1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年一月三十一日(月曜日)午前十時二十七分開議
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議事日程 第七號
昭和十三年一月三十一日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件(第六日)
第二 有限會社法案(政府提出) 第一讀會
第三 昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=0
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001・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔石橋書記官朗讀〕
去ル二十八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政
府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ
衆議院ニ通知セリ
昭和十二年度歲入歳出總豫算追加案第
一般
同日分科會ニ於テ當選シタル正副主査ノ氏
名左ノ如シ
豫算委員會
第一分科
主査子爵前田利定君
副主査男爵矢吹省三君
昭和十三年二月一日
第二分科
主査子爵渡邊千冬君
副主査松村義一君
第三分科
主査伯爵橋本實斐君
副主査男爵大森佳一君
第四分科
主査子爵井上匡四郞君
副主査男爵菊池武夫君
第五分科
主査松村眞一郞君
副主査子爵織田信恒君
第六分科
主査男爵松田正之君
副主査子爵松平康春君
同日委員長ヨリ豫算委員第四分科擔當委員
岡喜七郞君ヲ第三分科兼務委員ニ選定シタ
ル旨ノ報告書ヲ提出セリ
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十三囘帝
國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ
受領セリ
大藏省所管事務政府委員
大藏書記官植木庚子郞君
一昨二十九日政府ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
民法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正法
律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=1
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002・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 一昨二十九
日宗秩寮ヨリ、公爵桂廣太郞君本月十六日
ヲ以テ滿三十歲ニ達セラレタルニ依リ貴族
院議員ニ就職ノ件通知ニ接シマシタ、就キ
マシテハ其ノ部屬ヲ第七部ニ定メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=2
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003・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ本日
ノ會議ヲ開キマス、本日、本會議中、特許
法中改正法律案特別委員會及日滿司法事務
共助法案特別委員會ヲ開會スルノ件中出ガ
デゴザイマシタ、之ヲ許可致シテ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=3
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004・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=4
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005・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程ノ順序
ヲ變更シテ日程第一ヲ後ニ廻シ、日程第二、
第三ヲ順次議題トナスコトニ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=5
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006・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐注木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=6
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007・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第二有
限會社法案、政府提出、第一讀會、久山司
法政務次官
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
有限會社法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年一月二十六日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
司法大臣鹽野季彥
有限會社法案
有限會社法目次
第一章總則
第二章設立
第三章社員ノ權利義務
第四章會社ノ管理
第五章定款ノ變更
第六章合併及組織變更
第七章解散
第八章外國會社
第九章罰則
第十章雜則
附則
有限會社法
第一章總則
第一條本法ニ於テ有限會社トハ商行爲
其ノ他ノ營利行爲ヲ爲スヲ業トスル目
的ヲ以テ本法ニ依リ設立シタル社團ヲ
謂フ
有限會社ハ之ヲ法人トス
第二條有限會社ハ商行爲ヲ爲スヲ業ト
セザルモ之ヲ商人ト看做ス
第三條有限會社ノ商號中ニハ有限會社
ナル文字ヲ用フルコトヲ要ス
有限會社ニ非ザル者ハ商號中ニ有限會
社タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコ
トヲ得ズ有限會社ノ營業ヲ讓受ケタル
トキト雖モ亦同ジ
第四條商法第五十四條第二項、第五十
五條及第五十七條乃至第六十一條ノ規
定ハ有限會社ニ之ヲ準用ス
第二章設立
第五條有限會社ヲ設立スルニハ定款ヲ
作ルコトヲ要ス
商法第百六十七條ノ規定ハ有限會社ニ
之ヲ準用ス
第六條定款ニハ左ノ事項ヲ記載シ各社
員之ニ署名スルコトヲ要ス
-目的
二商號
三資本ノ總額
四出資一口ノ金額
五社員ノ氏名及住所
六各社員ノ出資ノ口數
七本店及支店ノ所在地
第七條左ノ事項ハ之ヲ定款ニ記載スル
ニ非ザレバ其ノ效力ヲ有セズ
存立時期又ハ解散ノ事由
二現物出資ヲ爲ス者ノ氏名、出資ノ
目的タル財產、其ノ價格及之ニ對シ
テ與フル出資口數
三會社ノ成立後ニ讓受クルコトヲ約
シタル財產、其ノ價格及讓渡人ノ氏
名
四會社ノ負擔ニ歸スベキ設立費用
第八條社員ノ總數ハ五十人ヲ超ユルコ
トヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於
テ裁判所ノ認可ヲ得タルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
前項ノ規定ハ遺產相續又ハ遺贈ニ因リ
社員ノ數ニ變更ヲ生ズル場合ニハ之ヲ
適用セズ
第九條資本ノ總額ハ一萬圓ヲ下ルコト
乙酸)
第十條出資一口ノ金額ハ均一トシ百圓
ヲ下ルコトヲ得ズ
第十一條定款ヲ以テ取締役ヲ定メザルト
キハ會社成立前社員總會ヲ開キ之ヲ選
任スルコトヲ要ス
前項ノ社員總會ハ各社員之ヲ招集スル
コトヲ得
第十二條取締役ハ社員ヲシテ出資全額
ノ拂込又ハ現物出資ノ目的タル財產全
部ノ給付ヲ爲サシムルコトヲ要ス
商法第百七十二條但書ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第十三條有限會社ノ設立ノ登記ハ前條
ノ拂込又ハ給付アリタル日ヨリ二週間
內ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記
スルコトヲ要ス
-第六條第一號乃至第四號ニ揭グル
事項
二本店及支店
三存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタ
ルトキハ其ノ時期又ハ事由
四取締役ノ氏名及住所
五取締役ニシテ會社ヲ代表セザル者
アルトキハ會社ヲ代表スベキ者ノ氏
名
六數人ノ取締役ガ共同シ又ハ取締役
ガ支配人ト共同シテ會社ヲ代表スベ
キコトヲ定メタルトキハ其ノ規定
七監査役アルトキハ其ノ氏名及住所
商法第九條乃至第十五條、第六十四條
第二項及第六十五條乃至第六十七條ノ
規定ハ有限會社ニ之ヲ準用ス
第十四條第七條第二號及第三號ノ財產
ノ會社成立當時ニ於ケル實價ガ定款ニ
定メタル價格ニ著シク不足スルトキハ
會社成立當時ノ社員ハ會社ニ對シ連帶
シテ其ノ不足額ヲ支拂フ義務ヲ負フ
第十五條第十二條第一項ノ規定ニ依ル
拂込又ハ給付ノ未濟ナル出資アルトキ
ハ會社成立當時ノ取締役、監査役及社
員ハ連帶シテ拂込ヲ爲シ又ハ給付未濟
財產ノ價額ノ支拂ヲ爲ス義務ヲ負フ
第十六條前二條ニ定ムル義務ハ會社成
立ノ日ヨリ五年ヲ經過シタル後ニ非ザ
レバ之ヲ免除スルコトヲ得ズ
第三章社員ノ權利義務
第十七條社員ノ責任ハ本法ニ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外其ノ出資ノ金額
ヲ限度トス
第十八條各社員ハ其ノ出資ノ口數ニ應
ジテ持分ヲ有ス
第十九條社員ハ第四十八條ニ定ムル社
員總會ノ決議アルトキニ限リ其ノ持分
ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ讓渡スコトヲ
得但シ定款ヲ以テ讓渡ノ制限ヲ加重ス
ルコトヲ妨ゲズ
讓渡ニ因リ社員ノ總數ガ第八條第一項
ノ規定ニ依ル制限ヲ超ユル場合ニ於テ
ハ遺贈ノ場合ヲ除クノ外其ノ讓渡ヲ無
效トス
社員相互間ノ持分ノ讓渡ニ付テハ第一
項ノ規定ニ拘ラズ定款ヲ以テ別段ノ定
ヲ爲スコトヲ得
第二十條持分ノ移轉ハ取得者ノ氏名及
住所竝ニ移轉スル出資口數ヲ社員名簿
ニ記載スルニ非ザレバ之ヲ以テ會社其
ノ他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第二十一條有限會社ハ持分ニ付指圖式
又ハ無記名式ノ證劵ヲ發行スルコトヲ
得ズ
第二十二條商法第二百三條ノ規定ハ持
分ガ數人ノ共有ニ屬スル場合ニ之ヲ準
用ス
第二十三條持分ハ之ヲ以テ質權ノ目的
ト爲スコトヲ得
第十九條第一項及第二十條ノ規定ハ持
分ノ質入ニ之ヲ準用ス
第二十四條商法第二百八條第一項、第
二百九條第一項第二項、第二百十條、
第二百十一條及第二百十二條第一項ノ
規定ハ社員ノ持分ニ之ヲ準用ス
商法第二百二十四條第一項及第二項ノ
規定ハ社員ニ對スル通知又ハ催〓ニ之
ヲ準用ス
第四章會社ノ管理
第二十五條有限會社ニハ一人又ハ數人
ノ取締役ヲ置クコトヲ要ス
第二十六條取締役數人アル場合ニ於テ
定款ニ別段ノ定ナキトキハ會社ノ業務
執行ハ取締役ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
支配人ノ選任及解任亦同ジ
第二十七條取締役ハ會社ヲ代表ス
第二十八條取締役ハ定款及社員總會ノ
議事錄ヲ本店及支店ニ、社員名簿ヲ本
店ニ備置クコトヲ要ス
社員名簿ニハ社員ノ氏名及住所竝ニ其
ノ出資ノ口數ヲ記載スルコトヲ要ス
社員及會社ノ債權者ハ營業時間內何時
ニテモ第一項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求
ムルコトヲ得
第二十九條取締役ハ社員總會ノ認許ア
ルニ非ザレバ自己若ハ第三者ノ爲ニ會
社ノ營業ノ部類ニ屬スル取引ヲ爲シ又
ハ同種ノ營業ヲ目的トスル他ノ會社ノ
無限責任社員若ハ取締役ト爲ルコトヲ
得ズ
取締役ガ前項ノ規定ニ違反シテ自己ノ
爲ニ取引ヲ爲シタルトキハ社員總會ハ
之ヲ以テ會社ノ爲ニ爲シタルモノト看
做スコトヲ得
前項ニ定ムル權利ハ監査役アルトキハ
監査役ノ一人、監査役ナキトキハ他ノ
取締役ノ一人ガ其ノ取引ヲ知リタル時
ヨリ二月間之ヲ行使セザルトキハ治滅
ス取引ノ時ヨリ一年ヲ經過シタルトキ
亦同ジ
第三十條取締役ハ監査役アルトキハ其
ノ承認、監査役ナキトキハ社員總會ノ
認許ヲ得タルトキニ限リ自己又ハ第三
者ノ爲ニ會社ト取引ヲ爲スコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ民法第百八條ノ規定ヲ
