1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月十六日(火曜日)
午後二時十分開議
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議事日程 第二十四號
昭和十二年三月十六日
午後一時開議
質問
一 退職積立金及退職手當法の運用に關する質問(鈴木正吾君提出)
二 政府事業に於ける土地買收に際し小作人の被りたる損失補償等に關する質問(三宅正一君提出)
三 議會報告竝時局批判演説會に際し官公營造物使用に關する質問(高岡大輔君提出)
四 第十二囘國際オリンピック大會準備速進に關する質問(笠井重治君提出)
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第一 昭和七年法律第十二號中改正法律案(造幣局資金拂出に關する件)(政府提出) 第一讀會
第二 日本銀行條例中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 日本銀行參與會法廢止法律案(政府提出) 第一讀會
第四 東京農業教育專門學校創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 小運送業法案(政府提出) 第一讀會
第七 日本通運株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第八 帝國の滿洲國に於ける治外法權の撤廢及南滿洲鐵道附屬地行政權の調整乃至移讓に伴ひ退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 船員法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 揮發油及アルコール混用法案(政府提出) 第一讀會
第十一 貿易組合法案(政府提出) 第一讀會
第十二 貿易調整法案(政府提出) 第一讀會
第十三 工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 横莊鐵道株式會社所屬鐵道外三鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十五 製鐵事業法案(政府提出) 第一讀會
第十六 大正九年法律第五十三號中改正法律案(關税法及關税定率法等の朝鮮に於ける特例に關する件)(政府提出) 第一讀會
第十七 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(政府提出) 第一讀會
第十八 防空法案(政府提出) 第一讀會
第十九 海外移住組合聯合會に對する政府貸付金の出資等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二十 農村負債整理資金特別融通及損失補償法案(政府提出) 第一讀會
第二十一 帝國燃料興業株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第二十二 人造石油製造事業法案(政府提出) 第一讀會
第二十三 日本銀行金買入法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十四 商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十五 肥料取締法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十六 酒造組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十七 日本無線電信株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十八 特許法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十九 商標法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十 不正競爭防止法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十一 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十二 大正十年法律第百二號中改正法律案(定年に因る退職判事檢事の恩給に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十三 兵役法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十四 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十五 産業組合自治監査法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十六 軍機保護法改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十七 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十八 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十九 百貨店法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四十 辨理士法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四十一 樺太市制案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十二 輸出補償法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十三 昭和十年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十一年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第四十三 昭和十一年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) セマス
〔書記官朗讀〕
答辯書
ニ對スル答辯書
:
書
自昭和十一年一月昭
至同年三月
和十年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超
過及豫算外支出ノ件
昭和十一年度第二豫
備金支出ノ件
昭和十一年度特別會
計第二豫備金支出ノ
件
昭和十一年度特別會
計豫備金外ニ於テ豫
算外支出ノ件
諸般ノ報告ヲ致サ
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員大野伴睦君提出精神病者ノ保
護救療ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員鈴木正吾君提出退職積立金及
退職手當法ノ運用ニ關スル質問ニ對スル
衆議院議員三宅正一君提出政府事業ニ於
ケル土地買收ニ際シ小作人ノ被リタル損
失補償等ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員高岡大輔君提出議會報告竝時
局批判演說會ニ際シ官公營造物使用ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員笠井重治君提出第十二囘國際
オリムピック大會準備速進ニ關スル質問
(以上三月十六日受領)
精神病者ノ保護救療ニ關スル質問主意
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年二月二十七日
提出者大野
伴睦
精神病者ノ保護救療ニ關スル質問主
意書
精神病者ハ社會ノ複雜化ト文明ノ進
步トニ伴フ時代病ニシテ逐年增加スル
ニ拘ラス之カ保護救療ノ施設ニ至リテ
ハ歐米先進國ニ比シテ九牛ノ一毛ニ過
キス其ノ家族カ精神上經濟上ニ被ル損
害ハ想像ニ餘アリ或ハ人ヲ殺シ火ヲ放
チ時トシテハ不敬罪ヲ犯シ首相ヲ狙ヒ
大臣官邸ニ闖入スル等國家ノ安寧ヲ害
シ秩序ヲ紊シ戰慄ニ堪ヘサルモノアリ
政府ハ如何ナル方法ヲ以テ其ノ發生ヲ
防止シ且是等未監置患者ヲ保護シ取締
ラムトスルヤ
過激ナル思想ヲ抱キテ社會ノ秩序ヲ
破壞シ或ハ住所不定ノ患者ニシテ浮浪
徘徊シ公安ヲ害スルノ虞アルモノ少カ
ラス政府ハ國立精神病院ヲ設立シテ是
等ノ患者ヲ收容保護スルノ意思ナキヤ
精神病院法ハ道府縣ニ公立病院ヲ設
置セシムルノ趣意ナルニ拘ラス其ノ設
立ヲ見タルハ僅ニ指ヲ屈スルニ過キス
是レ每年豫算ニ補助金ノ計上過少ノ結
果ナリト信ス政府ハ何故ニ適當ノ金額
ヲ計上シテ之カ設置ヲ奬動促進シ重病
且危險ノ虞アル患者ヲ收容保護セシム
ルノ意思ナキヤ
道府縣ノ設立スル精神病院ニ對シテ
ハ建築及增改築ニ向テ其ノ經費ノ二分
ノ一ノ補助ヲ與フルニ拘ラス之カ代用
トシテ指定シタル病院ノ增改築ニ對シ
テハ全ク此ノ事ナシ政府ハ何故ニ補助
ノ途ヲ講シ之カ均衡ヲ計ラサルヤ
-精神病者ノ過半數ハ遺傳性ノモノナ
リト聞ク政府ハ斷種法ヲ制定シテ遺傳
性精神病ヲ豫防スルノ意思ナキヤ
-中年以後ノ精神病ハ靑年時ニ於ケル
黴毒ニ基因スルモノ多數ナリト聞ク政
府ハ花柳病ノ豫防撲滅ニ對シテ徹底的
方策ヲ講スルノ意思ナキヤ
精神病ニ關シテハ徒ニ監置ヲ主トス
ル精神病者監護法及醫療ヲ目的トスル
精神病院法カ適用サルルモ時代ヲ異ニ
シタル制定ニシテ複雜煩瑣其ノ取扱區
區ニシテ當事者ノ迷惑少カラスト聞ク
政府ハ速ニ之ヲ統一改正スルノ意思ナ
キヤ
右及質問候也
本質問ニ對シテハ書面ヲ以テ答辯アラ
ムコトヲ望ム
昭和十二年三月十六日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員大野件睦君提出精神病者ノ保
護救療ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員大野伴睦君提出精神病者ノ
保護救療ニ關スル質問ニ對スル答辯書
精神病ノ發生ヲ防止スル方法トシテ
ハ精神衞生思想ノ普及ヲ圖リ一面黴毒、
中毒等精神病ノ原因トシテ明白ナルモ
ノノ芟除ニ努メ居ルモ遺傳性精神病ノ
發生防止ニ付テハ更ニ一層愼重ノ〓究
ヲ進ムル考ナリ、又社會保安上危險ナ
ル精神病者ニ付テハ精神病者監護法、
精神病院法ノ規定ニ依リ之ヲ放置スル
コトナキ樣努メ居ルモ尙未監置ノモノ
ニ付テハ精神病院施設ヲ擴充シテ其ノ
保護取締ニ遺憾ナキ樣努メタキ考ナリ
精神病者ハ全國ニ散在シ且其ノ疾病
ノ性質上之ヲ遠隔ノ地ニ送致スルコト
困難ナルヲ以テ各道府縣ニ公立精神病
院ヲ普及シ其ノ道府縣ノ病者ヲ收容ス
ルコトニ努メツツアリ、尙特殊ノ病者
ヲ收容スル爲國立精神病院ノ設置ニ關
シテハ更ニ考究セントス
一、公立精神病院建設ニ對スル補助豫算
ハ現在ノ財政ノ都合上極メテ少額ヲ計
上シアリ、其ノ結果公立精神病院ノ普
及未ダ十分ナラザルハ甚ダ遺憾トスル
所ナリ、將來財政ノ許ス限リ補助豫算
ヲ增額シテ公立精神病院ノ擴充ヲ圖ラ
ントス
一、代用精神病院ハ公立精神病院ノ不足
ヲ補フ爲ニ旣設ノ病院ヲ利用スルノ本
旨ナルヲ以テ其ノ新築ニ對スル場合ト
同樣增改築ニ對シテモ公立病院同樣國
庫補助ノ途ヲ開クノ考ナシ
遺傳性精神病者ノ發生防止ノ目的ヲ
以テ斷種法ヲ制定スルノ可否ハ極メテ
重大ナル問題ナルヲ以テ目下愼重ニ調
査〓究中ナリ
花柳病ノ豫防ニ關シテハ娼妓取締規
則花柳病豫防法等ニ依リ種々施設ヲ
講ジ居ルモ今後一層之ヲ充實シ取締ヲ
嚴ニスルト共ニ一般民衆ニ對シテモ豫
防知識ノ普及ニ努メ花柳病豫防ノ徹底
ヲ期セントス
一、精神病者監護法竝精神病院法ノ改正
ニ付テハ政府モ旣ニ其ノ必要ヲ認メ曩
ニ地方長官ニ照會シ更ニ民間專門家ノ
意見ヲ徵シ目下調査〓究中ナリ
右及答辯候也
昭和十二年三月十六日
內務大臣河原田稼吉
退職積立金及退職手當法ノ運用ニ關ス
ル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年二月二十七日
提出者鈴木正吾
退職積立金及退職手當法ノ運用ニ
關スル質問主意書
退職積立金及退職手當法ノ運用ニ關シ次
ノ二點ヲ御尋ネ致シマス
第一ハ退職積立金及退職手當法ニ關ス
ル官廳ノ事務取扱ノ方針ニ付テデアリ
マス
本年一月一日ヨリ施行セラレ居ル本法ニ
依リ各事業主ニ於テハ第十七條ノ規定ニ
依ル者モ第三十條ノ規定ニ依ル者モ共ニ
各ミ其ノ事業沿革、現在ノ從業員ニ對ス
ル規定等ヲ參酌シテ自工場ニ適應シタル
退職積立金竝退職手當ニ關スル規程案ヲ
作製シ當該地方長官ニ對シテ其ノ許可又
ハ認可ヲ申請シテ居ルノデアリマス
此ノ場合成ルベク許可又ハ認可ヲ速ニシ
テ民間業者ニ迷惑ヲ掛ケナイヤウ注意ス
ルコトハ本法審議ノ委員會ニ於テ當局ノ
言明セラレタ所デアリマスガ現前ノ實情
ハ其ノ認可ガ中々手間取ッテ當該官廳モ
民間業者モ共ニ困ツテ居ルノデアリマス
何故ソウナツテ居ルカト云ヘバ同一ノ事
業主ノ工場又ハ鑛山ガ他府縣ニモアル場
合ニ於テ事業主ノ立場トシテハ各工場
(鑛山)ヲ同一ノ規定ニ依テ律シタイト云
フ經營上當然ノ理由カラ同一ノ規程案文
ヲ各工場(鑛山)カラ當該地ノ行政官廳ニ
提出スル之ヲ受取ツタ道府縣當局者ハ內
務省カラノ通牒「退職積立金及退職手當
法ニ關スル事務取扱方針」ノ第三十條ノ
四-同一ノ事業主ノ工場又ハ鑛山ガ他
府縣ニモ在ル場合ニ於テ同一ノ退職手當
規定ヲ定メントスル希望アル場合ハ勞働
部ニ協議ノ上許可スルコトト云フ指
令ニ基キ其ノ認可又ハ許可ニ付社會局ニ
相談スルノデアリマス
卽チ各府縣ノ官廳デハ退職規定ノ許可又
ハ認可申請ハ受付ケルガ單獨デ許可又ハ
認可スルコトハ出來ナイ形式上デハ地方
長官ガ許可又ハ認可スルコトニナツテ居
ルガ實際ハ社會局勞働部ト協議シナケレ
バナラナイ所ガ各府縣ノ當局者ハ必ズシ
モ意見ガ一致シテ居ルト云フ譯デハナイ
カラ思ヒ思ヒノ見解ニ基キ認可又ハ許可ノ
申請ニ對シテ事業主ト折衝スル勿論事業
主トスレバ各府縣限リデ定マルモノ又ハ
各地方事情各工場ノ特殊事情ニ依テ定マ
ルモノ等モアリ必ズシモ同一ノ規定ヲ必
要トシナイ就業規則ノヤウナモノデアレ
バ各府縣ノ單獨意思ニ依リ或ハ單獨ノ折
衝ニ依テ許可又ハ認可シテ貰ツテ良イノ
デアルガ退職手當ヤ積立金ノ規定ノ如キ
ハ其ノ工場又ハ鑛山ノ所在地如何ニ拘ラ
ズ同一規定ヲ必要トスル場合ハ其レデハ
困ル又各府縣ノ官廳デ色々審査ヲシテミ
タ所デ結局實質的ニハ社會局ノ勞働部ガ
其ノ規定ヲ決裁スルコトニナル斯ンナコ
トナラ最初カラ社會局ノ勞働部ニ其ノ規
程案ヲ提出シテ其ノ許可又ハ認可ヲ得ル
コトニスレバ手數ガ省ケテ府縣モ事業主
モ共ニ便利デアリマスガ法文ノ組立ガ行
政官廳ノ許可又ハ認可ト云フコトニナツ
テ居ル爲實際上ノ許可又ハ認可權ヲ有ス
ルモノガ陰ニ隱レテ何處マデモ府縣ヲ表
面ニ立テテ居ルカラ仕事ガ遲レルノミナ
ラズ各府縣ノ工場課ニ於テモ結局自分達
デ審査シテモ社會局デドウ取扱フカ判ラ
ナイカラ無駄ナ手數ガ掛カル許リデアル
ト云フ氣ニナツテ益〓事ガ捗ラナイノデ
アリマス
其處ガ斯ル事務取扱方針ヲモツト簡易化
スル爲政府ニ御尋ネ致シタイ所ハ
同一ノ事業主ノ工場又ハ鑛山ガ他府縣
ニモ在ル場合ニ各工場(鑛山)ニ共通ノ
退職規定ヲ希望スル向キニ對ツテハ其
ノ事業ノ本社又ハ主タル工場(鑛山)所
在地ノ行政官廳ニ對シ先ヅ其ノ規定ノ
許可又ハ認可ノ申請ヲ爲シ其ノ許可又
ハ認可ヲ得タル上ハ其ノ旨ヲ附記シテ
從タル工場(鑛山)所在地ノ行政官廳ニ
許可又ハ認可ノ申請ヲ爲スコト
此ノ場合本社又ハ主タル工場(鑛山)所
在地ノ地方長官ハ其ノ規定ノ許可又ハ
認可ヲ爲スニ當リ社會局ト十分協議シ
テ愼重ニ之ヲ決定セラレルコトハ勿論
デアリマスガ從タル工場(鑛山)所在地
ノ府縣當局ハ其ノ許可又ハ認可ノ申請
ニ對シテハ同一規定ナルガ故ニ其ノ儘
直ニ之ヲ許可又ハ認可スルコト
右ノ通リ其ノ取扱方針ヲ簡易化スレバ官
廳モ民間モ共ニ非常ナル便宜ヲ得ルコト
ニナリマスノデ現ニ各府縣當局ニ於テモ
斯ウナルコトヲ希望スル空氣ガアルヤニ
聞キ及ビマス政府ガ速ニ本法ノ事務取扱
方針ヲ右ノ樣ニ定メ各府縣ニ指令ヲ出シ
テ頂キタイト思ヒマスガ政府ノ御所見ハ
如何デアリマスカ
第二ハ本法適用ノ範圍ヲ更ニ擴張セラ
レル御考ハナイカドウカト云フ點デア
リマス
申ス迄モナク本法適用ノ範圍ハ當時五十
人以上ノ勞働者ヲ使用スル工場法ノ適用
ヲ受クル工場ト鑛業法ノ適用ヲ受クル事
業ノ二ツニ(第一條)限ラレテ居リマスガ
退職者保護ノ意味カラ云ヘバ右ノ範圍ヲ
擴張スルコトハ望マシイコトデアル殊ニ
事業主ニ於テ之ヲ擴張スル氣持ガアレバ
政府ハ進ンデ之ヲ奬勵スベキデアルト思
ヒマス
現在各種ノ工場ニ於テハ主タル工場內ノ
職場デ生產ニ從事シテ居ル職工以外ニ門
衞小使、食堂ノ炊事夫、倉庫人夫等附
屬ノ仕事ニ携ツテ居ル者モ少クナイ此等
ノ從タル仕事ニ從事シテ居ル勞働者ニ對
シテモ其ノ退職ノ場合工場法ノ適用ヲ受
クル職工ト同額ノ手當ヲ支給スルコトハ
工場經營上カラモ又社會政策的見地カラ
モ望マシイコトデアル事業主ガ此等ノ規
定ヲ退職手當ニ關スル規定ノ中ニ包括ス
ルコトハ現在ニ於テモ退職手當法ノ認ム
ル所デアル然シナガラ本法ノ適用ヲ當然
受クベキ職エト之ニ準ズル從タル勞働者
トノ間ニハ次ノ如キ取扱上ノ差違ガアリ
又法ノ保護ヲ受ケテ居ラヌ事實ガアル
本法ニ於テハ支拂賃金ノ百分ノ二
ノ額ヲ强制的ニ積立テルコトニナツテ
居ルガ從タル勞働者ハ事業主ニ於テ
其ノ取扱ヲスルコトガ出來ナイ從テ
勞働者ノ方カラ言ヘバ退職ノ際主タ
ル職工ハ退職手當ノ外ニ自己積立金
モ手取ニナルガ積立ヲ强制サレテ居
ラヌカラ其レダケ退職ノ際ノ手取リ
金額ガ少クナル
二主タル職工ハ普通ノ郵便通帳ノ外
ニ積立金ハ別ノ通帳デ預リ得ルノデ
アルガ從タル勞働者ニハ其ノ特典ガ
ナイ(郵便貯金ノ通帳ハ一人一册ニ
定メラレテ居ル)
三事業主ノ退職手當支給ノ爲ノ準備
金ノ積立ニハ免稅ノ特典ガアルガ從
タル勞働者ハ法ノ保護ガ及バナイカ
ラ是等ノ勞働者ノ爲ノ事業主ノ積立
金モ免稅ノ特典ナク別途ニ之ヲ積立
テネバナラヌ
四法ノ適用ヲ受ケル主タル職工ノ退
職手當ハ差押へラレヌト云フ法ノ保
護ガアルガ從タル勞働者ハ本法ノ保
護ヲ受ケナイカラ差押ノ危險ニ曝サ
レル
大體以上四ツノ差別待遇ヲ受ケルコトニ
ナツテ居リマスガ元來本法ノ精神ハ出來
ルダケ廣範圍ノ勞働者ヲ保護スルニアル
ベキ筈ナルガ故ニ工場法ノ適用ヲ受クル
職工ト其ノ他ノ勞働者ヲ併セ併用シテ居
ル事業主ガ後者ニ對シ前者ト同樣ナル取
扱ヲ爲サント希望スル場合ハ上述ノ如キ
差別扱ヲ廢シ本人ノ積立金、事業主ノ準
備積立金其ノ他凡テノ取扱ヲ同一ニスル
方針ニ改メラレタイト思ヒマスガ當局ノ
御所見ハ如何デアリマスカ若シ之ヲ否ナ
リトセラレルナラバ其ノ理由ヲ明示セラ
レタイ
右及質問候也
昭和十二年三月十六日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員鈴木正吾君提出退職積立金及
退職手當法ノ運用ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員鈴木正吾君提出退職積立金
及退職手當法ノ運用ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
第退職積立金及退職手當法第三十條
ノ規定ニ依ル許可ノ取扱ニ付テハ地
方長官及鑛山監督局長ヲシテ出來得ル
限リ速カニ其ノ手續ヲ取運バシメツツ
アリ
同一事業主ノ經營スル工場又ハ鑛山ガ
數府縣ニ存在スル場合ニ於テ當該事業
主ヨリ各事業ニ付同一ノ退職手當規定
ヲ制定シ度キ希望ヲ附シ地方長官又ハ
鑛山監督局長ニ許可ヲ申請シタル場合
ニハ許可ノ際社會局勞働部ニ協議スル
取扱ト爲シ居ルモ、其ノ事業主ノ主タ
ル工場鑛山ノ所在地ノ行政官廳ヨリ勞
働部ニ協議アリタル場合ニハ便宜勞働
部ヨリ其ノ他ノ工場鑛山ノ所在地ノ行
政官廳ニ對シテ適宜連絡ヲ取リ許可ノ
手續ヲ簡易ナラシムルコトトシ法律施
行ノ圓滑ヲ期シ居ル次第ナリ
第二退職積立金及退職手當法ノ適用範
圍ノ問題ニ付テハ、本法ガ工場法ノ適
用ヲ受クル工場又ハ鑛業法ノ適用ヲ受
クル事業ニ適用セラルル關係上本法ノ
適用ヲ受クル勞働者モエ場法又ハ鑛業
法ノ適用ヲ受クル勞働者ヲ謂フモノナ
リ、門衞、小使、賄夫、人夫等工場法
又ハ鑛業法ノ適用ナキ者ニ付テハ本法
外ニ於テ福利施設トシテ適宜ノ制度ヲ
設クルコトヲ奬勵シ其ノ保護ヲ圖ル方
針ナリ
右及答辯候也
昭和十二年三月十六日
內務大臣河原田稼吉
政府事業ニ於ケル土地買收ニ際シ小作
人ノ被リタル損失補償等ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年二月二十七日
提出者三宅正一
政府事業ニ於ケル土地買收ニ際シ小
作人ノ被リタル損失補償等ニ關スル
質問主意書
-鐵道敷設其ノ他ノ政府事業ニ於テ土
地ヲ買收スルニ際シ耕作權ニ對スル補
償若ハ作離料ハ由來小作人ニ直接支拂
ハス其レ等ヲ含メテ地主ニ土地代金ト
シテ手交スルヲ以テ往々ニシテ地主ハ
其ノ金額ヲ私シ小作人ハ一文ノ迷惑料
ヲモ受クルヲ得ス徒ニ耕作地ヲ失フニ
止マルノ事例頗ル多シ政府ハ斯ル不合
理ニ對シ適正ナル方法ヲ講スルノ意思
ナキヤ
二鐵道工事其ノ他ノ政府事業ガ請負ニ
付セラルル際ニ於テ元請負人ハ其ノ工
事ノ一部ヲ下請負人ニ、下請負人ハ更
ニ下下請負人ニ請負ハシムルハ斯界ノ
常態ナリ然ルニ下請負人ハ往々勞働賃
銀不拂ノ儘逃亡シ或ハ小賣商人ノ賣掛
代金ヲモ支拂ハサルコトアリ之ヲ元請
負人ニ請求スルモ責任ヲ囘避スルノ事
例多シ政府ハ政府事業ニ付テ斯ル不合
理ヲ絕滅シ元請負人ニ其ノ責任ヲ負ハ
シメ是等一切ノ不都合ヲ生セサルヤウ
適當ノ規定ヲ設クルノ意思ナキヤ
右及質問候也
昭和十二年三月十六日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員三宅正一君提出政府事業ニ於
ケル土地買收ニ際シ小作人ノ被リタル損
失補償等ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員三宅正一君提出政府事業ニ
於ケル土地買收ニ際シ小作人ノ被リタ
ル損失補償等ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
一、永小作權若ハ賃借權ノ登記アル場合
又ハ土地賣買ノ慣習アル場合ハ其ノ慣
習ニ準據シ小作人ヲモ關係人トシテ直
接協議ヲ爲シ地上物件又ハ作離料等ノ
補償ヲ爲スモ其ノ他ノ場合ニ於テハ土
地所有者ヲ通シ補償ノ解決ヲ爲サシム
ルノ方法ヲ採リ來レリ
尙土地所有者ニシテ前述ノ補償ヲ理由
ナク私スル者アラハ之等ニ對シテハ遺
憾ナキ方策ヲ講スヘシ
二、鐵道其ノ他政府事業ノ工事ノ請負人
ハ資力信用共ニ確實ナルモノヲ選ヒ其
ノ現場代人及下請負人ニ對シテモ充分
注意ヲ爲シ以テ勞働賃銀又ハ小賣商人
ヨリノ賣掛代金ヲ不拂ノ儘逃亡スルカ
如キコトナカラシムル樣努メツツアル
モ猶萬一斯ノ如キ事態ノ生スル場合ニ
於テハ請負人ニ對シテ嚴重警告ヲ爲シ
地方ニ迷惑ヲ掛ケサル樣取扱ヒツツア
リ尤モ政府ノ直接施行スル河川道路港
灣等ノ事業ニ在リテハ請負ニ附スルコ
トナシ
右及答辯候也
昭和十二年三月十六日
農林大臣山崎達之輔
鐵道大臣伍堂卓雄
內務大臣河原田稼吉
大藏大臣結城豊太郞
議會報告竝時局批判演說會ニ際シ官公
營造物使用ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年三月二日
提出者高岡大輔
議會報告竝時局批判演說會ニ際シ官
公營造物使用ニ關スル質問主意書
衆議院議員選擧ニ當リテハ小學校舍ヲ始
メ官公營造物ヲ演說會場トシテ借リ得ル
ガ議會報告或ハ時局批判演說會ニハ右營
造物ノ管理人ノ意思如何ニ依ルハ甚ダ不
都合ナルモノト思フ議會報〓ハ代議士ノ
義務ナリ然ルニ右ノ管理人ハ取締ノ煩シサヲ
理由ニ往々市町村當局者ノ所謂反對黨所
屬ノ代議士ニハ借用セシメズ從テ村落ニ在
リテハ農民ノ議會報告演說ヲ要望スルモノ多
多アルニモ拘ラズ之ヲ爲シ得ザル現況ナリ
政府ハ國民ノ政治〓育ノ觀點ヨリシテ議
會報告竝時局批判演說會ニ對シテハ選擧
ノ際ニ於ケルト同樣官公營造物ヲ損料ヲ
徵收シテ差支ナキ限リ申込次第使用セシ
ムルノ意思アリヤ否ヤ
右及質問候也
昭和十二年三月十六日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員高岡大輔君提出議會報告竝時
局批判演說會ニ際シ官公營造物使用ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員高岡大輔君提出議會報告竝
時局批判演說會ニ際シ官公營造物使用
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
代議士ガ議會報告演說會或ハ其ノ他ノ政
談演說會ノ會場トシテ小學校ノ校舍ヲ使
用セントスルトキハ授業ニ差支ナキ限リ
之ヲ使用セシムル樣文部省ヨリ地方廳ニ
通牒シアル所ナルモ之ヲ選擧ニ於ケルト
同樣ノ扱ニ改ムルコトニ付テハ尙篤ト考
究ノ要アルモノト認ム
右及答辯候也
昭和十二年三月十六日
內務大臣河原田稼吉
文部大臣林銑十郞
第十二囘國際オリムビック大會準備速
進ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年三月六日
提出者笠井重治
第十二囘國際オリムピック大會準備
速進ニ關スル質問主意書
第十二囘國際「オリムピック」大會ハ昭和
十五年東京ニ開催スルコトニ決定セリ時
恰モ建國二千六百年ニ方リ之カ成否ハ國
運ノ消長ニ多大ノ影響ヲ有スルヲ以テ政
府ハ速ニ之ニ關スル指導精神ヲ明示シ國
民精神ノ作興ト保健衞生ノ向上トニ資シ
且我カ國文化ヲ海外ニ宣揚スルコトニ努
力セサルヘカラス何故ニ政府ハ速ニ之カ
準備ニ著手スルト共ニ「オリムピック」組
織委員會ヲ鞭撻セサル乎
右及質問候也
昭和十二年三月十六日
內閣總理大臣林銑十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員笠井重治君提出第十二囘國際
オリムビツク大會準備速進ニ關スル質問
ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員笠井重治君提出第十二囘國
際オリムピツク大會準備速進ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
第十二囘國際オリムピツク大會ハ恰モ皇
紀二千六百年ニ東京ニ開催セラルルニ付
キ、之ヲ單ニ國際的運動競技會ニ了ラシ
ムルコトナク此ノ機會ニ於テ日本文化ノ
宣揚國民精神ノ作興國民體育ノ振興等ヲ
圖ルベキ必要アリ依ツテ是ガ準備竝ニ實
行ニ關シテハ擧國一致之ニ當ル趣旨ノモ
トニ、政府ハ曩ニ大會直接ノ施行團體ク
ル組織委員會ノ成立ヲ助ケ其ノ進行ニ關
シテモ適當ナル指導ト協力トヲ與へ來レ
リ、而シテ昭和十二年度豫算ニオリムビッ
ク大會指導監督費ヲ計上シタルノミナラ
ズ最近組織委員會ヨリ申請ノ大會經費ニ
關シ國庫補助金ヲ交付スベキ意圖ヲ以テ
目下種々〓究中ナルニ付不日十二年度追
加豫算トシテ計上ノ豫定ナリ
右及答辯候也
昭和十二年三月十六日
文部大臣林銑十郞
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十五日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
百貨店法案
