1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
恩給金庫法案(政府提出)
恩給法中改正法律案(政府提出)
庶民金庫法案(政府提出)
無盡業法中改正法律案(政府提出)
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會議
昭和十三年二月二十一日(月曜日)午後一時三十六分開議
出席委員左の如し
委員長 前田房之助君
理事 坂東幸太郎君 理事 江藤源九郎君
理事 最上政三君 理事 森幸太郎君
松田正一君 清水徳太郎君
川合直次君 高橋義次君
村瀬武男君 小高長三郎君
依光好秋君 馬岡次郎君
曾和義弌君 林路一君
松本治一郎君 今井新造君
出席政府委員左の如し
内閣恩給局長 高木三郎君
法制局長官 船田中君
法制局參事官 樋貝詮三君
企畫院總裁 瀧正雄君
陸軍政務次官 加藤久米四郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
恩給金庫法案(政府提出)
恩給法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=0
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001・前田房之助
○前田委員長 是ヨリ開會致シマス、去ル
十五日本會議ニ於テ恩給法中改正法律案審
議ノ際ノ答辯ニ關シ、陸軍政府委員ヨリ其
說明ヲ補足シタイト云フ發言ノ要求ガアリ
マス、之ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=1
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002・加藤久米四郎
○加藤政府委員 過日本會議ニ於テ恩給法
改正案審議ノ際、最上政三君ノ御質問ニ
御答致シマシタ答辯ノ中、一時賜金ノ增額
ノ意味ヲ申シマシタコトニ關シ、其趣旨ヲ
明ニ致シテ置キタイト存ジマス、卽チ昨年
十月上旬ニ改正セラレマシタモノノ中、增
額セラレマシタモノハ戰傷死者以外ノモノ
ニ對シテノ增額及ビ事變地以外ノ死歿者ニ
對スル賜金ヲ新ニ設ケラレタノデアリマス、
此事ヲ申述ベタノデアリマス
次ニ從來ノ率ヲ改正致シマシタ、卽チ下
ニ厚ク上ニ薄イ意味ヲ申述ベマシタコト
ハ、遺族扶助料ニ關シテ申述ベタノデアリ
マスガ、言葉ノ不足ノ爲ニ、萬一誤解ヲ招
ク虞アリト存ジマシテ、改メテ玆ニ明ニシ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=2
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003・前田房之助
○前田委員長 前囘御諮リ申上ゲタ如ク、
先ヅ恩給金庫法案、恩給法中改正法律案ニ
付テノ質疑ヲ行フコトニ致シマス、通〓順
ニ依ッテ質疑ヲ許シマス--最上政三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=3
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004・最上政三
○最上委員 私ハ本案ニ關聯シテ先ヅ質疑
ニ入ルニ先立ッテ、瀧企畫院總裁ニ一二御伺
致シタイト存ズル者デアリマス、ソレハ他
デモアリマセヌガ、去ル十五日ノ東京日々
新聞ニ揭載セラレタ一節デアリマス、其內
容ハ十四日貴族院五派代表者ニ對シテ、今囘
政府ヨリ提案サレタ國家總動員ノ内容說明
ニ當ッテ、瀧總裁ハ斯ウ云フコトヲ述ベラレ
タト記載サレテ居リマス、卽チ今日將兵ハ
戰場ニ於テ身命ヲ捧ゲテ御奉公申上ゲテ居
ル際デアルカラ、銃後モ亦必要ナ場合ハ一
切ヲ犧牲ニシテ御奉公申上グベキデハナイ
カ、故ニ本案ニ對スル論議ニ當ッテモ、所有
權トカ憲法論トカヲ振廻シテ議論スベキ時
デハナイ云々ト云フ記事ヲ拜見致シタノデ
アリマス、私ハ此席上デハ所有權デアルト
カ、憲法論ニ付テ總裁ニ聞カウトスルノデ
ハナイノデアリマス、總裁ノ心境ガ、當時
遠ク北支ノ戰線、或ハ中支ノ戰線ニ每日辛
苦艱難ヲシテ居ル將兵ヲ思ウ赤誠カラ斯ノ
如キ說ガ出タモノナリト信ズルノデアリマ
スガ、總裁ノ其當時ノ氣持ヲ此處デ御發表
願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=4
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005・瀧正雄
○瀧政府委員 最上サンノ御質問ハ、私カ
ラ見マスルト、大變御親切ナル御質問ノヤ
ウニ感ゼラレマス、ト云フノハ、大變誤解
ヲ傳ヘテ居リマスノデ、好イ機會ヲ與ヘテ
戴イタト云フ感ジガスルカラデゴザイマス、
貴族院ノアノ時ノ會合ハ、新聞ノ方モ御入
リニナラヌシ、速記モ取ラナカッタ會デア
リマスルカラ、私ガ話ガ間違ッテ居リマス
ト申シマシテモ、中々證據ガアリマセヌ、
デアリマスカラ、私ハ實ハ言譯ヲスルトカ
何トカ云フコトニ關シテハ、考ヘテ居マシ
タケレドモ、實ハ止メタノデス、幸ヒ今好
イ機會ヲ與ヘテ戴イテ、此處ニ其當時ノ模
樣ヲ申上ゲル機會ヲ得タノヲ喜ブ次第デア
リマスガ、實ハ其時ニハ憲法論ダケ質問ガ
出テ來タノデアリマス、サウシテ其憲法論
ニ對シテ私ハ答ヘテシマッテ、殆ド質問應答
ヲ終ッタ頃デシタ、私ハ斯ウ云フコトヲ申シ
タノデス「色々憲法論ガアリマスルケレド
モ、私共ガ此法案ヲ立案シタ氣分ハ斯ウ云
フコトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
ハ······」ト言ッテ申述ベタノハ、「只今ノ將兵ガ
支那デ戰ッテ居ル、斯ウ云フコトデハナイノ
デス、歐洲戰爭ニ於テ、將兵ガ戰場デ戰ッ
テ、歸ッテ來テ見ルト、一方ニ於テハ樂ヲス
ル人ハ大變樂ヲシテ居ル、又軍需工業ナド
ニ關係シテ居ル人ハ金ヲ儲ケテ、一方原料
ニ不足ヲ感ジタ人ハ工場ガヤリ切レナイト
云フヤウナ、非常ナ不公平ガアッタノデス、
其不公平ガ偶〓不平、不滿ヲ起サセル導火線
トナッテ、玆ニ思想問題ガ起ッタリ色々ナ革
命騷ギガ起ッタノデス、露西亞モサウデア
リ、獨逸ニモ其形勢ガ現レ、伊太利ニモ勞
働者ノ運動ガ起ツタ、サウ云フ不平、不滿ノ
因ハ、不公平カラ出テ參リマスノデ、玆ニ
國民ガ一般ニ犧牲的精神ヲ發揮スルト云フ
立前ニスルコトガ不公平ヲ除去シテ無理ヲ
無クスル、サウナルト不平ガ起ラナイ、斯
ウ云フ所ニ著眼ヲ致シマシテ、道義的根據
ニ基イテ斯ウ云フ立案ヲシタノデス」ト、斯
ウ云フコトヲ話シタノデス、現在ノ支那事
變ニ關シテノ話デハ實ハアリマセヌデシ
ク、隨テ憲法論ヲスベキ時期ニアラズト云
フコトモ實ハ言ッテ居ナイノデス、其時ニサ
ウ云フ言葉ハ少シモ使ッテ居リマセヌ、併シ
偶〓憲法論バカリ出タ後デ「色々憲法論モア
リマスケレドモ、斯ウ云フコトヲ考ヘタノ
デス」ト、斯ウ私ガ言ッタモノデスカラ、聽イ
タ人ハサウ云フ風ニ感ゼラレタカモ知レマ
セヌガ、內容ハ其通リナノデアリマス、サ
ウシテ私ノ其話シマシタ後デ、又憲法論ガ
出テ居ルノデス、其言葉ヲ御聽キ下サイマ
スト、私ガ「憲法論ヲスベキ時期ニアラズ」
ト言ハナカッタト云フコトガ明白ニナリ
マス、ト云フノハ、後デ出タノハ「アナタノハ
軍需工業動員法ト今度ノ國家總動員法トノ
間ニ程度ノ差ダト仰シヤイマスガ、其程度
ノ差ガ實ハ大變ナ、憲法ニハ重大ナル意義
ヲ持ッテ來マスカラ、吾々ハ程度ノ差ヲ非
常ニ重ク見テ居リマス」此一言デ會ガ終ッテ
