1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
臨時船舶管理法案（政府提出）
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會議
昭和十二年九月七日（火曜日）午後一時二十九分開議
出席委員左の如し
委員長 牧山耕藏君
理事 濱野徹太郎君 理事 最上政三君
理事 岡野龍一君 理事 中井一夫君
理事 南條徳男君
豐田豐吉君 山本厚三君
堤康次郎君 漢那憲和君
高橋壽太郎君 村上紋四郎君
高木粂太郎君 喜多壯一郎君
川副隆君 大野一造君
野口喜一君 庄司一郎君
板谷順助君 池田七郎兵衞君
塩川正藏君 樋口善右衞門君
原惣兵衞君 稻田直道君
高畠亀太郎君 西岡竹次郎君
春名成章君 伊豆富人君
山崎常吉君 長谷長次君
米窪滿亮君 岡崎憲君
淺沼稻次郎君 小山亮君
青木作雄君
出席國務大臣左の如し
遞信大臣 永井柳太郎君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 太田正孝君
遞信政務次官 田島勝太郎君
遞信參與官 犬養健君
遞信省管船局長 小野猛君
本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時船舶管理法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/0
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001・牧山耕藏
○牧山委員長 會議ヲ開キマス、昨日質問
ハ一通リ終了シタ譯デアリマスガ、本案ノ
贊否ヲ決スルニ特ニ質サナケレバナラヌト
云フ點ダケハ保留シタ譯デアリマス、ソレ
ニ付テ濱野徹太郞君カラ發言ヲ求メラレテ
居リマスカラ、之ヲ許シマス-濱野徹太
郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/1
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002・濱野徹太郎
○濱野委員 本法ノ附則ニアリマスル「本
法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止スル
モノトス」トアリマスガ、此法案ガ非常立法
タルノ本質ニ鑑ミマシテ、所謂支那事變終
了ト云フモノノ字義ヲ明ニ致ス必要アリト
存ジマス、其點ニ付キマシテハ昨日遞信大
臣ヨリノ御說明ガアリマシタガ、尙ホ多少
ノ疑義ガ存スルヤウニ存ゼラレマスノデ、
此際ハッキリト御言明ヲ願ヘレバ幸甚ト存
ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/2
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003・永井柳太郎
○永井國務大臣 昨日事變終了ノ意味ニ付
テ御說明申上ゲテ置キマシタガ、尙ホ正確
ヲ期スル爲ニ重ネテ申上ゲマス、事變ノ終
了ハ勅裁ヲ仰イデ之ヲ定ムルノデアリマス
ガ、如何ナル場合ニ事變終了ノ勅裁ヲ仰グ
カト言ヒマスト、事變ヲ終結セシムル兩國
ノ協定ガ成立シ、用兵ノ狀態モ略〓平常ノ狀
態ニ復シタリト認ムル時デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/3
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004・濱野徹太郎
○濱野委員 次ニ左ノ點ニ付テ政府ノ眞意
ヲ確メタイト思ヒマス、此法律ハ只今申上
ゲマシタ通リ、非常立法ノ一ツデアリマシ
テ、政府ニ强大ナル權限ヲバ委任スルコト
ニナッテ居リマス、隨テ此非常立法タル本法
ノ運營ニ付テ重大ナル關係ノアリマスル第
十三條ノ船舶管理委員會ノ委員ノ選定ニ當
リマシテモ、國民ヲ代表スル議員ノ委員ニ
選任セラレル數ハ、成ベク多數選任セラレ
ルト云フコトガ本法ノ性質ニ鑑ミテ必要デ
アラウト思ヒマスノデ、此點ニ付テ政府ノ
御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/4
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005・永井柳太郎
○永井國務大臣 委員會ノ構成ニ付キマシ
テハ、只今ノ濱野君ノ御希望ニ副フヤウニ
出來ルダケ努力致シタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/5
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006・濱野徹太郎
○濱野委員 私ハ只今ノ大臣ノ言明ニ十分
