第70回帝国議会　衆議院　本会議　第29号　昭和12年3月23日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十二年三月二十三日（火曜日）
  　　　午後一時十二分開議
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  　議事日程　第三十號
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　午後一時開議
  　　　　質問
  　　一　文政教育に關する質問（椎尾辨匡君提出）
  　　二　林野整備案に關する質問（小坂梅吉君提出）
  　　三　財政經濟軍備及外交に關する質問（尾崎行雄君提出）
  　　四　宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問（伊東岩男君提出）
  　　五　千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問（土屋清三郎君提出）
  　　六　鹽專賣に關する質問（小西和君提出）
  　　七　華族制度改正特權階級權益制限に關する質問（松本治一郎君提出）
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  　第一　防空法案（政府提出）　第一讀會（前會の續）
  　第二　帝國燃料興業株式會社法案（政府提出）　第一讀會
  　第三　人造石油製造事業法案（政府提出）　第一讀會
  　第四　肥料取締法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第五　酒造組合法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第六　日本無線電信株式會社法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第七　特許法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第八　商標法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第九　不正競爭防止法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十　兵役法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十一　産業組合中央金庫法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十二　産業組合自治監査法案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十三　軍機保護法改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十四　外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十五　百貨店法案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十六　辨理士法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第十七　昭和十年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十年度特別會計豫備費支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十一年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十一年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第十七　昭和十一年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）
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  　　〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
  一政府より提出せられたる議案左の如し
  　昭和十一年勅令第百八十九號（一定の地域に戒嚴令中必要の規定を適用するの件廢止の件）（承諾を求むる件）
  　　　　　　　（以上三月二十三日提出）
  一政府より受領したる答辯書左の如し
  　衆議院議員椎尾辨匡君提出文政教育に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員小坂梅吉君提出林野整備案に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員尾崎行雄君提出財政經濟軍備及外交に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員伊東岩男君提出宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員土屋清三郎君提出千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員小西和君提出鹽專賣に關する質問に對する答辯書
  　衆議院議員松本治一郎君提出華族制度改正特權階級權益制限に關する質問に對する答辯書
  　　　　　　　（以上三月二十三日受領）
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  　　文政教育に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月六日
  　　　　　　　　　提出者　椎尾辨匡
  　　　文政教育に關する質問主意書
  　一　政府は文政教育を重んずるか
  　　勿論之を重んずと云はざるべからざるべく又林首相の庶政一新、國體明徴精神發揚に鋭意なるが如きも　（１）文部大臣の專任を缺き　（２）政綱中に教育充實に言及することすらなく　（３）教育上の提案なきことを以ても平生文相に努力せしめたる廣田内閣にすら比較にならぬは文政教育を尊重して重大時局に善處する所以でないと思ふ有力なる文部大臣を得んが爲に延引せりとの豫算委員會の説明の如きは詭辯に類し　（１）議會を輕視せるもの　（２）閣僚詮奏に對する首相の職分を曠しうせるもの　（３）全教育界、全國民を失望せしめ疑惑せしむることとなる政府は文政教育尊重の誠意を有するか之を有すとせば前述の諸點を如何にせらるるか
  　二　精神作興の時運を如何に充足せんとするか
  　　（１）拜金唯物より剛健精神へ　（２）兵數の増加兵器の整備必要なるも皇軍の振肅は更に重大　（３）物資財力少く費用殊に多き我が國状を支持するには堅忍剛毅なるを要し　（４）現世紀の生命たるべきは眞に信念實力ある人間教育に俟つべし然るに政綱第一に掲ぐる「國體觀念を愈愈明徴にし敬神尊皇の大義を益益闡明し祭政一致の精神を發揚して」と云ふも數次の答辯に聽くに其の氣魄なく其の主張なく漠然皇謨を翼贊し親政を輔弼し奉ると云ふのみにて言當然なるも眞に精神作興の時運を明にせざるは勿論現内閣の政策中に何等見るべきものなく前内閣の施設せんとしたる所すら減額するに至りては其の政綱も無意義と言ふべし何を以て政綱を充たし時運に應ぜんとするか
  　三　義務教育を如何にするか
  　　（１）前内閣すら義務教育延長に努力せるに現内閣は「國體の本義に基き肇國の理想を顯現」せんと云ふのみにして實際は冷淡甚しきに非ずや　（２）庶政一新は教育の革新を第一とし之には文政、教育、研究、教化の全面的再檢討を要す政府は最近の教育審議機關の刷新意見を以て足れりとするか再審議を加ふるか　（３）學齢、義務教育、國民教育、社會教育を檢討して適正なる國民教育を樹立すへきものと思ふ政府は何等之に處する所なし如何なる所見ありや　（４）父兄の負ふ教育義務あるも別に國務として國民教育の重大任務あり同胞一家協戮親和を教養するを要す是れ庶政一新の爲にも國體發揚の上にも根本なりと考ふるが政府の所見云何　（５）義務教育は個人主義の國民に子弟教養を義務付けるに依るも之と區別し若は之に代ふる國民教育を行ふには其の年齡、年限、方法、國家負擔を云何にするか　（６）國民教育たるべき普通教育に在ては外國人の經營管理を許すべからざるものと思ふ然るに都市に此の種學校あるは國民精神涵養の途に非ず明治初期の義務、自由、拜外教育の流弊たり政府は之を如何にせんとするか
  　四　大學教育の改善云何
  　　（１）現在の大學は眞に學理蘊奥の研究とならず科學戰の時代に於て大學院研究室充實の意圖ありや　（２）國防、産業、教化孰れも更深の研究を要するも現に大學には研究の用意設備を缺くに非ずや　（３）國體發揚に關する諸學部の科學的充實云何　（４）法、文、經、商等の學部も尚國立を要すとするか私學に行はれさる特色何れに在りや　（５）吏道、人格、國士要求の聲大なるも赤化學徒輩出せるも研究充たされざるも責任を負はず實際には人格養成の覺悟と方法とを缺くに非ずや
  　五　祭政一致の精神發揚云何
  　　（１）首相の敬虔奉承維れ勗むるを認むるも祭政一致は深意なきものにして達成せらるべきか　（２）神社は宗教に非ずとし神社局行政の現機構を以て足れりとするか　（３）惟神の大道は源遠きも世に濟美、歴史を通じて精華を濟せりと思ふ殊に神武、崇神、應仁、推古以降淡海、飛鳥、奈良、平安諸時代の主流を標準とすべしと信ず尚古遡源して狹化するは國體精華を發揮する所以に非ずと思ふ政府の所見を明にして疑惑を斷つの要あり其の所見云何　（４）一國一教問題の所見云何滿洲協和會等には宗教信仰を命令に依り歸一せんとする主張あり今祭政一致を高調す此の主張を含むや否や　（５）憲法第二十八條は他の規定と異り強く堅く廣くして信仰、布教、集會、結社自由、安寧秩序を妨げ臣民たる義務に背くに於ては法の制裁發動あるべきものと思ふ政府は宗教法規を如何に處理せんとするか　（６）前内閣より行へる宗教警察行政は信教自由の憲法違反に非ずや
  　六　思想教導を云何にするか
  　　（１）國家は物資財兵を要する以上に剛健なる精神を要す其の研究向上の組織體制を如何にするか現に施設せる文化研究竝本年度豫算にては不十分と思ふ政府の所見云何　（２）今の教育、宗教、文藝のみに期待するを得ず若期待すべきものとするには如何なる施設をなさんとするか　（３）政治機構に依り人心を倦ましめざる經綸を施すの要あり最近組閣の經緯は人心に陰鬱を感ぜしむ軍部大臣が現役大中將に限るとせば組閣拝命者が求むる所に無條件入閣すべく若順次固辭するとも全現役大中將に於て誰か應諾の責任あるものと思ふ首相の所見云何　（４）剛健精神は尚農に發揚せらる然るに現政府は重商輕農に逆轉せりと見らる農村興隆に對する政策云何　（５）欽定憲法治下日本獨得の立憲政治あるべし政府は政綱に之を掲げながら首鼠兩端嚮ふ所を審にせざるは政黨を傷け民衆を過つものなり其の所見を明にせらるべし現内閣の主張の要旨云何
  　右及質問候也
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  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員椎尾辨匡君提出文政教育に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員椎尾辨匡君提出文政教育に關する質問に對する答辯書
  　一、未だ専任文部大臣の任命を奏請するに至らざるは諸般の事情に依るものなるも議會を輕視し或は又首相としての閣僚詮奏に對する職分を曠しうし居るものとは思料せず、教育の重んずべく、文部行政の重要なることに付ては今更言を要せず、時艱克服は特に亦之に俟たざるべからざるものありと思料し、組閣以來之が施設經營の徹底を期し居れり
  　二、政府は時勢に鑑み我が國體の本義に則り教育、學問の刷新、興隆、國民精神の振作、更張を圖ることは最も肝要なりと思料し之れが實現に付き各種の施設を講じつつあるも尚將來一層努力せんとす
  　三、（１）義務教育の年限を延長することは時勢に鑑み緊要なりと思料せらるるを以て今後尚十分檢討の上次の議會に提案の見込なり
  　　（２）（３）（５）政府は教育の刷新は最も重要なりと思料し今後更に教育各般に亙り再檢討を行ひ教育刷新の實を擧げんとす
  　　（４）同胞一家協戮親和を教養するは國民精神作興上必要なりと思料す
  　　（６）普通教育を施す外國人經營の學校に對しては尚一層監督を嚴にし國民精神涵養上遺憾なきを期せんとす
  　四、（１）政府は大學の使命に鑑み各大學の研究室を整備充實するに努めつつあるは勿論更に大學附屬の各種研究所を擴充新設し學術の蘊奥を究むるに遺憾なきを期しつつあり
  　　（２）國防、産業、教化に關する研究の更新を達成せんが爲政府は航空學科の充實創設を企て各種研究所の整備と新設とを爲し又從來不十分の憾ありたる法、經學部の演習制度を確立する等鋭意努力しつつあり
  　　（３）我が國體の本義に基き教學の發展を圖らむが爲政府は大學に於て特に日本文化講義を開設する外昭和十二年度より日本國體學講座充實等を圖らんとす
  　　（４）文科系統の學部は一國文化の進展に至大の關係あるを以て國家に於て之が經營發展を圖ることは私學の重視及之が助成と相俟ちて極めて重要なることと思料す
  　　（５）政府は大學の使命の重大なるに鑑み鋭意人格の陶冶に意を致しつつあり
  　五、（１）祭政一致の精神は我が國古來より存する大道なり
  　　（２）神社に關する行政機構は事極めて重大問題なるを以て愼重に調査研究中なり
  　　（３）惟新の大道は我が國固有の大道にして古來我が祖先の歴史的活動によりて發展し來りたる國民的信念なり
  　　（４）祭政一致の精神には一國一教の主張を含むことなし
  　　（５）憲法第二十八條は廣く信教の自由を保障すと雖も教宗派寺院教會等の結社に關しては之を憲法第二十九條の規定中に含むものと解し此の方針を以て宗教法規を整備せんとし目下調査中なり
  　　（６）最近所謂淫祠邪教と認めらるるものの弊特に著しきものあるが爲是等に對し相當の取締を加へつつあるは事實なり、然りと雖も之が爲苟くも正信正法の宗教を壓迫し若は憲法に保障せられたる國民の信教の自由を妨害するが如きことあるべからざるは固より言を俟たざる處にして此の點特に戒心留意を爲しつつあるものにして既往當局の措置に關し何等斯る事實なしと確信す
  　六、（１）（２）政府は剛健なる精神を涵養することは極めて重要なりと思料す、仍て政府は國體の本義に基き教育の刷新を圖り以て益益國民精神の振作を圖らんことを期し例へば現に國民精神文化研究所に於て國民精神文化の研究、指導及普及を圖りつつあるも、昭和十二年度に於ては特に教學局の設置に關する費目を計上し益益國民精神の涵養、振興の實を擧げんとするものなり
  　　（３）本質問は組閣拜命者より入閣の交渉を受けたる現役陸海軍大中將に關するものなるを以て答辯の限りに非らざるものと認む
  　　（４）政府は農村固有の互讓相助の精神に則り農に對する諸制度の整備改善を爲すと共に其の剛健なる國民精神を基調とし農村經濟の根本的刷新を圖りつつあり、其の政策は經費の關係もあり尚ほ不十分なるは免れざるも必しも重商輕農に逆轉せりとは思料せず
  　　（５）我が國獨特の立憲政治が萬古不磨の欽定憲法の條章に恪循して行はるべき政治なることは炳として明白なる所にして政府は其の健實なる發達を期し居れるものなることは既に屡々述べたる所たり
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　　　　文部大臣　林銑十郎
  　　　　　　農林大臣　山崎達之輔
  　　　　　　内務大臣　河原田稼吉
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  　　林野整備案に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月八日
  　　　　　　　　　提出者　小坂梅吉
  　　　　林野整備案に關する質問主意書
  　我か國現行の保安林制度は産業經濟の幼弱なりし數十年以前の制度に係り今や世相一變二變三變し國民經濟の變遷せる世運に鑑み適當ならさるもの鮮からす現行森林法に依れは保安林所有者中には不當に利益を害されてゐるものあり今日保安林として所有權を制限し置くを要せさるに拘らす尚且其の儘に存置せらるるもの少からす此等を整理し眞に其の歸すへき所に從て全能力を發揮せしめ從來の如き無用なる犠牲を撤去して民林の利益を増進せしめ以て經營の合理化を期せしめさるへからす
  　政府は昭和四年調査委員會を農林省内に設け農林大臣及次官竝關係各廳官吏、貴衆兩院議員、林政農政の各學者等二十二名を委員とし調査研究の結果林野整備に關する成案を得たり
  　右林野整備案は民有水源涵養保安林の國有漸く實行されむとするに當り窮乏山村に取つて旱天に慈雨の意義あるものなるに政府は之を六年度議會に提出せす七年度又繰下けられ八年度九年度十年度十一年度十二年度又同樣の運命に葬られたるは我か國林政上實に慨歎に堪へす
  　今や世界各國中水道水源林の概ね九割は國有公有に歸し民有水源林に委ぬるものは小弱國に過きす速に民有水源涵養林を國有に移し國營民營の分野を確立するの外民有保安林の整齊竝國有林砂防施設の充實を圖り治水國策の下森林經營の根本的合理化を期するは農山村の實力培養産業振興を促進する所以にして「命を支ふるの道は山を齊ふるにあり」實に我か國林政上の急務にして國民生活安定に必須なるものなり
  　政府は右林野整備案を速に帝國議會に提出するの意思なきや
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員小坂梅吉君提出林野整備案に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員小坂梅吉君提出林野整備案に關する質問に對する答辯書
  　政府は昭和六年十月より同七年十月に亙り林野整備調査委員會を設け愼重審議の結果其の根本方策に付成案を得たるを以て適當なる時機に於て之が實現を期せんとす
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　　　農林大臣　山崎達之輔
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　財政經濟軍備及外交に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月八日
  　　　　　　　　　提出者　尾崎行雄
  　　　財政經濟軍備及外交に關する質問主意書
  　本員は二月十七日國務大臣に對し、口頭を以て、七八箇條の質問を爲し、首相と陸相より簡單な答辯を得たが、質問事項の大部分に對しては、未だ答辯がない。多分本員の不辯の致す所、質問の意味が御分りにならなかつた爲めであらうと思はれる。依て質問の箇條を列記説明して、重ねて答辯を求むることにするであらう。
  　（一）　政府は今囘提出したる増税案通過後も、尚ほ近き將來に於て、再び増税案を提出する見込なる乎。
  　　又將來も多額の公債を募集する見込なる乎。
  　昭和七年度までの一般會計は、二十億圓以下であつたが、十二年度は一躍して二十八億圓を超過し、多種多様多額の増税を爲すも、尚ほ八億圓以上の公債を以て、其不足を、補填するの止むべからざるに至つた。此の如くして底止する所なくんば、さなきだに生活難に苦める全國大多數の人民は、遂に其負擔に堪へざるに至るべく、又公債の應募力も遠からずして枯渇するに至るべし。
  　此の場合に於て、不幸にして干戈を外國と交ゆるの必要に際會せば、如何にして戰費を支辨するを得べき乎。一念此に及べば、何人と雖も、君國の爲めに戰慄せざるを得ざるべし。日清、日露の兩役に方ては、内に歳入の餘剩あり、外に友邦の我が募債に應ずるもの有て、漸く之を支辨し得たが、今や四顧何れの方面にも我に向て好意を寄する友邦はない偶々獨、伊兩國の、稍や我に接近するが如きものありと雖も、軍國主義の結果として、其經濟状態は、非常の窮地に陥り、人民の衣食すら缺乏してゐるほどである。我が戰費を援助する餘力のないことは辯を待たない。
  　かくて内外何れの所にも、戰費の出所がなければ軍備は充實しても、之を萬一の用に供することは出來ない。是れ本員が軍備の充實に贊成すると同時に、萬一の戰費支辨の爲めに募債と増税の餘地を遺さんことを切望する所以である。然るに政府は僅か數年の前途をも洞達せず、平居無事の今日に方り、増税と募債に因て、一時を糊塗し、更に幾たびも之を今後に繰返して、民力の枯渇を顧慮せざらんとする者に似たり。是れ本員が前記二個の質問をなす所以である。
  　（二）　政府は現在及近き將來に於ける國際關係を考察して、我と干戈を交ゆへき惧ある對手國は、海陸何れに在りと想定する乎。
  　　萬一海陸兩面にありと想定せば、是れ一箇國の力を以て、二箇國に當らんとする方針となるが、政府は帝國現在の國力を以て、海陸二大國に對敵し得べしと信ずる乎。
  　遠き將來は、いざ知らず近き二三十年の間に我が戰敵となり得べき邦國を、陸に在ては露支、海に在ては英米と假想するも、露支には我に對抗し得べき海軍なく、英米には陸軍がない。故に我は同時に海陸兩軍を對立的に整備擴張する必要はない筈だ。前後緩急を深思熟慮して、時あつては海軍を主とし、時あつては陸軍を主とし、以て國家の必要に應ずるこそ是れ經國の要諦にして眞に國家を思ふ者の瞬時も遺忘すべからざる所である。遠き將來に於て、露支兩國が、強大な海軍を整備するに至らば、我は英米と衝突するの惧なき場合と雖も、尚ほ相當の海陸兩軍を整備せざるを得ないが、現在はまだ其必要はない故に現在に於て、大に海軍を整備するの必要は、只英米との衝突を豫想する場合に於てのみ起るのである。陸軍は露支との惡關係を豫想し、海軍は英米との惡關係を豫想することは一箇國の力を以て少くなくとも、海陸二箇國以上との衝突を豫想することになる。此の豫想に關して、第一に考慮すべきは、我が國力である。
  　今日の我が國は時を同くして二箇國以上の強敵に當る實力はない、たとへ有るにしても大禁物である、二箇國以上の敵に當る爲めには、我も亦二箇國以上の味方を作らなければならぬ、然るに常に海陸二箇國以上の強國との惡關係を豫想し、而して一箇國の味方をも作らず、敵を海陸兩面に受くるに至らば、斯くては戰場だけでは勝ち得ても、銃後の力が盡きて悲慘の状況に陷つた所の獨逸の覆轍を踏むことになりはしない乎「ビスマーク」は墺太利を攻むるに方ては、百方佛國の歡心を買ひ、墺に勝つても尚ほ縦横計を運らして、巧みに其敵愾心を豫防し、以て之と同盟の素地を作成した然る後ち、始めて佛國を攻め戰勝後は獨逸聯邦を統一し、墺太利と結び、更に露と密約し、以て佛國の復讐に備へた、此の事例は、我が國人の宜しく參酌すべき所であらう、現在及近き將來の情勢を考察して、危險關係が英米よりは、寧ろ露支に多しとすれば、主力を陸軍の整備に盡し、海軍は暫く之を他日に譲るべきである且此の場合に於ても、時を同くして、露支兩國衝突すべきでない、露國と衝突する惧あるに方ては、多少讓歩しても、支那の歡心を買はなければならない、支那と衝突の惧ある場合には、露國をば中立（出來るなら友好關係）の位地に立たしめなければならぬ。同時に雙方の惡感を買ふが如きは、拙中の拙、毫も外交を解せざる者の所行である。
  　「ビスマーク」は墺に勝ち佛に勝ち、獨逸聯邦を統一して歐洲第一の強國となつた後も、陸軍だけを以て、軍備の主體と爲し、英國とは友好關係を維持してゐた、然るに新帝が「ビスマーク」の謀慮に戻り「獨逸の將來は海上に在り」と呼號し、大に海軍の擴張に努力するに至て、英國と衝突の端を發き、遂に世界戰爭を惹起して、帝國の滅亡を招いた。是れは軍備を擴張して、却て國家を危殆ならしめた最近の實例である。
  　我が國も武力を以て、英米何れかに對抗せんと欲せば、主力を海軍に注ぎ、陸軍は暫く其從として、露支に安心を與へざるべからず。之に反して、露支何れかに對抗せんと欲せば、主力を陸軍に注ぎ、海軍は暫く之を從として、英米を安心せしめざるべからず。
  　之を顧慮せず、國力を傾倒して、海陸兩軍を擴張すれば、如何に不脅威不侵略を聲言するも、露支は我が陸軍に對して、脅威を感じ、英米は我が海軍に對して、脅威を感じ、其結果は四大國を刺激し世界に孤立するに至るは、必然の勢である。獨逸は孤立と云つて尚ほ墺・匈・勃・土の同盟國を有つてゐたが、日本は純粹の孤立である。英國が全世界の四分の一に亙る所の領土を有つてゐての孤立とは、全く異つた意味の孤立である。此の點に就ても、深思熟考しなければならぬ。
  　（三）　政府は競爭的方法に由て、陸軍は露支に對し、海軍は英米に對して、均勢又は優勢を保持し得べしと考ふる乎
  　兵の強弱は、精神的及び物質的要素の多寡に由て分るべきものであるが、精神的要素が如何に充足しても、物質的要素が缺乏すれば結局戰勝の利を收むることは出來ない、而して陸軍の物質的要素中最も大切なものは人口であり、海軍の物質的要素としては金力が大切である。先づ陸軍の組織分子たる人口を見るに、我が國は七千萬人で（朝鮮臺灣には、まだ徴兵制度すら施行してゐない）露國は約一億六千五百萬人、支那は四億人である。故に我が國同様の努力をすれば、露は我に二倍、支那は我に四五倍の兵員を訓練し得べし。明治三十七八年の日露戰役に際し、我が國が兵員の不足に苦める事實は、將來も亦あり得べきこととして考へて置かなければならぬ、現に今年の徴兵檢査には、五尺以下の壯丁や、近視者をも、甲種合格者として、採用しなければならないほど壯丁の不足を感じてゐるやうだ。現在の支那は、尚ほ問題外であるにしても、古來幾たびか隆興した史例のある國民だから、將來も再び隆興しないとは限らない。苟も國策を論ずるものは、現支那の病的状態のみを見ず、病勢囘復後の支那をも、打算中に加へなければならぬ。病衰中の支那だけを見て、打算しては其全快後悔ゆるとも、及び難き違算を生ずるであらう。
  　されば露支と對抗するに方ては、常に雨降つて地固まるの結果を齎らすべく百方苦心しなければならぬ。誤つて永く怨恨を抱かせるが如きことがあつては、露支其一に對するだけでも、日本は國力を傾倒せざるを得ざるに至ること、恰も佛獨恨みを結んで、人口の寡少な佛國が百年枕を高うする能はざると同樣の運命に陥るかも知れない。况んや露支二國を敵とするに於てをや。
  　海軍々備の爲めには、人員はさまで多きを要しないが、軍艦其他の器械的設備を要すること、陸軍の比類ではない。故に陸軍が人力を必要とする如く、海軍は金力を必要とする。巨大の經費を以て、多數の艦船を造らなければ如何に人材があつても海軍力の強大を來すことは出來ない。
  　然るに其金力に於ては、我が國と英米の間には、左の如き相違がある（内閣統計局發行の國勢要覧に據る）
  　　　第一表　國富
  　　　　　　　　　　　　　人口一人當り
  　百萬圓　圓
  　　帝國　一一〇、一八八　一、七一〇
  　　北米合衆國　八八〇、三八八　七、〇五二
  　　英吉利　二八九、〇八一　六、三八五
  　我が國の農地は、世界無類の高價に評價されておるから、其實力は兩國にくらべて右表よりももつと少ないのかも知れない。左に全國民の一年中の所得高を對照する。
  　　　第二表　國民所得
  　　　　　　　　　　　　　人口一人當り
  　百萬圓　圓
  　　帝國　一〇、六三六　一六五
  　　北米合衆國　一六七、五九三　一、三三三
  　　英吉利　六五、七〇〇　一、四一三
  　國民納税力の多寡大小は、右の所得に準じて定まるのであるが、人口一人當りの所得高に於ては、我が國人は、殘念ながら英米人の八分の一に過ぎない。（「ポンド」や「ドル」の國内的融通の力と、圓のそれとは、必ずしも其の名稱通りでないと思ふけれども、今は世上の慣例に依つて此の比較を用ひる。）從て其納税力も八分の一程度と見なければなるまい。然るに昭和十一年度に於ける政府の總歳入を比較すれば、凡そ左の如し。
  　　　第三表　政府の總歳入
  　百萬圓
  　　帝國　二、三〇五
  　　北米合衆國　一九、四九七
  　　英吉利　一三、六八六
  　右の日本政府の歳入中には、八億餘萬圓の公債をも加算してあるに反し、英米の方は普通の歳入だけであるのに、尚ほ米は我が八倍、英は我が五倍に達してゐる。更に各種租税中に在て主要の位地を占むべき所得税を對照すれば、凡そ左表の通りであつて、我が所得税額は、米の十五分の一、英の十九分の一に過ぎない。故に將來は尚ほ大に増加すべき餘地はあるが、假りに廣田内閣の立案通り、五億二千六百萬圓に増加しても、尚ほ英米の八分の一に過ぎない。
  　　　第四表　所得税（昭和十一年度）
  　百萬圓
  　　帝國　二三一
  　　北米合衆國　三、七九〇（我が十五倍）
  　　英吉利　四、四四〇（我が十九倍）
  　右の如く彼我の經濟力に、懸隔があるのだから、英米國民と同様の奮發をしたのでは、我が國の海軍力は、彼等の六割は愚か、三割にも達する事は出來ない。衣食住の費用まで節約して、製艦費に充當しても、彼等を相手に競爭すれば、我が國防は次第に危殆に赴かざるを得ない。然るに「ワシントン」條約終了の結果として、英米は從來差控へてゐた條約範圍内の製艦に著手し、又廢棄を約束した所の艦艇を保存し、又備砲の口徑を増大することに決定した。日本も勢ひ之に對應して、勢力増加の計を講ぜざるを得ない。是れ擴張競爭の前提である。（此所まで書いた時に、英國政府は、五ケ年間に十五億磅、即ち我が二百五十七億圓を以て海、陸、空の三軍を擴張することに決定した由の電報が到著した。海軍にも多大の金額を充當することと思はれるが、單に此の金額だけを見ても、我が國現在の富力では、競爭に因て、國防を安全にすることの、非常に困難である事情が分るであらう。但し英國の軍備大擴張は歐洲の危機に處するが爲めであつて、歐洲の情勢が險惡なれば、險惡なるほど、東洋には手出しが出來ないこととなる譯である。我が國人は頻りに海軍の英米に及ばないことだけを苦にするが、商船の隻數及噸數をも對照すべきである
  　　　第五表　商船の隻數及噸數
  　隻數　噸數
  　　帝國　二、三六七　四、二一五、六九〇
  　　北米合衆國　三、〇二一　一一、九〇五、二八一
  　　英吉利　六、八九一　一七、一八二、八五七
  　我が商船の噸數は、米の三分の一、英の四分の一に過ぎない。戰闘艦が英米の六割しかないことを、國辱とするなら、商船が米の三割五分、英の二割四分しかないことも亦國辱でなければならぬ。現に軍艦だけは、我が國にも英米の最大戰艦に匹敵すべき三萬五千噸級の戰闘艦があるが、商船に至ては、我が最大の秩父丸一萬七千噸に對して、英には七萬九千噸の「クヰーン・マリー」號があり、佛には七萬三千噸の「ノルマンヂー」號がある。眞に國家の體面を重んずるものは、單に軍艦のみを見ずして、他の方面をも觀察しなければならぬ。國力が豐富でなければ、到底十分に軍事費を支辨することは出來ないからである。基本を量らずして、只其末を均しくせんとするは、國家經營の本道ではない。
  　本員の知る所だけを以てすれば、我が海軍將校中最も政治的に優れてゐた人物は、山本權兵衞伯、加藤友三郎男、齋藤實子であつて、三人とも首相となつた人である。此の三人は、何れも華府條約及「ロンドン」條約を贊成し、之を以て國防上の良計と考へてゐたのに、現在の海軍首腦部は、却て之に反對し、條約廢止を以て、國防上の長策と思つてゐるらしい。本員は其理由を知らんと欲して、二三の當局者と會談したが、不幸にして本員の首肯し得べき説明を聞くことを得なかつた。故に本員は現在も尚ほ左の如く確信してゐる。
  　　（１）　無條約となつた將來は、其程度に濃淡強弱の差はあつても、製艦競爭は必ず起る。
  　　（２）　經濟力が我に七八倍する所の英米と金力競爭にも均しき製艦競爭をすれば、如何に努力し、如何なる犠牲を拂つても、我が國防力は現在よりも一層危殆に陥らざるを得ない。
  　　（３）　之に反して、英米と妥協して、制限條約を締結すれば、大に經費を減少して、而も現在以上に國防力を増加することが出來る。
  　然るに政府は無條約を以て、海軍國防の方針と爲し、製艦競爭僅かに其徴候を示せるばかりの今日に於てすら既に六億八千萬圓の經費を要求してゐる。將來本格的の競爭とならば、海軍費の激増恐らくは底止する所なかるべく、而して國防は益々危殆に赴くべし。
  　明年度の増税及募債計畫に付てすら、既に多大の不安と恐怖を感ずる所の國民が、今後無際限の誅求に戰慄するは、無理からぬ次第である。况んや如何なる大犠牲を拂ふも、我が國防力は、英米に對して、益益弱小ならんとするに於てをやである。政府は親切丁寧に右等の諸點を説明し、擧國人民をして犠牲の拂ひ甲斐があることを知らせねばならぬ。
  　（四）　政府は軍備さへ充實すれば、國防は必ず安全になると考へる乎。換言すれば、軍備の充實と、國防の安全とは、常に竝行兩立するものと考へてゐる乎。
  　國際關係が同一なれば、軍備の充實は國防の安全となるけれど、此の場合に於てすら、對手國の充實力が、遠く我に超過すれば、軍備の充實は、必ずしも國防の安全とはならない。對手國は豐富なる經濟力を以て、必ず我が國以上の軍艦を造るからである。
  　加之、世界列國は悉く總歳出の二割内外を軍事費に充當するに方り、我が國だけが、五割近くの軍事費を使用するときは、關係列國は我に侵略的野心あるかと推測し、縦しそれが無根の邪推であつても、之を解消せしめる事は容易でない。從て他國の敵意を惹起し、國際關係を悪化し、其結果却て國防の安全を減少することになるのは、獨逸が海軍を擴張した爲め、英國との關係を惡化し、遂に敗北の最大原因を作成した前掲の例がある、深く鑑戒すべきであらう。
  　かくて軍備の充實は、其海軍たり陸軍たるを問はず、對外關係上却て國防力を減少することもある。况や軍備は國防の要部であるが、其全部ではなく、之を運用するに方ては、全國民の協力、科學的知識、經濟力等を要するが、餘り軍備だけに熱中して他の方面の事業を怠るときは、一朝事あるに方て、戰費にすら差支へることがある。獨逸が戰場では敗けなかつたが降旗を翻へすの已むを得ざるに至つたのは、軍備以外の國防力が缺乏した爲めであつた。
  　適宜の軍備充實は普通の場合には、國防力を増加するが、過度に之を充實すれば、外に於ては列國の猜疑を招き、内に於ては財政の均衡を失し且つ民力を枯渇せしめ内外兩面より國防力を減殺することになる。然るに我が國人中には、軍備さへ充實すれば、國防は安全になると速斷するものが多い。故に國民の健康状態の惡いことは世界無比と云つても差支ないほどで、而も年々惡くなりつつあるにも拘はらず、未だ衞生省すら設置することが出來ない。軍備偏重の豫算を作るからである。是れでは軍備は如何に充實しても、國防力は内外兩様の原因よりして減少せざるを得ない。
  　（五）　剛健なる國家には其時代に適應すべき確乎不動の方針、即ち國是がなければならぬが、現在の我が國には一定の方針がない。政府は茫漠として捕捉すべからざる形容語を羅列することの代りに、具體的方針を確立する意思はない乎。
  　明治年間に於ける帝國の大方針、即ち國是は、外人に對しては法權も税權も有せざる哀れはかなき状態を脱出して獨立國當然の權利を囘復するに在つた。其手段方法に付ては各人みな多少意見を異にしたにも拘はらず、其大目的に至ては擧國同見、一人の異議者もなかつた。而して三十餘年間の努力に因て、遂に其目的を達成したのみならず、嚴然として世界八大強國中に列するに至つた。此に至るまでの方法としては、緩急疾徐の差別はあつても、歐米の武備と文物を採用するより外はなかつた。明治時代には之を稱して、「開國進取の國是」と云つた。此國是だに因て、既に國權を囘復し、八大強國に列し、歐洲大戰後は五大強國と呼ばれるやうになつた爲め從來の國是は此に至つて一大轉換を見なければならないことになつたのである。然るに舊方針は既に其目的を達して、廢物と爲つたけれど、新方針は未だ確立せられずして、右往左往、前進後退、人々各々獨自の意見に從つて、彷徨すること恰も夢遊患者の如き状態になり、或は大陸に伸びんとするものを生じ、或は海洋に伸びんとするものを生じ、一面に經濟的發展を企圖するものあれば、一面に武力的發展を企圖するものも現れて居るのである。
  　陸海兩省に總歳出の四割五割を充當し、更に之を増加せんとするを見れば、現在の國是は武力發展に在るやうにも想はれるけれど、大増税に反對する氣勢の激烈なるを見れば、其の眞意は未確定のやうにも思はれる。之を決定することが今日の急務であるに相違ない。之に反して、文化的及經濟的發展を以て帝國將來の方針と爲さんと欲するものは、既存の材料を以て、一と通り其方案を立つることが出來る。此處で問題となるのは、「現在の國際情勢に於ては軍備擴張は已むを得ない」と云ふ一事である。
  　　　　　　歐洲の危機は東洋の安機か
  　歐洲列國の如く、何ん時大戰爭が勃發するかも知れない所（否な西班牙に於ては獨・伊・露の間に小能模の國際戰爭が既に開始されてゐる）では、軍備の擴張は已むを得ないが、帝國の關する限り、東洋に於ては支那以外には戰爭の起るべき危險は少ない。且つ歐洲の危機は東洋の安機であらう。歐洲が無事ならば、英・米・露等も或は武を東洋に用ふるかも知れないが、現在の如き事態の下に於ては、たとへ其必要があつても、百方之を囘避するに相違ない。况や彼等は、東洋に於ては、武力を以て解決し得べき問題を有せざるに於てをや。外來的危險がないことが明白であれば、帝國は毫も他に顧慮する所なく、自由自在に自國の大方針を確立することが出來る。それは將來我が經濟力が豐富になり、且つ屬領統治の祕訣を自得するまでは、武力發展を斷念するに如くはないと云ふことである。既に平和的發展と決心する以上は、基本法は何人でも容易に立てることが出來る。英米とは戰爭に由て解決し得べき衝突點がない。現に滿洲事件の當時ですら英米兩國は經濟的斷交をすら囘避した。將來帝國が該事件以上の大事件を捲起せば格別、苟も然らざる限りは、彼等より挑戰的態度に出る氣遣はない。之と友好關係を維持するは極めて容易の業である。
  　只米國は折角獨立させた「フヰリツピン」列島を日本に取られることを心配するだらうから日本は進んで其獨立を保證すべきである。それさへすれば米國の渡洋作戰の計畫などは自然に斟酌され、日米間の製艦競爭は大に之を緩和することが出來るやうになるであらう。
  　世間には、露國との關係を憂慮するものが多いやうだが、露國は列國に對して不可侵條約を提議して居るから、我も之に應じて締約すれば良いではない乎。漁業や國境問題の如きは普通の外交手段を以て之を解決すべきである。殘る所は、共産主義の宣傳であるが、思想は思想を以て對抗するより外に、有效な防禦法はない。武力や刑罰を以て之を防止することは、絶對に不可能である。彼が共産主義を宣傳すれば、我は皇道主義を以て之に對抗すれば良いではない乎。それでは對抗が出來ないと云ふのは、自ら世界無比の國體を侮蔑するものである。
  　大小強弱、智愚の天然的差別を無視して、平等の生活を爲さしめんとするが如き無法背理な共産主義が、知識階級に容れられるのは、それより以上の無法背理が社會に行はれてゐるからである。閥閲財産等の他力に因て、自力以上の位置を得、生活を爲すものが、多いからである。此の弊風を打破する爲めには共産主義が、俗耳に入り易いから、自力相當の位置を得る能はざる知識階級中之を唱道するものが起るのである。彼等は實は共産を求むるのではなく、公正なる社會を求め、機會均等を求むるのである。故に資本主義は未だ旺盛ならざるも、閥閲の情弊最も太だしかりし露國が、先づ之に感染し、獨國が次に之に感染した。獨逸の共産黨が最近の大統領選擧の際に、無慮六百萬の投票を得議會へ約一百名の議員を選出した事實を忘れてはならぬ。「ナチス」の勃興以來共産黨は一時武力に出て壓抑されて居るが、其六百萬の選擧人は恨を呑んで、鎭默して居るに過ぎない。他日機會を得れば、猛然として蹶起するであらう。將來「ナチス」に代つて獨逸を支配するものは、或は共産黨であるかも知れない。之に反して、英米の如き資本主義的國柄に於ては、却て其社會状態が、獨露よりも公正にして有能者進出の道が開通してゐるからである。我が國に於ても、共産思想の蔓延を豫防せんと欲せば、爵閥、財閥、軍閥等を始めとし、凡そ閥と名の附くものは、成るべく速に之を是正し、能者進出の道を開かねばならぬ。露國の「コミンテル」大會に於て、我が國を以て、共産思想の有望地と決定したのは、閥閲財産に起因する不平等不公平の情弊が、特に多いと認識したからである。而して此の情弊は、世に所謂皇道主義にも背戻するものと思はれる。
  　支那との關係に至つては、多端複雜にして急速に之を調整することは洵に容易の業でないが、然し既に國家の大方針を平和的發展と決定すれば、調整の途は徐ろに備はると思ふ。而してそれには大英斷を要する。茲に本員の卑見を略陳して當局者の囘答の便に供する。
  　　（１）滿洲國をば極力庇護し如何なる場合に於ても支那に復歸せしめざること
  　　（２）滿洲以外の支那内地に於ける政治及軍事には直接には勿論のこと間接にも一切關係せざること
  　　（３）支那の統一事業と國權囘復には、其希望に應じ政治的と經濟的とを問はず、出來るだけ援助を與ふること
  　　（４）滿洲國及關東軍をして、支那關係の事項に就ては總て東京政府の方針に遵據せしむること
  　右の方針を以て誠心誠意に支那の統一及發展を援助する以上は、支那人もやがて滿洲の囘復をば斷念して、關内を保全するを得策と考へるやうになり、排貨抗日等の運動をも廢棄するに至るであらう。多年軋轢の結果であるから、一朝一夕に拂拭することは出來まいが、遠からずして、そうなるであらう。其方が支那全國民の利益であるからである。
  　以上述べ來つた所を實行すれば、陸に於ては露支と衝突するの憂なく、海に於ては英米と角逐競爭するの必要もなく、我が海陸の軍備は、大に之を減少しても、國防は却て現在以上に安全になるのである、軍事費に於て、節約した經費を以て、教育、衞生、農漁村の救濟、製造工業貿易等の奬勵に充當すれば、さなきだに躍進しつつある我が産業は、更に大に發達せんこと疑を容れない。されば多くの年月を經過せずして、我が經濟力、納税力は英米とも對抗し得るに至るであらう。望むべきことではないが、其中に、若し歐洲に大戰爭が起り、米國も之に參加すれば、我が經濟力は一躍して、英米兩國をも凌駕するに至るは、必然の勢である、斯くて帝國は經濟的にも、武力的にも世界第一の富強國となれば、茲に始めて意の如く大和民族の使命を全うすることを得べし。
  　之に反して、現在の無方針状態を繼續すれば、啻に軍備を減縮する能はざるのみならず豫算は際限なく膨脹し、募債増税底止する所を知らずして、民衆は塗炭の苦に陥るであらう。二者何れが國家の長計大策であるか、眞に深思熟考を要するの秋であらう。
  　（六）　政府は日獨協定を以て、我が國體擁護の爲に有利と信ずる乎。
  　　又將來益々此の協定を強化せんとする乎。
  　有田前外相は、日獨協定は兩國協力して、共産主義を驅逐し、我が國體を擁護せんが爲めに締結したるものの如く説明したが、本員は獨逸と協力することが、何故に此の二つの目的を達する爲に必要であるかを解することが出來ない
  　　（１）　前にも述べた通り、獨逸は露西亞に次ぐ所の共産主義旺盛な國柄である。故に之を驅逐する爲めには、他國の助力を求むる必要もあらうが、我が國には毫も其必要はない。假りに其必要あるとしても共産主義の旺盛な獨逸の力を借ることは火を消さんと欲して石油を注ぐに均しき振舞である。
  　　（２）　世界大戰爭までは、神意に因て帝位に居るものと傲語してゐた廢帝は、國境を接する所の和蘭に流寓してゐるが、獨逸國民は之を迎立しようとはしない。又皇子皇族をも路傍の人の如く取扱って居る、我が國體を擁護するが爲めに如何して此の如き國民の助力を借りる必要があるの乎。又彼等は如何なる言行を以て我に助力し得るだらう乎「自分等の爲す所に倣ふ勿れ」と云ふことの外には助力の道はなからうではない乎。
  　　（３）　獨逸大總統「ヒツトラー」は露國に對して宣戰にも均しき暴言を逞しうして居る。之と協約を結べば、日露の關係は勢ひ悪化せざるを得ない。支那との關係が頗る險惡なる今日に於て、單に獨逸を助くるが爲に、對露關係を悪化するの非なるは、何人にも理解が出來そうなものだ。
  　　（４）　更に日獨協定を強化して、軍事協定と爲し、東西呼應して露國を攻め、大勝を得たと假想せよ。獨逸は歐露に於ける肥沃繁榮の地を割取するを得べきも、我が國は「シベリア」の荒原を得るに過ぎないであらう。純然たる「ヒツトラー」の獵犬餘りと云へば馬鹿馬鹿しいではない乎。故に既に締結したものは仕方がないが、此の上之を強化するが如きことなからんを望む。
  　　（５）　獨伊の專制主義と、英米の自由主義とは氷炭相容れざる性質のものであつて、獨伊と英米とは啻に經濟的や政治的のみならず、思想的にも調和し難い關係になつてゐる。故に我が國が特別に獨伊に接近すれば、自然英米と隔離することになる。之が爲めに生ずる思想上經濟上及軍事上の利害得失も亦考慮すべきである。
  　（七）　現内閣は植民地返還に關する獨逸の要求に應ずる意思ある乎。
  　前條の如き無益有害な日獨協定すら謳歌する我が外交界であるから、植民地返還の如きも獨逸が之を要求すれば、我が政府は二つ返辭で之を應諾するかも知れない。〓爾たる南洋の孤島、之を返しても還さなくつても其事自身は餘り大事件であるまい、が、之に關連する主義方針に至つては將來の大問題となるべき性質を有つてゐる。
  　現在は世界戰爭の結果獨逸から取上げた植民地だけが、問題に上つてゐるが、此の事件は元來そんな一局部だけの解決で終了すべき性質のものではない。「ハウス」大佐などは植民地再分配を唱へてゐるが、其具體的方法はない。縦し其方法を立てても之を實行することは出來ない。百歩を譲つて實行し得たとするも、人口の増減や國運の盛衰に因て再び不權衡を生ずる。人口、富力、産業力等を標準として少くも五十年に一囘位づつ再分配をしなければ、不平不滿と之に基いて起る所の紛爭は、絶えないだらう、我が政府は此の如き意見に惑はされて、植民地問題を取扱はれざらんことを切望する
  　然らば現在我が國も惱み又英米佛露支等の外全世界の邦國が悉く惱んで居る所の原料問題は如何にして之を解決すべき乎。「宇宙は全人類の共有物である」と云ふ原則を漸次實行すれば好いのである。土地は日光や空氣と同じく人類に取つて絶對的必要物であることを承認し、漸次之を實行すれば好いのである。世人が空氣や日光に付ては、此の原則を承認しながら、獨り土地に付て、之を承認しないのは、其知識道徳が尚ほ卑低な爲である。其證據には世の文明國と稱するものは、國内的には何れも此の原則を承認し、漸次之を實行に移してゐる。封建時代には武力を以て斬り從へた五十萬石百萬石の領分を其私有物と爲してゐたが、今日は之を國家に奉還し、何人でも法定の手續さへ履行すれば、之を使用し得ることになつてゐる。國際的に切り從へた土地、即ち植民地だけが、尚ほ蠻習を脱せず、封建時代の諸侯の領地と同様に取扱はれてゐるに過ぎない。文化は小なるものより進んで、漸次に大なるものに及ぶのが其順序であるから既に國内的に行はれてゐる事柄はやがて國際的にも行はれるに相違ない。否な、そうなるやうに盡力するのが、文化人の聯責である。植民地再分配の如き空論すら世上の一問題となつたのは、文化進歩の過程に於ける一現象と見て宜しい。
  　米國が多年極東に向つて提唱し、且つ或程度まで既に實行されてゐる所の「門戸解放」「機會均等」の主張は本人は未だそうとは氣が付かずにゐるにしても「土地は空氣や日光と同じく人類の共有物である」と云ふ思想の顯現として視るべきである。純然たる國家の私有物と見るならば、他より右の如き提議を爲すことは、國際的儀禮を解せざる無禮の言行である。それは兎もあれ門戸開放機會均等の提議は、極東の關する限り、日米英佛支獨伊等に承認され、且つ不十分ながらも、實行されてゐる。將來益益此の主義を擴張し且つ獨り極東のみならず、廣く世界の植民地にも實行すれば、原料問題や人口問題は、自然に解決せられるではない乎。其事は植民地の返還若くは再分配よりも、合理的にして實行し易く、且つ其結果は、一層良好であらう。返還や再分配は、たとへ出來ても、強大國だけの利益となつて弱小國は之に均霑することは出來ないが、門戸開放機會均等を實行すれば、大小強弱の別なく列國悉く其利益に均霑することが出來る。
  　帝國が經濟的發展を以て今後の國是と爲す以上は、門戸開放機會均等の主張と、其實行を以て、大方針と爲すべきである。有らゆる機會に於て有らゆる努力を以て差當り此の主義を、世界列國の植民地に實行せしめ、遂には其本國にも實行せしむべきである。武力發展に要するだけの努力と犠牲を、此の大方針の爲に拂へば早晩必ず成功して世界の面目を一新し大に全人類の幸福を増加し得べしと信ずる。知らず現内閣は此の國是方針に向て邁進するの雄圖なき乎。
  　（八）　林首相は對外軍備の必要を説くに方り、數々一觸即發などと云ふ詩語を用ふるが、それは何れの國を對手として云ふのである乎。
  　英米露は歐洲の形勢極めて險悪な今日に於て、彼より手出しをする氣遣はない。支那も自ら進んで失地囘復に著手する準備はないのみならず、首相は前内閣の對支方針を轉改して親善を圖る見込のやうである。果して然らば一觸即發の對手がないではない乎。又なからしむるやうに力めなければならぬ。對手のないのに此の如き險語を使用すれば、却て接壌國を刺激し其誤解を招く結果を生ずる。
  　現在の如き歐洲の危局に處しながら露國が大軍を「シベリア」方面に駐屯せしむることを欲せざるは勿論であらう。それにも拘らず、之を爲すのは疑心暗鬼の結果に過ぎないであらう此の疑心と誤解を一掃する位のことは平凡な外交官にも出來る筈。不可侵條約の提議に應じても又日獨協定を緩和しても、其目的は達し得られるではない乎。又眞に一觸即發の危機に際會して居るなら今後五年に亙る所の軍備充實では、手後れになりはしない乎。又此方が五年掛つて軍備を擴張すれば二倍以上の人口を有する先方は我よりも多く擴張して、我が國防は現在よりも危殆に赴きはしない乎。
  　（九）　杉山陸相は獨り本員の質問に對してのみならず他人に對しても、數々二・二六事件は政治的の腐敗の爲めに起つたやうに演べて居るが、それは如何なる事實を指して云ふのである乎。
  　墮落腐敗と云へば先づ殺人、強竊盜、贈收賄、詐僞取財、情實推擧等が、其重大なる現象であらうが、それは獨り我が政治社會ばかりに限つた現象ではない。政黨者流の間に見るだけの墮落腐敗は、何れの方面にも現れてゐるのみならず、同じ收賄でも、政黨者流は何れも皆な黨の爲に收賄したのであつて、自己一身の爲にしたのではない。然るに他の方面の收賄者は、多くは自己一身の爲めにして居る。
  　又五・一五事件二・二六事件が、軍備以外の堕落腐敗の爲めに起つたのなら、彼等は其張本人を襲撃すべき筈であるのに、彼等が襲撃した人物は、犬養毅、齋藤實、高橋是清、渡邊錠太郎、岡田啓介、牧野伸顯、鈴木貫太郎、西園寺公望等何れも三朝歴任の功臣であつて、而も所謂腐敗堕落には最も縁の遠い人々である。加之、彼等が擁立せんとした人物は、右等の諸君とは比べものにならない人物であつた。優れた人物を殺して劣つた人物を擁立すれば、何故政界の墮落腐敗を匡正することが出來る乎。彼等と雖も、其位のことは分らない筈はない。從つて彼等犯罪の動機は、陸相が數々明言するが如きものでないことは、明白なやうだ。
  　縱し、一歩を讓つて、陸相の説明の通りだと假定しても苟も身を陸軍の上層部に置く者は、之を口外してはならない。之を口外することは、叛逆者を庇護して、其後繼者を誘起せしむる結果を生ずる惧れがある。政治社會が如何に腐敗墮落しても、軍隊中より多數の犯罪者を出してはならぬ。明治初年以來、政界の腐敗墮落が昭和年代よりも太だしかつたことはあつたが、二・二六事件の如き不祥事件は起らなかつた。畢竟軍紀の弛廢未だ今日の如く太だしきに至らなかつた爲めであらう。明治天皇には臣民の犯罪に對してすら、
  　　罪あらばわれをとがめよ天つ神
  　　　　民はわが身の生みし子なれば
  　と仰せられた。然るに陛下の薫育に浴したる軍人、特に軍紀維持の責に任ずる者が、自己の怠慢を咎めずして、却て罪を政界の腐敗墮落に歸するに至つては、本員未だ其の可なる所以を解する能はざるを悲しむ。
  　（十）　政府は所謂る庶政一新の手段として、官廳の新設及廢合を企ててゐるやうだが、海陸兩省を合併して國防を統一する考はない乎。
  　明治年間には、内外の情勢上、海陸兩省を對立させる必要が有つたが、大正以後は、内に於ては薩長兩藩閥の對立が解消し、外に於ては、露支の海軍力が消滅した。故に兩國に對して、防備を施すの必要を認めても、それは陸軍だけで好い筈だ。又經費其他の關係より武力を背景として、英米と折衝するを必要とせば、其武力は海軍でなければならぬ。英米佛の如き富裕國ですら、海陸兩軍を對立的に充實するが如きことはしない。力を海陸に分てば、雙方共に弱くなるからだ。古人も「二兎を逐ふものは一兎を得ず」と云つてゐる。今や帝國は國防の重點を海陸何れに置くべき乎の大問題を解決すべき時機に際會してゐる。今日の機會に乘じ、陸海兩省を併合して、國防省を設くることは、庶政一新中の最大急務であらねばならぬ。之を合併して一大臣に管理せしむれば、大局の利害より打算して、「國防上の重點を海陸何れに置くべき乎」の問題は困難はあつても自然に解決せらるるであらう。又空軍の重要性は、將來益々増加すべく、英佛伊の如きは既に空軍省を設けて居る。
  　我が國では海陸兩省各々空軍を設備してゐるが、それは啻に不經濟であるのみならず、效果的でない。故に海陸各々一省を置く以上は、空軍省をも設けて之を統一すべきであらう。然しそれよりも寧ろ國防省を新設して、三軍を統轄せしむるが好い。そうすれば經費を減ずると同時に、國防力を増加することが出來る。
  　現在の如く陸軍は大陸に伸んと欲し、海軍は海洋に伸んと欲し、國家に一定の方針がなく、恰も夢遊病者の如く彷徨するときは、折角天祐に浴せる帝國も、或は左躓右顛、遂に意外の窮地に陷るかも知れない。
  　（十一）　帝室の尊榮と人民の幸福を維持する將來百年の計の爲めには、今日に方り、百方思を凝らして、武門政治の出現を豫防する必要があると信ず。現内閣の所見如何。
  　鎌倉以後徳川幕府の末に至る最近七百年間は、武門政治の時代であつて、其間に養成發達した思想感情は、今尚ほ國民の大多數の頭腦を支配してゐる　議會政治が滿足に行はれ難いが如き、軍部の權勢動もすれば内閣を壓するが如き、近來の總理大臣が多く軍人より出るが如きは、皆な其結果である。此の如き情勢の下に於ては、油斷をすれば全體主義統制主義其他の名義を以て、武力を背景とする所の獨裁政治即ち武門政治が、出現し易い。而して其結果が、朝廷と人民に不利なることは、最近七百年の歴史が之を證明してゐる。
  　然し、軍人をして政治に關與せしむれば、純忠至誠の士と雖も、知らず識らず、背後の武力を政治に應用するに至るは、必然の勢である。而してそれが武門政治の端緒となるのであるから、眞に君國を愛するものは、防微杜漸の計を施さねばならぬ。
