1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月三十日(火曜日)
午後二時二十分開議
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議事日程 第三十六號
昭和十二年三月三十日
午後一時開議
質問
一 帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問(杉山元治郎君提出)
二 林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問(佐藤與一君提出)
三 帝都防火建築に關する質問(深澤豐太郎君提出)
四 對滿對支政策に關する質問(中村嘉壽君提出)
五 機船底曳網に關する質問(北れい吉君外三名提出)
六 國有鐵道赤穗線敷設に關する質問(江藤源九郎君提出)
七 尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問(川俣清音君外一名提出)
八 帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問(服部米次郎君外五名提出)
九 度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問(東武君外四名提出)
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第一 昭和十年度歳入歳出總決算
第一 昭和十年度各特別會計歳入歳出決算
第二 昭和十年度國有財産増減總計算書
第三 議院法中改正法律案(政府提出、貴族院囘付)
第四 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 産業組合自治監査法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 百貨店法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 辨理士法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 帝國燃料興業株式會社法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 人造石油製造事業法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 船員法改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 日本無線電信株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 農地法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 勞働組合法案(鈴木文治君外一名提出) 第一讀會
第十五 小作法案(杉山元治郎君外三名提出) 第一讀會
第十六 狩獵法中改正法律案(鈴木正吾君提出) 第一讀會
第十七 交通機關調整法案(田中好君外一名提出) 第一讀會
第十八 民法施行法中改正法律案(大石大君外三名提出) 第一讀會
第十九 航空事業奬勵法案(中村嘉壽君提出) 第一讀會
第二十 航空事業奬勵法案(末松偕一郎君外一名提出) 第一讀會
第二十一 民族優生保護法案(荒川五郎君外三名提出) 第一讀會
第二十二 恩給法中改正法律案(宮脇長吉君外一名提出) 第一讀會
第二十三 理容師法案(中山福藏君外十名提出) 第一讀會
第二十四 金錢債務臨時調停法廢止法律案(升田憲元君外十三名提出) 第一讀會
第二十五 行政裁判所法案(宮古啓三郎君提出) 第一讀會
第二十六 行政訴訟法案(宮古啓三郎君提出) 第一讀會
第二十七 訴願法案(宮古啓三郎君提出) 第一讀會
第二十八 權限裁判法案(宮古啓三郎君提出) 第一讀會
第二十九 行政裁判官懲戒法案(宮古啓三郎君提出) 第一讀會
第三十 民事訴訟法中改正法律案(牧野賤男君外八名提出) 第一讀會
第三十一 觀光地助成法案(田中好君外一名提出) 第一讀會
第三十二 家事調停法案(坂東幸太郎君外四名提出) 第一讀會
第三十三 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(原口初太郎君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 郷又は町村祿高に對する公債證書給與に關する法律案(寺田市正君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 六大都市に特別市制實施に關する法律案(瀬川嘉助君外十名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より受領したる答辯書左の如し
衆議院議員杉山元治郎君提出帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問に對する答辯書
衆議院議員佐藤與一君提出林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問に對する答辯書
衆議院議員深澤豐太郎君提出帝都防火建築に關する質問に對する答辯書
衆議院議員中村嘉壽君提出對滿對支政策に關する質問に對する答辯書
衆議院議員北れい吉君外三名提出機船底曳網に關する質問に對する答辯書
衆議院議員江藤源九郎君提出國有鐵道赤穂線敷設に關する質問に對する答辯書
衆議院議員川俣清音君外一名提出尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問に對する答辯書
衆議院議員服部米次郎君外五名提出帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問に對する答辯書
衆議院議員東武君外四名提出度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問に對する答辯書
(以上三月三十日受領)
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帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十一日
提出者 杉山元治郎
帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問主意書
一 陸海軍に於ける現在の囑託齒科醫を以て齒科衞生上遺憾なきを期し得るや
陸海軍に於ける齒科衞生状態は現在甚だ不良にして殊に齒牙疾患少き農山漁村よりの入隊者も軍隊生活の關係上忽ちにして甚しく惡化するの状況であるから之が豫防及治療上十分なる施設を必要とするのである然るに現在に於て陸軍には各病院に齒科診療室あるも其の殆んど全部が近傍の開業齒科醫を囑託して治療に當らしめ大概一週二三囘二三時間宛の勤務に過ぎないから到底將兵の治療を全うし難く義齒等は全く行はれて居らぬ状況である況んや進んで之が豫防法を講ずるが如きことは思もよらず又海軍に於ては各海軍病院竝に各艦隊に齒科醫ありて幸に何れも專任者なるも其の人員合計十三名を出でず是だけにて數萬の海軍將兵の手當をすることは全く不可能なることである陸海軍共に僅に重症者に對し應急の處置を爲すに過ぎないのである滿洲駐在部隊に對しては各病院に齒科醫を置くも其の數甚だ少く又内地と異り付近に開業齒科醫なきこととて誠に在滿將士に對しては氣の毒なる有樣である陸海軍當局も色々心配されて時々囑託齒科醫の數を増加する等の方法を講じて居られるやうであるが現在のやうなことを行つて居るのでは陸海軍將兵の健康上憂ふべき點が非常に多い政府は如何にして此の缺陷を充さんとする考であるか
二 現在に於ける陸海軍齒科衞生上の施設を以て平時及戰時に對處して之が調査研究上遺憾なきを期し得るや
前に述べた如く現在は平時應急の手當も困難な状況である況んや戰時に對し如何なる準備をしてよいか之が調査研究に甚だ不完全なりと言はざるを得ない然るに一朝大國が互に兵を交へることになれば勢戰爭は長期に亙り兵の齒牙は非常に惡くなる又歐洲大戰の際には齒牙口腔の病氣が殊に多かつた許りでなく顎骨病院が特に設立された程口や顎の損傷が多くなつた是等の病理治療に關し平時から十分なる調査研究が必要である陸軍、海軍軍醫學校では口腔外科を教へて居るやうであるが其の規模が小さく甚だ遺憾である又戰時齒科衞生に從事する人々を養成するやうな機關もなく方法も付いて居ない何等此の方面に訓練なき開業齒科醫を動員して急場の間に合せるのでは不十分なること言ふ迄もない我が陸海軍は有らゆる點に於て整備され又多額の經費を投じて整備を急いで居るのであるが何故か齒科衞生の事には無頓著である
三 毎年幹部候補生として入隊しつつある齒科醫學專門學校卒業生に對し特別なる待遇を與ふる意圖なきか
我が國には男子の齒科醫學專門學校が七つもある其の卒業生にして幹部候補生として軍隊に入營するものが毎年百名以上で昨年度に於ても百九名に上つて居る其の全部が普通の兵として服務して居るのであつて折角專門の知識技能を持ちながら少しも軍隊で活用されて居ない齒科衞生設備の不完全な今日甚だつまらぬことではないか何とか是等の齒科醫專卒業生を專門家として活かして國家に御奉公をさせる工風はないか其の中には滿洲國に於て普通の兵として服務して居る者がある是等は殊に大に考慮する餘地がある專門學校卒業迄中學から引續き十箇年の學校教練を經て來て居るものであるから普通の兵として其の訓練を加へずとも齒科衞生の方面に從事せしむることが國家の爲利益する所が非常に多いのではないかと思ふ