ノ信賴ヲ拂ヒマシテ、之ヲ以テ質問ヲ打切
ルコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/6
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007・中井一夫
○中井委員 大藏當局ニ一點御尋ヲ致シタ
イコトガアリマス、ソレハ此度ノ日支事變
ニ依リマシテ、各方面ニ於テ非常ナル軍事
關係ノ支拂ヲ政府ガセラレルコトニナッテ
居ルノデアリマスガ、其支拂ハ至ル所停頓
ヲ致シテ、國民ハ非常ニ迷惑ヲ感ジテ居ル
者モアルノデアリマス、船舶ニ付キマシテ
モ同樣ノ事情ガアルノデアリマシテ、之ヲ
當該官憲ニ迫リマスト、ソレハ會計法規ガ
窮窟デアルガ爲デアルト云ッテ其責任ヲ法
規ノ不備ニ轉嫁サレテ居ルノデアリマス、
旣ニ非常時ト云ッテ玆ニ斯樣ナ臨時船舶管
理法案ノ如キモノモ御出シニナルト云フ時
デアリマスカラ、其支拂ニ付キマシテモ民
間ノ實情ニ卽スルヤウニ、餘リ多クノ犠牲
ヲ國民ニハ拂シメナイヤウニ處置セラレル
ガ當然デアラウト思フノデアリマス、就
キマシテハ會計法規ノ中ニハ〓算拂、又
ハ前金拂等ガ出來ナイカノ如キ規定ニ相成ッ
テ居ルコトガ其不自由ヲ來ス原因ノ一ツ、
又運賃ト云フモノモ、規定ニハアリマスケ
レドモ、運賃ノ中ニ傭船料ト云フモノガ含
マレテ居ルカドウカト云フコトニ付テ疑問
ノアリマスト云フコトモ其不自由ヲ來タス
原因ノ一ツナノデアリマス、此際大藏當局
トシテハ會計法規ノ斯樣ナ不都合ナ點ヲ思
切ッテ改正ヲセラレ、民間現下ノ苦痛ヲ除去
セラレル意思ナキヤ否ヤト云フコトヲ承リ
タイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/7
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008・太田正孝
○太田政府委員 中井君ノ御質問ニ御答致
シマス、政府ノ諸拂ガ滯リマス爲ニ、金融
逼迫等ノ點ニ付キマシテノ御忠告ハ確ト承
リマシタ、政府ノ方ニ於キマシテモ、サウ
云フコトノナイヤウニ成ベク早ク拂フヤウ
ニト云フコトヲソレ〓〓促進シテ居ルノデ
アリマスガ、ソレデモ尙ホ及ビ得ザルノハ、
只今御示シニナッタヤウナ法規ノ關係モ一
ツアルノデアリマス、會計法二十一條ニ依
リマシテ、勅令ノ定ムル場合ニ於テハ前金
拂若クハ〓算拂ガ出來ルヤウニナッテ居リ
マス、然ルニ其會計法二十一條ヲ受ケマシタ
ル會計規則第五十九條ノ中ニアル前金拂、
竝ニ第六十條ニアル〓算拂ノ中ニ只今此法
案ト深キ關係ヲ持ッテ居ル船舶ノ傭船料ヲ
前金拂ガ出來ルカ、或ハ〓算拂ガ出來ルカ
ト云フト、實際上ニ於テ出事ナイト云フ解
釋ヲシテ居ッタノデアリマス、但シ今御言
葉ノ中ニモアリマシタ通リ第五十九條ノ中
ニ前金拂ヲスル時ニハ運賃ヲ拂フト書イテ
アリマスカラ、其運賃ノ中ニ傭船料ヲ含ム
ベキカドウカト云フコトニ付テ疑義ガア
リ、實際ニハ之ニ適用シテ居ラナカッタノデ
アリマス、〓算拂ノ方ニハ運賃ト云フモノ
ハアリマセヌ、ソコデ關係當局ト御相談申
上ゲテ近ク勅令ヲ以テ特例ヲ設ケルコトト
致シ、前金拂ノ場合ニモ〓算拂ノ場合ニモ
傭船料ヲ拂ヒ得ルヤウニスルコトニ決定シ
タ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/8
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009・中井一夫
○中井委員 能ク諒承致シマシタ、大藏當
局ノ御親切ヲ多ト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/9
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010・原惣兵衞
○原委員 昨日罰則規定ガ大分喧シク問題
ニナッタノデアリマスガ、最後ハ刑罰法規
ニ委託スルコトニナリマスノデ、非常ナ重
要ナ點ニ付キマシテ、モウ一言大臣ノ御說
明ヲ承ッテ置キタイト思ヒマス、ソレハ法人
ノ場合ト個人ノ場合ニ於テ結局非常ナ不公
平ガ起ルト云フコトハ論ジ盡サレタノデ、
此不公平ト云フコトニ付テノ問題デアリマ
スカラ、敢テ司法當局ノ御答辯ヲ承ルマデ
モナク、大臣自身トシテ公平ト御考ニナッテ
居リマスカ、個人ト法人ノ違ヒデ確ニ不公
平ナ立場ニ置カレテ居ルト云フコトニ付
テ、此點ドウ云フ風ニ御認メニナリマスカ
承リタイ、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/10
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011・永井柳太郎
○永井國務大臣 此罰則ハ總テノ法案ニ共
通シテ居ルノデアリマスシ、從來モ亦此罰
則ガ多クノ場合ニ使用サレテ居リマスノ
