第71回帝国議会　衆議院　製鉄事業法案委員会　第2号　昭和12年7月31日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  付託議案
  　製鐵事業法案（政府提出）
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  　　　會議
  昭和十二年七月三十一日（土曜日）午前十時三十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　清瀬規矩雄君
  　　　理事　中井川浩君　理事　清寛君
  　　　理事　瀧澤七郎君　理事　南條徳男君
  　　　　　　高橋壽太郎君　大島寅吉君
  　　　　　　池田秀雄君　木原七郎君
  　　　　　　池本甚四郎君　手代木隆吉君
  　　　　　　岡崎久次郎君　古田喜三太君
  　　　　　　野口喜一君　工藤十三雄君
  　　　　　　井上知治君　鶴惣市君
  　　　　　　芦田均君　野方次郎君
  　　　　　　小池四郎君　安倍寛君
  　　　　　　永山忠則君　塚本重藏君
  　　　　　　井上良次君　椎尾辨匡君
  　　　　　　小野謙一君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　商工大臣　吉野信次君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　陸軍參與官　比佐昌平君
  　　　　　　海軍政務次官　一宮房治郎君
  　　　　　　　海軍參與官　岸田正記君
  　　　　　　商工政務次官　木暮武太夫君
  　　　　　商工省鑛山局長　東榮二君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　陸軍砲兵少佐　澤本理七郎君
  　　　　　　　　商工技師　足立泰雄君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　製鐵事業法案（政府提出）

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• 001・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　會議ヲ開キマス、質問ヲ始
  メタイト思ヒマスカラ、通告ノ順序ニ依ッテ
  御許シ致シマス-高橋壽太郞君

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• 002・高橋壽太郎

  ○高橋委員　商工大臣ノ御見エニナル迄ノ
  間ト云フコトデ、事務當局ニ御尋シタイト
  思ヒマス、只今頂戴シタ參考資料ヲ半分バ
  カリ讀ンダノデアリマスガ、其中ノ日本製
  鐵株式會社法第九條ノ、命令ニ依ル特殊〓
  究事項ト云フ所デアリマス、要スルニ政府ハ
  日鐵會社法ノ第九條ヲ設ケタケレドモ、〓
  究事項ニ對シテハ政府ハ自發的ニ何等ノ御
  註文モナイノデアル、日鐵ノ方デ是ダケノ
  コトヲヤッタト仰シヤルノデスガ、貧鑛處
  理砂鐵ノ利用ニ關シテ今尙ホ餘リ芳シイ
  成績ヲ擧ゲ得ナイト云フノハ、畢竟スルニ
  日鐵會社法第九條ヲ適用スルコトヲ怠ッテ
  居ッタト申シテモ、私ハ宜クハナイカト思
  フ、私共ガ此第九條ノ適用ヲヤカマシタ言
  ヒ始メタノハ昭和九年カラデアリマスガ、
  未ダニ遲々トシテ進マナイ、個々ノ項目ハ
  澤山揭ゲテアルヤウデアリマスガ、此中ニ
  ハ恐ラク日本製鐵株式會社ニナラナイ前ノ
  〓究項目ノ引繼ノモノ迄モ擧ゲラレテ居ル
  ノヂヤナイカト思ハレマスガ、其中ノ貧鑛
  處理、砂鐵ニ關係シタダケノコトデ、ツ
  詳シク御說明願ヒタイ、其項目ノ中ノ熔鑛
  爐ニ依ル「チタニウム」含有砂鐵鑛ノ精鍊法
  ト云フノハ、何時カラ著手シテ、ドウ云フ
  成績ヲ擧ゲテ居ルカ、又一ツ置イテ砂鐵ノ
  選鑛ト燒結ニ付テト云フコト、モウ一ツノ
  直接製鐵法ニ關スル〓究、之ヲ成ベク詳シ
  ク御說明ヲ得タイト思ヒマス

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• 003・東榮二

  ○東政府委員　日本製鐵株式會社ニ對シマ
  シテ、政府ハ一向特殊事項ノ〓究等ヲ命ジ
  ナイノデハナイカ、斯ウ云フ御尋ネデアリ
  マスガ、只今御擧ゲニナリマシタ日本製鐵
  ニ於テ〓究中ノ事項ハ、大體政府ノ意嚮ニ
  從ヒマシテ、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、
  大體政府ガ命令シタト實質的ニ同ジコトデ
  アリマスガ、公式ニ命ジタト云フ形ハ採ツ
  テ居リマセヌケレドモ、政府ノ意ヲ體シマ
  シテ、斯ウ云フ事項ヲ〓究ヲ致シテ居ル次
  第デアリマス、尙ホ此具體的ナ問題ニ付キ
  マシテ、一々只今ドウ云フ過程ニアルカ、
  ドノ程度ノ成績ヲ擧ゲテ居ルカト云フコト
  ニ付キマシテハ、技術ニ亙ルコトデアリマ
  スカラ、技術者ノ方カラ說明ヲ申上ゲマ
  ス

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• 004・足立泰雄

  ○足立商工技師　只今御質問ニ相成リマシ
  タコトノ中、技術方面ニ關スルコトニ付テ
  極ク〓略御答申上ゲマス、最初ニ御尋ニナ
  リマシタコトハ、何時頃カラヤッテ居ルカ
  ト云フ御質問デゴザイマシタガ、是ハ勿論
  中ニハ可ナリ前カラ繼續的ニヤッテ居ルモ
  ノモアリマス、只今御指摘ニナリマシタ熔
  鑛爐ニ依ル「チタニウム」含有砂鐵ノ精鍊法
  トカ、或ハ直接製鐵法ニ關スル〓究トカ、
  第二番目ノ熔鑛爐銑鐵ノ脫硫〓究、是等ハ
  實ハ極メテ新シイ〓究デアリマシテ、昨年
  ノ暮若クハ今年ノ三四月頃專ラヤッタヤウ
  ナ仕事デ、是ハ私共カラ日鐵ノ方ヘ九條ニ
  依ル命令デ、斯ウ云フコトヲヤッテ見タラ
  ドウカト、盛ンニ勸誘シタコトガアルノデ
  アリマス、サウ云フ關係モアリマシテ、向
  フデ著手致シマシテ〓究ヲ始メタヤウナモ
  ノモアリマス、殊ニ鑛石關係ニ付テハ、特
  ニサウ云フ傾向ガ多イノデゴザイマス、ソ
  レカラ内容デゴザイマスガ、比較的古クカ
  ラヤッテ居リマシタノハ、五番目ノ砂鐵ノ選
  鑛ト燒結デゴザイマス、是ハ試驗室デヤヲ
  テ居リマス關係カラ、大キナ〓究デハナイ
  ノデアリマスガ、大體日鐵ト致シマシテ、
  砂鐵ヲドウ云フヤウニ使ッテ行カウカト云
  フ場合ニ、熔鑛爐デ使フコトガ一番大量ニ
  使ヘルト云フ一ツノ頭ガアルモノデゴザイ
  マスカラ、其爲ニドウシテモ選鑛ト燒結ト
  云フコトヲ〓究シテ行カナケレバ、假ニ熔
  鑛爐デ使フコトガ出來テモ、元ガ出來ナケ
  レバイカヌト云フノデ、此選鑛ト燒結ハ可
  ナリ早クカラヤッテ居リマス、併シソレモ大
  體ノ目鼻ガ付キマシタ關係カラ、一番問題
  ニナル熔鑛爐ニ一ツ抛リ込ンデヤッテ見タ
  ラドウカト云フコトヲ、此三月ニ專ラヤッ
  タノデゴザイマス、三月ノ十日頃カラ三月
  ノ二十日頃マデ連續シテ試驗シタ成績ヲ
  持ッテ居リマス、ソレハ八幡ニ數多クノ熔鑛
  爐ハゴザイマスガ、斯ウ云フ試驗ハ相當危
  險ヲ伴ヒマスカラ、本當ノ熔鑛爐デヤルニ
  ハ、豫備的ニ十分〓究ヲシテ、可ナリ自信
  ヲ得テカラデナケレバイカヌト云フ關係カ
  ラ、普通ノ熔鑛爐ノ「イミテーション」ト申
  シマスカ、小サナ熔鑛爐デ一日一瓲位ノ銑鐵
  ヲ造ルモノヲ造リマシタ、是ハ總テノ「コ
  ンヂション」ハ普通ノ熔鑛爐ト同ジニ致シマ
  シテ、唯小サイダケニシテ、之ニ色々ノ試驗
  ヲヤッテ居ルノデゴザイマス、大體支那ノ鑛
  石ト砂鐵トヲ色々ニ混ゼテ吹イテ見タノデ
  アリマス、其大體ノ成績ヲ見マスト、最初
  支那ノ鑛石ヲ四割、ソレカラ砂鐵ノ方ヲ六
  割此配合カラ「スタート」致シマシテ、段
  段砂鐵ノ配合ヲ增シテ參リマシテ、翌々日
  位ニハ砂鐵ヲ七十%位ニシテ、更ニ又其翌
  日ニハ砂鐵ヲ八十%、ソレカラ四五日目位
  ニナリマスト砂鐵ヲ九十%、ソレカラ六日目
  邊リニハ百%ニシテ、支那ノ鑛石ヲ全然ナ
  クシテ吹イテ居ルノデアリマス、其結果ヲ
  見マスト非常ニ好イ成績デ、從來考ヘナカッ
  タヤウナモノデゴザイマス、勿論是ハ特殊
  ノ作業方法ヲヤッテ居リマス、此點ハ一寸今
  申上ゲル譯ニ參リマセヌケレドモ、極ク特
  殊ノ作業方法ヲヤッテ居リマス、約二十幾日
  是デ吹イテ居リマスガ、非常ニ好イ成績デ、
  從來缺點トサレテ居ック點ナドハ問題ナカ
  ラウト云フヤウナ成績ヲ大體得テ居リマ
  ス、是ハ只今申上ゲマシタヤウナ小サナ「イ
  ミテーション」ノ爐デヤッテ居リマス關係カ
  ラ、直チニ普通ノ熔鑛爐ニ移シタ場合ニハ
  ドウカト云フコトニナリマスガ、總テノ「コ
  ンヂション」ヲ唯「スモール·スケール」ニシ
  タダケデヤッテ居リマスノデ、吾々技術者ノ
  方カラ申シマスト、之ヲ大キナ熔鑛爐ニ持ッ
  テ參リマスコトモ、比較的容易ナコトデア
  ル、相當自信ヲ持ッテヤレルト云フヤウナ
  觀察ヲ下スコトガ出來ルノダラウト思ッテ
  居リマス、今模型熔鑛爐ノ作業ガ非常ニ「ス
  ムース」ニ行クト申上ゲマシタガ、熔鑛爐
  ハ「スムース」ニ參リマス、併シ出テ參リマ
  ス銑鐵ニ多少ノ癖ガ殘ッテ居ル、其癖ト申シ
  マスト、是ハ〓究事項ノ第二番目ニ屬シテ
  居リマスガ、熔鑛爐銑ノ脫硫ト云フコトデ
  アリマス、實ハ硫黄分ノ可ナリ高イ銑鐵ガ
  出ルヤウナ方法ヲヤッテ「チタニウム」ノ害
  ヲ除ク考デヤッテ居リマスノデ、隨テ熔鑛爐
  カラ出テ來マシタ銑鐵ノ硫黄分ヲ除ク〓究
  ヲシナケレバナラナイ、是ハ極メテ簡單ニ
  出來ルノデアリマス、熔鑛爐カラ出テ參リ
  マス銑鐵ノ流レル所へ、特殊ノ樂品ト申シ
  マスカ、特殊ノ媒體ヲ入レマシテヤリマス
  ト、是ハ容易ニ出來ルノデアリマス、大體
  內容ト申シマスト、ソンナモノデス、ソレ
  カラ直接製鐵法ニ關スル〓究、是ハ實ハ昨
  年ノ終リカラ今年ノ初メ邊リニ掛ケテヤッ
  タノデアリマスガ、是ハ實ハ設備トシテハ
  完全ナ設備ハゴザイマセヌガ、八幡製鐵所
  ノ「セメント」工場ノ「ロータリーキルン」是
  ハ日鐵ノ直接製鐵法ノ方法ト比較的酷似シ
  テ居リマス關係カラ、是デ實ハ向フト同ジ
  ヤウナ作業ヲヤッテ居リマシテ、是モヤハリ
  初メハ相當色々故障ガゴザイマシタガ、段
  段慣レテ參リマシテ、或ル程度ハ是デモウ
  ヤレルノデハナイカト云フ程度ノ結果ヲ得
  テ居リマス、鐵鋼ニ關係致シマス〓究ノ最
  近ノ狀況ハ、大體コンナモノデゴザイマス

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• 005・高橋壽太郎

  ○高橋委員　商工大臣ガオ見エニナリマシ
  タカラ、私ノ質問ハ是デ一先ヅ終リマス

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• 006・清瀬規矩雄

  ○〓賴委員長　岡崎久次郞君

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• 007・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　商工大臣ニ極メテ簡單ニ御質
  問ヲ致シマス、私ノ質問ハ第一ニ本法案ノ
  施行ニ依ッテ、果シテ製鐵業ノ發達及ビ製鐵
  ノ增產ヲ圖リ得ルヤ否ヤト云フ點ニ付テオ
  聽キヲシタイシ、第二ハ製鐵業ノ現狀ヲ如
  何ニ持ッテ行クノカト云フコト、第三ハ製鐵
  事業ノ來ルベキ將來ノ見透シガ何處ニ根據
  ヲ求メ、如何ナル筋ヲ通ッテ行クカ、此三點
  ニ付テ御答辯ガ得タイノデアリマス
  質問ニ先ッテ申上ゲタイノハ、御承知ノ通
  リ本案ハ前議會ニ於テ、相當ナル質問應答
  ヲ重ネラレテアリマス、其當時內閣ニ於キマ
  シテハ、此製鐵事業法ヲ何カ議員ガ阻止シ
  タト云フ風ナ話ガアリマシタガ、是ハ全然
  誤解デアッテ、政民兩黨共、モウ通過サスベ
  ク修正ノ意見モ出デ居ッタ、故ニ若シサウ云
  フ御考ガアッタトスレバ、是ハ全然政府ノ
  誤解デアッタト云フコトヲ承知シテ置イテ
  戴キタイ、併ナガラ政府モ迭リ、議員モ替ッ
  タ議會デアリマスカラ、新シキ質問ガ新シ
  キ議員ニ依リ、或ハ古キ議員ニ依リ行ハレ
  ルコトヽ思ヒマス、幾多ノ疑ガ此事業法案
  ニハ存シテ居ルノデス、併ナガラ現時ノ重
  大時局ニ直面シタル機會ニ於テ、政府ノ意
  ノアル所モ亦固ク深ク尊重シテ、努メテ政
  府ノ意ニ副ハント吾々ハ努メテ居ルト云フ
  コトヲ諒解シテ戴キタイ、ソレ故ニ幾多ノ
  疑問モ省イテ根本ナル問題ヲ私ハ極メテ簡
  單ナ、又短時間ヲ割愛シテ御答辯ヲ得タ
  イト思ッテ居リマス
  現吉野商工大臣ハ商工行政ニハ中々御精
  通デアリ、且ツ近クハ民間事業會社ノ總帥
  ヲセラレ、總括ヲセラレテ居ッタノデアリ
  マスカラ、ソレ〓〓事業家ノ體驗モ亦等シ
  ク得ラレテ居ル筈デアリマス、是故ニ政府
  トシテ御考ニナッタ點ト、民間事業家トシテ
  考ヘタ點トハ、ソコニ指導或ハ監督等ニ付
  キ各〓異っタ見方ガアリ、又異ッタ體驗ヲ經
  ラレタ筈ダト私ハ思フ、隨テ事實ニ於テ本
  案ハ指導監督ノ點ニハ頗ル重キヲ置イテア
  リマス、本案ニ依ッテ、マア鋼ダノ砂鐵ノ貧
  鑛處理ノ問題ハアリマスケレドモ、之ヲ除
  ケテハ製鐵事業ヲ發達シ、製鐵事業ヲ今後
  增加シテ行ク生產增加ト云フ方法ニハ、此
  監督或ハ許可ト云フコトニ依ッテ、必ズシモ
  私ハ增產ガ出來ナインヂヤナイカ、增產ト
  カ、或ハ發達トカ云フ問題ハ、斯ウ云フ形
  デハ行カナイノデアルト云フヤウナ疑念
  ヲ、委員ガ持ッテ居ルヤウニ思ハレルノデア
  リマス、又私モ持フテ居リマス、併シ先程申
  シタ通リ、議員ハ時局ノ重大ニ鑑ミテ、專
  ラ政府ノ意ノアル所ヲ付度シテ法案通過ニ
  -政府ハ如何ニ考ヘテ居ルカ知ラヌガ、
  議員ハ少クトモ通過ニ努メント考ヘテ居ル
  ノデアリマス、此事業ノ發達奬勵竝ニ現在
  及ビ今後ノ事業方針ニ對シテ、眞ニ製鐵ヲ
  助長發達セシメ、完全ナル發達ヲ圖ルト云
  フ根本筋ハ本案ノ何處ニオアリナサルノ
  カ、一ツ商工大臣ノソレニ對スル極ク腹藏
  ナキ趣旨ト御意見ヲ伺ッテ見タイト考ヘマ
  ス

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• 008・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御尤モナ御尋デゴザイマ
  ス、申上ゲル迄モナク鐵鋼ハ現在不足致シ
  テ居リマスノデスカラ、御心持ハ成ベク斯
  ウ云フ許可主義ト云フヤウナ面倒ナコトヲ
  シナイデ、何デモマア造ルモノハ造ラシタラ
  宜イヂヤナイカト云フヤウナ御考ヲオ持チ
  デアラウカト存ズルノデアリマス、併ナガ
  ラ製鐵事業ハ私ガ申上ゲマスル迄モナク、
  非常ニ大切ナ事業デゴザイマシテ、幾ラサ
  ウ云フ時代デアルカラト云ウテ、餘リ間ニ
  合セノ形態ノミガ起リマシテハ、國防竝ニ
  產業ノ基本ヲ成ス見地カラ、ドウモ面白ク
  ナイ、現ニ私ノ申上ゲル迄モナク製鐵事業
  ト云フモノニハ、例ヘバ「コークス」ヲ造ル
  ト云フ場合ニ、詰リ「ベンゾール」モ出來マ
  ストカ、或ハ染料ノ中間物モ出來マストカ
  サウ云フ事業デゴザイマスカラ、一時ノ如
  ク銑鋼一貫作業ト云フ主義ダケニ餘リ固執
  スルト云フコトハ、當面ノ急ニ應ズル爲ニ
  ハ適當デハナイト存ジマスケレドモ、サリ
  トテ現在ノ如ク「スクラップ」其モノヽ手配
  ダケニ付テスラ、當業者ノ間ノ、何ト申シ
  マスカ濫設ノ結果、是ガ手配ニ困難ヲ感ジ
  テ、非常ナ高イモノヲ買フト云フコトデハ、
  ヤハリ國家百年ノ計ヲ圖ル上ニ於テ適當デ
  ナイ、ドウシテモ是ハヤハリ統制アル發達
  ト云フモノヲ圖ル點ニ於テ、ヤハリ許可事
  業トシタ方ガ宜シカラウト、今度新シクヤッ
  タ譯デアリマスケレドモ、實ハ從來ノ製鐵
  奬勵法ニ於キマシテモ、免稅其他ノ特典ヲ
  與ヘル場合ニハ、ヤハリ認可ヲ受ケルコト
  ニナッテ居リマス、言葉ハ許可、認可ト違ヒ
  マスケレドモ事實ハ同ジデアリマス、從來
  ニ於テモ、製鐵奬勵法ト云フモノニ依ル恩
  典ヲ受ケナイモノハ、認可ヲ受ケナイデモ
  ヤレタ譯デアリマスケレドモ、御承知ノ通
  リ實際問題トシテハ、大多數ノ大キイモノ
  ハアノ條項ニ依ッテ認可モ受ケテ居リマス、
  實際問題ト致シマシテモ、新シク許可事業
  ニシタカラト申シテ、其取扱ト云フモノ
  ガ、大ナル事業ニ付キマシテハ從來ト異ナ
  ル所ハナイ、斯ウ云フ考デ、旁々ヤハリ全體
  ノ健全ナル發達ヲ圖ルト云フ見地カラ、ヤ
  ハリ許可事業ニシテヤッタ方ガ宜シカラウ、
  其コトガ又此事業ト云フモノヽ發達ヲ期ス
  ル上ニ於テ必要デアル、唯今御指摘ニナ
  リマシタ通リ、兎角役所ノコトハ中々許可
  ニ於キマシテモ、從來私共モ長ク役人ヲ
  ヤッテ居ッタノデアリマスケレドモ、手續ナ
  ドニ付キマシテ、ヤハリ相當時ヲ費スト云
  フヤウナ點モアリマスカラ、サウ云フコト
  ヲヤル場合ニ於テモ餘程許可ナドニ付テモ
  迅速ニ事ヲ運ビマセヌト、折角ノ考ガ實際
  ニ合ハナイヤウナコトニナルト云フコトガ
  アリマスカラ、運用ニ付キマシテハ十分ニ
  注意シタイ思ヒマス、而シテ又他ノ政府委
  員カラモ說明ガアッタト思ヒマスガ、不許可
  ニ關スル場合ニ付テモ、今度ハ製鐵事業委
  員會ニ掛ケマシテ、ヤハリ公正妥當ナル方
  針デ以テ許可、不許可ヲ決スルヤウニシタ
  イト、斯ウ云フ考デゴザイマス

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• 009・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　商工大臣ノ答辯ハ私モ非常ニ
  滿足スル所デアリマス、サウ云フヤウナ御
  考ヲ以テ此法案ニ向ッテ戴クコトガ大切ダ
  ラウト存ジテ御質問申シタ、果シテ伍堂君
  ノ御答辯トハ餘程趣ヲ異ニシタコトヲ私ハ
  悅ブ、就テハ運用ニ重キヲ置クト云フノデ
  アリマシテ、過去ノコトヲ申述ベル必要ハ
  ナイノデアリマスガ、熔鑛爐ノ認可ノ表ヲ
  見マシテモ、洵ニ御躊躇ナスッタリ何カシ
  テ、ソレガ爲ニ今日ノヤウナ鐵不足、熔鑛
  爐不足ヲ來シタ-必ズシモアナタノ罪ト
  ハ申シマセヌケレドモ、商工省ガ躊躇逡巡、
  消極主義デ熔鑛爐ノ設備ガ出來テ居リナガ
  ラ許可サレナイ、サウシテ今日ニ於テ「ス
  クラップ」モイカナイ、銑鐵ガ足リナイト云
  フケレドモ、是ハ熔鑛爐ガ許可サレナイノ
  ダカラ、言フ方ガ無理デアッテ、少シ無理ナ
  コトダト思フ、併シ現大臣ノ如キ御考ヲ以
  テ商工行政ニ當ッテ戴ケレバ、私ハ左程此法
  案ガ害ヲ及ボサヌト思ヒマスガ、中ニハ刺
  戟スル文句ヤ條項ガアルヤウニ思ヒマス、
  ソコデ大臣ニ御質問ト申シテハナンデス
  ガ、多少疑義ト思フヤウナ條項ハ、御熟議
  ノ結果御修正ニ應ジナスッテ、至急法案ノ通
  過ヲ圖リタイト私ハ思フテ居リマス、固ヨリ
  根本ヲ變ヘルトカ、大切ナコトヲ變ヘルト
  云フノデナク、多少ノ字句ノ修正ヤ或ハ少
  シ强過ギルノヂヤナイカト云ッタヤウナ二
  三箇處ノ條項ヲ、相寄ッテ御相談シタイ點
  モアリマス、併シ其點ヲ丸呑ミニシテ此通
  リニヤレトモ言ハナイノデアリマスガ、之
  ニ應ジテ以テ本案ヲ通過スルト云フヤウナ
  努力ヲナサッタ方ガ宜シクハナイカ、吾々
  ハ通過サシタイ、努力シタイト思ッテ居リ
  マスガ、政府當局者ハ果シテ通過ニ努力ス
  ルノ御意思ガアリヤ、左樣ナ風ニ御進行下
  サルヤウナ御趣意アリヤ否ヤト云フコト
  ヲ、モウ一ツ承ッテ置キタイト思ヒマス

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• 010・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御話ノ點ハ虛心坦懷ニ御
  話ヲ承リマシテ、御協賛ヲ願ヒタイト思ヒ
  マス

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• 011・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　サウスルト私ノ第一質問ハソ
  レデ相濟ミマシタ、第二ニハ商工大臣モ旣
  ニ御承知デアリマスカラ諄クハ申シマセヌ
  ガ、製鐵ノ現狀カラ云ヒマスト、申ス迄モ
  ナク鐵ガ少クナッテ居ル、足リナイ、銑鋼一
  貫作業ニ依ッテモ鑛石ガ足リヌ、併シ現狀デ
  ハ鐵ガ足リヌ、ソレハ「スクラップ」ニ依存シ
  テハイカヌ、御尤デアリマス、「スクラップ」
  ニ依存シナイナラバ、銑鐵ヲ何處カラカ持ッ
  テ來ナケレバナラヌ、滿洲ナリ內地デ出來
  レバ勿論議論ハナイノデスガ、內地滿洲デ
  ソレガ出來ナケレバ、「スクラップ」ヨリモウ
  少シ高イ銑鐵ヲ他處カラカ持ッテ來ナケレバ
  ナラヌ、「スクラップ」モ銑鐵モイカヌト云ヘ
  バ今度ハ製品、鋼材ナリ鋼ナリ、向フノ高
  イ勞働賃銀デ造ッタモノヲ持ッテ來ナケレバ
  ナラヌ、此三段論法ハ間違ヒナイノデアリ
  マスカラ、私ハ現狀ニ於テノ急ヲ救フハ「ス
  クラップ」デモ宜シ-引合ハヌケレバ「ス
  クラップ」ヲ取ラヌノデアル、「スクラップ」モ
  宜シ、銑鐵モ宜シ、如何ナル方法デモ-
  現狀ノ製鐵事業ト云フト、大キナ製鐵所ノ
  コトヲ直グ御考ニナルガ、私ノ言フノハ第
  二、第三ノ其鐵ヲ製品ニシ、或ハ其製品ヲ
  實際ニ商品化スル、輸出ニ或ハ內地ニ使フ
  工業者ノ幾分材料ノ安全ヲ期スルニハ、サ
  ウシナケレバナラヌト思フ、殊ニ御承知ノ
  通リ輸出ト云ッテモ、生絲ト纎維工業ヲ除
  イテハ鐡ヲ用ヒヌモノハ-間接直接ニ鐵
  ニ依ラヌモノハ殆ドナイノデアリマス、デ
  ハ「セルロイド」ナンカ鐵ニ依ラヌヂヤナイ
  カト云フガ、「セルロイド」ヲ造ル機械ハ、ヤ
  ハリ鐵ニ依ッテ居ル、ダカラ鐵ニ依ラヌモノ
  ハナイ、其鐵ノ不足ニ因ッテ建築モ出來ナ
  イ、或ハ機械モ出來ナイ、先達テ來ハ「ヅ
  ク」デ拵ヘルモノ、川口ノ鑄物業ナドハ半分
  休業シテ居ルト云フヤウナコトデアレバ、
  生活安定ドコロヂヤナイ、國民生活ノ不安
  ハ此處カラ來テ居ル、唯物價ガ高イ、物ガ
  高イト云フダケガ國民生活不安ヂヤナイ、
  澤山ナル勞働者、三千人、五千人、一萬人
  ト云フ勞働者ノ造ル材料ガナイ、其製造ス
  ル材料ガナイト云フ時ニ、賃銀モ拂ヘナイ
  ト云フソコニ生活不安モ來ルノデアリマス
  カラ、現狀ヲ凌グニ付テハ、幸ヒ斯ウ云フ
  重大ナル事業法ノ如キ監督權、或ハ許可權
  モアルノデアリマスカラ、日鐵ヲ中心トシ、
  「アウトサイダー」ノ多クノ製鐵業ヲ一致團
  結セシメテ、啻ニ日鐵依存バカリデハイケ
  ナイト思フノデス、兩方合體セシメテ、モ
  ウ旣ニオヤリナスッテ居ルヤウニ考ヘテ居
  ルガ、私ハ前ニ伍堂君ニ注意シタノデアリ
  マス、サウシテ一手或ハ一一手カラ、競爭的デ
  ナク妥協的ニ「スクラップ」ヲ輸入スルトカ、
  或ハ安イ所カラ「ヅク」ヲ輸入シテ、以テ現
  狀ノ鐵飢饉、鐵不足、マア飢饉ト云フ言葉
  モ今日ハ此一月、二月ノ如クデハナイヤウ
  デアリマスガ、鐵不足ヲ補ッテ行ク、今ハ鐵
  ノ不足ガ落付イタト政府諸君ハ思ハレルノ
  デスガ、其處ガ大變違ッテ居ルノデス、其處
  ハモウ一ツ御了解願ヒタイ、何故今落付イ
  タカト云フノニ、建築シテモ鐵ガ高イカラ
  止メヨウ、機械ヲ造ルノニモ鐵ガ高イカラ
  止サウ、此仕事ヲヤルニモ鐵ガ高イカラ一
  寸見合セヨウト、皆見合セタ結果假ニ安定
  シタ、假ニ先ヅ不足ガナクナッタヤウナ形
  ニナッテ居ルノハ、皆是ハ見合セテ居ルノ
  デス、其處ガ大變違ッテ居ル、見合スト云
  フコトハ仕事ヲシナイコトデス、所ガ政府
  ハ生產擴充、生產ヲ增大スルト云フノハ、政
  府ガ生絲工場ヤ何カヲ增大スルノヂヤナイ
  ト思フノデス、今ノ政府ノ言ハレテ居ル生
  產擴充ト云フノハ、綿絲工場ヤ生絲工場バ
  カリヲ增大スル意味ヂヤナイ、寧ロ重工業ヲ
  增大スルト云フ意味ダラウト思フ、或ハ機
  械工業ノ增大充實ト云フ御意見ダラウト思
  フ、サウスルト皆ガ見合セテ居ルノダト云
  フコトニ付テ篤ト御考慮ヲ願ッテ、現在モ鐵
  ハ不足シテ居ルノダ、ソレニハヤハリ日鐵
  ヲ中心トシ、多クノ事業家、工業家ヲ連鎖セ
  シメテ、屑鐵デモ或ハ銑鐵デモ、其價格ト
  需要ト其目的ニ從ッテ共同輸入ヲナスッテ、
  以テ國民ノ鐵ニ對スル不安ヲ除イテヤル
  ト、斯ウ云フ御考ガ一番宜イノヂヤナカラ
  ウカト、私ハ考ヘテ居リマスガ、運用上ニ
  對スル、實行上ニ對スル吉野君ノ御意見ハ
  果シテドウデアラウカ、一ツ率直ナル御意
  見ヲ承ッテ見タイト斯ウ思フノデアリマス

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• 012・吉野信次

  ○吉野國務大臣　大體同感デゴザイマシ
  テ、決シテ日鐵中心主義ト云フヤウナ考ハ
  ゴザイマセヌ、全體ノ業者ガ、斯ウ云フ時
  局デゴザイマスカラ一丸トナッテ、各〓其所
  ニ從ッテ協同シテヤッテ行キタイト、斯樣ニ
  考ヘテ居リマス

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• 013・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　サウスルト前ノ伍堂君ハ何カ
  平爐ヲ動カシテ「スクラップ」ヲ使フト云フ
  コトハ罪惡-マア罪惡トモ言ハヌケレド
  モ、怪シカラヌト云フヤウナ風ノ御言葉ノ
  ヤウニ-マアサウ推察スレバ其樣ニモ聽
  イタ、何デモ熔鑛爐ニ依ル銑鐵鑛石デナケ
  レバイカヌト主張サレタル所ト、吉野君ノ
  御考トハ現在ノ所デハ、現狀ヲ凌グ上ニ於
  テハ違フト、斯ウ見解ヲ下シテ宜シウゴザ
  イマスカ

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• 014・吉野信次

  ○吉野國務大臣　前大臣ハドウ云フ言葉デ
  言現ハサレマシタカ存ジマセスガ、私モ「ス
  クラップ」ヲ使フコトハ決シテ罪惡トモ何ト
  モ考ヘテ居リマセヌ、唯現狀ニ於キマシ
  テ、先程申上ゲマシタ通リ鐵ト云フモノ
  ハ、ヤハリ何トシテモ熔鑛爐ト云フモノヲ
  中心ト致シテ立テマセヌト云フト、國防ナ
  リ產業ノ結果カラ困ルノデアリマス、現在
  ノ實狀ト云フモノガ「スクラップ」ト云フ
  -御承知ノ通リ「スクラップ」ノ供給量モ、
  世界的ニ見マシテ限リガアル譯デゴザイマ
  スカラ、ソレ等ノ諸般ノコトヲ判斷致シマ
  シタ時ニ、ドチラニ不足ガアルカト云ヘ
  バ、熔鑛爐ノ方ニ不足ガアル、サウ云フ見
  地カラ云フト「スクラップ」ノ方ハ幾ラカ剩
  リガアル、サウ云フコトハ私モ認メテ居リ
  マス、デスカラドチラニ力ヲ入レルカト云
  く是カラハ「スクラップ」ノ方ニヨリモ、
  ヤハリ熔鑛爐ノ建設ノ方ニ力ヲ入レナケレ
  バナラヌト、斯樣ニ考ヘテ居リマス