四 陸海軍に齒科軍醫を設置するの計畫なきか
以上述べたやうに陸海軍は齒科衞生上の施設が極めて不十分である軍隊には精神力と共に體力が必要である體力の根源は榮養であつて榮養の根源は咀嚼である此の點からも何故齒科にもつと陸海軍が重きを置いて考へないのであるか私には寧ろ不思議に思へるのである而して軍隊に於ける齒科施設をやつて行くにはどうしても齒科軍醫の制度を設けなければならないのは言ふ迄もないのである第六十三囘議會以來連年本院に於ては陸海齒科軍醫設置の請願が採擇され建議も通過して居るのであるが其の實現の模樣がない陸海軍に於ても軍政調査の一項目として此の問題を採り上げて居られるやうであるが現在如何なる處まで進んで居るのであるか規律と訓練の殊に尊ばれる軍隊に於て又階級のやかましい軍隊に於て囑託制度の儘幾ら人員を増しても本當の成績を得ることが出來ないどうしてもしつかりした制度を設けなければならぬのである歐米各國に於ては何れも平時數百人の齒科軍醫を置き其の教育訓練の爲學校病院を設立し戰時の爲には數千人の豫備齒科軍醫がある歐洲大戰の際出征部隊兵員五百人に付一人の齒科軍醫を派遣したと云ふことである有ゆる點に於て各國に優れたる我が陸海軍は此の設備を今現に缺いで居る爲に將兵共に現に平時に於ても齒牙疾患に惱んで居るのである之は制度を新に作ることが困難なのか其れとも經費がないのであるか何れにしても其の必要を認めて之を實現せんとする熱意さへ有るならば當局の決心に依て今日にも直ぐ出來得ることである政府はどう考へらるるか又齒科軍醫として之を實現することは只今の所困難であるのか或は特種な文官としたならば實現可能なりとの説もあるとのことであるが其の邊のことに付て當局の御答を願ひ是非軍隊に於ける齒科衞生の充實の爲御盡力あらんことを希望するのである
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員杉山元治郎君提出帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問に對し別紙答辯書差進候也
〔別紙〕
衆議院議員杉山元治郎君提出帝國陸海軍に於ける齒科衞生に關する質問に對する答辯書
一 陸軍に於ては囑託齒科醫の數、勤務日數及時間は患者數に應じて適當にし以て齒科診療に遺憾なからしめ且齒科衞生一般に關しては現施設を以て遺憾なきを期しつつあり
海軍に於ては新兵入團に際し特に齒牙の健康診斷を行ひ必要なる治療を施し又艦船乘員に對しては其行動作業の關係上主たる齒科治療は可成母港在泊中海軍病院にて之を完了せしめ出動後は應急處置に止むるを目途とし各海軍病院、艦隊等に夫々必要なる專任齒科醫を置き尚海軍軍醫學校に於ては軍醫科士官をして齒科應急治療に差支なき樣教育しつつあり、然れども近時人員の増加に伴ひ囑託齒科醫の現状を以てしては幾分不足を感ずるに至れるを以て十二年度に於ては若干其數を増し齒科衞生上遺憾なきを期しつつあり
二 海軍現役軍醫科士官中には齒科口腔外科の專門家あり且つ前項に述べたる如く囑託齒科醫の増員をも計畫し各部密接なる連絡を執り平時戰時に對する調査研究に遺憾なきを期しつつあり
陸軍に於ては概ね海軍と同樣なるも軍醫學校に於て齒科の研究調査及教育を實施しありて平時戰時に於ける調査研究に遺憾なきを期しつつあり
三 陸軍に於ては第四項の研究と關聯して研究中なり
海軍に於ては該當事項なし
四 陸海軍共に囑託齒科醫制度の改善に關し目下研究中なり
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
海軍大臣 米内光政
陸軍大臣 杉山元
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林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十一日
提出者 佐藤與一
林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問主意書
一 我が肇國の理想に關する件
林内閣總理大臣は組閣の大命を奉じて能く其の任を全うし所謂清新摯實なる内閣を組織したり而して其の政綱を發表するに當り 聖旨を奉體して我が國體の本義に基き肇國の理想を顯現するを以て施政奉行の本と爲すべきことを宣明せり
凡そ首相たる者は啻に内閣の首班として國政を統宰するに止らず我が國民が之れに向つて進むべき大理想を普く中外に宣布し國民の先頭に立ちて之れを率ゐるの慨なかるべからず
謹んで案ずるに天業を恢弘し天下を光宅となし六合を兼ねて都を開き八紘を覆うて宇と爲さむことは之れ我が肇國の大理想にして萬世一系の我が皇室が 天皇の赤子として愛撫せさせ給ふ臣民を率ゐ此の大理想に向ひ進ませ給ふことは之れ我が皇祖皇宗以來の鞏固なる傳統にして我が尊嚴なる國體の精華なり即ち我が皇室の御稜威を世界に擴充し皇恩を六合に光被せしめ以て世界に於ける道徳政治の完成を期することは實に我が肇國の理想を實現する所以の道なりと信ず林内閣總理大臣の所謂肇國の理想とは抑抑之れを謂ふものなりや又他に在るものありや敢て林内閣總理大臣の所見を問ふ
二 國運進暢の源流に關する件
林内閣總理大臣は其の政綱の第一項として國運進暢の源流を深からしむる爲國體觀念を愈愈明徴にして敬神尊皇の大義を益益闡明し祭政一致の精神を發揚せむことを高調せり我が國體の萬邦無比なることは何等言説の要なしと雖も之れが觀念を明徴ならしめむには幾多具體的案件なかるべからず
近時政局の變異に際し誠に憂慮すべき事象なしとせず大命降下の際に於ける問題之れなり畏くも一旦 陛下の親任を辱うし組閣の恩命に接せる者は必ず謹みて之れを拜受し萬死以て其の責を果たすべく國民は擧って之れが支援に協力すべし之れ我が國體觀念の然らしむる所にして猥りに自ら己れの健康を顧慮して拜辭すべきに非ず又國民は擧つて之れを援助して組閣の大任を遂げしむることに努むべし苟も組閣の大命を拜したる者にして國民一部の支援を失ひ爲に閣僚を得る能はず以て大命を拜辭するに至るが如きは之れ 陛下の聖明を覆ひ奉るものにして國體觀念と相容れざる所なり今之れを最近の事實に徴するに陸海軍大臣を現役の大中將に限ると制限せる陸海軍官制の改正は正に如上の結果を將來せるものにして遺憾限りなし
内閣總理大臣は速に陸海軍官制を改正し陸海軍大臣の資格制限を一層緩和せむとする意思ありや否や
抑抑天皇の稱號竝に國號の尊重は愛國心を喚起する一大原由にして愛國心の涵養は國體觀念を一層明徴にする所以なり然るに歴代の内閣は甚だ之を輕視し之れに對して努力せる所鮮少なるが如し
謹んで案ずるに「大日本帝國 天皇」の御尊稱は帝國憲法に於て嚴然一定せらるる所なるに拘らず政府は條約文等に於て此の固有の御尊稱に代ふるに「アンペリュール」、「エムペラー」等の語を使用しつつあるは恐懼に堪へざる所なり
我が大日本帝國の國號も亦憲法の明示する所にして國民は之れに據りて之れを稱呼せざるべからず然るに之れを外にしては政府は條約文其の他に於て自ら外國の舊慣に依る「ジヤポン」、「ジヤパン」、「ヤーパン」等の語を使用しつつあり又之れを内にしては「ニッポン」及び「ニホン」兩樣の稱呼竝び用ひられ國民は其の適從する所に惑ふ斯の如きは國體觀念を明徴にし國民精神を作興する所以に非ず政府は宜しく速に一層我が國號を尊重し其の稱呼を統一することに努力せざるべからず
外務大臣は外國との條約文等に於て「アンペリュール」、「エムペラー」、「ジヤポン」、「ジヤパン」等を使用することを廢し其の固有の御尊稱竝に稱號を使用せむとする意思なきや又外務大臣は商工省の努力に依り「メード、イン、ニッポン」の標識を附して輸出せられたる商品が陸揚げを拒まるるが如き失態なきやう通商條約及び其の附屬の規定を改正せむとする意思なきや
文部省は小學教育に於て其の兒童をして我が國を稱呼せしむるに「ニッポン」を以てせり文部大臣は小學校以上の各種學校竝に其の他の教育機關をして之れを勵行せしめむとする意思なきや
陸軍大臣及び海軍大臣は全國の壯丁、現役軍人竝に在郷軍人をして一定せる國號の稱呼に據らしめむとする意思なきや
大藏大臣竝に商工大臣は其の監督の下にある銀行會社等の中其の名稱に「大日本」「日本」等を冠するものに對し之れを「ニッポン」と稱呼すべく統一せむとする意思なきや
更に内閣總理大臣は我が大日本帝國 天皇の御尊稱、國號竝に帝國の理想とする大使命に關し大に内外に宣布せむとする意思なきや
凡そ國體觀念を明徴ならしめむとする方策種々あるべしと雖も先づ國史、國語等を尊重し我が國固有の良風美俗を保存助長すること等に其の指を屈せざるべからず然るに歐米文明模倣時代の餘弊より脱却する能はず故らに我が國の古史に荒唐無稽の説を加へ我が神聖なる國史を汚さむとするが如きは政府の嚴に戒めざるべからざる所にして國語の尊重も亦大に忽にすべからず而して文部省臨時國語調査會に於て決議せる國語假名遣改定案は我が國語の有する特色たる動詞の活用を度外視し靈妙なる我が國語の生命を奪はむとするものなり文部大臣は之れが使用を國民に強ふるの意思ありや否や又國語の記載法に至りては縱書横書の別あり横書には右横書あり左横書あり又彼の送り假名法の如きも區々にして一定の法則なし文部大臣は國語記載の方法を統制する必要を認めざるや
