1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年七月三十一日(土曜日)
午後一時十九分開議
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議事日程 第六號
昭和十二年七月三十一日
午後一時開議
第一 通信事業特別會計に於ける簡易生命保險及郵便年金の事務の取扱に要する經費に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 軍機保護法改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 兵役法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 大正十年法律第百二號中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 昭和十年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第七 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 自昭和十一年一月至同年三月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十一年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第七 昭和十一年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第八 陪審法中改正法律案(牧野賤男君外八名提出) 第一讀會
第九 陪審法中改正法律案(野田文一郎君外二名提出) 第一讀會
第十 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(森下國雄君提出) 第一讀會
第十一 恩給法中改正法律案(宮脇長吉君外一名提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一今三十一日貴族院ヨリ受領シタル政府提
出案左ノ如シ
貿易及關係產業ノ調整ニ關スル法律案
貿易組合法案
工業組合法中改正法律案
百貨店法案
酒造組合法中改正法律案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第三號)昭和十二年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第三號)昭和十二年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
通信事業特別會計ニ於ケル簡易生命保險
及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル經費ニ
關スル法律案
昭和十年度第一豫備金
支出ノ件
昭和十年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
昭和十年度特別會計豫
備費支出ノ件
昭和十年度滿洲事件第
一豫備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度第二豫備金支出
ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度豫備金外ニ於テ
豫算超過及豫算外支出
ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度特別會計第二豫
備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度特別會計豫備金
外ニ於テ豫算超過及豫
算外支出ノ件
昭和十一年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
豫備金外ニ於テ豫算外
支出ノ件
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
小作法案
提出者
杉山元治郞君
(承諾ヲ求ムル件)
(以上七月三十日提出)
松永義雄君
黑田壽男君前川一正君
富吉榮二君野溝勝君
勞働組合法案
提出者
鈴木文治君米窪滿亮君
河野密君塚本重藏君
永江一夫君
鐵道豫定線追加ニ關スル建議案
提出者小山倉之助君
東北廳設置ニ關スル建議案
提出者
森田重次郞君山田六郞君
伊藤五郞君
農業保險法制定ニ關スル建議案
提出者
松浦周太郞君森田重次郞君
手代木隆吉君伊藤五郞君
坂本宗太郞君
漁業組合中央金庫設置促進ニ關スル建議
案
提出者
喜多壯一郞君多田滿長君
田村秀吉君手代木隆吉君
高木条太郞君松田喜三郞君
卯尾田毅太郞君
國民負擔均衡ニ關スル建議案
提出者
森田重次郞君松浦周太郞君
山田順策君手代木隆吉君
伊藤五郞君
高等手工師範學校設置ニ關スル建議案
提出者大野伴陸君
西成線高架改築竝電化促進ニ關スル建議
案
提出者
塚本重藏君內藤正剛君
上田孝吉君
老兵年金法ノ制定竝從軍者優遇ニ關スル
建議案
提出者
本田義成君武知勇記君
松永東君池田〓秋君
小高長三郞君高橋義次君
下級俸給者竝傭人ニ對スル健康保險法制
定ニ關スル建議案
提出者
井上良次君田万〓臣君
塚本重藏君
アンゴラ養兎振興ニ關スル建議案
提出者
野中徹也君高橋壽太郞君
(以上七月三十日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
國民健康保險法案不提出竝醫藥制度調査
會設置ニ關スル質問主意書
提出者
武知勇記君靑木亮貫君
產繭處理統制ニ關スル質問主意書
提出者
野溝勝君須永好君
前川正一君山崎釼二君
三等郵便局現業從事員ノ待遇改善ニ關ス
ル質問主意書
提出者佐竹晴記君
(以上七月三十日提出)
一昨三十日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第一部選出
決算委員福田關次郞君(本田彌市郞
君補闕)
一昨三十日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
農村負債整理資金特別融通及損失補償法
案(政府提出)委員
委員長寺田市正君
理事
松田正一君岡田喜久治君
吉植庄亮君西川貞一君
人造石油製造事業法案(政府提出)外一件
委員
委員長古屋慶隆君
理事
粟山博君小野寅吉君
小笠原三九郞君川島正次郞君
製鐵事業法案(政府提出)委員
委員長〓瀨規矩雄君
理事
中井川浩君〓寛君
南條德男君瀧澤七郞君
船員法改正法律案(政府提出)委員
委員長漢那憲和君
理事
岡野龍一君長井源君
高橋泰雄君田代正治君
陪審法中改正法律案(政府提出)委員
委員長牧野賤男君
理事
澤田利吉君中山福藏君
河野一郞君松木弘君
紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籤
劵附囘數入場劵發行ニ關スル法律案(政
府提出)委員
委員長田中万逸君
理事
高橋義次君飯田助夫君
宮澤〓作君深澤豐太郞君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外三
件委員
委員長山道襄一君
理事
西村金三郞君本田彌市郞君
岩瀨亮君綾部健太郞君
一昨三十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
產金法案(政府提出)外六件委員
山本厚三君勝正憲君
小山谷藏君小山倉之助君
原玉重君山田順策君
小泉純也君字賀四郞君
小林房之助君堀內良平君
猪野毛利榮君小笠原三九郞君
匹田銳吉君生田和平君
一ノ瀨俊民君綾部健太郞君
石坂養平君武田德三郞君
松山常次郞君松村光三君
豐田收君窪井義道君
簡牛凢夫君田万〓臣君
冨吉榮二君田川大吉郞君
靑木作雄君
一昨三十日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外三
件委員
辭任綾部健太郞君補闕小平重吉君
辭任飯塚春太郞君補關中島彌團次君
辭任猪野毛利榮君補關靑山憲三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、陸軍大臣、海軍大臣ヨリ報〓ガアル筈
デアリマシタガ、臨時閣議ガ開カレタトノ
コトデアリマスカラ、此際日程ニ入リマス、
日程第一、通信事業特別會計ニ於ケル簡易
生命保險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル
經費ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-大藏參與官
第通信事業特別會計ニ於ケル簡易
生命保險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ
要スル經費ニ關スル法律案(政府提
四第一讀會
通信事業特別會計ニ於ケル簡易生命保
險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル經
費ニ關スル法律案
遞信省及遞信大臣ノ管理ニ屬スル官署ニ
於テ取扱フ簡易生命保險及郵便年金ノ事
務ニ要スル經費ハ通信事業特別會計ノ所
屬トス
簡易生命保險特別會計及郵便年金特別會
計ハ前項ニ規定スル經費ニ充ツル爲每年
度通信事業特別會計ニ繰入金ヲ爲スコト
ヲ得
前項ノ規定ニ依ル繰入金ハ通信事業特別
會計業務勘定ノ歲入トシ第一項ニ規定ス
ル經費ハ同勘定ノ歲出トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員中村三之丞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=2
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003・中村三之丞
○政府委員(中村三之丞君) 只今議題トナ
リマシタ通信事業特別會計ニ於ケル簡易生
命保險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル經
費ニ關スル法律案提出ノ理由ヲ說明致シマ
ス、保健社會省ヲ設置セラルヽコトト相成
リマシタコトト伴ヒ、簡易生命保險及ビ郵
便年金ノ兩事業ハ同省ニ於テ主掌セラルヽ
コトトナリ、隨テ簡易生命保險及ビ郵便年
金ノ兩特別會計ハ、之ヲ同省ニ移管スルコト
トナリマスルガ、簡易生命保險及ビ郵便年
金ノ現業事務及ビ右現業事務ノ管理ニ關ス
ル事務ハ、之ヲ遞信省及ビ遞信大臣ノ管理
ニ屬スル官署ニ於テ取扱フコトト致シマス
ル關係上、是ガ取扱ニ要スル經費ヲ通信事
業特別會計ニ所屬セシメ、其財源ニ相當ス
ル金額ヲ右ノ兩特別會計ヨリ通信事業特別
會計ニ繰入ルヽコトトスルニ必要ナル會計
上ノ處理ニ關スル規定ヲ設クル爲メ、本法
律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上速ニ御協賛アランコトヲ希望
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-山崎釼二君
〔山崎釼二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=4
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005・山崎釼二
○山崎釼二君 簡單ニ箇條的ニ五點程御伺
致シマス、保健社會省ノ新設ニ伴ヒマシテ、
此事業ガ新省ニ依ノテ行ハレルコトハ、只今
ノ御說明デ承ッテ居ルノデアリマスルガ、ソ
レニ依リマシテ遞信省關係ガ實際ノ勸誘其
他ノ事務ヲ扱フヤウニ承知スルノデアリマ
ス、ソコデ第一ニ御伺シタイト思ヒマスル
コトハ、此保險ヲ扱フニ當リマシテ、昭和
十年度ノ簡易保險局ノ年報ニ依ッテ見マス
ルト、月掛五十錢以下ノ掛金ノ加入者ノ新
契約ガ非常ニ少イノデアリマス、ドウ云フ
譯カト思ッテ居リマシタ所ガ、偶〓一二ノ例
ヲ私見タノデアリマスル、ソレハ靜岡縣下
ニ於テ行ハレタコトデゴザイマス、或ル郵
便局デ募集致シマスル際ニ、五十錢以下ノ
少額者ノ加入ヲ取ルト云フコトハ非常ニ面
倒デアル、手間ガ掛ルカラ、サウ云フモノ
ハ成ルベク取ラヌヤウニシテ居ルノダト
云ッテ、事實加入申込ヲ爲シタル者ヲ斷ッテ、
郵便局ガ扱ハナカッタ事例ガアッタノデアリ
やっ、其關係者ガ當局ニ對シテ質問書其他
ヲ出シマシタ所ガ、左樣ナコトハナイト思
フカラ、關係當局ヘ言ッテヤルト云フ囘答ハ
參ッテ居リマスガ、其儘ニナッテ居ルノデゴ
ザイマス、是ハ其扱ッタ沼津郵便局長ノ言明
ノ如ク、當局ハ左樣ナ極ク零細ナ掛金ヲ以
テ、之ニ加入シヨウトスル者ノ取扱ヲ煩瑣
デアルカラ、之ヲ爲サシメナイ方針デアル
カドウカト云フコトヲ、先ヅ第一ニ伺ッテ置
キタイノデアリマス
第二點ハ、此保險料ノ金額ト云フモノガ
僅カ四五百圓ノモノデゴザイマスケレドモ、
今日社會情勢モ非常ナル變化ヲ來シテ居リ
マス、故ニ之ヲ千圓程度位ニ引上ゲル意思
アリヤナシヤ、此點ヲ御伺シタイノデアリ
マス(拍手)此千圓程度ニ引上ゲルコトガ、
群小ノ保險營利事業會社ノ營業ヲ壓迫スル
ト云フヤウナ言動ノ下ニ、一部ニ反對シテ
居ル向ガアルサウデアリマス、併ナガラ國
民ノ健康乃至生命ノ保險ヲスルコトハ、少
數營利會社ノ手ニ依ッテノミ萬全ヲ期セラ
ルヽコトデナイコトハ勿論デゴザイマス、
仍テ是等ノ國民ノ殆ド中以下ニ位シテ居ル
人達ノ生命ヲ保險ショウトスレバ、少數ノ
營利業者ヲ壓迫スルト云フ、二ツノ立前ニ
立ッテ、ドチラカヲ採ラナケレバナラヌト云
フコトニ今日ナッテ居ルノデハナイカ、吾々
ハ斯樣ニ推察スルノデアリマス、ソコデ先
ヅ第一ニ左樣ナコトハ今日ノ國民生活安
定保險政策ヲ徹底サセヨウトスル場合ニ
於テハ、ドチラカヲ採ラナケレバイカヌ、
ドチラ採ルカト云ヘバ、ドウシテモ是ハ千
圓程度ニ引上ゲル方ガ宜イト考ヘルノデア
リマスルガ、其點ニ付テ政府ハ如何ニ御考
ニナッテ居ルカ、之ヲ第二點トシテ御伺致シ
マス
第三點ト致シマシテハ、此引上ニ依ッテ來
ルモノハ當然群小營業者ノ壓迫デアリマス、
之ニ付テ是等ヲ政府ガ積極的ニ整理統合シ
テ、寧口是等ヲ一ツノ保險國營政策ノ立前
ニ立チマシテ、之ヲ直接政府ガ取上ゲテシ
マフ-取上ゲルト云フコトハ語弊ガアリ
マスガ、綜合シテ一ツノ國營保險事業ニ移
シテシマフ方針ヲ執ラルヽコトガ必要デハ
ナイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、第三
點ト致シマシテ、保險國營ヲ斷行スルノ意
思アリヤナシヤ、此點ヲ御伺致シマス(拍
手)
ソレカラモウ一點最後ニ御伺致シタイト
思ヒマスルコトハ、保險料金ノ引下ヲ爲ス
意思ガアルカドウカ、斯ウ云フ點デアリマ
ス、創業以來相當ノ年月ヲ經テ居リマスカ
ラ、其營業モ統計ヲ以テ見レバ飛躍的ニ伸
ビテ居ルノデアリマス、サウナレバ勢ヒ料
金ガ自然ニ下ッテモ、是ハ當然ナノデアリマ
スケレドモ、其料金率ノ引下ト云フコトハ
ゴザイマセヌ、保險會社ノ營業率カラ見レ
バ、私ハ約二割程度ノ高率デアルト考ヘルノ
デアリマス、併ナガラ二割程度ノ高率モ、月
月集メニ來テ吳レルト云フ一ツノ便宜ガア
リマスル爲ニ、之ニ對スル加入ガ相當アルノ
デハナイカ、殊ニ各郵便局ニ强制的ニ割當
テテ、之ヲ全國的ニ徵募スル關係上相當ノ成
績ヲ擧ゲテ居ル、只今コヽデ二割乃至三割ノ
引下ヲ斷行シテモ、國庫ニ對シテ損害ヲ掛
ケルヤウナコトハナイ、保險ハ十分立チ得
ル、斯樣ニ統計ノ上カラ見テ考ヘルノデア
リマスガ、之ヲ政府ハ斷行セラルヽ意思ア
リヤナシヤ、斯ウ云フ點ヲ御伺致シタイト
思ヒマス
附帶致シマシテ、ソレ等ノ保險積立金ヲ
以テ、政府ノ公債發行ニ對シテ之ヲ引受ケ
ルコトニノミ政策ヲ振向ケテ行キマスルナ
ラバ、將來保險關係ノ低利資金政策ノ上ニ
於テモ非常ナル支障ヲ來シテ來ハシナイ
カ、是等ノ集ッタモノハ、ドウセ零細ナル中
以下ノ大衆ノ金デアッテ-何万圓ト云フ
生命保險ヲ掛ケルコトノ出來ナイ人達ノ利
用機關デアリマスカラ、謂ハバ庶民階級ノ
生命ト生活ヲ安定セシメル機關ニ依ッテ零
細ニ集メタモノデアリマス、隨テ其利用方
法ハ成ベク之ヲ結核豫防費用トカ、或ハ其
他ノ細民階級ノ保健衞生ノ爲ニ、殊ニ是ハ
十分ニ全部的ニモ使用シナケレバナラヌト
思フノデゴザイマス(拍手)是等ニ對スル當
局ノ御所信ハ如何デゴザイマスルカ、之ヲ
御伺致シマス、以上簡單デゴザイマスルガ
