1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月七日(月曜日)午前十時十一分開議
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議事日程 第十九號
昭和十三年三月七日
午前十時開議
第一 昭和十三年度歳入歳出總豫算案竝昭和十三年度各特別會計歳入歳出豫算案 會議(委員長報告)
第二 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件 會議(委員長報告)
第三 重要鑛物増産法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 日本産金振興株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 漁業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 産業組合自治監査法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 有價證券引受業法案(政府提出) 第一讀會
第十一 支那文化工作施設に關する請願 會議
第十二 未成線鐵道南谷線及南勝線一部速成に關する請願 會議
第十三 鳥取縣天神川改修工事繰上施行の請願 會議
第十四 國立自然博物館設立の請願 會議
第十五 石川縣上熊野郵便局に集配事務開始の請願 會議
第十六 和歌山縣勝浦港内暗礁取除工事國庫補助の請願 會議
第十七 豫定線日田、守實間鐵道速成の請願 會議
第十八 中華民國及滿洲國に於ける澱粉輸入關税に關する請願 會議
第十九 學校看護婦令制定の請願 會議
第二十 小樽港鐵道省埋立地内に漁船揚場設置の請願 會議
第二十一 北海道山越郡長萬部村に函館區裁判所出張所設置の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
去ル三日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十三
囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通
牒ヲ受領セリ
厚生省所管事務政府委員
厚生書記官近藤壤太郞君
去ル四日委員會ニ於テ當選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
市街地建築物法中改正法律案特別委員會
委員長子爵曾我祐邦君
副委員長男爵加藤成之君
有價證劵業取締法案特別委員會
委員長子爵保科正昭君
副委員長仁井田益太郞君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和十三年度歲入歲出總豫算案、昭和十
三年度各特別會計歲入歲出豫算案、豫算
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要
スル件可決報〓書
請願委員會特別報告第五號
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
重要鑛物增產法案
日本產金振興株式會社法案
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十三囘帝
國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ
受領セリ
外務省所管事務政府委員
外務事務官山形〓君
一昨五日政府ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
有價證劵引受業法案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
不動產融資及損失補償法中改正法律案
產業組合中央金庫法中改正法律案
漁業法中改正法律案
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中改正法律案
產業組合自治監査法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、平生釟三郞君公務ニ付會期
中、請暇ノ申出ガゴザイマシタ、許可スル
コトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、昭和
十三年度歲入歲出總豫算案竝昭和十三年度
各特別會計歲入歲出豫算案、日程第二、豫算
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要ス
ル件、會議、委員長報〓、是等ノ二件ヲ一
括シテ議題トスルコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長林博太郞伯
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
一昭和十三年度歲入歳出總豫算案
一昭和十三年度各特別會計歲入歲出豫算
案
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十三年三月四日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=4
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005・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今議題ニ上程サレマ
シタ昭和十三年度歲入歲出總豫算案、昭和
十三年度各特別會計歲入歲出豫算案、豫算
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要ス
ル件、以上ニ付キマシテ、豫算委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報〓ヲ致シマス、昭和十三
年度總豫算額ハ御承知ノ通リ、二十八億六
千七百餘萬圓デアリマス、之ヲ前年度ノ豫
算額ト比ベテ見マスルト、此ノ前年度豫算
ノ中ニハ、臨時軍事費特別會計ノ設置ニ伴
ヒマシテ、之ニ移シテ整理セラルヽモノヲ
含ンデ居リマスノデ、之ヲ控除シタモノト
比較シマスルト、歲入デ四千餘萬圓ヲ減ジ
テ居リマス、歲出デ七千六百餘萬圓ヲ減ジ
テ居リマス、一歲入豫算ノ內譯、經常部
ニ於テ二十億二千三百餘萬圓、臨時部ニ於
テ一億五千餘萬圓、合計二十一億七千三百
餘萬圓ト相成ッテ居リマス、之ヲ前年度ノ
改算豫算額ト比較スレバ、經常部デ一億九
千五百餘萬圓ノ增加ニナリ、臨時部ニ於テ
八千二百餘萬圓ノ減少トナッテ居リマス、結
局差引キマシテ、一億千二百餘萬圓ノ增加
トナリマス、而シテ歲入經常部ノ增加ハ、
大體租稅收入增加一億七千二百餘萬圓ヲ算
シテ居リマシテ、其ノ外ニ印紙ノ收入、官
業〓官有財產收入增加ガ之ニ伴ッテ居リマ
ス、又臨時歲入ノ減少ハ、主トシテ特別會
計ヨリ一般財源受入ノ減少六千百餘萬圓ア
リマスノニ依ッタ次第デアリマス、二、歲出
豫算ノ內譯、經常部ニ於テ十六億四千餘萬
圓、臨時部ニ於テ十二億二千七百餘萬圓、
之ヲ前年度ノ改算豫算額ト比ベルト、經常
部ガ一億三千七百餘萬圓、臨時部ニ於テ二
億千四百餘萬圓減少シテ居リマス、前ノ經
常部ハ增ニナッテ居リマス、軍備ノ充實ニ
ハ、既定計畫、新規計畫ノ兩々相俟ッテ計
上シテアルト說明シテ居リマス、陸海兩省
ノ施設經費トシテ新規ニ軍事扶助費ノ增加、
軍事援護事業ノ充實ニ要スル經費等ガ五千
六百餘萬圓計上サレテ居リマス、又防空經
費液體燃料ノ經費、是等ガ緊要ナルモノ
デアリマシテ、計上サレテ居リマス、又地
方財政補給金ハ前年度ト同樣ニ一億圓計上
シテアリマス、此ノ外、事變ニ伴フ豫算超過、
豫算外支出ノ必要ニ應ズル等ノ爲ニ國庫豫
備金ヲ三千七百萬圓增シテ居リマス、結局既
定經費ニ付テ一億四千百餘萬圓節減繰延ヲ
行フコトニナッテ居ルト云フノデアリマス、次
ニ十三年度豫算ノ歲入ノ不足ハドウスルカ
ト云フ、是ハ公債財源ニ依ルノダ、總額六億
九千四百餘萬圓ニナッテ居リマス、之ニ朝鮮總
督府、帝國鐵道、通信事業ノ各特別會計デ發
行スル公債ガ一億六千六百餘萬圓デアリマス
ノデ、之ヲ加ヘマスト、計八億六千萬圓トナル
ノデアリマス、之ヲ前年度ノ改算豫算上ノ
公債發行豫定額ニ比べマスト、一億九百餘
萬圓ヲ減少シテ居ルト云フ政府ノ說明デア
リマス、以上ハ大體此ノ豫算ノ內容ニ付テ
說明ヲ申上ゲタノデアリマスガ、二月十四
日カラ豫算委員會總會ヲ開キマシテ質問ニ
入リマシタ、今其ノ大要ニ付テ申上ゲテ見
タイト思ヒマス、一、財政、七十億ノ公債
ノ消化方法ニ付テ政府ハ自信ガアルカ、短
期ガ宜イノカ、長期ガ宜イノカ、或ハ長短
併用スル積リデアルカ、利子ノ三億ハ增稅
デヤルカ、赤字公債、赤字公債デヤルカ、
是カラ齎ス所ノ物價昂騰ニ對スル政府ノ對
策ハドウデアルカト云フ質問デアリマス、
政府ハ惡影響ヲ出來ルダケ與ヘヌヤウニ注
意ヲスル、直接トシテハ日銀ノ引受、國債
「シンヂケート」團ノ利用、郵便局ノ賣出、
預金部資金ノ利用等ニ依ルノデアルガ、其
ノ惡影響ヲ防グ爲ニハ基礎工作ガ要ルノ
ダ、卽チ國際收支ノ均衡ト云フコトガ大切
デアル、次ニ物資需給ノ調節ガ必要デアル、
爲ニ內地ノ物資ノ生產、輸入ニ付キマシテ
適當ナル方法ヲ講ジタイ、又物資ノ消費節
約ヲ必要トスル、公債ハ原則トシテ長期公
債ニ依ルノダ、或ハ事變ノ情勢デハ若干短
期公債ヲ發行スルカモ知レナイ、公債ノ利
子ハ戰後經常財源デ支出スル必要アリト考
ヘル、今囘ノ事變ハ長ク掛ルノデアルカラ、
增稅ニ依ルトハ明カニ言ヒ兼ネルガ、應
增稅ノ必要ガ起ルカモ知レナイ、事變後成
ルベク早ク稅制整理ヲヤリタイト云フ考デ
アル、經費節減ハ十分ニ實行シテ居ル、赤
字財政ハ事變後尙持續スル必要ガアル、健
全財政ノミデハ如何カト思フ、デ總豫算二
十八億、軍事豫算四十八億、合セテ七十七
億位ニナルガ、ドウカ節約シ得ル機會ガア
レバ節約シテ貰ヒタイ、戰地第一戰ニ在ル
將兵ト同ジ氣分デ、大藏省當局モ覺悟シテ
戴キタイ、官民一致、消費節約ヲ爲サナケ
レバナラヌト思フガドウデアルカ、デ政府
モ固ヨリ戰地ノ第一線ノ將士ト同樣ノ氣分
デ今日處理シテ居ルノデアル、節約ハ物資
ノ種類デ程度ヲ異ニスルノデアルガ、軍需
品、輸出品、輸入品等ニ重點ヲ置イテ居ル
ノデアル、又收入ノ增加シタモノハ貯蓄ニ
廻シタイ、節約ト貯蓄トデ、十分ニ財政ヲ
賄ヒ得ルト云フ考デ是カラ進ンデ行クノデ
アル、其ノ外財政ノ問題ニ付キマシテハ、
產金ノコトモ質問應答ガアリマシタ、其ノ
外ノ質問應答ハ此ノ際省略ヲ致シマス、二、
外交、蔣介石政權ガ共產黨ト手ヲ握リマシ
テ、我ニ對抗シテ來タ時ニ、既ニ彼ヲ對手
トシナイノガ宜イノデハナイカ、然ルニ之
ヲ對手トシテ、事情ニ依ッテハ手ヲ握ラムト
迄サレタノハドウ云フ理由ニ依ルカ、之二
對シマシテ政府ハ、事件發生以來、現地解
決不擴大主義デアリマシタガ、ドウモ外
交ガ捗ラナイ、ソレデ武力膺懲ト云フコト
ニナッタ、併シナガラ他ノ一面カラハ尙反省
サセルコトニ努力シタノデアル、特ニ九箇
國條約會議ガ開カレタ際ニ、列國ガ支那ニ
同情シテ、我ニ對シテ干涉ノ氣運ガアリマ
シタガ、支那サヘ反省スレバ手ヲ握ル用意
ガアルト云フコトヲ通〓シテ置イタ、其ノ
後「ドイツ」カラ日本側ノ要求ヲ示サレタイト
言ッテ來マシタノデ、彼ガ防共ノ精神ニ則ッ
テ、其ノ實サヘ示シテ來レバ宜イト云フコ
トヲ答ヘタ、蔣政權ニ對シテ妥協セムトシ
タ事實ハナイ、其ノ後「ドイツ」ノ橋渡シモ
失敗ニ終ッテアヽ云フ風ナ聲明ガ出クノデ
アル、外交專門家ヲ民間カラ登用スル考ハ
ナイカ、政府ハ之ニ對シマシテ申シマスノ
ニ、各地ニ於ケル外交官ノ任務ガ段々複雜
多樣ニナッテ來タノデ、專門家的外交官ヲ要
スルノデアル、此ノ點デ外務省ハ尤モ門戶
開放ガ行ハレテ居ル、大使ヤ公使ニモ自
由任用ノ途ガ開カレテ居リマス、如何セ
ン人物ヲ物色スルコトニ寧ロ苦心シテ居
ル情況デアル、斯ウ云フ答デアリマス、蔣
政權ヲ對手トシナイ以上、統一的ノ支那
政權ノ成立ガ必要デアル、日支經濟提携、
日支合同開發ハ目下如何ナル狀態ニアル
カ、日支思想提携、儒〓復興ト云フコトニ
關スル政府ノ所見如何、新政權ノ成立ニハ
相當ノ年月ガ掛ル、軍事行動ト相俟ッテ文
化對策ヲ行ヒ、新政權成立迄ノ間、兩國諒
解ノ付ク限リ鐵道、鑛山等ニ於キマシテ
共存共榮ノ實ヲ擧ゲタイト考ヘテ居ル、支
那ノ文化復興ニハソレノ〓機關ヲ作リタイ、
日支經濟提携ニハ組織的ナ基礎ヲ作リタイ、
儒〓ノ復興モ然ルベキコトデアル、今後蔣
政權ニ對シテハ武力デ解決ヲ圖ルト共ニ、
一面誤レル政策デ指導サレテ居ル支那民衆
ノ啓蒙スルコトガ必要デアル、先般「ドイ
ツ」大使ノ仲介デ蔣政權ト我ガ政府トノ間
ニ和議ガ交涉サレ、其ノ結果、政政權ヲ對手
ニシナイコトニナッタ、何故ニソレ以前ニ蔣
政權ヲ對手ニシタノデアルカト云フ質問デ
アリマス、方針トシテハ蔣政權ヲ壞滅ニ歸
セシメ、眞ニ日本ト提携シ得ル新政權ノ成
立ヲ助長スルニアル、又列國ノ旣存ノ權益
ヲ尊重シ、親善關係ヲ維持スル考デアルト
云フ答デアリマス、北支ノ經濟開發、文化
對策モ必要ダガ、此ノ際支那民衆ノ救濟ガ
最モ急ヲ要スルノデアル、政府ハ之ニ對ス
ル計畫ヲ立テ、實施スベキデアルト考ヘル、
軍部ニハ旣ニ宣撫班ガアルガ、軍ノ仕事ト
切離シテ十分ニ救濟スベキデアルト考ヘル
ガ、此ノ點ハドウデアルカ、北支ノ占據地
域ハ非常ナ水害ヲ被ッテ居リマス、支那民衆
ニ對シテ誠ニ同情ニ堪ヘナイ、彼ニ〓糧ヲ
與ヘ、生活必需品ヲ安ク供給シ、又醫療ヲ
施シテ居ル次第デアル、尙北支新政權ト協
力シテヤリタイト云フ政府ノ答辯デアリマ
ス、次ニ、政府ハ速カニ對支中央機關設置
ノ要アリト思フガ如何、之ヲ內閣直屬トシ
タイ、又新政權ノ顧問トシテ立派ナ人物ヲ
派遣シタイガドウデアルカ、政府ハ答ヘテ
言フノニ、支那問題處理ノ爲ニ中央機關設
置ノ必要ハ痛感シテ居ル、其ノ組織ノコト
ハ目下〓究中デアル、滿洲ハ特殊ノ地方デ
アル、歷史上カラ見テモ、日本トノ從來ノ
關係カラ見テモ然リ、支那本部トハ同一視
スルコトノ出來ナイ事情ニアル、然ルニ支
那ハ立派ナ外國デアル、此ノ故ニ外交體系
