1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年八月六日（金曜日）午前十時三十五分開會
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午前十時三十五分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=0
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001・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) ソレデハ只今
カラ委員會ヲ開會致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=1
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002・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ此ノ四十三條ノ船舶賃
貸借ニ關スル適用ニ付キマシテ、此ノ儘デハ
色々疑義ヲ生ズル虞ガアルト考ヘマシテ、
先日モ色々質問ヲ致シテ居ッタノデアリマ
ス、其ノ心配ハ今モ同ジヤウニ持ッテ居ルノ
デハゴザイマスルガ、併シナガラ其ノ爲ニ
此ノ實害ヲ生ズル虞ガアリマスナラバ、或
ハ一部修正モ已ムヲ得ヌコトニナルノデハ
ナイカト云フ考ヲ懷イテ居ッタノデアリマ
スルガ、併シ段々本法ノ他ノ多數ノ重要ナ
ル條項其ノ他ノ關係、各種ノ事情ヲ考慮致
シマシテ、實害ヲ生ジナイ限リハ解釋上多
少ノ疑問ガアリマシテモ、今日ノ所デハ或
ハ此ノ儘デ置クト云フコトモ出來ルノデハ
ナイカト更ニ考ヘテ居ルノデアリマス、從ッ
テ其ノ點ニ付テ尙伺ッテ置キタイノデアリ
マスルガ、私ノ考ト致シマシテハ、是ハ昨
日來政府當局ノ方カラ屢〓伺ッタ所デアリマ
スガ、此ノ船舶貸借ト云フノハ所謂裸傭船
ノ場合ノミヲ意味スルモノデアルト云フコ
トノ一面、其ノ趣旨デアルト云フ言明ヲ新
タニ得マシテ、ソレト同時ニドウセ本法ノ
施行令ニ於キマシテ、色々手續ノコトヲ御規
定ニ相成リマスル際ニ、玆ニ謂フ船舶貸借
ト云フノハ、裸傭船ノ場合ノミデアルト云
フコトヲ直接デモ、間接デモ其ノ施行規定
デ明カニナルヤウニ規定ガ願ハレマスルナ
ラバ、ソレニ依ッテ實害ハ生ジナイ、唯法文
ノ上ノ疑問ガ殘ルニ致シマシテモ、實際問
題トシテハ其ノ手續ノ時ニ總テ確定ヲシテ
參リマスルカラ、有耶無耶ノ曖昧ノ中ニサ
ウ云フ狀態ガ續クト云フ危險ガナクナリマ
スルカラ、實害ダケハナクナル、從テ後ノ
法文ノ字句ヤ體裁ダケト云フコトニナリマ
スルナラバ、必ズシモ今日之ヲ完璧ヲ期シ
ナクテモ宜イヂヤナイカ、斯ウ考ヘルノデ
アリマシテ、從テ施行令ノ方ニサウ云フヤ
ウナ趣旨ノ規定ヲ設ケラレルコトハ差支ナ
イノデアリマスルカ、又設ケラレル意嚮ガ
アリマスルカ、其ノ點ヲ大體伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=2
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003・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今ノ岩田博
士ノ御話ノ御趣旨ヲ能ク諒承致シマシタ、
本法案ノ主ナル部分ハ、海員ノ雇傭契約ニ
關スル事項ヲ中心ト致シテ居ルノデゴザ
イマスルカラ、船舶所有者ト海員トノ問ニ
雇傭契約ガ存スル限リ、各本條ニ依リ所有
者ガ法ノ適用ヲ受クルコトトナルノデアリ
マシテ、卽チ問題ノ第四十三條ノ規定ハ其
ノ適用ナク、唯船舶ヲ裸ノ儘デ他人ニ貸ス
場合ニ於テ、此ノ借入人ト海員トノ間ニ雇
傭契約ガ新タニ成立致シマスル關係上、此
ノ契約ノ當事者タル借入人ニ本法ノ規定ヲ
適用スルト云フ意味ニ解シテ居ルノデゴザ
イマス、斯樣ナ規定ハ現ニ船舶職員法、船
員最低年齡法、船舶安全法等ニ其ノ例ガア
ルノデゴザイマス、是等ノ規定ノ中デ船舶
貸借ト云フ字句ハ、總テ只今申上ゲマシタ
ヤウナ意味ニ解釋シテ參ッタノデアリマシ
テ、斯ク解釋スルコトニ依ッテ格別ノ不都合
ナク運用シテ居ル次第デゴザイマス、尙只
今ノ御注意モアリマシタノデ、施行規則ヲ
作製致シマスル場合ニ、第十八條ニ關シマ
シテハ前申上ゲマシタ意味ヲ明カニスル規
定ヲ設ケル積リデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=3
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004・岩田宙造
○岩田宙造君 ソレデ了承致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=4
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005・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 此ノ機會ニ於キマシテ遞
信大臣ニ御尋ネ致シタイト思ヒマスガ、遞信
省ガ現下ノ我ガ沿岸船舶ノ缺乏ノ爲ニ非常ニ
海運界ニ問題ヲ惹キ起シタルコトヲ緩和ス
ルガ爲ニ、沿岸貿易ヲ許容スルト云フ方策
ヲ執ラレマシタコトハ、時宜ニ適シタル誠
ニ結構ナルヤリ方ト私モ贊成致シマスル次
第デアリマス、之ニ關聯致シマシテ、先般
來カラ目下遞信省ニ於キマシテ、外國船ノ
輸入ト云フコトハ之ヲ禁止ト云フ迄ニ至ラ
ズトモ、許可ヲセザル方針ヲ御執リニナッテ
居ラレタノデアリマスガ、此ノ遞信省ノ方
針ヲ緩和シテ、支那置籍船ハ勿論ノコト、
一般ノ諸外國カラデモ勝手ニ內地ニ船舶ヲ
輸入シテ以テ此ノ內國ニ於ケル所ノ船腹ノ
不足ヲ補充シテハドウカト云フ議論モ大分
或方面ニ於キマシテハ擡頭致シテ居ルヤウ
ニ聞イテ居リマスガ、之ニ對シマスル所ノ
遞信省ノ御意嚮、御方針ヲ此ノ機會ニ承ル
コトガ出來レバ誠ニ仕合セト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=5
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006・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 御尤モノ御尋
デアリマシテ、船腹ノ不足ヲ如何ニ緩和ス
ルカト云フコトハ色々ナ點カラ重大ナ問題
トナッテ居ルノデゴザイマス、外國船ノ輸
入ヲ許可スルト云フコトヲ、其ノ問題ノ解
決ノ一方法トシテ主張シテ居ラルヽ方モ少
クアリマセヌノデ、當局トシテモ色々〓究
致シテ見タノデアリマス、併シナガラ御承
知ノ通リニ政府ト致シマシテハ從來船舶改
善ノ目的デ、出來ルダケ優秀船ノ建造ヲ奬
勵スル方針ヲ立テマシテ、其ノ方針ノ下ニ
相當ノ成績ヲ擧ゲツヽアル次第デゴザイマ
ス、御承知ノ通リニ百噸以上ノ船舶ニ付テ
見マシテモ、昨年末ニ於キマシテハ約千九
百艘、四百二十五萬噸程デアリマシタモノ
ガ、今年末ニ於キマシテハ約一一千二百艘、
四百七十五萬噸程ニ達シテ、四五十噸ノ增
加ヲ致ス豫定デアリマス、尙明年ノ上半期
末ニナリマスト二千三百艘ヲ超エマシテ五
百萬噸ニ垂ンタル噸數ニ增加スル豫定デゴ
ザイマシテ、サウ云フ方面ニ於テ相當船腹
ノ增加ヲ·····優秀ナル船腹ノ增加ヲ見ル
筈ニナッテ居ルノデアリマス、併シ只今橋
本サンモ御話ノ通リニ、他方ニ於キマシテ
時局ノ爲ニ、又外國品ニ對スル需要ノ增加
ノ爲ニ船腹ヲ非常ニ要求シテ參ッテ居リマ
スノデ、其ノ點カラ船腹ヲ補充スル必要ハ
十分ニ感ゼラレルノデゴザイマスガ、他方又
御存知ノ支那ノ北支事變ノ進展ニ伴ヒマシ
テ、對支貿易ニ從事シテ居リマシタ船腹ガ
著シク不要ニナッテ、他ノ方面ニ向ケナケレバ
ナラヌト云フ事態モ起ッテ參リマスノデ、ソ
レ等ノ噸數モ少クナイノデアリマスカラ、
サウ云フ點ヲ考慮致シマシテ、今暫ク形勢
ヲ觀望シテ居ル次第デアリマス、併シナガ
