1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年二月一日(火曜日)午前十時十九分開議
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議事日程 第八號
昭和十三年二月一日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件(第七日)
第二 民法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 民事訴訟法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 特許法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 商標法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 不正競爭防止法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 辨理士法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=0
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001・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐太行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔丸龜書記官朗讀〕
去月三十一日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出
セリ
昭和十三年二月二日
特許法中改正法律案可決報告書
商標法中改正法律案可決報告書
不正競爭防止法中改正法律案可決報〓書
辨理士法中改正法律案可決報告書
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十三囘帝
國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ
受領セリ
拓務省所管事務政府委員
朝鮮總督府鐵道局長吉田浩君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=1
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002・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ本日
ノ會議ヲ開キマス、日程ヲ變更シテ日程第
一ヲ最後ニ廻シ、日程第二、民法中改正法
律案、日程第三、民事訴訟法中改正法律案、
日程第四、外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法
中改正法律案、政府提出、第一讀會、是等
ノ三案ヲ一括シテ議題トナスコトニ御異議
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=2
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003・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、久山政務次官
〔左ノ提出文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ做フ〕
民法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年一月二十九日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
司法大臣鹽野季彥
民法中改正法律案
民法中左ノ通改正ス
第四十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
法人ハ其設立ノ日ヨリ主タル事務所ノ
所在地ニ於テハ二週間、其他ノ事務所
ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ登記ヲ爲
スコトヲ要ス
同條第三項中「一週間內ニ」ヲ「其事務所
ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」ニ改ム
第四十六條第二項中「一週間內ニ」ヲ「主
タル事務所ノ所在地ニ於テハ二週間、其
他ノ事務所ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」
三分八
第四十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
法人カ主タル事務所ヲ移轉シタルトキ
ハ舊所在地ニ於テハ二週間內ニ移轉ノ
登記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ三週間內
ニ第四十六條第一項ニ定メタル登記ヲ
爲シ其他ノ事務所ヲ移轉シタルトキハ
舊所在地ニ於テハ三週間內ニ移轉ノ登
記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ四週間內ニ
第四十六條第一項ニ定メタル登記ヲ爲
スコトヲ要ス
第七十七條中「一週間內ニ」ヲ「主クル事
務所ノ所在地ニ於テハ一一週間、其他ノ事
務所ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」ニ改
ム
第九十七條ノ二意思表示ハ表意者カ相
手方ヲ知ルコト能ハス又ハ其所在ヲ知
ルコト能ハサルトキハ公示ノ方法ニ依
リテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ公示ハ公示送達ニ關スル民事訴
訟法ノ規定ニ從ヒ裁判所ノ揭示場ニ揭
示シ且其揭示アリクルコトヲ官報及ヒ
新聞紙ニ少クモ一囘揭載シテ之ヲ爲ス
但裁判所相當ト認ムルトキハ官報及ヒ
新聞紙ノ揭載ニ代ヘ市役所、町村役場
又ハ之ニ準スヘキ施設ノ揭示場ニ揭示
スヘキコトヲ命スルコトヲ得
公示ニ依ル意思表示ハ最後ニ官報若ク
ハ新聞紙ニ揭載シタル日又ハ其揭載ニ
代ハル揭示ヲ始メタル日ヨリ二週間ヲ
經過シタル時ニ相手方ニ到達シタルモノ
ト看做ス但表意者カ相手方ヲ知ラス又
ハ其所在ヲ知ラサルニ付キ過失アリタル
トキハ到達ノ效力ヲ生セス
公示ニ關スル手續ハ相手方ヲ知ルコト
能ハサル場合ニ於テハ表意者ノ住所地、
相手方ノ所在ヲ知ルコト能ハサル場合
ニ於テハ相手方ノ最後ノ住所地ノ區裁
判所ノ管轄ニ屬ス
裁判所ハ表意者ヲシテ公示ニ關スル費
用ヲ豫納セシムルコトヲ要ス
第百七十四條ノ二確定判決ニ依リテ確
定シクル權利ハ十年ヨリ短キ時效期間
ノ定アルモノト雖モ其時效期間ハ之ヲ
十年トス裁判上ノ和解、調停其他確定
判決ト同一ノ效力ヲ有スルモノニ依リ
テ確定シタル權利ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ確定ノ當時未ク辨濟期ノ
到來セサル債權ニハ之ヲ適用セス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ登記事由ノ生ジタル場合ニ
於テハ其ノ登記ノ期間ハ仍從前ノ例ニ依
ル
第百七十四條ノ二ノ規定ハ本法施行前ニ
確定シタル權利ニ付テモ亦之ヲ適用ス但
シ本法施行前時效ノ完成シタルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
民事訴訟法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年一月二十九日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
司法大臣鹽野季彥
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第百七十八條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ訴訟ノ遲滯
ヲ避クル爲必要アリト認ムルトキハ申
立ナキトキト雖公示送達ヲ爲スヘキコ
トヲ命スルコトヲ得
第百八十條第一項但書中「第百七十八條
第二項」ヲ「第百七十八條第三項」ニ改
ム
第二百三十六條第一項中但書ヲ削リ同項
ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
訴ノ取下ハ相手方カ本案ニ付準備書面
ヲ提出シ、準備手續ニ於テ申述ヲ爲シ
又ハ口頭辯論ヲ爲シタル後ニ在リテハ
相手方ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ效
力ヲ生セス
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
第三項但書ノ場合ニ於テ相手方カ期日
ニ出頭セサルトキハ口頭辯論又ハ準備
手續ノ調書ノ謄本ヲ之ニ送達スルコト
ヲ要ス
訴ノ取下ノ書面ノ送達アリタル日ヨリ
三月內ニ相手方カ異議ヲ述ヘサルトキ
ハ訴ノ取下ニ同意シタルモノト看做ス
第三項但書ノ場合ニ於テ相手方カ期日
ニ出頭シタル場合ニ於テハ訴ノ取下ア
リタル日ヨリ、相手方カ期日ニ出頭セ
サル場合ニ於テハ前項ノ謄本ノ送達ア
リタル日ヨリ三月內ニ相手方カ異議ヲ
述ヘサルトキ亦同シ
第三百六十三條第二項中「第二百三十六
條第二項第三項」ヲ「第二百三十六條第三
項乃至第五項」ニ改ム
第六百四十三條第一項第五號中「其期限
竝ニ借賃」ノ下ニ「及ヒ借賃ノ前拂又ハ
敷金ノ差入アルトキハ其額」ヲ加フ
第六百五十八條第三號中「其期限竝ニ借
賃」ノ下ニ「及ヒ借賃ノ前拂又ハ敷金ノ差
入アルトキハ其額」ヲ加フ
第六百六十四條第一項中「利害關係人カ
或ル競買人ヨリ保證ヲ立テシメンコトヲ
申立ツルトキハ其」及第二項ヲ削ル
第六百六十六條第二項中「預ケタル保證
アルトキハ卽時ニ其」ヲ「卽時ニ保證
ノ」ニ改ム
第六百六十七條第一項第七號中「申立ニ
因リ」及「申立アルモ」ヲ削ル
第七百五條中「第六百六十四條ノ規定ニ
從ヒ保證ヲ立ツ可キ求ヲ受クルモ之ヲ」
ヲ「第六百六十四條ノ規定ニ依ル保證
ヲ」ニ改ム
