1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月十八日(木曜日)
午後二時四十分開議
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議事日程 第二十六號
昭和十二年三月十八日
午後二時開議
第一 船員法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 揮發油及アルコール混用法案(政府提出) 第一讀會
第三 貿易組合法案(政府提出) 第一讀會
第四 貿易調整法案(政府提出) 第一讀會
第五 工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 横莊鐵道株式會社所屬鐵道外三鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 製鐵事業法案(政府提出) 第一讀會
第八 大正九年法律第五十三號中改正法律案(關税法及關税定率法等の朝鮮に於ける特例に關する件)(政府提出) 第一讀會
第九 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(政府提出) 第一讀會
第十 防空法案(政府提出) 第一讀會
第十一 海外移住組合聯合會に對する政府貸付金の出資等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 農村負債整理資金特別融通及損失補償法案(政府提出) 第一讀會
第十三 帝國燃料興業株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第十四 人造石油製造事業法案(政府提出) 第一讀會
第十五 日本銀行金買入法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 肥料取締法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十七 酒造組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十八 日本無線電信株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十九 特許法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 商標法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十一 不正競爭防止法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十二 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十三 大正十年法律第百二號中改正法律案(定年に因る退職判事檢事の恩給に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十四 兵役法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十五 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十六 産業組合自治監査法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十七 軍機保護法改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十八 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十九 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十 百貨店法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十一 辨理士法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十二 輸出補償法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 昭和十年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十一年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十三 昭和十一年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=0
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) セマス
〔書記官朗讀〕
(昭和十年度第一豫備)
金支出ノ件
昭和十年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十年度特別會計
豫備費支出ノ件
昭和十年度滿洲事件
第一豫備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭
至同年三月
和十年度第二豫備金
支出ノ件
自昭和十一年一月昭
至同年三月
和十年度豫備金外ニ
於テ豫算超過及豫算
外支出ノ件
自昭和十一年一月昭
至同年三月
和十年度特別會計第
二豫備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭
至同年三月
和十年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超
過及豫算外支出ノ件
昭和十一年度第二豫
備金支出ノ件
昭和十一年度特別會
計第二豫備金支出ノ
件
昭和十一年度特別會
計豫備金外ニ於テ豫
算外支出ノ件
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
承
ヲル求諾
ム
件
諸般ノ報〓ヲ致サ
(第一號)昭和十二年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第一號)昭和十二年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
昭和十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案
神戶商業大學移轉改築費ニ充用シタル全
額ノ補塡ニ關スル法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル件)中修正
(以上三月十八日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十七日林內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
朝鮮總督府鐵道局長吉田浩
第七十囘帝國議會拓務省所管事務政府委
員被仰付
一昨十七日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
第二部選出
豫算委員牧山耕藏君(平川松太郞
君補闕)
第三部選出
建議委員長野長廣君(角源泉君補
關
第七部選出
豫算委員角源泉君(川橋豐治郞
君補闕)
第八部選出
豫算委員川俣〓音君(杉山元治郞
君補闕)
第八部選出
豫算委員池崎忠孝君(北勝太郞君
補闕)
一昨十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
小運送業法案(政府提出)外一件委員
委員長岡田伊太郞君
理事
平野光雄君中井川浩君
星島二郞君紅露昭君
大正十二年法律第五十二號中改正法律案
(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關スル件)
(小林錡君外一名提出)外一件委員
委員長山本芳治君
理事
內藤正剛君立川太郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(牧野賤
男君外十一名提出)外一件委員
委員長齋藤隆夫君
理事
戶澤民十郞君森兼道君
篠原義政君小林錡君
一昨十七日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送
付)委員
俵孫一君末松偕一郞君
齋藤直橘君松定吉君
野村嘉六君濱野徹太郞君
山本条吉君作田高太郞君
手代木隆吉君櫻井兵五郞君
岡崎久次郞君渡邊銕藏君
本多眞喜雄君池本甚四郞君
角源泉君服部英明君
宮古啓三郞君高橋泰雄君
松木弘君板谷順助君
益谷秀次君熊谷直太君
牧野良三君岩崎幸治郞君
名川侃市君砂田重政君
末次虎太郞君高良宗七君
花城永渡君金井正夫君
岸田正記君片山哲君
田万〓臣君今井新造君
石坂繁君由谷義治君
一昨十七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會計
ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案(政府提
出)外二件委員
辭任藏原敏捷君補關伊豆富人君
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)委員
辭任春名成章君補闕林路一君
衆議院議員選擧法中改正法律案(牧野賤
男君外十一名提出)外一件委員
辭任飯村五郞君補闕金井正夫君
辭任武知勇記君補關小久江美代吉君
辭任靑木亮貫君補闕村岡吾一君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外四
件委員
辭任松田竹千代君補關川橋豐治郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=1
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002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=2
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003・中山福藏
○中山福藏君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、臨時租
稅增徵法案、法人資本稅法案、外貨債特別
稅法案、揮發油稅法案、有價證劵移轉稅法
案、及ビ明治四十年法律第二十一號中改正
法律案ノ六案ヲ一括議題ト爲シ、委員長ノ
報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=3
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004・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=4
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005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、臨時
租稅增徵法案、法人資本稅法案、外貨債特
別稅法案、揮發油稅法案、有價證劵移轉稅
法案、明治四十年法律第二十一號中改正法
律案、右六案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員
長增田義一君
臨時租稅增徵法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
法人資本稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
外貨債特別稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
揮發油稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
有價證劵移轉稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案(樺太ニ於ケル租稅ニ關スル件)(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一臨時租稅增徵法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義一
衆議院議長富田幸次郞殿
〔別紙〕
(小字ハ委員會修正)
臨時租稅增徵法案中左ノ通修正ス
第六條所得稅中第三種ノ所得ニ對スル
所得稅ニ付テハ所得金額ノ階級ニ從ヒ
左ノ割合ノ稅額ヲ增徵ス
所得金額二千圓以所得稅額ノ百分
下ナル所得ノ二十
同三千圓以下ナル所得稅額ノ百分
所得ノ三十
同七千圓以下ナル所得稅額ノ百分
所得ノ三十五
同一萬五千圓以下所得稅額ノ百分
ナル所得ノ四十
同十萬圓以下ナル所得稅額ノ百分
所得ノ四十五
同五十萬圓以下ナル所得稅額ノ百分ノ
所得五十五
同百萬圓以下ナル所得稅額ノ百分
所得ノ六十
同百萬圓ヲ超ユル所得稅額ノ百分
所得ノ七十
所得金額ガ二千圓ヲ超エ三千圓以下ナ
ル所得ニ付テハ之ニ對スル所得稅額及
增徵稅額ノ合計金額ヨリ所得金額二千
圓ノ所得ニ對スル所得稅額及增徵稅額
ノ合計金額ヲ控除シタル殘額ガ所得金
額中二千圓ヲ超ユル金額ヲ超過スルト
キハ該超過額ニ相當スル金額ヲ其ノ增
徵稅額ヨリ控除ス
前項ノ規定ハ所得金額ガ三千圓ヲ超エ
七千圓以下ナル所得、同七千圓ヲ超エ
一萬五千圓以下ナル所得、同一萬五千
圓ヲ超エ十萬圓以下ナル所得、同十萬
〓五十萬圓以下ナル所得、同五十萬圓ヲ超エ
圓ヲ超エ。百萬圓以下ナル所得及同百萬
圓ヲ超ユル所得ノ各同樣ノ場合ニ付之
ヲ準用ス
山林ノ所得ト山林以外ノ所得トハ之ヲ
區分シ各別ニ前三項ノ規定ヲ適用ス
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算
シ其ノ總額ニ付前四項ノ規定ヲ適用ス
戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ
所得ニ付亦同ジ
附帶決議
一臨時租稅增徵法ノ適用ヲ昭和十二年
度ニ限定シ政府ハ速ニ官民ヨリ成ル權
威アル調査會ヲ設ケ中央地方ヲ通ズル
根本的稅制改革ヲ行ヒ特ニ直接稅間接
稅ノ調整ヲ圖ルベシ
一稅制改革ニ當リ營業收益稅及自作農
地ノ地租免稅點ヲ適當ニ引上グベシ
第三種所得稅ノ決定ニ際シテハ負債
ノ利子ハ其ノ原因ノ如何ヲ問ハズ總テ
所得金額中ヨリ控除スベシ
相續稅ニ不動產ノ物納制度ヲ認ムベ
一政府ハ租稅ノ賦課徵收ニ當リ嚴ニ職
權ノ濫用ヲ愼ミ苟モ苛察ニ亙ラザルヤ
ウ注意スベシ
報告書
一法人資本稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義に
衆議院議長富田幸次郞殿
〔別紙〕
(-ハ委員會修正)
法人資本稅法案中左ノ通修正ス
第八條法人資本稅ノ稅率ハ千分ノ一ト
ス
前項ノ規定ニ依リ算出シタル稅額ガ年
十圓ニ滿タザルトキハ年十圓トス
所得及積立金額ナキ法人ノ法人資本稅
ハ之ヲ免除ス前二項ノ規定ニ依リ算出
シタル稅額ガ其ノ事業年度ノ所得金額
及其ノ事業年度末ニ於ケル積立金額ヲ
超過スルトキハ其ノ超過額ニ相當スル
法人資本稅ニ付亦同ジ
所得稅法第四條ノ規定ハ前項ノ所得金
額ノ計算ニ付之ヲ準用ス
報〓書
一外貨債特別稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義一
衆議院議長富田幸次郞殿
報告書
一揮發油稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
一揮發油稅ノ收入ヲ財源トシ其ノ中ヨリ
相當額ヲ道路改良費ニ充テ且地方稅中
營業用自動車稅ノ輕減ヲ圖ルベシ
報〓書
一有價證劵移轉稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義
衆議院議長富田幸次郞殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
有價證劵移轉稅法案中左ノ通修正ス
營利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得
第八條國北海道、府縣、市町村其ノ他
稅法其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレ
命令ヲ以テ指定スル公共團體ハ有價證
ザル者ハ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要
劵移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
セズ
報告書
一明治四十年法律第二十一號中改正法律
案(樺太ニ於ケル租稅ニ關スル件)政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十二年三月十八日
委員長增田義一
衆議院議長富田幸次郞殿
〔增田義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=5
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006・増田義一
○增田義一君 只今上程サレマシタ臨時租
稅增徵法案外五件ノ委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報〓申上ゲマス、此增稅案ハ國民ノ負
擔ニ關スル重大問題デアリマシテ、今期議
會ニ於ケル重大法案デアリマス、隨ヒマシ
テ委員會ハ十四囘開會致シマシテ、長時間
ニ亙ッテ愼重審議ヲ重ネマシタ、各委員諸君
ト國務大臣及ビ政府委員トノ間ニ重要ニシ
テ極メテ適切、而モ有益ナル質疑應答ガ交
換サレマシタ、其主ナルモノヲ申上ゲルニ
先ダッテ一言致シタイト思ヒマス、今囘ノ增
稅案ハ臨時租稅增徵法案ト云フ一本ノ中ニ、
所得稅、法人營業收益稅、資本利子稅、相續