ラ時局ガ益〓擴大致シマシテ運送船ノ如キモ
ノノ需要モ、現在ノ狀態又ハ現在ノ狀態以上
ニ繼續スル必要ガ起リ、ソレニ反シテ船腹
ニ對スル要求ガ益〓增加シテ來ルト云フヤ
ウナコトデアリマスレバ、政府トシテハ其
ノ時ニハ機宜ノ處置ヲ執ッテ、船腹ノ增加ヲ
圖ラナケレバナラヌト思ヒマス、只今橋本
サンガ御話ニナリマシタヤウナコトモ、其
ノ時ニハ機宜ノ處置トシテ採用シナケレバ
ナラヌカトモ考ヘテ居ルノデアリマス、併シ
現在デハ只今申上ゲマシタヤウナ事情ガア
リマスノデ、ソレ等ノ對支貿易ニ從事シテ
居リマシタ船舶ノ模樣ナドモ考慮ノ中ニ入
レマシテ暫ク形勢ヲ觀望シテ居ル次第デゴ
ザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=6
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007・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 只今ノ御答辯ニ依リマシ
テ遞信省ニ於テハ、大體ニ於テ老朽船淘汰、
優秀船奬勵ト云フ御方針ヲ依然トシテ御採
リニナッテ居ルト云フコトヲ承リマシテ私ハ
滿足致シマシタ、實際ニ於キマシテ假ニ外國
船ヲ輸入スルト致シマシタ處ガ、今日ニ於
キマシテハ其ノ船價ガ非常ニ〓騰致シマシ
テ、外國ソレ自體ニ於キマシテモ船腹ノ不
足ヲ感ジテ居ル折柄デアリマシテ、餘程多
額ノ、高イ値段デナケレバ船舶ヲ買却ス
ルモノハナカラウト思ヒマス、又支那ニ
於キマスル船ノ大部分ト云フモノハ、恐ラ
クハ不經濟船ガ其ノ多數ヲ占メテ居ルノデ
ハナカラウカト思ヒマス、其ノ內ニハ解撤
ノ目的ヲ以テ內地ニ持チ來シタ船ヲ其ノ儘
解撤ヲセズシテ籍ヲ支那ニ置イテ運航シテ
居ルモノモ多々アラウト思ヒマシテ、是等
ノ輸入ヲ許シマシテサウシテ日本船籍ニス
ルト云フコトハ、日本船舶ノ總體ノ上カラ
見マシテ老朽船ガ多數ヲ占メルト云フ結果
ニナリマシテ、船舶改善ノ趣旨ヲ全ク滅却
スルコトニナルヤウナ虞モアラウト思ヒマ
ス、又昨日ノ新聞カラ見マスルト、「ロン
ドン」ニ於テ日本カラ十一「シル」トカデ傭
船ヲシタト云フコトデアリマス、十一「シ
ル」ト言ヒマスト云フト約ドウモ十圓近ク
ニ今日ナルカノヤウニ思ヒマスデスガ、斯
ウ云フナニハ歐洲戰爭ノ終リニ於テ漸ク見
タクラヰ高運賃デゴザイマスガ、斯ウ云フ
モノヲ是ハ非常ナ焦眉爛額ノ必要ヨリシテ
已ムヲ得ズ金錢ナドヲ顧慮スル暇ナクシテ
傭ッタノデアラウト思ヒマスガ、差當リノ必
要ヨリシテ對策ヲ誤ルヤウナコトハ餘リド
ウモ好マシクナイカノヤウニ思ヒマスノデ、
能ク總テノ海運界ノ事情、世界ノ海運界ノ
情勢ナドヲ達觀セラレマシテ、一部ノ人ノ
策動ニ乘ゼラルヽヤウナ輕率ナル擧動ヲ演
ズルヤウナ不幸ヲ見ルト云フヤウナコトニ
ナリマシタナラバ、日本ノ海運界ノ前途ノ
爲ニ實ニ憂慮スベキコトト私ハ考ヘルノデ
アリマシテ、篤ト其ノ時ニ於ケル所ノ情勢
ヲ調査セラレマシテ、其ノ處置ヲ誤ラザル
ヤウナ方針ヲ以テ御進ミニナルコトヲ希望
致シマシテ、私ノ質問ヲ打切ルコトニ致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=7
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008・後藤一藏
○伯爵後藤一藏君 司法大臣ニチヨット御
伺ヒ致シタイト思ヒマスガ、此ノ船員法ヲ
出サレテ色々ノ刑事事件ヤナンカト云フモ
ノハ、刑法ニ據ルト斯ウ云フ御考ノヤウデ
アリマスガ、度々是ハ力說論議サレタコト
デアリマスガ、ドウシテモ各〓特異性ト云フ
モノガアルノデアルカラ、刑法一點張リニ
行カウト云ッテモ刑法バカリデ、海ノコトモ
陸ノコトモ空ノコトモ交通ダケニ付テデモ
サウ云フコトヲ規定スルノハ無理デハナイ
カ、ダカラドウシテモ海事ノコトハ、海事
ノコトニ付テダケデモ法律ガ出來ルト云フ
コトガ大事ヂヤナイカト思ヒマスガ、今迄
ノ建前カラ言ヘバドウシテモソレハ出來ナ
イ、斯ウ云フコトデ司法當局ノ御答辯モア
リマスケレドモ、將來斯ウ云フコトガ段々
複雜ニナッテ來ルト云フコトカラ考ヘマス
ト云フト、ドウシテモソコ迄今カラ司法省
アタリデモ御考ヘ下サラナケレバナラヌ問
題デアル、ソレデ司法當局トシテハ將來モ
何處迄モ此ノヤリ方ヲ續ケテイラッシヤル
御積リデアリマセウカ、ドウデアリマセウ
カ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=8
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009・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 御尋ネノ點ニ付
キマシテハ只今ノ所、刑法ノ改正ノ事業ガ旣
ニ著手サレテ可ナリ進行シテ居ル際デアッテ、
此ノ刑法ノ改正ノ事業ニ付キマシテハ諸般
ノコトヲ十分ニ考究致シマシテ、現在竝ニ
將來ノ刑ノ盛リ方、刑ノ按配ト云フコトニ
付テ考究致シテ居リマス、從テ此ノ海員ノ
特性ニ付キマシテモ私共モ十分ニ能ク納得
致シマシタガ、此ノ刑法ノ改正委員會ニ出
シテ、サウシテ其ノ上ニ於テ十分ニ決メタ
イ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス、現在
ノ所、共ノ儘ニヤッテ居ッテ宜カラウ、斯ウ
考ヘテ居リマス,発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=9
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010・後藤一藏
○伯爵後藤一藏君 政府委員ノ御答ニ依リ
マシテ、刑法ノ改正委員ノ中ニハ專門的ノ
海事知識ノアル人ヲ入レルコトニ付テ或委
員カラ御質問ガアッタノデスガ、ドウモソレ
ハ法規上出來ナイ、官制上カ法規上カ出來ナ
イ、斯ウ云フヤウナ御答ガアッタノデスガ、サ
ウ云フヤウナコトデ此ノ刑法ノ改正ヲサレ
ルト云フノデハ非常ニ心細イト思ッタモノデ
スカラ、只今ノヤウナ質問ヲ申上ゲタヤ
ウナ次第デアリマス、ドウモ昨日モ私ハ司
法大臣ノ御出デニナラヌ時ニ申上ゲマシタ
ガ、自動車ノ如ク我々ノ日常出入スル時ニ
見テ居ルヤウナ事柄ニ對シテモ、非常ニド
ウモ法ヲ扱フ方ト實際ノ人トノ間ニ齟齬ガ
非常ニ多イ、況ヤ海ト云フコトニ付テサウ
云フコトガ多イト云フコトハ已ムヲ得ナイ、
而モ法ノ方ヲ扱フ方ノ方々ハソレヲ努メテ
知ラウトナサラヌト云フ傾向ガ非常ニ多イ、
デスカラドウゾ是ハ本當ニ御考ヘ下サルナ
ラバ、モウ少シ實際ノ問題ニ付テ司法省ニ於
テモ御考ヲ戴キタイ、斯ウ思フノデアリマ
スシ、海軍ノ法律ナラ法律ト云フモノヲ司
法省ニ於テモ切リ離シタモノトシテ、遞信
省ノ關係カモ知レマセヌケレドモ、御作リ
ニナルト云フコトヲ成ルダケ早クシテ戴キ
タイ、斯ウ思フノデアリマス、遞信省ノ方
ヘモ申上ゲタイノデアリマスガ、遞信省ノ
方トシテモ私ハ海員ノ問題ニ付テ相當御考
ヘ下サッテ居ルコトハ分リマスケレドモ、甚
ダ私ハ熱ガ足リナイト思フ、例ヘバ此ノ刑
法ノ改正ニ當ッテモ海事ノ問題ニ付テモ色
色ノコトガアル、ソレカラ又今度ノ海員法
ノ問題ニ付テモサウデアリマス、サウ云フ
時ニ其ノ委員ノ方ガ、マア船ニデモ乘ッテ
橫濱カラ神戶カラ門司、上海迄デモ乘ッテ見
ヨウト云フヤウナコトヲナサッタト云フコト
ヲ伺ッタコトガナイ、ドウモ實際ト法文トノ
喰違ヒガ出來ルト云フコトハ、サウ云フ所
ニアル、ソレダケ乘ラレタ處デ大シタコト
ハナイト言ヘバナイカモ知レマセヌガ、私
ハ非常ニ違ヒガアルト思フ、ソレデ機關室
ニ入ッテモ、「ブリッヂ」ニ乘ッテモ、水夫ガヤッ
テ居ルコトヲ見テデモ非常ニ意味ガアルト
思フ、唯東京ニバカリ居ラレテ、斯ウ云フ
法文ヲ練ラレルト云フコトハ、船ノ上バカ
リデナシニ非常ニ私ハ日本ノ一般ノ行キ方
ニ付テ支障ヲ來ス問題ガ多イト思フ、其ノ
結果トシテ斯ウ云フヤウナ、今度ノヤウナ委