適用セズ
第三十一條社員總會ニ於テ取締役ニ對
シテ訴ヲ提起スルコトヲ否決シタル場
合ニ於テ資本ノ十分ノ一以上ニ當ル出
資口數ヲ有スル社員ガ訴ノ提起ヲ會社
ニ請求シタルトキハ會社ハ請求ノ日ヨ
リ一月內ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ定款ヲ以テ別段ノ定ヲ爲
スコトヲ妨ゲズ
第三十二條商法第二百五十四條、第二
百五十七條、第二百五十八條、第二百
六十一條、第二百六十二條、第二百六
十六條、第二百六十七條、第二百六十
八條第二項乃至第五項及第二百六十九
條乃至第二百七十二條ノ規定ハ取締役
ニ之ヲ準用ス
第三十三條有限會社ハ定款ニ依リ一人
又ハ數人ノ監査役ヲ置クコトヲ得
第十一條ノ規定ハ定款ニ於テ監査役ヲ
置クコトヲ定メタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十四條第三十一條竝ニ商法第一一百
五十四條、第二百五十七條、第二百五
十八條、第二百六十六條、第二百六十
七條、第二百六十八條第二項乃至第五
項、第二百六十九條、第二百七十條、
第二百七十二條及第二百七十四條乃至
第二百七十八條ノ規定ハ監査役ニ之ヲ
準用ス
第三十五條社員總會ハ本法ニ別段ノ定
アル場合ヲ除クノ外取締役之ヲ招集ス
第三十六條總會ヲ招集スルニハ會日ヨ
リ一週間前ニ各社員ニ對シテ其ノ通知
ヲ發スルコトヲ要ス但シ此ノ期間ハ定
款ヲ以テ之ヲ短縮スルコトヲ妨ゲズ
第三十七條資本ノ十分ノ一以上ニ當ル
出資口數ヲ有スル社員ハ會議ノ目的タ
ル事項及招集ノ理由ヲ記載シタル書面
ヲ取締役ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求
スルコトヲ得
第三十一條第二項及商法第二百三十七
條第二項第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ
之ヲ準用ス
第三十八條總會ハ總社員ノ同意アルト
キハ招集ノ手續ヲ經ズシテ之ヲ開クコ
トヲ得
第三十九條各社員ハ出資一口ニ付一個
ノ議決權ヲ有ス但シ定款ヲ以テ議決權
ノ數ニ付別段ノ定ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
第四十條有限會社ガ左ノ行爲ヲ爲スニ
ハ第四十八條ニ定ムル決議ニ依ルコト
可愛人
一營業ノ全部又ハ一部ノ讓渡
二營業全部ノ賃貸、其ノ經營ノ委任、
他人ト營業上ノ損益全部ヲ共通ニス
ル契約其ノ他之ニ準ズル契約ノ締結、
變更又ハ解約
三他ノ會社ノ營業全部ノ讓受
四取締役又ハ監査役ノ任務懈怠ニ因
ル責任ノ免除
第三十一條ノ規定ハ前項第四號ノ決議
アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ハ有限會社ガ其ノ成立後
二年內ニ其ノ成立前ヨリ存在スル財產
ニシテ營業ノ爲ニ繼續シテ使用スベキ
モノヲ資本ノ二十分ノ一以上ニ當ル對
價ヲ以テ取得スル契約ヲ爲ス場合ニ之
ヲ準用ス
第四十一條商法第二百三十四條乃至第
二百三十六條、第二百三十八條、第二
百三十九條第一項第三項第四項、第二
百四十條、第二百四十一條第二項、第
二百四十三條、第二百四十四條及第二
百四十七條乃至第二百五十三條ノ規定
ハ社員總會ニ之ヲ準用ス
第四十二條總會ノ決議ヲ爲スベキ場合
ニ於テ總社員ノ同意アルトキハ書面ニ
依ル決議ヲ爲スコトヲ得
決議ノ目的タル事項ニ付總社員ガ書面
ヲ以テ同意ヲ表シタルトキハ書面ニ依
ル決議アリタルモノト看做ス
書面ニ依ル決議ハ總會ノ決議ト同一ノ
效力ヲ有ス
總會ニ關スル規定ハ書面ニ依ル決議ニ
之ヲ準用ス
第四十三條取締役ハ每決算期ニ左ノ書
類ヲ作ルコトヲ要ス
-財產目錄
二貸借對照表
三營業報〓書
四損益計算書
五準備金及利益ノ配當ニ關スル議案
監査役アルトキハ取締役ハ定時總會ノ
會日ヨリ二週間前ニ前項ノ書類ヲ監査
役ニ提出スルコトヲ要ス
第四十四條利益ノ配當ハ定款ニ別段ノ
定アル場合ヲ除クノ外出資ノ口數ニ應
ジテ之ヲ爲ス
第四十五條有限會社ノ業務ノ執行ニ關
シ不正ノ行爲又ハ法令若ハ定款ニ違反
スル重大ナル事實アルコトヲ疑フベキ
事由アルトキハ資本ノ十分ノ一以上ニ
當ル出資口數ヲ有スル社員ハ會社ノ業
務及財產ノ狀況ヲ調査セシムル爲裁判
所ニ檢査役ノ選任ヲ請求スルコトヲ得
檢査役ハ其ノ調査ノ結果ヲ裁判所ニ報
告スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ必要アリト認ムルト
キハ裁判所ハ監査役アルトキハ監査役、
監査役ナキトキハ取締役ヲシテ社員
總會ヲ招集セシムルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ商法第百八十一條第二項及第
百八十四條第二項ノ規定ヲ準用ス
第四十六條商法第二百八十二條、第二
百八十三條第一項、第二百八十四條乃
至第二百八十六條、第二百八十八條第
一貫、第二百八十九條及第二百九十條
ノ規定ハ有限會社ノ計算ニ之ヲ準用ス
商法第二百九十五條ノ規定ハ有限會社
ト使用人トノ間ノ雇傭關係ニ基キ生ジ
タル債權ニ之ヲ準用ス
第五章定款ノ變更
第四十七條定款ノ變更ヲ爲スニハ社員
總會ノ決議アルコトヲ要ス
第四十八條前條ノ決議ハ總社員ノ半數
以上ニシテ總社員ノ議決權ノ四分ノ三
以上ヲ有スル者ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ議決權ヲ行
使スルコトヲ得ザル社員ハ之ヲ總社員
ノ數ニ、其ノ行使スルコトヲ得ザル議
決權ハ之ヲ議決權ノ數ニ算入セズ
第四十九條左ノ事項ハ定款ニ別段ノ定
ナキトキト雖モ資本增加ノ決議ニ於テ
之ヲ定ムルコトヲ得
-現物出資ヲ爲ス者ノ氏名、出資ノ
目的タル財產、其ノ價格及之ニ對シ
テ與フル出資口數
二資本ノ增加後ニ讓受クルコトヲ約
シタル財產、其ノ價格及讓渡人ノ氏
名
三增加スル資本ニ付出資ノ引受ヲ爲
ス權利ヲ與フベキ者及其ノ權利ノ內
容
第五十條有限會社ガ特定ノ者ニ對シ將
來其ノ資本ヲ增加スル場合ニ於テ出資
ノ引受ヲ爲ス權利ヲ與フベキコトヲ約
スルニハ第四十八條ニ定ムル決議ニ依
ルコトヲ要ス
第五十一條社員ハ增加スル資本ニ付其
ノ持分ニ應ジテ出資ノ引受ヲ爲ス權利
ヲ有ス但シ前二條ノ決議ニ依リ別段ノ
定ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第五十二條資本增加ノ場合ニ於テ出資
ノ引受ヲ爲サントスル者ハ引受ヲ證ス
ル書面ニ其ノ引受クベキ出資ノ口數及
住所ヲ記載シ之ニ署名スルコトヲ要ス
有限會社ハ廣〓其ノ他ノ方法ニ依リ引
受人ヲ公募スルコトヲ得ズ
第五十三條有限會社ハ出資全額ノ拂込
又ハ現物出資ノ目的タル財產ノ給付ア
リタル日ヨリ本店ノ所在地ニ於テハ二
週間、支店ノ所在地ニ於テハ三週間內
ニ資本增加ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記
スルコトヲ要ス
一增加シタル資本ノ額
二資本增加ノ決議ノ年月日
第五十四條第四十九條第一號及第一一號
ノ財產ノ資本增加當時ニ於ケル實價ガ
資本增加ノ決議ニ依リ定メタル價格ニ
著シク不足スルトキハ其ノ決議ニ同意
シタル社員ハ會社ニ對シ連帶シテ其ノ
不足額ヲ支拂フ義務ヲ負フ
第五十五條引受ナキ出資又ハ出資全額
ノ拂込若ハ現物出資ノ目的タル財產ノ
給付ノ未濟ナル出資アルトキハ取締役
及監査役ハ連帶シテ其ノ引受ヲ爲シ又
ハ拂込若ハ給付未濟財產ノ價格ノ支拂
ヲ爲ス義務ヲ負フ
第五十六條第十六條ノ規定ハ前二條ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第五十七條第十二條及第四十條第三項
竝ニ商法第二百條第二項、第三百五十
二條、第三百五十八條第一項、第三百
七十一條、第三百七十二條、第三百七
十三條第一項及第三百七十四條ノ規定
ハ資本增加ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五十八條商法第三百七十六條第一項
第二項、第三百七十九條第一項第二項、
第三百八十條ノ規定ハ資本減少ノ場合
ニ之ヲ準用ス
第六章合併及組織變更
第五十九條有限會社ハ他ノ有限會社ト
合併ヲ爲スコトヲ得但シ合併後存續ス
ル會社又ハ合併ニ因リテ設立スル會社
ハ有限會社ナルコトヲ要ス
會社ガ前項ノ規定ニ依リ合併ヲ爲スニ
ハ第四十八條ニ定ムル決議アルコトヲ
要ス
合併ニ因リテ會社ヲ設立スル場合ニ於
テハ定款ノ作成其ノ他設立ニ關スル行
爲ハ各會社ニ於テ選任シタル設立委員
共同シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第四十八條ノ規定ハ前項ノ選任ニ之ヲ
準用ス
第六十條有限會社ハ株式會社ト合併ヲ
爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ合併ヲ
爲ス株式會社又ハ合併ニ因リテ設立ス
ル株式會社ニ關シテハ商法ノ規定ニ從
フコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ合併後存續スル會社
又ハ合併ニ因リテ設立スル會社ガ株式
會社ナルトキハ合併ハ裁判所ノ認可ヲ
受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ有セズ
合併ヲ爲ス會社ノ一方ガ社債ノ償還ヲ
完了セザル株式會社ナルトキハ合併後
存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立ス
ル會社ハ有限會社タルコトヲ得ズ
前條第二項乃至第四項ノ規定ハ第一項
ノ規定ニ依ル合併ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六十一條前條第一項ノ場合ニ於テ合
併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設
立スル會社ガ有限會社ナルトキハ商法
第二百八條第一項ノ規定ハ從前ノ株式
ヲ目的トスル質權ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ質權ノ目的タル持
分ニ付出資口數竝ニ質權者ノ氏名及住
所ヲ社員名簿ニ記載スルニ非ザレバ其
ノ質權ヲ以テ會社其ノ他ノ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第六十二條有限會社ガ合併ヲ爲シタル
トキハ第六十三條ニ於テ準用スル商法
第四百十二條又ハ第四百十三條ノ規定
ニ依ル社員總會ノ終結ノ日ヨリ本店ノ
所在地ニ於テハ二週間、支店ノ所在地
ニ於テハ三週間內ニ合併後存續スル有
限會社ニ付テハ變更ノ登記、合併ニ因
リテ消滅スル有限會社ニ付テハ解散ノ
登記、合併ニ因リテ設立シタル有限會
社ニ付テハ第十三條第二項ニ定ムル登
記ヲ爲スコトヲ要ス
第六十三條商法第九十八條第二項、第
九十九條、第百條、第百二條乃至第百
十一條、第三百七十九條第一項第二項、
第四百八條乃至第四百十條、第四百十
二條、第四百十三條及第四百十五條ノ
規定ハ有限會社ニ之ヲ準用ス
第六十四條株式會社ハ總株主ノ一致ニ
依ル總會ノ決議ヲ以テ其ノ組織ヲ變更
シテ之ヲ有限會社ト爲スコトヲ得但シ
社債ノ償還ヲ完了セザル場合ニ於テハ
此ノ限ニ在ラズ
前項ノ組織變更ノ場合ニ於テハ會社ニ
現存スル純財產額ヨリ多キ金額ヲ以テ
資本ノ總額ト爲スコトヲ得ズ
第一項ノ決議ニ於テハ定款其ノ他組織
ノ變更ニ必要ナル事項ヲ定ムルコトヲ
要ス
第六十一條ノ規定ハ第一項ノ組織變更
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六十五條前條ノ組織變更ノ場合ニ於
テ會社ニ現存スル純財產額ガ資本ノ總
額ニ不足スルトキハ前條第一項ノ決議
當時ノ取締役、監査役及株主ハ會社ニ
對シ連帶シテ其ノ不足額ヲ支拂フ義務
ヲ負フ
第十六條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準
用ス
第六十六條株式會社ガ第六十四條ノ規
定ニ依リ其ノ組織ヲ變更シタルトキハ
本店ノ所在地ニ於テハ一一週間、支店ノ
所在地ニ於テハ三週間內ニ株式會社ニ
付テハ解散ノ登記、有限會社ニ付テハ
第十三條第二項ニ定ムル登記ヲ爲スコ
トヲ要ス
第六十七條有限會社ハ總社員ノ一致ニ
依ル總會ノ決議ヲ以テ其ノ組織ヲ變更
シテ之ヲ株式會社ト爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ會社ニ現存スル純
財產額ヨリ多キ金額ヲ以テ拂込ミタル
株金額ト爲スコトヲ得ズ
第一項ノ組織變更ハ裁判所ノ認可ヲ受
クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ有セズ