稅鑛產稅、酒稅、砂糖消費稅、取引所稅、
臨時利得稅、合計九ツノ稅種ガ現行稅率ニ
對シテ二三割ヨリ多キハ十割ノ增稅スルト
云フノデアリマス、而シテ其臨時租稅增徵
ハ所得稅ヲ中心トシテ居マスガ、所得稅ノ
ミデ一億六千三百万圓增收ヲスルノデアリ
マス、其他ノモノヲ合セマスト二億三千万
圓、此外更ニ新稅トシテ法人資本稅、外貨債
特別稅、揮發油稅、有價證劵移轉稅ト云フ
四ツノ稅ヲ新ニ起シタノデアリマスガ、其
收入三千九百万圓、合計致シマスルト二億
六千九百万圓ノ增收ヲ圖ルノデアリマス、
此以外ニ關稅及ビ輸出統制稅ガアルノデア
リマスガ、ソレハ是ニハ加ハッテ居リマセヌ、
尤モ前藏相馬場稅制案ノ四億二千八百万圓
ノ大增稅ヲ圖ルト云フノニ比ベマスレバ、
一億五千九百万圓ノ減額トナルノデアリマ
ス、併ナガラ一擧ニシテ二億六千九百万圓
ノ大增稅ハ空前デアリマス、偖テ是カラ各
委員諸君ト大藏大臣、內務大臣、及ビ大藏、
內務、商工、各省ノ政府委員トノ間ニ交換
サレマシタ質疑應答ノ主ナルモノヲ申上ゲ
マス、委員ヨリ斯ル多額ノ增稅ヲ爲スニ當ッ
テハ、將來ノ財政計畫ガ立ッテ居ルカドウ
カトノ質問ニ對シテ、結城大藏大臣ハ、ソ
レハ數字デハ申上ゲラレマセヌ、主ナル經
費ヲ要求スル陸海軍當局者ト能ク話合ヒヲ
シタ上デ計畫ヲ立テタイト思ヒマスト云フ
答辯デアリマス、次ニ臨時租稅增徵ト云フ
ガ、臨時トハ何時マデノ積リカトノ問ニ對
シテ、大藏大臣ハ昭和十二年度ダケノ積リ
ダト答ヘラレタノデアリマス、次ニ次期ノ
議會マデニ國稅地方稅ヲ通ジテ、根本的稅
制改革ヲ爲スノ意思アリヤ否ヤトノ質問ニ
對シテハ、大藏大臣ハ次ノ議會マデニ、中
央地方ヲ通ジテノ稅制改革案ヲ提出シテ
協賛ヲ求メル積リデアルト答ヘラレマシタ、
次ニ臨時租稅增徵案ハ臨時的立法デアルコ
トハ明瞭デアルガ、新稅法案ハ恆久的立法
ニ見エルガ、次ノ稅制改革ノ際ニドウナル
ノカトノ質問ニ對シテ、大藏大臣竝ニ政府
委員ハ、次ノ機會ニ根本的稅制改革ヲ爲ス
ニ際シテハ、此恆久的新稅ニモ手ヲ觸レル
トノ答辯デアリマシタ、次ニ今後ノ稅制整
理方針ハドウデアルカ、尙ホ此上增稅スル
ヤ否ヤトノ質問ニ對シテハ、大藏大臣ハ、
負擔ノ均衡ヲ目的トシテノ稅制整理ヲヤル
ノデ、增徵ヲ目的トシテノ整理デナイ積リ
デアル、併シ何處カニ餘地ガアルモノトス
レバ、自然ノ結果增徵ニナルカモ圖ラレナ
イ、併シ增徵目的ノ整理デナイト云フコト
ヲ繰返シテ說明サレ、且ツ國民負擔ノ增加
ハ避ケタイト明言サレマシタ、ソレカラ次
ノ稅制改革案ヲ立テル場合ニハ、今囘ノ暫
定案ヲ基礎トスルカ、ソレトモ全然白紙ニ
立還ルノカトノ質問ニ對シテハ、政府ハ全
然白紙ニ立還ルト云フ譯ニハ行カヌガ、併
シ決シテ拘泥セズニヤル積リダト言明サレ
マシタ、之ニ關聯シテ委員カラ、斯ル多額
ノ增稅ヲ爲スニ當ッテハ、政府ハ歲出ノ方面
モ十分檢討シテ、旣定經費ノ節減ヲ圖ル意
思アリヤ否ヤ、此質問ニ對シテハ、政府ハ
既定經費ノ節約ト云フコトハ、中々困難ナ
ル問題デアルケレドモ、出來ルダケ努力ス
ルト答辯サレマシタ、次ニ今囘ノ臨時租稅
增徵法案ハ、直接稅ト間接稅トノ何レニ重
キヲ置イタカトノ問ニ對シテハ、直接稅ニ
重キヲ置イタ、次ニ法人ト個人トノ負
擔ノ均衡ハドウデアルカトノ質問ニ對
シテハ、法人ニ重キヲ置イタト云フ答
デアリマシタ、次ニ增稅ト物價トノ關係ニ
付キマシテ、消費稅ノ引上ハ物價騰貴ヲ招
來スルト思フガドウデアルカトノ質問ニ對
シテハ、增稅ハ幾分カ物價ニ影響スルコト
ハ認メルケレドモ、物價騰貴ニハ種々ノ原
因ガアル、今日ノ物價騰貴ハ世界ヲ通ジテ
ノ物價騰貴デアリ、需要供給ノ關係カラモ
來テ居ルカラ、必シモ增稅ガヒドク物價ニ
影響スルトハ思ハレヌト云フ答辯デアリマ
シタ、次ニ國防充實ト產業發展ト兩立セシ
メナケレバナラヌガ、資本ニ重課スルノ嫌
ヒハナイカ、資本ニ對スル重複課稅ガ多イ
ト思フガドウカ、卽チ法人ノ課稅ニ付テ見
テモ營業收益稅、所得稅、臨時利得稅、超
過所得稅、更ニ玆ニ又法人資本稅ト云フモ
ノガ加ハルカラ、如何ニモ重複課税ダト思
フガ政府ハドウ考ヘルカ、此質問ニ對シテ
ハ、政府デモ重複課稅ハ認メテ居ルカラ、
此次ノ稅制改革ノ場合ニハ考慮シテ見タイ
トノ答辯デアリマシタ、次ニ國債ヲ優遇シ
テ株式ノ利廻ヲ惡クスルガ爲ニ、產業資金
ヲ壓迫シテ事業發達ヲ阻碍セザルヤトノ質
問ニ對シテ、政府ハ決シテ左樣ニハ思ハヌ、
株式ニ投資スル者ハ國債ヤ社債ニ投資スル
者ト違ッテ、必シモ利廻計算ノミヲ考慮ニ入
レテ居ナイ、株式ノ値上リヲ狙ッテ居ルモノ
ト思ハレルカラ、今囘ノ改正ニ依ッテ資金ガ
產業界ニ行カナクナルモノトハ考ヘラレナ
イト云フ答辯デアリマス、次ニ法人資本稅
ハ財產稅デハナイカトノ質問ニ對シテハ、
財產稅ハ法人ノ全財產ヲ評價シテ課稅スル
ノデアルガ、此法人資本稅ハ法人ノ拂込資
本金ト積立金ニ付テ課稅スルニ止マルカラ、
必シモ財產稅トハ思ハレヌト云フ解釋デシ
ク、ソレカラ法人資本稅ハ所得ノナイ、謂
ハバ缺損シタト云フ場合ニ、尙ホ此資本稅
ヲ課スルコトニナッテ居ル、サウスレバ是ハ
法人ノ內容ヲ益〓不健全ニナラシメ、且ツ
元本侵蝕ニナルデハナイカトノ質問ニ對シ、
政府ハ積立金ノアル法人ニ課稅スルノデア
ルカラ、積立金ヲ崩シテ納稅スベキデアル
ト答ヘラレタ、ソレニ對シテ積立金ハ必シ
モ金ガ積ンデアル譯デハナイ、或ハ機械ト
ナリ、設備トナリ、品物トナッテ居ルカラ、
ソレヲ處分シテ、或ハ借金シテ納メナケレ
バナラナクナル故、ヤハリ結果ハ元本侵蝕
ニ及ブデハナイカトノ質問ニ對シ、政府ハ、
積立金ハ過去ノ所得ノ累積デアルカラ、ソ
レヲ稅源ト認メテ課稅スルノデアルト云フ
答辯デアリマシタ、次ニ產業組合ガ有價證
劵ヲ購入スル場合ニ、有價證劵移轉稅ヲ課
スルノハ、從來產業組合ヲ保護助長シテ來
タ精神ト背馳セヌカ、今マデノ產業組合ニ
對スル國家政策ノ自己否定デハナイカトノ
質問ニ對シテ、政府ハ是ハ產業組合ニ課稅
スルノデハナイ、組合ガ取得スル有價證劵
ノ移轉ニ對シテノ課稅デアル、產業組合ガ
不動產ヲ取得スル場合ニ登錄稅ヲ取ル、尤
モ或ル特殊ノ場合ニハ登錄稅ヲ取ラナイノ
モアル、ケレドモ大體登錄稅ヲ課スルト云
フ立前ニナッテ居ルカラ、今度ノ有價證劵移
轉稅モ不動產登錄稅ト權衡ヲ取ッテ課稅ス
ルノデアルトノ答辯デアリマシタ、次ニ有
價證劵移轉稅ハ万分ノ八デアルノニ、不動
產登錄稅ハ千分ノ三十三ニナッテ居ル、是ハ
如何ニモ不均衡デアルシ、不動產ニ對スル
登錄稅ハ重過ギハシナイカ、次囘ノ稅制整
理ノ時ニハ輕減スルノ意思ナキヤトノ質問
ニ對シテハ、政府ハ有價證劵ノ移轉稅ト不
動產登錄稅トハ性質ガ全ク違フ、不動產ノ
財產ヲ登錄シテヤルト云フコトト、有價證劵
ノ如ク轉々スルモノニ稅ヲ課スルノトハ趣
意ニ於テ違フ、併シ登錄稅ノ高イコトハ認メ
テ居ルカラ考慮スルトノ答辯デシタ、次ニ揮
發油稅ニ付テ、政府ハ燃料國策ノ上カラ揮發
油稅ヲ取ルト云フコトガ、理由ノ一ツニナッテ
居リマスノデ、ソコデ委員カラ石炭液化ハ
尙ホ前途遼遠ノ如ク考ヘル、少クトモ數年ノ
後デナケレバ出來テ來ナイ、然ルニ急イデ
揮發油稅ヲ課シテ消費者ヲ苦シメ、今カラ
ソンナ高イ稅ヲ取ッテ行ク必要ハナイデハナ
イカトノ質問ニ對シテ、政府ハ、今カラ揮發
油稅ヲ取ッテ、値上シナケレバ、燃料液化ノ
事業ガ起ッテ來ナイト思フト云フ答辯デア
リマシタ、ソレカラ前藏相馬場稅制ニ於テ
取引稅、卽チ謂ハバ賣上稅デスガ、アノ賣
上稅ノ如キ商品ノ〓轉スル每ニ、課稅シテ結
局物價ヲ騰貴セシメ、消費者ヲ苦シメルヤ
ウナ新稅ハ、次期改革ノ場合ニ採用サレル
意思アリヤ否ヤトノ質問ニ對シテ大藏大臣ハ、
斯ル稅ヲ創設スルコトハ餘程考ヘ物デアル
ト、ハッキリ答ヘラレマシタ、次ニ個人財產
稅ノ如キ、課稅物件ノ捕捉調査困難デ
アッテ、其評價ニ物議ヲ起シ、官民摩擦ノ多
イ新稅ヲ起スノ意思アリヤ否ヤトノ質問ニ
對シ大藏大臣ハ、ソレハ易々ト登場サセナ
イ方ガ宜カラウト思ッテ居マスト答辯サレ
マシタ、次ニ國稅、地方稅ヲ通ジテノ根本的
稅制改革ニ付テハ、官民合同ノ調査會ヲ設置
スルノ意思アリヤ否ヤトノ質問ニ對シテ大
藏大臣ハ、民意ニ聽イテ政治ヲシタイト云
フ理想ダガ、併シ委員會トカ調査會等ヲ作
ルカドウカ決メテ居ラヌトノ答辯デシタ、
其他澤山ノ質疑應答ガアリマシタガ、質疑
終了シテ最後ニ討論ニ入リマシテ、民政黨
ノ川崎末五郞君ヨリ修正意見三箇條、附帶
決議六箇條提出サレ、政友會ノ三善信房君
ヨリモ同樣ノ提案ガアリ、何レモ兩君トモ
其說明ヲサレマシタ、次ニ昭和會ノ森肇君
ハ之ニ贊成サレマシタ、社會大衆黨ノ河野
密君ハ反對ノ意見ヲ述ベラレ、第二控室
ノ加藤勘十君モ反對ノ意見ヲ述ベラレマシ
タ、國民同盟ノ伊禮肇君ガ贊否ヲ保留サレ、
東方會ノ渡邊泰邦君ヨリハ反對ノ意思表示
ガアリマシタ、採決ノ結果、川崎、三善兩
君共同提案ニ係ル修正案及ビ附帶決議ハ多
數ヲ以テ可決サレマシタ、其修正案、附帶
決議共ニ是カラ述ベマス
修正案ノ第一ハ、臨時租稅增徵法案中ノ第
三種所得稅ノ累進稅率ノ中ニ「所得十万圓以
下」、其次ニハ「百万圓以下」トアル、其間ヘ
段階ヲ入レテ「所得五十万圓以下」ヲ入レル
ト云フ趣意ノ修正案デアリマス、第二ハ有
價證劵移轉稅法案ノ中デ、營利ヲ目的トセ
ザル法人ニシテ、所得稅法其他ノ法律ニ依ッ
テ所得稅ヲ課セラレナイモノハ有價證劵移
轉稅ヲ納メルコトヲ要シナイト云フ修正
案デアリマス、其内容ノ解釋ハ、產業組合、
商工組合、輸出組合、漁業組合、其他學校、
圖書館、病院、神社、寺院-何レモ財團
法人カ、社團法人ニナッテ居ラナケレバイ
ケマセヌガ、サウナッテ居ルモノヽ有價證劵
移轉稅ヲ免除スルト云フ修正案デアリマス、
第三、ハ法人資本稅ノ中デ、所得ナク〓損
ヲシテモ資本稅ヲ取ルト云フノヲ、是ハ苛
酷デアル、缺損ノ場合ニハ資本稅ヲ免除ス
ルト云フ意味ナノデアリマス、之ヲ法文ニ
シテ朗讀致シマス
臨時租稅增徵法案
第六條第一項中「同十万圓以下ナル所得
所得稅額ノ百分ノ四十五」ノ次ニ「同五十
万圓以下ナル所得所得稅額ノ百分ノ五
十五」ヲ加フ
同條第三項中「同十万圓ヲ超エ」ノ下ニ、
「五十万圓以下ナル所得、同五十万圓ヲ超
エ」ヲ加フ
有價證劵移轉稅法案
第八條ヲ左ノ如ク改ム
營利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得稅法
其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレザ
ル者ハ有價證劵移轉稅ヲ納ムルコトヲ要
セズ
法人資本稅法案
第八條第三項中「及積立」及ビ「及其ノ事
業年度末ニ於ケル積立金額」ヲ削ル
以上デアリマス、次ニ附帶決議ヲ申上ゲマ
ス、附帶決議ハ之ヲ朗讀スルニ止メマシテ、
後ニ討論ノ場合ニ、討論者ヨリ修正及ビ附
帶決議ノ趣意ヲ含メテ討論サレルモノト思
ヒマス
附帶決議
一臨時租稅增徵法ノ適用ヲ昭和十二年度
ニ限定シ政府ハ速ニ官民ヨリ成ル權威
アル調査會ヲ設ケ中央地方ヲ通ズル根
本的稅制改革ヲ行ヒ特ニ直接稅間接稅
ノ調整ヲ圖ルベシ
二稅制改革ニ當リ營業收益稅及自作農地
ノ地租免稅點ヲ適當ニ引上グベシ
三第三種所得稅ノ決定ニ際シテハ負債ノ
利子ハ其ノ原因ノ如何ヲ問ハズ總テ所
得金額中ヨリ控除スベシ
四相續稅ニ不動產ノ物納制度ヲ認ムベシ
五揮發油稅ノ收入ヲ財源トシ其ノ中ヨリ
相當額ヲ道路改良費ニ充テ且地方稅中
營業用自動車稅ノ輕減ヲ圖ルベシ
六政府ハ租稅ノ賦課徵收ニ當リ嚴ニ職權
ノ濫用ヲ愼ミ苟モ苛察ニ亙ラザルヤウ
注意スベシ
此六箇條ガ附帶決議デアリマス、以上ハ先
程申上ゲタ通リ、委員會ニ於テ大多數ヲ以
テ可決致シマシタ、此段御報告申上ゲマス
ト共ニ、諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=6
-
007・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 委員長報告ノ六案
ヲ一括シテ討論ニ付シマスガ、六案中臨時
租稅增徵法案、法人資本稅法案及ビ有價證
劵移轉稅法案ノ三案ノ委員會報告ハ修正デ
アリマスカラ、討論ハ便宜上第二讀會ニ於
テ爲スコトト致シマス、六案ノ第二讀會ヲ
開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス-六案ノ第
二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=7
-
008・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 起立多數(拍手)仍
テ六案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=8
-
009・中山福藏
○中山福藏君 直チニ六案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=9
-
010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=10
-
011・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ六案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
臨時租稅增徵法案第二讀會
法人資本稅法案第二讀會
外貨債特別稅法案第二讀會
揮發油稅法案第二讀會
有價證劵移轉稅法案第二讀會
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=11
-
012・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 討論ニ入リマス、
討論ノ通〓ガ多數アリマス、通〓順ニ依リ
發言ヲ許可致シマス-水谷長三郞君
〔水谷長三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=12
-
013・水谷長三郎
○水谷長三郞君 諸君、吾々ハ此臨時租稅
增徵法案外五件ニ對シ反對スル者デアリマ
ス、只今委員長ハ、委員會ニ於ケル審議ノ
經過ヲ委曲詳細報〓サレタノデアリマスル
ガ、吾々ハ此委員會ニ於ケル質問應答ノ跡
ヲ顧ミテ、愈〓反對スベキ論據ヲ固ムルニ
至ッタノデアリマス、吾々ノ反對論ハ、固ヨ
リ其根源ハ、曩ノ豫算討論ニ於ケル返上論
ニ發スルノデアリマスルガ、更ニ大體三ツ
ノ理由カラ本案ニ反對シタイト思フ次第デ
アリマス、其三ツノ理由ハ、第一點ハ結城
稅制ニ對スル技術的反對デアリ、第二點ハ
結城稅制ニ對スル政治的反對デアリ、第三
點ハ結城稅制ノ歷史性ヲ暴露シテ、我黨ノ
階級的態度ヲ明白ニシタイト思フ次第デア
リマス(拍手)
先ヅ第一點ノ技術的反對ニ於ケル詳細
ハ、曩ニ委員會ニ於ケル所ノ同僚河野密君
ノ反對意見モアリマシタガ故ニ、私ハ此點
ニ關シテハ極メテ典型的ナル一二ヲ述ベマ
シテ、私ノ反對ノ論據ニシタイト思フ次第
デアリマス、諸君、今貿易關係ノ新稅ヲ除
キマシテ、增徵サルベキ租稅ヲバ、直接
税間接稅ニ分ケテ之ヲ比較致シマスル
ニ、直接稅ハ所得稅、營業收益稅、資本利
子稅、相續稅、鑛業稅、外貨債特別稅、臨
時利得稅、法人資本稅、取引所稅、有價證
劵移轉稅ヲ合シマシテ、其總額二億二千九
百三十二万四千圓トナリ、之ニ反シマシテ
間接稅ハ酒稅、砂糖消費稅、揮發油稅、關
稅ヲ加ヘマシテ、合計五千八百九十九万圓
トナルノデアリマス、卽チ直接稅、間接稅
ノ比率ハ、今囘ノ增稅ハ直接稅ニ於テ、間
接稅ニ於ケルヨリモ大ナル增稅ガ行ハレテ
居ッタコトヲ物語ルコトハ、前ノ委員長ノ報
告通リデアリマス、此點政府ハ聲ヲ大ニシ
テ誇ッテ居ラレルノデアリマスルガ、併ナガ
ラ之ヲ以テシテモ-尙ホ斯ル直接稅ノ大
增稅ヲシテモ、我國ノ稅收入ノ重心ハ斷ジ
テ直接稅ニ移行シテ居ラナイモノデゴザイ
マス、實質ニ於キマシテハ、石渡局長ノ言葉
ヲ以テシテモ、間接稅ノ徴收ノ一形式デア
リ、又間接稅ノ一種トモ見ラルベキ專賣益金、
煙草收入ヲ除イテ計算致シマシテモ、昭和
十一年度稅收入豫算ヲ基準ニシテ、增稅後
ニ於ケル直接稅、間接稅兩稅ノ割合ハ、極
メテ大雜把ナ數字デアリマスガ、直接稅六
億三千四百万圓ニ對シ、間接稅ハ六億五千
七百万圓ニ達スル次第デアリマス、卽チ間
接稅ハ其收入尙ホ直接稅ヲ超エテ居ルノデ
アリマスルガ、若シ之ニ煙草專賣益金ヲ加
ヘルナラバ、間接稅ノ國稅收入上ニ占メル
所ノ比重ハ愈〓重クナルノデアル、此事實コ
ソハ、從來我國ノ勤勞大衆ガ如何ニ重稅ヲ
課サレテ居ッタカト云フコトヲ反證スルモ
ノデアリ、之ニ反シテ是程資本課稅ヲ增稅
シテモ、尙且ツ直接稅ガ少イト云フコト
ハ、資本家階級ガ如何ニ從來税金カラ脫シ
テ居ッタカト云フコトヲ、明々白々ニ數字ノ
上カラ雄辯ニ物語ルモノト言ハナクテハナ
ラヌノデアリマス(拍手)
諸君、吾々ハ西ト東ニ現在特異ナル傾向
ヲ以テ發展シツヽアル二ツノ國ヲ持ッテ居
ルノデアル、卽チ東ニハ資本主義ノ亞米利
加ガアリ、西ニハ「ソビエート」社會主義聯
邦ノ二箇國ガアルノデゴザイマス、資本主
義亞米利加ノ「ルーズヴェルト」大統領ハ、
一昨年三月議會ニ送ック〓書中ニ、最早稅法
上個人ト法人トヲ區別スル時ニアラズト言
ヒ、法人所得ニ累進稅率ヲ以テスル所得稅
ヲ提案シ、議會ハ四箇月ニ亙ル審議ノ結果
之ヲ通過シタノデゴザイマス、我國ノ法人
組織ノ發達モ亦實ニ顯著ナモノデアリマシ
テ、試ミニ合名、合資、株式等ノ會社數
ハ、大正五年ニ二万三千六百九十六デアッタ
ニ對シ、昭和十年ニハ九万四千五百九十二
ニ達シ、最近十九箇年ニ於テ約四倍ノ增加ヲ
示シテ居ル次第デアリマス、昭和十年ニ於
ケル第三種個人所得稅納稅者數ハ九十四万
一千六百四人デアリマシテ、サウシテ法人數
ハ九万四千六百ニ垂ントシテ居ル、此比率ヲ
バ-我國內地人口總數中ニ占メル第三種
個人所得稅納稅者ノ比率、昭和九年度ガ〇·
九二%卽チ百人ニ對シテ一人ニ足ラナイ、此
比率ト對照スルナラバ、我國ノ今日モ亦「ルー
ズヴェルト」ノ〓書ニ言ハレテ居ル如ク、
最早稅法上個人ト法人トヲ區別スベキ時デ
ハナカラウカト思フノデアル、然ルニ委員會
ニ於キマシテ、同僚河野議員ガ此點ニ關シ
テ爲シタル質問ニ對スル政府當局ノ答辯ハ、
顧ミテ他ヲ言フ所ノ類デアッテ、吾々ハ斷ジ
テ承服スルコトガ出來ナカッタノデアル、政
府ハ聲ヲ大ニシテ庶政一新ヲ叫ンデ居ルニ
拘ラズ、政府ハ法人所得-法人普通所得ニ
