1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
船員法改正法律案
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委員氏名
委員長 侯爵 西郷從徳君
副委員長 伯爵 後藤一藏君
侯爵 池田宣政君
子爵 伊集院兼知君
子爵 松平保男君
子爵 秋元春朝君
内田重成君
男爵 有地藤三郎君
白根竹介君
今井田清徳君
男爵 井上清純君
男爵 深尾隆太郎君
橋本辰二郎君
油井徳藏君
岩田宙造君
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昭和十二年八月四日（水曜日）午前十時十五分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=0
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001・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 只今カラ船員
法改正法律案ノ委員會ヲ開會致シマス、遞
信省ノ方ハ大臣初メ御出マシヲ願ヒマシタ
ガ、司法省ノ方ハ大臣初メ御用ガアリマス
ルノデ、〓原邦一君ガ說明員トシテ御出デ
ニナッテ居リマスカラ、司法省ノ方ノ御質問
ノ方ハ後〓シニシテ戴キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=1
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002・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 船員法改正法
律案提出ノ理由ハ、旣ニ本會議ニ於テ御說
明申上ゲマシタ通リ、船員ニ關スル現行諸
法規ハ、制定以來三十有餘年ノ歲月ヲ經過
シテ居リマシテ、時代ノ進運ニ副ハザルモ
ノアルニ鑑ミマシテ、是等諸法規ヲ整理統
一シテ適當ナル改正ヲ加ヘマシテ、之ニ依ッ
テ船員ノ生活ノ安定ヲ圖ルト共ニ、海運界
ノ平和ト其ノ健全ナル發展トヲ期セムトス
ルモノデゴザイマスガ、尙一應改正ノ要旨
ニ付キマシテ御說明申上ゲタイト存ジマス、
形式上カラ見マシタ改正ノ主要ナル點ハ船
員ニ關スル現行諸法規ヲ整理統一致シマシ
テ之ヲ單一法トシタコトデアリマス、現在
船員ノ保護監督ニ關スル法規ハ、船員法、
船員最低年齡法、商法第五篇第一章中海員
ノ節等、多岐ニ亙ッテ居ルノデアリマスガ、
斯クノ如ク同一ノ目的ヲ有スル多數ノ法規
ヲ整理致シマシテ單一化スルコトハ、其ノ
運用上極メテ必要ト信ズルノデアリマシテ、
此ノ點ハ世界ノ主要海運國ノ法制ニ徵スル
モ、幾多ノ實例ノ存スル所デゴザイマス、
次ニ內容上カラ見マシタ改正ノ主要ナル點
ガ如何ナル事カト申シマスト、船內ニ於テ
支給スル食料ノ標準ヲ定メマシタコト、船
內ニ於ケル醫療設備ヲ規定致シマシタコト、
船員ニ支給スル扶助手當ニ改善ヲ加ヘマシ
タコト、海上勞働ノ特殊性ニ鑑ミマシテ、勞
働爭議ニ關スル取締規定ヲ調整致シマシタ
コト、船主ヲシテ船員ニ對スル保護規定ヲ
遵守セシムル爲、取締規定ヲ設ケマシタコ
ト、海員ノ船主ニ對スル一定債權ノ時效ヲ
二年ニ延長シ且讓渡、差押ヲ禁止致シマシ
タコト、船內ニ於テ死亡シタ者ノ水葬ニ關
スル規定ヲ設ケマシタコト、海員送還ノ場
合ヲ擴張致シマシタコト、海員ニ關スル若
干ノ保護規定ヲ船長ニ準用致シマシタコト
等デアリマスガ、尙海運ノ國際性ニ鑑ミマ
シテ、曩ニ國際勞働總會ニ於テ採擇セラレ
マシタ四ツノ條約案、卽チ船舶ノ滅失又ハ
沈沒ノ場合ニ於ケル失業ノ補償ニ關スル條
約案、海員ノ雇入契約ニ關スル條約案、海
員ノ送還ニ關スル條約案及船員ノ最低年齡
ニ關スル候約案ノ趣旨ヲ採リ入レマシテ、
是等ノ條約ノ實施ニ支障ナカラシムルヤウ
致シタ次第デゴザイマス、最後ニ本法案ハ
六章七十一條ヨリ成立致シマシテ、一見極
メテ厖大ナル如クデアリマスガ、其ノ條文
ノ大部分ハ現行法ト同趣旨ノモノデアリマ
スルシ、殊ニ本案ノ骨子ハ曩ニ遞信省ニ開
催セラレマシタ臨時海事法令調査會ニ於キ
マシテ、船主及海員代表者ニ於テ意見ノ一
致ヲ見マシタルモノデアリマスカラ、何卒
政府ノ意ノ存スル所ヲ諒トセラレマシテ、
速カニ御審議ノ上御贊成アラムコトヲ希望
致ス次第デゴザイマス、尙本法律案ハ前議
會ニ提出ヤラレマシテ、衆議院ヲ通過シ、
貴族院ニ廻付後、議會解散ノ爲審議未了ト
ナリマシタモノト全ク同樣ナモノデアリマ
スカラ、一言申添ヘテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=2
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003・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) ドナタカ御質
問ガアリマシタラ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=3
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004・松平保男
○子爵松平保男君 私ハ主トシテ司法省關
係ノ方ニ御質問申上ゲタイノデアリマスガ、
マダ當局ノ御方ガ御出デニナラヌト云フコ
トデアリマスカラ、是ハ後ニシマシテ、條
文ノ中ニ付テ極ク簡單ナコトデアリマスケ
レドモ、遞信省關係ノ方ニ付テ伺ヒタイト
思ヒマス、第一條ノ本法ヲ適用シナイ範圍
ガ玆ニ、一、二、三ト決メテアリマスガ、
其ノ條項ニ付テモウ少シ詳シク御說明願ヒ
タイト思ヒマス、ソレカラ其ノ次ニ三十六
條ノ所ニアリマス「海員ガ兇器、爆發若ハ
發火シ易キ物」云々、ソレカラ「酒類ヲ所持
スルトキ」此ノ件デアリマスガ、是ハモウ
大シタコトハナイト思ヒマスガ、詰リ兇器
ト言ヒマシテモ、自身ガ護身用ニ刀ヲ持ッテ
居ルトカ云フヤウナコトハ是ハマア兇器ト
認メナイ、卽チ船長ガ是ハ危ナイ、危險ナ
モノデアル、或ハサウ云フヤウナ意思ヲ持ッ
テ居ルノデアルト云フヤウナ場合ニ兇器ト
云フノデアリマセウシ、又酒類ト云フコト
モ酒ヲ持ッテ入ッチヤイカヌ、斯ウ云フヤウ
ナコトデハナイノダラウト考ヘルノデアリ
マスガ、此ノ酒ヲ持ッテ入ッテ非常ニ風紀ヲ
紊ス虞ガアルト云フヤウナ時ニハ、是ハ止
メルコトガ出來ルト云フヤウナ意味デ、深
イ意味ハナイト思ヒマスガ、此ノ點伺ヒマ
ス、ソレカラモウ一ツハ附則ノ所ニアリマ
ス本法施行前ニ生ジタル事項ニ付テハ、卽
チ從前ノ例ニ依ル但シ同法第三十一條第一
項ノ規定ニ依ル云々ノ規定ガゴザイマス、
此ノ點ヲ御說明願ヒタイ、此ノ三點ヲ伺ヒ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=4
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005・小野猛
○政府委員(小野猛君) 第一條ノ除外規定
デアリマスガ、第一條第一項ノ除外規定ヲ
先ヅ申上ゲマス、第一項第一號ニ付テ申上
ゲマスト、二十噸未滿ノ船ニ付テハ適用ガ
ナイ、ソレカラ第二號ニ付テハ平水區域ヲ
航行スル船ニ付テハ適用ガアリマセヌ、卽
チ前記區域以上ノモノニ適用ガアル、ソレ
カラ第三號ノ漁船ニ付キマシテハ商船ト幾
分噸數ヲ異ニ致シマス、三十噸未滿ノモノ
ニ適用スルト云フコトニ致シタ次第デアリ
マス、ソレカラ第一條ノ第二項ノ乘組員ニ
關スル除外規定デアリマスガ、第一號ニ揭
ゲテ居リマスル「船舶所有者以外ノ者ニ雇傭
セラルル者」、是ハ近頃非常ナ優秀船ガ出來
マシタ關係上、船ノ中ニ、例ヘバ三越ノ店
ヲ開クトカ、松屋ノ店ヲ開クトカ、或ハ住
友銀行ガ銀行ヲ開店スルト云フヤウナ事實
ガアル、サウ云フ者ノ店員ニハ純然タル船
員トシテ取扱フニハ聊カ本質ヲ異ニシテ居
ルト云フノデ、之ニ付キマシテハ船員ニ準
ズルモノトシテ、或程度ノ、例ヘバ船長ノ
紀律ニ關スル規定ハ適用スルガ、給料共ノ
他ノ扶助ニ關スル規定ハ適用シナイ、相當
ノ船員トハ異ック規定ノ適用方ヲシヨウ、斯
ウ云フ考デアルノデアリマス、第二項第二
號ノ「何人ニモ雇傭セラレズシテ業務ヲ營
ム者」是ハ例ヘバ船內ニ髪床ノ「バーバー」、
或ハ「バー」ノ「バーテンダー」、サウ云フ者
ガ居ルノデアリマス、是等ハ船主カラ雇ハ
レテ居ル譯デハナイ、自分ガ船內デ獨立ノ
生計ヲ營ンデ居ル、併シ其ノ船ニ乘ジ、居
住ヲ共ニシテ居リマス關係カラ、船員ノ如
キ體樣ヲ成シテ居ルノデアリマス、是モ第
一號ト同ジヤウニ船員ニ準ズル者トシテ、
或程度ノ規定ヲ適用スルコトニシタノデア