辨理士法中改正法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
〓又ハ町村祿高ニ對スル公債證書給與ニ
關スル法律案
提出者
寺田市正君東〓實君
井上知治君天辰正守君
(以上三月十三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
帝都防火建築ニ關スル質問主意書
提出者深澤豐太郞君
外務大臣ノ演說ニ關スル質問主意書
提出者〓瀨一郞君
對滿對支政策ニ關スル質問主意書
提出者中村嘉壽君
(以上三月十三日提出)
機船底曳網ニ關スル質問主意書
提出者
北昤吉君田邊熊一君
三宅正一君內藤久一郞君
(以上三月十五日提出)
一去十三日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第一部選出
豫算委員南雲正朔君(坂東幸太郞君
補關)
第一部選出
懲罰委員大石大君(馬場元治君補關)
第二部選出
請願委員中野邦一君(湊季松君補闕)
第三部選出
豫算委員勝田永吉君(渡邊銕藏君補
關
第五部選出
請願委員仲井間宗一君(高野喜六君
補闕)
第九部選出
決算委員江藤源九郞君(中原謹司君
補闕)
一去十三日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計
ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案(政府提
出)外二件委員
辭任今井新造君補闕田川大吉郞君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外四
件委員
辭任渡邊泰邦君補闕大石大君
絲價安定施設法案(政府提出)外一件委員
辭任粟山博君補關松尾四郞君
辭任助川啓四郞君補闕小林錡君
辭任最上政三君補關高木条太郞君
辭任生田和平君補關益谷秀次君
辭任篠原義政君補關登坂良作君
輸出補償法中改正法律案(政府提出)委員
辭任馬場元治君補闕木村武雄君
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)委員
辭任大石倫治君補關石川定辰君
辭任林讓治君補闕大本貞太郞君
樺太市制案(政府提出)委員
辭任服部〓一君補闘牧山耕藏君
一昨十五日常任委員理事補闕選擧ノ結果左
ノ如シ
請願委員
理事大島寅吉君(理事高野嘉六君本
月十二日委員辭任ニ付其ノ補關)
一昨十五日特別委員理事補闕選擧ノ結果左
ノリリ
樺太市制案(政府提出、貴族院送付)委員
理事川崎末五郞君(理事服部〓一君本
月十三日委員辭任ニ付其ノ補闕)
一昨十五日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計
ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案(政府提
出)外二件委員
辭任北原阿智之助君補關宮澤胤勇君
絲價安定施設法案(政府提出)外一件委員
辭任瀨川嘉助君補關東條貞君
辭任百瀨渡君補闕多田滿長君
國民健康保險法案(政府提出)外二件委員
辭任小林三郞君補闕勝田永吉君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外四
件委員
辭任松岡俊三君補關松山常次郞君
農地法案(政府提出)委員
辭任杉山元治郞君補闕川俣〓音君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=1
-
002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、御諮リ致シマス、第二部選出豫算委
員平川松太郞君、第七部選出豫算委員川橋
豐治郞君、第八部選出豫算委員杉山元治郞
君、第八部選出豫算委員北勝太郞君、第三
部選出建議委員角源泉君、右常任委員辭任
ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=2
-
003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ許可スルニ決シマシタ、其
部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ、御屆アラ
ンコトヲ望ミマス、本日ノ日程ニ揭ゲマシ
タ質問一乃至四ハ、何レモ政府ヨリ答辯書
ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ之ヲ省キ
やく、質問ノ答辯書ニ對スル意見陳述ノ申
出ガアリマスガ、是ハ適當ノ機會ニ許可ス
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=3
-
004・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第四十一ヲ繰
上ゲ上程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=4
-
005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=5
-
006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第四十一、樺太市制案、第一讀會ノ
續キヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
ス-委員長野村嘉六君
第四十一樺太市制案(政府提出、貴
族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一樺太市制案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十五日
委員長野村嘉六
衆議院議長富田幸次郞殿
〔野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=6
-
007・野村嘉六
○野村嘉六君 只今議題トナリマシタ樺太
市制案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致
シマス、本案ハ樺太ニ市制ヲ施行スルト云
フ案デアリマス、其理由ハ、樺太ハ領有以
來三十年ノ歲月ヲ經過シマシテ、初メハ專
ラ官治行政ヲ續ケテ來タガ、次第ニ人口モ
增加シ、地方モ發達シテ來タノデ、大正十
一年樺太ノ特殊事情ヲ斟酌致シマシテ、町
村制ヲ實施致シマシタ所、良好ナル成績ヲ
收メタノデ、昭和四年ニ更ニ町村制ヲ改正
致シマシテ、略〓內地同樣ナ自治機能ヲ有
スル制度ニ致シマシタ、其後ノ實績ハ、島
民ノ自治的訓練モ行屆キ、各町村ノ基礎モ
亦漸次鞏固トナリマシテ、殊ニ樺太廳ノ所
在地タル豐原町ノ如キハ、人口三万五千ヲ
超エントスル有樣デアリマス、故ニ樺太ニ
市制ヲ施行スルコトニ依ッテ、町村ノ發達ヲ
促ス結果トモナリマス、又樺太拓殖上ニ寄
與スル所モ多イト云フ、此見地カラ提案シ
タト云フコトデアリマス、サウ致シマシテ
本案ハ全文デ七箇條アリマシテ、樺太ノ特
殊事情ニ鑑ミタル規定以外ハ、多クハ內地
ノ市町村制ノ規定ヲ例トシテ居リマス、審
議ニ入リマシテ、委員ト政府トノ間ニ色
色質疑應答ガアリマシタ、其二三ヲ御紹介
申上ゲマスレバ、本案ハ勅令ニ讓ッテ居ル事
項ガ多イノデアリマス、從來ノ例ニ依レバ、
勅令ニ讓ッタ結果出來上ッタ規定ハ、動トモ
スレバ立法府ノ考ヲ裏切リ、遺憾ノ點ガ
多イノデアリマス、例ヘバ選擧法ニ關スル
規定ノ如キハソレデアリマス、故ニ此點十
分注意シテ貰ヒタイトノ意見ヲ述ベタノデ
アリマス、又本市制施行ノ上ハ、支廳長ヲ
以テ第一次監督者トスル如キ、或ハ市會ノ
解散權ヲ樺太長官ノ權限ニ屬セシメタル如
キ、勅令ニ對スル政府未定稿ノ原案ハ、監
督權又ハ解散權ヲ輕ンズルモノデ、何レモ
改メネバナラヌト云フ立場カラ、第一次監
督者ハ樺太長官トナシ、又市會解散ハ主管
大臣ニ屬セシメネバナラヌトノ質問ニ對シ
マシテ、拓務大臣ハ委員ノ意見ヲ諒トシテ、
十分考慮ノ上適當ナ處置ヲ執ルトノ答辯ガ
アリマシタ、審議ノ結果、全委員一致ヲ以
テ原案ヲ可決致シマシタ、玆ニ此段御報〓
ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=7
-
008・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=8
-
009・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=9
-
010・中山福藏
○中山福藏君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=10
-
011・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=11
-
012・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
樺太市制案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=12
-
013・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第一乃
至第三ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=13
-
014・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程第一、昭和七年法律第十二
號中改正法律案、日程第二、日本銀行條例
中改正法律案、日程第三、日本銀行參與會法
廢止法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ヲ
開キマス-大藏大臣結城豊太郞君
第昭和七年法律第十二號中改正法
律案(造幣局資金拂出ニ關スル件)
(政府提出)第一讀會
第二日本銀行條例中改正法律案(政
府提出)第一讀會
第三日本銀行參與會法廢止法律案
(政府提出)第一讀會
昭和七年法律第十二號中改正法律案
昭和七年法律第十二號中左ノ通改正ス
第三項中「拂出シノ日ヨリ五年以內」ヲ
「昭和二十二年度末迄」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
日本銀行條例中改正法律案
日本銀行條例中左ノ通改正ス
第十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
日本銀行ハ其業務ニ參與スル参與理事
七人以內ヲ置クヘシ
第十九條第三項ニ左ノ但書ヲ加フ
但大藏大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此
限ニ在ラス
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
參與理事ハ金融業若ハ產業ニ從事シ又
ハ學識經驗アル者ノ中ヨリ株主總會ニ
於テ選擧シ大藏大臣之ヲ命シ其任期ヲ
二年トス
參與理事ハ任期中他ノ銀行又ハ會社等
ノ常務ニ從事セントスルトキハ大藏大
臣ノ許可ヲ受クヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
日本銀行參與會法廢止法律案
日本銀行參與會法ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=14
-
015・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郎君) 只今議題トナ
リマシタ昭和七年法律第十二號中改正法律
案提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、本法律
ノ現行規定ハ、昭和六年以來ノ滿洲事變ノ
影響ニ因リマシテ事業ノ經營ガ甚シク困難
トナリ、又ハ不能ニ陷リマシタル支那在留
邦人ニ對シ、其事業復興ノ資金ヲ貸付クル
爲ニ、造幣局資金トシテ保有セラレマスル銀
地金ノ拂出ヲ認ムルト共ニ、其拂出ニ係ル
銀地金ハ、是ガ拂出ノ日ヨリ五箇年以內ニ、
一般會計ノ負擔ニ於テ之ヲ補塡スベキコト
ニ相成ッテ居リマスルガ、一般會計ノ歲計ノ
現狀ニ鑑ミマシテ、是ガ補塡ヲ貸付銀ガ償
還ニナリマスル昭和二十一一年度末マデ延期
シ得ルヨウ改正スルヲ適當ト認メマシテ、
本改正法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリ
マス
次ニ日本銀行條例中改正法律案及ビ日本
銀行參與會法廢止法律案ニ付キ御說明申上
ゲマス、日本銀行ノ機能ヲ一層發揚セシム
ル爲メ、日本銀行ニ新ニ參與理事ヲ置クコ
トト致シマシテ、又現行ノ規定デハ理事及
ビ監事ハ絕對的ニ兼職ヲ禁ゼラレテ居リマ
シテ、甚ダ不便ヲ感ズル場合ガアリマスルノ
デ、大藏大臣ノ許可ヲ受クレバ、他ノ銀行
會社等ノ役員ヲ兼ネ得ルコトニ改メ、同時
ニ日本銀行參與會法ハ、之ヲ廢止スルヲ適
當ト認メマシテ、本改正法律案及ビ廢止法
律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協贊アランコトヲ切望致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=15
-
016・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、順次之ヲ許可致シマス-木暮武太
夫君
〔木幕武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=16
-
017・木暮武太夫
○木暮武太夫君 只今議題トナリマシタ日
本銀行條例改正ノ法律案ニ關聯致シマシテ、
現在及ビ將來生ズベキ我國厖大豫算ヲ圓滿
ニ遂行シナケレバナラナイト云フ立前カラ、
政府ハ現行ノ日本銀行條例ニ對シマシテ、
如何ナル觀方ヲ致シテ居ルカト云フコトヲ
四五ノ點ニ付テ質問致シテ見タイト思フノ
デアリマス、結城大藏大臣ガ、過般多年日
銀ノ經營ニ當リマシテ、學識ト多年ノ經驗
ニ於テ評判ノ好カッタ深井前總裁ノ辭任ノ
後ヲ承ケマシテ、世間ノ表面カラハ暫ク隱
退シタ形ヲ取ラレタ池田氏ヲ無理ニ懇請ヲ
致シマシテ、日本銀行ノ總裁ノ位地ニ就カ
シメタ、此事ハ所謂刮目スベキ現內閣ノ一
ツノ人事行政デアリマシテ、是ガ爲ニ將來
大藏大臣ハ日本銀行活動ノ爲ニ、條例ノ徹
底的ノ改正ヲスルノデハナカラウカ、其用
意ト覺悟ガアルノデハナカラウカト云フコ
トヲ、推測セシムルニ十分ナルモノガアッタ
ノデアリマス、何トナレバ、昭和八年六月
デアリマシタカ、日本經濟聯盟ガ前年以來
〓究シタ我國ニ於ケル金融制度改善ヲ調査
シタル結果ヲ文書ニ致シマシテ、我國金融
制度改善ニ關スル意見書ナルモノヲ政府ニ
提出シテ、其中ニハ日本銀行ノ職制ノ改正、
日本銀行ノ事業金融ニ敢然トシテ出動スベ
キコトヲ慫慂致シテ居ル等、幾多ノ日銀條
例改正ノ意味ヲ含メタル、我國金融制度改
善ニ對スル意見書ト云フモノヲ出シマシタ
ガ、主トシテ之ヲ出シタル中心ノ人ハ、現日
銀總裁池田氏デアルト云フコトハ、世間周
知ノ事實デアリマス、加フルニ現大藏大臣
ハ興業銀行總裁御在職中カラ、常ニ日本銀
行條例ノ改正ヲ雜誌其他デ御主張ニナッテ、
日本銀行ガ產業金融ニ乘出スト云フコトノ
必要ト、而シテ其當然ナルコトヲ主張セラレ
テ居ルコトヲ、私共ハ常ニ耳ニ致シテ居ッタノ
デアリマス、ソレバカリデハアリマセヌ、
更ニ加フルニ今期議會ノ初メニ於ケル結城
藏相ノ言明ト云フモノハ、此大藏大臣ガ日
本銀行條例ノ改正ニ乘出スト云フコトヲ推測
セシムルニ、十二分ノ理山ガアッタノデゴザ
イマシタ、例ヘバ二月十五日貴族院ニ於ケ
ル阪谷男爵ノ質問ニ對シマシテ、大藏大臣
ハ何ト御答ニナッテ居ルカト云フト、日本銀
行條例ニ揭ゲテ居ル點ガ可ナリ古イモノデ
アルカラ云々ト、其改正ノ必要ノアルコト
ヲ暗示シテ、進ンデ殊ニ中央銀行ノ仕事ト
致シマシテハ、全般的ニ產業界ニ金融ノ疏
通ヲ圖ルコトガ必要デアリマシテ、ト云フ
意味ニ於テ營業方針ヲ考へ、同時ニ條例ノ
改正スベキモノハ、議會ノ協賛ヲ經ルヤウ
ニナルデアラウト思フノデアリマスト答ヘ
テ居ルノデアリマス、更ニ其翌日、二月十
六日本院ニ於テ太田正孝君ガ質問致シマシ
テ、太田君ハ御自分ノ意見ヲ可ナリ長ク御
述ニナッテ居ルノデアリマス、太田君ガ「日
本銀行ノ仕事振ハ從來餘リニ消極的デアリ、
化石化シ、民間金融ニ對シテ不親切、或ハ絕
緣狀態デアリマシタ、今回條例ヲ改正シ、其
職能ヲ積極ニ向ハシメルト云フコトハ、寧
ロ遲カッタト思ハレルノデアリマスガ、吾々
ハ一步進ンデ機構其モノヲモ、改革スベキ
必要ニ迫ラレテ居ルノデハナイカト思フノ
デアリマス」云々、更ニ「非常時財政遂行
上重大ナル役割ヲ持ツベキ銀行ノ銀行トシ
テノ日本銀行、之ニ新シイ考ヲ盛ルノニハ、
古イ革囊ニ副ハザルモノアルヤニ見受ケル
ノデアリマス、是コソ行政機構ノ改革ニモ
比スベキ經濟金融制度ノ改革ノ根本義ト信
ジマスガ、大藏大臣ハ如何ニ考ヘラレマス
カ」ト云フ大藏大臣ニ對スル太田君ノ質問
ニ對シマシテ、結城大藏大臣ハ何ト言ッテ
居ル、「日本銀行ノコトハ是ハ太田君ハ大體
御贊成下サイマシタヤウデアリマス、モウ
ソレヨリ外ハナイト思ヒマス」云々ト答辯
シテ居ラレルノデアリマス、更ニ一月十五
日阪谷男爵ガ貴族院ニ於テ御質問ニナッタ、
ソレニ對スル結城大藏大臣ノ答辯ニ恰モ呼
應スルガ如ク、當時ノ總テノ新聞ニ池田日
銀新總裁ハ其抱負ヲ語ラレテ居リマス、何
ト語ラレテ居ルカト云フト、池田日銀總裁
ハ、貴族院ニ於ケル日銀條例改正ニ關スル
結城藏相ノ答辯ニ關シ、左ノ如ク語ッタ「日銀
ノ現制度ヲ改革スルト云ヘバ、日銀ノ營業
方針ニ關スル問題デ、日銀條例第十一條及
第十二條ヲ改正シテ、從來日銀ノ機能ガ商
業金融ノ範圍ニ閉籠メラレテ居タノヲ、工
業金產マデ擴大シ、日銀ヲシテ廣ク產業資
本ヲ「バック」セシメルト云フコトデアラウ」
ト云フコトデ、明ニ條例ノ改正ノ點マデモ
言明シテ抱負ヲ語ラレテ居ルノデアリマス、
以上ノ事實ヲ、卽チ深井氏ノ後ニ日銀條例
改正論者デアル池田氏ヲ懇請シテ新總裁ニ
擧ゲタト云フコトト、又新藏相自ラモ在野
時代同ジ議論ヲ御持チニナッテ居ッタト云フ
コトト、本會議初メノ御言明ト云フヤウナコ
トヲ、私共ガ靜ニ振返ッテ考ヘテ見マスルナ
ラバ、結城藏相コソ日本銀行ノ所謂傳統ノ
殼ヲ打破ル所ノ、最初ノ立役者デハナカラ
ウカト考ヘルノハ、至當デアラウト私共ハ
信ズルノデアリマス、結城藏相コソ日本銀
行條例ニ飛躍的ノ改正ヲ加ヘテ、產業金融
ニ一新時期ヲ割スル人デアラウト世間ガ確
信スルコトガ、何處ニ無理ガアルカト思フノ
デアリマス、然ルニ其後初メ脫兎ノヤウデ
アッタ結城大藏大臣ガ、段々ト處女ノヤウニ
變ッテ來テ、三月一日ノ豫算委員會第三分科
ニ於ケル民政黨ノ中村三之水君ニ對スル答
辯ニ於テ、又三月三日ノ太田正孝君ニ對ス
ル答辯ニ於キマシテモ、一月ノ初メノヤウ
ナ御聲明トハ全ク異ル所ノ言明ガアッテ、結
局ハ本日只今此處ニ出デマシクル所ノ、泰
山鳴動鼠一匹ト申シマスカ、極メテ簡單ナ
ル改正案ダケガ出タノデアリマス、或ハ心
境ノ變化ト云フ御返事ガアルカ知レマセヌ
ケレドモ、責任ノアル大藏大臣ノ御言動ト
致シマシテ、靜ニ御反省ヲ願ヒタイノデハ
ナカラウカト思ヒマス
ソコデ第一ニ私ガ伺ヒタイコトハ、會期
ガ切迫シテ居ル爲ニ、一月初メノ御言明ノ
ヤウニ、又產業界一般ガ大藏大臣ニ御期待
申上ゲタ如キ、徹底シタル改正案ヲオ出シ
ニナレヌノデアリマスカ、不提出ノ原因ト
云フモノガ、會期ノ切迫ト云フコトニアル
カト云フコトヲ、先ヅ第一ニ御伺致スノデ
アリマス
第二ニ御伺致スコトハ、一體大藏大臣ハ
日本銀行條例第十一條、第十二條ヲ改正シ
テ、日本銀行ノ金融對象物ト云フモノヲ
モットウント擴張シテ、サウシテ產業金融ニ
乘出ス所ノ御意思ガアルカドウカ、又意思
ガアッテ現在〓究シテ、來ルベキ次ノ議會ニ
御提案ニナルヤウナ御考デアルカドウカト
云フコトヲ、第二ニ御伺致スノデアリマス、
何故カト申スト、結城大藏大臣ハ二月十五
日本院ニ於キマスル初メテノ財政演說ノ
中デ斯ウ言ウテ居ル、「產業ノ助長發展ノ爲
ニハ政府ノ諸施設ノ外、生產力擴充等ノ爲メ
金融機關ノ活躍ヲ期待スル次第デアリマス」
ト申サレテ居ルノデアリマス、其後ノ委員
會或ハ本會議ノ質問應答ヲ通ジテ見マシテ
モ、大藏大臣ガ今囘ノ厖大ノ豫算ノ圓滑ナ
ル遂行ニ當ッテ、物價ノ暴騰ヤ惡性「インフ
レ」ノ襲來スルコトヲ極力防止スル必要ヲ
痛感シテ、現在著シク不足シテ居ル所ノ生
產力ノ擴充ヲ急務ト認メマシテ、產業資金
ノ潤澤ナ供給ヲ圖ルト云フコトヲ、御自分
ノ金融政策ノ中心トシテ居ルト云フコト
ハ、吾々ニモ察知サレルノデアリマシテ、
又斯クナケレバ今日ノ厖大ナル豫算ヲ圓滑
ニ實行スルコトハ出來ナカラウカト思ヒマ
ス、サウシタナラバ大藏大臣ノ御考ニナッテ
居ルヤウナ、生產力擴充ノ必要ノ爲ニ、豐
富ナル潤澤ナル產業資金ヲ供給スルト云フ
ヤウナコトガ、必要デアッタトシタナラバ
日本銀行現行條例デハ不便デハアリマセヌ
カ、十一條、十二條ヲ改正シテ、サウシテ
金融ノ對象物ト云フモノヲモット擴大シテ、
初メテ積極的ニ金融ヲ援助スルコトガ出來
ルノデハナイカト私共ハ考ヘマス
元來日本銀行條例ハ明治十五年、今カラ
丁度五十五年前ニ、松方大藏卿ノ時ニ出來
タ、洵ニ古色蒼然タルモノデアリマシテ、
其後瑣末ノ點ニ付テハ幾ラカ改正ガアリマ
シタケレドモ、根本的ノモノニハ改正ガナ
イノデアリマス、歐洲大戰後總テノ經濟機
構ガ變化、進轉致シマシタ今日、日本銀行
條例ダケガ、何時マデモ舊態依然タルコト
ハ、斷ジテ我國ニ於テモ許サレナイモノガ
アルト信ズルノデアリマス、日本銀行ノ營
業ハ初メカラ極メテ窮屈ニ規定セラレマシ
テ、日本銀行ノ現在ノ條例ノ儘ニ仕事ヲ行
ヒマスルナラバ、日本銀行ガ通貨ヲ一般ノ
經濟界ニ送出ス所ノ通路ト云フモノハ、僅
ニ算ヘル位シカアリマセヌ、第一ハ商業手
形ノ割引ト買入、第二ハ金銀ノ買入及ビ金
銀ヲ抵當トスル貸付、第三ガ政府發行手形
ノ割引及ビ買入、第四ガ公債證書ノ買入、
第五ガ公債證書、政府發行手形及ビ政府保
證ノ證劵ヲ抵當トスル貸付ト云フダケニ止
マッテ居ルノデアリマシテ、皆サンガ御考ヘ
下サイマスレバ分リマスガ、吾々國民ノ產
業界カラ發生スル所ノ有價物ノ殆ド總テト
云フモノハ、日本銀行ノ條例ノ上カラ見レ
バ金融ノ對象物デハナイ、僅ニ金銀ト商業
手形ダケガ條例ノ上カラ見テ、金融ノ對象
物ト相成ッテ居ルノデアリマス、我國ニ於テ
ハ昔カラ商業ニ所謂手形ノ割引デ融通サレ
テ、金融ヲ付ケルト云フヤウナ習慣ガ、割
合ニ乏シイノニ加ヘマシテ、國際貿易ノ爲
替手形ガ盛ンニ金融市場ニ出〓ハルト云フ
ヤウナコトモ、澤山ハナイノデアリマスル
カラ、明治ノ初年ニ於キマシテハ、洵ニオ
互民間ニ於テ必要ノナカッタモノ、甚ダ乏シ
キモノニダケ金融スルト云フヤウナ、極メ
テ商業手形偏重ノ金融制度デアッタト申上
ゲテ差支ナイノデアリマス、勿論公債ニ付
テハ、政府ガ幾ラデモ金ヲ出スコトヲ、此
條例ニ於テ日本銀行ニ許シマシタケレドモ
元來政府保證ノ證劵トカ公債トカ云フモ
ノハ、國民ノ產業界ノ持ツ資產デハナイノ
デアリマシテ、市中銀行ガ自分デ持ッテ居
ル所ノ資產ノ一部デアル公債ヲ犠牲ニシ
テ、間接的ニ產業界ヲ潤ホスニ止マリマシ
テ、產業界自ラガ直接ニ日本銀行カラ金融
ヲ受ケルト云フヤウナ途ガナカッタ、斯ウ
云フ商業手形尊重、商業金融偏重ノ日本銀
行條例ト云フ窮屈ナモノハ、何時カハ其缺
陷ヲ暴露スル時期ガ來タノデアリマス、
旣ニ早ク明治二十三年ニハドウモ斯ウ
モ-商業手形偏重ノ日本銀行條例デハ、
明治二十二年ノ好景氣ノ後ヲ受ケタ反動
的ノ不景氣、銀ノ値打ノ世界的昂騰ニ
依ッテ生ジタ恐慌、之ヲ克服スルコトガ出
來マセヌデ、コ、デ初メテ保證準備ヲ
七千万圓カラ八千五百万圓ニ擴張シタガ、
マダソレデモ恐慌ヲ克服スルコトガ出來
ナイ、已ムヲ得ズ商業手形偏重ノ日銀條
例ノ中ニ、變態的デハアルガ、有價證劵ヲ
擔保ト致シマスル所ノ融通手形ニ金融ヲス
ルト云フ、今日ノ所謂見返擔保ノ制度ト云
フモノガ、明治二十三年ニ初メテ出來タノ
デアル、斯ウ考ヘテ參リマスト今日、明治
二十三年ニ旣ニ日本銀行ノ商業手形偏重ノ
金融デハヤリ切レナイト云フコトガ分ッ
テ、見返擔保ト云フモノガ出來タコトヲ考ヘ
テ見マスト、今日十一條、十二條ヲ擴張シ
テ、サウシテ金融ノ對象物ヲ殖ヤシテ行ク
ト云フコトハサウ吾々ガ見テ突飛ナ改正
デハナイ、寧ロ當然デハナイカト考ヘルノ
デアリマス、ヨク健全通貨論者其他ノ人ハ、
外國ノ中央銀行ニ於テ健全ナル商業手形ノ
ミヲ相手トシテ、商業金融中心ノコトヲ致
シテ居ルカラ、日本銀行モ亦其條例ヲ改正
スベカラズト云フ、御議論ヲ爲サル方モア
リマスケレドモ、最近ニ於キマシテハ各國
ノ中央銀行ト云フモノモ、其動向ト云フモ
ノハ著シク變ッテ來テ、昔ノヤウニ商業金融
ノミヲ中心トシテ居ル中央銀行ハ段々ト
減ッテ、各國ノ中央銀行ハ商業金融バカリデ
ハナク、進ンデ產業金融、殊ニ工業金融ニ
手ヲ染メナケレバナラヌト云フコトヲ自覺
シテ來タノデアリマス、佛蘭西、ニ於テ然
リ、獨逸ニ於テ然リ、亞米利加ニ於テ然リ、
殊ニ正統派ト稱セラルヽ商業金融ノミヲ掌
ルヤウニ考ヘラレテ居ッタ所ノ英蘭銀行ニ
於テサヘモ、思想上、實際上ドウシテモ產
業金融、工業金融ト云フモノニ乘出サナケ
レバナラヌト云フコトガ、今日ノ實際ノ狀
態ト相成ッテ來タノデアリマス、御承知ノ通
リニ千九百三十三年デアリマシタカ、不況
ニ虐ゲラレタ所ノ工業ヲ助クル爲ニ、「バン
カース·インダストリアル·デベロープメン
ト·カンパニー」ト云フモノヲ設立シタト云
フコトモ、卽チ英蘭銀行ガ古イ正統派的ノ
商業金融專門ニノミ生キテ行クコトガ出來
ナイ立派ナ立證デアルト言ハナクテハナリ
マセヌ、日本銀行ノミガ獨リ此方面ニ怠惰
デアリ、非常ニ臆病デアルト云フ理由ヲ、私
ハ日本ノ產業金融ノ爲ニ解スルコトガ出來
ナイモノデアリマス(拍手)
ソコデ第三ニ政府ニ御伺シタイコトハ、
政府ハ一體明治二十三年ニ日本銀行條例ガ
餘リ窮屈デ、商業手形ニ偏重シテ居ルコト
ガ禍ヲ爲シテ、當時ノ恐慌ヲ救ヒ得ザル爲
ニ、變態的ニ許シタ一時ノ方便、便宜、機
宜ノ處置デアッタ見返擔保制度ノミニ依ッテ、
今後ノ產業資金ノ潤澤ナル融通ト云フコト
ヲ賄ヒ得ル御確信ガアルカ、又賄ヒ來テ
居ッタモノト大藏大臣ハ御考ニナッテ居ルカ
ト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、元來
日本銀行ノ今日通例見返擔保ト言ッテ居ル
所ノ制度ト云フモノハ、日本銀行條例カラ
見レバ、私共ハ嚴格ニ判斷スレバ違法ダラ
ウト思フ、日本銀行條例十二條第一ノ不動
產及ビ銀行又ハ諸會社ノ株劵ヲ抵當トシテ
貸金ヲ爲スコトヲ禁ジテ居ル所ノ條項トカ、
或ハ同ジク十二條第三ノ直接間接ヲ問ハズ
工業ニ關係スルコトヲ禁止シテ居ル所ノ條
項カラ見マスルト、有價證劵ヲ見返品トシ
テ融通手形ニ金ヲ貸出ト云フコトハ、嚴格
ナ意味ニ於テハ潜リノ仕事デアルト私ハ考
ハト唯必要ニ迫ラレテ明治二十三年ニ此
見返制度ト云フモノガ出來タノデスカラ、
見返制度ヲ作ラナケレバナラナカッタ其事
自體ガ、日本銀行條例ノ改正ノ必要ヲ的確
ニ物語ッテ居ルモノデアラウト私ハ信ジテ居
ルノデアリマス(拍手)近頃日本銀行ノ一般
貸出ノ中デ割引手形ガ非常ニ多イ、而モ其割
引手形ノ中デモ見返品擔保附ノ融通手形ニ
對スル貸出ガ又多イト云フコトヲ見テ、所
謂見返制度ニ依ッテ產業資金ヲ潤澤ニ賄ヒ
得テ居ルヤウニ御考ニナル人ガアリマスガ、
是ハ思ハザルノ甚シキモノデゴザイマシテ、