第七百五十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ執行ニ付テハ假差押ノ命令ヲ發
シタル裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所ト
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ開始シタル强制執行ニ付テ
ハ仍從前ノ例ニ依ル
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正
法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年一月二十九日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
外務大臣廣田弘毅
司法大臣鹽野季彥
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正
法律案
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中左ノ通
改正ス
第一條ノ二ニ左ノ一項ヲ加フ
條約又ハ之ニ準スヘキモノニ前項ノ規定
ト異ル規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員久山知之君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=3
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004・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今議題トナリ
マシタ民法中改正法律案外二件ノ法律案ノ
提出ノ理由ヲ一括シテ御說明申上ゲマス、
是等ノ法律案ハ何レモ第七十議會ニ於テ御
贊成ヲ得マシタ司法法規整備、卽チ現行法
規中ノ不備ヲ箇別的ニ補充シ、實際ニ適セ
ザルモノヲ部分的ニ改正スル事業ノ一部ヲ
爲スモノデアリマス、先ヅ民法中改正法律
案デアリマスルガ、其ノ改正ノ要點ハ三ツ
ゴザイマス、其ノ一ハ民法法人ニ關スル登
記期間ヲ延長シタ點、其ノ二ハ所在不明ノ相
手方ニ對シテ爲サルベキ意思表示ノ方法ヲ
新ニ設ケタ點、其ノ三ハ所謂短期消滅時效
ノ定メアル權利ノ中、判決、裁判上ノ和解
等ニ依ッテ確定致シマシタモノニ付テ、確定
後ノ消滅時效ノ期間ヲ十年ト云フコトニ改
メタ點デアリマス、次ニ民事訴訟法中改正
法律案デアリマスルガ、改正ノ第一點ハ裁
判所ノ職權ヲ以テ公示送達ヲ爲シ得ベキ場
合ヲ認メタコトデ、第二點ハ取下ノ手續ヲ
簡便ニシタコトデアリマス、改正ノ第三點
ト致シマシテハ、第三者ニ賃貸サレテ居ル
下動產ノ競賣ニ付賃料ノ前拂、敷金ノ差入
ノ有無ヲ取調べ且之ヲ公告スベキ事項ノ中
ニ加ヘ、第四點ト致シマシテ下動產競買ノ
申出ヲ爲サントスル者ニハ、必ズ競買代金
ノ一部ニ相當スル保證ヲ立テサセルコトニ
致シマシタ、改正ノ第五點ハ不動產假差押ニ
付管轄執行裁判所ヲ規定シ、解釋上ノ疑義
ヲ一掃致シタノデアリマス、次ニ外國裁判
所ノ囑託ニ因ル共助法中改正法律案デアリ
マスルガ、現行法ニ於キマシテハ外國ノ裁
判所ヨリ司法事務ノ共助ヲ求メラレマシタ
場合ニ、我ガ國ノ裁判所ガ之ニ應ジマスル
三、其ノ國ガ囑託シク事項ノ施行ノ爲ニ
要スル費用ノ辨償ヲ保證シタル場合デアル
コトヲ條件トスルノデアリマスルガ、其ノ
後現行ノ條約中ニハ、囑託ヲ受ケタ國ニ於
テ自ラ費用ヲ負擔シテ受託事項ヲ施行スル
ヤウニ定メタモノガ出來テ參リマシタノ
デ、此ノ法律ヲ改正スル必要ヲ認メタノデ
アリマス、以上ノ理由ヲ以チマシテ是等ノ
三ツノ法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス
ルガ、此ノ中共助ニ關スル法律案ハ、第七
十議會ニ提出致シタモノト同一デアリマシ
テ、前囘ハ衆議院ノ解散ノ爲ニ審議未了ト
ナックモノデゴザイマス、何卒十分御審議ノ
上御協賛アラムコトヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=4
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005・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御質疑
モナケレバ、三案ヲ日滿司法事務共助法案
ノ特別委員ニ併託致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=5
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006・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第五、
特許法中改正法律案、日程第六、商標法中
改正法律案、日程第七、不正競爭防止法中
改正法律案、日程第八、辨理士法中改正法
律案、政府提出第一讀會ノ續、委員長報〓、
是等ノ四案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御
異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=6
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007・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス、委員長西〓侯爵
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ倣
フ〕
特許法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年一月三十一日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
商標法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年一月三十一日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
不正競爭防止法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年一月三十一日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
辨理士法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年一月三十一日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=7
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008・西郷從徳
○侯爵西郷從德君 特許法中改正法律案、
商標法中改正法律案、不正競爭防止法中改
正法律案、辨理士法中改正法律案、右四案
ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シ
マス、特別委員會ハ二十八日竝ニ三十一日
ニ開會ヲ致シマシタ、本法律案ハ旣ニ前議
會ニ本院ニ於テソレ〓〓可決ト相成リマシ
タ案デゴザイマシテ、其ノ中三案ハ「ロンド
ン」條約改正ニ基ク改正案デアリ、辨理士法
中改正案モ亦時勢ニ適セル案デ、委員會デ
ハ全會一致原案通リ可決致シマシタ、
而シテ特許ニ關スル限リ近年進步甚ダシキ
モノガアリ、出願ノ件數モ多ク、益ハ繁
ヲ加フベキモノデゴザイマスルガ、審査期
日ノ延長ヲ防グコトニ注意セラレタシト云
フ委員側ノ希望ガアリ、當局モ亦此ノ點ニ
ハ十分御注意下サルトノ御意見デアリマシ
タコトヲ特ニ御報〓致シマス、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=8
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009・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ、四案ノ採決ヲ致シマス、四案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=9
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010・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=10
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011・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=11
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012・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=12
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013・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=13
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014・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=14
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015・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 四案ノ二讀
會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、四案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=15