  　彼の五・一五事件乃至二・二六事件の如きは、青年將校が、政治に興味を持つた爲めに、人臣の大節を誤るに至つた事例である。故に軍人をして政治に關與せしむることは、啻に國家に大害あるのみならず、兼ねて亦軍人をして其身を誤らしむる原因となる。之が統率の責に任ずるものは、深く思を茲に致して、紀律を肅正しなければならぬ。
  　現役に在らざる軍人は、選擧權被選擧權の行使を許されてゐるから、政治に關しても差支ないことは、勿論だが、さりとて、在郷軍人會の如き軍人團體の名義を以て、政治に關與するは、武門政治に到達するの徑路となる故之を嚴禁すべきであらう。軍人團體の名義を以て、政治に關與せずとも、普通人民として、之に關與すれば、好いではない乎。軍人團體の名に於て、政治に關與すれば、自然に其武力を用いたくなる。たとへ使用せずとも、他人をして其脅威を感ぜしむる。それは立憲政治下の大禁物である。申すまでもなく、立憲政治は言論と投票に依て萬事を解決すべき政體であつて、武門政治は武力に依て問題を解決すべき政體である。此の兩者は其主義と、最後の手段に於て、絶對に相容れざる政治機構であるから、苟も憲政を扶持して、帝室の尊榮と人民の幸福を保全せんと欲する者は、武力を背景とする者の政治的進出は、其現役將校たると、在郷軍人たるを問はず、總て之を禁止しなければならぬ。三百萬の會員ありと稱する在郷軍人會の活動は、之を單純なる軍事關係に止め、事の大小に拘らず、政治に關與せしめてはならないと思ふ。陸軍大臣は此の點に關して、如何なる見解を有する乎。本員の聽かんと欲する所である。
  　（十二）　現内閣は海陸軍備の國際協定を提唱し、以て世界列國を救ふと同時に、自ら救ふ意圖なき乎。
  　英米露支を對手として、競爭的に軍備を擴張しては、帝國は如何なる大犠牲を拂つても國防を安全ならしむることの困難な次第は、既に記述した通りである。陸相は我が五箇年計畫が成就すれば、蘇聯に對抗し得べき旨を説いたそうだが、我が陸軍擴張中に、先方が手を束ねて擴張せずに居れば、陸相の言ふ通りになるだらう。若し先方が帝國以上に擴張すれば、他に豫想外の異變が起らざる限り、我が對蘇國防力は、現在より弱くならうではない乎。其時は日獨協定が役に立つと思つてるかも知れないが、「ヒツトラー」が口を極めて蘇聯を攻撃しながら、盛んに軍需品を蘇聯に賣込んでゐることは、我が當局者も承知の筈である。
  　英米露は、何れも軍備の協定制限を希望してゐると認めらるるから近來は無條約論の急先鋒であつた所の帝國が、協定制限を提唱すれば、列國は必ず贊成するであらう、縱しそれが不成功に終つても、別段の損害はなく、若し成功すれば、世界列國を救ふと同時に、自ら救ふことも出來る。是れ本員が此の問題を提起して、現内閣諸公の意圖を聽かんとする所以である。
  　　　　帝國前途の豫想
  　之を要するに、現在の儘で推移すれば、豫想外の僥倖に遭遇せざる限り、帝國は數年ならずして、凡そ左記の状態に陷るべき憂がある。
  　　（１）　政府の經費は、際限なく増加するも、募債増税共に困難に赴き、財政的破綻を免れざるべきこと。
  　　（２）　軍人の得意と民衆の失意とは、反比例に増加し、軍民の關係は漸次離反する虞あること。
  　　（３）　國家必要の事業に對する經費の分配、其均衡を失するが爲め、不具的國家を現出すべきこと。
  　　（４）　如何に軍備を擴張しても、國防力は次第に減少し、國勢は危殆に陷るべきこと
  　　（５）　四圍の列國に嫉視せられ、帝國は益々孤立無援の位地に陷るべきこと。
  　　（６）　孤立状態を免れんと欲して、獨伊に接近すれば、政治的及經濟的に交渉の多き英・米・露・支とは益々隔離して、帝國の不利を招くべきこと。
  　　（７）　躍進途上に在る所の帝國の産業貿易は、當然の發展を遂ぐる能はずして、中道に挫折すること。
  　　（８）　軍需品關係者だけ不當の暴利を得て、一般人民は生活難に苦しみ、社會的不平不滿が、愈々増加すること。
  　　（９）　不正不當の方法に由て起れる不平等を打破する方便として、共産的思想が蔓延する惧あること。
  　　（１０）　一歩を誤れば、暴動内亂も起り兼ねまじき患あること。
  　　（１１）　二・二六事件の如き惡質の不祥事件が將來再發するかも知れないとの憂ひ尚ほ存すること。
  　　（１２）　明治大帝の最大偉業たる憲政の發達は、中道にして挫折し、武門政治とならんとする惧あること。
  　右は前途の見透しであるが、帝國には意外の天祐があるから、或は歐洲の大亂其他不期の事變が起つて、狂瀾を既倒に廻すかも知れない。只本員は天祐を頼まんよりは、寧ろ人事を盡したく思ふが故に、忌憚なく質問するのである。
  　今や帝國が前記の如き悲運に陷らんとする根本原因を尋ぬれば、國民的智徳の缺乏に在る、而して言路を壅塞して居ることが其智徳の發揚を妨害する大原因なるに相違ない。例へば戰亂の勃發既に目睫の間に迫れるが如き歐洲列國すら、悉く總歳出の二割強の軍事費を支出するに過ぎないのに、我が國だけが、四割乃至五割の軍事費を支出することの過度なる次第は、説明さへすれば、何人でも理解し得べき問題であるにも拘らず、言論壓抑の結果、之を説明することが出來ない。説明すれば生命財産に對する脅威が來る。其反對に勅諭と刑法を以て政治關與を禁ぜられて居る所の軍人のみは、演説に文書に盛んに其意見を發表する。故に全國人民は單に一方の意見のみを見聞して、之に盲從する。是れが近來に於ける國歩艱難の最大近因であるから、其匡救法は極めて簡單明瞭である。
  　甲　勅諭と法律の明文を属行して、軍人の政治關係を禁ずること。
  　　（い）　軍部より發行する所の思想、經濟、政治等に關係する文書には總て責任者の氏名を署せしめ、且つ主管大臣をして其責任を負はしむること。
  　　（ろ）　軍部の意向、決心、決議などと題して、數々新聞紙上に掲載せられる事項中、主管大臣の命に由て發表したるものの外は、其當事者を處罰すること。
  　乙　言論の自由を確保して、其暴壓者を嚴罰すること。
  　丙　政治に關與すべからざる軍人を教唆して、政治的行動を爲さしめんと企つる者は、叛亂豫備罪として嚴重に之を處罰すべきこと。
  　右の三件さへ實行せらるれば、時勢相當の意見が勝を制するから、現在の如き軍部偏重の論を生ずる惧れはなくなるのであるが、現在の輿論及議會の形勢は、自由の言論に因て造られず、其背後の武力に因て作成せられた趣がある。其證據には本員が二月十七日に衆議院で演べた意見中には、大多數の贊成を得た所もあつたのであるが、豫算案議決の際にはそれと反對の結果を現はした。本員は重ねて言ふ「憲政を維持し、且つ國家を救はんと欲せば、請ふ先づ言論の自由を確保せよ。又武門政治を豫防して、帝室の尊貴を保たんと欲せば、請ふ先づ軍人の政治に關與することを禁遏せよ」と。知らず現内閣は、此に事を遂行して、目下の國難を救治するに努むるや否や
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員尾崎行雄君提出財政經濟軍備及外交に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員尾崎行雄君提出財政經濟軍備及外交に關する質問に對する答辯書
  　（一）大藏大臣答辯
  　刻下内外の諸情勢より觀るときは、國防の充實其の他の施設の爲に、當分の内、相當多額の歳出を必要とすることに付ては覺悟する所なかるべからず、之が爲には租税收入の増加を圖る外、當分の内、相當額の公債を發行するは又已むを得ざる所なるべし
  　政府は今囘前内閣の立案に係る税制改革案は姑く之を取止むることとし不取敢、租税の臨時増徴を行ふこととなしたるが、尚政府は大體に於て制度の整備を主眼とし中央地方の税制を改正せんとするの意圖なり
  　（二）陸海軍大臣答辯
  　帝國の陸海軍軍備は、我が國體を擁護し、國權を維持し、帝國の平和的存立發展を保障するに要する最少限度の整備を目途とするものにして、或特定の國を目標とするものにあらず、又我が國情、地理的環境及現下の國際情勢に鑑みるときは、軍備の目標を一方に極限すること能はざるのみならず、假定の上に立脚して陸海軍備の一方に缺陷を存するときは、却て他國の乘ずる所となり、戰爭誘發の危險大となるべし、即ち、現状に於ては、陸海軍備は兩々相俟って始めて國防の實を完うし得るを以て、何れに偏傾するも適當にあらず
  　（三）陸海軍大臣答辯
  　第二項の答辯に述べたるが如く、自主的に國防上必要と認むる最小限度の軍備の整備を爲さんと欲するものにして、毫も列強と軍備擴充を爭はんとするものにあらず、從って、他國に追隨して之と均勢又は優勢の兵力を保有せんとするものに非ることは、已に屡屡政府より言明せる通なり
  　（四）陸海軍大臣答辯
  　國防の安全を期するには、獨り軍備の充實のみならず、國家の綜合的國力を向上發展せしめざるべからず
  　（五）内閣總理大臣答辯
  　政府は曩に政綱を公にして、其の嚮ふ所の大方針を明かにしたるが、今後は更に其の具體化を圖り、國運の進暢に大に力を效すべし
  　（六）外務大臣答辯
  　我國體と相容れざる「コミンテルン」の破壞工作は、國際的なるを以て、之が防遏の爲に國際的協力を爲すことは、必要且有效と認めらるるが故に、政府は先づ「コミンテルン」策動の主要目標たる獨逸國との間に協定を締結したり
  　將來は其の運用に錯誤無きを期し、協定の本旨に從ひ、充分の成果を擧ぐるに努力すべし
  　（七）外務大臣答辯
  　政府は舊獨逸殖民地たる南洋委任統治地域の返還を考慮するの意思毛頭無し、門戸開放機會均等の主張は、從來有ゆる機會に於て、帝國の主張し來りたる處にして、今後と雖も之が實現に一層努力すべし
  　（八）内閣總理大臣答辯
  　我が帝國は東亞安定勢力たる特殊使命を有するに鑑みて、東亞永遠の平和に力を效し、諸列強との交を敦うし、特に外交の明朗化を期し居れるも、滿洲事變後滿洲國を中心として釀成せられたる其の周圍の形成は、國境紛爭等未だ其の跡を絶たず、時に衝突の危險なきを保せざるの状況を見、遺憾に堪へざるものあり、一觸即發の語は、かかる状態を形容したるものなり
  　（九）陸軍大臣答辯
  　政界の腐敗のみを責むるに急にして、自己の責を囘避せんとする意志は之を有せず、政治的腐敗の事實は茲に之を指摘せず
  　（十）陸海軍大臣答辯
  　陸海軍省を合併し國防省となすことは、之を考慮し居らず
  　（十一）陸軍大臣答辯
  　我國獨特の立憲政治の健全なる發達は、之を衷心より熱望する旨屡々説明せる所にして、我國に武門政治が出現すべしとは、夢想だにせざる所なり
  　（十二）外務陸海軍大臣答辯
  　公正妥當なる基礎に於ける軍備の國際協定には、政府は從來同樣熱意を以て之に協力するの用意あり
  　但し、現下世界の情勢に照すときは、今日帝國より之を提唱するも、其の目的を達成し得る好機なりと認むること能はず
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　　　　海軍大臣　米内光政
  　　　　　　大藏大臣　結城豊太郎
  　　　　　　陸軍大臣　杉山元
  　　　　　　外務大臣　佐藤尚武
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月八日
  　　　　　　　　　提出者　伊東岩男
  　　　宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問主意書
  　宮崎縣は東西十七里南北四十里餘に亙り其の廣袤五百一方里にして面積頗る廣大なりと雖其の四割五分は官有地にして大部分は森林原野に屬し民有地は五割五分に過きす而も民有地租の内田地は二割、畑地は二割八分、宅地は三分にして山林原野雜地租は實に四割九分に達す而して人口八十五萬、其の一方里人口密度は僅に二一、六九一人にして全國中北海道に次く人口稀薄の地たり從て富力に於ても甚た低く民間の産業亦農産物、林産物及水産物を主とし其の業態は舊態依然として素朴幼稚の域を脱せす即ち地理的人文的特殊事情に因り財源貧弱なるは寧ろ宿命的制約に屬し將來と雖財源の自然的増加を期待し能はさるは之亦明白にして縣財政の前途を顧念する者夙に深憂措く能さる所なりとす加之歳出額は益益増加するのみならす土地廣濶なる關係上諸般の施設は寧ろ分散的普遍的に之か施行の必要に迫らるる事情ありて縣民の負擔は愈愈累加するの趨勢にあり更に縣財政上到底默過し能はさるものは即ち地理的不可避の關係と官有林の伐採亂行とに原因する大風水害及其の他の災害に對する復舊費莫大にして之か負擔に堪へさることにして財政策としては縣債に依らされは支辨の途なく今日極めて厖大なる縣債の數字を示すに至れるは注目すへき特異の事相と謂ふへし
  　斯の如く年々歳出の増加を見つつあるに反し歳入に於ては財源益益涸渇して増收の途なし試みに國税及地方税の比較に付て見るに國税の全國一人宛平均額は六圓十七錢（昭和十年）に對し宮崎縣は同上一圓八十八錢（昭和十一年）に當り右全國平均額を指數一〇〇とすれは宮崎縣は僅に三〇に過きす之を以て見るも國税負擔力の如何に貧弱なるものあるかを察知するを得へし然るに地方税に至りては國税百圓宛平均額は百五十二圓七錢なるに對し宮崎縣は同上四百四十四圓六十二錢に當り全國平均を指數一〇〇とすれは其の三倍に當る二九二の過大なる數字を示す以て如何に地方税の負擔か縣民の經濟に重壓を加へつつあるかを推知するに足るへし
  　此の機會に地方財政交付金制度を創設實施せらるるは洵に時宜に適したることにして就中右交付金制度の實施に當り税源貧弱にして負擔過重なる地方に對しては特に其の地方の實情に應して租税の再分配に依る交付金を以て地方の財政安定を期せむとするは蓋し地方財政の前途に一大光明を投するものと謂ふへし更に地方財政交付金の配分方法を公平にして其の均衡を計り戸數割の全廢又は輕減又雜種税の改廢を期すると共に併せ考察檢討すへきは負擔力涵養の爲産業資源を國か分與するの策を樹て其の地方の特別の事情に鑑み恆久的而も彈力性發展性ある財源を分與するの問題なり而して之か實行は最緊切なる要務にして十分講究を盡し且地方の要望を容認して以て其の救濟を爲し大いに將來の發展に資すへきなり
  　本員は此の見地より前述の如き宮崎縣の現状に顧みて少くとも既得權益たる各河川の發電水利使用竝特別の事情にある國有林野の拂下解放及利用に關する左記の各項に付政府の所見を質さむとするものなり
  　　　　　（い）　發電水利使用に關する特種財源保有の件
  　第一點
  　　宮崎縣各河川は霧島山及祖母の山脈に水源を發し千古斧鉞を加へさる蓊鬱たる森林溪谷の間を蜿蜒流下して東太平洋へ注く而して縣下各河川は到る處豐富なる水利發電力を有し現在發電中のもの既に一八四、九六九馬力に及ひ將來開發すへきもの即ち
  　　　昭和十四年完成のもの　七八、四八〇馬力
  　　　既許可未著手のもの　一七、五四九馬力
  　　　工事實施未濟のもの　三六、八八二馬力
  　　　水利使用出願中のもの　一二三、三八九馬力
  　　にして合計四四二、二六五馬力に達すへく蓋し宮崎縣に於ては各河川に依る發電水利は天與の一大資源たると共に税源涸渇せる縣財政上直接間接極めて有力なる財源にして大正十三年縣外に送電するものに對しては一馬力一圓宛を水利使用料に代る寄附金として夫々水力電氣事業會社との間に締結せる契約に基き徴收し更に昭和三年に至り縣外送電一圓五十錢、縣内供給の水利發電に對しても亦一馬力一圓の使用料に代るへき寄附金を收納することとし第一期に於て縣外送電のもの及縣内供給のもの併て總額二十九萬圓に上る寄附金收入を以て縣債償還の財源たらしめ種々重要事業を計畫實施せり
  　　然るに昭和七年に至り内務遞信兩省か強制的に料金徴收率の低下を要求したるは實に宮崎縣の實情を無視したるものにして一時は縣民の輿論激化の徴ありしも本省示達巳むなく將來に於ける新規發電のものに對しては常時理論馬力一馬力に付一圓而して常時理論馬力、最大理論馬力との差に依る一馬力に對する五十錢の使用料を徴收するに止め從來の分に對しては昭和十二年度迄縣内外の供給を問はす總て最大理論馬力一馬力に付一圓を水利使用料として徴收し現在十八萬圓餘の寄附金を收納しつつあり殊に昭和十三年度よりは之を一般水利使用料として收入するを要する結果其の收入額亦十三萬餘圓に減することとなり縣財政の一大脅威にして只さへ財源窮乏の縣なれは之か補填の途なく財政經理の上に一大支障を訴ふるに至るへきは火を睹るより瞭かなり故に政府は此の實情に照し再檢討して縣財源の増加を期せしむる爲昭和三年當時の計算に基き徴收し得るやう考慮されたし政府の所見如何
  　第二點
  　　若試みに現在水利使用料算定の基準に依り其の收納額を算出するときは昭和十四年に至り二十六萬四千圓餘に達し全部發電開始後は四十四萬二千圓、更に遡て昭和三年當時の計算に依るときは昭和十四年三十五萬圓、將來は約六十萬圓の收入を當然得へきものにして縣として斯の如き財政上極めて重大なる既得權益を喪ふことは全然縣民の默視し得さる所なり
  　　前述の通り昭和三年より水利使用料二十九萬圓の收入を目的として縣政上の重要事業の起債財源とせるに拘らす本省の示達に依り遂に收入率低減の爲現在は收入額十八萬圓となり更に昭和十三年度より十三萬圓に減少するに及ひては既往及將來に於ける縣債償還財源に愈愈大なる缺陷を生せしめ從て之か補填の爲一般歳入に依る縣民負擔の増加亦已むを得さるとするも到底負擔能力なく縣財政の破碇を生するに至るへし故に政府は宮崎縣の實情に顧み天與の既得權の確保は勿論財源保有の爲他に特殊の方法を考慮せられたし所見如何
  　第三點
  　　近く政府か企圖する國營電氣事業實施の曉に於ては此の既得權益に對して使用料に代るへき交付金の交付率に對して相當増額せられむことを切望し尚未許可の水利權に付ては悉く國營管理の下に移され此の結果縣財政の將來に於て最有力なる財源として多年渇望し來れる之等水利使用に依る收入か全く水泡に歸し從て縣政伸展の將來に應すへき諸多の新計畫亦畫餅となり縣民の失意落膽は到底筆舌に盡し得さるものあり國營電氣事業實施の曉に於ける之等關係權益の處置及方針如何
  　　　　　（ろ）官有林野解放其の他に關する件
  　第一點
  　　宮崎縣は前述の如く國有林野の面積は頗る厖大にして其の經營は今日著しく公企業化し寧ろ産業行政たることよりも財務行政に主力を注き收入本位となる傾向ある爲却て直接間接地方財政及産業に影響する所少からす亦實際問題として公企業よりも私企業に移すことに依て有利の點多し仍て將來地方財政の財源涵養又は産業資源開發の目的を以て適當に國有林野の解放拂下を斷行せられたし政府の所見如何
  　第二點
  　　若將來廣大なる國有林野の拂下又は部分林制度の擴大施行等を爲さす更に公企業化する場合に於ける之か保護監視は地元民の愛護に俟たさるへからす此の見地より關係地元町村に對する交付金を増額せらるるは當然なり政府の所見如何
  　第三點
  　　部分林制度の擴大の意思なきや尚部分林伐採後跡地を縁故拂下を爲し引續き造林せしめては如何即ち部分林は少くとも伐採期に至るまて五十年、其の間造林者は其の土地に手入し且樹木を愛護したるものにして伐採後と雖其の跡地に對する愛著心は頗る濃厚なるなり此の意味より以上の方針を希望するものなり政府の所見如何
  　第四點
  　　國有林野中作付適地多く之を田又は畑地とすることに依り其の利用率増大するものなれは之か合理化の爲開墾豫定地を擴大し而も其の貸付の簡易化を計り農山村の救助に資しては如何
  　第五點
  　　海岸空地利用は現時早熟作物の栽培及各種特用作物の作付の上に頗る有利の點多し海岸空地の利用厚生は決して等閑に付すへきものに非す積極的に拂下けては如何
  　第六點
  　　官有林、立木の拂下、賣却に當りては從來資本家の獨占なりし弊を改め農山村救濟更生に重點を置き殊に木炭用原料木の拂下の如きは地方の産業組合員に利用せしめ資金の供給、製品の販賣を組合中心とするの要あり又之に依りて雙方とも頗る有利なり政府の所見如何
  　第七點
  　　各河川及海岸地に於ける土石及砂利の賣却料金は從來大藏内務兩省の收入となりたるも其の關係町村の財源に之を充當せしむるを要す政府の所見如何
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員伊東岩男君提出宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員伊東岩男君提出宮崎縣下各河川發電水利使用及官有林野解放等特種財源保有に關する質問に對する答辯書
  　　（い）　發電水利使用に關する特種財源保有の件
  　第一點及第二點
  　　河川法に依り徴收する發電水利使用料は從來發電の理論馬力を標準とし常時一理論馬力に對し年額一圓常時理論馬力と最大理論馬力との差に對し年額五十錢を徴收し得るものと定め其の範圍内に於て徴收することを認め來れり宮崎縣は前記徴收額の最高額を徴收し來れるものなるも水利使用料を徴收するは電力會社の一部に過ぎず他の大部分のものに對しては水利使用料に代へ最大一理論馬力に對し年額一圓の割合を以て寄附金を納付せしめ今日に至りたり此の寄附金は普通の場合に比し高率に上るものにして、昭和十三年度より當然水利使用料に改むべきものなるも窮迫せる宮崎縣の財政に重大なる影響あることは政府に於ても認むる所なるを以て政府は之等諸點を併せ考慮して適當なる措置を爲さむとす
  　第三點
  　　電氣事業の國營が實現するも、電力會社より徴收し得べき水利使用料に相當する金額は之を可及的府縣に收納せしむるの方途を講じ府縣の財政に惡影響なき樣考慮せむとす
  　（ろ）　官有林野解放其の他に關する件
  　第一點
  　　國有林野は治水其の他國土保安上重要なる關係を有するのみならず林利を永遠に保續し民業に適せざる巨材、特殊用材の如き材種を生産して國民經濟の需要に備ふると共に他面地元産業竝に地元民經濟の充足伸張を圖る方針に依り一定の計畫の下に經營せるものにして宮崎縣下の國有林野は十八万一千百餘町歩にして此の中不要存置國有林野は地方の事情に順應し拂下處分の見込なるも其の餘の要存置國有林野は前敍の國有林野本來の使命達成上必要なる林野に屬し永く國有として存置するの要あるものなり
  　第二點
  　　國有林野の中管理上地元民に其の保護を委託するの必要あるものに付ては委託林の制度を設け町村又は部落に其の保護を委託し之が代償として自家用薪炭材及副産物の無償採取を許可し來りたる所にして將來に於ても本制度の活用を計る見込なるを以て保護委託の増加を理由として國有林野所在市町村交付金を増額するの要を認めず
  　第三點
  　　政府は地元産業の状況竝從來の慣行等を參酌し必要なる林野は部分林の設定を許可し現在宮崎縣下に於ては一万七千餘町歩を算する現況なり而して之等部分林の伐採後は契約更新を爲す場合あるべきも部分林地の拂下に付ては考慮し居らざるものなり
  　第四點
  　　國有林野中農耕適地に付ては地元の状況等を參酌し拂下又は貸付の方法に依り之が耕地として利用せしむる方針なり
  　第五點
  　　海岸に所在する農林省所管の國有林野は概ね防潮防風保安林なるを以て農耕地として拂下利用せしむべき土地は存在せず
  　第六點
  　　國有林野所在の地元民に對する自家用竝稼用の用薪材の供給に關しては其の實情に應じ可及的地元の要望に副ふ樣努めつつある所にして又一面木炭金融竝販賣の合理化を圖る爲には産業組合を中心として低資の供給販賣の斡旋を爲さしめつつあり
  　第七點
  　　各河川及海岸地に於ける土石及砂利の賣却料金は河川法の適用若は準用なきものは國の收入となり居るも之を關係町村の財源に充當するや否やに付ては尚考究の上決定するの要あるものと認む
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　　　農林大臣　山崎達之輔
  　　　　　　遞信大臣　伯爵　兒玉秀雄
  　　　　　　　　内務大臣　河原田稼吉
  　　　　　　　　大藏大臣　結城豊太郎
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月八日
  　　　　　　　　　提出者　土屋清三郎
  　　　千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問主意書
  　近來地方人民共通の不滿は實に官僚獨尊の脅威にあり而して昨年千葉縣山武郡緑海村に起れる所謂房總七・二六事件は地方に於ける官僚獨尊の如何に恐るへきかを暴露したるものにして端を小學校舍移築に對する縣當局の輕卒非常識なる措置に發し一半の村民愕然として反對陳情の擧に出つるや縣當局は以て官廳の威信に關すと爲し警察權を濫用して手段を選はす反對部民を彈壓し威力を以て之を慴伏せしめむとして果さす民間有志か之を憂へて調停解決に乘出すや陽に之に贊して陰に之を忌み反對部民か圓滿解決を信して安心せるに乘しし亂暴にも武力を以て之を強行せむと企て七月二十六日夜半縣下の警察官を動員して一隊を以て反對部落を封鎖し一隊を以て授業期間中の小學校舍を包圍し一擧に之を破壞して他に撤去し以て學童及反對部落をして名状すへからさる悲痛混亂に陷らしめ遂に二千の反對部民を驅りて縣政より離れて獨自の新村を結成し三百の學童を私塾に擁して自ら教育するの餘儀なきに至らしめたり爾來日を經ること既に九箇月村民は有らゆる迫害に對して頑然死守して屈せす縣當局は威信兩つなから地に墜ちて今尚策の出つる所を知らす甚しきは校舍破壞の際恐れ多くも教育勅語謄本の奉安に關し重大なる不敬の失態を演しなから極力之を曲庇して責任囘避の態度に出つ抑抑警察隊を以て自治體及教育機關を襲撃破壞する既に空前の暴擧たり之か爲縣政より遊雜せる無政府村の出現を餘儀なくせしめ陛下の赤子を政澤の外に遺棄して今尚之を迫害するに至りては聖代許すへからさる暴政に非すや況や之か爲未た一人の責任者を出さす監督の政府亦之を放任するに至りては政府は本來何の爲に存在するやを疑はさるを得す仍て左記事項に付内閣總理大臣、内務大臣及文部大臣の責任ある答辯を求む
  　一　緑海村の學校位置問題は十年來上側即ち純農部落と下側即ち半農半漁部落と爭ひ來りたるものにして六年前當時の村當局は多年の紛爭を一掃せむと欲し位置の公平なる選定を縣當局に仰き縣か專門的調査に依りて最適當と指定したる場所に全村會一致を以て決定建築したるものなり然るに一昨年新村當局か上側村會議員の多數に依り新築漸く五年を過きさる前述の校舍を僅々百餘間の上側に移築するの議を決し縣の認可を求むるや縣は下側村民が情理を悉くして其の不當を哀訴陳情したるに拘らす唯村會多數決の一事を理由として前任縣當局の苦心を無視し將來の影響を慮る所なく輕卒にも之に認可を與へ以て今次紛爭の因を作れり素より多數決は會議政治の原則なりと雖本件の如き場合唯村會多數決のみの故を以て必す之を認可せさるへからすとせは縣の監督權は無用の存在なるのみならす將來村會勢力の消長毎に學校の位置は上轉下行して止まる所なく啻に自治の圓滿なる發達を害するのみならす小學教育機關をして町村爭覇の火中に投するの結果を招來すへし政府は縣當局の措置を以て當を得たりと爲すか
  　二　縣の移築認可に對し下側村民か依然として反對陳情を繰返すや縣當局は緑海村を管轄する成東警察署長に態態下側と反對の立場に在る同村上側出身の齋藤某を任命し職權を濫用して極力下側反對民を彈壓せしめたり例へは反對民に對する債權者を警察署に招致して告訴を要請し以て反對者を窮地に陷れむと企て債權者の義憤的拒絶に會ひて失敗したるか如き又移築絶對反對の書面を上側の一友に送れる下側の者を捉へて拘留に處し釋放に先ち捕繩を以て胸部を緊縛し更に之を椅子に括り附けて署長の面前に据ゑ「君には氣の毒なるも斯くせされは反對は屏息せす加之校舍移築は縣の絶對的指令なるを以て如何なることあるも必す之を斷行すへし萬一之を妨くる者あらば直に全縣下の警官を動員して之を壓伏すへく必要に應して軍隊出動の用意もあり」と威嚇したるか如き或は下側反對の村税滯納者等に對し警官三名か村吏を帶同して家宅に臨檢し入口の障子其の他見易き場所に長大の差押封印を貼附し其の後屡屡警官を派遣して樣子を窺はしめ偶偶其の一部か剥離せるを發見するや數名の警官直に其の家に侵入し主人を引致して交換的に反對運動中止を強要したるか如き其の他一々之を指擧するを略すと雖以て縣當局の人事行政の非常識と警察の惡辣なる職權濫用の一端を窺知するを得へし政府は右警察署の行動を以て當を得たりと爲すか
  　三　成東警察署の彈壓痛く下側反對民の憤怨を買ひ人心漸く惡化するや此の儘に推移せむか他日遂に拔くへからさる禍根を殘さむことを憂ひ有志の士は頻りに縣當局、成東署及縁海村上側竝下側の間を奔走して圓滿解決に乘出すに至り下側も遂に其の誠意に動かされ一切を擧けて調停者に一任安堵し調停の有志亦縣當局と折衝の間に何事そ縣當局は陽に之を迎へて圓滿解決に贊しなから陰に村及成東署を指揮して遮二無二校舍の移築強行を企て竊に縣警察部巡査教習所其の他縣下の各署より百數十名の警官を動員し成東署員と合して七月二十六日午前三時を期し突如一隊を以て下側部落を戒嚴封鎖し一隊を以て小學校を包圍し署長及村長指揮の下に百數十名の人夫をして警官と協力し疾風迅雷の勢を以て校舍を破壞し之を所定の上側の新築地に運搬を始むるに至れり黎明に及び朝起會員として校門前の鐵路掃除に來れる學童等は此の光景を睹て愕然色を失ひ警官叱咤の間を縫ひて恰も火事場に物を探すか如く自己の學用品を索めて得す悲叫しき家に歸るに及ひ部民は始めて朝來物々して武裝警官隊の來往か吾等の愛兒の校舍破壞の爲の吾等の部落封鎖なるを知り卑怯極まる暗打的暴擧として悲憤一時に激發し各自警戒を突破して決死の集合を爲し署長以下警官隊包圍の裡に異口同音官憲の暴状斯の如し吾等は最早や本村より離れて吾等の兒童を吾等の手に依りて教育するの外なしと叫ひ即時私學設立、村税不納、警察排斥の議を決し獨立自營以て縣の虐政より囘避するに至れり抑抑警察の使命は社會生活の秩序を維持するにあり然るに縣當局は上述の如く反對部民か圓滿解決を信して安堵し毫も不穩の状なかりしに拘らす此の秩序維持を使命とする警察隊を以て夜陰に乘して包圍急襲し一擧秩序を破壞して無政府状態に陷らしめたるものにして其の行動は之を叛徒馬賊に比すへく其の思想は庶民を犬羊視する昔日の暴吏と選ふ所なし部民か呼んて以て警匪と爲し今尚之を怨敵視して毎月二十六日を記念する故なきに非す若夫れ授業中の校舍を豫告なくして警察力に依り急襲破壞せることか如何に童心に影響したるかに至りては一度彼等の綴れる感想文を讀む者をして思はす肌に粟を生せしむ政府は右縣當局及警察隊の行動竝學校破壞を以て當を得たりと爲すか
  　四　前項の校舍破壞に際して起れる最恐懼に堪へさる一事は實に教育勅語謄本奉護に關する失態なりとす即ち當日午前三時十五分頃成東署長及緑海村長は多數の警官及人夫を引率して突如校舍に乘込み先つ使丁及宿直教員を呼起して今より校舍の取壞しを行ふへきを以て直に教室に入りて机及校具の片付を爲すへし校長も迎へにやりたるを以て追て來るへしと告け兩名か直に教室に入りて片付けつつある間に早くも多數の人夫は正面玄關脇より宿直室の屋根に上りて瓦の剥離を始め以て教育勅語謄本奉安の儘其の直上の屋根を蹂躪取壞すの失態を惹起し剩へ間もなく登校せる校長に依りて他の書類と共に玄關廊下に移されたる勅語謄本は忽卒不用意の間に人夫に依りて他の校具書類と同樣自轉車後部の荷附に結ひて上側に運搬せられ次席訓導之を發見して恐懼して人夫を叱咤するの事態を惹起するに至れり思ふに斯る失態を釀すに至りたるは縣當局か警察及村當局と祕密に諜合して夜半急遽校舍の破壞搬出を敢行せむとしたる結果なりと雖苟も教育勅語謄本か同校に奉安しあることは縣當局周知の事にして從て校舍取毀に先ち必す之を適當の場所に奉安すへき旨嚴重關係者に注意すへかりしに拘らす當該校長職員にすら之を嚴祕して如上の失態を惹起するに至りたる以上現場に指揮せる村長署長等素より大責任ありと雖縣當局の責任最重しと謂はさるを得す然るに縣當局は關係部民より屡屡注意陳情を受けたるに拘らす只管其の責任の及はむことを恐れ縣會に於ても事實を曲庇して之を瞞化するの態度に出て部民をして縣當局果して皇室に對し忠誠の念ありやと憤慨せしむるに至れり抑抑教育勅語は國民道徳の大本にして御下賜の謄本は　天皇陛下皇后陛下の御尊影と同樣最尊重して奉護すへきこと文部當局累次の訓令なるに拘らす今日上述の如く關係者明知の失態を看過せむか文部の訓令は一片の反古と化し皇室の尊嚴と教育勅語の神聖は冒涜せられ國民思想に及ほす影響實に寒心に堪へさるものあり況や關係吏僚相結んて之を曲庇するに至つては不臣の罪斷して許すへからす政府は右に對し如何なる措置を取りたるか
  　五　校舍が破壞撤去せられ私立學校設置の報一度傳はるや同情翕然として被害部民に集り中には大に義憤を感して校舍は勿論机腰掛及使丁宿舍まて新造提供せる特志家あり其の他遠近淨財を贈りて之を後援する者相繼くの状態なるに反し縣當局は私學の出現か其の失政の結果となるを恐れ教員の招聘にも一一警官を派して之を阻止せしめ部民か巳むなく校長を東京より招聘し前月校舍破壞の日を以て清海小學塾として開校式を擧け九月一日三百餘名の學童を收容して授業を開始し同時に縣に對して私立小學校設立認可の申請を爲すや縣當局は右申請を其の儘にして百方手段を盡くして在學兒童の切崩しを策し遂に其の寸效なきを知るや八箇月を經たる去月中旬突如認可申請を却下すると共に一方縣下の中等學校に對して清海生徒入學拒絶の指令を與へ他方清海塾生は全部落第せしむる旨を新聞紙に宣傳し以て全面的に清海塾兒童の進出を封鎖し以て塾の潰滅を企つるに至れり茲に於てか上級生中には中等學校入學の爲他村の親族に寄留して其の村校に入學する者あるに至るや右情報に接せる縣當局は直に縣視學を派して當該小學校に對し清海塾生の入學取消を強要し之か爲折角入學したる者も拒絶せられて歸村の餘儀なきに至り父兄は餘りに執拗なる縣當局の迫害を怨み其の儘就學を斷念せしむるに至れり抑抑小學教育は次代國民養成の爲國家及父兄に課せられたる重大なる義務なるに拘らす縣當局は校舍を破壞して學童を私學に據るの已むなきに至らしめなから更に其の私學を壓迫不認可として尚飽足らす今又新學期を目前にして飽く迄之を迫害するに至りては之をしも文政當局の態度なりと爲すか竊に恐る斯の如き惡辣極まる迫害は孰れの日か民怨の爆發となりて遂に重大なる結果を生せむことを政府は右縣當局の措置を以て當を得たりと爲すか
  　六　學校破壞の最後的結果は下側部民に依る獨自の新村結成なり即ち警察隊の封鎖包圍の下に校舍の破壞搬去か決行せらるるや部民は縣當局及警察に對しては勿論本村上側に對する感情俄然惡化し營業上の取引は勿論日常の交際殆と杜絶し兄弟血縁の間も義絶の状態となり就中學童に在りては官憲及上側に對して極度に敵愾心を抱き上級學童の如きは誓つて他日の報復を期すと叫ひ頽齡の老婆亦涙を振つて兒孫を激勵する有樣にして到底融和の望なきのみならす此の儘に經過するは上下雙方の不幸にして寧ろ一日も速に本村より分れて新村を結成することか現在の恐怖状態より逃れて將來の平和を期する唯一の途なりとし下側部落四百餘戸加盟調印の上清海村の名に於て新村の結成を宣言し縣に向つて分村實現の陳情を爲すと共に村長以下村會議員を選任して近く更に役場建設の計畫を進めつつあり然るに縣當局は斯の如き事態か自己の失政の結果なるを省みす絶えす裏面的工作に依りて之か解消を企て其の全然不成功に終るや最近方向を學童及學校に轉換し前項所述の如く中等學校及他校への入學轉學の封鎖に依りて清海村塾の攪亂を策するに至りたる爲部民は憤慨の餘り去月下旬大會を急開して悽愴なる光景の下に「飽く迄分村の貫徹を期す縣税は納付せす」との決議を爲し以て縣當局の壓迫に對抗するに至れり抑抑地方自治の要諦は村民の協調偕和に在り然るに縣當局は自ら暴力を揮つて一村を兩斷し協調偕和の命脈を斷ちて必然的に分村の基礎を作りなから今に至つて進んて分村を實現するの勇斷なく退いて責を引くの良心なく縣政より遊離獨立する無政府村を出現せしめて何等爲すなきに至りては全然村民の能力を缺くものと謂はさるを得す政府の所見如何
  　七　近時官界の通弊は吏僚多く其の責任觀念に乏しきに在り而して緑海村事件は實に本邦自治制施行以來空前の暴擧にして最よく官僚獨尊の脅威を暴露したるものなり單なる一學校位置問題の解決の爲警察的武力を以て彈壓の一途に出て其の間聖勅奉護に對する不敬の失態を惹起し其の結果陛下の赤子を驅つて無政府村に逃避を餘儀なくせしめ荏苒九箇月を過きて何等解決せさるのみならす當局官憲中一人の責を負ふ者なきに至りては豈天下の一大怪事に非すして何そや往年徳川幕府の治世千葉縣には下總に佐倉騒動あり安房に萬石騒動あり孰れも藩僚暴政の結果に出つ而して前者の藩主は民怨の崇る所となりて亂心狂死し後者の藩主は領土を奪はれて追放せられ部下當局の藩僚は孰れも罪死し一方部民の願望は迅速且悉く達せられ怱々にして和平の局處を結へり幕府專制の時代に於て尚斯の如し聖世の當今下總と安房の間に起れる未曾有の暴政に對し關係の吏僚未た一人の責を問はれたる者なく部民の願望年を越えて何等達せらるるなきに至りては今日立憲政治却て昔日幕府の專制政治よりも劣るに非すや庶政を一新して民心を安んするは實に現内閣の重要政綱なり政府は速に關係吏僚の責任を糾明して官僚獨尊の病根を切斷し速に民怨を解消して被害村民をして再ひ天日を仰くを得しむるの意なきや
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員土屋清三郎君提出千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　（別紙）
  　　衆議院議員土屋清三郎君提出千葉縣緑海村に於ける縣警察隊の部落封鎖小學校舍破壞教育勅語冒涜竝無政府村の出現及學童迫害に關する質問に對する答辯書
  　一、千葉縣山武郡緑海村に於ては小學校位置問題に關し多年紛爭を續け來りし處縣當局は之が融和解決に付種々腐心し愼重調査の結果現在の位置を指定したるものにして其の措置に付ては何等不當とすべき點なしと認む
  　二、警察官の行動に關しては同村が既往に於て小學校位置問題を中心に紛擾を重ね之が爲遂に警察事故を惹起したること一再ならざるの事實に鑑み昨年七月二十六日校舍移轉に際しても或は治安を害するが如き事態の發生せんことを虞れ警察官を派して取締の萬全を期したるものにして警察官自ら手を下して校舍を破壞したるが如きことは無く其の他特に本件に付干渉威嚇を行ひ又は職權を濫用したる等の事實なし
  　三、教育勅語謄本に關する不敬問題に付ては特に嚴密なる調査を行はしめたるも教育勅語謄本は移轉工事開始前職員に於て無事上側校舍に奉遷したるものにして質問の如き事實なし
  　四、私立清海小學塾の問題に付ては縣當局に於て關係民の感情鎭靜を期し極力村立小學校に兒童の通學を勸奬する一方各般の事情を愼重考慮の結果之を認可せざることと爲したるものにして特に學童を迫害したるが如き事實なし
  　五、要するに本件に關し縣當局の執りたる措置に付ては特に不當と認むべき事項なく又分村問題の如き愼重なる考究を遂げたる結果に基くものに非ずして偶發的感情に捉はれたる一時的所論と認めらるるを以て目下縣當局をして鋭意本件の解決に付努力せしめつつあり時日の經過と共に漸次事態は平靜に歸するものと認めらる
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　　　　文部大臣　林銑十郎
  　　　　　　内務大臣　河原田稼吉
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　鹽専賣に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月九日
  　　　　　　　　　提出者　小西和
  　　　鹽專賣に關する質問主意書
  　一　鹽の專賣は當初品質の改良と財政關係とに基き且國庫の收入を目的とせり其の後收入主義を一擲し之に代ふるに非常の場合内地産食鹽の自給自足を期するのみならす配給の圓滑と價格の統一とを眼目とし以て今日に至れるものと認む然るに現下諸般の状況に照せは鹽專賣の必要性は著しく減殺せられたるものの如し此の故に依然鹽專賣を續行するは時勢に適應せす最近に於ては政府の之に對する處置も亦專賣廢止を前提とするに非すやとの疑を抱かしむるのあり政府は鹽專賣廢止の意思なきか
  　二　内地産鹽に對して政府は昨年七月を以て向八箇年を期し其の賠償價格金一圓引下けの聲明を發したり當局は爾來當業者との間に種々折衝中の處昨年十二月末を以て昭和十二年度に適用すへき内地鹽の賠償價格を大幅金二十錢引下くへき旨發表し當業者を驚駭せしめたり輓近に於ける一般物價は騰貴の趨勢に在り勞銀も亦上昇の傾向を辿るに非すや此の時に當りて單り鹽價の引下けを敢行するは逆流に棹さすの類にして適切穩當の擧と謂ふを得す從て政府の執れる熊度は確的に内地鹽の生産を壓迫し斯業を萎縮せしむるのみならす當業者をして苦痛を嘗め甚しきに至りては倒産に陥らしめ一方に於ては從業者の生活を脅威す斯る状態を以て推移したらむには遂に特殊の一大産業を廢滅に導くの虞なしとせさるなり而も尚鹽價引下けの擧に出つる理由及其の影響に對する政府の所見如何
  　三　政府は北支那就中長蘆の價格低廉、在貨豐富なる産鹽を内地に輸入するに決したるのみならす既に實行の端緒を啓きたるか如し其の經過と内容とに付て詳細なる説明を望む又此等外鹽の輸入は專賣局か軍部の強要的主張と購買の斡旋盡力とに加ふるに内閣調査局の軍部迎合に基因し遂に如上の擧に出つるの外なきに至れるものなりと聞く事實果して如何尚内地鹽賠償價格の引下けは如上外鹽輸入に起因するものに非すや政府は之か爲に内地製鹽業を壓迫し其の産額の漸減を招致するも已むを得すと思考するか
  　四　鹽專賣に關する施設經營の如何は啻に製鹽業者及其の從業員の利害に關するのみに止らす鹽田所在地方に取りて直接又間接の影響多大なり内地鹽の四割を生産する香川縣の實情は特に顯著なるものあり地方經濟及自治制度等に關聯すること亦素より鮮少なりとせす内地鹽賠償價格の引下けを聞きたる當時關係町村長は一齊上京して其の波及する苦痛を陳情し香川縣會は縣經濟及財政のみならす縣民に與ふる關係に付て論議し香川縣知事も亦上京して政府に具申する所ありき以て内地鹽賠償價格引下けの及ほす苦痛損害の多大且廣汎なるを知るへし之に對する政府の所見如何
  　五　鹽田は皆海岸に面し危險率多く營繕費を要すること亦然り加ふるに公租公課等の負擔重し而も鹽田所有者は四圍の情勢と金利の低下とに鑑み既に相當の地料を引下けたるもの多し其の地料は鹽を用ひて受渡すを普通とすること尚水田に於ける小作料に米を用ふるに異ならす從て鹽の賠償價格引下けに因る鹽田所有者の苦痛頗る大にして其の利廻りは甚た鮮少なるに至れり況んや凶年に際會すること稀ならさるに於てをや又鹽田小作者は勞銀及物價の昂騰に伴ひ經營に苦しむこと甚しき以て鹽田所有者に向ひ地料の引下けを要求するの外なきに至り茲に兩者間の爭議を惹起し現に紛爭中のもの比々然らさるはなく事態は誠に憂慮すへき情勢を呈す斯る場合を辨別せすして鹽賠償價格を引下くるか如きは決して當を得たる處置に非すと認む政府の所見如何
  　六　政府にして鹽専賣廢止の意思あらは豫め之を公表し當業者をして其の善後の方策を誤らさらしむへきなり之に反して依然專賣を維持する方針なるに於ては鹽田所有者、製鹽業者及從業員の等しく安定して經營又勞作し得るを基調とし以て各般の施設及行爲に出つるを要す即ち物價、勞銀を首め社會の情勢を參酌して生産費を算出し中庸適切なる賠償價格を定め併せて之に適應する諸般の方途を立つへきに非すや政府の之に對する態度如何敢て明確なる答辯を求む
  　七　政府は往年鹽田整理を決行せり爾來暫く斯の事なかりしに仄聞する所に據れは近く鹽田整理を爲さむとする趣なり之を整理する場合には廢田に對して新田を開拓せしむるか又は單に廢止するのみにして鹽田の面積を縮少する見込なるか若し鹽田の面積を縮少する見込なりとせは其の理由如何尚賠償價格引下けの理由として政府は根本的に製鹽設備を改良せしめ以て其の生産費を遞減する旨を高唱しつつあり然れとも政府の指導奬勵する設備及方法に依り果して好果を奏するや否や未た確乎たる實際上の證憑を見す今尚疑惑の裡に在り而も當業者としては多大の設備費を要するのみならす其の運用の困難に苦しめり之に對する政府の所見を問ふ併せて政府の内地製鹽に關する根本方針に付て明瞭なる答辯を望む
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員小西和君提出鹽專賣に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員小西和君提出鹽專賣に關する質問に對する答辯書
  　一、政府は鹽專賣を廢止する意思なし、時勢に適應して之に改善を加へ、其の運用を完うすることに努むるを適當と考へ居れり
  　二、内地鹽の價格は近年製鹽業の著しき改善に依り、漸次低下するに至れるも之を外地産鹽の豐富にして低廉なるに比較すれは尚ほ格段の遜色あり、故に内地鹽業は更に改善を加へ以て生産費の低下を圖るの緊要なることは論を俟たさるところにして、之か方策として製鹽の合同機械化を奬め、其の資金に付ては低利資金の融通を爲しつつあり而して昭和十二年に適用すへき鹽賠償價格は製鹽の收支關係、鹽業經濟の實情等に稽へ愼重考究の上之を決定したるものにして其の決定に當りては物價勞銀の動向に付十分考慮を拂ひたるを以て鹽業者の經濟に支障なきものと認め居れり
  　三、近年本邦内地に於ける曹達工業の急激なる發展に伴ひ、多量の工業原料鹽を要する處、北支那に廉價なる停滯鹽ありて之を輸入することの極めて有利なるを認め工業家をして之を輸入せしめたるものに外ならす他に何等事情あるに非す、而して右北支産鹽は工業用原料鹽なるを以て其の輸入は食料用たる内地鹽の賠償價格問題に關係を有せす又何等内地製鹽業を壓迫する等の虞なきものとす
  　四、鹽專賣の經營に當りては生産者の事業安定を圖るとともに消費者側の立場をも考慮し賠償價格を適當に決定するの要あり、而して昨年十二月行ひたる賠償價格の引下は第二項に述へたるか如き事由及考慮に基くものにして、決して鹽業の安定を失するものに非すと認む
  　五、鹽價引下に伴ひ偶々香川縣地方に於て鹽田地主及小作人の間に紛議を生したる事實あるも兩者の協調に依り漸次圓滿なる解決を見つつあり
  　六、政府は中庸適切なる賠償價格を定め居り尚鹽業の健全なる發達を圖るに付萬遺漏なきを期しつつあり
  　七、政府は目下の處鹽田整理を行ふの意嚮を有せす
  　　内地鹽業設備の改善に付ては低利資金の融通、奬勵金の交付、技術の指導及鹽業關係者の協力等に依り所期の成果を擧け得るものと信す、而して政府は内地鹽業の維持改善に努めつつあること前述の通りなり
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　　　大藏大臣　結城豊太郎
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　華族制度改正特權階級權益制限に關する質問主意書
  　右成規に據り提出候也
  　　昭和十二年三月十日
  　　　　　　　　　提出者　松本治一郎
  　　　華族制度改正特權階級權益制限に關する質問主意書
  　現存華族制度の沿革を見るに明治維新の變革に當り封建制度の改廢に伴ひ舊身分は一應形式的には廢止せられたが明治十七年華族授爵の詔竝華族令が公布されるに及び當初維新政府が公卿諸侯を廢して唯空名のみを與へんとした華族は再び至特權ある一の身分的地位を確保するにつたのである之は實に一度廢止せられた舊身分制度の延長存續であり且明治維新の精神たる國民平等の原則を攪亂するものであつて是れあるが爲諸々の社會的、政治的不合理と矛盾とを生じ出して來たのである實に今日の華族制度こそは現代社會に於ける一種の癌である
  　今日華族は身分上、經濟上、政治上に幾多の權益を有して居る彼等は其の殊權を利用し財閥官僚と結託して極度に社會を毒し國民の絶對多數を占むる勞働者、農民、中小商工業者、俸給生活者等勤勞大衆を生活窮乏に陥れて居る
  　殊に全國に散在する六干部落三百萬人の被壓迫部落大衆は封建的身分關係に因り特權階級としての華族の對蹠的存在として凡ゆる人民的自由と權利とを奪はれ經濟的劣惡と政治的無權利とを強制される悲慘極まる状態に置かれて居る
  　今日華族制が存置されて居ることは被壓迫大衆を存在せしむる主要な條件となつて居り且國民の間に於ける階級對階級の軋轢鬪爭も亦之に縁由すること多大なりと言はねばならぬ
  　「和を以て貴と爲す」と天下に聲明せる現政府は國民の間に存在する斯の如き溝渠を撤廢し人民平等の原則に立脚して融和達成の爲に努力すべき責任と義務ありと信ず
  　故に左記の諸項に付政府の誠意ある答辯を要求するものである
  　一　政府は速に華族制度を根本的に改め臣民としての華族制を改正する爲之を上奏する意思なきや
  　二　政府に於て若し華族制度の改正を上奏するの意思がないとすれば政府は華族の身分上及政治上の特權を形式のみに止むべく之が手續を取る意思なきや
  　三　華族制度の改正に拘らず政府は貴族院の權限を徹底的に縮少すべく之を上奏御裁可を仰ぐ意思なきや
  　右及質問候也
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  　　　衆議院議長富田幸次郎殿
  　衆議院議員松本治一郎君提出華族制度改正特權階級權益制限に關する質問に對し別紙答辯書差進候
  　〔別紙〕
  　　衆議院議員松本治一郎君提出華族制度改正特權階級權益制限に關する質問に對する答辯書
  　（一）及（二）に付て
  　　華族制度に關しては宮内省の管掌する所なるを以て答辯を差控へたし
  　（三）に付て
  　　貴族院制度の改革に付ては第六十九囘帝國議會に於ける貴族院の建議の次第もあり、已に貴族院制度調査會を設置して愼重審議中なり
  　右及答辯候也
  　　昭和十二年三月二十三日
  　　　　　　内閣總理大臣　林銑十郎
  一議員より提出せられたる議案左の如し
  　人權蹂躪根絶に關する決議案
  　　提出者
  　　　　小泉又次郎君　濱野徹太郎君
  　　　　漢那憲和君　土屋清三郎君
  　　　　内ヶ崎作三郎君　松田正一君
  　　　　澤田利吉君　三好榮次郎君
  　　　　清水留三郎君　一宮房治郎君
  　　　　加藤鯛一君　永井柳太郎君
  　　　　工藤鐵男君　八並武治君
  　　　　松村謙三君　木檜三四郎君
  　　　　櫻内幸雄君　齋藤隆夫君
  　　　　一松定吉君　小山倉之助君
  　　　　俵孫一君　大麻唯男君
  　　　　原夫次郎君　岡崎久次郎君
  　　　　岡本實太郎君　小久江美代吉君
  　　　　渡邊銕藏君　田村秀吉君
  　　　　中山福藏君　野村嘉六君
  　　　　野田文一郎君　松田竹千代君
  　　　　福田關次郎君　平川松太郎君
  　　　　牧野賤男君　植原悦二郎君
  　　　　宮脇長吉君　堀切善兵衞君
  　　　　若宮貞夫君　安藤正純君
  　　　　名川侃市君　西岡竹次郎君
  　　　　宮澤清作君　山本芳治君
  　　　　服部岩吉君　工藤十三雄君
  　　　　大口喜六君　金光庸夫君
  　　　　濱田國松君　松野鶴平君
  　　　　川口義久君　立川太郎君
  　　　　大野伴睦君　中井一夫君
  　　　　青木雷三郎君　藏園三四郎君
  　　　　　　　（以上三月二十二日提出）
  一昨二十二日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
  　（第一號）昭和十一年度歳入歳出總豫算追加案
  　（特第一號）昭和十一年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
  一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
  　教育改革に關する質問主意書
  　　提出者　　　　　　　　服部教一君
  　　　　　　（以上三月二十二日提出）
  一昨二十二日提出者に於て撤囘したる質問主意書左の如し
  　外務大臣の演説に關する質問主意書
  　　提出者　　　　　　　　清瀬一郎君
  一昨二十二日林内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
  　　　　　　　　商工書記官　酒井喜四
  　第七十囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
  一昨二十二日常任委員補闕選擧の結果左の如し
  　第一部選出
  　　建議委員　氏家清君（仲西三良君補闕）
  　第四部選出
  　　懲罰委員　中山福藏君（松井郡治君補闕）
  　第六部選出
  　　建議委員　椎尾辨匡君（今井新造君補闕）
  一昨二十二日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
  　第二部選出
  　　豫算委員　亀井貫一郎君
  　第二部選出
  　　懲罰委員　立川太郎君
  　第六部選出
  　　懲罰委員　沖藏君
  　第九部選出
  　　懲罰委員　宮澤裕君
  一昨二十二日委員長及理事互選の結果左の如し
  　製鐵事業法案（政府提出）委員
  　　委員長　福井甚三君
  　　　理事
  　　　　　　大島寅吉君　片山一男君
  　　　　　　田尻生五君
  　裁判所構成法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）外二件委員
  　　委員長　青木雷三郎君
  　　　理事
  　　　　　　西田郁平君　村松久義君
  　　　　　　天辰正守君
  一昨二十二日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
  　鐵道敷設法中改正法律案（政府提出）委員
  　　理事　佐保畢雄君（理事大本貞太郎君本月二十日委員辭任に付其の補闕）
  　船員法改正法律案（政府提出）委員
  　　理事　日比野民平君（理事岡本實太郎君本月二十日委員辭任に付其の補闕）
  一昨二十二日議長に於て選定したる委員左の如し
  　農村負債整理資金特別融通及損失補償法案（政府提出）委員
  　　　　西村丹治郎君　牧山耕藏君
  　　　　村上國吉君　岡田春夫君
  　　　　松田喜三郎君　山本粂吉君
  　　　　柏木清治君　佐澤定二君
  　　　　吉植庄亮君　助川啓四郎君
  　　　　高橋熊次郎君　行吉角治君
  　　　　大本貞太郎君　伊東岩男君
  　　　　石井徳久次君　永山忠則君
  　　　　黒田寿男君　小山亮君
  一昨二十二日に於ける特別委員の異動左の如し
  　輸出補償法中改正法律案（政府提出）委員
  　　辭任　福田耕君　補闕　北勝太郎君
  　　辭任　木村武雄君　補闕　渡邊泰邦君
  　　辭任　菊池長右エ門君　補闕　東條貞君
  　　辭任　森田政義君　補闕　山田佐一君
  　樺太市制案（政府提出、貴族院送付）委員
  　　辭任　石坂豐一君　補闕　上塚司君
  　農地法案（政府提出）委員
  　　辭任　愛野時一郎君　補闕　高橋守平君
  　小運送業法案（政府提出）外一件委員
  　　辭任　柏木清治君　補闕　堀内良平君
  　裁判所構成法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）外二件委員
  　　辭任　野村嘉六君　補闕　原夫次郎君
  　船員法改正法律案（政府提出）委員
  　　辭任　倉成庄八郎君　補闕　立川平君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=0