デ、今日ノ所此罰則ヲ此儘使用スルコトガ
適當デアルト考ヘマス、尙ホ御意見ノ次第
モアリマスノデ、將來此點ニ付キマシテハ
尙ホ〓究スル積リデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/11
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012・稻田直道
○稻田委員 私ハ船ノ事ハ餘リ詳シクアリ
マセヌノデ、申上ゲルコトモドウカト思ヒ
マスケレドモ、此法案ガ施行セラレル上ニ
於キマシテ御注意シテ戴キタイコトハ、現
ニ或船主ノ如キハ一日ニ六万圓モ金ヲ儲ケ
テ居ルノデアリマスガ、將來船ノ輸入サレ
ル場合ニ於テモ、現在船ヲ有ッテ居ラレル人
ガ、此事變ニ依リマシテ巨利ヲ博スルト云
フ機會ガ多イノデアリマスカラ、政府ニ於
テ此法案ヲ運用セラレル上ニ於キマシテ、
サウ云フ點ニ付テ御注意アランコトヲ希望
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/12
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013・牧山耕藏
○牧山委員長 質問ハ全部終了致シマシ
ク、之ヨリ討論ニ入リマス、通告順ニ依ツ
テ發言ヲ許シマス-濱野徹太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/13
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014・濱野徹太郎
○濱野委員 私ハ民政黨ヲ代表シマシテ本
法ニ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス、本法
ハ日支事變ノ突發進展ニ伴ヒ軍需輸送ニ多
量ノ船腹ヲ必要トシマス、之ニ伴ヒ一般船
舶市場ノ需要ニ應ズベキ船腹ノ調節、運賃
ノ調整、造船ノ促進ヲ圖ランガ爲ニ、所謂
戰時體制下ニ於ケル海上運輸統制ヲ全ウセ
ントスル趣意デアルト承知致シマスト共
ニ、國民モ亦今日ノ時勢ニ鑑ミ、本法ノ如
キ法案ノ發布ハ旣ニ豫期セルモノガアッタ
ト存ズルノデアリマス、吾々ノ本法ニ對ス
ル懸念ハ、本來統制ノ本質其運營ニ關スル
點デアリマス、御承知ノ通リ本來海運ト云
フモノハ、全般的ニ見テ國防、產業上等必
須ノ重要機關デアリマス、サウシテ多分ニ
自主獨往的ノ特色ノ强イ企業デアリマス、
隨テ其運營ニ當リマシテハ、何處マデモ自
治ヲ生命トスルコトハ當然デアリマス、最
近非常時ノ要求ニ伴ヒマシテ業者ノ方面ニ
於テハ運行ノ自主統制ニ努メ、著々トシテ
其功績ヲ擧ゲントシテ居リマス、併ナガラ
政府ノ說明ニ依リマスレバ、本法ノ趣意ト
云フモノハ船主當業者側ニ於ケル所ノ自主
的統制ノ精神ヲ尊重シ是ト相表裏シ、相倚
リテ以テ本法立法ノ趣旨ヲ透徹セシメント
スル意圖デアルト云フコトヲ承リ、寧ロ本
法ノ存在ハ事變ノ存スル限リ緊急ナモノデ
アルト存ジマスルト共ニ、冀クハ當局ノ方
面ニ於カレマシテモ、時代ノ勢ニ便乘スル
ガ如キコトヲ避ケラレタイト存ズルノデア
リマス、併ナガラ私ハ本法ヲ唯單ニ贊成シ
謳歌スルト云フノミニ止マル者デハアリマ
セヌノデ、二三ノ點ニ付キマシテ意見ヲ申
上ゲタイト存ジマス
先ヅ本法第五條、第六條ハ最モ緊急處置
ヲ要スル場合ニ於テ發動シ、緊急ナラザ
ル場合ニ於キマシテハ、民間ニ十分協議
ノ機會ヲ作リ、民意ノ尊重ヲ怠ラズト云
フ當局ノ說明ニ十分ノ信賴ヲ寄セマスガ、
吾々ハ進ンデ此政府ノ說明ノ案ノ具體化
ノ言明ヲ要求シタノデアリマスケレドモ、
今日ノ議事進行ノ狀態ニ顧ミマシテ是以
上申シマセヌ、政府ハ須ク此言明ヲ十分
自ラ尊重セラレマシテ、吾々ノ信賴ニ反
セザランヤウニ最善ノ準備ト注意ヲ必要
ト致スト存ジマス、次ニ本法ノ目的ハ事變
ニ處スベキ船腹ノ需給ニ對應センガ爲デア
リ、隨テ船腹モ當然增加ノ傾向ヲ辿ルモノ
ト豫定スベキデアリマス、又一面海運ニ從
事セラレル人達、高級又普通ノ船員ノ如キ
ハ、海軍ノ所謂豫備隊ト云フヤウナ實質ニ
鑑ミマシテ、船員ノ公務召集ニ應ズル人モ
多々アッタト存ジマスガ、是等ノ數點ニ鑑
ミマスル時ニハ、高級船員ノ急速ニシテ、
且ツ多數ノ養成ニ對シテ十分ノ準備ヲ必要
ト致シマス、更ニ船員ノ質及數ノ制限ノ緩
和ヲ圖ルト云フコトガ條文ニ置カレテ居リ
マス結果、其方面ニ慮リヲ致シマスル時ニ
ハ、是等高級竝ニ普通船員ヲシテ過勞ノ弊
ニ陷ラシムルコトガナイヤウニ最善ノ注意
ヲ致サレタイト存ジマス、尙ホ本法ハ急遽
ヲ要シタル緊急立法タルノ故デアリマ
スカ、法律的ノ論點カラ見マシテ足ラザ
ルモノアリ、或ハ其趣意ノ徹底ニ頗ル遺
憾ノ點ガアルヤウニ存ジマス、尙ホ本法
違反者ニ對スル罰則ニ付キマシテハ、法
人ニ對スル、罰則ニ對シテハ單ニ罰金刑ヲ
以テノミ臨ムコトニナッテ居リマスガ、
例ヘバ小資本ヲ以テ經營スル所ノ個人ガ萬