ノ外ニ對支事務ヲ取扱フ官廳ヲ新ラシク設
ケルコトハ、我ガ國ニ取ッテ不得策ト考ヘ
ル、事變終了後ハ我ガ國トノ親善關係モ囘
復スル次第デアル、此ノ場合我ガ外交系統
カラ對支事務ノ處理ノ機關ヲ引去ルト云フ
コトハ、卽チ外交系統ヲ紊ルモノデアリマ
ス、我ガ國ニ取ッテ不得策デアル、今東亞省ト
カ對支經濟局ガ別ニ內閣直屬トシテ出來ル
ト云フコトニナレバ、外務省トノ關係ハド
ウナル、大使、領事ノ關係ハドウナル、統
制ガ紊レルト思フガ、此ノ點ハ如何、政府
ノ答ニハ、支那ニ對スル經濟開發其ノ他ニ
關スル中央機關ヲ設ケルコトハ必要ダト云
フコトヲ申シタ、但シ其ノ組織ハ目下〓究
中デアル、此ノ組織ヲ考ヘルニハ、十分御
意思ノアル所ヲ考慮シテ、外交全般ノ統一
性ヲ破ラナイヤウニ注意ヲスルト云フ答辯
デアリマス、次ニ石油ノ質問ガアリマシタ、
石油ノ權益ヲ確保セヨ、北樺太ノ石油、石
炭ノ利權ハ尼港事件撤兵ノ代償トシテ獲得
シタモノデ、「ロシア」ハ飽ク迄之ヲ保護ス
ルト云フコトヲ條約デ保障シテ居ル、然ル
ニ「ロシア」ハ其ノ後人的彈壓ヲ加ヘルコト
甚ダシク、石油事業者八名、石炭關係者デ
二十數名ヲ、理由ナクシテ拘禁シテ居ル、
此ノ救濟ニハ、外交上徹底的ニ爲スベキコ
トハ勿論デアルガ、國內的ニモ此ノ事業ニ
對シテ、卽チ北樺太石油會社ニ輸血ヲスル
必要ガアルト思フガドウデアルカ、又漁業
條約ヲ一年間延期シタコトニ付テノ所見ハ
如何、政府ハ斷乎タル處置ヲ執ルト云フコ
トデアルガ、ソレハドウスル積リデアルカ、
政府ハ答ヘマシタ、以上ノ事實ハ承知シテ
居ル、北樺太ノ利權ハ條約ニ明カニ規定シ
テアルコトモ承知シテ居ル、暫定的ナ漁業
條約ニ付テハ大使館カラ督促シテ居ル、出
來ルダケ速カニ締結ヲスルヤウ促シテ居
ル、邦人ノ逮捕監禁ト云フコトモ近頃ハ稍〓、
改リマシテ、國外追放ノ形式デスルト云フ
話モアルガ、是モ支那事變勃發ノ爲實行シ
テ居ラヌヤウデアル、故意デナイ、又漁夫
ノ領海侵入事件ニ付テハ先方モ直グ了解シ
テ釋放シタ例ガアル、「ロシア」人ハ一般ニ疑
ヒ深イ國民デ、兎角「スパイ」トシテ拘禁ス
ルノデアル、時ハ要シマスガ、十分ニ解決
ヲスルヤウニ努力ヲスル、北樺太石油會社
經營ノ內部ニ付テハ、所謂輸血ヲスル、石油
ノ試掘期間ガ短イ關係上早ク何等カ對策ヲ
考ヘタイト思ッテ居ル、今後モ大イニ努力シ
マスト云フ答辯デアリマシタ、第三ニ內政、大
臣ノ事務化ノ改善論ガ質問トナッテ出マシタ、
第一、國務大臣ト帝國議會トノ關係、第二、國
務大臣其ノモノノ補强、卽チ元老ニ依ル補强、
最近出來タ內閣参議ニ依ル補强等ヲ考ヘナ
ケレバナラヌ、第三、國務大臣ト樞密院トノ
關係、是ハ頗ル緊密ナモノデアル、樞密院
ハ憲法第五十六條「樞密顧問ハ樞密院官制ノ
定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ
國務ヲ審議ス」トアル、デ「重要ノト云フ
コトニ强調シテ考ヘテ見ナケレバナラヌ、
然ルニ樞密院官制第六條ヲ見ルト、色々ナ
諮詢事項ガ列擧サレテアル、其ノ六號ニ次
ノ如キコトガ書イテアル、卽チ「前諸項ニ
揭グルモノノ外臨時ニ諮詢セラレタル事項」
トアル、ソレカラ慣例トナッタコトヲ注意
スルト、重大ナコトデモ此ノ臨時ニ諮詢セ
ラレル事項ノ中ニ揭ゲテナイガ爲ニ、諮詢
サレナイコトガ起ッテ來タリ、又其ノ中ニ揭ゲ
テアルガ爲ニ煩瑣ナ小サナコトデモ諮詢サ
レルコトノ慣習ガ起ッテ來テ、玆ニ弊害ガ生
ジテ來タノデ、政府ハ獨斷ニ傾イテ、面倒
ナモノ、重イモノハ寧ロ避ケテ樞密院ニ掛
ケナイト云フコトハ是カラ出テ來タノダ、
是ガ抑〓大イナル間違デアル、各省大臣ト國
務大臣トヲ分離スル時ニハ、責任ノナイ大
臣ガ出來ル虞ガアル、內閣參議ノ如キモノ
ハ出來マシタガ、是ハ愼重ニ考慮シナケレ
バナラヌ、大臣ガ餘リ熱心ノ餘リ事務ニ沒
頭スルト云フコトハ、大事ト小事トヲ混同ス
ルコトニナル、各省ノ事務ハ大綱ヲ摑ンデ
大所高所ヨリ指導スレバ宜イノデアル、玆
ニ初メテ綽々トシテ餘裕ガ出來テ、大事ヲ
考ヘルコトガ出來ルト思フ、又議會ヲ通シ
テ民意ヲ察知スルト云フコトヲ大臣ハ考ヘ
ナケレバナラヌ、國際的ニ考慮シテ見マス
ト、軍令軍政ト外交トノ兩者ガ緊密ニ協調
スルト云フコトガ最モ必要デアルト思フ
ガ、此ノ點ハドウデアルカ、之ニ對シマシ
テハ、今日ノ内閣制度ニハ將來十分〓究ヲ
シタイ、國務大臣自體ノミナラズ、樞密院
竝ニ議會等ノ問題モ大イニ考慮シナケレバ
ナラナイト考ヘルト云フ答辯デアリマシ
ク、次ニ又官吏ノ事務、技術ノ系統ヲ正シ
クシテ待遇スルト云フ原則カラ、又行政機
關トシテ官廳ノ職務權限ノ筋途ヲ正シク
シ、憲法上認メラレタル立法權、司法權、
大權ノ筋途ヲ正シクスル爲ニ質問ヲシタイ
ト思フ、元來方々ノ役所ニ委員會ト云フヤ
ウナモノガアルガ、其ノ中ニ官吏ガ多ク入
レバ、其ノ結論ハ分リ切ッテ居ル、民間ニ現
職ヲ有スル生キ々々シタ空氣ヲ委員會ノ委
員ニ入レナケレバナラナイ、技術官ハ技術
官トシテ待遇ヲ正シクシナケレバナラナイ
ノニ、是ガ色々ト均衡ガ取レテ居ラナイ例
ガ澤山アルノハ遺憾デアル、國家ガ官吏ト
ナルノニハ法律ガ要ルト云フ原則ヲ指示シ
タ爲ニ、國家試驗ニ法律ヲ重ズルヤウニナッ
テ、其ノ結果ガ卽チ法科萬能主義ト云フヤ
ウナモノガ起ッテ來タノデアル、憲法上司法
權ヲ行使スル者ハ裁判官デアル、司法大臣
ハ行政大臣デナケレバナラヌ、行政權ト司
法權トノ見解ニ付テ、豫審判事ト云フモノ
ガアルコトヲ忘レテハイカヌ、檢察權ノ、改
正以前ニ先ヅ豫審制度ヲ改正シナケレバナ
ラナイト思フ、今總動員法デ問題ニナッテ
居ル立法事項ト委員命令ノ問題ナド、立法
事項ヲ無制限ニ命令ニ委任スルコトハ明カ
ニ違法デアル、委任命令ノ限度ハ憲法自ラ
現定シテ居ルノデアルカラ、其ノ邊ノ御考
ハドウデアルカ、政府ガ答ヘルノニハ、事
務系統ト技術系統ノ關係ヲ明カニスルコト
ハ結構デアルト考ヘル、從來技術系統ノ官
吏ガ事務系統ノ官吏ニ比シテ昇進ガ遲レテ
居ルト云フコトハ事實デアリマスカラ、是
ハ大イニ考慮スル、任用令ハ未ダ具體的ノ
モノニナッテ居リマセヌ、司法權ト行政權ノ
限界ニ付テモ、是モ亦十分考慮スル必要ガ
アル、次ニ此際內政改革卽時斷行ガ必要デ
アル、地方制度改正、中央、地方稅政ノ改
革、地方自治團體ノ選擧ノ改革ヲ速カニ斷
行シテハ如何デアルカ、政府ガ答ヘマスノ
ニ、地方制度ノ改正ハ全面的ニ再檢討ヲシ
ナケレバナラヌ、御趣旨ノアル所ハ十分考
慮致シマス、地方選擧制度ノ改正デ、等級
選擧ト云フコトニ付テハ是ハ重大デアリマ
スカラ、餘程愼重ヲ要スルト云フ答辯デア
リマシタ、極端ナル國粹主義ハ左翼ヨリモ
危險デアル、日本臣民タル以上、國體ノ尊
嚴ヲ自覺シテ居リマス、併シナガラ其ノ全
貌ヲ······國體ト云フコトノ全貌ヲ理論付
ケルコトハ頗ル困難デナイカト思フ、國體
ノ本義ノ理論付ケ、基礎付ケガ困難デア
ルノニ、國體ノ本義ニ反スルモノハ卽チ
共產主義者ナリト云フコトニ考ヘルト云フ
ト、玆ニ色々ノ弊害ガ湧出シテ來ル、帝國
憲法ハ統治權行使ノ限度ヲ明カニシテ居
ルノデアリマス、然ルニ猥リニ憲法ノ條
章ヲ離レ、國體論ヲ爲ス結果、憲法無視ト
云フコトニナリ易イ、世ノ中ニ分ッタ理窟ハ
通ラナイト云フコトニナルガ、此ノ邊ノ政
府ノ所見如何、又自由主義ハ共產主義ノ溫
床デアルト云フガ、極端ナル國家主義ノ方
ガ共產主義ニ似タ點ガアルト思フガ、所見
如何、政府ガ之ニ對シ、今日國體明徵ノヤ
カマシイ折柄、國體ノ本義ヲ濫用スル者ガ
アルノハ事實デアル、御質問ノ趣旨ハ大體
同感デアル、其ノ外內政ニ付キマシテハ和
歌山築港問題等モアリ、其ノ他モアリマシ
タガ、今日ノ場合省略ヲ致シマス、四〓
育兎角日本人ノ優越感ト云フモノハ外國
ニ對シマシテ惡影響ヲ與ヘテ居ル、是ニハ
先ヅ日本人ノ〓育ガ必要デアル、小學校ノ
〓育カラ根本的革新ノ要ガアル、卽チ弱小
民族ハ之ヲ愛撫シ、傲慢强力ノ民族ニハ徹
底的ニ双向フト云フ日本精神ニ卽シタ〓育
ヲ爲サナケレバナラヌト思フガ、文相ノ所
見如何、之ニ對シ、支那、滿洲デ誤レル優
越感ヲ持ツ者ガナイトハ言ヘナイ、之ヲ匡
正スル必要ガアル、〓育ニモ若干其ノ原因
ノアルコトハ認メテ居ル、次ノ質問ハ、文
部大臣ガ厚生大臣ヲ兼ネルコトハ、重大ナ
ル〓育革新ノ叫バレル今日ニ當ッテ、餘り宜
クナイコトト考ヘルガ如何、之ニ對シテハ、
一日モ早ク專任大臣ヲ置カレムコトヲ希望
シテ居ルト云フ答辯デアリマシタ、次ニ武
道精神ノ發揚ハ、軍隊精神上ノミナラズ、
國民〓育上頗ル必要デアル、量的ニ申セバ
先ヅ武道ヲモット一般化スル必要ガアル、質
ノ上カラ申セバ武道ノ高等ナル學校ヲ起ス
必要ガアル、武道審議會ト云フモノヲ設置
スベシト思フガドウデアルカ、武道ノ再興
ニハ同感デアル、現在中學校デハ正科ニナッ
テ居リマス、指導者養成ニ付テハ從來ノ施
設デ十分トハ思ハレヌガ、是ハ十分努力ス
ル、武道審議會ノコトハ〓究ノ上實現シタ
イト思フト云フ答辯、次ニ、我ガ國ノ國語〓
育ハ、眼卽チ視覺ニ依ル〓授ガ重ク視ラレ
居ッテ、耳卽チ聽覺ニ依ル〓授ガ永ク閑却サ
レテ來タノデアリマス、其ノ結果偏傾的ナ記
憶注入主義トナッテ、其ノ弊害ノ爲ニ、我ガ
文化ガ如何バカリ障碍ヲ受ケタカ知ラナイ、
音聲學的方面ヲ大イニ補フ所ノ國語〓育ト
云フモノガ今日必要デアルト思フガ、此ノ
點ハ如何デアル、國語〓育ガ視覺ニ偏セル
三·八發音ヲ閑却シテ居ルコトハ同感デア
ル、十分調査ヲ遂ゲタ上デ、適當ナ解決ヲ
圖リタイ、第五、國防、卽チ陸海軍ノ方面
デアリマス、我ガ航空ハ遞信省ノ直轄ト、
陸海軍ノモノトガアル、國防上カラ大イニ
考慮ヲ要スルモノガアル、最近防空法モ出
來タ、〓究設備モ大イニ進步ハシマシタガ、
モット軍ハ積極的ニ此ノ事業ニ當ラナケレ
バナラナイ、豫算モ相當アルガ、專ラ國防
ト都市ノ防備トニ連絡ヲ取ッテ貰ヒタイ、又
民間航空機ノ利用程度モ十分ニヤッテ貰ヒ
タイト思フガ、政府ノ所見ハ如何、防空ニ
ハ陸海軍、內務省トガ能ク協調シテ非常ノ
際ニ當ッテ居リマス、民間航空ニ付テハ遞信
省ト十分ノ連絡ヲ取ッテ實施シタイト思フ、
防空ノ重點ハ敵機ノ主力ヲ求メテ之ヲ擊破
スルコト、政府ハ航空兵力ノ增强ヲ目標ト
シテ、今度ノ豫算ニ計上シテ置イタ、海軍ノ
使命ハ艦隊作戰ニアル、故ニ航空モ亦艦隊作
戰ニ協力スベキモノデアル、日本ノ國土ニ
近キ敵機ヲ擊破シ、之ヲ近寄ラシメナイト
云フ所ニ重點ヲ置キタイト思フ、此ノ際遞
相ヨリモ航空機製作ト地方乘員、中央乘員
養成所ニ付テ詳細ノ答辯ガアリマシタ、次
ニハ、我ガ國ニモ持久戰ノ覺悟ガアル、今日
支那ガ持久戰ヲ爲シ得ルモノハ其ノ背景ア
ルガ爲デアル、我モ總動員ニ依ッテ步一步進
ンデ行クベキニ、豫算面ニハ餘リ數字ガ現
レテ居ラナイノハドウデアルカ、之ニ對
シマシテ、今年度ノ海軍豫算ノ如キハ、臨
時軍事費ノ中ニ入ッテ居リマスカラ一見貧弱
ノ感ガアル、尙戰爭ニ必要ナモノハドン〓〓
要求スルト云フ答辯デアリマス、今囘關東
軍ノ外ニ北支軍、中支軍ト云フモノガアル、
此ノ相互關係ニ付キマシテ、陸相ノ對滿事
務局總裁トシテノ抱負如何、答、北支、中支
ノ經濟發展ヲ補給スルト云フコトニ重點ガ
アル、北支中支ニテ經濟的特色ヲ十分ニ利用
スル、又日滿經濟ノ方デハ、期待スルコトノ出
來ナイ經濟方面ヲ發展サセマシテ、資本關
係モ支障ナキヤウニ努力シテ行キタイト云
フ答辯デアリマス、六、司法、神奈川縣放火事
件、帝人事件ト云フヤウナモノハ多數ノ被疑者
ヲ取調ベルニ際シテ、僅カ數名ノ檢事ガ之ニ
當ッタ、要スルニ人員ノ不足カラ事件ハ發
生タシト云フガ、帝人事件ノ某氏ノ歎願書
ノ問題ノ如キ、左樣ナコトガ原因デハナイ、
檢事ノ手不足ガ原因デハナイ、此ノ歎願書ハ
決シテ某氏ガ自發的ニ書イタモノデナイコ
トハ明カデアル、檢事ガ書カシタノデアル、
檢事ノ方デハ其ノ內容ヲ元々初メカラ信用
シナイデ居ルモノデアルカラ、書カシタダ
ケデ、後ハ取調ベモシナイ、處ガ內閣デハ
物的證據ガナケレバ責任ヲ取ルコトガ出來
ナイト云フコトデアル、恰モ此ノ時此ノ書面
ガ出タト云フノデ、岩村檢事正カラ小山法相
ニ差出シマシテ、小山法相ハ齋藤首相ナリ
高橋藏相ニ之ヲ報告シタ、其ノ結果齋藤內閣
總辭職ト云フコトヲ促シタノデアル、ダカ
ラ此ノ書面ハ唯倒閣ノ目的ハ達シタノデア
ルガ、帝人事件其ノモノノ取調ノ上ニハ寸
毫モ役ニ立ッテ居リマセヌ、此ノ事實ハ檢事
ノ手不足デヤッタ譯デハナイコトハ明カデ
アル、檢察當局ガ故意ナラバ申スニ及バズ、
徒ニ信ジモシナイコトヲ態々書カセテ上司ニ
差出シタ理由ハ何處ニアルカ、是ハ犯罪ノ
證據ニナッタトカ、ナラヌトカ云フ關係ヨリ
干、モット〓〓大キナ關係ニ於テ大臣トシ
テ取調ベナケレバナラヌト考ヘル、下院ニ
於テ、衆議院ニ於テ法相ガソレ以上ノコト
ハ犯罪ニ關係ガナイコトデアルカラ取調べ
テ居ラヌトノ答辯ハ甚ダ了解ニ苦シムガ如
何ナル御考デ居ラレルカト云フ御質問ガア
リマシタ、之ニ對シマシテ、檢事ノ手不足
ハ種々ノ原因ノ一ツデアルト云フコトハ一
般的ノ話デアル、尙歎願書ノコトニ付テハ、
斯カル捜査ノ際ニ出來タ書面ハ調書ニ添付
スル必要ハナイノデ、其ノ儘ニシテ居ッタ
ト云フノニ過ギナイ、次ニ、三土氏ノ證言
ガ唯某男ノ言フコトト異ルト言フダケデ僞
證罪ニ問フトハ、何ヲ標準トシテ虚僞ト斷
定シタノデアルカ、之ニ對シマシテハ、元
來證人トナルベキモノヲ被告人ニ面會サセ
ルコトハ、普通避クベキコトデアルガ、法
トシテハ禁止シテハ居ラナイ、而モ豫審判
事ノ許可ノ下ニ檢事立會ノ上デ、事件ノ話
ニハ立チ入ラナイト云フ條件デヤラシクモ
ノデアリマスカラ、是ハ決シテ不法トハ考
ヘナイト云フ答辯デアリマス、商工省ノ問
題日本製鐵株式會社デハ、咸鏡北道ト茂
山ニ製鐵工場ヲ造ルト云フコトヲ聞イテ居
ルガ、其ノ進捗ノ程度如何、近時鐵饑飢ト
云フガ、十三年カラ十六年ヘノ鐵ノ需給關
係ハ如何ナルモノデアルカ、聽キタイモノ
デアル、答、茂山ノ埋藏量ハ相當アル、會
社ハ敷地ヲ買入レマシテ目下測量ヲ終ッタ
所デアリマス、十三年度乃至十六年度迄ノ需
給關係ハ申上ゲルコトハ出來ナイガ、ドウ
カ此ノ點ハ御安心ヲ乞フ、又尺貫法ニ付テ
ノ質問ガ出マシタ、之ニ對シマシテハ、尺
貫法併用ノ趣旨ヲ法律ニ現ス方法ニ付テ〓
究中デアル、是ガ出來次第今議會ニデモ提
出シタイト思ッテ居ル、植民地、卽チ拓務ノ
問題デアリマス、移民ガ自由ニ出來ルノハ
「ブラジル」ト滿洲ダケダ、一一十箇年百萬戶、
