1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年二月十日(木曜日)午前十一時九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=0
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001・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 是ヨリ商法中
改正法律案外二件ノ特別委員會ヲ開キマス、
其ノ前ニ御諮リ致シマスガ、有限會社法案
ノ小委員ヲ御設ケ願ヒマシテ、御審議ヲ
願ッタノデアリマスガ、小委員ノ方ガ御終了
ニナリマシタカラ、小委員長カラ御報〓ヲ
伺ヒタイト思ヒマス、山岡委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=1
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002・山岡萬之助
○山岡萬之助君 小委員會ハ去ル四日、五
日、七日、九日ニ亙リマシテ審議ヲ致シマ
シタ、其ノ大要ヲ御報告申上ゲマス、政府
ノ說明ニ依リマスレバ、有限會社ハ株式會
社ト同樣ニ責任ガ有限デアル、サウ云フ點
ノ所カラ企業組織ト致シマシテ、實業界ニ
歡迎セラレル所ノ株式會社ト最モ能ク似テ
居ル所ノモノデアル、唯株式會社ハ株主ガ
多イガ爲ニ株主間ニ連絡ガナイノデ、其ノ
缺點ヲ補フ意味ニ於テ互ニ信賴シタル少數
者ガ相集ッテ會社ヲ組織シテ、サウシテ事業
ヲ進メテ行クコトガ適當デアル、斯樣ナ次
第デ社員相互ノ信賴ト云フコトノ點ガ有限
會社ノ特長デアリマシテ、責任ガ資本ノ程
度ニ限ラレル點ニ於テ株式會社ト同樣デア
ル、今一ツ言ヒ換ヘレバ、合名會社ト社員
ノ相互信賴ノ點ニ於テ似テ居リ、責任ノ點
デ株式會社ト似テ居ル、斯ウ云フ根本ガ說
明セラレテ居リマシタ、仍テ此ノ有限會社
ハ少數社員ヲ以テ會社ノ基礎ト致シマス、
其ノ少數社員ガ持分ヲ持チマシテ、其ノ持
分ハ一口百圓、而シテ最低ノ資本額ハ一萬
圓、社員數ハ五十名、斯ウ云フ所ニ基礎ヲ
置キマシテ、而モ其ノ資本額ハ全額ノ拂込
ヲ必要トスル、此ノ點ガ株式會社ト異ッテ居
ル所デアリマス、而シテ社員ノ數ニ付キマ
シテハ、英國其ノ他ノ例ニ於テ五十名以下
デアル、「ドイツ」系統ノ、「ドイツ」、「オー
スタリー」、「フランス」、「スヰス」、ソ
コ等ハ社員ノ數ガ定メテナイ、ケレドモ、
資本ノ額ニ依ッテ或程度ニハ止マッテ居ル
ガ、可ナリ其ノ系統ニ於テハ大キイ有限會
社ガアルト云フ次第デアリマス、ソコデ全
額拂込ヲ要件ト致シテ居リマスルカラ、若
シ全額拂込ノナカッタ場合ニ登記ガ出來タ
場合ハ、依ッテ會社ハ成立スルノデアルカ、
或ハ成立ニ付テ問題ヲ生ズルノデアルカト
云フ點ニ付テ質疑應答ガゴザイマシタ、此
ノ點ニ付キマシテハ政府ノ說明ハ拂込不足
ノモノガアリマシテモ、或ハ未拂ガアリマ
シテモ、會社ハ成立スル、然シソレニ付テ
ハ社員若シクハ取締役、監査役等ガ場合々々
ニ依ッテ連帶責任ヲ以テ其ノ補塡ヲ致スノ
デアル、ソレニ依ッテ會社資本ハ何時モ充
實サレルコトニナルノデアル、斯ウ云フ規
定デアルカラ、ソレデ差支ナイノデアル、
斯樣ナ說明デアリマシタ、而シテ此ノ連帶
義務ハ增資ノ場合ニモ亦適用セラレテ居リ
マスノデ、何時デモ資本額ト云フモノハ會
社ニ充實シテ居ルト云フノガ此ノ會社ノ建
前デアリマス、而シテ社員五十人ヲ限リマ
シテ、廣ク資本ヲ集メテ居ラヌ性質カラ致
シマシテ、社債募集ト云フコトハ一切此ノ
會社ニハ認メテ居ラナイ、是モ矢張リ株式
會社ト全ク異ッテ居ル點デアリマス、以上申
上ゲタヤウナ點ガ株式會社ト本質的ニ差異
ノアル點デアリマス、其ノ結果此ノ會社ヲ運
用スル上ニ於キマシテモ、色々ト其ノ差ガ存
スルノデアリマス、其ノ一一一ヲ申上ゲマスレバ、
取締役ガ業務ヲ執行スルノデアリマスガ、
ソレハ一名デ足リルノデアリマス、勿論
數名ヲ置クコトガ出來ルノデハアリマス
ガ、一名ニ依ッテ業務執行ガ出來マス、監査役
ハ之ヲ置クト否トハ其ノ會社ノ自由デアリ
やっ、次ニ株式會社ニ於ケル株主總會ト同
ジ働キヲスル所ノモノガ社員總會デアリマス、
社員總會ハ社員ノ數ガ少イノデアリマスカラ、
招集手續ヲ極メテ簡易ニ致シマシテ、又場
合ニ依レバ書面ノ決議ヲモ認メテ居ル次第
デアリマス、斯樣ナ次第デ、資本ガ少イノガ
通常デアリマスカラ、株式會社ニ於ケルガ
如キ整理ヲスルト云フ規定、或ハ解散ノ場
合ニ於ケル特別〓算ト云フヤウナコトハ、
此ノ會社ヘハ適用致サヌコトニナッテ居ル
次第デアリマス、デ、合併若シクハ組織變
更ニ付キマシテモ、以上述ベマシタル本質
ニ從ッテ極メテ狹イ範圍ニ於テ是ガ認メラ
レテ居ルノデアリマス、ソレカラ株式會社
ニ似テ居ルト云フ點カラ致シマシテ、此ノ
會社ヲ法則通リニ國家ガ監督シテ參リマス
ル取締規定デアリマス、ソレハ大體株式會
社ニ似テ居ルモノデアリマス、ソレ等ハ法
案ニアリマスコトデ、ソレヲ御覽ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、此ノ程度デ大體ノコトハ說
明ハ濟セマシテ、次ニ二三ノ質問ノ點ヲ御