對シテサヘモ、尙且ツ累進稅率ヲ適用スル
勇氣ヲ斷ジテ持タナイモノデアル(拍手)斯
ク資本ノ課稅ニ怯懦ナル結城藏相モ、勤勞
階級ノ課稅ニ於キマシテハ洵ニ勇猛果敢ナ
ルモノガアリマス、例ヘバ日本酒ニ對シマ
シテ今囘一割二分五厘ノ增稅ガ行ハレ、
石四十圓ノ現行稅ハ、石四十五圓ニ改メラ
レヨウトシテ居ル、一升一圓ノ日本酒ニ四
十五錢ノ稅金ト致シマスレバ、其稅率ハ實
ニ四割五分ニ相當スルノデアル、而シテ一
升一圓ノ酒ノ倉元元價ガ四割引ノ六十錢デ
アルト致シマスレバ、ソレニ對スル四十五
錢ノ稅率ハ實ニ七割五分ニ達スルノデアル、
若シ元價ガ五掛ケデアルト致シマスレバ、
倉元卸賣元價ニ對スル酒ノ稅金ハ、實ニ九
割ニ達スルト云フ次第デゴザイマス、諸君、
「ソビエート」社會主義聯邦ハ、國ノ立前上
其稅金ハ全部間接稅ニ依ッテ居ルノデゴザ
イマスルガ、此國ハ千九百三十一年ノ稅制
改革ニ於テ、取引稅ヲ改正致シマシテ「ウ
オッカ」ニ對スル取引稅率ハ、卸賣値段ノ九
割三分四厘ノ從價稅トサレテ居ルノデアリ
マく、卸賣價格ニ對シ九割三分四厘ノウ
オッカ」取引稅デアル、國民生活安定ヲ叫ブ
今日、我國ニ於キマシテ大衆ノ接觸スル酒
稅ハ卸賣倉元價格ノ九割デアル、實ニ間接
稅一本デ進ンデ來テ居ル、「ソビエート」聯
邦ノ稅金ニ比較シテモ、優ラウトモ斷ジテ
劣ラナイ重稅デアルト言ハナケレバナラヌ
ノデアリマス(拍手)「ソビエート」聯邦ノ砂
糖取引稅ハ、都市ニ於テ卸賣値段ノ六六%
ト規定サレテ居ル、結城大藏大臣ハ一斤二十
錢程度ノ砂糖ニ付キマシテ、十五六錢ノ消
費稅ノ課稅ヲシテモ滿足セナイデ、今又二
割四割ノ增稅ヲ提案シツヽアル、斯クテ
國民ノ負擔スル砂糖消費稅ハ、小賣値段ニ
對シテ八割乃至九割ノ稅率トナラウトシテ
居ルノデアリマス、「ソビエート」聯邦ニ於
キマシテハ、卸賣値段ニ對シテ六六%、我
國ハ小賣値段ニ對シテ八○乃至九〇%、實
ニ面白イ對照ト言ハナクテハナラヌノデゴ
ザイマス、諸君、太平洋ト日本海ヲ隔テマ
シテ相對スル異色アル此一一ツノ國ノ稅制改
革ニ、我國今囘ノ增稅ヲ比較スルコトニ依
リマシテ、私達ハ今囘ノ結城增稅案ト云フ
モノガ、資本ヘノ課說ニ於テハ資本主義亞
米利加ニ數步劣リ、數步怯懦デアルガ、大
衆ノ課說ニ於テハ「ソビエート」聯邦ニ數步
優リ、數步勇敢デアルト斷言シナクテハナ
ラヌノデアル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、結城
大藏大臣ハ國民大衆ノ大臣デアル前ニ、日
本經濟聯盟、日本商工會議所ノ大臣タラン
トシテ居ルノデアル、吾々ノ反對ノ論據ノ
第一點ハ當ニ玆ニアルノデゴザイマス
更ニ吾々ノ反對ノ第二點ヲ申上ゲマスレ
バ、私ハ曩ニ本案ニ對シ、此壇上カラ結城
大藏大臣ニ直接稅ノ轉嫁問題ヲ質問シタモ
ノデゴザイマスルガ、昭和十年臨時利得稅
三千万圓ガ創設サレタ時ニ、是ガ課稅ヲ受
ケタ軍需工業勞働者ノ賃銀ガ、他種工業勞
働者ニ比較シテ急激ナル低下ヲ示シテ、軍
需工業資本ノ純益ハ課稅ノ爲ニ減少セズ、
勞働者運動ハ其前年マデ賃銀値上要求ヲ以
テ、次第ニ强ク起上ッテ來タノデアリマス
ルガ、昭和十年ヲ轉機ト致シマシテ、値下
反對鬪爭ニ我國ノ勞働運動ハ主力ヲ注ガネ
バナラナカッタ點ヲバ吾々ハ述ベタノデ
アリマス、此點ニ付キマシテ委員會ニ於テ
私等ノ同志ハ更ニ追究シタモノデアリマス
ガ、其結果石渡政府委員ハ次ノ如ク答辯サ
レテ居ルノデアル、卽チ其大要ヲ申シマス
レバ、轉嫁關係ヲ見ナケレバ租稅ガ果シテ
衡平カドウカハ分ラナイ、轉嫁ノ一番困難
ナル稅ハ第三種所得稅、ソレカラ相續稅ト
云フヤウナモノヲ考ヘルコトガ出來ル、サ
ウシテ最モ問題デアリマスノハ、法人ノ所
得稅ガ轉嫁スルカドウカト云フコトデアラ
ウ、是モ實際問題トシテハ、或ル程度マデ
轉嫁致スコトハ已ムヲ得ナイト存ジマスト
云フ答辯ヲバ、石渡局長ハ同僚議員ノ質問
ニ對シテ爲サレテ居ルノデアル、卽チ此答
辯コソハ、直接稅モ亦轉嫁スルモノデアル
ト云フ、吾々ガ長イ間唱ヘテ來タ所ノ理論
闘爭ニ、大藏當局ガ屈服シタモノト吾々ハ
斷言シテ憚ラナイノデアリマス(拍手)顧ミ
レバ昭和三年第一次普選ニ依リマシテ、吾
吾無產階級ノ代表者ハ初メテ議會ニ出タノ
デゴザイマスガ、其時田中政友會內閣ノ兩
稅委讓法案ガ議會ニ提出サレタ時ニ、吾々
ハ直接稅ノ轉嫁論ヲ極力主張シタモノデゴ
ザイマス、同僚河上丈太郞君ハ當時委員會
ニ於キマシテ、時ノ大藏大臣三土忠造氏ニ
此點ヲ質問シ、恐ラク三土氏モ初メテ聽ク
所ノ議論トシテ、今尙ホ腦裏ニアラウト思フ
ノデゴザイマス、斯ノ如ク私等ハ此議會ニ
議席ヲ占メタ當初カラ、此「ブルジョア」經
濟御用學者ノ口癖ノヤウナ、直接稅ハ斷ジ
テ轉嫁セナイト云フ租稅理論ニ、吾々ハ抗
爭シテ來タノデアル、サウシテ爾來十年間、
今日第七十議會ニ於キマシテ、遂ニ政府當
局カラサヘモ、直接稅ハ場合ニ依リテ轉嫁
スルト云フ、兜ヲ吾々ハ脫ガシタノデゴザ
イマス、私達ハ此勝利ヲ知ッテ居ルガ故ニ、
卽チ直接稅モ亦轉嫁スルモノデアルト云フ
理論的勝利ヲ知ッテ居ルガ故ニ、政府當局ガ
直接稅ノ勤勞階級ヘノ轉嫁ヲ認メナガラ、
其轉嫁ヲ防止スベキ何等ノ防塞ヲモ勤勞階
級ニ與ヘナイコトニ、吾々ハ斷乎トシテ反
對スルモノデアル(拍手)現ニ三月十日ノ增
稅委員會ニ於キマシテ、結城大藏大臣ハ此
轉嫁ニ關シテ、此轉嫁モ必シモ惡イ結果ニ
ナラヌ、經濟界ノ自然ノ流レガ其處ニ行
〃、轉嫁スルガ必シモ大衆ノ苦痛ト云フヤ
ウナコトニ考ヘヌデモ宜イヂヤナイカト云
フヤウナコトヲ放言サレテ居ルノデアル、
又本會議ニ於キマシテ-內務大臣ガ居ラ
レマセヌカラ、マルデ缺席裁判ヲ言渡スヤ
ウデゴザイマスガ、內務大臣ニ對シマシテ
私ハ此轉嫁論ヲ述べ、之ヲ民衆ガ防グ所ノ
所謂防衞手段トシテ、勞働者ニハ勞働組合
法、小作人ニハ小作法、之ヲ制定シナクテ
ハ駄目ヂヤナイカト云フコトヲ質問シタニ
對シマシテ、內務大臣ハ實ニ驚クベキ答辯
ヲサレタ、勞働者モヤハリ國民ノ一部デア
ルカラ考ヘナクテハナラヌ、實ニ大學時代
授業料ヲ値切ッタヤウナ月足ラズノ答辯ヲ
サレタノデゴザイマス、吾々ハ此樣ニ考ヘ
ルニ時ニ、民衆ノ政治的自由ガ斷ジテナイ
限リ、卽チ勞働者ニハ勞働組合法ノ團結權
ガナク、小作人ニハ小作法ノ制定、耕作權ノ
確立ガナイ現在ニ於キマシテハ、如何ニ此
度ノ增稅案ニ於テ政府當局ガ自慢ヲシテ、
直接稅ヲ此樣ニ大增稅シタノダト大言壯語
サレマシテモ、ソレハ結果ニ於テハ直接稅
轉嫁ノ大進軍ニ外ナラナイノデアリマス
(拍手)勤勞階級ノ生活ヲ一層窮乏ニ陷レル
以外ノ何モノデモナイノデアル、是ガ吾々
ガ反對スル所ノ實ニ第二點デゴザイマス
(拍手)
諸君、吾々ハ單ニ以上ノヤウナ課稅技術
上ノ點ノミニ跼蹐シテ反對スル者デハナイ
ノデゴザイマス、眼ヲ開イテ昭和六年滿洲
事變勃發以來ノ日本資本主義ノ動向ヲ見マ
スルニ、資本收益ノ驚クベキ躍進ト、逆ニ勤
勞大衆家計ノ慘澹タル窮乏トガ、相反馳セ
ル雙曲線ヲ描イテ進行シテ居ル事實ヲ吾々
ハ見ルノデゴザイマス、政府當局ハ昭和六年
秋以來、ズット勤勞者家計ノ收支調査ヲ行ッテ
居ルノデゴザイマスガ、此調査結果ヲ見マス
ルト、月收五十圓以上百圓未滿ノ收入階級
ノ勤勞收入對實支出ノ過不足ヲ吾々ガ玆ニ
考ヘルト、昭和六年カラ七年ノ間ニ掛ケテ
ハ、八十七錢乃至五圓四十七錢ノ收入超過
ヲ示シテ居ッタモノガ、昭和九年カラ十年ニ
於キマシテハ、ズット其額ガ減少シテ、三十
二錢乃至四圓五錢ト收入超過ハ減ッテ居リ
マシテ、更ニ六十圓未滿ノ者ニ於テハ、實
ニ月々二十八錢ノ赤字ヲ示シテ居ルノデゴ
ザイマス、是ハ單ニ我黨ノ勝手ニ決メタ數
字デハナシニ、内閣統計局家計調査報告ニ
基イタ所ノ數字デゴザイマス、然ルニ株式
會社ノ純益金ハ、三菱經濟〓究所ノ調査ス
ル所ニ依レバ、昭和六年上期ヲ百トスル純
益金指數ガ、昭和十一年上期ニハ二百五十
九ト昇リ、純益金ハ六年上期ハ一億六百万
圓、十一年上期ハ四億六百万圓トナッテ居ル
ヤウナ次第デゴザイマス、更ニ又大藏省金
融事項參考書ノ示ス所ニ依リマスレバ、會
社配當金ハ昭和六年ニ五億四千万圓デアッ
タモノガ、十一年ニハ九億二千八百万圓ト
ナリ、此五箇年ノ間ニ配當金增加額ハ、實
ニ三億八千八百万圓ニ上ッテ居リマス、三菱
經濟〓究所ノ調査發表シタ會社純益金指數
ハ、昭和十年上期ノ二百四十四ニ比シ、十
一年度上期ハ二百五十九デ一層躍進ヲ續ケ
テ居ル、之ニ從ッテ配當金モ或ハ十一年度ハ
十年ニ比ベマシテ、一層增加スルデアラウ
ト云フコトヲ吾々ハ推測出來ルノデアリマ
ス、五箇年ニ三億八千八百万圓ノ配當金ガ
增加シ、又純益金ガ三菱〓究所ノ調査ニ於
テ、半期ニ三億圓ヲ增加シテ居ル時ニ、
箇年ニ僅ニ二億二千九百万圓、而モ其中ニ
ハ大衆課稅ヲ含ンデ居リマスルガ、サウ云
フ僅カノ直接稅ノ增加シタ其增稅ガ、果シ
テ資本ニ殊更苛酷ナモノデアルカ、或ハ恩
惠デアルカドウカト云フコトハ、理論ヲ超越
シテ以上ノ數字ガ明々白々ニ吾々ニ傳ヘテ居
ルト斷言シテ憚ラヌノデアリマス、別シテ此
資本收益ノ增加ハ、果シテ何ニ基クカト云
フコトヲ考ヘマスレバ、是等ノ資本收益ノ
增加ハ多額ナル大衆課稅、間接稅ノ收入、
或ハ將來ノ驚クベキ大衆課稅デアル公債收
入ニ依ッテ招來サレルモノデアル以上ハ、此
直接稅增收ニ依ッテ誇リ得ベキ寸毫ノ名譽
モ政府ハ持合セナイノデアル、直接稅二億
三千万圓ノ增加ハ、政治上何等誇示スルニ
値ヒシナイト吾々ハ斷言スルノデアリマス
(拍手)更ニ吾々ガ內閣統計局ノ家計調査報
告ヲ累年比較〓究致シマスルト、月收五十
圓以上九十圓未滿ノ勤勞者ノ月支出中ニ占
メル公課ノ比率ハ、昭和六年カラ昭和七年
ニ比較シテ、昭和九年、十年ハ遙ニ增大シ
テ居ル、卽チ〇·二三%乃至〇·二〇%デ
アッタ公課負擔ハ、實ニ〇·三六%乃至〇·
二一%ニナッテ居ルノデゴザイマスル斯ノ
如ク公課負擔ハ重クナッテ行ク、其上前述ノ
如ク家計ノ餘裕ハ減少シテ、家計ハ益〓苦シ
クナッテ行ク、是ハ實ニ政府自身ノ名ニ於テ
社會ニ公表シテ居ルニ拘ラズ、玆ニ更ニ約六
千万圓、而モ煙草ノ値上ヲ除外シタ狹義ノ
間接稅ガ增收サレルノデゴザイマス、此計
畫ハ斯クテ此點カラ見テモ、勤勞者ノ生活
ヲ一層窮迫ニ追込ム所ノ增稅デアルト斷言
シテ憚ラナイノデアリマス(拍手)否、少ク
トモ勤勞者ノ生活ヲ顧ミナイ亂暴ナ增稅デ
アルト吾々ハ言フノデアル、然ラバ吾々ハ
今囘ノ增稅計畫ヲバ資本主義現段階ノ所得
配分ノ社會的基礎ニ於テ、其政治的意義ヲ
端的ニ結論スルナラバ、吾々ハ次ノ如ク言
ヘルノデゴザイマス、卽チ直接稅ノ增稅額
ハ、如何ニ政府ガ誇示シテ、多イトカ或ハ
多過ギルトカ申シマシテモ、軍需景氣ニ惠
マレタ增大シタ資本配當增加額ノホンノ一
部分タケヲバ侵スニ過ギナイト私ハ斷言ス
ルノデアル(拍手)
更ニ之ニ反シテ間接稅ノ增收額ハ、勤勞階
級ノ赤字家計ヲバ愈〓擴大スルモノト吾々ハ
斷言スル、更ニ吾々ハ言葉ヲ强メテ申シマス
ナラバ、結城增稅ハ勤勞者ノ家計ヲバ蹂躪シ
テ、資本ノ收益ニ捧ゲントスル、資本家奉仕
ノ增稅デアルト斷言スルノデアル(拍手)政
府ハ負擔ノ衡平トカ、色々ナコトヲ言ッテ吾々
ヲ胡麻化シテ居ルノデゴザイマスルガ、併
ナガラ其負擔ノ衡平ハ、單ニ租稅負擔能力
カラ見タダケデハ不十分ダト言ハナケレバ
ナラヌ、楯ノ半面ニアル所ノ國家歲出ノ方
面カラ增稅計畫ヲ檢討シナケレバナラナイ
ノデアル、租稅收入ハ實ニ歲出ノ主要ナル
支柱デアルカラデゴザイマスル、今此大增
稅ヲバ吾々ガセナケレバナラナカッタ原因
ハ、言フ迄モナク最近ニ於ケル國費ノ膨脹
デアル、國費ノ膨脹率ハ軍事費ヲ第一トス
ルコトハ、三尺ノ童子ト雖モ分ッテ居ルノデ
ゴザイマス、我國ノ總豫算ハ昭和六年ノ十
四億カラ、十二年度ノ二十八億ト倍增シタ
ノデアリマスルガ、豫算ハ其樣ニ倍ニナリ
マシタガ、其間ニ陸海軍兩省費ハ四億五千
万圓カラ十四億万圓ト、實ニ三倍ニ餘ル所
ノ增加ヲシテ居ルノデゴザイマスル、斯ク
テ租稅收入ト陸海軍兩省費ト比較シタ最近
ノ年次ノ計數ヲ申上ゲテ見マスト、昭和八
年ヲ劃シテ、卽チ滿洲事變勃發以來ヲ劃シ
マシテ、陸海軍兩省費ハ租稅收入ノ全部ヲ
軍部兩省ニ呑ミ盡シテモ、尙ホ足ラナイト
云フ有樣デアル、吾々ハ玆ニ昭和六年カラ
昭和十一年度ノ決算、現計、實行豫算ヲ持ッ
テ居ルノデゴザイマスルガ、昭和八年租稅收
入七億四千八百五十六万六千圓、是カラ陸
海軍ノ兩省費ガ八億七千二百六十二万圓、
玆ニ卽チ我國ノ租稅收入ハ軍部兩省ノ豫算
ガ呑ミ盡シタコトヲ吾々ハ知ルノデゴザイ
マス、明治以來ノ我國財政史ヲ繙イテ、租
稅收入ノ全部ヲ擧ゲテモ、尙且ツ陸海軍兩
省費ヲ賄ヒ切レナカッタ時代ハ、僅ニ明治三
十七八年日露戰爭當時ニ吾々ハ見ルノミデ
アル、然ルニ現在ニ於キマシテハ、何等如
何ナル國トモ宣戰ヲ布告シテ居ラナイニ拘
ラズ、租稅收入ハ陸海軍兩省費ヲ充シ得ナ
イ日露戰爭當時ノヤウナ傾向ヲバ、吾々ノ
前ニ示シテ居ルノデアル、言葉ヲ換ヘテ申
シマスレバ、アノ先ニ申シマシタ昭和八年
當時カラ、廣義國防論ト云フモノガ突如ト
シテ軍部ノ一角ニ捲起リ、昭和九年十月ニ
アノ有名ナ陸軍ノ「パンフレット」ガ出マシ
テ、廣義國防々々々々ト唱ヘラレタノデア
ルガ、廣義國防々々々々ト唱ヘル聲ノ大キ
イノニ比例シテ、我國ノ軍事豫算ハ又益〓大
キクナッタト云フ事實ヲバ、吾々ハ斷ジテ忘
レナイノデゴザイマス(拍手)遂ニ馬場財政
ハ三十億四千万圓ノ豫算、六億ノ增稅、三
億ノ減稅ノ、劃期的增稅トナッテ吾々ノ前
ニ現レタノデアリマス、此馬場增稅ニ修正
ヲ加ヘタノガ此度ノ結城增稅デアリマスガ、
此增稅ハ明ニ軍事費支出ノ爲ノ增稅ニ外ナ
ラナイト吾々ハ斷言スルノデゴザイマス、
此國防費ノ爲ノ增稅、若シ是ガ勤勞者階級ノ
生活ト、國家トヲ護ル爲ノ增稅デアルナラ
バ、又吾々ハ何ヲカ言ハンヤデゴザイマス、
全所得ヲ擧ゲテ國家ニ捧ゲテモ悔イルモノ
デハナイノデゴザイマスルガ、其護ラント
スル日本國土ノ中ニハ、資本主義經濟ガ支
配的機構トナッテ存在シテ居ル、サウシテ勞
働者ハ低賃銀デ惱ムノミデハナイ、工場法
適用工場ニ於ケル勞働者災害死亡數ハ、九
年度ニ於テ五百五十四名ヲ算シ、生產勞働
者ハ資本ノ犠牲ニ依ッテ鮮血ヲ流シテ居ルト
云フヤウナ狀態デゴザイマス、斯ル資本家
的生產ニ對シテ修正ヲ加ヘヨウトモシナイ、
又其意圖ヲバ財政豫算ニモ盛ラウトハシナ
イ、歲出ノ爲ノ增稅デアル、勞働者、農民ノ
乏シイ所得ヨリ多額ノ增稅ガ徵收サレ、而
モ是ガ直接何等勞働者、農民ノ幸福ニ充テ
ラレナイト云フ始末デゴザイマス
併ナガラ吾々ハ假令僅カノ增稅デアリマ
シテモ、若シ日本ノ財政ニ見透シガ付キ、或
ハ二年三年辛抱スレバ酒モ安クナル、或ハ
煙草モ安クナル、或ハ稅金モ安クナルト云
フヤウナ見透シガアレバ、尙且ツ吾々ハ一
時忍ビマセウ、併ナガラ現在日本ノ政府ノ
ヤリ方ト云フモノハ、實ニ國民大衆ヲ驅ッテ、
決勝點ノ無イ「マラソン」競爭ニ追ヒヤッテ
居ルモノデザイマス(拍手)或ハ一部ノ者ガ
出テ、ソラ非常時局ダト言ッテ國民大衆ノ尻
ニ鞭ヲ與ヘル、其非常時ト云フ言葉ガ耳ニ
胝ガ出來テ、モウ應ヘナイヤウニナルト、
次ニハ準戰時ダト言フ、更ニ又ソレガ效ガ
ナケレバピント髯ヲヒネッテ、一觸卽發ト云
フヤウナ言葉ガ出マシテ、サウシテ國民大
衆ノ尻ヲ叩イテ、ソラ走レ〓〓ト言ハレル
ノデアリマスガ、國民大衆ハナンボ走ッテモ
走ッテモ決勝點ニ達スルコトガ出來ナイノ
デアル、卽チ決勝點ニ達スルコトガ出來ナ
イ「マラソン」競走ニ出マシテ、今ヤ日本ノ
勤勞大衆ハ、現內閣ノ下ニヘト〓〓ニナッテ
居ルト云フノガ、我國勤勞大衆ノ僞ラナイ
生活ノ姿デアリマス(拍手)
私達ハ斯ク增稅ノ目的ヲ見ルト、此增稅
ニ斷乎タル反對ヲ叫ブ者デゴザイマス、國
民生活安定向上ヲ度外視シテ、單ナル軍事
費支辨ノ爲ノ增稅ニ、而モ勤勞者ノ生活ガ
侵サレル其增稅ニ對シマシテ、吾々ハ飽
マデモ反對スル者デアリマス、更ニ吾々ハ
言葉ヲ換ヘテ、言葉ヲ强メテ申シマスナラ
バ、資本主義生產組織ヲ國內ニ存續セシメ
ツヽ軍事、國防費ノ爲ニ財源ヲ必要トス
ルナラバ、直接稅轉嫁ヲ防グ所ノ城塞ヲバ
勤勞者大衆ニ許シタ上デ、言葉ヲ換ヘテ申
シマスレバ、勤勞者大衆ニ政治的自由ヲ與
ヘタ上デ、而モ其財源ハ全部全資本家ノ利潤
カラノミ稅金ヲ取レト吾々ハ主張スル者デ
ゴザイマス(拍手)吾々ハ以上ヲ以テ吾々ノ
第三點ノ反對デアル、政治的反對論ノ論據
トスルモノデゴザイマスガ、更ニ吾々ハ最
後ニ第四點ト致シマシテ、結城稅制ノ歷史
性ヲ暴露致シマシテ、我黨ノ態度ヲ明白ニ
シタイト思フ次第デゴザイマス
此結城稅制ハ諸君モ既ニ御存ジノ如ク、
馬場財政ノ修正トシテ現レタモノデアル、
而シテ馬場財政ハ昨年三月九日ノ第一次聲
明ニ於キマシテ、將來歲出ノ減少ヲ豫想ス
ルコトハ恐ラク不可能デアルノミナラズ、
或ハ更ニ新ナル國費ノ增加ヲモ覺悟セネバ
ナラヌ實情ニアル際ニ、歲出ノ一部ヲ公債
ニ依リ支辨スルコトハ固ヨリ何等ノ差支ハ
ナク、又今日公債ノ發行ガ行詰リツヽアル
モノトハ考ヘマセヌ、國及ビ地方ヲ通ジテ
租稅ノ根本的改革ヲ行ヒ、負擔ノ均衡ト租
稅收入ノ增加ヲ圖リ、更ニ金融界ノ情況ニ
卽シテ、適當ナル通貨政策竝ニ低金利政策
ヲ實施シ云々ト述べ、敢然トシテ高橋財政
修正ヲ宣言サレタノデゴザイマスル、高橋
故大藏大臣ハ、晩年其豫算編成ニ際シマシ
テハ、常ニ增稅ニ反對シ、增稅ハ未ダ其時
期ニアラズト反對サレテ來タノデゴザイマ
スルガ、滿洲事變處理ノ爲ノ經費ヲバ公債
ニ求メナガラ、而モ公債增發ニ消極的デアッ
タノデアリマス、此事ハ昭和九年以來昭和
十一年度ノ各年度豫算綱要說明文中ニ於キ
マシテ、公債發行ノ減少ヲ圖ルトカ、或ハ
公債發行額ノ增加ヲ避ケルトカ、サウ云フ
文字ヲ見テモ、ハッキリト吾々ハ知ルコトガ
出來ルノデアリマス、果シテ此事實ハ一體
何ヲ語ルノデゴザイマセウカ、故高橋大藏
大臣ハ日本資本主義ノ矛盾ヲ爆發サセタニ
過ギナカッタ、滿洲事變ヲバ資本主義ノ必然
ト見ラレズ、之ヲ單ナル偶然事ト理解サレ
マシテ、最近ノ機會ニ之ヲ除去シ、資本主
義ノ健全財政ニ立還ラウト念願サレテ居ッ
タト吾々ハ推測スルノデアル、隨テ滿洲事
變ヲバ、サウ云フ一時的ノ偶然事ト解釋サ
レタガ故ニ、滿洲事變ヲバ資本主義ノ必然
的矛盾ノ產物デアルト見ラレナカッタガ故
ニ、此支出ヲバ經常支出トスルコトニ反對
シ、赤字公債ニ依ッテ一時ヲ糊塗サレヨウト
シタノデゴザイマス、併ナガラ此滿洲事變
ハ、其進行ノ間ニ國際關係ノ逼迫カラ、遂
ニ兵備改善費ノ恆久的支出ヲ伴ッテ來タ次
第デゴザイマス、今之ヲ表ニ依ッテ見マスレ
バ、昭和八年ニ於テハ二億三千九百万圓アッ