リマス、第三號「其ノ他勅令ヲ以テ定ムル
者」、是ハ例ヘバ船ノ中ニ遞信省ノ郵便局
ガアッテ、其ノ通信官吏、サウ云フ者モ普通
ノ「プロパー」ノ船員トハ異ッテ居ルノデア
リマシテ、船員ト全然同ジ畫一的規定ヲ設
ケルト云フコトハ適當ニアラズトシテ除外シ
タ次第デアリマス、次ノ御質問、第三十六
條ニ付キマシテハ、全ク松平子爵ト同様ナ
ル見解デアリマシテ、此ノ海員ガ兇器其ノ
他酒類ヲ所持スル時ニハ、船長ガ其ノ物ヲ
保管又ハ放棄スルコトヲ得ト云フコトニ
ナッテ居ッテ、必ズシモ放棄スルト云フコト
デナク、必要ト認ムル場合ニハ放棄スルコ
トガ出來ルト云フ次第デアリマス、ソレカ
ラ附則ノ「刑法第六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲ
ズ」ト云フコトガアリマスガ、刑法第六條
ヲ見マスト、「犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ變更
アリタルトキハ其ノ輕キモノヲ適用ス」ト
云フコトニナッテ居リマスノデ、此ノ法律ガ
出マシタ結果、前ノ刑法ノ適用ヲ受ケルカ、
此ノ船員法ノ適用ヲ受ケルカト云フ問題ガ
起リマシタ場合ニ、本來ナラバ施行前ニ生
ジタル事項ニ付テハ尙從前ノ例ニ依ルト云
フコトデ、本來ナラバ原則トシテ前ノ法律
ニ依ルベキデアリマスガ、此ノ船員法ノ刑
罰ガ若シ輕キ場合ニハ輕キニ從フト云フ趣
旨ナノデアリマス、輕キニ從フコトヲ得ルト
云フ刑法第六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲナイ、
斯ウ云フヤウニ致シタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=5
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006・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 今逐條ニ付テノ質問ガ
アリマシタガ、此ノ法文ニ付テ質疑シテ宜
シウゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=6
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007・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=7
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008・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 此ノ法文ノ中デ見マス
ルト、勅令ニ依ル、或ハ命令ニ依ルト云フ
コトガアリマスガ、是ガ大體四ツカ五ツシ
カアリマセヌガ、初メカラ御說明願ヘマセ
ヌカ、先ヅ第一ニ申上ゲレバ、一條ノ後ノ
方ニ、其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者トカ、斯
ウ云フノハドウ云フ內容デスカ、ソレカラ
又其ノズット後ニモ、第五條デスカ、勅令ヲ
以テ定ムル場合ヲ除クノ外······隨分勅令ノ
コトガ澤山アリマスシ、其ノ後ノ附則ニモ
アリマスガ、是ハ皆ドノヤウナ内容デスカ、
簡單ニ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=8
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009・小野猛
○政府委員(小野猛君) 勅令事項ニ付キマ
シテハ御手許ニ差上ゲテアルト思ヒマスル
ガ、大分アリマスルガ、第一條カラ御說明
申上ゲマスルト、御手許ニ船員法施行令要
綱案ト云フモノヲ差上ゲテ居リマスルガ、
是デ勅令施行ノ要綱ハ御諒承ヲ願ヒマス、
今第一條ノ第二項デアリマスガ、松平サン
ノ御質問ニ對シテチヨット御答ヘ致シマシ
タガ、第二項ノ第三號ノ勅令ハ船內ノ通信
官署ノ役員ニ關スルモノヲ勅令デ決メヨウ、
斯ウ云フ次第デアリマス、ソレカラ第五條
ノ「十八歲未滿ノ者ハ勅令ヲ以テ定ムル場
合ヲ除クノ外船內勞働ニ適スルコトヲ證明
シ」云々ト云フコトガアリマスガ、此ノ例
外ハ勅令ニ定メマスルノハ、例ヘバ漁船ノ
乘組員デアルトカ、ソレカラ同一家族ニ屬
シテ居ル者ガ乘リ込ンデ居リマスル場合ニ
ハ、十八歲未滿ノ者ノ火夫、石炭夫トシテ
使ッテ宜イト云フコトヲ書ク積リデアリマ
ス、ソレカラ第六條ハ命令トナッテ居リマシ
テ、是ハ遞信省令デヤル積リデアリマス、是
ハ船員手帳ノ交付、訂正、書換等極メテ細
カイ規定デアリマスノデ、是ハ遞信省令デ
行カウト云フ次第デアリマス、ソレカラ第
十一條ニ「船長ハ他ノ船舶ノ遭難ヲ知リタ
ルトキハ人命ノ救助ニ必要ナル手段ヲ盡ス
コトヲ要ス但シ自己ノ指揮スル船舶ニ急迫
ノ危險アル場合及勅令ヲ以テ定ムル場合ハ
此ノ限ニ在ラズ」、此ノ勅令ヲ以テ定ムル場
合ニハ、船長ハ急迫ノ危險ノアル船ヲ知ッ
テモ救助ニ行カヌデモ宜イト云フ場合デア
リマスガ、ソレハ如何ナル場合カト云フコ
トハ、是ハ船舶安全條約ニアルノデアリマ
スガ、ソレヲ一應讀ミマスト、船長ガ無線
電信デ遭難信號ヲ接受シタ時ト雖モ、遭難
者ノ所在ニ到達シタル船舶カラ救助ノ必要
ナキ旨ノ通報ヲ接受シタル時ハ遭難者ノ救
助ニ赴クコトヲ要シナイ、ソレカラ遭難船
舶ノ船長ハ、遭難信號ニ應答シタル船舶ノ
船長ト能フ限リ協議シタル上、適當ト認ム
ル船舶ヲ選定シ救助ヲ要請スルコトヲ得、
此ノ場合救助ヲ要請セラレタル船舶ノ全部
ガ其ノ要請ニ應ジ救助ニ赴ク旨ノ通報ヲ接
受シタル時ハ、他ノ船舶ハ救助ニ赴クコト
ヲ要シナイソレカラ無線電信ニ依ル遭難
信號ヲ接受シタル船舶ノ船長ハ、已ムコトヲ
得ザル事由ニ依リ救助ニ赴クコト能ハザル
カ、又ハ特殊ノ事情ニ依リ救助ニ赴クヲ不
合理若シクハ不必要ト認メ救助ニ赴カザル
時ハ、直チニ其ノ旨遭難船舶ノ船長ニ通報
シ、且遭難者ノ救助ニ赴カザリシ理由ヲ航
海日誌ニ記入スルコトヲ要ス、斯ウ云フ三
點ヲ勅令ニ書ク積リデアリマス、是ハ現在
無線電信ガ非常ニ發達シタ結果、現行法ノ
救助義務ヲ此ノ程度ニ緩和シヨウト云フ積
リデアリマス、ソレカラ勅令ダケヲ申上ゲ
マスト、第二十條關係ニ、「海員ノ給料及
手當ノ支拂方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト
アリマス、是ハ海員ノ給料及手當ヲ船內ニ
於テ支拂フ場合ハ、船長カラ直接當該海員
ニ手渡スベキコトヲ定メタモノデアリマス
ガ、但シ已ムヲ得ナイ事情ガアルトキハ船
長ハ他ノ船舶職員ヲシテ手渡サシメルコト
ヲ得、斯樣ニシタイノデアリマス、此ノ趣意
ハ現在船內ニ於キマシテハ、相當金ノ貸借
問題ニ付テ惡弊ガアリマシテ、ソレハ全部
ノ船舶ト云フ譯デハアリマセヌガ、船內ノ
水夫長、火夫長等ガ部下ノ者ニ金ヲ貸シテ、
相當高利ノ、極端ナモノニナリマスト、月
一割、二割ト云フ風ナ高利ヲ貸付ケテ居ル
ト云フ事實ガアルノデアリマス、之ヲ幾分
デモ矯正致シタイト思ヒマシテ、勅令デ以
テ給料ヲ船長ガ手渡シヲシヨウ、斯ウ云フ
規定ヲ定メテ、其ノ惡弊ノ芟除ニ努メヨウ
ト思フ次第デアリマス、ソレカラ給料ハ每
月一囘支拂フベキコト、但シ支拂日ガ航海
中ナル時ハ、其航海終了ノ際之ヲ支拂フヲ
妨ゲザルコトト云フ風ナ勅令規定ヲ定メタ
次第デアリマス、ソレカラ二十一條ニ「船舶
所有者ハ海員ノ乘船中勅令ノ定ムル所ニ依
リ之ニ食料ヲ支給スルコトヲ要ス」、是ハ海
員ニ支給スル食料ハ遞信大臣ノ定ムル標準
食料表ニ據ルベキコトヲ今度定メラレタ譯
デアリマスガ、此ノ食料表ニ據ルベキコト
但シ所轄遞信局長ノ許可ヲ受ケタルトキハ、
之ニ代ヘ相當ノ現金ヲ支給スルコトヲ得ル
コトトシタノデアリマス、ソレカラ漁船、
沿海區域ヲ航行スル船舶又ハ總噸數千噸未
滿ノ船舶ノ海員ニ支給スル食料ハ、前項ノ
食料表ニ據ルコトヲ要セザルコトト云フ趣
意ノモノヲ入レヨウ、斯ウ云フ次第デアリ
マス、是ガ大臣ノ說明ニモゴザイマシタガ、
海員ノ扶助、保護ノ爲ニ、從來動モスレバ
非難ノアリマシタ劣惡ナル食料ヲ支給スル
ト云フコトヲ廢メサセマシテ、相當ノ船舶
ニハ主務大臣ノ定メマシタ標準食料ヲ遣ラ
ウト云フコトニナッタ次第デアリマス、是ハ
海事法令調査會デ、相當ノ權威者ニ諮リマ
シテ、例ヘバ榮養〓究所デアリマスルトカ、
ソレカラ實際ノ事情ハ陸海軍デ現ニ支給シ
小居リマスル食料等ヲ〓究致シマシテ、
應ノ基準ガ出來マシタノデ、此ノ基準ニ據
ラシムルコトニ致ジタイト存ズル趣旨デア
リマス、ソレカラ第二十二條關係デアリマ