第六十一條第一項、第六十四條第三項、
第六十五條及前條竝ニ商法第二百九條
第三項ノ規定ハ第一項ノ組織變更ノ場
合ニ之ヲ準用ス
第六十八條商法第九十九條及第百條ノ
規定ハ第六十四條及前條ノ組織變更ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第七章解散
第六十九條有限會社ハ左ノ事由ニ因リ
テ解散ス
存立時期ノ滿了其ノ他定款ニ定メ
タル事由ノ發生
二社員總會ノ決議
三會社ノ合併
四營業全部ノ讓渡
五社員ガ一人ト爲リタルコト
六會社ノ破產
七解散ヲ命ズル裁判
前項第二號ノ決議ハ第四十八條ノ規定
ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第七十條前條第一項第一號又ハ第二號
ノ場合ニ於テハ第四十八條ニ定ムル決
議ニ依リテ會社ヲ繼續スルコトヲ得
前條第一項第五號ノ場合ニ於テハ新ニ
社員ヲ加入セシメテ會社ヲ繼續スルコ
トヲ得
第七十一條有限會社ハ本店ノ所在地ニ
於テ解散ノ登記ヲ爲シタル後ト雖モ前
條ノ規定ニ從ヒテ會社ヲ繼續スルコト
ヲ妨ゲズ此ノ場合ニ於テハ本店ノ所在
地ニ於テハ二週間、支店ノ所在地ニ於
テハ三週間內ニ繼續ノ登記ヲ爲スコト
로얄
第七十二條有限會社ガ解散シタルトキ
ハ合併及破產ノ場合ヲ除クノ外取締役
其ノ〓算人ト爲ル但シ定款ニ別段ノ定
アルトキ又ハ社員總會ニ於テ他人ヲ選
任シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ規定ニ依リテ〓算人タル者ナキ
トキハ裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ依
リ〓算人ヲ選任ス
第七十三條殘餘財產ハ定款ニ別段ノ定
アル場合ヲ除クノ外出資ノ口數ニ應ジ
テ之ヲ社員ニ分配スルコトヲ要ス
第七十四條〓算人ハ裁判所ノ選任シタ
ルモノヲ除クノ外何時ニテモ社員總會
ノ決議ニ依リ之ヲ解任スルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ監査
役又ハ社員ノ請求ニ依リ〓算人ヲ解任
スルコトヲ得
第七十五條商法第九十六條、第百十六
條、第百二十二條乃至第百二十五條、第
百二十八條、第百二十九條第二項第三
項、第百三十一條、第百三十四條、第百
四十條乃至第百四十二條、第四百十八
條乃至第四百二十四條及第四百二十七
條乃至第四百二十九條ノ規定ハ有限會
社ニ之ヲ準用ス
第二十八條、第三十條、第三十一條、第
三十五條及第四十條第一項第四號第二
項竝ニ商法第二百三十六條乃至第二百
三十八條、第二百四十四條第二項、第
二百四十七條、第二百四十九條、第二
百五十四條第二項、第二百五十八條、
第二百六十一條、第二百六十六條、第
二百六十七條、第二百六十八條第二項
乃至第五項、第二百六十九條乃至第二
百七十二條、第二百七十四條乃至第二
百七十八條、第二百八十二條、第二百
八十三條第一項及第二百八十四條ノ規
定ハ〓算人ニ之ヲ準用ス
第八章外國會社
第七十六條商法第四百七十九條乃至第
四百八十二條、第四百八十四條及第四
百八十五條ノ規定ハ有限會社ト同種ノ
又ハ之ニ類似スル外國會社ニ之ヲ準用
ス
第九章罰則
第七十七條取締役、監査役又ハ第三十
二條若ハ第三十四條ニ於テ準用スル商
法第二百五十八條第二項、第二百七十
條第一項若ハ第二百七十二條第一項ノ
職務代行者若ハ支配人其ノ他營業ニ關
スル或種類若ハ特定ノ事項ノ委任ヲ受
ケタル使用人自己若ハ第三者ヲ利シ又
ハ會社ヲ害センコトヲ圖リテ其ノ任務
ニ背キ會社ニ財產上ノ損害ヲ加ヘタル
トキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下
ノ罰金ニ處ス
第五十九條第三項若ハ第六十條第四項
ノ設立委員、第六十條第一項ノ規定ニ
依リ從フベキ商法第五十六條第三項ノ
設立委員、〓算人又ハ第七十五條第二
項ニ於テ準用スル商法第二百五十八條
第二項、第二百七十條第一項若ハ第二
百七十二條第一項ノ職務代行者前項ニ
掲グル行爲ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同
ジ
前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第七十八條前條第一項ニ揭グル者ハ左
ノ場合ニ於テハ三年以下ノ懲役又ハ三
千圓以下ノ罰金ニ處ス
一會社ノ設立又ハ資本增加ノ場合ニ
於テ出資總日數ノ引受、出資ノ拂込
若ハ現物出資ノ給付ニ付又ハ第七條
第二號乃至第四號若ハ第四十九條第
一號第二號ニ揭グル事項ニ付裁判所
ニ對シ不實ノ申述ヲ爲シ又ハ事實ヲ
隱蔽シタルトキ
二何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ會
社ノ計算ニ於テ不正ニ其ノ持分ヲ取
得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受ケ
タルトキ
三法令又ハ定款ノ規定ニ違反シテ利
益ノ配當ヲ爲シタルトキ
四會社ノ營業ノ範圍外ニ於テ投機取
引ノ爲ニ會社財產ヲ處分シタルトキ
有限會社ノ取締役、監査役若ハ第三十
二條若ハ第三十四條ニ於テ準用スル商
法第二百五十八條第二項、第二百七十
條第一項若ハ第二百七十二條第一項ノ
職務代行者又ハ株式會社ノ取締役、監
査役若ハ商法第二百五十八條第二項、
第二百七十條第一項、第二百七十二條
第一項若ハ第二百八十條ノ職務代行者
ガ第六十四條又ハ第六十七條ノ組織變
更ノ場合ニ於テ第六十四條第二項又ハ
第六十七條第二項ノ純財產額ニ付裁判
所又ハ總會ニ對シ不實ノ申述ヲ爲シ又
ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ亦前項ニ同ジ
第七十九條第七十七條第一項ニ揭グル
者出資ノ拂込ヲ假裝スル爲預合ヲ爲シタ
ルトキハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス預合ニ應ジタル者亦同
第八十條前三條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコト
ヲ得
第八十一條第七十七條第一項若ハ第二
項ニ揭グル者又ハ檢査役其ノ職務ニ關
シ不正ノ請託ヲ受ケ財產上ノ利益ヲ收
受シ、要求シ又ハ約束シタルトキハ三
年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ
處ス
前項ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ
約束ヲ爲シタル者亦前項ニ同ジ
第八十二條左ニ揭グル事項ニ關シ不
正ノ請託ヲ受ケ財產上ノ利益ヲ收受
シ、要求シ又ハ約束シタル者ハ一年以
下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-社員總會ニ於ケル發言若ハ議決權
ノ行使、第四十二條第一項ノ規定ニ
依ル議決權ノ行使又ハ同條第二項ノ
規定ニ依ル同意ノ表示
二本法ニ定ムル訴ノ提起又ハ資本ノ
十分ノ一以上ニ當ル出資口數ヲ有ス
ル社員ノ權利ノ行使
前項ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ
約束ヲ爲シタル者亦前項ニ同ジ
第八十三條第八十一條第一項又ハ前條
第一項ノ場合ニ於テ犯人ノ收受シタル
利益ハ之ヲ沒收ス其ノ全部又ハ一部ヲ
沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額
ヲ追徴ス
第八十四條第八十一條第二項又ハ第八
十二條第二項ノ罪ヲ犯シタル者自首シ
タルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スル
コトヲ得
第八十五條第七十七條第一項若ハ第二
項ニ揭グル者、外國會社ノ代表者、檢
査役又ハ支配人ハ左ノ場合ニ於テハ五
千圓以下ノ過料ニ處ス但シ其ノ行爲ニ
付刑ヲ科スベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
一本法ニ定ムル登記ヲ爲スコトヲ怠
リタルトキ
二本法ニ定ムル公〓若ハ通知ヲ爲ス
コトヲ怠リ又ハ不正ノ公〓若ハ通知
ヲ爲シタルトキ
三本法ニ違反シ正當ノ事山ナクシテ
書類ノ閱覽又ハ其ノ謄本若ハ抄本ノ
交付ヲ拒ミタルトキ
四本法ニ定ムル調査ヲ妨ゲタルトキ
五官廳又ハ社員總會ニ對シ不實ノ申
述ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
六第二十一條ノ規定ニ違反シテ持分
ニ付指圖式又ハ。無記名式ノ證劵ヲ發
行シタルトキ
七第二十四條第一項ニ於テ準用スル
商法第二百十一條ノ規定ニ違反シテ
持分失效ノ手續又ハ持分若ハ質權ノ
處分ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
八第二十四條第一項ニ於テ準用スル
商法第二百十二條第一項ノ規定ニ違
反シテ出資ノ消却ヲ爲シタルトキ
九定款ニ定ムル取締役又ハ監査役ノ
員數ヲ缺クニ至リタル場合ニ於テ其
ノ選任手續ヲ爲スコトヲ怠リタルト
キ
十定款、社員名簿、議事錄、財產目
錄貸借對照表、營業報告書、事務
報〓書、損益計算書、準備金及利益ノ
配當ニ關スル議案、決算報告書又ハ
商法第三十二條第一項ノ帳簿ニ記載
スベキ事項ヲ記載セズ又ハ不實ノ記
載ヲ爲シタルトキ
十一定款、社員名簿、議事錄、財產
目錄、貸借對照表、營業報告書、事
務報告書、損益計算書、準備金及利
益ノ配當ニ關スル議案又ハ監査役ノ
報告書ヲ備置カザルトキ
十二第四十一條ニ於テ準用スル商法
第二百三十四條ノ規定又ハ第四十五
條第三項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命令
ニ違反シテ社員總會ヲ招集セザルト
キ
十三第四十六條第一項ニ於テ準用ス
ル商法第二百八十八條第一項又ハ第
二百八十九條ノ規定ニ違反シテ準備
金ヲ積立テズ又ハ之ヲ使用シタルト
キ
十四第五十二條第二項ノ規定ニ違反
シテ出資ノ引受人ヲ公募シタルトキ
十五第五十八條、第六十三條又ハ第
六十八條ニ於テ準用スル商法第九十
九條又ハ第百條ノ規定ニ違反シテ資
本ノ減少、合併又ハ組織變更ヲ爲シ
タルトキ
十六第七十五條第一項ニ於テ準用ス
ル商法第百二十四條第一一項ノ規定ニ
違反シテ破產宣告ノ請求ヲ爲スコト
ヲ怠リタルトキ
十七第七十五條第一項ニ於テ準用ス
ル商法第百三十一條ノ規定ニ違反シ
テ會社財產ヲ分配シタルトキ
十八裁判所ノ選任シタル管理人又ハ
〓算人ニ事務ノ引渡ヲ爲サザルトキ
十九〓算ノ結了ヲ遲延セシムル目的
ヲ以テ第七十五條第一項ニ於テ準用
スル商法第四百二十一條第一項ノ期
間ヲ不當ニ定メタルトキ
二十第七十五條第一項ニ於テ準用ス
ル商法第四百二十三條ノ規定ニ違反
シテ債務ノ辨濟ヲ爲シタルトキ
二十一第七十六條ニ於テ準用スル商
法第四百八十四條第一項又ハ第二項
ノ規定ニ依ル裁判所ノ命令ニ違反シ
タルトキ
株式會社ノ取締役、商法第二百五十八
條第二項、第二百七十條第一項若ハ第
二百七十二條第一項ノ職務代行者、〓
算人又ハ同法第四百三十條第二項ニ於
テ準用スル同法第二百五十八條第二
項第二百七十條第一項若ハ第二百七
十二條第一項ノ職務代行者ガ第六十條
第一項ノ規定ニ依リ從フベキ又ハ第六
十八條ニ於テ準用スル商法第九十九條
又ハ第百條ノ規定ニ違反シテ合併又ハ
組織變更ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同ジ
第八十六條第三條第二項ノ規定ニ違反
シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第十章雜則
第八十七條本法ニ依リ署名スベキ場合
ニ於テハ記名捺印ヲ以テ署名ニ代フル
コトヲ得
第八十八條第五十八條、第六十三條若
ハ第六十八條ニ於テ準用シ若ハ第六十
條第一項ノ規定ニ依リ從フベキ商法第
百條第一項ノ規定又ハ第七十五條第一
項ニ於テ準用スル商法第四百二十一條
第一項ノ規定ニ依リ爲スベキ公〓ハ裁
判所ガ爲スベキ登記事項ノ公〓ト同一
ノ方法ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第八十九條有限會社ハ商法ヲ除クノ外
他ノ法律ノ適用ニ付テハ之ヲ商法ノ會
社ト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員久山知之君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=7
-
008・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今議題トナリ
マシタ有限會社法案ニ付テ御說明申上ゲマ