御伺致シマス(拍手)
〔政府委員田島勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=5
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006・田島勝太郎
○政府委員(田島勝太郞君) 山崎君ノ御質
疑ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、第一問ハ簡
易保險募集ノ上ニ於キマシテ、五十錢以下
ノ保險料金ノモノヲ加入セシメルコトヲ
澁ッテ居ルヤウナ傾向ガアルヤウデアルガ、
ソレハ不都合デハナイカト云フヤウナ御尋
デアッタヤウニ思ヒマス、此點ニ付テ御答ヲ
申上ゲマスルガ、簡易保險ノ月掛料金ハ十
錢ヲ最低ト致シマシテ、ソレヨリ以上十錢
刻ミニナッテ居ルノデゴザイマス、ソレデ加
入者ハ如何ナル料金ノモノニモ加入シ得ル
コトハ勿論デアリマシテ、募集從事員ト致
シマシテハ仕事ニ熱心デアリマス餘リニ、
成ベク保險金ノ高額ナルモノヲ募集スルコ
トヲ欲スルヤウナ傾向ハアルコトト存ジマ
スルケレドモ、申上ゲマスル通リニ十錢以
上十錢刻ミニナッテ居リマシテ、成ベク少額
ノ保險モ之ヲ取扱フコトガ本事業ノ精神デ
モゴザイマスルカラ、其點ニ付キマシテ當
局ト致シマシテ少額ノ保險募集ト云フコト
ヲ澁ッテ、高イ方ヲ奬勵スルト云フヤウナ精
神ヲ以テ、此事業ヲ經營シテ居ルト云フヤ
ウナコトハ、毛頭アリマセヌト云フコトヲ
申上ゲテ置キタイト思フノデアリマス
次ハ此簡易保險ノ最高金額ヲ千圓ニ引上
ゲル意思ハナイカドウカト云フ御尋デゴザ
イマスルガ、此點ニ付キマシテ以前ニ保險
ノ最高金額ヲ引上ゲマスル際ニ、相當ノ議
論ガアッテ多少ノ摩擦ヲ生ジマシタコトハ
御存ジノ通リデゴザイマス、目下社會保健
省ノ設置將ニ成ラントシテ居ル際デゴザイ
マシテ、此問題ハ何レ新設省ニ於テ適當ニ
〓究ヲサレルコトト存ズルノデゴザイマス
ルガ、大體ニ於キマシテ既存保險事業ト多少
ノ衛突摩擦ヲ生ズルコトデゴザイマスカ
ラ、愼重ニ〓究調査ヲ致シマシタ上ニ、實
行ヲスル法案ヲ定メルコトガ必要デアラウ
ト考ヘルノデアリマス
第三番目ニ保險事業ノ整理統合ヲ圖リマ
シテ、之ヲ國營ニ移スヤウナ意思ハナイカ
ト云フ御尋デゴザイマスルガ、本件ニ付キ
マシテモ前ノ御質疑ニ御答申シマシタノト
同樣ニ、新設社會保健省ニ於テ考慮サレル
コトデアラウト考ヘルノデアリマスガ、旣
ニ今日マデニ此新シキ省ノ設置ヲ決定サレ
ル場合ニ於ケル根本ノ方針ト致シマシテ、
參與制度ノ如キモノヲ設ケテ、愼重ニ總テ
ノ問題ヲ考究スルコトニナッテ居ルノデゴ
ザイマスルカラ、何レ新設省ノ設立後ニ於
キマシテ、適當ノ解決ガアルコトト信ズル
ノデアリマス
最後ニ保險料金ノ引下ヲ考ヘテハ居ラヌ
カト云フヤウナ御尋デアリマスルガ、本件
ニ付キマシテハ、經理ノ成績ニ鑑ミマシテ
還付金ノ制度ヲ設ケマシテ、普通ノ言葉デ
申シマスルト、料金ノ拂戾デゴザイマスル
ガ、サウ云フ制度ヲ設ケマシテ、適當ノ年
限繼續ヲ致シマシタ被保險者ニ對シマシテ
ハ、保險料低減ト同一ノ效果ヲ奏スルヤウ
ナ措置ヲ執ッテ居ルノデアリマス、是ダケ御
答申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、船員法改
正法律案委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-此際陸
軍大臣及ビ海軍大臣ヨリ北支事變ニ關シ報
告ノ爲メ發言ヲ求メラレテ居リマス-杉
山陸軍大臣
北支事變ニ關スル陸軍大臣海軍大臣ノ報
告
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=10
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011・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 本月二十八日以後
ノ平津地方ニ於キマスル戰鬪經過ノ〓要ヲ
說明致シマス
隱忍ニ隱忍ヲ重ネマシタ我ガ駐屯軍モ、
二十五日夜ニ於キマスル郞坊事件、竝ニ二
十六日ニ於キマスル北平廣安門事件等續發
スルニ及ビマシテ、遂ニ支那側ニ於ケル協定
實行ニ誠意ナキモノト認メマシテ、駐屯軍
ハ其任務遂行竝ニ自衞上斷乎トシテ第二十
九軍ヲ膺懲スルコトニ致シマシタコトハ、
既ニ申上ゲタ通リデアリマス
我ガ駐屯軍ノ此決意ハ眞ニ已ムヲ得ザル
ニ出タモノデアリマシテ、我軍ノ目標ト致
シテ居リマスルモノハ、抗日挑戰ヲ敢テ致
シマシタ支那軍デアリマシテ、決シテ善良
ナル支那ノ民衆ヲ敵トスルモノデハアリマ
セヌ、隨テ北平ノ城內ニ於キマシテモ、支
那側ガ挑戰的行動ニ出デザル限リハ、武力
ヲ使用セザルハ申スマデモナク、列國ノ權
益ヲ尊重シテ居ルノデアリマシテ、此趣旨
ニ依リマシテ、我軍ハ先ヅ北平ノ周圍ニ在
リマスル支那軍ニ、斷乎タル膺懲ノ鐵槌ヲ
加ヘルコトニナッタノデアリマス
卽チ二十八日ニハ北平ノ郊外ニアリマス
ル西苑、北苑及ビ南苑附近ニ駐屯ヲシテ居
リマス支那軍ヲ擊攘スル如ク行動ヲ開始致
シマシタ、此日早朝ヨリ暴風雷雨ガ起リマ
シタガ、我ガ飛行隊ハ此惡天候ヲ冒シテ出
動致シマシテ、西苑ノ兵營ヲ爆擊ヲシテ多
大ノ損害ヲ與ヘマシタ、酒井兵團ハ西苑ノ
北方約四里ニアリマス沙河鎭ノ敵ヲ攻擊シ
テ、午前十時半ニ之ヲ占領シ、又鈴木兵團
ハ西苑東北方約一里半ノ〓河鎭ヲ攻擊ヲシ
テ、午後三時之ヲ奪取致シマシタ、南苑ニ
於キマシテハ川岸兵團、河邊兵團竝ニ萱島
部隊ガ相協力ヲシテ、三方面ヨリ猛烈ニ攻
擊ヲ加ヘマシタ、支那軍ハ早クモ午前八時
三十分頃ヨリ逐次退却ヲ始メマシタノデ、
一部ヲ以テ之ヲ追擊ヲ致シマシテ、北平ノ
南側馬村附近ニ於テ殲滅的打撃ヲ加ヘマス
ルト共ニ、尙モ抵抗ヲ持續致シマスル殘敵
ヲ掃蕩致シマシテ、午後六時ニハ完全ニ南
苑ヲ占領致シマシタ
此日八寶山、蘆溝橋方面ノ敵ハ、不遜ニ
モ豐台附近ニ殘ッテ守備ニ任ジテ居リマシ
タ河邊兵團ノ一部ヲ攻擊シテ來マシタノ
デ、該兵團ノ主力ハ馬村附近ノ戰勝後直チ
ニ轉進シテ豐台ニ歸リ、此敵ヲ攻擊致シマ
シタ次第デアリマス、又天津ニ於キマシテ
ハ、我軍ハ北平ト同樣ニ、戰禍ノ巷トスル
ノヲ避ケテ居タノデアリマスガ、支那軍ハ
我ガ兵力少シト侮ッテカ、第三十八師ノ一部
ガ保安隊ト共ニ、二十八日夜半ヨリ我ガ軍
司令部、飛行場等五箇所ヲ攻擊シテ來マシ
テ、猛烈ナル市街戰ヲ演ズルニ至リマシ
ク、併ナガラ翌朝迄ニハ敵ニ多大ノ損害ヲ
與ヘテ、一先ヅ擊退致シマシタ
次デ翌二十九日ニハ北平西方地區ニ於キ
マシテ、我軍ハ再ビ酷熱ヲ冒シテ西范附近
ニ於ケル敵ノ抵抗ヲ逐次排除シツヽ前進シ、
河邊兵團ハ午後六時蘆溝橋ヲ完全ニ占領
シ、酒井兵團モ亦午後七時蘆溝橋西北方約
一里永定河東岸ニ在ル衙門口ヲ占領致シマ
シテ、該方面永定河左岸ヲ占領シマシタ、北
平城內ニ於キマシテハ、最初ノ方針ノ如ク、
我ヨリ進ンデ武力ヲ使用スルコトナク、專
心居留民ノ保護ニ任ジテ居リマシタガ、支
那側モ敢テ事ヲ起サズ、第三十七師ノ部隊
ハ、二十九日夜窃ニ保定方面ニ退却シタモノ
ノ樣デ、城內ニハ第百三十二師ノ二箇團ヲ
殘スノミトナリ、宋哲元モ亦秦德純、馮治
安等ヲ帶同シテ保定ニ遁走シタト傳ヘラレ
テ居リマス、天津方面ニ於キマシテハ、支
那軍ガ依然トシテ執拗ナル攻擊ヲ續ケマシ
タノデ、我軍ハ自衞上巳ムヲ得ズ支那軍ノ
占據シテ居リマスル主要地點ヲ爆擊スルニ
決シ、駐屯軍司令部ハ、天津市內ノ治安ヲ
維持シ、居留民ヲ保護スル目的ヲ以テ爆擊
スベキモ、列國ノ權益尊重、居留民ノ保護
ニ關シテハ、最善ヲ期スル旨ヲ聲明シマシ
タル後、二十九日午後ニ至リ、保安總隊
本部、警備司令部等ヲ爆擊シ、多大ノ效果
ヲ收メマシタ、其夜ハ少數ノ敵ガ東站停車
場等ヲ夜襲シテ來マシタダケデ、何レモ直
チニ擊退シタノデアリマス、昨三十日ニ於
テハ、主ナル兵團ガ蘆溝橋對岸ニ在ル長辛
店附近ノ高地ヲ占領スベク、午後一時攻
擊前進ヲ開始シマシテ、午後三時ニハ早
クモ完全ニ目的ヲ達シ、敵ヲ遠ク南方ニ
擊攘致シマシタ、又鈴木兵團ノ一部ハ、
北苑ノ殘敵ヲ武裝解除シタノデアリマス、
天津ニ於キマシテハ、佛蘭西租界ガ通行
出來マセヌノデ、支那街ノ一部ヲ掃蕩致
シマシテ、日本租界ヨリ金湯橋ヲ經テ東
站停車場ニ至ル沿線ノ地區ヲ占領シ、其
交通連絡ヲ確保シマシタ、第二十九軍ハ
天津郊外ニ撤退致シマシテ、旣ニ積極行動
ニ出ヅルノ意圖ハ消滅シタヤウデアリマス、
尙ホ塘沽ノ對岸大沽ニ居リマスル支那軍モ、
二十八日以來不意ニ我ヲ射擊スル等ノ挑戰
行動ニ出マシタノデ、我ガ駐屯軍ハ二十九
日海軍ノ協力ヲ得マシテ、猛烈ナル爆擊及
ビ砲擊ニ依リ、多大ノ損害ヲ與ヘテ敵ヲ
沈默セシメ、翌三十日午前十時過ギニハ完
全ニ之ヲ占領シ、支那軍艦一隻ヲ鹵獲シマ
シタ、通州ニ於テ二十八日冀東保安隊ガ叛
亂ヲ起シマシタノハ事實デアリマシテ、僅
少ナル我ガ部隊ハ約三千ノ敵ニ包圍サレテ
苦戰ヲ續ケ、飛行隊ノ爆擊ニ依ッテ漸ク圍
ミヲ解カセルコトガ出來マシタ、我ガ居留
民ノ狀況ハ遺憾ナガラ未ダ眞相ガ判明シテ
居リマセヌ、斯クテ平津地方ニ於テハ大ナ
ル支那軍隊ハ潰滅致シマシタガ、尙ホ殘敵
各處ニ蠢動スルアリ、未ダ治安ノ恢復ニハ
相當ノ時日ト兵力トヲ要スルト考ヘル次第
デアリマス
次ニ中央軍ノ北上ノ狀況ニ付テ申述ベマス、
中央軍ハ七月十日前後カラ平漢鐵道ニ沿ヒ、
逐次北上ヲ開始致シマシテ、二十二三日頃
ニハ河北省ニ進入セル兵力約七万ヲ算フル
ニ至リマシタ、是等ノ中央軍ハ、保定カラ以
南、河南省トノ省境附近ニ亙ッテ集中シマシ
テ、其前方良〓、是ハ蘆溝橋ノ南方約四里ノ
所デアルガ、其附近ニ互ル間ニ居リマシタ
所ノ、河北省在來ノ東北軍系デアル、萬福
麟ヤ馮占海ノ軍約三万ト共ニ、昨今逐次前方
ニ詰メ掛ケテ來テ居ル狀況デアリマス、其
後方鄭州附近ニモ各方面ヨリ兵力ヲ集メマ
シテ、現今デハ約十二三万ニ達シテ居リマ
ス、尙ホ津浦鐵道方面デハ、徐州及ビ海州ニ
約四五万ノモノガ居ル外、最近ハ濟南附近
ニモ若干ノ中央軍ガ進入シテ來ル模樣デア
リマシテ、中央軍中ノ最精銳部隊デアル南
京軍官學校ノ〓導總隊モ旣ニ出動シテ居ル次
第デアリマス、又支那ノ空軍ハ未ダ一機モ
平津地方ニ現レテ居リマセヌガ、併ナガラ
隴海鐵道沿線及ビ其以南ノ地區ニ於テ戰鬪
準備ヲ著々實施シテ居リマス、以上ガ昨日
マデノ一般狀態デアリマス
尙ホ玆ニ北平、天津、通州ノ居留民ノ狀
態ニ付テ申上ゲマス、北平ニハ事變前ハ內
國人約二千百、鮮人約千九百、合計約四千
ヲ算シタノデアリマシタガ、事變直前ニ其
約五分ノ二ハ他ニ避難ヲ致シマシタ、殘餘
ノ五分ノ三ハ目下公使館區域ニ收容セラレ
テ居リマス者ガ、內鮮合シマシテ約二千四百
デアリマシテ、其後何等ノ異狀ナク完全ニ
保護サレテ居リマス、天津ニ於キマシテハ、
居留民ハ殆ド全部ヲ租界內ニ收容致シテ居
リマス、現地保護可能ノ見込ノ者ハ現地デ
保護ヲシ、天津東南地區ノ住民ハ、危險ヲ慮
リマシテ二十九日ニ租界內ニ收容致シテ居
リマスガ、目下ノ所大ナル被害ガ無イ見込
デアリマス、通州ニ於キマシテハ內地人百
十三、鮮人百八十二名、其他ニ陸軍ノ特務
機關ノ者ガ若干居ッタノデアリマスガ、是ハ
只今申上ゲマシタヤウニ、冀東保安隊ノ叛
亂ノ爲ニ居留民、特務機關共ニ多數ノ死傷
者ヲ生ジテ居ルヤウデアリマスガ、未ダ確
報ヲ得テ居リマセヌ
今後ノ戰局ノ推移ハ豫斷ヲ許サヌノデア
リマスガ、事態ガ擴大スルカ否カハ、ー一
支那側ノ態度如何ニ依ルモノデアリマジテ、
現狀ニ於テハ一層事態ガ重大化スルカモ知
レナイノデ、陸軍當局トシテ之ニ對スル用
意準備ニ萬遺憾ナキヲ期シテ居リマシテ、
我ガ駐屯軍ニ於テモ任務遂行竝ニ自衞上飽
マデモ公明正大、千万人ノ敵我往カンノ意
氣ヲ以テ我ガ威武ヲ發揚シテ、益〓奉公ノ
誠ヲ盡サンコトヲ期シテ居リマス、之ヲ以
テ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 米內海軍大臣
〔國務大臣米内光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=12
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013・米内光政
○國務大臣(米内光政君) 前囘御說明致シ
マシテ以來ノ海軍ニ於テ執リマシタ處置等
ニ付テ申上ゲマス
海軍ニ於キマシテハ、主トシテ第三艦隊
及ビ旅順要港部ノ兵力ヲ以テ、支那沿岸及ビ
揚子江方面ノ警備ニ當ラシメ、一部ヲ以テ陸
軍ニ協力セシメラルヽト共ニ、萬一ニ應ズ
ル爲メ所要ノ兵力ニハ移動待機ヲ命ゼラレ
テ居リマスガ、塘沽ニ於キマシテハ平津方
面ノ情況進展ニ伴ヒ、所在ノ支那兵ニ不穩
ノ情勢ガアリマシタノデ、同地ノ警備ニ任
ジテ居リマシク我ガ驅逐隊ハ一層警戒ヲ嚴
ニシテ居リマシタ所、去ル二十九日支那兵
ハ我ニ向ッテ發砲スルニ至リマシタノデ、之
ニ應戰シ、所在ノ我ガ陸軍部隊ト協力、同
方面ノ支那兵ヲ掃蕩致シマシテ、三十日午
後ニ至リ白河下流ノ水路ヲ確保致シマシタ
山東及ビ中南支方面ニ於テハ、漸次排日ノ
氣勢ガ昂ッテ居リマスガ、警備艦ハ所在ノ帝
國官憲ト協力シテ、極力事件ノ波及及ビ發
生ヲ防止スルニ努メテ居リマス
第三艦隊司令長官ハ右ノ目的ノ爲メ、去
ル二十九日支那側當局者ノ自重警戒ヲ要望
スルト共ニ、一般ニ對シテモ此際不祥事件
ヲ起スコトナキヤウ戒シムル所ガアッタ次
第デアリマス
斯クテ今日マデノ所玆ニ特ニ申上グル程
ノ事件ハ起ッテ居リマセヌ、海軍ト致シマシ
テハ今後一層警戒ヲ嚴ニシツヽ事件ノ擴大
波及ヲ抑止スルト共ニ、萬全ノ準備ヲ整ヘ
テ萬一ニ備へ、以テ其任務達成ニ遺憾ナカ
ランコトヲ期シテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 日程ニ入リマス、日
程第二、軍機保護法改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス-海軍大臣
第二軍機保護法改正法律案(政府提
出貴族院送付)第一讀會
軍機保護法改正法律案
軍機保護法
第一條本法ニ於テ軍事上ノ祕密ト稱ス
ルハ作戰、用兵、動員、出師其ノ他軍
事上祕密ヲ要スル事項又ハ圖書物件ヲ
謂フ
前項ノ事項又ハ圖書物件ノ種類範圍ハ
陸軍大臣又ハ海軍大臣命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第二條軍事上ノ祕密ヲ探知シ又ハ收集
シタル者ハ六月以上十年以下ノ懲役ニ
處ス
軍事上ノ祕密ヲ公ニスル目的ヲ以テ又
ハ之ヲ外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者
ニ漏泄スル目的ヲ以テ前項ニ規定スル
行爲ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ有期懲
役ニ處ス
第三條業務ニ因リ軍事上ノ祕密ヲ知得
シ又ハ領有シタル者之ヲ他人ニ漏泄シ
タルトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ
處ス
業務ニ因リ軍事上ノ祕密ヲ知得シ又ハ
領有シタル者之ヲ公ニシ又ハ外國若ハ
外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シタルト
キハ死刑又ハ無期若ハ四年以上ノ懲役
三四八人
第四條軍事上ノ祕密ヲ探知シ又ハ收集
シタル者之ヲ他人ニ漏泄シタルトキハ
無期又ハ二年以上ノ懲役ニ處ス
軍事上ノ祕密ヲ探知シ又ハ收集シタル
者之ヲ公ニシ又ハ外國若ハ外國ノ爲ニ
行動スル者ニ漏泄シタルトキハ死刑又
ハ無期若ハ三年以上ノ懲役ニ處ス
第五條偶然ノ原由ニ因リ軍事上ノ祕密
ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ他人ニ
漏泄シタルトキハ六月以上十年以下ノ
懲役ニ處ス
偶然ノ原由ニ因リ軍事上ノ祕密ヲ知得
シ又ハ領有シタル者之ヲ公ニシ又ハ外
國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ
タルトキハ無期又ハ二年以上ノ懲役ニ
處ス
第六條軍事上ノ祕密ヲ探知シ、收集シ
又ハ漏泄スルコトヲ目的トシテ團體ヲ
組織シタル者又ハ其ノ團體ノ指導者タ
ル任務ニ從事シタル者ハ無期又ハ三年
以上ノ懲役ニ處ス
情ヲ知リテ前項ノ團體ニ加入シタル者
ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第七條業務ニ因リ軍事上ノ祕密ヲ知得
シ又ハ領有シタル者過失ニ因リ之ヲ他
人ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第八條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ軍事上
ノ祕密保護ノ爲必要アルトキハ命令ヲ
以テ左ニ揭グルモノニ付測量、撮影、
模寫、模造若ハ錄取又ハ其ノ複寫若ハ
複製ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
-軍港、要港又ハ防禦港
二保壘、砲臺、防備衞所其ノ他ノ國
防ノ爲建設シタル防禦營造物
三軍用艦船、軍用航空機若ハ兵器又
ハ陸軍大臣若ハ海軍大臣所管ノ飛行
場、電氣通信所、軍需品工場、軍需
品貯藏所其ノ他ノ軍事施設
前項ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反
シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ三千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第九條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ軍事上
ノ祕密保護ノ爲必要アルトキハ命令ヲ
以テ前條第一項ノ防禦營造物又ハ軍事
施設ノ周圍ノ地域ニシテ陸軍大臣又ハ
海軍大臣所管ノモノニ付區域ヲ定メ其
ノ區域ニ付測量、撮影、模寫、模造若
ハ錄取又ハ其ノ複寫若ハ複製ヲ禁止シ
又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反
シタル者亦前條第二項ニ同ジ
第十條許可ヲ得ズ若ハ許可ニ附シタル
條件ニ違反シ又ハ詐僞ノ方法ヲ以テ
許可ヲ得テ第八條第一項第二號若ハ第
三號ニ揭グルモノニシテ同條ノ禁止若
ハ制限ニ係ルモノ又ハ前條第一項ノ區
域ニ侵入シタル者ハ五年以下ノ懲役又
ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一條第八條第一項又ハ第九條第一
項ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反ス
ル行爲ヨリ生ジタル圖書物件ヲ他人ニ
交付シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ三
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ圖書物件ヲ公ニシ又ハ外國若ハ
外國ノ爲ニ行動スル者ニ交付シタル者
ハ十年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰
金ニ處ス
第十二條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ防空
其ノ他國土防衛ノ爲軍事上ノ祕密保護
ノ必要アルトキハ命令ヲ以テ空域、土
地又ハ水面ニ付區域ヲ定メ左ニ揭グル
行爲ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
-其ノ區域ニ於ケル航空
二其ノ區域内ノ氣象ノ觀測又ハ其ノ
區域內ノ水陸ノ形狀若ハ施設物ノ狀
況ノ測量若ハ空中、高所ヨリノ撮影
又ハ其ノ複寫若ハ複製
前項第一號ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限
ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處
シ同項第二號ノ規定ニ依ル禁止又ハ制
限ニ違反シタル者ハ三年以下ノ懲役又
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第一項第二號ノ規定ニ依ル禁止又ハ制
限ニ違反スル行爲ヨリ生ジタル圖書ヲ
他人ニ交付シタル者ハ五年以下ノ懲役
又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ圖書ヲ公ニシ又ハ外國若ハ外國
ノ爲ニ行動スル者ニ交付シタル者ハ七
年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ
處ス
第十三條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ演習
又ハ兵器實驗等ニ際シ軍事上ノ祕密保
護ノ爲必要アルトキハ命令ヲ以テ演習
又ハ實驗等ヲ行フ空域、土地又ハ水面
及其ノ周圍ノ地域ニ付區域及期間ヲ定
メ之ニ出入スルコトヲ一時禁止シ又ハ
制限スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反
シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第十四條陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ軍事
上ノ祕密保護ノ爲必要アルトキハ命令
ヲ以テ開港場以外ノ水面ニ付區域ヲ定
メ外國船舶ノ之ニ出入スルコトヲ禁止
シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反
シタル船舶ノ長又ハ其ノ職務ヲ執ル者
ハ五年以下ノ懲役又ハ三百圓以上二千
圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ情狀重キトキハ其ノ
船舶ヲ沒收ス
第十五條第二條乃至第六條、第八條第
二項、第九條第二項、第十條、第十一
條、第十二條第二項乃至第四項及第十
三條第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十六條第二條乃至第五條ノ罪ヲ犯ス
目的ヲ以テ其ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲シタ
ル者ハ三月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第二條乃至第五條ノ罪ヲ犯サシムル爲
他人ヲ誘惑シ又ハ煽動シタル者亦前項
ニコシ
第十七條第六條、第八條第二項、第九
條第二項、第十條、第十一條、第十二
條第二項乃至第四項又ハ第十三條第二
項ノ罪ヲ犯サシムル爲他人ヲ誘惑シ又
ハ煽動シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條本法ノ罪ヲ犯シ因テ得タル財
物ハ犯人以外ノ者ニ屬セザルトキニ限
リ之ヲ沒收ス其ノ財物ガ犯人以外ノ者
ニ屬シ又ハ消費其ノ他ノ事由ニ因リ其
ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザ
ルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第十九條第二條乃至第五條、第七條、
第八條第二項、第九條第二項、第十一
條又ハ第十二條第二項乃至第四項ニ規
定スル犯罪行爲(未遂罪ノ場合ヲ含ム)
ヲ組成シタル物又ハ其ノ犯罪行爲ヨリ
生ジタル物ハ裁判ニ依リ沒收スル場合
ヲ除クノ外何人ノ所有ヲ問ハズ行政ノ
處分ヲ以テ之ヲ沒取スルコトヲ得
前項ノ沒取ニ關スル手續ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二十條第二條、第六條、第八條第二
項、第九條第二項、第十二條第二項、
第十五條又ハ第十六條第一項ノ罪ヲ犯
シタル者未ダ官ニ發覺セザル前自首シ
タルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除ス
第二十一條第二條乃至第七條、第八條
第二項、第九條第二項、第十一條、第
十二條第二項乃至第四項及第十五條乃
至前條ノ規定ハ何人ヲ問ハズ本法施行
地外ニ於テ其ノ罪ヲ犯シタル者ニ亦之
ヲ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
刑法施行法第二十六條第一號ヲ左ノ如ク
改ム
一削除
〔國務大臣米内光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=14
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015・米内光政
○國務大臣(米内光政君) 只今上程セラレ
マシタ軍機保護法改正法律案ノ提出ノ理由
ヲ說明申上ゲマス、軍事上ノ祕密ヲ保護ス
ルコトハ、時ノ平戰ヲ問ハズ、國土防衞上
緊要ナルノミナラズ、特ニ有事ニ際シ敵ヲ
奇襲スル所以デアリマシテ、戰勝ノ一大要
因タルコトハ、古今東西ヲ通ジテ不變ノ鐵
則デアリマス、殊ニ近時ニ於ケル科學ノ進
步ト戰爭技術ノ變遷トハ、益〓軍機ノ種類、
範圍ト、是ガ保護ノ必要性トヲ增大スルニ
至ラシメタノデアリマス、卽チ各國ハ平時
ヨリ多大ノ犧牲ヲ拂ッテ、極祕裡ニ作戰、用
兵動員又ハ出師等ノ諸計畫、編成、裝備、
〓育、訓練、艦船、兵器等ヲ〓究整備シテ、
一朝有事ニ際シ有ユル部面ニ於テ奇襲的效
果ヲ得ルコトニ腐心シテ居リマスト共ニ、
他面競ウテ外國ノ軍事上ノ祕密ヲ諜知スル
爲メ、膨大ナル組織ト巧妙ナル科學的手段
トヲ以テ、一片ノ祕密取得ニ數万金ヲ惜マ
ザルガ如キ實情デアリマシテ、最近ニ於ケル
國際情勢ノ險惡化ニ伴ヒ、其傾向益〓甚シキ
ヲ加ヘテ參リマシタ、然ルニ現行軍機保護
法ハ約四十年以前ノ制定ニ係リ、之ヲ以テ
シテハ到底現代ノ諜報戰ニ對應スルコト不
可能トナッタバカリデナク、其刑名、刑期等
ハ舊刑法所定ノモノニ係ル等、不備缺陷多
キヲ以テ、改正案ヲ第七十議會ニ提案シ、
本院ニ於テハ委員會ノ通過ヲ見タル次第デ
アリマスガ、議會解散ノ爲メ協贊ヲ得ルコ
トガ出來マセヌデシタノデ、本議會ニ提出
致シマシタ次第デアリマス、何卒速ニ御審
議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍
手)
〔「司法大臣ガ居ナイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 司法大臣ハ病氣引籠
中トノコトデアリマス、司法政務次官ハ出
席致シテ居リマス-質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-三田村武夫君
〔三田村武夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=16
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017・三田村武夫
○三田村武夫君 本案ハ既ニ前議會ニ於キ
マシテ、各方面カラ審議サレテ居リマスノ
デ、私ハ極メテ簡單ニ二三ノ點ヲ御尋致シ
タイト思ヒマス、第一ニ私ハ陸海軍大臣ニ
御伺致シマス、只今陸軍大臣ガ北支事變ノ
其後ノ狀況ヲ御說明ニナリマシタガ、北支
ノ風雲愈〓急ヲ告ゲマシテ、所謂戰時體制
ニ入ッタモノト私達ハ考ヘルノデアリマス、
此際此議會ニ於キマシテ軍機保護法ノ審議
ヲ致シマスコトハ、私ハ洵ニ意義ナシトシナ
イノデアリマス、就キマシテ私ハ昨年ノ特
別議會ニ御提出ニナリマシタ國家總動員祕
密保護法案ヲ、此議會ニ御提出ニナラナカッ
タ御趣旨ヲ先ヅ御伺シタイノデアリマス、
ト申シマスノハ、今日此戰時體制下ニ於キ
マシテ、國防上保護シナクチヤナラナイ軍
事上ノ機密ハ、所謂狹義ニ於ケル軍事ノ機
密ノミニ止ラナイト思フノデアリマス、作
戰用兵、軍隊ノ編成、軍機ノ機密ニ關シテ
ハ、固ヨリ嚴重ナル機密ノ保持ヲ必要ト致
シマスガ、今日ノ所謂近代戰ハ私ガ申上ゲ
ルマデモナク、單ナル武力戰デナクシテ國
力戰デアリマス、狹義ノ軍事上ノ機密ヲ保
護スルコトノミニ依ッテ、國力ノ全體ガ玆ニ
保護サレルモノデハナイノデアリマス、國
力戰デアリマスナラバ、所謂廣義國防ノ見
地カラ國力ノ總和デアリマス、而モ戰ニ重
大ナル關係ヲ持チマス所ノ產業計畫、卽チ經
濟戰、思想戰ニ必要ナ有ユル機關ノ祕密ガ保
護サレナクチヤナラナイト思フノデアリマス、
昨年ノ特別議會ニ於キマシテハ、此國家總
動員祕密保護法ガ非常ニ不評判デアッタノ
デアリマス、ソレハ此法案ノ運用如何ニ依ッ
テハ國民ノ自由ニ至大ナル惡影響ヲ及ボス、
斯ル懸念ノ下ニ不評判デアッタノデアリマ
スガ、今日事態ハ一轉致シマシテ、東亞ノ
一大變局ニ直面シタノデアリマシテ、吾々
國民全部擧ッテ一大決意ヲ爲サナクチヤナ
ラナイ秋デアリマス、斯ル際ニ於キマシテ
ハ、日本人ハ忍苦ト犠牲ニ堪ヘ得ルモノデ
アリマス、私ハ斯ル時ニコソ國力ノ全體ヲ
保護スル意味ニ於テ、モット高イ、モット廣
イ範圍ノ國力保護ノ爲ノ立法ガ考ヘラレテ
宜イノデハナイカト思フノデアリマス(拍
手)其意味ニ於キマシテ、今囘此北支事變
ヲ契機ト致シマシテ、東亞ノ風雲急ナル今
日、軍機保護法ヲ御提案ニナリマシタ此時
ニ於キマシテ、私ハイマ一段ノ軍機保護ノ
點ニ御留意アリタイコトヲ切望スルノデア
リマス、同時ニ前提致シマシタ此所謂廣義
ノ意味ニ於ケル軍機保護法ノ點ニ關シテ、
陸海軍大臣ハ如何ナル御計畫ヲ御持チニナッ
テ居リマスカ、其點ヲ御伺シタイノデアリマス
第二ニ私ハ文部大臣ニ御伺シタイノデア
リマスガ、オ居デニナラヌヤウデアリマス
カラ省略致シマス、唯一言致シマスノハ、
私ハ政府全體ニ一言致シテ置キタイト思フ
ノデアリマス、戰時體制下ニ於ケル國政ノ
運營ハ、總テ一體ニナラナクチヤナラヌト
思フノデアリマス、今日東亞ノ現勢ガ斯ノ
如ク紛糾シ、日本ガ對外的ニ苦艱ヲ嘗メテ
居リマス根本ノ原因ハ、固ヨリ支那ノ暴戾
極マル排日抗日ニアッタノデアリマスガ、併
シ吾々ハ國民トシテ、政治家トシテ大イニ
反省シナクチヤナラヌ事實モアッタコトヲ
知ルノデアリマス、ソレハ國內ニ於テ徒ナ
ル抗爭ヲ繰返シ、日本自ラ國內ノ不統一ヲ
彼等ノ前ニ暴露シタ其事實ガ、支那ヲシテ
益〓排日抗日ノ思想ヲ助長セシメタノデア
リマス、デアリマスカラ今日此戰時體制下
ニ於テ特ニ考慮サレベキ問題ハ、國民總動
員ノ形體ニ於テ、國民ノ所謂思想動員、國
民ノ全思想ヲ國家目的ノ爲ニ統一シ運營ス
ル、强化スルト云フ點ヲ、特ニ御考慮願ヒ
タイト思フノデアリマス
第三ニ私ハ內務大臣ニ御伺致シマス、本
案ハ言フ迄モナク所謂「スパイ」ノ取締法案
デアリマス、併シ「スパイ」ト申シマシテモ色
色アリマシテ、中々難カシイノデアリマス
ガ、實際吾々ガ聞及ブ範圍ニ於キマシテ、
甚ダ遺憾ニ堪ヘナイト思ヒマスコトハ、社
會ノ上層階級ニ於ケル外人トノ交遊デアリ
マス、私ハ如何ニ法律ヲ整備シ、形ヲ整ヘ
テ見テモ、漏レル所カラ漏レヽバ無意義ダ
ト思フノデアリマス、嘗テ倫敦海軍條約ノ
折ニ、或ハ國際聯盟脫退ノ際ニ於ケル日本
ノ對外方針ガ、海外ニ頻々ト漏レタコトヲ
私達ハ聞及ンデ居ルノデアリマス、彼等ハ
或ハ長イ外國生活ノ體驗カラ、或ハ古イ交
遊關係カラ、常ニ外部ノ人ト接觸ヲシテ居
リマス、或ハ不用意ノウチカモ知レマセヌ
ガ、中ニハ自己ノ地位ヲ保持センガ爲ニ、
往々ニシテ國內ノ好マシカラザル事マデ傳
ヘル者ガナシトシナイノデアリマス、此點
ニ對シテ如何ナル御所見ヲ御持チデアリマ
スカ、私ハ今囘提案ニナッテ居リマス此軍
機保護法ガ嚴重ニ施行サレマス時、國民ハ
相當大キナ苦痛ヲ感ズルト思フノデアリマ
ス、國民ガ全部相當ノ犠牲ト忍苦ヲ拂ッテ
モ、タッタ一ツモット高度ノ場所カラ漏レル
モノガアリマスナラバ、私ハ全ク無意義ダ
ト思フノデアリマス、尙ホ私ハ玆ニ內務當
局ノ御考慮ヲ煩シタイト思フノハ、國際主
義ヲ飽マデモ遵奉スル社會主義陣營ノ組織
活動デアリマス、私ハ今日ノ日本ニハ斯ノ
如キ組織活動ガ無イコトヲ希ヒ且ツ確信致
シテ居リマスガ、國際關係ガ險惡ニナレバ
ナル程、彼等ノ蠢動ハ益〓、盛ニナルノデア
リマス、「ソビエト」露西亞ノ所謂人民戰線ノ
思潮、其思潮ノ線ニ依ッテ動ク各國ノ社會主
義陣營ハ、必然ノ勢ト致シマシテ國際的ナ
組織ヲ持チマシテ、サウシテ彼等ハ所謂非
戰論ヲ唱ヘテ、有ユル角度カラ本國ノ利益
ヲ擁護シヨウトシナイノデアリマス、デア
リマスカラ特ニ斯ノ如キ對外關係ノ緊迫シ
タ折ニ於キマシテハ、此國際主義ヲ飽マデ
モ遵奉スル社會主義陣營ノ組織活動ニ付テ
ハ、嚴重ナル取締ヲ切望シテ已マナイノデ
アリマス、此點ニ付テ如何ナル御所見ヲ御
持チデアリマスカ、内務大臣ノ御所見ヲ伺
ヒタイノデアリマス
次ニ私ハ外務大臣ニ御伺シタイノデアリ
マスガ、是モオ居デガナイヤウデアリマ
スカラ簡單ニ申上ゲテ置キマス、此Jス.