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• 001・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　是ヨリ會議ヲ開キ
  マス-暫時休憩致シマス
  午後一時十三分休憩
  午後二時十二分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=1

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• 002・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　休憩前ニ引續キ會
  議ヲ開キマス、本日ノ日程ニ揭ゲマシタ質
  問一乃至七ハ何レモ政府ヨリ答辯書ヲ受領
  致シマシタ、仍テ日程ヨリ之ヲ省キマス、
  是ヨリ法律案ノ日程ニ入リマス、日程第一、
  防空法案ノ第一讀會ヲ開キ、前會ノ議事ヲ
  繼續致シマス、通〓順ニ依ッテ質疑ヲ許可致
  シマス-蔭山貞吉君
  〔蔭山貞吉君登壇〕

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• 003・蔭山貞吉

  ○蔭山貞吉君　私ハ昨日來日程ニ上ッテ居
  リマスル防空法案ニ付テ、內務大臣、陸
  軍大臣、海軍大臣、遞信大臣ニ質疑ヲ試ミ
  タイノデアリマス、諸君、現下ノ國際情勢
  ヲ觀察致シマスト、此防空ノ必要ナルコト
  ハ申ス迄モナイコトデアリマス、殊ニ我ガ
  帝國ト致シマシテ、隣邦ノ軍備ノ整備シテ
  居ル狀況ヲ觀察致シマシテ、尙ホ我ガ國內
  ノ建築物ノ狀態ニ想到致シマス時ニハ、此
  防空ノ緊要ナルコトハ、一日モ忽セニスル
  コトガ出來ナイノデアリマス、私ハ此防空
  法案ガ今日出サレタコトハ、洵ニ遲イ感ジ
  ヲ致スノデアリマス、國民モ最初ノ防空演
  習ノ時ニハ、非常ニ眞劍味ヲ缺イタヤウニ
  思ヒマシタガ、最近ニ於テハ餘程防空ト云
  フ觀念ガ湧イテ來タト云フコトハ、洵ニ慶
  賀スル次第デアリマス、私ハ第六十七議會
  ニ、關係當局ニ防空法案ヲ出シテハドウカ
  ト云フコトヲ御注意申上ゲタノデアリマス、
  其時ニ當局ハ、防空法案ヲ出スコトハ必要
  デアルガ、今俄ニ是ハ出シ得ナイ、ソレハ
  關係各省ガ非常ニ多クテ、直チニ是ハ實施
  出來ナイ、斯ウ云フコトヲ申シテ居ラレマ
  シタガ、漸ク今日其提出ヲ見マシタ、法案
  ヲ拜見致シマスルト、洵ニ簡單デアリマス、
  併シ私ハ其當時モ進言ヲ致シタノデアリマ
  スガ、取敢ヘズ簡單ナ法案デモ出シテ、サ
  ウシテ防空觀念ヲ養成スル必要ガアル、又
  萬一有事ノ際ニ於テハ、直チニソレヲ適用
  シ得ルノデアル、斯ウ云フコトヲ申上ゲタ
  ノデアリマス、今日提案サレテ居ル法案ハ
  簡單デアリマシテ、幾多ノ疑點ヲ包藏シテ
  居ル、又此法案ニ伴フ所ノ有ユル施設ハ、
  昨日モ中山君ガ述べラレタヤウニ多數アル
  ト思フ、殊ニ內務省ニ於テハ現在御考究中
  ノ事柄ガ相當アルト私ハ思ヒマスガ、內務
  大臣ハ其點ニ付テ、今關係法規ニ付テ御〓
  究ニナッテ居ルコトヲ率直ニ申サレタイノ
  デアリマス
  次ニ御伺致シタイノハ、防空ノ第一要件
  ハ、我ガ帝國ニ敵機ノ襲來ヲサセナイト云
  フコトデアリマス、此事ハ言フベクシテ洵
  ニ至難ナコトデアリマス、日露戰爭ニ於テ
  干、アノ浦鹽艦隊ノ僅カナモノニ對シマシ
  テ、我ガ帝國海軍ガ有ユル手段ヲ講ジテ
  居ッタニ拘ラズ、對馬海峡ナリ或ハ津輕海峽
  ヲ超エテ、我ガ太平洋岸ニ進出シテ來テ、
  國內ヲ非常ニ騒擾サセタ、此事ト此航空機
  ノ關係ヲ對照シマス時ニ、海軍大臣ガ昨日
  申サレタヤウニ、ドウシテモ海軍ハ遠洋ニ
  於テ敵ヲ擊滅シ、又出來ナケレバ中途ニ於
  テ擊滅シ、更ニ防空ヲ達シタイガ、敵ノ僅
  カナモノハ侵入シテ來ル、斯ウ云フヤウニ
  御答辯ニナッテ居リマシタ、私ハ海軍ノ方ト
  致シマシテハ、確ニ遠洋作戰デアッテ、遠キ
  ニ於テ擊滅スルノハ、是ハ尤ナコトデアリ
  マスガ、是ハ敵ノ大艦隊ヲ擊滅シテ海上ヲ
  制覇スルト云フ見地カラ言ウテモ必要ナコ
  トデアリ、寧ロソレガ主目的デアリマス、
  デアリマスカラ、此主目的ニ防空ノ副目的
  ガ附イテ來ルト云フ自然ノ結果ニナル、私
  ハソレヨリ更ニ進ンデ敵ガ侵入シテ來タ場
  合ニ於テ、直接防禦ヲ如何ニスルカト云フ
  コトニ付テ伺ヒタイノデアリマス、是ハ海
  軍大臣ガ居ラレナケレバ、次官デモオ出デ
  ニナッテ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、
  詰リ國土ノ直接防衞ニ付テ、海軍ニ於テ
  ハドウ云フ考ヲ持ッテ居ルカ、同樣ニ陸軍
  大臣ニ於キマシテハ-陸軍トシテハ國防
  上陸地ノ防衞ニ當ルノハ當然デアリマス、
  海軍大臣ガ遠洋作戰ニ於テ敵機ヲ擊滅ス
  ル如ク考ヘラレルヤウニ、陸軍ニ於テモ
  ソレハ敵ノ根據地ヲ衝クト云フコトハ尤ナ
  コトデアリマスルガ、併シ又敵ガ不意ニ
  我ガ國土ニ侵入シテ來タ場合ニハ如何ニス
  ルカ、之ニ付テ國土ノ直接防衞、其完璧ヲ
  期スルト云フコトニ付テハ、是モ甚ダ至難
  ナコトデアリマスルガ、此點ニ付テ現在ニ
  於テ用意ガアルカ、私ハ素人考トシテ、敵
  機ヲ防禦スルノニハ、進ンデ我ガ飛行機ヲ
  以テ敵機ヲ襲擊スルニアル、斯ウ云フ場合
  ニ於テ、我ガ陸軍ニ於テ十分ナル準備ガ今
  出來テ居ルカ、又帝國ノ國土ハ洵ニ狹隘デ
  アル、飛行機ノ著陸場モ到ル處ニナイ、諸
  外國ニ比較スルト洵ニ寂寥ノ感ヲ致スノデ
  アリマス、詰リ著陸、離陸、俗ニ言フ所謂
  空中ノ港ガナイノデアリマス、斯ウ云フ敵
  機ガ襲來シタ場合ニ於テ直チニ港ヨリ飛ン
  デ來テ之ヲ攻擊スルト云フコトガ出來ナイ、
  是ハ遞信當局ニ於テモ、逐次飛行場ヲ、民
  間航空ヲ發達サセル爲ニ、航空路ヲ開設ス
  ル爲ニ設ケラレツヽアルト云フコトハ分ル
  ノデアリマスガ、併シ洵ニ是ハ徵溫的デア
  リマス、此點ニ付テ遞信大臣ノ隔意ナキ御
  意見ヲ伺ヘマシタナラバ結構デアリマス、
  又陸軍ト致シマシテ、國土防衞上現在ノ飛
  行場デ以テ滿足シテ居ルノデアルカドウカ
  次ノ問題ハ我國ノ航空事業ノ發達シナイ
  ノハ、航空事業ノ統一ガ出來テ居ラヌカラ
  デアルト云フコトハ、誰デモ考ヘテ居ルコ
  トデアリマスルガ、特ニ陸軍大臣ハ數日前
  貴族院ノ豫算總會ニ於テ、同樣ノ意見ヲ御
  發表ニナッタト云フコトヲ伺ッテ居リマス、
  然ラバ陸軍大臣、遞信大臣-或ハ是ハ總
  理大臣ニ伺ヒタイノデアッタノデアリマス
  ガ、如何ニシテ此航空事業ヲ統一スルカト
  云フコトニ付テノ所見ヲ、陸軍大臣、遞信
  大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、又其一案ト
  致シマシテハ航空省ヲ設ケル、斯ウ云フコ
  トニ付テハ、海軍大臣ハ昨日、或ハ數日前
  モ御發表ニナッテ居リマシタガ、海軍トシテ
  ハドウシテモ艦隊ニ搭載スル飛行機ノ爲
  ニ、海軍ハ航空省ニ之ヲ統一サセルコトハ
  出來ナイ、陸軍ノ方ニ於テハ或ハ統一スル
  コトハ贊成ノヤウニモ、新聞紙上其他ニ於
  テ散見致シマスルガ、此點ニ付テ私ハ陸海
  軍ハ兎モ角ト致シマシテ、更ニ民間航空ヲ
  發達サセ、又國土防衞ニモ資スル爲ニ、航
  空省ヲ設ケル必要ガアルト思フ、之ニ付テ
  遞信大臣ノ御考ナリ、陸軍大臣ノ御考ナリ
  ヲ伺ヒタイノデアリマス
  尙ホ本法案ニ付テ國土防衞上ニ關スル統
  制ト云フコトニ付テハ、是ハ十分ニ明ニナッ
  テ居ラヌヤウニ思フノデアリマス、併シ軍
  ノ機密等ノ場合ニ於テハ、十分ニ發表出來
  ナイコトモアルデアリマセウ、或ハ分ラヌ
  コトハ將來勅令ニ於テ之ヲ出スト云フコト
  ヲ書イテアリマスカラ、是モ未定ノコトデ
  アリマセウ、所謂逐次ニ防空ヲ全ウスル、
  斯ウ云フ意味ニ於テサウ詳シクハ出セナカッ
  タモノト思ヒマスルガ、私ハ此國土防衞上、
  陸軍、海軍及ビ遞信方面ニ於テ、或ハ內務
  方面ニ於テドウ云フ風ナ統制法ヲ以テ此防
  空ヲ全ウスルカ、陸軍ニ於テハ私共ノ伺ッテ
  居ル所ニ依ルト、防衞司令官ヲ設ケテ、我
  國ヲ三ツニ分ッテ防衞司令官ヲ設ケル、東京
  ニハ東部防衞司令官ト云フモノヲ置イテ居
  ルト云フ風デ、今逐次ヤリツヽアルト云フ
  コトデアリマスルガ、其點ニ付テ海軍ノ方
  ニハ鎭守府司令長官、或ハ要港部司令長官
  ト云フモノガアッテ、其方面ノミヲヤルノ
  カ、海正面ハドウスル、內務大臣ハドウ云
  フ風ナ方面ニ主トシテ防空ニ任ズルノカ、
  斯ウ云フ點デアリマス
  尙ホ內務大臣ニ御伺シタイノハ、此防空
  法ヲ適用スルノハ都市ヲ主トシテ-農村
  ニモ勿論及ブノデアリマセウガ、然ラバ現在
  ノ建築法-建築ニ何カ制限ヲ今設ケテア
  ルト私ハ思ッテ居リマスガ、併シ將來尙ホ此
  帝都、或ハ大都市等ニ建築ノ制限ヲ設ケ、或
  ハソレノ防火ニ對スル奬勵助長、其方法ニ付テ
  御考ニナッテ居ルコト、或ハ何カ將來法規ヲ御考
  ニナッテ居ルト云フコトニ付テ伺ヒタイノデア
  リマス、防空法ノ指導奬勵デアリマスガ、
  是ハ陸海軍、內務兩方面ニ於テ、非常ニ奬
  勵サレテ居ルヤウニ私ハ思ヒマスルガ、併
  シ其中ニ精神訓練ナリ、其他實際的ノ訓練
  ニ於テ、準繩トナルベキモノガ今見當リマ
  セヌ、勅令ニ於テ御定メニナリ、サウシテ
  將來ドウ云フ風ナコトヲヤッテ、防空法ヲ能.
  ク國民ニ貫徹サセルカ
  次ニ第十一條ニハ調査ノ爲ニハ人民ノ家
  ヲ徵發シ、或ハ人モ徵發スル、檢査スルト
  云フ風ニ、色々ナ人民ノ權利義務ニ關スル
  問題ガアリマス、此通リヤル際ニハ、從來
  ノ例ニ徵シマスルト官吏吏員ニハ餘程是
  ハ訓練スル必要ガアルト思フ、是ハ訓練ガ
  行屆カナイト兎角人權問題ノヤカマシ
  イ時代ニ於テ、非常ニ權利ヲ侵害スル虞ガ
  アリマス、此點ニ付テ内務大臣ハ如何ナル
  御考ヲ持ッテ居ラレルカ、防空委員會ノコト
  ハ、是ハ昨日モ御質問ガアリマシタガ、此
  規定ナリ範圍ナリ、或ハ何人ヲ以テ組織ス
  ルノデアルカ
  又第十七條ニ於キマシテ、國庫ハ相當ノ
  補助ヲスル、本年度ノ補助ハドレ位、將來
  ハドウ云フ風ナ補助ヲスルノデアルカ、是
  ハ餘程〓究スベキ問題デアリマシテ、現在
  ニ於テノ防空演習等ニ於テハ、各地方々々
  ニ寄附ヲサセテヤッテ居ル處モアリマス、併
  シ兎角寄附ト云フモノハ甚ダ宜シクナイノ
  デアリマス、此點ニ付テ内務大臣ハ二分ノ
  一補助ヲシテ置イテ、サウシテ足ラナカッタ
  ナラバマダ寄附ヲサセルノデアルカ、勿
  論道府縣及ビ町村ニ於テモ出スノデアリマ
  セウケレドモ、其以外ニ於テ今ノ慣習ト云
  フモノハ拔ケナイノデアリマス、此點ニ付
  テ內務大臣ノ御方針ヲ伺ヒタイノデアリマ
  ス
  次ニ第十八條、第十九條ニハ可ナリ深刻
  ナル刑罰ノ規定ガアリマス、第十八條ノ如
  キハ、醫者トカ或ハ其外藥劑師トカ、サウ
  云フ風ナ技術的ノ人ニ對シテ、相當重イ刑
  ガ科シテアリマス、三月以下ノ懲役又ハ百
  圓以下ノ罰金、或ハ燈火管制ニ從ハナカッタ
  者ハ三百圓以下ノ罰金、拘留又ハ科料ニ處
  スト云フコトニナッテ居リマス、斯ウ云フモ
  ノハ國家ノ有事ノ際ニ、好ンデ斯ウ」云フコ
  トニ反對ヲスル者モ私ハアルマイト思フノ
  デアリマスルガ、併シ斯ウ云フ罰則ヲ設ケ
  ル上ニ於キマシテハ、相當根據ガアルダラ
  ウト思フノデアリマス、此根據ヲ伺ヒタイ
  ノト、尙ホ此罰則ガ餘リニ重キニ失シハシ
  ナイカ、空文ニ屬シハシナイカト云フコト
  ニ付テ御伺シタイノデアリマス
  尙ホ最後ニ、我國ノ防空法ハ今囘初メテ
  出サレタノデアリマスルガ、世界列强ノ防空
  ノ趨勢ハドウナッテ居ルカ、是ハ主管大臣ト
  シテ內相ヨリ御伺シタイノデアリマスルガ、
  其實施ノ年月、是ハ〓要デ宜シイノデアリ
  やく、御調ニナッテ居ナカッタラ、委員會ニ
  於テデモ伺ヒタイノデアリマス、大體以上
  ヲ以テ質問ヲ終ル次第デアリマス(拍手)
  〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=3

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• 004・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)　私ハ內務省ニ
  關スル限リニ於テ、先ヅ御答ヲ致シタイト
  思ヒマス、第一ニ本法ノ制定ガ大變遲レタ
  デハナイカ、斯ウ云フ御意見ガアリマシタ
  ヤウデアリマスガ、是ハ種々ナル點カラ〓
  究調査ヲ致シマシテ、關係スル所モ廣イノ
  デアリマスルカラ、又他ノ省トノ關係モア
  リマシテ、ヤット今囘制定シテ提案セラレタ
  ヤウナ事情ニ至ッタノデアリマス、固ヨリ防
  空ノ問題ヲ解決致シマスルニハ、單ニ本法
  案ノミヲ以テ足レリトシナイノデアリマス、
  廣ク陸海軍ニ於ケル國土防衞ハ固ヨリデア
  リマス、消極的ノ防備ノ上カラ言ヒマシテ
  千、或ハ市街地建築法ノ關係、或ハ都市計
  畫ノ關係、種々ナル點ガアリマスルガ、本
  法ハ取敢ヘズ最小限度ニ於ケル設備ト、竝
  ニ防空ニ關スル訓練ト云フコトヲ主眼トシ
  テ制定セラレタノデアリマス、就キマシテ
  ハ順次諸方面ト連絡ヲ保チマシテ、又必要
  ナル法規ノ改正ト云フコトモ將來考ヘテ行
  カナケレバナラヌト、斯ウ云フ風ニ思フノ
  デアリマス、ソレカラ防空法ノ適用ハ、申
  ス迄モナク主トシテ市街地デアリマスノデ、
  是等ニ付キマシテ、將來ハ只今申述べタヤ
  ウニ、或ハ市街地建築物法ノ關係トカ、或
  ハ耐火ノ建築ノ問題トカ云フヤウナコトニ
  付キマシテ、ヤハリ逐次調査〓究ヲシテ、
  改正スベキモノハ改正シテ行カナケレバナ
  ラヌト、斯ウ云フ風ニ思フノデアリマス
  ソレカラ第十一條ノ問題デアリマスガ、
  是ハ只今御述ニナリマシタヤウニ、事公益
  ニ關スル重大ナル事項デアリマスルカラ、
  或ル場合ニ於キマシテ個人ノ權利ヲ侵シ
  テ、或ハ資料ノ提供ヲ命ジ、或ハ必要ナル
  場合ニ官吏、吏員ヲシテ立入ラシムル必要
  ガアルノデアリマスルガ、此實行ニ付キマ
  シテハ十分ニ官吏、吏員ニ注意ヲ加ヘマシ
  テ、無闇ニ十一條ノ濫用ニ互ルヤウナコト
  ノナイヤウニ、十分ナル注意ヲ加ヘタイト
  思ヒマス、ソレカラ防空委員會ノ組織デア
  リマスガ、是ハ昨日御答致シマシタヤウニ、
  官民ノ方面カラ適當ナル人ヲ網羅シタイ、
  斯ウ云フ積リデアリマス、デ結局ハ府縣ニ
  於キマシテハ府縣知事、市町村ニ於テハ市
  町村長ト云フモノガ、其首腦者ニナルヤウ
  ナコトニ相成ルト思フノデアリマス
  ツレカラ第十七條ノ補助ノ問題デアリマ
  スガ、是ハ十七條ニ定メテアリマスルヤウ
  ニ、國庫カラ二分ノ一以内ヲ補助スルコト
  デアリマスルガ、其他ハ此設備ヲ爲スベキ
  責任ノアル者、卽チ道府縣、市町村、竝ニ
  特殊ノ設備ヲ持ッテ居ル個人、斯ウ云フモノ
  ガ負擔スルノデアリマス、而シテ從來アリ
  マスルヤウナ、種々ナル寄附ノ强要ト云フ
  ヤウナコトニ付キマシテハ、十分ニ地方長
  官ニ注意ヲ加ヘマシテ、强要ガマシイコト
  ノナイヤウニ十分ニ注意ヲ加ヘタイト思ヒ
  マス
  ソレカラ第十八條ト第十九條ノ點ニ付キ
  マシテ、餘リニ處罰ノ程度ガ重クハナイ
  カ、斯ウ云フ御意見ノヤウデアリマシタ
  ガ、第十八條ハ特殊ノ技能ヲ持ッテ居ル者
  ガ、故ナク防空ニ關スル必要ナル指揮若ク
  ハ命令ニ從ハナカッタ場合ノ規定デアリマ
  シテ、是ハ其防空ニ關スル堪能者ガドウシ
  テモ必要デアル場合ニ、其命ニ從ハナイト
  云フヤウナ場合ニハ、事多數ノ民衆ニ關ス
  ル問題デアリマスノデ、此點ニ付キマシテ
  ハ、此位ノ處罰規定ヲ設ケテ居ッテモ差支ナ
  イ、斯ウ云フ見地ニ出テ居ルノデアリマ
  ス、ソレカラ第十九條ノ問題デアリマスル
  ガ、是ハ燈火管制ニ從ハナカッタ者ニ對ス
  ル處罰ノ規定デアリマス、是亦私ガ申ス迄
  モナク、一人ノ燈火管制ニ從ハナカッタ者ガ
  アルガ爲ニ、或ハソレガ目印トナッテ非常ニ
  大キナ害ヲ及ボスト云フコトモアルノデア
  リマスカラ、之ニ對シテモ相當ナ處罰規定
  ヲ設クルコトハ適當ノヤウニ思フノデアリ
  マス、サリナガラ之ニ付キマシテハ、輕重
  等モ斟酌シナケレバナラヌノデアリマスカ
  ラ、法文ニ於キマシテハ、一番重イ所デ三
  百圓以下ノ罰金、併シ輕イ時ニハ拘留、科
  料ト云フヤウナ、極ク輕イ罰モ規定シテ居
  ルヤウナ次第デアリマス、又防空法ヲ設ケ
  テ居リマスノハ、獨逸、佛蘭西、「チエッコ」
  ト云フヤウナ國々デアリマス、尙ホソレ等
  ノ詳細ニ付キマシテハ、委員會ニ於テ御答
  ヲ申上ゲタイト思ヒマス
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=4

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• 005・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　只今蔭山君カラ御
  尋ニナリマシタ點ガ四ツアッタト考ヘマス、
  第一ハ、今日ノ狀態ニ於テ敵機ノ侵入ヲ陸
  海軍ノ航空ヲ以テ直接防衞シ得ルカドウ
  カ是デ滿足シテ居ルカドウカト云フ御尋
  デアリマス、第二ハ、航空ノ統一ニ關スル
  事柄デアリマス、第三ハ、防衞ニ關スル陸
  海軍竝ニ民間ノ任務ニ付テ、如何ニシテ居
  ルカト云フ御尋デアリマシタ、最後ニ外國
  ノ防空法ニ付テノ御尋デアッタト存ジテ居
  リマス、第一ノ防空ト云フコトニ付キマシ
  テ先ツ御答致シマス、此點ニ付キマシテハ
  昨日海軍大臣カラ御答ヲ致シタヤウニ、防
  空ノ最モ良イ方法ハ敵ノ根據地ヲ奇襲致シ
  マシテ、之ヲ殲滅スルノガ最モ宜シイノデ
  ゴザイマス、此機ヲ逸シマシタナラバ、空
  中ニ於テ敵ノ空中武力ヲ破碎ヲスル、斯ノ
  如クスルコトヲ得マシタナレバ、敵ノ飛行
  機ヲシテ一指ダモ我ガ國土ニ染メルコトガ
  出來ヌヤウニスルコトガ出來ルト存ジテ居
  ルノデアリマス、併ナガラ航空ノ本質上カ
  ラ申シマスト、長イ時間ノ間廣イ地域ニ對
  シマシテ、制空權ヲ獲得スルト云フ事柄ハ、
  是ハ非常ニ困難ナ事柄デアリマス、一六、
  敵ノ航空主力ヲ破碎スルコトガ出來マシテ
  モ、尙ホ若干ノ敵機ガ我ガ領土ニ侵入シテ
  來ルト云フコトハ、ドウシテモ防グコトハ
  出來ヌノデアリマス、隨テ是等ノモノニ
  對シマシテ、我ガ領土ヲシテ危險ナカラシ
  ムル爲ニ、直接防空ノ處置ヲ講ジナケレバ
  ナラヌノデアリマシテ、此直接防空ノ處置
  ヲ講ジマスル爲ニ、陸軍ニ於キマシテハ漸
  次其兵力ヲ整備致シツヽアリマス、又是ト
  伴ヒマシテ軍ノ防空以外ノ非軍事防空、卽
  チ此度ノ防空法ニ依ッテ實施セラレマス所
  ノ國民防空ニ依リマシテ、是ガ兩方相俟ッテ
  隙間ノナイヤウニスルコトニ依ッテ、防空ノ
  完全ヲ期シ得ルコトト存ジテ居リマス、併
  ナガラ此直接防空ガ、今日ノ狀態ニ於テ滿
  足シ得ル狀態ニアルカト云フ點ニ至リマシ
  テハ、決シテ滿足スベキ程度デナイト存ジ
  テ居リマス、隨テ今後ニ於キマシテハ、尙
  ホ此防空ニ付テ軍其モノト致シマシテモ、
  十分ニ其整備ヲ圖ルト共ニ、一方ニ於キマ
  シテハ非軍事防空、卽チ此度ノ防空法ニ依
  リマス所ノ民間ノ防空ト、防空ノ訓練ガ統
  制スルコトニ依リマシテ、防空ノ完全ヲ期
  セナケレバナラヌト考ヘテ居リマス
  第二ニ航空統一ニ關スル事柄デアリマス
  ガ、先ヅ第一ニ御尋ニナリマシタ空軍省ノ
  問題ニ付キマシテハ、旣ニ海軍大臣カラ答
  ヘラレタ通リデアリマシテ、此際陸海ノ兩
  方ヲ合シテ空軍省ヲ作ルト云フ事柄ハ、現
  在ノ狀況ニ於キマシテハ海軍ニ於キマシ
  テモ、陸軍ニ於キマシテモ、漸ク海陸軍自
  體ノ作戰ニ協同シ得ル勢力ヲ整備シ得テ居
  ルノデアリマシテ、之ヲ更ニ割イテ特別ノ
  空軍ヲ作ルト云フ域ニハ達シテ居リマセヌ、
  隨テ海軍大臣ト申シテ居リマス如ク、陸海
  軍合シテ直チニ空軍省ヲ作ルト云フ點ニ付
  テハ困難ガアルノデアリマス、併ナガラ飜ツ
  テ民間航空、卽チ軍事航空ノ戰時ニ於ケル
  强大ナル豫備トシテ考ヘナケレバナラヌ此
  民間航空ガ、今日甚ダ不振ノ狀態ニアルト
  云フ事柄ハ、國防上カラ考ヘテ見マシテモ、
  非常ニ遺憾ニ存ズルノデアリマス、殊ニ此
  民間航空ニ於キマシテ、航空技術ノ指導、
  又航空工業ノ指導監督、今日ノ航空事業ノ
  現狀、又航空ニ必要ナル人員ノ養成、操縱
  士及ビ機關士ノ養成ト云フコトニ付テ、其
  設備ガ極メテ不十分デアリマス、是等ノモ
  ノヲ指導シ、監督シテ行クベキ强大ナル機
  關ヲ作ルコトハ、目下ノ緊急ナル仕事デア
  ルト存ジテ居リマス、隨テ今後之ヲ如何ナ
  ル機關ニスルカト云フコトニ付キマシテ、
  十分ニ〓究致シマシテ、關係ノ各省ト協議
  ノ上、今日ノ民間航空ノ現狀ヲ、一層發達
  進步セシメルコトニ努メナケレバナラヌト
  存ジテ居リマス
  第三ノ防衞ノ任務デアリマスガ、是ハ陸
  海軍ノ防務條例、其他陸海軍ノ作戰協定ニ
  依ッテ決メラレテアルノデアリマシテ、卽チ
  是ハ度々申シマスヤウニ、軍防空ニ屬スル
  問題デアリマシテ、其內容ニ付マシテハ、
  事軍機ニ關スルモノデアリマスカラ、申述
  ベルコトハ差控ヘタイト思ヒマスガ、此軍
  防空ト此度ノ航空法ニ依リマス非軍事防
  空、卽チ國民ノ防空ニ依リマシテ、領土ノ
  防衛ノ完璧ヲ期スベキデアルト存ジテ居リ
  マス
  次ニ外國ノ防空ノ狀態ニ付テハ、只今內
  務大臣カラモ御答ガアリマシタガ、歐米ニ
  於キマシテ防空法ヲ設ケテ居ル國ハ多々ア
  ルノデアリマスガ、其中デモ特ニ獨逸、佛
  蘭西ハ、此點ニ付テ代表的ニ出來テ居ルノ
  デアリマス、其法ノ內容ニ至リマシテハ、
  大體ニ此度ノ航空法案ニ於テ規定シテアリ
  マス如ク、災害ノ防止、被害ノ輕減ト云フ
  コトヲ、主トシテ規定サレテアルノデアリ
  マス
  〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=5

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• 006・兒玉秀雄

  ○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君)　民間航空ノ
  發達ヲ促進シナケレバナラヌト云フコトハ、
  航空行政ノ上カラ申シテモ、將又國防上カ
  ラ申シマシテモ、最早議論ノナイ所デアル
  ノデアリマス、然ルニ不幸ニ致シマシテ、
  民間航空ハ今日マデ其進步ガ甚ダ遲々トシ
  テ居ルノデアリマス、今囘陸海軍ニ於キマ
  シテノ航空計畫ノ擴張ニ伴ヒマシテ、漸ク
  十二年度ノ御協贊ヲ得マシタ豫算、竝ニ目
  下御審議中ニ屬シテ居リマス追加豫算ニ於
  キマシテ、從來遞信省ガ考ヘテ居リマス航
  空國策ノ一部ヲ、實行シ得ルノ機會ニ到達
  致シタノデアリマス、從來遞信省ト致シマ
  シテハ、操縱士ノ養成、國際航空線路ノ擴張、
  航空工業ノ助成等ニ付キマシテ、第一次計畫、
  第二次計畫ヲ立テヽ居ッタノデアリマスケレ
  ドモ、併シ色々ノ財政上ノ事情カラ、之ヲ實
  行スルノ運ビニ至ラナカッタノデアリマス、幸
  ヒニ御協贊ヲ得マシタ豫算ヲ以テ、今年度
  ニ於キマシテハ約一千三百万圓程ノ金ガ之ニ
  使ヘルコトニナリマシタノデ、玆ニ漸ク民間
  航空ガ本格的ニ進步シ得ルノ端ヲ開クコトガ
  出來タノデアリマス、併ナガラ從來ノ如ク國ノ
  補助ノミニ依ッテ民間航空ノ發達ヲ促スコト
  ハ、容易デナイト考ヘテ居リマスルノデ、
  玆ニ國民ノ總努力ニ依リマシテ、此民間航
  空ノ發達ヲ一層適切ナラシメント欲シテ居
  ル次第デアリマス、而シテ航空行政ノ統制
  ノ問題ニ關係致シマシテハ、理想論ト致シ
  マシテハ、玆ニ航空省ナルモノガ出來マシ
  テ、國策ノ向フ所ヲ知ラシメ、而シテ專門
  的ニ是ガ航空ノ發達ヲ促スト云フ事柄ハ、
  洵ニ望マシイコトデアルト考ヘテ居リマス
  ルガ、今日ニ於キマシテハマダ其域ニ達ス
  ルコトガ出來マセヌガ、幸ニシテ豫算ガ成
  立ヲ致シマスレバ、今年度ニ於キマシテハ
  獨立ノ航空局ヲ設ケテ、今日ヨリハ稍〓一、面目
  ヲ一新スルコトガ出來ルト思ウテ居リマス、
  殊ニ航空行政ノ上カラ見マシテ、又航空事
  業ノ上カラ見マシテ、差當リ統制的ニヤッタ
  ラ宜カラウト云フ、一番大切ナコトハ、中
  央ニ所謂統制ヲサレマシタル所ノ大〓究所
  ヲ作ルト云フ事柄ガ、最モ必要ノコトト考
  ヘテ居ルノデアリマス、此點ニ於キマシテ
  ハ、政府ト致シマシテ各種ノ方策ヲ考ヘマ
  シテ、出來ルダケ早イ機會ニ於キマシテ其
  實現ヲ期シタイト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
  リマス、現ニ今年度ノ豫算ニ於キマシテモ、
  航空試驗所ト致シマシテ、繼續費ト致シマ
  シテ七百万圓ノ金ヲ計上シテアルノデアリ
  やく、是等ガ中心ニナリマシテ、陸海軍共
  通ノ航空〓究所ヲ建テマシテ、而シテ飛行
  機ノ發達ニ對スル中央〓究機關ヲ速ニ求メ
  タイト考ヘテ居ル次第デアリマス、何レニ
  致シマシテモ、今日ノ民間航空ノ儘デ打棄
  テテ置クコトニ行キマセヌノデ、政府ト致
  シマシテハ、國民ト共ニ此發達ヲ十分ニ期
  シタイト考ヘテ居リマス
  〔政府委員山本五十六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=6