卽チ五百萬人移住ノ計畫ノ此ノ數字ハ何處
カラ生ミ出シタノデアルカ、滿洲移民ヘノ
非難ハ一、治安維持、二、生產ノ不適當、
三、日本人ハ滿人ト競爭スルコトガ出來ナ
イ、此ノ三點デアルガ、之ヲ如何ニ克服ス
ルカ、政府ノ答ハ、二十箇年百萬戶ト云フ
コトハ机上ノ空論デハナイ、滿洲ニ於ケル
統治上ノ計算カラ來タノデアル、五族協和
ノ精神カラモ來タノデアル、一割以上ノ日
本人ガ滿洲デ指導者トシテ居ルコトガ必要
デアル、卽チ滿洲ノ人口ハ軈テ五千萬人
トナルト云フ見地カラ二十箇年百萬戶、卽
チ五百萬人ハ一割ニ當ッテ居ル、卽チ此ノ
趣旨カラ生レタノデアル、尙移住計畫
遂行上ノ諸問題、移民ト金融ノ問題ニ付
テ詳細ナル御答辯ガアリマシタ、樺太ヲ內
務省ノ管轄ニ讓ッテ、拓務省ハ宜シク今日大
事ナ、海外發展ノ方ニ專念シテハドウデア
ルカ、之ニ對シマシテハ、樺太ハ未ダ十分
ニ開發サレテ居リマセヌ、此ノ故ニ今直チ
ニ內務省ニ讓ルコトハ困難デアルガ、併シ
將來ハ左樣ニ考ヘル、其ノ他拓務ニ付テ問
題ガアリマシタガ、是ハ省略ヲ致シマス、
二月二十四日ヨリ三月二日迄ニ亙リマシテ
各分科會ヲ開催致シマシタ、三月三日再ビ
總會ヲ開キマシテ、各分科主査ヨリ報〓ガ
アリマシタ、ソレヨリ再ビ質問ニ入リマシ
テ、三月四日討論ニ入リマシタ、一委員ヨ
リ次ノ如ク贊成意見ガ出マシタ、此ノ豫算
案全部ニ贊成ヲスル、此ノ大豫算ヲ有效適
切ニ活用スルノニハ、各省中ニ分立シテ個々
ニ存在スル一部ノ經濟的强化ト、各省ノ連
絡ダケデハ到底萬全ヲ期スルコトハ出來
ナイ、玆ニ此ノ方面ノ首尾脈絡ヲ一貫シタ
經濟省ト云フモノヲ新設スルコトハ、目下
急務中ノ急務デアルト思フ、此ノ際政府ハ
我ガ國戰時經濟ノ參謀本部ヲ作ッテ、其ノ存
在ヲ全國民ニ了解セシメ、以テ其ノ適從ヲ
誤ラシメヌヤウ善處スル義務アリト信ズル
ノデアル、玆ニ經濟省ヲ設ケ、我ガ經濟行
政ノ全機關ヲ集中シ、政府自カラ進ンデ經
濟行政上ノ責任ヲ負フベキデアル、勿論日
滿支ノ全面的經濟行政ノ中樞機關タラシ
メ、特ニ北支、中支經濟發展ノ爲ニハ、國
防重要產業ノ特殊ナルモノヲ除イテハ、
門戶開放、機會均等ノ精神ニ則ッテ善處セ
ラレムコトヲ望ムノデアル、此ノ重要ナル
希望ヲ述ベテ、政府ノ愼重ナル考慮ヲ煩
シ、サウシテ此ノ豫算案全部ニ贊成スル者
デアルト云フ意見デアリマス、又他ノ一委
員ヨリモ贊成意見ガ出マシタ、支那事變ハ
更ニ長期ニ亙ル覺悟ヲ以テ總豫算ガ計上サ
レテ居ル、戰爭ガ長期ニ繼續スルモ、我ガ
國防ノ上ニ何等危惧ナイコトト確信シマス、
軍事以外ノ豫算ニ付テハ不滿足ノ點ナキニ
アラザルモ、大局ノ見地ヨリ小局ノ問題ハ
忍ブベキモノト思フ、故ニ無修正デ贊成ヲ
スル、此ノ厖大ナル豫算ヲ政府ニ一任スル
以上ハ、政府モ篤ト考慮スベキコトガア
ル、豫算ニ關スル貴族院、衆議院ノ言論中
三、實ニ傾聽ニ値スベキモノガ多イ、政
府ハ本豫算ヲ實行スル上ニ於テ、一段ノ勇
氣ト愼重ナル注意ヲ以テシ、之ヲ有效適切
ニ處理シテ誤リナキヤウ念願スルト云フ意
見デアリマス、斯クシテ採決ニ入リマシ
テ、豫算案全部、原案通リ滿場一致可決ニ
相成リマシタ、右ニテ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=5
-
006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ討論ニ移
リマス、通〓順ニ依リマシテ發言ヲ許シマ
ス、渡邊千冬君
〔子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=6
-
007・渡邊千冬
○子爵渡邊千冬君 私ハ只今議題トナッテ
居リマス各豫算案ニ對シ、贊成ノ意ヲ表シ
タイト存ジマス、抑〓我々ガ豫算ニ對スル態
度ヲ決セムトスル時ニハ、先ヅ周圍ノ情況
竝ニ其ノ豫算ノ目的ヲ檢討致サナケレバナ
ラナイト存ジマス、豫算ハ手段デアッテ、目
的デハナイノデアリマスカラ、豫算ノ價値
ハ其ノ內的技巧ニ存セズシテ、外的關係ニ
依ッテ決定セラレナケレバナラヌト存ジマ
ス、而シテ本豫算案ハ支那事變下ニ編成セ
ラレマシタ所ノ、文字通リノ非常時豫算デ
アリマス、非常時豫算ニ對シマシテハ、我々
ノ態度モ亦平時豫算ニ對スルモノトハ自
ラ異ル所ガアルベキデアリマス、私ハ嘗テ
高橋財政ニ贊意ヲ表シ、又藤井財政ニ對シ
テモ贊成ヲ致シタノデアリマス、而シテ高
橋、藤井財政ニ於ケル財政經濟ノ政策ト、
今日賀屋大藏大臣ニ依ッテ執ラレテ居リマ
ス所ノ政策トハ、相當方向ヲ異ニスル所ノ
モノガアルノデアリマス、卽チ當時ニ於テ
ハ、所謂健全財政主義ガ唱ヘラレテ居ッタノ
デアリマス、昔ノ財政〓科書ニハ、國家財
政ノ原則ハ、出ヅルヲ計ッテ入ルヲ制スト
申シテ居リマスガ、國家ノ經費ト雖モ不要、
不急ノモノハ一錢一厘タリトモ之ヲ認ム
ベキデナイコトハ申ス迄モアリマセヌ、
又公債財源主義ノ歡迎スベカラザルコトモ
當然デアリマス、是レ當時ニ於テ高橋、藤
井兩氏等ノ政策ガ當ヲ得タモノデアッタ
所以デアリマス、私ハ今日ニ於キマシテ
モ、何人ト雖モ主義トシテ健全財政主義
ヲ指彈スルコトハ許サレナイモノト考ヘ
マス、唯問題ハ實際ニ於ケル可能不可能
ニ繫ルノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、
健全財政主義ヲ懷イテ居ル者ニシテ、初メ
テ非常時財政ノ衝ニ當ルノ資格ガアルト信
ズルノデアリマス、然ルニ十三年度豫算ニ
於ケル大部分ノ出費ハ、目前ノ事變ニ對處
スベキ絕對的ニ必要ナル經費デアリマス、
卽チ今日ニ於テハ出ヅルヲ計ッテ入ルヲ制
スノ原則ハ、其ノ儘掛値ナシニ適用セラレ
ナケレバナラナイ時期ニアルノデアリマス、
國家ノ實情ヨリ申シマシテ、今日ノ豫算編
成ノ方針トシマシテハ、眼前ノ時局ノ打開
ノ爲ニ眞ニ必要ナル限リ、如何ニ厖大ナル
經費ト雖モ之ヲ計上シナケレバナリマセヌ、
要ハ唯之ニ依ッテ生ズベキ各種ノ惡影響ヲ
排除シ、銃後ニ於ケル國民經濟ノ混亂ヲ防
止スベク、周到ナル用意ヲ爲サナケレバナ
ラナイコトニ繫ッテ存スルノデアリマス、私
ハ現內閣ガ此ノ點ニ付テ尠カラザル努力ヲ
シテ居ラルヽコトヲ認メテ、又之ヲ多トス
ル者デアリマス、是レ私ガ豫算案全部ニ贊
成ヲ致ス所以デアリマス、私ハ此ノ機會ニ
於キマシテ、本豫算案ニ關聯シテ二三ノ希
望ヲ申述ベテ見タイト思フノデアリマス、
其ノ第一ハ豫算ノ施行ニ當ッテ放漫ニ流レ
ザルヤウ、遺憾ナキヲ期シテ戴キタイト云
フコトデアリマス、今日議題トナッテ居リ
マス所ノ昭和十三年度豫算ノ總額ハ、二十
八億六千七百餘萬圓デアリマス、之ニ別途
政府ヨリ提出ニナッテ居リマス所ノ、臨時軍
事費特別會計ノ追加額四十八億五千萬圓ヲ
加ヘマスレバ、七十七億圓以上ナナルノデ
アリマス、此ノ外ニ各特別會計ノ豫算ガア
リ、又迫ッテハ十三年度ノ追加豫算ノ提出モ
アルノデアリマセウ、今ヤ斯クノ如キ厖
大ナル支出權ガ政府ニ與ヘラレムトシテ居
ルノデアリマス、私ハ先ニ申述ベマシタ如
ク、目下ノ時局ニ於テハ豫算ノ數字ノ厖大
ナルコトヲ以テ、直チニ非難致スモノデハ
ナイノデアリマス、併シナガラ私ハ豫算ガ
厖大ナルガ故ニ、其ノ實行ニ際シテハ、政
府ハ一層愼重デアッテ戴キタイト思フノデ
アリマス、何人デモ金ガ紙入ノ中ニ澤山ア
ル時ハ濫費ヲ爲シ勝チデアルト同樣、厖大
ナル支出權ヲ得タ政府ハ、動モスレバ放漫
ニナリ勝チナモノデアリマス、勿論政府ノ
支出ニ付テハ豫算上ノ制限ガアリマス、併
シナガラ非常時ノ豫算ハ平時ニ比シテ政府
ノ自由ニ委サレテ居ル點ガ多イノデアリマス、
英國ハ世界大戰ノ時、軍事費ヲ「ヴオート·オ
ブ·クレヂット」、卽チ信用勘定ト云フ名ノ下
ニ議會ノ協贊ヲ得タノデアリマス、卽チ實
行上ノ細目ハ擧ゲテ之ヲ政府ニ委ネ、國民
ハ之ヲ信用スルト云フ考デアッタラウト思
ヒマス、今日我々ガ此ノ非常時豫算案ニ贊
成スルニ付キマシテモ、我々ハ之ヲ一種ノ
信用勘定トシテ贊成致スノデアリマス、從ツ
テ政府ニ於カレマシテハ、此ノ國民ノ信倚
ニ背カザルヤウ十分ナル留意ヲセラルヽ必
要ガアルト思フノデアリマス、厖大ナル豫
算案デアルガ故ニ、尙更無駄ノナキヤウニ
致サネバナリマセヌ、又同ジ金ヲ使フニモ、
如何ニスレバ最モ效果的デアルカノ配意ヲ
怠ッテハナリマセヌ、斯ウ云フ點ニ付キマシ
テ出來得ベクンバ、政府ハ特別ナル調査機
關ヲ設ケテ、豫算運用ノ適正ヲ期セラレタ
イト存ズルノデアリマス、第二ハ物價ノ問
題デアリマス、厖大豫算ノ實施ニ伴フ物價
騰貴ハ、今日總テノ人々ガ最モ懸念シテ居
ル所デアリマス、賀屋大藏大臣ノ御說明ニ
依レバ、一方ニ於テ金ト物トノ調整ガ適當
ニ行ハレ、他方ニ於テ爲替相場ノ安定ニ依
リ、通貨ノ信用ガ維持セラルヽ限リ、物價
暴騰ノ懸念ハナイト云フコトデアリマス、
併シナガラ今最近ニ於ケル物價ノ趨勢ヲ見
マスルト、昭和十二年中ノ平均卸賣物價指
數ハ、日本銀行ノ調査ニ依レバ、其ノ前年
タル昭和十一年中ノ平均指數ニ比シテ二割
以上ノ騰貴ヲ示シテ居リマス、又本年一
月ノ指數ハ昨年ノ平均指數ニ比シテ三分程
上ッテ居リマス、私ハ政府ノ財政理論ガ誤ッ
テ居ルトハ思ヒマセヌ、併シナガラ物價ハ
現實ニ上ッテ居ルノデアリマス、今日迄ノ所
ハ幸ニシテ未ダ經濟生活ヲ破壞スルヤウナ
暴騰ヲ示シテハ居リマセヌ、併シナガラ今
後厖大豫算ノ施行ニ依ル通貨ノ膨脹、輸入
制限ニ依ル物資ノ缺乏、增稅ノ實施ニ依ル
生產費ノ昂上等ニ依ッテ、物價騰貴ノ傾向ハ
一層拍車ヲ掛ケラレルト思フノデアリマス、
玆ニ於テ私ハ物價騰貴ノ抑制ニ付テ、政府
ハ一層效果的ナル政策ヲ執ラレムコトヲ希
望シテ已マナイノデアリマス、「ドイツ」デ
ハ開戰匆々千九百十四年八月四日、最高價
格ニ關スル法律ヲ制定シ、又同時ニ戰爭勃
發後僅カニ一週間ニシテ各地ニ於ケル最髙
小賣相場ヲ決定セシメタノデアリマス、抑〓
物價ハ國民生活ニ最モ緊密重要ナル關係
ヲ有シテ居ルコトハ申ス迄モアリマセヌ、
若シ物價ヲ御馳走ニ譬ヘマスナラバ、百ノ
經濟理論ハ一般大衆ノ眼ニハ御馳走ヲ盛ル
皿小鉢ノ類ニ過ギナイノデアリマス、物價
ヲ調節スル力ナキ政治家、專門家、學者等
ノ經濟理論ハ國民大衆ノ飢ヲ凌グ爲ニハ沒
交涉デアリマス、各種ノ經濟統制ヲ行ヒナ
ガラ物價統制ヲ忘レテ居ル政治ハ、畫龍點
睛ヲ缺クモノト言ハナケレバナリマセヌ、統
制ハ常ニ困難ヲ伴フモノデアリマスガ、物
價ノ統制ハ困難ノ程度ガ他ノ統制ヨリモ一
層大ナルモノガアルノデアリマス、而モ既
ニ騰貴シタル物價ヲ低下セシムルノ困難ハ、
未ダ騰貴セザルニ先ダッテ之ヲ抑制スルヨ
リモ、尙又一層大ナルモノガアルノデアリマ
ス、是レ「ドイツ」ニ於テ開戰後、直チニ物價ノ
統制ヲ試ミタ所以デアラウト思フノデアリ
マス、然ルニ我ガ國ニ於テハ各種ノ經濟統
制ガ順次實施セラレルニ拘ラズ、物價統制
ノミ今日ニ至ル迄尙等閑ニ附セラレテ居ル
ヤウニ感ゼラレルノハ誠ニ遺憾ニ存ジマス、
消費階級ニアル國民ハ重稅ノ苦痛ヲ甘受シ
テ居ルノニ、生產者ハ總テノ增稅、新稅、生
產費ノ增加等ヲ需要者ニ轉嫁スルノミナラ
ズ、總テノ機會ヲ捉ヘテ必要以上ノ價格引
上ヲ行ハムトスル傾向ガアリマス、私ハ政府
ハ一方軍需品製造者ノ暴利ヲ嚴重ニ取締ル
ト共ニ、他方一日モ速カニ物價ノ統制、殊
ニ生活必需品ノ價格ノ統制ヲ行ハレムコト
ヲ熱望致ス者デアリマス、私ハ是ガ軍國ニ
於ケル政府者ノ重大ナル義務ト信ズルノデ
アリマス、尙一二此ノ問題ニ付テ附加ヘタ
イト存ジマス、其ノ一ハ、物價ノ統制ハ地
方的ニ別々ニ統制致スコトハ、却テ市場ヲ
混亂セシムル結果ヲ來スコトデアリマシテ、
「ドイツ」ニ於テモ先ニ述べタル法律制定後
一箇月ニシテ新ラシイ布告ヲ出シマシテ、
單一官廳ヲ於テ物價統制ヲ致スコトニ改メ
タノデアリマス、尙又狙ヒ打的ニポツリ〓〓
ト物價ノ統制ヲ致シマス時ハ、他ノ商品
トノ關係ニ於テ不公正、又ハ片手落ニナ
リ易イノデアリマスカラ、此ノ點モ細密ナ
ル注意ヲ要スルノデアリマス、今手近ノ一
二ノ例ニ付テ申述ベテ見マスト、一昨五日
ノ新聞紙ニハ、商工省ハ「ビール」ノ小賣相
場ノ統制ニ力ヲ致シテ居ルト云フ記事ガア
リマシタガ、昨六日ノ新聞紙ニ登載セラレ
テ居リマス商工省ノ發表ニ依レバ、二月十
六日現在ニ於テハ小賣物價指數ハ前月ニ比
シ、百分ノ三·二ノ騰貴ヲ示シ、殊ニ「ビー
ル」ヨリモ尙一層生活ニ直接ノ關係アル晒木
綿ノ如キハ、前月ニ比シ、實ニ百分ノ四十六
ト云フ大暴騰ヲ示シテ居ルノデアリマス、又
政府ガ其ノ使用ヲ强制シテ居リマス所ノ
ㄱステープル·ファイバ1」ハ、一昨五日百
「ポンド」ニ付キ三圓ノ騰貴、割合ヨリ申シ
マスト平均百分ノ三·四程ノ暴騰ヲ致シテ
居ルノデアリマス、政府ハ木綿織物ニ긋
テープル·ファイバー」ノ混用ヲ强制スル時ニ
ハソレト同時ニ純木綿ノ製日吸「ステー
プル·ファイバー」ノ騰貴ヲ爲スコトハ當然
考慮ノ中ニ置カナケレバナラナカッタコト
ト思フノデアリマス、政府ハ果シテ是等ノ
コトヲ豫期セラレナカッタノデアリマスカ、
又ハ豫期シテモ手ヲ著ケナカッタノデアリ
マスカ、「ドイツ」ニ於テハ純毛ノ毛絲ノ產
出ヲ禁ジ「ステープル·ファイバー」ヲ、2
イツ」語デ「ツェルローゼ·ウオルレ」卽チ植
物纖維質羊毛ト申シテ居リマスガ、「ツェル
ローゼ·ウオルレ」ノ混用ヲ命ズルト同時
ニ、在來ノ市場ニ存在シタ純毛ノ毛絲ノ價
格ヲ其ノ爲メ騰貴セシムルコトヲ絕對ニ取
締ッテ居ッタト云フコトハ、私ノ直接ニ目擊
致シタ所デアリマス、卽チ物價統制ニ當ッテ
ハ全體的ナル方針ニ基キ、周密ナル計畫
ヲ立ツルコトガ最モ緊要デアリマス、是ハ
單ニ物價統制ノミニ關スル問題デハナイノ
デアリマシテ、全體的ニシテ周密ナル計畫
ニ基カザル統制ハ、一部ノ不正ヲ追ヒ遣ッテ
他ノ不正ヲ迎ヘルニ過ギナイノデアリマス、
斯クノ如キハ徒ニ手續ノ煩瑣ヲ生ジ混亂ヲ
釀スノミデアリマス、又是ハ申ス迄モナイ
コトデアリマスガ、統制國「ドイツ」ノ經濟
相デアッタ「シャハト」氏スラ、產業ヲ發達セ
シムルニハ自由競爭ヲ原則トシ、統制經濟
ハ特別ノ場合ニ於ケル便宜的措置デアルト
申シテ居ルノデアリマス、又或經濟學者ハ、
官吏ガ民間ノ實業家ニ比シ薄給ニ甘ンジテ
居ルノハ、國家ノ權力ヲ振リ廻スコトノ快
樂ニ陶醉シテ居ルカラデアルト申シテ居ル
ノデアリマスガ、此ノ皮肉ナル言葉ノ中ニ
ハ、確ニ多少ノ眞理ガ存スルモノト存ジマ
ス、現政府ガ統制諸策ノ實施ヲ爲スニ當
リ、是等ノ諸點ニ付キマシテモ亦當該官廳
ニ於テ、殊ニ留意アラムコトヲ希望致ス次