居リマス、若シ私ガ憲法ノ議論ヲスベキ時
期ニアラズ-實ハ所有權ト云フヤウナ言
葉モ使ッテ居ナイノデス、一言モ使ッテ居ナ
イノデスガ、時期ニアラズトデモ假ニ言ッタ
ト假定シマスト、次ノ質問者ガ「法律ノ議
論ヲスル時ニ憲法ノ議論ヲシテハイケナイ
ト云フヤウナコトハ怪シカラヌヂヤナイカ」
ト必ズ出ナケレバナラヌ筈デアリマスガ、
サウ云フ議論ハ出テ居リマセヌ、ソコデ實
ハアノ言葉ト言ヒマスカ、ソレガアノ會合
デハ一口モ問題ニナッテ居ナイ、然ルニ其會
合ガ終ッテ、ドウシテ間違ッテ出タモノカ、
新聞ノ記事ガ出タモノデスカラ、其新聞ノ記
事ニ付テ世間デ問題ニナッテ居ルダケデ、會
合ノ中デハ、サウ云フコトハ一言モ問題ニ
ナッテ居リマセヌ、何故ニサウ云フ記事ガ
出タカ、ソレハドウカト云フコトニ對シテ
ハ、實ハ取消ト云フヤウナコトモ考ヘナイ
ノデハアリマセヌ、ケレドモ私色々考ヘマ
シタ、考ヘマシタガ、結局私ハ默ッテ置イ
タノデス、私自身ガ言譯ヲシナケレバ、私
ノ心事ヲ了解シテ下サル方ガ無イ、サウ云
フ私ナラバ、言ヒ譯ヲシテ見タ所デ證據モ
何モアリマセヌカラ、信任セラレルカドウ
カ分ラヌ、宜シイト云フ考デ實ハ今日マデ
來タ次第デゴザイマス、最上サンノ御質問
ヲ御親切ナル御質問ト感ズルノハ其爲デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=5
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006・最上政三
○最上委員 只今瀧總裁ノ御說明ニ依ッテ
大體當時ノ記事ノ如何デアッタカヲ了承致
シマシタ、其意思ヲ忖度スルト、當時ノ說
明ハ例トシテ歐洲大戰後ニ於ケル各國ノ
情勢ヲ擧ゲラレタト思ハレル、卽チ獨逸、
伊太利等ニ於テハ、戰後凱旋將士ガ待遇
其他ノ不公平ノ爲ニ幾多ノ問題ヲ起シタト
云フコトモ私承知シテ居リマス、彼ノ伊太
利ニ於ケル「ムッソリーニ」ガ伊太利ノ
天下ヲ取ッタコトモヤハリサウ云フ結果カ
ラ到達シタモノナリト信ジテ居リマスガ、
之ニ依ッテ瀧總裁ノ心境ガ那邊ニアッタカヲ
私承知スルコトガ出來マス
偖テ瀧總裁ガサウ云フ御心境デアラレル
ト云フ點ニ對シテ、ソレニ關聯シテ御聽シ
タイノハ、昨年總裁ガ法制局長官御在職時
代ニ、當時戰死者ニ對スル一時賜金、之ヲ
嚴格ナ言葉デ申シマスレバ、特別賜金ヲ現
在ノ支給額デハ甚ダ薄イ此コトハ後デ詳シ
ク申上ゲマスガ、薄イト云フ結果カラ政府
ノ一部デハ增額案ヲ立テラレタト傳ヘ聞イ
テ居リマス、特ニ瀧當時ノ長官ハ、此賜金ノ
增額ヲ主張セラレテ居ッタサウデアリマス、
其事實ハ當時一二ノ新聞ニモ現レ、其金額
五千圓ヲ算セラレテ居ルノデアリマス、而
モ其內容ハ上下ノ別ナク、尉官下士兵ノ別
ナク五千圓ヲ支給スルト云フ詳シイ新聞記
事ガ現レタノデアリマス、又此問題ニ付テ
ハ一部政府有力者ニ於テモ贊成デアルト云
フコトモ仄カニ聞イテ居ッタノデアリマス、
之ニ付テ總裁ハ、當時ノ事情ニ付テ承知シ
テ居ル點ダケヲ此處デ御說明ヲ願ヒタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=6
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007・瀧正雄
○瀧政府委員 法制局長官時代ト云フ御言
葉デアリマシタガ、實ハ其話ノ起ッタノハ企
畫院總裁就任後デゴザイマス、サウシテサ
ウ云フヤウナ話ヲ私ニ入智慧ヲシテ下サッタ
友人ガ他ニアリマス、其注意ト言ヒマスカ、
入智慧ト申シマスカ、新聞ニ現レタヤウナ
類似ノ點ニ付テ企畫院デ調査ヲ始メマシタ
ノハ事實デアリマス、併シ新聞ニ話シタト
云フコトハアリマセヌ、如何ニシテソレガ
漏レタカハ私存ジマセヌガ、漏レタノデス、
勿論話モ多少違ッテ漏レテ居リマス、サウ
云フヤウナ考ヲ〓究ヲ始メタト云フコトハ、
友人ニハ私ハ話シタコトガアリマス、隨テ
ドウシテ漏レテ行ッタカト云フコトハ私ニ
ハ分リマセヌケレドモ漏レタ次第デアリマ
ス、直チニ取消サウカト思ヒマシタケレド
モ、實ハ調査ハ本當ニヤッテ居ルノデス、類
似ノ調査ヲヤッテ居ルノデス、企畫院ト云フ
所ハ各省トノ協調ヲ保チマシテ、自分勝手
ノ立案ヲシナイ所デアリマスルガ、サウ云フ
方針ノ下ニ調査ハヤッテ來テ居リマス、ダカ
ラ取消スニモ取消シヤウハナク、漏レタノ
ヲ非常ニ遣憾ト思ヒマシタケレドモ、ドウ
シテサウ云フ記事ガ出タノカ分リマセヌ、
勿論私ノ談話デハアリマセヌ、ソレガ眞相
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=7
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008・最上政三
○最上委員 只今瀧總裁ハ企畫院總裁ニナツ
テカラノ問題ト云フヤウナ御話デアリマシ
タガ、私ノ聞ク所ニ依ルト、企畫院ノ組織
サレタノハ十月二十五日アッテ、總裁ノ任命
サレタノモ十月二十五日デアルト思ヒマス、
併シソレ以前、調査局當時カラ此問題ハ多
少論議サレテ居ッタモノナリト私ハ信ズル
ノデアリマスガ、ソレハ兎モ角トシテ、然ラ
バ其五千圓ノ計算ノ根據ヲ何處ニ置イタカ
之ヲ先ヅ御伺シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=8
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009・瀧正雄
○瀧政府委員 ソレハ成案デハアリマセヌ、
成案デハアリマセヌカラ、色々ノ話ガ出タ
ト云フダケデ根據モ何モアリマセヌ、是カ
ラ調査ヲシヨウト云フ時ニ、其近邊ノ數字
モ名稱モ出マシタシ、色々ナ意見ハ出テ居
リマスガ、根據ガアッテ斯ウ確定スルトカ、
方針ヲ決メルト云フ話デハアリマセヌデシ
タ、サウシテ企畫院總裁就任以前ノコトハ、
實ハ私能ク知リマセヌノデ、或ハ仰シヤル
ヤウナコトデアッタカモ知レマセヌガ、私
ノ知ッテ居ル範圍ヲ今申上ゲタ」次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=9
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010・最上政三
○最上委員 其後此問題ニ付テ企畫院ニ於
テハ如何ナル態度ニ出テ居ラレルカ、又依
然トシテ調査ヲ進メテ居ラレルカ更ニ御尋
シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=10
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011・瀧正雄
○瀧政府委員 調査ハズウットソレカラ受
持ノ方ノ部ニ於テシテ居ラレマシタケレド
モ中々纏ラヌノデス、各省ノ成ベク相剋摩
擦ヲ避ケテ圓滿ニ行キタイト云フ方針デヤッ
テ居リマスノデ、結果ハ只今現レタヤウナ
結果ニ相成ッタコトト御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=11
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012・最上政三
○最上委員 私ノ知ル所デハ初メ企畫院ニ
於テハ大體五千圓方針デ進ミ、又關係陸海
軍當局ニ於テモソレヲ認メテ、一時是ガ具
體化サントシテ居ッタ時ニ、豫算關係デ大
藏省方面ニ於テ反對サレ遂ニ是ガ有耶無耶
ニ葬ラレタモノナリト聞キ傳ヘラレテ居ル
ノデアリマスガ、斯ウ云フ事實ガアッタノ