國民の衣食住に歐風の加味せらるるは敢て之れを排するの必要なかるべきも故らに我が國固有の衣食住を賤むの風尚は國民精神作興の爲遺憾の點なしとせず政府は我が國古來の式服たる紋服、紋附羽織、袴を以て通常禮服の一種となすの要を認めざるや
三 青年教育振興に關する件
國運進暢の源流は教育を尊重するにあり特に國家永遠の將來を思念する時青年教育の片時も忽諸に附すべからざるを痛感するものなり國家は官立大學に於ける青年教育の爲年額一人數百圓を費すに比し上級學校に入學する途なき都市及び農村青年の教養に對しては男子青年團のみに就いて見るも其の費す所極めて僅少にして大日本聯合青年團への補助年額は三萬圓に過ぎず政府は青年教育振興の爲此の補助金を増額して數十萬圓程度に至らしむると共に大日本女子聯合青年團に對する補助金も亦之れに準じて増額すべく特に青年及び青年團の使命の益益重大なるに鑑み青年教育振興を以て重要國策の一に加へ且つ之れに關する調査機關を設置する必要ありと信ず此れ等の點に關する内閣總理大臣、文部大臣、大藏大臣、陸軍大臣、海軍大臣及び農林大臣の所見如何
四 神祇に關する特別政廳の設置に關する件
抑抑敬神尊 皇の大義を闡明し祭政一致の精神の發揚せむとするは林内閣が掲げたるる特異の政綱なり而して敬神尊 皇の大義は國民一般の體得せざるべからざる所之れに違背するを以て非國民となす祭政一致の政治亦必ずしも上代と現今と同一ならずと雖も祭事の重んずべきは我が國の特色にして益益之れが精神の擴充を計りて始めて我が國體觀念を明徴ならしむべし之れ神祇に關する特別政廳を要する所以にして而も此の政廳たる我が國神祇の特異性に鑑み之れをして他の官廳の下位に立たしむべきものに非ず最高位に特立し以て其の神聖を保持するの要あり内閣總理大臣は神祇に關する此の種の特別政廳を設置するの急務なることを痛感せられざるや
五 學生の精神訓育に關する件
近時各種の犯罪中所謂智能犯と稱し學識經驗を有するものにして己れが有する此れ等を惡用して犯行を爲す者極めて多く又最高の學府を出でたる者又は在學中の者にして其の中庸を失ひ左右兩翼に趨る者亦尠からざるを見聞し國家教學の爲寒心に堪へざるものあり
惟ふに學校に於て施す所の精神訓練は小學教育に於て最も多く留意せらるるに拘らず上級の學校に進むに從ひ漸く弛緩を來たし僅に教練科に於て多少の精神訓育を施すに過ぎず是れ如上の結果を將來せる原因にあらざるなきか
四大節の祝賀式、卒業式等に於て國歌を奉唱し勅語を捧讀するは小學校、中等諸學校、高等學校等に止まり高等專門學校、大學等に於て之れを實施せる例甚だ稀なり然るに今年紀元節に際し東京帝國大學に於ては長與總長以下教職員、學生全部安田講堂に參集し一同國歌を奉唱し教育勅語の捧讀等ありしと云ふ斯の如きは學生生徒の精神訓育上其の效果の極めて大なるものあるを信ず文部大臣は他の大學竝に高等專門學校をして此の實例に傚はしめ以て學生生徒の訓育に資せむとするの意圖ありや否や
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員佐藤與一君提出林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員佐藤與一君提出林内閣の政綱政策竝文教上の諸問題に關する質問に對する答辯書
一、我が肇國の理想に關する件
我が肇國の理想に付ては大體同感なり
二、國運進暢の源流に關する件
一、陸海軍官制の改正を奏請し、陸海軍大臣の資格制限を緩和せむとするの意思は、之を有せず
一、我が國と外國との條約の外國語文に於て、「アンペリュール」「エムペラー」「ジャポン」、又は「ジャパン」等を、夫夫の外國語に於て使用することは、外國語文としては、事實巳むを得ざるものと思料せらるるも愼重考慮中なり
一、「メード・イン・ニッポン」の標識を附して輸出せられたる商品が、陸揚げを拒まるるが如きこと無き樣、通商條約及其の附屬の規定を改正することは、目下の處、早急には實現不可能と思料せらる
一、國號の稱呼を統一して小學校以上の各種學校竝に其の他の教育機關をして、之を励行せしむることに付ては、考慮を要するものありと思料せらる
一、全國の壯丁、現役軍人、竝に在郷軍人をして、一定せる國號の稱呼に據らしむることに付ては、考慮を要するものと認む
一、大藏省竝商工省の監督下にある銀行會社等の中、其の名稱に「大日本」「日本」等を冠するものに對し、之れを「ニッポン」と稱呼すべく統一することに付ては、尚篤と考慮の要あるものと思料せらる
一、肇國の理想を顯現し、帝國の大使命を宇内に宣明するは時局に顧み適當なりと認む
一、曩に、臨時國語調査會に於て決議せる國語假名遣改定案は、昭和六年に修正を加へ、昭和九年國語審議會組織せらるるに及び、更に該會に於て再審議中なり
一、教科書用圖書に於ては既に國語の記載法は之を一定して居れり、即ち普通の國語は、勿論縱書とすれども、外國語或は數式、數字等を多く記載する圖書に在りては、左横書とし、尚是等の圖書表題を横書とする場合には、我が國古來の慣例に從ひ、右横へ書かしむることとし居れり、又送假名法に付ては、曩に、國語調査委員會に於て決議せる案を參考として、教科用圖書に在りては、一定の法則を定めて之を使用し、以て其の標準を示し居れり
一、紋服、紋附羽織、袴を以て通常禮服の一種と爲す事に付ては、愼重考慮を要すべきものと思料せらる
三、青年教育振興に關する件
刻下、我が國内外の情勢は、青年教育をして一層振興せしむるの要切なるものあり、政府は之が爲、其の方策に關し考究中なるも、特に調査機關を新設すべきや否やに付ては、今後篤と考究せんとす、大日本聯合青年團、大日本女子青年團の使命の重大なる點に付ては同感なるが、是等に對する補助金に關しては、將來財政上の關係を考慮して愼重考究すへし
四、神祇に關する特別政廳の設置に關する件
神祇に關する特別政廳の設置に關しては、愼重考慮を要すべきものと思料せらる
五、學生の精神訓育に關する件
一月一日、紀元節、天長節、明治節等の式典に際し諸學校に於て、國歌を奉唱し、勅語を捧讀することは精神訓育上極めて重要なることなるを以て、小學校中等諸學校高等學校に於てのみならず、高等專門學校大學等に於ても概ね實施しつつある所なるが、今後一層學生生徒の訓育上留意し遺憾なきを期せんとす
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
文部大臣 林銑十郎
農林大臣 山崎達之輔
海軍大臣 米内光政
商工大臣 伍堂卓雄
大藏大臣 結城豊太郎
陸軍大臣 杉山元
外務大臣 佐藤尚武
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帝都防火建築に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十三日
提出者 深澤豐太郎
帝都防火建築に關する質問主意書
大正十二年九月の大震災は死傷者十五萬七千人、損害額五十五億圓に達し其の慘憺たる光景は今尚吾人の記憶に血腥い暗影を投じてゐる
其の後十三年を經過したる今日道路や橋梁は殆んど完全に復興したのであるが都市生活上最も重要であり生命財産迄も脅かされる火災に對する民間の家屋の復興が遲々として進捗しないのは一面民間の經濟力の薄弱性を物語るものであるが反面に政府の對策も機宜を得ざるものがあるのではなからうか
木造建築の日本では年々多大の生命や財産を火災の爲失つてゐる火災の爲の死傷者は一年間に三四千人に達し建築物の燒失額は毎年實に五千萬圓を超過してゐる之に家具調度の損害、營業に關する損害等を加算すると實際の損害額は此の數倍に達するであらう
此の火災に對する防備の第一は燒けぬ家「鐵筋コンクリートの家」を造ることである
大正十三年政府は東京横濱兩市の中樞に防火地區を制定し其の地區内の建築に一定の規格を定めると共に「バラツク」建築の除却期限を定めたのであるが之も延期に延期を重ねてゐる有樣である
現在東京の防火地區の坪數は百五十八萬六千坪で其の中防火構造の本建築は現在大體千五六百棟に過ぎず殘りの二萬五千棟は今尚「バラツク」建築である其の「バラツク」も今日迄二囘延期されてゐる來年八月迄には全部本建築になる規定になつてゐるが政府に於ては果して其の準備が出來てゐるか
火災の防備のみならず防空上の見地からしても今後防火建築の完成は緊急事である又近づく「オリムピツク」の爲にも不體裁な「バラツク」を一日も早く取除きたいものである
政府は防火地區内の本建築に對して坪當り五十圓の補助金を交付してゐるが現在殘つてゐる六百萬圓の補助金で百五十萬坪の防火地區が完成されるとは思はれない之では昭和十三年八月と定めた「バラツク」除却期限も遂に空文に終る結果となりはせぬか政府の之に對する所見を求む
思ふに耐火建築の不振は前述の如く民間の經濟力の薄弱なることに基因するのであるが政府では民間に對し建築資金融通の途を開く爲に六千萬圓を限度として東京横濱兩市に預金部低利資金を貸付け兩市は此の資金を以て當時財界の有力者十數名の發起に依て設立されたる復興建築助成株式會社に建築助成の事業を委託したのである而して兩市は此の會社に對して無條件に年八分の配當と損失全額の補給とを保證したのである此の重大なる公共的事業を一營利機關に委ねたのが抑抑復興建築失敗の第一歩であつた