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• 007・山本五十六

  ○政府委員(山本五十六君)　只今御尋ニナ
  リマシタ所ノ、海軍ニ於テ局地ノ直接防空
  ハドウシテヤルカト云フ御質問ニ對シマシ
  テハ、只今陸軍大臣ガ御述ニナリマシタト
  同樣ノ趣旨ト方式ニ依ッテ、海軍モヤッテ居
  ルノデゴザイマス、隨ヒマシテ從來防空協
  定作戰協定等デ決メラレテ居リマシタ方
  面ニ對シマシテハ、ヤハリ陸軍デ從來ナサ
  レタト同樣ノ訓練モヤッテ居リマス、將來モ
  其積リデ實施スル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=7

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• 008・蔭山貞吉

  ○蔭山貞吉君　簡單デアリマスカラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=8

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• 009・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=9

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• 010・蔭山貞吉

  ○蔭山貞吉君　大體御答辯デ滿足致シマス
  ガ、陸軍大臣ガ、ヤハリ海軍ト同樣ニ空軍
  ハ別ニスルコトハ出來ナイト云フコトヲ明
  瞭ニサレタコトハ能ク分リマシタ、私ノ質
  問ノ趣旨ハ、陸海軍ハ共ニ戰鬪上ドウシテ
  モ差支ガアルト云フアラバ、民間航空ヲ發
  逹サセル爲ニ、又戰時事變ニ際シテハ、ソ
  レガ陸海軍ヲ援助シ、國土ノ防衞ニ任ズル
  爲ニ、航空省ヲ設ケルト云フコトニ付テ意
  見ヲ持ッテ居ッタノデアリマス、此點ニ付テ
  遞信大臣ガ懇切ナル御答辯ガアリマシタガ、
  私ハ其事ヲ希望シテ居ルト云フコトヲ玆ニ
  申上ゲテ置キマス、アトハ委員會ニ讓ル次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=10

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• 011・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　蔭山君、宜シウゴ
  ザイマスカ-松田喜三郞君
  〔松田喜三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=11

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• 012・松田喜三郎

  ○松田喜三郞君　私ハ國上防衞ト防空施設
  ニ付キマシテ先ヅ御伺シタイノデゴザイマ
  ス、國際間ノ緊迫セル現下ノ如キ情勢ト、
  科學ノ進步極リナキ現下ノ情勢トカラ考ヘ
  テ見マスルト、我國ノ如ク環ラスニ四邊海
  洋ヲ以テセル所ノ優秀ナル國土ト云ヒマシ
  テモ、一朝有事ニ際シマシテハ、國土安全
  ナリト誰ガ保證シ得マセウカ、今日ノ如キ
  防空施設ノ現狀ニ於キマシテハ、洵ニ憂慮
  ニ堪ヘヌモノガアルノデゴザイマス、將來
  ノ戰爭ガ空中カラ開始セラレマシテ、其制
  空權ヲ獲得シタ者ガ勝敗ノ鍵ヲ握ルノデゴ
  ザイマス、爲ニ我國ニ於キマシテモ昨年ノ
  七月以來、此根本的防空、或ハ國土防衞ノ
  大體ノ御方針ヲ定メタモノト思ウテ居ルノ
  デゴザイマス、彼ノ一昨年ノ七月獨逸ノ空
  軍再建ノ爆彈的宣言以來、英國、米國、佛
  蘭西トモ急激ナル空軍ノ擴張ヲ致シタノデ
  ゴザイマス、殊ニ「ソビエト」聯邦ニ於キマ
  シテハ、二箇國ヲ標準トスル所ノ案ヲ立テ
  タノデアリマス、斯ノ如キ狀態デアリマシ
  テ、各國擧ッテ空軍ノ軍備競爭ノ時代ヲ出現
  ヲシテ居ルノデアリマス、各國トモ其優越
  ヲ期サンガ爲ニ、空軍ノ勢力擴張充實ノ爲
  ニ、隨テ又國土防衛ノ爲ニ邁進ヲシテ居ル
  ノデゴザイマス、私ガ此處デ御伺シタイノ
  ハ、昨年我國ガ御決定ニナリマシタル所ノ
  御方針ガ、其豫算ノ現レト云フモノガ、此
  豫算年度ヨリ其片鱗ヲ現ハシタモノト思フ
  ノデアリマスケレドモ、其方針ト云フコト
  ニ付キマシテハ、吾々ハ更ニ窺ヒ知ルコト
  ガ出來ヌノデゴザイマス、故ニ政府ノ其根
  本方針ヲ此際承リタイノデアリマス、尙ホ
  只今ノ大臣ノ御說明等ニ依ッテ見マスルト、
  現狀デハ甘ンジルコトガ出來ナイノデア
  ル、將來ハ大イニ考ヘネバナラヌト云フヤ
  ウナル御意見アリマシタガ、然レバ明年度
  以降ニ於キマシテ、此航空、防空ニ對スル
  所ノ經費ニ付テ、更ニ增大ナル要求ヲセラ
  ルヽト云フ御考ガアルカナイカ、此點ヲ御
  伺シタイノデアリマス
  今囘御提案ニナリマシタ劃期的ナル防空
  法ヲ實施スルニ當リマシテ、私達ガ痛切ニ
  感ズルコトハ、綜合統制機關デアリマス、
  卽チ此防空法ハ陸海軍ガ行フ所ノ防衞ニ卽
  應致シマシテ、陸海軍以外ノ者ガ行フ所ノ
  防空計畫デアリマス、其命令權ハ內務大臣
  デアッテ、地方長官、市町村長ガ是ガ實施ノ
  任ニ當ルヤウデアリマスガ、之ヲ見マシテ
  私達ハ陸海軍、內務或ハ遞信省ノ關係カラ
  考ヘテ見テ、統制ノ點ニ於キマシテ缺ケル
  所ガナイカト云フ心配ヲ持ツ者デアリマ
  ス、一觸卽發的國際情勢ノ現狀ニ鑑ミマシ
  テ、航空兵力ノ統制上ノ必要、民間航空ノ
  增强擴大ノ必要、航空關係事業竝ニ工業統
  制上ノ必要、又ハ陸軍、海軍、遞信省、內
  務省ノ各省ニ亙リマス所ノ、此統一ヲ圖ル
  ト云フコトニ付キマシテハ、如何ニシテ統
  一ヲ圖ルト云フ御意見デアリマスカ、私達
  ハ只今モ蔭山君カラモ申シマシタガ、ドウ
  シテモ此機會ニ於キマシテ、航空省ト云フモノ
  ノヲ絕對ニ設置スル必要アリト思フノデア
  リマス、只今陸軍大臣ノ御答辯ノ中ニモ、
  何ダカ其點ニ於キマシテ、大ニ考慮ヲセラ
  レテ居ルノデナイカト云フヤウナ御考モア
  ルヤウニ、御言葉ノ中ニアッタヤウニ拜聽シ
  タノデアリマスガ、是ハ御尤デアルト思ヒ
  やく、斯ノ如ク陸軍、海軍、遞信、內務、
  或ハ鐵道省ニマデ及ビマス所ノ、此事業ヲ
  行ヒマスル上ニ付キマシテハ、ドウシテモ
  統一シタル所ノ機關ヲ作ラナカッタナラバ、
  完全ニ之ヲ實行シテ行クコトハ難カシカラ
  ウト思ヒマス、故ニ是等ノ事情ニ鑑ミマシ
  テ、航空省ノ必要大イニアリト信ズルノデ
  ゴザイマス、此際當局ニ於キマシテハ、卽
  チ陸海軍大臣、總理大臣ニ於テハ、其意思
  ヲ明ニセラレンコトヲ私ハ希望致ス者デア
  リマス
  第二ハ人的要素ト施設ノ運用ニ付テ御伺
  シタイノデアリマス、現今我國ニ於ケル國
  土防衞ニ對スル所ノ防空施設ト、其知識ハ
  如何デアルカト申シマスレバ、唯軍部ノ指
  導セル防空演習ニ依ッテ、僅ニ知識ト訓練ト
  ヲ與ヘラレテ居ルノミダト云フ狀態デアリ
  マシテ、洵ニ憂フベキ狀態デアリマス、隨テ國民
  ノ之ニ對スル施設ト云フモノハ、殆ド見ル
  ベキモノガナイ狀態デアリマス、殊ニ本法
  案提出ニ當リマシテノ御說明ニ際シ、國土
  防衞、防空施設ニ對シマシテハ、具體的ニ
  何等ノ御說明ガナイノデアリマス、私ハ此
  點ニ付テ其基幹トナルベキ方針ヲ、此處デ
  明ニ御說明アランコトヲ希望スル者デアリ
  やる、尙ホ此法案ガ假令如何ニ完全デアリ
  マシテモ、之ヲ構成スル人的要素ナリ、又
  ハ施設ノ運用宜シキヲ得ナカッタナラバ、其
  完備ヲ期スルコトハ絕對ニ出來ナイト信ズ
  ル者デアリマス、今日マデノ防空演習ノ實
  際カラ見マシテ、燈火管制、爆彈投下ニ因
  ル火災、毒瓦斯ニ因ル人畜ノ慘害ニ對シマ
  シテ、其被害ヲシテ最小限度ニ防グベキ訓
  練演習ガ行ハレテ居ルノヲ見マスルノニ、
  消防隊或ハ又防護團ガ擔當致シマシテ、其
  方面ニ於ケル所ノ人的要素又ハ施設ニ付キ
  マシテハ、殆ド遺憾ノナイ狀態デアリマス
  ルガ、唯毒瓦斯ニ對スル防毒ハ、マダ〓〓
  人的要素ニ於キマシテモ缺クル所ガアリマ
  ス、其施設方法ニ於キマシテモ、甚ダ非科
  學的デアルコトヲ痛感スル次第デアリマス、
  將來ノ化學戰ハ益〓其深刻サヲ覺悟シナケ
  レバナリマセヌ、彼ノ米國ハ毒瓦斯ヲ以テ
  主トスル化學戰ガ、最モ經濟的デアッテ、有
  效的デアルト云フコトニ方針ヲ置キマシテ、
  官民合同ノ〓究調査ニ努力ヲ致シテ居リマ
  スル現狀デアリマス
  次ニ第六條デアッタト思ヒマスルガ、地方
  長官ハ特殊技能者ヲ以テ之ニ當ラシメルト
  云フ條文ガアッタト思ウテ居リマス、此條文
  ニ依ッテ見マスト、特殊技能者ニ何等カノ團
  體ヲ結成セシメテ、之ニ當ラシメルノ御意
  見デアルカドウカ、又團體ヲ結成セシメラ
  レルトシマスレバ、平素カラ十分ナル組織
  ノ下ニ訓練演習等ヲ行ハシメ、以テ之ヲ活
  用セラレル御計畫デアリマスルカ、如何デ
  アルカ、此點ニ付キマシテ政府ノ意ノ在ル
  所ヲ御明示セラレンコトヲ望ム者デアリマ
  ス
  私ハ此機會ニ於テ將來ノ化學戰ニ備ヘル
  爲ニ、自己ノ職能ヲシテ國土防衞上ニ盡サ
  ンガ爲ニ、全國的ニ組織網ヲ張ッテ、命令一
  下身命ヲ擲ッテ、國防ノ任務ニ當ラントスル
  其ノ團體ガアルコトヲ、定メシ政府トシテ
  モ御承知ノコトデアラウト思ウテ居リマス
  ガ、斯ノ如キ團體ヲ活用シタナラバ、本法
  施行ノ目的ヲ達成シ、卽チ國土防衞上カラ
  言ヒマシテモ、大ナル效果ガアルノデハナ
  イカト存ズルノデアリマス、卽チ毒瓦斯ノ
  如キ化學生成品ノ如何ナルモノデアルカ、
  又ハ如何ニスレバ消毒シ、防毒シ得ルカト
  云フ、實際的ノ方法ヲ一番能ク知ッテ居ル
  者ハ、化學者デアル所ノ藥劑師デアルト私
  ハ信ズルノデアリマス、一般民衆ハ毒瓦斯
  ガ如何ナルモノデアルカト云フ、化學的ノ
  知識ハ持ッテ居ナイノデアリマス、毒瓦斯ノ
  性質ヲ知ラズシテ、實際ノ防毒ノ出來ナイ
  コトハ當然デアリマス、今日一般民衆ガ、
  如何ナル毒瓦斯ニ對シマシテモ、唯晒粉ヲ
  撒布スレバ、能事了レリト思ウテ居リマス
  ル者ガ多イト云フヤウナコトモ、亦已ムヲ
  得ヌ次第デアルト思ハネバナラヌノデアリ
  マス、要スルニ毒瓦斯ニ對スル國民ノ大多數
  ノ認識ハ、化學ニ對シテ殆ド皆無デアルト
  申シテモ過言デナイノデアリマス、斯ル狀
  態ノ下ニ一旦空襲ヲ受ケ、卽チ實際ノ非常
  時ヲ想定致シマスルト、眞ニ憂慮ニ堪ヘヌ
  モノガアルノデアリマス、斯ル場合ニ先ヅ
  此毒瓦斯ハ如何ナル種類ノモノデアルカト
  云フコトヲ檢知シテ、其毒瓦斯ニ適合スル
  防毒ノ種類選定、防毒ノ方法ヲ講ズル者ハ、
  一體誰ガ其衝ニ當ルノデゴザイマセウカ、
  誰ガ完全ニ其任務ヲ果シ得ルノデゴザイマ
  セウカ、申ス迄モナク私ハ銃後ノ國民ノ中
  ニ於キマシテハ、何ト云ウテモ化學的知識
  ヲ有シ、而モ全國各地ニ分布サレテ、當日
  民衆ト親密ニ接觸シテ居ル所ノ街ノ化學
  者、卽チ藥劑師ヲ措イテ外ニナイト思フノ
  デアリマス、全國ノ藥劑師ハ斯ル見地カラ、
  數年前カラ國防化學協會ト云フ團體ヲ、道
  府縣ヲ單位ト致シマシテ結成シ、聯合シテ
  大日本國防化學協會ト云フモノヲ、細胞組
  織的ニ設立シテ居リマス、以テ常ニ毒瓦斯
  ノ〓究、防毒ニ對スル施設〓究等ニ力ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、而シテ國民ノ防毒
  竝ニ防毒思想ノ指導普及ヲ圖ルコトヲ、自
  治的ニ絕エズ努力ヲ續ケマシテ、以テ一般
  民衆ノ防毒ニ對スル知識ト認識ヲ深カラシ
  メツヽアル、其眞摯ナル態度ニ私共感心ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、軍部ニ於キマシ
  テモ定メシ御認メニナッテ居ラルヽコトト
  存ジマス、
  外國ヲ見マシテモ彼ノ佛蘭西ヤ獨逸ヲ初
  メ、各國共ニ特殊技能者ノ團體ヲ結成セシ
  メ、藥劑師ヲシテ防毒ニ關スル方面ヲ擔當
  セシメテ居ルノデアリマス、我國ニ於キマ
  シテモ全國的ニ旣ニ二万五千ノ藥劑師ガ活
  躍致シテ居ルノデゴザイマスカラシテ、此
  劃期的立法ヲセラレルニ當リマシテハ、國
  防化學協會ノ如キ團體ヲ、十分ニ活用セラ
  レルト云フ御方針デアルカナイノカト云フ
  コトヲ、此際ニ御伺シタイノデアリマス
  次ニ此法案ヲ見マスト、毒瓦斯ヲ知ッテ病
  毒菌、卽チ細菌戰ト云フモノヲ知ラヌノデ
  ハナイカト云フ憾ミヲ抱クモノデアリマ
  ス、之ニ對シマシテ政府ノ御所見ヲ伺ヒタ
  イノデアリマス、彼ノ細菌ヲ以テ敵國ヲ攻
  擊スルノ行爲ハ、條約ヲ以テ禁止セラレテ
  居ルト云フコトハ知ッテ居リマス、又人道ノ
  上カラ申シマシテモ默視スルコトハ出來ヌ
  ノデアリマスガ、世界大戰ノ末期ニハ旣ニ
  一部使用セラレタル形跡ガアリマス、殊ニ
  「ソビエト」聯邦ニ於キマシテハ、全國數十
  箇所ニ細菌ノ〓究所ヲ設ケマシテ、浦鹽斯
  德方面カラ此病菌ヲ培養スル爲メノ寒天
  ヲ、多量ニ送ッテ居ルト云フコトハ事實デア
  リマス、之ニ對シテ此法案ニ於テ、條約デ
  禁止セラレテ居ルカラシテ、其防衞ノ方法
  ヲ講ズル必要ガナイト云フヤウナコトガアッ
  タナレバ、容易ナラヌコトガ起リハセヌカ
  ト思フノデゴザイマス、之ニ對シテ政府ノ
  覺悟、御所見ガアレバ承リタイノデアリマ
  ス
  次ニ御伺シタイノハ、自治體ト特殊施設
  者トノ經費ノ關係デアリマス、只今ノ御說
  明ニ依リマシテ初メテ分ッタノデアリマス
  ガ、國庫カラ二分ノ一ノ補助ヲスルト云フ
  ヤウナコトデアリマシタ、二分ノ一ト云ヒ
  マスルカ、二分ノ一以内ト云ヒマスルカ、
  承ッタノデアリマスルガ、此二分ノ一以
  上ノ負擔ヲ地方ノ者ガ致スト云フコトニナ
  リマスト、非常ナ負擔ノ增加ヲ來スコトニ
  ナルデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、
  今日國費負擔ノ均衡ヲ唱ヘテ居リマスル際
  ニ、斯ノ如キ負擔ヲ强ユルト云フコトハ如
  何デゴザイマセウカ、此點ヲ承リタイノデ
  アリマス、尤モ非常時ニ際シマシテハ、國
  民トシテ其負擔ニ堪ヘナイト云フコトハア
  リマセヌ、身モ心モ抛ッテ奉公スルノデアリ
  マスカラシテ、其負擔ニ苦シムモノデハア
  リマセヌケレドモ、平時ニ於キマシテ、此
  施設ヲスル上ニ於キマシテ、國庫二分ノ一
  以內ノ補助ト云フコトニ付テハ、洵ニ遺憾
  ナ點ガアルト思フノデアリマスガ故ニ、此
  質問ヲスル譯デアリマス
  其次ニ承リタイノハ、傷痍、疾病者ニ對
  スル所ノ治療費、及ビ死亡者ニ對スル所ノ
  葬祭料ト云フモノデアリマス、是ガ府縣竝
  ニ市町村ノ負擔ニナルト致シマスト、玆ニ
  私達ハ非常ナ不安ヲ感ズルノデアリマス、
  傷痍、疾病、或ハソレガ爲ニ不具癈疾トナ
  リ、ソレガ爲ニ死亡シタ者ニ對シマシテ
  唯治療費或ハ葬祭料ノミヲ與ヘテ、ソレデ
  恬然トシテ居ッテ宜イモノデアリマセウカ、
  而モ其費用ト云フモノハ何處カラ出ルノデ
  アリマスカ、殆ド地方費カラ出ルヤウナ狀
  態ニナッテ居リマスガ、此處デ更ニ不安ヲ
  感ジマスルノハ、特殊技能者或ハ之ニ從事
  スル所ノ人デアッテ、官吏、軍人、警察官
  ノヤウナ人デアリマスレバ、旣ニ其治療費、
  恩給其他ノ手當、扶助料等モ決ッテ居リマ
  スルケレドモ、其以外ノ者ガ團體ヲ作ッテ、
  國家ノ爲ニ身命ヲ抛ッテ、以テ不具トナリ、
  癈疾トナリ、死亡シタ時ニ、唯治療費或ハ
  葬祭料ノミヲ以テ我慢ヲセヨト云フコトニ
  ナリマスルト、玆ニ又官民ノ負擔ノ不均
  衡取扱ノ不公平ト云フコトガ起ルノデア
  リマスルガ、此點ニ付テ如何ナル御考ヲ
  持ッテ居リマスカト云フコトヲ御伺シタイ
  ノデアリマス
  次ニ國防ノ充實、國土防衞、卽チ防空ヲ
  實施シマスルニハ、國土ヲ安全ナラシムル
  上、·或ハ航空兵力ヲ增强スルトカ云フ上カ
  ラ申シマシテモ、電力ト云フモノノ必要ヲ
  非常ニ感ズルノデゴザイマス、卽チ燈火
  管制、或ハ航空機ノ製作工業、或ハ又全國
  ノ產業ヲ、農村ヲ發展セシムル上カラ申シ
  マシテモ、電氣ノ國營ト云フコトハ當然ナ
  モノデハナイカト思フノデアリマス、殊ニ
  政府ノ唱ヘテ居リマスル不侵略、不脅威、
  此方針ヲ確立致シマスル點ニ付キマシテハ、
  電力ヲ國營ニシテ、以テ燈火管制ヲ一度ニ
  行フコトガ出來ルヤウニ國土防衞、防空、
  國防充實、增强ノ爲ニモ、亦工業ヲ發展セ
  シムル上カラ申シマシテモ、電力ヲ國營ニ
  スルト云フコトハ當然ナリト信ズル者デア
  リマスガ、政府ハ此點ニ付キマシテ如何ナ
  ル御考ヲ持ッテ居ラレルノデアリマスルカ、
  御伺ヲシタイノデアリマス、以上諸點ヲ質
  問致シマス、各所管大臣ノ御明答ヲ御願致
  シマス
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=12

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• 013・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　第一ノ御尋ト致シ
  マシテ、今後ニ於テ防空ノ爲ニ一層兵力ヲ
  充實スル必要ハナキカト云フ御尋デゴザイ
  マシタガ、此點ニ付キマシテハ、陸海軍共
  此度ノ軍備充實ニ於キマシテ、防空兵力ヲ
  增設スルコトニ計畫ヲシテアルノデゴザイ
  マイク其內容ニ付キマシテハ、委員會ノ際
  ニ於テ御話ヲ申上ゲルコトニ致シタイト思
  ヒマス
  第二ハ、防空ニ付テハ之ヲ內務大臣ニ委
  スルコトナク、軍部ニ於テ之ヲ統一シタ方
  ガ宜シクハナイカト云フ御尋デゴザイマシ
  タガ、只今モ述ベマシタ如ク、此防空法ハ
  危害ノ防止、及ビ損害ヲ輕減スルト云フ事
  柄ヲ主ト致シテ居ルノデアリマシテ、卽チ
  是ハ行政事項、或ハ警察事項ニ屬スル事柄
  デアリマスノデ、內務大臣ガ之ヲ管掌サレ
  テ居ル事柄ガ適當デアルト信ジテ居リマス、
  併ナガラ此防空ヲシテ實際ニ適スルヤウニ
  致サセル爲ニハ、陸海軍ト能ク共同シテ之
  ヲ實施スルコトガ極メテ必要デアリマスノ
  デ、陸海軍大臣ニ於キマシテ、此防空ヲ實
  施スベキ時期、區域、又如何ナル程度ニ防
  空ヲ實施スベキカト云フ事柄ハ、陸海軍大
  臣ヨリ內務大臣ノ方ニ通報致シマシテ、之
  ニ依ッテ直チニ內務大臣ハ必要ナ處置ヲ執
  ルト云フコトニ致シテアルノデアリマス、
  尙ホ更ニ戰時事變ニ當リマシテハ、防空ニ
  關シテハ國土ノ一部或ハ全部ガ防衞司令官
  ノ指揮下ニ入ルル必要アルコトガ豫期セラ
  ルルノデアリマシテ、此際ニ於テハ只今御
  話ノヤウナ處置ガ、十分ニ徹底スルコトニ
  ナル譯デゴザイマス
  次ハ防空省ノ設置ニ付テ御尋ガゴザイマ
  シタガ、只今ノ所デハ防空省ヲ設置スルト
  云フコトニ付キマシテハ考ヘテ居リマセヌ、
  前囘御答ヲ申上ゲタヤウナ趣旨ニ依リマシ
  テ、陸海軍竝ニ國民ノ共同一致ニ依リマシ
  テ、此防空ヲ完成致シタイト只今ノ所ハ考
  ヘテ居ルノデアリマス
  第四ハ瓦斯竝ニ細菌ニ關スル御意見ガゴ
  ザイマシタガ、洵ニ御尤ナ御意見デゴザイ
  マス、此防空法ニ於キマシテモ、此點ニ付
  キマシテハ十分考慮致シマシテ、設備竝ニ
  人員ニ付キマシテモ注意ヲ致シテ居リマス、
  此第六條ニ於キマシテ、此防空ヲ實施致シ
  マス爲ニ、特殊技能ヲ有スル者ヲ特ニ從事
  シテ貰フコトハ、極メテ必要デアルコト
  ヲ規定致シテアルノデアリマス、此特殊技
  術ト申シマスル事柄ヲ詳シク申上ゲマスレ
  が、瓦斯或ハ細菌ニ付キマシテハ、醫師、
  藥劑師、或ハ看護婦等ガナケレバナラヌ所
  ノ機關デアルノデアリマス、斯ウ云フヤウ
  ナ關係カラ、第六條ニ於キマシテ特殊技能
  ヲ有スル者ヲ、此防空ニ從事セシムルコト
  ヲ規定シテアルノモ、其所以デゴザイマス、
  私カラ御答申上ゲルノハ是ダケデアリマス
  〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=13

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• 014・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)　大體陸軍大臣
  カラ御答セラレマシタガ、私ニ關スル限リ
  ノ事項ニ付テ御答ヲ致シタイト思ヒマス
  第六條ノ特殊技能者ノ團體ヲ結成セシ
  ムル所ノ意思ガアルカドウカ、斯ウ云フ御
  意見デアリマシタ、國民防空ニ關シテマシテ
  ハ、單ニ役所ノ仕事バカリデナク、廣ク其
  事業ニ援助セラルヽコトヲ希望スルノデア
  リマス、併ナガラ特ニ特殊ノ團體ヲ作ルカ
  ドウカト云フコトニ付キマシテハ、尙ホ考究
  ヲ要スルト思ヒマス、御話ノ化學協會ノ如
  キモノノ御援助ヲ希望スルコトハ固ヨリデ
  アリマスガ、單ニ化學協會ノミナラズ、有ユ
  ル公共的ノ團體ガ、總テ此事業ニ協力セラ
  レンコトヲ希望スルノデアリマス
  ソレカラ自治體若クハ特殊施設者ノ經費
  ノ負擔ノ問題ニ付キマシテ、其中ノ二分ノ一
  マデヲ國庫ガ補助スルノデアルガ、アトノ
  二分ノ一ハ是等ノ團體ニ於テ施設シナケレ
  バナラヌノデアルカラ、ソレダケ負擔ガ增
  シテ、益〓地方ノ困窮ヲ來スノデハナイカ
  ト云フ御意見デアリマシタガ、是ハ併シ御
  承知ノ通リ、從來ト雖モ何等カノ形ニ於テ、
  防空演習ト云フヤウナ名義ノ下ニ、ソレ/
  費用ノ負擔ヲ直接ニシテ居ルノデアリマスカラ、
  之ニ對シマシテ今回國庫カラ更ニ二分ノ一
  以內ノ補助ヲ致スノデアリマスカラ、從來ニ
  比ベテ若干ナリトモ地方ノ負擔ノ援助ニハ
  ナルヤウニ思フノデアリマス、且又防空法
  ノ施行ニ依リマシテ、直チニ完全無缺ナ施設
  ヲスルヤウニ命ズルノデハナクシテ、逐次
  其施設ヲ充實シテ行カウ、斯ウ云フ次第デ
  アリマスルカラ、急激ニ地方團體若クハ特
  殊施設團體ノ負擔ヲ增加セシムルト云フ程
  デモナカラウ、斯ウ云フ風ニ思フノデアリ
  マス
  次ニ傷痍、疾病、卽チ防空ニ付キマシテ傷
  痍、疾病ヲ受ケタ者ニ對スル治療費等ノ問題
  デアリマスガ、是ハ勅令ヲ以テ其內容等ヲ
  規定スル積リデアリマス、是亦從來ニ比べ
  テ、サウ云フ規定ヲ設ケテ、明ニ之ニ對ス
  ル救濟ヲ規定致シマシタコトダケデモ、
  步ヲ進メタコトデハナイカ、斯ウ云フヤウ
  ニ思フノデアリマス、其詳細ノ內容ハ勅令
  ニ讓リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=14

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• 015・松田喜三郎

  ○松田喜三郞君　本席カラ發言ヲ御許ヲ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=15

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• 016・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=16

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• 017・松田喜三郎

  ○松田喜三郞君　遞信大臣ガ御見エニナッ
  テ居リマスケレドモ、御答辯ガナイヤウデ
  アリマスガ、御答辯ヲ煩ハシマス
  〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=17

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• 018・兒玉秀雄

  ○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君)　私ニ對スル
  質問ハ只今陸軍大臣カラ御答ニナッタコト
  デ盡キテ居ルト實ハ考ヘマシテ、控へテ居ッ
  タノデアリマス、航空省、所謂航空行政統
  一ニ關スル御質問ノコトト考ヘテ居リマス、
  此點ニ付キマシテハ先程ノ御質問ニ御答申
  上ゲマシタル通リニ、將來航空行政ノ統制
  ヲ致シマスル上ニ於テ、最モ有力ナル國家
  機關ヲ起スト云フ事柄ハ望マシシイコトデ
  アリマスルノデ、今回其第一步ト致シマシ
  テ、航空局ノ獨立ヲ期シテ居ルヤウナ次第
  デアリマス、此問題ハ將來ニ亙リマシテ、
  必ズ斯ノ如キ機運ニ促進サレルコトト考ヘ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=18

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• 019・松田喜三郎

  ○松田喜三郞君　只今遞信大臣ノ御答辯ガ
  アリマシタガ、私ノ質問ノ要點ニ觸レテ居
  ラナイ點ガ多イ、只今私ガ第一番ニ御質問
  ヲ致シマシタノハ電力國營問題デアリマス、
  如何ニセラレル所ノ政府ノ御方針デアルカ
  ト云フコトヲ、此際明確ニ御答辯ヲ煩ハシ
  タイノデアリマス
  (國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=19

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• 020・兒玉秀雄

  ○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君)　電力國營ノ
  問題ハ、經濟上カラ見マシテモ、亦國防上
  カラ見マシテモ、重大ナル關係ヲ持ッテ居リ
  マスルノデ、殊ニ防空ノ點ニ關係致シマシ
  テハ、最モ注意ヲシナケレバナラヌ點ガ多
  多アルト考ヘテ居リマス、政府ニ於キマシ
  テハ、電力ノ統制ノコトノ必要ハ感ジテ居
  リマスケレドモ、未ダ電力ヲ果シテ國有ニ
  スベキカ否カト云フ方針ヲ決スルマデニハ
  參ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=20

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• 021・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　永田良吉君
  〔永田良吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=21

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• 022・永田良吉

  ○永田良吉君　私ハ防空ノ問題ニ付キマシ
  テハ、多年或ハ空軍ノ充備ニ關シ、或ハ又
  民間航空ノ振興等ニ付キマシテ、度々建議
  或ハ請願、尙又質問ノ方便等ヲ以チマシテ、
  熱心ニ主張シタ一人デアリマス、御蔭ヲ以
  チマシテ、本年ハ陸海軍トモ十四億ノ豫算
  ヲ取ラレマシテ、其中ニハ航空ノ方面ニ向
  ケラレル金額モ相當ナモノト思フノデアリ
  マス、洵ニ國防ノ充備ノ爲ニ慶賀ニ堪ヘナ
  イ次第デアリマス、又民間航空ノ方面モ、
  多少豫算ノ增額等モ見エテ居リマスルガ、
  此點等モ大變欣ビニ堪ヘナイノデアリマス、
  而シテ又今囘防空ノ完璧ヲ期スル爲ニ、防
  空法案ガ提案サレマシタコトモ、洵ニ欣ビ
  ニ堪ヘナイ次第デアリマス、但シ私ハ此防
  空法ノ內容ヲ檢討シテ見タ場合ニ、洵ニ結
  構ナル案デハアリマスケレドモ、是ノ運用
  ノ如何ニ依ッテハ、餘程注意ヲセンケレバナ
  ラヌ點ガアルノデアリマス、此點ニ付キマ
  シテ一二御尋シヨウト思ヒマス
  私ハ一體防空上ノ問題ニ於キマシテ根本
  ノ觀念ハ、空ヲ守ルニハヤハリ飛行機デナ
  ケレバナラヌ、是ガ一番簡單ナ原理ダト思フ
  ノデアリマス、隨テ此防空法ノ如キ消極的ノ手
  段ハ、先ヅ第二、第三ノ問題デアッテ、ヤハリ
  日本ノ防空ノ完璧ヲ期スルニハ陸海軍ノ空
  軍ノ充備ヲヤル、又國防ノ豫備軍タル民間航
  空ノ進展ヲヤルコトガ最モ重大ナル要件デ
  アル、隨テ此防空法ノ如キヲ以テ徒ニ空騒
  ギヲスルガ如キハ、餘リニ感心スベキコト
  デハナイト思ッテ居リマス、此防空法モ適當
  ニ之ヲ運用スレバ洵ニ結構デアリマスケレ
  ドモ、是ノ運用ヲ誤レバ、一面カラ見マス
  ルト云フト、國民ニ國防費ノ負擔ヲ二重ニ
  課スルヤウナ虞ガナキヤ如何、此點デアリ
  ママ、此點ヲ陸海軍兩大臣竝ニ遞信大臣ニ
  モ御尋申シテ置クノデアリマスガ、此點ハ
  餘程考ヘナイト、此提案ノ理由書ニモ書イ
  テアル通リ、色々ナ整備ヲ爲ス、資材ノ整
  備トカ或ハ設備、尙又此防空法ニ付テハ先
  ニ內務大臣カラ、是ハ訓練ガ主デアルト云
  フコトヲ御發表ニナッタノデアリマス、訓練
  ヲ主ニシマスト云フト、現在吾々地方町村
  ノ狀態等ヲ以チマシテモ、色々地方ニハ或
  ハ町村ノ〓育方面ノ仕事デアルトカ、或ハ
  軍事方面デアッテモ、在〓軍人ノ爲スベキコ
  トモ、招魂祭デアルトカ、點呼ノ豫習、或
  ハ徵募兵ノ豫備〓育デアルトカ、爲スベキ
  澤山ノ日常行事ガ、一箇月ノ中ニ三十五日
  アッテモ、マダ足リヌヤウナ澤山ノ行事ガア
  ルノデアリマス、隨テ今囘防空法ガ實施ニ
  ナッタ際、日本全國ノ津々浦々マデ、地方長
  官ノ命ニ依ッテ本法ノ訓練ヲ强制シタ場合、
  是ガ簡單デアルト宜イケレドモ、度重レテ餘
  リ內容ノ充備セナイヤウナ、所謂空騷ギ的
  ノ防空演習ガ行ハレタ場合ハ、大變國民ト
  シテモ、地方トシテモ迷惑ヲ被ムルコトガ
  アリハシナイカト思フノデアリマス、此點
  ハ餘計ナ杞憂カモ知レヌケレドモ、此點ニ
  付キマシテ從來ノ日本ノ防空演習ノ狀態ガ、
  餘リニ現實ト離レテ居ルヤウナ氣持ガスル
  ノデアリマス、ソレハ我國ハ歐米各國ノ如
  〃、未ダ本當ニ航空機ノ慘禍ト云フコトヲ
  國民ガ體驗ヲ持ッテ居ナイ、是ガ爲ニ實際ノ
  防空演習ガ稍<架空的ニナッテ居ル、斯ウ云
  フ點カラ甚ダ面白カラヌ狀態モ二三アッタ
  コトモアルノデアリマスガ、將來大都市ハ
  勿論ノ事、日本ノ津々浦々マデ是ガ防空演
  習ノ訓練ヲヤラレタ場合ニ、其訓練ヲヤル
  地方長官、或ハ地方官廳ノ役人デアルト
  カ、町村長デアルトカ、斯ウ云フ曾テ飛行
  機ニモ一遍モ乘ックコトモナイ、爆彈投下ノ
  事情モ分ラヌヤウナ人ガ中心ニナッテ防空
  法ヲヤッタ場合、飛ンデモナイ考へ違ヒヲシ
  テ、空騒ギバガリシテ、實績ガ擧ラヌヤウ
  ナコトガアッテハイケナイト思フノデアリ
  マス、此點ハドウ云フ覺悟ヲ以テ實施セラ
  レル意味デアルカ、之ヲ御尋シテ置キタイ
  第二ニハ本法ヲ實施シタ場合、其費用ハ
  國庫ノ方カラ二分ノ一位ハ補助ガアル、他
  ハ地方ノ縣ト町村ガ之ヲ負擔センケレバナ
  ラヌヤウニ法文ニハ書イテアリマスルガ、
  此點デアリマス、卽チ費用ノ區分ハ是等ハ
  數字ガ示シテナイカラシテ、一體此防空法
  ヲ實施シタ場合、若シ日本全國ニ全般ニ
  豆ヲ、都市ハ一箇年ニ一二囘、地方ノ町
  村デアッテモ一囘位ヲ實施シタ場合ニ於テ
  ハ、私ガ是ガ爲ニ費ス費用モ大シタ額ニ上
  ルデアラウト思フノデアリマス、大體是等
  ノ費用ニ付テ地方費ガドノ位、町村全般ニ
  亙ッテドノ位ノ程度、又國家トシテハ之ニ
  ドノ位ノ補助ヲスルト云フ、御見當ヲ付ケ
  テ居ラッシヤルナラバ、此際大要デ宜シイ
  デスカラ、陸海軍、或ハ內務省ノ方カラ、
  其大要ノ金額ニ付テ御示シヲ願ヘレバ結構
  ト思フノデアリマス、私ハ此防空法ヲ簡單
  ニ申シマスナラバ、防空法ハ蜜蜂ヲ飼ッタ
  人ハ能ク御分リニナルト思フガ、蜜蜂ヲ飼
  ヒマスト云フト、一番恐ロシイノハ、アレ
  ニ熊蜂ト云フ大キイ蜂ノ襲擊ヲ受ケルノデ
  アリマス、ソレガ參ッタ場合ニハ、飼主ハ
  之ヲ朝カラ晩マデ追〓シテモ一向擊退ガ出
  來ナイ、最後ニハ到頭蜜蜂ノ巢ノ中ニ侵入
  シテ來テ、蜜モ嘗メレバ子モ食ッテシマ
  フ、是ト同ジク蜂ヲ飼フ心ヲ以テ此防空法
  ヲ〓究サレヽバ宜イノデアリマスガ、其際
  ニ此熊蜂ノ出テ來ル巢ヲ壞ツテシマヘバモ
  ウ安全ナンデアリマス、昨日來陸海軍大臣ノ
  御說明ヲ承ルト、洵ニ妙デアリマシテ、私
  共ハ非常ニ感謝致シテ居リマスガ、卽チ我
  國ニ空襲シテ參ル所ノ、所謂外敵ノ飛行機
  ノ根據地ヲ一擧ニシテ壞シテシマヘバ何デ
  モナイ、是ガ一番大事デアル、ソレハ陸海
  軍ガ擔當シテ居ラレル、此陸海軍ガ十四億
  ノ澤山ノ國防費ヲ以テ、之ヲ擔當シテ居ラ
  ルヽノデアリマスカラ、先ヅ吾々國民ハ枕
  ヲ高ウシテ居ッテ宜イヂヤナイカト思フノ
  デアリマス(拍手)ソレニ又飛行機ガ來ルゾ
  來ルゾト言ッテ威シテ居ルヤウナコトハ、下手
  ナ蜜蜂飼ガ熊蜂ガ一匹來タカラト云ッテ、追
  〓シテ居ルト同ジヤウデアッテ、ソノ熊蜂ノ
  巢ヲ壞スコトヲ知ラナイ愚ヲ學ンデハイカ
  ヌト思フ、陸海軍ノ偉イ方ハソンナ愚ヲ爲
  サラヌデセウガ、失禮デハアリマスケレド
  干、地方ノ長官デアルトカ、田舍ノ町村長
  三、マダ此防空法ガ分ラヌ者ガ居ル、サ
  ウ云フ者ガ過ッテ下手ナ蜜蜂飼ノヤウナコ
  トヲ致シマスト云フト、徒ニ蜂ハ働カズ、
  蜜ハ貯メズ、蜂ハ子ヲ產マズ、戰々兢々ト
  シテ、遂ニ蜂ノ一群ハ滅亡ヲ來スヤウナコ
  トガナイトモ限ラヌ、所謂防空案ガウッカリ
  スルト亡國案ニナッテシマフ、左樣ナコトガ
  アッテハナリマセヌカラ、私ハ此防空法ノ訓
  練ノ實施ニ當リマシテハ、周到ナル計畫ヲ
  樹テマシテ、陸海軍、內務省ニ於キマシテ、
  餘程ノ御注意ガ必要ト思フノデアリマス
  ソレニ付キマシテ、此第一ノ出發點ニ一
  ツ私ノ腑ニ落チヌ點ガアル、此法案ノ提出
  ノ署名者ヲ見マスト云フト、總理大臣ト陸
  海軍大臣ト內務大臣デ、一番大事ナ民間航
  空ノ主管者タル遞信大臣ノ連署ガナイ、
  體日本ノ民間航空ノ存在ヲ認メナクテ、コ
  ンナコトヲサレタモノデアルカ、是ガ私分
  リマセヌ(拍手)又苟モ斯ウ云フ大事ナ法案
  ヲ出ス場合ニ、林總理大臣、陸海軍大臣、
  內務大臣ハ、民間航空ノ一番親分デアル此
  遞信大臣ヲ除ケ去リニシテ、此法案ヲノソッ
  トオ出シニナッタモノデアルカ、是ハ大事ナ
  コトデアル、是ハ將來此法案ガ生レテ責任
  ガ生ジタ場合ニ、私生兒認知問題ガ起ッチヤ
  困ルカラ、私ハ此際ニシッカリ遞信大臣ニ御
  交涉ガアリマシタカ、此事ヲ明瞭ニサレンコ
  トヲ希望致シマス、是ハ本案ニハ直接ノ關
  係ハアリマセヌケレドモ、間接ニ關係ガア
  ルコトデアリマスカラシテ、私ハ此際申上
  ゲテ置キタイト思フノデアリマスルガ、先
  程モ御話ガアリマシタ通リニ、私ハ空ヲ守
  ルニハヤハリ飛行機デナケレバナラヌト云
  フ此立場カラ、防空法モ大事デアリマスケ
  レドモ、陸海軍ノ空軍ノ充備ヲヤック後ニ
  番大事ナ問題ハ、先刻カラ他ノ議員カラ質
  問モアリマシタ通リ、又當局ノ方カラモ說
  明モアリマシタガ、ヤハリ重點ハ民間航空
  ノ振興ノ如何ト云フコトデアリマス、此民
  間航空ガシッカリシテ居レバ、防空法ナンカ
  ノ訓練モ、サウ慌テヌデモ宜イ譯デアリマ
  ス、所ガ日本ノ民間航空ハ殆ド是ハ諸外國
  ニ對シテ話ニナラナイ、但シ是等ニ付キマ
  シテハ、遞信省當局モ隨分御心配ハシテ居
  ラッシヤルノデアリマシテ、洵ニ御同情、御
  氣ノ毒ニ堪ムヌ點モアルノデアリマスガ、
  此民間航空ニ對シテ一番大事ナコトハ、私
  ハ先刻大臣ガ〓究所ガ必要デアルト云フ御
  話ガアリマシタケレドモ、〓究所ヨリモ一
  番大事ナコトハ、私ハ對外的ニ日本ノ航空
  路ヲ伸バシテ行クコトガ、所謂日本ノ將來
  ノ經濟發展ノ爲ニ、尙又國防ノ完璧ヲ期ス
  ル意味カラ考ヘテモ、一番ノ大事ナコトト
  思フノデアリマス、今日日本ノ商船ガ世界
  ノ各港ニ出入ヲシテ居ル、ソレニ日本ノ飛
  行機ハ殆ド國外ヘ出テ參リマセヌ、是ハ陸
  海軍ノ飛行機ハ如何ニ澤山アッテモ、サウ日
  本ノ陸海軍ノ飛行機ガ諸外國ノ領域ヘ勝手
  ニ飛ブ譯ニハ行カナイ、但シ民間飛行機デ
  アリマスト云フト、世界中何處デモ聯盟國
  ヘハ飛ンデ行ケル譯デアリマス、我國ニハ
  佛蘭西カラモ曩ニ四囘飛ンデ來ル、英吉利
  カラモ、亞米利加カラモ、到ル處カラ日本
  目掛ケテ民間飛行機ガ飛ンデ來ルノデアリ
  マスルガ、我國カラハ餘リ之ニ向ッテ突進シ
  ナイ、漸ク今朝日新聞社ガ近ク倫敦マデ飛
  ンデ行カウト云フヤウナ狀態デアリマス、
  是等ニ付キマシテ一番大事ナコトハ、先刻
  モ申シマシタ通リ、敵ノ根據地ヲ壞ス
  場合ニハ、ヤハリ飛行機ノ大キナ爆擊機
  デアル、爆擊機ハ陸海軍ニモ相當ノ用意ガ
  アルトシテモ、此代用的任務ヲ果スノ
  ハ民間航空機デアリマス、卽チ旅客輸送
  機デアル、是ガ戰爭ノ場合ニ爆擊機ノ代用
  ヲ爲スコトハ何デモナイノデアリマス、此
  大事ナ日本ノ民間航空機ハ殆ド國外ニ伸ビ
  テ居ナイ、滿洲國マデハ伸ビテ居リマスケ
  レドモ、其以外ニハ一寸モ伸ビテ居ナイ、
  然ルニ英米デアルトカ、或ハ露西亞、佛蘭
  西等ハ、皆數千里或ハ一万數千里ヲ隔ッ
  テ、東洋ノ方ニ突進シテ參ルニ拘ラズ、是
  等ニ對シテハ日本ハ一寸モ手ガ出ナイ、此
  點ガ私ハ國防ノ完璧ヲ期スルト仰シヤイマ
  スケレドモ、マダ〓〓大變ナ缺陷デハナイ
  カト思フノデアリマス、之ニ對シマシテ色
  色他ノ議員ノ方カラモ、或ハ空軍省ノ獨立デア
  ルトカ、或ハ民間航空ヲ中心ニシタ航空省
  ノ獨立等モ叫バレテ居リマシテ、洵ニ是ハ
  必要ナル、重要ナ御意見ト思フノデアリマス
  ガ、是等ニ對シテサウ云フ名ヲ取ラレルヨ
  リモ、ヤハリ私ハ民間航空ノ將來ノ一番ノ
  重點ハ、卽チ敵ノ飛行機ノ根據地ヲ爆破ス
  ル、民間航空機ノ航空路ヲ海外ニ伸スコト
  ガ、最大要件デアリハセヌカト思フノデア
  リマス、此點ニ付キマシテ遞信大臣ノ御意
  見ヲ承リ得レバ結構ト思フノデアリマス
  又私ハ本法ヲ實施スルニ當リマシテ、考
  ヘナケレバナラヌコトハモウ一ツアリマス、
  ソレハ此條文ヲ見マスト云フト、本法ハ陸
  海軍人ヲ含マズト言ッテアリマスカラ、地方
  デ防空演習ヲスル時分ニ、現役以外ノ在〓
  軍人デアリマスガ、是等ハドチラノ方ニ區
  分スルノデアリマスカ、一寸明瞭ニ〓ヘテ
  戴キタイノデアリマス、ソレト內務省ガ中
  心ニシテヤラレルナラバ、地方町村デモ、
  或ハ都市デモ、此防空演習ニハ消防組ガ大
  變ナ働キヲシハセヌカト思フノデアリマス、
  是等ニ對シテ消防組ガヤハリ重要ナル役割
  ヲ果シマスガ、サウスルト消防組ニ對シテ
  ハ將來非常ナル責任ガ生ズル譯デスカラ、
  是等ノ優遇等ニ付テハ隨分考ヘナケレバナ
  ラヌ、斯ウ云フ點ニ付テ内務大臣ハ如何ナ
  ル考ヲ持ッテ居ラッシヤルカ、是モ此機會ニ
  御尋シテ置キタイト思ヒマス
  尙ホ最後ニ御尋シテ置キタイコトハ、「オ
  リムピック」ノ問題デ只今色々ヤカマシク
  議論ヲサレテ居リマスルガ、私ハ此「オリ
  ムピック」ト飛行機トハ切ッテモ切レナイ緣
  ガアルト思ヒマス、然ルニ我ガ日本ノ「オ
  リムピック」ノ準備ハ出來マシテモ、日本
  ノ現在ノヤウナ民間飛行機ノ狀態、殊ニ東
  京ノ羽田ノ飛行場ノ如キハ、洵ニ貧弱極マ
  ルモノデアル、昨年獨逸デアッタ時ノ、伯林
  ノ「テンペルホーフ」ノ飛行場ト東京ノ羽田
  トヲ比較シタ場合ニ、「オリムピック」永
  タ外國人ガ、日本ノ民間航空ノ貧弱サヲ四
  年後ニ嘲ルダラウト思フト、洵ニ身ノ毛ガ
  ゾットスルノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付キ
  マシテ、民間航空ニ付テ當局ハ如何ナル覺
  悟ヲ持ッテ居ッシヤルカ、是等モ此機會ニ御
  尋シテ置キタイト思ヒマス
  第三ニハ、私ハ此民間航空ノ點ニ付テ、
  國外ノ方ニ對外航空路ヲ延シテヤル際ニ、
  一番大事ナコトハ日本ノ外交官ノ働キガ足
  ラヌト思フノデアリマス、此點ニ付テ日本
  ノ外交官ハ飛行機ニモ隨分乘ランケレバナ
  ラヌシ、又飛行機ニ對スル知識モナケレバ
  ナラヌノデアリマス、然ルニ一體日本ノ上
  級ニ居ラッシヤル方、或ハ金持階級ノ方、色
  色ナ方ハ飛行機ヲ虎ノヤウニ怖ガッテ居ラッ
  シヤル、サウシテ飛行機ニ御乘リニナルコ
  トガ少イノデアリマス、私ハ昨年ノ議會ノ
  際ニモ、豫算委員會デ前ノ内閣ノ閣僚ニ飛
  行機ニ御乘リニナリマシタカト云フ、單純
  ナ御尋ヲシマシタ所ガ、乘ラレタ方ハ殆ド
  一割カ二割シカ居ラッシヤラナイ、飛行機ニ
  一度モ乘ッタコトノナイ御方ガ、如何ニ航空
  ヲ口ニサレテモドウモ徹底シナイ、人間ニ
  取ッテ最モ大事ナコトハ、體驗カラノ知識
  デアリマス、卽チ國民一般ガ航空ニ對シテ
  體驗ガ乏シイニ拘ラズ、中心ノ閣僚ノ如キ
  人ガ之ニ體驗ヲ有セラレヌト云フコトハ、
  洵ニ進步シタ現代ニハ相應シカラヌコトト
  思フノデアリマス、私ハ此意味カラ閣僚初
  メ皆樣方ガ飛行機ニドン〓〓御乘リニナル
  ヤウニト云フコトヲ御奬メスルノデアリマ
  スガ、之ニ對シテ閣僚ガ自ラ範ヲ垂レテ戴
  クヤウニ希望スル譯デアリマス、甚ダ
  皮肉ナコトヲ申上ゲマスガ、此開ノ蔣介石
  ノ西安ノ事件ノ時ニハ、蔣介石ノ妻ガ慥カ
  英米ノ人ガ案内スル飛行機デアレヲ救出シ
  ニ行クナンカ、日本ノ女性ナンカ一寸眞似
  ノ出來ナイコトデス、餘リニ大キナコトバ
  カリ言ハナイデ、十分オ互ガ此點ニ付テハ
  注意ヲシナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、此點カラ考ヘマシテモ、マダ〓〓我國
  ノ國民一般ガ防空ニ關スル知識ガ乏シイノ
  デアリマスカラ、是等ニ對シテ防空演習ヲ
  ヤル場合ニ、有ユル「ラヂオ」デアルトカ、或
  ハ雜誌、ㄱパンフレット」、色々ナモノヲ以
  テ、此航空ニ關スル準備ヲ爲サレテ、サウ
  シテ防空ニ關スル知識ヲ國民ニ徹底セシム
  ルト云フコトモ、此防空演習ノ場合等ニハ
  最モ大事ナコトト思ヒマス、斯ウ云フ點ニ
  付キマシテ隨分御注意アランコトヲ希望ス
  ル次第デアリマス、尙ホ詳シイコトハ委員
  會デ申上ゲタイト思ヒマス
  大要以上ノヤウナ事ニ付キマシテ御尋シ
  タ譯デアリマス、私ハ最後ニ唯一ツ御願シ
  テ置キタイコトハ、此國防問題ニ對シテノ
  經濟化ノ問題デアリマス、私ハ國防上ニ使
  フ飛行機ハ無論大事ナ機關デアリマスケレ
  ドモ、民間飛行機ハ國防ノ經濟化ノ見地カ
  ラ、重要ナル使命ヲ持ッテ居リマスカラ、是
  等ニ對シテ成ベク陸海軍ノ方モ、民間航空
  ノ發達ニ對シテハ十分ノ御援助ヲ御依賴シ
  タイノデアリマスルガ、元々民間航空ハ陸
  軍ノ方カラ遞信省ノ方ニ養子ニヤラレタ、
  其養子ニ行ッタ子ガ一向乳ガ缺乏シテ成長
  ガ惡イノデアリマスカラ、是ニハ陸軍ハ殊
  ニ、主トシテ海軍モ所謂援助者トシテ、一
  層ノ御援助アランコトヲ希望シテ已マナイ
  次第デアリマス、大變下ラヌコトヲ御尋シ
  マシテ失禮シマシタ、之ヲ以テ私ノ質問ハ
  打切リマス(拍手)
  〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=22