員會ノ色々ノ問題ガ「スムーズ」ニ行カナカッ
タヤウナコトデハナイカト私ハ思フノデス、
ドウゾ其ノ邊ニ付テ遞信當局ニ於テモ實際
ノ問題ニ付テモウ少シ考ヘテ戴キタイ、考
ヘルバカリデハナク意識シテ戴キタイ、斯
ウ云フコトヲ切ニ御願ヒスル譯デアリマス、
サウシテモウ一ツ是ハ遞信大臣、司法大臣
ニ伺ヒタイト思ヒマスガ、此ノ海員ノ問題
ト云フモノハ昨日モ申上ゲマシタケレドモ、
衆議院コ於テ相當論ジテ居ル、此ノ方ニ於
テモ論ジテ居ル、衆議院ニ於テ論議サレタ
時ニ於テモ、色々ノ特異性ヤナンカニ付テ
知ッテ居ルト云フコトハ隨分仰シヤッタケレ
ドモ、實際前議會ニ提出サレタモノト、今
度提出サレタモノトチットモ違ッテ居ナイ、
法文化シテ吳レト云フコトヲ、アレダケ皆ガ
申シタコトヲ無視サレタト云フコトハ甚ダ
遺憾ダト思フ、遞信當局ニ於テモ此ノ努力
ヲナサラナカッタト云フコトハ誠ニ遺憾ダ
ト思フ、今度ノヤウナ短期ノ臨時議會ニ御
出シニナルト云フコトハドウ云フ譯テアル
カ、ト云フコトヲ伺ッタノデアリマスガ、昨
日ハ社會立法ノ問題、外ニモ重要ナ急グモ
ノガアルカラト云フコトデアッタ、サウ云フ
コトモオアリコナッタデセウケレドモ、アレ
ダケ言ッタコトヲ、法文ノ上ニ表ハシテ貫ヒ
タイト云フコトヲ相當世間デモ論議サレテ
居ルト云フコトヲ、司法大臣モ御認メニナッ
テイラッシヤルヤウニ伺ッタノデスケレドモ、
コンナ短期議會ニ御出シニナラヌデモ、通
常議會迄練ッテ、サウシテ法文化シテ御出シ
ニナラナイカ、私ハ昨日仰シヤッタダケノ、
早急ニ要スル理由ハ寧ロ練リ直シテ御出シ
ニナルト云フコトノ方ガ重大ダト思フ、是
ハ意見ノ相違デアルカモ知レヌケレドモ、
ドウシテモ私ハサウ思フ、本統ニ海員ノコ
トヲ思ッテ爲サルナラバソコニ遞信省ノ當
局ナドハ御考ヘニナラナケレバイカヌ、斯
ウ私ハ思フ、サウシテ又昨日出タンデスガ、
四十三條ノ問題ニ付テ岩田博士カラ非常ニ
御深切ナ御注意ガアッタ、私ナドハ法律ノコ
トハ能ク知ラナイケレドモ、是程御深切ナ
ル御注意ガアッテ、サウシテ色々ト御話ニナツ
タニ拘ラズ、刑事局長ガ歸ラレテ、民事局
長ガ來ルカラ待ッテ居レト言ハレテ、何時迄
經ッテモ來ラレナイ、三時カラ四時迄經ッテ
モ來ラレナイ、休憩中ニ來ラレタカト思ッ
タラ、岩田博士ト懇談シテ去ッテシマッタ、
アヽ云フ事柄ヲ考ヘマスト云フト司法省ノ
御考ガ奈邊ニアルノカ、今度ノ刑法ノ改正
ノ時ニデモ色々考ヘルト仰シヤッテモ、ドノ
程度ニ爲サルカト云フコトヲ非常ニ心配ス
ルノデアリマス、今日モ民事局長ハ出テ來
ラレナイ、一度モ答辯ニ御立チニナラヌ、
斯ウ云フヤウナコトデ此ノ重大ナル法律案
ヲ審議シヨウト云フコトハ誠ニ困ッタ問題
ダト思フ、殊ニ此ノ內閣ハ正義ニ依ッテ革新
ヲスルト云フコトデアル、相剋ヲ無クスルト
云フコト、其ノ趣意カラ言ッテモ此ノ法案ヲ
今迄ノヤウナ審議ノ狀態デ之ヲ通過スルト
云フ事柄ハ、是ハ私トシテ非常ニ自分自ラ
トシテモ職責ヲ盡シ得ナカッタコトヲ誠ニ
遺憾ニ思ッテ居ル次第デアリマス、岩田博士
ノヤウナ立派ナ御方ガ、此ノ法規ハ此處ガ惡
イノダゾト言ハレテモ、其ノ惡イト云フ事
ガ判ッテ居テモ、惡イ事ヲ知ラヌ顏シテ通ラ
レルト云フヤウナ事柄ハ誠ニ困ッタコトダト
思フノデアリマスガ、先程ノ博士ノ御話ニ依
ルト便法ガナイ譯デハナイト云フ、斯ウ云
フ御話デアリマスカラ、ソレデ宜イカモ知レ
マセヌガ、私ハ此ノ點ニ付テ誠ニ遺憾ダト
思ヒマス、共ノ事ダケヲ兩大臣ガ御列席デ
アリマスカラ、申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=10
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011・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 後藤伯爵ノ色
色御氣付ニナリマシタ點ハ私モ御尤モニ存
ジマス、實ハ海員ノ過失ニ關スル刑罰ノコ
トニ付キマシテハ、司法當局ニ於キマシテ
刑法改正審議會ノ時ニ十分ソレヲ考慮スル
ト云フコトニナッテ居リマスノデ、遞信省ト
致シマシテモ出來ルダケ司法當局ト協力致
シマシテ、其ノ實現ヲ期シタイト思フテ居
リマスノデ、海事上ノコトニ經驗ノアル學
者ノ意見書ノ如キモノモ、司法當局ノ方ニ
御傳ヘシテ見テ戴クコトニ致シテ居リマス、
又御審議ノ此ノ刑法改正ニ關スル審議會ノ
進行ノ途中ニ於テハ、遞信省カラ司法當局
ニ御願ヒシテ、又サウ云フ專門家ノ意見モ
聽イテ戴キタイト思フテ居ルノデアリマス、
決シテ其ノ場限リノ言明デナク、眞實ニ言
明シタ所ハ、遞信當局ト致シマシテハ之ヲ
實現スル決心ヲ持ッテ居リマス、十分ニ努力
ヲ致シマス、ソレカラ前囘ノ如ク衆議院ヲ
通過シマシタ所ノ附帶決議ノ中ニ、衆議院
ノ要求ヲ法文化スルト云フヤウナ意味ノコ
トガ書イテアリマスルガ、ソレハ實ハ此ノ
刑法ヲ改正スル時ニ法文化スルト云フヤウ
ナ意味デアリマシテ、是ハ刑法改正ノ行ハ
レマス時ニ、法文化スルコトニ努メルト云
フ其ノ精神ハ決シテ失ッテ居ナイ譯デゴザ
イマス、唯此ノ法案ノ成立ヲ遞信當局ガ非
常ニ急ギマス意味ハ、是ハ後藤伯爵モ御存
知ノ通リニ、約十萬ノ海員ノ生活ノ保護ニ
關係シテ居ル海員ノ仲間カラ見マスト、非
常ニ期待サレテ居ル社會立法デアリマシテ、
此ノ法案ノ成立ハ十萬ノ海員カラ見マシテ
モ、非常ニ要求サレテ居ルコトト思ヒマス
ルシ、兎ニ角海事法令審議會ニ於キマシテ
官民各方面、勞資各方面ノ人ガ集ッテ拵ヘ上
ゲマシタ其ノ原案ヲ、意見ノ纏ッタ案ヲ餘リ
ニ法文化シナイデ長ク放任シテ置クト云フ
コトハ、時代ノ要求ニモ背クヤウニモ思ヒ
マスノデ、取敢ズ各方面ノ意見ノ纏ッタモノ
ダケヲ法律トシテ出來ルダケ早ク制定シタ
イ、サウシテ尙〓究ヲ要スル點ハ引續キマ
シテ遞信當局ニ於キマシテモ〓究ヲ致シマ
シテ、サウシテ修正スベキモノハ修正ヲシ、
尙追加スベキ所ハ追加致シマシテ、出來ル
ダケ完璧ヲ期シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デゴザイマシテ、色々此ノ度ノ法案ノ御審
議ノ途中デ各委員諸君カラ御注意下サイマ
シタコト、又色々御意見ヲ聽カセテ戴キマ
シタコトハ、十分遞信當局ニ於キマシテ之
ヲ考慮致シマシテ、將來ノ改善、修正ノ資
料ニ致シタイト斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴ
ザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=11
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012・後藤一藏
○伯爵後藤一藏君 私ハ是デ質問ヲ終リマ
スガ、只今ノコトデアリマスガ、司法大臣
カラ御答辯ガアリマセヌデシタガ、ドウゾ
只今遞信大臣ノ仰シヤッタヤウニ此ノ海員
ノ問題ニ付テ出來ルダケ御考ヲ戴キタイト
思ヒマシタノデスガ、サッキ時代ノ要求ニ應
ジテ追加修正スルト仰シヤッタヤウデスガ、
私ガサッキ一番初メニ申シマシタガ、刑法ノ
中ニ全部ヲ引クルメルト云フコトハ非常ニ
ムツカシイト斯ウ思ヒマスガ、其ノ點ニ付
テハ今迄ノ慣習ガアルカラ、ソレヲ壞スト
云フコトハムツカシイカモ知レマセヌトモ
思ヒマスケレドモ、是ハ本當ニ海員ノ爲ヲ
御思ヒニナルナラバ、別ニ御考ヲナスッテ、
遞信當局ニ於テ時代ニ卽シタ根本的ナモノ
ヲ御作リニナリ、追加修正デナシニ、ソコ
ヲ御考ヲ一ツ戴キタイト斯ウ思ッテ居リマ
スガ、是デ以テ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=12
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013・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 外ニドナタカ
御質問ゴザイマセヌカ、是デ質問ヲ終ルコ
トニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=13
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014・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) ソレデハ質問
ハ是デ終リマス、是カラ討論ヲ開始致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=14
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015・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 私ハ本案ニ贊成ノ意ヲ
表スルモノデアリマスガ、何分ニモ本法案
ハ六章七十一條ト云フヤウナ厖大ナルモノ
デアリマシテ、此ノ短期間ノ會期ニ於テ隨
分勉强ハ致シタノデスガ、ナカ〓〓細目ニ
互ッテ迄ノ檢討ト云フコトハ出來マセヌガ、
大體ヲ通覽致シマスト現行法ニ比ベマシテ、
海員ノ生活上優遇サレテ居ル點ガ多々見受
ケラレマスノデ、此ノ點ニ付テハ全ク同感
デアリマス、異議モゴザマイセヌ、ガ唯改
正法ニ於キマシテハ、現行法ニゴザイマシ
タ七十三條、詰リ刑罰ノ點デアリマスガ、
是ガ削除ニナッテ居リマス、ソシテ此ノ點ダ
ケガ私共聊カ不滿ナ點ガアルノデアリマ
スガ、又海員一同ノ聲ト致シマシテモ急ニ
變化ヲ及スノデハナイカト云フヤウナ危惧
心モアリマスシ、又此ノコトニ付テハ衆議
院ニ於テ七十議會ニモ殆ド初メカラ終ヒマ
デ、此ノ點デ論議サレ、又今囘ノ七十一議
會コ於キマシテモ相當ニ論議ガアリマシタ
シ、又本委員會ニ於キマシテモ相當ナ論議
ガアリ、又質疑應答ガアッタノデアリマス、
併シ遞信當局ノ御言明又司法當局ノ御言明
ガアリマシタノデ、全然滿足トハ申シマセ
ヌケレドモ、一應此ノ點デ私ハ諒解シテ置キ
タイト思ヒマス、就キマシテハ希望決議ヲ
附ケマシテ、ソシテ本案ニ贊成ヲ致シタイ
ト思フノデアリマス、希望決議ヲ讀ミマス、
五ツノ希望決議ヲ附ケタイト思フノデアリ
マス、「一、政府ハ海運ノ重要性ト海上任務
ノ特殊性ニ鑑ミ速ニ現行刑法ヲ改正シ船員
ノ業務上ノ過失ニ對シテハ著シク其ノ職務
ヲ怠リタル場合ニ非ザレバ處罰セザル事ヲ
明カニシ船員ヲシテ安ジテ其ノ職務ニ從事
スルヲ得セシムル事ニ、政府ハ船員ノ業務上ノ
過失ニ對シテハ海事審判所ノ審判後ニ非ザレ
バ刑事訴追ヲナサザル方針ヲ採ル事、三、政
府ハ檢察當局ニ對シ船員ノ業務上ノ過失ニ
對シテハ特ニ其ノ取扱ヲ愼重ニシ輕々處斷
スルガ如キ事ナキ樣訓令ヲ發スル事、四、政
府ハ檢察當局ニ對シ海難ニ際シ船員ノ喚問
取調ヲ爲スニ當リテハ充分ニ船員ノ任務ヲ
理解シ其ノ業務ニ支障ヲ來サザル樣注意ス
ベキ旨訓令ヲ發スルコト、五、水先人ニ對
シテモ船員ト同樣ノ取扱ヲ爲ス事、以上五
ツノ事項ヲ希望決議トシテ附シマシテ本案
ニ贊成ヲ致ス次第デアリマス、ドウカ私ノ
此ノ希望決議ニハ全員御贊成ヲ希望致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=15
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016・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 如何デゴザイ
マスカ、此ノ希望事項ハ後〓シニシテ、先
ヅ原案ノ討論ヲ進メタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=16
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017・橋本辰二郎
○橋本辰二郞君 私ハ只今承リマシタル希
望決議ニ贊成スル一人デアリマスルガ、委
員長ノ御意見ニ依リマシテ希望決議ハ後ニ
廻シマシテモ差支ゴザイマセヌ、本案ニ對
スル私ノ意見ヲ是ヨリ申述ベタイト思ヒマ
ス、本案ハ大體ニ於キマシテ、時代ノ要求
ニ順應シ、本邦海運業ノ發展ト、船舶所有
者ト乘組員間トノ協調ヲ目的トシマシテ、
併セテ從來ノ關係ノ諸法規ヲ整理統一セラ
レタル所ノ法案デアリマシテ、政府ノ御說
明ニ依リマシテモ、船主竝ニ船員ノ代表者
及官民各方面ノ權威者ヲ網羅セル調査會ニ
於テ審議決定シタル成案ヲ骨子トシ、之ニ國
際勞働總會ニ於テ採擇セラレタル條約案ノ
趣旨ヲ取入レテ立案サレタモノデアルト云
フコトデアリマシタ、本員モ案其ノモノハ
先ヅ以テ今日ノ社會立法上必要ナル良案デ
アルト認ムルノデアリマス、併シナガラ多
年ノ間船主及船員ガ共同一致致シマシテ、
最モ熱心ニ要望セル所ノ肝腎ナル一箇條、
卽チ船員ノ輕過失ハ之ヲ司法處分ニ付スベ
カラズトノ一箇條、之ヲ脫漏セシコトハ所
謂九仭ノ功ヲ一簣ニ虧クモノデアリマシテ、
本法案ノ完璧ヲ傷ツクルモノデアリ、本員
ノ最モ遺憾トスル所デアリマス、海事行政ノ主
管省デアリ、又海事ニハ最モ通曉セラレ船
員ニ對シテ最モ同情アル所ノ遞信當局ニ於
カレマシテハ船主、船員ノ此ノ多年ニ亙リ熱
望セル所ノ所謂船員ノ業務上ノ輕過失ヲ司
法處分ニ付スルノ不當ナルコトノ主張ニハ
全面的同感ヲ表セラレマシテ、此ノ海員法
改正ニ當リマシテ船主竝ニ船員ノ要望ヲ容
レラレマシテ、重過失ハ之ヲ處罰スルモ、輕過
失ハ之ヲ行政處分ニ委スベク之ヲ法文ノ原
案ニ明記セラレタト云フコトデアリマシタ、然
ルニ司法省ノ反對ニ會シマシテ、遂ニ遞信省ノ
原案ヲ覆サレ、刑罰規定ニ關スル所ノ箇條
ガ變更セラレタコトデアリマス、此ノ事柄
ハ誠ニ私ハ惜ムベキコトト思フノデアリマ
ス、司法當局ハ船舶操縱者ノ過失ニ對スル
刑事責任ヲ、他ノ一般交通機關ノ操縱者ノ
刑事責任ト區別シテ、輕減スルト云フコト
ハ、均衡ヲ失シ、又國民ノ感情ニ反スル、
加之船員外ノ通常人ト雖モ過失ノ程度ヲ論
ゼズ、船舶ノ〓覆、沈沒、破壞セシ時ハ之
ヲ罰スルコトニナッテ居ル、通常人スラ罰ス
ル場合ニ、船員ニ限リ之ヲ寛容ニ取扱フト
云フコトハ、誠ニ權衡ヲ失スルカラ、今囘
ハ船員法ノ改正ニ際シ、現行船員法第七十
三條ノ挿入ヲ見合セ、交通ニ關スル一切ノ
過失ハ等シク刑法ニ於テ處斷ヲスルコトニ
シタトノ趣旨ヲ答辯セラレタノデアリマス、
此ノ司法當局ノ御意見ハ法理論トシ、又
片ノ理窟ト致シマシテハ一應ハ御尤モナリ
ト首肯セラルヽ點モアルノデアリマス、併
シナガラ世ノ中ハ單ニ理窟一片ノミニテ通
ルモノデハナイノデアリマス、況ンヤ政治
ハ現實ニ卽セネバナラナイノデアリマス、
法律モ勿論時代ノ進運ニ順應シ、適切ナル
時代ノ要求ニ從ヒ、立法運用ノ必要アルコ
トハ又言ヲ俟タナイノデアリマス、英國ニ
於キマシテハ幾多煩瑣ナル法律ガ現存シテ
居ルニモ拘リマセズ、時勢ニ伴ハザルモノ
ハ之ヲ死法卽チ死シタル法律ト致シマシテ、
其ノ適用ヲ休止シテ居ルノ慣例ガ少カラヌ
ト云フノデアリマス、船員法モ英國ニハ在
ルニハアリマスガ、嘗テ之ヲ懲罰ノ目的ニ
運用シタルコトハナイト云フコトデアリマ
ス、ソレ故ニ近年英國ノ海員ノ業務上ノ過
失ト致シマシテハ全ク處罰ヲ受ケタルコト
ハナイト言ッテ、非常ニ誇ッテ居リマス、又
是ガ英國ノ船舶ガ遭難事故ノ少キ所以ナリ
ト英國人ハ得々トシテ揚言致シテ居ルノデ
アリマス、之ニ依ッテ見マシテモ、技術者ノ
業務上ノ過失ヲ處罰ニ依リマシテ、他ノ警
戒ヲ喚ビ起シ、又ハ反省サセヨウト試ミル
コトト云フコトハ全ク是ハ木ニ緣リテ魚ヲ
求ムルヤウナモノデアリマシテ、寧ロ罰セ
ザルコトガ却テ好結果ヲ齎スト云フコトニ
ナルノデアリマス、實ニ業務上ノ過失ヲ一
律ニ處罰スルト云フコトハ、百害ガ有ッテ
利ガ無イト思ヒマス、業務上ノ過失ナルモ
ノハ、其ノ職業ノ種類ニ應ジ宜シク區別ヲ
シテ取扱フベキモノデナケレバナリマセヌ、
例ヘバ醫師ガ治療ヲ誤リマシテ患者ヲ死傷
セシメタリト致シマシテモ、之ヲ他ノ殺傷
罪ト同一ニ取扱フ國ハ何處ニアリマスカ、
我ガ高級船員ヲ陸上交通機關ノ電車自動車
ノ運轉手ト同視シ、一律ニ取扱フト云フヤ
ウナコトハ畢竟事理ヲ辨ゼザル甚シキ事柄
