1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月十七日(木曜日)午前十時十四分開議
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議事日程 第二十五號
昭和十三年三月十七日
午前十時開議
第一 東洋拓殖株式會社法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 工作機械製造事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 職業紹介法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 國家總動員法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 昭和十二年法律第八十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔石橋書記官朗讀〕
昨十六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
昭和十三年三月十八日
出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議
院ニ通知セリ
重要鑛物增產法案
日本產金振興株式會社法案
樺太地方鐵道補助法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
國定〓科書中ニ酒害豫防ニ關スル〓材插入
ノ請願外十三件ノ請願ハ各,ミ意見書ヲ附シ
卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和十二年法律第八十四號中改正法律案
可決報告書
關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太
廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ一部
ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特別會計
ニ繰入ルルコトニ關スル法律案可決報〓
書
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案可決報
〓書
請願文書表(第九囘報告)
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
東洋拓殖株式會社法中改正法律案
工作機械製造事業法案
職業紹介法改正法律案
國家總動員法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、昨十六日、三宅秀君ガ薨去
セラレマシタ、寔ニ哀悼ノ至リニ堪ヘマセ
又、同君ハ明治二十四年四月十五日本院議
員ニ任ゼラレマシテ、第二囘議會ヨリ議席
ニ列シ、爾來實ニ四十有餘年ノ久シキニ亙
リ、常ニ精勵恪勤專ラ憲政發達ノ爲ニ盡瘁
セラレタノデアリマス、而シテ去ル第七十
囘議會ニ於キマシテ、特ニ院議ヲ以テ其ノ
功勞ヲ表彰セラレマシタコトハ諸君ノ御承
知ノ通リデアリマス、就キマシテハ同君ニ
對シ、議長ノ手許ニ於キマシテ起草致シマ
シタ弔辭ヲ御贈リ致シタイト存ジマス、玆
ニ其ノ案ヲ朗讀シテ御諮リヲ致シマス
貴族院ハ多年力ヲ憲政ノ濟美ニ效シ特ニ
院議ヲ以テ其ノ功勞ヲ顯彰セラレタル議
員中央衞生會委員學校衞生調査會委員保
健衞生調査會委員東京帝國大學名譽〓授
帝國學士院會員錦雞間祇候從三位勳二等
三宅秀君ノ長逝ヲ追悼シ恭シク弔辭ヲ呈
ス
以上ノ議長ノ發議竝ニ只今朗讀致シマシタ
弔辭案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、東洋
拓殖株式會社法中改正法律案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會、大谷拓務大臣
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
東洋拓殖株式會社法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月十六日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
東洋拓殖株式會社法中改正法律案
東洋拓殖株式會社法中左ノ通改正ス
第一條中「朝鮮及外國」ヲ「內地以外ノ地
域」ニ改ム
第七條中「總裁一人」ヲ「總裁副總裁各一
人」ニ改ム
第八條第二項中「理事中一人」ヲ「副總裁」
ニ改メ同條第三項ヲ左ノ如ク改ム
副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定
ムル所ニ從ヒ東洋拓殖株式會社ノ業務
ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
第九條第一項中「總裁」ヲ「總裁及副總裁」
二人人
第十條中「總裁及理事」ヲ「總裁、副總裁
及東洋拓殖株式會社ノ業務ヲ分掌スル理
事」ニ改ム
第十一條第二項中「外國」ヲ「朝鮮以外ノ
地域」ニ改ム
第二十三條第一項中「十倍」ヲ「十五倍」
ニ、同條第二項中「第百九十九條」ヲ「第
百九十九條及第二百條ノ二」ニ改ム
第四十條ノ二ヲ削ル
第四十一條中「總裁若ハ總裁ノ職務ヲ行
ヒ又ハ代理スル理事」ヲ「總裁又ハ總裁ノ
職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁」ニ、「理
事ノ分擔業務ニ係ルトキハ理事」ヲ「副總
裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副總
裁又ハ理事」ニ、「第四十條又ハ第四十
條ノ二」ヲ「又ハ第四十條」ニ改ム
第四十二條中「總裁」ノ下ニ、「副總裁」ヲ
加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣大谷尊由君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=4
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005・大谷尊由
○國務大臣(大谷尊由君) 只今議題ニナリ
マシタ東洋拓殖株式會社法中改正法律案ニ
付テ御說明申上ゲマス、東洋拓殖株式會社
ノ營業ハ、近年次第ニ順調ナル發達ヲ遂ゲ
テ參リマシテ、其ノ投資額、收益額モ逐年
增加シ、經營事業ノ種類內容モ複雜多岐ト
ナリ、營業地域モ漸次擴張セラルヽニ至リ
マシタノデ、玆ニ副總裁一人ヲ置キ、總裁
ヲ輔佐シテ社務ノ統轄ニ當ラシメ、以テ社
務ノ圓滑遺漏ナキ運行ヲ圖リマスト共ニ、
參與理事ノ制度ヲ設ケマシテ、各方面ニ於
ケル達識者ノ參畫ヲ求メ、以テ同社ノ使命
達成上、遺憾ナカラシメムトスル次第デゴ
ザイマス、次ニ、東洋拓殖債劵ノ發行限度ハ、
拂込資本金ノ十倍、卽チ三億五千萬圓デア
リマスル處、現ニ二億四千餘萬圓ノ債劵ヲ
發行シテ居リ、餘力ハ約一億圓ニ過ギナク
ナッタノデアリマス、然ルニ同社ノ業務ハ前
述ノ通リ、最近飛躍的發展ヲ示シ、更ニ今
後朝鮮、滿洲竝ニ北支方面ニ於テ、同社ノ
企業經營ニ俟ツベキモノ極メテ多ク、從ッテ
之ガ資金ノ調達ハ最モ急務トスル所デアリ
マスノデ、之ニ對處スル爲債劵ノ發行限度
ヲ十五倍ニ擴張セムトスルノデアリマス
尙此ノ機會ニ於キマシテ、營業地域ニ關ス
ル規定其ノ他ノ規定ニ付テ、若干ノ修正削
除ヲモ致サムトスル次第デアリマス、何卒
宜シク御審議ノ上、速カニ御協贊アラムコ
トヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケレ
バ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
東洋拓殖株式會社法中改正法律案特別委
員(三月十七日議長選定)
侯爵淺野長之君子爵片桐貞央君
子爵水無瀨忠政君山川端夫君
男爵肝付兼英君小坂順造君
各務鎌吉君林平四郞君
金子元三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=6
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007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、工作
機械製造事業法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、吉野商工大臣
工作機械製造事業法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月十六日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
工作機械製造事業法案
工作機械製造事業法
第一條本法ハ國防ノ整備及產業ノ發達
ヲ期スル爲本邦ニ於ケル工作機械製造
事業ノ確立ヲ圖ルコトヲ目的トス
第二條本法ニ於テ工作機械製造事業ト
稱スルハ命令ヲ以テ定ムル工作機械ノ
製造ヲ爲ス事業ヲ謂フ
第三條工作機械製造事業ヲ營マントス
ル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ但シ其ノ
設備ガ命令ノ定ムル規模ニ達セザルモ
ノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
本法ニ定ムルモノノ外前項ノ許可ニ關
シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條前條ノ許可ヲ受クルコトヲ得ベ
キ者ハ帝國法令ニ依リ設立シタル株式
會社ニシテ其ノ株主ノ半數以上、取締
役ノ半數以上、資本ノ半額以上及議決
權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法令ニ
依リ設立シタル法人ニ屬スルモノニ限
ル
前項ノ法人ハ其ノ社員、株主若ハ業務
ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ
半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人
又ハ外國法人ニ屬セザルモノナルコト
マルチノ
前條ノ許可ヲ受ケタル者前二項ノ規定
ニ該當セザルニ至リタルトキハ許可ハ
其ノ效力ヲ失フ
第五條第三條ノ許可ヲ受ケタル會社
(工作機械製造會社)ハ政府ノ指定スル
期間內ニ其ノ事業ヲ開始スベシ
政府ハ正當ノ事由アリト認ムル場合ニ
限リ前項ノ期間ノ延長ヲ許可スルコト
ヲ得
工作機械製造會社前二項ノ期間內ニ其
ノ事業ヲ開始セザルトキハ第三條ノ許
可ハ其ノ效力ヲ失フ
第六條工作機械製造會社其ノ設備ヲ增
設シ又ハ變更セントスルトキハ命令ノ
定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
第七條工作機械製造會社政府ノ認可ヲ
受ケ本法施行後五年以內ニ於テ政府ノ
指定スル期間內ニ命令ノ定ムル規模以
上ノ設備ヲ新設シ又ハ增設シタルトキ
ハ設備完成ノ年及其ノ翌年ヨリ五年間
其ノ新設シ又ハ增設シタル設備ヲ以テ
營ム工作機械製造事業ニ付所得稅及營
業收益稅ヲ免除ス
前項ノ工作機械製造會社其ノ設備完成
前其ノ一部ヲ以テ工作機械製造事業ヲ
營ム場合ニ於テモ其ノ事業ニ付所得稅
及營業收益稅ヲ免除ス但シ前項ノ規定
ニ依ル期間內ニ設備ヲ完成セザルトキ
ハ此ノ限ニ在ラズ
第八條北海道、府縣及市町村其ノ他之
ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所
得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル工
作機械製造會社ニハ其ノ免除セラレタ
ル事業ニ對シ課稅スルコトヲ得ズ但シ
特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタ
ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九條第七條ノ規定ニ依り所得稅及營
業收益稅ノ免除ヲ受クベキ事業ヲ繼續
スル者又ハ其ノ事業ヲ繼續スルモノト
認ムベキ事實アル者ハ前事業者ガ第七
條ノ規定ニ依ル所得稅及營業收益稅免
除期間內ニ在ルトキハ其ノ期間ヲ承繼
ス
第十條工作機械製造會社政府ノ認可ヲ
受ケ本法施行後五年以內ニ於テ政府ノ
指定スル期間內ニ命令ノ定ムル規模以