一本法違反ノ行爲ヲ爲シタ場合ニハ、之ニ臨
ムニ峻嚴ナル懲役或ハ重キ罰金刑ヲ以テ臨
ムコトニナッテ居リマスルニ反シ、大資本ヲ
擁シ巨利ヲ博スル所ノ法人ガ本法ニ違反ノ
行爲ガアッタ場合ニ於キマシテハ、唯單ニ
其理事者ニ對シテ罰金刑ノミヲ以テ臨ムト
云フコトハ頗ル刑ノ均衡ヲ失シ、國民ノ感
情ノ上ニ於テモ面白カラヌモノガアルト存
ジマスノデ、司法當局ハ斯ル場合ニ於テ大
イニ愼重ニ實情ヲ酌ミ刑ノ均衡ヲ謬ル如キ
コトナカラシメンコトヲ要スルト存ジマ
ス、尙ホ第五條、第六條ニヨル統制力發動
ノ場合、著シキ損害ヲ受ケタル者ガ、之二
對シテ不服ノ申立、補償ヲ得ルノ途ヲ開カ
ザルノ點アルハ獨リ本法ノミノ弊トスル所
デハアリマセヌケレドモ、ソレ故ニコソ却ッ
テ政府ハ本法ノ發動ニ對シテハ事前ニ於テ
十分愼重ノ用意ヲ必要トスルモノデアルト
存ジマス、之ヲ要スルニ本法ハ政府ノ意圖セ
ラルヽガ如ク船主當業者側ノ自主統制ノ精
神ト相倚リ相補ッテ、以テ日支事變ニ對處セ
ントスルノ趣旨ヲ十分自ラ尊重セラレ、謂
フ所ノ官僚獨善ノ權力ノミニ依ルト云フガ
如キコトナク、以テ海國日本ノ第一線ニ飛
躍シ、進展セントスル今日ノ日本ノ海運ヲ
徒ニ萎縮セシムルガ如キ結果ヲ招來セザル
ヤウ最善ノ用意ヲ喚起シタイト存ジマス、
以上私ガ本法ノ諸點ニ對シテ政府ノ注意ヲ
喚起スルコトハ、本法ノ今日ニ處スル必要
性ヲ十分ニ認識スルモノアルト共ニ、非常
立法トシテノ本法ノ其運營ニ當リテ寸毫ノ
過誤ナカラシメンガ爲ニ政府自身十分ノ責
任ヲ喚起致シタイト云フ所以ニ外ナラナイ
ノデアリマス、之ヲ以テ私ノ贊成ノ意ヲ表
スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/14
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015・中井一夫
○中井委員 私ハ立憲政友會ヲ代表致シマ
シテ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス、本法
ノ內容ガ洵ニ重要デアルコトハ言フマデモ
ナイノデアリマシテ、謂ハバ是ハ議會ガ行
政府タル政府ニ對シマシテ、强力ナ、廣汎ナ
權力ヲ本法ニ依ッテ委任スルノ結果トナル
ノデアリマス、隨ヒマシテ私共此法案ヲ承
認セントスル者ハ、其責任ノ重大ナルコト
ヲ痛感致シマスルト共ニ、其强力廣大ナル
權限ヲ委任セラレル所ノ政府モ亦、其責任
ノ重大ナルコトヲ能ク御認識ニナラナケレ
バナラナイト信ジマス、卽チ問題ハ一ニ懸ッ
テ此法案ノ運用宜シキヲ得ルヤ否ヤト云フ
コトニアルノデアリマス、此點ニ付キマシ
テハ遞信當局ハ平素ヨリ常ニ船主、船員其
他海運關係者トノ間ニ、胸襟ヲ開イテ萬事
ヲ圓滿ニ處理セラレテ居リマスカラ、此ノ
法案ノ運用ニ當リマシテモ萬過チナイモノ
トハ存ジマスルケレドモ、此際私ハ吳々モ
此法案ノ運用ノ責任ノ重大デアルト云フコ
トヲ强調シテ、政府ノ善處ヲ要求致ス者ナ
ノデアリマス、就キマシテハ既ニ只今濱野
君カラモ御話ガアリマシタガ、本案第五條、
第六條ノ如キ、是ハ單ニ船賃、又ハ船價ノ
高低多寡ヲ決メルト云フコトダケデハナ
クシテ、航路ノ制限廢止等、海運營業ノ根本
ニマデ及ブモノデアリマス、我國ノ海運業
ガ、多大ナル苦心慘憺ノ結果、漸ク世界ノ
到ル處ニ雄飛スルヤウニ相成ッタト云フコ
トハ、申スマデモナイノデアリマスガ、今
日非常時デアレバアル程、海運業ヲ盛ンナ
ラシメテ、サウシテ一面國防、他面國際收
支ノ改善ニ資スルト云フコトガ、一層必要
デアルト思フノデアリマス、然ルニ事變ナ
ルガ故ヲ以テ、愈〓伸ビテ行カントシツヽアル
此海運業ヲ壓迫スルト云フヤウナコトニナ
リマスルナラバ、是程殘念ナコトハナイト
存ジマス
本法ニ依ルト、一般海運營業ハ素ヨリ、
船員ノ待遇サヘモ薄メ得ルト云フコトニ相
成ッテ居リマス、斯ノ如キコトニ付キマシ
テハ、政府ハ特ニ愼重ナル態度ヲ以テ、臨
マレナケレバナリマセヌ、一言ニシテ之ヲ
申シマスルナラバ、本法ハ飽マデモ政府ノ
傳家ノ寶刀トセラルベキモノデアッテ、昨
日板谷君モ言ハレタヤウニ、斷ジテ忽セニ
ハ拔クベキモノデナイト云フコトヲ、吳々
モ申上ゲテ置カナケレバナラヌノデアリマ
ス、次ニ本法ノ運用ニ關シテ、管理委員會
ノ問題ガゴザイマス、是ニ付テハ遞信大臣
ノ明確ナル御答辯ヲ信賴致シマス、願クバ
其御言明ノ精神ニ則ッテ、飽マデモ民意尊
重、官僚獨善ニ陷ラナイヤウニ、ヤッテ
行カレタイノデアリマス、又委員ノ選定
ノ如キモ、從來政府ノ委員會ニヨク見マス
ル如キ、著名ノ大實業家、大資本家ニアラザ
レバ委員タルヲ得ズト謂フガ如キ實ニ噴飯
ニ堪ヘナイ從來ノ陋習ニ囚ハレルコトナ
ク、思ヒ切ッテ各方面ノ適材ヲ集メラレテ、
眞劍ナル國家ノ委員會トセラレルヤウニ、
希望致ス次第デアリマス
次ニ所謂變態輸入船ノ問題ニ付キマシテ
ハ、板谷君、堤君等ヨリ互ニ異ナレル見地