イ」ノ取締ト云フノハ非常ニ重要デアリマ
スガ、是ハ積極ト消極ト二ツノ方面ガアリ
マシテ、此內地ニ於ケル外國ノ「スパイ」、所
謂諸列國ノ諜報機關ヲ取締ルト云フコトガ
一ツト、同時ニ考慮サレナクテハナラナイ
問題ハ、我國ニ於ケル其機關ノ整備デアリ
マス、御承知ノ如ク滿洲ハ國際「スパイ」ノ活
躍舞臺デアリマシテ、滿洲ニ於キマシテハ
日本ノ有ユル行動ヲ彼等ハ聽取セント活躍
シテ居ルノデアリマス、其滿洲ニ於ケル日
本ノ所謂警察機關ノ狀態ヲ見マスルト、甚
ダ私ハ不可解ナ點ガアルノデアリマス、ト
申シマスノハ、御承知ノ如ク滿洲ニハ外
務大臣ノ監督下ニアリマス駐滿全權大
使ト云フモノガアリマス、其下ニ領事館ノ
警察ガアリマス、一方關東局ノ下ニハ關東
局ノ警察官ガ居リマス、尙ホ憲兵警察ガア
リ、滿洲國ノ警察ガアリ、四ツモ五ツモ輻
湊シテ居ルノデアリマス、私ハ或ル意味ニ
於テ斯ノ如ク輻湊シタ警察機關ノアルコト
ヲ好マシク思フコトモアリマスガ、大體ニ
於テ甚ダ複雜デアリ、不統制ニ終ルノデア
リマス、滿洲ガ今日日本ノ生命線トシテ國
際「スパイ」ノ活躍舞臺ニナッテ居リマス現
狀ニ鑑ミマシテ、私ハ滿洲ニ於ケル此警察
機構ノ整備ト云フコトハ、最モ留意シナケ
レバナラヌ問題デアルト思フノデアリマ
ス、此點ニ付テ外務當局ノ御所見ガ伺ヘマ
スレバ甚ダ結構ダト思フノデアリマス
尙ホ私ハ第五點ト致シマシテ拓務大臣ニ
モ御伺シタイノデアリマスガ、オ居デガナ
イヤウデアリマスカラ簡單ニ致シマス、唯
一言政府當局ニ申上ゲテ置キマス、今日ノ
此東亞ノ重大時局ハ、吾々ノ見解ヲ以テ致
シマスナラバ、尙ホ暫ク膠著狀態ニ居ルコ
トト思ヒマス、政府當局ノ不擴大、局地解
決方針モ、遂ニ其努力ガ酬ヒラレズ、益証、
擴大ノ一途ヲ辿リツヽアルノデアリマス、
此現狀ニ於テ尙ホ一層時局ガ重大化シタ
際朝鮮、臺灣、南洋方面ニ於ケル治安ニ
付テ、一體安心シテ吾々ガ居レルカドウ
カ、私ハ此點ヲ深憂ニ堪ヘナイノデアリマ
ス、ドウカ此方面ニ於キマシテモ、此軍機
保護法ノ制定ヲ機會ト致シマシテ、十分ナ
ル取締ノ組織機關ヲ整備サレンコトヲ望ン
デ、私ノ質問ヲ終リタイト思ヒマス
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=17
-
018・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 三田村君ニ御答
致シマス、國家總動員、頗ル範圍ガ廣イヤ
ウデアリマスルガ、特ニ此際必要トスルモ
ノニ付テ〓究中デアリマス
〔國務大臣馬場鍈一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=18
-
019・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 三田村君ノ御質
問ニ御答ヲ申上ゲマス、社會上層部ノ者ガ折
ニ觸レテ祕密ヲ漏洩スルト云フヤウナコトハ、
私モ聞カナイコトデハアリ、マセヌ、甚ダ遺憾
ナ次第デアリマス、是ハ宜シク各人ノ自省
ニ俟ツベキモノダト思ヒマス、之ヲ法規ノ
下デ取締ルト云フ特別ノ手續ハナイト思ヒ
マス、第二ノ御質問ハ、共產主義其他サウ
云フ主義ガ國際主義的ニ色々活動スル、之
ニ對シテ警察上ノ査察ニ付テノ御注意的御
質問ダラウト思ヒマス、斯ウ云フコトハ斯
ル時局ノ上ニ於テハ特ニ必要ガアルト思ヒ
マス、內務省ニ於テハ此點ニハ日頃努メテ
居リマスガ、斯ウ云フ時局ニ於テハ一層注
意致ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=20
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021・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=21
-
022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=22
-
023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
三、兵役法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-陸軍大臣
第三兵役法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
兵役法中改正法律案
兵役法中左ノ通改正ス
第十九條ノ二特ニ必要アルトキハ第十
六條ニ規定スル未入營期間ノ外〓ネ三
月以內ノ未入營期間ヲ置クコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ當該期間ニ相當スル期
間以内現役期間ヲ延長スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ延長シタル期間ハ豫
備役期間ニ之ヲ通算ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=23
-
024・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 兵役法中改正法律
案ヲ提出スルニ至リマシタ理由ヲ說明致シ
マス、現在陸軍ノ現役兵ハ種々ノ關係カラ、
輜重兵特務兵ノ如キ短期在營者ハ別ト致シ
マシテ、一般ノ者ハ十二月一月及ビ三月ニ
入營スルコトニナッテ居ルノデアリマスガ、
現行兵役法ノ關係上、其中十二月及ビ一月
ニ入營ヲ致シマス者ノ現役ハ、十二月カラ
始ッテ居リマシテ二箇年ト云フコトニナッテ
居リマス、三月入營ノ者ハ三月カラ始マリ
マシテ二箇年ト云フコトニナッテ居リマス、
此現役ノ始マル時期ニ差ガアリマスル事柄
ハ、其者ノ豫備役、後備役ヲ含ム全服役ニ
互リマシテ、其服役及ビ各年次ノ移變リ時
期ニ差異ヲ生ズルノデアリマシテ、此人員
ガ多數ニ上リ、殊ニ其數ガ漸次多クナリマ
スル關係上、取扱ガ頗ル困難トナッテ參ルノ
デアリマス、而シテ此取扱ノ困難ニナリマ
スル事柄ハ、動員ノ準備ヲ致シマスル上ニ
於キマシテ至大ノ關係ヲ持ッテ居ルノデアリ
マシテ、此儘推移致シマシタナレバ、動員
部隊ノ素質ニ累ヲ及ボス虞ガ益〓大キクナッ
テ參ル狀態デアリマス、隨テ十二月又ハ一
月ニ入營シマスル者モ、三月ニ入營シマス
ル者モ、其服役上ノ取扱ハ一樣ニ致シマシ
テ、何レモ十二月カラ其現役ガ始マリマシ
テ、隨テ服役及ビ各年次ノ移變リガ一樣ニ
行ハレルヤウニシマシテ、動員準備上ニ缺
陷ヲ生ゼシメナイヤウニ致シタイト存ズル
ノデアリマス、卽チ三月ニ入營シマスル者
ノ現役ノ始マリヲ、三月トスルコトナク、
ヤハリ十二月ニ現役ニ就カシメマシテ、三
月マデノ間ハ未入營期間トシテ置キ得ルヤ
ウニ法律ノ改正ガ出來レバ、各人ノ義務負
擔ニハ殆ド影響ガナク、其目的ヲ達シ得ル
ノデアルト考ヘテ居リマス、今囘本法律案
ヲ提出スルニ至リマシタ理由ハ以上申述ベ
タ通リデアリマス、何卒愼重審議ノ上協贊
アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-野溝勝君
〔野溝勝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=25
-
026・野溝勝
○野溝勝君 私ハ兵役法ノ改正ニ關聯致シ
マシテ、簡單ニ當局ニ質問ヲシテ見タイト
思フノデアリマス、軍事扶助法ノ適用、竝
ニ出征兵士ノ家族生活保障ノ問題ニ付テ御
伺致シマス、從來ノ軍事救護法ガ、七十議
會デハ軍事扶助法ト改正サレタノデアリマ
ス、サウシテ其適用範圍ガ擴大サレマシタ、
軍事扶助法ニ依レバ、方面委員ノ手ヲ經タ
リ、或ハ市町村自治體ノ手ヲ經テ、地方長
官ニ上申スルコトニナッテ居ッテ、其手續ガ
中々煩瑣デアッタノデアリマス、又其精神ニ
於キマシテモ多分ニ救恤的デアルトカ、或
ハ慈善的デアルトカ云フヤウナ意味ガ含マ
レテ居ッタカノ如ク吾々ハ見テ居ルノデア
リマス、斯ノ如キ言葉ト申シマセウカ、無
意義ナ言葉ヲ使フ觀念デ之ヲ處理セントス
ルコトハ、現內閣ガ唱ヘテ居ル所ノ社會正
義ノ理念ト云フコトニ反シハシナイカト思
フ者デアリマス、故ニ吾々ハ國家ノ爲ニ一
身ヲ挺シテ、重大使命ヲ爲シテ居ル所ノ出
征兵士ニ對シマシテハ、後顧ノ憂ナカラシ
ムルコトガ最モ緊急事デハナイカト思ヒ
マス、特ニ現下ノ國民生活不安定ノ情勢下
ニ於キマシテハ、是等家族ニ對シマシテ國
家ガ不安ナカラシムルト云フコトハ、最モ
深ク考ヘナケレバナラヌ點デアルト私ハ思
ヒマス、出征兵士ノ家族ニ對シ、生活保障
ノ爲ニ、是ハ私等ノ私案デアリマスケ
レドモ、一家族當テ月額五十圓ヲ國庫ヨリ
支給シ、每月末日ニ聯隊區司令官ヲ經テ現
金ヲ以テ交付シ、且ツ或ハ官公署、其他ノ
會社、商店等ニ於ケル從業員及ビ工場其他
ノ業務ニ從事シテ居ル所ノ者ガ應召サレル
ヤウナ場合ハ、官公署或ハ雇傭主ハ是等應
召者ノ俸給賃金全額ヲ支給セシメ、或ハ除
隊ノ際ニ於ケル就職等ニ對シテモ、保障ヲ
セシムルヤウナ法律ヲ制定シテ貰ヒタイト
思フノデアリマス、其趣旨ノ決議案ヲ今議
會ニ提唱シテ居ルノデアリマスガ、政府ハ
是等ノ趣旨ヲ統一致シマシテ、出征兵士家
族ノ保障ヲスル所ノ手段ヲ講ズル意思アリ
ヤト云フコトヲ御聽キシタイト思フノデア
リマス
最後ニ申上ゲテ置キタイコトハ、多クノ
先輩議員諸君カラモ度々言ハレテ居ルコト
デアリマスガ、軍部ニ於キマシテハ廣義國
防ヲ提唱シテ居ル立前カラ見マシテモ、現
下ノ國民ノ經濟情勢ガ、ドンナ關係ニ在ル
カト云フコトハ、篤ト御諒承ノコトト思フ
ノデアリマス、左樣ナ點カラ見マシテモ、
出征兵士ノ家族ノ後顧ノ憂ナカラシムル爲
ニ、政府ハ相當ノ考ヲ持ッテ居ラルヽト思フ
ノデアリマスガ、其點ニ付キマシテ特ニ御
答辯ヲ御願シタイト思ヒマス
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=26
-
027・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 野溝君ノ御尋ニ對
シマシテ御答致シマス、出征兵ノ家族ヲシ
テ、出征兵ヲシテ遺憾ナカラシムル如ク後
援ヲ十分ニスルト云フ趣旨ニ付キマシテ
ハ、全然御同意デアリマス、此點ニ付キマ
シテハ、制度ト致シマシテハ、只今野溝君
ノ言ハレタ如ク、軍事扶助法ガ立テラレテ
居ルノデアリマスガ、其實行上ニ於テ煩多
ナコトガアルト云フ御話デアリマスル
ガ、是等ノ點ニ付キマシテハ、尙ホ內務當
局ト其實行上ニ於テ御意圖ニ副フヤウニ協
力ヲシテ行キタイト存ジテ居リマス、併ナ
ガラ此軍事扶助法ハ、或ル一部ノ者ニ特定
ヲサレテ居ルノデアリマシテ、只今御話ノ
如キ應召ノ者全部ニ對シテ實行スルト云フ
ヤウナコトニ付キマシテハ、社會團體其他
ノ團體ノ努力ニ依リマシテ、其心持ヲ十分
ニ發揮致シタイト云フコトニ考ヘテ居リマ
シテ、此點ニ付キマシテハ、旣ニ内務當局
ヨリモ此心持ガ普及致シマスルヤウニ、
ソレ〓〓手續ヲ執ラレテ居ルヤウニ聞及ン
デ居リマス、私カラ御答申上ゲルノハソレ
ダケデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=28
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029・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、軍機保護
法改正法律案委員ニ併セ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=30
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031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第四
乃至第六ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=31
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032・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第四、裁判所構成法中改正法
律案、日程第五、大正十年法律第百二號中
改正法律案、日程第六、刑事訴訟法中改正
法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キ
マス-司法政務次官久山知之君
第四裁判所構成法中改正法律案(政
府提出、貴族院送付)第一讀會
第五大正十年法律第百二號中改正法
律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會
第六刑事訴訟法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第二十五條ノ二中「豫審判事」ヲ「判事」ニ
改ム
第三十一條第五項中「第二十五條」ヲ「第
二十五條及第二十五條ノ二」ニ改ム
第七十四條ノ二大審院長年齡六十五年
其ノ他ノ判事ノ職ニ在ル者年齡六十三
年ニ達シタル場合ニ其ノ時期カ十二月
一日ヨリ五月三十一日マテノ間ナルト
キハ五月三十一日六月一日ヨリ十一月
三十日マテノ間ナルトキハ十一月三十
日ニ於テ各〓退職トス但シ控訴院又ハ
大審院ノ總會ニ於テ三年以內ノ期間ヲ
定メ仍在職セシムヘキモノト決議シタ
ルトキハ其ノ期間滿了ノ時ニ於テ退職
トス
第八十條ノ二檢事總長年齡六十五年其
ノ他ノ檢事ノ職ニ在ル者年齡六十三年
ニ達シタル場合ニ其ノ時期カ十二月一
日ヨリ五月三十一日マテノ間ナルトキ
ハ五月三十一日六月一日ヨリ十一月三
十日マテノ間ナルトキハ十一月三十日
ニ於テ各〓退職トス但シ司法大臣ハ三年
以內ノ期間ヲ定メ仍在職セシムルコト
ヲ得
第八十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
大審院大審院檢事局控訴院及控訴院檢
事局ノ書記課ニ書記長ヲ置ク地方裁判
所及地方裁判所檢事局ノ書記課ニ監督
書記ヲ置ク
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正十年法律第百二號中改正法律案
大正十年法律第百二號中左ノ通改正ス
第一項中「裁判所構成法第七十四條ノ二
又ハ第八十條ノ二ニ規定スル年齢」ヲ「年
齡六十年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
刑事訴訟法中改正法律案
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第四百四十條中「原判決ヲ破毀スヘキモ
ノト認ムルトキハ」ノ下ニ「第四百四十八
條ノ二ノ場合ヲ除クノ外」ヲ加フ
第四百四十三條中「上〓裁判所第四百十
二條乃至第四百十四條ニ規定スル事由ア
リト認ムルトキハ」ノ下ニ「第四百四十八
條ノ二ノ場合ヲ除クノ外」ヲ加フ
第四百四十八條中「第四百四十九條及第
四百五十條」ヲ「第四百四十八條ノ二乃至
第四百五十條」ニ改ム
第四百四十八條ノ二上告裁判所事實ノ
確定ニ影響ヲ及ホスヘキ法令ノ違反ア
リト認メ又ハ第四百十二條乃至第四百
十四條ニ規定スル事由アリト認ムル場
合ニ於テ自ラ事實ノ審理ヲ爲スヲ適當
ナラストスルトキハ判決ヲ以テ原判決
ヲ破毀シ事件ヲ原裁判所ニ差戾シ又ハ
原裁判所ト同等ナル他ノ裁判所ニ移送
スヘシ
前項ノ差戾又ハ移送アリタル事件ニ付
裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ原判決又ハ其
ノ基礎ト爲リタル取調ニ關與シタル判
事ハ其ノ裁判ニ關與スルコトヲ得
第四百五十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第四百十二條乃至第四百十四條ニ
規定スル事由アリト爲ス上告ノ趣意ハ
其ノ一部ヲ省略スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=32
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033・久山知之
○政府委員(久山知之君) 曩ニ議長カラ御
述ニナリマシタ通リ、司法大臣昨晩カラ病
氣ノ爲ニ引籠中デアリマシテ、甚ダ遺憾デ
アリマスガ、私カラ提案理由ノ說明ヲ致シ
マス
裁判所構成法中改正法律案デアリマスガ、
本改正案ハ三箇ノ事項ニ付テ改正セントス
ルモノデアリマシテ、第一點ハ地方裁判所
ノ判事ノ代理ノ範圍ヲ擴張セントスルモノ