上ノ設備ヲ新設シ又ハ增設シ其ノ設備
ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ償却ヲ爲シ
タル場合ニ於テ其ノ償却濟額ガ其ノ設
備完成ノ日ノ屬スル營業年度ノ翌營業
年度ヨリ起算シ一年ヲ營業年度トスル
モノニ在リテハ第五營業年度末、六月
ヲ營業年度トスルモノニ在リテハ第十
營業年度末ニ於テ當該設備ノ價額ノ六
割ニ達セザルトキハ政府ハ之ニ達セシ
ムベキ金額ヲ補給スベシ
前項ニ規定スル最終營業年度ノ翌營業
年度以降每營業年度ニ於テ當該設備ヲ
以テ營ム工作機械製造事業ヨリ生ズル
利益金額ガ勅令ヲ以テ定ムル金額ヲ超
過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前
項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベ
第十一條詐欺ノ行爲ヲ以テ前條ノ規定
ニ依ル補給金ノ交付ヲ受ケタル者ニ對
シテハ其ノ金額ヲ返還セシム
前項ノ規定ニ依ル返還金ハ國稅滯納處
分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但
シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次グモノト
ス
第十二條工作機械製造會社其ノ事業ノ
爲必要ナル器具、機械又ハ材料ヲ政府
ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行
ノ日ヨリ五年間命令ノ定ムル所ニ依リ
輸入稅ヲ免除ス
第十三條工作機械製造會社ハ事業擴張
ノ場合ニ於テ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事
業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金
全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スル
コトヲ得
第十四條工作機械製造會社ハ政府ノ認
可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用
ニ充ツル爲商法ニ規定スル制限ヲ超エ
テ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ
總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユ
ルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存ス
ル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザル
トキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付
テハ工場抵當法ニ依リ會社ノ事業ニ屬
スルモノヲ抵當ト爲スコトヲ要ス但シ
特別ノ事情アル場合ニ於テ政府其ノ必
要ナシト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第十五條工作機械製造會社、其ノ事業ノ
全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休
止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ政府ノ許可ヲ受クベシ
工作機械製造會社ノ合併又ハ解散ノ決
議ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十六條第十條第一項ノ規定ニ依リ政
府ノ認可ヲ受ケタル工作機械製造會社
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定
メ政府ニ之ヲ屆出ヅベシ之ヲ變更セン
トスルトキ亦同ジ
政府必要アリト認ムルトキハ事業計畫
ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第十七條第十條第一項ノ規定ニ依リ政
府ノ認可ヲ受ケタル工作機械製造會社
ハ同項ニ規定スル最終營業年度迄每營
業年度ニ於ケル利益金ノ處分ニ付政府
ノ認可ヲ受クベシ
第十條第一項ノ規定ニ依リ補給金ノ交
付ヲ受ケタル工作機械製造會社ハ同條
第二項ノ規定ニ依リ補給金ノ償還ヲ終
了スル營業年度迄每營業年度ニ於ケル
利益金ノ處分ニ付亦前項ニ同ジ
第十八條政府ハ工作機械製造會社ニ對
シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サ
シムルコトヲ得
政府ハ工作機械製造會社ニ對シ業務及
會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ
又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ當
該官吏ヲシテ工作機械製造會社ノ事務
所營業所、工場、倉庫其ノ他ノ場所
ニ臨檢シ業務若ハ財產ノ狀況又ハ帳簿
書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコト
ヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス
證票ヲ携帶セシムベシ
第十九條政府公益上必要アリト認ムル
トキハ工作機械製造會社ニ對シ工作機
械ノ販賣價格若ハ販賣條件ノ變更ヲ命
ジ又ハ工作機械ノ需要供給ヲ調節スル
爲必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
政府公益上必要アリト認ムルトキハ工
作機械製造會社ニ對シ其ノ設備ノ擴張
又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第二十條政府軍事上必要アリト認ムル
トキハ工作機械製造會社ニ對シ特殊工
作機械ノ製造、工作機械ニ關スル特殊
事項ノ〓究又ハ特殊設備ノ施設其ノ他
軍事上必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第二十一條第十九條第二項又ハ前條ノ
規定ニ依リ爲シタル命令ニ因リ生ジタ
ル損失ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府之
ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十二條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ政府ノ指定スル工作機械ノ試作ヲ爲
ス者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ奬勵金
ヲ交付スルコトヲ得
第二十三條工作機械ノ輸入ガ工作機械
製造事業ノ確立ヲ妨グルノ虞アルトキ
ハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ
定メ工作機械ノ輸入ヲ制限スルコトヲ
得
第二十四條工作機械ノ輸入ニ因リ其ノ
市價ノ低落ヲ來シ工作機械製造事業ノ
確立ヲ妨グルノ虞アルトキハ政府ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ關稅調査委員會ノ
議ヲ經テ期間ヲ定メ工作機械ニ對シ關
稅定率法別表輸入稅表ニ定ムル輸入稅
ノ外其ノ物品ノ價格ノ五割ニ相當スル
金額以下ノ輸入稅ヲ課スルコトヲ得
第二十五條政府ハ工作機械製造會社ヲ
除クノ外工作機械又ハ工作機械部分品
ノ製造ヲ爲ス者ニ對シ命令ノ定ムル所
ニ依リ業務又ハ設備ノ狀況ニ關シ必要
ナル事項ヲ屆出デシムルコトヲ得
第二十六條政府第三條ノ許可、第六條
ノ許可(命令ノ定ムル規模以上ノ設備
ニ關スルモノニ限ル)、第十九條ノ命令、
第二十一條ノ補償金額ノ決定又ハ第二
十三條ノ制限ヲ爲サントスルトキハ工
作機械製造事業委員會ノ議ヲ經ベシ
工作機械製造事業委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條工作機械製造會社本法若ハ
本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キ
テ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル
行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ其ノ業務
ヲ停止シ若ハ制限シ、第三條ノ許可ヲ取
消シ、取締役若ハ其ノ職務ヲ行フ監査
役ノ解任ヲ爲シ又ハ之ニ對シ第十條ノ規
定ニ依ル補給金ノ全部若ハ一部ヲ交付
セズ若ハ交付シタル補給金ノ全部若ハ
一部ヲ返還セシムルコトヲ得
第二十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第三條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケ
ズシテ工作機械製造事業ヲ營ミタル
者
二第二十三條ノ規定ニ依ル制限ニ違
反シテ工作機械ノ輸入ヲ爲シタル者
第二十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第六條ノ規定ニ違反シテ設備ヲ增
設シ又ハ變更シタル者
二第十五條第一項ノ規定ニ違反シテ
事業ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ体止シタ
ル者
三第十六條第一項ノ規定ニ違反シテ
事業計畫ノ屆出ヲ爲サズ又ハ屆出デ
タル事業計畫ヲ實施セザル者
四第十六條第二項ノ規定ニ依ル變更
命令ニ違反シテ事業計畫ヲ實施シタ
ル者
五第十七條ノ規定ニ違反シ認可ヲ受
ケズシテ利益金ノ處分ヲ爲シタル者
六第十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
七第二十條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
第三十條第十八條第二項ノ命令又ハ處
分ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ
處ス
第三十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條第一項ノ規定ニ依ル報告
ヲ爲サズ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタル者
二第十八條第三項ノ規定ニ依ル當該
官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌
避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サ
ズ若ハ虚僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第三十二條營業者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務
ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命
令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタ
ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十三條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十四條第二十五條ノ規定ニ依ル屆
出ヲ怠リ又ハ不正ノ屆出ヲ爲シタル者
ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ第三條ノ規定ニ依リ許
可ヲ受クベキ工作機械製造事業ヲ營ム者
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨ
リ之ヲ同條ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ者ニシテ本法施行ノ際現ニ第六條
ノ規定ニ依リ許可ヲ受クベキ設備ノ增設
又ハ變更ノ工事中ニ在ルモノハ命令ノ定
ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ之ヲ同條
ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第三條ノ規定ニ依リ許可ヲ受クベキ工作