デアリマスカ、其點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=12
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013・瀧正雄
○瀧政府委員 內部ノ事情ニ付テハ御答ヲ
差控ヘタイト思ヒマス、結果ハ只今提案ニナッ
タヤウナコトト御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=13
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014・最上政三
○最上委員 私ハ只今總裁ノ御答辯ヲ聽イ
テ、是以上突込ンダ話ハ伺ヒマセヌガ、唯
世間デハ瀧總裁ガ曾テ代議士時代、法制局
長官時代ニ、選擧區デアル某師團管下ニ澤
山ナ戰死傷者ガ出來タ、之ニ對シテ國民トシ
テ之ヲ哀悼シ、大イニ敬弔ヲスルコトハ勿論
デアリマスガ、特ニ瀧總裁ハ選擧區內ニ於
ケル所ノ幾多ノ戰死傷者ノ實情ヲ見テ、眞
ニ是等戰死傷者ノ遺家族ヲ慰藉シナケレバ
ナラヌト云フ考カラ、此五千圓說モ出タモ
ノデアルトノ說サヘアルノデス、然ルニ其
後瀧總裁ガ企畫院總裁ニ就任後、隨テ代議
士ヲ辭職セラレ、身官吏トナッタ今日ハドウ
モ之ニ對シテ餘リ熱意ガ足ラナイト云フ巷
間臆測スル者スラアルノデアリマス、私ハ
決シテ總裁ノ心事ニ付テ兎ヤ斯ウ言フノデ
ハアリマセヌガ、ドウカサウ云フ世間ノ誤
解ヲ招クヤウナ虞アル今日デアリマスカラ、
今後トモ此一時賜金ノ問題ニ付テハ相當調
査〓究ヲシテ、成ベク今囘ノ戰死者ニ對シ
テハ增額セル所ノ特別賜金ヲ支給サレルヤ
ウニ努力ヲ拂ハレンコトヲ御願シタイト云
フコトヲ一言附加ヘテ總裁ニ對スル質疑ヲ
終リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=14
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015・瀧正雄
○瀧政府委員 洵ニ御親切ナ御注意デ有難
ク感謝致シマス、若シサウ云フ意味デ御尋
下サイマシタトスレバ、明白ニ御答シテ置
キマスガ、問題ノ私ヲ繞ッテ起ッタノハ企畫
院總裁ニナッタ以後ノコトデアリマス、私ガ
サウ云フヤウナ問題ニ付テ新聞ニ出タル類
似ノ〓究ニ付テ考ヘ出シタノハ選擧區ノコ
トヲ考ヘテト云フノデハアリマセヌ、私
入レ智慧シタノハ京都ノ人デゴザイマス、
京都ノ人ガ國家ノ大勢ヲ考ヘテ私ニ注意サ
レタノデ、ソレニ基イテサウ云フ考ヲ一ツ
〓究シテ見マセウト言ヒ掛ケタノデアリマ
シテ、代議士ヲ辭任シタ後ノコトデアリマ
ス、選擧區ノ事情ヲ知ッテ考ヘ出シタノデモ
アリマセヌ、入レ智慧シタ人ハ國家ノ爲ニ
言ヲ爲シテ居ル人デゴザイマス、其點モ折
角ノ御親切ナ御質問デアリマスカラ、御諒
承ヲ願ッテ置キタイト思ヒマス、兎モ角努力
セヨト云フ御注意ニ對シ、國家ノ爲ニ相變
ラズ勉强ヲシテ行キタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=15
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016・最上政三
○最上委員 私ハ以下法制局長官ニ對シ本
案ニ付テノ質疑ヲ致シタイト思ヒマス、ソ
レニ先立ッテ只今陸軍カラ配布サレタ戰死
者ノ賜金一覽表ヲ見ルト私ガ聽カウトシタ
點ガ他ノ賜金ト合算シテアッテ、吾々素人ニ
ハ能ク分リ惡イノデアリマスカラ、何レ是
等ノ問題ニ付テハ政府委員カラ直接聽クコ
トトシテ、私バ直チニ法制局長官ニ對スル
質疑ニ入ルコトト致シマス、法制局長官ハ
去ル本會議ニ於テ色々恩給法改正法案ニ付
テ御說明ノ中、遺族扶助料ニ對シテ、多額ナ
ル、引上ヲ爲シタト云フ御說明ガアリマシ
タガ、其內容ヲ見ルト、長官ノ言フガ如ク上
ニ薄ク下ニ厚ク、增加率ノ如キモ例ヲ見ナ
イ所ノ約二割乃至八割ノ增額ヲサレテ居ル
コトハ、表ダケ見レバ事實デアリマス、唯現
行ノ遺族扶助料ガ甚ダ少額デアッタノデア
リマス、今私ハ玆ニ家族三人以下ノ兵ノ遺
族扶助料ニ付テ計算シテ見マスト、改正後
ノ扶助料ハドノ位デアルカト申シマスルト、
三百二十四圓デアリマス、之ヲ改正前ノ五
年間ノ三割增ノ金額ト比較シテ見ルト、從
來デモ二百三十四圓ダケ支給サレテ居ルノ
デアリマス、然ルニ改正法ニ依ルト三百二
十四圓デアリマスカラ、其差ガ僅ニ年額九
十圓デアル、而モ之ヲ月額ニスルト七圓五
十錢ノ增額デアリマスガ、是ガ法制局長官
ノ言ハルヽ所ノ大幅ナ增額デアルノデアリ
マセウカ、此點私ノ計算ガ誤リデアルカド
ウカ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=16
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017・船田中
○船田政府委員 此點ハ先般本會議ニ於
テモ申上ゲマシタヤウニ、只今御指摘ニナ
リマシタヤウニ、非常ニ多額ノ增額ト云フ
譯ニハ參ラヌカモ知レマセヌケレドモ、政
府ト致シマシテハ此程度ヲ以テ先ヅ一應滿
足スルノ外ハナイト考へテ居リマス、ソレ
ハ多イ程宜イノデアリマスガ、併シ御承知
ノ通リ恩給金額ト云フモノハ年々增加ヲ致
シテ居リマス、而モソレハ經常的ニ增加ヲ
致スノデアリマスカラ、諸般ノ情勢ヲ考ヘ
マスレバ、是デ十分滿足ダ、殊ニ個々ノ遺
族ニ對シテ是デ十分ダト云フ人ハナイカモ
知レマセヌ、或ハ是デハ甚シク不足ヲスル
ト云フ家族ノ方モ-遺族ノ方モアラレル
ト思フノデアリマス、併シ諸般ノ情勢カラ
考ヘマスト、先ヅ此程度ノ增額ニ止メルト
云フコトハ巳ムヲ得ナイ事情ニアルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=17
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018・最上政三
○最上委員 只今ノ御說明デ私ノ計算ノ誤
リナキコトヲ承知致シタノデアリマスガ、
サスレバ政府ガ非常ニ宣傳シ、「ラヂオ」其
他ニ依ッテ今囘ノ戰死者ニ對スル遺家族扶
助料ハ大幅ノ引上ヲ爲シタト云フ其增額ハ
僅カニ月額七圓五十錢デアッテ、一家ノ扶助
額ハ私ノ計算スル所ニ依ルト二十六圓餘デ
アリマス、是ガ兵ノ戰死者ニ對スル家族扶
助料デアルト思フタ時ニ、私ハ是デ-其
中ニハ今マデ相當ナル暮シヲシテ居ッタ人
モアリマセウガ、貧シイ暮シヲシテ居ッタ人
デモ月額二十六圓デ而モ愛スル夫ヲ失ヒ、
或ハ愛スル子ヲ失ッタ遺族ガ、永久ニ生活シ
ナケレバナラヌト云フコトハ戰死者ノ遺族
ニ對シテ國家ノ待遇トシテハ如何カト考ヘ
ルノデアリマス、私玆ニ一二ノ例ヲ引イテ
申上ゲテ、如何ニ戰死者ノ遺族ノ待遇ガ薄
イカヲ明ニシタイト思ヒマス、ソレハ今囘
政府ガ別表ヲ改正シテ、第二號表ノ甲號ノ
第七項ヲ新ニ加ヘタノデアリマス、是ハ政
府ノ說明トシテ新聞紙等ニ發表シタ所ニ依ツ
テ見マスト、今マデノ款ノ第一款ヲ上ゲテ
七項ニ改メタノデアッテ、其七項ノ說明ニ如
何ナルコトヲ言ッテ居ルカト申シマスト、此
第七項ニ關スル所ノ傷ノ程度ハ、拇指一本
ヲ失ッタ人、是ガ七項ニ相當スル者ナリト發
表シテ居ル次第デアリマス、然ラバソレ等
ノ人々ハドノ位ノ傷病年金ヲ支給サレルカ
ト申シマスト、普通恩給ノ兵デアリマスト
-私ノ以下言ハントスルノハ多ク兵デア
リマス-百八十圓、增加恩給ガ第七項ト
シテ二百三十圓デアリマスカラ、計四百十
圓ヲ拇指一本ヲ失ッタ人ニ與ヘラレルノデ