デアリマス、現行規定ニ依リマスト、豫審
判事ニ付テ一定ノ場合ニ控訴院長ガ其管轄
區域內ニ於テ適當ニ代理ヲ命ズルコトヲ得
ルヤウニナッテ居リマスルガ、裁判事務ノ現
狀ニ鑑ミマシテ、右代理ノ範圍ヲ啻ニ豫審
事務ニ止ラズ、一般ノ裁判事務ニ付テ擴張
致シマシテ、由テ以テ事件ノ處理ノ適正迅
速ヲ圖ルコトヲ必要ト考ヘタノデアリマス
第二點ハ判檢事ノ定年ニ因ル退職ノ時期
ヲ調整致シマシテ、年二回定期ニ纏メテ退
職セシメントスルモノデアリマス、現行ノ
規定ニ依リマスト、判檢事ガ定年ニ達シタ
ル時ハ、其時々々ニ於テ個々別々ニ退職ス
ルコトニナッテ居リマスカラ、人事行政ノ支
障ガ少クナイノデアリマス、此支障ヲ除ク
爲ニ本改正ヲ爲サントスル次第デアリマス
第三點ハ控訴院檢事局ノ監督書記ヲ奏任
タル書記長ニ昇格セシメントスルモノデア
リマシテ、之ニ依リ控訴院ノ書記長ト均衡
ヲ得シムルト同時ニ、裁判所書記ノ向上ノ
途ヲ開カントスル趣旨デアリマス
次ハ大正十年法律第百二號中改正法律案
デアリマスルガ、現行法ニ依リマスト、本
法ノ施行致サレマシタ大正十年六月一日當
時、判事又ハ檢事ノ本官ニ在職シ、爾後引
續キ判事又ハ檢事トシテ在職スル者ガ、定
限年齡ニ達シタ後、退官、退職スル場合ニ
於キマシテ、其恩給年額ハ文官ノ普通恩給
年額ニ百分ノ三十ニ相當スル金額ヲ加ヘタ
ルモノヲ給與セラレテ居ルノデアリマスガ、
右年齡ニ達スル以前ニ於キマシテ退官又ハ
退職致シマシタ者ハ、前述ノ增加恩給ヲ支
給セラレナイノデアリマシテ、隨テ右ノ資
格ヲ有スル判事、檢事ニシテ、定限年齡ニ
達スル以前ニ退官又ハ退職致シ、後進ニ途ヲ
開クト云フコトモ出來ナイヤウナ狀態ニ
ナッタ譯デアリマス、仍テ玆ニ本法ニ定ムル
年齡ヲ低下致シマシテ滿六十年ト爲シ、前
述ノ資格ヲ有スル判事、檢事ガ其ノ年齡ニ
達シマシタ後、退官、退職致シマシタ場合
ニ於キマシテハ、恩給年額ハ文官ノ普通恩
給年額ニ百分ノ三十ヲ加ヘタルモノヲ給與
スルコトニ致シマシテ、比較的高齡者ノ勇
退ヲ圓滑ニシ、新進有爲ノ者ノ進出ヲ容易
ナラシメ、以テ司法部內人事ノ刷新ヲ圖ラ
ントスルモノデアリマス
次ハ刑事訴訟法中改正法律案デアリマス
ガ、大正十三年一月一日カラ施行ニナリマ
シタ現行刑事訴訟法ニ於キマシテハ、上告
ノ理由ト致シマシテ、法令違反ノ外一定ノ
場合ニハ、事實ノ認定及ビ刑ノ量定ニ付キ
マシテモ、亦之ヲ爭フコトガ出來ルコトニ
ナッタノデアリマス、而シテ事實ノ誤認又ハ
刑ノ量定不當ヲ上告ノ理由トシタ場合、竝
ニ事實ノ認定ニ影響ヲ及ボスベキ法令ノ違
反ヲ上〓ノ理由トシタ場合ニ於キマシテ
ハ、上告裁判所自ラ事實ノ審理ヲ爲スベキ
モノト致シテ居ルノデアリマス、所ガ上告
裁判所ニ於ケル事實審理ノ狀況ヲ見マスル
ト、上〓裁判所ノ所在地ト被〓人ノ住所地、
又ハ犯罪地トガ相隔ツルコト遠イガ爲ニ、
證人、鑑定人等ノ訊問ノ爲メ上告裁判所ニ
其出頭ヲ求メルニ致シマシテモ、亦上告裁
判所ガ現場ニ出張シテ檢證ヲ爲スニ致シマ
シテモ、不便ナ場合ガ屢〓生ズルノデアリ
マス、又事實ノ誤認及ビ刑ノ量定不當ヲ理
由トスル上告ニアリマシテハ、其上告理由
ガ頗ル多岐多樣ニ亙リマシテ、上告趣意書
ニハ幾多ノ事實問題ガ巨細ニ揭ゲラレマシ
テ、浩瀚ナル上告趣意書ガ差出サレル傾向
ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ刑事訴訟
法上、上告裁判所ノ判決書ニハ、上〓ノ趣
意及ビ重要ナル答辯ノ要旨ヲ全部記載セネ
バナラヌコトニナッテ居リマスノデ、上〓裁
判所ト致シマシテハ、判決ヲ爲スニ當リマシ
テ、誠ニ必要以上ノ力ヲ用ヒテ居ルヤウナ
實情デアリマス、仍テ茲ニ裁判所竝ニ訴訟
關係人ノ便益ヲ考慮致シマシテ、上告裁判所
ニ於ケル事實審理ノ制度ニ改正ヲ加ヘンガ
爲ニ、本案ヲ提出致シマシタ次第デアリマ
ス、卽チ改正ノ第一點ハ、從來上〓裁判所
ガ自ラ事實ノ審理ヲ爲サナケレバナラヌ場
合ニ於キマシテモ、上〓裁判所自ラ事實ノ
審理ヲ爲スコトガ適當デナイト思料シタ場
合ニハ、原判決ヲ破棄シテ事件ヲ元ノ裁判
所ニ差戾スカ、又ハ元ノ裁判所ト同等ナル
他ノ裁判所ニ移送スルコトガ出來ルヤウニ
改メタコトデアリマス、改正ノ第二點ハ、上
告裁判所ガ判決書ヲ作成スルニ當リマシテ、
事實問題ニ關スル上〓ノ趣意ハ、其一部ヲ
判決書ニ記載スルコトヲ省略スルコトガ出
來ルヤウニ改メタコトデアリマス
以上三案共御承知ノ通リ旣ニ前議會ニ於
キマシテ、本院ニ於キマシテ、委員會、本會
議共通過ヲ致シタ法案デアリマス、何卒愼
重御審議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコト
ヲ御願申上ゲル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=33
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034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-平川松太郞君
〔平川松太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=34
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035・平川松太郎
○平川松太郞君 私ハ只今提案ニナリマシ
タ法案ニ關聯致シマシテ、內務大臣竝ニ司
法當局者ニ人權蹂躪ニ關スル質問ヲ試ミタ
イト考ヘマス、近頃全國ニ亙ッテ人權蹂躙ガ
行ハレテ居ルノデアリマス、殊ニ神奈川縣
下ニ於キマシテハ、其最モ甚シキモノガア
ルノデアリマス、故ニ私ハ主トシテ此神奈
川縣下ニ於ケル拷問事件、人權蹂躪ノ件ニ
付キマシテ質問ヲ試ミタイト考ヘルノデア
リマス、神奈川縣ハ齋藤内閣當時デアリマ
シタガ、時ノ警察部長相川君ガ赴任ヲ致シ
マスルヤ、其部下デアリマシタ所ノ、曾テ
警視廳ノ警部、其當時ハ原宿カノ警察署長ヲ
勤メテ居ッタル加藤道雄ト云フ人ヲ拔擢致
シマシテ警視ト爲シ、神奈川縣ノ刑事課長
ニ据エタノデアリマス、此刑事課長赴任以
來神奈川縣ニ於キマシテハ有ユル犯罪
ニ、其捜査ノ任ニ當リマシテ、悉ク人權蹂
躪ヲ行ッタノデアリマス、卽チ加藤刑事課
長ガ縣ノ刑事數名ヲ引連レマシテ、何レノ
犯罪ニモ搜査ノ任ニ當ッタノデアリマス、是
ヨリ以來神奈川縣ニ於キマシテハ、選擧違反
ハ勿論デアリマス、選擧違反以外ノ犯罪、或
ハ瀆職罪若クハ放火事件、斯ノ如キ犯罪ニ人
權蹂躪ノ伴ハナカッタ所ノ檢擧ハ一ツモナカッ
タノデアリマス、最近ノ問題ハ神奈川縣ノ
放火事件デアリマス、此放火事件ハ神奈川
縣松田町ヲ中心ト致シマシタ所ノ各村落ニ
亙リマシテ、昭和七八年ノ頃ニ火災ガ頻々
トシテ發生シタノデアリマス、其當時ハ失
火罪トシテ檢擧セラレタ者モアリマシタガ、
或ハ放火デハナイカト云フ嫌疑ノ下ニ、保
險外交員、卽チ保險「ブローカー」數名ヲ檢
擧シタノデアリマス、此數名ヲ檢擧致シマ
シテ、數名ニ止メテ他ハ擴大シナイト云フ
方針デアッタノデアリマスルガ、時ノ檢事正
ト時ノ主任檢事、奥田檢事トノ意見ガ相違
致シマシテ、遂ニ奧田檢事ハ浦和地方裁判
所ニ轉任ヲ致シマシタ、其後ニ神奈川縣ノ
警察部刑事課ヲ總動員致シマツテ、サウシ
テ犯罪捜査ノ任ニ當ラシメタ、其結果起訴セ
ラレタ所ノ人員ガ百八十三名デアリマス、
百八十三名中二名ハ獄中ニ於テ拷問ニ堪ヘ
得ズ、遂ニ悲慘ナル最期ヲ遂ゲタノデアリ
マイ、サウシテ殘リ百八十一名ノ中デ九十
名ハ、本年ノ六月ニ至リマシテ豫審免訴ノ
決定ヲ與ヘラレタノデアリマス、殘リ九十
一名ガ有罪ナリトシテ公判ニ付スルト云フ
決定ニ相成ッタノデアリマス、此九十名ガ豫
審免訴ニナッタ、此事實ニ徵シマシテモ、如
何ニ司法警察官若クハ檢事ガ人權蹂躪ヲシ
タカト云フコトニ付キマシテハ、窺ヒ知ルコ
トガ出來ルト考ヘルノデアリマス(拍手)又
其人權蹂躙ノ事實ニ付キマシテハ、政友會
ヨリモ調査隊ヲ派遣セラレテ調査ヲ爲シ、
民政黨ヨリモ一松代議士竝ニ不肖ガ此任ニ
當リマシテ、人權蹂躙ノ事實ヲ調査シタノ
デアリマス、其調査ノ結果ハ實ニ苛酷ナル
拷問ヲ行ヒ、昭和ノ聖代ニ於テアルマジキ
行爲ヲ敢テシタコトガ明瞭ニナッタノデア
リマス(拍手)此拷間ノ事實ニ付キマシテハ、
色々ノ栲問ノ方法ガアッタノデアリマス、或
ハ椅子ヲ橫タヘマシテ、椅子ノ上ニ正座
セシメテ、サウシテ膝ノ上ヲ毆ル、若ク
ハ煙草責メト稱シテ、煙草ノ煙ヲ鼻ノ中
カラ吹込ム、火烙リノ刑ト稱シマシテ、
前ニ火鉢ヲ置キマシテ、ソレニ猛火ヲ起
シテ、其前ニ置イテ之ヲ責メル、萬歲責
メト稱シテ、手ヲ擧ゲシメテ其脇ヲクス
グル、此萬歲責ニハ四ツノ種類ガアルノ
デアリマス、斯樣ナ方法ヲ行ヒ、警察署
ニ何ノ權限モナクシテ留置スルコト一箇月、
若クハ三箇月ノ間各警察署ニ留置致シマシ
テ、サウシテ警察官ガ自白ヲ强要シ、自白
ヲ致シマスルヤ、之ヲ檢事局ニ送リ刑務所
ニ收容致シマシタ、其收容致シマシタノガ
一昨年ノ十月頃デアッタノデアリマス、一昨
年ノ十月頃カラ本年ノ五月、六月マデ刑務
所ニ留メ置イタノデアリマス、斯ノ如キ長
イ期間刑務所ニ留メ置キ、長イ間警察署ニ
留置致シマシテ、有ユル拷問ヲ行ッタ、此拷
問ノ件ニ付キマシテハ、陪審法ノ委員會ニ
於テ詳細ニ私ハ說明ヲ致シマシテ、サウシ
テ政府當局者ノ答辯ヲ得ル考デアリマスル
ガ、今日ハ簡單ニ其一二ヲ御紹介致シマシ
テ、諸君ノ御批判ヲ請ヒタイト考ヘルノデ
アリマス
其一ツハ私ニ參ッタ所ノ手紙デアリマス、
私ハ此手紙竝ニ上申書ヲ、殆ド三日若クハ
五日ニ亙ッテ質問スルダケノ材料ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、其一二ヲ朗讀致シマスル
機會ヲ御與ヘ下サランコトヲ御願シタイト考
ヘマス、是ハ斯ウ云フ書面デゴザイマス、
「同月二十二日午前九時半ヨリ午後四時マデ
四囘ニ互ル大拷問ニ遭ヒ、兩手ヲ十文字ニ
縛リ後ロニ廻シ、口ニ手拭ヲ捩リ嚙マセ、
二名ニテ口ノ割ケル程縛リ、海老責ノ刑ト
稱シ、二名ニテ脊筋ノ折レル程ゴウツカレ
(此間二時間位)ヘト〓〓トナリ、一時休ミ、
又々二名ニテ脇ノ下ヲ拳骨デ突キ、頭ヲ毆リ、
靴ニテ蹴リ、小生ヲ橋絆一枚ニ致シ、小生
ニ於テハ何事モ知ラザルコト故知ラヌト申
スト、右ノ如キ故、小生實ニ驚キマシタガ、
小生ハ何事モ知ラザルコト故知ラヌト申シ
マスト、又打ツ蹴ル突ク、頭ハ八ツ頭芋ノ
ヤウニナリ、耳ハ腫レ塞ガリ、左ノ齒ヲ二
枚折ラレ、右ノ下犬齒一枚ユラ〓〓トナリ、
未ダ飯ヲ嚙ムコトモ出來ズ、實ニ弱リ居リ
マス、第三囘目、午後二時又々同類デ私ヲ
調ベタノデアリマス」其間ハ中略致シマスル
ガ、是ハ豫審免訴トナッテ歸ッタノデアリマ
ス、「小生ガ歸リテ見マスト、店モ廢業サセ
ラレ、家族七名ハ路頭ニ迷ヒ、次男モ中學
ヲ退學致シ、子供ノ緣談モ破壞サレ、何ト
モ申シヤウモアリマセヌ、小生ニ於テハ未
ダ半身不隨ノ有樣ニテ、營業モ思フヤウニ
出來ズ、立テバ足ガムクミ實ニ弱ッテ居リ
マス」是ハ澤山參リマシタ所ノ書面ノ一通
デアリマス
斯樣ナ方法ヲ以テ拷問ヲ致シマシテ、現
ニ獄中ニ於テ自殺ヲ企テタ者數名アルノデ
アリマス、所ガ一時ハ自殺セント致シマシ
タガ、若シモ此儘デ自殺致シマスルト、子孫
ニ汚名ヲ遺サナケレバナラナイ、ドウシテ
モ此無實ノ罪ヲ晴シテ死ナ、ナケレバナラヌ
ト心ヲセキ立テマシテ、自殺ヲ思ヒ止ッタト
云フヤウナ人モアルノデアリマス、意思ノ
弱イ人ハ其苛酷ナ拷問ニ堪ヘ得ズシテ、先
程申ス如ク二名獄中ニ於テ自殺ヲ遂ゲタノ
デアリマス、是等ノ事實ニ依リマシテモ、
如何ニ拷問ガ苛酷デアッタカト云フコトハ
明瞭スルト考ヘルノデアリマス、又昨年ノ
選擧ニ於キマシテモ同ジヤウナ筆法デ拷問
ヲシタノデアリマス、此處ニ昨年ノ選擧ノ
拷問事件ニ付キマシテ、拷問ヲ受ケマシタ所
ノ一被〓ガ圖ヲ以テ示シマシテ、此圖ヲ私ニ
送ッテ來タノデアリマス、此圖解ニ依リマシ
テモ、只今申ス通リノ拷問ノ方法ヲ圖解ニ
示シテ居リマス、是ハ速記錄ニ留メテ貰フ
譯ニハ行キマセヌカラ、議長ヲ通ジテ此圖
解ヲ政府ニ提出シタイト考ヘマス、諸君、
凡ソ革命ノ歷史ヲ見マスノニ、或ハ檢擧ノ
任ニ當ル所ノ人ガ人權蹂躪ヲ敢テシ、裁判
ノ任ニ當ル所ノ者ガ不公平ナ裁判ヲ行ヒ、
是ガ革命ノ端〓ニナッテ居ルノデアリマス、
若シモ神奈川縣ニ於ケル所ノ此拷問事件ヲ、
此儘ニ看過シテ置イタ場合ニ於キマシテハ、
怨嗟ノ聲ハ澎湃トシテ起リマシテ、遂ニ政
府ハ此怨嗟ノ聲ニ殆ド措ク所ヲ知ラナイヤ
ウナ有樣ニナリハシナイカト思フノデアリ
マス(「神奈川縣バカリヂヤナイ」ト呼フ者
アリ)內務大臣ハ此神奈川縣ノ拷問事件ノ
ミナラズ、全國ニ亙ル所ノ拷問事件ニ付テ、
如何ナル對策ヲ講ゼラレントスルノデアル
カ、此點ニ付テ詳細ナル御答辯ヲ得タイト
考ヘルノデアリマス(拍手)聞ク所ニ依リマ
スレバ先般陪審法ノ改正法案ガ樞密院ニ
諮詢セラレタ際ニ於キマシテ、樞密顧問官
ヨリ全國ニ亙ル所ノ拷問事實ヲ摘發セラレ
テ、將來注意シナケレバナラヌト云フコト
ヲ、附帶條件トシテ決議セラレタト云フコ
トヲ聞イテ居リマス、是ハ果シテ附帶條件
デアッタカドウカ知リマセヌケレドモ要ス
ルニ樞密院ニ於テ人權蹂躪ノ注意ガアッタ
ト云フコトハ、隱レモナイ事實デアルト考
ヘルノデアリマス、畏クモ天皇陛下御親臨
ノ御前ニ於テ、斯ノ如キ注意ヲ受ケナガラ、
內務大臣竝ニ司法大臣ノミナラズ、政府ハ
恬然トシテ之ヲ顧ミナイノデアリマスルカ、
將來如何ナル方針ヲ以テ人權蹂躪ヲ杜絕セ
ラレントスルモノデアルカ、此點ニ付キマ
シテドウカ明瞭ナル御答辯ヲ得マシテ、全
國民ヲシテ安心ノ出來ルヤウニ御願ヲシタ
イノデアリマス(拍手)又豫審免訴トナリマ
シタ所ノ九十名、此九十名ニ付キマシテハ、
警察署ニ於テ拷問ノ結果虛僞ノ事實ヲ自白
シタト云フ點ニ付テ、重大ナル過失アリト
シテ、刑事補償法ニ依ル所ノ損害ノ賠償モ
出來ナイト云フヤウナ悲慘ナ狀況ニアルノ
デアリマス、二年若クハ三年ノ間罪ナクシ
テ刑務所ニ勾留セラレテ、財產上、身體上
精神上非常ナル損害ヲ受ケテ、是ガ賠償ノ
請求ガ出來ナイト云フコトニナリマシテハ、
人心ノ惡化是ヨリ甚シキモノハナイト考ヘ
ルノデアリマス(拍手)司法當局者ハ刑事補
償法ヲ改正致シマシテ、斯ノ如キ者ニ對シ
マシテハ、特ニ補償ヲスルト云フ特例ヲ設
ケラレナイノデアリマスルカ、此點ニ付テ
司法當局者ノ御說明ヲ乞ヒタイト考ヘマス
質問ハ簡單デアリマスルガ、ドウカ之ニ對
シテ政府當局者ハ明瞭ナル御答辯アランコ
トヲ要求スル者デアリマス(拍手)
〔國務大臣馬場鍈一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=35
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036・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 警察官ノ人權蹂
躪問題ヲ聞キマスコトハ、私トシテ洵ニ遺
憾ニ存ジマス、今日ノ聖代ニ於キマシテ、
苟モ拷問ノ如キ事實ガアリマスルコトハ、
洵ニ殘念千萬デアリマス、私ハ之ニ對シテ
ハ能ク事實ヲ調ベマシテ、決シテ何等曲庇
スルコトナク、嚴正適切ナル處置ヲ執リタ
イト考ヘテ居リマス、併ナガラ是ハ單ニ處
罰ヲ嚴正ニスルトカ云フコトダケデハ、此
問題ノ根ヲ絕ヤスコトハ到底出來ナイト思
ヒマス、ヤハリ將來警察官ノ修養、訓練、
指導、監督ニ付テ、更ニ一層私共ガ十分ニ
力ヲ入レナケレバナラヌト思ヒマス、此點
ニ付テ內務當局トシテハ目下篤ト〓究ヲ致
シテ居リマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス
〔政府委員久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=36
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037・久山知之
○政府委員(久山知之君) 私ハ曾テ此壇上
ニ於キマシテ人權蹂躪ノ非ヲ糺彈致シタ
記憶ヲ持ッテ居リマス、本日ハ立場ヲ變ヘマ
シテ、同ジ此壇上ニ立ッテ平川君ニ御答申
上ゲルコトハ、洵ニ思出ノ深イモノガアル
ノデアリマス、只今御述ニナリマシタ神奈
川縣ニ於キマスル集團放火事件ニ對シマシ
テハ、司法當局ト致シマシテモ、洵ニ遺憾
ナ出來事ト致シマシテ、十二分ノ注意ヲ拂ッ
テ居リマス、尙ホ全國各地ニ起リマスル人
權蹂躪ノ聲ニ對シマシテモ、決シテ之ヲ閑
却致シテ居ル者デハナイノデアリマス、集
團放火事件ノ被疑者ガ、多數豫審免訴ニナ
リマシタコトニ付キマシテハ、其原因竝ニ
事情等ニ對シマシテ、目下大審院檢事局