現在復興建築助成會社から資金を借入れて建造した耐火建築は約七百棟あるが其の實情を見るに殆んど全部が資金の償還に苦しみ金利すらも支拂へないものが半數以上あり建物を競賣されたものが一割に上つて居る有樣である其の原因を考察するに此の會社は年八分の株主配當と放慢なる營業費を支出する爲に貸付金に對し年二分五厘の利鞘を取得し延滯金に付ては容赦なく日歩四錢の損害金を建築者に負擔せしむる結果彼等は其の支拂に塗炭の苦しみを嘗めてゐるのである
帝都復興の裏に建築者が斯の如き悲慘なる境遇にあることは既に世間周知の事實である昨年來内務省警視廳では防火建築の普及に大童の宣傳をしてゐるが一向其の實績の上らない原因は此に存するのである曩に法令を遵守し政府の復興方針に從つて帝都復興の先驅を爲した善良なる市民が今は不拂の汚名を受けて經濟死線を彷徨せるに拘らず之が救濟の方法を講ぜざるが如きは社會思想に及ぼす影響重大と言はねばならない
復興建築會社では昭和十年以後新規の建築助成が一件もなく純然たる一整理會社となつてゐる状態である斯く如き事業不振にも拘らず八分配當を繼續してゐるのである聞く所に依れば今此の會社を清算すれば約九百萬圓の損失があると言はれてゐる之を此の儘に放置すれば將來數千萬圓の損失が兩市民の負擔になるのである
帝都復興の重大事業を一營利會社に委託し助成の美名に隱れて市民の膏血を絞り三十年間八分配當を繼續し而も兩市が之を保證せるが如きは天下無類の會社である此の會社こそは市民の犠牲に於て財閥の私腹を肥す外の何物でもなく帝都の復興を阻害する一大癌腫である監督官廳として政府は之に對して如何なる措置を講じられつつありや
最近に至り該會社を解散せしめて本事業を市の直營に移管すべしとの論が各方面に起りつつありと聞くが最も妥當なる方策なりと信ず
斯くして既建築者の負擔を輕減し其の經濟更生を企圖すると共に將來建築せんとする者に對しても成るべく長期低利資金の融通を爲し政府補助金の如きも現在の倍額位に増額すれば漸次復興建築の完成を期待し得るものと信ず此の點に關し政府の所見如何
即ち
一 防火地區内の建築に關する件
一 防火地區内建築助成に關する件
一 復興建築會社に關する件
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員深澤豐太郎君提出帝都防火建築に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員深澤豐太郎君提出帝都防火建築に關する質問に對する答辯書
一、防火地區の制度が都市の防火防空上極めて緊要なる施設にして地區内耐火建築の完成の急務なるは夙に痛感する所なり、此の故に東京及横濱兩市に於ける大正十二年九月の震災に依り火災に罹りたる區域内の防火地區に於ては大正十三年度以降昭和十三年度迄防火地區建築補助金を交付して助成を圖ると共に他面假設建築物の除却期限を定めて耐火建築の促進に努めつつある處なるも右除却期限は昭和十三年八月到來するを以て一層右の促進に對し努力致度
一、東京横濱兩市に於ける防火地區内に於ては前項の如く耐火建築の助成を圖りつつあるも耐火建築の促進は諸般の事情特に市民の經濟力の如何に左右せらるる處少からず、從來所期に副はざるの憾ありしも近時幾分經濟界の活況を呈したるに鑑み今後一段の努力を拂ふと共に將來一層之が助成を圖るべきや等に關しては國家財政の都合等に照し考究致度
一、復興建築助成株式會社の事業成績に關しては其の事業の緊要性と市民負擔に及ぼす影響の重要性とに鑑み之が對策に關しては愼重考究を遂げ遺憾なきを期せむとす
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
内務大臣 河原田稼吉
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對滿對支政策に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月三十日
提出者 中村嘉壽
對滿對支政策に關する質問主意書
對支問題の重要なるは今更贅言を要せす然るに近時支那に於て中央地方を通し抗日氣分の益益濃厚なる今日より甚しきはなし我か國と古來より深密なる關係を有し同種同文の隣邦國たる支那にして斯の如き状態にあるは日支兩國の爲將又東洋平和の爲眞に遺憾に堪へさる所なり
更に他方滿洲人中にも未た十分日本に理解を有せさるのみならす甚しきは親露、親支主義を唱ふる者さへあるは斷して輕視する能はさるものあり茲に於て何等かの對策を講し有效適切の擧に出つるを要すへしと信す
惟ふに天下を治むるは徳を以て第一とすへく徳治なき政事には信なく信なき政事は民の心服なし我か國は東洋の安定勢力として又盟主として東亞の運命を雙肩に荷ふ立場にあるを以て徳を以て滿支に臨み信を以て彼等より信頼を受くる用意なかるへからす又賞罰を明にし徳に報ゆるに徳を以てし報本反始の古道徳を實踐することは政事に缺くへからさる信條なりと信す故に一身同體たる滿人に對し此の道を行はむか滿人悉く我に信頼を寄せ滿人の信頼生すれは亦以て支那の信頼を博するに足らむ滿人に對しては親日的有爲の人材は之を優遇し又反日人士に對しては之か理解を深むるに努めさるへからす然るに往々にして事此に出てさるものあるは最遺憾とせさるを得す一例を擧くれは滿洲建國に當り功勞顯著なる滿洲人士にして今日逆境に沈淪する者あり又當日の反日家にして今日却て日本に優遇せらるる滿人高官あり斯くして我か國の政道を明徴すること甚た遠く滿支兩國と我か國との關係を疎隔すること多大なりと謂はさるへからす之を歴史に徴するに數千年の歴史と文化を有する漢族を當時比較的文化低き滿族か克く治め人心を收攬せし所以は一に清朝か漢人中の親清家たる人材洪承疇等を極力優遇したるに因る惟ふに日滿支は人種、言語、文學其の他幾多共通點を有する立場なるを以て此の間の原理、事情を十分討究し以て之を實行に移して善處せは日滿支の友好關係は愈愈好轉して東洋平和の確立を期する決して難事に非すと信す内閣總理大臣竝對滿事務局總裁の之に對する所見如何
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員中村嘉壽君提出對滿對支政策に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員中村嘉壽君提出對滿對支政策に關する質問に對する答辯書
趣旨に於て全く同感にて政府に於ても右方針にて善處し居れり又滿洲國は王道政治を以て建國の大本とせる國なるか故に徳を以て施政の根本方針と爲すは當然のことにして人材の拔擢の如きも常に公平無私適材を適所に置くは勿論なり又日滿不可分の關係は曩に滿洲國皇帝陛下か煥發せられたる囘鑾訓民の詔書にも明かにして日滿兩國は一徳一心の國なるを以て滿洲國當局に於ても克く此の日滿關係に徹底したる建國の功勞者を重用するは當然なりと信す
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
外務大臣 佐藤尚武
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機船底曳網に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十五日
北れい吉
外三名
機船底曳網に關する質問主意書
積年に亙り財界不況の結果として農山漁村の疲弊困憊甚大を極め其の慘状時に眼を蔽ふか如きものあり之か對策を講するに官民一致大に努力し近來陸上の産業は稍稍恢興の曙光を認めつつありと雖獨り漁村に於ては未た何等の生色を見す其の由て來る所は實に生産漁場の荒廢に基因するものと謂はさるへからす而して農村は米の豐作に依り山村は生産物資の人爲的工作に依て各其の窮地より脱すること比較的容易なるも漁村は上記の諸條件以外更に漁場の復興と云ふ特殊事情に支配せらるる爲幾多の陸上産業に比し更生に遲遲たるものあるは眞に痛恨に堪へす
輓近科學的漁法の進歩に伴ひ沿岸漁民は亂獲の弊を知り酷漁の結果を覺り稚魚を愛し幼貝を保護し各各自省的共同施設に依りて漸次沿岸漁場の復興を計り更に統制ある組織の下に生産消費の調節其の他漁村更生の根本工作として漁業協同組合の設立に力め以て往時の盛況再現に懸命の努力を爲しつつある時に際し此の大衆漁民の幸福を無視せる機船底曳網業者は永遠の大計に何等顧慮することなく常に禁止區域内に於て公然犯則行爲を敢てして憚らぬ折角漁民か築かむとする復興計畫を平然として日毎に破壞しつつあり斯の如き弊害を根本的に除去する方法として農林當局は昭和十二年度に機船底曳網轉業整理の法案を樹てたりと聞き沿岸漁民は漸く多年の愁眉を開き同案の議會通過の一日も早からむことを熱望しつつある時に當り突如として底曳網漁業者は農林當局の發案に反對的猛運動を開始し有らゆる奸策を用ひて其の野望を達せむと狂奔しつつあるか如きは是れ實に社會の安寧秩序を害するものにして許すへからさるものなり殊に新潟縣の機船底曳網業者は窮餘の策として北蒲原郡沖合佐渡北東より粟生島西南に亙る海區に限り其の操業を認められたき旨の請願書を呈出し併て野望達成の猛運動を爲しつつあるやに仄聞せり
該海區は遠く信濃川の流末に當り常に淡鹹水交流する天惠的漁場にして附近沿岸漁民は勿論西蒲原、三島郡沿岸漁民の延繩漁業者にとりて主要且無限の價値ある漁場なり從て近來小型動力附漁船の發達を見るや益益之を有效に利用して漁獲に從事しつつある所なるに若し本漁場に機船底曳網の操業を許すか如きことあらむか其は眞に寒心すへき暴擧と謂はさるを得す政府は此の際是非共機船底曳網漁業整理法案の通過を圖り以て沿岸漁場を復興し頻死の状態に在る沿岸漁民と漁村とを救濟する爲新潟縣沖合に於ける機船底曳網の操業を絶對に禁止すへきものと思惟するか之に對し政府は如何なる對策を有するや