此見返擔保ノ手形ノ中ノ大部分ハ、昭和二
年ノ恐慌ノ時ノ特融ニ基クモノデ埋マッテ
居ルノデゴザイマス、數字ヲ擧ゲテ申上ゲ
マスルト直グ分ル、昨年六月ノ日本銀行ノ
一般ノ貸出金ヲ見ルト、割引手形ニ依ル貸
付ト云フモノガ八二%强デアル、一般貸出
ノ中デ割引手形ニ依ル貸出ト云フモノガ八
二%强デアル、此割引手形ノ中ニ、ソレデ
ハ昭和二年ノ勅令第五十五號ノ五億圓口ノ
特融ノ貸付ノ焦付ガ幾ラアルカト云フト、
八五%强ノ多キニ達シテ居ルノデアル、サ
ウシテ見マスナラバ、此見返擔保ノ制度ガ
今日產業金融ニ非常ニ役立ッテ居ルト云フ
ヤウナコトヲ斷ジテ言フコトハ出來ナイノ
デアリマス、政府ハ一體此潜リノ仕事デア
ル見返擔保ノ制度ダケニ依賴シテ宜シイ
カ、既ニ有價證劵、銀行債、或ハ會社債ト
云フモノヲ擔保ニシテ貸出ヲスルコトヲ便
宜ノ方法トシテ、所謂一時ノ方便ナリトハ
言ヒナガラ、今日恆久的ニ日本銀行ノ營業
デオヤリニナッテ居ルノナラバ、ナゼ寧ロ
進ンデ正々堂々ト條例十一條、十二條ヲ御
改正ニナッテ此等ニ對スル貸付ヲオヤリニ
ナラヌカト、私ハ伺ヒタクナルノデアリマ
ス
ソレカラ第四ニ御伺シタイコトハ、今囘
御提出ニナリマシタ所ノ所謂參與理事ノ制
度ノコトデゴザイマスガ、一體十一條、十
二條ノ改正ヲオヤリニナッテ、日本銀行ノ活
動範圍ヲ擴張スルト云フコトガ、參與理事
制ト云フモノヲ決議機關トシテ新ニ置ク必
要ガアルノデハナイカ、十一條、十二條ヲ
御改正ニナラズ、從來ノ儘ノ日本銀行ノ活
動範圍デ止マッテ居ルナラバ、參與理事制ト
云フモノハ無意味デハアリマセヌカ、少ク
トモ其效果ヲ半減スルモノノヤウニ私ハ考
ヘルノデアリマスガ如何デアリマスカ、御
承知ノ通リ高橋サンノ御創意ニ依ッテ御作
リニナッタ所ノ日本銀行參與制ト云フモノ
ハ、其效能ヲ發揮致シマセヌデ、月一囘金
融情況ヲ聽イテ御飯ヲ食ベルト云フ飯食ヒ
ノ會ニナッテシマッタト云フコトハ、是ハ高
橋サンノ創意ガ惡イノデハナイ、制度ガ惡
イノデハナイ、卽チ之ヲ運用スル人ガ骨拔
ニシタコトニ缺點ガアルノデ、大藏大臣ノ
今ノ御說明ノヤウニ、一般產業界、一般金
融界ト日銀ト密接ナル連絡ヲ取ルコトノ爲
ニ、今囘ノ制度ヲ設ケルト云フノデアリマ
シタナラバ、今マデノ高橋サンノ創意ニ依ッ
テ出來タ今迄ノ參與制度ト云フモノヲ屢〓
開クコトニ依ッテ、其目的ハ達スルコトガ出
來ルノデハナカラウカ、何ヲ苦ンデ決議機
關トシテ此新シイ法律ヲ御作リニナルカト
云フコトモ考ヘラレルノデアリマス、ソコ
デ五十五年前ノ古イ條例、時代遲レノ條例
ト云フモノヲ御改メニナラズニ、昭和七年
七月ニ漸ク施行シタ所ノ、新シイモノヲ玆
ニ御變ヘニナルト云フコトモ、隨分矛盾シ
タヤウニ私共ニハ考ヘラレマス、日本銀行
條例十一條、十二條ヲ御變ヘニナッテ、サウ
シテ日本銀行金融ノ對象物ヲ擴張シテ、其
活動範圍ヲ廣クシタノナラバ、所謂參與理
事制ト云フモノノ意義モ、非常ニ大キナモ
ノデアルト思ヒマスケレドモ、一方ノ方ヲ
オヤリニナラズニ、唯職制ダケ御改正ニナ
リマシタト云フヤウナコトハ、例ヘテ申シマ
スレバ、馬車ヲ持ッテ居ル者ガ今度ハ自動車
ニ代ヘヨウト思ッタ、併シ自動車ハ買へヌカ
ラ相變ラズ馬車ヲ使ッテ居ルト云フノニ、氣
ヲ早クシテ馭者ヲ解雇シテ運轉手ヲ賴ンダ
ヤウナモノデハナカラウカト吾々ハ考ヘル、
斯ウ云フ點ニ付キシテハ、十分ナル御說明
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
最後ニ私ハ一點御伺致シタイコトハ、大
藏大臣ハ日本銀行ニ依ル爲替統制ヲスル御
決心ガ、モウ御付キニナッテ居ルノデアラウ
ト思ヒマス、ソコデ我國ノ爲替統制ヲ日本
銀行ニ擔當セシムル御意思ガ大藏大臣ニ御
有リデアルカドウカト云フコトヲ御伺致ス
ノデアリマス、現在世界主要國ノ爲替統制
ハ誰ガヤッテ居ルカト云ヘバ、何處デモ中央
銀行ガヤッテ居リマス、御承知ノ通リ爲替
政策ト云フモノハ、所謂貨幣政策、通貨政
策ノ一ツノ形態ニ過ギナイノデアルカラ、
中央銀行ガ主管トシテ之ヲ擔當スルト云フ
コトガ條理上當然デアリマス、現在ノヤウ
ニ正金銀行ト云フモノニ日本ハ委セテ居ル
ノデアリマスガ、ナゼ是ガ惡イカト云フト、
一ツノ實際ノ例ガゴザイマス、最近丁度昨
年ノ十二月中旬カラ今年ノ一月八日、爲
替管理令ガ强化スルマデノ間爲替ガ非常ニ
暴落シタ、此事ハ勿論思惑輸入ガ殺到シタ
コトハ一ツノ重大ナ理由デアラウケレドモ、
爲替統制ノ任ニ當ッテ居ル正金銀行ガ、毅然
トシテ外貨ノ買ヒニ賣向ハナカッタト云フコ
トガ、重大ナル爲替操作ノ失敗デアルト私
ハ信ジテ居ルノデアリマス、併ナガラ正金
銀行ノ爲替操作ノ失敗バカリヲ責メル譯ニ
行クマイト思フ、何故ナラバ正金銀行ガ日
本ノ基準デアル所ノ一志二片ヲ維持シヨウ
ト致シマシタ場合ニ、政府ハ何等ノ補償ヲ
致シテ居ラナイノデアル、正金銀行ノ「リス
ク」ニ對シテハ何等ノ補償ヲシテ居ラナイ、
前ニ井上大藏大臣ノ時正金銀行ガ弗ヲ賣向ッ
ク、此時井上サンハチヤント、善イカ惡イ
カハ兎モ角トシテ、政府ガ一札ヲ正金銀行
ヘ入レテ居ル、ソコデ正金銀行ハ腰ヲ入レ
ティアノ操作ヲチヤントヤッタノデアリマ
ス、然ラバ政府ハ少シモ構ッテ吳レズ、一ツ
ノ營利會社デアル所ノ正金銀行ガ本腰ヲ入
レテ、國策デアル所ノ爲替統制ト云フモノ
ニ、毅然トシタ態度ヲ以テ邁進スルト云フ
コトヲ望ムコトハ、蓋シ無理デハナカラウ
カト思フ、正金銀行ガ初メ出來タ時分ハ、
ソレハ日本銀行カラ金ヲ借リテ、サウシテ
日本ノ唯一ノ貿易銀行トシテノ仕事ヲヤツ
テ居リマシタラウガ、今日ハ他ノ爲替銀行
ト同ジ立場ニ立ッテ競爭ヲシ營業ヲシテ居ル
所ノ一ノ營利會社ニ過ギナイ、外ノモノト
同ジニ竝ンデ商賣ヲシテ居ル所ノ正金銀行
二、他ノモノヲ率ヒテ行クヤウナ統制ノ力
ヲ與ヘテ置クト云フコトニ、旣ニ缺陷ガア
ルノデハナカラウカ、傳ヘラルヽ所ニ依レ
バ、此國策ヲ利用シテ正金銀行ガ利益ヲ得
テ居ルヤノ噂サヘ市場ニハアル今日、政
府ハ餘程御考ニナラナケレバナラヌト思
フノデアリマス、又正金銀行ガ國策デアル
所ノ、一志二片ヲ維持スル所ノ爲替統制ヲ
行フ爲ニハ、外國ニ澤山ノ在外資金ト云フ
モノヲ擁シテ居ラナケレバナラナイ、是ハ
大部分ハ御承知ノ如ク無利子デセウ、無利
子ノ數億ノ在外資金ヲ持タナクチヤナラヌ
ガ、ソレハ何處カラ持ッテ行クカト云フト、
內地デ「コール」ヤ其他ヲ吸收シテ、是ニハ
「コスト」ヲ拂ッテ居ル、サウシテ見ルナラ
バ政府ハ助ケテ吳レヌ、營利會社デアル所
ノ正金銀行ガ國策ノ爲ニ「リスク」ヲ冒シ、
而シテ「コスト」ヲ自ラ負擔シテ居ルト云フ
ヤウナ制度ノ上ニ一大缺點ガアルノデハア
リマセヌカ、斯ウ考ヘテ見マシタ場合ニハ
日本銀行ガ乘出シテ、サウシテ他ノ諸國ノ
中央銀行ト同ジヤウニ、爲替政策ト云フモ
ノガ通貨政策ノ一形態デアル事實ニ鑑ミマ
シテ、日本銀行ノ責任ニ於テ爲替統制ヲ擔
當セシムルコトガ必要デアルト信ズルノデ
アリマス
私ノ質問ハ大體是デ終リマシタガ、唯本
質問ヲ終ルニ當リマシテ一言ダケ申上ゲテ
置キマスガ、中央銀行ノ-中央銀行ト申シ
マスルカ、我ガ日本銀行ノ重大ナル目的ト
云フモノハ、要スルニ飽マデモ通貨ノ調節
ト云フコトニアリマス、能ク通貨ノ調節ト
云フコトヲ消極的ニノミ御取リニナル論者
ガアリマスガ、私ハ之ヲ積極的ニ取リタイ、
具體的ニ申上ゲマスレバ、一國ノ產業能力
ヲ十分ニ活動セシムルニ必要ナル過不足ナ
キ通貨ノ量ヲ供給シテ、其通貨ノ價値ヲ內
外ニ安定セシムルト云フコトガ、日本銀行
ノ重大ナル使命デアルコトハ論ヲ俟タナイ
ノデアリマス、ソレデアルカラ私ハ日本銀
行ノ金融對象物ト云フモノヲ廣ク天下ニ求
メテ、日本銀行ノ通貨調節ノ力ヲ强化致シ
マシテ、サウシテ日本銀行ノ活動力ノ範圍
ト云フモノヲ自由ニシテ、活潑ナラシメタ
イト云フコトノ念願ノ爲ニ、此質問ヲ致シ
タ次第デアリマス、而シテ大藏大臣ガ在野ニ
於ケル所ノ色々ノ御言明、或ハ本會議、委員
會ヲ通ジテ御正月頃ノ御話ト、三月頃ノ御
話ト餘程違フ、餘程世間ニ迷ヒガアリマス
カラ、ドウゾ一般ノ迷ハヌヤウニ、事ハ苟
モ日本ノ金融政策ヲ掌ル日本銀行ノ條例改
正ニ關スル問題デアリマスカラ、率直ニ所
懷ヲ開陳サレンコトヲ切望シテ私ノ質問ヲ
終リマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=17
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018・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 木暮君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、現行日本銀
行條例ニ對スル見方ガドウデアルカ、何故
根本的改正ヲヤラヌカ、斯ウ云フ御話デア
リマス、御話ニモアリマシタヤウニ、生產
ノ擴充ノ爲ニ金融機關ノ活動ヲ期待スル、
殊ニ中央銀行ノ活動ヲ期待スルコトニ於テ
ハ御同感デアリマス、ソレデ只今迄ノ日本
銀行ノ條例ノ立テ方ト致シマシテハ、御話ノ
通リニ古イ條例デアリマシテ、其時分ノ經
濟界ノ實情カラ申シマシテ、商業手形ノ再
割引ト云フコトガ主タル業務デアル、其後
ニ公債擔保ノ割引ト云フコトガ仕事ニナッ
テ居リマスルガ、產業金融ノ方ニ對スル連
絡ガ不十分デアッタト云フコトハ、御話ノ通
リデアリマス、是ハ條例ノ立法ノ精神ガサ
ウデアリマシタガ、併ナガラ年ヲ經過致シ
マスル其時ノ當局者ノ運用次第ニ依ッテ、敢
テ其條例ニ違反スルトカ、或ハ條例ヲ潛ル
トカ云フヤウナコトヲ致シマセヌデ、今ノ
條例ニ依ッテ產業金融ニ對スル連絡ガ出來ル
ノデアリマス、今囘モ金融機關ノ活動ニ俟
ツト云フコトハ、私共ノ考トシテハ只今
ノ日本ノ金融機關ノ缺陷ト致シマシテハ、
各種ノ機關ノ連絡統制ガ不十分デアル、斯
ウ云フコトガ考ヘラレマスノデ、其邊ハ日
本銀行ヲ中心ニシテ連絡協調ヲ圖ラネバナ
ラヌ、斯ウ考ヘテ居リマス、隨テ條例ヲ改
正致シマシテモ、直接ニ產業資金ニ日本銀
行ガ融通ヲスルト云フヤウナコトハ、曾テ
考ヘタコトモアリマセヌガ、其邊ノ連絡ニ
依ッテ、ソレ〓〓ノ職分ヲ有ッテ居リマス
金融機關ニ活動ヲサセル、斯ウ云フコトガ
目的デアルノデアリマス、ソレデ只今ノ條
例ヲ改正致一シマセヌデモ、サウ云フコ
トハ出來マスノデアリマス、併ナガラ
御話ノヤウニ、日本銀行條例ト云フモノガ
古イノデアリマスルカラ、之ヲ御覽ニナリ
マスルト、條文カラ致シマシテ、甚ダ現代
ニ副ハナイモノガ澤山アルノデアリマス
ソレデ是ハ一二ノ改正ヲ行フヨリハ、全體
ヲ通ジテ條例ノ改正ヲ考ヘテ、サウシテ御
審議ヲ願フ方ガ宜シイ、併ナガラ今期ノ議
會ハ如何ニモ會期ガ切迫シテ居ルノデ、其
點ノ〓究ニ付キマシテハ、大藏省ト日本銀
行ト一〓ニナッテ、全體ノ條例ニ付テノ十分
ノ檢討ヲ行フ必要ガアル、斯ウ云フコトカ
ラ今囘十一條、十二條ノ改正ノ提案ヲ致ス
コトヲ見合セタノデアリマシテ、他ニ何等
ノ考ハアリマセヌ、コチラノ考ノ變ッタト云
フヤウナコトモナイノデアリマス、唯世間
デハ日本銀行ノ條例ノ改正ト云フコトハ、
如何ニモ大シタ飛躍的トカ、今御言葉ニア
リマシタヤウニ、或ハ非常ナ改革ヲスルヤ
ウナコトニ考ヘル人ガアルノデアリマスル
ガ、サウ云フコトハ是ハ努メテ避クベキコ
トデアリマシテ、御承知ノ通リニ改革ヲ致
シマスニシテモ、急激ナル改革ヲ避ケテ、
徐々ニ改ムルコトガ必要デアルノデアリマ
スルガ、只今ノ條例ニ於テサウ云フ連絡統
制ヲ圖ッテ、ソレ〓〓ノ機關ヲシテ十分ノ活
動ヲサセルト云フコトニ於テハ、何等ノ支
障ガナイノデアリマス、サウ云フ意味ニ於
テ、今囘ハ條例全般ニ對スル改正案ト云フ
モノヲ見合セタヤウナ次第デアリマス
ソレカラ產業金融ニ積極的ニ乘出ス考ガ
アルカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、ドウ
シテモ生產ノ擴充ヲヤリマス爲ニハ、其邊
ニ金融ノ援助ヲ必要ト致シマスルノデ、背
後ニ日本銀行ガソレ等ノ援助ヲスルコトガ
必要デアラウト思フノデアリマス、併ナガ
ラ直接ニソレ等ノ資金ヲ日本銀行カラ融通
スルト云フヤウナコトハ、時トスルト累ヒ
ヲ貽スヤウナコトニナリマスノデ、是ハソ
レゾレノ機關ヲ通ジテ出スヤウナコトニ致
スベキデアッテ、產業金融ト云フコトニ付テ
ハ十分ニ働キマスガ、直接ニ之ヲヤルベキ
ヂヤナイ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス
見返擔保ノコトニ付テ、是ハ違法デハナ
イカト云フ御話モアリマシタガ、少シモ違
法デハナイノデアリマス、條例ノ面カラ見
マスルト、商業手形ノ割引ト云フコトガ主
ニナッテ居リマスガ、併ナガラヤハリ確實ナ
ル有價證劵ヲ擔保ニシテ貸出スト云フコト
ハ、當然出來ルノデアリマシテ、立法ノ趣
旨ガサウナッテ居ル爲ニ、多少ノ便宜ヲソコ
ニ行ッタコトデハアリマスルガ、少シモ法律
ニ違反シテ居ルヤウナ點ハナイノデアリマ
ス、是ハ產業金融其他ニ於テ洵ニ便利ナ制
度デアリマシテ、今後ニ於テモ此制度ニ依ツ
テ產業金融ヲ賄ヒマシテ、例ヘバ社債其他
ヲ擔保ニシテ融通ヲスルト云フコトハ、
向ニ差支ナイト思フノデアリマス、日本銀
行ノ金融ノ對象物ハ狹クナイカト云フコト
デアリマスガ、只今ノ所デハサウハ考ヘテ
居リマセヌ
ソレカラ參與制度ヲ廢シテ參與理事ト云
フコトニ致シマシタニ付テハ、是ハ今マデ
ノ參與ニ付テハ、御話ノヤウナ餘リ效果ハ
ナカッタノデアリマス、寧ロ參與理事ト致シ
マシテ、ソレ等ノ方ニ責任ヲ取ッテ貰フ方ガ
却テ效果アルモノダラウ、斯ウ云フヤウナ
コトカラ、參與理事ト云フコトニ致シタヤ
ウナ次第デアリマス、隨テ却テ練達堪能ノ
外部ノ人ヲ參與セシムルコトニナリマシテ、
色々日本銀行ノ施設ヲスル上ニ於テ、效果
ガアルダラウト思フノデアリマス、是ハ十
儀十二條ノ改正ニ伴ハナイデモ、組織
ノ上ニ於テ是ダケノコトヲ致スコトハ必要
デアラウト思フノデアリマス、通貨ノ調節
ニ付キマシテハ、御考至極私ハ同感デアリ
ママ、御答申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=18
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019・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 木暮君、宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=19
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020・木暮武太夫
○木暮武太夫君 御答辯漏ガアリマスカラ
自席カラ申上ゲマス、只今御質問申上ゲマ
シタ中ノ最後ノ、日本銀行ニ爲替統制ヲ擔
當セシムル御意思ガアルカドウカト云フ點
ヲ御答願ヒマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=20
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021・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 其事ヲ御答ス
ルノヲツイ忘レマシタガ、只今爲替ノ統制
ハ正金銀行ハヤッテ居リマセヌ、大藏省ガヤッ
テ居リマス、併ナガラ事實ハ日本銀行ノ
當局者、正金銀行ノ當局者、ソレ等ト能ク
協議ヲ致シマシテ、責任ハ大藏省ノ當局者
ガ取ッテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=21
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022・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 河野密君
〔河野密君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=22
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023・河野密
○河野密君 私ハ只今議題トナッテ居リマ
スル日本銀行條例ノ改正案ニ對シマシテ、
社會大衆ノ名ニ於テ極メテ簡單ニ御質問申
上ゲマス、私ガ此問題ニ付テ發言ヲセント
シマスル理由ハ、第一ニ此案ガ結城財政ノ根
幹ヲ成スモノデアリ、第二ニ此案ニ依ッテ
日本ノ財政政策ガ一定ノ方向ヲ取ルト感ズ
ルカラデアリ、第三ニ今日國民大衆ノ一齊
ニ憂慮シテ居リマス「インフレーション」ガ
愈〓本格的トナリ、所謂惡性「インフレーショ
ン」ノ可能性ガ深マッテ來、其結果大衆ノ生
活ヲ脅威スルニアラザルカヲ感ズルカラデ
アリマス、勿論今日提案セラレマシタ日本
銀行條例ノ改正ハ、極メテ局部的ノモノデ
アリマシテ、當初傳ヘラレマシタモノトハ
違ッテ居ルノデアリマスルガ、其底ヲ流レテ
居ルモノハ、結城、池田兩氏ヲ結ブ所謂生產
力擴充財政ノ根本精神デアルコトニハ變リ
ハナイノデアリマス、此根本精神ハ、銀行ノ
銀行トシテノ日本銀行ノ機能ヲ、資本融通
ヲ本位トスル產業金融ノ機能ニ轉換セント
セシムルモノデアリマシテ、日本銀行ヲ名
實共ニ國民ノ銀行カラ、資本家ノ銀行タラ
シメントスルモノデアルト私ハ考ヘタノデ
アリマス(拍手)ソコデ私ノ御尋セントスル
點ハ次ノ通リデアリマス
第一ニ結城、池田兩氏ガ企テテ居リマス
ル日本銀行條例ノ改正案ナルモノハ、昭和二
年ニ制定セラレマシタル銀行法ノ精神-私
ハ條文トハ申シマセヌ、精神デアリマス
ルガ、精神ニ反スルモノニアラザルカト云
フ點デゴザイマス、昭和二年銀行法ノ制定
ヲ見マシタ當時ニ於テ、論爭ノ中心トナリ
マシタ點ハ、日本ノ銀行ヲ英吉利型ノ商業
銀行ノ型ニ從ハシムルノデアルカ、ソレト
モ獨逸型ノ產業銀行型ニ從ハシムルノデア
ルカト云フコトニアッタト存ズルノデアリ
マス、而シテ私ノ解スル所ニシテ誤リガナ
カッタトシマスルナラバ、產業資金ノ融通ハ
其大宗ヲ興業銀行ニ依ラシメ、投資ヘノ融通
ハ主トシテ根本ヲ勸業銀行ニ依ラシメ、-
般ノ銀行ハ商業銀行タル方向ニ向ヒ、日本
銀行ハ所謂銀行ノ銀行トシテ、一般銀行ノ王
座ヲ占ムルト云フコトニアッタト信ズルノ
デアリマス、其後我國ニ於キマシテモ、亦
諸外國ニ於キマシテモ、相踵グ恐慌ニ依ッ
テ、中央銀行ノ機能ニ著シイ變化ノアッタコ
トハ事實デアリマスルガ、一時ノ急ニ應ズ
ル爲ニ、中央銀行ノ機能ニ變革ヲ加ヘマシ
タ國ハ、〓シテ其成績ガ惡ク、產業資本ノ
大規模的ナル〓通ノ爲ニハ、日本ノ興業銀
行ヲ擴大スルガ如キ特殊ノ機關、例ヘバ產
業復興會社トカ、產業金融會社トカ云フモ
ノヲ建設シテ、ソレニ依ッテ居ッタト私ハ思
フノデアリマスルガ、今結城大藏大臣竝ニ池
田日本銀行總裁ヲ貫イテ、兩者ニ依ッテ企テ
ラレテ居リマスル計畫ナルモノハ、其逆ヲ
行カントスルモノデアルヤウニ考ヘマス、
是ハ昭和二年ノ銀行法以來ノ我國ノ銀行政
策ト、甚シク矛盾スルモノニアラザルカト
考ヘルノデアリマスルガ、大藏大臣ノ所見
ヲ伺フノデアリマス
第二ニ此改正ニ依リマシテ、日本銀行
ノ負フベキ所ノ危險性ノ負擔ト云フモノガ
增大スル點デアリマス、從來ノ日本銀行條
例ハ先程木暮君カラモ御話ガアリマシタヤ
ウニ、商業手形ニ對スル金融ニ限ッテ、株劵
社債等ニ融資スルコトヲ禁ジテ來タノデア
リマス、勿論事實ニ於テハ、此運用ハ所謂見
返擔保ノ便法ニ依リマシテ、大イニ緩和セ
サレタトハ申シマスルガ、尙ホ此鐵則ダケハ
儼然トシテ存シテ來タノデアリマス、然ルニ今
日之ニ反スル方向ヲ執ッタナラバ、ドウ云フ
結果ニナルデアリマセウ、從來鐵則ヲ守ッテ來
タノハ、長期金融ニ依ッテ融資ノ固定性ヲ來ス
コトヲ恐レ、日本銀行ノ機能トスル通貨ノ
伸縮ヲ通ジテ金融經濟界ヲ巧ミニ「リードㄴ
シテ行ク機能ノ麻痺センコトヲ惧レタカラ
デアリマス、然ルニ今結城大藏大臣ノ改正
案ヲ貫ク指導精神ヲ見マスルノニ、愈〓此禁
ヲ破ッテ、所謂長期ノ產業資金ノ融通、資本
ノ融通ヲ爲スト云フコトニ依ッテ「インフ
レーション」ヲ起シ、ソレニ依ッテ生產力ノ擴
大ヲ人爲的ニ圖ラントスル如クデアリマス、
併シ斯ノ如キ資本融通ノ方法ハ、金本位制
ヲ維持セル當時ニ於テモ、危險性ヲ導クノ
デアリマスルガ、況ヤ金本位制ヲ離脫シテ居
リマスル今日ニ於キマシテハ、常ニ惡性「イ
ンフレーション」ヲ招來スル所ノ危險性ガ潛
在シテ居ルノデアリマシテ、此方法ニ依ッテ
尙ホ拍車ヲ掛ケラレル結果トナルト存ズル
ノデアリマスルガ、大藏大臣ニ此點ニ對ス
ル所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
第三ノ點ハ、日本銀行ハ所謂資本融通ニ
依リマシテ、先程木暮君カラモ御話ノアリ
マシタヤウニ、苦イ經驗ヲ嘗メテ居ル筈デ
アリマス、震災手形ノ融通ニ依リマシテモ
昭和二年金融恐慌ノ當時ニ於ケル融資ニ依
リマシテモ、非常ニ苦イ經驗ヲ嘗メテ居ル
筈デアリマス、此爲ニ私ハ國庫ニ莫大ナ損
失ガ掛ケラレタト存ズルノデアリマスルガ、
其明確ナル數字ヲ示シテ戴キタイト思フノ
デアリマス、當局ノ方ハ或ハ當時ニ於ケル
金融ナルモノハ、震災或ハ恐慌ニ依ッテ無
クナッタモノニ對スル融通デアルガ故ニ、是
ハ損ヲスルノガ當然デアル、斯樣ニ御考ヘ
ニナルカモ知レマセヌケレドモ、將來產業
ニ對スル融通トシマシテハ、無ニ對スル融
通ニ於テハ何等變ル所ハナイト私ハ信ズル
フデアリマス、之ニ依ッテ人工的ニ作ラレ
タ資本、人工的ニ作ラレタ生產力ノ擴大ト
云フモノハ、謂ハヾ架空的ノ資本デアリ、
架空的ノ生產力ノ擴大ニ過ギナイノデアリ
やく、而モ其融資ガ軍需工業ニ主トシテ向
クノデアリマスカラ、常ニ一定ノ「インフ
レーション」ヲ增大シテ、其軍需工業ヲ刺戟
シテ行カナケレバナラナイノデアリマス、
若シ、常ニ「インフレーション」ヲ增大シ、
刺戟スルコトヲ停止スルナラバ、直チニ囘
轉ハ止マッテシマフ結果ニナルト思フノデ
アリマス、謂ハヾ坂ニ向ッテ車ヲ押スヤウ
ナモノデアリマシテ、其結果ノ危險負擔ナ
ルモノハ、是ハ懸ッテ日本銀行ニ在ルト存
ズルノデアリマスガ、大藏大臣ハ如何ニ御
考ニナリマスカ、而モ斯ノ如キ適度ノ「イ
ンフレーション」ヲ起ス積リデ、始終資本ノ
融通ヲスルト云フコトヲヤッテ行クト、其ノ
結果利益ヲ見マスモノハ、其得タル資金ヲ
一定ノ限度ニ於テ、之ヲ踏倒シテ行ク所ノ
可能性ヲ有スル產業資本家ノミデアッテ、結
局其損失ハ國庫ノ負擔トナリ、一般大衆ノ
負擔トナルト信ズルガ如何デアリマセウカ
(拍手)
第四ノ正貨現送トノ關係デアリマス、政
府ハ在外資金ノ涸渴ヲ來シタ爲ニ、正貨ノ
現送ヲ企テマシテ、旣ニ其第一囘ノ現送ヲ
實行シタノデアリマスガ、今日「ブロックㄴ
經濟ノ時代ニ於キマシテ、金ノ保有ガ如何
ナル意味ヲ有ツカト云フコトニ付テハ、政
府當局ニ於テ萬々御承知ノコトト存ズルノ
デアリマス、而モ此正貨現送ニ依ッテ狙ヒマス
目的ハ、爲替相場ノ維持ト、爲替ノ下落ヲ通
ジテ起ラントスル國內的ナル「インフレー
ション」ヲ阻止スルニ在リト信ジマスガ、然ル
ニ一方ニ於テハ金ヲ現送シ、他方ニハ產業
資金ヲ放出シ、大規模ナル授信作用ニ依ッテ
「インフレーション」ヲ人工的ニ起シテ行カ
ウトスルナラバ、爲替相場ガ薄弱ニナルコ
トハ是ハ當然デアリマス、益〓大規模ナル金
ノ現送ヲシナケレバナラナクナルノデアリ
マス、其結果ハ加速度的ニ「インフレーショ
ン」ニ拍車ヲ掛ケラレマス、政府ハ金ノ現
送ヲ圖ルト共ニ、日本銀行ヲシテ時價ヲ以
テ產金ヲ買上ゲシメ、產金買上ニ對スル差
金ヲ補償シテ居リマスガ、其補償限ノ度ヲ
最近二億カラ四億ニマデ增大セントシテ居
ラレルノデアリマスガ、斯ノ如ク金紙ノ開キ
ガ增大シテ行クコトハ、ソレ自身重大ナル
事デアリマシテ、軈テ不價ノ切下ヲ必然ナ
ラシメ「インフレーション」ノ惡化ヲ招來セ
シメルト思ヒマスガ、當局ノ御考ハ如何デア
リマスカ、而モ此產金買上政策ニ依リマシ
テ直接ノ利益ヲ受クルモノハ、所謂少數ノ
產金業者、三井、三菱、住友等ノ產金業者
ヲ裨益スル結果ニナルト考ヘマスガ、政府
ノ御考ハ如何デアリマセウカ(拍手)
第五ノ點ハ主トシテ組織ノ點デアリマス
ガ、參與會ヲ廢シテ參與理事制ヲ採ラレマ
シタ理由ハ、如何ナル點ニアリマセウカ、
私ノ御尋セントスルモノハ、之ニ依ッテ日本
銀行ニ對スル國家ノ統制力ヲ增大セントス
ルノデアリマセウカ、ソレトモ別箇ノ意圖
ニ基クモノデアリマセウカ、伺ヒタイノデ
アリマス、新ニ設ケラレル參與理事ニハ
如何ナル人物ヲ据エントスルノデアリマセ
ウカ、例ヘバ一般國民ノ代表者ヲ之ニ參加
セシメル御考デアリマスカ、セメテハ貴衆
兩院ノ代表者ヲ之ニ入レル位ノ精神ガオア
リデアリマセウカ、伺ヒタイノデアリマス、
此處ニ佐藤外務大臣モ居ラレマスガ(「居ナ
イ」ト呼フ者アリ、笑聲)佐藤外務大臣ノ御
存ジノ如ク、昨年「レオン·ブルム」ノ內閣
ガ成立致シマシタ時ニ、佛蘭西中央銀行ノ
理事ノ中ニハ、所謂佛蘭西勞働總同盟「セー·
ゼー·テー」ノ「ゼネラル·セクレタリー」
ヲシテ居リマス「ジュオー」ガ選バレタコト
ハ大藏大臣モ御存ジト存ジマスガ、吾々
ハ勿論今日ノ日本ニ於テ、斯ノ如キ急激ナ
ル所ノ要求ヲセントスル者デハゴザイマセ
ヌガ、日本銀行ノ理事中ニハ、少クトモ貴
衆兩院ノ代表者各一名位ヲ入レルコトハ當
然ナリト、吾々ハ考ヘザルヲ得ナイノデア
リマスガ、政府ノ御所見ヲ伺ヒタイノデア
リマス
第六ノ點ハ、日本銀行ノ機能ハ國民中樞
ノ銀行デアリマスガ故ニ、國家ノ之ニ對ス
ル監督權ヲ强力ナラシメ、日本銀行ノ營業
成績ノ如キハ之ヲ議會ニ報〓シテ、議會ノ
承認ヲ經ルト云フガ如キ方面ニ、改正ノ方
針ヲ向ハシムルコトガ、今日ノ趨向デアル
ト存ジマスガ、大藏大臣ハ如何ニ御考ニナ
リマスカ、今囘ノ大藏大臣ノ改正ノ方向ヲ
見マスルト、如何ニモ國家ノ監督權ノ增大
ヲ拒否致シマシテ、其日本銀行ノ持ツ至大
ナル權能ヲ、一切擧ゲテ財界人ノ獨裁ニ之
ヲ委ネントスル傾向ガ强イヤウニ思ハレル
ノデアリマスガ、大藏大臣ハ果シテ如何デ
アリマスカ、大藏大臣ノ御存ジノ如ク、ツ
イ本年ノ一月三十日ニ獨逸ノ中央銀行ノ機
能ニ變化ガゴザイマシテ、獨逸ニ於キマシ
テハ銀行ニ對スル國家ノ統制力ヲ强メタノ
デアリマスガ、一體中央銀行ニ對スル國家
ノ統制力ヲ强メルカドウカト云フ點ニ付テ
ノ、大藏大臣ノ御所見ヲ承リタイノデアリ
マス、獨逸ノ中央銀行ノ機能ニ國家ノ統制
權ヲ强メ、國家ノ獨裁權ノ下ニ之ヲ置カウ
トシタト云フコトニ付キマシテハ、色々ノ
理由モアルト存ジマスガ、兎ニ角中央銀行
ガ產業資金ノ方面ニ出動シヨウトスルナラ
バスル程、私ハ中央銀行ニ對スル國家ノ統
制權ト云フモノヲ高メナケレバナラナイト
信ズルノデアリマス、然ルニ大藏大臣ハ、
一方ニ於テハ中央銀行ノ產業資金ニ對スル
出動ヲ奬勵シナガラ、一方ニ於テハ國家ノ
中央銀行ニ對スル統制權ヲ弱メントスルガ
如キ熊度ヲ執ルノハ、其間ニ甚シキ矛盾ア
リト信ズルノデアリマスガ、大藏大臣ノ御
所見ヲ伺ヒタイト存ズルノデアリマス
第七ノ點ハ、日本銀行ガ產業資金ノ融通
方面ニ出動致シマシテ、所謂低金利政策ヲ
愈〓本格的ニ實行致シマスルコトニナリマス
ルト、直接ニ困ルモノハ中小商工業者、中
小生產者デアリマス、中小商工業者、中小
生產者ノ資金難ト云フモノハ、既ニ低金利
政策ヲ謳歌致シマシタ馬場財政ノ下ニ於テ
モ、現實ノ問題トナッテ經驗ヲセラレタコト
デアリマスガ、結城大藏大臣ハ中小商工業
者中小生產者ノ資金難ヲ緩和スベキ、或
ハ庶民金庫ヲ御削リニナルトカ、此方面ニ
對シテハ洵ニ御同情ト御理解トヲ持タナイ
カノ如クニ吾々ハ見受ケルノデアリマスガ、
日本銀行ノ產業資金貸出ニ出動セラレルト
同時ニ、中小商工業者、中小生產者融資ノ
方面ニ對シテ、如何ナル御考ヲ持ツカ、私
