第72回帝国議会　衆議院　本会議　第2号　昭和12年9月5日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十二年九月五日（日曜日）
  　　　午後一時十九分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第一號
  　　昭和十二年九月五日
  　　　午後一時開議
  　第一　支那事變に關する臨時軍事費支辨の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二　臨事軍事費特別會計法案（政府提出）　第一讀會
  　第三　支那事變の爲從軍したる軍人及軍屬に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　臨時資金調整法案（政府提出）　第一讀會
  　第五　外國爲替管理法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　米穀の應急措置に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第七　臨時肥料配給統制法案（政府提出）　第一讀會
  　第八　輸出入品等に關する臨時措置に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第九　臨時船舶管理法案（政府提出）　第一讀會
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
  一議員より提出せられたる議案左の如し
  　戰時體制下の青年學校擴充強化に關する建議案
  　　提出者　　　　　　　　庄司一郎君
  　内地産製鐵原料資源開發利用に關する建議案
  　　提出者
  　　　　高橋壽太郎君　手代木隆吉君
  　　　　森田重次郎君
  　出動將兵送迎人代表に對し停車場無料入場許可に關する建議案
  　　提出者
  　　　　淺沼稻次郎君　阿部茂夫君
  　　　　井上良次君　永江一夫君
  　　　　野溝勝君
  　　　　　　　　　（以上九月四日提出）
  一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
  　土地賃貸價格調査に關する質問主意書
  　　提出者　　　　　　　　菅野善右衞門君
  　　　　　　　　　（以上九月四日提出）
  一昨四日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
  　　　　　司法省民事局長　大森洪太君
  　　　　　司法省刑事局長　松阪廣政君
  　第七十二囘帝國議會司法省所管事務政府委員被仰付
  　　　　　商工省統制局長　黒田鴻五君
  　第七十二囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
  一昨四日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
  　　　　　　　　六八　　　増永元也君
  　　　　　　　　九九　　　紅露昭君
  　　　　　　　一二二　　　田中源三郎君
  一昨四日委員長及理事互選の結果左の如し
  　豫算委員
  　　委員長　勝正憲君
  　　　理事
  　　　　　　木檜三四郎君　清寛君
  　　　　　　内藤正剛君　西方利馬君
  　　　　　　沖島鎌三君　佐藤洋之助君
  　　　　　　森肇君　三輪壽壯君
  　決算委員
  　　委員長　菊池良一君
  　　　理事
  　　　　　　佐藤與一君　福田關次郎君
  　　　　　　石坂養平君　服部岩吉君
  　　　　　　春名成章君　川俣清音君
  　請願委員
  　　委員長　菅野善右衞門君
  　　　理事
  　　　　　　坂東幸太郎君　片岡恒一君
  　　　　　　宮本雄一郎君　高橋圓三郎君
  　　　　　　鈴木正吾君　菊地養之輔君
  　懲罰委員
  　　委員長　岡本實太郎君
  　　　理事
  　　　　　　中村梅吉君　本田義成君
  　　　　　　石坂繁君
  　建議委員
  　　委員長　田中亮一君
  　　　理事
  　　　　　　木村淺七君　田村秀吉君
  　　　　　　田中好君　川崎巳之太郎君
  　　　　　　赤城宗徳君　前川正一君
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• 001・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　是ヨリ會議ヲ開キマ
  ス、開院式勅語奉答書捧呈ノ〓末ヲ御報〓
  致シマス、本日參內致シマシテ、午前十一
  時鳳凰ノ間ニ於テ拜謁ヲ賜リ、御前ニ進ミ
  マシテ奉答書ヲ朗讀致シ捧呈致シマシタ、
  之ニ對シテ勅語ヲ賜リマシタ、玆ニ捧讀致
  シマス、諸君ノ御起立ヲ望ミマス
  〔總員起立〕
  朕衆議院ノ深厚ナル敬禮ヲ嘉ス
  〔總員敬禮〕

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• 002・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　本日ノ議事日程ニ入
  ルニ先ダチ内閣總理大臣、外務大臣及ビ大
  藏大臣ヨリ演說ノ通〓ガアリマス、尙ホ右
  三大臣ノ演說ニ次イデ陸軍大臣及ビ海軍大
  臣ヨリ、支那事變ニ關シ報告ノ爲メ發言ヲ求
  メラレテ居リマス、順次之ヲ許シマス-
  內閣總理大臣近衞文麿君
  國務大臣ノ演說
  〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕

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• 003・近衞文麿

  ○國務大臣(公爵近衞文麿君)　昨日開院式
  ニ當リマシテ、時局ニ關シ特ニ優渥ナル勅
  語ヲ拜シマシタコトハ、眞ニ恐懼感激ノ至
  ニ堪ヘマセヌ、私ハ諸君ト共ニ謹ンデ聖旨
  ヲ奉戴シテ一意報效ノ誠ヲ竭シ、宸襟ヲ安
  ンジ奉リタイト存ズルノデアリマス
  去ル七月七日北支ニ事變ガ勃發致シマシ
  テ以來、帝國政府ガ支那ニ對シテ採リ來リ
  マシタル根本方針ハ、飽マデモ支那政府ノ
  反省ヲ求メマシテ、其誤レル排日政策ヲ抛
  棄セシメ、以テ日支兩國ノ國交ヲ根本的ニ
  調整セントスルニアルノデアリマシテ、此
  方針ハ今日ト雖モ何等變ル所ガナイノデア
  リマス、唯此方針ヲ遂行致シマスル手段ト
  致シマシテ、從來政府ハ出來ルダケ事件ノ擴
  大スルコトヲ防ギ、局面ヲ限定シテ事態ヲ
  收拾スベク努メタノデアリマス、此事ハ今
  日マデ屢〓聲聲致シタ通リデアリマシテ、諸
  君モ御諒承ノコトト思フノデアリマス
  然ルニ支那側ハ公正ナル帝國政府ノ眞意
  ヲ諒解セザルノミナラズ、帝國政府ノ隱忍ニ
  乘ジマシテ益〓侮日抗日ノ氣勢ヲ擧ゲ、統制
  ナキ國民感情ノ激スル所、事態ハ急速ナル惡
  化ヲ來シマシテ、局面ハ北支ノミナラズ、
  中支南支ニマデモ波及スルニ至ッタノデア
  リマス、隱忍ニ隱忍ヲ重ネテ參リマシタ我
  ガ政府モ、是ニ於テ從來ノ如ク消極的且ツ
  局地的ニ事態ヲ收拾スルコトノ不可能ナル
  ヲ認ムルニ至リマシテ、遂ニ斷乎トシテ積
  極的、且ツ全面的ニ支那軍ニ對シテ一大打
  擊ヲ與フルノ已ムナキニ立至リマシタ次第
  デアリマス(拍手)
  抑.一國ガ特定ノ他ノ一國ヲ排斥侮蔑ス
  ルコトヲ以テ其國策トナシ、國民〓育ノ方
  針トシテ斯ル思想ヲ幼少ナル兒童ノ頭腦ニ
  マデ注入スルガ如キコトハ、古今東西ノ歷
  史ニ於テ未ダ曾テ類例ヲ見ザル所デアリマ
  シテ、是ガ將來ニ於ケル結果ヲ考ヘマスル
  時ニハ、獨リ日支兩國ノ國交ノ爲ノミナラ
  ズ東洋ノ平和、延テハ全世界ノ平和ノ爲ニ
  眞ニ寒心ニ堪ヘナイモノガアルノデアリマ
  ス、帝國政府ト致シマシテハ從來屢〓支那
  政府ニ對シ、其態度ヲ更メンコトヲ要求シ
  タニ拘ラズ、毫モ顧ミル所ナク、遂ニ今次
  ノ事變ヲ惹起セシムルニ至ッタノデアリマ
  ス、斯ノ如キ國家ニ對シテ其反省ヲ求ムル
  爲ニ、帝國ガ斷乎一擊ヲ加フルノ決意ヲ爲
  シタルコトハ、獨リ帝國自衞ノ爲ノミナラ
  ズ、正義人道ノ上ヨリ見マシテモ、極メ
  テ當然ノコトナリト固ク信ジテ疑ハヌモ
  ノデアリマス(拍手)蓋シ東亞ノ和平ナク
  シテ東亞國民ノ幸福ナシト信ズルカラデ
  アリマス、固ヨリ帝國ノ打擊ヲ加ヘント
  スル目標ハ、斯ル誤レル排外政策ヲ實行シ
  ツヽアル所ノ支那政府及ビ軍隊デアリマシ
  テ、帝國ハ斷ジテ支那國民ヲ敵トスルモノ
  デハナイノデアリマス、又支那政府ニ致シ
  マシテモ、眞ニ能ク反省ヲ致シ、今後我國
  ト提携シテ、相共ニ東洋文化ノ發達ト、東
  洋平和ノ確立ニ向ッテ力ヲ盡サントスル誠
  意ヲ示スニ至リマシタナラバ、帝國トシテ
  ハソレデモ尙ボ之ヲ追究セントスルモノデ
  ハナイノデアリマス
  併ナガラ今日此際帝國トシテ採ルベキ手
  段ハ、出來ルダケ、速ニ支那軍ニ對シテ徹底的
  打擊ヲ加へ、彼ヲシテ戰意ヲ喪失セシムル
  以外ニナイノデアリマス、斯クシテ尙ホ支
  那ガ容易ニ反省ヲ致サズ、飽マデ執拗ナル
  抵抗ヲ續クル場合ニハ、帝國トシテ長期ニ
  亙ル戰モ勿論辭スルモノデハナイノデアリ
  マス、惟フニ東洋平和ノ確立ノ大使命ヲ達
  成スルガ爲ニハ、尙ホ前途ニ幾多ノ難關ガ橫
  ハッテ居ルノデアリマシテ、此難關ヲ突破ス
  ルガ爲ニハ、上下一致堅忍持久ノ精神ヲ以
  テ邁進スルノ覺悟ヲ要スルト思フノデアリ
  マス
  今ヤ、我ガ忠勇ナル將兵ハ全支ニ亙リ萬
  難ヲ排シテ堂々正義ノ陣ヲ進メ、皇軍ノ威
  力ヲ中外ニ宣揚シツヽアルコトハ、國民
  ノ齊シク感謝感激ニ堪ヘヌ所デアリマス
  (拍手)又是ト同時ニ全國津々浦々ニ至ルマ
  デ銃後ノ熱誠ガ湧立チマシテ、美ハシキ擧
  國一體ノ實ヲ示シツヽアルコトモ、誠ニ力
  强ク感ズル次第デアリマス(拍手)願クハ
  一時ノ戰勝ニ醉フガ如キコトナク、此緊張
  ヲ持續致シマシテ、時艱ヲ克服シ、終局ノ
  目的ヲ達成シナケレバナラヌト思フノデア
  リマス
  政府ハ玆ニ時局ノ急務ニ應ズル爲ニ必要
  ナル豫算案及ビ法律案ヲ帝國議會ニ提出致
  シテ居リマス、是等ノ法律ニ於キマシテ政
  府ハ此非常事態ニ對應スルヤウニ財政經濟
  ノ體勢ヲ整フルコトト致シタイノデアリマ
  ス、固ヨリ是ガ爲ニ財界ニ無用ノ衝擊ヲ與
  ヘルコトハ、出來ルダケ之ヲ避クルヤウニ
  十分ノ注意ヲ拂フ積リデアリマス、尙ホ事變
  ノ經過、外交ノ事情、財政ノ計畫等ニ付キマ
  シテハ、ソレ〓〓主務大臣ヨリ申述べマス
  政府ハ此重大ナル時局ニ當リ、諸君ト共
  ニ此國家ノ大事ヲ翼贊シ奉ルコトヲ以テ、
  洵ニ光榮トスルト同時ニ、其責任ノ愈〓重
  大ナルコトヲ痛感スルノデアリマス、諸君
  ニ於カレマシテモ、宜シク政府ノ意ノアル
  所ヲ諒トセラレマシテ、愼重御審議ノ上協
  贊ヲ與ヘラレンコトヲ切望スル次第デアリ
  マス(拍手)

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• 004・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　外務大臣廣田弘毅君
  〔國務大臣廣田弘毅君登壇〕

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• 005・廣田弘毅

  ○國務大臣(廣田廣毅君)　今次支那事變ニ
  對シマスル帝國政府ノ所信ハ、只今總理大
  臣ヨリ明ニセラレタ通リデアリマス、私ハ
  玆ニ前議會後ニ於ケル今次事變ニ關聯スル
  外交ノ經過ノ〓略ヲ陳述致シタイト存ジマ
  ス
  事變勃發以來帝國政府ハ現地解決、事態
  不擴大ノ方針ニ基キ、南京政府ノ速カナル反
  省ヲ求メ、時局ノ收拾ニ努力シ參ッタノデア
  リマスガ、南京政府ハ毫モ誠意ヲ示サズ、
  益〓中央軍ヲ北支ニ集中シテ我方ニ挑戰シ
  來ルト共ニ揚子江流域及ビ南支各地ニ於テ
  ハ、陰險極マル排日ヲ行ヒ、以テ是等地方
  ニ於ケル我ガ在留民ノ平和的活動ハ固ヨリ、
  其生存ヲスラ危殆ナラシムルニ立至ッタ
  ノデアリマス、斯ル狀態ノ下ニ於キマシテ
  モ、帝國政府ハ尙ホ出來得ル限リ事態ノ平
  和的收拾ヲ期シ、漢口ヲ初メ、長江流域在
  留邦人ヲ全部引揚ゲシメタノデアリマス、
  其後偶〓八月九日上海ニ於テ、我ガ陸戰隊大
  山中尉及ビ齋藤水兵ガ、支那保安隊ノ
  爲メ無殘ニ殺害セラルヽニ至リマシタ
  ガ、我方ニ於テハ尙ホ努メテ平和的解
  決ノ方針ヲ以テ之ニ處シ、右保安隊ノ
  急速ナル撤退、竝ニ昭和七年ノ停戰協定ニ
  違反スル各種軍事施設ノ撤去ヲ求メテ、事
  態ノ收拾ヲ圖ラントシタノデアリマス、然
  ルニ支那側ニ於テハ言ヲ左右ニ託シテ之ニ
  應ゼザルノミナラズ、益停戰區域內ニ於
  ケル其兵力及ビ軍事施設ヲ增大シ、我方ニ
  對シテ不法ニモ攻勢ニ出デマシタ爲メ、帝
  國ニ於テハ已ムナク應急ノ措置トシテ、少
  數ノ海軍兵力ヲ上海ニ增遣シ、以テ我ガ居
  留民保護ノ責ヲ全ウセンコトヲ期シタノデ
  アリマス
  斯ノ如ク上海ノ形勢不穩ニ立至リマスル
  ヤ、八月十一日在南京英、米、獨、佛伊
  ノ五箇國大使ハ、日支雙方ニ對シ、上海ニ
  於ケル外國人ノ生命財產ノ安全ヲ圖ル爲
  メ、同地ヲ兵火ノ巷ト爲サザルヤウ、出
  來得ル限リノ措置ヲ講ゼラレタキ旨申出タ
  ノデアリマス、右ニ對シ帝國政府ハ、上海ニ
  於ケル內外人生命財產ノ安全ハ、固ヨリ、
  我方ニ於テモ最モ顧念スル所デアルガ、是
  ガ爲ニハ租界附近ニ進出シ、我方ニ脅威ヲ
  與ヘツヽアル支那正規軍及ビ保安隊ヲ交戰
  距離外ニ撤退セシメ、租界附近ノ軍事施設
  ハ之ヲ撤收スルコトガ先決問題デ、支那側
  ガ右條件ヲ受諾スルニ於テハ、我方陸戰隊ノ
  配備ヲモ亦常態ニ復スルノ用意アル旨ヲ答
  ヘマシテ、關係列國ニ於テ先ツ支那側ヲシ
  テ、右條件ヲ受諾セシムルヤウ在支大使ヲ
  シテ五國側ニ申入レシメタノデアリマス、
  然ルニ支那側ハ右我方ノ應急適切ナル條件
  ニ對シマシテモ、耳ヲ傾ケナカッタ由デア
  リマスガ、續イテ八月十三日ニハ更ニ上海
  ノ英、米、佛三國總領事ヨリ、交戰停止方ニ關
  スル新シキ一具體案ヲ示シテ參リマシテ、
  日支間ニ直接交涉ヲ行ヒ、目前ニ迫ッタ危
  機ヲ囘避スルヤウ日支雙方ニ申出デタノデ
  アリマス、其申出ハ八月十三日ノ夜半ニ東
  京ニ著キマシタガ、支那側ハ之ニモ拘ラズ
  續々上海附近ニ正規軍ヲ進出セシメ、旣
  同日ノ午後カラハ攻撃ヲ開始シ、十四日ニ
  至ッテハ遂ニ我ガ陸戰隊及ビ軍艦竝ニ總領
  事館ノミナラズ、租界內隨所ニ爆彈ヲ投下
  スルノ暴擧ニ出デマシタ爲ニ、事茲ニ至ツ
  テハ帝國ト致シマシテモ、最早平和的收拾
  ノ望ヲ捨テヽ、三万ニ垂ントスル我ガ居留
  民保護ノ爲メ、遂ニ戰鬪ヲ行ハザルヲ得ザ
  ルニ至ッタ次第デアリマス、關係列國ノ努力モ
  支那側ノ暴擧ニ依リ、一瞬ニシテ水泡ニ歸
  シタコトハ洵ニ遺憾ニ堪ヘナイ所デアリマス
  斯ノ如ク上海一帶ハ兵火ノ巷トナリマシ
  タ結果、該地ニ莫大ノ投資ト多數ノ居留民
  トヲ有シテ居リマスル所ノ關係各國ハ、自
  然之ニ對シテ重大ナル關心ヲ示スニ至リ、
  英國ヨリハ更ニ八月十八日日支兩國政府ガ
  雙方ノ兵力ヲ撤退シ、共同租界及ビ越界路
  在住日本臣民ノ保護ヲ外國側ニ委任スルニ
  於テハ、英國政府ハ他ノ列國ガ英國ト共ニ
  同一行動ニ出ヅル限リ、右責任ヲ取ルノ用
  意アル旨申出デタノデアリマス、佛蘭西政
  府モ亦翌十九日英國政府ノ申出ヲ支持スル
  旨申出デタノデアリマスガ、是ヨリ先、米國
  政府側カラモ上海ニ於ケル戰鬪停止方ニ付
  テノ希望ヲ申述ベテ參ッテ居ッタノデアリマ
  ス、帝國ト致シマシテモ是等諸國ト同樣、
  上海ニハ重大ナル利害關係ヲ持ッテ居ル
  コトニ鑑ミマシテ、出來得ルダケ同地
  ノ平穩ヲ冀念スル次第デアリマスガ、
  前申述べマシタヤウニ、今次上海ニ於
  ケル支那側ノ行動ハ昭和七年ノ上海停
  戰協定ニ違反シ、濫ニ正規軍ヲ協定地
  域內ニ入レ、保安隊ノ數及ビ武裝ヲ增
  强シ、衆ヲ恃ンデ我軍民ニ挑戰シ來ック次
  第デアリマスノデ、右英國政府ノ申出ニ對
  シマシテハ、我方從來ノ平和的努力竝ニ支
  那側ノ不法攻撃ノ實情ヲ述ベマシテ、上海
  ニ於ケル戰鬪ハ、支那側ガ直チニ右正規軍
  ヲ協定地域外ニ撤退シ、保安隊ヲ前線ヨリ
  遠ザクルコトニ依リテノミ終熄スルノ外ナ
  キ旨ヲ囘答致シマシテ、英國モ停戰協定關
  係國ノ一トシテ、速ニ支那側ノ停戰區域外
  撤退方實現ニ努力スルヤウニ求メタノデア
  リマス、佛蘭西及ビ米國ニ對シテモ、ソレ
  ゾレ同樣ノ趣旨ヲ囘答致シタノデアリマス
  尙ホ北支ニ於キマシテハ、支那側ハ從來
  我方トノ間ニ存在シマシタ各種ノ約諾ヲ無
  視シテ、大軍ヲ北上セシメテ、頻リニ挑戰
  的態度ニ出デテ居リマスルノミナラズ、更
  ニ察哈爾方面ニモ續々軍隊ヲ進出セシメテ
  參リマシタノデ、我方ト致シマシテモ斷然
  之ニ對應シテ、適切ナル措置ヲ執ルノ已ム
  ナキニ至ッタノデアリマス
  以上ノ如ク戰鬪ハ今ヤ北支ノミナラズ、
  中支南支方面ニモ波及シ、帝國ハ遂ニ支那ト
  ノ間ニ廣範圍ニ涉リ兵火ヲ交ヘザルヲ得ザ
  ルニ至リ、又中南支及ビ山東ニ於ケル約五
  万ノ我ガ居留民ハ、多額ノ投資、多年ノ地盤
  及ビ權益ヲ後ニ殘シマシテ、引揚グルノ巳
  ムナキニ立至リ、更ニ兵火ノ犠牲トナッタ
  居留民モ相當多キニ上リツヽアリマスノ
  ハ、甚ダ痛心ニ堪ヘナイ所デアリマス、在
  支第三國人モ亦我ガ居留民ト同樣、困難ナル
  立場ニ置カルヽモノモ少クナイノハ、誠
  氣ノ毒ナコトデアルト言ハナケレバナリマ
  セヌ、斯ルコトモ是レ畢竟南京政府ノミナ
  ラズ、地方軍閥ニ至ルマデ、多年自己政權
  强化ノ爲メ排日抗日ノ氣風ヲ煽動シ、民心
  ヲ激化スルノミナラズ、進ンデハ共產分子
  ト苟合シテ、日支ノ國交ヲ益〓惡化セシメ
  タル結果ニ外ナラナイノデアリマス
  今ヤ我ガ忠勇ナル皇軍ハ、擧國一致ノ後
  援ノ下ニ、日夜有ユル艱苦ヲ排シテ戰鬪ニ
  從事シ、目覺マシキ效果ヲ擧ゲツヽアリマ
  スコトハ、眞ニ感激感謝ニ堪ヘナイ次第デ
  アリマス
  帝國ノ國是ガ日滿支三國間ノ融和提携ニ
  依リ東亞安定ノ基礎ヲ築キ、以テ共存共榮
  ノ實ヲ擧ゲントスルニアリマスコトハ、今
  更申スマデモナイノデアリマス、然ルニ支
  那ハ毫モ我ガ眞意ヲ諒解セントセズ、却テ
  今日ノ如ク大軍ヲ動カシテ、我ガ軍民ニ
  向ッテ參リマスル以上ハ、我方モ亦之ニ對
  應スル軍事行動ニ依ッテ、斷乎トシテ支那
  ノ猛省ヲ促スコトヲ急務トスルノデアリマ
  ス、而シテ帝國ノ庶幾スル所ハ北支ヲ明朗
  ナラシメ、支那全土ヨリ今囘ノ如キ戰禍再
  發ノ憂ヲ除キ、兩國ノ國交ヲ調整シ、仍テ
  以テ前述ノ國是ヲ實現セントスルニ外ナラ
  ナイノデアリマス、故ニ私ハ支那爲政者ガ
  東亞ノ大局ヲ洞觀シ、速ニ反省シテ帝國ノ
  理想ニ順應シ來ランコトヲ望ンデ止マナイ
  次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=5

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• 006・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　大藏大臣賀屋興宣君
  〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=6

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• 007・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　玆ニ本議會ニ提
  出致シマシタ臨時軍事費豫算及ビ昭和十二
  年度追加豫算ノ大要竝ニ日支間ノ事件ノ擴
  大ニ伴ヒ、之ニ對處スベキ財政經濟ニ關ス
  ル方針ニ付申述ベタイト思ヒマス
  日支間ノ事件ニ關スル經費ト致シマシテ
  ハ、曩ニ第七十一囘帝國議會ニ於テ必要ナ
  ル經費ノ協賛ヲ經タ次第デアリマスガ、其後
  ノ事態ノ推移ニ伴ヒ、時局ニ關シ必要ナル
  施設ニ要スル經費等ノ豫算トシテ計上ヲ要
  シマスモノハ、臨時軍事費ニ於テ二十億二
  千二百餘万圓、一般會計各省所管ニ於テ四
  千二百餘万圓デアリマス
  右ノ中臨時軍事費ハ軍事行動ノ爲メ必要
  ナル經費デアリマシテ、是ガ收支ハ金額多
  キニ上ルノミナラズ、其性質上一般ノ歲計
  ト區分シテ特別ノ整理ヲ爲シ、時局ノ終結
  ニ至ル迄ヲ一會計年度トシテ整理スル爲
  メ、臨時軍事費特別會計ヲ設置スル必要ヲ
  認メマシタノデ、之ニ關スル法律案ヲ本議
  會ニ提出スルコトト致シタノデアリマス
  次ニ一般會計各省所管ニ於テハ、今囘ノ
  事件ニ關シ外交上所要ノ經費、軍事扶助費
  ノ增加、軍人援護事業助成費、國民精神總動
  員ニ要スル經費、防空法施行ニ伴ヒ要スル
  經費、農山漁村應急施設ニ關スル經費、硫
  安輸入損失補償ニ關スル經費等、現下ノ事
  態ニ顧ミ必要ナル經費ヲ計上致シタノデア
  リマス
  而シテ右ノ財源ト致シマシテハ、臨時軍
  事費ニ付キマシテハ全部公債金ヲ以テ、又
  一般會計ニ付キマシテハ本年度豫算實行上
  ニ於ケル歲出不用額、竝ニ歲出ニ伴フ普通
  歲入ノ增加等ヲ以チマシテ、之ニ充當スル
  計畫デアリマス、右ノ外、外地各特別會計等
  ニ於テモ現下ノ時局ニ關シ必要ナル經費等
  ヲ追加計上致シタノデアリマス
  尙ホ令囘支那事變ノ從軍將兵ニ對シ租稅
  ノ減免、徵收猶豫等ヲ行フ爲メ、之ニ關ス
  ル法律案ヲ本議會ニ提出致シタノデアリマ
  ス
  以上ノ如ク今囘ノ事件ニ關スル經費ハ多
  額ニ上ルノデアリマスガ、右ハ暴戾ナル支那
  軍ヲ膺懲シ、支那政府ノ反省ヲ促ス爲メ、必
  要已ムヲ得ザル所ト考ヘルノデアリマス、
  而シテ今後斯ル事態ニ處シテ遺憾ナク其目
  的ヲ達成致シマスルガ爲ニハ、財政モ經濟
  モ共ニ此非常事態ニ應ズルヤウ、其態勢ヲ
  整ヘルコトガ必要ト信ズルノデアリマシ
  テ、卽チ軍ノ需要及ビ國防ニ關係アル產業
  等、此際特ニ必要ナル方面ニ對シ、其必要
  トスル物資ト資金ト勞力トヲ、出來得ル限
  リ潤澤ニ供給スルコトヲ中心トシテ、諸般
  ノ方策ヲ講ズベキモノト考ヘルノデアリマ
  ス、而シテ是ガ爲ニハ積極的ニ斯ル方面へ
  ノ資金ノ疏通ヲ圖リ、以テ此方面ニ對シ物
  資勞力等ヲ集中セシムルト同時ニ、他面
  資金、物資、勞力等ニハ自ラ限リガアリマ
  スノデ、此際トシテハ比較的不急ナル事業
  ノ新設擴張等ヲ暫時差控フルコトガ必要デ
  アルト考フルノデアリマス、又此際時局ノ
  爲メ必要ナル物資ノ輸出ヲ制限致シマスル
  ト共ニ、比較的不急ナル物資ノ輸入ヲ抑制
  シテ、必要ナル物資ノ輸入力ノ增大ニ努
  メ、且ツ右ノ輸入抑制ノ結果生ズルコトア
  ルベキ國內物資ノ不足ニ對處スル方策ヲ講
  ズルコトガ肝要デアルト思ヒマス、仍テ
  今後是等ノ趣旨ニ依リ財政、產業、貿易、
  資金、爲替等ノ各方面ニ亙リ、適切ナ
  ル調整ヲ加フルコトヲ必要トスルノデア
  リマス
  此故ヲ以チマシテ政府ハ本議會ニ資金調
  整ニ關スル法律案ヲ提出致シ、會社ノ新設、
  增資竝ニ金融機關等ノ社債ノ引受、事業設
  備ノ新設擴張資金ノ貸付等ニ付、右ニ申述
  ベマシタ趣旨ニ基キ適當ナル調整ヲ行フト
  共ニ、時局ニ當面シ必要トスル事業ニ對ス
  ル資金ノ疏通ヲ圖ル爲メ、日本興業銀行
  ヲシテ必要ナル資金ノ融通ヲ爲サシムルヤ
  ウ、興業債劵發行限度ノ擴張、其他ノ措置
  ヲ執ルコトト致シタノデアリマス、又政府
  ハ同樣ノ趣旨ニ基キ今後事變ノ爲メ特ニ必
  要ナル物資ノ供給ヲ潤澤ナラシムル爲メ、
  一部ノ物資ノ輸出入ニ制限ヲ加ヘ、又輸入
  ノ制限ヲ爲シタル場合等ニ於テ、其物品又
  ハ之ヲ原料トスル製品ノ需給ノ調整ヲ圖ル
  等、此際ニ於ケル國民經濟ノ運行ニ阻碍ヲ
  來スコトナカラシムル爲メ、本議會ニ右ニ
  關スル法律案ヲ提出スルコトト致シタノデ
  アリマス、而シテ右ノ資金及ビ物資ノ調整
  ニ付キマシテハ、出來得ル限リ當業者ノ自
  主的調整ニ俟ツノ方針デアリマス
  右ニ申述マシタ如ク、政府ハ今後資金及
  ビ物資ニ付出來得ル限リ是ガ需給ノ調整ニ
  努力スル方針デアリマスルガ、殊ニ輸入品
  又ハ之ヲ原料トスル製品ノ需給ノ調整ニ付
  キマシテハ、國民ノ此種物資ノ消費節約ニ
  俟ツ所極メテ大ナルモノガアリマスルノ
  デ、今後各方面ニ於テ出來得ル限リ是ガ實
  行ニ努力シ、以テ國民自體ノ力ニ依リ國家
  全體ノ必要ノ充足ニ努力セラルヽヤウ切望
  致ス次第デアリマス、尙ホ事變關係ニ依ル
  急激ナル物資ノ需要增加ニ伴ヒ、動モスレ
  バ過當ナル物價騰貴ヲ招來スルコトモ考ヘ
  ラレマスルノデ、暴利取締令ノ運用等ニ依
  リマシテ適切ナル措置ヲ講ジ、是ガ對策ニ
  遺憾ナキヲ期シタイト思フ次第デアリマ
  ス、又此資金及ビ物資ノ調整ニ關シマシテ
  ハ、財政ノ方面ニ於テモ十分考慮スルコト
  ト致シ、昭和十三年度豫算ノ編成ニ於テハ、
  時局ノ爲メ必要ナル經費ノ外ハ出來ル限リ
  是ガ計上ヲ差控フル方針デアリマシテ、昭
  和十二年度豫算ニ關シマシテモ、右ノ趣旨
  ニ基キ節約ヲ實行スルコトト致シ、地方公
  共團體ノ財政ニ付テモ亦同樣ノ方針ニ依ラ
  シムル積リデアリマス
  今後公債發行額ノ增加ニ伴ヒ、公債政策
  ノ運用ニ付テハ一層意ヲ用フベキモノト考
  ヘマス、政府ハ右ニ申述ベマシタ資金ノ調
  整ニ關スル法律ニ依ル資金ノ調整、預金部
  資金、其他ノ政府關係資金ノ運用、公債ノ郵
  便局賣出等ニ依リ、時宜ニ應ジタル對策ヲ講
  ジテ參ル積リデアリマス、故ニ金融機關ハ
  固ヨリ國民一般ガ國家的見地ニ立チテ公債
  消化ニ協力支援セラルヽコトハ、今後最モ
  必要ノコトト考フルノデアリマス、尤モ公
  債ノ消化ニ付テハ金融界ノ實情ニ卽スルコ
  トガ肝要デアリマスノデ、常ニ先ヅ資金ノ
  供給ヲ潤澤ニシ、金融ノ疏通ニ支障ヲ生ゼ
  ザルヤウ十分留意致ス考デアリマス、尙ホ
  公債ノ利〓ニ付テハ現在ノ水準ヲ維持スル
  方針デアリマシテ、又外國爲替相場ニ付キ
  マシテモ、對英一志二片ノ水準ヲ維持致シ
  マスルコトハ、軍需ノ充足竝ニ國民生活ノ
  安定ヲ圖ル爲メ必要ナル要件デアルト考ヘ
  マスルノデ、依然是ガ堅持ニ努ムル方針デ
  アリマス
  事變發生以來各方面ニ於テ擧國一致ノ態
  勢ガ如實ニ示サレツヽアルコトハ、洵ニ心
  强ク感ジテ居ル次第デアリマス、政府ハ今
  後時局ニ對處シ出來得ル限リノ努力ヲ拂
  ヒ、財政經濟上必要ナル各般ノ措置ヲ講ズ
  ル積リデアリマスルガ、右ハ結局國民一般
  ガ能ク時局ヲ認識シ、朝野渾然一體トナッテ
  初メテ其成果ヲ收メ得ルモノト考ヘマスル
  ノデ、今後共一層國民一般ノ擧國的協力支
  援ヲ切望致ス次第デアリマス
  終リニ臨ミ政府提出ノ豫算案ニ付キマシ
  テハ、何卒速ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ切
  望致ス次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=7