紹介致シテ置キマス、先ヅ第一ニ有限會社
ハ諸國ニ立法例モアリ、是ガ現在便利デア
ルト云フ意味カラ、此ノ法案ヲ提出シタノ
デアルカ、或ハ何カソレ以上差迫ッタ理由ガ
アッテ、提出シタノデアルカト云フ質問ニ對
シテ、政府ハ差迫ッタト云フ理由ハ別ニナ
イ、諸國ノ立法例モアリ、實績モ擧ッテ居
ル、又實業界ニ於テモ之、ヲ要望シテ居ル、
デアルカラシテ、早ク之ヲ制定スルト云フ
考ハアッタケレドモ、商法ノ改正案ガ審議中
デアルカラシテ、ソレノ出來ナイ間ニ有限會
社法ヲ作ルト云フコトハ困難デアル、ソレ
故ニ差控ヘテ今日ニ及ンダノデアルガ、商
法ノ改正案ガ提出セラレタコトデアルカ
ラ、玆ニ次イデ此ノ案ヲ提出シタヤウナ次
第デアル、斯樣ナ說明デアリマシタ、又實
業界ト云フノハドウ云フ方面デアルカ、此
ノ質問ニ對シマシテハ、司法省其ノ他ノ官
廳へ各方面カラ書面、口頭デ其ノ必要ヲ申
出テ居ル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、次
ニ有限會社ハ經濟界ノ實情ニ鑑ミテ必要ダ
ト言ハレルケレドモ、ソレハドウ云フコト
デアルカト云フ問ニ對シマシテハ、責任ガ
有限デアルト云フ點ガ合名會社ヤ合資會社
ト違ッテ居ル、此ノ點ガ實業界ニ於テ業務ヲ
活潑ニ遂行シテ行クニ適シテ居ル、若シ無限
責任ダト云フコトニナレバ、業務執行ガ卑
屈ニナル、ソレ故ニ有限デアルト云フ點ニ
付テ此ノ會社ガ實業界ニ望マレル所以デア
ル、又資本ヲ集メテ事業ヲスルガ、株式會
社ノ如ク多數ノ未知ノ人ガ居ラヌデ、知合ッ
夕人達ガ集リ、卽チ信賴アル點ニ付テ特質
ガアル、サウ云フ必要カラ此ノ會社ヲ望ム
ノデアル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、ソ
レカラ別個ノ法案トシテ出シタノハドウデ
アルカ、此ノ點ハ屢〓論、ラレマシタ點デ
アリマスガ、全ク理論上カラシテ、此ノ法
案ニ於テモ商法上ノ會社デアルコトヲ特ニ
規定ヲシテ居リマシテ、合名、合資、株式
會社、株式合資會社ト、全ク商法上五ツノ
會社トナルベキモノデアリマスカラ、法典
ニナルコトガ理論ノ上カラハ當然デアリマ
スケレドモ、五種ノ會社ヲ一ツノ法典ニ纏
メルト云フコトハ、規定ガ極メテ尨大トナ
リ、之ヲ扱フニ不便ヲ感ズル、今一ツハ新
會社デアリマスルカラシテ、之ガ實際ニ運
用シテ改革ナケレバナラヌ點ガアリマセウ
シ、從ッテ既ニ長ク運用サレタ會社ト同ジ法
典ニ置クコトハ適當デナイト考ヘル、斯フ
云フ御說明デアリマシタ、ソレカラ次ニハ
此ノ取締役ノ資格ニ付キマシテ多クノ質問
應答ヲ重ネラレマシタ、此ノ點ハ株式會社
ニ於テ論ジラレマシテ、株式會社ノ取締役
ガ株主以外カラ選定シテ宜シイト云フ原案
ニ對シテ、當時現行法ノ如ク株主中カラ選
定スルコトガ適當デハナイカト云フ論ガ
アッタト同樣デアリマス、唯併シ此ノ有限會
社ニ於キマスル所ノ論議ニ於キマシテハ株
式會社ヨリモ一層格段ナル意味ガアルノデ
アリマス、卽チ此ノ案ハ「ドイツ」系統ト
違ッテ、五十人以下ヲ以テ信賴サレタル少數
者ニ依ッテ會社ヲ構成スルノデアル、斯ウ云
フコトニナリマスト云フト、ソレ〓〓信賴
關係ガアル人ガ寄ッテヤルノガ特質ダト云
フ次第デアリマスカラ、脇カラ其ノ業務ヲ
遂行スル所ノ幹部ガ入ッテ來ルト、俗ナ言葉
デ言ヘバ、飛ビ込ンデ來ル、斯フ云フコト
ハ條理上甚ダ不都合デハナイカト云フコト
ヲ考ヘマスレバ、株式會社ヨリモ甚ダ不都
合ダト云フ理論ガ立ツノデアリマス、又
政府ニ於テモ、此ノ點ニ此ノ立案ノ根據ノ
重キヲ置イテ、信賴關係ガ此ノ案ノ特質
デアルト、斯フ云フ說明デアリマスルカ
ラ、自然株式會社ニ於ケル論議以上ニ第三
者ノ取締役ニ入ッテ來ルト云フ點ニ付テハ適當
デハナカラウデハナイカト云フコトガ考ヘ
ラレルノデアリマス、其ノ點ニ於テ質問應
答ヲ致シマシタガ、政府ハ是非トモ是ハ矢
張リ有限ノ點ニ於テ株式會社ト同ジデアル
カラ、株式會社ニ於テ既ニ第三者ノ取締役
ヲ認メル以上ハ、是非是モ認メル必要ガア
ル、其ノ點ニ於キマシテ特ニ說明ヲ致シマシ
テ、株式會社ニ於テハ多數ノ人ガ其ノ會社
ノ基礎ヲ成シテ居ルノデアルガ、有限會社ハ
五十人、極メテ少數ナモノデアルカラ、其ノ
中カラ業務執行ノ適任者ヲ求メルト云フコ
トハナカナカ困難ナ場合ガアル、殊ニ同族
會社ニ於テ同族ガ業務執行ニ適當ナモノデ
ナイ場合ガ相當アルデアラウ、斯ウ云フ場
合ニハ脇カラ適當ナ人ヲ雇フ必要ガアル、
而シテ其ノ必要ガアッテ、脇カラ取締役ヲ求
メマス場合ニ、若シ社員タルコトヲ要スル
コトニ致シマスレバ、或社員ノ持分ト云フ
モノヲ其ノ人ニ貸シテヤルト云フコトニナ
ル、サウスルト云フト、從來株式會社ニ於
テ適當デナカッタ事例、卽チ之ヲ與ヘタガ爲
ニ民事訴訟ヲ起シタリドウシタリスルヤウ
ナコトモ出來テ來ル、殊ニ持分デアリマス
カラ、株式ノ如ク委任狀、白紙委任狀ヲ交
付シテ、直グ本人ニ戾ル手續ヲシテ置クヤ
ウニ簡單ニ行カナイ持分デアルカラ、ソレ
ヲ本人ニ戾スト云フコトニ法律上ノ計畫ヲ
樹テルコトハナカ〓〓面倒デアリマス、ソ
レデアルカラ一層問題ヲ引キ起ス、況ヤ其
ノ人ガ死亡シタ場合ニ於テハ相續人ガ社員
トナッテ、一向知ラナイヤウナ人ガ入ッテ來
ルノデアルカラ、一層株式會社ヨリ工合ガ