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• 015・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　能ク分リマシタ、ソコデ將來
  ノ問題ノ御質問ヲ申上ゲテ、私ノ質問ヲ打
  切リマスルガ、今アナタノ仰シヤル通リ、
  私ノ意見ハ少シモ違ヒマセヌ、其通リデゴ
  ザイマス、其通リデアレバ、然ラバ熔鑛爐
  ト云フモノニハ、申ス迄モナク鑛石ガ必要
  ナノデアル、現在マデ鑛石ヲ取ッテ居ラレ
  タ所ハ支那トカ、南洋トカ、「シンガポール」
  馬來アタリカラ御取リニナッタ、支那ハ現在
  ノ狀態デアリマシテ、將來トモ供給ニ對ス
  ル安定ハ頗ル少イト思フヤウナ氣ガシマ
  ス、或ハ來ルカモ知レマセヌ、併ナガラ必
  シモ日本ニ欣ンデ從前ノヤウニ供給スルト
  云フ可能性ガ、非常ニ少クハナイカ、承レ
  バ馬來アタリハ英國政府カラ、何ヤラ鑛石
  ヲ七月一日カラハ、日本ニ送ルナト云フヤ
  ウナ命令ガ出タト云フヤウナ風ニモ聞イテ
  居リマスシ、又サウヂヤナイト云フコトモ
  アリマスガ、果シテサウトスルトドノ邊ニ
  鑛石ヲ求メントスルカ、是ガ第一ノ質問デ
  アリマス、又第二ハ貧鑛ヲ處理シテ云々ト
  云フコトガアリマス、併シ是ハ伍堂君ノ御
  答辯ニ依ッテモ、私等ノ〓究ニ依ッテモ、マ
  ダ是カラ始マル問題デ、一方ニ茂山アタリ
  デ二十「パーセント」トカ二十五「パーセン
  ト」ノ鐵鑛ヲ處理シテ、サウシテ「ヅク」デ
  モナイ、屑デモナイヤウナ混ゼ鐵ノモノヲ
  拵ヘル、所謂鐵鑛石ノ純分ノ良イヤウナモ
  ノデ御拵ヘニナル、是モ硫黃モ入ッテ居リ
  必シモ屑トシテ使ヘナイト云フコトデア、
  テ、中々二年ヤ三年デハ處理ガ付カナイ筈
  デアルト思ヒマス、ポツ〓〓出來タ所デ、
  ソレガ中々現在ノ熔鑛爐ノ需要ヲ充タスト
  云フコトハ、思ヒモ寄ラヌト思ハレルト云
  フコトニ付キマシテハ、先ヅ鐵鋼政策ハ別
  トシテ、鑛石ヲドノ點カラドウ安心ガ出來
  テ、ドウ云フ風ニヤラレテ居ルカ、祕密ノ
  ナイ限リ御說明ヲ御願シタイト思ッテ居リ
  マス

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• 016・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御話ノ通リ鐵ノ鑛石ノ供
  給ト云フコトニ付キマシテハ、只今大部分
  外國ノ供給ニ依ッテ居ルヤウナ次第デゴザ
  イマシテ、御承知ノ通リ支那或ハ南洋或ハ
  濠洲、ソレニ」茂山ノ貧鑛デアルトカ國內
  ノ砂鐵デアルトカ云フ問題ハ、丁度今御指
  摘ニナッタヤウニ、目標ハソレニ依ルト致シ
  マシテモ、相當ニソレニハ時ガ掛ルノデア
  リマスカラ、ヤハリ現在ノ通リ出來ルダケ
  サウ云フ方面ノ諒解ヲ得テ、今來テ居リマ
  ス所カラ鐵鑛石ト云フモノヽ供給ヲ仰グト
  云フコトニ、萬全ノ注意ヲ拂ッテ行クヨリ外
  ハ致シ方ガナイダラウ、斯樣ニ考ヘテ居リ
  やっく。唯滿洲國或ハ北支方面ナドガ、、、
  云フ事情デアリマスカラ、今直グデハゴザ
  イマセヌケレドモ、或ハ新シイ鐵山ノ開發
  ト云フコトニ、若シ見込ガアリマスレバ、
  サウ云フ方面モ十分ニ力ヲ協セテ行ク、之
  ヲ要スルニ現在ノ所ハ丁度御心配ニナッテ
  居ル通リ、何分ニモ外國ニ依存シテ居ルト
  云フ狀態デゴザイマスカラ···

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• 017・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　馬來ノ問題ハドウデスカ

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• 018・吉野信次

  ○吉野國務大臣　馬來ノ方ハ私ノ承知シテ
  居ル所デハ「スクラップ」ノ輸出ヲ禁止シタ
  ト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、鑛石ニ付
  テハマダ左樣ナ情報ハ得テ居リマセヌ、恐
  ラクハ英國ト雖モサウ云フ趣意デハヤラナ
  イダラウト思ッテ居リマス

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• 019・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　許可スルヤウナコトハナイト
  云フノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=19

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• 020・吉野信次

  ○吉野國務大臣　是ハドウモ相手ノコトデ
  ゴザイマスカラ······現實ハ「スクラップ」ノ
  輸出ト云フコトヲ禁止シテ居ルト聞イテ居
  リマス、多分其コトガ鑛石ト云フ風ニ傳ッタ
  ノデハナイカト考ヘテ居リマス

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• 021・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　馬來ノ方ガソレデアレバ、南
  洋方面ハ先ヅ鑛石ヲ取ル上ニ於テ、多少心
  配ハナイヤウデスガ、中々鑛石ト言ヒマシ
  テモ、非常ニ多量ヲ取ルノデアリマスカ
  ラ、交通不便ナ、運搬不便ナ、設備不便ナ
  所デサウ澤山取レマイト思フ、又濠洲等モ
  是等ハ港ノ關係ヤ何カデ、サウ思フヤウニ
  行カナイヤウニ聞イテ居リマス、ソコデ私
  ハ日本ノ鋼ノ鑛石ガ豐富デアルト云フコト
  ヲ、世界ニ吹聽スル必要モナイノデスガ、
  ソコハ中々「デリケート」ナ問題デアリマス
  ガ、假ニ豐富デアッテモ、政府民間-此日
  鐵ノミニ依ラズ、他ニ熔鑛爐ヲ置イテアル
  所ガ澤山アルノデアリマスガ、之ヲ打ッテ
  と丸ト成シテ、各〓特異性モアリマセウカラ、
  必シモ共同シテヤルト云フコトハ出來マス
  マイガ、各〓意思ヲ疏通シ、此際皆不足ナノ
  デスカラ、オ互ニ大キナ國家的ノ見地カラ
  不足ヲ補フト云フヤウニ、ソレハ各〓ノ會
  社ノ計算ガ違ヒマスカラ必シモサウ行カヌ
  ノデアリマセウガ、サウ云ッタヤウナ協定
  的ナ方法ヲ以テ、鑛石ノ獲得ヲスルト云フ
  コトガ非常ニ大切ナコトデハナイカト云フ
  コトガ一ツ、モウ一ツノ點ハ前議會ニ私ハ
  本會議ニ於テ質問シタ時ニ、大藏大臣ニオ
  出デヲ願ッテ、商工省ト協力シテ大藏大臣
  ハ鑛石ノ貯藏ニ對シテ、利息ノ補助ヲスル
  決心ガナイカト云フコトヲ尋ネタ、其時ニ
  賀屋君ガ來テ居ッテ、賀屋君ハ是非サウシタ
  イト思フト云フ答辯ガアッタノデアリマス
  ガ、其點デハ容易ナラザル澤山ノ金額ガ掛
  ルノデアリマス、併シ金ハ何モ政府ガ補助
  シテ吳レヌデモ、其利息トカ、運搬費トカ
  云フモノニ對シテ、幾分カノ政府ノ協力ガ
  得ラレヽバ茲ニ民間-日鐡モ民間デアリ
  マスガ、民間相携へテ鑛石ノ不足ニ付キマ
  シテハ非常ナ努力ヲスルト思フノデアリマ
  スガ、御承知ノ通リ日鐵ノヤウナ會社、或
  ハ日本鋼管ノヤウナ規模ノ大ナルモノハ、
  ソレガ出來テ居リマスケレドモ、一ツヤ二
  ツノ熔鑛爐ヲ持ッテ居ルモノハ、海外ニ人ヲ
  派シテ設備ヲシテ、運送ノ準備ヲシ、棧橋
  ヲ拵へ「レール」ヲ敷イテ鑛石ヲ取ッテ來ル
  ト云フコトハ、欲シクテモ容易デナイ、又
  各〓ガ之ヲヤッテ行ッタナラバ二重、三重ノ
  不便ト云フモノガ伴ッテ來ルト私ハ思フ、サ
  ウ云フ點ニ付テ良イ鑛石ガアレバ、政府ハ
  之ヲ能ク諒解シ、協定サレテ共同作業ヲ奬
  メルトカ、ソレニ對シ貯藏ニ對スル利子
  ハ、政府ガ補給スルトカ云フヤウナコトニ
  シテ、議員ハ必シモ政府ノ支出ヲ要求スル
  ノデハアリマセヌガ、サウデモ爲サラヌト
  何時マデモ鑛石ノ不足ガ、熔鑛爐ノ原料ノ
  不足ヲ來シ、又熔鑛爐ノ不足ガ銑鐵ノ不足
  ヲ來シ、有ユル鐵工業ノ不振ヲ來シテ、所
  謂因ハ果トナリ果ハ因トナッテ底止スル所
  ヲ知ラヌノデアリマス、此點ヲドウカ眞劍
  ニナッテ、監督指導ト云フ點ニ於テ、重大
  責任ト重大ナル努力ヲ御拂ヒ下サッテ、ドウ
  カ製鐵ノ健全ナル發達ヲ、其方面ニ求メテ
  戴キタイカニ私ハ感ズルノデアリマスガ、
  大臣ノ所見ハ如何デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=21

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• 022・吉野信次

  ○吉野國務大臣　財政上ノ理由モゴザイマ
  スカラ、今此處デ具體的ニドウ斯ウト云フ
  コトハ、御示シスル程度ニ至ッテ居リマセ
  ヌガ、御說ノ點ハ私モ大體同感デアリマ
  ス、現ニ農商務省以來色々ノ民間ノ識者ヲ
  集メマシタ調査會ナルモノヽ答申ニ依ッテ
  モ、原鑛石ノ輸入ト申シマシテモ、ヤハリ
  當時ノ八幡製鐵、今日ノ日鐵ト云フ大キイ
  モノガ中心トナッテ、主トシテ國デ組織的
  ニヤッタ方ガ宜シイト云フ意見モ出テ居リ
  やく、此點ニ付キマシテハ、篤ト御趣旨ノ
  ヤウナ意味デ、今後ニ於テモ考慮シタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=22

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• 023・岡崎久次郎

  ○岡崎委員　私ノ時間ガ略〓來タヤウデア
  リマスカラ、私ノ質問ハ是デ止メマスガ、
  私ガ此意見ヲ申述ベル意味ハ、商工大臣ヲ
  前ニ置イテ甚ダ失禮デアリマスガ、アナタ
  ハ大藏大臣ト大變御懇意デ、良イ「コンビ」
  ダト云フコトデアリマスカラ、巧ク行クカ
  モ知レマセヌガ、吾々ハ商工省ノ腰ヲ抱イ
  テト言フテハ語弊デアルガ、アナタノ意見
  ガ果シテサウデアレバ、議員ハ其意見デア
  ルト云フコトカラ大藏省ニ御話ヲナッサテ、
  又吾々モ微力ナガラ其意見ガ國家ノ爲メデ
  正當デアリ、妥當デアルト信ズレバ、何處
  マデモ之ヲ主張スルニ吝カデナイノデアリ
  マス、何モ一會社、一私設會社ニ利益ヲ與
  ヘルト云フ意味ナラ御斷リスルガ、サウデ
  ナク國家全體ノ方針トシテ、鑛石貯藏利子
  ノ補給位ノ案ナラバ勇敢ニ御提出ニナッテ、
  勇敢ニ迫ッテ、吾々ハ之ヲ後援スルノ力ヲ
  少シモ吝マナイト、私自身ハ信ズル、又皆
  議員ハ左樣ニ考ヘテ居ルヤニ存ジマス、勇
  敢ニ之ヲ御主張ナサッタラ如何デアルカト、
  斯ウ申上ゲタイノデアリマス、之ヲ以テ私
  ノ質問ハ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=23

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• 024・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　瀧澤七郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=24

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• 025・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　少シ御伺シタイト思ヒマス
  ガ、大體ニ於テ只今先輩ノ岡崎サンカラ御
  質問ガアリマシテ、岡崎サンハ斯業ニ多年
  ノ御經驗ヲ持ッテ居ラシヤル、其岡崎サンガ
  前議會ニ於テ御審議ヲ爲サッテ、サウシテ
  其結果ヲ以テ御質問ニナッタノデアリマス、
  岡崎サンノ御質問ニ依ッテ、私ノ御聞シタイ
  ト云フコトノ大體ハ諒解致シタノデアリマ
  スケレドモ、私ハ尙ホ委員長ニ御願ヲ致シ
  マシテ、適當ノ機會ニ於テ前議會デ質疑應
  答ヲセラレテ、稍〓成案ヲ得ラレタト云フ、
  其成案ヲ又吾々新シキ者ニ御示シ下サルコ
  トヲ一ツ御願シテ置キマス、前議會ニ於テ
  御審議ナサッタ方ハ能ク御承知デアリマス
  ケレドモ、私共初メテノ者ト致シマスレ
  バ、ヤハリ初メテノコトヽシテ申上ゲマス
  ルノデ、御聽苦シイ點ガアルカモ存ジマセ
  ヌガ、是ハ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス、只
  今休憩中ニモ、大體委員長初メ先輩各位ノ
  御意向ハ、此法案ヲ通サウ、斯ウ云フヤウ
  ナ御考ノヤウニ見受ケテ居リマシテ、私共
  其點ドノ程度マデニ妥協セラレテ、之ヲ修
  正セラレルカ存ジマセヌケレドモ、商工大
  臣ニモ其用意アリトノ御答辯デスカラ、必
  ズ是ハ通過スルモノト思ヒマスルガ、只今
  商工大臣ノ御答ニ依ルト、ドウモ吾々ノヤ
  ルコトニ付テハ手緩イヤウニ思フ所ガアル
  ト云フ御自覺ガアリマシタケレドモ、認可
  ガ許可ニナルトカ云フコトニ付テハ、私非
  常ニ不安ヲ懷イテ居ルノデス、昨日モ岡崎
  サンガ、是ハ君事業法デナクテ管理法ト名
  付クベキモノヂヤナイカ、事業法ト云フノ
  ナラバ、モソット當業者ガ自由ニ隨意ニ働
  キ得ラレルヤウナ條項ニシナケレバナラヌ
  ヂヤナイカト云フ御話モアッテ、是ハ洵ニ私
  當ヲ得タコトヽ思フノデアリマス、私昨
  日、今日ノ資科等モ御願ヲ致シマシタケレ
  ドモ、私ノ御註文ノシ方ガ誤ヲテ居リマシ
  タカ、此處ニ書イテアリマセヌガ、私ハ、
  許可ヲ申請シタ日ヨリ許可サレタ日ト申上
  ゲタ譯デス、其間ニ一年半モ二年近クモ
  掛ッテ居ルヤウナ熔鑛爐ガアルト、私ハ曾テ
  聞及ンデ居リマス、之ニハソレガ明示シテ
  アリマセヌ、唯許可ノ日ト火入レノ時期ガ
  アリマスガ、許可申請ノ日ガアリマセヌカ
  ラ、私此處デハッキリ申上ゲルコトハ出來
  マセヌケレドモ、今迄デモ私共ハ昨年ノ銑
  鐵飢饉ニ當ッテ、ナゼアノ時ニ熔鑛爐ヲア
  ソコヘ許可サレナカッタノダラウ、アレガ
  許可サレテ居ッタナラバ此苦シミハ受ケナ
  カッタダラウ、斯ウ考ヘタ、此處ニ銑鐵ノ
  値段表ガ付イテ居リマス、昭和九年カラ本
  年ノ六月マデノ値段表ガ付イテ居リマス
  ガ、之ヲ見マスト非常ニ銑鐵ノ安イモノ
  ヲ.國民ハ供給ヲ受ケ居ルヤウニ見エテ居
  リマスケレドモ、是ハ日本製鐵株式會社ガ
  商工省ト相談ヲシテ賣ル値段ダケデアリマ
  シテ、實際ニ於テハ、此取締リガアル爲ニ
  非常ニ高イモノヲ使ッテ居ル現狀デアリマ
  ス、ト申シマスルノハ日本製鐵ニハ、元來
  安イ品物ヲ澤山供給スルト云フコトデ、此
  製鐵會社ガ出來テ居ッタ、デスカラ値上ゲ
  スル時ニ、ソレハイカヌ、ソレハイカヌト
  監督セラレマスル結果、日本製鐵ハ他ノ高
  イ銑鐵ヲ買ッテ、安イ自社製造ノモノニ混
  ゼテモソット賣レバ宜イケレドモ、アノ會社
  ト雖モ營利ノ會社ダカラ、中々高イモノハ
  買ハナイ、買ハナイカラ益〓銑鐵飢饉ヲ迎
  ヘテ-此處ニ昨年ノ暮ナドハ僅ニ五十七
  圓トナッテ居リマス、非常ニ安イ銑鐵ヲ供
  給サレタヤウニナッテ居リマスケレドモ、是
  ハ當業者ガ使フ六割ニシカ當ラナイノデア
  リマス、或ハ五割ニシカ當ラナイノデアリ
  Vく、品物ガ無イカラ「スクラップ」ヲ買ヒ
  マス、元來「スクラップ」ハ銑鐵ノ補ヒニ使
  フベキ筈デアルノヲ、ソレヲ銑鐵ノ代リニ
  使フヤウニナッタノミナラズ、銑鐵ガ五十
  七圓ニ對シテ、當時十二月ノ上旬ニ於キマ
  シテハ「スクラップ」ハ百三十圓ヲ唱ヘテ居ッ
  タノデアリマス、ソレカラ今日鐵鋼ハ稍〓緩
  和セラレタト、斯ウ云フ風ニナッテ居リマス、
  ケレドモ、銑鐵ハチットモ緩和セラレテ居
  ラナイ、今度ハ少シ上ヲテ是ガ八十七圓ニ
  ナッテ居リマスケレドモ、實際ニ使用シテ
  居ル三割、四割ノモノハ、「スクラップ」ハ百
  二十圓ヲ唱ヘル、只今使ッテ居リマスル亞
  米利加カラ來テ居ル極ク個人的ニ買入レタ
  モノハ百三十五圓デアリ、又已ムヲ得ズシ
  テ印度カラ來マス百八十圓ノ銑鐵ヲ使ヒ、
  大暮產木炭銑ノ百八十圓ノ銑鐵ヲ使ッテ居
  ル、此見透シハ、ドウシテ斯ウ云フ風ノ惡
  イ結果デアルカト申上ゲマスレバ、要スル
  ニアノ熔鑛爐ノ認可申請ニ對シテ、一年有
  餘モ愚圖付カレタ結果ガ、斯ウ云フヤウナ
  コトニナッテ居ルト信ジテ居リマスカラ、只
  今商工大臣ハ運用ニ當ッテハ注意スルト云
  フ御話デアリマスカラ、繰返シテハ申上ゲ
  マセヌケレドモ、此點ハ更ニ十分御注意下
  サラナケレバ困ル、ソレカラ尙ホ此機會ニ
  於テ、是ハ御願ヒスベキコトデアルノデス
  ケレドモ、銑鐵ノ非常ニ不足セル結果-
  今一番良イ銑鐵ヲ市場ニ供給シ、鑄物用ニ
  使ハレル一番良イモノハ本溪湖デアリマ
  ス、本溪湖ガ年ニ十萬瓲位供給シマセウ
  カ、然ルニ此前三箇月ハ某官衙ノ方デ全部
  ソレヲ需要スルト云フヤウナコトデ、民間
  ノ方へ來ルモノハ非常ニ少クナッテシマッ
  テドウシテモ必要デアルモノヲ得ルコト
  ガ困難デアリマスカラ、是ハ商工省トシテ
  -軍需專門工場モ勿論優先權ハアリマセ
  ウケレドモ、此軍需工業ノ一部ヲ分擔シテ
  居ル者ニモ、是等ノモノガ相當配付セラレ
  ルヤウニ、是ハ商工省ヨリ一ツ御骨折ヲ願
  ヒタイト思ッテ居ル事柄デアリマスルガ、要
  ハ見透シヲ誤マラレタ結果、今日ノ鐵鋼饑
  饉、銑鐵饑饉ヲ來シテ居ル、只今岡崎サンカ
  ラ御話ノ通リ、鐵鋼ニ對シテハ饑饉ガ緩和
  サレタヤウニ見エテ居リマスルケレドモ、
  決シテ銑鐵饑饉ガ濟ンダモノデハアリマセ
  ヌ、ノミナラズ、イツモノ時ニ於キマシテモ、
  戰爭ガ始マルト鐵ト云フモノハ一時需要ガ
  減ッテシマヒマスケレドモ、要スルニ鐵ノ
  戰爭デアリマスカラ、戰爭、事變ガ長引ク
  ニ從ッテ、キット非常ナル不足ヲ來スコトハ
  當然ナコトデアル、事變ガ始マリ、戰爭ガ
  始マル時ニハ鐵銅ト云フモノハ、最初ニ於
  テハ何時モ餘リマス、サウ私ハ考ヘテ居リ
  マスル、今度ハ急ノ上リ方デスカラ其點ハ
  皆遠慮シテ使ハナカッタ結果、今日ノヤウ
  ニナッテ居ルト云フケレドモ、平均ニハ皆
  高クナッテ居リマス、ドウカ一ツ誤マラザ
  ル方策ヲ執ッテ戴キタイ、ソレカラ私コン
  ナ機會ニ將來ノ監督上、又吾々工業家ヲ救
  濟シテ戴ク上ニ付テモ御參考ニ供スルコト
  ハ、例ヘバ私ハ非常ニ不可解ニ存ジタコト
  ハ、日本製鐵ノ配當金ヲ、六分ヲ七分ニ引
  上ゲラレタコトモ一ツノ不可解ナコトニ存
  ジテ居ル、世ノ中ハ金利ガ安クナッテ、銀行
  ダトカ主ナル會社ガ、配當金ヲ引下ゲルト
  云フ時ニ、日本製鐵ノミ一分ノ增配ヲシタ、
  其一分ノ增配ハ何百萬圓ニナリマスカ深ク
  存ジマセヌ、二百萬圓ニナルカ、三百萬圓
  ニナルカ存ジマセヌガ、併ナガラソレニ依ッ
  テ會社ノ利益ヲ多ク取ル、スルト國民ニ安
  イ鐵ヲ與ヘルト云フコトノ逆ナコトヲ、假
  令少シデモ商工省ガ許可セラレタト云フコ
  トノ其御意思ハ、那邊ニアッタカト云フコ
  トヲ御尋ネシタイト思フノデアリマス、是
  ハ前ノコトデアリマスケレドモ、將來私共
  ハ此事業法ニ依ッテ監督セラレル場合ニ於
  テ、私ハ重要ナル參考ニナルコトヽ存ズル
  ノデアリマス

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• 026・吉野信次

  ○吉野國務大臣　日鐵ノ配當ヲ六分カラ七
  分ニシタト云フコトノ御尋デゴザイマス
  ガ、マア六分ガ正當デアルカ、七分ガ正當
  デアルカト云フコトノ絕對ノ理由ト云フモ
  ノモ、サウナイノデゴザイマス、唯私共ノ
  考ヘマシタノハ、アノ時ニ相當ノ利益ガゴ
  ザイマシテ、サウシテ其利益ヲ以テ日鐵ノ
  國策會社タルノ使命ヲ果ス爲ニ、色々ナ〓
  究デアリマストカ、或ハ設備ノ擴張デアリ
  マストカ、サウ云フ方ニ振向ケルダケノ餘
  裕ハ十分取ッタノデアリマス、而モ尙ホ餘
  裕ガアッタモノデアリマスカラ、是ハ宜シ
  カラウ、サウシテ御承知ノ通リ其大部分ノ
  配當ハ、政府ノ收入ニナルト云フヤウナ財
  政上ノ關係モ多少アッタラウカト思ヒマス
  ガ、ソレデ許シタノデアリマス、實ハソレ
  ヲ御考ノヤウニ製品ノ市價ノ引下ノ方ニ向
  ケタラバト云フコトモ、私共モ考ヘマシ
  タ、所ガ御承知ノ通リ日鐵ハ總テノ鐵鋼品
  ノ全部ヲ生產シテ居ル會社デハゴザイマセ
  ヌノデ、ドウモ日鐵ノ製品ダケ下ゲルト云
  フ手ハナイ、ソレデゴザイマスカラ日鐵ノ
  建値ナドニ付キマシテモ、日鐵ノミガ作ッテ
  居リマスル所謂獨占分野ト稱スルヤウナモ
  ノニ付キマシテハ、日鐵ハ安ク賣ラウト思
  <、或ル程度安ク賣レル譯デアリマス
  ガ、其邊ノ所モ實ハ考慮ヲ致シマシテ、總
  テノ點ヲ考慮致シマシタ上ニ、尙ホ餘裕ガ
  アッタモノデアリマスルカラ、一分ノ增配
  ハ宜シカラウ、斯ウ云フ考デヤリマシタ次
  第デアリマス

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• 027・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　只今ノ御答ニ依ッテ御意思ノ
  所ハ分リマシタ、マア私共モ是ガ中央金庫
  ノ資金ニナッテ居ルト云フヤウニ傳ヘ聞イ
  テ居リマス、サウ致シマスト、是ハ一ツノ
  考デアリマスケレドモ、茲ニ農村ノ金融ヲ
  助ケルナント云フヤウナ法案ガ出テ居ルケ
  レドモ、吾々工業家ハ僅カサウ云フモノニ
  依ッテノミ金融ヲ得ル途ガアルダケダト云
  フコトハ、甚ダ手薄イヤウニ感ジマスカ
  ラ、是ハ製鐵トハ違ヒマスケレドモ、商工
  省ノ管轄ニナッテ居ル工業組合ナドノ金融
  ニ付テ、何分一ツ今ノヤウナ御氣持デ十分
  ナル御援助ヲ與ヘラレンコトヲ希望シテ置
  ク次第デアリマス
  ソレカラ是デ三萬五千瓲ガ十萬瓲ニナル
  ノデアリマスガ、サウ致シマスト、今マデ
  ノ小サイノハマア既得權利ダカラ、其保護
  ハ受ケテ居リマスルガ、是等ノモノヲ又强
  制的ニ合同セシメラレルヤウナ御意思ガア
  リマスカドウカ

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• 028・吉野信次

  ○吉野國務大臣　サウ云フ考ハ持ッテ居リ
  マイル

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• 029・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　ソレカラ只今岡崎サンカラノ
  最後ノ御質問デ、此熔鑛爐ヲ建設シテモ鑛
  石ハドウスルカ、是ハ全ク重大ナル事柄デ
  アッテ、アノ木曜島ノ先ニ行ッテ、無人島カ
  ラ命懸ケデ持ッテ來ルヤウナ、アヽ云フコ
  トヲ長ク續ケテ行カナケレバナラナイカト
  云フコトニ對シテハ、私共ハ非常ニ危懼ノ
  念ヲ懷イテ居ルノデアリマス、商工大臣ハ
  東北ニ長クオ居デニナラレマシテ、アノ邊
  ノ產業モ御調査ニナッタデアリマセウ、又
  鑛山監督局ニ依ッテ、日本ノ鐵鑛石ノ埋藏
  量ヲ御調査ニナッタコトモアラウト思ハレ
  マスケレドモ、マアサウ云フコトモドノ位
  ノ埋藏量ガアリヤ伺ヒタイト思ヒマス、
  ツ斯ウ云フ場合ニ於キマシテ手取早ク申シ
  マスレバ、日本ノ僅カバカリ方々ニ散在シ
  テ居ル鐵鑛ヲ今日ニ於テ開發スル、其開發
  ニ向ッテ最近ニ於テ直接奬勵保護ノ御考ガ
  アリマスルヤ否ヤ、ソレカラモウ一ツハ平
  時ニ常ニ小サナ鑛山ヲ開發セシメテ、日本
  ノハ貧鑛デアリマスカラ先ヅ三五%四十%
  デセウカ、是等ヲ四十トシテモ、南洋ノ六
  十ノモノニ半分入レヽバ五十ノ價値ヲ持ツ
  テ居ルモノデアリマスカラ、日本內地デ出
  ル貧鑛石ヲ强制シテ、製鐵所ニ一割ナリ二
  割ナリ必ズ之ヲ使ハセルト、今日ノ鐵鑛石
  ハ高クナッテ居ルカラ、掘出シテモ私ハ相
  當ニナルト思フ、ナルケレドモ、小サナモ
  ノハ何處ノ製鐵所デモ相手ニシマセヌ、ソ
  レヲ商工省ガ御骨折ヲ下サッテ、サウシテ最
  モ運賃ノ安イ所へ强制シテ一割ナリ五分ナ
  リ使ハセルト云フヤウナコトニ付テ、何カ
  御考ヲ持ッテ居ラッシヤルカト云フコトヲ御
  伺シマス

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• 030・吉野信次

  ○吉野國務大臣　國內ノ鐵鋼資源ノ開發ト
  云フコトニ付キマシテハ、多分他ノ機會ニ
  於テ政府委員カラ御答ニナルデアラウト思
  ヒマスガ、砂鐵其他ノ事ニ付テハ十分考ヘ
  テ居リマス、貧鑛ヲ强制シテ使ハセルト云
  フコトニ付キマシテハ、是ハ算盤ノ問題デ
  ハアリマスケレドモ、御話ノ通リ相當ニ大
  キイ會社ニ於キマシテハ、利益モアルコト
  デアリマスカラ、若シサウ云フ必要ガアレ
  バ-殊ニ日鐡ノ如キハ政府トハ特別ノ關
  係モアリマスカラ、必要ガアレバサウ云フ
  ヤウナ品位ノ惡イモノヲ、或ル程度マデ採
  算上非常ニ不利ニナラナイ限度ニ於テ、其
  使用ヲ强制スルト云フコトモ適切ナル方策
  デアラウ、斯樣ニ考ヘテ居リマス

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• 031・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　モウ一ツ伺ヒタイ、先程技術
  的ノ御話ガアリマシタカラ、技術的ノ事ニ
  付テ一寸伺ヒタイト思フノデアリマスガ、
  今迄政府ハ五六十萬圓ノ金ヲ出シテ、砂鐵
  精煉ニ對シテ〓究サレタ、其〓究ノ結果ハ
  大抵イケナカッタノデアリマスガ、今度九
  州ノ方デハ非常ニ好イ成績ダト云フコトデ
  アリマス、先般新聞紙上デ見マスト、前商
  工大臣ノ伍堂サンガ、松永サン初メ五大電
  力會社ノ社長ト、越後ノ直江津ニ旅行セラ
  レマシテ、サウシテ直江津ノ「ステンレス」
  ノ會社ノ砂鐵直接製鋼法ヲ御覽ニナッテ、サ
  ウシテ電力サヘアレバ是ハ大變宜イト云フ
  ヤウナ風ニ聞イテ居リマシタガ、其件ニ關
  シテ商工省ハ何カ御調査ニナッタノデアリ
  マスカ、若シ御調査ニナッタトスレバ、ソ
  レニ對シテハドンナ御考ヲ持ッテ居ラッシヤ
  ルカト云フコトヲ御伺ヒシタイノデアリマ
  ス

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• 032・東榮二

  ○東政府委員　只今ノ御話ニ付キマシテ
  ハ、私共モ非常ニ有望デアルト思ヒマス、
  併シ電力ガ非常ニ安クナケレバ、ヤハリ經
  濟的ニ引合ハナイノデ、如何ニ其電力ヲ安
  ク供給スルカト云フコトニ付テ、〓究ヲ進
  メラレテ居ルト云フコトヲ聞キ及ンデ居リ
  マス、商工省ト致シマシテハ、マダ現場ニ就
  キマシテ調査ヲ致シタコトハアリマセヌ
  ガ、若シサウ云フ計畫ガ進ムヤウデアリマ
  スレバ、商工省トシマシテモ、勿論モウ少
  シ突キ進ンデ〓究スル必要ガアラウカト考
  ヘテ居リマス