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• 008・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　陸軍大臣杉山元君
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=8

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• 009・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　第七十一議會後ニ
  於キマスル支那事變經過ノ〓要ヲ說明致シ
  マス
  七月末支那駐屯軍ハ平津地方ニ於ケル第
  二十九軍ヲ膺懲セル後、一部ヲ以テ北平ノ
  西南約五里、永定河右岸ニアル長辛店附近
  ヲ占領シマシタ、其他ヲ以テ平津地方ニ於
  ケル敗殘兵ヲ掃蕩シテ、該地方ノ秩序恢復
  ヲ圖リマスルト共ニ、依然事件不擴大方針ノ
  下ニ支那側ガ自省自戒シテ、平和的ニ事件
  ヲ解決センコトヲ期待致シテ居リマシタ、
  然ルニ支那側ハ依然梅津、何應欽協定ヲ蹂
  躪シテ、平漢線、津浦線、此兩方面ニ益〓中
  央軍ヲ北上セシメテ我ニ戰鬪ヲ挑ミ、又北
  平ノ西北約四十里ニアリマス張家口方面、
  綏遠、察哈爾ノ一帶ニ於テハ、土肥原、秦
  德純協定ヲ無視シテ、大兵ヲ進メ平津地方
  ヲ脅威シ、滿洲國境ヲ攪亂セントスル勢ヲ
  示シマシタ、更ニ又上海方面ニ於テハ、上
  海停戰協定ニ違反シテ、續々大軍ヲ集中シテ
  我ガ海軍ニ挑戰シテ參ッタノデアリマス
  斯ノ如クシテ支那側ハ毫モ帝國ノ眞意ヲ
  解セザルバカリデナク、其不信、暴戾ハ全
  面的ニ惡化シテ、其挑戰的行爲ハ本格的ニ
  激烈トナリマシテ、爲ニ平和解決ヲ念願ト
  致シマシタ帝國ノ努力モ全ク水泡ニ歸シマ
  シタ、去ル八月十五日ニ政府ハ遂ニ不擴大
  方針ヲ一擲シテ、自主自發的ニ彼ヲ徹底的
  ニ膺懲シ、其ノ抗日意識ヲ絕滅スベク斷乎
  タル措置ヲ採ルノ已ムナキニ至ッタノデア
  リマス(拍手)
  偖テ曩ニ平津地方ヨリ敗退シマシタ敵
  ハ、平漢線方面ニ於テハ北平ノ西南約三十
  里ノ保定北方地區ニ於テ、又津浦線方面ニ
  於テハ天津ノ西南約十五里ノ馬廠附近ニ於
  テソレ〓〓中央軍ト合體シ、此處ニ著々戰
  鬪準備ヲ固メ、軍隊ノ集中、陣地ノ構築、
  作戰資材ノ集積等ニ餘念ナク、其兵力今ヤ
  三四十万ニ達シマシテ、其陣地ハ逐次東西
  ニ延長セラレテ蜿蜒實ニ四十里ニ亙ッテ居
  リマス、卽チ保定附近ニ於キマシテハ、同
  地ノ西北方約五里ノ險峻ナル山岳地帶ヨリ
  保定ノ北方地區ヲ經テ、保定東方約十里ニ
  在ル白洋淀ト稱シマスル湖沼ニ亙ル正面約
  十三里ノ間ニ、又白洋淀ノ東方地區ニ於テ
  ハ、該湖沼ノ東北側ヨリ其東方一帶ノ濕
  地沼澤地帶ヲ縫ウテ、遠ク馬廠東方ニ亙
  ル正面約二十里ノ間ニ堅固ナル陣地ヲ構成
  シ、且ツ其後方ニ於テモ數線ニ抵抗線ヲ重
  疊シテ居リマス、又別ニ我ガ第一線ノ前面
  ニ近ク、卽チ平漢線上北平ノ西南約十里、
  流璃河ノ西北方山地ヨリ流璃河ノ北側ヲ經
  テ其東方約五里、永定河右岸ノ固安附近ニ
  亙ル間ニモ陣地ヲ占領シマシテ、戰意ニ燃
  ユル其一部ハ平漢線、津浦線ノ兩方面共、
  諸所其陣地ヨリ出テ我ニ向ッテ來襲致シマ
  スノデ、我軍ハ其都度之ヲ擊攘シテ、漸次
  步武ヲ南方ニ進メツヽアリマス、卽チ平漢
  線方面ニ於キマシテハ、八月二日ニ長辛
  店西南方約五里ニ在リマス良〓ヲ、同ジ
  ク三十日ニハ良〓西北方約五里ノ滿水
  波高地ヲ占領致シマシタ、又津浦線方面ニ
  於キマシテハ、八月二十四日ニ天津ノ西南
  約八里ノ靜海ヲ、九月四日靜海ノ南方約六
  里ニ在ル唐官屯ヲ我ガ掌中ニ收メマシタ
  翻ッテ平綏線方面ニ於キマシテハ、敵ハ
  北平ノ西北方約十里ニ在ル南口一帶ノ天險
  ヲ扼シマスルト共ニ、十二三箇師團ノ兵力
  ヲ陝西、山西方面ヨリ南口西北方延慶、懷
  來地方及ビ張家口附近ニ進メ來ッタノデア
  リマスノデ、支那駐屯軍ハ之ヲ擊滅スルニ
  決シテ、其一部ハ北平附近ノ戰鬪ヲ終リマ
  シタル後直チニ南口ニ向ヒ前進シテ、同地
  附近一帶ノ險峻ナル山地ニ堅固ナル陣地ヲ
  占領セル優勢ナル敵ニ對シマシテ、八月十
  一日攻擊ヲ開始致シマシタ、敵ハ數線ニ重
  疊セル陣地ニ據リ頑强ナル抵抗ヲ反復致シ
  マシタガ、我軍ハ增加兵團ノ到著ニ伴ヒマ
  シテ、强襲ニ次グニ强襲ヲ以テシ、八月二
  十四日遂ニ長城線ノ要害デアリマス居庸關
  ヲ攻略致シマスルト共ニ、敵ノ側面ニ肉薄
  ヲ致シマシテ、次デ南口山脈北門ノ要衝デ
  アリマス八達嶺ヲ越エテ敗敵ノ追擊ニ移リ
  マシタ、他方關東軍ノ一部ハ多倫方面ヨリ
  遠ク張家口方面ニ進擊致シマシテ、到ル處
  頑强ナル敵ノ抵抗ヲ排除シツヽ八月二十七
  日ニ張家口ヲ占領シ、玆ニ南口及ビ南口ノ
  西方地區ヨリ前進シマシタ我軍ト相呼應シ
  テ敵ノ腹背ヲ衝キマシタ、又陸空兩方面ヨ
  リスル猛烈ナル攻擊ニ依リ、敵ニ徹底的ノ
  打撃ヲ與ヘ、其四五師團ヲ殆ド潰滅致シマ
  シテ偉大ナル戰果ヲ獲得シマシタ、此戰鬪
  ニ於テ敗走セル敵ハ遠ク山西省北境ノ要
  地デアリマス大同方面ニ退却致シマシテ、
  同地ノ東北約十里ノ陽高カラ陽原ヲ經テ、
  更ニ其東南方蔚縣ノ線ニ陣地ヲ占領シツヽ
  アル模樣デアリマス
  斯ノ如ク駐屯軍ハ各地ニ轉戰シマスル傍
  ラ、平津地方ニ於キマスル民心ノ安定、交
  通通信ノ復舊ニ努メマシテ、今後ニ於ケ
  ル活動ノ準備ニ努力ヲ致シテ居リマス
  次ニ上海方面ニ於キマシテハ、陸軍ノ有
  力ナル部隊ガ派遣ヲセラレマシテ、其先頭
  部隊ハ八月二十三日未明ニ海軍ノ極メテ緊
  密適切、且ツ果敢ナル協同動作ノ下ニ、揚
  子江ノ下流吳淞附近ニ於テ該江岸ニ陣地ヲ
  占領致シテ居リマス敵ヲ擊破シテ、危險ナ
  ル敵前上陸ヲ敢行シ、引續キ上海周邊ニ於
  テ我ガ海軍陸戰隊ヲ力攻シアル優勢ナル敵
  ニ向ヒ進擊中デアリマス、今ヤ此派遣軍ハ
  逐次到著スル部隊ヲ併セマシテ其戰鬪力ヲ
  增大シ、海軍艦船及ビ航空隊ノ緊密ナル協
  同ノ下ニ相携ヘテ奮鬪力戰、八月二十八日
  ニハ上海ノ西北方約四里ノ羅店鎭ヲ、同三
  十一日ニハ吳淞鎭ヲ、九月一日ニハ獅子林砲
  臺ヲ占領シマシタ、遠カラズ上海ニ在ル海軍
  陸戰隊トモ、直接連繫シ得ルコトト確信致
  シテ居リマス(拍手)今次事變ノ其後ノ經過
  ハ大體以上ノ通リデアリマスガ、今ヤ事態ハ全
  面的ニ擴大シ、其將來ハ臆斷ヲ許サヌモノ
  ガアリマスガ、帝國陸軍ハ御聖旨ヲ奉戴致
  シマシテ、今後如何ナル艱難障碍ニ遭遇ス
  ルモ之ヲ排シテ、義勇公ニ奉ジ、暴戾ナル
  支那軍ヲ膺懲シテ、速ニ我ガ目的ノ貫徹ニ
  邁進スベク、縱令彼ニシテ長期抗戰ノ策ニ
  出ヅルニ於テモ、之ヲ徹底的ニ膺懲致シマ
  シテ、支那側ノ抗日意識ヲ挫折シ、其戰意
  ヲ喪失セシメテ、所期ノ目的ヲ達成スル迄
  ハ、斷ジテ鋒ヲ收メヌ堅キ決心ヲ持ッテ居
  ルノデアリマス(拍手)玆ニ諸君ノ熱烈ナル
  御協力ヲ切望シマスルト共ニ、擧國一致ノ
  熱誠ヲ益〓昂揚シマシテ、諸般ノ事項克ク
  戰勝ノ獲得ニ歸一セラレテ堅忍持久、銃後
  ニ又戰線ニ、遺憾ナク國體ノ精華ヲ發揮シ、
  以テ速ニ時局ヲ克服シ上聖慮ヲ安ンジ奉ラ
  ンコトヲ衷心冀念スル所デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=9

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• 010・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　海軍大臣米內光政君
  〔國務大臣米内光政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=10

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• 011・米内光政

  ○國務大臣(米內光政君)　支那事變ニ關シ
  マシテ前議會後海軍ノ執リマシタ處置等ニ
  付、其〓要ヲ說明申上ゲマス
  北支戰局ノ其後ノ進展ニ伴ヒマシテ、山
  東及ビ中南支方面ニ於ケル排日抗日ノ氣勢
  ハ漸次深刻トナリ、貿易ハ激減シ、經濟關
  係ハ斷絕ニ近ヅキ、在留邦人ノ日常生活ニ
  モ脅威ヲ感ズルニ至リマシタガ、海軍ト致
  シマシテハ、帝國ノ根本方針ニ則リマシテ關
  係省トモ協力シ、我方ヨリハ絕對ニ事ヲ起
  サシメヌヤウ有ユル努力ヲ致シマスト共
  ニ、支那側ニ對シマシテモ之ヲ要望シタノ
  デアリマスガ、八月ニ入リマスルヤ是等各
  地ノ事態ハ益〓險惡ヲ加フルニ至ッタノデア
  リマシタ、卽チ山東方面ニ於キマシテハ濟
  南方面ノ邦人ハ七月末ヨリ漸次引揚ヲ開始
  スルノ巳ムヲ得ザルニ至リ、又靑島及ビ芝
  罘ニ於キマシテハ、支那側ハ盛ニ軍事施設
  ヲ築造シ、兵力ヲ移動增加致シマシテ、八
  月初メニ至ルヤ人心頓ニ動搖ノ兆ヲ認ムル
  ニ至リマシタガ、我ガ警備艦船ノ指揮官ハ
  所在帝國官憲ト協力シマシテ、極力事故ノ
  防止ニ努メテ參ッタノデアリマス
  南支方面ニ於キマシテハ、廣東及ビ油頭
  ノ狀況ハ特ニ不良ニシテ、汕頭ニ於キマシテ
  ハ在留邦人ノ食糧購買ニモ不便ヲ感ズルニ
  至リマシタノデ、八月二日居留民ノ大部ハ
  引揚ヲ行ヒ、中支方面ノ揚子江流域ニ於キ
  マシテモ、上流ノ重慶、宜昌、沙市ハ八月
  1日、長沙ハ八月五日、我ガ警備艦護衞ノ
  下ニソレ〓〓居留民全部ノ引揚ヲ行フノ已
  ムナキ事態ニ立至ッタノデアリマス、御承知
  ノ通リ漢口ハ掃子江中流ニ於ケル我ガ權益
  ノ中樞デアリマスノデ、ドウニカシテ現地
  ニ於テ保護シタイ希望ヲ持ッテ居リマシタ
  ガ、八月五日ニ至リマスルト、支那側ハ俄
  然我ガ租界ニ對シ積極的ノ態勢ヲ示シ、我
  方モ之ニ對應シテ適應ノ處置ヲ執ルノ已ム
  ナキニ至リマシテ、事態ハ當ニ一觸卽發ノ
  狀態ニ陷リマシタノデ、關係省ト協議ノ結
  果大局上、漢口及ビ其下流各地ノ居留民ヲ
  モ全部引揚グルコトトナリ、警備艦護衞ノ
  下ニ八月九日マデニ全部無事上海ニ到著致
  シマシタガ、我ガ在留邦人ガ多年營々辛苦
  ノ結果築キ上ゲマシタ幾多ノ經濟的地盤及
  ビ諸般ノ施設、權益等ヲ殘シテ一時撤退ス
  ルノ巳ムナキニ至ッタ次第デアリマス、今囘
  ノ如ク上海ノ上流各地ノ居留邦人全部ヲ引
  揚グルノ已ムナキニ至リマシタコトハ、全
  ク前例ノナイコトデアリマシテ、是レ實ニ
  今次ノ支那ノ排日抗日ガ如何ニ深刻デアル
  カヲ如實ニ物語ルモノト思フノデアリマス
  八月九日上流各地ノ居留民ヲ收容致シマ
  シタ上海ニ於キマシテハ、居留民現地保護
  ノ萬全ヲ期シテ居リマシタ所、同日午後上
  海西方虹橋飛行場附近越界路上ニ於テ、上
  海特別陸戰隊ノ大山中尉及ビ齋藤水兵ハ不
  法ニモ支那保安隊ノ爲メ射擊セラレ、無殘
  ナル死ヲ遂グルニ至ッタノデアリマス、海
  軍ト致シマシテハ事茲ニ至リマシテモ尙ホ
  能ク事件ノ眞相ヲ調査シ、外交交涉ニ依リ
  最モ公正妥當ニ事件ノ解決セラレンコトヲ
  冀ッタノデアリマスガ、支那側ハ毫モ反省
  スル所ナク、停戰協定ヲ無視シテ益〓租界
  附近ノ軍事施設ヲ增築スルノミナラズ、多
  數ノ正規軍ヲ侵入セシメ、我ガ居留地ノ四
  周ハ文字通リ銃砲ノ垣ヲ以テ張リ廻サレ、
  眞ニ危機一髪ノ情勢トナリマシタノデアリ
  マス、是ニ於テ我ガ第三艦隊司令長官ハ在
  留民保護上、其萬全ヲ期センガ爲メ、八月
  十一日一部ノ兵力ヲ上海ニ增强スルノ手段
  ヲ執ッタ次第デアリマスガ、支那側ハ十二
  日早曉ヨリ益〓挑戰的行動ニ出テ參リマシ
  テ、租界內在留邦人ノ生命ハ非常ナル危險
  ニ曝サルヽニ至ッタノデアリマス
  海軍ト致シマシテハ斯ル事態ニナリマシ
  テモ、依然平和的收拾ニ一縷ノ望ヲ囑シマ
  シテ、關係省ト共ニ努力シタノデアリマス
  ガ、八月十三日午前九時過租界警備中ノ我
  ガ陸戰隊員ハ、支那便衣隊ノ射撃ヲ受ケ、
  次デ支那正規軍ノ攻擊ヲ被リ、遂ニ應戰ス
  ルノ已ムナキニ立至リマシタ次第デアリマ
  ス、同夜在上海英、米、佛三國總領事ノ申
  出ガアリマシテ、我ガ方トシマシテハ之ニ基
  キマシテ上海ヲ戰禍ヨリ救フ爲メ、適當ナ
  ル方策ニ付キ關係省ト協議中デアリマシタ
  所、翌十四日午前支那軍ハ又復我ヲ攻擊シ
  來リ、其飛行機ハ我ガ陸戰隊本部、艦船、總
  領事館等ニ對シ不法ニモ爆擊ヲ加ヘ、遂一
  ハ外國居留民及ビ自國民ノ居住地マデ爆擊
  シ、幾多無辜ノ人々ヲモ殺傷スルニ至リマシ
  タノデ、隱忍ニ隱忍ヲ重ネテ參リマシタ我
  モ居留民保護ノ爲メ、敢然起ッテ實力ヲ行使
  シ、暴戾極マル支那軍ヲ膺懲シ、其反省ヲ促サ
  ザルヲ得ザルニ立至ッタノデアリマス(拍手)
  帝國海軍トシテハ豫テ今日アルヲ憂慮
  シ、萬一ニ對スル準備ヲ完整シテ居リマシ
  タノデアリマスガ、今ヤ不幸ニシテ一刻モ
  速ニ其發動ヲ見ネバナラヌ情勢トナッタノ
  デアリマス、當時上海沖合ニハ猛烈ナル颱
  風ガ停滯シテ居リマシタガ、我ガ海軍航空
  部隊ノ一部ハ之ヲ突破シ、異常ナル惡天候
  ト戰ヒツヽ、十四日夕刻長驅シテ杭州及ビ
  廣德ノ飛行場ヲ爆擊シ、敵ノ格納庫、飛行
  機及ビ飛行場ニ多大ノ損害ヲ與ヘマシタ
  (拍手)又我ガ上海特別陸戰隊ハ寡兵能ク十
  倍ニ餘ル衆敵ニ對シ、居留民保護ノ爲メ敢
  然トシテ銃砲火ヲ開イタノデアリマス
  爾來我ガ陸戰隊ハ海上部隊及ビ航空部隊
  ト協力シ、寡兵ヲ以テ數万ノ支那軍ニ對抗
  シ、派遣陸軍來著マデ十有餘日間善戰力鬪
  能ク租界ヲ堅守シ、更ニ陸軍ノ揚陸ニ際シ
  テハ、關係各部隊ハ完全ニ海陸協同ノ實ヲ
  擧ゲ、爾後ノ作戰ヲ順調ニ進捗セシメテ居
  リマス(拍手)又航空部隊ハ上海附近ノ作戰
  ニ協力スルノ外、南京、南昌、九江、漢
  口、孝感、蘇州、杭州、廣東、漳州、徐州等
  ノ航空根據地ニ對シ、連日勇猛果敢ナル爆
  擊ヲ續行シテ、多大ノ戰果ヲ收メテ居リマ
  スコトハ旣ニ各位ノ御承知ノ通リデアリマ
  ス(拍手)此間海上部隊ハ其一部ヲ以テ揚子
  江口、黃浦江水域ノ交通ヲ確保シツヽ、其
  艦砲及ビ陸戰隊ヲ以テ陸戰ニ協力シ、又他
  ノ大部ノ艦艇ハ陸軍ノ輸送及ビ輸送船團ノ
  護衞等ニ馳驅シ、又飛行機ヲ以テ上海方面
  ノ陸上戰鬪ニ協力シ、連日敵陣地及ビ其背
  後ノ飛行場ヤ、補給線等ノ爆撃ヲ實施シテ
  居ルノデアリマシテ、其活躍ノ狀況ハ其都
  度公表致シテ居リマス通リデアリマス
  玆ニ一言致シタイト思ヒマスコトハ、御
  承知ノ通リ今囘ノ作戰地域ニハ、我ガ居留
  民ガ多數存在シテ居リマスノデ、之ヲ安全
  ニ保護スルノ必要ガアリ、又列國ノ權益及
  ビ其居留民竝ニ警備ノ爲ニ派遣セラレタル
  各國艦船、軍隊等モ多數存在シテ居リマス
  ノデ、極メテ複雜機微ナル國際關係ヲ伴ッテ
  參リマス、是ガ爲ニ純作戰上ノ見地ノミニ
  テハ、戰鬪ヲ實施シ難キ狀況デアリマシ
  テ、作戰指導ハ勿論、前線ニ於テ戰鬪ニ從
  事シテ居ル者ヤ空襲部隊マデモ、國際關係
  ヲ念慮ニ置カネバナラヌ次第デ、一同多大
  ノ苦心ヲ拂ッテ居ル次第デアリマス(拍手)
  幸ニ今日マデニ左程重大ナル問題ヲ起シ
  テハ居リマセヌガ、去ル二十六日戰線附近
  通行中ノ駐支英國大使ガ負傷致シマシタコ
  トハ、誠ニ御氣ノ毒ナ出來事デアリマシテ、
  之ニ關シ英國政府ヨリ我國ニ對シテ抗議ガ
  アリマシタコトハ御承知ノ通リデアリマス
  ガ、我方ト致シマシテハ、愼重精細ニ實情
  ヲ取調べ、適當ニ處置致シタイト考ヘテ居
  リマス(拍子)
  右ノ如クニシテ帝國海軍ハ中南支方面ニ
  於ケル帝國臣民ノ生命財產、權益ノ擁護ノ
  爲メ必要ナル自衞ノ手段ヲ執ルコトヲ餘儀
  ナクセラレタ次第デアリマスガ、支那ハ益ミ
  兵力ヲ增勢シテ挑戰シ來リ、事態ハ愈〓重
  大ヲ加フルニ至リマシタノデ、八月二十五
  日第三艦隊司令長官ハ、揚子江口ヨリ油頭
  ニ至ル支那沿海ニ於ケル支那側公私船舶ノ
  交通ヲ遮斷スル旨宣言ヲ發シ、本日午後ヨ
  リ更ニ其範圍ヲ靑島、香港、澳門等ヲ除イ
  タ全支沿岸ニ擴張スルノ已ムヲ得ザルニ立
  至リマシタ次第デアリマス、併シ是ガ實施
  ニ當リマシテハ、濫ニ支那船舶又ハ載貨等
  ヲ沒收スルコトナク、國際正義ニ立脚スル
  自衞手段ノ範圍ヲ出デナイコトトシ、又第
  三國及ビ帝國ノ船舶ニハ右交通遮斷ヲ適用
  セズ、特ニ第三國船舶ノ平和的通商ハ之ヲ
  尊重スルノ立前ヲ執ルコトニ致シテ居リマ
  ス
  次ニ靑島方面ノ情勢ニ付テ說明致シマス、
  北支及ビ上海ノ事態ハ急速ニ靑島方面ニモ
  波及シ、八月中下旬ニ至リマシテ、形勢頗
  ル緊迫致シマシテ、市內ニ於テハ多クノ店
  舗ハ閉サレ、食糧購入ニモ不便ヲ感ズルニ
  至リ、又郊外滄口、四方方面ノ日本人經營紡
  績工場モ閉鎖ノ已ムナキニ至リ、形勢益〓切
  迫シテ參リマシタノデ、關係省トモ協議ノ
  上、成ベク靑島ヲ戰禍ヨリ救フ爲メ居留民
  ノ總引揚ヲ決行スルコトトナリ、昨四日無
  事完了致シマシタ次第デアリマス、今次事
  變ノ海軍ニ關スル處置ノ〓要ハ以上ノ通リ
  デアリマス
  愈〓時局ハ重大トナッテ居リマス、今ヤ帝
  國ハ擧國一致國家ノ全力ヲ擧ゲテ何處マデ
  モ暴戾支那ヲ膺懲シテ出師ノ目的ヲ達成セ
  ナケレバナリマセヌ、海軍ト致シマシテハ
  全軍一體トナリ、死力ヲ盡シテ所期ノ目的
  ノ達成ニ邁進シ、以テ護國ノ重責ヲ完フセ
  ンコトヲ期シテ居ル次第デアリマス(拍手)
  終リニ臨ミ國民各位ヨリ事變以來我ガ海
  軍ニ寄セラレマシタ絕大ノ御後援、御同情
  ニ對シ、海軍ヲ代表シマシテ深ク感謝致シ
  マスルト共ニ、出征將兵ヲシテ後顧ノ憂ナ
  ク征戰ニ從事セシメ得ルヤウ、此上共、各
  位ノ御後援ヲ御願致シタイト存ジマス(拍
  手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=11

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• 012・中山福藏

  ○中山福藏君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際町田忠治君外六十
  一名提出ノ決議案、陸海軍ニ對スル感謝ノ
  件ヲ議題ト爲シ、其審議ヲ進メラレンコト
  ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=12

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• 013・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　中山君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=13

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• 014・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、政府ハ此議事日程變更ニ同意セラレマ
  シタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-決
  議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明
  ヲ許シマス-提出者島田俊雄君
  決議案(陸海軍ニ對スル感謝ノ件)(町
  田忠治君外六十一名提出)
  決議案
  決議
  支那事變勃發以來轉戰旣ニ幾十日我カ陸
  海軍將兵諸士ハ彈雨ヲ冒シ炎暑ニ堪ヘ寡
  兵以テ克ク衆敵ニ對シ刻苦淬勵義ヲ泰山
  ノ重キニ任シ死ヲ鴻毛ノ輕キニ比シ奮戰
  激鬪北ニ南ニ連勝ノ功勳ヲ立テ國威ヲ中
  外ニ發揚ス是レ固ヨリ御稜威ノ然ラシム
  ル所ニシテ其ノ忠勇義烈ハ國民ノ齊シク
  感激シテ已マサル所ナリ今ヤ事態ハ愈〓、擴
  大シテ東亞安危ノ鍵一ニ懸テ此ノ機ニ存
  ス聖慮深遠優渥ナル勅語ヲ賜ヒテ國
  民ノ嚮フ所ヲ示サセ給フ諸士ノ責任重大
  ニシテ其ノ勞苦推察ニ餘アリ衆議院ハ特
  ニ院議ヲ以テ感謝ノ誠意ヲ披瀝シ將兵諸
  士ノ勇健ヲ祈ル
  右決議ス
  〔島田俊雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=14

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• 015・島田俊雄

  ○島田俊雄君　只今議題トナリマシタ陸海
  軍ニ對スル感謝ノ件ニ付キマシテ、決議ヲ
  致シタイト存ズル點ニ付キマシテ提案ノ趣
  旨ヲ述ベタイト思ヒマス、此度ノ支那事變
  ハ、去ル七月七日蘆溝橋ニ於ケル支那軍ノ
  不法射擊事件ニ端ヲ發シマシテ、其後漸次
  ニ擴大ヲ致シマシテ、今日ノ如ク全面的ノ
  事變トナッタ次第デアリマス、我國ト致シ
  マシテハ、事件ニ付テハ所謂不擴大、現地
  解決、此方針ヲ以テ進ンダノデアリマスケ
  レドモ、支那ノ方ニ於テ恣ニ協約ヲ蹂躪
  シ、盛ニ抗日ノ氣勢ヲ煽リ、大軍ヲ北支ニ集
  中スルノミナラズ、一方ニ於キマシテハ上
  海ニ於テモ亦事ヲ構フルニ至リ、終ニ南北
  ニ亙ッテ全面的ニ戰雲ヲ漲ラシムルニ至リ
  マシタコトハ、東亞大局ノ上カラ考ヘマシ
  テ洵ニ遺憾ノ至リデアリマス、此間ニ於キマ
  シテ我ガ陸海軍將兵諸士ハ、轉戰既ニ幾十
  日ニ及ビ、硝煙彈雨ノ間ヲ潜リ、惡風土、惡氣
  候ニ耐エ、具ニ艱難ヲ嘗ムルト共ニ、寡兵ヲ
  以テ能ク衆敵ニ對シ、幾多ノ犠牲ヲ拂ウテ、連
  戰連勝ノ勳績ヲ樹テツヽアラレルノデアリマ
  ス、是レ固ヨリ御稜威ノ然ラシムル所デア
  リマシテ、我ガ陸海軍將兵諸士ガ、義ハ泰
  山ヨリ重ク、死ハ鴻毛ヨリモ輕シトスル所
  ノ愛國ノ至誠ノ發露デアリマシテ、其忠勇
  義烈ノ精神ト活動トニ對シマシテハ、全國
  民ノ齊シク感激シテ已マザル所デアリマス
  (拍手)畏クモ天皇陛下ニ於カセラレマシ
  テハ、昨日行ハセラレマシタル帝國議會ノ
  開院式ノ勅語ニ於カセラレテ、國民ノ嚮フ
  所ヲ示サセラルヽト共ニ、特ニ「朕カ軍人
  ハ百艱ヲ排シテ其ノ忠勇ヲ致シツツアリ」
  ト仰セラレマシタ、聖慮ノ洪大寔ニ恐懼措
  ク能ハザル所デアリマス(拍手)
  惟フニ事態ハ愈〓擴大サレマスルト共ニ、
  東亞將來ノ安危消長ハ、實ニ懸ッテ此機會
  ニ在ルト存ズルノデアリマス(拍手)
  我國ト致シマシテハ須ク重大ナル決心ヲ
  以テ、有ユル抗日行動ヲ根柢ヨリ打倒シ、
  速ニ其根本的反省ヲ促シテ東亞ノ平和ヲ確
  立シ、一日モ早ク明朗ナル東亞ノ天地ヲ實
  現スベキデアルト存ズルノデアリマス(拍
  手)今ヤ國內ニ於キマシテハ朝野協力、政
  治ニ、經濟ニ、其他各方面ニ於キマシテ擧
  國一致ノ實ヲ擧ゲ、銃後ノ經營ニ遺憾ナキ
  ヲ期シツヽアル次第デアリマシテ、內外相
  俟ッテ此重大局面ノ收拾ヲ致サナケレバナ
  ラヌト考ヘテ居ル次第デアリマス
  就キマシテハ陸海軍將兵諸君ノ今後ノ努
  力ハ、更ニ容易ナラヌコトデアリマシテ、
  其勞苦ハ洵ニ推察ニ餘リアル次第デアリマ
  ス、卽チ茲ニ本院ト致シマシテ、特ニ院議ヲ
  以テ感謝ノ誠意ヲ披瀝致シタイト存ズル次
  第デアリマス(拍手)右ノ趣意ニ依リマシ
  テ、決議セント致シマスル案ノ本文ヲ朗讀
  致シテ置キマス
  決議
  支那事變勃發以來轉戰既ニ幾十日我カ陸
  海軍將兵諸士ハ彈雨ヲ冒シ炎暑ニ堪ヘ寡
  兵以テ克ク衆敵ニ對シ刻苦淬勵義ヲ泰山
  ノ重キニ任シ死ヲ鴻毛ノ輕キニ比シ奮戰
  激鬪北ニ南ニ連勝ノ功勳ヲ立テ國威ヲ中
  外ニ發揚ス是レ固ヨリ御稜威ノ然ラシム
  ル所ニシテ其ノ忠勇義烈ハ國民ノ齊シク
  感激シテ已マサル所ナリ今ヤ事態ハ愈〓、
  擴大シテ東亞安危ノ鍵一ニ懸テ此ノ機ニ
  存ス聖慮深遠優渥ナル勅語ヲ賜ヒテ
  國民ノ嚮フ所ヲ示サセ給フ諸士ノ責任重
  大ニシテ其ノ勞苦推察ニ餘アリ衆議院ハ
  特ニ院議ヲ以テ感謝ノ誠意ヲ披瀝シ將兵
  諸士ノ勇健ヲ祈ル
  右決議ス
  右趣意ヲ說明致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=15

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• 016・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　採決致シマス、本案
  ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔總員起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=16

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• 017・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　起立總員、仍テ本案
  ハ全會一致可決致シマシタ
  〔拍手起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=17

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• 018・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　此際陸軍大臣及ビ海
  軍大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス-
  杉山陸軍大臣
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=18

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• 019・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　只今ハ派遣部隊ノ
  將兵ニ對シマシテ、重ネテ全院一致御懇篤
  ナル決議ヲ賜リマシテ洵ニ感謝ニ堪ヘヌ所
  デアリマス、本決議ハ速ニ派遣部隊ノ將兵
  ニ傳達ヲ致シマス、派遣ノ將兵モ此決議ニ
  依リマシテ、益〓感奮激勵サレマシテ、一層
  一死報國ノ念ヲ固メテ各位ノ御期待ニ副ハ
  ンコトヲ期スルモノト確信ヲ致シマス、茲
  ニ陸軍ヲ代表致シマシテ衷心ヨリ深甚ナ
  ル謝意ヲ表シマス(拍手)
  尙ホ事變勃發以來引續キマシテ國民各位
  ヨリ熱誠溢ルヽ銃後ノ後援ヲ賜リマシテ、
  派遣將兵一同ハ無上ノ感激ニ打タレマシテ
  感謝ヲ致シテ居リマス、私ハ此際全將兵ニ
  代リマシテ深甚ナル感謝ノ誠意ヲ表明致シ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=19

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• 020・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　米內海軍大臣
  〔國務大臣米內光政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=20