ス、我ガ商法ニ於キマシテハ、御承知ノ如
ク、合名會社、合資會社、株式會社及株式
合資會社ノ四種類ノ會社ヲ認メテ居リマシ
テ、各會社共ソレ〓〓其ノ特色ヲ有ッテ居ル
ノデアリマスルガ、就中最モ重要ナル活動
ヲ致シテ居リマスノハ株式會社デアリマシ
テ、只今當院ノ御審議ヲ願ッテ居リマスル商
法中改正法律案ニ於テモ、其ノ改正ノ重點
ヲ株式會社ノ上ニ置イテ居ル次第デアリマ
ス、而シテ株式會社ハ通例之ヲ組織スル株
主ノ數ハ甚ダ多イノデアリマシテ、或株主
ト他ノ株主トノ間ニ連絡ノナイノガ普通デ
アリマスルシ、又廣ク株式ノ賣買ガ行ハレ
マシテ、株主ノ移動ハ常ニ生ジテ居ルノデ
アリマス、然ルニ株式會社ノ株主ト同ジク、
有限責任デアリマスルケレドモ、相互ニ信
賴關係ノ篤イ少數者ニ依ッテノミ組織スル
特殊ノ法人ガ、營業ニ甚ダ適當ナ形態デア
リマシテ、御承知ノ如ク英國ニ於テ先ヅ發
達シ、獨佛等ノ諸國モ旣ニ之ヲ是認シテ居
ルノデアリマス、我ガ國ニ於キマシテモ、
實業界ニ於テ大分以前カラ其ノ要望ガ强ク
ナッテ居タノデアリマシテ、昭和六年七月法
制審議會ハ、先般モ申上ゲマシタ如ク、商
法改正要綱ノ諮問ニ對スル答申ノ一項目ト
シテ、「外國法上ノ有限責任會社又ハ英國法
上ノ私會社ニ該當スル特別ノ會社ヲ認メ之
ニ付キ特別法ヲ以テ規定ヲ設クルコト」ヲ明
カニセラレタノデアリマス、之ニ基キマシ
テ司法省內ノ商法總則及會社編改正調査委
員會ニ於キマシテ、商法中改正法律案ニ引
續キ有限會社法案ノ立案審議ヲ進メ、今囘
玆ニ同法案ヲ提案スルノ運ニ至ッタ次第デ
アリマス、本案ノ詳細ニ付キマシテハ、他
ノ機會ニ十分ニ御說明申上ゲル積リデアリ
マスルガ、要スルニ先程申述ベマシタ特殊
ノ營業組織ヲ是認シテ、ソレニ適應スル法
規ヲ網羅シタモノデアリマシテ、國民經濟
ノ發達ノ爲ニ大イニ稗益スルコトガ出來ヨ
ウカト存ジマス、今囘ノ事變ニ關聯シ、國
民經濟ノ健全ナル運行ヲ確保スル必要ガ、
日ニ日ニ其ノ度ヲ加ヘツヽアルコトハ申ス
迄モナイ所デアリマス。ルシ、事變後ノ事態
ニ備ヘル爲ニ、商法中改正法律案ト相俟ッ
テ、會社關係法規ノ完備ヲ期スルコトハ、
今日ニ於テ全ク焦眉ノ急務トナッテ參ッタノ
デアリマス、各位ニ於カレマシテハ、何卒
十分御審議ノ上、本案ニ對シ協贊ヲ與ヘラ
レムコトヲ切望致ス次第デアリマス
〔土方寧君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=8
-
009・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 土方君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=9
-
010・土方寧
○土方寧君 質問ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=10
-
011・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=11
-
012・土方寧
○土方寧君 本案ノ終ヒニ提案ノ理由ガ簡
單ニ書イテゴザイマスガ、本員ハドウ云フ
趣意カ能ク了解ガ出來マセヌノデ、御說明
ヲ伺ッタナラバ分ルカト思ヒマシタガ、尙分
リマセヌ、ソレ故ニ御尋ヲ致シタイト思ヒ
マス、此ノ末尾ニアル說明ノ所ニモ、只今
ノ御說明ノ所ニモ、現行ノ商法ニ四種ノ會
社ガアリマス、其ノ他ニ今度又一種ノ有限
會社ヲ新シク設ケヨウト云フ案デアリマス、
ドウモ其ノ必要ガアルカナイカ、或ハ弊害
ヲ生ジハシナイカト云フ點ニ付テ疑念ガア
リマスノデ御尋シタイノデアリマス、現ニア
リマス合名會社ハ御承知ノ通リ是ハ「ロー
マ」法時分カラ、何處ノ國ニモ古クカラア
ルノデアリマス、會社ト言ヒマスケレドモ、
全社員ガ無限責任社員デアリマスカラ、外
ノ會社トハ大分違ッテ、實ハ會社ノ形シカナ
イ、實ハ民法ノ組合ノ契約ニ類スルモノト
思ヒマス、ソレ故ニ「イギリス」デハ法人ト見
テ居リマセヌ、是ハ要ガナイカラ申シマセ
ヌガ、合資會社ハ可ナリ古クカラアリマス
ガ、中古多クノ國ニ於テ嚴格ナル利息制限
法ガ行ハレテ居ル、嚴格ト云フノハ日本ノ
利息制限法トハ違ッテ、制限ヲ超過スル部分
ハ取レナイト云フノデハナイ、其ノ法律ニ
反スル際ハ全部ガ無效デ、元金迄失フト云
フ制裁ガアッタノデアリマス、其ノ適用ヲ免
レル爲ニ、營業者ニ制限以上ノ利息ニ當ル
利益ノ配當ヲ受ケルト云フ趣意デ實施ヲシ
タト云フノガ起リデアリマス、他ノ會社ト
ハ遠ッテ參リマスカラ、見ヤウニ依ッテハ今
日デモ有益ナ點ガアリマスガ、起リハサウ
デアリマス、然ルニ有限責任株式會社ト云
フモノハ元ハ無イモノデアリマス、僅カニ
產業革命以來、九十六年程前ニヤット出來タ
モノデアリマス、「イギリス」ガ初メデアリマ
ス、產業革命後、多大ノ資本ヲ擁シテ大規
模ノ經營ヲスルト云フコトニ付キマシテハ、
固ヨリ前カラアッタ合名會社、合資會社ト云
フヤウナ小規模ノ組織デハナカ〓〓出來マ
セヌ、多數ノ株主ヲ募集シテ、大資本ヲ以
テ大事業ヲシヨウ、其ノ事業ニ携ハル經營
者ハ少數ノ取締役デアリマス、會社ニ出資
ヲスル多クノ株主ハ事業ニ與カリマセヌ、
故ニ其ノ事業ガ蹉跌シテ損害ヲ生ジタ場合
ニ、株主或ハ社員ガ無限責任ヲ負フト云フ
コトデアリマシテハ危險デアリマスカラ應
募者ガナイ、ソレ故ニ產業革命後「イギリスㄴ
ガ率先シテ今日ノ株式會社ミタイナモノヲ
拵ヘルト云フコトヲ試ミマシタガ、當時ハ
ソレヲ認ムル法律ガナイノデアリマス、故
ニ英法ニ照シマスト云フト、是ハ非常ニ合
名會社······非常ト云フノハ非常ニ社員ガ多
イ、株主ノ名義デモ何デモ非常ニ多イ、合
名會社ハ責任ハ無限デナケレバナラヌ、ー
體人ガ自分ノ責任ヲ自分ノ財產ノ一部ニ局
限スルト云フコトハ理窟ニナイコトデアル、
例ヘバ十萬圓ヲ有ッテ居ル資產家ガ五萬圓
ダケデ事業ヲシヨウ、其ノ事ヲ世間ニ公表シ
テ、是レ以上ハ責任ヲ負ハヌト云フコトニ
シタ以上ハ、五萬圓以上ノ損失ヲ他ニ及シ
テモ、他ノ五萬圓ニハ債權者ガ一指モ觸レ
ヌト云フコトガ出來ルカ、ソンナ勝手ナコ
トハ出來マイ、然ラバ十人デモ、百人、千
人デモ、萬人デモ、幾人集ッテモ同ジコトデ
ハナイカ、併シ會社ト云フモノハ別ノ權利
ノ主體デアルト云フ形ノ上デ辯解ガ付キマ
スガ、畢竟此ノ會社ト言ヒマシテモ、自然人
ガ共同シテ事業ヲ經營スル一ツノ便法デア
リマシテ、根本ニ於テハ違ハナイデハナイカ、
ナカ〓〓有限株式會社ナドハ認メナカッタ
ノデアリマス、處ガ遂ニソレヲ認メルヤウ
ニナッタノハ何デアルカト云フト、ソンナ窮
窟ナ法律ノ理論ヲ以テシテ居ッテハ大事業ガ
出來ナイ、大事業ヲ會社ノ組織デスルト云
フコトハ、之ニ携ハル人々、自然人ノ人々ノ
個人々々ノ利益ノミナラズ、國ノ富ヲ增殖
スル上ニ於テ必要デアルト云フ點カラシテ、
公益上ノ理由デ遂ニ有限責任ヲ認メタノガ
千八百八十二年ト記憶致シマス、ソレガ他
ノ國ニ普及シタノハ數年後ノコトデアリマ
ス、今日デハモウ百年近クモ經ッテ居リマス
カラ、普通ノ人ハ勿論ノコト、有限責任會社
ナドハ當然ノコトト思ッテ居リマスケレド
モ、サウ云フ譯デハナイ、元起ッタ「イギリ
ス」デハ非常ニ難產デアリマシテ、誠ニ便利
ナ組織デアリマスガ、又其ノ代リ弊害モア
リマスノデ、「イギリス」デハ法律ガ何度モ
增補追加ニナッテ居リマスガ、成立後重役ト
云フモノノ責任ヲ非常ニ重クシテ居リマス、
一方ニハ有限責任ノ特權ヲ與ヘルカラ、濫
用シテ多數ノ債權者側ニ迷惑ヲ掛ケルヤウ
ニナル虞ガアルノデ、或場合ニハ刑事上ノ
制裁迄モ加ヘルコトニ今日デハナッテ居リ
マス、左樣ナ譯デアリマスカラ、既ニ我ガ
國現行法ニ於テハ四種ノ會社ヲ認メラレテ
居ル、其ノ一ツハ有限責任株式會社、ソレ
ガ一番廣ク行ハレテ居ルノデアリマス、處
ガソレハ先刻說明ニモアリマス通リ、多ク
ノ株主ガ互ニ知ラヌ人々ノ間ノコトデアリ
マス、サウシテ株モ轉々自由ニシテアル、
サウ云フコトデナシニ、少數ノ此ノ案デハ
五十人以下トナッテ居リマス、少數ノ多少相
知ルト云フヤウナ人ガ出資ヲシテ、或事業
ヲシヨウト云フノニハ、ドウモ株式會社ノ
組織デハ適シナイト云フ風ニ伺ヒマシタガ、
成程サウ云フ場合モアリマセウ、實質上カ
ラ言ヘバ本來四十人以下、五十人以下、或
ハ二十人、三十人ト云フ場合モアリマセウ
ガ、サウ云フ事業ヲスルノニハ商法ニハ合
名會社ガ一番適當ナノデアリマス、事業ニ
携ハル者ガ皆全責任ヲ負フト云フコトガ當
リ前ノ話デアル、或ハ合資會社デモ宜イデ
セウ、或ハ一人ハ無限責任ヲ負フ責任者ガ
アリマスカラ安心デアリマス、處ガ今度ノ
ハ五十人以下、比較的少數ノ者ニ矢張リ出
資ダケノ責任ヲ限定シヨウ、斯ウ云フノデ
アリマス、是ガ必要デアルカドウカ、此ノ
案ノ終ヒノ說明ノ中ニモ、經濟界ノ實情ニ鑑
ミ云々トアリマスガ、此ノ法律ガ出來マシ
タ上ハ、直チニ直グニ利用セラレルノハ軍
需工業ニ關係ノアル部分品ノ下請ヲスルヤ
ウナ工場ナノデアラウカト思ヒマスガ、私
實業界ニ緣ガナクテ實際ニ知リマセヌガ、
サウ想像シマスガ、當分ノ間ハソレデ宜カ
ラウト思ヒマス、此ノ戰時狀態ト云フモノ
ハ可ナリ永續シマセウガ、何時カハ終了シ
テ平時ニ復スルニ相違ナイ、サウ云フ時ニ
必ズ反動ガ來ル、其ノ時是等ノ戰時中ニ於
テハ此ノ組織ノ會社ト云フモノデ相當ノ利益
ヲ擧ゲタモノモ、此ノ平常ニ復シタ時ニ非
常ナ反動ヲ受ケテカラニ蹉跌スルヤウナコ
トガナイトモ限ラヌ、其ノ時ニ多クノ債權
者ニ迷惑ガ掛ルヤウナコトガアリハシナイ
カ、私ノ考デハドウモ元々有限責任ト云フ
モノハ純理ニ反スルコトデ、公益上ノ利益
デ初メハ俗ニ認メタモノニ過ギヌ、其ノ根
本ノ考ハ今日デモドウシテモ念頭ニ置イテ
總テ會社ノ規則ト云フモノヲ立テナケレバ
ナラヌト思フ、一時ハ大變ニ此ノ組織デ事
業ヲ經營スル者ニハ便利デアリマセウ、或
ハ蹉跌シタト云フ場合ニ多クノ債權者ニ迷
惑ヲ掛ケルト云フヤウナ弊害ガ目前ニ見エ
ルヤウニ思フノデアリマス、私ハ未ダ此ノ
本案ノ條項ニ付キマシテ、商法ノ多クノ條
文ヲ引用シテアリマスガ、一々巨細ニ〓究
シタモノデハアリマセヌケレドモ、是等ノ
コトハ餘程先ノコトヲ考ヘテ決メナケレバ、
迂ッカリ斯ウ云フ法律デ、少數ノ事業ノ經營
者ニハ便利デアリマスガ、其ノ便利ガ却ッ
テ禍ヲ爲ス原因ニナラヌトモ限ラヌト考へ
マスカラ、私ハ決シテソンナコトハナイト
云フコトデアレバ、其ノ譯ヲ說明シテ貰ヒ
タイ、私ハ見タダケデハ、此ノ簡單ナ理由
書デハ、今ノ政府委員ノ御說明デモ未ダ十
分ニ是ガナケレバナラヌト云フ趣旨、斯ウ
云フコトノ害ガナイト云フコトノ安心ガ付
キマセヌカラ、改メテ御伺シマス
〔政府委員久山知之君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=12
-
013・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今土方議員ノ
御質疑ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマス、有
限會社ノ必要ニ付キマシテハ、前ニ提案理
由ヲ申述ベマシタ時ニ申上ゲマシタ通リニ、
實業家方面カラ非常ニ要望サレテ居ルノデ
アリマシテ、其ノ必要ガアルカナイカ、或
ハ弊害ノミ多イヂヤナイカト云フ御意見ニ
對シマシテハ、色々申上ゲタイコトモアル
ノデアリマスガ、特ニ弊害豫防ニ對シマシ
テハ色々法案ノ上デ考へテ居ルノデアリマ
シテ、詳シイコトハ委員會ノ席上ニ於キマ
シテ能ク申述ベタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=13
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014・土方寧
○土方寧君 別ニドウモ滿足スルヤウナ御
說明ガ得ラレマセヌガ、押問答シテモ駄目
ダト思ヒマスカラ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=14
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015・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
有限會社法ハ關係ガゴザイマスガ故ニ、商
法中改正法律案外一件ノ特別委員ニ併託セ
ラレムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=15
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016・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=16
