1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
商法中改正法律案
商法中改正法律施行法案
有限會社法案
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委員氏名
委員長 侯爵 大隈信常君
副委員長 山岡萬之助君
公爵 島津忠承君
伯爵 黒木三次君
子爵 八條隆正君
子爵 舟橋清賢君
中川健藏君
仁井田益太郎君
松本烝治君
男爵 松岡均平君
男爵 伊藤文吉君
男爵 奥田剛郎君
森平兵衞君
磯村豐太郎君
山隈康君
岩田宙造君
山上岩二君
大西虎之介君
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昭和十三年二月一日(火曜日)午前十時十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=0
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001・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレヂヤ是ヨ
リ商法中改正法律案外二件ノ特別委員會ヲ
開キマス、先ヅ大臣ヨリ此ノ三法案ニ付テ
ノ御說明ヲ拜聽致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=1
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002・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 先ヅ商法中改正
法律案及商法中改正法律施行法案ニ付テ提
案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、本案制定ノ
趣旨竝ニ經過ニ付キマシテハ、本會議ノ際
ニ其ノ〓要ヲ申述ベタノデゴザイマスルガ
現行商法ハ明治三十二年ノ制定ニ係リ、其
ノ施行後既ニ約四十年ヲ經過シテ居リマ
ス、其ノ間ニ明治四十四年ニ一部分ノ改正
ガ行ハレマシタガ、是ハ最小限度ノ補修ヲ
加ヘタ程度ノモノデアリマシテ、要スルニ
現行規定ハ全般ヲ通ジマシテ、現在ノ社會
事情、殊ニ商事生活ノ實際ニ照シマシテ、
不備ノ廉ガ少クナイノデアリマス、殊ニ會
社ニ關スル規定ニ至リマシテハ、特ニ缺點
ガ多イノデアリマス、就中會社組織ニ依ル
企業ガ日ニ月ニ盛トナリマシタニ拘ラズ、
之ニ關スル法規ガ周到デナイ爲ニ、發起人
取締役等ノ責任、其ノ他重要ナル法律關係
ガ兎角明確ヲ缺キマシテ、多數ノ人々ノ權
益ニ不安ヲ與ヘマシタコト、殊ニ會社ノ事
業ガ蹉跌致シマシタヤウナ場合ニ、諸方面
ニ廣ク測ラザル損害ヲ及シマシタコトハ誠
ニ遺憾ニ堪ヘナカッタノデアリマス、仍テ政
府ハ昭和四年內閣ニ法制審議會ヲ設置シ
テ、朝野ノ權威者三十餘名ヲ其ノ委員ニ任
命致シマシタ、其ノ第一ノ事業トシテ商法
全般ニ亙ル改正要綱ヲ同審議會ニ諮問致シ
マシタル處、同審議會ハ實業界、法曹界、
學會等、各方面ノ意見ヲ徴シマシテ、愼重
ニ審議致シマシタル結果、昭和六年七月ニ
先ヅ商法中急速ニ改正ヲ要シマスル第一編
總則及第二編會社ノ二編ニ付テ二百六項目
ニ亙ル周到ナル改正要綱ヲ決定シテ、政府
ニ對シ答申セラレタノデアリマス、政府ハ
右改正要綱ヲ世間ニ公ニスルト共ニ、昭和
七年十月司法省内ニ商法總則及會社編改正
調査委員會ヲ設ケ、改正法律案ノ立案ノ任
ニ當ラシメマシタル處、同委員會ハ右改正
要綱ヲ基礎ト致シマシテ銳意審議立案致シ
マシタ結果、昭和十年十二月改正法律案ノ
立案ヲ完了致シマシタ、而シテ政府ハ取敢
ズ右法律案ヲ世間ニ廣ク公表シテ、之ニ對
スル意見ヲ徴シ、其ノ後右法律案ニ若干ノ
修正ヲ加ヘマシタルモノヲ去ル第七十囘帝
國議會ニ提案致シマシタル處、御承知ノ如
ク、本院ニ於テ一二ノ御修正ガアッテ可決セ
ラレタノデアリマスガ、衆議院解散ノ爲遂
ニ成立ヲ見ルニ至ラナカッタ次第デアリマ
ス、仍テ曩ニ提案致シマシタ法律案ニ本院
ニ於ケル修正其ノ他一二ノ修正ヲ加ヘマシ
タルモノヲ本案ト致シマシテ、今囘茲ニ提案
スルニ至ッタ次第デアリマス、前囘提案ノモ
ノト本案トノ異ナル點ハ、前囘ノ本院ノ修
正ニ御贊同申上ゲマシタ以外ニ、唯文字上
及ビ他トノ權衡上改メマシタ一二ノ點ガア
ルダケデアリマス、本案ハ商法第一編及第
二編、卽チ商法中一部ノ改正ヲ目的トスル
モノデアリマス、第四編ノ手形編ニ對シマ
シテハ旣ニ議會ノ協贊ヲ經マシテ、手形法
及小切手法ノ制定ヲ見テ居リマス、又第
三編商行爲及第五編海商ノ二編ニ對シマ
シテハ、昭和十一年ノ末法制審議會ニ於キ
マシテ改正要綱ガ決定セラレ、目下政府
ニ於テ改正法律案ノ作製ニ付調査〓究ヲ