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• 021・米内光政

  ○國務大臣(米內光政君)　曩ニ第七十一議
  會ニ於キマシテ陸海軍ニ對シ御懇篤ナル決
  議ヲ頂戴致シマシタ所、更ニ只今滿場一致
  ノ院議ヲ以チマシテ、洵ニ御懇篤ナル御慰
  問竝ニ激勵ノ辭ヲ賜リマシタコトハ、洵ニ
  感激ヲ新ニスルモノデアリマス、速ニ此決
  議ヲ海軍全般ニ傳達致シマス
  海軍ハ事變勃發以來今日ニ至ルマデ、善
  戰成果ヲ收メツヽアリマスコトハ、固ヨリ
  御稜威ノ然ラシムル所ト存ズルノデアリマ
  スルガ、內外朝野ノ別チナキ擧國一致ノ熱
  誠ナル御後援ト御同情、亦之ヲ然ラシムル
  モノト考ヘルノデアリマス、只今ノ決議ニ
  對シマシテ、我ガ海軍將兵ハ更ニ感激ヲ新
  三ヽヽ勇躍其任務ニ服スルコトト確信致シ
  テ居ル次第デアリマス、時局ハ多難デアリ
  マス、吾々ハ更ニ奮勵努力致シマシテ、宸襟
  ヲ安ンジ奉ルト共ニ、國民諸君ノ御期待ニ
  副フヤウニ努メタイト考ヘテ居リマス拍
  手)玆ニ全海軍ヲ代表致シマシテ、衷心ヨ
  リ御決議ニ對シテ感謝ノ意ヲ表スル次第デ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=21

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• 022・中山福藏

  ○中山福藏君　國務大臣ノ演說ニ對スル質
  疑ハ、本日ノ議事日程ニ揭載セラレタル政
  府提出法律案ニ對スル質疑ノ際併セテ之ヲ
  爲スコトトシ、直チニ日程第一乃至第九ノ
  九案ヲ一括議題ト爲シ、其審議ニ入ラレン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=22

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• 023・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　中山君提出ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=23

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• 024・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ中山君ノ動議ノ如ク決シマシタ日程
  第一支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲
  公債發行ニ關スル法律案、日程第二臨時軍
  事費特別會計法案、日程第三支那事變ノ爲
  從軍シタル軍人及軍屬ニ對スル租稅ノ減免、
  徵收猶豫等ニ關スル法律案、日程第四臨時
  資金調整法案、日程第五外國爲替管理法中
  改正法律案、日程第六米穀ノ應急措置ニ關
  スル法律案、日程第七臨時肥料配給統制法
  案、日程第八輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ
  關スル法律案、日程第九臨時船舶管理法案、
  右九案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-
  賀屋大藏大臣
  第支那事變ニ關スル臨時軍事費支
  辨ノ爲公債發行ニ關スル法律案政
  府提出)第一讀會
  第二臨時軍事費特別會計法案(政府
  提出)第一讀會
  第三支那事變ノ爲從軍シタル軍人及
  軍屬ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫
  等ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會
  第四臨時資金調整法案(政府提出)
  第一讀會
  第五外國爲替管理法中改正法律案
  (政府提出)第一讀會
  第六米穀ノ應急措置ニ關スル法律案
  (政府提出)第一讀會
  第七臨時肥料配給統制法案(政府提
  也第一讀會
  第八輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ
  關スル法律案(政府提出)第一讀會
  第九臨時船舶管理法案(政府提出)
  第一讀會
  支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲
  公債發行ニ關スル法律案
  支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲政
  府ハ二十億二千二百七十萬圓ヲ限リ公債
  ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
  ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
  ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
  爲スコトヲ得
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  臨時軍事費特別會計法案
  臨時軍事費特別會計法
  第一條支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ
  會計ハ一般ノ歲入歲出ト區分シ事件ノ
  終局迄ヲ一會計年度トシテ特別ニ之ヲ
  整理ス
  第二條一般會計ニ屬スル陸海軍省所管
  ノ北支事件費及大藏省所管ノ北支事件
  第一豫備金竝ニ其ノ財源ニ充ツベキ歲
  入ハ之ヲ本會計ニ移シ整理ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  支那事變ノ爲從軍シタル軍人及軍屬ニ
  對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關ス
  ル法律案
  第一條政府ハ支那事變ノ爲從軍シタル
  軍人及軍屬ノ納付スル昭和十二年以降
  ノ分ノ第三種所得稅、地租及營業收益
  稅ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ輕減又ハ免
  除スルコトヲ得
  第二條政府ハ支那事變ノ爲從軍シタル
  軍人及軍屬ノ昭和十三年以降ノ分ノ第
  三種所得稅及營業收益稅ニ付命令ヲ以
  テ課稅標準ノ決定ニ關スル特例ヲ設ク
  ルコトヲ得
  第三條政府ハ支那事變ノ爲從軍シタル
  軍人及軍屬ノ本法施行後ニ於テ納付ス
  ベキ租稅ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ其
  ノ徴收ヲ猶豫スルコトヲ得
  第四條前三條ノ規定ハ同居ノ戶主又ハ
  家族中ニ支那事變ノ爲從軍シタル軍人
  及軍屬アル者ノ租稅ニ付之ヲ準用ス
  第五條第一條又ハ前條ノ規定ニ依リ輕
  減又ハ免除セラルル租稅ハ法令上ノ納
  税資格要件ニ關シテハ輕減又ハ免除セ
  ラレザルモノト看做ス
  前項ノ規定ハ地方稅ニシテ支那事變ノ
  爲從軍シタルニ因リ輕減又ハ免除セラ
  ルルモノニ付之ヲ準用ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  臨時資金調整法案
  臨時資金調整法
  第一條本法ハ支那事變ニ關聯シ物資及
  資金ノ需給ノ適合ニ資スル爲國內資金
  ノ使用ヲ調整スルヲ目的トス
  第二條銀行、信託會社、保險會社、產
  業組合中央金庫、商工組合中央金庫及
  北海道府縣ヲ區域トスル信用組合聯
  合會(以下金融機關ト總稱ス)ハ事業ニ
  屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ニ關
  スル資金ノ貸付ヲ爲シ又ハ有價證劵ノ
  應募、引受若ハ募集ノ取扱ヲ爲サント
  スルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府
  ノ許可ヲ受クベシ金融機關ニ非ズシテ
  有價證劵ノ引受又ハ募集ノ取扱ヲ業ト
  スル者(以下之ヲ證劵引受業者ト稱ス)
  有價證劵ノ應募、引受又ハ募集ノ取扱
  ヲ爲サントスルトキ亦同ジ
  第三條金融機關又ハ證劵引受業者前條
  ノ貸付又ハ有價證劵ノ應募、引受若ハ募
  集ノ取扱ニ關シ本法ノ目的ニ從ヒ政府
  ノ適當ト認ムル方法ニ依リ自治的ニ調
  整ヲ爲スモノナルトキハ之ニ對シ命令
  ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ヲ適用セ
  ザルコトヲ得
  第四條命令ノ定ムル會社ノ設立ハ政府
  ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ
  生ゼズ會社ノ資本增加、合併又ハ目的
  變更ニシテ命令ノ定ムルモノニ付亦同
  命令ノ定ムル會社左ノ各號ノ一ニ該當
  スル場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クベ
  シ
  ー第二囘以後ノ株金ノ拂込ヲ爲サシ
  メントスルトキ
  二株金ノ拂込、社債ノ募集又ハ金融
  機關ヨリノ借入ニ依ラズシテ命令ノ
  定ムル限度ヲ超ユル事業設備ノ新
  設擴張又ハ改良ヲ爲サントスルト
  キ
  三他人ヲシテ引受又ハ募集ノ取扱ヲ
  爲サシメズシテ社債ヲ募集セントス
  ルトキ
  第五條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第
  二條又ハ前條ノ許可又ハ認可ニ關スル
  事務ヲ日本銀行ヲシテ取扱ハシム
  前項ノ事務ノ取扱ニ要スル經費ハ日本
  銀行ノ負擔トス
  第一項ノ場合ニ於テ當該事務ニ從事ス
  ル日本銀行職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務
  ニ從事スル職員ト看做ス
  第六條日本興業銀行ハ五億圓ヲ限リ日
  本興業銀行法第十二條ノ規定ニ依ル制
  限ヲ超エテ債劵ヲ發行スルコトヲ得
  日本興業銀行ハ其ノ債劵借換ノ爲債劵
  ヲ發行スル場合ニ於テハ前項ノ制限ニ
  依ラザルコトヲ得
  日本興業銀行法第十六條ノ規定ハ之ヲ
  適用セズ
  政府ハ第一項ノ規定ニ依リ發行スル債
  劵ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ額面金額
  五億圓ヲ限リ其ノ元本ノ償還及利息ノ
  支拂ヲ保證スルコトヲ得
  第七條金資金ハ金資金特別會計法第四
  條ノ規定ニ依ルノ外之ヲ興業債劵ニ運
  用スルコトヲ得
  第八條命令ノ定ムル時局ニ緊要ナル事
  業ヲ營ム會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ
  命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受
  ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツ
  ル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ
  增加スルコトヲ得
  第九條命令ノ定ムル時局ニ緊要ナル事
  業ヲ營ム會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設
  備ノ費用ニ充ツル爲商法第二百條ノ規
  定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スル
  コトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル
  株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
  最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存ス
  ル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザル
  トキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
  第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付
  テハ擔保附社債信託法ニ依ル物上擔保
  ヲ附スルコトヲ要ス
  第十條政府ハ第八條ノ規定ニ依リ資本
  ヲ增加シタル會社又ハ前條ノ規定ニ依
  リ社債ヲ募集シタル會社ニ對シ其ノ業
  務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ
  發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
  第十一條資金使用ノ調整ニ關シ重要ナ
  ル事項ヲ調査審議スル爲臨時資金調整
  委員會ヲ置ク
  臨時資金調整委員會ニ關スル規程ハ勅
  令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十二條第二條、第四條、第八條又ハ
  第九條第一項ノ規定ニ依ル許可又ハ認
  可ニ關スル處分ニシテ事案ノ重要ナル
  モノニ付テハ臨時資金審査委員會ノ議
  ヲ經ベシ
  臨時資金審査委員會ニ關スル規程ハ勅
  令ヲ以テ之ヲ定ム
  第十三條政府ハ日本勸業銀行ヲシテ收
  入金二億圓ニ達スル迄貯蓄債劵ヲ發行
  セシムルコトヲ得
  貯蓄債劵ハ無記名トシ劵面金額ヲ二十
  圓以下トス
  第十四條貯蓄債劵ハ發行ノ翌年ヨリ三
  十五年內ニ每年二囘以上抽籤ヲ以テ之
  ヲ償還スベシ
  貯蓄債劵ヲ償還スル場合ニハ賣出價格
  ノ百五十倍以内ノ割增金ヲ附與スルコ
  トヲ得其ノ方法及金額ハ主務大臣之ヲ
  定ム
  前項ノ割增金ハ主務大臣ノ定ムル價格
  ニ依リ國債證劵ヲ以テ交付スルコトヲ
  得
  第十五條復興貯蓄債劵法第三條、第五
  條第六條、第七條第一項及第八條竝
  ニ日本勸業銀行法第三十五條ノ二、第
  三十五條ノ三、第四十條及第四十二條
  ノ規定ハ貯蓄債劵ニ之ヲ準用ス
  第十六條政府ハ資金ノ狀況ヲ調査スル
  爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ム
  ル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル事項ニ關
  シ關係者ヨリ報〓ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ
  他ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
  一資金ノ需給及移動ニ關スル事項
  二有價證劵ニ關スル事項
  三國際收支ニ關スル事項
  四事業ノ資金計畫ニ關スル事項
  第十七條左ノ各號ノ一ニ當該スル者ハ
  五千圓以下ノ罰金ニ處ス
  -第二條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケ
  ズシテ資金ノ貸付ヲ爲シ又ハ有價證
  劵ノ應募、引受若ハ募集ノ取扱ヲ爲
  シタル者
  二第四條第二項ノ規定ニ違反シ許可
  ヲ受ケズシテ株金拂込ノ催告、設備
  ノ新設、擴張若ハ改良又ハ社債ノ募
  集ヲ爲シタル者
  第十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
  五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  一第十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分
  ニ違反シタル者
  二第十六條ノ規定ニ違反シ報〓ヲ爲
  サズ、〓僞ノ報〓ヲ爲シ又ハ檢査ヲ
  拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
  三本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
  ニ依リ政府ニ提出スベキ許可又ハ認
  可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虚僞ノ記
  載ヲ爲シタル者
  第十九條法人ノ代表者又ハ法人若ハ人
  ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其
  ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前二條ノ
  違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰
  スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前二
  條ノ罰金刑ヲ科ス
  第二十條當該官吏、委員若ハ第五條第
  三項ニ規定スル日本銀行職員又ハ其ノ
  職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ
  關シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ祕
  密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ千圓
  以下ノ罰金ニ處ス
  第二十一條本法ヲ朝鮮、臺灣又ハ樺太
  ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキ
  ハ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ
  得
  附則
  本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
  ヲルチ
  本法ハ第十四條及第十五條ヲ除キ支那事
  變終了後一年內ニ之ヲ廢止スルモノト
  ス
  外國爲替管理法中改正法律案
  外國爲替管理法中左ノ通改正ス
  第一條第七號ヲ第八號トシ以下順次一號
  宛繰下ゲ第六號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  七本邦通貨ヲ以テ表示スル外國居住者
  ニ對スル債權又ハ債務ノ取得又ハ處分
  同條ニ左ノ一號ヲ加フ
  十二外國ニ在ル財產ニシテ第一號、
  第六號又ハ第七號ニ揭ゲザルモノノ
  取得又ハ處分
  第二條中「禁止又ハ制限ニ關係アル事項」
  ヲ「禁止若ハ制限又ハ第四條ノ處分命令
  ニ關シ必要ナル事項」ニ改ム
  第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
  政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ揭グ
  ル財產ヲ有スル者ニ對シ之ヲ日本銀行
  其ノ他政府ノ指定スル者ニ賣却シ其ノ
  他之ニ關シ必要ナル處分ヲ爲スベキコ
  トヲ命ズルコトヲ得
  一金地金、外國通貨又ハ外國爲替
  二外國通貨ヲ以テ表示スル證劵若ハ
  債權又ハ本邦通貨ヲ以テ表示スル外
  國居住者ニ對スル債權
  三外國ニ在ル財產ニシテ前二號ニ揭
  ゲザルモノ
  第五條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  第一條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違
  反シ金貨幣、金地金、金ノ合金又ハ金
  ヲ主タル材料トスル物ヲ輸出スル目的
  ヲ以テ收得シ又ハ輸出セントシタル者
  亦前項ニ同ジ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  米穀ノ應急措置ニ關スル法律案
  第一條政府ハ軍用ニ供スル爲必要アリ
  ト認ムルトキハ米穀需給調節特別會計
  ニ屬スル米穀ノ賣渡ヲ行フコトヲ得
  前項ノ賣渡ノ價格ハ時價ニ準據シテ之
  マルチ
  第二條政府ハ支那事變ニ關聯シ必要ナ
  ル數量ノ米穀ヲ保有スル爲特ニ必要ア
  リト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
  リ米價ガ米穀統制法ニ基キテ發スル命
  令ニ定ムル標準最高價格ノ一定割合ニ
  相當スル價格以下ナル場合ニ限リ米穀
  統制委員會ニ諮問シテ米穀ノ買入ヲ行
  フコトヲ得
  前項ノ買入ノ價格ハ時價ニ準據シテ之
  ヨガエ
  第三條前二條ノ規定ニ依ル米穀ノ賣渡
  又ハ買入ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ米
  穀需給調節特別會計ニ屬セシム
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
  スルモノトス
  臨時肥料配給統制法案
  臨時肥料配給統制法
  第一條政府ハ支那事變ニ關聯シ肥料ノ
  需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲特ニ
  必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル
  所ニ依リ政府ノ適當ト認ムル者ニ對シ
  肥料ノ配給統制上必要ナル事業ヲ行フ
  ベキコトヲ命ズルコトヲ得
  前項ノ事業ヲ行フ者ノ監督其ノ他ニ關
  シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第一項ノ場合ニ於テ政府必要アリト認
  ムルトキハ肥料製造業者又ハ其ノ組織
  スル法人ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ
  其ノ製造又ハ取扱ニ係ル肥料ヲ第一項
  ノ事業ヲ行フ者ニ賣渡スベキコトヲ命
  ズルコトヲ得
  第二條政府ハ支那事變ニ關聯シ肥料ノ
  需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲特ニ
  必要アリト認ムルトキハ前條ニ定ムル
  モノノ外肥料ノ販賣、使用、消費、移動
  又ハ輸出入ニ關シ必要ナル命令ヲ爲ス
  コトヲ得
  第三條政府必要アリト認ムルトキハ肥
  料ノ製造、取引、保管又ハ運送ヲ業ト
  スル者ニ對シ前二條ノ命令ニ關係アル
  事項ニ付報告ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ
  檢査ヲ爲スコトヲ得
  第四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五
  千圓以下ノ罰金ニ處ス
  -第一條第一項又ハ第三項ノ規定ニ
  依ル命令ニ違反シタル者
  二第二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
  タル者
  第五條第三條ノ規定ニ違反シ報〓ヲ爲
  サズ、虛僞ノ報告ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒
  ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ五百圓以
  下ノ罰金ニ處ス
  第六條肥料製造業者其ノ他肥料ニ關ス
  ル業ヲ爲ス者ハ其ノ代理人、戶主、家
  族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ
  關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令
  又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタル
  トキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以
  テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
  第七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
  令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法
  人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法
  人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
  又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
  人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
  ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
  ハ此ノ限ニ在ラズ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
  スルモノトス
  輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關スル
  法律案
  第一條政府ハ支那事變ニ關聯シ國民經
  濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要アリト
  認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ物
  品ヲ指定シ輸出又ハ輸入ノ制限又ハ禁
  止ヲ爲スコトヲ得
  第二條政府ハ支那事變ニ關聯シ國民經
  濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要アリト
  認ムルトキハ輸入ノ制限其ノ他ノ事由
  ニ因リ需給關係ノ調整ヲ必要トスル物
  品ニ付左ノ措置ヲ爲スコトヲ得
  一命令ノ定ムル所ニ依リ當該物品ヲ
  原料トスル製品ノ製造ニ關シ必要ナ
  ル事項ヲ命ジ又ハ制限ヲ爲スコト
  二當該物品又ハ之ヲ原料トスル製品
  ノ配給、讓渡、使用又ハ消費ニ關シ
  必要ナル命令ヲ爲スコト
  第三條政府ハ第一條ノ制限若ハ禁止又
  ハ前條ノ命令若ハ處分ニ關係アル事項
  ニ付報告ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査
  ヲ爲スコトヲ得
  第四條第一條ノ規定ニ依リテ爲ス制限
  又ハ禁止ニ違反シテ輸出又ハ輸入ヲ爲
  シ又ハ爲サントシタル者ハ三年以下ノ
  懲役又ハ一万圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ場合ニ於テハ輸出又ハ輸入ヲ爲
  シ又ハ爲サントシタル物品ニシテ犯人
  ノ所有シ又ハ所持スルモノヲ沒收スル
  コトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
  スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
  徵スルコトヲ得
  第五條第二條ノ規定ニ依ル命令若ハ處
  分又ハ其ノ命令ニ基キテ爲ス處分ニ違
  反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ五千
  圓以下ノ罰金ニ處ス
  第六條第三條ノ規定ニ違反シ報告ヲ爲
  サズ、虛僞ノ報告ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒
  ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ六月以下
  ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス本
  法ニ基キテ發スル命令ニ依リ政府ニ提
  出スル許可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虚
  僞ノ記載ヲ爲シタル者亦同ジ
  第七條法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ
  代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ
  法人又ハ人ノ業務ニ關シ前三條ノ違反
  行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スル
  ノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前三條ノ
  罰金刑ヲ科ス
  第八條本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店
  又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表
  者代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ
  本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ
  之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有スル
  人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從
  業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行
  爲ニ付亦同ジ
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
  スルモノトス
  臨時船舶管理法案
  臨時船舶管理法
  第一條本法ハ支那事變ニ關聯シ海上ニ
  於ケル一般交通運輸ノ調整ヲ圖ルヲ目
  的トス
  第二條本法ニ於テ運航業者トハ帝國臣
  民又ハ帝國法人ニシテ海上ニ於テ人又
  ハ物ヲ運送スル事業ヲ營ム者ヲ謂フ
  第三條日本船舶ハ命令ヲ以テ定ムルモ
  ノヲ除クノ外之ヲ日本船舶(關東州ニ
  行ハルル命令ニ依ル日本船舶ヲ含ム)
  ヲ所有スルコトヲ得ザル者ニ讓渡シ、
  貸渡シ(期間傭船ヲ含ム)、擔保ニ供シ
  又ハ引渡サントスルトキハ政府ノ許可
  ヲ受クベシ
  前項ノ規定ハ製造中ノ船舶ニ之ヲ準用ス
  第四條日本船舶ヲ所有スルコトヲ得ル
  者日本船舶(關東州ニ行ハルル命令ニ
  依ル日本船舶ヲ含ム)ニ非ザル船舶ヲ
  取得セントスルトキハ政府ノ許可ヲ受
  クベシ但シ命令ヲ以テ定ムル船舶ニ付
  テハ此ノ限ニ在ラズ
  前項ノ許可ニハ條件ヲ附スルコトヲ得
  第五條政府ハ運航業者ニ對シ外國諸港
  間ノ運送ヲ爲スコトヲ禁止又ハ制限ス
  ルコトヲ得
  第六條政府ハ運航業者ニ對シ航路、就
  航區域又ハ運送スベキ人若ハ物ヲ指定
  シテ航海ヲ命ズルコトヲ得
  第七條政府ハ運航業者、船舶所有者又
  ハ造船業者ニ對シ運賃、船舶ノ賃貸料
  (期間傭船料ヲ含ム)又ハ其ノ製造若ハ
  賣買ノ價格ニ關シ必要ナル命令ヲ爲ス
  コトヲ得
  第八條政府ハ造船業者ニ對シ船舶ノ製
  造順位ノ變更、材料又ハ艤裝品ノ取得
  ノ調整其ノ他船舶ノ製造ニ關シ必要ナ
  ル命令ヲ爲スコトヲ得
  第九條政府ハ運航業者又ハ船舶所有者
  ニ對シ船舶ノ施設又ハ乘組員ノ保護若
  ハ整備ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコト
  ヲ得
  第十條政府ハ運航業者、船舶所有者又
  ハ造船業者ニ對シ其ノ業務ノ狀況ニ關
  シ報〓ヲ爲サシムルコトヲ得
  第十一條政府ハ遠洋航路補助法ニ依ル
  補助航海ニ使用スル船舶ノ資格ニ付命
  令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
  第十二條政府ハ船舶職員法ニ依リ船舶
  ニ乘組マシムベキ船舶職員ノ定員又
  ハ其ノ免狀ノ種類ニ付命令ヲ以テ別段
  ノ規定ヲ爲スコトヲ得
  第十三條第七條ノ規定ニ依ル命令ヲ爲
  サントスルトキハ船舶管理委員會ノ議
  ヲ經ベシ
  船舶管理委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ
  以テ之ヲ定ム
  第十四條第三條ノ規定ニ違反シ許可ヲ
  受ケズシテ日本船舶ヲ讓渡シ、貸渡シ
  (期間傭船ヲ含ム)、擔保ニ供シ又ハ引
  渡シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千
  圓以下ノ罰金ニ處ス
  第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
  一年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金
  二四八、
  -第四條第一項ノ規定ニ違反シ許可
  ヲ受ケズシテ船舶ヲ取得シタル者
  二第四條第二項ノ規定ニ依リ附シタ
  ル條件ニ違反シタル者
  三第五條ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限
  ニ違反シタル者
  四第六條又ハ第七條ノ規定ニ依ル命
  令ニ違反シタル者
  第十六條第八條又ハ第九條ノ規定ニ依
  ル命令ニ違反シタル者ハ二千圓以下ノ
  罰金ニ處ス
  第十七條第十條ノ規定ニ違反シ報〓ヲ
  爲サズ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタル者ハ
  五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  第十八條運航業者、船舶所有者又ハ造
  船業者ハ支配人其ノ他ノ代理人又ハ船
  長其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本
  法又ハ本法ニ基ク命令ニ違反シタルト
  キハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ
  其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
  第十九條本法又ハ本法ニ基ク命令ニ依
  リ運航業者、船舶所有者又ハ造船業者
  ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナル
  トキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業
  務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁
  治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之
  ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一
  ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ
  限ニ在ラズ
  第二十條前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ
  刑ニ處スルコトヲ得ズ
  第二十一條本法ノ罰則ハ本法施行地ニ
  本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ
  代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業
  者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲
  ニモ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有
  スル人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他
  從業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル
  行爲ニ付亦同ジ
  第二十二條本法及本法ニ基ク命令中船
  舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有ノ場
  合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキ
  ハ船舶管理人ニ之ヲ適用ス
  第二十三條朝鮮及臺灣ニ於テハ第十一
  條乃至第十三條ノ規定ニ關シ勅令ヲ以
  テ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
  スルモノトス
  〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=24

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• 025・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　只今議題ト相成
  リマシタ支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨
  ノ爲公債發行ニ關スル法律案外四件ニ付キ
  提案ノ理由ヲ說明申上ゲマス、先ヅ支那事
  變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲公債發行ニ
  關スル法律案ニ付テ申述べマス、支那事變
  ニ關スル經費ニ付キマシテハ、第七十一囘
  帝國議會ノ御協賛ヲ經マシテ、其財源ニ充
  ツル爲ノ公債發行ヲ爲シ得ル法律ノ制定ヲ
  見タノデアリマスガ、其後事態ハ日支間ニ
  於ケル全面的ノ事件ニマデ發展致シマシタ
  ノデ、之ニ關スル軍事行動ノ爲メ必要ナル
  臨時軍事費モ亦多額ニ上ルコトト相成ッタ
  ノデアリマス、而シテ今日ノ場合其財源ハ之
  ヲ公債ニ求ムルヲ以テ適當ト認メマスルノ
  デ、本法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス
  次ニ臨時軍事費特別會計法案ニ付キ御說
  明申上ゲマス、日支間ノ事變ニ關スル經費
  ニ付キマシテハ、曩ニ第七十一囘帝國議會
  ニ於テ、當時必要ト認メマシタル金額ノ御
  協贊ヲ經タ次第デアリマスルガ、其後事態
  ノ發展ニ伴ヒマシテ、軍事行動ノ爲メ多額
  ノ經費ヲ必要トスルニ至リマシタル所、是
  ガ收支ハ其性質上一般ノ會計ト區分シ、事
  件ノ終局ニ至ルマデヲ一會計年度トシテ經
  理スルノ必要ガアリマスルノデ、之ニ關ス
  ル臨時軍事費特別會計法案ヲ提出致シタ次
  第デアリマス
  次ニ支那事變ノ爲從軍シタル軍人及軍屬
  ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關スル
  法律案ノ要旨ヲ御說明申上ゲマス、支那事
  變ノ爲從軍シタル軍人及軍屬ニ對シマシテ
  ハ、租稅ノ減免及ビ徵收猶豫等ヲ行フコト
  ガ適當デアルト認ムルノデアリマスルガ、
  現行法ヲ適用致シマスルノミデハ、尙ホ十
  分デアリマセヌノデ、玆ニ支那事變ノ爲
  メ從軍シタル軍人及ビ軍屬ニ對シ、租稅ノ
  減免及ビ徵收猶豫等ノ途ヲ開ク爲メ、本案
  ヲ提出致シタ次第デアリマス
  次ニ臨時資金調整法案ニ付キ提案ノ理由
  ヲ說明申上ゲマス、本法案ハ今囘ノ支那事
  變ニ關聯致シマシテ、物資及ビ資金ノ需給
  ノ適合ヲ圖ル爲メ、國內資金ノ使用ヲ調整
  スルコトヲ目的トスルモノデアリマシテ、
  其内容ハ事業資金ノ調整ヲ主トシ、貯蓄債
  劵ノ發行及ビ資金狀況ノ調査ノ事項ヲモ含
  ンデ居ルノデアリマス、今後事件ノ進展ニ
  伴ヒマシテ、相當多額ノ事件費ガ國內ニ散
  布セラルヽノデアリマスルガ、其結果ト致
  シマシテ、各方面ノ企業ヲ刺戟シ、爲ニ生
  產資材ノ需要ハ益〓旺ントナルベキ傾向ニ
  アルコトハ否マレヌ所デアリマスルガ、是
  等資材ノ豐富デナイ我國ト致シマシテハ、
  其增大スル需要ニ對シ、差當リ之ヲ輸入ニ
  依ッテ補フノ外ナイノデアリマス、併ナガ
  ラ國際收支ノ關係上、無制限ニ是等資材ヲ
  輸入致シマスルコトハ、適當デナイノデア
  リマスルカラ、若シ別ニ方策ヲ講ジナイデ
  置キマスルナラバ、此際最モ必要ナル軍需
  關係竝ニ時局ニ緊切ナル生產事業關係ノ資
  材ニ、不足ヲ來ス虞ナシトシナイノデアリ
  マス、故ニ此際ト致シマシテハ、資材ガ當
  面不必要ナル方面ニ使用セラルヽコトヲ抑
  止致シマスルト共ニ、必要ナル方面ニハ之
  ヲ圓滑且ツ潤澤ニ供給スルノ方策ヲ講ズル
  コトガ、極メテ肝要デアルト信ズルノデア
  リマス、阿クト資金ノ方面ヨリ見マシテ
  干、時局ノ爲メ必要ナル物資ノ生產ニ對シ
  テハ、資金ノ供給ヲ潤澤ナラシムルノ要ア
  ルハ勿論、他面巨額ノ公債ヲ消化シテ參リ
  マスル上ニ於キマシテモ、此際新規ノ投資
  ヲ適當ニ調整シ、資金ガ國防其他時局ニ緊
  切ナル用途ニ向ケラレマスルヤウニ致シマ
  スルコトガ、極メテ肝要ナノデアリマス、
  此意味ニ於キマシテ、政府ハ金融機關等ガ
  事業設備ニ關シ資金ノ貸付ヲ爲シ、又ハ社
  債其他ノ有價證劵ノ引受等ヲ行ヒマスル場
  合ニ、政府ノ許可ヲ受ケシムルコトトシ、
  又一定額以上ノ資本ノ會社ノ設立、增資等
  ニ付テモ、政府ノ認可ヲ受ケシムルコトト
  致スヲ適當ト認メタノデアリマス、唯金融
  機關等ガ政府ノ適當ト認ムル方法ニ依リ、
  本法ノ目的ニ從ヒ自治的ニ其資金ノ運用ヲ
  調整致シマスル場合ニハ、別ニ一々政府ノ
  許可ヲ受ケシムル必要モナイノデアリマシ
  テ、右ノ許可制度ヲ適用セザルコトト致シ
  タノデアリマス、而シテ實際上ハ主トシテ
  自治的ノ調整ニ依ッテ、本法ニ依ル資金調整
  ノ目的ヲ達シ得ルコトヲ希望致シテ居ルモ
  ノデアリマス、而シテ此資金ノ調整ハ、固
  定的事業設備ニ要スル資金ニ付テ行フモノ
  デアリマシテ、事業ノ運轉資金、其他短期
  ノ資金ニハ何等之ヲ適用スルノ意味ヲ有セ
  ザルモノデアリマス
  右ニ申述ベマシタ如ク、資金ノ調整ヲ致
  シマスルト同時ニ、今後增大スベキ事業資
  金ノ需要ニ應ジマスルガ爲ニ、一般金融機
  關ガ其機能ヲ發揮スルコトニ期待致シテ居
  ルモノデアリマスルガ、特ニ政府ハ今囘日
  本興業銀行ガ五億圓ヲ限リ、現在ノ制限以
  上ニ興業債劵ヲ發行シ得ルコトト致シ、
  此分ノ債劵ニ付テハ是ガ元利支拂ヲ政府
  ニ於テ保證スルコトト致シ、又金資金特
  別會計所屬ノ資金ヲ興業債劵ニ運用スル途
  ヲ開キマシテ、更ニ時局ニ緊切ナル事業ヲ
  營ム會社ニ於キマシテハ、政府ノ認可ヲ受ケ
  マシテ、株金全額拂込ノ前ト雖モ增資ヲ爲
  シ、又ハ拂込ミタル株金額ノ二倍マデ社債
  ヲ募集シ得ルコトト致シマシテ、是等ノ事
  業ノ資金調達ノ便宜ヲ圖ルコトト致サント
  スルノデアリマス
  次ニ今囘ノ事變ニ伴ヒ、收入ガ急激ニ增
  加スル方面モアリマスルノデ、此方面ノ國
  民層ノ濫費ヲ防ギ、其貯蓄ヲ奬勵シ、併セ
  テ是等零細資金ヲ適當ニ吸收致シマスルコ
  トガ、金融上其他ノ點ヨリ見テ適當ナルコ
  トト思ハレマスルノデ、收入金二億圓ヲ限
  度ト致シマシテ、少額面ノ割增金附貯蓄債
  劵ヲ、日本勸業銀行ヲシテ發行セシムルコ
  トト致シタノデアリマス
  最後ニ政府ハ資金ノ調整ヲ爲シ、其他一
  般金融ニ關シ、適切ナル方策ヲ講ズル基礎
  ノ資料ト致シマシテ、正確ナモノヲ整備ス
  ルノ必要ヲ認メ、資金ノ需給、有價證劵、
  國際收支又ハ事業ノ資金計畫等ニ付キ、關
  係者ヨリ報〓ヲ徵シ、檢査ヲ爲シ得ルノ權
  能ヲ取得シテ置キマスルコトト致サントス
  ル次第デアリマス、以上本法案ノ內容ヲ大
  體御說明申上ゲマシタ次第デアリマス
  最後ニ外國爲替管理法中改正法律案ニ付
  テ說明申上ゲマス、現下ノ情勢ニ於キマシ
  テ、邦貨ノ爲替相場ノ維持安定ヲ圖リマス
  ル爲ニハ、爲替管理ノ有效適切ナル運用ニ
  俟タネバナリマセヌ、然ルニ本邦ノ爲替管
  理ノ基本ト爲シテ居リマスル外國爲替管理
  法ニハ、外國ニ在ル財產ノ管理其他ニ關
  シマシテ、規定ガ十分デナイ所ガアリマス
  ルノデ、爲替管理ノ運用上完全ヲ期シ難イ
  憾ミガアリマスルノデ、是ガ整備ハ目下ノ
  急務ト存ジテ居ルノデアリマス、又金ノ密
  輸出ノ豫備ニ付テハ、現行法規ニ於キマシ
  テ、取締リ得ルヤ否ヤニ付キ疑義ガゴザイ
  マスルノデ、之ヲ明瞭ニ致シタイト存ズル
  ノデアリマス、是レ本法案ヲ提出シタ理由
  デアリマス、以上五件ニ關シ何卒御審議ノ
  上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致
  シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=25