惡イ、尙其ノ點ガ若シ其ノ會社ニ於テ脇カ
ラ取締役ノ入ルト云フコトヲ不都合デアル
ト考ヘルナラバ、定款ニ於テ嚴重ニ規定ス
レバ、ソレデ足リル、其ノ規定ハ法律上有
效デアルカラシテ、之ニ依ッテ其ノ各個ノ場
合ニ於テ要求ガ十分ニ滿タシ得ルノデアル
カラ、法律ヲ以テ左樣ニ强制スル必要ハ何
處マデモナイ、而シテ尙此ノ社員總會ト云
フモノガ選任ヲスル又解任ヲスルノデアル
カラ、氣ニ入ラナケレバ、何時デモ解任ス
レバ宜シイノデアル、斯ウ云フ風ニ、運用
上ノ點カラ幾多ノ理論ヲ述ベラレテ、原案
ヲ强ク支持サレタノデアリマス、玆ニ於テ
小委員會ノ委員諸君ノ考ニ於キマシテモ無
論兩論アッタ次第デアリマスルガ、旣ニ株式
會社ノ方ニ於テ株主以外ノ者ガ幹部トナラ
レルコトヲ認メマシタ以上ハ、定款ヲ以テ
自由ニ制限出來ル規定ト相俟ッテ、先ヅ是ハ
社員外カラ取締役ガ出テモ、法規ヲサウ云
フヤウニシテ置クコトハ差支ナカラウト、
斯ウ云フ點ヲ認メルコトガ適當ダト云フコ
トニ議論ガ落著キマシテ、原案通リニ、原
案ヲ修正スルト云フ態度ニハ進マナカッタ
次第デアリマス、次ニ此ノ資本ノ實額ガ不
足致シマシテ居ル時ニ、連帶ノ責任ハ一體
何年ソレハ續クモノカト云フ問題ニ對シマ
シテ、政府ノ答辯ハ、ソレハ別ニ規定ガナ
イカラシテ、他ノ法規ニ依ッテ時效期間其ノ
他ノ關係ニ依ッテ消滅スルハ格別、此ノ場合
ニ別ニ規定ハナイ、否、更ニ一步ヲ進メテ、
五年間ノ間ハ如何ナル意味ニ於テモ其ノ債
務ヲ免除スルコトヲ許サナイト、斯樣ニ本
案ハナッテ居ルノデアルト說明セラレテ居
リマス、ソレカラ次ニ此ノ財產目錄ノ點、
卽チ商法ノ三十四條、二百八十五條デアリ
マスガ、ソレガ此ノ有限會社ニ準用サレテ
居リマスル所カラ、財產目錄ニ付テ議論ガ
交換サレマシタ、デ財產目錄ニ付キマシテ
ハ、商法ノ改正案ニ於キマシテ、時價ヲ以
テ財產目錄ハ作成スルコトガ原則デアル、
唯固定財產ニ付キマシテハ原價ヲ以テ記入
シ得ルト、此ノ規定ノ關係カラ、株式會社
ニ於テハ假令固定財產ノ時價ガ原價以上ニ
上リマシテモ、何時モ原價ニ止メナケレバ
ナラヌ、斯ウ規定サレテ居リマス、其ノ點
ニ付テ幾多質問應答ガゴザイマシタ、記錄
ノ上ニ、卽チ速記錄ノ上ニ明瞭ニナッテ居リ
マスルカラ、此ノ一々ハ此處ニ申上ゲマセ
ヌノデアリマス、以上質問應答ノ〓要デア
リマス、尙ソレ等以外マダ詳細ノコトハ速
記錄ニ讓リマシテ、私ノ小委員會ニ於ケル
報〓ハ此ノ程度ニ止メマシテ、何カ又御質
問ガゴザイマスレバ、申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=2
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003・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) サウ致シマス
レバ、此ノ場合ニ全般ニ亙ッテ、卽チ三法案
ニ亙ッテノ御質疑ガ尙アリマスナラバ、伺ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=3
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004・山隈康
○山隈康君 法律制定ノ當初ニ於キマシテ
ハ完全無缺何等ノ瑕瑾ナキモノト認メマシ
タ法律ガ、實際問題ニ當嵌リ、更ニ進ンデ
裁判上ノ懸案トナリマスル際ニ於テ種々ノ
議論ガ起ッテ、之ニ對シテ學說トカ判例等ガ
區々ニ亙ル場合モ少クナイノデアリマス、
其ノ學說、判例ノ最モ根據トスルノハ、帝
國議會ニ於ケル質疑應答、是ガ立法ノ精神
ヲ明白ニスル指針盤トナッテ居ルヤウデア
リマス、是等ノ見地カラ致シマシテ、疑ハ
シキモノハ詳細ニ御尋ヲ致シマシテ、立法
ノ趣旨ヲ明白ニスルコトガ、我々ニ與ヘラ
レタル權利デアリ、又義務デアルト信ズル
ノデアリマス、併シ此ノ商法改正案ハ旣ニ
當院デ可決ヲサレマシテ、衆議院ノ審議中
ニ解散ニ相成リマシタ、殊ニ衆議院デハ大
法典デアルカラ、繼續委員ヲ設ケテ審議ヲ
シタイト云フヤウナ意見ガ速記錄ニ屢〓現ハ
レテ居ルヤウデアリマス、從ッテ衆議院ノ方
ノ審議モ相當時間ヲ要スルト存ジマスカラ、
一日モ速カニ衆議院ノ方ニ送付スル必要モ
アリマセウシ、又他面ニハ從來現行商法ノ
缺陷ニハ事業界ノ方デモ相當ニ惱ンデ居リ
マスルカラ、此ノ改正法案ノ實施ノ速カナ
ラムコトヲ期待シテ居リマス、デアリマス
ルカラ、私ノ商法改正法律案ニ對シマスル
先般留保致シマシタル質問モ、成ルベク簡
單ニ唯僅カニ三點ダケ御尋ネ申シタイ、其
ノ三點モ第七十議會ニ於キマシテ、小委員
會デ質問ヲ申上ゲマシタ範圍デアリマシテ、
其ノ際政府委員ノ御答辯中尙考慮シテ見タ
イト云フ點、及ビ御答辯ト速記錄ニ現ハレ
テ居リマスル點ガ喰違ヒガナイカ知ラント
存ジマスル點ニ限ッテ御尋ネ申シタイト存
ジマス、第一ハ此ノ商法改正法案ノ第百八十
五條、第百八十七條ニ亙ル御尋デアリマス、
第百八十五條ニ依リマスレバ、第百六十八
條卽チ此ノ定款中ノ「二、數種ノ株式ノ發
行竝ニ其ノ各種ノ株式ノ內容及數、三、株
式ノ額面以上ノ發行、四、發起人ガ受クベ
キ特別ノ利益及之ヲ受クベキ者ノ氏名、五、
現物出資ヲ爲ス者ノ氏名、出資ノ目的タル