ヨリ、論ゼラレタ所デアリマスガ、此輸入
ヲ可トスルカ、否トスルカ、ト云フ事ハ、
曩ニ船舶素質改善法案ノ提出サレマシテ以
來、此方五箇年ノ間、海運界ニ於テ有力ナ
ル二潮流トシテノ對立ヲ來シツヽ今日ニ迄
至ッタ問題デアリマス、大正六年ノ戰時船
舶管理令ノ布カレマシタ時ニ於テハ、日本
ニハ船ガ剩ッテ外國ニハ船ガ少クナイ、外
國ガ日本ノ船ヲ取入レントシタ時デアリマ
ス、此度本法案ヲ政府ガ施行セラレントス
ル今日ハ、日本ニ船舶少クシテ、外國ニ船
舶多カラントシテ居ル時デアリマス、併ナ
ガラサレバトテ直チニ無條件ノ輸入ヲ許容
スベキデアラウカ、斯樣ナ時代ニ於テ、
體日本ノ海運政策ハ、如何ナル方針ノ下ニ
進ンデ行クベキカ、我國海運界ノ將來ヲ念
ヒマス時、實ニ重大ナル問題ガ含マレテ居
ルト思ヒマス、從ッテ政府ノ處置ノ仕方ニ
依リマシテハ、各方面ニ重大ナル結果ヲ來
スノデアリマスカラ、政府ハ事態ノ實相ヲ
洞察セラレ、先般來同僚議員ノ質問ニ答ヘ
テ居ラレマス通リ、最モ愼重ナル態度ヲ以
テ、善處セラレンコトヲ、特ニ注意ヲ致シ
テ置キマス、更ニ本案ノ罰則規定ニ付キマシ
テハ、昨日私ニ於テ又唯今ハ原君ヨリ御話
ノアリマシタ通リ、洵ニ個人ト法人トノ間
ニ不公平ノ憾ナキヲ得マセヌ、而シテ我國
現代社會ノ實情ヲ見マスナラバ、大キナ者
ガ大キナ惡事ヲ致シテモ輕ク罰セラレ、小
サイ者ガ小サイ惡事ヲスルト重ク罰セラレ
ルト云フ例ガ、到ル處ニアルノデアリマス、
斯ウ云フ不公平ナル情勢ト云フモノガ、我
國ニ存在致シテ居リマスコトハ、實ニ現代
ノ惱ミデアルト思フノデアリマス、政府ハ
庶政一新ト言ハレ、殊ニ現內閣ニ於キマシ
テハ、社會正義ト云フコトヲ高調サレテ居
リマス、本法ヲ施行セラレントスルニ當リ
マシテハ、斯樣ナ問題ニコソ、新例ヲ聞イ
テ、國家ノ眞憂ニ「メス」ヲ入レラレルコト
ガ適當デアッタト思フノデアリマス、司法
當局ノ辯明ニ依リマスト、罰則規定ノ體裁
ガ、他ノ法案ニ於テモ同樣ニ相成ッテ居ル、
已ムヲ得ズ其形式、前例ヲ踏襲シテ居ルト
云フコトデアリマスガ、サウ云フ考へ方ガ、
吾々ハ氣ニ入ラヌノデアリマス、サウ云フ
考方ヲ打破ッテ、新シイ正シイ考方ニ基イ
テ、大キナ者ガ大キイ惡事ヲシタ場合ニハ、
嚴罰ニ處スル、小サイ者ガ小サイ惡事ヲシ
タ場合ニハ、輕ク處罰スル、所謂社會正義
ニ合フヤウニ、此法律ヲモ作製セラレテ行
クト云フコトガ、現內閣主張ノ眞髓ニ合ス
ルモノデアルト信ズルノデアリマス、然ル
ニ最モ吾々ノ尊敬スル、民衆政治家トシテ
ノ永井遞信大臣ノ下ニ於テ、此法案ガ作ラ
レヨウトスルノニ、此點ニ付テ、大臣平素
ノ御主張ノ現ハレルコトノ出來ナカッタコ
トヲ殘念ニ思ヒマス、併ナガラ吾々ハ他ノ
問題ト共ニ、本法案ハ所謂臨時立法デアリ
マスガ故ニ、暫ク之ヲ看過致シマシテ、唯
此罰則ヲ適用スルニ當ッテハ不公平ナル結
果ヲ來サナイヤウニ善處セラレンコトヲ注
意スルニ止メマス、最後ニ、本法案ハ事變
終了後一年以內ニ廢止セラレルト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマスガ、事變終了トハ
何ゾヤト云フコトニ付キマシテハ、只今大
臣ノ御說明ニ依ッテ之ヲ諒承致シマシタ
併シナガラ終了致シタ後ニ於テ、旣ニ本法
ノ效果ノ發生ニ依ッテ、各方面ニ船舶ノ動
員ヲサレテ居リマスルノヲ、元ノ狀態ニ
戾スト云フコトニ付テ、政府ハ如何ナル
用意ト方策トヲ有セラルヽノデアルカ、
其用意方策コソハ最モ大切ナ結果ヲ來ス
モノデアルト信ジマス、例ヘテ見レバ遠洋航
路ノ如キ、ソレガ定期デアラウガ、不定期
デアラウガ、皆是レ粒々辛苦シテ海運業者、
船員ガ獲得致シタモノデアリマス、率直ニ
申シマスナラバ、外國ノヤッテ居ッタモノヲ
取上ゲテ日本ノ航路ト致シタノデアリマ
ス、斯ウ云フ所カラ船ヲ引揚ゲテ參リマス
ル其結果ハ、旣ニ彼ノ印度航路ノ如キ、今
ヤ英國船ハドシ〓〓之ニ侵入ヲ致シテ參リ
マシタ、其他ノ方面ニ於テモ外國船ガ日本
船ノ引揚ノ後ニツケ込ンデ活躍ヲ致サント
シテ居リマス、左樣ナ方面へノ船ヲ先ヅ以
テ還ヘサレテ、サウシテ此管理令發動ノ結
果若クハ政府ガ徵發ニナッタ所ノ船舶、
ソレニ依ル各方面ノ犠牲ヲ極力緩和セラレ
ルヤウニ、出來得ル限リノ考慮ヲ拂ハレタ
イノデアリマス、卽チ政府ノ親切ナル用意
ト善處ニ依リマシテ、海運界ノ今次事變ニ
依ル打撃ヲ少シデモ少クセラレルヤウニ、
格別ノ御配慮ヲ願ヒタイノデアリマス
右意見ヲ附シマシテ、私ハ本案ニ贊成ノ
意ヲ表スルモノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/15
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016・牧山耕藏
○牧山委員長 ソレデハ暫ク休憩致シマ
ス、引續キ本會議ニ於ケル豫算議了直後ニ
開會シタイト思ヒマスカラ、ドウゾ御出席