スルガ、「船舶所有者ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ船舶ニ醫師ヲ乘組マシメ又ハ醫療設備ヲ
爲スコトヲ要ス」、如何ナル船ニ醫者ヲ乘込
マセルカト云フコトヲ勅令ニ書カウト云フ
ノデアリマス、其ノ趣旨ハ、遠洋區域ヲ航
行スル船舶ニシテ、百人以上ノ人員ヲ搭載
スルモノニハ、船舶所有者ハ醫師ヲ乘組マ
シムルコトヲ要スルコト、但シ已ムヲ得ザ
ル事由アルトキハ最寄遞信局長ノ許可ヲ受
ケ、一定期間ニ限リ之ヲ乘組マシメザルコ
トヲ得ルコト、ソレカラ近海區域以上ノ區
域ヲ航行スル船舶ニシテ醫師ノ乘組マザル
モノニハ、船舶所有者ハ主務大臣ノ定ムル
醫療函及醫療便覽ヲ備付クベキコト、此ノ
二ツノ事ハ漁船ニハ適用シナイ、但シ他ノ
法令ニ別段ノ規定アル時ハ此ノ限リニアラ
ズト云フ風ナ規定ヲ勅令ニ置ク積リデアリ
マス、是モ海事法令調査會デ、色々ノ討議
ノ結果此ノ案ガ適當グラウト云フコトニナッ
タ次第デアリマス、ソレカラ第二十九條「船
舶所有者ハ海員ガ疾病ニ罹リ若ハ傷痍ヲ受
ケタルトキ、雇入契約終了シタルトキ又ハ
死亡シタルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ扶助シ、之ニ手當ヲ支給シ又ハ之ガ葬祭
ノ費用ヲ負擔スルコトヲ要ス」、此ノ內容ヲ
勅令デ定メヨウ、斯ウ云フ次第デアリマス、大
體現行工場法ニ於キマシテモ、陸上勞働者ノ
扶助規定ハ勅令ニ定メテ居リマスルノデ、工
場法ノ例ニ則ッテ、之ヲ勅令ニ讓ッタ次第デア
リマス、其ノ一ヲ申上ゲマスト、海員雇入期間
中故意又ハ重大ナル過失ニ因ラズシテ疾病
罹リ又ハ傷痍ヲ受ケタルトキハ、船舶所有
者ハ三箇月ヲ超エザル期間內ノ治療及看護
ノ費用ヲ負擔スルコト、二、前項ノ疾病又
ハ傷痍ガ職務ヲ行フニ因ルモノナルトキハ
船舶所有者ハ海員ヲ雇止メタル後ト雖モ、
前項ノ治療期間中之ニ當該海員ノ給料ト同
率ノ手當ヲ支給シ、且其ノ治療期間經過後一
箇月ノ範圍內ニ於テ、海員ノ實際ノ失業日
數ニ應ジ給料ト同率ノ手當ヲ支給スベキコ
ト、ソレカラ三ガ、船員法第二十三條ノ規
定ニ依リテ海員ヲ雇止メタルトキハ、船舶
所有者ハ海員ノ實際ノ失業日數ニ應ジ、之
ニ二箇月ノ範圍內ニ於テ其ノ給料ト同率ノ
手當ヲ支給スベキコト、但シ漁船ノ船員ニ
付テハ此ノ限ニ在ラザルコト、此ノ船員法
第二十三條ハ國際勞働條約ノ船舶ノ滅失又
ハ沈沒ノ場合ニ於ケル失業ノ補償ニ關スル
條約ト云フモノヲ採リ入レマシテ今度新タ
ニ入レタノデアリマス、之ガ滅失、沈沒シ
タ場合ニハ二箇月分ノ失業手當ヲ支給スベ
キコトト云フコトヲ勅令ニ定メタ次第デア
リマス、ソレカラ四ハ、船員法第二十四條
第五號ニ依リ雇止メタルトキハ一箇月分ニ
相當スル手當ヲ支給スベキコト、此ノ第二
十四條第五號ト申シマスノハ、船主ノ方カ
ラ已ムヲ得ザル理由ニ依ッテ解雇スル、斯ウ
云フ時ニハ一箇月分ノ失業手當ヲ遣ラウ、
斯ウ云フコトヲ勅令デ定メル積リデアリマ
ス、ソレカラ五ハ、船員法第二十六條又ハ
第二十八條ノ規定ニ依リ海員ノ雇入契約終
了シタルトキハ、船舶所有者ハ其ノ海員ニ
給料一箇月分ニ相當スル手當ヲ支給スベキ
コト、是モ船主ノ都合ニ依ッテ雇入レタ場合
デアリマスノデ、給料一箇月分ニ相當スル
手當ヲ支給スルト云フコトニ定メタノデア
リマス、ソレカラ六ガ、海員其ノ雇入期間
中職務ヲ行フニ因リテ死亡シタルトキハ、
船舶所有者ハ海員ノ葬祭行フ者ニ其ノ費用
ヲ支給スベキコト、但シ給料一箇月分ヲ下
ルコトヲ得ザルコト、海員職務ヲ行フニ因
リテ疾病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ、第一項ニ
依ル治療看護ヲ受クル期間中死亡スルニ至
リタルトキ亦同ジキコト、斯ウ云フ趣意ノ
モノヲ置イタノデアリマス、ソレカラ七ガ、
船舶所有者ガ豫メ所轄遞信局長ノ許可ヲ受
クルトキハ、船員ノ爲ノ扶助施設ニ依リ爲
シタル給付ノ限度ニ於テ、之ニ相當スル前
六項ノ給付ヲ爲スコトヲ要セザルコトト云
フコトヲ定メタノデアリマス、ソレカラ八
ガ、海員ガ步合······是ハ大體漁船ノ問題デ
アリマスガ、海員ガ步合ニ依リ給料ヲ支給
セラルヽ場合ニ於テ、第二項乃至第五項及
(次條ノ第二項)ノ規定ニ依ル海員ノ一定期間
ニ對スル給料額ヲ算出セムトスルトキハ、
船舶所有者ノ住所地ノ慣習ニ依リ、同種ノ
船舶ニ乘組ム同種ノ海員ノ當該期間ニ對ス
ル通常ノ所得額ヲ以テ其ノ給料額トスルコ
ト漁船ハ步合ヲ以テ收入ヲ決メテ居リマ
スノデ、此ノ步合ノ決メ方ヲ勅令デ書カウ
トスルノデアリマス、ソレカラ第三十條、
是ハ海員ノ送還ノ場合デアリマス、是ハ大
臣ノ說明ニモアリマシタガ、現行法ヨリモ
送還ノ場合ヲ非常ニ廣ク致シマシタノデア
リマス、是ハ海員ノ送還ニ關スル國際勞
働條約カラ來テ居ルノデアリマス、是ハ
一カ、海員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ、船舶所有者ニ對シ雇入港迄ノ送還ヲ
請求スルコトヲ得ルコト、但シ船舶所有
者ノ負擔ヲ增加セザル限リ海員ハ發航港、
本國港其ノ他海員ノ希望スル地迄ノ送還ヲ
請求スルコトヲ得ルコト、要スルニ船舶所
有者ノ負擔ヲ增加シナイト云フ限度ニ於テ
ハ海員ノ希望スル所迄送還サセテヤル、斯
ウ云フ次第デアリマス、ソレデ各號ニ付テ
申シマスト、ガ、船員法第二十三條ノ規
定ニ依リ雇入契約終了シタルトキ、二ガ疾
病ニ罹リ又ハ傷痍ヲ受ケ、職務ニ堪ヘザル
ニ至リタル爲雇止メラレ又ハ雇止ヲ請求シ
タルトキ、但シ職務ヲ行フニ因ラザル疾病
又ハ傷痍ニ付テハ過失ナキ場合ニ限ル、三
ガ船員法第二十四條第一項第一號ノ規定ニ
依リ雇止メラレタルトキ、但シ海員ノ雇入
ニ際シ其ノ不適任ナルコトヲ知ラザルニ付
船長ニ重大ナル過失アリタル場合ニ限ル、
ソレカラ船員法第二十四條第五號ノ規定ニ
依ッテ雇止メラレタルトキ、ソレカラ船員法
第二十五條第一項第一號又ハ第三號ニ揭グ
ル事由ニ依リ雇止ヲ請求シタルトキ、ソレ
カラ外國ニ於テ雇入期間ガ滿了シタルトキ、
ソレカラ船員法第二十六條第一項又ハ第二
十八條ノ規定ニ依ッテ雇入契約ガ終了シタ
ルトキ、ソレガ送還ノ原因デアリマスルガ、
其ノ次ニ海員ガ前項第三號又ハ第四號ニ揭
グル事由ニ依ッテ送還セラレタルトキハ船
舶所有者ハ海員ノ送還ニ必要ナル期間中之
ニ對シ其ノ給料ト同率ノ手當ヲ支給セヨト
云フコト、次ハ送還費用ノ決メ方デアリマ
スガ、送還ノ費用ハ左ノ各號ニ揭グル費用
ヲモ包含スルコト、一ガ所定ノ出發ノ時ニ
至ル迄ノ滯在費、二ガ送還中ノ食費、三ガ
送還中ノ宿泊費、是ハ國際勞働條約ノ規定
ニ依ッテ左樣ニ相成ッテ居ルノデアリマス、
ソレカラ第三十五條關係デアリマスルガ、
「懲戒ハ四種トシ勅令ノ定ムル所ニ依リ船長
之ヲ行フ」トアリマスガ、其ノ勅令事項デア
リマスガ、是ハ船長ガ海員ヲ懲戒セムトス
ルトキハ、船舶職員其ノ他適當ノ者ヲ立會
ハシメ船員法第三十四條各號ノ一ニ該當ス
ル行爲ヲ爲シタル海員其ノ他ノ關係者ヲ取
調ベタル後懲戒ヲ科スベキコト、但シ二種
以上ノ懲戒ヲ併科スルコトヲ得ナイ、是人
懲戒ヲ行フ場合ニハ必ズシモ船長獨斷デヤッ
テハイカヌ、其ノ他適當ノ者ヲ立會ハシメ
ル、斯ウ云フ趣意デアリマス、是ガ勅令事
項ノ解釋デアリマス、次ニ第四十四條關係
デアリマスガ、「本法ニ依リ管海官廳ノ行フ
ベキ事務ハ外國ニ在リテハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ帝國ノ領事館又ハ貿易事務官之ヲ行
フ」、此ノ勅令ハ帝國領事館又ハ貿易事務官
ハ船員手帳ノ交付、訂正、書換及再交付ニ
關スル事務ヲ除キ船員法ニ關スル一切ノ事
務ヲ行フコト、斯ウ云フノデアリマスガ、
是モ新船員法ニ新タニ設ケタ規定デアリマ
ス、ソレカラ第四十五條關係、是ハ省令デ
ヤルノダト思ヒマス、次ニ第四十六條關係
デアリマスガ、「左ニ揭グル船舶ノ乘組員ニ
付テハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得」
此ノ四十六條デアリマスルガ、如何ナル
勅令ヲ設ケルカト云フコトデアリマスガ、
船員法第四十六條第一號ニ揭ゲル船舶ノ船
員ニシテ官吏又ハ待遇官吏タルモノニハ同
法第六條、第十七條乃至第二十條、第二十
三條乃至第三十條、第三十二條、第三十三
條、第三十五條第一項第三號、第三十九條
第五十條及第五十五條第五號ノ規定ヲ適用
シナイ、是ハ國有船又ハ公有船デアリマス
ノデ適用シナイ規定ヲ揭ゲタノデアリマス、
船員法第四十六條第一號ニ揭グル船舶ノ船
長ニハ同法第二十一條ノ規定ヲ準用スル、
ソレカラ船員法第四十六條第一號ニ揭グル
船舶ノ海員ニシテ第一項ニ揭グル者以外ノ
者ニハ同法第六條、第十八條、第三十九條
及第五十條ノ規定ヲ適用シナイ、其ノ
