1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月二十四日(木曜日)午前十時二十七分開議
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議事日程 第三十號
昭和十三年三月二十四日
午前十時開議
第一 兌換銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 印刷局据置運轉資本補足に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 昭和九年法律第七號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 昭和十三年法律第六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 昭和十一年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第六 昭和十一年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第七 昭和十一年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第八 昭和十一年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第九 昭和十二年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十 昭和十二年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十一 昭和十二年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十二 航空機製造事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 硫酸アンモニア増産及配給統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 臨時農村負債處理法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 昭和十一年度歳入歳出總決算、昭和十一年度各特別會計歳入歳出決算報告 會議(委員長報告)
第十六 昭和十一年度國有財産増減總計算書報告 會議(委員長報告)
第十七 昭和十二年三月三十一日現在國有財産現在額總計算書報告 會議(委員長報告)
第十八 護國共同組合法案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔石橋書記官朗讀〕
昨二十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
東洋拓殖株式會社法中改正法律案
職業紹介法改正法律案
飼料配給統制法案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ衆議院提出
案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院
ニ通知セリ
支那事變ニ際シ召集中ノ者ノ選擧權及被
選擧權等ニ關スル法律案
同日農業保險法案特別委員會ニ於テ當選シ
タル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長本多政樹君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
航空機製造事業法案可決報告書
硫酸アンモニア增產及配給統制法案可決
報〓書
臨時農村負債處理法案可決報〓書
請願文書表(第十囘報〓)
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第二號)
昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案(第
三號)
昭和十三年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第三號)
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ
關スル法律案
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル法律案
昭和九年法律第七號中改正法律案
昭和十一年度第一豫備)
金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十一年度特別會計
豫備費支出ノ件
昭和十一年度滿洲事件
第一豫備金支出ノ件
昭和十二年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
豫備金外ニ於テ豫算超
過及豫算外支出ノ件
昭和十三年度法律第六號中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
護國共同組合法案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
擔保附社債信託法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 議ヲ開キマス、日程第一、
證發行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案、
程第二、
法律案、日程第三、
改正法律案、日程第四、
六號中改正法律案、政府提出、
一讀會、及ビ日程第五、
豫備金支出ノ件、
一豫備金支出ノ件、
豫備費支出ノ件、
一豫備金支出ノ件、
金支出ノ件、
備金支出ノ件、
金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件、
(承諾ヲ求ムル件)
是ヨリ本日ノ會
兌換銀行劵ノ保
日
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル
昭和九年法律第七號中
昭和十三年法律第
衆議院送付、
昭和十一年度第一
昭和十一年度特別會計第
昭和十一年度特別會計
昭和十一年度滿洲事件第
昭和十二年度第二豫備
昭和十二年度特別會計第二豫
昭和十二年度特別會計豫備
以
上第五ヨリ第十一迄ノ承諾ヲ求ムルノ件、
衆議院送付、是等ノ十一案ヲ一括シテ議題
トナスコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、太田政務次官
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ做フ〕
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
ニ關スル法律案
兌換銀行劵條例第二條第二項及第四項中
十億圓トアルハ當分ノ內之ヲ十七億圓ト
ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
スルモノトス
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル法律
案
第一條印刷局据置運轉資本ニ不足ヲ生
ジタルトキハ大藏大臣ハ借入金ヲ爲シ
一時之ヲ補足スルコトヲ得但シ其ノ金
額ハ四百萬圓ヲ超過スルコトヲ得ズ
前項ノ借入金ハ遲クトモ翌年度ニ於テ
之ヲ償還スベシ
第二條大藏大臣ハ前條第一項ノ借入金
ニ代ヘ當該會計年度內ニ限リ國庫餘裕
金ヲ繰替使用スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和九年法律第七號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和九年法律第七號中改正法律案
昭和九年法律第七號中左ノ通改正ス
「五千八百四十萬圓」ヲ「六千二百六十萬
圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和九年法律第七號ハ滿洲事件ニ關ス
ル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ
關スル法律ナリ
昭和十三年法律第六號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十三年法律第六號中改正法律案
昭和十三年法律第六號中左ノ通改正ス
第一條中「五億五千七百八十萬圓」ヲ「七
億九千七百四十萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ施行ス
參照
昭和十三年法律第六號ハ昭和十三年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發
行ニ關スル法律ナリ
昭和十一年度第一豫備金支出ノ件
昭和十一年度特別會計第一豫備金支出
ノ件
昭和十一年度特別會計豫備費支出ノ件
昭和十一年度滿洲事件第一豫備金支出
ノ件
昭和十二年度第二豫備金支出ノ件
昭和十二年度特別會計第二豫備金支出
ノ件
昭和十二年度特別會計豫備金外ニ於テ
豫算超過及豫算外支出ノ件
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ
因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔政府委員太田正孝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=3
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004・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 只今議題トナリ
マシタ兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴
張ニ關スル法律案、印刷局据置運轉資本補
足ニ關スル法律案、昭和九年法律第七號中
改正法律案、昭和十三年法律第六號中改正
法律案、昭和十一年度第一豫備金支出ノ件、
外六件、事後承諾ヲ求ムル件ニ付キマシテ
提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、先ヅ兌換
銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ關スル
法律案ニ付テ申上ゲマス、此ノ法律案ハ、
今囘ノ事變ニ關聯致シマシテ、兌換銀行劵
發行高ノ增加スル趨勢ニ對處致シマスル爲、
今後當分ノ間兌換銀行劵ノ保證發行限度ヲ
七億圓ダケ擴張致シマシテ、之ヲ十七億圓
トナサムトスルモノデゴザイマス、兌換銀
行條例ニ依ル現行ノ保證發行限度十億圓ト
申シマスノハ、昭和七年七月ニ一億二千萬
圓カラ擴張セラレタモノデゴザイマス、其
ノ後我ガ國ノ經濟界ハ、各方面トモ漸次發
展ヲ續ケマシテ、之ニ對應シテ、兌換銀行
劵ノ發行高ハ每年々々增加ノ勢ニアリマシ
タガ、殊ニ昨年支那事變ノ勃發ヲ見マスル
や、軍需ノ急增ニ伴ヒマスル一般經濟活動
ノ急激ナル膨脹ニ依リマシテ、兌換銀行劵
ノ發行高モ著シク增加シ、屢〓制限外發行ヲ
出現スルニ至ッタ次第デゴザイマス、而シテ
今後ニ於ケル兌換銀行券發行高ノ趨勢ヲ推
シ測ッテ見マスルノニ、事變ニ關聯シテ色々
ノ經濟活動ハ依然膨脹シ、之ニ伴ッテ兌換銀
行劵ノ發行高モ尙增加スルモノト考ヘラレ
マー、仍テ此ノ際臨時ニ保證發行限度ヲ相
當擴張スルノヲ適當ト認メマシテ、本案ヲ
提出致シタ次第デゴザイマス、次ニ印刷局
据置運轉資本補足ニ關スル法律案ニ付テ御
說明申上ゲマス、內閣印刷局ニ於ケル各種
製造品ノ數量ハ、近年著シク增加ヲ來シテ
居リマスル關係上、現在ノ作業會計法ノ規
定ニ依ル据置運轉資本百萬圓ヲ以テ致シマ
シテハ、其ノ事業遂行上、時ニ困難ヲ伴ヒ
マスルノデ、斯樣ナ場合ニ於キマシテハ、
借入金ヲ致シマシテ一時之ヲ補ヒ、又ハ此
ノ借入金ニ代フルニ國庫餘裕金ノ繰替使用
ヲ以テシ得ルコトト致シマスノヲ適當ト認
メマシテ、本案ヲ提出シタ次第デゴザイマ
ス、次ニ昭和九年法律第七號中改正法律案
ノ提出ノ理由ヲ申上ゲマス、滿洲事件ニ關シ
マシテ、陸海軍軍人等ニシテ功績アル者ニ
對シ、行賞一時賜金トシテ交付セラレマス
公債ハ、現行ノ昭和九年法律第七號ニ依リ
マシテ、總額五千八百四十萬圓ヲ限ッテ發
行スルコトガ出來ルコトトナッテ居ルノデ
ゴザイマス、然ルニ今囘賜與セラレル人員
ノ殖エマスナドニ伴ヒマシテ、此ノ公債發
行限度ノ法定額ヲ、更ニ四百二十萬圓ダケ
增加スルノ必要ガゴザイマス、仍テ本法律
案ヲ提出シタ次第デアリマス、次ニ昭和十
三年法律第六號中改正法律案提出ノ理由ヲ
御說明申上ゲマス、昭和十三年度ノ一般會
計歲出ノ財源ニ充テマスル爲必要ナル公債
ノ發行ニ付キマシテハ、今期議會ニ於テ、
旣ニ二囘ニ互リ之ニ關スル法律案ヲ提出致
シマシテ、何レモ御協賛ヲ經テ居ルノデゴ
ザイマス、然ルニ今囘提出ノ第二號追加豫
算案及第三號追加豫算案ニ計上シテ居リマ
スル經費ノ、所要財源總額二億六千一一十餘
萬圓トナッテ居リマス中デ、二億三千九百六
十餘萬圓ハ之ヲ歲入補塡公債ニ依ルノ必要
ガゴザイマスノデ、旣ニ御協贊ヲ經テ居リ
マシテ本月十六日ニ公布セラレマシタ昭和
十三年法律第六號ニ規定スル公債發行限度
ノ法定額ヲ、七億九千七百四十萬圓ニ增加
スル爲ニ、此ノ法律案ヲ提出致シタ次第デ
ゴザイマス、終リニ昭和十一年度第一豫備
金支出外六件ニ關スル事後承認ヲ求ムル件
行け、其ノ大要ヲ御說明申上ゲマス、昭和
十一年度一般會計第一豫備金ノ豫算額ハ八
百萬圓デアリマスガ、昭和十一年勅令第二
百六十五號ニ依ッテ、第一豫備金ヨリ補充致
シマシタル主ナル事項ハ、入營附添人檢丁
及新兵旅費、諸拂戾立替補塡及償還金、海
軍主食品ノ購買費、矯正院及刑務所收容費
等デゴザイマシテ、其ノ總額ハ八百萬圓デ
ゴザイマス、各特別會計ニ於キマシテモ、
其ノ第一豫備金又ハ豫備費ヨリ豫算超過ノ
支出ヲ爲シタモノガアリマス、尙昭和十一
年度滿洲事件第一豫備金支出ニ付申上ゲマ
ス、昭和十一年度滿洲事件第一豫備金ノ豫
算額ハ五百萬圓デゴザイマスルガ、昭和十
一年勅令第二百六十五號ニ依リマシテ、滿
洲事件費ニ補充致シマシタ金額ハ二百萬圓
デアリマス、尙昭和十二年度一般會計第二
豫備金ノ豫算額ハ二千五百萬圓デアリマシ
テ、其ノ支出ノ主ナル事項ヲ申上ゲマスレ
バ、衆議院議員總選擧諸費、北支事件費、
衆議院議員總選擧檢察費、中國地方其他各
地風水害復舊施設費、關東地方其他各地災
害應急施設費等デゴザイマシテ、其ノ總額
ハ千八百八十五萬千二百七十一圓デゴザイ
やく、各特別會計ニ於キマシテモ、其ノ第
二豫備金ヲ以テ豫算外ノ支出ヲナシタルモ
ノト、豫備金外ニ於テ其ノ歲入金又ハ國庫
剩餘金ヲ以テ、豫算超過及豫算外ノ支出ヲ
致シタモノガアリマス、何卒御審議ノ上速
カニ御協贊竝ニ御承諾ヲ與ヘラレムコトヲ
御願ヒ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ十一件ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サ
セマス
〔石橋書記官朗讀〕
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ
關スル法律案外十件特別委員
侯爵中山輔親君子爵大岡忠綱君
男爵今園國貞君男爵長基連君
中村純九郞君土方久徵君
深井英五君西本健次郞君
平沼亮三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十二、航
空機製造事業法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告、委員長溝口伯
爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
航空機製造事業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十三日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=6
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007・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 私ハ本案ノ委員長ト致
シマシテ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓
致シマス、本法案ノ委員會ハ去二十日ヨリ
三囘ニ亙リマシテ開設致シマシテ、昨二十
三日全員一致、可決決定致シマシタ、其ノ
中一昨二十二日ハ午前午後トモ、終日祕密
會ニ終始致シマシテ、航空ニ關スル諸問題
ヲ聽取致シマシタ、質問應答ノ大要ヲ申上
ゲル前ニ、本案ニ關シマシテ政府委員ヨリ
說明サレマシタコトハ、本議場ニ於キマシ
テ申サレマシタコトト大差ゴザイマセヌカ
ラ、是ハ省略致シタイト存ジマス、要スル
ニ本案ハ航空機ノ國防及產業上ニ於ケル重
要性ニ鑑ミ、航空機製造事業ニ對シ、適切
ナル保護統制ヲ加へ、次デ斯業ノ確立ヲ圖
リ、優秀且低廉ナル航空機ノ豐富ナル供給
ヲ爲スト云フコトガ主眼デ作ラレタ案デゴ
ザイマス、次ニ質問應答ノ大要ヲ中上ゲマ
スガ、尙此ノ質問應答中ニハ、屢〓筆記ヲ
中止致シマシタ所ガゴザイマシテ、其ノ件
ニ付テハ本議場ニ於テ報告ヲ致スコトガ出
來マセヌノハ遺憾デゴザイマス、第一ハ一
委員ヨリ、航空船ト云フコトニ付テ御質問
ガゴザイマシタ、航空船ハ現ニ「ドイツ」デ
使ヒ、且「アメリカ」ノ海軍ニ於テモ尙使用
シテ居リマス、之ニ關シテ本邦ニ於テモ〓
究調査スル必要ガアルト思フガドウデアル
カト云フ御問ニ對シマシテ政府委員ヨリ
〓究ニ付テハ尙續ケテ〓究スル積リデアル
ガ、何分ニモ非常ニ多額ノ經費ヲ要スルモ
ノデアルカラシテ、實際ノ實驗若シクハ製
造ト云フコトハ、他ニ尙ソレヨリモ急務ナ
ルコトガアッテ、ナカ/〓手ガ著ケラレナイ
ノヲ遺憾トスルト云フ御答、次ニ規格ノコ
トニ付テ本法ノ第六條ニ、「規格ヲ定ムルコ
トヲ得」トアル、此ノ規格ニ付テノ問答ガゴ
ザイマシタ、ソレハ此ノ規格ト云フモノハ
殆ド世界ガ共通的ニナッテ行ク傾向ガアル
ノデ、我ガ國ニ於テモソレニ則ッテ、大體世
界ノ標準ニ應ズルヤウニ定メタイト思フト
云フコトニ對シテ、一委員ヨリハ、規格ハソ
レハ尤デアルガ、尙我ガ國獨得ノ規格ト云
フモノガアリハシナイカ、又ハソレヲ造ル
必要ガアリハシナイカト云フ御質問ガゴザ
イマシタ、ソレニ對シテ政府當局ヨリハ、此
處ニ謂フ規格ト云フモノハ、大キナ飛行機
ノ種類トカ何トカ云フヤウナコトデナイ、極
メテ技術的ノ規格ヲ謂フノデアルカラ、是
ハ大體ニ於テ世界共通ニ段々ナッテ行クモ
ノデアル、左樣御承知ヲ願ヒタイト云フ御
答辯デアリマス、次ニ官營ノ工場ヲ設ケテ、
模範的ノ試作ヲスルト云フヤウナ必要ハナカ
ラウカト云フ御問ニ對シマシテ、政府當局
ヨリ、斯クノ如キコトハ目下考ヘテナイ、
遞信省ノ航空局及陸海軍ニ於テモ各〓究
所若シクハ試驗場ト云フヤウナモノヲ持ツ
テ居リマシテ、ソコデ〓究シ、尙一部試作
其ノ他ノ〓究調査ヲスレバ十分デアッテ、別
ニ官營ノ工場ヲ設ケル必要ハナカラウト云
フ御答デゴザイマシタ、次ニ一委員ヨリ國
民ニ航空思想ヲ注入シ、且航空機ニ親マシ
メルコトハ極メテ必要デアルカラシテ、ソ
レニハ旅客機ニ餘計乘ルヤウニ、運輸ノ囘
數ヲ增加スルト共ニ、賃銀ヲ安クスレバ
之ヲ利用スル者ガ多クナッテ、航空思想ガ發
達シテ來ルガ、之ニ關シテ何カ政府デ御考
ハアルカト云フコトニ付キマシテ、政府
當局ヨリハ目下ノ賃銀モ諸外國ニ比シテ
著シク高イト云フコトハナク、寧口現爲替
相場ヲ以テスレバ安イ位デアル、但シ本邦
ト外國トノ生活程度ノ比較モアリマスシ、
尙其ノ他ノ汽車汽船等トノ比較モアリマス
ガ、是ハ將來ニ於テ出來ルダケ御希望ニ副
フヤウニ、趣旨トシテハ誠ニ御尤ナコトデ
アルカラ努力シタイト思フト云フ御答デゴ
ザイマシタ、次ニハ中央〓究機關ノコト、
是ハ嘗テ本議場ニ於テ永井遞信大臣ガ申サ
レタコトデゴザイマス、航空局ニ御置キニナ
ル中央〓究機關ヲ設ケテ、ソレヲ利用シテ
我ガ國ノ航空機製造及航空法ニ對シテモ、
十分ナル發達進步ノ爲ニ貢獻シヨウト云フ
機關デゴザイマス、之ニ付キマシテ構造及
運用等ニ關シ、一委員ヨリノ質問ニ對シ、
政府當局ヨリハ、本年度ニ於テ取敢ズ五十
萬圓ノ豫算ヲ取リマシテ、準備ヲ致シ、來
年度カラ出來ルダケ此ノ實現ニ資シタイト
云フ御答デゴザイマシテ、尙其ノ節ニ遞信
省ノ私案ヲ示サレマシテ、是ハ別ニ決定シ
タモノデモゴザイマセヌカラシテ、此處デ
御報告ハ略シマス、次ニ輕飛行機及「グラ
イダー」ニ對シテハ、本法案デ別ニ保護奬
勵ハシナイノカト云フ御問ニ對シマシテ、
政府當局ヨリ、玆ニ稱スル飛行機ト云フノ
ハソレヨリモ大キナモノヲ謂フノデ、輕飛
行機及「グライダー」ニ對シテハ、本法デ一
般ノ飛行機製造ト同樣ニハ保護ヲシナイガ、
併シナガラ是等ニ關シテモ尙保護スル途ガ
アルノデ、ソレニ依ッテ出來ルダケ保護シ
タイト思ッテ居ル、但シ「グライダー」ハ寧
ロ目下「スポーツ」ノ方ノ領域ニ入ッテ居ル
ノデ、文部省及厚生省ニ於テ此ノコトハ頻
ニ保護奬勵發達ト云フヤウナコトヲ考ヘテ
居ルノデ、其ノ方ノ手ニ大體ハ委ネテアル
ト云フ御答デアリマス、次ニ委員會ノコトデ
アリマス、此ノ法律ニ於キマシテ一一ツノ委
員會ガ出來マス、第一ノ委員會ハ航空機技
術委員會、ソレカラ航空機製造事業委員會、
此ノ二ツノ委員會、其ノ外尙現今文部省内
ニ一委員會ガ存在致シマス、是等ノ各委員
會ガ委員會ノ濫立ニナッテ、其ノ〓究アタリ
ガ却テ無用ニナリハシナイカ、重複若シク
ハオ互ニ權限ヲ爭フト言ッテハ語弊ガアリ
マスルガ、權限ノコトニ付テ色々問題ガ起ッ
タリ何カスルト、却テ面倒ニナッテ御困リ
ニナリハシナイカ、寧ロ斯クノ如キ委員會
ハ成ルベク統一シテ、同種類ノモノハ一ツ
ニ集メテヤラレタ方ガ宜クハナイカト云フ
一委員ノ御質問ニ對シマシテ、政府當局ハ、
本法律ニ依ッテ作ル技術委員會ト云フノハ、
專ラ學術的ノ、學術及技術ノ方面ヨリシテ
根本的ノ〓究ヲスルモノデアル、片ッ方ノ
事業委員會ト云フノハ、此ノ法律ノ運用ニ
關スル問題ヲ實際ニ就テ〓究スルモノデ、
全然是ハ種類ノ違フモノデ、決シテソレガ
重複ニナルトカ或ハ混同スルトカ何トカ云
フヤウナ憂ハ絕對ニナイモノデアルト云フ
御答デアリマシタ、次ニ償却ノコト、是ハ
嘗テ本議場ニ於テ工作機製造事業法ニ付
テ申上ゲマシタ通リ、航空機製造ニ付キマ
シテモ尙戰時若シクハ非常ノ場合ニハ非常
ニ膨脹シ、且需要ガ澤山アッテ收益ガ多イ、
其ノ間ニ出來ルダケ償却ヲ多クシテ、平時
ノ狀態ニ移ッタ時ノ、需要ノ減少若シクハ總
テノ經濟上ノ變動ニ適應スルヤウニ、此ノ
際成ルベク多額ノ償却ヲサシタラ宜カラウ、
ソレニ付テ政府ハドウ云フ御考デアルカ、
尙是等ニ付テ大藏省ト御打合セニナッテ居
ルカト云フ問ニ對シマシテ、政府當局ヨリ
ハ、ソレハ趣旨ニ於テハ誠ニ同意デ、自分
ノ方モサウ思ッテ居ルガ、尙如何程ノ償却ヲ
サセルベキモノデアルカト云フコトニ付テ
ハマダ決ッテ居ナイ、追ッテ是ハ決メル筈デ
アル、尙此ノ事ニ關シマシテ大藏省トハ十
分協議ヲ遂ゲテ、之ガ爲ニ故障ノ起ルコト
ハナイヤウニシタイト思フト云フ御答デア
リマシタ、ソレカラ最後ニ一委員ヨリシテ
飛行機製造工場ト云フモノハ工場ノ分布
ハ國防上ヨリモ其ノ他產業上ヨリモ、非常
ニ必要ナコトデアリ、且其ノ地域ノ選定等
ニ付テハ、國防產業其ノ他ヲ顧慮シテ餘程
能ク御考ニナッテ按配シナケレバナラヌ、
殊ニ新設サレル會社ノ如キハ、其ノ點ヲ十
分顧慮シテ政府ニ於テ許可サレル必要ガア
ルト思フ、政府ノ御意見ハドウデアルカト
云フ御問ニ對シマシテ、政府當局ハ誠ニ御
尤ノコトデ、此ノ點ハ十分顧慮シテ、御希
望ニ副フヤウニシタイト思フト云フ御答デ
ゴザイマシタ、以上ヲ以チマシテ一委員ヨ
リシテ、次ノ如キ意見ヲ述ベラレマシテ贊
成ノ意ヲ表明サレマシタ、ソレハ本法ハ一
面ニ於テハ非常ニ保護助成ト云フコトヲ含
ンデ居ルガ、又半面ニ於テハ可ナリ强イ統
制强化ト云フコトヲ含ンデ居ル、ソレ故ニ
此ノ法律ノ運用ニハ深甚ナル考慮ヲ要スル、
目下世界ノ大勢ヲ見マスルト、大體ニ於テ
工業統制ノ方針ニ二ツアル、一ツハ、國家總
動員法ニ依ッテ之ヲ統制シヨウト云フモノ、
其ノ第二ハ、事業ニ依ッテ統制ヲシヨウト
云フ、其ノ二ツノ方法ガアル、サウシテ大
體ニ於テ各事業ニ於テ統制ヲ强化スルト云
フノハ、旣ニ其ノ工業ガ發達シテ、或一定ノ
程度迄達シテ居ル國、極メテ卑近ナル例ヲ
引イテ言ヘバ英米獨佛、是等ノモノハ總テ
此ノ方法ニ依ッテヤッテ居ル、之ニ反シテ工
業發達ノ未ダ所要ノ點ニ達シナイ國ニ於テ
ハ、統制强化ヲ餘リ强クシナクテ、總動員法
ニ依ッテ之ヲ取締リ、以テ將來ノ戰鬪ニ資サ
ウト云フ考ヲ採ッテ居ル、我ガ國ノ今囘ノ立
法ヲ見ルト、是等ノコトヲ併用シテ居ルガ
如キ觀ガアル、然ルニ我ガ國ニ於ケル工業
殊ニ航空機製造事業ノ如キモノハ、之ヲ歐
米諸國ニ比シマスルト遙カニ質ニ於テモ、量
ニ於テモ、殊ニ量ニ於テハ遙カニ下位ニア
ル、ソレ故ニ本法ヲ御出シニナッテ、本法提
出ノ趣旨ニアッタ如ク、多量ニ且良イモノヲ
造ラウ、ソレガ爲ニ保護助成ヲシヤウト云
フ御考デアルコトハ明カデアルガ、動モス
レバ統制强化ノ結果却テ工業ノ發達ヲ阻害
シテ、所期ノ目的ヲ遂行スルコトガ出來ナ
イヤウニナル虞ガナイコトハナイト考ヘル
カラシテ、本法施行ニ當リマシテハ、政府
當局ニ於テ此ノ點ニ十分意ヲ用ヒラレテ、
決シテ統制ノ爲ニ事業ノ發達進步ヲ阻害シ
ナイノハ勿論、益〓事業ノ發達進步、國防上
產業上總テニ所期ノ目的ヲ達成スルヤウニ
努力サレタイト云フ、大體ノ御趣旨ノ贊成
演說デゴザイマス、是ニテ討論ヲ終リマシ
テ採決ニ入リマシテ、全員一致、原案ノ如
ク可決致シマシタ、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第三
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=9
-
010・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=10
-
011・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=12
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013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=14
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015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=15
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016・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=16
-
017・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=17
-
018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=18
-
019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=19
-
020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=21
-
022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十三、硫
酸アンモニア增產及配給統制法案、日程第
十四、臨時農村負債處理法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、
是等ノ兩案ハ之ヲ一括シテ議題トスルコト
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平頼壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長報〓、副委員長後藤伯爵
硫酸アンモニア增產及配給統制法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十三日
委員長公爵鷹司信輔
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時農村負債處理法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十三日
委員長公爵鷹司信輔
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵後藤一藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=23
-
024・後藤一藏
○伯爵後藤一藏君 只今議題ト相成リマシ
タ硫酸アンモニア增產及配給統制法案、及
臨時農村負債處理法案ノ一一法案ノ、委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、委員會ハ
二十日ヨリ三日間開會致シマシタ、此ノ二
法案ハ先日本議場ニ於キマシテ農林大臣ガ
說明セラレタ通リデアリマスルガ、最初ニ
硫酸アンモニア增產及配給統制法案ノ內
容ニ付テ申上ゲマスト、此ノ法案ハ增產促
進ニ關スル規定ト、其ノ配給統制施設ニ關
スル規定トカラ成ッテ居ルノデゴザイマス、
增產ニ關シマシテハ本法案施行後五箇年間
ニ硫酸「アンモニア」製造設備ノ新設又ハ增設
ヲ致シマス者ニ對シマシテ所得稅、營業收
益稅及地方稅ヲ免除シ、必要ナル器具、機
械ノ輸入稅ヲ免除シ、尙土地收用法ヲ適用
シ得ル事業ト致シテアルノデアリマス、又
資金調達ノ便宜ノ爲ニハ、是等ノ諸會社ニ
ハ株金全額拂込前ノ增資ヲ認メ、又社債發
行限度ヲ擴張スル等ノ保護助成ヲ與ヘマス
ト共ニ、必要ニ應ジマシテ是等諸會社ノ製
造設備ノ新設、增設、又ハ改良ヲ命ジ得ル
コトト致シマシテ、命令ニ依ッテ生ジタル
損失ハ政府ニ於テ之ヲ補償スルコトトシテ
アルノデゴザイマス、配給統制ニ付キマシ
テハ、現ニ臨時肥料配給統制法ニ依ッテ行
ヒツヽアリマスル所ノ硫酸「アンモニア」ノ
配給統制事業ヲ恆久的制度トスル爲ニ、資
本金一千萬圓ノ特殊會社、日本硫安株式會
社ヲ設立致シマシテ、硫酸「アンモニア」ノ
配給統制事業ヲ完全ニ遂行セシムルト共
ニ、民間ニ於ケル增產ノ進捗ノ情況ニ依リ
マシテハ日本硫安株式會社自體ニモ硫酸
「アンモニア」ノ製造、其ノ他供給權確保ノ
上ニ必要ナル事業ヲモ行ヒ得ルコトト致シ
タノデゴザイマス、又日本硫安株式會社ニ
對シマシテ、資金調達ノ便宜ノ爲ニ資本ノ
增加、社債ノ募集ニ付テハ商法ノ特例ヲ設
ケマシテ、特ニ社債ニ付キマシテハ元利ノ
支拂ヲ政府ニ於テ、保證スル等ノ特典ヲ與
ヘ、重要ナル事項ニ付テハ政府ノ認可ヲ受
ケシメ、又利益ノ配當ノ制限ヲスルコトト
致シテアルノデゴザイマス、尙其ノ硫酸「ア
ンモニア」ノ製品ハ、何レモ日本硫安株式會
社ニ對シ賣渡スベキ旨ノ規定ヲ致シテ居ル
ノデゴザイマス、申ス迄モナク、硫酸「アン
モニア」ハ農村經營ノ必需品デアリマシテ、
其ノ需要增加ノ趨勢ニ對應致シマシテ、自
給ヲ圖リマスコトハ極メテ必要ナルコトデ
ゴザイマス、同時ニ硫酸「アンモニア」ハ軍
事上ニ於テモ爆藥ノ原料ニ變換シ得ル大切
ナルモノデアリマスルノデ、平時ニ於テ相
當ノ輸出力ヲ持チ、又戰時ニ於テモ肥料ニ
事缺カヌヤウニシ、一方ニ於キマシテ國際
貸借ノ改善ニ資スルト共ニ、硫酸「アンモ
ニア」ノ配給統制機構ヲ確立スル方策ヲ樹
立スルコトハ、現下ノ非常時局ニ於テ最モ
緊要ナルコトト考ヘラレルノデゴザイマス、
委員會ニ於キマシテモ、種々質疑ガアッタノ
デゴザイマスルガ、其ノ詳細ニ付キマシテ
ハ速記錄ニ依ッテ御承知ヲ願ヒタイト存
ジマス、其ノ二三ヲ申上ゲマスルト、第
ニ現在硫安配給統制事業ヲ行ヒツヽアル硫
安販賣會社ヲ改組スル必要ガアルカト云フ
質問ニ對シマシテ、硫安販賣株式會社ハ、
臨時肥料配給統制法ニ依ルモノデアルカラ、
恒久的制度トスル必要ガアルノト、民間硫
酸「アンモニア」ノ製造事業ガ、所期ノ增產
ヲ實現スルコトガ出來ヌ時ニハ、日本硫安
株式會社ハ生產ヲモ爲シ得ルヤウニスル必
要ガアル爲デアルトノ答辯ガゴザイマシ
タ、第二ニハ、日本硫安株式會社ノ設立ガ、
肥料商ニ與フル影響ハドウデアルカト云フ
質問ニ對シマシテ、日本硫安販賣株式會社
ガ現時行ヒツヽアルト同ジ方針ニ依ッテヤ
ルノデアルカラ、肥料商ノ營業上ニ變化ヲ
與ヘルヤウナコトハナイ、配給機構ノ合理
的調整ニ付キマシテハ、十分〓究ノ上善處
スル旨ノ答辯ガアリマシタ、第三ニ、現
硫酸「アンモニア」製造設備ノ新設又ハ增設
工事中ノモノニ對シテモ、本法ノ助成ヲナ
スモノデアルカトノ質問ニ對シマシテ、現
ニ設備ノ新設又ハ增設工事中ノモノニ付テ
ハ、一律ニ決シ難イモノデアルケレドモ、
工事ノ相當程度ニ進步シテ居ルモノニ付テ
ハ適用シナイ積リデアルガ、本案ノ趣旨ニ
鑑ミマシテ、出來ルダケ考慮スル積リデモ
アルト云フ答辯ガゴザイマシタ、斯クテ質
疑ヲ終ヘマシテ討論ニ入リマシタ、一委員
ヨリ「アンモニア」工業ハ、獨リ農業上重要
ナル硫酸「アンモニア」用トシテノミナラズ、
軍事上化學工業上甚ダ重要ナルモノデアル
カラ、廣ク「アンモニア」製造ニ對シテモ、何
等カノ助成方法ヲ講ゼラレルヤウ商工省、軍
部方面トモ十分ニ考究セラレタイト云フコ
トデゴザイマシタ、又一委員カラ、本法案ノ
實施ニ當リマシテ、今迄ハ、商工農林兩省ニ
於テ監督サレタノデ、價格ノ適正ヲ維持サ
レテ來タケレドモ、今後ハ農林省ノミノ
監督トナルノデアルカラ、或ハ農民ノ方ニ
重キヲ置イテ、偏頗ニナルヤウナコトノナ
イヤウニ公正ヲ期セラレタイ、硫安ノ價格
ノ適正ト云フコトハ、混合肥料其ノ他ノ配
合肥料等ノ、肥料ノ價格ヲ適正ナラシムル
モノデアルカラ、需要者、製造事業者雙方
ニ公平ナルヤリ方ヲシテ貰ヒタイト云フ御
希望ガアリマシタ、サウシテ原案ニ贊成セ
ラレタノデアリマス、次イデ採決ニ入リマ
シタガ、全會一致ヲ以テ本法案ハ可決サレ
タノデゴザイマス、次ニ臨時農村負債整理
法案ノ委員會ノ報〓ヲ申上ゲマス、本法ノ
目的ト致シマスル所ハ、支那事變等ニ因ル
戰死傷者遺家族ノ經濟更生ヲ圖ル爲ニ、急
速ニ其ノ負債ノ整理ヲ圖ルコトヲ目的トシ
テ、從來ノ農村負債整理制度ヲ擴充スルコ
トト致シマシテ、臨時農村負債處理制度ヲ
立テムトスルモノデアリマス、第一ハ負債
整理組合ノ設立ヲ見ルニ至ラナイ農山漁村
ニ於キマシテモ、是等ノモノニ對シマシテ
ハ、負債整理ヲナサシムルノ途ヲ開クコト、
第二ニ道府縣ニ臨時負債處理委員會ヲ設置
致シマシテ、必要トスル負債ノ整理ヲナサ
シムルコト、第三ニハ負債整理資金ノ特別
融通ニ對スル國庫ノ損失補償ノ割合ノ限度
ヲ、從來ノ制度ノ二倍ニ擴張スルコトデア
ルノデアリマス、委員會ニ於キマスル質疑
應答ノ詳細ハ、速記錄ニ依ッテ御承知ヲ願フ
コトト致シタイト存ジマス、其ノ中ノ一二
ヲ申上ゲマスルト、本法ノ適用ヲ農山漁村
ニ居住スル者ニ限リ理由ハ如何ト云フ質問
ニ對シマシテ、從來ノ農村負債整理制度ハ、
農山漁村ニ居住スルモノニ付テ行ハレルモ