タモノガ、九年ニハ三億三千百万圓、十年
ニハ三億六千六百万圓、十一年度ニハ三億
九千四百万圓ト、兵備改善費ハ增加シテ來
タノデゴザイマス、卽チ滿洲事變費、竝ニ之
ニ隨伴スル支出ハ、高橋財政ノ晩年ニ於テ
ハ、之ヲ一時的、偶然的支出ト認メルコト
ガ出來ナカッタヤウナ狀態ニナッタ、此事態
ヲバ看取シテ、滿洲事變ニ日本資本主義
ノ一轉機ヲ發見サレ、之ヲ必然ト觀念サレ
タノガ馬場財政デアリマシテ、ソレ故ニ馬
場氏ハ敢然高橋財政ノ修正ヲ宣言シ、一方
ニ於テハ公債增發政策、他方ニ於テハ增稅
計畫ヲ立テマシテ、玆ニ高橋財政ノ反對的
立場ノ旗ヲバハッキリト揭ゲラレタ次第デ
ゴザイマス、併ナガラ此厖大豫算ハ、諸君
モ既ニ御存ジノヤウナ物價騰貴ヲ以テスル
資本家ノ猛襲ニ敢ナク倒レ、茲ニ現レタ
ノガ結城税制デゴザイマス、結城大藏大臣
ハ、此本會議ニ於キマシテ、一ツノ比喩ヲ以
テ自分ノ財政ヲ物語ッテ居ラレル、其比喩ト
ハ何デアルカト申シマスレバ、高橋財政ハ
入ルヲ計ッテ出ヅルヲ制シタ、馬場財政ハ出
ヅルヲ計ッテ入ルヲ制シタガ、自分ハ難キデ
アルケレドモ、其中道ヲ步マントスルモノ
デアルト云フコトヲ言ハレタノデアル、此
所謂結城大藏大臣ガ、サリ氣ナク本會議デ
申サレマシタ、此比喩ノ意味スル日本資本
主義ノ歷史的意義ヲバ吾々ハ究明致シマシ
テ、結城增稅ノ本質ヲバ摘出シテ見タイト
思フ次第デゴザイマス、今馬場增稅ト此度
ノ結城增稅ノ增減ノ計數ハ、直接竝ニ間接
稅ニ於テ比較致シマスレバ、結城增稅ハ馬
場增稅カラ直接稅ヲ減ラスコト八千六百九
十九万圓、間接稅ヲ減ラスコト七千八百五
十四万圓、卽チ結城大藏大臣ハ、所有課稅
タル直接稅ニ於テヨリ多ク輕減サレテ居ル
ノデゴザイマス、而シテ馬場增稅ハ金融資
本ノ攻擊ニ敗レマシテ、國債利子ノ綜合課
稅ニ除外例ヲ設ケタノデアリマスガ、結城
稅制ハ更ニ一步ヲ進メテ源泉課稅ニ戾シ、
金融資本ノ利益ヲ擁護シ、又配當金全額課
稅ヲ二割控除課稅ニ改メテ、金融生活者ニ
熱キ慈悲ノ淚ヲ垂レラレタコトハ、天下明
白ナル事實デアリマス、現行所得稅法第十
四條ノ配當金四割控除規定ノ改正ハ、本會
議ニ於テモ、委員會ニ於テモ、强ク論議サ
レタノデゴザイマスガ、此規定ノ爲ニ昭和
ノ初ニ於キマシテ三井、三菱兩家ノ一箇年
ノ減稅ト申シマスカ、負擔ヲ免除サレル所
ノ稅額ハ、實ニ合セテ二百三十九万圓デア
ルトノコトデアリ、此樣ニ三井、三菱ニ二
百數十万圓ノ輕減ヲスル法規ヲ設ケラレタ
ノハ、何時デアルカト申シマスレバ、彼ノ
曾テ日本ノ政黨史ニハッキリシテ居リマス、
島田三郞ノ普選ノ演說ノ文句ヲ捉ヘラレマ
シテ、原政友會總裁ガ解散ヲ斷行サレ、其
直後政友會ノ黃金時代デアリマスル第四十
三議會、卽チ原政友會內閣ノ時ニ、政友會
ガ此規定ヲ作ッタノデゴザイマス、此時憲政
會ノ代表者、今ハ議席ニ居ラレマセヌガ、
鈴木富士彌氏ガヤハリ本會議ノ壇上ニ立ツ
テ之ニ反對ヲシテ居ル、更ニ現在政友會ノ
領袖ニシテ財政通ト言ヘバ、アナタト呼ベバ
アナタト答ヘル歌ノ文何ノ大口喜六サン
ガ、其時分國民黨ノ代表者トナッテ此案ニ反
對サレテ居ルノハ、實ニ感慨無量デアリマ
ス、更ニ又此議席ニ居ラレル三土忠造氏ハ、
二割ヲバ三割ニ修正スル意見ヲ提出サレ、
更ニ貴族院ガ四割ニ再修正サレタ時ニ、之
ニ勇敢ニ贊成サレテ居ルノデゴザイマス、
吾々ハ何人モ蔽フコトガ出來ナイ此速記錄
ノ文字ヲ見テ、實ニ現在ノ議會ノ階級性ヲ
明々白々ニ知ルコトガ出來ルノデアリマス、
此樣ニ結城稅制ハ馬場增稅ヲ變更致シマシ
テ、金融資本ニ好都合ナル、其希望ニ十分ニ
副フヤウナ修正ヲサレタノデゴザイマス、
而シテ一面增稅ノ持ツ軍事費的性質ハ一段
ト輝クニ至ッタノデアル
由來我國ノ增稅ハ、明治以來常ニ軍事費
支辨ノ爲ノ增稅デアッタ、日〓戰爭ノ時モサ
ウデアッタ、日露戰爭ノ時モサウデアッタ、
否明治ノ初年ニ於テモサウデゴザイマス、斯
ノ如ク歷史的ニ軍事的色彩ヲ持ッテ生レタ
結城增稅ハ、何故ニ馬場增稅ヨリモ一層戰
爭的色彩ヲ濃厚ニ浮ベテ來タカト云フコト
ガ、玆ニ起ル問題デゴザイマス、卽チ諸君
モ既ニ御存ジノヤウニ、各省豫算ノ各〓削
減繰延ガ行ハレタニ拘ラズ、軍部兩省ハ馬
場豫算ニ盛ラレタ其儘デアル、僅カ各〓二千
數百万圓ノモノデモ、唯單ニ其節約ヲバ議
會ニ於テ口頭ニ述ベタニ過ギナイト云フヤ
ウナ狀態デアル、卽チ馬場財政ヲバ修正シ
ナガラ、軍部豫算ニハ其儘喙ヲ容レナイト
云フコトハ、現在ノ結城財政ガ馬場財政ヨ
リモ、ソレヨリ一步軍事的性質ヲ帶ビテ居ル
モノデアルト言フ所以デアッテ、是ハ明々白
白タル事實デアル、吾々ハ斯ル豫算處理ノ
爲ニ、此增稅ガ必要デアルナラバ、此增稅
ニ軍事費的性質ガ一層輝イテ居ルト言ハナ
ケレバナラヌ、三十四億ノ馬場豫算ガ喚起
シマシタ物價騰貴ヲ抑制セント致シマシテ、
豫算ノ緊縮ヲスル爲ニ結城稅制ハ玆ニ現レ
タノデゴザイマスルガ、併ナガラ結城稅制ハ、
高橋財政ガ堅持シタ、サウシテ馬場財政ニ
於テハ棄テラレタ健全財政主義ノ片鱗ヲバ、
結城サンハ留メテ居ッタノデアル、サウシテ
他面ニ於テハ、馬場財政ニ於テ確ッカリト
把握サレタ、滿洲事變ヲ契機トスル武裝强化
ノ國防充實ノ資本主義的必然性ヲ、軍部兩省
ノ歲出ヲバ削減シナカッタト云フ事實ニ於
テ、之ヲ認メテ居ルノデアル、言葉ヲ換ヘ
テ申シマスレバ、結城稅制ハ卽チ滿洲事變
ノ把握ニ於テハ馬場財政ト一致シ、健全主
義ノ立場ニ於テハ、馬場財政ヨリモ所謂高
橋財政ニ步ミ寄ッテ居ルト吾々ハ見ナクテ
ハナラナイノデアル、滿洲事件費、國防費
ヲ必然性ト觀タ馬場財政ノ方針ヲ繼續スル
コトニ依リマシテ、結城財政ハ軍部ノ支持
ヲ受ケタノデアル、サウシテ更ニ健全財政
ヘノ復歸傾向ヲ見セテ、サウシテ金融資本
ノ擁護ヲ爲シ、以テ金融資本家陣營ノ所謂
全的支持ヲ受ケタノデアル、卽チ一方ニ於
テハ軍部ノ支持ヲ受ケ、一方ニ於テハ資本
家ノ支持ヲ受ケルト云フ、コヽガ結城大藏
大臣ノ所謂資本ト軍部トノ抱合ヒノ本質ガ
正ニ玆ニアラウト思フノデゴザイマス
昨年五月ノ特別議會ニ於キマシテ、同僚
河上丈太郞君ハ壇上カラ馬場財政ヲ批判シ
テ、資本主義ノ下ニ當ッテハ軍備擴張ガ、ド
ウシテモ資本家ノ利益トナリ、大衆ヲ犠牲
ニシテ打樹テラレナケレバナラナイ······馬
場財政ハ此次ニ來ルベキ所ノ、專制的ナ暗
黑的ナル所ノ、獨占企業中心ノ政治ト經濟
ノ前夜所產デアルト、馬場財政ヲ規定シタ
ノデゴザイマス、サウシテ馬場財政ガ三十
億ノ豫算ヲ編成シタ時、日本資本主義ハソ
レガ物價騰貴ヲ齎シ、資本主義ヲ「インフ
レーション」ノ破綻ニ入レルコトヲ恐怖シ
テ、之ヲ倒シタノデアリマスルガ、併ナガ
ラ馬場財政ノ政策デアッテ棄テラレタモノ
ハ、唯其財政ノ基礎ヲバ少シモ考ヘナカッタ
財政膨脹主義デアッタダケデアリマシテ、高
橋財政ヲ修正シタ戰時財政主義-戰時財
政主義ト言フト又叱ラレマス故、準戰時財
政主義ト言ヒ直シマスガ、ソレハ其儘ニ存
置サレタノデアリマス、卽チ馬場財政ノ奉
ジマシタ廣義國防ハ棄テラレタ代リニ、金
融資本ノ欲スル所ノ健全財政主義ノ狹義國
防論ハ存續スルコトニナッタノデアリマス、
卽チ結城增稅ハ金融資本ノ狹義國防ニ還元
シタ所ノ、「フアッショLトノ合體ニ依ル所ノ
增稅デアルト、吾々ハ規定スルノデアリマ
ス、金融資本コソ獨裁專制ヲ欲スル資本デ
アリマスルガ、獨占企業ヲ動カスモノ、
ソレハ金融資本デアル、サウシテ吾々ハ今
昨年吾々ノ規定シタ、馬場財政ニ亞グ所ノ
モノハ、獨占企業中心ノ政治ト經濟デアル
ト吾々ハ言ッタノデアリマス此言葉ガ、結
城財政、其增稅ノ中ニ現實化シタノガ今日
ノ姿デアル、吾々ハ增稅案審議ヲ通ジマシ
テ、遂ニ結城財政ノ本質ヲ見タノデアリマ
ス
吾々ハ曩ニ直接稅ノ轉嫁理論ニ於キマシ
テ、理論上ノ勝利ヲ確保致シマシタ、サウ
シテ今又增稅ヲ通ジタ財政ノ見透シガ、正
確ニ的中シタコトヲ吾々ハ知ッタノデゴザ
イマス、斯ノ如キ議會ニ於ケル所ノ吾々ノ
理論的勝利ハ、必ズヤ吾々ノ現實世界ニ於
ケル實踐上ノ勝利トナルデアラウコトヲ確
信スル者デゴザイマス、旣ニ直接稅モ亦轉
嫁スルモノデアルト云フ吾々ノ理論的勝利
ハ、現實ニ於テ我國ノ勞働階級ガ、此度ノ
直接稅增課ニ對シ、機先ヲ制シテ、彼等ノ
生活ヲ守ル爲ニ、彼等ハ自己防衞タル「スト
ライキ」ヲ各處ニ起シテ居ルデハナイカ、更
ニ又彼ノ交付金問題ニ依リマシテ、田舍ノ
地主階級ガ負擔ヲ輕クサレヨウトスル其前
ニ、我ガ小作人階級ハ地主階級ノ負擔ノ輕
減ニ於テ、直チニアノ高率ナル小作料ヲ輕
減スル運動ヲバ、今ヤ待機シテ居ルヤウナ
姿デゴザイマス、吾々ハ此樣ニシテ議會討
議ニ於ケル所ノ理論ノ勝利ハ、大衆ヲ捉へ
テ大衆ヲ進軍セシメツヽアルコトヲ、吾々
ハ玆ニ宣言スル次第デアリマス、サウシテ
此增稅案ニ反對スル吾々ノ言葉ト共ニ、此
增稅案ニ吾々ガ此壇上ニ於テ反對スル言葉
ト共ニ、此增稅案ヲバ粉碎スル所ノ歷史的
勢力ガ、日一日ト力强ク、結城財政ノ前ニ成
長シツヽ、軈テ此財政ヲバ實力ヲ以テ粉碎
スル日ノ來ルデアラウト云フコトヲ吾々ハ
確信スル者デアル、吾々ハ以上ヲ以チマシ
テ、此狹義國防トサウシテ金融資本トノ抱
合心中ニ陷ック所ノ結城稅制ニ絕對反對ス
ル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=13
-
014・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 高橋守平君
〔高橋守平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=14
-
015・高橋守平
○高橋守平君 諸君、私ハ只今上程セラレ
テ居リマスル臨時租稅增徵法案外五件ノ法
律案ニ付キマシテ、委員長ノ報告通リ原案
ヲ修正シ、尙ホ附帶決議ヲ附シマシテ贊成
スル者デゴザイマス
諸君、本諸法案ハ豫算ニ伴フ重大ナル法
案デアリマシテ、二十八億万圓ノ歲入ニ對
スル增稅案デアルノデゴザイマス、非常時
局ヲ打開シ、財政ノ確立ヲ圖ルコトハ、現
下ノ急務デアリマシテ、之ニ對シマシテ相
當ノ增稅ノ已ムヲ得ナイコトモ必然デアリ
マシテ、是ハ國民モ亦覺悟シテ居ル所デゴ
ザイマス、我國ノ將來ノ財政ヲ考ヘマスル
ト、年々豫算ハ累增シテ參リマス、其主タ
ル原因ハ、國防費ノ厖大デアルコトハ申ス
迄デゴザイマセヌ、サウシテ此國防費モ本
年ハ十四億九百万圓ガ計上サレテ、其中ニ
モ陸軍ノ航空部隊編制費、兵備改善費、資
材整備費ノ十四億万圓ノ六箇年計畫ガ出テ
居ルノデゴザイマス、隨テ是ハ昭和十八年
マデ繼續スルモノデアルノデゴザイマス、
滿洲事件費ノ二億八千八百万圓モ、當分ハ減
額サレルトハ考ヘラレマセヌ、海軍モ亦第三
次補充計畫ノ八億万圓ノ年度割モ出テ居ル
ノデゴザイマス、隨テ國際情勢ノ變化シナ
イ限リニ於キマシテハ、將來ノ國防費ハ增
加ノ線ヲ辿ルヨリ外ニナイノデアリマシテ、
又行政費モ國內情勢カラ見マシテ、漸增ス
ルコトハ明ナル所デゴザイマス、隨テ年々
ノ豫算ガ級數的ニ累增スルコトヲ認メナケ
レバナリマセヌ、今假ニ政府ノ聲明通リ、
本諸法案ガ昭和十二年度ノ豫算ニ依ル國庫
收入ノ辻褄ヲ合セル爲ノ增稅デアル、卽チ
一時間ニ合セノ、本年限リノ增稅デアルト
致シマシテモ、更ニ來年、再來年ノ歲出ノ
增加ハ、結局稅收入ト公債ニ依ル借入金等
デ埋メナケレバナリマセヌ、結城大藏大臣
ハ、國債消化ハ國民ノ貯蓄力ト國家財政ノ
信用トニ依リ、十五億圓位ノ增加ハ可能デ
アルト所信ヲ述ベラレマシタガ、一應最善
ノ場合ヲ考ヘテ、十數億万圓ノ國債發行ガ
可能デアルト致シマシテモ、限リナク激增
スル所ノ歲出ニ對シテ、之ニ對應スル爲ニ
ハ、ドウシテモ增稅ヲ考ヘナイ譯ニハ參ラ
ナイノデゴザイマス、隨テ私ハ將來ノ增稅
ヲ豫想致シマシテ、本案ヲ通シテ增稅問題
ヲ檢討シテ見タイト思フノデゴザイマス
先刻モ相當ノ增稅ハ國民モ覺悟シテ居ル
トハ申シマシタガ、ソレハ決シテ無條件デ
申シタノデハゴザイマセヌ、是ニハ次ノ三
條件ガ行ハレテノ結果デアルノデゴザイマ
ス、一ハ、國民負擔ノ均衡ガ中央、地方ヲ
通ジテ保タレナケレバナラヌト云フコトデ
アリマス、一ハ、企業心ヲ沮喪セシメテハ相
成ラヌト云フノデゴザイマス、一、大衆
課稅ニ墮シテハイケナイト云フコトデゴザ
イマス、國民負擔ノ均衡ハ稅立法ノ第一條
件デナケレバナリマセヌ、此點ニ關シマシ
テハ、幾多ノ非難ヲ受ケマシテ、廣田內閣
倒壞ノ一素因デアリマシタ、馬場財政ト稱
セラレル前內閣ノ稅制立案ノ大方針ハ、私
共ノ首肯出來ル點モアッタノデアリマス、卽
チ都市ト農村トノ不均衡ノ是正、法人ト個
人、不動產ト動產トノ負擔ノ均衡ヲ得セシメ
ル、ソレ等ハソレデアリマス、併ナガラ此
根本方針モ不幸ニシテ其方法ニ幾多ノ缺陷
ガアリマシテ、豫算ノ發表サレタ前後カラ
經濟界ヲ刺戟致シマシテ、產業界ハ不安ニ
襲ハレル、物價ハ騰貴スル、到頭社債ノ發
行ハ十一日ノ末カラ此一月マデ不可能ニ陷
ルト云フ失態ヲ招來シタノデゴザイマス、
之ニ鑑ミマシテ、結城藏相ガ就任〓々二億
七千万圓ノ豫算ヲ削減スルコトヲ聲明シ、
馬場案ノ行過ギヲ緩和スルノ方途ニ出デ、
一時的デハアリマシタガ、經濟界ヲ落付
ケ、物價騰貴ヲ制シマシタコトハ、適當ナ
處置トハ考ヘルノデゴザイマスガ、其後
結城案トシテ提出サレク豫算案、之ニ伴フ
本諸案ヲ檢討致シマスルト、私共ハ失望
セザルヲ得ナイノデゴザイマス、豫算額
ニ於テ實行見合セト稱シナガラ、陸海軍ノ
二千三百万圓ヅツ、卽チ四千六百万圓
ノ軍事費違憲ノ譏リヲ受ケナガラモ豫算面
ヨリ除クコトガ出來ナイ、增徵案ハ單ニ現
行法ノ負擔ノ不均衡ヲ其儘累增シタニ過ギ
ナイ、新規稅法モ馬場案ノ行過ギノミヲ考
慮シテ、却テ歪曲サレタル所ノ結果ノ所
產デアリマシテ、全ク義ニ懲リテ膾ヲ吹ク
ト云フ譏ニ墮チタノデゴザイマス、卽チ馬
場財政ハ、方針ハアリナガラ其手段ニ誤リ、
結城財政ハ、應急策ニ急ニシテ財政方針ヲ
失ッタノデゴザイマス、私ハ組閣匁々デアリ、
物價騰貴ノ抑制ハ國防充實敢行ノ爲ニモ、
國民生活安定ノ爲ニモ急務中ノ急務デアリ、
林總理モ、結城藏相モ、必ズ物價ヲ抑制セ
シメルト稱シ、機會アル每ニ次期議會ニハ
根本的地方、中央ヲ通ジタル稅制改革案ヲ
提出スルト聲明シタノデゴザイマスルカラ、
暫ク之ヲ信ジ、一應ハ此二十八億四千万圓
ノ厖大豫算ニ協贊ヲ表シタノデゴザイマス
ルガ、主義方針ノ織込マレテ居ナイ所ノ豫
算案、法律案ハ、全ク魂ノ無イ脫殼デアル
ノデゴザイマス、繰返シテ申シマスガ、斯
ル厖大ナル豫算竝ニ本法案ヲ認メマスル所
以ハ、全ク物價騰貴ニ依ル影響、卽チ原料
ノ値上リニ依ル產業上ヘノ打擊、延イテハ
國防上、貿易上ヘノ惡影響、國民生活ノ不
安等、惡性「インフレーション」ヲ惧レルカ
ラデアリマス、仍テ此豫算ノ執行上、法ノ
運用上、其言明ヲ裏切リ、萬一物價騰貴ヲ
抑制シ得ザルガ如キコトガアリマスレバ、
議會ニ於ケル政府ノ聲明ニ反シ、國民ヲ僞
リ、國政ヲ誤ラセルモノデアリマシテ、全
ク結城大藏大臣ノ責任デアリ、現內閣ノ責
任デアルト考ヘルノデゴザイマス(拍手)
企業心ヲ振作シ、生產力ノ充實ヲ圖ラナ
ケレバナラヌコトハ、我國ノ現狀ヨリ見テ
最モ必要ノコトデゴザイマス、實行豫算ノ
繰延ニ致シマシテモ、現在以上ノ豫算ヲ消
化シ得ル生產力ノ擴張ガ期待サレルト云フ
前提ノ下ニ初メテ意味モアリ、繰延モ可能
デアルノデゴザイマス、更ニ又前內閣ノ方
針ヲ蹈襲セル輸入爲替許可制モ、近キ將來
ニ輸入ヲ制限セズトモ、爲替下落ノ不安ナ
キ生產力ノ充實ガ豫想サレルト云フ想定ノ
下ニ於テノミ、初メテ許サレル臨時的便法
デアルト私ハ信ズルノデゴザイマス、斯樣
ニ政府ガ現ニ採用シツヽアル各種ノ惡性「イ
ンフレ」防止策ハ、要スルニ生產力ノ急速ナ
ル擴張ヲ實現スル迄ノ過渡期ニ於ケル繋ギ
ニ過ギナイノデアリマス、然ラバ政府ハ斯
ル生產力ノ發達强化、國民經濟力ノ充實ヲ
如何ニシテ達成セントスルノデアリマセウ
カ、結城藏相ハ本議場デ財政演說中「租稅
ノ增徵ハ其及ボス所ノ影響ガ甚大デアリマ
スルカラ、是ガ實行ニ當リマシテハ愼重事
ニ當リ、人心ニ不安ヲ與ヘヌコトニ留意ス
ルト共ニ、十分經濟界ノ實情ヲ察シ、出來
得ル限リ之ニ依ル惡影響ノ防止ニ努ムベキ
デアリマシテ、企業心ノ萎縮、生產力ノ減
退ヲ來スガ如キコトナキヲ期スルコトガ、
極メテ肝要ナリト信ズルノデアリマス」ト
述ベラレタニ徵シマシテモ、增稅案ノ經濟
界ニ及ボス影響ノ相當ニ大キイト云フコト
ハ、考慮ガ拂ハレテ居ルト看取出來ルノデ
ゴザイマス、併ナガラ示サレタ具體案ハ果
シテ其演說ノ通リデアリマセウカ、十二年
限リノ純然タル臨時增徵デアルト稱シナガ
ラモ、產業ノ動脈デアル資本ヲ壓迫スルノ
傾向ガアルノデゴザイマス、增稅額ノ多寡
ハ兎モ角モ、現行稅ニ於ケル各種資本間ノ
負擔ノ不均衡ニ、大ナル變化ヲ與フル方針
ガ現レテ居ルノデゴザイマス、ト云ッテ私ハ
株式ニ對スル課稅ガ重過ギルト言フノデハ
必シモアリマセヌ、問題ハ他ノ源泉所得、
就中國債トノ關係ニ於キマシテ、株式ガ虐
待サレテ居ルト言フノデアリマス、卽チ一
定ノ基本所得ヲ有スル者ガ、其基本所得ヲ
超エル所得ヲ、株デ持ツヲ有利トスルカ、
又ハ國債デ持ツヲ有利トスルカノ限界點ガ
問題デアルノデゴザイマス、此關係サヘ不
當デナケレバ、所得ニ對スル增徴ハ原案ヨ
リモ高率デアッテモ差支ナイト考ヘルノデゴ
ザイマス、贅言スル迄モアリマセヌ、元
來株式ノ配當ハ事業ノ將來ニ關スル一切ノ
危險、景氣、不景氣、政治的變動、其他有ユ
ル「リスク」ヲ負擔スルモノデアリ、之ニ對
シテ國債ノ利子、是ハ景氣、不景氣、其他
經濟界ノ變動ヲ超越致シマシテ、國家ノ權
力ト信用トニ依ッテ保障サレタ確利收入デ
アルノデゴザイマス、隨テ投資家カラ見テ
前者ト後者トノ手取利〓ハ、其「リスク」ノ幅
ニ對應スルダケハ常ニ差ガナケレバナラナ
イノデアリマス。然ルニ今囘ノ結城案ハ、
基本所得二十万圓ヲ超エル場合ニハ、國債ノ
利廻ガ株式ノ利廻ノ上ニ逆轉致シマシテ、假
ニ兩者ノ間ニ百分ノ一ノ開キヲ相當トスル
ト致シマシテモ、實ニ基本所得一万五千圓
以上ノ所得者ハ、株式ノ投資ヲ中止致シマ
シテ、國債投資ニ趨ル數字ガ出テ來ルノデ
アリマス、隨テ最モ活潑ニ投資スル階級ガ、
殆ド國債投資ニノミ行ク可能性ガアルト云
フ結果ニナッテ參リマシテ、全ク國債消化ニ
ノミ急ニシテ、企業投資ヲ等閑ニ附シテ居
ルノデアリマシテ、厖大シテ行ク軍事豫算
ノ消化ノ上カラモ、增稅ニ應ズル國民經濟
ノ蓄積ノ爲ニモ、一大氣務デアル生產力ノ擴
充ヲ阻碍スルノ虞ガアルノデゴザイマス、
政府ハ宜シク我國ニ於ケル產業ノ重要性ト