アルト、私ノ計算ニハ出マスガ、是ハ事實
デアリマスカドウカ、此點ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=18
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019・船田中
○船田政府委員 只今最上君ノ言ハレタ戰
死者ノ遺族ノ扶助料ガ非常ニ少ナイデハナイ
カト云フコトハ、此表ヲ能ク御覧覽サレバ
大體御諒解ヲ得ルコトト思フノデアリマシ
テ、其點ハ先般ノ本會議ノ御質問ニ對スル
私ノ答辯トシテモ申上ゲテ置イタノデアリ
マスガ、現行基本扶助料陸軍ノ二等兵ニ付
テ申セバ年額百五十圓、五年間三割增加ヲ
加ヘタル額ガ百九十五圓デス、而モ是ハ五
箇年間ダケガ三割增加ト云フコトデアッテ、
其五箇年ヲ經過シタ後ニ於テハ、現行基本
扶助料ノ百五十圓ニ還ルノデアリマス、所
ガ是ハ改正額ニ於キマシテ最低ガ二百七十
圓ニナリマス、只今最上君ノ御議論ニナリ
マシタ點ハ二百七十圓デハ少ナイデハナイ
カト云フ御質問デアリマシタガ、是ハ相當
ナ增額ニナッテ居ルノト、ソレカラ御承知ノ
通リ陸軍二等兵ガ戰死ヲサレタト云フヤウ
ナ場合ニ於テハ、是ハ殆ド例外ナシニ一等
兵ニ昇進致シマス、隨テ實際ノ扶助料ヲ支
給スル場合ニ於テ、陸軍二等兵ノ扶助料ヲ
支給スルト云フ場合ハ殆ド全クゴザイマセ
又、隨テドンナ場合ニ於キマシテモ陸軍一
等兵ノ最低支給額、卽チ改正額ニ依リマス
ト年額二百九十七圓、大體ニ於テ本會議
デ申上ゲマシタヤウニ月額二十五圓ト云フ
コトニナリマス、而モ今度ハ家族ノ員數ニ
應ジマシテ、例ヘバ五人以上家族ガアルト
云フ場合ヲ例ニ取ッテ見マスト、陸軍一等兵
ノ戰死者遺族扶助料ハ年額四百三十一圓ト
云フコトニナリマス、四百三十一圓ト云フ
金額ヲ、從來ノ陸軍一等兵ノ戰死者遺族扶
助料、卽チ五年間三割增ト云フモノヲ見マ
シテモ、ソレガ二百十五圓デアリマス、之ニ
比較致シマスト、正ニ倍ノ增加ニナッテ居リ
マス、隨テ政府ガ從來此恩給法ノ改正ニ付
キマシテ、戰死者遺族扶助料ニ付テ相當ナ
增額ヲ致シタト申シマシタコトハ、決シテ
過言デナイノデゴザイマス、此點ハ十分御
諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、此陸軍二等兵
ノ二百七十圓、或ハ家族五人以上ノ場合ヲ
考ヘテ三百九十二圓、ソレダケヲ御覽ニナ
レバ、是ハ如何ニモ少ナイト云フヤウニ御
考ニナルカモ知レマセヌガ、併シソレダケ
デモ、其基本額ダケデモ、從來ノ金額ニ比
較ヲ致シマシテ非常ナ增額デアル、サウシ
テ況ンヤ陸軍二等兵トシテノ扶助料ヲ受ケ
ルト云フ者ハ、殆ド絕對的ニナイノデアリ
マス、必ズ如何ナル場合ニ於テモ、其上ノ欄
ノ年額二百九十七圓ト云フノガ最低デア
リマスカラ、サウナリマスト、現行遺族扶
助料ニ比較致シマシテ非常ナ增額デアル、
場合ニ依ッテハ十六割何分ト云フヤウナ增
額ニナルト云フコトヲ申シマシタノハ決シ
テ誇張シテ申シタノデハアリマセヌ、其點
ヲ十分御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス、ソレ
カラ後段ノ御質問ノ點ハ正ニ其通リデアリ
マシテ、百八十圓ト二百三十圓、合計四百
十圓ト云フ年額ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=19
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020・最上政三
○最上委員 只今船田長官ハ私ガ前ニ申シ
タ點ニ對シテ、ソレヲ反駁的ニ、決シテサ
ウ少ナイモノデナイト云フ意味ノ御答ガア
リマシタガ、私ノ前ニ申上ゲタノハ上等兵
ノ例デアリマス、政府ハ家族三人以上、或
ハ五人トカ七人トカノ例ヲ以テ來テ居ルノ
デアリマスガ、私ノ例ヲ擧ゲタノハ、家族
三人以下ノ上等兵ガ、改正案ニ依レバ扶助
料ヲ三百二十四圓デ、基本率カラ見レバ勿
論八割增加デアリマス、併ナガラ之ヲ現行
法ニ比ベテ見ルト、上等兵ハ百八十圓デア
リマス、此外ニ十分ノ三ノ增額ガアリマスカ
ラ二百三十四圓五箇年ダケ支給サレルノデ
ス、其後ニ於テハ是ガ減ッテ百八十圓ニナ
ルノデアッテ、其後ニ於テハ御說ノ如ク八割
ト云フコトニナルガ、五年間ダケハドウシ
テモ三割增ガアルカラ差引五割シカ增額サ
レテ居ナイコトニナルノデス、政府ハ何デ
モ之ヲ有利ニ解釋シテ、五年後ノコトノミヲ
見テ八割增ト云フノデアリマスガ、五年マ
デハ五割シカ增加シナイ、五年後初メテ八
割ニナルノデス、私ノ例ヲ擧ゲタノハ三人
以下デス-三人以上ナラバ或ハ政府ノ言
フガ如ク前例ニナイヤウナ增加率デアル
ト言ヘマセウガ、五年マデハサウ云フ率デ
行クノデアルカラ、五年マデハ僅ニ五割シ
カ扶助料ハ上ッテ居ラナイノデ是ガ甚ダ少
イト言フノデアリマス、元來扶助料其モノ
ガ根本的ニ初メカラ少イノデス、ソレハ兎
モ角トシテ、只今申述ベマシタ如ク、第二
號表ノ甲第七項ノ傷病年金ハ四百十圓デア
リマスガ、私ガ計算シタ前ニ申ス上等兵ノ
五箇年間ノ給與ハ幾ラデアルカト申シマス
ルト、現行法ニ依レバ五箇年間ハ二百三十
四圓デアリマスガ、今度ノ改正法案ニ依レ
バ、五箇年ノ期間ハ廢止サレ、永久ニ三百
二十四圓トナッテ居リマス、自分ノ夫ヲ失ヒ
吾子ヲ失ッタ遺族扶助料ガ僅、二三百二十四
圓デアルニモ拘ラズ、親指一本ヲ失クシタ戰
傷者ガ二百四十圓ノ年金ヲ貰ッテ居ルコトニ
ナルノデアリマス故ニ是ハ何レガ優遇サレ
テ居ルカ、其點ヲ聞キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=20
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021・船田中
○船田政府委員 前ニ私ガ最上君ニ御答シ
タ點ハ、決シテ是デ以テ政府ノ戰死者ノ遺
族ニ對スル給與ガ完全無缺ダト云フ意味ニ
於テ申上ゲタノデアリマセヌ、是ハ度々申
上ゲテ居リマスヤウニ、個々ノ家族ニ付テ
見レバ、隨分其待週ガ薄イト云フ感ジヲ持
タレル方ハ相當アルト思ヒマス、併シ政府
トシテハヤハリ財政萬般ノコトヲ考ヘナケ
レバナリマセヌカラ、ソコデ此程度ノ增額
ヲ以テ先ヅ一應滿足スルノ外ハナイト云フ
コトヲ申シタノデアリマシテ、決シテ是レ以
上ハ何モヤル必要ハナイト云フコトヲ申シ
タノデハアリマセヌ、殊ニ戰死者ト云フ尊
イ犠牲ヲ拂ッタ御家族ニ對シテ、出來ルダケ
ノ國家トシテノ優遇ノ途ヲ講ズルト云フコ
トハ當然デアリマス、只今例ニ御取リニナッ
タ陸軍上等兵ノ遺族扶助料ニ付キマシテハ、
御話ノ通リ、五箇年間ハ三割增額ガゴザイマ
スカラ、年額二百三十四圓ニナリマス、ソ
レニ對シテ改正法ニ於テハ三百二十四圓、
併シ此外ニ家族ノ員數ニ依ッテ加給ヲサレ
ルト云フ制度ヲ開キマシタカラ、ソレ等ヲ
併セ考ヘテ見マスルト云フト、相當ノ增額
ニナリマス
ソレカラ私ガ本會議ニ於テ說明ヲ致シ
マシタ時ニ八割乃至二割ト申シタノデゴ
ザイマシテ、八割以上何十割ト云フコト
ヲ申シタノデハナイノデアリマス、基本年
額ニ付キマシテハ、八割乃至二割程度ノ增
加ヲスルコトニシタ、斯ウ云フコトヲ申シ
マシタノデ、其點私ノ言葉ノ足リマセヌ點
ハ惡シカラズ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ只今ノ御話ノ增加恩給ト遺族扶
助料トノ比較ノ問題デアリマスガ、是モ見
樣デアリマスガ、マア政府ハ此程度ニ於テ
權衡ヲ失シテ居ルトハ考ヘテ居リマセヌ、
尙ホ此點ハ多少專門的ニナリマスカラ、恩