財產、其ノ價格竝ニ之ニ對シテ與フル株式
ノ種類及數」、主トシテ財產ニ關スル規定デ
アリマス、此ノ場合ニ對シテ總會ガ變更ヲ
致シマシタ時ニハ、第百八十五條ノ第二項
ニ依リマシテ、第百七十三條ノ第三項ニ依ッ
テ引受人ハ其ノ株式ノ引受ヲ取消スコトガ
出來ル、斯ウ云フコトデ引受人ヲ保護シテ
居ルヤウデアリマス、然ルニ第百八十七條
ノ創立總會ニ於テ定款ニ變更ヲ爲シマシタ
場合ニハ、第百七十三條ノ第三項ニ依ッテ
引受ヲ取消スコトガ出來ナイ、然ルニ此ノ
定款ノ變更中ノ最モ重要ナルモノハ會社ノ
目的タル事業、會社ハ其ノ目的タル事業ガ
會社ノ生命デアッテ、引受人モ其ノ目的ニ
依ッテ引受ヲスル、例ヘバ飛行機ノ製作ヲ目
的トスル事業、此ノ事業ハ時代ニ卽シタ最
モ有益ナル事業デアルト云フコトデ、相當
株ノ引受ヲ致シマシタ、處ガ、ソレガ總會
ニ依ッテ目的タル事業ガ吳服販賣ニ變更サ
レタ、斯ウ云フ場合ニ於テモ尙引受人ノ引
受ヲ取消スコトガ出來ナイト云フコトハ、
甚ダ權衡ヲ得ヌデハナイカ、目的ノ變更ト
云フコトハ容易ニソレハナイコトデアラウ
ト存ジマスケレドモ、改正商法ノ第六節ノ
第三百四十三條ノ末項ニ於キマシテモ前
二項ノ規定ハ會社ノ目的タル事業ヲ變更ス
ル場合ニハ之ヲ適用セズ」トアッテ、法律自
カラ目的ノ變更ト云フコトモ既ニ認メテ居
ルノデアリマス、目的ノ變更ト云フ重要ナ
ル點ヲ總會デ變更シタル場合ニ於テハ、引
受人ハ引受ヲ取消スコトガ出來ナイノニ、
僅カニ發起人ノ受ケル補償額トカ、或ハ會
社ノ負擔ニ歸スベキ設立費用トカ、斯ウ云
フモノニ對シテハ不服ノ者ハ引受ヲ取消ス
コトガ出來ルト云フコトハ、是ハ權衡ヲ失
シタヤウナ感ガアリマス、此ノ點ヲ先ヅ伺
ヒタイ、第二ニハ第百九十一條ノ場合デア
リマス、是ハ現行法ト大體違ハナイヤウデ
アリマスガ、「詐欺若ハ强迫ヲ理由トシテ其
ノ引受ヲ取消スコトヲ得ズ」、登記ガアッテ
會社ガ成立致シマシタ後ニ於テハ、如何ニ
强迫ガアッテモ、其ノ强迫ノ理由ニ依ッテ株式
ノ引受ヲ取消スコトガ出來ナイ、是ハ第七
十議會ニ於テ御尋ヲ致シマシタノハ、其ノ
强迫ガ總會ノ終了スルマデ、若シクハ終了
シタ後マデ繼續シタ場合ニ於テハ、全然意
思ノナイ株式ノ引受デアルカラ、ソレモ取
消スコトガ出來ナイデアラウカ、ドウデアラ
ウカ、卽チ總會ノ成立スル······登記スルマデ
ニ强迫カラ免レテ、取消スコトノ出來ル能力
ヲ囘復シタニ拘ラズ、取消ヲセズシテ登記ヲ
シタ場合ニ限ッテ取消スコトヲ得ナイト云フ
趣旨デアルカドウカ、或ハ假令總會ノ成立マ
デ若シクハ總會ノ成立後マデ强迫ガ繼續シ
テ居ッテモ、ソレハ會社ノ成立ニ影響スルコ
トデアルカラ、假令意思ノナイ引受デモ、ソ
レヲ取消スコトガ出來ナイト云フ風ニ解ス
ベキモノデアルカ、此ノ點ニ對スル政府委員
ノ御答辯ハ斯ウナッテ居リマス、政府委員、
「矢張リ解釋問題デ甚ダムツカシイノデア
リマスガ、强迫ガ會社ノ成立スル迄續イテ
居リマシタヤウナ場合ナラバ、取消ガ出來
ナイノヂヤナイカト思ヒマスルガ、矢張リ
困難ナ問題デ十分ニ考慮致シタイト存ジマ
ス」、此ノ時ノ御答辯ハ斯ウデナクシテ、强
迫ノ繼續シタ場合ニハ取消スコトガ出來ル
ト云フ趣旨ノ御答辯デアッタカノヤウニ拜
承シタノデアリマス、或ハ此ノ速記錄ノ通
リカモ知レマセヌ、念ノ爲ニ此ノ點御伺ヒ致
シマス、第三點ハ是モ前囘御尋ネ致シマシ
タ點デアリマスガ、條文ヲチヨット見付ケ出
セマセヌガ、此ノ記名株式ニ對シテ質權ヲ
設定致シマシタ際ハ、會社ハ質權者ニ對シ
マシテ、會社ノ利益配當若シクハ分配ト云
フヤウナコト、斯ウ云フモノヲ請求ニ依ッテ
會社ハ支拂フノ義務アリヤト云フ問ニ對シ
マシテ、其ノ通リ義務ガアル、ソコデ私ノ
疑問ニ存ジマスルノハ、サウ云フ場合ニ若
シ其ノ質權者ノ權利ガ免除、或ハ一部若シ
クハ全部ノ辨濟、或ハ相殺等ニ依ッテ消滅シ
タ場合ニハドウカ、ソレニ對シテ政府委員
ハ左樣ナ危險モアルコトハ確カデアルト云
フ御答ヲ得テ居ルノデアリマス、ソコデ私
ノ更ニ疑ノ存シマスル所ハ、一部ノ辨濟、
全部ノ辨濟、若シクハ其ノ他ニ依ッテ消滅シ
タ質權者ニ對シテ、會社ガ支拂ッタ場合ニ於
ケル會社ト株主ノ法律關係、此ノ場合ハ會
社ノ方デハ、請求ニ依ッテ初メ質權ノ設定セ
ラレタル金額ヲ基準トシテ支拂ッタノデア
リマスルカラ、會社自身ニハ過失ハナイヤ
ウデアリマスルケレドモ、株主ニ對シテハ、
株主卽チ債務者、質權ヲ設定致シマシタル
債務者其ノモノハ、自分ノ債務デナイ既ニ
辨濟サレタ債務ヲ、會社ガ支拂ッタノデア
リマスルカラ、ソレハ支拂シナカッタモノト
シテ、株主ハ會社ニ對シテ利益配當、其ノ
他解散ノ場合ニ於ケル殘餘財產ノ分配請求
權ガアルカドウカト云フ點、是ハドウモ此
ノ點ハ餘程問題デハナイカト思フノデアリ
マンク。他ノ法律ニヨク見マスルヤウニ、株
主タル債務者ガ質權者ニ對シテ、相殺ニ依ッ
テ消滅ヲシタ、一部、全部ノ免除ヲ得タ、辨
濟ヲシタト云フ時ニハ、債務者カラソレヲ會
社ノ方ニ屆ケル、私ノ設定シタル債權ハ是々
ニ依ッテ辨濟ヲシマシタ、消滅ヲシマシタト
云フコトヲ屆出ヲセシメタ場合ニ於テハ、債
務者ハソレヲ以テ會社ニ對抗出來ル、斯ウ
云フヤウナ、他ノ多クノ場合ニハ規定ガアッ
テ保護ヲシテ居ルヤウデアリマスルガ、或