ハ之ヲ承リタイノデアリマス、要スルニ日
本銀行條例ノ改正案ハ、極メテ簡單ナル提
案デアリマスルガ、其背後ニ流レテ居リマ
スル所ノ政策ハ、極メテ重大デアルト私ハ
信ズルノデアリマス、吾々ハ結城、池田兩
氏ノ「コンビ」ニ依ッテ、所謂生產力擴充ノ爲
ノ過剩授信作用ガ、結局彼ノ震災手形善後
處理ノ如クニ莫大ナル損失ヲ政府ニ掛ケ、
惡性ノ「インフレーション」ヲ惹起シ、一方
ニハ過剩ノ授信作用ニ助ケラレタル日本ノ
「スチンネス」ヲ生ミ出ス如キ結果ニ陷ルコ
トヲ恐レルノデアリマス(拍手)吾々ハ彼ノ
銀行法ノ制定ガ、昭和二年金融恐慌ノ序曲
ヲ爲シタルガ如ク、今囘提案ニナッタ日本銀
行條例ノ改正ガ、昭和十二年度ニ於ケル惡
性「インフレーション」ノ序曲トナルコトヲ
恐レルノデアリマス(拍手)此點ヲ嚴ニ當局
ニ警告ヲ致シマスルト共ニ、當局者ノ責任
アル御答辯ヲ希ヒマシテ、私ノ簡單ナル質
問ヲ終ル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=23
-
024・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 河野君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、昭和二年ノ
銀行法ノ改正ノ時分ニ、是ハ普通銀行デア
リマス、ヤハリ英吉利流ニ從フカ、獨逸流ニ
從フカト云フ議論ハ確ニアリマシタ、ソレ
ハ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、短期ノ金融ヲ
スルカ、長期ノ金融ヲスルカト云フコトニ
アルノデアリマスルガ、普通銀行トシテハ
短期ノ金融ニ應ジナケレバナラヌ、斯ウ云
フ風ナコトニ改正サレタコトハ事實デアリ
マス、ソレト中央銀行、日本銀行ハ普通銀
行ノ銀行ト云フノデハアリマセヌデ、ヤハリ
各種ノ特殊銀行、其他金融機關ノ全般ニ對
スル中央ノ機關ト云フコトニ考ヘテ宜カラ
ウト思フノデアリマスガ、併ナガラ發劵銀
行トシテ、是亦長期ノ金融ニ對シテ焦付ケヲ
スルヤウナコトハ、是ハ斷然避ケネバナラ
ヌノデアリマシテ、斯ウ云フ風ナ意味ハナイ
ノデアリマス、ソレデ長期ノ金融ヲシテ、其
爲ニ「インフレーション」ヲ起ストカ、惡性ノ貸
出ヲスルヤウニナラヌカ、通貨膨脹ヲ來サ
ヌカト云フヤウナ御懸念デアリマスルガ、
サウ云フコトハ日本銀行トシテ斷ジテナカ
ラウト思フノデアリマス
震災善後策ノ處置トシテ特別融通ニ付テ
ノ御質問ガアリマシタガ、ソレハマダ處理
ガ十分ニ出來テ居リマセヌノデ、金額モ未
確定デアリマス、ソレカラ正貨ノ現送ニ付
テ御質問ガアリマシタガ、是ハ爲替相場ヲ
維持スル上ニ於キマシテ、又日本ノ國際貸
借尻ヲ決濟スル上ニ於テ、相當ノ正貨ヲ送
リマスコトハ、何等ノ懸念モナイノデアリ
マシテ、ソレノ爲ニ產金業者ヲ利益セシム
ルトカ、或ハ大キナ資本家ヲドウスルト云
フヤウナコトハ、是ハ御懸念ハナカラウト
思フノデアリマス、ソレカラ次ノ參與理事
ハマダ人ハ決ッテ居リマセヌガ、大體ノ趣旨
ハ經濟界ノ各方面ノ練達堪能ノ士ヲ集メ
テサウシテ日本銀行ノ仕事ニ參與シテ貰
ハウ、ソレ等ノ人ノ考ヲ聞イテ日本銀行ト
シテ仕事ヲシヨウト、斯ウ云フノデアリマ
ス、詰リ各方面ノ連絡協調ヲ圖ルト云フコ
トガ主タル目的デアリマス爲ニ、其目的カ
ラ人選ヲスルダラウト思フノデアリマス、
ソレカラ日本銀行ニ對スル國家ノ監督統制
ト云フコトハ是ハ何等ノ變更ハナイノデ
アリマシテ、從來通リヤハリ國家ガ十分ニ
監督シテ行クコトニナルノデアリマス、最
後ニ中小商工業者ニ對スル金融ニ付テモ考
ヘテ居ルカト云フ御質問デアリマシタガ、
是ハ常ニ考ヘテ居ルコトデアリマシテ、庶
民金庫ヲ此議會ニ出サヌト云フコトハ、庶
民金融ハ殊ニ大切ナ問題デアルダケニ、十
分ニ案ヲ練ラナケレバナラヌト云フコトカ
ラ出シマセヌノデアリマシテ、不必要ナ爲
ニ出サヌト云フノデハアリマセヌ、ソレデ
中小商工業ニ對スル金融ニ付テハ、從來カ
ラ非常ナ心配ヲシテ居リマスト云フコトヲ
重ネテ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=24
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025・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 河野君、宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=25
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026・河野密
○河野密君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=26
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027・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=27
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028・中山福藏
○中山福藏君 日程第一乃至第三ノ三案ヲ
一括シテ一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案外
二件委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=28
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029・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=29
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030・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第四、東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ帝
國大學特別會計及學校及圖書館特別會計ノ
關涉ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-大藏大臣結城豊太郞君
第四東京農業〓育專門學校創設ニ伴
フ帝國大學特別會計及學校及圖書館
特別會計ノ關涉ニ關スル法律案(政
府提出)第一讀會
東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ帝國
大學特別會計及學校及圖書館特別會計
ノ關涉ニ關スル法律案
昭和十一年度末現在ノ東京帝國大學資金
ニシテ東京帝國大學農學部附屬農業〓員
養成所ノ用ニ供スルモノ及昭和十一年度
東京帝國大學ノ歲入殘餘ニシテ同帝國大
學農學部附屬農業〓員養成所ニ關シ生ジ
タルモノハ之ヲ學校及圖書館資金ニ編入
スベシ
前項ノ規定ニ依リ編入シタル資金ニシテ
歲入殘餘ヨリ成リタルモノハ之ヲ東京農
業〓育専門學校ノ資金トシテ區分整理ス
ベシ
昭和十一年度帝國大學特別會計歲入歲出
豫算中翌年度ニ繰越ヲ要スルモノニシテ
東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成所
ニ關スルモノハ之ヲ學校及圖書館特別會
計ニ繰越使用スベシ
附則
本法ハ昭和十二年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=30
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031・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 只今議題トナ
リマシタ東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ
帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計
ノ關涉ニ關スル法律案提出ノ理由ヲ說明致
シマス、農業〓育ノ普及徹底ヲ圖ル爲メ、
現在ノ東京帝國大學農學部附屬農業〓員養
成所ハ、之ヲ昭和十二年度ヨリ獨立セシメ
マシテ、東京農業〓育專門學校ト致シマス
ル關係上、昭和十一年度末現在ノ東京帝國
大學資金ノ中、東京帝國大學農學部附屬農
業〓員養成所ノ用ニ供シマスルモノ、昭和
十一年度東京帝國大學ノ歲入殘餘ニシテ、
同帝國大學農學部附屬農業〓員養成所ニ關
シ生ジマシタルモノハ、之ヲ學校及ビ圖書
館資金ニ編入スル等ノ規定ヲ設クル必要ガ
アリマス、仍テ本法律案ヲ提出致シタ次第
デアリマス、何卒御審議ノ上御協贊アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=31
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032・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=32
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033・中山福藏
○中山福藏君 本案ハ政府提出、一般會計
歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰
入金ニ關スル法律案外二件委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=33
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034・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=34
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035・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第五、地方鐵道補助法中改正法律案ノ第一
讀會ヲ開キマス-鐵道大臣伍堂卓雄君
第五地方鐵道補助法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
地方鐵道補助法中改正法律案
地方鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條政府ハ豫算ノ範圍內ニ於テ地方
鐵道ニ對シ建設費ノ百分ノ四ニ相當ス
ル金額ヨリ益金ヲ控除シタル殘額以内
ニ於テ運輸數量ニ基キ命令ノ定ムル所
ニ依リ計算シタル金額ヲ補給スルコト
ヲ得
補助ヲ爲ス地方鐵道ノ範圍竝ニ前項ノ
建設費、益金及運輸數量ノ算出方法ハ
命令ノ定ムル所ニ依ル
第二條補助金ノ使途ハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
附則第二項ヲ左ノ如ク改ム
第一條ノ規定ニ依ル補助金ハ昭和十七年
四月一日以後ノ期間ニ付テハ之ヲ交付ス
ルコトヲ得ズ
附則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
從前ノ附則第二項ニ揭グル地方鐵道以外
ノ地方鐵道ニ對シテハ申請ニ依リ仍從前
ノ第一條ノ規定ニ依リ補助ヲ爲スコトヲ
妨ゲズ但シ昭和十二年四月一日以後ニ補
助ヲ爲ス場合ニ於テハ同條中百分ノ五ト
アルハ百分ノ四トス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=35
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036・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 只今上程サレマ
シタ地方鐵道補助法中改正法律案ノ提案理
由ヲ御說明申上ゲマス、現行補助法ハ營業
開始後十年間補助スルモノデアリマスガ、
昭和十二年一月一日以後ニ營業ヲ開始シタ
地方鐵道ニハ、之ヲ適用スルコトヲ得ナイ
コトニナッテ居リマス、地方鐵道ハ〓ネ國有
鐵道ト密接ナ關係ヲ有シ、交通脈絡上重要
ナ役割ヲ演ズルモノデアリマシテ、公益上
其存續ヲ必要トスルモノデアリマスカラ、其
運營ヲ保持シ、更ニ進ンデ施設ノ改善等ヲ
行ハシムルコトニ依リ、獨立自營ノ域ニ逹
スルヤウ之ヲ誘導シ、益ゝ公益ヲ增進セシ
メナケレバナラナイノデアリマス、此目的
ヲ達スル爲ニハ、單ニ現行補助法ノ年限ヲ
延長スルコトニ代ヘ、現在ノ事情ニ卽シテ
適切ナ政策ヲ施スベキモノト考へ、此趣旨
ニ依ル新補助制度ヲ設ケヤウトスル次第デ
アリマス、何卒愼重審議ノ上御協贊アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=36
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037・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=37
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038・中山福藏
○中山福藏君 本案ハ政府提出、鐵道敷設
法中改正法律案委員ニ併セ付託セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=38
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039・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=39
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040・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第六及ビ第七ハ關聯セル議案デアリマスカ
ラ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=40
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041・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程第六、小運送業法案、日程
第七、日本通運株式會社法案、右二案ヲ一
括シテ第一讀會ヲ開キマス-鐵道大臣伍
堂卓雄君
第六小運送業法案(政府提出)
第一讀會
第七日本通運株式會社法案(政府提
出)第一讀會
小運送業法案
小運送業法
第一條本法ニ於テ小運送業トハ左ニ揭
グル事業ヲ謂フ
鐵道、軌道若ハ自動車運輸事業ノ
爲ス物品運送又ハ此等ノ運送機關ト
通運送ヲ爲ス運送機關ニ依ル通物品
運送ノ運送取扱業又ハ運送代辨業
二鐵道、軌道又ハ自動車運輸事業ニ
附隨シ又ハ之ヲ利用シテ爲ス陸上ノ
物品運送業
第二條小運送業ヲ營マントスル者ハ主
務大臣ノ免許ヲ受クベシ
第三條小運送業者ハ運賃、料金其ノ他
ノ取扱條件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受
クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第四條主務大臣ハ公益上必要アリト認
ムルトキハ運賃料金其ノ他ノ取扱條件
ノ變更、設備共同使用ノ協定、集配區
域ノ協定其ノ他事業ノ實施及改善ニ關
シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
前項ノ協定ニ付當事者間ノ協議調ハザ
ルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス
第五條主務大臣ハ小運送業者ヲシテ其
ノ事業ニ關シ報〓ヲ爲サシメ又ハ部下
ノ官吏ヲシテ其ノ事業ノ狀況ヲ檢査セ
シムルコトヲ得
前項ノ官吏其ノ職務ヲ執行スル場合ニ
於テハ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶ス
ベシ
第六條小運送業者其ノ事業ノ全部又ハ
一部ヲ休止シ又ハ廢止セントスルトキ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第七條小運送業ノ讓渡又ハ小運送業ヲ
營ム會社ノ合併若ハ解散ノ決議若ハ總
社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可ヲ受クル
ニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
相續人ガ被相續人ノ小運送業ヲ承繼シ
タルトキハ相續人ハ小運送業ノ免許ヲ
受ケタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ
ハ相續人ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ主務大臣
ニ屆出ヅベシ
第八條免許又ハ認可ニハ條件ヲ附スル
コトヲ得
前項ノ條件ハ公益上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
第九條小運送業者其ノ事業ニ關スル協
定ヲ爲シタルトキハ之ヲ主務大臣ニ屆
出ヅベシ之ヲ變更又ハ廢止シタルトキ
亦同ジ
前項ノ協定ガ本法若ハ本法ニ基キテ發
スル命令ニ違反シタルトキ又ハ公益ヲ
害スル虞アルトキハ主務大臣ハ協定ノ
全部若ハ一部ヲ取消シ又ハ其ノ變更ヲ
命ズルコトヲ得
第十條小運送業者ハ認可ヲ受ケタル運
賃及料金ヲ公示スベシ
小運送業者ハ何等ノ名義ヲ以テスルモ
小運送業ニ付テハ公示シタル運賃及料
金以外ノ報酬ヲ請求スルコトヲ得ズ但
シ特別ノ事由ニ因リテ爲シタル特別ノ
作業ニ付相當ノ報酬ヲ受クルハ此ノ限
ニ在ラズ
第十一條鐵道營業法第十三條ノ三ノ規
定ハ小運送業ニ之ヲ準用ス
第十二條小運送業者左ノ各號ノ一ニ該
當スルトキハ主務大臣ハ免許ノ全部若
ハ一部ヲ取消シ又ハ事業ノ全部若ハ一
部ノ停止ヲ命ズルコトヲ得
-本法ニ基ク命令ニ違反シタルトキ
二免許又ハ認可ニ附シタル條件ニ遠
反シタルトキ
三事業ノ經營不確實又ハ資產狀態ノ
著シキ不良其ノ他ノ爲事業ヲ繼續ス
ルニ適セザルトキ
四公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキ
五第十條ノ規定ニ違反シ運賃及料金
ヲ公示セズ又ハ不當ノ報酬ヲ請求シ
タルトキ
第十三條第三條乃至第五條、第八條乃
至第十條及前條ノ規定ハ運送品ノ荷
造保管及仕分、保險契約ノ締結、代
金ノ取立、立替其ノ他小運送業ニ通常
附帶シテ爲ス業務ニ之ヲ準用ス
第十四條免許ヲ受ケズシテ小運送業ヲ
營ミタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス自
己ノ免許名義ヲ他人ニ利用セシメタル
者亦同ジ
第十五條小運送業者左ノ各號ノ一ニ該
當スルトキハ三百圓以下ノ罰金又ハ科
料ニ處ス
一本法ニ基ク命令ニ違反シタルトキ
二本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ認可ヲ受ケテ爲スベキ事項ヲ
之ヲ受ケズシテ爲シタルトキ
三免許又ハ認可ニ附シタル條件ニ違
反シタルトキ
四本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依ル屆出若ハ報〓ヲ爲サズ又ハ虚
僞ノ屆出若ハ報〓ヲ爲シタルトキ
五第五條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタルトキ
六第十條ノ規定ニ違反シ運賃及料金
ヲ公示セズ又ハ不當ノ報酬ヲ請求シ
タルトキ
第十六條小運送業者ハ其ノ代理人、戶
主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ
業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自
己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處
罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
本法ノ罰則ハ法人ニ在リテハ理事、取
締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員
二、未成年者又ハ禁治產者ニ在リテハ
法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關
シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年
者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條本法ニ定ムル主務大臣ノ職權
ノ一部ハ之ヲ地方長官(東京府ニ在リ
テハ警視總監トス)又ハ鐵道局長ニ委
任スルコトヲ得
第十八條第一條ニ揭グル事業以外ノ陸
上ニ於ケル物品運送業(鐵道、軌道又
ハ自動車ニ依ル物品運送業ヲ除ク)又
ハ陸上ニ於ケル物品運送ノ運送取扱業
若ハ運送代辨業ニ於ケル運賃、料金其
ノ他ノ取扱條件ニ關スル規定ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法公布前小運送業ヲ開始シタル者又ハ
其ノ承繼人ニシテ本法施行ノ際現ニ小運
送業ヲ營ムモノ本法施行後三月內ニ主務
大臣ニ其ノ旨ノ屆出ヲ爲ストキハ本法施
行ノ日ヨリ本法ニ依リ小運送業ノ免許ヲ
受ケタル者ト看做ス
本法公布ノ日以後ニ小運送業ヲ開始シタ
ル者ニシテ本法施行ノ際現ニ小運送業ヲ
營ムモノ又ハ其ノ承繼人ハ本法施行後三
月內ニ限リ小運送業ヲ營ムコトヲ得此ノ
期間內ニ免許ノ申請ヲ爲ストキハ免許又
ハ免許ノ拒否ノ日迄亦同ジ
日本通運株式會社法案
日本通運株式會社法
第一條日本通運株式會社ハ小運送業ノ
健全ナル發達ヲ圖ル爲左ノ事業ヲ營ム
コトヲ目的トスル株式會社トス
小運送業者ノ取引ヨリ生ズル債權
債務ノ決濟ニ關スル事業
二貨物引換證ノ整理及保證ニ闔スル。
事業
三小運送業ノ助長ニ必要ナル事業
四小運送業及之ニ附帶スル事業
日本通運株式會社ハ小運送業又ハ之ニ
關聯スル事業ニ投資スルコトヲ得
第二條日本通運株式會社ノ資本ハ三千
五百萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之
ヲ增加スルコトヲ得
第三條日本通運株式會社ノ株式ハ記名
式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ
帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ
執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額
以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ
外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所
有スルコトヲ得
第四條政府ハ日本通運株式會社ノ資本
ノ半額ヲ限リ其ノ株式ノ引受ヲ爲スコ
トヲ得
前項ノ株式引受ニ因ル拂込金ハ帝國鐵
道會計ノ資本勘定ノ歲出トシ政府ガ該
引受ニ因リ取得シタル株式ハ同會計ノ
資本所屬物件トス
第一項ノ規定ニ依ル株式ノ株金拂込ハ
其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニス
ルコトヲ得
第五條日本通運株式會社ニ社長副社長
各一人、理事五人以上及監事二人以上
マダノ
第六條社長ハ日本通運株式會社ヲ代表
シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務
ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ日本通運
株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本通運株式會社ノ業務ヲ監査
ス
第七條社長及副社長ハ主務大臣之ヲ命
ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ
選任シ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ主務大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ三
年トス
第八條日本通運株式會社ノ社長、副社
長及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ
得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルト
キハ此ノ限ニ在ラズ
第九條日本通運株式會社ハ每營業年度
ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ第四
條第一項ノ規定ニ依ル株式以外ノ株式
ノ拂込ミクル株金額ニ對シ年六分ノ割
合ニ達スル迄第四條第一項ノ規定ニ依
ル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ
要セズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ第四條第一項ノ規定ニ依ル株式
以外ノ株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ
年六分ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超
過額ハ總株式ニ對スル利益配當ガ拂込
ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達ス
ル迄第四條第一項ノ規定ニ依ル株式以
外ノ株式ノ拂込ミクル株金額及第四條
第一項ノ規定ニ依ル株式ノ拂込ミタル
株金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之
ヲ配當スベシ
第十條主務大臣ハ日本通運株式會社ノ
業務ヲ監督ス
主務大臣ハ部下ノ官吏ヲシテ何時ニテ
モ日本通運株式會社ノ金庫、帳簿及諸
般ノ文書物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
第十一條主務大臣ハ日本通運株式會社
ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲
スコトヲ得
第十二條定款ノ變更、社債ノ募集、利
益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ主務
大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
第十三條日本通運株式會社其ノ事業ヲ
休止セントスルトキハ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第十四條主務大臣ハ日本通運株式會社
ノ決議又ハ社長、副社長、理事若ハ監
事ノ行爲ガ法令、法令ニ基ク命令若ハ