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員北れい吉君外三名提出機船底曳網に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員北れい吉君外三名提出機船底曳網に關する質問に對する答辯書
今般農林省に於て計畫中なる機船底曳網漁業整理案は沿岸漁場を荒廢せしめ又は沿岸漁場の漁利を壟斷する等多數の中小漁業者と利害相容れさるか如き機船底曳網漁業を整理し沿岸漁業者に對し直接又は間接に何等の影響を與へす漁業資源の維持竝に増進に關し支障なきか如き機船底曳網漁業は整理せむとするものに非す而して新潟縣沖合に操業する機船底曳網漁業か前記の何れに該當するものなりやに付ては目下愼重調査中なり
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
農林大臣 山崎達之輔
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國有鐵道赤穗線敷設に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十八日
提出者 江藤源九郎
國有鐵道赤穗線敷設に關する質問主意書
一 第六十九囘帝國議會に於ける鐵道敷設法中改正法律案委員會議録に據れは赤穗線に對する政府當局の言明に依り赤穗線は國有鐵道幹線たらしむるか爲に敷設するものなることを明白にしたるは當然なり而して東京下關間鐵道の日滿連絡の重要使命に鑑みれは赤穗線は輸送能率の増進と時間の短縮とを主要眼目として線路建設を爲すへきものにして赤穗線を以て地方産業の開發を目的とする培養線と同一視すへからさるは言を要せさる所なり故に第六十九囘、第七十囘帝國議會鐵道敷設法中改正法律案委員會に於て議員の質問に對し前、現兩鐵道大臣は「線路の選定は未定なり國有鐵道の本義に則り時代に適應する適正なる線路を決定すへし」との旨答へたり然るに第七十囘帝國議會豫算委員分科會に於ては鐵道事務當局か「事務當局としては最初より線路は決定せり由來事務當局の決定せる案に對しては責任者(大臣)にて彼此云ひし例皆無」なるか如く答辯せり是れ實に大臣と事務當局との間に於ける答辯の矛盾にして國務大臣の議會に於ける言明は無責任、無誠意の甚しきものなりと斷定せさるを得す眞に一大怪事なると共に議會政治上の重大問題なりと思惟す政府の所見奈何
二 鐵道事務當局か議會に於て線路の選定に付事務當局の決定せる案に對し主管大臣か彼此云ひし例なしと言明せるは下剋上の甚しきものにして而も赤穗線の如きは昨春の選擧運動に利用せられたりとの批難を受け又最近の鐵道疑獄に因縁ありとの風評を受け居れる所謂曰く附の敷設線なり然るに此等の事件發生當時より在任しつつある事務當局か斯る上司を無視し事實を誣ひ或は國家の方針を勝手に變更するか如き發言を敢てするは世間の疑惑を深からしめ官紀の紊亂を憂へしむるのみならす現に鐵道疑獄事件の進行中突如前議會に於ける當局の言明を裏切るか如き言辭を弄することは其の動機と理由と必要とに付て多大の疑問を禁する能はす斯の如きは事務當局として不謹愼千萬、奇怪至極の言動と謂はさるへからす司法當局の注意を喚起する必要ありとさへ思惟せらる此の一大怪事に對し政府は如何なる處置を執らむとする乎敢て所見を質す
三 赤穗線の線路は直通線と迂囘線との二線を豫想せらる而も本線敷設の根本理由よりすれは第六十九囘帝國議會の鐵道敷設法中改正法律案委員會に於て鐵道當局から言明せる如く「距離と時間とを短縮する改良線にして併せて地方産業の開發を計る」ものなるを以て其の線路は最短距離を直通して土地平坦なる地方を通する工事容易なる線路を選定すへきか當然にして殊更に一小鄙都を目標とするか爲に線路をして三角形の二邊を迂囘せしめて距離を延長し現在線路の急勾配を避くるか爲の新線敷設に急「カーブ」線を取入れ且又工事至難にして多額の建設費を要する線路を採り而も亦之を直通線に比すれは距離に於て、六粁、時間に於て十二分を増大する迂囘線を經由せしむるか如き計畫は交通政策上將又國防計畫上斷して避くへきものなりと信す鐵道竝陸海軍當局の所見奈何
四 鐵道省當局の言明に依れは赤穗線をして西大寺町を迂囘經由せしむれは直通線に比し年額二十萬圓の増收なりと云ふ思ふに之れ長距離の算出する旅客賃金、貨物運賃の増加を見積るか爲にして斯る採算を以てすれは寧ろ新線を敷設せす長距離なる現在線の運轉に依ることか收入最大なりとの結論に達し赤穗線敷設理由の如きは全然解消せらるる自繩自縛論に陷るへし殊に右收益計算中には附近各町村産果物其の他の農産物の西大寺町集散運賃を見積り居れとも該生産物は西大寺港より舟運に依り大阪其の他の各仕向地に發送せられ假令西大寺町經由の鐵道の敷設を見るも舟運に比し鐵道は運賃三倍を要するを以て到底此等果物を鐵道に託送せしむることは至難なりと思惟す鐵道當局の二十萬圓増收計算の根據奈何
五 赤穗線をして西大寺町に迂囘せしむへしとは西大寺町の希望にして又直通線たらしむへしとは地方八箇村の希望なり而して迂囘線の敷設を見むか可知、芳野の二村は單なる線路通過地となり徒に田畑を收用さるへく往年の水害善後處置工事の爲田畑の收用せられたると相俟て全村失業離散の悲慘事を現出するか故を以て迂囘線敷設に極力反對しつつあり思ふに西大寺町に對しては現在西大寺軌道の運轉に依て十分交通上の恩惠を受けつつあり然るに若し八箇村の利害を全然無視蹂躪して西大寺町のみの希望に副はむとするか如き鐵道の敷設計畫は政治の大眼目に反する時代錯誤の甚しきものに非すや政府の所見奈何
右及質問候也
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昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員江藤源九郎君提出國有鐵道赤穗線敷設に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員江藤源九郎君提出國有鐵道赤穗線敷設に關する質問に對する答辯書
一、赤穗線敷設に際し西大寺町を經由するや否やの問題に對し、前現大臣共「線路の選定は未定なり今後適正なる線路を決定すべし」と答へたり、又今議會に於て事務當局は「最初より線路は決定せり、由來事務當局の決定せる案に對しては大臣にて彼是云ひし例無かる如く答辯せり」と質問書にあるも事務當局のものは「議會提出當時の線路は西大寺町經由となれるも實測に際し猶其の是非を再檢討をなすべし、而して從來大臣より技術上非なることを強ひられたること無し」との意味にして兩者答辯の間に矛盾なし
二、一項に述べたる如く兩者の答辯に矛盾無く事務當局が上司を無視し事實を誣ひたること無し
三、赤穗線は地方開發を主要目的とし山陽本線の補助線とするは從の目的なればこの主旨に從ひ目下線路調査中なり、尚陸海軍としても本件に關しては何等異論なし
四、西大寺町經由線は經由せざるものに比し其の勢力範圍内に於ける人口、物資共に多く從って收入の増加を來す、又後者は前者より多少距離短く特定賃金設定の關係上既成線に及ぼす收入の減少を來す
以上二つの理由により收入に於て多額の差あり
五、西大寺町經由線と經由せさる線とに對する兩關係地方民の希望を考慮に入れ目下線路調査中なり
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
陸軍大臣 杉山元
海軍大臣 米内光政
鐵道大臣 伍堂卓雄
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尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十九日
提出者 川俣清音
外一名
尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問主意書
本員等が曩に二囘に亙り表記問題に關する質問主意書を提出したるに對し政府當局は逐一答辯書を寄せられ其の意の在る所を示されると共に三菱鑛業會社に對し鑛業法違反其の他の廉を以て告發され又廣く天下に聲明される等關係地方民の疑惑一掃に努められつつあるは本員等の諒とする所なるも更に其の責任の所在を糾明し飽まで其の原因を探求し再び斯る慘禍を繰返さざるやう根本對策を講ぜんとする素志の下に再度左の諸項に付政府の答辯を煩はさんとするものである
一 決潰の原因に關する件
本員は嚮に三菱鑛業株式會社の事業成績と本邦鑛業の趨勢とを擧げて沈澱池堤防決潰が決して偶然のことに非ず其の原因は
(1) 生産増加に對應すへき鑛滓堆積處置に付て科學性を有せざる土木工事が行はれ居りたること
(2) 鑛山經營の資本家的獨善主義
に在ることを指摘し政府の所見を訊ねたるに
(1) の原因を肯定し
各般の事情より判斷するに決潰前數囘の漏水ありたるに拘らず鑛山側に於ては之を重大視せず其の原因糾明不十分にして彌縫的なる應急處置を講じたるに止り而も本鑛泥堆積方法の本旨に悖り送泥したること等を大體に於て主要なる原因と認むべく而して前記漏水を生じたるは堤防の百尺地竝の部分に於て弱點を生じ易き工事を爲したりと思はるること築堤材料に不均一なる點ありたること及排水管に故障を生じ堤防内に軟泥部分を生じたりと思料せられること等の事實に因るものなるべくと答へ更に