給局長カラ詳シク補足シテ戴クコトニシタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=21
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022・高木三郎
○高木政府委員 只今遺族扶助料ト增加恩
給トノ比較ニ付テ、何レヲ優遇シテ居ルカ
ト云フ御尋ノヤウニ伺ッタノデアリマスガ、
私共ト致シマシテハ大體ニ於キマシテ生活
程度ト云フヤウナコトヲ基準ニ致シマシ
テ、何レヲ特ニ優遇スルト云ッタヤウナ考ヲ
持ッテ居リマセヌ、併ナガラ實際問題ト致シ
マシテハ、一家ノ柱石ヲ失ッテ全ク生活ノ
資源ガナクナッタト云フヤウナ遺族ニ對シ
マシテハ、是ハ最モ深イ同情ヲ持タナケレ
バナラヌト云フコトハ言ヘルト思フノデア
リマス、又一面カラ考ヘマスト、增加恩給
ナリ傷病年金ナリヲ受ケマスヤウナ所謂傷
痍軍人、此立場カラ考ヘマスト、是ハ死ン
ダ者ヨリ以上ニ苦痛ガアルト云フコトモ屢〓、
言ハレテ居ルノヂアリマス、是ハ見方ノ問
題デアリマスカラ、何レヲ重イト云フヤウ
ナコトヲ決メテシマフト云フコトニモ行キ
兼ネルト思フ、今囘提案致シマシタ金額ノ
算出ノ基礎ニ付キマシテハ、只今企畫院等ニ
於テ調査致シマシタ生活費ノ全國平均ニ依
リマスト、〓ネ年額三百圓乃至四百圓ノ間
デ平均ガ出來テ居リマスカラ、ソコデ遺族
扶助料ノ基本ニ對シマシテハ、先程法制局
長官カラ御說明ヲ致シマシタヤウニ、年額
三百圓、月額二十五圓ト云フ基準ヲ以チマ
シテ大體立案ヲ致シタノデアリマス、增加
恩給ニ付キマシテハ、是モ中々ドウ云フ基
準ニ依ッテヤルト云フ理論的ノ根據ト云フ
モノハ求メ兼ネルノデアリマスガ、元來ガ
增加恩給ヲ給セラレルヤウナ傷痍軍人ニ對
シテ、何處ヲ基準ト致シマスカト云フト、
是ハ大體私共ノ考ヘテ居リマスノハ、獲得
能力ノ喪失ト云フコトニ大體ノ基準ヲ置イ
テ居ルノデアリマス、隨テ第一項ノ程度ニ
ナリマシタ者ハ、大體ニ於テ全獲得能力ヲ
失ッタモノト見テ宜イノデハナイカ、卽チ兩
腕ガ無クナッタトカ、或ハ兩足ガ無クナッタ
ト云フヤウナ者デアリマスレバ、多少ノ例
外ハアルカモ分リマセヌガ、大體ニ於テ普
通ノ狀態ニ於テハ獲得能力ノ全喪失ト見ラ
レルノデアリマス、而モソレ等ノ人ニ對シ
テハ醫療トカ介護トカ云フヤウナ關係カラ
モ相當ノ優遇ヲシナケレバナラヌ、以下順
次傷病ノ程度ガ下ルニ從ヒマシテ多少ノ殘
存能力ヲ持ッテ居ルト云フ風ニ考ヘル、是ハ
一體恩給制度ト云フモノハ非常ニ劃一的デ
アリマシテ、先程申シマシタ遺族扶助料ニ
付キマシテモサウデアリマスガ、都市ニ生
活スル者ト農村ニ生活スル者トデハ差異ガ
アルト云フコトモ言ヘルト思フノデアリマ
ス、併ナガラ恩給ノ程度ガソコ迄詳細ニ區
分ヲスルト云フコトハ一寸出來難イコトデ
アリマスノデ、先ヅ大體ノ基準ヲ其處ニ置
イタト云フニ過ギナイ、增加恩給ニ付キマ
シテモ同樣デアリマシテ、ソレ〓〓ノ事情
ヲ考ヘルコトニナリマスレバ、可ナリ複雜
ナ計數ニチッテ來ルノデアリマスケレドモ、
大體ノ劃一的方針ト致シマシテハ、只今申
上ゲマシタヤウナ第一項以下ノ者ニアッテ
ハ多少ノ殘存能力ガアル、其殘存能力ノ活
用ニ依ッテ或ル程度補ッテ行クド云フヤウナ
コトヲ實ハ考ヘテ居リマス、此點ニ付キマ
シテハ、今厚生省デ盛ニ起案致シテ居リマ
ス再〓育、或ハ職業補導、或ハ就職紹介ト云ッ
タヤウナ施設ニ依リマシテ、其半面ヲ補ッ
テ行ク、之ニ依ッテ稍〓、完全ナル傷痍軍人ノ救
護ガ出來ルト云フコトニ目標ヲ置ク外ハナ
イノデアリマス、苟モ傷痍ヲ受ケタナラバ
總テ國家デ扶養スルヤウニシテヤルト云フ
コトハ、國家財政ノ立場カラ考ヘマシテ到
底出來難イコトデハナイカ、大體ノ基準ト
シテ立テマシタ所ハ其處ニアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=22
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023・最上政三
○最上委員 私ハ前ニモ色々申上ゲマシタ
ガ、決シテ今囘ノ傷病年金ノ增額ニ對シテ
兎ヤ角言フノデハナイ、傷病者ニ對シテハ
出來ルダケ待遇ヲセヨト私ハ主張スル者デ
アリマス、隨テ以下其例ヲ傷病年金ニ擧ゲ
ルコトガ多イノデアリマスカラ斷ッテ置キマ
スガ、私ハソレガ爲ニ傷病年金ガ決シテ多
イト言フノデナイト云フコトヲ御諒解願ヒ
タイノデス
偖テ只今御答ノ如ク致シテ見マスルト、
傷病者ガ拇指一本失ッタ、其人ガ普通恩給百
八十圓、增加恩給二百三十圓、計四百十圓、
是ハ上等兵デアリマス、然ルニ一家ノ主人
ヲ失ッタ家族ノ人々ガ政府ノ言フ所ノ增額サ
レタ案ニ依ッテ計算シテモ、三人以下トシテ
僅ニ三百二十四圓シカ貰ヘナイ之ヲ比較ス
ルト、拇指一本失ッタ人ガ差引年額ニ於テ八
十六圓ダケ多イ、之ヲ月額ニシテ見マスル
ト、一家ノ首長ヲ失ヒ、我子ヲ失ッタ家族ガ
僅ニ月二十六圓ノ扶助料ヲ貰ッテ居ルニ過ギ
ナイニモ拘ラズ、拇指一本失ッタ.負傷者ガ三
十四圓ヲ貰ッテ居ルト云フコトハ、甚ダ遺家
族ニ對シテ待遇ガ薄イト思フノデス、之二
對シテ政府ハドウ云フ御考ヲ持ッテ居リマス
カ、是デ澤山デアルト云フ御意向デアルカ
ドウカ、伺ヒタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=23
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024・高木三郎
○高木政府委員 只今御尋ノ點ハ、指一本
失ッタ程度ノ增加恩給受給者ニ對スル方ガ政
府トシテノ待遇ガ善イト云フ風ニ伺ッタノデ
ゴザイマスガ、是ハ見方ノ問題ニナリマス
ガ、醫學的ニ申シマスト、拇指一本ヲ失フ
ト云フコトハ殆ド他ノ四本ノ指ヲ失ッタヨ
リ以上ニ實際ニ困ルノダサウデアリマス、
是ハ專門ノ醫者ノ言フコトデアリマスガ、
拇指一本無クナリマシタ場合ニハ、握力ノ
關係、或ハ物ヲ摑ムト云フ關係カラ致シマ
シテ、殆ド一ツノ腕ヲ失ッタト餘リ大差ナイ
程度ノ障碍ヲ起スト云フヤウニ、一般ノ醫
者ノ方デハ言ハレテ居ルノデアリマス、ソ
コデ此七項ト云フモノヲ基準ニ致シマシテ、
御承知ノ通リ增加恩給ヲ給セラレル傷病ノ
程度ハ、不具癈疾ト云フコトニナッテ居リマ
ス、不具癈疾ノ定義ノ問題ニナリマスガ、
私共ハ大體ソコヲ基準ト致シマシテ、ソコ
ヲ增加恩給ノ最低ニショウト云フコトヲ言ッ
テ居リマス、現在ノ規定ノ上カラ申シマス
ト、第六項ハ拇指ト人差指ヲ失クシタ程度
ノモノヲ言ッテ居ルノデアリマス、是ガ今ノ
不具癈疾ノ程度ニナッテ居ルノデアリマス
ガ、ソレモ實ハ私共實際ノ審査ニ當リマシ
テ、寫眞等ヲ見マスト、實ニ氣ノ毒ニ堪ヘ
ナイ、拇指ト人差指ガ失クナッテ、三本ダケ
ノ指デ活動シヨウト云フヤウナコトハ、可
ナリ慘メナコトデアルト云フ風ニ考ヘラレ
ル、是ハ職業ニモ依ルト思ハレルノデアリ
マスケレドモ、〓括的ニ見マシテ、一ケン
手ハ殆ド役ニ立タナイト云フヤウナ狀態ニ
於テハ、少クモ平常得テ居リマス、收入ノ
半分位ハ補給ヲシテヤラナケレバ、アトノ
殘存能力デハ半分位シカ行カナイデハナイ
カト云フヤウナコトニ實ハ基準ヲ置イテ居
ルノデアリマシテ、是モ都市ト農村トニ於
テハ收入モ相當異ナルト思ハレルノデアリ
マスケレドモ、大體ニ於テ現在都會地ニ於
ケル勞働者ノ賃銀等カラ考ヘマシテ、月額
六十圓、年額七百二十圓以上ノモノヲ基準
ニスベキデハナカラウカ、サウ致シマスト、
大體其半バニ近イ程度ノモノヲ基準トスル