定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムル
トキハ其ノ議決ヲ取消シ又ハ社長、副
社長、理事若ハ監事ヲ解任スルコトヲ
得
第十五條日本通運株式會社本法又ハ本
法ニ基ク命令ニ違反シタルトキハ社長
又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副
社長ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又
ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長
又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
第十六條社長、副社長又ハ理事第八條
ノ規定ニ違反シタルトキハ二百圓以下
ノ過料ニ處ス
第十七條非訟事件手續法第二百六條乃
至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ
之ヲ準用ス
附則
第十八條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行
ス
第十九條日本通運株式會社左ノ事項ニ
付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登錄
稅ノ額ハ左ノ額トス但シ登錄稅法ニ依
リ算出シタル稅額ガ左ノ額ヨリ少キト
キハ其ノ稅額ニ依ル
設立
金錢出資ニ依ル拂込株金額ノ千
分ノ五ト金錢以外ノ財產ノ出資
ニ依ル拂込株金額ノ千分ノ一ト
ノ合計額
二設立ノ際ニ於ケル出資ノ目的タル
不動產又ハ船舶ニ關スル權利ノ取得
不動產又ハ船舶ノ價格ノ千分ノ三
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ日本通運株式會社ニ對シ前項ニ規
定スル不動產又ハ船舶ニ關スル權利ノ
取得ニ關シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第二十條主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ日
本通運株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ
事務ヲ處理セシム
第二十一條日本通運株式會社ノ設立ニ
際シ金錢以外ノ財產ヲ出資ノ目的ト爲
ス者アル場合ニ於テハ設立委員ハ出資
ノ目的タル財產ノ價格ニ付評價委員會
ニ諮問スベシ
前項ノ評價委員會ニ關スル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條設立委員ハ定款ヲ作成シ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ
株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式及
前條ノ金錢以外ノ財產ノ出資ニ對シテ
割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株
式ニ付株主ヲ募集スベシ
第二十三條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
ヲ記載スベシ
第二十四條設立委員ハ株主ノ募集ヲ終
リタルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ
提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第二十五條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株式ニ付第一囘ノ
拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
創立總會ニ於テハ第七條第二項ノ規定
ニ準ジ理事ヲ選任スベシ
第二十六條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ日本通運株式會
社社長ニ引渡スベシ
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=41
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042・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 只今議題トナリ
マシタ小運送關係二法律案提出ノ理由ヲ申
上ゲマス、小運送ハ國民經濟上極メテ重要
ナル意義ヲ有スルノデアリマスガ、現行制
度ノ下ニ於キマシテハ、其經營ヲ自由ニ放
任致シテアリマス結果、小運送業ノ堅實ナ
ル發達ヲ期待シ得ナイバカリデナク、般
利用者ニ對シテモ尠カラザル不便、不利ヲ
與ヘテ居ル實情デアリマス、仍テ此際小運
送業ヲ免許營業ト致シマシテ、資力薄弱、
信用不確實ナルモノノ簇出ヲ防止スルト共
ニ、免許業者ニ對シマシテ適當ナル監督取
締ヲ加ヘタイト存ズルノデアリマス、又小
運送業ハ其業務ノ性質上、業者間ニ於ケル
貸借ノ決濟、業務ノ連絡、其他ノ統轄事務
ヲ行フ機關ヲ必要トスルモノデアリマシ
テ、此機關ヲシテ業者間ノ連絡ト事業ノ助
成トヲ行ハシムルコトガ、小運送改善ノ捷
徑デアルト考ヘルノデアリマスガ、現在ノ
如キ數箇ノ營利會社ニ之ヲ委ネマスコトハ、
公益上不適當デアリマスシ、又直接國家ノ
經營トスルコトモ實情ニ副ハヌ虞ガアリマ
スノデ、此際新ニ半官半民ノ特殊會社ヲ設
立シ、國家ガ適當ニ之ヲ監督助長致シマシ
テ、統轄機能ノ完全ナル運用ヲ圖リタイト
存ズルノデアリマス
尙ホ小運送改善ノ問題ハ、業界二十年來
ノ懸案デアリマシテ、鐵道省ハ從來色々ノ
方策ヲ講ジマシタガ、孰レモ徹底シタ成果
ヲ收メルニ至ラズ、又帝國議會ニ於キマシ
テモ、此小運送改善ガ屢〓問題ニナッタノハ御
承知ノ通リデアリマス、鐵道省ハ之ニ鑑ミ、
昨年朝野ノ權威者ヲ網羅シタ小運送制度調
査會ヲ設ケ、愼重審議ヲ御願シ、其答申ヲ
得マシタノデ、之ニ基キ茲ニ兩法案ヲ提出
致シタ次第デアリマス、業界ヲ根本的ニ改
善シテ國利民福ニ寄與スルニハ、是非共此
兩法ノ實施ニ俟タネバナラヌト信ズル次第
デアリマスカラ、何卒御審議ノ上御協贊ヲ
賜ハランコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=42
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043・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 此際新ニ議席ニ著
カレマシタ議員ヲ御紹介致シマス、北海道
第五區選出議員木下成太郞君
〔木下成太郞君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=43
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044・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
さく、順次之ヲ許可致シマス--三好榮次
郞君
〔三好榮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=44
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045・三好榮次郎
○三好榮次郞君 私ハ玆ニ上程サレマシタ
兩法案ニ付テ質疑ヲ致シタイト思フノデア
リマス、本法案ノ運輸行政上ノ事務的檢討
ノ前ニ、私ハ幸ヒ鐵道大臣ガ我ガ商工業ノ
問題ニ對スル商工大臣ヲ兼務セラレテ居ル
ガ爲ニ、此問題ヲ通ジマシテ、現政府ノ懷
カレテ居ル我ガ產業經濟ニ對スル、其御信
念ヲ一ツ伺ヒタイト思フノデアリマス
現內閣ハ議會開會中ノ政變ニ依リマシテ
組閣セラレ、隨テ議會ニ提案サレマシタル
豫算案ヲ初メト致シ、之ニ關聯致シタル法
律案、-施政ハ、總テ一時ノ便法ナリト
政府モ唱ヘラレテ居ルノデアリマス、隨テ
幾多ノ重要ナル法律案、或ハ農地法ト云ヒ、
或ハ國民健康保險法ト云ヒ、或ハ商法ノ改
正法案ト云ヒ、或ハ又玆ニ提出サレマシタ
ル法案ノ如ク、重要ナル法案ダト唱ヘラレ
テ居リマスルガ、果シテ是等ノ重要法案ニ
對シテ、政府ハ國政ノ大局ヨリ見テ、偉大
ナル信念ノ下ニ、是等ノ法案ヲ發案サレタ
ルヤ否ヤニ多少ノ迷ヒヲ私ハ生ズルノデア
リマス、コヽ二三年此方、我國ノ產業經濟
界ニハ色々ナ波紋ガ生ジマシテ、或時ハ統
制經濟ガ論ゼラレ、或ハ資本主義ノ是正ガ
唱ヘラレ、更ニ進ミマシテハ營利追求ノ資
本主義ヲ打破致シテ、公益第一主義ノ經濟
機構ヲ樹立シナケレバナラヌト云フヤウナ
議論モ出テ參ッタノデアリマス、是ガ爲ニ我
國ノ產業經濟界ニ於キマシテハ、非常ナ危
惧ノ念ヲ懷キマシテ、是ガ爲ニ多少タリト
モ我國ノ產業經濟ノ發展ヲ、一時的ニセヨ
多少ノ阻止ヲ見タルコトハ、私共ノ洵ニ遺
憾トスル點デアッタノデアリマス、現內閣ガ
成立セラレマシテカラ、私共ハ是等國民ノ
不安ノ念ヲ懷イテ居リマスル產業經濟對策
ニ對シテ、政府ノ所謂抱負經綸ヲ伺フコト
ノ出來マセヌコトハ、洵ニ遺憾ニ考ヘテ居
リマスルガ、去ル本會議ニ於キマシテモ、
總理大臣ハ是等ノ問題ニ對シテ、斯樣ナコ
トヲ仰セラレテ居ルノデアリマス、「產業ノ
振興ハ內外ノ經濟情勢ニ適應セシメ、保護
ノ施設ヲ講ズルト共ニ適切ナル統制ヲ實施
スルコトガ緊要デアリマス、尤モ是ガ爲ニ
國民ノ創造力ヤ企業心ヲ沈滯萎靡セシムル
コトガアッテハナラヌノデアリマシテ、寧ロ
進ンデ之ヲ助長スベキデアルト存ズルノデ
アリマス」、斯樣ニ總理大臣ハ仰セラレテ居
ルノデアリマス、又大藏大臣ハ其施政ノ演
說ニ於キマシテ、斯樣ナコトヲ仰セラレテ
居ル、「我國經濟界ハ重大ナル時期ニ遭遇シ
テ居リマスカラ、是ガ根本對策ノ樹立ハ、
極メテ愼重ヲ期スルノ要ガアルノデアリマ
ス、經濟界ノ組織ハ本來極メテ微妙ナルモ
ノデアリマシテ、一部ノ不調和ハ忽チ全體
ノ運營ノ圓滑ヲ阻碍スルモノデアリマスル
カラ、單ニ一部的觀察ニ基キ、部分的必要
ノ爲ニ全體ノ發展ヲ阻碍スルガ如キハヽ嚴
戒ムベキデアラウト存ジマス、故ニ政府ト
致シマシテハ、今後ノ經濟政策ノ樹立ニ當
リマシテハ、常ニ全體ト一部トノ雙方ニ留
意シ、先ヅ全體トシテノ歸趨ヲ考察シ、其
方向、其線ニ沿ウテ各部門ノ調和的漸進ヲ
期シタイト考ヘテ居ルノデアリマス」、サウ
シテ「平地ニ波瀾ヲ生ズルガ如キコトハ、努
メテ之ヲ避クベキモノデアルト信ズルノデ
アリマス、何事モ極端ナ事ハ行ヒ易イノデ、
中庸ヲ得ルコトハ困難デアリマスガ、私ハ
其難キヲ執ル心構ヲシテ居ルノデアリマス」、
斯樣ニ總理大臣、大藏大臣ハ、施政ノ演說
ニ於テ、其產業經濟對策ノ指針トシテ、仰
セラレテ居ルノデアリマス、併シ私共ハ此
總理理臣、大藏大臣ノ我國ノ產業經濟ニ關
スル此信念ヲ伺ッテ、コヽ二三年ノ間、私共
ガ其歸趨ニ迷ッテ居リマシタ日本ノ產業經
濟政策ハ、如何樣ナコトニ依ッテ進步發達ス
ベキモノデアルカト云フ此迷ヒガ、此施政
ノ演說ダケニ依ッテハ、私共ハ氷解スルコト
ガ出來ヌノデアリマス、元來私共ハ財政政
策ニ依ッテ、國家ノ產業經濟ガ指導セラレマ
スルコトハ能ク承知ヲ致シテ居リマス、併
シ其國家ノ財政ノ基本ハ何處ニ置クベキカ
ト言ヘバ、申上ゲル迄モナク國民經濟力ノ
充實ニアル、其國民經濟力ノ充實ハ申上ゲ
ル迄モナク、所謂產業經濟ノ發展ニアルコト
ハ申上ゲル迄モナイ、是ニ於テ私共ハ財政
政策ヲ考慮スルト同時ニ、所謂一國ノ產業經
濟政策ト云フモノガ玆ニ樹立スルニアラザ
レバ、吾等ガ進步發達スル國家ノ其財政ヲ變
理致スノニハ、洵ニ困難ノ感ゼザルヲ得ヌト思
フノデアリマス、是ニ於テ私ノ政府ニ御尋
致シタイノハ、此案ヲ通ジマシテ、政府ハ
我國ノ產業經濟機構ニ對シテ如何ナル信念、
如何ナル經濟理念ヲ持ッテ之ヲ指導セラレ
ントスルノデアルカト云フコトデアリマス、
本法案ヲ通讀致シマスルト、只今鐵道大臣
ノ說明セラレマシタル如ク、半官半民ノ特
殊會社ヲ作リ、小運送ヲ政府ノ免許制度ニ
依ッテ、サウシテ運輸行政上ノ統制ヲ圖ルト
云フ御趣意ノヤウデアリマス、故ニ一面ヨ
リ之ヲ見マスルト、所謂民主官從、民業ヲ
主ト致シマシテ、鐵道省ハ唯之ヲ指導スル
ト云フ意味デアルガ如クニモ解サレルノデ
アリマスルガ、又一面カラ之ヲ見マスルト、
其實質ニ於キマシテハ、卽チ鐵道省ガ直營
スルカノ如クニモ、亦之ヲ見ルコトガ出來
ルノデアリマス、私共ハ本案ヲ運輸行政上
ノ事務的問題トシテ檢討スル時、二三ノ質
疑ガアルノデアリマスルガ、其前ニ當リマ
シテ、斯ノ如キ半官半民ノ仕事ニ依ッテ鐵道
省ガ指導シヨウトスル、其經濟理念ハ何處
ニ根據ガアルカ、卽チ所謂國營事業、官營
事業ニ對シテ、色々私ハ批評スベキ事柄ガ
アルト思フノデアリマスルガ、政府ハ我國
ノ產業經濟ヲ指導致スノニ、所謂自由資本
主義是正ノ立場ヨリ、如何ナル經濟理念ヲ
以テ之ヲ指導セラレントスルノデアルカ、
昨年電力問題ガヤカマシクナリマシタル時
ニ、國家社會主義デアルトカ、色々ナ所謂
經濟理念ニ付キ、「イデオロギー」ニ付キ、
論議サレタコトガアルノデアリマス、國民
ノ間ニハ是等ノ問題ニ對シテ非常ナ迷ヒヲ
生ジテ居ル、希クハ政府ハ斯樣ナ機會ニ於
キマシテ、吾々ハ斯樣ナ經濟上ノ信念ヲ以
テ我國ノ產業經濟ヲ指導スルノデアルト云
フ、其御考ヲ御示ニナルコトガ當然デアッ
テ、吾々ハ之ヲ聽イテ、實業人、經濟人ハ
之ヲ基礎ト致シテ諸般ノ計畫ヲ樹テルコト
ガ出來ルト思フノデアリマスルカラ、是等
ノ點ニ付テノ政府ノ御所信ヲ私ハ伺ヒタイ
ト思フノデアリマス
本案ノ事務的問題ト致シマシテハ、私ハ
第一ニ本案ニ依ッテ日本通運株式會社ト云
フ半官半民ノ會社ヲ御作リニナル、其半官
半民ノ會社ニハ、現在存在致シテ居リマス
ル所ノ國際通運ノ關係ヲ基礎ト致シテ、之
ヲ現物出資サセテ、之ニ政府ガ半額ノ出資
ヲシテ、玆ニ特殊會社ガ出來ルコトニナツ
テ居ルト云フヤウデアリマスルガ、此國際
通運ヲ特殊會社ニ買收セラルヽ其財物出資
ノ見積等ハ、如何ナル標準ニ依ッテ之ヲ爲サ
ントスルノデアルカ、是ハ委員會ニ於テモ
吾々ノ同僚カラ色々御質問ノアルコトト思
ヒマスルガ、其大綱ダケヲ一ツ御示ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス
第二ハ、新ニ出來マスル日本通運株式會
社ト鐵道省トノ關係デアリマス、法案ニ依
リマスルト、所謂小運送ノ指定、非指定、
今マデ指定サレテ居ッタ者モ、指定サレザル
者モ、兩者共今囘ノ法律ニ依ッテ、所謂免許
セラレテ、サウシテ日本通運株式會社ノ關
係ニ包容サレルコトニナルノデアリマスカ
否カ、又左樣ダトスルナラバ、其結果ト致
シテ、果シテ現在ヨリモ小運送費ト云フモ
ノガ、如何樣ナ程度ニ低下スルコトガ出來
ルヤ否ヤ、是ノ大體ノ御見込ガ決ッテ居ル
ト思ヒマスルカラ、其點ヲ伺ッテ置キタイト
思フノデアリマス
第三ハ、本案ニ依リマスルト、小運送ヲ
扱ヒマスル者ハ總テ免許制度ニ依ル、斯ク
致シマスルト、全國各地ノ小運送ヲ扱ヒマ
スル者ハ、所謂官許ニ依ッテ、免許ニ依ッテ
其地位ヲ得ルコトニナリマスルカラ、其結
果ト致シテ獨占ノ弊ニ流レハセヌカ、私共
ノ今日マデ知リ得タ所ニ依リマスルト、今
日マデノ國際通運ノ取扱ニ於キマシテモ、
鐵道省ガ運送店ヲ指定致シマスルガ爲ニ、
實際荷物ヲ依託スル者ノ方カラ申シマスル
ト、色々不便ノアッタコトヲ私共ハ承知ヲ致
シテ居ル、然ルニ今囘ノ法律ニ依リマシテ、
更ニ是ガ嚴格ニ、所謂免許制度ニ依ル、サ
ウ致シマスルト、結論ニ於テハ一驛一店主
義ニ或ハ段々ナルカモ知レナイ、一驛一店
主義ニナリマシタル時ニ、依託者ノ方カラ
申シマスルト、相當ナ不便ヲ感ズルコトガ
アリハセヌカト私ハ疑問ヲ持ツノデアリ
マス、是ニ於テ免許制度デアッテ、斯樣
ナ組織ニナリマスルト、業界ハ獨占ノ弊
ニ移リマシテ、遂ニ先程申上ゲマシタ
ヤウニ、恰モ鐵道省ガ直營ヲスルガ如ク、
世ノ中ニ言ハレマスル所ノ所謂官僚獨善ノ
弊ニ陷リハセヌカ、是ガ爲ニ蒙リマスル一
般依託者ノ不便ト不利益ハ相當大キイモノ
デハナイカト云フヤウナ疑問ヲ私ハ懷クノ
デアリマス、是等ノ點ニ付テノ政府ノ御答
ヲ私ハ伺ヒタイト思フノデアリマス
以上申上ゲマシタ四點、卽チ大局ノ上カ
ラ見マシテ、日本ノ產業經濟政策ノ立場カ
ラ、此案ヲ通ジテ見マスル所ニ依リマスル
ト、所謂產業政策、經濟政策ハ、其政府ノ
有セラルヽ信念ハ、卽チ國家社會主義ト唱
ヘラレ、或ハ官僚獨善ト唱ヘラレ、所謂現
内閣ノ施政方針ノ中ニ言ハレマシタ如ク、
大藏大臣ノ仰セラレルガ如ク、急激ナル變
化ヲ與ヘズシテ中庸ヲ得ル-中庸ヲ得ル
ト云フヤウナコトダケデハ、吾々國民ハ了
解スルコトガ出來ナイノデアリマス、モウ
少シ明ニ、例ヘバ公益主義ト營利主義トヲ
竝行サセル、サウシテ民業ヲ自由ニ發達セ
シムルコトヲ考慮スルト云フノカ、或ハ公
益主義ヲ第一ト致シテ、營利主義ヲ第二ト
スルヤウナ、新シキ經濟機構ヲ御考ニナッテ
居ルノカ、斯樣ナ大切ナル產業、經濟政策
ニ對スル政府ノ御信念ヲ私ハ伺ヒタイト思
フ、第二ニハ事務的問題ト致シマシテ、先
程申上ゲマシタヤウニ、卽チ國際通運ノ買
收ニ當リマシテ、其見積ノ標準ヲ何處ニ御
決メニナッテ居ルカ、日本通運ト鐵道省トノ
關係ニ於キマシテ、指定、非指定ノ運送店
ノ取扱ニ關スル點、是ガ爲ニ小運送賃ノ低
下スル程度ヲ御見込ニナッテ居ルナラバ其
程度、及ビ免許制度ノ結果獨占ノ弊ニ移リ
マシテ、却テ依託者ニ非常ナル不便ヲ及ボ
スモノデハナイカト云フ此疑問、此四點ニ
付テ政府ノ御答辯ヲ御願申上ゲタイト思フ
ノデアリマス(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=45
-
046・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 第一ニ統制經濟
ニ對スル根本政策ニ付テ御質問ガアリマシ
タガ、是ハ首相、大藏大臣、又私モ色々ノ
機會ニ於テ申述ベタノデアリマスルガ、要
スルニ今日ノ世界ノ經濟情勢ニ鑑ミマシテ、
又我國ノ國防上ノ見地カラ考ヘマシテ、國
策上竝ニ公益上必要ナモノニ對シテ、適當
ナ統制ヲ行ハナケレバナラヌト考ヘルノデ
アリマスルガ、其統制ハ强度ノ統制ト云フ
意味デハアリマセヌノデ出來ルナラバ自主
的ノ統制ニ依ッテ、ソレデモイカナイモノニ
對シテハ適度ノ統制ヲ行ヒタイト云フノ
デアリマシテ、是ガ一般ノ政府ノ執ラント
スル政策デアリマス、此小運送法案ト、ソ
レカラ日本通運會社法案ハ、少シ今日論議
サレテ居リマス統制問題トハ趣ヲ異ニシテ
居ルノデアリマス、是ハ先程法案ノ說明ヲ
致シマシタ時ニ申述べマシタ通リ、此數箇
年間ニ起ッタ問題デハアリマセヌ、實ニ遡レ
バ二十年來ノ懸案デアッタノデアリマシテ、
關聯上簡單ニ申上ゲマスト、小運送制度ノ
改善ニ對シマシテハ、長年ノ間意ヲ用ヒ
テ、色々ノ政策、色々ノ手段ヲ用ヒタノデ
アリマス、遡リマスト大正八年ニ公認制度
ヲ實施致シマシテ、要スルニ小運送業者ニ
鐵道省ノ「レッテル」ヲ貼ッテ信用ヲ得セシメ
タノガ初メデアリマシテ、其後大正十五年
ニ、全國運送店ノ合同ヲ行ッテ見タノデアリ
マく、是ハ驛前ノ運送店ヲ合同サセ、又當
時存在シテ居リマシタ統轄會社、內國通運、
明治運送、國際運送、是等ヲ合同サセマシ
テ、國際通運ト致シタコトハ御承知ノ通リ
デアリマス、ケレドモ是ハ自由主義デ繼續
シテ參リマシタ爲ニ、其後ニ色々ノ多數ノ
小運送業者ガ簇生シ、又其後統轄會社等モ
出來マシテ、此時ニ行ヒマシタ合同ノ目的
ヲ達スルコトガ出來ナカッタノデアリマス、
要スルニ今囘ノ二法案ノ目的ハ、決シテ是
ハ官營ニシ、直營ニスルト云フ意味デハナ
イノデアリマス、現存シテ居リマス小運送
店ヲ全部認メマス外、統轄會社トシマシ
テ、五ツカ六ツカアリマスノヲ、ソレヲ一
ツニ纏メマシテ、サウシテ鐵道若クハ軌道、
其他ノ運輸施設ニ依ル運送ノ兩端ニ於キマ
ス所ノ、交互計算業務ヲ一ツノ會社デ統轄
スル、卽チ從來ノ小運送業者ハ此五ツ六ツ
ノ交互計算會社ヲ經テ、債權債務ノ決算ヲ
致シテ居リマシタノヲ、一ツノ統轄會
社ニ纏メル、卽チ今度出來マス日本
通運會社ニ纏メマスコトニ依リマシ
テ、一ツ以上ノ交互計算會社ニ拂ッテ居リ
マシタ料金ヲ、一ツニスルコトガ出來ル、
斯樣ナ便宜ガアリマスノト、ソレカラ色々
ノ信用ノ置ケナイ小サナ小運送業者ガ簇出
シマスコトニ依ッテ脅サレル所ノ小運送業ヲ
安全ニ行ハシムル、是ハ獨リ指定運送業者
ノミナラズ、非指定業者モ望ム所デアリマ
シテ、私ガ就任以來、此全國ノ指定竝ニ非
指定運送業者ノ代表者カラ、齊シク此兩案
ノ成立ヲ熱望シテ來ラレタノデアリマス
具體的ニ先刻ノ四ツノ質問ニ對シテ申上
ゲマスト、評價ニ對シテドウスルカ、現在
ノ國際通運ヲ買收スル、其方法ハ如何ニト
云フ御質問ダト考ヘマスガ、是ハ別ニ勅令
ヲ以テ定メマス評價委員會ノ議ヲ經テ適當
ナ評價ヲ致シマス積リデアリマス、ソレカ
ラ今囘ノ法案ガ成立チマスト、指定竝ニ非
指定兩者ヲ共ニ免許致シマス結果、從來指
定運送業者ニノミ鐵道省ガ行ッテ居リマシ
タ請負制度ヲ、更ニ非指定運送業者ニモ均
霑サセル考ガアルカドウカト云フコトデア
リマスガ、此鐵道省ノ請負ト云フモノハ、
要スルニ宅扱ノ運送ニ對スル請負デアリマ
シテ、之ヲ非常ニ多數ノ運送業者ニ分割ス
ルコトハ、業務ノ性質上出來難イノデアリ
マスルカラ、ヤハリ免許致シマシタ總テノ
運送業者ノ中ノ或數ダケヲ指定スルコトニ
ナルノデアリマス、併ナガラ現在ノ指定サ
レク運送業者ハ、長イ歷史ガアルノデアリ
マスルカラ、之ヲ廢メル譯ニハ行キマセヌ
ガ、其數ガ色々ナ事情カラ缺ケタ場合ニハ
申ス迄モナク補闕シナケレバナリマセヌ、
サウ云フ意味ニ於テ均霑サセル積リデ居リ
マス、ソレカラ免許制度ヲ實施スルト、獨占
ニナル弊害ガナイカト云フ御尋デゴザイマ
スガ、是ハ免許制度ヲ寶施致シマシテモ、要
スルニ現存シテ居リマス運送后ハ其儘殘ス
ノデアリマスカラ、ソレ等ノ間ニ「サービスㄴ
トカ、或ハ料金ノ定メラレタ範圍內ニ於テ、
自由ニ競爭ガ行ハレルノデアリマスカラ、
是ハ獨占ノ弊害ハ生ジナイモノト認メテ居
ルノデアリマス、大體是デ御質問ニ答ヘタ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=46
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047・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 三好君、宜シイデ
スカ-石坂豐一君
〔石坂豐一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=47
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048・石坂豐一
○石坂豐一君 只今上程サレテ居リマスル
小運送免許ノ法案竝ニ日本通運株式會社新
設ノ法案ニ對シマシテ、私ノ質サントスル
所ヲ申述ベタイト存ジマス、實ハ私ハ鐵道
ニ關シテハ全然素人ノ者デアリマスルガ、
併シ每日々々鐵道ヲ長短ニ拘ラズ利用シテ
居ル一人デアリマス、而シテ此小運送ト云
フモノハドウ云フ範圍ノモノカ存ジマセ
ヌケレドモ、鐵道省ノ吾々ニ示サレテ居リ
マスル鐵道、軌道ニ屬セザル所ノ、宅カラ
驛マデノモノヲ指シテ言ハレテ居ルモノト
致シマシタナラバ斯ノ如キ小運送ニ對シ
テハ私共年中數少カラズ厄介ニナッテ居
ル者デアリマス、而シテ又モウ一面ノ方面
カラ考ヘテ見マスト、此小運送業ナルモノ
ハ、頗ル簡易ナル營業デアリマシテ、誰デ
モ營業ガ出來ル所ノモノデアルト考ヘルノ
デアリマス、私ノ所ニ參ッテ居ル所ノ若イ靑
年ナドハ、之ニ對シテ幾多ノ疑問ヲ持チマ
シテ、私ニ此機會ニ於テ質シテ戴キタイト
云フコトヲ申出デヽ居ル者ハ數少クナイノ
デアリマス、取分ケテ中シマスルガ、此案
ハ私共ノ先輩前田前鐵相ノ立案ニ係ルモノ
デアリマシテ、私共其點カラ申シマシタナ
ラバ、之ニ盲判ヲ捺スベキ性質ノモノデア
ルト考ヘルノデアリマスルケレドモ、私共國
民ヲ代表シテ居リマスル以上ハ、唯本案ニ
對シテ情實因緣ヲ以テ盲判ヲ捺スコトハ出
來ナイノデアリマス、故ニ當局ニ質スベキ
所ヲ十分質ンマシテ、理解ノ行ッタ所デ私ノ
態度ヲ決定致シタイト思フノデアリマス、
姑ク御〓聽ヲ汚シタイト思フノデアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
私ノ考ヘル所ニ依リマスト、鐵道省ノ御
考ニナッテ居ル小運送ノ取扱ト、國民ガ之ヲ
利用スル關係トハ、聊カ立場ガ異ルト信ズ
ルノデアリマス、私ノ質問セントスルノハ、
私共ノ如ク此小運送】ヲ利用スル所ノ荷
主-ト申スト甚ダ大キイヤウデアリマスガ、
一般大衆ノ立場カラ之ヲ申上ゲルノデアリ
マく、政府ハ運送店ガ濫立ヲ致シテ、不正
競爭ヲ爲スカラ、免許制ニスルト云フノデ
アリマス、是ハ先ノ同僚三好君カラモ御質
問ガアッタデアリマセウガ、私共ノ見ル所ヲ
以テ致シマスルト、昭和一一年ニ四千三百店ニ
整理サレテ、段々減ッテ來マシタモノガ昭
和十一年三月ニ六千九百店バカリニ、約七
千店バカリニ增加致シテ居ルヤウニ聞イテ
居リマス、鐵道省ノ方針ガ一定不變デアルナ
ラバ、斯樣ニ增減アルベキ筈デハナイノデ
アリマスガ、此數ガ大ニ殖エテ居ル、尤モ
此數ヲ以チマシテ大正十五年公認時代ニ比
較致シマシタナラバ-新規ニ鐵道ノ開業
ニ伴ヒマシテ、驛ノ增加致シテ居リマスル
關係上、マダ〓〓增加スベキ筈デアルカモ
存ジマセヌケレドモ、此十五年當時ノ數ヨ
リ、尙ホ一割バカリ減ジテ居ルノニ徵シマ
シタナラバ、運送店ガ儲ケノ少イ業柄デア
ルカラシテ、最早飽和點ニ達シテ居ルモノ
ト考ヘテモ然ルベキカト思フノデアリマス、
サスレバ之ヲ以テ濫立シテ居ルカラシテ、
免許制ニスルト云フコトハ、私共ニハ諒解
出來ナイノデアリマス
第二ニハ鐵道省ガ不正競爭ヲ惧レ、又競
爭者ノナイ處デハ暴利ヲ貪ルコトヲ憎ンデ、
之ヲ以テ免許制ト爲サントシテ居ラレルノ
デアリマスガ、抑〓新規開業ヲ抑ヘ、旣ニ開
業シテ居ルモノヲ保護スル結果、自然運送
店手數料ガ上ッテ來テ、荷主ノ不利益ヲ來ス
ト云フコトニナリハシナイカ、或ハ免許制
トナッタナラバ、運送店ヲ嚴重ニ監督致シ
テ、運賃ヲ公正ナラシムルト御辯明ナサル
カモ知レマセヌケレドモ、鐵道ノ目ノ及バ
ヌ所ノ行爲ハ多數アル、又監督ノ目ノ及バ
ヌモノモ多數アリマセウカラ、今ヨリ運賃
ノ低下ヲ圖ルト云フコトハ容易ナコトデナ
イト考ヘルノデアリマス
第三ニハ鐵道省ガ運送店ノ不當不正ノ取
扱トシテ、幾多ノ列擧ヲナサッテ居ルノデア
リマス、私共ノ手許ニハ約五十件バカリ類
例ヲ整頓シテ御知ラセニナッテ居リマスガ、
此種ノ行爲ハ、大部分ハ旣往十數年間ニ於
テ、全國七千餘ノ驛所ニ於テ行ハレテ居ル
事柄デアリマシテ、餘リニ今日ノ運送店ヲ
誣ユルモノデハアルマイカ、吾々ハ此社會
世相ヲ見マス時ニ、制服ノ巡査ガ人ヲ殺シ
タコトモアルケレドモ、國民ハ之ヲ以テ善
良ナル誠忠ノ警察官ヲ疑フモノデハナイノ
デアリマス、又最近埼玉縣ニ百万圓バカリ金
ヲ使ヒ込ンダ役人ガ居ルガ、之ヲ以テ官僚全
體ヲ免許制ニスルト云フコトニハ參ラヌト
思ヒマス、殊ニ此不正分子ノ中ニハ、鐵道省
ガ指定シタ店ガ數少クナイト思ヒマス、サス
レバ之ヲ免許制ニシタカラトテ、不正ノ者ガ
根絕スルトハ限ラナイト考ヘルノデアリマスル
ガ、此點保證ガ出來ルノデゴザイマセウカ
又第四ニハ、政府ハ素質不良ノ業者多
キコトヲ以テ免許制ヲ布クト言ハレテ居
リマスルガ、本法案ニ依リマスレバ、現在
