第72回帝国議会　衆議院　臨時船舶管理法案委員会　第2号　昭和12年9月6日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  　付託議案
  　　臨時船舶管理法案（政府提出）
  —————————————————————
  　　　　會議
  昭和十二年九月六日（月曜日）午前十時十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　牧山耕藏君
  　　　理事　濱野徹太郎君　理事　最上政三君
  　　　理事　岡野龍一君　理事　中井一夫君
  　　　理事　綾部健太郎君　理事　南條徳男君
  　　　　　　豐田豐吉君　山本厚三君
  　　　　　　堤康次郎君　漢那憲和君
  　　　　　　高橋壽太郎君　村上紋四郎君
  　　　　　　高木粂太郎君　喜多壯一郎君
  　　　　　　川副隆君　大野一造君
  　　　　　　野口喜一君　庄司一郎君
  　　　　　　板谷順助君　池田七郎兵衞君
  　　　　　　塩川正藏君　樋口善右衞門君
  　　　　　　原惣兵衞君　稻田直道君
  　　　　　　高畠亀太郎君　西岡竹次郎君
  　　　　　　春名成章君　伊豆富人君
  　　　　　　山崎常吉君　長谷長次君
  　　　　　　米窪滿亮君　岡崎憲君
  　　　　　　淺沼稻次郎君　小山亮君
  　　　　　　青木作雄君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　遞信大臣　永井柳太郎君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　法制局參事官　樋貝詮三君
  　　　　對滿事務局事務官　竹内徳治君
  　　　　　　　陸軍參與官　比佐昌平君
  　　　　　　陸軍主計中將　平手勘次郎君
  　　　　　　　　陸軍中將　後宮淳君
  　　　　　　海軍政務次官　一宮房治郎君
  　　　　　　　海軍參與官　岸田正記君
  　　　　　　　　海軍中將　豊田副武君
  　　　　　　司法政務次官　久山知之君
  　　　　　　　司法參與官　藤田若水君
  　　　　　司法省民事局長　大森洪太君
  　　　　　司法省刑事局長　松阪廣政君
  　　　　　　遞信政務次官　田島勝太郎君
  　　　　　　　遞信參與官　犬養健君
  　　　　　遞信省管船局長　小野猛君
  　　　　　　拓務政務次官　八角三郎君
  　　　　　拓務省殖産局長　植場鐵三君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　　司法書記官　大竹武七郎君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　臨時船舶管理法案（政府提出）

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/0

  ---

• 001・牧山耕藏

  ○牧山委員長　是ヨリ會議ヲ開キマス、通
  告順ニ依ッテ質問ヲ許シマス-堤康次郞
  君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/1

  ---

• 002・堤康次郎

  ○堤委員　遞信大臣ニ伺ヒタイノデアリマ
  スガ、我國ノ海運業ハ國家的見地カラ見マ
  シテ重要デアルコトハ申ス迄モアリマセ
  又、國際收支ノ點カラ見マシテモ亦重要ナ
  ルモノデアリマシテ、國際收入ノ第三位ニ
  位シテ居ル、卽チ綿織物、生絲ニ次イデ海
  運收入ガ大ナルモノデアリマス、隨テ此海
  運事業ノ發達ニ對シテハ相當御考ニナッテ
  居ラルヽコトト思フノデアリマス、昨日本
  會議デモ大體ノ御意見ハ伺ヒマシタガ、極
  ク搔摘ンデドウ云フ方針デ日本ノ海運事業
  ヲ助長サセタイト云フ御考デアリマスカ、
  極メテ大綱ヲ搔摘ンデ伺ヒタイノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/2

  ---

• 003・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　海運業ノ重要性ハ堤君ノ
  御話ノ通リニ思ッテ居ルノデアリマス、海
  運業ハ申上ゲル迄モナク國防上ノ要求ニモ
  應ジナケレバナラナイ、產業上ノ要求ニモ
  應ジナケレバナラナイ、國民生活上ノ要求
  ニモ應ジナケレバナラナイノデアリマシ
  テ、其重要性ハ十分ニ之ヲ認メテ、其要求
  ニ適應シ得ルヤウニ海運業ヲ助長シタイト
  思ッテ居リマス、只今堤君ノ御話ニナリマ
  シタ國際收支ノ決算ノ上ニ重大ナル要素ト
  ナッテ居ルト云フコトモ。勿論考ヘテ居ルノ
  デアリマスガ、併シ國際收支ノ上ニ重大ナ
  ル要素トナッテ居ルト云フコトダケデ指導
  シテ居ル譯デハナク、只今申上ゲマシタヤ
  ウニ各般ノ要求ニ應ジ得ルヤウニ海運業ヲ
  指導助長シタイト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、隨テ出來得ルダケ優秀ナ商船隊ヲ所有
  スルト云フコトガソレ等ノ要求ニ適應スル
  ニ必要ト考ヘテ居ルノデアリマシテ、飛ば、
  議會ノ協賛ヲ得テ優秀船建造ノ方針ヲ確立
  サレテ居ルノデアリマスガ、其方針ニ從ツ
  テ優秀船ヲ出來得ルダケ增加セシムルト云
  フコトニ努力致シテ居リマス、其方針ニ依
  リマシテ優秀船ノ建造ヲ促進シテ居リマス
  ル結果、今年度ニ於キマシテ若シ豫定通リ
  ニ建造ガ出來マスレバ約百噸以上ノ船舶約
  三百隻、五十万噸ニ垂ンタルモノガ建造セ
  ラルヽ譯デアリマス、明年ノ上半期ニ於キ
  マシテ更ニ約百四十隻二十五万噸ニ達スル
  モノガ建造セラレルノデアリマシテ、斯ノ
  如ク出來得ルダケ優秀ナ各種ノ條件ヲ備
  ヘタ船舶ヲ增設致シマシテ、軍事上、產業
  上、又只今堤君ノ御話ニナリマシタ國際收
  支ノ決濟ノ上ニモ出來得ルダケ有利ナ結果
  ヲ持チ來ラセルヤウニ努力致シテ居ルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/3

  ---

• 004・堤康次郎

  ○堤委員　只今遞信大臣ハ各般ノ要求ニ應
  ズル爲ニ優秀ナル商船隊ヲ造ルヤウニ努
  メテ居ルト云フ御說明デアリマシタ、私、
  是カラ内容ニ突キ込ンデ伺ヒタイト思ヒマ
  スカラドウカ直接ノ事務當局管船局長カラ
  御答辯ヲ願ッタ方ガ便宜カト思フノデアリ
  マス、只今遞信大臣ハ優秀ナル商船隊ヲ殖
  ヤス卽チ今年中ニ五十万噸位殖エルト云フ
  コトデアリマシタガ、今日ノ最モ熱烈ナル
  要求ハ船腹ノ增加デアル、只今遞信大臣ハ
  各般ノ要求ニ云々ト言ハレマスガ、各般ノ
  要求ノ中ニハ私ハ物價騰貴對策トシテノ
  ツノ役割モ含ンデ居ルト思フノデアリマ
  ス、運賃ガ物價ヲ左右スル大ナル要素デア
  ルコトハ是ハ論ヲ俟タナイ、是ハ最モ著シ
  イ例デアリマスガ、鹽ノ如キハ埃及カラコ
  チラニ持ッテ來ルノニ鹽ノ代金五志ニ對シ
  テ運賃ハ三十志デアリマスカラ鹽ノ買入代
  金ニ對シテ運賃ハ六倍デ、埃及ノ鹽ヲ嘗メ
  ルト云フコトハ運賃ヲ嘗メルト云フコトデ
  アッテ、是ハ餘程重要ナコトデアル、木材
  其他ノモノモ亦然リ、ソコデ何レニ致シマ
  シテモ船腹ヲ殖サナケレバ各般ノ要求ニ應
  ズルコトガ出來ナイコトハ明デアリマス、
  一年ニ五十万噸ノ增加デソレデ此要求ニ應
  ジ得ルヤ否ヤ、私ハ甚ダ之ヲ疑問ニ思ッテ
  居ルノデアリマス、ツイ此間優秀船ヲ建造
  スルト云フ名目ノ下ニ古船ヲ四十万噸解體
  シタノデアリマス、四十万噸ト云ヘバザッ
  ト一年ノ造船能力デアル、一年間是カラセッ
  セト働キマシタ所ガ、解體シタダケノ數量
  ヲ補フニ過ギナイノデアル、今日此船腹不
  足ノ著シイ現象ハ、唯優秀船ヲ造ルト云フ
  ダケデ、ソレデ補ヒ得ルヤ否ヤ、管船局長
  ノ御意見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/4

  ---

• 005・小野猛

  ○小野政府委員　船腹問題ハ世界經濟ノ動
  キニ從ッテ、大海運ノ動キニ依ッテ是ガ非常
  ナル增大ヲ圖リ、或ハ調整ヲ圖ルト云フ政
  策ヲ採ラナケレバナラヌコトト存ズルノデ
  アリマス、只今堤サンノ御話モ遞信省ガ古
  船ヲ潰シタコトハ宜クナイヂヤナイカト云
  フコトデアリマスガ、是ハ御承知ノヤウニ
  昭和六七年頃ハ、世界經濟界ガ歐洲大戰ノ創
  疾最モ深刻デアッタ時デアルノデアリマス、
  隨ヒマシテ船腹ガ非常ニ過剩ニナリマシ
  テ、隨所ニ繫船ガ出來ル、世界中ノ繫船ガ
  五十万噸ヲ突破スルト云フヤウナ狀況デ
  アリマシテ、失業者ガ街ニ溢レルト云フ
  實狀デアッタノデアリマス、此際ニ於キ
  マシテ遞信省トシマシテハ、何トカシテ
  此船腹ノ調節ヲ圖ル必要ガアッタ、同時ニ當
  時造船界ガ非常ナ沈衰ノ域ニ陷ッテ居リマ
  シタ、御承知ノヤウニ川崎造船所ノ如キ非
  常ナ「ストライキ」マデ起ルト云フヤウナコ
  トデアッタノデアリマス、ソコデ要スルニ世
  界ノ荷動キガ非常ニ少ナイニモ拘ハラズ、船
  ノ分量ハ世界大戰デ造ッタモノガ尙ホ殘ッテ
  居ル、玆ニ此海運界竝ニ經濟界沈衰ノ原因
  ガアルト心得マシテ、日本デハ特ニ早ク此
  情勢ヲ矯正スル、古イ船ヲ潰シテ新造優秀
  船ニ代ラセヨウトシタ政策ヲ確立サセタノ
  デアリマス、二噸潰シテ、一噸ヲ新造スル
  ト斯ウ云フコトニ致シマシテ、昭和九年ノ
  十月カラ三年間ニ亙リマシテ此政策ヲ行
  ヒマシテ、其結果約五十万噸ノ古船ガ陶汰
  サレ、之ニ代ッテ三十万噸ノ新造船ガ出來
  タノデアリマス、サウ云フコトハ海運界ノ
  爲ニ非常ニ惡イコトデハナイカト云フ意見
  ガアルカモ存ジマセヌガ、私共ノ考ト又從
  來ノ日本海運界ノ經過ニ顧ミマスルト、之
  ニ依ッテ日本海運界ハ英吉利其他ノ先進海
  運國ガ未ダ囘復ノ曙光ノ見エナイ時ニ、日本
  ノ海上運賃ガボツ〓〓騰リ出シタ、世界ニ
  率先シテ囘復ノ機運ニ向ッタノデアリマス、
  同時ニ此優秀ナ三十万噸ト云フモノハ相當
  今マデ曾テナイヤウナ設備モ致シマシタ
  シ、又軍當局トモ話合ッテ、今遞信大臣ノ
  御話ニナリマシタ軍事ノ目的ニモ適フヤウ
  ナ方法ヲ執ッタノデアリマス、所ガ此三十万
  噸竝ニ遞信省ノ優秀船建造方針ニ誘發サレ
  テ出テ來マシタ其他ノ優秀船ガ、現在ニ於
  キマシテハ世界ノ海運界ヲ蓆捲シテ居ルヤウ
  ナ有樣デアルノデアリマス、當時紐育航
  路日本ノ生絲ヲ運ビマスル橫濱紐育間ノ
  航路ノ如キハ、外國船ガ非常ニ入ッテ日本
  船ノ獨占ヲ許サナカッタノデアリマスガ、此
  優秀船建造方針ニ依リマシテ、現在日本ト紐
  育日本ノ弗箱トモ言ハレマスル航路ハ七
  十四五「パーセント」ハ日本船デ獨占シテ居
  ルヤウナ有樣デアルノデアリマス、是ハ一
  ニ懸ッテ優秀船ノ賜デアルノデアリマス、
  從來ハ生絲ハ主トシテ桑港、「シヤトル」等
  カラ亞米利加側ノ汽車ニ載セテ、サウシテ
  ㄱオーヴァー·ランド」シタモノデアリマスガ、
  此優秀ナ「ハイスピード」ノ船ガ出來マシテ、
  「パナマ」經由デ船ニ載ッテ生絲ガ紐育ニ行
  クト云フヤウニ、生絲ノ「コース」ニ非常ナ
  大變動ヲ起シマシテ、同時ニ日本ノ船舶ガ
  殆ド紐育航路ヲ獨占スルト云フヤウナコト
  ニ相成ッテ參ッテ居ルノデアリマス、最近ニ於
  キマシテハ新聞デモ御承知ノ如ク、印度、
  濠洲邊ニ於キマシテ、此優秀船ガ非常ナ活
  躍ヲ致シマシタ結果、英吉利海運界ハ非常
  ニ脅威ヲ來シ、日本ノ海運政策ハ英吉利ヲ
  打倒スルト云フ聲ガアルト云フヤウナ目ヲ
  以チマシテ、現在英吉利本國デハ「インピ
  リアル·マリタイム·コンミッション」ト云フ委
  員會ヲ設ケテ、日本ノ海運政策ニ付テ非常
  ニ深刻ナル檢討ヲヤッテ居ル、東洋方面カ
  ラ英吉利ノ海運ガ壓迫サレルコトガ、恰モ
  數年前「マンチェスター」ノ紡績ガ日本ノ優
  秀ナ紡績企業ノ爲ニ壓迫サレタヤウナ情勢
  ニ、大英帝國ノ海運ガナルノデハナカラウ
  カト云フ非常ナ脅威ヲ覺エテ居ルノデアリ
  やく、次ニ濠洲航路ニ於キマシテモ非常ナ
  「スピード」ノ早イ船ガ入リマスル結果、濠
  洲ノ羊毛ハ殆ド日本船ニ取ラレルト云フヤ
  ウナコトニ相成ッテ參リマシテ、此優秀船主
  義ト云フモノハ經濟上ノ見地カラ見マシテ
  モ、亦海運政策トシテ見マシテモ、非常ナ成
  功デアルト私ハ心得テ居ルノデアリマス、
  ノミナラズ此優秀船體ハ、最前申上ゲマシ
  タ如ク相當ノ軍事施設モ持ッテ居リマスシ、
  此度ノ事變ニ當リマシテ、軍方面ニ優秀ナ
  船舶ヲ提供致シマシテ、國防上ニモ非常ナ
  貢獻ヲ致シテ居ルト私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、優秀船主義ト申シマスカ、優秀船方針
  ト云フモノハ私ハ海運界ノ方面カラ大變良
  イ結果ヲ齎シテ居ルト考ヘテ居ルノデアリ
  やく、又五十万噸ハ少クナイカ、斯ウ云フ
  御話モアリマスガ、是ハ見方ニモ依ルノデ
  アリマスガ、五十万噸ノ新シイ船ヲ造ルト
  云フコトハ非常ナ稀有ナ例デアリマシテ、
  歐羅巴大戰中世界ノ船腹ガ非常ニ不足シタ
  アノ當時ニ於キマシテ、一番日本ノ造船ノ
  多カッタノガ、ヤハリ五六十万噸デアッタノ
  デアリマス、現在ノ狀況ハ歐羅巴大戰中ノ
  造船量ニモ匹敵スルヤウナ分量ニ及ンデ居
  ルノデアリマスルノデ、業界ト致シマシテ
  ハ、私共ト致シマシテモ尙ホ是ヨリ船腹ノ增
  加ヲ圖リタイト思ヒマスルガ、五十万噸ノ
  新造船ハ決シテ少クナイト、斯樣ニ心得テ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/5

  ---

• 006・堤康次郎

  ○堤委員　是カラ御答辯ハ成ベク要點ニ觸
  レテ、簡潔ニ願ヒタイ、只今管船局長ノ御
  答辯デ、成程代々ノ遞信當局ノ海運政策ト
  云フモノガコンナモノデアッタカ、丁度是
  ハ大學ノ辯論會ナリ、又大學ノ卒業論文ヲ
  書イテ居ルヤウナモノデアッテ、アナタ方
  ノ御考ハ實ニ見當ガ違ッテ居ル、五十万噸
  デ少クナイトハ驚イタ、五十万噸デモ百万
  噸デモ足リルモノデハナイ、是ハ新ラシイ
  船ハドン〓〓拵ヘテ行カナケレバナラヌ
  ガ、大體五十万噸モノ古イ船ヲ解體シテシ
  マフト云フコトハ何事デアリマスカ、世界
  ノ海運界ヲ「リード」スルトカ、指導スルト
  カ云フコトハ、是ハ我國ノ管船當局トシテ
  ハ實ニ僭越)至極ノ申分デアル、一體世界全
  體ノ船ハドノ位アルカ、世界ノ船ノ總噸數
  ハ六千百二十五万噸デ其ノ中日本ノ船ハ
  僅ニ四百二三十万噸、實ニ世界全體ノ僅
  ニ七%ニ過ギナイ、僅ニ七%ノ貧弱ナル
  船ヲ持ッテ居ッテ、世界ノ海運界ヲ指導ス
  ルトカ「リード」スルトカ云フコトハ、是
  ハ學生ノ論文トシテハ良イケレドモ、帝
  國議會ノ論議トシテ私ハ承服スルコトハ
  出來ナイノデアリマス、優秀ナル船ヲ澤
  山拵ヘルコトハ、固ヨリ是ハ必要ナ事デア
  ルト思フ、併ナガラ優秀ナラザル船モ、
  朝有事ノ際ニハ、是ハ非常ニ用ヲ爲スノデ
  アリマス、ソコデ若シ先見ノ明ガアッタナ
  ラバ、其ノ解體船ハ私ハ別ニ保存シテ置
  ク、繫イデ殘シテ置クト云フコトガ、良
  カッタノデハナイカ、嘗テ川上操六氏ガ兵器
  ヲ改造スルト云フ時ニ、舊式ノ銃ガ倉庫ニ五
  六杯積ンデアッタ、是ガ無駄ニナルカラ此
  舊式ノ村田銃ヲ燒棄テヨウト云フコトノ書
  類ガ〓ッテ來タ、其時ニ一朝有事ノ際ニハ、
  此舊式ノ銃モ亦必要ナモノデアルト云ッテ、
  ソレヲ保存ヲサセテ置カレタガ、ソレガ日
  露戰爭ノ時ニ皆役立ッタト云フコトヲ私ハ
  聞イテ居ル、ソコデ將來此船ガ非常ニ必要
  デアルカモ知レヌト云フコトハ、昭和七年
  ニハ豫想シ得ラレタ狀況デアルノデアリマ
  ス、卽チ滿洲事變ノ起ッタノハ昭和六年デ
  アリマス、滿洲事變ノ起ラナイ先ニ世界ノ
  海運界ガ悲境ノドン底ニアル時ニハ、或ハ
  分ラナカッタト云フコトモ通リマスケレド
  モ、滿洲事變ガ起ッタ以上ハ、將來日本ニ國
  際的ニ微妙ナ關係ガ生ズルデアラウコト
  ハ、是ハ何人ニモ看取シ得ラレルコトデア
  ル、ソレヲ五十万噸ノ船ヲ徒ニ壞シテシ
  マッテ、今船腹ノ不足ヲ喞ッテ居ルト云フコ
  トハ、事務デアッテ政治デハナイ、大局ヲ
  見ル眼ガナカッタト言ハザルヲ得ナイ、併
  シ船主ヲ保護スルト云フ考ハ洵ニ私ハ同感
  デアリマス、併ナガラ壞サナイデモ宜イノ
  デアル、是ハ例ヘバ船主カラ船主ニ渡ス船
  ノ代金ヲ幾分出サセテ、政府モ之ニ對シテ補
  助ヲシテ特殊會社ヲ拵ヘ、其壞ス船ヲ保存
  シテ置クナリ何トカノ方法モアッタデアラ
  ウ、船主ヲ保護シ、造船ヲ保護スルト云フ
  コトハ、海運國策ヲ以テ立ツ我國トシテハ
  最モ必要ナコトデアル、併シ之ヲ積極的ニ
  保護シ、指導奬勵スルト云フ考ヲ持ッテ行
  カナケレバ、日本ハ將來世界ニ海運ノ覇ヲ
  爲スコトハ私ハ出來ナイト思フ、ソコデ今
  優秀船デナケレバナラヌト云フコトカラ新
  造船ノミニ依ッテ船腹ノ增加ヲ圖ラウト云
  フ御考ハ、私ハ少シ是ハ實情ニ副ハヌノデ
  ハナイカト思フガ、局長ノ御考ハ如何デス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/6

  ---

• 007・小野猛

  ○小野政府委員　勿論新造船ノミヲ造ルト
  云フコト、ソレカラ外國カラ輸入ヲサセナ
  イト云フコトハ其時ノ海運ノ事情ニ依ルコ
  トデアリマシテ、船腹ガ非常ニ不足ヲ〓ゲ
  ルト云フ事態ニ立至リマスレバ、或ハ急場
  ノ間ニ合セル爲ニ外國ヨリ相當ノ船腹ヲ輸
  入スルト云フコトモアリ得ルト思フ、唯日
  本ニ於キマシテモ非常ニ優秀船々々々ト申
  シマスガ、實際ハ古船モ非常ニアルノデア
  リマス、優秀船ト申シマシテモマダ二十
  「ノット」以上ノ船ガ二艘シカナイト云フヤ
  ウナコトデアリマスカラ、吾々ト致シマシ
  テハ何トカシテ優秀船ヲ益〓多クシタイト
  云フ方向ニ進ムト同時ニ、海運界ノ情勢ヲ
  見マシテ、ソレデ間ニ合ハナイト云フ場合
  ニハ外國船モ輸入スルト云フ方策ヲ採ル外
  ナイト考ヘルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/7

  ---

• 008・堤康次郎

  ○堤委員　此事變ガ起リマシテ私ハ將來船
  ノ足リナイコトデ非常ナ混亂ヲ來シハセヌ
  カト云フコトヲ惧レルノデアリマス、日〓
  戰爭ノ時ニハ商船ガ軍事的ニ非常ニ活躍ヲ
  致シマシタ、樺山中將ノ乘ッテ居ル西京丸、
  是ハ裝甲ヲシテ居ナイ所ノ商船デアリマス、
  而モ是ハ戰場ヲ馳驅シ、砲彈ヲ浴ビ、水雷
  ヲ受ケテ將ニ危機一髪沈沒スル所デアリマ
  シタガ、非常ナ働キヲ致シマシタ、日〓戰
  爭ガ始マリマスルト同時ニ、船ガ非常ニ不
  足ヲ生ジマシテ-日〓戰爭ノ始マル前ハ
  僅カ十六万噸ニ過ギナカッタモノガ日〓戰
  爭ガ濟ンダ時ニハ、船ハ買ウタモノモアリマ
  スシ急ニ造ッタモノモアリマシテ、ソコデド
  レ位ノ船ニナッタカト云ヒマスト、三十三万
  噸ニナッテ居ル、日〓戰爭ノ始ッタ時ト終ッタ
  時ト比ベマスルト十割六分殖エテ居リマ
  ス、ソレカラ日露戰爭ノ時ニハドウデアッタ
  カト云ヒマスト、日露戰爭ノ始マル前ハ六
  十五万噸デアッタ、併シ日露戰爭ノ時ニモ
  隨分商船ガ活躍ヲ致シマシテ、日本海ノ海
  戰ノ時ニ逸早ク敵艦見ユトノ信號ヲ發シタ
  ノハ信濃丸デ、僅ニ敵前三千米ノ距離デ竝
  行シテ來テ時々刻々ニ其情報ヲ送ッテ我ガ
  海戰ニ寄與シタコトハ莫大デアリマス、
  旅順ノ閉塞ノ時ニモ古イ船ヲ二十一艘沈沒
  サセタ、戰爭ノ役ニハ相當立ッテ居ル、ソコ
  デ戰トナリマスト非常ニ船ガ必要デアリマ
  シタガ故ニ、戰爭ノ濟ンダ三十八年ニハ九
  十三万噸ニ殖エテ居ル、其增加シタ率ハ四
  割三分デアリマス、ソコデ日〓戰爭ト日露
  戰爭ト、此二ツノ戰爭ノ結果船ノ必要ヲ痛切
  ニ感ジテ、サウシテ殖エタ其率ハト云フト
  平均シテ七割四分五厘ニナッテ居ルノデア
  リマス、ソコデ日支事變ガ始ッタ、現在ノ四
  百二十万噸ト云フモノニ其同ジ率デ七割四
  分モ殖サナケレバ需要ニ應ゼラレヌト云フ
  コトニナッタナラバ、是ハ實ニ大變ナコト
  デアル、是ハ私ハ想像ヲ申スノデハナイ、
  過去ノ數字デ申シテ居ルノデアリマスルカ
  ラ、此事變ガ濟ムマデニハ非常ニ船ノ必要
  ヲ生ジテ來ル、ソコデ大勢ヲ見マシタナラ
  バ、逸早ク之ニ對シテノ對策ヲ講ジナケレ
  バ、一日遲レヽバ國家ノ損失ハ私ハ大ナル
  モノガアルト思フ、是ハ事軍機ニ關シマスカ
  ラ私ハ申上ゲルコトヲ憚リマスガ、日〓戰
  爭、日露戰爭ニ於テハ商船ガ大イニ軍艦ノ
  助ケヲヤック、近頃ハ商船ガ不足シテ居リマ
  スガ故ニ、軍艦ニ相當商船ノヤル輸送ノ役
  目ヲ手傳ッテ貰ッテ居ルノデハナイカ、事變
  ニ對シテ商船ガ役ニ立ツテ居ルト云フ先程
  ノ御說明、ソレハ決リ切ッタコトデアル、事變
  ガ起レバ兵隊ヲ輸送シナケレバナラヌ、ソ
  レハ商船ノ任務デアリマスカラソレハモウ
  當然ノコトナノデアリマス、日本ノ軍事關
  係ノ輸送ヲ我國ノ商船デ全部間ニ合スト云
  フコトハ恐ラク私ハ出來マイト思フ、イマ
  ニ眼ヲ〓スヤウナ事態ヲ玆ニ來スト思フノ
  デアリマスガ、斯ンナコトデヤッテ行ケルト
  思ハレルノデアリマスカドウカ、私ハ五十
  万噸ノ船ヲ潰シテシマッタコトハ實ニ國家
  的見地カラ見テ惜シイト思フ、併シ潰シテ
  シマッタコトハドウモ是ハ仕方ガナイ、床次
  遞信大臣ノ時代ニ其政策ハ私ハ誤ッテ居ル
  カラト云フコトデ遞信大臣ニ注意シタ所ガ、
  大臣ハ管船當局者ハ旣ニ久シク優秀船デ
  ナケレバイカヌ古イ船ハ壞サナケレバイカ
  ヌト云フ强イ意見ヲ持ッテ居ルカラ、其君ノ
  意見ト一應對質シテ吳レナイカ、僕ハソレ
  ヲ聽イテ大イニ參考ニシタイト思フト言ッテ
  居ル中ニ逝クナラレタノデアリマスカラ、
  私ハ實ニ惜シイコトヲシタト思ッタ、優秀
  船ハ非常ニ結構デアリマス、私ハ贊成ヲシ
  マス、速力ガ早イ優秀ナ船、是ハ結構ナコ
  トデアル、結構ナコトデアルガ、優秀船ト
  云フモノハ一面ニ不經濟ナ船デアリマス、
  一番優秀ナ速力ヲ持ッテ居ルモノハ軍艦デ
  アル、併シ是ハ商船トシテハ一番不經濟ナ
  モノデアリマス、大體船ノ速力ヲ增ス爲ニ-
  卽チ速力一割ヲ殖ストドレダケ石炭ヲ多ク
  使フカト言ヒマスト三乘比ニ比例スル、ソコ
  デ速力ヲ一割殖スト云フコトニナルト石炭
  ヲ三割三分多ク焚カナケレバナラヌ、速力
  一割ニ對シテ石炭一割ダケナラソレデ宜シ
  イ、三乘比ニ比例ヲシマシテ三割三分石炭
  ヲ多ク焚カナケレバナラナイ、ソレカラ速
  力三割ヲ殖スノニハドウカト云フト、石炭
  ヲ十一割九分多ク焚カケナレバナラヌト云
  フコトニナル、ソレハ製品ヲ急イデ送ル時
  ニハ「スピード」ノ早イ優秀船ガ必要デアリ
  マス、併シ日本ハドウカト言ヘバ主トシテ
  原料品ノ輸入、又サウ急ガナイ製品ノ輸出
  デアリマスカラ、サウ寸刻ヲ爭フモノデハナ
  イ、日限ノ早イト云フコトヨリモ價格ノ安
  イト云フコトガ必要デアリマスカラ、是ノ、
  船價ノ安イモノヲ使フヤウニシナケレバナ
  ラナイ、唯徒ニ理想ニノミ驅ラレルト云フ
  コトハ私ハ實情ニ大變懸ケ離レテ居ル所以
  デハナイカト斯ウ思フノデアリマスガ、大
  體アナタハ優秀船デナケレバナラヌ、又斯
  ウ云フ際ニハ優秀ナル船モ必要デアリマス
  ケレドモ、優秀デナイ船モ非常ニ是ハ必要
  ヲ生ジテ來ルノデアリマスルガ、其船腹增
  加ト云フコトニ付テドウ云フ御考ヲ持ッテ
  居ラレルカ、又船腹增加ハ必ズ優秀船デナ
  ケレバナラヌト御考ニナルカドウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/8

  ---

• 009・小野猛

  ○小野政府委員　非常ニ船腹ガ足ラナクナ
  ルダラウト云フコトデアリマスガ、私モ戰
  局ノ擴大如何ニ依ッテハ同憂ノ者デアリマ
  ス、唯最前大臣カラモ申上ゲマシタガ、現
  在年內ニ五十万噸、其外ニ日本ノ造船所ニ
  現在註文サレテ居ル船ガ百二十五万噸ア
  ル、是ガ一兩年或ハ兩三年中ニ海運界ニ出
  テ參ルノデアリマス、是ハ御承知ノヤウニ
  「スピード」ノ速イ船、能率ノ高イ船ト申シ
  マスルト、古船ノ能率ニ比較致シマシテ約
  三割乃至四割ノ能率ガアルノデアリマス、
  古船百万噸ニ對シテ新造船百三四十万噸ノ
  能率ヲ發揮スルト云フコトガ技術的ニ言ハ
  レルノデアリマス、隨ヒマシテ現在ノ百二
  十五万噸ノ船腹ガ非常ニ殖エルト云フコト
  ニナレバ、相當ニ海運界ヲ潤ホシ、又軍需
  方面ノ需要ヲモ充タシ得ルト考ヘルノデア
  リマス、而シテ現在ノ狀況ハドウカト云フ
  コトヲ簡單ニ申シマスルト、現在ニ於キマシ
  テハ軍ノ爲ニ相當徵用サレテ居ルノデアリ
  マス、併シ支那方面ノ排日ノ爲ニ、相當ノ
  船腹ガ內地ニ參ッテ居リ、又遞信大臣ハ先
  頃外國船ノ沿岸貿易ヲ一時開放スルト云フ
  コトニ致シマシテ、兎ニ角現在ハ或ル程度
  ノ小康ヲ保ッテ居リマス、今急激ニ非常ナル
  船腹ヲ增ス必要ガアルカドウカト云フコト
  ハ相當檢討ヲ要スルト考ヘルノデアリマ
  ス
  ソレカラ古船ノ方ガ經濟的ニ宜イデハナ
  イカト云フ御話モアリマシタガ、是ハ見方
  ニモ依ルノデアリマセウ、私ノ方デ調ベマ
  シタ所ニ依ル實例ヲ見マスト、古船デ十一
  「ノット」ノ速力ヲ出スノニ二十六瓲ノ石炭
  ヲ要スルノデアリマス、所ガ新造船デハ二十
  五瓲ノ石炭ヲ焚イテ十六「ノット」ノ「スピー
  ド」ガ出ルノデアリマス、又二十八瓲ノ石
  炭ヲ焚イテ十七「ノット」ノ速力ガ出ルト云
  フ實例ガアルノデアリマス、十一「ノット」
  ノ速力ヲ出ス爲ニ二十六瓲ノ石炭ヲ消費ス
  ルト云フヤウナコトハ、經濟上カラ見マシ
  テモ何レガ經濟ナリヤト云フコトモ考ヘナ
  ケレバナラヌノデアリマスルガ、併シ手取
  リ早ク安イ船ヲ兎ニ角一稼ギ二稼ギシテ、此
  難局ヲ切拔ケヨウト云フコトモ一ツノ傾聽
  スベキ意見デアルト考ヘルノデアリマス、
  斯ルガ故ニ此臨時船舶管理法ニ於キマシテ
  モ、從來ヨリハ古船ノ輸入ヲ緩和スルト云
  フコトニナッテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/9

  ---

• 010・堤康次郎

  ○堤委員　其古船トカ優秀船トカ云フコト
  ハ極メテ抽象的ニナリマスルガ、大體是ハ
  輸入ヲ禁止シテ居ラルヽ狀況ニナッテ居ル
  ノデアルガ、其標準ハドノ點ニ持ッテ居ラ
  ルヽノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/10

  ---

• 011・小野猛

  ○小野政府委員　此標準ヲ技術的ニ決メル
  ト云フコトハ中々困難デアルト思フノデア
  リマスルガ、現在海運業ノ定論ト致シマシ
  テハ、歐羅巴大戰中ニ急造濫製致シマシタ
  船ガアルノデアリマスガ、斯ノ如キハ極メ
  テ能率ノ上ラナイ古船ト稱スルモノノ標本
  デアラウ、斯ウ云フ風ナ觀念デアリマスル
  ノデ、私共モ歐羅巴大戰以前ノ船ハ大體古
  船トシテ取扱ッテ宜イノデハナカラウカト
  斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/11

  ---

• 012・堤康次郎

  ○堤委員　ソコデ現在ノ輸入ノ條件ハ船齡
  ハ何年位ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/12

  ---

• 013・小野猛

  ○小野政府委員　現在デハ五年ニナッテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/13

  ---

• 014・堤康次郎

  ○堤委員　サウスルト五年以上ハ古イモノ
  トシテ役ニ立タヌト云フ譯デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/14

  ---

• 015・小野猛

  ○小野政府委員　現在デハ五年ト申シマス
  ノハ、優秀船ヲ日本ノ造船所デ建造サセヤ
  ウト云フ趣意デアリ、船舶ノ自給自足、戰
  時ニ於キマシテ船ハ成ベク日本ノ造船所
  デ造ラウト云フ見地カラシマシテ、外國ノ
  古船ヲ入レルコトヲ成ベク制限シテ居リマ
  スルノデ、特ニ相當嚴シクヤッテ居ル次第
  デアリマス、併シ此臨時船舶管理法デ是ガ
  戰時事變ト云フコトニ相成リマスレバ、其
  限界ハ相當緩和スルコトニ相成ルノデハナ
  イカト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/15

  ---

• 016・堤康次郎

  ○堤委員　五年位ノ船ヲ賣ル者ハソレハ殆
  ドアリハシマセヌカラ、輸入ノ禁止ニ等シ
  イト云フコトデアリマスガ、新造船ヲ以テ
  日本ノ自給自足ヲ圖ル、ソレハ私共モ非常
  ニ同感デアル、併ナガラ造船ノ能力ニ限リ
  ガアリ、最モ不況デアッタ昭和七年ノ造船
  能力ハ年ニ四万三千噸ヨリナカッタガ、翌年
  ニハ六万八千噸ニナリ、其翌年ニハ十二万
  四千噸、更ニ十一万一千噸、昨年ハ二十七
  万噸出來タ、今年ハ當局ノ指導ト當業者ノ
  努力トニ依リマシテ五十万噸出來ル、併シ
  昭和七年ノ四万三千噸カラ五十万噸ト云フト
  ザット是ハ十倍デアリマス、造船能力ニハ限
  リガアル、ダカラ應急ノ施設トシテハ私ハ
  安イ古船ヲ輸入シテ船腹ノ增加ヲ圖ッテ、
  面ニハ國家ノ軍用ニモ供シ又物價ノ調節ニ
  モ供シ、而シテ是ガ不況ニナッタト云フ時
  ニハ古イ船程早ク壽命ガ終ルノデアリマス
  カラ、此際ハ古イ船ガ一番私ハ適切ニ役ニ
  立ツト思フ、アナタ方ハ常ニ書類ノ上カラ見
  テ居ラレマスガ、大體實際ノ問題トシテ船
  ノ壽命ト云フモノハソンナ短イモノデハア
  リマセヌ、是ハ最モ古イ例デアリマセウ
  ガ、敦賀丸ト云フ船ガアル、是ハ總噸數九
  百九十六噸ノ船デアリマスガ、元治元年ニ
  造ッタ船デアリマス、町田總裁ガ生レラレ
  ノタハ文久三年デアリマスカラ、其翌年ニ
  出來タ船デアリマス、其敦賀丸ガ今尙ホ矍
  鑠トシテ働イテ居ル、昭和六年ニ是ハ支那
  ニ賣ラレタ、古船ダト云ウテ當局ノ排斥ニ
  遭ウテ支那ニ賣ラレタケレドモ、支那デハ
  沿岸ヲ盛ンニ活躍致シテ居ル、是ハ一ツ考
  ヘナケレバナラナイコトデアリマス、日本
  ガ今日マデ英國船、諾威船ナドヲ驅逐シタ
  ノハドウカト云フト、安イ船價ノ古船デ勇
  敢ニ世界ノ各地ヲ步キ〓ッタ其結果デアリ
  やく、而モ少シ海運界ガ好クナリ國ガ伸ビ
  テ來マスルト直グニ慢心ヲ致シマシテ、是
  ハ古船ダ〓〓ト言ウテ叩キ賣ラシテシマ
  フ、其結果支那ハ之ヲ買ウテ、保險モ附ケ
  ズ、月何元カノ安イ船員ヲ傭ッテ支那ノ沿
  岸ヲ盛ンニ活躍シテ居ル、日本ガ古船トシ
  テ排斥シタモノヲ支那ガ買ウテ、私ハ支那
  ノ沿岸航路ナドハ嘗テ日本ガ英國、諾威ヲ
  驅逐シタガ如ク、軈テ支那人ニ驅逐セラル
  ルノデハナイカト云フ杞憂ヲ持ツノデアリ
  やっ、サウ云フ實情ニ副ハナイコトヲ考ヘ
  ズ須ク實際ニ合ウタヤウナコトヲナサルガ
  宜シイ、是ハ私ノ經驗デアリマスガ、大正
  七年ノ七月ニ秩父丸ト云フ總噸數千五百四
  十噸ノ船ヲ自分デ買ヒマシタ、是ハ千八百
  七十八年ニ建造シタ船デアリマシテ、當時
  四十一年ノ老齡船デアッタノデアリマス、併
  ナガラソレハ間モナク他ニ賣リマシタ、買
  ウタ値段ハ八十万圓デアッタ、ソコデ船齡四
  十一年ノ船デモ經濟界ノ狀況ニ依ッテハ八
  九十万圓ノ市場價値ガアッタノデアリマス、
  私ハ斯ウ云フ際ニハ最モ壽命ノ短イ安イ船
  ヲ輸入シテ、此國家的ノ急ニ應ズルコトガ
  最モ今ノ時代ニ適切シタ政策デハナイカト
  思フガ如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/16