デアリマシテ、私ノ慨嘆ニ堪ヘザル所デア
リマス、彼ノ兇惡ナル犯罪ヤ又ハ破廉恥罪
ノ如キモノハ萬人齊シク之ヲ適用シナケレ
バナリマセヌ、併シナガラ業務上ノ過失ニ
至リマシテハ、宜シク職業ノ種類ト其ノ地
位人格等ニ對應致シマシテ、然ルベキ區別
ヲシテ取扱ヲ爲シ、特別法ニ於テ之ヲ規定
スルコトハ當然ダラウト思ヒマス、卽チ船
員ノ過失ノ如キモノモ、此ノ船員法ニ規定
スベキモノデアルト思フノデアリマス、其
ノ點ニ對シマシテ切ニ司法當局ノ猛省ヲ促
サザルヲ得ナイノデアリマス、況ンヤ技能
ヲ有スル人々ト云フモノハ國家ノ寶デアリ
やく、國家興隆ノ基礎トナリ、又經濟發展
ノ原動力トナルモノデアリマス、ソレ故ニ
國家ハ宜シク是等技能ヲ有スル者ヲ優遇シ
テ、安ンジテ各自ノ天分ト技能ヲ十分ニ發
揮セシメナケレバナラヌ、之ヲ誘導又ハ奬
勵スベキコトハ勿論デアリマス、而シテ其
ノ職業ト人格トヲ無視致シマシテ、玉石混
清總テ之ヲ一律ニ取扱ハムト欲スルハ、
恰モ國家ノ進運ヲ阻害スルニ異ナラズ、斷
ジテ爲政家ノ執ルベキ道デハナカラムト私
ハ思フノデアリマス、重ネテ言ヒマス、我
ガ海員諸君ハ海運國策遂行ノ重大使命ヲ帶
ビテ世界ノ海運界ニ躍進シテ、海國日本ノ
海外發展ノ第一線ニ立チ、國家ノ爲ニ挺身
奮鬪致シテ居リマスル尊敬スベキ紳士デア
リマス、之ヲ彼ノ電車ヤ自動車ノ運轉手ト
同一視スルガ如キハ、國家的使命ノ上ニ活
動致シテ居リマスル是等尊敬スベキ戰士ノ
矜持ト自尊心ヲ傷ツケ、延イテハ職業上ノ
意氣ヲ阻喪セシムル虞レガ十分ニアルノデ
アリマス、斯ノ如キコトハ政治上努メテ之ヲ避
クベキコトデアルト思フノデアリマス、本邦高
級海員ガ船員業務上ノ過失ハ、其ノ重大ナ
ルモノニ限リ、之ニ嚴罰ヲ課シ、輕過失ハ
之ヲ行政處分ニ委ネタシトノ請願書ヲ提出
シタルコトハ、實ニ一再デアママセヌ、第
一ニハ大正三年ニ此ノ請願ヲ提出致シタノ
デアリマス、以後二十數年ニ亙リマシテ絕
エズ此ノ請願ノ趣旨ヲ繰返シテ居ルノデア
リマス、然ルニ今日迄之ヲ等閑ニ附シマシ
タノハ、遞信當局ニ於キマシテモ、海員ニ
同情アリトハ雖モ、多少怠慢ノ責ヲ免レヌ
點モアリト言ハナケレバナリマセヌ、併シ
遞信當局ニ於キマシテ近來非常ナル同情ヲ
以チマシテ、海員ノ希望ノ達成ニ努力ヲ拂
ハレタルコトハ私モ感謝スル所デアリマス、
元來勞働者ト資本家ト云フモノハ、其ノ立
場ヲ異ニスル關係上ヨリ致シマシテ、雙方
ノ主張ハ常ニ相反撥シ、對立關係ヲ生ゼザ
ルモノハ殆ド稀デアリマス、然ルニ獨リ此
ノ船員ノ輕過失ハ之ヲ行政處分ニ委ネラレ
タシトノ主張ニ至リマシテハ、船主船員ハ
勿論、一般海運關係者ガ擧ッテ共鳴スル所デ
アリマス、之ヲ是レ輿論ト言ハズシテ、將
何ヲカ輿論ト言ハムヤデアリマス、況ンヤ
此ノ輿論ナルモノハ衆愚ノ勢デハアリマセ
又、衆議院ニ於キマシテモ、亦本院ニ於キ
マシテモ、此ノ海員法ノ審議ニ當リマシテ、
重點ハ此ノ事柄ニノミ集中セラレテ居ッタ
ノデアリマス、是ヨリ見マシテモ、此ノ輕
過失ハ司法處分ニ付スベカラズト云フ輿論
ハ、日本ニ於ケル所ノ識者ノ言葉デアリマ
ス、決シテ是ハ衆愚ノ輿論デハナイノデア
リマス、斯クノ如キ尊敬スベキ輿論ニ耳ヲ
藉サヌ如キ政治ト云フモノハ、其ノ實政治
デナイト言ッテ可ナリト私ハ思フノデアリ
マス、全體立法者ハ時代ノ進運ニ伴ヒ、輿
論ノ歸趨ヲ察シ、又ハ法案關係者ノ意思ヲ
尊重シテ、依ッテ以テ妥當穩健ナル法規ヲ制
定シナケレバナラナイノデアリマス、此ノ
點ニ付キマシテモ重ネテ司法當局ノ御反省
ヲ促シタイト思ヒマス、又司法當局ハ警察
ナリ檢事局ナリ檢察當局ニ訓示ヲ發シ、又
ハ注意ヲ喚起シテ運用ニ遺憾ナキヲ期シタ
イト云フコトヲ述ベラレテ居リマスルガ、
果シテ訓示若シクハ注意ノ喚起ニ依リマシ
テ、法ノ圓滿ナル運用ガ期シ得ラルヽデア
リマセウカ、近年ニ起リマシタル檢察當局
ニ對スル國民ノ見ル所ニ依リマスレバ、
遺憾ナガラ此ノ目的ノ達成ハ十分ナル期待
ヲ置キ難イト私ハ信ズルノデアリマス、殊
ニ船舶ノ遭難直後ニ於キマスル所ノ警察當
局ノ處置ニ至リマシテハ、實ニ事理ヲ辨ゼ
ザルノ甚ダシキモノガアルノデアリマス、
例ヘバ船舶ガ遭難致シタル場合ニ於キマシ
テ、船長ハ乘客其ノ他總テノ乘組員ヲ避難
ヲサセマシテ、自分ハ善後ノ處置ヲ爲シテ
最後ニ海ニ飛込ムノデアリマスガ、幸ニ辛
ウジテ生命ヲ全ウシ、氣息奄々ト致シマシ
テ海岸ニ泳ギ著イタト致シマスナラバ、直
チニ警察官ガ參リマシテ、此ノ立ツコトモ
能ハザルヤウニ困憊シテ居ル所ノ人ヲ拉致
致シマシテ、警察署ニ抑留シ而シテ種々ノ
審問ヲ爲スノデアリマス、船長ハ未ダ船主、
關係者ニモ遭難ノ事故ノ發信モセズ、又ハ遭
難事故ノ屆出モ爲サザル前ニ、直チニ斯ク
ノ如キ目ニ遭フト云フコトハ、殆ド堪ヘ兼
ネルコトデアルト云フコトノ述懷ヲ、私ハ
度々遭難セル船長ヨリ聞イテ知ッテ居ルノ
デアリマス、ソレデ一片ノ訓示ニ依リマシ
テ、此ノ檢察當局ノ適當ナル處置ヲ望ムト
云フコトハ、私ハ遺憾ナガラ十分ノ期待ヲ
置クコトハ出來ナイノデアリマス、元來法
文ノ解釋ト云フコトハ、立法者ノ意思スラ
モ問フノ必要ハナイト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマス、法ノ適用ハ法ヲ執行スル者
ノ任意ノ解釋ニ委セナケレバナリマセヌ、
況ヤ近來司法官及警察「フアッショ」ノ聲ノ髙
イ今日ニ於キマシテハ尙更デアリマス、司
法大臣ガ訓示又ハ注意ニ依リマシテ、法ノ
圓滿ヲ期シタイト仰セニナリマスルコトハ、
又之ヲ見ヤウニ依リマシテハ、此ノ法ノ不
當若シクハ不備ナル點ヲ自ラ御認メニナッ
タカノヤウニモ思ハルヽノデアリマス、果
シテサウデアリマシタナラバ何卒一步ヲ進
メマシテ、法文ノ上ニ明確ナル規定ヲ揭ゲ
マシテ、世ノ疑惑ト誤解ヲ一掃セラルヽコ
トガ寧ロ賢明ナル方法デハナカラウカト私
ハ思フノデアリマス、昨日司法省ノ刑事局
長ハ現行船員法ノ刑罰ノ最高ハ五箇年ト
ナッテ居ル、然ルニ刑法ニ於テハ之ヲ三箇
年ニ引下ゲテアル、非常ナル是ハ恩典デア
ルカノヤウニ言ハレタノデアリマスルガ、
我ガ海員ハ斯クノ如キコトハ問題トシテ居
ラナイノデアリマス、實際ニ重大ナル過失
又ハ怠慢ガアリマシタナラバ、五箇年ハ偖
テ置キ、十箇年デモ二十箇年デモ決シテ厭
フ所ハナイノデアリマス、所謂輕過失ヲ恐
レル所以ノモノハ、其ノ事實ノ認定ノ正確
ヲ期シ難イト云フ點ニ存スルノデアリマ
ス、實際上船舶ノ海事故ハ果シテ是ガ過失
デアルカ否カト云フコトヲ判斷スルト云フ
コトハ、實ニ難事中ノ難事デアルノデアリ
マス、多年海上生活ニ任ジ、幾多ノ經驗ト
知識トヲ有スル老練家ト雖モ、是ハ誠ニ惱
ム所デアリマス、況ヤ比較的ニ海事知識ト
經驗ニ乏シキ所ノ檢察當局ニ於テオヤデア
リマス、又況ヤ海難事故ハ其ノ損害ガ莫大
ニ上ルノデアリマス、人命、財產ニ及ス影
響ハ實ニ甚大デアリマス、之ガ爲ニ動モス
レバ事ハ誇大ニ報道セラレ、玆ニ社會問題
ヲ惹キ起ス虞ガ多分ニアルノデアリマス、
司法省ニ於キマシテハ是レアルガ爲ニ重キ
刑罰ヲ課セナケレバナラヌト言ハレマシタ
ガ、是ガ誠ニ船員一統ノ怖ルヽ所デアリマ
ス、是等ノ損害ノ重大ナルコト、此ノ社會
問題ガ檢察當局ノ腦裡ニ反映シマシテ、遂
ニ豫斷ニ陷リ、而シテ寃罪ヲ被ル者ハ決シ
テ少カラヌノデアリマス、又海難ノ事故ハ
其ノ過失ナリヤ否ヤヲ判斷スルコトガ困難
デアルト同時ニ、又其ノ過失デナイコトヲ
證明スルコトモ等シク又困難デアリマス、
ソレガ故ニ苟モ甚大ナル損害ヲ生ジ、社會
問題トナリタル場合ニ於キマシテハ、多ク
ハ之ヲ過失ナリト認定セラレテ處罰セラル
ト云フコトガ、過去ニ於ケル所ノ實例デ
アルノデアリマス、不幸ニ致シマシテ一度
船員ガ刑餘ノ人トナリマシタル場合ニハ、
忽チ信用ヲ失墜致シマシテ、生涯失業ノ艱
苦ヲ嘗メナケレバナラナイノデアリマス、
卽チ刑餘ノ人ハ保險會社ノ「ブラック·リストㄴ
ニ上リマシテ、終生船長ニ就職ノ機會ヲ失
フモノデアリマス、是レ寳ニ船員ノ生命ヲ
奪フモノデアリマス、而モ實際ニ過失ガア
リマシテ其ノ運命ニ陷ルト云フコトデアレ
バ、固ヨリ是ハ當然デアリマス、併シナガ