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016・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=17
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018・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=18
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019・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=19
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020・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=20
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021・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 四案ノ第三
讀會ヲ開キマス、四案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=21
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022・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=22
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023・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第一、
國務大臣ノ演說ニ關スル件、田中館愛橘君
〔田中館愛橘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=23
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024・田中館愛橘
○田中館愛橘君 昨日、昨年ノ內閣ヨリ訓
令ニナリマシタ「ローマ」字綴リ方統一ニ付
テ質疑ヲ致シマシタ、此ノ訓令ハ是迄ト違
ヒマシテ内閣總理大臣ヨリ御示シニナッタノ
デアリマスカラ、此ノ訓令ノ大體ノ御趣旨
ニ付テ伺ヒタウゴザイマスカラ、總理大臣
ノ御見エニナル機會ヲ待ッテ、更ニ總理大臣
ニ簡單ニ伺ヒタウゴザイマス、昨日質疑ヲ
致シマシタ際ニ、或ハ私ノ言葉ノ足ラヌ爲
ニ少シク要領ヲ得ナイ所ガアッタカト思ヒ
マス、文部大臣ノ御答ハ經費其ノ他ノ都合
モアル、併シナガラ政府ニ於テハ此ノ訓令
ノ國民全般ニ行ハレルヤウニ努力ヲ爲サル
ト云フコトヲ伺ヒマシテ、誠ニ其ノ通リ努
力ヲ下サルコトヲ希望致シマス、此ノ訓令
ガ出マシテカラ早速ニ影響ヲ見マシテ、實
ハ省令ヲ殊更ニセズトモ、民間ヨリ進ンデ
之ヲ用ヒル者ガ續々ト現レマシテ、書册ノ
表題、新聞雜誌ノ表題等ヲ書キ改メタモ
ノガ少カラスノデアリマス、外國ニ日本
ヲ紹介致シテ居リマス「ヘラルド·オブ·アジア」
ト云フ雜誌ガアリマスガ、是ナドモ自分ノ住
所ノ番地、町名等悉ク新式ニ改メマシタ、尙
又內閣諸公ノ御名前ヲモ新式ニシテ出テ
居リマス、サウ言フ譯デアリマシテ、自然
是ガ國民大多數ノ意嚮ニ適ッタモノデアリ
マス故ニ、必ズ此ノ訓令ノ御趣旨ニ從ッテ
國民一般モ之ヲ用ヒルコトニナラウトハ
思ヒマス、サリナガラ多クノ中ニハ之ヲ用
ヒルコトヲ妨ゲヨウ、成ルベク舊式ノ「ヘボ
ン」式、或ハソレヲ少シク修正シタモノヲ用
ヒルガ宜イトシマシテ、殊更ニ統一ヲ妨害
シヨウト試ミル者モナイデハアリマセヌ、デ
斯樣ナ妨害ニ對シマシテハ宜シク御說諭ヲ
加ヘルトカ、或ハ注意ヲ與ヘルトカ、殊ニ
學校〓員等ニ左樣ノ者ノアリマス際ニハ、
政府ニ於テ之ヲ訓戒スル、或ハ場合ニ依ッ
テ警告ヲスルト云フヤウナコトニ御願シタ
イト思ヒマス、次ニ是ハ「ローマ」字調査會ニ
於テモ當局ヨリ言明ガアッタコトデアリマ
スガ、〓科書ノ檢定ハ旣ニアルモノハ急ニ
改メル譯ニ行カヌ、併シ是カラ新シク檢定
ヲ受ケルモノハ新式ニ依ッテノミ檢定ヲス
ル、新式ニ反對シタモノハ檢定ヲ與ヘナイ
ト云フコトデアリマスガ、是ハ其ノ通リダ
ラウト思ヒマスガ、念ノ爲メ尙伺ッテ置キ
タウ存ジマス、第三ノ度量衡ノ原理或ハ歷
史等ヲ一般國民ニ知ラシムルコトガ必要デ
ナイカト云フコトニ對シマツテハ、之ヲ小學校
ニ於テ〓ヘルコトハ學科ノ關係上困難ガア
ル、能ク考ヘテ見ル······ト云フ御答ヲ拜聽
シマシタ、私ノ伺ッタノハ、總テ小學〓育
ト云フ譯デハナカッタノデアリマシテ、小
學〓員、詰リ師範〓育、或ハ中學程度ノ者、
之ニ只今ノ此ノ工業〓育ニ意ヲ用ヒルト云
フ際ニ於テハ、工業ノ基礎トナル所ノ學術
〓究等、之ヲ實際ノ工業ニ應用致シマスル
爲ニハ、度量衡ハ其ノ基礎トナルモノデア
リマスルカラ、其ノ原理ノ〓要ヲ〓へルヤ
ウニ〓科書ニ織込ンデ戴キタイ、斯ウ云フ
伺ヒデアリマシタ、唯度量衡ハ大切ダト
云フノミナラズ、舊來ノ大體ノ來歷、舊來
ノ度量衡デハ間ニ合ハヌ、現代ノ學術〓究
ニハ其ノ系統ノアルモノノ必要ヲ感ジテ今
日ノ度量衡ガ出來テ居ルト云フコトヲ極ク
簡單ニ示スコトガ必要デアラウト思ヒマシ
テ、サウ云フコトヲ小學ヨリ少シク進ンダ
所ニデモ織込ンデ戴クコトヲ希望致シマス、
文部大臣ハ是ダケデ御忙シイ所ヲ再ビ伺ヒ
マシテ相濟ミマセヌ、ソレカラ外務關係ニ
於キマシテ、外務省ノ海外ノ大使館、領事
館等ニ御逹シニナッタコトヲ伺ヒマシテ、
誠ニサウアルベキコトト感ジマシタ、併
シ外國ニ日本語ノ弘マルコトハ日々ニ進ミ
マス、殊ニ文化事業ニ於キマシテ、文化振
興會ナルモノハ外務省ノ御指圖ヲ受ケルコ
トト思ヒマシテ、謂ハバ外務省ノ延長シタ
一部分トモ見ルコトガ出來ルノデアリマス、
而シテ外國ニ於テ日本使臣、公使、是等ニ總
テ新式ガ使ハレテアルニモ拘ラズ、新ラシ
ク文化振興會ヨリ出版致シマスモノニ舊式
ニ從ッテ出版致シマシテハ、政府ガ統一ヲ期
スル、實行ヲ期スルト云フ訓令ニ依ッテ出
來タ所ノ書方ニ、反對シタ書方ヲ用ヒルコ
トハ、外國人ニ迷ヒヲ來シハセヌカ、延イ
テハ政府ノ威信ニ障ハル所ハナイカト心配
致シマス、是ハ然ルベク其ノ邊ノ所ヲ御示
シニナリマシテ、此ノ統一シタル所ノ綴方
ヲ用ヒルコトヲ希望致シマス、是ハ外務當
局ニ伺ヒマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=24
-
025・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 田中館博士
ノ御質問ニ御答ヘ致シマス、第一ノ點ハ內
閣訓令ニ依リマス「ローマ」字ノ式ヲ一般ニ
使用サセルコトニ付キマシテ、若シ妨ゲル
者ガアレバ之ニ對シテハ相當ノ手段ヲ講ジ
テハドウカト云フ御尋デゴザイマシタ、政
府ニ於キマシテモ內閣ノ訓令ノ式ヲ一般ニ
使用セラレルヤウニ、有ラユル機會ニ勸メ
テ居リマスコトハ勿論デゴザイマス、今日
ノ所强ヒテ之ヲ妨ゲルト云フヤウナ、大キ
ナ意味ノ問題ハナイト考ヘテ居リマス、併
シナガラ若シ幾ラカ之ニ異存ガアリマスヤ
ウナ者ガアリマスレバ、十分話合ッテ之ヲ
成ルベク弘メテ行キタイト考ヘテ居リ
やく、又〓育上ニ付キマシテハ適切ナ
ル指導ヲ以テ內閣ノ訓令ニ基キマス「ローマ」
字ガ、〓育上ニ於テモ十分使用サレ
ルヤウニ努メタイト考ヘテ居リマス
次第デアリマス、ソレカラ第二ノ點ハ〓科
書ノ檢定ハ新式ニ依ルコトト思フガドウデ
アルカト云フコトニ伺ヒマシタガ、ソレハ
其ノ通リニ取運ブコトニ致シテ居リマス、
ソレカラ第三ノ點ハ度量衡ノ重要性ニ鑑ミ
マシテ、「メートル」法ノ度量衡ノ所謂原理
ヲ學校ニ於テ〓ヘテハドウカト云フコトデ
ゴザイマスガ、此ノ點ハ小學校ノ意味ニ於キ
マシテ昨日ハ御答辯申上ゲマシタガ、更ニ
上級ノ〓科書ニ於テ或程度ノコトヲ〓授致
シマスコトハ、御趣旨ハ誠ニ結構ト存ジテ
居リマス、十分考慮致シタイト存ジテ居リ
マス
〔政府委員松本忠雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=25
-
026・松本忠雄
○政府委員(松本忠雄君) 文化事業振興會
ナドノ外務省トノ關係ノアリマスル團體ガ、
同ジヤウナ行方ヲスル方ガ望マシイコトデ
アリマスルコトハ申ス迄モナイコトデゴザ
イマシテ、外務省トシテハ、サウ行クコト
ノ出來マスルヤウニ努力致ス積リデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=26
-
027・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 田中館君ニ
伺ヒマスガ、總理大臣ニ對スル御質疑ハ未
ダ御殘リデゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=27
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028・田中館愛橘
○田中館愛橘君 是ハオ出デノ節ニ伺ヒタ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=28
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029・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) ソレデハ次
ノ機會ニ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=29
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030・田中館愛橘
○田中館愛橘君 結構デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=30
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031・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 平沼亮三君