此等の事實が綜合して今囘の災害を發生するに至りたるものと認む之を要するに本件災害は鑛業權者に於て操業に對する注意を缺きたるに因るものと謂ふへし
との結論を下して居るのである
而して本員等の擧げたる
(2) の鑛山の資本家的獨善經營に決潰の原因を有するものに非ずやとの質問に對しては何等の答辯がなかつたのである
顧ふに政府が決潰の重大なる原因として擧げたる幾つかの事實は之を要約すれば利潤獲得を至上命令とする資本主義的生産方法に當然且必然的に隨伴する事項であつて資本から最大の利潤を生ましめんとすれば或は勞働者の生命、鑛石排泄物の處置等に付「注意の周到」を缺くも亦巳むを得ないと謂ふ結論になるのである故に本員等は政府答辯書を通し政府の意の在る所を推察するに要約次のやうになるのではないかと思ふのである即ち
「鑛業權者に於て操業に對する注意の周到を缺きたる」事例として政府の擧げたる幾つかの事實は資本主義的生産方法の本質から生れたるものであり而して鑛業權者の操業に對する注意不周到は其の本質より來る當然の結果であると謂ふ事を暗に承認されたるものであり本員等の「鑛山の資本家的經營」に遠因を有すとの説に贊成したるものであると
若し然りとせば鑛山に於ける災害防止對策に關し更に拔本塞源的對策を樹つる必要があるのではないか即ち例へば鑛山國營の如き具體策を樹つべきではないか此の點に關する政府の所見を明にされたい
二 施業案違反に關する件
鑛業法第七十一條同第七十二條に基き廣汎なる警察事務を委ねられて居る商工大臣竝鑛山監督局長の監督不行屆に付て本員等が質問したるに對し政府は
「中澤堆積場扞止堤防に付ては其の設計支障なきものとして仙臺鑛山監督局に於て認可し爾後監督し來りたるものなり」(第一質問主意書答辯)
と答へ本員等が更に第二質問主意書に於て
イ 花輪警察署、秋田縣警察部を通し漏水の都度政府當局は其の報告を受けたるか
ロ 仙臺鑛山監督局は昨年局員を尾去澤鑛山に派遣してゐるが右復命書を提示せよ
ハ 堤防増高の如き施業案變更に於て三菱鑛業株式會社は其の都度施業案を提出したるか
ニ 堰堤建設竝増設の年月日と之が工事監督に付當局の執りたる處置如何等を擧げて追及したるに政府當局は
イ 警察署或は警察部を通して報告を受けたることなく漏水ありたる事實は災害後の調査に依り初めて知り得た
ロ 昭和十一年九月排水管に故障ありたる事實に付ても別に報告を受けず同年十月仙臺鑛山監督局が局員を出張せしめたるは金鑛買鑛事情及坑内状況調査の爲である
ハ 三菱鑛業株式會社は當初中澤鑛滓堆積場に關し所定の施業案を差出したるも之が變更に際しては其の手續を爲さざりしものなり
ニ 中澤堆積場扞止堤防の築堤工事は昭和六年四月著手し爾後數囘増高し同十一年九月之を完成せり
鑛業警察の目的を以て昭和七年、同八年及同十年本鑛山に出張の際堤防に付ても實地調査を爲したり
右實地調査の際には施業案記載の通り操業し居りたり
と答へて居る
本員等が本年二月二十一日尾去澤鑛山に赴き同鑛山當局と會見したる際鑛山當局は
中澤堰堤は昭和六年築造し爾後四五囘嵩上げをして居る
と口頭を以て應へ其の後文書を以て本員等に報告したる所に依れば
中澤堰堤施業案
第一次 昭和六年四月五日附提出
同年九月十二日附受理
第二次 昭和八年二月六日附提出
同年三月二十二日附受理
と前後二囘に亙つて施業案は提出されて居ることになつて居る此の鑛山側文書報告を信用し得るものと假定して之と先の政府答辯書「三菱鑛業株式會社は當初中澤鑛滓堆積場に關し所定の施業案を差出したるも之が變更に際しては其の手續を爲さざりしものなり」とを對照すれは少くとも施業案に依らざる増高工事は昭和八年三月以降であるかのやうである
然るに「昭和十年鑛業警察の目的を以て本鑛山に出張の際堤防に付ても實地調査を爲し」「右實地調査の際には施業案記載の通り操業し居りたるもの」(政府答辯書記載要旨)であると政府は答へて居る「昭和六年四月著手し爾後數囘増高し同十一年九月之を完成した」中澤堆積場堤防は少くとも昭和八年三月以後は施業案「變更に際して其の手續を爲さざりし」ものであるに「昭和十年堤防實地調査の際には施業案記載の通り操業し居たるもの」であるとの政府答辯は本員等をして了解せしめないものがある
以上政府竝社會當局の談を綜合して本員等は下記各項に關し再び政府の答辯を煩はさざるを得ない
1 政府は尾去澤鑛山が三菱鑛業株式會社の經營たることに過信し科學的究明を怠つて輕卒に施業案を受理したるものに非ざるや
2 從て選鑛施業案夫れ自體に缺陷を藏したるものに非ずや
3 若し中澤扞止堤防が豐富なる科學的檢討を經たる後に立案され更に此の認可されたる施業案に依り築造されたるものなりとせば之に背反する施業を長期に亙り行ひたる事態は如何やうに説明し得るものなりや
而して其の説明は單なる鑛業法規違反と了解し得べきものなりや否や
4 施業案の變更の手續を爲さずして長期に亙り操業を爲したる鑛業權者は本件以外に類例ありや否やありたりとせば之に對して執りたる所斷如何
5 實地調査の際は施業案通り操業を爲しつつありたるものが調査後に於て無屆の儘變更し操業するは明に鑛業法違反行爲を敢て爲したるものと認むべきものと思料するが所見如何之と所見を異にする場合は其の理由を明示されたし
6 政府當局も既に施業法違反を認めて居るのであるが中澤扞止堤防築造が施業案に背反すること及無屆で工事されたる年月日を明示されたし
三 政府の監督に關する件
人命、操業中斷等に影響なき漏水、排水管故障の如きは鑛業警察規則第七十三條の除外例であり其の結果「其の概況を鑛山監督局長に急報」すべき必要はないとしても此の漏水、排水管故障は數箇月後には一瞬間に三百六十餘名の生靈を奪ふ災禍の原因であり又其の前兆であつた又尾去澤鑛山當局が二月二十一日本員等に應へたる所に依れば
漏水
第一次 昭和十一年九月二十五日
第二次 同年十月三十日
排水管故障
同年九月十一日
で此等は鑛業警察規則に依れば「急報」すべき義務はないことにはなつて居るが同規則第十四條第三項に依て當然保安日誌に記入しなければならない事項である
それ故三菱鑛業株式會社が忠實に保安日誌を記入して居たとすれば昭和十年鑛業警察の目的を以て同鑛山に當局が出張したる際又は昭和十一年初秋漏水、排水管故障の事故起りたる最中に「坑内状況調査の爲」局員が派遣されたる際には當然保安日誌を繙くべく保安日誌を一見すれば少くとも漏水、排水管故障事故を知り得る機會があつたと思料する然るに其の事のなかつた旨を政府は答へて居る茲に於て
1 三菱鑛業株式會社は保安日誌に前記事項を記載し居りたるや否やの疑問が起らざるを得ないし又
2 「年四五囘監督に出張する局員」(尾去澤鑛山小林一正氏の言)は保安日誌を點檢したるや否や
の答辯を要求する必要も亦起るのである本年二月二十一日本員等の質問に對し尾去澤鑛山小林一正氏は
鑛山監督局からは年四五囘の出張監督がありましたが災害前までは書面に依る警告は一度も受けた事はありませぬでした只年は忘れましたが決潰した中の澤「ダム」の直下に在った共和館の事に付て多數の者を寄せる建物をあそこに置く事はどうかと思ふと口頭で注意された事がありましたので會社も地理の不便な事を考慮して尾去澤町役場の傍の現在所迄移した事があります
と應へて居る
第一質問主意書に對する政府答辯書には第一囘決潰後仙臺鑛山監督局長は鑛業法第七十二條第二項に基き
鑛業の操業開始の際には鑛山監督局に豫め申出づること
を鑛山當局に警告してあると言ふて居るが尾去澤鑛山は第二囘決潰の直後たる昭和十一年十二月二十八日操業を開始し本年初め一旦中止したる後一月十九日から再度操業を開始して居る茲に本員等は次の疑問を持つ即ち
3 昨年十二月二十八日の操業開始は鑛業法第七十二條第二項に基き仙臺鑛山監督局に豫め申出でたる後に爲したるものなりや否や
尚申出後なりとするならば何故本年一月八日頃操業中止の注意を下し一月十八日迄休業せしめたるものなりや
中の澤「ダム」決潰は更に尾去澤鑛山獅子澤沈澱池の決潰をすら考慮せしめるに至り仙臺鑛山監督局は第二囘の中澤堰堤決潰後獅子澤「ダム」下の家屋の移轉を尾去澤鑛山當局に警告したとの事であるが此の移轉は二月末現在に於ても實施されて居ない斯る事情から茲に
4 右獅子澤「ダム」下の家屋移轉警告が發せられた日時竝其の實行遲延に對する政府當局の處置如何
の點に付詳細に政府の答辯を要求するものである
四 責任者處分に關する件
本員等は第一質問主意書に於て中の澤堰堤の不正工事の事實を擧示し大略
一 責任者は三菱鑛業株式會社代表社員たるべし
二 刑事上の責任を負はすべし
と質問したるに對し
刑事責任の有無、範圍等は未だ決定し難し尚仙臺鑛山監督局に於ては鑛業權者及技術管理者に鑛業法違反の廉あるものと認め所轄檢事局に告發を爲したり
と答へて居る刑事責任の有無範圍等未だ決定し難しとあるも本員等が花輪警察署竝尾去澤鑛山當局から提示されたる第一囘決潰に因る犠牲死亡者數は左表の示す如くである
第一 慘事死亡者部落字別數
字名 人口數 死者 行方不明者
男 女 男 女
中澤 五九一 一八 一六 三 四
笹小屋 二九二 三〇 三三 四 八
瓜畑 五八八 一〇 二二 二 二
春木澤 一七九 二二 二三 三 三
新山 一三六 一一 一四 四 三
新堀 二三九 二三 四七 二 八