機械製造事業ヲ營ム爲本法施行ノ際現ニ
其ノ設備ノ建設工事中ニ在ル者ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ之ヲ同
條ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
前二項ノ規定ニ該當スル者ノ當該設備ニ
關シテハ第七條、第八條及第十條ノ規定
ハ之ヲ適用セズ
〔國務大臣吉野信次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=7
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008・吉野信次
○國務大臣(吉野信次君) 只今議題トナリ
マシタ工作機械製造事業法案ニ付キマシテ、
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、申ス迄モ
ナク工作機械製造事業ハ、國防上緊要缺ク
ベカラザル事業デアリマスルト共ニ、般
機械工業ノ基礎タル工業トシテ、產業上モ
極メテ重要ナルモノデアリマシテ、之ガ發
達ノ如何ハ我ガ國國防ノ上ニモ亦產業ノ上
ニモ重大ナル意義ヲ有スルモノデアリマス、
然ルニ我ガ國ニ於キマスル工作機械製造事
業ハ、近頃漸ク發展過程ニ入ッタヤウナ實情
デアリマシテ、其ノ製造能力ニ於キマシテ、
將又其ノ製造技術ニ於キマシテモ遺憾ノ點
ガ尠クナイノデアリマス、卽チマダ我ガ國
ニ於キマシテ製造困難ナル工作機械ガ相當
アリマスルノミナラズ、一般國產ノ工作機械
ノ性能ハ、外國品ニ比ベマシテ可ナリ遜色
ガアリマスコトハ、否ムコトガ出來ナイ事
實デアリマシテ、我ガ國ハ之ガ爲ニ每年多
額ノ工作機械ヲ海外カラノ輸入ニ仰イデ居
ルノデアリマス、ソレ故ニ斯業ノ振興ノ必
要ハ從來カラ痛感セラレテ居ッタノデアリマ
スルガ、特ニ現下ノ時局ニ際シマシテ、斯
業ノ確立ハ刻下最大ノ急務ト信ズルノデア
リマス、而シテ工作機械製造事業確立ノ方
策ト致シマシテハ、斯業ノ特質ニ卽應致シ
マシテ、適切ナル各種ノ奬勵方策ヲ講ジ、
以テ生產力ノ擴充ヲ圖リマスルト共ニ、他
面適當ナル指導監督ニ依リマシテ、斯業ノ
經營ヲ合理的基礎ノ上ニ置キ、以テ其ノ製
造技術ノ向上ニ資シマスルコトガ適當デア
ラウト考ヘルノデアリマス、此ノ法案ハ此
ノ目的ヲ達スルコトヲ期スルモノデアリマ
ス、何卒御審議ノ上、御協贊アラムコトヲ
御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=8
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009・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
工作機械製造事業法案ハ、重要ナル法案デ
アリマスルガ故ニ、其ノ特別委員ノ數ヲ十
八名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=9
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010・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=10
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011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=11
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012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
工作機械製造事業法案特別委員(三月十
七日議長選定)
公爵山縣有道君侯爵中御門經恭君
伯爵溝口直亮君子爵谷儀一君
子爵井上勝純君男爵淺田良逸君
男爵東〓安君男爵井上〓純君
倉知鐵吉君次田大三郞君
大塚惟精君江口定條君
藤原銀次郞君久恒貞雄君
平尾喜三郞君長野忠次君
水野甚次郞君子爵大河內正敏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=12
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013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三、職業
紹介法改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、木戶厚生大臣
職業紹介法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月十六日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
職業紹介法改正法律案
職業紹介法
第一條政府ハ勞務ノ適正ナル配置ヲ圖
ル爲本法ニ依リ職業紹介事業ヲ管掌ス
第二條何人ト雖モ職業紹介事業ヲ行フ
コトヲ得ズ
第三條政府ハ職業紹介事業ニ併セテ職
業指導及必要ニ應ジ職業補導其ノ他職
業紹介ニ關スル事項ヲ行フモノトス
前項ノ規定ニ依ル職業紹介及職業指導
ハ之ヲ無料トス
第四條政府ハ前條ニ規定スル事業ヲ行
フ爲職業紹介所ヲ設置ス
職業紹介所ノ業務ヲ補助セシムル爲職
業紹介所ニ聯絡委員ヲ置ク
職業紹介所及聯絡委員ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條市町村長(勅令ヲ以テ指定スル
市ニ在リテハ區長)ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ職業紹介所ノ業務ノ一部ヲ行フ
第六條第三條ニ規定スル事業ニ關シ職
業紹介委員會ヲ置ク
職業紹介委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第七條職業紹介所及聯絡委員ニ關スル
費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣ヲ
シテ其ノ一部ヲ負擔セシムルモノトス
地方長官必要アリト認ムルトキハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ前項ノ規定ニ依リ道
府縣ノ負擔スル費用ノ一部ヲ市町村ヲ
シテ負擔セシムルコトヲ得
第八條勞務供給事業ヲ行ハントスル者
又ハ勞務者ヲ雇傭スル爲勞務者ノ募集
ヲ行ハントスル者ニシテ命令ノ定ムル
モノハ地方長官(東京府ニ在リテハ東
京府知事及警視總監トス)ノ許可ヲ受
クベシ
前項ノ勞務供給事業及勞務者ノ募集ニ
關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六
月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第二條ノ規定ニ違反シ有料又ハ營
利ヲ目的トスル職業紹介事業ヲ行ヒ
タル者
二第八條ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズ
シテ有料又ハ營利ヲ目的トスル勞務
供給事業ヲ行ヒタル者
第十條第八條ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケ
ズシテ勞務者ノ募集ヲ行ヒタル者ハ百
圓以下ノ罰金又ハ拘留ニ處ス
第十一條法人又ハ人ノ代理人、使用人
其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業
務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルト
キハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出
デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコ
トヲ得ズ
第十二條本法ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナ
ルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行
スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナル
トキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但
シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條前二條ノ場合ニ於テハ懲役又
ハ拘留ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第十四條町村制ヲ施行セザル地ニ於テ
ハ本法中町村ニ關スル規定ハ町村ニ準
ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ
町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第十五條第二條ノ規定ハ主務大臣ノ指
定スル職業ノ職業紹介事業ニハ之ヲ適
用セズ
前項ノ職業紹介事業ニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條本法ハ船員職業紹介事業ニハ
之ヲ適用セズ
附則
第十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第十八條從前ノ規定ニ依リ設置シタル
職業紹介所ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ
一年ヲ限リ職業紹介委員會ニ關スル規
定ヲ除キ仍從前ノ例ニ依ル
第十九條地方長官ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ前條ノ職業紹介所ノ廢止ヲ命ズル
コトヲ得
第二十條本法施行ノ際現ニ行政官廳ノ
許可ヲ受ケ職業紹介所ヲ設置スル者ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ當分ノ內無料ノ
職業紹介事業ヲ行フコトヲ得
第二十一條本法施行ノ際現ニ行政官廳
ノ許可ヲ受ケ有料又ハ營利ヲ目的トス
ル職業紹介事業ヲ行フ者ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ引續キ其ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
前項ノ職業紹介事業ノ施設ヲ相續ニ因
リ承繼シタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ地方長官(東京府ニ在リテハ東京府
知事及警視總監トス)ノ許可ヲ受ケ其
ノ事業ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ
ハ相續開始ノ日ヨリ一月以內ニ許可ヲ
申請スベシ
前項ノ者ハ前項ノ申請ニ對スル許可又
ハ不許可ノ處分アル迄其ノ事業ヲ行フ
コトヲ得
第二十二條本法施行ノ際現ニ第八條ノ
規定ニ依リ許可ヲ受クベキ勞務供給事
業又ハ勞務者ノ募集ヲ行フ者ハ本法施
行後二月以内ニ地方長官(東京府ニ在
リテハ東京府知事及警視總監トス)ニ
許可ヲ申請スベシ
前項ノ者ハ前項ノ申請ニ對スル許可又
ハ不許可ノ處分アル迄其ノ事業又ハ募
集ヲ行フコトヲ得
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=13
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014・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今議題ト
ナリマシタ職業紹介法改正法律案ニ付キマ
シテ提案ノ理由ヲ御說明致シマス、我ガ國
現下ノ情勢ニ觀マスルニ、國家ノ遂行スル
諸政策ニ順應セシムル爲、勞務ノ適正ナル
配置ヲ圖ルコトガ、極メテ緊要デアルト考
ヘルノデアリマス、今次事變下ニ於ケル當
面ノ問題ト致シマシテハ一方ニ於テ軍需
勞務ノ充足ヲ敏速的確ナラシムルト共ニ
他方ニ於テハ事變ニ伴ッテ生ズル職業轉換
等ヲ圓滑ナラシメ、克ク長期對戰ニ耐ヘ得
ルノ措置ガ必要デアリマスノミナラズ、歸
還又ハ傷痍軍人等ノ職業斡旋ニ付テモ、其
ノ萬全ヲ期スルノ用意ガナケレバナリマセ
又、又今後ノ問題ト致シマシテハ、生產力