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• 023・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)　第一ノ御尋ハ、
  從來防空演習ナドニ於テ、往々實行ノ伴ハ
  ナイ空騒ギノコトニナリ勝デアルガ、之二
  付テ十分注意スル積リカドウカト云フ御尋
  ノヤウニ拜承シタノデアリマス、洵ニ適切
  ナル御言葉デアリマシテ、本法施行ノ曉ニ
  ハ、十分ソレ等ノ點ニ注意シテ實效ヲ收メ
  ルヤウニ努メタイト思ヒマス
  尙ホ本法ハ明年度カラ施行スル筈デアリ
  マシテ、本年ハ本法施行ニ要スル十分ナル
  準備ト訓練ヲ致シタイ、斯ウ云フ積リデア
  リマス
  尙ホ第二ニ本法ノ提出ニ付キマシテ、內
  務大臣ト陸海軍大臣ト云フコトニナッテ居
  リマシテ、遞信大臣ガ無イノハドウカ、斯ウ
  云フ御尋デアリマシタガ、是ハ申スマデモ
  ナク、本法ハ所謂防空ニ對スル非常救護、
  災害防止、或ハ避難、サウ云フ風ナ事項ヲ
  規定シテ居ルノデアリマシテ、航空自體ヲ
  規定シテ居ル法規デナイノデアリマスカラ、
  隨ヒマシテ本案ノ提出者ナルモノハ三大臣
  ノ名前ニナッテ居ル譯デアリマス、併ナガラ
  本法制定ニ付キマシテハ、ソレ〓〓〓議デ
  決定致シタ次第デアリマス、尙ホ將來勅令
  其他施行命令ヲ作リマス際ニハ、十分ニ關
  係省ト連絡ヲ取ルコトニ相成ッテ居リマス、
  三大臣ト云フノハ、從來ノ形式ニ從ッテ居
  ル次第デアリマス
  ソレカラ本法施行ニ付キマシテ、費用ハ一
  體ドノ位掛ルカ、斯ウ云フ御尋デアリマシタ
  ガ、是ハ實ハマダ十分ナ費用額ノ算定ト云フ所
  マデ至ッテ居リマセヌガ、將來精密ナル調査ヲ
  行ヒタイト思ヒマス、唯從來行ッテ居リマシタ
  演習等ノ費用ハ、全國全體デ約百六十万圓位
  デハナイカ、斯ウ云フコトニ相成ッテ居リマス、
  ソレカラ防空ノ實效ヲ擧ゲルニ付テ各種ノ
  團體、殊ニ消防組アタリノ活動ヲ必要トス
  ルガ、之ニ對スル優遇方法ヲ考ヘテ居ル
  カ、斯ウ云フ御話デアリマシタ、御承知ノ
  通リ、消防組ニ付キマシテハ、今日警察ノ
  補助機關トシテ非常ニ必要ナ働キヲシテ居
  リマスガ、,ミ愈〓防空法ノ實施ニ付キマシテ
  ハ、一層其活動ヲ期待シナケレバナラヌト思
  ヒマスガ、是ハ單ニ消防組バカリデナク、
  靑年團其他各種ノ〓體ノ、ヤハリ協力ヲ俟
  タナケレバナラヌト思ヒマス、之ニ對スル
  優遇其他ニ付キマシテハ、將來十分ナル〓
  究ヲ致シタイト思ヒマス
  〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=23

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• 024・兒玉秀雄

  ○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君)　防空法ニ遞
  信大臣ノ署名ガナイコトニ付キマシテハ、
  只今內務大臣ヨリ御說明ガアリマシタ通リ
  デアリマス、防空事業ヲ遂行スル上ニ於キ
  マシテハ、其通信ノ點ニ於キマシテ、又燈火
  管制ノ點ニ於キマシテ、遞信省ト密接ナ關
  係ガアルコトハ勿論ノコトデアリマスケレ
  ドモ、主トシテ今囘ノ防空法ハ、保安救護ノ
  點ニ重キヲ置キマシタモノデアリマスカ
  ラ、主務大臣ハ之ヲ內務大臣トシ、而シテ
  是等ノ仕事ヲ實行シマス上ニ於テ、遞信省
  ト密接ナル連絡ヲ取ッテ、防空ノ實ヲ擧ゲル
  コトニシテ居ルノデアリマス
  民間航空ノコトニ付テ洵ニ該博ナル御意
  見ヲ承リマシタノデアリマスガ、防空ノコ
  トニ付キマシテ、防空ハ先ヅ航空機ニ依リ
  テト云フ御話デアリマシタガ、洵ニ其通リ
  デアリマスノデ、戰時ニ於キマシテ、國防
  上陸海軍ノ飛行機ト相聯關ヲ持チマシテ、
  民間航空ガ玆ニ有力ナル一ツノ國防援助ノ
  意味ヲ有チマスコトデアリマスカラ、民間航
  空ハ獨リ平時ニ於テ必要ノミナラズ、國防上
  ノ見地ニ於キマシテ、之ヲ奬勵シナケレバナ
  ラヌコトハ申スマデモナイコトデアリマス
  又國際航空ノコトニ於キマシテモ、御意
  見ノ通リデアリマシテ、今日不幸ニシテ我
  國ノ國際航空ハ、微々トシテ振ハナイノデ
  アリマスガ、幸ニ今囘東京ト北京トノ間ノ
  直通航路ガ開ケマシテ、之ニ依ッテ北支ト東
  京トノ間ガ、一日ノ間ニ航空シ得ルト云フ
  途ガ開ケタノデアリマス、今後國際航空ノ
  開拓ニ付キマシテハ、十分ニ努力シタイト
  考ヘテ居リマス、又「オリムピック」ヲ機會
  ニ、我ガ國際電信、電話ヲ初メト致シマシ
  テ、飛行機竝ニ飛行場ノ設備ニ付キマシ
  テ、十分ナル改善ヲ加ヘナケレバナラヌコ
  トモ、御說ノ通リデアルト考ヘテ居リマ
  ス、ソレカラ飛行機利用ノコトニ付キマシ
  テ、閣僚初メ多クノ機會ニ於キマシテ飛行
  機ヲ利用スルヤウニト云フコトデアリマシ
  タガ是ハ先ヅ私カラ始メルコトガ必要ト
  考ヘテ居リマス、航空ニ關スル知識ノ啓發
  ニ付キマシテモ、亦國防ノ經濟化ト民間航
  空ノコトニ付キマシテモ、全ク御同感ノ至
  リデアリマス
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=24

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• 025・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　只今永田君カラ此
  度ノ防空法ヲ設ケマスル事柄ハ、國民ニ二
  重ノ負擔ヲ負ハセルノデハナイカト云フ御
  意見デアリマシタ、此點ニ付キマシテハ屢、こ
  申上ゲマスル如ク、防空ノ最良ヲ方法ハ敵
  ノ根據地ヲ襲ウテ、之ヲ殲滅スルコトニ
  アルノデアリマス、併ナガラ是ハ中々言
  フベクシテ、實行ハ非常ニ困難ナ事柄デ
  アリマス、例ヘバ鳥ヲ襲ヒマスル爲ニハ
  夜寢テ居ル所ガ一番宜イノデアリマスガ、
  是モ中々十分ニ行クト云フコトハ出來ヌノ
  デアリマス、又斯ノ如キ場合ニ於キマシテ
  テハ、空中ニ於テ之ヲ迎ヘ撃ツト云フ事柄
  モアリマスケレドモ、是モ一機モ殘サズ之
  ヲ擊墜スルト云フコトハ困難デアリマス
  隨テ斯ノ如キ擊チ殘サレタルモノ、或ハ擊
  チ落サレズニ儼然トシテ殘ッテ居ル飛行機
  ヲ、直接國境ニ追擊致シマス場合ニ於キマ
  シテハ、ドウシテモ軍ノ防空ト民間ノ防空
  ト兩方相俟ッテ其效果ヲ擧ゲルヤウニ致
  シマセヌケレバ、防空ヲ十分ニ發揚スルコ
  トハ出來ヌト信ジテ居リマス、サウ云フ所
  以ニ於キマシテ、一方ニ於キマシテハ軍ノ
  防空ヲ致シマスト共ニ、國民ノ防空ヲ此度
  此法案ニ依ッテ實施スルコトガ、極メテ必要
  デアルト感ジテ居ルノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=25

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• 026・永田良吉

  ○永田良吉君　簡單デアリマスカラ此席カ
  ラ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=26

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• 027・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　御許シ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=27

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• 028・永田良吉

  ○永田良吉君　只今ノ陸軍大臣ノ御答辯ニ
  依リマシテ、多少私ノ申上ゲルコトガ、私
  ノ言葉ノ足ラザル爲ニ誤解ガアッタヤウナ
  氣ガ致シマスカラ、此際ニ一言申上ゲテ置
  キマス、私ハ豫テカラ陸海軍ノ空軍ノ方ガ、
  戰時平時ノ區別ナク、國防ノ爲ニ猛訓練致
  シテ居ラレルコトヲ目擊シテ、洵ニ感謝感
  激致シテ居ル一人デアリマス、隨テ私ガ國
  防上此防空法ガ二重ノ負擔ニナリハシナイ
  カト申シマシタコトハ、寧ロ陸海軍ノ飛行
  機ヲ益〓充備シテヤッタ方ガ得デアルト云フ
  意味カラ申シマシタノデアッテ、十分ニ陸海
  軍トモ空軍ノ充備ヲシテ貰ヒタイト云フ意
  味カラ、二重ノ負擔ヲ云々ト云フコトヲ言ッ
  タノデアリマス、是ハ此際辯明シテ置キ
  マリ、尙ホ私ハ此機會ニヤハリ私ノ信念ヲ
  申上ゲテ置キマスガ、私ノ信念トシテハ、
  空ヲ護ルニハヤハリ飛行機デナケレバナラ
  ヌ、ソレニハ先ヅ陸海軍ガ第一ニ之ニ向ッテ
  立チ、次ニ日本ノ民間航空ガ豫備隊トシテ
  突進シナケレバナラヌト云フ意味カラシテ、
  防空法モ大事デアリマス、故ニモットノ
  我ガ日本ノ空軍ハ、益〓充備ノ必要ガアル
  ト云フコトヲ申上ゲテ御尋致シタノデアリ
  マスガ、其詳シイコトハ委員會デ申上ゲル
  コトニシテ、私ノ質問ハ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=28

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• 029・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　升田憲元君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=29

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• 030・升田憲元

  ○升田憲元君　議事進行ノ狀態ニ鑑ミマシ
  テ、本員申出ノ質問ハ之ヲ撤囘シ、更メテ
  委員會ニ於テ質問スルコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=30

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• 031・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　野中徹也君
  〔野中徹也君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=31

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• 032・野中徹也

  ○野中徹也君　議事進行ノ狀態ニ依リマシ
  テ、私モ極メテ簡單ニ御質問申サウト考ヘ
  テ居リマス、實ハ此防空法ガ初メ提出サレ
  マシタ時ニ、非常ニ重要ナル法律案デアル
  ト私共ハ考ヘマシタ、ソレデアリマスルカ
  ラ巨細ニ此中ヲ調ベタノデアリマス、所ガ
  此內容ヲ調ベレバ調べル程、何ノ爲ニ此防
  空法ト云フモノヲ御提出ニナッタノカ、其意
  味ガ分ラナカッタノデアリマス、例ヘバ此中
  ニ於キマスル防空ヲ實施スルニ當リマシテ
  ハ、陸海軍以外ノ者ノ行フコトデアリマス、
  又刑罰法規ニ於キマシテモ、此法規違反ハ
  僅ニ三百圓以下ト云フヤウナ狀態デアリマ
  ス、ソレデアリマスルカラ私ハ此防空法ト
  云フモノハ、本當ノ意味合ノ防空法トシテ玆
  ニ提出ニナッタノカドウカ、非常ニ疑問デア
  リマシタガ、本日河原田內務大臣ノ說明ニ
  依リマスレバ、所謂防空思想ノ涵養デアリ、
  又防空ノ練習デアル、斯フ云フ意味合ヲ以
  テ提出シタノデアルト云フ話デアリマシタ
  カラ、ソレナラバ諒承出來ルノデアリマス、
  同時ニソコデ又問題ガ直チニ生ズルノデア
  リマスルガ、サウ云フ狀態デ、所謂練習ト
  シテノ意味合カラ、此法律ガ出來タモノデア
  ルトスルナラバ、其刑罰規定ノ十九條或ハ
  十八條ノ規定ハ、法律デ明記サレテ居リマ
  スルガ故ニ、戰時狀態ニモ同樣ニ於テ適用
  サレネバナラヌト思フノデアリマスルガ、
  之ニ對スル法律ノ適用ハドウ云フ風ナ工合
  ノモノデアリマセウカ、之ヲ第一ニ伺ッテ置
  キマス、第二點ハ、ヤハリ本案提出ノ理由ト
  致シマシテ、防空ノ責ニ任ズル者ヲ定メルト
  云フコトガアリマス、ソレデアリマスルカ
  ラ、ドウ云フ人ガ一體防空ノ責ニ任
  ズル者デアラウカト調べテ見マシタガ、
  中々分ラナイノデアリマス、此法文ノ中
  カラ見ルナラバ、或ハ地方長官ガ其責ニ任
  ズルカノヤウニ見エマス、或ハ主務大臣、
  是ハ恐ラク內務大臣デアリマセウガ、內務
  大臣ガ其責ニ任ズルカノ如ク見エマス、サ
  ウシテ主務大臣、所謂內務省ノ關係ノ人ガ
  其責ニ任ズルナラバ、一朝戰時狀態ガ來タ
  時ニ、果シテ本當ノ防空ガ出來ルヤ否ヤト
  云フコトガ、實ハ私ハ疑問デアリマシタ、
  ソレデアリマスカラ事實ニ於テ此法案ノ責
  任者ハ誰デアルカ、非常ニ疑ッテ居リマシ
  タ所ガ、是モ本日ノ說明ニ依リマシテ、戰
  時狀態ニ於キマシテハ、防空司令官ガ其責
  ニ任ズルト云フ御話デアリマシタカラ、ソ
  レナラバ諒解ハ出來マスガ、ソコデ又問題
  ガ起ッテ來タ、此防空演習或ハ防空事業實施
  ト云フモノハ、是ハ陸海軍ハ全然關係ガア
  リマセヌ、現役ノ軍人ハ關係ガアリマセヌ、
  サウ云フ人ダケデ防空ノ演習ヲ致シ、愈〓戰
  時狀態ニ臨ンデ、陸海軍軍人ガ之ニ參加シ
  ナケレバナラヌト云フ狀態ノ時ニ於テ、モ
  ウ既ニ組織ガ出來テ居ル所へ新シキ人々ガ
  入ッテ來テ、本當ノ防空實績ヲ擧ゲルコトガ
  出來マセウカドウデセウカ、出來ルナラバ
  ソレハ洵ニ結構ナコトデアリマスガ、果シ
  テ出來ルヤ否ヤ、此問題ニ付キマシテ御所
  見ヲ伺ッテ見タイト思ヒマス
  ソレカラ內務大臣ノ言ハレマスル通リ、
  此防空法ト云フモノガ、所謂防空思想ノ涵
  養デアリ、或ハ防空機械ノ整備デアル、斯
  ウ云フモノデアルトスルナラバ、私共ハ非
  常ニ其犠牲ノ大キイノニ驚カザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、併シ此問題ニ關シマシテ、
  松田君ガ質問ヲ致シマシタ時ニ、是ハ普通
  ノ場合ニ於テモ防空演習ハアルノデアル、
  ソレニ費用ト云フモノヲ出ス譯ニハ行カナ
  イガ、此防空ニ依ッテ半分ナリトモ出スコ
  トガ出來ルカラ、ソレデ先ヅ宜イデハナイ
  カ、而モ此防空ノ實施ヲ完成スル爲ニ一度
  ニヤル譯ヂヤナイ、急速ニヤル譯デハナ
  イ、漸ヲ追ウテヤル譯デアルカラ、ソレ程
  ニ費用ハ掛ルマイ、ソレダカラ先ヅ此程度
  デ宜イデハナイカト、斯ウ云フ御說明デア
  リマシタ、併シヨク〓〓御覽ニナレバ分リ
  マスガ、中々重大ナル費用ガ掛ルモノデア
  リマス、決シテ生ジッカナ金錢ヲ以テ之ヲ整
  備スルコトハ出來マセヌ、例ヘバ防毒「マ
  スク」ト云フヤウナモノニシテモサウデア
  リマス、防毒「マスク」ノ單價ハ今ハハッキリ
  ト存ジマセヌガ、少クモ十四五圓ハ掛ルダ
  ラウト思フ、其半分ヲ政府ガ出ス、サウスル
  ト八圓位ハ自分ガ持タナケレバナラヌ、本
  當ノ戰時狀態ニシテ、敵機ガ來襲シテ毒ヲ
  市中ニ抛擲ヲシタ、之ヲ防禦スルニ當リマ
  シテハ、各人各戶ニ持タナケレバナリマセ
  又、サウ云フ風ナ意味合ヲ以テ之ヲヤルト
  スルナラバ、全戶數、全人員ガ持ツコトヲ
  最終ノ目的トシ、サウシナケレバナラナイ
  ノデアリマスガ、サウシタ場合ニ於テ國家カ
  ラ僅ニ半額ノ補助シカナイ、其場合ニ於ケ
  ル一般ノ家庭ニ於ケル負擔ハ、偉大ナルモ
  ノデアラウト私共ハ考ヘル、ソレダカラ此
  半分ノ補助ト云フモノヲ、ヨリ以上ニ增加
  スルノ意思アリヤ否ヤ、今ソレハ單ナル防
  毒「マスク」ダケノ問題デアリマス、マダ此防
  空問題ニ關シマシテハ、色々ナモノヲ整備
  シナケレバナリマセヌ、ソコニ又必要ナル
  澤山ノ費用ガ要サレマス、斯ウ云フ問題ヲ
  一々拾ヒ集メタナラバ、可ナリ澤山ナモノ
  デアラウト思フノデアリマスガ、此費用ヲ
  一體ドウナサイマスカ、中々ニ犠牲ハ大キ
  過ギハセヌカトモ考ヘル、併シ私共ハ決シ
  テ防空ソレ自身ノ實施ニ對シテ反對スルモ
  ノデハアリマセヌ、戰時狀態ニ於キマシテ
  ハ、當然其狀態ガ用意サレナケレバナラヌ、
  ソレダカラ斯ウ云フ風ナ場合ニ於テハ、其
  用意ヲ完備シナケレバナラヌガ、完備スル
  ニ當ッテハ是デハ不十分デナイカ、之ヲ御伺
  申上ゲマス、卽チ補助ヲヨリ以上ニ增額ス
  ルノ意思アリヤ否ヤ
  第二ニ私共ハ此防空法ニ於テ、果シテ本
  當ノ防空ト云フモノガ出來ルカドウカ、假
  令內務大臣ノ豫定サレテ居ル通リ、總テノ
  機械ナリ總テノ組織ナリガ完成セラレタト
  シテモ、果シテ之ヲ以テ眞ノ防空ト云フモ
  ノハ爲シ得ルヤ否ヤ、ソコニ非常ナ疑問ヲ
  懷カザルヲ得ナイノデアリマス、何トナレ
  バ國家ノ文明ト云フモノハ漸次發達ヲシ
  テ參リマス、科學ト云フモノモ亦進步シ
  テ參リマス、今日護謨製ノ防毒「マス
  クレ之ヲ以テ成程通常ノ毒ハ防ギ得ルカモ
  知レナイ、併ナガラ其護謨ヲ腐蝕セシメ、
  人體ニ危害ヲ加ヘルヤウナ「ガス」ノ發明ヲ
  更ニ見ナイトモ限ラヌ、サウ云フ風ニナッタ
  場合ニ於テ、果シテ此法案ニ依ッテ實施セラ
  レントスル、此防空裝置或ハ防空整備ト云
  フモノガ、眞ノ防空ヲ爲スコトガ出來ルカ
  ドウカ、防空ニ於ケル災害ヲ免レルコトガ
  出來ルカドウカ、非常ニ疑問ダト思フ、ソ
  レデアリマスカラ、此點カラ見マシテ可ナ
  リノ犠牲ノ大キサヲ私共ハ感ズルノデアリ
  マイ、此防空法ハ實ハドウ云フヤウナ內容
  デアルカソレヲ伺ヒタイノデアリマス、
  ドチラカト言フナラバ、去年アタリ東京市
  內ニ行ハレマシタ防空演習ノ如キハ子供
  ノワルサデアリマス、アヽ云フモノデハ私
  共カラ言ハセルナラバ、本當ノ防空ト云フ
  モノハ完備シナイト思フ、併ナガラ其事柄
  ヲドウ云フ風ナコトデアルカト云フコト
  ヲ、具體的ニ御質問申上ゲテモ御答辯ヲ得
  ルコトハ出來ナイト思フ、出來ナイト思ヒ
  マスカラ其點ハ私共ハ伺ヒマセヌ、伺ヒマ
  セヌガ、兎ニ角此防空法ニ依ッテ、今練習
  シテ居ルヤウナ防空ノ狀態デハ、私共ハ眞
  ニ目的ヲ完成スルコトハ出來ナイト思フ、
  ソレデアリマスカラヨク〓〓注意シナケレ
  バナリマセヌ、同時ニ又防空設備ノヤウナ
  モノモ、今ノ日本ノ計畫ハ存ジマセヌガ、
  餘程大袈裟ニヤラナケレバ、非常ニ不備ヲ
  生ズルト云フコトガアリハセヌカト思フ、
  例ヘバ倫敦ニ於キマシテハ、最近ハ氣球網
  ヲ以テ取卷クト云フヤウナ、計畫ヲ立テラ
  レテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ル、中々此費
  用ト云フモノハ冗談ナモノデハアルマイト
  思フ、或ハ僞市ト申シマシテ、町ノ形ヲ外ニ
  拵ヘテ置ク、斯ウ云フヤウナコトナドニモ
  相當ナ費用ノ掛ルモノデアルシ、又或ル意
  味ニ於キマシテハ效果的ナモノデアリマス
  ガ、兎ニ角サウ云フ風ナコトマデモ、ヤラ
  ナケレバナラナクナルノデハナイカ、或ハ
  防空光線、總テノ點ニ於テヤラナケレバナ
  ラヌノデハアルガ、此間ノヤウナ練習狀態
  デアルトスルナラバ、此間ノヤウナ計畫範
  圍デアルトスルナラバ、不十分デアルト私
  共ハ考ヘルガ、內務大臣或ハ陸海軍大臣ハ
  ドウ御考ニナリマスカ、又飛行機ノ襲擊モ
  サウデアリマス、吾々ガ豫定スルヤウナ、
  簡單ナ飛行機ノ襲擊狀態デハ今日ハアリマ
  セヌ、今ハ例ヘバ六千米突、七千米突ト云
  フ上空ニ於テ、飛行機ノ發動機ヲ止メル、
  サウシテ空中滑走ニ依ッテ都市ヲ爆擊スル
  ト云フノガ、最近ニ於ケル世界ノ都市爆擊
  ノ狀態デアリマス、サウ云フヤウナ場合ニ
  於テ、今ノヤウナ聽音機ニ依ッテ中々發見
  スルコトモ出來ナケレバ、又之ニ對シテ用
  意ヲ爲スト云フコトモ、餘程ニ困難ナコト
  デハナイカト思フ、ソレデアリマスカラ、
  餘程徹底シタ所ノ防空計畫ヲ立テルニアラ
  ズンバ、今日ニ於ケル防空事業ト云フモノ
  ハ完成ハ出來ナイト思フ、ソレデアリマス
  カラ此内容ニ付キマシテハ、前ニ申シタ通
  リ私ハ御聽キ致シマセヌ、御聽キ致シマセ
  ヌガ、サウ云フヤウナ場合ニ處シテ、萬。
  ニモ過チナカランヤウニ準備シテ戴キタイ
  ト考ヘマス、又防空計畫ニ於テモ色々足リ
  ナイノガアル、其一々ヲ申上ゲルト餘リニ
  內容ガ多過ギルシ、又時間モ長クナル虞モ
  アリマスカラ申上ゲマセヌガ、兎ニ角防空
  ノ實施或ハ完成ト云フコトニ對シテハ、今
  マデノヤウナ考ヘ方デハ不十分デアルト云
  フ點ダケハ、スッカリ御諒承ヲ願ヒタイト思
  フ、先刻ドナタカ電力ノ國營ノ問題ヲ御聽
  ニナッタ、私共ハ此電力國營卽集中的ナ電力
  ノ統制ト云フモノガ、防空ニ對シテ適當デ
  アルカドウカ非常ニ疑ハザルヲ得ナイノデ
  アリマス、成程燈火管制ト云フヤウナモノ
  ヲ、完全ニ實施スルト云フニ當ッテハ、電力
  ノ統制ト云フコトモ必要デアリマセウ、併
  ナガラ都市ト云フモノハ、唯燈火ヲ點ケテ
  居ル爲ニ必要ナ電力デハアリマセヌ、總テ
  ノ生產業、總テノ經濟界ノ發展ノ爲ノ動力
  トシテ必要ガアルノデアリマス、サウ云フ
  ヤウナモノガ例ヘバ集中セラレタ時ニ、
  ツノ變電所ガ飛行機デヤラレル、或ハ一ツ
  ノ發電所ガヤラレタ時ニハ、其變電所、發
  電所ガ破壞サレルコトニ依ッテ、本當ニ其
  外ノ意味合ノ電力ノ使用ト云フコトガ出來
  ナクナルト云フコトヲ、非常ニ心配ヲ致シ
  やっ、ソレデアリマスカラ電力ノ統制ハ、
  此防空事業ニ關シマシテ、實際化スルカ否
  カト云フコトニ對シテハ甚ダ疑問ヲ持チ
  やく、寧ロソレナラバ一工場ニ於テ相當ノ
  使用電力ノアルモノニ對シテハ、自家發電
  ヲ許スベキガ適當デハナイカト考ヘルノデ
  アリマスガ、斯ウ云フ點ニ對シテノ意見
  ハ是ハ今日餘リ長クナリマスルカラ論ジ
  マセヌデ他目ニ讓リマス、兎ニ角何レニ致
  シマシテモ、今ノ此本案ニ現レタ所ノ防空
  ノ狀態、イヤ今マデノ東京市其他ニ於ケル
  防空演習ノ狀態、是等ハ不十分デアリマ
  ス私共ハ眞ノ防空ノ爲ニハ先程永田君
  ガ言ハレマシク通リ、積極的ニ日本ノ市街
  カラ離レテ、日本ノ市街ヲ護ル時ニハ、積
  極的ニ敵ノ方面ニ進出ヲ致シマシテ、敵ノ
  根據地ヲ破壞ヲ致シマスルコトニ依ッテ、本
  當ノ防衞ガ出來ルノデハナイカト思フ、卽
  チ斯ウ云フ風ナ消極的ナ防衛政策ヨリハ
  積極的攻擊ニ依ッテ、眞箇ノ積極的防衞ガ出
  來ルノデハナイカト考へルノデアリマス、
  併シ是等ノ事柄ハ、所謂軍ノ意向デアリマ
  セウシ、祕密ニ屬スルコトデアリマセウカ
  ラ、其內容ハ本日ハ伺ヒマセヌ、伺ヒマセ
  ヌガ、ヨク〓〓注意ヲシテ、若シモ吾々ノ
  考ヘテ居ルガ如ク行クナラバ、サウ云フ風
  ナ設備ト計畫トヲ持タレンコトヲ切望スル
  ノデアリマス
  更ニ今中シマシタコトデハゴザイマスル
  ガ、本當ニ防空ヲ完全ニ行ハウトスルナラ
  卽チ航空事業ノ發達ガ絕對要件デアラ
  ネバナラヌト思フノデアリマス、今日世界
  ニ於ケル飛行機ト云フモノハ、可ナリノ意
  味合ニ於キマシテ進步ヲ致シテ居リマス、
  例ヘバ戰鬪機、此戰鬪機ト云フモノハ、非
  常ニ速力ノ早イモノデアリマスルガ、又速
  力ノ早キコトヲ必要トスルモノデアリマス
  ルガ、其戰鬪機ニ於キマシテモ、伊太利ノ
  「カプロニ」ト云フノハ、四千七百五十米ノ
  高度ニ於テ四百十ノ速力ヲ出シテ居リマ
  ス、又「ファイアト」ノ如キハ三千五百
  米ニ於テ四百十二「キロ」ノ時速ヲ出シテ居
  リマス、英吉利ノー「クロスター·グラデア
  トール」ト云フノハ、四千七百三十米ノ高度
  ニ於テ四百十九、米國ノ「グルムマン·エフ」
  ハ時速三百八十六デアリ、又「ホーグト」是
  ハ四百三、〓セバスキー」是ハ複座式デアリ
  マスルガ、四百五十一、「ノース·アメリカ
  ン」四百三十五、斯ウ云フヤウナ可ナリノ
  速力ヲ持ッテ居リマス、又佛蘭西ハ割合ニ戰
  鬪機ハ早ウゴザイマスルガ、例ヘバ「ロ
  アール」ハ四百九十、「ニユーポルト」四百八
  十五、「デボイチン·デー」五百十三ハ四百
  八十、「レトーブ」ト云フノハ四百五、斯ウ
  云フヤウナ狀態デアリ、又獨逸ノ最近ノモ
  ノハ「ドルニエ」雙發爆擊機ト云フノハ千
  瓩ヲ積ミマシテ四百九十ノ速力ヲ出シテ居
  リマス、斯ウ云フヤウナ工合ニ外國ニ於ケ
  ル戰鬪機其他偵察機、爆擊機、皆アリマス
  ケレドモガ、サウ云フモノハ相當ノ威力ヲ
  持ッテ居リ、又相當ノ速力ヲ持ッテ居ルノデ
  アリマス、日本ニ於キマシテモ最近ニ於キ
  マスル海軍ノ狀態、或ハ陸軍ノ狀態モ可ナ
  リノ意味合ノ進步ヲ致シテ居ルシ、海軍ニ
  於キマシテハ、世界ノ域ニ到達シタノガ三
  ツアルト云フコトヲ、大臣自ラ御言ヒニナッ
  テ居ル、陸軍ハソレ以上デアラウト私共ハ
  考ヘル、考ヘマスルガ、兎ニ角世界ハ斯樣
  ナ工合ニ、飛行機ノ總テノ點ニ對シテ注意
  ヲシテ居ルノデアリマスルカラ、日本モ負
  ケテハナリマセヌ、日本モ總テノ點ニ於テ
  世界ニ優秀タリ得ルヤウナ工合ノ用意ト
  準備ヲシナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、此方策ト致シマシテハ、四ツバカリノ
  方策ガ執ラレルデアラウト思フ、此積極的
  ノ政策ト致シマシテ、四ツバカリノ方策ガ
  執ラレルデアラウ、其四ツバカリノ方策ヲ
  私ガ申上ゲマスカラ、其點ニ對シテ各省大
  臣ヨリソレ〓〓意見ヲ伺ヒタイト思フノデ
  アリマス
  第一ハ工場ノ整備、卽チ生產力ノ確保デ
  アリマス、各飛行機トモ各〓性能ガ違ッテ居
  リマス、又陸軍、海軍ニ依リマシテ、性能
  ノ異ッテ居ル所ノ飛行機ガ要セラレルノデ
  アリマスソレデアリマスカラ、同ジ工場
  カラハ同ジヤウナ飛行機シカ出來ナイ、大
  體ニ於テ其通リデアル、色々ナ戰鬪ノ狀態
  ニ於テ、或ハ計畫ノ實施ニ於テ、色々ナ飛
  行機ガ必要デアラウト思フ、ソレデアリマ
  スカラ、總テノ狀態ニ適應スルヤウナ工合
  ニ、有ユル意味合ノ飛行機ヲ用意シ、又ソ
  レヲ製作スルヤウナ生產ノ設備ガ用意サレ
  ナケレバナラヌト考へルノデアリマス、之
  ニ對シテハ如何デゴザイマセウカ、中ニハ
  日本ニ於キマスル所ノ大キナ會社デアリマ
  シテモ、可ナリノ意味合ノ舊イ飛行機ヲ御
  造リニナッテ居ル會社ガアリマス、モウ或
  ル人々カラ言ハセルナラバ、ソレガ最後デ
  ハナカラウカト云フヤウナ狀態ニ追込マレ
  テ居ル會社ガアリマスガ、是等ハ宜シク陸
  海軍ニ於テ之ヲ監督シ、時ニ依ッテハ修正
  シ、完成スルヤウナ工合ニナサルベキガ、
  適當デハナイカト考ヘルノデアリマスガ、
  是ハ如何ニ御考ニナリマスカ、又最近ニ於
  テ非常ニ國產奬勵ト云フ言葉ガアリマス、
  國產奬勵ハ勿論必要デアリマス、併シ國產
  ヲ奬勵スル場合ハ、卽チ國內ニ於ケル同等
  ナルモノガ生產サレルカ、少クトモ代用品
  ノアル場合ニ於テ言ハレルコトデアラウト
  思フ、若シ代用品ナク、適當ナモノガ生產
  セラレザル場合ニ於テ、國產奬勵ト云フコ
  トハ餘リニ偏狭ニシテ、時ニ依ッタナラバ國
  防ノ充實ト云フコトニスラモ、或ハ缺陷ヲ
  生ズルコトナキニシモアラズデハナイカト
  考ヘマス、マダ色々ナ之ニ對スル方法ガア
  リマスガ省略致シマス
  第二ノ問題ハ、民間飛行ノ發達デアリマ
  ス、此問題ニ關シマシテハ、永田君ガ先ニ
  言ハレマシタカラ、私ハ附加ヘルコトハ餘
  リアリマセヌ、唯此處デ注意ヲシナケレバ
  ナラナイノハ、卽チ民間飛行ノ會社ノ飛行
  機ヲ選擇スル場合ニ於テ、機體ヲ能ク注意
  シナケレバナラナイト云フコトデアリマス、
  今日ニ於キマシテ旅客機トシテ、或ハ安全
  率ヲ最上ノ條件ト致シテ採用スルコトガア
  ルカモ知レマセヌ、併ナガラ此旅客機ガ國
  防ノ第二軍デアルト云フヤウナ意味カラ出
  ル場合ニ於テ、此旅客機ト云フモノハ二
  十四時間以內ニ之ヲ改メテ軍用機ニナルヤ
  ウナ、時ニ依ッタナラバ或ハ安全性ト云フモ
  ノモ、幾分犧牲ニシナケレバナラヌコトナ
  キニシモアラズデハナイカト考ヘルノデア
  リマス
  〔「サウ云フコトハ注意シナイト危イゾ」
  ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=32

  ---

• 033・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=33

  ---

• 034・野中徹也

  ○野中徹也君(續)　今ノ危イノハ飛行機ガ
  危イノデハナイ、古クテ危イノダ、次ニハ
  水上飛行機ノ問題デアリマス、是モヤハリ
  機體ノ問題トシテ注意シナケレバナラヌト
  思フ、今日ノ日本ニハ餘リ水上機ト云フモ
  ノガアリマセヌ、多少霞浦方面ニ於キマシ
  テ若干ノモノガアルヤウニ見エルシ、其他
  ニ於テモ海軍ト致シマテハ、水上飛行機ハ
  整備サレテ居ルヤウデゴザイマス、併ナガ
  ラ陸軍ニ於テ水上飛行機ト云フモノガア
  リマセヌ、卽チ今日ノ狀態デ言フナラバ
  海軍ニ對スル豫備トシテ民間飛行ト云フモ
  ノガ十分ニ整備サレテ居リマセヌ、之ニ對
  シテハドウ云フ風ナ御考ヲ有ッテ居リマス
  カ、其他民間飛行ノ發達ニ公、ハハ行行場ノ
  設備デアルトカ、或ハ防空燈臺ノ問題デア
  ルトカ、飛行燈臺ノ問題デアルトカ、色々
  ゴザイマスルガ、是ハ十分御諒承ノコトデ
  アラウト思ヒマスルカラ述べマセヌ
  第三問題ハ、民間飛行家ノ養成デアリマ
  ス、之ニ付キマシテハ、永田君ガ幾分觸レ
  ラレタヤウデアリマスカラ、特ニ此問題ニハ
  觸レマセヌガ、此民間飛行家ヲ養成スルニ
  ハ、私ハ其根本的問題トシテ、飛行家ニ對
  スル特別保險-保險ト云フヤウナモノヲ
  作ルノガ、民間飛行士ヲ養成スル上ニ於
  テ、又希望シテ中へ入ルニ付テ必要ナ條
  件デハナイカト考へマス、成程陸軍、海
  軍ノ方面ニ於キマシテハ、飛行家ノ犠牲ニ
  ナッター飛行機ノ犧牲ニナリマシタ人ニ
  對シマシテハ、相當ノ金額ガ贈與セラレ
  ルヤニ承ッテ居リマス、併ナガラ民間飛行
  ノ飛行家ハ、空中事變ニ依ッテ死ニ陷リマ
  シテモ、ソレ相當ノ所謂條件ト云フモノ
  ガ備ッテ居リマセヌ、是ハ或ハ遞信省、或ハ
  內務省、其他ニ於キマシテ是等ハ能ク考へ
  テ、是等ニ對スル飛行保險、特別ノ問題デ
  アリマスルガ、飛行士ニ安イ所ノ料金ニ於
  テ、多額ノ保險金額ノ附ケ得ルヤウナ工合
  一、特別ナ保險制度ガ必要デハナイカト考
  ヘルノデアリマスガ、之ニ對シテハドウ云
  フ御考ヲ有ッテ居リマスカ、ソレカラ飛行機
  ノ〓究機關ノ問題デアリマス、飛行機ノ發
  展ニ對シマシテハ、〓究ガ重大ナモノデア
  ルト云フコトハ御諒承ノ通リデアリマス、
  其〓究ニハドウ云フ所ガ狙ハレナケレバナ
  ラナイカ、私共ハ今日ノ〓究ニハ、先ヅ第
  一ニ試作ヲ澤山ニヤル、飛行機ヲ澤山造ッテ
  見ル、ソコニ於テ利害關係ヲ色々〓究ス
  ル、今遞信省ニ於キマシテハ、十二三年度
  ニ於キマシテ隔年五十万圓ヅヽ百万圓ノ費
  用ヲ取ラレテ居リマス、併シ是ダケデハ私
  共ハ不十分ダト思フ、一臺ノ飛行機ガ製作
  サレルノニ、先ヅ其飛行機ノ內容ニ依ッテ
  遠ヒマスガ、高イモノニナレバ二十万圓、
  安イ所ノモノデモ恐ラク二万圓以下デハ出
  來マスマイ、ソレハ現在出來テ居ルヤ
  ツヲ買ッテ來ルノニ其値段デアル自
  分デ作ルノニハ、少クトモ其倍カ三倍
  位ノ創作費ガ必要デアルト思フ、サウ
  スルナラバ非常ニ馬力ノ大キナ飛行機
  ノ製作ガ若シ必要デアルトスルナラバ、
  ソレガ二十万圓掛ルトスルナラバ、其三倍
  六十万圓ハ、一臺ニ於テモ實驗的ニ於テ必
  要ナ費用デアリマス、百万圓位ナ費用ヲ以
  テ十分ナル試作ヲスルコトハ出來ナイト考
  ヘマスガ、遞信大臣ハ如何樣ニ御考ニナッテ
  居リマスカ(「問題ハ航空法ダゾ、豫算ノ問
  題デハナイ」ト呼フ者アリ)マダ其外細カイ
  問題ハアリマスガ、是ガ主ナル問題デア
  ル、私共ハ豫算デハナイガ、委員會ノ方ニ
  出席スルコトガ出來マセヌカラ、十分ニ此
  場合ニ於テ吾々ノ意見ヲ述ベテ置カナケレ
  バナラナイ
  〔「シッカリヤレ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=34

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• 035・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　私語ヲ禁ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=35

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• 036・野中徹也

  ○野中徹也君(續)　續イテ〓究ノ方法ヲ能
  ク考ヘナケレバナラヌト思フ、現在ノ日本
  ニ於キマシテハ、或ハ帝國大學ニ於キマシ
  テモ、其他ノ大學ニ於キマシテモ、大體飛
  行機〓究ノ中心ハ英國、米國デアリマス
  英吉利、亞米利加デアリマス、勿論中學時
  代ニ於テ英語ガ讀マレテ居ル、文字ガ自分
  ノ目ニ最モ能ク慣レテ居ル、斯ウ云フ關係
  カラ英語ヲ能ク讀ミ得ル方モアル又英語
  ノ書物ハ非常ニ能ク飛行機ノ內容ガ說明サ
  レテアル、佛蘭西等ノ飛行機ノ說明ト云フ
  モノハ「アウトライン」-主ダッタ所シカ
  書イテナイケレドモ、英米ノ書物ニハ事細
  カニソレガ書イテアル、ソレデアリマスカ
  ラ日本ノ〓究室ニ於テ、或ハ日本ノ學壇ニ
  於テハ兎ニ角飛行機ノ〓究ノ方向ヲ、英
  米追隨主義デ以テヤッテ居ルヤウナ狀態ニ
  ナッテ居ル、是ハ餘程注意シナケレバナラヌ
  ト思フ、現在ニ於ケル飛行機ガ何處ガ發達
  シテ居ルト云フコトハ、私ハ此處デハ言ヒ
  マセヌ、言ハナイガ、英米ヨリモ優レテ居
  ル國ガアルノデハナイカト思フ、ソレデア
  ルカラ斯ウ云フ風ナ英米追隨主義ヲ止メ
  テ、或ハ獨逸デモ宜シイ、或ハ佛蘭西デモ
  宜シイ、或ハ伊太利デモ宜シイ、或ハ「ソ
  ビエト」露西亞デモ宜シイ、優レテ居ル所
  ノ飛行機ヲ、或ハ飛行學問ヲ〓究スルコト
  ガ、今日ニ於テ重要ナル所ノ動向デハナイ
  カト思フノデアリマスルガ、文部大臣ガ居
  リマセヌカラ、內務大臣ハ如何ニ之ヲ御考
  ヘニナッテ居リマスカ(「其位デ止メテシマ
  ヘ」ト呼フ者アリ)マダアル〓究ノ目標デ
  アリマス、今ノハ動向デアリマスガ、今度
  ハ〓究ノ目標デアリマス、日本ノ現在ノ目
  標ハ、現在ヲ目標ニシテハイケマセヌ、目
  標ハ遠キ將來ヲ目標ニシナケレバナリマセ
  又、今ノ飛行機ハ爆發「エンヂン」デアリ、
  或ハ空冷カ水冷カ知ラヌガ、サウ云フ風ナ
  機關ニ依ッテ運轉サレテ居ルノデアリマス、
  併ナガラ是ハ現在ノ飛行機ノ狀態デアル、
  將來ニ於テハ斯ウ云フ風ナ狀態デアルカド
  ウカ私ハ非常ニ疑問ダト思フ、ソレデ昔蒸
  氣力ヲ利用スル場合ニ於テ、今日ノ自動車
  ノヤウナ爆發「エンヂン」ノ極ク輕便ナ自動
  車ガ走ルトハ誰モ豫想シナカッタ、同ジヤウ
  ナ工合ニ、今日ニ於キマシテハ「ヂーゼル」
  トカ、或ハ「ガソリン」トカ、サウ云フモノ
  ガ燃料トナッテ、之ヲ目標トシテ、之ヲ中心
  ト致シマシテ飛行機ノ〓究ガ進メラレテ居
  リマスルガ、私共ハ果シテ是ガ將來ニ於ケ
  ル飛行機ノ目的デアリ、動向デアルカドウ
  カ非常ナ疑ヲ持ッテ見テ居ルノデアリマ
  ス、ソレデアルカラ或ハ液體酸素ノヤウナ
  工合ニ、或ハ液體水素ノヤウナ工合ニ、斯
  ウ云フ風ナモノモ、或ハ動力ノ問題ト致シ
  マシテ相當考ヘラルベキ問題デハナイカト
  考へ、又或ハ機關ノ問題ト致シマシテモ、
  〓ロケットㄴデアルトカ云フヤウナモノモ、
  是モ中々將來ニ於テハ考ヘラルベキ問題デ
  アルト思フ、ソレデアリマスルカラ、斯ウ
  云フ風ナ點ガ相綜合致シ、相〓究ヲ致シマ
  シテ、而シテ後ニ空軍ノ眞箇ノ發展ガ出來
  ルシ、是ニ於テ防空ノ本當ノ充實ガ期待シ
  得ラレルモノデアルト思フノデアリマス、
  ソレデアリマスカラ、宜シク此點ニ對シテ
  ハ深甚ナル御注意ヲ持チ、又愼重ナル御考
  査ヲ願ヒタイト思フ
  殊ニ今日私共ガ甚ダ遺憾ニ思ヒマスルノ
  ハ所謂資本家ノ今日ノ狀態デアリマス、
  今特許局ノ中ニ於キマシテモ、相當ナル斯
  ウ云フモノニ關スル所ノ特許ガ出テ居リマ
  スソレヲ自分デハ實現スルコトガ出來ナ
  イ、之ヲ製作スルコトガ出來ナイ、ソレデ
  若シ製作ヲシ或ハ販賣スルト云フコトヲ考
  ヘル時ニハ、ソコニ所謂資本家ガ來テ、此權
  利ハ俺ニ賣レ、其代リオ前ニハ是ダケト言ッ
  テ、淚金ノ程度ヲ以テ其權利ヲ剝奪サレル
  ノガ今日ノ狀態デアリマス、ソレデアリマ
  スカラ優秀ナル發明デアルト云フコトガ分ッ
  タナラバ、或ハ〓究ノ結果分ッタナラバ、陸
  軍ナリ或ハ內務、遞信ニ致シマシテモ、相
  當此點ニ對シテ意ヲ注ガナケレバナラヌノ
  デハナイカト思ヒマス、斯ウ云フ風ナコト
  ニ依ッテ、防空ノ完成ト云フモノガ期待出來
  ルノダト思ヒマス、ソレデアリマスカラ私
  ハ極メテ簡單ニ今マデノコトヲ御說明申上
  ゲマシタカラ、各所管大臣カラソレ/ノ
  御答辯ヲ得タイト考へマス(拍手)
  〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=36