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• 033・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　鑛石ニ付テハ只今御伺致シマ
  シタガ、是ト伴フ「コークス」ニナル石炭ニ
  付キマシテハ、其鑛石ト竝ビ立ッテ間ニ合ッ
  テ參ルモノデアリマスカ、之ヲ承リタイ

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• 034・東榮二

  ○東政府委員　只今ノ計畫ニ依リマス電力
  ヲ用ヒテヤリマス方ハ、石炭ハ餘リ用ヒナ
  イ、石炭ガ要ラヌト云フ計畫ノヤウデアリ
  マス、ソレガ詰リ今ノ計畫サレテ居ル電力
  使用製鐵ノ方ハ不要ニナッテ居ルヤウデア
  リマス

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• 035・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　其事ハソレデ分リマシタガ、
  唯熔鑛爐デ鑛石ニ依ッテ銑鐵ヲ造ル場合ニ、
  支那ノ問題其他色々ノ問題ガ起キテ參リマ
  シタノデ、「コークス」ニナル石炭ガ果シテ
  此鑛石ト伴ウテ、十分ニ間ニ合ヒマスカ否
  ヤト云フ見透シヲ承リタイ

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• 036・東榮二

  ○東政府委員　石炭ノ量ニ付キマシテモ、
  私共全體ノ需給計畫ニ付テ、只今色々考究
  シテ居ルノデアリマスガ、是ハ鑛石ト違ヒ
  マシテ、石炭ハソレ〓〓ノ用途ニ從ヒマシ
  テ大體供給ハ差支ナイモノト見テ居リマ
  ス

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• 037・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=37

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• 038・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　此次ノ順序ハ高橋君ニナッ
  テ居リマス、高橋君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=38

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• 039・高橋壽太郎

  ○高橋委員　最初ニ先程岡崎サン、瀧澤サ
  ンノ御話ガアリマシタガ、ソレニ關聯シテ一
  言申上ゲタイノハ、此法案ノ中ニ一番委員
  達ノ懸念ヲ持ッテ居ラレルノハ、統制ノ强化
  ト云フコトニ虞ヲ懷イテ居ルコトデアラウ
  ト思ヒマス、ドウモ商工省ガ過去ノ成績ニ
  於テ、鐵ノ普及奬勵トカ、今年ノ春ノ議會
  デ問題ニナリマシタ帶鐵或ハ最近ノ銑鐵ノ
  建値、アヽ云フ所ヲ見マスト、餘リ商工省ハ
  先見ノ明ヲ誇ル御自信ハタントハ御持合セ
  アルマイト思ヒマスガ、ソレガ統制强化サ
  レテ參ッテ、其結果ガ踏誤ルト云フコトハ、
  可ナリ重大ナコトニナッテ來ハセヌカト思
  フ、此事ハ餘リ多言ハ致シマセヌガ、先ヅ
  豫算委員會デ熟々感ジタコトハ、豫算委員
  會ハ冷房裝置ガアルカラ大變涼シサウダ、
  世ノ中デモ一時間ニ二百五十圓トカノ氷ヲ
  使フカラ、大變凉シカラウト言ッテ居ルガ、
  決シテ凉シクナイ、却テ鬱陶シイ、又溫度
  ヲ逃ガサナイヤウニシマスカラ、同ジ空氣
  ヲ何遍モ繰返シテ送ルカラ頭ガ痛クナル、
  理窟ハ甚ダ冷房ガ利クヤウデアリマスガ、
  事實ハサウデハナイ、窓ヲ開ケテ自然ノ空
  氣ヲ入レタ方ガ却テ氣持ガ好イ、恐ラク統
  制强化ト云フコトハアヽ云フ風ナ結果ニナ
  リハシナイカト思フ、幸ニシテ商工大臣ノ
  ヤウナ練達堪能ノ士ガ居ラレマスカラ、御
  在職中ハ皆モ安心致スコトガ出來マセウ
  ガ、ドウモ此點ハ餘程當局ハ愼重ニ考慮ナ
  サレナクテハナラナイ、何ト言ッタ所ガオ
  役人サンハ營業ノ當事者ノヤウナ利害ヲ直
  接ニ感ズルコトハアリマセヌシ、感ジカラ
  言ッテモ今マデノ行懸リニ捉ハレテ、面子ヲ
  重ンズル爲ニ虚心坦懷ニモノヲ捌クト云フ
  譯ニハ行カナイ、景氣ガ好イ時分ニハ遲レ
  ル、景氣ガ惡クナル時分モ始末ガ又遲レ
  ル、斯ウ云フ不始末ヲ持來スデアラウト思
  ヒマス、私ハ統制ト云フコトガ良イコトデ
  アルナラバ、實ハ哲人政治デ立憲政治ナン
  カナクテモ宜イト云フヤウナ常識論モ、其
  點カラ生レテ來ルト思フノデアリマス、ド
  ウカ此點ハ往ク〓〓幾重ニモ御注意願ヒタ
  イト思フノデアリマス
  私ノ第一ニ伺ヒタイト思ヒマスコトハ、
  政府ノ財經三原則ニ照ラシテ、製鐵事業法
  ニ何等ノ色揚ゲヲナサレナカッタト云フコ
  トデアリマス、先程モ瀧澤サンアタリガ申
  サレマシタ通リ、是ハ製鐵事業法デハナク、
  製鐵管理法デアル、チットモ國際收支ノ適
  合ト云フヤウナ點ニハ觸レテ居ラレナイ、
  殊ニ國防ノ見地ヲ基調トスル時ニ、國防上
  カラ見ルト此製鐵事業法ト云フモノハ、餘
  リドウモ寄與スル所ガナイ、又他ニモ製鐵
  事業法ノヤッテ居ル副生物ヲ何トカヤッテ居
  リマスガ、副生物關係ナンカハ、此製鐵事
  業法デハ綜合國策トシテハ甚ダ不十分デア
  ルト思フ、所ガ一面ニ於テ政府ハ產金法ト
  云フモノヲ提案サレマシテ、其第十六條ニ
  ハ「金鑛業者及金製鍊業者ニ對シ奬勵金ヲ
  交付スルコトヲ得」茲マデヤッテ居ル、所ガ
  鐵ノ方ニハサウ云フ奬勵ト云フコトノ實ガ
  擧ッテ居ラナイ、是ハ製鐵事業法ト云フモノ
  ヲ能ク御考ニナッテ、前議會ノ提案ノ儘ヲ御
  出シニナル前ニ、何カ潤色ヲ加ヘル、或八
  產金法ニ類似シタヤウナ產鐵法ト云フヤウ
  ナモノヲ御出シニナルカドウカシナケレ
  バ辻褄ガ合ハナイヤウニ私ハ考ヘマスガ、
  此點ハドウ云フ御都合デアリマスカ、御答
  辯ヲ御願致シマス

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• 040・吉野信次

  ○吉野國務大臣　此法律デゴザイマシテ
  モ、稅ノ免除ナント云フモノハ相當大キイ
  ノデゴザイマスカラ、ソレ以上ニ奬勵金其他
  ノモノト云フコトハ、此法律ニ於テハ考慮
  ヲ致シマセヌノデゴザイマシタガ、砂鐵トカ
  何トカ云フ特殊ナモノニ付キマシテハ、又
  別途ノ方法ヲ考ヘタイト思ッテ居リマス、而
  シテ此三原則ノ關係ト此法案ノ關係ニ於キ
  マシテハ、私モ相當ニ考慮ヲ廻ラシマシタ
  ノデアリマシテ、何分ニモ鐵鋼ノ需要ガ非
  常ニ多イノデゴザイマスカラ、之ニ對スル
  策トシテ六、供給ヲ潤澤ニスル以外ニハ方
  法ハナイノデゴザイマスケレドモ、唯現在
  ノ此情勢ノ下ニ於キマシテ、色々急激ニ需
  要ガ增シマス場合ニ、之ニ對シテ無制限ニ
  供給ヲ潤澤ニスルト云フコトガ出來得ナイ
  コトハ、高橋サンノ御承知ノ通リダト思ヒ
  やゞ、サウ致シマストドウシテモ是ハ需要
  其モノヽ方面ニ於テ、國防ノ充實デアリマ
  ストカ、或ハ國民生活ノ安定デゴザイマス
  トカ云フ見地カラ、事ノ輕重緩急ト云フモ
  ノヲ考ヘマシテ、經濟活動デゴザイマスカ
  ラ不必要ナル經濟活動ト云フモノハナイ筈
  デアリマスケレドモ、サウ云フ見地カラ見
  タ比較上、不要不急ト云フ方面ニ對シテハ
  ヤハリ其鐵ノ需要ト云フモノニ付テモ按排
  ヲシナケレバナラヌ、實ハ其必要上或ハ特
  別ナ立法デモ御願ヲシナケレバナラヌノデ
  ハナカラウカ、是カラノ國防ノ充實ト云フ
  コトヲヤル爲ニハ、鐵ガ非常ニ重大ナモノ
  デアリマスカラ、一方生產ノ奬勵モ十分ニヤ
  ル積リデアリマス、其目標ナドニ付キマシ
  テモ、從來六百二十萬瓲ト云ヒ、八百幾萬
  瓲ト云ッテ居ルコトニ付テモ、再檢討ヲスル
  積リデアリマス、モット積極的ニ有ユル角度
  カラサウ云フコトモ考ヘル積リデ、マダ具
  體的ナ數字ハ說明スル程度ニナッテ居リマ
  セヌケレドモ、考ヘテ居リマス、其處マデ行
  ク道程トシテ現在ドウスルカト云フコトニ
  付テハ、今モウドウシテモ需給ノ調節ヲ圖
  ル必要ガアリハシナイカト云フノデ、此法
  律ヲ能ク見マシテ、幸ヒニ十八條或ハ十九
  條、二十條ト云フヤウナ點ニ付テ規定ガゴ
  ザイマシタモノデスカラ、是等ノ規定ナド
  モ能ク考ヘマシテ、サウシテ今ハ是デ十分
  ダ、今高橋サンノ御話ニナリマシタ通リ、統
  制々々ト申シマシテモ唯官カ一方的ニヤル
  ト云フ統制デハ行カナイノデアリマシテ、
  時局ニ對シテ當業者ガ能ク認識ヲシマシ
  テ、先ヅ以テ當業者ガサウ云フヤウナ氣持
  デヤル、併シ利害ガオ互ニ非常ニ複雜デゴ
  ザイマスカラ、數アル當業者ノ中ニハ、自
  分ハ自分ダト云フヤウナ利己本位ノ考ヲ起
  ス人モアリマセウカラ、サウ云フ人ニ對シ
  テハ、是等ノ條項ト云フモノハ相當ニ、何
  ト申シマスカ利目ガアルノデアリマス、必
  シモ此條項ヲ振廻スト云フノデハナイノデ
  アリマスガ、斯ウ云フ備ヲ置イテ、出來ル
  ナラバ當業者自身ト能ク相談ヲシテヤリタ
  イ、現ニサウ云フ方面ニ關シマシテ、日鐡ヲ
  初メ其他ノ鐵鑛業者ト、今サウ云フヤウナ
  問題ニ付テ具體的ニ協議ヲ進メテ居ル、斯
  ウ云フ情勢デゴザイマス

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• 041・高橋壽太郎

  ○高橋委員　昨日豫算委員會アタリニ於
  テ、國際收支ノ極メテ心細イヤウナコトガ
  話サレタノデアリマス、恐ラク數億ノ「マ
  イナス」ニナリハシナイカト云フヤウナコ
  トヲ申シテ居ラレル向モ、相當アルヤウニ
  思ヒマス、サウ云フ場合デアリマスカラ、
  殊ニ此製鐵事業ノ如キ諸外國カラ原料ヲ仰
  イデ居ルト言ッテ宜イヤウナモノハ、私ハ內
  地ノ原料ヲ努メテ使用スルト云フ見地ニ立
  タナケレバナラヌト思フノデアリマス、恐
  ラク外國カラ輸入スル原料ノ値段ハ、億
  數千萬圓ニ達シテ居ルノデアリマセウ、此
  三分ノ一ヲ內地產ノ物ト置換ヘタニシテ
  モ、茲ニ四五千萬圓ノ裕リガ出來ルノデア
  リマス、何モ金デナケレバ決濟ガ出來ナイ
  コトハナイ、實ハサウ云フ風ナ國產品ノ使
  用ニ依ッテ、金ヲ澤山持出サナクテモ濟ム
  ト云フヤウナコトニナルノデアリマスカ
  ラ。是ハドウシテモ內地ニ金鑛デアラウ
  ガ、砂鐵デアラウガ、利用スベキモノガア
  ルナラバ、此際努メテ之ヲ使ハナケレバナ
  ラナイ、今赤鐵鑛ハ二十五圓位ニナッテ居
  ルデアリマセウガ、赤鐵鑛二十五圓ヲ金貨
  デ買フト云フノナラバ、內地ノ紙幣ナラバ
  私ハ百圓出シテ買ッテモ宜カラウト思フ、ソ
  レガ一方ニ於テハ農山村ノ振興ニモナッ
  テ來ル、又將來ハソレガ重工業ノ基礎ヲ爲
  スコトニモナッテ來ル、又一方ニ於テハ外國
  勞働ト云フモノヽ輸入ヲ防グト云フコトニ
  モナッテ來ル、私ハ是等ノコトヲ取入レテ、
  產金法ト遲レナイデ、產鐵法ヲ是非出サナ
  ケレバナラヌト云フコトヲ痛感スル者デア
  リマス、次ニハ其內地產ノ原料ヲ澤山ニ使
  用セシムルト云フコトデアリマスガ、ソレ
  ヲヤラセルニハ先ヅ政府ガ大規模ノ實驗〓
  究ヲシテ、斯ウ云フ風ニヤレバ行ケルノダ
  ト云フ手本ヲ示スコトデアリマス、吾々ガ
  昭和九年以來頻ニ商工當局ニ向ッテ、日鐵
  ニ命令ヲシテ製鐵上ノ一ツノ大〓究ヲ遂ゲ
  ロト云フコトヲ御願シタノデアリマスガ、
  ソレガ遲々トシテ進マナイ、伺ヒマスルト
  日鐵會社ノ自發的措置ニ依ッテ、幾ラカノ
  貧鑛處理、砂鐵利用ニ對スル〓究ガ考ヘラ
  レタラシイケレドモ、恐ラク其金額ヲ突進
  メテ聽キ、事實ヲ調べ、成績ヲ調ベタラ、
  私ハ雀ノ淚程シカ掛ケテ居ナイト思フ、ド
  ウモ日鐵會社アタリハ、昨今ノヤウニ鐵ノ
  需要ガ增シテ來テ、景氣ガ好クナッテ來ル
  ト、今鐵饑饉デ追ハレテ居ルノダカラ、サ
  ウ云フコトヲ〓究スル暇ガナイト言フ、又
  景氣ノ惡イ時分ニソンナコトヲ言ハウモノ
  ナラバ、今時ソンナ金ハナイト言ッテ撥ネ
  ルデセウ、是デハ何時マデモ實驗〓究ト云
  フモノハ出來ナイ、現ニ日鐵會社法ニハチ
  ヤント政府ノ方ノ配當カラ差引イテモ宜イ
  カラ、必要ナ實驗〓究ヲヤラセロト書イテ
  アルニ拘ラズ、何故カ商工當局ハ此法文ヲ
  適用スルコトヲ躊躇セラレル、私ハ是ガ分
  ラナイ、ソレカラ昨年、今年度ノ豫算ニ九十
  萬圓バカリノ、貧鑛處理其他ノ豫算ガ出ル
  ト云フ話ガアリマシタガ、結城財政デ是ハ
  潰レテ、其後始末ハ何デモ前伍堂商工大臣
  ハ、何カ他ノ方法デ-辨法デヤルノダ、貧
  鑛處理、砂鐵ノ利用ニ關シテハ、來年度ノ豫
  算デ大々的ニヤルト云フコトヲ、委員會デ
  述ベテ居ラレルノデアリマス、多分サウナ
  ルダラウト思ヒマスガ、是ハ一ツ政府モ大
  局ニ鑑ミラレテ、十分ニ此實驗〓究ヲヤッ
  テ、斯ウスレバ出來ルノダ、此先ハ斯ウ云
  フ風ナ助成モアル、例ヘバ事業法ニ制定セ
  ラレル所ノ方法モアル、サウシテ統制ヲヤッ
  テ行クノダ、育テヽ置イテ、出來上ッタ所
  ヲ統制シテ行クト云フノナラ宜イノデアリ
  マスガ、成行ニ任セテ、ヤリッ放シニシテ
  置イテサウシテ輸入稅ノ免除ガアルトカ、
  所得稅ノ免除ガアルトカ、營業收益稅ノ免
  除ガアルト言ッタ所ガ、其處マデ漕付ケテ
  行ケルカドウカ、問題ハ其處ナノデス、要
  スルニソレ程儲カラナイ仕事デアリマスカ
  ラ、儲ケタラ出ス稅金ヲ免除シテヤルト言ツ
  タ所ガ、ソレハ空文デアル、政府ハモット
  育テノ親ニナッテ行カナケレバナラヌト思
  フ、若シ之ヲ忘レテ、成行ニ任セテ置イテ、
  ソレガ成長シテ來タナラバ統制ノ名ニ依ッ
  テ引括ッテ行クト云フナラバ、扶養ノ義務
  ヲ怠ッテ居ル親ガ、其子ガ成人シタ時ニ、親
  子ノ關係デ其家ニ入リ込ムト云フ恰好ニナ
  リハセヌカト私ハ思フ、此點ハ一ツ十分ニ
  御考ヲ願ヒタイ、附加ヘテ伺ヒマスガ、十
  萬圓ノ砂鐵奬勵金ガアッタノデアリマスガ、
  伺フ所ニ依ルト、是ハ東北興業ノ方ニ補助
  サレタト云フコトデアル、ドウモ是ハ私ニ
  ハ解セナイ、東北興業ト云フノハ、會社ヲ
  創立シテトンナ仕事ヲシヨウカト云ッテ、マ
  ダ何等ノ設備モ、經驗モ、組織モナイ、ソ
  レヲ商工省ガドウ云フ譯デ茲ニサウ云フ補
  助金ヲ與ヘラレタノデアルカ、私ハ不可解
  デアル、ドウカ折角殘ッタ十萬圓デアリマ
  スカラ、モウ少シ役ニ立ツヤウナ風ニ、斯
  ウ云フ助成金ヲ御使ヒ願ヒタイノデアリマ
  ス
  次ノ項目ハ、國產原料ノ併用ヲ强制スル
  ト云フコトデアリマス、今瀧澤サンカラ御
  述ニナリマシタガ、之ヲヤラセナケレバナ
  ラヌ、獨逸ノ今日ノ貧鑛處理ノ成功ハ、原
  鑛石ノ二割ノ貧鑛ヲ使用スルト云フコトヲ
  「ヒトラー」政權ガ强制ヲシタ、伍堂前商工
  大臣ノ御話ニ依ルト、一千萬瓲ノ原鑛石ニ
  對シテ、二百萬瓲ノ貧鑛ヲ使へト言ッタノ
  デアルガ、初メノ年度ニハ其六割ノ百二十
  萬瓲シカ使ヘナカッタガ、翌年度ハ見事ニ
  二百萬瓲使ヒコナシタト云フコトデアリマ
  ス、是ガ今日ヤカマシイ問題ニナッテ居ル
  クルップ」ノ直接精鍊法デアリマス、政府
  ハソレダケノ決意ヲ以テ臨マレナケレバイ
  カント思フ、私ハサウ云フ意味ニ於テノ此
  事業法ノ統制ハ、甚ダ歡迎スル所デアリマ
  ス、此結果ハドウ云フ所ニ及ボスカト言ヒ
  マスト、第一番ニ自然ニ國內ノ鐵資源ノ探
  鑛ニナリマス、政府ガ幾ラ力ヲ振ッタ所ガ
  「アマチュア」ノ見付ケタ山ヲ、ソレ〓〓ノ
  手蔓ニ依ッテ知ッテ探スデナケレバ、私ハサ
  ウ云フヤウナ良イ山ヲ澤山ニ見付ケルコト
  ハ出來ナイト思フ、是ハ良イ餌ヲヤレバ良
  イ魚ガ獲レルト云フコトヲ申シテ居リマス
  ガ、相當ナル事ヲ爲サレヽバ、貧弱ナリト
  雖モ國內ノ數千萬瓲ノ貧鑛ハ、數億瓲ノ砂
  鐵ハ、私ハ原料ノ制限ニ困ラナイト思フノ
  デアリマス、又斯ウ云フコトヲスルコト
  ガ、卽チ國際收支ノ關係ヲ良クシ、此委員
  會デヤカマシイ問題ニナッタ爲替管理令ノ
  適用モ、私ハ緩和サレルト思フノデアリマ
  ス
  第三ニハ國產ノ原料ヲ使ッタ者ニ補助金
  ヲ與ヘルコトデアル、此事ハ後ニ其補助金
  ノ財源ニ付テ述ベヤウト思ヒマスガ、補助
  金ヲ與ヘテヤル、先程申シマシタ通リ、是
  ハ靑砥藤綱ノ筆法デ十文錢ヲ拾フノニ百文
  掛ッテモ國家ノ國策ノ全體カラ見レバ易イ
  事デアル
  第四ガ、日鐵會社ニ國產ノ鑛石ヲ買ハス
  ト云フコトヲ取計ッテ戴キタイ、是ハ前議
  會ノ委員會デモ問題ニナッタヤウデアリマ
  スガ、兎角國產原料ヲ買ヒタガラナイ、是
  ハ恐ラク數量ノ關係デ區々ニナリマスカラ
  厄介デアル、ソレヨリモヤハリ六十%トカ
  使ヒコナシ易イモノヲ、少々高クテモ持ッ
  テ來タ方ガ、技術的ニモ其他ノ取扱ニモ容
  易デアリマスカラ、サウ云フモノヲ取入レ
  テ、內地ノ原料ニハ兎角ノ文句ガ付クノダ
  ラウト思フ、是ハ國策會社ガサウ云フコト
  ヲヤッテハ相成リマセヌカラ、之ヲ買ハス
  コトデアリマス、マア取敢ズ以上ノ四ツノ
  事ヲ政府ガオヤリニナリマスレバ、國產原
  料ト云フモノハ、私ハ豫想外ニ澤山集メ得
  ラレルト思フノデアリマスガ、此點ニ對シ
  テ商工大臣ノ御意見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=41

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• 042・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御話ノ通リ國內ノ資源ヲ
  利用スルト云フコトニ付キマシテハ、全然
  同感デゴザイマシテ、唯日鐵ガ從來〓究ガ
  足リナイト云フ點ハ、私共モモウ少シ日鐵
  ヲシテサウ云フ方面ノ〓究ヲヤラセルヤウ
  ニ致シタイト思ヒマスルシ、又國內ノ鐵鑛
  石ト云フモノヲ買ヒタガラナイト云フ點ガ
  アリマスレバ、是ハ是非共改メサセテ買ハ
  セルヤウニシナケレバナラナイ、ソレカラ
  東北興業云々ノ話ハ、實ハアレハ實質的ニ
  ハ仙臺ノ本多サンノ許ニ於キマシテ、東北
  金屬材料〓究所デアレハ〓究ヲ致シマシタ
  ノデ、唯東北興業ヲ興シマシタ所以ハ、向
  フノ方ハ學校ノ施設ナモノデゴザイマスカ
  ラ、其結果ガ好イ時ニ之ヲ企業化スル傳手
  ガ一寸ナイ譯デゴザイマスカラ、實質ハ東
  北金屬材料〓究所デ、アノ權威者ノ手ニ依ッ
  テ〓究致シマシテ、結果ガ好ケレバ東北興
  業ノ一ツノ仕事トシテ、ソレヲ實現サセル
  コトガ便宜ダラウ、斯ウ云フ意味デ、表向
  キノ名儀者トシテアソコヲ通シテ、好カッタ
  場合ニ將來企業化スルコトノ責任ト云フモ
  ノヲ、東北興業會社ニ負ハシタ、斯ウ云フ
  關係デアリマス、尙ホ强制使用云々ノ點ニ
  付キマシテハ、私モ技術的ニ又經濟的ニ、
  若シ可能デアル限リニ於キマシテハ、十ハ
  リ國內ノ製鐵業者ニ、國內ノ資源ト云フヤ
  ウナモノヲ、多少品位ガ惡クトモ使ハシタ
  方ガ宜シイ、斯ウ考ヘテ居リマス

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• 043・高橋壽太郎

  ○高橋委員　今東北興業ノコトガアリマシ
  ク、是ハ小サイ事デアリマスシ、別段大シ
  テ曲ッタ事デモナイヤウデアリマスガ、政
  府ノ處置トシテハ何モ東北興業ニノミ私サ
  レナイデ、サウ云フ良イ發明ガアッタナラ
  バ、之ヲ全國ノ製鐵業者ニ均霑セシムルト
  云フ趣旨ノ方ガ、私ハ公明デアッタノデハ
  ナイカト思フ、次ハ國產原料ヲ使ッタ者ニ
  補助ヲ與ヘル、其財源ノコトデゴザイマ
  ス、是ハ財源ハ澤山アルト思ヒマス、私ノ
  考ヘ付イタノデモ三ツ位此處ニアル、第
  番ハ先程御話ノアリマシタ鑛石ヲ澤山ニ積
  ミ置クト云フコトデス、鑛石ヲ積ミ置クト
  云フコトハ可ナリ大變デ、利子デモ何百萬
  圓ニ上ルト思フ、是ハ畢竟スルニ國內ニサ
  ウ云フ資源ガナクテ、海外カラサウ云フ
  資源ヲ仰グコトガ出來ナイ時ノ豫備デアル
  カラ、切メテ其半分ダケデモ國產品デ補ヘ
  レバ、私ハ其處ニ結構何百萬圓カラノ金ガ
  浮イテ來ルト思フ、是ハ活キタ金ノ使ヒ方
  デアリマス、其次ニ第二ノモノハ、內務省
  ノ地方財政調整交付金デアリマスガ、是モ
  相當ナ額ヲ內地產ノ原料ヲ使フ者ニ補助ト
  シテ與ヘテ行ケルト思フ、何モ地方財政調
  整交付金ト云フ看板ヲ掛ケテ渡サナケレ
  バ、地方農村ガ霑ハナイト云フモノデハナ
  イ、實ハ金ヲ貰フヨリモ事業ヲ貰ヒタイノ
  デアル、サウ云フ風ナコトカラ製鐵事業法
  ニ書イテアル副生物、其副生物ノ一ツトシ
  テ是ハ內務省ノ關係カラモ、一ツ召シ上ゲ
  テ宜シイト思フ、モウ一ツハ海軍ノ製艦費
  ノ一部分ヲ讓ッテ貰ッテモ宜シイト思フ、後
  ニ此事ハ豫算總會デ中述ベル積リデアリマ
  スガ、結局ノ所政府ノヤッテ居ルコトハ茂
  山ノ鐵ガ目標デセウガ、戰時ニ茂山カラ何
  百萬瓲モ運ンデ來レルカドウカ、「ニユーヨ
  ークタイムス」ニ書イテアルノヲ見テモ、
  露西亞ハ百二十四隻モノ潜水艦ヲ準備シテ
  居ル、アノ强大ナ空軍ガアル、其浦鹽ノ鼻
  先ニ行ッテ、運送船ガ日本海ヲ橫斷スルコ
  トガ出來ルカ、恐ラクマダ鐵ヲ全部積込マ
  ナイ中ニ、飛行機ノ爆擊ニ依ッテ參ッテシマ
  フト思フ、何レニシテモ海ヲ渡ッテ來ルト
  云フコトハ、大ナリ小ナリ海軍ノ御厄介ニ
  ナル、海軍ニハソンナ餘力ハアリマセヌ、
  隨テ若シ內地ノ原料ヲ以テ幾分デモ間ニ合
  ハシテ、海軍ヲ煩ハスコトヲ少ナクスルト
  云フ見地ニ立ツト云フト、海軍ノ製艦費ノ
  一部ヲ讓ッテ貰ッテモ結構ナノデアリマス、
  斯ウ云フ見地カラ私ハ是非內地產ノ原料使
  用ト云フコトヲ奬勵スル意味ノ、名前ハ存
  ジマセヌガ、產鐵法ナリ、或ハ產鐵奬勵法
  ト云フモノヲ、政府ガ次ノ議會マデニ御出
  シ下サルカドウカ、其御意向ヲ伺ッテ置キ
  タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=43

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• 044・吉野信次

  ○吉野國務大臣　實ハ私モ國內ニ鐵鋼資源
  ト云フモノガ、相當アルカナイカト云フコト
  ニ付キマシテノ確信ガゴザイマセヌ、正直
  ニ申上ゲマス、若シ國內ニ相當ナ資源ガア
  ルト云フコトデアリマシタナラバ、只今高
  橋サンノ御話ニナッタコトハ、相當考慮シ
  ナケレバナラヌト存ジテ居リマスガ、今日
  マデ商工省方面ニ於キマシテ、種々調査ヲ
  致シマシタ所ニ依リマスト、如何ニモ乏シ
  イモノデアリマス、又一般ノ問題カラ申シ
  マスト、乏シイモノデアルダケニ國內ノ資
  源ト云フモノハ、有事ノ場合ニ備ヘテ置イ
  タ方ガ宜イノデハナイカト云フ點モアリマ
  ス、色々其方ノ關係ハ、事國防ニモ關係致
  シマシテ、複雜ナ點モアルヤウデアリマス
  カラ、御意見ノ所ハ篤ト承ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=44

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• 045・高橋壽太郎

  ○高橋委員　タッタ一ツダケ今商工
  大臣ガ最後ニ御述ニナリマシタ國內ノ資源
  ヲ有事ノ際マデ保存シテ置クト云フ議論
  ハ、私ハ屢〓聞クノデアリマス、ケレドモ
  是ハ普段手ヲ著ケテ居ナイデ、何處ニ物ガ
  アルカモ分ラナイヤウナ狀態ニ放置シテ
  居つ、イザ戰爭ダト云フト、ソレ探鑛ダ、
  イヤ此處ニ良イ鑛石ガアルカラ鐵道ヲ架ケ
  口、港灣ヲ拵ヘロト云ッテモ、ソンナコト
  デハ間ニ合ハナイ、幾ラ圖書館ニ澤山本ガ
  アッテモ、「インデックス」ガ無カッタラ、私共
  ハ適時ニ使用スルコトガ出來ナイ、私ハ少
  クトモ此御言葉ハ政府當局ノ謬見ナリトシ
  テ、極力之ヲ排擊シタイト思フノデアリマ
  ス、午前ハ是デ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=45

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• 046・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　承リマスト今日午後本會議
  ニ於テ、陸海軍大臣カラ何カ事變ニ關スル
  報〓ガアルト云フコトデアリマス、確カデ
  ハアリマセヌガ、サウ云フコトヲ一寸聞キ
  マシタカラ、委員會ハ開會ヲ二時ニ致シテ
  置キマス、併シ若シ本會議デ報告ガ二時ヲ
  過ギルヤウナ場合ガアリマシタラ、陸海軍
  大臣ノ報〓ノ濟ミ次第ニ開會スルト云フコ
  トニ致シマシテ、一應二時ニ開會致シマス、
  姑ク休憩致シマス
  午後零時十一分休憩
  午後二時十分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=46

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• 047・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　午前ニ引續キ會議ヲ開キマ
  ス-高橋壽太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=47