  ---

• 017・小野猛

  ○小野政府委員　幾分意見ニ相違ヲ來スカ
  モ知レマセヌガ、英國船ヲ追拂ヒ、其他ノ
  優秀國ノ船ヲ追拂フト云フノハ、私ノ考デハ
  優秀船ニアラズンバ競爭ハ出來ナイト考ヘル
  ノデアリマス、日本ガ諾威又ハ希臘ノヤウナ
  古船國デ-一種ノ海運國デアリマスガ、古
  船ヲ以テ主トシテ定期航路ヲヤッテ居ル國ハ一
  種ノ海運國デハアリマスケレドモ、斯ノ如ク
  古船本位デ世界ノ特ニ亞米利加、英吉利、
  獨逸ト云フヤウナ優秀船體ヲ持ッテ居ル國
  ノ、私ハ特ニ英吉利ト云フコトヲ擧ゲマス
  ルガ、斯ノ如キ優秀ナ國ノ海運ヲ壓倒スル
  ト云フコトハ不可能デアルト思フノデアリ
  やく、ソレハ最前申上ゲマシタヤウニ、優
  良船ガ出來テ初メテ英吉利ガ日本ノ海運ノ
  壓迫ヲ覺エ、現在非常ニ悲鳴ヲ揚ゲテ居ル
  ノデアリマスガ、是ハ古船デハ決シテ出來
  ナイト私ハ考ヘルノデアリマス、併シ何度
  モ申上ゲマスルガ、今戰時事變ニ際シマシ
  テ、或ル程度ノ古イ船ノ輸入ヲ考ヘルト云
  フコトハ、遞信省ニ於キマシテモ考ヘテ居
  ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/17

  ---

• 018・堤康次郎

  ○堤委員　ソレハ大變ナコトニナリマス、
  世界大戰ノ時ニ戰禍ニ罹ッタ船ハ大體ニ於
  テ千二百八十万噸、其中伊太利ハ所有船ノ
  五割一分ヲヤラレタ、諾威ハ四割七分擊沈
  セラレタ、希臘ハ四割、佛蘭西ガ三割九
  分、英吉利ハ三割七分、日本デモ所有船ノ
  七分ヲヤラレタ、將來ノ國際情勢ト云フモ
  ノハ何時ドウナルカ分ラナイ、船ヲ多ク
  持ッテ居ナケレバ一朝有事ノ際ニハ私ハ非
  常ニ間誤ツクト思フ、ソレカラ優秀船ト云
  フコトハ、船ノ建造ノ新シイト云フコトモ
  主ナル條件デアリマスガ、又機關、卽チ重
  油ヲ使フ「タービン」ノ機關ヲ意味シテ居ラ
  レルト思フノデアリマスガ、ソレハ「ター
  ビン」ガ經濟デアリマセウ、併ナガラ是モ
  一ツ考ヘナケレバナラヌ、日本ノ軍艦ハ大
  部分「タービン」デアリマス、日本ノ商船ノ
  悉ク「タービン」デアル、ソコデ重油輸入ガ
  止ッタラドウスルカ、ソレヲ一ツ考ヘナケレ
  バナラヌ、且又世界ノ各地ヲ股ニ掛ケテ未
  開ノ地ニ活躍ヲスルノニハ、何處ニデモ重
  油ヲ得ラレルト云フ譯ニハ行カヌ、是ハ相
  當困難デアリマス、石炭ハ到ル處ニアル、
  將來日本ノ海運トシテ發展スベキ南米トカ
  南阿トカ「ニユージーランド」濠洲ナドニ行
  キマスルト云フト、是ハ中々重油ヲ直グニ
  供給ヲ受ケルト云フコトハ相當困難デア
  ル、ソコデ石炭、一朝事有ル場合ニハ石炭
  デ間ニ合フノデアリマスカラ官吏ハ論文ニ
  ナルヤウナコトガ好キデアル、所謂統制ダ
  トカ、何ントカキチントシタコトガ大變好
  キデアル、學校デ論文ヲ書クヤウナ氣持ヲ
  以テヤラレマスルト云フト、是ハ大變ナ間
  違ガ起リマスルゾ、ソレカラ又安イ船ハ不
  經濟ダカラ禁止スル、禁止シナクテモ商賣
  人ハ算盤ヲ採リマスカラ、不經濟ト思ヘバ
  決シテ買ヒハシマセヌ、役人ガソコマデノ御
  心配ハ私ハ却テ御無用ダト思フ、經濟界ノ
  實情ニ應ズルヤウニ善處シテ行クコトガ最
  モ私ハ適當ナル海運政策ダト思フノデアリ
  マスガ、ソコデ現在ノ管船當局ノ此海運ニ
  對スル方針ト、日本ノ船ノ需給トノ關係ハ
  調和ガ取レテ居リマセヌ、調和ガ取レテ居
  ナイト云フ現象ハ何處ニ現レテ居ルカト言
  くべ、關東州ニ置籍シテ居ル所ノ變態輸入
  船及ビ外國ノ傭船、斯ウ云フコトニナルノ
  デアリマスガ、大體現在外國ノ傭船ノ數
  ト、變態輸入ノ船ノ數ハドノ位ニナリマセ
  ウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/18

  ---

• 019・小野猛

  ○小野政府委員　變態輸入ハ實ハ政府ノ政
  策ノ下ヲ潜ッテ居ルノデアリマシテ、正確ナ
  數字ハ分リマセヌガ、大體總噸數三十万噸
  位ダラウ、斯ウ云フコトデアリマス、外國
  ノ傭船モ大體其邊ヂヤナカラウカト思ヒマ
  ス、「デットウエート」デ五十万噸ト云フコ
  トガ言ハレテ居リマス、最近船腹ノ不足ニ
  依ッテ相當增加シテ參ッテ居ル傾向ニアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/19

  ---

• 020・堤康次郎

  ○堤委員　總噸數三十万噸ト云ヘバ重量噸
  ニシテ五十万噸、サウスルト變態輸入ト外
  國ノ傭船ト合セテ百万噸、百万噸ト云フモ
  ノハ、是ダケ運賃ガ高クテモ尙且ツ不足ダ、
  ソレダケ變態デ日本ニ入ッテ稼イデモ足リ
  ナイカラ運賃ガ最近三倍ニモ暴騰シタト云
  フ現象ヲ玆ニ來シテ居ル、卽チ經濟上ニ現
  レテ居ル所ノコノ現象ト云フモノハ、ソレ
  程船ガ足リナイト云フコトガ玆ニ出テ居ル
  ノデアリマス、大體外國ノ傭船ト云フコト
  ハ、此位詰ラヌコトハナイ、外國ノ傭船ヲ
  スルト云フコトハドウ云フコトデアルカ、大
  體之ヲ變態輸入ト傭船トヲ合セテ百万噸ト
  シテ、傭船料ヲ月一噸七圓ト致シマスルト
  年ニ八千四百万圓ノ正貨ヲ拂ハナケレバナ
  ラヌ、變態輸入ノ分ハ何トカ致シマシテモ、
  外國ノ傭船ダケデ年ニ四千二百万圓ト云フ
  モノハ外國へ正貨ヲ拂ハナケレバナラナ
  イ、其他ニ外國ノ船ヲ日本デ傭ウテ使フト
  云フコトハ、外國ノ船員ヲ日本デ養成スル
  ト云フコトナノデアル、高イ月給ヲ拂ッテ外
  國ノ船員ヲ養成スルト云フコトニナル、日
  本ニハ船員ハ澤山居リマス、居リマスシ又
  日本ニ船員ハ養成シテ置カネバナラヌ、飛
  行機ノ操縱士或ハ船ノ船員ト云フモノハ
  朝一夕ニ出來ルモノデハナイ、平時ニ於テ
  常ニ養成ヲシナケレバナラヌ、傭船ヲシテ
  居ルト云フコトハ、外國ノ船員ヲ日本ノ高
  イ金デ賄ッテ養ッテ居ル、コンナ馬鹿ナコト
  ハナイ、私ハ優秀船ヲ十二分ニ造リ得ルダ
  ケノ金ガアルナラバ是ハ何ヲカ言ハンヤ、
  併シ日本ノ現在ノ經濟ノ狀態ニ於テハ之ニ
  應ジタ政策ヲ採ラナケレバナラヌ、極ク早
  イ話ガ、數ノ少イ優秀船ヲ持ッテ世界ノ海
  運ニ覇ヲナスカ、數多ク優秀ナラザル船ヲ
  持ッテ世界ニ覇ヲナスカ、ドッチガ早イカ今
  此處デ自動車屋ヲ開業スルト云フ例ヲ取ッ
  テ見レバ簡單ニ分ル、息子ガ大勢居ッテ皆運
  轉ガ出來ルナラ、日本ノ海運ノ實情ハサウ
  云フ風ナモノナノデアル、サウスルト云フ
  ト高級車ヲ一二臺買ウテ「ハイヤー」ヲ始メ
  テモ何時客カラ註文ガ來マシテモ、生憎出
  拂ッテ居リマス、斯ウ云フコトデハ得意先ハ
  取レマセヌ、何時電話ガ掛ッテ來テモ直グ間
  ニ合フヤウニ自動車ノ數ヲ整ヘテ置クト云
  フト註文ガ集ッテ來ル、船モ此通リ船ガ多
  ケレバ世界カラ積荷ノ註文ガ集ッテ來ル、
  殊ニ「トランパー」ト云フモノハ船ノ數ガ多
  クナケレバナラヌ、日本ニ「オッフアー」ス
  レバ何時デモ船ガ間ニ合フト云フコトニシ
  テ置クコトガ世界ノ得意ヲ取ッテ行クト云
  フコトデアル、先ヅ世界ノ得意ヲ取ッテ行ッ
  テ、ソレカラ徐々ニ優秀船ニ換ヘテ行ク、
  ト斯ウ云フ方法ヲ採ラナケレバナラヌ、金
  持ノ息子ガ道樂半分デ自動車屋ヲヤルノナ
  ラバ、極ク少イ優秀ナル自動車ヲ買入レテ
  營業スルノモ宜シイ、日本ノ實情ニ於テハ
  ソレハ適シマセヌゾ、ソレカラ又船ガ多イ
  ト云フト不景氣ニナルト云フコトハ、是八
  數學ヤ論文デハサウ云フコトガアリマスガ、
  實際ハサウヂヤナイ、船ガ多クテ何時デモ
  註文ヲ受ケ得ラレルヤウニシテ置クト云フ
  コトガ私ハ海運ガ繁昌スル本ダト思フ、銀
  座ノ「カフエー」ハ近頃澤山殖エタ、併シ吾
  吾ノ學生時代ニハ「カフエー」ハ極ク少イ、
  少イ時代ニハ行ク者ハアリマセヌガ殖エル
  ト益〓繁昌スル、是ハ卽チ理窟ヤ學問デハナ
  イ、實際ノ狀況デアル、吾々ハ近頃ハ身體
  ガ肥ッタガ、瘦セテ居ッタ時ニハ洋服ト云フモ
  ノハ大抵柳原へ買ヒニ行ッタ、柳原ニ行ケバ
  好キ好ンダ洋服ガ買ヘル、洋服屋ガ澤山竝
  ンデ居ルカラ特ニ註文ヲシナクテモ「レデー
  メード」デ買ヘル、局長ハソンナ必要ハ
  ナイデセウガ、屬官雇員ナドニ聽イテ御覽
  ナサイ、大抵「レデーメード」デ役ニ立テテ
  居ル、ソレハドウ云フ譯カ、柳原ニハ洋服
  屋ガ竝ンデ居ルカラ、ソコデ皆買ヒニ行ク
  ノデアル、日本ニハ船ガ澤山アル、何時「ト
  ランパー」ノ「オッフアー」ヲ出シマシテモ、
  直グ間ニ合フト云フコトニナレバ、日本ハ
  遂ニハ世界ノ海運ヲ指導スルコトガ出來ル
  ト思フ時ハ正ニ非常時デアル、今日マデノ
  極ク少イ優秀船デ行クト云フサウ云フ實情
  ニ副ハナイ政策ヲ止メテ、サウシテ實情ニ
  副フヤウナ政策ヲ執ッテ戴キタイ、私ハ眞劔
  ニ國家ノ大局カラ考ヘテ居ルノデアリマス、
  今局長トシテハ直グニ答辯ハ出來マスマイ、
  能ク是ハ御考ニナルコトガ宜シイ、大體ズッ
  ト引續イテ管船局ニハ傳統的ノ一ツノ方針
  ガアリマス、之ヲ轉換スルト云フコトハ相
  當困難デアリマセウ、併シナガラ是ハ誤ッ
  テ居ルト思ッタラ速ニ轉換シナケレバナラ
  又、而シテ國家ノ實情ニ副フヤウニシテ行
  カナケレバナラヌト私ハ思ヒマスガ、遞信
  大臣ニ最後ニ此點ニ付テ一ツ御意見ヲ伺ッ
  テ見タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/20

  ---

• 021・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　先程カラ堤君ノ御話ニ
  ナッテ居リマス優秀船建造ノ方針ハ贊成デ
  アル、出來ルダケ優秀船ヲ多ク持ツコトハ
  必要デアルガ、同時ニ又非常ノ場合モ考慮
  シ、又特殊ノ經濟上ノ要求ニモ應ズル爲
  二、適當ナ古船モ輸入ヲ許ス方ガ宜カラウ
  ト云フ大體ノ御趣旨ダト思フノデアリマス、
  今日ノ事態ニ於キマシテハ、大體ニ於テ優
  秀船建造ノ方針ハ是ハ繼續シテ行カネバナ
  ラヌコトハ堤君御自身モ御認メト思ヒマス
  ガ、此非常ノ場合ニ臨ンデ船腹ノ不足ヲ調
  節シテ行ク爲ニ特殊ノ古船ヲ輸入スルト云
  フコトハ是ハ已ムヲ得ナイ所デアルト認メ
  マシタノデ、今御審議ヲ願ッテ居ル本法律
  案ノ中ニモ從來ノ方針ヲ緩和スル意味デ或
  ル程度ノ改革ヲスルコトニナッテ居ルノデ
  アリマス、唯堤君ガ先程御述ニナッタ非常
  ニ老齡ノ船デモ十分役ニ立ツデハナイカト
  云フヤウナ御話モアリマシテ、如何ニモ人
  間ニモ非常ナ老人デ尙且ツ非凡ナ人物モ居
  ルノデアリマスガ、マア大體カラ言フト老
  齡ニナルト活動能力ハ鈍クナルノデアリマ
  スカラ、古船ノ輸入ヲ許可スルト致シマシ
  テモ、堤君モ御承知ノ通リ大戰當時ハ隨分
  各國デ船舶ガ不足スル爲ニ粗製濫造ヲヤッ
  タ事實ガアル、甚シキハ鐵筋「コンクリー
  ト」ノ船マデ拵ヘタノデアリマスカラ、サウ
  云フヤウナ當時ノ粗惡ナ船ヲ持テ餘シテ何
  處カヘ賣付ケヨウトシテ居ル國モ今日ハア
  ルノデアリマス、サウ云フヤウナ持テ餘サ
  レテ居ルヤウナ船ヲ買込ンデ來ルト云フヤ
  ウナコトハ是ハ困リマスケレドモ、大體ニ
  於キマシテ日本ニ入ッテ、日本ノ優秀船建
  造ノ方針ト調和シ得ルヤウナ適當ナ古船ハ
  外國カラ輸入ヲ許シマシテ、此非常時ニ對
  處スルコトノ出來ルヤウニ併セテ使用シテ
  行キタイ、斯ウ云フ考デ居ルノデアリマシ
  テ、此御審議ヲ願ヒマス法律案モ亦其精神
  ニ基イテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/21

  ---

• 022・堤康次郎

  ○堤委員　ドウモ其點ハ少シ是ハ矛盾シテ
  居ル、優秀船ガ必要ダト云フナラバ、此非
  常時局ニ對處スル爲ノ輸入ハ是ハ優秀ナラ
  ザル船ガ一番宜イ、何トナレバ壽命ガ短
  イ、事變ガ濟ンダ時ニ壽命ガ終ルト云フヤ
  ウナ船ヲ入レルコトガ是ガ一番適當シテ居
  ル、焦眉ノ急ハ終ッタ、而シテ優秀船デ行
  カナケレバナラヌト云フ時ハ丁度ソレニ適
  當スルト思フ、私ハ之ニ付テ更メテ御答辯
  ハ要求致シマセヌガ、能ク一ツ遞信當局ハ
  此點ヲ御考ニナリマシテ、徒ニ理想ニ驅ラ
  レルコトナク實情ニ合フヤウニシテ貰ヒタ
  イ、惡イ船ヲ輸入スルコトハ困ルト言ハレ
  ルガ、遞信當局ガ御困リニナルヨリモ、當
  業者ガ眞劍勝負デ生命ノ次ニ大事ナ金ヲ出
  シテ引合ハヌモノヲドウシテ買フモノガア
  リマスカ、役人ガ餘計ナ心配スル程ノコト
  ハアリマセヌ、ドノ位此非常時ガ續ク、ド
  レダケ此傭船料ガ續クト云フコトヲ眞劔ニ
  考ヘテヤッテ居ルノデアリマスカラ、ソコ
  マデ當局ガ御干涉ニナル必要ハナイ、私ハ
  優秀船建造ノ大方針ニハ贊成致シマスケレ
  ドモ、焦眉ノ爲ニ應ズルヤウニシナケレバ
  ナラナイ、而シテ日本ハ海岸線ニ於キマシ
  テハ世界一流ノ國デハ一番長イ、海岸線ハ
  一万八千二百浬デアル、英吉利ノ本國ハ僅
  ニ一万浬、ソレカラ亞米利加ガ一万七千五
  百浬、瑞典、諾威ガ一万四千八百浬ト云フ
  ノデアリマシテ、日本ノ一万八千二百浬ト
  云フモノハ一流ノ海運國ニ比ベテモ一番長
  イ、サウシテ船ノ率ハ英吉利ト對比シテド
  ウデアルカト云ヒマスト、英吉利ノ船ノ總
  量ト日本ノ船ノ總量ト比ベマスト、英吉利
  ノ十ニ對シテ僅ニ一一·四五デアリマス、海軍
  ハドウカ、海軍ハ英吉利ノ十ニ對シテ日本
  ノ海軍ハ七デアル、ソレデモ不足シテ居ル
  ト云フノガ勃興日本ノ要求デアリマス、然
  ルニ船ハ英吉利ノ十ニ對シテ二·四五ヨリ
  ナイ、コンナ貧弱ナ船ヲ以テ、何ンノ彼ン
  ノト云フテ居ル、而シテ足リナイカラト云
  フノデ外國カラ傭船ヲシテ外國人ヲ高イ給
  料デ雇ッテ船員ヲ養成シテ居ル何タル事カ、
  實情ニ副ハナイニモ程ガアル、斯ルコトヲ
  ヤッテ居ルノハ宜クナイ、此非常時ヲ一ツ
  ノ契機トシテ傳統的ノ誤レル政策ヲ一擲シ
  テ、サウシテ日本ヲ世界ノ海運國クラシム
  ルヨウ政策ノ大轉換ヲセラレンコトヲ私ハ
  望ムノデアリマス、私ハ此國家ノ政策ニ對
  シテ非常ニ熱心ノ餘リ多少禮ヲ失シタコト
  ガアルカモ知レマセヌガ、私ノ念トスル所
  ハ他意ナイ、ドウカ理想ハ理想、現實ハ現
  實デ、早ク日本ヲ世界ノ第一流ノ海運國ト
  シテ、總噸數ニ於テモ亦實質ニ於テモ引ケ
  ヲ取ラナイモノニシタイ、斯ウ云フ考デ居
  ルノデアリマス、モウ丁度約束時間ニナリ
  マシタカラ質問ハ是デ打切リマスガ、虛心
  坦懷ニ遞信當局ハ御考ニナッテ戴クコトヲ
  熱望スルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/22

  ---

• 023・牧山耕藏

  ○牧山委員長　堤君ノ御要求ニ依ッテ海軍
  省ノ軍務局長ガ御見エニナッテ居リマス、折
  角デスカラ五分カ六分御質問ニナッタラ如
  何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/23

  ---

• 024・堤康次郎

  ○堤委員　モウ次ノ方ノ時間デスカラ御遠
  慮致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/24

  ---

• 025・牧山耕藏

  ○牧山委員長　ソレデハ軍務局長宜シウゴ
  ザイマス-板谷順助君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/25

  ---

• 026・板谷順助

  ○板谷委員　私ハ先以テ第一ニ遞信大臣ニ
  對シマシテ本法案ヲ御設ケニナッタ實情ニ
  卽シタ理由、只今堤君ノ御話ノ理論上デナ
  ク、實質上ニ卽シタル理由竝ニ將來此法案
  ノ運用ニ對スル見解、其點ニ付テ御伺シタ
  イト思フノデアリマス、我國ノ現在ノ非常
  時ニ際シマシテ政府ハ戰時體勢ヲ整ヘル上
  ニ於キマシテ、經濟或ハ產業方面ニ於テハ
  出來得ルダケ業者ノ自治的ノ統制ニ委スト
  云フコトヲ聲明サレテ居ルノデアリマス、
  勿論或ル程度マデノ統制ハ必要ガアルデア
  リマセウ、又例ヘバ船舶ニ對シマシテモ、
  船舶動員ノ必要ナルコトモ言フマデモナイ
  コトデアリマスガ、私ハ果シテ現在ノ我國
  ノ船舶界ノ實情ガ此法案ノ適用ノ必要アリ
  ヤ否ヤト云フコトニ付キマシテ先ヅ第一ニ
  伺ヒタイト思フノデアリマス、御承知ノ通
  リ此法案ノ目的ト致シマシテハ、出來ルダ
  ケ船腹ノ緩和、或ハ運賃ノ暴騰ヲ防イデ船
  舶界ノ調整ヲ圖ルト云フ目的ニアルコト
  ハ、言マデモナイコトデアリマスルガ、
  海運業者ト致シマシテハ、此政府ノ方針ニ
  基イテ、自治的ニ統制ヲ行ヒマシテ、現在
  相當ノ成績ヲ擧ゲツヽアルコトモ、御承知
  ノ通リデアルト思フ、現在近海ノ船ノ運航
  ノ情勢ハドウカト申上ゲマスルト、平年デ
  アリマスルナラバ、約百五十万噸位ノ船ガ
  働イテ居ル、所ガ或ル程度ノ御用船ニ徵發
  サレタリ、其他ノ關係ニ於キマシテ、現在
  ニ於キマシテハ百十万噸、併ナガラ一面カ
  ラ見マスト、荷動キモ割合ニ不足デアリ、
  又例年南洋材デアルトカ、北米材ノ如キモ
  ノガ、是ハ爲替統制ノ關係カラ輸入ガ杜絕
  ヲシテ居ル、其他先程管船局長ノ御話ノヤ
  ウニ、或ル程度マデ變態輸入性モアルコト
  デアリマシテ、現在ニ於キマシテハ、先般
  海運業者ガ自治的ニ統制ヲシテ定メマシタ
  所ノ運賃、例ヘバ若松濱ノ石炭運賃ノ如
  キ、五圓デ決メタモノガ、現在ニ於テハ四
  圓七十錢ニ下ッテ居ル、又樺太材ノ如キ、
  四百圓ニ定メマシタモノガ、現在ニ於テハ
  三百七八十圓ニ下ッテ居ルト云フヤウナ情
  勢デアリマシテ、一面ニ於テ船舶ノ動員ハ
  アリマスルケレドモ、現在ノ狀態ニ於テハ、
  別ニ此法案ノ運用ノ必要ハナイ、斯ウ私共
  ハ考ヘテ居ルノデアリマス、大體私ハ我國
  ノ船舶界ハ、世界的ニ雄飛セネバナラヌコ
  トハ言マデモナイコトデアリマスルカラ、成
  ベク自由放任ニ任ス方ガ宜イヤウニモ考ヘ
  テ居リマスルケレドモ、併シ又一面ニ於テ
  ハ、國家ノ非常時ニ對シテ或ル程度ノ統制
  ノ必要ガアル、併シナガラ此法案ノ大體ノ
  趣意ハ、政府ノ權力ヲ集メテ、業者ヲ抑制
  シヨウト云フコトデアル、從來ノ我國ノ船
  舶界ノ發達ノ情勢ヲ見マスルト、戰爭每ニ
  積極的ニ、世界的ニ雄飛シテ居ルノデアリ
  マスガ、現在ノ我國ノ海運界ノ狀況ニ於
  テ、此法案ヲ差當ッテ適用スルノ心要アリ
  ヤ否ヤト云フ點ニ付キマシテ、大臣ノ御考
  ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/26

  ---

• 027・永井柳太郎

  ○永井國務大臣·　板谷君ノ御尋ハ、御尤デ
  アリマスガ、御存知ノ通リニ、我國ノ船腹
  ハ、事變前ニ於キマシテモ尙且ツ缺乏ヲ感
  ジテ居ッタニ、相違ナイノデアリマス、其
  結果運賃ノ騰貴ニ關スル苦痛モ、種々ナル
  方面ニ於テ感ゼラレテ居ッタコトハ、御承
  知ノ通リデアリマス、固ヨリ是ハ世界共通
  ノ船腹不足ノ影響ニ基クコトデアリマスケ
  レドモ、兎ニ角我國ニ於キマシテモ、船腹
  ノ不足ヲ感ジテ居ッタノデアリマス、此場
  合ニ支那事變ガ勃發致シマシテ、只今板谷
  君ガ御話ノ如ク、多大ノ船腹ヲ要求スルニ
  至ッタノデアリマスカラ、其船腹ノ不
  足ニ關スル苦痛ハ、深刻トナラザルヲ得
  ナイノデアリマス、幸ニシテ我國ノ船主
  ガ、從來カラモ自主的ニ出來ルダケ此船
  腹ノ不足ニ伴ッテ積荷ガ停滯スルトカ、運
  賃ガ暴騰スルト云フコトノナイヤウニ、自
  主的ニ統制シタイト云フ考デ、種々ナル組
  合ヲ作リマシテ、其組合々々ノ相互ノ連絡
  ニ依ッテ、出來ルダケ積荷ノ停滯ヲモ緩和
  スルヤウニ努力シ、又運賃モ出來ルダケ暴
  騰シナイヤウニ努力ヲシテ居ッタコトハ、之
  ヲ多トセザルヲ得ナイノデアリマス、併ナ
  ガラソレダケニ依賴シテ、此重大ナル時局
  ニ直面シテ行ク譯ニハ、行カナイト思フノデ
  アリマス、業者モ、殊ニ此事變ニ直面シテ
  一層結束ヲ擴大シ、又鞏固ニシテ、自主的
  統制ヲスルト云フ覺悟ヲ示シテ居ルノデア
  リマスガ、併シ支那事變ガ何時マデ繼續ス
  ルカト云フコトハ、何人モ豫斷スルコトハ
  出來マセヌ、又一層事變ガ擴大スルカモ知
  レナイト云フ危險性ニ付テモ、何人モ不安
  ナキヲ得ナイノデアリマスガ、事變ノ將來
  ノ進行如何ニ依リマシテハ、船腹ノ不足ニ
  對スル重壓モ、一層深刻ニナッテ來ルカモ
  知レズ、サウシテ積荷モ益〓停滯スル、或
  ハ配船ノ調節ニ付キマシテモ、內部ダケデ
  ハ到底統制シキレヌト云フヤウナコトガ、
  起リ來ラナイト、何人モ豫言スルコトハ出
  來ヌト思フ、サウ云フヤウナ、是カラ事變
  ノ進行ニ伴ウテ、益〓業者ノ上ニ受ケルベ
  キ時局ノ壓迫ニ伴ウテ、其結果ガ弛緩スル
  カモ知レナイ場合ニ於テ、國家ガ外部カラ
  法的統制ニ依ッテ、出來ルダケ業者ノ自主
  的統制ヲ圓滿ニ行ハシムルヤウニ、之ヲ補
  强シ、之ヲ指導シテ行クト云フコトハ、此
  重大ナル時局ニ對スル政府ノ責任デアル
  ト、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、同時ニ先
  程堤君モ御話ニナリマシタヤウニ、船腹ノ
  不足ヲ調節スル上ニ於キマシテハ、從來ノ
  如ク外國船ノ輸入ヲ餘リニ嚴重ニ取締ルコ
  トナク、出來得ルダケ其輸入ニ對シテモ自
  由ヲ與ヘテ、船腹ノ不足モ調節シナケレバ
  ナラナイ、又造船業者ノ如キモノモ、今日
  ハ御承知ノ通リ、各造船所ハ滿員ノ狀態デ
  アリマスケレドモ、今後日本ノ船腹ノ不足
  ヲ出來ルダケ補ッテ行ク爲ニハ、時局ト關
  係ノ薄イ船ノ建造ハ、後〓シニサセル必要
  モアルト思ヒマス、例ヘバ遊覽船デアリマ
  ストカ、外國カラ註文ヲ受ケタト云フヤウ
  ナモノハ成ベク後〓シニシテ、貨物船ヲ之
  ヲ先ニ建造サセル、サウ云フヤウナコトモ
  ヤハリ時局ノ必要ニ應ジテ、政府ガ當業者
  ト話合ヒヲシテ、斯ウ云フコトヲ實行セシ
  メナケレバナラヌ事態モ、必ズアルト思フ
  ノデアリマス、サウ云フヤウニ造船業、海
  運業全般ヲ大觀シマシテ、如何ニ時局ガ繼
  續シ、又時局ガ擴大シテモ、海運業ニ關ス
  ル限リ國民ガ安心シテ居ルコトノ出來ルヤ
  ウニ、國國ガ確固タル基準ヲ定メテ、業者
  ヲシテ其據ル所ヲ知ラシメテ置クコトガ必
  要デアル、ソレダケノコトハ、是非トモ法
  案トシテ之ヲ制定シテ置クコトガ必要デア
  ル、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、ケレドモ
  板谷君モ御存ジノ通リ業者ノ要求ニ對シマ
  シテハ十分政府トシテハ理解ヲ持タナケレ
  バナラヌ、又配船ノ變更ヲ命ズルトカ、或
  ハ傭船料ニ對シテノ適當ナル基準ヲ定メル
  トカ、運賃ヲ上下スルト云フヤウナコトハ
  經濟界ニ影響スルコトモ極メテ重大デアリ
  マスカラ、斯ウ云フヤウナ事柄デ急ヲ要シ
  ナイモノニ對シマシテハ、委員會ヲ設ケマ
  シテ、其委員會ノ議ヲ經テ主務省ガ適當ニ
  之ヲ處理シテ行クヤウニシタイ、出來ルダ
  ケ自主的統制ノ精神ハ尊重シテ、國民ガ自
  發的ニ擧國一致ノ精神ヲ發揮シタイト云フ
  其精神ハ尊イノデアリマシテ、出來ルダケ
  ソレヲ尊重シ、强制的ニ擧國一致ヲ求ムル
  ト云フヤウナコトハ決シテ本旨デハナイノ
  デアリマスカラ、唯其自主的統制ノ補强ト
  シテ此法律ヲ制定シテ置キマシテ、出來ル
  ダケ業者ト急ヲ要セザルモノハ意見ノ交換
  ヲシテ、理解アル態度デ此法律ヲ執行シテ
  行クヤウニシタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/27

  ---

• 028・板谷順助

  ○板谷委員　只今大臣ノ御答辯デ大體ノ方
  針ハ分リマシタガ、大臣ノ御答辯中ニモ事
  件ガ將來意外ニ發展ヲ致シマシタナラバ、
  是ハ勿論別問題デアリマスケレドモ、現在
  ノ狀態ニ於テハ所謂傳家ノ寶刀トシテ、此
  法案ヲ差當ッテ適用ノ必要ハマア認メナ
  イ-ト言ヘバ、或ハ言葉ガ過ギルカモ知
  レマセヌ、兎ニ角法律ハ法律トシテ將來ニ
  備ヘル意味ニ於テ此法律ヲ提出シタノデア
  ルト言フ風ニ諒解シテ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/28

  ---

• 029・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　是ハ此法律ガ制定サレマ
  スレバ、ヤハリ此法律ノ精神ニ基イテ業者
  ニ時局ニ對スル態度ヲ定メルヤウニ指導モ
  シ、又或ル場合ニ於テハソレヲ要求モシナ
  ケレバナラナイト思ヒマス、併シ業者ガ此
  法律ノ精神ヲ尊重シテ、此法律ノ定メタル
  範圍ノ內ニ於テ時局ニ對スル精神ヲ發揮シ
  テ、其事業ヲ自ラ統制シテ行カレレバ自然
  ニ此法律ニ觸レル必要ハナクナッテ來ルコ
  トデアラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/29

  ---

• 030・板谷順助

  ○板谷委員　更ニ御伺致シマス、只今堤君
  ヨリ古船ノ輸入問題ニ付テ色々議論ガアリ
  マシタガ、私共多少船舶ニ經驗ヲ持ッテ居
  リマスル者ハ、所謂優勝劣敗デ、古船ハ成程
  運賃ガエライ高イ場合ニ於キマシテハ或ル
  程度マデ引合ヒマスケレドモ、平均シテ所
  謂古船ガ段々淘汰ヲサレテ、先程大臣ノ御
  話ノヤウニ優秀船ヲ以テ商船隊ヲ造ルト云
  フ此理想ニ進マナケレバナラヌコトハ言フ
  迄モナイコトデアリマス、隨テ遞信當局ト
  致シマシテハ先年來優秀船ニ對スル助成ナ
  ルモノヲ設ケラレマシテ、出來ルダケ古船
  ヲ潰シデ新シイ船ニ變へルト云フ方針ヲ執
  ラレタノデアリマスガ、今囘輸入許可ノ緩
  和方針ヲ執ラレルト云フノデアリマスガ、
  之ニ對スル條件-條件ニ付テハ「前項ノ
  許可ニハ條件ヲ附スルコトヲ得」ト斯ウナッ
  テ居ルノデアリマス、之ニ付テ私共當局ニ
  能ク御考ヲ願ヒタイコトハ、先程管船局長
  モ御話ノ通リ、目下建造中ノ新造船ガ約百
  二十五万噸位ノモノガ今明年中ニ於テハ恐
  ラク運航サルヽコトト思フノデアリマス、
  此事件ガ何時マデ續クカ分リマセヌケレド
  モ、所謂臨時的ニ此法律ヲ設ケラレマシテ、
  將來禍根ガ殘ルト云フコトニ付テハ十分警
  戒スベキコトト思フノデアリマス、隨テ此古
  船ノ輸入ニ對スル許可條件ト申シマスル
  カ、如何ナル所ノ方針ヲ以テオヤリニナル
  積リデアルカ、此點ヲ一ツ御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/30

  ---

• 031・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　板谷君ノ御話ノ通リ、此
  法案ガ議會ヲ通過シテ實施ノ運ビニ至リマ
  スレバ、第一ニ適用サレルモノハ古船ノ輸
  入許可ノコトデアリマスガ、此外國船ノ輸
  入許可ノコトニ付キマシテハ、先程管船局
  長モ申上ゲマシタヤウニ、大體ニ於テ外國
  ガ持テ餘シテ賣付ケヨウト思フヤウナ船ヲ
  コチラガ引受ケルト云フヤウナコトハ成ベ
  ク避ケタイト思ヒマス、大體カラ申上ゲマ
  スト、大戰中ニ建造サレタ船ハ多ク粗製濫
  造ニナッテ居ルノデアリマスカラ、大體ニ於
  テ其後ノ十六七年位ノ船齡ノ船舶デアリマ
  スルナラバ輸入ヲ許可シテ、其儘繼續シ
  テ使用セシメテモ差支ガナイノデハナイカ
  ト考ヘテ居リマス、又餘リニ粗惡ナ船デア
  ルヤウナ場合ニハ、只今御存ジノ通リ軍事
  上ノ目的デ船舶ガ徵用サレルノデアリマス
  カラ、其殘リノ船デ吾々ハ如何ニ國民經濟
  ノ要求ニ應ジテ行クカト云フコトノ方針ヲ
  樹テナケレバナラヌノデアリマシテ、此時
  局ノ進展如何ニ依ッテハ或ハ其年齡ヨリ尙
  ホ古イ船ノ輸入モ必要トシナケレバナラヌ
  カモ存ジマセヌガ、餘リニ惡イ老齡ノ船デ
  アレバ、或ハ解體ヲ條件トシテ輸入サセルト
  云フコトモ一ツノ方法デアラウカト思フテ
  居リマス、是等ノ點ニ付キマシテハ十分〓
  究シテ、大體ニ於キマシテ優秀ナル商船隊
  ヲ維持シテ行クト云フ大方針ト矛盾シナイ
  ヤウニ基準ヲ定メタイト思フテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/31

  ---

• 032・板谷順助

  ○板谷委員　古船ノ輸入ト云フコトニ付キ
  マシテハ餘程御考ニナッテオヤリニナリマ
  セヌト、折角優秀船建造ノ爲ニ政府ガ相當
  ノ補助金マデ出シテヤラシタモノガ、天六一
  又整理ヲシナケレバナラヌ時代ニ於テ金ヲ
  出シテヤラナケレバナラヌト云フヤウナコ
  トガ起リハシナイカト考ヘラレルノデアリ
  マス、勿論非常時局ニ際シマシテ船舶界ノ
  情勢ヲ見テ、出來ルダケ其圓滿ヲ期スルコ
  トハ當然デアリマスガ、是ハ當局ニ能ク御
  考ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマス
  ソレカラ更ニ外國間ノ航路ニ對シテ制限
  或ハ禁止スルト云フ箇條ガアルノデアリマ
  スガ、此點ニ付キマシテモ折柄我國ガ世界
  的ニ雄飛ヲシテ到ル所活動ノ結果外國カラ
  相當ノ金ヲ持ッテ來テ、先程來大臣ノ御話
  ノヤウニ國際收支ノ貸借ノ上ニ於キマシテ
  モ非常ニ貢獻ヲシテ居ルト云フヤウナ場合
  ニ於テ、或ハ又將來此事件ガ多少長クナリ
  マシテモ、折角今日マデ外國デ活躍ヲシテ
  權益ヲ取リマシタモノヲ抛棄スルト云フコ
  トニ付テハ重大ナ影響ガ來ルコトト思フノ
  デアリマスガ、之ニ對シテハ出來ルダケ緩
  和ノ方法ヲ執ッテ成ベク之ヲ禁止或ハ制限
  ト云フコトハヤラナイヤウニ一ツ御考へ願ッ
  タ方ガ、國家ノ大局カラ見テ利益ヂヤナイ
  カト斯ウ考ヘルノデアリマス、如何デゴザ
  イマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/32