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• 037・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)　第一ニ本法案
  ハ唯訓練ト云フヤウナコトデアッテ、大シタ
  内容ガナイデハナイカト云フ御言葉ノヤウ
  デアリマシタ、是ハ私ガ先程來申上ゲマス
  ヤウニ、所謂最小限度ノ設備ヲ命ジ、且ツ
  一般ノ人ニ對スル訓練ヲ期待スルト、斯ウ
  云フコトデアリマシテ、其點ニ於テ重要ナ
  ル意味ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ノミナラ
  ズ本法案ノ中ニハ、或ハ第二條ト云ヒ、第
  三條ト云ヒ、ソレ〓〓重大ナル個人ノ權利
  ニ關スル制限規定ヲ設ケテ居ルノデアリマ
  シテ、是ハ私ガ申ス迄モナク、法律ヲ以テ
  規定セナケレバナラヌ事項デアリマス、尙
  ホ本法ニ依リマシテ防空ノ施設ノ責ニ當ル
  者ハ、甚ダ不明瞭デハナイカト云フ御言葉
  デアリマシタガ、是ハ度々申述ベマシタヤ
  ウニ、府縣或ハ市町村、若クハ市町村內ニ
  於テ、例ヘバ大キナ設備ヲ有ッテ居リマス工
  場或ハ鑛山ナドノ經營者、斯ウ云フ者ガ此
  防空施設ヲ爲スベキ義務ヲ命ゼラレテ居ル
  ノデアリマス、是亦ヤハリ從來ノヤウニ便
  宜ノ處置デ爲スト云フ譯ニ行カヌノデアリ
  マス、法律ノ命令ニ依ッテサウ云フ施設ヲス
  ベキ義務ヲ負擔スル、斯ウ云フコトニナル
  ノデアリマシテ、事極メテ重要ナル事項ヲ
  規定シテ居ル法律ト考へルノデアリマス、
  此法律ハ固ヨリ戰時事變等ニモ適用セラレ
  ルノデアリマスガ、併ナガラ事極メテ重大
  デ、更ニ此法律デハ足リナイト云フ時ニハ、
  或ハ別ノ法律ナリ、緊急勅令等ニ依ッテ、更
  ニモット嚴密ナモノヲ作ルヤウナ時期ニ到
  達スル場合モアラウ、斯ウ云フ風ニ思フノ
  デアリマス
  ソレカラ費用ノ點デアリマスガ、是ハ初
  カラ十分ナル設備ヲ-例ヘバ大キナ市
  ニ、其市民全體ニ防毒「マスク」ヲ全部供給
  スルト云フヤウナコトニナリマスレバ是
  ハ何百万、何千万ト云フコトニナリマスガ、
  ソレハ初メカラサウ云フコトヲ豫想シテ居
  ラヌノデアリマス、先ヅ實際ノ防空ニ當ル
  ト云フヤウナ人トカ、或ハ又大キナ工場、
  鑛山等ニ於キマシテハ、其工場等ニ於キマ
  シテ自ラサウ云フ施設ヲスルノデアリマス
  カラ、初メカラ急ニ府縣トカ、或ハ市町村
  ニ急激ナル費用ノ負擔ヲ增スト云フコトハ
  想像シナイノデアリマス、且又私ガ申スマ
  デモナク、國ノ補助ト云ヒナガラ、是亦國
  民全體ノ負擔ニ於テ支出スル次第デアリマ
  スカラ何處マデモ必要ダカラト云ッテ、國
  ノ補助ヲ增スト云フ譯ニハ行カヌ、斯ウ云
  フ風ニ思フノデアリマス、且又地方ニ於キ
  マシテ、ソレ〓〓防空施設ト云フコトハ、
  國家ノ必要バカリデナク、其地方ニ住ンデ
  居ル住民ノ利益ニ重大ナル關係ヲ有ツモノ
  デアリマスカラ、其地方ノ團體ニ於テ相當
  ノ負擔ヲスルト云フコトハ、是亦當然ノコ
  トト考ヘルノデアリマス
  更ニ眞ノ防空ハ斯ウ云フ風ナ規定ダケデ
  ハ足リヌデハナイカ、斯ウ云フ御言葉デア
  リマシタガ、是ハ御尤デアリマシテ、單エ一
  防空ノ問題ハ此法案ダケデ-法律ダケデ
  萬事了レリト云フ譯デハナイノデアリマシ
  テ、或ハ是ト相關聯シテ都市計畫、或ハ建築、或
  ハ水道、道路ト云フヤウナ點ニ付キマシテモ
  〔發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=37

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• 038・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=38

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• 039・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)(續)　是亦考究
  ヲ要サナケレバナラヌコトハ固ヨリデアリ
  マスガ、是ハ自ラ別個ノ問題デアリマス
  〔田淵豐吉君「防空バカリ、ノ建築ヲドウ
  スルカ、半面ヲ見ロ、其點ヲ能ク考ヘ
  ナケレバ駄目ヂヤナイカ」ト呼フ〕

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• 040・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　田淵君、靜肅ニ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=40

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• 041・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)(續)　且又訓練
  ニ付テモ、從來ノヤウナ詰ラナイ、形式
  的ナ訓練デハイカヌ、斯ウ云フ御話ガアリ
  マシタガ、是亦御尤デアリマシテ、從來ノ
  ヤウナ訓練ヲ實效アラシムルガ爲ニ、此法
  規ヲ制定シタヤウナ次第デアリマス、私ガ
  申ス迄モナク訓練ト云フコトハ、非常ニ必
  要デアリマシテ、此訓練ヲ充實スルト云フ
  コトニ依ッテ、如何ニ災害ヲ最小限度ニ止メ
  得ルカト云フコトハ
  〔田淵豐吉君何事カ發言ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=41

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• 042・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　田淵君、靜肅ニ

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• 043・河原田稼吉

  ○國務大臣(河原田稼吉君)(續)　從來ノ天
  災等ニ依ッテ分ルコトト思ヒマス、大體私
  ニ關スル限リハ、此程度デ足リテ居ルト思
  ヒマスガ、若シ足リヌヤウナ場合ニハ又御
  答致シマス
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

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• 044・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　只今野中君カラ御
  尋ニナリマシタ最後ノ御意見ニ付キマシテ、
  私ノ考ヘテ居ル所ヲ申上ゲタイト存ジマス、
  野中君ハ生產力ノ問題、又民間飛行家ノ養
  成、航空ノ〓究機關ヲ作ルコト、竝ニ〓究
  ノ動向及ビ方針ヲ十分ニ確立セヨト云フ御
  話デゴザイマシタ、此點ニ付キマシテハ曩
  ニ蔭山君ニ私ガ申上ゲタヤウニ、今日航空
  ノ發達進步ヲ圖リ、且ツ之ヲ統一致シマス
  ル爲ニ、强大ナル機關ヲ作ルト云フコトガ
  極メテ必要デアルト云フコトヲ申シタノデ
  アリマスルガ、此機關ヲ作ルコトニ依リマ
  シテ、航空技術ノ進步發達ヲ圖リ、之ニ依ッ
  テ一般ノ航空技術ヲ指導監督ヲ致シマシテ、
  又航空工場ノ指導監督ヲ十分ニ出來ルヤウ
  ニ致シマシテ、尙ホ航空ニ從事致シマスル
  所ノ人、卽チ操縱者、機關士、サウ云フヤ
  ウナ者ヲ十分ニ〓育ノ出來ルヤウナ設備ヲ
  整ヘマシテ、而シテ航空事業ヲ十分ニ發達
  ヲサセルト云フコトヲ、十分ニ實行ノ出來
  ル機關ヲ作リマシタナラバ野中君ノ述べ
  ラレタ所ノ趣旨ニ副フモノガ出來ルデアラ
  ウト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、隨テ此
  機關ノ設置ニ付キマシテハ、關係ノ官廳ト
  能ク協議ヲ致シマシテ、其實現ニ努力ヲ致
  シタイト考ヘテ居リマス
  〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕

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• 045・兒玉秀雄

  ○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君)　防空ノ實ヲ
  擧ゲマスルノニ、航空事業ノ發達ヲ促スノ
  必要ナル事柄ハ申上ゲル迄モナイコトデア
  リマス、其方法トシテ只今述べラレマシタ
  コトニ付テハ、旣ニ陸軍大臣ヨリ詳シク說
  明ガアリマシタカラ、私ハ之ヲ省略致シマ
  ス

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• 046・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　野中君、宜シイデ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=46

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• 047・野中徹也

  ○野中徹也君　簡單デアリマスカラ議席カ
  ラ御許ヲ願ヒマス

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• 048・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=48

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• 049・野中徹也

  ○野中徹也君　今內務大臣ノ御答辯ハ承リ
  マシタガ、餘リニ月竝デアリマス、私ハ初
  カラサウ云フ風ナコトヲ豫想シテ御質問申
  上ゲテ居ルノデアリマス、ソレデアリマス
  ルカラ、私ノ速記錄ヲ能ク御覽ニナリマシ
  テソレカラ後デ御返事ガアッテモ宜シイ
  カラ、十分ニ後カラ御返事ヲ願ヒマス、私
  ハ其返事ヲ豫定シテアリマスカラ、能ク速
  記錄ヲ御覽ニナッテカラ、御答辯ヲ願ヘ
  バ其方ガ却テ宜シウゴザイマス、杉山陸
  軍大臣ノ御答辯ハ洵ニ當ヲ得テ居リマ
  ス、唯一應御注意、或ハ御參考ニナリハセ
  ヌカト思フノハ、强大ナ機關ヲ作ルコトハ
  非常ニ結構デアリマス、併ナガラ各飛行機
  ニ依ッテ、又各飛行機ヲ使フ目的ニ依ッテ、
  色々違ッテ來ルト思ヒマス、ソレカラ又
  〓究ノ方向モ、或ハ綜合〓究ガ宜イノ
  カ、單獨〓究ガ宜イノカ、各バノ飛行
  機ニ依ッテモ違ッテ來ルダラウト思ヒマ
  ス、ソレデスカラ强大ナ機關ヲ作ッテ、
  サウシテソレニ依ッテ將來ノ航空事業ヲ
  指導監督スルト云フコトハ結構デアリマス
  ルガ、其〓究或ハソレヲ實施スルニ當リマ
  シテハ、其點ヲ能ク御考ニナリマシテ、綜
  合〓究或ハ單獨〓究モ必要デアリマスルカ
  ラ、必シモ中心ニ集メルト云フコトノミデ
  ナクシテ、各省ト能ク聯合致シマシテ、融
  和ヲ圖リ、其間ニ此目標ニ驀進セラレンコ
  トヲ希望致シマス、私ノ質問ハ是デ終リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=49

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• 050・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　是ニテ質疑ハ終局
  致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
  ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス

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• 051・中山福藏

  ○中山福藏君　本案ハ議長指名十八名ノ委
  員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=51

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• 052・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　中山君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=52

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• 053・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　御異議ナシト認メ
  やっ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
  〔淺沼稻次郞君「議長、議事進行ニ付テ
  發言ヲ求メマス」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=53

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• 054・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　日程第二、第三ハ
  關聯セル議案デアリマスカラ、一括議題ニ
  供スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」其他發言スル者多シ〕

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• 055・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　(議場騷然聽
  取スル能ハス)
  〔淺沼稻次郞君何事カ發言セルモ發言
  者多ク聽取スル能ハス〕

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• 056・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　發言ヲ中止致シマス
  〔「退場々々」ト呼ヒ其他發言スル者多
  ク議場騷然〕

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• 057・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　淺沼君ニ退場ヲ命
  ジマス-淺沼君ニ退場ヲ命ジマス
  (「議長々々」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕

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• 058・富田幸次郎

  ○議長(富田幸次郞君)　日程第二、帝國燃
  料興業株式會社法案、日程第三、人造石油
  製造事業法案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會
  ヲ開キマス--商工大臣伍堂卓雄君
  第二帝國燃料興業株式會社法案(政
  府提出)第一讀會
  第三人造石油製造事業法案(政府提
  山第一讀會
  帝國燃料興業株式會社法案
  帝國燃料興業株式會社法
  第一章總則
  第一條帝國燃料興業株式會社ハ人造石
  油製造事業ノ振興ヲ圖ル爲必要ナル事
  業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社ト
  ス
  第二條帝國燃料興業株式會社ノ資本ハ
  一億圓トシ內五千萬圓ハ政府ノ出資ト
  ス
  帝國燃料興業株式會社ハ政府ノ認可ヲ
  受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
  第三條帝國燃料興業株式會社ハ株金全
  額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコ
  トヲ得
  第四條帝國燃料興業株式會社ノ株金ノ
  第一囘拂込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下
  ルコトヲ得
  第五條帝國燃料興業株式會社ノ株式ハ
  記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民
  又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業
  務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本
  ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國
  人又ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ
  之ヲ所有スルコトヲ得
  第六條帝國燃料興業株式會社ノ存立期
  間ハ設立登記ノ日ヨリ五十年トス但シ
  政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
  第七條帝國燃料興業株式會社ニ非ザル
  モノハ帝國燃料興業株式會社又ハ之ニ類
  似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
  第二章役員
  第八條帝國燃料興業株式會社ニ總裁副
  總裁各一人、理事三人以上及監事二人
  以上ヲ置ク
  第九條總裁ハ帝國燃料興業株式會社ヲ
  代表シ其ノ業務ヲ總理ス。
  副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ業務ヲ
  代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
  副總裁及理事ハ總裁ヲ補助シ帝國燃料
  興業株式會社ノ業務ヲ分掌ス
  監事ハ帝國燃料興業株式會社ノ業務ヲ
  監査ス
  第十條總裁及副總裁ハ政府之ヲ命ジ其
  ノ任期ヲ五年トス
  理事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ二倍
  ノ候補者ヲ選擧シ政府其ノ中ヨリ之ヲ
  命ジ其ノ任期ハ四年トス
  監事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ
  選任シ其ノ任期ヲ三年トス
  第十一條總裁、副總裁及理事ハ他ノ職
  務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ
  政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ
  在ラズ
  第三章營業
  第十二條帝國燃料興業株式會社ハ人造
  石油製造事業ニ對スル投資ヲ爲スモノ
  トス
  帝國燃料興業株式會社ハ政府ノ認可ヲ
  受ケ前項ノ事業ノ外人造石油ノ製造又
  ハ販賣其ノ他本會社ノ目的達成上必要
  ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
  第四章燃料興業債劵
  第十三條帝國燃料興業株式會社ハ拂込
  ミタル株金額ノ三倍ヲ限リ燃料興業債
  劵ヲ發行スルコトヲ得
  燃料興業債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
  商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
  トヲ要セズ
  第十四條燃料興業債劵ヲ發行セントス
  ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
  第十五條政府ハ燃料興業債劵ノ元本ノ
  償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
  第十六條燃料興業債劵ハ無記名式トス
  但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記
  名式ト爲スコトヲ得
  第十七條燃料興業債劵ノ所有者ハ帝國
  燃料興業株式會社ノ財產ニ付他ノ債權
  者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル
  權利ヲ有ス
  第十八條帝國燃料興業株式會社ハ社債
  借換ノ爲一時第十三條ノ制限ニ依ラズ
  燃料興業債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ
  場合ニ於テハ發行後一月以內ニ其ノ社
  債總額ニ相當スル舊燃料興業債劵ヲ償
  還スベシ
  第五章準備金
  第十九條帝國燃料興業株式會社ハ每營
  業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補
  フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ
  且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金
  額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
  第六章監督及助成
  第二十條政府ハ帝國燃料興業株式會社
  ノ業務ヲ監督ス
  第二十一條帝國燃料興業株式會社借入
  金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ
  受クベシ
  第二十二條定款ノ變更、利益金ノ處分、
  合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受ク
  ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
  第二十三條帝國燃料興業株式會社ハ每
  營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ
  受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
  第二十四條政府ハ帝國燃料興業株式會
  社ノ業務ニ關シ監督上又ハ人造石油製
  造事業ノ振興上其ノ他公益上必要ナル
  命令ヲ爲スコトヲ得
  第二十五條政府ハ帝國燃料興業株式會
  社ノ業務ニ關シ軍事上必要ナル命令ヲ
  爲スコトヲ得
  第二十六條政府ハ帝國燃料興業株式會
  社監理官ヲ置キ帝國燃料興業株式會社
  ノ業務ヲ監視セシム
  第二十七條帝國燃料興業株式會社監理
  官ハ何時ニテモ帝國燃料興業株式會社
  ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査
  スルコトヲ得
  帝國燃料興業株式會社監理官必要ト認
  ムルトキハ何時ニテモ帝國燃料興業株
  式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算
  及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
  帝國燃料興業株式會社監理官ハ株主總
  會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳
  述スルコトヲ得
  第二十八條政府帝國燃料興業株式會社
  ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
  基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
  公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
  取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
  第二十九條帝國燃料興業株式會社ハ每
  營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
  額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
  込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割
  合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對
  シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
  第三十條帝國燃料興業株式會社ノ每營
  業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
  ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
  ミタル株金額ニ對シ第三營業年度迄ニ
  在リテハ年百分ノ四、第四營業年度以
  降ニ在リテハ年百分ノ六ノ割合ニ達セ
  ザルトキハ政府ハ第十營業年度迄之ニ
  達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其
  ノ額ハ第四營業年度以降每營業年度ニ
  於テハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
  拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ
  割合ニ相當スル額及當該營業年度ニ於
  テ支拂ヒタル燃料興業債劵ノ利息額ノ
  合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
  每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
  金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
  拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ
  割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先
  ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還
  ニ充ツベシ
  第十營業年度迄每營業年度ニ於ゲル配
  當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ
  所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對
  シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ
  其ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立
  ツベシ
  第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙
  殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミ
  タル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ
  超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看
  做ス
  前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年
  度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金
  ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益
  金ト看做ス
  第三十一條帝國燃料興業株式會社ノ每
  營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
  額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
  込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割
  合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者
  ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ
  割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルト
  キハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當
  ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ
  均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ
  所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政
  府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額
  ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當
  スベシ
  第三十二條帝國燃料興業株式會社ニハ
  開業ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間所得稅
  及營業收益稅ヲ免除ス
  第三十三條北海道、府縣及市町村其ノ
  他之ニ準ズベキモノハ前條ノ期間帝國
  燃料興業株式會社ノ事業ニ對シ地方稅
  ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ
  基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ
  限ニ在ラズ
  第七章罰則
  第三十四條帝國燃料興業株式會社左ノ
  各號ノ一ニ該當スルトキハ總裁又ハ總
  裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁ヲ
  百圓以上二千圓以下ノ過料ニ處ス副總
  裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副
  總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同
  一本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ
  於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
  二第十二條ノ規定ニ依ラズシテ業務
  ヲ營ミタルトキ
  三第十三條ノ規定ニ違反シ燃料興業
  債劵ヲ發行シタルトキ
  四第十八條ノ規定ニ違反シ燃料興業
  債劵ノ償還ヲ爲サザルトキ
  五第二十四條又ハ第二十五條ノ規定
  ニ基キテ爲シタル命令ニ違反シタル
  トキ
  第三十五條帝國燃料興業株式會社ノ總
  〓副總裁及理事第十一條ノ規定ニ違
  反シタルトキハ二十圓以上二百圓以下
  ノ過料ニ處ス
  第三十六條第七條ノ規定ニ違反シタル
  者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
  第三十七條非訟事件手續法第二百六條
  乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
  ニ之ヲ準用ス
  附則
  第三十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第三十九條政府ハ設立委員ヲ命ジ帝國
  燃料興業株式會社ノ設立ニ關スル一切
  ノ事務ヲ處理セシム
  第四十條設立委員ハ定款ヲ作成シ政府
  ノ認可ヲ受クベシ
  第四十一條前條ノ認可アリタルトキハ
  設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
  ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
  株主ヲ募集スベシ
  第四十二條株式申込證ニハ定款認可ノ
  年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
  二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
  ヲ記載スベシ
  第四十三條設立委員株主ノ募集ヲ終リ
  タルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ
  其ノ檢査ヲ受クベシ
  第四十四條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
  ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
  込ヲ爲サシムベシ
  前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
  遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
  第四十五條創立總會ニ於テハ第十條ノ
  規定ニ準ジ理事候補者ノ選擧及監事ノ
  選任ヲ行フベシ
  第四十六條創立總會終結シタルトキハ
  設立委員ハ其ノ事務ヲ帝國燃料興業株
  式會社總裁ニ引渡スベシ
  第四十七條登錄稅法第六條第一項第十
  一號中「又ハ東北興業債劵」ヲ「、東北興
  業債劵又ハ燃料興業債劵」三六人
  人造石油製造事業法案
  人造石油製造事業法
  第一條本法ハ液體燃料ノ供給ヲ確保ス
  ル爲人造石油製造事業ノ確立ヲ圖ルコ
  トヲ目的トス
  第二條人造石油製造事業ヲ營マントス
  ル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
  前項ノ人造石油製造事業ノ範圍及許可
  ニ關シ必要ナル事項ハ本法ニ定ムルモ
  ノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三條前條ノ許可ヲ受クルコトヲ得べ
  キ者ハ帝國法令ニ依リ設立シタル株式
  會社ニシテ其ノ株主ノ半數以上、取締
  役ノ半數以上、資本ノ半額以上及議決
  權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法令ニ
  依リ設立シタル法人ニ屬スルモノニ限ル
  前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務
  ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ
  半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人
  又ハ外國法人ニ屬セザルモノナルコト
  ヲル大
  前條ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定
  ニ該當セザルニ至リタルトキハ許可ハ
  其ノ效力ヲ失フ
  第四條第二條ノ許可ヲ受ケタル會社
  (人造石油製造會社)ハ政府ノ指定スル
  期間內ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
  政府ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ
  限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコト
  ヲ得
  人造石油製造會社前二項ノ期間內ニ其
  ノ事業ヲ開始セザルトキハ前二條ノ許
  可ハ其ノ效力ヲ失フ
  第五條人造石油製造會社ノ營ム人造石
  油製造事業ハ土地收用法第二條ノ土地
  ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ト
  シ同法ヲ適用ス
  第六條人造石油製造會社ニハ命令ノ定
  ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ十年間
  其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免
  除ス
  第七條北海道、府縣及市町村其ノ他之
  ニ準ズベキモノハ前條ノ期間人造石油
  製造會社ニハ其ノ事業ニ對シ又ハ其ノ
  事業ニ屬スル資本金額、從業者、製造
  若ハ加工ノ用ニ供スル器具機械類、使
  用動力又ハ收入ヲ標準トシテ課稅スル
  コトヲ得ズ
  第八條人造石油製造會社其ノ事業ノ爲
  必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府ノ
  認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ
  日ヨリ七年間命令ノ定ムル所ニ依リ輸
  入稅ヲ免除ス
  第九條政府ハ人造石油製造會社ニ對シ
  命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造シタル
  人造石油ニ付奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
  第十條詐欺ノ行爲ヲ以テ前條ノ奬勵金
  ノ交付ヲ受ケタル者ニ對シテハ其ノ金
  額ヲ返還セシム
  前項ノ規定ニ依ル返還金ハ國稅滯納處
  分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但
  シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次グモノトス
  第十一條人造石油製造會社ハ事業擴張
  ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事
  業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金
  全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スル
  コトヲ得
  第十二條人造石油製造會社ハ政府ノ認
  可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用
  ニ充ツル爲商法第二百條ノ規定ニ依ル
  制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得
  但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ
  二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
  最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存ス
  ル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザル
  トキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
  第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付
  テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬
  スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ
  特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必
  要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
  第十三條人造石油製造會社ハ命令ノ定
  ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定メ政府ノ認
  可ヲ受クベシ
  之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
  政府必要アリト認ムルトキハ事業計畫
  ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
  第十四條人造石油製造會社其ノ事業ノ
  全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休
  止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ
  依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
  人造石油製造會社ノ合併又ハ解散ノ決
  議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可
  ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
  第十五條政府ハ人造石油製造會社ニ對
  シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ
  爲サシムルコトヲ得
  政府ハ人造石油製造會社ニ對シ其ノ業
  務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ
  發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  政府監督上必要アリト認ムルトキハ當
  該官吏ヲシテ人造石油製造會社ノ事務
  所、營業所、工場、貯油所其ノ他ノ場
  所ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳
  簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコ
  トヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示
  ス證票ヲ携帶セシムベシ
  第十六條政府公益上必要アリト認ムル
  トキハ人造石油製造會社ニ對シ人造石
  油ノ販賣價格ノ變更其ノ他販賣ニ關シ
  必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
  政府公益上必要アリト認ムルトキハ人
  造石油製造會社ニ對シ其ノ設備ノ擴張
  若ハ改良又ハ製造方法ノ改善ヲ命ズル
  コトヲ得
  第十七條政府軍事上必要アリト認ムル
  トキハ人造石油製造會社ニ對シ人造石
  油ノ製造ニ關スル特殊設備ノ施設其ノ
  他軍事上必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
  第十八條人造石油製造會社ハ其ノ所有
  スル人造石油ヲ政府ガ命令ノ定ムル所
  ニ依リ時價ヲ標準トシテ購入セントス
  ルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
  第十九條政府第二條ノ許可又ハ第十六
  條ノ規定ニ依ル命令ヲ爲サントスルト
  キハ液體燃料委員會ノ議ヲ經ベシ
  液體燃料委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ
  以テ之ヲ定ム
  第二十條人造石油製造會社本法若ハ本
  法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ
  爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行
  爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ其ノ業務ヲ
  停止シ若ハ制限シ、第二條ノ許可ヲ取
  消シ又ハ取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監
  査役ノ解任ヲ爲スコトヲ得
  第二十一條第二條ノ規定ニ違反シ許可
  ヲ受ケズシテ人造石油製造事業ヲ營ミ
  タル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第二十二條人造石油製造會社第十六條
  又ハ第十七條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
  シタルトキハ其ノ取締役又ハ其ノ職務
  ヲ行フ監査役ヲ三千圓以下ノ罰金ニ處
  ス
  第二十三條人造石油製造會社左ノ各號
  ノ一ニ該當スルトキハ其ノ取締役又ハ
  其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ千圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  第十三條第一項ノ規定ニ違反シ認
  可ヲ受ケザル事業計畫ヲ實施シタル
  トキ
  二第十三條第二項ノ規定ニ依ル命令
  ニ違反シ事業計畫ヲ變更セズシテ之
  ヲ實施シタルトキ
  三第十四條第一項ノ規定ニ依リ許可
  ヲ受クベキ事項ヲ許可ヲ受ケズシテ
  爲シタルトキ
  四第十五條第二項ノ命令又ハ處分ニ
  違反シタルトキ
  第二十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
  ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  一第十五條第一項ノ規定ニ依ル報〓
  ヲ爲サズ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタル者
  二第十五條第三項ノ規定ニ依ル當該
  官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌
  避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サ
  ズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
  第二十五條人造石油製造會社ハ其ノ代
  理人、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務
  ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命
  令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタ
  ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
  以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
  第二十六條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
  ル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者
  ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
  ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
  年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
  代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
  年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
  付テハ此ノ限ニ在ラズ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ際現ニ人造石油製造事業ヲ營
  ム者ハ本法施行ノ日ヨリ一一年ヲ限リ命令
  ノ定ムル所ニ依リ第二條ノ規定ニ拘ラズ
  其ノ事業ヲ營ムコトヲ得
  第十五條第一項第三項及第二十四條乃至
  第二十六條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ人
  造石油製造事業ヲ營ム者ニ之ヲ準用ス
  石油業法第八條第一項中「石油業委員會」
  ヲ「體液燃料委員會」ニ改メ同條第二項ヲ
  削ル
  〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=58

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• 059・伍堂卓雄

  ○國務大臣(伍堂卓雄君)　只今議題トナリ
  マシタ帝國燃料興業株式會社法案竝ニ人造
  石油製造事業法案ニ付キマシテ、其提案ノ
  理由ヲ御說明申上ゲタイト存ジマス、抑c
  液體燃料ハ產業上竝ニ國防上必要缺クベカ
  ラザル基礎的資源デアリマスガ、我國ハ遺
  憾ナガラ石油資源ニ乏シク、國內產油額ハ
  昭和十年ニ於テ約三十八万竏デアリマシ
  テ、總需要量約四百六十七万竏ニ對シ、僅
  カ八%ヲ充スニ足ラズ、大部分ハ英米等ノ諸
  外國カラ、原料又ハ製品トシテ輸入ヲ致シ
  テ居ル有樣デアリマス、而モ逐年著シイ需
  要增加ノ趨勢ニアリマスノデ、此外國依存
  ノ我ガ石油事情ヲ打開シ、液體燃料ノ自給
  ヲ促進致シマシテ、產業ノ發展ト國防ノ安
  固ヲ期シマスコトハ、現下內外ノ情勢ニ鑑
  ミマシテ、最モ急務デアルト信ズルノデア
  リマス、固ヨリ液體燃料ノ自給促進ノ爲ニ
  ハ、內外石油資源ノ確保開發ヲ圖ルト共
  ニ、本邦石油業ノ統制アル發展ヲ講ズルノ
  必要ナルコトハ多言ヲ要シナイ所デアリマ
  スガ、國內石油資源開發ノ實績及ビ世界石
  油資源分割ノ現狀ニ於キマシテハ、液體燃
  料ノ供給ヲ此方面ニノミ俟ツコトハ困難デ
  アリマシテ、更ニ天然石油以外ノ原料カ
  ラ、人工的ニ液體燃料ヲ製造スル所ノ、人
  造石油製造事業ノ本格的確立ヲ圖リ、又代
  用燃料ノ使用ヲ普及セシメテ、是ガ供給ヲ
  確保スルト共ニ、一面各種燃料ノ合理的利
  用ノ方策ヲ講ジ、燃料消費ノ節約ニ付キ十
  分ノ考慮ヲ拂フニアラザレバ、結局其十分
  ナル效果ヲ期待スルコトヲ得ナイノデアリ
  マス、而シテ是等諸般ノ施設ノ實施ヲ考慮
  スルニ當リマシテハ平戰兩時ニ於ケル燃
  料需給ノ趨勢ヲ勘考シ、內外地及ビ滿洲國
  ヲ通ジ、各種燃料ニ亙ッテ綜合的ナル國策ヲ
  樹立シ、是ガ計畫的遂行ヲ期セネバナラナ
  イト存ジマス
  〔議長退席、副議長著席〕
  政府ニ於キマシテハ右ノ見地ニ基キマシ
  テ、從來ノ施設ヲ擴充整備スルト共ニ、各
  方面ニ亙リ諸般ノ施設ヲ實施セントスル考
  デアリマス、卽チ其一方策ト致シマシテ、
  揮發油ニ「アルコール」ヲ混入使用セシムル
  ノ制度ヲ創設セントシ、旣ニ揮發油及ビ
  「アルコール」混用法案ヲ提案致シタ次第デ
  ゴザイマスガ、特ニ我國ノ液體燃料需給ノ
  情勢ニ鑑ミマシテ、其補給ヲ確保スル爲ニ
  ハ、人造石油製造事業ノ急速ナル振興確立
  ヲ圖リマスコトガ、最モ緊要且ツ有效適切
  ナル方策デアルト考へルノデアリマス
  人造石油製造事業ノ急速ナル發達ヲ企圖
  スルニ付キマシテハ、幸ニ人造石油ノ原料
  タル石炭ガ我國ニ於テ相當豐富デアリ、且
  ツ友邦滿洲國ニ於テモ石炭資源ニ惠マレテ
  居リマスノデ、兩國ヲ通ジテ綜合的ニ本事
  業ノ確定ヲ圖ル方針デアリマス、而シテ本
  事業振興計畫ノ目標ト致シマシテハ、液體
  燃料中特ニ主要ナル揮發油及ビ重油ノ生產
  ニ重點ヲ置キ、日滿兩國ヲ通ジテ差當リ七
  箇年計畫ヲ以テ、各、こ年產百万竏ヲ生產セ
  シメントスルモノデアリマス、申ス迄モナ
  ク本事業ハ全ク新規ノ事業デアリマシテ、
  是ガ爲ニハ多大ノ努力ヲ要ズルノミナラ
  ズ、今後巨額ノ資金ヲ必要ト致シマス、併
  ナガラ我ガ國石油事情ヲ十分認識スルニ於
  テハ、官民一致一大決意ノ下ニ、是ガ振興
  助長ニ邁進セネバナラヌト確信スルノデア
  リマス、而シテ前述ノ人造石油一一百万竏ノ
  生產計畫ヲ遂行スル爲ニハ、約七億圓ノ資
  金ヲ必要トシ、其圓滑ナル調達ニ對シテ適
  當ナル援助ヲ與ヘナケレバ、到底所期ノ目
  的ヲ達成スルコトハ困難ト考ヘルノデアリ
  マス、仍テ政府ニ於キマシテハ、其資金ノ
  圓滑ナル調達ニ援助ヲ與フルト共ニ、所期
  ノ計畫實現ヲ促進スルガ爲ニ、玆ニ半官半
  民ノ資本組織ニ依ル資本金一億圓ノ特殊會
  社ヲ設立セシメ、政府ハ之ニ對シ五千万圓
  ヲ出資スルト共ニ、配當補給、社債ノ元利
  支拂ノ保證、租稅ノ免除等、特別ノ保護助
  成ヲ與ヘ、且ツ周到ナル指導監督ノ下ニ、
  資本金及ビ社債ヲ以テ人造石油製造事業ニ
  對スル投資、其他ノ事業ヲ經營セシムル爲
  メ、帝國燃料興業株式會社法ヲ制定スルコ
  トト致シマシタ次第デアリマス
  更ニ是ト同時ニ本事業ノ重要性ニ鑑ミマ
  シテ、本事業ヲ政府ノ許可事業トシ、其統
  制アル發達ヲ圖ルコトトシ、又奬勵金ノ交
  付、租稅ノ免除等ノ保護助成ヲ爲スト共ニ、
  政府ノ指導監督ヲ加ヘマシテ、事業ノ合理
  的經營ヲ促進シ、帝國燃料興業株式會社ノ
  運營ト相俟ッテ、斯業ノ確立ヲ期スルガ爲
  メ、人造石油製造事業法ヲ制定スルコトト
  致シマシタ次第デアリマス
  以上ガ今般帝國燃料興業株式會社法案及
  ビ人造石油製造事業法案ヲ提出致シマシタ
  趣旨ノ大要デアリマス、何卒十分御審議ノ
  上速ニ御協贊ヲ賜ハランコトヲ切望シテ已
  マヌ次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=59

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• 060・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　質疑ノ通〓ガアリ
  マス、順次之ヲ許シマス-野田武夫君
  〔野田武夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=60