ノ擴充計畫遂行ノ爲ニモ、所要ノ勞働力ヲ適
當ニ供給スルノ要ガアリ、更ニ事變後ニ於
テモ勞務ノ調整ニ付テ十分ノ配慮ガ必要デ
アルト考ヘラレルノデアリマス、而シテ之
ガ爲ニハ職業紹介機關ヲシテ其ノ機能ヲ十
分發揮セシメマシテ、國家ノ行ハムトスル
諸政策ニ順應シツヽ、一方ニ於テハ國民各
人ノ資質ト事情等ヲ稽ヘ、成ルベク其ノ適
職ニ就カシムルト共ニ、之ヲ需ムル側ニ對
シテハ成ルベク適材ヲ圓滑ニ供給シ、以テ
之ガ配置ノ適正ト需給ノ圓滑トヲ圖ルヤ
ウ、之ヲ運用スルコトガ最モ肝要デアルト
信ズルノデアリマス、併シナガラ職業紹介
機關ヲシテ、斯クノ如キ機能ヲ十分ニ發揮
セシメマス爲ニハ、其ノ紹介網ヲ全國的ニ
分布シ、且其ノ內容ヲ充實スルト共ニ、之
ガ連絡絲制ノ組織ヲ强化シ、眞ニ全國ノ機
關ヲ打ッテ一丸トシ、統一アル活動ヲ爲シ得
ルヤウ、之ヲ整備擴充スルコトガ必要デア
リマス、然ルニ現在ノ公益職業紹介制度
ハ、大正十年ニ之ガ制定ヲ見タノデアリマ
シテ、其ノ當時ニ於キマシテハ、職業紹介
事業ハ主トシテ失業者ニ對スル救濟ト云フ
立場ニ於テ、是等ノ職業斡旋ヲ爲スト云フ程
度デアッタノデアリマス、其ノ後公益職業
紹介事業モ段々ト發展シテ參リマシテ、今
日ニ於キマシテハ唯單ナル救濟的機關タル
ニ止ラズ、國防、產業、其ノ他各方面ノ勞
務需要ニ對シテ、其ノ勞務ノ斡旋ヲスルヤ
ウニ相成リマシテ、所謂勞務ノ需給調整機
關タルノ地步ヲ築キツヽアルノデアリマス
ルガ、現在ノ制度ニ於キマシテハ、其ノ經營
ヲ市町村等ノ地方公共團體ニ委ネテ居ル關
係上、其ノ普及ノ點ニ於テ、其ノ活動力ノ
點ニ於テ、將又其ノ連絡統制ノ點ニ於テ、
種々缺陷不便ガアリ、本事業ノ機能ヲ十分
ニ發揮シ得ナイ實情ニアリマシテ、斯クノ
如キ制度ヲ以テ致シマシテハ到底現下ノ
要求ニ卽應スルコトガ出來ナイト考ヘルノ
デアリマス、政府ニ於キマシテハ以上申上
ゲマシタヤウナ時勢ノ要求ト、職業紹介制
度ノ缺陷トニ鑑ミマシテ、現行ノ職業紹介
制度ヲ改メ、職業紹介事業ヲ政府自ラ管掌
シ、之ガ機關ヲ整備擴充シ、以テ現下竝ニ
將來ノ時局ニ對處セムト致シマシテ、玆
本改正法律案ヲ提出スルニ至ッタ次第デア
リマス、本改正法律案ニ於キマシテハ職
業紹介事業ノ政府管掌ニ關スル事項ヲ規定
致シマシタ外、民間ニ於ケル職業紹介事業
竝ニ之ガ類似事業等ニ付テ、若干ノ規正ヲ
加ヘル規定ヲモ設ケタノデアリマス、尙本
改正法律案實施ニ要スル經費ニ關シマシ
テハ、昭和十三年度追加豫算案ニ計上シ、
御協贊ヲ願フ豫定トナッテ居リマス、何卒御
審議ノ上速カニ御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=14
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015・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシ
ク、職業紹介法改正法律案ハ、社會事業法
案外二件ト關聯スル所ガゴザイマスルガ故
ニ、同一委員ニ併託セラレムコトノ動議ヲ
提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=15
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016・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第四、國家
總動員法案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會近衞內閣總理大臣
國家總動員法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月十六日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國家總動員法案
國家總動員法
第一條本法ニ於テ國家總動員トハ戰
時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム
以下之ニ同ジ)ニ際シ國防目的達成ノ爲
國ノ全力ヲ最モ有效ニ發揮セシムル樣人
的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ
第二條本法ニ於テ總動員物資トハ左ニ
揭グルモノヲ謂フ
-兵器、艦艇、彈藥其ノ他ノ軍用物資
二國家總動員上必要ナル被服、〓糧、
飮料及飼料
三國家總動員上必要ナル醫藥品、醫
療機械器具其ノ他ノ衞生用物資及家
畜衞生用物資
四國家總動員上必要ナル船舶、航空
機、車輛、馬若ノ他ノ輸送用物資
五國家總動員上必要ナル通信用物資
六國家總動員上必要ナル土木建築用
物資及照明用物資
七國家總動員上必要ナル燃料及電力
八前各號ニ揭グルモノノ生產、修理、
配給又ハ保存ニ要スル原料、材料、機
械器具、裝置其ノ他ノ物資
九前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅
令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要
ナル物資
第三條本法ニ於テ總動員業務トハ左ニ
揭グルモノヲ謂フ
-總動員物資ノ生產、修理、配給、輸
出、輸入又ハ保管ニ關スル業務
二國家總動員上必要ナル運輸又ハ通
信ニ關スル業務
三國家總動員上必要ナル金融ニ關ス
ル業務
四國家總動員上必要ナル衞生、家畜
衞生又ハ救護ニ關スル業務
五國家總動員上必要ナル〓育訓練ニ
關スル業務
六國家總動員上必要ナル試驗〓究ニ
關スル業務
七國家總動員上必要ナル情報又ハ啓
發宣傳ニ關スル業務
八國家總動員上必要ナル警備ニ關ス
ル業務
九前各號ニ揭グルモノヲ除クノ外勅
令ヲ以テ指定スル國家總動員上必要
ナル業務
第四條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
帝國臣民ヲ徴用シテ總動員業務ニ從事
セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ
妨ゲズ
第五條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
帝國臣民及帝國法人其ノ他ノ團體ヲシ
テ國又ハ地方公共團體ノ行フ總動員業
務ニ付協力セシムルコトヲ得
第六條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
從業者ノ使用、雇入若ハ解雇又ハ賃金
其ノ他ノ勞働條件ニ付必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得
第七條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞
働爭議ノ豫防若ハ解決ニ關シ必要ナル
命令ヲ爲シ又ハ作業所ノ閉鎖、作業若
ハ勞務ノ中止其ノ他ノ勞働爭議ニ關ス
ル行爲ノ制限若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第八條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
總動員物資ノ生產、修理、配給、讓渡其
ノ他ノ處分、使用、消費、所持及移動ニ
關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第九條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
輸出若ハ輸入ノ制限若ハ禁止ヲ爲シ、
輸出若ハ輸入ヲ命ジ、輸出稅若ハ輸入
稅ヲ課シ又ハ輸出稅若ハ輸入稅ヲ增課
若ハ減免スルコトヲ得
第十條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上
必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
總動員物資ヲ使用又ハ收用スルコトヲ
得
第十一條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ會社ノ設立、資本ノ增加、合併、目的
變更、社債ノ募集若ハ第二囘以後ノ株金
ノ拂込ニ付制限若ハ禁止ヲ爲シ、會社
ノ利益金ノ處分、償却其ノ他經理ニ關
シ必要ナル命令ヲ爲シ又ハ銀行、信託會
社保險會社其ノ他勅令ヲ以テ指定ス
ル者ニ對シ資金ノ運用ニ關シ必要ナル
命令ヲ爲スコトヲ得
第十二條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ總動員業務タル事業
ヲ營ム會社ノ當該事業ニ屬スル設備ノ
費用ニ充ツル爲ノ社債ノ募集又ハ資本
ノ增加ニ付商法第二百條又ハ第二百十
條ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定
ヲ爲スコトヲ得
第十三條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ總動員業務タル事業ニ屬スル工場、事
業場、船舶其ノ他ノ施設又ハ之ニ轉用
スルコトヲ得ル施設ノ全部又ハ一部ヲ
管理、使用又ハ收用スルコトヲ得
政府ハ前項ニ揭グルモノヲ使用又ハ收
用スル場合ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ從業者ヲ供用セシメ又ハ當該施
設ニ於テ現ニ實施スル特許發明若ハ登
錄實用新案ヲ實施スルコトヲ得
政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員
業務ニ必要ナル土地又ハ家屋其ノ他ノ
工作物ヲ管理、使用又ハ收用スルコト
ヲ得
第十四條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ鑛業權、砂鑛權及水ノ使用ニ關スル
權利ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得
第十五條前二條ノ規定ニ依リ收用シタ
ルモノ不用ニ歸シタル場合ニ於テ收用
シタル時ヨリ十年內ニ拂下グルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ舊所有者若ハ舊
權利者又ハ其ノ一般承繼人ハ優先ニ之
ヲ買受クルコトヲ得
第十六條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ
改良ヲ制限若ハ禁止シ又ハ總動員業務
タル事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若
ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第十七條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ總動員業務タル同種若ハ異種ノ事業
ノ事業主間ニ於ケル當該事業ニ關スル
統制協定ノ設定、變更若ハ廢止ニ付認
可ヲ受ケシメ、統制協定ノ設定、變更若
ハ取消ヲ命ジ又ハ統制協定ノ加盟者若
ハ其ノ統制協定ニ加盟セザル事業主ニ
對シ其ノ統制協定ニ依ルベキコトヲ命
ズルコトヲ得
第十八條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ總動員業務タル同種又ハ異種ノ事業
ノ事業主ニ對シ當該事業ノ統制ヲ目的
トスル組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ組合ハ法人トス
第一項ノ規定ニ依り設立ヲ命ゼラレタ
ル者其ノ設立ヲ爲サザルトキハ政府ハ
定款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル
處分ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ組合成立シタルトキハ政府ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ當該組合ノ組合
員タル資格ヲ有スル者ヲシテ其ノ組合
ノ組合員タラシムルコトヲ得
政府ハ第一項ノ組合ニ對シ其ノ組合員
ノ營業ニ關スル統制規程ノ設定、變更
若ハ廢止ニ付認可ヲ受ケシメ、統制規
程ノ設定若ハ變更ヲ命ジ又ハ其ノ組合
員ニ對シ組合ノ統制規程ニ依ルベキコ
トヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ價格、運送賃、保管料、保險料、賃貸料
又ハ加工賃ニ關シ必要ナル命令ヲ爲ス
コトヲ得
第二十條政府ハ戰時ニ際シ國家總動員