次ハ省令事項デアリマス、ソレカラ其ノ次
ノ第三項ニ揭グル海員ガ船員法第二十九條
及第三十條ニ定ムル保護ニ關シ傭人扶助
令、共濟組合規則其ノ他ノ法令ニ依ル給付
ヲ受クル場合ニ於テ、其ノ給付ノ種類及程
度ヲ主務大臣ニ於テ適當ト認メタルトキハ
其ノ海員ニ對シテハ法律第二十九條及第三
十條ニ附屬スル勅令規定ノ適用ヲシナイデ
宜シイ、要スルニ官廳ノ共濟規定、ソレカ
ラ扶助規定ガアリマシテ、ソレガ適當ダト
思ヘバ其ノ船員法ノ扶助規定ヲ適用シナイ
デ宜カラウ、斯ウ云フ趣意デアリマス、次
ニ第四十七條關係デアリマスガ、「本法ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ第一條第二項各號ニ揭
グル者ニ之ヲ準用ス」、第一條第二項各號ト
云フモノハ第一條ノ時ニ說明致シマシタ
ガ、船員ニ準ズルモノデアリマス、ハンド
バー」デアリマストカ、銀行員デアリマスト
カ、サウ云フモノニ關シマシテハ特別ナ適
用方法ヲ定メル次第デアリマス、ソレヲ詳
シク申上ゲマスルト、船員法第一條第二項
第一號及第二號ニ揭グル者ニハ同法第二
條、第三條、第六條、第七條、第三十四條
乃至第三十七條、第四十一條、第五十條、
第五十七條、第五十八條及第五十九條ノ規
定ヲ準用スル、ソレカラ練習船ノ生徒ニハ
船員法第五條ノ規定ヲ準用スル、次ハ省令
事項デアリマスカラ省キマス、大體勅令ノ
內容ハ今申上ゲマシタヤウナ次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=9
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010・岩田宙造
○岩田宙造君 チヨット御尋シタイノデア
リマスガ、先刻大臣ノ御說明ノ中ニ、本法
ハ船員ニ關スル各種ノ規定ヲ整備、統一ス
ルト云フコトガ一ツノサウ云フ目標デ起案
サレタト云フ御說明ガゴザイマシタガ、此
ノ商法ノ海員ノ方ハ成程全部規定ヲ削除シ
テ本法ニ移サレタノデアリマスケレドモ、
船長ニ關スル規定ノ中ニハ、商法ノ中ニ置
クヨリモ、本法ノ方ニ持ッテ來ル方ガ極メテ
適當デアルト考ヘラレル規定ガ澤山マダ
殘ッテ居ルヤウニ考ヘラレマスガ、是ハドウ
云フコトデ此ノ儘ニ置カレタノデアリマス
カ、例ヘバ其ノ一例ヲ擧ゲテ申シマスルト
商法ノ第五百六十二條ニ船長ガ船ニ備ヘ付
ケテ置カナケレバナラヌ色々ナ書類ガ規定
シテアルノデアリマス、デ斯ウ云フモノハ
實ハ商法ノ外ノ方ノ規定ニハ大シタ關係ハ
ナイノデアッテ、是ハ主トシテ取締ニ關スル
規定デアリマスカラ、斯クノ如キ規定ハ本
法ニ持ッテ來ル方ガ極メテ適當ダト考ヘル
ノデアリマス、斯ウ云フヤウナ規定ガ段々
殘ッテ居ルノデアリマスガ、是ハドウシテ
殘ッテ居ルノデアリマスカ、ソレカラ序ニモ
ウ一ツ、是ハ衆議院デモ以前問題ニナッタコ
トデアリマスガ、海難事故ニ關スル船長等
ノ處罰ニ關スル點デアリマス、是ハ前ノ遞
信省ノ案ニ依リマスト、故意又ハ重大ナ過
失ノミヲ處罰スルヤウナコトニナッテ居ッタ
ノデアルト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリ
マスケレドモ、ソレガ今度ハ全部特別ナ規
定ヲ設ケナイデ、刑法ノ規定ニ讓ラレテ普
通ノ輕過失デモ處罰スルト云フ風ニ、案ガ
變ッタト云フヤウニ聞イタノデアリマスガ、
是ハ若シサウデアリマシタナラバ、ドウ云
フ理由デサウ云フ風ニ變へラレタノデアリ
マスカ、假リニ變ヘラレタノデナイト致シ
マシテモ、サウ云フコトガ屢〓問題ニナッテ
居ルノデアリマスガ、輕過失デモ同ジヤウ
ニ處罰スルト云フヤウナコトガ適當デアル
ト御考ニナリマシタ其ノ主ナル理由等ヲ承
ルコトガ出來レバ幸ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=10
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011・小野猛
○政府委員(小野猛君) 第一點ノ商法ノ中
ニ、船長ニ關スル部分ニモ相當船員法ニ持ツ
テ來テモ宜ササウナ規定ガアルト云フ御話
デアリマスガ、實ハサウ云フ議論モ非常ニ
出タノデアリマス、海員法令調査會ニ於キ
マシテモ、其處迄商法ノ中ニ入込ンデ見タ
ラドウダト云フヤウナ說モアリマシタノデ
アリマスガ、主トシテ船員法ニ商法ヲ取入レル
ト云フコトハ、海員ニ關スル勞働立法ヲ持ッテ
來ヨウト云フ趣意デアリマス、從ヒマシテ海
員ノ施設ニ關スル規定ハ主トシテ海員ノ勞働
問題デアリマス、アレダケ持ッテ來ヨウ、今例示
ニ致サレマシタ船內ニ書類ヲ備ヘ付ケテ置
ク規定ガアリマスルガ、サウ云フモノモ船
長ノ義務トシテハ持ッテ來ベシト云フ說モ
アリマシタノデアリマスルガ、サウシマス
ト餘リニ商法ノ、アノ船長ノ部分ハ相當海
員ノ保護ト云フヨリハ、船主ノ立場カラ見
タ經濟上ノ規定ガ多イノデアリマスルノデ、
其處迄持ッテ來ルニハ及バナイト云フコト
デ、議論ヲ致シテ見マスナラバ幾分議論ノ
餘地ガ岩田博士ノ今仰シヤッタヤウニアルト
思ヒマスガ、大體ノ方針ガ主トシテ海員ノ
保護ニ關スルモノヲ持ッテ來ヨウト云フコト
デ、左樣ニ決リマシタノデ、司法省等ニモ
此ノ點ハ能ク御話ハ致シタノデアリマスル
ガ、商法ノ改正ト云フコトナラバ、先ヅ海
員ノ保護ダケニ止メテ貰ヒタイト云フ御意
見ガアリマスルノデ、海員ノ保護ニアラザ
ル部分ハ持ッテ來ナイト云フヤウニ決メタ
次第デアリマス、ソレカラ輕過失ノ問題ニ
付キマシテハ、遞信當局ト致シマシテハ、
海員ニ對シテ成ルベク負擔ヲ輕クシテヤラ
ウト云フ氣持ガ常ニ動イテ居ル次第デア、
そく、ソレデ幾分刑法トシテ法制上ノ理窟
ハアルガ、成ルベク負擔ヲ輕クシテヤラウ
ト云フ氣持デ、初メ私共ノ作リマシタ初期
ノ案ニハ輕過失ヲ罰シナイヤウナ規定ガアッ
タノデアリマス、案ト申シマスカ、未定稿
ト申シマスカ、サウ云フモノガアッタノデア
リマス、併シ御承知ノヤウニ刑罰問題ハ一
般刑法ト同ジク、特殊刑法デモ司法省ノ主
管デゴザイマスノデ、我々審議ヲ進メマス
ル道程ニ於キマシテ主管廳ト色々相談シ、
議論モ戰ハシマシタノデアリマスルガ、此
ノ點ハ司法省カラ御說明ニナルコトト心得
マスガ、普通刑法ノ建前カラ船員法ニ新タ
ニ輕過失ヲ罰セザル趣意ノ規定ヲ置クコト
ハ、一般ノ權衡上、理論上宜シクナイト云
フ、斯ウ云フヤウナコトデ、結局刑法改正
ノ時ニ一般刑法問題トシテ考慮シヨウト云
フコトニナッタ次第デアリマス、是ガ玆ニ至
リマシタ沿革デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=11
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012・清原邦一
○說明員(〓原邦一君) 御許シヲ戴キマシ
テ、司法省當局ニ於キマシテ何故船員ノ業
務上ノ過失事件ニ付キマシテ、輕過失ヲ處
罰シナイヤウニシヨウト云フ遞信省其ノ他
御意見ニ對シ、反對ノ意思表示ヲ致シマシ
タニ付キマシテ、簡單ニ其ノ理由ヲ御說明
申上ゲタイト存ジマス、先ヅ現行法ノ船員
法第七十三條ノ規定ハ、御承知ノ如ク刑法
百二十九條及同第二百十一條ニ對スル特別
規定ニナッテ居ルノデゴザイマス、換言致
シマスルト、刑法ノ第百二十九條ニ於キマ
シテハ、船員ノ業務上過失事件ニ付キマシ
テ、之ヲ汽車、電車ノ機關手、或ハ運轉手
ノ業務上過失事件ト同樣ニ、其ノ過失ノ輕
重ヲ問ハズシテ何レモ處罰スルコトニナッ
テ居ルノデアリマス、同刑法二百十一條ハ
業務上ノ過失致死ヲ規定シテ居リマシテ、
是亦船員ニ付キマシテ、陸上ノ交通從業者
ト同樣、過失ノ輕重ヲ問ハズ處罰スルコト
ニナッテ居リマス、處ガ現行船員法第七十三
條ハ船員ガ著シク其ノ職務ヲ怠ッタ場合、其
ノ結果船舶ヲ破壞シ、人ヲ死傷致シマシタ
場合ニ付テ五箇年以下ノ禁錮ニスル旨ノ規
定デゴザイマシテ、是ハ申ス迄モナク現行
刑法ニ對スル加重的ノ特別規定ニナッテ居
ルノデゴザイマス、今海員、船員側ノ方ヨ
リ船員ハ陸上ノ交通從業者トハ異ナル、其
ノ事業ノ原因ニ付テハ極メテ特殊性ニ富ン
デ居ル故ヲ以テ、刑法ノ如ク過失ノ輕重ヲ
問ハズシテ處罰スルコトヲ酷ニ失スルト認
メラルルカラ、是非此ノ際船員ニ付テ例外
規定ヲ設ケロ、卽チ船員ニ對シテハ重過失
ノミヲ處罰スル、輕過失ハ之ヲ處罰シナイ
コトニ法律ノ規定ヲ改正シテ貰ヒタイ、サウ云
フ趣旨ノ希望ガアッタノデゴザイマスルガ、
司法省トシテハ冒頭ニ申上ゲマシタ如ク、
之ニ對シ遺憾ナガラ贊成ノ意ヲ表スルコト
ノ出來ナカッタ理由ハ、大體次ノ四點ニ歸著
スルノデアリマス、第一ハ只今申上ゲマシタ如
ク、刑法ノ一般規定ニ於キマシテハ、陸上ノ
交通從業者ト船員ト區別シテ居ナイノデア