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• 061・野田武夫

  ○野田武夫君　私ハ只今上程サレマシタ所
  ノ帝國燃料興業株式會社法案竝ニ人造石油
  製造事業法案ニ付キマシテ、政府ノ御所見
  ヲ伺ヒタイト思ッテ居リマス、先ヅ第一ニ御
  伺致シタイノハ、液體燃料國策ニ對シマス
  ル所ノ根本ノ方針デアリマス、ソレハ政府
  ハ屢〓產業振興ト國防ノ充實ヲ力說シテ居ラ
  レマスガ、各施設ノ上ヲ見マスト、何等一
  貫シタ指導精神ト計畫トヲ持ッテ居ラレナ
  イヤウデアリマス、特ニ燃料問題ニ於テ之
  ヲ痛感スル者デアリマスルガ、液體燃料ガ
  產業上ニ於ケル重要性ハ固ヨリ、國防上ニ重
  大ナル關係ヲ持ツト云フコトハ、私ガ喋々
  ヲ要シナイノデアリマス、歐洲戰亂當時、
  石油ノ一滴ハ血ノ一滴デアルト叫バレテ居
  リマス然ルニ我國ノ現狀ヲ見マスルト
  此石油需要ノ總額ハ、昭和十一年度ニ於キ
  マシテ四百九十五万「キロ」デアリマスルガ、
  之ニ對シマシテ只今ノ商工大臣ノ御說明ニ
  依リマシテモ、內地ノ產油額ハ僅ニ八%、所
  謂四十二万「キロ」程度デアリマス、而モ之
  ニ北樺太ノ十六万「キロ」ヲ加ヘマシテモ
  僅ニ五十八万「キロ」ニ過ギナイト云フ、洵
  ニ貧弱ナル有樣デアリマス、其結果現在日
  本ニ輸入致シテ居リマスル總額ハ、大體ニ
  於キマシテ、十一年度ニ於キマシテモ四百
  七十万「キロ」程度デアリマシテ、億
  八千二百五万圓ニ及ンデ居リマス、而モ
  此輸入國ヲ點檢致シマスルト、先ヅ亞米
  利加ノ三百八十七万「キロ」蘭領印度ノ五
  十万八千「キロ」英領「ボルネオ」ノ三十一一万
  「キロ」「ソビエト」露西亞ノ七十二万五
  千「キロ」其他ニナッテ居リマス、林總理大
  臣ハ國民ニ向ヒマシテ、常ニ國際政局ノ危
  機ヲ叫ンデ居リマスルガ、特ニ一觸卽發ヲ
  警告シテ、吾々國民ニ此重要性ヲ說イテ居
  リマス、然ルニ今日ノ國際政局ニ於テ、最
  モ摩擦ノ多イト思ハレマス所ノ亞米利加、
  「ソビエト」露西亞、竝ニ英吉利ヲ中心トシ
  テ石油ガ輸入サレテ居リマスコトハ、洵ニ
  痛心ノ至リデアリマシテ、此現狀ヲ政府ハ
  ドウ御覽ニナッテ居ラレマスカ、私ハ石油ガ
  單ニ平和的產業ノ原料デアルナラバ敢テ問
  フ所デハアリマセヌ、併ナガラ陸海軍當
  局ガ、來年度ノ豫算ニ於キマシテモ厖大ナ
  ル豫算ヲ取ッテ、而シテ戰艦或ハ戰車、航空
  機ノ充實ニ努メテ居ラレマスルガ、元來此
  各兵器ノ作業資材ヲ何ニ求メラレルト思ッ
  テ居ラレマスルカ、洵ニ今日ノ日本ノ石油
  ノ狀態ヲ見マスレバ、所謂軍事上致命的缺
  陷トモ言フベク、又國防ノ脆弱性ヲ遺憾ナ
  ク現ハシタモノデアリマシテ、卽チ國防上、
  資材ノ整備上、由々シキ問題デハナイカト
  思ッテ居リマス、軍當局ハ如何ナル之ニ對ス
  ル御見解ヲ持ッテ居ラレルノデアルカ、御尋
  ヲ致シタイト思ヒマス
  又次ニ政府ハ此外交ト石油輸入國ノ選定
  ニ關シマシテ、有機的ナ御考慮ヲ拂ッテ居ラ
  レルカドウカ、唯漫然ト石油ノ不足ヲ外國
  カラ仰グト云フ前提ノ下ニ、何等國際關係
  ヲ顧ミズシテ、此石油輸入ト外交對策ヲ講
  ジテ居ラレルト云フコトニナリマシタナラ
  バ、私ハ此問題ニ付テ、外務當局ハ此石油輸
  入國ト外交方針ニ對シマツテ、再檢討ヲ爲
  サル必要ハナイカト思フノデアリマス、是
  等ニ付キマシテ軍務當局竝ニ外務當局ノ御
  答辯ヲ煩ハシタイト私ハ希望致マシス
  第二ニ御伺致シマスコトハ、今囘提案サ
  レマシタ人造石油事業法案ト云フモノハ、
  所謂日本ノ液體燃料國策確立ノ爲ニ一步ヲ
  進メタモノデアリマスル意味ニ於テ、私ハ
  洵ニ悅ブ者デアリマスルガ、同時ニ日本ノ
  天然石油開發ニ對シテ、モウ少シ積極的ナ
  態度ヲ御執リナル御方針ガアルカドウカ、
  卽チ我國ハ地質學者ノ調査ニ依リマスト、
  油田ノ保有ハ洵ニ厖大ナルモノヲ持ッテ居
  リマシテ、殆ド亞米利加ト等シイ五十億坪
  程度ノ油田ヲ持ッテ居ルト云フ調査ガ出テ
  居リマス、然ルニ今日亞米利加ハ世界ノ七
  割近クノ油ヲ出シテ居ルニ拘ラズ、先程申
  上ゲマシタ通リ、日本ハ洵ニ貧弱デアリマ
  ス、此結果私ノ最モ高調致シタイト思ヒマ
  スルコトハ、亞米利加ノ今日マデノ此油田
  ニ對スル投資額ヲ調ベテ見マスト、約三百
  六十億圓ヲ投資シテ居リマス、然ルニ日本
  ハ政府竝ニ民間ノ投資高ヲ調ベテ見マス
  ト、僅ニ今日マデ一億五千万圓程度ノ投資
  シカ見テ居ラナイノデアリマス、如何ニ政
  府竝ニ民間ガ內地ノ油田開發ニ對シテ、殆
  ド力ヲ致サナイデ居ルト云フコトガ明瞭デ
  アリマシテ、私ハ洵ニ遺憾ニ思ッテ居ルノ
  デアリマス(拍手)而シテ油田ノ開發ニ
  ハ、先ヅ第一ニ地質ノ調査ニ著手シナケレ
  バナラナイ、而シテ次ハ油田ノ試掘デアリ
  ママ、地質ノ調査ニ付キマシテハ、政府ハ
  明治三十三年ニ初メテ一万數千圓ノ金ヲ出
  シマシテ、之ニ著手致シマシタガ、爾來今
  日マデ三十六年間、其間地質調査ニ支出シ
  タ所ノ政府ノ支出高ハ、僅ニ九十四万六千
  圓ニナッテ居リマス、又內地ノ油田試掘ノ跡
  ヲ辿ッテ見マスルト、是亦極メテ貧弱デア
  リマシテ、昭和二年以降七箇年間ニ亙ッテ、
  繼續事業トシテ約二百万圓ノ金ヲ出シテ居
  リマス、此二百万圓ノ奬勵金ノ後ハ、
  僅ニ十年度、十一年度ニ於テ、二十四万
  圓、三十八万圓ヲ計上シテ居リマシテ、
  之ヲ合計致シマスルト、昭和十一年度マ
  デニ政府ハ油田試掘ノ奬勵金トシテ、借此
  二百六十二万餘圓ヲ出シテ居ルニ過ギナイ
  ノデアリマス、ソレニ致シマシテモ今日秋
  田縣ノ院內トカ、或ハ雄物川ト云フヤウナ、
  有望ナ油田ヲ發見シテ居ルノデアリマス、
  只今商工大臣ノ御說明ニナリマス通リ、今
  囘ノ人造石油製造事業ニハ、約七億圓ノ資
  本ヲ動員スルト云フコトヲ聞イテ居リマス
  ガ、其七億圓ヲ人造石油事業ニ使ッタ反面
  ニ於テ、今日マデノ天然石油、內地ノ油田
  開發ニ對スル政府竝ニ民間ノ跡ヲ迪リマス
  ト、洵ニ天地宵壤ノ差デアリマシテ、全ク
  內地ノ油田開發ハ、今日マデ抛擲シテ居ラレ
  タト言ッテモ、私ハ過言デナイト思ッテ居リ
  マス(拍手)燃料〓究者ノ中ニ於キマシテ、
  今日人造石油事業ヲヤルコトモ結構デアル
  ガ、此際モウ少シ更ニ積極的ニ內地ノ油田
  開發ニ力ヲ注グノガ本當デアル、尙ホ一部
  ノ說ノ中ニハ、寧ロ此際未開發ノ油田ニハ政
  府事業トスルカ、若クハ之ニ近イ最モ積極
  的ノ奬勵ヲ爲シテハドウカト云フヤウナ意
  見モアルヤウデアリマスガ、吾々ハ之ニハ
  當然耳ヲ傾クベキダト思ッテ居リマス、是等
  ニ關シマシテ商工省ノ御當局ノ御考ハ如何
  デゴザリマセウカ
  次ニ御尋申上ゲタイト思ヒマスコトハ、北
  樺太ノ油田ノ問題デアリマス、北樺太油田
  ニ付キマシテハ、新シイ契約ノ下ニ五箇年
  ノ試掘ノ權利ヲ確保シマシタ、昭和十六年
  末マデ試掘權ヲ確保致シマタコトハ、洵
  國家ノ爲ニ慶ブベキコトデアリマス、併ナ
  ガラ其新契約ノ內容ヲ見マスルト、或ハ日本
  人竝ニ「ソビエト」露西亞人ノ勞働者ノ使用
  數ノ比率、竝ニ勞働條件ノ過當ナル負擔等
  ガアリマシテ、利權開發ニ種々支障ヲ來シ
  テ居ル事實ガアリマス、右利權ヲ完全ニ開
  發スルニ於キマシテハ、單ニ其會社ノ助成
  金、竝ニ社債ノ元利ノ保證ト云フヤウナ姑
  息的ナ手段ニ俟タズシテ、モウ少シ外交方
  策ニ依ッテ積極的ニ本問題ノ解決ニ當ルト
  云フコトガ、私ハ寧ロ當然ノ處置デアルト
  思ッテ居リマス、此際外務省竝ニ關係省ニ於
  カレマシテハ、卽チ積極的ナ外交交涉ニ依
  リマシテ、此今迄ノ條約竝ニ新シク締結シ
  タ契約ノ不當ナル條件其他ヲ撤囘シテ、玆
  ニ完全ナル自由ニ開發ヲ助成スルコトガ出
  來ルヤウナ有效適切ナル方策ヲ樹テラレル
  御考ハアリマセヌカ、私ハ特ニ之ヲ要求ス
  ルシ、希望致ス者デアリマス、更ニ此現在
  ノ北樺太會社ニ對シマシテ資源ノ開發計畫
  竝ニ助成方法其他ニ對シマシテ具體的ナ內
  容ヲ御示シ願ヒタイト思ッテ居リマス
  次ニ御伺ヒ申上ゲマスコトハ、海外ノ石
  油資源開發デアリマス、海外ノ資源開發ニ
  付キマシテハ、英國、亞米利加、獨逸、佛
  蘭西等ハ、洵ニ積極的ノ態度ヲ執リマシテ、
  此資源獲得ニ大キナ力ヲ致シテ居リマス、
  然ルニ我國ハ今日マデ之ニ對シテ何等ノ對
  策モ採ッテ居リマセヌ、而モ屢〓海外カラ資
  源賣込ノ交涉ヲ受ケマシテモ、之ヲ捉ヘル
  機會ト時トヲ得ナカッタト云フヤウナ憾ガ
  アルノデアリマス、唯拓務省ガ十一年度ニ
  於キマシテ「ボルネオ」ノ石油組合ノ試掘助
  成ニ十万圓程ノ金ヲ出サレテ居リマス、是
  ハ其一端ト思ヒマスルガ、私ハ此際政府ガ
  モウ少シ積極的ニ、モウ少シ進ンダ御計畫
  ノ下デ、海外資源ノ開發ニ御力ヲ致サレル
  ト云フコトガ、最モ必要ダト思ヒマスルガ
  故ニ、其御考ガアルカドウカト云フコトヲ御
  聽キ致シタイト思ッテ居リマス、尙ホ最近國
  際聯盟ニ於キマシテ原料資源ノ均等利用ニ
  付キマシテ、議論ヲシテ居ルヤウデアリマ
  スルガ、日本政府ハ將來世界ノ石油資源ノ
  分割ニ對シテ、ドノ程度ノ御見込ヲ付ケテ
  居ラレマスルカ、又ハ何カノ御調査ガアッタ
  カドウカト云フコトヲ私ハ御聽キシテ見タ
  イト思ッテ居リマス
  次ニ御尋申上ゲタイコトハ、本案ノ內容
  デアリマスルガ、是ハ只今御說明ノ通リ帝
  國燃料興業株式會社ト云フモノヲ一億圓ノ
  資本金デ御作リニナッテ、之ニ三倍スル所ノ
  社債ヲ發行スルコトニナッテ居リマス、其他
  民間ノ人造石油會社ニ對シテモ相當ノ助成
  ヲシテ居ラレルヤウデアリマスガ、大體昭
  和十八年ニ於キマシテハ、此人造石油事業
  ニ對シテ、政府竝ニ民間ノ資金ガドノ位動
  員ヲ見ルカ、ドノ位ノ投資ヲ見ルカト云フ
  コトヲ先ヅ御聽キシテ見タイト思ッテ居リ
  マス
  ソレカラ次ニ人造石油事業法ニ於キマシ
  テハ、生產費ト市價トノ値開キヲ補給サレ
  ルト云フコトニナッテ居リマスルガ、此負擔
  額ハドノ位ニナルノデアルカ、尙且十年間
  ハ全面的ノ免稅ヲサレルト云フコトニナッ
  テ居リマスルガ、是等ヲ合セマシテ結局政
  府ノ負擔額ハ、大體ドノ位ノ御見込デアル
  カ、尙ホ本計畫ニ依リマスト、今ノ御說明
  ニモアリマス通リ七年後、昭和十八年ニ於
  キマシテハ、生產額ガ重油百万竏、「ガソ
  リン」百万竏、合計二百万竏ノ生產額ガ生
  レルト云フコトニナッテ居リマスガ、其結果
  十八年度ニ於ケル日本ノ石油ノ需給關係
  ハ、ドウ云フコトニ御見込ヲ付ケテ居ラレ
  マスカ、卽チ十一年度ノ石油ノ總需要高ハ
  四百九十五万竏デアリマスガ、本年ハ正ニ
  五百万竏ヲ突破シテ居ルト思ッテ居リマス、
  而シテ我國ノ液體燃料需要ノ增加率ト云フ
  モノハ、大體ニ於テ年々三十五万竏トナッテ
  居リマスルガ、假令其數字ガ全然增減ガナ
  イト見マシテモ、後七年間ニ於テ增加額ダ
  ケ集メマシテモ、旣ニ二百五十万竏トナル
  ノデアリマスガ、今囘御提出ニナック法案ニ
  基ク新人造石油製造ノ結果、十八年ノ二百
  万ト云フ數字ハ、此新シク增加シテ來ル量
  ニモ及バナイト云フコトニナリハシナイ
  カ、此意味ニ於キマシテ、只今御說明ノ中
  ニモ或ハ「アルコール」混合ノ强制、其他代
  用燃料ガ考ヘラレマスガ故ニ、稍〓緩和ハ致
  シマスカモ知レマセヌケレドモ、私共カラ
  考ヘマスト、今囘ノ法案ニ基ク新事業ノ決
  行ヲ見マシテモ、到底日本ノ石油ノ輸入ト
  云フモノハ、一分一厘モ防止スルト云フコ
  トハ出來ナイト云フ結論ヲ來スノデアリマ
  ス、特ニ心配ニナルコトハ、此案ヲ進メテ
  行キマシタ時ニ於テハ、戰時ノ需給關係ヲ
  ドウナサルカ、軍部當局ハ戰時ノ需要ノ補
  給ヲ如何ニシテ御進メニナル御計畫デアリ
  マスルヤ、特ニ之ヲ御聽キシタイト思ッテ居
  リマス、又御說明ニモアリマシタガ、日滿
  兩國ヲ通ジテ此計畫ヲナサレルトノ御說明
  ガアリマシタガ、滿洲國トノ關係ハドウナッ
  テ居ルカ、更ニ今日滿洲國ニ於テドノ程度
  ノ御打合セガ出來テ居ルカ、是モ御聽キシ
  テ見タイト思ッテ居リマス
  更ニ次ニ御尋申上ゲタイコトハ、石炭ノ
  供給問題デアリマス、人造石油工業ニ取リ
  マシテ其原料トナル所ノ石炭ノ供給ハ、其
  根本問題ト考ヘルノデアリマス、然ルニ今
  日石炭ノ產額ハドノ位カト申シマスルト、
  昭和十年度ノ統計ヲ見マシテモ、約三千七
  百八十万「キロ」ノ產額ヲ見テ居ルヤウデア
  リマス、然ルニ本計畫ノ內容ヲ點檢致シマ
  スルト、石油ト石炭トハ石炭ノ四ニ對シ石
  油ガ一出來ル計算ニナッテ居リマス、併ナガ
  ラ其石油ヲ造ル作業ニ石炭一ヲ必要ト致シ
  マスガ故ニ、結局五對一ノ比率カト存ジマ
  ス、仍テ二百万「キロ」ノ石油ヲ御造リニナル
  爲ニハ、石炭一千万「キロ」ヲ必要トスルト思
  ヒマス、唯此石炭ノ中ニハ滿洲炭モ相當ニ御
  使ヒニナルト云フコトデアリマスルカラ、
  結局昭和十八年度ニ於キマシテ二百万「キ
  口ノ石油ヲ御造リニナル爲ニハ、內地ノ
  炭ガ八百万「キロ」ヲ要スル計算ニナルノデ
  アリマス、然ルニ只今申上ゲマシタ通リ、
  十年度ノ石炭ノ總生產高ハ三千七百八十万
  「キロ」、而モ今日國際情勢其他ノ關係上、重
  工業ガ非常ニ飛躍的ノ發展ヲ致シマスト同
  時ニ、色々石炭ノ用途ガ廣イ、而モ銑鐵事
  業〓其他諸工業用ニ多量ノ石炭ヲ必要ト致
  シマスガ故ニ、果シテ此需給關係ハ圓滿ニ
  調整ガ出來ルカドウカ、此點ノ御見込ヲ伺
  ヒタイト思ヒマス次ニ御尋申上ゲタイコト
  ハ、此人造石油製造ノ企業ヲ敢行ナサル爲
  三、國民大衆ニ更ニ大ナル犠牲ヲ强ユル
  ト云フコトニナリハシナイカ、卽チ人造石
  油ハ其生產費ガ七十錢、販賣費ノ十錢ヲ加
  いつ、販賣價格ハ八十錢ト云フヤウナコト
  ヲ御聽キシテ居リマスガ、政府ハ當然天然
  石油トノ價格ノ接近ヲ圖ル爲ニ、當然天然
  石油ノ價格ノ吊上ゲヲナサルモノト考ヘテ
  居リマス、其證據ノ第一ノ現レトシテ現レ
  テ來テ居ルノハ、卽チ今囘出テ居リマス所
  ノ輸入稅ノ引上ゲ竝ニ消費稅ノ新設デアリ
  マリ、兩稅ノ結果「ガソリン」ハ一「ガロン」
  ニ十錢ノ增徵ヲ見ルコトニナッテ居リマス
  ガ、此結果今日日本ノ內地ニ於キマシテハ
  約三億「ガロン」ノ「ガソリン」ヲ使用シマス
  ガ故ニ、其結果ハ三千万圓ノ玆ニ增稅ヲ見
  ルコトニナルノデアリマス、此三千万圓ノ
  新シイ負擔ト云フモノハ、抑、ヾ誰ガ負擔スル
  カ、私ハ此問題ヲ御聽キスル前提ト致シマ
  シテ、先ヅ檢討致サネバナラヌコトハ、石
  油事業法デアリマス、石油事業ノ統制ヲ目
  的ト致シマシテ、特ニ價格ノ是正權ヲ握ッテ
  居ルノデアリマス、然ルニ此石油事業法ハ
  今日マデ徒ニ統制共通ノ惡弊ト申シマスル
  カ、單ニ「カルテル」、「トラスト」ト云フヤウナ
  獨占的企業ヲ助成スルコトニ力ヲ注ギマシ
  テ、一種ノ生產者ノ番犬ト云フヤウナ形ヲ
  現シテ居ル、隨テ何等今日マデ公正妥當ナ
  ル價格ノ維持ニ役立ッタコトハナイノデア
  リマス、隨テ其結果ハ事業法ノ制定以來、
  「ガソリン」ノ値段ト云フモノハ段々上ッテ
  來テ、而モソレハ何人ガ負擔シテ居ルカト
  言ヘバ、悉クハ消費者デアッテ、生產者ハ全
  然負擔ヲシテ居ナイト云フ結果ヲ見テ居ル
  ノデアリマス、第六十議會ニ於キマシテ、
  本法ガ提案サレマシタ時ニ、時ノ商工大臣
  ハ議會ニ於テ、本法ガ實施サレテモ、斷ジ
  テ「ガソリン」ノ値上ヲ見ルコトハナイト云
  フコトヲ言明致シテ居リマス、然ルニ其實施
  サレタ年ノ昭和九年六月、市價一「ガロン」
  四十錢ノモノガ、旣ニ今日五十一錢ニ値上
  リトナッテ居リマス、而モ其負擔ト云フモノ
  ハ悉ク國民大衆ニ轉嫁サレテ、サウシテ今
  各方面ニ種々ノ摩擦ヲ生ジテ居ル次第デア
  リマス、私ハ先程申シマシタ此消費稅ノ新
  設或ハ關稅ノ値上リニ基ク三千万圓ト云
  フ新シイ負擔モ、是ハ恐ラク生產者ニハ何
  等ノ關リハナクテ、當然消費者ニ轉嫁サレ
  ルト思ヒマスルガ、更ニ恐ルヽコトハ、此
  代用燃料工業化ニ依リマシテ、更ニ〓〓
  「ガソリン」ノ價格ハ〓騰スルト思フ
  ノデアリマス、隨テ其增稅竝ニ此工業化
  ニ依ル値段ノ上リト云フモノハ、是ハ悉
  ク消費者ノ頭上ニ振リ掛ルト云フコトハ旣
  ニ明カデアリマス、卽チ今日揮發油ノ九
  五%ヲ使用シテ居ル自動車業者ガ、此問
  題ニ付テ非常ニ心配シテ居ルト云フコト
  ハ、私ハ特ニ考ヘネバナラヌコトダト思ッ
  居リマス、更ニ是ガ自動車業者ニ轉嫁サレ
  マスレバ、當然國民大衆ノ交通費ニ是ガ影
  響シテ來ル、サナキダニ物價騰貴ノ重壓ニ
  惱ンデ居ル國民ハ、此結果非常ニ生活ノ脅
  威ヲ受クルコトニナリハシナイカト云フコ
  トヲ私ハ氣遣フ者デアリマス、國民生活ノ
  安定ヲ高唱シテ居ラレマス現內閣ト致シマ
  シテハ、洵ニ一ツノ矛盾デハナイカ、私特
  ニ此際商工當局ニ希望ヲ申述ベルコトハ、
  此際政府ハ此機會ニ於テ、卽チ生產者ト消
  費者ノ利害關係ヲ調整シテ、其負擔ノ均衡
  ヲ圖ッテ、國家統制ノ眞ノ目的ニ副フヤウ、
  一ツ石油事業法ノ改正カ、或ハ其他ノ積極
  的ナ施設ヲナサッテハドウカト云フコトヲ、
  特ニ希望ヲ申述ベテ置キマス
  更ニ農林省ニ於キマシテハ、今囘重油
  ノ增稅ニ關シマシテ、何等カ之ニ直接關係
  ノアル漁業者ニハ緩和セネバナラヌト言ッ
  テ、來年度ノ豫算ニ相當額ガ計上サレテ居
  リマスルガ、商工省ニ於キマシテハ、其結
  果ノ及ブ「ガソリン」消費者ニ對シテ何等ノ
  對策モ、何等ノ救濟策モナクテ、全然之ヲ
  拾テヽアルト云フコトハ、私ハ洵ニ苛酷ナ
  仕打デハナイカト思フノデアリマス、ドウ
  ゾ商工大臣ハ此點ニ付テ篤ト御考慮ノ上御
  返事ヲ戴キタイト思ッテ居リマス(拍手)
  私ハ更ニ此問題ニ關聯致シマシテ若シ
  他ノ特別ナ方法ニ依ッテ、此消費者ノ救濟ガ
  出來ナイナラバ、此際思切ッテ一ツ自動車稅
  ノ免稅ヲナスッテハドウカ、是ハ旣ニ獨逸ア
  タリデハ之ヲ敢行シテ、非常ナ好イ成績ヲ
  擧ゲテ居ルコトヲ聞イテ居リマス、更ニ大
  藏省ノ當局ニ一言御聞キ致シマスガ、今囘
  ノ揮發油竝ニ關稅ノ增收ハ、是ハ當然一般
  財政ニ充當スルコトナクシテ、當然燃料葹
  設、其他今申上ゲマシタ消費者關係ニ對ス
  ル財源トシテ用フルノガ是ハ妥當ダト思ヒ
  マスガ、如何ニ御考ニナリマスカ、此點ノ
  御答ヲ戴キタイト思ッテ居リマス
  斯ク考ヘテ參リマスト、現在ノ液體燃料
  問題ト云フモノハ、唯今囘ノ兩法案ノ提案
  ヲ見マシタ程度デハ、迚モ到底解決ヲスル
  コトハ困難デアリマス、寧ロ今後ノ施設ヲ
  俟タナケレバ、此重大問題ノ解決ヲ見ルコ
  トハ出來ナイト云フコトハ、何人モ先ヅ考
  ヘネバナラナイコトダト思ッテ居リマス、商
  工省ガ來年度ニ於キマシテ、燃料局ヲ外局
  トシテ新設サレテ、サウシテ之ニ對シテ力
  ヲ致シ、更ニ種々ノ委員會、其他ニ於テモ
  色々ノコトヲ〓究調査シテ居ラレルコトハ
  結構ナコトデアリマスガ、私ハ此場合斯ウ
  云フ重大問題ハ、商工省ノ一局カ、或ハ商
  工省內ニ於ケル一ツノ委員會ニ於テ之ヲ解
  決スルト云フコトハ、迚モ困難ダト思ッテ居
  リマス、政府ハ特ニ此際國家ノ重要國策ト
  モ言フベキ本燃料問題解決ノ爲ニ、特ニ內
  閣ニ燃料ニ關スル大審議會カ調査會ヲ設置
  シテ、普ク衆智ヲ集メマシテ、此解決ノ一
  步ヲ進メルノ熱意ヲ御持チハナイカ、特ニ
  御考慮ヲ願ヒタイト思ヒマス
  以上ノ諸點ニ付キマシテ、洵ニ簡單デア
  リマスルガ、御尋致シマスルカラ、各關係
  大臣竝ニ政府委員ハ、之ニ對シテ明快ナル
  御答辯アランコトヲ要望致シマス(拍手)
  〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=61

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• 062・伍堂卓雄

  ○國務大臣(伍堂卓雄君)　簡單ニ各項ニ付
  テ御返事申上ゲマス、第一ニ燃料政策ノ根
  本ハ、內地油田ノ開發竝ニ外地油田ノ開發
  助成、ソレカラ人造石油事業ノ確立、尙ホ
  消費ノ節約ニ依ッテヤルノデアリマス、人造
  石油事業ニ對シテ非常ニ大キナ金ヲ使フノ
  モ宜イガ、尙ホ內地ノ油田開發ニモット積
  極的政策ヲ執ッテハドウダト云フ御話デゴ
  ザイマス、洵ニ御尤ナ御話デゴザイマシテ、
  之ニ對シテハ十二年度以降ハ、是迄ヨリ
  モモット積極的ニ之ヲ行ハントシテ居ルノ
  デアリマシテ、從來迄ノヤリ方ニ、尙ホ地
  表調査ニ加フルニ剝土作業、試錐法及ビ物
  理的探鑛法等ニ依ル調査ヲ行ヒマシテ、一
  層從來ヨリモ加速度的ニ內地ノ炭田調査ヲ
  行ヒ、竝ニ此奬勵ヲ行ハントシテ居ルノデ
  アリマス
  北樺太ニ付キマシテハ、先刻御話ノ、非
  常ニ讓步的ノ契約ヲシタノデハナイカト云
  フ御話デゴザイマス、「ソビエト」露西亞ノ勞
  働者ヲ使フコト、竝ニ之ニ對シテ住宅其他
  ヲ與ヘマスコトニ付キマシテハ、日本人ヲ
  使フヨリモ高ク付クノデアリマシテ、此點
  ハ讓步シタノデアリマスケレドモ、結局四
  ツノ協商地區ニ對スル權利ヲ得、又更ニ三
  ツノ試掘地域ヲ獲得致シマシタノデ、之二
  依ッテ非常ニ利スル所ガアリマシタノデ、其
  位ノ讓步ハ致シテモ差支ナイト認メタノデ
  アリマス、海外資源ノ開發ニ對スル態度ハ
  洵ニ今日マデハ思フヤウニ行キマセヌデゴ
  ザイマシタガ、色々方々カラ申込ガアリマ
  スケレドモ、隨分イカサマガアルノデゴザ
  イマシテ、是ガ選擇ニ對シテハ愼重ナ態度
  ヲ以テ臨ミタイト思フノデアリマス、世界
  資源ノ調査ニ付キマシテハ、此處デ申上ゲ
  ルヨリモ書類ヲ以テ申上ゲタ方ガ宜イト考
  ヘルノデアリマス
  ソレカラ帝國燃料株式會社ノ資金ノコト
  ハ此法案ニモ書イテアリマス通リ、七億圓
  デアリマシテ、七億五千万圓、七年後ニ百
  万竏ノ揮發油、百万竏ノ重油ヲ製造スルニ
  必要ナ能力ヲ備ヘル爲ニハ、七億五千万圓
  要ルノデアリマスガ、此五千万圓ハ旣設ノ
  會社又ハ目下計畫中ノモノニ屬シマス三ツ
  ノ會社、卽チ朝鮮ノ野口氏ノヤッテ居ル能力
  五万瓲ニ對スル設備ニ費シタ資金、又滿鐵
  ガ行ッテ居リマス撫順ニ於ケル二万瓲能力
  ノ資金、ソレカラ三井ガ計畫シテ居リマス
  九州ニ於ケル合成式人造石油事業、之ニ對
  スル資金、之ヲ合セマスト五千万圓ニナル
  ノデアリマス、此以外ニ七億圓ノ投資ヲ要
  スルノデアリマス、七年後ノ需給關係ハ先
  刻御話ニナリマシタ通リ約二百五十万瓲ノ
  需要ニナリマシテ、サウシテ之ニ對シマシ
  テ人造石油其他ニ依ッテ補給致シマス額、竝
  ニ「アルコール」混用法ニ依ッテ節約致シマ
  ス量ヲ除キマスト、不足額ハ九十五万竏ニ
  ナルノデアリマシテ、今日ノ不足額ヨリモ
  減ズルノデアリマス、之ヲ重油ト揮發油ノ
  百分率ニ付テ申シマスト、七年後ニ於キマ
  シテハ、揮發油ニ對シマシテハ、需要量ノ
  約四五%ヲ自給スルコトニナリマス、又重
  油ニ對シマシテハ需要量ノ約四四%ヲ自給
  スルコトニナルノデアリマス、ソレカラ日
  滿兩國トノ關係ハ只今一寸申シマシタヤウ
  二、滿鐵ガ計畫ヲシテ居リマス撫順ニ於ケ
  ル液化事業トノ關係デアリマス、尙ホ此外
  ニ滿洲ニ於テ起ラントスルモノニ對スル投
  資ヲスル考デアリマス、石炭ニ付キマシテ
  ハ、御話ノ如ク約一千万瓲、卽九百万瓲要
  ルノデゴザイマスルガ、其半分ハ滿洲炭ニ
  依リ、半分ハ內地炭ニ依ル豫定デアリマ
  ス、消費者ノ負擔ニ付キマシテハ、最モ注
  意ヲ致シテ居リマスノデ、是ハ大體ニ於キ
  マシテ市價ト、ソレカラ人造石油ノ生產
  費、其差額ハ補助金ニ依ッテ行フ豫定ニシテ
  居リマス、大體七年後ニハ市價トソレカラ
  生產費-生產費ト申シマシテモ、ソレニ
  ハ無論相當ノ利潤ヲ考へナケレバナリマセ
  ヌガ、其價格トノ差ガ殆ドナイヤウニナル
  豫定デアリマス、卽チ今後七箇年ニ亙ッテ補
  助シナケレバナリマセヌノデ、其金額ハ約
  九千五百万圓ヲ豫定シテ居ルノデアリマ
  ス、又自動車營業者ニ對スル影響ニ付キマ
  シテハ、自動車營業改善委員會ヲ設ケテ居
  リマシテ、運賃ヲ合理的ナラシムルコト、
  其他色々具體案ヲ〓究シ居リマシテ、出來
  ルダケ早ク之ヲ實行シタイト思フノデアリ
  マス
  ソレカラ最後ニ大キナ燃料ニ關スル調査
  機關ヲ設ケタラ宜カラウト云フ御話デゴザ
  イマス、是ハ御意見トシテ謹ンデ承ッテ置キ
  マス
  〔政府委員賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=62

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• 063・賀屋興宣

  ○政府委員(賀屋興宣君)　只今御質問ノ中
  今囘新設致サントスル揮發油稅及ビ「ガソ
  リン」關稅ノ値上ニ依ル收入ハ、之ヲ燃料
  國策ニ關スル經費又ハ「ガソリン」消費者ニ
  關スル施設ノ爲ニ流用シタラドウカト云フ
  趣旨ノ御質問ニ對シマシテ御答辯申上ゲマ
  ス、此燃料政策ニ付キマシテハ、極メテ國
  防上其外一般產業ノ爲ニ重要デアリマスル
  コトハ仰セノ通リデアリマスノデ、本年
  度ニ於キマシテモ、各種ノ新規ノ經費
  ヲ豫算ニ計上致シテ居ル次第デアリマス、
  例ヘバ商工省ニ新ニ外局ト致シマシテ、
  燃料局ヲ設置致シマスルトカ、又北樺太
  石油資源開發ノ爲ニ特別ノ助成ヲ致シマス
  ルトカ、或ハ海外石油資源ノ開發助成ニ
  要スル經費ヲ支出致シマスルトカ、石炭ノ
  品質別埋藏量ノ調査竝ニ生產能力ノ調査ニ
  要スル經費ヲ計上致シマスルトカ、高壓合
  成法ニ依ル石油製造ノ中間工業試驗ニ要ス
  ル經費ヲ計上致シマシタ、其外尙ホ十二年
  度追加豫算ニ於キマシテ帝國燃料興業株式
  會社ヘノ出資金五百万圓ヲ計上致シテ居ル
  ヤウナ次第デアリマシテ、本年度ノ此液體
  燃料ニ關シマスル一般會計ノ經費ノ計上ノ
  合計額ハ、二千万圓ニ近イノデアリマス、
  其外各特別會計ニ於キマシテモ、合計五百
  万圓ノ經費ヲ計上致シテ居ル次第デアリマ
  シテ、財政ノ許ス限リ、此方面ニ力ヲ盡シテ
  居ルノデアリマス、併ナガラ此揮發油稅ニ
  依ル收入竝ニ「ガソリン」關稅ノ引上ニ依リ
  マスル收入ヲ、特別ニ目的稅的ニ此燃料政
  策等ニ用ヒルト云フ方針ハ執ッテ居リマセ
  又、是ハ普通ノ國稅竝ニ關稅收入ノ如ク一
  般ノ財源トシマシテ、特ニ之ニ經費ヲ引當
  テルト云フ處置ハ致シマセヌガ、右申シマ
  シタ如ク出來ルダケ燃料政策ニ關シマスル
  經費ハ計上致ス、斯ウ云フ風ナ考ヲ以テ收
  入支出ノ上ニ考慮ヲ致シテ居ル次第デアリ
  マス
  〔國務大臣米內光政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=63

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• 064・米内光政

  ○國務大臣(米内光政君)　十二年度ノ海軍
  豫算ノ中カラ實際外國人ノ手ニ落チマス所
  ノ金ハ三千百万圓デアリマシテ、其中ノ千
  八百万圓ト云フモノハ、全ク油ノ爲ニミス
  ミス外國人ノ手ニヤルヤウナ次第デアリマ
  ス、斯樣ナコトヲ考ヘマスト云フト、一日
  モ速ニ此燃料ノ自給自足ト云フコトガ非常
  ニ願ハシイノデアリマシテ、御質問ノ國內
  ニ於ケル油田ノ資源開發ト云フコトニ付キ
  マシテハ、海軍ト致シマシテモ非常ニ願ハ
  シイコトデゴザイマス、尙ホ北樺太ノ油田
  ニ關シマシテハ、外交工作ニ依リマシテ完
  全ニ、自由ニ其資源ヲ得ルコトガ出來マス
  ルナラバ、洵ニ結構ト考ヘテ居リマス、海
  外ノ油田開發ニ關シマシテハ、昨年十月出
  來上リマシタ所ノ協和鑛業ノ活躍ニ、大イ
  ニ期待ヲ致シテ居リマス、尙ホ戰時ノ油ヲ
  ドウスルカト云フ御質問デアリマシタガ、
  是ハヤハリ平素ニ於キマシテ外國カラ買溜
  ヲスルト云フ外ニ、今日途ガゴザイマセヌ
  ノデアリマス、是等ノ諸點ヲ考ヘマシテ、
  一日モ速ニ自給自足ノ出來マスヤウニ、此
  帝燃會社ト云フモノノ將來ニ對シマシテ、
  非常ナ期待ヲ持ッテ居ル次第デゴザイマス
  (拍手)
  〔政府委員東〓茂德君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=64

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• 065・東郷茂徳

  ○政府委員(東〓茂德君)　石油ニ關シテ國
  際資源ノ分配ニ付キマシテノ見解ヲ御答致
  シマス、日本ノ如ク石油ノ資源ガ乏シイ國
  ニ於キマシテハ、各國間ノ話合ヒヲ付ケマ
  シテ、出來マスレバ資源ヲコチラノ方ニモ
  確保スルト云フコトハ洵ニ政府トシテハ
  望マシイコトニ考ヘテ居ル次第デゴザイマ
  スルガ、尙ホ又最近各國ニ於キマシテモ、
  資源ノ分配ニハ公平ナル方法ヲ執リタイト
  云フコトニ、段々氣持ガ進ンデ參リマシテ、
  「ゼネバ」ニ原料分配ノ委員會モ最近設ケラ
  レマシテ居ル次第デゴザイマスルガ、原料
  ノ分配ハ直接各國ノ利害關係ニ來ル所ガ多
  イノデアリマシテ、其解決ハ必シモ容易ヂ
  ヤナイト思ヒマスルガ、成ベク總テノ機會
  ニ於キマシテ、資源ノ公平ナル分配ヲ爲ス
  ヤウニ、政府トシテモ百方努力致シマシテ、
  其中ニモ最モ我方ニ足ラナイ石油ニ付キマ
  シテハ、出來ルダケ資源ヲ確保致シテ行ク
  ト云フ考デ居リマス、簡單デハアリマスガ、
  以上ヲ以テ御答ト致シマス
  〔政府委員大橋八郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=65

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• 066・大橋八郎

  ○政府委員(大橋八郞君)　只今ノ御質問
  中、現在商工省內ニアリマスル委員會ヲ擴
  大强化シテ、內閣直屬ノ大審議會ヲ設ケタ
  方ガ宜イデハナイカト、斯ウ云フ意味ノ御
  質問ガアリマシタ、御意見ノ點ハ今後篤ト
  〓究ノ上善處致ス考デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=66

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• 067・野田武夫

  ○野田武夫君　政府ノ御答辯ハマダ不十分
  デアリマスルガ、時間ノ關係上委員會ニ讓
  リマシテ、私ノ質疑ハ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=67

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• 068・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　窪井義道君
  〔窪井義道君登壇〕
  〔中井一夫君、「議長、私ガ通告ヲシテ
  居リマスガ······」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=68

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• 069・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　取消シテアリマス、
  私ノ方ニ
  〔「取消シテハアリマセヌ」「進行々々」
  ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=69

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• 070・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　ソレデハ相濟マセ
  ヌガ、御待チ下サイ、今登壇ヲ許シマシタ
  カラ·····窪井君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=70

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• 071・窪井義道

  ○窪井義道君　私ハ只今上程シテゴザイマ
  スル兩法案ニ付テ、極ク簡單ニ政府ノ所信
  ヲ質シタイト思フ者デアリマス、本法案ハ
  恐ラク現内閣ガ天下ニ聲明シテ居リマスル
  所ノ、庶政一新ノ唯一ノモノダト思フノデ
  アリマス、私ハ我國ノ重油ノ源泉ニ乏シイ
  所ノ此國情ニ於キマシテ、政府ガ最モ大膽
  ニ、又率直ニ此我國ノ燃料國策ヲ樹立セン
  トスル所ノ意氣込ニ對シテ、敬意ヲ表スル
  者デアリマス、併ナガラ今日會期切迫シタル
  此時ニ當ッテ、斯ノ如キ重大ナ法案ヲ政府ガ
  出サレ、而モ豫算面ニ於テハ僅ニ五百万圓
  デアリマスケレドモ、其奧ヲ探ッテ見マス
  ルト、只今商工大臣ガ中サレタル如ク、七億
  五千万圓ノ巨費ヲ投ズル所ノ此法律案ヲ、
  僅カ數日ニ會期ガ迫ッテ居ルノニ出サレタ
  ト云フコトニ付テハ、甚ダ遺憾ニ思フ者デ
  アリマス(拍手)今日石油國策ノ重要ナコト
  ハ、今更申上ゲル必要ハナイノデアリマス
  ケレドモ、私共ハ嘗テ石炭ヲ支配スル者ガ
  世界ヲ支配スル者ダ、英吉利ハ石炭ニ依ッテ
  世界各國ニ其勢力ヲ伸バシタノデアリマス、
  今ハ石炭ニ代ッテ、重油ヲ持ッテ居ル所ノ量
  ト云フモノガ其國運ノ進展ヲ量ル一ツノ
  「バロメーター」デアルト云フ時代ニナッテ
  來タノデアリマス、此時代ニ當リマシテ、
  私ハ此國策ヲ誤ッタナラバ、國運ノ進展ヲ害
  スルノミナラズ、折角私共ガ血ノ出ルヤウ
  ナ金ヲ以テ、十數億ニ及ブ所ノ國防豫算ヲ
  協賛シテ居リマスルケレドモ、此國策ヲ誤ッ
  タナラバ、吾々ガ協賛シテ居ル國防ソレ自
  體ニ對シテモ一大脅威ヲ感ジ、折角ノ吾々
  ノ協贊ガ無駄ニナルト云フコトモ考ヘナケ
  レバナラヌノデアリマス(拍手)私ハ此重油
  問題ハ、先程野田君ガ中シマシタヤウニ、
  伊太利ガ「エチオピヤ」ヲ攻メマシタ時ニ、
  歐羅巴諸國ガ石油斷交政策ヲ以テ伊太利ニ
  迫リマシタ時ニ、伊太利ハ、石油ヲ斷交シ
  テ之ヲ封鎖スルナラバ、吾々ニモ最後ノ覺
  悟ガアルト言ッテ歐羅巴ヲ威カシタト云フ
  コトモ、吾々ノ耳ニ新ナルコトデアル、又
  日本ガ日獨協定ヲ結ブト、露西亞ハ吾々ノ
  輸入シテ居ッタ所ノ石油ヲ送ラナクナッタ、
  是程今日國際關係ニ於テモ、亦國防關係ニ
  於テモ重要ナ問題デアルノデアリマス、此
  石油ハ我國ニ於キマシテハ、大正二年デハ
  消費量ガ五十七万瓲デアッタ、所ガ今日僅カ
  ノ間ニ五百万瓲ニ及バントシテ居ルノデア
  リマス、此恐ルベキ速力ヲ以テ需要ノ殖エ
  テ行ク石油ノ原料ガ、日本ニハ先程商工大
  臣ガ申サレタ通リニ、僅ニ八%シカ吾々ノ
  國內ニ生產シナイノデアリマス、デアルカ
  ラドウシテモ此石油ノ國策ヲ樹立シヨウト
  スルナラバ、只今上程サレマシタヤウナ人
  造石油ヲ造ルヨリ外ニハ、日本ノ石油國策
  ハナイノデアリマス、幾ラ國內ノ油田ヲ開
  發シテ見マシタ所デ、日本ノ國內カラ此二
  百万瓲モ、三百万瓲モ出ルト云フコトハ吾
  吾想像ガ出來ナイ、又樺太ノ-是ハ北樺
  太ハ露西亞領デアリマスガ、其借リテ居ル
  吾々ノ權利ヲ開拓シタ所ガ、精々五十万瓲
  トカ六十万瓲ノモノデアルト思フノデアリ
  マイ、滿洲ノ「オイルシェール」ニシテ見タ
  所ガ、今日僅ニ三十万瓲、最後ニ來ルベキ
  モノハドウシテモ此人造石油ヲ造ルヨリ外
  三、日本ノ石油國策ハ立テヤウガナイノ
  デアリマス、此立テヤウノナイ-最後ノ
  吾々ガ考ヘタ所ニ今ノ政府ガ考へ付カレマ
  シテ、サウシテ此機會ニ於テ日本ノ礦油國
  策ヲ樹立サレントシテ居ルノデアリマス、而シ
  テ此政府ハ今議會ニ於キマシテ、之ニ關聯致シマ
  シテ所謂礦油ノ關稅ノ引上、或ハ揮發油ノ課
  稅、其他「アルコール」專賣法案、揮發油及「ア
  ルコール」混用法案、幾多ノ燃料國策ニ關聯
  致シマシテ、重大ナル法案ヲ本議會ニ提出
  シテ居ルノデアリマス、就キマシテハ、私
  ハ是ダケノ重大ナ法案デゴザイマスカラ、
  嘸カシ吾々國民ノ間ニハ何故然ラバ七億圓
  モノ巨費ヲ、今マデナカッタモノヲ俄ニ投ジ
  テ、此國策ヲ樹立シナケレバナラヌカト云
  フ幾多ノ疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併
  ナガラ時間ノ制限モゴザイマスシ、又委員
  會ニ於テモ述ベタイト思ヒマカラ、極ク大
  綱ニ付テ政府當局ノ所見ヲ聽イテ見タイト
  思フノデアリマス
  其第一ハ政府ハ是ダケノ大キナ國策ヲ
  樹立サレテ、又殆ド七ツニ及ブ此關係法案
  ヲ議會ニ提出シテ居ラレマスガ、何故是ダ
  ケノ同ジ石油國策-商工大臣ガ常ニ委員
  會デ申シテ居リマシタ明日ノ戰ニ備ヘル爲
  ニ、鐵及ビ燃料國策ヲ自分ハ執ッテ居ルノデ
  アル、ソレ程重大ナ問題デアルナラバ、何
  故之ヲ政府ハ統一、一括シテ一ツノ委員會
  ナラ委員會ニ付託スルナリ、又陸海軍、商
  工共ニ吾々ト堂々ト此國策ヲ國民ノ前ニ愬
  ヘラレナイカ、一ツ〓〓如何ニモ內證ノモ
  ノヲ出スヤウニ御出シニナッテ居ル、此大キ
  ナ國策ヲ私ハ一ツニ纏メテ、又一ツニ纏メ
  テ審議スルノニ都合ガ好イヤウニ吾々ニ出
  サレルノガ、吾々議會ニ對シテ親切デアリ、
  又國民ニ對シテ親切デアルト思フノデアリ
  やっ、私ハ其點ニ付テ、石油ニ對スル國策
  ノ樹立ト云フコトニ付テ、政府ガ是ダケノ
  費用ヲ以テ出サレテ居ルモノガ-統一シ
  タル一ツノ石油國策ト云フモノノ本當ノ用
  意ガ、政府全體ニ出來テ居ルカドウカト云
  フコトニ付テモ疑ヲ持ツノデアリマス、隨
  テ私ハ政府ニ對シテ、先ヅ第一點ニ御尋シ
  タイト思ヒマスノハ、本法案ヲ提出致サレ
  マシタ所ノ根本的ノ根據ト云フモノニ付テ
  御尋シタイノデアリマス
  今マデ私共ノ當識デ知ッテ居リマシタ所
  ニ依ッテハ、日本ニ於テ本當ニ石炭液化ガ出
  來ルモノカドウカ、或ハ噂ニ聞クト、直接
  法トカ或ハ混合法トカ、或ハ低溫乾溜ト云
  フヤウナ言葉ハ私共常ニ聞イテ居ッタノデ
  アリマスガ、是ハ今日マデ工業化サレテ居
  ナイ、サレテ居ルナラバ今日立派ナ工業ガ
  興ッテ居ナケレバナラヌト思フノデアリマス
  ガ、政府ガ俄ニ此七億五千万圓モ要スル所
  ノ厖大ナル豫算ヲ伴フ法案ヲ出サレタコト
  ニ付テハ、此會期切迫ノ間際ニ出サレクコト
  ニ付テハドウ云フ譯デ今日此法案ヲ提出
  シナケレバナラヌカ、又ドウ云フ基礎、信
  念ニ依ッテ提出サレタカト云フコトヲ御聽
  キシタイノデアリマス、ソレハモウ少シ分
  リ易ク申上ゲマスト云フト、先程商工大臣
  ガ中サレマシタガ、直接法トカ、合成法ト
  カ、低溫乾溜ト云フモノガ、本當ニ工業化
  サレテ行ク自信ガアルノカ、ナイノカ、自
  信ガアッテ初メテ御提案ニナッタト思ヒマス
  ガ、然ラバドウ云フヤウニ今日日本ノ國內
  ニ於テ現在是等ノモノガ成績ヲ示シテ居ル
  カ、及ビ將來ドウ云フ見透シノ下ニ、是ダ
  ケノ金ヲ出シタカト云フコトニ付テ明確ナ
  ル御答辯ヲ得タイノデアリマス
  其點ハ先程ノ野田君ト重複スル點ハ避ケ
  マシテ、私ハ第二點ト致シマシテ、一體此
  一億圓ノ會社ト云フモノハ、政府ガ五千万
  圓負擔シテ、民間ガ五千万圓ト言ハレマス
  ケレドモ、豫算總會デ商工大臣ガ述べラ
  レマシタ所ニ依ルト、此二百万瓲ノ重油、
  揮發油ヲ製造スルノニハ七億圓ノ金ガ要ル
  ノダ、サウスルト七億圓!金ト云フモノ
  ハ、民間ノ方ハ一向自分ノ方デ出サナイデ、
  政府ノ補助ヲ貰ッテヤル積リデ居ル、斯ウ私
  ハ解釋出來ルト思フ、サウスルト純然タル
  是ハ補助會社デアッテ、投資會社トハ思ハレ
  ナイ、民間ノ方ハ僅カ五千万圓金ヲ出シテ、
  而モソレガ六分ノ補助ヲ受ケテ居ル、サウ
  スルト七億圓ト云フモノハ全部政府ガ、損
  シヨウガドウシヨウガ持タナケレバナラヌ
  ト云フ風ニ私ハナルト思フ、デアリマ
  スカラ、斯ウ云フ種類ノ會社ヲ御造リ
  ニナルナラバ、今少シ政府ハ考フベキ點ガ
  アッタノヂヤナカラウカ、ソレハ私ハ今期議
  會ニ於キマシテモ、所謂礦油ノ關稅ト、ソ
  レカラ揮發油ト兩方合セマスト云フト、約
  四千万圓ノ金ガ一般會計ニ入ッテ居ル、詰リ
  是等ノ金ガ一般會計ニ入ッテ居ルト云フコ
  トハ、是ハ商工大臣ガ度々言ハレルヤウ
  ニ、明日ノ戰時ニ備ヘル爲ニ、日本ノ燃料
  國策ヲ樹立スル爲ノ金デアル、其爲ニ此稅
  金ヲ取ルノダ、斯ウ言ハレルナラバ、ソレ
  ト私ハ關聯シテ是等ノ財源ニ何カ振當テラ
  レル所ノ商工大臣ハ御考ガアルノカナイノ
  カト云フ點ヲ御聽シタイ
  第三點ハ、商工大臣ハ七年後ニ於テハ二
  百万瓲ノ重油、揮發油ガ出來ルト仰シヤ
  ル、サウスルト私ハ商工大臣ノ言ハレル通
  リニ、是ガ理想通リニ行ッタト假定シマス
  ト云フト、現在日本ガ外國カラ輸入シテ居
  リマス量ヲ大體七年間ズット持ッテ行ッテ、現
  狀維持ノ結果ニナリハシナイカ、七年後モ
  現在モ外國カラ輸入スル所ノ礦油ノ量ト云
  フモノハ同ジデアリマス、商工大臣カラ戴
  イタ表ヲ見テモ同ジデアリマス、サウスル
  ト、自給自足ト言ハレルケレドモ、自給自
  足ノ一部ヲ補フニ過ギズシテ、寧ロ私ハ現
  狀維持ノ案デ、七億圓ノ金ヲ投ズル結果ニ
  ドウセ好ク行ッタトシテモナル、サウスルト
  本當ノ日本ノ燃料國策ニナラナイノヂヤナ
  イカト云フコトヲ考へルノデアリマス、此
  點ハ私ハ現在ヨリモット餘計輸入スルヤウ
  ニナルト思フノデアリマス、其點ヲ商工大
  臣ニ御伺シタイノデアリマス、更ニ先刻野
  田君ガ御聽キニナッタノデアリマスガ、私ハ
  此燃料國策ト云フモノト、石炭トノ關係ヲ
  聽キタイノデアリマス、燃料ノ石炭ハ約一
  千万瓲要リマス、サウシテ商工大臣ガ言ハ
  レルヤウニ、鐵國策ヲ御樹テニナルコトニ
  付テハ、私ハ約一千万瓲ノ熔鑛爐ノ設備ヲ
  シナケレバナラヌト思フ、ソレニ對シテ殖
  エル所ノ石炭ガ約千五百万瓲、サウスルト
  此一千万瓲ト千五百万瓲ニ對シテ鐵道運
  輸或ハ船舶、サウ云フ關係ニ於テ五百万
  瓲位殖エルト思ヒマス、約三千万瓲ノ石炭
  ガ七年後ニ此政策及ビ商工大臣ノ言ハレル
  鐵及ビ燃料國策ヲ實行スルト云フト殖エテ
  來ル、現在ノ約四千万瓲ノ石炭ノ倍ニ殖エマ
  スルガ、果シテサウ云フ鐵ト燃料ノ國策
  ヲ、商工大臣ガ行ハレントスルナラバ、サ
  ウ云フ結果ヲ必然的ニ伴フモノト思フノデ
  アリマスルガ、果シテソレガ實行出來ルモ
  ノデアルカドウカト云フ點ヲ御伺シタイノ
  デアリマス
  私ハ極ク總括的ニ御質問申上ゲタノデア
  リマスガ、最後ニ私ハ陸海軍大臣ニ御質問
  致シタイト思フノデアリマス、ソレハ本議
  會ニ於テ鐵及ビ燃料ニ關シテ幾多ノ法案ヲ
  御提出ニナッテ居ルノデアリマスルガ、鐵ノ
  國策ヲ私共拜見致シテ見マスルニ、大體ニ
  於テ日本內地ニ於ケル自給自足ヲスル爲
  ニ、昭和十四年ニナッタナラバ、ソレガ完全
  ナリト斯ウ仰シヤッテ居ル、併ナガラ今日我
  國ノ鐵ノ熔鑛爐ニ使ッテ居リマスル所ノ原料
  ノ約八〇%ハ、南洋方面カラ參ッテ居ルノデ
  アリマス、燃料ニ付テモ同ジヤウニ、大體
  七、八〇%ハ外國カラ之ヲ仰イテ居ルノデ
  アリマス、サウ致シマスルト云フト、私共ハ
  玆ニ國防豫算ニ協贊スル上ニ於テ、國防ト
  云フモノト鐵、燃料國策トノ關係ニ付テ考
  ヘテ見ザルヲ得ナイノデアリマス、軍備國
  防ト云フモノハ國運ヲ發展サス上ニ於テ、
  又國家在立ノ上ニ於テ必要デゴザイマスケ
  レドモガ、片一方ニ於テ產業ノ發達ノ後
  ノ大キナル控ヘトシテノ國防ガ必要デ
  アルト同時ニ、何時モ軍備ト云フモノハ
  戰爭ヲスル爲ニ備へテ居ルノデアリマ
  ス、所謂戰ヲスル場合、卽チ我國ト外國
  トガ國家ノ體面ヲ汚シ、或ハ國家存立
  上意見ノ衝突ヲ來シタ場合ニ當ッテハ、戰
  端ヲ開カナケレバナラヌノデアリマス、デ
  アリマスルカラ私共ハ今日此商工大臣ナ
  リ、政府ノ執ッテ居ラレル國防政策ト云フモ
  ノハ、所謂燃料及ビ鐵政策ト云フモノハ、
  七年乃至十年ノ數年後ヲ豫想シテ作ラレタ
  案デアリマスルケレドモガ、今日我國ガ外
  國ト戰ヲ起スニ至ッタト云フ場合ニ當ッテ、
  私ハ日本內地ノ熔鑛爐-此日本內地ニ於
  ケル鐵ト云フモノノ八〇%外ノ鑛石ヲ、外國
  カラ輸入シテ居リマスルト致シマスルト云
  フト、熔鑛爐ノ火ガ止ッテシマフデハナイカ、
  日本ノ總テノ鐵ト云フモノハ生產出來ナク
  ナルモノデハナイカ、又恐ラク鐵ト燃料ト
  云フモノハ軍需必要品デアリマスルカラシ
  テ、戰時ノ場合ハ中立國カラ、或ハ其他ノ
  國カラ輸入ガ私ハ出來ナイト思フ、サウス
  ルト此七、八〇%ノ原料ヲ仰イデ居ル所ノ
  鐵及ビ燃料ト云フモノガ、外國カラ來ナク
  ナッタ場合ニ於テ、果シテ日本ノ本當ノ國防
  計畫ト云フモノガ、樹立サレルモノデアル
  カドウカ、私ハ此點ハ私ノミナラズ、國民
  ガ齊シク心配シテ居ル點デアリ、又今日燃
  料興業株式會社法案ト云フモノガ提出サレ
  タノモ、此問題ノ解決ニ資センガ爲ニ七億
  圓ト云フ巨費ヲ投ジテ、提出サレタモノダ
  ト思フノデアリマス、就テハ私ハ陸海軍大
  臣ニ御伺スルノデアリマスルガ、亞米利加
  及ビ南洋カラ是等ノ日本ニナイ所ノ鐵及ビ
  燃料ノ資源ガ參リマスルケレドモガ、是ガ
  明日戰爭ガアッタト致シマシタナラバ、是ハ
  日本ニ來ルモノカ來ナイモノカ、私ハ國際
  法上カラ觀マスルト云フト、來ナイト思フ
  ノデアリマスガ、來ナイデモ我國ノ國防ハ
  安全デアルカドウカ、吾々國民ガ是ガ不安
  全デアルト云フコトニナルト、現在協賛シ
  テ居リマス所ノ十五億ノ國防費ト云フモノ
  ハ、不安全デ所謂國民ガ安心出來ナイ、國
  軍ニ信賴出來ナイケレドモガ、金ヲ出シテ
  居ルト云フ結果ニナルノデアリマスカラ、
  此點ニ付テ國民ガ安心ヲ致シマスルヤウニ、
  私ハ陸海軍當局カラ【本當ニ我國ガ斯ル場
  合ニ、最モ我國ノ國ヲ護ル上ニ於テ、國軍
  ガ果シテ大丈夫デアルカドウカト云フコト
  ニ付テ、十分ナル國民ガ納得スルヤウナ御
  答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、而シテ私ハ
  成ベク陸海軍當局ニ於カレマシテハ、此點
  ハ私共ガ常識的ニ國民ノ一人ト致シマシテ、
  原料ノナイ此日本ノ國ガ、果シテ今戰爭出
  來ルカドウカト云フコトニ付テハ、一六.
  不安ヲ等シク持ッテ居ルモノデゴザイマス
  ルカラシテ、成ベク私ハ祕密會デナクテ、
  國民ノ納得ノ行クヤウナ十分ナル御說明ヲ
  願ヒタイト思フノデアリマス、以上ノ諸點
  ニ付テ政府ノ御親切ナル御答辯ヲ御願致シ
  マス(拍手)
  〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=71