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017・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戶澤子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ考アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=17
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018・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=18
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019・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第三、
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案、
政府提出、第一讀會、吉野商工大臣
昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年一月二十六日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
大藏大臣賀屋興宣
農林大臣伯爵有馬賴寧
商工大臣吉野信次
昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案
昭和十二年法律第九十二號中左ノ通リ改
正ス
第二條ノ二前條ノ物品ノ需給ニ關係ア
ル產業ヲ營ム者又ハ其ノ組織スル團體
ハ當該物品ノ需給關係ヲ調整スル爲政
府ノ認可ヲ受ケ需給調整協議會ヲ組織
スルコトヲ得
前項ノ者需給調整協議會ヲ組織セザル
場合ニ於テ政府支那事變ニ關聯シ國民
經濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要アリ
ト認ムルトキハ前項ノ者ニ對シ需給調
整協議會ノ組織ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ組織ヲ命ゼラレタル
者其ノ認可ヲ申請セザルトキハ政府ハ
規約ノ作成其ノ他組織ニ關シ必要ナル
處分ヲ爲スコトヲ得
需給調整協議會ノ成立アリタルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員タル資
格ヲ有スル者ハ其ノ會員トス
第二條ノ三政府ハ支那事變ニ關聯シ國
民經濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要ア
リト認ムルトキハ需給調整協議會ニ對
シ當該物品ノ需給關係ノ調整ニ關シ必
要ナル決定ヲ爲スベキコトヲ命ジ又ハ
需給調整協議會ノ會員ニ對シ需給調整
協議會ノ決定ニ從フベキコトヲ命ズル
コトヲ得
第二條ノ四本法ニ定ムルモノノ外需給
調整協議會及需給調整協議會ニ依ル需
給關係ノ調整ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條中「前條」ヲ「第二條」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和十二年法律第九十二號ハ輸出入品
等ニ關スル臨時措置ニ關スル法律ナリ
〔國務大臣吉野信次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=19
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020・吉野信次
○國務大臣(吉野信次君) 只今議題トナリ
マシタ法律案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲ
マス、此ノ法律ハ所謂輸出入品等ニ關スル
臨時措置法ト稱セラレルノデアリマシテ、
御承知ノ通リ前議會ニ御協贊ヲ得タモノデ
アリマス、此ノ法律ノ制定ノ趣旨ハ支那事
變ニ際シマシテ國民經濟ノ運行ヲ確保スル
爲ニ、國家ニ於テ必要ト認メマシタ場合ニ
ハ、輸入或ハ輸出ノ制限禁止ヲ致シマシタ
リ、又此ノ輸入ノ制限ナドヲ致シマシタ場
合ニ於キマシテ、其ノ物或ハ又之ヲ原料ト
スル製品ナドガ不足ヲ來タスヤウナ場合ガ
アリマスカラ、之ガ需給ノ調節ヲ爲シ得ル
コトヲ規定致シタノデアリマス、而シテ事
變ノ進行ニ伴ヒマシテ、此ノ法律ヲ施行致
シマシタ實績ニ徴シマスルト云フト、物資
ノ需給調整ノ方法トシテハ、國家ガ一方的
ニ命ジマスルコト以外ニ、其ノ物ノ需給
ニ關係ノアル業者ノ團體ヲシテ、自治的ニ
之ガ方策ヲ決定セシムルコトガ適當ト認メ
ラレル場合ガ少クナイノデアリマス、ソレ
ニハ現行ノ法律ノ規定ノミヲ以テシテハ不
十分ナ點ガゴザイマスノデ、今囘之ヲ改正
補充セムトスルモノデアリマス、卽チ上述
ノ目的ノ爲ニ需給調整協議會ト云フ機關ヲ
設ケマシテ、當該物品ノ需給ニ關係ノアル
產業團體、例ヘバ輸出、輸入、生產、配給、
使用等ノ各部門ニ組織セラレテ居リマスル
團體ヲ參加セシメマシテ、調整ニ關スル方
策ヲ協議セシメムトスルモノデアリマス、
更ニ必要ニ應ジマシテ、政府ハ關係產業團
體ニ對シテ、此ノ協議會ノ組織ヲ命ジ得ル
コトト致シマスト共ニ、協議會ニ對シテ必
要ナル決定ヲ爲スベキコトヲ命ジ、又ハ協
議會ノ會員ニ對シマシテ協議會ノ決定ニ從
フベキコトヲ命ジ得ルコトト致シタイト考
ヘテ居ルノデアリマス、以上ガ本改正法律
案ノ要點デアリマスガ、何卒御審議ノ上御
協贊アラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=20
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021・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題ニナリマシタ
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案ハ
重要ナル法案デアリマスルガ故ニ、特別委
員ノ數ヲ十八名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一
任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=21
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022・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=22
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023・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戶澤子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=23
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024・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔石橋書記官朗讀〕
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案
特別委員
侯爵四條隆愛君侯爵小村捷治君
伯爵樺山愛輔君子爵會我祐邦君
子爵岡部長景君子爵松平康春君
出淵勝次君山川端夫君
男爵東〓安君男爵伊藤一郞君
男爵安場保健君稻畑勝太郞君
小倉正恒君下出民義君
久恒貞雄君大澤德太郞君
金成通君金岡又左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=24
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025・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第一、
國務大臣ノ演說ニ關スル件、中島鐵道大臣
〔國務大臣中島知久平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=25
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026・中島知久平
○國務大臣(中島知久平君) 去ル二十八日
本議場ニ於ケル淺田男爵ノ御質問ニ御答ヘ
致シマス、御質問ノ要旨ハ鐵道省ニ於テ飛
行機ヲ運輸機關トシテ採用シテハドウカト
云フ御問デアリマシタガ、現在ニ於キマシ
テハ鐵道省ニ於テ飛行機ヲ運輸機關トシテ
採用スルノ運ビニ迄至ッテ居ラナイノデアリ
やく、併シナガラ將來飛行機ガ一層進步致
シマスル場合ニハ、當然鐵道省ニ於テモ飛
行機ヲ運輸機關トシテ採用スルニ至ルベキ
コトヲ豫想シ、期待致シテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=26
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027・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ通〓
順ニ依ッテ質疑ヲ許シマス、水野甚次郞君
〔水野甚次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=27
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028・水野甚次郎
○水野甚次郞君 嘗テ列强諸國ガ空軍ノ充
實ニ意ヲ用ヒ、都市ノ防空施設ニ餘念ナカ
リシ當時、我ガ帝國官民ハ空軍ノ强化ハ固
ヨリ、防空施設ニ付テモ毫モ之ヲ顧ミル所ナ
ク、憂國ノ士ヲシテ徒ニ痛憤セシメタニ止ツ
タノデアリマシタ、然ルニ其ノ後國際聯盟ガ
其ノ無力ヲ暴露シ、實力ニ依ル平和ノ維持
ノミガ唯一最高ノ途トセラレ、近代諸兵器
ノ進步、就中航空機ノ性能ノ著シキ向上
ハ、我ガ陸海軍ヲ刺戟シ、其ノ航空隊ノ淚
グマシキ努力ヲ見ルニ至リ、殊ニ海軍航空
隊ガ、無敵潛水艦隊ノソレニモ劣ラザル活
躍ヲナシ、常ニ夥シイ犠牲者ヲ出スモ、之
ニ怯ム所ナク、只管他日ノ國難ニ備へムガ
爲默々トシテ猛訓練ヲ行ヒ、國民ニ對シ
寡言實行ノ大〓訓ヲ示シツヽ、遂ニ今次ノ
日支事變ニ至ッタルコトハ世上周知ノ事實
デアリマス、今次事變ニ於ケル陸軍航空隊
ノ活躍モサルコトナガラ、海軍航空隊ノ勇
猛果敢ナル爆撃ノ事實ハ、既ニ其ノ都度報
道セラレタ所デアリマシテ、帝國國民ハ固
ヨリ世界全人類ヲシテ驚嘆セシメ、世界空
軍史上ニ一大記錄ヲ作ッタノデアリマス、
斯クシテ國民政府ニ再ビ起ツ能ハザルノ痛
手ヲ與ヘ、戰捷ノ效果ヲ致シタノデアリマ
ス、若シ我ニ斯カル勇壯無比ノ空軍ナカリ
セバ、斯クノ如キ戰局ノ急速的發展ヲ見ル
コトハ到底出來ナイノミナラズ、却テ新
銳機ヲ購入シ、優秀ナル外人操縦士ノ雇入
ニ依ル支那側ノ行動ニ見ル時ハ、誰カ肌ニ
粟ヲ生ゼザル者ガゴザイマセウカ、私ハ此
ノ機會ニ於テ國民ト共ニ深甚ナル謝意ヲ表
スル次第デアリマス、今ヤ航空機ノ獻納ト
云ヒ、愛國切手ノ賣行ト云ヒ、誠ニ國民ノ
航空ニ對スル關心甚大ナルモノガアリマス、
此ノ機會ニ政府當局ニ於カレテハ、私ノ從
來繰返シテ居リマス航空省設置論ニ付テ、
再吟味ヲ御願ヒ致シタイト存ジマス、嘗テ
寺內陸相ハ、私ノ質問ニ對シ、航空ニ關ス
ル朝野ノ理解未ダ十分ナラズ、爲ニ航空工
業ノ基礎十分デナク、輸送事業モ亦極メテ
貧弱ナリト歎ゼラレマシタガ、只今申シマ
シタ如ク、今日程航空ニ關スル國民ノ關心
深キ時機ハゴサイマセヌ、此ノ機ヲ逸セズ、
一面ニ於テハ海上防空ト全ク別個ニ、內地
ハ勿論滿鮮支大陸へ航空網ヲ布キ、以テ
陸上防空ノ完璧ヲ期スルト共ニ、航空輸
送ノ發展ヲ策スル爲、他面ニ於テハ我ガ
國土防空施設ノ擴充ヲ圖ル爲ニ、遞信省
ノ一局課ニ止メズ、航空省設置コソハ焦
眉ノ急務デアリマセヌカ、支那大陸ヘノ
航空路擴張ノ如キ、事變ノ終局ヲ待ツ迄
モナク、適當ナル方策ヲ以テ之ヲ速カニ
實現スルニアラザレバ、完全ナル交通機關
ノ發展ト稱スル能ハザルノミナラズ、滿
鮮防空ノ安全瓣ハ得ラレマスマイ、此ノ
點ニ付テ總理大臣及陸軍大臣ノ御答辯ヲ御
願ヒ致シマス、我ガ忠勇ナル皇軍ガ戰ッテ勝
タザルナク、攻メテ取ラザルナキ戰局ノ進
展ハ、誠ニ世界驚異ノ的デアリマシテ、全
國民ノ齊シク感謝措タ能ハザル所デアリマ
ス、事變未ダ終結セズ、寧ロ戰ハ是カラデ
アルトハ政府當局ノ屢〓言明セラレシ所デ
アリマシテ、國民總テ長期戰ヲ覺悟シテ居
リマス、尙抗日軍ヲ勦滅シタル後ト雖モ、
支那各地ハ到底支那國民ノミニ委ス譯ニハ