第デアリマス、第三ハ對支政策ニ關スル希
望デアリマス、對支政策ニ關シマシテハ、
近衞首相初メ政府當局者ヨリ段々ト御說明
ガアリ、又議員各位カラ種々有益ナル意見
ガ開陳セラレタノデアリマスガ、私ハ對支
政策ノ根本ハ我ガ國民ノ正シキ對支觀念ノ
育成ニ在リト信ズルノデアリマス、最近ニ
於ケル我ガ國ノ情況ハ、之ヲ例フレバ從來
一定ノ目數ノ碁盤ニ向ッテ居ッタノガ、急に
目數ガ倍モ三倍モアル碁盤ニ面シタヤウナ
モノデアリマス、急ニ舞臺ガ廣クナックノ
デアリマス、此ノ大キナ碁盤ノ上ニ於テハ
從來ノ定石ハ役ニ立チマセヌ、更ニ雄大ナ
ル布石ヲ必要ト致スノデアリマス、政府ハ
此ノ新ラシイ舞臺ニ立ッテ、我ガ國民ニ新ラ
シキ定石ヲ示ス必要ガアルト存ズルノデア
リマス、皇國ノ東亞ニ於ケル大使命ヲ思フ
時ハ、我等ハ高遠ナル理想ヲ要求致シマス、
我ガ國民ノ拂ヒタル生命財產ノ犠牲ノ如何
ニ大ナルカヲ思フ時、我等ハ遺漏ナキ打算
ヲ要求スルノデアリマス、支那ニ於ケル列
國ノ錯綜シタル利害關係ヲ思フ時、我等
ハ賢明ナル常識ヲ要求セザルヲ得ナイノデ
アリマス、對支政策ニ關シテ今日迄政府ノ
行ッテ來ラレマシタ所ハ、應急ノ措置タルヲ
出デナイノデアリマス、是ハ巳ムヲ得ヌ所
デアッタト存ジマス、併シナガラ今後ハ新ラ
シイ對支政策ヲ樹立スベキ建設時代デアリ
マス、抽象的ナル日支親善、日支提携ノ議
論ハ何人モ聞キ飽イテ居ルノデアリマス、
具體的ニシテ實行的ナル對支政策ノ樹立ハ
誠ニ容易デハアリマセヌ、又今日國民ノ考
ヘ方モ區々ニ亙ッテ居リマス、此ノ點ニ關シ
テ政府ハ國民ヲシテ、新タナル事態ニ處ス
ル途ヲ知ラシムルヤウニ、萬全ノ努力ヲ致
サレムコトヲ希望スル次第デアリマス、最
後ニ私ハ現内閣ノ根本的指導原理ヲ明カニ
シテ戴キタイト思フノデアリマス、近時國
内萬般ノ事項ニ亙ッテ革新ガ叫バレテ居ル
ノデアリマス、現内閣モ亦革新政策ノ遂行
ヲ聲明シテ居ラレルノデアリマス、近衞首
相ハ革新政策ノ遂行上、多少ノ摩擦ヲ生ズ
ルコトハ當然デアル、此ノ政策實現ノ爲ニ
當然生ズルコトアルベキ摩擦ハ斷ジテ之ヲ
囘避セズト言ハレマシタ、併シナガラ又一
方ニ於テ無用不必要ナル摩擦相剋ハ、之ヲ
解消セシメムトスルノデアルトモ言ッテ居
ラレルノデアリマス、然ラバ何ガ無用ナル
摩擦、不必要ナル相剋デアリ、何ガ囘避ス
ルコトヲ要セザル摩擦相剋デアルカ、此ノ
點ガ明カデナイノデアリマス、私ハ革新ガ
惡イトハ決シテ申シマセヌ、併シナガラ現
狀ノ變更ガ總テ革新デハナイノデアリマス、
革新ニハ一貫シタ指導原理ヲ必要トスルノ
デアリマス、其ノ指導原理ニ付テ國民ガ十
分ナル理解ヲナスナラバ、思切ッタ革新政策
モ圓滑ニ行ハレルノデアリマス、背後ニ如
何ナル指導原理ヲ藏シテ居ルカヲ明カニセ
ズシテ、革新ヲ唱フルハ國民ニ徒ニ不安ヲ
與フル結果トナリマス、世界各國ニ於ケル
成功セル革新政策ノ背後ニハ、必ズ一貫シ
タ思想體系ガアリ、指導原理ガアルノデア
リマス、非常時局ニ於テ國民ハ一應緊張ス
ルノハ當然デアリマス、併シナガラ難局ガ
長期ニ亙ル場合ニ於テハ、動モスレバ懷疑
的頽廢的乃至自棄的ナル思想ガ起リ勝チ
デアリマス、此ノ時期コソハ緊張セル第一
期ヨリモ遙カニ大ナル危機デアリマス、此
ノ際ニ國民ヲ誤ラシメザル爲ニハ、單純ナ
ル表面的訓示デハ何ノ役ニモ立タナイノデ
アリマス、深イ思想的根柢ノ上ニ打チ立テ
ラレタ指導原理ガナケレバナラナイノデア
リマス、私ハ近衞總理大臣ガ此ノ重大時局
ヲ擔任セラレテ、日夜肝膽ヲ碎イテ居ラレ
ルコトニ對シ、深ク敬意ヲ表スル者デアリ
マス、唯以上申述ベマシタ種々ノ希望ニ付
テ、十分考慮ヲ拂ハレムコトヲ望ミマシテ、
玆ニ私ノ豫算案贊成ノ演說ヲ終リタイト存
ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ討論ハ終
リマシタ、是ヨリ採決ヲ致シマス、御異議ガ
ナケレバ兩案全部ヲ問題ニ供シマス、兩案
全部ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=9
-
010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三、重要
鑛物增產法案、日程第四、日本產金振興株
式會社法案、政府提出、衆議院送付、第
讀會、是等ノ二案ヲ一括シテ議題トスルコ
トニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス、吉野商工大臣
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
重要鑛物增產法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
重要鑛物增產法案
重要鑛物增產法
第一條本法ニ於テ重要鑛物トハ金鑛、
銀鑛、銅鑛、鉛鑛、錫鑛、安質母尼鑛、
水銀鑛、亞鉛鑛、鐵鑛、硫化鐵鑛、格
魯謨鐵鑛、滿俺鑛、重石鑛、水鉛鑛、
ニッケル鑛、コバルト鑛、石炭、亞炭、
硫黃、砂金、砂鐵、砂錫其ノ他勅令ヲ
以テ指定スル鑛物ヲ謂フ
本法ニ於テ鑛業權者トハ砂鑛權者ヲ、
鑛業權トハ砂鑛權ヲ、鑛區トハ砂鑛區
ヲ含ム
第二條政府重要鑛物ノ增產ヲ圖ル爲必
要アリト認ムルトキハ重要鑛物ヲ目的
トスル鑛業權者ヲシテ事業計畫ヲ定メ
之ヲ屆出ヅベキコトヲ命ズルコトヲ得
鑛業權者前項ノ命令ニ依リ屆出デタル
事業計畫ヲ變更セントスルトキハ之ヲ
政府ニ屆出ヅベシ
政府必要アリト認ムルトキハ前二項ノ
事業計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第三條政府重要鑛物ノ增產ヲ圖ル爲必
要アリト認ムルトキハ重要鑛物ヲ目的
トスル鑛業權者ニ對シ事業ニ著手シ又
ハ事業ヲ繼續スベキコトヲ命ズルコト
ヲ得
第四條重要鑛物ノ增產ヲ圖ラントスル
者ハ之ガ爲必要トスル鑛業權ノ讓渡又
ハ隣接鑛區トノ間ノ鑛區ノ增減ニ付當
該鑛業權者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依
リ協議ヲ爲スコトヲ得
前項ノ協議ヲ爲スコト能ハズ又ハ協議
調ハザルトキハ重要鑛物ノ增產ヲ圖ラ
ントスル者ハ當該事項ニ付政府ノ裁定
ヲ申請スルコトヲ得
第五條政府重要鑛物ノ增產ヲ圖ル爲必
要アリト認ムルトキハ鑛業權ノ讓渡又
ハ隣接鑛區トノ間ノ鑛區ノ增減ニ付當
該鑛業權者ニ對シ重要鑛物ノ增產ヲ圖
ラントスル者ト協議ヲ爲スベキコトヲ
命ズルコトヲ得
鑛業權者前項ノ協議ヲ爲サズ若ハ爲ス
コト能ハズ又ハ協議調ハザルトキハ政
府ハ當該事項ニ付必要ナル決定ヲ爲ス
コトヲ得
第六條第四條第二項ノ規定ニ依ル申請
アリタルトキ又ハ前條第一項ノ規定ニ
依ル命令アリタルトキハ當該鑛業權者
ハ其ノ申請ヲ拒否スル旨ノ裁定アル迄
又ハ第十條第二項ノ規定ニ依リ裁定若
ハ決定ガ其ノ效力ヲ失フ時期迄當該鑛
業權ヲ讓渡シ又ハ當該鑛區ノ分合、減
區若ハ增減區ノ出願ヲ爲スコトヲ得ズ
第七條政府鑛業權ヲ讓渡シ又ハ隣接鑛
區トノ間ノ鑛區ノ增減ヲ爲ス旨ノ裁定
又ハ決定ヲ爲ストキハ其ノ裁定又ハ決
定ニ於テ鑛業權者ニ支拂フベキ對價及
其ノ支拂ノ時期ヲ定ムルコトヲ要ス
第八條裁定又ハ決定中對價ニ付不服ア
ル者ハ其ノ裁定又ハ決定ノ通知ヲ受ケ
タル日(裁定又ハ決定ノ通知ヲ受ケザ
ル者ニ付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十
日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ
得
第九條左ニ揭グル場合ニ於テハ對價ヲ
支拂フベキ者ハ其ノ對價ヲ供託スルコ
トヲ要ス
對價ヲ受クベキ者ガ其ノ受領ヲ拒
ミタルトキ又ハ之ヲ受領スルコト能
ハザルトキ
二裁定又ハ決定中對價ニ付前條ノ規
定ニ依ル出訴アリタルトキ
三鑛業權ニ付抵當權ノ設定アルトキ
但シ抵當權者ノ同意ヲ得タルトキハ
此ノ限ニ在ラズ
前項第三號ノ場合ニ於テハ抵當權者ハ
供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコト
ヲ得
第十條對價ヲ支拂フベキ者裁定又ハ決
定ニ於テ定メタル對價支拂ノ時期迄ニ
對價ノ全部ノ支拂又ハ供託ヲ爲サザル
トキハ鑛業權者ハ對價ヲ支拂フベキ者
ニ對シ六十日ヲ下ラザル一定ノ期間内
ニ其ノ支拂又ハ供託ヲ爲スベキ旨ヲ催
告スルコトヲ得
前項ノ期間內ニ支拂又ハ供託ナキトキ
ハ裁定又ハ決定ハ其ノ效力ヲ失フ
第十一條裁定又ハ決定ニ依ル對價ノ全
部ノ支拂又ハ供託アリタルトキハ政府
ハ鑛業權ノ移轉又ハ變更ノ登錄ヲ爲ス
鑛業權者對價ノ全部又ハ一部ノ支拂ニ
付延期ヲ承諾シタルトキ亦前項ニ同ジ
此ノ場合ニ於テ政府ハ對價ノ支拂ヲ受
クル權利ヲ有スル者ノ爲移轉又ハ變更
アリタル鑛業權ニ付抵當權設定ノ登錄
乙酸、
第十二條第四條乃至第十條ノ規定ハ鑛
業權ノ讓渡又ハ隣接鑛區トノ間ノ鑛區
ノ增減ニ伴ヒ必要ナル事業設備ノ讓渡
ニ之ヲ準用ス但シ第九條中抵當權トア
ルハ登記シタル擔保權、抵當權者トア
ルハ擔保權者トス
事業設備ヲ讓渡スル旨ノ裁定又ハ決定
アリタルトキハ其ノ權利ハ裁定又ハ決
定ニ依ル對價ノ全部ノ支拂又ハ供託ア
リタル時移轉ス
第十三條本法ニ規定スルモノノ外裁定
又ハ決定ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第十四條第四條第二項ノ規定ニ依ル裁
定又ハ第五條第二項ノ規定ニ依ル決定
ニ依リ鑛業權ヲ取得シ又ハ鑛區ヲ增區
セラレタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ
之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ前項ノ事
業計畫ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第十五條鑛業權者前條第一項ノ規定ニ
違反シ認可ヲ受ケザル事業計畫ヲ實施
シ又ハ同條第二項ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シ事業計畫ヲ變更セズシテ之ヲ實
施シタルトキハ政府ハ鑛業權ヲ取消ス
コトヲ得
第十六條政府重要鑛物ノ增產ヲ圖ル爲
必要アリト認ムルトキハ重要鑛物ヲ目
的トスル鑛業權者ニ對シ事業設備ノ新
設擴張若ハ改良ヲ命ジ又ハ作業方法
若ハ作業用品ノ規格ニ關シ必要ナル事
項ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ規
定ニ依リ爲シタル命令ニ因リ生ジタル
損失ヲ補償ス
第十七條政府ハ重要鑛物ヲ目的トスル
鑛業權者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況
ニ關シ報〓ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其
ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
政府ハ重要鑛物ヲ目的トスル鑛業權者
ニ對シ其ノ業務及會計ニ關シ監督上必
要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコト
ヲ得
第十八條本法ニ依リ爲シタル手續其ノ
他ノ行爲ハ鑛業權者ノ承繼人ニ對シテ
モ其ノ效力ヲ有ス
第十九條政府第四條第二項(第十二條
第一項ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含
ム)ノ規定ニ依ル裁定、第五條第二項
(第十二條第一項ノ規定ニ依リ準用ス
ル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依ル決定、第
十六條第一項ノ規定ニ依ル命令又ハ同
條第二項ノ規定ニ依ル補償ヲ爲サント
スルトキハ重要鑛物委員會ノ議ヲ經ベ
シ
重要鑛物委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第二條第一項ノ規定ニ依ル命令若
ハ同條第二項ノ規定ニ違反シ事業計
畫ノ屆出ヲ怠リ又ハ屆出デタル事業
計畫ヲ實施セザル者
二第二條第三項ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シ事業計畫ヲ變更セズシテ之ヲ
實施シタル者
三第三條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タル者
四第十四條第一項ノ規定ニ違反シ認
可ヲ受ケザル事業計畫ヲ實施シタル
者
五第十四條第二項ノ規定ニ依ル命令
ニ違反シ事業計畫ヲ變更セズシテ之
ヲ實施シタル者
六第十六條第一項ノ規定ニ依ル命令
ニ違反シタル者
第二十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第十七條第一項ノ規定ニ依ル報〓
ヲ怠リ又ハ虛僞ノ報〓ヲ爲シタル者
二第十七條第一項ノ規定ニ依ル檢査
ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
三第十七條第二項ノ規定ニ依ル命令
又ハ處分ニ違反シタル者
第二十二條法人ノ代表者又ハ法人若ハ
人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十條
又ハ前條第一號若ハ第三號ノ違反行爲
ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外
其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前二條ノ刑ヲ
科ス
第二十三條金鑛及砂金ニ關シテハ第二
條第三條、第十六條及第十七條ノ規
定ハ之ヲ適用セズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ施行後五年間ヲ限リ其ノ效力ヲ有
ス
本法失效ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
日本產金振興株式會社法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
日本產金振興株式會社法案
日本產金振興株式會社法