ハ他ノ條文等ニ其ノ會社ヲ保護シ、若シクハ
株主ノ權利ヲ全ウスル條文ガアルカモ知レ
マセヌガ、マダ精讀シテ居リマセヌカラ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=4
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005・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今ノ御尋ノ劈
頭ニ當リマシテ、誠ニ御懇篤ナル御言葉ヲ
拜承致シマシテ、先ヅ以テ御禮ヲ申上ゲタ
イト思ヒマス、御質問ノ第一點デアリマス
第百八十五條ニ於キマシテ、株式ノ引受ヲ
取消スコトノ出來ル途ヲ開キマシタ其ノ趣
旨ハ、只今御指摘ニ相成リマシタ通リデア
リマス、是ハ申ス迄モナク、特定ノ引受人
ニ關スルモノデアリマシテ、例ヘテ申シマ
スルト、甲ト云フ引受人ガ現物出資ヲ致シ
マシテ、其ノ現物出資ニ對シテ、千株貰フ
ト云フコトニナッテ居リマシタ場合ニ、是ガ
七百株ニ減少サレマシタ、左樣ナ場合ニ七
百株デ甘ンジテ居ルコトガ出來レバ宜シイ
ノデアリマスケレドモ、常ニ七百株デ甘ン
ジナケレバナラナイト云フコトハ、是ハ氣
ノ毒ナ話デアル、左樣ナ關係カラ致シマシ
テ、是ガ爲ニ此ノ特定ノ不利益ヲ受ケル引受
人ノ取消權ヲ認メタヤウナ次第デアリマス、
然ルニ第百八十七條ノ創立總會ニ於ケル定
款變更ノ際ニ於ケル目的ノ變更、是ハ御承
知ノ通リニ、特別決議デヤルノデアリマシ
テ、從ッテ引受人總體ニ關スル一般的ノ問題
デアリマス、ソレデアリマスルカラ、目的
ノ變更ニ依リマシテ、自分達ノ引受ノ趣旨
ニ反スルモノト考ヘマスルナラバ、是ハ其
ノ者ガ必ズヤ反對ノ投票ヲ致シマセウ、デ
アリマスルカラ、此ノ目的ハ全般的ノ問題
デアッテ、全般的多數ノ意思デ決定ヲスルノ
デアリマスルカラ、此ノ際ニ特ニ引受取消
ト云フコトヲ規定スルコトハ、却テ相當デ
ハナクナルノデハナイカ、斯樣ニ考ヘタ次
第デアリマス、尙御承知ノ通リニ、會社成
立後ト雖モ、定款ノ變更ニ依ッテ、目的ノ變
更ガ出來ル次第デアリマシテ、左樣ナ場合
ニ、株主ガ株主タル地位ヲ脫退スルト云フ
譯ニハ參ラナイノデアリマスルカラ、彼此
對照致シマシテ、第百八十七條ノ方ニ、引
受取消ノ途ヲ開カナカッタト云フコトハ、寧
ロ適當デハナイカト存ズルノデアリマス、ソ
レカラ第二點デアリマスルガ、昨年私ノ申
上ゲタ所ガ甚ダ明快ヲ缺イタヤウデアリマ
シテ、其ノ爲ニ御手數ヲ掛ケテ甚ダ恐縮ニ
存ズルノデアリマス、御設例ノ場合ニ於テ
ハ、矢張リ此ノ法文ノ解釋トシテハ取消ス
コトヲ得ナイモノト解釋スルノ外ハナイト
思フノデアリマス、併シナガラ是ハ强迫、詐
欺ノ程度デアリマシテ、若シ意思欠缺ト云
フヤウナ、當然無效ノ場合ナラバ、是ハ別
箇ノ問題デアリマスルケレドモ、御設例ノ
如ク、詐欺、强迫ノ問題デアリマスル限リ
ハ、矢張リ取消スコトヲ得ザルモノト解ス
ルノデアリマス、左樣ナ場合ニハ不都合ヂ
ヤナイカト云フコトハ起リマセウケレドモ、
左樣ナ場合ハ、恐ラクハ事案トシテサウ屢〓、
ハナイコトデアリマセウ、左樣ナコトノ爲
ニ、會社創立ノ基礎ヲ固クスルト云フヤウ
十、此ノ法文ハ矢張リ維持ヲシナケレバナ
ラナイト存ジタ次第デアリマス、第三點デ
アリマスルガ、御指摘ノ場合ハ第二百九條
ノ登錄質ノ問題デアラウト拜察スルノデア
リマス、此ノ登錄質ノ場合ハ、御承知ノ通
リニ質權ヲ會社ニ通知ヲシテアルノデアリ
マスルカラ、若シ其ノ後債權ガ辨濟又ハ免
除ニ依リマシテ、全部若シクハ一部ガナク
ナリマシテモ、之ヲ以テ會社ニ對抗スルコ
トハ出來ナイ譯デアリマス、從ッテ會社ガ
質權者ニ對シテ爲シタ辨濟ハ有效デアリマ
シテ、唯質權者ト株主トノ此ノ當事者間ノ
不當利得ノ問題ヲ生ズルダケデアルト思フ
ノデアリマス、然ラバ只今御示シノ通リノ、
左樣ナ免除ナリ辨濟ナリシタ場合ニ、ソレ
ヲ會社ニ通〓シテ、其ノ通告ヲ以テ會社ニ
對抗スルト云フヤウナ法文ヲ置イテ置イタ
方ガ宜クハナイカ、斯ウ云フ御說デアリマ
シタガ、誠ニ結構ダト存ズルノデアリマス、
併シソレ迄規定ヲ致シマスルト、規定ガ甚
ダ錯雜ニ亙ルノデアリマシテ、其ノ點ハ法
律上對抗力アル若シクハナイト云フ點ハ規
定ヲ差控ヘタ次第デアリマス、實際上ノ問
題ト致シマシテ、會社ニ十分通知ヲシテ、
會社ガソレヲ守ルト云フコトニナリマスレ
バ、運用上間違ガナイダラウト、斯樣ニ考
ヘマシテ、只今御指摘ノ第二次的ノ辨濟若
シクハ免除ヲ得タル旨ノ通知ノ對抗力ニ付
テハ、規定ヲ設ケナカッタ次第デアリマス、
左樣ニ御諒承ヲ題ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=5
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006・山隈康
○山隈康君 私ノ質問ハ大體是デ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=6
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007・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 外ニ御質問ハ