ノ運送店ハ總テ免許ヲ受ケタモノト看做
サレルノデゴザイマシテ、當分ハ改善ノ
見込ナイコトトナルノデアリマスルガ、此
點ハ如何デゴザイマセウカ、又現在ノ開業
者ハ、斯ウナッテ參リマスト、僅カバカリノ
失策ニ依ッテデモ、免許ヲ取消サレル不安狀
態ニ襲ハレテ、戰々兢々タラザルヲ得ナイ
デハアリマスマイカ、此點ハ、國民ノ一部ニ
對シテデモ、生活不安ノ狀態ニ陷レルト云フ
コトハ、私ハ良策デハアルマイト思フ、
現內閣ノ政綱デアル所ノ、國民生活安定ノ
點カラ言ウテ如何ナモノデゴザイマセウカ、
要スルニ小運送店ノ如キ簡易ナル職業ハ、
國民ノ自由營業ニ委セテ置ク方ガ、國民ノ
活動範圍ヲ廣クスル所以デアルト、私ハ確
信ヲ致シテ居ル者デアリマス、徒ニ免許制
ヲ以テ臨ムコトハ國民ヲ萎縮セシメ、且ツ
競爭ナキ結果、荷主ノ負擔ヲ增大スルノ逆
ノ結果ヲ來サナイカト考ヘルノデアリマス、
殊ニ小運送ヲ免許制ト爲スニ伴ヒ、鐵道ト
關係ナイ所ノ自動車ヲ取締ルト云フコトニ
ナルノデアリマスルガ、是ハ小運送業ノ免
許ニ名ヲ藉ッテ、鐵道トノ競爭營業者デアル
所ノ自動車ニ對シテ、自己ノ營業ニ對スル
防禦線ヲ張ルコトノ嫌ハナイデアリマセウ
カ、此點ヲ御說明願ヒタイノデアリマス、
我國ノ現狀ニ於キマシテハ、自動車ノ發達
ハ已ムヲ得ナイモノデアリマス、又自動車
ハ、是ハ國防上カラ申シマシテモ、益〓發
達セシメナケレバナラヌモノデアリマスル
ガ、之ヲ鐵道省ガ此小運送ノ機會ニ於テ取
締ヲ厲行スルト云フコトニナリマスレバ、
其發達ニ多少ノ阻碍ヲ來スコトニナリハシ
マイカ、此點ニ對スル御說明ヲ承リタイノ
デアリマス
第五ニ免許制ニスル結果、荷主ノ負擔ガ
ドレ程減ズル見込ガアルノデアリマセウ
カ、其〓算ヲ御示シ願ヒタイ、荷主卽チ一
般民衆ノ負擔ガ減ラナケレバ、此制度ノ意
義ヲ失フモノト考ヘルノデアリマス
其次ニ日本通運會社ノ法案ニ對シテ御說
明ヲ願ヒマス、私ハ何ガ故ニ日本通運會社
ヲ新設スルノカ、不敏ニシテ其理由ヲ發見
スルニ苦シムノデアリマス、鐵道省ハ此新
設會社ヲ以テ、政府ノ免許シタル運送店ヲ
締轄シ、宅扱ノ元請、引換證ノ整理等、又
是等各店ノ間ノ交互計算ニ當ラセルト言ハ
レテ居ルノデアリマスガ、此種ノ事業ハ現
在國際通運會社及ビ其他ノ計算會社ガ完全
ニ行ッテ居ルト伺ッテ居リマス、若モ現在ノ
宅扱請負料、是ガ高過ギルト云フノデアル
ナラバ、之ヲ引下サセルコトモ、强チ至難
デハアルマイカト考ヘルノデアリマス、是
ガ出來ルナラバ、鐵道省ニ於テ進ンデ各驛
ニ於テ、直接指定店トノ請負ニナサッタラ
如何ナモノデアリマセウ、强チ新設會社ヲ
起シテ之ニ當ラシメルト云フコトハ理解出
來ヌノデアリマス、半官半民會社ハ今ヤ國
民ハ〓傷シテ、其成績ヲ疑ッテ來テ居ルト考
ヘマス、世間デハ此新會社ハ鐵道省ノ古手
官吏ヲ賣込ム所ノ養老院デハアルマイカト
言ッテ居ルノデアリマス、現ニ國際通運ニ鐵
道省ノ古手官吏ヲ押付ケテ居ルノデアリマ
スルカラ、世間デ左樣ニ申スト云フコトモ、
强チ理不盡ノコトデハアルマイカト考ヘマ
ス、鐵道省ガ此點ニ對シテ辯明ガアリマス
ルナラバ、篤ト私共ノ諒解ノ行クヤウニ說
明ヲ仰ギタイノデアリマス、世間デハ最早
此會社ノ社長ハ誰、副社長ハ誰ト云フコト
ヲ、吾々ニ洩シテ居ルノデアリマスルガ、
私ハ之ニ信ヲ置イテ居ル者デハゴザイマセ
ヌケレドモ、世間ノ耳目、世間ノ風評程恐ロ
シイモノハナイノデアリマス、又假令政府
ガ此資本ノ半數ヲ出資シテ居ルトシテモ、
此會社ハヤハリ營利會社デアルカラシテ、
損失勘定ニ於テマデモ單ニ小運送業者ニ負
ケテヤルト云フ譯ニ參リマスマイ、況ヤ此
新會社ガ官僚式ノ經營ヲ以テ營業致シマシ
タナラバ、經費ハ嵩ムノデアリマス、現在
ノ計算會社ノ如ク、僅少ノ費用ヲ以テ各加
盟店ノ期待ニ副フコトハ不可能デハアルマ
イカト考ヘルノデアリマス、勿論今日ノ國
際通運ニ對シテ、總支拂金ノ實費手數料ト
シテ御拂ヒニナッテ居ル一割ヲ負ケサセル
ト云フコトモ出來マセウ、斯ウ云フコトハ
至難デハナイト考ヘマス、又政府ハ引換證
ノ整理ハ、交互計算ノ事務ノ如キハ、之ヲ
官ニ依ラズ民ニ偏セズ、官民持出シノ會社
ニ纏メテ、之ヲ統一處理セントスル如キ御
希望ノヤウデアリマスルガ、鐵道ガ直接之
ヲヤルコトガ出來ナイト云フナラバ、鐵道
自ラ自己ノ營業ハ最早官業ニ適セナイト云
フコトヲ、自白セラルヽト同樣デハゴザイ
マスマイカ、私ハ此點ニ付テ餘リ思ハシク
感ジナイノデアリマス、又今日ノ全國通運
會社ヲ全部免許制トシテ之ヲ營業セシムル
ト云フコトハ、運送店ノ資力信用ガ取扱ニ
非常ナ懸隔ヲ生ズルノデアリマス、ドノ運
送店モ同ジ資力信用ノアルモノトハ言ハレ
ナイノデアリマス、之ヲ同一ノ基準ヲ以テ
待遇スルコトハ至難デアッテ、必ズヤ數十
等ノ階級ニ分ッテ待遇シテ行カナケレバナ
ラヌ、斯樣ナ結果、更ニ又第二ノ小運送店
ニ相當シタル所ノ計算會社ガ出現スルコト
ガナイデアリマセウカ、此點ヲ明瞭ニ御示
シヲ願ヒタイノデアリマス
私ノ恐ルヽ所ハ、政府ハ現在ノ力ノ弱イ所
ノ運送店ヲ免許シタモノト看做シテ置イ
テ、他面此新設會社ヲシテ、其取引基準ヲ
厲行セシメテ、自然淘汰ヲ爲スノデハアル
マイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、若シ
サウデアックナラバ、此日本通運會社ノ實現
ハ、是等薄資ノ通運會社ニ取リマシテ、實
ニ威シノ鬼面トモナラザルモノデアルカ、
此點ニ對シテ小運送會社ノ者共ヲ安心セシ
ムルヤウナ理出ガアリマシタナラバ、御說
明ヲ願ヒタイノデアリマス(拍手)政府ハ半
官半民ノ會社ヲ擁スルナラバ寧ロ小運送
會社ノ組合ヲ設ケマシテ、交互計算事務ニ
當ラシムルコトモ出來ナイモノデアリマセ
ウカ、要スルニ拂込少キ株式ヲ半數以上ノ
株ト看做シマシテ、政府ニ於テ之ヲ何處マ
デモ占有セラレル以上ハ、全然政府ノ出店
ノヤウナモノトナリマシテ、軈テ歲月ヲ經
過スルニ從ッテ、古手官吏ノ巢窟トナルノ虞
ガナイトモ限ラナイノデアリマス(拍手)斯
ノ如クシテ國民ノ反感ヲ買フニ至リマシタ
ナラバ、折角御作リニナッタ所ノ此運送界
刷新ノ目的ガ、却テ國民ノ信ヲ失フト云フ
コトニナリマスマイカ、ドウゾ此點ニ付テ
大臣ノ所信ヲ拜聽致シタイノデアリマス(拍
手
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=48
-
049・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 御答致シマス、
第一ニ此小運送ヲ免許制度トスルコトニ
俊の、自ラ獨占主義ニ陷リ、運賃等ガ高
クナラヌカト云フ御質問ト承リマシタガ、
是ハ運賃ハ公示致シマシテ、公衆ノ批判ヲ
受ケルコトニ致シマス爲ニ、極ク公正ナ標
準ヲ採ルコトニナルト思ヒマス、ノミナラ
ズ道理上極ク明カナ點ハ、先程モ申シマシ
タ通リニ、從來五ツ六ツノ交互計算會社ニ
拂ッテ居リマシタ料金ダケデモ、一ツニ纏メ
ルコトニナリマスノト-ソレハ相當ハッキ
リシタ問題デアリマス、又其他集約作業デ
アリマストカ、色々ノ點カラ見マシテ、運
賃ハ今日ヨリモ安クナルコトハ明カデアル
ト考ヘルノデアリマスガ、ドノ位安クナル
カト云フコトハ、此處デ申上ゲルコトハ出
來ナイノデアリマス
ソレカラ此運送業者ノ不正行爲デアリマ
スガ、是ハ先刻モ是マデノ歷史ニ付テ申上
ゲマシタ通リニ、要スルニ一旦合同ヲサセ、
又統轄會社モ合同ヲシマシタガ、ソレガ免
許制度デナカッタガ爲ニ、多數ノ不信用ナ小
運送業者ガ濫立致シマシテ、其結果隨分澤
山ノ不正行爲ガ今日ト雖モ行ハレテ居リマ
スルコトハ、記錄ガアリマスカラ委員會等
デ御示シガ出來ルノデアリマス
ソレカラ現在ノ運送業者ヲ免許シタモノ
トシテ置イテ、サウシテ將來其免許ヲ取消
スヤウナコトヲスルノデハナイカ、斯樣ナ
御質問デアリマシタガ、ソレハ將來非常ナ
不正行爲等ヲ行ハヌ限リハ、左樣ナ考ハ毛
頭持ッテ居ナイノデアリマス
ソレカラ荷主ノ負擔ハ減ルノカドウカト
云フ御話デゴザイマスガ、是ハ只今申シマ
シタ通リ、料金ガ減ルモノト考ヘルノデア
リマス、其他色々ノ不正行爲ニ依ッテ禍ヲ
受ケルコトガ無クナリマスノト、殊ニ樣子
ノ分ラナイ、所謂一〓ニ荷主等ガ色々ノ方
法ニ依ッテ損害ヲ受ケテ居ルコトハ御承知
デアルト思ヒマス、斯樣ナコトガ無イト云
フコトニ依リマシテ、著シク利益ヲ受ケル
ト考ヘルノデアリマス
ソレカラ日本通運會社ノ統轄會社ヲ設ケ
ルコトニ付テノ御議論デゴザイマスルガ、
是ハ只今申シマシタ所ニ關聯シテ居リマシ
テ、此交互計算會社ヲ多數ニ存在サセマス
コトハ、各〓ノ系統ニ屬スル運送業者ハ、全國
ニ跨ル運送業ヲ行ヒマスルニハ、ドウシテ
モ一ツノ交互會社デハ行キマセヌノデ、ソ
レデヤハリ是等ノ五ツ六ツニ上ル交互計算
會社ニ料金ヲ拂ッテ入ッテ居ナケレバナラ
又、斯樣ナ不利益ガアリマスノト、ソレカ
ラ貨物引換證ノ整理保證等ニ付テ、隨分驚
クヤウナ不正事件ガアルノデアリマス、是
ハ一々斯ウ云フ事ガアッタト云フコトヲ申
上ゲル必要ハナカラウト思ヒマス、斯樣ナ
事ヲ完全ニ取締ルコトガ出來、其保證ノ責
ニ半官半民ノ會社ガ任ズルノデアリマス、
此點ニ於テ荷主ハ非常ナ安心ヲ得ルト思ヒ
マス
其次ニ官吏ノ養老院ニナルノデハナイカ
ト云フ御話デゴザイマスルガ、是ハ或ハ官
吏ト雖モ最モ適當ナ人ガアレバ、其幹部ニ
スルト云フコトハアリ得ルノデアリマス
ガ、決シテ是ハ養老院ニスルト云フヤウナ
考デ、斯樣ナ統轄會社ヲ起スノデハナイノ
デアリマス、最モ斯道ニ堪能ナ人ヲ集メタ
イト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=49
-
050・石坂豐一
○石坂豐一君 簡單デゴザイマスカラ此席
カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=50
-
051・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=51
-
052・石坂豐一
○石坂豐一君 只今大臣ノ御答辯ヲ伺ッタ
ノデアリマスルガ、私ノ質問ニ對シテ的ノ
外レタコトガ澤山アルノデアリマス、殊大
自動車ノ取締ニ付テノ說明ヲ伺フコトガ出
來ナカッタノデアリマス、其他免許制ニシタ
爲ニ、ドレダケノ運賃ガ減ルノデアルカ、
此點ニ關シテハ鐵道ノ事務當局ガ、屢〓幾ラ
減ルノデアルト云フコトヲ御言明ニナッテ
居ルコトヲ伺ッテ居ルノデアリマスガ、之ヲ
大臣ノ口ヲ通シテ責任アル御答辯ヲ願ヒタ
イノデアリマス、ソレガ分ラナイト仰セラ
レルト、私共尙ホ一層不審ガ增スノデアリ
マス、伍堂鐵道大臣ハ兼務デアラセラレル
カラ、マダ御〓究ガ足リナイノデハナイカ
ト思ヒマス、ドウゾ責任アル御答辯ヲ此席
ニ於テ拜聽シタイノデアリマス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=52
-
053・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) モウ一ツ申シ漏
レマシタガ、今一ツニ纏メテモ亦交互會
社ガ出來ルノデハナイカト云フ御質問ガアッ
タト考ヘマスルガ、今度ノ計畫ニ於キマシテ
ハ、サウ云フコトノナイヤウニ一ツニ纏メ
タノデアリマシテ、其意味ニ於テ半官半民
ノ强力ナモノニ致シタノデアリマス、ソレ
カラ只今仰セラレタ自動車ノ關係ニ付テ
ハ、私ハ能ク御答ガ出來マセヌ、政府委員
カラ御答サセマス
〔政府委員喜安健次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=53
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054・喜安健次郎
○政府委員(喜安健次郞君) 自動車ノ取締
ヲ小運送業法ノ實施後ニ於キマシテ嚴重ニス
ル、言換ヘマスレバ、鐵道ト競爭關係ニ立ツ
テ居リマスル自動車ヲ壓迫スルヤウナ態度
ニ出ルノデハナイカ、斯ウ云フ御質問ノヤ
ウデゴザイマシタガ、御承知ノ通リ自動車
ニ付キマシテハ、數年前ニ議會ノ御協贊ヲ
經マシタ自動車交通事業法ト云フ取締規則
ガゴザイマス、其適用ヲ受ケルコトニ相成ッ
テ居リマスノデ、今囘ノ小運送業法實施
ノ結果ト致シマシテモ、自動車方面ニ對シ
テハ特ニ影響ガアルヤウナコトハゴザイマ
セヌ、其點ハハッキリ此處デ中上ゲルコト
ガ出來ルノデゴザイマス、ソレカラ今度ノ
兩法案ヲ實施致シマスル結果、小運送費ガ
幾ラ低下スルカ、事務當局ハ從來數額ヲ擧
ゲテ言明シテ居ッタガ、之ヲ大臣ノ口カラ聞
キタイ、斯ウ云フコトデゴザイマシタガ、
成程事務當局ト致シマシテ、是等ノ法律ヲ
實施致シマスルト、ドレ位小運送費ガ低下
スルカト云フコトヲ申上ゲタコトハゴザイ
マス、併シナガラ御承知ノ通リ、小運送費
トシテ今全國デドレ位ノ金ガ使ハレテ居ル
カト云フコトハ、是ハ正確ナ數字ハゴザイ
マセヌ、或人ハ年額二十億ニ上リハシナイ
カ、或人ハ又サウアルマイ、十億位デアラ
ウ、或ハ十四五億デナイカ、斯ウ云フヤウ
ニドレ位使ハレテ居ルカト云フコトノ數額
ガ旣ニ推定ナンデゴザイマス、デ色々具體
的ノ數字、減額スベキ數字ハゴザイマスル
ノデスガ、假ニ之ヲ二十億費トシテ居ルト致
シマシテ、將來假スニ時日ヲ以テ致シマス
レバ、一割減ルトシテモ二億位ニナリハシ
ナイカ、卽チ二億ノ金額ト云フモノガ、小
運送ヲ從來利用シテ居リマスル國民ノ負擔
カラ減ルト云フコトニナルノデハナイカ、
斯ウ云フ極メテ推測ノ假定ノ下ニ數字ヲ申
上ゲタコトハゴザイマス、尙ホ具體的ノ稍、ミ
正確ニ減リ得ル數額ニ付キマシテモ、色々
調査ハゴザイマスルガ、是ハ委員會デ御說
明ヲ申上ゲルヤウニシタイト存ジテ居リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=54
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055・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 石坂君、宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=55
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056・石坂豐一
○石坂豐一君 私ハ事務當局ガ多年御〓究
ノ結果、斯ノ如キ重大ナル法案ヲ、國民ノ
前ニ立憲的ナ判斷ヲ受ケラルヽ其勇氣ニ感
服スルノデアリマス、サリナガラ其精神ニ
於テハ、何處マデモマダ疑ッテ居ル所ノ點
ガ多々アリマスルガ、是ハ後日ノ機會ニ讓
リマシテ、私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=56
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057・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 永山忠則君
〔永山忠則君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=57
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058・永山忠則
○永山忠則君 私ハ只今上程サレマシタ小
運送業法案及ビ日本通運株式會社法案ニ關
シマシテ質問ヲ致シ、政府ノ所信ヲ御伺
シタイト存ズル者デアリマス、本法案ノ狙
ヒ所ハ、現在ノ小運送業者ガ指定運送店
及ビ非指定運送店ニ對立シテ居リマシテ、
其相剋甚シキモノガアルノデアリマス、
其甚シキ相剋ヲ融合統一致シマシテ、其摩
擦面ヲ「スムース」ニ致シマシテ、且ツ小運
送業ノ本質ガ公益性ヲ多分ニ持ッテ居ル點
ニ鑑ミラレマシテ、國家ガ之ニ公益的統制
ヲ加ヘラレテ、事業ヲ合理化セシメ、冗費
ヲ節約シ、小運送費ノ低減ヲ圖ッテ、以テ荷
主大衆ノ負擔ヲ輕減セントスル所ノ動向ヲ
示シテ居ルモノデアルト思フノデアリマス、
故ニ本法案ハ物價騰貴ヲ抑制シ、國民生活
安定ヲ圖ル上ニ於テ、重大ナル關係ヲ特ツ
モノデアリマシテ、謂ハバ庶政一新ノ國策
ノ一ト言ヒマシテモ、敢テ過言デナイト思
フノデアリマス、故ニ本法案ノ窮極ノ目的
ハ、荷主大衆ノ負擔輕減ニ重點ヲ置クベキ
デアラウト思フノデアリマスガ、果シテ政
府當局ハ本法案ノ目的ヲ小運送業ノ合理經
營ト、公益的統制トニ置イテ、小運送賃ノ
低廉ヲ圖リ、荷主大衆ニ福利ヲ齎スコトヲ
重點トシテ居ラレルノデアリマスカ、政府
ノ所信ヲ御伺スルノデアリマス
本案ヲ通ジテ最モ不安ヲ感ゼラレマスコ
トハ、結局ハ指定運送店ノ獨占利潤强化ニ
墮シ、荷主大衆ノ恩惠極メテ尠ク、否過去
ノ一驛一店主義ガ荷主公衆ニ非常ナル不利
ヲ招イタヤウナ結果ニ終ルノデハナイカト
思フ點デアリマス、卽チ大正十五年六月九
日、鐵道省ハ一驛一店主義ヲ聲明シ、同八
月通運、國際、明治ノ三社ノ合同方針ヲ確
立シマシテ、昭和二年末全國一驛一店合同
運送ノ出現ヲ見タノデアリマスガ、爾來鐵
道省ハ此合同運送店ニ對シ、特別小口扱貨
物集配作業ヲ下請セシメ、一方合同運送ノ
總括會社トシテノ國際通運ニ對シテハ、是
ガ元請ヲ爲サシメ、續イテ今日マデニ荷物
積込取卸シ及ビ貨車手押作業、手荷物、小
荷物配達作業一手請負等々ノ有ユル特權ヲ
指定運送店ニ集中强化シテ、非指定運送店
ノ絕滅ヲ期セント焦慮サレタノデアリマス
ガ、結果ハ却テ反對ニ、一驛一店ノ指定運
送店ノ利潤獨占ト横暴ニ、荷主公衆ヨリ非
難ガ起リマシテ、昭和二年運送店合同當時
ハ、四千店ノ運送店デアリマシタガ、漸次
非指定運送店ヲ增加致シマシテ、現在約七
千店ニ及ンデ居ルノデアリマス、其比率モ
最近鐵道省調査トシテ傳ヘラルヽ所ニ依リ
マスレバ、指定店ガ三千二百八十八店、非
指定店三千七百三十二店デアリマシテ、非
指定運送店ガ四百四十四店ノ多キニ至ッテ
居ルノデアリマス、此過去ノ事實ヲ基調ト
シテ考ヘマスト、現法案通過後ノ運用次第
ニ依リマシテハ、指定運送店ノ利潤强化ニ
墮シ、結局荷主公衆ノ不利ト、怨嗟ヲ招ク
ニ至ルニアラズヤト案ゼラルヽノデアリマ
スガ、當局ノ所見如何デゴザイマスカ、勿
論本法案ハ國際通運ヲ解消致シマシテ、日
本通運株式會社ヲ作リ、指定及ビ非指定運
送店ヲ打ッテ一丸トナシ、交互計算及ビ貨物
引換證ノ整理及ビ保證、小運送業ノ助長發
達等ノ諸事業ヲ目論ンデ居ル點ニ於キマシ
テハ、將來小運送事業ノ整調ヲ圖リ、業者
ノ利潤確保ニ進展スルデアラウコトヲ示唆
スルモノデアルト是認スルモノデアリマス
ガ、此業者ノ經濟確立ト相俟チマシテ、運
送料金ノ低下ヲ圖リ、延イテ荷主大衆ノ福
利ヲ增進スルニハ、政府ハ相當ニ英斷的ニ、
現在ノ指定運送店ガ持ツ不勞所得、不當利
潤ニ公益的統制ヲ加ヘナクテハ至難事デア
ルト考ヘルノデアリマスガ、政府ノ所見ハ
如何デアリマスカ
第一國際通運株式會社ガ日本通運株式會
社ノ半官半民ノ公益的會社ニ改組サルヽヲ
契機ト致シマシテ、現在國際通運ガ不勞所
得トシテ利潤ヲ獨占セル、宅扱貨物集配元
請制度ノ撤廢ヲナスベキデアリマセウ、現
在國際通運本社ハ、鐵道省ヨリ宅扱貨物集
配ノ元請ヲ爲シテ、之ヲ各驛ノ指定店ニ下
請ヲ爲サシメテ居ルノデアリマシテ、其元
請料トシマシテ、取扱總額ノ約一割五分ヲ
天引シテ、利益ヲ收得シテ居ルト言ハレテ
居ルノデアリマス、此宅扱費年約七百万圓
デアリマスカラ、實ニ年百万圓ノ不當利潤
ヲ獲得シテ居ル現狀デアリマス、又小荷物、
手荷物ノ集配元請外、小運送業務兼業ニ依
リマシテ、莫大ナル不當利潤ヲ獨占シテ居
ルノデアリマシテ、巷間傳ヘル所ニ依リマ
スト、國際通運株式會社ノ重役ハ、年收入
夥シイモノガアルトサヘ稱セラレテ居ルノ
デアリマス、元來國際通運株式會社ノ本質
的目的ハ、交互計算ト貨物引換證ノ整理保
證及ビ業者間ノ事業助長ニアルノデアリマ
シテ、交互計算費及ビ管理費、其他貨物引
換證ノ整理保證費等々ニテ、相當以上ノ利潤
ヲ得テ居ルモノデアリマスカラ、特殊ナル
小運送業ヲ營ンダリ、是ガ元請ヲ爲ス必要
ハナイト思フノデアリマス、今囘出來上リ
マス日本通運株式會社ハ、是等ノ特權附ケ
ラレタ不當利潤ヲ公益的ニ統制排除シテ、
眞ニ公益性ノ會社ニ整備シナクテハナラヌ
ト信ズルノデアリマスガ、政府ハ嘗テ小運
送調査會ニ於テ、此特權ハ旣得權デアルガ
故ニ排除出來ザル旨ヲ申述べラレテ居ルト
拜聞スルノデアリマスガ、斯クテハ日本通
運株式會社ノ出資金三千五百万圓ヲ、政府
ガ半額支出スル半官半民ノ公益性ヲ持ツ會
社ノ特質ヲ沒却致シマシテ、純然タル營利
會社ノ態樣ヲ示スモノト思ハレルノデアリ
マスガ、政府ハ果シテ日本通運株式會社業
務ハ、公益性本質ニ驀進スルモノナリトノ
斷言ヲ下シ得ラルヽデアリマセウカ、所信
ヲ御伺シタイノデアリマス
次ニ指定運送店ト非指定運送店トノ相剋
ガ、既往及ビ現在ノ小運送制度ノ失敗ノ主
因ヲ成スト同時ニ、又荷主大衆ニ不利益ヲ
齎シテ居ルノデアリマスカラ、本法案ノ施
行ノ目的ハ、又同業者間ノ事業ノ合理的整
調デナクテハナラヌノデアリマス、政府ハ
果シテ本法案實施ニ當リマシテ、此點ニ全
幅ノ努力ヲ傾注サレルノデアリマスカ、第
一政府ハ、各驛每ニ指定及ビ非指定運送店
ノ商業組合結成ヲ懲慂シテ、事業ノ合理化
ヲ圖ルト共ニ、庶民金融ノ至便ヲ圖リ、現在
ノ非指定運送店ガ持ツ交互計算會社ガ、庶
民金融ノ便ニ資シテ居ルモノヲ、日本通運
株式會社ハ、之ヲ顧ミナイトノ非難ガ續出
セル缺點ヲ、此小運送商業組合ノ組織ニ依
リマシテ、補正スルノ計畫アリヤ否ヤヲ御
伺スルノデアリマス、私ガ特ニ小運送商業
組合結成ノ促進ニ關スル政府ノ指針ヲ御伺
スル所以ノモノハ、鐵道省ハ是迄非指定運
送店ガ商業組合組織ヲ自衞上ノ立場ヨリ申
請セルモノヲ、商工大臣ニ對シテ指定運送
店强化ノ爲メニ、反對答申ヲサレテ居ルト
云フ事實ガアルノデアリマス、是ガ爲ニ北
海道小運送商業組合モ、九州小運送組合モ
成立不能ニ陷ッテ、業者ノ悲痛ノ叫ビヲ聞
イテ居ルノデアリマス、是ニ於テ私ハ敢テ
政府ニ對シテ、此商業組合結成ニ對スル方
針ヲ御伺スルノデアリマス
指定及ビ非指定運送業者ノ相剋整調ト事
業ノ合理化ハ、現在指定運送店ガ持ツ各種
ノ特權ヲ解放スルノデナクテハナラヌト思
フノデアリマス、此點ニ公益的ノ統制ヲ加ヘ
ナクテハ、經營ノ合理化ニ依ル冗費節約ノ根
本目的ハ、逸脫スルモノデアルト私ハ思フノ
デアリマス、政府ハ此指定店ガ有スル特權
ヨリ生ズル獨占的利潤ヲ驛每ノ指定、非指
定店ヲ合一スル小運送業組合ニ統制分配ス
ルノ覺悟ヲ御持チニナッテ居リマスカ、御伺
シタイノデアリマス、其特權トハ宅扱貨物
集配作業、貨物積込取卸及ビ貨車手押作業、
手小荷物配達作業、鐵道倉庫貨物取扱、省
營自動車線發著貨物取扱等ノ一手請負及ビ
運賃料金後拂、驛構内鐵道用地ノ貸付、無
賃乘車證交付等デアリマシテ、非指定運送
店ハ是等ニ對シテハ何等ノ恩惠ガナイノデ
アリマス、繼子扱ヒモ甚シイノデアリマス、
元來是等ノ特權付與ハ、過去ニ於テ非指定
運送店ヲ撲滅スル爲メノ手段トシテノ、指
定運送店利潤强化策ヨリ出デタルモノデア
リマスカラ、本法案ガ指定及ビ非指定店ノ
一視同仁主義ヨリ萠芽セルモノデアル以
上、是等ノ特權ノ統制ハ必然的デナクテハ
ナラヌト思フノデアリマスガ、政府ノ御考
ハ如何デアリマスカ、若シ此特權ガ小運送
業者一般ニ無差別的ニ解放サレズシテ、政
府ノ事業統制下ニ置カレ、非指定店ガ唯一
ノ生存手段タル强度ノ自由競爭ニ掣肘ヲ加
ヘラレタナラバ、長年ノ壓縮政策ノ爲メ、
經濟內容ノ劣勢トナレル非指定運送店ノ運
命知ルベキノミト思フノデアリマス、現在
非指定運送店ハ店員、仲仕、倉方、家族等
三十餘万人ヲ擁シ、最低生活線ニ喘イデ居
ルノデアリマス、是ガ經濟ノ破綻ハ由々シ
キ社會問題デアルト思フノデアリマスガ、
政府ノ所見ハ如何デアリマスカ、各驛每ニ
小運送業者組合ヲ結成セシメテ、其組合ニ
前記ノ特權ヲ解放スルコトコソ、指定、非
指定店ノ相剋激化ヲ整調シマシテ、經營ノ
合理化、作業ノ融合統制ガ出來、冗費節約
ノ目的ヲ貫徹シ、荷主大衆ノ負擔輕減トナ
ルモノデアルト考ヘルノデアリマスガ、政
府ノ御意見ヲ御伺致シタイノデアリマス
之ヲ要スルニ本法案ノ最重要性ヲ公益的
統制ニ置キ、其觀點ヨリ現在國際通運株式
會社ニ不當ニ特權付ケラレタル不合理性ヲ
是正シテ、日本通運株式會社ヲ出現セシ
メ、一方非指定運送店絕滅策トシテ、有ユ
ル特權ヲ指定運送店ニ集中强化シタル、非
社會性ノ部分層ヲ統制シテ、一般業者ニ再
分配スルノ方途ヲ講ジテ、以テ小運送料金
ノ低減ヲ圖リ、一般民衆ノ福利ヲ增進スベ
キデアルト思料致シマスガ、政府ノ率直ニ
シテ親切ナル答辯ヲ要求スル次第デアリマ
ス(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=58
-
059・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 御答致シマス、
勿論此法案ハ國民生活ニ貢獻スル爲ニ計畫
サレタノデゴザイマシテ、運送店ノミヲ利
シテ、荷主ニ迷惑ヲ及ボスヤウナコトガナ
イノミナラズ、荷主ニ積極的ノ利益ヲ與ヘ
ル爲ニ出來タノデアリマシテ、ソレハ先程
申シマシタ通リ運賃ノ低下ヲ圖リ、事業ノ
正確、其他「サービス」ノ點ニ於テ、是マデ
缺陷ノアリマシタ所ヲ是正シヨウト云フノ
デアリマス、ソレカラ指定運送業者ト非指
定運送業者ヲ差別待遇スルコトハ宜クナイ
ト云フ御話デアリマス、是ハ御趣意ニ於テ
ハ同感デアリマスルガ、先程モ申シマシタ
通リ、全運送業者ヲ指定トスルコトハ、非
常ニ事業ノ關係カラ難カシイノデアリマス、
卽チ宅扱貨物ニ對スル請負デアリマスカラ、
是ハヤハリ一定ノ數ニ止メテ置カナケレバ
ナラヌ、併ナガラ今日指定サレテ居ルモノ
ハ、是迄ノ歷史モアリマスシ、ソレヲ廢サ
セル譯ニハ行キマセヌカラ、將來補關等ノ
場合ニハ適當ニ考ヘテ行キタイト思フノデ
アリマス、ソレカラ此統轄會社ニ不當利潤
ヲ與ヘルコトニ對シテハ、嚴ニ監督ヲ要ス
ルコトハ勿論デアリマシテ、永山君ノ言ハ
レマシタ如キ理想ヲ以テ、監督指導シテ行
キタイト思フノデアリマス、卽チ指定者、
非指定者ノ協調ニ對シテハ十分ニ努力致シ
マシテ、其間ニ摩擦ノナイヤウニ致スコト
ハ最モ强キ念願デアリマシテ、今囘ノ兩法
案ノ上程ニ付キマシテハ、非指定、指定兩
方共全國カラ多數見エマシテ、是ガ速ニ上
程セラレンコトヲ、竝ニ其成立ヲ希望シテ
居ルコトニ依リマシテモ、如何ニ此兩法案
ガ業者ノ爲ニ利益デアルカト云フコトヲ御
推察ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=59
-
060・永山忠則
○永山忠則君 此席カラ御許ヲ願ヒマス-
多々御伺シタイ點モゴザイマスガ、是デ私
ノ質問ハ後日ニ讓リマシテ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=60
-
061・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=61
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062・中山福藏
○中山福藏君 日程第六乃至第七ノ兩案ヲ
一括シテ、議長指名十八名ノ委員ニ付託セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=62
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063・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=63