  ---

• 033・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　只今ノ御話ノ點ハ全然同
  感デアリマス、折角擴張サレマシタ對外航
  權ハ出來ルダケ堅持シタイト思ヒマス、唯
  軍事上ノ目的ニ今日ハ船舶ヲ使用スルコト
  ガ第一義デアリマスカラハサウ云フ方面ニ
  優秀ナ船舶ヲ使用スルト云フコトニナッテ
  來マスト、其結果一時從來ノ命令航路ニ從
  來ノ如キ種類ノ船舶ヲ廻スコトガ出來ナイ
  デ、多少船舶ノ性質ニ變更ヲ來スヤウナコ
  トモ起ッテ來ルカモ知レヌト思ッテ居リマ
  ス、又貿易管理其他ノ關係カラ或ル地方
  ニ對スル船舶ハ以前程頻繁ニ廻サナイデモ
  宜イト云フヤウナ事態ガ起ッテ來ルカモ知
  レマセヌガ、サウ云フヤウナ起リ來タルコ
  トアルベキ事態モ考慮致シマシテ、此一項
  ヲ設ケタノデアリマスケレドモ、根本ノ精
  神ニ於テハ板谷君ノ御話ノ通リ、一度擴張
  シタ對外航權ハ出來ルダケ之ヲ堅持シ機會
  アル每ニ之ヲ擴大シテ行クト云フコトハ全
  ク同感ニ存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/33

  ---

• 034・板谷順助

  ○板谷委員　先程來此法案ノ運用ニ付テハ
  出來ルダケ業者ノ自治統制ニ委シテ、所謂
  船舶管理委員會ナルモノニ諮問シテ相談シ
  合ッテヤルト云フ大臣ノ御話デアッタノデ
  アリマスルガ、此委員會ハ一體ドウ云フヤ
  ウナ人ヲ以テ組織スル御考デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/34

  ---

• 035・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　大體此委員會ハ二十五名
  程デ組織スル積リデアリマスガ、ソレハ只
  今ノ所關係官吏、ソレカラ貴衆兩院議員、
  ソレカラ船主、貿易業者、其外ニ尙ホ臨時
  委員モ設ケテ置キマシテ、船舶ニ關係ノア
  ル他ノ各層ノ意見モ徵スルヤウニシタイ、
  サウ云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/35

  ---

• 036・板谷順助

  ○板谷委員　此委員ヲ御作リニナルニ付
  テ只今船主側カラ御出シニナルト云フコト
  デゴザイマスガ、是ハ兎角從來四大會社ト
  申シマスカ、現在自治聯盟ヲ作ッテ居リマ
  ス會社ノ如キ、無論其人達モ多數ノ船舶ヲ
  持ッテ居ルノデアリマスカラ、當然加入サ
  レルコトハ必要デアリマセウケレドモ、廣
  ク各方面ニ亙ル船舶業者カラモ相當ノ人選
  ヲ願ヒタイト云フコトヲ希望致シテ置キマ
  ス
  ソレカラ此法律ハ事變終了後一箇年以內
  ト云フコトデアリマスルガ、此支那事變終
  了ト云フコトハドウ云フ點ヲ目標トシテ御
  定メニナル御考デアリマスカ、其點ヲ御伺
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/36

  ---

• 037・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　此處ニ事變終了後一箇年
  トシテ居リマスガ、此事變終了ト云フ意味
  ハ兎ニ角日支兩國ノ間ニ於テ停戰狀態ガ確
  實ニ成立シタ場合ヲ意味シテ居ルノデアリ
  マシテ、例ヘバ停戰協定ガ成立致シマシ
  テ、ソレデ安心スルコトノ出來ル狀態ニナッ
  テ來ルヤウナ場合ヲ想像シテ居ルノデアリ
  マスガ、併シ國際關係ハ中々複雜デアリ、殊
  ニ戰爭ノ交戰狀態ノ完全ニ終了スルト云フ
  事態ハ頗ル複雜デアルコトガ常デアリマス
  ノデ、其事變ノ終了ト認メ得ベキ事態ニ達
  シマシタ時分ニハ、又更メテ其時日ヲ公示
  致シマシテ、其公示セラレタ後カラ一年ト
  云フヤウナ風ニ計算セラレルコトデアラウ
  ト存ジマス、只今ノ場合ニ申上ゲマスコト
  ハ兎ニ角戰爭ノ狀態ガ停止セラレテ、例
  バ停戰協定ノ如キモノガ成立シテ兩國ノ關
  係ニ於テ十分ニ安心シ得ル事態ニ到達シタ
  場合ト云フヤウナ風ニ中上ゲルノ外ハナイ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/37

  ---

• 038・田島勝太郎

  ○田島政府委員　一寸只今ノ大臣ノ說明ニ
  補足致シタイト思ヒマス、大臣ノ御答辯ノ
  通リデゴザイマスガ、此一年內ニ廢止スル
  コトニナル爲ニハ廢止ヲスルト云フコトヲ
  帝國議會ノ協贊ヲ經ル譯デゴザイマスカラ、
  ソレデ結局何時廢止スルカ分ラナイト云フ
  ヤウナコトハ起リ得ナイノデゴザイマシ
  テ、廢止ヲスル場合ニハ更ニ議會ニ提案ヲ
  致シマシテ廢止スルコトニナルノデアリマ
  ス、ソレダケヲ念ノ爲ニ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/38

  ---

• 039・板谷順助

  ○板谷委員　先程來申シマシタ通リ新造船
  モ今明年ニ續々出來テ參リ、或ハ古船ヲ許
  可サレルト云フコトデ-相當ノ輸入ガア
  ルカドウカ勿論採算ノ關係デアリマセウケ
  レドモ、入ルト致シマシタ場合ニ於テ現在
  ノ狀態デハ高等海員ガ非常ニ不足ヲ告ゲテ
  居ルヤウニ感ジテ居ルノデアリマス、是ハ
  ドウ云フ御見解ヲ御持チニナッテ居リマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/39

  ---

• 040・小野猛

  ○小野政府委員　之ニ付キマシテ此前ノ議
  會ニ文部省カラ豫算ヲ出シマシテ、神戶及
  大阪ノ商船學校、又ハ海員學校ニ於テ航海
  部機關部ノ高級船員ヲ神戶ニ於テ九十
  名、大阪ニ於テ六十名、其養成ノ速成方法
  ヲ講ジテ居ルノデアリマス、其他最近ニ於
  キマシテハ實際陸上デ他ノ職業ニ就イテ居
  リマス者ニ付テ相當狩リ出シト申シマス
  カ、サウ云フ方法ヲ强烈ニヤッテ居リマス
  ノデ、現在ノ所デハ、餘ルト云フ程デハア
  リマセヌガ、一應凌ギ得ルヤウナ風ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、ソレカラ無線電信ノ
  技師ニ付キマシテモ或ル便法ヲ用ヒマシテ
  相當ノモノヲ供給スルト云フ方法ヲ只今考
  ヘテ居リマス、其他此臨時船舶管理法ノ第
  十二條デアリマスガ、「政府ハ船舶職員法ニ
  依リ船舶ニ乘組マシムベキ船舶職員ノ定員
  又ハ其ノ免狀ノ種類ニ付命令ヲ以テ別段ノ
  規定ヲ爲スコトヲ得」此規定デ、例ヘバ現
  在免狀持ヲ三人乘セルト云フノモアリマス
  ガ、或ル場合ニハ之ヲ緩和シヨウト云フ風
  ニ考ヘテ居ルノデアリマス、有ユル方法デ
  高級海員竝ニ下級海員ノ供給ヲ緩和シヨウ
  ト努力致シテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/40

  ---

• 041・板谷順助

  ○板谷委員　最後ニ今一ツ御伺シタイノデ
  アリマスガ、是ハ多年ノ問題トナッテ居リマ
  スル內地外地ヲ通ジマシテノ海事行政ノ統
  一デアリマス、又日滿海運ニ關スル所ノ協
  定デアリマス、是ハ吾々ガ機會アル每ニ其
  當時ノ大臣ニモ迫リ、或ハ又大臣ニ於カレ
  マシテモ、出來ルダケ此問題ニ付テハ考慮
  中デアルトカ、或ハ又出來ルダケ努力ヲスル
  ト云フヤウナ御話バカニデ、未ダニ問題ガ解
  決シテ居ラヌノデアリマス、聞ク所ニ依リ
  マスト、事務官ノ方々ハ一日モ早ク之ヲヤ
  リタイ、併ナガラ朝鮮、臺灣ナドニ於ケル總
  督府ノ權力ノ强イ爲ニ、此問題ガ或ハ壓セ
  ラレルト言ヘバ語弊ガアルカモ存ジマセヌ
  ケレドモ、ソレ等ノ關係ニ於テ未ダニ解決
  ヲ見テ居ラヌノデアリマスルガ、幸ヒ此非
  常時ニ際シマシテ、ドウシテモ內地外地ヲ
  通ジテ協力一致、有ユル方面ニ進マナケレ
  バナラヌト云フ此時代ニ於テ、大臣ガ非常
  ニ御努力ニナッテ此問題ヲ御解決ニナッテハ
  如何デアリマスカ、是非私ハ此際解決ヲシ
  テ貰ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/41

  ---

• 042・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　此法律案ガ實施セラル
  ト云フコトニナリマスル場合ハ、內外地ヲ
  通ジマシテ統一セラレタ方法ニ依リマシテ
  之ヲ適用スルト云フコトニ、內外地ノ間ニ
  於キマシテ十分ニ諒解ガ出來テ居ルノデア
  リマスガ、併ナガラ只今板谷君ガ御話ニナ
  リマシタノハ、モウ少シ廣イ意味ニ於テ、
  交通トカ通信トカ云フヤウナ性質ノモノハ、
  內外地ヲ通ジテ法域ヲ異ニシナイデ、ッ
  ノ機關ニ依ッテ指導統制サレルヤウニ、法制
  上ノ改革ヲ考慮セヨト云フ意味デアラウト
  思ヒマス、サウ云フヤウナコトハ行政機構
  ノ時代ノ要求ニ卽シタ一ツノ改革トシテ、
  十分ニ〓究スベキモノデアラウト私モ思ヒ
  マス、內外地ダケデナク、日滿兩國ヲ通ジ
  テ交通通信ニ對シテハ、平戰兩時ニ於テ
  ツノ國家ノ要求ニ基イテ、自由ニ指導統制
  ノ行ハレルヤウニ改革シテ行クト云フコト
  ハ必要ナコトデアラウト思フノデアリマス
  ガ、ソレ等ノコトハ此法案ヲ離レテ、又別
  個ニ十分〓究ヲ致シタイト思ウテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/42

  ---

• 043・板谷順助

  ○板谷委員　私ノ御尋致シマシタノハ、サ
  ウ廣イ意味デハナイノデアリマス、差當リ
  此海運ニ關スル所ノ所謂海事行政ノ統一、
  例ヘバ同ジ船舶ニ補助ヲ出スニ付キマシテ
  モ、同ジ航路ニ對シテ、例ヘバ朝鮮新潟間ノ
  如キ、或ハ臺灣ト內地間ノ如キ、遞信省デ
  モ出シ、或ハ又總督府デモ出スト云フヤウ
  ナ矛盾ガアル、隨テ此船舶ノ行政ニ對シテ
  ハ、ドウシテモ之ヲ統一ヲシテ、銘々勝手
  ナコトヲシナイヤウニヤッテ貰ヒタイ、此意
  味デアリマス、是ハ多年ノ問題デ、吾々海
  事關係ノ者ハ始終遞信當局ニ之ヲ陳情シテ
  居ルノデアリマスルケレドモ、考慮シヨウ
  トカ、或ハ出來ルダケ努力スルト云フ言葉
  ダケデ、只今大臣ノ御言葉ノ中ニモ〓究ト
  云フヤウナ言葉ガアリマシタガ、恐ラクハ
  事務當局ニ於テハ十分分ッテ居ル筈デ、今更
  〓究スル必要ハナイノデアリマス、此際思切ッ
  テ之ヲ統一ナサル御考ガアリマスカドウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/43

  ---

• 044・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　內外地ノ海運ヲ一ツノ機
  關ノ運用ノ下ニ置クト云フコトハ、是ハ法
  制ノ上ニ於キマシテ、今日直チニ行ハレ難
  キ事情ガアルノデアリマス、ケレドモ此法
  案ニ付キマシテハ、假令之ヲ執行スル機關
  ハ異ッテ居リマシテモ、同一ノ方針ニ基イテ
  同ジ方針デ運用シテ行クト云フコトニ、吾
  吾ハ此法案ノ運用ノ方法ニ付キマシテハ、
  十分ナ協調ヲ遂ゲ得タノデアリマシテ、此
  法案ニ關スル限リニ於キマシテハ、內地ト
  外地トガ別々ノ事ヲ命令シタリ、別々ノ適
  用ヲシテ海運業者ニ迷惑ヲ掛ケルトカ、造
  船業者ヲシテ其嚮フ所ニ迷ハシムルト云フ
  風ナコトハ決シテナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/44

  ---

• 045・板谷順助

  ○板谷委員　此法案ニ關係シタバカリデハ
  アリマセヌ、私ノ御尋シテ居ルノハ、船舶
  行政ニ關スル所ノ統一デアリマス、恐ラク
  ハ大臣ハ從來ノ經過ガ能ク御分リニナラナ
  イコトデアルト思フノデアリマスガ、管船
  局長ハ此問題ニ對シテ、總督府ト能ク御交
  涉ニナッタコトガアルノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/45

  ---

• 046・小野猛

  ○小野政府委員　長イ問題デアリマシテ、
  私ハ過去管船局ニ居ル間、終始此問題デ其
  方面ニ當ッテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/46

  ---

• 047・板谷順助

  ○板谷委員　一體ドウ云フ所ニ支障ガアッテ
  出來ナイノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/47

  ---

• 048・小野猛

  ○小野政府委員　只今大臣ノ申上ゲマシタ
  現在ノ行政機構ノ關係上、直チニ御趣意ノ
  ヤウナ事ガ實現サレナイト云フ實情ニアル
  ノデアリマス、唯此法案ニ關スル限リ、從
  來ヨリハ一步或ハ二步進メテ、同一ノ方向
  ニ向ッテ居ルト云フコトダケハ、大臣モ只今
  申上ゲタ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/48

  ---

• 049・板谷順助

  ○板谷委員　ドウモ御答辯ガ不得要領デ洵
  ニ遺憾ニ考ヘルノデアリマスガ、此問題
  ハ多年ノ懸案デアッテ、歷代ノ大臣初メ、
  當局ハ出來ルダケ之ヲ實現スルコトニ努力
  ヲスルト言ハレ、支障ノアルト云フ話ハ聞
  イタコトハナイノデアリマス、然ルニ未ダ
  ニ此問題ガ解決セヌ爲ニ、船舶業者トシテ
  モ、或ハ政府ノ當局トシテモ非常ニ不便ガ
  アルコトト私ハ思フノデアリマスガ、ドウ
  カ將來ニ於テハ、是非適當ノ機會ニ成ベク
  早ク解決シテ戴キタイト思フ
  ソレカラ最後ニ此法案ノ運用ニ付キマシ
  テハ、成程現在國家ハ非常時デアリマスカ
  ラ已ムヲ得ヌ事デアリマセウケレドモ、成
  ベク傳家ノ寶刀ハ之ヲ拔カナイヤウニシテ
  戴キタイ、海運業者ト致シマシテハ出來ル
  ダケ自治的ニ統制ヲ行ッテ、一方ニ於テハ
  世界的ニ出來ルダケ我國ノ海運業ノ發達ヲ
  圖リ、此法案ハ言フマデモナク所謂業者ヲ
  抑制スル消極案デアリマス、デアルカラ、ド
  ウカ當局ニ於テモ思ヒヲ此點ニ及ボサレマ
  シテ、成ベク一面ニ於テハ海運業ノ發達ヲ
  圖ルト同時ニ、又此國家ノ非常時ニ對スル
  遺憾ナキ御處置アランコトヲ希望致シマシ.
  テ、私ノ質問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/49

  ---

• 050・小野猛

  ○小野政府委員　只今御手許ニ配リマシタ
  本邦漁船調ト云フモノノ中ニ一寸數字ノ違ッ
  テ居ル所ガアリマスカラ訂正致シマス、其
  刷物ノ眞ン中ヨリ一寸下ッタ所ニ、合計百
  三十五隻、五万六千九百三十七噸トアリマ
  ス、其五万六千九百ガ八百ノ間違デアリマ
  スカラ、御訂正ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/50

  ---

• 051・牧山耕藏

  ○牧山委員長　暫ク休憩致シマシテ、午後
  一時半カラ開會致シマス
  午後零時一分休憩
  午後一時四十五分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/51

  ---

• 052・牧山耕藏

  ○牧山委員長　午前ニ引續キ會議ヲ開キマ
  ス-漢那君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/52

  ---

• 053・漢那憲和

  ○漢那委員　本法案ハ曩ニ遞信大臣ノ御說
  明ニモアリマシタ通リニ、支那事變ノ爲ニ
  惹起セラレマシタ海運界ノ壓迫ヲ緩和シテ
  一ツニハ軍事上ノ急ニ應ジ、又一ツニハ運
  輸交通ノ調整ヲ期スルコトヲ目的トサレタ
  モノデアリマシテ、洵ニ機宜ヲ得タモノト
  思フノデアリマス、ソコデ此法律ノ施行ニ
  依リマシテ政府ハ凡ソドノ位ノ船腹ヲ新ニ
  輸入シテ時局ノ急ニ應ジ得ルト云フ御見込
  デアリマスカ、思フニ事變ノ爲ニ徵發セラ
  レタ船舶ノ船腹ハ相當多額ニ上ルコトト思
  フノデアリマス、所ガ世界ノ海運界モ亦今
  日ハ船腹ノ不足ニ困ッテ居ル現狀デアリマ
  スノデ、我國ニ輸入シ得ル外船ノ船腹ハ案
  外ニ少イモノデハナイカ、政府ハドノ位ノ
  船腹ヲ輸入シ得ルト云フ御見込デアルカ、
  此點ヲ御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/53

  ---

• 054・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　漢那君ノ御意見ノ通リ外
  國カラ輸入シ得ル船舶ハ餘計ナイデハナイ
  カト云フコトヲ考ヘテ居リマス、ドノ程度
  ノ船腹ヲ要求ノ限度トスルカト云フコトニ
  付キマシテハ明確ニハ申上ゲ兼マス、ソレ
  ハ、今日ハ只今漢那君モ御話ノ通リ軍事上
  ノ需要ヲ第一ニシテ、其軍事上ノ需要ニ充
  テタ殘餘ノ船舶ヲ國民經濟ノ要求ニ如何ニ
  適應セシメテ行フカト云フコトヲ方針トシ
  テ〓究スルノデアリマスガ、軍事上ノ需要
  ノ程度ハ時局ノ進展ニ伴ウテ如何ナル限度
  デアルカト云フコトハ明白ニ申上ゲ兼二
  ス、隨テ其要求ニ伴ウテ外國カラ輸入シナ
  ケレバナラヌ船腹ノ分量モ明白ニハ申上ゲ
  兼ネルノデアリマス、唯現在支那ニ船籍ヲ
  置イテ居リマスル所所變態船ノヤウナモ
  ノハ、直チニ我國ニ其船籍ヲ變更セシムル
  ト云フヤウナコトハ出來ルト思ヒマス、又
  外國ニ籍ヲ置イテ居ルモノモ今日旣ニ日本
  ノ近海、又ハ日本ノ貨物ヲ運ブ爲ニ使用セ
  ラレテ居ルヤウナモノノ中ニハ輸入シ得ル
  モノモアルト思ヒマスケレドモ、只今御話ノ
  通リ世界ヲ通ジテ船腹ノ不足ヲ感ジテ居ル
  時デアリマスカラ、十分ナル供給ヲ受ケル
  コトガ出來ルカドウカト云フコトニ付キマ
  シテハ、政府當局ニ於キマシテモ、多少ノ
  疑惑ヲ持ッテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/54

  ---

• 055・漢那憲和

  ○漢那委員　輸入シ得ベキ船腹ノ見込ニ付
  テ明言ガ出來ナイト云フ當局ノ御答辯ハ了
  承致シマス、ソコデ斯ノ如ク輸入シテモ極
  ク僅ナ船腹シカ輸入セラレナイト云フ現狀
  デ、此僅少ナル輸入ト既存ノ船腹ノヤリ繰
  ダケデハ到底我ガ海運ヲ調節致シマシテ、
  サウシテ前途豫測ヲ許サナイ所ノ今日ノ事
  變ノ急ニ應ズルコトハ出來ナイト思フノデ
  アリマス、ソコデ新ニ船舶ヲ急造シナケレ
  バナラヌ時期ガ來ルノデナイカト云フコト
  ヲ私ハ心配スルノデアリマスガ、急造シマ
  スルニハ、船ノ型式ヲ簡單劃一ニスルコト
  ガ絕對必要ノ條件デアリマス、卽チ世界大
  戰ノ際ニ亞米利加ニ於テハ船舶院ト云フモ
  ノヲ創立シ、又英吉利デハ海運管理委員會
  デアリマシタカ、サウ云フモノヲ創立致シ
  マシテ、劃一型ノ船舶ヲ大量生產ヲシテ、
  急ニ急場ヲ凌イダ先例ガアルノデアリマ
  ス、先程政府委員ノ御話ニ依レバ、此急造
  シタ船舶ガ今日ハ隨分古船々々ト言ハレテ
  厄介物ノヤウニ言ハレテ居リマスガ、其當
  時ニ於テハ相當ニ是ハ役ニ立ッテ國家ノ急
  ニ應ジタモノデアリマス、事變ノ前途ガ豫
  測ガ出來ナイ、隨テ斯ウ云フヤウナコトヲ
  必要トスルヤウナ時期ガ到來スルノデナイ
  カト云フコトヲ心配スルノデアリマスガ、
  此點ニ付テ政府ニ於テハ何等カノ御用意ガ
  アルカドウカ此點ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/55

  ---

• 056・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　御質問ノ御趣旨ハ至極同
  感ニ存ジマス、政府ニ於キマシテモ船舶ノ
  大量生產ニ必要ナル準備ヲスルコトガ急務
  デアルト考ヘマシテ、造船聯合會、船舶改
  善協會ニ命ジマシテ、標準船型ヲ〓究サセ
  テ居ルノデアリマス、其標準船型ノ規格ヲ
  定メマシテ、ソレニ基イテ一般ノ造船業者
  ニモソレニ倣ッテ船舶ヲ造ラセルヤウニ懲
  慂シタイト思ヒマス、ソレニ依リマシテ
  船價モ安クナルコトデアリ、又船舶ノ建造
  モ迅速ニ出來ルコトデアリマスカラ、御話
  ノ通リ大量生產ニ必要ナル準備トシテ標準
  船型ヲ造ラセマシテ、出來ルダケ船舶ノ建
  造ニ對シテハ材料其他ノモノヲ大量的ニ供
  給セシムルト云フコトニ努力致シテ居ルノ
  デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/56

  ---

• 057・漢那憲和

  ○漢那委員　只今ノ御答辯ヲ承ッテ滿足デ
  アリマス、ソレカラ次ニ本法ハ時局ノ急ニ
  應ズルニ必要ナモノトハ思ヒマスガ、其施
  行ニ依ッテ海運界ニ摩擦ヲ生ジ、又ハ折角獲
  得シタ我ガ對外航權ヲ外カラ侵害サレルノ
  憂ナキヲ期セナイト思フノデアリマス、就
  中第五條ノ外國諸港間ノ航海ノ制限、第六
  條ノ指定航路及ビ第七條ノ運賃、賃貸料又
  ハ賣買價格ノ制限等ハ此摩擦又ハ侵害ノ原
  因トナルノデアリマシテ、是等ハ當然船舶
  管理委員會ノ審議ニ付セラルベキモノデア
  ラウト思フノデアリマスルガ、當局ノ御所
  見ハドウデアリマスカ、尙ホ船舶委員會ノ
  議ニ付セラルベキ項目ヲ承ルコトガ出來レ
  バ仕合セト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/57

  ---

• 058・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　御話ノ委員會ニ諮問スベ
  キ重要事項ハ運賃、傭船料、配船等ニ關ス
  ルコトデアリマシテ、多ク緊急ニ屬セナイ
  コトデ尙ホ其外ニ隨時必要ト考ヘル事柄ハ
  其委員會ニ諮問スルト云フ方針デアリマス、
  委員會ノ構成ノコトハ御手許ニ配付シテア
  ルヤウデアリマスカラ別ニ申シマセヌガ、
  大體諮問スル事柄ハ只今申上ゲマシタヤウ
  ナ事柄ガ重要ナ點デアリマス、其他隨時ニ
  尙ホ必要ニ應ジテ其委員會ニ諮問スルコト
  ガアルト思ヒマスケレドモ、大體ハ只今申
  上ゲマシタヤウナ事柄ガ主ナ諮問スベキ項
  目デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/58

  ---

• 059・漢那憲和

  ○漢那委員　只今ノ御答辯デ略〓諒解シタ
  ヤウニモ思ハレルノデアリマスガ、例ヲ擧
  ゲマシタ五條、六條、七條、是等ハ當然此
  委員會ノ諮問ニ付セラルベキモノト心得テ
  宜イノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/59

  ---

• 060・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　先程申上ゲマシタヤウ
  ニ、緊急ヲ要スルモノハ諮問スルコトガ出
  來ナイノデアリマスガ、只今御述ニナリマ
  シタ箇條ノ中第七條ハ委員會ニ諮問スルコ
  トニ致ス積リデアリマス、五條、六條ハ是
  ハ機宜ノ處置ニ出デナケレバナラナイコト
  デアリマシテ、諮問スルコトナシニ政府ト
  シテハ適當ニ處置ヲ執リタイト考ヘテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/60

  ---

• 061・漢那憲和

  ○漢那委員　五條、六條ハ固ヨリ緊急機宜
  ノ措置ヲ執ラナケレバナラヌコトモアラウ
  ト思ヒマスガ、又一面ニ於テハ豫言スルコ
  トガ出來テ、サウシテ之ヲ實行スルト云フ
  ヤウナコトモ有リ得ルト思フノデアリマス、
  サウ云フ場合ニハヤハリ時日ノ餘裕ガアル
  ノデアリマシテ、原則トシテハ諮問ヲスベ
  キモノト思フノデアリマスガ、重ネテ御所
  見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/61

  ---

• 062・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　先程申上ゲマシタヤウニ
  緊急ニ機宜ノ處置ヲ執ラナケレバナラヌヤ
  ウナ場合ハ、諮問スルコトナクシテ適當ノ
  手段ヲ執リマスケレドモ、十分時間ノ餘裕
  ノアルコトデアリマシテ、海運業者ニ對シ、
  又共他ノ業者ニ對シテ重大ナル關係ノア
  リマスルコトハ、是ハ出來ルダケ諮問スル
  コトニ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/62

  ---

• 063・田島勝太郎

  ○田島政府委員　大臣ノ御說明ノ通リデゴ
  ザイマスガ、一寸補足ヲ致シテ置キタイト
  思ヒマス、漢那君ノ御質問ハ丁度大臣ノ御
  答ニナリマシタヤウナ意味ノコトガ此十三
  條ニ書イテアリマス、ソレデ七條ノ規定ニ
  依ル命令ヲ爲サントスル場合ニ、船舶管理
  委員會ノ議ヲ經ルコトニナッテ居リマス、
  ソレデ其他ノ場合ハ、大臣ノ仰セラレマシ
  タヤウニ其場合ニ時間ガ許シマシタナラ
  バ、勅令案ニゴザイマス通リ遞信大臣ニ於
  テ諮問スルコトヲ得ルノデゴサイマスカ
  ラ、大臣ガ仰セラレマシタヤウニ重要ナル
  影響ヲ當業者ニ及ボスヤウナ事柄デアリマ
  シテ、時ノ許スモノハ諮問スルコトニナル
  ト思ヒマスガ、法律ノ立前ト致シマシテハ、
  法律上船舶管理委員會ノ議ヲ經ルト決ッテ
  居リマスルモノハ、此第七條ノ規定ノ關係
  ノミデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/63

  ---

• 064・漢那憲和

  ○漢那委員　次ニ此委員會ノ組織ノコトデ
  アリマスガ、曩ニ板谷君ノ質問ニ對スル御
  答辯デ分リマシタ、此關係官廳ノ官吏ノ外
  ニ學識經驗アル者、及ビ貴衆兩院議員ヲ加
  ヘルト云フ大臣ノ御答辯デアリマシタ、此
  貴衆兩院議員ヲ加ヘルト云フコトハ、殊
  總テ統制流行ノ今日ニ於テハ極メテ必要ナ
  コトデアリマシテ、更ニ擧國一致デ此事變
  ヲ乘切ッテ行クト云フコトカラ言ヒマシテ
  モ至極必要ナコトデアリマス、尙ホ貴衆兩
  院議員ノ中ニハ運航業者モ居ラレマシテ、
  斯ウ云フ人々モ或ハ此委員ノ中ニ加ヘラレ
  ルカト思ヒマスが、ソレ以外ニ第三者ノ立
  場ニ居ル者モ努メテ此委員ニ加ヘラレルコ
  トニ致シタイモノダト思フノデアリマス、
  此點ニ付テ當局ニ御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/64

  ---

• 065・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　此委員會ノ中ニ貴衆兩院
  議員ヲ加ヘマスル理由ハ、大體今漢那君ガ
  御述ニナリマシタヤウナ趣旨デアリマス、
  業者ノ代表者ヲ加ヘテ置イテ、業界ノ要求ヲ
  理解スルト云フコトモ勿論必要デアリマス
  ケレドモ、其業者以外ノ國民全般ノ見地カ
  ラ業者ニ對スル要求モ幾多アルニ相違ナイ
  ノデアリマシテ、サウ云フヤウナ點ニ對ス
  ル理解ヲ得ル爲ニ、特ニ貴衆兩院議員ヲ加
  ヘテ置ク必要ヲ感ジタノデアリマス、大體
  サウ云フ意味ト御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/65

  ---

• 066・漢那憲和

  ○漢那委員　次ニ此船員ノ召集ニ應ジタル
  者ノ補缺ヲスル爲ニ、船舶職員法ノ規定ヲ
  緩和スルコトニ付テ先程御答辯ガアリマシ
  テ諒承致シマシタガ、尙ホソレニ附加ヘマ
  シテ現行法デハ二十噸以上ガ登簿船舶トサ
  レテ、サウシテ相當ノ資格アル者トカ、色々
  ノ制限ニ拘束サレテ居ル、其爲ニ今日ノ事
  變ニ際シマシテ、船員ノ補充ガ相當ニ困難
  ニナリハセヌカト思フノデアリマス、リュ
  デ此際此二十噸ト云フノヲ三十五噸ニ引上
  ゲラレル御意思ハナイカ、是ハ事變以前-
  モウ平時カラ漁業者ニ於テハ夙ニ此希望ヲ
  持ッテ居リマシテ、當局ニソレ〓〓進言シ
  タ經緯モアリマス、殊ニ此際ハ船員補充ト
  云フ意味カラ必要ナコトト思フノデアリマ
  ス、當局ノ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/66

  ---

• 067・小野猛

  ○小野政府委員　二十噸ヲ引上ゲテハドウ
  カト云フ御意見デアリマスルガ、是ハ現在
  船舶安全法、船舶職員法等デ決ッテ居リマス
  ルノデ、是ガ改正ニ付キマシテハ、尙ホ相
  當攻究ヲ致サナケレバナラヌコトト思フノ
  デアリマス、平常ノ場合、海上ノ安全等ニ
  鑑ミマシテ之ヲ引上ゲテモ宜イカドウカト
  云フコトハ、是ハ非常ニ重要ナルコトト思
  ヒマスノデ、他日相當〓究シタイト思ヒマ
  ス、此事變ノ際ニ於キマシテハ、差向キ第
  十二條デ、船舶職員法デ相當緩和致ス積リ
  デアリマス、只今御話ノ事變ニ應召サレル
  ト云フヤウナコトノ爲ニ職員ガ足リナクナ
  ルト云フヤウナ場合ニハ、例ヘバ船頭デア
  リマストカ、其他適當ナル有能ナ者ヲ代リ
  ニ出シテモ宜イト云フヤウナ所マデ考ヘテ
  見タイト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/67

  ---

• 068・漢那憲和

  ○漢那委員　次ニハ變態輸入船ノ問題デア
  リマスガ、先程ノ政府委員ノ御說明ニ依ル
  ト約三十万噸アルト云フコトデアリマス、
  是等ハモウ既ニ事變前カラ存在ヲシテ居ッ
  テ、我ガ全船腹ノ一部ヲ構成シテ居ルモ
  ノデアリマスカラ、此際其輸入ノ有無ハ船
  腹ノ補充ト云フ意味カラハ問題デハナイノ
  デアリマス、ノミナラズ優秀船主義カラ申シ
  マシテモ輸入船ト云フモノハ妥當トハ認メ
  ラレヌノデアリマス、併ナガラ是等ノ船舶
  ニ對シマシテハ南京政府ハ國外賣却ヲ嚴禁
  ヲシテ居リマス、或ハ其徵發、沒收ニ遭フ
  危險ガ大イニアルノデアリマス、又我ガ海
  上保險業者ハ是等ノ輸入船ニ對シテ戰時保
  險ヲ拒ンデ居ルト云フ實情デアリマス、更
  ニ下級船員デアル支那人ハ下船ヲ申出デ、
  上級船員ノ日本人モ支那ノ國旗ノ下ニ勤勞
  スルコトヲ嫌ッテ居ルト云フヤウナ色々ノ
  事情カラ致シマシテ、之ヲ此儘ニ放任スル
  ト結局事實上ニ是等ノ船腹ガ喪失シテシ
  マウト云フコトニナル虞ガアラウト思フノ
  デアリマス、之ニ對シテ變態輸入船ニ付テ
  ドウ云フ處置ヲ執ラルヽ御考デアリマス
  カ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/68

  ---

• 069・田島勝太郎

  ○田島政府委員　御答ヲ申上ゲマスガ、此
  法律ヲ此際提出致サレマシタ所ノ眼目ノ
  ツハ、變態輸入船ノ問題ヲ解決致シタイト
  云フコトガ此法律ノ主眼ノ一ツデアリマス、
  ソレデ今ノ漢那君ノ仰セノ通リデ、大體支
  那置籍船ト云フモノガ日本ノ船腹ノ中ニ加
  ハッテ居リマシテ、船腹ノ上カラ申シマスト
  別段增加スルヤウナ筋合ニナラヌノデハナ
  イカト云フ漢那君ノ御話ハ尤モノ次第デア
  リマシテ其通リデアリマス、大體今日マデ
  支那ニ籍ヲ置イテ居リマスケレドモ、日本
  ノ船トシテ航海ニ從事シ、日本ノ運輸關係
  ニ於テハ日本ノ船ト考ヘテモ宜シイヤウナ
  立場ニ置カレテ居ッタモノデアリマスカラ、
  船腹ノ關係カラ言フト恰モ此變態輸入船ノ
  處置ヲ付ケナクテモ宜シイヤウデアリマス
  ケレドモ、只今漢那君ノ申サレタヤウニ種
  種ノ點ニ於テ實際ハ日本ノ船舶デアリナガ
  ラ、色々ナ不自由苦痛ト云フモノガゴザイ
  マス爲ニ、自由ニ運航ガ出來ナイト云フヤ
  ウナ關係ガ起ッテ來ルノデゴザイマス、ソレ
  デ遞信大臣ノ許可ニ依リマシテ沿岸航路ニ
  從事スルコトヲ許可サレテハ居リマスケレ
  ドモ、支那ノ船舶デアリマス以上ハ今ノ御
  話ノ通リ保險ノ關係モ考慮シナクテハナラ
  又、或ハ乘組員ニシテ支那船ニ乘ルコトヲ
  潔シトシナイ者モアリマス、又支那人ノ下
  級船員ガ下船ヲ要求スルト云フヤウナコト
  モアルノデアリマスカラ之ヲ純然タル日本
  船舶ト致シマスレバ船腹ノ上ニ付キマシテ
  モ非常ナ自由ナコトニナリマシテ、結局日
  本船腹ヲ或ル意味ニ於テ增加シタコトニ考
  ヘラレル場合ガ起ッテ來ルト思ヒマス、ノミ
  ナラズ事實ニ於テ日本國民ノ財產デアリマ
  スモノガ、斯ウ云フ時局ニ際シテ非常ナ不
  都合ナ取扱ヲ受ケルト云フコトハ、極力之
  ヲ救濟シナクテハナラヌノデアリマスカラ、
  政府ト致シマシテハ船其モノガ餘リ感心シ
  タ結構ナ船デナイノデアリマスノデ、無條
  件デ之ヲ日本ノ籍ニ移スト云フコトハ考ヘ
  ナクテハナラヌノデアリマスケレドモ、第
  四條ニ依リマシテ相當ノ條件ヲ附シマシテ
  之ヲ日本船舶トスル、詰リ或ル一定ノ年限
  內ニ解體ヲ致ストカ云フヤウナ條件ヲ附シ
  マシテ、輸入ヲ許スト云フヤウナコトニナ
  リマシタナラバ、所謂自他共ニ利益ヲ受ケ
  ルヤウナ譯デアリマスノデ、此第四條ハ船
  舶管理法トシテ第一番ニ變態輸入船ニ對シ
  テ適用サレ、サウシテ此困難ナル問題ヲ解
  決致シタイ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ居ル次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/69

  ---

• 070・漢那憲和

  ○漢那委員　外船輸入ノ場合ニ高率ナル輸
  入稅ヲ課セラルヽ爲ニ、之ヲ課セナイ關東
  州ニ籍ヲ置キ謂ハヾ合法的脫稅ヲヤッテ居
  ルモノガアルト云フコトデアリマス、又最
  近變態輸入船ヲ統一シテ、關東州ニ一ツノ船
  會社ヲ創立シヨウト云フ計畫ガアルヤウニ
  モ聞イテ居リマスガ、政府ハ之ニ對シテド
  ウ云フ措置ヲ執ラレントスルノデアリマ
  スカ伺ヒタイ、又輸入稅ガ高イカラ斯ウ云
  フヤウナコトニナルノデ、此輸入稅ヲ引
  下ゲラルヽ御考ハナイカドウカ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/70

  ---

• 071・竹内徳治

  ○竹内政府委員　現在關東州ニ置籍船ト
  ナッテ居リマスモノハ約二十五万噸アリマ
  ス、其中大連汽船會社ノ持ッテ居リマスモ
  ノガ十七八万噸、アト五六万噸ハ一隻乃至
  二隻ト云フヤウナ種類ノモノガ持ッテ居ル船
  ダト思ヒマスガ、現在置籍船ニナッテ居リ
  マスモノハ所謂變態輸入船ハ全然ゴザイマ
  セヌ、先程御述ニナリマシタ輸入セントス
  ル場合ニ關稅ヲ免レンガ爲ニ關東州ニ置籍
  ヲ希望スル、サウ云フヤウナ話ハ私共實ハ
  正式ニ何等聞イタコトハナイノデアリマス
  ガ、關東局ト致シマシテハ假ニサウ云フ風
  ナ要求ガゴザイマスレバ、ソレハ海軍行政
  全般ニ付テノ主務官廳デアル遞信省ノ意向
  モ聽キ、又其船ガ內地ニ置籍スルコトヲ不
  便トシ、關東州ニ是非トモ置籍シナケレバ
  ナラヌカ否カト云フコトヲ〓究致シマシタ
  上デ決定スル問題デハナイカ、斯ウ云フ風
  ニ考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/71

  ---

• 072・田島勝太郎

  ○田島政府委員　一寸今ノ說明ヲ少シ補足
  シテ置キマス、輸入稅ヲ免除スル意思ハナ
  イカト云フ御話デゴザイマスガ、是ハ內地
  ニ關係シタ問題デアルト思ヒマスカラ御答
  ヲ申上ゲテ置キマスガ、本法ヲ制定致シマ
  ス際ニ十分ニ其點ハ考慮致シタノデアリマ
  ス、併シ立法上ニ非常ナ困難モ無論アリマ
  スノミナラズ、法律的ニ申シマシテモ、此
  際特ニ輸入稅ヲ減ジマストカ、或ハ免ズル
  トカ云フヤウナ取扱ヲスベキ筋合ノモノデ
  ハナイト考ヘマシテ、其問題ニ付キマシテ
  ハ本法ヲ起草致シマス際ニ附セズニ居ル次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/72