リマスルカラ、今此ノ場合獨リ船員ノミニ對シ
テ輕過失ヲ處罰シナイ、サウ云フ規定ヲ設ケ
マスルコトハ、電車ノ運轉手、汽車ノ機關
手、或ハ航空機ノ操縱者、航空機ノ操縱者
ニ付テハ航空法ニ同樣ノ規定ガアリマシテ、
過失ノ輕重ヲ問ハナイコトニナッテ居リマ
ス、從テ斯ウ云フ人々トノ間ニ甚ダシキ差
別待遇ヲスルコトニナリマシテ、公正ヲ缺
クモノト認メマス、第二ニ船員法ハ第一條
ニ規定致シテ居リマス如ク、二十噸未滿ノ
船舶ニ對シテハ其ノ適用ヲ見ナイノデアリ
マス、然ルニ刑法ノ業務上過失、艦船覆沒
或ハ同破壞罪ハ船員法ノ適用ノ有ル無シヲ
問ハズ一般ノ船舶ニ適用ガアルノデゴザイ
マスカラ、若シ今船員法ノ改正ニ當リマシ
テ、船員ニ對シ重過失ノミヲ處罰スルト云
フコトニナリマスルト、船員法ノ適用ノナ
イ小型ノ船舶ノ從業者、是等ノ人々ハ依然
トシテ刑法ノ規定ニ依リ輕過失ヲ處罰セラ
ルヽノデアリマスカラ、是亦其ノ間著シク
公正ヲ失スルコトニナルノデゴザイマス、
第三ニ刑法ノ百二十九條ノ規定ハ單リ業務
上ノ過失事件ノミヲ規定シテ居ルノデハナ
クシテ、一般普通人、卽チ單純過失ノ場合
ヲモ規定シテ居ルノデゴザイマス、從テ通
常人ガ過失ニ依ッテ船舶ヲ〓覆セシメタ場
合ニ於キマシテハ、過失ノ輕重ヲ論ゼズシ
テ法ノ建前カラハ之ヲ處罰スルト云フコト
ニナッテ居リマス、然ルニ業務上特ニ其ノ責
任ノ重カルベキ船員ガ、獨リ重過失ノミ處
罰ヲサレ、輕過失ハ之ヲ處罰セラレズニ濟
ムト云フコトハ、刑法ノ理論カラ申シマシ
テモ甚ダシク矛盾ヲ來ス次第デアリマス、
第四點ト致シマシテハ、申上ゲル迄モナク
船員ハ通常多數ノ船客、多クノ貨物ヲ積載
シテ居ルノデアリマシテ、其ノ船客竝ニ船
貨ノ運命ハ繋ッテ船長以下船員ノ雙肩ニア
ルノデゴザイマス、而モ一度ビ事故ガ惹起
セラレタ場合ニ於キマシテ、其ノ結果ノ重
大デアリ且ツ悲慘デアルコトハ私ヨリ申上
グル迄モナク、陸上事故ト比較スベクモナ
イ次第デアリマシテ、現ニ昭和七年瀨戶內
海ニ於テ或商船ノ沈沒シタ場合ハ、船客竝
ニ船員六十九名ガ死亡シテ居ル事實ガアル
ノデゴザイマス、是ハ單ナル一例ニ過ギマセ
ヌガ、斯カル重大ナル結果ヲ惹起スルコト
アルベキ船員ニ對シ、何故輕過失ヲ處罰シ
ナイ方ガ宜イト云フ議論ガ生ズルノカ、私
共俄ニ首肯シ難イ次第デゴザイマス、勿論
船員······船船ノ操縱ハ極メテ困難デアリ、
且海難ノ事故ハ暴風雨、惡潮流其ノ他自然
現象ニ災サレルコトガ多イコトハ、司法省
ト致シマシテモ重々了承致シテ居ル次第デ
ゴザイマシテ、從テ法ノ運用ニ付キマシテ
ハ過去ニ於キマシテモ十分之ニ愼重ヲ以テ
臨ムコトトシ、輕々ニ船員ヲ處斷セザルヤ
ウニ努力シ來ッタノデアリマスルガ、將來一
層此ノ點ニ注意スルコトハ申上ゲル迄モナ
イノデアリマシテ、此ノヤウナ特殊ノ事情
ハ法ノ運用ノ點ニ於テ之ヲ賄フベキデアリ
マシテ、立法ノ際輕過失ヲ處斷シナイヤウ
ニ法ヲ改正スルト云フコトハ、司法省トシ
テハ遺憾ナガラ御賛成申上ゲルコトガ出來
ナカッタ次第デゴザイマス、之ヲ以テ御說明
ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=12
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013・岩田宙造
○岩田宙造君 チヨットモウ一ツ關聯シテ
伺ッテ見タイノデスガ、只今ノ御說明ヲ聽キ
マスト、私共ノ此ノ問題ヲ考ヘテ居リマシ
タノトハ、其ノ問題ノ根據ノ······見方ガ全
然違ッテ居ルヤウニ思フノデアリマス、私共
ノ之ヲ問題トシテ考ヘテ居リマシタノハ、
過失ガアッテモ、輕過失ナラバ船員ダケハ特
別ナ恩典ヲ與ヘテ處罰シナイ、斯ウ云フノ
デハナイノデ、形ハサウ云フコトニナリマ
スガ、實質ハサウ云フノデハナイノデアリ
マス、過失ノアル者ヲ罰スルノハ無論當然
ナコトデアリマスケレドモ、船員ノ場合ニ
ハ此ノ輕過失ガ有リヤ否ヤト云フコトハ、
假令形式ノ上デハアリト認メラレテモ、共
ノ實際ニハナカ〓〓困難ナモノデアッテ、
無イ場合ニ輕過失アリト認メラレル危險ガ
外ノ場合ニ比較シテ非常ニ大キイ、ソレダ
カラ輕過失ヲ罰スルト云フコトニシテ置ク
ト云フト、其ノ本質ニ於テハ過失ノ無イ者
ヲ罰スル場合ガ非常ニ多クナルカラ、ソレ
ダカラ輕過失ヲ罰シナイ、言葉ハ成程輕
過失ヲ罰シナイト云フノデアリマスケレド
モ、其ノ實質ハ無辜ノ者ヲ罰スル虞ガアル
カラ、ソレヲ危險ヲ防グ爲ニ、輕過失ト云
フダケハ不問ニ付シヨウト云フコトガ問題
デアルノデアル、ソレデアリマスカラ、問
題ノ內容ハ、果シテ輕過失ト云フモノハ
外ノ場合ニ比較シテ、航海ニ關係ヲスルヤ
ウナ時ニハ、誤リ易イモノデアルカ否ヤト
云フコトガ問題ニナラナケレバナラヌノデ
アッテ、輕過失ト決ッタ、ソレハ間違ヒハナ
イ、間違ヒガナク輕過失ガアッテモ、ソレヲ
尙ホ船員ハ特別ニ待遇ヲシテ處罰シナイコ
トニスルカドウカト云フコトハ、ソレハ形
式ノ言葉ノ上デアリマシテ、問題ノ眞相ハ
ソコデハナイ、併シナガラ只今ノ御說明ニ
依リマスト、其ノ過失ノ有無ヲ判斷スルコ
トハ、外ノ場合ト同ジヤウニ、是ハ判斷ハ
出來ルモノダト云フ前提ノ下ニ立ッテ、サウ
シテ尙ホ過失ガアッテモ罰シナイト云フコト
ハ、外ノ場合ニ比較シテ大イニ權衡ヲ失ス
ル、斯ウ云フ御說明ノヤウデアッタノデア
リマスガ、果シテ私ガ今聽取ッタ通リデアリ
マセウカ、今ノ御說明ハサウデアッタケレ
ドモ、矢張リ司法當局ニ於テモ航海ニ關ス
ル乘組員ノ高級船員ノ技術上ノ判斷ト云フ
モノハ、是ハ特殊ナモノデアッテ、到底電車
ノ運轉手ヤ汽車ノ運轉手ノ過失ノ場合ト、ソ
レヲ判斷スル上ニ於テ難易ハ同一ノモノデ
ナイト云フコトハ、御認メニナルノデア
ルカ、ソレハ其ノ區別ハ御認メニナラヌノ
デアッテ、其ノ判斷ハ同ジヤウニ出來ルノ
ダ、ソレダカラ特ニ輕過失ヲ罰シナイト云
フコトハ、外ノ場合ニ比較シテ非常ニ權衡
ヲ失スルコトニナルノダ、斯ウ云フ御信念
デアリマスカ、其ノ點ヲ今一應念ノ爲ニ伺ッ
テ置キタイノデアリマス、ソレカラ理由ヲ
四ツバカリ御擧ゲニナッタノデアリマスガ、
外ノコトハ皆ソレニ附隨シテ來ルノデアリ
マスガ、或ハ二十噸未滿ノ小型船舶ノ場合
云々ト云フコトガアリマスガ、併シ是ハ旣
ニ此ノ船員法カラモ二十噸未滿ノモノヲ除
外シテ居ルヤウニ、之ニハ又特殊ナ異ッタ
事實ガアッテ除外サレテ居ルノデアリマス
カラ、異ッタサウ云フ事情ノアルモノニ付テ
之ヲ又區々ニスルト云フコトハ、少シモ矛
盾ハシテ居ラヌ、權衡ハ失シナイ、サウ云
フ違ッタ事情ガアルニモ拘ラズ、ソレヲ無視
シテ同ジヤウニ扱フト云フコトコソ却テ權
衡ヲ失スルモノデハナイカト思フノデアリ
やく、デアリマスカラ、第二ノ理由ハ、私
共ニハ理由ニナラヌヤウニ考ヘラレルノデ
アリマス、ソレカラ殊ニ第三ノ刑法ノ方カ
ラ云ヘバ業務ニ關係ノナイ者デアッテモ、例
ヘバ船舶ヲ沈沒サセルト云フコトガアレバ是
ハ刑法ニ依ッテ輕過失デモ處罰サレル、然ル
ニ只今ノヤウニ業務ニ關係ヲシテ居ル者ガ
輕過失ハ處罰サレナイト云フコトニナルト
云フト、非常ニ權衡ヲ失スルノデハナイカ
ト云フ御說明デアリマシタガ、是モ唯皮相
ノ論デアッテ、一向問題ノ眞相ニ觸レテ居ナ
イノヂヤナイカト思フノデアリマス、一體
船ヲ沈沒ヲサス場合ニ、サウ云フ結果ヲ生
ズルヤウナ海難事故ノ原因ヲナシマスモノ
ニ、其ノ船ノ運行ヲ掌ッテ居ル船長ガ、サウ
云フ結果ヲ惹キ起シタ場合ト、ソレニ關係
ノナイ他人、局外者ガサウ云フ結果ヲ惹キ
起シタ場合ト、之ヲ同ジヤウニ見テ居ラレ
ルノデアリマスケレドモ、其ノ內容ハ全然
違フ、船ヲ運行シテヤッテ行ク者ガ、ソレヲ
間違ッテ外ニ衝突ヲシタトカ坐礁ヲシタト
カ云フコトト、ソレカラ局外者ガ燈臺ノ火
ヲ消スナリ、其ノ他何カ方向ヲ誤マラシメ
ルヤウナコトヲシテ船ヲ〓覆サセルトカ、
或ハ外カラ何カ力ヲ加へテ破壞ヲサセルト
カ、沈沒サセルトカ、同ジ沈沒ヲサストカ、
海難事故ヲ生ズルト致シマシテモ、局外者
ガ船ヲ沈沒サセルノト、船ヲ運行スル人ガ
誤ッテ沈沒サセルト云フコトトハ全然違フノ
デアリマス、ソレヲ全然內容ノ同ジモノノヤ
ウニ御覽ニナリマシテ、ドウモ刑法デハサウ
云フ局外者ガヤッタ場合ニハ輕過失デモ罰セ
ラレルノニ、船員法デハ輕過失ノモノハ罰
セナイト云フコトハ、非常ナ權衡ヲ失スル
ト言ハレルノデアリマスガ、是ハ唯條文ノ
上ノ權衡論デアッテ、事ノ眞相ヲ少シモ御
覽ニナラヌヤウニ思ヒマスノデスガ、此ノ
點ヲ今一應伺ッテ見タイノデアリマス、ソレ
カラ結果ノ重大云々·······是ハ何レニシテ
モ重要ナコトデハナイト思フノデアリマス
ガ、成ル程船長ハ重要ナ、人ノ生命財產ノ
責任ヲ負ッテ居ルノデアリマスカラ、嚴重ニ
監督スルト云フコトハ、是ハ勿論必要ナコ
トデアリマスルガ、其ノ爲ニ海員懲戒法ト