ノデアッテ、本制度ハ從來ノ此ノ制度ヲ基礎
トシテ之ヲ擴充セムトスルモノデアル、更
ニ都市ニ於ケル戰死傷者遺家族ニ付テモ、
何等カノ方法ヲ講ズル必要ハナイカトノ質
問ニ對シマシテ、都市ニ居住スルモノニ付
テハ現在別ニ中小商工業者ニ對スル資金
ノ特別融通及損失補償制度ガアリ、其ノ運
用ニ依ッテ別ニ法律ガナクテモ差支ハナイ
旨ノ答辯ガゴザイマシタ、又本法ト從來ノ
制度トノ差異及ビ兩者ノ關係ハドウデアル
カトノ質問ニ對シマシテハ、本法ニ於テハ、
新タニ道府縣臨時負債處理委員會ヲ設ケ
テ、戰死傷者遺家族ノ負債ヲ整理セムトス
ルモノデ、又負債整理資金ノ特別融通ニ對
スル損失補償ノ割合ノ限度ヲ、從來ノ制度
ニ依ルモノノ二倍ニ擴充セムトスルモノ
デ、是等ノ特別融通資金ノ總額、及ビ損失
補償金ノ總額等ニ付テハ、何レモ從來ノ制
度ニ依ッテ定ッテ居ル總額ノ範圍內ニ止ッテ
居ル旨ノ答辯ガゴザイマシタ、次イデ討論
ニ入リマシテ、更ニ都市ニ於ケル中小商工
業者ノ戰死傷者遺族家族ノ負債ニ付テモ、
特別ノ施設ヲ講ゼラレタイトノ希望ガアリ
マシテ、原案贊成意見ノ開陳ガアリマシタ、
採決ニ入リマシテ全會一致ヲ以テ、原案通
リ可決セラレタノデゴザイマス、以上ヲ以
チマシテ此ノ二法案ノ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=24
-
025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=26
-
027・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=27
-
028・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=28
-
029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=29
-
030・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=30
-
031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=32
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033・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=33
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034・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=34
-
035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=35
-
036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=36
-
037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御諮リヲ致シマ
ス、決算委員長ヨリノ御希望ガゴザイマシ
テ、大藏大臣ニ出席ヲ求メラレテ居リマス
ルガ、大藏大臣ハ都合上出席ガ出來マセヌ、
故ニ日程ノ順序ヲ變更致シタイト存ジマス
ガ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=39
-
040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十八、護
國共同組合法案、衆議院提出、第一讀會
護國共同組合法案
右本院提出案及送付候也
昭和十三年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平頼壽殿
護國共同組合法案
護國共同組合法
第一章總則
第一條護國共同組合ハ國民皆兵ノ本義
ニ鑑ミ互助共同ニ依リ兵役義務服行ニ
必要ナル家庭ノ經濟的準備ヲ整へ護國
ノ精神ヲ振作スルヲ以テ目的トス
第二條護國共同組合ハ法人トス
第三條護國共同組合ノ名稱中ニハ護國
共同組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用
フヘシ
護國共同組合ニ非サレハ其ノ名稱中ニ
護國共同組合タルコトヲ示スヘキ文字
ヲ用フルコトヲ得ス
第四條護國共同組合ニハ所得稅、登錄
稅及印紙稅ヲ課セス又地方稅ヲ課スル
コトヲ得ス
第二章設立
第五條護國共同組合ノ地區ハ市區町村
又ハ町村組合ノ區域ニ依ル但シ特別ノ
事情アルトキハ此ノ區域ニ依ラサルコ
トヲ得
前項中町村トアルハ町村制ヲ施行セサ
ル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノトス
第六條護國共同組合ハ其ノ地區內ノ世
帶主ヲ組合員トス但シ世帶主ニ非サル
者又ハ法人亦組合員タルコトヲ得
第七條護國共同組合ヲ設立セムトスル
トキハ其ノ地區內ノ世帶主五十人以上
ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款ヲ作
リ地方長官ノ認可ヲ受クルヲ要ス
第八條護國共同組合ハ設立ノ認可ヲ受
ケタルトキニ成立ス
第九條定款ニハ左ニ揭クル事項ヲ記載
スルコトヲ要ス
ー目的
二事業
三名稱
四地區
五事務所ノ所在地
六共同金ノ負擔及交付ニ關スル規定
七役員及組合會ニ關スル規定
八經理ニ關スル規定
九組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
十存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタ
ルトキハ其ノ時期又ハ事由
十一其ノ他組合ニ關スル重要ナル事
項
第三章事業
第十條護國共同組合ハ陸軍又ハ海軍ニ
徵集、徵募又ハ召集セラレタル者アル
トキ組合員ニ對シ共同金ヲ交付シ家業
及家事ノ援助ヲ爲シ其ノ他組合ノ目的
達成ニ必要ナル事業ヲ行フ
第十一條共同金ハ左ニ揭クル者陸軍又
ハ海軍ニ徵集、徵募又ハ召集セラレタ
ルトキ其ノ組合員ニ對シ之ヲ交付ス
一組合員ト同一ノ家ニ屬スル者
二組合員ト生計ヲ同クスル親族
三組合員ト同一ノ家ニ屬シ且生計ヲ
同クスル者
護國共同組合ハ其ノ定款ヲ以テ前項第
一號及第二號ニ定ムル共同金ヲ受クヘ
キ場合ノ範圍ヲ制限スルコトヲ得
護國共同組合ハ前二項ノ規定ニ拘ラス
組合會ノ決議ニ依リ組合員ニ對シ共同
金ヲ交付スルコトヲ得
第十二條共同金ハ普通共同金及特別共
同金ノ二種トス
普通共同金ハ家庭ノ事情如何ニ拘ラス
均一ノ割合ヲ以テ交付シ特別共同金ハ
疾病、災害又ハ家庭ノ狀況ニ因リ必要
アル場合ニ於テ組合會ノ決議ニ依リ普
通共同金ニ併セ交付スルモノトス
第十三條護國共同組合ハ必要アルトキ
ハ定款又ハ組合會ノ決議ニ依リ組合員
ノ家業若ハ家事ノ援助又ハ物品ヲ以テ
共同金ノ一部又ハ全部ニ代フルコトヲ得
第十四條交付セラレタル共同金ニ對シ
テハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ
得ス
共同金ヲ受クルノ權利ハ之ヲ差押フル
コトヲ得ス
第十五條護國共同組合ノ事業ニ必要ナ
ル經費ハ組合員之ヲ負擔スルモノトス
前項ノ負擔ハ定款又ハ組合會ノ決議ヲ
以テ之ヲ定ム
第十六條護國共同組合ハ必要アルトキ
ハ定款又ハ組合會ノ決議ニ依リ物品ノ
醵出又ハ勞力奉仕ヲ以テ醵金ノ一部又
ハ全部ニ代ヘシムルコトヲ得
第十七條護國共同組合ハ已ムコトヲ得
サル事情アリト認ムル組合員ニ對シ組
合會ノ決議ニ依リ前條ニ依ル金品ノ醵
出及勞力奉仕ヲ猶豫又ハ減免スルコト
ヲ得
第十八條護國共同組合ハ現役ニ服セサ
ル組合員又ハ現役ニ服セサル者ト同一
世帶內ニ在ル組合員ニ對シ其ノ故ヲ以
テ特別ノ負擔ヲ爲サシムルコトヲ得ス
第十九條護國共同組合ハ第十條ニ規定
スル事業ノ外左記各號ニ關シ組合員ノ
指導誘披ニ努ムルモノトス
國民皆兵ノ本義ニ鑑ミ護國ノ精神
ノ振作ニ努ムヘキコト
二自彊ノ精神ニ基キ兵役義務服行ニ
伴フ家庭ニ於ケル經濟的準備ノ完整
ニ努ムヘキコト
三隣保相助ノ誼ヲ厚クシ組合ノ定ム
ル金品ノ醵出及勞力奉仕ハ組合ノ精
神ニ鑑ミ進テ之ヲ爲スヘキコト
四兵役義務者及其ノ家族ヲ敬愛シ其
ノ名譽ヲ尊重スヘキコト
五其ノ他組合ノ目的達成ニ必要ナル
精神指導ヲ爲スヘキコト
第四章役員
第二十條護國共同組合ニ左ノ役員ヲ置
キ組合會ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ選任
ス但シ組合設立ノ際ニ於ケル役員ハ定
款ヲ以テ之ヲ定ム
理事若干名
監事若干名
理事ハ組合長及副組合長各一名ヲ互選
ス但シ副組合長ハ必要アル場合ニ於テ
ハ其ノ數ヲ增加スルコトヲ得
役員ノ任期ハ二年トス但シ重任ヲ妨ケ
ス
役員ハ必要アル場合ニ於テハ定款ノ定
ムル所ニ依リ組合員ニ非サル適當ナル
者ヨリ選任スルコトヲ得
第二十一條役員ハ名譽職トス
第二十二條組合長ハ組合ヲ代表シ組合
ノ事務ヲ統轄ス
副組合長ハ組合長ヲ輔佐シ組合長故障
アルトキ其ノ職務ヲ代理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合ノ事
務ヲ執行ス
監事ハ組合ノ事務ヲ監査ス
第二十三條組合事務ノ執行ニ付テハ民
法第四十四條第一項、第五十二條第二
項及第五十五條ノ規定ヲ準用ス
第五章組合會
第二十四條護國共同組合ニ組合會ヲ置
ク
組合會ハ組合長及組合會議員ヲ以テ之
ヲ組織ス
理事及監事ハ何時ニテモ組合會ニ出席
シ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第二十五條組合會議員ハ組合員中ヨリ
之ヲ選任ス
議員ノ定數及選任ニ關スル事項ハ定款
ヲ以テ之ヲ定ム
議員ノ任期ハ二年トス
第二十六條組合會議員ハ名譽職トス
第二十七條組合會ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ組合長之ヲ招集ス
第二十八條組合會ハ左ニ揭クル事項ヲ
議決ス
一組合定款ノ改廢ヲ爲スコト
二年度收支豫算ヲ定ムルコト
三組合事業ノ報告及決算報告ヲ認定
スルコト
四財產ノ管理、處分及取得ニ關スル
コト
五其ノ他本法ニ依リ組合會ノ權限ニ
屬セシメタル事項又ハ組合長ニ於テ
付議シクル事項
前項第一號ニ揭クル事項ノ決議ハ地方
長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效
力ヲ生セス
第二十九條組合會ハ組合長ヲ以テ議長
トス組合長故障アルトキハ副組合長又
ハ其ノ他ノ理事議長ノ職務ヲ代理ス
第三十條組合會ハ組合會議員ノ半數以
上出席スルニ非サレハ開會スルコトヲ
得ス但シ招集再度ニ及フモ尙半數ニ達
セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
組合會ノ議事ハ出席議員ノ全員ノ同意
ヲ以テ之ヲ決ス但シ已ムヲ得サル場合
ニ在リテハ其ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テ可否同數ナ
ルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第六章經理
第三十一條護國共同組合ノ會計年度ハ
政府ノ會計年度ニ依ル
第三十二條組合事務費ハ每年度組合員
醵金ノ十分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
第三十三條護國共同組合ハ基本金ヲ積
立ツルコトヲ得
第七章解散
第三十四條護國共同組合ハ左ノ事由ニ
因リテ解散ス
一定款ニ定メタル事由ノ發生
二組合會ノ決議
三組合ノ合併
四組合員カ三十人未滿ニ減シタルト
キ
五組合ノ破產
組合ノ解散及合併ハ組合會議員總數ノ
三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルニ非サレハ
之ヲ爲スコトヲ得ス
第三十五條合併ニ因リテ組合ヲ設立ス
ル場合ニ於テハ定款ノ作成其ノ他設立
ニ關スル行爲ハ各組合ニ於テ選任シタ
ル者共同シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三十六條組合會ノ決議ニ因ル解散又
ハ合併ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非
サレハ其ノ效力ヲ生セス
第三十七條合併後存續スル組合又ハ合
併ニ因リテ設立シタル組合ハ合併ニ因
リテ消滅シタル組合ノ權利義務ヲ承繼
ス
第三十八條民法第七十條ノ規定ハ護國
共同組合ノ解散ニ之ヲ準用ス
第八章〓算
第三十九條〓算人ハ其ノ職務ノ範圍內
ニ於テ理事ト同一ノ權利義務ヲ有ス
第四十條〓算人ハ就職後遲滯ナク組合
財產ノ現況ヲ調査シ財產目錄及貸借對
照表ヲ作リ之ヲ組合會ニ提出シテ其ノ
承認ヲ求ムヘシ
第四十一條〓算人ハ組合ノ債務ヲ辨濟
シ又ハ辨濟ニ必要ナル金額ヲ供託スル
ニ非サレハ組合財產ヲ分配スルコトヲ
得ス
第四十二條〓算事務カ終リタルトキハ
〓算人ハ遲滯ナク決算報告書ヲ作リ之
ヲ組合會ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘ
第四十三條〓算人タル者ナキトキ又ハ
〓算人ノ缺ケタル爲損害ヲ生スル虞ア
ルトキハ地方長官ハ〓算人ヲ選任スル
コトヲ得
第四十四條重要ナル事由アルトキハ地
方長官ハ〓算人ヲ解任スルコトヲ得
第四十五條〓算人ノ選任アリタルトキ
ハ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ氏名、
住所ヲ登記スヘシ
第四十六條〓算結了シタルトキハ各事
務所ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ爲スヘ
シ
第四十七條民法第七十三條、第七十四
條及第七十八條乃至第八十一條ノ規定
ハ護國共同組合ノ〓算ニ之ヲ準用ス
第九章監督
第四十八條護國共同組合ハ第一次ニ北
海道廳長官又ハ府縣知事、第二次ニ內
務大臣、厚生大臣、陸軍大臣及海軍大
臣之ヲ監督ス
第四十九條監督官廳ハ組合ニ對シ組合
ニ關スル報〓ヲ爲サシメ組合事務ノ執
行又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ組合ノ定款、
細則、收支、豫算又ハ經費ノ分賦收入
方法ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナ
ル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十條監督官廳ハ組合會ノ決議又ハ
役員ノ行爲カ適當ナラスト認ムルトキ
ハ決議ヲ取消シ役員ヲ解任シ又ハ議員
ノ改選ヲ命スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ本法第一條ニ揭クル目的ヲ
以テ設立セラレタル組合ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受クルヲ要ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=41
-
042・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今日程ニ上リマシタ
護國共同組合法案ハ、社會事業法案ニ關聯
致シマスルガ故ニ、其ノ同一委員ニ併託セ
ラレムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=42
-
043・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=43
-
044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=44
-
045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=45
-
046・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 議事ノ都合上、
是ニテ一時休憩致シマシテ、午後ハ三時ヨ
リ開會致シマス
午前十一時二十二分体憩
午後三時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=46
-
047・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔石橋書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約
ヲ爲スヲ要スル件(追第二號)、昭和十三
年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)、昭
和十三年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第二號)、豫算外國庫ノ負擔トナル
ベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第三號)可
決報告書
國家總動員法案可決報告書
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
北支那開發株式會社法案
中支那振興株式會社法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=47
-
048・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ休憩
前ニ引續キ會議ヲ開キマス、日程第十五、
昭和十一年度歲入歲出總決算、昭和十一年
度各特別會計歲入歲出決算報〓、日程第十
六、昭和十一年度國有財產增減總計算書報
〓、日程第十七、昭和十二年三月三十一日
現在國有財產現在額總計算書報〓、會議、
委員長報告、是等ノ三件ヲ一括シテ議題ト
爲スコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=48
-
049・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長周布男爵
昭和十一年度輸入歲出總決算竝昭和十一
年度各特別會計歲入歲出決算及既往年度
檢査未確定金額ノ檢査確定シタルモノヲ
審査シ
第
昭和十一年度歲入歲出總決算歲入經
常部第一款租稅第五項相續稅中品川
稅務署ノ徵收ニ係ル件、第二款印紙
收入第一項印紙收入中奉天總領事館
ニ於テ歲入ニ編入スヘキ件、第六款
雜收入第十一項雜入中秋田縣ノ收入
未濟ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算大藏省所管關東局歲出臨時部第二
款補助費第二項勸業補助中關東局ノ
支出ニ係ル件
右ハ政府ノ措置適切ナラサルモノト認ム
第二
昭和十一年度歲入歲出總決算歲入經
常部第一款租稅第一項所得稅中板橋
稅務署ノ收入ニ至ラサリシ件、下京稅
務署、茨木稅務署、水道橋稅務署、水
道橋稅務署、玉造稅務署ノ徵收不足
ニ係ルモノ五件、第三項營業收益稅
中玉造稅務署ノ徵收不足ニ係ル件、
第四項資本利子稅中板橋稅務署ノ收
入ニ至ラサリシ件、第五項相續稅中
弘前稅務署ノ徵收ニ係ル件、第六款
雜收入第二項徵罰及沒收金中金澤地
方裁判所、岐阜地方裁判所、東京控訴
院盛岡區裁判所ニ於テ歲入ニ編入
スヘキモノ四件、第三項辨償及違約
金中金澤地方裁判所、岐阜地方裁判
所ニ於テ歲入ニ編入スヘキモノ二件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲入臨
時部第十款臨時利得稅第一項臨時利
得稅中玉造稅務署ノ徵收不足ニ係ル
件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲出經
常部陸軍省所管第二款軍事費第五項
兵器及馬匹費中陸軍航空本部ノ支出
ニ係ル件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲出經
常部海軍省所管第二款軍事費第一項
俸給中海軍省經理局、横須賀海軍經
理部ノ支出ニ係ルモノ二件、第三項
雜給及雜費中海軍省經理局ノ支出ニ
係ル件、第四項衣糧費中海軍省經理
局ノ支出ニ係ル件、第七項患者費中
海軍省經理局ノ支出ニ係ル件、第九
項艦營費中海軍省經理局ノ支出ニ係
ル件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲出臨
時部內務省所管第一款補助費第十項
災害復舊其他諸費借入金利子補給中
大阪府ノ支出ニ係ル件、第二款治水
事業費第二項河川費中內務省橫濱土
木出張所ノ支出ニ係ル件、第四款道
路改良費第三項國道改良繼續費中內
務省橫濱土木出張所ノ支出ニ係ル件、
第十一款北海道拓殖費第八項港灣費
中北海道廳ノ支出ニ係ル件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲出臨
時部陸軍省所管第二款國防充備費第
二項要塞整理費中陸軍築城部本部ノ
支出ニ係ル件、第十五款滿洲事件費
第一項滿洲事件費中陸軍省經理局主
計課ノ支出ニ係ルモノ一一件
昭和十一年度歲入歲出總決算歲出臨
時部海軍省所管第九款〓究費第一項
特種化學兵器〓究費中海軍省經理局
ノ支出ニ係ル件、第十四款滿洲事件
費第一項滿洲事件費中海軍省經理局
ノ支出ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算大藏省所管專賣局歲入第一款專賣
局作業收入第一項作業收入中東京地
方專賣局ノ徵收ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算遞信省所管通信事業業務勘定歲出
第一款通信業務費第三項諸拂戾立替
及補塡金中貯金局ノ支出ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算鐵道省所管帝國鐵道用品勘定歲入
第一款用品及工作收入第一項用品及
工作收入中鐵道省ノ徵收ニ係ル件、
歲出第一款用品及工作費第一項用品
及工作費中鐵道省ノ支出ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算拓務省所管朝鮮總督府歲入經常部
第一款租稅第二項所得稅中京城稅務
署ノ徵收不足ニ係ル件、歲出經常部
第十七款專賣局第二項事業費中朝鮮
總督府京城地方專賣局外一箇所ノ支
出ニ係ル件、歲出臨時部第四款補助
及奬勵費第五項土木費補助中平安南
道ノ支出ニ係ル件、第七款鐵道建設
及改良費第一項建設費中朝鮮總督府
鐵道局ノ支出ニ係ル件
昭和十一年度各特別會計歲入歲出決
算拓務省所管臺灣總督府歲入經常部
第一款租稅第二項所得稅中臺中州ノ
徵收不足ニ係ル件
昭和八年度歲入歲出總決算歲入經常
部第一款租稅第一項所得稅中茨木稅
務署ノ徵收不足ニ係ル件
昭和八年度各特別會計歲入歲出決算
鐵道省所管帝國鐵道用品勘定歲出第
一款用品及工作費第一項用品及工作
費中鐵道省ノ支出ニ係ル件
昭和九年度歲入歳出總決算歲入經常
部第一款租稅第一項所得稅中板橋稅
務署、東稅務署、茨木稅務署ノ徵收
不足ニ係ルモノ三件、第三項營業收
益稅中板橋稅務署、東稅務署ノ徴收
不足ニ係ルモノ二件
昭和十年度歲入歲出總決算歲入經常
部第一款租稅第一項所得稅中玉造稅
務署、日本橋稅務署、下京稅務署、
神田橋稅務署、八幡稅務署、名古屋
南稅務署ノ徵收不足ニ係ルモノ六件、
第三項營業收益稅中玉造稅務署ノ徵
收不足ニ係ル件、第三款官業及官有
財產收入第九項刑務所收入中大阪刑
務所ノ收入未濟ニ係ル件
昭和十年度歳入歳出總決算歲出經常
部海軍省所管第二款軍事費第三項雜
給及雜費中海軍省經理局ノ支出ニ係
ル件、第六項演習費中海軍省經理局
ノ支出ニ係ル件
昭和十年度歲入歲出總決算歲出臨時
部海軍省所管第十五款大演習費第一
項大演習費中海軍省經理局ノ支出ニ
係ル件
昭和十年度各特別會計歲入歲出決算
遞信省所管簡易生命保險歲出第一款
簡易生命保險費第二項事業費中簡易
保險局ノ支出ニ係ル件
昭和十年度各特別會計歲入歲出決算
鐵道省所管帝國鐵道用品勘定歲出第
一款用品及工作費第一項用品及工作
費中鐵道省ノ支出ニ係ル件
昭和十年度各特別會計歲入歲出決算
拓務省所管朝鮮總督府歲出經常部第
二十款遞信費第二項遞信事業費中朝
鮮總督府遞信局ノ支出ニ係ル件、歲
出臨時部第七款鐵道建設及改良費第
一項建設費中朝鮮總督府鐵道局ノ支
出ニ係ル件
右ハ政府ニ對シ將來ノ注意ヲ促スヘキモ
ノト認ム
第三
其ノ他異議ナシ
右ノ通議決セリ依テ及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長男爵周布兼道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十一年度國有財產增減總計算書ヲ審
査シ
第
(既往年度)
臺南州ノ徵收ニ係ル臺南州虎尾郡土
庫庄外一庄所在官有原野ノ管理及賣
渡ニ當リ措置其ノ宜シキヲ得サル件
臺中州ノ徵收ニ係ル臺中州北斗郡溪
州庄圳寮所在官有原野ノ賣渡ニ當リ
措置其ノ宜シキヲ得サル件
右ハ政府ニ對シ將來ノ注意ヲ促スヘキモ
ノト認ム
第二
其ノ他異議ナシ
右ノ通議決セリ依テ及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長男爵周布兼道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十二年三月三十一日現在國有財產現
在額總計算書ヲ審査シ總テ異議ナキモノ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長男爵周布兼道
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵周布兼道君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=49
-
050・周布兼道
○男爵周布兼道君 只今議題トナリマシタ昭
和十一年度歲入歲出總決算竝ニ昭和十一年
度各特別會計歲入歲出決算、昭和十一年度
國有財產增減總計算書、昭和十二年三月三
十一日現在、國有財產現在額總計算書ニ付
キマシテ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓申
上ゲマス、決算、國有財產ニ付キマシテハ政
府ヨリ本會議ニ於テ別段ノ御說明ガアリマ
セヌノデ、玆ニ數字ニ付キマシテ簡單ニ申
上ゲマス、數字ハ少シ決算デゴザイマスカ
ラ細カク申上ゲマス、昭和十一年度ノ歲入
歲出總決算ハ、歲入ノ收入濟額、經常部ニ
於キマシテ十五億六千百六十四萬九千五百
十四圓六十七錢四厘、臨時部ニ於キマシテ
八億一千四十四萬九千九十八圓七錢七厘、
合計二十三億七千二百九萬八千六百十二圓
七十五錢一厘、之ニ對シマシテ歲出ノ支出
濟額ハ、經常部ニ於キマシテ十三億二千十
四萬六百八十六圓三十八錢七厘、臨時部ニ
於キマシテ九億六千二百三萬五千百十四圓
六十九錢八厘、支出濟額合計二十二億八千
二百十七萬五千八百一圓八錢五厘トナリマ
シテ、歲入ノ收入濟額ト歲出ノ支出濟額ト
ノ差引額、八千九百九十二萬二千八百十一
圓六十六錢六厘ノ剩餘ヲ生ジタノデアリマ
スルガ、是ハ會計法第二十六條ニ依リマシテ
昭和十二年度ノ歲入ニ繰入レタノデアリマ
ス、此ノ外特別會計ハ本決算ニ於キマシテ
其ノ數三十四アリマスルガ、其ノ金額ハ頗
ル煩雜ニ互リマスルノデ玆ニ之ヲ省略致シ
マス、次ニ國有財產增減計算書ニ付テ申上
ゲマス、昭和十一年度中增加致シマシタ國
有財產ハ一般會計ニ於キマシテ總計九億四
千八百十八萬七千九百餘圓、特別會計六億
七百二萬三千八百餘圓、合計致シマスルト
十五億五千五百二十一萬一千七百餘圓ヲ減
少致シマシタ、國有財產ハ一般會計ニ於キ
マシテ二億九千九百七十七萬四千三百餘
圓特別會計ニ於キマシテ四億三千七百八
十二萬七千三百餘圓、計七億三千七百六十
萬一千六百餘圓トナリマシテ、結局差引增
加額八億一千七百六十一萬餘圓トナリマス、
尙昭和十二年三月三十一日現在、國有財產
現在額總計算書ニ付テ一言致シタイト存ジ
マく、從來國有財產法ハ內地ノミニ適用サ
レテ居リマシタガ、昭和十二年四月一日ヨ
リ外地、卽チ朝鮮、臺灣、樺太、關東州及
南洋群島ニ同法ガ施行セラルヽコトトナリ
マシテ、本現在額計算書ニソレ等外地ノ國
有財產ノ價格モ計上サレテ居ルコトデゴザ
イマス、內地、外地ヲ通ジマシテ其ノ總價
格ハ百十四億二千八百三十九萬五千九百十
四圓餘トナルノデゴザイマス、本委員會ハ
第一囘ヲ去ル二月二十五日ニ開會ヲ致シマ
シテ、政府當局ヨリ大體ノ說明ガアリマシ
テ、後ニ各委員ヨリ質疑ガアリマシテ、次
ニ先例ニ依リマシテ決算ノ審査方針竝審査
期限ヲ決議致シ、之ガ審査ヲ各分科ニ、國
有財產ニ關シテハ小委員會ニ各〓付託致シタ
ノデアリマス、分科會、小委員會ニ於キマ
シテハ、各所管ノ部ニ付數囘ノ會議ヲ開キ
マシテ、愼重ナル審査ヲ盡サレ、三月ノ十
六日各分科會及小委員會ハ決議ヲ致シマシ
ク、三月十九日ニ第二囘ノ委員會ヲ開キマ
シテ、各分科主査竝ニ小委員會ノ委員長ヨ
リ詳細ナル報告ガアリマシタ、各分科ヲ通
ジ議決セラレマシタモノハ、政府ノ措置適切
ナラザルモノト認ムルモノ四件、政府ニ對シ
將來ノ注意ヲ促スベキモノト認ムルモノ六
十三件、其ノ他ハ全部異議ナシト云フコトデ
アリマシテ、小委員會ニ於テハ政府ニ對シ將
來ノ注意ヲ促スベキモノト認ムルモノ二件、
其ノ他ハ全部異議ナシト決定セラレタノデ
ゴザイマス、各分科主査竝ニ小委員會ノ委
員長ノ報〓ノ後、尙政府ニ對シ質疑應答ガ
重ネラレマシテ、十分審査ヲ盡シ、採決ノ
結果全會一致デ各分科主査竝ニ小委員會ノ
委員長ノ報告通リニ可決致シタノデゴザイ
マリ、玆ニ先ヅ申上ゲテ置カナケレバナラ
ナイコトハ、豫算議定權ニ伴フ決算ノ審査
ト云フコトハ非常ニ重要ナコトデアリマ
スノニ拘ラズ、決算書ノ提出ガ每年遲レマ
シテ、特ニ今年ノ如キハ甚ダシク遲レマシ
テ、ソレガ爲ニ審議ニ困難ヲ感ズルヤウナ
狀態デゴザイマス、委員ヨリ度々其ノ提出
時期ガ遲レナイヤウニ政府ニ要求シテ居ル
ノデアリマスルガ、政府當局ハ何等改ッテ來
ナイ、此ノ際政府當局ニ於テ、斷然從來ノ
弊習ヲ打破シテ、決算ト云フモノ決算委
員會ト云フモノヲ十分尊重セラレ、我々ノ
希望スルヤウニ次ノ議會ヨリ、早ク提出ヲ
願フコトニ考ヘテ戴キタイ、尙此ノ趣旨ヲ
徹底セシムル爲、本會議ニ於テ大藏大臣ノ
言明ヲ求ムル動議ガ成立致シマシタ、次ニ
本委員會ニ於ケル質疑應答ノ若干ヲ申上ゲ
マく、第一ニ本決算委員會ニ於テ不當ナリ
ト決議サレ、本會議ヲ經テ政府モ認メラレ
ナガラ、每年同樣ナ不當事項ガ繰返サレル
ノハ如何ト云フ質疑ニ對シ、政府當局ハ何
分廣汎ニ亙ッテ居ル役人ニ對スル仕事デ、同
ジヤウナ「ケース」ガ繰返サレルコトハ、監
督上誠ニ遺憾デアル、今後十分注意シ、左
樣ナコトノナイヤウ努力スルトノ答辯ガア
リマシタ、次ニ財務當局デ豫算ノ增加ヲ注
意セラレ、各省ノ要求ニ付テ斧鉞ヲ加ヘラ
レテ居ルニ拘ラズ、決算ヲ見ルト一億三千
萬圓以上ノ不用額ガ生ジテ居ルノハ如何ナ
ル理由ニ依ルモノデアルカトノ質問ニ對シ、
當局ハ不用額ノ一億三千二一百餘圓ハ施行豫
算ニ對スル計算デ、實行豫算ニ於ケル不用
額ハ四千二百餘萬圓トナリ、主トシテ豫算
執行ノ適正ヲ期スル爲ニ、自然ニ又計畫的
ニ不用額ヲ生ジタノデアルガ、他面豫算編
成後ノ種々ナ事情、經費使用ノ自制等ニ依
ルモノデアルトノ答辯デアリマシタ、又稅
金ノ徴收不足ニ對スル質疑ニ對シ、政府ハ
稅務署ニ於テ受取ル所謂資料ノ報告ハ全國
ヲ通ジ約四百萬通モアルノデ、勢ヒ遲延ス
ルコトモアリ、脫漏防止ノ方法トシ、所得
稅法第二十六條第二項ノ期限ヲ延長スルコ
トモ一案デアルト云フ答辯デアリマシタ、
對支文化事業特別會計ノ資金ヨリ每年國
際文化事業ノ經費トシテ百萬圓ヲ繰入レテ
居ルガ、三百萬圓ノ對支文化事業ノ經費ヲ、
之ガ爲ニ永久ニ支出スルト云フコトニ付テ
支障ハナイカト云フコトニ對シマシテ、政
府當局ハ、將來何等支障ナク支出ヲ爲シ、
後日繰入補塡スル考デアルト云フ答辯デゴ
ザイマシタ、更ニ國有財產ニ關シマシテ、
鐵道省所管ノ國有財產ニ對スル減價償却實
施ハ如何ト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ
夙ニ〓究ヲ重ネテ居ルガ、何分國有鐵道ノ
固定財產ハ四十億ニ近ク、約五十年間ニ投
資セラレタモノデアッテ、今日迄當初ノ價格
ニ依リ臺帳ニ記載サレテ居ルノデアルノデア
ルガ、改良ニ依リ價格ガ增加シタモノナド、
非常ナ複雜ナ關係ニアッテ、又官業特別會計ニ
於テ、償却勘定ヲ立テルコトノ實益モ疑問デ
アルノデ、先ヅ學問的ノ正シイ結論ヲ得テ
カラニシタイト云フヤウナ意見デゴザイマ
シタ、次ニ國有財產法上國有財產デアリナ
ガラ、國有財產ノ計算書ニ計上セラレナイ
道路、河川、港灣ナドガアルガ、是等ハ計
算書ニ計上スルヤウニシタラバドウカト云
フ質問ニ對シ、報告書ニ計上スルコトハ望
マシイコトデアルガ、相當手數モ掛ルコト
デアリ、マダ其ノ結論ニ達シテ居ナイト云
フ答辯デゴザイマシタ、更ニ國有財產ノ整
理情況、國有財產ノ評價、國富總額ニ對ス
ル問題等ニ付種々質疑ガアリマシテ、政府
委員ヨリ詳細ナル答辯ガゴザイマシタ、以
上ノ外種々質疑應答ガアリマシタガ、詳細
ハ速記錄ニ讓ルコトニ致シマシテ、玆ニ省
略ヲ致シタイト存ジマス、右御報〓申上ゲ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=50
-
051・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 大藏大臣
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=51
-
052・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今決算委員長
周布男爵ヨリ、決算委員會ニ於ケル昭
和十一年度決算ノ審議ニ關スル御報告ヲ
拜聽致シタノデアリマスルガ、其ノ中ニ
於キマシテ、議會ニ於ケル決算ノ審議ハ
曩ニ協贊ヲ與ヘタル豫算ノ執行ニ付キ爾
後ノ監督ヲ行ヒ、之ニ依ッテ將來ニ於ケル
豫算審議ノ參考ニ資セムトスルモノナルヲ
以テ、帝國議會トシテハ決算ノ審議ハ之ヲ
重視シ居ルニモ拘ラズ、政府ハ從來動モス
レバ決算ノ提出ヲ遲延シ勝チデアルガ、政
府ニ於テモ決算ノ審議ヲ尊重シ、將來成ル
ベク速カニ提出シ、議會ヲシテ十分ナル審
議ヲ盡サシムルヤウ努力スル意向デアルベ
キ旨ノ御言葉ガアッタノデアリマスルガ、決
算ノ尊重スベキコトハ誠ニ御言葉ノ通リデ
アリマシテ、政府ト致シマシテモ十分ニ之
ヲ尊重致シテ居ル次第デアリマス、決算ノ
提出ハ出來得ル限リ速カニ取運ブ方針ノ下
ニ努力致シテ居ルノデアリマス、併シナガ
ラ御承知ノ通リ決算ハ何分過去一箇年度ニ
亙ル國家歲計ノ全般ニ關シマシテ、其ノ結
末ヲ付ケルノデアリマスカラ、愼重審査ヲ
遂ゲル必要ガアリ、各所管大臣ノ報〓ヲ基
礎ト致シマシテ決算ヲ調整シ、更ニ之ヲ會
計檢査院ニ送付シマシテ、其ノ檢査確定ヲ
待チマシテ、然ル後ニ議會ニ提出致シマス
ルヤウナ關係カラ致シマシテ、其ノ間相當
ノ時日ヲ要スルノデアリマス、併シナガラ
御意見ハ誠ニ御尤ト存ジマスルシ、又政府
ニ於キマシテモ前申上ゲマシタ如ク、決算
ノ極メテ重要ナルモノデアルト云フコトハ
御同感ナノデアリマスルカラ、將來一層ノ
努力ヲ致シマシテ、之ガ提出ノ時期ヲ出來