行キマセヌ、若シ之ヲ放任スルニ於テハ、
我ガ國今次ノ行動ハ無駄骨ニ終リハ致シマ
セヌカ、眞ニ隣國ノ難ヲ救フ一大慈悲心ヲ
發輝シ、東亞永遠ノ平和ヲ招來スル爲ニハ、
荒野ノ開拓ニ、資源ノ開發ニ、支那四億ノ
民衆ヲ指導〓養スルノ勞ヲ惜ンデハナリマ
セヌ、是コソ今次事變ノ後始末トモ云フベ
ク、我ガ國民ニ課セラレタル一大負擔デア
ラネバナリマセヌ、支那民族ヲシテ皇恩ノ
無窮ニ浴セシムル所ノ途ハ多々ゴザイマセ
ウガ、航空輸送ノ外ニ陸上交通機關建設ノ
如キ、最モ時宜ニ適シタルモノデアリマシ
テ、破壞サレタル鐵道ノ修理、未成線ノ開
通等、民間會社ニ一任スルコトナク、寧ロ
鐵道省ガ是等ヲ率ヰテ其ノ任ニ當リ、急遽
其ノ成果ヲ擧ゲナケレバナリマスマイ、之
ガ爲ニハ我ガ國ニ於ケル比較的急ヲ要セザ
ル路線ノ如キハ、其ノ建設ヲ一時中止又ハ
繰延ブルコトモ已ムヲ得ナイコトト存ジマ
ス、固ヨリ軍事上、產業上急ヲ要スル路線
ノ如キハ、速カニ建設セラレナケレバ相成
ラヌコトハ、今更申上ゲル迄モゴザイマセ
ヌ、去ル二十七日淺田男爵ハ、國家興隆ノ根
本義ハ人口增殖ニアリトノ御意見ガアリマ
シタガ、其ノ點私モ同感デアリマスケレド
モ、私ト致シマシテハ寧ロ植民問題ヲ離レ、
支那民衆ヲ指導スル爲メ、大兵團ノ駐屯ト
共ニ、我ガ帝國財問ハ此ノ際區々タル國內
競爭ヲ嚴ニ戒メ、支那財閥ト提携シ以テ大
イニ各種事業ヲ起シ、更ニ我ガ帝國靑壯年
二千萬人ヲ支那各地ニ派遣スルノ要ヲ感ゼ
ザルヲ得ナイノデアリマス、此ノ點ニ關ス
ル總理大臣ノ御所見ヲ御伺ヒ致シマス、次ニ
木戶文相ハ靑年學校ノ義務〓育制度ニ關
シ、女子ヲ除ク旨ノ御意見ガアッタカト承
リマスガ、男子靑年學校ノ義務〓育ガ喫緊
ノ要務デアルコトハ勿論デアリマスケレド
モ、是ト竝ビ女子靑年〓育モ亦忽諸ニ附ス
ベカラザルモノデハゴザイマセヌカ、固ヨ
リ私ハ靑年女子ニ男子同樣ノ訓練ヲ施スベ
シトハ考ヘテ居リマセヌガ、國家ノ基礎タ
ル家庭ノ主婦トナリ、第二ノ國民哺育ノ任
ニ當ルベキ靑年女子ニ對シ、名實共ニ備ハ
ル衞生、看護其ノ他家事萬般ノ知識ヲ會得
セシムル爲、家庭生活ニ直接緊要ナル科目
ヲ擇ビ、義務〓育制ヲ採ルベキデハゴザイ
マセヌカ、內務大臣及文部大臣ノ御意見ヲ
御伺ヒ致シマス
〔國務大臣杉山元君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=28
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029・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今水野君カラ航
空ノ整備ガ國防上極メテ重要デアリ、又之
ヲ實際ニ實現致シマス爲ニ、航空省ヲ設置
スルト云フコトニ付テノ御尋ガアッタノデ
アリマス、此ノ問題ニ付キマシテハ旣ニ前
議會ニモ申上ゲマシタ如ク、又此ノ度ノ事
變ニ依ッテ證明セラレマシタ如ク、國防上航
空ノ重要性ガ著シク增加致シマシテ、陸上、
海上、空中、各方面ニ偉大ナル威力ヲ發揮
セシムルコト、其ノ事ガ又偉大ナル作戰ヲ
遂行スル上ニ緊急デアリマスル事柄ガ明カ
ニナッタノデアリマシテ、益ス空軍獨立ノ空
氣ハ醞釀サレテ參ッタノデアリマス、然ルニ
我ガ帝國ノ航空ノ現在ノ情況ハ、器材ノ整
備ノ關係等ニ鑑ミマシテ、今直チニ空軍獨立
ニ進ミ難イ情況ニアルノデアリマス、元來
航空ノ國防上ニ於ケル任務ヲ考ヘテ見マス
ルト、陸上ノ作戰ニ共同致シマスル所ノ航空
兵力、海上ノ作戰ニ共同致シマスル所ノ航
空兵力、竝ニ純空軍的ニ必要デアリマス所ノ
所謂空軍ノ任務ニ服シマスルモノ、此ノ三
者ニ分ツコトガ出來ルノデアリマスルガ、
現在ノ技術方面カラ考ヘマシテモ、此ノ三
ツノ任務ヲ同時ニ遂行スルコトノ出來マス
ル萬能ノ飛行機ヲ整備スルト云フコトハ、
未ダソコ迄技術ガ進ンデ參ッテ居ラヌノデ
アリマス、他方我ガ帝國ノ航空兵力ヲ見マ
スルト、只今述ベマシタ三ツノ任務ノ中、陸
軍及海軍ニ共同致シマスル兵力ト致シマシ
テモ、尙其ノ兵力ニ於テ不十分ナル點ガアリ
マシテ、之ヲ措イテ直チニ獨立ノ空軍ヲ造
リマスルト云フ所ニハ未ダ達シ得難イ情況
ニアルノデアリマス、斯クノ如キ情況ニア
ルノデアリマスルガ、陸軍ト致シマシテモ、
此ノ度ノ作戰ノ經過カラ鑑ミマシテ、一方
ニ於キマシテハ地上ノ部隊ニ共同致シマス
ル部隊ト同時ニ、空軍的ニ活動シ得ル兵力
ヲ整備ヲスルト云フコトノ極メテ必要デア
ルト云フコトヲ痛感シテ居ルノデアリマシ
テ、陸軍自體ノ今後ノ航空兵力ヲ整備スル
上ニ於キマシテハ、一方ニ於キマシテハ地
上作戰ニ共同致シマスル部隊ヲ作リマスト
同時ニ、而モ此ノ部隊ニ於テハ成ルベク必
要ノ限度ヲ定メマシテ、他方ニ於テ空軍的
ニ比較的ニ活動シ得ル兵力ヲ整備致シタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、斯クノ如キ考
ノ下ニ陸海軍ノ共同作戰ノ空軍兵力ガ、航
空兵力ガ整備致シマシタ後ニ於キマシテ、
獨立セル空軍ヲ作リマスル時期ニ到達シ得
ルデアラウト考ヘルノデアリマシテ、現在
ノ情況ニ於キマシテハ只今申上ゲマシタヤ
ウナ實情ニアルノデアリマス、尙陸海軍ノ
問題ト離レタ航空省ノ問題ニ付キマシテ
ハ、此ノ點ニ付キマシテモ民間航空ノ發展ヲ
促シマスコトハ、是ガ又軍事航空ノ强大ナ
ル豫備トシテ必要デアリマスルト云フコト
ヲ痛感シテ居リマスルコトハ、旣ニ前議會
ニ於テ述ベタ通リデアリマスルガ、此ノ觀
點ニ於キマシテ關係當局ニ於キマシテハ種
種〓究ヲ重ネマシテ、旣ニ御承知ノ如ク遞
信省ニ航空ノ外局ヲ設ケテ居ルノデアリマ
スルガ、尙之ヲ一層强化致シマスルコトニ
付キマシテハ、〓究ヲ進メテ居ルノデアリ
マス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=29
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030・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今御尋ノ
女子靑年學校〓育ヲ擴充、整備致シマスコ
トニ關スル水野サンノ御意見ニハ、全然私
共モ同感デアリマス、唯之ヲ義務制ニスル
ヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、只今內
閣ニ於テ設ケラレマシタ〓育審議會等ニ於
キマシテモ、此ノ〓育ノ內容其ノ他全般ヲ
考慮致シマシテ、審議ガ行ハレルコトト存
ジテ居リマスルノデ、其ノ結果ニ基キマシ
テ當局ニ於テハ之ヲ實施シテ行キタイト考
ヘテ居ル次第デゴザイマス
〔國務大臣末次信正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=30
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031・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 女子靑年〓育ノ
必要ニ付キマシテハ同感デアリマス、十分
〓究ノ上、其ノ實現ニ努力致シタイト考ヘ
テ居リマス
〔水野甚次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=31
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032・水野甚次郎
○水野甚次郞君 私ノ質問ニ對スル陸軍大
臣、文部大臣、内務大臣ノ御懇篤ナル御答辯
ヲ得マシテ滿足致シマス、總理大臣ガ御退
席ニナッテ居リマスノデ、此ノ總理大臣ノ御
答辯ハ後日ニ保留シテ置キマス、尙只今陸
軍大臣ノ仰セラレマシタルガ如ク、直チニ
空軍省ヲ作ルト云フコトヲ前々ヨリ論ジテ
居リマシタガ、私モ現代ノ情況ヨリ鑑ミマ
シテ、更ニ今次ノ事變ニ鑑ミマシテ、海軍
ノ航空隊、所謂海上防空ハ海軍ニ隸屬ヲス
ベキモノデアリ、又陸軍ノ航空隊ハ陸軍ニ
隸屬スベキモノデアルト云フコトヲ痛感シ
テ居ルモノデアリマス、將來ニ於テ空軍省
ヲ御作リニナルト云フコトハ別問題ト致シ
マシテ、今日直チニ空軍省ヲ設置スベキモ
ノナリト云フ議論ニハ只今ノ處贊成出來兼
ネル次第デアリマシテ、而モ日本內地ハ勿
論滿鮮支、此ノ廣イ陸上防空、此ノ任ニ
當ラレマス陸軍ト致シマシテハ、其ノ豫備
隊デアル般空省ノ設置ガ極メテ緊要デハナ
イカト存ズルノデアリマス、遞信大臣ガ先
般淺田男爵ニ答ヘラレタルガ如キ生溫イコ
トデハ私モ滿足出來マセヌ、海軍ニ豫備
隊ト稱スベキ商船アリ、陸軍ニ豫備役、後
備役ガアルノニ、空軍ニ限ッテ其ノ豫備隊ノ
ナイト云フコトハ變則的ナモノデナイカト
思フノデアリマス、空軍ニ對スル豫備隊ノ
任務ヲ掌ル航空省ノ設置ハ急務中ノ急務デ
ハナイカト存ジマスル次第デアリマスノ
デ、此ノ點ヲ篤ト御留意ヲ願ヒマシテ、遞
信省ノ一局課ニ止メテ置カルヽコトナク、
獨立シタル航空省ヲ設置セラレムコトヲ重
ネテ切望致シマシテ私ノ質問ヲ終リマス
〔國務大臣中島知久平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=32
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033・中島知久平
○國務大臣(中島知久平君) 只今水野君カ
ラ、鐵道省ノ所管事項ニ付キマシテ總理大臣
ニ御質問ガアリマシタガ、只今總理大臣ガ
オ出デニナリマセヌカラ私カラ御答ヘ致シ
マツヽ、鐵道省ニ於キマシテハ運轉機材、建
設機材竝ニ人員等ヲ相當ノ數ヲ北支及中支
ニ送リマシテ、軍ノ行動ニ協力致シテ居ル
ノデアリマシテ、唯滿鐵ニノミ之ヲ委シテ
居ルト云フヤウナ次第デハアリマセヌノデ
アリマス、尙國內ニ於ケル鐵道建設ニ付キ
マシテモ、軍事上及產業上必要ナルモノニ
主力ヲ集注致シマシテ、ソレニ關係ノ薄イ
建設ハ之ヲ差控ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=33
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034・水野甚次郎
○水野甚次郞君 只今中島鐵道大臣ノ御深
切ナ御答辯ニ感謝致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=34
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035・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 田中館愛橘
君
〔田中館愛橘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=35
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036・田中館愛橘
○田中館愛橘君 昨年支那事件ノ擴張致シ
マシテ、政府ニ於テ多忙ヲ極メル際ニモ拘
ラズ、政府ハ〓育上、學術上、其ノ他國際
關係上、「ローマ」字ヲ以テ國語ヲ綴ル方式
ノ區々ナルコトハ捨テ置キ難キコトト看做
サレマシテ、之ガ統一ヲ期シ、實行ヲスベ
キコトヲ各官廳ニ御命ジニナリマシタ、之
ニ付テ質疑ヲ致シマス、此ノ事ハ關係スル
所頗ル廣イノデアリマシテ、其ノ各關係ノ
長官ヨリ御答辯ヲ戴キタウゴザイマスガ、
只今御忙ガシイ所デアリマスルカラ、其ノ
主ナル大臣方ヨリ御願スルコトニ致シマス、
政府委員ニ於テ、或ハ他ノ大臣ヨリ御答ガ
拜聽出來マスレバソレニ滿足致シマス、若
シ又當局者デナケレバ御答ノ出來難キコト
ガアリマスレバ、後程伺ッテ宜シウゴザイマ
ス、此ノ訓令ハ〓育、學術、國際關係ト云
フ大切ナ部分ニ係リマシテ、國語ノ「ロー
マ」字綴方ノ區々ナルコトハ宜シクナイ、之
ガ統一ヲ圖ルコトハ最モ必要ト考ヘラレテ
御發シニナリマシタノデアリマス、其ノ後
各官廳ニ於カレマシテモ、想ヒノ外之ガ實
行セラレマシテ、最モ困難デアラウト思ヒ
マシタ外務省ニ於カレマシテモ、旣ニ旅劵
ニ記載スル所ノ書式、又條約文ニ記載シマ
ス所ノ年號等ハ、悉ク此ノ新式ヲ御使ヒニ
ナッテ表ハシテ居リマス、又鐵道省ニ於カレ
マシテモ、旣ニ驛名ノ書キ方ヲ實行サレタ
所ガアリマス、鐵道省ハ、此ノ「ローマ」字
ノ調査ヲ命ゼラレマシタ調査會ニ於テ、今
直チニ實行スルニハ金ガ要ル、併シナガラ
漸ヲ以テ立札ノ如キ、時間表ノ如キハ年々
改メルカラ、其ノ度每ニ變ヘレバ費用モ手
數モ要ラヌト云フコトデアリマシタガ、近
頃見マスルト其ノ塗換ヲモ待タズ、新式ノ
舊式ト違フ所ダケヲ塗換ヘマシテ書換ヘテ
居リマス、誠ニ適當ノ御處置ト在ジマス、
房總鐵道ノ市川、千葉、船橋ト云フヤウナ
所ハ、其ノ綴リ方ノ違フ所ダケヲ「ペンキ」
デ塗リマシテ、書換ヘテ居リマス、願ハク
ハ他ノ線路ニ於テモ此塗換ヲ待タズシテ、