〔平沼亮三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=31
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032・平沼亮三
○平沼亮三君 近來國民ノ體位ノ問題ニ付
キマシテ、漸ク世間ノ注意ヲ惹クヤウニナリ
マシテ、政府ニ於カレマシテモ、此ノ點ニ
重キヲ置カレテ、今度新シク一省ヲ設ケテ
戴キマシタコトハ、非常ニ御同慶ニ堪ヘナ
イ所デゴザイマス、併シナガラ先達テノ總理
大臣ノ御演說中ニモ、一言モ此ノ新シク出
來マシタ厚生省ノコトニ付キマシテノ御話
ガゴザイマセヌ、又其ノ後議員各位カラノ
御質問ニ依リマシテ、厚生大臣ノ御答辯ハ
ゴザイマシタケレドモ、其ノ多クハ虛弱者
トカ、或ハ病人ナドノ療養トカ、或ハ〓究
ニ對シマスル、詰リ消極的ノ問題ガ多ウゴ
ザイマシテ、積極的ニ其ノ病人ヲ作ラナイ、
虛弱者ヲ起サナイト云フヤウナ、所謂體育
ノ方面ニ付キマシテ何等御抱負ガゴザイ
マセヌノデ、少クモサウシタ方面ニ對シマ
スル厚生大臣ノ御抱負ノ一端ヲ御伺ヒ致シ
タイト思ヒマスルノハ、是ハ私バカリデハゴ
ザイマセヌデ、多クノ國民、殊ニ靑年層ノ者
共ノ非常ニ期待シテ居ル所ト存ズルノデア
リマス、目下支那膺懲ノ皇軍ハ、忠勇義烈ナ
ル將兵ノ奮闘ニ依リマシテ、到ル處連戰連
捷ハ致シテ居リマスガ、其ノ兵力ニ於キマ
シテモ、常ニ我々ノ數倍、又ハ數十倍ヲ超
シテ居リマスシ、又軍器ノ點ニ於キマシテ
モ、或ハ彼等ノ方ガ優ッテ居ルノデハナイカ
ト云フヤウナコトヲ考へテ居リマス、ソレ
ニモ拘ラズ常ニ彼等ヲ擊滅シテ居リマスト
申シマスルノハ、上陛下ノ御稜威ノ然ラシ
ムルコトハ勿論デゴザイマスルケレドモ、
全ク我ガ將兵ノ陛下ノ御爲ニ戰フ、又皇國
ノ爲ニ鬭フト云フ非常ニ尊イ精神、ソレニ
反シマシテ、全ク傭ハレテ戰フト云ブヤウ
十、支那ノ兵隊ト非常ニ其處ニ精神上ノ相
違ガ、此ノ大捷ヲ見テ居ルノダト思フノデ
アリマス、兵隊ノ個々ノ體格ヲ或ハ比較シ
マシタナラバ殘念ナガラ彼ニ一日ノ長ガ
アルノデハナイカトサヘ我々ハ悲觀シテ居
ル者デアリマス、我ガ將兵ガ何時モ敵彈ニ
殪レマス最後ノ叫ビハ、必ズ陛下ノ萬歲ヲ
唱ヘ奉ルノデアリマシテ、此ノ萬歲ヲ唱ヘ
マスルコトガ、我ガ兵隊ノ所謂强キ現レト
思ヒマスルケレドモ、先達テ陸軍大臣カラ
ノ御演說モアリマシタ通リ、是カラハ我々
ハ長期ノ戰ヒヲ覺悟セネバナリマセヌシ、
又ソレバカリデハアリマセヌ、或ハ滿洲ニ
或ハ支那ニ向ッテ多數ノ移民ヲ送ラナケレ
バナラヌト思ヒマス、サウ云フ場合ニ只今
持ッテ居リマスアノ尊キ所ノ兵隊ノ精神ハ
勿論必要デハアリマスルケレドモ、ソレ以
上ニ是カラノ持久戰ニ備へ、是カラノ慣レ
ヌ所ノ風土ト〓フ上ニ於キマシテモ、精神
以上ニ體力ノ健全ヲ我々ハ非常ニ必要ト
スルノデハナイカト思フノデアリマス、
只今我々ハ此ノ軍備ノ爲ニ有ラユルモノ
ヲ犧牲ニ致シマシテ、一意之ニ全力ヲ擧
ゲナケレバナラヌコトハ當然デアリマス
ルケレドモ、澤山ノ兵器ヲ造リ、澤山ノ
軍器ヲ造ルト同ジヤウニ、國民ノ、殊
靑年ノ體育ヲ完全ニ致シマスルコトガ、
軈テハ此ノ軍備上非常ニ密接ナ關係ガア
リマスル上ニ、非常ナ緊急事デハナイカ
ト思ヒマシテ、軍備ニ使ヒマスル其ノ費
用ノ何分カデモ此ノ方面ニ、大ニ盡シテ
戴キタイト云フノガ、我々ノ非常ナル希望
デアルノデアリマス、其ノ一二ノ例ヲ申上
ゲマシテ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマスノ
ハ、少シク手前味噌ノ感ガアルノデゴザイ
マスガ、從來社團法人ノ大日本體育協會ト
云フヤウナモノガアリマシテ、是ハ我ガ國
ニ於キマスル綜合團體ト致シマシテ唯一ノ
最大最古ノモノデアルノデアリマス、是ハ
專ラ國際的ノ競技ニ意ヲ注イデ居リマシ
テ、或ハ國際的ノ選手ヲ養成スルトカ、或
ハ靑年體位ノ向上ヲ圖ルトカ云フヤウナコ
トニ盡シテ居ルノデアリマスルガ、是トテ
モ單ニ國際ノ競技デモアリマスル場合ノミ
ニソレ〓〓御補助ヲ願ヒ、或ハ一般カラノ
御寄附ヲ願ッテ、サウシテ仕事ヲヤッテ居リ
マスルダケデ、平生ハ何等ノ御補助モ戴ケ
マセヌデ、辛クモ加盟團體ノ加盟金ニ依ッテ
ヤッテ居ルノデアリマス、將來ハ勿論斯ウシ
タヤウナ仕事ヲ厚生省ニ於テ爲サッテ下サ
ルコトトハ存ジマスルケレドモ、私ハ却テ
今迄出來テ居リマスル團體ヲ御利用下サイ
マシテ、物質上ノ援助ヲ與ヘ、精神上ノ鞭
撻ヲ與ヘマシテ、サウシテサウ云フ團體ト
御提携下サイマシテ、サウシテ益〓此ノ方
面ニ御努力下サルヤウナ御心持ガオアリデ
アリマスルカ、是モ御伺ヒ致シタイト思フ
一ツデアリマス、又只今申上ゲマシタノハ
國際的ノ例デゴザイマスガ、國內的ノサウ
シタ團體ノ例ト致シマシテ、是ハ私ハ前議
會ニ於テモ御尋ネ致シマシタノデゴザイマ
スガ、大臣モ御迭リニナリマシタシ、所管
モ今度變リマシタノデ、稍、重複ノ嫌ガア
ルカモ知レマセヌガ御伺ヒ致シタイノハ、
明治神宮ノ體育大會ノコトデゴザイマス
ガ、是ハ隔年每ニ明治神宮ノアノ外苑ヲ中
心ト致シマシテ、明治大帝ノ御聖德ヲ景仰
シ奉ルノガ此ノ會ノ趣意デゴザイマシテ、
其ノ御神前ニ於テ、各種ノ競技ヲ臠ハスノ
デアリマシテ、是ハ單ニ體育バカリデハゴ
ザイマセヌデ、精神的ニモ非常ナ效果ガア
ルト信ジテ居ルノデアリマス、殊ニ昨年ハ
丁度此ノ大會ノ開催ノ年ニ當ッテ居リマシ
タノデ、昨年ノ十一月ノ明治節ヲトシマシ
テ此ノ大會ヲ開催致シタノデアリマス、昨
年ハ丁度約一萬人程ノ選手ガ日本ノ津々浦
浦カラ集リマシテ其ノ大會ヲ擧行シタノデ
アリマスガ、入場式ニ當リマシテ其ノ集合
ノ選手ノ内約五千五百人ガ明治神宮ノ御神
前ニ參拜致シマシテ、サウシテ在支那ノ兵
士ノ武運長久ノ御祈願ヲ致シタノデアリマ
ス、其ノ際ニ五千五百人ノ各選手ガアノ廣
廣ト致シマシタ御神前ニ額キマシタ時ニ、
又代表者ガ祈願文ヲ朗讀致シマシタ時ニ
ハ、殆ド莊嚴其ノモノデゴザイマシテ、一
人ノ咳スル者サヘナカッタノデアリマシテ、
近來國民精神總動員トカ、或ハ精神作興ト
云フヤウナコトガ非常ニ叫バレテ居リマス
ル際ニ、コンナ良イ國民精神總動員ノ運動
方法トシテハナイト云フコトヲ、私共ハ痛
感致シタノデゴザイマス、ソレカラ引續キ
マシテ明治神宮ノ外苑ニ一同ハ入場式ヲ擧
行致シマシテ、文部大臣竝内務大臣ノ御臨
場ヲ願ヒマシテ、兩大臣ヨリ御訓示ヲ頂戴
致シタノデアリマス、之ニ參加致シマスル
此ノ津々浦々カラ參リマス者ハ、アノ明治
神宮ノ大會ニ出マスコトダケヲモウ非常ナ
憧レトシテ居ルノデアリマス、是ハチヨット
餘事ニナルノデアリマスルガ、其ノ際ニ文
部大臣カラ、アトデ私ハ御伺ヒ致シタノデ
アリマスガ、御注意ガアリマシテ、大變ニ
立派ナ會デアルガ、アノ行進ガモウ少シ揃
ハヌカト云フ御尋ガ文部省ノ方ニアックサ
ウデアリマス、是ハ私ハ其ノ時ニ大臣カラ
サウ云フ風ナ御注意ガアリマシタト云フコ
トヲ聞キマシテ、非常ニ心嬉シク存ジマシ
ク、ト申シマスルノハ從來ナカ〓〓オ出デ
サヘ下サラナカッタ、オ出デ下サイマシテモ
行列ニ、行進ニ御注意下サルヤウナコトハ
全然ナカッタノデゴザイマス、是ハモット行
進ガ揃ハナイカト云フ御尋ハ、非常ニ無理
カラヌ御尋デアリマスガ、實ハ此ノ五千五
百人ノ選手ハ、有ラユル日本ノ臣民ナラバ
誰デモ參加出來マスル規定上、中ニハ十五
歲位ノ水泳ノ選手モ居リマスシ、中ニハ又
六十歲位ノ劍道ノ範士モ入ッテ居リマスル
シ、武道ノ人ハ羽織、袴デ參列致シマス、
又馬術ノ人ハ軍服デ參列致シマスルシ、或
ハ「ユニホーム」デ參列致シマスルシ、又女
子モ居ルト云フヤウナ譯デ、所謂老若男女
ガ參加シテ居ルノデアリマスルカラ、軍隊
デアルトカ學生ノ行進ヲ御覽ニナック眼カ
ラ見マスルト、如何ニモ亂雜カモ知レマセ
ヌガ、併シナガラ兎ニ角サウシタ者ガ五千
五百人揃ヒマシテ行進ヲシ、又參拜ヲスル
ト云フコトハ非常ニ私ハ意義ガアリマスル
コトデ、今後トモ大ニ是ハ奬勵シテ行カナ
ケレバナラヌコトト思フノデアリマス、唯
御尋シタイト思ヒマスノハ、是ハ從來ハ政
府カラ一萬圓ノ御補助ヲ願ヒマシテ、アト
ハ全部入場料ヲ以テ支辨シテ居ッタノデア
リマス、其ノ入場料ガ約五萬圓位ゴザイマ
シタ、處ガ宮殿下ヲ總裁ニ仰ギ奉ッテ居リ
マシテ、萬一入場料ナドノ不足デ此ノ經費
ニ何カ不足ヲ起シマシタ時ニハ相濟マヌ、
モウ一ツニハ斯ウシタ會ハ入場料ヲ取ラヌ
デヤルコトノ方ガ宜イノデハナイカト云フ
ヤウナ考カラ、政府ニ御補助ヲ增額シテ戴
キマシテ、サウシテ本年カラ、所謂昨年度
カラハ入場料ヲ全廢シタノデアリマス、處
ガ時局柄我々ノ御願ヒ致シマスダケノモノガ
出來マセヌデ、二萬圓程ノ補助ヲ今日
ハ戴キマシテ入場料ナシデヤッタノデア
リマスルケレドモ、從來七萬圓程掛ッテ
居ッタノデアリマスカラ、非常ニ節約致
シマシタガ、尙且相當ノ不足ヲ生ジタ
ノデアリマス、是ハ私ハ政府ニ於カレマシ
テモット斯ウシタ方面ニ御力ヲ御入レ下サル
ヤウナ御考ガナイカ、又此ノ大會ナンカハ、
是モ前ニ申上ゲマシタ筈デアリマスルガ、
昔ハ內務省ガ御主催ニナッテ、此ノ大會ヲ擧
行サレテ居ッタノデアリマス、處ガ文部省ト
所管ノ爭カラ問題ガ起リマシテ、遂ニ僅カ
ニ二囘ニ致シマシテ之ヲ民間ニ讓リマシテ、
サウシテ之ヲ所管スルノハ文部省ト云フコト
ニナッタノデアリマス、雨來ズット民間デヤッ
テ來タノデアリマスケレドモ、今度ノヤウ
ナ劃然タル所管省ノ厚生省ガ出來マシタ以
上ハ、或ハ本ニ戾リマシテ、斯ウシタ結構
ナ會ハ政府直營デ以テ、厚生省デオヤリニナ
ルコトモ一ツノ御考デナイカ、サウシタ御
考ガゴザイマスヤラ、是モ御尋シタイ一ツ
デアリマス、ソレカラ又モウ一ツ御尋シタ
イト思ヒマスルコトハ、先達テ私共「ドイ
ツニ參リマシテ向フノ現狀ヲ見マスルト
云フト、日本ト非常ニ此ノ運動ノ指導方法
ガ違ヒマスルト申シマスルノハ、日本デハ
全ク運動ナド致シマスル者ハ學生ニ限ラレ
テ居リマスケレドモ、「ドイツ」ガアノ歐洲
ノ大戰爭デ慘敗ヲ致シマシクニモ拘ラズ、
此ノ僅カノ間ニ非常ナ更生振リヲ示シタ申
シマスルノハ、全ク「ヒットラー」氏ガ全力
ヲ國民體位ノ向上ニ努メマシタ結果デゴザ
イマシテ、今ハ非常ナ立派ナ體軀ヲ現シ、
又立派ナ元氣ヲ見セテ居リマスルガ、是ハ
全ク非常ナル力ヲサウシタ方面ニ注イデ居
リマスル、其ノ一例ヲ申シマスルト云フト、
「ベルリン」ノ町ニ學生以外ノ所謂社會人ノ
爲ノ運動場ガ四百何十箇所モアリマシテ、
又政府デ以テ抱ヘテ居リマスル指導員ガ七
千名モアルサウデゴザイマス、是ハ日本デ
ハ全然サウシタ學生以外ニ對シマスル指導
方法ナドハナイノデアリマス、今度此ノ厚