ラ若シモ事實ノ認定ヲ誤マッテ、斯クノ如キ
悲慘ナル境遇ニ際會スル者ガアッタト致シ
マスレバ、是ハ昊天ニ哭スルノ外途ナク、
實ニ憐レムベキコトデアルト思フノデアリ
マス、況ヤ此ノ刑罰ヲ受ケマシタ後ニ續ク
モノハ民事訴訟デアリマス、巨萬ノ請求ニ
惱マサルヽノデアリマス、私ハ他ノ特別法
ニ於キマシテ民法、商法等ノ大法典ノ除外
例ヲ許シテ居リマス幾多ノ例ノアルコトヲ
知ッテ居リマス、ソレ故ニ船員法改正ニ當リ
マシテモ、大正三年以來ノ船員諸君ノ要望
ヲ容レマシテ、之ヲ法文化スルノ雅量ヲ政
府ニ望ム次第デアリマス、併シナガラ今ヤ
時局ハ重大デアリ、會期ハ極メテ短イノデ
アリマス、徒ニ論議ニ日ヲ費スノ時デナイ
コトヲ思ヒマシテ、有ハ無キニ優ルトノ諺
ニ從ヒ、本法案ノ成立ヲ切望致シマスル、
ソレ故ニ修正意見ナドノ提出ハ致シマセヌ、
而モ最モ近キ機會ニ於キマシテ、船舶海事
關係者ノ要望ヲ充足セラルヽ所ノ法案ノ提
出ヲ切ニ政府ニ向ッテ希望致シマス、從ヒマ
シテ本案ニ付キマシハ、先程秋元委員ノ御
述ベニナリマシタル希望條件ニ贊成致シマ
シテ本案ノ通過ヲ望ム者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=17
-
018・内田重成
○內田重成君 私ハ本案ニ贊成致ス者デア
リマス、希望決議ニ付キマシテハ後カラ述
ベマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=18
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019・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 續イテ此ノ希
望決議事項ニ移リマス、希望決議事項ヲ問
題ニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=19
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020・内田重成
○內田重成君 私ハ此ノ希望決議ノ第一項
ニ付キマシテハ其ノ文字ガ相當ニ修正セラ
ルヽナラバ格別、此ノ原文ノ儘ト致シマシ
テハ遺憾ナガラ贊成ノ意ヲ表シ兼ネル者デ
アリマス、是ハ旣ニ是マデ此ノ委員會席上
ニ於キマシテモ質疑應答ガアリマシテ、政
府當局ノ說明モ承リマシタ、又前議會以來
衆議院ノ委員會ニ於ケル速記錄ニ依リマス
ト、此ノ問題ハ相當詳論ヲセラレテ居ルノ
デアリマス、從ッテ如何ナル點ニ問題ガアル
カト云フコトモ自ラ判明ヲ致シテ居ルモノ
ト思ヒマス、元普通刑法ガ明治四十年ニ改
正ニ相成リマシタ際ニ、往來交通ノ妨害罪
ニ於キマシテ、刑法百二十九條ノ規定ハ相
當深ク〓究サレタ歷史ガアルノデアリマス、
其ノ當時此ノ刑法トノ關係ニ於キマシテ、
海軍刑法等モ同時ニ〓究致シテ居ッタノデ
アリマス、海軍刑法中ニ矢張リ現行ノ船員
法ノ七十三條ニ殆ド同一ナル規定ガアリ
マシテ、海軍艦船ノ乘員ガ怠慢ニ因ッテ其
ノ艦船ヲ覆沒破壞シタ場合ダケノ規定ガア
リマシタノデアリマスルガ、之ヲ普通刑法
ノ百二十九條トノ睨ミ合ヒニ於キマシテ、
海軍刑法ノ怠慢罪ノ規定ハ削除セラレタ
ノデアリマス、當時海軍刑法ノ怠慢罪
ヲ削除スルニ付キマシテハ、相當長イ
間深キ〓究、各調査委員會ニ關聯致シ
マシテ〓究ノ末ニ、是ハ削除サレタノデ
アリマス、其ノ以後現行ノ艦船法ノ適用ニ
付キマシテハ、先般來政府委員ノ說明ノ通
リニ太審院ノ判例ト致シマシテモ、輕過失
ニ付キマシテハ普通刑法ノ適用アルモノト
云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、
從ッテ只今ニ於キマシテハ、船員ノ過失ニ
付テハ船員法ト現行刑法トノ二箇ノ法律ノ
適用ヲ受ケルノデアリマス、是ガ只今マデ
ノ論議ノ焦點ニ相成ッテ居リマスル所ハ、海
上任務ノ特殊性ニ付テ、普通ノ司法官ノ司
法上ノ裁斷ノ上ニ於テ非常ニ困難ナル事情
モアルカラ、從ッテ海員ガ不安ヲ感ズルト云
フ取扱上ノ問題ト、刑罰本體ノ問題ガ混淆
シテ居ル意見ガ相當ニアリハシナイカト云
フコトヲ自分ハ感ズルノデアリマス、刑罰
本體ノ規定トシテノ考ト取扱上ノ關係ト
ハ、是ハ嚴重ニ區別ヲセナケレバナラヌモ
ノデアルト思フ、各種ノ業態ノ關係ニ於テ、
船員ダケニ特殊ナル法規ヲ設ケテ、ソレデ
濟ムモノデアルカ否ヤト云フコトニ付テ、
先般來政府當局ノ說明ガアッタノデアリマ
スルガ、是ハ我々モ相當ニ考慮シナケレバ
ナラヌ問題ト思フ、殊ニ此ノ海員ト海軍軍
人トノ關係ハ極メテ密接ナルモノデアッテ、
又殆ド同一種類ノ業態ノモノデアルト言ハ
ナケレバナラヌ、ソレガ現在ニ於キマシテ
ハ海軍刑法ガ普通刑法ノ領分ニ讓ッテアル、
其ノ時ニ當ッテ此ノ船員法ダケノ關係デ、此
ノ第一項ニ示サレタル如ク決定的ニ、著シ
ク其ノ職務ヲ怠リタル場合ニアラザレバ、
處罰セザルコトヲ明カニスト云フ風ニ貴族
院ノ意思ヲ表明スルコト、當委員會ノ意思
ヲ表明スルト云フコトハ、少シク早過ギハ
シナイカ、今少シク〓究ヲ要スルモノデハ
ナイカト考ヘルノデゴザイマス、此ノ重大
ナル各種法制ノ關係ヲ、僅カ一日二日ノ審
議ニ依ッテ、衆議院ガ此ノ附帶決議ヲ附シ
タカラト云ッテ、ソレニモウ一ツ輪ヲ掛ケ
タヤウナ文句ヲ以テ、此ノ貴族院ガ斯ウデ
ナケレバナラヌト云フ風ニ、其ノ法制關係
ヲ示スト云フコトハ私ハマダ早イト思フノ
デアル、若シ之ニドウシテモ斯ウ云フモノ
ヲ附ケタイト云フコトデアリマスナラバ、
「私ハ海運ノ重要性ト海上任務ト特殊性ニ鑑
ミ船員ノ業務上ノ過失ニ對スル刑事制裁法
規ニ關シ殊ニ愼重ノ調査ヲ爲スコト」ト云フ
位ノコトデアルナラバ、現在相當世間ニ此
ノ問題ニ付キマシテ、當カ不當カ分リマセ
ヌケレドモ、議論モアルコトデアリマスカ
ラ、此ノ委員會トシテモ、又貴族院ト致シ
マシテモ、其ノ世間ノ聲ニ應ジテ、政府ト
シテハ海運ノ重要性、海上任務ノ特殊性ヲ
考ヘテ、其ノ制裁法規ニ付テハ、愼重ノ調
査ヲナサレタラ宜カラウト云フコト位ハ申
シテ差支ナイト考ヘマス、其ノ以上進ミマ
スルコトハ貴族院トシテ、私ハ餘リ是ハ行
過ギルコトデアルト確信スルモノデアリマ
ス、我々ノ多年ニ亙ッテ、此ノ問題ニ付テ〓
究ヲ致シマシタコトハ容易ナラヌ、ソレヲ
僅カナ時間ノ〓究ニ依ッテ、斯樣ニ明確ニ、
明瞭ニ、著シク職務ヲ怠ッタ場合デナケレ
バ處罰セヌ、輕過失ハ全然無責行爲デアル
ト云フ風ニ、刑法ノ原則ニ大例外ヲ認メル
ガ如キ規定ヲ玆ニ明カニスルト云フコトハ、
少シ私ハ早計デアルト考ヘル、ソレデ今少
シ之ガ文句ヲ、緩和セラレタ文句デ現サ
レ、一般ノ聲ニ聽イテ政府ハ愼重ニソレニ
付テノ調査ヲ爲サレタイト云フ程ノ、御注
意ヲ申上ゲルト云フ程度デアレバ、私モ之
ニ同意ヲ致シタイト思フノデアリマス、此
ノ問題ハ、恐ラク獨リ海員法ノ問題デ收ラ
ヌモノデ、必ズ海軍刑法トノ對象問題ガ出
テ來ル、ソレデアリマスカラ此ノ法案ノ中
ニ之ガ組入レラレマスト云フト、刑法ニ對
スル一種ノ特別法ト相成ルモノデ、刑法ガ
除外セラレテ、船員法ダケガ適要サレルト
云フ結果ニナル、從ッテ海軍々人ノ處罰法
規ト異ナルト云フ結果ニ相成ル、ソレハ法
制上如何ナモノデゴザイマセウカト思フノ
デアリマス、ソレデ私ハ甚ダ遺憾ナガラ此
ノ原案ノ文句ノ儘デハ同意ヲ致シ兼ネルノ
デアリマス、ソレカラ此第二項ノ「海事審
判所ノ審判」トアリマスガ、是ハ恐ラク文
字ノ誤リデ、「海員審判所ノ審判」ト云フ意味
デアラウト思フノデアリマス、私ハ二項以
下ニ於キマシテノ希望決議ト致シマシテハ、
若シ之ヲ爲シ得ベクンバモウ少シ大キイ問
題貴族院トシテ提出シテモ、サウ衆議院
ニ於テ決議ニナッタカラ、ソレヲ其ノ儘受ケ
ルト云フコトデナシニ、獨自ノ希望決議ガ
ナイノデハアルマイト云フ風ニモ感ジハシ
マスケレドモ、此ノ際其ノ提案ハ容赦致シ
テ置キマス、二項以下ニ付キマシテハ、私
モ同意ヲ致ス積リデアリマス、第一項ニ付
キマシテハ原案ノ儘デハ贊成致シ兼ネルコ