得ル限リ速カニ致シ、十分ニ御審議ノ御便
宜ヲ圖リタイト存ズル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=52
-
053・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三件トモ決
算委員長ノ報告通リデ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=53
-
054・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=54
-
055・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本日衆議院
ヨリ送付セラレマシタ政府提出ニ係ル、北
支那開發株式會社法案及中支那振興株式會
社法案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シ、括
シテ第一讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=55
-
056・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、吉野商工大臣
北支那開發株式會社法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
北支那開發株式會社法案
北支那開發株式會社法
第一章總則
第一條北支那開發株式會社ハ北支那ニ
於ケル經濟開發ヲ促進シ其ノ統合調整
ヲ圖ルヲ目的トスル株式會社トシ其ノ
本店ヲ東京ニ置ク
第二條北支那開發株式會社ノ資本ハ三
億五千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ
之ヲ增加スルコトヲ得
第三條政府ハ一億七千五百萬圓ヲ限リ
北支那開發株式會社ニ出資スベシ
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目
的ト爲スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四條北支那開發株式會社ノ株金ノ第
一囘ノ拂込金額ハ株金ノ六分ノ一迄下
ルコトヲ得
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ其ノ所有
スル株式ノ第二囘以後ノ株金拂込ニ充
ツルコトヲ得
第五條北支那開發株式會社ハ株金全額
拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコト
ヲ得
第六條北支那開發株式會社ノ株式ハ記
名式トス
第七條北支那開發株式會社ニ非ザルモ
ノハ北支那開發株式會社又ハ之ニ類似
ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得
ズ
第八條北支那開發株式會社ノ定款ノ變
更ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ
其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第二章役員
第九條北支那開發株式會社ニ總裁一
人副總裁二人、理事五人以上及監事
二人以上ヲ置ク
第十條總裁ハ北支那開發株式會社ヲ代
表シ其ノ業務ヲ總理ス
總裁事故アルトキハ副總裁ノ一人其ノ
職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職
務ヲ行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定
ムル所ニ從ヒ北支那開發株式會社ノ業
務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ北支那開發株式會社ノ業務ヲ監
査ス
第十一條總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政
府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府
ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四
年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
第十二條總裁、副總裁及業務ヲ分掌ス
ル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スル
コトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條北支那開發株式會社ニ顧問若
干人ヲ置クコトヲ得
顧問ハ總裁ノ諮問ニ應ジテ意見ヲ開陳
ス
顧問ハ北支那開發株式會此政府ノ認可
ヲ受ケ之ヲ委囑ス
第三章業務
第十四條北支那開發株式會社ハ左ノ事
業ノ主要ナルモノニ對シ投資又ハ融資
ヲ爲シ其ノ經營ヲ統合調整スルモノト
ス
一交通、運輸及港灣ニ關スル事業
二通信ニ關スル事業
三發送電ニ關スル事業
四鑛產ニ關スル事業
五鹽ノ製造、販賣及利用ニ關スル事
業
六前各號ノ外北支那ニ於ケル經濟開
發ヲ促進スル爲特ニ統合調整ヲ必要
トスル事業
第四章北支開發債劵
第十五條北支那開發株式會社ハ拂込株
金額ノ五倍ヲ限リ北支開發債劵ヲ發行
スルコトヲ得
北支那開發株式會社ハ北支開發債劵借
換ノ爲一時前項ノ制限ニ依ラズ北支開
發債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金
額ニ相當スル舊北支開發債劵ヲ償還ス
ベシ
北支開發債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
トヲ要セズ
第十六條北支開發債劵ヲ發行セントス
ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十七條政府ハ北支開發債劵ノ元本ノ
償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ
得
第十八條北支開發債劵ノ所有者ハ北支
那開發株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者
ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權
利ヲ有ス
第五章準備金
第十九條北支那開發株式會社ハ每營業
年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ
爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且
利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額
ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章政府ノ監督及助成
第二十條政府ハ北支那開發株式會社ノ
業務ヲ監督ス
第二十一條北支那開發株式會社借入金
ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受
クベシ
第二十二條定款ノ變更、合併及解散ノ
決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ
其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十三條北支那開發株式會社ハ政府
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ處
分ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十四條北支那開發株式會社ハ每營
業年度ノ投資及融資ノ計畫ヲ定メ事業
開始一月前迄ニ之ヲ政府ニ提出シ認可
ヲ受クベシ之ニ重大ナル變更ヲ加ヘン
トスルトキ亦同ジ
第二十五條政府ハ北支那開發株式會社
ノ業務ニ關シ監督上、國防上又ハ北支
那ニ於ケル經濟開發ヲ促進シ其ノ統合
調整ヲ圖ル爲必要ナル命令ヲ爲スコト
ヲ得
前項ノ規定ニ依リ國防上必要ナル命令
ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償
ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十六條政府ハ北支那開發株式會社
監理官ヲ置キ北支那開發株式會社ノ業
務ヲ監視セシム
北支那開發株式會社監理官ハ何時ニテ
モ北支那開發株式會社ノ金庫帳簿及諸
般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
北支那開發株式會社監理官ハ必要ト認
ムルトキハ何時ニテモ北支那開發株式
會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
北支那開發株式會社監理官ハ株主總會
其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第二十七條政府ハ北支那開發株式會社
ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十八條北支那開發株式會社ハ每營
業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル
迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配
當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十九條北支那開發株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル投資及融資ニ因ル收入
ノ投資及融資ノ總額ニ對スル割合(以
下收入割合ト稱ス)ガ年百分ノ六ニ達
セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後
五年間左ノ各號ノ金額ノ合計額ヲ限度
トシ配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外
ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ
年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄其ノ不足
額ニ相當スル金額ヲ補給ス
-投資及融資ノ總額中政府以外ノ者
ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル
部分ニ百分ノ七ヨリ收入割合ヲ減ジ
タル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
二投資及融資ノ總額中社債收入金
(社債前借金ヲ含ム以下同ジ)ニ依リ
タル部分ニ百分ノ五ヨリ收入割合ヲ
減ジタル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超
過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前
項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
第一項ノ投資及融資ニ因ル收入、投資
及融資ノ總額竝ニ其ノ中政府以外ノ者
ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル部
分及社債收入金ニ依リタル部分ノ計算
方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條北支那開發株式會社ノ每營業
年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ
政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金
額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル
場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株
式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益
配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過ス
ル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂
込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達
スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込
金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ
配當スベシ
第三十一條北支那開發株式會社ニハ命
令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌
年ヨリ十年間所得稅及營業收益稅ヲ免
除ス
第三十二條北海道、府縣、市町村其ノ
他之ニ準ズベキモノハ前條ノ期間北支
那開發株式會社ノ事業ニ對シ地方稅ヲ
課スルコトヲ得ズ
第三十三條北支那開發株式會社ガ設
立資本ノ增加、合併又ハ第二囘以後
ノ株金拂込ノ登記ヲ受クル場合ニ於テ
ハ其ノ登錄稅ノ額ハ拂込株金額、增資
拂込株金額又ハ每囘拂込株金額ノ千分
ノ一トス
第七章罰則
第三十四條北支那開發株式會社ガ本法
若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ
基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總
裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル
副總裁ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ
處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ル
トキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スル
コト亦同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
第三十五條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施
行ス
第三十六條政府ハ設立委員ヲ命ジ北支
那開發株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ
事務ヲ處理セシム
第三十七條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
府ノ認可ヲ受クベシ
政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サント
スルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金錢
以外ノ財產ノ價格及之ニ對シテ與フル
株式ノ數ニ付政府出資財產評價委員會
ノ議ヲ經ベシ
政府出資財產評價委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
株主ヲ募集スベシ
第三十九條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
ヲ記載スベシ
第四十條設立委員ハ株主ノ募集終リタ
ルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其
ノ檢査ヲ受クベシ
第四十一條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十二條創立總會ニ於テハ第十一條
ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フ
ベシ
第四十三條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ北支那開發株式
會社總裁ニ引渡スベシ
第四十四條政府第四條第二項ノ規定ニ
依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ其ノ所有ス
ル株式ノ株金拂込ニ充ツル場合ニ於テ
ハ其ノ財產ノ價格ニ付政府出資財產評
價委員會ノ議ヲ經ベシ
第四十五條政府ハ北支那開發株式會社
ニ對スル出資ノ目的ニ充ツル爲帝國鐵
道特別會計ヨリ其ノ所屬物件ヲ無償ニ
テ一般會計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
第四十六條登錄稅法第六條第一項第十
一號中「東洋拓殖債劵」ノ下ニ「、北支開
發債劵」ヲ加フ
中支那振興株式會社法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十三年三月二十四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
中支那振興株式會社法案
中支那振興株式會社法
第一章總則
第一條中支那振興株式會社ハ中支那ニ
於ケル經濟ノ復興及開發ヲ助成スルヲ
目的トスル株式會社トシ其ノ本店ヲ上
海ニ置ク
第二條中支那振興株式會社ノ資本ハ
億圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增
加スルコトヲ得
第三條政府ハ五千萬圓ヲ限リ中支那振
興株式會社ニ出資スベシ
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目
的ト爲スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
得
第四條中支那振興株式會社ハ株金全額
拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコト
ヲ得
第五條中支那振興株式會社ノ株式ハ記
名式トス
第六條中支那振興株式會社ニ非ザルモ
ノハ中支那振興株式會社又ハ之ニ類似
ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得
ズ
第七條中支那振興株式會社ノ定款ノ變
更ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ
其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第二章役員
第八條中支那振興株式會社ニ總裁副總
裁各一人、理事三人以上及監事二人以
上ヲ置ク
第九條總裁ハ中支那振興株式會社ヲ代
表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務
ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定
ムル所ニ從ヒ中支那振興株式會社ノ業
務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ中支那振興株式會社ノ業務ヲ監
査ス
第十條總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政府
之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府
ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四
年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
第十一條總裁、副總裁及業務ヲ分掌ス
ル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スル
コトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章業務
第十二條中支那振興株式會社ハ左ノ事
業ニ對シ投資又ハ融資ヲ爲スモノトス
-交通及運輸ニ關スル事業
二通信ニ關スル事業
三電氣、瓦斯及水道ニ關スル事業
四鑛產ニ關スル事業
五水產ニ關スル事業
六前各號ノ外中支那ニ於ケル公共ノ
利益又ハ產業ノ振興ノ爲必要ナル事
業
特殊ノ事情アル場合ニ於テハ中支那振
興株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項各
號ニ揭グル事業ヲ自ラ經營スルコトヲ
得
第四章中支振興債劵
第十三條中支那振興株式會社ハ拂込株
金額ノ五倍ヲ限リ中支振興債劵ヲ發行
スルコトヲ得
中支那振興株式會社ハ中支振興債劵借
換ノ爲一時前項ノ制限ニ依ラズ中支振
興債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金
額ニ相當スル舊中支振興債劵ヲ償還ス
ベシ
中支振興債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
トヲ要セズ
第十四條中支振興債劵ヲ發行セントス
ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五條政府ハ中支振興債劵ノ元本ノ
償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ
得
第十六條中支振興債劵ノ所有者ハ中支
那振興株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者
ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權
利ヲ有ス
第五章準備金
第十七條中支那振興株式會社ハ每營業
年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ
爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且
利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額
ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章政府ノ監督及助成
第十八條政府ハ中支那振興株式會社ノ
業務ヲ監督ス
第十九條中支那振興株式會社借入金ヲ
爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受ク
ベシ
第二十條定款ノ變更、合併及解散ノ決
議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其
ノ效力ヲ生ゼズ
第二十一條中支那振興株式會社ハ政府
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ處
分ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十二條中支那振興株式會社ハ每營
業年度ノ投資及融資竝ニ自營事業ノ計
畫ヲ定メ事業開始一月前迄ニ之ヲ政府
ニ提出シ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル
變更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
第二十三條政府ハ中支那振興株式會社
ノ業務ニ關シ監督上、國防上又ハ中支
那ニ於ケル公共ノ利益若ハ產業ノ振興
ノ爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ國防上必要ナル命令
ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償
ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十四條政府ハ中支那振興株式會社
監理官ヲ置キ中支那振興株式會社ノ業
務ヲ監視セシム
中支那振興株式會社監理官ハ何時ニテ
モ中支那振興株式會社ノ金庫帳簿及諸
般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
中支那振興株式會社監理官ハ必要ト認
ムルトキハ何時ニテモ中支那振興株式
會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
中支那振興株式會社監理官ハ株主總會
其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第二十五條政府ハ中支那振興株式會社
ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六條中支那振興株式會社ハ每營
業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル
迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配
當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十七條中支那振興株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル投資、融資及自營事業
ニ因ル收入ノ投資、融資及自營事業資
金ノ總額ニ對スル割合(以下收入割合
ト稱ス)ガ年百分ノ六ニ達セザルトキ
ハ政府ハ初營業年度及爾後五年間左ノ
各號ノ金額ノ合計額ヲ限度トシ配當シ
得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有
スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六
ノ割合ニ達スル迄其ノ不足額ニ相當ス
ル金額ヲ補給ス
投資、融資及自營事業資金ノ總額
中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込金ニ依リタル部分ニ百分ノ七ヨリ
收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ得べ
キ金額
二投資、融資及自營事業資金ノ總額
中社債收入金(社債前借金ヲ含ム以
下同ジ)ニ依リタル部分ニ百分ノ五
ヨリ收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ
得ベキ金額
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超
過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前
項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
第一項ノ投資融資及自營事業ニ因ル收
入投資融資及自營事業資金ノ總額竝
ニ其ノ中政府以外ノ者ノ所有スル株式
ノ拂込金ニ依リタル部分及社債收入金
ニ依リタル部分ノ計算方法ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第二十八條中支那振興株式會社ノ每營
業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過ス
ル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル
株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利
益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過
スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付
拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ
達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式
ノ拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂
込金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之
ヲ配當スベシ
第七章罰則
第二十九條中支那振興株式會社ガ本法
若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ
基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總
裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル
副總裁ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ
處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ル
トキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スル
コト亦同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
第三十條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行
ス
第三十一條政府ハ設立委員ヲ命ジ中支
那振興株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ
事務ヲ處理セシム
第三十二條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
府ノ認可ヲ受クベシ
政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サント
スルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金錢
以外ノ財產ノ價格及之ニ對シテ與フル
株式ノ數ニ付政府出資財產評價委員會
ノ議ヲ經ベシ
政府出資財產評價委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
株主ヲ募集スベシ
第三十四條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
ヲ記載スベシ
第三十五條設立委員ハ株主ノ募集終リ
タルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ
其ノ檢査ヲ受クベシ
第三十六條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第三十七條創立總會ニ於テハ第十條ノ
規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベ
シ
第三十八條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ中支那振興株式
會社總裁ニ引渡スベシ
第三十九條政府ハ中支那振興株式會社
ニ對スル出資ノ目的ニ充ツル爲帝國鐵
道特別會計ヨリ其ノ所屬物件ヲ無償ニ
テ一般會計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
〔國務大臣吉野信次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=56
-
057・吉野信次
○國務大臣(吉野信次君) 只今議題トナリ
マシタ二ツノ法案ニ付キマシテ、一括シテ
其ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲタイト存ジ
マン、今次ノ事變ノ終局ノ目的ニ顧ミマシ
テ、北支及中支ノ經濟ノ復興及開發ヲ圖ッ
テ、以テ日滿支三國ノ提携、共榮實現ノ基
礎ヲ確立致シマスルコトハ、帝國政府ガ夙
ニ其ノ方針トセル所デアリマス、政府ハ右
ノ方針ニ基キマシテ、支那現地ノ資本竝ニ
我ガ方ノ資本及技術ヲ緊密ニ結合セシメ、
經濟各部門ヲ開發整備シテ、秩序ノ囘復及
維持、竝ニ民衆生活ノ向上ヲ圖リ、以テ東
亞ノ安定ニ資シマスル爲ニ、北支那及中支
ニ國策會社トシテ、ソレ〓〓北支那開發株
式會社及中支那振興株式會社ヲ設立スルコ
トト致シタ次第デアリマス、先ヅ北支那開
發株式會社法案ニ付テ申上ゲマスルガ、本
會社ハ北支那ノ經濟開發ヲ促進シ、其ノ統
合調整ヲ圖ル爲、同地方ニ於キマシテ交通
運輸及港灣事業、通信事業、發送電事業、
鑛山事業、鹽ノ製造販賣及其ノ利用事業等
ノ主要ナルモノニ投資又ハ融資ヲ致スコト
ヲ業務トスルモノデアリマス、本會社ノ資
本金ハ三億五千萬デアリマシテ、政府及民
間ニ於キマシテ半額ヅツ出資ヲ致シマシテ、
拂込資本金ノ五倍迄社債ノ發行ヲ爲シ得ル
コトニナッテ居リマス、次ニ中支那振興株式
會社法案ニ付キマシテ申上ゲマス、本會社
ハ中支那ニ於ケル經濟ノ復興及建設ヲ助成
致シマスル爲ニ、同地方ニ於キマシテ交通
運輸及通信事業、電氣、瓦斯、水道事業、
鑛山事業、水產事業等ニ投資又ハ融資ヲ致
シマスルコトヲ主タル業務トスルモノデア
リマス、本會社ノ資本金ハ一億圓デアリマ
シテ、政府及民間ノ折半出資ト致シマシ
テ、拂込資本金ノ五倍迄社債ヲ發行シ得ル
コトハ前ニ述ベタ北支那ノ方ノ會社ト同樣
デアリマス、次ニ此ノ兩會社ノ使命及性質
ニ鑑ミマシテ、政府ハ會社ニ對シテ、民間
出資ニ對シマシテハ、優先配當權ヲ認メ、
又會社ニ對スル一定期間ノ利益補給ニ依ッ
テ配當ノ確實ヲ期スル等、適當ナル優遇方
法ヲ講ズルコトト致シタノデアリマス、政
府ハ兩國策會社ノ設立ニ依リマシテ、支那
ニ於ケル第三國ノ旣存權益ヲ何等阻害スル
ガ如キ意圖ノナイコトハ申ス迄モナイノデ
アリマシテ、更ニ進ンデハ寧ロ第三國ノ資
本及技術トノ提携ヲ希〓王致ス者デアリマス、
以上ハ兩法案ノ提出ヲ致シマシタ大體ノ理
由デゴザイマス、會期ガ押詰リマシテ提出
スル運ビニナリマシテ、誠ニ恐縮ニ存ズル
次第デゴザイマスガ、何卒御審議ノ上、御
協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=57
-
058・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 質疑ノ通〓
ガゴザイマス、大藏男爵
〔男爵大藏公望君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=58
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059・大藏公望
○男爵大藏公望君 會期切迫ノ折柄、本會
議ニ於テ質問ヲシマスルコトハ誠ニ恐縮千
萬デアリマスルガ、併シナガラ私ノ考ニ於