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064・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ動議ノ如ク決定シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=64
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065・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際小林錡君外一名提
出、大正十二年法律第五十二號中改正法律
案、及ビ手代木隆吉君外三名提出、大正十
二年法律第五十二號中改正法律案ヲ一括議
題ト爲シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=65
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066・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=66
-
067・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス-政府ハ此議事日程ノ變更ニ同意致
シマシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシク、
小林錡君外一名提出、大正十二年法律第五
十二號中改正法律案、手代木隆吉君外三名
提出、大正十二年法律第五十二號中改正法
律案、右二案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマ
ス、順次提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-
提出者小林錡君
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案(小林錡君外一名提出)第一讀會
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案(手代木隆吉君外三名提出)第一讀會
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案
大正十二年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一項中「昭和十二年十二月三十一日迄」
ヲ「昭和十七年十二月三十一日迄」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案
大正十二年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一項中「昭和十二年十二月三十一日迄」
ヲ「昭和十七年十二月三十一日迄」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔小林錡君登壇〕
〔「司法省ノ政府委員ノ出席ヲ願ヒマ
ス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=67
-
068・小林かなえ
○小林錡君 只今議題トナリマシタ大正十
二年法律第五十二號中改正法律案ノ提案ノ
趣旨ヲ御說明申上ゲマス、此法律卽チ大正
十二年法律第五十二號ハ、次ノ如ク規定シ
テ居リマス、「明治二十六年司法省令第九號
辯護士試驗規則ニ依ル試驗ノ受驗ヲ出願シ
タル者ニシテ昭和十二年十二月三十一日迄
ニ勅令ヲ以テ定ムル試驗ニ合格シタル者ハ
辯護士法第三條ノ規定ニ拘ラズ辯護士試補
タルコトヲ得」ト云フノデアリマス、卽チ
大正十二年度以前ノ辯護士試驗規則ニ依リ
マスト、特別ナル資格ナクトモ我國ノ臣民
ハ辯護士試驗ニ應ジテ、之ニ合格スレバ辯
護士タルコトガ出來ル規定デアッタノデア
リマス、然ルニ高等試驗令ノ改正ニ依リマ
シテ、辯護士モ亦中學ヲ出テ、法律科ノ專
門部、或ハ學部ノ法科ヲ出ナケレバ、辯護
士試驗ニ應ズルコトガ出來ナクナッタノデ
アリマス、併ナガラ大正十二年度ニナルマ
デ、多年ノ間法律ノ勉强ヲ致シマシテ、此
試驗ニ「パス」シテ辯護士タルコトヲ終生ノ
希望トシテ、營々トシテ努力シテ來タ者ガ
澤山ニ殘ッテ居ッタノデアリマスカラ、社會
政策上玆ニ大正十二年法律第五十二號ト云
フモノガ發布サレテ、是等ノ人々ニ大正十
一年度マデニ試驗ニ應ジタ者ニハ、受驗資格
ヲ與ヘルト云フコトニナッテ今日マデ來タノ
デアリマス、併ナガラ其間ニハ色々ノ經過
ガゴザイマシテ、大體五年每ニ此期間ヲ
限ッテ居ッタノデアリマス、卽チ昭和七年度
頃デアッタト思ヒマスガ、其期間ヲ延バシマ
シテ、昭和十二年十二月三十一日マデト云
フコトニ相成ッテ今日ニ來タノデアリマス、
併ナガラ此爲ニマダ救濟サレザル所ノ、試
驗ヲ受ケヨウトシテ勉强シテ居ル者ガ、尙
且ツ千數百人アルト云フコトデアリマス、
併ナガラ此儘ニシテ置キマスルナラバ、本
年ノ十二月三十一日ニ資格ヲ失フノデアリ
マスカラ、此議會ニ之ヲ提出シテ、更ニ十
七年ノ十二月三十一日マデ、卽チ五年間ノ
延期ヲスルト云フコトガ、社會政策上極メ
テ重要ナルコトダト思ッテ、本案ヲ提出シタ
所以デアリマス、卽チ更ニ五年間ノ猶豫ヲ
致シマシテ、是等ノ人々ヲ救濟シ、其目的
ヲ達成セシメタイト云フ趣旨ニ外ナラヌノ
デアリマス、御承知ノ如ク是等ノ人々ハ、
今日マデ非常ナル苦學〓鑚ヲ續ケラレタル
人々ガ多クアリマシテ、其家族ノ人々モ、
其試驗ニ合格シテ辯護士タルコトヲ神ニ祈
ルヤウナ熱心サヲ持ッテ來テ居ルノデアリ
マス、然ルニ此儘ニシテ、此資格ヲ剝奪ス
ルト云フコトハ、一種ノ旣得權ヲ奪フモノ
デアリマシテ、本人ノ落膽ハ固ヨリデアリマ
スガ、其家族親族ノ悲歎モ亦思ヒヤルダニ同
情スベキ點ガ少クナイノデアリマス、若シ
之ヲ奪フト云フコトニ依ッテ、是等受驗者、
其家族ヲ自暴自棄ニ陷レシメ、延テハ危險
思想ニ陷ルヤウナコトガアルナラバ、洵
是マデ取リ來ッタ寛大ナル措置ト云フモノガ
無ニナルコトニナルト考ヘマス、仍テ本案
ヲ提出シタノデアリマスガ、幸ニ政府モ此
點ヲ諒トセラレマシテ、日程ヲ變更サレテ
マデ本案ノ上程ニ同意ヲサレタノデアリマ
スルカラ、滿場ノ諸君モ是非是等ノ人々ノ
境遇ニ同情サレマシテ、速ニ本案ニ贊成セ
ラレンコトヲ切ニ御願スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=68
-
069・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 提出者手代木隆吉
君
〔手代木隆吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=69
-
070・手代木隆吉
○手代木隆吉君 只今上程セラレマシタ大
正十二年法律第五十二號中改正法律案ノ理
由ニ付キマシテ、只今述ベラレマシタ小
林錡君ノ說明ニ補足ヲ致シマシテ、此法律
改正案提出ノ理由ヲ辯明致シタイト思ヒマ
ス、只今小林君カラ大體ヲ述ベラレマシタ
通リ、從來辯護士ノ受驗資格ニハ學歷ヲ問
ハナカッタノデアリマス、其後受驗資格ニ制
限ガ設ケラレマシテ、小林君ノ言ハレル通
リ、中等學校ヲ卒業シ、若クハ專門學校入
學檢定試驗ニ合格シ、而シテ三年以上法律
ノ專門學校ニ學ンデ、之ヲ修了シタル者ト
云フ制限ヲ受ケルニ至ッタ譯デアリマス、而
シテ其改正前ヨリ長イ間此司法試驗ヲ受ク
ル目的ノ爲ニ、苦學力行ヲシテ居リマシタ多
數ノ受驗生ハ、之ニ依ッテ其進路ヲ遮ラレル
コトニナッタノデアリマス、是ニ於テ大正十
二年法律第五十二號ニ依リマシテ、是等ノ
受驗生ヲ救フノ途ヲ設ケラレタノデアリマ
スルガ、其期限ハ正ニ本年十二月三十一日
ヲ以テ滿了致スノデアリマス、然ルニ尙ホ
玆ニ受驗資格ヲ有スル者ニシテ救ハレザル
者千五百名ニ上ルノデアリマス、其多數ノ
中ニハ長イ間苦學ヲ致シマシテ、既ニ齡六
十ヲ超エル者モアルノデアリマス、併シ尙
ホ目的ヲ捨テズ、孜々トシテ其目的ノ貫徹
ニ努メテ居ルノデアリマスルガ、或ハ家族
ヲ扶養シ、其日ノ生活ヲ支ヘツヽ努力ヲ致
シテ居ルノデアリマシテ、今遠ニ此途ヲ塞
ガレルヤウナコトガアリマスルナラバ、ソ
レ等ノ者ノ失望落膽ハ言フ迄モナク、是ガ
又社會ニ及ボス所ノ影響モ、只今小林君ノ
言ハレタ通リデアリマス、左樣ナ點カラ致
シマシテ、何トカシテ此殘ッテ居ル多數ノ篤
學者ヲ、是非救濟ヲ致シタイト考ヘルノデ
アリマシテ、先年來當局ニ對シテモ屢〓、陳情
ヲ致シ、或ハ議會ニ請願ヲ致シ、議會ニ於
テハ其請願ヲ採擇致シテ居ルノデアリ
マス、尙ホ昨年ノ第六十九特別議會ニ
於テ前司法大臣カラシテ、是等ノ救濟ニ付
テ十分ノ考慮ヲ爲スト云フ言明ヲ得テ居ル
ノデアリマシテ、恐ラク今囘ハ政府ノ手ニ依ッ
テ改正案ガ提出セラレルダラウト期待ヲ致
シテ居ッタニ拘ラズ、是ガ提出ヲ見ナカッタ
ノデアリマシテ、玆ニ吾々ハ此窮狀ヲ救フ
爲ニ、議員案トシテ本案ヲ提出致シタ次第
デアリマス、而シテ曾テ醫師ノ試驗ニ於キ
マシテ、多數ノ受驗者ヲ最後ノ一人マデモ
救ッタ前例ガアルノデアリマス、屢〓此年限
ヲ延長致シマシテ、遂ニ一人殘ラズ此醫師
ノ受驗生ガ救ハレタ例モアルノデアリマス
ガ、此方ハ司法省ノ管轄デアリ、醫師ノ方ハ
別ノ役所ノ管轄デハアリマスルケレドモ、是
非ソレ等ノ前例ニモ鑑ミラレマシテ、尙又昨
年ノ特別議會ニ於ケル林法相ノ此言明ヲ實
現スルコトニ、當局モ十分ノ考慮ヲセラレ
マシテ、是等ノ者ガ救ハレマスルヤウニ、
此議員提出案ノ成立ニ對シテモ、是非政府
ノ御同意ヲ願ヒタイト考ヘル所ノモノデア
リマス、甚ダ簡單デアリマスルガ、之ヲ補
足致シマシテ提案ノ趣旨辯明ト致ス次第デ
アリマス、何卒滿場ノ諸君ノ御贊同ニ依リ
マシテ、本案ノ速ニ成立スルヤウニ御助力ア
ランコトヲ、切ニ御願致ス次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=70
-
071・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 質疑ノ通告ハアリ
マッス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=71
-
072・中山福藏
○中山福藏君 兩案ハ一括シテ議長指名九
名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=72
-
073・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=73
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074・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=74
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075・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際牧野賤男君外十一
名提出、衆議院議員選擧法中改正法律案、
及ビ戶澤民十郞君外二名提出、衆議院議員
選擧法中改正法律案ヲ一括議題ト爲シ、其
審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=75
-
076・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「贊成」「異議アリ」「贊成」「反對」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=76
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077・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス-政府ハ此議事日程變更ニ同意セラ
レマシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ
(「議長横暴」ト呼フ者アリ)牧野賤男君外十
一名提出、衆議院議員選擧法中改正法律案、
戶澤民十郞君外二名提出、衆議院議員選擧
法中改正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀
會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマ
ス-牧野賤男君
衆議院議員選擧法中改正法律案(牧野
賤男君外十一名提出)第一讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案(戶澤
民十郞君外二名提出)第一讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第七十九條第三項中「選擧ノ期日ヨリ一
年以內ニ關員ト爲リタル者ナル場合ニ於
テ」ヲ「第七十四條ノ規定ニ依ル當選承諾
屆出ノ期限前ニ於テ關員ト爲リタル者ナ
ル場合ニ於テ」二四八
第八十九條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ選擧委員ハ選擧事務長ノ承諾ヲ得
タルトキハ選擧運動ノ爲使用スル勞務
者ヲ選任スルコトヲ得
第九十一條中「選擧事務所」ノ下ニ三八、
選擧演說會場」ヲ加フ
第九十三條第一項中「二十人」ヲ「二十五
人」ニ改ム
第九十五條ノ二中「選擧運動ハ」ノ下ニ
「其ノ準備行爲ヲ除クノ外」ヲ加ヘ同條ニ
左ノ一項ヲ加フ
議員候補者銓衡ノ爲ニスル集會ハ前項
ノ準備行爲ト看做ス
第九十六條第一項但書中「演說又ハ推薦
狀ニ依ル選擧運動ヲ」ノ下ニ「爲シ又ハ應
援辯士ノ依賴、斡旋及派遣竝推薦狀發送
ノ依賴ヲ」ヲ加フ
同條第二項但書中「常傭ノ使用人」ノ下ニ
「竝第三者ガ演說又ハ推薦狀ニ依ル選擧
運動ヲ爲ス場合ニ於テ之ト同居スル親族
家族及常傭ノ使用人」ヲ加フ
第九十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
選擧委員ニ對シテハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ日當ヲ支給スルコトヲ得前項ノ演
說ニ依リ選擧運動ヲ爲ス者ニ付亦同ジ
第九十八條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第三者ガ演說又ハ推薦狀ニ依ル選
擧運動ヲ爲ス爲ニ必要ナル場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
第九十八條ノ二中「第一項但書ノ規定ニ
依ル推薦狀」ノ下ニ「又ハ選擧運動ノ事務
ノ爲ニスル文書」ヲ加フ
第百二十九條中「第九十五條ノ二」ノ下ニ
「第一項」ヲ加フ
第百三十四條中「一年以下ノ禁鋼」ノ下ニ
「又ハ五百圓以下ノ罰金」ヲ加フ
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第二十條中「市町村長」ノ下ニ「又ハ地方
長官ノ指定シタル者」ヲ加フ
第四十九條第二項中「市町村其ノ他地方
長官ノ定ムル區域每ニ」ヲ削ル
第六十九條第五項ヲ削リ同條第六項中
「前三項」ヲ「前二項」ニ改ム
第七十五條第一項但書中「第七十九條第
八項」ヲ「第七十九條第六項」ニ改ム
第七十九條第三項及第四項ヲ削リ同條第
五項中「第三項ノ規定ノ適用アルトキ及」
ヲ削ル
第八十三條第一項中「第六十九條第六項」
ヲ「第六十九條第五項」ニ改ム
第八十四條第一項ヲ削ル
第八十五條中「第八十一條、第八十三條
又ハ前條第一項ノ規定」ヲ「第八十一條又
ハ第八十三條ノ規定」ニ改ム
第八十六條第二項ヲ左ノ如ク改ム
第八十四條ノ規定ニ依ル訴訟ニ付判決
確定シ效力ヲ生ジタルトキハ裁判所ノ
長ハ其ノ旨ヲ內務大臣及關係地方長官
ニ通知スベシ
同條第三項中「第八十三條若ハ第八十四
條」ヲ「第八十三條又ハ第八十四條」ニ改
メ同項中「第一項ノ規定ニ依ル訴訟ニ付
判決アリタルトキ又ハ第八十四條第二
項」ヲ削ル
第八十七條第一項中「第八十一條、第八十
三條又ハ第八十四條第一項」ヲ「第八十一
條又ハ第八十三條」ニ改ム
第八十九條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ選擧委員ハ選擧事務長ノ承諾アル
場合ニハ選擧運動ニ使用スル勞務者ノ
選任ヲ爲スコトヲ得
第九十三條第一項中「二十人」ヲ「二十五
人」ニ改ム
第九十五條ノ一ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ立候補準備ノ爲ニスル行爲ハ此ノ
限ニ在ラズ
第九十六條第一項但書中「演說又ハ推薦
狀ニ依ル選擧運動」ヲ「演說若ハ推薦狀ニ
依ル選擧運動、選擧演說會ニ出演スル者
ノ依賴、斡旋若ハ派遣又ハ推薦狀發送ノ
依賴」二五六
同條第二項但書中「但シ議員候補者ト同
居スル親族、家族及常傭ノ使用人」ノ下
ニ「竝前項但書ニ依リ第三者ガ演說又ハ
推薦狀ニ依リ選擧運動ヲ爲ス場合ニ於テ
之ト同居スル親族、家族及常傭ノ使用人」
フォッ
第九十六條ノ二議員候補者銓衡ノ爲ニ
スル集會ハ郡市及勅令ヲ以テ定メタル
市ノ區以上ヲ單位トスルモノニ限リ前
條第一項ノ規定ヲ適用セズ但シ之ニ要
スル費用ハ銓衡ニ依リ立候補屆出ヲ爲
シタル候補者ノ選擧運動費用ニ加算ス
第九十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
選擧委員及選擧運動ノ爲ニスル演說會
ニ出演スル者ハ前項ノ規定ニ依ル實費
辨償ノ外日當ヲ受クルコトヲ得
第九十八條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第九十六條第一項但書ニ依リ第三
者ガ演說又ハ推薦狀ニ依ル選擧運動ヲ
爲ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九十八條ノ二ニ左ノ一項ヲ加フ
特定少數ノ者ニ對シ推薦狀ノ發送又ハ
演說會ノ開催ヲ依賴スル等其ノ他選擧
運動ノ事務ノ爲ニスル文書ノ發送ハ之
ヲ前項ノ規定ニ依ル文書ノ頒布ト看做
サズ
第百一條第一項但書中「文書ニ依ル」ス削
ル
第百二十九條中「第九十八條ノ二」ノ下ニ
「第一項」ヲ加フ
第百三十四條中「一年以下ノ禁錮」ノ下ニ
「又ハ百圓以下ノ罰金」ヲ加フ
第百三十六條當選人其ノ選擧ニ關シ本
章ニ掲グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル
トキハ其ノ當選ヲ無效トス選擧事務長
又ハ選擧運動ヲ總括主宰シタル者第百
十二條乃至第百十三條ノ罪ノ中惡質ノ
罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタルトキ亦同ジ
但シ選擧事務長ニ非ズシテ事實上選擧
運動ヲ總括主宰シタル者ガ刑ニ處セラ
レタル場合ニ於テ當選人ガ選擧事務長
ニ非ズシテ事實上選擧運動ヲ總括主宰
シタル者ナルコトヲ知ラザリシトキ又
ハ其ノ者ガ當選人ノ制止ニ拘ラズ事實
上選擧運動ヲ總括主宰シタル者ナルト
キハ此ノ限ニ在ラズ
第百四十一條中「第十六條、第八十一條、
第八十三條又ハ第八十四條第一項」ヲ「第
十六條、第八十一條又ハ第八十三條」ニ
改ム
第百四十一條ノ二第一項及第二項中「第
八十四條第二項」ヲ「第八十四條」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔牧野賤男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=77
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078・牧野賤男
○牧野賤男君 只今上程致サレマシタ衆議
院議員選擧法ノ改正案ニ付テ趣旨辯明ヲ致
シマス、現行ノ選擧法ハ選擧界ノ弊風ヲ一
掃シ、政界ヲ廓〓スルト云フコトヲ標榜致
サレマシテ改正致サレタノデアリマスルガ、
一昨年ノ府縣會議員ノ選擧、及ビ昨年ノ衆
議院議員ノ選擧、竝ニ二三ノ地方議會ノ議
員選擧ニ於テ經驗致シマシタ所ニ依レバ、
現行法ハ頗ル不備缺陷ガアッテ、之ニ向ッテ
朝野齊シク改正ノ必要ヲ唱ヘテ、內務省ニ
於カレテモ、司法省ニ於カレテモ、之ヲ〓
究シテ其綱要ヲ發表セラレテ居リマス、又
在野ノ政黨ニ於テモ、民政黨、政友會各〓委
員ヲ擧ゲテ〓究ヲ致シテ、其綱要ヲ發表セ
ラレテ居リマス、又時ノ政府ニ於テモ選擧
法改正委員會ヲ設ケテ、各方面カラ委員ヲ
選出致シテ、選擧法改正ノ要綱ヲ發表セラ
レテ居リマスルコトハ、諸君御承知ノ通リ
デアリマス、內務省ハ改正要綱ニ基ク條文
化ヲ致シタモノヲ持ッテ居ルト云フコトデ
アリマス、併ナガラ政府ノ瓦解、林內閣ノ
出現等ニ依ル情勢ノ變化ニ依リマシテ、現
在ノ內務省ニ於テハ改正案ヲ提出シナイト
云フコトヲ明ニ致サレタノデアリマス、加
之條文ヲ作ッテ居ル其案文サヘモ、極祕ニ付
シテ吾々ニ示サナイト云フ有樣デアリマス、
吾々ハ旣ニ各方面ニ於テ〓究セラレテ、恐
ラクハ異論ハアルマイト思フ點ダケヲ拾ヒ
上ゲテ、改正案ヲ提出致シタノデアリマス、
此改正案ハ頗ル僅少ノ改正デアリマスル
ガ、此僅カナル改正ニ依ッテ、現行法ノ不備
缺陷ガ頗ル多量ニ補ヒ得ルト信ジテ居ル者
デアリマス(拍手)申ス迄モナク選擧ハ國民
ヲ總動員致ス國家的大事業ト致シテ取扱フ
ベキモノデアリマス、ソレ故ニ選擧權ノ有
無ヲ問ハズ、老若男女ヲ問ハズ、苟モ意思
能力ノアル者ハ、事實上選擧ニ無關心デハ
居ラレナイノデアリマス、ソレ故ニ法律ハ
成ベク國民ニ便利ニ、容易ニ、簡單ニ、安
全ニ、明朗ニ選擧運動ガ出來ルヤウナ方針
ヲ以テ規定致スベキモノデアルコトハ、勿
論デアルト考ヘルノデアリマス(拍手)然ル
ニ從來ノ選擧法ノ變遷ノ經過ヲ見マスルト
云フト、多クハ取締官憲ガ其取締ニ便利デ
アルト云フコトニ重點ヲ置イテ規定セラレ
テアルヤウニ思フノデアリマス、殊ニ現行
法ハ頗ル難解デアリマシテ、此難解ノ法律
ヲ取扱フ所ノ官憲ガ、殊、更ニ難解ニ導クヤ
ウナ解釋ヲ致シテ居リマシタコトハ、旣
經驗セラレタ選擧ニ於テ、吾々ハ十分苦痛
ヲ感ジタ所デアリマス、卽チ法律ノ立テ方
モ、官憲ノ取締方針モ、國民ノ自由安全ト
云フコトハ全ク閑却セラレテ居ッタト言ウ
テモ、敢テ過言デナイト信ズルノデアリマ
ス、又最モ著シク吾々ノ異樣ニ感ズルコト
ハ、選擧ヲ行ハントスルニ當リマシテ、內
務省ハ警保局ヲ中心ト致シテ、全國ノ警察
ニ移牒ヲ致シテ、所謂檢擧ノ準備ニ著手ヲ
致シテ檢擧網ヲ張ルノデアリマス、司法省
ハ刑事局ヲ中心トシテ各檢事局ニ命令ヲ發
シテ、檢擧陣ヲ組織シテ、部隊ヲ分ッテ、甚
シキハ警察ニ態〓出張ッテ來テ、晝夜ヲ分
タズ檢擧ニ從事ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、固ヨリ選擧ノ神聖ヲ汚ス者ヲ嚴重ニ檢
擧センガ爲ニ、職務ニ忠實デアルト云フコ
トハ、吾々モ敬意ヲ表スルコトニ躊躇致シ
マセヌ所デアリマスガ、併シ取締官憲モ國
民ノ一員トシテ、選擧ノ結果ニ支配セラレ
ルモノデアルト云フ根本ノ觀念、言葉ヲ換
ヘテ申スト、取締官憲ガ好ムト好マザルト
ニ拘ラズ、國民ノ一員トシテ到底選擧カラ
遁レルコトガ出來ナイモノデアルト云フ根
本觀念ヲ、或ハ忘レテ居ルノデハナイカト
云フヤウニ、吾々ヲシテ疑ハシムルノデア
リマス、恰モ選擧ハ國民ノ一部分ノ仕事デ
アッテ、官憲ハ其傍觀者デアッテ、選擧ノ範圍
外ニ立ッテ居ル者ト心得テ居ルヤウナ感ヲ
持ッテ居ルノデアリマスカラ、國民ト共ニ明朗
ナ選擧ヲスルト云フコトヲ後〓シニシテ、
嚴重ニ檢擧ヲスルト云フ觀念ニノミ囚ハレ
テ、是ガ爲ニ或ハ無辜ヲ罰シ、或ハ羅織ヲ
事トシ、遂ニハ人權蹂躪ノ暴擧ヲ敢テスル
者ガアルト云フコトハ、屢〓吾々ノ實見致ス
所デアリマス、斯ノ如キハ甚ダ遺憾千萬デ
アリマシテ、法律ヲ改正スルニ當リマシテ
ハ、是等ノ重要ナル問題ヲ解決スルコトヲ
考究スルノ必要ガアルノデアリマス、又選
擧ノ區制ノ問題、選擧ノ根本制度ノ問題デ
アル所ノ選擧ノ方法、卽チ例ヘバ比例代表
ノ如キ、是等モ十分〓究ヲスル必要ガアル
ノデアリマス、殊ニ現行ノ別表改正ニ付テ
モ、人口ノ增加上急速ニ手ヲ染メナケレバ
ナラナイ部分モアルノデアリマス、是等ハ
姑ク他日ノ〓究ニ委ネテ、今ハ極メテ僅少
ノ部分ノミノ改正ヲ以テ甘ンゼントスル者
デアリマス、ソレ程目前ノ弊害ヲ除クノニ
急ナルモノヲ感ズルノデアリマス
惟フニ現行法ニ於ケル不備缺陷ハ、滿場
諸君ノ齊シク熟知セラレル所デアルト信ジ
マスカラ、恐ラク各方面ニ御異存ノナイコ
トト信ズル事柄ダケヲ取上ゲテ、此改正案
ヲ提出致シタ次第デアリマシテ、以上ノ趣
旨ヲ以テ本案ヲ提出致シタノデアリマスル
ガ、詳細ハ委員會ニ於テ辯明ヲ致スコトト
致シマシテ、只今ハ以上ノ數言ヲ以テ趣旨
辯明ニ代ヘタ次第デアリマス、何卒滿場ノ
諸君ノ御贊成ヲ以テ、速ニ通過セラレンコ
トヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=78
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079・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 提出者戶澤民十郞
君
〔戶澤民十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=79
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080・戸澤民十郎
○戸澤民十郞君 只今上程ニナリマシタ衆
議院議員選擧法中改正法律案ノ提案者ノ一
人ト致シマシテ、極メテ簡潔ニ提案ノ理由
ヲ說明申上ゲタイト存ジマス、現行法ハ實
施以來極メテ經驗ニ富マセラルヽ諸君ガ親
シク色々御體驗ニナッテ、選擧法中多々改正
ヲ要スベキモノアルコトハ、今更私ガ此壇
上デ諸君ニ申上ゲル必要モアリマセヌ、而
モ前ノ第六十九議會ニ於キマシテ、我ガ衆
議院ハ院議ヲ以テ是ガ改正ヲ爲スベキコト
ヲ決議シ、政府ニ要望ヲ致シタノハ諸君ノ
御承知ノ通リデアリマス、前內閣ノ廣田首
相ハ院議ヲ尊重シテ、是ガ調査委員會ヲ設
ケ、諸君ノ中ノ代表者ノ方々モ之ニ參加セ
ラレテ、愼重審議一箇年ヲ費シテ、非常ニ
數々御努力ニナッテ、其成案ヲ見タノデアリ
マス、只今玆ニ提案致シマシタ案ハ、其委
員會ノ努力ノ結晶ト略、相似タルモノデ、大
同小異デアリマス、併ナガラ衆議院議員選
擧法ノ實體タルモノハ、申上ゲル迄モナク
立憲政治ノ實ヲ擧グルガ爲ニ(「ヤリ易イヤ
ウニシタ方ガ宜イヨ」ト呼フ者アリ)少數ノ
喧シイ人々ガ輕卒ニ暴言ヲ吐クヤウナ、輕
卒ナ問題デハアリマセヌ(拍手)苟モ立憲政
治ノ爲ニ努力セントスル者ハ、モウ少シ愼
重ニ此法案ニ臨ンデ宜イ(拍手、「質問ヲサ
セロ」ト呼フ者アリ)議論ハ勝手デアル、委
員會ニ於テ十分議論ヲ盡スガ宜イ
現行選擧法ノ缺點ノ一ツ二ツヲ摘ミ上ゲ
テ申セバ、繰上當選ノ如キハ極メテ不合理
ニ出來テ居リマス、第百三十六條ニ依ッテ失
格シタル場合、其繰上當選ノ次ノ順位ニアル人
ノ選擧事務長ガ、若シ選擧法違反ニ問ハレタ
ル場合ニ於キマシテモ、其次點者ニ對スル制裁ノ
法ガナイト云フコトハ、正ニ現行法ノ大ナル
缺陷デアリマス(拍手)斯ノ如キハ幾多ノ弊
害ト共ニ、之ヲ根本的ニ削除シテ、繰上當
選ノ制度ヲ全廢スルガ宜シイト云フノガ、
私ノ提案ノ一ツトナッテ居リマス、是ニハ色
色ナ弊害ガアルコトハ、申上ゲルマデモナ
ク各位ノ御承知ノ通リデアリマス、其他今