ヲ願ヒマス
午後二時三分休憩
午後二時二十七分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/16
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017・牧山耕藏
○牧山委員長 前會ニ引續キ會議ヲ開キマ
ス-春成名章君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/17
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018・春名成章
○春名委員 第一議員倶樂部ノ態度ヲ簡單
ニ表明致シマス、卽チ時局ノ重大ト今後ニ
鑑ミマスレバ、本法案ハ之ヲ成立セシムベ
キモノナリト考ヘマスルガ故ニ、本案ニ對
シテハ贊成致ス者デアリマス、唯本案ノ內
容ニ至リマシテハ昨日來ノ委員會ノ經過竝
本日民政黨及政友會ノ代表者諸君ノ御論議
ヲ聞キマシテモ、相當論議ノ餘地ガアリ、
考究スベキ箇所モ多イト存ジマス、併ナ
ガラ罰則ノ問題ニシマシテモ、亦委員會ノ
組織又其運用ノ點ニ付キマシテモ、旣ニ論
ゼラレタ點デアリマスカラ、是ハ重複ヲ避ケ
テ私ハ申上ゲマセヌ、又應召海員ノ優遇ノ問
題ニ當リマシテハ、昨日管船局長ヨリ、陸海
軍當局ト懇談ヲシテ、適當ナル措置ヲ執ル
トノ言明アリ、又同樣海員ノ思想問題ニ付
キマシテモ、遞信大臣ヨリ善處ストノ御言
明ガアリマシタガ故ニ、之ニ信賴シテ更ニ
重ヌルコトヲ致シマセヌ、要ハ本案ハ所謂
昨日遞信大臣ノ言明セラレタ通リニ、統制
法デアリマス、統制法ト所謂自由主義乃至
ハ自治統制トノ間ヲ潜ッテ、提案ノ趣旨ト
セラルヽ一般交通海運ノ調整ヲ期シ、以テ
時局ニ貢獻ヲスルト云フノデアリマシテ、
實際問題ト致シマシテ、妙味ハ亦玆ニ存ス
ルノデアリマス、謂ハバ理想的ノ法案デア
ルトモ言ヒ得ルト私ハ考ヘマス、併ナガラ
實際問題トシテ其目的ヲ達シ實效ヲ擧ゲル
ト云フコトニ付キマシテハ、事容易デナイ
ト思ヒマス、之ニ付テハ當業者ノ奮發モ望
マナケレバナリマセヌガ、一面ニ於テハ何
ト致シマシテモ當局者ガ法ノ運用ニ付キマ
シテ十分御注意アリ、御用意アルコトヲ要
スルト思ヒマス、私ハ言ハ簡單デアリマス
ルケレドモ、重大ナル意味ヲ以テ是ダケノ
御注意希望ヲ致シマシテ、本案ニ贊成ノ意
ヲ重ネテ表明スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/18
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019・米窪滿亮
○米窪委員 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シマ
シテ本案ニ對シテ贊成スル者デアリマス、
但シ本案ニ付キマシテハ昨日御質問申上ゲ
タ時ニソレニ觸レタノデアリマスガ、成文
ニ付テハ尙ホ多クノ私共トシテ慊ラナイ點
ガアルノデアリマス、本法ノ如キ非常統制
ノ目的ヲ持ッテ居ルモノニ於テハ其要諦ハ
運用ノ妙ヲ極メルノニアルノデアリマス、其
點ニ付テ二三ノ希望意見ヲ申上ゲタイト思
フノデアリマス
第一ニ此本法ヲ實行スルコトニ於テ副作用
トシテ起ルコトガ必ズ必至デアルト思ハレ
ル點ハ、昨日モ申上ゲマシタ所謂非常時局ニ
對應スル爲ニ徵發サレタ船ノ空位ヲ塞グ爲ニ
遠洋航路ニ從事シテ居ル船舶ヲ近海ニ引揚ゲ
ルコトカラ生ズル我ガ海運業者ノ航權ノ衰
退退却ト云フコトデアルノデアリマス、此點ニ
付テハ之ニ對應スル方策トシテ遞信當局ハ
來ルベキ一年間ニ新造サレル五十万噸、或
ハ來ルベキ二年間ニ新造サレル百十万噸ヲ
以テ之ニ處スルト云フコトヲ言ハレテ居リ
マスガ、造船資材デアル鐵ノ最近ノ狀況カラ
見マシテ、果シテ此御豫定ガ十分ニ行クカド
ウカト云フコトヲ吾々ハ危惧ノ念ニ堪ヘナ
イ、隨テ問題ハ外國船ノ購入及ビ外國船ノ
傭船ト云フコトガ含マレテ來ルト思フノデ
アリマス、此點ニ付キマシテハ、板谷委員
其他ノ委員カラ非常ナ御心配デアル質問ガ
出テ居リマス、吾々モ同感デアリマス、政府
當局ハ此外國船ノ購入及ビ傭船ニ付テ業者
ニ十分ナル好意ヲ以テ、サウシテ補償ガ出來
ナケレバ相當ノ便宜ヲ御取計ハレルヤウニ
御考慮ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
第二ノ點ハ先日小野政府委員カラ伺ッタノ
デアリマスガ、本法ニ於テハ之ヲ豫定シテ居
ラナイ、所管違ヒデアルカラト云フコトデ
アルノデアリマスガ、卽チ船體保險料ニ付テ
テハ速ニ當該關係官廳ト御協議ノ上相當ノ
統制ガ加ヘラレルヤウニ善處ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス
次ニ希望ヲ中上ゲタイ點ハ、此機會ニ內
外地ノ海事行政ノ統一、是ハ是非共何等カ