其ノ場所ダケヲ書換ヘルコトハ出來マスカ
ラ、其ノ御實行アラムコトヲ希望致シマス、
此ノ問題ハ國語ノ綴リ方ト云フコトガ謳ハ
レテアリマス故ニ、〓育上最モ基礎的ノ間
題ト存ジマス、〓育審議會ニ於テ先達會議
ノアリマシタ中ニ、八箇條ノ審査事項ガ議
セラレタヤウニ新聞ニ見エテ居リマス、其
ノ第一番ニ國語ノ整理統一ト云フコトガ謳
ハレテアリマス、此ノ國語ノ整理統一ト云
フコトハ、明治初年以來社會ニ論ゼラレタ問
題デアリマス、今日ト雖モ國語審議會ガ尙
ソレヲ議シテ居リマス、諺ニ「工其事ヲ善ク
セント欲スレバ先ツ其ノ器ヲ利ス」ト云フ
コトガアリマス、仕事ヲ良クスル前ニハ先
ヅシッカリ其ノ器ヲ磨カナケレバ良イ事ハ
出來ナイト云フコトデアリマス、〓育ニ於
キマシテ最モ基礎的ノ道具ハ國語、之ヲ記
ス所ノ國字デアリマス、近頃社會モ之ニ目
醒メマシテ、國語國字ヲ論ズル者ガ追々ト
殖エテ參リマシテ、現ニ總理大臣ノ近衞公
爵ハ國語協會ノ總裁トシテ、之ヲ指導セラ
レテオ出デニナルコトヲ見マシテモ、如何
ニ此ノ國語ノ整理ガ大切デアルカガ分リマ
ス、國語ノ整理ニハ何ト致シマシテモ國字
ガ伴ハナケレバ出來マセヌ、又國字ノ整理
ニ於テモ國語ヲ伴ハナケレバ出來ヌノデア
リマス、重大ナ問題ト存ジマシテ五ツ程伺
ヒタイコトヲ申上ゲテ置キマス、其ノ第一
ハ、此ノ度ノ訓令ハ諸官廳ニ對シテ御命ジ
ニナッテ居リマス、併シ是ハ官廳ダケデ宜シ
イモノカ、諸官廳ダケデ社會トノ連絡ガア
リマセヌデハ、實行ガ速カニ參ルマイト思
ヒマス、諸官廳ダケガソレヲ使ッテ居ルダケ
デハ、御訓令ノ御趣旨ガ徹底致スマイト思
ヒマス、ソレデ統制ヲ致シマスルニハ、何
ト致シマシテモ長イモノヲ縮メ、短イモノ
ヲ足スト云フヤウナコトデアリマスカラ、
幾分カノ其ノ間ニ不便ヲ感ズルコトガアリ
マス、又不滿足ノモノモアリマセウ、併シ
ナガラ大體ニ於テ統制ヲスルコトハ、國家
ノ進展上必要デアレバ、統制シナケレバナ
リマセヌ、本員ト雖モ御訓令ノ式ニ對シ多
少ノ意見ハアリマスケレドモ、今日此ノ際
相剋摩擦ヲ避ケ、國民一致協同シテ國難ヲ
打開スルノ秋ニ當リマシテ、殊更多少ノ意
見ヲ挾ンデ、其ノ統一ヲ妨ゲルヤウナコト
ガアッテハ相濟ミマセヌト心得マシテ、私
ハ御訓令ニアル所ノ御趣旨ニ全然服從致
シテ進マウト思ッテ居リマス、但シ國語ハ
時勢ニ依ッテ動キマスカラ、其ノ將來ニ
對スル〓究等ハ決シテ怠ルベキモノデ
ナイト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、此ノ
御示シニナリマシタ所ノ式ノ名前ガ決ッテ
居リマセヌノデ、世間ニ「ヘボン」式、日本
式ト云フ名前ハ行ハレテ居リマスガ、訓令
ノ大體ハ日本式ヲ基礎トシテ多少ノ修正ヲ
加ヘタモノデアリマス、併シ全然日本式デモ
アリマセヌ、ソレデ之ヲ世間デハ國定式ト
申シテ居リマス、勿論文部當局ニ於キマシ
テ調査ヲシマス時ニ、國定〓科書ハ之ニ據
ルト云フコトヲ仰セラレマシタカラ、旣
世間デモ國定式ト申スヤウニナッタノダラ
ウト思ヒマス、併シ或者ハ之ヲ訓令式トモ
申シテ居リマス、又之ニ意見ヲ挾ム者ハ官
僚式······アレハ官僚ノ使フ式デアルカラ官
僚式デアルト云フヤウナコトヲ申シテ居リ
マス、ソコデ此ノ名稱ノコトハ取急イダ
問題デモアリマセヌガ、國定式ト假ニ私ハ
申シテ置キマスガ、若シ適當ナ名稱ヲ政府
ニ於テ御示シニナリマスレバ、無論ソレニ
從ヒマス、此ノ綴リ方ヲ啻ニ官廳ニ御訓示
ニナッタノミナラズ、社會一般ニ對シテ之ヲ
適當ノ方法ヲ以テ御示シニナリ、或ハ之ニ
對スル誤解ノアルモノハ、進ンデ之ヲ說明
ヲスルト云フヤウナ方法ヲ御執リニハナラ
レマスマイカ、漸ヲ以テ實行ヲ期スベシト
訓令ニアリマスガ、漸ヲ以テト云フコトハ
意味ノ取リヤウニ依ッテハ多少ノ裕リガア
リマシテ、今日明日ト云フ譯デハナイト云
フ意味ニモナレバ、二三年經ッテト云フヤウ
ナ意味ニモナル、自然ヲ俟ッテト云フヤウナ
意味ニモナリマスカラ、ソレハ矢張リ成ル
ベク速カニ實行ニナルヤウニト思ヒマス故
ニ、民間ニモ之ヲ用ヒルヤウニ希望致スノ
デアリマス、ソレニハ第二ニ伺ヒマスガ、
政府ヨリ補助ヲ受ケテ居リマス所ノ學會ガ
アリマス、例ヘバ學術振興トカ、文化振興
トカ云フヤウナ學會ハ政府ヨリ補助ヲ受
ケ、政府ノ指導ヲ受ケテ進ンデ居ル會デア
リマス、是等ノ會ニ對シテハ諸官廳同樣ニ
政府カラ御訓令ガアッテ然ルベキト思ヒマ
スガ、此ノ點ヲ伺ヒマス、第三ニ伺ヒマス
コトハ地名ノ問題デアリマス、實ハ此ノ地
名ノ問題ハ、此ノ「ローマ」字ノ混雜スルコ
トガ不都合デ、最モ不便ヲ感ズルモノデア
リマシテ、昭和四年デアリマスカ、千九百
二十八年デアリマス、「ロンドン」ニ於ケル
地理學會ヨリ日本地名ノ書キ方ガ陸海軍ハ
日本式ヲ使ヒ、民間デ出來ルモノ、或ハ鐵
道等ハ「ヘボン」式ヲ使フ、誠ニ不便デ困ル
カラ、ドチラカニ統一ヲスルコトヲ希望ス
ルト云フコトガ出テ來マシテ、政府ニ於キ
マシテモ、是ハ是非共一定シナケレバ國家
ノ體面上宜シクナイ、玆ニ於テ委員ヲ設ケ
ラレマシテ六年間ノ長イ檢討ノ後ニ、此ノ
度ノ御訓令ニアルヤウナ式ガ決ッタノデア
リマス、ソレデ此ノ地名ニ付キマシテハ只
今申シマシタ如ク鐵道ハ旣ニ之ニ著手シテ
居ラレマス、又鐵道ノ外航海ニ要リマス所
ノ燈臺表、海圖、航空線路、是等ハ餘程前
ヨリ只今ノ訓令ニアル通リノ式ヲ用ヒテ居
リマス、尙注意致シマスコトハ二千六百
年ノ記念ニ當リマシテ博覽會、「オリンビッ
〃等ノ催ガアリマス、是ニハ多數ノ外國
人ガ參ルコトト存ジマス、ソレニ政府ノ出
シタ所ノ地圖ト、鐵道ノ驛名等ガ區々デア
リマシテハ、體裁ハ固ヨリ、不便ヲ感ズル
コトモ夥シイコトト存ジマスル故ニ、ドウ
カ此ノ二千六百年迄ニハ、地名ノ書キ方ハ
統一出來ルヤウニ希望致シマス、是モ鐵道
ノ如ク塗換ヲ俟ッテヤルト云フコトデハ、二
年間ニハムヅカシイカト思ヒマスノデ、只今
房總線ニ行ハレテ居リマス如ク、其ノ箇所ダ
ケヲ塗ッテ書換ヘルコトハ左程ノ困難デアリマ
セヌ、是ハ鐵道大臣ニ伺フベキカト思ヒマ
スガ、兎モ角適當ノ方法ヲ以テ此ノ二千六百
年ノ期限迄ニハ、地名ノ書キ方ハ全部統一
サレルヤウニ希望致シマス、第四ニ、何ト致
シマシテモ此ノ書キ方ノ如キハ、子供カラ
覺エマシタモノヲ行フト云フノハ、自然ノ人
情デアリマス、ソレデ只今ノ所デハ「ローマ」
宇ニ初メテ逢フノハ、外國語ヲ習フ時ニ、
「ローマ」字ト云フモノヲ使ヒマス、デ只
今英語ヲ習フ時ニ「ローマ」字ニ當リマシテ、
先ヅ以テ英語ノ讀ミ癖ヲ〓ハル、ソレカヲ日
本語ノ書キ方ヲ習ヒマスカラ、英語ト違フト
云フト變ダ、斯ウ云フコトニナリマシテ、
詰リ主客〓倒ト云フコトニナリマス、是ハド
ウシテモ「ローマ」字ノ使ヒ方ヲ、詰リ訓令
三、、前ノ「ローマ」字調査委員會ノ官制ニ
モ、國語ノ綴方ト云フコトニナッテ居リマ
スカラ、國語ノ綴方ヲ外國語ヲ習フ前ニ〓
ヘルト云フコトニ私ハ希望致シマス、又ソ
レガ至當ノコトト存ジマス、先ヅ自分ノ國
ノ言葉ノ書キ方ヲ學ンデ、然ル後ニ他國ノ
式ヲ學ブベキデアリマス、「ローマ」字ト云
フモノハ世界ノ文字デアル、英國ダケノ文
字デハナイ、此ノ事ニ付キマシテハ昭和
五年ニ「ローマ」字調査會ノ出來マシタ時
ニ、詰ラナイ意見書ヲ書キマシテ、方々ニ
御意見ヲ伺ヒマシタ、ソレニ對シテ杉村陽太
郞大使カラノ意見ガアリマシタ、「ドウモ忙
シイ時ニ左樣ナ問題ヲ論ズルコトハ甚ダ遠
慮スルガ」ト云フコトデアリマシテ、杉村
大使ノ簡單ナ杉村ト云フ名前ノ書キ方ガ
「フランス」ニ行ッテ又書換ヘテ四通リアル、
或席ニ招カラレテ名ヲ聞カレタ、杉村ト言ッタ
所ガ、席ニ著イテ見ルト云フト英語デ讀メバ
「セゲメラ」ト讀ムヤウニ書イテアル、成程
「フランス」式デ書カレレバ斯ウダト思ヒマ
ス、ソレカラ「ヂー」ノ下ニ「エチ」ヲ入レタ
リ「ユー」ヲ入レタリ、四通リ違ッタ書キ方
ガアッテ、是デハ誠ニイケナイ、ドレデモ宜
イカラ一定スルコトヲ希望スルト云フ御意
見デアリマシテ、尙ソレニ加ヘテ書イテア
リマスコトハ、「ローマ」字ハ各國ソレ〓〓
ノ國語ニ區々ニ使フ、今申ス通リ杉村ガ四
通リモアルヤウデアリマスカラ、近頃ノ形
勢ヲ見ルニ「フランス」語ノ大陸ニ於ケル勢
力、「ドイツ」語ノ東「ヨトロッパ」ニ於ケル
勢力、又「イスパニヤ」語ノ南米ニ於ケル勢
力等ヲ考ヘル時ニハ、英語一點張リハ遠慮
スベキコトト考ヘル、斯ウ云フ意見ヲ述べ
ラレマシタ、是ハ杉村君ノ許シヲ得マシテ、
學士會月報ニ載セマシタ、サウ云フコトデ
アリマシテ、自國語ノ綴方ヲ知ラズシテ外
國語ノ綴方ヲ先キニ習フト云フコトハ、國
民精神ヨリ考ヘマシテモ不都合ナルコトト
存ジマス、是ハドウシテモ「ローマ」字ヲ以
テ國語ヲ綴ルコトハ、外國語ヲ習フ前ニ〓
ヘルベキコトト思ヒマス、此ノ特點ニ伺ヒタ
ウゴザイマス、デ今日ハ「ローマ」字ハ最早
日用ニ必要ナル文字デアリマシテ、外國ニ
出入シマス所ノ手紙ヲ、統計表ニ依ッテ大
略勘定シマシタ、支那滿洲ハ除キマシテ、外
國ト云フノハ「ヨーロッハ」「アメリカ」南洋
等、此ノ數ヲ一日ニ割當テテ見レバ約十七
萬通ガ出入シテ居ル、是ハ皆「ローマ」字書
ノ手紙ト云フヤウナモノデ、更ニ外國電報
ヲ見マスレバ、是モ一日ニ割當テテ見マス
レバ、約八千通ノ歐文電報ガ出入シテ居リ
やく、斯ウ云フ時代デアリマスカラ、「ロー
マ」字ヲ以テ日本語ヲ綴ルコトハ、綴方ハ
ドウシテモ國民〓育ニ必要ト思ヒマス、學
科ノ增減等ニ付キマシハ無論愼重ナル御調
査ガ必要デアリマセウ、併シナガラ昨年ノ
訓令ニアリマス所ノ表ヲ知ラセルグラヰノ
コトハ、五十音ノ半分足ラズノ文字デ濟ム
ノデアリマスカヲ、之ヲ外國語ヲ習フ前ニ
〓ヘテ、外國語ハ外國語ノ時ニ〓ヘルト云
フヤウニ爲サレテハ如何デアリマセウカ、
私ハ切ニソレヲ希望致ス者デアリマス、第
五ニ伺ヒマスコトハ、是ハ外務省關係デア
リマスガ、我ガ國ハ斯ウ云フ綴方ヲ以テ國
語ヲ綴ルト致シマシテモ、外國一般ニ之ヲ
知ラセヌケレバ其ノ效ヲ奏シマセヌ、仍テ
甚ダ不束ナ次第デアリマスルケレドモ、此
ノ綴字法ノ現代ノ學理ヲ調ベマシテ、萬國
言語學會、萬國音聲學會等ニ於キマシテ、
「ゼネバ」「ㄱアムステルダム」ㄱローマ」「ロン
ドン」「パリ」ノ大學等ニ於テ日本式ノ綴方
ヲ說明致シマシク、卽チ只今ノ訓令ニアル
所ノ基礎トナッタモノデアリマス、之ヲ說明致
シマシテ私ハ御贊成ヲ願フナドト云フコトハ一
遍モ申シマセヌ、御批評ヲ願フ、何卒遠慮ナ
キ御批評ヲ願フト云フコトヲ申シマシテ、未ダ
曾テ一遍モ反對論ヲ聽キマセヌ、ノミナラズ
「現代ノ綴字法、卽チ「フォノロヂイ」ニ從ッタ
綴字法ノ模範的綴方トシテ日本式ヲ紹介ス
ル」、是ハ「ウィーン」大學ノ其ノ方ノ大家
ノ「トルベッコイ」〓授ノ報〓ニ出シテアリ
マス、政府ガ此ノ基礎ニ基イタ所ノ綴方ヲ
用ヒタコトハ、實ハ此ノ現代ノ綴字ノ學問
ニ對シテ誇ルベキ所ト思ヒマス、ソコデ外
國ニ於キマシテモ、今朝ノ新聞デ見マスレ
バ、靑島ノ如キハ日本語ヲ必須科トシテ〓
ヘルト云フコトガ見エマス、國民ノ發展ニ
ハ何ト致シマシテモ國語ガ相伴ハナクテハ
イケマセヌ、カルガ故ニ歐米諸國ハ何レモ
自國語ヲ世界ニ擴ゲルコトヲ皆努メテ居リ
マス、ソコデ日本ノ近來ノ發展ニ顧ミマシ
テ、「アメリカ」アタリデモ、「ドイツ」、「イ
タリー」、「フランス」、何レモ日本語ヲ學習
スル熱ガ起ッテ居リマス、此ノ機會ニ於テ日
本語ヲ〓ヘル學校モアリマスルガ、之ニ對
シテ新シキ訓令ニ依ル所ノ綴方、所謂整理
統一シタ所ノ綴方ヲ御勸メニナリマセヌカ、
又ソレヲ爲サラヌケレバ、此ノ實行ヲ徹底
スルコトハムツカシイト思ヒマス、「コロン
ビア」大學アタリデモ意見ヲ聽キニ參リマ
シテ本ヲ送リマシタ、「ハワイ」大學ニ於テ
モ其ノ通リデアリマス、然ルニ玆ニ奇怪ナ
ルコトガアルト、「ハワイ」大學ノ「カール」
ト云フ人カラ言ッテ來マシタ、此ノ人ハ昨年
日本語ノ動詞ノ變化ヲ論ジマシテ文學博士
ヲ得タ方デアリマス、此ノ方ノ手紙ニ依リ
マスト、日本式ハ理窟ニ適ッテ誠ニ結構ダ、
之ニ依ッテ日本話ヲ學ブベキダ、ソコデ奇怪
ナコトニハ、「アメリカ」人ハソレヲ言ッテ
聽カセレバ分ル、然ルニ日本人ガソレニ反
對スルモノガアル、是ハ誠ニ奇怪ナコトデ
アルト云フコトヲ書イテアリマス、是ハ取
リモ直サズ英語ヲ先ニ習ヒマシテ、「ロー
マ」字ト云フモノハ斯ウ云フモノダト云フ
コトヲ英語デ頭ニ入ッテ居リマス故ニ、今ノ
ヤウナコトガ出來ル、日本ニ於ケル方デモ
其ノ通リデアリマシテ、却テ日本人ノ方デ
杉村君ノ所謂英語一點張リト云フ方ガ、ド
ウモ英語ニアルモノト違ッテ不都合デアル
ト云フコトヲ申スノデアリマスカラ、之ヲ
外務省ヨリ日本語ノ國定式ヲ勸メルト宜イ
ト思ヒマス、其ノ爲ニハ特ニ外務省ニ機關
ヲ御設ケニナッテモ宜シイカト存ジマス、其
ノ點ニ付テ外務大臣ノ御答辯ガ伺ヒタイノ
デアリマス、ソレカラ終リニ臨ミマシテ
「ローマ」字トハ離レマシテ、度量衡ノ〓育ヲ普
通〓育ノ中ニ御加ヘナサラヌカ、勿論是ハ
普通〓育ノ中ニアルコトハ存ジテ居リマス、