第一章總則
第一條日本產金振興株式會社ハ產金事
業ノ振興ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ム
コトヲ目的トスル株式會社トス
第二條日本產金振興株式會社ハ其ノ本
店ヲ東京市ニ、支店ヲ京城府ニ置ク
日本產金振興株式會社ハ前項ノ外政府
ノ認可ヲ受ケ支店又ハ出張所ヲ設クル
コトヲ得
第三條日本產金振興株式會社ノ資本
ハ五千萬圓トシ內二千五百萬圓ハ政府
ノ出資トス
日本產金振興株式會社ハ政府ノ認可ヲ
受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第四條日本產金振興株式會社ハ株金全
額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコ
トヲ得
第五條日本產金振興株式會社ノ株式ハ
記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民
又ハ帝國法人ニ限リ之ヲ所有スルコト
ヲ得
第六條日本產金振興株式會社ノ存立期
間ハ設立登記ノ日ヨリ三十年トス但シ
政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ
得
第七條日本產金振興株式會社ニ非ザル
モノハ日本產金振興株式會社又ハ之ニ
類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコト
乙酸チェ
第二章役員
第八條日本產金振興株式會社ニ社長副
社長各一人、理事三人以上及監事二人
以上ヲ置ク
第九條社長ハ日本產金振興株式會社ヲ
代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務
ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ日本產金
振興株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本產金振興株式會社ノ業務ヲ
監査ス
第十條社長及副社長ハ政府之ヲ命ジ其
ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ二倍
ノ候補者ヲ選擧シ政府其ノ中ヨリ之ヲ
命ジ其ノ任期ヲ三年トス
監事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ
選任シ其ノ任期ヲ二年トス
第十一條社長、副社長及理事ハ他ノ職務
又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政
府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
第三章營業
第十二條日本產金振興株式會社ハ左ノ
事業ヲ營ムモノトス
-金鑛ヲ目的トスル鑛業若ハ砂金ヲ
目的トスル砂鑛業(以下金鑛業ト總
稱ス)、金製鍊業又ハ金鑛業若ハ金製
鍊業ノ用ニ供スル器具機械類ノ製造
業ニ對スル資金ノ融通又ハ投資
二金鑛業又ハ金製鍊業
三金鑛業又ハ金製鍊業ノ爲必要ナル
器具、機械、材料又ハ設備ノ賣買
四含金鑛產物ノ賣買
五委託ニ依ル金鑛山ニ關スル調査又
ハ鑑定
日本產金振興株式會社ハ政府ノ認可ヲ
受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的達成
上必要ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
第十三條日本興業銀行、朝鮮殖產銀行
又ハ東洋拓殖株式會社ハ前條第一項第
一號ノ事業ニ關シ日本產金振興株式會
社ノ業務ノ一部ヲ代理スルコトヲ得
日本產金振興株式會社前項ノ銀行又ハ
會社ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメン
トスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四章產金振興債劵
第十四條日本產金振興株式會社ハ拂込
ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ產金振興債
劵ヲ發行スルコトヲ得
產金振興債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
トヲ要セズ
第十五條產金振興債劵ヲ發行セントス
ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十六條政府ハ產金振興債劵ノ元本ノ
償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十七條產金振興債劵ハ無記名式トス
但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記
名式ト爲スコトヲ得
第十八條產金振興債劵ノ所有者ハ日本
產金振興株式會社ノ財產ニ付他ノ債權
者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル
權利ヲ有ス
第十九條日本產金振興株式會社ハ社債
借換ノ爲一時第十四條ノ制限ニ依ラズ
產金振興債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ
場合ニ於テハ發行後一月以内ニ其ノ社
債總額ニ相當スル舊產金振興債劵ヲ償
還スベシ
第五章準備金
第二十條日本產金振興株式會社ハ每營
業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補
フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ
且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金
額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章監督及助成
第二十一條政府ハ日本產金振興株式會
社ノ業務ヲ監督ス
第二十二條日本產金振興株式會社借入
金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ
受クベシ
第二十三條定款ノ變更、利益金ノ處分、
合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十四條日本產金振興株式會社ハ每
營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可
ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦
同ジ
第二十五條政府ハ日本產金振興株式會
社ノ業務ニ關シ監督上又ハ產金事業ノ
振興上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十六條政府ハ日本產金振興株式會
社監理官ヲ置キ日本產金振興株式會社
ノ業務ヲ監視セシム
第二十七條日本產金振興株式會社監理
官ハ何時ニテモ日本產金振興株式會社
ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査
スルコトヲ得
日本產金振興株式會社監理官必要ト認
ムルトキハ何時ニテモ日本產金振興株
式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本產金振興株式會社監理官ハ株主總
會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第二十八條政府日本產金振興株式會社
ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十九條日本產金振興株式會社ハ每
營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割
合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對
シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第三十條日本產金振興株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合
ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度及
爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金
額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ初營業年
度ヲ除キ每營業年度ニ於テハ政府以外
ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金
額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ相當スル
額及當該營業年度ニ於テ支拂ヒタル產
金振興債劵ノ利息額ノ合計額ヲ超ユル
コトヲ得ズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ
割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先
ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還
ニ充ツベシ
初營業年度及爾後五年間ニ於ケル配當
シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所
有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ
年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其
ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツ
ベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙
殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミ
タル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ
超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看
做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年
度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金
ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益
金ト看做ス
第三十一條日本產金振興株式會社ノ每
營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割
合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ
所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ
超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其
ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株
式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ
割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル
株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有
スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ
ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十二條日本產金振興株式會社ニハ
開業ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間所得稅
及營業收益稅ヲ免除ス
第三十三條北海道、府縣及市町村其ノ
他之ニ準ズベキモノハ前條ノ期間日本
產金振興株式會社ノ事業ニ對シ地方稅
ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ
基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
第七章罰則
第三十四條日本產金振興株式會社左ノ
各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社
長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ
百圓以上二千圓以下ノ過料ニ處ス副社
長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副
社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同
一本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ
於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二第十二條ノ規定ニ依ラズシテ業務
ヲ營ミタルトキ
三第十四條ノ規定ニ違反シ產金振興
債劵ヲ發行シタルトキ
四第十九條ノ規定ニ違反シ產金振興
債劵ノ償還ヲ爲サザルトキ
五第二十五條ノ規定ニ基キテ爲シタ
ル命令ニ違反シタルトキ