進メテ居ル次第デアリマス、右ノ如ク本案
ハ商法中一部ノ改正ヲ目的トスルモノデア
リマスルガ、其ノ內容ハ商法第一編及第二
編ニ對シ殆ド全般的ノ改正ヲ企テタモノデ
アリマシテ、改正ヲ加ヘマシタ點ハ相當多
數ニ上ッテ居リマス、今比較的重要ト認メラ
レマスルモノヲ列擧致シテ見マスルト、第
一編總則編ニ於キマシテハ、商號ニ關スル
規定ヲ補充シマシタ點、營業讓渡ノ場合ノ
權利關係、殊ニ營業讓受人ノ責任ニ付新タ
ナ規定ヲ設ケマシタ點デアリマス、デ、第
二編會社編ニ付キマシテハ、會社全般ニ關
シテ、會社ハ本店所在地ニ於テ設立ノ登記
ヲ爲スニ依リ成立スルモノトシマシタ點、
會社ノ繼續ヲ廣ク認メマシタ點、會社ノ合
併無效ノ訴ノ制度ヲ創設致シマシタ點、
會社ノ設立無效ノ訴ニ關スル規定ヲ改正シ
マシタ點、罰則ニ付全般的改正ヲ加ヘマシ
タ點、合名會社及合資會社ニ關シマシテ
ハ、社員ノ責任ヲ明確ニシマシタ點、株式
會社ニ關シマシテハ、定款ハ公證人ノ認證
ヲ受クベキモノトシマシタ點、現物出資ト
同視スベキ所謂財產引受及事後設立ニ付規
定ヲ新タニ設ケマシタ點、募集設立ノ場合
ニ於テモ、一定ノ事項ニ付裁判所ノ選任シタ
ル檢査役ノ檢査ヲ受クベキモノトシマシタ
點所謂預合ニ關シ適當ナル禁止規定ヲ設
ケマシタ點、記名株式ニ付裏書讓渡ノ制度
ヲ設ケマシタ點、優先株、後配株等種類ヲ
異ニスル株式ノ發行ヲ認メ、且會社設立ノ
場合ニ於テモ之ヲ發行シ得ルモノトシマシタ
點株主總會ノ決議取消ノ訴ニ關スル規定
ヲ改メ、且決議無效ノ確認ノ訴ニ關シ規定
ヲ新タニ設ケマシタ點、株主總會ノ特別決
議ヲ必要トスル事項ヲ明確ニシマシタ點、
取締役又ハ監査役ハ、定款ニ別段ノ規定ナ
キ眼リ、株主中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要
シナイモノトシマシタ點、少數株主權ノ行
使ニ付若干ノ制限ヲ如ヘマシタ點、社債ニ
闘スル規定ニ主要ナ補修ヲ加ヘ、且社債權
者集會ノ制度ヲ新設シマシタ點、資本增加
ニ關スル規定ニ重要ナル改正ヲ加ヘマシタ
點各種株式ノ相互ノ轉換ヲ認ムルト共
ニ、株式ニ轉換シ得ル社債ノ發行ヲモ認メ
マシタ點、資本ノ增加又ハ減少ノ無效ノ訴
ニ關シ規定ヲ新タニ設ケマシタ點、會社ノ
整理ノ制度ヲ新タニ設ケマシタ點、合併ニ
關スル規定ニ必要ナ補修ヲ加ヘマシタ點、
特別〓算ノ制度ヲ新タニ設ケマシタ點等デ
アリマス、尙商法中改正法律施行法案ハ、
商法ノ改正ニ伴ヒ、新舊法ノ調和ヲ圖ル
爲其ノ他施行上必要ナル事項ヲ規定致シ
タモノデアリマス、以上ノ外詳細ノ點ニ付
キマシテハ、必要ニ應ジマシテ、政府委員
カラ十分ニ御說明ヲ致サセルコトニ致シマ
ス、尙本法改正案ハ現行法ニ對シ相當重要
ナ改正ヲ加フルモノデアリマスノデ、キニ
御協賛ヲ得テ公布セラレマシタ場合ニ於キ
マシテハ、公布後或期間其ノ施行準備ニ充
テ、ソレカラ實施致シタイト考ヘテ居リマ
ス、本會議ノ際ニモ申上ゲタ所デゴザイマ
スガ、今囘ノ事變ニ關聯シ、國民經濟ノ運
行ヲ確保スルノ必要ガ日ニ日ニ其ノ度ヲ加
ヘツヽアルコトハ申ス迄モナイ所デアリマ
ス、從ッテ本案ニ於ケルガ如キ會社制度ノ堅
實ヲ圖ル爲ノ新方策ヲ立テマスルコトハ、
今日ニ於テ彌、こ急務トナッテ參ッタノデアリマ
ス、何卒十分御審査ノ上、此ノ法案ノ通過
ニ御盡力アラムコトヲ切望致ス次第デアリ
マス、次ニ有限會社法案ノ提案理由ヲ申上
ゲタイト存ジマス、本案制定ノ趣旨ニ付キ
マシテハ、本會議ノ際ニ極メテ簡單ニ其ノ
〓要ヲ申述ベタノデゴザイマスガ、我ガ商
法ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ、合名會
社.合資會社、株式會社及株式合資會社
ノ四種類ノ會社ヲ認メテ居リマシテ、
各會社共ソレ〓〓其ノ特色ヲ有シテ居ル
ノデアリマスルガ、就中最モ重要ナ活動
ヲ致シテ居リマスノハ株式會社デアリマ
シテ、當委員會ニ於テ御審議ヲ願ッテ居リ
マスル商法中改正法律案ニ於テモ努力ヲ株
式會社ノ法規ニ集注シテ居ル次第デアリマ
ス、御承知ノ如ク、株式會社ヲ組織シマス
ル社員卽チ株主ノ責任ガ有限ニナッテ居リ
マスコトガ企業組織トシテ歡迎セラレルノ
デアリマスガ、通例株式會社ノ株主ノ數ハ
甚ダ多イノデアリマシテ、或株主ト他ノ株
主トノ間ニ聯絡ノナイノガ普通デアリマス
ルシ、又廣ク株式ノ賣買ガ行ハレマシテ、
株主ノ移動ハ常ニ生ジテ居ルノデアリマス
然ルニ株式會社ノ株主ト同ジク有限責任デ
ハアリマスケレドモ、相互ニ信賴關係ノ篤
イ少數者ニ依ッテノミ組織スル特殊ノ法人
モ亦營業ニ甚ダ適當ナ形態デゴザイマシテ、
御承知ノヤウニ英國ニ於テ先ヅ發達致シマ
シテ、獨佛等ノ諸國モ既ニ之ヲ是認シテ居
ルノデアリマス、我ガ國ニ於キマシテモ實
業界ニ於テ大分以前カラ其ノ要望ガ强クナッ
テ居タノデアリマシテ、昭和六年七月法制