ノ審査部ニ於キマシテ熱心ニ調査ヲ致シテ
居リマス、其審査ノ結果ヲ俟チマシテ、適
當ナル處置ヲ講ズルコトガ至當デアラウ
ト、斯樣ニ私ハ考ヘテ居リマス
尙ホ放火事件ノ被疑者ノ中ニ、若シ本人
ノ自白ガ拷問ノ結果餘儀ナク致サレマシタ
モノガアリマシタ場合ニハ、當該檢事局ノ
審査部ノ檢事ニ於キマシテ、其事實ガハッキ
リ現ハレマシタ時ハ、現行刑事補償法ノ下
ニ於キマシテモ、賠償ニ與ルコトガ出來ル
コトニ相成ッテ居ルノデアリマス
ソレカラ尙ホ將來ノ人權蹂躪ノ根絕ノ對
策ト致シマシテハ、昨年來司法部ト致シマシ
テハ、關係方面ニ屢〓、嚴重ナル戒〓ヲ發シ
マシテ、自肅自戒ヲ促シテ居リマス
又司法警察官吏ノ〓養訓練ニ對シマシテ
モ、從來ヨリ一層ノ努力ヲ拂ッテ居ル譯デ
アリマシテ、近來相當其成績ノ見ルベキモ
ノアルコトヲ喜ンデ居ル次第デアリマス、
併シ····
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=37
-
038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=38
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039・久山知之
○政府委員(久山知之君)(續) 併ナガラ地
方ニ於キマシテ犯罪ノ起キマスル原因、手段、
犯罪捜査ノ方法等ニ付キマシテハ、之ヲ從
前ノ取調ノ手段ニ委セテ置クダケデハ、到
底此人權蹂躙ノ根絕ヲ期スルコトハ出來ナ
イト思ヒマスノデ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=39
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040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=40
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041・久山知之
○政府委員(久山知之君)(續) 將來ハ科學
的ノ搜査ノ方法ニ依リマシテ、今マデノ缺
陷ヲ補ッテ行ク、斯ウ云フコトヲ考ヘマシ
テ、來ルベキ議會ニ是等ニ對スル豫算ヲ提
出致シタイト、目下努力ヲ致シテ居ル譯デ
アリマス、私ハ重ネテ申上ゲマスルガ、人
權蹂躪ノ事實ノアリマシタコトニ對シテ、
吾々決シテ之ヲ否認スルモノデアリマセヌ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=41
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042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=42
-
043・久山知之
○政府委員(久山知之君)(續) 私司法省ニ
職ヲ奉ジマスル以上ハ、洵ニ微力デアリマ
スルガ私ノ全努力ヲ傾注致シテ、將來重ネ
テ皆樣方カラ斯ノ如キ問題ニ對シテ御非難
或ハ御指摘ヲ戴クコトノナイヤウニ、十分
ナル努力ヲ拂ヒタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=43
-
044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 河野一郞君
〔河野一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=44
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045・河野一郎
○河野一郞君 私ハ只今提案ニナッテ居リ
マスル司法省關係ノ議案審議ニ當リマシ
テ、現內閣ガ現下ノ我ガ國家ノ情勢ニ鑑ミ
マシテ、特ニ國論ヲ統一シ、擧國一致ヲ以
テ國難打開ニ當ラナケレバナリマセヌ時ニ
當ッテ、最モ吾々トシテ憂慮ニ堪ヘマセヌ一
二ノ具體的ノ實例ヲ擧ゲマシテ、司法當局
ハ現在司法ノ威信ガ國民ノ間ニドノ程度ニ
傷付ケラレテ居ルカ、又今議會ヲ通ジテ司法
事務刷新、司法威信ノ確保ト云フ見地カラ
提案セラレテ居リマスル是等ノ法案ガ、假
令本院ヲ通過致シ、法律ト相成リマシタ所
デ、其程度ノモノデ果シテ司法ノ威信ガ囘
復スルコトガ出來ルヤ否ヤト云フコトニ、
深ク疑問ヲ懷キマスルガ故ニ、此機會ニ於
テ、時間ノアリマセヌコトヲ甚ダ遺憾ト致
シマスルガ、極ク簡潔ニ實例ヲ申上ゲテ、
司法當局ノ明快ナル御答辯ヲ要求致シマス
ルト共ニ、特ニ御出席ノ軍當局其他內閣諸
公ノ是等ノ點ニ付テ十分ニ御反省ヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス
先ヅ第一ニ申上ゲタイノハ、只今先輩平
川氏ヨリ此壇上ニ於テ述ベラレマシタル神
奈川縣下ノ放火團事件、此事件ニ關聯致シ
マシテ、其被疑者、被〓等ガ現在如何ナル
心境ニアルカト云フコトヲ、率直ニ申上ゲ
テ見タイト思フノデアリマス、吾々ハ先日
政友會本部ヨリ特派セラレマシタ同事件ノ
調査班ノ方々ト共ニ、此放火團ニ關係ノア
リマス被告百數十名ヲ松田町ニ集メマシテ、
一々ノ被告ニ就イテ取調ベノ狀況ヲ伺ッタ
ノデアリマス、所ガ驚クベキコトニハ、
其中ノ多數ノ者ガ人權蹂躪ノ事實ヲ吾々
ニ話ス前ニ、此席ニ於テ申上ゲルコトハ
甚ダドウカト考ヘマスケレドモ、吾々ノ
心境トシテハ政治ガ有難クナイ、國家
ガ有難クナイ、一生懸命ニ働イテ、稅金
ヲ納メテ、忠良ナル臣民トシテ今日マデ努
メテ來タモノガ、何ガ何ダカ譯ガ分ラズニ
警察ニ連レテ行カレ、毆ラレ、一年モ二年
モ監獄ニ入レラレテ、サウシテ出テ來ルヤ
ウナ世ノ中ガ何處ガ一體有難イノダ、今更
皆樣ガ人權蹂躪ノ調査ニオ出ニナッテモ有
難クアリマセヌ、吾々ハ名譽ヲ蹂躪ラレ、
家庭ヲ蹂躪ラレ、旣ニ〓ニ歸ッテモ人カラ
ハ放火團ト指ヲ指サレル、是程慘虐ナ目ニ
遭ッテ、世ノ中ガ一體何ガ有難イカ、極端ニ
申セバ、當日彼等ガ申シマシタ言葉ヲ其儘
ニ申シマスナラバ、日本ノ國ガ有難クナイ
ト申スノデアリマス、此心境ニアリマスル
所ノ臣民、此心境ニアリマス所ノ國民ガ、九
千万ノ國民ノ中ニアルト云フコトヲ政府ハ
御認識願ヒタイ、而モ其國民ガ政府爲政者
ノ暴政ノ爲ニ彼等ガ其心境ニナッテ居ル、生
レナガラニシテ決シテ國家ヲ呪ッテ居ルモノ
デモナイ、政治ヲ呪ウテ居ルモノデモナイ、
政府當局ノ暴政ノ結果ガ、斯ノ如クニシテ
忠良ナル臣民ヲシテ、日ノ丸ノ旗ハ立テマ
セヌトマデ言明サセルニ至ッテハ、其責任
ハ果シテ何人ガ負フベキデアリマセウカ
(拍手)私ハ內務大臣ガ只今此席ニ於テ答辯
セラレマシタコトニ甚ダ不滿ヲ持チマス、
何故ナレバ此演壇デ述ベラレタコトト、
內務大臣ガ今日マデヤラレマシタコトト、
果シテ言行一致シテ居リマセウカ、平川先
輩ガ述ベラレマシタ通リ、神奈川縣下ニ於
キマスル所ノ、拷問事件ノ元祖トモ申スベ
キ所ノ、最モ惡質ナ官吏ハ相川現宮崎縣知
事デアリマス、此相川現宮崎縣知事ガ、神奈
川縣下ニ於ケル斯ノ如キ暴虐ナル拷問事件
ノ元祖デアリマス、其相川君ガ一度內務本
省カラ朝鮮ニ左遷セラレテ居ッタモノヲ、何
ノ必要ガアッテ宮崎縣ニ榮轉サセタノデアリ
マスカ(拍手)認識ガ足ラナカッタト云フナ
ラバ、直チニ御考ニナッテ然ルベシト私ハ
考ヘル、其他神奈川縣下ニ於テ、吾々ガ數
年來屢〓本院ヲ通ジテ人權蹂躪ノ事實ヲ申
上ゲマシテモ、何レモ處罰ヲ受ケタル者ハ
警部、警部補、巡査ノ類デアリマス、未ダ課
長、部長、知事ニ至ッテハ一人モ處分ヲ受ケ
タ者ハ無イノデアリマス、凡ソ眞ニ政府ガ人
權蹂躪ヲ根絕ササウトスルナラバ、何故ニ其
責任ノ衡ニ在ル所ノ知事ヲ處分セナイノデ
アリマスカ(拍手)警察部長ヲ何故處分シナ
イノデアリマスカ(拍手)課長ヲ何故處分セ
ヌノデアリマスカ、剩ヘ先程平川氏ニ依ッテ
指摘セラレマシタ加藤前刑事課長ノ如キハ、
神奈川縣下ニ於テ縣廳ノ斡旋ニ依ッテ東京
電氣株式會社ニ相當ノ高給ヲ食ンデ居ルデ
ハアリマセヌカ、人權蹂躪ヲヤッタ警察官ガ
辭表ヲ出ス、マア辭表ヲ出シテ置ケバ何處
カニ世話ヲシテヤルカラト云フコトデ、惡
イ事ヲシタ者ガ救ハレルト云フコトデハ、
ドウシテ一體人權蹂躪ノ事實ガ根絕スルト
御考ニナルカ、私ハ此處ニ多數ノ被〓ノ上
申書ヲ持參致シテ居リマス、是等ハ何レモ
淚ナクシテハ朗讀ノ出來ナイ各人ノ書イタ
上申書デアリマス、是ハ時間ガ許シマセヌ
ノデ一々朗讀スルコトヲ省キマシテ、此中
ノ最モ皆樣ニ御一讀ヲ願ヒタイ、又全國民
ニ御一讀ヲ願ヒタイ部分ヲ、議長ノ御許
シヲ得テ速記錄ニ載セタイト考ヘマス〔「贊
成」ト呼フ者アリ)議長ノ御許可ヲ願ヒマ
ス
尙ホ此機會ニ時間ヲ省略スル意味ニ於キ
マシテ、本上申書ノ中ニ書キ記サレテ居リ
マスル所ノ拷問ノ事實ヲ簡單ニ申上ゲテ見
マス、大體拷問ノ種類ト致シマシテハ萬歲
責、擽責、椅子責、煙草責、火責、竹刀責、
朝鮮責、腹揉責、首締、手足ヲ延バシテ反
對ニ捻ル、是ハ名前ガ分リマセヌ、其他鉛
筆責デアリマスルトカ、火烙リ責デアリマ
スルトカ色々アリマス、其中デ特ニ此上申
書ノ中ニ書キ記シテアリマスル所ノモノデ、
繪ニ描ケルモノヲ此處ニ持ッテ參リマシタ
カラ、御參考マデニ御一覽ヲ願ヒタイト思
ヒマス(圖ヲ示ス)是ガ先程平川氏ニ依ッテ
示サレマシタ椅子ノ上ニ坐ラセテ、煙草デ
以テ燻スヤツデアリマス(「內務大臣ニ見セ
ナケリヤ駄目ダ」ト呼フ者アリ)(圖ヲ示ス)
是ガ火責ノ中ノ一例デアリマス、大體兩方
カラ警察官ガ腕ト足ヲ押ヘテ、全部猿轡ヲ
嵌メマス、サウシテ手ニ紙片ヲ持タセテ、
ソレニ火ヲ點ケテ責メルノデアリマス、(圖
ヲ示ス)是ガ被〓ノ申シマスルニハ、番
辛イト申スヤツデアリマス、後ロニソラシ
テ、サウシテ此腹ヲゴリ〓〓揉ミ上ゲルサ
ウデアリマス、是ガ刑務所カラ一年半ニシ
テ出テ參ッテモ、尙ホ腹ノ工合ガ惡イト云フ
ヤツデアリマス、(笑聲圖ヲ示ス)是ハ椅子
責ノ一種デ中腰ニシテ椅子ヲ持タセテ、是
デ二時間デモ三時間デモ立タセテ置クサウ
デアリマス、マダ澤山アリマスガ、時間ガ
アリマセヌカラ······(「ヤレ〓〓」ト呼フ者
アリ)是ハ此儘政府ニ提出シテ、私ノ此機
會ニ質問致シテ置キタイコトハ、此處ニア
リマスル上申書ヲ議長ノ許可ヲ得テ速記錄
ニ留メテ、私ハ各被〓カラ斯ノ如クニ心情
ヲ愬ヘラレテ、政府ニ御質シヽテ吳レト云
フコトヲ申込マレテ居ルモノデアリマス、
私ハ此事實ノ有無ヲ知リマセヌ、知リマセ
ヌガ、本人ノ血書デアリマス、血ト淚ヲ以
テ綴ッタ書類デアリマス、之ヲ速記錄ニ留
メテ、全國ニ速記錄ヲ以テ發表致スモノデ
アリマス、政府ハ此事實ニ付テ速ニ調査ヲ
セラレ、此內容ノ眞僞ヲ天下ニ發表スベ
キデアルト考ヘルノデアリマス、若シモ
此事實ニシテ眞ナラバ、一日モ速ニ斯ノ
如キ官吏ハ斷乎トシテ處分スベキデアル
ト思フノデアリマス(拍手)而シテ此
機會ニ特ニ申上ゲテ置キタイコトハ、
前七十議會ニ於キマシテ、私ハ百二十餘
通ノ上申書ヲ當時ノ鹽野司法大臣、又ハ
河原田內務大臣ニ提出致シマシテ、其實情
ヲ調ベテ、機宜ノ處置ヲ執レト云フコトヲ
政府ニ迫ッタモノデアリマス、然ルニ政府ハ
當時議會ニ於テハ何カト巧イコトヲ申シテ
居リマシタケレドモ、今日マデ既ニ半歲ヲ
經過致シマスルケレドモ、何等政府ガ活動
シタ跡ヲ吾々ハ聞カナイノデアリマス、議
會ニ唯吾々ガ提出スレバ、此書類ヲ其儘握
潰シテ一時ヲ糊塗セントスル、政府ガ如何
ニ此壇上ニ於キマシテ巧イコトヲ言ウテ
モ、是ハ吾々ハ信ヲ置クコトガ出來ナイ、
本日私ハ此書類ヲ政府ニ預ケマスルガ故
二、政府ハ此內容ニ付テ速ニ調査ヲ致シ、
而シテ其非違アル官史ニ對シテハ、斷乎タ
ル處分ヲスル決心アリヤ否ヤト云フコト
ヲ、此壇上ヨリ、明確ニ御答辯アランコト
ヲ御願致シマシテ、私ノ質問ヲ終リマス
〔國務大臣馬場鍈一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=45
-
046・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 篤ト事實ヲ調査
致シマシテ、嚴正適切ナル處分ヲ致シマ
ス
〔政府委員久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=46
-
047・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今河野君カラ
人權蹂躪ノ事實ニ對シマシテ、縷々御述ニ
ナリマシタ點ハ、具ニ拜聽致シテ居リマ
ス、
リマス
シマシタ、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=47
-
048・小山松壽
○服部崎市君 ハ、
案ノ
マス
ス、
七、
件、
大藏參與官
サウ云フ事實ガアリトシマスレバ、
手ガ何デアラウトモ、
テ之ヲ默過スルコトハ致シマセヌ、
具體的ノ事實ニ對シマシテハ、
其事實ヲ御申告ヲ煩ハシタイト思フノデア発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=48
-
049・服部崎市
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス
日程第四乃至第六ノ三案
一括シテ政府提出、
委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=49
-
050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=50
-
051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
昭和十年度第一
承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致シマス-
(昭和十年度第一豫備金)
支出ノ件
昭和十年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
昭和十年度特別會計豫
備費支出ノ件
昭和十年度滿洲事件第
一豫備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度第二豫備金支出
ノ件
相
司法省ニ限ッテ斷ジ
ドウカ
御遠慮ナク
是ニテ質疑ハ終局致
陪審法中改正法律
服部君ノ動議ニ御異
御異議ナシト認メマ
豫備金支出ノ件外十
第七
八號ニ依リ、
救護費、
テモ、
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度豫備金外ニ於テ
豫算超過及豫算外支出
ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度特別會計第二豫
備金支出ノ件
自昭和十一年一月昭和
至同年三月
十年度特別會計豫備金
外ニ於テ豫算超過及豫
算外支出ノ件
昭和十一年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
豫備金外ニ於テ豫算外
支出ノ件
〔政府委員中村三之丞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=51
-
052・中村三之丞
○政府委員(中村三之丞君) リマシタ昭和十年度第一豫備金支出外十件
ニ關スル事後承諾ヲ求ムル件ニ付キ、
體ノ說明ヲ致サウト存ジマス
昭和十年度第一豫備金ノ豫算額ハ六百万
圓デアリマスガ、昭和十年勅令第二百六十
第一豫備金ヨリ補充致シマシ
タル主ナル事項ハ、檢丁及新兵旅費、
內國稅拂戾金、海軍主食品購買費、
刑務所收容費等デアリマシテ、
百万圓デアリマス、
其第一豫備金又ハ豫備費ヨリ豫算超
過ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス
次ニ昭和十年度滿洲事件第一豫備金支出
ニ付申上ゲマス、
(承諾ヲ一
球ムル
件
只今議題トナ
其大
軍事
其總額ハ六
各特別會計ニ於キマシ
昭和十年度滿洲事件第
一豫備金ノ豫算額ハ五百万圓デアリマスガ、
昭和十年勅令第二百六十八號ニ依リ、滿洲
事件費ニ補充致シマシタル金額ハ五百万圓
デアリマス、次ニ昭和十一年一月ヨリ三月
ニ至ル間ニ於ケル昭和十年度第二豫備金支
出ニ付申上ゲマス、昭和十年度第二豫備金
ノ豫算額及ビ其支出總額ハ二千三百万圓デ
アリマシテ、內昭和十年十二月以前ノ支出
ニ係ル千九百二万八百五十六圓ハ、旣ニ第
六十九囘帝國議會ニ於テ御承諾ヲ得テ居リ
マスガ、其後昭和十一年一月及ビ同二月中
ニ支出致シマシク金額ハ一一百九十七万九千
百四十四圓デアリマス、其內主ナル事項ヲ