ゴザイマセヌデスカ、御質問モナイヤウ
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=7
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008・黒木三次
○伯爵黑木三次君 私ハ先般有限會社法律
案ガ本議場ニ提出サレマシタ時ニ、土方博
士カラ御質問ニ相成ッタコトニ關聯致シマ
シテ、寧ロ私ノハ議事進行ノ質問位ニナル
ノデゴザイマセウガ、伺ヒタイト斯ウ思フ
ノデアリマス、ソレハ土方博士ノ御心配ノ
點モ御尤ナ所ト存ジテ居リマスルニ、政府委
員ノ之ニ對スル御答ガ甚ダ不十分ト申上ゲ
テハ如何カト思ヒマスガ、サウ云フ風ナコト
デゴザイマシテ、我々同ジク會派ノ者ノ中
デモ其ノ點ニ付テ多少不滿ヲ申サレル方
モゴザイマスルカラ、若シカ是ガ本議場
ニ御報告ノ後デ又斯ウ云フヤウナコトハ
委員會ニ於テ質疑應答ガアッタヤ否ヤト云
フヤウナコトモ起ラナイトモ限リマセヌカ
ラ、其ノ點ヲ懸念致シマシテ、是ハ私ハ自
分ノ質問ヂヤナイト思ヒマスルガ、人ノコ
トデゴザイマスルガ、斯ウ云フ風ナ意味合
デ私ガ御尋ネシテ居ルト云フコトヲ御諒承
ノ上デ少シ詳カニ御說明ヲ願ヒタイト斯ウ
思ヒマス、ソレハ一ツノ點ハ既ニ小委員長
ノ御報〓ノ中ニアッタトハ存ジマスルガ、重
ネテニナリマスケレドモ、モウ一應言ハシ
テ戴キタイト思ヒマス、ソレハ一點ト致シマ
シテ、少數ノ事業ノ經營ニハ便宜デアラウ
ケレドモ、其ノ便宜ガ却テ禍ヲナス原因ニ
ナラヌトモ限ラナイヂヤナイカ、此ノ譯ヲ
モウ少シ話シテ貰ヒタイト云フ斯ウ云フ御
問ダッタト思ヒマスガ、此點ニ關シテ御答
ハ甚ダ不十分ト思ヒマス、第二ノ點ガ小委
員會デ既ニ多少ノ御質疑ガアッタト思ヒマ
スコトデゴザイマスガ、ソレハ經濟界ノ實
情ニ鑑ミト云フヤウナコトデアリマスル
ガ、果シテ是ハドウ云フコトデアラウカ、
土方博士ハ自分ハ實業界ニハ緣ガ遠イケレ
ドモ、多分ソレハ軍需工業ニ關スル部分品
ノ下請ト云フヤウナモノデアッテ、是ハ平
和ガ來タ時ニハ、反動デ非常ニ困難ナコト
ガ債權者ニカヽッテ來ルノヂヤアルマイカ
ト云フヤウナ御心配デゴザイマシタ、ソレ
ニ付テモ御答ハ甚ダ不十分ダッタモノデ畢
竟サウ云フコトガ起ッタト思ヒマスルカ
ラ、此ノ二點ニ關シマシテ政府ノ御答辯ヲ
得テ置キタイト、斯樣ニ思フ次第デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=8
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009・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 前囘本會議ニ於
キマシテ、土方先生カラ御質問ガアリマシ
ク、其ノ際ノ政府ヨリノ答辯ガ極メテ簡單
ニ過ギタコトニ付テハ、私共恐縮ニ存ジテ
居ル次第デアリマス、ソレデ只今此ノ點ニ
關シテ御答辯ヲ致シ得ル機會ヲ與ヘラレタ
コトニ付キマシテハ、誠ニ有難ク存ズル次
第デアリマス、第一點デアリマスルガ、有
限會社ガ企業組織ニ極メテ適當デアルト云
フコト、及ビ有限會社法ヲ認メテ居リマス
ル各國ニ於キマシテ其ノ實績上其ノ有限會
社ガ誠ニ重寶デアッテ、而モ重大ナル活躍
ヲシテ居リマスルコトハ、御承知ノ通リデ
アリマス、ソレデ之ガ企業組織トシテ歡迎
セラルヽ所以ハ、蓋シ有限責任ノ社員ヲ以
テ組織ヲスルケレドモ、其ノ組織ナリ管理
ナリガ比較的小規模デアル、簡單デアル、
內輪デアルガ爲ニ便宜デアルト云フコトニ
主モニ存スルデアラウト思フノデアリマス、
然ラバソレガ爲ニ却テ弊害ヲ生ジヤシナ
イカト云フ點ヲ虞レルノデアリマス、此ノ
法案ニ於キマシテモ有限會社ノ設立ハ株式
會社ニ比シテ誠ニ容易ニナッテ居リマス、併
シ此ノ設立ガ容易ニナッテ居リマスル一面
ガアリマスルケレドモ、他面ニ於キマシテ
ハ、此ノ案デ御承知ノ通リニ出資ナリ、現
物出資ナリ、是ハ全部拂込提供ヲ要スルモ
ノニシテ、其ノ基礎ノ確實ヲ期シマシタ、
是ハ第十二條ニ規定ガアル所デアリマス、
又ソレ等ニ付テ未濟ナリ又瑕疵ガアリマス
ルナラバ、之ニ對シテ連帶シテ塡補スルト
云フ責ヲ規定シタノデアリマス、又ソレ
等ノ塡補義務ニ付テ五年間ハ決シテ免除ガ
出來ナイ、斯ウ云フ規定モ置イタノデアリ
マス、此ノ基礎ノ確實ト云フコトニ付テハ、
株式會社以上ノ規定ヲ以テ之ニ臨ンダ次第
デアリマス、尙債權者ヲ保護スル關係ニ於
キマシテハ、例ヘテ申シマスルト、資本減
少ナリ又合併ナリ、或ハ組織變更ノ場合等
ニ付キマシテ、株式會社ト同樣ニ債權者ヲ
保護スル手續ヲ取ラナケレバナラナイノデ
アリマシテ、是等ニ付テモ債權者ニ對スル
關係ニ於テハ缺クル所ガナイカノ如ク存ズ
ルノデアリマス、又詐害的設立ニ付キマシ
テ矢張リ株式會社ト同樣ニ此ノ取消請求權
ヲ認メテ居ル次第デアリマス、尙只今モ申
述ベマシタ通リニ、有限會社ノ設立ガ比較
的株式會社ヨリモ容易デアリマスル關係上
憂慮ヲ致シマスルノハ、有限會社ヲ假ニ設
立ヲ致シマシテ、之ヲ後ニ何等カノ方法ニ
依リマシテ株式會社ニ引直ス、卽チ株式會
社ノ設立ノ嚴重ナル規定ヲ潛脫スルト云フ