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• 048・高橋壽太郎

  ○高橋委員　商工大臣ガマダ御見エニナリ
  マセヌノデ、先ヅ事務的ノコトヲ伺ヒタイ
  ト思ヒマス、先程日鐵國策會社ガ內地產ノ
  原料ヲ買入レルコトニ餘リ好意ヲ持タナイ
  ト云フコトヲ申シタノデアリマスガ、是尺
  一通リノコトデハ、ヤハリ營利ヲ考ヘテ居
  ル會社ダカラ、自發的ニハソコマデ行クマ
  イト思ヒマスカラ、商工當局ニ於テ日鐵ニ
  相當サウ云フコトヲ慫慂若クハ指令ヲ與ヘ
  テ戴キタイノデアリマス
  モウ一ツ私ハ東北ノ者デアリマスガ、釜石
  ノ日鐵ノ製鐵所デアリマス、此處デハ三井ノ
  鐵山カラ從來ノ關係デ一瓲四圓五十錢デ鐵
  鑛石ヲ買ッテ居ルト云フコトデアリマス、契
  約ニ基クノダサウデス、所ガ是ガ標準ニナツ
  テ、釜石ノ最寄ノ鐵鑛所有者ガ賣込ニ行ッ
  テモ、先ヅ四圓五十錢ナラバ買ッテヤルト
  云ッタヤウナコトデ、相談ニナラナイ、是デハ
  東北地方ノ鐵鑛ヲ賣鑛シヨウトスル者ニハ
  洵ニ困ル狀態デアリマス、所ガ一方ニ於テ政
  府ハ八幡其他ニ於テハ外國鑛石ヲ、今デモ
  高クナッテ居ルカモ知レマセヌガドン〓〓
  買ッテ居ラレル、同ジ日鐡會社デアレバ、帳
  面ノ記載方法ヲ變ヘテサヘ行キマスレバ、
  東北ノ鐵鑛ヲ釜石デ買ッテ、ソレヲ何トカ
  移牒ノ方法ヲ執リサヘスレバ都合ガ付クヤ
  ウニモ考ヘラレルノデアリマスガ、兎モ角
  モ今ノ所デハ東北ニ於テハ、內地產ノ鐵鑛
  石ヲ釜石ノ製鐵所ニ賣ルト云フコトノ望ガ
  絕對ニアリマセヌ、日鐵ノ當局ニ其事ヲ訊
  シテ見マスルト、釜石ノヤウナ交通ノ不便
  ナ所デ、石炭モナイ所デ製鐵所ヲ營ムニ
  ハ、鐵鑛石ガ安イコトガ第一ノ條件デ、高イ
  鑛石ヲ買ヘバ引合ハナイ、今四圓五十錢ノ
  安イ鑛石ヲ買ッテ居ルカラヤッテ行ケルノダ
  ガ、之ヲ高メラレテハ困ル、三井ノ鑛山カ
  ラ買ッテ居ル四圓五十錢ノ建値ヲ增サナケ
  レバナラヌヤウナ事態ヲ惹起スルヤウナ賣
  鑛ノ方法ハ、此際避ケテ居ルノダト云フ御
  話デアリマス、無理モナイコトダト思ヒマ
  ス、併シ日鐵會社成立ノ當初ニ遡ッテ、何レ
  堅イ契約ガアッタ筈デアリマス、其契約ヲ履
  行スルナラバ、何モ東北地方ノ鑛石ノ買入値
  段ニ對シテ私ハ遠慮ハ要ルマイト思フ、是
  ガ反對ニ政府ガ鐵山ヲ持ッテ、三井ノ釜石ノ
  製鐵所ナルモノニ四圓五十錢デ賣ルト云フ
  契約ヲ期限ナシニ決メテアッタナラバ、恐ラ
  ク四圓五十錢デ賣ッテ行カナケレバナラナ
  イト思フ、是ハ同樣ナコトデ、三井トノ契
  約ヲ氣ニシテ、東北ノ鐵鑛ノ賣鑛ノ値ヲ四
  圓五十錢ニ叩カナケレバナラヌト云フコト
  ニハ當ルマイト私ハ考ヘル、併シ事情ハ色
  色營業上ノ機微ノコトデモアリ、ドウ云フ
  契約ノ內容デアリマスカ、私ハ詳シクハ存
  ジマセヌガ、何トカ釜石ノ製鐵所ニモ東北
  地方ノ鑛石ノ賣込ノ出來ルヤウニ御考ヲ願
  ヒタイノデアリマス、例ヘバ四五十錢ノ値
  段ニ、三井鑛山以外ノ運賃ノ掛ルモノハ、
  運賃ダケハ「プラス」ニシテ買ッテヤル、ソレ
  モ一ツノ方策デアラウト思フノデアリマス、
  窃ニ承ル所ニ依レバ、釜石ノ製鐵所ニハ七
  百瓲ノ熔鑛爐ノ增設ガアッタノデアリマス、
  他ノ所ハ室蘭ノ如キハ千瓲ノ熔鑛爐デアリ
  マスガ、釜石ニ稍〓小規模ノ熔鑛爐ヲ設ケ
  タコトハ、釜石ノ製鐵所ノ如キ一ニ三井ノ
  鐵山ヲアテニシテ居ルヤウナ製鐵所ハ、同
  鐵山ノ鑛石ヲ掘リ盡シテシマヘバ、最早釜
  石ニ製鐵所ヲ置ク譯ニハ行カナクナル、隨
  テ將來ヲ慮ッテ、此處ニハ積極的ノ大規模ナ
  增產設備ハシナイト云フコトデアリマス、
  ソレハサウカモ知レマセヌ、併シ日鐵當局
  ガ釜石ノ製鐵所ノ將來ノコトモ考ヘテ、又
  本當ニ製鐵國策ノ根本義ニ思ヒ當ッテ、東北
  地方ノ鐵ノ資源ヲ一ツ探鑛シテ貰ッタナラ
  バ、是ハ釜石製鐵所ノ利益バカリデナシ
  二、私ハ國家全體ノ利益ニモナルコトヽ考
  ハト。ドウカ事務當局カラ日鐵會社ヲシ
  テ,內地產ノ原料ヲ買入レシメル手段ヲ執
  ラレル、或ハ今申シマシタヤウニ釜石ノ製
  鐵所ノ如キ特殊ノ事情ニ對シテ、ドウ云フ
  風ニ內地產ノ原料使用ヲ慫慂セラルヽヤウ
  ナコトニナルノデアリマスカ、其邊ノコト
  ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=48

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• 049・東榮二

  ○東政府委員　只今ノ內地ノ製鐵資源ノ開
  發ヲ圖ラナケレバナラヌト云フ御意見ハ私
  共モ至極同感ニ思フノデアリマス、其中デ
  釜石ノ鑛石ノ値段ガ瓲當リ四圓五十錢ト云
  フノハ、是ハ御承知デモアリマセウガ、釜
  石ノ製鐵所ヲ日本製鐵ニ合同致シマシタ場
  合ニ、アノ製鐵所ヲ評價スル時ノ一ツノ條
  件ニナッテ居ルノデアリマス、是ハ比較的今
  カラ見マスレバ安ク買フコトニナッテ居ル
  ト思フノデアリマスガ、併ナガラ其附近ノ
  他ノ山カラ出タ鑛石ヲ、必シモソレト同ジ
  値段デ買ハナケレバナラヌト云フ理由ハナ
  イノデアリマス、是ハ御意見ノヤウニ今後
  サウ云フモノガアリマスレバ、十分日鐵ヲ
  シテ適當ノ値段デ買ハセルト云フコトニ話
  ヲシテ行キタイト思ッテ居リマス尙ホ日鐵
  ニ於キマシテモ、最近ハ內地ノ中小ノ鑛山
  ノ開發ヲ圖ッテ、內地ノ資源ヲ利用スルト云
  フコトニ付テ、相當積極約ニ考慮ヲ廻ラシ
  テ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ
  漸次御趣旨ニ副フヤウニナッテ行クコトデ
  アラウト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=49

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• 050・高橋壽太郎

  ○高橋委員　今鑛山局長ノ御話ヲ承ッテ甚
  ダ喜バシク存ジマス、日鐵デモ最近東北地
  方ニ於ケル鐵資源ノ調査ヲヤラレマシテ、
  私共モ御伴ヲシテ參ッタノデアリマス、不幸
  ニシテ餘リ良イ物、吾々ノ豫期シタモノハ
  アリマセヌデシタケレドモ、中ニハ鑛量ハ
  餘リ多クアリマセヌ、百萬瓲以下ト云フ日
  鐵ノ技師ノ話デアリマスガ、六七-八%ノ
  赤鐵鑛ヲ發見シタノデアリマス、性質ハ赤
  鐵鑛トシテハ最上ノモノデ、酸素ヲ還元ス
  レバ殆ド純鐵ト云フ御話デアリマス、鑛石
  ヲ一寸見マスト殆ド鐵ノ片ノヤウナ感ジヲ
  スルノデアリマス、尙ホ貧鑛デ四〇%程度
  ノモノデハアリマシタガ、恐ラク一箇村ノ
  鑛區ノ中ニ千萬瓲ヤソコラノ貧鑛ハアルラ
  シク聞イテ居リマス
  〔委員長退席、中井川委員長代理著席〕
  是ハ主トシテ盛岡附近ノ探鑛ノ結果デアリ
  マスガ、他ニモソコ此處ニアルヤウデアリ
  ママ、由來岩手縣ト云フ所ハ、日鐵アタリ
  ノ話ヲ聞キマスト良イ鑛石ハナイ、釜石ノ
  鐵山以外ニハ鐵資源ハ乏シイノダト云フコ
  トヲ、三井製鐵所時代ノ香村トカ云フ工學
  博士ガ言明シタノデ、マルデ彼處ニハ脈ガ
  ナイト云ッタ位ノ先入主ニ囚ハレテ居ルヤ
  ウデアリマスガ、御承知ノ通リ山嶽疊々シ
  タアノ岩手縣デ、人跡未踏ノ地モ相當アル
  ノデアリマス、是カラ探鑛ヲ續ケラレ、或
  ハ「アマチュア」ガアレ此レト言ッテ來ルコ
  トヲ親切ニ御採リニナッテ、ソレカラソレト
  御探シニナレバ、私ハ相當ノモノガ得ラレ
  ルコトヽ思フノデアリマス、殊ニ先程申シ
  マシタガ、內地產ノ原料ヲ利用スルヤウニ
  政府ガ積極的ノ方針ヲ採ラレマスレバ、或
  ハソレカラソレヘト斯ウ云フモノハ發見セ
  ラレテ、碁年ノ間ニハ相當ナ成績ヲ擧ゲ得
  ラレルノデハナイカト思ッテ居リマス製鐵
  事業法ノ中ニハ政府ノサウ云フコトニ對ス
  ル方針ハ示シテゴザイマセヌガ、事務當局
  ニ於テ斯ウ云フコトノ實現致シマスヤウ
  ニ、切ニ御骨折ヲ願ヒタイト思フノデアリ
  マス、私ガ申上ゲタイコトハ小サイ事ハ澤
  山ニアリマスケレドモ、事務當局ノ方々ト
  此處ニ問答スルマデノモノモナイヤウデア
  リマス、商工大臣ノオ出デヲ待ッテ、商工大
  臣ノ言明ヲ伺ヒ、尙ホ商工省以外ノ、モット
  廣イ方面ニ亙ッタコトハ、國防トカ或ハ國際
  收支ノ關係、地方農村等ノ關係ノコトハ豫
  算委員會デ各大臣ノ居ラッシヤル前デ御尋
  シタ方ガ便利ダト思ヒマスカラ、商工大臣
  ノ來ラレルマデ私ノ質問ハ是デ打切ッテ置
  キマス

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• 051・木原七郎

  ○木原委員　簡單ニ當局ノ御意見ヲ伺ッテ
  置キタイト思ヒマスガ、私ハ專門家デナイ
  ノデアリマスカラ、詳シイコトハ申上ゲラ
  レナイノデアリマスガ、「ロール」ト云フモ
  ノヲ拵ヘル木炭ー「ロール」製造ニ最モ必要
  ナルモノガ木炭デスガ、此木炭トカ、銑鐵
  トカヾ必要デアルト云フコトハ、是ハ昭和
  七年頃デアリマシタカ、八幡製鐵所ノ技術
  會議デ證明出來タ、最近ニハ宮本サンデス
  カ、アノ方ノ御貢獻デ是ハ證明出來テ居リ
  マス、ソレ程必要ナル木炭銑鐵デアリマス
  ガ、現在ノ日本內地ニ於キマス此製造狀態
  ハ、マダ微々タルモノデアリマス、到底內
  地ノ需要ニ應ズルダケノ生產ガ出來テ居ナ
  イ、其大部分ハ外國ニ仰イデ居ル、ソレデ
  昨日參考資料トシテ御尋シタノハ、最近五
  ケ年間ニ於ケル木炭銑鐵ノ日本ニ入ッテ來
  ル輸入總額、此數量ヲ御尋シタノデアリマ
  ス、參考資料ヲ戴キマシタケレドモ、是一
  ドウモ御當局ノ方ニ先般非公式ニ伺ッタノ
  デアリマスガ、十分ノ材料ハ得ラレナイト
  云フコトデアリマス、併シ當局者トシテ調
  ベテ居リマス所ニ依リマスルト、東京地方
  ノ村上商店ガ扱ッタ本年度ノ上半期ノ數量
  ノミニ於テモ六千瓲ヲ使ッテ居ル、斯ウ云フ
  コトハ、是ハ論ヨリ證據デ村上商店ノ方カ
  ラ材料ヲ報告シテ居ルノデモ分リマス、其
  他隨分木炭製ノ銑鐵ハ色々ノ方面ニ使ハレ
  テ居ルヤウデアリマス、現ニ日鐵ノ舊八幡
  製鐵所ノ如キハ、本年度ニ五千瓲カラ契約
  ヲシテ居ル、其他川崎造船所デアルトカ、
  東京金子「ロール」工場トカ其他澤山アルヤ
  ウデアリマスガ、サウ云フ譯デアリマシ
  テ、需要ハズン〓〓增加シテ居ルノデアリ
  やく、然ルニ是ハ內地デ生產スルコトハ僅
  ニ今日ハ五六千瓲ニ聞イテ居リマス、ドウ
  シテモ多ク海外ノ輸入ヲ仰グノガ年額三萬
  瓲ヲ下ラヌト云フ素人筋ノ見込デアリマ
  ス、此木炭銑ハ無論品物ニ依ッテ價格ニ高
  下ガアルサウデアリマスガ、先ヅ平均瓲當
  リ二百圓ト見マシテモ、六百萬圓ノ輸入ヲ
  仰イデ居ルト云フ〓算ガ出テ居ル譯デアリ
  やくろ、ソレコソ國際收支ノ改善ノ上カラ申
  シマシテモ私ハ重大ナ問題デアルト思ッテ
  居ルノデアリマス、是ダケ大切ナ木炭銑鐵
  ガ、此度ノ製鐵事業法ニ於テ第九條ノ上ニ
  現レテ居ナイ、他ノ製鐵業ハ全部入っテ居
  ル、ソレ程今大切ナ木炭銑鐵ニ付テハ何等
  項目ニ擧ゲテナイノデアリマスガ、是ハ
  ドウ云フ譯デスカ、ドウ云フ理由デソレヲ
  除外サレタノダラウカ、此點ヲ一寸承リタ
  イ

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• 052・東榮二

  ○東政府委員　木炭銑ノ中ニ於キマシテモ
  低燐銑ニ屬スルモノハ、第九條ノ規定デ同
  ジ取扱ヲスルコトニ相成ルノデアリマス
  ガ、尙ホ砂鐵等ヨリ採リマスル木炭銑ニ付
  キマシテハ、第十條及ビ第十一條ノ規定ニ
  依リマシテ同ジヤウナ取扱ガ出來ルモノト
  考ヘテ居ル次第デアリマス
  〔中井川委員長代理退席、委員長著席〕

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• 053・木原七郎

  ○木原委員　ソレハサウデアリマセウケレ
  ドモ、低燐銑鐵ノヤウナモノハ、斯ウシテ
  項目ハ擧ゲテアリマスレドモ、殆ド出來テ
  居ナイノデセウ、九條デハ一番最初ニ「低
  燐銑鐵製造事業者」トアリマスガ、是ハ殆ド
  名目ダケデゴザイマセウ、現在デハ日鐡ニ
  僅カバカリ試驗的ニヤッテ居ルヤウナモノ
  デハナイデスカ、私ハサウ云フコトカラ、
  無理ニ十條ノ中へ入レナクテモ、是ダケハッ
  キリシタモノナラヤハリ低燐銑ト同ジク木
  炭銑鐵製造事業者ト斯ウ擧ゲテ戴イチドウ
  云フ不足ガアルダラウカト思フ、同ジ項目
  ニ入レテ戴イテドウ云フ不都合ガアルモノ
  ダラウカト思フ

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• 054・東榮二

  ○東政府委員　只今話ヲ聞キマスト、日本
  ニ於テハ木炭銑ハ砂鐵若クハ砂鐵滓等カラ
  造ルノガ主デアッテ、ソレ以外ノモノカラハ
  餘リ木炭銑トシテハ造ラレテ居ラヌト云フ
  コトデアリマス、サウ云フモノカラ出來マ
  スモノデアレバ、先程申シマシタヤウニ第
  十條及ビ第十一條ノ規定デ出來マス、ソレ
  デ行ク積リニシテ居ル譯デアリマス

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• 055・木原七郎

  ○木原委員　ソレハ御尤デアリマス、ケレ
  ドモソレダケ大切ナモノヲ-低燐銑鐵ノ
  如キ今申ス通リ現在日本ニハ拵ヘテ居ラヌ
  デセウ、サウ云フモノデモ此處ヘ項目ニ擧
  ケテゴザルノニ、現在非常ニ必要性ヲ帶ビ
  テ居ル木炭銑ヲ何故項目ニ擧ゲテイケヌノ
  カ、其保護ヲ受ケル、奬勵ヲ受ケル心持ハ
  十條ナリ十一條ノ心持デ行ケルデアリマセ
  ウ、ケレドモ九條ノ規定ヘ持ッテ行ッテ名目
  ヲ擧ゲテ戴イテ居ッテモ何等不都合ナ點ハ
  アルマイ、斯ウ私共ハ考ヘル

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• 056・東榮二

  ○東政府委員　御尤ノ御意見ト思ヒマス
  ガ、唯實際問題ト致シマシテハ、只今申上ゲ
  マシタヤウニ砂鐵若クハ砂鐵滓以外ノモノ
  カラ作ルノハ餘リナイト云フコトデアリマ
  スノデ、サウスルト規定ヲ決メマシテモ、
  實際ハ第十條及ビ第十一條ノ適用ニ依フテ
  保護ヲ受ケル、ソレデ行ケルコトニナリマ
  スノデ、其必要ハナイデハナイカ、斯ウ云
  フ考カラ此處ニ木炭銑ト云フ文字ヲ擧ゲナ
  カッタノデアリマス

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• 057・木原七郎

  ○木原委員　ソレハ能ク分ッテ居リマス、ア
  ナタノ仰シヤル意味カラ言ヘバ低燐銑鐵ト
  一ツコトデス、ソレハ同ジコトデス、此木
  炭製ノ銑鐵ヲ是カラ大イニ奬勵シテ行カナ
  ケレバナラヌモノダカラ、現在ヤッテ居ルモ
  ノガアナタノ仰シヤルヤウナ十條ノ適用ヲ
  受ケルナラソレハ宜シイ、私ハ現在ヤッテ
  居ルノヲ彼此レ言フノデハナイガ、兎ニ角
  ソレダケ製鋼界ニ必要ナ木炭銑ノ取扱ヲモ
  ウ少シ條項ニ擧ゲテ戴ク御意思ガナイカ、
  是ダケノコトデゴザイマスカラ····

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• 058・東榮二

  ○東政府委員　御意見ハ御尤ト思ヒマス
  ガ、唯低燐銑ニ付キマシテハ、只今餘リ御
  話ノ通リナイノデアリマスガ、是ハ茲ニ揭
  ゲテ置キマセヌト云フト、將來起ッタ場合
  ニ保護ヲ受ケル途ガナイ譯デアリマス、唯
  木炭銑ニ付キマシテハ、先程カラ申上ゲマ
  スヤウニ日本ニ於キマシテハ、砂鐵及砂鐵
  滓等カラノ木炭銑、殆ドソレニ限ラレテ居
  リマス譯デアリマス、是デ法ノ趣旨ハ十分
  達セラレルモノト考へマシテ、斯ウ云フ規
  定ニ致シテ居ル次第デアリマス

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• 059・木原七郎

  ○木原委員　是デ私ハ終リマスガ、低燐銑
  モ將來殖ヤス御見込ニナッテ居ル、木炭銑モ
  私ハ將來斯ウ云フヤウナ高級ナ、謂ハバ製
  鋼界ノ藥トモ言フベキ木炭銑ノ如キハ、政
  府ハ大ニ奬勵ナサッテ、一面ニハ輸入モ大ニ
  防遏シナケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナ重
  要性ヲ帶ビタモノデアルガ故ニ、ヤハリ是
  ハ低燐銑ノ扱ヒト同ジヤウナ心持デ之ヲ御
  取扱ナサッテモ差支ナイノデハナイカ、斯ウ
  思ッテ御尋シタノデアリマス、能ク分ッテ居
  リマスカラ、別ニ御答辯ハ要リマセヌ

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• 060・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　高橋君、宜シウゴザイマス
  カ

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• 061・高橋壽太郎

  ○高橋委員　商工大臣ガ御見エニナリマシ
  タカラ御尋致シマスガ、次ノ議會ニハ內地
  產ノ製鐵原料ヲ利用セシムル方針ノ立法ヲ
  御提出ニナルノカドウカ、之ヲ一ツ伺ヒタ
  イノデアリマス、今年ノ春ノ議會ノ製鐵事
  業法ノ委員會ノ速記ヲ見マスト、伍堂商工
  大臣ハ斯ウ申シテ居ラレマス「ソレカラ尙
  ホ砂田君ノ御話ニナリマシタ貧鑛處理其他
  ニ對スル助成ノ仕方ガ、此法案ニ現ハレテ
  居リマス點ダケデハ如何ニモ消極的デア
  ル、其コトハ私モ認メテ居リマス、實ハ助
  成奬勸金ヲ給スルコトヲ得トデモ書キタ
  カッタノデアリマスケレドモ、サウ云フコ
  トヲ明記致シマスレバ、豫算ガ伴ハナケレ
  バナラナイノデアリマスカラ、是ハ今日明
  ニ其豫算ヲ立テルコトガ出來マセヌ爲ニ、
  來年度ノ次ノ議會ニ於テ相當要求スル積リ
  デ居ルノデアリマス」斯ウ云フノデアリマ
  スガ、政府ハ此言明ヲ重ンジテ、必ズヤ時
  代ニ卽シタ、政府ノ言明サレマシタ財經三
  原則ノ線ニ沿ウタ案ヲ御出シ下サルコトヲ
  私ハ期待シテ居リマスガ、如何デゴザイマ
  セウカ

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• 062・吉野信次

  ○吉野國務大臣　國內ノ資源ノ利用ヲ促進
  スルト云フコトニ付キマシテハ、出來ルダ
  ケノ力ヲ盡シタイト思ヒマス、一部分ハ此
  法律ニ依リマシテモ出來ルト思ヒマスガ、
  又此法律デ足ラナイ點モアラウカト思ヒマ
  ス、ソレ等ノ施設ノ具體的ニドウ云フコト
  ヲヤルカト云フコトハ、段々是カラ〓究シ
  テ參ル譯デアリマスガ、其〓究ノ結果必要
  ガアリマシテ、或ハ豫算ナリ、或ハ法律案ナ
  リヲ必要トスルト云フ場合ニハ、御協贊ヲ
  願フ手續ニ致シタイト思ヒマス

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• 063・高橋壽太郎

  ○高橋委員　今サウ云フ法案ヲ御出シニナ
  ル御意向ダト承リマシタ、ソレニハ少クモ
  次ノ重要ナ希望ヲ私ハ述ベテ置キタイト思
  ヒマス、是ハ先程一通リ申上ゲマシタガ、
  實驗〓究ヲ十分ニヤラレル、早速日鐵會社
  法ノ第九條ノ適用ヲナサリ、ソレ以外ニモ
  先程御話ノアリマシタ東北大學、或ハ民間
  ニ砂鐵製鍊ニ對シテ色々ナ〓究實驗ヲヤッ
  テ居ル向ガアリマス、電氣ニ依リ、或ハ電
  波ニ依リ諸種ノ考案ヲ立テヽ居ルモノモア
  ルヤウデアリマスカラ、之ニ助成ノ方法ヲ
  講ジテ戴キタイ、ソレガ一ツ、ソレカラ國
  產ノ原料ノ併用ヲ少クモ日鐵會社ニハ强制
  スルノ手段ヲ執ッテ戴キタイ、第三ハ國產ノ
  原料ヲ使用シテ出來上っタ鐵鋼ニ對シテハ、
  特別ノ助成金ヲ與ヘルヤウニシテ戴キタ
  イ、第四ハ日鐵會社ニハ國產ノ製鐵原料品
  ノ買入ヲ强制シテ戴キタイ、斯ウ云フヤウ
  ナ條件ヲ-私ハ產鐵奬勵法ト云フヤウナ
  名ヲ著ケタイノデアリマスガ、加味シテ戴
  クヤウニ出來マセヌデセウカ、大臣ノ御意
  向ヲ伺ヒタイ

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• 064・吉野信次

  ○吉野國務大臣　今此處デ具體的ニ必ズサ
  ウ云フ規定ヲ編ムノダト云フ程ノコトヲ申
  上ゲルダケノ、實ハ準備ガゴザイマセヌノ
  デス、唯產金ニ付テモ同樣デアリマスガ、
  常識的ニ相當ニ鐵鋼業者ハ儲ッテ居ル工合
  ナモノデスカラ、必シモ今御話ノヤウニ奬
  勵金云々ト云フコトヲ致シマセヌデモ、製
  鐵業者ノ現在ノ利益ノ範圍內ニ於キマシテ
  モ、或ハ話合ニ依リ、或ハ肯カヌ場合ニハ、
  幸ニ此法律ガ御協賛ヲ得マシタナラバ、此
  法律ノ規定ニ依ッテ、今御話ニナリマシタヤ
  ウナ國產資源ノ利用ト云フコトハ相當ニ達
  セラレルダラウ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
  併シ御話ニナリマシタ數々ノ點ニ付キマシ
  テハ篤ト考慮ヲ致シタイト思ヒマス

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• 065・高橋壽太郎

  ○高橋委員　如何ニモ製鐵事業法ノ中ノ二
  十條、二十一條ヲ見マスルト、今大臣ノ御
  答ニナリマシタ通リノコトガ實施セラル
  ヤウデアリマス、唯此處ニハ國產ノ原料
  品.例ヘバ貧鑛ノ開發、砂鐵ノ利用、サウ
  云フモノニ對シテ政府ノ補助金ヲ與ヘルト
  云フ項目ハナイヤウデアリマス、是ハヤハ
  リ先程申シマシタ通リ、產金法ノ第十六條
  ノ規定ノヤウニ、奬勵金ヲ交付スルコトヲ
  得ト云フ、斯ウ云フ積極的ノ所マデ進ンデ
  行カナケレバイケナイト思ヒマス、現ニ前
  議會ニ於ケル製鐵事業法ノ委員會ニ於キマ
  シテ、伍堂商工大臣ハ「特別ナ助成デモシ
  ナケレバ引合ハナイノデアリマス、サウ云
  フノニ對シテハ「クルップ」ノ方法ヲ使ッタ方
  ガ一番有利ダト云フコトニナリマス」是ハ
  龜井委員ニ對スル答デアリマス、製鐵事業
  法委員會ノ第四囘ノ速記錄ノ二十一頁ニア
  リマス、ソレデ龜井委員ハ「御說明ハ能ク
  諒承シマシタ、サウスルト私ノ伺ヒマシタ
  點ハ最後ノ點ナンデスガ、鞍山デオヤリニ
  ナリマシタ貧鑛處理デハ-「クルップ」ヲ
  使ハナクテハ茂山ノ開發ハ採算上困難デゴ
  ザイマセウカ、其點ナンデス」伍堂國務大
  臣「其通リデゴザイマス、助成ガナケレバ
  ····」斯ウ云フノデアリマス、政府ノ狙ッテ
  居リマスル貧鑛處理法デスラモ助成ガナケ
  レバイケナイト云フコトヲ、アノ製鐵ノ權
  威者ガ國務大臣トシテ言明セラレテ居ルノ
  デアリマスカラ、內地ニ於ケル貧鑛ノ開
  發砂鐵ノ利用ニハ相當ナ私ハ奬勵助成ガ
  ナケレバ不可能ダト思フノデス、實ハ斯ウ
  云フコトヲ政府ニ御願スルノニ都合好ク財
  經ノ三原則ヲ御立テニナリマシタノデ、私
  共ハ良イ看板ヲ出シテ戴イタト喜ンデ居ル
  ノデアリマス、此點ヲ商工大臣ノ御言明ヲ
  聽イテ私ノ質問ヲ終リマス

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• 066・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　大島寅吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=66