生省ガ出來マシテ、サウシタ指導者ナドノ
養成、或ハ又學生以外ノ者ノ何カ此ノ體育
ノ養成ニ關シマスル設備ナドニ對シマシテ、
御考ガアルカナイカト云フヤウナコトモ御
伺シテ見タイノデアリマス、又一昨年ノ此
ノ大會ノ時ニ、「ドイツ」ガ「ベルリン」ニ於
キマシテ數千萬圓ヲ掛ケマシテ、僅カニ一
ツノ競技場ヲ造ッテ居ルノデアリマス、私共
ハ參ッテ見マシテ餘リノ雄大、餘リノ壯麗ニ
「オリンピック」ト致シマシテ是ハ少シク贅
澤過ギルモノデハナイカト云フヤウナ感ジ
ト、モウ一ツハ殊ニ戰敗國デアルニモ拘ラ
ズ、斯ウシタ立派ナモノヲ能クモ建テタモノダ
ト云フヤウナ感ジガシタノデアリマス、處
ガ「ヒットラー」ハ是ハ決シテ一「オリンピッ
ク」ノ爲ニ建ッタモノデハナイ、「オリンピック」
ハホンノ一時的ノモノデアルケレドモ、此
ノ殿堂ハ將來之ニ依ッテ「ドイツ」國民ノ體
位ノ向上ガ出來ルナラバ、「ドイツ」國民ノ
保健ノ上ニ利益ガアルナラバ、決シテ高イ
モノデハナイト云フヤウナコトヲ豪語シテ
居ックノデ、成程「ドイツ」ガ非常ナ勢ヲ以テ
復興シ、非常ナ勢ヲ以テ體位ノ更生ヲ圖ッ
テ居ルト云フコトモ言ヘナイデハナイカト
思ッタノデアリマス、ソレニ付キマシテ私ガ
尋シタイト思ヒマスノハ、前議會ニ於キマ
シテ二荒伯爵其ノ他ノ方ニ依リマシテ御提
唱ニナリマシテ、當議會ニ於キマシテ滿場
一致可決サレマシタ外苑ノ擴張工事デアリ
マス、丁度皇紀二千六百年ノ記念事業トシ
テ是非アレヲ擴張シ、中ニ立派ナ完全ナル
競技場ヲ造リ、又立派ナ庭園モ造ッテ、サウ
シテ國民ノ保健ノ上ニ、精神上ニ裨益スル
所ガアルカラト云フヤウナ建議ガアッタノ
デアリマスガ、是ガ滿場一致デ通過致シタ
儘ニナッテ居ルノデアリマスルガ、是モ此ノ
際私ハ非常ニ良イ事デ、先程モ申上ゲマス
ルヤウナ、國民精神總動員ノ運動ヲ起シテ
居リマスル今日、最モ相應シイコトダト思
ヒマスルノデ、是ハ所管ハ內務省デゴザイ
マスカラ、造ル造ラナイハ內務省ノ御意向
ダト存ズルノデアリマスケレドモ、矢張リ
厚生省ニ於カレマシテモ保健ノ方ニ非常ナ
ル關係ガアリマスルノデ、多分ノ御助力ヲ
得ナケレバ、內務省ト相俟ッテ其ノ事ノ實行
ハムヅカシイノデハナイカト思ヒマスルノ
デ、是モ兩省大臣ニ對シテ御尋ヲシタイト
思フノデアリマス、ソレカラ又以上ハ厚生
大臣ニ御尋シタイノデアリマスルガ、同ジ大
臣デイラッシヤイマスルガ、文部大臣ト致シマ
シテ御尋シタイト思ヒマスルコトハ、今度此ノ
一省ガ新シク出來マシテ、文部省ノ今迄ヤッテ
居リマシク體育ノ方ノ仕事ガ非常ニ閑散ニ
ナッタヤウニハ思ハレマスルケレドモ、學校
體育ナルモノハ全然文部省ニ殘ッタノデア
リマス、サウシテ今日本デハ私先程申上ゲ
マスル通リ、殆ド此ノ體育運動ハ學生ニ限
ラレテ居リマスル上ニ、僅カニ中小或ハ專門
學校位ガ體操ナドガ正科ニ揭ゲラレテ居リ
マスルダケデ、大學ニ參リマスルト云フト、
全ク自由ニナッテ居ルノデアリマシテ、或少
數ノ選手ハ非常ニ運動ヲスルガ、一般ノ者
ハ運動ヲシナイト云フヤウナコトデ以テ、
可ナリ其ノ邊ニ弊害ガアリマシテ、始終私
共オ小言ヲ承ッテ居リマスノデアリマスル
ガ、サウシタ意味カラ參リマシテモ、文部
省ノアノ體育課ナルモノガ、新シク一省サ
ヘ出來マシテ、全然サウ云フ方面ニオ働キ
下サルノデアリマスルカラ、少クモ體育課
ヲ體育局位ニ文部省ノ方デ御昇格ニナリマ
シテ、サウシテモット國民體育ト全ク離レル
コトノ出來ナイ、アノ學生ノ體育方面ニ御
盡シ下サルヤウナ御考ガ文部大臣ニアラッ
シイマセヌカト云フコトヲ御尋シタイノデ
アリマス、ソレカラ最後ニ、是ハ只今問題
ニナリマシタ、所謂マダ詳シイ名前モ存ジマ
セヌガ、入場稅トカ申シマシテ、一般ノ觀
覽者カラ取リマス入場料ト申シマスカ、ソ
レニ對シマスル稅金デゴザイマスガ、之ヲ
學生ノ所謂「アマチュア」ノ「スポーツ」ニモ
總テカケルト云フヤウナ議ガ上ッテ居ルヤ
ニ聞イテ居リマス、是ハ此ノ非常時デゴザ
イマスノデ、我々ハ決シテサウシタ稅金ヲ
免レタイトカ、拂ハナイトカ云フヤウナ意
思ハ毛頭ナイノデアリマス、寧ロ是ハ僅カ
デモ進ンデ御拂スルコトガ、所謂奉公ノ義
務ト存ジテ居ルノデアリマス、併シ先頃文
部省ニ於カレマシテ野球統制案ナドガ出來
マシテ、サウシテ成ルベク此ノ學生ガ各種
ノ競技ヲヤリマス上ニ、職業化シテハイケ
ナイ、ドウモサウ云フヤウナ傾向ガアルカ
ラト云ッテ、非常ニ深甚ノ御注意ヲ拂ハレマ
シテ、サウシタ方面ノ色々ノ規則ガ作ラレ
タノデアリマス、ソレニ今度若シモ一般ノ
興行物ト同ジヤウニ、學生ノ競技ニ對シマ
シテサウシタ稅金ガカケラレマシタナラ
バ、益〓職業ト、非常ニソコニ嚴格ナ境ヲ
付ケナケレバナラヌニモ拘ラズ、何ダカ職
業化サレルヤウナ氣ガ致シマシテ、是ハ所
謂角ヲ矯メテ牛ヲ殺ストデモ申シマスカ、折
角心配下サッタ文部省ノ御趣旨ニモ非常ニ
反スルノデハナイカト思ヒマス、學生ノ「ス
ポーツ」ニ稅金ヲカケルト申シマシテモ殆
ド野球位ノモノデ、其ノ他ノモノハサウ大
シタモノモアリマセヌガ、野球ノ如キハ相
當ノ收入ガアリマスノデ、是ハ稅金ガカケ
ラレマスル迄モナク、現ニ昨年ノ如キ二萬
八千八百八十七圓ヲ陸海軍ノ兩省ニ獻金ヲ
致シマシテ、入場料ノ內ヲ獻金致シテ居ル
ノデアリマスカラ、今度ト雖モ若シモ名目
サヘ立チマスナラバ、サウシタ御奉公ヲ致
シマスコトハ決シテ吝デハアリマセヌ、唯
同ジヤウニ「ダンサー」モ學生モ同シ稅金ヲ
拂ッテ興行化サセルト云フコトガ、非常ニ私
ハ危險デハナイカト思フノデアリマシテ、
此ノ點ハ寧ロ大藏大臣ニ御願スルヨリモ、
厚生省ト致シマシテ、或ハ文部省ト致シマシ
テ、敢然ト別ノ方法ニ依ッテヤッテ戴キタイ
ト思フノデアリマス、以上厚生大臣ノ御抱
負ノ一端ヲ御伺ヒ致シマスニ付キマシテ、
二三御參考ニ御伺ヒ致シマシタ次第デアリ
マス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=32
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033・木戸幸一
○國務大臣(侯爵太戸幸一君) 平沼サンノ
御質問ノ第一點ハ國民體位向上ニ對シテ、
厚生省モ設置セラレタニ付テハ、政府ハ如
何ナル所信、抱負ヲ持ッテ居ルカト云フ御尋
デゴザイマシタ、國民體力ノ向上ガ國運進
展ニ重大ナ關係ヲ有シマスコトハ、最近殊
ニ唱ヘラレル所デアリマシテ、之ガ厚生省
ヲ設置セラレマシタ理由ノ一ツデアル所ノ
國民體位ノ向上ノ問題ナノデアリマス、今
日長期抗戰ト云フ時代ニナリマシテ、殊
此ノ剛健ナル思想ヲ涵養シナケレバナラ
ヌ場合ニ當リマシテハ、結局健康ナ軀ヲ總
テノ人間ガ持ッテ居ラナケレバ、此ノ目的ヲ
達スルニ非常ニ困難デアルコトハ事實デアリ
マス、從ッテ厚生省ニ於キマシテハ從來ノ如
ク、單ニ消極的ナ衞生ト云フヤウナ方面ノ
コトニノミ考ヘマセヌデ、積極的ニ國民ノ體
力ヲ鍛へ體位ヲ向上サセルト云フコトニ付キ
マシテハ、特ニ力ヲ入レル考デアリマシテ、
體力ニ於テ國民體力ノ向上ニ關スル諸般ノ
事務ヲ統合致シマシタノモ、此ノ趣旨ニ外
ナラヌノデアリマス、從ヒマシテ政府ハ國民
體力ノ向上ヲ圖リマス方策トシマシテハ、
一面ニ於テハ衞生行政ノ徹底ヲ圖リ、且
衞生ニ關スル國民ノ自覺ヲ促シテ、體力ノ
向上ヲ實行セシメルト共ニ、體力向上ノ施
設ノ擴充、體育指導機關ノ充實、體育運動
ノ奬勵等ヲ行ヒマシテ、健康ノ保持增進ヲ
圖リタイト存ジテ居ル次第デゴザイマス、
而シテ是等ヲ實施致シマスルト呼應致シマ
シテ、國民體力ヲ適正ナル方法ニ依ッテ調ベ
マシテ、之ニ立脚シテ、更ニ體力向上ノ根
本的ノ方策ヲ立テルト云フコトガ又必要ニ
ナルノデアリマシテ、國民個々ニ對シテ適
切ナル指導監督ヲ致シマスルコトガ緊要デ
アリマスガ故ニ、此ノ度國民體力ノ管理制
度ノ準備調査ヲ行ハムトシテ居ル次第デア
リマス、是等ノ方策ヲ實施シマスルコトニ
依リマシテ、今後國民ノ體力ノ向上ヲ圖リ
得ルモノト存ジテ居ル次第デアリマス、ソ
レカラ第二ノ點ハ明治神宮體育大會ヲ國デ
主催スル意思ハアルカドウカ、若シ國デ主
催シナイナラバ、或ハ補助金ノ增額等ニ依
リマシテ、更ニ之ヲ充實シテ行フ考ハナイ
カト云フ御尋デアリマス、明治神宮體育大
會ガ我ガ國ノ體育ノ向上ニ付テ非常ナ貢獻
ノアルコトハ爭ハレナイコトデアリマシ
テ、政府ニ於キマシテモ此ノ體育大會ガ益〓發
展スルコトニ付テハ、非常ナ期待ヲ持ッテ居
ル譯デゴザイマス、唯之ヲ國デ主催スルヤ
否ヤニ付キマシテハ、マダ種々〓究ヲ要ス
ル點モゴザイマス、篤ト調査ノ上デ決定シ
タイト思フノデゴザイマス、次ニ補助金ニ
付キマシテハ主催ノ問題等モ關聯致シマス
ノデ、是モ併セテ十分考究致シタイト思ッテ
居リマス、ソレカラ次ニ「ドイツ」ニ於テハ社
會人ノ爲ノ所謂運動場ノ設置トカ、指導者
ノ養成等ニ付テ非常ナ力ヲ入レテ居ルガ、
我ガ國ニ於テハサウ云フ施設ガ殆ドナイ、
將來ハ是等ニ付テ如何ナル考ヲ持ッテ居ル
カト云フ御尋デゴザイマシタガ、厚生省ガ
出來マシテ、學校體育以外ノ體育ヲ直接管
掌致シマシテ指導致シマス上カラ言ヒマス
ト、將來ハ是等ノ點ニ付テハ最モ力ヲ入レ
ナケレバナラヌト考ヘテ居リマスノデ、只
今ハマダ厚生省設立直後デアリマシテ、十
分ノ案モゴザイマセヌガ、漸ヲ加フテ是等
ハ充實シテ行キタイト考ヘテ居リマス、ソ
レカラ明治神宮外苑ノ擴張ニ關シマスル點
ニ付キマシテハ、是ハ御趣旨ハ誠ニ私モ御
同感デゴザイマスガ、神苑ニ屬スルコトデ
モゴザイマスシ、所管大臣ト十分協議致シ
テ善處シタイト考ヘテ居リマス、其ノ次ハ
文部省ノ所管ト致シマシテ、體育行政ガ厚
生省ニ移リマスニ付キマシテ、文部省ニ於
ケル體育ガ如何ニモ貧弱ニナル、モウ少シ
之ヲ擴大强化スル意思ハナイカト云フ御尋
デゴザイマスガ、勿論是ハ常ニ考ヘテ居ル
所デゴザイマシテ、現在ノ體育ハ〓育ノ上
カラ申シマスト甚ダ位置ガ低イノデアリマ
シテ、德育智育ニ比ベマシテ體育ガ甚ダ閑
却サレテ居ルト云フ實情ハ、私等モ認メテ
居ルノデゴザイマス、從ヒマシテ學校體育
ト云フコトニ付キマシテ、文部省ガ今後ハ
專念致シマス次第デアリマスカラ、是等ニ
付テハ十分〓究ヲ致シマシテ、智育德力體
カ、三ツガ步調ヲ合セテ進メ得ルヤウニ努
力シタイト思ッテ居リマス、ソレカラ最後
ニ、今囘政府ガ提出スルヤウニ出テ居リマ
ス所ノ臨時增稅法案ノ中ニ、入場稅新設ニ
關シマシテ御尋デゴザイマシタガ、是ハ平
沼サンガ仰セノ通リ、今日非常ノ際ノ立法
デアリマシテ、運動競技ノ觀覽者等モ亦此
ノ負擔ヲ致シマスコトハ、是ハ協力御奉公