云フモノガアリ、海員審判法ト云フモノガ
アッテ、其ノ方デ嚴密ニヤルノデアリマス
カラ、是ハ其ノ方ノ行政規定ニ預ケテ置イ
テ宜イノデアリマシテ、何モ刑罰ヲ以テ必
ズシモサウ云フ場合ニ迄臨マナケレバナラ
ヌト云フ理由ハナカラウト思ヒマス、併シ
是ハ議論デアリマスルカラ別ニシテ置キマ
シテ、ドウモ見方ガ唯其ノ形式ダケヲ御覽
ニナッテ居ルヤウデアッテ、問題ノ本當ノ眞
相ヲ見テ居ラレルノデアルカドウカガ先刻
ノ御說明デハ不明デアリマシタカラ、念ノ
爲ニソレヲ伺フコトガ出來レバ仕合セト思
フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=13
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014・清原邦一
○說明員(〓原邦一君) 只今岩田博士ヨリ
御尤モナル御質問ガゴザイマシタノデ、甚
ダ失禮デスガ、私ヨリ今一應司法省ノ輕過
失ヲ處罰スベシト云フ理由ニ付テ御說明申
上ゲタイト思フノデアリマス、先ヅ只今御
話ノ第一點デアリマスルガ、船員ノ業務上
ノ過失事件ニ付テ、輕過失アリヤナシヤヲ
認定スルコトハ頗ル困難デハナイカ、陸上
ノ交通事故ト同樣ニ至極簡單ニ認定ハ出來
ナイヂヤナイカト云フ御話ハ全ク同感デア
リマシテ、司法省ト致シマシテハ誠ニ其ノ
通リ、海難ノ事故ニ付キマシテハ、陸上ノ
一般交通事故ニ反シ種々複雜且特殊ナ事情
ニ富ンデ居ルノデアリマスカラ、其ノ判定
ノ困難ナルコトハ十分之ヲ諒承シテ居ル次
第デアリマス、從ヒマシテ船舶ノ覆沒等ノ
海難事故ノ取扱ニ付キマシテハ、原則トシ
テハ海員審判所ノ審判ヲ先ニシ、其ノ結果
ヲ俟ッテ後起訴スルヤウニ豫テヨリ通牒ヲ
出シテ居ル位デアリマシテ、之ニ付キマシ
テハ十分愼重ナル態度ヲ以テ臨ンデ居ル積
リデゴザイマス、而モ輕過失ノ認定ガ困難
デアルト云フコトハ、是ハ法ノ運用ノ際愼
重ニ考慮スベキ問題デアリマシテ、輕過失
ノ認定ガ困難デアルカラ、法律上輕過失ヲ
處罰セズト云フ規定ニシテ置イテハドウカ
ト云フコトニナレバ問題ハ自ラ別箇デハナ
イカト考ヘマス、從ッテ第一點ニ付キマシ
テハ、私共ノ方ト致シマシテハ尙依然トシ
テ輕過失ハ處罰スベシト云フ風ニ考ヘテ居
リマス、ソレカラ小型船舶ノ問題ニ付キマ
シテノ御話デゴザイマスガ、船員法ハ何故小
型船舶ニ適用シナイカト云フコトニ付キマ
シテハ、勿論種々相違セル點モアリマシテ、
船舶法ヲ適用セザルヲ可トスル理由ガア
ル爲デアリマスガ、併シ過失事件ヲ處罰ス
ルカドウカト云フ問題ニ付キマシテハ、小
型船舶ガ〓覆シタ場合ト多數ノ人命ト財產
ヲ預カッテ居ル大キイ船舶ガ沈沒シタ場合
トドチラヲ特別ニ重要ニ取扱フベキカト
言ヘバ、寧ロ是ハ大型船舶ノ方ヲ嚴重ニ取
締ル方ガ、社會ノ公平ナル觀念カラ見マシ
テ重要デナイカト私ハ考ヘマス、從ヒマシ
テ私ノ方ハ最少限度ニ於テ、小型船舶ニ於
テスラ輕過失ハ處罰サレテ居ルニ拘ラズ、
大型船舶ノ船員ハ何故輕過失ヲ處罰スルコ
トガ出來ナイカ、其ノ理由ヲ首肯スルコト
ガ出來ナイノデゴザイマス、又第三ニ通常
人ノ問題ニ付キマシテ御話ガアリマシタガ、
是ハ今ノ問題ト略〓同樣デゴザイマシテ、
通常人ガ偶〓小サナ船ニ乘ッテ······此ノ刑
法ノ百二十九條ハ別段二十噸以上ノ船ト限
リマセヌデスガ、小サナ渡船、其ノ他ノ船
ヲ操ッテ居ル中ニ〓覆セシメタ事件モ含
マレル譯デアリマスガ、サウ云フ場合ニ
偶〓船員デナイ通常人ガ操縱ヲ誤ッテ〓
覆セシメタ場合ト、何萬噸、何千噸ト云
フ船舶デ、業務上操縱ヲシテ居ル船長等
ガ〓覆セシメタ場合ト、何レヲ嚴重ニ追
及スベキカト言ヘバ、是亦寧ロ大型船舶
ノ方ヲ嚴重ニ處罰スベキモノデハナイカト
思フ、勿論通常人ニ對シテ、〓覆セシメタ
爲ニ起訴スルト云フ場合ハアルノデアリマ
スカラ、此ノ點ガ稍〓形式論ニ囚ハレテ居ル
デハナイカト云フ御意見ハ、或點ニ於テハ
御尤モデアリマスガ、併シ理論的ニ今ノ問
題ヲ論ズル場合ハ、矢張リ一箇ノ理由タル
ヲ失ハナイカト考ヘマス、之ヲ以テ說明ヲ
終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=14
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015・岩田宙造
○岩田宙造君 尙質問ハアリマスケレドモ、
後ノ機會ニシマシテ只今ハ止メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=15
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016・井上清純
○男爵井上〓純君 今ノ問題ニ關聯シマシ
テ質問ヲ致シタイト思ヒマス、只今ノ司法
省ノ方カラノ御說明ニ依リマシテ、遞信省
ノ希望ガ司法省ニ容レラレナカッタト云フコ
トガ明カニ分ッタノデアリマス、ソレデ、ソ
レ故ニ遞信省ニ對シテハ此ノ問題ニ付キマ
シテハ、別段質問スル必要ハナイノデアリ
やく、只今岩田氏ノ御質問ニ對シテ色々御
答ガアリマシタケレドモ、私共第一ニ不思
議ニ思フノハ、海上ノ出來事、ソレカラ陸
上ノ出來事、或ハ空中ニ於ケル所ノ出來事
ヲ、同ジ法律ニ依ッテ之ヲ處斷シナケレバナ
ラヌト云フコトガ、今御話ガアリマシタケレ
ドモ、其ノ根本ノ考ガドウモ腑ニ落チナイ
ノデアリマス、是ハ法理觀念ノ然ラシムル
所デアリマスガ、法律ヲ運用スルト云フコ
トニ於テ、其ノ弊害ヲ緩和スレバ宜シイト
云フヤウナ御說明デアリマシタケレドモ、
併シナガラ法律ヲ運用スルト云フコトハ矢
張リ人ニアリマシテ、其ノ人ガ旣ニ法律ノ
權化見タヤウニナッテ居ル今日ニ於キマシテ
ハ、矢張リ法律ノ明文ニ依ッテ運用サレル
コトニナリマスカラ、法律ノ中ニ明文ガナ
カッタナラバ、幾ラ大臣カラ御訓示ガアリマ
シテモ、之ヲ實際ニ運用スル者ハ、矢張リ
法律通リニ運用スルノデアリマス、警察官
アタリガ大キナ船長ヲ捕ヘテ拘留スルコ
トモ出來ル、サウシテ出港スルコトモ出來
ナイ、又荷揚ノ事ナドモ世話スルコトモ出
來ナイヤウナ大損害ヲ、間接的ニハ國家ニ
及スト云フコトモ出テ來ルノデアリマス、
サウ云フコトヲ考ヘタ時ニ果シテ陸上ノ遭
難、空中ノコト、海上ノ遭難ナドヲ一〓ニ、
一ツノ規定ニ依ッテ、刑法ニ依ッテ處斷シナ
ケレバナラヌカト云フコトガ、大キナ問題
デアルカト思フノデアリマス、デ今日ハ飛
行機ノ遭難ニ付キマシテハ、マダ一事件モ
起ッテ居ラヌカラ今日ハ問題ガナイト思ヒ
マスケレドモ、必ズヤ將來ニ於テハ此ノ飛
行機ノコトニ付キマシテモ、特別ナ法律ガ
制定サレナケレバナラヌト云フ聲ガ必ズ擧
ガルト思ヒマス、サウシテ若シモ一樣ニ之
ヲ處斷スルト云フコトニナリマシタナラバ、
海上ニ於テハ最早船長ニナリ手ハ無クナッ
テシマウノデアリマス、或ハ空中ニ於キマ
シテハ、飛行家ハ、折角發達シヨウトスル
其ノ飛行術ニ對シテモ、大ナル障害ニナラ
ウト思フノデアリマス、ソレ故ニ此ノ問題
ハ啻ニ船員ノ問題バカリデナク、飛行機ノ、
飛行家ノ問題ニナラウト思フノデアリマス、
全體政治ト云フモノガ唯法律ニ依ッテ治メ
ナケレバナラヌ、其ノ法律ハ一樣デナケ
レバナラヌト云フコトガ抑〓不公平デアリマ
シテ、特殊性ヲ帶ビタモノニ對シテ一樣ノ
法律ヲ與ヘルト云フコトガ不公平ナンデ、
矢張リ特殊性ノアルモノヲ、特別ナ法律ヲ
銘々ニ作ルト云フコトガ公平デナケレバナ
ラヌ、其ノ見解ニ於キマシテハドウモ司法
省ノ御說明ガ私共ニハ根本的ニ諒解ガ出來
ナイノデアリマス、併シナガラ斯ウ云フコ
トハ衆議院ニ於キマシテモ、モウ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=16
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017・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 井上君、司法
政務次官ガ御出デニナッテ居リマスカラ······
刑事局長ガ御出デニナッテ居リマスカラ、チ
ヨット今ノ話ヲ中途カラ聽カレテハ分ラナ
イト思フガ、前カラモウ一遍ヤリ直シテ戴
キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=17
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018・井上清純
○男爵井上〓純君 ソレデハ改メテ申上ゲ
マス、只今船員ノ業務上過失ニ對スル處罰
規定ニ付キマシテ御質問ヲ申上ゲテ居ルノ
デアリマス、只今迄ノ御說明ニ依リマスル
ト海上ノ船舶ノ事故ニ付キマシテモ、陸
上ノ電車或ハ鐵道、自動車ノ事故ニ於キマシ