キマシテハ恐ラク今囘ノ議會ニ於キマシテ、
諸々ノ重要法案ガ提出サレマシタガ、此ノ
法案程重大ナル案ハナイカト考ヘマスルノ
デ、此ノ質問ヲ提出セムトスル次第デアリ
マイク此ノ法案ハ謂ハバ、我ガ國家ノ大陸
進展ノ羅針盤ヲ定メヨウカト云フ問題デア
リマシテ、國內ノ色々ノ重要問題ハアリマ
スルガ、併シナガラ日本ノ將來ヲ考ヘマス
ルト云フト、此ノ法案ニ依ッテ生レマスル會
社ガ、ウマク經營サレルカドウカト云フコ
トガ、恐ラク今後ノ日本ノ將來ニ向ヒマシ
テハ、非常ナ力ヲ持ツモノト私ハ考ヘルノ
デアリマス、從來是ト比較スベキ重大
ナル計畫ト云フモノハ先ヅ南滿洲鐵
道株式會社ガ創立サレタ時ダト考ヘルノデ
アリマスガ、併シナガラ滿鐵ガ南滿洲ニ於
キマシテ持チマシタ使命ヨリモ、此ノ會社
ガ支那全體、殊ニ北支那及中南支那ニ向ッテ
有スル所ノ使命ノ方ガ恐ラク遙カニ重大デ
アルト云フコトヲ私ハ痛感スルノデアリマ
ス、滿洲ハ何ト申シマシテモ支那ノ片田舍
デアリマシテ、極メテ限ラレタ部分デアリ
Pく、今度ノ會社ハ謂ハヾ中原ニ乘リ出シ
テ、本當ニ支那ノ經濟開發ヲ行フ、列國環
視ノ間ニ於キマシテ、アノ豐富ナル資源ヲ
有スル支那ト云フモノヲ開發シ、以テ支那
ノミナラズ我ガ國ノ經濟發達ニ資セムトス
ル非常ニ重大ナル使命ヲ持ッテ居ルト存ジ
マスルノデ、私ハ此ノ會社ノ經營ガ萬一ニ
モ失敗スルコトガアリマスルナラバ、ソレ
ハ國家ニ取リマシテ非常ナ不祥事デアル、
考へ方ニ依リマシテハ我ガ國ノ大陸進展
ハ之ニ依ッテ阻止セラレル程ノモノデハ
ナイカト云フコトヲ心配スルノデアリマス
シ、之ニ反シマシテ、若シモ此ノ會社ノ經
營ガ十分ニ成功シマスルナラバ、現在行ハ
レテ居リマスル日支事變ノ本當ノ效果ト云
フモノハ、之ニ依ッテ求メ得ラレルト云フ風
ニ考ヘルノデアリマス、從ッテ此ノ會社ヲ成
功セシムル爲ニハ、ドウシテモ我ガ國ノ朝
野擧ッテ之ヲ援助スル、最モ熱心ニ、最モ忠
實ニ之ヲ助ケルト云フコトガ必要デアル、
殊ニ政府ニ於キマシテハ此ノ會社ヲ御作リ
ニナリマシタダケニ、又此ノ會社ノ事業ノ
性質上カラ見マシテモ、私ハ全力ヲ注イデ
此ノ會社ノ成功ヲ期スルト云フコトヲ御考
ニナラナケレバナラヌ、斯ウ信ズルノデア
リマス、然ラバ如何ニシテ此ノ會社ガ成功
スルダラウカト考ヘマスル時分ニ、私ハ從
來ノ半官半民會社ガ、何故ニ大體ニ不成績
デアッタカト云フコトヲ考ヘナケレバナラ
又、斯ウ考ヘルノデアリマス、私ノ知ッテ居
リマスル所ニ依リマスト、從來ノ半官半民會
社ガ大體ニウマク行カナカッタ、若シクハ其
ノ經營者ガ非常ニ困難シテ居ルコトハ、主
トシテ政府ノ監督如何ニアル、政府ノ監督
ハ決シテ從來ドノ會社ニ對シテモ一途ニ出
テ居リマセヌ、政府ノ方針ガハッキリ御定リ
ニナリマセヌ爲カ、若シクハ各官廳間ノ繩
張爭ヒノ爲デアリマセウカ、決シテ監督ノ
途、命令ノ途ト云フモノハ一途ニ出テ居ラ
ナイノデアリマス、大體ノ半官半民會社ハ、
悉ク政府ノ關係アル總テノ部門ニ向ッテ交
涉ヲ持チ、其ノ方々カラノ命令ヲ肯クコト
ヲ强要サレマス、又肯カナケレバウマク經
營サレマセヌノデ、ドノ位苦心シテ居ルカ
分ラヌト云フコトヲ私共ハ感ズルノデアリ
さく、從來出來テ居リマスル會社ハマダ
マダ宜シイノデアリマスガ、假ニ此ノ新シ
イ會社ガ、今カラシテ作リ上ゲヨウトスル
會社ガ、今申シマシタヤウニ各方面ノ指揮
監督命令ヲ受ケルヤウデハ、到底此ノ會社
ハウマク經營サレナイコトハ明カデアリマ
ス、殆ド私ハ其ノ會社ガ出來ル前カラ豫言
シテ差支ナイト云フコトヲ考ヘルノデアリ
マく、此ノ點ニ關シマシテ曾テ後藤新平伯
ガ、滿鐵ノ總裁ヲ御引受ニナリマシタ時分
ノ經緯ヲ知リマシテ、私ハ痛切ニ其ノ當時
ノ御心境ニ無理カラヌ點ガアッタコトヲ痛
感スルノデアリマス、少シク時間ヲ頂戴シ
マシテ、其ノ當時ノ經過ヲ申上ゲテ見タイ
ト思フノデアリマス、是ハ後藤サン自身ガ
御書キニナリマシタ、滿鐵總裁就任情由書
ト云フ書キ物デアリマシテ、ソレニ其ノコ
トガ、詳細載ッテ居リマス、其ノ一節ニ曰
ク「明治三十九年七月二十二日召ニ應シテ、
入京スルヤ先ツ謁ヲ原內務大臣ニ取リ內務
大臣ノ示ニ據リテ直チニ、首相閣下ニ參見
シ玆ニ滿洲鐵道總裁ノ職ニ就クヘキコトヲ
勸メラル某仍リテ滿洲鐵道經營ノ全局カ
何人ノ監督ニ屬シ其統理ノ中心點ヲ那邊ニ
求メラルヘキヤヲ進問セシニ首相閣下ノ
告ケラレシ所ニ曰ク監督權ハ關東都督ニ在
ルモ中央政府ノ責任者ハ外務大臣タルヘシ
ト」後藤サンハ御就任ニナリマス時ニ、眞先
ニ誰ガ一體監督スルカト云フコトヲ聽キマ
シタ時ニ、政府ハ現地ニ於キマシテハ關
東都督ガ監督シ、政府ニ於キマシテハ外務
大臣ガ中心點ニナルノダ、斯ウ云フ返事ガ
アリマシタノデ、後藤サンハ是デハ迚モ滿
鐵ノ總裁ハ引受ケラレナイト云フノデ、御
斷リスルト云フノデ卽座ニ斷ラレタノデア
リマス、ソレデ色々政府モ心配ヲシマシテ、
是非後藤サンノ就任ヲ求ムルノ餘リニ兒玉
サンヲ說イテ、兒玉サンヲシテ直接ニ後藤
サンヲ說カシメタ、兒玉サンハ御承知ノ通
リニ後藤サンノ最モ尊敬スル最モ自分ノ
引立テラレタ先輩デアリマシテ、恐ラク兒
玉サンノ仰シヤルコトナラバ、何デモ後藤
サンハ御引受ニナルダラウト云フコトヲ政
府ハ考ヘタノデアリマセウ、ソレデ其ノ日
ノ午後ニ兒玉サンニ會ハレテ、サウシテ後
藤サンハ又兒玉サンカラ三時間半ニ亙ッテ
色々ノ勸誘ヲ受ケラレタヤウデアリマス、
其ノ文ニ曰ク、「是レ實ニ薨去十時間前ノ事
ニシテ某ニ對スル末後ノ垂喩タリシモノナ
リ席上對晤堅ク辭意ヲ陳シ爲メニ參謀總長
ヲシテ三時間半ノ談說ヲ勞スルニ至ラシメ
タリシハ今ニシテ之ヲ思ヘバ實ニ某平生不
償ノ一恨事タリ」、兒玉大將ハ此ノ時ニ、此
ノ後十時間ニシテ御亡クナリニナッタノデ
アリマスルガ、其ノ前ニ於キマシテ兒玉サ
ンハ後藤サンニ向ッテ、三時間半ノ久シキニ
亙ッテ就職ヲ御勸メニナッタノデアリマスル
ガ、後藤サンハドウシテモ御肯キニナラナ
カッタ、其ノ時ノ兒玉サンノ言ハレタ所ノ一
節ニ曰ク、「今日ノ事衆ニ選ヒテ一大臣ノ才
ヲ得ンコトハ易ク滿洲問題解決ノ爲メニ一
士ヲ得ンコトハ難シ今衆口相合シテ君ノ適
材ヲ推ス君若シ時ト睽クコトナクンバ必ズ
進ミテ之ニ當レ」、オ前デナキヤイケナイト
皆ガ言フノダカラ是非引受ケロト云フコト
ヲ熱心ニ御勸メニナッタノデアリマスルガ、
後藤サンハ今ノ監督權ノ問題カラシテ、ド
ウシテモ御引受ニナラナカッタ、兒玉サンモ
困ラレマシテ、ソンナラ一遍山縣元帥ニ會
ヘト云フコトヲ兒玉サンハ言ハレマシタノ
デ、二十三日ノ午後ニ會ハレタ、二十三日
ノ午後ノ四時、「元帥閣下」、是ハ山縣サン
デアリマス、「元帥閣下ヲ訪ヒ滿洲鐵道經營
ニ關スル鄙見ヲ呈シ會社ノ組織計畫ニシテ
果シテ所聞ノ如クンハ總裁ノ如キハ之ヲ陸
軍官憲ヨリ選用スルノ優レルニ如カサルヘ
キヲ陳ス元帥閣下乃チ曰ク武官總裁モ亦置
キ難キニ非サルヘシ但々適材ヲ選ハンカ爲
メニ君ニ及フノミト某是ニ於テ元帥閣下別
ニ其人ヲ選ハルヘキヲ庶幾セリ」ト云フノ
デ、山縣サンノ御勸メモ斷ラレタノデアリ
マス、其ノ日ニ兒玉參謀長ハ亡クナラレタ、
翌日更ニ西園寺公爵ニ御會ヒニナリマシ
ク、頻リト西園寺サンカラモ言ハレタノデ
アリマスルガ、「二十四日首相閣下ニ謁シ重
ネテ辭意ヲ陳ス」、斯ウ云フ風ニ言ハレテ居
リマス、「二十五日元帥閣下ニ謁シテ辭意ヲ
陳ス」、二十三日モ二十四日モ二十五日モ、
何方ニ御會ヒニナッテモ皆斷ラレタ、ソレデ
結局ハ西園寺首相モ亦山縣元帥モ、殖民政
策滿洲經營ノ中心ヲオ前ニ委セルカラ、
一ツオ前引受ケテ吳レナイカト云フコトヲ
御決意ニナッタヤウデアリマス、此ノ文ニ
ハ「首相、元帥兩侯閣下ハ皆既ニ殖民政策
ノ中心點ヲ併セテ某ニ寄屬シ某ヲシテ無中
心ノ疑問ヲ以テ推選ヲ辭スルニ由ナカラシ
メントスルニ似タリ」ト云フノデ、到頭斯
ウ云フ風ナ條件付デ、後藤サンハ八月ノ一
日ニ至ッテ滿鐵ノ總裁ヲ御引受ニナッタノデ
アリマス、後藤サンノ言ハレタ趣旨ノ二
三節ヲ御參考迄ニ申上ゲタイト存ジマス
ルガ、或場合ニ於キマシテハ「官僚政治ノ
流弊此間ニ滲入シ殖民政策上無經驗ノ徒此
權宜ノ事局ヲ解セス漫ニ法律官制ノ具文ニ
牽カレ枝葉ノ理論ニ趨リ實務ヲ口舌ノ間ニ
誤ルカ如キコトアルニ至ランカ是レ寔ニ滿
洲經營ノ大患ナリ」ト言ハレテ居リマス、又
「所謂殖民政策ニシテ果シテ紙上ノ空論タラ
ハ卽チ已ム苟モ國家重大ノ事實問題タルヨ
リ以上ハ空理ニ拘ハリ議論ニ東ネラレ觸處
相掣累シテ以テ大局ヲ誤ツコト世間往々見
ル所ノ外交事弊ノ如クナルヘカラス」、又次
ニ「然レトモ外務省ハ實ニ滿洲政治ノ主務
省ナリ中央政府ニ於ケル最上監督官廳ナリ
滿洲經營ニ於ケル事實上ノ主力ヲ假シテ之
ヲ鐵道總裁ニ委スルカ如キ外相閣下ノ容
易ニ同意ヲ表セラルヘキ所ナルヤ否ヤ未タ
知ルヘカラス果シテ斯クノ如クナラハ某願
ハクハ此際ニ於テ外相閣下ト著實親切ニ是
非ヲ論究シ得失ヲ決定セン假シ所見ヲ直言
スルコトヲ許サハ從來外務省ノ殖民政策ニ
於ケルヤ空疏不振ニ久シト云フヘシ今一能
才ヲ得テ外務省ノ爲メニ殖民政策ヲ主持振
起セシムルコトヲ得ハ誠ニ國家ノ慶事ナ
リト雖モ抑々政策實務ノ能才ハ官制ノ文按
ト共ニ一朝ニシテ進出シ得ヘキモノニ非ス
某好ミテ外務省ノ短所ヲ擧クルニ非サレト
モ此問題タルヤ現勢ニ省ミテ玆ニ言及セサ
ルヘカラサル所ニ屬ス外務省果シテ某ガ言
ノ不當ヲ論明セハ某應サニ罪ヲ引イテ前言
ヲ撤囘スヘシ萬一單ニ其言ヲ咎メテソノ實
ヲ效スニ吝ナラハ帝國殖民政策ノ前途豈勝
ケテ言フヘケンヤ語ニ云フ言者罪ナシ聞者
戒ムルニ足ルト假シ某カ言ヲ以テ聽クヘキ
ノ理アリトセラレンカ滿洲經營殖民政策ノ
中心主持其宜シク何人ニ委スヘキカニ至リ
テハ固ヨリ唯々外相閣下ノ聰明ニ待チ可否
ノ一言ヲ承クレハ足ルノミ」ト、斯ウ云フ
風ニ言ハレマシタ、只今御聽キノ通リニ後
藤サンノ言ハレタ所ハ、全ク今囘政府ガ北
支那政府ヲ造ラレタ時ノ情況ト殆ド同ジデ
アッテ、唯違ヒマスル所ハ北支那會社ノ使命
ト云フモノハ、滿鐵ノ使命ヨリハ遙カニ重
大デアルト云フ點ガ違フダケダト思フノデ
アリマス、私ハ後藤サンガ、監督ヲ關東都
督ガヤラレテ、中央ニ於テハ外務省ガヤル
ト云フコトダケデ以テ、是程ノ辭退ヲサレ
タ、アノ偉才ガ、アノ非常ナ雄渾ナ氣魄ヲ
持ッテ居ラレル方ガ、本當ニ滿洲經營ヲスル
爲ニハ是デナキヤイカヌト云フコトヲ言フ
テ、自分ノ親トモ云フベキ、自分ノ本當ノ
心カラノ上輩タル兒玉大將ノ言ヲモ退ケテ、
此ノ言ヲ爲サレタト云フコトハ、誠ニ故ア
ルト私ハ考ヘルノデアリマス、然ラバ今度
ノ會社ト云フモノハ一體誰ガ監督スルノダ
ラウカト云フコトヲ考ヘマスルト、是ハ或
ハ誤リデアルカモ知レマセヌ、私ハ其ノ點
ニ付テ質問セムトスルモノデアリマスルガ、
私共ノ了解スル所ニ依リマスルト、又先般政
府當局ノ衆議院ニ於テ御答辯ニナリマシタ
所ヲ併セテ考ヘマスルト、私ハナカ〓〓兒
玉サンノ御話ニアッタヤウニ、タッタ二ツノ
關係ノモノドコロデハナイヂヤナイカト云
フコトヲ心配スルノデアリマス、チヨット考
ヘテ見マシテモ、新聞ニ依リマスルト、對
支事務局ト云フモノガ今度出來マシテ、サ
ウシテ此ノ會社ヲ監督セムトスルノダ、果
シテサウデアリマセウカ、對支事務局ト云
フモノハ極メテ小サナ局デアリマシテ、到底
此ノ大會社ヲ監督スルニ堪ヘヤシナイ、是ハ
單ニ事務ヲ取扱フダケデアリマシテ、決シテ
監督ノ實ヲ擧ゲ得ナイ、是ガ前ニ言ハレマシ
タヤウナ、何カ支那省トデモ申シマスヤウナ
非常ニ大キナ省デモ出來マシテ、ソレガスッカ
リ握ルト云フナラ又分ッテ居リマス、丁度後
藤サンノ言ハレタ外務省ニ相當スルモノデア
リマシテ、ソレナラマダノ〓宜シイノデアリ
マスルガ、今度ハ此ノ御監督ヲ小サナ對支
事務局ト云フモノガサレル、サウシテ恐ラ
クハ陸軍省、外務省、拓務省、遞信省、鐵
道省、農林省、商工省、大藏省、是等ノ諸
官廳ト云フモノハ自分ノ主管スル事務ニ付
テハ一々口ヲ御出シニナルニ相違ナイ、而
モ其ノ御出シニナリマスルモノガ、全部ガ
對支事務局長ガ引受ケテ、之ヲ決定スルナ
ラマダシモ、私共心配シマスル所ハ是等ノ
人々ガ、一ツ一ツガ皆新シイ會社ノ首腦者
ニ向ッテ、思ヒ〓〓ノ註文ヲスルノデハナ
イカト云フコトヲ心配スルノデアリマス、
又更ニ現地ニ於キマシテドウカト申シマス
ルト、現地ニハ何ト申シマシテモ現在ハ戰
時中デアリマス、恐ラク此ノ會社ハ絕對ニ
現地ノ、北支軍司令官ノ管轄下ニ入ルニ相
違ナイ、而シテ北支軍司令官ノ外ニマダ今
度ハ支那ノ政府モアリマセウシ、承ル所ニ
依リマスルト經濟委員會ト云フモノガ出來
ル、又日本ト支那ノ間ノ日支經濟委員會ト
云フモノガ出來ル、サウシテ日支經濟委員
會ニハ旣ニ其ノ首班トシテ北支ノ經濟ハ俺
ガ引受ケルンダト言ッテイラッシヤッタ、我々
ノ尊敬スベキ平生サンガ其處ニモ居ラレ
テ、色々註文ガ必ズヤ此ノ會社ニ向ッテ發
セラレルデアラウ、後藤サンガ現地ニ於キ
マシテ關東都督一ツ、内地ニ於テ外務省ト一
ツト云フ時デサヘアレ程頭張ラレマシタノ
ニ、若シモ私ガ心配スルヤウナ、此ノ幾多ノ
機關ト云フモノガ新シイ會社ニ向ッテ種々
ノ命令ヲ發シ、若シクハ監督ヲ振リ廻ス
ヤウデアリマシタナラバ、此ノ會社ハ到底
立ッテ行カナイノデアリマス、更ニ色々私共
ハ此ノ會社ニ付キマシテハ質問ヲ持ッテ居
リマス、何十カノ質問ヲ持ッテ居リマス、例
ヘバ一體誰ガ此ノ會社ノ中心ヲ任命スルノ
カ、滿鐵ガ出來マシタ時分ニハ、政府ハ後
藤サン一人ヲ任命シタ、後ノ副總裁デアラ
ウガ、理事デアラウガ、悉ク後藤サンガ勝
手ニ決メラレタノデアリマス、從ッテ其ノ理
事者ハ年齡三十幾歲ト云フヤウナ極メテ若
イ、而モ從來餘リ世間ニ出テ居ナカッタ三
井物產ノ支店長ト云フヤウナ非常ニ適材ノ
方ヲ選ンダ、ソレガ可能デアッタガ、今日果
シテ斯ウ云フコトガ可能デアリマセウカ、
私共ハ頗ル疑ナキヲ得ナイ、恐ラク總裁モ
副總裁モ、若シクハ理事モ、アッチコッチカ
ラノ自選他選ノ運動ニ依ッテ、政府ガ之ヲ御
命ジニナルニ相違ナイノデハナイカト云フ
コト迄心配スルノデアリマスガ、是ハ本日
ノ質問ノ範圍外ノコトデアリマス、私ノ質
問、心配スル所ハ是デハ到底此ノ小サナ
會社ガ成立シ得ナイト云フコトヲ痛感シマス
ノデ、一體誰ガ此ノ會社ヲ監督セラレルノ
デアラウカ、又其ノ監督ニ際シマシテハ
其ノ會社ノ總裁ト云フモノハ、曾テ後藤サ
ンガ滿洲ニ於テ、滿洲經營ノ中心ニナラレ
タヤウニ、其ノ會社ノ總裁ガ果シテ北支ニ
於テ、北支經營ノ中心ニ置カレルノデアリ
マセウカ、又內地ト竝ニ現地トノ關係ニ於
キマシテ、誰ガドウ云フ風ニ纏メテ、サウ
シテ現地ニ於テハ如何ナル監督ヲナサルカ
ト云フコトヲ私ハ御伺シ、ソレガドウカ先
程申上ゲマシタヤウナ、後藤サンノ希望サ
レタヤウニアラレムコトヲ希望シテ、此ノ
質問ヲ致ス次第デアリマス、ドウカ明快ナ
ル御答辯ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=59
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060・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 杉山陸軍大
臣
〔國務大臣杉山元君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=60
-
061・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今大藏君ノ御尋
ニナリマシタ此ノ開發、振興兩會社ノ監督
ニ關スル問題ニ付キマシテハ、直接其ノ監
督ヲ致スコトニナッテ居リマスル內閣總理
大臣ガ、只今此ノ席ニアリマセヌノデ、現
在現地ニ於テ是等ノ仕事ノ監督ヲ軍司令官
ガ致シテ居リマスル關係カラ、私ガ代ッテ御
說明申上ゲタイト存ズルノデアリマス、內
地ニ於キマスル此ノ兩會社ノ監督ハ、只今
大藏男爵ノ御述ニナリマシタヤウニ、對支
經濟事務局ニ依ッテ之ヲ監督スルコトニナッ
テ居ルノデアリマス、御說ノ如ク此ノ支那ニ
對スル極メテ重大ナル經濟、其ノ他ノ問題
ヲ處理致シマスル爲ニハ、斯クノ如キ機關ヨリ
一層大規模ナ機關ヲ設置致シマスルト云フ
事柄ハ、是ハ理想デアルト考ヘルノデアリマス
ルガ、之ガ爲ニ直チニ斯クノ如キ機關ヲ設
置致シマスル爲ニハ、今日ノ各省ノ官制ニ相
當ナ變革ヲ加ヘナケレバナリマセヌノデ、
短イ時日ノ間ニ急イデ占據地ニ於キマスル經
濟ノ發展ヲ期シマスル爲ニハ、取敢ズノ機關
トシテ、對支經濟事務局ヲ設クルコトニ相成ッ
タ次第デアリマスル、而シテ此ノ對支事務
局ノ事務ノ外ニ、全般的ニ亙リマシテ
經濟、文化、其ノ他各方面ニ亙ッテ考ヘナ
ケレバナラヌ事柄ニ付キマシテハ、特ニ對
支審議會ヲ設ケマシテ、尙御承知ノ如ク此
ノ事變ノ爲ニ特ニ設ケラレマシタ內閣參議
ノ諮詢ヲ經マシテ、支那ニ對スル諸般ノ處
理ヲ進メテ行キタイト存ジテ居リマシテ、
差當リノ處置トシテハ是デ差支ハナイト考
ヘテ居ルノデアリマスルガ、此ノ點ニ付
キマシテハ將來一層考究ヲ致サナケレバナラ
ヌト考ヘテ居ルノデアリマス、斯クノ如ク
致シマシテ、內地ノ監督ノ機關ノ關係ハ只
今申上ゲタ通リデアリマスルガ、是等ノ方
針ガ決定致シマシタ上ハ、是ハ出先ニ於キ
マスル占據地帶ニ對シマシテハ、現ニ作戰
ヲ實施致シテ居リ、治安維持ニ任ジテ居リ
マスル軍ノ行動ト經濟開發トハ分ケルコト
ノ出來ナイ現情ニアルノデアリマシテ、現
下ノ情勢ニ於キマシテハ軍司令官ノ指導ノ
下ニ之ヲ置クノハ已ムヲ得ヌ狀態デアルト
考フルノデアリマス、從ッテ內地ニ於テ決リ
マシタ所ノ方針等ハ、之ヲ軍司令官ニ指命
シマシテ、軍司令官ハ其ノ下ニ經濟委員會
ヲ設ケマシテ、內地ヨリ商工、大藏、農林、
外交等ノ關係ノ各省ヨリ派遣ヲサレマシタ
當事者ヲ以チマシテ、經濟委員會ヲ作リマ
シテ、高級ノ經濟ノ顧問トシテハ平生釟三
郞氏ガ派遣ヲサレテ居ルノデアリマシテ、
軍司令官ノ下ニ斯クノ如キ機關ガアリマシ
テ、審議諮詢ニ應ジマシテ、軍司令官ガ占
據地ニ於キマスル所ノ經濟業務ヲ監督ヲ致
スト云フコトニナッテ居ルノデアリマシテ、
大藏男爵カラ只今各種ノ出先ニ於ケル機關
ニ付テ、色々ト聯繫ガ錯雜ヲシテ、十分ナ
統一ガ出來ナイノデハナイカト云フ風ニ御
尋デアリマシタガ、今日此ノ經濟業務ノ進
ミ方ニ付キマシテハ、只今申上ゲタヤウナ
筋道ヲ履ミマシテ、之ヲ監督スルコトニ致
シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=61
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062・大藏公望
○男爵大藏公望君 簡單デアリマスカラ此
ノ席カラ述ベルコトヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=62
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063・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=63
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064・大藏公望
○男爵大藏公望君 只今ノ御說明ニ依リマ
シテ或部分ハ分リマシタガ、未ダ相當疑ガ
アリマス、併シナガラソレハ他ノ機會ニ致
スコトニシテ、私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=64
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065・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 質疑ノ通〓
ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=65
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066・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今日程ニ上リマシタ
北支那開發會社法案外一件ハ、極メテ重要
ナル法案デアリマスガ故ニ、此ノ特別委員
ノ數ヲ二十五名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一
任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=66
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067・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=67
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068・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戶澤子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=68
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069・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔石橋書記官朗讀〕
北支那開發株式會社法案外一件特別委員
公爵山縣有道君侯爵西〓從德君
侯爵佐竹義春君伯爵柳原義光君
子爵前田利定君子爵加藤泰通君
子爵鍋島直繩君子爵舟橋〓賢君
男爵菊池武夫君勝田主計君
坂西利八郞君塚本〓治君
男爵東〓安君男爵高崎弓彥君
男爵大藏公望君男爵松田正之君
倉知鐵吉君中川小十郞君
小坂順造君深井英五君
瀧川儀作君金子元三郞君
野村德七君山上岩二君
松岡潤吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=69
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070・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 議事進行ニ
付發言ノ通〓ガゴサイマシタカラ、之ヲ許
シマス、土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=70
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071・土方寧
○土方寧君 私ガ、去ル八日デアリマス、
陸軍省ノ西ノ門ト陸軍大臣ノ官舍ノ前ニ、
兩側ニ十一枚位、電柱ニ不穩ノ「ビラ」ガ貼ッ
テアリマシタ、大部分ガ抹消ヲ裝フテアリ
マシタガ、大體讀メルヤウナモノデアリマ
シタ、二ツハ完全ニ其ノ儘ニナッテ居リマ
ス、是ハ何レモ議員ノ言論ヲ掣肘スル爲ニ
暴行ヲ〓唆シタモノデアリマス、コンナモ
ノハ看過スベキモノデナイノダガドウカト
云フコトヲ政府ニ御尋ネ致シマシタ處ガ、
內務大臣ハ只今ノ御話ヲ聽イテ實ハ驚キ
マシタ、早速事實ヲ取調ベマス、左樣ナコ
トガアリマスレバ直チニ取締リマス、陸軍
大臣ハ、同ジヤウナコトヲ······只今御話ニ
ナリマシタコトハ初メテ私モ承リマシテゴ
ザイマス、陸軍ニ關係シテ居リマスル範圍
ニ於キマシテハ、十分ニ取締ヲ致シマス、
斯ウ云フ御答デス、內務大臣ハ驚イタト仰
シヤルケレドモ、私ノ眼ニハ驚イタヤウニ
見エマセヌ、ソレハ十時過ギノコトデゴザ
イマシタ、晝頃其處ヲ通ッタガ、其ノ儘、元
ノ儘ニナッテ居リマシタ、翌日十時前ニ彼處
ヲ通ッタラ、ソレハ綺麗ニ抹消シテアリマシ
タケレドモ、誰ガ貼ッタノカ、ソレ、ヲ取調べ
ルト云フコトヲ內務大臣ガ言ッテオ出デデ
アリマスガ、御調ニナッタカドウカ、御調
ニナッテ分ッタカドウカ、ソレガ伺ヒタイ
暴行〓唆ハ犯罪デアリマス、ソレヲ其ノ儘
ニシテ置イタカ、御調ニナッタカ、御調ニ
ナッテモドウ調ベテモ分ラヌカ、其ノ點ヲ伺
ヒタイ、之ニ付テ私ガ此ノ會期切迫ノ時ニ
重ネテ伺フト云フヤウナコトハ、實ハ遺憾
至極デアリマスガ、ドウモ我ガ國ノ現狀ニ
於テ多數ノ人、殊ニ內閣ノ方々デモ、此ノ
暴力ト云フモノノ不可ナルコトヲ存外輕視
セラレテ居ハシナイカト思フ、所謂世間
ニハ危險人物ガ隨分アリマス、世間デ危險
人物ト云フノハ動モスルト人ニ危害ヲ加ヘ
ムトスル虞ノアル人デアリマス、此ノ取締
ガ十分付イテ居ナイ、ヲカシナ言葉ヲ使ヒ
マスケレドモ、危險人物ト云ッテモ私ハ二樣
アルト思フ、モウ一ツハ人ニ危害ヲ加ヘラ
レル虞ガアル、普通危險人物ト云フノヲ假
ニ積極的危險人物ト云ヘバ、危害ヲ加ヘラ
レル虞アルモノハ消極的危險人物トモ云ヒ
マセウカ、或ハ被危險人物ト云ヒマスカ、
二種アルト思フ、現ニ我ガ輩ガ大正十四年ノ
普通選擧ニ反對シタ時ト云フモノハ、約一
週間餘リト云フモノハ巡査ニ護衞セラレ
テ、誠ニ不自由ニ感ジマシタ、現在モ電氣
案ニ强ク反對スル我々ノ同僚ノ或人ノ所ニ
ハ、隨分多クノ人ガ警衞シテ居ルサウデス、
宅ニ警衞スル、往來ニ護衞シテ居ル、是八
一時ノコトデアリマセウガ、高位高官ニ在
ル方ハ常ニ其ノ職ニ在ル間ハ隨分澤山ノ巡
査ガ官邸ニ、私宅ニ、往來ニ、警衞シテ居
ル、總理大臣初メ總テノ大臣······總理大臣
ノ方ナドハ幾人カ知リマセヌガ、十人モ居
ラレルカ知ラヌ、私宅モ二ツ持ッテ居リマ
ス、現在ドウ云フ割合ダカ知リマセヌガ、
警視廳管內ノ人ロト巡査ノ割合ガ、マア大
體考ヘマス所デ、巡査一人ガ七百人ヲ保護ス
ルコトニナッテ居ヤシナイカト思ヒマス、假ニ
總理大臣ノ官邸私邸ナドニ十人程デ護ッテ
居レバ、六七千人分ノ巡査ヲ一人デ獨占シ
テ居ラレルコトニナル、是モ總理大臣其ノ
他ノ大臣、要職ニ在ル方ガ危險ヲ加ヘラレ
ル虞ガアルト云フナラ必要モアリマセウ、
現ニ五·一五事件ノ時ニハ、白晝時ノ總理大
臣ガ官邸デ射殺サレルト云フヤウナコトガ
アッタノデスカラ、ソレハ御取締ニナル必
要ガゴザイマセウ、ケレドモ其ノ必要デア
ルコトハ實ニ情ナイ、歐米文明國ニ於キマ
シテハ······露西亞ハ知リマセヌガ、大臣ハ
貨澤山巡査ガ護衞シテ居ナケレバ安全デ
ナイト云フヤウナコトハ、實ニ情ナイ話デ
アリマス、畢竟警察ノ方デ共產主義ナドノ
取締ハ實ニ行屆イテ居マス、其ノ反對ノ
右翼ノ方ハ、動機サヘ良ケレバ手段ハ問ハ
ヌト云フヤウナ間違ッタ考、動モスルト
暴行ヲセムト云フヤウナ者ガ隨分アリ
マスガ、其ノ方ノ取締ガ隨分不行屆デ、
ソレガ故ニ保護ヲ要スル人ガ出テ來マス、
是ハ要スルニ我ガ國ノ恥辱ト思ヒマス、ド
ウカ此ノ方面ニ付テモ十分ニ取締ヲ願ヒタ
イト思ヒマスカラ、執拗イヤウデアリマス
ケレドモ、此ノ會期切迫ノ時ニ、改メテ政
府當局ノ御所見ヲ······御決心ヲ承リタイ
〔國務大臣末次信正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=71
-
072・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 土方博士ノ御質
問ニ御答ヘ申上ゲマス、過日御質問ノアリ
マシタ陸軍省ノ前ノ「ポスター」デアリマス、
是ハ其ノ前ニ不穩ナ立看板「ポスター」等ノ
撤去ヲ命ジマシテ、二月ノ二十八日中ニハ全
部撤去致シタノデアリマスガ、偶〓御目ニ留く
リマシク陸軍省前ノ「ポスター」ハ非常ニ
能ク糊ガ利イテ居リマシテ、ナカ〓〓剝ゲ
取レナカッタノダサウデアリマス、御注意ニ
依リマシテ早速是ハ綺麗ニ剝ギ取ッタノデ
アリマス、是ハ大日本靑年黨ノ「ポスターㄴ
デアリマス、爾來不穩ナ「ポスター」ハ嚴重ニ
取締ッテ居リマス、尤モ近頃又二三現レテ參
リマシタガ、是ハ電力國家管理案ヲ支持セ
ヨト云ッタ程度ノモノデアリマシテ、治安維
持上安寧秩序ト云フ見地カラ、サシテ差支
ナイモノデアリマスカラ、其ノ儘ニ致シテ
アリマス、政府ノ閣僚、或ハ貴衆兩院議員
ノ一部分ノ方々、其ノ他ニ對シマシテ、
警官ヲ護衞ノ爲ニ附ケテアリマス、之ニ對
シテ御注意ノアリマシタ件々ハ、警察當局
ト致シマシテモ衷心同感ニ存ジテ居ルノデ
アリマスガ、今日ノ世情ニ於キマシテハ、
誠ニ已ムヲ得ザル必要ニ出デテ居ルノデア
リマスカラ、是ハ世ノ中ガ直リマセヌト云
フト、チヨットドウシタラ宜イト云フ良案ガ
浮バナイノデアリマスカラ、暫ク此ノ儘忍
ブ外ハナイト思ヒマス、甚ダ遺憾ノコトデ
ハアリマスガ、如何トモ致シヤウガナイノ
デアリマス、其ノ點御諒承ヲ願ヒタイト思
ヒマス
〔國務大臣杉山元君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=72
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073・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今土方博士カラ
御尋ニ相成リマシタ件ニ付キマシテハ、二
月中旬頃ニ、「ビラ」ヲ陸軍省附近ノ電柱ニ
貼付ヲ致シタノデアリマシテ直チニ之ヲ
發見致シマシテ除去致シマシタノデアリマ
スルガ、內務大臣カラ申上ゲマシタ如ク、
非常ニ糊ガ能ク利イテ居リマスルモノハ、
取去ルコトガ出來マセヌノデ巳ムヲ得ズ之
ヲ消シテ置クト云フヤウナ處置ヲ執リマス
ト同時ニ、憲兵ハ內務當局ト能ク聯繫ヲ致
シマシテ、爾後斯クノ如キモノニ對スル行
動ニ付テハ、注意ヲ致シテ參ッテ居ルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=73
-
074・土方寧
○土方寧君 簡單デスカラ此ノ席カラ御許
シヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=74
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075・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=75
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076・土方寧
○土方寧君 「ポスター」ヲ除ケタカラ宜イ
ト云フ御答デアリマシタガ、アレハ明カニ
犯罪ヲ〓唆スルモノデアリマス、暴行ヲ〓
唆スルモノデアリマス、ソレヲ唯剝ガシタ
ダケデナク、唯ガ貼ッタカト云フコトヲ調べ
テ、分ッタラ相當ノ處罰ヲシナケレバナラヌ
ト思ヒマス、ソレヲ放任ナサル御趣意デア
リマスカ、ソレヲ伺ヒマス
〔國務大臣末次信正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=76
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077・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 只今話題ニナッ
テ居リマス「ポスター」ハ、大日本靑年黨ト
ノミデ其ノ誰ガヤリマシタカハ、マダ突止
メテ居リマセヌ、取調中デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=77
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078・土方寧
○土方寧君 簡單デスカラ·······取調ベテマ
ダ分ラナイト云フコトデアリマスガ、分レ
バアヽ云フモノヲ貼ッタナラバ、相當ノ處分
ヲスベキモノト思ヒマスガ、サウ云フ御考
デアルカ、其ノ儘ニシテ置ク御考デアルカ、
其ノ點ヲ聞キタイ、何故コンナコトヲ聞ク
カト云フト、實ハ暴行者ノ取締ヲナサルト
仰ッシヤルケレドモ、ドウモ私ハ手緩イト思
フ、共產主義者ヲ取締ルニ付テハ、警察ハ
非常ナ意氣込デアルガ、ソレニ比ベタラ殆
ド放任シテ居ル、二大政黨ノ本部ヲ大擧シ
テ占領シタト云フヤウナコトモ、當局ガソ
レヲ知ラナカッタト云フコトハ信用ガ出來
ナイ位デアル、實ニ遺憾デアル、兎角ドウ
モ·······或ハ惡ク推量スレバ政府ノ主張ニ都
合ノ好イヤウナ暴行者ハ、看過スルト思ハ
レテモ仕樣ガナイヤウナ態度デアルノハ實
ニ殘念デス、是デモウ質問ハ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=78
-
079・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 委員長ヨリ
報告ノ提出セラレマシタ國家總動員法案ヲ、
此ノ際議事日程ニ追加シテ、第一讀會ノ續
ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ煩シタイト存ジマ
ス、御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=79
-
080・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長渡邊子爵
國家總動員法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵渡邊千冬
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=80
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081・渡邊千冬
○子爵渡邊千冬君 國家總動員法案ノ委員
會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ノ御報告ヲ
申上ゲタイト存ジマス、本案ハ其ノ規定ス
ル所ノ內容頗ル
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
廣況ニ亙リ、且我ガ憲法ノ運用ニモ重大ナ
ル關係ヲ持ッテ居リマスル未曾有ノ重要法
案デアリマシテ、委員會ニ於テハ去ル三月
十七日之ヲ付託セラレタノデアリマスガ、爾
來今日迄數日ノ間、愼重且熱心ニ審議ヲ重ネ
タノデアリマス、其間行ハレマシタ質疑應答
ノ內容ノ詳細ニ付キマシテハ之ヲ速記錄ニ
讓ルコトニ致シ、玆ニ其ノ重要ナルモノニ
付御報〓ヲ申上ゲタイト存ジマス、先ヅ第
一ニハ憲法第三十一條ト本案トノ關係ニ付
テデアリマス、其ノ趣旨ハ、憲法第三十一
條ノ非常大權ハ、戰時又ハ國家事變ノ際、
國家ノ存立ヲ保全スル爲、眞ニ已ムヲ得ナ
イ非常緊急ノ場合ニ限リ發動スルモノデアッ
テ、法律又ハ緊急勅令ヲ超越スル本質ヲ有
シ、決シテ法律又ハ緊急勅令ト同列ニ立ッテ
發動スルモノデハナイ、此ノ本質ヲ明確ニ
シ、苟モ誤解ナキヲ期スルコトハ憲法上重
要ナ事柄デアルガ、此ノ點ニ關シ政府ハ衆
議院ニ於テ普通ノ立法手續ト結ビ付ケテ、
非常大權ノ發動ヲ說明シテ居ルガ爲、動モ
スレバ戰時又ハ國家事變ノ際ニ於テハ非
常大權ガ法律又ハ緊急勅令ト同列ニ立ッテ、
何時デモ發動シ得ルガ如キ誤解ヲ生ゼシム
ル虞ガアル、是ハ頗ル重大ナ問題デアルガ、
政府ハ如何ニ考ヘルカト云フ質問デアリマ
シタ、之ニ對シ政府ハ、憲法第三十一條ノ
非常大權ハ、法律又ハ緊急勅令ト同列ニ立ツ
モノデハナク、全ク之ヲ超越シタモノデ、
戰時又ハ國家事變ニ際シ、國家存立ノ保全
上眞ニ已ムヲ得ナイ非常ノ變局ニ處スル非
常ノ例外デアルコトハ同感デアル、此ノ考
ヘ方ハ歷代內閣ノ一貫セル方針デアッテ、ソ
レハ本法ノ前身タル軍需工業動員法ガ法律
トシテ制定セラレタコト、及ビ日〓日露ノ
戰役ニ際シ、各種ノ戰時法律、又ハ緊急勅
令ガ制定セラレタニ拘ラズ、非常大權ノ發
動ヲ見タコトハ今日マデ未ダ曾テ一度モ
ナカッタコトニ徵シテモ明瞭デアル、衆議院
ニ於テ說明ヲシタノハ、立法事項ハ戰時ト
雖モ平時ト同ジク法律又ハ緊急勅令ニ依ル
ノガ原則デアルカラ、憲法第三十一條ノ規
定ガアルカラ、本法制定ノ必要ナシトスル
ノハ立憲的デハナイ、又今日本法ヲ制定シ