蟹澤 九五 七 七 一 —
西洞口 四一 — — — —
其他 一〇四 二八 八 二 —
(註) 本表は二月二十一日花輪警察署長が本員等に提示したる第一囘決潰慘事に因る犠牲者數
第二 尾去澤鑛山當局提示のもの
職員及其家族 勞務者及其家族 其他 計
中澤方面 二一 二二 一二 五五
笹小屋瓜畑方面 六 一一九 六五 一九〇
新堀蟹澤方面 〇 一〇一 一六 一一七
計 二七 二四二 九三 三六二
(尾去澤鑛山小林一正氏送付)
花輪警察署提示の死亡者、行方不明者を字別人口數に對比して見れば決潰堰堤直下の中の澤部落は豫想外に犠牲率少く(高地にある瓜畑部落を除けば)決潰「ダム」を遠ざかるに隨て犠牲率は増加し二割から三割を超ゆるに至つてゐる而して尾去澤鑛山當局が語る所に依れば「十一月二十日午前一時頃眞暗闇の堰堤に沿うて中澤「ダム」下の鑛夫住宅に急いでゐた一鑛夫は水の音で漏水と堰堤決潰の危險を豫知し鑛山事務所に急報したる結果鑛山當局が該箇所に出向きて應急措置に掛かりしは午前一時半頃にして萬策盡きて決潰したるは午後三時過ぎであつた」と謂ふのである即ち右鑛夫が危險を豫知して後破局に至る迄の時間は約二時間以上もあつたのである
第一囘決潰後仙臺鑛山監督局長は其の警告書に於て「警報機關の完備」を警告してゐるのであるが縱し「完備したる警報機關」を持たざるとするも第一囘の決潰は時は静寂な暗夜であり而も大破局迄は二時間有餘の時間があつたのである完備したる警報機關よりは應急の警報即ち半鐘又は「サイレン」に依る等の處置が必要だつたのである此の點に於て鑛山當局の重大なる過失を果して默過出來やうか其の人口の最大多數なる中の澤部落が却て犠牲者の最少なりし事を思へば思ひ半に過ぐるものがあるのである
然るに當局が斯る鑛山當局の過失に對し刑法第二百十一條の適用を躊躇するのは何故なるや尾去澤慘事が業務上の過失致死罪を構成せざる理由何處にありや吾人は其の理由を解するに苦しむのである茲に於て本員等は次の諸點に付政府の明答を要求するものである
1 政府當局が右事件に付刑法第二百十一條の犯罪として起訴せざる理由如何
2 鑛業法第十七條に於て鑛業權一般の處分能力に制限を加へたるは結局鑛業權者に民事、刑事の責任を負はしむる趣旨に非ずや
次に鑛山の「保安日誌」の記載は鑛山警察規則第十四條に基く鑛山當局の義務であり施業案の提出は鑛業法施行細則第四十四條竝樣式第十九號に關するものである右保安日誌が成規の如く記載せられありたりとすれば漏水、排水管故障は急報なくとも昨年の秋政府當局が注意を怠らざる限り容易に發見し得られたるものである又鑛山當局が擅に施業案を變更し又は施業案を提出せずして數囘に亙り増高工事を行ひ(昭和十一年九月完成)たるに其の間政府當局は「實地調査」を三度も爲せし故右事實が鑛業法違反なることを發見し得たる筈である
然るにも拘らず政府當局は尚災禍後に至る迄鑛業法第七十二條に依る處置を執らずして一鑛山監督局長を懲戒處分に付したるのみである茲に於てか吾人は連年監督怠慢の責任を有する歴代商工大臣竝仙臺鑛山監督局長の責任を問はんとし併せて今日に至る迄尚之を爲さざる理由如何を質さんとするものである
五 將來の災害防止の件
本員等が嚮に軍需景氣の進行に伴ふ工場鑛山に於ける災害死傷者急増の事實を指摘し且從業勞働者の災害豫感に依り災害を未然に防止せんとして組織的なる災害防止勞資共同委員會の設置を提唱したるに對し政府は其の答辯に於て「災害防止が勞働者の協力に俟つ所大なることは言を要せず」と答へながら「之が爲には各工場鑛山に在りては安全委員會其の他を組織し勞資相協調して災害防止に努め相當の成績を擧げつつあり」と恰も之が爲災害に基く勞働者、鑛夫の死傷數が増加し居らざるが如き「顧みて他を云ふ」態度を取つてゐるのである此の答辯が如何に欺瞞性を持ち居るかは政府自身の統計表が明示してゐる即ち内務大臣の下にある所の社會局、商工大臣の率ゐる所の鑛山局が其の名に於て社會に公表せる累年の「本邦鑛業の趨勢」「工場監督年報」を一瞥せば瞭である然るに政府は上掲の如き答辯に次いで「右(組織)は極めて有效適切なるものとして極力奬勵し居る所なるが將來に於ても一層奬勵に努めることと致し度し」と述べ其が組織を勞働者、資本家の善意に俟つて奬勵せば足るかの如き言葉を用ひて居るのである
以上は第一質問書に於て尾去澤鑛山從業員の災害豫感に付十分詳述し尚法的強制力を持つ組織を通じて豫防的工作を爲さざりし故に災害を破局に陷らしめたる事を述べたるに對する政府の答辯である本員等は斯る答辯に痛憤を感ずるのである斯くて本員等は次の如く質疑を提出し以て政府當局の誠意ある答辯を求めんとするのである即ち
政府は災害防止の爲各工場、鑛山に勞資協同委員會を組織せしむる法律を制定する必要を認めさるや又之を制定する意思を有せざるや
六 鑛業權取消に關する件
本員等は第二質問主意書に於て政府發表の決潰原因を檢討したる後
政府は施業案に悖る數箇の決潰原因を擧示し鑛業法第四十四條違反として同法第九十七條を適用し責任者に對し告發の處置に出てたるも更に第四十條の規定に依り三菱鑛業株式會社に對し尾去澤鑛山の鑛業權取消の處置に出づるを適當と思料するが如何
との質問を發したのである之に對し政府は
鑛業法第四十條の規定に依る鑛業權の取消を爲す意思なし
と答へたのである
顧るに明治四十四年、某鑛山は鑛區税を納付せざる爲税務署が滯納處分として適法に該鑛業權の公賣を執行したるに結局缺損に歸したる故を以て鑛業法第四十一條に基き鑛業權の取消を行つたのである而して行政裁判所も亦之を正當なるものと宣告したのである鑛業權者に課せられたる二大義務(納税の義務、施業案提出同履行の義務)の一たる鑛區税の未納の爲に既に鑛業權が取消されたる事實が存するのである果して然らば今囘の尾去澤鑛山慘事は三菱鑛業株式會社が公然鑛業法第四十條違反を敢行し「施業案に依らずして採掘し來りたる」爲遂に三百六十餘名の生命を奪ひ未曾有の慘事を惹起したるものなれば當然之を取消すべきに拘らず主務大臣は尚且「鑛業權を取消す意思なし」と明言するのであらうか帝國議會の協贊を經 天皇陛下の御命令に依り公布せられ儼乎として存する鑛業法を主務大臣は尚默殺し去らんとするのであらうか
茲に於て本員等は次の諸點に付政府當局の明解なる答辯を煩はしたいのである即ち
「採掘權者は施業案に依るに非ざれば採掘を爲すことを得ず」(鑛業法第四十四條第二項)との規定に違反したる結果遂に大慘事を惹起したる本件に對し「施業案に依らずして採掘を爲したるときは主務大臣は鑛業權を取消すことを得」との同法第四十條を適用せざる理由如何而して監督局の監督を輕視し長期に亙り施業案違背行爲を繼續し大慘禍を招きたるは鑛業法第四十四條の重大義務違背に非ずと認定するや
七 鑛山監督局官制改正の件
本員等が第一質問主意書に於て中の澤「ダム」堰堤の建設が土木工學上の「いろは」をさへ無視したるものなる事を例示したるに對し政府は中の澤堆積場扞止堰防に付ては其の設計支障なきものとして仙臺鑛山監督局に於て認め爾後監督し來りたるを……堤防百尺地竝の部分に於て弱點を生じ易き工事を爲したりと思はるること、築堤材料に不均一なる點ありたること及排水管に故障を生じ堤防内に軟泥部分を生じたること等の内容を以て本員等の質問に肯定的答辯を與へたのである
此の事たるや假令政府當局が善意の監督を爲したりとするも土木工學に對する甚しき認識不足が遂に上述の如き災害を惹起する一原因であつたと謂はねばならぬ
本員等が今鑛山監督局官制を見るに此の官制にも亦土木工學的知識の缺如に基く規定の存在するを見るのである此の官制を此の儘に放置せんか再び上記の如き災害の發生なきを期し難い不完全なる官制の修正増補を爲し以て災害豫防の一方法とする必要を認むるのである從て本員等は政府當局が進んで右官制の改正の擧に出でられんことを促して止まぬのである
更に又本員等は右官制の改正に際しては鑛山に於ける勞働行政を鑛山監督局長の監督下に置いては勞働行政をして内務省社會局と商工省鑛山監督局との支配を受け統一ある監督を爲し得ず爲に幾多の不便を生ずるを以て之亦併せて改正されんことを望むと同時に此等官制改正の意思ありや否やを問はんとするものである
右及質問候也
━━━━━━━━━━━━━
昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員川俣清音君外一名提出尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員川俣清音君外一名提出尾去澤鑛山中の澤鑛滓沈澱池ダム決潰に關する再質問に對する答辯書
一 決潰の原因に關する件
鑛山に於ける災害防止に關しては常に留意し居る處なるが今後更に之が徹底を期せんとす尚明年度追加豫算に鑛山災害防止に關する經費を計上して監督機構の擴充を圖ることとしたるが鑛業法規の改正に當りても鑛業警察事務に付十分攻究することと致度
二 施業案違反に關する件
尾去澤鑛山施業案に付ては中澤扞止堤防第一次百四十尺の築造に付昭和六年四月五日附提出、第二次六十尺の築造に付昭和八年二月六日附提出ありたるものにして右施業案に付ては十分之を檢討し支障なきものとして受理したるものなり而して施業中鑛業法に違反せる點は同鑛山鑛滓堆積方法の本旨に悖り送泥したることに關するものにして右は長期に亙りたるものに非ず尚實地調査の際には施業案通り操業を爲しつつありたるものなり
三 政府の監督に關する件