適應性トニ鑑ミマシテ、一面綜合產業國策
ヲ樹立シテ、指導方針ヲ確立シ、他面產業
ノ動脈デアル資本ノ重大性ヲ確認シ、善處
スベキデアルト思フノデアリマス、今後長
期ニ亙ッテ年々巨額ノ國債ノ發行ニ對應ス
ル消化力ハ、現在アル資金ヨリモ、今後蓄
積サレル資金ニヨリ多ク依存シナケレバナ
ラナイ事情ニアルコトヲ忘レテハナリマセ
ヌ、眼前ノ優遇ニ依ル國債消化ヨリモ、根
本對策タル生產力ノ擴大ニ依ル資本ノ蓄積
ヲ圖ルベキハ當然デアリマス、若シ本諸法
案其他ニ依リ企業心ヲ萎靡セシメ、豫算ヲ
消化スルコトガ出來ズ、國防計畫ニ已ムヲ
得ズ缺陷ヲ生ジ、莫大ナル次年度繰越ノ生
ズルガ如キコトガアリマスレバ、當然政府
ハ其責ニ任ジナケレバナラヌト思フノデア
リマス、增稅ガ大衆課稅ニ堕スベカラザル
コトモ自明ノ理デアリマス、結城大藏大臣
ハ答辯中此點ニモ言及シテ居リマス、「國民
負擔ノ現狀ニ顧ミ、其擔稅力ニ適應スルニ
努メ、直接稅殊ニ所得稅ノ增徵ニ重キヲ置
キ、間接稅ノ增徵ハ成ルベク之ヲ少ナカラシ
ムルヤウ意ヲ用ヒタノデアリマス」ト說カ
レタノデアリマスルガ、果シテ然リデアリ
マセウカ、今囘ノ增徵法案ニ依ルト、成程
馬場案ニ比べテ織物消費稅ノ引上ハ中止サ
レマシタ、酒造稅ヤ砂糖消費稅ノ引上緩和
等モアリマシテ、稍〓社會政策的考察ノ吾
吾ト近イモノガナイデモアリマセヌガ、併
シ馬場案ノ間接稅ノ修正減ガ七千六百万圓
デアリ、直接稅ノ修正減ガ九千四百万圓デ
アリマスルカラ、此間接稅七千六百万圓ト、
直接稅九千四百万圓ノ修正サレタ減額ヲ比
較致シマス場合ニハ、大衆課稅ノ割合デ
ハ、却テ前內閣案ヨリモ現內閣案ガ增加シ
テ居ル事實ヲ見遁ス譯ニハ參リマセヌ、現
行法ニ比シテ結城案ハ消費稅ノ增加ガ四千
四百万圓、關稅ニ於キマシテ一千九百万圓
デ、之ニ依リマシテ大衆ノ負擔ハ六千三百
万圓ノ增加デアリ、昨冬ノ煙草値上ノ二千
五百万圓、今囘ノ郵便料金値上ニ依ル一千
五百万圓ノ官業ノ增收、是等ガ當然大衆課
稅ニ含マレルコトヲ考ヘマスルト、驚クベ
キ數字ヲ示スノデゴザイマス、全ク藏相ノ
御說明ヲ裏切ル結果ト相成ルコトヲ、洵ニ
遺憾ト存ズルノデアリマス(拍手)
今日負擔ノ最モ不公平ナノハ地方稅デア
リマス、國稅百圓ニ對シ都市ハ百十二圓、
町村ハ實ニ三百六十圓ノ不均衡ナル地方稅
ヲ負擔シテ居ルノデゴザイマス、農村疲弊
ノ原因ハ幾多理由ハアリマスガ、此地方稅
ノ過重モ重大ナル素因デアルコトハ明デゴ
ザイマス、此町村負擔ガ斯ノ如ク過重ナノ
ハ、年々約十億万圓ノ國家事務ノ性質ヲ
有ッタ仕事ヲ町村ニ擔當セシメ、國家ハ僅ニ
二億圓ヨリ金額ヲ交付シテ居ナイ、是ガ主
タル原因デアリマス、謂ハバ所得力ノ少イ
農山漁村ノ、資本主義經濟ノ波ニ乘後レタ、
サウシテ不動產ノ重課方針ト、個人ノ負擔
不均衡ノ重壓ヲ受ケテ居ル上ニ、當然國家ガ
負擔スベキ十億万圓ノ內差引八億万圓ヲ町
村ガ負擔スル、不公平ナ制度カラ來テ居ル
地方稅ノ過重デアリマシテ、一日モ速ニ負擔
ノ均衡ラ得セシメナケレバナリマセヌ、今囘
馬場案ノ地方交付金二億一一千万圓ヲ七千万
圓ニ減額シ、議會ノ要求ニ依リマシテ三千
万圓ヲ、而モ公債財源ニ依リ增額スル如キ
ハ、全ク現內閣ニ確固タル不動ノ財政方針
ガナク、農村ノ認識ガ缺如シテ居ルト云フ
コトヲ暴露シタモノデアリマシテ、謂フ所
ノ庶政一新モ、洵ニ心許ナイ限リダト存ズ
ルノデアリマス、世上トモスルト、三千万
圓增額ニ依ル一億万圓ノ地方財政補給金ヲ、
無意味ニ地方ニ與フルナリト考フル者ガア
リマスガ、マダ實ハ當然國家ガ支出スベキ
八億万圓ノ內ニ於テ、今囘一億万圓ノ交付
デアリマスカラ、差引七億万圓ハ尙且ツ國
家ノ犠牲ニ地方町村ガナッテ居ルノデゴザ
イマス、結城大藏大臣ハ此實情ヲ深ク御認
識下サイマシテ、都市ト農村トノ負擔ノ不
均衡ヲ、必ズ御調整ナサル固キ決心ヲ要求
スル者デゴザイマス(拍手)若シ夫レ次期議
會マデニ是ガ徹底的改革ガ爲サレナケレ
バ、馬場藏相ハ勸銀出ダカラ農村ヲ知リ、
結城藏相ハ興銀出ダカラ農村ヲ理解シナイ
ト云フ世評ヲ裏書スルモノデアリマシテ、
私共ハ絕對ニ之ヲ認定スル譯ニハ參リマセヌ
以上增稅ニ對スル意見ヲ述ベタノデアリ
マスガ、只今委員長カラ御報告申シマシタ
民政、政友其他ノ諸君ト一致修正シタル理
由、竝ニ附帶決議ニ付テ申上ゲテ見タイト
思フノデアリマス
修正ノ第一ハ、臨時租稅增徵法案第六條ノ
第三種所得稅累進率ノ段階ヘ、基本所得五
十万圓以下ニ對シテ百分ノ五十五ノ一項ヲ
加ヘマスコトデ、是ハ別ニ說明ヲ要シナイ
ト存ジマスル、基本所得十五万圓ヨリ一躍
シテ基本所得百万圓ニナッテ居リマス其中
間ニ、一段階ヲ設クルノ趣旨デゴザイマス
第二ハ有價證劵移轉稅法案第八條ニ、營
利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得稅ヲ課セ
ラレザル者ガ取得スル有價證劵ノ移轉ハ免
稅スト云フコトニ修正スルコトデゴザイ
さく、御承知ノ通リ商工組合、商業組合、
工業組合、輸出組合、漁業組合等ハ、所謂共
同組合デゴザイマシテ、其本質上免稅ノ特
典ヲ與ヘテ、國策上保護助成スルノハ當然
ダト考ヘルノデゴザイマス、今共同組合ノ
一ツデアリマスル產業組合ヲ考察シテ見マ
スルナラバ、產業組合ハ言フマデモナク農村
ノ中小產者ノ經濟行爲ヲ共同組織化シテ、
經濟活動ニ於ケル優越者タル所ノ有產者階級
ノ經濟的壓迫ニ對シ、自己防衞ノ手段トシ
テ團結シタモノデアリマシテ、共存共榮相
互扶助ハ其指導精神デアルノデゴザイマ
ス、自由競爭ニ依ル資本主義社會ニ於キマ
シテ、小產階級ガ活キル唯一ノ途ハ、團結ス
ルノ一事ニアルノミデアリマス、救濟政策ハ
下策デアリ、自力更生政策ハ最上策デアリ
マス、全ク產業組合ハ農村ニ於ケル中小產
者團結ノ力ニ依リ、自力ニ依ル農村經濟更
生ノ唯一ノ機關デアルノデアリマス、此產
業組合ヲ國家ガ保護助長セシムルノハ當然
ノ國策デゴザイマス、歷代ノ農林大臣ガ其
普及ト內容ノ充實トニ努力シ來ッタコトハ
御承知ノ通リデゴザイマス、昭和十一年度
ヨリ施行セラレル農村經濟更生特別助成事
業モ、其大部分ハ產業組合ガ擔當シテ居ル
ノデゴザイマス、歲入增加ノ一手段トシテ
大增稅ヲ行ハントスル際、國民ノ各階級、
各職業ヲ通ジテ、全面的ニ有ユル擔稅力ニ
動員ヲ加ヘマシテ之ニ備ヘルト云フコト
ハ、一應首肯シ得ラレルノデアリマスガ、
取レルダケハ何處カラデモ取ッテヤレト云
フ考ヘ方デ組合ニ課稅ヲサレルコトハ、官
僚「フアッシヨ」ノ熊度デアリマシテ、コ
ンナ亂暴ナ考ヘ方デ稅ノ問題ヲ取扱ハレ
テハ堪ラナイノデアリマス、稅ノ問題ハ先
程モ申シマシタヤウニ、政治的ニ、經濟的
ニ、將又思想的ニ、深キ考慮ト愼重ナル〓
鑽ガサレナケレバナリマセヌ、全ク組
合課稅ハ組合本質上カラ見テモ、國策上
カラ見テモ、矛盾モ甚シイト考ヘルノデゴ
ザイマス、ノミナラズ現在組合ノ有シテ居
ル流動資本ハ四十億万圓デ、其中組合員ノ
貯金ハ十七億万圓デアリマシテ、サウシテ
所有シテ居ル有價證劵ハト云フト、僅ニ三
億万圓デゴザイマス、此三億万圓モ總テ組
合員貯金拂戾ノ準備的性質ヲ多分ニ持ッテ
居リマシテ、其種類モ命令ニ依リマシテ、
國債、地方債、特殊銀行債ニ限ラレテ居ル
ノデアリマスカラ、他ノ一般ノ營利的ノ有
價證劵ノ取得トハ、自ラ其本質ヲ異ニシテ
居ルノデゴザイマス、以上ノ如ク國策的見
地カラ、將又其有價證劵所持ノ性質カラ考
ヘマシテモ、共同組合ヘノ課稅ハ絕對反對
ヲ致シマシテ、此修正ヲ致シタ次第デアリ
マス
第三ノ修正ハ、法人資本稅中第八條ニ、
法人ニシテ所得ナキ時ハ課稅セズト云フ意
味ニ修正スルノデアリマス、政府原案ニ依
リマスト、所得ナキ場合ニ於テモ課稅スル
立前デゴザイマスガ、稅額ガ法人ノ資本ニ
マデ喰入ルコトハ、餘リニ苛酷ト考ヘタカ
ラデアリマス
附帶決議ノ六項ハ、租稅賦課徴收ニ際シ
マシテ、財務當局へノ警〓デアリマスガ、
最近ニ於ケル一箇年ノ租稅徵收ニ關スル差
押件數ハ十一万八千件ニ上ッテ居リマス、競
賣手續ヲ行ヒマシタモノガ一万二千件ニモ
達シテ居ルノデゴザイマス、如何ニ納稅ハ
國民ノ義務トハ言フモノノ、臨時金錢債務
調停法ヲ國民ニ布イテ居リマスル今日、實
情ニ卽シタル取扱ヲ爲サシムベキハ當然デ
アルト考ヘタカラデゴザイマス、第一項ハ
「臨時租稅增徵法ノ適用ヲ昭和十二年度ニ
限定シ政府ハ速ニ官民ヨリ成ル權威アル調
査會ヲ設ケ中央地方ヲ通ズル根本的稅改制
革ヲ行ヒ特ニ直接稅間接稅ノ調整ヲ圖ルベシ」
ト云フノデアリマス、政府ハ今囘臨時應急
ノ措置ヲ講ジタノニ過ギナイノデアルガ、
根本的改革ヲ明年ニ殘シタト主張スルノデ
アリマス、仍テ私共ハ改革ノ手段ニ付テ注
意ヲ喚起シタノデアリマス、馬場財政ハ國
防ノ充實ト國民生活ノ安定トノ二大目標ニ
向ッテ重心ヲ置イタノデゴザイマス、果シテ
此兩全主義ガ實行シ得ラレルカドウカハ疑
問デアリマスガ、兎ニ角財政ノ方針ダケハ
判然シテ居ッタノデゴザイマスケレドモ、國
民大衆ニ不人氣デアリ、財界ニモ非常ニ不
人氣デアッタノデアリマス、此不人氣ハ大增
稅ヲヤル、赤字公債ハ消化額ノ限界近クマ
デ發行スル、其上ニ準戰時體系ノ極印マデ
捺シテ國民ニ押付ケヨウト致シマシテ-
國民負擔ノ均衡ハ宜シイノデアリマスケレ
ドモ、大衆課稅ノ新設增徵ヲヤラレテハ國
民ハ堪ラナイノデアリマス、其上立法ニ當ッ
テモ、命令的ナ官僚獨善主義的態度ガ拍車
ヲ掛ケタノデアリマス、結城藏相ハ馬場財
政ノ不人氣ヲ先ヅ物價問題カラ解決シヨウ
ト意圖シテ居ルヤウデアリマスガ、如何ナ
ル厖大豫算モ生產力サヘソレニ順應シテ擴
充サレヽバ、景氣ガ維持サレテ商品ノ取引
量ハ增大スル、物價騰貴ヲ抑制シ得ラレテ、
此大豫算ヲ消化シ得ルト考ヘテ居ル政府ノ
考デゴザイマス、生產力ノ擴充ハ時局ノ性
質上、專ラ軍需工業ノ擴大ニ向ケラレ、年
來ノ生產ノ跛行ガ益〓深刻化サレ、是ガ爲ニ
一般產業ノ發展ガ害サレルヤウデアレバ、
一般國民生活ノ充實向上ハ望マレナイノデ
アリマス、兎ニ角全面的稅制改革ヲ一箇年
延バシタコトハ、此間諸般ノ準備モアラウ
シ、靜ニ國民ノ意向ヲ察セントスルモノデ
アリマセウカラ、其立案ニ當ッテハ獨善主義
ヲ排シ、官民一致協力シテ是ガ根本的解決
ヲ爲サシムベク、官民ヨリ成ル調査機關ノ
設置ヲ要求スルモノデアリマス、第二項ヨ
リ第五項ハ、次期稅制改革へノ負擔ノ均衡
ニ關スル强キ要求ヲ示シタモノデアリマス、
私ハ不滿ノ意ヲ持チナガラモ、本諸法案ニ修
正贊成致シマスノハ、豫算案通過ノ際、我黨ノ
勝君、中村君カラ述ベラレタヤウニ、何分組
閣〓々デアリ、豫算不成立ノ結果ガ國家ニ及
ボス影響ノ重大サヲ考へ、豫算ト不可分ノ關
係ニアリマスル此諸法案デアリマスコトヲ
考慮致シタカラデアリマス、政府ハ委員會中
ニ屢〓聲聲致シマシタヤウニ、斯ノ如キ不合
理ナ臨時租稅增徵法案外新稅法ヲ一切昭和
十二年度限リニ抛棄〓算致シマシテ、國民
ノ輿論ニ從ヒ、確固タル財政政策ヲ樹立
シ、國防ト財政ト產業ヲ整調シ、國民負擔
ノ均衡ヲ圖リ、國民生活ノ安定ヲ得セシム
ル拔本寒源的稅制改革ヲ、必ズ次期議會ニ
提出スベキコトヲ最後ニ更メテ警告致ス者
デゴザイマス、サウシテ其經過ヲ私共ハ嚴
重ニ監視セントスル者デアリマスコトヲ申
述ベマシテ、委員長ノ報告ニ贊成セントス
ル者デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=15
-
016・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 伊禮肇君
〔伊禮肇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=16
-
017・伊禮肇
○伊禮肇君 私ハ只今上程サレマシタ臨時
租稅增徵法案外各案ニ付キマシテ委員長ノ
報〓ノ中、臨時租稅增徵法案第六條第一項
ノ修正ニ反對ヲ致シ、其他ノ部分ニ贊成ノ
意ヲ表スル者デアリマス、私共モ此法案ノ
第六條第一項ノ十万圓ノ所得カラ百万圓ノ
間ニ於テ、更ニ相當ノ課稅區分ヲ設ケルト
云フコトニハ贊成デアリマスルケレドモ、
私共ガ玆ニ課稅區分ヲ設ケルコトノ希望
ハ、要スルニ稅收入ニ影響ナキ範圍ニ於テ
希望スル次第デアリマシテ、此委員長報告
ノ如ク、稅收入ニ影響シ、卽チ豫算ノ歲入
ヲ減ズルガ如キ此修正ニハ、絕對ニ贊成シ
兼ネル者デアリマス(拍手)此法案ハ大藏大
臣ノ御說明ニ依リマスレバ、ホンニ臨時應
急ノ措置トシテ立案サレタモノデアリマシ
テ、來ル通常議會マデニハ更ニ根本的ノ稅
制改革ヲ致サレマシテ、議會ノ協贊ヲ求メ
ラレル御方針ノヤウニ承ッテ居リマス、吾々
ハ此大藏大臣ノ御言明ヲ信賴致シ、暫ク其
發表ヲ待チタイト考ヘル者デアリマス、更
ニ又私共ハ此豫算ニハ、國防費ヲ初メトシ
テ、少額ナガラ地方財政交付金竝ニ國民健
康保險、或ハ農地法、斯ノ如キ社會立法ニ
伴フ諸經費ガ盛ラレテ居リマスルノデ、旣
ニ豫算ニハ贊成致シタ者デアリマス、隨テ
斯ノ如キ理由カラ致シマシテ、吾々ハ不滿
足ナガラ以上述ブルヤウナ希望條項ヲ附シ
マシテ、贊成スルモノデアリマス(拍手)
政府ハ第七十議會直後稅制改革ノ調査ヲ
開始シ、少クトモ左記各項ヲ含ム所ノ稅
制案ヲ帝國議會ニ付議スベシ
一、負擔ノ不均衡是正ヲ目標トスル中央
地方ノ根本的稅制改革ヲ斷行スルコト
二一、地方稅制ノ整理改革ヲ爲スニ當リテ
ハ戶數割ノ廢止、附加稅、雜種稅ノ減
免ヲ主眼トシ、地方財政調整交付金制
度ヲ確立スルコト
三、地租、營業收益稅ノ免稅點ヲ引上グ
ルコト
四自作農維持ノ趣旨ヲ徹底セシムル爲
メ、一定ノ自作農地ヲ相續財產ニ加算
セズ、且ツ不動產ノ相續ニ當リテハ現
物納付ヲ認ムルコト
五、大衆生活苦緩和ノ爲メ自家用濁酒、
藷燒酎ノ釀造ヲ免許スルコト
六、不當課稅ニ對スル救濟ヲ簡易敏速ナ
ラシムルヤウ制度ノ改革ヲ爲スコト
以上六ツノ希望條項ヲ附シマシテ贊成致ス
者デアリマス
此增稅各法案ハ先程モ申シマスル通リ、
大藏大臣ハ根本的稅制改革ヲ爲スマデノ、
臨時應急ノ措置トシテ立案シタモノデアル
ト申サレテ居リマスルガ、吾々ハ此根本改
革案ガ出ルマデハ、暫ク批判ヲ避ケタイト
モ思ヒマスルケレドモ、本會議竝ニ委員會
ニ於ケル大藏大臣ノ御答辯、竝ニ本案ニ現
レマシタル所ノ大藏大臣ノ稅制ニ對スル態
度此點ヲ具サニ檢討致シマスルト云フ
ト、實ニ不滿ノ點ガ多イノデアリマス、私
共ハ努メテ法案ノ內容ノ檢討ハ他ノ諸君ニ
讓リ、之ヲ避ケマシテ、大藏大臣ノ稅制ニ對ス
ル態度、竝ニ將來根本的ノ改革ヲ爲サルヽニ
當リマシテノ希望ヲ申述ベテ置キタイト思フ
ノデアリマス、結城大藏大臣ノ本案ノ說明ニ
當リマシテ申サレタコトハ、增稅ヲ行フニ
當リマシテハ相當多額ヲ得ルト共ニ、又國
民負擔ノ現狀ニ鑑ミ、其負擔力ニ適應スル
ニ努メ、直接稅殊ニ所得稅ノ增徴ニ重キヲ
置キ、間接稅ノ增徵ハ成ベク之ヲ少カラシ
ムルヤウ意ヲ用ヒタト述ベテ居ラレマス、
併ナガラ吾々ハ此御言明ヲ無條件ニ承服ス
ルコトハ出來ナイノデアリマス、大藏大臣
ノ財政經濟運用ニ對スル熊度、是ハ私共ノ
見ル所デハ資本家ニ偏傾シ、農民トカ或ハ
中小工業者階級、斯ウ云フ者ニ對スル同情
ト認識ガ缺ケテ居ルト思フノデアリマス(拍
手)
大藏大臣ハ馬場稅制ヲ修正シテ、本案ヲ
立案サルヽニ當リマシテ、資本家ノ代辯機
關タル全國產業團體聯合會、或ハ東京商工
會議所、斯ウ云フ團體ノ稅制改革ニ對スル
意見ヲ非常ニ重要ニ御採用ニナッテ居リマ
ス、十二分ニ此意見ヲ採用シテ居ラレマス、
然ルニ農民ヤ商工業者其他一般大衆ノ聲ニ
ハ、全然耳ヲ藉サナカッタノデアリマス(拍
手)此事實ハ私ガ中傷的ニ申上ゲルノデモ
アリマセヌ、大藏大臣自身ガ御認メニナツ
テ居ラレルノデアリマス、卽チ河野委員ノ
御質問ニ對スル大藏大臣ノ御答辯ハ、明ニ
此點ヲ承認シテ居ラレマス、河野委員カラ
「稅制案修正ニ當リテハ酒造組合トカ、全國
自動車業者トカ、一般大衆ノ意見等ニ耳ヲ
傾ケズ、全國產業團體聯合會ヤ、商業會議
所等ノ意見ヲ其儘御採用ニナッテ居ル、是ハ
大藏大臣ガ能ク言ハレル所ノ大衆ノ輿論ニ
聽ク稅制ノ改革デアルト云フコトトハ、聊カ
趣ヲ異ニスルノデアルト存ズルノデアルガ
如何デスカ」、斯ウ云フ質問ニ對シテ、大臣
ハ率直ニ御承認ニナッテ居ラレマス、卽チ之
ニ對スル大臣ノ御答辯ハ「當業者ノソレ〓〓
ノ陳情トカ意見トカト云フモノニナリマス
ト、其利害ニ立ッテノ主張ガ多イノデアリ
マスカラ、是ハ餘程愼重ニ考ヘテ取入レナ
ケレバナラヌカト私ハ思フノデアリマス、
商業會議所デアルトカ、產業團體デアリマ
スルトカト云フモノハ、必シモサウハ行カ
ヌト思ヒマスガ、大體ハ公平ナル立場ニ立ッ
テ論議ヲシテ來ル所デアル、斯樣ニ見タ方
ガ私ハ適當デアッテ、或ル一部ノ人ガ言フヤ
ウニ、アヽ云フモノハ資本家階級ノ何カオ
先キニナッテ働クヤウニ見ルノハ、少シ僻目
デアッテ、割合ニ公平ナ意見ヲ審議シテ齎ス
モノヂヤナイカ、當業者ハ苦痛ヲ愬ヘル、
其苦痛ハ聽イテ行カナケレバナラナイガ、
トモスルト其一部ノ利害ノ爲ニ他ノコトヲ
顧ミナイ、或ハ輕視スルト云フヤウナ建言
ヲ爲サルコトガアルカラ、是ハ餘程愼重ニ
其邊ノ論ヲ聽キ分ケナケレバナラヌ、斯ウ
云フ風ニ考ヘテ居ル次第デ、或ハサウ云フ
當業者ナンカノ主張ヲ容レナイヤウナ傾キ
ガアッタトスルト、全體ノ上カラサウ云フコ
トガ無理ダト考ヘテ入レナカッタカトモ思ッ
テ居ル次第デアリマス」斯樣ニ率直ニ御答
辯ニナッテ居リマス、卽チ大藏大臣ノ御答辯
ハ、一般ノ當業者ノ陳情ハ、各〓其利害關係
ノ立場カラスルノデ、是ハ聽ク必要ハナイ、
必要ハナイトハ仰シヤリマセヌケレドモ、
大イニ考ヘナケレバナラヌ、併シ商工會議
所トカ或ハ產業國體聯合會等ハ、割合ニ公
平ナル意見ヲ持ッテ來ルモノデアル、斯ウ云
フ風ニ御認識ニナリ、御採用ニナッテ居ラ
レマス、大藏大臣ノ御思想、卽チ資本家團
體ヲ偏重シ、一般大衆ヲ餘リ理解シテ居ラ
ナイ所ノ此考ヘ方ハ、稅制ノミデハアリマ
セヌ、豫算ノ上ニモ反映シテ居リマス、卽
チ馬場案ヲ修正サレルニ當リマシテ、大衆
ニ對スル同情ト認識ヲ缺キ、保健衞生ニ關
スル經費、或ハ農民、中小工業ニ對スル經
費、是等ノ大衆的ノ經費ヲ削減シ、殊ニ地
方財政調整交付金ノ如キモノヲ削減致シマ
シテ、サウシテ地方議員各派ノ猛烈ナル增
額要求ニ對シマシテモ、ヤハリ農村ニ對スル理
解ガ薄イ、最後ニ大藏大臣ハ斯樣ナコトヲ言ッ
テ居ラレマス「事實農村民ガ此交付金ヲ要望
シタノデアレバ考慮シテ見ル」此大臣ノ熊度ハ
實ニ冷カデアリマス、全然農村ニ理解ノナ
イコトハ、此熊度ニ依ッテ明カデアリマス、