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• 067・大島寅吉

  ○大島委員　私ハ此製鐵事業法案ニ對シマ
  シテハ、幾多ノ質問ガアルノデアリマス、原
  鑛問題、或ハ貧鑛處理、或ハ「日滿ブロック」
  ニ依ル方法等ニ付テハ澤山御質問ヲ致シタ
  イノデアリマスケレドモ、併シ斯樣ナコト
  ヲ申シテ居リマスルト、一時間ヤ二時間デ
  ハ到底要領ヲ得ルト思ハヌ、殊ニ本日中ニ
  是非質問ハ大體打切ッテ、サウシテ何トカ案
  ヲ通過サセルヤウニシヨウデハナイカト云
  フ大體ノ空氣デアリマスルシ、又吾々モ本
  案ノ通過スルコトニ反對スル者デハナイノ
  デアリマス、ソコデ私ハ寧ロ質問ト云フヨ
  リハ議事進行的ニ、前ノ委員會ニ於ケル吾
  吾ノ多少當局トモ折衝致シタ點ニ付テ申上
  ゲマシテ、サウシテ商工大臣ノ考慮ノ餘地
  ガアルカナイカト云フコトヲ承レマスレ
  バ吾々モ亦修正等ニ對シテモ便宜デア
  ル、斯樣ナ點カラ御同致シタイノデアリマ
  ス、併シ其前ニ私ハ唯僅カ五分間バカリ申
  上ゲテ見タイノデアリマスガ、ソレハ此春
  ノ議會ニ於キマシテモ、今日ノ鐵饑饉ハ是
  ハ前商工大臣トサレテハ決シテ不足シテ居
  ルノデハナイ、所謂賣惜ミニ依ル所ノ田惑
  ニ依ル需給ノ圓滿ヲ缺イテ居ルノデアル、
  斯ウ云フ大體見解デ居ラレタヤウデアリマ
  ス、併シ多數ノ委員諸君ハ皆サウデナイ、實
  際不足ヲシテ居ルノダト云フ考デ居ラレマ
  シタガ、其後ニ於テモヤハリ不足ノ事實ハ
  不足デアルノデアリマスガ、此不足ヲ來シ
  タ原因ハ何處ニアルカト言ヒマスルト、是
  ハ世界的ノ情勢ニモ依ルケレドモ、大體ニ
  於テハ商工省ノ數年來採リ來ッタ所ノ消極
  的ノ指導方針トデモ申シマスルカ、是ガ今
  日ノ饑饉ニ拍車ヲ掛ケタノデハナカラウ
  カ、斯樣ニ吾々ハ信ジテ居ルノデアリマ
  ス、殊ニ日鐵中心主義デ進メラレタト云フコ
  トハ、一層斯樣ナ狀態ヲ惹起シテ來タノデ
  アル、例ヘバ熔鑛爐ノ許可ノ申請等ニ對シ
  マシテモ、數年經ッテモ中々許可サレナカツ
  タト云フヤウナコトハ、確ニ事實デアルト
  思フノデアリマスルガ、殊ニ又前商工大臣
  ハ、此法案ノ骨子ニナル所ノ最モ取締ラナ
  ケレバナラヌノハ、所謂層鐵ニ依ッテ製鋼
  スル所ノ濫設ヲ取締ラナケレバナラヌノデ
  アルト申サレ、先程吉野商工大臣モ御話ガ
  アッタヤウデアリマスルガ、所謂平爐ノ取
  締ヲスルコトガ最モ急務デアル、是非必要
  デアル、斯樣ニ仰セラレテ居リマスルケレ
  ドモ、成程ソレハ「スクラップ」ヲ外國依存
  ニ依ラヌヤウニスルト云フコトニ對シマシ
  テハ、吾々モ敢テ異議ノアル筈ハアリマ
  セヌ、極ク賛成ノコトデアリマスルケレド
  モ、今日ノ「スクラップ」製鋼法ガ跛行的ニ
  多クナッタト云フヨリハ、寧ロ之ニ對スル
  熔鑛爐、所謂銑鐵ノ製造ノ方ガ跛行的ニ過
  少デアッタ、言換へマスレバ熔鑛爐ノ許可
  ナドガ遲レタカラ此狀態ヲ惹起シタノデア
  ルト云フ風ニ吾々ハ考へルノデアリマス、
  左樣ニ考ヘテ參リマスル時ニ於テ、ドウシ
  テモ本事業法案ニ對シテノ全部ヲ通ジテ、
  吾々ノ頭ノ中ニ流レテ居ル考ハ、何トナク
  當業者ニ不安ヲ與ヘルノデハナイカ、所謂
  今日ノ鐵生產擴充ト云フ趣旨ニ副ハナク
  テ、反對ニ生產ヲ減少スル、低下スル方法
  ニナリハシナイカ、斯樣ナ點ヲ惧ルヽノデ
  アリマス、殊ニ前商工大臣ハ、昭和十六年度
  ノ推定量ハ六百二十萬瓲ト云フヤウナコト
  ヲ申サレテ、何人モ其少ナ過ギルト云フコ
  トニハ驚イタノデアリマスルガ、今日ハ又
  狀態モ變ッテ居ルカラ、一層サウデアリマ
  スルガ、モウ既ニ五六百萬瓲ト云フモノハ
  本年ニモ必要ナ狀態ニナッテ居リマス、ソ
  コデ新聞紙ヲ通ジテ拜見致シマスルト、現
  商工大臣ニ於カレテハ、昭和十六年度トシ
  テハ一千萬瓲位ノ所ヲ基準推定量トシテ、
  指導方針ヲ進メラレルヤウナコトモ見エテ
  居ルノデアリマスルカラ、此點ハ稍〓安心
  ヲ致シテ居ル次第デアリマスルケレドモ、
  唯吾々ノ惧ルヽ所ハ、是ガ擴充ニナラズシ
  テ却テ減少スルコトニナラヌカト云フコト
  ヲ惧ルヽノデアリマスルカラ、此點モ豫メ
  御諒解ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマ
  ス
  ソレデハ只今成ベク懇談會デ話シタラド
  ウダト云フ注意モアリマシタカラ、各箇條
  ニ付テハ其時ニ申上ゲルコトニ致シマシ
  テ、私ハ此中最モ大キナ問題デアリマシタ
  二三ニ付テ、大體尙ホ御考慮ノ餘地アリヤ
  否ヤト云フコトヲ、其程度デ宜シウゴザイ
  マスカラ、承ッテ置キタイト思フノデアリ
  マス、ソレハ第二十條ノ規定ニ對シマシテ
  ハ、大體吾々ノ方デハ、是ハ餘リ强過ギル
  カラ、重要產業ノ統制法ニ依ル程度ノ法文
  ノ書キ方ニ修正シテハドウカ、斯樣ニ申シ
  タノデアリマスルガ、商工當局モ此點ハ多
  少耳ヲ傾ケテ居ラレタヤウニ思ハレマシタ
  ガ、昨日懇談的ニ鑛山局長ニ伺ッテ見マシ
  タ所ガ、大體同ジヤウナ意味合ダカラ斯樣
  ニ出シタノダ、斯ウ云フ御說デアリマスル
  ケレドモ、文意ガ違フト隨テ解釋モ違ヲテ
  參リ.マスルカラ、ソコニ於テ相當違ガアリ
  ハセヌカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマスル
  ガ、此第二十條ニ對シテハ、尙ホ多少ノ御
  考ヘ下サル餘地ガアリヤ否ヤト云フコトヲ
  伺ッテ置キタイノデアリマス
  尙ホ時間ガナイカラ一遍ニ申上ゲマスル
  ガ、次ニ第二十條ノ第二項ノ場合ト第二十
  一條ノ場合ニ於テ、色々ノ設備ノ變更等ヲ
  命ジタリ、或ハ〓究等ノ特殊ノ設備ヲ命ズ
  ル場合ニ於テ、其他原料ノ保持ヲ命ズル場
  合ニ於テ、補償ノ規定ヲ設ケラレテハドウ
  カト云フコトハ、是ハ前議會ニ於テモ、大
  體ソレガ必要ダト云フ意味合ニ御答辯ガ
  アッタノデアリマス、所ガ是モ私ザックバラ
  ンニ申上ゲルノデ、決シテ昨日鑛山局長ト
  彼此レ懇談ヲ致シマシタ事ヲ此處デ申上ゲ
  テ攻撃スルヤウナ考ハナイノデアリマスカ
  ラ、左樣ニ御聽取ヲ願ッテ置キタイノデア
  リマス、ソコデ其御話ヲ致シマシタ時ニ、
  マア補償ハ必要デアルガ、政府トシテモ左
  樣ナ場合ニハ、當業者ガ望マヌヤウナコト
  ハ、コチラニモ補償ノ義務ガアルカラ成ベ
  ク命ジナイヤウナ考デ居ル、斯ウ云フ御話
  デアッタノデアリマス、所デ今ノ作業方法ト
  カ、或ハ〓究等ノ設備ノコトハ、是ハ當業
  者ガ望マナケレバ命ジナイトスレバ、ソレ
  デ補償ト云フコトモ白然解消致シマスル
  ガ、次ニアリマス所謂原料ノ保持ト云フコ
  トニ對シマシテハ、是亦同樣ニ成ベク命ジ
  ナイヤウニスル方ガ宜カラウト思フト云フ
  御話ガ昨日アッタノデアリマスガ、私ハ日
  鐵ニ對シテハ、既ニ原料ニ利子ノ補給ヲ致
  シテ居ラレルデハナイカ、ソレデアルカラ
  普通ノ一般ノ「アウトサイダー」ト申シマ
  スカ、他ノ熔鑛爐ヲ持ツ連中ニモ、竝行的
  ニ、所謂競爭ト言フト何カ恐イ競爭ノヤウ
  ニ聞エマスルガ、所謂競ウテ生產擴充ヲス
  ルト云フ意味合ニ於テ、他ノ「アウトサイ
  ダー」ニモ平等ニ原料保持ヲ命ジテヤルノ
  ガ宜イデハナイカ、斯樣ニ承リマシタガ、
  ヤハリ之ニ對シテハ利子ノ補給バカリデハ
  ナイ、其他ニモ色々當業者ニ澤山保持サシ
  テ置クト云フヤウナコトハ迷惑ニナルコト
  デアルカラ、成ベク命ジタクナイト考ヘテ
  居ル、斯樣ニ御話ガアッタノデスガ、ソレ
  ハアナタ方ノ机上ノ御考デハアリマセヌ
  カ、誰デモ今日斯樣ナ大金ヲ掛ケテ熔鑛爐
  ヲ造ッテ居ルヤウナモノハ、是ハ成ベク長
  イ間ノ-半年ノモノハ一年、一年ノモノ
  ハ二年モ原鑛モ用意シテ置キタイト云フコ
  トハ人情デアル、殊ニ今日ノヤウナ場合ニ
  ナルト、直グ又原鑛ヲ得ルノモ容易デナイ
  ト云フヤウナコトガ起キテ來ルノデアルカ
  ラ、長イ間ノモノヲ用意シテ置クト云フコ
  トハ人情デアル、併ナガラソレヲシ得ナイ
  ノハドウ云フ所ニアルカト申シマスト、ヤ
  ハリ色々ノ資金關係モアル、資金ハ他カラ
  融通ヲ受ケルトシテモ、此資金ニ對スル利
  息ト云フヤウナモノガ直接影響シテ來ルノ
  デアルカラ、ソコデ爲シ得ナイノデアル、
  ソレデ迷惑デアルカラ命ジナイヤウニシ
  テ、成ベク日鐵ニ命ズルヤウニスルト云フ
  ヤウナコトハ、實際實業ニ從事シテ居ル者
  ノ考トハ相當ニ隔ッタ考デハアリマセヌカ、
  斯樣ナ意味合ニ申シタノデアリマスガ、此
  點ニ付キマシテモ商工大臣ハドウ云フ工合
  ニ御考ニナリマスルカ、極ク大體ノ點デ宜
  シウゴザイマス、餘リハッキリスルト宜シ
  クナイヽ云フノデアリマスルナラバ、御考
  慮ノ餘地アリヤ否ヤト云フ點ダケデ宜シウ
  ゴザイマスカラ、其程度デ承リタイト思フ
  ノデアリマス、尙ホ第二十二條ノ規定ハ、
  前ニハ第一項ダケ置イテ第二項ハ削除スル
  ヤウニ吾々ハ考ヘテ居ッタノデアリマスガ、
  此點ニ付テハ末文ニ祕密漏洩ノ取締規定ヲ
  置イテ、之ヲ以テ此規定ヲ活カサウト云フ
  ヤウナ御考ノヤウデアリマスカラ、是ハ先
  ヅ此程度デ私ハ申上ゲマセヌガ、唯第二十
  五條ノ公益ヲ害スルトキト云フコトハ御拔
  キニナリマシタケレドモ、終ヒノ方ノ法人
  ノ役員ノ解任ニ付テデアリマスガ、許可ノ
  取消以外ニ、法人ノ役員ノ解任ヲセナクテ
  ハナラヌト云フ必要ガアリマスカ、斯樣ノ
  點ニ付テ極ク簡單デ宜シウゴザイマス、又
  大體ノ當局ノ意向ガ分リマスレバ、修正ス
  ルニシテモ考へ方ガアルカラ、此點ニ付テ
  承リタイト思ヒマス

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• 068・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御質問ノ第一點ニ付キマ
  シテハ、統制法ノ規定ト大體似テ居ルノデ
  アリマスガ、今日ノ時局ガ是カラドウ云フ
  風ニ發展致シマスカ分リマセヌガ、鐵材ト
  云フモノヽ需要ハ益〓盛ニナルダラウト思
  ヒマシテ、供給ノ點ガ大分困ルト云フコト
  ガ豫想セラレルノデアリマスガ、サウ云フ
  場合ニ鐵材ノ需給ノ調整ヲ圖ルト云フ見地
  カラ致シマスルト、幾ラカ此製鐵事業法案
  ノ方ガサウ云フ事態ニ善處スル場合ニハ宜
  クハナイカ、細カイコトハ別デゴザイマス
  ガ、統制法ノ方ハ消極的デアリマシテ、圓
  滑ナル供給ヲ妨ゲルトカ、當該產業ノ利益
  ヲ害スト云フヤウナ條件付ニナッテ居リマ
  スガ、ソレダケデハ現下ノ鐵鋼ノ需給ノ調
  節ヲヤルト云フ時ニハ不便デアッテ、モウ
  少シ積極的ニヤル必要ガアリハセヌカト考
  ヘマスカラ、此前ノ當時トハ少シ事情ガ違
  ヒマシテ、現下ノ情勢カラ見マストヤハリ
  本法案ノ方ガ適當デハナイカ、斯樣ニ考ヘ
  テ居リマス
  ソレカラ公益上必要アッテ色々ナコトヲ
  命ジマスル時ノ補償問題ニ付キマシテハ、
  先ヅ第二十條ノ二項ノ關係カラ私ノ考ヲ率
  直ニ申シマスト、相當ニ利益ガアル場合ナ
  ラバ其範圍ニ於テハヤッテ戴ク、併シソレ
  以上ノコトヲ若シ命ズルト云フ場合ニハ補
  償スルノガ私ハ寧ロ當然ダラウト思フ、ソ
  レデアリマスカラサウ云フ場合ニ於キマシ
  テハ、補償スルト云フコトニ付テハ少シモ
  異存ガアリマセヌ、又サウアルベキダト考
  ヘテ居リマス、第二十一條ノ關係ハ軍事上
  ノ關係デゴザイマスカラ、軍事當局ハドウ
  云フ御意見デアリマスカ、恐ラクヤハリ軍
  事上必要ガアッテモ、若シ過當ナ事ヲ命ジ
  マシテ、之ニ依ッテ業者ニ所謂損失ガアリ
  マストカ、或ハ苦痛ヲ與ヘルト云フヤウナ
  場合ニハ、是亦適當ニ補償ヲスルコトニナ
  ルダラウト云フコトヲ、私ガ代ッテ申上ゲ
  テモ宜カラウト存ジマス
  第二十五條ノ關係法人ノ役員ノ解任ノ點
  デゴザイマスガ、是モ率直ニ申上ゲマスガ、
  一寸御考ニナリマスト隨分嚴シイ監督規定
  デアルガ如ク御考ニナルノデアリマスガ、
  實ハ從來モ幾多ノ法律ニアリマス立法デゴ
  ザイマシテ、立法スル者ノ頭カラ申シマス
  ト、是ハ法人ノ業務其モノヽ制限ヲシタ
  リ、許可ヲ取消シタリスルト云フコトノ權
  限ヲ法律デ持ッテ居リマスガ、製鐵事業ノ如
  キモノハ許可ヲ取消シタカラト云フテ、唯
  膺懲スルト云フダケデハ目的ヲ達シマセヌ
  ノデ、ヤハリ其事業ヲヤリタイ、ソレデソ
  コマデ行カナイデ、若シ法人ト云フモノヽ
  役員ガ非常ニ不都合ナモノデアルト云フコ
  トナラバ、役員ノ解任位デ以テ我慢ヲシテ、
  事業其モノハヤハリ繼續シテ、許可ノ取消
  ト云フコトハヤラナイヤウニスルト云フ途
  ヲ置クコトガ宜クハナイカ、是ハ實ハ此法
  律バカリデハゴザイマセヌデ、幾多ノ最近
  -デモゴザイマセヌガ、相當長イ間カラ
  ノ法人處罰ト云フモノニ關スル一ツノ立法
  例ニナッテ居リマス、併シ私モ長ク役人ヲ
  シテ居リマスケレドモ、此法律ガアルカラ
  ト云ウテ、ソレデハ此條項ニ依ッテ法人ノ
  役員ヲ解任シタ例ガアルカト云フト、ソレ
  ハナイノデス、唯斯ウ云フ規定ヲ置クコト
  ニ依ッテ、役員モ能ク法律ノ規定ニ從ッテ業
  務ヲヤルコトヲ期待シテ居ルノデアリマ
  ス、是ガアルカラト云ウテ別ニ役員ヲドウ
  斯ウト云フコトハゴザイマセヌ

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• 069・大島寅吉

  ○大島委員　原鑛ニ對スル利子ノ補給ハド
  ウデスカ

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• 070・吉野信次

  ○吉野國務大臣　今申上ゲマシタ通リ、軍
  事上ノ必要云々ト云フコトニ依ッテ、若シ
  軍部ノ方デ原鑛ノ保存ヲスル爲ニ、貯藏ヲ
  命ズルト、斯ウ云フ必要ガアル場合ニハ補
  償ヲスルコトガ當然デアラウト斯樣ニ考ヘ
  テ居リマス

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• 071・大島寅吉

  ○大島委員　其點ニ付テ一寸伺ッテ置キタ
  イ點ハ、是ハ實ハ斯ウ云フヤウナ工合ニ、
  此前ニモ皆聽カレテ居リ、又考ヘラレテ居
  ルノデアリマスガ、所謂軍事上ノコトヲ彼
  此レ言フコトハ出來ナイガ、兎ニ角必要ガ
  アルトカナイトカ言ッテモ、「アウトサイダ
  ー」ニ貯鑛ヲ命ズルトスルト、補給スルト
  云フト所謂豫算ガ伴ッテ來ル、ソレデ大藏
  省ガ彼此レ言フ、所ガ日鐵ニ對シマシテハ
  配當ノ中カラ之ヲ差引クノダカラ一般豫算
  ニ計上スル必要ガナイ、斯ウ云フヤウナ關
  係カラシテ、勢ヒ實際問題トシテ日鐵ニバ
  カリ利子ノ補給ヲスル、事實上ノ補給ヲス
  ルト云フヤウナ意味合ニナリハセヌカ、斯
  樣ナコトハ將來日鐵中心ニ返ル虞ガアル、
  今日日鐵中心ナルガ故ニ此饑饉ノ一ツノ原
  因ヲ成シテ居ルノデハナイカ、然ルニ又其
  憂ガアルノヂヤナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘ
  ラレルノデアリマス、ソコデ是ハ何モ「ア
  ウトサイダー」ヲヨリ以上ニ待遇セイト云
  フノデモナシ、ドレ程セヨト云フコトデモ
  ナイガ、必要ノ場合ハ公平ニ競ウテ生產擴
  充ニ進ミ得ルヤウニ御ヤリニナル御考ハナ
  イカ、ソレハ必要ガ無イ時ニハ何モセイト
  云フノデハナイガ、必要ヲ認メタ場合ニ於
  テハ日鐡ニモ「アウトサイダー」ニモ同樣ノ
  待遇ヲスル、斯ウ云フ御考デ御進ミニナル
  御考ハナイカト云フコトヲ承リタイ

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• 072・吉野信次

  ○吉野國務大臣　折角ノ御尋デゴザイマス
  ケレドモ、事柄ガ軍事土ノコトデアリマシ
  テ、軍事ノ當局ニ於テドウ考ヘテ居リマス
  カ、私ニモハッキリ御答辯ガ致シ兼ネルノ
  デアリマスガ、唯現ニ日鐵ニ命ジテ居リマ
  スノハ、アレハ御承知ノ通リ日鐵ナルガ故
  デハゴザイマセヌノデ、八幡ノ製鐵所ト云
  フ官營ノ時代ニ、軍部ノ必要ニ依ッテ-
  是モ祕密ニシテ居ル譯デアリマスガ、所謂
  軍事ノ必要ニ應ジマシテ、一定ノ貯藏ヲ命
  ジテ置カウカト云フ沿革ガ傳ッテ居ル譯デ
  アリマス、併シ是ハ私ハ恐ラクハ段々原鑛
  石ノ問題ト云フコトガ國防上カラ相當考ヘ
  ナケレバナラヌコトニナルト思フノデアリ
  マシテ、アレ以上ニ若シ軍部トシテドウシ
  テモ必要デアルノダト云フコトガ決定シ
  テ、ソコデ此條項ニ依ッテ命令ヲスルト云
  フ時ニハ、是ハ日鐵中心ニスルコトハ少シ
  モナイノデアリマスカラ、適當ニ命ジマシ
  テ、又命ジタモノニ付テハソレ〓〓適當ナ
  處置ヲヤルコトガ當然ダト考ヘテ居リマ
  ス

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• 073・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　小池四郞君

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• 074・小池四郎

  ○小池委員　最初ニ伺ヒタイコトハ本法案
  ノ第七條ニアリマスル利益率ノコトデアリ
  やゝ、稅ヲ免除スル特典ノ基準ガソコニ書
  イテゴザイマスガ、資本金額ニ對シ年百分
  ノ十ト云フ割合ノ基準ガ出テ居リマス、百
  分ノ十ト云フ基準ヲ御取リニナリマシタ其
  意味ヲ御話願ヒタイ

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• 075・吉野信次

  ○吉野國務大臣　別ニ深イ理論上ノ根據ト
  云フモノモナカッタノデゴザイマスガ、私モ
  當時之ヲ置クコトニ關係シテ記憶致シテ居
  リマスガ、慥カ臨時超過所得稅デスカ、ア
  ア云フ立法ニ於キマシテモヤハリ百分ノ十
  ト云フコトニナッテ居リマシテ、百分ノ十ト
  言ヘバ俗ニ謂フト一割デゴザイマスガ、是
  ハ利益ノ割合デゴザイマスカラ、一割ノ中
  カラ色々費用トカ何トカ差引キマスト、所
  謂配當ニナリマス時ニハ、會社デゴザイマ
  スナラバ八分見當ニナルダラウカト云フヤ
  ウナコトヲ唯常識的ニ考ヘマシテ、此規定
  ヲ現行法ニ置キマシタ、現行法ノ規定ヲ其
  儘之ニ持ッテ來タ、斯ウ云フ次第デアリマス

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• 076・小池四郎

  ○小池委員　恐ラクマアサウダラウト思ヒ
  マスガ、サウスルト私ハ斯ウ云フ解釋ヲ致
  スノデアリマス、百分ノ十ト云フ利益率ヲ
  上ゲマスレバ、大體製鐵事業トシテハ普通
  ノ利益ヲ上ゲタモノト看做ス、此百分ノ十
  ヲ割リマスト企業トシテハ少シ薄利デアッ
  テ氣ノ毒デアル、斯ウ云フモノニ對シテハ
  免稅ヲ以テ之ヲ助ケテヤラウ、百分ノ十ト
  云フ利益率ガ旨ク上レバ「コスト」ガ標準ニ
  比ベテ少シ儲カリ過ギルト云フ風ニ見テ宜
  シイ、サウ云フ風ニ私ハ解釋ガ出來ルト思
  フノデアリマス、サウシマスト次ニ質問致
  シマスルコトハ、參考資料ヲ戴キマシテ大
  體拜見致シマシタケレドモ、現在ノ製鐵會
  社ノ主要ナルモノヽ利益率ハ-利益率ノ
  計算モ色々アリマセウケレドモ、〓略〓此第
  七條ニ謳ッタヤウナ計算ニ近イモノト信ジ
  マス、大抵大キナ製鐵會社ハ百分ノ十以上、
  或ハ時ニ依ルト非常ニ猛烈ニ利益率ヲ超シ
  テ居リマス、戴キマシタ參考資料ニモ書イ
  テアリマス、現在モ其通リデアリマスルシ、
  恐ラク近キ將來モヤハリ是ガ持續スルモノ
  ト私ハ見テ居リマス、サウ見ラレルコトハ
  大臣モ亦同一意見デアラウト私ハ思フノデ
  アリマス、ソコデ私一ツ疑問ガアルノデス
  ガ、製鐵事業ト云フモノノ利潤ヲ、卽チソ
  レヲ利益率デ現シマスト、ソレカラ差引イ
  タモノガ配當率ニナリマセウガ、マア利益
  率デ話ヲ致シマスルト、サウ云フヤウナ製
  鐵會社ノ利益率ハ-勿論製鐵事業ハグン
  グン助成發達セシメナケレバナラヌ必要ニ
  迫ラレテ居リマスケレドモ、サウ云フ立前
  カラ言ッテ、此位ノ現在製鐵會社ガ取ヲテ居
  リマスルヤウナ利益率ガナケレバ、製鐵業
  ノ近キ將來ニ於ケル企業ヲ維持、發展セシ
  ムルニ足ラナイノカト云フコトデアリマ
  ス、言換ヘテ見マスレバ、現在位ノ製鐵會
  社ノ利益率ガ上ラナケレバ、企業ハ萎縮ス
  ルモノト考ヘルベキデアルカドウカト云フ
  此點デアリマス

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• 077・吉野信次

  ○吉野國務大臣　實ハ此規定ハ沿革的ノ規
  定デゴザイマシテ、ト申シマスノハ現行法
  ノ製鐵奬勵法デ總テ免稅ヲヤッテアルノデ
  アリマス、所ガソレガ最近ニ於キマシテ相
  當ノ利益ガアルト云フ時ニ、相當ニ利益ノ
  アルモノヲ免稅ニズットシテ置クト云フコ
  トハ適當デナカラウト云フノデ、是ハ後カ
  ラ、詰リ一遍法律デ以テ與ヘマシタ何ト申
  シマスカ、一ツノ旣得ノ利益ヲ、又立法ニ
  依ッテ剝イダ規定ナノデアリマス、ソレデス
  カラサウ云フ時ニ唯常識的ニ此一割ト云フ
  コトヲ以テヤッタノデアリマス、ダカラ新規
  ノ新シイ立法論トシテハ、斯ウ云フ事業ト
  云フモノハ一體利益率ヲ一割ト見ル必要ガ
  アラウカドウカト云フコトデアリマスガ、
  現行法デ以テ免稅ノ特典ヲ十年ナリ十五年
  ヤッテ居ッタノヲ、中途カラ剝奪シタ規定デ
  アリマス、而シテ現行法ニ依ッテ十五年得
  テ居ルモノガマダ現ニアリマスカラ、形式
  的ニ見テ之ヲ救ハナケレバナラヌ、ドウシ
  テモヤハリ沿革上ノ理由ト云フモノヲ少シ
  斟酌シテ考ヘナイト、實際ノ事情ニ合ハナ
  イト云フ考カラ、此儘此規定ヲ置イタノデ
  アリマス、必ズシモ此規定ヲ置イタカラト
  言ッテ製鐵事業ハ一割ノ利益率ガナケレバ
  事業トシテ成立タナイモノダト云フ風ニハ
  私ハ考ヘマセヌ

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• 078・小池四郎

  ○小池委員　能ク分リマシタ、輕イ意味デ
  百分ノ十ト云フ意味デ出シタト云フコトデ
  アレバ、是ハ問題ニシナイデモ宜イト思ヒ
  マスガ、根本ノ問題ハ斯ウ云フコトヲ伺ヒ
  タイ、現在ノ製鐵會社ガ此一兩年、或ハ近
  キ將來ニ於テ上ゲ得ルダラウ所ノ利益率、
  是ハ製鐵業ト云フ企業ハ、ソレ以下ノ利潤
  率デアッタナラバ萎縮シテシマフダラウト
  考ヘラレルカドウカト云フ點ガ重點デアリ
  マス、ト云フノハザックバランニ申上ゲマ
  スガ、私ハ斯ウ云フ考ヲ持ッテ居リマス、先
  程來大臣ノ言葉ノ中ニモアリマシタガ、日
  本製鐵ノ方ハ割合「コスト、」ガ安イ、日本製
  鐵單獨デ存在シテ居レバモウ少シ安ク鐵鋼
  材ヲ賣レル、賣ッテモ會社トシテ差支ナイ、
  ケレドモサウデナイ、「コスト」ノ高イ所ノ
  他ノモノガアッテ、ソレトノ關係カラ引ッ掛ツ
  テ參リマシテ安ク下ゲル譯ニイカヌ、隨テ
  先刻配當ガ七分ニナッタ理由ガソコニアル
  ト云フコトヲ仰セラレタ、サウ云フコトガ
  始終現在起ッテ居ル、私共ノ希望スル所ハ、
  現在ノ製鐵會社ノ利益率ガ相當厖大ダト私
  ハ認定スルノデアリマスガ、此製鐵會社ノ
  利益率ヲ何等カノ相談ナリ、或ハ力ナリ、
  其時ノ適當ナル方法ニ依リマシテ、利益率
  ヲモウ少シ下ゲサセテ-其具體的方法ハ
  細カクナリマスレバ配當ノ問題ニモナリマ
  セウガ、ソレヲ製品ノ値下リノ方ニ振向ケ
  ルト云フコトニ致シマスレバ、或ハ日本製
  鐵ガ「コスト」ヲ安ク出來ル、安ク賣リタイ
  ガ賣レナイト云フコトヲ緩和スルコトガ出
  來ル、日本製鐵其他ノ會社ガ共ニ手ヲ携ヘ
  テ、安ク製品ヲ提供スルト云フコトヲ實ハ
  私ハ希望スルノデアリマシテ、サウ云フ意
  味カラ大臣ガ現在ノ製鐵會社ノ利益率ヲド
  ウ見ラレルカ、此利益率ヲ妥當ナルモノト
  シテ企業ヲ將來維持發展セシムルカ、是位
  ナケレバナラヌト思ヘバ是ハ抑ヘル譯ニイ
  カヌダラウガ、若シモ少シ多イト云フ御考
  ガアレバ、ソコニ何等カノ方法ヲ講ジテ利
  益率ノ方ニ遠慮セシムルト云フ方法モ亦起
  ラウト思フノデアリマス、是モ御承知ダラ
  ウト思ヒマスガ、滿洲ノ銑鐵ヤ鋼材ニ付テ
  ハ、ヤハリ內地ノモノトノ喰ヒ違ガ來テ居
  リマス、滿洲デハヤハリ內地ノ製品ガ、「コ
  スト」ガ高ク、建値ガ高クナルカラシテ滿洲
  ダケデハ安クナラヌ、日本內地ノ御付キ合
  ヲシテ高ク賣ラナケレバナラヌト云フ難カ
  シイ事情ガアルノデアリマス、其癌ハ何處
  ニアルカ、滿洲モ安イ鐵ヲ使ヘルノニ安イ
  モノガ使ヘナイ、日本內地モ安イモノヲ使
  ヘバ使ヘルノニ使ヘナイト云フコトハ、利
  益率ヲ厖大ニ上ゲテ居ル他ノモノガソコニ
  存在シテ居ル爲ニ、一切ガ行詰ッテ參ルト
  云フ形ニナルノデハナイカト私ハ思フノデ
  アリマス、サウ云フ觀點カラ見マシテ、現
  在ノ製鐵業ノ利益率ヲドウ御覽ニナッテ居
  ルカト云フコトヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 079・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御承知ノ通リ製鐵事業ト
  云フモノハ、過去ニ於キマシテハ色々浮沈
  ガアリマスノデ、隨分不況ナ時代モアッタ
  ノデゴザイマスガ、現在ノヤウウナ狀況デ
  アリマスナラバ、製鐵事業ノ利益ハ相當多
  イ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、隨ヒマシテ今
  御話ニナリマシタ點ニ付キマシテモ、實ハ
  私モ考慮致シテ居リマシテ、今、日鐵ト其
  他ノ業者トノ間ニ一ツノ「カルテル」ト云フ
  モノヲ作リマシテ、日本ヲ打ッテ全體トシテ
  鐵鋼ト云フモノヽ生產ナリ、販賣ト云フモ
  ノヲ合理的ニヤルヤウニ努メサセタイ、サ
  ウシテ又滿洲トノ關係ニ於テモ、今申サレ
  マシタヤウナ二元的ノ値段ガ出ルヤウナコ
  トノナイヤウニ、其點ニ付テモ一ツノ調和
  點ヲ見出シマシテ、一元ニナルヤウニ致シ
  タイ、斯ウ云フ風ニ思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=79

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• 080・小池四郎

  ○小池委員　御答ニナルノハ難カシイカト
  思ヒマスガ、モウ少シ私達ハ突詰メテ伺ヒ
  タイト思フノデアリマスガ、現在トシテハ
  相當ナモノダト云フ觀察ヲナサッテ居ルヤ
  ウデアリマスガ、ソコデ第二十條ト引掛ツ
  テ解釋シテ行カナケレバナラヌ、第二十條
  デハ價格ノ公正ヲ圖ルト云フコトノ爲ニ、
  色々ノ力ガ發動スルノデハナイカト考ヘサ
  セラレテ居ル、此第二十條ト、今御話シタ
  ヤウナ利益率ノ問題アタリモ關聯シテ考ヘ
  テ行カナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、之ニハ色々ナ異論モアルト思ヒマスガ、
  私ハサウ思ッテ居リマス、サウ云フ意味デ第
  二十條ヲ考ヘテ戴キタイ、私ハ斯ウ云フ風
  ナ考ヲ持ッテ居リマス、是ハ極ク穩カナ平時
  デアルナラバ左程問題ニスベキデハナイト
  思ヒマスケレドモ、申スマデモナク此時局
  ニ際會致シタノデアリマスカラ、色々政府
  ノ御話ヲ承ッタ上デ、國民ハ相當覺悟シテ時
  局ニ當ルコトハ勿論ナノデアリマスケレド
  モ、隨分苦シイ目ニ國民ハ遭フノデアリマ
  スカラ、何カコヽデ國家ノ經濟ナリ、國民
  ノ生活經濟ナリト云フモノガ、政府ノ親切
  ナ考慮デ、民間ノ企業者ノ本當ノ協力ト云
  フモノニ依リマシテ、幾分デモ國家ナリ、
  國民生活ノ方ガ緩和サレルト云フ方法ガア
  レバ、是ハ相當ナ商賣ヲ乘越エテモヤッテ
  行カナケレバナラヌト思ヒマス、此點カラ
  考ヘマスト、鐵ノ値ノ幾分デモ安クナルコ
  トハ、國家豫算ヲ消化スルニモ樂ニナルコ
  トハ勿論、又一般ノ民間ノ經濟ニモ非常ニ
  關係ガアルノデアリマス、其鐵ノ値ヲ安ク
  スルト云フコトハ、今申上ゲマシタヤウナ
  事業會社ガ相當ナ利益ヲ上ゲテ居ル、相當
  厖大ノ利益ヲ上ゲテ居ルト云フ點ニ著眼サ
  レテ、之ニハ勿論反對ガアルト思ヒマスガ、
  其反對ヲ相當ナ程度乘切ッテ、政府ハ製品ノ
  値下ヲナサルトカ、或ハ其他ノコトヲナサ
  ルト云フ態度ニ出テ吳レナケレバ困ルノ
  デハナイカ、斯ウ私ハ思フ、是ハ製鐵業ダ
  ケニ付テ私ハ何等敵ノヤウニ申上ゲルノデ
  ハナイノデアリマシテ、此間カラノ議會ノ
  調子ヲ見テ居リマスト、遞信大臣ガ言ハレ
  ルノニ、電力料金ノ引下ト云フヤウナ問題、
  或ハ電力會社ノ八分ノ配當ト云フモノヲ切
  ラシテモ、或ハ程度ノ値下ヲシタイト云フ
  意向ガアルト云フコトヲ承ッテ居リマス、是
  ガヤハリサウ云フ意向ダト思ヒマス、部
  ノ方面ニ我慢出來ヌ程度マデ我慢サシテ、
  國民生活ノ安定ナリ、其他ノ事業ヲ安全ニ
  發展セシメルト云フ材料ヲ作ッテヤルト云
  フコトハ、政府ノ當然此時局ニ際シテヤル
  ベキコトダト思ヒマス、又農林大臣ノ御話
  ヲ聽イテ居ッテモ、硫安ノ間題デ來ルベキ來
  年度ニ於キマシテハ、硫安會社ノ方ヲ相當
  抑ヘ付ケテデモ、硫安ヲ今マデヨリモ安ク
  スルト云フ決意ガアルト云フコトヲ本會議
  デ述ベラレタノデアリマス、是ハドウスル
  カト言ヘバ、ヤハリ硫安會社ノ利益率ト云
  フモノニ檢討ヲ加ヘテ、之ヲ遠慮サセルト
  云フ方法以外ニナイト思ハレルノデアリマ
  ス、有ユル方面ニサウ云フ努力ガ民間、官
  邊ガ共ニ協力シテ爲スベキ時期ニ入ッタト
  思フノデアリマス、其際ニハ製鐵事業ノ如
  キハ先ヅ一流ニ位サルベキ、注目サルベキ
  事業デアルト思ヒマスカラ、サウ云フ點ニ
  付テ一ツ大臣ノ確乎タル考ヲ置イテ戴カナ
  ケレバイケナイノデアッテ此委員會デサウ
  言明ハ私ハ出來ナイト云フコトヲ知ッテ居
  リマス、無理ニ大臣ヲ突詰メテ言明シロト
  言ッテモ無理デアラウト思ヒマスガ、其氣持
  ハ必ズアルベキモノデアッテ、又一二箇月ノ
  內或ハ三四箇月ノ內ニ、默ッテ居ッテモ議論
  拔キデサウ云フ時局ニ行クベキコトニナル
  ト思ヒマス、サウ云フ點ガ是非必要デアル
  ト思ッテ伺ッタノデアリマスガ、是以上伺ツ
  テモ無理ダト思ヒマスカラ、私ノ强イ意見
  ヲ心ニ留メテ置イテ戴キタイト思ヒマス
  ソレカラ簡單デアリマスカラモウ少シ伺
  ヒタイ、一貫作業デヤリマスノト、一貫作
  業デナイ冷イ銑デヤリマス作業ト、瓲ニ付
  テドレ位費用ノ違ガ出テ來ルカ、モウ一ツ
  一〓ノコトデアリマスカラ、事務當局ニ先
  ニ伺ッテ置キマス、ソレカラ所得稅或ハ營業
  收益稅等ヲ前カラ免稅ヲシテ居ルノモアル
  筈デアリマスガ、昨年度ノ免稅シタ金額ハ
  幾ラニナルカト云フコトヲ一寸伺ッテ置キ
  タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=80