ト云フコトデ、此計算ガ出來上ッテ來テ居ル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=24
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025・最上政三
○最上委員 恩給局長ハ私ノ質問ノ趣旨ヲ
誤解シテ居ルト思ヒマス、私ハ決シテ此第
七項ノ拇指或ハ人差指一本ヲ失クナシタ人
ニ對シテ、四百十圓ヲ支給スルコトガ多イ
トハ言ヒマセヌ、是以上多クヤッテ貰ヒタイ
ト思フノデアリマス、私ノ云ハントスル所
ハ最モ輕イ人ヲ、例ニ擧ゲテ、此人サヘ月
額三十四圓ヲ支給サレルノニ、指ドコロデ
ハナイ、尊キ生命ヲ國家ノ爲ニ失ッテ居ル其
戰死者ノ家族ニ對シテ今少シク優遇シテ貰
ヒタイト云フコトデアリマス、傷兵ニ對シ
テモ私ハ滿腔ノ敬意ヲ表シテ居ル、待遇ハマ
ダ是デハ足リナイト思フガ、其最モ安イ所ノ
第七項ノ人々ニ比ベテモ、遺族扶助料ハ甚
ダ尠ナイノデス自分ノ子ヲ失フ局長ガ若シ
モサウ云フ境遇ニアッタ場合ニドウ云フ心
境デアルカ、ソコナノデス、一家ノ主人ヲ
失ッテ寡婦ガ子供ヲ抱ヘテ將來ドウシテヨ
イカ分ラナイ、人ニ對シテ二十五圓ヤ六圓
ノ扶助料デ滿足スルカ如何カ、私ハ國家ノ
待遇トシテドウカト思フノデス、ソレニ付
テ聽キタイ、是ハ傷病兵ノ問題デハナイ、私
ハ更ニ質問ヲ致シマスガ、此扶助料ノ問題
ガ最モ輕イ所ノ七項ト比ベテ甚ダ待遇ガ薄
イカラ、之ニ對シテドウ云フ御考ヲ持ッテ
居ルカト云フコトヲ聽クノデアリマス、誤
解ノナイヤウニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=25
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026・高木三郎
○高木政府委員 私別段誤解シテ申上ゲテ
居ル積リデハナイノデアリマス、私ノ申上
ゲマシタコトハ、算出ノ根據ガソコニアル
ト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、成程
遺族ニ對シマシテハ實ニ氣ノ毒デ、出來得
レバモット〓〓增ス、多々益〓可ナリト私共ハ
考ヘテ居リマス、又大藏省ト折衝致シマシ
タ際ニモ、サウ云フコトハ頻ニ申シタノデ
アリマスケレドモ、併シ是ハ又一面國家財
政ノ立場カラ考ヘマスト、サウ急激ニ、無
限ニ上ゲルト云フコトモ出來兼ネル、或ル
程度ニ於テ我慢ヲシテ戴クト云フ外ハナイ
デハナカラウカ、增加恩給受給者ノ側カラ
見マスト、死ンデシマッタ者ヨリ非常ニ宜
イヤウニモ考ヘラレマスガ、是モ先程申上
ゲマシタヤウニ、增加恩給受給者デアレバ、
本人バカリデナク自分ノ家族モアル、サウ
云フヤウナ點カラ考ヘマスト、必シモ增加
恩給ノ受給者ガ是デマダ十分トモ言ヘナイ
ノデハナカラウカ、要スルニドノ程度デ止
メルカト云フコトニナルノデアリマシテ、
理論的ニ斯ウデナクテハナラヌト云フコト
デハナイノデアリマス、ヤハリ財政其他ノ
關係ヲ考慮致シマシテ、或ル程度ノ我慢ヲ
シテ戴ク、尙ホ其足ラザル所ハ、他ノ施設
ヲ以テ補フト云フヨリ外方法ハナイノデハ
ナカラウカト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=26
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027・最上政三
○最上委員 私ノ聽カントスル所ハソレデ
アリマス、他ノ施設ヲ以テ補フ、ソレニ付
テ先程モ瀧企畫院總裁ニ申上ゲタノデアリ
マスガ、彼ノ五千圓支給問題デアリマス、
五千圓デナクテモ、特別賜金ニ對シテハ相
當政府ガ考慮シナケレバナラヌト私ハ考ヘ
居テルノデス、然ルニ瀧總裁ノ御說ト云ヒ、
又恩給局長ノ今マデノ說明ヲ聽クト、他
ノ施設デドウニカ考ヘテ居ルト言ッテ居ル
ガ、ドウモ戰死者ニ對スル特別賜金ガ增加
サレタトハ考ヘラレナイノデアリマス、私
ノ聞ク所ニ依ルト、滿洲事件ト率ハ同ジデ
アルトノコトデアリマス、之ニ付テ實ハ其
詳細ナル一覽表ガ欲シカッタノデアリマス
ガ、此表ハ色々ナモノガ合計サレテ居ッテ、
判然シナイノデアリマスカラ、改メテ此處
デ伺ヒマス、然ラバ今回ノ事件ニ依ッテ戰
死セル人ニ對スル賜金ハ、如何程ヲ特別賜
金トシテ給與シテ居ルカ、其點ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=27
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028・加藤久米四郎
○加藤政府委員 戰死者ニ對シテ最上君ガ
非常ニ同情ヲ寄セテ戴キマシテ、軍ト致シ
マシテハ洵ニ感謝致シマス、此制度ノ出來
マスル時ニ、軍トシテハ財政當局者ニ對シ
マシテモ成タケ多クノ賜金ヲト云フ要求ヲ
致シタノデアリマス、併シ國家財政ノ立場
ニ於キマシテ、先ヅ此邊デト云フコトニナッ
タノデ、金額ノ少イコトハ最上君ノ仰シ
ヤッタ通リデアリマス、併シ國家ノ立場カ
ラ申シマスト、サウ主張シ得ラレナイ事情
モアルノデアリマスカラ、軍ト致シマシテ
ハ、此程度ニ於テ先ヅ我慢ヲ致シタノデア
リマス、併シ先程モ特ニ念ヲ押サレテ最上
君ガ御質問ニ相成リマシタ戰死者ノ遺族ニ
對シテノ手當ノ少イコト、是ハ實ハ金額ハ
全部表ヲ以テ申上ゲニクイノデアリマスケ
レドモ、折角ノ御問デアリマスルカラ、
二ノ實例ヲ以テ申上ゲマス、陸軍大將カラ
二等兵マデズット表デ申上ゲルト宜イノデア
リマスケレドモ、ソレデナク、此點デ一ツ諒
解シテ戴キタイノデアリマスガ、今上等兵デ
一時賜金ガ千四百圓デアリマス、サウスルト千
四百圓ダケト云フコトニナリマスト、私共殊
ニ軍ノ關係ト致シマシテハ、實際同情ニ堪ヘ
ナイノデアリマス、併シ所謂行賞デ賜ルベキ金
額モ亦他ニアルノデアリマス、是ハドノ程度ト
云フコトハ申上ゲラレマセヌケレドモ、金
鵄勳章ノ年金ト云フコトヲ御考下サイマ
スト、ソコニ又アルノデアリマス、ソレ
カラ死亡賜金、埋葬料或ハ特別賞與、是ハ
將校以上デアリマスガ、サウ云フモノヲズッ
ト計算致シテ見マスルト、先程仰セニナリ
マシタ唯一時賜金ダケト云フヨリモ、軍ト
シテハ斯ウ云フ方面ニ遺族ノ生活ニ不自由
ヲ感ジナイヤウニ、其立場カラ出來ルダケ
ノコトヲ講ジテ居ルノデアリマス、ソレデ
此數ヲスッカリ申上ゲマスト宜イノデアリ
マスケレドモ、是ハ此程度デ御諒解ヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=28
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029・最上政三
○最上委員 只今加藤政務次官ノ御說明デ
大體分リマシタガ、其說明ニ依ルト上等兵
デ千四百圓ヲ特別賜金トシテ給與シテ、其
他俸給令ニ依ル死亡賜金、埋葬料等ヲ支給
サレルカラ多イ者ハ千六七百圓ニナルト言
ハレルノデアリマスガ、是等ハ最モ良イ例
ヲ引イタモノト思フノデアリマス、實際ハ
是以下デアル、現ニ滿洲事件ニ於テモ昭和
十年後ニ戰死セル者ニハ六七百圓シカ吳レ
ナイト云フ譯デス、最モ良イ特別賜金ノ例
ヲ擧ゲテサヘ千四百圓、今日ノ市井ノ色々
ノ交通事故等ニ於テモ、相當地位アル人ニ
對スル慰藉料ハ千圓位ノモノハ往々アル、
而モ國家ノ爲ニ身ヲ犠牲ニシテ戰死セル人
々ニ對シテ千四百圓、是ハ甚ダ少イト思フ、
此數字ヲ見ルト、戰死者ノ遺族ハ特別賜金
トシテ-私ハ又戰傷者ヲ例ニ擧ゲルノデ
アリマスガ、俸給令ニ依ル死亡賜金デアル
トカ、埋葬料ヲ含マナイデ計算致シマス、
ソレハ一般官吏デモ死亡シタ場合ニハ貰へ