日ノ如キ選擧法ハ、立憲政治ノ實ヲ擧ゲル
爲ニハ極メテ不適當ナル點ガアリマス、卽
チオ互ノ眞ノ立憲國民トシテノ選擧ヲ行ハ
シムルニハ、今少シク簡單明瞭ニスルト云
フコトガ、論ズルマデモナク必要デアリマ
ス、故ニ只今提案致シマシタ法案ノ各部ヲ
御覽願ヒマスト、極メテ簡單ニシヨウ、明
瞭ニシヨウ、疑問ノアル點ヲ少クシヨウト
云フノガ、提案ノ一理由デアリマス(拍手)
委員ノ數ノ二十名ヲ二十五名トシタ點、是
ナドハ最早此處デ說明ヲ申上ゲル必要ハ認
メマセヌ、又日當ヲ出スト云フコト、現行
法ヲ見マスト云フト、各部ニ於テ人情ニ副
ハザルモノガアリマス、委員ノ數ヲ五名增
加シ、之ニ對シテ日當ヲ與ヘルト云フコト
ハ、今日ノ社會通念ニ照シテ極メテ適當ナ
リト、提案者ハ信ジテ居ル一點デアリマス、
其外連坐規定ノ徹底ヲ期シ、例ノ但書ヲ削
除致シマシテ提案ヲ致シテ居リマス、アノ
連坐規定ノ但書ノ如キハ、極メテ疑問ノ起
ル點デアリマシテ、又事務長ガ起訴ヲ受ケ
テ居リナガラ、或人ハ連坐規定ニ問ハレ、
或人ハ連坐規定ニ問ハレナイト云フ、極メ
テ不公平ナリト多クノ方々カラ見ラレル缺
點モアリマス、寧ロ進ンデ此但書ハ徹底的
ニ撤廢シタ方ガ、法ノ精神ニ副フノデアラ
ウト云フコトヲ信ジマシテ、本案ニハ此點
ヲ削除シテアリマス、其外投票所ノ增加、
是ハモウ說明ヲ申上ゲル迄モアリマセヌ、
又提案ノ一點ハ、混同開票制度ヲ決メテア
リマス、是ニハ大分議論モアルヤウデアリ
マスガ、能ク委員會ニ於テ御審議願ヒタイ
ト思ヒマス、其他立候補屆出前ノ手續ヲ、
稍、選擧界ノ實情ニ適合セシムルヤウニ改革
シタ一點モゴザイマス、又勞務者ノ選任ニ
付テ、事務長ダケガ選任ノ權限ガアルト云
フコトデハ、餘リニ狹イ、極メテ不便デア
ル、此點ハ委員タルモノハ事務長ノ承認ヲ
得テ、勞務者ノ選任ガ出來ルト云フコトガ
提案ノ一點ニナッテ居リマス、其外細々シイ
點ハ、委員會ニ於テ實際ノ經驗ヲ有セラレ
ル諸君ガ詳細ノ御論議ヲ盡サレテ、此提案
ニ對シテ十分ニ御審議ヲ盡サレンコトヲ切
望致シマシテ、提案ノ理由ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=80
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081・中山福藏
○中山福藏君 兩案ハ質疑ヲ爲サズシテ、
議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレンコト
ヲ望ミマス
(「反對」ト呼ヒ其他發言者多ク議場騷
然発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=81
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082・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 靜ニ-靜ニ-
中山君ノ動議ハ、兩案ハ質疑ヲ爲サズシ
テ、議長指名十八名ノ委員ニ付託センコト
ヲ望ムモノデアリマス、本動議ノ採決ニ對
シテハ、社會大衆黨、國民同盟、東方會、
第二控室所屬議員全員ヨリ、記名投票ノ要
求ガアリマス、仍テ是ヨリ記名投票ヲ行ヒ
マス、中山君提出ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ白
要反對ノ諸君ハ靑票ヲ持參セラレンコト
ヲ望ミマス-閉鎖-氏名點呼ヲ行ヒマ
ス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=82
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083・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ-投票漏ナシト認メマス-投票函
閉鎖開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=83
-
084・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓致サセマス
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數二百三十
可トスル者白票百九十三
否トスル者靑票三十七
〔拍手起ル〕
〔參照〕
中山福藏君提出兩案ハ質疑ヲ爲サスシテ
議長指名十八名ノ委員ニ付託スヘシトノ
動議ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ如シ
伊藤東一郞君池田〓秋君
飯田助夫君飯塚春太郞君
服部〓一君服部英明君
濱野徹太郞君西村丹治郞君
西村金三郞君西田郁平君
堀內良平君本田英作君
本多眞喜雄君戶澤民十郞君
小野寅吉君小久江美代吉君
尾崎重美君大島寅吉君
岡田喜久治君岡本實太郞君
渡邊玉三郞君渡邊銕藏君
川崎末五郞君片岡恒一君
片山一男君勝正憲君
鏑木忠正君柏木〓治君
漢那憲和君田中武雄君
田中万逸君田島勝太郞君
高松長三君高木条太郞君
高島兵吉君賴母木桂吉君
添田敬一郞君土屋〓三郞君
內藤久一郞君中亥歲男君
中井川浩君中村三之丞君
中村梅吉君中山福藏君
仲西三良君永井柳太郞君
長野長廣君南雲正朔君
村岡吾一君村上國吉君
村上久義君紫安新九郞君
植村嘉三郞君氏家〓君
野田武夫君野村嘉六君
工藤鐵男君八並武治君
矢野庄太郞君山道襄一君
山本条吉君眞鍋儀十君
前田房之助君松尾四郞君
松田正一君松田喜三郞君
松村謙三君古屋慶隆君
小畑虎之助君小林三郞君
小西和君小山松壽君
小山谷藏君木檜三四郞君
手代木隆吉君靑木亮貫君
淺川浩君朝倉每人君
佐藤謙之輔君佐澤定二君
澤田利吉君櫻井兵五郞君
櫻內幸雄君坂下仙一郞君
木村小左衞門君喜多壯一郞君
菊池良一君三好榮次郞君
〓水德太郞君斯波貞吉君
信太儀右衞門君比佐昌平君
日比野民平君松定吉君
最上政三君百瀨渡君
角源泉君鈴木康太郞君
岩崎幸治郞君犬養健君
今井健彥君石井德久次君
石川定辰君石坂豐一君
石坂養平君鳩山一郞君
服部岩吉君服部米次郞君
八田宗吉君原口初太郞君
濱田國松君西岡竹次郞君
登坂良作君小笠原八十美君
小高長三郞君尾崎天風君
大石倫治君大野伴睦君
岡田伊太郞君加藤久米四郞君
加藤鐐五郞君加藤賢司君
川口義久君片山秀太郞君
金光庸夫君菅野善右衞門君
橫川重次君田中源君
田子一民君丹下茂十郞君
土倉宗明君名川侃市君
中村嘉壽君中野猛雄君
中野治介君中島知久平君
永田良吉君南條德男君
植原悅二郞君上田孝吉君
工藤十三雄君久山知之君
熊谷直太君八角三郞君
山田又司君山田佐一君
山口忠五郞君山崎猛君
松野鶴平君松山常次郞君
牧野賤男君益谷秀次君
深澤豐太郞君藤井達二君
古河和一郞君小林絹治君
小谷節夫君木暮武太夫君
高良宗七君寺田市正君
天辰正守君芦田均君
木下成太郞君木村正義君
〓瀨規矩雄君三善信房君
宮澤裕君宮古啓三郞君
宮本雄一郞君宮崎一君
志賀和多利君篠原義政君
島田俊雄君神保重吉君
森幸太郞君森田政義君
門田新松君瀨川嘉助君
助川啓四郞君鈴木辰三郞君
井阪豐光君春名成章君
林路一君豐田收君
陣軍吉君永山忠則君
窪井義道君山口久吉君
岸田正記君三鬼鑑太郞君
森肇君田川大吉郞君
福田耕君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
綾川武治君伊豆富人君
石坂繁君大竹貫一君
高岡大輔君野中徹也君
〓瀨一郞君岡崎憲君
川俣〓音君川村保太郞君
河上丈太郞君片山哲君
龜井貫一郞君田万〓臣君
塚本重藏君山崎釼二君
松本治一郞君河野密君
安部磯雄君佐竹晴記君
三宅正一君水谷長三郞君
鈴木文治君今井新造君
池崎忠孝君岡幸三郞君
加藤勘十君田中耕君
北勝太郞君北吟吉君
平野力三君大石大君
渡邊泰邦君中野正剛君
木村武雄君由谷義治君
三浦虎雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=84
-
085・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ニ依リ
マシテ、中山君ノ動議ハ可決セラレマシタ、
仍テ兩案ハ議長指名十八名ノ委員ニ付託ス
ルコトニ決シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=85
-
086・中山福藏
○中山福藏君 議事は程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、郵便法
中改正法律案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報〓
ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ·····
〔「反對々々」ト呼ヒ其他發言スル者多
ク聽取スル能ハス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=86
-
087・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 〔議場騒然聽取スル能ハス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=87
-
088・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 靜肅ニ-靜肅ニ
〔「反對」「三十七名アル」ト呼ヒ其他發
言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=88
-
089・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 改メテ申上ゲマス、
三十名以上ノ〓
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=89
-
090・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 靜ニ-靜ニ
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=90
-
091・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 靜肅ニ願ヒマス、
中山君ノ動議ハ議事日程ヲ變更シテ、政府
提出、郵便法中改正法律案ヲ議題ト爲シ、
委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ進ムベシト
云フノデアリマス、此動議ノ採決ニ對シ三
十名以上ノ議員ヨリ記名投票ノ要求ガアリ
マシタ、仍テ中山君提出ノ動議ニ對シ記名
投票ヲ以テ之ヲ決シマス(拍手)中山君ノ動
議ニ御贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ靑
票ヲ持參セラレンコトヲ望ミマス-閉
鎖-氏名點呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=91
-
092・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ-投票漏ハナイト認メマス-投票
函閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=92
-
093・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓致シマス
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數二百二十六
可トスル者白票百九十二
否トスル者靑票三十四
〔拍手起ル〕
〔參照〕
中山福藏君提出議事日程ヲ變更シテ政府
提出郵便法中改正法律案ヲ議題ト爲シ委
員長ノ報〓ヲ求メ其ノ審議ヲ進ムヘシト
ノ動議ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ如シ
伊藤東一郞君池田〓秋君
飯田助夫君飯塚春太郞君
服部〓一君服部英明君
濱野徹太郞君西村丹治郞君
西村金三郞君西田郁平君
堀內良平君本田英作君
本多眞喜雄君戶澤民十郞君
小川〓太郞君小野寅吉君
小久江美代吉君大麻唯男君
大島寅吉君岡田喜久治君
岡本實太郞君渡邊玉三郞君
渡邊銕藏君川崎末五郞君
片岡恒一君廾山一男君
勝正憲君勝田永吉君
鏑木忠正君柏木〓治君
漢那憲和君田中武雄君
田中万逸君田島勝太郞君
高松長三君高木条太郞君
高島兵吉君賴母木桂吉君
添田敬一郞君土屋〓三郞君
內藤久一郞君中亥歲男君
中井川浩君中村三之丞君
中村梅吉君中山福藏君
仲西三良君永井柳太郞君
長野長廣君南雲正朔君
村岡吾一君村上國吉君
村松久義君紫安新九郞君
植村嘉三郞君氏家〓君
野田武夫君野村嘉六君
工藤鐵男君八並武治君
山道襄一君山本粂吉君
眞鍋儀十君前田房之助君
松尾四郞君松田竹千代君
松田正一君松田喜三郞君
松村謙三君古屋慶隆君
小泉又次郞君小畑虎之助君
小林三郞君小西和君
小山松壽君小山谷藏君
木檜三四郞君手代木隆吉君
靑木亮貫君淺川浩君
朝倉每人君佐藤謙之輔君
佐澤定二君澤田利吉君
櫻井兵五郞君櫻内幸雄君
坂下仙一郞君喜多壯一郞君
菊池良一君三好榮次郞君
〓水德太郞君斯波貞吉君
信太儀右衞門君比佐昌平君
日比野民平君松定吉君
最上政三君百瀨渡君
角源泉君鈴木康太郞君
犬養健君今井健彥君
石井德久次君石川定辰君
石坂豐一君石坂養平君
鳩山一郞君服部岩吉君
服部米次郞君八田宗吉君
原口初太郞君濱田國松君
西岡竹次郞君登坂良作君
小笠原八十美君小高長三郞君
尾崎天風君大石倫治君
大野伴陸君大口喜六君
岡田伊太郞君若宮貞夫君
加藤久米四郞君加藤鐐五郞君
加藤賢司君川口義久君
片山秀太郞君菅野善右衞門君
橫川重次君田中源君
田子一民君丹下茂十郞君
名川侃市君中村嘉壽君
中野猛雄君中野治介君
中島知久平君永田良吉君
南條德男君植原悅二郞君
上田孝吉君工藤十三雄君
久山知之君熊谷直太君
八角三郞君山田又司君
山田佐一君山口忠五郞君
山崎猛君松村光三君
松野鶴平君松山常次郞君
牧野賤男君益谷秀次君
深澤豐太郞君藤井達二君
古河和一郞君小谷節夫君
木暮武太夫君紅露昭君
高良宗七君寺田市正君
天辰正守君芦田均君
木村正義君木下成太郞君
〓瀨規矩雄君三善信房君
宮澤裕君宮古啓三郞君
宮本雄一郞君宮崎一君
志賀和多利君篠原義政君
島田俊雄君神保重吉君
森幸太郞君森田政義君
門田新松君瀨川嘉助君
助川啓四郞君鈴木辰三郞君
井阪豐光君飯村五郞君
春名成章君豐田收君
陣軍吉君永山忠則君
窪井義道君山口久吉君
綾川武治君三鬼鑑太郞君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
石坂繁君高岡大輔君
野中徹也君〓瀨一郞君
岡崎憲君川俣〓音君
川村保太郞君河上丈太郞君
片山哲君龜井貫一郞君
田万〓臣君塚本重藏君
山崎釼二君松本治一郞君
河野密君安部磯雄君
佐竹晴記君三宅正一君
水谷長三郞君鈴木文治君
今井新造君池崎·忠孝君
岡幸三郞君加藤勘十君
田中耕君北勝太郞君
北昤吉君平野力三君
大石大君渡邊泰邦君
田中養達君木村武雄君
由谷義治君三浦虎雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=93
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094・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ニ依ッ
テ日程ハ變更セラレマシタ、郵便法中改正
法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス-委員長永田良吉君
郵便法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一郵便法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十六日
委員長永田良吉
衆議員議長富田幸次郞殿
附帶決議
-郵便料金ハ其ノ性質上漸次之ヲ低減
スヘキモノナルニ拘ラス今之カ値上ヲ
行フノ已ムヲ得サルニ至レルハ從來他
ノ特別會計トノ均衡ヲ顧ルコトナク通
信事業特別會計ヨリ一般會計ヘノ納付
金八千一百万圓ノ外更ニ本年度ニ於テ
一千二百六十四万圓ノ巨額ヲ一般會計
ニ繰入ルル等年々其ノ負擔ヲ遞增スル
ノ結果ニ外ナラス故ニ政府ハ先ツ右ノ
內法案ノ明文ニ「當分ノ內」ト限定セル
繰入金ヲ次年度ニ於テ相當減額スルト
共ニ將來納付金ノ減少ニ努ムヘシ
二通信施設ノ現狀ハ國民ノ期待ニ副ハ
サルモノアリ政府ハ速ニ之カ改善ニ努
ムヘシ
三從業員ノ待遇亦不滿足ノ點尠カラス
政府ハ將來之カ改善優遇ノ途ヲ講スヘ
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=94
-
095・永田良吉
○永田良吉君 郵便法中改正法律案ノ委員
會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告中上ゲマス、本
委員會ハ二月ノ二十五日以來本日マデ前後
八囘開會致シマシテ、其間委員ト政府當局
ノ間ニ於キマシテ、熱心ナル質疑應答ガア
リマシタガ、本日討論ニ入リマシテ、民政
黨ノ眞鍋議員ヨリ左ノ如キ附帶決議ヲ附シ
テ、原案通リ全部可決確定サレマシタ、玆
ニ附帶決議ヲ朗讀致シマス
附帶決議
郵便料金ハ其ノ性質上漸次之ヲ低減
スヘキモノナルニ拘ラス今之カ値上ヲ
行フノ已ムヲ得サルニ至レルハ從來他
ノ特別會計トノ均衡ヲ顧ルコトナク通信
事業特別會計ヨリ一般會計ヘノ納付金
八千一百万圓ノ外更ニ本年度ニ於テ一
千二百六十四万圓ノ巨額ヲ一般會計ニ
繰入ルル等年々其ノ負擔ヲ遞增スルノ
結果ニ外ナラス故ニ政府ハ先ツ右ノ內
法案ノ明文ニ「當分ノ內」ト限定セル繰
入金ヲ次年度ニ於テ相當減額スルト共
ニ將來納付金ノ減少ニ努ムヘシ
二通信施設ノ現狀ハ國民ノ期待ニ副ハ
サルモノアリ政府ハ速ニ之カ改善ニ努
ムヘシ
三從業員ノ待遇亦不滿足ノ點尠ナカラ
ス政府ハ將來之カ改善優遇ノ途ヲ講ス
ヘシ
以上ノ附帶決議ヲ附セラレマシタ、是ト同
樣ノ附帶決議ヲ政友會ノ紅露君カラモ提出
サレマシタ、同一案デアリマシタカラシテ、
一括シテ是ガ採決ヲ經マシテ、原案ノ通リ滿
場一致可決決定セラレマシタ、右御報〓ヲ
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=95
-
096・工藤鐵男
○工藤鐵男君 此際質疑ヲ爲サズシテ、直
チニ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「反對々々」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=96
-
097・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 工藤君ノ動議ノ採
決ニ對シ三十名以上ノ要求ガアリマス、仍
テ記名投票ニ依リ之ヲ決シマス、工藤君提出
ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ
靑票ヲ御投票アランコトヲ望ミマス-閉
鎖-氏名點呼ヲ行ヒマス
〔「異議アリ〓〓」「公平々々」ト呼ヒ其
他發言スル者アリ〕
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=97
-
098・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ-投票漏ハナシト認メマス-投票
函閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=98
-
099・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓致サセマス
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數百九十
可トスル者白票百六十三
否トスル者靑票二十七
〔拍手起ル〕
〔參照〕
工藤鐵男君提出本案ハ委員長報告ニ對ス
ル質疑ヲ省略シテ審議ヲ進ムベシトノ動
議ヲ可トスル議員ノ氏名左ノ如シ
伊藤東一郞君池田〓秋君
飯田助夫君服部〓一君
濱野徹太郞君西村金三郞君
西田郁平君堀内良平君
本田英作君本多眞喜雄君
戶澤民十郞君小川〓太郞君
小久江美代吉君大麻唯男君
大島寅吉君岡田喜久治君
岡本實太郞君渡邊銕藏君
川崎末五郞君片岡恒一君
片山一男君鏑木忠正君
漢那憲和君田中武雄君
田中万逸君高松長三君
高木条太郞君高島兵吉君
土屋〓三郞君內藤久一郞君
中亥歲男君中井川浩君
中村三之丞君中村梅吉君
中山福藏君仲西三良君
長野長廣君南雲正朔君
村岡吾一君村松久義君
紫安新九郞君植村嘉三郞君
氏家〓君野田武夫君
工藤鐵男君八並武治君
山道襄一君山本条吉君
眞鍋儀十君前田房之助君
松尾四郞君松田竹千代君
松田正一君松田喜三郞君
古屋慶隆君小泉又次郞君
小畑虎之助君小林三郞君
小西和君小山松壽君
小山谷藏君木檜三四郞君
手代木隆吉君淺川浩君
朝倉每人君佐藤謙之輔君
佐澤定二君澤田利吉君
櫻井兵五郞君櫻內幸雄君
坂下仙一郞君三好榮次郞君
〓水德太郞君斯波貞吉君
篠原陸朗君信太儀右衞門君
日比野民平君松定吉君
最上政三君百瀨渡君
角源泉君鈴木康太郞君
犬養健君今井健彥君
石井德久次君石川定辰君
石坂豐一君石坂養平君
鳩山一郞君服部岩吉君
八田宗吉君原口初太郞君
濱田國松君西岡竹次郞君
登坂良作君小笠原八十美君
小高長三郞君尾崎天風君
大石倫治君大野伴睦君
大口喜六君岡田伊太郞君
若宮貞夫君加藤久米四郞君
加藤賢司君川口義久君
片山秀太郞君金光庸夫君
菅野善右衞門君橫川重次君
田子一民君胎中楠右衞門君
丹下茂十郞君名川侃市君
中村嘉壽君中野猛雄君
中野治介君中島知久平君
永田良吉君植原悅二郞君
上田孝吉君工藤十三雄君
久山知之君熊谷直太君
八角三郞君山田又司君
山田佐一君山口忠五郞君
山崎猛君松野鶴平君
松山常次郞君牧野賤男君
益谷秀次君深澤豐太郞君
藤井達二君古河和一郞君
小谷節夫君紅露昭君
高良宗七君寺田市正君
天辰正守君佐保畢雄君
木村正義君三善信房君
宮澤裕君宮古啓三郞君
宮本雄一郞君宮崎一君
志賀和多利君篠原義政君
島田俊雄君神保重吉君
森幸太郞君瀨川嘉助君
助川啓四郞君井阪豐光君
春名成章君豐田收君
陣軍吉君永山忠則君
窪井義道君山口久吉君
靑木精一君三鬼鑑太郞君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
野中徹也君岡崎憲君
川俣〓音君川村保太郞君
河上丈太郞君片山哲君
龜井貫一郞君田万〓臣君
塚本重藏君松本治一郞君
河野密君安部磯雄君
佐竹晴記君三宅正一君
水谷長三郞君鈴木文治君
今井新造君池崎忠孝君
岡幸三郞君加藤勘十君
平野力三君大石大君
渡邊泰邦君田中養達君
木村武雄君由谷義治君
三浦虎雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=99
-
100・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 投票ノ結果ニ依リ
マシテ······(發言スル者多シ)投票ノ結果ニ
依リマシテ、本案ハ質疑ヲ用ヒザルコトニ
決定致シマシタ-此際大藏大臣ヨリ發言
ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマス-
結城大藏大臣
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=100
-
101・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 各特別會計ノ
間ニ於テ、一般會計ニ協力スル程度ニ關シ、
公平デアルベキデアルト云フ御趣旨ハ同感
致ス所デアリマス、唯財政ノ現狀ハ極メテ
困難デアリマスルカラ、サウ急ニ御期待ニ
副フコトハ困難カトモ存ジマスルガ、出來
得ルダケ御趣旨ニ副フヤウニ努メタイト存
ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=101
-
102・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 討論ノ通〓ハアリ
〔木暮武太夫君演說參照〕
第一表
日本銀行一般貸出金種類別(千圓)
昭和十年六月末
定期貸
當座貸一二〇
割引手形五五〇、二五三
外國爲替貸付金九四、八一二
合計六四五、一八六
計ノ內官公關係及外五五〇、三七三
國關係貸控除殘高
マセヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=102
-
103・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=103
-
104・中山福藏
○中山福藏君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=104
-
105・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中山君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=105
-
106・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マく、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
郵便法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=106
-
107・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)次會ノ議事
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス(拍手)
午後六時二十七分散會
昭和十年十二月末昭和十一年六月末
O〇〇
五七〇二七八
六六一、〇八九五六五、六二〇
一八〇、八六〇一二二、八三一
八四二、五一九六八八、七二九
六六一、六五八五六五、八九八
第二表
割引手形ニ依ル貸付內譯(千圓)
昭和十年六月末
特別融通割引手形五一八、四三九
)
五億圓口割引手形1五一八、四三九
(
特別融通以外ノ割引三一、八一四
手形
割引手形合計五五〇、二五三
備考
(1)昭和二年勅令第五五號ニ依ルモノ
衆議院議事速記錄第二一號中
正誤
五一八頁三段一〇行「肥田琢司君」ノ次ニ左ノ二
名ヲ加フ
松方幸次郞君金井正夫君
五一八頁三段三〇行「松尾四郞君」ノ次ニ左ノ一
○名ヲ加フ
〓瀨規矩雄君石坂豐一君
大本貞太郞君岡田伊太郞君
名川侃市君田邊七六君
匹田銳吉君松山常次郞君
木暮武太夫君原口初太郞君
頁段行誤正
五四五四一八退職退藏
昭和十年十二月末昭和十一年六月末
四九八、一七六四八二、五四〇
四九八、一七六四八二、五四〇
一六二、九一三八三、〇八〇
六六一、〇八九五六五、六二〇発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02319370316&spkNum=107
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