弊害モ考ヘ得ラレルノデアリマスルカラ、
有限會社ガ株式會社ト合併ヲ致シマシテ株
式會社トナリマスル場合、又有限會社ガ組
織變更ヲ致シマシテ株式會社トナリマスル
場合、是等ニ付キマシテハ其ノ財產ニ付テ
モ相當嚴重ナル規定ヲ以テ臨ミマシタ外ニ、
裁判所ノ認可ヲ要スルモノト致シマシタ、
デアリマスルカラ、此ノ案自體ト致シマシ
テハ、有限會社ノ設立ハ簡單ニハナッテ居リ
マスルケレドモ、之ガ爲株式會社設立ノ規定
ヲ潜ルト云フヤウナコトガナイヤウニ、又
有限會社ノ設立ナリ、又存續ナリニ付キマ
シテ、債權者ニ對スル關係ニ於テハ、株式
會社ト殆ド同樣ニ、相當强キ規定ヲ以テ臨
ンデ居リマスルカラ、先ヅ債權者ニ對スル
關係ニ於テハ心配ハナイカト存ズル次第デ
アリマス、尙第二ノ點デアリマスルガ、
有限會社ガ斯樣ナ企業組織デアリマスルガ
爲ニ、實業界ニ非常ニ是ガ歡迎セラレマシ
テ、餘程以前カラ司法省ナリ其ノ他ノ官廳
ニ對シマシテ有限會社是認スベシト云フ要求
ガアッタノデアリマス、現ニ御承知ノ通リニ同
族會社ガ株式會社ト云フ形デ以テ多ク設立
ヲセラレテ居リマスルガ、是ナドハ有限會社
法ガナイカラ、巳ムヲ得ズ株式會社トシテ
設立ヲシタモノデアリマセウ、若シ有限會
社ガ出來テ居リマスルナラバ、思フニ有限
會社トシテ組織ヲセラレタモノト存ズルノ
デアリマス、又敢テ同族會社ニ限リマセズ、
凡ソ有限會社ト云フモノハ先程申上ゲマシ
タ通リニ手頃ナモノデアルト云フ關係カラ、
大イニ歡迎セラレルコトデハナイカト思
フノデアリマス、軍需工業ニ付テノ御話ガ
アリマシタガ、有限會社ガ特ニ軍需工業ノ
關係カラ歡迎セラレルト云フ特段ノ理由ガ
アルトハ別ニ考ヘナイノデアリマス、今日
軍需工業ガ盛ンデアリマスル關係カラ特ニ
有限會社ノ必要ヲ痛感シタト云フ譯デハナ
イノデアリマシテ、從來カラ有限會社是認
ノ希望ガ多カッタノデアリマシテ、此ノ希望
ニ副フタ次第デアリマス、軍需工業ガ若シ
一朝ニ致シマシテ今日ノヤウナ盛觀ヲ失フ
ト致シマスルナラバ、經濟界一般ニ恐ラク
ハ相當ノ打擊ヲ與ヘマセウ併シ是ハ有限會
社ニノミ打撃ヲ與ヘルト云フ譯デハナイノデ
アラウト思ヒマスルノデ、恐ラクハ一般的
傾向トシテ現ハレテ來ルコトカト存ズルノ
デアリマス、卽チ有限會社ヲ拵ヘマスルコ
トハ、決シテ軍需工業其ノ特殊ノ爲ニ生ジ
タコトデハナイノデアリマス、唯此ノ事變
中ナリ又事變後ニ於キマシテ會社ガ多ク起
リマセウ、左樣ナ場合ニ在來ノ四種類ノ會
社ヨリモ更ニ第五種ノ會社ヲ認メ、會社ノ
種類ガ殖エタト云フコトハ、是等ノ經濟界
ノ活動ヲ助ケルコトニハナリマセウケレド
モ、今日ノ此ノ機會ヲ狙ッテ有限會社法案ト
云フモノヲ立案シタ次第デハナイノデアリ
マス、左樣ニ御了承ヲ願ヒタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=9
-
010・黒木三次
○伯爵黑木三次君 私ノ質問ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=10
-
011・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) モウ皆サン御
質問如何ガデゴザイマセウカ······モウ大抵
皆樣御濟ミニナッタヤウニ拜承致シマス、然
ラバ此ノ法案ノ討論ニ入リマスガ、討論ニ
入リマシテ御異議ガゴザイマスマイカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=11
-
012・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ是カ
ラ討論ニ入リマス、先ヅ商法中改正法律案
ト商法中改正法律施行案ト、此ノ二ツヲ議
題ニシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=12
-
013・八條隆正
○子爵八條隆正君 商法中改正法律案ハ
度々此ノ委員會ノ席上デモ御意見中ニ出マ
ス通リ既ニ第七十議會ニ於キマシテ本院ヲ
通過シタ案デアリマシテ、今囘ノ御提案ハ
貴族院ニ於テ當時修正セラレタ點モ其ノ修
正ヲ容レラレ、其ノ他衆議院ノ委員會ノ空
氣等モ察セラレマシテ、僅カナル修正ヲ加ヘ
ラレテ提案セラレタモノデアリマシテ、今
囘ノ提案ニ依リマシテ當委員會ニ於テ再檢
討ヲセラレマシテモ何等修正其ノ他手ヲ著
クベキ必要モナイヤウニ思ハレマス、私
商法中改正法律案ノ原案ニ贊成致シマス、
又商法中改正法律施行法案モ商法ノ改正ニ
伴ヒマシテ必要トスル法案デアリマスノデ、
是亦私ハ原案ニ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=13
-
014・山隈康
○山隈康君 私モ兩案共原案ニ賛成ノ一人
デアリマスガ、玆ニ一ツノ希望ヲ申述ベタ
イト思ヒマス、先刻小委員長ヨリ有限會社
法ニ對シテ、質疑應答ノ詳細ナ報〓ガゴザイ
マシタガ、其ノ中ニ社員外カラ取締役ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=14