トノ意思ヲ明カニ表明致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=20
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021・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) モウ一度第一
項ノ修正ノ文面ヲ仰シヤッテ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=21
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022・内田重成
○內田重成君 「政府ハ海運ノ重要性ト海上
任務ノ特殊性ニ鑑ミ船員ノ業務上ノ過失ニ
對スル刑事制裁法規ニ關シ殊ニ愼重ノ調査
ヲ爲スコト、」是ハモウナケリヤナクトモ宜
イ希望決議デアリマスガ、愼重ノ調査ハ何
時デモシテ居ルノデアリマスカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=22
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023・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 內田君ノ意見
ガ出マシタガ外ニ御意見ハアリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=23
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024・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ此ノ希望決議ニハ全部
贊成ヲ致スモノデアリマス、只今內田君ノ
御意見モゴザイマシタガ、此ノ第一項ハ刑
事法ノ實體ニ關スル點ト其ノ取扱トヲ混同
シテ居ルノデハナイカト云フヤウナ御心配
モアッタヤウデアリマスガ、私ハサウハ考ヘマ
セヌノデアリマシテ、是ハ全然實體ニ關ス
ル希望ヲ述ベテ居ルノデアリマス、而シテ
其ノ實體ニ關スル希望ト致シマシテモ、餘
リ行過ギテ居ルノデナイカト云フ御考ノ
ヤウデアリマスガ、先般來此處デ質問應
答デ現レテ居リマス所ニ依ッテ見マシテ
モ、此ノ海運ノ、船員ノ海上任務ノ特殊
性ト云フコトニ付キマシテハ、私共ノ考
ト致シマシテハ、モウ是ハ此ノ過失罪ニ
付テ特別ノ刑事規定ヲ設クルト云フコトニ
付テハ、是レ以上調査ノ必要ヲ認メナイノ
デアリマシテ、其ノ特殊性ノアルト云フコ
トニ付テハ十分ノ確信ヲ持ッテ居ルノデア
リマス、唯政府當局ニ於テハ特殊性ハ認メ
テ居ラレマスルガ、其ノ程度ニ付キマシテ
モ私共ノ見ル所ト、果シテ同ジ程度ニ認メ
テ居ラレルカドウカハ、是ハ未ダ明カニナッ
テ居リマセヌガ、我々ト致シマシテハ、此
ノ過失罪ニ付テ特殊ノ規定ヲ設クルニ十分
ナル、特殊性ノアルモノト云フ立場デ此ノ
第一項ハ設ケラレタモノト思フノデアリマ
シテ、從ッテ其ノ意味ニ於キマシテ、政府ガ
之ヲドウ云フ風ニ扱ハレルカト云フコトハ
問題デアリマスガ、此ノ委員會ノ決議ト致
シマシテハ、其ノ特殊性ハ、旣ニ我々ノ認
メル特殊性ハ、此ノ特別ノ取扱ヲスルニ足
ル程度ノモノナルコトヲ認メル前提ノ下
ニ、第一項ニモ、希望事項ニモ贊成ヲスル
モノデアリマス、ソレカラ海軍刑法トノ關
係ヲ御心配ノヤウデアリマシタガ、是ハ昨
日デアリマシタカ、此處デ海軍ノ政府委員
ノ御說明モ伺ッタノデアリマスルガ、是ハ私
ノ考ヘル所ニ依リマスルト、軍人ノ軍紀ノ
上カラ言ヒマシテノ責任ノ問題ト、唯一般
人ノ責任ノ問題トハ、是ハ固ヨリ取扱ガ違
フノガ當然デアルト考へルノデアリマス、
昨日海軍ノ方ノ御話モアリマシタヤウニ、
一般ノ過失ノ場合ニ付テ、之ヲ普通刑法ニ
委ネテ置クコトガ良イカ惡イカ、或ハ海軍
刑法ノ方ニ移シテ、モット軍人ラシク、モッ
ト嚴重ニ規定スベキヂヤナイカト云フ議論
ガ部內ニアルト云フコトハ、是ハ當然ノコ
トト私ハ考ヘルノデアリマス、從ッテ海軍ノ
方ノ軍紀ノ上カラ申シマシテ、特ニ嚴重ナ
規定ヲ設ケナケレバナラヌノデアルガ、現
在ニ於テハソレダケノ必要モナイカラ、
般ノ刑法ノ規定ニ委シテ置イテ宜カラウト
云フ、斯ウ云フ意味デ海軍ノ方ハ委シテ居
ラレル、サウ云フ狀態デアリマシテ、サウ
云フ海軍ノヤウナ軍紀軍律ノ上カラ嚴重ニ
扱ハレルモノト、一般海員、船員ガ一般刑
法ノ上デ取扱ヲ受ケル上ニ於テ寛嚴ノ差ガ
アルト云フコトハ、是ハ當然ノコトデアッ
テ、其ノ取扱ガ違ッテ居ルカラト言ッテ少シモ
不思議ハナイト私ハ考ヘルノデアリマス、
從ッテ海軍ノ方トモ權衡問題ヲ考慮スル必
要ハ毫モナカラウト思フノデアリマス、第
一項ニ付テ申上ゲマスノハ、ソレダケデア
リマスガ、序デニチヨット第二項ノ意義ニ付
キマシテ、此ノ希望決議ガ若シ可決ニナリ
マスル場合ニ於テ、殊ニ司法當局ノ御注意
ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマス、是ハ
此ノ海員審判所ノ審判ノ刑事訴追ヲ後ニシ
テ貰ヒタイト云フ希望デアリマスガ、是ハ私
ハ贊成スル者デハアリマスルケレドモ、本來
ハ實ハ海員審判所ノ審判ト、ソレカラ刑事裁
判ト云フモノハ全ク、全クト云フノハ言ヒ
過ギデアリマスガ、少シ違ッタ立場デ行ハル
ベキモノト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、
海員審判所ノ方ハ、是ハ行政處分デ色々海
事上ノ懲戒紀律ヲ維持スルト云フコトモア
リマスルケレドモ、同時ニ海事ノ進步發達
ノコトヲ頭ニ置イテ心配ヲスルト云フ意味
モ多分ニアルモノト思フノデアリマス、從ッ
テ多少無理ト思ハルヽヤウナ位ニ是ハ嚴重
ニ見テ、少シデモ過失ガアレバ、ソレヲ懲
戒シテ將來ヲ戒シメルト云フコトニナラナ
ケレバナラヌ、又サウ云フ方針デ出テ居ルヽ
モノト思フノデアリマス、デアリマスカラ
海員審判所デ之ガ懲戒ヲ加フベキモノダ、
多少ハ過失ガアルモノダト審判サレタカラ
ト云ッテ、刑事罰マデ之ニ加ヘテ犯罪人ニシ
ナケレバナラヌト云フコトハ、海員審判所
ノ審判ト云フモノハ、サウ云フ意味ノ基礎
ニサレテハ甚ダ迷惑ト私ハ思フノデアリマ
ス、デアリマスカラ是ハ其ノ海事海難ノ審
判ハ困難デアリマスカラ、其ノ後ニシテ、
之ヲ參考ニシテ愼重ニヤッテ貰ヒタイト云
フ意味デ是ハ海員審判ノ、審判ノ後ト云フ
コトヲ我々ハ希望スルノデアリマシテ、決
シテ審判所デ懲戒ヲサレタカラ、ソレニ則ッ
テ過失アルモノトシテ處罰ヲシテ貰ヒタイ
ト云フヤウナ意味ハ毫モナイノデアリマシ
テ、本當ノ希望ハ海員審判所デ是ハ輕イモ
ノダト、斯ウ云フコトニナッタ時ニハ刑事訴
追ハシナイ、海員審判所デ重ク懲戒サレル
ト云フ時ニ初メテ訴追ヲサレルガ然ルベキ
コトト、斯ウ云フ意味デ其ノ後ト云フコト
ヲ希望シテ居ルノデアリマスカラ、其ノ點
ヲ一ツ司法當局ニ於カレマシテハ、十分御
諒解ヲ願ッテ置キタイト考ヘルノデアリマ
ス、ソレダケ申上ゲマシテ私ハ此ノ希望決
議全部ニ贊成ヲ致シタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=24
-
025・内田重成
○內田重成君 此ノ第一項ハ、是ハ實體上
ニ關スル意見デアルト思フ、デ先程申述べ
マシタノハ是マデノ議會ニ於ケル意見ガ、
實體法ノ關係ト、ソレカラ取扱上ノ關係ヲ
混同シテノ議論ガ多イヤウニ考ヘルト云フ
コトヲ申述ベタ、其ノ希望決議其ノモノガ兩
方含メテノ曖昧ナモノデアルト云フ意見デ
ハナイ、ソレカラ此ノ希望決議ニ依リマス
レバ、本委員會ニ於テハ、船員ノ業務上ノ
過失ニ對シテハ著シキ怠慢ノ場合デナケレ
バ處罰シナイト云フコトノ意思ヲ表明シ、
而シテ之ガ若シ院議ニ於テ多數ヲ以テ採用
サレマシタ場合ニハ、貴族院ハ其ノ法制上
ニ付テ今日只今、船員ノ業務上ノ過失ハ著
シキ怠慢ノ場合ニ限ッテ處罰スルノデアルト
云フコトノ意思ヲ表明シタ譯ニ相成ル、是
ガ最近ニ於テ改正ノ刑法等ガ當院ニ提出サ
レク場合ニ於テ、審議ノ上ニ於キマシテモ