テモ、非常大權ガ發動スベキ要件ノ備ッタ場
合ニハ其ノ發動スルコトヲ何等妨ゲルモ
ノデナイコトヲ申シタニ過ギナイト云フ答
辯デアリマシタ、次ニハ本條ノ、第四條以
下第三十一條迄殆ド各條ニ於テ、勅令ノ定
ムル所ニ依リ、又勅令ヲ以テ之ヲ定ムト云
フ字句ヲ以テ現シテ居ル、所謂委任命令ノ
適否ニ關シ、繰返シ〓〓種々ノ質疑應答ガ
行ハレタノデアリマス、卽チ本法案ハ、憲
法第二章ノ條規ノ中、主トシテ第二十七條
ノ所有權ニ關スルモノ、第二十九條ノ言論
ニ關スルモノ等ニ該當スル事項ヲ規定シ、
臣民ノ權利義務ノ全部ニ付規定スルモノト
モ考ヘナイガ、國民ノ一部ニ不安ト衝動ヲ與
ヘタノハ、廣汎ナル委任命令ノ形式ヲ取ッタ
コトニ起因スル、而モ政府ノ提出シタ施行要
綱ヲ見ルト、其ノ中ニ揭ゲテアル事項ハ大
部分法律ノ執行ニ關スルモノデアッテ、立法
事項ハ寧ロ少イノデアルカラ、委任命令ニ
依ラズシテ、執行命令デモ足リルト思フ、然
ラバ國民ノ不安ノ原因タル委任命令ノ形式
ハ之ヲ避クベキデハナイカ、斯樣ナ意味ノ質
問ガ屢〓强調サレタノデアリマス、之ニ對シ政
府ノ答辯ハ、本法案ハ大綱ニ付規定シテア
ル關係上、具體的事項ハ命令ノ規定ニ讓ラ
ナケレバナラヌガ、其ノ具體的事項ノ中ニ
ハ、國民ノ權利義務ニ關スル重要ナルモノ
ヲ相當ニ含ンデ居ル、此ノ種ノ事項ハ法律
ト同一視スベキ委任命令ノ形式ニ依ッテ規
定スルノガ適當デアル、本法中數箇條ノ規
定ハ、今日ノ處執行命令ニ依ルモ差支ナイ
ト認メラルヽガ、是トテモ將來事態ガ變化
シタ場合ニハ、其ノ範圍程度ヲ擴大セラレ、
立法事項ニモ觸ルヽ場合モアルノデアルカ
ラ、寧ロ委任命令ノ形式ニ依ルヲ可トスル、
又委任命令ハ、本質上法律ニ規定スル義務
ノ範圍內ニ限ラレルノミナラズ、事態ニ順
應シテ必要ナル最小限度ニ拘束ヲ止メ得ル
ノ利益モアルカラ、何等不安ハナイ譯デア
ル、國民ノ一部ニ不安ヲ懷カシメタコトハ
遺憾デアルガ、運用上十分注意シテ誤解ヲ
一掃スルコトニ努メタイト云フ答辯デアリ
マシタ、又右ニ關聯シテ本案ハ國民ノ權利
義務ニ關シ、極メテ廣汎且重要ナル事項ヲ
規定スルモノデアルニ拘ラズ、其ノ規定ス
ル所ガ餘リニ抽象的デアッテ、斯クノ如ク非
常ニ廣汎ナル事項ヲ命令ニ委セテ居ルノ
ハ、憲法ノ精神ニ反スルノデハナイカ、法
律ニハ大綱ヲ規定スルニシテモ、今少シ具
體的ニ規定スベキデハナイカト云フ質問モ
アッタノデアリマスガ、之ニ對シ本法ハ戰爭
ノ規模、對手國等ノ如何ニ依リ千變萬化ス
ル事態ニ對應スル爲ニ、又總動員計畫ガ外
國ニ窺知セラルヽコトヲ避ケル必要上、具
體的事項ハ之ヲ命令ニ讓リ、法律ニハ抽象
的ニ規定スルコトトシタト云フ答辯ガアリ
マシタ、又委任命令ガ廣汎ニ亙ルコト本法
ノ如キハ未ダ曾テ先例ガナイ、斯カル廣汎
ノ委任ヲ致サナケレバナラナイ理由ハ如何
デアルカト云フ質問ニ對シマシテハ本法
ガ軍需ノ關係、民需ヲモ含ム多岐ノ內容ヲ
持ッテ居リマスカラ、事項ノ廣汎複雜ニナル
ノハ已ムヲ得ナイ、如何ナル場合ニモ是等
ノ委任命令ハ、法律ノ規定ノ範圍內デ義務
ヲ負ハス手段方法ヲ規定スルニ過ギナイノ
デアルカラ、差支ナイデアラウト云フ答辯
ガアリマシタ、又更ニ之ニ對シ、假ニ現在
ハ法律ニハ抽象的ニ規定スルノ外ナシトス
ルモ、將來之ヲ具體的ニ爲シ得ル時期ノ到
來シタ時ニハ更ニ法律又ハ急ヲ要スル時
ニハ緊急勅令ニ規定スルノガ立憲的デア
ル、今カラ總テヲ勅令ニ委任スルコトハ憲
法ノ精神ニ副ハナイデハナイカト云フ質問
ニ對シマシテ、政府ハ勅令ニ規定スルノハ
法律ニ規定スル事項ノ範圍デアルカラ、更
ニ法律又ハ之ニ代ル緊急勅令ヲ要スルトス
ルノハ理窟ニ合ハナイノミナラズ、本法各
條ノ發動ノ都度、法律ヲ制定スルコトハ戰
爭ノ目的遂行上、迅速且適切ヲ期シ得ナイ
虞ガアッテ、本法所期ノ目的ヲ達成スル所以
デナイ、本法ヲ制定スル以上ハ本法ノ系統
ノ命令ヲ以テ之ヲ規定シテ、之ガ施行ヲ期
スルノガ妥當デアルト云フ答辯デアリマシ
タ、又委任命任ヲ勅令ニ限定シタル理由如
何ト云フ質問ニ對シマシテ、事項ノ重要性
ニ鑑ミ、手續ノ愼重ヲ期シ、運用ノ統一ヲ
圖ルノ趣旨ニ出タモノデアルト云フ答辯ガ
アリマシタ、次ニハ本法案ノ發動ノ時期ニ關
シ、本法ハ其ノ如何ナル部分ガ今囘ノ支那事
變ニ於テ發動スルノデアルカト云フ質問ニ
對シ、政府カラ、今次ノ事變ハ本法案第一條
ノ戰爭ニ準ズベキ事變ニ該當スルノデアッテ、
本法ガ成立スレバ、本法各條ハ固ヨリ今次事
變ニ發動シ得ルノデアルガ、是ガ運用ノ方針
トシテハ政府ハ現ニ軍需工業動員法ニ依リ、
工場ノ管理ヲ實施シテ居ルノデアルカラ、之
ニ關スル部分ハ右動員法ヲ廢止シテ、ソレニ
代ルモノヲ本法ノ施行ト同時ニ發動セシメ
ル、又支那事變關係臨時諸法律ハ、今後事
態ノ著シキ變化ナキ限リ其ノ儘施行スルノ
デアル、從ッテ本法ノ當該部分ハ今次事變ニ
之ヲ發動セシメナイ、其ノ他ノ部分ノ發動
ヲスルヤ否ヤハ一ニ事態ノ推移如何ニ係ル
モノデアッテ、必要ヲ生ズル場合ニハ之ヲ發
動セシムルモノデアルト云フ說明ガアリマ
シタ、次ニ本法案ノ各條ニ關シテ、先ヅ第
三條第七號ニ關シ、政府ハ新聞紙發行業務
ガ總動員業務ニ含マレルコトヲ言明サレタ
ノデアルガ、從ッテ其ノ新聞紙ノ施設ハ之ヲ
徴用シ得ルコトトナルト思フガ、言論機關
ニ對シ斯クノ如キ立入ッタ措置ヲ執ルコト
ハ國民ノ精神的協力ヲ妨ゲ、却テ總動員ノ
目的ニ合シナイ結果ヲ來ス虞ガアル、政府
ハ果シテ新聞ニ對シ其ノ施設迄徴用スル等
ノ意思ガアルカト云フ質問ガアリマシタ、
之ニ對シ政府ヨリ、新聞發行業務ヲ總動員
業務トシタノハ、戰時ニ於ケル新聞業務ノ
重要性ニ鑑ミ、之ヲ本法ノ規定ヨリ除外ス
ルコトヲ不適當トセルニ依ルノデアルガ、
其ノ施設ヲ徴用收用スル等ノコトハ、今日
全ク之ヲ豫想シテ居ナイ旨ノ答辯ガアリマ
シタ、又第二十條ニハ總動員ノ必要上、記
事ノ揭載ヲ禁止制限スル規定ガアリマスケレ
ドモ其ノ運用ニ付テモ十分之ヲ注意致スト
云フ言明ガアッタノデアリマス、次ニ本案第
二十八條ノ損失補償及第二十九條ノ損失補
償委員會ニ關シテ質問ガアッタノデアリマ
ス、ソレハ損失補償ノ適否ハ、本法ノ如ク
軍需ノミナラズ民需ニモ及ブ廣汎ナルモノ
ニアッテハ、殊ニ國民ノ利害ニ重大ナル關係
ガアルガ、其ノ金額ハ補償委員會ノ議ヲ總テ
政府ガ之ヲ定メルコトニナッテ居ルノハ宜
シイ、唯之ニ對シテ不服ノアル場合ノ救濟
規定ヲ缺クノハ不當デハナイカ、斯ウ云フ
質問ニ對シマシテ、政府ハ、補償委員會ヲ
設ケル其ノ趣旨ハ、現行ノ軍需工業動員法
ニ依ル軍需評議會設置ノ目的ト同樣、戰時
ニ際シテハ國民ト政府トノ間ニ補償金額等
ニ付幾多ノ訴訟問題、係爭問題等ノ起ルコ
トハ適當デナイト思フカラ、政府ハ豫メ愼
重ナル手續ヲ踏ンデ適切ナル補償ヲシテ、
サウシテ兩者ノ關係ヲ成ルベク速カニ解決
シタイト思フカラ、別ニ救濟手段ヲ設ケテ
ナイ、斯ウ云フ說明デアリマシタ、從ッテ
之ニ對シ更ニ國民ガ訴訟等ニ依リ不服ヲ申
立テル途ヲ開イテ置クノハ適當デナイト云
フ說明デアリマス、次ニ第五十條ニ總動員
審議會ノ規定ガアルノデアリマスガ、此ノ
審議會ノ規定ニ關係ヲ致シ、此ノ總動員法
案ハ廣汎ナル事項ヲ勅令ニ委任シテ居ル
爲國民ノ間ニ不安ヲ懷カシメテ居ルカ
ラ、此ノ不安ヲ解イテ國民ヲシテ精神的ニ
總動員ニ協力セシメルヤウニ措置ヲスルコ
トハ極メテ必要ナルコトデアル、總動員審
議會ハ此ノ目的ニ副フモノデアルトハ思フ
ケレドモ、其ノ重要ナル趣旨ニ鑑ミ、之ヲ
單ナル諮問機關トセズ、更ニ進ンデ議決機
關トスベキデハナイカト云フ質問ガアッタ
ノデアリマスガ、之ニ對シテ政府ハ審議
會ノ設置ハ本法ノ運用ニ當リ國民ノ
意嚮ヲ十分ニ取入レ、圓滑適切ナル運用ヲ
期スル趣旨ニ出ヅルノデアルガ、本法運用
ニ關スル全責任ハ政府ガ之ヲ負擔スルノデ
アルカラ、之ヲ諮問機關ニスルノガ至當デ
アル、之ヲ議決機關トスルコトハ却テ責任
ヲ審議會ニ轉嫁スル結果トナルノデ、審議
會設置ノ目的カラ言フテ好マシカラヌコト
デアルト云フ答辯ガアッタノデアリマス、審
議會ノ構成ニ關シテモ、其委員ノ過半數ハ
貴衆兩院議員ヲ以テ之ニ充テルノデアルト
云フ衆議院ニ於ケル政府ノ言明ニ關聯シマ
シテ、其ノ選任ニ當ッテハ政府ハ貴族院ノ各
會派又ハ衆議院ノ政黨ノ意思ヲ尊重スル方
針ナリヤ否ヤト云フ質問ガアッタノデアリ
マスガ、之ニ對シ政府ハ政府ノ適任ナリト
認ムルモノヲ選任スル方針デアルガ、唯結
果ニ於テハ大體左樣ニナルデアラウカト思
フト云フヤウナ答辯ガアリマシタ、審議會
ノ權限ニ關シマシテ、第五十條ニ括弧ノ內
ニ軍機ニ關スルモノヲ除クト云フ文句ガア
ルノデアリマスガ、此ノ文句ハ統帥事項ガ
本法ノ範圍內ニアルガ如キ誤解ヲ生ゼシメ
ルト思フガドウデアルカト云フ質問ガ出マ
シタガ、之ニ對シテハ、軍機軍令其ノモノ
ハ當然本法ノ範圍外ニアル、併シ本法ノ範
圍內ノ事項中ニハ矢張リ軍機ニ關聯スル
モノガアル、卽チ審議會ニ諮問スベキ第五
十條ノ重要事項ト云フ中ニハ、勅令ノ內容
タルベキ事項ト本法運用ノ方針ニ關スル事
項トヲ含ムモノデアッテ、勅令事項ハ之ヲ公
表セラルベキモノデアルカラ、軍機ニ關ス
ル事項ヲ含ムコトノナイコトハ明瞭デアル、
唯運用方針ノ中ニハ軍機ニ關係ヲ持ツモノ
ガ相當ニアル、是モ亦本條ノ重要事項タル
コトハ勿論デアルカラ、審議會ニ懸クベシ
ト云フ議論ガ生ズルコトノ可能性ガアルノ
デアルカラ、法文ニ左樣ナモノハ是ハ審議
會ニ懸ケナイト云フコトヲ明瞭ニシテ置イ
タ次第デアルト云フ說明デアルノデアリマ
ス、其ノ他本法ヲ圓滑ニ實施スル爲ニハ
單ニ法規ヲ整備スルノデハ不十分デアル、
之ガ運用ニ當ルベキ中央及地方ノ行政機關
ヲ擴充改善スルコトガ必要デアル、又官吏
制度ヲ改革シテ、官吏ノ素質ヲ向上セシメ、
更ニ國民精神ヲ作興シ、〓學ヲ刷新スル等
ノ事柄ガ極メテ重要デハナイカト云フ質問
ニ對シマシテ、政府ハ同感ノ意ヲ表セラレ
タノデアリマス、以上申述べマシタ如ク、
本法案中最モ問題トナッタノハ、勅令ニ委任
シタ事項ガ餘リニ廣汎ナルコトデアリマシ
テ、玆ニ大ナル不安ヲ惹キ起シタ次第デア
リマスガ、之ニ關シ政府ハ、委任勅令ガ本
法ノ規定ノ範圍外ニ出ヅルコトナキハ勿論、
其ノ範圍內ニ於テモ必要ノ程度ヲ超エナイ
ヤウニ深甚ノ注意ヲ拂フベキ旨ヲ言明セラ
レマシタ、最後ニ世上ニハ此ノ法案ヲ提出
スルニ至リタル其ノ裏面ニハ憲法政治ニ
背反スル指導精神ノ伏在スルコトヲ懸念ス
ル者ガ尠クナイガ、政府ノ所見果シテ如何
ト云フ質問ニ對シマシテハ、近衞總理大臣
ノ答辯ニ依リマシテ、此ノ法案ハ近時「3 |
ロッパ」ノ或國々ニ行ハレテ居ル獨裁政治ノ
思想トハ根柢ヲ異ニシテ居ル、我ガ國ニハ
上ニ萬邦無比ノ皇室ヲ戴キ、又欽定憲法ガ
儼存致シテ居ルノデアッテ、政治ハ飽ク迄モ
憲法ノ條章ニ從ッテ行ハレナケレバナラナ
イ、又此ノ法案ハ今日ノ時局ニ際シ卒然ト
シテ起草セラレタモノデハナクテ、十數
年以前ヨリ資源局等ニ於テ長ク考究セラレ
ツヽアッタモノガ實ヲ結ンダモノデアリ、
又「ドイツ」ノ千九百三十三年ノ「ナチス」ノ
授權法等トハ異ッテ居ッテ、本法ハ主トシテ
戰時ニ於テ適用ヲ見ルモノデアル全ク其
ノ撰ヲ異ニスルモノデアルト云フ意味ガ明
白ニナッタ次第デアリマス、質疑ヲ終了シテ
討論ニ入リマシテ、修正案ガ提出セラレマ
シタ、其ノ修正案ハ本法ノ第二條、第三條
及第十八條ノ規定中、「勅令ヲ以テ」トアル
ヲ「別ニ」ト改メ、第四條乃至第十一條、第
十三條乃至第二十四條、第二十六條及第二
十七條ノ規定中「勅令ノ」トアルヲ「別ニ」ト
改メムトスル修正ノ動議ガ提出セラレマシ
タガ、此ノ修正案ハ採決ノ結果、少數ニテ
否決セラレマシタ、仍テ更ニ原案ニ付テ採
決致シマシタ處、一委員ヲ除クノ外委員會
全部ノ贊成ヲ以テ本案ハ可決ト相成ッタ次
第デアリマス、右御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=81
-
082・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ討論ニ移
リマス、土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=82
-
083・土方寧
○土方寧君 此ノ法案ハ憲法ニ重大ナル關
係ノアル法案デアリマス、衆議院ニ於テモ
本院ニ於テモ、委員會ナドデ此ノ法案ノ內
容ニ付テ巨細ナ質問應答ガアッタヤウデア
リマス、ケレドモ私ハサウ云フ細目ニハ
論及シナイ積リデアリマス、大體ニ於テ本
法ヲ不可トスル者デアリマス、私ノ考ヘマ
シタ所デハ、若シ本案ガ法律ニナッテ、之ニ
依ッテ數多クノ勅令ガ出來マシタ時ニハ、其
ノ勅令ト內容ヲ同ジウスル法律、若シクハ
法律ニ代ルベキ勅令ト云フモノノ憲法ノ規
定ガ適用ガナイコトニナル、故ニ此ノ本法
ノ可否ハ、本法ニ想像シテ居ルヤウナ場合
デモ、憲法ガ完全ニ行ハレルカ、ソレトモ本
法ノ範圍內ニ於テハ、本法ガ出來タ時ニハ其
ノ內容通リノ場合ニハ憲法ノ適用ガ一時
中止セラレルト云フコトニナルカト私ハ思
ヒマス、ソレデ私ハサウ云フコトデアッテ
ハナラヌト云フ考デ反對ヲスルノデアリマ
スガ、併シナガラ此ノ法案ニ想像シテ居ル
ヤウナ場合ガ起ッテモ、何カ特別ノ緊急ノ法
規ヲ拵ヘルコトノ必要ナルコトハソレハ
私ハ認メマス、事柄ハソレ自身ガ惡イトハ
思ヒマセヌ、斯ウ云フ類ノコトノ必要ナコ
トガ起リマセウ、ソレガ爲ニ本法ノヤウナ
方法ヲ執ルト云フコトガ、違憲トハ申シマ
セヌ、法律ニナッテ、本案ガ貴衆兩院ノ協賛
ヲ經テ、御裁可ニナッテ公布ニナッタラ、ソ
レニ依ッテ勅令ヲ作ルト云フコトナラ、何モ
違憲トハ申シマセヌガ、併シナガラ本法案
ニ想像スル如ク、廣範圍ノ委任立法ヲスル
ト云フコトハ憲法ノ本旨、根本義ニ反ス
ル非立憲的ノモノデアルト考ヘルカラ反對
ヲスルノデアリマス、之ニ反對シテ、其ノ結
果本案ニ想像スルヤウナ場合ニ處スル適當
ノ手段ガナイカト云フト、私ハアルト思フ、
矢張リ憲法ノ條章通リニヤッテ、同ジ目的ガ
達セラレルト思ヒマスカラ、本法案其ノモ
ノニ反對ヲスルノデアリマス、私ノ論旨ヲ
成ルベク明カニ申述べ、御了解ヲ得ル爲ニ
少シク卑見ヲ述べテ御聽キヲ願ヒタイト思
ヒマス、御承知ノ通リ我ガ憲法ノ條章ノ大
多數ハ、歐米諸國ノ憲法ニ似寄ッタモノガ
多イノデアリマス法文ノ上デハ、形ノ上デ
ハ······、ケレドモ、我ガ國ノ憲法ハ全ク我ガ
國ノ國體ニ基ク獨得ノ特別ノ性質ヲ持ッテ
居リマス、此ノコトハ皆サンモ特ニ御承知
ノコトト思ヒマスカラ、私ガ此處デ其ノコ
トヲ說ク必要モナイト思ヒマスガ、併シナ
ガラ記憶ヲ新タニスル爲ニ、成ルベク簡單
ニ我ガ欽定憲法ノ根本義ノ由來カラ御話ヲ
シテ聽イテ戴キタイト思ヒマス、歷史前、
神代ノ時代、高天原ニ於ケル神集ヒト云フ
コトノ傳說ガアリマス、コンナ古イコトハ
扨テ措キマシテ、奈良朝ノ時分ニ聖德太子
ノ十七憲法ト云フモノガゴザイマス、憲法
ト云フ字ハ使ッテアリマスケレドモ、其ノ內
容ハ寧ロ〓育勅語ニ比スベキ聖訓デアルト
思ヒマス、其ノ一番終ヒノ第十七條ニ「大事
ハ獨斷ス可カラズ、必ズ衆ト與ニ論ズベシ」
明治元年ニ明治天皇ガ紫宸殿ニ於テ神々
ニ御報告ニナッタ後ニ御公布ニナッタ五箇條
ノ御誓文ノ第一ニアルコトハ、同ジ御趣意
デアリマス、「廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ
決スヘシ」トアル、之ガ明治御維新ノ國是
ノ大眼目デアリマス、ソレカラ此ノ趣意ヲ
實現スル爲ニ、明治天皇ハ初メカラ色々
有司ニ御下命ニナッテ、憲法政治ノ基礎ヲ定
メルヤウニ御考デアッタヤウデアリマス、明
治時分カラ勅語ヤ何カハ出テ居リマスケレ
ドモ、最モ著シイノハ明治八年ノ帝國議
會準備ノ詔デアリマス、餘リ長クアリマセ
ヌケレドモ、全部ヲ讀マヌコトニシマスガ、
今拜讀シタイト思フノハ、「朕今誓文ノ意ヲ
擴充シ玆ニ元老院ヲ設ケ以テ立法ノ源ヲ廣
メ大審院ヲ置キ以テ審判ノ權ヲ鞏クシ又地
方官ヲ召集シ以テ民情ヲ通シ」云々ト云フ
ヤウナコトガアリマス、丁度此ノ時分ニハ
板垣サンガ自由民權ヲ唱ヘテ、頻ニ政治運
動ヲシテ居ラレタ時デ、大阪ナンカニ會ガ
アッタ、ソレカラ明治十四年ニ開拓使ノ官有
物拂下ト云フ事件カラ天下ニ物議ヲ生ジ、
畢竟專制政治ハ我儘ヲスルカラコンナコト
ニナルト云フノデ、國會論ガ勃興シタ、獨
リ民間ニ於ケルノミナラズ、廟堂ニモ國會
開設ノ急進論、漸進論、二樣アッタヤウデア
リマス、大隈サンハ急進論者デ、確カ單獨
ニ憲法ノ私案ヲ上奏ニナッタト云フヤウナ
コトガ大變ニヤカマシクナッテ官ヲ退カレ
ク、サウシテ改進黨ヲ作ラレタ、板垣サン
ノ自由黨ハ少シ前カト思ヒマス、二大政黨
ガ十三年、十四年ニ出來マシテ、頻ニ藩閥
政治ニ反對スル態度ヲ執ッテ居ル、ソコデ
明治天皇ニハ御軫念アラセラレタデアリマ
セウ、十四年ニ國會開設ノ詔ガアッタ、ソレ
モ一々長ク拜讀スルノデハアリマセヌガ、
其ノ一部分ヲ拜讀シマス、「嚮ニ明治八年ニ
元老院ヲ設ケ、十一年ニ府縣會ヲ開カシム、
此レ皆漸次基ヲ創メ、序ニ循テ步ヲ進ムル
ノ道ニ由ルニ非ザルハ莫シ」云々、ソレカラ
先ノ方ニ行キマスト「將ニ明治二十三年ヲ
期シ、議員ヲ召シ、國會ヲ開キ、以テ朕カ
初志ヲ成サントス」、是ガマア二十三年ヲ期
シテ今ノ帝國議會ヲ御開キニナルト云フ御
沙汰デアリマス、ソレカラ十五年ノ頃ト思
ヒマスガ、伊藤公ガ憲法調ベニオ出デニナッ
テ、サウシテ歸ッテ來テ、井上子爵、伊東
巳代治伯、後ニ伯ニナッタ、御健在ノ金
子伯トカ云フヤウナ方ト一〓ニ憲法ノ草
案ノ起草ニ著手セラレタ、草案ガ出來タ時
ニ上奏ニナッタ、明治天皇ハ長イ間每囘御
臨席、御臨場ニナラレ、元老院デ憲法案ヲ
議シテ、サウシテ二十二年ノ二月十一日ノ紀
元節ニ御發布ニナッタ譯デアリマス、此ノ時
ニハ御〓文ト勅語ト、勅諭トアリマス、其ノ
中ニハ我々ガ今日拜讀シテ、日常服膺スベ
キモノモアリマスケレドモ、マア時ヲ省ク
爲ニ略シマス、玆ニ世人ガ餘リ注意ガシテ
ナイト思フコトハ、是非玆ニ申シテ御考ヲ
願ヒタイノハ、〓育勅語デアリマス、是モ
明治天皇ガ明治十二年項カラデアリマセ
ウ、時ノ文部卿、或ハ侍講等ノ者ニ御下命ニナッ
テ色々御調ニナッタヤウデアリマス、其ノ成
案ガ出來タ時ニ、是ハ明治二十三年ノ十月
三十一日ニ、國務大臣ノ副署モ何モ無シニ
公布ニナッテ居リマス、是ハ欽定憲法ノ公布
後デアリマスケレドモ、欽定憲法ハ明治二
十三年十一月、第一議會召集ノ時カラ效力
ヲ生ズト云フコトニナッテ居リマスカラ、其
ノ實施前デアリマス、是ハ私ノ考デハ非常
ニ重大ナ關係ガアルト思ヒマス、私ノ考ヘ
マスル所デハ、此ノ〓育勅語ノ聖旨ト云フモ
ノヲ、〓育勅語ニアリマス通リニ拳々服膺
シテ居ルニアラズンバ、折角ノ欽定憲法ニ
依ッテ御親政ニ參與シ奉リ、國民ナリ國務大
臣ナリノ職責ヲ盡スコトハ出來ヌト思フ、
〓育勅語ト云フモノハ動モスルト世間カラ
小學校ノ〓材ニ過ギナイト云フヤウニ思ッ
テ居ル人モアルヤウデアリマス、大變ナ間
違ヒデアリマス、固ヨリ小學校デ之ヲ〓へ
ルコトハ必要デアリマス、日本臣民タルモ
ノハ終生生キテ居ル間ハ、造次〓沛忘レル
コトガ出來ナイ、是ハ出來ルダケ實踐躬行
シナクチヤナラヌノデアリマス、明治天
皇御自身オ終ヒノ方ニ「斯ノ道ハ實ニ我カ
皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守
スヘキ所」、子孫ト云フノハ是カラ後ノ天子
樣デアリマス「之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之
ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々
服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ」
ト、聖天子自ラサウデアリマス、此ノ中
ニマア直接憲法ニ關係ノアリマスルコト
ハ「常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ」ト云フ字句
デアリマス、此ノ憲法ガ出來マシテ後、公
布ニナッタ後カラ此ノ憲法ノ或部分ニ付テ、
例ヘバ何人カ此處ハ斯ウ、此處ハアヽト云ッ
テ、幾分ノ修正ノ意見ガアリマシテモソレ
ハ仕方アリマセヌガ、ドウ云フモノカ伊藤
公ハ苦心シテ、是等ノ憲法ヲ斯ウ確定シタ
ケレドモ、歐米ノ學者ナドガ之ヲ見テドウ
云フ風ニ判斷スルダラウ、其ノ意見ヲ聽イ
テ見タイモノダト云フ御考デ、金子サンガ
憲法ヲ持ッテ歐米ヲ巡遊セラレマシタ、구
メリカ」、「イギリス」、「ドイツ」ト方々ノ
學者ニ會ッテ憲法ヲ示シテ、斯ウ云フモノ
ヲ今度日本デ作ッタ、是デ立憲政治ヲ行フ積
リデアルガ、オ前等ノ考ハドウデアルカ、
腹藏ナキコトヲ聽カシテ吳レト、「アメリ
カ」デハ「ウォンデル·ホルムス」ト云フ、當
時合衆國ノ中央ノ高等法院ト云ヒマス日本
ノ大審院ニ當ルモノデ、ソコノ判事デアリ
マス、其ノ前ニハ「マサチューセッツ」州ノ
最上ノ裁判所、上告裁判所ト云ヒマスカ
日本ノ大審院ノ判事ニ當ル人デアリマス、
「マサチューセッツ」州ノ判事デアッタ時分ニ
「ボストン」ノ法律學校デ講義ヲシタコトガ
アッテ、本ガ出テ居リマスガ、小サイ本デ
アリマスケレドモ、ソレガ爲ニ學界ニ名ヲ
得タ人デアリマス、サウシテ判事トシテ扱ッ
タ判決文ト云フモノ、「ホルムス」ノ判決文
ダケ集メテアル本ガアリマス、其ノ位學識
ノ豐富ナ人デアリマス、其ノ人ニ聽キ、ソ
レカラ「イギリス」デハ「ゼームスブライス」
是ハ「アメリカン·コンモンウエルス」、「ア
メリカ」共和制ト云フモノヲ二册本ヲ書イ
テ居ル、是ハ「アメリカ」人モ自國ノコトヲ
是程簡明ニ正確ニ說イテ呉レタ人ハナイト
言ッテ稱讚シテ居ル人デアリマス、其ノ著者
デアリマス、ソレカラ「オックスフォードㄴ
大學デ「オール·ソールス」ト言ヒマスカ、日
本ノ學長ニ當リマセウ、「アンソン」ト云フ
人此ノ「アンソン」ト云フ人ハ大學ノ〓授
ヲシテ居ル外ニ「ロー·エンド·カストム·オ
ブ·イングリッシュ·コンスティチューショ
ン」、憲法ノ法律及慣習ト云フ二册本デアリ
マイ、一册ハ「パリヤメント」、議會ノコト
デアリマス、二册目ハ「シクラオン」、行政
官廳ト云フノデアリマスガ、行政官廳ノ
コトヲ說イタモノデアリマス、此ノ二册本
ハ類似ノ本ガ餘計外ニハアリマセヌ、「イギ
リス」ノ行政官廳ノコトハ實ニ分リニクイ、
「アンソン」モ殆ド半生以上苦心シテ出來タ
結果ト言ッテ居リマス、是ハ私モ其ノ著書ニ
依ッテ知ッテ居ル人デアリマス、面識ハアリ
マセヌガ、金子サンカラ御話ヲ聞イテ覺エ
テ居リマス、大陸ノ學者ノ名ハ聞キマシタ
ガ今記憶シマセヌガ、金子サンガ是等ノソ
レソレノ學者ニ憲法ヲ示シテ意見ヲ徴セラ
レタ所ノ結果ハ、皆實ニ是ハ立派ナモノデ
アル、日本ノヤウナ君主國ガ立憲政治ヲ行
フト云フ時、其ノ爲ニ造ッタ憲法トシテハ
殆ド完全デアル、若シ自分ガ他ノ君主國カ
ラ立憲政治ヲ行フ爲ニ憲法ヲ起草シロト賴
マレタラ、大體此ノ通リスルガ一番良イト
思フ位ト、非常ナ稱讚ヲ得ラレタ、ソレデ
歸ッテ來テ其ノコトヲ伊藤公ニ御話ニナッ
タ、伊藤公モ非常ニ御喜ビニナッタヤウデ
アリマス、其ノ譯デアル、西洋ノ憲法ハ何
レモ完全ナモノハナイト云フノハ、時々改
正ヲシナケレバナラヌ、何處ノ國ノ憲法デ
モ屢〓改正ヲシテ居リマス、處ガ日本ノ憲法
ハ憲法發布ノ時ノ勅諭ニ、明治天皇御
自身ニ、將來憲法ノ改正ヲスル必要ガアッタ
時分ニハ天子樣御自身發案ナサル、臣下ノ
者カラ兎ヤ斯ウ容喙スルコトヲ許サヌト云
フ御趣意ノコトガアリマス、所謂不磨ノ大
典デアリマス、サウシテ是ガ將來ノコト
ハ人間ノ力デ想像シ切レマセヌケレ
ドモ、先ヅ私ノ考デハ、日本ノ憲法
一ト云フモノハ將來ドンナニ時世ガ變遷シテ
モ、此ノ條章ヲ改正スル必要ハナイ、完全
ニ出來テ居ル、總テノ場合ガ出來テ居ル、
ソレヲ稱讃シタ、例ヘバ外ノ國デハ若シ行
政府ト立法府ト衝突シテ、豫算ガ不成立ト
ナッタラ行政府ハ動キガ付カヌ、サウ云フ時
ニハ日本デハ前年度ノ豫算ニ依リ、現狀維
持デ次ノ議會ノ時期迄待ツ、更ニ都合好ク
融通ノ付クヤウニナッテ居ル、ソレカラ今ノ
非常緊急勅令ト云フヤウナコトモ後デ勿論
話シマスガ、先月ノ丁度紀元節ニ憲法發布五
十年ノ式典ガ擧ゲラレマシタ時ニ、畏クモ
秩父宮殿下ガ御名代デ勅語ヲ賜リマシタ、
其ノ時ノ勅語ノ中ニモ「憲章ヲ奉遵シテ」ト
云フヤウナ字句ガアックト思ヒマス、總理大
臣ノ御奉答ニモ同ジヤウナ文句ガアッタト
思ヒマス、然ルニ私ノ考ヘマス所デハ、初
ニ申シマス通リニ、ドウモ此ノ法案ト云フ
モノハ憲法ノ精神ニハ反スル、此ノ法律ガ
成立ッテ、色々ナ勅令ガ出テ來ルト、勅令デ
決メルヤウナコトハ、同ジコトガ憲法ノ條
章ニ依ッテ、法律カ或ハ緊急勅令デアル場合
ガアルガ、ソレニ依ラヌト云フコトハソ
レダケ本法ニ依ル勅令ノ範圍內ニ於テハ
憲法ノ條章ノ適用ガナイト云フコトニナリ
マス、ケレドモ違憲ト云フコトハ言ハナ
イ、委任立法ト云フコトハアリマス、今迄
モ始終ヤッテ居ルコトデス、其ノ委任ノ範圍
ノ廣狹デアリマス、廣イ狭イニ依ッテ違憲デ
アルカナイカト云フコトノ差別ガアル譯ノ
モノデハアリマスマイ、性質論カラ言ヘバ
委任ノ範圍ガ廣クテモ狹クテモ委任ガ出來
ルモノナラバ、立憲的デ、ソレハ違憲トハ
言ヘマスマイ、ダカラ私ハ違憲トハ申シ
マセヌ、ケレドモ此ノ法案ニ副フタヤウ
ナ廣範圍ノ委任、マア世間ノ人ハ白紙委任
狀ヲ出スヤウナモノデアルト言ッテ居リマ
ス、是ハ違憲デハナクテモ、憲法ノ立法上
ノ精神ニハ明カニ反スル、反スルカラソ
レデ私ガ本案ニ反對スル、反對スルト云フ
ノハ本案ノ不成立ヲ希望スル譯デアリマス、
不成立ニナッタラ後ハ困リハセヌカ、ケレド
モ、私ノ考デハ少シモ困ラヌ、矢張リ憲法
ノ條章ヲ奉遵シテ、立憲的ニ此ノ法案ト同
ジ目的ヲ達シ得ルト思フノデス、若シ此ノ
法案ニ副フト云フヤウナ勅令ヲ必要トスル
場合ガ起ッタ時ニハ、議會開會中デアリマシ
タナラバ、矢張リ早速議會ニ提出シテ協贊
ヲ求ムレバ宜イ、サウ云フ場合ガ出來マシ
タラ夜中デモ宜イト思フ、直チニ議會ニ提
出シテ、急速ニ協贊シテ吳レト云フ請求ヲ
ナサッタラ宜イ、サウ云フ場合ニハ、私ノ考
ヘル所デハ、貴衆兩院議員トモ夜中デモ何
デモ來集シマシテ、或ハ委員付託ダトカ云
フコトヲ略シテ、本會議デ、或ハ三讀會ノ
順序モ略シテ、直チニ本會議ヲ開イテ審議
シテ、數時間ニシテ、其ノ內容ガ餘リ混ミ
入ッタ時ニハ掛リマセウケレドモ、何モ御心
配ニナルヤウナ小田原評定ヲスルヤウナコ
トハ決シテナイト思フ、其ノ位ニ我々ハサ
ウ云フ非常時ノ場合ニハ、政府當局者ノ御
心配ノ要ラヌ位ナ誠意ハアルト思ヒマス
現ニ憲法實施初期ノ第一議會ハ、忽チ自由
黨改進黨ガ聯合シテ、政府ノ豫算ヲ大削
減シヨウトシタ、詰リ政府ヲ攻メ落サウト
云フノデス、處ガ初メテノ議會ニ解散ト云
フコトハ政府モ好マヌト云フノデ、妥協ヲ
シテ、第一囘ダケハ其ノ削減ノ額ヲ減ジテ
折合ヲ付ケタ、二囘目ハ又衝突シタ、其ノ
後ノ總選擧ノ時ニハ實ニ隨分亂暴デアリ
マシタ、品川サンガ內務大臣デ、政府ニ反
對スル議員ハ國賊デアルカラ、左樣ナ者ヲ
選擧シテハナラヌゾト云フ、各府縣知事ニ
對シテノ嚴命デアリマス、私ノ〓里ナドハ
隨分死傷ガアリマシタ、私ノ伯父ハチヨット
腕ガ利イテ居リマシタノデ、拔刀デ候補者
ヲ護衞シテ參リマシタ、ソンナコトガアッタ
ソレカラ日〓戰爭迄ハ始終ゴタ〓〓シテ居ッ
ク、ソレダカラコソ、日本ハ內爭ガアルカ
ヲ與シ易イト李鴻章ハ思ッタノデセウ、是コ
ソ朝鮮ニ對スル野望ヲ達スルニ適當ト思ッ
タノデセウ、ソレガアヽ云フ戰ガ起ッタ主ナ
原因ダト思ヒマス、支那人ハ日本人モ支那
人ノヤウナ心ト思ッタノデセウ、處ガソレガ
大變ナ違ヒデ、サア戰トナルト、內輪喧嘩
ヲシテ居ル者ハ誰モアリマセヌ、政府ノ提
出シタ豫算ヲ直グニ協贊シタ、ソレカラ日
〓戰爭ガ濟ミマシタ後ハ又ゴタ〓〓シマシ
タガ、ドウシテモ立憲制ヲ布イタ以上ハ
議會ヲ相手ニシナケレバ政治ノ仕樣ガナイ、
議會ガ基礎トナル、殊ニ衆議院ノ政黨ノ了
解ガナケレバ、圓滿ニ行政ノ行ハレヤウガ
ナイト云フノデ、板隈內閣ガ出來タリ、桂
サンガ同志會ニ居ッテモ、十分ニ立法府、行
政府ノ間ノ融和ガ付イテ居ナイ、ゴタノ
シテ居ル、其ノ中又日露戰爭ニナッタ、
サウナルト、內爭ヲ止メテ擧國一致、政府
ヲ援助シテアノ戰爭ニ臨ンダ譯デス、サウ
云フ譯デ有事ノ場合ニハ、ドンナ緊急ノ案
ヲ出サレタ時デモ、無用ナ小田原評定ヲシ
テ急ノ場ニ間ニ合ハヌト云フヤウナ御心配
ヲ掛ケルコトハ決シテナイト私ハ思ヒマス、
ダカラ開會中ナラバ、法律案デ出シテ私達
ニモ協贊ヲ求メラレル、ソレカラ若シ閉會
中ト云フ、其ノ場合ガ多イデセウ、會期ハ
三箇月位デスカラ、閉會中ノ時ガ多イデセ
ウ、コンナ場合ガ起ル時ハ、其ノ時ニハ所
謂非常勅令、法律ニ代ル勅令ト云フモノヲ
樞密院ニ御諮詢ニナック上デ御定メニナレ
バ宜イ、樞密院デアリマシテモサウ云フ
急場ノ場合ニハ、夜會議ヲ催サレテモ必ズ
皆出ルダラウト思フ、隨分老人ガ多イノデ
スケレドモ、サウ云フ場合ニハ命賭ケデデ
モ出ルダラウト思フ、平生餘リ出ナイヤウ
ナ人デアリマシテモ、非常ノ場合デアルノ
ダカラ、急ヲ要スルト云フノデ、夜ニナッテ
樞密院ノ會議ヲ開カレテモ、出來ルダケ出
ルダラウト思フ、現ニ大正十二年ノ關東ノ
震災後ノ緊急勅令ノ如キ、確カ夜御諮詢ニ
ナッテ、卽決シテ奉答シタト云フコトヲ聞イ
テ居リマス、ソレダカラシテ、急場ノ間ニ
合ハナイ、人ニ相談シテハイケナイト云フ
ノハ、全ク自分ダケ此ノ必要ヲ感ジテ他ノ
人ハ感ジナイ、自分ハ獨斷デヤルヨリ仕方
ガナイト云フ、所謂獨善主義ダト思フ、ソ
レデハ聖徳太子ノ「獨斷ス可カラズ」ト云フ
御趣意、「廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決ス
ヘシ」ト云フ明治維新ノ御趣意、ソレニ依ッ
タ欽定憲法ノ其ノ精神ト云フモノヲ全ク沒
却シテ居ルト私ハ思フ、私ノ考デハ、サウ
云フ精神デ法律案ヲ議會ニ提出サレ、或ハ
樞密院ニ諮詢セラレル所ノ勅令案ガ、大變
ニ混ミ入ッタ案デアリマシタナラバ、或ハソ
レヲ見タ上デ、一部分、是ハアヽ、是ハア
アト云フ修正ノ意見ガ出ルカモ知レマセ
又、ソレガアッテコソ衆智ヲ利用スル所以
デアリマス、ケレドモ故ナク、唯時間ヲ浪
費スルヤウナコトハ決シテナイト思ヒマ
ス、若シ斯ウ云フ風ニ純粹ニ日本ノ憲法ニ
相應シタ立憲的ノ方法ヲ採ラレマシタナラ
バ私ハ是デコソ本當ニ國民ノ精神總動員
ノ實ガ擧ガルト思フ、若シ衆議院ニ相談シ
タリ、議會ニ懸ケテ居ッタ日ニハ間ニ合ハ
ヌカラト云ッテ、時ノ政府ガ獨斷デヤラレタ日
三、必要デアルコトナラ國民ハ屈服スル
カモ知レマセヌガ、內心政府ニ協力シテ、
官民一致デ其ノ實現ニ努ムルト云フコトノ
熱情ガ生ズマイト思ヒマス、ドンナ急場ノ
場合デアッテモ、ソレ〓〓ノ途ノ立憲的ノ
機關ニ御尋ニナッテ、サウシテヤラレタナ
ラバ、國民モ心中カラ眞ニ其ノ緊急ノ法令
ト云フモノノ實行ニハ努ムルヤウナコトニ
ナラウト思フソコデ初メテ國民精神總動
員ノ實ガ擧ガルト思フ、ソレデアリマスカ
ラ私ハ此ノ本案ハ法案トシテ之ヲ制定スル
コトハ反對シマスガ、其ノ代リ此ノ法案其
ノモノハ全部國民精神總動員ノ材料トシ
テ、サウシテ全國民ニ成ルタケ此ノ法案ノ
內容ノ意味ノ分ルヤウニシテ置ク、他日時
局ノ發展次第デハ、此ノヤウナ中ノドウ云
フコトヲスルカ分ラヌ、其ノ結果私ハ國民
ノ日常ノ生活ニ非常ニ不自由ヲ感ズルヤウ
ナコトニナルカモ分ラヌケレドモ、サウ云
フコトガナイトモ限ラヌカラ、サウ云フ場
合ニハドウスルト云フ位ナ覺悟ヲ極メテ居
ナケレバナラヌ、デ是ハ法案トシナイデ、
國民精神總動員ノ資料トシテ、成ルベク國
民全體ニ其ノ意味ノ了解ヲサセルコトニ努
メル、斯ウシタ方ガ私ノ考デハ非常時ニ於
ケル立法デアリマシテモ立憲的ニ出來、而
シテ國民精神總動員ノ實ヲ擧ゲル所以デア
ルト思ヒマス、長イコト言ッテモ無益ト思ヒ
マス、四時間半ヤッテ大變ニ馬鹿ヲ見マシタ、
今見テ下サレバ尤モダト仰シヤル方モアル
ト思ヒマス、其ノ時ニハ西洋カブレノ方々ガ
多カッタヤウニ思ハレマス、私ノ外ニハ絕對
反對者ハアリマセヌデシタ、今日ノ問題ノ大
勢ハ見エテ居リマス、ケレドモ私ハ議席ヲ
持ッテ居ル以上ハ、欽定憲法ノ趣意ト云フモ
ノヲ實現スルト云フコトノ必要ヲ痛感スル
私トシテハ、苟モ忠良ナル臣民タラムト欲
スルナラバ、是ダケノコトヲ言ハナケレバ
良心ガ許シマセヌ、故ニ是ダケヲ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=83
-
084・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 山岡萬之助君
〔山岡萬之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=84
-
085・山岡萬之助
○山岡萬之助君 私ハ只今上程セラレテ居
リマスル國家總動員法案ニ對シマシテ、贊
成ノ意見ヲ表白致シタイノデアリマス、本
案ハ總動員計畫ヲ法規化シマシテ、現下ノ
時局ノ推移及將來ノ戰時若シクハ準戰時ニ
備フル所ノモノデアルノデアリマシテ、近
代戰ガ國家ノ全力ヲ以テスル、所謂國力戰
ト云フコトニナリマシタル以上、國家總動
員ノ必要ト云フコトハ恐ラク何人モ異存ナ
ク認メルコトデアルト確信致スノデアリマ
ス、然ル處此ノ法案ニ對シマシテハ、只今
反對論ガ述ベラレテ居ルノデアリマス、本
案ハ實ニ劃期的ノ法律デアリマス、是故ニ
政府ニ於テ之ヲ立案シ、又其ノ趣旨ノアル
所ヲ說明致サレルコトニモ相當ナ困難ヲ感
ゼラレタコトト思ヒマス、是故ニ其ノ法案
ノ構成若シクハ說明ニ付テ、遺憾ノナイト
ハ決シテ申サレヌノデアリマスガ、政府ノ
苦心ノアル所ハ是ハ諒トシナケレバナラヌ
ト私ハ思フノデアリマス、唯併シ此ノ法案
ニ對シマシテハ、法案ガ重大デアルダケニ
憲法上ノ議論、若シクハ國民生活カラ考ヘ
テ來タ所ノ議論ガ上下サレタノデアリマス、
是故ニ本案ノ本體ヲ能ク審議スルト云フコ
トハ是ハ帝國議會ノ義務デアルト言ハナ
ケレバナラヌト思ヒマス、之ニ關シマシテ
委員會ニ於テ精密ナル審査ヲ遂ゲテ、其ノ
結果ハ委員長ヨリ御報告ノアック通リデア
リマシテ、之ヲ御承知ニ相成リマシタル皆
樣ハ、大體ニ於テ、否正確ニ、憲法ニハ違
反シテ居ラヌモノデアル、又憲法ノ精神ニ
モ牴觸シテ居ラヌモノデアルト云フコトニ
關シテ御聽取リニナッタコトト考ヘマス、此
ノ法案ニ付キマシテ何ガ故ニ左樣ナ問題ニ
ナル點ガアルノデアルカ、之ヲ考ヘマスル
ト、我ガ國ノ憲法ノ由來、若シクハ明治以
來ノ政治上、社會上若シクハ思想上ノ發展
ト云フコトニ、私ハ關係シテ居ルト思フノ
デアリマス、明治以來既ニ七十有餘年、時
代ノ進化ハ非常ナモノデアルト云フコトハ
申上ゲル迄モナイコトデアリマス、ソコデ
憲法ノ制定ノ由來ニ鑑ミマスルニ、封建制
度ヲ改メテ、所謂皇政ヲ布ク、斯ウ云フコ
トニナリマシテ玆ニ公私一新ノ時期、所謂
明治維新ト云フモノガ現レテ參ッタ、然ラバ
何ヲ土臺ニシテ明治ノ制度ヲ立テルノデア
ルカト申シマスレバ、當時ノ事情カラ行キ
マスルト、ドウシテモ西洋ノ文物ヲ採用ス
ル外ハナイ、ソレデアリマスルカラ、十九
世紀ニ於キマスル所ノ向フノ自由主義、個
人主義ト云フモノガ入ッテ來タコトハ當然
デアリマス、ソコデ自由主義カラ見タ人格
ノ自由、サウ云フコトガ總テノ事柄ノ土臺
ニナッテ來テ、是ハ併シ實ニ有難イコトデ
アリマシテ、其ノ以前ニ於テハ人格ノ自由
ト云フモノハナカッタ、ソレヲ段々明治ノ
初年ヨリノ各種ノ制度ニ依ッテ之ヲ認メ、
殊ニ刑法ノ實施ニ依ッテ我々國民ハ法律ニ
依ルニアラザレバ、處罰サレルコトナシ、
是ガ完全ニ臣民ノ權利ヲ確保シタノデアリ
マシ、ソレヨリ憲法ノ發布トナリマシテ、
憲法ニ於テ日本臣民ハ法律ニ依ラナケレ
バ、逮捕、監禁、審問、處罰ハサレヌ、斯
ウ云フ規定ヲ置イテ、舊刑法ノ第二條ハ之
ニ相當スル所ノモノデアリマス、サウ云フ
譯合カラ致シマシテ、憲法ノ第二章ノ規定
ト云フモノハ實ニ大切ナモノデアル、臣民
ノ權利、自由ヲ確保シ、之ヲ保障シタ、憲
法發布ノ由來ニ徵シマスレバ、昭々トシテ
之ヲ認メルコトガ出來ルノデアリマス、ソ.