併シナガラ其ノ度量衡ノ原理ヲ簡單ニ說イ
タモノモ一般〓育ノ中ニ入レル必要ガアル
ト思ヒマス、度量衡ノ目的、度量衡ノ變遷、
昔ノヤウニ唯桝目ダトカ、長サダケヲ測ッテ
居ルモノデハナイ、系統ノアルモノデアル、
之ニ依フテ速度ヲ測リ、速度カラ力ヲ測リ、
力カラ其ノ根源タル所ノ「エネルギー」ヲ測
ルト云フヤウナコトヲ簡單ニ說イテ知ラセ
ル必要ガアルト思ヒマス、此ノ事ニ付テ「ゼー
ムス·ワット」ガ蒸氣ヲ發明致シマシタ時ニ、
度量衡ヲ今ノヤウニシテ居ッテハ迚モイケ
ナイ、ドウシテモ是ハ改良スル必要ガアル、
一「フット」ヲ百ニ割リ、サウシテ上、下全
部十進法ニシロ、其次ニチヨット驚キマスコ
トハ、「ワット」ハ此ノ長サト目方ト云フモノ
ノ關係ヲ明カニシナケレバナラヌ、水ハ世界中
何處へ行ッテモアリマスカラ、水ノ立方單位ノ
目方ヲ目方ノ單位ニスベシ、是ガ「メートル」法
ノ始マル前、「メートル」法トハ其ノ時ハ言ヒマ
セヌ名前ハ決ッテ居リマセヌカラ······、度量
衡合理化ノ問題ヲ「フランス」ノ議會ニ出シ
マス七年程前ニ論ジテ居リマス、千七百八
十三年ト思ヒマス、千七百九十年ニ初メテ
此ノ度量衡整理ト云フ案ガ「フランス」議會
ニ出マシタ、ソレ程ニ必要ヲ感ジタモノデ
アリマス、ソコデ此ノ度伺ヒマスト、「メー
トル」法竝ニ尺貫法ノ調査委員ノオ骨折ニ依ツ
テ、長イ間ノ御調査ノ結果、「メートル」法、
尺貫法竝用ト云フコトガ御決議ニナッタヤ
ウデアリマス、誠ニ穩當ナル御考ト思ヒマ
ス、而モ此ノ頃ノ相剋摩擦ヲ避ケテ、擧國
一致ノ世ノ中ニ於キマシテ徒ニ度量衡如キ
ヲ以テ轂擊シテ居ルト云フコトハ誠ニ宜シ
カラヌ、ソコデ竝用ト云フコトニナッタ、私
モ尺貫法廢止ト云フヤウナコトモ前ニモ申
シマシタガ、竝用ト云フコトニ贊成致シマ
ス、併シナガラ竝用ト云フコトト混用ト云フ
コトヲ混ゼテハイケマセヌ、竝用ハ竝ビ用ヒ
ル、混用ハ之ヲ混ゼコゼニ用ヒルト云フコト
デアリマス、竝用ハ例ヘバオ茶モ飮ミ、オ酒モ
飮ム是ガ竝用デアリマスケレドモ、扶茶ト「ウ
イスキー」トゴッチヤ混ゼニ飮ムト云フヤウ
ナコトハ混用デアリマス、是ハ衞生上モイケ
マセヌ、何ヲカ混用ト申シマスレバ、例ヘバ
稅關ノ法規ノ中ニ、一「メートル」平方ノ中ニ
何匁ノ目方ト云フヤウナコトガアリマス、
此ノ事ハ故斯波男爵モ此ノ壇上カラ御論ジ
ニナリマシタ、ソレカラ一「メートル」ニ付
テ何「キログラム」以上ノモノ、ソレニ稅金
ハ何ニ依ッテ取ルカト云フト何斤、一 け 、
對シテ幾ラト云フコトニナッテ居ル、片方
デハ「メートル」法デ片方デハ斤デス、斤ト
云フ頗ル不都合ナモノデス、混用モ混用、
大混用デアル、尙私ガ心ヲ寒カラシメマシ
タコトハ、昨年ソコノ府中ニ於テ、東京日
日新聞ト帝國飛行協會ガ共同致シマシテ、
飛行機模型ノ全國競技ヲ行ヒマシタ、九州、
北海道ヨリ何レモ精神ヲ籠メテ雛型ヲ作ツ
タ模型ヲ持ッテ來マシテ飛バシマシタ、其ノ
表ヲ見テ驚キマシタコトハ、所謂「メートルL
法ヲ使ヘバ國民精神ヲ滅シ、惡法ナリト
云フヤウナ雜誌等ヲ見タ爲デモアリマセ
ウガ、大抵ハ「センチ·メートル」デアリマ
スガ、其ノ中ニ寸、四十寸、三十五寸ト云
フヤウナ寸ガ書イテアル、斯ウ云フコトニ
ナリマスト、若シモ雛型ガ優秀デアッタ、安
定ガ良カッタカラ之ヲ一ツ「グライダー」ニ
シヨウ、飛行機ニシヨウト云フ時ニ、又々
換算ガ必要ニナリマス、是ガ所謂混用デア
リマス、然ラバ私ノ言フ併用ハ何レニアル
カト申シマスレバ、是ハ全ク關係ナクシテ、
古典ニ殘ッテ居ルヤウナモノ、現在用ヒナイ
モノハソレナリニ使フベキデアル、例ヘバ
十束ノ劍、千尋ノ海、千尋ノ海ヲ千五百
「メートル」ト言ッテハ歌ニナリマセヌ、又近イ
所デ言ヒマスト、箱根八里ハ駕籠デモ越ス
ト言ッタヤウナコトガアリマスガ、箱根三十
二「キロメートル」ト言ッテハ歌ニナリマセ
ヌ、是ハ何處迄モ箱根八里デ結構デアリマ
ス、今日ハ子供ノ歌ッテ居リマスノニ、神風
ガ「ロンドン」迄行ッタ歌ニハ鵬程一萬五千
「キロ」、之ヲ何百何十何里ナドト云フコト
ヲ言ッテハ歌ニナリマセヌ、鵬程一萬五千
「キロ」デ、如何ニモ「ロンドン」迄飛ンダヤ
ウナ氣持ガ今ノ若イ者ニハ皆湧イテ居リマ
ス、之ヲサッキノ雛型ノヤウニ、里ニ直セノ
町ニ直セト言ッタラバ是ハ混用ニナリマス、
私ハ併用ハ宜シイ、混用ハ避ケナクテハナ
ラナイ、此ノ事ハ政府ニ於テモ宜シク御調
査ニナッテ混用ヲシナイヤウニ、而シテ何故
混用ガ出來ルカト言ヘバ、度量衡ノ原理ヲ
呑ミ込ンデ居ラヌ故ダト敢テ申シマス、四
五年前ニ私ハ小學〓員ノ夏期講習ニ於テ、
度量衡ノ原理ヲ講義致シマシタ、其時ノ〓
員諸君ノ度量衡ノ原理ニ對スル知識ノ足ラ
ザルコトヲツク〓〓感ジマシタ、仍テ〓員
ニ、只今モアリマスケレドモ、モット度量衡ノ
根本ノ意義ヲ〓ヘタイ、漢學デ申シマスト
加藤〓正ガ秀賴ノ幼稚ナルヲ見テ、之ヲ助
ケナケレバナラヌト感ジマシタノハ、論語
ノ、「以テ百里ノ命ヲ寄スベシ、以テ六尺ノ
孤ヲ託スベシ、大節ニ臨ンデ奪フベカラズ、
士ト曰フベシ」ト云フヤウナ言葉ガアリマ
スガ、之ヲ見テ感激シタノデアリマス、六
尺ノ孤ト云フノハ、今ノ六尺ダト思ッタラ横
綱ノ大キサデアリマス、秀賴ノヤウナ幼少ナ
子供デハアリマセヌ、アノ六尺ノ孤ハ周尺、
周ノ尺デアリマスカラ、只今デ申シマスト
三尺六七寸位デアリマスガ、三尺六七寸ノ
孤ヲ託スベシデハ文ニナリマセヌ、六尺ノ
孤ヲ託スベシハ何處迄モ六尺ノ孤ヲ託スベ
シト併用スベシ、混用シテハイケナイ、私
ノ言フ併用ト混用トハサウ云フ譯デアリマ
シテ、若シモ是ガ國民精神ニ關係アルコト
デアリマスナラバ、何事ヲ措イテモ「メート
ル」法ナドハ廢却スベキコトデアルガ、若シ
モ國民精神ニ關係ガナイト云フナラバ、合
理的ノモノヲ使フベキデアリマス、ドウカ
此ノ度量衡ニ付テハ、政府ニ於テ御調ニナ
リマス時ニ、併用ハ宜シイ、混用ハイケナ
イト云フコトヲ御承知アラムコトヲ希望致
シマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=36
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037・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 田中館サン
ノ「ローマ」字ニ關シマスル御質疑ニ御
答ヲ致シマス、第一ノ御尋ハ、昨年九
月ニ內閣訓令ト致シマシテ、各官廳ニ
使用致シマス「ローマ」字ノ新綴方ヲ、官廳
ダケニ止メズ、民間ニ之ヲ奬勵シロト云フ
意味ノ御尋ダッタト存ジマス、政府ニ於キマ
シテモ此ノ「ローマ」字ノ新綴方ヲ訓令致シ
マスト共ニ、政府部內ニ於キマシテハ、諸
官廳ニ於テモ銳意是ノ使用ヲ圖ッテ居ル次
第デゴザイマス、唯之ヲ問題ノ性質上特ニ
民間ニ向ッテ奬勵策ヲ講ズルト云フ考ハ只
今持ッテ居リマセヌケレドモ、各官廳ニ於キ
マシテ統一シテ之ヲ使用致シマスレバ自
然普及スルコトモ相當ノ期待ヲ致シテモ宜
イカト存ジテ居ル次第デゴザイマス、ソレ
カラ第二ニハ政府ガ補助ヲ致シテ居リマ
スル學會等ニ對シテ、之ガ使用方ヲ要求ス
ル考ハナイカト云フ御尋デゴザイマシタ
ガ、其ノ點ニ付キマシテモ、何分ニモ綴方
ト云フヤウナ問題デゴザイマスカラ、之ヲ
要求スルトカ何トカ云フコトハ、更ニ考慮
ヲ要スルト存ジマスガ、學會等ニ對シマシ
テハ、文部省ニ於キマシテモ常ニ意見ヲ交
換致ス機會モゴザイマスシ、接觸ヲ持ッテ居
ル譯デゴザイマスカラ、出來ルダケ此ノ綴
方ヲ普及致シマスコトニ付テ努力ヲ致シタ
イト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、ソレカ
ラ地名ニ付キマシテモ、此ノ綴方ニ統一シ
テ、殊ニ二千六百年ノ記念ノ色々ノ祭典、
催シ物ノアル時期迄ニ之ヲ統一シロト云フ
御希望デアリマスガ、此ノ點ハ出來ルダケ
前ノ各問題ト同樣努メル考デゴザイマス
ガ、何分ニモ經費其ノ他ノ關係モゴザイマ
スカラ、必ズ之ガ實行出來ルヤ否ヤニ付テ
ハ、唯努力ヲスルト申上ゲル程度ニ止メタ
イト存ジマス、ソレカラ國語ノ綴方ヲ小學
生等ニ學バセマスノニ、先ヅ外國語ヲ習ッテ
後ニ之ヲ〓ヘルカラ色々ノ間違ガ起ルノ
ダ、外國語ヲ習フ前ニ習ハシテハドウカト云
フ御意見ハ誠ニ御尤モト存ジマス、唯小學生
ニ此ノ「ローマ」字ヲ正科ノヤウニシテ〓ヘル
ト云フコトニ付キマシテハ、小學校ノ各學科
ノ數等ニモ、或ハ每週ノ〓科時間等ノ關係
モアリマシテ、小學生ノ負擔能力等ニモ影響
ガアリマスカラ、是ハ尙篤ト〓究シテ見タ
イト思ヒマスガ、尙此ノ實施ハ困難デハナ
イカト考ヘテ居リマス、ソレカラ最後ニ度
量衡ノ原理ヲ小學校〓育ニ於テ〓ヘテハド
ウカト云フ御希望デゴザイマシタガ、此ノ
點ハ初等〓育ニ於キマシテ、現在ハ日常使
用シテ居リマス所ノ量ノ觀念ヲ與ヘテ、其
ノ運用ヲ圖ラセルト云フコトガ目的デアリ
マシテ、度量衡ノ原理ト云フヤウナ〓念的
ナコトヲ理論的ニ〓ヘマスト云フコトハ、
是ハ兒童ノ學習能力等カラ考ヘマシテモ相
當困難カト存ジマスノデ、尙十分ニ考慮ヲ
致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=37
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038・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 外務省ノ政
府委員カラ答辯ガゴザイマス
〔政府委員松本忠雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=38
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039・松本忠雄
○政府委員(松本忠雄君) 田中館博士ノ御
尋ノ中ノ外務省ノ關係ノコトヲ私カラ御答
ヘ致シマス、外務省デハ從來傳統的ナ一種
ノ「ローマ」字ノ綴方ヲ使ッテ居ッタノデアリ
マス、其ノ結果時ニ面倒ノ起ルコトガアッタ
ノデアリマシテ、例ヘバ旅劵ヲ下附スル場
合ニ外務省ハ外務省ノ傳來ノ「ローマ」字ノ
綴方ヲ用ヒ、旅劵ヲ貰フ人ハ自分ハ從來斯
ウ云フ使ヒ方ヲシテ居ッタカラ、ソレニ依ッ
テ名前ヲ書イテ吳レト云フヤウナコトガア
リマシタ時ニ面倒ガアッタノデアリマスガ、
此ノ度是ガ田中館博士ガ仰セニナリマシタ
國定ニサレマシテ一定致シタノデアリマス
ガ、大變結構ナコトダト存ジマス、今年ノ
一月一日以降ノ外務本省、在外公館、何レ
モ此ノ國定ヲサレタ「ローマ」字ノ綴方ニ
據ルベキコトニ定メテ實行致シテ居リマ
ス、其ノ結果ハ外國ニ於キマシテモ、必ズ
此ノ國定サレタ式ニ做ッテ來ルコトデアラ
ウト期待ヲ致シテ居リマス、博士ノ仰セニ
ナッタヤウナ、之ヲ外國ニ知ラシメテ、外國
ヲモ同ジヤウナ式ニ據ラシムルト云フコト
ニ付キマシテハ、御意見ヲ參酌致シマシ
テ、更ニ適當ニ考慮〓究致シタイト思ヒマ
ス、此ノ段御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=39
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040・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本日ハ此ノ
程度ニ於テ延會致シタイト存ジマス、御異
議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=40
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041・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、次會ハ明二月一日午前十時ヨ
リ開會致シマス、議事日程ハ決定次第彙報
ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散
會致シマス
午後零時十三分散會
貴族院議事速記錄第四號正誤
頁段行誤正
六八二一六不信實ダケレ不深切ノヤウ
ドモダガ
〃〃二〇遞信省厚生省
六九、三何カ、馬鹿ダ、何カダ、
〃〃三〇辭令ヲ賣ル時流ヲ追フ
〃〃三一辭令時流
〃〃三一-三二賣ル所追フ所
〃〃三二ナイ、勿論〓ナイ、〓育
育
〃〃三三居ルコトハ無居レバソレ
論ソレ
〃三一0ドモ矢張リ、ドモ、獨
デハ獨
七〇二五ソレガソレヲ
〃〃二六折合ッテ織合ッテ
〃〃〃內閣ノナンダ內閣ノ仕事ナ
ンダ
七一二六ソレハソレガ
〃〃七事實ハ事例ハ
貴族院議事速記錄第五號正誤
頁段行誤正
七三二七會議中會期中発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00719380131&spkNum=41
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