  ---

• 073・漢那憲和

  ○漢那委員　只今ノ政府委員ノ御答ハ一寸
  私ハ聞漏シマシタガ、合法的脫稅シタヤウ
  ナコトヲヤッテ居ル事實ヲ聞カナイト仰ッタ
  ノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/73

  ---

• 074・竹内徳治

  ○竹内政府委員　只今申上ゲマシタノハ現
  在關東州置籍ニナッテ居リマス船ハ既ニ相
  當久シイ前カラ關東州ニ置籍サレテ居ルノ
  デアリマシテ、所謂變態輸入船ハ含ンデ居
  ラナイヤウニ申上ゲマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/74

  ---

• 075・漢那憲和

  ○漢那委員　サウシマスト輸入稅ヲ減免ス
  ル必要ハ認メナイ、斯ウ云フ風ナ今ノ政府
  委員ノ御答デアリマシタガ、是等ノ只今申
  述べマシタヤウナ合法的脫稅ミタヤウナコ
  トヲヤルモノニ對シテ、輸入稅關係以外ニ
  於テ之ヲ防ギ得ル何カノ手段ガアル譯デア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/75

  ---

• 076・田島勝太郎

  ○田島政府委員　其點ニ付キマシテハ從來
  ノ取扱ヲ一應申上ゲテ置クコトガ宜シイカ
  ト思フノデゴザイマスルガ、詰リ今御話ノ
  ヤウナ脫稅ノ目的ヲ以テト申シマシテハ少
  シ言ヒ過ギルカモ知レマセヌガ、關東州ニ
  置籍スルコトノ必要ナ事情ガアル場合ノ外、
  例ヘバ大連汽船ガ必要ニ應ジテ何處カラカ
  船ヲ買ヒマスト云フヤウナ場合ハ、當然是
  ハ大連ニ籍ヲ置クト云フ必要ガソコニアル
  譯デアリマスガ、先ヅサウ云フヤウナ關東
  州ニ籍ヲ置ク必要ガナイニ拘ラズ、關東州
  ニ籍ヲ置クコトヲ願出デルト云フモノニ付
  キマシテハ、關東州ノ從來ノ取扱トシテ
  ハ、許可セザル方針ニ取扱ガナッテ居ルノ
  デゴザイマシテ、ソコガ先刻政府委員ノ答
  ヘラレマシタ變態輸入ト云フコトニ付テハ
  關東州ニ於テ考ヘタコトハナイ、又サウ云
  フ置籍ハナイト云フコトヲ言ハレル所以デ
  ハナイカト思フノデアリマス、從來ノ內輪
  ノ取扱ノヤリ方ハサウ云フヤウナ筋合ニ
  ナッテ居リマスノデ、最近ニハ關東州ニ籍
  ヲ置ク必要以外ノ船ハ、關東州ニハ大體新
  シク置ケナイコトニナッテ居ルノデゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/76

  ---

• 077・漢那憲和

  ○漢那委員　只今ノ政府委員ノ御答ノヤウ
  ニ實際合法的ニ脫稅ヲヤッテルモノガナイ
  トスルナラバ至極結構ナコトデアリマス
  ガ、私ノ聞ク所ニ依ルト、只今申上ゲマシ
  タヤウナ法規ヲ潜ッテ斯ウ云フコトヲヤッテ
  居ル者ガアルト云フコトデアリマス、此點
  ニ付キマシテハ當局トシテハ十分調査ヲサ
  レテ、斯樣ナコトガナイヤウニ取締ヲシテ
  戴キタイト思フノデアリマス
  ソレカラモウ一ツハ解體ヲ條件トシテ輸
  入ヲ許サレタ古船、之ヲ實際解體ヲシナイデ
  運航ヲシテ巨利ヲ博シテ居ル者ガアル、斯
  ウ云フコトモ聞クノデアリマス、此點ニ付
  テ當局ハ調査サレタコトガアルノデアリマ
  スカ、又實際ドレ位ノモノガアルノデアリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/77

  ---

• 078・小野猛

  ○小野政府委員　現在デハ解體ヲ條件ニシ
  テ輸入シテ居ルモノハナイノデゴザイマ
  ス、唯解體ヲスルト云フ名目デヤッテ來マ
  シテ、途中デ意思ヲ飜シテ變態輸入ヲスル
  ト云フヤウナモノガ相當アルト云フコトヲ
  聞イテ居リマス、輸入ハ今止メテ居リマス
  ガ、解體條件デモ何デモ輸入シテ居ル例ハ
  ナイノデアリマス、唯解體スルト云フ名義
  デヤッテ來テ支那ニ轉向スルト云フモノガ
  十數隻ニ及ンデ居ルト云フ風ニ聞イテ居リ
  やく、是ハ私ノ方ノ行政上ノ表面ニ現ハレ
  テ來ナイノデアリマシテ、唯サウ云フ噂ヲ
  聞クニ過ギナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/78

  ---

• 079・漢那憲和

  ○漢那委員　輸入ヲ許サレル時ニ直グニ解
  體ヲサセルト云フサウ云フ條件デハナイノ
  デアリマシテ、今ノ御答ハ能ク分ラナイノ
  デスガ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/79

  ---

• 080・小野猛

  ○小野政府委員　現在デハ遞信省ニ於キマ
  シテハ最前申シマシタヤウニ船齡五年未滿
  ノ船ニアラザレバ輸入ヲ絕對ニサセナイ、
  隨ヒマシテ解體條件ノ輸入船ト云フモノハ
  現在デハナイ、此法律ガ出マシテ解體條件
  ヲ附スル輸入ト云フモノガ始メテ出テ來ル
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/80

  ---

• 081・漢那憲和

  ○漢那委員　次ニ陸軍當局ニ伺ヒタイノデ
  アリマスガ、事變ノ爲ニ徵發ヲ致シマシタ
  船舶ニ對スル傭船料ノ支拂ガ滯ッテ居ル爲
  ニ相當ニ困ッテ居ル運航業者ガアルト云フ
  コトヲ聞イテ居リマスガ、是ハ凡ソ何時頃
  支拂ハレル見込デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/81

  ---

• 082・比佐昌平

  ○比佐政府委員　其點ニ付テハ陸軍トシテ
  ハ極力其料金ヲ支拂フヤウニ今關係當局ト
  能ク打合セ中デアリマス、出來ルダケ急イ
  デ支拂フコトニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/82

  ---

• 083・漢那憲和

  ○漢那委員　此問題ハ傭船料バカリヂヤナ
  ク、自動車其他方々ニ困ル困ルト云フ不滿
  ノ聲ガ聞エルヤウデアリマス、當局トシマ
  シテハ出來ルダケ早ク支拂ヲセラレルヤウ
  ニ希望スル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/83

  ---

• 084・板谷順助

  ○板谷委員　關聯シテ極ク簡單ニ、漢那君
  ノ只今ノ御質問ニ對シマシテ極メテ重要ナ問
  題ガ御答辯ガハッキリ致シマセヌノデ、此
  際確メテ置キタイト思フノデアリマス、
  船舶管理委員會ノ權限ハ「第七條ノ規定ニ
  依ル命令ヲ爲サントスルトキハ船舶管理委
  員會ノ議ヲ經ベシ」所謂是ハ決議事項ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、所ガ先程大臣ノ
  御答辯ニ依リマスト云フト、大體統制ニ
  付テハ業者ニ重キヲ置ク、而シテ此法律ヲ
  適用スル場合ニ於テハ、大體ニ於テ殆ド此
  規定サレテ居ル主ナル條項ニ付テハ、船舶
  管理委員會ニ諮問ヲスルヤウニ私ハ承ッタ
  ノデアリマス、所デ第七條ノ命令ヲ御定メ
  ニナル場合ニ於テハ第四條、第五條、第六
  條ト云フモノハ勿論之ニ重大ナ關係ヲ持ッ
  テ居ルコトデアリマスカラ、隨テ決議事項
  デナイト致シマシテモ先程大臣ノ御答辯ノ
  如ク此委員會ニ大體ニ於テ諮問サレルト云
  フコトガ當然デアリ、又業者ノ間ノ圓滿ヲ
  期スル所以デアラウト私ハ斯ウ考ヘルノデ
  アリマスガ、如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/84

  ---

• 085・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　先程御答辯申上ゲマシタ
  通リニ第七條ノ事項ニ關シマシテハ船舶管
  理委員會ノ議ヲ經ルコトニナッテ居ルノデ
  アリマスガ、其他ノ點ニ於テハ政府カラ必
  要ト認メル事項ニ付テハ諮問ヲシテ意見ヲ
  徴スルコトニ致シタイト思ッテ居リマス、
  唯先程申シマシタヤウニ緊急已ムヲ得ザル
  ヤウナ事態ニアル場合ニハ適宜ノ處置ヲ執
  ラザルヲ得マセヌケレドモ、業者ノ活動ニ
  重大ナル影響ヲ及ボスヤウナ問題ハ出來ル
  ダケ諮問ヲシテ、理解ヲ以テ適當ノ處置ヲ
  スルヤウニ致シタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/85

  ---

• 086・板谷順助

  ○板谷委員　第七條ノ命令ヲ御定メニナル
  ニ付テハ、第四條、第五條、第六條ト云フ
  モノガ關聯ヲ致シマシテ、其當時ノ船舶界
  ノ情勢ガドウデアルカト云フコトニ付テ十
  分ナ調査〓究ガ遂ゲラレナケレバ、第七條
  ノ命令ヲ發スルコトハ出來ナイト云フ結論
  ニ私共ハナルト思フノデアリマス、隨テ當
  業者及ビ其關係者カラ成立ッテ居ル所ノ管理
  委員會ニ於テハ、當然是等ハ諮問サルベキ
  事項デアル、勿論緊急已ムヲ得ザル場合ニ
  於テハ政府ノ權力ニ依ッテオヤリニナルコ
  トガ出來ル法律デアリマスケレドモ、所謂
  業者トノ關係ノ圓滿ヲ保ツ意味ニ於テ、諮
  問スル積ダト云フコトデナク、成ベク諮問
  スルト云フ方針ノ下ニヤッテ戴キタイ、私
  ハ先程ノ御答辯ヲサウ云フ風ニ諒解ヲシテ
  居ッタノデアリマスガ、モウ一ツハッキリ御
  願ヒシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/86

  ---

• 087・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　實ハ第七條ノ事項ヲ委員
  會ノ議ヲ經ベキモノト致シマシタ趣旨モ、
  只今御話ニナリマシタコトト同ジ趣旨ナノ
  デアリマス、此第七條ノ事項ニ對シテ委員
  ノ議ヲ經ルガ爲ニハ、自然其基礎トナルベ
  キ事實ニ付キマシテモ、委員ノ間カラ色々
  ナ意見モ出ルト思ヒマス、又勢ヒ其意見ハ
  第四條、第五條第六條ニ關係アル事項ニ
  モ觸レテ、色々意見ガ發表サルヽコトデ
  アラウト思フノデアリマス、餘リ條文ニ拘
  泥ハラナイデ御考下サイマスト、第七條ニ
  關スル事項ヲ議決致シマスル場合ニハ、當
  然業者トシテ第五條ヤ第六條ニ書イテアル
  事柄ニ關シテモ色々實情ヲ御話ニナリ、或
  ハ御要求ヲ御述ニナル機會ガ十分アルノデ
  アリマシテ、出來ルダケ業者ノ實情ニ卽シ
  テ決定ヲシタイト思ッテ居ル次第デアリマ
  スカラ、第七條ダケデアッテモ十分安心ヲシ
  テ意見ヲ御述ニナッテ、其意見ノ實現ヲ期ス
  ルコトガ出來ルノダト思ヒマスケレドモ、
  尙且ツ其他ノ第五條ナリ第六條ナリニ書イ
  テアル事柄デ緊急ヲ要シナイ場合ニ於キマ
  シテハ、出來ルダケ業者ノ意見ヲ徵スル爲
  ニ諮問ヲスルト云フコトヲ考ヘテ居ルノデ
  アリマシテ、サウ云フ意味デ此勅令ノ案モ
  記載サレテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/87

  ---

• 088・板谷順助

  ○板谷委員　第四條モ同樣デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/88

  ---

• 089・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　同ジコトデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/89

  ---

• 090・小山亮

  ○小山委員　一寸簡單ニ關聯ヲ致シマシ
  テ····、先程漢那君ノ御質問ノ中ニ關東州所
  屬船籍ノ船ノ件デ御質問ガアリマシタ、田
  島政務次官ノ之ニ對シテノ御答辯ハ、從來
  關東州船籍ノ船ハ、大連汽船ノヤウニ關東
  州ニ於テ仕事ヲスルヤウナ汽船會社ヲ除イ
  テ、其他ハ從來ヨリ關東州ニ於テハ關東州
  所屬トシテ許可シタコトガナイト云フ御答
  辯ノヤウニ承リマシタガ、サウ承知シテ宜
  シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/90

  ---

• 091・田島勝太郎

  ○田島政府委員　私ノ漢那君ニ對シ御答申
  上ゲマシタノガ、言葉ノ不十分デアリマシ
  タ爲ニ御質問ヲ招キマシテ、洵ニ恐縮ニ存
  ジマス、初メカラサウ云フ次第デハゴザイ
  マセヌ、漢那君ノ御心配ニナリマシタヤウ
  ナ脫稅ノ目的ヲ以テ、或ハサウ云フヤウナ
  心組ヲ以テ關東州置籍ト云フヤウナ船ガ段
  段ト出テ來ルト云フコトニナリマシタノ
  デ、ソレデ先刻御答申上ゲマシタヤウニ關
  東州ニ籍ヲ置クコトガ必要デアルト云フコ
  トガ明カデアル船舶以外ハ許サナイコトニ
  シタ、斯ウ云フコトニ御答ヲシタ積リデア
  リマス、ソレデ以前ニハサウ云フ仰セノヤ
  ウナ、關東州ノミニ限ラレテ是非籍ヲ置カ
  ナクチヤナラヌト云フ性質ノ船デナイモノ
  モ、關東州置籍船中ニアリ得ルノデアリマ
  ス、併シサウ云フヤウナ取扱ノ方針ヲ決メ
  マシタ以外ハ今御尋ノヤウナ船ハナイコト
  ニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/91

  ---

• 092・牧山耕藏

  ○牧山委員長　原惣兵衞君······原君、御相
  談デスガ、刑事局長ノ出席御要求デシタガ、
  今他ノ委員會デ答辯中ダサウデス、ソコデ司
  法書記官ノ大竹氏ガ御出席デスガ、大竹書
  記官ハ政府委員ニハオナリニナッテ居ラヌ
  ノデアリマス、併シ同君ノ御說明デ宜ケレ
  バ說明員トシテ許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/92

  ---

• 093・原惣兵衞

  ○原委員　宜シウゴザイマス、先ヅ遞信大
  臣ニ本法ヲ制定スルニ付キマシテノ根本方
  針ヲ承リタイノデアリマス、大正六年寺內
  內閣ニ於テ船舶管理令ヲ裁可シタ其當時ト
  現在ノ日本トハ、支那事變ヲ惹キ起シタ現
  在ノ場合ニ於テ本法ヲ發令スル上ニ於キマ
  シテ、法律トシテ議會ノ協贊ヲ求メテ發令
  スル場合ニ於キマシテノ根本方針ハ、先程
  カラ承ッテ居リマスト、成タケ本法ヲ施行シ
  ナイヤウニスル方針デアルガ、補强ヲスル
  爲ニヤルト云フ御意思ノヤウニモ承ッタノ
  デアリマスガ、寺內內閣ノ當時ニ於ケル所
  ノ管理令ヲ施行シヨウト云フヤウナ御意思
  デアルカ、重大ナ此事變、而モ世界各國ガ
  經濟上ニ重大ナル逼迫ヲ感ジテ居ル時ニ於
  テ、根本的ニ國家統制ノ經濟ニ基イテ本法
  ノ必要アリトシテ御發令ニナッタノデアル
  カ、ヤハリ寺內內閣當時ノ御考通リデアッタ
  ノデアルカ、其根本方針ニ依ッテ本法ノ運用
  ニ重大ナ關係ヲ持チ、現内閣ノ政策ノ根本
  方針ニ重大ナル關係ヲ持ッテ來ルト思フノデア
  リマスガ、其點ニ於テ本法發令ノ趣旨ガ何
  處ニアルカ、根本ノ國策ニ關スル重要ナ點ニ
  關聯シテ遞信大臣ノ御意見ヲ承ッテ見タイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/93

  ---

• 094・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　此度ノ事變ノ重大性ハ、寺
  內內閣當時ニ較ベルト或ル意味ニ於テ一層
  深刻デアルトモ言フコトガ出來ルト思ヒマ
  ス、隨テ海運ニ付キマシテハ一方デ軍事上
  ノ要求ガアリマシテ多量ノ船舶ヲ必要トス
  ルノデアッテ、其殘リノ船舶ヲ以テ國民經濟
  上、國民生活上ノ要求ニ適合セシメテ行カ
  ナケレバナラナイノミナラズ、尙ホソレダ
  ケデハ到底不十分デアリマスカラ、更ニ其
  上外國船ヲ輸入シテ其缺乏ヲ補ッテ行カナ
  ケレバナラナイ、サウ云フ意味ニ於テ本法
  ノ制定ハ必要デアルト認メテ本法ノ御審議
  ヲ願フト云フコトニナッテ來タノデアリマシ
  テ、先程色々御答ヲ申上ゲマシタ中デ、業
  者ノ自制ニ依ッテ適當ニ船舶需給ノ關係ヲ
  調整スルト云フヤウナコトハ、出來ルダケ
  業者ノ自制ニ依ッテ、ソレヲ調整シテ貰フコ
  トガ必要ダト思ヒマスガ、ソレ等ノコトガ
  若シ圓滿ニ行ハルヽナラバ、政府トシテハ出
  來ルダケ內部ノ自治的統制ヲ尊重スル、併
  ナガラ船舶ノ事業ハ業者ダケノ利害ノ爲ニ
  存在シテ居ルノデハアリマセヌ、同時ニ又
  國民全體ノ利害ノ爲ニ其事業ハ考慮セラレ
  ナケレバナラナイノデアリマスカラ、ソコ
  デ業者ダケノ自制ニ依ッテ調整サルヽ部分
  モアリマセウシ、又業者ダケノ利害關係ノ
  考慮デ適當ト思ハルヽコトガ、國民全體ノ
  生活上ノ要求カラ見ルト適當ト思ハレナイ
  點モアルト思ヒマス、サウ云フヤウナ部分
  ニ對シマシテハ、政府トシテハ國民全體ノ
  生活上ノ要求ヲ基準トシテ、其時ノ國民生
  活上ノ要求ニ適スルヤウニ外部カラ指導統
  制スルコトガ必要ダト思フノデアリマス、
  又外國船ノ輸入ニ付キマシテモ從來ノ方針
  ヲ改メテ、或ル程度ノ基準ニ則ッタ外國船
  ハ之ヲ輸入シテ缺乏ヲ補ッテ行カナケレバ
  ナラナイノデアッテ、其事モ本法ニ依ッテ規
  定シテ居ルノデアリマス、本法ノ精神ハ此
  重大ナル時局ニ直面致シマシテ軍事上、經
  濟上、國民生活上ノ目的ニ卽スルヤウナ海
  運業ノ全般ヲ國家的見地ニ立ッテ指導統制
  スルノ必要ヲ認メテ之ヲ立法シタノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/94

  ---

• 095・原惣兵衞

  ○原委員　サウ致シマスト、本法ハ私ハ施
  行期日ガ確定スレバ積極的ニ本法ヲ適用ス
  ルト云フコトニナルト考ヘルノデスガ、私ノ
  御聽キシタイ點ハ、運賃船舶ノ賃貸料デア
  ルトカ、運航業者ノ運賃ナドニ關係致シマ
  シテ、是ハ非常ナ干涉ニモナリマスノデス
  カラ、隨テ私ハ現在ノ時局ニ卽シテノ重大
  ナ經濟統制ヲ爲スモノデアルト斯樣ニ見テ
  居ルノデアリマス、船舶ガ足リナイカラト
  云フコトダケデナクテ、私ハ一面カラ言ヘ
  バ政府ノ力ニ依ッテ經濟統制ヲ爲スト云フ
  所ニ、昔ノ寺內內閣當時ノヤウナ簡單ナ管
  理令ト云フヤウナ一勅令デナクテ、法律ニ
  求メナケレバナラヌ點ガアルト思ヒマス、
  デスカラ私ハ經濟統制ノ目的モ何モナクテ
  簡單ナ船舶ノ管理ヲシテ、船舶ノ足ラヌ點
  ヲ補フト云フダケデアルカドウカト云フ點
  ニ付テハ、所管命令ノ遞信大臣ダケノ意見
  デハ私ハ滿足スルコトハ出來ナイノデアリ
  マスカラ、商工大臣ハ御出デニナッテ居リ
  マスカ、先程カラ田島政務次官ハ非常ニ博
  學ナ點ヲ御見セニナッテ居ラレマスガ、商工
  省トシテ此經濟統制ニ對シテドウ云フ御關
  係ガアルカト云フコトニ關係シテ、本法發
  令ノ趣旨ガ何處ニアルカト云フコトヲ御伺
  シタイ、引續イテ陸海軍ニモ船舶ト云フモ
  ノハ重大ナ關係ガアルト思ヒマスカラ、本
  法施行ニ付テノ陸海軍ノ政府委員デ結構デ
  アリマスカラ御意見ヲ承レヽバ仕合セト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/95

  ---

• 096・田島勝太郎

  ○田島政府委員　洵ニ御尋ニ對シテ恐縮致
  シマスガ、私ノ名ヲ御指シ下サイマシタノ
  デ、取敢ズノ御答ヲ申上ゲテ置キタイト思
  ヒマス、寺內內閣時代ノ船舶管理令ト云フ
  ノハ、今ノ御話ノヤウナ、其時分ニ非常ニ
  輕イコトデアルカラ勅令ニ依ッタト云フ意
  味デハナイノデアリマシテ、當時臨時議會
  ヲ開會スルト云フ便宜ヲ得ナカッタガ爲ニ、
  アヽ云フ緊急勅令ノ形ヲ取ッテ出テ居ルヤ
  ウナ次第デアルト思ヒマス、是ハ大臣カラ
  ノ御答デ盡キテ居リマス通リニ、當業者ノ
  自治統制ヲ主眼ト致シマシテ、ソレヲ指導
  誘掖シテ行キタイト云フコトガ精神デハゴ
  ザイマスルガ、併シ已ムヲ得ナイ場合ニ於
  キマシテハ、國家トシテ國民大衆ノ生活ニ
  影響ヲ及ボスヤウナ場合ニ於キマシテハ、
  相當ノ統制ヲ進ンデヤラナクチヤナラヌト
  云フヤウナ場合モアリ得ルカモ知レナイト
  云フヤウナコトヲ考ヘマシテ、斯ノ如キ法
  律ヲ御協贊願フヤウナ次第デアルノデアリ
  マス、ソレデ要スルニ當業者ノ自治統制ヲ
  主眼トシテ居ルノデゴザイマスカラ、船舶
  管理委員會ト云フモノヲ設ケマシテ、當業
  方面ノ知識ヲ動員致シマシテ、サウシテソ
  レニ依ッテ此實行ガ過チナキヲ期シタイト
  云フヤウナコトニナッテ居ルノデゴザイマ
  スルカラ、丁度御話ノヤウナ生產ノ方ノ
  側詰リ商工省ノ方ノ側ノ生產關係ノモノ
  ヲ運送致シマスルト云フコトガ、所謂船舶
  ノ運輸ノ目的ノ大部分デアルノデアリマス
  カラ、ソレデ其荷物ノ按排ニ付キマシテ當
  業者ノ知識ヲ十分ニ動員致シマシテ、實情
  ニ卽スルヤウニ當業者ノ自治統制ヲ指導シ
  テ行ク、若シ當業者ノ自治統制ガ不幸ニシ
  テ其目的ヲ達スルコト出來ナイヤウナ場合
  ニナリマシタナラバ、政府トシテ此法律ノ
  條文ニ依リマシテ、統制ノ處置ニ出ル次第
  デアリマスガ、併シ其場合ニ於キマシテ十
  三條ニ於キマシテ船舶管理委員會ノ議ヲ經
  ナケレバナラヌノデアリマス、船舶管理委
  員會ノ決議ニ依ラナケレバ行ヘナイノデア
  リマスカラ、其點カラ考ヘマシテ、所謂官
  僚獨善ノ統制ト云フコトハ十分ニ避ケラレ
  得ルト云フヤウナ考ヲ持ッテ「居ル」次第デア
  リマシテ、詰リ實情ニ適スル所ノ統制ヲ行
  ヒ得ルト云フヤウナ結果ヲ此法律デ持來シ
  得ルト考ヘテ居ルヤウナ次第デゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/96

  ---

• 097・原惣兵衞

  ○原委員　陸海軍所管ニ御願スル前ニ今田
  島政府委員ノ御話ガアッタガ、尙ホ、加ヘテ
  置キマスガ、官僚獨善デアルトカ何トカ云
  フヤウナコトハ私ガ何モ言ウタモノデハア
  リマセヌ、併シモウ一步進ンデ、官僚獨善
  ガ怖イ時期デハナクテ、此重大ナ日支事變
  ト云フヤウナコトニ關聯致シマシテ、我ガ
  日本ハ經濟上ニ重大ナ決心ヲシナケレバナ
  ラヌ時期デアリマシテ、官僚獨善ト云フ攻
  撃ヲ怖ガル、怖ガラヌノ問題デハナクシテ
  獨リ此法案ガ出タ、例ヘバ運賃ノ點ニ付テ
  經濟統制ノ關係ガアルカラ申上ゲマスガ、
  大藏省ノ所管ニ於キマシテモ、會社ノ設
  立其他ニ付テモ一ノ許可ヲ得ナケレバナ
  ラヌト云フヤウナ法律ガ今出テ居ルノデア
  リマス、斯ウ云フヤウナ方針ハ、本當ニ政
  府ガ此重大ナ時局ニ當ッテ居ル爲ニ、此頃
  流行ノ言葉デ言ヘバ「フアッシヨ」ヲヤル、
  所謂「フアッショ」形態デ以テデモ進ンデ此
  重大ナル時局ヲ乘切ル決心デアルヤ否ヤト
  云フ政府ノ根本ノ經濟ノ方針ヲ聽イテ居ル
  ノデアリマスノデ、其點ニ付テ陸海軍政府
  委員ガ根本ノ斯ウ云フ關聯シタ點ニ付テノ
  方針ガ、ドウ云フ目的カラ本法ヲ發布シテ居
  ルノカ、獨リ此法案ダケデナイノデ、其方
  針ヲハッキリ私ハ聽ク必要ガアリ、隨テ其方
  針ガ決マレバ本當ノ所謂運賃其他總テノ經
  濟統制ニ重大ナ立法ノ趣旨ガ明ニナルノデ
  アリマスカラ、ドウカ此點ニ於キマシテ、
  國家重大ナ時デアリマシテ、私ハ決シテ官
  僚獨善ト云フ、ソンナコトヲ恐レテモ居リ
  マセヌ、願ハクバ陸海軍所管ノ政府委員ハ
  所信ノアル所ヲ明白ニシテ、本法立法ノ趣
  旨ヲ明白ニシテ戴キタイト思フノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/97

  ---

• 098・比佐昌平

  ○比佐政府委員　本法ト陸海軍ノ考ニ付テ
  御問ヒデアリマスルガ、本法ガ實施セラレ
  レバ陸海軍總テノ方面ニ於テ非常ニ便宜ヲ
  得ルノデアリマシテ、陸軍トシテハ本法ヲ
  一日モ早ク實施スルコトヲ希望致シテ居ル
  ノデアリマス
  (「答辯ニナラヌ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/98

  ---

• 099・原惣兵衞

  ○原委員　本法ノ施行ノコトヲ早クシテ吳
  レト云フヤウナ話デハナイノデス、私ノ聽
  カントスル點ハ-サウ云フ方針デアリマ
  スケレドモ、恐ラクソレハ比佐君ノ仰セノ
  點ハ御尤ノ點デ其範圍ノコトデアラウト思
  ヒマスカラ、是以上聽キマセヌケレドモ、
  私ハ此樣子デハ迚モ皆サンデハ御答ガ出來
  ナイト思ヒマスカラ、陸海軍大臣ニ來テ戴
  イテ根本方針ヲ聽ク迄ハ此點ハ留保スルコ
  トニ致シマス
  ソレカラ次ニ私ノ御聽キ申シタイコトハ、
  第十三條ノ船舶管理委員會ニ付テ御聽キ申
  シタイノデアリマス、同僚ガ御聽キシタヤ
  ウデアリマスガ、船舶管理委員會ト云フ委
  員會ノ議ニ付スルト云フコトニナッテ居リ
  マシテ、私等ハ之ヲ議決機關ダト考ヘテ居
  ルノデアリマスガ、此議決機關デ議スルニ
  ハ凡ソ何日位ノ日ニチガ掛ルノデアリマス
  カ、簡單ニヤレルモノデアリマスカ、一人
  此議ヲ經ルト云フコトハ、反面カラ言ウタ
  ラ、政府ト致シマシテモ兩挾ミ見タヤウニ
  ナルノデアリマスカラ、其點ヲ敢テ責メヨ
  ウト云フノデアリマセヌガ、若シ相當ノ時
  間ガ掛ルト致シマシタナラバ、傭船料金其
  他運賃等色々重大ナ關係ヲ持ツノデアリマ
  シテ、此點ニ付キマシテ、是ハ政府ノ命令
  系統ニ重大ナ關係ヲ持ツテ來マスガ、陸軍
  省ガ例ヘバ運賃ニ關係スル、若クハ海軍省
  ガ造船ニ關係ヲスルト云フ時ニ、或ル一ツノ
  指令ヲ出ス時ニ於テ直接出シ得ルモノデア
  ルカ、或ハ遞信省ノ一々許可ヲ得テ、遞信
  省ニ迄申達ヲシテ、遞信大臣ガ所管大臣ト
  スルナラバ其命令ヲサレナクチヤナラヌノ
  デアリマスガ、直接ヤレルモノデアルカ、其
  點ヲ併セテ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/99

  ---

• 100・比佐昌平

  ○比佐政府委員　遞信省ヲ通ジテヤルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/100

  ---

• 101・原惣兵衞

  ○原委員　遞信省ヲ通ジテ一々ヤルト云フ
  コトニナリマスト、非常ニ是ハ日ニチガ掛
  ルト思ヒマス、其日ニチノ點ハ簡單ナコトデ
  ヤレルモノデアリマスカドウデアリマスカ、
  遞信大臣ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/101

  ---

• 102・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　是ハマダ其場合ニナッテ
  見ナイト正確ニハ申上ゲラレマセヌケレド
  モ、大體ニ於テ運賃ニ關スルコトハ運賃ニ
  關スル小委員會ヲ設ケテ〓究シ、傭船料ニ
  關スルコトハ傭船料ニ關スル小委員會ヲ設
  ケテ〓究スルト云フコトニシテ置イテ、出
  來得ルダケ迅速ニ、出來得ルダケ能率ヲ擧ゲ
  ルヤウナ方法ヲ採リタイト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/102

  ---

• 103・原惣兵衞

  ○原委員　田島政務次官ニ御質問申シタイ
  ノデアリマスガ、本法施行ノ期日ハ勅令ヲ
  以テ之ヲ定メル、本法ハ支那事變終了後一
  年內ニ之ヲ廢止スルト云フコトガ附則ニ付
  イテ居リマスノデ其點ニ付テ、此終了ノ時
  ハ議會ノ協贊ヲ得ルノダト云フコトヲ仰セ
  ニナッタノデアリマスガ、チヨット是ガ分ラナ
  イノデアリマスガ、承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/103

  ---

• 104・田島勝太郎

  ○田島政府委員　先刻私ノ御答申上ゲマシ
  タノハ、詰リ何時是ガ廢止サレルカ分ラヌヂ
  ヤナイカト云フヤウナ意味ノ御質問デアッ
  タト思ヒマシタカラ、ソレデ支那事變終了ト
  云フコトハ、大臣御答申上ゲマシタ通リニ、
  停戰協定其他ノ外部ニ現レタ段落ノ著ク事
  項ニ依ッテ終了ガ明ニナルダラウ、サウス
  ルト、其後一年內ニ之ヲ廢止スルト云フコト
  ニナッテドウモ曖昧ヂヤナイカト云フヤウナ
  疑ガ御有リデナカッタカト思ヒマシタカラ
  御答ヲ申シタノデアリマスガ、此處ニハ書
  イテゴザイマセヌケレドセ、詰リ法律ヲ廢
  止スル場合ニ、自然ニ消滅致スコトニ法律
  ガ規定シテアレバ、是ハモウソレデ明デア
  リマスケレドモ、自然ニ消滅シテ居ナイヤ
  ウナ書キ方、詰リ此處ニ書イテアリマスヤ
  ウナ書キ方ニナリマスルト、結局廢止スル時
  期ニ關シテ議論ガ起ル譯デアリマスガ、法
  律ガ自然ニ消滅セズシテ、之ヲ積極的ニ何
  等カノ方法ニ依ッテ廢止スルト云フヤウナ
  コトニナルノデアルト致シマスルナラバ、
  法律ヲ廢止スルノニハ又復法律ニ依ルニ非
  ザレバ出來ナイノデゴザイマスルカラ、ソ
  レデ當然議會ノ協贊ヲ經マシテ、何月何日
  ヨリ之ヲ廢止スルト云フコトヲ法律ニ依ッテ
  更ニ確定スル、斯ウ云フコトニナルノガ此
  立法ノ精神ダト云フコトヲ申上ゲタ積リデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/104

  ---

• 105・原惣兵衞

  ○原委員　遞信大臣ハ支那事變終了ト云フ
  時ニ付テ御答辯ガアリマシタケレドモ、ソ
  レハマダ十分明白ニシ得ナイノデアリマス
  ガ、支那事變終了ト云フモノハ、所謂政府
  ガ支那事變ハ之ヲ以テ終了シタノダト云フ
  コトヲ閣議デ聲明ヲセラレタ時ナノデアリ
  マスカ、モウ少シソレモ明白ニ承ッテ置キタ
  イノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/105

  ---

• 106・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　支那事變終了ト云フコト
  ヲ明白ニ申上ゲルコトハ困難デアリマス、
  併シ例ヘテ申セバ、停戰協定ノ成立ト云フ
  ヤウナ、兩國ガ干戈ヲ收メテ安心シ得ル狀
  態ニナルヤウナ場合ヲ意味スルノデアリマ
  シテ、サウ云フヤウナ場合ニハ政府ガ其趣
  旨ヲ明ニスル機會ガアラウト思ヒマス、併
  シ國際上ニ於ケル戰爭ノ結果ハ色々複雜ナ
  現象ヲ伴ウテ居リマシテ、簡單ニ斯ウ云フ
  場合ニ於テ終了シタンダト云フヤウナコト
  ハ申上ゲルコトハ中々困難デアリマス、サ
  ウ云フ意味ニ御諒承願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/106

  ---

• 107・原惣兵衞

  ○原委員　法律ト云フモノハ困難デアルト
  カナイトカト云フ問題デナクテ、終了ノ時期
  ヲ確實ニスルコトガ出來ルカラ、一年內ニ
  廢止スルト云フヤウナ第二段ガ起ッテ來ル
  ノデアリマシテ、困難ダト言ッタラ結局法
  律デ決メルコトハ出來ナクナルノデアリマ
  スガ、是ハ餘計ナコトデアリマスケレドモ
  サウ云フ工合ニ仰セニナルカラ勢ヒ言フノ
  デアリマスガ、終了ノ時期ガ困難ナノニ、
  一年內ニ之ヲ廢止スルト云フコトハ時期ガ
  決マラナイモノト思ヒマスガ、ソレハ如何
  デスカ、法律ハ困難デハ濟マナイト思フノ
  デアリマスガ、ハッキリ仰シヤッテ戴キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/107

  ---

• 108・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　支那事變ガドウ云フ狀態
  デ結末ニナルカト云フコトハ中々豫斷出來
  ヌノデアリマスケレドモ、譬ヘテ言ヘバ其
  一例トシテ、兩國ノ間ニ停戰協定ガ成立シ
  テ干戈ヲ收メルト云フヤウナコトニナレバ
  事變ノ終了ト認メラレルダラウト思ヒマ
  ス、歐洲大戰ノ當時モ休戰條約調印ト云フ
  コトヲ一ツノ事變終了ト認メタ法律上ノ文
  章ノ書キ方モアッタヤウデアリマスガ、サ
  ウ云フヤウナコトモ一ツノ終了ノ形デアリ
  マス、ケレドモ停戰協定ガ成立シナケレバ
  外ノ形デ終了ハナイカト言フニ、必シモ又
  サウデモナカラウト思ヒマス、サウ云フ意
  味デ事變終了ト云フコトハ、譬ヘテ申セバ
  停戰協定ノ成立ニ依ル兩國ノ關係ノ復舊ト
  云フヤウナ意味デアリマシテ、其時必ズ兩
  國ノ間ニ停戰協定ト云フモノガ成立スルノ
  カ、或ハ其外ノ形デ終了スルノカト云フヤ
  ウナコトハ、複雜ナ現象ニナッテ現レテ來
  ル先例ガ多イノデアリマスカラ、ソレヲ一
  〓ニハ申上ゲ兼マスト申シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/108

  ---

• 109・原惣兵衞

  ○原委員　司法省ノ政府委員ノ御方ハ御見
  エニナッテ居マセヌガ、書記官ノ方ガ御見
  エニナッテ居リマスカラ一寸御聽キシタイ
  ト思ヒマス、「運航業者、船舶所有者又ハ造
  船業者ハ支配人其ノ他ノ代理人又ハ船長其
  ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本
  法ニ基ク命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指
  揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルル
  コトヲ得ズ」所謂當該ノ責任者ハ免レルコ
  トハ出來ヌト云フコトヲ規定シテアルノデ
  スカラ是デ宜シイノデアリマスガ、此場合
  ニ於キマシテ少クトモ所有者ガ船長ニ命令
  ヲシタト云フ時ニ於キマシテ當該ノ船長モ
  罰シ、其船舶所有者モ罰スルコトニナルノ
  デアリマスカ、或ハ其人ダケヲ罰スルノデ
  アリマスカ、常ニ兩者ヲ竝行シテ罰スルノ
  デアリマスカ、其點ガハッキリシナイヤウ
  ニ思ヒマスカラ此際承ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/109

  ---

• 110・大竹武七郎

  ○大竹司法書記官　御答申上ゲマス、第二
  十條ニ「前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ
  處スルコトヲ得ズ」ト云フ規定ニナッテ居リ
  マス、隨テ現實ニ其業者ガ行爲ヲ自ラ爲シ
  タ場合ハ其人ノ責任デアリマスガ、サウデ
  ナクテ業者ニ行爲ガナイ場合ニ於キマシテ
  ハ業者ノミヲ罰スルケレドモ、併シ其場合
  ニハ體刑マデ科スルノハ苛酷ニ失スルカラ
  罰金刑ダケヲ科スル、斯ウ云フ趣旨デ立案
  サレテ居ルノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/110

  ---

• 111・原惣兵衞

  ○原委員　私ノ御聽キ申シタノハ、船舶所
  有者竝ニ船長モ兩方共一〓ニ罰スルノカ、
  ツダケ罰シタラ宜イノカ、斯ウ云フコトデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/111