全國ノ町村長ハ東京ニ集リ、或ハ全國ノ各
府縣農會長ガ東京ニ集リマシテ、此交付金
制度ニ付テ猛烈ナル要求ヲ致シタノデアリ
マス、所ガ大藏大臣ハ、此農村代表ノ聲ニ對
シテハ全ク耳ヲ藉サズ、或ハ大臣ノ耳ニ入
ラズ、此資本團體ノ聲ノミガ大臣ヲ動カシ
テ、此豫算ノ修正ニナッタヤウナ感ジガスル
ノデアリマス、此點甚ダ遺憾ニ存ズル次第
デアリマス、斯ノ如キ大臣ノ考ヘ方、斯ノ
如キ思想ヲ以テ十三年度ノ根本的稅制改革
ニ御當リニナルトスレバ、アノ資本家ノ團
體ハ滿足スルカモ知レマセヌガ、一般大衆
ハ非常ニ失望スルデアラウコトハ、玆ニ斷
言シテ憚ラヌ者デアリマス(拍手)
更ニ大藏大臣ハ、今日ノ財政ノ狀況デア
ルカラ、ドンナ人デモ國民デアル以上ハ、
分相當ニ納稅シテ奉公ノ誠ヲ效シテ行ク、
又其ノ人達ニ自分達モ相當ニ奉公シテ居ル
ノダト云フコトノ誇リヲ持タセタイ、斯ウ
云フ風ニ述ベテ居ラレマスガ、直接稅ヲ負
擔シナイ所ノ大衆ト雖モ、郵便切手ヤ葉書
ノ値上、或ハ煙草ノ値上、或ハ消費稅ノ增
徵、或ハ豫算ノ膨脹ヨリ來ル所ノ物價騰貴、
斯ウ云フモノノ爲ニ、國民大衆ハ忍ブベカ
ラザル過重ノ負擔ヲ强ヒラレ、非常時ヲ十
分ニ滿喫致シテ居ルノデアリマス、大臣ノ
言ハレル分相應ドコロデハアリマセヌ、大
衆ハ寧ロ資本家ニモ比較致シマシテ、分不
相應ノ負擔過重ニ喘イデ居ル次第デアリマ
ス、負擔ノ均衡問題ガ最モ喧シク叫バレル
ノモ、要スルニ大衆ノ負擔過重ガ茲ニ聲ト
ナッテ現レタモノデアリマス、此點ヲ大藏大
臣ガ能ク御認識サレ、篤ト御熟慮致サレナ
ケレバ、國民怨嗟ノ聲ハ巷ニ滿チ、延イテ
ハ國民思想ノ惡化ニ拍車ヲ掛ケルモノト思
フノデアリマス
十三年度ノ豫算ハ、思フニ國防費トカ、
或ハ庶政一新政策ノ實施ニ伴フ經費トカ、
斯ウ云フモノノ爲ニ、十二年度ヨリモ寧ロ
增加スルデアラウト云フコトハ想像ニ難ク
ナイノデアリマス、隨テ十三年度ノ稅制改
革ニ當リマシテハ、一般的ノ減稅ト云フコ
トハ到底期待ガ出來マセヌ、卽チ十三年度
ニ於キマシテハ、此根本的ノ稅制改革ニ吾
吾ガ期待スル所ノモノハ、獨リ負擔不均衡
ノ是正ノ一點ニ外ナラヌト思フノデアリマ
ス(拍手)
而シテ私共ガ期待スル所ノ負擔ノ均衡ト
申シマスルノハ、或ハ法人ト個人ノ間、或
ハ動產ト不動產、或ハ都市ト農村、斯ウ云
フモノノ關係ニ於ケル負擔ノ不均衡ノ是正
ノミヲ言フノデハアリマセヌ、吾々ハ更ニ
直接稅ト間接稅-玆ニ謂フ間接稅ハ專賣
其他國家事業カラ來ル所ノ負擔ヲ含ムモノ
デアリマスガ、此直接稅ト間接稅ノ均衡、
卽チ資本家階級ト一般大衆トノ負擔ノ均衡
ヲ最モ重視致ス者デアリマス、政府ハ努メ
テ大衆課稅ヲ避ケルト同時ニ、間接ニ大衆
ノ負擔ヲ增加スルヤウナ課稅方針ヲ極力排
シ、以テ社會政策的ノ稅制改革ヲ斷行セラ
レンコトヲ切ニ希望致シマシテ、本案ニ贊
成スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=17
-
018・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 宮澤裕君
〔宮澤裕君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=18
-
019・宮澤裕
○宮澤裕君 先刻增田委員長ヨリ御報〓ニ
相成リマシタ通リ、增徵稅法案及ビ新稅法
案ニ對シ、修正及ビ附帶決議ヲ附クルコト
ヲ條件トシテ本案ニ贊成スル者デアリマス
今囘ノ稅制改革ノ根本ハ、所得稅外八件、
及ビ法人資本稅外三件、之ヲ新設增稅スル
所ノ案デアリマスルガ、金額ニ於テ關稅收
入ヲ加ヘマスルト云フト、優ニ二億九千幾
百万圓、三億万圓ニ達シテ居ルノデアリマ
ス、從來ノ日本ノ租稅收入デゴザイマスル
九億二三千万圓ニ比ベマスルト云フト、正
ニ三割ニ相當致シマスル所ノ、劃期的ノ大
增稅法案デアリマスルコトモ申スマデモナ
イノデアリマス、隨ヒマシテ十二年度ノ豫算
ノ中心ハ本稅制案ニアリト申シテ決シテ過
言デナイノデアリマスルガ、其審議ノ範圍モ
極メテ廣汎デアリ、多岐多樣ニ亙ッテ居リマ
スルコトモ申スマデモナイノデアリマス、
而シテ增稅法案九件ノ增收額ハ二億三千万
圓新稅四件ノ歲入額ハ三千九百万圓、合
シマシテ二億六千九百万圓ニナルノデアリ
マス、大藏大臣ノ言明ニ依リマスルト、此
新稅法案ハ恆久稅トシテ、手ヲ觸レナイデ
將來存置セシメル、唯增稅法案ニ付テハ、
來ル十二年度ノ根本的稅制改革ノ際ニ手ヲ
觸レルケレドモ、成ベク增稅シナイヤウニ
シテ、所謂負擔ノ不衡平ヲ是正スル程度ニ
止メテ、增收計畫ニハ手ヲ染メナイ氣デア
リマスト、最初ハ言明サレタノデアリマス、
サウ云フ御說デアルノデアリマスルガ、政
府ハ來ル十二年度ニ於テ、當然稅制全般ニ
亙ッテ再檢討ヲ加ヘテ、十分〓究考慮シタ上
デ、國家ノ經常歲入ノ恆久的稅制計畫ヲ樹
立スルト同時ニ、中央、地方ヲ通ズル負擔
ノ衡平、及ビ地方財政調整ニ付テ稅制ノ根
本的改革ヲ斷行スルコトハ、屢〓言明サレタ
ノデアリマス、而シテ先般モ同僚諸君ガ御
討論ニナリマシタ通リ、郡部ト市部、法人
ト個人、動產ト不動產、間接稅ト直接稅、
是等ノ關係ニ於テモ、各、、擔稅力ニ應ジテ之
ヲ修正シテ、應能課稅ニ稅制ヲ改メルト云
フコトモ明言サレテ居ルノデアリマス、デ
アリマスルカラ當委員會ニ於キマシテハ、
當面ノ豫算ヲ審議致シマスルコトヨリハ、
寧ロ將來ニ亙ッテ、吾々ハ國民ノ希望ヲ政府
當局ニ十分注意モ致シ、希望モ述ベテ、所
謂將來ニ備フルコトガ一層必要事ト存ゼラ
レマシタノデ、將來ノ改正ニ付テ色々ノ意
見ヲ質シタノデアリマスルガ、遺憾ナガラ
其答辯ハ十分〓究スルトカ、能ク考慮スル
トカ、殘念ナガラ將來ノ見透シハ付キ兼ネ
マスルト云フコトノミヲ以テ終始サレタト
云フコトハ、洵ニ心細イ限リデアッタノデ
アリマス、之ヲ曩ノ馬場財政ノ改革案ニ比
較シテ、多少論評ヲ試ミテ見タイト思フノ
デアリマスルガ、第一ハ國庫ノ歲入ノ點デ
アリマス、是ガ馬場案ニ比シマシテ、結城
案ハ凡ソ一億三千万圓ノ減收ニナッテ居リマ
ス、是ハドウ云フ譯デアルカト申シマスル
ト、當時最モ不人氣デアリマシタル所謂賣
上稅、是ハ取引稅ニ改名サレマシタケレド
モ、此賣上稅ノ三千万圓、財產稅中個人ニ
屬シマスル金額ノ三千万圓、是デ六千万圓
ノ兩稅ヲ外シテシマッテ、所得稅ノ方面ニ於
テ、馬場案ニ比シテ凡ソ五六千万圓ノ減稅計
畫ヲ樹テテオ居デニナルノデアリマスルカ
ラ、此二ツヲ合セマスルト、凡ソ一億二三
千万圓ノ減收ニナルコトモ當然デアリマス、
而シテ此外シマシタル稅種ハ、何レモ或ハ
商工方面デアリ、有產階級ニ關スル課稅デ
アッタノデアリマスルカラ、世間ガ結城稅制
ヲ評シテ、是ハ金融資本家稅法ナリト言ヒ
マスルノモ、强チ是レ京童ノ言ノミトハ言
ヘヌト思フノデゴザイマス
第二ハ負擔ノ均衡ト、都會ト農村トノ負
擔ノ是正ニ關シテデゴザイマスルガ、般
負擔ノ均衡ニ付キマシテハ、其能力ニ應ジ
テ或ハ減免ヲシ、或ハ重課致シマシテ、租
稅ノ凸凹ヲ修正致シマスルコトハ固ヨリデ
アルニ拘リマセズ、事實ハ既設ノ稅種ニ增
稅ヲスル、或ハ新稅ヲ創設シテ之ニ課稅ヲ
スル、終始重稅主義、課稅主義一點張ニ止
ンデ、廢稅ハ愚カ、減稅ノ一ツダモ止メテ
居ラヌノデアリマス、殊ニ私共問題ト致シ
テ居リマスルノハ、臨時利得稅ノ問題デア
リマス、是ハ先年創設致シマシテ、昭和十
年、十一年、十二年度、三年間ヲ限定シテ
臨時的ニ創設サレタ利得稅デアルノデアリ
マス、金額ハ凡ソ三千万圓餘デアル、此臨
時利得稅ニ對シテ、今回ノ結城稅制ニ於テ
ハ凡ソ五割課ケテ居リマス、個人、法人ヲ
通ジテ一千五百万圓餘ノ增收ヲ計畫サレテ
居ルノデアリマス、是ガ來年ノ根本的稅制
計畫ニ於テハ、當然廢止サルベキ運命ニナッ
テ居ル、然ルニ拘リマセズ之ヲ昭和十三年
度間、尙ホ一年延長スルト云フコトヲ、政
府ハ增稅計畫法案ニ示シテ居ルノデアリマ
ス、申ス迄モゴザイマセヌガ、是ハ前ノ高
橋大藏大臣ガ、所謂軍需景氣ニ依ル跛行景
氣都會ト農村ノ擔稅力ヲ是正スル意味ニ
於テ新設サレタ所ノ、臨時利得稅デアルノ
デアリマスガ、是ハ唯當分之ヲ運用シテ、近
キ將來ニ於テ稅制ノ根本的改革ヲ樹立スル
ト同時ニ、此稅ハ廢止スルモノダト云フコ
トヲ、國民ニ向ッテ明言シテオ居デニナルノ
デアリマス、然ルニモ拘リマセズ十三年度ニ於
テ、尙ホ是ノ存續ヲ聲明シテ居ラレルノデアリマ
スルガ、來年度ニ於テ根本的ノ稅制改革ヲ立
案シテ、國民ニ示スト云フ政府ノ聲明デアル
限リ、前ノ大藏大臣ノ國民ニ誓ヒモアル限リ
ニ於テ、今囘是ハ十二年度限リデ當然廢止
スベキモノダト私共ハ信ジテ居ルノデアリ
マス、實ハ之ヲ附帶決議カ、或ハ修正カニ
依ッテト思ッタノデアリマスルケレドモ、當
然ノコトデアリ、且又一面ニ於テ、或ハ都
會ト農村ノ跛行景氣ハ、此處當分續クデア
リマセウ、然ル時ニ唯所得稅ノ稅法改正一
本デ、此跛行景氣ノ擔稅力ヲ調整スルコト
ガ出來ルカ、或ハ臨時利得稅ヲ廢シマシテ
モ、何カ新シイ臨時的ノ稅制ヲ以テ、此調
節ヲ圖ラナケレバナラヌト云フコトガアル
カモ知レナイノデアリマスカラ、必シモ之
ヲ私共廢止シロトカ、或ハ繼續シロトカ云
フコトハ、附帶決議ニ於テ謳ヒマセヌノデ
アリマスケレドモ、此間ノ事情ハ十分御理
解下サレマシテ、善處ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、就中郡部ト都會トノ負擔ノ是
正ハ、今囘ノ稅制ノ眼目デアリマツテ、全
ク焦眉ノ急ニ迫ッテ居リマスル懸案デアリ
マスルガ、之ニ對シテチットモ手ヲ觸レテ
ナカッタト云フコトハ、洵ニ遺憾ナ點デア
リマス、前ニ高橋君モ申サレマシタ通リニ、
都會ト農村ノ負擔ノ關係、大正ノ初カラ今
日マデ凡ソ二十數年間デアリマスルガ、國
稅ノ一ニ對シテ地方稅ハ二ニモナッテ居ル
シ、又地方ニ於キマシテモ都會ト農村ト云
フモノハ、都會ノ一ニ對ツテ農村ハ凡ソ三
倍ノ課稅ヲ負擔シテ居ルト云フ實情デゴザ
イマス、而モ近年農村ハ色々ナ社會上、經
濟上ヨリ致シマシテ、人モ物モ悉ク田舍
ヲ拂ッテ都會ニ流出致シテ居ル、サナキダニ
擔稅力ノ少イ地方ノ農山漁村民ハ、是等ノ
不當ナル重税ニ多年惱ンデ居ルノデアリマ
スカラ、此點ニハ一層ノ注意ヲ拂ヒマシテ、
所謂農村ト都會トノ財政ノ調節、負擔ノ均
衡ト云フコトニ付テハ、一般ノ御考慮ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス
第三ハ地方ノ財政調整交付金ノ問題デア
リマスガ、地方財政調整交付金ノ確立ト云
フコトハ、各派多年要望シ、且ツ唱道シ
來ッタ所ノ問題デアリマス、馬場前大藏大臣
ハ之ニ聽取スル所アッテカ、十二年度ニ
於テ約二億二千万圓、平年度ニ於テ二億九
千万圓ノ交付金ノ計畫ヲ樹立サレタ、然ル
ニ未ダ議會ノ協贊ヲ經ザルニ於テ、或ハ大
藏省ノ屬僚ヲ派シ、或ハ地方府縣ノ吏僚ヲ
各地ニ派遣シテ、所謂交付金ノ宣傳ヲ各市
町村ニ向ッテ行ハレマシタガ爲ニ、各町村ハ
旣ニ交付金ヲ鍋ニ入レタ如キ感ヲ懷キマシ
テ、旣ニ昭和十二年度ノ町村財政計畫ニハ
餘程此點ガ織込マレテ居ルノデアリマス、
多キハ一割四五分モアリ、少キハ二三分ノ
所ガアルノデアリマスガ、平均全國市町村
ノ財政ノ膨脹ハ、凡ソ八分ノ膨脹現狀デア
ルノデアリマス、兎モ角モ大藏當局ナリ、
或ハ地方ノ吏僚ノ是等ノ處置ノ當否ハ別ニ
論ジマセヌデモ、地方ノ財政ガ此宣傳ノ爲
ニ、目下一大混亂ヲ捲起シテ居リマスルコ
トハ、蔽フベカラザル事實デゴザイマス、
尤モ馬場財政案ノ如キ、地方獨立ノ財源ヲ
悉ク國稅ニ移管スルトカ、或ハ之ヲ廢止致
シマシテ、財政ノ中央集權主義ノ租稅體系ヲ
整備シテ、專ラ交付金制度ニ依ッテ地方財
政ヲ中央ニ握ラント致シマシタ措置ノ如キ
ハ、甚シク官僚政治ノ弊竇ヲ現シタモノト
云フコトガ出來マス、是ガ爲ニ地方ハ所謂
財政ノ獨立性ヲ全然喪失致シマシテ、多年
唱ヘテ居リマスル自力更生ハ勿論ノコト、
唯依賴主義、依存主義ニ堕落シテ、遂ニハ
地方自治ノ破壞ヲ恐レザルヲ得ナイト云フ
コトガ今日ノ實際デアリマス(拍手)結城財
政當局ニ於カレマシテモ、來年度ニ於テ地
方ノ稅制ノ整理ト共ニ、此點ニ最大ナル考
慮ヲ拂ハレテ、所謂負擔ノ衡平ト共ニ、此
點ニ於テ手配ヲスルト云フ御聲明デアリマ
スルガ、馬場財政ニ對スル此非難ニ鑑ミ、
此缺點ニ徵セラレテ、獨立ノ財源ヲ地方
ニ先ヅ持タシテ、地方ヲ財政的ニ獨立セ
シムル、而シテ其不足分ヲ國家ヨリ交付金
ヲ以テ賄フト云フコトデナケレバ、眞ニ地
方ノ自治獨立、國家ノ根幹ト云フモノハ
破壞サレルノデアリマス(拍手)或ハ其稅源
ト致シマシテハ、地租或ハ家屋稅ノ如キ、正
ニ適當ナ稅種デアラウト思フノデアリマス
ガ、馬場案ニ於キマシテハ、地方ノ戶數割
ノ全廢ノ計畫デアッタノデアリマスルガ、是
モ日本獨特ノ稅デアリマス、獨特ノ稅デアッ
テ、運用如何ニ依ッテハ、極メテ巧妙ニ出來
テ居ル是ハ稅種デゴザイマスルガ故ニ、輕
減シテ此稅源ハ依然存スルコトガ、地方稅
源獨立ニ資スル所以デハナイカト私共ハ考
ヘテ居ルノデアリマスルガ、十分此點モ御
留意ヲ願ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
今回ノ臨時增徵計畫ニ於キマシテハ、固ヨ
リ申スマデモゴザイマセヌガ、地方交付金
ハ臨時部カラ七千万圓御出シニナッタノデ
アリマス、然ルニ衆議院ニ於ケル各派ノ熱
烈ナル要求ニ依リマシテ、政府ハ近ク追加
豫算デ更ニ三千万圓御提出ニナル、御追加
ニナルコトニナッテ居リマスガ、是ハ無キニ
優ルコトハ萬々デゴザイマスガ、併シ今日
ノ農村ノ現狀ヲ以テ致シマスレバ、極メテ
不十分デアルノデアリマス、爾カ致シマシ
テ、其分配方法ニ關シテデアリマスガ、從
來色々ノ交付金ナリ、或ハ助成金ナリガ市
町村ニ御交付ニナリマスルガ、色々失敗ガ
アッタノデアリマス、此從來ノ失敗ニ鑑ミラ
レテ、最善ノ調査〓究ヲ期シタ上デ、分配
方法ニ誤リナキヲ期セラレタイノデアリマ
ス、先頃內務當局ノ言明ニ依リマスルト云
フト、今囘七千万圓、三千万圓、合セマシ
テ一億万圓デアリマスルガ、其一億万圓交
付ノ方法ハ、三千万圓ハ府縣ニ交付シテ、
所謂地租附加稅、雜種稅ノ輕減ノ財源ニ充
テシムル、殘ル七千万圓ノ中、六千五百万
圓ハ所謂町村ト貧弱市ニ交付シテ、戶數割
ノ輕減ニ之ヲ充テシムル、更ニ殘ル五百万
圓ハ特別ノ貧弱町村ニ交付シテ、之ヲ救濟
スルノデアルト云フ言明デアリマスルガ、
冀クハ單ニ机上ノ數字ノミニ依ッテ、分配額
ヲ決定セラルヽコトナク、親シク町村ノ實
情ニ就テ斯ク〓〓ダト、十分調査〓究ノ上
デ御交付ガ願ヒタイ、從來動モ致シマスル
ト、此交付金ヲ他ニ濫費流用シマシテ、負
擔ノ輕減ノ目的ヲ逸シタコトモアリマス、
或ハ之ヲ負擔ノ輕減ニ支出充當ハ致シテ居
リマスルケレドモ、少數有產階級ノ負擔輕減
ニ、其大半ヲ奪ハレルヤウナ事例モアッタノ
デアリマスルカラ、將來ノ分配ニ付テ十分ノ
御調査御〓究ヲ願ヒ、御留意ヲ願ヒマスル
上ニ、分配後ノ監督ニ付テモ、一段ノ御注
意ヲ御忘レナラヌヤウニ、特ニ內務當局ニ
御願シテ置クノデアリマス、而シテ交付金
本來ノ性質デアリマスルガ、私ハ交付金ハ
何處マデモ交付金デアルト思フノデアリマ
ス、決シテ市町村ヲ救濟スル意味ノ國家ノ
扶助費、救濟費ニアラザルコトノ意味ヲ、
其思想ヲ此際植付ケルコトモ同時ニ肝要ダ
ト思ヒマス、如何トナラバ、前ニ此討論モ屢〓、
行ハレマシタ通リニ、地方ノ市町村ニ於キ
マシテ支出シマスル大半ト云フモノハ、所
謂國民〓育費デアリマス、其〓育費ノ〓員
給料ノ約半額八千五百万圓ガ、旣ニ政府カラ
交付サレテ居ルノデアリマスガ、尙多額ノ
〓育費ト云フモノガ、市町村ニアッテハ是ガ
市町村費ノ大部分ノ費用トナリ、不相應ノ
巨額ニ上ッテ居ルノデアリマス、故ニ之ヲ嚴
密ニ論ジマスルト云フト、國家ノ國民ヲ〓
育スル費用デアリマスカラ、無論國庫ガ負
擔スベシト云フ論モ立ツデアリマセウ、又其
他ニ於テ徵兵事務ニ致シマシテモ、或ハ徵稅
事務ニ致シマシテモ、戶籍事務ニ致シマシテ
モ、實ハ町村ノ固有事務ヨリモ、國家カラ
委任サレマシタ委任事務ノ方ガ寧ロ多イノ
デアリマス、隨ヒマシテ町村ノ費用ノ半分以
上モ、此國費擔當ノ爲ニ補償サレテ居ルト
云フコトモ亦言得ルノデアリマスルカラ、嚴
密ニ申シマスルナラバ、少クトモ町村吏員
ノ給料ノ半額位ヤ、町村費ノ半額位ハ、國庫
ヨリ支辨スベキガ是ハ當然ナノデアリマス、
決シテ國家ガ町村ヲ救濟スル、所謂乞食ニ
殘飯ヲ與フルガ如キ性質ノモノデハ絕對ニ
ナイノデアリマス、併シナガラ固ヨリ國家
アッテノ市町村デアリ、市町村アッテノ國家
デアリ、此兩者ハ互ニ所謂抱合デアッテ、持
合デアルノデアリマスルカラ、此關係ヲ截
然區別シ、其經費ヲ國家ガ分擔シナケレバ
ナラヌト云フヤウナコトヲ論ジマスコト
モ、是ハ穩當ヲ缺クト思フノデアリマスル
カラ、必シモ左樣ニハ考ヘテ居リマセヌノ
デアリマスケレドモ、交付金ノ本來ノ性質
ト云フモノハ、斷ジテ扶助的、救濟的ノ性
質ノモノニアラズシテ、明ニ國庫ノ負擔ス
ベキ當然ノモノデアルト云フコトヲ申シテ
モ差支ナカラウト思フノデアリマス、然ル
ニ國家ト致シマシテモ、近來所謂頓ニ累增
致シマスル不可避ナ國費ノ捻出ニ惱マサレ
テ居ル場合デアリマスルカラ、到底巨額ノ
交付金ト云フモノノ支出ハ不可能デアリマ
ス、デアリマスルカラ、先ヅ先ニ町村ニ獨
立ノ稅源ヲ與ヘテ、財政上ノ獨立ヲ保障ス
ル、而シテ交付金ヲ交付スベキデアリマス
ルガ、實ハ又交付金ヲ交付スルト同時、
或ハ之ニ優先シテ、地方產業開發ノ爲ニ、
モウ少シ國家ハ經費ヲ投ズルノ政策ヲ講ジ
ナケレバナリマセヌ、地方市町村民ニ生活
ノ安定ヲ與ヘ、產業ヲ授ケテ、以テ地方費
ノ財源ノ根幹ヲ涵養致シマスコトガ急務デ
アルト信ジマス、是レ卽チ一面國費ノ輕減
ト同時ニ、他面ニ於テ吾人多年唱道シ來レ
ル、所謂廣義國防ノ本旨ニモ合スル所以デ
アルト存ズルノデアリマス
第四ハ、物價ノ騰貴ト惡性「インフレ」ニ
對スル關係デアリマス、是モ曩ニ高橋君カ
ラ御述ニナッタヤウデアリマスガ、馬場財政
ニ於テハ、十二年度ハ一躍三十億三千八百
万圓ノ厖大豫算ヲ計畫サレタノデアリマ
ス、而モ其中ニ陸海軍ノ經常、臨時部ニ於
テ、十一年度ニ比シテ三億五千万圓ノ增加
ガ行ハレテ居ッテ、總額十四億一千万圓バカ
リノ國防費ガ消費サレルコトガ明瞭ニサレ
タノデアリマスガ、サウ致シマスルト如何
デゴザイマセウ、所謂軍需工業熱ノ爆發氣
構ヘカラ、鐵材其他ノ重工業用ノ材料ガ暴
騰氣配ヲ示シマスコトハ勿論、工場ノ擴張
充實、生產財ノ輸入買占或ヘ賣惜ヤラ、熟