漏水及排水管故障後仙臺鑛山監督局職員が出張したるは第二質問に對する答辯書中に記載せる通金鑛買鑛事情及坑内状況調査を目的とするものにして坑外保安日誌を點檢せざりき又昨年十二月二十八日の操業開始は鑛山監督局と鑛山との間に行違の廉ありて行はれたるものなり尚扞止堤防と人家の關係に付ては十分留意して居る所なるも獅子澤扞止堤防下の家屋移轉に關し特に警告を發したる事實なし
四 責任者處分に關する件
本件は所轄檢事局に於て未だ捜査中にして其の完了を俟つに非ざれば起訴不起訴何れとも決し難し又仙臺鑛山監督局長に對しては曩に十分戒飭を爲し將來に對し嚴重注意する樣訓告を發したるを以て右處分を以て妥當なるものと思料す
五 將來の災害防止に關する件
工場、鑛山に勞資協同組織に依る安全委員會を設けて災害防止の方法を講ずることは極めて有效適切なるを以て從來極力奬勵せる所なるも法規を以て一樣に之が設置を強制することに付ては目下研究中なり
六 鑛業權取消に關する件
三菱鑛業株式會社に對し鑛業法第四十四條の規定に依る鑛業權の取消を爲すの要なきものと認む
七 鑛山監督局官制改正の件
鑛山監督局官制等の改正に付ては鑛業法規の一般的改正と關聯して攻究することと致度
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
商工大臣 伍堂卓雄
内務大臣 河原田稼吉
司法大臣 塩野季彦
━━━━━━━━━━━━━
帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十九日
提出者 服部米次郎
外五名
帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問主意書
帝國在郷軍人會の目的は 聖旨を奉體し軍人精神の鍛錬と軍事能力の増進とを主眼とし會員は一致協力此の目的を達せむか爲孜々として奉公の實を擧けつつあるものにして或は生業を抛ち或は私財を投して本會事業の實施に努め全く自己の利害得失を顧みることなく一意國家に奉仕せむとするものにして其の純眞なる精神より發する功績は朝野の均しく認めて多とする所なり然るに從來會員の此の多大なる犠牲に對して國家より報いらるる所極めて薄く本會の甚た遺憾とする所なり殊に本會會員會務旅行の際の如きは各人に頗る多額の負擔を課するの實情にある爲屡屡情を具し其の割引を請願せしも私的團體たるの故を以て容れらるる所とならす以て今日に至れり然るに昨年十一月三日優渥なる 勅語を賜はり公的の團體として勅令の公布を見るに至りしを以て當局としては從來の請願に付て斷然見直すへきは當然なりと信す
政府は帝國在郷軍人會の目的に鑑み同會員會務の爲旅行するときは國有鐵道の運賃を五割低減し又官公衙の主催する會合等に團體として參列する場合は國有鐵道旅客及荷物運送規則第八十七條の特別團體として取扱ひ以て其の目的達成を助成するの意思なきや政府の明快なる答辯を求む
右及質問候也
━━━━━━━━━━━━━
昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員服部米次郎君外五名提出帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員服部米次郎君外五名提出帝國在郷軍人會會員國有鐵道運賃割引に關する質問に對する答辯書
本件に關しては從來の經緯もあり又軍部關係の各種割引との關係あるを以て之等と併せ十分研究すべし
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
鐵道大臣 伍堂卓雄
━━━━━━━━━━━━━
度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問主意書
右成規に據り提出候也
昭和十二年三月十九日
提出者 東武
外四名
度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問主意書
現在の度量衡法は我か國情に即せさるを以て本院は曩に第六十五囘及第六十七囘議會に於て二囘まて改正法律案を通過し又第六十九囘議會に於ては度量衡法改正に關し調査會審議速進に關する建議を爲したり然るに其の後同調査會の審議は遲々として進ます國家竝國民の爲洵に遺憾に堪へす政府は之に關し如何に考慮せらるるや又從來の審議經過如何
右及質問候也
━━━━━━━━━━━━━
昭和十二年三月三十日
内閣總理大臣 林銑十郎
衆議院議長富田幸次郎殿
衆議院議員東武君外四名提出度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問に對し別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員東武君外四名提出度量衡法改正に關し調査會の審議に關する質問に對する答辯書
度量衡制度調査會は其の開設以來我國の度量衡制度及其の運用に付審議を行ひ總會を開くこと四囘、特別委員會の審議を行ふこと三囘に亙り、更に審議を促進する爲小委員會を設け目下折角審議中なり其の審議事項は極めて重要なる問題なるを以て特に愼重なる審議を行ふ要あるも政府に於ては鋭意其の審議の進捗を圖ることと致度
右及答辯候也
昭和十二年三月三十日
商工大臣 伍堂卓雄
一昨二十九日貴族院より囘付ありたる政府提出案左の如し
議院法中改正法律案
一議員より提出せられたる議案左の如し
農地法案に對する修正案
提出者 大石大君
(以上三月三十日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
南洋委任統治諸島及比律賓居住の日本人間に於ける社會問題に關する質問主意書
提出者 川俣清音君
内鮮融和に關する質問主意書
提出者 淺沼稻次郎君
(以上三月二十九日提出)
一昨二十九日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
昭和十二年度歳入歳出總豫算案竝昭和十二年度各特別會計歳入歳出豫算案
豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
(第一號)昭和十二年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)昭和十二年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
昭和十二年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年法律第十二號中改正法律案
日本銀行條例中改正法律案
日本銀行參與會法廢止法律案
東京農業教育専門學校創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案
帝國の滿洲國に於ける治外法權の撤廢及南滿洲鐵道附屬地行政權の調整乃至移讓に伴ひ退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案
小運送業法案
日本通運株式會社法案
一昨二十九日委員長及理事互選の結果左の如し
建築士法案(小西和君外七名提出)委員
委員長 川橋豊治郎君
理事
服部英明君 古藤増治郎君
南條徳男君 勝又春一君
司法書士法中改正法律案(立川平君提出)外一件委員
委員長 小林かなえ君
理事
角源泉君 立川平君
一昨二十九日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
船員法改正法律案(政府提出)委員
理事 山枡儀重君(理事池田清秋君今二十九日委員辭任に付其の補闕)
一昨二十九日議長に於て選定したる委員左の如し
昭和十年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外十件委員
野田文一郎君 山枡儀重君
清水留三郎君 日比野民平君
坂東幸太郎君 佐藤正君
津原武君 小山倉之助君
船田中君 大口喜六君
牧野良三君 名川侃市君
門田新松君 小高長三郎君
匹田鋭吉君 岸田正記君
川村保太郎君 椎尾辨匡君
一昨二十九日に於ける特別委員の異動左の如し
船員法改正法律案(政府提出)委員
辭任 池田清秋君 補闕 山枡儀重君
辭任 高野喜六君 補闕 山本厚三君
輸出補償法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 永山忠則君 補闕 綾川武治君
辭任 高良宗七君 補闕 古河和一郎君
關税定率法中改正法律案(政府提出)外四件委員
辭任 川橋豊治郎君 補闕 森下國雄君
防空法案(政府提出)委員
辭任 春名成章君 補闕 綾川武治君
辭任 松田喜三郎君 補闕 長尾秀太郎君
樺太市制案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任 南條徳男君 補闕 石坂豐一君
農村負債整理資金特別融通及損失補償法案(政府提出)委員
辭任 柏木清治君 補闕 高田耘平君
裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外二件委員
辭任 水谷長三郎君 補闕 松本治一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X03519370330&spkNum=0
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