上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ新聞紙其ノ他ノ出版物ノ揭載ニ付制
限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
政府ハ前項ノ制限又ハ禁止ニ違反シタ
ル新聞紙其ノ他ノ出版物ニシテ國家總
動員上支障アルモノノ發賣及頒布ヲ禁
止シ之ヲ差押フルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ併セテ其ノ原版ヲ差押フルコト
ヲ得
第二十一條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝國臣
民及帝國臣民ヲ雇傭若ハ使用スル者ヲ
シテ帝國臣民ノ職業能力ニ關スル事項
ヲ申告セシメ又ハ帝國臣民ノ職業能力
ニ關シ檢査スルコトヲ得
第二十二條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ學校、
養成所、工場、事業場其ノ他技能者ノ養
成ニ適スル施設ノ管理者又ハ養成セラ
ルベキ者ノ雇傭主ニ對シ國家總動員上
必要ナル技能者ノ養成ニ關シ必要ナル
命令ヲ爲スコトヲ得
第二十三條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員
物資ノ生產、販賣又ハ輸入ヲ業トスル
者ヲシテ當該物資又ハ其ノ原料若ハ材
料ノ一定數量ヲ保有セシムルコトヲ得
第二十四條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員
業務タル事業ノ事業主又ハ戰時ニ際シ
總動員業務ヲ實施セシムベキ者ヲシテ
戰時ニ際シ實施セシムベキ總動員業務
ニ關スル計畫ヲ設定セシメ又ハ當該計
畫ニ基キ必要ナル演練ヲ爲サシムルコ
トヲ得
第二十五條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ總動員物資ノ生產若ハ修理ヲ
業トスル者又ハ試驗〓究機關ノ管理者
ニ對シ試驗〓究ヲ命ズルコトヲ得
第二十六條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員
物資ノ生產又ハ修理ヲ業トスル者ニ對
シ豫算ノ範圍內ニ於テ一定ノ利益ヲ保
證シ又ハ補助金ヲ交付スルコトヲ得此ノ
場合ニ於テ政府ハ其ノ者ニ對シ總動員
物資ノ生產若ハ修理ヲ爲サシメ又ハ國
家總動員上必要ナル設備ヲ爲サシムル
コトヲ得
第二十七條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ第八條、第十條、第十三條若ハ第十四
條ノ規定ニ依ル處分、第九條ノ規定ニ
依ル輸出若ハ輸入ノ命令、第十一條ノ
規定ニ依ル資金ノ融通若ハ有價證劵ノ
應募、引受若ハ買入ノ命令又ハ第十六
條ノ規定ニ依ル設備ノ新設、擴張若ハ
改良ノ命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償
ス
第二十八條政府ハ第二十二條、第二十
三條又ハ第二十五條ノ規定ニ依リ命令
ヲ爲ス場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償シ又
ハ補助金ヲ交付ス
第二十九條前二條ノ規定ニ依ル補償ノ
金額及第十五條ノ規定ニ依ル拂下ノ價
額ハ總動員補償委員會ノ議ヲ經テ政府
之ヲ定ム
總動員補償委員會ニ關スル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條政府ハ第二十六條又ハ第二十
八條ノ規定ニ依リ利益ノ保證又ハ補助
金ノ交付ヲ受クル事業ヲ監督シ之ガ爲
必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十一條政府ハ國家總動員上必要ア
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ報〓ヲ
徵シ又ハ當該官吏ヲシテ必要ナル場所
ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類共ノ
他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
第三十二條第九條ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シ輸出又ハ輸入ヲ爲シ又ハ爲サン
トシタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬
圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ輸出又ハ輸入ヲ爲シ
又ハ爲サントシタル物ニシテ犯人ノ所
有シ又ハ所持スルモノハ之ヲ沒收スル
コトヲ得若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵スルコトヲ得
第三十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰
金ニ處ス
第七條ノ規定ニ依ル命令又ハ制限
若ハ禁止ニ違反シタル者
二第八條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タル者
三第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
輸出又ハ輸入ヲ爲サザル者
四第十條ノ規定ニ依ル總動員物資ノ
使用又ハ收用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避
シタル者
五第十三條ノ規定ニ依ル施設、土地
若ハ工作物ノ管理、使用若ハ收用又
ハ從業者ノ供用ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌
避シタル者
六第十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
第三十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰
金ニ處ス
一第十一條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁
止又ハ命令ニ違反シタル者
二第十六條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁
止又ハ命令ニ違反シタル者
三第十七條若ハ第十八條第五項ノ規
定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ統制協
定若ハ統制規程ヲ設定、變更若ハ廢
止シ又ハ第十七條若ハ第十八條第五
項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
四第二十三條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シ保有ヲ爲サザル者
五第二十六條ノ規定ニ違反シ生產、
修理又ハ設備ヲ爲サザル者
第三十五條前三條ノ罪ヲ犯シタル者ニ
ハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコ
トヲ得
第三十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金
三酸〕、
-第四條ノ規定ニ依ル徵用ニ應ゼズ
又ハ同條ノ規定ニ依ル業務ニ從事セ
ザル者
二第六條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タル者
第三十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シタル者
二第二十四條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シ計畫ノ設定又ハ演練ヲ爲サザル
者
三第二十五條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シ試驗〓究ヲ爲サザル者
第三十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條第一項ノ規定ニ依ル命令
ニ違反シ組合ノ設立ヲ爲サザル者
二第三十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處
分ニ違反シタル者
三第三十一條ノ規定ニ依ル報〓ヲ怠
リ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタル者
第三十九條第二十條第一項ノ規定ニ依
ル制限又ハ禁止ニ違反シタルトキハ新
聞紙ニ在リテハ發行人及編輯人、其ノ
他ノ出版物ニ在リテハ發行者及著作者
ヲ二年以下ノ懲役若ハ禁鋼又ハ二千圓
以下ノ罰金ニ處ス
新聞紙ニ在リテハ編輯人以外ニ於テ實
際編輯ヲ擔當シタル者及揭載ノ記事ニ
署名シタル者亦前項ニ同ジ
第四十條第二十條第二項ノ規定ニ依ル
差押處分ノ執行ヲ妨害シタル者ハ六月
以下ノ黴役若ハ禁錮又ハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
第四十一條前二條ノ罪ニハ刑法併合罪
ノ規定ヲ適用セズ
第四十二條第三十一條ノ規定ニ依ル當
該官吏ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シ
タル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第四十三條第二十一條ノ規定ニ違反シ
テ申告ヲ怠リ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若
ハ忌避シタル者ハ五十圓以下ノ罰金又
ハ拘留若ハ科料ニ處ス
第四十四條總動員業務ニ從事シタル者
其ノ業務遂行ニ關シ知得シタル當該官
廳指定ノ總動員業務ニ關スル官廳ノ機
密ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以
下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
公務員又ハ其ノ職ニ在リタル者職務上
知得シタル當該官廳指定ノ總動員業務
ニ關スル官廳ノ機密ヲ漏泄又ハ竊用シ
タルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
第四十五條公務員又ハ其ノ職ニ在リタ
ル者本法ノ規定ニ依ル職務執行ニ關シ
知得シタル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密
ヲ漏泄又ハ竊用シタルトキハ二年以下
ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條第十八條第一項又ハ第三項
ノ規定ニ依リ設立シタル組合ノ役員其
ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要
求若ハ約束シタルトキハ一一年以下ノ懲
役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相
當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ
懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徴ス
第四十七條前條第一項ニ揭グル者ニ對
シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十八條法人ノ代表者又ハ法人若ハ
人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其
ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十二條
乃至第三十四條、第三十六條第二號、
第三十七條、第三十八條又ハ第四十三
條前段ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行
爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對
シ各本條ノ罰金刑又ハ科料刑ヲ科ス
第四十九條前條ノ規定ハ本法施行地ニ
本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ
代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者
ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ
モ之ヲ適用ス本法施行地ニ住所ヲ有ス
ル人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者
ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニ
付亦同ジ
本法ノ罰則ハ本法施行地外ニ於テ罪ヲ
犯シタル帝國臣民ニモ之ヲ適用ス
第五十條本法施行ニ關スル重要事項
(軍機ニ關スルモノヲ除ク)ニ付政府ノ
諮問ニ應ズル爲國家總動員審議會ヲ置
ク
國家總動員審議會ニ關スル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軍需工業動員法及昭和十一一年法律第八十
八號ハ之ヲ廢止ス
本法施行前軍需工業動員法ニ基キテ爲シ
タル命令又ハ處分ハ之ヲ本法中ノ相當規
定ニ基キテ爲シタルモノト看做ス
軍需王業動員法ニ違反シタル者ノ處罰ニ
付テハ仍舊法ニ依ル
〔國務大臣公爵近衞文麿君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=19
-
020・近衞文麿
○國務大臣(公爵近衞文麿君) 只今議題ト
ナリマシタ、國家總動員法案ニ付キマシテ、
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、近代戰ノ
特色ハ所謂國力戰ニアルノデアリマシテ、
戰爭ノ目的ヲ達成スル爲ニハ陸海軍ノ奮
鬪ト相俟ッテ、國家總動員ノ態勢ヲ完備シナ
ケレバナラナイノデアリマス、卽チ戰時
又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ニ際シテハ物心
兩面ニ亙リ全資源ヲ動員シテ、以テ單リ軍
需ノ充足ヲ完ウスルニ止マラズ、國民生活
ヲ確保シ、且戰爭遂行上必要アル各般ノ國
家活動ヲ圓滑ナラシメ、以テ國ノ全力ヲ最
モ有效ニ發揮スルコトガ、戰勝ノ目的ヲ達
成スル爲ニハ必須ノ要件デアリマス、本案
ハ此ノ事實ニ鑑ミマシテ、政府トシテ戰時
又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ニ際シ、所要ノ措
置ヲ敏速ニ講ジ得ベキ根據ヲ規定シタルモ
ノデアリマス、斯クノ如キ戰時發動ヲ必要
トスル政府ノ權限ノ大綱ハ、國家總動員ノ
準備事務ノ進捗ニ伴ヒ、大體豫定シ得ル譯
デアリマスルガ故ニ、豫メ議會ノ御協贊ヲ
經テ之ヲ定メテ置キマシテ、其ノ範圍內ニ
於テ、政府ガ戰爭ノ實際ノ情況ニ卽應シ、
臨機ノ處置ヲ講ジ得ルコトト致シマスルノ
ガ適當ト考ヘルノデアリマス、尙斯クシテ
國家總動員ニ關スル國家ノ權力發動ノ態樣
ヲ、豫メ國民一般ニ了解セシメテ置クコト
ハ、國家總動員準備ノ進捗ニ資スル所以タ
ルノミナラズ、有事ニ際シ國民ノ自發的協
力ヲ容易ナラシメ、法令執行ノ圓滑ヲ期ス
ル上ニ必要デアルト考へルノデアリマス、
殊ニ我ガ國ハ國家總動員ノ經驗ニ乏シク、
又其ノ資源ノ情況等ヲ考ヘマシテモ、特ニ
本法制定ノ必要ヲ感ズル次第デアリマス、
國家總動員ニ關スル現行ノ法制ト致シマシ
テハ、大正七年ニ制定セラレマシタル軍需
工業動員法ガ存スルノデアリマスガ、同法
ハ軍需充足ノ爲ニ國內工業力ヲ動員スルコ
トヲ主眼トスルモノデアリマシテ、從ッテ其
ノ法律運用ノ目的ニ於キマシテ、將又規定
事項ノ範圍ニ於キマシテ、前述ノ如キ國家總
動員ノ目的ヲ達スル爲ニハ固ヨリ不十分ナ
ノデアリマス、尙今囘ノ支那事變ニ於キマ
シテハ差當リ曩ニ御協贊ヲ得マシタル臨
時諸法律ニ依リマシテ、軍需工業動員法ノ
足ラザル所ヲ補ヒ、應急ノ措置ヲ講ジツヽ
アルノデアリマスガ、時局ノ推移如何ニ依
リマシテハ、更ニ一段ノ國家統制ヲ必要ト
スル事態モ考慮セラレマスルガ故ニ、此ノ
意味ニ於キマシテモ本法ノ制定ハ緊急ヲ要
スルモノト認メテ居ルノデアリマス、本案
ノ內容ハ大體ニ於テ、軍需工業動員法及事
變關係ノ臨時諸法律ニ規定セラレマシタル
事項ガ其ノ根幹トナッテ居リマスルガ、規定
ノ形式ガ大綱ニ止リ、細部ヲ命令ニ委ネテ
居リマスルノハ、其ノ內容ガ事態ノ程度等
ニ依リマシテ變化致シマスル關係上、豫メ細
部ニ亙ッテ之ヲ豫定スルコトガ困難デアル
ガ爲メデアリマシテ、戰時事態ノ變化ニ卽
應シ、迅速且適切ナル措置ヲ講ズルコトガ
戰爭ノ本質上緊要デアルノデアリマス、又是
等ノ措置ノ詳細ヲ豫メ外部ニ現シマスコトハ、
國防上ノ機密ヲ暴露シ、得策デナイ點モ考へ
ラレル次第デアリマス、又本案ニハ平時ニモ
適用セラレル規定ヲ含ンデ居リマスガ、是
等ノ事項ハ前以テ平時的準備ヲ必要トスル
モノデアリマスルト同時ニ、戰時ニ際シ
マシテモ必要ナル事柄デアルノデアリマス、
而シテ本案規定ノ各條項ハ相互ニ密接ナル
關聯ヲ有シ、一貫セル國家總動員ノ體系ヲ
形成シテ居ルノデアリマス、本案ノ內容ハ
人員、物資、施設、資金等、各般ノ事項ニ
亙リ國民生活ニ大ナル關係ヲ有シテ居リマ
スルノデ、之ガ運用ニ付キマシテハ適切ヲ
期スルコトガ極メテ肝要デアリマシテ、特
ニ審議會ニ關スル規定ヲ設ケマシタノモ、
此ノ趣旨ニ副ハムガ爲メデアリマス、要ス
ルニ國家總動員ハ國民ノ愛國心ヲ基礎ト
シ、擧國一致ノ協力ニ依ッテ初メテ其ノ效果
ヲ完ウシ得ルノデアリマス、政府ハ時局ニ
鑑ミマシテ、國家總動員ノ實施ニ法的根據
ヲ與フルノ必要ヲ認メマシテ、玆ニ本法ヲ
提出致シマシタ次第デアリマス、何卒十分
御審議ノ上、速カニ御協贊アラムコトヲ切
望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=20
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021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通告ガゴ
ザイマシタカラ御許シ致シマス、土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=21
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022・土方寧
○土方寧君 私ハ此ノ國家總動員法ニ付キ
マシテ、政府ニ二三質問ヲ致シタク存ジマ
ス、第一ハ本案ハ憲法ニ重大ナル關係ガア
リマスト云フコトト、モウ一ツハ本案ニハ數
多クノ體刑、罰金刑等ノ制裁ガ附イテ居ル
勅令ガ豫想セラレテ居リマス、是等ノ點カ
ラ見タダケデモ、政府ガ此ノ法案ヲ議會ニ
提出セラレル前ニ、豫メ憲法上ノ重大ナル
機關デアル樞密院ニ御諮詢ニナルヤウニ、
奏請スベキ筈デアッタト存ジマス、然ルニサ
ウデナカッタヤウデアリマス、ソレハドウ云
フ譯デアルカ、其ノ理由ヲ承リタイ、是ガ
ー、、第二ハ御承知ノ通リ我ガ國ノ憲法ニ
ハ外ノ國ニ見ルコトノ出來ナイ、我ガ國ノ
國體ニ基ク獨得ノ、天皇ノ大權ノ發動ト
云フコトガアリマス、本法ガ成立シマスト、
行ハレマシタナラバモウ大權ノ發動ヲ仰ガ
ナクテ宜イト云フ趣旨デハ萬々ナカラウト
思ヒマス、併シナガラドウ云フ場合ニ、本
案ニ想像セラレテ居ルヤウナ勅令ヲ以テス
ルカ、ドウ云フ場合ニ大權ノ發動ヲ仰グカ、
其ノ分界ガハッキリ分リマセヌカラ、之ヲ成
ルベク、我々ニ分ルヤウニ御說明ヲ願ヒタ
イ、此ノ御說明ガ十分出來マセヌト云フト、
實際ニ於テハ本法ハ大權ノ發動ト云フモノ
ヲ不要ナラシメルヤウナコトニナルト思ヒ
マスカラ十分ニ伺ヒタイ、第三ニハ政府ガ
獨斷デヤラヌト云フヤウナ趣意ラシイ、審
議會ヲ設ケテシマスガ、ソレニ付キマシテ
ハ政府ハ本案ニ想像セラレテアル勅令案ヲ
必ズ其ノ審議會ノ議ニ付セラレルノデアル
カ、ソレカラ政府ノ考へ次第デハ審議會ニ
付託スルコトモアルシ、ナイコトモアル、
其ノ時次第ト云フコトデアルカ、ソレカラ
又審議會ニ付託セラレタル場合、若シ審議
會デ勅令案ヲ不必要トスル、或ハソレニ付
テ修正ヲスルトカ云フヤウナ場合ガアリマ
ス時ハ、政府ハ審議會ノ決議ト云フモノヲ
採用セラレル積リカ、ソレトモソレハホン
ノ參考ニ聽イタノダカラ、何ヲ言ハウトモ、
全會一致デ反對シヨウガ、修正ショウガ、
矢張リ政府ハ原案ガ宜イト思ッタラ原案ヲ
公布スル積リデ居ルト云フ御考デアルカ、
此ノ三ツノ點デアリマス、只今本案提出ノ
理由ハ總理大臣カラ誠ニ簡明ニ伺ッタ、私ハ
本案ノ趣意ハ少シモ反對デナイ、唯此ノ方
法ガ非立憲デアルト思フカラ、其ノ意見
ハ他日述ベマスガ、色々ナ點デ明カニナッテ
居ルノデアリマス、決シテ立憲的手段デナ
イト思フノデアリマス、日本ノ憲法デハモッ
ト立派ニ出來ルト思フ、斯ウ云フコトハ
ソレハ意見デアリマスカラ質問ノ時ハ申シ
マセヌ、此ノ三ツノ點ダケ成ルタケ簡明ニ
御答辯ヲ願ヒタイ
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=22
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023・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 土方サシノ御質
問ニ對シマシテ私ヨリ御答ヲ申上ゲマス、
第一點ハ本法ニハ多數ノ罰則ガ附イテ居
ル、サウシテ本法カラ出ル命令ノ適用ニ付
テモ罰則ガ關係ガアルデハナイカ、從ッテ樞
密院ニ御諮詢ニ相成ルヤウニ奏請スルノガ
適當デハナイカト云フ御趣意ニ拜聽致シマ
シタガ、御承知ノヤウニ樞密院ノ御諮詢ヲ
奏請スル場合ハ、樞密院官制ニ示ス所デアリ
マシテ、本法律ノ如キハ從來ノ解釋カラ御諮
詢ヲ奏請致サナイノデゴザイマス、先程ノ提
案ノ說明ノ中ニモアリマシタヤウニ、本法ハ
軍需工業動員法其ノ他昨年ノ臨時諸法、或
ハ古クハ徴發令等ヲ綜合包括致シタヤウナ
モノデアリマシテ、ソレ等ノ各法律ニ付キマシ
テモ、樞密院ノ御諮詢ヲ經テ居ラナイノデ
アリマス、命令ト罰則トノ關係ハ、本法ニ基
キマスル命令ハ本法ノ內容ニナルモノデゴザ
イマシテ、罰則其ノモノハ命令ノ中ニ規定
サレルノデハゴザイマセヌ、本法ソレ自體
ニ於テ罰則ヲ規定致シテ居ルノデアリマス
ルカラ、所謂罰則ヲ含ム命令ニ付テハ樞密
院ノ御諮詢ヲ奏請スルト云フ例ニハ全ク當
ラナイノデゴザイマス、第二點ハ大權ノ發
動ニ付テ本法トノ關係ハドウナルノカト云
フ御趣意ニ承リマシタガ、此ノ點ニ付キマ
シテハ憲法第二章、臣民ノ權利義務ノ規定
ニ依リマシテ、所謂立法事項ハ法律ヲ以テ
規定スベキ事柄デアリマスルガ、戰時或ハ國
家事變ノ際ニ於テハ、天皇ノ大權ハソレ等
ノ條規ニ妨ゲラレズ發動シ得ル旨ガ明カニ
規定サレテ居ルノデアリマス、天皇ノ大權
ノ發動ト本法律トノ關係ハ、何等大權ノ發動
ニ支障ヲ及スモノデハナイノデゴザイマス、
言換ヘマスレバ本法ガ成立致シテ居リマ
シテモ、大權ノ發動ハ御自由ナコトデゴザ
イマス、所謂立法事項ハ平時ニ於キマシテ
モ戰時ニ於キマシテモ、之ヲ法律ニ依ルコ
トガ相當デアリマシテ、本法ガ戰時ノ事項
ニ付テ之ヲ規定致シマスルコトハ何等差
支ナイノデコザイマス、第三點ハ總動員審
議會ナルモノガ設ケラレルガ、ソレニ諮問
スル場合ニ、其ノ答申ニ付テ政府ハ如何ニ
取扱フカト云フヤウナ御趣意ニ承リマシタ、
御承知ノヤウニ此ノ審議會ハ諮問機關デゴ
ザリマシテ、之ニ諮問致シマスル事項ハ、
本法ヲ實施致シマスル上ニ於テノ重要ナル
事項ヲ掛ケルノデゴザイマス、勅令案其ノモ
ノヲ諮問致スノデハゴザイマセヌ、諮問案
ノ內容トナルベキ重要ナル事項、若シクハ
實施致ス上ニ於キマスル方針等ニ付テ諮問
ヲ致シマス、固ヨリ審議會ノ審議致シマシ
タル結果ニ付テハ、政府ハ十分ニ之ヲ尊重
シテ、施行ノ上ニ採用スルコトデアリマセ
ウガ、法律ノ精神ト致シマシテハ、其ノ諮
問機關ノ答申ニ對シテ東縛セラレルト云フ
コトハナイノデゴザイマス、併シナガラ事實
ノ上ニ於キマシテハ、ソレヲ尊重スルコト
ガ當然ト考ヘテ居リマス
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=23
-
024・土方寧
○土方寧君 只今ノ司法大臣ノ御答辯ハ、
政府代表ノ御答辯ト見テモ宜カラウト思ヒ
マスガ、誠ニ私ノ質問ニ對シテノ御答トシ
テハ不滿足ニ思ヒマス、第一ノ點ノ罰則附
ノ勅令ハ、豫メ樞密院ニ諸詢ニナルト云フ
例ニ付キマシテ、本案ハ罰則附ノ勅令ヲ含
ンデ居ル法律案デハナイト云フ、妙ナ御說
明デアリマシタ、私ガ聞イク所デハ甚ダ失
敬ナ言分ダケレドモ法文ノ形式ダケノ、謂
ハバ三百代言式ノ辯解トシカ思ハレマセヌ、
併シソレハ意見ナンデス、今ハ申シマセヌ、
第二ノ大權發動ニ付キマシテハマルデ私ノ
問ニ答ヘテオイデニナリマセス、唯本案ガ
法律ニナリマシテモ、大權ノ發動ハ妨ゲナ
イト云フダケノ話デス、私ノ伺フノハ折角
斯ウ云フ法律ガ出來タナラバ、此ノ法律ニ