審議會ハ商法改正要綱ノ諮問ニ對スル答申
ノ一項目トシテ、「外國法上ノ有限責任會社
又ハ英國法上ノ私會社ニ該當スル特別ノ會
社ヲ認メ之ニ付キ特別法ヲ以テ規定ヲ設ク
ルコト」ヲ明カニセラレタノデアリマス、之
ニ基キマシテ、司法省内ノ商法總則及會社
編改正調査委員會ニ於キマシテ商法中改正
法律案ニ引續キ有限會社法案ノ立案審議ヲ
進メ、今囘玆ニ同法案ヲ提出スルノ運ビニ
至ッタ次第デアリマス、本案ハ第一章總則、
第二章設立、第三章社員ノ權利義務、第四
章會社ノ管理、第五章定款ノ變更、第六章
合併及組織變更、第七章解散、第八章外國
會社、第九章罰則、第十章雜則ニ分レ、八
十九箇條ヨリ成ッテ居リマス、今本案ノ骨子
トモ申スベキ要點ヲ列擧致シテ見マスルト、
有限會社ハ其ノ目的ヲ商法上ノ會社ト
全ク同一ト致シマシタコト、二、社員ノ責
任ハ其ノ出資ノ金額ヲ限度ト致シマシタコ
ト、三、社員ノ數ノ最大限度ヲ原則トシテ
五十人ト致シマシタコト、四、資本ノ總額
ノ最大限度ハ別ニ制限致シマセヌガ、其ノ
最小限度ヲ一萬圓ト致シマシタコト、五、
社員ノ持分ハ出資口數ニ分割スルモノト
シ、出資一口ノ金額ヲ百圓以上ト致シマシ
タコト、六、持分ノ讓渡ニハ社員總會ノ特
別決議ヲ要スルモノトシ、社員相互間ノ讓
渡ニ付テハ定款ヲ以テ其ノ制限ヲ緩和スル
コトヲ得ルモノト致シマシタコト、七、設
立ノ際ニ必ズ出資金額ノ拂込ヲ爲スモノト
シ、拂込未濟ノ分ニ付テハ、會社設立當時
ノ取締役、監査役及社員ガ連帶シテ拂込ノ
責ニ任ズルモノト致シマシタコト、八現
物出資又ハ財產引受ニ付其ノ財產ノ評價ガ
不當ナル場合ニハ、會社成立當時ノ社員ガ
連帶シテ責任ヲ負フモノト致シマシタコト、
九、資本增加ノ場合ニモ、右八及ビ九ト同
趣旨ノ規定ヲ設ケマシタコト、+、業務ノ
執行ハ取締役ヲシテ之ニ當ラシムルコトト
致シマシタガ、監査役ヲ置タト否トハ任意
トシ、定款ノ定ムル所ニ依ルモノト致シマ
シタコト、十一、社員總會ニ付書面ニ依ル
決議ヲ認メ、其ノ他多タノ事項ヲ會社ノ自
治ニ委セマシタコト、十二、少數社員ノ權
利ヲ認メマシタコト、十三、有限會社ト他
ノ有限會社又ハ株式會社トノ合併ヲ認
メマシタコト、十四、株式會社ハ其ノ組
織ヲ變更シテ、有限會社ト爲スコトヲ得
ルモノトシ、有限會社ハ其ノ組織ヲ變更シ
テ、株式會社ト爲スコトヲ得ルモノト致
シマシタコト、十五、貸借對照表ノ公〓
ハ之ヲ强制セザルモノト致シマシタコト、
十六、社債ノ募集ハ之ヲ認メザルモノ
ト致シマシタコト等デアリマス、其ノ他
詳細ノ點ニ付キマシテハ、必要ニ應ジマシ
テ、政府委員ヨリ十分ニ說明ヲ致サセル積
リデアリマスガ、要スルニ、先程申述ベマ
シタ特種ノ營業組織ヲ是認シテ、之ニ適應
スル法規ラ網羅シタモノデアリマシテ、國
民經濟ノ發達ノ爲ニ大ニ裨益スルコトガ出
來ヨウト存ズル次第デアリマス、今囘ノ事
變ニ關聯シ、國民經濟ノ健全ナル運行ヲ確
保スル必要ガ日ニ日ニ其ノ度ヲ加ヘツヽア
ルコトハ申ス迄モナイ所デアリマスルシ、
事變後ノ事態ニ備ヘマスル爲ニ、商法中改
正法律案ト相俟ッテ、會社關係法規ノ完備ヲ
期スルコトハ、今日ニ於テ全ク焦眉ノ急務
トナッテ參ッタノデアリマス、何卒十分ニ御
審査下サレ、此ノ法案ノ通過ニ御盡力アラ
ムコトヲ切望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=2
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003・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレヂヤ此ノ
場合、此ノ三法案ニ對シマシテ全般的ノ御
質問ガアリマシタラ、ドウゾ願ヒタイト思
ヒマス、尙細カイコトニ付キトシテハ其ノ
法案每ニ願フコトニ致シタイト思ヒマス、
大體ノコトヲ一ツ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=3
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004・森平兵衞
○森平兵衛君 過日モ或席デ質問ガアリマ
シタノデスガ、此ノ有限會社法案ヲ商法中
ニ包含セラレナカッタ理由ヲ御尋ネ致シタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=4
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005・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 有限會社ニ關ス
ル法案ヲ別法典トシテ立案ヲ致シマスルコ
トハ、法制審議會當時カラ左樣ニ御決定ニ