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• 081・吉野信次

  ○吉野國務大臣　說明員カラ說明サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=81

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• 082・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　說明員ノ說明ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=82

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• 083・足立泰雄

  ○足立商工技師　私カラ御答申上ゲマス、
  一貫作業ノ鎔銑ヲ使ッテヤッタ場合ト、冷銑
  ヲ使ッテヤル場合ト「コスト」ガ幾ラニナル
  カト云フコトハ、計算ノ仕樣ニ依ッテ色々
  ノ見方ガアルデアラウト思ヒマス、殊ニ石
  炭ノ値段ニ非常ナ關係ヲ持ッテ參リマスノ
  デ、一〓ニ幾ラト申上ゲル譯ニハイカヌカ
  ト思ヒマスケレドモ、最近ノ石炭ノ値段ノ
  情勢アタリヲ採リマシテ大體ヤリマスレ
  バ、マアドッチカト云フト〓源トノ關係ニ
  ナルノデアリマスカラ、ソレカラ計算致シ
  マスト大體三圓乃至四圓程度ハ安クナルノ
  デハナイカト思ヒマス、極ク粗ッポイ勘定
  デアリマスケレドモ、大體ソンナモノダト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=83

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• 084・東榮二

  ○東政府委員　只今ノ御尋ノ免稅サレタ稅
  額ニ付テハ、只今調ベタモノガゴザイマセ
  ヌカラ、何レ後デ調ベテ申上ゲマス

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• 085・小池四郎

  ○小池委員　只今ノ一貫作業ト冷銑作業ト
  ノ差ト云フモノヲ、實ハモウ少シ詳シク調
  ベテ戴キタイト思ヒマス、是ガ判リマセヌ
  ト、ドノ位ノ作業費ガ節約サレルカト云フ
  金錢ノ問題ダケデハナイト思ヒマスガ、
  貫作業奬勵ノ根本ハ、一ツハヤハリドノ位
  「コスト」ガ下ルカト云フ問題ニ付テモ、
  貫作業ヲ奬勵スベキカ否ヤト云フ決定點ニ
  ナリマス、是ガ曖昧デアルト云フコトハ事
  務當局トシテ困ルト思ヒマス、私共モ專門
  家デハナイノデスカラ、ハッキリシタコトハ
  知リマセヌ、各工場ヲ廻ッテ聽キマスト、時
  ニハ一圓位シカ違ハナイト云フ工場モアル
  ノデアリマス、又相當違フ工場モアル筈デ
  アリマス、私ガ疑ッテ居リマスノハ、政府ノ
  當局ガ製鐵業ニ關シマシテ、此數年來一貫
  作業、一貫作業ト云フコトヲ非常ニ金科玉
  條ノヤウニ强ク言ハレマスケレドモ、私
  實ハ疑ッテ居ルノデアッテ、經費ノ點カラ左
  程一貫作業ハ利益ニナラナイデハナイカト
  云フ感ガ、工場ヲ步キマス時ニスルノ
  デアリマス、私ハサウ云フ計算ハ出來
  マセヌシ、工場ヂモ〓ヘテ吳レマセヌカ
  ラ、本當ノ要領ヲ得ナイ、サウ云フ點ノ
  要領ヲ一ツ確カリ調ベテ戴キタイト思
  フ、ソレガ一ツノ論點ニナルト思フ、ソ
  レガ決レバ免稅ヲスベキデアル、私ハ斯
  ウ云フ意見ヲ持ッテ居リマスガ、此第何條
  カニ書イテアリマスル所ノ所得稅及ビ營業
  收益稅ノ免稅-私ハ今日ノ製鐵業ハ免稅
  マデシテ奬勵スル程ノコトハナイノデハナ
  イカト云フ、逆ナ意見ヲ持ッテ居リマス、言
  フ迄モナク製鐵業ノ急角度ノ發展ヲ希望ス
  ルコトハ、私ハ誰ニモ負ケナイノデアリマ
  スガ、今日ノヤウナ非常ニ順調ニ行ッテ居
  ル際ニ、國家ガ之ニ免稅マデシテヤル必要
  ハナイト思ヒマス、自由主義ノ時分ナラバ
  斯ウ云フコトモ勿論當然ナ處置デアリマ
  ス、併シ大分時代ガ違ッテ參リマシテ、經
  營ヲシテ居リマスル製鐵事業者ト雖モ、今
  ハ構ヘガ違ッテ來テ居ル、昨年度免稅ヲシマ
  シタ製鐵業ニ付テノ金額ト云フモノハ-
  其金額ガアッタレバコソ、製鐵業者ガ喜ンデ
  飛付イテ發展計畫ヲシヨウト云フ程ノ、大
  キナ金額ヂヤナイト思フノデス、或ル製鐵
  業者カラ言ヒマスルト、免稅ナドハドウデ
  モ宜イノダ、ソンナモノハ要ラナイノデ、
  勝手ニ事業ヲシタイノダト云フ位ナ意向ヲ
  持ッテ居ル人モアル位デアリマシテ、免稅ヲ
  囮ニサレテ發奮シテヤルト云フノハ、少ク
  トモ大企業者ニハナイ筈ダト思ヒマス、サ
  ウスレバ折角製鐵事業法ノ中デ免稅ヲシテ
  ヤルト大イニ謳ッテ、奬勵ノ一手段ニサレテ
  居ルヤウデアリマスガ、大シタ刺戟劑ニナ
  ラヌ、大シタ刺戟劑ニナラヌモノニ、ナケ
  無シノ政府ガ幾分デモ取ルベキ金ヲ取ラナ
  イト云フコトハ、詰ラヌコトデハナイカト
  思ッテ居タ、寧ロ思切ッテ此際取ルモノハ取ッ
  テシマッテ、モット製鐵業者ト政府當局ト、
  本當ニ日本ノ國家ノ前途ニ向ッテ協力シテ
  鐵ノ供給ニ當リ、生產ニ當ルト云フヤウ精
  神的ナ一ツノ結合ヲ爲サル方ガ、僅カナ金
  額デ奬勵スルヨリモ、私ハ有效デハナイカ
  ト思フ、私ハ是ダケノ小サナ金ノ問題ヲ申
  上ゲテ居ルノデハナイ、今後政府ト民間ノ
  重要產業々者トガ、心ヲ一ツニシテ進マナ
  ケレバナラヌト云フ立前ニ於キマシテ、サ
  ウ云フ方針ノ下ニ進ムノガ本當デアッテ、金
  ヲ與ヘルト云フコトハ必要ハナイヂヤナイ
  カト云フ氣ガスル、其氣構ヘガ政府當局ニ
  欲シイ、勿論先程高橋委員カラ言ハレマシ
  タヤウニ、貧鑛ノ〓究トカ、或ハ砂鐵ノ〓
  究トカ云フコトニ付キマシテハ、是ハ實際
  金ガナイ爲ニ〓究ガ疎カニナッタ事實ガア
  ルノデ、サウ云フモノニ對シテハ別途ニー
  ー詰リ所得稅、營業收益稅ト云フヤウナモ
  ノハ其儘ニシテ置イテ、サウ云フ〓究ニ充
  テルトカ、大々的ナ奬勵ヲ片方ニ與ヘルノ
  ガ本當デアルト思フ、製鐵業者ヲ樂ニサセ
  ルヨリモ、サウ云フ〓究ノ方ヲ樂ニサセル
  方法ヲ執ルノガ宜イ、私モ技術ニハ幾分ノ
  經驗ガアルノデアリマスガ、高橋委員ガ言
  ハレマシタ通リ、今日ノ技術者ガ色々ナ劃
  期的ナ發明ヲ致サウトシマシテモ、實際金
  ハナシ、〓究所ハナイト云フ點ニ始終打突
  カンチ、本當ノ〓究ハ出來ナイ、本當ノ自分
  ノ素質ナリ天才ヲ發揮スルダケノ準備ヲ、
  誰モ作ッテ吳レナイト云フ點ニ、日本ノ〓究
  ガ遲レル原因ガアルト私ハ思フ、サウ云フ
  方面ニ於テ一ツ野ニ遺材ナカラシメルヤウ
  ナ思切ッタ補助ナリ、奬勵ナリヲヤッテ戴キ
  タイト思フ、序デアリマスカラ希望ヲ申上
  ゲマスガ、例ヘバ日本製鐵ナリ、或ハ何ナ
  リニ於テ、其處ニ雇傭サレテ從業シテ居ル
  技術者ガ、畫期的ナ一ツノ發明ナリ發見ナ
  リヲシタト云フ場合ニ、之ニ報ユル點ガ非
  常ニ薄インデス、之ヲ厚イトハ大臣モ仰シ
  ヤラナイト思フ、非常ニ薄イ、勿論「パテ
  ント」トナルベキモノデアリマスケレドモ、
  是ハ自身ノ「パテント」ニナラナイ、國家ノ
  「パテント」トナルカ、會社ノ「パテント」ニ
  ナル、發明シタト云フダケノモノデアッテ、
  結局何ニモナラナイ、其發明ガ世間カラ報
  ヒラレナイ、會社カラモ報ヒラレナイ、國家
  カラモ報ヒラレナイ、本當ニ緣ノ下ノ力持
  ヲシナケレバナラヌト云フコトガ多イ、之
  ヲ大膽ニ奬勵シ慫慂スル施設ヲ、商工當局
  ガ御作リニナルコトガ、私ハ有意義ダト思
  フ、私ハ自分ガ技術者トシテノ經驗ガアリ
  マス上カラモサウ言ヘル、是ハ能ク調ベテ
  戴イテ、何等カノ方法ヲ是非ヤッテ戴キタイ
  ト思フノデアリマス
  次ハ是ハ小サナ問題デアリマスルケレド
  モ一ツ申上ゲテ置キマス、今錻力ノ需要ガ
  非常ニ增加シテ居ルノデアリマス、斯ウ云
  フ時局ニナリマスルト、一層殖エルト思ヒ
  マス、所ガ此錻力ハ現在ヤハリ相當輸入シ
  テ居ル、日本デモ工場ガアリマシテ錻力ヲ
  製造シテ居リマスルガ、ソレハ勿論錫ト云
  フモノガ、日本ニハ殆ドアリマセヌカラ、
  錫ヲ外國カラ輸入シナケレバナラヌ、日本
  ノ錻力工場ハ錫ヲ輸入シテ居リマス、所ガ
  錫ノ輸入ニ非常ナ制限ガアル、例ヘバ爲替
  管理ダトカ色々ナ關係モアリマセウガ、現
  在デハ斯ウ云フコトニナッテ居ルヤウデア
  リマス、錫ヲ輸入シテ宜イト云フ數量ノ割
  當ハ、前年或ハ前々年ノ錻力製造ノ實績ニ
  應ジテ決メテ行ク、所ガ一方ニ於テ錻力ノ
  需要ガ殖エテ參リマスルカラ、新シイ工場
  ガ殖エテ來テ、去年アタリカラ工場ヲ建テ
  テ錻力ヲ作ル所ガ殖エテ來タ、マダ此暮カ
  ラ來年ノ春ニ掛ケテモ增設サレルト思フノ
  デアリマス、商工當局ノ御考デハ、今マデ
  ノ錻力製造ノ實績ニ依ッテ、錫ノ輸入割當ヲ
  決メルト云フ立前カラ、新工場ニハ殆ド錫
  ノ輸入ヲ許サレナイト云フコトニ、今日ナッ
  テ居ルノデアリマス、是ハ非常ナ矛盾デア
  リマス、サウシテ置イテ、一方ニ錻力ノ精
  製品ヲ相當輸入シテ居ル、是ナドハ計畫的
  ニヤッテ居ルコトデハナイト思ヒマスケレ
  ドモ、少シ此點ニ矛盾ガアルノデハナイカ
  ト思ヒマスガ、サウ云フ點ハ一體ドウ云フ
  風ナ結果ニナッテ居ルカ承リタイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=85

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• 086・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御話ノ點ハ御尤デアリマ
  ス、製鐵會社ガ今日相當利益ガアルノデア
  リマスカラ、是カラ事業ヲ擴張シタリ、經
  營シタリスルト云フ場合ニハ、今御話ノヤ
  ウナ心構デ以テヤルヤウニ、吾々モ導キタ
  イト思フノデアリマス、唯利益ガアリマス
  ト云ウテ、一旦反動ノ時ニナリマスト、此
  事業ト云フモノハ非常ニ不況時代ニハ、苦
  痛ヲ受ケル事業デアリマスカラ、恐ラク將
  來長キニ亙ッテ、斯ウ云フ景氣ガアルノダト
  云フコトヲ保障セラレルナラバ、製鐵業者
  モ此程度ノ免稅ノ規定ハ、大シテ必要トハ
  感ジナイダラウト思ヒマスケレドモ、先程申
  シマシタ通リ、過去ニ於キマシテモ隨分不
  況ガ永イ間續イタト云フヤウナコトモアル
  ノデアリマシテ、最近ノコトハ存ジマセヌ
  ガ、私ノ關係スル限リニ於キマシテハ、先
  程申シマシタ通リ從來ノ奬勵法ハ許可事業
  ニナッテ居ラナイノデアリマス、免稅ノ特權
  ヲ得ントスル時ニダケ、認可事業ニナッテ
  居ルノデアリマス、其場合ニモ免稅ノ特權
  ヲ受ケズシテ、今御話ノヤウニヤルト云フ
  コトニナッテ來マスレバ、是ハドン〓〓出來
  ル筈デアリマスケレドモ、實際ハサウ云フ
  コトニナッテ居ナイト云フコトヲ考ヘマシ
  テモ、此規定ハ相當ニ當業者トシテハ希望
  シテ居ルノダト云フヤウニ考ヘテ居リマ
  ス、併シ御話ノヤウナ點ハ洵ニ御尤デアリ
  マスカラ、私モ將來ハサウ云フヤウナ趣旨
  ニ副フヤウニ、業者トノ間ニ話ヲ進メテ行
  キタイト考ヘテ居リマス、免稅額ノ點ハ私
  モ昨年ノコトハ的確ニ存ジマセヌケレド
  モ、私ノ記憶デハヤハリ從來數百萬圓ノ金
  額ニ上ッテ居ッタト思ヒマス、所得稅、營業
  稅ノ免稅ガ二百萬圓、或ハ三百萬圓デスカ
  ラ、其金額ガ相當カドウカト云フコトハ、
  見方ニ依ッテ違ヒマスガ、マア相當ノ免稅點
  デアッタト思ヒマス、斯ウ御承知ヲ願ヒマ
  ス、ソレカラ錻力、錫ノ關係ニ付キマシテ
  ハ、實ハ爲替管理ノ關係ト、產業上ノ關係
  ニ於キマシテ-是モ率直ニ申上ゲマス
  ガ、從來何ト言ヒマスカ、大藏省ト商工省
  ト分レテ居リマスガ、聯絡ガ十分デナカッタ
  ト云フ憾ガアリマシタモノデスカラ、是デ
  ハイケナイ、斯ウ云フ時勢ニ對處スル爲ニ
  ハ、ヤハリ產業ノ關係ト爲替管理ノ關係ト
  云フモノヲ、常ニ緊密ニヤラナケレバナラ
  又、斯ウ云フコトヲ痛感致シマシタノデ、
  此度兩者ノ間デ、其事ヲ共同ノ責任ヲ以テ
  ヤルト云フ積リニ致シマシテ、今度ノ追加
  豫算ニ於テモ、ソレニ對スル若干ノ經費ヲ
  計上致シマシタ、是カラハ大藏省ノ方ト商
  工省ノ方ト一體ニナッテ爲替管理ヲヤリマ
  ス時ニ、產業上ノ見地ト云フモノヲ十分ニ
  顧慮シテヤル、斯ウ申上ゲマスト、ソレデ
  ハ今マデ產業上ノ見地ヲ一ツモ考慮シナイ
  デヤッタノカト言ハレルト思ヒマスガ、サウ
  云フ意味デハナイノデ、此上トモ其點ニ深
  甚ノ考慮ヲ拂ヒタイト云フ積リデアリマ
  ス、今後ハ今申サレマシタヤウナ點ガ若シ
  事實デアリマシタナラバ、サウ云フ點ノ弊
  害ト云フモノハナイヤウニ努メタイト思ッ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=86

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• 087・小池四郎

  ○小池委員　大臣ノ御氣持ハ能ク分リマ
  ス、唯併シ其中ニ斯ウ云フコトヲ仰ッシヤラ
  レルト又言ヒタクナリマス、製鐵業ノ利益ハ
  今日ハ相當デアルケレドモ、過去ニ於テ非
  常ニ不況ナ時ガアッタ、又此景氣ガ續クトハ
  見ラレヌ、將來ノコトモアル、ダカラ當分此
  位ナモノハオ目滾シデ見テ置クノガ當然ダ
  ト云フ意味ガアリマシタ、ソレデハドウモ
  困ルノデアリマシテ、將來此製鐵業ガ不況ニ
  ナッタ際ニ、折角此製鐵事業法ヲ作ラレテ、
  政府ガ製鐵業ヲ「リード」シヨウト云フ立場
  ニ今度ナルノデアリマスカラ、前ノ自由主
  義經濟時代ノヤウナ、ガタ落チノ來ルヤウ
  ナコトヲ豫想サレテ居ッテハ私ハ困ルト思
  フノデス、是ハ恐ラクナイト大臣ガ言明シ
  テ下サラナケレバナラヌ、斯ウ云フ軍需工
  業的ニ無理ニ生產ヲ擴大サセテ來夕政府ノ
  責任トシテ、昔ノヤウナ景氣ノ猛烈ナル轉
  換ガ、將來モ同ジク來ルモノトシテ立論サ
  レルコトハ、是ハ一寸困ルト思フ、サウ云
  フ意味ヂヤナイト思ヒマスガ、サウ云フコ
  トハ一寸誤解ヲ招クト思フ、將來國家ガ責
  任ヲ持ッテ戴キタイ、決シテ製鐵業ニ恐慌ヲ
  起サセヌ、其代リ此景氣ノ好イ時ニハ、國
  家ト共ニ抱合ッテ行クト云フ態度ヲ取ッテ下
  サルコトガ、新シキ政治方針デアルト思フ
  ノデス、是ハ申上ゲテサウカドウカト云ッテ
  突詰メテモイケナイノデ、大體分ッテ居リマ
  スルカラ、希望トシテ申上ゲテ置キマス、
  結論ハ簡單デスガ、要スルニ事業會社ガ鐵
  ノ値段ヲ下ゲルヤウニ、政府ガ誘導シテ下
  サルコトヲ御願ヒスルノデアリマシテ、是
  ハモウ否應ナシニ私ハ時局ガサウサセルト
  思ヒマスカラ、モウ議論ハ必要ハナイト思
  ヒマス-陸軍ノ方ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=87

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• 088・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　陸軍ノ方ハ後デ見エマス、
  一寸稅ノコトニ關聯シテ簡單ニ發言シタイ
  ト云フコトデアリマスカラ、南條君ニ發言
  ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=88

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• 089・南條徳男

  ○南條委員　只今稅ノ事ガ出マシタカラ、
  議事ノ進行ヲ圖ル意味ニ於テ、簡單ニソレ
  ニ關聯シタコトヲ伺ッテ見タイト思ヒマス、
  ソレハ只今ノ第十二條ニ關スルコトナノデ
  アリマスガ、詰リ免稅ノ問題ト地方財政ト
  ニ關聯シタ稅ノ問題デアリマスガ、私ハ免
  稅ヲ必要トシナイト云フ只今ノ御意見モ御
  尤ト思ヒマスケレドモ、ソレハ直チニ製鐵
  業者ニ對シテ【今免稅ノ必要ハナイトマデ
  ハ、强ク主張スル意思モアリマセヌガ、今
  日ハ只今ノヤウナ御議論ノ立ツヤウナ時代
  ナノデアリマスカラ、殊ニ業者ガ特殊ナ事
  情デ、非常ニ利益ノ擧ッテ居ル際デアリマス
  カラ、サウ云フ時ニ又半面ニ於テ地方財政
  交附金ト云フヤウナコトデ、地方ノ財政ヲ
  補フト云フヤウナ空氣ノ時代ニ、地方自治
  體ノ財源ト云フモノヲ、非常ニ中央政府ト
  シテ考慮シナケレバナラナイ秋ナノデアリ
  やく、然ルニ前ノ製鐵奬勵法ノ時代カラ、
  永年ノ仕來リデアリマシタ關係デ、此十二
  條ト云フモノガ其儘現行法ニモ殘ッテ居ル
  ノデアリマスガ、是ハ時勢ノ進展、今日ノ
  ヤウナ場合カラ相當考慮シテ、少クトモ國
  稅ノ免除ハ致シ方ナイト思ヒマスガ、地方
  稅ノ免稅マデモ、奬勵法ト同ジニ現行法ニ
  規定サレテ居ルト云フコトハ、地方ノ財政
  ヲ或ル程度マデ危貽ニ瀕セシムルコトガア
  ルト思フノデアリマス、鑛業法ニ於キマシ
  テハ、一昨年多年ノ問題デアリマシタガ、
  地方ノ財政ニ鑛產稅ガ委讓サレマシテ、今
  日デハ之ニ依ッテ非常ニ潤ッテ居ル、其姉妹
  法デアル所ノ製鐵業法ニ其恩典ガナイト云
  フコトハ、地方自治體ハ洵ニ困ルノデアリ
  やく、之ニ對シテ當局ハ、イヤソレニ付テ
  ハ地方自治體ト當業會社トガ妥協シテ、サ
  ウシテ交附金ト云フヤウナ形ヲ以テ、其自
  治體ニ寄附ヲシテ居ルカラ宜イト云フヤウ
  ナ御答辯ガアラウト思ヒマスガ、是ハ從來
  ノ慣例デアリマス、所ガ是ハ洵ニ弊害ガ伴
  フノデアリマス、又紛爭ガ伴ヒ勝ナノデア
  リマス、ソレハ從來-此十二條ニモ規定
  シテアリマスガ、市町村其他之ニ準ズベキ
  モノニシテ、特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可
  ヲ受ケタ場合ハ此限リニ在ラズト云フ規定
  ニ依ッテ、妥協ニ應ジテ此交附金ヲ出シテ居
  ルノデアリマス、此特別ノ事情ニ基イテ政
  府ノ認可ヲ受ケル必要ガ起キテ來ル、所ガ
  是ハ內務省ヤ大藏省ハ地方自治體ニ贊成ヲ
  シテ、サウシテ特別ナ事情ヲ認メテ吳レル
  ヤウナモノガ多イノデアリマスガ、商工省
  ハ得テ製鐵業者ノ方ノ肩ヲ持チ、成ベク左
  樣ナ特別ノ事情ト云フコトヲ認メナイヤウ
  ナ傾向ガアリ勝ダト云フコトヲ聞イテ居リ
  マス、ソレガ爲ニ地方自治體デ此稅金ノ附
  加稅ヲ取ル爲ニハ、困難ナ實情ガ非常ニ澤
  山アルノデアリマス、私ハ其實例ヲ能ク知ツ
  テ居リマスガ、左樣ナコトヲ今日ノヤウナ
  好況時代ニ於テ-只今ノヤウニ免稅ノ必
  要ガナイト云フヤウナコトガ出ル場合ニ於
  テ,殊更斯樣ナコトヲ抽象的ニ紛ラハシイ
  條文ヲ設ケナイデモ、鑛產稅其他ガ地方ニ
  委讓サレテ居ル時代ニ於テハ、殊ニ地方財
  政ノ危急ヲ救ハナケレバナラヌト云フ國民
  ノ聲ガアル時ニハ、斯樣ナコトハ明文デ以
  テ、國稅ハ少クトモ免除スルガ、地方町村
  ノ附加稅ハ相當ノ課稅ヲスルコトガ出來ル
  ト云フ位ナ規定ヲ、明文デ明記サレルコト
  ガ妥當デハナイカト思フノデアリマスガ、
  當局ノ御意見ハドウカト云フコトヲ御伺致
  シマス

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• 090・吉野信次

  ○吉野國務大臣　地方ノ方カラ申シマスレ
  バ御話ノヤウナ點モ御尤ダト思ヒマスガ、
  是モ先程申シマシタ通リ沿革上ノ規定デア
  リマスルカラ、殊ニ此規定ニハ但書ガアリ
  マシテ、取ッテモ宜イト云フ規定ガアリマシ
  テ、現ニ御承知ノ通リ室蘭ナリ、川崎ナド
  ハ取ッテ居ルト云フ場合モゴザイマスガ、今
  日ノ所旣得ノ權利トシテ、旣ニ與ヘテ居ル
  關係モゴザイマスカラ、特ニ立法ヲ以テ止
  メルト云フダケノヽコトモアルマイト云フ
  位ニ考ヘテ、其儘ニ置キマシタヤウナ次第
  デアリマス

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• 091・南條徳男

  ○南條委員　只今ノ大臣ノ御答辯ノ通リノ
  事情デアリマス、今室蘭ノ御話ガアリマシ
  タガ、最近室蘭モ八幡ノ製鐵所ノヤウナ大
  擴張ヲシヨウトシテ居ルヤウナコトニナッ
  テ居リマス、殊ニ又其點ニ付テモ協定ヲ
  シナケレバナラヌガ、サウスルト先年協
  定ニ付テ非常ニ紛糾ガアッタガ、今度更ニ協
  定ヲスルコトニ付テハ、又困難ガ生ズルダ
  ラウト思ヒマス、サウスルト相當從業員モ
  殖エテ、今マデ人口ガ六萬バカリノモノガ
  假ニ十二萬カ十三萬ニナルト、〓育、衞生
  其他ノ設備ニ於テ、非常ニ自治體ガ負擔ガ
  增スノデアリマス、サウ云フ場合ニ於テ、
  是ダケノ條文デ抽象的ナ議論ヲシテ協定ヲ
  スルト云フコトニナルト、市ノ當事者ガ非
  常ナ困難ヲ來ス事情ガ出來テ來ルノデアリ
  やく、其爲ニ自治體ノ色々ナ摩擦ガ生ジマ
  シテ、折角地方民ガ製鐵會社ノ增產ニ依ッテ
  恩惠ヲ受ケルト喜ンダモノガ、ソレガ爲ニ
  稅ガ足リナイト云フト、外ノ二般ノ市民ガ
  負擔ヲ多クシナケレバナラヌト云フコトニ
  ナッテ、却テ喜ビガ禍ニ轉ズルヤウナコトニ
  ナリハセヌカト云フコトヲ、憂慮スルノデ
  アリマスカラ、先程ノヤウニ色々ナ議論ガ
  出ルヤウナ今日ノ時代ニ於テハ、寧ロ今マ
  デノ色々ナ因襲ニ囚ハレナイデ、鑛產稅ノ
  ヤウニハッキリト地方稅ダケハ地方ニ移讓
  スルヤウナ仕組ニ、何トカ御工夫ヲ願ヘナ
  イカ、一ツモウ一段ノ御考慮ヲ願ヒタイト
  思ヒマス、是ハ今度出來ナクトモ何カ他ノ
  方法ニ依ッテ、モウ少シ强化スル方法ガアル
  ナラバ、御考ヘ願ヒタイト思ヒマス

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• 092・吉野信次

  ○吉野國務大臣　段々ノ御話デゴザイマス
  ガ、マア少クトモ商工省ニ關スル限リハ、
  唯事業者保護ト云フヤウナ考ハ、從來モナ
  カッタノデアリマスガ、今後トモサウ云フコ
  トハナク、サウ云フ問題ガアリマシタナラ
  バ、公正妥當ナ見地カラ話合ッテ、サウ云フ
  方面ノ官廳同志、或ハ市町村トノ間ノ摩擦
  相剋ト云フモノハ、成ベクナクスルヤウニ
  努メタイト考ヘテ居リマス

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• 093・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　井上良次君