コデアリマスルカラ、此ノ見地カラ考ヘマ
スレバ、斯カル法案ハ如何ニモ廣イコトヲ
規定シタノデ、危險極マル斯ウ云フ風ナ
考ノ出テ來ルノハ、是ハマア當然ナコトノ
ヤウニ私ハ思フノデス、唯併シナガラ非常
ニ世ノ中ガ變ッテ參リマシテ、而モ我ガ國ノ
國情ト云フモノハ東洋ノ平和ヲ雙肩ニ擔
ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ建前ニ迄ナッテ
來タ以上デス、眼ヲ轉ジテ一ツ考ヘネバナ
ラヌ、否現實ノ時代ハ何デアルカ、現實ノ
時代ニ處シテ何ヲシナケレバナラヌカ斯
ウ云フコトヲ考ヘル時ニ於テハ所謂明治時
代ニ於テ我々ノ人格、自由ヲ確保セラレタ
ル其ノ有難キコト、是ハ是非共保護シナケ
レバナラヌコトハ勿論デアリマス、去リナ
ガラ時代ヲ能ク認識シテ、所謂大所高所カ
ラ考ヘマシタ時ニハ其ノ權利、自由ニ關
係ガアリマシタ事柄デモ、適度ニ玆ニ規定
ヲ置イテ、全體ノ爲ニ個人ノ權利、利益ヲ
制限スルト云フコトハ已ムヲ得ナイト、斯
ウ云フ考ガソコヘ出テ來ナケレバナラヌノ
デアリマス、卽チ國家ノ爲ニ個人ノ權利自
由ノ多少ノ制限ハ是ハ已ムヲ得ナイ、斯ウ
云フ考ガ、卽チ此ノ法案ガ現レテ來タ所以
デアリ、而シテ此ノ法案ハ何ヲ畫スルノデ
アルカ、何ヲ規定シタノデアルカト申シマ
スレバ、只今申上ゲマシタ憲法ニ依ッテ一度
保障シテ居ル所ノ臣民ノ權利、自由、ソレ
ヲ更ニ是ダケ國家ノ高イ見地カラ茲ニ制限
ヲ與ヘテ、其ノ線ヲ是ハ畫イテ居ル、此ノ
線ノ引キ方ガ最モ公平無私ニ、而モ現代ノ
要求ヨリ一步モ餘計ニ出ナイ、ソコガ大切
デアリマス、卽チ線ノ引キ方ガ今日ノ時代
ノ要求ニ最モ適スルヤウニ、臣民ノ權利、
自由ノ保護ヲシナケレバナラヌコトハ最
早申上ゲル必要ハナイ、唯高キ國家ノ見地
カラ見テ、何處迄此ノ要求ノ線ヲ引クカ、
是ガ政府ニ於テモ考へラレ、而シテ其處ニ
此ノ動員法ト云フ一ツノ條規ヲ與ヘタ、此
ノ故ニ今後我々國民ハ此ノ總動員法案ノ示
ス所ノ條規ニ從ッテ、國家ノ爲御奉公致シ、
國民自ラモ此ノ法規ヲ遵守シテ、生活シテ
行カナケレバナラヌト云フコトニナッタノ
デアリマス、サウ云フ次第デアリマスルカ
ラシテ、之ヲ我々ガ協贊スルト云フニ當リ
マシテハ反對論若シクハ憲法ニ牴觸シテ
居ルト云フヤウナコトガアルノナラバ、何
處迄モ之ヲ辯明シ、之ヲ明カニシテ、我々
安心シテ行ケルノデナケレバナリマセヌシ、
又國民ニ對シテモ此ノ事ヲハッキリトスル
ノデナケレバ、我々ノ義務ト云フモノハ盡
サレヌト思フノデアリマス、ソコデ本案ニ
對シマシテ論議セラレ、非難セラレテ居ル
點ハ數箇アルノデアリマスルガ、私ハ其ノ
多クヲ玆ニ申述ベルコトハ差控ヘマス、唯
右述べマシタ趣旨カラシテ必要ト致シマス
ル二三ノ點ヲ申述ベルニ止メタイノデアリ
マく、第一ニ、憲法ノ三十一條ニ示シマス
所ノ非常大權ノ關係デアリマス、此ノ事ガ
圖ラズモ此ノ法案ノ提出ト共ニ論議サレル
ニ至リマシタト云フコトハ段々御承知デ
アリマスルヤウニ、此ノ法案ガ四條以下、
否初メノ方カラト申シテモ宜イ程、二條以
下ト申シテモ宜イガ、勅令ノ定メト云フ
コトヲズット規定ヲ致シテ居リマス、サウス
ルト、政府ハ其ノ勅令ニ依ッテ何ヲ定メルノ
デアルカ、斯ウ云フコトハ何人モ直グ考へ
ルコトデアリマス、ソレダカラ、何ヲ定メ
ルノダラウ、是非其ノ內容ヲ知リタイト云
フノガ、所謂施行要綱ト云フモノガ、議會ニ、
委員會ナリニ提出セラレタ所以デアリマ
ス、サウ云フ次第カラ致シマシテ、「戰時ニ
際シ國家總動員上必要アルトキハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ」、大體斯ウ云フ形デアリマ
ス、處デ三十一條ハ矢張リ「本章ニ揭ケタ
ル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ
天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ」、書キ出
シガ、丁度同ジコトニナリマスルノデ、戰時
又ハ國家事變ノ場合ニ於テ、所謂非常時ニ
於テ、本案モ其ノ非常時ニ於テ國家總動員
上必要ガアレバ、斯ウ云フノデアリマスル
カラ、三十一條ニ依リマスル所ノ非常大權
ガ勅令ナリ或ハ處分ナリ、色々ナ形式ヲ取
ルノデアリマスガ、勅令ノ形式ヲ取リマシ
タ時ニハ、正ニ似寄ッタモノデアリマス、ソ
レデアルカラ、戰時、事變ニ際シマシテ發
布サレタ所ノ、勅令ダケ發布サレタトスレ
バ、ソレハ何ニ依ッテ發布サレルト云フコト
ガ、モウ少シ進ンデ考へナケレバ、分ラヌヤ
ウナ形ガ出來テ參ルノデアリマス、玆ニ於
テカ三十一條ニ依ッテ勅令ガ出得ルノヲ本
法案ニ於テ委任立法トシテ、サウシテ政府
ガ責任ヲ以テ勅令ノ發布ヲ奏請スル、斯ウ
云フコトハ三十一條ノ大權ヲ干犯スルモノ
デハナイカ、斯樣ナ議論ノ出テ來ルノハ
左樣ナ所カラ私ハ來タモノト考ヘマスル、
然ルニ此ノ議論ハ旣ニ委員長ヨリ報〓モア
リマシタルヤウニ、本案ハ憲法ノ條章ニ從
ヒマシテ、議會ノ協贊ヲ經ル爲ニ提案セラ
レタノデアリマシテ、憲法ノ第二章ニ於キ
マスル所ノ三十條迄ノ臣民ノ權利自由ヲ
保障致シマシタル規定內ニ於ケル法律ノ
定ムル所、若シクハ法律ノ範圍內、斯樣ナ
コトガ書イテアル、其處ノ制限ヲ爲スガ爲
ニ提出セラレタモノデアルト云フコトハ
政府ニ於テ言明セラレタ所デアリマス、憲
法ノ三十一條ノ非常大權ニナリマスルト
只今申述ベマシタル憲法ノ十八條ヨリ三十
條ニ至リマスル所ノ此ノ憲法ノ法規ヲ全ク
超シテ、是等ノ規定ニ何等ノ關係ナシニ非
常緊急ノ場合ニ於テハ陛下ノ大權ニ依ッ
テ如何ナル御處置ヲモ遊バサレル、斯ウ云
フコトデアリマスルカラ、本質ガ非常ニ違ッ
テ居ルノデアリマス、ソコデ此ノ非常大權
ニ依リマシテ、勅令ナリ或ハ處分ナリト云
フコトガ出マス場合ニ於テハ其ノ場面ニ
於キマスル所ノ形ハ、形ノ自體カラ申セバ、
本案ト似タモノガ出來ル場合モアルノデア
リマセウ、併シソレハ此ノ臣民ノ權利自由
ノ範圍內ニ於テノ勅令乃至處分デハナクシ
テ、此ノ規定ヲ全然引離レタ高キ見地カラ
ノ措置デアリマス、ソレ故ニ本法案ハ全ク
此ノ憲法ノ臣民ノ權利義務ヲ保障シタル所
ノ規定ニ於ケル法律ノ範圍內ヲ制限スル所
ノ規定デアリマス、殊ニ本案ノ內容ニ於テ
ハ、矢張リ二十七條ノ第二項ニ依リマスル
所ノ制限ガ大部分デアリマス、試ニ憲法二
十七條ノ第二項ヲ申述ベマスレバ「公益ノ
爲必要ナル處分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」、
斯ウ云フコトデアリマスルカラシテ、玆
其ノ規定ガ出テ來ル譯デアリマス、斯樣ナ
次第デ、私共ハ此ノ三十一條ニ於ケル勅令
乃至處分ト云フモノハ非常ニ廣イ範圍內
ニ於テ國家緊急已ヲ得ザル場合ニ發動致ン
マスルト云フコトハ明カデアリマスルガ、
本案ニ於キマスル所謂委任勅令ト云フモノ
トハ全ク異ッテ居ルモノデアル、斯樣ニ政府
ノ說明ヲ承リマシタ、ハッキリト了承致シタ
ノデアリマス、次ニ此ノ本案ノ內容ニ入リ
マシテ、所謂委任勅令デアリマスルガ、此
ノ委任勅令ヲ申上ゲル爲ニ、本案ノ第四條
ヲ引用致シタイト思ヒマス、本案ノ第四條
ハ、「帝國臣民ヲ徴用シテ總動員業務ニ從事
セシムルコトヲ得」ト、斯ウ云フコトデアリ
マス、ソコデ只今申述ベマシタルヤウニ、
ソレダケノ規定デ我ガ帝國ノ臣民ハ國家ノ
必要ニ應ジテ國家ノ御役ニ立チ、總動員ノ
業務ニ從事シナケレバナラヌト云フコトハ
極メテ明白デアリマス、之ヲ何ガ故ニ勅令
ヲ以テ補充スルガ必要デアルカ、委任命令
ハ卽チ補充命令デアリマス、此處デ私ガ申
上ゲテ、ソレヲ何ヲ補充スル必要ガアリヤ
ト云フ問ヲ起シタ時ニ、何モノモナイト
云フコトヲ御答スルヨリ外ハナイト思フノ
デアリマス、ソレダカラ、勅令ト云フモノ
ガ書イテアル以上ハ、何カ是ハ此ノ規定以
上ニ書クノデハナイカト云フ疑ガ其處へ當
然ノ推論トシテ出テ參リマス、此處ガ其ノ
迷ヲ來ス所デアリマス、其ノ外廣ク書イテ
アリマスル本案第十條デアリマス、是モ「政
府ガ戰時ニ際シ國家總動員上必要アルトキ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト云フノヲ拔キ
マシテ、「必要アルトキハ······總動員物資ヲ
使用又ハ收用スルコトヲ得」、斯ウ書イテア
リマスレバ、國家ガ總動員上必要デアリマ
スナラバ、總動員ノ物資ト云フノハ、卽チ
第二條ニ明示シテアリマス其ノ物資ヲ使用
シ收用スルコトガ出來ルト書イテアリマス
カラ、是レ以上何ヲ勅令ハ我々ノ權利義務
ヲ制限スルト書クノデアルカト言ッタラ、何
物モナイ、我々ハ既ニ臣民ノ權利義務ハ四
條、十條ヲ例示シテ申上ゲタノデアリマス
ガ、是デ完全ニ義務付ケラレテ居ルノデア
リマス、ソコデ此ノ勅令ノ解釋ニ付キマシ
テ、委員會ニ於キマシテモ政府トノ間ニ質
問應答ヲ致シタノデアリマス、政府ニ於テ
ハ、此ノ各本條ニ示シマシタ義務ガ明カニ
ナッテ居ルニ拘ラズ、勅令ガ規定シテアルト
云フノハ、施行命令デ足ル場合モ相當アル、
斯ウ云フ御說明ガアリマシタ、此ノコトハ
私ガ只今申上ゲタト同樣ナ趣旨デ、各本條
デ義務付ケテ居リマスルカラ、ソレヲ施行
スル爲ニ細則ヲ定ムルノデアリマスルカラ、
ソレヲ「勅令ニ依リ」ト、斯ウ云フヤウニ解釋
致シマスト、漸ク解釋ガ出來テ來ルノデア
リマス、處ガ其ノ解釋ダケデ宜シイカドウ
カト云フ問題ニナリマスルト、政府ニ於テ
ハ、イヤソレダケデハ困ル、戰時ニナリマ
スト云フト、ドウ云フ事態ガ起キテ來ルカ、
豫メ豫測ガ出來ナイ、千變萬化ノ狀態デア
ルカラ、ソコデ法規トシテノ規定ヲモシナ
ケレバナラヌト思ハレル、故ニ唯之ヲ以テ
施行命令ダケト解スルコトハ、ソレハイケ
ナイ、此ノ場合ニ於テハ、矢張リ左樣ナ規
定ノ中ニハ法規命令ガ書ケルヤウニ、卽チ
補充命令ガ出來ルヤウニ考ヘテ置キタイ、
斯ウ云フヤウニ言ハレマスノデアリマス、
然ラバデス、其ノ言葉ヲ其ノ儘ニ借リ來ル
ト云フト、各本條ニ於テ既ニ義務付ケテ居
ルコトヲ、ソレ以外ノ法規命令ヲ出シタイ
ト云フナラバ、各本條ノ義務以外ノコトヲ
何カ書クコトデアラウト云フコトガ、其ノ
言葉自體カラ想像セザルヲ得ナイノデアリ
ママ、サウスルト、此ノ法律ハ憲法ニソコ
デ觸ッテ來ル、斯ウ言ハナケレバナラヌノデ
アリマス、ソコデ委員會ニ於テハ政府ニ對
シテ、然ラバ施行命令ノ外ニ委任命令、補
充命令ガアリトシテ、各本條ニ示シテアル
所ノ義務ヲ超越シテ規定ヲ致スノデアリマ
スカ、致サヌノデアリマスカト云フコトヲ
伺ヒマシタ場合ニ於テ、政府ハソレハ各本
條ノ義務ヲ一步モ出ナイノデアル、之ヲ言
明致サレタノデアリマス、玆ニ於テ委員會
ト致シマシテハ、其ノ命令ガ政府ノ言ハレ
ル如ク委任命令デアラウト、施行命令デア
ラウト、兎モ角勅令ト云フモノハ各本條ノ
義務付ケラレタル以上ニハ、一步モ出ナイ
ト云フ以上ハ、我々共此ノ法律ヲ協贊シテ、
其ノ義務ヲ認メマシタル以上ハ、其ノ義務
ノ範圍內ホカ出ナイトスレバ、之ヲ協贊シ
テ、政治的方面カラ考ヘテ何モ支障ガナイ
ト云フコトヲ考ヘラレマス、ソレデ憲法ノ
若シクハ法律ノ解釋ト致シマシテ、施行命
令デアルカ、委任命令デアルカト云フコト
ハ是ハ學者ガ其ノ他ノ人達ガ自由ニ議論
ヲシテ居ッテ宜シイコトデアリマス、サウ
云フコトニ拘ハル必要ハナイノデ、何處迄
モ各本條ニ義務付ケタ範圍ダケガ勅令ニ規
定出來ルト云フコトデアリマスカラ、我々
ハソレニ依ッテ少シモ懸念ハナイ、卽チ憲
法ノ精神ニモ牴觸シナイト、斯樣ニ考ヘラ
レル次第デアリマス、而シテ此處ニ特ニ申
上ゲタイコトハ、形式上ノ議論ハ左樣ナ譯
デ、先ヅ大體了解出來ルト思フ、今度實質
上ノ議論デアリマス、各本條ニ斯クノ如ク
ニ廣ク義務付ケテ居ルノデアリマス、其ノ
廣ク義務付ケタト云フコトハ、戰時ニ際シ
マシテ色々ノ事態ニ照應シテ國家ノ必要ナ
ル活動ヲシタイ、言葉ヲ換ヘレバ、國力戰
ニ害ノナイヤウニ致シタイ、斯ウ云フ考ヘ
方デアリマスカラ、恐ラク此ノ規定ト云フ
モノハ實際ノ必要カラ考ヘル以上ニ規定
ハ出テ居ルト思フノデアリマス、卽チ十數
年來、國家總動員ノ計畫ト云フモノガ旣ニ
出來テ居リマス、其ノ總動員ノ計畫ト云フ
モノガ玆ニ事實上出來テ居ル、ソレヲ法規
化シテ、ドノ總動員ノ項目ヲモ完全ニ此ノ
範圍內ニ於テ動キ得ル、斯ウ云フコトニ目
標ヲ立案者ハ置イタト思ヒマス、サウデア
リマスレバ、此ノ義務範圍ト云フモノハ、
實際論カラ申セバ、可ナリ寧ロ場合ニ依ッタ
ラ廣過ギル、斯ウ云フコトニナルノデアリ
やく、玆ニ於テ此ノ各本條ニ「勅令ノ定〓
ル所ニ依リ」ト云フコトハ、確カニ此ノ狭
クナル面ニ於テ效力ヲ認メルコトガ出來ル
ノデアリマス、例ヘバ只今例示致シマシタ
第四條ニ於キマシテ、帝國臣民ハ總テ徴用
出來ルト云フノハ、勅令ニ依リマシテ定メ
マシテ、六十歲以上ハ徴用セズ、十五六歲
以下ハ之ヲ徴用セズ、或ハ其ノ他、性ノ區
別ニ依リ、或ハ身體ノ健康問題ニ依リ、之
ヲ徴用スル場合トシナイ場合ヲ規定スル斯
ウ致シマスレバ、義務ガソコニ於テ具體化
シテ來ル、而モ其ノ義務ハ法律ニ義務付ケ
タ範圍ニ止ルノデアリマス、其ノ點ハ委員
會ニ於キマシテモ、勅令ノ定ムル所ト云フ
ノハ、法文ノ關係ヲ具體化シテ、義務ヲ制
限スルト云フ御說明モアッタノデアリマス
ガ、其ノ御說明ノ以外ニ於テ、先ニ申上ゲ
マシタヤウニ施行命令デハナクシテ、何處
迄モ委任命令ガ此ノ中ニナケレバイケナイ
ノデアル、斯ウ云フ御說明ニナル、ソコト
ハドウモ喰合ハナイノデアリマス、喰合ハ
ヌノデアリマスルケレドモ、私共ト致シマ
シテハ何處迄モ法定ノ卽チ各本條ノ所定ノ
義務ニ止ルト云フ所、立法上トシテハ安心
ノ出來ル譯デアリマス、斯樣ナ次第デ此ノ
各本條ニ於テ「勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト云
フノハ、之ヲ以テ憲法ノ精神ニ牴觸スルモ
ノデナイ、斯樣ニ考ヘラレルノデアリマス、
唯尙一言致シテ置キタイコトハ、サウ云フ
廣イ規定ヲスルコトハ、憲法ヲ制定スル時
ハ何處迄モ臣民ノ權利義務ヲ保障スルノデ
アル、其ノ廣イ規定ヲスルコトハ卽チ臣民
ノ權利義務ヲ不當ニ制限スルノデアル、斯
ウ云フ考ヘ方ハ各本條ノ此ノ法案ノ法文自
體ニ付テ出テ來ル論デアリマス、ソレハ勅
令ニ委任シタカラ、出ルノデハナイ、法文
自體カラ出ル論デアリマス、其ノコトニ付
キマシテハ、觀察ノ仕方ニ依ルノデアリマ
ス、沿革的ニ之ヲ見マシテ、臣民ノ人格ヲ
保障シタ、玆ニ於テ憲法第二章ノ規定ハ何
處迄モ嚴肅ニ考ヘナケレバナラヌト云フ沿
革的ニ見タ考ハ、先ニ申上ゲマシタヤウニ、
其ノ面カラ見レバ、ドウモ行キ過ギテ居ル、
斯ウ考ヘルノデアリマス、私共ハ政府ノ段々
ノ說明ヲ承リマシテ、今日ノ此ノ情勢ハ、
何處迄モ一層國防力ヲ强化致シマシテ、我
ガ國ノ大任ヲ十分ニ果スコトガ出來ルヤウ
ニスルコトガ、今日ノ國際情勢カラ見テモ
相當デアルト、斯樣ニ考ヘマシタ次第デア
リマス、デ、今日ノ如ク日支事變ガ展開致サ
レテ居リマス際ニ、「ヨーロッパ」ノ狀態ト
云フモノモ、刻々ニ變化致シテ居ルコトハ
御承知ノ通リデアリマス、ソコデ戰爭ニハ
勝タネバナラヌト云フコトハ、私ガ玆ニ喋々
スル迄モナイコトデアリマス、サウ云フ
次第デアリマスレバ、此ノ憲法上ノ疑義ト
云フモノガナイ限リ、此ノ疑義ガ說明シ得
ル限リ、速カニ之ヲ國法ト致シマシテ、サ
ウシテ國家ノ要求スル所ニ應ジ得ルコト
ガ、相當ナリト思フノデアリマス、斯樣ナ
次第デ、法律上ノ見地カラ申シマスレバ
憲法ノ表ニ牴觸シ若シクハ精神ニ牴觸スル
ト云フコトハ、大體之ニ依ッテ無イモノデア
ルト深ク信ズルノデアリマス、併シ本案ハ
右ニ述ベマシタル如ク、劃期的ノ立法デア
リマシテ、而シテ含蓄スル所極メテ廣イノ
デアリマス、之ヲ實施致シマスルニ付キマ
シテハ、其ノ法ノ精神、其ノ他必要ナル計
畫ヲ立テマシテ、目的ヲ達成スルコトガ必
要ナリト思ヒマス、此ノ點ニ付キマシテ、
私ハ一二ノ點ヲ申添へテ置キタイト思ヒマ
ス、デ、今日迄十數年、此ノ動員計畫ト云
フモノハ致サレテ居ルノデアリマスルガ、ド
ウモ國民ノ多クハ之ヲ矢張リ了知シテ居ラ
ヌノデアリマス、ソコデ事變ノ突發ト同時ニ、
國民ノ精神總動員ト云フモノガ行ハレテ居
リマスルノデ、此ノ物價面ノ總動員計畫ト
云フモノヲ能ク國民ニ了知セシメマシテ、
法文ノ中ニモ演練スルト云フヤウナ文字モ
アリマスルガ、ソレノ如クニ訓練ヲシテ、
サウシテ一朝事アル時ニ、本案ガ動ク時ハ、
斯クノ如キモノデアルト云フコトヲ能ク了
解サシテ、而モ其ノ時ノ必要ノ程度ダケ此ノ
法律ヲ動カスト云フコトニ致スコトガ、卽チ
國民ガ喜ンデ此ノ總動員ニ參加スル所以デ
アラウト思ヒマス、ソレカラ本案ノ規定ガ
極メテ廣イノデアリマスルカラ、之ヲ實行
致シマスル場合ニ於キマシテハ、政府ニ於
キマシテモ此ノ點ヲ言明セラレテ居リマシ
タガ、最小程度ニ本案ヲ施行スル、デ、最
小程度ノ施行ヲ以テ國家ノ最大ノ目的ヲ達
成スルト云フコトガ肝要デアルト思ヒマス、
而シテ先ニ申述ベマシタヤウニ、憲法ノ二
十七條ノ關係ガ大體ノモノデアリマス、是
故ニ私有財產ノ制度ニ關係ヲ持ッテ居ルモ
ノデアリマシテ、此ノ私有財產ノ制度ニ付
キマシテハ、憲法ノ保障スル所ハ、如何ナ
ル財產ヲ保障スルト云フヨリモ、財產ハ寧
口金錢ニ見積リ得ルコトヲ以テ原則ト致シ
テ居ルノデアリマスルカラ、賠償ヲスルト
云フコトガ大切ノ點デアリマス、國有鐵道
ヲ買收シタ······鐵道ヲ買收シテ國有鐵道ト
致シタ、完全ナ賠償ヲスルト云フコトニ
依ッテ、決シテ憲法ノ二十七條ニ牴觸スルモ
ノデハナイノデアリマス、サウ云フ意味デ
アリマスルカラ、其ノ賠償ト云フコトガ、
伊藤公ノ憲法義解ニモ、大切ナモノデアル
ト云フコトガ、特筆サレテ居ルノデアリマ
スデアリマスルカラ此ノ總動員法ヲ運用
セラレマスル所ノ當局ハ其ノ意ノアル所
ヲ十分ニ體セラレマシテ、賠償ノ運用ニ付
キマシテハ深甚ナル注意ヲナサルコトガ適
當ダト思ヒマス、斯クノ如クニ致シマシテ、
國民ガ此ノ法律ニ對シマスル所ノ今日迄考
ヘタヤウナ不安ヲ一切除去致シマシテ、國
民ハ、此ノ總動員法案ト云フモノハ國家ノ
高キ見地カラ必要ナモノデアル、唯徒ニ臣
民ノ權利自由ヲ制限スルト云フ考ノモノデ
ナイ、斯樣ナコトヲ能ク理解致シマシテ、
之ニ依ッテ不安ヲ一掃シ、一意君國ノ爲ニ盡
スノ覺悟ヲ益〓向上セシムルノ必要ガアル
ト考ヘマス、斯樣ナ希望ヲ以チマシテ、此
ノ劃期的重大法案ニ對シマシテハ贊成ノ意
ヲ表スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=85
-
086・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 討論ノ通告ハ終
リマシタ、他ニ御發言ガナケレバ本案ノ採
決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クコト
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=86
-
087・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=87
-
088・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=88
-
089・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=89
-
090・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=90
-
091・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=91
-
092・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部委員長ノ報〓通リデ
御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=92
-
093・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=93
-
094・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=94
-
095・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=95
-
096・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=96
-
097・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=97
-
098・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部第二讀會ノ決議通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=98
-
099・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=99
-
100・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本日豫算委員長
ヨリ報〓書ノ提出サレマシタ昭和十三年度
歲入歲出總豫算追加案第二號、豫算外國庫
ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、
追第二號、昭和十三年度歲入歲出總豫算追
加案第三號、昭和十三年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案特第二號、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スルノ件追第
三號、以上五案ヲ此ノ際議事日程ニ追加シ、
一括シテ議題トナシ、之ガ會議ヲ開キ委員
長ノ報〓ヲ煩シタイト存ジマス、御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=100
-
101・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、豫算委員長林伯爵
一昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案
(第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第二號)
一昭和十三年度歲入歲出總豫算追加案
(第三號)
一昭和十三年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第三號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長伯爵林、博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=101
-
102・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今上程サレマシタ追
加豫算案全部ニ付キマシテ豫算委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、昭和十三年
度歲入歲出總豫算追加案第二號ニ付キマシ
テ先ヅ申上ゲタイト思ヒマス
〔副議長候爵佐木木行忠君議長席ニ著
乞
歲入歲出共ニ一億七千百萬餘圓、此ノ歲入
豫算ハ經常部ニ於テ千五百六十餘萬圓、臨
時部ニ於テ一億五千五百三十餘萬圓ト相成ッ
テ居リマス、普通歲入ニ於テ森林收入ノ
增加四百九十餘萬圓、刑務所收入ノ增加千
餘萬圓、之ニ印紙收入增加、印刷局益金
增加、雜收入增加ヲ加ヘテ合計千七百十
餘萬圓ト相成リマス、公債金ニ付キマシ
テ道路改良費ノ財源ニ充ツベキ公債金
ノ增加百二十萬圓、歲入補塡ノ財源ニ
充ツベキ公債金ノ增加一億五千二百
五十餘萬圓合計一億五千三百八十餘萬圓ト
相成ッテ居リマス、歲出豫算ニ付テ申シマ
スト、經常部ニ於テ五千五百十餘萬圓、
臨時部ニ於テ一億千五百八十萬餘圓、右
ノ中、主ナルモノハ支那事件ニ關スル經費
千三百七十餘萬圓、地方財政援助ニ要スル
經費ノ增加三千萬圓、氣象觀測施設ノ整備
擴充ニ關スル經費四百餘萬圓、그パルプ」資
材ノ增產竝ニ造林等ニ要スル經費六百萬
圓、是ハ主トシテ內地ニ於ケル「パルプ」等
ノ資材ヲ增產スル爲ニ計上サレタノデアリ
マス、災害其ノ他施設費ノ增加四百餘萬圓、
恩給ノ增加四百五十餘萬圓、第二豫備金ノ
增加二千萬圓、其ノ外石油消費規正實施ニ
要スル經費、物價調整竝ニ貯蓄奬勵ニ要ス
ル經費、刑務所軍需作業施行等ニ要スル經
費增加、農山漁村應急施設ニ關スル經費、
中小工業ノ戰時工業轉換等ニ要スル經費、
航空ニ關スル經費ノ增加、靑年移民ニ關ス
ル經費等モ入ッテ居マス、此ノ中ニ付キマシ
テ二三ノ說明ヲ加ヘタイト思ヒマスケレド
モ、此ノ際ハ之ヲ省略致シマス、尙以上ノ
外、通商應急對策ニ要スル經費、物資需給
調整ニ要スル經費、硫安供給確保ニ關スル
經費、農產物其ノ他販賣斡旋統制施設ニ關
スル經費、應召中小商業者營業援護ニ要ス
ル經費、其ノ他靑年學校〓育義務制、農業
保險及電力國家管理ノ各實施準備ニ關スル
經費等、現下時局ニ關シ必要ナル經費ヲ計
上サレテアルト云フ說明デアリマス、豫算、
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル件、
追第二號、此ノ主ナルモノハ造船資金貸付
補給及損失補償ノ擴張、開墾助成金ノ增加、
航空輸送補助等デゴザイマス、昭和十三年
度歲入歲出總豫算追加第三號、是ハ歲入歲
出共ニ八千九百二十餘萬圓、歲入豫算ニ付
キマシテ申上ゲマス、此ノ經常部ガ八十餘
萬圓、臨時部八千八百三十餘萬圓、其ノ內
譯ハ普通歲入ニテ職業紹介所國營ニ伴フ地
方負擔金百三十餘萬圓、其ノ外計二百十餘
萬圓ト相成ルノデアリマス、公債金デ歲入
補塡ノ財源ニ充ツベキ公債金ノ增加八千七
百餘萬圓、歲出豫算ニ付テ申上ゲマスト、
經常部二百五十餘萬圓、臨時部八千六百七
十餘萬圓デアリマス、其主ナルモノハ國營
職業紹介所開設ノ經費ガ三百九十餘萬圓デ
アリマス、是ハ職業紹介所ヲ國營ニ致シマ
シテ、益〓其ノ方面ノ發展ヲ圖リタイト云
フコトカラ計上サレタノデアリマス、先程
上程サレマシタ所ノ北支那開發株式會社設
立ノ經費ガ二千五百十餘萬圓竝ニ中支那振
興株式會社設立ノ經費ガ千百三十餘萬圓デ
ゴザイマス、是ハ設立ノ準備費竝ニ政府ノ
拂込金等ノコトデアリマシテ、先程商工大
臣ヨリ說明ニ相成ック通リデアリマス、臨時
物資調整局設置ノ經費ガ四十餘萬圓、傷痍
軍人保護ニ要スル經費三千五百三十餘萬
圓軍事援護相談所設置等ニ要スル經費百
十餘萬圓等デアリマス、傷痍軍人保護ノ經
費厚生省ノ外局ト致シマシテ傷兵保護院
ト云フモノヲ造ル爲ニ、其ノ經費ガ計上サ
レタノデアリマス、又軍人援護相談所、是
ハ軍人、軍屬ノ遺族家族ニ關スル相談指導
ヲナス爲ニ、其ノ設置ノ助成等ニ要スル經
費ト云フコトデアリマス、次ニ昭和十三年
度特別會計歲入歲出豫算追加特第二號、是
ハ對支文化事業、造幣局、印刷局、大藏省
預金部、國債整理基金、公債金、關東局、
帝國大學、學校及圖書館、通信事業、朝鮮
總督府、臺灣總督府、樺太廳、南洋廳等ノ
各特別會計ニ屬スルモノデアリマス、豫算
外國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル件、
追第三號在支一般居留民業務復興資金貸付
補給及損失補償、在支邦人企業復興資金融
通損失補償、大型優秀船建造助成金竝ニ支
那事變關係ノ海運業損害復舊資金貸付補給
竝ニ損失補償ニ關スルモノデアリマス、豫
算委員會ハ三月二十四日午前十時開會致シ
マシテ、鐵道ヲ除キマシテ各省大臣ノ詳細
ナル說明ヲ聽キマシテ、質疑ニ入リマシタ、
今其ノ主ナルモノヲ申上ゲテ見マス、「アラ
スカ」漁業問題ニ付キマシテ、鮭、鱒是ノ問
題ニ付テノ質問ガアリマシタ、「パネー」事
件以來、動モスレバ米國ノ輿論ハ日本ヲ誤
解セムトシテ居ル、然ルニ此ノ罐詰ノ類ハ
多ク米國ガ得意ニナッテ居ル、六十萬箱位ノ
需要ノアルノニ對シテ、百萬箱モ送ルヤウナ
コトヲシタノデアリマス、米國デハ一昨年
ノ如キハ鮭ノ漁業ヲ休マセテ、サウシテ鮭
ノ增殖ヲ圖ッテ居ルト云フヤウニ保護ヲシテ
居ルノデアリマス、之ヲ此ノ際日本ガ誤解
ヲ受ケタリナンカスルヤウナコトガアリマ
シテハ、非常ナル損害デアルト思フガ、此
ノ點ハドウデアルカ、之ニ對シテ政府ガ答
ヘマスノニハ、國際法ノ規定ニ出來ルダケ
準據シテ背カナイヤウニヤリタイト思フ、
米國ノ此ノ鮭ノ市場ノコトヲ能ク考ヘマシ
テ、日米間ニ話合ヒヲ能クシテ行カウト思
フ、農林省ノ派遣船ハ今年ハ出サナイ、兎
角蟹工船ヲ鮭ノ工船ト間違ヘルコトガ多イ
ノデアル、假裝巡洋艦トカ、戰時用ノ船ニ
代ヘルナドト云フヤウナコトハ單ニ風評
ニ過ギナイノデアル、日米間ノ了解ヲ出來
ルダケ進捗スルヤウニヤリマシテ、遠カラ
ズ之ニ付テハ發表スルヤウナ情況ニナッテ
居ルト云フ答辯デアリマス、次ニ南洋ノ潜
水夫、「ダイビング·ボート」ノ問題デアル、
卽チ水ヲ潜リマシテ貝ヲ採ッテ釦等ニ細工
ヲスル所ノ潜水夫ガナカ/〓多ク出テ居ル
ノデアルガ、是ガ二千萬圓モアルノデアリ
マシテ、非常ニ此ノ貿易ノ上ニ於テ利益ヲ
擧ゲテ居ル、然ルニ動モスレバ小サナル漁
夫ガ澤山出テ居ルノデアリマスカラ、領海
侵犯等ノコトガ起ラヌトモ限ラナイ、是等
ニ付テハ政府カラシテ統制シタラドウデア
ルカ、之ニ對シテ政府ハ成ル程百五十モ船
ガ今日ハ出テ居ルノデアリマス、サウシテ
重要ノ產業トナッテ居ル、二ツノ會社ガアリ
マスガ、今囘ノ方針トシテハ之ヲ段々ト
行動サシテ行キタイト思フ、ソレニハ色々
歷史モアリマスコトデアリマスカラ、先ヅ
運送船、是ノ運輸船ト云フモノノ方カラシ
テ統制ヲ始メテ行キタイト思フト云フ答辯
デアリマス、又日「ソ」問題ニ付テノ質疑ガ
アリマシタ、之ニ對シテ政府ハ兎角「ソ」聯
側ニハ條約ノ違反ガアル、併シ是ハ穩カニ
纏メタイモノデアル、北樺太ノ石油、石炭
事業等ニ付キマシテモ、條約上ノ權利ハ何
處迄モ主張スルモノデアル、又北滿ノ所謂
東支鐵道買收ノ最後ノ支拂ハ昨日デアッタ
ノデアルガ、之ニハ「ソヴエト」側ノ義務負
擔ト云フモノモアルノデアルガ、是サヘ拂
ヘバ滿洲國モ拂フコトト思フ、又次ニ滿洲
國デ匪賊ト戰ッテ戰死シタ所ノ將校、下士、
兵卒等ノ扶助ガドウモ少イヤウデアルガ、
之ニ付テハドウ云フ考デアルカ、政府ハ之
ニ答ヘマシテ、戰死者ニ對シテハ、兵ニハ
千三百圓ヲ贈ルコトニナッテ居ル、是ハ一時
金デアル、扶助料トシテハ、兵ニハ八割ヲ
增シ、上等兵百八十圓ヲ、今度ハ三百二十
四圓ニ增シタノデアル、下士ハ五割增シマ
シテ、伍長ガ二百二十五圓ヲ之ヲ三百三十
八圓ニ增シタト云フヤウナ譯デ、又少尉ハ
四百六十七圓ヲ今囘ハ六百五十四圓ニ殖シ
タヤウナ次第デアッテ、上ニ行ク程率ハ惡イ
ケレドモ、增シタ率ニ於テハ出來ルダケ之
ニ努力シタノデアルト云フ答辯デアリマス、
次ニハ此ノ貯金ノ奬勵ノ件ニ付テノ質疑應
答ガアリマシタ、貯蓄銀行ノ利率ト云フ
モノハ二分四厘ニシカナラナイ、然ルニ郵便
貯金ノ方ハ三分三毛六絲位ニナッテ居ルノ
デアル、デアルカラシテ、ドウシテモ此ノ
際資金ガ預金ハ貯蓄銀行ノ方ニ薄クナッテ、
サウシテ政府ノ方ニノミ集中スルヤウニナ
ル、是デハ折角民間ノ銀行ガ漸次發達スル
ヤウニナリ、又政府ガ民間ノ銀行ニ貯蓄ガ
行クヤウニ奬勵シタ從來ノ方針ト背馳シタ
方向ヘ向フヤウデアルガ、是ハ如何ナモノ
デアルカト云フ質問ガアリマシタ、之ニ對
シマシテ政府ハ成ル程ソレダケノ利率ノ差
ハアルケレドモ、貯蓄銀行ノ方ニ預ケル人
ト郵便貯金ニ預ケル人トハ人ガ違フノデア
ル、デ此ノ金融業者ハ主ニドウシテモ此ノ
貯蓄銀行ノ方ニ預ケル、何トナレバ之ヲ土
臺ニシテ金ヲ借リテサウシテソレヲ金融ス
ルコトガ出來ルカラデアル、郵便局ノ方ハ
金融ノ爲ニ借リルト云フコトハ出來ナイノ
デアルカラ、自ラ預金ニ於テモ分業ガ起ッテ
來ルカラ差支ナイ、卽チ是ハ從來ノ例ニ徵
シテ差支ナイノミナラズ、今囘ニ於キマシ
テハ非常ニ大キナ金ガ溢レテ出ルノデアリ
マシテ、政府ニ於テハ寧ロ民間ノ銀行ニ於テ
モ郵便局ニ於テモ此ノ金ヲ吸收シ切レナイ
程ノ影響ガアリハシナイカト云フコトヲ惧
レルノデアリマシテ、決シテ民間ノ銀行ガ金ガ
流レテ來ナイデ困ルト云フヤウナコトトハ
全ク反對ノ考ヲ持ツノデアルノデアルト云
フヤウナ答辯デアリマシタ、本日午後二時
討論ニ入リマシテ、採決シマシタ所全會一
致ヲ以テ只今問題トナッテ居リマスル追加
豫算案全部原案通リ可決ニ相成リマシタ次
第デアリマス、此ノ段御報〓ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=102
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103・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 質疑ノ通〓
ガゴザイマス、三室戶子爵
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=103