擧ゲマスレバ、衆議院議員總選擧諸費補足、
衆議院議員總選擧檢察費補足、災害地方尋
常小學校費臨時補助、東北地方其他各地冷
害應急施設費等デアリマス、各特別會計ニ
於キマシテモ、其第二豫備金ヲ以テ豫算外
ノ支出ヲナシタルモノガアリマス
次ニ昭和十年度豫備金外支出ニ付申上ゲ
マス、昭和十一年一月衆議院解散ノ結果、
緊急支出ヲ要スル費途ニ對シ、政府ハ已ム
ヲ得ズ昭和十一年二月一日ヨリ三月三十日
ニ至ル間ニ於テ、國庫剩餘金及公債金ノ繰
入ヲ以テ、豫算超過及豫算外ノ支出ヲナシ
タルモノガアリマス、其內主ナル事項ヲ擧
ゲマスレバ、國庫剩餘金支出ニ依リマシタ
モノハ、內國稅拂戾金、恩給、臨時警備諸
費等デアリマシテ、公債金ノ繰入ニ依リマ
シタモノハ、北海道及靑森外八縣應急土木
事業助成費、關東及關西地方其他各地風水
害復舊施設費、東北地方其他各地冷害應急
施設費等デアリマシテ、其總額ハ千四十七
万五千七百五圓デアリマス、各特別會計ニ
於キマシテモ、其國庫剩餘金ヲ以テ豫算超過
及豫算外ノ支出ヲナシタルモノガアリマス
次ニ昭和十一年度第二豫備金支出ニ付申
上ゲマス
昭和十一年度第二豫備金ノ豫算額ハ二千
三百万圓デアリマシテ、昭和十一年四月ヨ
リ同年十二月ニ至ル間ニ於ケル支出總額ハ
九百三十九万五千五百十九圓デアリマス、
其內主ナル事項ヲ擧ゲマスレバ、電信料補
足、臨時警備諸費、水陸整備費補足、航空
隊設備費補足、艦船其他損傷復舊費等デア
リマス、各特別會計ニ於キマシテモ、其第
二豫備金ヲ以テ豫算外ノ支出ヲナシタルモ
ノト、豫備金外ニ於テ其國庫剩餘金ヲ以テ、
豫算外ノ支出ヲナシタルモノトガアリマス、
何卒御審議ノ上承諾ヲ與ヘラレンコトヲ望
ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=52
-
053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本件ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=53
-
054・服部崎市
○服部崎市君 日程第七ハ議長指名十八名
ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=54
-
055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=55
-
056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
八及ビ第九ハ同種議案デアリマスカラ、
括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=56
-
057・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第八、陪審法中改正法律案、
日程第九、陪審法中改正法律案、右兩案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス、順次提出者
ノ趣旨辯明ヲ許シマス-立川平君
第八陪審法中改正法律案(牧野賤男
君外八名提出)第一讀會
第九陪審法中改正法律案(野田文一
郞君外二名提出)第一讀會
陪審法中改正法律案
陪審法中左ノ通改正ス
第二條死刑又ハ無期若ハ長期三年ヲ超
ユル有期ノ懲役若ハ禁錮ニ該ル事件ニ
シテ地方裁判所ノ管轄ニ屬スルモノハ
之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
第三條削除
第四條中「前二條」ヲ「第二條」ニ改ム
第五條削除
第六條中「辭シ又ハ請求ヲ取下クルコト
ヲ得」ヲ「辭スルコトヲ得」二位人
第十條第一項中「陪審ノ評議ニ付スルコ
トヲ辭シ又ハ請求ヲ取下クルコトヲ得」ヲ
「陪審ノ評議ニ付スルヲ辭スルコトヲ得」ニ改
メ同條第二項及第三項中「又ハ請求ヲ取
下ケ」ヲ削ル
第十一條削除
第三十九條削除
第九十五條削除
第九十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
陪審ノ答申アリタルトキハ檢事ハ適用
スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘシ
第百一條被〓人ハ上訴ヲ爲スコトヲ得
上訴ヲ爲スコトヲ得ル者ニ付テハ刑事
訴訟法第三百七十八條、第三百七十九
條及第三百八十三條ノ規定ヲ準用ス
第百二條陪審ノ答申ニ影響アル控訴ノ
申立アリタルトキハ前二節ノ規定ニ從
ヒ更ニ之ヲ審理スヘシ
陪審ノ答申ニ影響ナキ控訴ノ申立アリ
タルトキハ第一審ニ於ケル陪審ノ答申
ハ其ノ效力ヲ有ス
第百三條中「理由アル場合ニ於テ」ノ下ニ
「檢事及被告人」ヲ加フ
第百七條削除
陪審法中改正法律案
陪審法中左ノ通改正ス
第二條死刑又ハ無期若ハ長期三年ヲ超
ユル有期ノ懲役若ハ禁錮ニ該ル事件ニ
シテ地方裁判所ノ管轄ニ屬スルモノハ
之ヲ陪審ノ評議ニ付ス
第三條削除
第四條中「前二條」ヲ「第二條」ニ改ム
第五條削除
第六條中「辭シ又ハ請求ヲ取下クルコト
ヲ得」ヲ「辭スルコトヲ得」ニ改ム
第十條第一項中「陪審ノ評議ニ付スルコ
トヲ辭シ又ハ請求ヲ取下クルコトヲ得」ヲ
「陪審ノ評議ニ付スルヲ辭スルコトヲ得」
ニ改メ同條第二項及第三項中「又ハ請求
ヲ取下ゲ」ヲ削ル
第十一條削除
第三十九條削除
第九十五條削除
第九十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
陪審ノ答申アリタルトキハ檢事ハ適用
スヘキ法令及刑ニ付意見ヲ陳述スヘシ
第百一條被〓人ハ上訴ヲ爲スコトヲ得
上訴ヲ爲スコトヲ得ル場合ニ付テハ刑
事訴訟法第三百七十八條、第三百七十
九條及第三百八十三條ノ規定ヲ準用ス
第百二條陪審ノ答申ニ影響アル控訴ノ
申立アリタルトキハ前二節ノ規定ニ從
ヒ更ニ之ヲ審理スヘシ
陪審ノ答申ニ影響ナキ控訴ノ申立アリ
タルトキハ第一審ニ於ケル陪審ノ答申
ハ其ノ效力ヲ有ス
第百三條中「理由アル場合ニ於テ」ノ下ニ
「檢事及被告人」ヲ加フ
第百七條削除
〔立川平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=57
-
058・立川平
○立川平君 只今上程セラレマシタ陪審法
中改正法律案ニ付キマシテ、其提案ノ趣旨
ヲ簡單ニ申上ゲタイト存ジマス、改正ノ要
點ハ三ツデアリマス、第一ハ其範圍ノ擴張
デアリマス、現行法ノ下ニ於キマシテハ、
陪審ノ評議ニ付スル事件ノ範圍ガ極メテ狹
小デアリマシテ、陪審制度ノ實績ヲ擧ゲル
コトガ出來マセヌ、ソコデ之ヲ擴張致シマ
シテ、地方裁判所ノ管轄ニ屬スル事件ハ、
原則トシテ總テ之ヲ陪審ノ評議ニ付スルコ
トニ致スノデアリマス
第二點ハ三審制度ノ採用デアリマス、現
行刑事訴訟法ハ三審制ヲ採用シテ居リマス
ニモ拘ラズ、陪審法ハ二審制度ヲ採用シテ
居リマス、是ハ何等理由ナイコトデアリマ
スルノミナラズ、陪審法ガ實際ニ用ヒラレ
テ居ラナイ重大ナル原因ノ一ツニナッテ居
リマス、故ニ之ヲ刑事訴訟法ト同樣ニ三審
制ニ致サウト云フノデアリマス、而シテ裁
判所ガ陪審ノ答申ヲ無視シテ、更ニ他ノ陪
審ニ付スルト云フヤウナコトハ、全ク官僚
獨善ノ思想カラ出發シタモノデアリマシテ、
陪審ノ精神ニ悖ルコト甚シイノデアリマス、
故ニ第九十五條ノ如キハ斷然之ヲ削除スル
ノデアリマシテ、陪審法ヲ三審制度ニ改メ
マスル時ニハ、上訴ノ申立人ノ範圍モ亦刑
事訴訟法ト同樣ノ點マデ擴張シナケレバナ
リマセヌ、更ニ陪審ノ控訴ニ於キマシテモ、
第一審ノ審理ト同樣ナル審理ヲシナケレバ
ナラナイノデアリマス、唯第一審ニ於ケル陪
審ノ評議ニ影響ノナイ控訴ノ申立ガアッタ
場合ニ限ッテ、第一審ニ於ケル陪審ノ答申ヲ
シテ、其效力ヲ存續セシムルヤウニ致スノ
デアリマス
第三ノ點ハ費用ノ點デアリマス、現行陪審
法ニ於キマシテ、其費用ノ全部或ハ一部ヲ
當事者ガ負擔ヲ致シテ居リマスカラ、國民
ト致シマシテハ、ドウシテモ此陪審法ニ賴
ルコトヲ躊躇セザルヲ得ナイコトガ多イノ
デアリマス、故ニ之ヲ全部國庫ノ負擔トシ
ヨウト云フノデアリマス、現在ノ陪審法ガ
實際ニ多ク用ヒラレテ居ラナイト云フノハ
斯ノ如クニ現行陪審法ニ幾多重大ナル缺陷
ガアルカラデアリマシテ、斷ジテ國民ノ陪
審法其モノニ對スル不信用カラデアルノデ
ハナイノデアリマス、然ルニ政府ハ今囘陪
審法ヲ寧ロ改惡セントスルヤウナ意思サヘ
持ッテ居ルト云フコトハ、實ニ驚クニ堪ヘタ
ルコトト言ハナケレバナリマセヌ、吾々ハ
是ニ於テ陪審法ヲ斯ノ如クニ改正致シマシ
テ、本法制定ノ趣旨ヲ貫徹セントスル次第
デアリマス、願クハ滿場ノ御贊成ヲ願ヒマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=58
-
059・岡本實太郎
○岡本實太郞君 簡單デアリマスカラ自席
カラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=59
-
060・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=60
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061・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ヲ提出致シマシタ趣
旨ハ、只今同僚立川君カラ申述ベラレタ通
リデアリマスカラ、之ヲ私ハ援用致シテ置キ
マス、其理由ニ付キマシテ聊カ附加致シテ
置キタイト思ヒマスガ、本來陪審法ヲ設ケ
ラレマシタノハ、國民ガ國政ニ參與スル一
ツト致シマシテ、司法ニ參與ヲ許サレタノ
デアリマス、斯クシテ適正ナ裁判ヲ得テ司
法ノ尊嚴ヲ保チ、國民ノ信賴ヲ得ンガ爲ニ、
此制度ガ設ケラレタノデアリマス、然ルニ
此法ガ實施サレテ以來ノ實際ヲ見マスルト
云フト、是ガ適用ニ付甚ダ不十分デアリマ
ス、制定サレタ時ノ積リヨリモ、實施後ニ
其結果ガ振ハナイト云フヤウナ現在ノ狀態
デアリマス、何故斯樣ナ狀態ニナッタカト
言ヘバ、畢竟此法律其モノニ缺陷ガアル、
卽チ只今立川君カラ申述ベラレマシタヤウ
ニ、或ハ有罪ニナレバ費用ヲ負擔シナケレ
バナラヌトカ、或ハ又控訴ヲ許サナイト云
フコト等ガアリマス爲ニ、遂ニ此適用ガ甚
ダ減縮サレテシマヒマシタ、斯ウ云フコト
カト思フノデアリマス、故ニ此缺陷ヲ除ク
爲ニ本法ヲ改正シヨウ、而シテ法廷陪審ノ
制度ヲ一層擴張シテ法ノ運用ヲ滑カナラシ
メ、此法制定ノ精神ヲ發揚シタイト云フノ
ガ本法案ヲ提出シタ理由デアリマス、何卒
此趣旨ヲ御諒解ノ上御贊成ノ程ヲ御願致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=61
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062・服部崎市
○服部崎市君 日程第八及ビ第九ノ兩案ハ
一括シテ政府提出、陪審法中改正法律案委
員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=62
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063・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=63
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064・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
+、大正十二年法律第五十二號中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯
明ヲ許シマス-提出者森下國雄君
第十大正十二年法律第五十一一號中改
正法律案(森下國雄君提出)第一讀會
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案
大正十二年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一項中「辯護士法第三條」ヲ「辯護士法
第二條第一項第二號」ニ、「辯護士試補タ
ルコトヲ得」ヲ「辯護士タルコトヲ得」=
改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リテ辯
護士試補タル資格ヲ有スル者ハ本法ニ依
ル辯護士タル資格ヲ有ス
〔森下國雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=64
-
065・森下國雄
○森下國雄君 本案提出ノ理由ヲ申述ベマ
ス、昭和八年五月法律第五十三號改正辯護
士法ハ、同十一年四月一日ヨリ實施セラレ
タ結果、其影響ヲ受ケマシテ、本法モ同十
一年五月法律第七號ニ依リ改正セラレ、本
法ニ依ル試驗合格後何等ノ生活ノ保障ナク
シテ更ニ一年半ノ實務修習ヲ爲シ、成規ノ
考試ヲ得ナケレバ辯護士トナレヌコトニナッ
タノデアリマス、此辯護士法制度ハ少クト
モ本法ニ依ル合格者ニ對シテハ非常ナ不公
平ナル、不合理ナル制度ト存ズルノデアリ
マシ、試補ハ辯護士法第二十八條ニ依リ他
ノ職務ニ在ルコトヲ許サレナイノデアリマ
ス、隨テ試驗ニ合格後デモ、辯護士タラン
トスルニハ現在ノ職ヲ辭シテ、卽チ失業狀
態トナリマシテ實務修習ヲ致サナケレバナ
リマセヌ、裕福ノ者又ハ學校ヲ出タテノ者
ニシテ、親ノ世話ニナリ得ル者デアリマス
ルナラバ、此修習ヲ受ケ得ラレルノデアリ
マスガ、本法ノ合格者ハ總テ四十歲以上又
ハ六十歲ニ及ンデ居ル人デアリマス、而シ
テ各〓職職ヲ持ッテ其家族ヲ養ッテ居ルノデ
アリマシテ、隨テ其職ヲ奪フニ於テハ、直
チニ辯護士トシテ開業ガ出來ルヤウニシテ
ヤラナケレバナラナイト存ズルノデアリマ
ス、更ニ每年司法試驗合格者約三百名ノ中、
司法官試補トナル者ガ百二三十名、ソレカ
ラ行政科ニ合格シテ行政官其他トナルベキ
者ヲ除ク約百餘名ト、本法ノ合格者約二十
名、卽チ百三四十名ガ辯護士トナッテ居リマ
シタノデアリマスガ、此度ノ辯護士試補ハ
生活ノ保障ノ一大難關ノ爲メ、試補トシテ
實務修習ヲ受ケ得ザル者ガ、其半數以上ニ
達シテ居ルト云フコトデアリマス、地方ニ
アリマシテハ實務修習ヲ開始シテ居ナイ處
モ大分アリマス、而モ其人々ハ怨ヲ呑ンデ
此不合理ナル所ノ制度ノ撤廢ヲ待ッテ居ル
ト云フコトデアリマス、折角學校ヲ出マシ
テ多年ノ宿望ヲ果シタニモ拘ラズ、此制度
ノ爲ニ辯護士トナルコトガ出來ナイト云フ
結果ニナル、洵ニ氣ノ毒ノ狀態ト存ズルノ
デアリマス、現在實務修習ヲ致シテ居リマ
スル者ハ東京、大阪、名古屋位ノモノデア
リマシテ、東京ガ約五十名、大阪ガ約十五
名、名古屋ガ三名、其他ハヤッテ居ラヌト云
フコトデアリマス、斯ウ云フヤウナ不合理
ナルヤリ方デ、此法ヲ不備ナル形ニ其儘迷
ハセテ居ルト云フコトガ、洵ニ怪シカラヌ
コトデハナイカト私共ハ存ズルノデアリマ
ス、ドウゾ斯ウシタ洵ニ御氣ノ毒ナ狀態ニ
アル所ノ制度ヲ改メマシテ、是等ノ四十歲
カラ六十歲ニ及ンデ居リマス所ノ、今日マ
デ刻苦勉勵ヲ續ケテ來マシテ尙ホ苦ンデ居
ル人々ノ爲ニ、是非共御贊成ヲ戴キマシテ、
前囘ノ議會ニ於キマシテ全員一致デ可決ヲ
シタモノデアリマスカラ、何卒之ニ御贊成
ヲ仰ガントスル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=65
-
066・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、陪審法中
改正法律案ノ委員ニ併セ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=66
-
067・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=67
-
068・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
十一、恩給法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-
提出者宮脇長吉君
第十一恩給法中改正法律案(宮脇長
吉君外一名提出)第一讀會
恩給法中改正法律案
恩給法中左ノ通改正ス
第二條第一項中「傷病賜金、」及同條第二
項中「、傷病賜金」ヲ削ル
第四十六條ニ左ノ二項ヲ加フ
軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹
リ失格原因ナク且恩給ヲ受ケスシテ退
職シタル後其ノ程度增進シタルトキハ
新ニ普通恩給及增加恩給ヲ給ス但シ重
大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ傷病ノ程度ハ勅令ヲ以テ之ヲハ下士官以下ノ軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ
定ム又ハ疾病ニ罹リ別ニ勅令ノ定ムル程度ニ
第四十六條ノ二第一項中「公務員公務ノ達シ失格原因ナクシテ之カ爲退職シ又ハ
爲」ヲ「公務員(下士官以下ノ軍人ヲ除ク)退職後」ニ改ム
公務ノ爲」ニ、「又ハ其ノ公務員カ下士官第六十六條削除
以下ノ軍人ニシテ退職後一年內ニ」ヲ「又別表第二號表ヲ左ノ如ク改ム
第二號表
親任奏任判任
階
傷勅任三等乃至五等六等乃至九等一等二等三等四等
病症等
原勅任待遇奏任待遇判任待遇
狀等差
因將官佐官尉官准士官下士兵
特別項
円円円円円円
第一項二、四〇〇一、八〇〇一、二〇〇〇八〇九九〇九〇○
甲第二項
二、〇〇〇五〇〇〇〇〇九〇〇八二五七五〇
第三項六〇〇二〇〇八〇〇七二〇六六〇六〇〇
第四項-、二八〇九六〇六四〇五七六五二八四八〇
務公キヘス準ニ鬪戰ハ又鬪戰第五項〇〇〇七五〇五〇〇四五〇四一三三七五
第六項八〇〇六〇〇四〇〇三六〇三三〇三〇〇
第七項六四〇四八〇三二〇二九〇二六〇二四〇
號第八項五二〇三九〇二六〇二三〇三0二〇〇
第九項四一〇三一〇三○一八〇一·七·一六〇
第十項三二〇二四〇一七〇i n 1一四〇一三〇
特別項
円円円円円円
普第一項一、九二〇四四〇九六〇八六四七九二七二〇
乙第二項一、六〇〇一、二〇〇八〇〇
七二〇六六〇六〇〇
第三項、二八〇九六〇六四〇五七六三六四八〇
通第四項○二四七六八
五一二四六一四二三三八四
第五項八〇〇六〇〇四〇〇三六〇三三〇三〇〇
公第六項六四〇四八〇三二〇二八八二六四二四〇
第七項五二〇三九〇二六〇二三〇二一〇二〇〇
號第八項四一〇三一〇二一〇一八〇一七.一六〇
務第九項三二〇二四〇一 七 〇一五〇1 nn一三〇
第十項二六〇二〇〇一四〇一二〇一一〇一〇〇
備考特別項ハ各號第一項ノ金額ニ其ノ十分ノ五以內ヲ加へタルモノトス
ハ
別表第三號表ヲ左ノ如ク改ム
第三號表
親任奏
階
傷勅任三等乃至五等
病症等勅任待遇奏
原駅時差
因將官佐
円
第一款三五〇三〇〇
甲戰鬪
又第二款三三〇二八〇
戰鬪第三款三0二六〇
二種子
スヘ第四款二九〇二四〇
號務キ公第五款二七〇二二〇
第六款二五〇二〇〇
円
第一款三二〇二八
乙普
第二款三〇〇二六〇
通第三款二八〇二四〇
公第四款二六〇二二〇
號第五款二四〇二〇〇
務
第六款二二〇一八〇
別表第四號表ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軍人ニシテ從前ノ規定ニ依ル賑恤金、傷
病賜金、傷病年金又ハ之ニ準スヘキモノ
ヲ受ケタル者ニ對シテハ再診ヲ要セスシ
テ本法施行ノ翌日ヨリ普通恩給及增加恩
給ヲ給ス
前項ノ普通恩給及增加恩給ノ年額ニ付テ
ハ第四十六條ノ規定ニ依ル普通恩給增加
恩給ノ年額ニ關スル規定ヲ準用ス
〔宮脇長吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=68
-
069・宮脇長吉
○宮脇長吉君 只今上程ニナリマシタ恩給
法中改正法律案ニ關シマシテ、改正ノ要點
「軍人公務ノ爲傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹
リ失格原因ナク且恩給ヲ受ケスシテ退職シ
タル後其ノ程度增進シタルトキハ新ニ普通
任判任
六等乃至九等一等二等三等四等
任待遇判任待遇
官尉官准士官下士兵
円円円円円
二六〇二四〇二二〇二〇○
二四〇二二〇二〇〇一〇〇
二二〇二〇〇一八〇一七〇
二〇〇一八〇一七〇一四○
一八一七〇一四〇一二一〇
一七〇i m2,一二〇一〇〇
円円円円
○二四〇二二〇二〇○一六○
二二〇二〇〇一六〇一四0
一〇〇一八〇一四〇一二〇
一〇〇一七〇一二〇-○○
二一〇一二〇〇〇八〇
一〇〇一〇〇八〇六〇
恩給及增加恩給ヲ給ス」ト云フノガ其要點
デアリマス、極メテ簡單ニ要ヲ摘ンデ其理
由ヲ述ベテ見タイト思ヒマス
本法案ノ適用スベキ者ハ其大部分ハ戰場
ノ負傷兵デアリマス、御承知ノヤウニ戰場
ニ於テ負傷ヲ致シ、其程度ガ一指以上ノ用
ヲ失フ場合ニ於キマシテハ、終生普通恩給
竝ニ增加恩給ヲ給シマス、然ルニ戰場ニ於
キマシテハ多數ノ負傷者ガアリ、所謂兵馬
倥偬ノ間ニアル爲ニ、診斷ニ於テモ動モス
レバ過ガアリ、或ハ將來ノ見込違モアリ、
此樣ナ關係カラ其後負傷シタ者ガ、程度ガ輕
イト判斷サレタ者ガ、却テ非常ニ重クナリ、
恩給竝ニ增加恩給ヲ受ケテ居ル者ヨリモ、
層困難ナ者ガ澤山アリマス、之ニ對シ更ニ
診斷ヲ行ヒ、玆ニ十分ナル檢討ヲ爲シテ、
正シク戰場負傷ノ原因デアリ、此者ハ一指
以上ノ用ヲ失ッテ居ルト云フコトガ決ッタ場
合ニ於キマシテハ、之ニ對シ遡及ハシナク
トモ、此法案ガ通過シタ翌日カラ、茲ニ普
通恩給竝ニ增加恩給ヲ給セヨト云フノガ其
理由デアリマス、私ハ之ニ對シ何人モ異存
アルマイト思ヒマス、然ルニ本法案ハ此數
年來每年出テ居リマスルガ、今ニ是ハ通過
致サナイ、時恰モ北支ニ於テ事變ガ突發シ、
我ガ忠勇ナル國軍ハ炎暑ノ下ニ身命ヲ賭シ
テ兇暴ナル支那兵ト戰ッテ居ル、私ハ此機會
ニ於テ斯ル法案ヲ通過サスコトハ、最モ機
宜ヲ得タモノデアリ、又國家トシテハ斯ル
不具者ニ對シテ斯樣ナ方法ヲ執ルコトガ、
國家ノ負傷者ニ對スル義務デアリ、又一面
ニ於キマシテハ、大所高所カラ見タ廣義國
防ノ意義ヲ爲スト思ヒマスルガ故ニ、本法
案ニ付キマシテハ是非トモ本議會ニ於テ兩
院ヲ通過シ成立スルヤウ、ドウカ御贊成ヲ
願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=69
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070・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、軍機保護
法改正法律案委員ニ併セ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=70
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071・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=71
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072・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ議
事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議事日程
ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是ニテ
散會致シマス
午後三時四十一分散會
〔河野一郞君演說參照〕
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡寄村二千百八十九番地
被〓佐藤保次
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡〓水村神繩三百五十七番地
被〓山崎直藏
上申書ノ件
放火被疑事件
本籍神奈川縣足柄上郡松田町惣領千九百
十三番地倉吉長男
小川貞義
明治四十二年三月六日生二十九歲
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千二百六番
地
被〓人中戶川粂藏
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡寄村字虫澤六百四十三
番地
被告人古谷愛之助
上申書ノ件
放火被〓事件
神奈川縣足柄上郡三保村中川上野原
被〓人細川四作
上申書ノ件
神奈川縣足柄上郡三保村玄倉二百十八番
地
杉本彌三郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千九百
六番地
尾登善作
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千九百
九番地
藥袋靜
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄郡〓水村神繩三百四十五番地
被〓人山崎逸郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡南足柄村開本千二十二
番地
被〓人吳地傳之助
上申書ノ件
放火被疑事件
小田原町綠町二丁目百五十三番地
被告人片野濱吉
上申書ノ件
放火被疑事件
小田原町綠町三丁目三百七十二番地
小河內祐藏
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千八百九十
九番地
山口德治
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千九百
五十一番地
被〓澁谷喜
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡松田町松田惣領二千四十番地
被〓中村茂興
上申書ノ件
住所神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千
二百六十番地
被〓福田長松
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄下郡小田原町綠町二丁目百五十二番
地
櫻井若三郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄郡上秦野村菖蒲千六百四十
二番地
被〓人府川儀助
上申書ノ件
放火被疑事件
本籍地神奈川縣足柄上郡〓水村湯觸二百
九十五番地
現住所神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領
千二百八十四番地
被〓書籍文房具商山崎近次郞
明治十二年四月四日生
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上松田町松田惣領千八百八
十八番地
被告小島萬助
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千九百五十
四番地
被〓森谷勝次
上申書ノ件
神奈川縣足柄上郡寄村彌勒寺二千三百六
十八番地
被〓人小宮計平
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千九百六番
地
被告小宮次郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千七百六十
二番地
被〓人澁谷才次郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田千九百三十
四番地
被〓人齋藤貞之助
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千八百
九十九番地
被〓人吉田、安行
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡三保村中川二百四十二番地
被告人關野良造
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡松田町惣領千九百十二番地
被告人內藤金次郞
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡三保村中川上之原二百八十三番
地
被〓人細川三平
上申書ノ件
放大被疑事件
足柄上郡三保村中川二百二十二番地
被〓人井上市五郞
上申書ノ件
放火被〓事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領二千二
百十二番地
被告高橋音松
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領二千六
十九番地
被〓人中村嘉七
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千八百
八十八番地
被〓人石川正司
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣松田町惣領千八百八十八番地
被〓人石井浦太郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千九百十四
番地
大野梅忠
上申書ノ件
放火被〓事件
神奈川縣足柄上郡三保村世附七百四十五
番地
被〓山本五三郞
上申書ノ件
足柄上郡松田町松田庶子一一百二十一番地
坂田米吉
當五十年
松田放火被疑事件ニ對スル件
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡〓水村神繩三百四十八番地
被〓人高橋茂
上申書ノ件
放火被疑事件
足柄上郡松田町松田惣領千二百四十九番
地
被〓露木源次郞
上申書ノ件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千八百七十
一番地
天野義信
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡三保村玄倉二百四十八
番地
被〓佐藤百太郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡三保村中川二百二十二
番地
被〓人湯川助
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千八百
九十九番地
被〓人吉田傳三
上申書ノ件
放大被疑事件
神奈川縣足柄上郡三保村上ノ野二百八十
九番地
被〓細川磯吉
上申書ノ件
放火被疑事件
三尋木彌一郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町千九百五十一番
地
被〓人澁谷銳
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡寄村二千二百十三番地
被告佐藤六郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千八百八十
六番地
被〓井上倉藏
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡寄村二千二百五十番地
被〓佐藤佐七
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町惣領千九百十四
番地
被〓內藤直次
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡〓水村神繩三百四十二
番地
被〓山崎作太郞
上申書ノ件
放大被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町松田惣領千八百
二十番地
被〓中村智尊
上申書ノ件
放火被〓事件
神奈川縣足柄上郡三保村玄倉二百五十六
番地
被〓人三尋木新次郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄上郡松田町千八百九十番地
被〓人露木辰五郞
上申書ノ件
放火被疑事件
神奈川縣足柄下郡小田原町綠二丁目百六
十九番地
片野仙太郞
上申書ノ件
放火被疑事件
住所
被〓人山口喜右衞門
取調經過報〓書ノ件
松田町
湯川和平
三浦郡三崎町放火容疑者調ノ件
足柄上郡放火被疑者檢擧數調ノ件
三浦郡三崎町放火容疑者調ノ件
萬歲責外十六責方ノ件
足柄上郡、足柄下郡、平塚市及城ケ島事
件ノ檢擧ノ件
放火集團事件ニ於ケル拷問ノ件ニ關スル
秦野町ノ田淵德次郞ノ手紙
衆議院議事速記錄第三號中正誤
頁段行誤正
二二三末社會主義社會正義発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007113242X00719370731&spkNum=72
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