ルノデアリマスカラ、之ヲ含マナイトシテ、
戰死ニ依ル恩賞トシテ授ルモノガ、兵ト見
テ戰死者ノ遺族ニハ特別賜金トシテ千二百
圓、改正扶助料ニ依ッテ家族扶助料ガ年額
三百二十四圓、是ハ三人以下ノモノデアル、
合計初年度ニ渡サレル金ハ千五百二十四圓
デアリマス、ソレヲ戰傷者、第二號表ノ甲
第一項ノ例ヲ擧ゲテ見マスト、ドノ位貰へ
ルカト云フニ、普通恩給百八十圓、增加恩
給第二號表甲號第一項千百七十圓、計千三
百五十圓デアリマシテ、初年度ニ於テ殆ド
同額デアル、僅ニ戰死者ノ家庭ハ二百圓位
シカ餘分ニ貰ッテ居ラナイノデス、然ルニ次
年度ニ於テドウナルカト云フト、戰傷者ハ
千三百五十圓デアルガ、戰死者ノ家族ハ三
百二十四圓シカ貰ヘナイ、金鵄勳章ニシテ
モサウデアル、戰傷者ハ永久ニ貰ヘルガ遺
族ニ於テハ僅ニ五年間デソレガ打切ラレル
ト云フ現狀デアル、私ハ戰傷者モ今日ノ年
金額デハ滿足トハ言ハナイノデスガ、之ニ比
較シテ見テモ實ニ戰死者ノ遺族ニ對スル國家
ノ待遇ガ薄ク是等遺族ニ對スル國家ノ待遇
トシテハ如何デアルカト熟、考ヘルノデアリ
やく、故ニ私ハ一部ノ方面ニ於テ唱ヘラレ
ル如ク、五千圓ヲ此際支給シロトハ言ハナ
イガ、五千圓デナクテモ千圓ダケデモ上ゲ
テ貰ヒタイノデス、決シテ國家ノ現狀ヨリ
見テ至難デハナイ、千圓位上ゲルノナラ、
決シテ困難デナイト思フ、軍當局ニ於テ發
表シタ數ヲ見テモ戰死者ハ二万人デアルカ
六、千圓上ゲタト見テモ其額ハ數千万圓デ
宜イノデアル、今日戰費ハ一日ニシテ數千
万圓ヲ消費スルト云フコトデアルカラ此位
ノコトハ國民トシテ又政府當局トシテ出シ
得ルト思フノデアリマス、ドウカ遺族扶助
料ハ此程度デ宜イトシテモ、此特別賜金ニ
付テ政府ハ更ニ考究スル餘地ガアルカドウ
カ、其點ニ付テ御聽キシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=29
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030・加藤久米四郎
○加藤政府委員 先程申上ゲマシタ戰死者
ノ手ニ入ルベキ金額ノ總計デアリマスガ、
是ハ行賞ヲ賜ハルベキ者、賜ハラナイ者ナ
ドガアリマスルト云フコトモ觀念上想像シ
ナケレバナリマセヌカラ、私正確ニ申上ゲ
得ラレナカッタノデアリマス、併シ賜ハルベ
キモノトシテ計算致シマスルト、今最上君
ノ言ハレタヤウニ、金額ハ相當ニ增加シ得
ルノデアリマス、一二等兵デ千五百圓云々、
斯ウ云フ工合ニ拜承致シマシタ、ソレハモッ
ト多イノデアリマス、モウ千圓位多イノデア
リマス、ソレカラ上等兵デモ二千五百圓位
賜ハル-行賞デ金鵄動章ヲ賜ハッタモノ
トシテ申上ゲル譯ニ參リマセヌガ、總テノ
金額ヲ申上ゲマストサウナリマス、ソレカ
ラ今ノ一時賜金ノ多イ少イノ問題デゴザイ
やく、軍ノ立場カラ申シマスルト、唯多イ
方ガ宜イト云フコトニハ贊成シ兼ネル場合モ
アルノデアリマス、ソレハ最上君ノ御〓里邊
リデモ能ク御承知デアラウト思ヒマスルガ、
時ニ多クノ金ガ遺族ノ手ニ渡リマスルト、
人情ノ常トシテソコニ生活ニ相當ノ異變ヲ
來スモノデアリマス、戰死シタ人ノ一時賜
金デアルト云フノデ、非常ニ緊張シテ子孫
ノ將來ノ計ヲ爲ス、一家ノ生計ヲ維持スル
爲ノ職業資金ニスルト云フヤウナ工合ニ、
皆ガスルトハ申上ゲ惡イノデアリマシテ、
動トモスレバソコニ浪費ノ風ガ入リマス、
私地方へ視察ニ參リマスルト、サウ云フコ
トモ隨分アリガチノ事デアリシシテ、時
賜金デ多ク與ヘタ時ノコトモ亦考ヘナケレ
バナラヌノデアリマス、五千圓ト云フ話モ
アリマシタ、最上サンハ五千圓ト云フ意味
デハナカッタ、假令千圓デモト云フ御話ガア
リマシタガ、ドウモ此邊ハ餘程冷靜ニ考ナ
ケレバナラヌト云フコトモ、私共モ今日ノ實
情カラ非常ニ憂ヘテ居ルノデアリマス、例
ヘバ戰死者ノ遺族、殊ニ妻タル身分ノ者ハ、
夫ガ戰死シタ爲ニ離緣ヲサレル、或ハ入籍
ヲスル承諾書ガアルニ拘ラズ、承諾ヲセズ
シテ宙ニ迷ッテ居ル、或ハ平素親戚ノ附合ヲ
シナイヤウナ親戚ガ寄ッテ參リマシテ、一時
賜金ノ分取リニ狂奔スルト云フヤウナ、日
本固有ノ美風ヲ破壞スルト云フヤウナコト
モ、隨分苦々シイコトニ思ッテ、私共軍トシ
マシテハ非常ニ心配シテ居ルノデアリマス、
デアリマスカラ賜金ノ多クナルト云フコ
トハ、最上君ノ仰セニナリマシタヤウニ、
私ハ其氣持ハ分ルノデアリマスケレドモ、
與ヘタカラト言ッテ直グニ遺家族ガ不自由
ヲセズシテ、軍人ノ遺族トシテノ體面ヲ保
持シテ行ッテ吳レルカト云フコトモヤハリ
考ヘナケレバナラナリマセヌカラ、サウ云
フヤウナ諸種ノ實情ヲ綜合致シマシテ、今
日ハ先ヅ此程度デ我慢シナケレバナラヌト
云フコトデ、軍トシテハ是ハ承知ヲ致シタ
ノデアリマス、度々ノ御話ノ御趣旨ハ能ク
分ッテ居リマス、戰死者ニ對スル御同情ノ措
置及ビ御氣持ハ能ク分ッテ居リマス、大體是
シカ致シ方ガナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=30
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031・最上政三
○最上委員 只今ノ御說明ヲ承リマシテ、
私モ實ハサウ云フ考ヲ持ッテ居ルノデス、ソ
レデアルカラ先刻屢〓遺族扶助料ヲ增額セヨ
ト云フト、恩給局長ノ言ハレルノハ、遺族
扶助料ハ或ル程度以上出來ナイ、他ニ方法
ガアルト云フカラ、私ハソレナラ是ハドウ
カト例ヲ擧ゲタノデアリマス、勿論私ハ是バカ
リデハナイ、恩給金庫法案ニ付テモ本會議
ニ於テ私ノ意思ノ一端ヲ申上ゲタノデス、
一部ニ於テハ反對ノ彌次ガ飛ビマシタガ、
私ハ今日マデノ受恩給者ガ、金融業者其他
ニ金ヲ借リテ困ッテ居ルト云フコトヲ承知
シテ居ル、故ニ是等、受恩給者ニ對シテハ
今囘ノ金庫法案ニ依ッテ大イニ之ヲ救濟ス
ルト云フコトハ私モ贊成デアリマス、併ナ
ガラ只今政府委員ノ申サルヽ如ク玆ニ今度
恩給金庫法案ガ出來テ、數年間ノ多額ナル恩
給金ヲ先借スルト云フ制度ヲ設ケタ場合ニ
於テ、受給者ハドウ云フ考ヲ起スカト云フ
コトデス、丁度只今ノ一時賜金ノ受給者ト
同ジ考ヲ起スノデハナイカト心配シテ居ル
ノデス、私ガ本會議ニ於テ受恩給者ニ對シ
テ資金運用ノ指導ヲドウシタラ宜イカト云
フコト聽イタノハ是レナノデス、私ハ恩給
金庫法案ニハ反對デハナイ、又病氣ナドノ
已ムヲ得ザル場合ニ於テハ、恩給金庫ヲ發
動シテモ差支ナイノデアルガ、誰デモ貸ス
ト云フコトニナルト、政府委員ノ言フ如ク、
二年三年分ヲ先借ヲシテ、是デ遺家族ガ將
來ヤッテ行ケルカドウカト云フコトヲ心配
シテ居ルノデス、私モ一時賜金ヨリカ扶助
料ヲ增額セヨト主張スルモノデス、併シ扶
助料ハ是以上ヤルコトハ出來ナイト云フカ
ラ、然ラバ一時賜金ニ於テ幾分デモ增額ス
ル考ガナイカ否カト云フコトヲ聽イタノデ
アリマス、元來政府ガ一時賜金ヲ五千圓ヤ
ルト云フコトヲ發表デモアリマセヌガ洩レ
ク、當時色々〓究シタノデアリマスガ、是
ハ五千圓說ニハ多少ノ根據ガアッタラシイ
ト思ヒマシタ、瀧總裁ハ內容ノコトヲ發表
シマセヌガ、私ノ計算シタ所ニ依リマス
ト、改正後ノ扶助料ニ依ッテ見マスト
是ハ兵デアリマスガ、三百二十四圓、之ヲ
五箇年計算スルト、恩給法其他、金鵄勳章
等ニ於テハ、今マデノ例トシテ五箇年ヲ基
準ニシテ居ル、又各國ノ法令ニ於テモ遺族
扶助料ニ於テハ五箇年ヲ基準ニシテソレヲ
計算シテ居ル隨テ三百二十四圓ヲ五箇年計
算スルト千六百二十圓ニナル、ソレニ五千
圓ヲ加ヘルト六千六百二十圓トナル、一方
第一項ノ、最モ重イ重症者ニ對スル傷病年