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104・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 昭和十三年歲入歲出
總豫算追加案第二號中ニ「紀元二千六百年
奉祝會ヨリ依囑ニ係ル神武天皇聖蹟調査及
國史館建設事業施行ニ關スル經費ヲ要スル
ニ依リ此ノ經費八千三百七十二圓ヲ臨時部
第三十二款ニ豫算セリ」、斯ウ揭ゲラレテア
リマスノデ、之ニ關シテノ質問デアリマ
ス、先頃私ガ此ノ場所カラ文部大臣ニ御質
問ヲ致シマシタ一ツニ、神武天皇ノ御聖蹟
ハ此ノ場合是非トモ二千六百年ヲ前ニ致シ
テ居リマスル此ノ機會ヲ捉ヘテ、十分ニ一
ツ御聖蹟ノ保存維持、或ハ確定ト云フヤウ
ナコトニ御努力ヲ願ヒタイト云フコトヲ
申上ゲテ置イタノデアリマス、此ノ豫算ニ
付キマシテハ奉祝會ヨリノ依囑デアリマス
ガ、ソレハ何處カラ參ッテモ私ハ構ハヌノデ
アリマスガ、日本ノ今日ニ於キマシテハ何
事ヲ致ス場合ニ於テモ皆必要アリトシテ提
出サレルノデアリマスガ、二千六百年ヲ前
ニ致シマシテ、此ノ場合ニ於テ此ノ機會ヲ
外シマシテハ遂ニ神武天皇ノ御聖蹟ノ幾
ツカハ湮滅ニ歸スル虞ガアラウト考ヘマス、
是非、幸ニ斯樣ナ豫算ガ出タノデアリマス
カラ十分ニ御熟考ヲ願ヒタイノデアル、唯
憾ムラクハ豫算ノ金額ガ如何ニモ少イノデ
アリマス、併シマダ十四年度モアルコトデ
アリマスカラ、次ノ機會ニハモット活用ノ出
來ルダケノ豫算ヲ大藏當局ニ御折衝相成ル
ヤウニ私ハ願フノデアリマスガ、之ニ對シ
テノ御所見ガドウデアラウカ、之ヲ先ヅ伺
フノデアリマス、次ハ國史館建設實行事業、
是モ誠ニ結構デアリマスガ、國史館ト申サ
バ大體其ノ建物ノ大キサモ想像サレルノデ
アリマス、固ヨリ此ノ種ノ建物ノ必要デア
リ之ニ依ッテ日本國史ヲ闡明セラレルト云
フコトハ極メテ適切ナル御考デアリマスガ、
此ノ建物ヨリモット貴イ私ハ國史館ガアル
ト思ヒマス、ソレハ日本ノ中ニ於キマシテ
モ我ガ大和國ハ申サバ是ハ活キタ國史館デ
アル、此ノ大和ノ土地ニハ先ニ申上ゲタ御
聖蹟、或ハ日本歷史ノ大切ナル表象トナル
ベキモノガ多々アルノデアリマスカラ唯一
ツノ建物デ博物館的ノ國史館ノミニ御滿足
ニナッテ居ルノデアルカ、ドウデアルカ、賢
明ナル文相ハ左樣ナコトデ御滿足デナイト
私ハ信ジマスガ、動モ致シマスルト此ノ事
業ガ常ニ必要デアルト云フコトハ皆言ッテ
居ラレマスガ、實行ニ著手サレル場合ニ於
テ遺憾ノ點ガ多イノデアリマス、是モ私ガ
先年此ノ場所カラ申シタノデアリマスガ、
崇神天皇ノ御代ニ於キマシテ神器ヲ笠縫邑
ニ御遷シシタ、其ノ笠縫邑ガ今日何處ニア
ルカト云フコトガ確定致シテ居ラヌノデア
リマス、學者ノ所說ハ色々デアリマス、學
者ハ所謂學者トシテノ立場カラ甲ノ位置デ
アルト言フ者ガアレバ乙ノ位置デアルト
斯樣ニ稱シテ居ルノデアリマスガ、學者ノ
所說ニ委シテ置ク時代デハナイノデアリマ
ス、而モ動モスレバ學者ハ自說ヲ固執致シ
マシテ、一學者ノ是ナリトスル所ハ常ニ反
對シテ居ルト云フヤウナ通弊尠カラザル場
合デアリマスカラ、是非斯ウ云フ場合ニ於
キマシテハ早ク其ノ位置ヲ御確定ニナル
コトガ絕對ニ必要デアルト私ハ考ヘル、若
シ已ムヲ得ナケレバ其ノ中ニ稍〓信ズベキモ
ノハ自ラ私ハアラウト思フノデアリマス、
其ノ確デアラウト多ク考ヘラレル所ノ場所
ノ二三ハ或ハ傳說ノ地トシテ保存スルコト
モ出來ヨウカト思ヒマス、今日ノ儘ニ致シ
テ置キマシタナラバ遂ニ湮滅ニ歸スル虞ガ
尠カラザルコトカラ考ヘマシテ、是非斯ウ
云フヤウナ方策ニ出ラレルコトハ出來ナイ
モノデアリマセウカ、御出來ニナルノデア
リマセウカ、其ノ御所見ヲ伺フノデゴザイ
やく、先ヅ此ノ二點ヲ伺ヒマシテ、其ノ上
デ更ニ今一ツ伺ヒタイコトガゴザイマスガ、
一應此ノ二點ダケヲ御答辯ヲ願ヒマシテ、
再ビ此處デ御質問ヲ致シタイノデゴザイマ
ス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=104
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105・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三室戶サン
ニ御答ヲ致シマス、第一ノ御尋ノ神武天皇
ノ御聖蹟ノ調査ハ言フ迄モナク二千六百年
ヲ記念致シマシテ之ヲ十分ニ調査シテ確定
致シタイト存ズルノデアリマシテ、豫算ハ
御話ノ通リ必ズシモ豐富デハアリマセヌガ、
委員會等モ設ケマシテ十分調査シテ、此ノ
際出來ルダケ確定致シタイト考ヘテ居リマ
ス、ソレカラ國史館ニ關聯致シマシテ大和
ノ地、卽チ奈良、京都地方ノ史蹟ノ保存ニ
付テノ御話ガアリマシタ、此ノ點モ全ク御
同感デアリマシテ、從來トモ十分愼重ニ此
ノ保存ノ途ハ講ジテ居リマスルガ時ニ此
ノ史蹟ニ付キマシテ色々ノ問題ヲ起シテ居
ルコトモゴザイマスノデ、今後ハ十分ソレ
等ノ點ニ付テモ府縣ヲ督勵致シマシテ其ノ
永遠ノ保存ニハ努力致ス積リデ居リマス、
又笠縫邑ノ御話ハ前囘此ノ議場ニ於テ御尋
モアリマシタガ、御話ノ通リ學者ノ說ハ往
往ニシテ衝突スルノデアリマシテ、其ノ結
果ガナカ〓〓確定ガ出來ヌト云フヤウナコ
トガアリマスルガ、只今御話ノ例ヘバ傳說
ノ地トシテ取敢ズ之ヲ湮滅ニ歸セナイヤウ
ニ處置シテ置クト云フヤウナコトニ付キマ
シテハ、一ツノ御考デアルト存ジマシテ假
指定ト云フヤウナコトモヤッテ居リマスル場
合モアルノデアリマスガ、ソレ等ノ點ニ付
キマシテハ尙篤ト考慮致シマシテ、此ノ種
ノ史蹟ガ湮滅ニ歸セナイヤウニ十分努力シ
タイト考ヘテ居リマス
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=105
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106・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 文相ハ誠ニ適切ナル
御答デアリマシテ、私ハ非常ニ之ハ滿足ヲ
致スノデアリマス、唯ドウカ一日モ早ク其
ノ事ノ實現サレムコトヲ重ネテ御願ヲ申上
ゲテ置キマス、次ニ伺ヒマスノハ十數日前
ニ新聞紙上デ承知致シタノデゴザイマスガ、
彼ノ私共ガ少年時代ニ〓ハリマシタ、豐太
閤ニ明ノ國カラ日本國王ニ封スルト云フ文
書ガ參リマシテ、私共ノ少年時代ニハ太閤
秀吉ハ眼ノ前ニ破ッテ捨テタト云フコトデ
ゴザイマスガ、是ハ誤チデアッタサウデアリ
マシテ、其ノ當時ノ現物ガ今日日本內地ニ
存在致シテ居ルノデアリマス、私共ハ斯
樣ナ文書ガ存在シテ居ルコトガ非常ニ宜
シイトモ思ヒマセヌ、無クナッテ居ッテモ
左程惜シイト思ハナイノデアリマス、併
シ事實今日存在致シテ居ルノデアリマス、
私ハ現物ハ見マセヌガ、存在シテ居ルト云
フコトガ確カデゴザイマス、昨今ノ〓科
書等ニハサウ云フ譯デアリマスルカラ破ッ
タト云フコトハ書イテゴザリマセヌ、ソ
レハソレデ宜シイガ、承レバ此ノ文書ヲ國
寶ニ指定スルト云フコトガ、文部省內ニ設
ケラレテアル所ノ此ノ種ノ委員會ニ於テ決
議サレタト云フコトガ、新聞ニ載ッテ居ル
ノデアリマス、如何ナル理由ニ依リマシテ
斯カル穢ラハシイ文書ヲ何ガ故ニ國寶ニ指
定セナケレバナラヌノデアルカ、私ハソレ
等ノ委員ノ方々ノ國體精神ノ觀念ヲ疑フノ
デアリマス、尤モ是ハ新聞紙上ノ事ヲ眞ナ
リトシテ申上ゲルノデアリマスルガ、若シ
然ラザル場合、是ハ私ノ申スコトハ全部取
消サナケレバナラヌノデアリマス、敢テ長
ク申ス迄モナク豐太閤ニ對シテ日本國王ニ
ショウト云フ斯ウ云フモノガ何故ニ日本ノ
國寶デアリマスカ、豐太閤ノ心事カラ考へ
マシテモ、實際破リタカッタラウト私ハ思フ
ノデアリマス、ソレガ只今存在シテ居ルノ
ヲ骨董的ニ考ヘテ之ヲ保存シテ、國寶ニシ
ヨウト、サウ云フ精神ハ、ドウ考ヘタナラ
バ左樣ナ考ガ出テ參ルノデアルカ、無論マ
ダ今日ハ委員會ニ於テハ、指定スベキモノ
ト決議ハセラレタサウデアリマスガ、文部
省ニ於カレテハマダ國寶ニ指定ニ相成ッテ
居ラヌノデアリマスカラ、私ガ御質問申上
ゲル迄モナク、是ハ此ノ委員會ハ諮詢機關
デアルガ故ニ、委員ニ於テハ國寶ト考ヘタ
ガ、文部當局ト致サレマシテハ、是ハ國寶
ニ指定セナイト云フ御考デアラウト私ハ思
フノデアリマスガ、事國體ニ關スル重大問
題デモアリマスルカラ、念ノ爲ニ文相ハ之
ニ付テドウ云フ御處置ヲ遊バス御考デアラ
ウカ、之ヲ伺フノデゴザイマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=106
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107・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三室戶サン
ニ御答ヲ致シマス、只今御話ノ明國ヨリ豐
太閤ニ贈リマシタ册封文ヲ國寳ニ指定スル
ト云フコトハ、御話ノ通リ國寶保存會ニ於
キマシテハ可決シタノデアリマス、其ノ趣
旨ハ御話ノ册封文ハ我ガ國ニ對シマシテ認
識不足ノ明ガ、豐太閤ニ不逞ナル文書ヲ齎
シタノデアリマス、日本精神ノ旺盛デアル
秀吉ハ、激怒ノ上直チニ其ノ文書ヲ抛ッテ使
者ヲ退ケテ、斷乎トシテ再征ノ軍ヲ起シタ
事實ニ關スル、國威發揚ノ歷史的文書デア
リマス、我ガ國體ノ尊嚴ナル所以ヲ豐太閤
ガ明カニ致シマシタル、國民的ニモ周知ノ
事實ニ關スル史料デアリマシテ、國寶保存
會ニ於テモ右ノ趣旨ニ依リマシテ、愼重審
議ノ結果、之ヲ國寶トシテ保存スルヲ適當
ト認メタモノデアリマス、右樣ノ次第デア
リマシテ、是ハ國寶保存會ニ指定セラレテ
居ル次第デアリマス
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=107
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108・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 私ノ第一問ニ對シマ
スル御答辯ハ誠ニ文相トシテ立派ナ答辯ヲ
得マシタノデアリマスガ、只今ノ質問ニ對
シマシテノ御答辯ハ、私ハ甚ダ遺憾ニ考ヘ
ルノデアリマス、史料ハ卽チ國寶デアル、
國寶デナケレバナラヌト云フ理窟ハ何處カ
ラ參ルノデアリマスカ、若シ史料トシテ必
要ナルモノデアルナラバ、國史館ノ、出來
ル國史館ニ御陳列ニナルコトモ宜シイ、何
ガ爲ニ之ヲ國寶トナサル必要ガアルノデア
リマセウカ、折角存在スルモノヲ破ル必要
ハ無論ゴザリマスマイ、史料ハ卽チ國寶ト
云フ論ハ私ハ出來ナイト思ヒマス、國寶
ニシテモ亦必ズシモ史料トナルモノガナ
イカモ知レマセヌガ、少クモ史料ハ卽チ
國寶デアル、斯ウ云フ論理ハ何處カラ參
ルノデアルカ、私ハ不肖ニシテ左樣ナ論
理ハ、其ノ結論ヲ得ルニ甚ダ苦シムノデ
アリマス、是ハ恐ラク文相ハ國寶審議委
員會ノ多數ガ決議シタノデアルカラ宜シ
イノデアルト云フ簡單ナ御考デアラウト
思ヒマスガ、是ハ一ツ御考慮ヲ私ハ願ハナ
クチヤナラヌト思フノデアリマス、日本ノ
國ノ認識ガ足ラナクテ、向フカラ贈ッテ參ッ
タモノデアル、ソレニ依ッテ日本ノ國體ノ嚴
ナルコトガ分ッタ、斯カル文書ハナクトモ日
本ノ國體ノ尊嚴ナルコトハ能ク分ル材料ガ
幾ツモアルノデアリマス、明國カラ參ッタ一
ツノ書面ニ依ッテ、日本ノ國體ノ尊嚴ガ能ク
分ルト云フヤウナコトハ、私ハ甚ダ其ノ意
ヲ得ナイデス、何處カラサウ云フコトヲ仰
セラルルノデアルカ、屬僚共ガ左樣ナ案ヲ
提出致シマシテ、文相ニ差出シタノカモ知
レマセヌ、日本ノ國體ノ尊嚴ヲ證據立テル
モノニハ澤山アルノデアリマス、幾百千ト
アル筈デアリマス、一明國カラ參ッタ左樣ナ
モノガ、日本ノ國體ノ尊嚴ヲ象徵スル所ノ
唯一ノ物件デアルカノ如ク論ジラレルコト
ハ、私ハモウ一度能ク御考ヲ煩シマシテ、
更ニ御答辯ヲ願ハナケレバナリマセヌ、是
等ハ非常ニ重大ナル結果ヲ招來スルモノデ
アリマス、日本ノ國體ノ尊嚴ナルコトヲ知
ルモノハ此ノ外ニナイノデアリマスカ、然
ラバ斯樣ナコトヲ又言フ人ガアラウト思ヒ
やく、文部當局等ニハ必ズ斯ウ云フコトヲ
言フ者ガアル、兎ニモ角ニモ斯ウ云フモノ
ガアルト云フコトハ宜シイコトデアル、國
寶ニシテ置カナイト散逸スルコトガアル虞
ガアル、散逸スル虞ガアルナラバ寫眞ヲ御
撮リニナッテモ宜シイデス、實物ト同ジヤウ
ニ今日ハ模寫ヲスル技術モ十分發達シテ居
ルノデアリマス、各寺院等ニ在ル國寶ニ致
シマシテモ、其ノ寫シナルモノガ本眞物ト
殆ド區別ノ付カナイ位ノモノガ幾ラモアル
ノデアル、其ノ技術ハ十分進步致シテ居ルノデ
アル、若シソレガ大切ナモノデアルトナラ
バ、左様ナ方法ニシテ保存スル方法ハ幾ラ
モアル、國寶ニシテ迄保存シナケレバナラ
ヌト云フ事由ガ何處ニアルノデアリマス
カ、前刻ノ御答辯ハ、最初ノ私ノ御答辯ニ
對スル文部大臣ノ御精神トハ全然別ナ御精
神カラ出テ居ル、私ハ此ノ御答辯ニ付テハ
承服スルコトガ出來マセヌノミナラズ、今
一應私ノ申スコトガ間違デアッテ、御自身ノ
御考ガ宜シイノデアルト云フコトデアレ
バ、歷史的ニ、論理的ニ、玆ニモウ一度御
辯明ヲ煩シタイノデゴザイマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=108
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109・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三室戶サン
ニ重ネテ御答辯ヲ申上ゲマス、私ガ申上ゲ
マシタコトガ不足シテ居リマシタカ、幾ラ
カ誤ッテ御解釋ニナッタヤウデアリマスル
ガ、私ガ申上ゲマシタノハ、是ノミヲ以テ
我ガ國體ノ精華ヲ發揚シタト云フノデハナ
イノデアリマス、此ノ豐太閣ニ贈リマシタ
册封文ヲ國寶ニ指定致シマスルコトヲ、國
寶保存會ガ決定致シマシタル趣旨ガ玆ニア
ルノデアリマシテ、而シテ此ノ册封文ハ歷
史ノ象徴ト致シマシテモ價値アリトシテ國
寶保存會ガ之ヲ指定シタノデアリマス、私
ガ前囘ニ御答辯ヲ致シマシタノト、今日此
處デ御答辯致シマスノトハ、全然其ノ精神
ニ於テハ同ジナノデアリマス
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=109
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110・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今ノ御答辯ハ、實
ハ私ノ御質問シタ要點ニ外レテ居ルノデア
リマシテ、結局前言ヲ御繰返シニナッタノデ
アリマス、今モ申上ゲマスル通リ彼ガ日本
ノ國體ヲ認識セズ斯カルモノヲ出シタノデ
アッテ、日本ノ國體ノ立派ナコトヲ證明スル
モノデアル、斯ウ云フ御論ハドウカ歷史的
ニ論理的ニ御辯明ヲ願ヒタイト申上ゲタ、
ソレヲ伺ハナイ限リハ此ノ御答辯ハ全カラ
ザルモノデアルト申サナケレバナラヌ、
ドウカ是等ハ所謂辯明ニアラズシテ、本心
カラノ御考ヲ能ク伺ハナケレバ、私モ此處
ニ立チマシテ御尋ヲ致シタノデアリマスカ
ラ、此ノ御答辯ダケデハ如何ニシテモ引退
ガルコトハ出來ナイノデアリマス、開會時
間中ハ御質間ヲセネバナラヌヤウナコトニ
相成ルノデアリマス、先程申上ゲマスル通
リ、日本ノ國體ノ尊嚴ハコンナモノガ無ク
テモ宜シイ、無クテ宜シイノデス、不幸ニ
シテ殘ッテ居ッタ位ノモノデアル、併シ殘ッテ
居ルモノヲ殊更破ラウト云フヤウナコトハ
私ハ敢テ申スノデハアリマセヌ、之ヲ國寶
ニ指定スル理由ガ何處ニアルカ、國寶審議
會ノ諸子ガ國寶ニスベキモノデアルト申シ
テモ、ソレ等ノ人ハデス、恐ラクハ國體觀
念ニデス、認識ヲ缺イテ居ル明ノ皇帝ト同
ジ考デアルノデス、ドウゾ是ハデス、所謂
辯明ニ非ズシテ本當ノコトヲ私ハ言ッテ戴
キタイノデス、斯ウ云フ質問ニ對シテノ御
辯明ハデス、唯法規ノ解釋トカ見解ノ相違
ト云フヤウナモノニ於テ一掃サルベキモノ
デハナイノデアリマスカラ、極ク眞面目ニ
デス、曩ノ御答辯ノ御面目トカ何トカ云フ
コトデナクシテ、誰モガ承服ヲ致スダケノ
御說明ヲ願ヒタイ、御辯明デナケレバ御說明
デモ結構デアリマス、若シ私ノ申スコトニ
誤リガアルナラバ、ソコヲ一ツ正シテ戴キ
タイ、結局是ハ私ノ考へ違ヒヲ正シテ戴ク
ノミナラズ、若シサウデアルナラバ此ノ壇
上ヲ通ジテ國民ニデス、其ノコトヲ此ノ壇
上ヲ通ジテ國民ニ御話ニナルコトデアリマ
ス、左樣ニ仰セ下サレバドレダケ位國民〓
育ニ效果ヲ現スカモ知レマセヌ、只今ノヤ
ウナ御辯明デ御止メニナリマシタナラバ
是ハ問題ヲ非常ニ大キクスルノデアリマス、
此ノ御說明ヲ伺ヘマセヌケレバ私ハ更ニ他
ノ質問ヲ致シマスカラ、ソレハ申シタクナ
イノデアリマスガ、斯樣ナコトニ相成リマ
スレバ私ハ更ニ他ノ質問ヲ申上ゲマスガ、
其ノ點カラモデス、此ノ私ノ只今伺ヒマ
シタモノニ付テ、正確ナル、誰モガ滿足ヲ
スル國體ノ尊嚴ヲ云々ト云フヤウナコトニ
依ッテデス、此ノ文書ヲ國寶ニ致サレタコ
トニ付テノ御辯明ヲ、今少シクシッカリ伺ヒ
タイ、ソレヲ伺ハナケレバ更ニ私ハ第二第
三ノ質問ヲ申上ゲル考デゴザイマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=110
-
111・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三室戶サン
ニ御答ヲ致シマス、私ガ御答辯ヲ致シマス
ルコトハ先程申上ゲマシタノデ、大體其
ノ精神ヲ盡シテ居ルノデアリマス、而シテ
歷史的ニ說明セヨト云フ御話デアリマスル
ガ、此ノ際直チニ歷史ヲ論ズルコトハ差控
ヘタイト思ヒマス、而シテ此ノ問題ニ付キ
マシテハ成ル程豐太閤ニ送リマシタル明
王ノ文書ハ、甚ダ不敬ナルモノデゴザイマ
スルガ、併シナガラ其ノ際ニ於ケル豐太閤ノ
之ニ對シマスル處置ハ、極メテ明快ニ、斷乎
トシテ扱ッテ居ルノデアリマシテ、今日カ
ラ見マシテ此ノ文書ガ極メテ或意味ニ於テ
ハ國威ヲ發揚致シテ居リマスル文書デアリ
マスルノデ、之ヲ國寶ニ指定スルト云フコ
トニ付キマシテハ愼重國寶保存會ニ於テ審
議ヲ致シマシタ結果、左樣決定シタ次第デ
アリマシテ、私ノ考ヘテ居リマスコトハ以
上ヲ以テ盡キテ居ル次第デアリマス
〔子爵三室戸敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=111
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112・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今文相ノ御辯明ハ
一向辯明ニナッテ居ラヌノデアリマスガ、之
ヲ私ガ又繰返シマシタ所デ同ジ結果ニナリ
マスカラ、然ラバ次ノ問題ニ付テ御質問申
上ゲマス、國定〓科書中ニ尋常小學ノ修身
デアリマシタカ、五年ノ書物ニ〓育勅語ガ
揭ゲラレテ居ル、其ノ中ニ私共ガ會テ拜戴
致シマシタ〓育勅語トハ文字ガ一字違ッテ
居ルノガアリマスガ、是ハ何處ガ違ッテ居ル
カ文部大臣ハ御承知ダラウト思ヒマスガ、
一ツドウ云フ譯デ變ッテ居ルノデアリマス
カ、伺ヒタイノデアリマス、先刻土方博士
ノ御演說中ニモ、〓育勅語ハ外ナラザル勅
語デアリマシテ、各大臣ノ副書モナク御渙
發ニ相成ッテ居ル、私ハ甚ダ歴史ニ乏シイ者
デアリマスガ、是ハ副書ガアレバ他日又大
臣カラ此處ハ斯樣々々ニ御直シヲ願ヒタイ
ト云フコトガ出來ルノデアルガ、〓育勅語
ニ付テハ左樣ナコトノ相成ラザルヤウ、卽
チ古今ニ通ジテ惇ラナイ事柄デゴザイマス
カラ、〓育勅語ニ付テハ一字一句モ疎カニ出
來ナイ筈デゴザイマス、然ルニ今申上ゲマシ
タヤウニ一字異ッテ居ルノデアリマス、是ハ御
改竄デアルノデアルカ、或ハ又誤字デアルノ
デゴザイマセウカ、先ヅ以テ之ヲ伺ヒマス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=112
-
113・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今國定〓
科書尋常小學五年ノ讀本ノ中ニ揭載サレテ
居リマスル所ノ〓育勅語ノ中ニ誤リガアル
ト云フ御尋デアリマス、ドノ點デアリマス
ルカ、私ハ承知致シテ居リマセヌガ、此ノ
國定〓科書ニ揭載致シマスル〓育勅語ハ文
部大臣ニ當時御下賜ニナマシタ勅語ヲ本ト
致シマシテ、十分精査致シマシテ揭ゲテアリ
マスルノデ、誤リハナイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=113
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114・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 簡單デアリマスカラ
此處カラ御許シヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=114
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115・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=115
-
116・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 御答辯ハ非常ニ御立
派デアリマスガ、一應御調ヲ願ヒマシテ、
明日御知ラセヲ一ツ願ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣侯傅木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=116
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117・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 取調ベマシ
テ明日申上ゲマスガ、子爵ノ御指摘ニナリ
マシタ點ハドノ點デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=117
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118・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 此處カラ甚ダ何デス
ガ、此處カラ申上ゲマス、〓育勅語ハ御承
知ノ如ク三百五十一字ゴザイマシテ、漢字
ガ百七十五字アルノデゴザイマス、其ノ中
ニ「獨リ朕カ忠良ノ臣民夕ルノミナラス又
以テ」此「マタ」ハ私共ガ幼少ノ時代カラ頂
戴シテ居ル其ノ後幾多刊行サレテ居リマス
ル〓育勅語ヲ拜見致シマスルニ「又以テ」ノ
「マタ」ハ「モ亦」、赤ト云フ字ニ似テ居リマ
ス「モ亦」デゴザイマス、處ガ尋常科修身書
ノ第五學年用ニハ此ノ「又」デアルノデス、
ソレニ付テ伺ッタンデアリマス、明日御答ヲ
願ヒマシタ模樣ニ依リマシテ、更ニ極ク簡
單デアリマスカラ伺フコトガアルカモ知レ
マセヌ、本日ハ是デ質問ヲ取止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=118
-
119・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 他ニ御發言
モナケレバ是ヨリ採決ヲ致シマス、御異議
ガナケレバ五案全部ヲ問題ニ供シマス、五
案全部、委員長ノ報告通リデ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=119
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120・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=120
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121・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔石橋書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
支那事變特別稅法案可決報告書
相續稅法中改正法律案可決報〓書
臨時租稅增徵法中改正法律案可決報〓書
所得稅法中改正法律案可決報告書
登錄稅法中改正法律案可決報告書
酒造稅法中改正法律案可決報告書
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案可
決報告書
麥酒稅法中改正法律案可決報告書
大正九年法律第十二號中改正法律案可決
報〓書
臨時利得稅法中改正法律案可決報〓書
臨時租稅措置法案可決報告書
日滿國稅徴收事務共助法案可決報告書
本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇ニ
關スル法律案可決報〓書
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ
關スル法律案可決報告書
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル法律案
可決報〓書
昭和九年法律第七號中改正法律案可決報
告書
昭和十一年度第一豫備金支出ノ件、昭和
十一年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
昭和十一年度特別會計豫備費支出ノ件、
昭和十一年度滿洲事、件第一豫備金支出
ノ件、昭和十二年度第二豫備金支出ノ件、
昭和十二年度特別會計第二豫備金支出ノ
件、昭和十二年度特別會計豫備金外ニ於
テ豫算超過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求
ムル件)可決報〓書
昭和十三年法律第六號中改正法律案可決
報〓書
本日兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
ニ關スル法律案特別委員會ニ於テ當選シタ
ル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵大岡忠綱君
副委員長男爵長基連君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=121
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122・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 午後八時三
十分迄体憩ヲ致シマス
午後七時三分休憩
午後九時二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=122
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123・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
本日北支那開發株式會社法案特別委員會ニ
於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵柳原義光君
副委員長男爵菊池武夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=123
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124・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ休憩前ニ
引續キ會議ヲ開キマス、本日、松本眞平君
都合ニ依リ、電力管理法案外三件特別委員
ヲ辭任シタキ旨ノ中出ガゴサイマシタ、之
ヲ許可スルコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=124
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125・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス、就キマシテハ松本君ノ補闕ト致シ
マシテ、細田安兵衞君ヲ指名致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=125
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126・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 委員長ヨリ報〓
書ノ提出セラレマシタ支那事變特別稅法案、
相續稅法中改正法律案、臨時租稅增徵法中
改正法律案、所得稅法中改正法律案、登錄稅
法中改正法律案、酒造稅法中改正法律案、
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案、麥
酒稅法中改正法律案、大正九年法律第十二
號中改正法律案、臨時利得稅法中改正法律
案、臨時租稅措置法案、日滿國稅徴收事務
共助法案、本邦內ニ於テ募集シタル外國債
ノ待遇ニ關スル法律案、以上十三案ヲ此ノ
際議事日程ニ追加、一括シテ議題トナシ一
讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報〓ヲ煩シタイ
ト存ジマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=126
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127・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス委員長前田子爵
支那事變特別税法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
相續稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時租稅增徵法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
所得稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
登錄稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
酒造稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
麥酒稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
大正九年法律第十二號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時利得稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時租稅措置法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
日滿國稅徵收事務共助法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報
〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=127
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128・前田利定
○子爵前田利定君 支那事變特別稅法案外
十二件ニ對シマスル委員會ノ審査報告ヲ
致シマス、各案ノ提案ノ趣旨內容ニ付キマ
シテハ、去ル三月二十日本議場ニ於キマシ
テ、大藏大臣ヨリ稍〓詳細ナル演述ガアリマ
シタカラ、多數ノ諸君ニ於カセラレマシテ
ハ旣ニ御聽取ノコトト存ジマスルケレドモ、
其ノ折議席ニ御著席ノナカッタ方モオアリ
デアラウト思ヒマスルシ、多少日時モ經過
致シマシタカラ、皆樣方ノ御記憶ヲ喚起ス
ルガ爲ニ各案ノ提案ノ趣旨ヲ、政府ノ說明
致シマシタ所ニ基キマシテ陳述致サウト思
ヒマス、便宜上、臨時租稅增徵法中改正法
律案、所得稅法中改正法律案、相續稅法中
改正法律案、登錄稅法中改正法律案、酒造
稅法中改正法律案、酒精及酒精含有飮料稅
法中改正法律案、麥酒稅法中改正法律案、
大正九年法律第十二號中改正法律案此ノ八
案ハ政府ノ所謂部分的改正法案デアリマシ
テ、政府ノ申ス所ニ依リマスレバ、支那事
變ノ爲ニ經濟事情竝ニ國民ノ負擔力ニ變動
ガ起リツヽアル際ニ、恒久的ノ稅制整理ヲ
致スト云フコトハ適當ノ時機ニアラズト見