スベキ一ツノ手段デアッテ、差支ナイト存ジ
テ居リマス、唯問題ハ御說ノ通リ是ガ演劇
デアルトカ、興行物ト一〓ニ致シマスコト
ハ、運動競技ノ觀念カラ見マシテ、其ノ神
聖ト權威ヲ傷ツケル虞ハ十分アルノデアリ
マシテ、其ノ點ニ付テハ關係當局トモ話合
ヒマシテ、其ノ神聖ト權威ヲ傷ツケナイヤ
ウニ、適當ノ手段ヲ講ジマシテ、取計ラウ
コトニ略〓話ヲ付ケテ居ル次第デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=33
-
034・平沼亮三
○平沼亮三君 極メテ御深切ナ御答辯ヲ有
難ウゴザイマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=34
-
035・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三室戶子爵
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=35
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036・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 私ハ本議會ニ於キマ
シテハ、國務大臣ノ施政方針ニ對スル御演
說ニ付テ、殊更質問ヲ致ス考ハ持ッテ居リマ
セヌノデアリマシテ、恐ラク私ガ質問ヲ致サ
ムト考ヘテ居リマスル事項ハ、他ノ多クノ
先輩カラ適切ナル御質問ガアルデアラウト
斯樣ニ期待ヲ持ッテ居リマシタガ、不幸ニシ
テソレヲ耳ニ致スコトガ出來マセヌ爲ニ、今
朝漸ク通〓ヲ致シマシテ此處ニ壇ニ立ッタ譯
デゴザイマス、而シテ私ガ質問ヲ申上ゲタ
イ點ハ、數ト致シマシテハ相當ニアルノデ
ゴザイマスガ、成ルベク集約致シマシテ、
司法大臣、陸軍大臣、內務大臣、文部大臣、
更ニ場合ニ依リマシテハ總理ニモ申上ゲタ
イノデアリマスガ、國務多端ノ際デモアリ
マスルノデ、總理ヲ煩スコトハ出來得ル限
リ避ケタイト思フノデゴザイマス、從ヒマ
シテ私ガ今申上ゲマシタ各大臣ノ御答辯ハ、
再ビ總理ノ御說明ヲ煩スヤウナコトニ立至
ラザルヤウ御願ヲ豫メ申上ゲマス、今日ハ
陸軍大臣ハ御出席ニナリマセヌカラ先ヅ司
法大臣ニ御伺ヲ申上ゲルノデアリマス、現
內閣ノ其ノ以前ノ內閣ハ、申上ゲル迄モナ
ク皆樣御承知ノ通リ林內閣、林內閣ハ祭政
一致ヲ標榜サレマシテ、私共ハ其ノ主義ニ
大共鳴ヲ持ッテ居ックノデゴザイマス、然ル
ニ其ノ內閣ハ案外ニモ短命デゴザイマシタ、
殘念至極ニ思ッテ居リマス、其ノ內閣ニ現法
相ハ矢張リ司法大臣トシテ閣僚ノ一員デオ
アリニナッタノデアリマス、卽チ司法大臣ト
シテノ御職責ヲ御盡シナサル上ニ於テハ、
必ズ祭政一致ノ本義ヲ主體トシテ御臨ミニ
ナッテ居ルコトト私ハ信ジテ居ックノデアリ
マス、而シテ林內閣ガ今申上ゲタヤウナ結
果ニ相成リマシテ、近衞內閣ガ成立致シマ
シテ、或ハ以前ニモ增シタ結構ナ內閣デア
ラウト云フヤウナ聲モ承ッテ居ルノデアリ
マシテ、而シテ此ノ內閣ハ正義ヲ土臺トシ
テオイデニナルノデアリマス、申サバ精神
內閣、林內閣ニ付キマシテ私ハ祭政一致ヲ
標榜セラレタト云フコトヲ、非常ニ結構ナ
コトデアルト云フコトヲ申上ゲタト同ジ心
持ヲ以チマシテ、此ノ內閣ガ正義ヲ本義ト
シテ立タレタト云フコトハ、實ニ結構ナコ
トデアル、而モ現法相ハ先キノ祭政一致ノ
內閣ニ法相デアリ、又正義ヲ土臺トスル所
ノ内閣ニ司法大臣トシテオイデニナルノデ
アリマスカラ、誠ニ御質問ヲ申上ゲル上ニ
於テモ、私ハ賴リ多イ司法大臣デオアリニ
ナルト斯樣ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、
然ル所、先般來衆議院ニ於キマシテ彼ノヤ
カマシイ帝人事件ニ對スル質問ガゴザイマ
シテ、其ノ御答辯ノ要旨ヲ或ハ「ラヂオ」、或
ハ新聞等ニ依ッテ大體承知ヲ致シタノデア
リマスガ、其ノ報道ガ全然正確デアルトハ
申スコトガ出來マスマイガ、大體ニ於テ私
ハ間違ヒナイモノト考ヘテ居ルノデゴザイ
マス、昨日ノ豫算總會ニ於キマシテ、所謂
一問一答ト云フヤウナ形式デ一議員ト法相
トノ間ニ問答ガゴザイマシタ、拜見ヲ致シ
マシタ、處ガ質問ヲスル人ガ法律家デアル
爲デアルカ何カハ存ジマセヌガ、是ハ法廷
ニ於テ辯護士同士ガ互ニ爭ッテ居ルヤウナ
論調デアル、決シテ正義ヲ本義トシテ居ル
所ノ方ノ御答トハ私ハ承ルコトガ出來ナイノデ
アリマス、是ハ非常ニ私ハ意外ニ感ジテ居
ル、時間ガ少イノデアリマスカラ、其ノ當
時ノ問答ヲ一々申上ゲルコトハ、此ノ場合
避ケマスガ、ドウモ御答辯ノ御樣子ハ私ハ
度々繰返シマス所ノ正義ヲ土臺トシテノ御
答辯デナカッタコトヲ甚ダ遺憾トスル所デ
アリマス、先ヅ一例ヲ申上ゲマスト、新聞
ニ傳ヘラレル所ノモノハ自分ノ聲明デハナ
イノデアル、アレハ談話デアッタノデアル、
聲明ト談話ハ成程法律的ニ解釋スレバ、其
處ニ幾多ノ相違モゴザイマセウガ、聲明ト
談話ト違フノデアル、アレハ談話デアッタノ
デアル、是ハ責任囘避モ甚ダシイ御言葉ダ
ト思フ、正義ヲ土臺トシテ斯樣ナ御言葉ガ
アッタコトハ、私ハ司法大臣トシテ誠ニ惜シ
イコトデアルト思フ、併シ人ニハ過チモア
ルコトデアリマスカラ、其ノ點ヲヨリ明瞭
ニ御說明ヲ下サレバ私ハ滿足スルノデアリ
マート是ハ一ツノ例デアリマス、澤山例ヲ
擧ゲレバ限リハナイノデアリマスカラ、私
ハ稍〓横ニ走ッテ申譯アリマセヌガ、林內閣ノ
當時祭政一致ヲ極力主張ヲ爲サッタ、我々モ
非常ニ御贊成ヲ申上ゲタ、其ノ林內閣ハ突
如トシテ議會ノ最終日ニ解散ヲサレマシ
ク、其ノ解散ノ當否ハ私共ハ問題ニ致シテ
居リマセヌ、其ノ解散ノ結果來タモノハ總
選擧デアル、總選擧ハ四月ノ三十日、其ノ前
日迄ハ何百ト云フ候補者ハ自分ノ當選ヲ期
サムガ爲ニ大イニ爭ッタノデアリマス、二
十九日、其ノ前日デアル二十九日ハ所謂最
後ノ五分間デアリマスガ爲ニ、選擧違反モ
此ノ日ニ多ク起ルデアリマセウシ、又互ニ
反對黨、或ハ反對ノ候補者ニ對シテ色々非
難攻擊ヲ試ミルト云フコトモ人情トシテ此
ノ點ハ有リ得ルコトト思フ、併シ祭政一致
ヲ標榜シテ居ル林內閣ハ、四月二十九日ト
申セバ、畏レナガラ天皇陛下ノ御誕辰日デ
アル、國ヲ擧ゲテ皆陛下ノ萬歲ヲ祝シ申上
ゲ、我々ハ其ノ下ニ國民トシテノ榮譽ニ付
テ感謝ヲ申上ゲナケレバナラヌ、一日其ノ
心ニ滿タナケレバナラヌ、其ノ日ガ總選擧
ノ最後ノ日ニナルト云フコトモ考ヘズニ、
祭政一致內閣ガ左様ナコトヲヤッテ居ルノ
デアリマス、是ハ非常ニ大ナル缺點デゴザ
イマシタガ、斯ウ云フコトガアッタノデゴ
ザイマス、シテ見ルト正義內閣ノ下ニ於テ
モ亦矢張リ之ニ類スルヤウナ過ッタコトガ
アリヤシナイカト云フコトニ付テ私ハ非常
ニ心配ヲ申スノデアリマス、個々ノ問題ニ
付テ辯論的ニ、法律的ニ御答ヲ私ハ此ノ機
會ニハ願ハナイ、此ノ議席ニハ此ノ帝人事
件ニ關シテハ非常ニ御迷惑ヲ御蒙リニナッ
タ方モオ出デニナル、併シ是ハ白日靑天、斯
カル事實ナカッタモノデアルト云フ立派ナ
判決ヲ御受ケニナリマシテ、最近ハ高キ勳
章迄御佩用ニナルコトニナッタヤウナ譯デ
アリマス、一面ニ於テサウ云フ結構ナコト
ガゴザイマスガ、司法大臣ガ豫算總會其ノ
他或ハ新聞記者ニ御話ニナリマシタコトヲ
伺ヒマスト云フト、若シソレガ事實デアッタ
トシタナラバ、折角名譽アル勳章モ大キク
御佩用爲サルコトモ出來ナイコトニナル、
衆議院ニ於テノ御答辯ハソレデ宜シイト致
シマシテモ、此ノ貴族院ニ於テハ此ノ議員
ニ席ヲ列シテ居ラレル所ノ我等ノ先輩ガ、
帝人事件ニハ非常ナル名譽、精神的ニ、色
色ノ方面ニ於テ被害ヲ蒙ッタノデアリマ
ス、デアリマスルカラ私ノ質問ガナクトモ、
是等ノコトニ付テハ法相自身進マレテ世ニ
相當ノ疑惑ヲ流シテ居ルノデゴザイマスカ
ラ其ノ點ハ十分ニ御說明ニ相成ラナケレバ
ナラヌ御立場ニオイデニナルノデアリマス、
私ハ玆ニ帝國辯護士會ナルモノガゴザイマ
シテ、此ノ會ガ去ル二十日ニ決議ヲ致シテ
居リマス、本問題ニ付キマシテ私ハ此ノ
決議ノ全部ヲ是認致シテ居ル譯デハアリマ
セヌガ、帝國辯護士會ト云フモノノ存在、
其ノ權威等カラ考ヘマシテ、此ノ決議文ハ
左樣ニ簡單ニ取捨テベキモノデハナイト考
ヘマスルガ故ニ、一應此ノ決議ヲ此處デ讀
マシテ戴キマス、「決議、所謂帝人事件ノ檢
察及豫審ニ干與シ非違ノ行動アリタル司法
當局者及司法當局者タリシ者ハ速カニ其ノ
責ニ任スヘシ」斯ウ云フ決議ヲ致シテ居リマ
ス、理由モ長ク書カレテ居リマスルガ、是
モ一應ハ時間省略ノ爲ニ申上ゲマセス、
御答辯ノ如何ニ依リマシテハ此ノ理由ニ付
テ伺ハナケレバナラヌヤウナ事態ニナラウ
トモ思フノデアリマスガ、ドウカ左樣ナコ
トニ相成ラザルヤウ、所謂正義內閣ノ一員
デアッテ、而モ司法大臣トシテオイデニナル
鹽野閣下ノ、御誠意ヨリ出デタル所ノ御答
辯ヲ先ヅ願フ次第デゴザイマス、內相、文
相ニ付キマシテハ引續キ申上ゲルト宜シイ
ノデアリマスガ、事柄ガ餘リニモ緣故ノナ
イコトデゴザイマスカラ、此ノ場合ハ先ヅ
鹽野法相ニ對スル只今申シ上ゲタコトニ付
テノ御答辯ヲ願ヒマシテ、更ニ登壇ヲ許サ
レ、他ノ大臣ノ質問ヲ續ケタイト思ヒマス
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=36
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037・塩野季彦
○國務大臣(鹽野黍斉君) 三室戶子爵ノ御
質問ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマス、御說
ノ通リニ政治ノ基調ハ正義ニ置クベキコト
ハ勿論デゴザイマシテ、司法部ニ於キマシ
テハ殊ニ正義ヲ守ッテ、之ヲ顯現スルノガ其
ノ大ナル使命デゴザリマス、只今帝人事件
ニ付キマシテノ御話ガゴザイマシタガ、誠
ニ判決ニ示スガ如ク此ノ事件ハ、長期ニ亙ツ
テ審議ヲ致シマシタ結果、何レモ罪トナラ
ザルコトガ判明致シマシテ、是ガ確定致シ
タノデゴザリマス、其ノ間一般世人竝ニ關
係ノ方々ニ非常ニ御迷惑ノ掛ッタコトヲ遺
憾ニ存ズル次第デアリマス、尙ソレニ關聯
シテ新聞記事ノ點ニ付テ御一言ニナリマシ
タガ、聲明デアルカ、談話デアルカト云フ
事柄ハ、要スルニ新聞記事ノ文言其ノモノ
ガ聲明トシテ讀ミ上ゲマシタノデアルカ、
或ハ談話シタ所ガ記事トシテ綴ラレタノデ
アルカト云フ差異ニ過ギナイノデゴザイマ
シテ、私ガ衆議院ニ於テ答辯致シマシタル
所ハ、私ノ談話ガ記者ニ依ッテ綴ラレタル