依ツテ勅令ヲ作ル場合ト、サウデナシニ大權
ノ發動ヲ仰グ場合ト、ドウ云フ場合ガアル
カト云フコトヲ示シテ戴キタイ、サウデナ
イト實際ニ於テハ本法ガ大權發動ノ代リニ
ナルヤウナコトニナリハセヌカト思フ、ソ
レヲ伺ヒタイト思フ、其ノ御答ガナイ、試
驗ナラバ落第點、問フタコトニ答ヘズ顧ミ
テ他ヲ言フ、第三點ハ頗ル曖昧ナンダ、審
議會ノ意見ハ尊重スルト言ウテ、ソレヲ必
ズ採用スルカシナイカソレヲ伺ッタガ、何ト
モハッキリ分ラナイ、ソレハサウデセウ、
審議會ヲ設ケテ審議ニ付シタガ、其ノ決議
ヲ無視シテ用ヒナイ、唯聞イテ見タンダト
云フノデハ、人ヲ馬鹿ニスルヤウナモノデ
アリマス、ソレヲ尊重スルハ當リ前、ソレ
ハ尊重ノ程度ダ、ソレヲ採用ナサルカ、ソ
レトモ何ト云フテモ政府デイケナイト思ッ
タラソレヲ却ケ、原案通リヤルカ、ソレガ
ハッキリシナイ、曖昧極マル御答、ソレヲド
ウカハッキリ伺ヒタイ
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=24
-
025・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 御答ヲ致シマス、
第三點ノ審議會ノ答申ニ付キマシテハ、法
律ノ豫期致シテ居リマスル所ハ、其ノ答申
ニ對シテハ政府ハ束縛ヲサレナイト云フコ
トニナリマスケレドモ、事實ノ上ニ於キマ
シテハ之ヲ採用スルコトト考ヘテ居リマス、
第二點ノ大權ノ發動ト本法トノ關係ニ付キ
マシテハ、本法ハ戰時ニ於ケル事項ヲ今カラ
想定シ得ル大綱ニ付テ之ヲ規定致シテ居ル
ノデアリマス、而シテ之ヲ以テ國民ノ覺悟ト
準備トヲ要求スルモノデアリマスルカラ、戰
時ニ於ケル狀態ノ變化ニ依リマシテ、尙足
ラザルモノガ生ズルカモ知レヌ、又今定メ
タ事ガ差障リヲ生ズルコトガアルカモ知レ
ヌ、ソレ等ノ場合ニ於キマシテ大權ガ發動
シテ、ソレニ應ズル御處置ニ相成ルコトガ
想像出來ルノデアリマス、併シナガラ此ノ
法律ニ於テ規定致シマシタ所ガ、勿論戰時
ニ於キマシテハ大權ノ發動ニ依ッテ御自由
ニ、新タニ規定サレルコトハ勿論妨ゲナイノ
デアリマス、ソレヲ今玆ニ法律ヲ以テ規定
シテ置キマスコトハ、國民ノ覺悟ヲ豫メ定
えた、其勞力其ノ物資ヲ如何ナル方向ニ差
出スベキカト云フコトヲ明カニシテ置キタ
イト云フ所ニ存スルノデアリマス、決シテ
ソレヲ以テ大權ノ發動ヲ妨ゲルト云フヤウ
ナコトハ毫モナイノデアリマス
〔子爵三室戸敬光君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=25
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026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三室戶子爵ハ何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=26
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027・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今司法大臣ノ、國
務大臣トシテノ御說明ニ付テ、聊カ分リニ
クイ點ガアリマスカラ、此ノ席カラ、簡單
デアリマスカラ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=27
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028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 土方サンガ濟ミ
マシテカラニ願ヒクイ、土方君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=28
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029・土方寧
○土方寧君 再度御說明ヲ願ッテモ同ジコ
トデ、腑ニ落チルコトガ出來マセヌカラ、
殘念デアリマスガモウ質問ハ是デ打切リマ
ス、意見ハ他日ニ讓リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=29
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030・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 簡單デゴザイマスカ
ラ此處カラ····只今第二囘目ノ御答辯中
ニ、大權ハ相當ニ御發動ガ出來ルノデアル
ガト、相當ト云フコトヲ申サレテ居リマス
ガ、相當ト云フコトハ全部ト云フコトデナ
イノデアリマスカラ、其ノ反面ニハ不相當ニ
御發動ガ出來ルト云フコトニモ解セラレル
ノデアリマス、其ノ點ヲ一ツ明確ニ伺ヒ
タイ、今一ツハ大權ハ御發動ハ御自由デア
ル、私共ハ大權ハ御自由ト云フヤウナ言葉
ヲ以テ論ゼラレルコトハ甚ダ遺憾トスル所
デアリマス、大權ハ御自由デアルト云フヤ
ウナ思想ヲ以テ御答辯ガアッタコトハ甚ダ
遺憾デアリマスカラ、其ノ點ニ付テ御辯明
ヲハッキリ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=30
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031・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 御答ヲ致シマス
ガ、大權ノ發動ニ付テ、相當ト云フ言葉ヲ
使ッタト云フコトニ付キマシテハ、法律ノ規
定ヲ致シマシタ所ト、其ノ戰時ニ於ケル實
際ノ事情トニ付テ法律ノ規定ガ存スルカ
ラソレデ足リルト云フ場合ト又足リナイ
ト云フ場合トヲ申上ゲタ爲ニ、相當ト云フ
ヤウナ言葉ヲ使ヒマシタガ、決シテ大權ガ
或範圍ニ法律ノ爲ニ制限ヲ受ケルト云フヤ
ウナコトハ毫モナイノデアリマシテ、私ノ
說明ノ仕方ガ不十分デ、言葉ノ足リナイ點
ニ付キマシテハ之ヲ訂正ヲ致シマス、大權
ノ發動ニ付テハ何等ノ障碍ナク圓滿無碍ニ
發動サレルモノデゴザイマスコトハ勿論デ
アリマス、其ノ圓滿無碍ノ大權ノ發動ニ付
キマシテ御自由ト云フ言葉ヲ使ヒマシタ
ガ、其ノ點ニ付キマシテモ圓滿無碍ト云フ
意味デアルト云フコトニ訂正ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=31
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032・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 大體了承致シマシタ
カラ是デ結構デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=32
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033・土方寧
○土方寧君 チョット私ハ三室戶子爵ノ御
質問ニ付テ簡單ナコトデスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=34
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035・土方寧
○土方寧君 斯ウ云フコトヲ伺ヒタイノデ
ス、大權渙發ト云ヒマスト、立憲治下ニ於テ
ハ、天皇ガ獨斷デナサレルコトハマアナ
カラウト思フ、國務大臣ガ天皇ノ御親政
ヲ翼贊シ奉ル職責ヲ持ッテ居リマス、何レ御
下命ガアルト思ヒマス、或ハ內閣ガ進ンデ
大權渙發ノ奏請ヲスルノデアラウト思ヒマ
ス、獨リデニ突然政府ガ知ラヌ中ニ渙發サ
レルト云フヤウナコトハナカラウト思フ、
ソレダカラドウ云フ場合ニ奏請スルカ、
天皇ガ親ラ御自分デ大權ヲ行ハレルノデナ
ク、其ノ行使ヲ奏請スル內閣ガ時ノ內閣、
ドウ云フ場合ニスルカ、此ノ法律ニ依ル勅
令デヤルカ、其ノ分界ノ大體デモ宜イカラ
說明シテ貰ヒタイ、ソレヲ說明シテ下サラ
ナイカラ殘念デ仕樣ガナイ
〔國務大臣鹽野季彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=35
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036・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 戰時ノ事態ハ變
轉常無キモノデゴザイマスルカラ、大體本
法ニ於キマシテ大綱ヲ想定シテ置キマスケ
レドモ、愈、〓戰爭ノ狀態ニナリマシテ事態ノ
移リ變リノ上ニ於キマシテハ、其ノ必要ニ
應ジテ奏請ヲ致スト云フコトニナルノデア
リマス、ドウ云フ時、斯ウ云フ時ト云フコ
トヲ具體的ニ申上ゲルコトハ困難ニ存ジマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=36
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037・土方寧
○土方寧君 質問ハモウ是デ止シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=37
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038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ質疑ノ通
告ガ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=38
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039・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
國家總動員法案ハ頗ル重要ナ法案デアリマ
スルガ故ニ、此ノ特別委員ノ數ヲ二十七名
トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一任スルコトノ動
議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=39
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040・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=40
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041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=41
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042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
國家總動員法案特別委員
公爵島津忠承君公爵四條隆愛君
侯爵井上三郞君伯爵二荒芳德君
男爵大井成元君子爵靑木信光君
子爵渡邊千冬君子爵曾我祐邦君
子爵岡部長景君大島健一君
水野鍊太郞君大塚勝太郞君
字佐美勝夫君男爵紀俊秀君
伊澤多喜男君塚本〓治君
山川端夫君白根竹介君
男爵渡邊汀君黑崎定三君
男爵伊江朝助君竹越與三郞君
山岡萬之助君松村義一君
中村圓一郞君金杉英五郞君
山隈康君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=42
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043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第五、昭和
十二年法律第八十四號中改正法律案、日程
第六、關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及
樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ一
部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特別會計
ニ繰入ルルコトニ關ル法律案、日程第七、