ナッテ居ッタノデアリマスガ、其ノ趣旨ハ之
ヲ商法中ニ插入致シマシテ、卽チ商法上ノ
第五種ノ會社ト致シマシテ規定ヲ致シマス
ト、規定ガ甚ダ錯雜ニナルノデアリマス、
ソレカラ申上ゲル迄モナク新種類ノモノデ
アリマスルカラ、之ヲ在來ノ商法ノ會社編
ノ中ニ插入シナイデ、別個ノ法案ト致シマ
シタ方ガ運用ニモ都合ガ宜イト存ジタノデ
アリマス、全ク便宜ノ問題デアリマシテ、
立案ノ點カラ考ヘマシテモ、亦運用ノ點カ
ラ考ヘマシテモ、其ノ方ガ至當ヂヤナイカ
ト存ジタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=5
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006・森平兵衞
○森平兵衛君 只今政府委員ノ御說明デ大
體ヲ諒承致シタノデアリマスガ、要スルニ
マア別箇ノ法典トスル方ガハッキリスルノ
ミナラズ、運用ニ便利デアル、此ノ二點ト
拜聽致シテ宜イノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=6
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007・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 全ク御說ノ通リ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=7
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008・森平兵衞
○森平兵衛君 參考書類ノミデ見マスト、
株式合資會社ト云フモノハ頗ル會社ノ數ガ
少イノデアリマス、今囘ノ此ノ有限會社ト
云フモノハ、チヨット見ルト、株式合資會社
ニ能ク似テ居ッテ、ソレデマア株式ノ方デア
しぐ、讓渡ガ便利デアル、有限會社デアレ
バ、一々社員ノ口數ガ讓渡スル度每ニ登記
ヲセンナラヌト云フヤウナ、非常ナ不便ガ
アルノデアリマスルガ、株式合資會社ガ、
殆ド有限會社ノ此ノ法案ガ通レバ、不要ノ
ヤウナ感ガスルノデアリマスガ、將來ハ此
ノ株式合資會社ト云フモノハ永久ニ存續セ
ラレルト云フヤウナ政府ノ御考デアリマス
カ、御考ヲ承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=8
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009・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 株式合資會社ハ
其ノ現狀ニ於キマシテ、御說ノ通リニ、甚
ダ其ノ數ハ少イノデアリマス、實ハ商法中
改正法律案ノ立案ノ際ニモ、斯樣ニ數ガ少
イノデアリマスカラ、寧ロ法典ノ上カラ削
除シタ方ガ宜イデハナイカト云フヤウナ議
論モアッタ位デアリマス、併シナガラ假令少
數デアリマシテモ、現在株式合資會社ト云
フモノガ存在シテ居ルノデアリマスシ、將
來是ガ絕無ニ歸スルトモ考ヘラレナイノデ
アリマシテ、ソレデ此ノ儘存置シタ方ガ宜
カラウト存ジタ次第デアリマス、ケレドモ、
私共モ將來株式合資會社ノ甚ダシク殖エル
ト云フ考ハ毛頭有ッテ居ラナイノデアリマ
ス、唯現在アリマスシ、且將來絕無ニナル
ト云フコトモ考ヘラレマセヌデシタカラ、
之ヲ其ノ儘存置シタヤウナ次第デアリマス、
尙株式合資會社ハ、御承知ノ通リニ、合名
會社ト株式會社トノ兩方ノ特長ヲ兼ネ併セ
ルモノトシテ考ヘラレタモノデアリマセウ
ケレドモ、ソレハ最初株式合資會社ナルモ
ノノ發案セラレタ當時ノ考デアリマシテ、
其ノ後ノ實情ヲ見マスルト、無限責任社員
ハ株主ト大變性質ノ違ッタモノガ二ツ揃ッテ
居ルモノデアリマスカラ、木ニ竹ヲ接イダ
ヤウナコトニナリマシテ、其ノ實際ノ運用
ハ必ズシモ圓滑デナイノデアリマス、之ニ
反シマシテ、有限會社ハ悉ク社員ガ有限責
任デアリマシテ、唯其ノ社員間相互ノ信賴
ノ厚イ者ダケ、斯ウ云フノデアリマスカラ、
相互ノ信賴ノ厚イ者ダケト云フ點カラ見マ
スト、合名會社ニ似テ居リマスシ、又悉
ク有限責任デアルト云フ點カラ言ヘバ、
株式會社ニ類似シテ居ルノデアリマス、卽
チ此ノ意味ニ於キマシテ有限會社ハ合名會
社ト株式會社ノ兩方ノ特長ヲ發揮スル性質
ノモノデアルト云フコトガ言ヘルカト思フ
ノデアリマス、從ッテ有限會社ガ益"、今後殖
エテ參リマスト、ソレニ伴ヒマシテ株式合
資會社ガ段々減ッテ來ルト云フコトモ想像ハ
出來マスケレドモ、先程申上ゲマシタ通リ、
株式合資會社其ノモノガ全ク無クナルト
云フコトハ今日想像ガ出來ナイモノデアリ
マスカラ、存置ダケハ致シテ置ク、斯ウ云