  ---

• 112・大竹武七郎

  ○大竹司法書記官　御答申上ゲマス、兩者
  ガ意思ヲ通ジテ爲シタ場合ニハ兩者共罰シ
  マス、行爲者ガ業者ノ命ヲ受ケズシテ爲シ
  タ場合ニハ所謂轉嫁罰ガ働キマシテ罰金刑
  ダケヲ科スルコトニナリマス、サウ云フ趣
  旨デ立案致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/112

  ---

• 113・原惣兵衞

  ○原委員　最後ニ承リタイノハ、私之ヲ今
  朝見タバカリデ十分デアリマセヌガ、海上
  ニ於ケル一般交通運輸ノ調整ヲ目的トスル
  トアリマスルガ、海上ト申シマスルト、例
  ヘバ揚子江ノ如キ十里モ沖ニ出ルトドッチ
  ヲ見テモ海ノヤウデアリマスガ、アレハヤ
  ハリ河ナンデアリマスガ、斯ウ云フ時ニ於
  キマシテ船舶或ハ運航業者ト云フモノハ、
  斯ウ云フ地帶ニ何等ノ關係ハ持タナイモノ
  デアルカ、持ツモノデアルカト云フコトヲ
  一寸承ッテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/113

  ---

• 114・小野猛

  ○小野政府委員　其海上ト申シマスルノハ
  海ノコトデアリマシテ、遞信省ノ規則ニ依
  リマスト、海トハ何ゾヤト云フニ、大體沿海
  航路以上ノモノヲ海ト云フコトニナッテ居
  リマス、揚子江ノ如キハ平水航路ト云フコ
  トデ此海上ト云フコトニ入ラナイ考ヲ持ッ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/114

  ---

• 115・原惣兵衞

  ○原委員　揚子江ノ中ノ漢口カラ長沙、重
  慶マデ色々ナル船舶ガ通ウテ居ルノデアリ
  マス、サウスルト戰時中ニハ適用ガ起ルト
  云フコトハ一ツモナイノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/115

  ---

• 116・小野猛

  ○小野政府委員　現在ニ於キマシテハ揚子
  江ノ航權ハ事實上閉鎻サレテ居ルノデアリ
  マスルガ、此事變中ニ於キマシテ大體揚子江
  ノ運輸交通ヲ調整シヨウト云フ必要ハ先ヅ
  ナカラウト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/116

  ---

• 117・原惣兵衞

  ○原委員　有難ウゴザイマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/117

  ---

• 118・中井一夫

  ○中井委員　一寸此機會ニ關聯事項ニ付テ
  司法省ノ方ニ御尋シタイノデアリマスガ、
  只今原君カラ御尋ニナリマシタ第十八條デ
  アリマス、是ガ轉嫁罰デアルト云フコトハ
  明デアリマス、御說明ノ趣旨ハ諒承致シマ
  シタガ、第十九條ニ付キマシテハ未成年者
  又ハ禁治產者ナル時ハ其法定代理人ト云フ
  コトニナリマシテ違反行爲ヲシタモノガ未
  成年者又ハ禁治產者ナル時ハ法定代理人ガ善
  意デモ罰ヲ受ケナケレバナラヌト云フコト
  ガ決メラレテアリマス、或ル意味ニ於テハ
  是亦轉嫁罰ノ一ツデアリマス、私ノ御尋シ
  ヨウト云フノハ其十九條ノ其以外ノ場合、
  卽チ「本法又ハ本法ニ基ク命令ニ依リ運航
  業者、船舶所有者又ハ造船業者ニ適用スベ
  キ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取
  締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ」
  之ヲ適用ス、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデ
  アリマス、此規定ハ必シモ轉嫁罰ヲ決メタ
  モノデハナイト思フノデアリマスガ、ドウ
  云フ御見解デアリマスカ、御尋致シタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/118

  ---

• 119・大竹武七郎

  ○大竹司法書記官　第十九條ノ前段ハヤハ
  リ第十八條ヲ受ケマシテ轉嫁罰ノ場合デア
  ルト云フ風ニ考ヘテ居リマス、隨テ業者ガ
  雇人ノ行爲ニ付キマシテ第十八條デ責任ヲ
  免レナイ、サウシテ其場合ニ於テハ其罰ヲ
  理事、取締役、其他法人ノ業務ヲ執行スル
  役員ニ轉嫁シテ科スルノデアル、斯ウ云フ
  風ニ解釋致シテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/119

  ---

• 120・中井一夫

  ○中井委員　サウスルト法人ノ理事、取締
  役其他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ガ自ラ
  犯則ヲ致シタ場合ハ其者ニ對スル制裁ハド
  ウ云フコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/120

  ---

• 121・大竹武七郎

  ○大竹司法書記官　御答申上ゲマス、第十
  八條、十九條ハ轉嫁罰ノ場合ダケデアリマ
  シテ、業者自身ガ違反行爲ヲ爲シタ場合ニ
  ハ、行爲者トシテ處罰致ス積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/121

  ---

• 122・中井一夫

  ○中井委員　能ク分リマシタ、遞信大臣ニ
  御尋致シタイノデアリマスガ、先程同僚議
  員ノ數氏ノ方カラ第四條、五條、六條、·七
  條ト第十三條ノ船舶管理委員會ノ議ヲ經ナ
  ケレバナラヌト云フ問題ニ付テノ御質問ガ
  アリマシタ、此御質問ニ對シマシテ、大臣
  ハ第七條ノ場合ニ於テハ必ズ船舶管理委員
  會ノ議ヲ經ル、併ナガラ第四號、五條、六
  條ノ場合ニ於テハ、緊急已ムヲ得ザル場合
  ニ於テノミ其議ヲ經ナイノデアッテ、然ラザ
  ル餘裕ノアル場合ニ於テハヤハリ管理委員
  會ノ議ヲ經ル積リデアルト云フコトヲ仰セ
  ラレマシタ、ソレナラバ何故ニ其趣旨ノコ
  トヲ第十三條ニ御明定ニナラヌノデアリマ
  スカ、其點ヲ御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/122

  ---

• 123・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　中井君ノ御不審ハ御尤デ
  アリマスガ、御手許ニ配付シテアリマスル
  委員會ノ官制ノ要綱案ノ中ニモ書イテアリ
  マスルヤウニ主管省ニ於テ特ニ重要ト認メ
  タ事項ニ關シテハ、委員會ニ諮問ヲスル
  ト云フコトニナッテ居リマスノデ、第七條
  ハ先程申上ゲマシタヤウニ、委員會ノ議ヲ
  經テ政府ノ處置ヲ決スルノデアリマスケレ
  ドモ、第四條、五條、六條モ業者ニ對シテ
  重大ナル影響ヲ及ボスト認メ得ル場合ニ於
  テハ、サウシテソレガ緊急ヲ要スルコトノ
  ナイ場合ニ於テハ、出來ルダケ之ヲ委員會
  ニ諮問シテ、委員會ノ意見モ徵シテ、出來
  ルダケ現實ノ要求ニ卽シタヤウニ取計ヒタ
  イト思フト、斯ウ云フ意味ノコトヲ申上ゲ
  タ次第デアリマス、隨テサウ云フ意味ノコ
  トヲ此法文ニ書現ハス必要ハナイト思ヒマ
  スノデ、第七條ニ關スルコトダケヲ第十三
  條ニ明記致シタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/123

  ---

• 124・中井一夫

  ○中井委員　ソレナラバ御尋センケレバナ
  ラヌノデアリマスガ、例ヘバ此法案ニ出サ
  レテ居リマスル第七條ノ場合ト第五條、六
  條トノ場合トヲ並立サシテ見テ、ドチラガ當
  業者ノ爲ニ重大ナル影響アリト考ヘラレマ
  スカ、必シモソレハ當業者ダケトハ申シマ
  セヌ、國家ノ海運政策ノ消長ノ上カラ見テ
  モ、何レヲ重大ナリト御考ニナルノデアリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/124

  ---

• 125・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　政府ト致シマシテハ、業
  者ニ直接ノ影響ノアル重要ナ問題ニ付キマ
  シテハ、出來ルダケ其要求ヲモ尊重シテ處
  置シタイノデアリマスガ、玆ニアリマスル
  第五條、第六條ハ是ハ外國諸港間ノ運送ニ
  關スルコト、又航路ニ關スルコトデアリマシ
  テ、是ハ第一ニ國家的ナ見地カラ決定セラ
  ルベキ重要ナ問題デアリマス、併ナガラ同
  時ニ又ソレハ業者ニモ關係ノアルコトデア
  リマスルカラ、其事情ノ許ス限リハ、業者
  ノ利害關係ヲモ能ク問質シテ、サウシテ國
  家的ノ外國航路、外國運送ニ關スル方針ヲ
  決メタイ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、後ノ運賃傭船料ノ問題トハ大分
  性質ガ違ッテ居ルト思フノデアリマス、ソ
  レデ自ラソレヲ區別シテ取扱ッタ次第デゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/125

  ---

• 126・中井一夫

  ○中井委員　ソレナラバ一層吾々ハ不可解
  千萬デアルト思フノデアリマス、大臣ノ御
  話ノ通リデアリマシテ、第五條、六條ト云
  フモノハ、最モ重大ナル影響ヲ公私共ニ及
  ボスベキモノデアリ、一言ニシテ之ヲ言フ
  ナラバ、航路ノ根本問題ニ關係シテ居リマ
  ス、第七條ハ單ニ賃貸料トカ、或ハ船舶ノ
  賣買價格、サウ云フ末梢的ナ、率直ニ言ナ
  ラバ、ドチラニナッテモ大シテ構ハヌヤウ
  ナ爭ヒノ起リ得ルヤウナ問題ノミデアリマ
  ス、之ヲ客觀的ニ見マシテ、其何レガ重大
  ナリヤト云フコトハ洵ニ明白デアリマス、
  而シテ之ヲ十三條ニ見マスルト、末梢的ナ
  ル、殆ドドチラニナッテモ構ハナイヤウナ
  問題ダケハ船舶管理委員會ノ議ニ付スルガ、
  公私共ニ重大ナル影響ノアルベキモノハ船
  舶管理委員會ノ議ニ付セナイト云フコトヲ
  立前トシテ居ラレルト云フナラバ、此船舶
  管理委員會程愚ナル、値打ノナイ委員會ハナ
  イト思ヒマス、其點ニ付テノ御見解ハ如何
  デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/126

  ---

• 127・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　先程私ノ申上ゲマシタ言
  葉ニ不十分ナ點ガアッタカモ知レマセヌガ、
  前ニモ申上ゲマシタヤウニ、業者ニ利害ノ
  關係ノ密接ナ業者ニモ影響ヲ及ボス問題デ
  アッテモ、緊急ヲ要スル場合ニ於テハ之ヲ
  政府ニ於テ適當ニ處置シ、機宜ノ處置ヲ執ッ
  テ行キタイト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
  マスガ、機宜ノ處置ヲ必要トスル場合ニ於
  テハ、御相談ヲシ、御意見ヲ伺フト云フ機
  會ハナイノデアリマスカラ、斯ウ云フヤウ
  ナ問題ニ對シマシテハ、政府トシテハ時ニ
  ハ意見ヲ問ハナイデ決定ヲシテ行カナケレ
  バナラヌト思フノデス、事情ガ許シマシテ、
  時間ガ之ヲ許シマスレバ、固ヨリ業者ニ對
  シマシテモ十分意見ヲ徵シテ、サウシテ
  又國家的見地ニ立ッテノ要求ヲモ參酌シテ
  其方針ヲ決メテ行キタイト、斯ウ云フヤウ
  ニ致ス考デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/127

  ---

• 128・中井一夫

  ○中井委員　第五條、六條ニ付キマシテハ
  是ハ最モ國民ノ權利ニ重大ナル影響ヲ及ボ
  スモノデアリマス、先程モ申シタ通リ根本
  的ニ其航路ヲ禁止セラレルコトサヘアルノ
  デアリマスカラ、賃貸料ヤラ賣買價格ノ多
  少ナドノ問題トハ雲泥ノ相違ガアルノデア
  リマス、假ニモ國家ガ非常時ノ爲ニ特別ナ
  ル臨時的ナ此法律ヲ設ケテ、場合ニ依レバ
  國民ノ權利ヲ根本的ニ奪ヒ去ルト云フヤウ
  ナコトヲシナケレバナラヌト云フ程ノ法律デ
  アル、而モ大臣ハ其場合デモ尙ホ緊急已ム
  ヲ得ザル場合ノ外ハヤハリ船舶管理委員會
  ノ議ニ附ス積リダト言ハレル、ソレナラバ
  是ハ明ニ第十三條ニ第七條ト共ニ其旨ヲ明
  記セラレテ然ルベキモノダト云フコトヲ確
  信シテ疑ハヌノデアリマス、第十三條ニ其
  旨ヲ明記セラレル、但シ第五條、第六條等
  緊急已ムヲ得ザル場合ハ船舶管理委員會ノ
  議ニ附セザルコトヲ得ト云フヤウナ但書デ
  モ置カレテ居リマスルナラバ、洵ニ是ハ明
  白デアラウト思フノデアリマス、ソレヲ明
  ニセラレナイデ居テ、第七條ノヤウナドチ
  ラニナッテモ構ハヌヤウナコトダケ、ハ船舶
  管理委員會ノ議ニ附スルト書イテ置イテ、
  而モソレデ遞信當局ハ大ニ船舶業者ノ實情
  ニ卽シテ其意見ヲ尊重スルノダナドト云フ
  ヤウナコトヲ言ハレテ、而モ第五條、第六
  條ト云フヤウナ根本的ナ大問題ニ付テハ知
  ラヌ顏ヲシテ通サウト言ハレルコトハ、公
  明ナル政治家デアラセラレル永井遞信大臣
  ノ御處置トモ思ハレヌノデアリマス、旣
  其意思ヲハッキリト此處ニ御公言ニナル以
  上ハ、之ヲ政府ノ意思トシテ法律ノ上ニ明
  定セラレテ何ノ不可ガゴザリマセウカ、是
  ハ寧ロ遞信大臣、此際第十三條ニ私ガ申上
  ゲルヤウナ規定ヲ明ニシテモ宜シイト云フ
  ヤウナ御意見ヲ御發表ニナルノガ至當デハ
  ナイカト思フノデアリマス、此點重ネテ御
  伺ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/128

  ---

• 129・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　中井君ノ御不審ハ御尤ニ
  存ジマスガ、此第五條、第六條ニ含マレテ居
  ル事柄ハ、是ハ軍事上ニ於キマシテ必要ナ
  軍事上ノ要求ニ基クコトモアルノデアリマ
  ス、又貿易管理ノ問題トモ關聯ヲスル事柄デ
  モアルノデアリマス、是ハ國家ノ大局カラ
  考慮ヲシテ決定セラレナケレバ、而モ機宜
  ヲ失セズ決定セラレナケレバナラヌヤウナ
  場合ガ多イノデアリマス、ケレドモ尙且ツ
  出來得ルナラバ、業者ニモ關係ノアルコト
  デアリ、其他國民生活ニモ關係ノ深イコ
  トデアルカラ、出來ルナラバ之ヲ諮問ヲ
  シテ委員會ノ意見ヲモ徵スルヤウニシタ
  イ、出來ルダケ過ナキ方法ヲ執リタイト斯
  樣ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、此兩條ノ
  箇條ノ中ニ含マレテ居ル問題ハ、サウ云フ
  特殊ナ意味ヲ持ッテ居ルモノデアルト云フ
  コトヲ御諒解願ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/129

  ---

• 130・中井一夫

  ○中井委員　此法案自體ガ固ヨリ特殊ナル
  意義ガアレバコソ、御提案ニナッタコトハ
  吾々能ク承知ヲ致シテ居リマス、併ナガラ
  其問題ト此問題トハ別問題ナノデアリマ
  ス、旣ニ大臣先程來度々御聲明ニナリマシ
  タ通リ、此委員會ニ於テ之ヲ公言セラレタ
  以上ハ、法律ニナイカラトテ行ハヌ譯ニハ
  行カヌノデアリマス、ソレナラバハッキリ
  ト法律ノ上ニ現ハシテハ置カレテ業者ガ遞
  信當局ノ亂暴ナル-ト云フコトハ餘リ言
  ヒ過ギデアリマスガ、實情ニ卽セザルヤウナ
  取扱ノ爲ニ、折角伸ビテ參ッタ所ノ此我ガ
  海運ノ根本ヲ破壞セラレルヤウナコトガ
  アッテハナラヌト云フ心配ヲ、多少トモ緩
  和セラレルコトガ此際必要デハナイカ、斯
  ウ云フ風ニ私ハ考ヘルノデアリマス、隨テ
  此際私ハ第十三條ヲ修正シテ、第五條、第
  六條或ハ四條等モ之ニニ入レテ、只今申上
  ゲタ特別ノ場合ニ於テハ其議ニ附セザル
  コトガ出來ルヤウニセラレルコトニ付テ、
  御異議ハナイカト云フ御尋ヲ致シタイノデ
  アリマスケレドモ、其御尋ハ敢テ致シマセ
  又、此程度ニ於テ私ノ質問ハ一應中止致シ
  マシテ、改メテ機會ヲ得テ更ニ大臣ノ御意
  見ヲ御伺シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/130

  ---

• 131・青木作雄

  ○靑木委員　一寸只今ノニ關聯致シテ居リ
  マスガ、第十九條ハ只今ノ說明ニ依リマス
  ト十八條ヲ受ケテ轉嫁罰ヲ決メタモノデア
  ル、斯ウ云フヤウニ御說明ニナリマシタ
  ガ、十九條ノ文言ヲ其儘ニ解釋シテ行キ
  マスト、「本法又ハ本法ニ基ク命令ニ依リ
  運航業者、船舶所有者又ハ造船業者ニ適用
  スベキ罰則」ト云フコトハ、結局第十四
  條第十五條、第十六條、第十七條、第十
  八條マデノ中デ同ジ罪ヲ法人ガ犯シタル場
  合ニ於テト云フ解釋ガ當ッテ居ルノデハナ
  イカ、其次ノ「未成年者又ハ禁治產者」ト云
  フノハ、同ジク未成年者又ハ禁治產者ガ十
  四條乃至十八條マデノ罪ヲ犯シタル場合ニ
  於テ、詰リ役員若クハ法定代理人ガ罰ヲ受
  ケル、斯ウ云フコトニ解釋スルノガ當ッテ
  居ルノデハナイカ、若シ他ニ轉嫁罰ト云フ
  ヤウナ場合ニ於テハ、法人ガ自己ノ指揮ニ
  出デザル場合ノ法人ノ罰ヲ指スヤウニ解釋
  サレマスガ、法人自身ガ自ラ指揮シテ、言
  ヒ換レバ法人ノ役員ガ自ラ指揮シタ場合ニ
  於テハ、當然第十四條ニ引掛ル譯ヂヤナイ
  カ、第十四條ニ引掛ルガ併ナガラ本法ニ基
  ク罰則ニ依ル是等ノ者ノ罰則ト云フコトニ
  ナリマスト、法人ダケハ自ラ指揮シタル場
  合ト雖モ、前二條ノ場合ハ懲役ノ刑ニ處ス
  ルコトヲ得ナイト云フ第二十條ノ趣旨ニ
  依り、法人ダケハ第十四條乃至條十八條
  マデノ罰則ニ引掛ルコトガアッテモ、絕對
  ニ役員ナル者ハ懲役ノ刑ニ處スルモノデハ
  ナイト云フヤウニ、此條文カラ言ヘバ解釋
  サレル、只今アナタガ御答辯ニナリマシタ
  ヤウニ、自ラ指揮シタル場合ニハ十四條ニ
  引掛リ、或ハ十五條ニ引掛リスルモノデア
  ル、斯ウ云フコトハ此法文ノ解釋ト違ヒハシ
  マセヌカ、今ノ御說明ト私ノ解釋トハ非常
  ナ差ガアルヤウデスガ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/131

  ---

• 132・濱野徹太郎

  ○濱野委員　議事進行ニ付テ申上ゲタイト
  思ヒマス、此處罰問題ハ法律上重大ナ問題
  デスカラ、司法省ノ民事局長モ刑事局長モ
  司法次官モ、ソレカラ法制局ノ政府委員モ
  是非出席願ヒタイト思ヒマスカラ、便宜御
  取計ヒ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/132

  ---

• 133・青木作雄

  ○靑木委員　ソレデハ私ハ其方々ガ御出席
  ニナルマデ保留シテ置キマセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/133

  ---

• 134・牧山耕藏

  ○牧山委員長　ソレデハ直チニ要求致シマ
  ス、司法省關係ノ政府委員ノ御出席マデソ
  レヲ保留致シマシテ次ニ長谷君ニ御發言ヲ
  許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/134

  ---

• 135・長谷長次

  ○長谷委員　本法ヲ拜見致シマスルト、全
  般的ニ見マシテ實ハ此統制命令系統ノ條文
  ト之ニ對スル所ノ課罰條項ガ全部ヲ占メテ
  居ルヤウニ拜見致シマス、ソコデ私ハ其點ニ
  關聯致シマシテ、實ハ先程遞信大臣ガ申サレ
  マシタコトニ對シテ、此法案ニ對スル政府ノ
  御所見ガ以下申上ゲルヤウナモノデアルカ
  ドウカト云フ點ニ付テ少シク簡單ナ御答辯
  ヲ求メタイト思ヒマス、ソレハ本法ハ國家
  統制法ノ體系ニ屬スル所ノ法律デアルカド
  ウカト云フ點、第二點ハ、實ハ當業者ノ自
  主統制ト云フ風ナ問題ヲ縷々述ベテ居ラレマ
  スルガ、其反面カラ直チニ吾々ノ頭ニ思ヒ
  浮ブモノハ卽チ國民大衆ノ利害關係ト云フ
  問題デアリマス、ソレデ其問題ニ付キマシ
  テハ當業者ニ對シテ、或ハ委員會ノ各委員
  ニ對シテ十二分ノ御理解ヲ願ヒツヽ圓滿ナ
  ル所ノ行動ヲ執ッテ行カレルモノデアルカ
  ノヤウニ推察シマスガ、其點ハドウ御考ニ
  ナリマスカ、遞信大臣ノ御意見ヲ一寸承リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/135

  ---

• 136・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　御答申上ゲマス、本法ハ
  其本質ニ於テハ國家統制法ニ屬スルモノデ
  アルト思ヒマス、併シ先程申上ゲマシタヤ
  ウニ、出來得ルダケ業者ノ自治自制ヲ尊重
  シテ此法ヲ適用シタイト考ヘテ居ルノデア
  リマス、例ヘテ申上ゲマスレバ、造船業者
  ハ此船舶不足ノ時デアリマスカラ、遊覽船
  デアルトカ外國ノ註文ノ船舶ト云フヤウナ
  モノハ後廻シニシテ、貨物船ヲ先ニ建造ス
  ルト云フヤウナコトヲ、業者ノ間ニ於ケル
  自制ニ依ッテ實現スルト云フコトデアレバ
  特ニ命令ヲ以テ之ヲ强制スル必要モ出テ來
  ナイコトダト思ヒマス、又積荷ノ配給ノ
  如キモノモ最近組織セラルヽヤウニモ承ッテ
  居リマスガ、荷主ノ組合ト船主ノ組合トノ間
  ニ於テ能ク其需給ノ關係ガ調節サレテ行ク
  ヤウナコトガアレバ、成ルベクハ其話合ヲモ
  尊重シテ行クヤウニシタイト思ヒマス、ケ
  レドモ此海運業ハ業者ダケノ海運業デハナ
  ク、國家國民ノ爲ノ海運業デアリマスカラ、
  業者ノ利益トスル所ト必ズシモ國民大衆
  ノ利益トスル所ト一致シナイ點モアリマ
  ス、只今長谷君御述べニナリマシタ通リデ
  アリマス、サウ云フ場合ニ於キマシテハ、
  國家存立ノ大目的ノ爲ニ、國民生活ノ大局
  ノ爲ニ國家ガ此法律ニ基イテ必要ナル命令
  ヲ下シ、統制ヲスルト云フコトハ當然ノコ
  トデアルト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/136

  ---

• 137・長谷長次

  ○長谷委員　ソレニ附帶致シマシテ希望ヲ
  一寸申述ベマス、ソレハ政府ハ必要ガアッタ
  ナラバ敢然トシテ一切ノ邪念ヲ廢シテ大乘
  的、ニ本法ノ發動ヲ御願致シタイト考ヘマ
  ス、ソレデ第二ノ問題ト致シマシテハ實ハ
  大正六年ノ勅令第百七十一號ノ第七條ノ記
  載ニ依ッテ見マシテモ補償關係ノ規定ガ
  アッタノデアリマス、本法ニ於テ拜見致シ
  マスト實ハ補償關係ノ規定ガナイノデアリ
  マスルガ、此點管船局長ドウ御考ヘニナリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/137

  ---

• 138・小野猛

  ○小野政府委員　此補償ノ問題デアリマス
  ガ、戰時立法ト致シマシテ急ヲ要シ、又國
  家ノ目的、軍ノ目的ノ爲ニ或ル行政權ヲ用ヒ
  ル場合ニ相當損害ガ及ブト云フコトハ感ゼ
  ラレルノデアリマスルガ、此非常ノ際デア
  リマスノデ、此程度ノコトハ補償ナクシテ
  國ノ行政運行ニ順應シタラドウダト云フコ
  トデ玆ニハ補償ノ規定ヲ設ケテ居ラナイノ
  デアリマス、或ハ是レ以上ハ事態ガ進ミマ
  シテ、工場ヲ收用スルトカ、船舶ヲ收用ス
  ルトカ、斯ウ云フ場合ニハ補償ヲ爲スベキ
  デアリマスルガ、玆ニ揭ゲテ居リマスル程
  度ノコトナラバ補償ナクシテ非常立法トシ
  テ行ハルベキモノデアル、斯樣ナ解釋ノ下
  ニ補償ノ規定ガナイノデアリマス、是ハ歐
  羅巴大戰中ノ戰時船舶管理令ニ於キマシテ
  モ同樣補償ナクシテ實行サレタ前例モアル
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/138

  ---

• 139・長谷長次

  ○長谷委員　サウスルト實質上ノ補償ヲ要
  スル場合ガ出來マシタ時、之ニ對シテ政府
  ノ方デハ全然放任セラレルモノカ、或ハ何
  等カノ處置ニ於テ之ヲ補償セラレル所ノ次
  善策ヲ講ゼラレル意思ガアルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/139

  ---

• 140・小野猛

  ○小野政府委員　要スルニ是ハ政府ノ運用
  ノ如何ニアルト思フノデアリマス、私共ト
  致シマシテハ非常ナ損害ヲ及ボスト云フヤ
  ウナ程度ノ運用ヲ決シテセヌ積リデアリマ
  ス、例ヘバ第九條ニ「政府ハ運航業者又ハ船
  舶所有者ニ對シ船舶ノ施設······ニ關シ必要
  ナル命令ヲ爲スコトヲ得」ト云フコトガアリ
  マスルガ、是ハ響キ方ニ依ッテハ非常ニ强
  ク響クノデアリマスルガ、私共ノ方デハ此
  施設ト言フノハ例ヘバ、危險區域ニ參リマス
  時ニ船ニ「カムフラージュ」ヲサセル、或ハ
  防彈ノ裝置ヲサセル、點滅燈ヲ附ケサセル
  ト云フ程度ノコトヲ豫想シテ居ルノデアリ
  マシテ、之ニ依ッテ非常ナル負擔ヲ受ケルト
  云フ意味ハ毛頭ナイノデアリマス、併シサ
  シニラ「カムフラージュ」ヲサセルト云フコ
  トニ依ッテモ損害ハアル、斯ウ云フ議論ニ
  ナリマスレバソレハ御尤デハアリマスル
  ガ、其程度ノコトナラバ此非常ノ際ニ敢テ
  忍ビ得ルノデハナカラウカト云フ態度デ居
  ルノデアリマス、一ニ運用ニ係ル問題ト思
  ヒマスカラ、私共ハ今御質問ノヤウナ非常
  ニ補償ヲ要スルト云フ程度ニナラナイヤウ
  ニ致シタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/140

  ---

• 141・長谷長次

  ○長谷委員　御趣旨洵ニ國家非常時ノ時局
  ニ於テ同感ニ存ジマス、唯是カラ逐條的ニ
  一ツ申上ゲタイ、其中ニ一二點此補償ヲ可
  及的ニ要スベキモノガアリマスルカラシ
  テ、其時ニ改メテモウ一ツ御尋致シタイト
  考ヘマス、實ハ私ハ船主デモナケレバ又船
  員組合ニモ關係致シテ居リマセヌガ爲ニ、
  私達ノ用フル所ノ言葉ガ或ハ適切デナイカ
  トモ存ジマスルガ、ソコハ一ツ遞信省關係
  ニ於テハ特ニ言葉ノ足リナイ所ハ補足シテ
  御答辯ヲ極メテ簡單ニ時間ガアリマセヌノ
  デ、御願致シタイト考ヘマス、實ハ第二條
  ノ中ニアルノデスガ、此運航業者ト云フ
  モノガ帝國臣民ト帝國ノ法人カラ成ッテ居
  リマスルガ、此帝國臣民ノ中ニ、例ヘバ先
  程出マシタ變態船舶、所謂日本人ガ實質上
  船ノ持主デアッテ旗ガ支那ノ旗デアルト云
  フ風ノモノヲ含ムカドウカト云フ點デアリ
  やっ、、此點ヲ一寸御尋致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/141

  ---

• 142・小野猛

  ○小野政府委員　是ハ帝國臣民ガ動カシテ
  居ル船ナラバ、假令支那ノ船デモ英吉利ノ
  船デモ、帝國臣民ニシテ運送事業ト云フコ
  トヲヤッテ居ル以上ハ、其船ノ船籍ヲ問ハ
  ナイ積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/142

  ---

• 143・長谷長次

  ○長谷委員　サウスルト今囘特ニ變態船舶
  中遞信省ノ許可特許ニナッタモノデ沿岸ニ
  就航シテ居ルモノガアルカニ聞イテ居リマ
  スガ、其點ニ付キマシテ第五條ノ中ニ實ハ
  外國諸港間ノ運送ヲ禁止スル、又ハ制限ノ
  規定ガアルヤウデアリマスガ、實ハ是ト二
  ツ關聯シテ今申上ゲタイノデアリマス、是マ
  デ斯ウ云フ船ハ主ニ古イ船デアッタカト吾
  吾ハ想像シテ居ルノデスガ、其船ガ實質ニ
  於テハ外國ノ港ト港トノ間ニ於テ貿易ヲ致
  シテ居リマシテ、日本ノ非常ナ收入ヲ見テ
  居ッタ所ノ船デアリマスルガ、是ガ今囘特
  許ニナリマシテ、我ガ日本ノ沿岸ニ就航致
  スヤウナ狀況ニナリマシテカラ、實ハ此處
  デ明言シテ間違ッテ居ルカモ知レマセヌ
  ガ、ソレハ實ハ優秀船ノ船主同盟ト云フ風
  ナモノガアルヤウニ聞イテ居リマシテ、其
  爲ニ此沿岸へ就航ヲ許サレタ所ノ船ガ綿布
  トカ、綿絲トカ、或ハ人絹關係ノ日本ノ雜
  貨方面ノ物ヲ積出スコトガ出來ナイヤウナ
  立場ニ置カレテ居ルガ爲ニ、是マデノ權益
  ハ捨テヽシマッタ、沿岸ノ就航ハ許可サレ
  タニ拘ラズ、尙且ツ日本ノ政府ノ實質上ノ
  保護ヲ受ケテ居ラヌト云フ風ナ立場ニナッ
  テ居ルガ、此點ニ對シテ一寸御意見ヲ承リ
  タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/143

  ---

• 144・小野猛

  ○小野政府委員　此支那ノ變態船デ沿岸貿
  易ヲ特許シテ居ルノガ相當アルノデアリマ
  スルガ、是ハ最前大臣カラモ御話ガアリマ
  シタガ、支那ノ船員ガ相當乘ッテ、國籍ガ支
  那デアルト云フヤウナコトデ、支那ノ政府
  カラ沒收サレハシナイカト云フヤウナ懸念
  モアリマスルコトヲ理由ノ一ツト致シマシ
  テ、內地沿岸ニ來サセルコトニ致シタノデ
  アリマスルカラ、此爲ニ綿絲、綿布其他ノ
  雜貨ノ輸送ガ非常ニ停頓シテ居ル事實アリ
  ヤト云フコトデアリマスガ、私ノ知ッテ居
  ル所ニ依リマスルト、是等ノ船ハ大體今ノ
  綿絲布等ヲ運ブニハ適セナイヤウナ船デア
  リマス、大〓比律賓カラ木材ヲ積ミマシタ
  リ、山東ノ鹽ヲ積ンデ居ッタ船デアリマ
  ス、今ノ御話ハ或ハ印度方面ニ出テ居リマ
  スガ、變態輸入船ニアラズシテ、日本固有
  ノ立派ナ船デアリマスガ、御用船ニ取ラ
  レマシテ其結果相當外國貿易ニ支障ヲ來
  シテ居ルト云フコトデ、荷主ノ方カラ或ル
  程度ノ苦情ガ出テ居ルノデアリマス、或ハ
  サウ云フコトハ私共ノ方デ考ヘ得ルノデア
  リマスガ、此變態船舶ニ付キマシテハサウ
  云フコトハナカラウ、斯樣ニ見テ居ルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/144

  ---

• 145・長谷長次

  ○長谷委員　實ハソレハ質問ガ丁度。逆ニ
  ナッテ居リマスガ、出來ルコトナラバ此沿
  岸ニ就航セシメマシタ船ノ中デモ、相當日
  本ノ雜貨方面ヲ輸出シ得ル所ノ物ヲ或ル程
  度マデ御認ヲ願ッテ、ソレデ是等ノ權益ヲ
  增加セシメルヤウニヤッテ行ケヌカト云フ
  點ニ付テ御質問ヲ致シマシタ譯デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/145

  ---

• 146・小野猛

  ○小野政府委員　御趣旨非常ニ御尤デアリ
  マイ、將來此日本ノ航權ヲ維持スル爲ニ或
  ハ必要ニ應ジテハ第六條ノ規定デ、航路又
  ハ物ヲ規定シテ日本ノ航權ヲ維持スル爲ニ
  此法律ヲ發動スル、斯ウ云フヤウナコトモ
  考ヘ得ルノデアリマスルガ、御趣意ニ從ヒ
  マシテ運用ヲ致シタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/146

  ---

• 147・長谷長次

  ○長谷委員　洵ニ御氣毒デスガ、一寸大臣
  ニ御尋致シタイノデス、先程申サレマシタ
  變態船舶ノ件ニ關スル所ノ大臣ノ御說明ニ
  所謂今ノ第五條ノ解釋「諸港間ノ運送ヲ爲
  スコトヲ禁止」云々此船舶ノ中ニ今言ウ
  タ變態船舶モ入ルカドウカト云フ點ヲ入ル
  ヤウニ解釋シテ宜シイノデスカ、御意見ヲ
  一寸承リタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/147

  ---

• 148・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　長谷君ノ御意見ノ通リデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/148

  ---

• 149・長谷長次

  ○長谷委員　ソコデ是等ノ就航致シテ居リ
  マスル所ノ、外國諸港間ノ變態船舶ガ齎ラス
  所ノ利益ト云フモノガ極メテ多イノデアリ
  マスカラ、先程多クノ質問者ガ御質問ニナッ
  タリ、御意見ヲ吐カレテ居リマス通リニ、
  ドウカ是等ノ船ニ對シテモ、將來共吾々ノ
  得タ所ノ大切ナ權益ニ對シテハ、出來ルダ
  ケ有效適切ニ保護ノ處置ヲ戴キタイ、是ハ
  希望條件トシテ一寸申述ベテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/149

  ---

• 150・牧山耕藏

  ○牧山委員長　長谷君ニ一寸御相談致シマ
  スガ、先刻靑木君カラ留保サレマシタ司法
  省關係ノ政府委員ガ御揃ヒデスガ、大分マ
  ダ他ガ忙シイヤウデスカラ、間デ一寸··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/150

  ---

• 151・長谷長次

  ○長谷委員　ソレデハ其點ヲ先ニ私ガ質問
  致シマシテ、關聯シテ戴キマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/151

  ---

• 152・牧山耕藏

  ○牧山委員長　靑木君ガ保留サレテ居リマ
  スカラ、先ヅ本體ヲ靑木君カラヤッテ戴イ
  テ、ソレデマダ御疑念ガアリマスレバ關聯
  シテ御發言ヲ願ヒマス、今出席サレテ居リ
  マスノハ、樋貝法制局參事官、司法政務次
  官、司法省民事局長、刑事局長、皆御揃ヒ
  デアリマス-靑木君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/152

  ---

• 153・青木作雄

  ○靑木委員　只今迄ノ御答辯ニ依リマス
  ト、第十九條ハ第十八條ト相竝ンデ、轉嫁
  罰ヲ定メタモノデアル、斯ウ云フノガ御答
  辯ノ骨子デアッタト思ヒマス、所ガ第十九條
  ノ法文ヲ其儘ニ解釋シテ行キマスト、「本法
  又ハ本法ニ基ク命令ニ依リ運航業者、船舶
  所有者又ハ造船業者ニ適用スベキ罰則」ト
  云フ其罰則ハ、私ノ解釋ヲ以テスレバ、第
  十四條乃至第十八條迄ノ罰則ヲ指スノデア
  ル、隨テ法人ガ若シ自ラ船舶ヲ讓渡シ、貸
  渡シシタ場合デモ、或ハ十五條ノ如キ、之
  ヲ許可ヲ得ズシテ受ケタル場合、其他ノヤ
  ウナ場合ヲ犯シテモ、其場合ニ於ケル罪ハ、
  此第十九條ニ依ッテ定メラレル役員ニ罪ガ
  落チ、其罪ガ若シ十四條ニ該當スル罪デ
  アッタ場合ニハ、二年以下ノ懲役又ハ三千圓
  以下ノ罰金ニ處スト云フコトニナルノデア
  ルガ、第二十條ニ於テ「前二條ノ場合ニ於
  テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ」トアリ
  マスカラ、法人ニ關スル限リハ十四條乃至
  十八條迄ノ罰則ヲ犯シタ場合ト雖モ、此第
  二十條ニ依ッテ懲役ノ刑ニ屬スル所ノ部分
  ダケハ遁レ得ル、斯ウ云フコトガ此法文ニ
  於テ私ハ解釋サレルト思ッタノデアリマス
  ガ、今迄ノ御答辯デハ若シ直接其法人自ラ
  指揮シテ、或ハ專務取締役ガ指揮シテ船舶
  ヲ讓渡シ、或ハ擔保ニ供シタル場合ニ於テ
  ハ懲役刑ニ處セラレルノデアル、唯十八條
  ノ如キ支配人ガヤッタ場合ニ於テハ、此懲
  役ニ處セラレヌト云フヤウナ解釋ヲセラレ
  タヤウニ承ッタノデアリマスガ、私ハ此條
  文ヲ率直ニ解釋シタノデハ、サウシタヤウ
  ナ解釋ハ生レテ出ナイヤウニ思フノデアリ
  マス、若シ私ノ解釋ノ如ク解釋」スルナラ
  バ、今日ノ船舶業者ト云フモノハ多ク法人
  デアリマスガ故ニ、其指揮シタル者ハ、共
  意圖ニ出デタル所ノ是等ノ犯則ハ、其常務
  取締役、或ハ社長トカ云フヤウナ者ガ指揮
  シタル場合ニ於テハ、懲役刑ニ處セラレヌ
  ト云フ結果ニ陷ル、サウシテソレニ基イテ
  動イタ所ノ支配人ハ懲役ニ處セラレルガ、
  ソレヲ命令シタ所ノ社長、或ハ常務取締役、
  專務取締役トカ云フ者ハ、懲役刑ニ處セラ
  レヌト云フ風ニ解釋サレルト私ハ思フノデ
  アリマスガ、私ノ解釋ガ誤ッテ居ルノデア
  リマセウカ、一寸伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/153