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債追加發行ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、是等ノ三案ヲ
一括シテ議題トナスコトニ御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=43
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044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長山縣公爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
昭和十二年度法律第八十四號中改正法
律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月十六日
委員長公爵山縣有道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺
太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ
一部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特
別會計ニ繰入ルルコトニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月十六日
委員長公爵山縣有道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月十六日
委員長公爵山縣有道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔公爵山縣有道君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=44
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045・山縣有道
○公爵山縣有道君 只今議題トナリマシタ
昭和十二年法律第八十四號中改正法律案外
二法律案ノ特別委員會ニ於ケル審議ノ經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、是等法律案
ノ內容ニ付キマシテハ、旣ニ本議場ニ於テ
政府ノ說明ガゴザイマシタノデ、極メテ大
體ノコトヲ玆ニ申上ゲマス、第一ノ昭和十
二年法律第八十四號中改正法律案ハ支那
事變ニ關スル臨時軍事費支辨ノ爲必要ナル
公債ノ發行限度ヲ二十億二千二百餘萬圓ヨ
リ六十四億七千六百餘萬圓ニ改メヨウトス
ルノデコザイマス、尙法律案ノ附則ニハ、
支那事變ニ關スル臨時軍事費特別會計法ニ
一箇條ヲ追加致シマシテ、臨時軍事費出納上
必要アル場合ニ於テハ一時借入金ヲ爲シ、
又ハ融通證劵ヲ發行スルコトヲ得ルヤウニ
シテ置カウトスル改正ヲ含ンデ居リマス、
第二ノ關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及
樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ一
部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特別會計
ニ繰入レルコトニ關スル法律案ハ、支那事
變費ノ一部ニ充當致シマスル爲ニ、外地ノ
各特別會計ニ於キマシテモ、一般會計ニ於
ケルト略、〓同趣旨ノ下ニ、各種ノ租稅ヲ增徵
シ、新稅ヲ創設スルト共ニ煙草ノ値上ヲ致
シマシテ、其ノ收入ノ一部ニ相當スル金額
等ヲ豫算ノ定ムル所ニ依リマシテ、臨時軍
事費特別會計ニ繰入レヨウトスル法律案デ
ゴザイマス、最後ノ昭和十三年度一般會計
歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行ニ關ス
ル法律案ハ所謂赤字公債ノ追加發行ニ關
スルモノデゴザイマシテ、一般會計歲出ノ
財源ニ充ツル爲ノ公債發行ニ關スル法律案
デゴザイマス、曩ニ今期議會ニ提出サレ、
旣ニ議決濟ト相成ッテ居ルノデアリマスル
ガ、昭和十三年度豫算追加第一號ニ計上セ
ラレマシタ經費ノ財源ノ一部ニ充ツル爲七
千三百餘萬圓ノ赤字公債ヲ追加發行スルコ
トニ關スルモノデゴザイマス、以上申述べ
マシタ三ツノ法律案ニ關シマシテハ三囘
ニ亙リ特別委員會ヲ開キマシタ、質疑應答
ヲ重ネ愼重審議ヲ致シマシタ、其ノ詳細ニ
付キマシテハ速記錄ヲ御覽願ヒタイト存ジ
マスガ、特ニ重要ナルモノヲ申上ゲマスレ
バ是等法案ニ依リ昭和十三年度ニ於テ發
行ヲ豫定セラルヽ公債ノ額ハ巨額ニ上ルコ
トニナルノデアリマスガ、之ニ對シ如何ナ
ル對策ヲ政府ハ講ズル心算デアルカト云フ
質疑ニ對シ、大藏大臣ヨリ斯ク巨額ノ公
債ヲ發行スル場合ニ於テハ一國經濟總
體ノ問題トシテ、政府總掛リデ國民ト協力
ヲ爲シ對策ノ遺憾ナキヲ期セネバナラヌ
ノデアルガ、就中其ノ基本工作トシテ
國際收支ノ適合ヲ圖リ、爲替相場ヲ
維持シテ通貨ノ價値ニ對スル國民ノ信用ヲ
保持シ、又物資自給ノ調節ヲ圖リ、急激ナ
ル物價騰貴ヲ防止スルコトガ必要ナノデア
リマシテ、之ガ爲ニハ輸出ノ振興、一部物
資ノ輸入制限、消費ノ節約、貯金ノ奬勵ナ
ドヲ圖ルコトガ大切デアリマス、今後トモ
是等ノ方面ニ十分ナル努力ヲスル考デアル
ガ、特ニ消費節約ト貯金獎勵トニ付キマシ
テハ國民ノ理解ヲ求ムル爲ニ格段ノ努力
ヲ致スト云フ趣旨ノ答辯デゴザイマシタ、
尙巨額ノ公債發行ニ伴ヒ、生產力擴充ニ支
障ヲ生ズル虞ハナイカトノ質問ニ對シマシ
テ、公債消化ノ爲ニ時局ニ必要ナル生產力
擴充ニ要スル資金ノ調達ニ支障ヲ生ズルコ
トガアッテハナラナイノデ、日本銀行引受ニ
依ル公債發行ノ方法ヲ適當ニ運用シテ金融
ノ調節ヲ圖リ、公債消化ノ爲生產力擴充資
金ヲ壓迫スルヤウナ事態ヲ生ジナイヤウ努
ムル心算デアルト云フ答辯デゴザイマシタ、
又公債ノ發行ハ今後トモ日本銀行引受ノ方
法ニノミ依ルモノデアルカト云フ質問ニ對
シ、市場ニ於ケル資金ノ情況ニ考へ、適當
ト認メル時ハ直接公債ノ公募ノ方法ヲ併用
スル考デアルト云フ答辯ガゴザイマシタ、
次ニ陸海軍ノ豫算ハ厖大ナル額ニ上ルノデ
アルガ、其ノ使用ノ監督ニ付テハ如何ナル
措置ヲ講ジツヽアルカ、之ガ爲特別ナ機關
ヲ新設スルノ意圖ハナイカト云フ質問ニ對
シ、陸海軍當局ヨリ、厖大ナル豫算ヲ使用
スルニ當リマシテハ、戰時デアルカラト云ッ
テ決シテ放漫ナ經理ヲ致スコトノナイヤ
ウ十分ナ注意ヲ拂ッテ居リ、國內ノ諸官衙、
諸部隊ハ勿論、出征各部隊ニ於テモ、特
此ノ點ニ付キ留意スルヤウ、數次ニ瓦リ訓
示ヲ致シテ居ルト云フコトデゴザイマス、
之ガ爲特別ナル監督機關ヲ新設スル意圖ハ
ナイガ、十分注意ヲ致スト云フ答辯デゴザ
イマシタ、尙今後物價ノ昂騰スルコトハ免
レナイト考ヘルガ、今囘議會ノ協贊ヲ經タ
豫算ハ、將來之ガ爲不足ヲ來スヤウナコト
ハナイカト云フ質問ニ對シ、政府ハ物價問題
ニ付テハ各種ノ方策ヲ講ズルト共ニ、國民
ノ理解アル協力ヲ得テ、物價ノ急激ナル昂
騰ヲ避ケルヤウ期シテ居ル次第デアル、軍
事費豫算不足ヲ生ズルガ如キコトハナイ
見込デアルト云フ答辯デゴザイマシタ、右
ノ外厖大ナル軍事費ニ伴フ工業勞働者ノ不
足ニ處スル對策、國防獻品ノ爲ニスル寄附
金、恤兵金ノ取扱ニ關スル會計法上ノ問題、
產業給制ニ伴フ利弊ノ問題、物價騰貴ノ國
民生活ニ及ス影響ノ問題、臨時資金調整法
施行ノ情況、臨時軍事費特別會計ニ於テ發
行スル流通證劵ノ發行限度、外地ニ於ケル
增稅及新稅創設ノ方針、臨時資金調整法改
正ノ要否ナドニ付キ質疑ヲ重ネマシタ、討
論ニ入リ是等ノ法律案ハ何レモ現下ノ時局
竝ニ財政ノ現狀ナドニ鑑ミマシテ、適當ナ
ルモノト認メマシテ、全會一致ヲ以テ可決
致シマシタ次第デゴザイマス、以上御報〓
ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=45
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046・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ三案ノ採決ヲ致シマス、三案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=46
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047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=47
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048・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=48
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049・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=49
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050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=50
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051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=51
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052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴサイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=52
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053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=53
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054・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=54
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055・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=55
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056・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=56
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057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=57
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058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀會
ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=58
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059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=59
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060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次會ノ議事日程
ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午前十一時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X02519380317&spkNum=60
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