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• 026・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　有馬農林大臣
  〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=26

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• 027・有馬頼寧

  ○國務大臣(伯爵有馬賴寧君)　只今上程セ
  ラレマシタ米穀ノ應急措置ニ關スル法律案
  ニ付キマシテ、其提案理由ノ〓要ヲ御說明
  申上ゲマス、政府ハ現在米穀統制法ヲ根幹
  トスル米穀政策ノ運用ニ依リマシテ、米穀
  ノ數量及ビ市價ヲ調節シ、以テ國民生活ノ
  安定ヲ圖リツヽアルノデアリマスガ、今囘
  ノ事變ニ際シマシテモ、幸ニシテ米穀ノ價
  格ハ何等異常ナル變動等ヲ見ルコトナク、
  極メテ平穩ニ經過ヲ致シテ參ッタノデアリ
  ママ、併ナガラ今後事變ノ進展ニ伴ヒマシ
  テ、軍ニ於ケル米穀ノ需要モ相當增加シテ
  參ルモノト考ヘラレルノデアリマスガ、從
  來ノ如ク之ヲ民間市場ヨリ買入レマスコト
  ハ、市場ニ對シテ過度ノ刺戟ヲ與フル虞ガ
  アルバカリデナク、祕密且ツ迅速ヲ必要ト
  スル軍用米ノ調達上遺憾ノ點ガ少クナイノ
  デアリマス、斯ル事情ニ鑑ミマシテ、米穀
  需給調節特別會計ニ屬スル米穀ヲ以テ軍ノ
  需要ニ充テ得ルノ途ヲ開キマスコトヲ必要
  ト認メルノデゴザイマス、而シテ政府ガ今
  後軍用米ノ供給等ヲ致シマスニハ、之ニ對
  シテ相當ノ用意ヲ必要トスルノミナラズ、
  今囘ノ事變ニ關聯致シマシテ、國民ノ主食
  物デアル所ノ米穀ノ需給ノ圓滑、價格ノ安
  定ヲ圖リマス爲ニハ、其調節ニ必要ナル米
  穀需給調節特別會計ニ屬スル米穀モ、此際
  一層之ヲ充實シテ置ク必要ガアルノデゴザ
  イマス、仍テ政府ハ今囘ノ事變ニ關聯シテ
  必要ナル數量ノ米穀ヲ保有スル爲メ特ニ必
  要アリト認メマスル場合ニハ、米穀ノ買入
  ヲ爲シ得ルコトト致シタイト存ズルノデア
  リマス、大體以上述べマシタ理由ニ依リマ
  シテ本法律案ヲ提出シタ次第デアリマス
  次ニ臨時肥料配給統制法案ハ農林、商工
  兩省ノ共同提案ニ係ルモノデアリマスガ、
  便宜上私ヨリ大體ノ趣旨ヲ申上ゲタイト思
  ヒマス、今次事變ノ勃發以來最近ニ於ケル
  肥料事情ヲ考察致シマスノニ、時局ノ進展
  ニ伴ヒマシテ、人馬ノ應召徵發等ニ依リマ
  シテ、自給肥料ノ生產減退ノ虞ガアリマス
  ノト、我國ハ每年多額ノ肥料及ビ肥料原料
  ヲ外國ヨリ輸入ニ仰ギツヽアル狀況デアリ
  マスノガ、貿易關係又ハ船腹ノ不足、其他
  ノ事情等ニ依リマシテ、或ハ輸入ニ付キマ
  シテモ困難ヲ加ヘルコトガアルト考ヘラレ
  マスノデ、肥料ノ問題ニ付キ遺憾ナキヲ期
  シマスコトハ、銃後ニ於ケル農村經濟ノ安
  定ヲ期シ、農業生產ノ維持確保ヲ圖リマス爲
  ニ最モ緊要ト認メラルヽノデアリマス、而
  シテ政府ハ應急措置ト致シマシテ、販賣肥
  料ノ中最モ重要デアリ且ツ困難ノ存スル硫
  酸「アンモニア」ニ付キマシテ、必要量ノ輸
  入ヲ確保スル爲ニ、其輸入補償ノ經費ヲ追
  加豫算ニ計上致シマシタガ、今後ニ於ケル
  肥料事情ノ推移ヲ考ヘマスノニ、此際配給
  方面ニ於テ適切ナル調整ヲ加ヘ、以テ供給
  ノ確保ト價格ノ安定ニ付キ遺憾ナキ施設ヲ
  講ジマスコトガ、現下ノ時局ニ卽シ最モ適
  切ナル對策ノ基調ヲ爲スモノデアルト認メ
  ルノデアリマス
  本法案ハ右ノ理由ニ基キマシテ、差當リ
  硫酸「アンモニア」ニ關シ適當ナル機關ヲシ
  テ政府ノ特別ナル監督ノ下ニ、是ガ配給統
  制ニ關スル施設ヲ行ハシメ、以テ需給ノ
  圓滑ト價格ノ公正ヲ期スルコトト致シマス
  ル外、時局ノ進展ニ伴ヒマシテ肥料ニ關ス
  ル事情ノ變化ニ對應シテ、政府ニ於テ適宜
  ノ措置ヲ講ジ得ルノ途ヲ開キ、以テ肥料政
  策上遺憾ナキヲ期スル爲ニ、之ヲ提案シタ
  ヤウナ次第デゴザイマス
  尙ホ本法案ハ此非常時局ニ處スル臨時立
  法デアリマスルノデ、關係當業者ノ協力ニ
  依ッテ所期ノ效果ヲ收メ得ルモノト考ヘル
  ノデアリマス、隨テ其運用ニ當リマシテモ
  關係當業者ノ意向ヲ尊重シ、其自治的統制
  ニ依リ目的ヲ達成スベキ施設ヲ爲サシムル
  ヤウ、指導誘披致シマスルコトハ、固ヨリ
  當然ノコトデゴザイマス、以上兩案何卒十
  分御審議ノ上御協贊ヲ賜ランコトヲ希望致
  シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=27

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• 028・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　吉野商工大臣
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=28

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• 029・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　只今議題トナッテ
  居リマスル日程第八ノ法律案ニ付キマシテ
  提案理由ヲ御說明申上ゲマス
  今次ノ事變ノ推移ニ鑑ミマシテ、此非常
  時ニ對應シマスルヤウニ、我ガ產業經濟ノ
  體制ヲ整ヘナケレバナラナイコトハ申ス迄
  モナイノデアリマシテ、殊ニ軍需及ビ國防
  用トシテ、或ハ又時局ニ緊要適切ナル色々
  ナ事業用ト致シマシテ、相當巨額ノ物資ノ
  需要ガアルノデアリマスカラ、是等ノ物資
  ヲ潤澤且ツ圓滑ニ供給スルコトニ努メナケ
  レバナラナイノデアリマス、然ルニ我國資
  源ノ現狀カラ申シマスト、差當ッテ外國カ
  ラ輸入致シマシテ、急ノ間ニ合セナケレバ
  ナラナイ物ガ少クナイノデアリマス、ソコ
  デ國際收支ノ關係カラ致シマシテ、或ハ物
  資ノ輸出制限ヲ致シマシタリ、或ハ比較的
  不急不要ナル物資ハ勿論ノコト、國家產業
  上有用ナル物ニ付キマシテモ、尙ホ幾許カ
  ノ數量ノ輸入ヲ抑制シマシテ、以テ必要物
  資ノ輸入ノ增大ニ努メナケレバナラナイ必
  要ガアルノデアリマス、是ガ卽チ本法案ニ
  於キマシテ、政府ハ必要ニ應ジテ輸出又ハ
  輸入ノ禁止制限ヲ爲シ得ルコトヲ規定致シ
  マシタ理由デアリマス、而シテ斯ク物資ノ
  輸入ヲ抑制致シマスル結果、之ヲ其儘自然
  ニ放任致シテ置キマスル時ハ、價格ノ暴
  騰供給ノ不安定ナドヲ來シマシテ、國民
  經濟ノ運行ニ著シイ支障ヲ及ボス虞ガアリ
  マスガ故ニ、本法案ハ又需給關係ノ調整ヲ
  必要トスル物品ニ付キマシテ、政府ハ必要
  ニ應ジテ適當ナル措置ヲ爲シ得ルコトト致
  シタノデアリマス
  本法案ハ大體只今申上ゲマシタ二點ヲ骨
  子トスルノデアリマスガ、是ガ運用ノ如何
  ハ、國內產業ニ最モ重大ナル關係ヲ及ボス
  ノデアリマスカラ、其施行ニ當リマシテ
  ハ、出來得ル限リ關係業者ノ協力ヲ得マシ
  テ、我國產業貿易ノ實際ノ事情ニ卽シタル
  措置ニ出デマシテ、聊モ遺憾ナイコトヲ期
  シタイト考ヘテ居ルノデゴザイマス
  尙ホ本法案ハ申ス迄モナク今次事變ニ對
  スル臨時ノ立法デアリマシテ、事變ガ終了
  致シマスレバ速ニ之ヲ廢止スルコトト致シ
  マシタ次第デアリマス、何卒十分御審議ノ
  上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ御願致シマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=29

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• 030・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　永井遞信大臣
  〔國務大臣永井柳太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=30

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• 031・永井柳太郎

  ○國務大臣(永井柳太郞君)　只今議題トナ
  リマシタ臨時船舶管理法案提案ノ理由ヲ簡
  單ニ說明申上ゲタイト存ジマス
  海運事業ハ經濟上ニ於キマシテモ、國防
  上ニ於キマシテモ極メテ重要ナル使命ヲ有
  シ、殊ニ戰時又ハ事變ニ際シマシテ其重要
  性ガ愈〓增加セラレマスコトハ、申上ゲル
  迄モナイノデアリマス、去ル七月支那事變
  勃發シ、其後漸次時局ノ擴大スルニ伴ヒマ
  シテ、本邦船舶ニシテ軍事上ノ目的ニ徵傭
  セラレタルモノ多ク、從來船腹ノ不足ヲ感
  ジタル我國ノ海運界ハ、是ガ爲ニ一層ノ壓
  迫ヲ受クルコトトナリマシタ結果、之ヲ其
  儘ニ放置スル時ハ、配船竝ニ運賃市況ニ於
  テ相當ノ動搖ヲ招來スベキコトヲ豫想セラ
  ルヽニ至リマシタノデ、政府ハ取敢ヘズ應
  急措置トシテ近海船腹ノ需給ヲ調節スル爲
  メ、外國船及ビ關東州置籍船ノ本邦沿岸貿
  易ヲ特許スルコトト致シマスト共ニ、業界
  ノ自制ヲ促シマシテ能フ限リ配船ノ合理化
  ヲ圖ラシメ、運賃市況ノ急激ナル昂騰ヲ自
  主的ニ防止セシメマスル等、其經濟的影響ヲ
  最小限度ニ止ムル爲メ極力意ヲ用ヒ來ッタノ
  デゴザイマス、目下ノ所關係業者ニ於キマシ
  テハ政府ノ意ヲ體シ、協力一致シテ其使命ノ達
  成ニ努メツヽアル次第デアリマスガ、今後斯
  ノ如キ狀況ガ相當長期ニ互ル場合、又ハ更ニ
  時局ノ進展スルガ如キ場合ニ於キマシテハ、
  或ハ業界ノ結束ニ破綻ヲ生ジ、國防上竝ニ
  經濟上思ハヌ障碍ヲ惹起スル虞ガナイトハ
  保證シ得マセヌノデ、政府ニ於キマシテハ
  今後如何ナル事態ニ當面致シマシテモ遺憾
  ノナイヤウニ、我國ノ海運ニ適當ナル監督
  ヲ加ヘ、重要物資ノ輸送、物價ノ調整、對
  外航權ノ維持等、非常時局ニ際シ國家ノ必
  要トスル方向ニ向ッテ適正ニ之ヲ運行セシ
  ムル爲メ、玆ニ本案ヲ提出シタ次第デゴ
  ザイマス、尤モ本案ノ實施ニ當リマシテ
  ハ、海運ノ現狀ニ卽シ、業界ノ實體ニ鑑
  ミ、緩急其宜シキヲ得テ運用ノ全キヲ期ス
  ベキハ當然ノコトデアリマシテ、政府ニ於
  キマシテモ此點ハ特ニ配意致シテ居ル所デ
  アリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協贊アラ
  ンコトヲ希望致ス次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=31

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• 032・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　是ヨリ通告順ニ依リ
  國務大臣ノ演說ニ對スル質疑竝ニ各案ニ對
  スル質疑ヲ許可致シマス-櫻內幸雄君
  〔櫻内幸雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=32

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• 033・櫻内幸雄

  ○櫻內幸雄君　畏クモ聖上陛下ニ於カセ
  ラレマシテハ時局ニ對シ深ク御軫念遊バサ
  V、日夜御勵精ノ御事ヲ、拜察致スダニ畏
  多キ極ミデアリマス、殊ニ昨日ノ開院式ニ
  膺リ優渥ナル御勅語ヲ賜リ、帝國ノ嚮フ所
  ヲ示シ給ヒシコトハ、洵ニ恐懼感激ニ堪ヘ
  ザル所デアリマス(拍手)全國民ハ誓ッテ聖
  旨ヲ奉戴シ、粉骨碎身奉公ノ誠ヲ致サント
  スルモノデアリマス(拍手)
  近衞總理大臣ハ只今帝國ノ支那ニ對スル
  方針ニ付キ演說ヲセラレ、不擴大現地解決
  ノ方針ヲ抛棄スルノ已ムナキニ至ッタ經緯
  ト、之ニ對スル所ノ態度ヲ述ベラレタノデ
  アリマス、其趣旨ハ全然同感デアリマシテ、
  吾々ハ擧國一致政府ノ方針ヲ支持シ、萬難
  ヲ排シ其根本的解決ニ邁進スベキデアルノ
  デアリマス(拍手)唯其目的貫徹上國民ノ聽
  カント欲スル所及ビ政府ノ注意ヲ喚起致シ
  タイコトニ付テ、二三申述べテ見タイト思
  フノデアリマス
  第一本事件ニ對スル我ガ態度ヲ中外ニ徹
  底セシムルコトニ付テデアリマス、昨日開
  院式ニ於キマシテ畏多クモ御勅語ニ於テ
  「帝國ト中華民國トノ提攜協力ニ依リ東亞
  ノ安定ヲ確保シ以テ共榮ノ實ヲ擧クルハ是
  レ朕カ夙夜軫念措カサル所ナリ」ト宣ハセ
  ラレ、又「中華民國ノ反省ヲ促シ速ニ東亞
  ノ平和ヲ確立セムトスルニ外ナラス」ト詔
  サレテ居リマス、暴戾ナル支那ニ對シ叡慮
  ノ洪大ナル、若シ中華民人心アラバ感泣ヲ
  スベキ筈デアリマス(拍手)御勅語ニ明ナル
  ガ如ク、東洋ノ平和ノ確保ト、日支兩國民
  ノ徹底的親善ヲ期スルコトガ本事變ノ目的
  デアッテ、我ガ帝國ハ終始其方針ノ爲メ努
  力シ來ッタノデアリマス、然ルニ南京政府
  ハ國內統一ト自己政權强化ノ爲メ排日抗日
  ヲ事トシ、自己實力ヲ過信シ、我ヲ輕視シ、
  又赤化ノ勢力ト妥協シテ反抗ノ氣勢ヲ揚
  ゲ、各地ニ事件ヲ起スニ至ッタノデアリマ
  ス、而モ尙ホ帝國ハ平和ヲ希望シ、我ガ同
  胞ヲシテ多年辛苦ノ結晶タル事業ヲ抛棄セ
  シメ、其引揚ヲ命ズルガ如キ忍ビ難キヲ忍
  ビ、其解決ニ努力シタニ拘ラズ、却テ兵火
  ヲ以テ反抗スルニ至ッテハ、旣ニ隱忍ノ域
  ヲ脫シタルモノデアッテ、我ガ帝國ガ奮起
  スルノハ眞ニ已ムヲ得ザル所デアリマ
  ス(拍手)隨テ之ニ依ッテ生ズル結果ハ當
  然支那ノ責任デアルコトハ申述ベル迄モ
  アリマセヌ、故ニ事茲ニ至リタル以上、
  支那ガ東亞和平確立ノ必要ヲ悟リ、今囘
  ノ事變ニ對シ全責任ヲ負フト共ニ、赤化ノ
  勢力ト斷絕シ、我ガ帝國ト根本的共存共榮
  ノ途ヲ講ズル誠意ヲ事實ノ上ニ示スニアラ
  ザレバ、到底容認スル能ハザルコトハ申ス
  迄モアリマセヌ、其反省ノ實ヲ見ザル以上、
  徹底的ニ彼ヲ膺懲セネバナラヌノデアリマ
  ス、此方針ハ我ガ國民ノ牢固タル決心デ
  アッテ、其目的貫徹ノ爲ニハ如何ナル障碍、
  如何ナル困難ニ遭遇致ストスルモ、斷乎ト
  シテ排擊突破スル覺悟ヲ有シテ居ルノデア
  リマス(拍手)固ヨリ支那ニ於ケル列國ノ權
  益ヲ尊重スルコトハ言フ迄モナイノデア
  リマシテ、世界列國ガ此儼乎タル方針ヲ知
  ル時、我ガ態度ノ公明正大ヲ認識スルデア
  ラウト信ズルノデアリマス、從來第三國ニ
  於テハ我ガ政府ノ聲明ニ對シ、往々其聲明
  ト意見ヲ異ニスル者アルヤノ宣傳ヲ致ス者
  ガアルソウデアリマスガ、斯ノ如キ事實ハ
  斷ジテナイノミナラズ、對支方針ニ付テハ
  軍部、政黨、財界、其他各方面モ全然一致
  セル國民ノ總意デアリマスガ故ニ、其眞意
  ヲ中外ニ徹底セシメマスナラバ、日本ノ支
  那ニ對スル所ノ行動ニ付テ一片疑ヲ存スベ
  キ筈ハナイノデアリマス、若シ是ガ徹底致
  シマスナラバ、支那ヲシテ反省悔悟セシム
  ルト共ニ、第三國ヲシテ日本ノ眞意ヲ諒解
  セシムルコトガ出來ルト考ヘルノデアリマ
  ス、特ニ支那ハ虚僞ノ宣傳ヲ事トスルノ國
  民デアリマスカラ、我國ハ世界ノ輿論ヲ正
  シク指導シ、苟モ支那ノ虛僞ノ宣傳ヲ容ル
  ルノ餘地ナカラシムルコトガ肝要デアリマ
  ス、惟フニ東亞ノ和平ハ獨リ日支兩國ノ爲
  ノミナラズ、世界列國ノ利益ト幸福トヲ保
  障スルモノデアッテ、列國ハ其和平ノ維持
  ニ任ズル所ノ帝國ノ努力ニ對シテ感謝スベ
  キ筈デアリマス、今ヤ勅語一タビ下ッテ帝
  國ノ國是炳トシテ明カデアリマス、此深遠
  ナル聖旨ヲ世界ニ傳ヘ、帝國ノ國是ト今囘
  ノ事變ニ對スル目的トヲ世界ニ徹底セシム
  ルハ今日ノ急務デアルト思フノデアリマ
  ス、政府ハ之ニ對シ如何御考ニナッテ居ル
  カ、御意見ヲ承リタイノデアリマス
  次イデ財政ニ關スル件デアリマスガ、軍
  事費支辨ニ付テハ我ガ國是旣ニ決シタル以
  上ハ、其額ノ如何ニ拘ラズ、國民ハ進ンデ之
  ヲ負擔スルノ覺悟ヲ有シテ居ルモノデアリ
  マス、唯其支辨ニ關スル所ノ方法ニ付キ深
  キ關心ヲ有シテ居ルノデアリマス、勿論平
  時ニ於ケル我ガ財政ガ近時年々七八億圓ノ
  赤字公債ヲ連發シ、辛ウジテ豫算ノ收支ヲ
  合セツヽアル際デアリマスルガ故ニ、多少
  ノ危惧ノ念ノアルコトハ已ムヲ得ナイコト
  デアリマス、併ナガラ一タビ非常時財政ニ
  入ッタ以上特殊ノ財政計畫トナルノデアッテ、
  斷ジテ行詰ッテ居ルモノデハアリマセヌ、
  私ハ今囘ノ二十億圓ハ愚カ、更ニ巨額ノ軍事
  費ト雖モ我ガ國力ハ優ニ之ニ支辨スル力ア
  リト固ク信ズルモノデアリマス(拍手)今試
  ニ歐洲大戰當時ニ於ケル英、米、佛、獨ノ
  資力狀態ト軍事費トヲ比較シ、又日〓、日露
  兩戰役當時ノ我ガ資力ト戰費トノ關係ヲ統
  計的ニ調査シテ見マスト、現在ノ膨脹日本
  ノ資力ハ、綽々トシテ相當巨額ノ軍事費ヲ
  支辨スル實力ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
  殊ニ日露戰役當時、內債募集額ニ對シ應募
  四倍ヲ突破スルノ盛況ヲ呈シタルガ如キ事
  ヲ顧ミマスレバ、甚ダ意ヲ强ウスルニ足ル
  モノガアルノデアリマス、畢竟軍事費調達
  ノ難易ハ、政府ノ財政政策ト國民ノ決心如
  何ニ在ルト言ッテ宜シイノデアリマス(拍
  手)尤モ連年赤字公債ノ連發ニ依リ前途ヲ
  憂慮セル際、此巨額ノ軍事公債ヲ急激ニ募
  集スルノデアリマスカラ、極メテ「デリ
  ケート」ナル財界ノ心理狀態ニ如何ナル影響
  ヲ與フルカ、又我ガ產業界ニ及ボス所ノ影
  響ガドウデアルカ、深ク考慮スル必要ガアル
  ノデアリマス、元來戰費ハ旣往ノ歷史ニ徵スル
  ニ、〓ネ公債ト增稅トヲ併用シテ支辨シテ
  居リマス、今囘ハ如何ナル方針ニ依リ處理
  セラルヽノデアルカハ未ダ知ルコトヲ得マ
  セヌガ、此度ノ豫算ハ全部公債支辨トシテ
  要求サレテ居リマス、是レ固ヨリ前議會ニ
  於テ一億餘万圓ノ增稅ヲ爲シ、且ツ中央地
  方ヲ通ジ負擔均衡ヲ基準トシテ稅制整理ヲ
  斷行センコトヲ聲明セラレテ居ル政府トシ
  テハ、此際此擧ニ出ラルヽコトハ當然ノコ
  トデアッテ、吾々ハ之ヲ諒トスル者デアリ
  マス、併シ事變ハ更ニ擴大シ、更ニ持久的
  狀態ニ入ラヌトモ限リマセヌガ故ニ、最惡
  ノ場合ヲ考ヘ、之ニ應ズル所ノ覺悟ト準備
  ガ必要デアリマス、隨テ政府ハ其決心ノ下
  ニ、適當ナル時機ニ將來ノ財政計畫ヲ立テ、
  各般ノ對策ヲ定メ、之ニ依ッテ國民ヲ指導
  スベキデアルト信ズル者デアリマス、卽チ
  軍事費ニ付テハ今後公債ノミニ依ッテ支辨
  セントスルノデアルカ、或ハ其一部ヲ增稅
  其他ノ恆久財源ニ俟タントスルノデアル
  カ、或ハ又軍事費ハ公債ニ依リ其利子、若ク
  ハ利子及ビ減債基金ヲ增稅ニ依ラントスル
  ノデアルカ、其決定ハ自ラ財界指導ノ上ニ
  其行キ方ヲ異ニシ、財界モ亦之ニ依ッテ將
  來ノ計畫ヲ定ムルノデアルカラ、十分〓究
  ノ上其方針ヲ明ニセラレンコトヲ希望スル
  ノデアリマス(拍手)勿論何レニセヨ、主タ
  ル財源ハ公債ニ俟ツコトハ已ムヲ得ナイノ
  デアリマス、政府ハ公債消化ニ付キ如何ナ
  ル對策ヲ執ラルヽノデアルカ、聽キタイト
  思フノデアリマス、政府ガ今囘行ハントス
  ル所ノ事業資金調整ニ依リ、事業資金トシテ
  投ゼラルヽ資金ノ或ル部分ヲ公債ニ振向
  ケ、或ハ自治的金融統制ヲ强化シテ、銀行
  預金竝ニ保險會社、信託會社等ノ資金ヲ出
  來ルダケ公債化セントスルハ、確ニ公債消
  化ノ一方法デアリ、又「インフレーション」
  防止ノ手段ナリト信ズルノデアリマスガ、
  其統制法ノ實行如何ニ依ッテハ金融界ヲ恐
  怖セシメ、事業資金ノ涸渴ヲ來シ、經濟界
  ヲ萎靡不振ニ陷レ、國民生活ヲ脅威スルニ
  至ルノデアルカラ、其結果ハ事志ト反スル
  場合ガナイトモ限ラヌノデアリマス、故
  其運用ニ付テハ特ニ戒心ノ要アリト思フノ
  デアリマス、私ハ公債ノ消化ニ關シテハ幾
  多ノ方法ガアリマス中ニ、資金循環ノ促進
  ヲ忘レテハナラヌト信ズルノデアリマス、
  元來如何ニ極端ナル統制ヲ行フモ、銀行其
  他ノ卽時應募シ得ル資金ハ、所有現金及ビ
  日銀ヘノ預金總額ノ中ノ或ル部分ニ過ギナ
  イノデアッテ、其以上ハ貸出金ヲ囘收スル
  カ、所有ノ公債、株劵、不動產ヲ賣却スル
  外ハ途ガナイノデアリマス、若シ貸付金ノ
  囘收、又ハ所有株劵ノ賣却ヲ强要スルガ如
  キ場合ハ、忽チニシテ財界ノ恐慌ヲ來スコ
  ト明カナルコトデアリマス故ニ、是ニ於テ
  カ資金ノ循環ヲ滑カニシ、之ニ依ッテ公債
  消化ノ强化ヲ圖ルト云フ途ノ外ハナイノデ
  アリマス、卽チ募集シタル公債金ガ種々ナ
  ル形ニ依ッテ支拂ハレタル際、海外拂、戰
  地拂以外ノ受取人ハ、原料代及ビ勞銀其他
  ノ支拂ヲ爲シタル殘金ヲ銀行預金トナシ、
  玆ニ再ビ資金化シ、原料代ヲ受取リタル人
  モ亦同一順序ニ依リテ預金ニ還元シ、勞銀
  モ亦種々ノ徑路ヲ經テ銀行ニ囘收サレ、更
  ニ重ネテ公債應募力ヲ作ルノデアッテ、此
  資金循環ガ早ケレバ早キ程財界ノ活氣ヲ呈
  シ、公債應募力ヲ增スノデアリマス(拍手)
  若シ此循環ヲ梗塞スルガ如キ政策ヲ採ルニ
  至ッテハ、他ニ如何ナル公債消化ノ途ヲ講
  ジ之ヲ勸奬スルモ、到底大ナル成果ハ得ラ
  レナイノデアリマス、卽チ財界ノ不安ヲ除
  キ、經濟界ノ疏通ヲ圖ルコトガ肝要デアルト
  考ヘルノデアリマス、現ニ先般巨額ノ公債
  ト幾多ノ統制法制定ノ報ガ傳ハリマスル
  ヤ、全國ノ銀行ハ貸出ヲ警戒シ、各商人ハ
  仕入ヲ手控へ、金融ハ梗塞シ、物資ハ停滯
  シ、經濟界ノ不振ノ兆ヲ呈シタルノ感ガア
  リマシタ、斯ノ如キハ事情ヲ知ラザル一時
  的衝動ニ過ギマセヌケレドモ、政府トシテ
  ハ十分注意スベキ點デアルト言ハネバナリ
  マセヌ、政府ハ資金循環ノ促進ニ付テ何等
  カ考慮ヲ拂ヒ、對策ヲ講ゼラレツヽアルノ
  デアルカ、伺ヒタイト思フノデアリマス
  (拍手)
  更ニ經濟上ノ問題ニ付テ御聽キシテ置キ
  タイノデアルガ、時局ガ戰時體制ヲ必要ト
  致スコトニ相成ッタ以上、注意ヲ要スル重
  大ナル點ガ多々アルト考ヘルノデアリマス
  ガ、其中デ軍需資材供給ノ擴充問題、通貨
  膨脹ニ因ル物價騰貴、貿易逆調ニ因ル爲替
  ノ動搖、是等ノ問題ハ深ク留意シナケレバ
  ナラヌ問題デアリマス、我ガ帝國ノ軍需品
  ハ、平素國防上相當ノ用意アルコトハ勿論
  デアリマスガ、奈何セン、資源ニ於テ缺乏
  セルノミナラズ、軍需工業ノ如キハ未ダ十
  分ナリト申スコトハ出來マセヌ、故ニ最惡ノ
  場合、卽チ永續的戰時狀態ノ場合ニ對スル用
  意トシテ、資源ノ確保ト工場設備ノ擴充ガ必
  要デアルコトハ申ス迄モアリマセヌ、然ル
  ニ石油ノ試掘ハ容易ニ發展セズ、重要鑛物
  ハ潤澤ナラズ、石炭液化モ亦幼稚デアリ、
  工場設備ハ、軍需品ヲ一時的需要ナリトノ
  見地ヨリ民間ニ於テハ容易ニ擴張ヲ見ナ
  イ、惟フニ現在ノ狀態ヲ以テスレバ、今囘
  要求セラレタル軍需品ニ對スル工場能力ス
  ラ憂慮セラレ、軍事費ノ消化スラ危マレル
  ノデアルガ、之ニ對シ十分ノ御用意アリヤ
  否ヤ、又將來ニ對シ何等カ適切ノ方法ヲ考
  ヘテ居ルノデアルカ、其說明ニ依ッテ國民
  ノ心配ヲ除キタイト思フノデアリマス(拍
  手
  物價騰貴ノ問題ハ、戰時ハ固ヨリ、一時
  ニ巨額ノ資金ノ散布セラレル場合ハ當然起
  ル現象デアリマスガ、特ニ公債不消化ノ爲
  メ中央銀行ノ公債脊負込ミノ多キ場合ハ、
  更ニ一層其結果ヲ齎スノデアリマス、物價
  騰貴ハ大衆ノ生活問題ニ重大ナル關係ガア
  リマスノミナラズ、物價ノ騰貴ハ軍事費ヲ
  初メ支出一切ノ基準ヲ引上ゲマス故ニ、容
  易ナラザル豫算上ノ齟齬ヲ來スコトガナイ
  トモ限リマセヌ、政府トシテハ最モ力ヲ致
  サナケレバナラヌ所デアリマス、軍需工業
  殷盛ノ關係上、偏在的ニ勞働者ニ散布セラ
  レタル資金ハ、消費節約、若クハ貯蓄奬勵
  又ハ愛國運動等ニ依リテ資金化スルコト
  必ズシモ不可能ナリトハ申シマセヌガ、公
  債消化ヲ圓滑ニシ、中央銀行ノ脊負込ミヲ少
  カラシムルガ爲ニハ各般ノ用意ガ必要デア
  リマス、要ハ經濟界ノ不安ヲ起サザルコト
  ニ注意ヲ拂ヒ、企業ノ如キモ緩急ヲ圖リ、
  公債應募ニ大ナル支障ヲ來ス虞ナキ程度ニ
  之ヲ認ムベキデアルト思フノデアリマス、
  同時ニ銀行ヲシテ理由ナキ警戒ヲ事トセシ
  ムルガ如キコトハ、是ハ取締ルベキ事ト思
  フノデアリマス、政府ハ此點ニ付キ如何ナ
  ル見解ヲ有セラレルノデアルカ、明瞭ニシ
  テ置キタイノデアリマス(拍手)
  貿易ノ逆調ヲ調整スル問題ハ、戰時體制
  トシテハ輸出入ノ管理、特ニ輸入ノ統制ト
  貿易外國際收入ノ改善ニ依リマシテ、國際
  收支ノ均衡ヲ圖リ、爲替ヲ安定シ、一面輸
  出ヲ徹底的ニ、奬勵セネバナラヌコトハ勿
  論デアリマス、政府ガ今囘提案セラレタル
  管理案モ其一案デアリマスケレドモ、而モ
  時局ノ擴大ニ伴フ輸入增加、工場設備擴張
  ニ伴フ輸入ノ增大、是等ヲ考ヘマス時ニ、
  幾多深甚ノ考慮ヲ拂フベキ點ガアリマスト共
  ニ、爲替維持ノ點ニ付キマシテハ幾多〓究ス
  ベキ問題ガアルノデアリマスガ、是ガ對策ハ
  單ニ政府ノ力ノミヲ以テ能ク調和スルコトハ
  出來マセヌ、又統制ノミニ依ッテ效果ヲ擧
  ゲ得ルモノデモアリマセヌ、眞ニ民間トノ
  協力ヲ必要トスルト考ヘルノデアリマス
  (拍手)民間トノ協力ヲ求ムルニハ、之ニ適
  合スル所ノ機關ガ必要デアリマス、政府ハ
  此點ニ關シ何等カ考慮セラレル所ガアッタ
  ノデアリマスカ、伺ヒタイノデアリマス
  更ニ此際一言致シタイノハ、我ガ忠勇義
  烈ナル皇軍ノ武勇ハ必ズ膺懲ノ目的ヲ達ス
  ルコトハ言ヲ俟タヌ所デアリマスケレド
  モ、眞ノ擧國一致ノ力ニ依リ、一日モ速ニ
  所期ノ目的ヲ達シ、平和ヲ招來セネバナリ
  マセヌ、ソレニハ國民總動員ノ體系ヲ整
  ヘ、軍事費ノ支辨、軍需品ノ供給ニ支障ナ
  カラシムルト共ニ、國民生活ノ安定、特ニ
  出征將士ノ後顧ノ憂ヲナカラシムル方法等
  ニ付キ、手落ナキヲ期サナケレバナラナイ
  ノデアリマス(拍手)更ニ特ニ政府ノ注意ヲ
  喚起シテ置キタイト思ヒマスノハ、今日國
  民ノ烈々タル擧國一致國難ニ殉ズル所ノ意
  氣ハ燃ユルガ如キモノガアリマシテ、國民
  ハ今日ノ戰時狀態ガ如何ニ長期ニ亙リマシ
  テモ、飽マデ支那ヲ膺懲シ、東洋ノ平和ヲ
  確保スル堅キ決意ヲ有シテ居ルノデアリマ
  ス(拍手)要ハ此擧國一致ノ人心ヲ如何ニ指
  導シテ、國家ノ爲メ十二分ノ成果ヲ收メ得
  ルカガ、爲政者ノ心スベキ重大ナル責任デ
  アルト考ヘルノデアリマス、軍事上ニ於テ
  精神ノ力ガ絕大ノ力ヲ有スルハ申ス迄モナ
  イ所デアリマス、是ト同樣政治、財政、經
  濟ノ點ニ付テモ、最モ此精神的作用ガ重大
  ナル影響ヲ有スルモノデアリマス、若シ其
  指導宜シキヲ得、國民ヲシテ其力ヲ十二分
  ニ發揮セシムルコトガ出來マスルナラバ、
  國力ハ一層旺盛トナッテ、戰時ノ經營ハ斷
  ジテ心配ヲ要シナイノデアリマス(拍手)是
  等ノ點ニ付キ政府ハ其指導ヲ愆ラズ十分ナ
  ル成果ヲ擧ゲンコトヲ希望スルト共ニ、吾
  吾モ亦全力ヲ擧ゲテ之ヲ支援致シタイト考
  ヘテ居ルノデアリマス(拍手)政府ハ國民ノ
  期待ニ副ヒ萬遺憾ナキ方策ヲ籌ラシ、皇軍
  ノ威力ノ相俟ッテ有終ノ成果ヲ收メラル
  ヲ信ジテ疑ハナイノデアルガ、此際軍部、
  政黨、財界其他各方面ノ間ヲ更ニ一層緊密ニ
  シ、全國民ノ衆智衆力ヲ總動員シ、之ヲ活
  用シ、水モ漏ラサザル所ノ結束力ニ依ッテ、
  今後如何ナル難局ニ遭遇スルモ、毫モ微動
  ダモセザルヤウ力ヲ致サレンコトヲ希望シ
  テ私ノ質疑ヲ終ル者デアリマス(拍手)
  〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=33