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015・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) チヨット山隈
君ニ御注意致シタイト思ヒマスガ、今マダ
有限會社法案ノ方ニ入ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=15
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016・山隈康
○山隈康君 ソレヂヤ後デ申シマス、ソレ
デハ商法改正案ニ對シマシテハ全然贊同ヲ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=16
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017・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 別ニ御異議ハ
ナイヤウニ思ヒマスガ、兩法案共可決シテ
宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=17
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018・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ是ハ
可決サレタコトニ致シマス、次ニ有限會社
法案ニ移リマス、此ノ討論ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=18
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019・八條隆正
○子爵八條隆正君 再ビ發言致シテ恐縮ニ
存ジマスガ、有限會社法案ハ是ハ新シイ試
ミデアリマスガ、政府ニ於テ本法案ヲ提案
サレマス以前ニ於キマシテ、御說明ノ如ク
各種ノ專門家ヲ集メタル委員會ニ於キマシ
テ愼重審議セラレタ其ノ際ニ生レタモノデ
アリマス、今日ノ社會ノ實況、要望等ヲ容
レラレマシテ立案サレマシタモノデアリマ
ス、旣ニ外國ニ於テモ經驗ヲ經タモノデア
リマス、今日我ガ國ニ於テ行ハレマシタナ
ラバ、相當社會ニ於テ便宜ヲ感ズルモノダ
ト存ジマス、實行上或ハ他日改正ヲ要スル
點モアラウトハ存ジマスガ、是ハ新シイ法
律デアリ、新シイ試ミデアル爲デアリマシ
テ、ソレハ又他日ノ改正ニ俟ツコトト致シ
マシテ、兎ニ角本法律ガ實施セラレマシタ
ナラバ、相當便益ヲ得ルコトト存ジマシテ、
私ハ本案ニ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=19
-
020・山隈康
○山隈康君 私モ本案ニ贊成スル一人デア
リマスガ、社員以外ヨリ取締役ヲ選任ヲス
ルト云フコトノ立法ノ根本趣旨ハ、其ノ自
治其ノ會社ノ自治ヲ尊重スルト云フコト
ガ主ナル理由ノヤウデアリマス、唯之ニ對
シテ多少ノ懸念ヲ懷キマスルコトハ、特許
若シクハ其ノ他許可ヲ要スルヤウナ會社ニ
對シマシテ、或ハ取締役ヲ他ヨリ强要スル
ガ如キ弊ハナイカ、其ノ點ガ最モ民間デ心
配ヲ致シマスル點デアリマス、デ、政府ニ
於カレマシテモ此ノ法律ノ趣旨ガ全ク有限
會社ノ自治、其ノ自由意思ニ決定スベキモ
ノデアッテ、他ヨリ强要等ニ依ッテ心ニモナ、
キ取締役ヲ選任スルト云フヤウナコトノナ
イヤウニ、此ノ趣旨ノ徹底、政府ノ之ニ對
スル格段ノ御注意ヲ願ヒタイト存ジマス、
此ノ希望ヲ附シマシテ、案ヲ全然贊成致シ
タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=20
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021・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 別ニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=21
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022・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ是ハ
可決サレタモノト致シマス、之ヲ以テ散會
スルコトニ致シマス
午後零時八分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵大隈信常君
副委員長山岡萬之助君
委員
公爵島津忠承君
伯爵黑木三次君
子爵八條隆正君
子爵舟橋〓賢君
中川健藏君
松本烝治君
男爵松岡均平君
男爵伊藤文吉君
男爵奧田剛郞君
森平兵衛君
磯村豐太郞君
山隈康君
岩田宙造君
政府委員
司法省民事局長大森洪太君
司法書記官齋藤直一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007301640X00319380210&spkNum=22
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