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• 094・井上良次

  ○井上(良)委員　大體製鐵事業法ニ對スル
  質問ハ、私ノ黨ノ方デ後デ塚本君カラ致シ
  マスガ、私ガ簡單ニ御質問申上ゲタイ點ハ、
  第一番ハ政府ガ此鐵製事業法案ヲ作リマス
  所以ハ、鐵鋼國策ノ上カラ作ルノダト云フ
  ヤウナ重要ナ國策ノ上ニ立テラレテ居ルノ
  デアリマス、隨テソレハ重要產業ノ國營ノ
  第一步デアルト、私共ハ先ヅ見テ居ル譯デ
  アリマス、サウ云フ立前ニ立ッテ私共ハ此法
  律案ヲ審議セナケレバナラヌト、斯ウ考ヘ
  マス、所ガ今マデ色々本法律案ヲ取扱ヒマ
  シタ各委員ノ御言葉ヲ承ッテ居リマスルト
  云フト、製鐵資本家側ノ意見ヲ出來ルダケ
  尊重シテ、本案ヲ審議シヨウトスルカノヤ
  ウニ見エルノデアリマス、是ハ私共ハ非常
  ニ遺憾ニ存ズルノデアリマス、何デサウ云
  フコトヲ言フカト申シマスト、今朝ノ朝日
  或ハ讀賣其他ノ新聞ニ出テ居リマスガ、鐵
  鋼協會ノ協議會デ相談ヲサレタ結果、吉野
  商相ニ對シマシテ一ツノ意見書ガ出テ居リ
  マス、其意見書ヲ讀ンデ居リマスト云フト、
  吾々ノ希望ノ一部ヲ參酌シテ下サレテ欣幸
  ニ堪ヘナイ、就テハ更ニ役員解任ノ問題ト
  カ、補償規定ノ問題トカ、斯ウ云フ問題ニ
  付テ、一ツ一層御考慮ヲ賜リタイ、將來是
  ガ運用ニ付テハ、吾々ノ事業ノ發展ノ爲ニ
  適宜ノ處置ヲ誤ラヌヤウニシテ貰ヒタイ、
  斯ウ云フ御意嚮ヲ述ベテ-蟲ノ好イ御意
  嚮ト私ハ思フノデスガ、國家ガ今何故ニ此
  樣ナ重要ナ問題ヲ取上ゲテ法律ヲ作ラナケ
  レバナラヌカト云フコトニ付テハ、一つんも
  考ヘテ居ナイコトハ實ニ心外デアリマス、
  御偉イ人々ハ口ヲ開キマスト云フト、非常
  時トカ或ハ國難トカ言ウテ、ヤイ〓〓言ッ
  テ、國民ノ前ニ見エテ居リマスガ、併ナガ
  ラ自ラハドンナコトヲシテ居ルカト云ヘ
  バ、現ニ北支ノアノ如キ大事件ニ當面ヲシ
  テ、明日デモ大戰爭ガ始マラウカト云フヤ
  ウナ時ニナッテ居ルニ拘ラズ、尙ホ斯ノ如キ
  蟲ノ好イコトヲ平氣デ述ベテ居ルノデス、
  コンナコトデ本當ニ我國ノ此行詰リノ現狀
  ヲ打開シテ、東洋ノ君主國トシテ世界ニ覇
  ヲ唱ヘルコトガ出來ルカドウカト云フコト
  ヲ思フ時ニ、私共ハ非常ニ心外ニ堪ヘナイ
  ノデアリマス、隨テ政府ハ斯ノ如キ蟲ノ好
  イ要求ニ對シテハ、斷乎トシテ之ヲ拒ケテ、
  政府ノ持ッテ居ル所信ヲ遂行サレンコトヲ、
  私ハ先ヅ最初ニ希望スルノデアリマス、ソ
  レト同時ニ此法律案ハ、飽クマデ製鐵事業
  ニ付テノ一ツノ奬勵、助成、更ニ統制、斯
  ウ云フモノヲ大體法ノ目的ニシテ作ラレテ
  居リマスガ、併シ本法デ一番大キナ缺點ハ
  勞働者ノ對策ニ對スル考へ方ガ、一ツモ盛
  ラレテ居ナイト云フコトナノデアリマス、
  是ハ考ヘ方ニ依リマスト、勞働者ノ問題ナ
  ドト云フモノハ、内務省ノ社會局ニデモ任
  セテ一ツ考ヘテ貰ッタラ宜イコトデ、商工省
  ハ考ヘル必要ハナイ、斯ウ云フコトヲ言ハ
  レルカ存ジマセヌケレドモ、併シ政府ガ國
  策ノ上カラ此法律案ヲ通過サヽウト致シマ
  スルナラバ、當然考慮セナケレバナラヌ間
  題ダト思ヒマス、一ツノ事業ニ對シマシテ
  ハ、勿論一方ニアッテハ巨大ナ資本ヲ必要ト
  致シマス、併ナガラ一方ニハ勞働者ノ理解
  アル協力ガナケレバ、其事業ノ眞ノ遂行ハ
  出來得ナイノデアリマス、サウ云フ立前カ
  ラ私共ハ勞働者ガ其事業ヲ理解シテ、重要
  ナル國策產業デアルト云フコトヲ自覺ヲシ
  テ、其產業ニ協力スルヤウナコトニ法的ニ
  導カナケレバナラヌト考ヘルノデアリマ
  ス、サウ云フ立前カラ私共ハ勞働者ノ理解
  アル協力ヲ求メル前提ト致シマシテハ、勞働
  者ノ待遇ヲ法律的ニ公認致シマシテ、更ニ彼
  等ノ人格ヲ十分認メテヤル、尊重シテヤル、
  此立前ニ立ッテ詰リ此勞資協力ガ產業ノ上
  ニ於テハ絕對ニ必要デアルト私ハ思ヒマス、
  サウ云フ立前カラ勞働時間制ヲ決メル、或
  ハ又最低賃銀制ヲ決メル、或ハ疾病、災害
  ニ對スル補償ノ方法ヲ決メル、斯ウ云フコ
  トガ一方ニナケレバイカヌノヂヤナイカト
  私ハ考ヘテ居リマス、是ハ資本家ダケガ考
  ヘル場合ニハ、資本家ノ利潤ノ上デ考ヘタ
  ラ宜イ法律案デアリマスカラ、ソレダケノ
  コトデ宜イノデスケレドモ、國策上ノ立前
  デ本當ニ增產計畫ヲ立テヨウ、鐵鋼ノ生產
  擴充ヲヤラウトシマスナラバ、勞資ノ兩方
  ガ協力シナケレバナラヌト考ヘマス、サウ
  云フ立前カラ、是ハ一ツノ特別法デゴザイ
  マスカラ、勞働者ノ問題ニ對スル一ツノ規
  定ヲ決メル必要ガアラウト、私ハ考ヘルノ
  デスガ、之ニ對スル大臣ノ御意見ヲ伺ヒタ
  イ、若シ此法案ニ對シテサウ云フコトガ出
  來ヌト云フナラバ、施行細則ノ上ニ於テ、
  或ハ又法案ノ中ニ決メラレテ居リマスヤウ
  ナ事業委員會ト云フノガアリマスガ、其委
  員會ノ取扱ノ場合ニ於テ、此問題ヲドウ
  體考ヘルカト云フコトニ付テ御示シ願ヒ
  タイト思ヒマス、尙ホ私共進ンデ、政府ガ
  許可ヲ與ヘマス所ノ製鐵事業會社ニ對シマ
  シテハ、必ズ其會社每ニ勞資委員會ト云フ
  モノヲ作ッテ戴キマシテ、勞資双方若干名ノ
  委員ヲ出シテ、政府或ハ商工當局ガ立會ヒ
  マシテ、勞働者ノ問題ニ對シテノ合理的ナ
  解決ヲ圖ッテ貰フヤウニ出來ナイカ、此點ニ
  付テノ御意見ヲ伺ヒタイ、ソレカラ是ハ今
  年第七十議會ニ於テ、龜井サンカラモ質問
  サレテ居リマスガ、所謂政府ノ製鐵事業委
  員會ニ付テノ代表者ノ問題デゴザイマス、
  之ニ付キマシテハ單ニ製鐵會社ダケノ委員
  デ委員會ヲ構成スル、或ハ又商工當局、或
  ハ之ニ關係ノアル官吏、斯ウ云フ人デ委員
  會ヲ作ルト云フノデナシニ、鐵ノ事業ニ實
  際深刻ナ經驗ヲ持ッテ居リマス所ノ中小
  工業ノ鐵工業者ノ代表者ヲ、此委員會ニ入
  レル必要ガアルト私ハ考ヘマスガ、之ニ付
  テノ商工大臣ノ御意見、ソレカラ更ニ鐵ガ
  上ガルカ下ガルカ、多イカ少イカト云フコ
  トハ、直チニ國民生活ニ重大ナル影響ヲ持
  ツ、サウ云フコトカラ生活部門ヲ代表シマ
  ス所ノ、消費者側ノ代表者ヲ參加セシメル
  必要ガアルト思ヒマスガ、之ニ付テノ御意
  見ヲ承リタイ、最後ニ伺ヒタイ點ハ、日本ノ
  鐵鋼ノ重要ナ資材ノ輸入國ハ印度デアリマ
  ス、銑鐵、屑鐵ノ狀況ヲ見テモ、大部分印
  度カラ輸入サレテ居ルノデアリマスガ、商
  工當局ハ英領印度、詰リ其支配權力ヲ握ッテ
  居リマス英國ニ對シテノ見透シデゴザイマ
  スガ、先ニモ一寸誰カ觸レテ居ッタヤウニ考
  ヘマスガ、英國トノ國交ニ付テ、將來危險
  ハ全然ナイカト云フ見透シデアリマス、國
  交ハ永久ニ整調サレテ、日本ノ鐵資材ノ輸
  入ニ付テハ、何等ノ支障ガナイト云フ言明
  ガサレルカドウカ、私ハナンデ斯ウ云フコ
  トヲ問フカト云フト、現在日本ハ北支ニ於
  テ事變ニ關係シテ居リマス、御覽ノ通リ支
  那ハ蔣介石ノ背景ヲ探ル迄モナク、揚子江
  沿岸、或ハ南支、或ハ北支ノ一部、到ル處
  ニ亞米利加或ハ英國ノ資本ガ入ッテ居リマ
  ス、若シアノ事變ニ於テ、支那軍ノ排日、
  侮日ノ積極的ナ態度ニ對抗致シマシテ、日
  本軍ガアレヲ擊滅シナケレバナラヌト云フ
  コトニナリマスト云フト、吾々ノ素人的ナ
  考方カラ致シマシテモ、アノ事變ハ相當發展
  スルト見テ居リマス、發展シマシタ場合ハ、
  之ニ重大ナ權益ヲ持ッテ居リマス所ノ、或ハ
  租界ヲ持チ、居留民ヲ持ッテ居リマス英國
  ガ、ドウ出テ來ルカト云フ問題デアリマス、
  吾々ハ此事變ガ簡單ニ片付クトハ考ヘマセ
  ヌ、相當長引クト私共ハ先ヅ睨ンデ居リマ
  ス、サウシテサウ云フ見透シヲ以テ、此戰
  爭ガ擴大スルト云フコトニナリマシタナラ
  バ必ズ英國ノ投資シテ居リマス色ンナ關
  係ニ、重大ナ影響ヲ與ヘルコトニナルト考
  ヘマスガ、此北支ノ問題ガドウナルカト云
  フト、直接私ハ印度ニモ影響シテ來ルト思
  フ、斯ウ云フ點カラ、如何ニ政府ガ製鐵事
  業法ヲ作リマシテ、ヂヤン〓〓增產ヲ計畫
  シヨウト致シマシテモ、其重要ナ原料ノ輸
  入國デアリマス英領印度ニ於テ、北支事變
  ヲ中心トシテ、英國トノ關係ガ非常ニ惡ク
  ナルト云フコトニ付テモ、吾々ハ以上ノ見
  透シヲ明カニシテ置イテ貰ハナケレバナラ
  ヌト考ヘマス、斯ウ云フ點ニ付テ商工大臣
  ノ明快ナル御答辯ヲ伺ヒタイト考ヘルノデ
  アリマス、尙ホ色々御質問致シタイノデア
  リマスガ、一寸他ニ出ナケレバナリマセヌ
  ノデ、詳シイ事ニ付キマシテハ、塚本君カ
  ラ質問サレルコトニナリマスカラ、私ハ此
  勞働者ノ待遇ノ問題ニ付テ、又鐵鋼資源ノ
  輸入國デアリマス印度ノ對英關係ニ付テノ
  見透シヲ伺ヒタイ

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• 095・吉野信次

  ○吉野國務大臣　總テノ企業ニ付キマシ
  テ、人的ノ要素ガ大切デアルト云フコトハ
  御話ノ通リデアリマス、唯法律ハドンナ事
  デモ規定出來ル譯デアリマスケレドモ、自
  ラ立法ノ體系ト云フモノハ定ッテ居ルノデ
  アリマスカラ、勞働條件ト云フモノニ關ス
  ルコトハ、此法律デ以テ特別ニ規定スルダ
  ケノ必要ハナカラウト考ヘテ居リマス、製
  鐵事業委員會ト云フモノヽ構成ニ關スル御
  話ニ付キマシテハ、關係官吏、當業者ト云
  フモノヽ外ニ、ヤハリ公平ナル第三者トシ
  テ公益ヲ代表スル方面ノ人ヲモ加ヘタイト
  思ヒマスガ、何ガ公益ヲ代表スル者デアル
  カ、御話ノ通リ中小ノ鐵工業者デアルトカ、
  或ハ消費者デアルカト云フコトハ、中々難
  シイ問題デアリマシテ、サウ云フ者ヲ擧ゲ
  マス時ニハ篤ト考慮シナケレバナラヌ、斯
  樣ニ考ヘテ居リマス、印度ノ問題ニ付テハ、
  御承知ノ通リ目下印度カラ、大體日本デ需
  要致シマス銑鐵ノ三分ノ一位ハ入レテ居ル
  ヤウナ狀態デアリマスガ、今日マデノ所事
  變ノ發展ガドウナリマスカ、私トシテ先ノ
  事マデハ一寸-是ハ私ノミナラズ、アナ
  タ方モ御同樣ダラウト思ヒマスガ、見透シ
  ガ付カヌノデアリマスガ、併シ今日マデノ
  所ハ鐵ノ供給ト云フ點ニ付テハ、圓滿ニヤ
  ハリ今日マデ通リ受ケラレルモノト、斯樣
  ニ考ヘテ居リマス、併シ政府ノ方針ト致シ
  マシテハ、今直グニハナンデアリマスガ將
  來ハヤハリ銑鐵ノヤウナモノハ、折角滿洲
  ト云フモノガアッテ、ソレニ資源ガアリマス
  カラ、滿洲ト云フモノニ依ッテ銑鐵ノ供給ヲ
  得タイ、印度ノ方ヘハ入リタクナイ、斯ウ
  云フ方針デ計畫ハ進メテ居ルノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=95

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• 096・井上良次

  ○井上(良)委員　今商工大臣カラ伺ヒマシ
  タガ、印度ノ方カラ受ケタクナイト云フ御
  話デアリマスケレドモ、ドウシテモヤハリ
  內地ノ砂鐵、或ハ印度、滿洲ノ鐵鑛ノ問題
  ニ付テ、モット積極的ニ働キ掛ケナケレバ困
  ルヂヤナイカト、斯ウ思フノデアリマス、
  ソレデ資料ヲ戴キマシテ、內地ニ於ケル砂
  鐵ニ付キマシテ非常ニ〓究サレテ居ルサウ
  デアリマスガ、モット積極的ニ一日モ早ク印
  度ヤ其他ノ國ニ賴ラナクテモ、十分供給出
  來ルヤウニ、商工當局ハ大車輪ヲ掛ケテ對
  策ヲ講ジテ戴クコトガ、今日ノ時局ノ上カ
  ラモ重要デハナイカト考ヘテ居リマス

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• 097・椎尾辨匡

  ○椎尾委員　私ハ此前ニモ承ッテ居リマス
  ケレドモ、唯時局ガ重大化致シマシタノニ
  關聯致シマシテ伺ヒタイ、只今モ出タノデ
  スガ、元來鐵ト石油トハ一般文明生活ノ上
  ニモ根本ノ問題デアリマスガ、特ニ國防上ノ
  重大性ヲ以テ考ヘラレテ居ル、ソシテ此問
  題ガ段々遲レテ居ルコトガ非常ニ國策ヲ妨
  ゲルモノデアルト云フコトガ非難ヲサレタ
  ノデアリマスガ、サウ云フ意味カラ此國策
  ヲ充實スル、國防ヲ充實スルト云フコトデ、
  特別ニ今囘ハ斟酌サレタ立案ガ出ルモノカ
  ト思ッタノデアリマスガ、此前ノ議會ニ問題
  ニナリマシタ點ヲ緩和サレタヾケデアリマ
  シテ、特ニ國防上ノ缺陷ヲ滿タスト云フコ
  トニ付テ何等特別ナ所ガナイト思ハレルノ
  デスガ、此前承リマシタ所デモ最小限度ノ
  五年後ノ生產額ヲ考ヘルト云フコトモ、要
  スルニ軍ノ國防力ノ問題カラ其事ガ打算サ
  レテ居ッタト思フノデアリマス、ソレニ對
  シマシテ今日モウ國防上ノ問題ハ當面ノ事
  實デアリマスガ、其當面ノ事實ニ對シテ此
  案ハ何等觸レル所ガナイデ、國家トシテ十
  分ニソレニ對應スルノ途ガ立ッテ居ルカト
  云フコトヲ、商工省竝ニ軍ノ當局カラ御說
  明ヲ願ヒマス

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• 098・吉野信次

  ○吉野國務大臣　當面ノ時局ニ對處スルト
  云フコトニ付キマシテハ、十分ニ當局ニ於
  キマシテモ考慮致シテ居リマス、併シ其事
  ハ色々ゴザイマセウガ、必ズシモ法律ヲ以
  テヤルト云フコトダケニハ限ラヌノデアリ
  マシテ、ソレ等ノコトニ付キマシテハ事變
  ノ發展如何ニ應ジマシテ、適當ナ處置ヲ講
  ズルコトニ準備致シテ居リマス

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• 099・椎尾辨匡

  ○椎尾委員　事變ニ關聯スルコトハ其程度
  ヨリ御說明ハ願ヘマスマイト思ヒマスガ、
  前ノ時ニハ彈丸其他ノ必要量カラ打算サレ
  マシテ、將來ハ是ダケニ於テノ安全性ヲ與
  ヘラレタノデスガ、今日ハ別途ニ準備スル
  所ガアッテ、ソレハ國民ガ安ンジテ宜イモ
  ノデアルト云フ意味ニ承ッテ置キマス
  モウ一ツハ先程小池サンカラモ、又前ニ
  モ出マシタコトデスガ、此〓究ニ關シマシ
  テ、殊ニ鋼鐵ニ關スル〓究ノ重要性ハ分ッテ
  居ルコトデスガ、何分ニモマダ我國ノ此種
  ノ〓究ハ獨逸ニ比ベマシテ遙ニ遲レテ居ル
  カラ、幸ニ今日ノ場合ニ此〓究費ヲ、十分
  ニ商工省ノ取扱デ收益ヲ擧ゲテ居ル所カラ
  出サセマスヤウニ、餘程積極的ノ方法ヲ講
  ゼラレマスコトヽ、モウ一ツハ商工省ノ御
  關係ニナッテ居リマスル特許、發明ニ關シ
  マシテ、其發明者ヲ擁護スルト云フ方法ガ
  我國デハ非常ニ鈍イノデアッテ、發明者カラ
  若干ノ納付金ヲ取ルヤウナコトニナッテ居
  リマス、ソレガ商品化シテ利益ヲ得テカ
  ラ、所得稅デモ何デモ取ルノハ別問題デア
  リマスガ、發明者ニ負擔ヲサセルコト、and.
  其發明ヲ實施セシムル試驗ニ對シテ、國家
  ガ有用ナ發明ト認メナガラ之ヲ試作セシメ
  ルコト等ニ保護ガ缺ケテ居リマス、獨逸ナ
  ドノヤウニ、サウ云ッタ發明權ヲ得タモノハ
  國家デソレ〓〓試作ヲサセルト云フヤウナ
  方法モ缺ケテ居リマス、是ハ鐵ノミニ關シ
  タコトデハアリマセヌケレドモ、ヤハリ發
  明ヲ保護シ、發明ヲ指導スル意味ニ於テ、
  商工大臣ハモット十分ナ試作ヲ致サセルヤ
  ウナ御意見ヲ持ッテ居ルカドウカ、序ダカラ
  伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=99

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• 100・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御尤ノ御尋デアリマシ
  テ、發明ノ振興ニ付キマシテハ從來ト雖モ
  考ヘテ居リマス、併シ御話ノ通リ必ズシモ
  從來ノ施設ニ依ッテ十分ダトハ認メテ居リ
  マセヌ、尙ホ今後一層此方面ニ力ヲ盡シタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=100

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• 101・小池四郎

  ○小池委員　陸軍ノ方ガ見エテ居リマスカ
  ラ一項ダケ承リタイト思ヒマス、重要ナル
  軍需產業全體ニ亙ル一ツノ心配ナノデアリ
  マスガ、ソレノ代表的ナ見本トシテ、製鐵
  業ニ付テ御尋シタイト思ヒマス、ソレハ此
  事變ガ段々擴大シテ參リマスト、重要ナル
  製鐵工場ノ內ニ働イテ居リマス熟練勞働
  者是ガ應召サレルニ決マッテ居リマス、工
  場ニ依ッテ色々違ヒマスケレドモ、大變應
  召者ノ率ノ多イ所ハ、二分ノ一、或ハ三分
  ノ一ガ軍籍ニアル者ガ働イテ居ルト云フヤ
  ウナ工場ガアルノデアリマス、製鐵業ハ特
  ニ肉體ノ强健ナルコトヲ要シマスカラ、主
  トシテ軍籍ニアル者ガ從業シテ居リマス、
  現在モウ既ニ幾分應召サレテ工場カラ出テ
  參ッテ居リマスガ、現在ノ程度デハ製鐵業
  ト云フモノハ左程支障ハ來サヌト思ヒマス
  ガ、段々應召者ノ數ガ多クナッテ參リマシ
  テ、軍需工業トシテ必須ナモノデアル製鐵
  工場カラ、非常ニ多數ノ熟練勞働者ヲ出征
  サセルト云フコトニナリマスト、製鐵業ハ
  一體事變中ハドウナルカト云フ心配ガ一ツ
  アル、勿論製鐵業ノミ制限サレルモノデナ
  クテ、其他ノ重要軍需工業ニ於テモ然リデ
  アリマス、是ハ過去ニ前例モアッタノデハ
  ナイカト存ジマスガ、又切迫シタ問題デモ
  アルノデアリマスガ、過去ニ前例ガアリマ
  スレバ其前例ノ御話ヲ願ヒタイシ、又同時
  ニ近キ將來ニ於テ或ハ起リハシナイカト想
  像サレル此問題ヲドウ御取扱ニナリマスル
  カ、軍需工業ヲ最小限度ニ維持シナケレバ
  ナラヌト云フコトハ、事變中ドウシテモ起
  ルト思ヒマス、サウ云フ意味カラノ御意見
  ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=101

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• 102・比佐昌平

  ○比佐政府委員　只今ノ御質問ニ對シマシ
  テ熟練勞働者ノ召集ニ關シテ軍需工業能力
  ヲ低下シナイヤウニ、目下總動員的ニ之ヲ
  〓究シテ居リマス、以前ノ例ニ付テハ他ノ
  委員カラ答辯致シマス

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• 103・澤本理七郎

  ○澤本陸軍砲兵少佐　只今熟練勞働者ノ召
  集ニ關シマシテハ、現在ノ事變デ早急ノ場合
  ニ一部ノ重要ナル勞働者ガ引上ゲラレルト
  云フヤウナ場合モアッタラウカト思ヒマス、
  併シ之ニ付キマシテハ軍ノ動員ノ關係上遽
  ニ修正スルコトハ却テ困難ヲ來シマスノデ、
  逐次修正ヲシ得ル如ク、言換ヘレバ軍需工
  業能力ヲ落サナイヤウニ何等カ補整ノ方法
  ヲ講ジヨウト云フノデ、現在銳意〓究セラ
  レツヽアリマス

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• 104・小池四郎

  ○小池委員　能ク分リマシタガ、斯ウ云フ
  點ヲ御參考ニ一言申上ゲテ置キマス、少ク
  モ製鐵工場ニ於キマシテ重要ナ仕事ヲシテ
  居リマスル者ニ付テハ、特ニ御考慮ヲ願ヒ
  タイ、例ヘバ大ニシマシテハ技師長、ソレ
  カラモット工場ノ方ニ下リマスト職工長、或
  ハ組長、斯ウ云フ者ハ非常ニ永年ノ熟練勞
  働者デアリマシテ、丁度扇子ノ要ミタイナ
  役目ヲ工場デ實際致シテ居ルノデアリマ
  ス、是レ一人ガ拔カレマスルト後ガ皆バラ
  バラニナルト云フコトガアルノデアリマス
  カラ、特ニ其一點ヲ、御考慮ニナリマスル
  際ニ一層考慮シテ戴キタイト云フコトヲ申
  上ゲテ置キマス

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• 105・清瀬規矩雄

  ○淸瀨委員長　塚本重藏君

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• 106・塚本重藏

  ○塚本委員　旣ニ段々質問ガアリマシテ、
  殊ニ前議會ニ於キマシテモ委員會ハ〓心ニ
  〓究討議ヲ遂ゲテ參リマシタ問題デアリマ
  スカラ、私極メテ簡單ニ四五ノ點ヲ御質問
  申上ゲタイト思ヒマスガ、先ヅ第一番ニ此
  處デ明ニシテ置イテ戴キタイノハ、ドナタ
  カラカ御質問ガアルト思ッテ居リマシタガ、
  今椎尾サンガ其片鱗ニ觸レマシタガ、問題
  ノ解決ニハ至ラナカッタノデアリマス、前內
  閣ノ伍堂商相ノ時ニヤカマシイ問題ノ鐵鋼
  五箇年計畫ト云フモノヲ樹立ニナッテ、是
  ガ公ニ傳ヘラレテ居ルノデアリマス、サウ
  シテ其五箇年計畫ノ內容ニ亙リマシテ、ソ
  レガ極メテ過少デアル、サウ云フヤウナ國
  策デハ駄目デハナイカト云フ議論ガ澎湃ト
  シテ揚ッテ居ッタコトハ皆サン既ニ御承知ノ
  所デアリマスガ、殊ニ今日ノヤウナ時局ニ
  鑑ミマシテ、今椎尾サンガ言ハレマシタヤ
  ウニ、モウ一應考へ直ス必要ガアルノデハ
  ナイカ、斯ウ考ヘマス、勿論考ヘ直ス必要
  ハ時局ガ變轉シテ參リマシタ爲ニ其必要ガ
  出來テ來タト云フノデハナクシテ、前ノ伍
  堂商相ガ計畫セラレマシタ五箇年計畫ノ內
  容ガ極メテ過少デアル、アレデハ將來我國
  ニ於キマスル鐵鋼國策ト致シマシテハ貧弱
  デアル、サウ云フヤウナ目標ヲ立テヽ政府
  ガ鐵國策ニ臨ンデ居リマスルナラバ、將來
  鐵國策ヲ樹立スルコトガ出來ナイノミナラ
  ズ、今日ノ此問題ヲ解決スルコトスラモ出
  來ナイト私共ハ憂ヘテ居ルノデアリマス、
  其點ニ付キマシテ今度ノ商相ハ、ヤハリ伍堂
  サンノ前ノ見込、計畫ト云フモノハ過少デ
  アルト云フコトヲ是認ナサッテ居ルガ如ク
  ニ私ハ聞キ及ンデ居ルノデアリマスガ、果
  シテサウデアリマセウカ、前ノ伍堂商相ノ
  立案セラレマシタ五箇年計畫、卽チ昭和十
  六年度ニハ鋼材六百二十萬瓲、銑鐵五百九
  十萬瓲ニ生產能力ヲ上ゲルト云フ目標ヲ以
  テ御進ミニナルノカ、但シサウハ考ヘテ居
  ナイノカ、若シサウダトスレバ現商相ハド
  ウ云フ見透シヲ持ッテ居ラレマスカ、鐵鋼
  國策ノ根本ニ付テ全貌ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 107・吉野信次

  ○吉野國務大臣　前ノ大臣ガ最小限度ニ於
  テ六百何十萬瓲ト云フ話ヲシタト云フヤウ
  ニ伺ッテ居リマスガ、是ハドナタカノ御質
  問ニ對シマシテ先程モ御答申シマシタ通
  リ.ヤハリ有ユル觀點カラ此問題ハモウ一
  遍考ヘ直シテ見タイ、斯ウ云フ積リデ、今
  關係廳ト折角其問題ニ付キマシテ調査中デ
  ゴザイマス

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• 108・塚本重藏

  ○塚本委員　是ハ私共ノ素人ノ考デアリマ
  スルガ、最初ニ戴キマシタ資料等ニ依リマ
  シテモ、其需要量ガ每年々々激增シテ參ッテ
  居リマスル其傾向カラ推進ンデ考ヘテ見マ
  シテモ、五箇年ノ後ニ於キマシテハ更ニ更
  ニ數等ノ需要ヲ增シテ來ルノデハナカラウ
  カト考ヘテ居ルノデアリマスカラ、折角御
  〓究中デアルト云フコトデアリマスルナラ
  バ、ドウゾ誤ラザラヌ方針ヲ樹テヽ戴キタ
  イノデアリマス、唯其場合ニ當ッテ考ヘナ
  ケレバナラヌコトハ、從來ノ增加ノ傾向カ
  ラ致シマシテ、其調子ヲ何時マデモ迪ッテ
  行クノカドウカト云フコトデアリマスガ、
  私ハ是マデ需要ガ增シテ來タ足取ヨリハ、
  今後需要ガ增シテ來ル足取ト云フモノハ更
  ニ其開キヲ大ニスル、斯ウ云フコトヲ考ヘ
  マスノデ、此點ヲ併セテ御考慮願ヒタイノ
  デアリマス、サウデナイト致シマスト誰カ
  ガ言ッタヤウニ、其國ノ强イカ弱イカト云
  フコトハ、其國ニ石炭ガドレ位アルカ、鐵
  ガドノ位生產セラレルカト云フコトニ依ツ
  テ想定スルコトガ出來ルト言ッテ居ルヤウ
  ニ、鐵ト云フモノハ軍事上ニ必要デアルバ
  カリデナク、日本ノ國ガ漸ク今日マデノ輕
  工業ノ域ヲ脫シテ重工業ニ轉換シヨウトシ
  テ居ル轉換期デアリマス、此所謂重工業ノ
  轉換ヲ出來ルダケ急速ニ發展セシメナケレ
  バナラナイ必要ニ迫ラレテ居ルノデアリマ
  スガ、サウ云フ點ヲモ併セテ鐵國策ヲ樹立
  シテ戴キタイ
  ソレカラ此製鐵事業法ヲ實施スルコトニ
  依り、將來製鐵產業ト云フモノガ非常ニ
  盛ンニナッテ來ルノカドウカ、斯ウ云フ點
  ニ付キマシテ、本日ノ委員會ニ於キマシテ
  モ甚ダ悲觀的ナ言ヒ方ヲナサッテ居ル委員ノ
  方モアルノデアリマシテ、私モ亦同樣ノ感
  ヲ持ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ法律
  ヲ制定スルコトニ依ッテ却テ事業ヲ萎縮セ
  シメル、事業ノ勃興ヲ抑ヘルト云フヤウナ
  結果ニナルノデハナカラウカト云フコトヲ
  非常ニ憂ヘテ居ルノデアリマス、是ハ單ニ
  私ダケノ杞憂ニ過ギナイモノダラウカ、當
  局ノ今後ニ對シマスル此法案ノ影響ニ付テ
  ノ見透シヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス

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• 109・吉野信次

  ○吉野國務大臣　私共ト致シマシテハ積極
  的ニ大ニ事業ノ發達ヲ圖ル、斯ウ云フ積リ
  デゴザイマス、若シ御話ノヤウナ結果ニナ
  リマシタナラバ甚ダ申譯ナイコトデアリマ
  ス,立法シタ目的ニ全ク副ハナイノデアリ
  マスカラ、サウ云フコトガナイヤウニ努メ
  タイト思ヒマス

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• 110・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ折角將來ノ製鐵產業ヲ盛
  ナラシメヨウトスル本法ノ實施ガ、今申シ
  マスルヤウナ風ニ、其所期ノ目的ヲ達成ス
  ルコトガ困難デナカラウカト云フ大キナ心
  配ヲ持ッテ居ルデノアリマスカラ、此點ニ付
  テハ幸ニ私共ノ心配ガ杞憂デアッタト云フ
  結果ヲ招クヤウニ、當局ノ努力ヲ願ハザル
  ヲ得ナイノデアリマスガ、今度ノ議會ニ出
  サレマシタ法案ニハ、四箇所ノ修正ガ加へ
  ラレテアリマス、此四箇所ノ修正ト云フモ
  ノハ、先ニ井上委員ガ申シマシタヤウニ、
  一部製鐵事業者ノ意見ヲ容レテ、此修正ガ
  加ヘラレタ、或ハ又前議會ノ質問應答ヲ斟
  酌セラレタト云フコトモアッタヤウデアル
  ガ、何レニ致シマシテモ四箇所ノ修正ガ加
  ヘラレテ居ル、其中ノ第二ノ修正デアリマ
  スル第二十四條ニ於テ、製鐵所ヲ設立スベ
  ク認可申請ヲ致シマシタ場合ニ、之ヲ不許
  可ニスル場合ニ於テモヤハリ製鐵事業委員
  會ノ議ニ掛ケテ、ソレヲ經ナケレバ決シナ
  イ、斯ウ云フヤウナ修正ニナッテ居ルヤウ
  デアリマスガ、是ハ何故サウ云フ修正ヲ加
  ヘラレル必要ガアッタノカト云フ、修正ノ理
  由ヲ一ツ伺ッテ置キタイ

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• 111・東榮二

  ○東政府委員　只今ノ御話ノ、前議會ニ提
  出致シマシタ案ヲ修正シテ今度出シマシタ
  其修正ノ點ニ付キマシテ、修正ノ理由ヲ私
  カラ申上ゲマス、第一ハ第十八條及ビ第十
  九條ニ關スル點デゴザイマスガ、是ハ製鐵
  事業者ガ鐵鋼ノ生產、販賣、輸出、輸入、
  移出若ハ移入又ハ命令ヲ以テ定ムル製鐵原
  料ノ購入ニ關シ他ノ製鐵事業者ト統制協定
  ヲ爲シタル場合ニハ斯ウ云フコトニナッテ
  居リマシタノヲ、今囘ハ「他ノ製鐵事業者」
  ト云フ字句ヲ削リマシテ、製鐵事業者ノ間
  ノミナラズ、製鐵事業ト他ノ例ヘバ販賣業
  者等トノ間ニ統制協定ヲ致シマシタ場合ニ
  モ、ヤハリ屆出ノ義務ヲ負ハシメマシテ、
  更ニ之ヲ第十九條ノ規定ニ依リマシテ政府
  ガ之ヲ監督スル、斯ウ云フコトニ致シマシ
  タノデアリマス、是ハ生產當業者ノ意向ニ
  依リマス修正デハナイノデアリマシテ、全
  ク最近ノ事情ニ應ジマシテ、製鐵事業者ノ
  統制協定ト云フヤウナモノヲ、更ニ縱ノ統
  制ニ迄入ッテ政府ガ、公益上必要ナル監督ヲ
  致シタイ、斯ウ云フ趣旨ニ基イテ修正ヲ致
  シタ點デゴザイマス

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• 112・塚本重藏

  ○塚本委員　發言中デスガ一寸時間ヲ省ク
  爲ニー今ノ修正ノ中デ第十八條、其他第三
  十一條ノ點ニ付テハ私ハ異存ハナイノデス
  カラ、續イテ全部ノ說明ヲサレルヤウデア
  リマスガ、第二十四條ト第二十五條ノ修正
  ダケノ說明ヲ願ヒタイ