合セテ、唯現在ノ稅制ニ付テ、出來得ル限リ
負擔ノ適正ヲ圖ル趣旨カラ出タノデアル
斯樣ニ申サレテ居ルノデアリマス、次ニ支
那事變特別稅法案竝ニ臨時利得稅法中改正
法律案此ノ二案ハ、過般本議場ヲ通過致シ
マシタル四十八億ノ臨時軍事費ノ財源ニ關
聯ヲ致シテ居ルモノデアリマシテ、其ノ大
部分ハ御承知ノ通リニ公債ニ仰イダノデア
リマスガ、其ノ一部ハ銃後ノ國民ト致シマ
シテ、分ニ應ジテ此ノ際租稅ヲ負擔スルト
云フコトハ適當デアルト認メテ、其ノ增徵
スルニ當リマシテハ、負擔力ニ留意致シ增
徵ヲ行フト云フノデアリマシテ、ソレノミ
ナラズ負擔力ノアル方面ニ對シマシテハ、
物品ノ消費及行爲ニ付テ課稅ヲスルノ必要
カラ物品稅ノ範圍ヲ擴張致シ、ソレト同時
ニ入場稅又通行稅ヲ新設致シタノデアリマ
ス、次ニ臨時租稅措置法案、此ノ法案ハ自
作農者竝ニ中小商工業者ガ此ノ事變ノ影響
ヲ受ケマシテ相當程度ノ減收ヲ致シテ居ル
ト云フコトニ鑑ミマシテ、臨時ノ措置トシ
テ相當程度ノ稅ノ輕減ヲ圖ッタノデアリマ
ス、卽チ地租竝營業收益稅ニ付テ輕減ヲ取
計ラハレタノデアリマス、又其ノ他鑛物ノ
產出ノ量ヲ助長スルガ爲ニ金、銀錫亞
鉛等ノ鑛物ニ付キマシテ、新ラシク採掘權
ヲ設定致シタ場合ニ於キマシテハ、之ヲ課
稅外ニ置クト云フコトニスルト共ニ、是等
ノ鑛物ノ產出量ガ昭和十二年度中ニ比シマ
シテ其ノ產出量ガ超過シタ場合ニ於キマシ
テハ、其ノ超過シタ部分ニ對シマシテ鑛產
稅又特別鑛產稅ヲ免ズルト云フコトニサレ
タノデアリマス、又砂金ヲ除ク砂鑛區千坪
ニ付キマシテ三十錢程度ノ課稅ヲサレテア
リマスノハ、卽チソレ等ノ鑛物ノ產出ヲ助
長スル爲デアルノデアリマス、又棉花ノ節
約ニ資スルガ爲ニ「ステープル·フアイバー」
ヲ混合致シマシタ綿絲ニ依ル所ノ織物ニ對
シマシテハ、一部ノ織物ニ對シマシテハ課
稅ヲ賦課シナイト云フコトニシ、又綿絲又
ハ「ステープル·フアイバー」ヲ混紡致シマ
シタ綿絲ト人造絹絲トヲ以テ組成致シマシ
タル織物ニ付キマシテハ、織物消費稅ヲ免
ズルト云フコトニ取計ラハレタノデアリマ
ス、左樣ナ次第デアリマシテ、此ノ臨時租
稅措置法案ニ依リマシテ彼此減稅ニナリマ
シタモノヲ合計致シマスト云フト、約一千
萬圓ニナルノデアリマス、而シテ是等ノ此
ノ支那事變特別稅法案、臨時利得稅法中改
正法律案ノ通過ト共ニ、北支事件特別稅ト
云フモノガ廢止ニナル次第デアルノデアリ
マス、次ニ日滿國稅徵收事務共助法案ハ、
是ハ御承知ノ通リニ滿洲國ノ發展ニ伴ヒマ
シテ、日滿ノ交通ガ愈〓益、頻繁ニナルニ鑑ミ
マシテ、相互ノ間ニ於キマシテ此ノ兩國ノ
國稅ノ徴收事務ヲ共助スルト云フ途ヲ開ク
爲デアルノデアリマス、終リニ本邦內ニ於
テ募集シタル外國債ノ待遇ニ關スル法律案
ハ、卽チ內國ニ於キマシテ募集シタル外國
債ニ對シマスル待遇ヲ內國債同樣ニ致シマ
シテ、サウシテ發行ノ便宜ヲ圖ルノ途ヲ開
イタノデアリマス、以上ガ各案ニ對シマス
ル立案趣旨ノ梗〓デアルノデアリマス、而
シテ是等ノ各法案ニ對シマシテハ、衆議院
ニ於キマシテ其ノ各案中ニ修正ヲ加ヘテア
ル箇所ガ數點アルノデアリマス、ソレハ所
得稅ノ第一種、第三種ノ增徴ヲ二割二分五
厘ニ改メマシタコト、相續稅ハ控除主義ニ
則リマシテ保險金、郵便年金、退職金五千
圓ヲ超過スルモノニ課稅ヲスルト云フコト
ニ致シマシタ、砂糖消費稅ニ付キマシテハ
第一種、第二種、第三種ヲ通ジマシテ、政
府案ヨリ十錢ヅツ引下ゲマシタ、入場稅ノ
免稅點十九錢ヲ二十三錢ニ引上ゲマシタ、
物品稅ノ保有數量ニ關スル經過規定ヲ改メ
マシテ、控除主義ニ則リ緩和シ、價格三千
圓ヲ超ユル「ストック」品ニ課稅ヲスルト云フ
コトニ致シマシタ、葡萄酒ハ一石十五圓ヲ
十圓ニ引下ゲテ課稅ヲスルト云フコトニ致シ
マシタ、酒ハ三十石ヲ超過スル數量、砂糖ハ
二萬斤ヲ超ユル數量、燐寸ハ一千萬本ヲ超
ユル數量ニ付テノミ課稅ヲスルト云フコト
ニ修正ヲ加ヘタノデアリマス、而シテ此ノ
衆議院ノ修正ヲ加ヘタコトニ依リマシテ、
各稅ノ徵收上ニ次ノヤウナ減收ト相成ルノ
デアリマス、所得稅ニ於キマシテハ、初年
度ノ減收額ガ一千萬圓、相續稅ニ於キマシ
テハ初年度ノ減收額ヲ七萬二千圓、入場稅
ニ付キマシテハ初年度ノ減收額ガ七十萬圓、
砂糖消費稅ニ於キマシテハ、初年度ノ減收
額ガ百二十萬圓、物品稅ニ於キマシテハ、
初年度ノ減收額六十萬圓、葡萄酒稅ニ於キ
マシテハ、初年度ノ減收額ガ九萬圓、以
上初年度ノ減收額ヲ合計致シマスト、千
二百六十有餘萬圓ニ相成ルノデアリマス、
之ガ委員會ト致シマシテハ、之ヲ原案ト看
做シマシテ、審議ヲ進メタノデアリマス、
今是等ノ諸案ニ對シマスル質疑ノ模樣ヲバ
御參考ニ供シタイト思ヒマス、一委員ヨリ
ハ增稅案ニ於テ附加稅ヲ許サヌガ、地方財
政トノ關係如何トノ質疑ニ對シマシテ、賀
屋藏相ハ、此ノ度ノ增稅ハ軍事費ノ財源ニ
充當シタモノデアルガ故ニ、地方附加稅ヲ
認メナイ方ガ適當デアルト答辯セラレマシ
ク、一委員ヨリ此ノ增稅案ハ今日已ムヲ得
ナイガ、併シ此ノ增稅ニハ國民ガ能ク理解
スルヤウニ仕向ケネバナラヌ、最近政府ノ
努力ガ足ラヌト思フガ如何トノ問ニ對シマ
シテ、藏相ハ誠ニ同感デアル、今後大イニ
理解セシムルヤウニ努力スルト答ヘラレマ
シタ、一委員ヨリ昭和十二年度ニ於ケル國
民ノ總所得、總消費、總蓄積ハ幾許カノ質
問ニ對シマシテ、大藏大臣ハ國民ノ所得ハ
百五十億、蓄積ハ三十億カラ四十億ニ達シ
テ居ルト思フ、消費ハ此ノ差額ノ百十億位
ト申サレマシタ、一委員ヨリハ勞働者ノ一
部ヲ强制的ニ貯金セシメテ、公債消化ニ充
テテハ如何ト云フ質問ニ對シ、大藏大臣ハ、
會社工場ニ貯蓄組合ヲ組織セシメ、貯金ヲ
サセテ行キタイト思フガ、法律的ニ强制ス
ベキデナイト思フトノコトデアリマシタ、
一委員ヨリハ、國家總動員法ノ規定ニ依リ、
稅制ノ上ニ影響スル所アルカニ對シマシテ、
賀屋大藏大臣ハ、國家總動員法ニ依リ財政
上特ニ負擔ヲ增スコトハナイ、同法ニ依リ
經費ヲ要スル點ハ補償ノ場合、及ビ戰時ニ於
テ新機關ヲ設置シ、機關擴充等ノ爲ノ費用
ガ要ル程度デアルトノ答デアリマシタ、同
委員ハ國家總動員法デハ命令ニ依リ國
稅關稅ノ稅率ヲ動カスコトガ出來ルカニ
對シマシテ、同大臣ハ、同法第九條ニ依リ
關稅ハ稅率ヲ動カシ、又ハ免稅スルコトガ
出來ルトノ答辯、又國家總動員法ニ依リ、
金融方面ニ影響ヲ與ヘルノカ、又國家總動
員法ニ依リ物ヲ收用スル場合ニ於ケル賠償
ノ金額ヲ與フルカ等ノ間ニ、同藏相ハ、同
法第十一條ニ、金融ニ關シテ規定シテ居ル
ガ、現在ノ情況ニ於テハ臨時調整法ニ依ッテ
ヤッテ行ク、又物ノ收用ニ當ッテノ損失賠償
ハ、損失其ノモノヲ賠償スル建前デアルト
ノ答辯デアリマシタ、一委員ヨリ事態ノ推
移如何ニ依ッテハ增稅避ケ難シト云フコト
デアルガ、之ニ對シテ政府ニ腹案アリヤニ
對シマシテ、大藏大臣ハ、增稅スルトモシ
ナイトモ言ヒ兼ネル、併シ增稅スル場合、
稅率ノ變更ヲスルトカ、如何ナル新稅ヲ起
スカハ今ノ處言ヘナイト申サレマシタ、
委員ヨリハ、擔稅力涵養ノ見地カラ平和產
業ノ振興モ必要ト思フ、併シ資金統制案ノ
爲是等產業ガ阻害サレテ居ルヤウデアルガ、
政府ハ如何ニ考ヘテ居ルカトノ問ニ對シ
マシテ、藏相ハ、戰爭ニハ多大ノ物資ガ要
ル、然ルニ物資ニハ限リガアルノデ、第
ニ軍事目的ニ向ッテセネバナラヌ、從ッテ平
和產業ノ方面ハ暫ク我慢シテ貰ハネバナラ
ヌトノ答辯デアリマシタ、又一委員ヨリハ、
本增稅案ニ對シ、衆議院ニ於テハ修正ノ箇
所アッテ、結局減收千二百六十有餘萬圓ヲ生
ズルガ、政府ハ之ニ對シテ反對ナキヤトノ
質問ニ、大藏大臣ハ、議論ヲスレバ同意出
來ヌ點ナキニアラザルモ、根幹ニ觸レタル
修正デモナク、又減收モ財政計畫ノ根本ニ
觸レル程度ノモノデナキ故、貴族院ガ修正
案ニ對シ贊成ト云フコトナラバ實行シテ參
ルト、ハッキリトシタ答辯ガアリマシタ、永
井遞相ノ出席ヲ要求シテ、一委員ヨリハ
日滿經濟關係ヲ律スル根本方針如何、海運
ニ關スル日滿間ノ協定ヲ爲シ、共存共榮ノ實
ヲ擧ゲルヤウ政府ハ努力シテ欲シイト思フ
ガ如何ト云フニ對シ、永井遞相ハ、國防ハ共
同防衞ニ依ラネバナラヌト同樣、經濟關係
ニ於テモ一元的基礎ノ上ニ立チ、從ッテ日滿
兩國ノ海運業ノ問題モ其ノ趣旨デ進ミタイ
ト考ヘテ居ルトノ答辯ガアリマシタ、又出席
サレタル農林大臣ニ對シ、一委員ハ、本來
產業組合ニ對シテハ課稅スベキモノデナイ
ト思フガ、其ノ代リ他ト競爭スル仕事ヲ止メ
テ欲シイモノデアル、併シ產業組合ノ仕事ガ殖
エテ、競爭摩擦ヲ起シテ來ルト云フナラバ
此ノ特權ハ與ヘナイデ課稅スルガ宜イト思
フガ如何トノ質問ニ、有馬農相ハ、產業組
合ガ廣汎ニ亙ッテ他トノ摩擦ヲスルコトハ
避ケナクテハナラヌ、必要ナ仕事ノミニシ
タイト考ヘテ居ルガ、產業組合ノ本質ニ則ッ
テ、課稅ヲセヌ從來ノ方針デ進ミクイト思
フトノ答辯ガアリマシタ、一委員ハ、貿易
長官ノ出席ヲ要求サレマシテ、次ノ質問ヲ
發セラレマシタ、卽チ貿易ノ統制ノ結果、
輸出不振ヲ來ス虞アリ、之ガ對策如何ト、
之ニ對シ同長官ハ、輸入原料ヲ制限スル結
果、輸出不振トナラヌヤウ努力シテ居ルガ、
今後トモ適切ナル方策ヲ〓究シテ行キタイ
ト思ッテ居ルトノ答ガアリマシタ、是ハ直
接稅法案トノ關係ハ稍〓薄イヤウデアリマ
スルガ、一委員ノ公債消化ノ方策ニ關聯シ、
又資本ノ蓄積ニ付テ、遞信省ニ於テ郵便貯
金ノ月掛金ヲ奬勵スルトノコトデアルガ、
右ハ貯蓄銀行トノ相剋摩擦ヲ惹起シ、絕大
ナル信用ヲ保有スル政府ニ對シ、民間ノ貯
蓄銀行ガ競爭スルコトトナレバ、況シテ利
率ガ差等アルニ依リ、結局民間當業者ハ悲
況ニ沈淪スルコトニナルト思フガ如何トノ
問ニ對シ、大藏政府委員ハ、其ノ點ニ付テ
ハ能ク遞信當局トモ協合シ、相剋摩擦ノ起
ラヌヤウ、新機構ノ實現ニ依ッテ、旣存ノ民
間業務ヲ壓迫スルガ如キコトノナキヤウ、
實行ニ當ッテハ留意スルトノコトデアリマ
シタガ、一委員ノ要求ニ依リマシテ、遞信
政府委員ノ出席ヲ求メマシテ、更ニ之ニ對
シテ二三ノ質問ニ對シ、遞信政府委員ハ、
月掛貯金制ノ施行ヲ都市ニ擴張シテモ、之
ヲ利用スルモノガ貯蓄銀行ト異ルシ、又當
局ニ於テモ其ノ狙ヒ所ガ違フガ故ニ、大シ
タ影響モアルマイト思フガ、其ノ實行ニ際
シテハ、其ノ邊ハ注意ヲ爲シ、利率ノ點其
ノ他ニモ考慮ヲ拂ヒ、民間當業者トノ競爭
ニ陷ラザルヤウ努ムル旨ノ答辯ガアリマシ
タ、是ハ本年豫算委員會ノ第二次追加豫算
ヲ檢討スル際ノ質疑トシテ、最モ適當ノモ
ノデアッタカモ知レヌノデアリマスガ、公
債消化、物價騰貴抑制ノ方策トシテモ考ヘ
合セラルヽモノデアルニ依リ、此ノ場合ニ
最後ニ此ノ質疑應答ヲバ御紹介申スコトニ
致シタイノデアリマス、質疑ハマダ是ドコ
ロデハナイノデアリマシテ、澤山ニ實ハアッ
タノデアリマス、何分衆議院ノ委員會ノ是
等ノ法案ヲバ去ル二月四日ニ其ノ付託ヲ受
ケラレマシテ、三月ノ十九日迄委員會ニ掛ツ
テ居ッタノデアリマス、其ノ間日ヲ費スコ
ト四十餘日、囘ヲ重ヌルコト二十二囘デアッタ
ノデアリマス、ソレニ比ベマシテ我ガ特別
委員會ハ、去ル三月ノ二十日ニ此ノ法案ノ
付託ヲ受ケマシテ、審査ニ掛ッタノデアリ
マシテ、爾後日數僅ニ五日間、會ヲ開クコ
ト僅ニ四囘、而モ會期ガ切迫致シマシテ、
何トシテモ議會ノ會期中ニ決定ヲ致サナケ
レバナラナイ大切ノ法案デアルノデアリマ
ス、申上ゲル迄モナク此ノ法案ハ前申上ゲ
マシタ通リニ、臨時軍事費ノ追加豫算ノ財
源ノ一部ヲ成スモノデアリマシテ、若シモ
此ノ法案ノ議了ガ遲レマシテ、會期ニ間ニ
合ハナイヤウナコトニナリマシタナラバ、
寳ニ由々シキ軍國ノ大事ヲ惹キ起ス次第デ
アリマス、故ニ委員ニ於キマシテハ、非常
ニ衆議院ノ特別委員會トハ比例ニモナラナ
イ短イ時間ニ、熱心ニ精勵サレマシテ、特
別委員會ノ開會ハ眞ニ時間ハ厲行サレタノ
デアリマス、而シテ其ノ質疑ハ大所高所ヨ
リノ財政經濟ノ諸問題ハ勿論ノコト、各方
面ノ內容ニ付キマシテモ細ニ入リ微ヲ穿ツ
底ノ內容ノ檢討ノ質問モ、矢繼早ニ連續シ
タノデアリマス、單ニ大藏大臣、大藏省ノ
政府委員ニ對シマスル質疑ノミナラズ、遞
信大臣、農林大臣或ハ貿易長官、地方局
長、貯金局長ノ大官迄モ出席ヲ要求致シマ
シテ、サウシテ具サニ審査ヲ致シタノデア
リマス、故ニ日數ガ甚ダ短イ割合ニハ、質
疑應答ノ分量ハナカ〓〓豐富デアルノデア
リマス、實ハ此處カラ引拔キマシテ、御紹
介ヲ申シマスト云フコトハ實ニ困難ヲ感ズ
ルノデアリマツテ、誠ニ名質問ガ澤山ニ續
出セラレタノデアリマス、併シ之ヲ一々此
ノ席デ以テ羅列シテ御紹介申上ゲマスト云
フコトハ、時間ノ關係上出來得ナイノデア
リマスルカラ、此處デ御披露漏レニナリマ
シタ質疑應答ノ點ニ付キマシテハ、何卒御
容赦ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、實ハ
是等委員會ノ速記錄ハ非常ニ輻輳シテ居リ
マシテ、此ノ二十日ニ政府ノ說明ヲ聽キマ
シタ議事速記錄ダケシカマダ我々委員ノ手
ニハ渡ッテ居ラヌノデアリマス、從ヒマシテ
此ノ質疑應答ヲ御參考迄ニ申上ゲタモノノ
中ニ、私ノ記憶違ヒ、記憶漏レモ少クナイデ
アラウト思ヒマスシ、或ハ又間違ッタ點モア
ルカモ知レヌト思フノデアリマス、ドウカ
大ナル間違ガアリマシタナラバ、特別委員
ノ中ノ先輩、僚友ノ方々カラ然ルベク御訂
正ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、而シテ
此ノ數多ノ質疑ガ終了致シマシタノデ、本
日薄暮ノ頃、夕刻ニ迫リマシテカラ、討議
ニ入ッタノデアリマス、先ヅ此ノ諸法案ノ中
デ、衆議院ノ修正ノ加ッテ居リマスル相續
稅法中改正法律案ト支那事變特別稅法案ヲ
一括シテ議題ニ供シマシテ討議ニ付シタノ
デアリマス、一委員ヨリハ、次ノ要旨ノ贊
成意見ノ陳述ガアリマシタ、卽チ法案ノ內
容ニ付テハ如何カト思ハレル點モアルカラ、
若シ餘日ガアルナラバ色々論議スベキ
コトモ生ジテ來ルト思フガ、先ヅ大體
ニ於テ差支アルマイト考ヘルシ、其ノ缺
點トシテ檢討セラレシ所ハ、政府ニ於テモ
今後〓究シテ之ヲ尊重スルトノ言明ガ
アッタカラ、旁〓此ノ修正案通リニ可決シ
テ然ルベキモノト思フノデアル、又法案ノ
運用ノ上ニモ意見ガ種々出テ御尤ト思フ御
意思モアッタ、政府モ苛斂誅求ヲスルトカ、
濫ニ誤解ヲナシタリ又獨善ニ陷ルコトノナ
イヤウニ注意スルトノ言明モアッタコトデ
アルガ、此ノ言明ヲ必ズ實行スルコトヲ切
ニ望ムト云フ意味デ、本案ヲ贊成スルノデ
アルト述ベラレタノデアリマス、又他ノ一
委員ハ、只今ノ委員ノ贊成ノ趣旨ニハ同感
デアルガ、更ニ稅法ハ極メテ複雜巧妙ニ出
來テ居ル、專門家ナラバ明瞭ニ理解セラレ
ルデアラウガ、納稅者ノ側カラ見タナラバ
混雜シテ見エルデアラウ、從ッテ納稅者ガ納
得ガ出來ナイ感ジヲ懷クデアラウト思フガ
故ニ、政府ハ根本的稅制ノ調整ノ必要ガア
ルケレドモ、此ノ場合極力納稅者ヲシテ納
得出來ルヤウニ努力セラレムコトヲ望ンデ、
贊成ノ意見ヲ表セラレタノデアリマス、又
他ノ一委員ヨリハ、前二人ノ委員ノ方ノ論
旨ハ固ヨリ同樣ノ贊意ヲ表スルノデアルガ、
稅法ガ如何ニモ複雜ニ亙ッテ居ル、物品稅ノ
如キハ或種類ノモノダケデアッタノヲ、今囘
ソレヲ擴張シテ課稅スルト云フコトニナル
カラ、納稅者ノ方ニ於テモ、又徵稅者側ニ
於テモ不慣レデ居ル爲ニ、納稅者側モ、惡
意デナク、或ハ手落ノアルト云フコトモア
ルカモ知レヌト思フ、收稅官吏ニ於テハ徵
稅上苛酷ノコトノナイヤウニ取扱ッテ貰ヒ
タイ、餘リ嚴重ニナサルト云フト產業ノ進
展ヲ阻害スル憂ガアルト思フ、殊ニ小サナ
資本ヲ持ッテ營業スル向キモ少クナイカラ、
此ノ邊ハ深ク留意アリタイ旨ヲ述べラレマ
シテ贊成ノ意ヲ表サレタノデアリマス、而
シテ他ニ發言スル方モゴザイマセヌ故ニ、
採決ニ付シマシタ所ガ、全會一致ヲ以テ此
ノ二案ニ對シマシテハ、衆議院修正通リニ
可決ニ相成ッタ次第デアリマス、而シテ殘ル
所ノ十一法案ヲ一括致シマシテ議題ニ供シ
マシテ、討議ニ付シマシタ所ガ、別段ノ御
發言モゴザリマセヌガ故ニ、採決ニ問ヒマ
シタ所ガ是亦異議ナク、十一法案モ全部、
政府原案ノ通リニ可決ニ相成ッタ次第デア
リマス、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=128
-
129・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、十三案ノ採決ヲ致シマス、各案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=129
-
130・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=130
-
131・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=131
-
132・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=132
-
133・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=133
-
134・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=134
-
135・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 各案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、各案全部、委員長ノ報〓通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=135
-
136・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=136
-
137・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=137
-
138・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=138
-
139・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=139
-
140・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=140
-
141・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 各案ノ第三讀會
ヲ開キマス、各案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=141
-
142・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=142
-
143・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 委員長ヨリ報〓
書ノ提出ガアリマシタ兌換銀行劵ノ保證發
行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案、印刷局
据置運轉資本補足ニ關スル法律案、昭和九
年法律第七號中改正法律案、昭和十三年法
律第六號中改正法律案、昭和十一年度第一
豫備金支出ノ件、昭和十一年度特別會計第
一豫備金支出ノ件、昭和十一年度特別會計
豫備費支出ノ件、昭和十一年度滿洲事件第
一豫備金支出ノ件、昭和十二年度第二豫備
金支出ノ件、昭和十二年度特別會計第二豫
備金支出ノ件、昭和十二年度特別會計豫備
金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件、以
上十一案ヲ此ノ際議事日程ニ追加一括シテ
議題トナシ、委員長ノ報〓ヲ煩シタイト存
ジマス、御異議ガゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=143
-
144・松平頼壽
○議長(伯爵松平頼壽君) 御異議ナイト認
メマス、大岡子爵
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵大岡忠綱
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
印刷局据置運轉資本補足ニ關スル法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵大岡忠綱
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和九年法律第七號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵大岡忠綱
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十三年法律第六號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵大岡忠綱
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十一年度第一豫備金支出ノ件、昭
和十一年度特別會計第一豫備金支出ノ
件、昭和十一年度特別會計豫備費支出
ノ件、昭和十一年度滿洲事件第一豫備
金支出ノ件、昭和十二年度第二豫備金
支出ノ件、昭和十二年度特別會計第二
豫備金支出ノ件、昭和十二年度特別會
計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支
出ノ件
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十三年三月二十四日
委員長子爵大岡忠綱
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵大岡忠綱君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=144
-
145・大岡忠綱
○子爵大岡忠綱君 只今上程ニ相成リマシ
タ兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ
關スル法律案、特別委員會ノ審議ノ經過竝ニ
結果ニ付テ御報告申上ゲマス、本委員會ニ
付託サレマシタ議案ハ、法律案四件、承諾
ヲ求メル件七件デアリマシテ、是等議案ノ
內容ニ付キマシテハ、本會議ニ於テ既ニ政
府ヨリ說明ガアリマシタノデアリマスガ、
今其ノ大要ヲ申述ベマスト、第一ハ兌換銀
行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ關スル法
律案デアリマス、本法律案ハ今囘ノ事變ニ
關聯シテ兌換銀行劵ノ發行高ノ增加スル趨
勢ニ對處スル爲、臨時ニ兌換銀行券ノ保證
發行限度ヲ七億圓ダケ擴張シテ十七億圓ト
スルモノデアリマス、第二印刷局据置運轉
資本補足ニ關スル法律案デアリマス、此ノ
法律案ハ印刷局ニ於ケル各種製造品ノ數量
ガ著シク增加シマシテ、同特別會計ノ現在
ノ据置運轉資本百萬圓ヲ以テシテハ、事業
遂行上時ニ困難ヲ伴ヒマスノデ、本法律案
ニ依リ借入金ヲナシ、一時其ノ不足ヲ補足
スル途ヲ講ジ、其ノ際國庫ノ餘裕金ガアリ
マシタ場合ニ於テハ、之ヲ繰替使用シ得ル
ヤウニ致シ、事業遂行ノ圓滑ヲ期セムトス
ルモノデアリマス、第三ハ昭和九年法律第
七號中改正法律案デアリマス、昭和九年法
律第七號ハ滿洲事件ニ關シ陸海軍軍人其ノ
他ニ對シ、一時賜金トシテ交付スル所ノ公
債五千八百四十萬圓ヲ發行スルコトニ關ス
ルモノデアリマスガ、今囘賜金ヲ與ヘラル
ル人員ガ增加致シマシタノデ、本法律案ニ
依リ右ノ公債發行限度ヲ四百二十萬圓ダケ
增加シ、總額ヲ六千二百六十萬圓ト改メヨ
ウトスルノデアリマス、第四ハ昭和十三年
法律第六號中改正法律案デアリマス、昭和
十三年法律第六號ハ、昭和十三年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲赤字公債ヲ發行ス
ルコトニ關スル法律デアリマス、卽チ昭和
十三年度追加豫算案第一一號乃至第三號ニ計
上シテアリマスル經費ノ所要財源ノ一部ニ
充ツル爲本改正法律案ニ依リ右赤字公債ノ
發行限度ヲ二億三千九百六十萬圓ダケ增加
セムトスルモノデアリマス、最後ハ昭和十
一年度第一豫備金支出外六件ノ事後承諾ニ
關スルモノデアリマス、以上各種ノ法律案
及事後承諾案ニ付テ委員會ニ於キマシテハ
政府當局ノ詳細ナル說明ヲ求メ、又種々質
問應答ヲ重ネマシテ愼重審議ヲ致シタノデ
アリマスガ、就中兌換銀行劵ノ保證限度ノ
臨時擴張ニ關スル法律案ハ特ニ重要ナ法案
デアリマスノデ、質疑應答モ右法律案ニ關
スルモノガ多カッタノデアリマス、委員會ノ
審議ノ經過ノ大要ニ付キマシテハ速記錄ニ
依リ御承知ヲ願フコトト致シマシテ、今其
ノ主要ナル問題ニ付此處ニ御報告致シマス
ト、先ヅ兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時
擴張額ヲ七億圓ト定メマシタ根據ニ付キマ
シテハ、政府ヨリ大要左ノ如キ說明ガアッタ
ノデアリマス、卽チ事變勃發以來ニ於ケ
ル軍事支出額ト、之ニ基ク公債兌換銀行
劵ノ平均發行高增加額トノ割合デアリマス
トカ、最近五箇年間ニ於ケル國債ノ新規發
行高ト、兌換銀行劵ノ平均發行高增加額ト
ノ割合デアリマストカ云フモノヲ基礎ニ致
シ、將來支出スベキ軍事費ヨリ推算致シマ
スト、本年度ニ於ケル兌換銀行劵ノ平均發
行高ノ增加見込額トシテ五億圓乃至六億圓程
度ノ數字ヲ得ラレマスノデ、之ニ多少裕リヲ
見込ンデ七億圓ト定メタトノコトデアリマス、
次ニ今囘ノ保證發行限度ノ擴張ハ低金利促
進ノ意味ヲ含ムノデアルカ、又政府ハ低金
利ヲ人爲的ニ促進スル意思ガアルカトノ質
問ニ對シマシテ、政府ヨリ何レモ然ラザル旨
ノ答辯ガアリマシタ、次ニ將來ヲ見越シテ
保證發行限度ヲ擴張スル時ハ兌換劵ノ發行
ヲ放漫ナラシムル虞ハナイカトノ質問ガア
リマシタ、之ニ對シ政府ハ此ノ點ニ付テハ
經濟界ノ實勢ニ卽シ兌換劵ノ發行ヲ行ハシ
ムル方針デアッテ、十分其ノ運用ニ留意スベキ
旨ノ答辯ガアリマシタ、次ニ現在日本銀行
ノ正貨準備八億餘萬圓ハ將來モ之ヲ維持ス
ル考デアルカトノ質疑ニ對シ、政府ハ之ヲ
維持スル考デアルト云フ答辯ガアリマシタ、
更ニ本案ハ支那事變終了後一年以內ニ之ヲ
廢止スルトセラレテ居ルガ、其ノ際ニ政府
ハ如何ナル處置ヲ講ズル意向デアルカトノ
質問ニ對シマシテハ、政府ハ其ノ際ノ兌換
劵ノ發行情況等ニ應ジ單ニ本法ヲ廢止スル
手續ヲ執ルカ、或ハ兌換銀行劵條例ヲ改正
スル等適宜ノ處置ヲ講ジタイ考デアルトノ
旨ヲ答ヘラレマシタ、尙世間ニハ現在日本
銀行ノ保有スル正貨準備ノ將來ニ關シ種々
ナル疑惑ガ存スル模樣デアルガ、政府ハ
斯カル疑惑ヲ生ゼシムルコトノナイヤウ善
處セラレタイ旨ノ希望ガ開陳セラレマシ
ク、此ノ外他ノ議案ニ付キマシテモ種々質
疑應答ヲ重ネ、次イデ討論ヲ經テ採決ニ入
リマシタ、何レモ現下ノ財政經濟情況等ニ
顧ミマシテモ適當ナルモノト認メ、全會一
致ヲ以テ法律案ニ付テハ原案ノ通リ可決
シ、事後承諾案ニ付テハ承諾ヲ與ヘルコト
ニ決定シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=145
-
146・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ是ヨリ採決ヲ致シマス、先ヅ法律案
四案ニ付キマシテ採決ヲ致シマス、四案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=146
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147・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=147
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148・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=148
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149・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=149
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150・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=150
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151・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=151
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152・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 四案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、四案全部委員長ノ報告通リデ
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=152
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153・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=153
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154・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=154
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155・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=155
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156・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=156
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157・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=157
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158・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 四案ノ第三讀會
ヲ開キマス、四案全部二讀會ノ決議通リデ
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=158
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159・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=159
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160・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次ニ七件ノ承諾
ヲ求ムル件ノ採決ヲ致シマス、七件ニ對シ
委員長ノ報告通リデ承諾ヲ與フルコトニ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=160
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161・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=161
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162・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 明日ハ午前十時
ヨリ開會致シマス、議事日程ハ決定次第彙
報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ
散會致シマス
午後九時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007303242X03019380324&spkNum=162
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