練職工ノ爭奪戰ヤ、色々ノ原因結果ガ相交
互錯綜致シマシテ、一般ノ物價騰勢ノ氣配
ヲ示シタノデアリマス、ソコデ時ノ廣田內
閣ハ倉皇トシテ爲替管理ノ属行ナドヲ致シ
マシテ、思惑輸入ノ防戰ニ努メタノデアリ
マス、サウシテ對物價抑壓策ヲ講ジマシタ
ケレドモ、事實ハチットモ防止シ得ナカッタ
バカリカ、却テ物價ハ騰貴致シタノデアリ
マス、然ルニ林內閣ニ於テハ、第一此儘ノ
物價騰貴ノ情勢ニ於テハ、到底豫算通リ軍
事費ヲ實現化スルコトノ至難ナルニ氣付カ
レマシテ、軍部トモ協定サレテ、先ヅ軍事
費ヲ抑ヘテ、一般歲出ノ切下ヲ行ヒ、以テ
物價騰勢抑壓ヲナサレテ、サウシテ豫算ヲ
修正シ、歲計ノ立直シヲ講ゼラレタモノノ
ヤウニ聞イテ居ッタノデアリマス、然ルニ所
謂實行見合セ額ト云フモノガ、二億六千九
百万圓出タノデアリマスガ、其中ニハ海軍
ノ見合セ額ガ二千三百万圓、陸軍モ同ジク
二千三百万圓、合計四千六百万圓デアリマ
シテ、最モ多ク削減サレマシタモノハ、
億五千万圓ノ地方交付金、殘リ七千三百万
圓ト云フモノハ、ドウ云フ點ガ見合セ額ト
シテ削減サレテ居ルカト言ヒマスト、內
務商工、農林ノ經費デアリマシテ、所謂
產業施設費ヲ初メトシテ、災害豫防費デア
リマストカ、救濟施設費デアリマストカ云
ラ社會事業費カラ、道路、河川、港灣ノ交
通所謂文運交通ノ經費ヲ、殆ド片ッ端カラ
切捨テヽシマッタノデアリマス、更ニ驚クベ
キコトハ、第二次修正案ガ提示サレタノデ
アリマスガ、此修正案ニ於テハ、海陸ノ兩
方合セク四千六百万圓ノ軍事費ハ、再ビ復
活計上サレテ居ル、サウ云フ豫算ガ提示サ
レタ、所謂馬場財政ノ國防費ノ十四億一千
万圓ト云フモノハ、全然無疵デ通過スルヤ
ウナ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、結
局斯ク觀ジマスルト、地方庶民大衆ハ是
ノダシニ使ハレタ形デアルノデアリマ
ス、隨ヒマシテ十二年度ノ歲計二十七億六
千七百万圓ハ、遂ニ二十八億一千三百万
圓ト相成リ、國防費ハ正ニ十二年度ノ
總歲出ノ五割以上ヲ占ムルコトト相成ッテ
居ルノデアリマス、此事ハ憲法上、會計法
上色々ノ疑義ヲ生ジ、違憲論モ生ジテ、吾
吾モ相當意見ハ持ッテ居ルノデアリマスル
ガ、其事ノ當否ハ別ト致シマシテ、物價騰
貴ヲ抑制スルト云フコトハ、一體ドウナッタ
ノデゴザイマセウカ、昨年十一月末ニ高物
價ニ襲ハレル所トナッテ、色々ノ手配ヲサレ
〃、所謂豫算モ切下ゲタ、ケレドモ事實ニ
於テ十二月モ一月モ物價ハ上ッテ居ルノデ
アリマス、二月ハ多少低落狀況ヲ呈シタノ
デアリマスケレドモ、三月ニ於テ又上ッテ居
ルノデアリマス、就中軍需工業ニ最モ必要
ナル「メタル」材ガ特ニ騰貴ヲ致シテ居ルコ
トハ、御承知デアラウト思フノデアリマス
ルガ、斯ノ如ク所謂物價ハヒタ上リニ騰勢
步調ヲ迪ッテ居リマスルコトハ、是ハ固ヨリ
世界的ノ物價上騰ノ影響ノアルコトモ見逃
セマセヌ、ケレドモ私ハ專ラ軍需品景氣ニ
依ル物價先高見越ヤラ、國費ノ膨脹ニ依ル
赤字公債增發ニ伴フ兌換劵ノ增發ト云フコ
トナド、幾多國內事情ニ原因致シマスルコ
トハ、固ヨリ當然デアルト思フノデアリマ
ス、此情勢ヲ放任致シマスル時ニ、内ニハ
物價勝貴デ遂ニハ惡性「インフレ」モ起ルノ
デハナイカ、或ハ外ニハ貿易ハ逆轉シテ逆
調トナリ、輸入ノ激增トナッテ、爲替相場ノ
下落トナリマスル時ニ、軍事費ノ實現化ガ
出來ナイト云フコトヲ憂フルバカリデナク、
果シテ我ガ經濟界ハ如何ニ成リ行クノデゴ
ザイマセウ、私共憂ヒマスルコトハ、私ノ
推定ニ依リマスルト云フト、此十二年度ノ
四月以降ハ所謂會社ノ新規拂込-增資ノ
爲ニ相當所謂拂込ガ行ハレルデアラウト思
フノデアリマス、而シテ是ハ何レモ軍需工
業ノ擴張及ビ新設デアリマスルガ故ニ、所
謂機械工具ノ買入ヲ必要ト致シマス、若
シ今日ノ如ク爲替管理ヲ極端ニ属行致シマ
スル時ニハ、工場ハ出來タケレドモ、機械
ノ据付ハマダ出來ナイト云フコトニナッタナ
ラバ、所謂資本ハ死藏シ、固定サレルコト
ニナルノデハナカラウカ、而シテ又其反面
ニ於テ之ヲ憂ヘテ、所謂爲替管理ヲ属行セ
ズシテ、買フガ儘ニ輸入ヲ許シマシタ時ニ、
所謂輸入超過トナッテ、大藏大臣當面ノ彌縫
策トシテ金ノ現送ヲ行ッテオ居デニナリマス
ルガ、果シテ之ニ對シテ少々ノ金ノ現送ヲ
以テ國際貸借ガ調節出來ルデアラウカト云
フコトヲ、私ハ氣遣ハザルヲ得ナイノデア
リマス、現ニ惡性「インフレ」ノ所謂亂調子
ノ一面トモ申シマスルモノガ、株式界ニ現
レテ居ルノデアリマス、昭和九年ノ五月ニ
株式ノ取引高ガ、三百万ト言ハレテ驚イテ
居ッタノデアリマスルガ、最近數日間ニ於テ
ハ株式ハ非常ニ爆發シテ、三百万ヂヤナイ、
四百万、五百万ノ取引ガアルノヂヤナイカ
ト言フ程、殖エテ居ルノデアリマスガ、是
ガ果シテ堅實ナル景氣ノ下ニ、斯ノ如キ株
式ノ爆發ガ起キテ居ルノデアルカドウカ、
是ハ憂フベキ現象デハナイカト云フコトヲ
私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、要スルニ
斯樣ニ論ジマスルト云フト、廣田內閣更迭
ノ意義モ、乃至ハ豫算修正ノ目的モ全然沒
却サレテ、唯國民生活安定經費ノミガ犧牲
ニサレタト云フ結果ニ終ッタニ過ギナイノ
デアリマス、惟フニ馬場稅制ニ致シマシテ
モ、結城税制ニ致シマシテモ、共ニ固ヨリ一
長一短ハアルノデアリマスルガ、何レモ官僚
獨善ノ計畫タルコトニ於テハ、其揆ヲ一ニ
致シテ居リマス(拍手)實ハ是ダケノ大增稅
計畫ヲヤリ、直接國民ノ負擔ニ關係スル稅
制計畫、財政計畫ヲ切盛リ致シマス上ニ於
テ、廣ク民間ノ意見ヲ御徵シニナッテ、官民
提携シテ御ヤリニナックラドウ云フモノデゴ
ザイマセウ、私共內閣調査局ニ關係致シテ
居ッテ、何時デモ御相談ニ與カレル身分ニ居
リマスニモ拘ラズ、前ノ馬場サンデモ、ア
ナタデモ、未ダ一度モ斯ウ云フ御相談ヲ內
閣調査局ニスラ御掛ケニナッタコトヲ覺エマ
セヌ、將來ニ於キマシテハ、所謂廣ク意見ヲ
御徵シニナルコトガ必要デアラウト思フノデ
アリマス
此際ニ於テ一言申スノデアリマスルガ、
私共ガ前ニ委員長ノ報〓通リ、二週間以上
ノ審議ヲ熱心繼續致シタニモ拘リマセズ、
應答ニ當リマスル者ハ主トシテ課長カ局長
デアリマス、大藏大臣ガ數囘御見エニナッタ
ケレドモ、私ハ十時間ハ愚カ六七時間位ガ
延時間ヂヤナカッタカト思フノデアリマス、
是デ果シテ此重要法案ノ審議ガ出來ルデゴ
ザイマセウカ、事務的ノ質問ニ於テハ、是
ハ大藏大臣ヨリ局長、課長ノ方ガ能ク御承
知デアリ、十分說明ヲ聽イタノデアリマス
ケレドモ、國策及ビ將來ノ方針ニ付テハ、
聽ク勇氣モ出マセヌケレドモ、聽イテモソ
レハ私共ニハ答辯ノ限リデゴザイマセヌト
言フノハ、是ハ當然デアリマス、况ヤ私共
ノ同僚ノ携ッテ居リマスル委員會ニ於キマ
シテモ、所謂參考書ヲ要求シマスト云フト、
其日ニ持ッテ來テ、成ベク是ハ本日中ニ討
論ヲ終ッテ貰ヒタイト云フ希望ガアッタト云
フコトモ聽クノデアリ、又二三日前ニ、是
ハ司法大臣デアリマスルカ、或ハ法制局ノ
合作デアリマスルカ、商法ノ大改正法律案
ヲ議會ニ御提案ニナッテ居リマス、是ハ實ニ
厖大五百箇條ニ及ブ所ノ改正法案デアッテ、
恐ラク專門家ノ司法省、或ハ法制局ガ、十
年ノ歲月ヲ費シテ、斧鉞ヲ加ヘタ改正法律
案ダト聞イテ居ルノデアリマスルガ、會期
僅ニ一週間ヤ十日足リ足ラズノ今日ニ於テ、
此商法ノ改正ガ審議出來ルト云フ思召デア
リマスカ、私ハ所謂由ラシムベシ知ラシム
ベカラズト云フ、專制政治ノ昔ナラバイザ
知ラズ、畏クモ萬機公論ニ決スベシト云フ、
今日ノ立憲政治ニ對スル政府ノ態度トシテ
ハ、餘リニ不謹愼デアリ、議會ヲ無視シタヤ
リ方デアルト思フノデアリマス(拍手)此點
ニ於テ今後ノ審議ニハ十分誠意ヲ以テ善處
サレンコトヲ、特ニ此機會ニ於テ御願申シ
テ置クノデアリマス
申スマデモアリマセヌガ、結城財政ノ今
日ノ膨脹豫算ハ、最早既ニ貴業兩院ヲ通過
セント致シテ居リマスルガ、是ハ失禮デア
リマスルガ、今囘ノアナタノ財政計畫ガ、
國民ガ全幅ノ贊成ヲ表シテノ結果デハゴザ
イマセヌ、寧ロ前ノ馬場財政ニ依ッテ大キナ
大入道ガノサバッテ參リマシテ、之ニ驚カサレ
ク後デアリマスルカラ、是ガ前觸レトナッテ、
其オ蔭デ此案ガ通ッタノダラウト私ハ考ヘテ
居ルノデアリマス、而シテ豫算膨脹ノ原因
デアリマスル內外諸般ノ事情ハ、其當時ト
少シモ變ッテ居ラヌノデアリマス、却テ拍車
ヲ掛ケタ感スラ致スノデアリマス、此間ニ處
シテ三年、五年ノ遠キ將來ノコトヲ見透シ
ノ付カヌト仰シヤルコトハ、御無理デアリ
マセヌケレドモ、十三年度豫算ヲ如何ニ編
成サレルノデアルカ、其收入ハ如何ニ御賄
ヒニナルノデアルカト云フ質問ニ對スル、
結城藏相ノ答辯ハ極メテ曖昧千萬デアリマ
ス、更ニ增稅スルガ如ク、セザルガ如ク、
一層赤字公債ヲ發行スルガ如ク、セザルガ
如ク、全ク五里霧中ノ答辯デアリマシテ、
最後ハ何カ妙案ヲ一ツ考ヘルコトニ致シマ
セウト云フ御託宣デアルノデアリマス、併
シ先般來提示サレテ居リマスル多數ノ豫算
書ニ依ッテ、私共及バズナガラ調査致シマシ
タル所ニ依リマスルト云フト、國防費ヲ中
心ニ致シマシタル昭和十二年度以降ノ繼續
費ダケガ、驚ク勿レ三十七億七千三十五万
餘圓ニ上ッテ居ルノデアリマス、其中ニ海軍
省所管ニ於テ、兵備充實ニ關スル部門ノ臨
時費ノミヲ見マシテモ、十二年度ハ二億一
千三百十五万二千餘圓デアリマシタノニ、
十三年度ハ是ガ三億一千一一百十九万九千餘
圓ニナッテ居リマス、同ジク陸軍省所管ニ於
テ、十二年度分ガ一億一千七百二十九万八
千餘圓デアリマスルノニ對シテ、翌十三年
度ハ是亦二億一千五百六十二万九千餘圓ヲ
示シテ居ルノデアリマス、海陸各〓凡ソ
億万圓ヅヽヲ增シテ居ルノデアリマスル
カラ、是等兩省ノ兵備充實ニ關シマス
ル繼續費ハ、臨時費ノミデ來ル十三年度ニ
於テハ、十二年度ニ比シテ約二億万圓
ノ增大ガ、現在約束サレテ居ルノデアリマ
ス、其上ニ近來殆ド每年ノ如ク、所謂
既定繼續費ノ上ニ追加繼續費ト云フモノガ、
年々追加ニ追加サレテ、膨脹サレテ居リマ
スルノ實情ニ想ヒ到リマスルノ時ニ、十三
年度ノ豫算ガ更ニ數億ノ膨脹豫算ニ上リマ
スルコトハ、是ハ必然デゴザイマス、曩
ニ馬場財政ニ於テ三十億以上ノ厖大豫算ヲ
出サレテ喫驚致シマシタル國民ハ、コヽ半
年足リ足ラズノ將來ニ於テ、或ハソレ以上
ノモノヲ提議サレルコトハ、是ハ自明ノ理
デアルノデアリマス、然ラバ此財政ハ何ニ
依ッテ補塡スルノデアルカ、或ハ十三年度ニ
於テハ、經費ノ節約ヲ何カ御考ニナッテ、
財政ノ調節ヲ行ハルヽノ意思アリヤト云フ
コトノ質問ニ對シテハ、結城藏相ハソレハ中
々困難デアトマセウト云フ御答辯デアリマス
此答辯カラ致シマスルト云フト、結局
更ニ增稅ニ依ルカ、赤字公債ニ依ルカ、
或ハ其二者共ニ之ヲ擇ブヨリ外ニハ方法ハ
ナキ筈デハゴザイマセヌカ、尤モ此稅制ヲ
以テ致シマスレバ、十二年度ニ於テハ相當
ノ自然增收モアルコトハアリマセウ、ケレ
ドモ是ハ當ニナリマセヌ、而シテ結城藏相
ノ御持論デアリマスル公債ハ尙ホヤリ方ニ
依ッテハ、十三億、四億五億バカリノ所謂國
民ニ應募力アリト信ズル、然ラバ其根據ハ
如何ナル根據ニ依ッテ、サウ云フ御所論デゴ
ザイマスカト云フコトノ質問ニ對シテハ、
吾々ノ滿足致シマスルヤウナ御答辯ヲ聽ク
ヲ得ナカッタノデアリマス、是ニ於テ私共心
配ニナリマスルコトハ、皆サンモ是ハ既ニ
御承知デアラウト思フケレドモ、十二年度
ニ於テハ前ニ申シマスルヤウニ、新規或ハ
擴張ノ法人ノ拂込金ガ相當ニ巨額ニナルコ
トヲ豫想サレルノデアリマス、而シテ又所
謂對滿投資ト致シマシテ、多クハ二十四五
億少クトモ十億見當ノ費用ヲ、對滿ニ投
資シナケレバナラヌヤウナ關係ニ立至ッテ
居ルノデアリマス、斯ウ云フ所謂金融資金
ノ涸渴ノ眞只中ニ在ッテ、昭和十二年度ニ
於テハ一般會計ニ於テ八億万圓以上、特別
會計ニ於テ一億六七千万圓、計九億六七千
万圓、約十億ニ垂ントスル公債ヲ募集シナ
ケレバナラヌト云フコトノ運命ニ在ルノデ
アリマス、而シテ昭和十一年度ノ手持公債
ヲ尙ホ政府ハ一億万圓以上賣出サズニ手持
ガアル筈デアリマス、之ヲ果シテ政府ハ如
何ニコナシテ行クノデアラウカ、私共洵ニ
心配ニ堪ヘヌノデアリマスルガ、所謂公債
ノ十四五億ノ募集ニ付テ確信ガアリ、方法
ガアリトサレル結城藏相ノ御意見ニ對シテ
ハ、吾々ハ極メテ傾聽セントスル何物モナ
ク、寒心ニ堪ヘヌト云フコトヲ此際申上ゲ
テ置クノデアリマス
思フニ年々押寄セ參リマスル國防費ヲ、
先ヅ吾人ハ再檢討ヲ加ヘマシテ、之ニ調節
ヲ試ミマセヌ限リニ於テハ、將來國民ノ重
壓ヲ除イテ、所謂負擔ヲ輕減シテ產業ノ發
達ヲ促シ、民心ノ安定ニ培フト云フコト
ハ、是ハ絕對ニ不可能ト信ズル者デアリマ
ス、唯政府モ或ハ議會モ、此國際情勢ノ變
化ニ際シテハ、已ムナキコトデアルナドト
言ッテ、所謂一定ノ常套話ヲ終始繰返スコ
トニ依ッテ、應答ヲ重ネテ居ルヤウナ呑氣
ナ今日ハ時機デハ絕對ニナイト思フノデゴ
ザイマス、斯ノ如ク國費ノ膨脹致シマスル
原因ハ、前ニ諸君ガ申シマス通リ、其原因
ハ國防費ノ過重ナル負擔ニアルノデアリマ
ス(「簡單ニ」ト呼フ者アリ)其國防費ガ過重
致シマスル原因ヲ掘下ゲテ、モウ少シ根據
ヲ究明スルノ必要ガアルノヂヤアリマセヌ
カ、急グバカリガ國家ニ忠デハゴザイマセ
又、オ互ニ虚心坦懷ニ一ツ國防ヲ議シテ見
タイト思フノデアリマス、ソコデ私ハ國防
費低減ノ基調ハ根本的ノ國策ノ立直シヲ措
イテ外ニナシト考ヘマス、所謂平和主義ノ
國是ヲ玆ニ明徵スルコトデゴザイマス、元
來我ガ皇道政治ハ宇內ニ冠絕スル政治デア
リマシテ、仁ヲ經トシ愛ヲ緯トシテ、所謂
優ニ世界人類ヲ包容スル所ノ廣大無邊ノ仁
愛政治ナルコトヲ本質ト致シテ居リマス、
隨テ皇國ノ國防ハ海陸軍部兩當局共ニ常ニ
主張致シマスル所ハ、無脅威無侵略ヲ以テ
國防ノ原則ト致シテ居リマス、所謂仁者敵
ナシノ筈デハアリマセヌカ、此皇道政治ノ
本義ニ鑑ミマシテ、專ラ國際關係ノ友好親
善ヲ圖ッテ、速ニ相互間ニ橫ハレル險惡ナ
ル暗雲ヲ一掃スルコトヲ措イテ他ニ方法ナ
シト信ジマス、國際間ノ險惡思想ハ國防ヲ
以テシテハ結局抑止スベクモアリマセヌ、
唯强キ正シキ外交ヲ基調ト致サナケレバ
ナリマセヌ、固ヨリ强キ正シキ外交ノ背
後ニ、强キ正シキ國防ヲ必要ト致シマス
コトハ勿論デアリマスルガ、現在ノ國防ハ
動モ致シマスレバ、國防ガ先驅シテ、外
交ヲ後ヘニ隨ヘテ、却テ國際間ノ摩擦ヲ多
カラシムルノ嫌ナキカヲ憂フル者デゴザイ
マス、而シテ現在ノ國際情勢ヲ馴致セル
ノ原因ハ内外何レニ存スルカト言ヒマス
ルト、外ヨリ來ルコトモ勿論デゴザイマス
ルガ、又內ヨリ來ルコトモナシトハ言ヘナ
イノデゴザイマセウ、歷代ノ政府ガ議會ノ
劈頭ニ於テ、國際ノ親善ハ極メテ圓滿デア
ル、而シテ友好關係ノ密ナルコトヲ喜ブト
宣明シテ居リマスル其反面ニ於テ、所謂
一觸卽發ノ危機ニ在リト答フルガ如キハ、
其聲明ニ悖ルデハナイカ、或ハ政府之ヲ唱
道シ、或ハ政府ガ之ヲ實行シヨウト致シマ
シテモ、出先官憲ニ於テ箇々ノ行動ヲ行フ
コトニ依ッテ、政府ノ方針ト違フ所ハナキ
カ、或ハ隨所不慮ノ葛籐ヲ生ミ、隨時無用
ノ摩擦ヲ招クコトハナイノデアリマスカ、斯
クシテ無用ノ國防費ヲ必要トセシムルガ如
キコトナシトセヌカラ、吾々共憂ヘテ居ル
ノデアリマス、是ハ某外人評論家ノ所論デ
ゴザイマスルガ、日本ノヤウナ軍國主義國ニ
對シテハ、最早條約モ協定モ無駄デアル、之
ヲ締結スルモ結局無意味デアル、唯之ニ對
抗スル方法ハ國防ヲ擴張スルコトニ於テ外
ニナイ、サウ致シテ居リマスト日本ノ國民
ニモ擔稅力ハ限リガアルカラ、早晩國民ノ
擔稅力ハ涸渴スル、其時マデ吾々ハ飽マデ
モ軍備競爭ヲ續ケテ、洵ニ殘念デハアルガ、
其日ノ到來スルコトヲ待ツノ外ニ方法ナシ
ト言ッテ居ル、現ニ日本ノ極東ニ於ケル地位
ハ、一千九百三十二年ヲ最高峰トシテ、所
謂三十三年、三十四年ハ「セコンド·レート〓
「サード·レート」卽チ第一一位モ第三位モ低
下シテ居ルデハナイカ、斯ウ云フコトヲ以
テ我ガ帝國ノ國防ヲ批判シテ居ルノデアリ
マス、私固ヨリ此言ヲ其儘受容レル者デハ
アリマセヌガ、時ニ取ッテ所謂他山ノ石ト
致シ、以テ我玉ヲ磨クベキデハナイカト信
ズルノデアリマス、而シテ所謂國防ハ比較
的ナモノデアリマスガ故ニ、國防ヲ充實致
シマスト、遂ニ救フベカラザル國際ノ危機
ヲ招來致シマスルコトモ是レ憂ヘザルヲ得
ナイコトデアリマス、之ヲ要シマスルニ國
防救國ノ目的ハ、國防ナキニ至ルコトデナ
ケレバナラヌ、然ルニ今日ノ實情ハ所謂倒
行逆施デアッテ、益〓國防ニ國防ヲ重ヌルノ
實情デアルノデアリマス、去ル二月十二日
ニ於テ林前外相ハ尾崎氏ノ質問ニ對スル答
辯トシテ、滿洲國周圍ノ形勢ハ一觸卽發ノ
危機ニ在リト說カレ、佐藤新外相ハ去ル十
一日ニ於テ本會議ノ席上デ、戰爭ノ危機ハ
日本帝國ノ考一ツデ何時デモ囘避スルコト
ガ出來ルト說カレ、更ニ我ヨリ能動的ナラ
ザル限リ危機ナシト論破セラレテ居ルノデ
アリマス、然ルニ其翌日貴族院ニ於テ、其
意味ハ積極的ニ戰ヲ誘致スルガ如キ態度ハ
愼ムベキデアルガ、相手國ヨリ挑戰サレテ
モ、何處マデモ忍從スベキノ主張ニアラザ
ル旨ノ附足シヲセラレテ居ルノデアリマス、
私共ハ此國際情勢ニ於キマシテ、玆ニ柄鑿
相容レザル二箇ノ對立スル意見ニ接シタノ
デアリマスルガ、佐藤新外相ノ主張モ、少
クトモ一面ノ事實ヲ把握セルモノデアッテ、
我ヨリ進ンデ積極的ニ出デザル限リニ於
テ、危險ノ負擔ハ餘程輕減サレルノ實情ニ
在ルトノ情報ニ接シマスル時ニ、所謂國民
ハ齊シク悅ビ且ツ安堵致シタノデアリマス
實ハ先般我々ノ此臨時租稅增徵法委員會
ノ席上ニ於テ、某委員ニ對スル政府當局、
就中軍部當局者ノ答辯スル所ニ依ルト、我
國ハ非常時デアル、準戰時狀態ニ置カレテ
居ルナドト言ッテ、常ニ最大形容詞ヲ以テ國
民ニ呼掛ケテオ居デニナル、然ルニ國民ハ
其眞相ヲ把握スルノニ苦ンデ居ル、我ガ日
本帝國國民ハ眞ノ危機ニ遭遇致シマスル時
ニ、サウ仰シヤラナイデモ、所謂臥薪嘗膽、
國難ニ殉ジマスルコトハ、前ノ日〓、日露
戰爭ニ之ヲ鑑ミマシテモ、明瞭デハナイカ
ト云フ意味ノ質問ニ對シマシテ、結城大藏
大臣ハ、政府當局ノ國民ニ理解ヲ求ムルノ
努力ガ未ダ足リナカッタノデアリマセウト
云フコトノ答辯ガアッタ、之ニ對シテ其委員
ハ更ニ言葉ヲ重ネテ、サウデアリマセヌ、
政府當局ノ近來ノ宣傳ト云フコトハ、實
行過ギル程ヤッテ居ル、然ルニ其宣傳ヲサレ
テ居リマスルガ、國民ニハ危機其モノノ實
體ヲ把握スルコトガ出來ヌノハ遺憾ト致シ