相當影響ガアルモノト思フ、デ是等ノ點ヲ
考慮シマスナラバ、貴族院ガ今日此ノ問題
ニ付テ斯程マデニ明カニ、此ノ重大問題ニ
付テ意思ヲ表白シテ置クト云フト云フコト
ハ、餘程必要ノアルコトデハナイト云フコ
トニ私ハ考ヘルノデアリマス、ソレデ先程
ノ考ヲ申上ゲタ譯デス、重ネテ此ノ點ヲ一
言申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=25
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026・深尾隆太郎
○男爵深尾隆太郞君 是ハ時間モ來マシタ
コトデスシ、決定スルニハ成ルベク全員一
致ニ願ッタラ如何カト思ヒマスガ、懇談ノ機
會ヲ與ヘラレテハ如何デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=26
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027・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) ソレニ御異議
ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=27
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028・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從徳君) ソレデハ一時
半ニ再會スルコトニ致シマス、ソレマデ休
憩致シマス
午後零時十一分休憩
午後一時三十九分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=28
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029・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 只今カラ委員
會ヲ開會致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=29
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030・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 私ハ午前中ノ委員會ニ
於キマシテ討論ニ入ッタ後······賛成ノ理由
ヲ申述べ希望條件ヲ附ケテ贊成致スト云フ
コトヲ申上ゲタノデスガ、其ノ希望條件ノ
中、字句ヲ少シ變ヘタイノガアリマスシ、
又活字ノ違ヒナドモゴザイマスノデ、ソレ
ヲ訂正致シテ、改メテ玆ニ私ノ希望決議ヲ
一ツ申上ゲマス
希望決議
一、政府ハ海運ノ重要性ト海上任務ノ特
殊性ニ鑑ミ速ニ現行刑法ヲ改正シ船員
ヲシテ安ジテ其ノ職務ニ從事スルヲ得
セシムルヤウ〓究調査スル事
二、政府ハ船員ノ業務上ノ過失ニ對シテ
ハ海員審判所ノ審判後ニ非ザレバ刑事
訴追ヲ爲サヾル方針ヲ採ル事
三、政府ハ檢察當局ニ對シ船員ノ業務上
ノ過失ニ對シテハ特ニ其ノ取扱ヲ愼重
ニシ輕々處斷スルガ如キ事ナキヤウ訓
令ヲ發スル事
四、政府ハ檢察當局ニ對シ海難ニ際シ船
員ノ喚問取調ヲ爲スニ當リテハ充分ニ船
員ノ任務ヲ理解シ其ノ業務ニ支障ヲ來サ
ザルヤウ注意スベキ旨訓令ヲ發スル事
五、水先人ニ對シテモ船員ト同樣ノ取扱
ヲナス事
所謂五ツノ事項ヲ原案ニ付シマシテ、贊成
ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=30
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031・深尾隆太郎
○男爵深尾隆太郞君 今朝程秋元子爵カラ
御提案ニナリマシタ希望決議ト、只今御述
ベニナリマシタ希望決議トハ、文章ノ上デ
先ヅ第一項ガ稍〓緩和サレテ居ルカノ如キ
感ガアリマスルガ、是ハ今朝程、内田委員ノ
御說モアリマシテ、成ルベク全員一致ノ希
望ニシタイト云フ御考ヲ以チマシテ、懇談
ノ結果斯樣ナコトニ相成ッタモノト考ヘマ
ス、從ヒマシテ遞信大臣ニ於カレマシテハ、
此ノ意味ハ無論何ガ船員ヲシテ安ンジテ職
務ニ從事スルコトヲ得セシメルカト云ヘバ、
卽チ此ノ刑罰ニ關シテ著シク職務ヲ怠ッタ
ト云フ時ニノミ處罰ヲサレルト云フコトニ、
刑法ノ改正ガアルト云フコトガ、卽チ船員
ヲシテ安ンジテ職務ニ從事セシムルコトデ
アルト云フコトハ申上ゲル迄モナイコトデ
アリマスルケレドモ、其ノ意味デアルト云
フコトヲ御諒承ヲ願ヒタイト思フノデアリ
やく、サウ致シマシテ其ノ意味ガ達成スル
ヤウニ、十分ナ御盡力ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、一應遞信大臣ノ御答ヲ得マシ
テ贊成ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=31
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032・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今秋元子爵
ガ御讀上ゲニナリマシタ附帶決議ノ御趣旨、
竝ニ深尾男爵ガソレニ附加シテ御說明ニナ
リマシタ御趣旨ハ能ク諒承致シマシタ、遞
信省ト致シマシテハ船舶ノ操縦ガ極メテ困
難ナル事情、及ビ海難原因ノ複雜ナル事情
等ニ付キマシテ、能ク理解シテ居リマスノ
デ、司法當局トモ篤ト協議ノ上、御希望ノ
アル所ヲ十分尊重致シマシテ、出來得ルダ
ケノ努力ヲ致ス積リデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=32
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033・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) 希望決議事項
ニ付キマシテ御意見ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=33
-
034・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) ソレデハ只今
カラ船員法改正法律案竝ニソレニ附隨致シ
マス希望決議ニ付キマシテハ採決ヲ致シマ
ス、船員法改正法律案、原案通リデ御異議
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=34
-
035・西郷從徳
○委員長(侯爵西〓從德君) 希望決議、修
正案通リデ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=35
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036・西郷從徳
○委員長(侯爵西郷從德君) ソレデハ兩方
トモ可決致シマス、是デ散會致シマス
午後一時四十六分散會
出席委員左ノ如シ
委員長侯爵西〓從德君
副委員長伯爵後藤一藏君
委員
侯爵池田宣政君
子爵伊集院兼知君
子爵松平保男君
子爵秋元春朝君
內田重成君
男爵有地藤三郞君
白根竹介君
今井田〓德君
男爵井上〓純君
男爵深尾隆太郞君
橋本辰二郞君
油井德藏君
岩田宙造君
國務大臣
司法大臣鹽野季彥君
遞信大臣永井柳太郞君
政府委員
遞信政務次官田島勝太郞君
遞信參與官犬養健君
遞信省管船局長小野猛君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007102070X00319370806&spkNum=36
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