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• 113・東榮二

  ○東政府委員　第二十四條ヲ修正致シマシ
  タノハ、前案ニ於キマシテハ第三條ノ規定
  ニ依ル許可ノ場合ノミヲ製鐵事業委員會ニ
  付議スル、斯ウ云フ規定ニ相成ッテ居リマ
  シタノヲ、許可ノ場合ノミナラズ、第三條
  ニ依ル處分、卽チ不許可ノ場合モ製鐵事業
  委員會ニ付議スル、斯ウ云フコトニ修正致
  シタノデアリマシテ、是ハ許可ノ場合ノミ
  ナラズ不許可ノ場合モ製鐵事業委員會ニ付
  議シテ廣ク意見ヲ聞ク方ガ適當デアル、斯
  ウ云フ考カラ之ヲ修正致シタニ過ギナイノ
  デアリマス、ソレカラ第二十五條ノ修正ニ
  付キマシテハ、政府ハ製鐵事業者ガ本法若ク
  ハ本法ニ基キ發スル命令又ハ之ニ基キ爲ス
  處分ニ違反シタ場合ノ外、尙ホ公益上必要
  ト認ムル場合ハ、其業務ヲ停止若ハ制限シ
  第三條ノ許可ヲ取消シ、又ハ法人ノ役員ノ
  解任ヲ爲スコトヲ得ル、斯ウ云フ規定ニ相
  成ッテ居リマシタノヲ今囘ハ單ニ「本法ニ基
  キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分」
  トアッテ本法若ハ本法ニ基キ發スル命令ニ
  違反シタ場合ノミニ限ッタノデアリマシテ、
  之ヲ修正致シマシタ趣旨ハ「又ハ公益ヲ害
  スル行爲ヲ爲シタルトキ」ト云フコトハ、
  如何ナル行爲ガ公益ヲ害スルカト云フコト
  ヲ單ニ役人ノ認定ノミニ依ルト云フコトハ
  稍〓廣ニニ失シハシナイカ、斯ウ云フ業務ノ
  停止若ハ制限、或ハ場合ニ依リマシテハ許
  可ノ取消ト云フ所マデ行クト云フヤウナ制
  裁ヲ科スル場合ニハ、單ニ公益ヲ害スル行
  爲ヲ爲シタト云フコトニ依ッテ斯ウ云フ制
  裁ヲスルト云フコトハ、少シク酷ニ失スル
  感ガアルト云フ考カラ、此點ヲ緩和致シマ
  シテ修正案ノ如ク致シタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=113

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• 114・塚本重藏

  ○塚本委員　今ノ說明ニ依リマシテハ、成
  程サウ修正セナケレバナラナカッタト云フ
  理由ヲ諒承スル譯ニハ行カナイノデアリマ
  ス、斯ウ云フ修正ガ、卽チ今日ノ新聞ニ現
  レテ居ル製鐵事業者側ノ、資本家側ノ意見
  ヲ容レテ修正ヲ加ヘラレタ、サウシテ製鐵
  事業者側カラ政府ニ向ッテ感謝ノ意ガ述べ
  ラレテ居ルノダト思フノデアリマスガ、斯
  ウ云フ修正ハ、卽チ私ハ製鐵事業者、資本
  家側ノ要求ニ政府ガ讓歩シタモノデハナイ
  カト思フ、何モ此公益ヲ害スル行爲云々ノ
  文字ヲ削除スル必要ト云フモノガナイノデ
  ハナイカ、前ノ案ノ、其他本法ニ基キ發ス
  ル命令又ハ之ニ基キ爲ス處分ニ違反シタモ
  ノト云フコトガアル其上ニ、更ニモウ一ツ
  公益ヲ害スル行爲ガアッタ場合ニ、此第三
  條ノ許可ヲ取消シ又ハ法人ノ役員ノ解任ヲ
  爲スコトヲ得ル、斯ウ規定シテ置イテモ一
  向差支ナイ、公益ヲ害スルコトニモ色々程
  度ハアリマセウガ、置イタカラト云ッテ無
  茶苦茶ニ、何デモナイ僅カナ事デ是ガ處分
  セラレルト云フコトハ勿論アリ得ベカラザ
  ルコトデアリマスガ、茲ニ云フ公益ヲ非常
  ニ害シタト云フヤウナコトガアッタ場合ニ
  ハ、ヤハリ此處分ガ出來ルノダト云フ規定
  ヲ、前議會ノヤウニ置ク方ガ寧ロ合理的デ
  アッタト考ヘマス、此修正ハ私ハ甚ダ遺憾ニ
  存ジテ居ルノデアリマス、ソレカラ推シマ
  シテ私ハ又非常ニ大キナ心配ガアルノデア
  リマス、ソレハ第二十條ノ、或ハ第二十一
  條等ノ規定、是ハ製鐵事業法デハナク、寧
  ロ製鐵事業ノ管理法デアルト云フヤウナ反
  對ノ聲モ段々承ッタノデスガ、私ハ寧ロ此第·
  二十條ナリ第二十一條ナリガアルコトニ
  依ッテ、本法ノ使命ガアルト思フ、ソレナノ
  ニ更ニ之ニ修正ヲ加ヘルト云フヤウナコト
  ガアリマシタナラバ、ソレハ全然此製鐵事
  業法ノ精神ト云フモノガ失ハレルコトニ
  ナッテシマフ、是ハ飽マデモ第二十條、第二
  十一條ヲ存置スルバカリデナク、十分ニ活
  用シテ行クコトガ必要ナノデアル、之ヲ十
  分ニ有效ニ運用シテ行クコトニ付テ、今後
  政府ニ努力シテ戴カナケレバナラヌ、斯樣
  ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、此點ニ關シ
  マシテハ、先程カラ承リマシタ委員ノ多ク
  ノ方々トハ、意見ヲ異ニシテ居ルト私ハ思
  フノデアリマス、第二十四條ノ修正、第二
  十五條ノ修正等カラ少シ離レマシテ、斯ウ
  云フ狀態デハ到底第二十條ノ運用ハ私共ガ
  期待スルガ如クニ行ハレナイノデハナカラ
  ウカ、是モ今日ノ重要產業統制法ノ第一條
  ガ活動シテ居ナイノト同樣ニ、死文同樣ニ
  終リハシナイカト云フ心配ヲ一層深クシテ
  來タ者デアリマス、ソレデ政府ハ此法案ヲ
  施行スルニ當ッテ此第二十條ナリ第二十一
  條ノ規定ヲ十分ニ活カシテ運用シテ行クト
  云フ決意ヲ持ッテ貰ヒタイト思ヒマスガ、其
  點ニ對シマスル政府ノ所見ヲ承リタイノデ
  アリマス

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• 115・吉野信次

  ○吉野國務大臣　先程產業統制法ノ規定ト
  ノ關係ニ於キマシテモ申上ゲマシタ通リ、
  私ハ第二十條、第二十一條ハ決シテ死文ダ
  トハ考ヘテ居リマセヌ、唯斯ウ云フ規定ヲ
  實際ニ運用スルコトナクシテ、當業者トノ
  間ニ圓滿ニ話ガ付イテ行ケバ是ガ一番理想
  ダト考ヘテ居リマス

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• 116・塚本重藏

  ○塚本委員　ソレナラバ此第二十條ナリ第
  二十一條ハ、丁度田圃ノ中ノ案山子同樣デ
  アリマス、死文デハナイカモ知レヌガ、併
  シ是ハ活動スルコトガサウアルノデハナ
  イ、斯ウ云フ規定ヲ置クコトニ依ッテ、兎ニ
  角或ル程度マデノ協調ガ保タレテ行クデア
  ラウト云フヤウナ、極メテ弱イ、法文ノ體
  ヲ成スト云フコトカラダケ斯ウ云フ規定ヲ
  設ケラレタノデアルガ、甚ダ是ハ遺憾ナコ
  トデアリマス、私ハ寧ロ積極的ニ、唯法文
  ノ體ヲ成ス爲ニ斯ウ云フ條文ヲ設ケタノダ
  ト云フダケデハナク、之ヲ本當ハ活カシテ
  行ッテ、鐵國策ノ遂行ヲ統制シテ行クコト、
  是ガ卽チ統制權デアリマス、此統制權ヲ十
  分ニ活用シテ行カナケレバ鐵國策ノ遂行ハ
  期セラレナイ、斯ウ考ヘマス、今ノ商工大
  臣ノ御答辯ニ依リマスルト、極メテ不滿足
  デアリマス、死文デハナイケレドモ、唯サ
  ウ云フ條文ヲ置クコトガ必要デハナイカト
  云フノデアレバ、ソレハ田圃ノ中ノ案山子
  同樣ノ價値シカナイノデアル、モット是ハ有
  效ニ、此法文ヲ活カスコトヲ考ヘルト云フ
  決意ヲ持ッテ貰ハナケレバナラヌ、ソレデ
  ナケレバ此法案ガ十分ナル力ヲ發揮スルコ
  トガ出來ナイ、私ハ斯樣ニ考ヘルノデアリ
  マスガ、モウ一應重ネテ此點ニ對スル商工
  大臣ノ御所見ヲ伺ヒマス

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• 117・吉野信次

  ○吉野國務大臣　私ノ言葉ガ或ハ足リナ
  カッタカモ知レマセヌガ、決シテ死文トハ考
  ヘテ居ラナイ、斯ウ申上ゲタノデアリマス、
  例ガ惡イカモ知レマセヌケレドモ、傳家ノ
  寶刀デモ、拔カナイカラ寶刀ニナラヌト云
  フコトハナカラウト思フ、ヤハリ寶刀ハ寶
  刀ナノデアリマス、ソレデアリマスカラ、
  此條文ハ私ハ決シテ死文デハナイ、相當ニ
  重要ナ條文デアルト云フコトハ、ドナタカ
  ノ御質問ニ對シマシテモ前々カラ申上ゲタ
  通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=117

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• 118・清瀬規矩雄

  ○〓瀨委員長　塚本サン、決シテ遮ル譯デ
  ハアリマセヌガ、成ベクナラバ御意見デナ
  ク、質疑ト云フコトニ一ツ限ッテ戴キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=118

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• 119・塚本重藏

  ○塚本委員　只今死文デハナイノダ、田ノ
  中ノ案山子デハナイ、傳家ノ寶刀位ノ價値
  ハアルノダ、斯ウ云フコトデアリマスガ、
  傳家ノ寶刀モ唯床ノ間ノ飾リデアッテハナ
  ラナイト思フ、今ノヤウナ時代デアリマス
  カラ、是ハヤハリ場合ニ依ッテハ押取刀デ
  出テ行カナケレバナラヌ場合モアリマス、
  サウ云フ場合ニ何時マデモ床ノ間ノ飾リノ
  傳家ノ寶刀デアッテハナラナイト思ヒマス、
  是ハ意見ニ亙ルコトハ出來ルダケ控ヘタラ
  ドウカト云フ委員長ノ御言葉デアリマスカ
  ラ、此程度ニ止メマス、更ニ是ハドナタカ
  モ觸レテ居ラレタノデアリマスガ、十分ナ
  答ヲ戴クコトガ出來ナカッタ、卽チ今日マデ
  鐵ガ非常ニ不足シテ居ッタ、銑鐵ガ非常ニ不
  足シテ居ッタト云フヤウナコトガアッタ場合
  ニ、其材料ト云フモノガ、一部軍需工業ニ充
  當スル爲ニ其方ニノミ配給セラレテ、其他
  ノ產業部面ニ對シテ配給ガ行ハレナイノデ
  アルト云フヤウナ風ニモ聞及ンデ居ッタノ
  デアリマスガ、今後ニ於キマシテモ、殊ニ
  ドナタカモ言ッテ居ラレマシタヤウニ、現
  内閣ハ經濟三原則ニ依ッテ需給ノ調節ヲ圖
  ルト云フコトデアリマスガ、ソレハヤハリ他
  ノ方面ハ節約シテモ、先ヅ軍需工業ノ方面
  ダケハ材料ヲ豐富ニヤラナケレバナラヌ、
  斯ウ云フ立前ニ立ッテ居ラレルヤウデアリ
  マスガ、是モ程度問題デアリマシテ、勿論
  今日ノヤウナ時デアリマスカラ、軍需工業
  ニ支障ガアルヤウナコトガアッテハナラナ
  イノデアリマスケレドモ、ソレヲ所謂萬全
  ヲ期スルノ餘リ、其他ノ產業部面ニ對シテ
  材料ガ廻リ得ナイト云フヤウナコトガアリ
  マスト、是ハ非常ナ修正ヲシナケレバナラ
  ヌ點デアリマシテ、昨年ノ秋以來東京方面
  ニ於キマシテハ川口ノ鑄物工場地帶、或ハ
  關西方面デハ伊勢ノ桑名地方ニ於ケル鑄物
  工業者、或ハ大阪ニ於ケル中小ノ鑄物關係
  ニ於キマシテモ、或ハ三日ニ一遍シカ仕事
  ガ出來ナイ、又ハ出來テモ鑄物ヲ作ルコト
  ガ出來ナイ、火入ヲスルコトガ出來ナイ、
  其事ノ爲ニ勞働者ハ一週ノ間ニ三日四日遊
  バサレルト云フヤウナコトガ續イテ來タ、
  其事自體ガ又材料ノ非常ナ値上リニナッテ
  來タト云フヤウナ結果ヲ見タコトハ甚ダ遺
  憾デアリマスガ、政府ハ此法ノ適用ニ當リ
  マシテ、所謂配給ノ調節、サウ云フ點ニ付
  テモ十分考慮ヲ拂ッテ戴キタイト思ヒマス
  ガ、其邊ノ御用意ガアリヤ否ヤ、承ッテ置
  キタイノデアリマス

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• 120・吉野信次

  ○吉野國務大臣　サウシタイト思ッテ居リ
  マヾ、唯何分ニモ需要ト供給トガ非常ニ合
  ハナイ、供給ガ非常ニ不足デアル、斯ウ云
  フ場合ニハ、ドウシテモ所謂需給ノ調整ト
  云フコトヲヤラネバナラヌ、其場合ニハ自
  然其方ニ赴クコトハ已ムヲ得ナイカト考ヘ
  マス

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• 121・塚本重藏

  ○塚本委員　是モ御答ノ通リデアリマシ
  テ、サウスルヨリ外實ハ仕方ナイノデアリ
  マスガ、曾テハサウ云フコトモアッタノデ
  アリマス、今幾ラカソレハ緩和セラレテ居
  リマスガ、サウ云フコトモアッタノデアリ
  いく、サウ云フコトガアッテハ非常ニ困ル
  ノデアリマスカラ、一層其點ニ付テ大局ヲ
  誤ラナイヤウニシテ戴キタイノデアリマ
  ス、ソレカラ今日ノ此鐡ノ不足デアリマス
  ガ、勿論近因ト致シマシテハ、十四億ト云
  フ軍事費ガ計上セラレテ居ルコトガ直接ノ
  原因デモアリマシタガ、又一方ニハヤハリ
  最近ノ重工業ガ段々ト急速ニ發展シテ來タ
  ト云フコトモ一ツノ原因デアリマセウシ、
  ソレカラ又多クノ委員カラモ言ハレテ居リ
  マシタヤウニ、前ノ委員會デモ屢〓繰返シ
  論ゼラレマシタヤウニ、從來ノ日本ノ國ニ
  於ケル鐵國策ト云フモノガ確立シテ居
  ラナカッタ、サウシテ唯日鐵中心主義ニ
  色々ナ政策ガ行ハレテ來タト云フコト
  ガ、今日ノ鐵不足ヲ來ス原因デアル、是ハ
  勿論ソレ〓〓皆重要ナ原因デアリマス
  ガ、私ハ更ニ今日ノ鐵不足ノ原因ハ-サ
  ウ云フコトガ一體起ッテ來タ原因ト云フモ
  ノ、モウ一ツ深ク切下ゲテ見マスルナ
  ラバ、今日ノ產業ト云フモノガ見込ノ產
  業デアル、之ヲヤレバ儲カル、是ハヤッテ
  モ儲カラナイ、之ヲヤレバ儲カルト云フ見
  込ガ立テバ、其產業ガ盛ンニナルガ、今日
  ノ鐵ノヤウニ莫大ナ資本ヲ投下致シマシテ
  モ、他ノ產業ノヤウニ利潤ヲ急速ニ擧ゲル
  コトガ出來ナイト云フヤウナコトガ、製鐵
  業ノ發達ヲ鈍ラシタ一ツノ原因デアリマセ
  ウ、サウ云フ風ニ見込生產デアリマスカ
  ラ、見込ガ立タナカッタ是マデト致シマシ
  テハ、是ガ發達シテ來ナカッタト云フコト
  ノ一ツノ原因、ソレカラ更ニモウ一ツハ言
  フ迄モナイコトデアリマスガ、今日一切ノ
  商取引ト云フモノガ見込ノ下ニ行ハレテ居
  リマス、サウ云フコトハ言葉ヲ換ヘテ言ヒ
  マスナラバ、思惑投機デアリマス、生產竝
  ニ配給ト云フモノガ、悉ク思惑投機ニ依ツ
  テ行ハレル今日ノ經濟組織デアリ、資本主
  義組織デアル、サウ云フコトガ殊ニ鐵ノ問
  題ニ付キマシテハ今日ノ不足ヲ來ス原因デ
  ハナカラウカ、斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリ
  マスガ、此鐵不足ノ原因ニ對スル私ノ考ヘ
  方ハ、誤ッテ居ルデアリマセウカ、商工大臣
  ノ所見ヲ伺ヒタイ

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• 122・吉野信次

  ○吉野國務大臣　難カシイ御尋デゴザイマ
  シテ、餘リ時間ノナイ所ヲ、長イ答辯ヲシ
  テハ相濟マヌノデアリマスガ、鐵ガ非常ニ
  饑饉デアッタト云フコトニ付テ、色々ナ委
  員ノ方カラ、實ハ御尋ガゴザイマシタノデ
  アリマスガ、是ハ私ノ考ヲ率直ニ申シマス
  ト、結局日本ノ產業ト云フモノガ、非常ニ
  發展シタ結果ダト思ッテ居リマス、今日マデ
  日鐵ヲ初メ鐵ノ需給ノ關係ヲ圖リマス時ニ
  ハ、皆過去ノ「カーブ」ヲ取ッテ居リマス、
  過去ノ明治三十何年以來ノ、鐵ノ需要ノ進
  步增加ト云フモノヲ「カーブ」ヲ取リマシ
  テ、ソレニ幾ラカ餘分ヲ見テ居ルノデアリ
  マス、所ガ最近ノ日本ノ產業ノ狀態ハ、表ヲ
  見マシテモ今マデノ日本ノ貿易品、輸出品
  ト云フモノハ纎維工業品デアリマス、鐵ノ
  品物ト云フモノハナイノデアリマス、所ガ
  最近ハ鐵製品ガ海外ニ出"是ハ最近ノコ
  トデス、過去ノ「カーブ」ニハ載ッテ居ラナ
  カッタ、日鐵ニ致シマシテモ、設立當初ノ
  計畫ヨリ以上ノ生產計畫ヲヤッテ居ル、ソ
  レデモ尙ホ足リナイ、先程來商工省ノ熔鑛
  爐ノ認可ガ怠慢デアルト言ハレル、私共ノ
  役所ノ仕事デアリマスカラ、怠慢デナカッ
  タトハ申シマセヌケレドモ、ソレバカリデ
  ナク日本人ノ產業ト云フモノガ變リ目ニ來
  テ居ル、サウ云フ場合デアリマスカラ、將
  來ノコトヲ見ルト云フ時ニ、過去ノ基礎的
  ノ資料ト云フモノガ足リナイ、サウ云フ點
  デ鐵ト云フモノガ非常ニ不足ニナッテ來テ
  居ルノデアリマス、ソレハ私共十分ニ心得
  テ居リマスカラ、其點ノコトハ餘程日本ノ
  產業ノ構成、貿易ノ工合ハ是カラ變ルモノ
  デアル、ソレニ最近御承知ノ通リ生產力擴
  充ト云フモノガ、重工業ニ重キヲ置イテ來
  ク、ソレ等ノ觀點ヲ考ヘテ需給ノ計畫ヲ立
  テタイ、斯ウ考ヘルノデアリマス、或ハ御
  尋ニ對シマシテ適切ナル答辯ニハナッテ居
  ラナイカトモ存ジマスガ、今御話ノヤウナ
  現在ノ經濟機構ノ缺陷カラ、鐵ノ不足ガ來
  タノダト云フ風ニハ、私ハ考ヘテ居リマセ
  ヌ

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• 123・塚本重藏

  ○塚本委員　鐵不足ノ原因ニ付キマシテ
  色々ノコトガ言ヒ得ルト思ヒマスガ、
  少クトモ鐵饑饉ヲ來シマシタ今日ノ事情ニ
  於テ尙且ツ-前ノ伍堂商工大臣ハ、必要
  以上ニ饑饉ヲ大ナラシメテ居ルモノハ、所
  觀思惑投機デアリマスト云フコトヲ言ハレ
  マシタ、私ハ尤ダト考ヘテ居リマシタガ、
  ヤハリサウ云フコトガ重要ナ禍ヲ爲シテ居
  ルト御考ニナリマスカ

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• 124・吉野信次

  ○吉野國務大臣　御話ノ點ハ景氣ガ好イ、
  物ガ高イト云フ時ニハ商人ハ思惑ヲシマス
  カラ、鐵鋼ト云フモノノ配給ノ點ニ付キマ
  シテモ其點ハ考慮ヲ致シテ、改ムベキモノ
  アラバ改メタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス

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• 125・塚本重藏

  ○塚本委員　大變時間ヲ長ク取リマシテ洵
  ニ相濟マヌノデアリマスガ、最後ノ結論ヲ
  申上ゲテ見タイト思ヒマス、要スルニ私ハ
  二十四條、二十五條ノ修正等ニ依リマシ
  テ、當局ノ決意ト云フモノガ弱イト云フコ
  トヲ推シ量ルコトガ出來マス、更ニ二十條
  ノ規定ヲ傳家ノ寶刀ノ程度ニシカ見テ居ラ
  ナイト云フヤウナ點カラ申シマシテ、本法
  ヲ十分ニ活用シテ行クト云フコトガ、ドウ
  モ望ミ難イノデハナカラウカ、斯ウ云フ風
  ニ考ヘマス、本法ニ依ッテ鐵國策ガ遂行セ
  ラレテ行クトカ、或ハ鐵ノ生產ヲ計畫的ニ
  行ヒ、更ニ又其生產、販賣ノ上ニ於キマシ
  テモ、二十條ノ規定ニ依ッテ之ヲ遺憾ナク
  配給スルト云フヤウナコトガ、實際ハ不可
  能デハナカラウカ、斯ウ云フ心配ガ私ニハ
  起ッテ來ル、併シ私ハ今日ノ事情ニ於キマ
  シテハ、蓋シ今日ノ政府ノ力ニ依リマシ
  テ、是以上ノモノヲ望ムコトガ不可能カモ
  知レマセヌケレドモ、之ニ依ッテ所謂日本
  ノ鐵國策ノ萬全ヲ期スルナドト云フコト
  ハ、是ハ到底望マレナイコトデアリマス、
  畢竟スルニ本法モヤハリ資本主義經濟ノ上
  ニ立ッテ居ル法律デアリマシテ、營利ト云
  フ觀念ノ下ニ產業ガ營マレテ居ル以上ハ望
  マレナイ、公正ナル價格ヲ維持シタリ、或
  ハ又配給部門ヲ摩擦ナク合理的ニ行ヒ得ラ
  レルナドト云フコトハ、今日ノ思惑ニ依
  リ.投機ニ依リ、或ハ見込ニ依ッテ物ガ生
  產セラレ、販賣セラレテ居ル時ニ於キマシ
  テハ、是ハ到底十分ニ此法律ヲ生カシテ行
  クコトガ出來ナイノヂヤナカラウカ、現
  最近ノ事情ニ於キマシテモサウデアリマ
  ス、政府ガ鐵、銑鐵ノ建値ヲ認可スル場合
  ニ於キマシテモ、是ハ前ノ議會ノ鐵關稅ノ
  委員會ニ於テ、伍堂前商相ト色々論ジテ來
  タ所デアリマシテ、鐵ノ値段ハ是以上上ゲ
  ナイト云フヤウナコトヲ、私ニ言明ナサッ
  テ居ルカト思フト、數日經タズニ建値ガ變ッ
  テ來ル、九圓上ゲテ吳レト言ヘバ七圓マデ
  認メテヤル、七圓上ゲテ吳レト言ヘバ其中
  ノ五圓マデハ認メテヤル、サウ云フコトニ
  依ヲテ段々鐵竝ニ銑鐵ノ値段ガ上ッテ來ル、
  十分政府ノ統制ガ行ハレナイ、前ノ製鐵事
  業奬勵法ヨリ大分强化セラレタモノニハ
  ナッテ居リマスルケレドモ、尙ホ其點ニ付
  テモ公正ナル價格ヲ維持スルコトガ出來ル
  ヤウニ、此法案ヲ活用サレルトハ、今ノ二
  十條ノ規定ガ傳家ノ寶刀的ノモノデアル以
  上ニ於テハ、是ハ不可能ノコトデハナカラ
  ウカ、私ハ左樣ニ考ヘル、本當ニ私共ハ日
  本ノ鐵國策ヲ樹立シ、ソレヲ支障ナク遂行
  シテ行カウトシマスルナラバ、ヤハリ是ハ
  前ニ關稅定率法ノ委員會ニ於テ、伍堂サン
  ガ私ノ質問ニ對シテ御答ナサッタコトデア
  リマスガ、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ラレマ
  ス、重要產業ハ株ヲ政府ガ半分以上持ッテ
  サウシテ統制權ヲ行ヒ得ルヤウナ方法ニ
  依ッテヤッテ行クコトガ、當面ノ方策デアル
  ト云フヤウナコトヲ言ッテ居ラレマス、私
  ハ此時ニ、重要產業ヲ國營ニシナケレバ駄
  目ヂヤナイカ、サウシナケレバ日本ノ今
  後ノ產業ヲ、重工業ヲ高度ニ發展セシメ、
  更ニ軍事上ノ各國トノ競爭ニ於テモ、日本
  ノ國ガ勝ッテ行クコトガ出來ナイノデハナ
  イカ、將來ノ國防上ノコトヲ考ヘマシテ
  モ、產業ノ發展ノコトヲ考ヘマシテモ、今
  日ノ營利主義經濟ノ上ニ何時マデモ立ッテ
  居ッテハ、到底其競爭ニ打勝ッテ行クコトガ
  出來ナイト思フ、ソコデ國營ニ移サナケレ
  バナラヌ、斯ウ云フコトヲ申上ゲタ時ニ、
  伍堂サンガ斯ウ云フ御答ヲナサッタ、今ハ平
  時デアルカラサウ云フ風ニシテ行クコトガ
  必要デアルト考ヘル、併シ若シ非常時ノ場
  合ニ於テハ-此場合ノ非常時ハ戰爭デモ
  アッタラト云フ意味ダッタト思ヒマス、サ
  ウ云フ場合ニハ此重要產業ヲ國營ニスルト
  云フコトガ必要デアル場合ガアルカトモ思
  ハレル、斯ウ云フヤウナ御答辯ヲ私ハ戴イ
  タノデスガ、私ハ此伍堂サンノ答辯ハ適切
  ナ答辯デアッタト思フ、少クモ平時ニ於キ
  マシテモ鐵デアルトカ、石炭デアルトカ、
  或ハ電氣デアルトカ、サウ云フ重要產業ダ
  ケハヤハリ强力ナル國家ノ統制ノ下ニ是ガ
  行ハレルヤウニシナケレバナラヌ、前々內
  閣デアリマシタカ、其時ニ賴母木遞信大臣
  ガ電力ノ民有國營案ヲ立案セラレマシタ
  ガ、少クモアノ程度ニ迄行カナケレバナラ
  ヌ筈デアルト思フ、鐵ノ問題ニ致シマシテ
  モ、ヤハリ是ハ特殊ノ一ツノ會社デモ設ケ
  テ、サウシテ政府ガ其株ノ半分以上モ持
  チ、サウシテ政府ノ方針通リニ、我國ノ鐵
  國策ガ行ハレテ行カレルヤウニ、先ヅ其方
  針ヲ立テラレルト云フコトガ、今日ノ場合
  必要ナ問題デハナカラウカト考ヘル、サウ
  云フ點ニ付テ、此製鐵事業法ヲ以テ萬全ナ
  リト御考ニナリマスルカ、更ニモウ一步先
  程申シマスルヤウニ强化スル必要ヲ御考ニ
  ナッテ居リマスルカ、御伺シテ見タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=125

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• 126・吉野信次

  ○吉野國務大臣　此程度ノ法律デ足リル、
  左樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=126

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• 127・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ此內閣ガ所謂革新政策ヲ
  遂行スルデアラウ所ノ內閣デアルト云フコ
  トデ、一般國民ガ非常ナ期待ヲ持ッテ居ル
  ト思フノデアリマス、然ルニ拘ラズ此製鐵
  事業法一ツヲ通シテ見マシテモ、前議會ニ
  提案セラレタモノニ比べマスルナラバ、或
  ル部分ニ於テ非常ニ弱クナッテ居ル、サウ
  シテ又現商工大臣ノ意見ト云フモノモ、前
  伍堂商相ノ意見ニ比べレバ、極メテ其點ニ
  付テ迫力ガナイト云フ點ニ付テ、甚ダ遺憾
  ニ感ズルモノデアリマス、是レ以上多クヲ
  望ムコトガ出來ナイカト考ヘマスルガ、折
  角此法案ガ出來マスルナラバ、セメテモ出
  來ルダケ之ヲ有效ニ運用ナサイマスコトヲ
  希望致シマシテ、私ノ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=127

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• 128・清瀬規矩雄

  ○淸瀨委員長　諸君ニ御諮リ致シマス、
  應通告順ニ依ル質問ヲ終リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=128

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• 129・芦田均

  ○芦田委員　甚ダ小サイ事デスガ、ホンノ
  三分位御質問シタイト思ヒマスガ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=129

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• 130・清瀬規矩雄

  ○淸瀨委員長　ソレデハ成ベク簡單ニ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=130

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• 131・芦田均

  ○芦田委員　政府委員カラ御答願ッテ結構
  デスガ、十七條ト十八條、是ハ前ニ質問ガ
  アッテ御說明ガアッタカモ知レマセヌガ、
  寸讀ンデ見テ能ク諒解シ兼ネル點ガアリマ
  スノデ御尋ヲ致シタイ、十八條ノ二行目ニ
  統制協定ト云フ字ガ使ッテアリマスガ、其
  意味ヲ一寸御說明願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=131

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• 132・吉野信次

  ○吉野國務大臣　私カラ簡單ニ申上ゲマス
  レバ「カルテル」ト云フコトデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=132

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• 133・芦田均

  ○芦田委員　ソレデ分リマシタ、ソレカラ
  ヤハリ其條ニ「命令ヲ以テ定ムル製鐵原料
  ノ購入ニ關シ」斯ウアルノデアリマスガ、
  ソレハ何レ命令デ細カイ事ヲ御出シニナル
  ノダト思ヒマスケレドモ、ソレハドウ云フ
  場合デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=133

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• 134・吉野信次

  ○吉野國務大臣　差當ッテハ「スクラップ」ノ
  如キハ、之ニ當篏マルダラウト思ヒマス、
  屑鐵デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=134

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• 135・芦田均

  ○芦田委員　サウスルト屑鐵ノ購入ハ之ヲ
  政府ニ一々屆出ヲシナケレバナラナイ、斯
  ウ云フ趣旨ニナル譯デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=135

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• 136・吉野信次

  ○吉野國務大臣　尙ホ簡單ニ申上ゲマス
  ガ、此統制協定ト云フノハ、重要產業統制
  法ニ慥カ使ッテアッタ字デアルト思ヒマス、
  今現ニ現實ノ問題トシテ當業者ガ「スクラッ
  プ」ヲ共同購入スル協定ガアル、サウ云フヤ
  ウナモノニ付キマシテ政府ニ屆出デシム
  ル、斯ウ云フ規定デゴザイマス、而シテ其
  內容ニ付テ若シ改ムベキモノガアレバ、政
  府ニ於キマシテハ其變更ヲ命ズルノデゴザ
  イマスカラ、サウ云フ權能ヲ發動スル爲ニ、
  兎モ角サウ云フヤウナ協定ヲ致シマシタ場
  合ニハ、政府ノ方ニ屆出デロ、斯ウ云フ規
  定デゴザイマス

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• 137・芦田均

  ○芦田委員　製鐵原料ト云フ文字ヲ「スク
  ラップ」ニ限ッテ御使ヒニナリ、鐵鑛石ハ製
  鐵原料ニ入ラナイ、斯ウ云フコトニナルノ
  デスカ

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• 138・吉野信次

  ○吉野國務大臣　無論入ルノデゴザイマ
  ス、今命令ヲ以テドウ云フ範圍ニ之ヲ限ル
  ノカト云フ御尋デアリマシタカラ·····

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• 139・芦田均

  ○芦田委員　分リマシタ、私ガ伺ヒタイノ
  ハソレダケデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=139

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• 140・清瀬規矩雄

  ○淸瀨委員長　質問ハ是デ一應終局致シタ
  譯デアリマス、オ互ニ各〓ノ黨ノ態度等モ
  是カラ決メナクチヤナラヌト思ヒマスルノ
  デ、本日ハ此程度デ散會致シマシテ、散會
  後ニ此案ニ付テ政府側ト隔意ノナイ懇談ヲ
  遂ゲテ見〃イト思ヒマスガ、皆サンノ御考
  ハ如何デゴザイマセウカ
  〔「異議ナシ」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007111933X00219370731&spkNum=140

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• 141・清瀬規矩雄

  ○淸瀨委員長　ソレデハ本日ハ此程度デ散
  會致シマス、次會ハ公報ヲ以テ御知ラセ致
  シマス
  午後五時八分散會

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