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• 034・近衞文麿

  ○國務大臣(公爵近衞文麿君)　櫻內君ニ御
  答ヲ致シマス、今次事變ニ處スル帝國ノ態
  度ハ、昨日畏クモ御勅語ニ依リマシテ中外
  ニ最モ明白ニ示サレタノデアリマス、又政
  府ト致シマシテモ、從來屢〓此點ニ付キマ
  シテ宣明ヲ致シテ居ルノデアリマス、今後
  一層其徹底ヲ期シタイト考ヘテ居リマス、殊
  ニ外國-歐米諸國ニ於キマシテハ、其國
  民ノ間ニ尙ホ少カラズ帝國ノ眞意ヲ諒解シ
  ナイ者ガアルヤウニ存ジマスルカラ、此方
  面ニ對シマシテハ、今後一層ノ努力ヲ拂ハ
  ナケレバナラヌト考ヘテ居ル次第デアリマ
  ス、是等ノ方法ニ付キマシテハ、政府ト致
  シマシテ、只今速ニ其效果ガ擧ルヤウニ考
  慮中デアリマス、尙ホ財政經濟等ノ問題ニ
  付キマシテハ、ソレ〓〓大藏大臣其他ヨリ
  御答ヲ申上ゲマス(拍手)
  〔國務大臣賀屋興宣君登摘〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=34

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• 035・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　只今ノ御質問ニ
  對シテ御答申上ゲマス、事件ノ發展如何ニ
  依リマシテハ、今後ノ戰費ガ如何ニ增大ス
  ルモ國民ハ之ヲ支援シ、議會ハ協贊ヲセラ
  ルヽノ御用意ガアルト云フコトヲ承リマシ
  テ、洵ニ心强ク感ズル次第デアリマス(拍
  手)政府ニ於キマシテモ如何ナル事件ノ擴
  大ガアリマセウトモ、之ニ對應致シマスル
  十分ノ覺悟ト準備トヲ有シテ居ル次第デア
  リマス、尙ホ今後戰費ノ財源ニ付キマシ
  テ、如何ナル方策ヲ執ルカト云フ御質問デ
  アリマスルガ、是ハ仰セノ如ク主タル部分
  ヲ公債ニ依ルト云フコトハ固ヨリ已ムヲ得
  ナイ所デアリマス、併ナガラ今後如何ニ之
  ヲ按排シテ參リマスルカト言ヒマスルコト
  ハ、今後ノ戰費ノ金額竝ニ經濟界ノ情勢如
  何ニ依ルコトデアリマシテ、只今ハ如何
  ナル按排ヲ致シマスルカト云フコトハ、
  未ダ申上ゲルニ適當ナ時期デナイト存ズル
  ノデアリマス、尙ホ此公債消化ニ關シマシ
  テ、又金融ノ疏通、資金ノ囘轉ノ速度等ニ
  關シマシテノ御質問デアリマスルガ、大體
  御質問ノ趣旨ハ結構ト拜聽致シテ居ル次第
  デアリマス、政府ニ於キマシテ考へマスル
  コトハ、公債ノ消化ニ付キマシテハ深甚ノ
  注意ヲ拂ヒ、適切ナル方策ヲ執ル積リデア
  リマスルガ、徒ニ其消化ノ急ナルコトヲ求
  メテ居ル次第デハナイノデアリマス、元來
  戰爭或ハ之ニ類似致シマスル事件ノ當初ニ
  於キマシテハ、所謂財界ハ必要以上ニ警戒
  恐怖ノ心ヲ懷クモノデアリマス、併シ事件
  ガ數箇月續キマスルト、多クハ我國ノ例ニ
  徵シマシテモ、一方戰ニ勝チ戰勝ノ氣分、
  光明-明ルイ感ジガ致シマスルト共ニ、
  一面相當多額ノ軍費ノ散布ガアリマスルノ
  デ、經濟界ハ好況ニ向ヒマシテ、寧ロ好況
  ニ向ヒ過ギルコトヲ警戒シナケレバナラナ
  イト云フヤウナ狀況ヲ呈スルノガ常ノ狀態
  デアリマス、左樣ナ狀態デアリマスカラ、
  事件ノ當初ニ於キマシテハ、資金ノ散布、
  金融ノ緩和ヲ圖リマスルコトヲ第一義ト致
  ス積リデアリマス、而シテ此多額ノ資金ガ
  財界ニ散布致サレマシテ、然ル後ニ徐ロニ
  公債ノ消化ヲ圖リマシテ、常ニ適當ナル潤
  澤ナル資金ノ供給、財界ニ於ケル其循環ヲ
  圖ル、大體斯樣ナル考デアルノデアリマ
  ス、其後ニ於キマシテハ、或ハ國債ノ公募
  モアリマセウ、郵便局ニ於ケル賣出デアリ
  マストカ、或ハ金融機關ト色々協議シテ參
  リマシテ、適當ニ其保有ヲ致ストカ斯ウ云
  フコトモ適宜致シテ參ル積リデアリマス、
  其際ニ於キマシテハ、國家的ノ心デ總テノ
  方面ガ協力シテ貰フコトヲ切ニ希望致シテ
  居ル次第デアリマス、併ナガラ只今ノ所當
  分無理ヲ致シマシテ、仰セノ如ク或ハ銀行
  ガ保有ノ證劵ヲ賣放チ、貸出ヲ囘收シテマ
  デモ公債ヲ求メナケレバナラヌト云フヤウ
  ナコトハ、一切之ヲ致サナイ決心デアリマ
  ス、資金ノ潤澤ナル供給ヲ第一トシテ參ル
  考デアリマス、隨ヒマシテ金融業等ニ於キ
  マスル今回ノ資金ノ調整ニ付キマシテモ、
  是ハ固定的ノ長期資金ノ問題デアリマシ
  テ、所謂事業ノ運轉資金デアリマストカ、
  其他ノ短期資金ハ之ヲ毫モ干涉スルノ意圖
  ヲ有セナイノデアリマス、此邊ニ誤解ナ
  ク、金融業者其他ニ於キマシテモ十分ニ
  安心ヲシテ、其融通貨出ニ努ムルコトヲ、
  此際最モ適當トスルト考ヘルノデアリマス
  其他事業ノ調整デアリマストカ、總テノ
  政策ニ付キマシテハ、政府ノ方ニ於キマシ
  テ、立法的ノ力、法律ニ依リマシテ之ヲ運
  用スルト云フ意思ノアリマセヌコトハ、仰
  セノ如クデアリマシテ、各種ノ重要ナル機
  關ニハ常ニ民間ノ協力ヲ求メマシテ、最モ
  適切ナル運用ノ方法ヲ講ジタイ、多クハ自
  主的ノ調整ニ俟チマシテ、自ラ當業者ニ於
  キマシテ、此事態ニ副ヒマスルヤウナ調整
  ヲ希望致シテ居ル次第デアリマス、無用ノ
  摩擦、無用ノ衝撃ヲ與フルコトハ一切愼ミ
  タイト考ヘテ居ル次第デアリマス
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=35

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• 036・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　御尋ノ中軍事資
  材ノ供給ノ圓滑ヲ期スルト云フコトニ付キ
  マシテハ、一々御尤デゴザイマシテ、軍部當
  局等トモ最モ緊密ナル連絡ヲ取リマシテ、
  國內デ生產ノ可能ナルモノハ勿論ヤリマス
  ルシ、間ニ合ハナイモノハ外國カラ輸入ヲ
  確保スル等、極力有ユル方法ヲ講ジマシテ、
  事缺カナイヤウニ致シタイト存ジマス
  物價問題ニ付キマシテノ御注意ノ點モ御
  尤デゴザイマシテ、殊ニ或ル物資ニ付キマ
  シテハ、輸入ヲ抑制スルヤウナ結果、其物
  ノ價格ノ暴騰ヲ來スト云フコトモゴザイマ
  スルカラ、其物ニ付キマシテハ、國內ノ配
  給ノ適正ヲ圖リマシテ、物ニ依リマシテハ、
  消費ノ抑制ヲスルト云フヤウナ方法ヲモ考
  ヘマシテ、成ベク需給ヲ合セマシテ、サウ云
  フ風ナ暴騰ノ結果ニナラナイヤウニ注意ヲ
  致シタイト存ジテ居リマス、併シ物價問題
  ハ關係スル所ガ非常ニ廣イノデアリマスカ
  ラ、有ユル方面ニ對シマシテ、出來ルダケ
  ノ注意ヲ拂ッテ參リタイト存ジテ居リマス
  所謂統制問題ニ付キマシテ、民間當業者
  トノ協力ニ付キマシテハ、政府ニ於キマシ
  テモ全ク同感デゴザイマシテ、民間當業者
  トノ協力ガナケレバ、其目的ハ達セラレナ
  イト存ジテ居ルノデアリマス、唯民間當業
  者トノ協力ノ形式、體樣ニ付キマシテハ、
  時ト場合ニ依リ、又事柄ニ依リマシテ、色
  色種々ナ方法ガアラウト存ジマスカラ、其
  時々ニ應ジマシテ、萬遺憾ナキヲ期シマシ
  テ所期ノ目的ヲ逹シタイ、斯樣ニ考ヘテ居
  リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=36

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• 037・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　大口喜六君
  〔大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=37

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• 038・大口喜六

  ○大口喜六君　先刻近衞首相ヨリ時局ニ對
  スル政府ノ方針ニ付テ御演說ガアリマシ
  ク、又廣田外務大臣竝ニ賀屋大藏大臣ヨリ
  モ御演說ガアリマシタガ、私ハ如何ニモ時
  局ノ重大ナルコトニ鑑ミマシテ、尙ホ政府
  ノ所信ヲ伺ヒタイト考ヘマスガ、只今櫻內
  君ノ御質問中ニハ、私ノ問ハント欲スル點
  モアリマシタノデ、成ベク重複ヲ避ケマス
  爲ニ、私ハ寧ロ豫メ私ノ愚見ヲ一通リ述べ
  マシテ、最後ニ政府ノ所信ヲ伺フコトニ致
  シタイト考ヘマス
  私ハ繰返シテ申シマスガ、今日ノ時局ハ
  我國ニ取リマシテ實ニ重大デアルト思ヒマ
  ス、或ハ日〓、日露ノ兩戰役當時ニモ勝ル
  ベキ一大覺悟ヲ要スルカト考ヘマス(拍手)
  洵ニ畏イコトデアリマスガ、昨日ノ開院式ニ
  於キマシテ、優渥ナル勅語ヲ賜リマシタル
  コトハ、唯々恐懼感激ニ堪ヘマセヌ、今囘ノ
  支那事變ニ付キマシテ、我ガ國民ノ嚮フベ
  キ所ハ、其御趣意ヲ奉拜致シマスレバ、洵ニ炳
  トシテ明瞭デアルト考ヘマス(拍手)私共ハ
  如何ナル艱難ヲ排シマシテモ、誤レル支那
  ノ猛省ヲ促シ、速ニ東亞ノ平和ヲ永遠ニ確
  保スルコトニ努メナクテハナリマセヌ、而
  モ我ガ忠勇ナル陸海軍將兵諸士ハ、今ヤ身
  ヲ以テ國家ニ捧ゲ、勇往邁進能ク其使命ヲ
  盡サレテ居リマス、其義烈盡忠ノ行動ニ對
  シマシテハ、洵ニ感謝感激ノ至リデアリマ
  ス、最早事此ニ至リマシテハ、假令如何ナル
  國費ヲ要シマシテモ、我ガ忠誠ナル國民ハ
  何處マデモ之ニ耐ユルノ覺悟ヲ爲サナクテ
  ハナリマセヌ(拍手)勿論政府ニ於カレマシ
  テモ、夙ニソレニ對スル萬般ノ用意ト決心
  トヲ有セラレテ居ルコトト存ジマス、併シ
  私共ガ玆ニ考ヘネバナリマセヌノハ、我國
  經濟界ノ前途デアリマス、近衞首相ガ先刻
  モ御演說ニナリマシタ如ク、吾々國民ハ所謂
  堅忍持久、飽マデモ最終ノ目的ヲ達成致サ
  ナクテハナリマセヌ、隨テ我國經濟界ノ前
  途ヲシテ益〓鞏固ナラシメ、如何ニ持續ス
  ルトモ、軍費ノ供給ニ萬遺憾ナキコトヲ期
  サナクテハナリマセヌ(拍手)ソレデ此見地
  ニ立チマスト、此場合先以テ我國財政ニ關
  シマシテ一應ノ檢討ヲ加ヘマスコトハ寧ロ
  當然ノ順序ナリト考へテ居リマス
  今度政府ガ御提案ニナリマシタ追加豫算
  案ヲ拜見致シマスト、其歲出總額ハ二十億
  餘万圓デアリマス、併シ旣ニ前議會ニ於キ
  マシテ五億餘万圓ノ追加豫算ガ議決サレテ
  居リマスノデ、之ヲ合計致シマスレバ、旣
  ニ二十五億圓ヲ超過致シテ居リマス、尙ホ
  此上ドレダケノ經費ヲ要スルノカ、ソレニ
  モ亦極メテ重大ナル關係ガ殘サレテ居リマ
  ス、而モソレニ對スル歲入ハ、其大部分ガ公
  債ヲ以テ支辨サレルコトニナッテ居ルノデ·
  アリマス、勿論今日ノ場合之ヲ公債支辨ト
  爲スコトハ已ムヲ得ザル處置デアリマス
  ノミナラズ、我國ノ經濟的實力ガ決シテ
  爾ク小ナルモノニアラザルコトハ、今日
  マデ私共ノ既ニ論ジ來ッタ所デアリマス、
  併シ世間ニハ之ニ付キマシテ二ツノ注意
  スベキ疑問ヲ持ッテ居ルヤウニ考ヘラレ
  マス、卽チ其第一ハ、此急激ニ增大スル
  所ノ政府ノ消費ニ對シテ、果シテソレニ
  應ズベキ國內生產力ガアルカドウカト云フ
  コトデアリマス、ソレカラ第二ニハ、爲ニ
  通貨ノ膨脹ヲ來シテ、物價ヲ昂騰セシムル
  ヤウナコトハナイカ、卽チ所謂惡性→ )
  フレーション」ヲ起スヤウナコトハナイ
  カ、斯ウ云フノデアリマス、然ルニ私ノ信ズ
  ル所ニ依リマスレバ、兎ニ角政府ハ是ダケ
  ノモノハ必要デアルトシテ此豫算ヲ要求サ
  レタノデアリマス、隨テ假令如何ナル方法
  ヲ講ジ、所謂夜ヲ日ニ繼グト致シマシテ
  モ、此豫算ニ應ジ得ルダケノ生產ハ增加サ
  ルベキモノダト考ヘナクテハナリマセヌ、
  果シテ然リトスレバ、ソレニ相應スル通貨ノ
  膨脹ハ決シテ恐ルヽニ足ラヌト思ヒマス、
  併ナガラ若シモ政府ノ消費ガ國內生產力ノ
  ミニ依リ難イ場合ガアリマシテ、通貨ノ膨
  脹程度ト國內生產力ノ發展トノ間ニ、苟モ
  均衡ヲ失スルヤウナコトガアリマスレバ、
  ソコニ必ズヤ物價ノ〓騰ヲ來シマス、卽チ
  所謂「インフレーション」ハ惡性ニ赴クモノ
  ト考ヘマス
  ソコデ國內物價ガ〓騰致シマスレバドウ
  ナルカト言ヘバ、申ス迄モナク爲替相場ガ
  下落スルカ、然ラザレバ輸出ガ減退スル、
  斯ウナルノガ當然ノ結果デアルト思ヒマ
  ス、爲替ガ下レバ輸出貿易ノ爲ニハ寧ロ好
  都合デハナイカト考へラレマスガ、ソレハ
  爲替相場ガ安定セル時ノコトデアリマス、
  今日ノヤウナ場合、爲替相場ガ止メ度モナ
  ク下リマスノデハ、取引ニ危險ヲ感ゼラレ
  マスノデ、輸出貿易ト雖モ恐ラクハ增進ハ
  致シマスマイ、况ヤ假令數量ガ減ゼヌニ致
  シマシテモ、外貨ノ受取高ガ減リマスノ
  デ、決シテ貿易上ニ有利デハアリマセヌ、
  ソコデ政府ハ爲替管理ニ依リテ爲替相場ノ
  維持ヲ圖ルコトヲ考ヘラレタノデアリマセ
  ウガ、成程或ル期間ハソレモ出來マセウ、
  併シソレダケデ國內物價ノ昂騰ハ防ガレマ
  セヌ、サウシテ輸出ハ減リマス、ソコデ今
  度ハ更ニ貿易管理ニ依リテ輸入ヲ抑制スル
  コトニナリマセウガ、サスレバ結局外國貿
  易ハ次第ニ縮小サレマシテ、其結果ハ輸入
  モ輸出モ共ニ減退スルコトニナルノデハナ
  イカト考ヘマス(拍手)尤モ正貨ノ現送ニ依
  リマシテ爲替ヲ維持スレバ、ソレハ格別デ
  アリマスガ、ソレニハ自ラ限度ガアルコト
  ハ言フ迄モアリマセヌ、勿論是等ノ政策モ
  當面ノ對策ト致シマシテハ或ル程度ノ必要
  ヲ私共ハ認メマス、併シ謂ハヾソレハ極メ
  テ變態的應急策デアリマシテ、決シテ喜ブ
  ベキ上乘ノ策トハ考ヘヌノデアリマス、斯
  ウ申シマスト或ハ反對ヲ受ケルカトモ存ジ
  マスガ、私ハ曾テ爲替管理ガ强化サレマシ
  タ時、寧ロソレハ見越輸入ヲ刺戟スル結果
  ニナルノデハナイカト論ジタコトガアリマ
  ス、其位ニ私ハ考ヘテ居リマス
  ソコデ今度起リマス問題ハ所謂物價對策
  デアリマス、併シ一面ニハ輸入ヲ抑制シ、
  一面ニハ通貨ヲ膨脹セシメテ置イテ、而モ
  國內ニ於ケル生產力ノ增加ガソレニ伴ハナ
  イトシマスレバ、如何ナル對策ヲ講ジマシ
  テモ到底物價ノ騰勢ニ對抗スルコトハ困難
  デアルト考ヘマス、サウナルト更ニ起リマ
  ス問題ハ所謂消費ノ節約デアリマス、今度
  ハ消費ノ節約デソレニ對抗シヨウト考ヘラ
  レルコトニナリマス、勿論浪費ハ戒メナク
  テハナリマセヌ、浪費ハ宜クナイ、又無駄
  ハ出來得ル限リ之ヲ排除セネバナリマセ
  又、併シ或ル一部ニ唱ヘラレテ居リマスヤ
  ウニ、一般的消費ノ節約ヲ厲行スルコトニ
  ナリマシタナラバ、其結果ハ果シテ如何デア
  リマセウ、今日最モ我國ニ發達セル消費財ニ
  對スル工業ハ、總テ萎靡減退スルコトニナ
  ルデハアリマスマイカ、ソレノミナラズ魚
  類ニ致シマシテモ、野菜ニ致シマシテモ、
  其消費ヲ極度ニ減退スルコトニナリマスレ
  バ、漁村農村ノ困憊ハ申ス迄モアリマセヌ
  (拍手)唯特殊ノモノニ限リマシテ必要ニ應
  ジテ其消費ノ節約ヲ奬勵スルコトハ强チ無
  用デハナイト考ヘマス、併シソレノミニ依
  リテ物價ノ騰勢ヲ抑制スルコトハ到底困難
  デアルコトヲ思ハナクテハナリマセヌ、然
  ラバ之ヲドウスルカ、斯ウ云フコトニナッ
  テ參リマス、スルト御承知ノ通リソレニハ
  所謂統制論モアリマスガ、又增稅論モアリマ
  ス、勿論需給ノ調節ヲ圖ル爲ニハ統制ヲ必
  要トスルモノガアリマス、又通貨ノ膨脹ヲ根
  本的ニ調整スル爲ニハ增稅論ハ確ニ首肯致サ
  レマス、併シ此急激ニシテ大イナル通貨ノ膨脹
  ヲ抑制スル爲ノ增稅ト致シマシテハ、一億圓
  ヤ二億圓デハ殆ド其效果ハアリマセス(拍手)
  サウ考ヘマスト、ソコニハ先以テ增稅ニ應
  ゼラルベキ國民的經濟力ノ確實性ガ大切デ
  ハナイカト考ヘルノデアリマス(拍手)殊ニ
  增稅ニ次グ增稅ヲ以テスルノハ、偶〓以テ
  國民ノ不安ヲ招來スルコトニナリマス、隨
  テ玆ニ增稅シヨウト云フノデアリマスナラ
  バ、今度ハ是デモウ大丈夫ダト云フ安心ヲ
  國民ニ與ヘテ掛ルコトガ必要デアリマス、
  實ヲ言フト國民ハ最早增稅ノ止ムナキコト
  ヲ覺悟シテ居ルト思ヒマス、唯惧ルヽ所ハ
  其歸著點ガ果シテ何處ニアルノカ、而モ其
  極メテ不確實ナル所ニ疑惑ノ念ヲ生ズルモ
  ノト考ヘマス、サウ考ヘマスト私ハ此國家非
  常ノ秋ニ當リマシテハ、須ク先ヅ非常時ノ
  方策ガナクテハナラナイト思ヒマス、唯物
  事ヲ消極的ニノミ考ヘテ、抑制抑止スルコ
  トニノミ沒頭致シマシタノデハ、人心ハ次
  第ニ萎靡沈滯スルコトヲ惧レル(拍手)
  殊ニ考ヘネバナリマセヌノハ、今日ノ場
  合假令國內ニ於ケル生產力ガ增加サルヽト
  致シマシテモ、ソレハ主ニ政府消費ニ對シ
  テデアリマス、卽チ所謂軍需的工業ニ於ケ
  ル生產力ガ增加サレルノデアリマス、勿論
  其結果ニ於キマシテハ〓リ廻ッテ同ジコトニ
  ハナリマス、併シ實ハ一時的現象トシテハ、
  所謂一般生產トノ間ニ摩擦ノ起ルコトハ當
  然ノ結果デアルト考ヘマス、卽チ政府消費
  ニ對シマシテハ、今日尙ホ生產能力ニ不足
  ヲ感ズルニモ拘ラズ、一面ニ於テハ民間消
  費ノ減退スル結果、ソレニ對スル生產力ニ
  ハ寧ロ過剩ヲ生ズル場合ナシトセヌノデア
  リマス(拍手)是等ノ產業ニ對シマシテハ、
  政府ハ寧ロソレニ對スル消費ヲ刺戟スル必
  要アリト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)ソ
  レガ軈テ我國ニ於ケル資本循環ノ一轉機ト
  モナルベキモノデアリマス、ソレノミナラ
  ズ我國ニハマダ閑却サレテ居ル事業ガ少カ
  ラズアリマス、方法サヘ宜シキヲ得マスレ
  バ必シモ大資本ヤ大工業ヲ要セズ、所謂小
  工業又ハ家庭工業トシテ發達サルベキモノ
  ガ決シテ少クアリマセヌ、由來我國ハ申ス
  迄モナク世界ニ獨特ノ社會組織ヲ有シ、殊
  ニ農村ニ至リマシテハ殆ド他ニ類例ノ少キ
  組織デアリマス、之ニ處スルノ途ハ又自ラ
  世界獨特ノモノガナケレバナラヌト考ヘマ
  ス、今日ノ如キ場合ニ當リマシテハ、殊ニ農
  村ニ對スル經營ハ一層深甚ノ注意ヲ拂ヒ、
  殊更時局ニ對應セシムルノ途ヲ講ゼネバ
  ナラヌト考ヘマス、兎ニ角我ガ國民中殆ド
  半數ニ近キ人口ヲ有スルノハ農村デアリマ
  ス、其一戶々々ハ小サイヤウデアリマシテ
  モ、集ムレバ大キナモノデアリマス、何ト
  申シマシテモ此場合ハ益、國本ヲ培養スル
  コトガ必要デアリマス、貯蓄モ固ヨリ必要
  デアリマスガ、ソレニハ自ラ限リガアリマ
  ス、併シ生產ニハ限リハナイ筈デアリマ
  ス、隨テ時局ヲ解決スベキ財源ハ、貯蓄ヨ
  リモ寧ロ生產ニアルコトヲ知ラネバナラヌ
  ト考ヘマス(拍手)サウ考へマスト、此場合最
  モ大切ナノハ、殊ニ國民ヲシテ安ンジテ其
  業ニ就カシムルコトデアリマス、只今モ政
  府提出ノ諸案ニ付キマシテ各大臣ヨリ御說
  明ガアリマシタガ、必要ナ統制ハ前ニモ申
  シマスル如ク爲サネバナリマセヌ、サリト
  テ餘リニ頻繁複雜ナル結果トシテ、割り
  事態ヲ混亂ニ陷ラシメ、國民ヲシテ其嚮フ
  所ニ迷ハシムルガ如キコトガアリマシテハ
  ナリマセヌ(拍子)是ハ最モ戒ムベキコトデ
  アルト考ヘマス、何ト申シマシテモ今日ノ
  急務ハ、先以テ國民ノ信賴ト安心トヲ得ル
  コトガ、正ニ經濟界ヲシテ安固ナラシムル第
  一ノ要件デアルト考ヘマス(拍手)所謂理外
  ノ理モ亦玆ニアルト存ジマス、固ヨリ此重
  大時局ニ當リマシテ、國民ハ尙ホ幾多重大
  ナル機牲ヲ覺悟致シテ居リマス、併シ假ニモ
  徒ニ犧牲ヲ拂ハシムルコトガアッテハナリ
  マセヌ(拍手)之ニ對シマシテハ深甚ナル注
  意ヲ政府ニ要求致シタク存ズル者デアリマ
  ス
  更ニ申述ベタイノハ外ニ向ッテ進ムベキ
  方策デアリマス、國內ノ事モ固ヨリ大切デ
  アリマスガ、併シ經濟的ニモ外ニ向ッテ
  益〓進ムベキ途ガナイ譯ハアリマセヌ、殊
  ニ此國家非常ノ時ニ當リマシテハ、外ニ向
  ヒマシテモ亦自ラ執ルベキ方策ガナクテハ
  ナラヌト思ヒマス、私ハ最早多クヲ申シマ
  セヌガ、併シ申ス迄モナク正義ハ最後ノ勝
  利者デアリマス、ソコニハ深キ信念ト勇猛
  心トヲ以テ進マルヽコトガ必要デアルト考
  八·三
  次ニ公債ノ募集方法ニ付キマシテ申述ベ
  マスガ、過日來一億圓ノ公債ヲ發行サレル
  ニ付キマシテ、有力銀行ノ「シンジケート」
  ヲ組織セシメ、又ハ信託會社ナドノ當事者
  ニ對シテ應募方ヲ申入レラレタ、ノミナラズ
  小額愛國公債ノ必要ヲモ發表サレマシタ爲
  ニ、銀行業者ノ間ニハ、此上何時何程ノ公債
  ノ應募ヲ申込マルヽヤモ圖ラレヌト云フノ
  デ、頗ル不安ノ狀態ヲ惹起シ、爲ニ金融梗
  塞ノ原因ヲ成シテ居ルト承ッテ居リマスガ、
  ソレハ餘リニ話ガ小サ過ギマス(拍手)マサ
  カ右樣ノ事實ハ政府ニハアルマイト存ジマ
  スガ、併シ事ハ小ニ似テ其影響スル所ハ頗
  ル大ナルモノガアリマス、是ハ此場合一應
  其事實ヲ政府ヨリ說明ヲ願ッテ置キタイト
  考ヘマス
  最後ニ一言致シタイノハ從軍者家族ノ救護
  ニ關スル事デアリマス、例ヘバ官吏、會社員
  其他俸給ニ依ッテ居ラレタ諸君ニハ、幸ニ出
  征中ト雖モ其俸給ハ從前通リ支給サレルコ
  トニナッテ居ルヤニ承リマス、洵ニ結構ナコ
  トト存ジマス、併シ其會社ニソレダケノ力
  ノ無イモノガ世間ニハアリマス、ソレノミ
  ナラズ農山漁村竝ニ中小商工業者ナドカラ
  出征セラレル諸君ニ對シマシテハ、殆ド其
  途モアリマセヌ、其地方々々ニ依リマシテ
  適當ナ救護方法モ出來テハ居リマスガ、中
  ニハ頗ル氣ノ毒ナ事情ニアル者ガ決シテ少
  クアリマセヌ、商業上ノ手形ナドヲ銀行カ
  ラ嚴シク督促サレマシテ困ッテ居ラレル家
  族モナイデハナイ、法律ニ依リマシテ救護
  サレ得ル迄ニ至ラヌ人デ、而モ推察スベキ
  情狀ノ人々ニモ何トカシテ適當ノ救護ノ方
  法ヲ全カラシメタク考ヘマス(拍手)勿論
  是ハ餘程愼重ナ〓究ヲ要スルコトデアリマ
  シテ、地方團體等トモ適當ニ連絡サレル必
  要ガアリマス、併シ何ト申シマシテモ所謂
  銃後ノ務ハ出征者ヲシテ後顧ノ憂ナカラシ
  ムルコトニ在リト私ハ考ヘマス(拍手)政府
  ニ於キマシテハ篤ト此邊ノ事ヲ考慮致サレ
  マシテ、十分ノ御盡力アランコトヲ希望ス
  ル次第デアリマス
  要スルニ此非常時ニ處スルニハ經濟上ニ
  モ亦非常ノ策ガナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、此場合一般產業ノ發展ヲ駢行セシムル
  コトハ到底不可能ナコトダトシテ、稍〓困却
  サレル傾向ガアルヤニモ思ヒマスガ、成程
  新ニ大資本ヲ要スル工業ナドニ付キマシテ
  ハ其通リデアラウト思ヒマス、併シ今日迄
  ニ發達シテ居リマスモノヲ、ミス〓〓減退
  セシムルノミナラズ、故ラニ減退セシムルヤ
  ウナコトヲ致シマスルノハ、洵ニ思ハザル
  ノ甚シキモノデアリマス(拍手)况ヤ農山村
  ニ對スル施設ヲ以テ今日ノ應急策ニアラズ
  ト爲シ、ソレヲ閑却スルガ如キコトガアレ
  バ結局國本ハ衰へマス、言フ迄モナク我國
  ハ比較的ニ資源ノ少イ國デアリマス、少イ
  資源ヲ以テ廣イ世界ニ雄飛致ス爲ニハ、智
  慧ト勞力ト工夫トデ戰ハナクテハナリマセ
  ヌ、ソコニ我國ニハ我國ノ執ルベキ途ガア
  リマス、現政府ニ於テ此處ガ御分リニナツ
  テ居ラヌ筈ハナイト私ハ信ジマス、勿論斯
  ル時局ニ方リマシテハ所謂最惡ノ場合ヲモ
  考慮致サネバナリマセヌ、ソレニ對シテ
  長々ト私ノ意見ヲ申述ベマスヨリモ、寧ロ
  政府ノ之ニ對スル御所信ヲ伺ヒタイノデア
  リマス、私ハ以上ノ意見ヲ述ベマシテ、之
  ニ對シマス政府ノ御所信ヲ伺フコトニ致シ
  マス(拍手)
  〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=38