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• 072・伍堂卓雄

  ○國務大臣(伍堂卓雄君)　窪井君ノ御質問
  ニ御答致シマス、重要資源デアリマス鐵ト
  燃料ニ對シテ、政府全體トシテノ協定ナリ、
  打合セナリガアッタカト云フ御質問ガ、初メ
  ニアッタト思ヒマスルガ、是ハ今囘ノ製鐵事
  業法案竝ニ只今提出シマシタ二法案ハ、殆
  ド各省カラノ代表者ヲ集メ、ソレニ資源局
  モ入リマシテ、相當長期ニ亙ッテ審議致シ、
  尙ホ之ニ滿洲ノ代表機關モ入リマシテ審議
  致シタ結果デアリマシテ、是ハ單ニ商工省
  ノ案デハナイノデアリマス
  ソレカラ次ニ石炭ノ液化竝ニ合成石油ニ
  對スル確信ガアルカドウカト云フ御質問デ
  アリマスガ、是ハ極メテ新シイ事業デアリマ
  シテ、主トシテ獨逸ニ於テ急速ノ發展ヲ見
  タノデアリマス、私ハ一年前ニ獨逸へ參リ
  マシテ、親シク是等ノ狀況ヲ觀マシテ、又
  獨逸ニ於キマシテモ急速ニ此事業ヲ工業化
  シ、サウシテ自給自足ヲ圖ッテ居ル實情カ
  ラ考ヘマシテ、心配ハナイト確信スルノデ
  アリマス、日本ニ於キマシテハマダ液化法、
  合成法ヲ工業化シテ居ル所ハアリマセヌ、
  是ガ計畫ニ著手シ、建設ニ掛ッテ居リマス所
  ハ先程申シマシタ三箇所デアリマス、撫順
  ニ於ケル滿鐵ノ施設、ソレカラ九州ニ於ケ
  ル三井ノ施設、朝鮮ニ於ケル野口經營ノ施
  設是ハマダ生產ヲ出ス所ニハ行ッテ居リ
  マセヌガ、著々進行中デアリマス
  ソレカラ七年ノ輸入額ハ現狀通リデアッ
  テ、自給自足ニナラナイノデハナイカ、勿
  論サウデアリマシテ、唯是カラ先殖エマス
  ダケノ量ヲ、七年後ノ能力ニ依ッテ供給シテ
  行カウト云フノデアリマシテ、數字ノ上
  ニ-差上ゲマシタ表ノ上ニ依然トシテ百万
  竏ノ揮發油ハ輸入ニ俟タナケレバナラズ、
  又重油ニ於テモ、ヤハリ今日ノ輸入額ダケ
  ヲ輸入シナケレバナラヌコトニナッテ居リ
  マスガ、是ハ豫定スルコトハ出來マセヌケ
  レドモ、天然油田ノ開發ニ依ッテ、此額ハ相
  當減ルモノト考ヘテ居リマス、ソレカラ石
  炭ノ問題デアリマスルガ、是ハ先刻モ御答
  致シマシタ通リ、此各省、資源局、滿洲代
  表者ノ寄リマシタ審議會ニ於キマシテ、日
  滿協力シテ行ヒ得ルコトノ豫定ガ付キマシ
  ク、是ハ數字上ノコトデアリマスカラ、寧
  ロ表ニ依ッテ差上ゲタ方ガ却テ宜カラウカ
  ト考ヘルノデアリマス
  〔國務大臣米内光政君登壇)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=72

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• 073・米内光政

  ○國務大臣(米內光政君)　窪井君ニ御答致
  シマス、明日ニデモ戰爭ガ起リマシテ、國
  家危急存亡ノ場合ニハ、現狀ヲ以チマシテ
  敢然トシテ起ツト云フヨリ外ニ仕方ガナイ
  ト思ッテ居リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=73

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• 074・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　窪井君、モウ宜ウ
  ゴザイマスカ-窪井君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=74

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• 075・窪井義道

  ○窪井義道君、　只今ノ御答辯デハ、果シテ
  一旦緩急アル場合ニ、國民ガ安心スルカド
  ウカ、此事ニ付テ甚ダ不滿足デアリマスケ
  レドモ、併ナガラソレニ任セテ、敢然トシ
  テ自信ガアル、斯ウ言ハレルノデアリマス
  カラ、是レ以上ハ御尋申上ゲマセヌガ、委
  員會ニ於テ御質問申上ゲルコトニシテ、私
  ノ質問ハ是デ終了致シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=75

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• 076・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　中井君、先程ハコ
  チラノ誤解デ少シ順序ヲ取違ヘマシテ遺憾
  ニ存ジマス、是ヨリ御登壇ヲ願ヒマス
  〔中井一夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=76

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• 077・中井一夫

  ○中井一夫君　本案ハ洵ニ重大ナ案デハア
  リマスルケレドモ、詳細ナ點ハ總テ委員會
  ニ讓リマシテ、本日ハ其根本的ナル數點
  ニ付テノミ政府ノ所信ヲ簡潔ニ御伺シタイ
  ト存ジマス、政府ニ於カレマシテモ、率直
  ナル御答辯ヲ賜ハランコトヲ御願致シマス
  只今窪井君ノ國防ニ關スル質問ニ對シマ
  シテ、海軍大臣ハ一朝事有ル場合ニハ敢然
  トシテ起ツト云フコトヲ仰セラレタノデア
  リマスガ、私共ハ此御答辯悲壯ナルモノアリ
  トハ存ジマシタケレドモ、却テ此御答辯ノ
  爲ニ心配ヲセナケレバナラヌコトヲ發見致
  シマシタカラ、押シテ私ヨリ御尋ヲ致シマ
  ス、只今商工大臣ガ此壇上ニ於テ御發表ニ
  ナリマシタ數字ニ依リマシテモ、昭和十八
  年度ニ於テサヘモ、揮發油ノ不足額ハ百万
  瓲重油ノ不足額ハ百六十餘万瓲ニ及ブノ
  デアリマス、隨ヒマシテ合計シテ一一百五六
  十万瓲、其外石油ニ關スル色々ナ燈油、輕
  油其他ノモノヲ入レマスルナラバ、容易ナ
  ラヌ不足ガ生ズベキコトハ明白デアリマス、
  平常ノ時ニ於テサヘ是ダケノ不足ガアル、
  若シ萬一一朝事有リマスル場合ニ於テ、石
  油ヲ有ユル動力ト致シテ居ル今日ノ軍艦、
  飛行機、「タンク」、一切ノ國防武器、之ヲ
  動カスニ如何ニセラレルカト云フコト
  ハ、所謂專門ノ軍人デナクテモ、吾々國民
  一同ノ深憂ニ堪ヘナイトスル所デアリマ
  ス、然ルニ此窪井君ノ御質問ニ對シマシ
  テ、唯敢然トシテ起ツト云フ御答ダケデ
  ハ、吾々ドウシテ承服スルコトガ出來ナイ
  ノデアリマス、此國防ニ關スル問題ニ付キ
  マシテハ、固ヨリ重大ナル意味ノ含マレ
  テ居リマスルコトハ、私萬々承知致シテ居
  リマスルケレドモ、旣ニ一タビ此公開ノ壇
  上ニ於テ、此問題ガ公衆ノ面前ニ於テ問題
  トナリマシタ以上ハ、海軍大臣ハモット親
  切ニ國民ノ此深憂ニ對シテ安心ヲセシメル
  ダケノ御覺悟ヲ以テ、御答辯ニナルベキ義
  務ガアルト私ハ思ヒマス(拍手)重ネテ御伺
  ヲ致スノデアリマスルカラ、更メテ此點ニ
  關スル御答辯ヲ願ヒタイト存ジマス
  次ニ大藏大臣ニ御伺致スノデゴザイマス
  ガ、此度ノ法案ニ依リマスト云フト、資本
  金額ハ一億、社債ハ三億、更ニ商工大臣ノ
  御說明ヲ以テスレバ、其事業計畫資金ハ七
  億五千万圓ニ及ブト云フコトデアリマス、
  最近半官半民ノ會社ガ續々ト出來テ參ルノ
  デアリマシテ、昨年度ノ御計畫ニ依リマシ
  テモ、南洋拓殖、東方興業、東北振興電力
  會社、又本年現ニ豫算ニ於テ問題ニナッテ
  居リマスル所ノ滿洲拓殖株式會社、朝鮮林
  業開發株式會社ノ如キモ、皆同工異曲ノ會
  社デアリマス、而モ尙ホ此上ニ或ハ恩給金
  庫農村負債整理資金、其他色々ナル債劵、
  社債等ガ、其資本金ノ數倍、多キハ十數倍
  ニ亙ッテ募集スルコトガ出來ルト云フヤウ
  ナ風ニナッテ居ルノデアリマシテ、私ノ寡聞
  ヲ以テ致シマシテモ、ザット計算致シテ二十
  億ニ達シテ居ルノデアリマス、而モ一面我
  國ノ財政狀態ヲ見マスルナラバ、一般豫算、
  特別會計合セマシテ、赤字公債ハ九億以上
  ニ相成ッタト承知ヲ致シテ居リマス、而モ他
  面預金部ノ中心ヲ成シテ居リマスル我國ノ
  郵便貯金ノ關係ヲ見マスルト云フト、多ク
  テモ二億五千万圓、少ケレバ一億位ノ間ヲ
  上下致シツヽ年々殖エテ居ルト云フヤウナ
  狀態デアリマス、斯ウ云フ情勢ニ於キマシ
  テ、果シテ斯樣ナ大キナ金ヲドン〓〓募集
  シ、ドン〓〓之ヲ使フト云フコトガ出來ル
  ノデアラウカ、先般大藏大臣ハ此壇上ニ於
  キマシテ、財政計畫ノ見透シガ付カヌト仰
  セラレマシクガ、是デハ眞ニ其見透シガオ
  付キニナラヌ筈デアラウト思フノデアリマ
  ス、此問題ハ我國ノ財政上ノ問題トシテ、
  洵ニ將來重要ナル關係ヲ各方面ニ及ボスモ
  ノト存ジマスルカラシテ、此際大藏大臣ノ
  御所見ヲ承リタイト存ジマス
  次ニ商工大臣ニ承リタイノデアリマスル
  ガ、先程此壇上ニ於テノ御說明ニ依リマス
  ルト云フト、本案ニ依ル計畫ハ七億五千万
  圓ニ及ブト云フコトデアリマス、私共ノ承
  知致ス所ニ依リマスルト云フト、此會社ハ
  固ヨリ投資會社デアリ、親會社デアリマス
  ルカラ、所謂石油ノ人造工業會社ト云フモ
  ノハ、子會社トシテ所々方々ニ出來ル筈デ
  アリマス、隨テ此會社ヨリハ三億五千万圓
  位ヲ目當トシテ投資セラレルノデアリマセ
  ウシ、其半額三億五千万圓ハ民間ヨリ之ヲ
  出サシテ、サウシテ事業會社ヲ作ラルベキ
  コトト承知致シテ居ルノデアリマス、然ル
  ニ今日我國ノ國情ヲ以テ致シマシテハ民
  間ノ實力カラ考ヘテ見テ、三億五千万圓ノ
  會社ヲ作上ゲルト云フコトハ-資本金ノ
  合計デアリマスルケレドモ、作上ゲルト云
  フコトハ容易ナラヌコトデアルト思フノデ
  アリマス、果シテ政府玆ニ太鼓ヲ叩カレテ、
  此大會社ヲ作ラレタガ、民間之ニ追隨シテ、
  政府ノ所謂石油國策ノ目的ヲ遂行セシムル
  コトガ、出來ルデアラウカドウカト云フコト
  ニ付テハ、私ハ疑ヲ持タザルヲ得ヌノデアリ
  ママ、商工大臣ノ此點ニ關スル見透シヲ承
  リタイト存ジマス、尙ホ此會社ガ出來マシテ
  後作ラレル人造石油ハ、「ガソリン」ト重油デ
  アリマスルガ、其重要ナル問題トナッテ居リマ
  スル「ガソリン」ダケニ付テ之ヲ見マスル時、
  其「コスト」ハ一「ガロン」七十錢位デアルト
  承知致スノデアリマス、然ルニ今日現在ノ
  「ガソリン」ノ「コスト」ハ、四十錢以內デア
  リマス、此度消費稅竝ニ關稅ノ引上ニ依リ
  マシテ、「ガロン」十錢ノ値上ヲスルト致
  シマシテモ卽チ五十錢、其差額二十錢ト云
  フモノガアルノデアリマスルガ、此儘ヤッテ
  行ケバ、此會社ニ依ル所ノ事業ト云フモノ
  ハ、經濟的ニハ立行キマセヌ、之ヲドウセ
  ラレルカ、卽チ一ツノ方法ハ、足ラヌダケ
  ヲ政府ガ補給金ヲ出シテ補ハセルト云フコ
  トガ、其一ツデアリマセウシ、更ニ又足ラ
  ヌダケヲ關稅若クハ消費稅等ヲ增徵シテ、
  新會社ガヤッテ行ケルヤウニシテヤルト云
  フコトモ其一ツデアリマセウ、但シ私ハ此
  問題ニ付テ特ニ政府ノ御注意ヲ煩シタイト
  思フコトガゴザイマス、ソレハ從來我國ニ
  ハ石油ノ六大會社、七大會社ト云フモノガ
  アリマスガ、此會社等ガ寄リマシテ、石油
  ノ値ヲ協定シテ引上ゲツヽアッタコトハ、先
  程同僚議員ノ申サレタ通リデアリマス、故
  ニ此會社ノ經濟的ノ存立ヲ可能ナラシメル
  ガ爲ニ、從來ノ如ク協定ニ依ッテ、唯石油ノ
  市價ヲ引上ゲラレルト云フコトデアルナラ
  バ、我國ノ輸入「ガソリン」約三億、其中ノ
  一億五千「ガロン」ト云フモノハ、純然タル
  輸入ニ俟ツ外ハナイノデアリマスルガ、十
  錢彼等ニ利益ヲ與ヘテモ千五百万圓、二十
  錢利益ヲ與ヘマスルナラバ三千万圓ト云フ
  モノハ、無意味ニ外國ニ出シテシマフコト
  ニナルノデアリマス、隨テ政府ガ此會社ヲ
  作ラレルト云フコトニナリマシテカラ、此
  「ガソリン」ノ値上ト云フコトニ付キマシテ
  ハ、如何ナル方策ヲ以テ御進ミニナルカト
  云フコトハ、將來各方面ニ色々重要ナル問
  題ヲ提供スルコトデアルト思フノデアリマ
  ス、此點ニ付テ商工大臣ノ所見ヲ承リタイ
  ト存ジマス
  次ニハ此會社ノ株式ノ募集ニ關スル問題
  デアリマスルガ、私共ノ從來承ッテ居ル所ニ
  依リマスルト、所謂我國ノ富豪ガ非常ナ犠
  牲ヲ忍ビマシテ、此會社ニ出資ヲスルト云
  フコトヲ聞イテ居ッタノデアリマス、然ルニ
  此法案ヲ見マスルト、十年ノ久シキニ亙リ
  マシテ、一年利廻四分乃至六分ノ保證ヲ政
  府ガ致シテ居ラレマス、三億ノ社債ニ對シ
  テモ、政府ハ保證ヲサレテ居リマス、更ニ
  所得稅竝ニ營業收益稅等ノ免除ガ久シク續
  クト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマス
  ルカラ、此會社ニ投資ヲスルト云フコト
  ハ、必シモ不利益ナコトデハナイト思ヒマ
  ス、現ニ公債三分五厘ノモノアリ、郵便貯
  金ハ三分デス、ソレヲ思ヒマスルト、此會
  社ノ株ヲ持ツト云フコトハ、必シモ犠牲デ
  ハナイト思フノデアリマス、故ニ政府ノ持
  タレル株ノ殘リノ半分ト云フモノハ寧口
  一般ニ公募セラレルコトガ適當デハナイノ
  カ、或ハ又何等カ信ゼラレル所ガアッテ、特
  別ナル人々ノ間ニ之ヲ分チ與ヘントセラレ
  ルノカ、之ニ關スル御所見ヲ承リタイト存
  ジテ居リマス
  最後ニ唯一點、我國ノ石油國策ノ根本ト
  ナリマシタ石油業法ノ執行ニ關シマシテ、
  政府ノ監督上重大ナル失態ガアルノデアリ
  マヽ、此問題ヲ承リタイト思ヒマス、石油
  業法ハ御承知ノ通リ、昭和九年ノ第六十五
  議會ニ於テ制定ヲサレタノデアリマスル
  ガ、其主タ目的トスル所ハ·····
  〔田淵豐吉君「議長、注意セイ」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=77

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• 078・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　田淵君、靜ニ-
  田淵君、注意シマス
  〔田淵豐吉君「議長、シツカリセイ、退
  場ヲ命ズルナラ退場ヲ命ジロ」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=78

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• 079・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　退場ヲ命ジマス
  退場ナサイ
  〔田淵豐吉君何事カ發言ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=79

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• 080・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　早ク退場ナサイ
  守衞、早ク執行··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=80

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• 081・中井一夫

  ○中井一夫君(續)　此石油業法ト云フモノ
  ハ、昭和九年ノ第六十五議會ニ制定サレタ
  モノデアリマスガ、此目的ハ固ヨリ石油ヲ
  輸入スル者ヲシテ、其半年分ヲ我國ニ所有
  セシムルト云フコトガ、重要ナル目的デアッタ
  ノデアリマス、隨ヒマシテ此石油業法ガ布
  カレマスルト、勅令ニ依リマシテ此義務ト
  云フモノハ、翌年ノ昭和十年ノ十月迄ニ之
  ヲ履行セネバナラヌト云フコトニ定メラレ
  タノデアリマス、之ニ依リマシテ我ガ國內
  ノ石油業者ハ、皆其履行ヲ致シタノデアリマ
  スノニ、獨リ「ライヂングサン」ト「スタンダー
  ド」ノ英米兩會社ダケガ、此履行義務ヲ履行
  シヨウト致サナカッタノデアリマス、石油業法ニ
  ハ斯ル場合ニハ、重大ナル罰則ガ決メラレテア
  ルノデアリマシテ、是等ノ不履行ノ輸入業者
  ニ對シテハ、五千圓以下ノ罰金ニ處スルコ
  トガ出來ル譯ナノデアリマス、然ルニ政府
  ハ之ヲ敢テ爲サラウトハシナイ、英米兩會
  社ガ其責任ノ履行ヲ爲スコトヲ拒ミツヽア
  ル情勢ヲ見マスルト云フト、突如ト致シテ
  此履行期限ヲ、勅令ヲ態、變更シテ先ニ延
  バサレテ、昭和十一年ノ七月マデ之ヲ延期
  ニ相成ッタノデアリマス、其後ドウナッタカ
  ト申シマスルト、今日ニ至リマスルマデ旣
  ニ十箇月ヲ經過致シテ居ルニ拘リマセズ、
  英米兩會社ダケハ、六箇月分ノ中ノ三箇月
  分ダケハ貯油ヲシテ、殘リノ三箇月分ハ貯
  油ヲ致サヌノデアリマス、卽チ之ニ依リマ
  シテ日本ノ業者ハ、正直ニ非常ナル犠牲ヲ
  拂ッテ貯油ヲ致シテ、數千万圓ノ金ヲ寢セテ
  居ル、然ルニ英米兩會社ハ日本ノ法律ニ從ハ
  ナイデ平氣デ居ルト云フ事情ガ起ッテ參ッテ
  居ルノデアリマス、斯ノ如キ狀態ハ果シテ
  國威ヲ毀損スル行爲デハゴザイマセヌカ、
  政府ハ何故日本人ニ對シテハ强イケレドモ、
  外國人ニ對シテハ左樣ナル遠慮ヲナサルノ
  デアルカ、若シ又此貯油義務ヲ嚴重ニ履行
  セシメルト云フコトニナルナラバ、英米兩
  會社ガ「ボイコット」ヲヤッテ、其石油ヲ日本ニ
  持ッテ來ナイト云フヤウナ事態ガ起ルカモ
  知レヌト云フコトヲ御心配ニナルノデアリ
  マスルナラバ、何故此石油業法ヲ制定ナサ
  ル前ニ於テ、是等ノ會社トノ間ニモ然ルベ
  キ、協定ト申シマスルカ、諒解ト申シマス
  ルカ、之ヲ得ラレテ置カナカッタノデアル
  カ、何レニ致シマシテモ、此石油業法ヲ外
  國人デアルガ故ニ履行シナイ、外國人デア
  ルガ故ニ政府ハ又其履行ヲ迫ルコトガ出來
  ナイト云フコトハ、甚ダ遺憾ニ堪ヘナイ所
  デアルト存ジマス、此點ニ關シマシテ政府
  ハ此問題ヲ將來ドウ解決セラレルカ、又其
  責任ニ付キマシテ、之ヲ如何ニ考ヘテ居ラ
  レルカト云フコトヲ承リマシテ、私ノ質問
  ヲ終リタイト存ジマス(拍手)
  〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=81

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• 082・伍堂卓雄

  ○國務大臣(伍堂卓雄君)　中井サンノ御質
  問ニ御答致シマス、此七億ノ巨額ヲ要スル
  會社ヲ起スコトノ見込ガアルカドウカ、見透
  シハドウカト云フ御質問ニ對シマシテハ、非
  常ニ有利ナ條件デアリマスルカラ、私ハ之
  ニ參加スル者ハ澤山アルト思フノデアリマ
  ス、大體ニ於キマシテ此單位ハ十万竏位ニ
  スルノガ一番宜カラウト思ヒマス、サウ致
  シマスト十ノ會社ガ必要ナノデアリマスル
  ガ、勿論是ハ十万ガ二十万ニナッテモ、尙
  ホ宜イノデアリマス、現ニ出來テ居リマス
  ル三會社等トモ交涉致シマシテ、是ノ擴張
  ヲ慫慂シヨウト考ヘテ居ルノデアリマス、
  ソレカラ生產費ト市價トノ差額ハ、消費者
  ニ轉嫁サレルコトニナルノデハナイカト云
  フ御質問ニ對シマシテ、先刻モ御答申シマ
  シタ通リ、是ハ原則トシテ助成金ヲ以テ七
  箇年間ニ約九千五百万圓ヲ豫定シテ居ルノ
  デアリマシテ、其七箇年後ニ豫定ノ通リ參
  リマスレバ、市價ト生產費ガ略、同ジニナル
  見込デアリマス、次ニ株ニ付キマシテハ、
  成ベク御趣意ニ副フヤウニ之ヲ民衆化シタ
  イト云フ考デ居リマス、最後ニ六箇月間ノ
  保有量ノコトデアリマス、御話ノ通リニ外
  國商社ガ中々之ニ應ジナカッタノデアリマ
  スルガ、最近此問題ハ解決致シマシテ、從
  來取引關係ガアル日本商社ノ協力ヲ得テ實
  行スルコトニ目下準備中デアリマス
  〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=82

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• 083・結城豊太郎

  ○國務大臣(結城豊太郞君)　御答ヲ申上ゲ
  やく、帝國燃料興業株式會社ノ資本金ガ一
  億デ、其半分ヲ政府ガ出資致シマス、其外
  ニ七億ノ金ガ要リマスノデ、七年間ニ六億
  ノ金ガ要リマス、其半分詰リ三億ヲ社債ノ
  形ニ於テ政府ガ投資スルコトニナッテ居ル
  ノデアリマス、七箇年間ニ是ダケノ金ヲ出
  スノデアリマスルガ、是ハ重要國策ノ一ツ
  トシテ、此事業ヲ助成スルコトガ必要デア
  ラウト存ジマシテ、御協賛ヲ求メテ居ル次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=83

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• 084・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　他ニ政府ノ答辯ハ
  ナイヤウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=84

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• 085・中井一夫

  ○中井一夫君　只今大藏大臣ノ答辯ハ何ヲ
  言ハレルノデアルカ、私共ノ質問ニ對シテ
  何等御答辯ナカリシト同ジ御答辯デアリマ
  ス、是ハ洵ニ大藏大臣トシテハ、所謂痛イ
  質問デアルカモ知レヌケレドモ、左樣ナ顧
  ミテ他ヲ言フヤウナコトデハ、ソレコソ財
  政ノ將來ノ見込ハ付カナイト云フコトニナ
  ルノデハナイカト思ヒマス、甚ダ遺憾ニ存
  ジマス、尙ホ海軍大臣ニ付キマシテハ、何
  故自ラ立ッテ、ソレコソ毅然トシテ御答辯ニ
  相成ラヌカ、自分ヲ信ジヨト言ハレルノモ
  其答辯デアリマス、此私ノ質問ニ對シテ答
  辯ヲセラレヌト云フコトハ、非常時日本ダ
  ト軍部大臣ガ常ニ言ハレテモ、餘リニモ非
  常時大臣ラシクナイ態度デアルコトヲ殘念
  ニ思ヒマス、私共ハ貯油ノ何處ニアルカ、
  其數量ハ幾ラダナント云フヤウナ、愚ナル
  質問ヲ致シテ居ルノデハナイノデアリマ
  ス、故ニ其範圍ニ於テハ、海軍大臣ハ相當
  ノ答辯ヲセラレテ然ルベキモノデアルト考
  ヘテ居ルノデアリマス
  〔國務大臣米內光政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=85

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• 086・米内光政

  ○國務大臣(米内光政君)　先程窪井君カラ
  明日ニデモ戰爭ヲ仕掛ケラレテ、國家危急
  存亡ノ場合ハドウスルカト云フコトヲ言ハ
  レタノデアリマス、私ノ信念ト致シマシテ、
  サウ云フ場合ニハ戰爭ハ囘避出來ナイ、敢
  然トシテヤルト、斯ウ云フコトヲ申上ゲタ
  ノデアリマスガ、御承知ノ通リ海軍-陸
  軍モ同ジデアリマセウ、出帥準備品ト云フ
  モノヲ、イザト云フ場合ニ使フ爲ニ貯ヘテ
  居リマス、相當長期間サウ云フ場合ニハ戰
  ニ耐ヘ得ルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=86

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• 087・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　中井君、モウ宜シ
  ウゴザイマスカ-森下國雄君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=87

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• 088・森下國雄

  ○森下國雄君　私ノ質問ハ議事ノ進行上其
  通〓ヲ取止メマシテ委員會ニ讓リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=88

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• 089・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　質疑ハ全部終リマ
  シタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧
  ニ付テ御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=89

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• 090・中山福藏

  ○中山福藏君　日程第二及ビ第三ノ兩案ハ、
  一括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラ
  レンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=90

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• 091・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　中山君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=91

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• 092・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  やっく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=92

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• 093・中山福藏

  ○中山福藏君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際政府提出、昭和十
  二年度一般會計歲出ノ財源ニ元ツル爲公債
  發行ニ關スル法律案、昭和七年法律第一號
  中改正法律案、昭和七年法律第十二號中改
  正法律案、日本銀行條例中改正法律案、日
  本銀行參與會法廢止法律案、東京農業〓育
  專門學校創設ニ伴フ帝國大學特別會計及學
  校及圖書館特別會計ノ關涉ニ關スル法律案、
  帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢及南
  滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至移讓ニ伴
  ヒ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行
  ニ關スル法律案ノ七案ヲ一括議題ト爲シ、
  委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレン
  コトヲ望ミマス
  (「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=93

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• 094・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　只今ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=94

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• 095・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  マス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、昭和
  十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
  債發行ニ關スル法律案、昭和七年法律第一號
  中改正法律案、昭和七年法律第十二號中改
  正法律案、日本銀行條例中改正法律案、日
  本銀行參與會法廢止法律案、東京農業〓育
  專門學校創設ニ伴フ帝國大學特別會計及學
  校及圖書館特別會計ノ關涉ニ關スル法律案、
  帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢及南
  滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至移讓ニ伴
  ヒ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行
  ニ關スル法律案、右七案ヲ一括シテ第一讀
  會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
  ス-委員長木暮武太夫君
  昭和十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充
  ツル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
  昭和七年法律第一號中改正法律案滿
  洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
  ニ關スル件)(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  昭和七年法律第十二號中改正法律案
  (造幣局資金拂出ニ關スル件)(政府提
  Hy第一讀會ノ續(委員長報告)
  日本銀行條例中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  日本銀行參與會法廢止法律案(政府提
  巴第一讀會ノ續(委員長報告)
  東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ帝國
  大會特別會計及學校及圖書館特別會計
  ノ關涉ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢
  及南滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至
  移讓ニ伴ヒ退官退職シタル者等ニ交付
  スル公債發行ニ關スル法律案(政府提
  〓第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報告書
  一昭和十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充
  ツル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
  提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報告書
  一昭和七年法律第一號中改正法律案(滿
  洲事件ニ關スル經費ノ支辨ノ爲公債發
  行ニ關スル件)(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報告書
  一昭和七年法律第十二號中改正法律案
  (造幣資金拂出ニ關スル件)(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報〓書
  一日本銀行條例中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報告書
  一日本銀行參與會法廢止法律案(政府提
  〓
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報告書
  一東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ帝國
  大學特別會計及學校及圖書館特別會計
  ノ關涉ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  報〓書
  一帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢及
  南滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至移
  讓ニ伴ヒ退官退職シタル者等ニ交付スル
  公債發行ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十二年三月二十三日
  委員長木暮武太夫
  衆議院議長富田幸次郞殿
  〔木暮武太夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=95

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• 096・木暮武太夫

  ○木暮武太夫君　只今議題ニナッテ居リマ
  スル七法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ノ〓
  略ヲ御報告申上ゲマス、順序ニ依リマシテ
  第一ノ案、第二ノ案ト呼ブコトノ御許シヲ
  願ヒタイト思ヒマス
  第一ノ案ハ、御承知ノ通リ所謂赤字公債
  發行ノ案デアリマス、昭和十二年度一般會
  計ノ歲出ガ二十七億一千三百九十万圓、普
  通歲入二十億四千三百十万圓デアリマシ
  テ、不足ノ七億七千八十万圓ヲ公債財源ニ
  依ルノデスガ、御承知ノ通リ旣ニ成立シタ
  幾多ノ公債法ガアリマシテ、例ヘバ震災善
  後公債デアルトカ、或ハ道路公債、滿洲事
  件費ノ公債ノ如キデス、斯ウ云フモノニ依
  ル公債ヲ差引キ致シマシタ四億八千七百五
  十万圓ト云フモノヲ、此法律ニ依ッテ新ニ公
  債ヲ發行シヨウト云フノガ第一ノ案デアリ
  マス
  第二ノ案ハ、所謂滿洲事件ノ經費ニ對ス
  ル公債發行ノ法律案デゴザイマシテ、御承
  知ノ通リ過去ノ六議會、卽チ第六十一、六
  十二、六十四、六十五、六十七、六十九ト
  云フ六議會ノ間ニ於テ、吾々ガ協贊ヲ與ヘ
  マシタ公債ノ發行ノ高ハ、九億九千四百五
  十万圓ノ多キニ達シテ居ルノデアリマス、
  是デ昭和十一年度分ダケハ賄ヘマスケレド
  モ、昭和十二年度分ヲ賄ヒマスル場合ニ於
  キマシテハ、新ニ公債ノ發行ノ法律案ヲ出
  ス必要ガ生ジテ、本案ヲ提出セラレタノデ
  ゴザイマス、而シテ一般會計ニ於キマシテ
  ハ、滿洲事件費トシテ二億八千四百九十七万
  圓ヲ必要ト致スノデアリマスルガ、滿洲國
  カラノ國防費分擔金受入等ヲ差引致シマシ
  テ、二億六千五百四十六万餘圓ト云フモノ
  ヲ、公債財源ニ依ルコトト致シタノデアリ
  マス、故ニ從來ノ九億九千四百五十万圓ニ
  之ヲ加ヘマシテ、十二億六千餘万圓ト云フ
  モノヲ、此法律ニ依ッテ公債トシテ出サウト
  云フコトニ相成ルノデアリマス、是ハ總額
  デアリマシテ、本年ハ只今申上ゲマシタ二
  億六千五百四十六万餘圓ヲ公債財源ニ依ル
  モノデアリマス
  第三ノ法律案ハ、是ハ皆樣方御記憶デモ
  アリマセウガ、昭和六年滿洲事件以來ノ影
  響ヲ受ケマシテ、支那ニ於ケル在留邦人ガ
  營業ガ全然立行カナクナッタトカ、或ハ又營
  業ガ非常ニ困難ニナッタ人達ガアル、之ヲ救
  濟スル爲メ復興ノ資金ヲ貸與ヘヨウト云フ
  爲ニ、造幣局資金ノ中カラ約五万貫ノ銀地
  金ヲ拂出シタコトヲ御記憶デアリマセウ、
  之ヲ一般會計ノ負擔ニ於キマシテ、五年以
  內ニ返濟スルト云フ法律ガ出來テ居リマス
  ノデスガ、今日ノ一般會計ノ狀態ト云フモ
  ノハ、御承知ノ通リ赤字補塡ノ公債ヲ出サ
  ナクチヤナラヌ、特別會計ヨリモ亦繰入金
  ヲ仰ガナケレバナラヌト云フヤウナ實情デ
  アルニ鑑ミマシテ、之ヲ昭和二十二年度末
  マン、卽チ此貸出金ガ返濟サルヽ時マデ、
  一般會計ガ返ス期間ヲ延長シヨウト云フ法
  律案デアリマス
  第四、第五ノ法律ハ、日本銀行條例改正
  ノ法律案、竝ニ高橋大藏大臣ノ在職當時出
  來マシタ、昭和七年ノ參與會制度廢止ノ法
  律案デゴザイマシテ、今囘ハ新ニ日本銀行
  ニ參與理事七名以內ニ置キマシテ、日本銀
  行ノ業務ガ頗ル煩雜多岐ニ亙ッテ居ルカ
  ラ、其運營ニハ廣ク民間カラ練達堪能ノ士
  ヲ入レマシテ、相共ニ其運營ニ當ラシムル
  コトガ、非常時財界ヲ指導シ、其機能ヲ發
  揮スル上ニ於テ、必要デアルト云フ立前ノ
  上カラ、斯ウ云フ制度ヲ作ラウト云フ案デ
  アル-從來ノ理事ハ御承知ノ通リニ大藏
  大臣ノ許可ガアリマシテモ、他ノ會社ナリ
  銀行ノ仕事ニ携ルコトハ出來マセヌデシ
  タガ、今囘ノ參與理事ハ、大藏大臣ノ許可
  ヲ受ケマシテ、他ノ會社、銀行ノ役員トシ
  テ、其業務ニ携ルコトヲ得テ、由テ以テ一
  般財界カラ練達堪能ノ士ヲ日本銀行ノ參與
  理事トシテ迎へ得ルコトトシヨウト云フ法
  律案デアリマス
  第六ハ農業〓育ノ普及徹底ヲ圖ル爲ニ、
  現在東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成
  所ト云フモノヲ本年度ヨリ獨立セシメマシ
  テ、東京農業〓育專門學校ト云フモノヲ創
  立スル爲ニ、色々變改ヲ要スル所ノ案デア
  リマス
  第七ノ案ハ、今囘我ガ帝國ガ滿洲ニ於ケ
  ル治外法權ヲ撤廢スル、又滿鐵ノ附屬地行
  政權ノ調整及ビ移讓ヲ行フ、之ニ伴ヒマシ
  テ、今マデ働イテ居ッタ外務省竝ニ關東局
  關係ノ役人ノ人達デ、退職スル者ガ六千七
  百人バカリアリマス、此中ノ大部分、卽チ
  五千四百人位ト云フモノハ警察官ナノデア
  リマス、斯ウ云フ人達ハ滿洲國ニ新ニ移ル
  ノデアリマスケレドモ、今マデハ帝國ノ官
  吏ナリ、其他ノ職員ナリトシテ、忠誠ヲ念
  トシテ働イテ居ッタ人デアリマスカラ、此際
  ニ是等ノ人ノ過去ノ業績ニ對シテ、國家ト
  シテ酬ユルノ途ナカルベカラズト云フ意味
  デ、額面四百万圓ノ交付公債ヲ出スト云フ
  案デアリマス
  以上ノ七ツガ-名前ヲ呼ブト大變長ク
  ナリマスカラ讀ミマセヌガ、此七ツガ只今
  上程ニナリマシタ所ノ案デアリマシテ、大
  體御分リ下サッタコトト思ヒマス
  ソコデ委員會ニ於キマシテハ、宮澤胤勇
  君、松山常次郞君、松田正一君、片山秀太
  郞君、田川大吉郞君、氏家〓君、小谷節夫
  君、渡邊玉三郞君、綾川武治君等ヨリ極メ
  テ眞面目ナル御質問ガアッテ、政府ニ於テモ
  御答辯ガアリマシタ、其質問應答ノ主ナモ
  ノヲ簡單ニ申上ゲタイト思ヒマス、御承知
  ノ通リ只今申上ゲマシタ案ハ、法案其モノ
  ヲ見マスルト、僅カ一行シカ書イテナイノ
  デアリマスガ、四億何千万圓ノ公債ヲ出ス
  トカ、二億何千万圓ノ滿洲事件費ノ公債ヲ
  支辨スルト云フヤウナ、極メテ重大ナ案デ
  アリマス爲ニ、委員會ニ於ケル民政黨、政
  友會、昭和會其他ノ方々ノ御質問ト云フモ
  ノハ、洵ニ國家ヲ憂フル所ノ熱心ナル御質
  問デアリマシテ、之ヲ委員長トシテ玆ニ御
  報告スル爲ニ時間ノ相當ナル割愛ヲ蒙ルコ
  トモ亦必要デアルト私ハ信ズルノデアリマ
  ス
  先ヅ第一ニ委員會ヲ通ジマシテ一ツノ重
  要ナル質問ハ、內地滿洲等ノ資金ノ需要ガ
  段々ト增大スルト云フコトヲ目前ニ控ヘテ、
  一體政府ハ公債消化ノ前途ヲドウ考ヘテ居
  ルノカ、公債消化ノ前途ノ見透シヲチヤン
  ト付ケテ居ルノカト云フガ、各委員カラ政
  府ニ對スル質問デアリマシタ、結城大藏大
  臣ガ、曩ニ本會議ノ本壇上カラ、產業界金
  融界ガ時局ヲ認識シテ努力シテ吳レ、公債
  消化ニ努メタナラバ、十億ハサテ措イテ、
  十二億デモ、十五億デモ発行シ得ルモノダ
  ト云フヤウナ御言葉ガアリマシタガ、其事
  ノ究明ヲ吾々委員會ニ委託サレタガ如キ感
  ガ實ハアッタノデゴザイマシテ、此點ニ各委
  員ノ質問ガ集中致シタノモ無理デハナイノ
  デアリマス、此質問ニ對シテ、結城大藏大
  臣ハ、一言ニシテ批評シマスナラバ極メ
  テ素朴ナル樂觀論ヲ以テ終始御答ニナッテ
  居ルノデアリマス、其可否ノ如何ハ兎モ角
  ト致シマシテ、馬場財政ノ公債政策ト云フ
  モノハ、權力的ノ强制保有ヲ目指ス極メテ
  直截簡明ナル一本槍デアッタカラ、分リガ宜
  カッタノデアリマス、併ナガラ結城大藏大臣
  ノ、各委員ノ公債消化ノ前途ニ對スル深憂
  ヲ中心トシテノ質問ニ對スル御答辯ハ、洵
  ニ樂觀論デアリマシタ、結局其御答辯ノ結
  論ハ、何トカナルダラウ、サウ心配シタモ
  ノデハナイト云フコトニ盡キテ居ルノデア
  リマス、最近產業資金ノ需要ガ增大シテ、
  早クモ各種ノ金融機關ニ於テ貸出增加
  トナッテ、預金ノ增加ガ停滯スルヤウナ
  傾キニナッテ來テ、日本銀行保有公債ノ
  賣行キガ減ジ初メタ此時ニ於キマシテ、
  各委員諸君カラノ質問ハ全ク國家財政ノ將
  來ヲ考ヘラレタ御質問デアッタノデアリマ
  スガ、之ニ對スル大藏大臣竝ニ政府委員ノ
  御答辯ハ、果シテ各委員ノ御滿足ヲ買ヒ得
  タカドウカヲ、私ハ疑ナキヲ得ナイノデア
  リマス
  第二ニ、四月一日カラ郵便貯金ノ利下ヲ
  スル、隨テ預金部貸出ノ資金「コスト」ト云
  フモノハ低下スルノデアルカラ、ソコデ預
  金部カラ貸出シテ居ル所ノ資金モ利下ヲシ
  テ、地方民ヘ其利益ヲ均霑還元サセルコト
  ガ必要デハナイカト云フ御質問ガアリマシ
  ク、之ニ對シマシテハ政府ハ、昨年ノ七月
  大幅ノ預金部貸付金利息ノ引下ヲ行ッタカ
  ラ、今囘ハ郵便貯金利下ニ依ル餘裕金ト云
  フモノハ、貸付利子ヲ下ゲルコトニ用ヒナ
  イデ、餘裕金ノ內六百万圓ヲ社會政策的ノ
  施設ノ財源トシテ一般會計ニ繰入レ、二百
  万圓ヲ郵便貯金事務施設ノ改善費用ニ充テ
  ル、明治四十四年ニモ郵便貯金利下ノ益金
  ト云フモノヲ一般會計ニ繰入レタ例ガアル
  ト云フ御答辯デアリマシタ
  ソレカラ金ヲ集メル政策ガ必要デハナイ
  カト云フ質問ガアリマシタ、所謂產金獎勵
  ノ意味カラ、金買入値段ヲ引上ゲル意思ガ
  アルカト云フ質問ガアリマシタガ、政府ハ
  現在ノ日本銀行ノ金買入値段ハ、倫敦ノ金
  塊相場ヲ標準トシテ、日英爲替相場デ換算
  シテ、其九〇%ヲ以テ買入レテ居ルノデア
  ル、今マデ八〇%デ買ッテ居ッタ時分ニハ
  滿洲ノ方デ九〇%デ買ッテ居ルカラ、金ガ
  逃避シテ行ッタガ、最近ハソンナ事ハナイカ
  ラ、之ヲ改メル必要ハナイ、斯ウ云フ意向
  デアリマシタ
  ソレカラ是ハ民政黨ノ松田君カラノ御
  質問デアリマシタガ、最近ノ株式相場ノ昂
  騰ニ對シテ、政府ハ如何ナル考ヲ持チ、處
  置ヲ執ッテ居ルカ、斯ウ云フ極メテ適切ナ
  ル御質問ガアリマシタガ、之ニ對シテ大藏
  大臣ハ斯ウ答ヘテ居リマス、只今ノ所デハ
  事業將來ノ發展ヲ見越シテ買ハレタ結果デ
  アルカラ、政府ハ之ヲ人爲的ニ抑制スルヤ
  ウナ措置ヲ講ズル考ハナイ、サウシテ將來
  ニ於テ、思惑ニ依ッテ不當ニ〓騰スル危險性
  ガアルヤウニ認メラレル場合ハ考慮スルト
  言ッテ居リマス
  ソレカヲ英米佛三國爲替協定ニ參加ノ意
  思ガアルカト云フ質問ニ對シテハ、只今ハ
  參加ノ必要モナケレバ其意思モナイ、又勸
  誘サレタ事實モナイト云フコトヲ言ッテ居
  リマス、ソレカラ爲替相場維持ノ爲ニ、金
  ノ現送バカリデナク、一步進ンデ爲替平衡
  資金ヲ作ッタラドウダト云フ質問ニ對シマ
  シテハ、日本デハ其必要ハナイノダ、外國ノ
  ヤウニ國際金融ノ渦中ニ入ッテ居ラズ、短
  期資金ノ外國ノ間ノ動キト云フモノハ少イ
  ノダカラ、其必要ハナイト云フコトデアリ
  マシタ、是等ノ應答ノ詳細ハ委員會ノ速記
  錄ニ讓リマスカラ、ドウゾ御覽ヲ願ヒマス
  ソコデ本日委員會ニ於テ討論採決ヲ致シ
  マシタ、第一ノ案ニ對シマシテハ、民政黨
  ノ佐藤謙之輔君、政友會ノ小谷君、昭和會
  ノ金井君カラ贊成ノ御意見ガアリ、社會大
  衆黨ノ塚本君カラ反對ノ御意見ガアリマシ
  テ、採決ノ結果多數ヲ以テ原案ヲ可決致シ
  マシタ、第二ノ案ニ對シマシテモ、民政黨
  ノ佐藤君、政友會ノ小谷君、昭和會ノ金井
  君カラ贊成ノ御意見ガアリ、社會大衆黨ノ
  塚本君カラ反對ノ意思發表ガアリマシタ、
  採決ノ結果多數ヲ以テ原案通リ可決致シマ
  シタ、次ニ三、四、五、六、七ノ五案ヲ一
  括シテ議題ニ供シマシテ、佐藤君、小谷君、
  金井君カラ贊成ノ意見ガアリ、社會大衆黨
  ノ塚本君カラ贊否留保ノ御意見ガゴザイマ
  シタ、採決ノ結果多數ヲ以テ原案通リ五案
  ヲ可決致シマシタ、以上ノヤウニ七案トモ
  大多數ヲ以テ可決致シマシタカラ、此段御
  報告申上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=96

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• 097・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　質疑討論ノ通〓ハ
  アリマセヌ-七案中、昭和十二年度一般
  會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關ス
  ル法律案、昭和七年法律第一號中改正法律
  案、右兩案ニハ反對ガアリマス、仍テ先ヅ此
  兩案ヲ一括シテ審議ヲ爲シ、次ニ其他ノ五
  案ヲ一括シテ審議ヲ致シマス-卽チ昭和
  十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
  債發行ニ關スル法律案、昭和七年法律第一
  號中改正法律案、右二案ノ第二讀會ヲ開ク
  ヤ否ヤヲ御諮リ致シマス、兩案ノ第二讀會
  ヲ開クニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=97

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• 098・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　起立多數、仍テ兩
  案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=98

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• 099・中山福藏

  ○中山福藏君　直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=99

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• 100・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　中山君ノ動議ニ御
  異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=100

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• 101・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  マス仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  昭和十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充
  ツル爲公債發行ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)
  昭和七年法律第一號中改正法律案(納得
  洲事件ニ關ズル經費支辨ノ爲公債發行
  ニ關スル件)第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=101

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• 102・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報
  告通リ可決確定致シマシタ(拍手)次ニ昭和
  七年法律第十二號中改正法律案、日本銀行
  條例中改正法律案、日本銀行參與會法廢止
  法律案、東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ
  帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計
  ノ關涉ニ關スル法律案、帝國ノ滿洲國ニ於
  ケル治外法權ノ撤廢及南滿洲鐵道附屬地行
  政權ノ調整乃至移讓ニ伴ヒ退官退職シタル
  者等ニ交付スル公債發行ニ關スル法律案ノ
  審議ニ入リマス、五案ノ第二讀會ヲ開クニ
  御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=102

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• 103・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  マツ、仍テ五案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=103

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• 104・中山福藏

  ○中山福藏君　直チニ五案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=104

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• 105・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　只今ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=105

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• 106・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ直チニ五案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  昭和七年法律第十二號中改正法律案
  (造幣局資金拂出ニ關スル件)
  第二讀會(確定議)
  日本銀行條例中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  日本銀行參與會法廢止法律案
  第二讀會(確定議)
  東京農業〓育專門學校創設ニ伴フ帝國
  大學特別會計及學校及圖書館特別會計
  ノ關涉ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)
  帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢
  及南滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至
  移譲ニ伴ヒ退官退職シタル者等ニ交付
  スル公債發行ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=106

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• 107・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、五案トモ委
  員長報告通り可決確定〓シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=107

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• 108・中山福藏

  ○中山福藏君　殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
  ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=108

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• 109・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　中山君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=109

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• 110・岡田忠彦

  ○副議長(岡田忠彥君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
  議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
  ハ是ニテ散會致シマス
  午後七時一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X02919370323&spkNum=110

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