ノ方法ヲ以テ行政機構ノ改革、或ハ貿易ノ
改革、何カノ方法ヲ以テ確立サレンコトヲ
希望スルノデアリマス、此問題ハ本法ガ假
令、廢案ニナッテモ、此點ハ殘リ得ルヤウニ
本法ノ施行ヲ通ジテ其素地ヲ作ラレンコ
トヲ希望ニ堪ヘナイノデアリマス、次ニ同
ジク同樣ノ希望ハ昨日御質問申上ゲマシタ
卽チ日本船ニハ日本ノ船員ヲ使フベシト云
フ原則ヲ御確立アランコトヲ御願スル譯デ
アリマス、更ニ先程同僚ノ委員カラ此事變ニ
徵發サレル船舶、其他ノ船舶ニ乘組ム船員
ノ保護ニ付テ非常ナ御高配アル御言葉ガア
リマシタ、併シ此船員ニ直接關係アル吾々
トシテハ洵ニ有難イ次第デアルケレドモ、
船員ノ今日ノ心境ハ軍屬ニ等シイ心持ヲ以
テ、身ヲ鴻毛ノ輕キニ任ジテ殆ド軍人ト同
樣ニ戰地區域ニ出入シマシテ、危險ヲ冒シ
テ或ル者ハ旣ニ戰禍ノ犠牲トナリ、或ル者
ハ重傷ヲ受ケテ居ル例ガ多々アルノデアリ
マス、然ルニ一言半句モ危險手當ヲ要求致
シテ居リマセヌ、本人トシテモ、所屬勞働
團體トシテモ何モソレニ觸レテ居ラナイデ
アリマス、併シ斯ノ如ク船主ハ船舶ヲ徵發
サレル點ニ付テ苦痛ガアルデセウガ、船員
ハ自分ノ身ヲ犠牲ニ供シテ此管理法案ノ指
示スル精神ヲ身ヲ以テ實踐シテ居ルノニ對
シテ、本人達ガ、希望シナイカラト云ッテ政
府當局ハ之ヲ高閣ニ束ネテ置クナラバ私ハ
恐ルベキ結果ヲ生ズルト思ヒマス、此船員
ノ犧牲的態度ヲ政府當局ハ能ク御觀察ノ
上、昨日御質問申上ゲタ船主船員ノ協同ノ
產業協力機關デアル海事協同會ニ對シテ、
此點ハ十分ナル御指示竝ニ御指導ヲ賜ハラ
ンコトヲ御願スル次第デアリマス、私ハ最
後ニ船舶管理委員會ノ組織ニ付テ是非是ハ
遞信御當局ニ深甚ナル御注意ヲ願ヒタイ、
此點ハ同僚委員カラシテ旣ニ色々ノ御希望
ガアリマシテ、之ニ對シテ遞信大臣ハ成ベ
ク廣ク關係者ノ代表ヲ參加セシムルト云フ
御答辯ガアック、抽象的ニ吾々ハ諒解シテ居
リマスガ、私ハ具體的ニ此二十五名ト規定
サレテ居ルモノヲ其數ヲ相當御增加ニナッ
テ、勿論臨時委員、特別委員ノ制度ハアリ
マスガ、兎ニ角正委員ノ數ヲモウ少シ殖ヤシ
テ、サウシテ正委員ニハ-今日勞動團體
ハ陸上デモ、海上デモ一意專心擧國一致ノ
態度ヲ執リマシテ、旣ニ我ガ黨カラハ產業
平和ニ關スル建議案ヲ出シテ居リマス、或
ハ勞資一體トナッテ難局ヲ切拔ケルト云フ
態度ヲ示シテ居リマス、斯ウ云フ態度ニ鑑
ミマシテ、海事協同會ノ如キ機關ノ完全ニ產
業ノ協調的態度ヲ示シテ居ル、是等ノ具體
的ノ事實ニ鑑ミマシテ、管理委員ニモ船主
ト竝ンデ船員ノ代表者ヲ御加ヘニナルト云
フコトヲ御考慮願ヒタイ、最後ニ臨時船舶
管理委員會ノ構成委員ニ海員ヲ加ヘルト云
フ私ノ希望ハ、委員長ガ本會議ニ於テ御報
告ノ時ニ御加ヘヲ願ヒタイト思ヒマス、私
ハ以上ノ希望ノ諸點ヲ申上ゲマシテ本案ニ
贊成スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/19
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020・牧山耕藏
○牧山委員長 小山亮君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/20
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021・小山亮
○小山委員 國家非常ノ難局ニ當ッテ本法
ヲ衆議院ニ於テ通過セシムルコトハ、私ハ
當然過ギル程當然デアラウト思ヒマス、民
間ノ船舶業者モ恐ラクハ此非常時局ニ直面
シテ此事態ヲ直視スル時ニ、喜ンデ本案ノ
遂行ニ協力シ、國策ノ遂行ニ對シテ有ユル
力ヲ披瀝シテ之ニ參加スルコトヲ決シテ拒
ム者デナイト私ハ思ッテ居リマス、從來マ
デ船舶業者ガ造船ノ奬勵資金ニ於テ、或ハ
航路ノ補助金等ニ於テ相當多額ノ補助金ヲ
獲得シテ居ル所ノ、卽チ十分ニ政府ノ恩寵
ニ浴シテ居ル所ノ船舶業者ガ多クアリマ
ス、卽チ國家ガ今日マデ是等ノ船主ニ加ヘ
タ所ノ其補助金、其恩惠ト云フモノハ、斯
ル非常時ニ於テコソ初メテ役ニ立タセンガ
爲デアラウト私ハ思フ、卽チ今日マデ有ユ
ル恩寵ヲ受ケタ所ノ船主ハ、此際一意報國
ノ精神ヲ以テ、國家ノ此國難ニ殉ズル爲ニ
有ユル犠牲ヲ忍ブコトハ當然デアラウト思
ヒマス、右ノ手デ金儲ケヲシナガラ、左ノ
手デ國難ニ殉ズルト云フ風ナ器用ナコトハ
私ハ到底考へ得ラレナイト思フ、全力ヲ擧
ゲテ此國難ニ殉ズルガ爲ニ、有ユル犧牲ヲ
拂フコトハ當然ダラウト私ハ思フ、又船員
ニ致シマシテモ、高級船員、普通船員ヲ問
ハズ、今日マデノ船員ノ待遇ト云フモノ
ハ、二重刑罰等ニ於テ、船員法ノ改正法律
案等ニ於テ多々論議サレタルガ如ク、從來
ニ於テハ其待遇ト云フモノガ、一般ノ陸上
ノ勞働者ニ比シテ極メテ差別的ナモノデア
リマシタ、サウシテ此差別ヲ撤廢センガ爲
二、常ニ力ヲ盡シテ、議會ニ或ハ社會問題