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• 039・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　只今ノ御質問ニ
  對シテ御答申上ゲマス、此非常狀態ニ於テ
  執ルベキ經濟政策ニ付キマシテ縷々御意見
  ガアリマシタガ、大體御同感ニ存ズル次第
  デアリマス、又今後ノ國民ノ執ルベキ覺悟
  ニ付キマシテノ御話デアリマシテ、洵ニ是
  モ有難ク拜聽致ス次第デアリマス、此經濟
  界ニ處シマス政府ノ方針ニ付キマシテハ、
  大體先刻モ申上ゲマシタ通リデアリマシ
  テ、此我國ノ支那軍膺懲ノ目的ヲ達シマス
  爲ニ必要ナル物資ト、資金ト、勞力ト云フ
  モノヲ動員致シマシテ、此方面ニ向ケルト
  云フコトヲ主眼ト致シテ居ル次第デアリマ
  ス、隨ヒマシテ其外ノコトニ付キマシテモ、
  仰セノ如ク何モ之ヲ抑制スルコトハ必要
  ガナイノデアリマス、寧ロ出來ルダケ順調
  ナル發達ヲ希フト云フコトハ無論ノコトデ
  アリマス、隨ヒマシテ例ヘバ消費ノ節約ニ
  付キマシテモ、海外ヨリ輸入致シマスル物
  資竝ニ之ヲ原料ト致シマスルモノニ付キ
  マシテハ、大ニ其節約ニ努メナケレバナラ
  ナイノデアリマスルガ、原料ハ國內ニ於テ
  生產セラレ、國內ニ於テソレガ加工致サレ
  マスヤウナモノニ付キマシテハ、何モ消極
  的ノ措置ヲ執ル必要ハ毫モナイノデアリマ
  ス、寧ロ斯ルモノニ付キマシテハ、仰セノ
  如ク其生產ヲ擴充シテ國民ノ豐ナル消
  費ヲ滿足セシムルコトヲ更ニ適當トス
  ルト考ヘルノデアリマス、資金ニ付キ
  マシテモ同樣デアリマシテ、先程モ
  申上ゲマシタルガ如ク、主トシテ輸
  入ニ俟チマスル物資ノ調整ト云フコトヲ主
  眼ト致シマシテ資金ノ按排ヲ致ス積リデア
  リマス、從來カラ國內ニアリマス產業ニ付
  キマシテモ、ソレガ所謂戰用資材、生產資
  材ト云フモノヲ特ニ消費スルト云フヤウナ
  場合デアリマセヌケレバ、毫モ生產ヲ抑制
  スル必要ハナイノデアリマシテ、其運轉資
  金等ニ付キマシテハ、從來ノ如ク潤澤ナル
  供給ヲ確保スルト云フコトハ又是レ無論ナ
  ノデアリマス、斯ノ如ク所謂時局ノ目的ヲ
  達シマスモノニ付キマシテ力ヲ集注シ、ソ
  レ以外ノモノハ努メテ之ヲ抑制スルコトヲ
  避ケル、斯樣ナ方針デ參リタイノデアリマ
  ス、隨ヒマシテ此物價騰貴ニ付キマシテモ、
  其根本ガ確デアリマスナラバ、生產ト資金
  トノ釣合ト云フモノガ取レルノデアリマシ
  テ、根源的ニハソコニ適合ヲ見出ス次第デ
  アルノデアリマスカラ、所謂末梢的ニ部分
  部分ノ歪ミヲ起シマスモノニ對シマシテ國
  民ノ自覺ヲ促シ、已ムヲ得ナイ場合ニハ暴
  利取締令等ヲ運用致シマスレバ、相當ノ效
  果ヲ擧ゲ得ルモノト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス
  增稅ニ付キマシテモ、仰セノ如ク國民ノ經
  濟力ヲ阻碍シナイト云フコトガ第一デアリ
  マシテ、財政ノ收支ヲ合セマスコトハ、斯
  ル際ニ於キマシテハソレニ拘泥スル必要ハ
  ナイノデアリマス、常ニ金融、經濟兩方ノ
  狀況ヲ見マシテ、適當ナル按排ヲ致シテ行
  キタイト思フノデアリマス
  尙ホ最後ニ公債ノ募集ノ方法ニ付キマシ
  テ御尋ガアリマシタ、先般-我ガ古キヨ
  リ組織サレテ居リマス國債「シンジケート」
  團ニ加盟致シテ居リマス銀行或ハ信託會社
  ガ、進ンデ一億圓ノ應募ヲ致スト云フコトニ
  致シタコトハ、是ハ事實デアリマス、今後
  多額ノ資金ガ市場ニ散布サレマス場合ニ於
  キマシテ、金融機關ガ斯樣ニ自發的ニ色々
  公債消化ニ付テ協力致シマスコトハ、極メ
  テ適當ナル措置デアルノデアリマス、但シ
  仰セニアリマシタ如ク、ソレニ依ッテ金融ノ
  梗塞ヲ生ズルヤウナコトハ、努メテ之ヲ避
  ケナケレバナラナイノデアリマシテ、其
  億圓ニ付キマシテモ、拂込ノ期日等ニ付キ
  マシテハ意ヲ用ヒマシテ、之ヲ後ニ繰延ベ
  テアルノデアリマスルガ、尙ホ只今ノ如ク
  金融ノ疏通不十分ナル時ニ當リマシテ、先
  刻モ前ノ質問ニ對シテ御答申上ゲマシタル
  ガ如ク、此公債ノ消化ニ急ナルノ餘リ、金
  融機關等ニ其公債ノ購入ヲ强ヒマスルコト
  ハ勿論、自發的ニ於テモ餘リニ急激ニ參リ
  マスルコトハ之ヲ避ケタイト思フノデアリ
  マス、サウ致シマシテ資金ノ供給ガ潤澤ト
  相成リ、金融機關ノ資力ガ十分ニ滿チマシ
  テ、公債ニデモ向ハナケレバ金ノヤリ場ガ
  ナイト云フ風ニナッテ初メテ保有セシムル
  コトニ努メル、斯樣ナ方法デ行キタイノデ
  アリマシテ、只今日本銀行ニ於キマシテモ
  金利政策其他ニ於キマシテ、又銀行ノ取引
  先ノ擴張、或ハ擔保物ノ擴張、進ンデ必要
  ナル場合ニハ、金融機關ノ持ッテ居リマス
  ル公債ノ買入等ニ付キマシテモ、十分ノ便
  宜ヲ圖ル手段ヲ既ニ講ジテ居リマスルシ、
  政府ニ於キマシテモ今後發行致シマスル公
  債ハ、當分總テ日本銀行ノ引受ト致シマシ
  テ、先ヅ市場ニ資金ヲ散布シテ後ニ、然ル
  ベキ時ニ是ガ吸收ヲ圖ルト云フコトニ致ス
  次第デアリマス(拍手)又提案ヲ致シテ居リ
  マスル臨時資金調整法ニ於キマシテハ、金
  資金特別會計ヲ以テ日本興業銀行債劵ヲ應
  募セシムルノ途ヲ開クベク規定致シマシタ
  ノデアリマスルガ、此法律ノ御協贊ヲ受ケ
  マスルナラバ、金資金特別會計ハ、先ヅ興
  業債劵ノ旣存ノ法律ニ依ル發行限度ノ餘力
  約二億五千万圓デアリマスルガ、之ヲ引受
  ケマシテ、潤澤ナル資金ノ供給ヲ圖ル積リ
  デアリマス、是ハ金資金ニアリマスル資金
  デアリマスルカラ、何等市場カラ資金ヲ吸
  收スルコトナク、ソレガ市場ニ散布サレル
  ト云フコトニナルノデアリマス
  愛國公債ノコトデアリマスルガ、是ハ左
  樣ナ名稱ノモノヲ出シマスル考ハアリマセ
  ヌノデ、先刻モ御說明申上ゲマシタガ、此
  際特ニ收入ノ殖エマスルヤウナ方面モアリ
  マシテ、其中ニハ平素貯蓄ノ習慣ノ行渡ッテ
  居ナイヤウナ方面モアリマスルノデ、斯ル
  層ニ對シテ餘リ資金ノダブ付キマスルコト
  ヲ防グ意味デ、割增金附勸業債劵ヲ發行ス
  ル次第デアリマス、是モ其限度等ハ其狀況
  ニ應ジテ適當ニ調整致シマシテ、是ダケノ
  モノヲ必ズ募集スル、是モサウ云フ風ナ致
  シ方ハ致サナイ、左樣ナ考デアリマス、大
  要御答辯申上ゲタ次第デアリマス(拍手)
  〔國務大臣馬場鍈一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=39

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• 040・馬場えい一

  ○國務大臣(馬場鍈一君)　應召軍人ノ家族
  遺族ノ扶助其他銃後ノ後援ニ付キマシテ
  ハ、事變以來私共モ日夜苦心致シテ居ル次
  第デアリマス、地方長官、市町村長、其他
  ノ關係團體ニモ十分ノ督勵ト協力ヲ求メテ
  今日ヤッテ居ルノデアリマスルガ、ソレ〓
  ノ場合ニ種々事情モ異ッテ居リマシテ、之
  ニ對シテ徹底セル扶助ヲ爲スト云フコト
  ハ、只今御論述ノアリマシタ通リ中々ニ困
  難ガアルノデアリマス、併ナガラ政府ト致
  シマシテハ有ユル努力ヲ拂ヒマシテ銃後ノ
  後援ノ全キヲ期シタイト考ヘテ居リマス、
  只今ノ御演說モ十分ニ拜承致シマシタ、私
  共ハ今後此方面ニ付テハ篤ト考究ヲ重ネツ
  ツ、銃後ノ後援ノ普及徹底ヲ合理的ニ行フ
  コトヲ實行シタイト考へテ居リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=40

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• 041・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　秋田〓君
  〔秋田〓君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=41

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• 042・秋田清

  ○秋田〓君　諸君私ハ近衞內閣總理大臣ニ
  對シマシテ、現下ノ重大時局、及ビ豫想セ
  ラレマスル將來ノ超非常時局ヲ、如何ニ變
  理セラルベキカノ、政機運用ノ根本義ニ付
  キマシテ、聊カ御尋申上ゲタイト存ズルノ
  デアリマス、北支事變勃發ノ際、政府ハ急
  遽擧國一致ノ體樣ヲ整備セラルヽト共ニ、
  所謂現地解決、不擴大方針ノ下ニ當面ノ時
  局ニ善處セラレマシタガ、其後ノ情勢ハ先
  刻來當局ヨリ御報告ノ通リ、事態益〓發展
  シテ底止スル所ナク、軍事行動トシテハ平
  津地方ヨリ上海方面ハ勿論、遂ニ相手國ノ
  國都南京ニマデモ及ビ、事件費ト致シマシテ
  ハ、特別議會ニ於ケル五億ノ成立豫算ヲ以テ
  シテハ到底之ヲ賄フコト叶ハズ、玆ニ此臨時
  議會ヲ召集セラレテ、二十億有餘ノ巨大ナ
  ル事件費協贊ヲ求メラルヽニ至リマシタ、
  斯クテ北支ノ一角ニ起リマシタ事變ハ、今
  ヤ全支那ニ波及シ、最早單ナル事變ノ域ハ
  遙ニ逸脫致シマシテ、日支兩國ハ全ク戰爭
  ノ狀態トナッタノデアリマス、是ハ正ニ現前
  ノ事實デアリマス、然ルニ今尙ホ形式上ハ
  國交存續ノ狀態ニ置カレテ居ルノデアリマ
  ス、是ハ開院式ニ於テ拜シマシタル御勅語
  ニ「支那ノ反省ヲ促シ速ニ東亞ノ平和ヲ確
  立セム」ト宣ハセラレタ、其御聖旨ニ順應
  シ奉ル御考ニ依ルモノトハ存ジマスルケレ
  ドモ、餘リニモ事態擴大セル今日、果シテ
  尙ホ此儘デ以テ宜シイノデゴザイマセウ
  カ、如何デアルカ、嘗テ閣僚ノ一人廣田外
  相ハ余ノ在職中、卽チ廣田外務大臣在職
  中戰爭ナシト、帝國議會ニ於テ揚言セラ
  レタコトガアリマシタ、夫レ此レノ關係カ
  ラ、此名實相副ハナイト見ラルヽ擧動ヲ
  バ、敢テ續ケラルヽノデハ勿論アルマイト
  ハ存ジマスルケレドモ、私ハ聊カ惑ヒナキヲ
  得ナイノデアリマス、若シ這般ノ事態ガ何
  處マデモ一ツノ事變ニ過ギズシテ、國交ハ
  依然繼續ノ狀態ニアルト主張セラルヽナラ
  バ、我ガ外交機關ハ何故ニ事變解決ニ付
  テ、南京政府ニ向ッテ外交上ノ大努力ヲ爲
  サレナイノデアルカ(拍手)國民ハ廣田外
  相、川越大使等ノ御健在ヲ希望シテ居リマ
  ス、併シ事實ハ廣田君、川越君ガ如何ニ御
  焦慮ナサレテモ、今ハ何トモヤリヤウノナ
  イ狀態デハゴザイマセヌカ、サレバ姑息ノ
  態度ハ一切之ヲ止メラレテ、國際的常道ヲ
  履ミ、聖旨ニ基キ、大義名分ヲ中外ニ闡明
  シ、全世界ヲシテ諒解セシムルト共ニ、軍
  事行動ハ勿論、政治、外交、財政、經濟、
  產業、思想、其他各部面ニ亙ッテソレ〓〓
  根本方針ヲ樹立シ、所謂戰時體制ヲ整ヘ、
  以テ眞ニ國民ヲシテ心配ノ中ニモ少シモ惑
  フ所ナク、一致協力大覺悟ノ下ニ勇往邁進
  ノ實ヲ擧ゲシムルガ、時務ノ最モ急ナルモ
  ノデハゴザイマスマイカ(拍手)私ハ今日ノ
  擧國一致ノ有樣ヲ以テ、決シテ不十分ダト
  申スノデハアリマセヌ、國民ハ實ニ淚グマ
  シキ、正心誠意ヲ以テ時局ヲ憂慮シ、眞ニ
  文字通リ獻身的犠牲ニ甘ンズル覺悟ト努力
  ヲ拂ッテ居ルノデアリマス、擧國一致ノ國
  民的態度ハ完全ニ整ッテ居リマス、併ナガ
  ラ率直ニ申シマスレバ、是ハ麗シキ我ガ國
  民性ノ然ラシムル所デアリマシテ、此國民
  ノ意氣、精神ニ對シマシテ、政府トシテ執
  ラルベキノ方途ハ完全ニ盡サレテ居ルトハ
  申シ難イノデアリマス(拍手)政府トシテハ
  右申セシ如ク國策ノ根本方針ヲ樹立シ、是
  ガ遂行ニ向ッテ徹底的理解ニ基ク國民ノ一
  致協力ヲ求メルコトコソ、何ヨリモ急務デ
  アルト考フベキデハアリマセヌカ、ヨリ深
  キ理解ニ基ク所ノ擧國一致、此點ニ付キマ
  シテモ私ハ政府ノ深甚ナル御考慮ヲ求メ、
  信念ノ存スル所ヲ承ラント欲スル者デアリ
  マス(拍手)
  次ニ國策ノ根本方針ヲ樹立遂行スル先決
  條件トシテ國內相和、卽チ一切ノ相剋摩擦
  ヲ解消スルコトガ、何トシテモ肝要デアル
  ト信ズルノデアリマス、表面ハ此時局ノ波
  ニ押サレテ、摩擦相剋ハ解消ノ形ニ見エマ
  スガ、一皮膜ヲ撤シテ之ヲ見レバ、ソコニ
  私ハ大ナル憂ヲ持ツ者デアリマス、此點ニ
  付キマシテハ、流石ニ近衞公爵ハ組閣ニ際
  シ、政綱ノ第一義トシテ聲明セラレマシタ
  ガ、遺憾ナガラ立言言行併セ濟サレテ居ル
  トハ申シ難イノデアリマス、ドウカ一日モ
  早ク對立相剋ノ解消ニ付キマシテ、拔本塞
  源ノ方針ヲ樹テ、之ガ實行ニ當ラレタイモ
  ノデアリマス、具體的ニ是レ〓〓ト申上ゲマ
  スルコトハ此際障リアリト存ジマスルカラ、
  敢テ玆ニ開陳致シマセヌ、是ハ固ヨリ至難
  ノ業デハアリマスルガ、眞ニ己ヲ空シウシ
  テ、神ノ御前ニ立テル御心持ヲ以テ、能ク
  我ガ國體ノ本義ニ徹シ、忠良ナル臣子ノ心
  カラナル至誠至情ヲ振ヒ起シ、以テ解決ノ
  大策ヲ案ゼラレマシタナラバ、必ズヤ現代
  ニ最モ有效適切ナル道ガ開ケルコトト存ジ
  マス、一條ノ大道ガ開ケマシタナラバ、次
  次ニ各方面ノ相剋ヲ解除スル幾條ノ徑路ガ
  自ラ開ケマシテ、更ニ是ガ綜合セラレテ、
  一切ノ摩擦相剋總テ解消スルニ至ルデアリ
  マセウ、聰明叡智而モ名利ニ超然タル近衞
  公爵トシテ、苟モ御考ガ決リマシタ以上
  ハ、何等遲疑セラルヽコトナク勇斷果決ア
  ランコトヲ望ムノデアリマス、我ガ崇高ナ
  ル國體ノ眞姿顯現ト、精神、物質兩方面ニ
  亙ル健實ナル國民生活ノ安定ニ内ニノ、輔
  弼ノ重責ヲ盡サルヽニハ、大勇猛心ヲ發揮
  シ、大乘的解決ニ御努力アランコトヲ只管
  希望致スノデアリマス(拍手)
  偖テ相剋摩擦ガ解消サレ、國內相和ヲ如
  實ニシテカラ、次ニ行フベキハ國策ノ樹立
  ト政權强化ノ問題デアルト思フノデアリマ
  ス、斯ク申セバ或ハ國策ガナイトカ、政府
  ノ力ガ徵弱デアルトカニ聞エマシテ、何ダ
  カ政府攻撃又ハ非難ニ當ルヤウニモ見エマ
  セウガ、私ハ決シテ左樣ノ心事ヲ持ツ者デ
  ハアリマセヌ、此時局ニ當面致シマシテ
  ハ前ニモ申シマシタ通リ、何處マデモ確
  乎不拔ノ國是國策ヲ遂行セネバナリマセヌ
  カラ、近衞公爵ノ內閣ニ於カレマシテ、現
  ニ公爵ガ抱藏セラルヽ所ノ大經綸ヲバ、速
  ニ廟議決定ノ形ヲ整ヘラレタイト希望スル
  ノデアリマス(拍手)ソレト共ニ國民ニ之ヲ
  理解セシメテ、而シテ是ガ實行ノ力ヲ更ニ
  一層强化セラルヽヤウ手順ヲ運バレ、以テ
  其成果ヲ擧ゲラレタイトノ意味ヲ申スニ外
  ナラヌノデアリマス(拍手)今日ハ有史以來
  眞ニ未曾有ノ難局デアルコトニ勿論御異存
  アルマイト存ジマスルカラ、國策ノ案出ニ
  ハ蒭蕘ノ言ト雖モ之ヲ藐視セラレヌヤウ、
  國民的全智全能ヲ集中シ、又其實行ノ力ハ
  强キ上ニモ强カルヤウアリタイト存ズルノ
  デアリマス(拍手)而シテ政權ノ强化ハ單ニ
  法規ノ上ニ權力ノ擴張ヲ圖ルノミデナク、
  制度組織ノ上ニモ、亦人物配置ノ上ニモ何
  等カ御工夫ヲ要スルモノアリハシナイカト
  存ジマス(拍手)更ニ此時局ニ對シ、上下信
  賴ノ中心ニ立テル近衞公爵ノ御心掛トシテ
  ハ、單ニ當面ノ國務ニ善處セラルヽダケデ
  ハナク、百尺竿頭一步ヲ進メテ、雄大ナル
  世界政策ノ遂行ニ邁進シ、所謂禍ヲ轉ジテ福
  ト爲スノ積極策ヲ採ラレタイト希望致シマ
  ス、ヤリ樣ニ依ッテハソレガ確ニ可能デアル
  ト私ハ竊ニ信ズルモノデアリマス、今日我ガ
  國民奉公ノ決意ハ眞ニ悲壯ナルモノガアリマ
  ス、戰場ニ於テハ永ク歷史ノ華ト稱ヘラルベ
  キ幾多ノ美談アルノミナラズ、銃後ノ國民ノ
  努力ニ付テモ亦實ニ驚クベキ程ノ赤誠ガ顯
  ハレテ居リマス、是ハ單ニ抗日膺懲ト云フ
  ガ如キ、當面ノ問題ニ對スルノミデハナ
  ク、今ヤ進ンデ世界ニ橫ハル相剋摩擦ノ根
  本解消、卽チ東洋永遠ノ平和乃至世界ノ眞
  ノ平和ノ確立ニ付キ、衷心深ク大イハ期ス
  ル所アル結果ナリト考へラルヽノデアリマ
  ス(拍手)國民ノ大犠牲ハ屢〓要求スベキモノ
  デハアリマセヌ、又之ヲ小出シニシテハナ
  リマセヌ、故ニ此機會ニ於キマシテ最後ノ
  解決ヲ目標トシ、吾ヨリ古ヲ成ス底ノ雄心
  憤發ヲナサレテ、天業恢弘ニ邁進セラレン
  コトヲ切望シテ止ミマセヌ(拍手)而シテ之
  ニ對スル國民ノ支持ト後援ハ絕對ナリ、無
  限ナリト云フコトヲ敢テ申上ゲテ置クノデ
  アリマス(拍手)
  以上申述べマシタ數項目ニ付キ私ノ說明
  ハ洵ニ不十分デアリマシテ、何レモ所謂含
  胡微言ノ謗ヲ免レナイカト存ジマスルガ、
  近衞首相ハ能ク御諒解下サル筈ト信ジマシ
  テ、敢テ玆ニ長談義ヲ差控ヘマス、要スル
  ニ第一ハ這度ノ事變ノ本質ニ基ク大義名分
  ト、根本方針ノ闡明ニ付テ、第二ハ時局ノ
  要求ニ基キ、ヨリ深キ理解ニ因ル國民的結
  束ニ付テ、第三ハ時局對策トシテノ摩擦相
  剋ノ根本解消ニ付テ、第四ハ國策ノ樹立遂
  行ト政權强化ニ付テ、第五ハ雄大ナル世界
  政策ノ決意ニ付テ申述べタ心算デアリマ
  ス、何卒右五箇條ニ亙リマシテ、御差支ナ
  キ限リ御所懷ノ一端ニテモ御披瀝下サイマ
  スルナラバ、此際國民ト共ニ極メテ欣幸ト
  スル所デゴザイマス(拍手)
  〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=42

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• 043・近衞文麿

  ○國務大臣(公爵近衞文麿君)　秋田君ニ御
  答ヲ致シマス、支那ニ對スル帝國ノ根本方
  針ハ、先程モ此壇上ニ於キマシテ申述ベマ
  シタ通リデアリマス、殊ニ昨日ノ御勅語ニ
  依リマシテ、大義名分ハ旣ニ明白ニ示サレ
  テ居ルト考ヘルノデアリマス(拍手)只今秋
  田君ハ、時局ニ關シマシテ縷々御所見ヲ御
  述ベニナリマシタガ、其大體ノ御趣旨ニ於
  キマシテハ御同感デアリマス、國民ヲシテ
  此時局ヲ一層能ク認識セシムル必要ガアル
  ト云フヤウナ御言葉デアリマシタガ、是亦
  御同感デアリマシテ、政府ト致シマシテ
  ハ、之ニ向ッテ努力ヲ惜マヌ積リデアリマ
  ス、又相剋摩擦ノ解消ト云フコトニ付テモ
  御話ガゴザイマシタガ、此事ハ此內閣組閣
  以來ノ重大ナル使命ノ一ツト考ヘテ居リマ
  ス、斯ル非常ノ事態ニ際會致シマシテ、一
  層其必要ヲ痛感スル次第デアリマス、將來
  ノ國策遂行ニ付キマシテ、政府ニ覺悟ヲ促
  ス激勵ノ御言葉ガアリマシタガ、之ニ對シ
  マシテハ深ク感謝致シマス、精々御趣意ニ
  副フヤウニ努力致ス積リデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=43

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• 044・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　片山哲君
  〔片山哲君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=44