  ---

• 154・松阪廣政

  ○松阪政府委員　第十九條ノ法律ノ趣旨
  ハ、犯罰ノ命令ヲ受ケタ者ガ法人デアリ其
  法人ガ法律上犯罪ノ主體デアル場合ニ、其
  モノノ機關デアル者ガ罪ヲ犯シタ場合ニ
  ハ、ヤハリ其責任ハ法人ニ歸スルノデア
  ルガ、併ナガラ十九條ノ轉嫁罰ノ規定ニ依ッ
  テハ、其場合ニハ法人ノ機關デアル理事、取
  締役或ハ法人ノ業務ヲ執行スル役員ヲ處罰
  スルト云フ趣旨デアリマス、其場合ニハ第
  二十條ノ適用上、懲役ノ刑ニ處スルコトヲ
  得ナイモノト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/154

  ---

• 155・青木作雄

  ○靑木委員　サウシマスト前ノ政府委員ノ
  御答辯ニナリマシタコトトハ、全然違フヤウ
  ニ思ヒマスルガ、サウデゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/155

  ---

• 156・松阪廣政

  ○松阪政府委員　其點說明員ノ說明ト相違
  スル點ガアリマスナラバ、私ノ說明ヲ以テ
  司法省ノ意見ト御承知ヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/156

  ---

• 157・青木作雄

  ○靑木委員　サウシマスト私ハ御伺シタイ
  ト思ヒマスガ、何ガ故ニ法人ノ場合ニ於テ
  指揮シタル者ガ此懲役刑ヲ免レ、個人商店
  ニ於テ自ラ店主ガ指揮シタル場合ニ於テハ
  懲役刑ニナル、斯ウ云フヤウナ區別ガ起ル
  ノデアリマセウカ、卽チ懲役ニ處サレル
  カ、罰金ニ處サレルカト云フコトノ其犯罪
  行爲ノ內容ヲ具サニ調ベラレテ、法人ト雖
  モ懲役ニ價シナイ行爲ヲ爲シタル役員ニ於
  テハ、罰金ヲ以テスルモ可デアルガ、併ナ
  ガラ一〓ニ同ジ犯罪ヲ犯シテモ、其指示シタ
  ル所ノ法人ノ役員ハ、僅ニ二千圓以內、或
  ハ三千圓以內ヲ以テ、而モ數十万圓、數
  百万圓ノ財物ヲ賣買シ、其利得ハ數万圓
  ニ及ブ、或ハ多イ場合ニハ數十万圓ニ上ラ
  ウカト云フ利得ヲ目的トシタル所ノ行爲ニ
  對シテ、二千圓乃至三千圓ノ罰金ヲ以テ完
  全ニ遁レ得ル所ノ法ノ精神ハ何處ニアリマ
  セウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/157

  ---

• 158・松阪廣政

  ○松阪政府委員　個人ガ犯罪ノ主體デアル
  場合ニハ、自己ノ營業ニ關シテ自己ノ利益ノ
  爲ニ行フモノデアリマス、併ナガラ法人ニ
  於キマシテハ、假令役員デアルニシロ、機
  關デアルニシロ、自己ノ爲ニヤルニ非ズシ
  テ、謂ハバ主人ノ爲、法人ノ爲ニヤルノデ
  アッテ、自己自ラ自己ノ利益ノ爲ニヤルノ
  ト區別シテ差支ナイト考ヘテ居ルノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/158

  ---

• 159・青木作雄

  ○靑木委員　私ハ本法ノ制定ハ、國家非常
  時ノ國家ノ重大ナル目的ヲ達成スル爲ニ、
  已ムナク斯ル罰則ヲ設ケタ、非常立法ヲ設
  ケラレタルモノデハナイカト思フノデアリ
  マス、斯ル非常ナ場合ニ於テ、此國家ノ政
  策ヲ阻ミ、自ラノ營利ヲ圖ラントスル所ノ
  如キモノガ動イタ場合ニ、只今ノ如キ解釋
  ヲ以テ、是等ノ殆ド大多數ノ犯スベキ可能
  性ノアル所ノ業者ガ、卽チ殆ド此法文ニ依ッ
  テ處罰サレサウナ犯罪ヲ犯スモノハ、皆法
  人ナリト私ハ解釋シテ憚ラナイノデアリマ
  ス、其大多數ニ對シテ今ノヤウナ御解釋デ
  アルトスルナラバ、此罰則ノ點ニ於テ、國
  家ノ非常時ト此法ノ目的トガ、頗ル一致シ
  ナイヤウニ考ヘラレマスガ、尙且ツ其點ニ
  付テ只今ノヤウナ御考ヲ維持シテ居ラレマ
  スカ、之ニ付テハ永井遞信大臣ノ御答辯ヲ
  促シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/159

  ---

• 160・田島勝太郎

  ○田島政府委員　此罰則ニ關スル規定ハ、
  今ノ御意見モ御アリデアリマスガ、何モ是
  ハ非常立法デアルカラト云ッテ、此處ニ是
  ガ入ッタノデハナイノデアリマシテ、斯ノ如
  キ法人ノ犯罪ニ關スル處罰ノ規定ハ、各種
  ノ法律ニ皆殆ド例文的ニ入ッテ居ルノデア
  リマス、ソレデ遞信省トシテ此點ニ關シテ
  遞信省ノ意見ヲ申上ゲルヨリモ、刑罰當局
  トジテノ司法省ノ御意見ヲ御聽キ下サルコ
  トガ當然ノコトト考ヘマス、ドウカ司法省
  ノ解釋ヲ御聽キ下サルヤウニ御願致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/160

  ---

• 161・牧山耕藏

  ○牧山委員長　之ニ關聯シテ何カ御質問ガ
  アリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/161

  ---

• 162・長谷長次

  ○長谷委員　先程ノ續キデスガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/162

  ---

• 163・中井一夫

  ○中井委員　今ノ點ニ關聯シテ私ガアルノ
  デスガ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/163

  ---

• 164・牧山耕藏

  ○牧山委員長　長谷君ノハ今ノ點ニ付テハ
  御觸レニナラヌノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/164

  ---

• 165・長谷長次

  ○長谷委員　先程ノ續キデスシ、又關聯ス
  ルコトガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/165

  ---

• 166・牧山耕藏

  ○牧山委員長　此問題ニ關聯シタ質問ヲ先
  ニ進メタイト思ヒマスカラ-中井一夫君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/166

  ---

• 167・中井一夫

  ○中井委員　只今靑木君ノ御質問ノ通リノ
  疑ヲ持チマシタカラ、先程司法省ノ大竹書
  記官ノ御出デニナッタ時ニ私カラモ御尋シ
  テ置イタノデアリマス、然ルニ大竹書記官
  ノ御意見ト云フモノハ全然松阪政府委員ノ
  意見トハ違フノデアリマス、法人ガ此違反
  ヲヤッタ場合ニ於テハ其法人ノ代表者ヲ罰
  スルノダ、其罰ハ個人ノ罰ト同ジコトデアッ
  5、罰金若クハ懲役刑ニ處スルノダト云フ
  趣旨ノ御說明ガアリマシテ、一應私共ハ質
  問ヲ中止シタノデアリマス、只今松阪政府
  委員ノ御說明ヲ伺ッテ初メテ私共ノ疑ガヤ
  ハリ疑デアッタト云フコトヲ發見致シマシ
  タ、此問題ハ非常時立法デアルカラ法人ノ
  代表者ヲモ嚴罰ニ處セナケレバナラヌト云
  フ問題以外ニ、刑罰ノ公平ト云フ觀念ノ上
  カラ見ナケレバナラヌ重要ナ點ガアルト思
  ヒマス、結局議論ハ遠慮シマスガ、今日海
  運界ノ實情ヲ見マスト云フト、個人デ海運
  業ヲヤッテ居ルモノハ極ク少イ、船主其他
  ノモノハモウ殆ド全部法人デアリマス、固
  ヨリ大キナ海運業者ト云フモノハ全部法
  人ナノデアリマス、隨テ若シ只今政府委員
  ノヤウナ御說明ニ依ッテ此罰則ヲ解釋スルト
  スルナラバ、大キク惡イコトヲスル者ハ全
  部罰金デ濟ムト云フコトニナル、小サク惡
  イコトヲスル個人ハ全部或ハ懲役ニ處セラ
  レルノ危險ヲ持ツト云フコトニナルノデア
  リマス、隨テ若シ刑法ノ公平ノ觀念カラ言
  フナラバ、吾々ハ寧ロ大キク惡イコトヲス
  ル法人ノ代表者ヲウント重ク罰スベク、小
  サク惡イコトヲスル個人ノ犯罪ニ對シテハ
  之ヲ輕ク罰スルガ宜イト思フノデアリマス
  ガ、假ニ是ガ立法技術ノ上ニ於テ出來ナイ
  コトデアルト云フナラバ、此個人ニ對スル
  犯罪ノ罰則ニ付テ決メラレタ懲役刑ヲ廢メ
  ルガ宜シイ、サウシテ全部罰金刑ニシテ置
  ケバ法人ニ對スル此罰則ト均衡ガ取レルノ
  デアリマス、若シソレデハ此法案ノ目的ガ達
  セラレヌトスルナラバ、法人ノ代表者若クハ
  法人ノ代表者ノ立場ニアルヤウナ者、通俗
  的ニ言フナラバ其責任者、之ニ對シテハ個
  人ト同樣ニ懲役刑ヲモ科スコトガ出來ルト
  云フコトヲ定メテ置カナケレバ、是ハドウ
  シテモ承服ノ出來ナイ規定デアルト思フノ
  デアリマス、只今私ガ申上ゲマスルコトヲ
  御尤トハ御思ヒニナリマセヌカドウカ、承
  リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/167

  ---

• 168・松阪廣政

  ○松阪政府委員　只今ノ御質問ハ一應御尤
  トハ存ジマスルガ、先程モ申上ゲマスル如ク
  個人ノ犯罪ノ場合ニハ個人ガ犯罪行爲ノ主
  體デアリ、又刑罰ノ主體デアルノデアリマ
  ス、所ガ法人ノ處罰ノ場合ニハ法人ガ犯罪
  ノ主體デアリ刑罰ノ主體デアルベキデアリマ
  スガ、其場合ニ法人ヲ處罰セズシテ其罰ヲ
  役員ニ轉嫁シヨウト云フノデアリマスカ
  ラ、役員ノ行爲ハ犯罪行爲デアルヤウニハ
  見エマスルガ、事實ハ法人ノ犯罪ナンデア
  リマス、其法人ノ犯罪ノ行爲ニ付テ其役員
  ヲ處罰スルノデアリマスカラ、其役員ニ對
  シテ體刑ヲ科スト云フコトハ情ニ於テ殘酷
  デアルト云フ所カラ區別ガ自ラ付クト存ズ
  ルノデアリマス、强イテ其點ガ不都合デア
  ルト云フコトニナルナラバ二重ニ處罰致シ
  マシテ、事實行爲者ヲ罰シ、且又其者ガ法
  人デアル場合ニハ法人ニ付テモ更ニ罰金刑
  ヲ科スルト云フ規定モヤレバヤレナイコト
  ハアリマセヌガ、此點ニ付テハ其必要ハナ
  カラウト云フ考デ自ラ個人ノ場合ト法人ノ
  場合トニ付テハ區別ガアリ得ルト考ヘマシ
  テ、私ハ斯樣ニ解釋致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/168

  ---

• 169・中井一夫

  ○中井委員　私ハ只今ノ政府委員ノ御意見
  ハ實ニ飛ンデモナイ御意見ダト思フノデア
  リマス、私共ノ見解ニ依レバ政府委員ノ御
  意見ハ全然事實ニ反スルモノデス、又今日
  ノ社會ノ實情カラ見タ所ノ、社會ノ實情ニ
  卽シタ吾々ノ見解カラ言フナラバ左樣ナ机
  上ノ空論トモ言フベキ法律理論ニハ私共ハ
  贊成ハ出來ナイノデアリマス、法人ト云フ
  モノハ此處デ其性質如何、又法人ニ犯罪能
  力アリヤ否ヤト云フヤウナ大學デ議論ヲス
  ルヤウナ議論ヲアナタト致サウトハ思ヒマ
  セヌケレドモ、法人自體ハ所謂看板ニ書イ
  タ會社ナンデアッテ、是自身ガ犯罪ヲ爲シ
  得ル力ノナイコトハ明カデアリマス、法人
  ノ名ニ依ッテ仕事ヲ致シ、進ンデ犯罪行爲
  ヲ爲ス者ハ其代表者タル實際上ノ責任者デ
  アルベキコトハ明カデアリマス、惡事ヲ爲
  ス者ハ生キタ人間デアリマス、其利益ハ或
  ハ法人ニ轉嫁サレルカモ知レナイノデアル
  ケレドモ、法人ノ爲ニ惡事ヲ爲ス所ノ者ハ
  生キタ人間デアル、其場合ニ於テ國家ガ其
  個人ヲ罰スルト云フノニ何ノ不審ガアリマ
  セウ、私ハアナタノ言ハレルヤウニ代表者
  ガ惡事ヲ爲スト云フコトハ法人ノ利益ノ爲
  ニスルノデアッテ、自分ノ利益ノ爲ニスル
  ノデナイト云フヤウナ左樣ナ見解ハ今日ノ
  實情カラハ斷ジテ許スコトノ出來ナイ意見
  ダト思フノデアリマス(拍手)サウ云フヤウ
  ナ刑法理論モアルデアリマセウ、ケレ
  ドモサウ云フモノハ今日ハモウ御止メニナ
  ラネバイカヌ、實際ニ卽シタ憎ムベキモノ
  ヲ憎ムトシテ嚴罰ニ處スルニ何ノ不思議ガ
  アラウ、私ハ左樣ノ考デ此法案ガ出來テ居
  ルト云フコトヲ今日承ッテ實ニ驚イタノデ
  アリマス、洵ニ此法案ハ、失禮千萬ナ言分
  デハアルガ未熟至ラザルモノデアルガ如キ
  感ジガ致スノデアリマス、政府當局ニ於カ
  レマシテハ-私ノ尊敬スル大臣ニハ洵ニ申
  上ゲ惡イガ、是ハ根本的ニ色々ナ問題ニ付
  テ再檢討ヲサレル必要ガアルノデハナイ
  カ、少クトモ此衆議院ニ於テハ吾々ハ此儘
  デハドウモ結構ナ法案デゴザルト申上ゲル
  コトガ出來ナイヤウナ感ジガ致スト云フコ
  トダケハ此機會ニ申上ゲテ置キマス、是デ
  私ハ私ノ質問ヲ一應中止致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/169

  ---

• 170・牧山耕藏

  ○牧山委員長　長谷君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/170

  ---

• 171・長谷長次

  ○長谷委員　私ハ簡單ニ一問一答デ行キマ
  ス、今ノコトニ關聯致シマシテ一寸刑事局
  長ニ御質問申上ゲマスガ、實際ニ犯罪ヲ覺
  悟ノ前デ犯シタ所ノ法人ノ特定ノ取締役自
  身ガアッタ場合ニ於テ、其者ガ全然責任ヲ
  負ハヌト云フ風ナ立場ニ立ツノデアリマス
  カ、其點ヲ一寸承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/171

  ---

• 172・松阪廣政

  ○松阪政府委員　取締役ガ會社ノ爲ニ會社
  ノ機關トシテ致シタル以上ハ左樣デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/172

  ---

• 173・長谷長次

  ○長谷委員　結局處罰ノ方法ガナイト承ツ
  テ、ソレデ宜シイト思ヒマス、ソレデハ次
  ニ質問ヲ進メテ行キマス、實ハ此第三條ニ
  付キマシテ少シク遞信當局ニ承リタイノデ
  アリマス、實ハ此第三條ノ中デ御規定ニナッ
  テ居ル所ノ御趣旨ヲ拜見致シマスト、此中
  ニハ日本ニ駐在スル所ノ外國ノ通商部ト日
  本ノ人民トノ間ニ出來テ居ル所ノ此船舶ノ
  賣買契約ト云フモノ、ソレニ適用ガアルカ
  ドウカト云フ問題デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/173

  ---

• 174・小野猛

  ○小野政府委員　ソレハ外國ノ通商部デス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/174

  ---

• 175・長谷長次

  ○長谷委員　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/175

  ---

• 176・小野猛

  ○小野政府委員　ソレナラバ勿論適用ハア
  ルト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/176

  ---

• 177・長谷長次

  ○長谷委員　能ク分リマシタ、勿論其點ハ
  斯樣ニ諒承シテ宜シイカトモ思ヒマスガ、
  今製造中ノ物、ソレカラ契約中ノ物、ソレ
  ニモ適用ガアルト承知致シテ宜シウゴザイ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/177

  ---

• 178・小野猛

  ○小野政府委員　勿論此法律施行ノ當時
  ニ、マダ讓渡シ前デアリマスレバ、此法律
  ノ適用ヲ受ケテ許可ヲ受ケルト云フコトニ
  相成ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/178

  ---

• 179・長谷長次

  ○長谷委員　ソレカラ次ニ第八條ニ關聯致
  シマシテ御尋致シタイノデアリマスガ、實
  ニ第八條ニ依リマスト云フト、造船業者ニ
  對シテ規定ヲ設ケラレテ居リマスルガ、遞
  信省ノ方ニ於キマシテ造船所ノ擴張ト云フ
  風ナ方面ニ向ッテ對策ヲ持タレテ居ルカド
  ウカ、其點ヲ一寸承ッテ置キタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/179

  ---

• 180・小野猛

  ○小野政府委員　此法律自體ニ於キマシテ
  ハ、造船所ノ積極的ノ擴張ト云フコトヲ考
  ヘテ居リマセヌ、此法律ハ現在ノ軍ニ徵用
  セラレマシタ徴用船カラ殘ッタ船、竝ニ現在
  ノ造船所ノ能率ヲ如何ニ擧ゲヨウカト云フ
  コトヲ目的トシテ居ルノデアリマシテ、之
  ニ依ッテ造船奬勵金ヲヤッテ造船所ヲ擴張ス
  ルト云フ所マデ此法律ハ考ヘテ居ラナイノ
  デアリマス、造船業ノ振興、例ヘバ低利資
  金ヲ與ヘテ造船業ヲ擴張致シマストカ、或
  ハ其他ノ積極的ナ方法デヤルト云フコトハ
  別途考ヘテ居リマスガ、此法律自體デハソ
  コ迄及ンデ居ラヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/180

  ---

• 181・長谷長次

  ○長谷委員　モウ後二三點ニナリマシタガ、
  實ハ遞信大臣ニ對シマシテ一寸承リタイノ
  デアリマス、本法ノ一番最後ノ所ニ「本法
  ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止スルモ
  ノトス」トナッテ居リマス、實ハ此事變ガ支
  那「プラス」「エックス」ト云フヤウナ外國關
  係ガアルト致シマシタ時ニ於キマシテ、此本
  法ハドウ云フ形ニ適用セラレテ行クモノカ、
  ソコヲ一寸承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/181

  ---

• 182・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　支那事變終了以後ハ大體
  先程申上ゲタノデ御諒解下サッテ居ルコト
  ト存ジマスガ、其支那事變ニ關聯シテ尙ホ
  其範圍ガ擴大スルヤウナコトガ起リマシテ
  モ、ヤハリ支那事變ノ中ニ包含サレテ居ル
  モノト解釋シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/182

  ---

• 183・長谷長次

  ○長谷委員　實ハ現在ノ此法案ヲ施行スル
  ニ當リマシテ、幾多海上ニ於ケル所ノ困難
  等モ起ルダラウト考ヘテ居リマスルガ、ソ
  レニ關聯致シマシテ陸上ノ之ト相提携スル
  所ノ、例ヘバ無電臺其他機關ノ施設ニ付テ
  日本ニ於テハ缺クル所ガアルト聞イテ居リ
  マス、實ハ此間佛蘭西ノ飛行機ガ土佐沖ニ
  不時著致シマシタ時、アレヲ誘導スル日本
  ノ無電臺ガナカッタヤウニ吾々聞イテ居ル、
  左樣ナ譯デサウ云フ方面ニ付テハ遞信省ト
  シテノ御考ハドウ云フ風ニナッテ居リマ
  カ、一寸御聽キ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/183

  ---

• 184・小野猛

  ○小野政府委員　此法案自體ハ無線電信ノ
  施設ニハ關係ゴザイマセヌガ、遞信省ニ於
  テハ燈臺ニ附屬致シマス船舶羅針方位信號
  其他「ラヂオビーコン」サウ云フ施設ヲ擴張
  致シマシテ、此法案ト兩々相俟テ運用ノ完
  璧ヲ期シタイト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/184

  ---

• 185・長谷長次

  ○長谷委員　法制局ノ御方ニ御尋ネ致シタ
  イノデアリマス、先程吾々ガ遞信當局カラ
  承ッタ所ニ依リマスト、第五條ト第六條ノ二
  ツノ條文ノ性質ト第七條第八條第九條ノ命
  令體系ノ性質ハ全然別箇ノ方針ヲ有ッテ居
  ルモノデアル、故ニ第十三條ニ於テ第七條
  ヲ捉ヘテ所謂「委員會ノ議ヲ經ベシ」ト云
  フ條文ニナッタノヂヤナイカト思ヒマスガ、
  法制ノ立場ニ於テドウ解釋シテ宜シウゴザ
  イマスカ承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/185

  ---

• 186・樋貝詮三

  ○樋貝政府委員　性質ハ全然違ッテ居ルト
  云フ意味デハアリマセヌ、第七條ノ規定ニ
  依ル命令ニ付キマシテ「委員會ノ議ヲ經ベ
  シ」ト致シマシタコトハ、七條ハ他ノ場合
  ノ如クニ緊急ヲ要シナイノデアリマス、五
  條、六條ニ於ケルヤウナ命令ハ之ヲ實際發
  動致シマス場合ニハ、極ク緊急ノ場合ト云
  フ趣旨デアリマシタ爲メ急施ノ手續ト云フ
  場合ヲ規定シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/186

  ---

• 187・長谷長次

  ○長谷委員　能ク分リマシタ、尙ホ最後ニ
  一點アリマス、此第十條ノ點デアリマシ
  テ、此中ニ實ハ中程カラ下ノ方ニ「造船業
  者ニ對シ其ノ業務ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サ
  シムルコトヲ得」トナッテ居リマスルガ、此
  業務ノ中ニハ所謂船員ノ動靜等ヲモ含メテ
  居ルカドウカ、其點一寸承リタイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/187

  ---

• 188・小野猛

  ○小野政府委員　是ハ主トシテ運賃、傭船
  料等ノ實際ノ現實ノ狀況ヲ聽キタイト云フ
  ノデ、是ガ趣旨デアリマスルガ、船舶所有
  者又ハ運航業者等ニ關聯シマシテ船員ノ事
  情-狀況報〓ガ必要デアルト致シマスル
  ナラバ、其點ニ付テモ勿論狀況報〓ヲ求メ
  タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/188

  ---

• 189・長谷長次

  ○長谷委員　是デ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/189

  ---

• 190・牧山耕藏

  ○牧山委員長　濱野君カラ今ノ罰則ニ關聯
  シテ質問ヲ求メラレテ居リマス、濱野君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/190

  ---

• 191・濱野徹太郎

  ○濱野委員　司法當局竝ニ法制局ノ方ガ御
  見エニナッテ居ラレルノデ、法律上極ク簡單
  ナコトヲ二三御伺シタイト思ヒマス、第三
  條ニ讓渡、引渡ニハ許可ヲ取ラナケレバナ
  ラナイコトニナッテ居リマスガ、運送契約
  竝ニ保險會社カラ委付ノ場合ハドウナリマ
  スカ、例ヘバ日本ノ船主ガ外國ノ保險會社
  ニ保險ヲ付シテ、委付ノ原因ガ發生シテ、其
  船體ヲ委付スル時ニ於テハ、勿論此時ニハ
  完全ナル船體ト云フモノハ想像出來ナイノ
  デスケレドモ、併ナガラヤハリ船舶ト云フ
  文字ヲ使ッテ居ル場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ
  必要トシナイノデスネ、是ハ海上運送契約
  ニ於テ重大ナル問題デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/191

  ---

• 192・大森洪太

  ○大森政府委員　委付ニ付キマシテハ私共
  デ調査ヲ致シタノデアリマスルガ、引渡ノ
  場合ニハ這入リハシナイノデアリマス、隨
  テ第三條第一項ニ包含セラルヽモノトシテ
  立案ニ當ッテ居リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/192

  ---

• 193・濱野徹太郎

  ○濱野委員　併シソレデハ其御話ニ依ル
  ト、保險契約ガ完全ニ出來テ居ッテ、保險
  ノ保障スル所ノ事故ガ發生シタ時ニ、其目
  的ヲ遂行スル時ニ、政府ノ許可ヲ取ラナケ
  レバナラナイト云フ場合、サウスレバ根本
  ニ遡ッテ法理上カラ言フナラバ、契約ノ内
  容ガ不履行ニ陷ル場合ガ想像出來ル、ソレ
  カラ日本ノ船舶ヲ外國ノ保險ニ付シ、外國
  ノ船舶ヲ日本ノ保險ニ付スル場合ニハ、ヤ
  ハリ許可ヲ取ラナケレバナラナイト云フ場
  合ガアルト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/193

  ---

• 194・大森洪太

  ○大森政府委員　御說御尤ト存ズルノデア
  リマスガ、併シ此案ノ眞意ト致シマシテ
  ハ保險契約締結ノ際ニハ政府ノ許可ヲ受ケ
  ル必要ハ毛頭ナイノデアッテ、引渡ノ際ダ
  ケデ宜シイ、併シ御說ノヤウナ場合ニハ政
  府ハ、之ヲ許可ヲ拒ムコトハナイデアリマ
  セウ、多クノ場合-常ニ許可ヲスルト云
  フコトニモ參ラナイカモ知レマセヌケレド
  モ、引渡ト云フ文字ヲ、之ヲ包含セシメテ
  置ク方ガ便利デアリ、又其方ガ相當デアラ
  ウト考ヘタノデアリマス、實際ノ例デ、許
  可、不許可ノ場合ニ適當ニ處置ガ出來ルカ
  ト在ズルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/194

  ---

• 195・濱野徹太郎

  ○濱野委員　實際ノ場合ニハ多分許可ガ出
  來ルダラウト云フヤウナ御言葉デアリマス
  カラ、私ハ是以上申上ゲマセヌ
  次ニ法律上聽キタイノハ、差押ヲシテ船
  舶ヲ競賣ニ付シテ競落シタ場合ニ於テハ許
  可ヲ必要トシナイト云フ御考デセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/195

  ---

• 196・大森洪太

  ○大森政府委員　全ク御說ノ通リデアリマ
  ス許可ヲ必要ト致シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/196

  ---

• 197・濱野徹太郎

  ○濱野委員　其時ニハ、第三條、第四條ノ
  兩方ノ場合ヲ含ンデ競落ニ依ル所有權ノ取
  得、讓渡、引渡ノ場合ハ許可ヲ必要トシマ
  セヌネ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/197

  ---

• 198・大森洪太

  ○大森政府委員　御說ノ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/198

  ---

• 199・濱野徹太郎

  ○濱野委員　サウナルト云フト或ハ脫法行
  爲ノヤウナ形ガ出來マセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/199

  ---

• 200・大森洪太

  ○大森政府委員　場合ニ依リマシテ、脫法
  行爲ガ行ハレルコトガアルカモ知レマセ
  又、是ハ御承知ノ通リニ、他ノ法律ニ、色
  色斯樣ナ場合ガアッテ、强制執行法デソレ
  ヲ解決シナケレバナリマスマイガ、强制執
  行法ニアッテモ其解決ハ遺憾ナガラマダ出
  來テ居リマセヌ、又、此法規ノミニ於テ其
  解決ヲ付ケルト云フコトハ假令不可能デハ
  ナクトモ不相當デハナイカト云フコトデ、實
  ハ其儘ニシテ置イタノデアリマス、左樣御
  諒承ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/200

  ---

• 201・濱野徹太郎

  ○濱野委員　能ク諒承シマシタ、ソレカラ
  總テ船舶ノ所有權ノ讓渡、取得ハ登記ニ依
  ラナケレバナリマセヌガ、此適用ヲ受ケテ
  登記ヲスル時ニハ政府ノ許可證ガ必要條件
  デアルカ、此頃ノヤウニ船價ノ騰落ノ甚シ
  イ時ニハ所有權ヲ取得シテ直チニ又轉賣ス
  ルト云フヤウナ時ニ、ソレヲハッキリシテ
  置イテ貰ッテ、登記ノ場合ニ愚圖々々出來
  ナイヤウニシテ貰ヒタイ、是ハ登記ヲスル時
  ニハ政府ノ許可證ガ必要條件デアルカ、ソ
  レトモ參考ノモノデアルカト云フコト、竝
  ニ登記所トノ關係ヲハッキリシテ戴カヌト
  實際上困ルダラウト思ヒマス、此點ノ御解
  釋ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/201

  ---

• 202・大森洪太

  ○大森政府委員　是ハ命令ヲ定ムル時ニ考
  ヘナケレバナラナイノデアリマスガ、御注
  意ノ點ハ確ニ諒承致シマシタ、私共考ヘテ
  居リマシテモ、此許可ハ御承知ノ通リ有效
  條件デハナイノデアリマス、詰リ許可ヲ得
  ナイデ讓渡ヲ致シマシテモ、讓渡其モノハ
  有效デアリマスカラ、登記ノ要件ニマデナ
  ス必要ハナイト思ッテ居リマシタケレドモ、
  尙ホ御注意ニ依リマシテ命令ヲ致シマスル
  際ニ能ク審議ヲ致シタイト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/202

  ---

• 203・濱野徹太郎

  ○濱野委員　只今政府委員ノ御答辯デハ本
  法ニ背イタ讓渡ハ無效デナクテ有效ダト仰
  シヤッタノデスネ、ソレデ間違ハナイノデ
  スネ、サウスルト國家ガ今日ノ非常時ニ處
  シテ軍事上輸送ニ多大ナル船腹ヲ必要ト
  シ、サナキダニ引締ッテ居リマス所ノ船腹
  ノ事情ガ緊迫ノ狀態ヲ告ゲル、サウ云フヤ
  ウナ非常時ヲ心配シテ出來タ此法案ニ對ス
  ル違反行爲ガ唯單ナル罰則ダケデ濟ムノデ
  アリマシテ、其行爲自體ガ無效デナイト云
  フコトハ法ノ精神ニ顧ミテドウ云フモノデ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/203

  ---

• 204・大森洪太

  ○大森政府委員　御尤ノ御說デアリマス
  ガ、斯樣ナ場合ニ二ツノ用例ガアリマシテ、
  滅多ニ許可ヲ得ナイ場合ニ其行爲自體ガ全
  部無效デアルト云フ場合、行爲自體ハ無效
  デナクテ、罰則ニ該當スルノデアルカラ、
  マア罰則デ以テ威壓シテ其行爲ヲ豫防ス
  ル、斯ウ云フ場合ト二ツアリマス、其何レ
  ガ宜イカト云フコトヲ種々審議ヲ致シタノ
  デアリマス、所ガ此三條第一項ノ中ニハ御
  承知ノ通リ引渡ト云フヤウナ事實上ノ行
  爲モアリマス、是ハ有效、無效ニ係ラナイ
  譯デアリマス、デスカラ極メテ精確ニ言ヒ
  マスナラバ、引渡ノ部分ダケガ有效要件デ
  ナク、許可ヲ受ケロ、許可ナクシテヤレバ
  罰則ヲ科スル、斯ウ云フコトニ致シマシ
  テ、他ノ部分ハ之ヲ無效ニスルト云フコト
  ヲ法規上明ニシタ方ガ宜クハナイカト云フ
  議モアリマシタ、ケレドモ斯樣ナ讓渡行爲
  ハ惟フニ其數ハ屢〓出ルト云フ譯デハナイ
  ノデアリマセウ、又之ヲ無效ニ致シマシ
  テ、其法律ノ效果ヲ決定的ニ引繰返スト云
  フコトノ必要モナイノデ、罰則ヲ以テ之ニ
  臨ムナラバ、此法規ノ趣旨ノ徹底ヲ期スル
  コトガ出來ルダラウ、斯樣ナ意味合ニ於キ
  マシテ此第三條第一項ハ無效ニ致サナカツ
  タノデアリマス、何々セントスルトキハ政
  府ノ誰或ヲ受クベシ、斯ウ云フ用例ハ常ニ
  左樣ナ意味合ニ使ッテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/204

  ---

• 205・濱野徹太郎

  ○濱野委員　私ハ敢テ法理論ヲ申シタノデ
  ハアリマセヌ、御承知ノ通リ滿洲事變ノ當
  時ニデモ張學良軍ノ軍隊ニ用フル鹽トカ或
  ハ帝國ニ不利益トナルベキ所ノ「トラック」
  ヲ大量ニ賣込ンダ人モアルト云フ事實ヲ囘
  想シマス、私ハ斯ル人物ガ我國ニ現在在リ
  トハ絕對信ゼマセヌガ併シ此法案ガ出來タ
  今日ノ時勢ニ顧ミル時ニハ、吾々ハ宜クナ
  イコトデスガ、斯ウ云フ單ニ本法ノ違反行
  爲ヲ爲ス場合ニ單ナル罰金二千圓ト云フダ
  ケデハドウナルデセウ、例ヘバ今ノ御說明
  ニ依ルト法人會社ガ如何ナル違反行爲ヲシ
  テモ最高二千圓デアリマス、サウシテ船ヲ
  一艘賣却シタ利益ハ殆ド二千圓ヤ三千圓デ
  ハ濟マナイ、滿洲事變ノ時ニ、アレ程國民ノ
  義憤ガ高調シテ居ッタ時ニスラ尙ホ國家ノ
  不利益ノ爲ニナル敵ニ食鹽ヲ送リ、敵ニ武
  器ヲ賣込ム者モアッタノデスカラ、巳ニ法
  ヲ以テ之ヲ嚴禁スル此非常時立法ニ顧ミル
  時ニ、私ハ當然之ヲ無效ニシタ上ニ尙ホ處
  罰スルト云フコトガ今日ノ國民ノ義勇奉公
  ノ精神カラ言ッテ、國民感情上カラ言ッテモ
  私ハ必要デアルト思フノデアリマスガ、敢
  テ法理論ニ拘泥スベキモノデナイ、又法理
  論デ、此急ナ場合不必要ダト思ヒマスガ、
  重ネテアナタノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/205

  ---

• 206・大森洪太

  ○大森政府委員　御說御尤デアルト存ジマ
  ス、勿論斯樣ナ行爲ヲスルコトハ今日極力之
  ヲ避ケナケレバナラヌ、其爲ニ之ヲ罰則ニ科
  スルノデアリマスガ、假令之ヲ有效ニシマシ
  タ所ガ、又無效ニシマシタ所ガ、其點ニ左
  程相違ガナイカト思ッタノデアリマス、併
  シ之ヲ無效ニスルナラバ御說ノ通リ此制裁
  ガ更ニ强イト云フコトハ確ニ言ヘマセウ、
  唯斯樣ナ行爲ハ非常ニ澤山ニハナイノデ
  アッテ、此罰則ヲ科スル程度ニ於テ本法制定
  ノ趣旨ハ十分貫徹出來ルデアラウ、斯樣ナ
  見込デ居リマス、左樣御諒承願ヒタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/206

  ---

• 207・濱野徹太郎

  ○濱野委員　是ハ今日ノ國民ノ感情上ノ問
  題デ、大ニ考慮スベキ餘地ガアルト思ピマ
  スガ、兎モ角是ハ是デ打切リマス、次ニ簡單
  ナコトデアリマスガ、是ハ解體スベキ古船
  ニ非ズシテ、運航ノ目的ニ供スル爲ニ、船腹
  調和ノ爲ニ第四條ガ設ケラレタノデアリマ
  スカラ、寧ロ無用ノ質問カモ知レマセヌ
  ガ、此場合第四條ノ「船舶ヲ取得セントス
  ルトキハ政府ノ許可ヲ受ク」ベキデアッテ、
  船腹其モノヲ利用目的トシテ賃借、傭船其
  他擔保ニ取ルト云フ場合ハ、是ハ無論許可
  ハ不必要ダト思ヒマス、是ハ無用ニ近イト
  思ヒマスガ、一應御答辯願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/207

  ---

• 208・小野猛

  ○小野政府委員　仰セノ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/208

  ---

• 209・濱野徹太郎

  ○濱野委員　所デ第八條デスガ、甚ダ法理
  的ノコトバカリ聞イテ御氣ノ毒デスガ、
  寸疑問ヲ起シタノハ、第八條ニ於テ船舶ノ
  構造ノ變更ト云フコトハ入ラナイノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/209

  ---

• 210・小野猛

  ○小野政府委員　構造ノ變更マデハ入ラセ
  ル意味デナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/210

  ---

• 211・濱野徹太郎

  ○濱野委員　此構造ノ變更ト云フコトハ第
  八條ニ含マヌト云フ御言明ダケデモ速記錄
  ニ殘レバソレデ結構デアルガ、モウ一ツ伺
  ヒタイノハ第五條、第六條、特ニ第六條ハ
  政府ハ運航業者ニ對シテ、航路トカ、或ハ
  就航區域、又ハ運送スベキ人又ハ物ヲ指定
  シテ航海ヲ命ズルコトガ出來ルノデアリマ
  シテ、此命令ヲ受ケマシタ業者ハ緊急ナル
  場合ニハ直チニ政府ノ一方的意思ニ依ッテ命
  令サレル、自然業者ト致シマシテハ豫定モ
  セナイヤウナ場合、業者側カラ言ヘバ思ヒ
  モ寄ラヌヤウナ此法ノ發動ヲ見ルト思ヒマ
  ス、サウ云フ場合ガ想像出來ルケレドモ、
  私ハ業者カラ言フナラバ、多大ノ財的損
  害ヲ受ケル場合モアルト思ヒマス、元々非
  常時デアリマスカラ業者ハ此點ヲ慮ルト思
  ヒマスガ、斯ウ云フ場合ニ政府ハ救濟方法
  トシテ例ヘバ補償ト云フヤウナコトヲ御考
  ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/211

  ---

• 212・小野猛

  ○小野政府委員　ソレハ運用ノ問題デ最前
  申上ゲタノデアリマスガ、例ヘバ最近アリ
  マシタ例ヲ申上ゲマスルト、避難民ヲ輸送
  スル爲ニ靑島ニ一航海シテ來イト云フヤウ
  ナ事實モアッタノデアリマス、ソレデ業者ト
  シテハ相當損害ヲ蒙ッテ居ル、併シ此法律デ
  ハ直接其補償ヲシヨウト云フコトハ考ヘテ
  居ナイ、唯事變後ニ至リマシテ政府ト致シ
  マシテ、色々ナ救恤方法ヲ考ヘル場合ニ、
  サウ云フモノモ包含スルカト云フコトハ、
  行政的ニ考ヘテ差支ナイダラウト思ヒマ
  ス、サウシテ此運用デアリマスガ、實ハ私
  共ノ方デモ管理委員會付屬ノ專門的ノ委員
  會ヲ設ケマシテ、配船ニ關スル委員會トシ
  テ、同業者ノ方デ第一線ニ働イテ居ルヤウ
  ナ人々ヲ集メマシテ、斯ウ云フ場合ニハド
  ウ云フ配船ヲスレバ業者ニ影響ガナイカト
  云フヤウナコトヲ、愼重審議ノ上デ實際ハ
  決定致サウト考ヘテ居ルノデアリマス、非
  常ナ急ヲ要スル、例ヘバ避難民輸送ト云フ
  ヤウナ時ニハ之ヲ諮ッテ居ル時間ガアリマ
  セヌカラ、一般的ニ此難局ヲ切拔ケル爲ニ
  如何ニ配船シタナラバ宜カラウカト云フヤ
  ウナコトハ、當業者ニモ諮ッテ、運用上十
  分ナ注意ヲスル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/212