第三十五條日本產金振興株式會社シ社
長、副社長及理事第十一條ノ規定ニ違
反シタルトキハ二十圓以上二百圓以下
ノ過料ニ處ス
第三十六條第七條ノ規定ニ違反シタル
者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處ス
第三十七條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
第三十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十九條政府ハ設立委員ヲ命ジ日本
產金振興株式會社ノ設立ニ關スル一切
ノ事務ヲ處理セシム
第四十條設立委員ハ定款ヲ作成シ政府
ノ認可ヲ受クベシ
第四十一條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
株主ヲ募集スベシ
第四十二條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
ヲ記載スベシ
第四十三條設立委員株主ノ募集ヲ終リ
タルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ
其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十四條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十五條創立總會ニ於テハ第十條ノ
規定ニ準ジ理事候補者ノ選擧及監事ノ
選任ヲ行フベシ
第四十六條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ日本產金振興株
式會社社長ニ引渡スベシ
第四十七條本法施行ノ際日本產金振興
株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商
號ト爲ス會社ハ本法施行後六月以内ニ
其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第三十六條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ
前項ニ揭グル者ニ適用セズ
第四十八條登錄稅法第六條第一項第十
一號中「又ハ燃料興業債劵」ヲ「、燃料興
業債劵又ハ產金振興債劵」ニ改ム
第四十九條金資金特別會計法第四條中
「又ハ國債」ヲ「、國債、產金振興債劵又
ハ總額二千五百萬圓ヲ限リ日本產金振
興株式會社株式」ニ改ム
〔國務大臣吉野信次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=11
-
012・吉野信次
○國務大臣(吉野信次君) 只今議題ニナリ
マシタ二ツノ法律案ニ付キマシテ御說明ヲ
申上ゲタイト存ジマス、第一ノ重要鑛物增
產法案デアリマスルガ、申ス迄モナク鑛物
資源ハ、國防上產業上最モ重要ナル物デゴ
ザイマシテ、之ガ增產ヲ圖リマスルコトハ、
現下ノ時局ニ於キマシテ極メテ緊要ノコト
デアリマス、從來重要ナル鑛產物ニシテ、
其ノ大部分ノ供給ヲ外國カラノ輸入ニ仰イ
デ居ッタ物モ少クナイノデアリマスルガ、
幸ヒナコトニハ是等ノ鑛物ノ或物ハ、我ガ
國ニ於キマシテ尙相當地下ニ埋藏セラレテ
居ルノデアリマシテ、此ノコトハ從來ノ調
査等ニ依リマシテモ略〓ミ想像ガ出來ルノデア
リマス、ソコデ此ノ法律案ハ是等ノ鑛物ノ
增產ヲ圖ルコトヲ目的トスルモノデゴザイ
マシテ、其ノ手段ト致シマシテ、先ヅ現在
鑛業權ヲ持ッテ居リナガラ、徒ニ其ノ權利ノ
上ニ眠ッテ居ル、所謂睡眠鑛區ト云フヤウナ
此ノ權利者ニ其ノ權利ノ行使ヲ促シ、或ハ
錯雜併存致シテ居リマスル鑛區ノ間ノ整理
ヲ促進セシメ、或ハ重要鑛物ヲ目的トスル
鑛業權者ニ對シマシテ、其ノ開發ニ關スル
事業計畫ヲ屆出デシムルト共ニ、更ニ進ミ
マシテハ必要ニ應ジテ、增產ニ關スル施設
ニ付キマシテ、適切ナル措置ヲ講ジヨウト
スルノデアリマス、尤モ本法律案ニ於キマ
シテモ、抵當權者ノ利益等ニ付キマシテハ、
十分ニ考慮ヲ拂フコトニ致シテ居リマス、
又權利關係ノ重要ナル事項、竝ニ增產ニ關
スル施設命令等ニ付キマシテハ、特ニ官民
有識者ヲ以テ組織致シマスル重要鑛物委員
會ヲ作リマシテ、是等ノ委員會ニ付議致シ
マシテ、以テ法ノ運用ノ適正ヲ期スル考デ
アリマス、尙此ノ法律案ニ規定シテ居リマ
スル條項ノ中ニハ、現行ノ鑛業法規ニ密接
ナル關係ヲ有スルモノモゴザイマシテ、或
ハ現在ノ鑛業法中ニ規定シテ然ルベキモノ
ト思レルモノモ少クナイノデアリマス、併
シナガラ御承知ノ通リ現行ノ鑛業法ノ一般
改正ハ、目下政府ニ於キマシテ、調査委員
會ヲ設ケテ著々〓究ヲ進メテ居ル次第デア
リマスルカラ、其ノ邊トノ關係ヲ考慮致シ
マシテ、此ノ法律案ハ其ノ施行期間ヲ五箇
年ト致シマシタ次第デゴザイマス、次ニ日
本產金振興株式會社法案デアリマスルガ、
我ガ國ニ於キマシテ金ノ增產ノ必要ナルコ
トハ、玆ニ事新ラシク申述べル必要モナイ
ノデアリマシテ、政府ニ於キマシテハ昭和
七年以來色々產金事業ノ奬勵助長ノ方策ヲ
行ッテ參リ、更ニ前々議會卽チ第七十一議會
ニ於キマシテハ、一層金ノ增產奬勵ノ施設
ヲ擴充致シマスルト共ニ、產金法ナル法律
ヲ制定致シマシタコトハ御承知ノ通リデア
リマス、幸ニ我ガ國ノ產金額ハ近年順調ナ
ル增加ヲ示シツヽアルノデアリマスガ、金
ノ增產ハ我ガ國策ノ遂行上、今後益〓其ノ重
要性ヲ加ヘルノデアリマスカラ、政府ニ於
キマシテモ之ガ爲ニハ尙一層ノ努力ヲ致シ
タイト考ヘルノデアリマス、ソコデ此ノ際
產金事業ノ振興ヲ圖リマスル爲ニ、半官半
民ノ日本產金振興株式會社ト云フモノヲ設
立致シマシテ、特ニ產金事業ニ對シマシテ、
必要ナル資金ヲ潤澤ニ供給シ得ルノ途ヲ開
キ、又低品位ノ鑛石ノ處理ヲ促シ、其ノ他
金ノ增產上必要ナル色々ノ助成ノ事業ヲ行
ハシメタイト存ズルノデアリマス、此ノ法
案ハ畢竟スル處、右會社ノ設立ニ關スルモ
ノデアリマス、何卒此ノ二法案トモ十分ニ
御審議下サイマシテ、御協賛アラムコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=12
-
013・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
ル重要鑛物增產法案外一件ハ重要ナ法案デ
アリマスルガ故ニ、其ノ特別委員數ヲ十八
名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議
ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=13
-
014・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=14
-
015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
重要鑛物增產法案外一件特別委員
侯爵山內豐景君侯爵四條隆愛君
伯爵副島道正君子爵井上匡四郞君
子爵立花種忠君子爵高橋是賢君
出淵勝次君男爵松田正之君
男爵杉溪由言君遠藤柳作君
堀啓次郞君久恒貞雄君
松本勝太郞君平沼亮三君
絲原武太郞君小野耕一君
大西虎之介君男爵水谷川忠麿君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第五、不動
產融資及損失補償法中改正法律案、日程第
六、產業組合中央金庫法中改正法律案、日
程第七、漁業法中改正法律案、日程第八、產
業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改
正法律案、日程第九、產業組合自治監査法
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等
ノ五案ヲ一括シテ議題トスルコトニ御異議
ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、賀屋大藏大臣
不動產融資及損失補償法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
不動產融資及損失補償法中改正法律案
不動產融資及損失補償法中左ノ通改正
ス
第二條中「六年」ヲ「九年」ニ、「十五年」ヲ
「十八年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
產業組合中央金庫法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合中央金庫法中改正法律案
產業組合中央金庫法中左ノ通改正ス
第二條第三項中「產業組合聯合會」ノ下ニ
「及漁業組合聯合會」ヲ加フ
第四條ノ二產業組合中央金庫ノ資本金
ヲ五百萬圓增加シ之ヲ五萬口ニ分チ一
口ノ金額ヲ百圓トス
第五條第一項中「又ハ產業組合」ヲ「、產業
組合、漁業組合聯合會又ハ漁業協同組
合」ニ改メ同條第二項中「產業組合聯合
會」ノ下ニ「又ハ漁業組合聯合會」ヲ、
「產業組合」ノ下ニ「又ハ漁業協同組合」
ヲタツ
第六條ノ二政府ハ第四條ノ二ノ規定ニ
依ル資本金ノ增加ノ爲二百五十萬圓ヲ
限リ產業組合中央金庫ニ出資スベシ政
府ハ其ノ出資ニ對シ出資スベキコトト
爲リタル當初ニ於テ五十萬圓ヲ拂込ミ
爾後四箇年間ニ其ノ殘餘ヲ拂込ムモノ
トス
第四條ノ二ノ規定ニ依ル增加資本金ニ
付テハ政府以外ノ出資者ハ其ノ出資ニ
對シ出資スベキコトト爲リタル當初ニ
於テ出資額ノ五分ノ一ヲ拂込ミ爾後十
箇年間ニ其ノ殘餘ヲ拂込ムモノトス
第十二條第一項中「二十名」ヲ「三十名」ニ
改メ「產業組合關係者」ノ下ニ「及漁業組
合關係者」ヲ加フ
第十三條中「又ハ所屬產業組合」ヲ「所屬產
業組合、所屬漁業組合聯合會又ハ所屬漁
業協同組合」ニ改メ同條第五號中「產業組
合、」ノ下ニ「漁業組合聯合會、漁業組合、」
ヲ加フ
第十四條ノ二第十三條第二號但書ノ規
定及前條ニ規定スル第十三條第二號但
書ノ規定ハ產業組合中央金庫ガ政府資
金ノ融通ヲ爲ス場合ニハ之ヲ適用セズ
前項ノ融通金額及之ヲ爲ス爲發行スル
產業債劵ノ額ハ第十三條第二號但書及
前條ニ規定スル第十三條第二號但書ノ
制限ノ計算上之ヲ算入セズ
第十五條第一項第一號中「買入」ノ下ニ、
「、應募又ハ引受」ヲ加へ同項第三號中「又
ハ產業組合」ヲ「、產業組合、漁業組合聯合
會又ハ漁業組合」ニ改メ同項ニ左ノ一號
ヲ加フ
四產業組合聯合會、產業組合、漁業
組合聯合會又ハ漁業組合ノ發達ヲ圖
ル爲必要ナル施設ヲ行フ法人ニ對シ
主務大臣ノ認可ヲ受ケ短期貸付ヲ爲
スコト
第二十三條削除
第三十條中「每事業年度ノ初ニ於テ」ヲ
「事業年度ニ從ヒ六箇月每ニ」ニ、「其ノ事
業年度內」ヲ「其ノ期間內」ニ改ム
第三十三條產業組合中央金庫ハ每事業
年度ニ於ケル出資ニ對シ配當シ得ベキ
剩餘金額ガ政府以外ノ者ノ拂込濟出資
額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄
政府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲ス
コトヲ要セズ
產業組合中央金庫ノ每事業年度ニ於ケ
ル出資ニ對シ配當シ得ベキ剩餘金額ガ
政府以外ノ者ノ拂込濟出資額ニ對シ年
百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ
政府以外ノ者ニ對シ年百分ノ四ノ割合
ヲ超エ剩餘金配當ヲ爲サントスルトキ
ハ其ノ超過スル剩餘金額ハ剩餘金配當
額ガ總拂込濟出資額ニ對シ均一ノ割合
ニ達スル迄政府以外ノ者ノ拂込濟出資
額及政府ノ拂込濟出資額ニ對シ一ト三
割トノ合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
漁業法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
漁業法中改正法律案
漁業法中左ノ通改正ス
第四十三條ノ二第一項第四號中「又ハ」ヲ
「若ハ」ニ改メ「資金ノ供給」ノ下ニ「又ハ
組合員ノ貯金ノ受入」ヲ加ヘ同項ニ左ノ
但書ヲ加フ
但シ組合員ニ出資ヲ爲サシメザル漁業
組合ハ組合員ノ貯金ノ受入ニ關スル施
設ヲ爲スコトヲ得ズ
同條第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ改メ
「組合ノ施設ハ」ノ下ニ「組合員ノ貯金ノ
受入ニ關スルモノヲ除クノ外」ヲ加ヘ同
條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
組合員ノ貯金ノ受入ニ關スル施設ヲ爲
ス漁業組合ハ組合員外ノ者ニシテ組合
加入ノ豫約ヲ爲シタルモノノ出資一口
ノ金額及出資一口ニ付規約ノ定ムル所
ニ依リ加入ニ關シ拂込ムベキ金額ノ合
計額ニ達スル迄ノ貯金又ハ組合員ト同
一ノ家ニ在ル者ノ貯金ノ受入ヲ爲スコ
トヲ得
第四十四條第五項中「第四十三條ノ二」ヲ
「第四十三條ノ二第一項第三項」ニ改メ同
項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ第四十三條ノ二第一項各號及第三
項中組合員トアルハ貯金ノ受入ニ關ス
ル場合ヲ除クノ外所屬ノ組合、聯合會
及組合員トス
第四十四條ノ二漁業組合聯合會ハ日本
勸業銀行、日本興業銀行、北海道拓殖
銀行、農工銀行又ハ產業組合中央金庫
ニ對シ所屬ノ組合又ハ聯合會ノ爲ニ債
務ノ保證ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ債務ノ保證ヲ爲シタ
ルトキハ漁業組合聯合會ハ銀行又ハ產
業組合中央金庫ノ委任ヲ受ケ其ノ債權
ノ取立ヲ爲スコトヲ得
第四十四條ノ三道府縣ヲ區域トスル漁
業組合聯合會ハ規約ノ定ムル所ニ依リ
所屬ノ組合又ハ聯合會ニ對シ手形ノ割
引ヲ爲スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中左ノ通改正ス
第二條中「六年」ヲ「九年」ニ、「十五年」ヲ
「十八年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
產業組合自治監査法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