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• 045・片山哲

  ○片山哲君　私ハ社會大衆黨ヲ代表致シマ
  シテ、政府ニ向ヒ外交、財政、產業ノ問題
  ニ付キマシテ質問ヲ致シタイト思フノデア
  リマス、就キマシテハ先ヅ最初ニ私共ノ立
  場ヲ申述ベタイト存ジマス、言フ迄モナ
  〃、今次ノ事變ハ極メテ重大デアリマシ
  テ、且ツ未曾有ノ重大性ヲ持ッテ居ルノデ
  アリマス、私共ハ此事變ノ進展ニ應ジマシ
  テ、愼重ナル態度ト又考慮ヲ拂ヒマシテ、
  現內閣ノ揭ゲテ居リマシタ今マデノ主張ヲ
  支持激勵シテ參ッタノデアリマス、所ガ政
  府ノ從來唱ヘテ居リマシタ不擴大方針ヲ、
  今日一擲セザルヲ得ナクナッタノハ、我國
  ノ一貫シテ居リマス日支提携、東洋永遠平
  和ノ見地カラ考ヘマスト、極メテ遺憾ノコ
  トデアルト思フノデアリマスルガ、併シ事
  玆ニ至リマシタ以上ハ、所期ノ目的達成ノ
  爲ニ最モ適切ナル手段ヲ檢討シテ、以テ異
  境ノ空ニ戰ッテ居リマスル所ノ將兵ノ勞苦ニ
  對ヘマスルコトガ、政府竝ニ國民ニ課セラ
  レタル最モ重大ナル任務ト思フノデアリマ
  ス(拍手)吾々ハ此ノ難局突破ノ爲ニハ眞
  ノ擧國一致、卽チ全國民ノ熱情ヲ傾倒致
  シマスル所ノ國民協力ニ依ル外、解決ノ
  途ハナイト考ヘルノデアリマス(拍手)此意
  味ニ於キマシテ、新シイ此擧國一致ニ參加
  致シ、國難突破ノ爲ニ微力ヲ傾倒致シタイ
  ト思フノデアリマス(拍手)私ノ質問モ此見
  地ニ起ッテノ故デアリマスルカラ、近衞內閣
  ヲ鞭撻シ且ツ激勵シ、以テ非常時克服ノ爲
  ニ色々ノ點ヨリ質問ヲ展開致シタイト思フ
  ノデアリマス
  先ヅ第一ニ首相ニ對シテ質問ヲ致シタイ
  ノデアリマスガ、其點ハ時局進展ヲ私共ガ
  考ヘマスル時ニ、先ヅ對支根本政策、卽チ
  今日ノ事變ノミナラズ、全般的ニ支那問題
  ノ根本政策ヲ、此機會ニ於テ樹立スル必要
  ガアルノデハナカラウカ、而シテ其爲ニハ
  國民ノ全協力ヲ求メル外交機關ノ設置ヲ必
  要トスルノデハナイカ、此點ニ關シテ首相
  ノ所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、之ヲ重大
  ニ考ヘマスル所ノ私共ノ考ハ、今次ノ問題
  ハ、內ニ在リマシテハ國民生活ノ安否ニ係
  ル問題デアリ、外ニ在リマシテハ東洋平和
  ノ達成ノ成否ニ係ル問題デアリマス、內外
  二ツニ形ハ岐レルト雖モ、由テ考ヘマスル
  點ハ一ツニ歸スルノデアリマス、隨テ其對
  策モ一ツトシテ考ヘテ行カナクテハナラナ
  イノデアル、卽チ內ニ在ッテ積極的革新ヲ
  促サザルヲ得ナクナッテ居リマスル今日、其
  革新ノ機運ト、其革新ノ協力ヲ以テコソ、
  始メテ日支關係ノ窮通ヲ爲シ得ル途ヲ拓ク
  ノデハナイカト云フコトヲ私ハ考ヘルノデ
  アリマス(拍手)
  更ニ又支那ガ我ガ膺懲ノ爲ニ出征セル本
  義ヲ知ッテ、飜然トシテ悔悟スルノ機緣ト
  ナリ、其機會ヲ與ヘルト云フコトガ最モ今
  日必要ナルコトデアルト云フコトヲ痛感ス
  ル者デアリマス(拍手)國內革新ノ波ガ波紋
  描イテ、日支事變窮通ノ途ヲ開クデアラウ
  ト云フコトヲ私共ハ確信スルノデアリマ
  ス、卽チ其爲ニ國民協力ト總意ヲ集注致シ
  マシタ擧國的外交機關ノ設置ヲ今日必要ト
  スルコトヲ私共ハ考ヘ、以下其理由ヲ述べ
  テ見タイト思フノデアリマス
  極ク〓略ヲ申述ベルニ止メタイト思ヒマ
  スガ、第一ハ一旦緩急アル場合ニ我ガ國民
  ハ擧國一致國難ニ當ルト云フコトハ、我ガ
  國民性ト國情ト歷史ノ然ラシムル美風デア
  ルト云フコトハ申ス迄モナイノデアリマ
  ス、併ナガラ之ニ加フルニ軍部ガ豫テ唱ヘ
  テ居リマシタ廣義國防ト、首相ガ組閣當時
  聲明サレマシタ社會正義、國際正義ヲ信賴
  致シマシテ、極メテ敏活ナル擧國一致行動
  ヲ執ルコトガ出來ルヤウニナッタト云フコ
  トヲ考ヘナケレバナラナイノデアリマス、
  卽チ首相ノ懷カレル理想ト信念ニ共鳴致シ
  マシテ、玆ニ擧國一致ノ結成ガ出來テ居ル
  ノデアリマス、ソコデ此國民ノ信賴ニ應ヘ
  ル爲ノ對策ヲ立テナクテハナラナイ、私ノ
  今唱ヘマシタ國民協力ニ依ル外交機關ノ設
  置ハ擧國一致ノ延長デアッテ、國民ノ協力
  一致ノ下ニ、對外政策、對支政策ノ根本策
  ヲ樹立スルコトガ、今日最モ時宜ヲ得タ、且
  又必要ナコトデアルト信ズルノデアリマス
  第二ハ政府ハ前議會ニ於テ、相手方ノ出
  方ニ依ッテ其場ニ至ッテ事ヲ定メナクテハナ
  ラナイト云フヤウナ點ニ付テ述べラレテ
  居ッタノデアリマスルガ、左樣ナ方法デハナ
  シニ、積極的ニ一ツノ方針ヲ今日ヨリ考ヘ
  テ置カナクテハナラヌト思フノデアリマス
  (拍手)政治ニ必要ナルモノハ一ツノ理想ト
  信念デナクテハナラナイノデアリマス、此
  理想ニ忠實デアリ、此信念ヲ實行スルニ勇
  敢デアルコトガ最モ必要デアリマス、然ラ
  バ此意味ニ於テ衆智ヲ集メテ、一ツノ國民的
  ナ外交機關ヲ設置スルコトガ出來ルト云フ
  コトヲ私ハ信ズル、若シ此理想ト信念ニ動
  イテ居リマスル際ニ、枝葉末節ニ論議スベ
  キ箇所アリト雖モ、國民ハソレ等ノ問題ニ
  付テハ全部之ヲ流シテ諒承スルデアラウト
  云フコトヲ私ハ信ズルノデアリマス(拍手)
  第三ニ對支政策根本策樹立ノ必要アルコ
  トヲ痛感スル特別ノ理由ト致シマシテ、事
  變ニ對スル我國ノ目的ガ遂行サレントスル
  曙光ガ見エマシタル時ニハ、一時ニドット
  重要ナル問題ガ後カラ〓〓ト押掛ケテ來ル
  ニ相違ナイト思フノデアリマス、左樣ナ
  時ニ慌テナイヤウニ今日ヨリ支那問題ニ對
  スル根本策ノ用意ト心構ヘガ、最モ必要ナ
  ルコトデアルト私ハ感ズルノデアリマス
  (拍手)
  更ニ第四ニ之ヲ支那側カラ考ヘテ見ル必
  要ガアラウト思フノデアリマス、卽チ吾々
  ハ支那ヲシテ反省セシメル爲ニ具體的ナ
  方法ヲ早ク講ズル必要ガアルト考ヘルノデ
  アリマス、抗日侮日ノヤウナ古臭イ手ヲ捨
  テヽシマッテ、日支ノ新ナル提携ヲ建立ス
  ル爲ニオ互ニ協力致シマシテ、共產主義ヲ
  排シ、支那民衆ヲ指導スベキ政治政策、經
  濟提携工作、東洋文明ニ一新紀元ヲ劃スベ
  キ所ノ新文化政策ヲ確立致シマシテ、以テ
  一日ノ長ヲ有スル所ノ我國ガ支那民衆ノ兄
  トナリ、師傅トナッテ、東洋平和ノ爲ニ不
  變ノ大方針ヲ堅持シテ居ルモノデアルト云
  フコトヲ明示スルコトガ、支那ヲ誘導スル
  上ニ於テ最モ必要ナルコトデアルト信ズル
  ノデアリマス(拍手)吾々ハ斯ク日支關係ノ
  調整ノ新シイ條項ヲ揭ゲテ、先ヅ之ヲ能ク
  檢討シ、我國ノ眞意ハ斯ノ如キモノデアル
  ト云フコトヲ支那ヲシテ反省セシメル機會
  ニ、且又機緣ニ、之ヲシナケレバナラヌト
  考ヘルノデアリマス、「ソ」聯ノ攻略カラ之
  ヲ救ヒ、第三國干涉侵入ノ憂ヲ斷チ、支那
  ノ西班牙化ヲ救フ所以ハ玆ニ在リト云フコ
  トヲ私ハ信ズル者デアリマス(拍手)
  以上ノ理由ニ依リマシテ、在來ノ如キ祕
  密的ナ、官僚的ナ、獨善的ナ施設デハナク
  シテ、國民ノ熱叫ニ依ル新シキ一ツノ外交
  機關、卽チ國民協力外交委員會ヲ設置スル
  コトガ、今日ノ最大ノ急務デアッテ、此國
  民外交委員會ヲ通ジテ、對支問題ノ根本策
  ヲ能ク檢討シ、之ヲ支那ニ提示シテ、支那
  ヲ誘導スルト云フコトガ、東洋永遠ノ平和
  ノ爲ニ最モ必要デアルト云フコトヲ私ハ痛
  感スル者デアリマス(拍手)
  近衞首相ガ此重大ナル時機ヲ乘切リ、之
  ヲ克服スル爲ニ最大ノ努力ヲ拂ハレテ居ル
  ト云フコトハ能ク諒解スル所デアリマス
  ガ、是等ノ具體策ニ對シマシテ、首相ハ如
  何ナル所見ヲ有セラレルカ、此機會ニ於テ
  吾々ハ承リタイト考ヘルノデアリマス(拍
  手)是ハ根本策ヲ今披瀝シテ貰ヒタイト云
  フノデハナクシテ、斯ル見地ニ立ッテ根本
  策ヲ檢討スル心構ヘト用意ヲ必要トスルモ
  ノデアルト云フコトニ重點ヲ置イテ居ルノ
  デアリマス(拍手)
  次ニ財政問題ニ關シマシテ首相ニ御伺ヲ
  致シタイト思フノデアリマス、今日ノ戰時
  體制下ニ於キマシテ、國民生活安定政策ヲ
  提出スル必要ヲ首相ハ御感ジニナッテ居ラ
  レルカドウカ、先程上程セラレマシタ所ノ
  戰時體制經濟立法ヲ見マスナラバ、國民生
  活安定ニ關スル政策無キヲ吾々ハ遺憾トス
  ル者デアリマス、吾々ハ今囘ノ必要ナル經
  費ハ有ユル手段ヲ盡シテ捻出シナケレバナ
  ラナイモノデアルト云フ點ニ於テハ異議ヲ
  有タナイノデアリマスガ、併ナガラ國民生
  活安定策ガ、戰時體制下ニ於テ最モ必要ナ
  ル所ノ基礎工作デアルト云フコトヲ痛感ス
  ル者デアリマス、併ナガラ吾々ノ申シマス
  所ノ國民生活安定ト云フモノハ、勤勞大衆
  ダケガ樂ヲシヨウトカ、或ハ今迄ノ負擔ヲ
  モ此機會ニ免レタイト云フヤウナ、左樣ナ
  利己本位ナ安逸主義デハ斷ジテナイノデア
  リマス(拍手)吾々ハ國難ニ處シテ共ニ苦勞
  ヲシナケレバナラヌ、此國難ヲ共ニ脊負ハ
  ナケレバナラナイト云フコトハ、十二分ニ
  諒承致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ働
  イタナラバ生活シ得ルト云フ勤勞者生活安
  定生活保障ノ本筋ダケハ、今日ノ非常時
  ニ於テ是非確立シナケレバナラナイ重大事
  デアルト信ズルノデアリマス(拍手)働ク
  者ノ生活ヲ保障スルコトハ社會不安ヲ除去
  シ、國民經濟力ヲ向上シ、且ツ國力進展上
  必要ナル絕對政策デアルト云フ立前ニ立タ
  ナケレバナラナイト信ズルノデアリマス、
  此意味カラ申シマスルナラバ、戰時體制下
  ニ於キマシテ先程提案セラレマシタ經濟諸
  立法ヨリモ、眞先ニ、筆頭ニ國民生活ヲ保
  障スルト云フ立法ヲ何故提出シナカッタカ
  ト云フコトヲ私ハ質問致シタイノデアリマ
  ス(拍手)首相ハ社會正義ヲ「モットー」トセ
  ラレテ居リマス、社會正義ヲ「モットー」ト
  致シテ居リマスル以上ハ、經濟政策ノ中ニ
  社會正義ヲ織込ンデ行カナクテハナラナイ
  ノハ言フ迄モナイノデアリマス、一例トシ
  テ、斯ノ如キ國民生活安定立法ガ最モ必要
  デアルト云フコトヲ申上ゲテ見タイ、卽チ
  戰時勞働立法ヲ提出スルコトノ必要ヲ痛感
  スルノデアリマス、戰時勞働立法ハ、是亦
  勞働者ノ自己本位、利己主義ニ立脚致シテ
  居ルモノデハ斷ジテナクシテ、勞働階級ノ
  生活ヲ安定シ、勞働力ヲ保護シ、勞働力ヲ
  擴充スルト云フコトガ、產業發展政策ノ基
  本デアルト云フ見地ニ立ッテ居ルノデアリ
  マス(拍手)或ハ今日ノ勞働者職業紹介事業
  ヲ國家ガ統一シ、之ヲ强化致シマシテ、之ニ
  依リ勞働力ノ補塡ヲ爲スト云フコトナド
  モ、戰時體制ニ於ケル產業充實政策上缺ク
  ベカラザル要素デアルト云フコトヲ私ハ信
  ズル者デアリマス、且又勞働者ノ意見ヲ合
  理的ニ國策ニ反映セシムルコトモ亦執ラナ
  クテハナラナイノデアリマス、戰時體制下
  ニ於ケル產業發展策トシテ、是等ノ立法ハ
  豫算ニハ大シタ關係ハナイノデアリマス、
  直チニ金ガドレダケ要ルト云フヤウナ經濟
  數學ノ問題デハナクシテ、之ニ依ッテ民衆
  ノ生活ヲ向上セシムルト共ニ、之ニ依ッテ
  產業ヲ發展セシムルモノデアルト云フ見地
  ニ立ツノデアリマスカラ、世界列强ハ競ッ
  テ戰時勞働立法デアルトカ、農村立法デア
  ルトカ、社會立法等ニ著々トシテ其立案ヲ
  急イデ居ルト云フコトハ、旣ニ諒承ノコトデ
  アラウト存ズルノデアリマス、勿論其內容
  ニ付キマシテハ、色々差ガアルノデアリマ
  スルケレドモ、我國ニ於キマシテ、戰時體制
  下ノ經濟政策トシテ、何等勞働政策モ、社
  會立法モ、農村對策モナイト云フコトハ、
  戰時經濟體制ヲ整ヘル上ニ於キマシテモ、
  一大缺陷アリト云フコトヲ指摘シナケレバ
  ナラナイノデアリマス、尙ホ其外ニ農民或
  ハ小賣商人ニ對スル社會立法ハ、國民生活
  安定政策トシテ最モ必要ナルコトト思フ
  ガ、是等ヲ出サナカッタ理由及ビ是等ニ關
  スル首相ノ所見ヲ御伺致シタイト思フノデ
  アリマス
  次ハ大藏大臣ニ御伺ヲ致シタイノデアリ
  マス、戰時體制下ニ於キマシテ、只今提案
  サレタ如キ統制經濟立法一點張リデ何等問
  題ガ起ラズ、又難局ヲ切拔ケ得ルト思ハレ
  テ居ルノデアリマセウカ、言換ヘテ見マス
  ルナラバ、生活不安ヲ除ク戰時經濟ノ生活
  對策ヲ具體的ニ明示シテ貰ハナクテハナラ
  ナイト云フ點ニ付テ、大藏大臣ノ所見ヲ伺
  フ次第デアリマス、政府提案ノ統制經濟政
  策ノ半面ニ於キマシテハ、先程大口氏ガ指
  摘セラレマシタヤウニ、物價騰貴問題ガ當
  然起ッテ參リマス、又旣ニ顯著ナル如ク、
  大キナ數字ヲ示ス所ノ入超ガ現レテ參リマ
  ス、又平和產業ノ行詰リヲ生ジマス、之一
  基イテ中小事業家、或ハ小賣商人、自由職業
  者ノ生活不安ガ生ズルコトト思フノデアリ
  マス、是等ニ對シマシテ、對策ヲ樹テズシ
  テ抛リッ放シニシテ置イテ、ソレデ宜イノ
  デアリマセウカ、勿論考ハ色々立テ得マセ
  ウ、立テ得マスルケレドモ、戰時體制經濟
  政策、非常時立法ト云フ名前ノ下ニソレヲ
  急グ餘リ、卽チ是等ニ對シテ專念スル餘
  リ、國民大衆ニ犠牲ヲ非常ナ數字ヲ以テ負
  ハスト云フコトヲ、私共ハ憂ヘナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマス、卽チ戰時體制ノ
  犧牲ヲ國民大衆ニ負ハスト云フコトハ、斷
  ジテ國力充實、產業發展ノ策ニナラナイモ
  ノデアルト云フコトヲ明ニシナケレバナラ
  ナイノデアリマス(拍手)戰時體制ノ犠牲ハ
  極メテ不公平デアルト云フコトニナッテ參リ
  マスルト、此處ヨリ決潰ガ始マルノデハナ
  カラウカト云フコトヲ、吾々ハ憂ヘルノデア
  リマス、惡性「インフレ」ヲ防止シナケレバ
  ナラナイト云フコトハ、旣ニ今日一般國民
  ノ諒承致シテ居ル所デアリマス、惡性「イ
  ンフレ」類似ノ社會不安ガ若シ招來スルト
  云フコトニナッタナラバ、一大事デアルト云
  フコトヲ考ヘナケレバナラナイノデアリマ
  ス、其社會不安招來ノ原因ハ何處ニアリヤ
  ト云フ、堤防決潰ノ箇所ヲ檢討致シマスルナ
  ラバ、國民大衆ニ犠牲ヲ强ヒテ居ル其點
  ニ、吾々ハ著眼シナケレバナラナイト云フ
  コトヲ感ズルノデアリマス(拍手)藏相ガ熱
  心ニ唱ヘラレテ居リマシタ經濟三原則ガ、
  經濟界ノ適合調節ヲ圖ルベク努力セラレマ
  シタ點ハ吾々諒承致スノデアリマス、併ナ
  ガラ今日時代ハ戰時體制ノ方ニ進ンデ參リ
  マシタ、隨テ其調整適合策モ、在來ノ三原
  則デハ間ニ合ハナクナッテ居ルノデアリマ
  ス、一步前進シナケレバナラナイ、一步前
  進ハ唯單ナル統制經濟、非常時立法一點張
  リデハ斷ジテ國民ハ承服スルコトガ出來ナ
  イノデアリマス(拍手)此統制經濟立法ニ
  依ッテ犠牲ヲ受ケツヽアル國民大衆ニ對シ
  テ、何等カノ經濟對策ヲ樹テルト云フコト
  ハ、目下ノ急務デアルト云フコトヲ吾々ハ
  指摘シナケレバナラヌト存ズルノデアリマ
  ス、反對ニ戰時經濟ノ壓力ノ下ニ國民生活
  保障政策ヲ樹立致シマシテ、サウシテ生活
  不安ヲ除キ、戰時經濟ノ生活對策ヲ樹テル
  ト云フコトニ關スル藏相ノ所見ヲ伺ヒタイ
  ノガ第一點デアリマス
  次ニ藏相ニ伺ヒタイノハ農村金融ノ點デ
  アリマス、戰時體制ガ農村金融ニ及ボス影
  響ト、農村資金ノ涸渴ヲ藏相ハ如何ニ考ヘ
  ラレテ居リマセウカ、其點ヲ伺ヒタイノデ
  アリマス、從來ノ農村金融ハ大藏省ノ預金
  部及ビ簡易保險積立金ヲ低利資金トシテ融
  通サレテ居リマシタ、今囘ノ二十億ノ公
  債對策ノ爲ニ此金ハ主トシテ其方面ニ吸收
  セラレル結果、農村融通ノ途ハ封鎖サレル
  ト云フ結果ニナルト思フノデアリマス、今
  一ツ農村金融ノ機關デアリマシタ產業組合
  中央金庫モ、ヤハリ公債引受ノ爲ニ動カナ
  クテハナラナイト云フ結果トナッテ、各地方
  ニ於キマシテハ、產業組合ガ小農ニ對シテ
  資金ヲ貸付ケルコトヲ中止スルト云フヤウ
  ナ現象ニ今日ハナッテ居ルノデアリマス、來
  ルベキ出來秋ニ於ケル所ノ小作農、小農ノ
  金融ハ果シテ如何ナル途ニ依ッテ開カレル
  ノデアリマセウカ、預金部ヤ、或ハ簡易保
  險ヤ、產業組合ノ途ヲ斷タレテシマヒマス
  ルト、小作農、自作農ノ金融ハ果シテ如何
  ナル途ニ依ッテ立テテ行クノデアリマセウ
  カ、何モ途ガナイト云フコトニナッテ參リ
  マスナラバ、自然高利貸ノ下ニ走ラナクテ
  ハナラナイノデアリマス、サウ致シマスル
  ト娘ヲ賣ッタリ、或ハ靑田ヲ賣ッタリ、白田
  ヲ賣ッタリスルト云フヤウナ農村ノ悲慘ナ
  ル狀態ガ、戰時體制下ニ又現ハレテ來ルニ
  相違ナイト云フコトヲ私共ハ考ヘザルヲ得
  ナイノデアリマス、戰時體制ノ影響ヲ受ケ
  ル農民金融ニ付キマシテ、大藏大臣竝ニ農
  林大臣ハ如何ナル具體對策ヲ樹テテ居ラレ
  ルカ、此點ニ對スル所見ヲ伺ヒタイト存ズ、
  ルノデアリマス
  更ニ商工大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、
  戰時立法ノ運用ニ依リマシテ、自治統制ヲ尊
  重スルト云フヤウナ御話デアリマスルガ、
  自治統制ハ結局一部少數事業家ノ獨占スル
  所トナリマシテ、其爲ニ中小事業家ガ非常
  ナル壓迫ヲ受ケ、且ツ消費者一般ノ不利益
  ヲ來スコト極メテ重大デアルト云フコトヲ
  私共ハ考ヘルノデアリマス(拍手)此點ニ關
  スル商相ノ所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
  之ヲ具體的ニ申シマスルナラバ、今提案
  セラレマシタ貿易管理ノ非常時立法デアリ
  マスルガ、吾々ノ所見ヲ以テシマスルナラ
  バ、管理ノ目的ハ國家產業本位デナクテハ
  ナラナイノハ言フ迄モナイノデアリマス、
  自治ト能率的ト云フ言葉ニ囚ハレマシテ、
  一部少數ノ事業家ニ之ヲ獨占セシムル傾向
  ガアルト云フコトハ、國家產業本位ノ上カ
  ラ申シマシテ、斷ジテ排擊シナケレバナラ
  ナイ點デアルト云フコトヲ言ハナケレバナ
  リマセヌ(拍手)且ツ新聞紙ノ報道スル所ニ
  依リマスルト、軍需資材ノ輸入ヲ或ル貿易
  會社ニ一手引受ヲセシメ、之ヲ通ジテ政府
  ガ統制ヲ爲スト云フヤウナ案ガ發表セラレ
  テ居ルノデアリマス、斯ル獨占的ナ自治統
  制ガ今日行ハレテ居ルノデアルカ、政府亦
  之ヲ支持スルノデアルカ、商工大臣ノ明快
  ナル御答辯ヲ伺ヒタイノデアリマス、若シ
  サウダト致シマスルナラバ、明ニ自治統制
  ハ少數大事業家ノ獨占利潤ヲ擁護スルト云
  フ結果ニナリマシテ、中小事業家及ビ一般
  消費者ニ非常ナル迷惑ヲ掛ケルト云フコト
  ハ、極メテ明瞭デアルト言ハザルヲ得ナイ
  ノデアリマス(拍手)斯ウ云フコトニナッテ
  參リマスルナラバ、戰時經濟體制ヲ機會ト致
  シマシテ「カルテル」「「トラスト」ノ獨占利潤
  ヲ益〓增長セシメルト云フ結果ニナッテ參ル
  ノデアリマス、商工大臣ハ戰時非常體制經
  濟立法ヲ一面ニ於テ制定シ、一面ニ於テ
  般消費者及ビ中小事業家保護ノ政策ヲ忘レ
  テ居ルノデハナイカト云フコトヲ質問セザ
  ルヲ得ナイノデアリマス(拍手)卽チ中小事
  業家及ビ一般消費者ニ對スル對策如何ヲ伺
  ヒタイノデアリマス
  更ニ此機會ニ、我國ニ於ケル獨占事業ノ
  價格ガ非常ニ暴騰致シテ居ルノ狀態ヲ繼續
  シテ居リマスルコトハ、極メテ明ニナッテ
  居リマスルガ、是等ニ對シマシテ如何ナル
  對策ヲ執ッテ居ラルヽカ、私ハ此機會ニ獨
  占事業ヲ抑ヘル爲ニハ、重要產業統制法ノ
  改正ヲヤル必要ガアルノデハナカラウカト
  信ズルノデアリマス、一般消費者、中小事
  業家保護ノ政策ヲ考慮致シマシテ、重要產
  業統制法ノ改正ノ必要アリト云フコトヲ考
  ヘルノデアリマス、統制委員會ニ何故ニ消
  費者代表ヲ入レテ居ナイノデアリマスル
  カ、前々議會ニ於キマシテ此法律ガ改正サ
  ルヽ時ニハ、消費者代表ヲ入レルコトハ十
  分考慮スルノデアルト云フ答辯ヲシテ居ル
  ノデアリマスルガ、其後ニ於ケルヤリ方ヲ
  見マスルナラバ、一般消費者ハ愚カ、中小
  事業家ヲ度外致シマシテ「カルテル」ノ助成
  ニ進ンデ居ルト云フヤウナ狀態ヲ考ヘマス
  ル時ニ、我國ノ產業政策ハ獨占事業ヲ擁護
  シ、中小事業家、一般消費者ニ非常ナル壓
  力ヲ加ヘテ居ルノデハナカラウカト云フ點
  ニ大キナル疑問ヲ持ツノデアリマス(拍手)
  更ニ又、此法律ノ第三條ヲ斯ル場合ニ有
  效適切ニ發動スル意思アリヤ否ヤト云フ點
  ヲ伺ヒタイノデアリマス、此第三條ハ、能
  ク傳家ノ寶刀ト言ハレテ居リマシテ、今マ
  デ殆ド發動セラレタコトガナカッタノデア
  リマス、最近或ル獨占事業者ニ對シマシ
  テ、政府ハ報〓ヲ求メルト云フヤウナ文書
  ヲ發セラレタヤウデアリマスルケレドモ、
  斯ル手緩イヤウナ狀態デハナクシテ、斷然
  一切ノ獨占業者ニ對シマシテ、本法第三條
  ヲ發動サレマシテ、最モ有效適切ナル對策
  ヲ執ルコトガ必要デアルト云フコトヲ、私
  共ガ玆ニ考ヘナケレバナラナイト思フノデ
  アリマス
  以上ノ諸點ニ付キマシテ、外交、產業及
  ビ財政、以下伺ヒタイノデアリマスルガ、
  最後ニ一言申上ゲタイノデアリマス、吾々
  ノ主張致シマスル國民生活安定ハ、前ニ申
  述ベタ通リデアリマスルガ、一ツノ階級、
  一ツノ階層、一部分ノ利害ヲ中心トシテ言ツ
  テ居ルモノデハ決シテナイノデアリマス、
  又勞働政策ヲ主張致ス上ニ於キマシテモ同
  樣デアルコトハ、先程申シタ通リデアリマ
  ス、全國民ヲシテ各〓其所ヲ得セシメ、國
  民ノ有ユル階層ニ政澤ヲ均等化セシメルト
  云フコトガ、最モ必要ナルコトデアラウト
  信ズルノデアリマス、事變ニ依ッテ一部、
  利得スル者アリ、事變ニ依ッテ失業破產ノ
  憂目ヲ見テ、生活ノ脅威ヲ受ケル者ガアッ
  タナラバ、今日ニ於ケル擧國一致ノ行動ハ
  如何ナル結果ニナッテ來ルカト云フコトヲ
  考ヘナケレバナラナイノデアリマス、三度
  ノ飯ヲ二度ニスルト云フコトデアツタナラ
  バ、國民ノ悉クガ齊シク公平ニ此犠牲ヲ忍
  ブト云フコトガ、當然ノ事柄デアラウト私
  共ハ信ズルノデアリマス(拍手)吾々ハ銃後
  ノ生活保障ノ爲ニ、十分ナル政府ノ活動ヲ求
  メルノデアリマスルガ、其銃後ノ保護ハ更
  ニ廣義ニ之ヲ解釋シ、一般勤勞大衆ガ事變
  ニ依ッテ非常ナル犠牲ヲ强ヒラレルト云フ
  コトノナキヤウニ、政府ノ有效適切ナル活
  動ヲ求メナケレバナラナイノデアリマス、
  吾々ハ擧國一致ノ强化、擧國一致ガ最モ有
  力ニ實現サレルコトヲ衷心ヨリ考ヘテ、以
  上ノ諸點ニ付キマシテ、大臣ノ御答辯ヲ伺
  ヒタイト思フ次第デアリマス(拍手)
  〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=45

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• 046・近衞文麿

  ○國務大臣(公爵近衞文麿君)　此重大ナル
  時局ニ對處スル爲ニ、外交ヲ審議スル特殊ノ
  機關ヲ新設スル意思ハナイカドウカト云フ
  御尋デアリマシタ、政府ハ此重大ナル時局
  ニ際シテ、此難關ヲ突破スル爲ニ、最モ重
  キ責任ヲ感ズルノデアリマス、獨リ外交ノ
  ミナラズ、經濟、財政、產業ノ各方面ニ亙
  リマシテ、有ユル能力、智識ヲ集中致シマ
  シテ、是等各方面ノ協力御援助ニ依リマシ
  テ、時局ニ對處シテ行キタイト存ジテ居ル
  ノデアリマス、其實現ノ方法ニ付キマシテ
  ハ、目下考慮致シテ居ルノデアリマス(拍
  手)
  次ニ國民生活ノ安定ニ關シマシテ御尋ガ
  アリマシタガ、今日ノ如キ軍事ニ厖大ナル
  經費ヲ要スル際ニ於キマシテ、積極的ニ國
  民生活ノ向上改善ヲ圖ルト云フコトハ中々
  困難デアリマスガ、併ナガラ決シテ政府ハ
  國民生活ノ安定ノ問題ヲ閑却シテ居ルノデ
  ハナイノデアリマシテ、此際ニ於キマシテ
  モ、社會立法等ニ付キマシテ攻究ヲ重ネテ
  居リマス、來ルベキ通常議會ニハ財政ノ許
  ス限リ之ヲ提案シタイト存ジテ居ルノデア
  リマス(拍手)今日ハ國民何レモ其日常生活
  ニ於テ相當ノ犠牲ヲ甘受スル覺悟ガナケレ
  バナラヌト思ヒマス(拍手)唯其犠牲ノ負擔
  ハ只今モ仰セニナリマシタヤウニ、全國民
  各階層平等ニ、公平ニ負擔セラルベキモノ
  ト考ヘマス(拍手)
  〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=46

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• 047・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　只今ノ御質問ニ
  御答申上ゲマス、此國民生活ノ安定ニ付キ
  マシテハ、各方面ヨリ考ヘラレルノデアリ
  マスルガ、大體ニ於キマシテ此時局ニ相成
  リマスト云フト、勞働ノ需要ハ增加スルコ
  トト考フルノデアリマス、相當ノ增加ヲ致
  シマスルノデ、其意味ニ於キマシテハ、憂
  フルベキ點ハ甚ダ少イト考ヘテ居ル次第デ
  アリマス、產業ニ致シマシテモ、軍需工業
  其他ハ益〓〓勞ノ需要ヲ增加スルコトト考
  フルノデアリマス、平和產業ニ付キマシテ
  ハ、先刻來申上ゲマスルヤウニ、新ナル擴
  張新設ハ止メルニ致シマシテモ、從來ノ規
  模ニ於キマシテ、其運轉ヲ見ルコトハ間違
  ナイノデアリマスルカラ、此點ニ付テノ御
  心配ハ要ラナイ、寧ロ勞働ノ需要ノ增加、
  而モソレガ新ナル方面ニ於テ需要ガ起リマ
  スル爲ニ、其轉換等ニ於テ多少ノ摩擦ト申
  シマスルカ、不便ハアリマセウガ、大體ニ
  於キマシテ、勞働ハ寧ロ好イ狀況ニナルト
  考ヘテ居ルノデアリマス
  物價ニ付キマシテハ、事業ノ調整其他ニ
  於キマシテ、物資ノ需給ヲ適合ノ圖ル方策ニ
  專念致シマスルノデ、非常ナル暴騰ヲ見ル
  ト云フコトハナイト思フノデアリマス、此
  國民生活ノ安定ニ付キマシテ、消極的方面
  デハアリマスルガ、最モ重要ナルモノハ爲
  替相場ノ維持デアリマス、此維持ガ崩レマ
  スルト云フト、爲替相場ノ暴落トナリマシ
  テ、所謂惡性「インフレーシヨン」ノ現象ヲ呈
  シマス、物價ノ暴騰、國民生活ノ非常ナル
  困難、其他各種ノ積極的施設モ之ヲ行フノ
  力ヲ失フノデアリマスルガ、爲替相場ヲ維
  持致シマスレバ、左樣ナ方面ニ於テ大キナ
  心配ハ斷然ナイノデアリマス(「現狀維持ナ
  ラバサウデセウ」ト呼フ者アリ)尙ホ農村金
  融ニ對シテノ御尋デアリマスルガ、是モ先
  刻一般金融ニ付テ申上ゲマシタヤウニ、非
  常ニ無理ヲシテ信用組合等ニ公債ノ保有ヲ
  强ユルト云フコトハ致サナイ積リデアリマ
  ス、尙ホ預金部資金等ニ於キマシテ、從來
  ノ地方資金ノ額ヲ相當節約ヲ致シマスル
  ガ、ソレハ今囘ノ時局ニ因ル主トシテ資金
  ノ散布ガ多イト思ハレマスル都市方面デア
  リマシテ、農村關係ハ出來ルダケノ考慮ヲ
  拂ッテ居リマス、例ヘバ農村經濟更生施設
  ニ要シマスル預金部ノ資金ノ如キモノハ、
  之ヲ決シテ減額致サナイ積リデアリマス、
  又少額デハアリマスルガ、自作農資金ノ如
  キモノモ、本年度ヨリ初メテ預金部ヨリ供
  給ヲ致ス積リデ居ルノデアリマス、尙ホ今
  日提案ノ理由ノ說明ガアリマシタ米穀ノ非
  常時局ニ對應スル買入等ニ於キマシテモ、
  直接、間接農村ニ散布致サレマスル資金モ
  相當ノ額ニ上ルト思ハレルノデアリマシ
  テ、非常ナル心配ハナイコトト考ヘテ居ル
  次第デアリマス(拍手)
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=47

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• 048・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　只今片山君カラ
  所謂當業者ノ自治統制ト云フコトニ付テ段
  段ノ御話ガゴザイマシタガ、御話ノヤウニ
  大企業家ガ中小ノ產業家ヲ壓迫スルト云フ
  ヤウナ風ニ、一部ノ經濟層ノ利害ニ墮スル
  ヤウナコトニハナラナイヤウニ、非常時經
  濟ノ運用ヲ致ス積リデゴザイマス、當業者
  ニ於キマシテモ得手勝手ナコトダケヲ主張致
  シマセヌデ、其業全體ノ利益或ハ國民經濟
  全局ノ利益ト云フ見地カラ話合フト云フコ
  トニナリマスルナラバ、當業者ノ統制ト云
  フコトモ相當ノ效果アル譯デアリマシテ、
  御話ノヤウナ結果ニハナラナイト考ヘテ居
  リマス
  ソレカラ獨占企業ニ關スル御話ガゴザイ
  マシタガ、決シテ從來ト雖モ獨占企業ノ助
  長ヲ致シテ居ル積リハ少シモナイノデアリ
  マシテ、今日ニ於キマシテモ獨占企業ノ弊
  害ト云フコトニ對シマシテハ、十分ニ注意
  ヲ致シテ居ルノデアリマスカラ、今後ニ於
  キマシテモ重要產業統制法ノ運用ナドニ於
  キマシテ、其點ニ付キマシテハ十一一分ノ注
  意ヲ致シタイト考ヘテ居リマス(拍手)
  〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=48

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• 049・有馬頼寧

  ○國務大臣(伯爵有馬賴寧君)　農業金融ノ
  コトニ付キマシテ御尋ガゴザイマシテ、只
  今大藏大臣カラ大體御答ニナリマシタカ
  ラ、私カラ蛇足ヲ加ヘル必要ハナイト存ジ
  マスガ、此時局ノ影響ト致シマシテ、將來
  ノ農業ノ生產ヲ減退セシムル虞ノアルヤウ
  ナコトハ、極力避ケナケレバナラナイト思ヒ
  マス、明治二十七年ノ日〓戰爭ノ年ガ非常
  ナ豐作デアッタニモ拘ラズ、翌年ハ非常ナ
  減收デアッタ、又日露戰爭ノ三十七年ハ非
  常ナ豐作デアッタノニ、三十八年ハ非常ナ
  凶作デアッタト云フヤウナコトガ、必シモ事
  實トナッテ現ハレルトハ考ヘラレマセヌケ
  レドモ、若シ本年ノ豐作ニ比シテ來年非常
  ニ凶作デアルト云フヤウナコトガ起ッテ參
  リマスレバ、是ハ農村ノ問題、又食糧問題
  カラ考ヘマシテ、非常ニ重大ナ問題ダト
  思フノデアリマス、隨テ農業ノ減產ヲ來シ
  マスルヤウナコトハ極力避ケタイト考ヘテ
  居リマス、隨テ農業金融ノ問題ハ非常ニ重
  大デアリマスカラ、其點支障ヲ來シマスヤ
  ウナコトハ、出來ルダケ避ケルヤウニ努メ
  タイト思ヒマス
  唯只今片山サンカラ御話ノゴザイマシタ中
  ニ、產業組合ガ公債ノ引受ヲスル爲ニ資金
  ノ貸出ニ不足ヲ來スヤウナコトハナイカト
  云フヤウナ御話ガゴザイマシタガ、兎角ノ
  批評ノ從來ゴザイマシタ產業組合ト致シマ
  シテハ、此際其力ノ許ス限リニ於テ此國債
  ニ應ズルト云フコトハ、私ハ寧ロ慫慂スベ
  キコトト思フノデアリマス、其實際上必要
  ナ貸付ノ資金ハ、現在聯合會其他ニ於テ他
  ニ融通サレテ居リマスル資金ヲ其方へ運用
  致シマスレバ、大シテ差支ヲ生ズルヤウナ
  コトハナイト考ヘマスカラ、國家ノ爲ニ出
  來ルダケノ御奉公モシ、同時ニ農村ノ金融
  ニモ支障ヲ來サナイヤウニ指導シ、其方面
  ニ向ハシメルヤウニ致シタイト考ヘテ居リ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=49