フ工合デアリマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=9
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010・森平兵衞
○森平兵衛君 今囘ノ有限會社ガ丁度合資
會社カ合名會社デアッテ、ソレデ有限デアル、
合資會社ノ方デハ他ノ社員ハ有限デアリマ
スガ、御承知ノ通リ、代表社員トカ業務執
行社員ダケガ無限デアル、其ノ無限ダケヲ
取ッタモノデ、全部有限ニナルト云フダケ
ノ特長デアッテ、出資ノ口數ノ移轉ノ度每ニ
登記ヲセンナラヌト云フコトガ、大變手數ヲ
要スルノデアリマス、實際上トシマシテハ、
同族會社ニシテモ何ニシテモ、株劵ノ口一
口ヲ甲カラ乙ニ讓ッタラ、直グ登記ヲセンナ
ラヌト云フコトガナカ/〓煩雜ノ手數ヲ要
スルノデアリマスガ、斯ウ云フコトニ付キ
マシテハ法制審議會ニ於テ何等カ御考ガナ
カッタノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=10
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011・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御說ノ點ハ固ヨ
リ考慮致シタノデアリマス、唯有限會社ニ
於キマシテハ、原則トシテ出資口數ノ持分
ト申シマスル此ノ讓渡ト云フコトニ付テハ、
非常ナ制限ガアルノデアリマシテ、只今大
臣ヨリ申述ベマシタ通リニ、在來ノ社員相
互間ノ讓渡ニ付キマシテハ、餘リヤカマシ
クシナイデモ宜イト云フ緩和方法ハ認メマ
シタケレドモ、サモナイ時分ニハ、此ノ持
分ノ讓渡ト云フコトニ付テハ相當嚴重ナ制
限ガアルノデアリマス、デアリマスルカラ、
出資ノ讓渡ト云フコトハ左樣ニ頻繁ニハア
リ得ナイト存ジテ居ルノデアリマシテ、登
記ヲ以テ之ニ臨ミマシテモ、左程ノ不便ガ
ナイト云フコトニ考ヘタヤウナ次第デアリ
マス······甚ダ恐縮デアリマスルガ、私ガ思
ヒ違ヒヲ致シテ居リマシタ、出資口數ノ移
轉ニ付テハ登記ノ必要ガナイノデアリマス、
左樣訂正ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=11
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012・森平兵衞
○森平兵衛君 有限會社デハ出資ノ口數ノ
移轉ニ付キマシテハ一々登記ノ必要ヲ認メ
ナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=12
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013・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御說ノ通リ、登
記ノ必要ハナイノデアリマシテ、社員名簿
ニ其ノ旨ノ書替ハ必要ト致シマスケレドモ、
登記ヲ强制致シテ居リマセヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=13
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014・山隈康
○山隈康君 商事ニ關スルコトハ世運ノ進
步ト共ニ頗ル繁雜ニ亙ッテ、其ノ取引ノ實際
ヲ管掌スルト云フコトハ餘程困難デハナイ
カト思フノデアリマス、現在ノ裁判制度ニ
於キマスレバ、大學ヲ出テ、司法官試驗ニ
及第ヲシ、僅カナ期間ノ修習ニ依ッテ本官ニ
任ゼラレル、斯ウ云フ人ノ手ニ複雜極リナ
ク而モ日ニ月ニ進步セル商事上ノ判斷ヲ任
セルト云フコトハ、餘程危險デアッテ、往々
實際ニ卽セナイ判斷ヲ下サルヽ虞ガアルト
思フノデアリマス、此ノ故ニ屢〓商商裁判
ノ如キ特殊ノ裁判制度ヲ設ケラルヽ御意思
ハナイカト云フコトヲ當局ニ御尋モ致シマ
シタガ、當局デハ左樣ナ御企テハナイト云
フ御話ヲ承ッタノデアリマス、是ハ今此ノ司
法官ノ試補ノ修習ト云フコトガ、現在ノ制
度ノ上ニ付テハ非常ニ形式的デ、實際其ノ
效果ノ有無ヲ私ハ疑フノデアリマス、此ノ
司法官ノ試補時代ニ於ケル修習ヲモット御
考ヘニナッテ、商習慣ナリ或ハ特殊ノ取引所
ニ於ケル取引ノ狀態トカ、其ノ他會社ノ實
際ノ情況、是等ヲ修習セシムルト云フヤウ
ナ御考ハ政府ノ方デハ御持チハナイデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=14
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015・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 甚ダ重要ナル御