テモ、或ハ空中ニ於ケル所ノ飛行機ノ事故
ニ對シマシテモ、同ジ一ツノ刑法ニ依ッテ處
斷スルト云フコトガ御方針ノヤウデアルノ
デアリマス、其ノ點ハ私共ハ頗ル不思議ニ
考ヘテ居ル點デアリマシテ、空中ニ於キマ
シテハ無論ノコト、海上ニ於キマシテハ風
濤アリ、或ハ濃霧アリ、或ハ標識等ノ不備
ガアツタリシマシテ、自分ノ考ヘ通リニ船
ガ行カナイノデアリマス、已ムヲ得ザル所
ノ事故ト云フモノガ、是ハ如何ナル熟練シ
タ船長ニ於テモ免カレナイ所デアラウト思
フノデアリマス、然ルニソレヲ果シテ過失
デアルトカ、或ハ輕過失デアルト云フヤウ
ナコトヲ判斷スルコトハ、陸上ノ御方ニ於
テハナカ〓〓至難ナコトナンデアリマス、
殊ニ事故ニ於テ之ヲ見ルト云フコトハ、何
モ證據ガ殘ラヌ場合モアルノデアリマスカ
ラ、非常ナル困難ナコトニナルノデアリマ
ス、先程岩田博士カラ仰セニナッタ如クニ餘
程此ノ實相ヲ調ベルト云フコトハ困難ナコ
トデアルト云フノニ拘ラズ、之ヲ處罰スル
上ニ於キマシテハ、同ジ刑法ニ依ッテ之ヲ
ヤラナケレバナラヌ、ソレデ其ノ特殊性ニ
對シマシテハ司法省ニ於カレテハ、法ノ運
用ニ依ッテ其ノ缺陷ヲ補ッテ行ケバ宜シイト
云フ御考ノヤウデアリマスルガ、ソレハ私
共ハ頗ル危險デアルト思フノデアリマス、
法律ガチヤントアリマシテ、ソレヲ手加減
デスルト云フコトニモナルノデアリマシテ
益〓不公平ナコトニナラウト思ヒマス、ソ
レデ今日ハ飛行機ノ遭難ニ付キマシテハ、
事件ガ起ッテ居リマセヌカラ何等問題ハ世
上ニ起ッテ居リマセヌケレドモ、併ナガラ
將來若シモ飛行機ニ對シテモ同樣ナ事ガ
起ッタ場合ニ於テハ、必ラズヤ飛行家ノ間ニ
於キマシテ大キナ問題ガ起ルト思フノデア
リマス、ソレ故ニ今日ノ船員法改正法律案
ニ於キマシテモ、是ハ船員ダケノ問題デナ
クシテ、飛行家ノ問題トモナリ得ルノデア
リマス、抑〓政治ノ根柢ト云フモノガ、皆同
一ナル法律ニ依ッテヤラナケレバナラヌト
云フコトガ公平デアルカ、特殊性ヲ帶ビタ
モノヲ特別ナ法律ニ依ッテヤルコトガ公平
デアルカ、此ノ二ツノコトニ對シマシテド
ウモ今迄ノ司法省ノ御說明ニ依リマスル
ト、總テガ同ジ一律ニ處斷スル方ガ公平デ
アルト、斯ウ云フ御考ノヤウニ考ヘラレル
ノデアリマス、デ法律ヲ御作リニナル上ニ
於テハ成ルベク單一ニシテ、サウシテ同ジ
ヤウニ處斷スルト云フコトガ宜イヤウニ考
ヘラレマスケレドモ、ソレハ机上ノ論デア
リマシテ、實情ニ卽シナイ論デアリマス、
必ズヤサウ云フコトヲナサッタナラバ、色々
ナ問題ガ次々ヘト起ッテ終止スルコトガ出
來ナイヤウニナルト思フノデアリマス、是
等ハ餘程考ヘテ戴カナケレバナラヌ、今ヤ
庶政一新ト云フ聲ガ盛デアルノデアリマ
ス、昔ノヤウニ法律萬能ニ囚ハレテ、總テ
ガ一ツノ法ニ依ッテ治メナケレバナラヌト
云フヤウナ、古イ思想ニ依ッテ官吏諸公ガ居
ラレタナラバ、此ノ國民ノ日進月步ヲシテ
居ル所ノ實情ニ副ハナイト思フノデアリマ
ス、今日折角海員法ガ改正ニナリマスノデ
アリマスカラ、其ノ際ニ於キマシテ此ノ點
ダケハ十分ニ直シテ戴ケルコトダト期待シ
テ居ッタ所ノ海員ノ人達ハ、少シモ其ノ點ニ
觸レナイデ、却テ惡クナッタ、サウスルト外
ノ社會政策ノ立法トシテハ宜イケレドモ、
大事ナ點ニ於テ非常ニ落チテ居ル、サウス
ルト折角ノ改正法律案ガ魂ガ拔ケテ居ルト
云フヤウナ聲ガ盛ニ起ッテ居ル所ヲ考ヘマ
シテ、ドウカ一ツ其ノ聲ニモ耳ヲ傾ケラレ
マシテ、他日ノ刑法ノ御改正ノ時ヲ待タナ
イデ、今日卽今此ノ不利ナ點ヲ御修正ニナッ
タラ宜カラウト思ッテ居ッタノデアリマス、
再ビ同ジ法案ヲ御出シニナッタト云フコト
ハ私共ハ非常ニ腑ニ落チカネルノデアリ
やく、併シ今日ハ非常ニ時期ガ切迫シテ居
リマスルカラ、此ノ委員會ニ於テ修正シナ
ケレバナラヌト云フコトヲ私ハ申上ゲルノ
ヂヤアリマセヌケレドモ、大事ナ點ヲ拔ケ
テ緊急ノ案ト云フ實體ハナイト思フノデア
リマス、外ノ社會政策的ナ事柄ハ此ノ法律
案ニ依ラナイデモ相當ニ各會社デモヤッテ
居ルヤウニ思ヒマス、否是レ以上ノ設備ヲ
シテ居ルヤウニ思フノデアリマス、ソレ故
ニ其ノ方ハ主ニ餘リ大切ナ問題ヂヤナクシ
テ、大事ナ問題ハ自分達ノ二重處罰ノ問題
デアリマス、懲戒ヲサレ、行政處分ヲサレ、
其ノ上ニ司法處分ヲ受ケナケレバナラヌト
云フコトヲ、豫知スルコトガ出來ナイ天候ノ
危險ニ常ニ間斷ナク曝サレテ居ル人々ヲ脅
威スルト云フコトハ、折角發展シテ居ル所ノ船
舶ノ業ヲ畏縮スルヤウナコトニナッテハ大變
デアリマス、是ハ必ズヤ刑法ノ御改正ノ時ニハ
御改正ニナルコトダト思ヒマスケレドモ、
今ノ御說明ニ依リマスト、刑法ノ改正ニ於
キマシテモ矢張リ依然トシテ斯ウ云フ御趣
旨ノ下ニ法律ハ存在スルヤウナ懸念ガアル
ヤウニ考ヘラレマスルカラ、諄イヤウデア
リマスケレドモ此ノ點ニ付キマシテ、遞信
省ノ方ト司法省ノ方カラ御自分ノ立場ニ於
カレマシテ、率直ナル御意見ヲ伺ヘレバ結
構ダト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=18
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019・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 先程カラ船舶
ノ操縱ニ關スル過失ノ特殊性ニ付キマシテ
色々御意見ガ出マシテ、誠ニ御尤モニ存ズ
ルノデアリマス、遞信省ト致シマシテハ船
舶ノ操縱ガ極メテ困難ナル事情ヲ有シテ居
リ且又海難ノ原因ガ極メテ複雜ナル事情ヲ
有ッテ居ルコトニ付キマシテハ御話ノ通リ
能ク諒承シテ居リマスノデ、此ノ點ニ付キ
マシテハ、司法當局トモ十分協議ヲ遂ゲマ
シテ御希望ノ在ル所ヲ出來ルダケ實現スル
ト云フコトニ努力致シタイト考ヘテ居ルノ
デゴザイマス、恰モ司法當局ニ於キマシテ
モ今刑法改正ノコトニ付テ審議ヲセラレテ
居ル途中デアリマスノデ、遞信省ト致シマ
シテハ只今御話ニナリマシタ御趣旨ニ基イ
テ、其ノ意味ヲ實現スルコトニ付テ司法當
局トモ十分ニ意見ヲ交換致シタイト存ジマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=19
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020・松阪廣政
○政府委員(松阪廣政君) 御答ヘ申上ゲマ
ス、司法省ト致シマシテモ海上事故ノ特殊
性、海難ノ立證ノムツカシイト云フコトハ
十分承知致シテ居リマスガ、先ニモ訓令ヲ
發シマシテ、成ルベク海員審判ノ結末ヲ待ッ
テ、ソレカラ參酌シテヤルト云フコトヲ訓
示致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、其ノ
特殊性ハ能ク分ッテ居リマスルシ、又其ノナ
カナカ困難ナル事業デ而モ國家的ニ功勞ノ
アルコトモ諒承致シテ居ルノデアリマスガ
過失責任ヲドウスルカ、重過失ノミヲ罰シ
テ輕過失ヲ除クコトガドウカト云フコトニ
ナリマスト、此ノ特殊性ダケ直チニ除イテ
宜イカドウカト云フコトニナルト、多少〓究
シナケレバナラヌ問題ダラウト思フノデア
リマス、海難事故ノムツカシイノハ主トシ
テ船員法ニ於ケル大キナ船舶ノ問題デアリ
マシテ、小型船舶用三十噸未滿ノ漁船トカ
陸上ノ渡船ノヤウナモノノ過失ヲ、此ノ方
ハ輕過失デ罰シテ、コッチダケハ罰セヌト云
フコトデ果シテ宜イカドウカト云フコトモ
〓究シナケレバナラヌト思ヒマス、ソレナ
ラバ小型ノ方モ輕過失ハ免シテヤッタラド
ウカト云フコトニナリマスト、陸上ノ電車
ナドハドウスルカト云フヤウナ問題モアリ
マシテ、結局舊刑法デハ業務上ノ過失ニ付
テハ覆沒罪ハ罰シナカッタ、唯過失致死、過
失傷害ダケヲ罰シテ居ッタ、舊刑法ノヤウ
ニスルノガ宜イカ、ソレトモ或ハ現行法ノ
ヤウニスルノガ宜イカ、或ハ高級船員ダケ
ハ除外例ヲ設ケテ宜イカ、水先案内人若シク
ハ航空員ダケ例外ヲ設ケルカト云フコトニ
付キマシテハ、若シ正義公平ノ觀念ニ基カズ
シテ其ノ除外ガ出來マスレバ誠ニ結構ダト
思ヒマスガ、此ノ點ハ目下刑法改正委員會
デ深ク〓究シテ戴ク積リデ居リマスガ、ド
ウカ左樣御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=20
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021・井上清純
○男爵井上〓純君 海軍ノ政府委員ハ見エ
テ居ラレマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=21