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• 050・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　中野正剛君
  〔中野正剛君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=50

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• 051・中野正剛

  ○中野正剛君　諸君、事變勃發ノ直後七月
  十一日ニ內閣カラ吾々ニ懇談セラレマシタ
  當時ノ對支方針ハ、局地解決デアリ、不擴
  大デアッタノデアリマス、然ルニ其後戰爭ハ
  擴大シ、今ヤ全面的ノ日支戰爭トナッタ、
  ソレバカリカ、最モ注意スベキコトハ、外
  來的勢力ノ浸潤、策動ニ依リマシテ、戰爭
  ハ最モ惡質ヲ帶ビ、西班牙戰爭ニ似タル國
  際戰爭ノ形態ヲ帶ビテ來タノデアリマス、
  宣戰ノ布告ガナイカラ此時局ハ戰爭以下ノ
  モノデアルトハ考ヘラレナイ、寧ロ宣戰布〓
  ガアリ得ナイ程、ソレ程時局ハ紛糾シデ
  リケート」ナ關係ヲ持ツ、我ガ東洋ニ取リ
  テハ惡性ノ戰爭デアルト私ハ信ジテ居リマ
  ス(拍手)廣田外務大臣ハ嘗ッテ外務大臣在
  職中、我輩ノ在職中斷ジテ東洋ニ戰爭ナシ
  ト言ハレタガ、併シ戰爭ハ斯ノ如ク發展シ
  テ居ル、廣田外相ノ考へ方ハ平和ヲ專念ス
  ル其衷心ヨリ發シタモノデアリマス、若シ
  ソレガ形勢ノ觀測デアッタトスレバ、其觀
  測ハガラリト外レテ居ルト私ハ考ヘマス、
  此不擴大ヨリ擴大ニ至ル、又我輩ノ在職中
  戰爭ナシト云フ外務大臣ヲ以テ組織セラレ
  タル近衞內閣、今日ノ時局ニ對シテ御感想
  如何、私ハ承リタイモノデアリマス、兎ノ
  角大勢ハ豫測ニ反シテ發展シテ行ッタ、現實
  ハ內閣諸公ノ御希望ニ副ハナイ、是ダケハ
  事實デアル、外ヨリ來ル原因デハアリマス
  ガ、此時ニシッカリ考へ直サルヽコトガ必要
  デアルト思フ、東方會ハ前期議會ニ於テ對
  支戰爭ノ目的ト方法ニ付テ率直ナル進言ヲ
  試ミタ、私共ノ同志ト近衞首相トノ應答ハ
  今尙ホ速記錄ノ上ニ殘ッテ居ル、吾々ノ目
  的トスル所ハ何處デアルカト言ヘバ、日本
  ノ傳統的使命タル東亞共存原則ヲ確立遂行
  スルニアリ、而シテ是ガ邪魔物デアル外來ノ
  歐洲的支配原則ヲ排擊スルニアル、吾々ノ
  戰ヒ取ラント欲スル所ノモノハ土地ニアラ
  ズ、資源ニアラズシテ、此無形ノ東亞共存ノ
  原則デアルコトヲ吾々ハ高調シテ置イタノ
  デアリマス、而シテ昨日開院式ニ及ビ詔勅
  渙發、共存ノ文字ヲ拜スルニ及ビテ私共ハ
  感慨無量、洵ニ畏ク感ジテ居ル次第デアリ
  マス、目的ハ斯ノ如シ、卽チ東亞的共存原則
  ノ確立、外來支配原則ノ排擊、是レ二ツガ
  決リマスルナラバ、一擧ニシテ外來支配原
  則ノ傀儡トナレル南京政府ノ中堅ヲ殲滅的ニ
  一撃スルコトガ、戰鬪遂行ノ手段デアルコト
  ハ自ラ明白デアルノデアル、前囘ノ質問ニ當
  リ近衞首相ハ南京政府ヲ敵視スルノハ早イ、南
  京政府ノ中ニハ吾々ヲ理解スル者ガアルト言
  ハレタ、私モ個人トシテハサウ云フ考ヲ持ツ、
  彼ノ上海ニ悶死シタ黃郛君ノ如キガ吾々ト話
  シタ當時ノ言葉ナドヲ思出スト、如何ニモ其
  心事同情ニ堪ヘザルモノガアル、併シソレ
  ハ樂屋落チノ話デアル、南京政府其モノガ公
  式的ニアノ排日ニ乘出シテ來テ居ル以上ハ、
  其全體的動向ガ吾等ニ害アリトスレバ、之
  ニ一撃ヲ加フルコトニ何等ノ猶豫アルベキ
  モノデナイト私ハ信ジテ居リマス(拍手)之
  ヲ責ムルコト緩ナレバ却テ抗日ノ氣勢ヲ增
  シ、抗日分子ノ傲慢ヲ長ズルト私ハ信ズ
  ル、非常時ニ臨ミ宋讓ノ仁ハ事ヲ破ルノ基
  デアリ、且又宋讓ノ仁ハ甚ダ屢〓內心ノ不決
  斷トヲ合宿スルコトヲシッカリ牢記シテ貰
  ヒタイト思ヒマス
  諸君、非常時ニ臨ミ內閣ニ對シ全ク同情
  ナキ批判ヲ試ムルコトハ國民トシテ差控ヘ
  ナケレバナラヌ、併シ事ヲ眞劍ニ論ズレバ、
  如何ニ同情アル者ト雖モ、齒ニ衣ヲ著セズシ
  テ本當ニ衷心ヲ曝ケ出スコトガ、公人相見エ
  ルノ禮デアルト私ハ斯樣ニ信ジマス、最初
  擧國一致ノ宣傳ハ洵ニ驚ク程大袈裟デアッタ、
  私ハ其大袈裟ナル擧國一致ノ宣傳ガアッタ
  ガ、當時ニ於テ目的ガ何處ニアルカガ甚ダ國
  民ニハ徹底シ兼ネタ、而モ其方法ハ局地解
  決不擴大、局地解決不擴大ハ宜シイガ、國民
  ニ向ッテ全面的昂奮ヲ與へル、其宣傳ヲ爲シ
  テ立上ック時ニハ肚ノ中ノ不擴大、現地解決
  ハ甚ダ宜シカラウガ、最惡ノ場合ニ處スベ
  キ徹底的覺悟ト準備トガナケレバナラヌ、
  此點ニ至ッテハ、當時カラハッキリシテ居ッタ
  カドウカ、此點ニ遺憾ナキヲ得ナイト思ヒ
  やく、私共カラ見マスレバ、北支ノ情勢ガ
  形勢ノ迫ル所、斯ノ如キ勃發ヲ見ルト云フ
  コトハ分リ切ッタコトデアル、最近一二年ノ
  北支情勢ハ、滿洲事變直前ノ如キ光景ヲ呈
  シテ居ッタノダ、是ガ勃發スレバ基礎アル彼
  等ノ排日-私ハ齒ニ衣ヲ著セズ言ヒマスガ
  「ソビエト」竝ニ霞關ガ信賴スル英吉利ナドノ
  計畫的援助ガ此ニ至ッテ全面的ノ抗日トナッテ
  居ル以上ハ、一度火ヲ發スレバ今日ノ如キ
  情勢ニナルト云フコトハ明白デアッタノデ
  アル、併シ是ハ避ケントシテ避ケラレナイ、
  コッチガ逃ゲレバ向フガ送リ狼デ追ッ掛ケテ
  來ル、之ニ處スベキ途ハ私ハ近衞內閣ノ責
  任トハ言ヒマセヌ、近衞内閣以前歷代內閣
  デモ解決出來ナカッタ、コッチガ讓ッテモ解決
  出來ナイ、相手方ガアルカラデアル、相手
  方ノ背後ニ控ヘル所ノ列國勢力ガアリ、魂
  膽ガアル、是ニ於テカ此問題ヲ徹底的ニ解
  決スルノハ消極デナクシテ積極、昨日ノ
  御詔勅ニアルガ如ク、日支提携ノ實ヲ擧ゲヨ
  ウトスルナラバ、率直ニ近衞サンガ前囘此
  議會ニ於テ披瀝サレタガ如キ、洵ニ美シキ
  亞細亞ヲ羽交ノ下ニ收ムルガ如キ、此溫情
  ヲ堪ヘナガラ斷乎トシテ率直ナル條件ヲ提
  ゲテ、日支間ニ根本的ノ諒解ヲ遂ゲルコト
  ガ、満洲事變以後ノ帝國內閣ノ責任デアッタ
  ノデアル、支那ト端的ニ腹心ヲ披ク、然ル
  ニ齋藤內閣以來歷次ノ內閣ハ、支那ヲ邪道
  ニ導ク外來的勢力ニ對シテ媚態ヲ呈シ、彼
  等ニ向ッテ歡心ヲ求ムルコトニ依リテ支那問
  題ヲ解決セントシタノデハナイカ、而シテ
  動モスレバ-御詔勅ニ提携スベシ、共存
  スベシト仰セラレタ、其ノ支那ニ對シテハ決
  心ナキ恫喝ヲ試ムル、而モ此支那問題ニ對
  シテ公然對立的地位ニ在ル國ニ對ツテハ御
  世辭ヲ竝べ、媚態ヲ呈ス、甚シキハ吾々國
  民ニマデ打明ケザル內證話マデモ打明ケ
  ル、殊ニ目立ツノハ吉田大使英國ニ赴任セ
  ル以來ノ對英媚態外交デアル、本國ニ於テ
  ハ政府ノ堪能ナル宣傳機關ヲ以テ效果ヲ齎
  シツヽアルガ如ク宣傳シテ居ルガ、英國ノ
  新聞ノ一二デモ讀ム者ガ、如何ニ日本ノ遣
  外使臣ノ媚態其モノヲ嘲弄シテ居ルカト云
  フコトヲ見テ取ルト云フコトハ甚ダ容易デ
  アル、支那ハ夷ヲ以テ夷ヲ制スル、廣田外
  交ハ支那ニ對シテ夷ヲ以テ夷ヲ制スルヲ止
  メヨト言ッタ、然ルニドウデス、我ガ日本ハ
  日本ト競爭的地位ニアル國ニ對シ、對立
  的地位ニアル國ニ對シテ頭ヲ下ゲ、成案
  ナキ媚態御世辭ヲ竝ベルニ於テハ、支那
  人ハ日本ト稱スル夷ヨリハ、日本ガ頭ヲ
  下ゲテペコ〓〓シテ居ル夷ノ方ガ强イ、
  此强キ夷ヲ以テフラ〓〓シテ居ル所ノ日本
  ノ夷ヲ制スベシト決メテ來ル、夷ヲ以テ夷
  ヲ制スルノ外交ヲ誘導發展セシメタルモノ
  ハ齋藤內閣以後ノ帝國外交デアルコトヲ、
  私ハ衷心ヨリ遺憾千萬ニ思フ者デアリマス
  (拍手)此問題勃發以前モ、對英外交ハ頗ル
  順調ニ進ミツヽアル、對支問題ニ對シテハ
  根本的諒解ニ到達シツヽアルト云フヤウナ
  宣傳ガ甚ダ宜カッタカラ、是マデ日本ガ折
  レテ出テ行ケバ、支那ノ傲慢ハ愈〓長ジテ、
  玆ニ何事カ起リハセヌカト考ヘタ、果セル
  哉問題ガ勃發シタ、近衞內閣ハ斯ノ如キ激
  發ヲ見ザル以前ニ生レタ內閣デアル、併シ
  近衞內閣ノ生レタ時ノ情勢ハ、外ハ實ニ斯
  ノ如キモノデアッタ、併ナガラ我ガ國內ノ政
  治情勢ハ、齋藤內閣以來ノ所謂姑息偷安、
  現狀維持ニアック、其空氣ノ中ニ生レタル(發
  言スル者アリ)御聽キナサイ-生レタ近衞
  內閣デアル、次カラ次ニ問題ガ發生シテ行ク
  ノニ當リテ、私ハ若キ近衞總理大臣ニ頭腦ノ
  彈力ガアレバコソ、斯ノ如キ豫期セザル問
  題ニ次々ニ處シテ行カレルト、斯ウ見テ居
  リマス、併ナガラ次々ノ問題ニ處スルニ直
  覺感覺、反射的ノ頭ノ働ヲ出スト云フコ
  トハ、一定ノ「コース」ヲ立テヽシッカリ踏張
  ルコトヨリハ危險デアルト私ハ思ツテ居
  ル、最初ノ政府ノ見透シト違ッテ問題ガ發
  展シテ行ッタ、率直ニ言ヘバ事件ノ發展ニ、
  ズル〓〓ト日本ノ政治ガ引張ラレテ居タノ
  デアッテ、事件ノ發展ヲ見越シテ、之ニ對シテ
  斷乎タル根柢的ノ準備ヲ爲シタノトハ違フ
  ト思フ、諸君、獨裁者ナラバ鐵ノ如キ意志
  ト、死ヲ以テ事ニ當ル責任感ガ要ル、立憲政
  治ナラバ變化シテ行ク情勢ニ、初メノ考ト
  ハ違フガ、次々ニ應ジテ行クト云フヤウ
  十、區切リノ付カヌコトデハイケナイト私
  ハ思フ、立憲政治ハ區切リガナクチヤナラ
  又、此有意義ナル議會、優諚ヲ拜シタル所
  ノ此帝國議會ノ會期ヲ一期トシテ、劃然ト
  シテ姿ヲ改メラルヽコトガ、立憲政治家ト
  シテ、又日本ヲ擔任スル非常時內閣トシテ、
  最モ當然ノ處置ダト思ッテ居リマス、本來
  ハ宣戰ノ布〓ガアリマスレバ大本營ガ出來
  ル、大本營ガ出來レバ統帥權ノ下ニ、軍事、
  政治、外交、經濟、產業、總テガ有機的ニ
  統一シテ働ク、併シ宣戰布告ナキ複雜ナル
  戰爭デアリマスルガ故ニ、大本營ハ出來ナ
  イ、大本營ナキ非常時特別ノ戰時內閣タル
  以上ハ、近衞總理大臣ノ責任ハ甚ダ重イト
  思フ、銃後ノ國民生活ト云フ問題ガアリマ
  スガ、若シ此戰爭ノ遂行中ニ國民ガ皆生活
  權ノ擁護ヲ唱ヘテ立上ッタナラバ、ソレコソ
  戰爭ハ敗北主義ニ墮スル、私ハ銃後ノ國民
  生活ヲ安定スルノ責任ハ總理大臣近衞氏ニ
  アル、軍隊ヲ動カシテ居ル所ノ杉山陸軍大
  臣、米內海軍大臣ニ在ル、其人死ヲ以テ銃
  後ノ國民生活安定ヲ實現スベシ、吾々ハ全
  國民ノ均等ナル犠牲運動ヲ以テ、此戰爭遂
  行ノ原動力ヲ國民的ニ培養スルコトヲ任務
  ト考ヘテ居ル者デアリマス
  就キマシテハ私ハ擧國一致形態ノ問題ニ
  付テ、日露戰爭當時ノ事ヲ引合セテ內閣ノ
  御決心ヲ承リタイト考ヘテ居リマス、日露
  戰爭ノ以前ニ明治三十六年六月二十三日御
  前會議ニ於テ、對露交涉ノ廟議ガ決定セラ
  レタ、サウ致シマスルト云フト時ノ桂內閣
  ハ其翌日對露交涉ノ根本ガ決セラレタ以上
  ハ戰爭トナル、戰爭トナル以上ハ戰爭ヲ豫
  期セザル以前ニ出來タ所ノ桂內閣デアル、愈、く
  戰爭トマデ行クナラバ天下ノ人材ヲ集メタ
  ル戰時內閣ガ必要デアル、形勢ガ變リタル
  ガ故ニ辭表ヲ捧呈スルト云フ考ヘデ、卽チ
  二十四日ニハ元老ニ對シテ辭職ノ意ヲ語
  リ、二十五日ニハ閣僚ノ辭表ヲ取纏メ、七
  月ノ一日ニハ關下ニ伏奏シテ桂内閣ハ辭表
  ヲ提出シタ、併ナガラ時ノ勢ハ桂公ノ退ク
  ヲ許サズ、色々紛糾シタル結果大詔再ビ桂
  公ニ降ッテ、七月十五日立派ナ改造內閣ガ生
  レタノデアリマス、私ハ今日ノ情勢ニ當リ
  テ、内閣諸公ヲ一瞥スルニ立派ナ方バカリ
  デアル、併ナガラ今日ノ如キ情勢ガ豫期セ
  ラレザル時ニ出來タル所ノ內閣デアル以上
  ハ、玆ニ一ツノ區切ガナクテハナルマイカ
  ト、斯樣ニ考ヘテ居リマス、私共ハ近衞內
  閣ノ改造ヲ要望スルガ如キ越權ノ論ヲ爲ス
  者デハナイノデスガ、此大勢ノ推移、戰爭
  ハ全面的トナリ擴大スル、之ニ臨ムノニハ
  姑息ニ法ヲ設ケル位デハ駄目ダ、法ヲ設ク
  ルヨリハ人ヲ改ムルニ如カズ、齋藤內閣以
  來逐次ニ同一傾向ノ內閣ガ出來、同一傾向
  ノ人間デ內閣ヲ組織シテ來タ、近衞內閣出
  現以前ニハ所謂庸人位ニ當リ國之ヨリ危キ
  ハナシト云フヤウナ情勢デアツタコトモア
  ル、今日ノ內閣ダッテ隨分平常時ノ基礎ノ
  下ニ於テ人間ノ配置ガシテアル、私ノ懇意
  ナル廣田外務大臣ガ此處ニ居ラレル、外務
  大臣トシテハ立派ナ人デアルガ、企畫廳ノ
  總裁ハドウ云フ譯デアルカ、企畫廳ノ總裁
  トナルナラバ、ソレ羊毛ト云フ問題ガ起ッ
  タナラバ、原產地ノ情勢カラ羊毛工業、ソ
  レカラ貿易、金融トピント頭ニ來ルヤウナ
  人デナケレバイカヌ、鐵デモ何デモ經濟問
  題トシテ取扱フノニハ一ツノ勘ガ要ル、勘ガ
  アルト云フコトハドウ云フコトデアルカト
  言ヘバ、平常十分ニ己ヲ養ッテ置ク、養ッテ
  居レバ問題ニ觸レテ頭ノ閃キガ發スル、今
  日ノ内閣ハ獨リ企畫廳ノミナラズ人物ヲ配
  置シテ居ルガ、ソレハ平常時ノコトヲ爲ス
  ニハ適シテ居ルガ、非常時ニ善處シテ活潑
  潑地ノ働キヲ爲スノニハ適セザル傾向アリ
  ト、私ハ密カニ憂慮スル者デアリマス、今
  日ハ各省ニ於テ諸般ノ經濟產業ニ對スル法
  律案ガ出マシタガ、私共ハソレモ宜カラウ
  ガ、モット徹底的ニ私ハ總動員法ト言フカ、
  國家總動員法ト云フカ、人間ト產業ト機構
  トヲ總動員スル、而モ其總動員ハ全面的デ
  アリ、均整的デアリ、立體的ニ之ヲ見レバ彈
  力的デアル、ソレガ必要デナイカ、統制經
  濟ガ全面的ニ進ンデ行カナケレバナラヌコ
  トハ、此情勢ニ卽シテ免カルベカラザルモ
  ノデアル、是ハ實際統制經濟ヲ喜バザル產
  業家ト雖モ之ヲ認メテ居ル、唯部分的官僚
  ノ小サキ統制ガ面倒デアル、全面的、均整
  的統制經濟ヲ之ニ經驗アル人物ヲ總動員シ
  テ、國家ノ非常ニ備ヘルコトガ今日ノ急務
  デハナイカト私ハ考ヘテ居リマス(拍手)戰
  局ハ不擴大方針ニ拘ラズ、是マデ擴大セラ
  レタ、戰時ニ順應スベキ國內經濟產業ノ大
  改革モ不擴大方針デ行キツヽアレバ、形勢
  ニ引摺ラレテ全面的ノ崩壞トナリ、齟齬ト
  ナル、私ハ擴大スル勢ヲ見越シタナラバ、
  內地ノ國內改革ヲ全面的ニ、普遍的ニ、併
  シ常識的ニ-一部ノ官僚ノミ、一部ノ人
  材ノミノコトデハ出來ナイ、全面的ニ日本
  ノ人材ヲ動員シテ之ヲ運營スルガ如ク改革
  シテ行カルヽコトガ、今日ノ急務デアルト
  私ハ信ジテ、居ル、今日ノ政治情勢ニ於テ
  ハ、難局ニ當ルモノハ近衞內閣ヨリ外ニハ
  ナイダラウト思フ、然ラバ其近衞內閣ガ確
  然トシテ時代ヲ劃シテ、勇躍シテ一新紀元
  ヲ出スガ如ク動カルヽコトガ今日ノ急務デ
  アラウト思フ、私ハ擧國一致ヲ要請セラレ
  ル內閣ニ對シテ、內閣其モノノ政略、軍略
  ノ一致、產業ト經濟ト財政ノ一致、時局ト
  行政トノ一致、政治ト政策トノ一致、內閣
  其モノニ整フベキ一致政策アルコトヲ深ク
  信ジ、私ハ近衞總理大臣ガ此點ニ於テ、大
  イニ心ヲ用ヒラレンコトヲ切望シテ巳マザ
  ル次第デアリマス
  最後ニ御勅語ヲ拜シマスレバ、日支提携
  トアリ、共存トアリマスガ、此提攜共存ノ
  爲ニハ南京政府ヲ徹底的ニ叩ク、叩クコト
  ガ反省ノ途デアル、提攜ノ途デアルト私ハ
  考ヘテ居リマス、南京政府ハ支那其モノノ
  政府ト言ハンヨリハ、外來的勢力ニ依リテ
  支配セラルヽ政府デアルト思フ、蔣介石ハ
  今ヤ殆ド支配權ヲ失ッタト云フ、其左右ニ
  居ル者ハ一部ノ「ファッショ」系統ノ陳立夫、陳
  果夫等ノ人々、然ラザレバ毛澤東、周恩來
  等ノ共產派ノ人々、穩健派ハ斥ケラレテ
  「ファッショ」ト共產黨ガ一〓ニナッテ、排外
  的ニ動キツヽアル、其共產黨ノ後ロニハ「ソ
  ビエト」露西亞アリ、而シテ此蔣介石政權ヲ
  外ヨリ誇導シテ、「リースロス」借款以來、彼
  等ヲ援ケルニ金融經濟ヲ以テシ、自己ノ意
  ノ儘ニ支那ヲ動カサントスルノガ、英國ノ政
  策デアルト私ハ思フ、然ラバ今日ノ支那南京
  ノ政權ハ「ソビエト」露西亞的勢力ト、英國的
  勢力ノ合作デアル、「イーデン」外務大臣ハ事
  變勃發ノ初メニ於テ、英國ノ議會ニ於テハッ
  キリ「ソビエト」露西亞トモ緊密ナル關係ヲ
  持續シテ、形勢ノ發展ヲ監視シテ居ルト
  言ッテ居リマス、日本ガ今マデ傳統的ニ賴
  ミトシテ居ッタ英國ハ「ソビエト」露西亞ト
  緊密ナル關係ヲ持シテ、形勢ノ推移ヲ監視
  シテ居ルト言ッテ居リマス、然ラバ斯ノ如
  キ非國民的ノ非東洋的ノ中央政府ヲ一撃シ
  テ、根柢ヲ衝クコトガ支那ノ抗日ヲ絕滅サ
  セル所以ダト私共ハ考ヘルモノデアリマ
  ス、諸君、南京ヲブッ潰セバ何處ニカ逃ゲテ
  行クダラウ、サウシテ抗日ヲ續クルダラウ
  トノ見解ガアル、併ナガラ南京、長江、浙
  江一帶、此方面ノ經濟的實力ト離レテシ
  マッテ、落行キタル政權ハ何等ノ力ヲモ爲サ
  ヌ、若シ蔣介石ガ斯ノ如クシテ落行クヤウナ
  コトガアレバ、或ハ共產黨ノ爲ニヤラレテ
  シマフカモ知レヌ、若シ旨ク地方ニ落行ク
  ナラバ、ソレハ地方ノ督軍的勢力ニナッテ
  シマフ、共產黨的勢力ガ地方ニ蟠ルト云ヒ
  マスガ、何處ニ逃ゲテ行キマス、陝西カ、
  甘肅カ、外蒙カ、新疆カ、經濟的ニハ價値
  ナク、交通ハ不便ナル支那ノ邊疆ニ永久的
  赤賊ノ混亂ヲ持續スル外ナイト思フ、支那
  問題ニ付テ外來的勢力ガ、日本ニ對シテ色
  色ノ交涉ヲヤッテ居ル、英國ニ依リテ唱ヘ
  ラレタル中立地帶ノ設定トカ、英大使問題
  ニ關スル色々ノ交涉トガアリマスガ、吾々
  ハ英國ニ對シテモ反省ヲ促サナケレバナラ
  又、英國ハ支那ガ長期抗日デ行ク、日本ガ
  不擴大デ行ク、不擴大デ長期抗日、ソレガ
  續ケバ支那ノ樞要ナル部分ハ英國化シテ行
  〃、ソレガ一番宜カッタラウ、是ガ英國ノ
  肚デアル、併シサウ云フ政策ヲ採ッテ「ソビ
  エト」露西亞ト手ヲ繫イデ居ルカラシテ、
  「ソビエト」的勢ニ引摺ラレテ今日ノ大動亂ニ
  ナッタ、日本ガモウ一ツ强ク引叩ク、サウ
  ナレバ支那ノ長期抗日ハ日本勢力ノ支那ノ
  經濟的交通利便ナル地方ニ對スル長期的浸
  潤デアリ、外國勢力ノ漸次的頽廢ノ基トナ
  ル、而シテ是ガ犧牲トナルモノハ國ヲ焦土
  トシテ爭ハントシツヽアル所ノ支那デア
  ル、外來的勢力ハ「ソビエト」露西亞ノ計畫
  通リニ、又英國ノ示唆スル長期抗日ニ依リ
  テ支那全國ヲ焦土ト爲サントシテ居ル、其
  損害ハ何處ニアルカ、第一損害ハ支那デア
  リ、第二損害ハ外來的勢力デアル、日本ノ
  如キハ少シモ恐ルヽモノデハナイ、長期抗
  日ヲヤルナラバ、吾々ノ勢力ガ支那ニ對シ
  テ長期浸潤ヲヤル、斯ノ如キ情勢ナリト私
  共ハ信ジテ居リマス、私ハ日支提携ノ徹底
  ヲ爲サント欲セバ南京政府ノ撃滅ニアル、
  南京ヲ叩ケバ地方ニ逃ゲル、混亂スルカラ長
  期ニナル、困ルト云フガ如キ誤レル考ハ大
  間違ヒ、南京ヲ失ヘル所ノ中央政府、南京
  政府ヲ叩キ破ラレタル所ノ支那ハ、其良民
  ノ力ニ依リテ到ル處ニ日支親善ノ地方的政
  權ヲ作ルコトトナリ、長期ニ抗日スル所ノ
  其分子ハ、支那ノ邊境ヲ攪亂スルニ止マル
  コトト思フ、私共ハ時代ヲ斯ノ如ク認識
  シ、近衞內閣ガ非常ノ決心ヲ以ッテ支那ノ
  中堅ニ向ッテ殲滅的打撃ヲ加フルコトニ、擧
  國一致體制ヲ整ヘラレンコトヲ切望シ、此
  點ニ對スル根本ノ御考ヲ伺ッテ今日ノ質問
  ヲ終ル者デアリマス(拍手)
  〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=51

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• 052・近衞文麿

  ○國務大臣(公爵近衞文麿君)　今日ノ非常
  時局ニ處シマシテ內閣强化ヲ圖ル意思ハナ
  イカト云フヤウナ意味ノ御尋デアッタト思ヒ
  マス、政府ト致シマシテハ、此內閣ハ決シテ
  萬能ノ力ヲ持ッテ居ルトハ思ッテ居ラヌノデ
  アリマス、ソレ故ニ先程モ申述べマシタヤ
  ウニ、各方面ノ方々ノ御協力ト御援助ニ依
  リマシテ、此難關ヲ突破シナケレバナラヌ
  ト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)又只今長
  期ノ抗日ガ却テ支那ニ不利ニシテ、日本ニ
  利スル所ガ多イト云フヤウナ御說デアリマ
  シタガ、是ハ確ニ一ツノ御議論トシテ拜聽
  スルノデアリマス、帝國ト致シマシテハ長
  期ニナラウト、又短期デアラウト、徹底的
  ニ支那ノ政府竝ニ軍隊ニ對シテ大打擊ヲ與
  ヘルト云フ覺悟ニ變リハナイノデアリマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=52

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• 053・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　是ニテ國務大臣ノ演
  說ニ對スル質疑竝ニ各案ニ對スル質疑ハ終
  局致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委
  員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=53

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• 054・中山福藏

  ○中山福藏君　日程第一乃至第五ノ五案ハ
  一括シテ議長指名三十六名ノ委員ニ、日
  程第六及ビ第七ノ二案ハ一括シテ議長指名
  三十六名ノ委員ニ、日程第八ハ議長指名三
  十六名ノ委員ニ、日程第九ハ議長指名三十
  六名ノ委員ニ各〓付託シ、直チニ委員ヲ指名
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=54

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• 055・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　中山君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=55

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• 056・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、各委員ノ
  氏名ハ書記官ヲシテ報〓セシメマス
  〔書記官朗讀〕
  支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案(政府提出)外四件
  委員
  川崎克君〓水留三郞君
  松田喜三郞君松田正一君
  前田房之助君中島彌團次君
  作田高太郞君堀內良平君
  澤田利吉君宇賀四郞君
  福田悌夫君愛野時一郞君
  津倉亀作君北昤吉君
  小笠原三九郞君森田福市君
  岩瀨亮君田邊七六君
  大内竹之助君橫川重次君
  工藤十三雄君武田德三郞君
  丹下茂十郞君山本芳治君
  田中好君大本貞太郞君
  井上知治君豐田收君
  笠井重次君小池四郞君
  赤城宗德君河上丈太郎君
  河野密君須永好君
  中原謹司君馬場元治君
  米穀ノ應急措置ニ關スル法律案(政府提
  出)外一件委員
  村上國吉君岡田喜久治君
  伊藤東一郞君西村丹治郞君
  高田耘平君池田秀雄君
  手代木隆吉君長野長廣君
  村瀨武男君成島勇君
  卯尾田毅太郞君山田六郞君
  森田重次郞君高橋熊次郞君
  森幸太郞君小串〓一君
  小平重吉君田子一民君
  東武君高見之通君
  馬岡次郞君上田孝吉君
  山川賴三郞君西川貞一君
  國光五郞君一ノ瀨俊民君
  東〓實君永山忠則君
  平野力三君守屋榮夫君
  野中徹也君杉山元治郞君
  三宅正一君川俣〓音君
  田中耕君小野謙一君
  輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關スル法
  律案(政府提出)委員
  寺島權藏君小山邦太郞君
  西村金三郞君岡崎久次郞君
  飯塚春太郞君宮澤胤勇君
  眞鍋勝君小山谷藏君
  渡邊玉三郞君小林三郞君
  古田喜三太君小林房之助君
  山田順策君松村光三君
  崎山嗣朝君田中源三郞君
  野方次郞君鈴木英雄君
  江原三郞君田代正治君
  猪野毛利榮君濱地文平君
  大野伴睦君江羅直三郞君
  小林絹治君河上哲太君
  鶴惣市君石坂繁君
  坂本宗太郞君井阪豐光君
  藤本捨助君阿部茂夫君
  松永義雄君井上良次君
  道家齊一郞君三田村武夫君
  臨時船舶管理法案(政府提出)委員
  牧山耕藏君濱野徹太郞君
  最上政三君岡野龍一君
  豐田豐吉君山本厚三君
  堤康次郞君漢那憲和君
  高橋壽太郞君村上紋四郞君
  高木条太郞君喜多壯一郞君
  川副隆君大野一造君
  中井一夫君綾部健太郞君
  南條德男君野口喜一君
  庄司一郞君板谷順助君
  池田七郞兵衞君塩川正藏君
  樋口善右衞門君原惣兵衞君
  稻田直道君高畠龜太郞君
  西岡竹次郞君春名成章君
  伊豆富人君山崎常吉君
  長谷長次君米窪滿亮君
  岡崎憲君淺沼稻次郞君
  小山亮君靑木作雄君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=56

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• 057・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　只今指名致シマシタ
  所ノ支那事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲
  公債發行ニ關スル法律案外四件委員ハ建議
  委員室ニ、米穀ノ應急措置ニ關スル法律案
  外一件委員ハ第九委員室ニ、輸出入品等ニ
  關スル臨時措置ニ關スル法律案委員ハ請願
  委員室ニ、臨時船舶管理法案委員ハ決算委
  員室ニ、ソレ〓〓直チニ御參集ノ上、委員
  長及ビ理事ヲ互選シ、引續キ審議ニ著手セ
  ラレンコトヲ望ミマス(拍手)本日ノ議事日
  程ハ議了致シマシタ、明六日ハ貴族院ヨリ
  政府提出法律案ガ送付セラルヽ見込デアリ
  マスカラ、午後四時ヨリ本會議ヲ開キマス、
  本日ハ是ニテ散會致シマス
  午後六時二十一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007213242X00219370905&spkNum=57

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