尋デアリマシテ、私カラ御答ヲ致シマスル
ノハ如何カト存ズルノデアリマスガ、司法
官試補ノ修習ノ現狀ニ付キマシテハ、御說
ノ通リニ、出來得ル限リ取引所デアリマス
ルトカ、手形交換所デアリマスルトカ、其
ノ他實業方面ニ付テ見學サセルト云フコト
ニ致シテ居ル次第デアリマス、而モ今日デ
モ御承知ノ通リニ一年半ト云フコトニ先ヅ
ナッテ居リマスルノデ、其ノ期間ダケデアリ
マシテハ、今申シマシタ見學ガ十分デナイ
關係モアリマスルカラ、今後近キ將來ニ於
テ此ノ期間ヲ相當延長致シタイト、斯樣ニ
存ジテ居ル次第デアリマス、尙御說ニ從ヒ
マシテ、今後是等ノ見學ヲ更ニ十分ニ致シ
タイト云フコトヲ此處デ申上ゲテ置ク次第
デアリマス、尙商事裁判所ノ問題デアリマ
スルガ、商事裁判所ニモ色々アルヤウデ
アリマシテ、例ヘバ我ガ裁判所構成法上ノ
裁判所ノヤウナモノデナク、判事以外ノ者
ヲ構成員トスル商事裁判所モアルヤウ
デアリマスガ、左樣ナ商事裁判所ノ制
度ハ今日採用スルト云フ考ハ持ッテ居ナイ
ノデアリマス、唯商事ニ付キマシテハ特殊
ノ知見ヲ要スルノデアリマスカラ、大都市
ニ於キマシテハ商事ニ特有ナル部ヲ設ケマ
シテ、卽チ其ノ部ニハ商事事件ノミ、從ッテ商
事ニ堪能ナル判事ヲ以テ之ニ當テルト云フ
コトニ致シテ居リマス、尤モ地方ニ依リマ
シテハ地方裁判所內ニ多數ノ部ヲ設ケルコ
トノ出來ナイ實情モアリマスルノデ、總テ
普遍的ニハ申サレナイノデアリマスケレド
モ、出來得ル限リ左樣ニ致シマシテ、只今御
指摘ニナリマシタヤウナ弊害ノナイヤウニ
努メタイト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=15
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016・山隈康
○山隈康君 只今御話ニナリマシタ現在ノ
試補修習ニ於ケル手形交換所若シクハ取引
所ノ實地見學等ハヤッテ居ラレルヤウデア
リマスガ、是ハ殆ド形式デ、實際ノ眞相ニ
觸レテ其ノ實情ノ修習ト云フコトハ、從來
ノ實績カラ見マスルト、甚ダ遺憾ノ點ガ少
クナイト思フ譯デアリマス、ソレハ第一地
方ニ於キマシテハソレヲ指導スル司法官ガ
居ナイ、唯情況ヲ見テ一二ノ質問ヲスルニ
止マルヤウナ情勢デアリマスルカラ、之ヲ
何トカ政府ノ方ニ御考ヘ願ヒマシテ、モット
實績ノ擧ガルヤウニ最善ノ御注意ヲ願ッテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=16
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017・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 現在ノ司法官試
補ノ修習中ニ於ケル見學ガ十分デナイト云
フ御意見デアリマスガ、私共モ誠ニ左樣ニ
考ヘテ居ルノデアリマシテ、決シテ現狀ヲ
以テ滿足シテ居ナイノデアリマス、只今ノ
御意見ヲ承リマシテ、甚ダ慚愧ニ堪ヘザル
感ヲ致スノデアリマス、仰セニ依リマシテ、
此ノ方面ニ更ニ十分ノ努力ヲ捧ゲタイト存
ズル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=17
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018・山隈康
○山隈康君 第七十議會ニ於キマスル商法
ノ改正案ニ關スル委員會ノ審議期間ガ非常
ニ短クテ、私共ハ十分ノ〓究竝ニ質疑ニ於テ
相應ハナイ所ガアッテ、遺憾ニ存ジテ居ッタ
次第デアリマス、此ノ節ハ相當ノ期間モア
ルヤウデアリマスガ、此ノ儘御繼續ニナル
ノデアリマセウカ、或ハ前囘ノ例ニ依リマ
シテ、小委員デモ設ケラレテ審議ヲサレル
ト云フ御意見デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=18
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019・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 如何デセウ
カ、是ハ第七十議會ニ貴族院デハ大體修正
ヲシテ通過シテ居リマスノデスカラ、此ノ
度ハ小委員ヲ設ケズニ、此處デ大體ノ御審
議ヲ願ッテヤラウカト云フ考ヲ我々ハ持ッテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=19
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020・山隈康
○山隈康君 此ノ儘御審議ヲ繼續セラレル
ト云フコトデアリマシタナラバ、本日ハ此