モノデアル、而シテ自分ノ言葉ノ足リナカッ
タ節モアッタト見エテ、アノ記事ガ出來テ居
ルト云フコトヲ答辯致シタニ過ギナイノデ
ゴザリマス、帝國辯護士會ノ決議ニ付キマ
シテハ、其ノ要領ハ事件關係ノ者ノ責任間
題ヲ決議致シテ居ルノデゴザイマス、主ト
シテ此ノ事件ヲ提起致シマシタル檢察當
局ノ責任ヲ問フ決議デゴザイマス、檢
察當局ノ責任ハ申ス迄モナク起訴致シ
マスル當時ニ於ケル證據ノ關係カラ見マシ
テ、犯罪ノ嫌疑ガ十分アルト認メラレマシ
タル場合ニ相當ノ手續ヲ執ッテ起訴サレテ
居リマスレバ、檢事ガ與ヘラレタル職權ヲ
行使シタノデゴザリマシテ、決シテソレニ
付テ責任ヲ問フベキ筋合デハナイト考ヘテ
居リマス、尙斯カル事件ガ長年ニ亙リマシ
テ、當該關係者ヲ初メ世人ニ對シテ色々ノ
疑惑ヲ生ゼシメタル點ニ付キマシテハ、私
トシテモ甚ダ遺憾ニ存ジテ居ル次第デゴザ
イマス、將來ニ於キマシテハ十分司法事務
ノ運用ニ付キマシテ、過チナカラムコトヲ
期シテ居ル次第デゴザイマス
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=37
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038・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 私ハ御答辯ヲ願ヒマ
スル以前ニ、衆議院デ御答辯ニナッタヤウ
十、同ジヤウナ御答ヲ實ハ忌避致シタノデ
アリマス、ソレガ爲ニ正義感ニ基キタル御
答辯ヲ願ヒタイト申シマシタニ拘ラズ、漸
ク只今承ッタ程度ノ御答辯デゴザイマシタ、
一體昨今ハ官吏ノ責任ト云フモノガ重イ筈
デアル、官吏ノ責任、ソレヲ感ズルコトガ
極メテ冷淡デアリマス、殊ニ司法官ナドハ
最モ嚴正ナル所ニ司法官ノ尊サガアリ、天
皇ノ御名ニ依ッテ仕事ヲ申上ゲルト云フノ
デアリマスルカラ、只今ノ御答辯デハ檢事
ハ職權ニ依ッテヤッタノデ、別ニ差支ハナイ
ノデアルト云フヤウナ風ノ御答辯デアリマ
ス、私ハ成ルベク責任問題ニ觸レナイ積リ
デ唯決議ダケヲ讀ンデ、而モ理由ヲ省略ヲ
致シタノデス、司法大臣ノ方ヨリ此ノ決議
ニ書イテアルコトハ責任ヲ問フノデアル、
併シ其ノ責任ハ少クモ檢事ハ與ヘラレタル
職權ヲ行ッタノデアル、成程職權ノ一部ヲ
行ッタノデアリマセウガ、此處ニモ問題ニ
ナッタ、此ノ事件ニ付テ人權蹂躪ノ問題ガ
此ノ演壇上ヨリモ述ベラレタ筈デアリマス、
其ノ人權蹂躙ハ左樣ナコトハナカッタト云
フヤウナ風ノ矢張リ當時說明モアリマシタ
ガ、世ノ多クハ其ノ說明ニハ餘リ滿足ハ致
シテ居ラナカッタ筈デアリマス、ドウモ昨今
ハ責任ノ窮極スル所ハ、甚ダ遺憾デアッタ、
是ハ大乘的ニ考ヘタカラ斯ウデアル、遣憾
デアッタ、大乘的、此ノ二字デ責任ヲ解除ス
ルコトガ世ノ中ノ流行ニナッテ、歷代ノ內閣
モ此ノ範域ヲ脫シナイ傾ガアル、ソコデ此
ノ正義ヲ土臺トセラレテ居ル所ノ近衞內閣、
其ノ一閣僚ハ其ノ本義ニ基イテ、今少シ立
派ナ、誰モガ成程左樣デアッタカト云フヤ
ウナ御答辯ニ相成ラナケレバ、輔弼ノ大任
ヲ御持チニナッテ居ル御立場トシテ、私ハ大
イニ反省ヲ願ハナケレバナラヌト思フ、私ハ
場合ニ依リマスレバ已ムヲ得マセヌカラ、
近衞總理ノ御出席ヲ請ヒマシテ、今少シ具
體的ニ質問ヲ申上ゲタイト思フノデス、併
シ出來得ル限リ其ノ勞ヲ避ケタイト思ヒマ
スガ爲ニ、玆ニ事理ヲ盡シテ御答辯ヲ要求
致シタノデゴザイマス、昨日ノ衆議院ノ豫
算總會ニ於ケル所ノ御答辯中ニモ斯ウ云フ
コトガアリマス、「當時ノ檢事正ガ歎願書ヲ
當時ノ司法大臣迄出シタコトハ認メルガ、
當時ノ法相ガ更ニ之ヲ如何ニ取扱ッタカハ
自分ノ知ル所デハナイ、」是ナドモ甚ダ無責
任ナノデス、前ノ司法大臣ガドウ云フコト
ヲシタカト云フコトハ、直グニ御承知デナケ
レバナラヌ筈デアル、此ノ席ニ前ノ司法大
臣モオイデニナルノデス、御尋ニナレバ直
グニ分ルノデス、又砂田氏ノ質問ニ答ヘラ
レルノニ、質問ハ斯ウ云フ趣旨デアリマス、
「此ノ歎願書ガ土臺トナッテ內閣ガ倒壞シタ
コトハ、當時總理祕書官、今ノ入間野大藏
省銀行局長ガ證言シテ居ル、此ノ點ヲモット
明確ニ御調ベ願ヒタイ、官吏トシテ責任ヲ
負フベキニ非ズト斷定スルカ」、司法大臣ハ
「尙詳シイコトハ調査シタ上答ヘル」、モウ御
調査ガ出來テ居リマスレバ、ソレヲ一ツ伺
ヒタイノデアリマス
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=38
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039・塩野季彦
○國務大臣(鹽野垂彥君) 御答ヲ致シマス、
只今御尋ノ點ニ付キマシテハ能ク事情ガ分
ラナイノデアリマス、此ノ事柄ハ事件ノ判
斷トハ關係ノナイコトデゴザリマスシ、當
時ノ大臣ガ如何樣ニサレタノデアリマスル
カ、之ヲドウト調ベル必要モナイト考ヘテ
居ル次第デアリマス
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=39
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040・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今司法大臣ノ御答
辯ハ、何カ斯ウ穴ニデモ入ッテ言ッテ居ラルヽヤ
ウナ御答辯デ、少シモ私ノ伺ック要旨ニ觸
レナイノデス、是ハ是カラ今日續キマシテ
御尋ヲ致シテモ、御答モ完全ニ御出來ニナ
ラナイト思ヒマス、又承レバ御病後デモア
リマスカラ、其ノ點ニ敬意ヲ表シマシテ、
是デ打切ッテ置ク次第デゴザイマス、次ニ內
務大臣、文部大臣、御兩相ニ伺フノデアリ
マス、事柄ガ相關聯致シテ居リマスノデ、從ッ
テ申上ゲルコトモ或事柄ハ內相ニ御說明ヲ
願ヒ、或事柄ニ付テハ文相ノ御答辯ヲ煩ス
ト云フコトニ立至ラウト存ジマスノデ、前以
テ是ハ御斷リ申上ゲテ里且キマス、昨今ハ時
勢ノ良イ影響ヲ受ケマシテ、惡イ思想ガ段
段解消サレ、精神總動員下ニ於テ私共ガ微
力ナガラ豫テ主張致シテ居リマス所ノ國體
明徵ト云フヤウナコトニ付キマシテモ、段々
良イ方ニ向ッテ居ルコトハ確カデゴザイ
マスガ、併シソレハ良イ方ニ向ッテ居ルト
云フノミデ、未ダ以テ完全ニ、具體的ニ申
セバ、天皇機關說カラ流派致シテ居ル所ノ
惡イ何物カガ、マダ處々ニアルコトハ事實
デゴザイマス、併シ林內閣以來、祭政一致
ヲ標榜サレ、現內閣ハ精神指導ノ下ニ大イ
ニ御活躍ニナッテ居ルノデアリマシテ、神社
問題等ニ付キマシテモ、段々宜シイ方ニ
向ッテ居ルコトハ私モ十分認メテ居ルノデゴ
ザイマス、先頃是モ衆議院デアッタト思ヒマ
スガ、內務大臣ニ神社ノ關係ニ付テ御尋ヲ
シタ人ガゴザイマシタガ、御答モ適切ナ御
答デアッタト存ジテ居リマス、デアリマスカ
ラ是ヨリ御伺スルノハ、只今ノ帝人事件ニ
付テノ處理ニ付テノ宜シカラナカッタト云
フヤウナ意味ノ風ナ御尋トハ全然違フノデ
ゴザイマス、神社崇敬ト云フコトガ非常ニ
盛ニナッテ參ッテ居リマス、サウ云フ時ニ出
版物等ニ於テ、是ノ反對ノ現象ヲ持ッテ居
ルモノガ公刊サレテ居ルト云フヤウナコト
ガアリハシナイカ、斯ウ云フコトヲ內務大
臣ニ伺ヒタイノデアリマス、又其ノ一ツノ
例ト致シマシテ、帝國大學ノ法學部長ニ田
中耕太郞ト云フ國體精神ヲ辨ヘナイ〓授ガ
居ルノデアリマス、彼ガドウ云フコトヲ言ッ
テ居ルカト云フト、其ノ書物ハ「法ト宗〓
ト社會生活」ト云フ書物デアリマス、其ノ百
三十頁ニ「神社ヲ國民全體トシテ崇拜セシ
ムルハ不可ナリ」、帝國大學ノ〓授デス、法
學部長デアリマス、其ノ著書ノ百三十頁ニ
「神社ヲ國民全體トシテ崇拜セシムルハ不
可ナリ」、更ニ其ノ次ノ頁ニハ國家ガ神社ニ
他ノ宗〓ト異ッタ特典ヲ與フルハ不可ナリ」
ドウ云フ心持デ斯樣ナコトヲ書イテ居ルノ
デアリマスカ、案外斯樣ナ書物ハ賣レルノ
デアリマス、印稅ヲ取ラムガ爲ニ書イテ居
ルノデアルカ、或ハ又此處ニ書イテ居ル通
リノ信念ヲ持ッテ居ルノデアルカ、更ニ、百
四十五頁ニハ「最良ノ方策ハ要スルニ小學校
ニ於ケル團體的神社參拜ノ慣習ヲ廢スベ
シ、神社ヲ國〓ト定メ之ヲ强ヒルノハ國民
ヲ卑屈ニシ、國民ノ精神生活ノ健全ナル發
達ヲ阻害スル」云々、斯ウ云フコトヲ言ッテ
居ルノデアリマス、繰返シテ申上ゲマスガ、
是ハ官デ拵ヘテ居ル東京帝國大學ノ、法學
部長田中耕太郞ナル者ガ斯樣ナコトヲ書イ
テ居ルノデアリマス、或ハ彼ニ言ハセマス
レバ、先刻ノ司法大臣ト同ジヤウナ答辯ヲ
スルカモ知レマセヌ、アレハ話シタノダガ
誰カ印刷シタノダト、是デハ人ガ許シマセ
又、斯樣ナ書物ガ能ク賣レテ居ル、斯樣ナ
思想ヲ持ッテ居ル者ガ、今ハ田中耕太郞一人
ノ例ヲ申上ゲマシタガ、斯カル例ハ澤山ア
ルノデス、自由主義、何トカ主義ハ何トカ
ノ醞釀地デアル、帝國大學ハ生產地デアリマ
ス、此ノ內閣ニハ不思議ナコトニ强力ナル
閣員中、而モ內務大臣ト文部大臣ガ中途ニ
迭ラレタノデアリマス、而モ何レモ前ニ增
シテ私ハ力强イ御方ガ閣僚ニ御加ハリニ
ナッタト斯ウ考ヘテ居ル、今申上ゲタヤウ
ナ問題ニ付テハ能ク考慮ヲシテ置ク、善處
ヲスル、能ク取調ヲスルト云フヤウナ御答
辯デナク、積極的ニサウ云フ書物或ハソレ
ニ類似シタル他ノ書物ガ幾ラモアラウト思ヒ
マスガ、サウ云フ物ハ急速ニ相當ノ處分ヲ
願ヒタイ、況ヤ今申上ゲタヤウナ神社ニ關
スルコトヲバ本ニ著ハシテ、多クノ人ニ讀
マシテ得々タル輩ガ澤山居ルノデス、私立
大學ニモ無論居リマセウガ、或人ハ昨今ハ
帝大ノ方ニソレガ多イノデアル、斯樣ニ申
シテ居ルノデアリマス、私ハ捜査權モ何モ
持ッテ居リマセヌカラ、ドノ程度迄アルト云
フコトハ申上ゲル限リデハアリマセヌガ、
私共ハ左樣ナコトヲ非常ニ多ク耳ニ致シテ
居ルノデアリマスカラ、話半分ト承ッテモ斯
ウ云フ點ニ付テハ、力アル內閣、其ノ閣僚
中ニ於テモ後カラ閣僚ニ加ハラレタ內相ト
文相ハ、斯ウ云フ問題ニ付テ殊ニ精神總動
員下ノ今日ニ於キマシテ、此ノ力アル內相、
文相ハ先ヅ以テ帝國大學ニ對シテ大キナ鐵
拳ヲ御下シニナルダケノ御考ガアルカドウ
デアルカ、著書等ニ付キマシテハソレヲ完
全ニ取締ルダケノ御考ヲ御持チニナッテ居
ルカ、否御考デハナイ、實行力ヲ御持チニ
ナッテ居ルカ、實行ヲ爲サルノデアルカドウ
デアルカ、ソレト反對ニ左樣ナ事實ナシト
云フコトデアレバソレハ誠ニ結構デ、私ハ
此ノ壇上ヲ通ジテ全國民ニ今迄申シタコト
ヲ御詫スル外ナイノデアリマス、若シ私ノ
申シタコトガ事實ナリトスレバ之ニ對スル