トシテ、或ハ法律問題トシテ之ヲ爭ッテ來
タノデアリマスルガ、今日ノ非常時ニ直面
スル時ニハ、最早サウシタ待遇問題ヲ論議
シテ居ル氣持ノ者ハ恐ラクハ一人モナイダ
ラウト思フ、日々ノ新聞紙上ニ現レル陸海
軍人ノアノ戰地ニ於ケル所ノ悲壯ナル活躍
ノ狀態ヲ見テ、國ノ有ユル階級ヲ擧ゲテ血
ト肉トヲ動員シテ、サウシテ國難ニ殉ゼン
トシテ居ル秋ニ、獨リ船員ノミガ自分ノ安
逸ヲ望ミ、其生活ノ安定ヲ望ムト云フコト
ハ有リ得ナイ、命ヲ賭シテ此國難ニ殉ズル
所ノ氣持ハ、恐ラク高級、下級、普通ノ船
員ノ總テヲ擧ゲテ私ハ等シイモノダラウト
思ヒマス、斯ルガ故ニ此時局ガ次第ニ進展
ヲシ、サウシテ戰局ガ切迫ヲシテ來ルニ連
レマシテ、如何ナル困難モ吾々ハ忍ンデ戰
ヲ勝利ニ導クマデ、努力邁進ヲスルト云フ
コトヲ私ハ信ジテ疑ヒマセヌ、ドウカ此點
ニ於テハ、遞信當局ハ決シテ御心配ナク此
法律案遂行ノ爲ニ、國策遂行ノ爲ニ邁進ア
ランコトヲ望ミマス、併ナガラ從來極メテ
自由放縱ニ流レテ居リマシタル船舶業者
ヲ-少クモ全國船舶業者ノ總數ハ二百四
十ニ近イト私ハ思ッテ居リマス、其二百四
十ニ近イ所ノ小船主マデモ網羅シマシテ、
サウシテ之ヲ統制ヲショウト云フニハ相當
ノ困難ガ伴フ、サウシテ又此法律案ハ、此
法律案ノ效果ノ萬全ヲ期スルガ爲ニハ、極
メテ强力ナル組織ト、サウシテ當局ニ十分
ナル覺悟ガナケレバ到底其所期ノ成果ヲ
擧ゲルコトハ私ハ出來ナイト思ヒマスガ故
ニ、本法遂行ノ爲ニハ各關係當局ノ要路ノ
人々ハ、十分ナル覺悟ヲ以テ、十分ナル效
果ヲ擧ゲラレルヤウニ御努力アランコトヲ
切望致シマシテ、私ハ本案ノ成立ニ贊成ヲ
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/21
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022・青木作雄
○靑木委員 東方會ヲ代表シテ本案ニ贊成
致シマス、諄イヤウデアリマスルガ、次ノ希
望ヲ附シテ置キマス、卽チ第十九條竝ニ第二
十條中法人ニ對スル罰則ハ、業者ノ大部分ガ
法人デアリ、大魚ニ輕ク、雜魚ニ重キ刑ヲ科
スルコトハ、如何ニモ不備、不公平ナル事明
カデアリマスガ、他ノ法律ガ殆ド總テ此主義
ニ則ッテ居ルト云フノデアリマスカラ、先
ヅ此主義ヲ改ムルコトハ、社會正義ノ上カ
ラ緊要デアリマスルガ、是ハ司法當局ニ於
テ速ニ他ノ機會ニ刑罰上ノ全面的改正ト共
ニ實現セラレンコトヲ希望シテ、此場合本
案ノ重要性ニ鑑ミ贊成スルコトト致シマ
ス、尙ホ本案ハ强大ナル統制、管理ノ力ヲ
政府ニ與ヘルモノナルガ故ニ、國民經濟上
或ハ當業者又ハ船員ノ利益ニ於テ徒ニ犠牲
ヲ拂ハシムルコトナカラシムルハ、自治的
統制ニ依ルコトガ最善ノヤウデアリマス
ガ、旣ニ本案ヲ必要トスルニ至ッタ以上ハ、
是ガ運用ニ當リ、當局ハ積極的獻身的態
度、人材ノ充實ニ依ルコトガ大切デアルト
云フコトハ、同僚委員カラモ强ク叫バレタ
ノデアリマス、私ハ特ニ此點ニ付テ當局ノ
御注意アランコトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/22
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023・牧山耕藏
○牧山委員長 討論ハ終局致シマシタ、是
ヨリ採決ニ入リマス、本案ニ贊成ノ諸君ノ
御起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/23
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024・牧山耕藏
○牧山委員長 本案ハ滿場一致ヲ以テ可決
サレマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/24
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025・牧山耕藏
○牧山委員長 一言御挨拶ヲ申上ゲタイト
存ジマス、此法案ハ極メテ重大ナル意義ヲ
有スル法案デアリマスルガ、其審議ノ期間
ハ極メテ短ク、ソレニモ拘ラズ、委員諸君ニ
於カレマシテハ連日御精勵ニ相成リマシ
テ、十分ニ審議ヲ御盡シニナリマシタコト
ニ對シテ、委員長トシテ深ク敬意ヲ表スル
次第デアリマス、殊ニ會議中極メテ委員長
トシテ不行屆勝デアリマシタニモ拘ラズ、
格別ノ御同情ヲ以テ御支援下サイマシタコ
トニ對シテ深ク〓〓感謝ノ意ヲ表スル次第
デアリマス、之ヲ以テ本委員會ハ閉會ヲ致
シマス
午後二時五十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007213731X00319370907/25
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