  ---

• 213・濱野徹太郎

  ○濱野委員　今ノ御說明デ私ノ豫想シテ居
  ナカッタコトハ、第六條ヲ率直ニ讀ムト、避難
  民ヲ運送スルト云フヤウナコトハ想像出來
  ナイ、避難民ヲ運送スル場合ニハ二ツアリ
  マセウガ、一ツハ政府ガ避難命令ヲ發スル
  場合ニ於テハソレヲ運ブ責任ハ政府ニアル
  ノデアリマシテ、其時ニハ政府ノ所要デ、
  政府ガ雇フモノトシテ行ハレルノデアルカ
  ラ、私ハ第六條ノ適用ハナイト思フ、是八、
  寧ロ一般ノ事業ナドヲ見マシテ、例ヘバ鐵ト
  カ、鹽トカ、或ハ其他ノ食品ガ必要デアル場
  〓或ル特殊ノ命令ヲ下スノハ第六條デア
  リマシテ、政府自ラ責任ヲ負ヒ運送業者ヲ
  シテ避難民ヲ運バセルト云フヤウナ場合ニ
  ハ、ソレハ一ツノ運送行爲トシテ行フノダ、
  第六條ハ一般的ニ何處カラ何處ニ航海セ
  ヨ、其物ヲ運ベト云フヤウナ問題ノ時ニ、
  第六條ガ適用ニナルノデ、今ノ局長ノ言葉
  ガ此中ニ入ルトハ解シ兼ネルノデアリマス、
  是ハ運用上ノ問題デアリマスカラハッキリ
  御說明願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/213

  ---

• 214・小野猛

  ○小野政府委員　避難民輸送ノ場合ニハ色
  色ナ場合ガアルノデス、政府自身ガ、民間
  ノソコニ働イテ居ルモノニ向ッテ、向フヘ行
  ケト云フ場合モアリマス、今申上ゲタヤウ
  ニ現ニ行ッテ居ルノデアリマスガ、歐羅巴
  航路ニ就航セントシテ居ル船ヲ最近或ル方
  面ニ-是ハ政府自身ガ買上ゲタモノデモ
  何デモナイ、君ノ方ノ損失ニ於テ避難民ヲ
  積ンデ來イ、非常ニ緊急ノ際デアルカラ、
  船會社トシテモ非常ナ犧牲ヲ拂ッテ航路ヲ
  變更シテ行ッタ例ガアルノデアリマス、勿
  論今ノ濱野サンノ第二ニ擧ゲタ例ガ、實際
  之ヲ運用スル場合モ多クナッテ來ルト思ヒ
  マスガ、最近ノ實例ガアリマスカラ念ノ爲
  ニ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/214

  ---

• 215・濱野徹太郎

  ○濱野委員　司法省ノ政府委員ノ方ガ先程
  法人ノ處罰ニ付テ、法人自ラ事業ノ爲ニ
  ヤック場合デモ罰金刑ダ、ソレハ體刑ヲ與
  ヘナイト云フコトニ付テ色々述ベラレマシ
  タガ、是ハ國民ノ感情上承知シナイダラウ
  ト思フ、其一ツノ例ヲ取レバ二人デ出來タ
  合名會社ハドウデス、資本ハ共同デ出シテ
  利益ハ山分ケデス、合名會社モ法人デアル
  トシテ爲シタコトニ對シテ、二千圓ノ罰金
  デ濟ム、ソシテソノ利益ト云フモノハ二人
  デ山分ケヲスルノデアル、司法省ノ政府委
  員ノ言ハレルヤウナ、單ナル刑法ノ理論ノ
  ヤウナコトハ通ラナイ、船ヲ一艘二艘
  持ッテ居ル人ハ、合名會社ヲ造ッテヤッテ居
  ルノデスカラ、今ドウダト云フコトハナイ
  ガ、國家ノ國民的感情ヲ法律ノ中ニ盛リ込
  ム場合ニハ、能ク御考ニナル必要ガアラウ
  ト思ヒマス、是ダケノコトヲ申上ゲテ置キ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/215

  ---

• 216・牧山耕藏

  ○牧山委員長　今議長カラノ要求希望デス
  ガ、今日一齊ニ重要法案ノ委員會ガ開カレ
  テ居ル爲ニ、本會議ガ或ハ定數ヲ缺クカモ
  知レナイト云フコトデ、各委員會トモ、豫
  算委員會ハドウデスカ知リマセヌガ、他ノ
  三法案ノ委員會ヲ暫ク休憩シテ議場ニ入ッ
  テ貰ヒタイト云フコトヲ各派交涉會デ決定
  シタサウデアリマス、五時十分マデ休憩ヲ
  致シマス
  午後四時四十分休憩
  午後五時二十五分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/216

  ---

• 217・牧山耕藏

  ○牧山委員長　引續キ會議ヲ開キマス、關
  聯事項デ山崎君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リ
  マス、之ヲ許シマス-山崎君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/217

  ---

• 218・山崎常吉

  ○山崎委員　私ハ極ク簡單ニ御尋シタイト
  思ヒマス、大體先程長谷君ガ第十條ノ點デ
  御尋シテ居リマスガ、アレニ關聯ヲスル問
  題デゴザイマスケレドモ、其前ニ少シノ間
  御許ヲ願ヒマシテ、本法案ニ對シマスル
  所ノ基礎的知識ノ點ニ付キマシテ、少シク
  御示ガ願ヒタイト思ヒマス、先程カラ先輩
  諸氏ノ御言葉ヲ承ッテ居リマスト、本案ガ
  斯樣ナ時期ニ如何ニ必要ナモノデアルカト
  云フコトヲ段々ト〓へラレタ感ガ致シマ
  ス、ソコデ私御尋シタイト思ヒマスノハ、
  參考書類ト致シマシテ戴キマシタ所ノ、大
  正六年ノ寺內內閣時代ノ勅令ニ依ッテ發布
  セラレマシタ此法案、是ハ慥カ日獨戰爭ノ
  時デナカッタカト考へマス、更ニ溯リマシ
  テ日露ノ戰爭、其前ノ斯樣ナ時期、斯ウ云
  フ風ナ場合ガアル度每ニ、斯ウ云フヤウナ
  法案ガ臨時ニ制定セラレルコトト思ヒマス
  ガ、左樣ナ場合ニハ其法案ヲ臨時ニ作ラネ
  バナラヌ理由、其時ノ情勢ヲ簡單ニ御示ガ
  願ヘレバ結構デス、是ハ具體的ニ斯樣ナ場
  合ガアルカラ、斯ウ云フ法案ヲ作ラナケレ
  バイケナイト云フヤウナ、基礎的知識ニナ
  ルモノヲ御話ガ願ヒタイト思ヒマス、更ノ
  又考ヘマスノニ、世界ノ大勢カラ、此度ノ
  日支事變以上ノコトガ將來又アルカモ分ラ
  ナイト思ヒマスガ、左樣ナ事變ノアル度
  ニ、斯樣ナ法律ヲ臨時ニ作ラネバナラナ
  1、其度ニ此內容ガ變ッテ來ルモノカ、變ッ
  テ來ナイモノカ、社會ノ變遷ニ隨ヒマシ
  テ、幾ラカハ變ルト思ヒマスケレドモ、併
  ナガラ其度ニ根柢カラ變ヘネバイケナイト
  云フヤウナ狀態デアリマシタ場合ニハ、相
  當ニソコニ業者ノ間ニモ世人ノ間ニモ色々
  ナ不便モ感ジラレ、又疑惑モ生ズルコトデ
  ハナイカト思ヒマス、此度此臨時船舶管理
  法案ガ、此第七十二議會デ提案サレマシ
  テ、是ガ法案トナッテ現ハレ、事變ノ終ッタ
  後ニ是ガ又撤廢セラレル、其法ハ其儘消エ
  テシマフモノカ、或ハ又將來是ガ事變ノ場
  合ニ適用サレルモノカト云フ點ニ付キマシ
  テ御尋シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/218

  ---

• 219・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　山崎君ノ御質問ノ趣旨ヲ
  十分ニ理解シテ居ナイカモ知レマセヌガ、
  特殊ノ社會情勢又ハ國際情勢ニ基キマシ
  テ、特殊ノ法律命令ヲ其時々ニ必要トスル
  コトハ申上ゲル迄モナイト思ヒマス、前ニ
  日獨戰爭-世界戰爭ノ時分ニ、船舶ニ
  對シテ特殊ノ船舶管理令ト云フモノヲ出シ
  テ置イテ、今日又斯ノ如キモノヲ出スト云
  フコトモ、其時ノ國際情勢竝ニ社會情勢ノ
  要求ニ基ク結果デアルト思ヒマス、今囘ノ
  事變ニ對シマシテ從來ノ如キ船舶ノ取締ニ
  關スル法規デハ、到底今日ノ國家ノ要求ニ
  應ズルコトハ出來ナイト云フコトヲ認識致
  シマシテ、特殊ノ法律ヲ制定スルコトニ決
  シタノデゴザイマスガ、現在ノ如キ國際情
  勢竝ニ社會情勢ガ、事變ノ終局ニ伴ウテ現
  在ヨリ變化シテ參リマスルナラバ、此法律
  ハ同ジク其重要性ヲ失ッテ來ルコトデアル
  ト思ヒマス、ケレドモ事變後ニ於キマスル
  社會情勢ノ變化ハ、又新ナル統制ヲ要求ス
  ルカモ知レマセヌ、世界戰爭ノ當時ヲ見マ
  シテモ、世界戰爭ノ間ニ於テ、世界戰爭前
  ニハ見ラレナカッタ國家管理ノ種々ナル法
  律ガ、交戰各國ニモ出來マシタガ、世界戰
  爭後ニ於テハ、モットソレヨリ嚴格ナ國家
  管理ヲ行ウタ國モアリマス、サウ云フヤウ
  ニ社會情勢ノ變遷ニ伴ヒマシテ、事變後又
  別ノ意味ニ於テ、政府ガ統制ノ必要ヲ感ズ
  ルヤウナコトガ起ルカモ存ジマセヌガ、併
  シ此御審議ヲ願ッテ居リマス法律案ハ、今
  日ノ支那事變ノ情勢ノ下ニ於キマシテ、國
  家ノ要求ニ應ズル爲ニ必要デアルト考ヘテ
  制定セント欲スルモノデアリマシテ、其爲
  ニ此事變ノ終了ト共ニ一先ヅ之ヲ終了セシ
  ムル、サウ云フコトヲ規定シテ居ル次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/219

  ---

• 220・山崎常吉

  ○山崎委員　大體諒解致シマシタ、第十條
  ノ前ニ第九條ニ關聯致シマスノデ御尋シタ
  イト思ヒマス、是ハ船員ノ保護法ニ對スル
  問題デゴザイマスノデ、實ハ手許ニ戴イテ
  居リマス所ノ參考資料ノ中、各國ノ戰時船
  舶管理制度ノ〓要、此六十四頁ノ所ノ第五
  節ニ、船員ニ關スル施設、是ハ各國ノ例ヲ
  取ッテ居リマスガ、ソコニ英吉利ノ例ヲ取ッ
  テアリマス、私ガ之ヲ御尋セント致シマスノ
  ハ、本案ノ第十條ニ乘組員ノ保護ト云フ所
  ガゴザイマス、此處ニハ明示シテゴザイマ
  セヌノデ、之ヲ御尋スルノデゴザイマスガ、
  斯樣ナ商船ガ戰時ニ徵發セラレマシテ、軍
  ノ仕事ニ從フ、是ハ大變危險ノ伴フ國家的
  ノ仕事デモゴザイマス、軍人ト同ジ任務ヲ
  果ス仕事デゴザイマス、此時ニ、英國ノ例
  ヲ見マスレバ、軍人ト同一ノ扱ヲ英國ノ船
  員ガ受ケテ居ル、ソレカラ萬一ノ場合、家
  族ニ對シマシテモ、ヤハリ其家族ノ補助ノ
  方法ガ講ゼラレテアリマスガ是ハ細カク分
  柝シテ御尋セズトモ、大體斯ク申上ゲレバ
  御分リニナルコトト思ヒマス、戰時ノ場合
  ニ徵發セラレマシタ所ノ船舶ニ乘組ンデ居
  リマス乘組員ニ對スル所ノ保護ノ方法トシ
  テハ、ドウ云フヤウナ規定ガゴザイマス
  カ、之ヲ一應御尋シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/220

  ---

• 221・小野猛

  ○小野政府委員　此規定ノ保護ト申シマス
  ルノハ、例ヘバ危險地域ニ船ガ行ク場合ニ
  ハ、船員ニ危險手當ヲ支給スベシト云フ風
  ナコトヲ頭ニ置イテ居ルノデアリマス、其
  他今申シマシタ戰禍ニ罹ッテ亡クナラレタ
  船員ノ遺族等ニ付テモ、其必要ガアレバ其
  保護ト云フ所デ攻究致シタイト存ズルノデ
  アリマス、尙ホ御用船等ノ船員ニ付キマシ
  テハ、成ベク軍人軍屬ノ例ニ從ッテ優遇致
  シタイト存ジマス、現在デモ精々軍ノ方ト
  相談致シテ居ルヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/221

  ---

• 222・山崎常吉

  ○山崎委員　御言葉ニ依リマスレバ、マダ
  其保護ノ方法ハ數字的ニ、或ハ具體的ニ明
  文ガナイノデゴザイマスガ、更ニ私ハ斯樣
  ナ場合ニ、乘組員ニ對シマシテハ、戰爭ニ
  從事シタト同ジ任務ヲ持ッテ居ル者デゴザ
  イマスノデ、其任務ヲ立派ニ果シタ曉ニ於
  キマシテハ、或ハ兵士ト同ジヤウニ名譽ノ
  勳章ヲ下附セラレル、或ハ左樣ナ場合ニ遭
  遇セズトモ、其任務ヲ普通ニ果シタ場合ニ
  於テハ、從軍記章ガ戴ケルトカ云フヤウナ
  方法モ講ジテ戴カネバナラナイノデハナイ
  カ、サウ云フヤウナ規定ガアルカドウカト
  云フコトヲ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/222

  ---

• 223・小野猛

  ○小野政府委員　此法律ガ出マシテ、此法
  律ニ基ク色々ナ命令ヲ出スコトニ相成ルノ
  デアリマス、現在ハサウ云フ規定ハナイノ
  デアリマスガ、此法律ニ基イテ、今御話ノ
  ヤウナ船員保護ニ關スル規定ヲ作ラウト考
  ヘテ居リマス、唯軍人軍屬ノ例ニ傚フト云
  フヤウナコトハ、是ハ遞信省ノ所管デアリ
  マセヌガ、現在今申上ゲマシタヤウニ、軍
  ノ方トモサウ云マ風ニ進ムヤウニ相談シテ
  居ルノデアリマス、是ハ軍人軍屬ト云フコ
  トニナリマスレバ、ソレニ伴フ名譽ノ點モ
  考慮致シ得ルノデハナイカト存ジテ、精々
  海員ノ爲ニ盡力致シテ居ル所デアリマス、現
  在ハマダ規定ハ設ケテ居リマセヌガ、此法
  律ニ基イテ相當考慮致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/223

  ---

• 224・山崎常吉

  ○山崎委員　御言葉ヲ承リマシテ、サウ云
  フヤウナ制度ノ設ケラレテ居ラナイト云フ
  コトヲ、洵ニ國民ノ一員トシテ遺憾トスル
  者デアリマス、是ハ關係軍部當局トモ精々御
  協力ナサイマシテ、斯樣ナ重大ナ任務ニ從
  事スル國民ニ對シマシテ、後顧ノ憂ノナイ
  ヤウナ方法ヲ御執リ下サランコトヲ切望ス
  ル次第デアリマス、次ニ第十條ノ、先程長
  谷君カラ御尋致シマシタコトニ關聯シテノ
  問題ニナリマスガ、是ハ戰時平時ノ場合ヲ
  問ハズ、特ニ戰時ノ場合ハ重大ナ問題ニナ
  ルト思ヒマス、卽チ乘組員ノ思想動向ニ關
  係スルモノデゴザイマス、此點ハ愼重ニ御
  聽キガ願ヒタイト思フ次第デアリマス、委
  員長ニ御相談申上ゲマスガ、此問題ハ斯樣
  ナ時局ノ場合、事變ニ關スル問題ニナリマ
  スノデ、速記ヲ止メテ戴イタラ如何カト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/224

  ---

• 225・牧山耕藏

  ○牧山委員長　デハ暫ク速記ヲ中止致シマ
  ス
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/225

  ---

• 226・牧山耕藏

  ○牧山委員長　米窪君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/226

  ---

• 227・米窪滿亮

  ○米窪委員　本法案ニ對シマシテ、社會大
  衆黨ヲ代表シテ、暫ク時間ヲ戴イテ御質問
  シタイト思フノデアリマスガ、旣ニ大分時
  間モ迫ッテ來テ居リマス、更ニ私ノ質問セ
  ントスル點ノ或ル部分ハ、同僚委員ニ依ッテ
  質問サレタ點モアルノデアリマシテ、隨テ
  其重複ヲ避ケマシテ、而モ本法案ニ直接關
  係ノアル點ヲ直截ニ遞信大臣竝ニ條文ニ付
  テハ小野政府委員ニ御質問シタイト思フノ
  デアリマス、先ヅ第一ニ私ガ遞信大臣ニ御
  質問シタイト思フ點ハ、本法案ノ立法ノ動
  機ト云フノデアルカ、趣旨ト云フノデアル
  カ、其邊ガ甚ダ失禮ナ言ヒ分カモ知レマセ
  ヌガ、今朝來委員會ニ於ケル質疑應答ヲ通
  ジテ見マシテ、ドウモハッキリト私共ノ認
  識ニ來ナイ、遞信大臣ハ多ク御說明ガアリ
  マシテ、而モ八月二十八日船主協會其他關
  係ノ業界ノ代表者ガ東京ニ集ッタ席上ニ於
  テ、大臣カラシテ此法案ヲ出サレル理由及ビ
  其環境ヲ御說明ニナッテ居ルノデアリマス
  ガ、要スルニ各種產業ノ中、海運業程「レッ
  セ·フェール」卽チ自由放任主義ノ形態ヲ以
  テ進ムノニ最モ適當シタ產業ハ無イ、是ハ
  同僚板谷委員カラ御話ガアッタ通リ、私人
  平時ニ於テハ海運業ハ自由放任主義ヲ以テ
  進ムコトガ、最モ發展スル所以デアルト考
  ヘテ居ルノデアリマスガ、而モ更ニ業界ノ
  代表者ガ集ッテ自治的統制ノ態度ヲ示シ
  ク、恐ラク是ハ日本ノ海運業ニ於テ、私ノ記
  憶ガ正シイナラバ、今マデニ曾テ歷史的ニ
  無イ事實デアリマス、或ル場合ニ於テハ臺
  灣ノ砂糖ヲ運ブ時ニ見苦シイ競爭ヲシ、或ル
  場合ニ於テハ撫順ノ石炭ヲ日本ニ輸入スル
  ノニ見苦シイ競爭ヲシタ日本ノ船主ガ、ア
  レ程マデニ結束シタト云フコトハ無イ、此
  船主及ビ業界ノ代表者ガ斯ノ如キ自治的統
  制ノ態度ヲ示シタニ拘ラズ、而モ此管理法
  ナルモノガ必要デアルト言ウテ出サレタ以
  上ハ、是ハモウ自治的統制デハイカナイト
  云フ見透シヲ、大臣竝ニ遞信當局ガ持ッテ居
  ルコトヲ如實ニ示スノダト思ヒマス、然ラ
  バ此法案ヲ貫ク所ノ精神ハ、先程長谷委員
  カラ御尋ニナッタ所ノ、所謂國家統制ノ一
  路ニ邁進スルヨリ外ニ方法ハ無イ、所ガ此
  法案ヲ第一條カラ末條マデズット私見テ參
  リマシテ不思議ニ思フ點ハ、先程カラ中井
  委員其他ノ各委員カラ度々質問ノアッタ第十
  三條-此第十三條ニ於テハ、單ニ第七條ヲ
  決議事項トシテ管理委員會ノ諮問ニ付スル、
  而モ管理委員會ノ官制ノ要項ニ於テハ、第
  七條以外ノ點ニ於テモ遞信大臣必要アリト
  認ムル時ハ諮問ヲスルト云フコトノ伏線ハ
  アリマスガ、併シソレハ極メテ緊急ヲ要シ
  ナイ所ノ問題デアル、隨テ第七條以外ハ、私
  ノ推察ニシテ若シ誤リデナイナラバ、殆ド
  全部是ハ遞信大臣ノ御決定ニ依ッテ決定ヲ
  サレルト云フコトデアリマス、所ガ遞信大
  臣ノ御答辯ノ節々ヲ伺ヒマスト、板谷委員
  ニ對シテハ、是ハ傳家ノ寶刀トシテ濫リニ
  拔カザル御決意デアルカノヤウニ推察シテ
  居ルノデアリマス、卽チ寶刀ヲ床ノ間ニ
  飾ッテ置クノダト云フ御意向ヲ御漏シデゴ
  ザイマスルガ、此第十三條ニ現ハレテ居ル
  片鱗ハサウデナク、鯉口三寸ヲチヤント見
  セテ居ラレルノデアッテ、斯ノ如ク觀テ來
  マスルト、是ハ統制法律案トシテ邁進サレ
  ル御考デアルノカ、或ハ船主其他ノ業界ノ
  代表者ガ今ヤッテ居ラレル自治的統制ノ成
  績ヲ先ヅ見テ、サウシテソレニ依ッテ遞信
  當局ガ不十分ダト思フ時ニ此法案ヲ行フノ
  デアルカ、其邊ガ所謂鷄肋ノ感ガアルノデ
  アリマシテ、恰モ蹠ニ飯粒ノ付イテ居ル感
  ガ私ドウシテモ離レヌノデアリマスガ、遞信
  大臣ニ御伺シタイ點ハ、思切ッテサウ云フヤ
  ウナ首鼠兩端ヲ持サレルヤウナ態度ヲ御止
  メニナッテ、之ヲ國家統制案トシテ出シタ
  以上ハ、此十三條ニ於テ「第七條ノ規定ニ
  依ル」云々ト云ッテ居ル以外ハ、明截卒直ニ
  緊急已ムヲ得ナイカラシテ、大臣ノ獨裁デ
  ヤッテ行クノダト云フコトヲハッキリト言ハ
  レタ方ガ、吾々此法案ヲ審議スル上ニ於テ、
  極メテハッキリ吾々ノ認識ニ來ルノデア
  リマス、隨テ私共ノ意見カラ類推シテ來マ
  スト、此理由書及ビ第一條ノ法案ノ目的、
  及ビ趣旨ヲ御決メニナッテ居ル點ニ於テ、何ト
  言ヒマスカ抽象的ダト思フ、是ハ一般交通
  運輸ノ統制ヲ圖ルト云フノデアリマスガ、
  私ノ意見トシテハ、更ニ進ンデ此非常時ヲ
  利用シテ投機的利潤ヲ得ントスル船主、或
  ハ造船業者、或ハ傭船者、或ハ「シッピング·
  ブローカー」等ノ、サウ云フ思惑賣買ヲ嚴禁
  スルト云フ條文ヲ、此處ニ御入レニナル必
  要ヲ御認メニナルカドウカ、斯ウ云フコト
  ヲ御尋シタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/227

  ---

• 228・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　米窪君ノ御尋ニナリマス
  ル點ハ、大體先程長谷君ニ御答シタコトト
  大差ナイヤウニ存ジマス、私ガ先程長谷君
  ニ御答ヲシマシタヤウニ、本法案ハ其本質
  ニ於テハ國家統制法ニ屬スルモノデアリマ
  ス、今日ノ事態ニ當面致シマシテ、軍事上
  ノ目的ニ對シテモ、產業上ノ目的ニ對シテ
  モ、亦國民生活上ノ目的ニ對シテモ遺憾ノ
  ナイヤウニ、海運事業ヲ指導統制シテ行クコ
  トガ本法ノ目的デアリマス、私ハ傳家ノ寶
  刀ト云フヤウナコトヲ申上ゲテ居リマセヌ
  ガ、海運業者ガ擧國一致ノ精神ヲ以テ荷主
  ノ團體ト出來ルダケ自制シテ、積荷ノ分配、
  運賃ナドニ於テ統制ヲ保ッテ行カレルナラ
  バ、ソレハ洵ニ望マシイコトデアル、ケレ
  ドモ先程申上ゲマシタヤウニ、業者ノ爲ニ
  ノミ海運業ガ存在シテ居ルノデハナイノデ
  アッテ、國家國民ノ爲ニ存在シテ居ルノデア
  リマスカラ、業者ノ見地カラ見テ適當ト思
  フ妥協モ、國家國民ノ見地カラ見テハ適當
  デナイコトガアリマスカラ、サウ云フヤウ
  ナ事態ニ對シテ、國家國民ノ大處ニ立ッテ、
  海運業ヲ指導統制シテ行カネバナラヌ場合
  ガ多イノデ、此法案ハ假令業者ガ自主的
  統制ヲ致シマシテモ、此法案ノ必要ハアル
  ト云フヤウニ申上ゲタノデアリマス、併シ
  業者ガ愛國心ニ依ッテ大同團結シテ、出來ル
  ダケ日本ノ海運業ノ發展ニ貢獻シテ行カウ
  トスル其精神ハ、之ヲ沮喪セシムベキモノ
  デナク、之ヲ尊重シテ、出來ルダケ斯ウ云フ
  時局ニ於テハ、ソレヲ活躍セシメルト云フ
  コトガ必要デアルト私ハ考ヘテ居リマス、
  併シナガラ此法律案ガ規定シテ居ル範圍ハ、
  御承知ノ通リ相當廣イ範圍デアリマシテ、
  單ニ船主ト荷主ト云フヤウナモノノ協調ダ
  ケデ解決ノ出來ル問題ニ限ラレテ居リマセ
  又、廣ク或ハ命令航路變更ノ問題モアリマ
  ス、或ハ造船事業ノ指導統制ノ問題モアリ
  マス、又外國船ノ輸入ノ間題モアリマシテ、
  斯樣ナ問題ノ全部ニ亙ッテ、國家存立ノ目
  的ニ從ッテ之ヲ指導統制シテ行クト云フ爲
  三、ドウシテモ特殊ノ統制法ヲ必要トス
  ル、此故ニ本法ノ制定ヲシナケレバナラナ
  イト考ヘテ居ルノデアッテ、本法律案ハ其本
  質ニ於テハ國家統制法デアル、若シ不當ナ
  ル運賃ヲ要求スル者ガアレバ、當然國家存
  立ノ目的ニ從ッテ、政府ガ之ヲ適當ニ矯正シ
  テ行クベキ其權限モ是デ認メラレテ居ルノ
  デアリマス、又國家ノ要求ヲ無視シテ、特
  殊ノ少數ナル者ガ、此事變ニ乘ジテ暴利ヲ
  貪ラントスルナラバ、斯ノ如キ者ヲ取締リ、
  必要デアレバ處罰スルコトノ出來ルヤウニ、
  此法律ハ制定サレテ居ルノデアリマシテ、今
  日ノ事變ノ下ニ於テ、國家ノ存立、國民生活ノ
  安定ト云フコトノ爲ニ、此法律案ハ十分ニ發
  動スルコトノ出來ル性質ヲ有ッテ居ルノデ
  ゴザイマス、隨テ米窪君ノ御心配ニナルヤウ
  ニ、此法律案ハ何處ニ精神ガアルカ明瞭デ
  ナイト云フヤウナ、御心配ハナサラナイヤ
  ウニ願ヒタイノデアリマス、其點ニ於テハ
  米窪君ガ今御話ニナッタト同ジ精神デ、十分
  國家ノ大處カラ海運業ノ全般ヲ指導統制ス
  ル考デ居リマス、ソレカラ此五條トカ六條ト
  カ云フヤウナ所ニ書イテアル事柄ノ重要性
  ハ、先程申上ゲタヤウニ、是ハ軍事上ノ目
  的或ハ貿易國策上ノ目的ニ從ッテ、時ニ
  ハ航路ノ變更モ必要デアル、時ニハ船會社ニ
  命ジテ其欲セザル人、又ハ貨物ヲ運送サセ
  ルコトモ必要デアル、而モソレハ機宜ヲ失
  シナイヤウニシナケレバナラナイノデアリ
  マスカラ、是ハ明白ニ主務大臣ノ決定事項ニ
  ナッテ居ルノデアリマスガ、併シ時間ガ許ス
  ナラバ、其機宜ヲ失スルコトガナケレバ、
  出來ルダケ其關係者ノ意向ヲモ徵シ、其執
  行ニ過チナキヤウニスルト云フコトハ、是
  ハ私ハ爲政者トシテ當然ノ心掛デナケレバ
  ナラナイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
  サウ云フコトヲ諮問スル爲ニ機宜ヲ失スル
  虞ハナイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/228

  ---

• 229・米窪滿亮

  ○米窪委員　遞信大臣ノ御答辯ヲ伺ッタノ
  デスガ、第一條カラ最後マデノ條文ヲ精讀
  シマシテ私ノ得タ感ジハ、ヤハリ立法者ノ
  「イデオロギー」ガ國家統制法トシテ一貫シ
  テ居ラナイト云フ認識ヲ、ドウシテモ大臣
  ノ言ハレタヤウニ是正出來ナイノデアリマ
  スガ、ソレハ見解ノ相違デアリマスカラ、
  其點ハ此程度デ打切リマス、唯先程同僚委
  員カラ屢〓御論議ノアッタ所謂十八條、十九
  條、法人ニ對スル處罰ノ點、及ビ其他ノ條
  文ニ瞥見サレル色々ノ點ヲ拾ッテ來マスト、
  ドウシテモ船主ニ御遠慮ナサリナガラ、此
  法律案ヲ施行サレルガ如キ感ヲ懷イテ已マ
  ナイノデアリマス、是ハ私ノ感ジデアリマ
  スルカラ、此點ハ御答辯ヲ御願スルマデモ
  ナイ、次ノ質問ニ入ルコトニ致シマス、遞
  信大臣ハ先程私ガ申上ゲタ業者ノ大會ニ於
  テ、或ハ昨日ノ本會議ニ於テ、又本日ノ此
  委員會ニ於テモ、海運業ト國民生活ノ安定ト
  ノ極メテ密接ナル關係ニ付テ、御關心ヲ拂ッ
  テ居ラレルガ如ク拜察スルノデアリマシ
  テ、洵ニ吾々トシテモ感謝シテ居ル次第デ
  アリマスガ、此法案ガ法律トナッテ實施セ
  ラレル曉ニハ、第五條、第六條ノ點カラ考
  ヘテモ、所謂支那事變ニ要スル、軍事上ニ
  要スル船ノ徵發ノ爲ニ、當然穴ノアク所ノ
  近海へ、遠洋ヘ行ッテ居ル日本ノ船ヲ呼寄
  セテ、其穴ヲ塞グト云フコトヨリ外ニハ方
  法ハナイ、勿論遞信省ハソレマデニ至ル過
  程ニ於テ、臨時ノ措置ト致シマシテ、變態
  輸入船及外國船ノ沿岸貿易ヲ許シテ居リマ
  スルガ、是ハ今マデノ實績ニ徵シテ、豫定
  ノ如ク多ク期待スルコトノ出來ナイ實情ニ
  在ルノデアリマス、勢ヒ遠洋ヘ行ッテ居ル
  日本ノ船舶ヲ引上ゲテ來ナケレバナラナイ
  ト云フコトニナルノデアリマス、サウナレ
  バ先程カラシテ度々遞信大臣ガ仰セラレ
  ク、或ハ小野管船局長ノ仰セラレタヤウ
  十、例ノ優秀船ヲ以テ多年ノ競爭ノ結果贏
  チ得タ所ノ紐育航路、濠洲航路、印度航路
  等ノ航權ヲ、甚ダ殘念ナガラ失フノヂヤナ
  イカ、外國ノ運輸業者ニソレヲ讓ルト云フ
  コトニナル危險ガ多イ、之ニ對シテハ遞信當
  局ハ勿論之ニ對スル對應策ヲ御持チニナッ
  テ居ルト思フノデアリマスガ、併シ其對應
  策タルヤ所謂破天荒ノ、天來ノ妙案ガ出テ
  來ル譯デハナイノデアリマシテ、結局ソレ
  ハ私共ノ推察スル所ニ依レバ、第四條デ規
  定シテ居ル所ノ、此法案ノ施行サレル期間
  ダケ、先程遞信大臣ノ仰セラレタ所ニ依レ
  が十六七年ノ船齡以下ノ外國船ノ輸入
  ヲ特ニ許スト云フ一ツノ方法、モウ一ツハ
  世界大戰ノ時ニ、旣ニ日本ノ海運界ニ顯著
  ナル事象トシテ現ハレタ所ノ外國船ノ
  「チャーター」、外國船ノ傭船、此二ツノ途ヨ
  リ外ニ方法ハナイト思フノデアリマス、所
  ガ外國船ヲ購入スルト云フコトハ、船齡ヲ
  十六七年以下ト致シマスルカ、十五年以下
  ト致シマスルカ、吾々ハ十年以下位ノ船齡
  トシナケレバナラナイト思ッテ居リマスガ、
  サウナッテ來ルト自ラ購入スル外國船ニ制
  限ガ起ル、而モ吾々トシテハ噸數ノ制限
  速力ノ制限-之ニ對シテモ遞信大臣ハ言
  ハレテ居ナイガ、速力ハ姑ク措クトシマシテ
  モ、噸數ニ於テハ多少ノ制限ヲ要スルコト
  ニナルノデハナイカト思ッテ居リマス、隨
  テサウナルト購入スベキ外國ノ船舶ノ制限
  ガ自ラ定マルノデアリマシテ、隨テ幾許ノ
  外國船ガ購入サレルカ、非常ニ疑問デアリ
  マス、殊ニ先程遞信當局ノドナタカガ仰セ
  ラレタ如ク、此船腹ノ不足ハ世界的ノ現象
  デアリマシテ、豈ニ獨リ日本ノミデハナイ
  ノデアリマス、然ラバ外國船ヲ買フト云ッ
  テモ、中々容易ニ制限サレタル所ノ船舶ガ
  手ニ入ラヌト云フコトハ、是ハ想像ニ餘リ
  アル、而モ無理ニ之ヲ買ハウトスレバ、必ズ
  船價ハ吊上ゲラレルコトニナリマシテ、算
  盤ガ採レナイ、隨テ業者ハ買ヘナイ、買ヒ
  タクテモ手ガ出ナイ、斯ウ云フコトニナル
  ノデアリマシテ、外國船ヲ輸入スルト云フ
  方法ハ、私ハ是ハ多クヲ庶幾スルコトハ出
  來ナイ、隨テ第二ノ方法トシテハ、外國ノ
  船ヲ傭船スルコトニナルノデアリマスル
  ガ、是ハ勢ヒ傭船料ガ船價ノ場合ト同ジヤ
  ウニ非常ニ吊上ゲラレルノデアリマス、現
  ニ世界大戰ノ時ニ、英國ハ總噸數二千七百
  万噸ノ船ヲ持ッテ居リマシテ、而モ軍事上ノ目
  的、或ハ聯合軍ノ用途ノ爲ニ徵發サレテ、僅
  ニ六百七十万噸、卽チ約四分ノ一ダケガ英國
  ノ本國ト植民地トヲ連絡スル爲ニ使ッテ居タ船
  舶デアリマス、支那事變ガドノ程度ニ進展ス
  ルカ、誰モ豫斷ハ許シマセヌガ、恐ラク私
  ハ吾々ノ想像以上ニ永引クダラウト云フ
  覺悟ヲ持ッテ居リマス、隨テ日本ノ船舶ハ
  所謂軍事ノ爲ニ相當ノ噸數ガ取ラレルト云
  フコトヲ吾々ハ豫期シナケレバナラナイ、
  此時ニ於テ、先程申上ゲタ外國ノ船ヲ
  「チャーター」スル時ニ於テ、傭船料ガ非常ナ
  高イ値段ニ吊上ゲラレルコトトナル、勿論
  船舶管理委員會ガ何レ傭船料ヲ決定サレル
  ダラウト思フガ今日ニ於テハ船主其他ノ業
  者ガ自治的ノ統制ニ依ッテ傭船料ヲ決定シ
  テ居リマス、今日ハ大型船ニ於テ、重量噸七
  圓五十錢ト云フコトニナッテ居リマスルガ、
  恐ラク斯ウ云フ値段デ以テ將來外國ノ傭
  船ハ出來ナイト思フ、此場合ニ於テ蒙ル業
  者ノ苦痛ハ非常ナルモノデアリマスルガ、
  先程小野管船局長ハドナタカノ質問ニ對シ
  テ、大正六年當時ノ臨時船舶管理令、勅令
  ニ基ク此管理令ニ於ケル補償ハ、此本法ニ
  於テハ考ヘテ居ラナイト云フコトデアリマ
  スルガ、私ハ少クトモ船主ニ對スル補償
  ハ、此上廻リスル傭船料ノ差額ニ對シテハ、
  政府ガ之ヲ補償シテヤル必要ガアルノデ
  ハナイカ、若シソレヲシナイ場合ニ於テハ、
  日本ノ航權ハムザ〓〓ト外國ノ海運業者
  ニ之ヲ讓ラザルヲ得ナイ、其結果ドウナル
  カト云フト、所謂貿易外ノ海外收入ガ減ツ
  テ參リマシテ、サウシテ軍事ノ爲ニ必要チ
  ル器材ハ勿論、國內產業ノ爲ニ必要ナル資
  材ノ輸入ガ杜絕スル、隨テソレガ爲ニ貿易
  ハ停頓シマシテ、國民生活ノ安定ハ著シク
  ソレガ爲ニ脅威ヲ感ズルコトハ必至ノ成行
  デアリマス、隨テ船舶管理法ハ春秋ノ筆法
  ヲ以テ論ズルナラバ、船舶管理法ノ出現ノ
  爲メ國民生活ハ不安ニ陷ルト云フコトニナル
  ノデアリマスガ、斯ル現象ノ起ラザルコト
  ハ、タビ〓〓遞信大臣カラシテ念願サレル所
  デアルト云フコトニ伺ッテ居ルノデアリマ
  スルガ、其場合ニ於テ今私ノ申上ゲマシタ
  二ツノ方策ノ外ニ、遞信當局ハモット良イ
  御對策ヲ御持チニナルノデアルカ、更ニ
  第二ノ點トシテ、他ニ名案ガナクテ外國
  船ヲ傭船スルコトガ必要ダト云フコト
  ニナッタ場合ニ於テ、傭船料ガ非常ニ高ク
  ナッタ時ニ、其差額ニ對シテ、政府ハ船主
  ニ對シテ補償サレル御考デアルカドウカ、
  此點ヲ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/229