處置方法如何、之ヲ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣末次信正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=40
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041・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 三室戶子爵ニ御
答へ致シマス、國體明徵、神社崇拜ニ付キマ
シテハ內務省トシマシテ深ク注意ヲ拂ッテ
居ルノデアリマス、神社崇拜ニ關シマシテ
田中博士ノ著書ニ甚ダ奇怪ナルコトガ書イ
テアルガ、如何ニスルカト云フ御問デゴザ
イマスカ、是ハ能ク事實ヲ調査致シマシテ、
事實ヲ確メタ上善處致シタイト思ヒマス、
第二ノ帝國大學ノ取締デアリマスガ、是モ
不都合ナ廉ガアレバ、其ノ取締ニ決シテ遠
慮ハ致シマセヌ
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=41
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042・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 簡單明瞭ニ、不都合
ナ廉ガアレバ決シテ遠慮ハシナイト斯ウ
云フ御答デアリマシタ、是レ以外ニハ御答
ハ無論ナイノデアリマスガ、此ノ御調ハ左
樣ニ長ク日ヲ要スルコトハナイト思ヒマス、
內務省ノ警保局方面ニ御使ヲオ出シニナレ
バ直グニ此ノ書物ハ出來ルノデアリマス、
今私ノ例示致シマシタ他ノ書物ニ付テハ篤
ト御調ヲ要スルト思ヒマスガ、今申上ゲタ
コトハ左樣ニ篤ト御考慮ヲ煩サナクトモ、
一時間程餘裕ガアレバ御調べ出來ルノデア
リマスカラ、御調ノ結果ヲ、今日ハ時刻モ
ゴザイマスマイカラ次ノ本會議ノ開會日ニ
御樣子ヲ承ルコトヲ得マシタナラバ滿足ヲ
致シマス、尙大學ニ對スル文相ノ御答辯モ
煩スノデアリマスガ、餘リ度々登リ降リ致
シマスルコトハドウカト存ジマスノデ、次
ノ質問ヲ致シマスカラ、ソレト同時ニ文部
大臣カラ御答辯ヲ煩シタイノデアリマス、
今囘申上ゲマスノハ極メテムツカシクナイ
問題デアルノデアリマス、ソレハ一口ニ申
上ゲマスト、我ガ國ハ歷史ノ古イダケニ到
ル處ニ尊イ史蹟ノ遺ッテ居ルモノガ數多イ
ト云フコトハ、私ガ申上ゲル迄モゴザイマ
セヌ、昨今ハ餘程邊陬ノ地ニ參リマシテモ、
或ハ大演習ノ當時御統監ニ御立チ遊サレタ
松ノ木デアルトカ云フモノ迄モ、聖蹟トシ
テ保存サレルヤウニナッテ居リマス、是ハ實
ニ良イコトト存ズルノデアリマスガ、先年
松田源治君ガ文部大臣當時ニ、私ガ質問ヲ
致シタコトガゴザイマス、ソレハ子供ニ〓
ヘル所謂國史、何レモ國定〓科書ハ、相當
ナ識者ガ寄リマシテ考ヘタ末出來タモノデ
ゴザイマスケレドモ、色々ノ事情ノ爲ニ完
備ヲ期スルコトモ出來ナイト云フコトハ巳
ムヲ得マセヌガ、日本ノ國史ノ極ク古イ所
デ崇神天皇ノ御事蹟ト云フモノニ付テハ、
小學生徒ニハ少シモ〓へル所ガナイ、御諡
ヲ拜シマシテモ、神ヲ崇フト云フヤウナ特
殊ナ御諡號デアラセラルヽ崇神天皇ノ御事
蹟ガ、子供ニ一向十分ニ〓へラレテ居ラヌ
コトヲ何トカシテ貰ヒタイ、又ソレニ關聯
致シマシテ、今日國民ガ大中心トシテ拜シ
テ居リマス所ノ伊勢ノ神宮、其ノ神宮ノ大
本トナッタ所ノ、崇神ノ朝ニ笠縫邑ト云フ
所ニ御祀リ遊バサレタ、其ノ笠縫邑ト云フ
モノヲバ立派ニ明カニシテ置カナイト、飛
ンデモナイ所ニ、電車ノ停留所ニ笠縫驛ト
云フモノガアッテ、非常ニ惑ヒヲ生ズルノ
ミナラズ、殊ニ二千六百年ト云フヤウナ
コトヲ前ニシテ居ル時ニ、早クソレヲ定
メナケレバナラナイ、林前ノ總理大臣
ガ、マダ總理大臣ヲ御拜命ニナル以前デ
アリマシタ、私共モ共ニ、善處ヲ致シマシ
テ、笠縫邑ハ大體此處デアル、早ク御決メ
ヲ願ヒタイト云フコトヲ當局ニ出シタノデ
ゴザイマスカラ、恐ラク文部省ニハオアリニ
ナル筈デアリマス、二千六百年ノ施設トシ
テハ博覽會アリ、「オリンピック」アリ、誠
ニ結構デアリマスガ、一面ニ於テ今申上ゲ
マシタヤウナ貴イ事蹟ノ廢レムトスル、埋
沒セムトスル、左樣ナモノニ對シテ大イニ
力ヲ御注ギ下サレテ、其ノ聖蹟ヲ玆ニ立派
ニ保存ヲ爲サルト云フコトハ、是亦精神動
員下ノ今日、正義內閣ノ今日、今申上ゲタ
色々ノ事由カラ致シマシテ、此ノ力アル內
闇而モ其ノ內閣ニ於テ更ニ補强的トモ見
得ラレル內相ト文相ハ、斯ウ云フ方面ニ一
ツ御力ヲ盡シテ戴キタイ、是ハ私ノ希望デ
アリマス、イヤソレハ餘計ナ希望デアルト
云フコトデアレバ、其ノコトヲ明カニシテ
戴イタラ宜シイ、動モスルト學者ハ、自分
ハ此ノ土地ガ何々デアル、他ノ學者ハ是デ
アルト、斯ウ批評致ストモウ其ノ氣ニナッテ
シマフ、互ニ讓ラナイノデス、ソレニ禍サ
レテ、此ノ聖蹟ハ決シテ學者ノ所有物デハ
ナイノデス、言葉ハ十分盡シテ居リマセヌ
ケレドモ、國民ノ所有物デス、日本帝國ノ
所有ナンデス、學者ノ玩弄物デハナイノデ
アリマス、兔角學者ハ之ヲ玩弄物視シテ居
ル嫌ガゴザイマスデ、斯ウ云フ點ニ付テモ
力アル內相、文相兩相ニ於カレマシテ、極
メテ適切ナル解決ヲ御付ケ下サルコトヲ私
ハ要望致スノミナラズ、此ノ兩相ノ御力ニ
依ッタナラバ、ドウヤラ私ハ出來得ルデアラ
ウト云フヤウナ風ニモ考ヘテ居ルノデゴザ
イマスカラ、斯ウ云フ點ニ付テ一ツ是コソ
多少ノ考慮ノ時間モ要シマセウガ、二千六
百年モモウ間近デゴザイマス、幾多ノ政務
ヲ前ニシテ斯カル閑日月的ノコトハ出來ナ
イト云フヤウナ御考デナク、斯樣ナコトカ
ラシテ國民精神ハソコニ緊張モ致スモノト
考ヘマスガ故ニ、特ニサウ云フ點ニ付テシッ
カリシタ御處置ヲ願ヒタイノデゴザイマス
ガ、之ニ對シマシテ內相、文相ノ御高見ヲ
承リ、善後ノ處置ニ付テノ御考ヲ御示シ下
サルコトガ出來マシタナラバ仕合セデゴザ
イマス
〔國務大臣末次信正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=42
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043・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 只今御述ニナリ
マシタ御趣意ハ御尤デアリマス、愼重ニ調
査考究致シマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=43
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044・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三室戶子爵
ノ御尋ノ第一點ハ、大學ノ〓授デアリ、法
學部長デアル田中博士ガ神社崇敬ニ關シ
マシテ出版物ニ甚ダ面白カラヌ言說ガアル
ト云フコトノ御尋デアリマシタガ、誠ニ御
述ニナリマシタ點ヲ承リマスト甚ダ面白ク
ナイ點ガアリマシタノデ、現內閣ニ於キマ
シテ國體明徵ニ努メテ居リマスルシ、國民
精神總動員ノ現下ニ於キマシテ、誠ニ面白
カラヌ言說ト存ジマスガ、是ハ十分調査致
シマシテ善處シタイト存ジマス、ソレカラ
次ニ聖蹟ノ保存ニ付キマシテハ、是亦文部
省ニ於キマシテモ銳意調査ニ當ッテ居リマ
ス、殊ニ二千六百年ニ當リマシテ崇神天
皇ノ御事蹟、又笠縫邑等ニ關シマシテハ、
出來ルナレバ調査ガ完了次第間ニ合セタイ
ト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、専門的ノ
調査デゴザイマスカラ、其ノ經過等ニ付テ
ハ、只今ハチヨット申上ゲ兼ネル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=44
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045・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 簡單デスカラ、此ノ
席カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=45
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046・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=46
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047・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今内務大臣、文部
大臣、御二方ヨリ至極簡單デハゴザイマシク
ガ、要領ヲ得タル御答辯ヲ得マシテ、私ハ
滿足ヲ致シマス、御答辯ニ滿足ヲ致スト同
時ニ、一ツ御願ヲ致シマスコトハ、御答辯
ニ何ッタコトノ實現ヲ、ヨリ早ク御實行ニ
ナラムコトヲ切望致シマシテ、私ノ質問ヲ
打切ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=47
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048・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本日ハ此ノ
程度ニ於テ延會致シタイト存ジマス、御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=48
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049・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナシ
ト認メマス、次會ノ議事日程ハ決定次第彙
報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ
散會致シマス
午後零時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X00819380201&spkNum=49
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