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022・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 海軍ハ御見エ
ニナリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=22
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023・井上清純
○男爵井上〓純君 見エテ居ラレマセヌケ
レバ缺席ノ儘申上ゲタイト思ヒマス、海軍
刑法ニ於キマシテハ艦船事故ニ對スル過失
罪ヲ、普通ノ刑法ノ規定ニ讓ッテ居ルヤウデ
アリマスガ、是等ハ非常ナ間違デアルト思
ヒマス、此ノ普通ノ規定ニ讓ツタ爲ニ禁錮
以上ノ刑ニ處セラレタ者ガ失官ヲスルコト
ニナリ、此ノ爲ニ艦長アタリデモ失官シテ
居ル者ガアルノデス、國家ノ干城トシテ働
キナガラ、自分ノ過失トハ云ヒナガラ普通
艦船ヲ破壞シタト云フ爲ニ、普通ノ刑法ニ
問ハレテサウシテ其ノ結果破廉恥罪ト同ジ
ヤウニ取扱ハレルデアリマス、是ハ船長アタ
リモ非常ニ憤慨シテ居ルノデアリマス、破廉
恥罪ト同ジヤウニ取扱ハレル、是ハドウモ
過誤デアルヤウニ思フノデアリマス、寧ロ
之ヲ辱職罪ト扱フベキガ本當デハナイカト
思ヒマス、全體刑法ヲ必ズ斯ウ云フヤウナ
過失罪ニ適用シナケレバナラヌカドウカト
云フコトガ私ハ非常ナ疑問デアリマス、コ
ンナコトニ刑法ナドヲ適用スベキデハナイ
ト思ヒマス、過失罪デ宜シイ、行政處分デ
宜シイ、行政處分ヲ受ケマスト船長ハ失職
シナケレバナラヌ、殆ド失職ノ憂目ニ遭フ
位ナ所ニ行クノデアリマスカラ、是程苛酷
ナモノハナイノデアリマス、ソレ以上ニ何
モ刑法ナドヲ適用スル必要ハナイ、海軍モ
是ハ御止メニナッタ方ガ宜カラウト思フノ
デアリマス、尙序デアリマスルガ、此ノ
問題ニ關聯シテ居リマスルカラ伺フノデア
リマスルガ、大分支那ノ國籍ニ在ル日本ノ
商船ガアルヤウデアリマス、一體ドノ位支
那ノ國籍ニ日本ノ船ガアリマスルカ、何隻
アリマスルカ、何噸アリマスルカ、遞信省
ノ當局カラ御聽キシタイノデアリマス、ソ
レカラ何故ニ支那ノ國籍ニ日本ノ商船ガナ
ケレバナラヌカ、沒收サレタラドウナルカ、
此ノ際ニ於テ沒收サレタラドウナルカ、·ソ
レニ對シテ豫防法ヲ講ゼラレテ居ルカ、恐
ラクハ船會社或ハ資本家ノ非常ナ間違ヒナ
考デ以テ支那ノ國籍ニ移シテ置イテ、サウ
シテ今非常ニ困ッテ居ルト思フノデアリマ
ス、併シナガラ此ノ支那ノ國籍ニ入ッテ居ル
所ノ何十萬噸ノ日本ノ商船ガ、一朝ニシテ
支那ニ沒收サレタ時ニハドウナルカ、此ノ
點ニ付テ遞信當局ハ如何ニ御考ニナルカ、
併セテ御答辯ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=23
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024・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 井上男爵ガ御
尋ニナリマシタ支那ニ在籍シテ居リマスル
所謂變態船ハ、約三十萬噸程ニ達シテ居ル
ト思ヒマス、ソレガ支那ノ置籍船ニナッテ居
リマスル理由ハ、井上男爵モ既ニ御存ジノ
通リ、多クハ非常ナ古船デアリマシテ、以
前ニ政府ニ於テ議會ノ御承認ヲ受ケテ確立
致シマシタ優秀船ヲ建造スル方針ヲ堅持シ
テ行ク上カラ、其ノ輸入ハ優秀船ヲ建造シ
テ行ク方針ト矛盾スルコトニモナリ、又造
船業ニモ多大ノ打撃ヲ與ヘルコトデモアリ
ソレ等ノ點ヲ考慮シテ輸入ヲ禁ジテ居リマ
シタ關係カラ、支那ニ在籍シテ專ラ外國船
ノ形デ日本ト諸外國トノ貿易ニ從事シテ居
ル次第デアリマス、日支兩國間ノ事態ガ險
惡トナルニ從ッテ、是等ノ船舶ガ沒收セラル、
危險ガナイカト云フ御心配ハ御尤モデアリ
マシテ、我々モ其ノ點ニ付テハ十分ニ〓究
ヲ致シテ居タノデアリマスガ、殆ド全部外
海ニ出テ居リマシテ、支那ノ港ニハ居ラナ
イノデアリマス、船舶自ラ沒收セラルヽト
カ、抑留セラルヽ危險ノナイ所ニ出テ活動
ヲシテ居ルノデアリマス、併シナガラ尙其
ノ上ニモ十分ソレ等ノ船ノ保護ニ付テハ、
矢張リ考ヘテ置カナケレバナリマセヌノデ、
若シ非常ナ危險ナ事態ニ立至リマスレバ、
兩國關係ノ推移ニ伴ウテ適當ナ保護ノ處置
モ執ラナケレバナラヌト考ヘテ居リマス、
併シ今日現在ノ狀態ハ、彼等自ラ只今御心
配ニナリマスヤウナ危險ノナイ區域デ活動
シテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=24
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025・井上清純
○男爵井上〓純君 只今ノ御說明デ諒承致
シマシタガ、尙支那ノ國籍ニ入ッテ居リマ
スル船ノ船長ハ恐ラク日本人ダラウト思ヒ
マスルガ、高級船員ノ中ニモ幾ラカ支那人
ガ居ルト思ヒマス、特ニ下級船員ハ全部支
那人デアラウカト思ヒマス、就中一番危險
ナコトハ、無線電信ノ技手ニ支那人ガアル
ヤウニ聞イテ居リマス、是等ハドウカ今ノ
中ニ變ヘルト云フヤウナ方法ハ講ゼラレナ
イモノデアリマセウカ、餘談ニ亙ルヤウデ
アリマスケレドモ、ドウモ時局ノ切迫セル
ニ連レマシテ非常ニ心配ニナルノデアリマ
スガ、遞信大臣ハドウ御考ニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=25
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026・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 井上男爵ノ御
心配ニナッテ居リマス點ヲ、私共モ矢張リ心配
ヲシテ色々取調ベテ見タノデアリマス、高
級船員ハ大體ニ於テ日本人デアリマス、下
級船員ガ支那人デアルト云フコトモ御話ノ
通リデアリマスガ、無線電信ニ從事シテ居
ル者ノ間ニ支那人ヲ使用シテ居ルラシイト
云フヤウナ情報モアリマシテ、ソレ等ノ點
モ取調ベテ見マシタガ、多數ノ船ハ矢張リ日
本人ヲ使ッテ居リマシテ、四隻ダケ支那人ヲ使ッ
テ居ルモノガアルヤウデアリマス、ソレ等ノ
船舶ニ對シマシテ、萬一ノ場合ニ危險ヲ感ズ
ルコトノナイヤウニ、當局トシテハ十分注
意ヲシテ置キタイト思ッテ居リマス、又最近
日本ノ船舶ガ大分御用船ニ、軍隊輸送ノ
爲ニ使用セラレルコトニナリマシタノデ、
沿岸貿易ニ從事スル船腹ガ不足シテ參リマ
シテ、其ノ結果物價ニ及ス影響モ察セラレマ
シタノデ、此ノ度外國船モ沿岸貿易ニ從事
シ得ルヤウニ特許致シマシタ、其ノ結果支
那ニ船籍ヲ置イテ居リマスル船ハ大分此ノ
方面ニ活動スルコトニナッテ來ルヤウデア
リマス、サウ云フコトニナッテ參リマスルト
抑留サレルトカ、捕獲サレルト云フヤウナ
危險ガ一層少クナッテ參ルコトデアラウト
存ジテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=26
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027・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 如何デゴザイ
マスカ、今日ハ是デ止メマシテ、明朝午前
十時カラ開キタイト思ヒマスガ、御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=27
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028・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) ソレデハサウ
云フコトニ致シマス、是デ散會致シマス
正午十二時散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵西〓從德君
副委員長伯爵後藤一藏君
委員
侯爵池田宣政君
子爵伊集院兼知君
子爵松平保男君
子爵秋元春朝君
內田重成君
男爵有地藤三郞君
白根竹介君
今井田〓德君
男爵井上〓純君
男爵深尾隆太郞君
橋本辰二郞君
油井德藏君
岩田宙造君
國務大臣
遞信大臣永井柳太郞君
政府委員
司法政務次官久山知之君
司法省刑事局長松阪廣政君
遞信政務次官田島勝太郞君
遞信參與官犬養健君
遞信省管船局長小野猛君
說明員
司法書記官〓原邦一君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00119370804&spkNum=28
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