  ---

• 230・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　米窪君ノ御心配ハ一應御
  尤デアリマスガ、御存ジノ通リ目下建造シ
  ツヽアル船舶モ、本年ノ下半期カラ來年ノ
  上半期ニ掛ケテ、約三百艘五十万噸ニ達ス
  ルモノガ增加致ス譯デアリマス、ソレ等ノ
  新造船モ海運ノ要求ヲ充ス上ニハ、相當ノ
  效果ヲ擧ゲルコトデアラウト考ヘマス、又
  先程申上ゲマシタヤウニ、成ベク世界戰爭
  中ニ造船サレタヤウナ粗製ノ船舶、外國ノ
  持餘シテ居ルヤウナモノヲ日本デ買入レル
  コトハシタクナイ、ソコデ十六七年以內ノ
  船齡ニ屬スルモノヲ成べク買入レルヤウニ
  シタイノデアリマスガ、御話ノ如クサウ云
  フヤウナ比較的優秀ナ船舶ヲノミ輸入スル
  コトデハ、十分ニ要求ヲ充シ得ナイ虞ガア
  リマス、隨テソレヲ補フ爲ニ一層古イ船ヲ
  輸入スルコトモ必要デアルダラウト思ヒマ
  ス、其一層古イ船ハ、是ハ或ル時期ニ達シ
  マスレバ解體ヲスルト云フヤウナコトヲ條
  件ニシテ輸入ヲサセマスルナラバ、從來ノ
  方針ト矛盾スルコトナクシテ、或ル程度ニ
  船腹ノ缺乏ヲ補フコトガ出來ルト思ヒマ
  ス、是等ノ方法ニ依リマシテ、今日ノ海運
  業ノ要求ニ應ジテ行クヤウニ、出來ルダケ
  努力ヲシタイト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/230

  ---

• 231・牧山耕藏

  ○牧山委員長　成ベク質問應答等ニ重複ニ
  涉ラザルヤウニ、旣ニモウ間ハレ答ヘラレ
  タ點ニ付テハ、ドウゾ重複ヲ避ケラレルヤ
  ウニ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/231

  ---

• 232・米窪滿亮

  ○米窪委員　重複ハ避ケテ居ル積リデアリ
  マスガ、尙ホ注意致シマス-モウ一ツ遞
  信大臣ニ御伺シタイ點ハ、マダ同僚委員カ
  ラ御質問ノナイ點デアリマス、是ハ前囘ノ
  議會デ船員法ノ審議ノ時ニモ御尋シタノデ
  アリマスガ、此船舶管理法ノ立法ノ御趣旨
  カラ言ッテモ、日本ノ國旗ヲ揭ゲテ居ル船
  ニハ、當然日本ノ船員ヲ乘セル原則ヲ確立
  スルノガ當リ前ノコトデアリマス、所ガ本
  法及ビ附則ノ文書ニハ、何等其點ガハッキリ
  ト書イテアリマセヌ、又遞信大臣ノ御說明
  ニモ其點ニハ觸レテ居ラレマセヌガ、是ハ
  此管理法案ノ目的ヲ實現スル爲ニハ重大ナ
  ル要素ノ一ツデアルト考ヘテ居リマス、此
  點大臣ハ御考ニナッテ居ルカドウカ伺ヒタ
  イ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/232

  ---

• 233・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　只今ノ米窪君ノ御尋ノ點
  ハ、私モ全ク同感ニ思ウテ居リマス、ソコ
  デ一方デ船員ヲ出來ルダケ養成モシ、又船
  員ノ數ノ繰合セモ致シマシテ、サウシテ一
  般ノ日本船員ノ乘ッテ居ナイモノニ、ソレ
  ヲ乘組マシムルト云フ必要ヲ認メテ居リマ
  ス、此第九條ニ「乘組員ノ保護若ハ整備」ト
  云フコトガアリマスガ、此整備ト云フノハ
  ソレヲ意味シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/233

  ---

• 234・米窪滿亮

  ○米窪委員　大臣ニ對スル質問ハ是デ打切
  リマシテ、小野政府委員ニ御尋ヲシタイト
  思フノデアリマス、第三條ト第八條ハ事實
  上禁止スル御考デアルカ、政府案ニハ制限
  スルヤウニ書イテアルノデアリマスガ、大
  正六年ノ戰時船舶管理令ニ於テハ禁止スル
  ト云フコトニナッテ居リマスケレドモ、法
  ノ運用ニ依ッテ事實ハ禁止スル御考デアル
  カドウカト云フコトヲ御尋シタイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/234

  ---

• 235・小野猛

  ○小野政府委員　第三條ノ外國へノ讓渡、
  此場合ハ實ハ戰局ノ變轉ノ如何ニモ依リマ
  スルガ、戰局ノ進ムニ從ヒマシテ禁止シナ
  ケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、第八
  條ニハ禁止スル規定ガナイヤウデアリマス
  ルガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/235

  ---

• 236・米窪滿亮

  ○米窪委員　私ノ說明ガ足ラナカッタカモ
  知レマセヌガ、日本ノ船舶ヲ所有シ得ザル
  者カラシテ造船業者ニ造船ノ註文ガアッタ
  場合ニハ、其順位ヲ變更スル程度ニ止メテ
  置クカ、或ハ其註文ヲ受ケルコトヲ禁止サ
  レルト云フ御考デアルカ、斯ウ云フ意味デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/236

  ---

• 237・小野猛

  ○小野政府委員　分リマシタ、今ノ戰局ノ
  變轉ト造船業ノ狀況ヲ見マシテ、順位ノ變
  更-要スルニ外國ノ註文船ハ後〓シニシ
  ロト云フトキハ、餘裕ノアル場合ハ左樣ニ
  致シタイト思ヒマスガ、戰局ノ進展ニ從ツ
  テハ禁止スルコトニナルダラウト考ヘテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/237

  ---

• 238・米窪滿亮

  ○米窪委員　第四條ニ但書トシテ「命令ヲ
  以テ定ムル船舶」ト云フコトガアルノデア
  リマスガ、是ハドウ云フ船デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/238

  ---

• 239・小野猛

  ○小野政府委員　是ハ極ク小型ノ例ヘバ二
  十噸未滿ト云フヤウナ船ニ付テハ、此制限
  ノ外ニ於テモ事實上實害ナイト心得テ、左
  樣ナ船ヲ規定シテアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/239

  ---

• 240・米窪滿亮

  ○米窪委員　第七條ニ於テ玆ニ色々決メテ
  アルノデアリマスガ、之ニ船體保險料ノ制
  限ガナイノデス、アノ支那事變ノ爲ニ、所
  謂上海其他ノ附近ガ純戰爭區域地帶デアル
  ヤウニ保險業者ノ間ニ扱ハレテ居ッテ、所謂
  戰時保險料ニ準ズル保險料トシテ〓騰ヲ續
  ケテ居ルノデアリマス、サウシテ將來益々
  危險性ガアルノデアリマスカラ、是ハ此管
  理法ノ中ニ保險料ノ制定或ハ制限ト云フコ
  トヲ含マセルカ否カト云フコトガ第一ノ
  點更ニ進水セザル船舶デ「キール」船架ニ
  アル船ガ、甲ノ所有者カラ乙ノ所有者ニ思
  惑賣スルコトガ現在アルノデアリマスガ、
  サウ云フコトヲ管理法デハ抑ヘル積リデア
  ルカ、此處分ニ付テ御伺ヒ致シタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/240

  ---

• 241・小野猛

  ○小野政府委員　保險料ノ點ニ付テハ觸レ
  テ居ラナイノデアリマス、是ハ商工省ノ所
  管ニ屬スルコトデアリマスガ、實際的ニ申
  セバ米窪君ノ御趣意ハ御尤ト思ハレマス、
  實ハ私ノ方デモ關係官廳ト能ク協調致シマ
  シテ、保險料ニ付テモ適當ニ考慮ヲ致ス積
  リデアリマス、尙ホ是ノミデハ運賃、傭船
  料等ノ公正ヲ期シ難イト思ヒマスノデ、例
  ヘバ商工省方面ニ働キ掛ケマシテ、荷主ノ
  方面ノ自制ヲ求メルト云フ必要モ出テ來ル
  ノデアリマス、此法案ハ船舶ヲ直接目的ト
  致シテ居リマスノデ、其他ノ點ニ付キマシ
  テハ適當ニ行政的ノ考慮ヲ拂ヒタイト思ヒ
  マス、ソレカラ思惑買ノ點デアリマスガ、
  是モ非常ニ御尤ナ御話デアリマシテ、私共
  モサウ云フ點ニ付テハ米窪君以上ニ憤慨シ
  テ居ル一人デアリマス、ソレニ付キマシ
  テ或ハ船舶製造ノ順序ノ變更、其他船舶ノ
  製造ニ關シ必要ナル命令ト云フヤウナコト
  ノ運用ニ依ッテ、サウ云フ單ニ權利ノ賣買、
  「キール」ヲ据付ケタモノノ賣買ト云フヤ
  ウナ、サウ云フモノト思ハレルモノニ對シ
  テハ、順序ヲ變ヘルト云フヤウナ方法ニ
  依ッテ、或ル程度ノ權力ノ作用ガ出來ルコ
  トト考ヘテ居ルノデアリマス、御趣意ハ極
  メテ御尤デアリマスノデ、此點ニ付キマシ
  テハ特別ノ考慮ヲ拂ヒタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/241

  ---

• 242・米窪滿亮

  ○米窪委員　私ノ方ニ直接關係ノアル第九
  條之ニ付キマシテハ同僚山崎君カラ洵ニ
  懇篤深切ニ御質問ガアリマシタシ、委員長
  ノ御注意モアリマスカラ、重複ヲ避ケテ私
  カラハ質問ヲ致シマセヌ、唯此第九條ニ付
  テ私トシテ御質問シタイ點ハ、日本海員組
  〓海員協會ト云フ海員團體ト、船主協會
  ト云フ船主ノ團體トノ間ニ、旣ニ十二三年
  ノ歷史ヲ以テ海事協同會ト云フ所ノ、勞働
  條件ノ協定竝ニ海上ニ於ケル紛議ノ裁定、
  要スルニ之ヲ一言デ言ヒマスレバ、健實ナル
  海運ノ發展ヲ策スル爲ノ產業協力精神ガ現
  ハレテ居ル協定機關ガアルノデアリマス、
  事船員ニ關スル限リハ總テ此機關ニ依ッテ
  決定ヲシ、而モ年々相當ノ額ノ補助金ヲ遞
  信省カラ戴イテ、半バ公認サレテ居ル所ノ
  機關デアリマスガ、先程小野政府委員ノ言
  ハレル危險手當、或ハ事變ノ爲ニ死亡シタ
  船員、或ハ負傷シタ船員ニ對スル補償、家
  族ノ慰安等ノ問題ハ、旣ニ一部此機關ニ於
  テ決定サレテ居ルモノモアルノデアリマス、
  併シ尙ホ此法案ノ精神ニ副フ爲ニハ不十分
  ナルモノガアルノデアリマスガ、遞信御當
  局ハ此機關ヲ有效ニ活動サセルヤウニ、何
  等カノ示唆、御指導ヲナサレテ、サウシテ
  此機關デ決定サレタモノヲ以テ、第九條ニ
  盛ラレテ居ル精神ノ一部ノ實現材料トサレ
  ル御考デアルカドウカ、此點ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/242

  ---

• 243・小野猛

  ○小野政府委員　御趣旨ハ御尤デアリマス、
  海事協同會ハ運賃、傭船料ニ關シテ、海運自
  治聯盟ガ決メルト同ジヤウナ作用ヲ、勞働條
  件ニ付テ船主ト勞働者トノ間ニ於テ決メテ居
  ルノデアリマス、此決メタモノニ付テ、
  大臣ノ先程申上ゲマシタヤウニ、自主的ナ
  定メヲ尊重スルト云フ精神ハ、此法ヲ一貫
  シタ主義デアルト思フノデアリマス、左樣
  御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/243

  ---

• 244・米窪滿亮

  ○米窪委員　次ニ第十二條ニ於キマシテ、
  船舶職員法ノ關係デ、職員ノ定員或ハ免狀
  ノ種類ニ付テ、命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲
  スト云フコトガアル、是ハ船ニハ一定ノ船
  舶職員ナルモノガアル、然ルニ一ツノ船ニ
  ハ規定以上ノ乘員ガ乘ッテ居ル、所ガ他ノ船
  ニハ其規定ニ達セザル程ニ缺乏シテ居ルト
  云フ場合ニ於テ、其甲ノ船カラ乙ノ船ヘ船
  舶管理法ガ命令ヲ以テ分配移乘サセルト云
  フ御趣旨ノヤウニ私ハ推察シテ居ルノデア
  リマスガ、此精神ハ普通船員ノ場合ニモ適
  用サレル御考デアルカ、卽チ甲ノ船ニ定員
  以上ノ者ガ乘ッテ居ル、或ハ陸上ニ於テ其
  會社ノ豫備員トシテ持ッテ居ル場合ニ、普通
  船員ノ足ラザル會社或ハ船ニ、此餘ッテ居
  ル普通船員ヲ分配スルコトヲ遞信當局ハ御
  考デアルカ、第三ニ船舶職員ガ足ラザル場
  合ニ於テハ、是ハ今ノ方法デ餘分ニ乘ッテ
  居ル船カラ持ッテ行ク-融通スルコトニ
  ナルノデアリマスガ、而モソレダケデハ船
  ヲ動カスニ足ラナイコトハ、此處ニ御列席
  ノ皆樣ハ御承知デアラウト思フ、隨テ其
  場合ニ於テハ、是ハ所謂船船職員トシテノ
  資格ガナクテモ、所謂免狀ガナクテモ、經
  驗ガアル普通船員ヲ代理トシテ使ヘバ使へ
  ル譯デアリマス、卽チ水夫長、火夫長等ヲ
  船舶職員法規定以外ノ運轉士或ハ機關士ニ
  使ヘバ使ヘル、サウ云フ方法モアルノデア
  リマシテ、其方法ヲ實施スルヤウニ、遞信
  當局ハ此法案ヲ通ジテ御指令サレル積リデ
  アルカドウカ、是等ノ點ヲ伺ヒタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/244

  ---

• 245・小野猛

  ○小野政府委員　甲ノ會社ニ澤山ノ船員ヲ
  持ッテ居ッテ、乙ノ會社ニ少イト云フ場合
  ニ、融通スルカドウカト云フ問題デアリマ
  スガ、是ハ人ノ就職ヲ强制シテ變更サセル
  コトデアリマシテ、極メテ困難ナコトデア
  リマスルガ、萬已ムヲ得ザル船員逼迫ノ場合
  ニ於キマシテハ、サウ云フコトモ考ヘテ居
  ルノデアリマス、ソレハ寧ロ第九條ノ乘組
  員ノ整備ト云フ方面デ考ヘテ居ル積リデア
  リマス、ソレカラ今ノ免狀ヲ持タザル船員
  ヲ、一時代理トシテヤル心構ヘガアルカド
  ウカト云フコトデアリマスガ、御說ノ通リ
  ニ併シ之ヲ甚ダ濫用スルコトハ如何カト思
  ヒマスガ、先程モ漢那サンカラ御質問モア
  リマシタガ、現在陸海軍ニ船員デ登用セラ
  レタ者モ相當多イノデアリマス、非常ノ場
  合トシテ或ル程度マデ經驗ニ徵シテ、經驗
  アル者ヲ免狀ヲ持ッタ者ト同ジ職ニ就カセ
  ルコトハ已ムヲ得ナイコトカト思ヒマスノ
  デ、只今色々具體的問題ニ付テ考究致シテ
  居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/245

  ---

• 246・米窪滿亮

  ○米窪委員　最後ノ質問ヲ致シマス、管理
  委員會ノ構成ニ付テデアリマスルガ、此官
  制ノ要項ニ依リマスト一一十五名トナッテ居
  リマス、遞信大臣モ、先程其人選ニ付テハ關
  係官廳ノ官吏、ソレカラ船主、貿易業者、
  貴衆兩院議員、斯ウ云フ御話デアルノデア
  リマシテ、而モ先程板谷委員ノ御希望デアッ
  タカ、所謂大手筋ノ船主、卽チ大キナ會社
  ノ船主ノミニ限ラズ、中小船主ノ代表者モ
  入レルト云フコトニナレバ、勢ヒ二十五名
  デハ分配シキレナイト思フ、故ニ此二十五
  名ヲ若干名增加サレル必要ガアルト私ハ思
  フノデアリマスガ、遞信御當局ハ飽マデ二
  十五名デナケレバナラナイト云フ御考デア
  ルカ、更ニ私ハ先程申上ゲタ海事協同會ニ
  於テ、船主、船員ガ產業協力ノ下ニ過去十
  二三年協力シタト云フ歷史カラ考ヘマシ
  テ、殊ニ此九條ニ於テハ船員ニ關スル重大
  ナルコトヲ審議スベキ場合モ起ルコトヲ
  豫想シテ、私トシテハ此管理委員會ニハ大
  臣ガ仰セラレタ以外ニ、卽チ海員團體ノ代
  表者モ御入レニナルコトガ、本法ヲ圓滿ニ
  遂行スル所以デハナイカト思ヒマスノデ、
  此二ツノ點ヲ大臣ニ御質問シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/246

  ---

• 247・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　此委員會ヲ組織スル所ノ
  構成ニ付キマシテハ、色々今〓究シテ居リマ
  スガ、出來ルダケ各方面ノ要求ヲ反映スル
  ヤウニシタイト思ッテ居リマス、又二十五名
  トナッテ居リマスガ、特殊ノ問題ニ對シテ
  ハ臨時委員ヲ囑託シテ、其意見ヲ徵スル必
  要ガアラウト考ヘテ居リマス、今ドウ云フ
  種類ノモノヲ何人入レルカト云フコトハ、
  此處デハ申上ゲ兼ネマスルケレドモ、各方
  面ノ要求ヲ十分ニ反映シ得ルヤウニ構成シ
  タイト思ッテ〓究致シテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/247

  ---

• 248・米窪滿亮

  ○米〓委員　私ノ質問ハ終リデアリマスル
  ガ、此際委員長ニ御願シタイノデアリマス
  ガ、速記ヲ止メテ戴キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/248

  ---

• 249・牧山耕藏

  ○牧山委員長　速記ヲ止メテ下サイ
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/249

  ---

• 250・牧山耕藏

  ○牧山委員長　小山亮君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/250

  ---

• 251・小山亮

  ○小山委員　時間ガアリマセヌノデ、簡單
  ニ一ツダケヲ遞信大臣ニ御質問ヲ致シマ
  ス、只今ノ質問ノ中ニモアリマシタガ、船
  舶管理委員會ニ關スル問題デアリマスガ、
  船舶管理委員會ノ使命ハ、唯大臣ノ監督ノ
  下ニ其諮問ニ應ジ、船舶ノ管理ニ關スル重
  要事項ヲ調査審議スルコト、是ダケガ船舶
  管理委員會ニ與ヘラレタ權限ナノデアリマ
  ス、此權限ヲ更ニ擴大ヲシマシテ、國策遂
  行ノ第一線ニ立ッテ實戰ニ參加スルダケノ
  力ヲ與ヘル團體ト、之ヲ爲サル所ノ御意志
  ガアルカドウカト云フコトヲ伺ヒタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/251

  ---

• 252・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　只今ノ所デハ、此委員會
  ハ先程申上ゲマシタヤウニ、第七條ノ事項
  ニ關シテハ決議ヲスルコトニナッテ居リマ
  スガ、其他主務大臣ニ於テ必要ト認メマス
  事項ニ付テ諮問ニ應ズルコトトナッテ居リ
  マス、更ニ其上ニ必要ト認ムル事項ニ付
  テ、船舶ノ管理ニ關スル事項ニ付テ、主務
  大臣ニ建議スルコトガ出來ルト云フヤウニ
  ナッテ居ルノデアリマス、サウ云フ程度ニ
  於キマシテ、主務省ガ本法律ヲ執行致シマ
  ス場合ニ協力ヲスルト云フコトニナッテ居
  ルノデアリマシテ、ソレ以上ノ範圍ニ亙ッ
  テ主務省ト協力スルト云フヤウニスルコト
  ハ、却テ此統制ノ精神ニ基イテ事務ヲ執行
  シテ行ク上ニハ適當デナイト考ヘテ居ルノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/252

  ---

• 253・小山亮

  ○小山委員　先程大臣ハ今囘ノ事變ハ從來
  ト全ク變ッテ、從來曾テ見ザルヤウナ實情ノ
  下ニ現下ノ海運界ガ置カレテ居ル、其只今
  ノ實情ノ中ニ於テ、サウ云フヤウナ從來曾
  テ見サル所ノ對策ヲ執ラナケレバナラヌト
  仰シヤッタヤウニ私ハ伺ヒマス、然ラバ此
  委員會ノ構成ニ付キマシテモ、玆ニ示サレ
  タヤウナ單ナル遞信省ノ諮問機關デアル、
  大臣ノ諮問機關デアッテ、如何ニ二十五人、
  或ハソレ以上ノ人達ノ中ニ優秀ナ意見ヲ
  持ッテ居リマシテモ、或ハ手腕ヲ持ッテ居リ
  マシテモ、大臣ニ對シテ唯獻言ヲスル位ノ
  コトガ、與ヘラレタル唯一ノ權限デアル
  ト云フコトニナルナラバ、私ハ是ハ一片ノ
  形式ニ過ギナイノデハナイカ、斯ウ思フノ
  デアリマス、卽チ遞信省ガ此船舶ノ所謂强
  制的ナ管理ヲ行ハントスル前提トシテ、各
  船主其他各方面ノ者ノ摩擦ヲ防グ爲ニ、或ハ
  其機嫌ヲ損セヌガ爲ニ形式的ナ委員會ヲ
  作ツテ、サウシテ其爲サントスル所ノ本體
  ヲ「カムフラージュ」スルヤウナ意味合ニ於
  テ、作ラレタ所ノ委員會デナイカト私ハ考ヘ
  ル、ドウシテサウ云フコトヲ私ハ言ハナケ
  レバナラヌカト申シマスルト、歐羅巴ノ戰
  爭當時ニ於ケル英吉利及ビ亞米利加ノ海運
  對策ハ、戰爭ト同時ニ直チニ「シッピング·
  ボード」ヲ作リマシテ、サウシテ是ニハ本
  當ノ官民合同ノ實際仕事ニ當ッテ居ル人達
  ヲ以テ一ツノ船舶局ヲ作リマシテ、サウシ
  テ其人達ガ國策ノ第一線ニ立ッテ海運界ヲ
  指導シタ、デアリマスカラ船舶ノ建造ニ於
  テモ、或ハ船舶ノ輸入ニ於テモ、或ハ艤裝
  スル所ノ船用品ニ於テモ、或ハ造船ノ材料
  ニ於テモ、一切ノモノヲ購入スル所ノ幹旋
  モシ、一度海難ガ起レバ、其海難ニ對スル
  對策マデモ其「シッピング·ボード」ガ斡旋ヲ
  シ國民ノ先頭ニ立ッテサウシテ指揮シ、指
  導シ、之ヲ世話スル所ノ親切ナ態度ニ出テ、
  ソコデ初メテ官民一致ノ海運對策ガ完成ヲ
  シタノデアリマス、從來日本ノ官僚ノ方
  方ノヤラレルヤリ方ヲ私ガ見テ居リマスル
  ニ、色々ナ規則ヲ作ッテ能ク監督ハ爲サ
  イマス、又罰ヲ著セルヤウナコトヲ能ク
  克明ニ丹念ニ調査ヲシテ、罰則ヲ拵ヘテサ
  ウシテソレヲ處罰スル、斯ウ云フヤウナコ
  トハ洵ニ水モ漏ラサヌヤウニ能クヤッテ居
  ラルヽノデアリマスガ、併ナガラ業者ニ對
  シテ親切ニ之ヲ指導シ、官吏ガ身ヲ挺シテ其
  業者ノ爲ニ其仕事ヲ助ケル、此仕事ヲ十分ニ
  能率ヲ上ゲサセル爲ニ、官吏ガ自ラ働イテ
  ヤルト云フ風ナ親切ナ態度ニ出タト云フコ
  トハ私ハ嘗テ見ナイノデアリマス、是ハ日
  本ノ官制ガ然ラシメルノカ、或ハ從來ノ官
  吏ニ對スル所ノ一ツノ慣習、或ハ何等カノ
  規定ガ其仕事ヲスルコトヲ妨ゲルノカ知レ
  マセヌケレドモ、恐ラク今日ノヤウナ非常
  時局ニ直面シマシテハ、少クトモ政府ノ役
  人ガ民間業者ノ先頭ニ立ッテ、業者ト共ニ此
  國策遂行ノ實踐ニ乘出スト云フヤウナコト
  迄オヤリニナルノデナケレバ、私ハ到底此
  船舶管理委員會ナント云フモノハ、有終ノ
  美ヲ發揮スルコトガ出來ナイノデハナイカ
  ト思フノデアリマス、若シ政府ノ役人ダケ
  デ、此船舶管理法ニ依ッテ法案ノ十分ナル
  運行ヲサセヨウトスルナラバ、絕對的ナ
  權力ヲ持ツ所ノ法案ヲ御作リニナラナケレ
  バ、到底其豫期ノ目的ヲ達スルコトハ出來
  ナイ此點私ハ米窪君ト同感デアリマス、
  斯ウシタ委員會ヲ作リ、四方八方ニ非常ナ
  ル氣兼ネヲシナガラオヤリニナル所ノ法案
  ナラバ、是ハ時局ガ次第ニ切迫ヲシ、戰局
  ガ次第ニ擴大シテ、更ニ日本ガモット重大
  ナル時局ニ直面スルヤウニナレバ、當然此
  法案ト云フモノハモット强化シ、更ニ今日大
  臣ガ此場合本議場ニ於テ御說明ナサレマシ
  タコトノ全ク反對ニ、絕對的ナ獨裁的ナ法
  律案ト變ラナケレバ、其運行ハ到底滿足ニ
  スルコトガ出來ナイト私ハ思フノデアリマ
  ス、デアリマスルノデ、現在ノ此御作リニ
  ナリマシタル法律案ダケデ十分ナル仕事ヲ
  爲サラウトナサルナラバ、民間カラ或ハ學
  識經驗ノアルヤウナ人達ヲ拔擢シマシテ、
  ソレモ從來ノヤウナ唯大手筋ノ代表的ナ看
  板ダケノ人ヲ委員會ニ入レルノデナクシ
  テ、各船舶會社等ノ船舶課長位ノ、實務ニ
  携ハッテ居ル人達ヲ各方面カラ拔擢ヲシテ、
  サウシテ共人々ノ協力ニ依ッテ、其人達ヲ自
  主的ニ、尙ホ其人達ヲ實踐運動ニマデ乘出
  サセルヤウニ之ヲオヤリニナルノデナケレ
  バ到底所期ノ成果ヲ得ルコトガ出來ナイ
  ト私ハ思フノデアリマスガ、此委員會ノ構
  成ニ付テ、或ハ委員會ノ活動ニ付テ、今日
  ハ是ガ出來ナイトシテモ、將來ハ左樣御考
  慮ナサル所ノ御考ガアルカナイカ、此點ヲ
  私ハ大臣ニ伺ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/253

  ---

• 254・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　非常時局ニ臨ンデ獨リ政
  府ノ役人ダケデナク、民間カラモ人材ヲ求
  メテ、協力シテ時艱ヲ克服スル態度ニ出テ
  ナケレバナラナイト云フ御意見ハ私モ同感
  ニ存ジマス、恐ラク日本ノ行政機構ハ將
  來、只今御話ニナッタヤウナ精神デ、再檢
  討サレル必要ガアルノデアラウト考ヘテ居
  リマス、併シ此本法案ノ適用ニ關シマシテ
  モ、共精神ヲ出來ルダケ實現スルト云フコ
  トニハ努メテ居ルノデアリマシテ、御存
  ジノ通リ世界大戰ノ當時ニ公布サレマシタ
  船舶管理令ニハ、今日御審議ヲ願ッタヤウ
  ナ委員會ナドト云フモノハ全ク存在シテ居
  ナカッタノデアリマス、今囘ノ法案ノ中ニ
  委員會ヲ設ケマシタノモ、決シテ單ニ機嫌
  ヲ取ルトカ云フヤウナ、サウ云フ淺薄ナ意
  味デナシニ、此法案ノ統制ヲ行フニ付キマ
  シテ、官吏ダケノ認識デナク、出來ルダケ
  ソレヲ民間ノ現實ニ其業務ニ關係ノアル者
  ノ意見ヲ徴スルコトニ依ッテ、其認識ヲ出
  來ルダケ正確ニシテ行キタイト云フ精神ニ
  基イテ居ルノデアリマス、ソレカラ尙ホ御
  手許ニ差上ゲマシタ委員會ノ組織ノ第五ニ
  記シテアリマスルヤウニ、此委員會ノ中ニ
  ハ又專門委員ヲ置クコトガ出來ルヤウニ
  ナッテ居リマシテ、此專問委員ハソレ〓〓
  ノ事項ニ付テ民間カラモ特殊ナ知識經驗ヲ
  持ッテ居ル人ヲ求メマシテ、サウシテ專門
  委員トシテ政府ト協力シテ調査モシ、又立
  案モスルト云フコトニシテ貰ヒタイト云フ
  考カラ、斯ウ云フ規定ヲ設ケテ居ルノデア
  リマス、只今小山君ノ御話ニナリマシタ根
  本精神ハ私モ共鳴スルノデアリマスガ、此
  法律案ノ適用ニ於キマシモ、出來ルダケ其
  精神ヲ實現スルヤウニ努力ハシテ居ル積リ
  デアリマス、決シテ形式ダケノ委員會デハ
  アリマセヌ、眞面目ニ此委員會ヲ運用シテ
  行キタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/254

  ---

• 255・小山亮

  ○小山委員　モウ一ツ伺ヒマスガ、只今ノ
  船舶管理法ガ出來テ、サウシテ日本全體ノ
  船舶ガ統制セラレル、管理セラレルト云フ
  風ナコトニナリマスト、隨テ遞信省トシテ
  ノ爲サル其仕事ノ遣方如何ニ依ッテハ、直
  チニ日本全國ノ船舶業者ノ盛衰ニ關シ、或
  ハ又直チニソレガ國家國民ノ利益ノ爲ニ影
  響スル所ハ極メテ大キイノデアリマス、又
  此戰時ニ直面シテ私共ガ認識ヲ新ニ致シマ
  スコトハ、船舶ト云フモノハ唯一ツノ營利
  會社ノ營利機關、營利ノ爲ノ用具デアルニ
  止ラズシテ、一度事變ガ起リ、一度戰端ガ
  開カレルト云フ風ナコトニナレバ、直チニ
  國防ノ一線ニ立ッテ國防上ノ重大ナ用具デ
  アルト云フコトガ、之ニ依ッテハッキリスル
  ノデアリマス、果シテサウデアルトスル
  ナラバ、少クモ管船局ト云フモノガ遞信省
  ノ一局トシテ、サウシテ是ダケノ大キナ事
  ヲスルニシテハ、餘リニ其局ガ小サイノデ
  ハナイカ、其「スタッフ」ガ非常ニ貧弱デハ
  ナイカ、若シ之ヲ本當ニ此目的遂行ノ爲
  ニ、日本全海運業ノ爲ニ本當ニ將來ノ飛躍
  發展ヲ望ムナラバ、少クトモ船舶院ノ如キ
  大キナ堅實ナ組織ニシ、力强イ、サウシテ
  組織的ナ、モット計畫的ナ海運對策ヲ樹テ
  テ御進ミニナルコトガ必要デハナイカト私
  ハ思フノデアリマス、又戰爭ガ長期ニナリ
  マスレバ、長期ニナレバナル程、管船局ノ
  仕事ト云フモノハ重大ニナッテ參リマス、
  少クトモ遞信省內ノ一局トシテ止ムルノデ
  ハナクシテ、是ハ空ト海ト陸トガ、陸ニハ
  鐵道省ガアリ、空ニハ航空省ガ作ラレルト
  云フ風ニナルナラバ、少クトモ海上ニハ獨
  立シタ一省ガ出來テモ宜イ位ニ私ハ思フノ
  デアリマス、故ニ現在ノ管船局ノ仕事ト云
  フモノハ極メテ重大デアリ廣汎デアルト考
  ヘト更ニ今後其極メテ重大デアリ廣汎デ
  アル所ノ仕事ガ、更ニ繁多ニナリ多クナッ
  テ參リマスニ鑑ミマシテモ、ドウシテモ管
  船局ト云フモノハ一ツノ院トカ省トカ云フ
  位ナ大キナ組織ニナラナケレバナラヌト考
  ヘマス、之ニ對シテノ大臣ノ御考ハ如何デ
  アリマセウカ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/255

  ---

• 256・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　現在ノ狀態ニ於キマシテ
  ハ、管船局ハ其責任ヲ果スニ十分ナル機關
  デアルト考ヘテ居リマス、尙ホ本法律案ガ
  愈〓、實施セラレルト云フコトニナリマスレ
  バ、此度追加豫算ニ於テ御協贊ヲ願ヒマシ
  タ程度ニ規模モ擴張ヲ致シマシテ、其要求
  ニ應ジテ行キタイト考へテ居リマス、併シ
  將來次第ニ日本ノ船舶モ增加シ、又船舶行
  政ニ關スル經驗ヲ重ネマシタ上デ、小山君
  ノ御話ニナルヤウニ、現在ノ監督機關ノ機
  構ヲ擴大强化スルコトガ必要ニナルカモ知
  レマセヌガ、ソレハ將來ノ問題トシテ〓究
  致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/256

  ---

• 257・小山亮

  ○小山委員　管船局長ニ一寸御尋ヲ致シタ
  イノデアリマスガ、先程米窪君ノ質問ノ中
  ニ高級船員ノ問題ガゴザイマシタガ、現在
  高級船員ハ非常ニ不足シテ居リマス、ソコ
  デ新シイ高級船員ヲ造ルト云フ對策ガオア
  リデゴザイマスガ、應急ノ問題トシテハ、
  各會社共ニ自分ノ會社專屬ノ船員ヲ持ッテ
  居ルノデアリマス、サウシテ何レモ自分ノ
  會社專屬ノ船員ヲ他ノ會社ニ融通ヲスルト
  云フコトヲシナイノデアリマス、何處マデ
  モ自分ノ豫備員トシテ、其船員ヲ他ノ會社
  ニ配給スルト云フコトハオ互ニシナイノデ
  アリマス、故ニ或ル會社ニハ高級船員ノ豫
  備員ガ多クアリ、或ル會社ニハ全ク不足ヲ
  シテ居ル、ドンナニ探シテモナイト云フ風
  ナ狀態ニナッテ居ルノデアリマスカラ、其
  點ハ管船局ノ方デ十分ニ御調査ヲ願ヒマシ
  テ、此非常時ノ際ニ他ノ會社ト雖モヤハリ
  船員ノ不足ノ所ニハ船員ノ配給ヲシ合フ、
  サウシテオ互ニ相寄リ相助ケ合ッテ、此國
  家ノ難局ヲ乘リ切ルト云フヤウナ心構ニナ
  ルヤウニ、管船局ノ方デ御指導ヲ願ヒタイ
  ト思フノデアリマス、是ハ質問デハゴザイ
  マセヌ、希望ダケデアリマス、以上デ私ノ
  質問ハ終リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/257

  ---

• 258・濱野徹太郎

  ○濱野委員　只今ノ小山君ノ御質問ニ關聯
  シテ一言當局ニ確メタイト思ヒマス、小山
  君ハ御質問中ニ、十三條ノ船舶管理委員會
  ガ諮問機關デアルト云フヤウナ御言葉ヲ御
  用ヒニナッテ御質問ニナッタヤウニ存ジマス
  ガ、私ノ解スル所ニ依ルト、是ハ單ナル諮
  問機關ニアラズシテ、立派ナ決議機關デア
  ルト解シ、ソレニ依ッテ初メテ權威ガアル
  ト考ヘルノデアリマスガ、此點當局ノ確ッ
  カリシタ言明ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/258

  ---

• 259・永井柳太郎

  ○永井國務大臣　第十三條ハ第七條ニ關ス
  ル事項ニ對シテハ決議機關デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/259

  ---

• 260・牧山耕藏

  ○牧山委員長　私一點伺ヒタイト思ヒマス
  ガ、過般黃浦江上デ日〓汽船會社ノ所有汽
  船ガ數隻撃沈サレタヤウデアリマスガ、此
  會社ハ國策遂行ニ基ク特殊ノ使命ヲ持ッテ居
  ル會社デアリマス、是ハ日〓、日露等ニモ
  事例ガアルト思ヒマスガ、斯ウ云フヤウナ問
  題ニ對シテ政府ハドウ云フ處置ヲ御執リニ
  ナルノデアリマスカ、將來起ル問題カドウ
  カ分リマセヌガ、斯ウ云フコトハアリ勝チ
  ノコトデアルト思ヒマスノデ、之ニ對スル
  政府ノ處置方針竝ニ其損害額ガドノ位デア
  ルカモ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/260

  ---

• 261・小野猛

  ○小野政府委員　先日甚ダ遺憾ナガラ日〓
  汽船ノ船舶ガ六艘バカリ黄浦江デ撃沈サレ
  タノデアリマス、其他日〓汽船ノ倉庫、躉
  船ト申シマスガ、河ニ出テ居ル倉庫船ミタ
  イナモノデアリマシテ、ソレ等ノ損害ハ莫
  大ナルモノデアルト思フノデアリマス、船
  舶ダケノ損害モ一千万圓ニ近イト云フヤウ
  ナコトニ聞及ンデ居ルノデアリマスガ、其
  他ノ損害ヲ合セ、尙ホ日〓汽船ノ航權ト云
  フヤウナモノヲ加算致シマスト、相當莫大
  ナル額ニ上ルコトト思フノデアリマスガ、
  之ニ付キマシテハ、事變後何レ對支賠償問
  題等モ生ズルコトデアラウト思ヒマスカ
  ラ、其賠償問題ノ一事項トシテ考究スルト
  云フコトニナルノデアリマスガ、尙ホ長江
  ノ航權ヲ將來ドウシテモ維持復活シナケレ
  バナラヌコトハ勿論デアリマスガ、其爲ニ
  ハ日〓汽船會社ノ復活救濟ト云フコトガ、
  自然事變後ニ生ズル問題ト思フノデアリマ
  シテ、私共ハ只今ヨリ相當〓究致シテ居ル
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/261

  ---

• 262・牧山耕藏

  ○牧山委員長　御通告ニナリマシタ質問ハ
  全部終了致シマシタ、ソコデ贊否決定ノ前
  ニ、ドウシテモ質サナケレバナラヌト云フ
  特殊ノ問題ガ起リマシタ場合ハ別トシテ、
  質問ハ大體是デ終局ヲシタコトト認メマシ
  テ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/262

  ---

• 263・牧山耕藏

  ○牧山委員長　御異議ナシト認メマス、先
  刻各派ノ諸君ニ非公式ニ御意見ヲ伺ッタノ
  デアリマスガ、明日ノ午前中ハ各派ノ態度
  決定ノ關係上委員會ヲ開カズ、午後一時カ
  ラ開會致シマシテ、本案ヲ決定シタイト存
  ジマスガ、大體サウ云フ方針デ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/263

  ---

• 264・牧山耕藏

  ○牧山委員長　御異議ナシト認メマス、明
  日ハ午後一時カラ開會致シマス、デハ本日
  ハ是ニテ散會致シマス
  午後七時十分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00219370906/264