產業組合自治監査法案
產業組合自治監査法
第一條產業組合ハ其ノ堅實ナル發達ヲ
圖ル爲自治監査ヲ行フ目的ヲ以テ產業
組合監査聯合會ヲ設立スルコトヲ得
產業組合聯合會ハ本法ノ適用ニ付テハ
之ヲ產業組合ト看做ス
第二條產業組合監査聯合會ハ法人トシ
全國ヲ通ジ一箇トス
產業組合監査聯合會ノ設立ハ主務大臣
ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣必要アリト認ムルトキハ產業
組合ニ對シ產業組合監査聯合會ニ加入
スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第三條產業組合監査聯合會ノ設立アリ
タルトキハ事務所ノ所在地ニ於テ設立
ノ登記ヲ爲スベシ登記シタル事項中ニ
變更ヲ生ジタルトキ亦同ジ
產業組合監査聯合會ノ設立又ハ登記シ
タル事項ノ變更ハ其ノ登記ヲ爲スニ非
ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコト
乙酸)、
第四條產業組合監査聯合會ハ產業組合
監査員ヲ設置ス
產業組合監査員ノ選任及解任ハ主務大
臣ノ認可ヲ受クベシ
產業組合監査員ハ產業組合監査聯合會
ニ屬スル產業組合ノ事務所、倉庫、加
工場其ノ他ノ場所ニ臨ミ金錢、物品、
帳簿其ノ他ノ物件ヲ調査シ當該產業組
合ノ事業及財產ノ狀況ヲ監査スルコト
ヲ得
產業組合監査員及其ノ行フ監査ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條行政官廳ハ產業組合監査聯合會
又ハ產業組合監査員ニ對シ產業組合ノ
監査上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第六條產業組合監査聯合會ニハ所得稅
ヲ課セズ
產業組合監査聯合會ガ本法ニ基キテ爲
ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第七條本法ニ規定スルモノノ外產業組
合監査聯合會ノ設立、登記、管理、監督、
解散、〓算其ノ他產業組合監査聯合會
ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第八條產業組合中央會及產業組合中央
金庫ハ產業組合監査聯合會ニ加入スル
コトヲ得
第九條產業組合ノ役員產業組合監査員
ノ行フ監査ヲ拒ミタルトキハ三百圓以
下ノ過料ニ處ス
產業組合監査員第五條ノ規定ニ依ル命
令ニ違反シタルトキハ三百圓以下ノ過
料ニ處ス
產業組合監査聯合會ノ役員本法又ハ本
法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルト
キハ三百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前三項ノ過料ニ之ヲ準用
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=18
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019・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ不動產融資及損失補償法中改正法律
案ニ付キマシテ說明申上ゲマス、不動產融
資及損失補償法ハ、昭和七年ニ當時ノ金融
情勢ニ顧ミ銀行ノ有スル不動產固定資產ヲ
資金化シテ、其ノ活動ヲ圓滑ナラシメムトス
ル趣旨ヲ以テ制定サレマシタノデ、其ノ不
動產資金ノ融通期間ヲ三箇年ト定メタノデ
アリマスルガ、其ノ後昭和十年ニ至リマシ
テ、其ノ期間ハ更ニ三年延長セラレ、本年
九月末ヲ以テ滿了スルコトト相成ッテ居ル
ノデアリマス、然ルニ最近ニ於ケル銀行ノ
不動產固定資產ノ情況ヲ見マスルニ、近年
ニ於ケル經濟界ノ好況ノ影響ヲ受ケマシテ、
之ガ整理モ漸次進捗シテ參ッタノデアリマ
スガ、尙之ヲ個々ノ銀行ニ付テ觀マスル時
ハ、本法利用ノ餘地ハ依然存スルモノト認
メラレルノデアリマス、ノミナラズ事變ノ
際デモアリマスノデ、本施設ハ尙之ヲ當分
存續セシムルヲ適當ト考ヘルノデアリマス、
仍テ本法ノ不動產資金ノ融通期間ヲ更ニ三
箇年間延長シマスルト共ニ、資金融通ノ最
長期間モ現在本法ノ施行ノ日ヨリ十五年以
內トセラレテ居リマスノヲ三年間延長致シ、
之ヲ本法施行ノ日ヨリ十八年以內トスルヲ
適當ト認メマシタノデ、本案ヲ提出致シマ
シタ次第デアリマス、御審議ノ上何卒御協
贊アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 高橋農林政務次
官
〔政府委員高橋守平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=20
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021・高橋守平
○政府委員(高橋守平君) 先ヅ產業組合中
央金庫法中改正法律案ノ提出理由ヲ御說
明申上ゲマス、產業組合中央金庫ハ產業組
合金融ノ中樞機關トシテ、農村金融ニハ相
當其ノ機能ヲ發揮シツヽアルノデアリマス
ガ、漁村ニ於キマシテハ金融上不十分ナ所
ガアリマシテ、漁村ノ經濟上ノ中樞機關タ
ル漁業組合ハ、中樞的金融機關ヲ持タヌ爲
メ、其ノ活動上遺憾ナ所ガアリマスノデ、
漁業組合ニ對シ產業組合中央金庫ニ加入ス
ルノ途ヲ開キマスルト共ニ、刻下組合金融
ノ實情ニ應ジマシテ、其ノ活動ヲ一層促進
シ且適切ナラシメマスル爲ニ、產業組合中
央金庫法中不便ノ點ヲ改正致シ、尙又產業
組合中央金庫ニ對スル政府ノ出資ニ對シマ
シテハ、從來剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要
シナイコトニナッテ居リマスガ、其ノ期間ハ
近ク終了致シマスノデ、同金庫ノ現狀及漁
業組合ノ新規加入ノ事實ニ鑑ミマシテ、政
府ノ出資ニ對スル今後ノ配當ニ關スル規定
ヲ定メル必要ガアリマスルノデ本案ヲ提出
致シタ次第デアリマス、改正ノ主要ナル點
ヲ申上ゲマスト、一、漁業組合聯合會及漁
業協同組合ノ產業組合中央金庫ニ對スル加
入ノ途ヲ開クコト、二、漁業組合聯合會及
漁業協同組合ノ產業組合中央金庫加入ニ伴
ヒ、同金庫ノ資本金ヲ新タニ五百萬圓增加
シ、政府ハ其ノ中二百五十萬圓ヲ限リ出資
スルコト、三、評議員ノ定員二十名以內ヲ
三十名以內ニ增加スルコト、四、年賦償還
貸付額ノ制限ニ關スル現行法ノ規定ヲ政府
資金ヲ融通スル場合ニハ適用セザルコトト
スルコト、五、餘裕金運用ノ範圍ヲ擴張ス
ルコト、六、事業年度ニ付テハ一般ノ產業
組合及同聯合會ト同樣ノ規定ニ依ルコトト
スルコト、七、政府以外ノ者ノ出資ニ對ス
ル配當ガ一定率以下ナル場合ニハ、政府ノ
出資ニ對スル配當ヲ制限スルコトト致シタ
コトデアリマス、次ニ漁業法ノ改正ニ付御
說明申上ゲタイト存ジマス、漁村金融ノ圓
滑ヲ圖ル爲、先ニ御說明申上ゲマシタ通
リ漁業組合聯合會及漁業協同組合ヲ產業組
合中央金庫ニ加入セシムルト共ニ、漁村經
濟ノ中樞機關タル漁業組合聯合會及漁業協
同組合ニ貯金ノ受入ニ關スル施設ヲ認メル
外、漁業組合聯合會ノ活動促進ヲ圖ル爲、
二、三ノ事項ニ關スル規定ヲ定メル必要ガ
アリマスノデ本案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、改正ノ主ナル點ハ第一ニ、漁業組合聯
合會及漁業協同組合ニ貯金ノ受入ニ關スル
施設ヲ認ムルコト
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク〕
第二ニ、日本勸業銀行、日本興業銀行、北
海道拓殖銀行、農工銀行又ハ產業組合中央
金庫ガ漁業組合聯合會及漁業組合ニ對シ資
金ノ供給ヲ爲スニ際シ、漁業組合聯合會ヲ
シテ保證ヲ爲スコトヲ得シムルコト、第三
ニ道府縣ヲ區域トスル漁業組合聯合會ガ、
所屬ノ組合又ハ聯合會ニ對シ手形ノ割引ヲ
爲スコトトシタノデアリマス、次ニ產業組
合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法
律案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、產業組合
中央金庫特別融通及損失補償法ハ、昭和七
年施行以來相當ノ成績ヲ擧ゲテ居ルノデア
リマスガ、御承知ノ通リ其ノ融通期間ハ本年
九月末ヲ以テ終了スルコトトナッテ居ルノ
デアリマス、然ルニ產業組合ノ現狀ニ鑑ミ
マスレバ、尙本制度ヲ繼續致シマシテ、事
變下ニ於ケル組合金融ノ疏通ニ資スルコト
ガ必要デアルト考ヘルノデアリマス、仍テ
組合金融ノ現況、整理更生ニ要スベキ期間
等ヲ考慮致シマシテ、特別融通資金ノ融通
期間及融通期限ヲ尙三箇年延長スルコトト
致シタノデアリマス、最後ニ產業組合自治
監査法案デアリマスガ、本法案ハ曩ニ第七
十囘帝國議會ニ之ヲ提出致シマシテ、貴族
院ニ於キマシテハ、可決セラレ、衆議院ニ
於キマシテハ、委員會ニ付託セラレタ儘、
衆議院ノ解散ノ爲不成立ニ終ッタノデアリ
マスガ、產業組合ノ現狀ニ鑑ミマシテ、玆
ニ本會議ニ重ネテ之ヲ提案致シマシタヤウ
ナ次第デアリマス、產業組合ノ堅實ナル發
達ヲ期スル上ニ於キマシテハ、之ガ指導監
督ノ施設ヲ充實スルコトガ必要デアリマス、
之ガ爲ニハ中央及地方ノ行政官廳ノ監督施
設ト相俟チ、產業組合自身ノ自治的監査ノ
制度ヲ確立シ、自治監査ノ厲行ヲ期スルコ
トガ極メテ肝要ト存ズルノデアリマス、本
案ハ右ノ趣旨ニ依リマシテ、全國ノ產業組
合ヲシテ產業組合監査聯合會ヲ組織セシ
メ、官廳ノ監督ノ下ニ監査員ヲ設置シテ、組合
ノ監査ニ當ラシメ、以テ自治監査ノ實ヲ擧ゲ
ムコトヲ期セムトスルモノデアリマス、以
上ガ四法案ヲ提出致シマシタ理由ノ〓要デ
アリマス、何卒御審議ノ上御協贊アラムコ
トヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=21
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022・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御質疑
ガナケレバ五案ノ特別委員ノ氏名ヲ報〓致
サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
不動產融資及損失補償法中改正法律案外
四件特別委員
侯爵佐竹義春君子爵伊集院兼知君
子爵西大路吉光君男爵園田武彥君
加藤政之助君中村圓一郞君
小倉正恒君吉田羊治郞君
佐々木八十八君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=22
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023・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第十、
有價證劵引受業法案、政府提出、第一讀會、
賀屋大藏大臣
有價證劵引受業法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十三年三月五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
大藏大臣賀屋興宣
有價證劵引受業法案
有價證劵引受業法
第一條本法ニ於テ有價證劵引受業トハ
有價證劵ノ引受又ハ募集ノ取扱ヲ爲ス
營業ヲ謂フ
前項ノ有價證劵ノ種類ハ勅令ヲ以テ之
フォル
第二條有價證劵引受業ハ主務大臣ノ免
許ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ
得ズ
第三條有價證劵引受業ハ資本金二百萬
圓以上ノ株式會社ニ非ザレバ之ヲ營ム
コトヲ得ズ
第四條第二條ノ免許ヲ受ケタル者(以
下證劵引受會社ト稱ス)ハ有價證劵引
受業ニ附隨スル業務又ハ有價證劵ノ賣
買若ハ其ノ媒介ノ外他ノ業務ヲ營ムコ
トヲ得ズ但シ主務大臣ノ許可ヲ受クル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第五條證劵引受會社ハ他ノ法律ノ制限
ニ拘ラズ社債募集ノ委託ヲ受ケ又ハ社
債募集ノ委託ヲ受ケタル會社ナキニ至
リタル場合ノ事務承繼者ト爲ルコトヲ
得
第六條證劵引受會社ハ左ノ場合ニ於テ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
-商號ヲ變更セントスルトキ
二資本金ヲ變更セントスルトキ
三支店其ノ他ノ營業所又ハ代理店ヲ
設置セントスルトキ
四本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更
セントスルトキ
第七條證劵引受會社ノ合併ハ主務大臣
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ
生ゼズ
第八條證劵引受會社ハ資本ノ總額ニ達
スル迄ハ利益ヲ配當スル每ニ準備金ト
シテ其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツ
ベシ
第九條證劵引受會社ノ營業年度ハ六月
ヨリ十一月迄及十二月ヨリ五月迄トス
第十條證劵引受會社ハ營業年度每ニ業
務報告書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提
出スベシ
第十一條證劵引受會社ハ營業年度每ニ
主務大臣ノ定ムル樣式ニ依リ貸借對照
表ヲ作成シ新聞紙ニ依リ之ヲ公〓スベ
シ
第十二條主務大臣ハ何時ニテモ證劵引
受會社ヲシテ其ノ業務ニ關スル報〓ヲ
爲サシメ又ハ其ノ帳簿書類ヲ提出セシ
ムルコトヲ得
第十三條主務大臣ハ何時ニテモ部下ノ
官吏ニ命ジテ證劵引受會社ノ業務及財
產ノ狀況ヲ檢査セシムルコトヲ得
第十四條主務大臣ハ證劵引受會社ノ業
務又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要ト認ムル
トキハ業務ノ停止ヲ命ジ其ノ他必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第十五條證劵引受會社ガ法令、定款若
ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ
害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大
臣ハ業務ノ停止若ハ取締役、監査役ノ
改任ヲ命ジ又ハ營業ノ免許ヲ取消スコ
トヲ得
第十六條主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命ゼ
ラレタル證劵引受會社ニ對シ其ノ整理
ニ依リ必要ト認ムルトキハ營業ノ免許
ヲ取消スコトヲ得
第十七條主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ
有價證劵引受業ヲ營ミタル者ハ五千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第十八條左ノ場合ニ於テ取締役、監査
役又ハ支配人ヲ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第十條ノ規定ニ違反シ業務報告書
ヲ提出セズ又ハ虚僞ノ業務報〓書ヲ
提出シタルトキ
二第十一條ノ規定ニ違反シ公〓ヲ爲
サズ又ハ虚僞ノ公〓ヲ爲シタルトキ
三第十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シ報〓ヲ爲サズ若ハ虚僞ノ報〓ヲ爲
シ又ハ帳簿書類ヲ提出セザルトキ
四第十三條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタルトキ
第十九條左ノ場合ニ於テハ取締役、監
査役又ハ支配人ヲ十圓以上千圓以下ノ
過料ニ處ス但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ科ス
ベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
-第四條、第六條又ハ第八條ノ規定
ニ違反シタルトキ
二第十條ノ規定ニ依ル業務報告書ノ
提出又ハ第十一條ノ規定ニ依ル公〓
ヲ怠リタルトキ
三本法ニ基キテ爲ス命令ニ違反シタ
ルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ニ定ムル過料ニ之ヲ
準用ス
第二十條銀行、信託會社又ハ特別ノ法
律ニ依リ設立セラレタル法人ニシテ有
價證劵引受業ヲ營ム者ニハ本法ヲ適用
セズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ有價證劵引受業ヲ營ム
者又ハ其ノ營業ヲ承繼シタル者ハ本法施
行ノ日ヨリ三月ヲ限リ第二條ノ規定ニ拘
ラズ其ノ營業ヲ爲スコトヲ得
前項ニ揭グル者前項ノ期間內ニ第二條ノ
免許ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ
對スル免許又ハ不免許ノ處分ノ日迄亦前
項ニ同ジ
本法施行ノ際迄一年以上引續キ有價證劵
引受業ヲ營ム者第二項ノ期間內ニ免許ヲ
申請スルトキハ本法施行後二年ヲ限リ第
三條及第四條ノ規定ヲ適用セズ
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=23
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024・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 有價證劵引受業
法案ニ付キマシテ說明申上ゲマス、御承知
ノ如ク公社債ノ發行ハ、銀行債等一部特殊
ノモノヲ除キマシテハ、其ノ大部分ガ銀行、
信託會社又ハ證劵引受業者ノ手ヲ經テ行ハ
レテ居ルノデアリマスル、從ッテ一般金融
政策ノ上カラ見マシテモ、又生產力擴充ニ
要スル資金調達ノ點ヨリ考ヘマシテモ、證
劵引受業者ノ地位ハ益〓重要ナルモノト相
成ッテ參リマシタノデアリマス、ソレニモ
拘リマセズ今日迄之ニ對シ政府ニ於テ監督
ヲ爲シ得ル途ガナカッタ爲ニ、尠カラズ不便
ノ點ガアリマシタノデアリマス、仍テ今囘
是等業者ノ業務ニ付監督ヲ加フルト共ニ、
一面其ノ業務ノ堅實ナル發展ヲ期シタイト
思フノデアリマス、玆ニ本法律案ヲ提出致
シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
御協賛アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=24
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025・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御質疑ガナ
ケレバ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔丸龜書記官朗讀〕
有價證劵引受業法案特別委員
侯爵淺野長之君子爵三室戶敬光君
子爵梅園篤彥君男爵高崎弓彥君
男爵沖貞男君久保市三郞君
油井德藏君宇野勇作君
野村德七君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=25
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026・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第十一
ヨリ日程第二十一迄ノ請願、會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
意見書案
支那文化工作施設ニ關スル件
長野市旭町千九十八番地平民林八十
司外一名呈出
右ノ請願ハ今ヤ支那ニ於テハ不法ナル思
想ト專恣ナル勢力漸ク蹙リ新興勢力ノ擡
頭ニヨリ庶政一新ニ向ハムトス此ノ秋ニ當
リ我國對支文化事業ヲ擴充シ以テ日支兩國
民ノ眞ノ提携ヲ圖ルハ緊要ナルニ依リ請
願人等所案ノ如ク之カ計畫ヲ樹立實施シ
以テ東洋平和ノ確立ニ寄與セシメラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
未成線鐵道南谷線及南勝線一部速成ニ
關スル件
鳥取縣東伯郡倉吉町長松田〓松外五
名呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道南谷線及南勝線ハ
山陰、山陽兩道ヲ連絡スル重要線路ニシ
テ產業、交通竝軍事上資スル所多大ナ
ルニ依リ目下工事中ノ南谷線ハ本年度內
ニ之ガ完成ヲ期スルト共ニ南勝線ノ中鳥
取縣東伯郡南谷村ヨリ岡山縣眞庭郡湯原
村ニ至ル區間ハ速ニ著工セラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
鳥取縣天神川改修工事繰上施行ノ件
鳥取縣東伯郡倉吉町長松田〓松外十
九名呈出
右ノ請願ハ鳥取縣ノ中央ヲ貫流スル天神
川ノ治水工事ハ昭和九年度ヨリ十五箇年
繼續事業トシテ現ニ施行中ナリト雖同川
ハ其ノ流域東伯郡內大部分ノ町村ニ及フ
重要河川ナルニ大風雨每ニ容易ニ決潰氾
濫シ過去數次ノ慘害ハ其ノ地方產業ニ與
ヘシ打擊尠カラス且之カ爲流域住民ノ不
安甚シキハ遺憾ナルニ依リ同工事ハ其ノ
事業年度ヲ相當繰上ケ又ハ豫定年度割ヲ
變更シ最初ノ數年度間ニ大部分ヲ施行セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
國立自然博物館設立ノ件
東京市本〓區本富士町東京帝國大學
內日本動物學會會長谷津直秀外五名
呈出
右ノ請願ハ各種ノ天然資源ヲ綜合的且有
機的ニ蒐集調査整理スル自然博物館ノ設
立ヲ圖ルハ現下ノ情勢ニ鑑ミ緊要事ナル
ニ依リ速ニ之ヲ實現シ以テ科學〓育ノ徹
底、文化ノ向上、延テハ利用厚生ニ寄與
シ併セテ美術博物館ト共ニ觀光上ノ利
便ニモ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
石川縣上熊野郵便局ニ集配事務開始ノ
件
石川縣羽咋郡上熊野村長前村十兵衛
外一名呈出
右ノ請願ハ石川縣羽咋郡上熊野村附近ハ
近時運輸交通機關ノ發達著シク從テ通信
ノ敏速ヲ要スルコト切ナルニ拘ラス同村
ニ在ル上熊野郵便局ハ無集配郵便局ナル
爲住民ノ不利不便尠カラサルニ依リ速ニ
同局ニ集配事務ヲ開始セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
和歌山縣勝浦港内暗礁取除工事國庫補
助ノ件
和歌山縣東牟婁郡勝浦町長岸泰一呈
出
右ノ請願ハ和歌山縣東牟婁郡勝浦商漁港
ハ太平洋ニ面スル良港ニシテ近時益發展
途上ニアリ將來紀勢鐵道ノ完成ト相俟テ
產業、交通竝軍事上寄與スル所多大ナル
ニ拘ラス港內東方ニ渡ノ島暗礁散在シ爲
ニ港ノ利用價値著シク減殺セラレ之カ除
去工事ヲ地元町ニ於テ企圖スルコト久シ
キモ工費多大ナル爲未實現スル能ハサル
ニ依リ速ニ國庫補助ノ下ニ和歌山縣營ニ
テ之カ取除工事ヲ施行セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別冊及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
豫定線日田、守實間鐵道速成ノ件
大分縣中津市長竹岡吉太郞外二十一
名呈出
右ノ請顯ハ豫定線日田、守實間鐵道ヲ速
成シテ久大線ト耶馬溪鐵道トノ連絡ヲ圖
ルハ沿線地方ニ於ケル鑛產資源ノ開發上
多大ノ裨益アルノミナラス大分縣中津築
港ノ完成ト相俟テ運輸交通上亦貢獻スル
所大ナルニ依リ速ニ之カ實現ヲ圖ラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
中華民國及滿洲國ニ於ケル澱粉輸入關
稅ニ關スル件
北海道札幌市北四條西七丁目北海道
農會長男爵佐藤昌介呈出
右ノ請願ハ我國澱粉事業ハ近時長足ノ進
步ヲ遂ケ之カ製品ノ國內自給ハ勿論海外
市場ニ迄進出シ國際貸借上貢獻スル所多
大ナルニ拘ラス隣邦中華民國臨時政府及
滿洲國ニ於テ澱粉ニ輸入稅ヲ課セラレツ
ツアルハ我國斯業ノ發展上甚遺憾ナルニ
依リ之カ輸入稅ヲ撤廢スルヤウ政府ニ於
テ斡旋セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
學校看護婦令制定ノ件
東京市芝區芝公園二十三號地東京市
〓育局體育課內平民醫師杉田武義外
一名呈出
右ノ請願ハ小學校ニ於ケル虚弱兒童ノ激
增、結核病ノ蔓延、一般學童ノ體位低下
等ノ現狀ニ鑑ミ之カ對策ヲ講スルハ緊要
事ナルニ拘ラス獨リ學校看護婦ニ對スル
職制未制定セラレサルハ甚遺憾ナルニ依リ
學校衞生ノ關鍵ヲ等シク把握スル學校醫
竝學校〓員ノ職務規定アルカ如ク速ニ學
校看護婦令ヲ制定セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別冊及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
小樽港鐵道省理立地内ニ漁船揚場設置
ノ件
北海道小樽市若竹町十三番地漁業渡
邊金作外百七名呈出
右ノ請願ハ北海道小樽市ノ海岸一帶ハ產
業ノ發展ニ伴ヒ逐次埋立テラレ昔時ヨリ
漁業者ノ船揚場竝漁獲物處理場トシテ使
用シ來リタル海濱地ハ次第ニ岩壁トナリ
就中鐵道省ノ施行ニ係ル埋立ハ船入澗二
箇所ヲモ含ム廣範圍ノ地域ニ亙リ爲ニ漁
船竝人命ノ損傷頻出シテ斯業者ノ生活ヲ
脅威スルコト甚大ナルニ依リ鐵道省埋立
地内適當ノ地點ニ漁船八十隻ヲ陸揚シ得
ル程度ノ船揚場ヲ設置セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿
意見書案
北海道山越郡長萬部村ニ函館區裁判所
出張所設置ノ件
北海道山越郡長萬部村長田中作平呈
出
右ノ請願ハ北海道山越郡長萬部村ハ近時
交通竝產業ノ發達ニ伴ヒ登記件數增加セ
ルニ拘ラス管轄函館區裁判所八雲出張所
ニ至ルノ距離遠ク爲ニ村民ノ不利不便尠
カラサルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ同村ニ
函館區裁判所出張所ヲ設置セラレタク尙
之ニ要スル敷地其ノ他ニ就テハ地元ニ於
テ十分用意スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和十三年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣公爵近衞文麿殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=26
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027・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是等ノ請願
ハ請願委員長ノ報〓ノ通リ、採擇スルコト
ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=27
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028・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=28
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029・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程ハ全部
終了致シマシタ、次會ノ議事日程ハ決定次
第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午前十一時四十二分散會
貴族院議事速記錄第十八號正誤
頁段行誤正
二〇一三一九彊界線疆界線発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X01919380307&spkNum=29
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