マスト、應酬致シタノデアリマス、事實ハ
全ク其通リデアッテ、私共其憾ナキヲ得
ナイノデアリマスガ、佐藤新外相ノ所論
ノ如ク、國際關係ノ安危ガ多クハ懸ツテ
帝國ノ進退ニアリト致シマスレバ、對露、
對支ハ勿論、對米、對英ノ國際事情トシテ
ハ、日本帝國ノ外交方針如何ニ依ッテ、多ク
ハ解決サレルノ道理デゴザイマス、外交措
置如何ニ依ッテハ、軍擴競爭ハ之ヲ餘程緩和
シテ、無用ノ國防費ヲ不要ト致シ、隨テ國
民負擔ハ自ラ輕減シ得ルコトモ自明ノ理デ
ゴザイマス、言フマデモナク現在ノ日本帝
國ハ、昔日ノ日本デハゴザイマセヌ、世界
最大ノ雄邦日本國デゴザイマス、數十年前
ノ小邦日本デハ斷ジテナク、東洋ノ指導權
ヲ握ッテ居リマスト同時ニ、所謂當ニ世界ノ
强國日本デアリマスルコトハ、申ス迄モゴ
ザイマセヌ、此堂々タル大日本帝國ノ襟度
ヲ以テ世界ニ臨ムベキデハナイカ、正ニ小
弱ハ之ヲ援ケルガ宜シク、强暴ハ之ヲ挫ク
ガ宜シイ、而シテ弱キ隣邦支那ハ之ヲ援ケ
テ、誤レル所謂「ソ、」聯ハ之ヲ導クベキデアリ
マス、隨テ支那ニ對スル帝國ノ國是ハ、主
權領土ノ保全、互惠平等ヲ基調トシテ共存
共榮ノ經濟提携ヲ國是トシテ、以テ臨ムベ
キデアルト信ジマス「ソ」聯邦ニ對シテハ多
年彼ノ提唱シテ居ル不可侵條約ヲ締結シテ、
所謂平和的狀態ヲ示スノ雅量ヲ必要トセザ
ルヤト思フ者デアリマス、由來「ソ」聯邦ガ
日本帝國ニ對シテ不可侵條約ヲ締結スルコ
トヲ要求シテ來タコトハ屢バアルト聞クノ
デアリマスルガ、之ヲ拒否致シマシタル理
由ハ、彼ニ誠意ナク、責任ナク、極メテ不
信用デアッタガ爲メデアルト云フコトヲ聞
イテ居ルノデアリマスガ、此際私共日本帝
國ハ大國民ノ度量ヲ持シテ、彼ガ希望スル
ヤウニ條約ヲ締結シテヤッテハ、ドンナモノ
デゴザイマセウ、而シテ徐ロニ彼ノ態度ヲ
正視スルダケノ餘裕ト度胸ヲ示ス必要アル
ヲ信ズルノデアリマス、唯彼ノ思想侵略ニ
對シテハ油斷ガアリマセヌ、所謂皇軍將士
ノ櫛風沐雨多年ノ苦心モ玆ニ在ルコトヲ感
謝シテ居ルノデアリマス、併シ試ニ條約
ヲ結ンデ見テハドウカト云フコトヲ、此際
思ハザルヲ得ナイノデアリマス、而モ尙ホ
彼ニシテ不信ノ行動ガアリトスレバ、其時
ニ敢然起ッテ膺懲ノ軍ヲ起シテモ、決シテ遲
クハナイト思フ、而シテ我ニアリマシテハ
終始彼ノ行動ニ留意スルコトハ勿論デアリ
マシテ、一朝有事ニ備ヘマス爲ニ一定程度ノ
國防ハ平素決シテ忽諸ニ付スベカラザルコ
トハ勿論デゴザイマス、而シテ國防ハ軍部
當局常ニ唱道致シマス通リニ、所謂無脅威、
無侵略ノ國防ヲ以テ足レリトシナケレバナ
リマセヌ、殊ニ我ガ日本帝國從來ノ經驗歷
史ニ徵シマシテモ、所謂戰爭ノ決定力ハ常
ニ兵器彈藥等ノ、物質的、科學的優劣ノミ
デハナカック筈デアリマス、勿論現時ノ科學
戰ニアリマシテ、此種ノ兵備ノ閉却出來マ
セヌコトハ、百モ私共ハ心得テ居リマスル
ガ、我國最高ノ武力ハ、卽チ何時ノ時代ニ
於キマシテモ忠君愛國デアリマス、國民總
動員ノ至誠デアルコトハ決シテ忘レテハナ
リマセヌ、換言シマスレバ七千万國民ノ肉
彈其モノデゴザイマス、是コソ卽チ帝國獨
特ノ武器デアッテ、金錢デ購ヒ得ザル、卽チ
諸外國ノ追從ヲ許サナイ最高最終ノ決定力
デアリマス、此決定力コソ、所謂護國ノ金
城湯池デアリマシテ、武田信玄ノ所謂人ハ
石垣、人ハ濠デアリマス、囘顧致シマスレ
バ日本海海戰ノ大勝利、或ハ奉天ノ大會戰
モ、皆此武力ニ依ッテ決定的ノ大勝利ヲ得テ
居ルデハアリマセヌカ、此最高最終ノ武力
ハ國民生活安定ニ因ッテ、初メテ贏チ得ルコ
トノ出來マスル、所謂國民體位ノ向上デア
リ、所謂國民精神ノ旺盛デアリ、忠君愛國
ノ思想其モノデアリマス、然ルニ此眞理ヲ
忘却シテ、眼前ノ國防的競爭ニノミ憂身ヲ
窶シテ、却テ國力ノ培養ヲ等閑ニ付シ、國
民生活ヲ犠牲ニスルコトアランカ、ソレコ
ソ國家ノ危機ト言ハザルヲ得ナイノデアリ
マス
去ル十一日佐藤外相ハ對露、對支ノ根本
國策ハ決シテ誤ッテ居ラヌ、唯其方法運用ヲ
誤ッテ居ルノミト御說明ガアッタノデアリマ
スガ、然リト致シマスレバ、洵ニ結構デア
リマシテ、將來ハ是等ノ國策ヲ正シク强ク
運用スルコトニ依タテ、連年增大セントスル
國防費ノ輕減ニ任ゼラレテ、一面內ニ民力
ヲ涵養シ、國民思想ノ健全ト、國民體位ノ
向上トニ資セラレ、他面產業ノ振興開發ニ
當リ、輸出貿易ヲ盛ンナラシメ、以テ經濟
的ニ實力ヲ涵養スルト云フコトヲ、當面日
本ノ國策ト致シタイト存ズルノデアリマス
私共此稅制改革案ニ對シテハ極メテ不滿足
デハアリマスガ、眼前ニ迫レル諸般ノ實情、
實勢ニ對シマシテハ、此際是等ノ國防費ヲ
否定スル譯ニハ參リマセヌ、隨ヒマシテ本
稅制ノ成立ニ贊成スル者デアリマスルガ、
以上根本的國策ノ立直シヲスルコトヲ條件
トシテ、將來ノ財政ニ根本的改革ヲ要求シ
テ所論ヲ終ルコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=19
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020・中山福藏
○中山福藏君 六案ニ對スル討論ハ、此程
度ヲ以テ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「反對」「議事進行ニ付テ」「議
長議事進行」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=20
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021・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君提出ノ動議
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕
〔「反對々々」「投票」「記名投票」其他發
言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=21
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022・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) (發言スル者
多ク聽取スル能ハス)······議長ノ宣〓ニ對
シ異議ノ申立ガアリマス、此申立ニハ三十
名以上ノ贊成ヲ要シマス、贊成者ノ起立ヲ
求メマス-贊成者ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕
〔「三十名ナイヂヤナイカ」「三十名アル
ゾ」「能ク勘定シロ」其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=22
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023・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 成規ノ贊成ガアリ
そく、仍テ記名投票ヲ以テ······
〔發言スル者多ク議場騷然「退場ヲ命ジ
ロ」「懲罰々々」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=23
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024・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 前田幸作君、小山
亮君ニ退場ヲ命ジマス-是ヨリ記名投票
ヲ行ヒマス-中山君提出ノ討論終局ノ動
議ニ贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ靑票
ヲ持參セラレンコトヲ望ミマス-閉
鎖-氏名點呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕
〔「投票中ニ退場ノ先例アリヤ、ソレハ
誤リダ、違フ、投票中ニ退場ノ先例ア
リヤ」「龜井ヲ懲罰ニシロ」「議員投票ノ
權利ト退場トハ別ダ」其他發言スル者
多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=24
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025・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ-投票漏ナシト認メマス-投票函
閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=25
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026・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓セシメマス(拍手)
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數二百七十一
可トスル者白票二百二十九
否トスル者靑票四十二
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=26
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027・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ハ可
決セラレ、討論ハ終局致シマシタ
〔拍手起ル〕
〔參照〕
中山福藏君提出六案ニ對スル討論ハ此ノ
程度ヲ以テ終局スヘシトノ動議ヲ可トス
ル議員ノ氏名左ノ如シ
伊藤東一郞君一宮房治郞君
一柳仲次郞君池田〓秋君
飯田助夫君飯塚春太郞君
服部英明君原玉重君
原夫次郞君林平馬君
濱野徹太郞君橋本祐幸君
西村丹治郞君西村金三郞君
西田郁平君堀內良平君
本多眞喜雄君戶井嘉作君
戶澤民十郞君豐田豐吉君
小川〓太郞君小野寅吉君
小久江美代吉君小山倉之助君
大門恒作君大島寅吉君
太田信治郞君岡本實太郞君
渡邊玉三郞君川橋豐治郞君
川崎末五郞君片山一男君
勝田永吉君漢那憲和君
田中武雄君田中万逸君
田中邦治君田島勝太郞君
高田耘平君高松長三君
高島兵吉君賴母木桂吉君
土屋寛君鶴見祐輔君
內藤正剛君中井川浩君
中村三之丞君中村梅吉君
中川重春君中山福藏君
仲西三良君長井源君
長尾秀太郞君長野長廣君
南雲正朔君村岡吾一君
村上國吉君紫安新九郞君
鵜澤字八君植村嘉三郞君
內ケ崎作三郞君野田武夫君
野村嘉六君工藤鐵男君
山道襄一君眞鍋儀十君
松井郡治君松尾四郞君
松田竹千代君松田喜三郞君
松村謙三君松永東君
增田義一君古屋慶隆君
古田喜三太君福田關次郞君
小泉又次郞君小畑虎之助君
小山松壽君小山邦太郞君
小柳牧衞君駒井重次君
木檜三四郞君寺島權藏君
淺川浩君朝倉每人君
佐澤定二君澤田利吉君
櫻內幸雄君坂下仙一郞君
木村淺七君北原阿智之助君
〓寛君菊池良一君
三好榮次郞君宮澤胤勇君
湊季松君〓水留三郞君
〓水德太郞君信太儀右衞門君
日比野民平君松定吉君
平野光雄君最上政三君
森下國雄君粟山博君
百瀨渡君井上知治君
板谷順助君岩崎幸治郞君
岩元榮次郞君岩瀨亮君
猪野毛利榮君今井健彥君
石井德久次君石川定辰君
石坂豐一君石坂養平君
鳩山一郞君服部岩吉君
服部米次郞君八田宗吉君
花城永渡君原口初太郞君
林讓治君濱田國松君
星島二郞君東條貞君
小笠原八十美君小高長三郞君
大石倫治君大口喜六君
太田正孝君岡田伊太郞君
若宮貞夫君加藤久米四郞君
加藤賢司君川口義久君
川島正次郞君片山秀太郞君
勝又春一君金光庸夫君
蔭山貞吉君菅野善右衞門君
橫川重次君田中源君
田中好君田中彌助君
田子一民君田尻生五君
田尻藤四郞君胎中楠右衞門君
玉置吉之丞君丹下茂十郞君
坪山德彌君土倉宗明君
名川侃市君中村嘉壽君
中野猛雄君中野治介君
中島知久平君南條德男君
植原悅二郞君工藤十三雄君
久山知之君倉元要一君
熊谷直太君八角三郞君
山田又司君山崎猛君
前田米藏君松村光三君
松野鶴平君松山常次郞君
深澤豐太郞君福井甚三君
船田中君古河和一郞君
小林絹治君小林錡君
小谷節夫君紅露昭君
高良宗七君寺田市正君
綾部健太郞君天辰正守君
安藤正純君佐保畢雄君
木村正義君木村作次郞君
〓瀨規矩雄君菊池長右衞門君
三善信房君三土忠造君
宮澤裕君宮脇長吉君
宮古啓三郞君宮本雄一郞君
宮崎一君志賀和多利君
篠原義政君島田俊雄君
島田七郞右衞門君匹田銳吉君
森幸太郞君森田政義君
盛島明長君瀨川嘉助君
助川啓四郞君末次虎太郞君
鈴木辰三郞君井阪豐光君
今給黎誠吾君石井三郞君
林路一君豐田收君
陣軍吉君金井正夫君
永山忠則君窪井義道君
藏園三四郞君熊谷五右衞門君
山口久吉君靑木精一君
岸田正記君三鬼鑑太郞君
森肇君守屋榮夫君
岡田忠彥君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
伊禮肇君伊豆富人君
石坂繁君大竹貫一君
高岡大輔君野中徹也君
〓瀨一郞君岡崎憲君
川俣〓音君河上丈太郞君
片山哲君龜井貫一郞君
田万〓臣君塚本重藏君
黑田壽男君山崎釼二君
松本治一郞君河野密君
麻生久君佐竹晴記君
水谷長三郞君鈴木文治君
今井新造君池崎忠孝君
岡幸三郞君加藤勘十君
田川大吉郞君田中耕君
田淵豐吉君中原謹司君
北勝太郞君椎尾辨匡君
平野力三君大石大君
渡邊泰邦君田中養達君
中野正剛君木村武雄君
由谷義治君三浦虎雄君
杉浦武雄君風見章君
〔田淵豐吉君「議長、議事進行ニ付テ先
ニ通告ヲシタガ、今囘ハ許サヌ譯ニ行
クマイ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=27
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028・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 議長ハ許可致シマ
セヌ-是ヨリ直チニ採決ニ入リマス、六
案ヲ一括シテ採決致シマス、六案ハ何レモ
委員長報告通リ決スルニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔贊成者起立〕
(「贊成」「反對」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=28
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029・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 多數ト認メマス、
仍テ六案トモ委員長報告ノ通リ決シマシタ
(發言スル者多シ)是ニテ六案ノ第二讀會ハ
終了致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=29
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030・中山福藏
○中山福藏君 直チニ六案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=30
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031・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ヒ其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=31
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032・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク六案ノ第三讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
臨時租稅增徵法案第三讀會
法人資本稅法案第三讀會
外貨債特別稅法案第三讀會
揮發油稅法案第三讀會
有價證劵移轉稅法案第三讀會
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案(樺太ニ於ケル租稅ニ關スル件)
第三讀會
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=32
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033・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ、六案トモ第二讀會議決ノ通リ
確定致シマシタ
〔拍手起リ「議長横暴」其他發言スル者
多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=33
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034・中山福藏
○中山福藏君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=34
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035・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 中山君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=35
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036・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時十三分散會
衆議院議事速記錄第一一三號中
正誤
頁段行誤正
五七〇一二七一番町三六九発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02519370318&spkNum=36
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