ノ程度デ散會ヲ願ヒマシテ、モット案ニ付テ
一ツ參考書類等モ本日戴キマシタカラ、モ
ウ少シ〓究シテ質疑ヲシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=20
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021・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 如何デスカ、
外ニ御質問ハアリマセヌカ、今日ハ無論午
前中デ大體ノ御質問ヲ打切ッテ、又後ニシタ
イト考ヘテ居リマシタ、大體ノ御質問ガア
リマスナラ、ドウゾ此ノ場合ニナスッテ戴キ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=21
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022・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 此ノ機會ニ御許
シヲ得マシテ、昨日提案致シマシタ所ト、
今日提案致シマシタ所トノ相違ノ點ヲ申述
ベテ見タイト存ズルノデアリマス、先程大
臣ヨリ申述べマシタ通リ、昨年當院ニ於テ
御修正ニ相成リマシタ箇所ハ、總テ御修正
ノ通リニ改メマシテ、提案ヲ致シタノデア
リマス、其ノ文字ヲ申述ベテ見タイト存ズ
ルノデアリマス、ソレハ先ヅ第百九十八條
デアリマス、昨年提案ヲ致シマシタモノハ
「發起人ニ非ズシテ株式申込證、目論見書、
株式募集ノ廣〓其ノ他株式募集ニ關スル文
書ニ自己ノ氏名及會社ノ設立ヲ贊助スル旨
ノ記載ヲ爲スコトヲ承諾シタル者ハ發起人
ト同一ノ責任ヲ負フ」トナッテ居ッタノデア
リマス、然ルニ御修正ニ依リマシテ、何々
ノ「記載ヲ爲スコトヲ承諾シタル者ハ」ノ次
ニ「自己ヲ發起人ナリト誤認シテ株式ノ申
込ヲ爲シタル者ニ對シ」ト云フ文字ヲ挿入
シタノデアリマス、原案ノ儘デハ廣キニ失
スルカラ、之ヲ幾分緩和シタ方ガ宜イト云
フ御修正ノ御意見デアリマシテ、ソレニ從
ヒマシタ次第デアリマス、其ノ次ハ第三百
十九條デアリマス、原案ハ「社債權者集會
ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外」云
云トナッテ居ッタノデアリマス、其ノ文字ヲ
改メテ「本法ニ規定アル場合ヲ除クノ外」トス
ベキデアルト云フ御修正ノ御意見ガアリマ
シタ、是ハ文字ノ問題デアリマシテ、實質
ニ影響ハナイノデアリマスルケレドモ、
御修正ノ方矢張リ實質ニ適スルノデアリ
マシテ、御修正】通リニ從ッタ次第デア
リマス、次ハ第四百四十二條ノ第一項デア
リマス、此ノ四百四十二條ノ第一項ニ
準用條文ヲ揭ゲテ居ルノデアリマスガ、
「第二百四十四條」ノ次ニ「第三百二十一條
第二項」ヲ加ヘタ方ガ宜イト云フ御修正ノ
御意見デアリマシタ、成程此ノ方ガ完全ニ
ナルノデアリマス、我々ノ方デ粗漏デアッ
タノデアリマス、從ッテ御修正ノ通リ此ノ條
文ヲ加ヘタモノヲ今囘提案ヲシタ次第デア
リマス、其ノ次ハ罰則ノ部分デアリマシテ、
第四百九十三條及第四百九十四條ノ各第一
項ニ關スルモノデアリマス、昨年提案ノ分
ニハ「賄賂ヲ收受シ」ト云フ文句デアッタノ
デアリマス、ソレヲ「不正ノ請託ヲ受ケ財
產上ノ利益ヲ收受シ」ト、斯ウ改ムベキデア
ル、ソレカラ「他人ニ賄賂ヲ供與セシメ」ト
云フ文字デアッタノデアリマスルガ、ソレヲ
削除シテシマッテ、サウシテ同條ノ各第二項
ニ「賄賂」トアルノデ「前項ノ利益」ニ改メタ
方ガ宜イ、斯ウ云フ御修正ノ御意見デアリ
マシテ、是亦御修正ノ通リニ從ッタノデア
リマス、次ハ第四百九十五條デアリマシテ、
只今申述ベマシタト同ジヤウナ趣旨デ、「賄
賂」ト云フノヲ「利益」ト改メタイト云フ御
修正ノ御意見デアリマス、是亦ソレニ從ッタ
ノデアリマス、以上ハ當院ニ於ケル御修正
ノ點デアリマシテ、總テ御修正ノ點ニ從ヒ
マシタコト只今申述ベタ通デアリマス、
其ノ他ニ二點變更ヲ加へタモノガアルノデ
アリマス、ソレハ第二百四條ノ第一項ノ問
題デアリマス、昨年提案ノモノニ依リマス
ト、「株式ハ之ヲ他人ニ讓渡スコトヲ得但シ
定款ヲ以テ其ノ讓渡ノ禁止又ハ制限ヲ定ム
ルコトヲ妨ゲズ」トアッタノデアリマス、此
ノ本文ニ付テハ變更ガアリマセヌケレドモ、
但書デアリマス、ソレヲ「但シ定款ヲ以テ其
ノ讓渡ノ制限ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」トシ
タ方ガ宜イ、卽チ「禁止」ト云フ文字ヲ避ケ
タ方ガ宜イト云フ意見ガ衆議院ノ委員會ニ
於テ多數ノ考トシテ現レタノデアリマス、
御承知ノ通リニ解散ニナリマシタガ爲ニ、
修正案トシテ現レル程度迄ニ立至リマセヌ
デシタケレドモ、多數ノ意嚮トシテ、此ノ
「禁止」ノ文字ヲトッタ方ガ宜イト云フコト
デアリマシタ、ソレハ御承知ノ現行法ノ第
百四十九條ニ此ノ條文ガ當ルノデアリマス
ガ、現行法ノ第百四十九條ニ依リマスルト、
「株式ハ定款ニ別段ノ定ナキトキハ會社ノ
承諾ナクシテ之ヲ他人ニ讓渡スコトヲ得」、
詰リ制限ガ出來ル、斯ウ云フヤウナ趣旨ニ
規定サレテ居ルノデアリマス、御承知ノ通
リニ、文字トシテ制限ガ出來ルト云フダケ
デアリマスルケレドモ、解釋ト致シマシテ
ハ禁止ヲシテモ差支ハナイ、卽チ茲ニ現レ
テ居リマスル禁止ノ趣旨ハ、廣イ意味デア
ルト云フコトニ先ヅナッテ居ルヤウデアリ
やっ、デアリマスカラ、我々ト致シマシテ
ハ、禁止モ出來ル、制限モ出來ルト云フ積
リデアリマシテ、其ノ實質ニ相違ハナイノ
デアリマスルケレドモ、成ルタケ現行法ニ
近イ文字ヲ入レテ、「制限」ト云フ字ダケデ
現シタ方ガ宜クハナイカト云フ趣旨デアリ
マシタ、デアリマスカラ、此ノ趣旨ニ從ヒ
マシテ、第二百四條ノ但書ヲ「但シ定款ヲ
以テ其ノ讓渡ノ制限ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」
ト、斯樣ニ變更ヲ致シタ次第デアリマス、
是ト同樣ノ趣旨カラ致シマシテ、第百七十
五條ノ第二項ノ第五號ニ矢張リ「禁止若ハ
制限」トアリマシタノヲ「制限」ト致シマシ
タ、第百七十五條第二項第五號デアリマス、
又矢張リ同樣ノ趣旨カラ致シマシテ、第百
八十八條ノ第二項第六號モ同樣ニ改メマシ
ク、尙第二百二十五條第一項第六號モ同樣
ニ改メマシタ、卽チ第二百二十五條第一項
第六號デアリマス、卽チ四ケ所アリマスル
ケレドモ、其ノ趣旨トスル所ハ只今申述べ
タ一點ダケデアリマス、是ガ衆議院ノ委員
會ニ於ケル多數ノ意〓ニ從ッタ次第デアリ
マス、其ノ外ニ私共デ再考ノ結果改メマシ
タ所ガ一點ダケアルノデアリマス、ソレハ
第三百八十條ノ第二項デアリマス、第三百
八十條ノ第二項ハ資本減少ノ無效ノ訴ヲ起
シ得ル者ヲ規定シタノデアリマスガ、其ノ
中ニ昨年提案ノ時ニハ〓算人ト破算管財人
トガ拔ケテ居ッタノデアリマス、是ハ他トノ
權衡カラ考ヘマシテモ、〓算ノ場合ノ〓算
人、破產ノ場合ノ破產管財人ヲ加ヘルコト
ガ適當デアラウト考へマシテ、此ノ二者ヲ
玆ニ加ヘタノデアリマス、以上申述ベタ所
ガ昨年提案ノモノト異ル點デアリマシテ、
卽チ當院御修正ノ分ノ外ニ先程申上ゲマシ
タ衆議院ノ委員會ノ意〓ニ從ッタモノガ一
ツ、ソレカラ私共他トノ權衡上デ考ヘマシ
タモノガ一ツ、以上デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=22
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023・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 山隈君ニ御尋
ネシマスガ、先程何カ參考資料ノ提出ヲ御
要求ニナリマシタガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=23
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024・山隈康
○山隈康君 サウヂヤアリマセヌ、色々ナ
書類、說明書トカ、理由書トカ云フノヲ今
戴キマシタカラ、之ヲ少シ拜見致シマシ
テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=24
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025・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 如何デスカ、
明朝マデソレハ差支アリマセヌカ、···ソ
レデハ今日ハ此ノ程度ニ致シマシテ、明朝十
時カラ開會致シタイト思ヒマス、今日ハ散
會致シマス
午前十一時四分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵大隈信常君
副委員長山岡萬之助君
委員
公爵島津忠承君
伯爵黑木三次君
子爵八條隆正君
子爵舟橋〓賢君
松本烝治君
男爵松岡均平君
男爵伊藤文吉君
森平兵衛君
山隈康君
岩田宙造君
山上岩二君
大西虎之介君
國務大臣
司法大臣鹽野季彥君
政府委員
司法省民事局長大森洪太君
司法省刑事局長松阪廣政君
司法省調査部長井上登君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00119380201&spkNum=25
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