金ハ幾ラデアルカト云フニ、年額千三百五
十圓、是ガ五箇年デ六千七百五十圓トナッ
テ、丁度釣合ガ取レルノデス、遺族モ五年
後ニ於テハ子供ガ大キクナルノモアリマセ
ウシ、又夫ガ亡クナッテモ五箇年經テバソ
コニ多少悲ミモ緩和サレルデアリマセウカ
ラ、第一項ノ傷病兵ト比ベテハ三分ノ一、
或ハ四分ノ一ニナッテモ然ルベキダト思ヒ
マス、斯樣ニ計算シテ見ルト、五千圓說モ
滿更何等根據ガナイモノデハナカラウト私
ハ思フノデアリマス、ソレデアルカラ私ハ
重ネテ五千圓デナクテモ千圓デモ二千圓デ
モ出シテ欲シイ、今ヤ國家ニ於テ四十八億
圓ト云フ臨時豫算ヲ出ス時デアルカラ、三
千万圓位ハ困難デハナイト思フ、故ニ今後
適當ナル機會ニ於テ、是等遺家族ニ對シテ
萬全ナル待遇方法ヲ講ゼラレテ戴キタイ
ト、私ハ政府委員ニ御願シテ此戰死者ニ對
スル遺家族扶助料ノ問題ハ打切リマス
第二ハ傷病年金ノコトデアリマス、是ハ
先ニ恩給局長ガ何ダカ傷病年金ニ付テ私ガ
滿足シテ居ルカノ如ク、或ハ戰死者ノ遺族
扶助料ニ比ベテ多イカノ如キ說ヲサレタノ
デアリマスカラ、私ハ此點ニ付テ誤解ノナ
イヤウニ今少シク論ジテ見タイト思フノデ
アリマス、今囘ノ改正法ニ依ル增加恩給-
是ハ普通恩給ヲ入レマセヌ、增加恩給ニハ
第一項症ガ月額九十七圓、第二項症ガ月額
七十八圓、第三項症ガ六十二圓、第四項症
ガ四十七圓、第五項症ガ三十六圓、第六項
症ガ二十八圓、第七項症ガ十九圓ト云フコ
トニナリマス、勿論其他ニ普通恩給ガ貰ヘ
ルノデアリマスガ是ハ別トシテ以上ノ數字
ガ出ルノデアリマス、然ルニ傷病兵ハ現在
傷病年金ノ中デドウ云フ種類ノ人々ガ多イ
カト申シマスルト、是ハ昭和十一年末現在
デ恩給局ノ調査デアリマスガ、特別症ガ二
十七名、第一項症ガ百三十五名、第二項症
ガ二百八十七名、第三項症ガ千二百七名、
第四項症ガ七百十九名、第五項症ガ三千三
百十四名、第六項症ガ四千二百六十二名ト
云フ數ニ上ッテ居リマス、此內第一項症、第
二項症或ハ特別症ハ、非常ナ重症者デアッ
テ、附添人ヲ必要トスル人々デアルカラ斯
ウ云フ人ハ勿論少カラウト思ヒマスガ、之
ヲ見マスルト、多クハ五項、六項ノ人々ガ
多イノデス、此項症ノ決定ニハ勿論其傷ノ
程度ノ如何ニ依ッテ決ルノデセウガ、ドウモ私
達ハ此數ヲ見テ或ハソコニ作爲-ト云フト
甚ダ當局ニ對シテ失禮デアリマスガ、何ダ
カ五項症、六項症ヲ多クスルヤウニモ考ヘ
ラレマス、故ニ增加恩給ヲ貰ッテ居ル人々
ハ、月額ハ四十圓、五十圓ノ程度ガ多イト
思フノデス、政府當局ハ以上申シタ增加恩
給ノ受給者ノ數字其他ニ於テ誤リガアルカ
ドウカニ付テ先ヅ御答辯ヲ願ヒタイノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=31
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032・高木三郎
○高木政府委員 只今ノ御尋ハ大體數字等
ニ於テハ御說ノ通リデアリマス、唯增加恩
給ノ受給者ニ對シテ先程申上ゲマシタヤウ
ニ、此恩給ノミヲ以テ總テヲ賄フト云フ立
前デアリマセヌ、他ノ施設ニ依ッテ生計ヲ補
フト云フ所ニ目的ヲ置イテ居ルノデアリマ
ス、左樣ニ御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=32
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033・最上政三
○最上委員 他ノ施設トハドウ云フモノデ
アルカ、一々例ヲ擧ゲテ其施設ノ狀況ヲ御
知ラセ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=33
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034・高木三郎
○高木政府委員 一寸先程モ申上ゲマシタ
ガ、結局獲得能力ノ全喪失ト云フコトヲ大
體ノ基準ニ置イテ居リマスカラ、多少デモ
殘存能力ガアリマス者ハ、其殘存能力ヲ利
用シテ生計ヲ補ッテ行クト云フコトニスル
外ハナイト思ヒマス、其點ニ付キマシテハ
旣ニ厚生省ニ於テモ相當〓究中デアリマシ
テ、近クソレニ對スル何カ具體的ノ案ガ出
ルヤウデアリマス、私共ノ聞イテ居リマス
所ニ依リマスレバ、例ヘバ傷兵保護院ト云ツ
タヤウナモノモ出來ルヤウデアリマス、其
機關ヲ通シテ再〓育、或ハ職業ノ補導、就
職ノ斡旋トカ、療養施設ト云フヤウナモノ
ヲ作リマシテ、ソレ等ト相俟ッテ恩給法ヲ活
用致シテ行キマスレバ、稍、滿足スベキ傷痍
軍人ノ保護施設ガ出來ルノデハナイカト考
ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=34
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035・最上政三
○最上委員 只今ノ局長ノ他ノ施設ト云フ
ノハ、是カラ厚生省等ニ於テ始メヨウト云
フコトト承知致シマスガ、今マデモ多少アッ
タデアリマセウ、卽チ傷病軍人ニ對シテハ
煙草ノ賣捌ヲ許可スルトカ、或ハ郵便切手
類ノ賣捌ノ優先權ヲ與ヘルコトモ規則ガア
リマスガ、是ハ實際ニハ能ク行ハレテ居ラナ
イ、專賣局等ニ行ッテモ中々直チニ許可シテ
吳レナイシ、又郵便局等ニ行ッテモ距離其他
ニ於テ許可シテ吳レナイノデス、幸ニシテ
許可シテ吳レテモ資金ガ出來ナイシ、ソレ
ガ爲ニ種々ナル不便ヲ來シテ、規則ニハサ
ウ云フコトガアルニハアルガ、實際ニハ、
ソレガ完全ニハ行ハレテ居ラナイ現狀デア
ラウト思ヒマス、其他鐵道ノ無料乘車劵ノ給
與ナリ、或ハ中小學校ノ兒童ニ對スル授業
料ノ免除ト云フコトモアルノデアリマスガ、
遺族或ハ傷病者トシテモ社會的ノ關係カラ
之ヲ行ッテ居ナイノモアリマス、故ニ私ハ他
ノ施設ニ付テ政府ガ是カラヤラウトシテ居
ルトヤウナ生溫イコトデハイカヌ、現在譬
ヘテ見レバ傷病者ガドン〓〓歸ッテ來ル、
サウ云フ場合ニ於テ會社、工場等ニ於テ
ハ兎モ角トシテ、政府直轄ノ官公署ニ於テ
ハ、サウ云フ傷病兵ニ對シテドウ云フ御取
扱ヲスルカ此點ヲ伺ヒタイ、今マデハ各官
廳ニ於テハ內規ガアッテ、不具廢疾者ハ之ヲ
使用致シマセヌガ、今度歸ッテ來タ腕ガナイ
人トカ足ガナイト云フ人々ニ對シテハ、官
廳自ラドウ云フ方針デアルカ、ソレヲ御伺
致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=35
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036・船田中
○船田政府委員 支那事變ニ出征致シテ傷
痍ヲ受ケタ歸還兵ニ對シテ、ドウ云フ施設
ヲスルカト云フコトハ、今直チニ明答ヲ申
上ゲルコトハ出來マセヌガ、傷痍軍人ニ付
キマシテハ、只今最上君ノ御心配ノ通リ、
國家トシテ之ニ對シテ出來ルダケノ優遇ヲ
致サナケレバナラヌ、而モ其優遇ト云フコ
トハ、唯單純ニ國家ノ恩惠ニ縋ラセルト云
フヤウナコトデナク、傷痍ヲ受ケタル者ガ、
先程高木恩給局長ノ申シタヤウニ、殘存能
力ガアルナラバ、其殘存能力ヲ十分發揮シ
得ルヤウナ施設ヲシテヤル、斯ウ云フヤウ
ナコトデ傷痍軍人ニ對スル保護施設ニ付キ
マシテ、厚生省ニ傷痍軍人保護對策委員會
ト云フモノヲ設ケマシテ、旣ニ數囘ニ亙リ
マシテ委員會竝ニ特別委員會ヲ開キマシテ
成案ヲ得テ、厚生大臣ノ手許マデ是ガ答申
ニナッテ居リマス、其中ニハ只今例ニ御擧ゲ
ニナリマシタヤウナ、例ヘバ煙草ノ小賣ノ
問題、或ハ鐵道無賃乗車劵ヲ給スルト云フ
ヤウナ問題、或ハ傷兵院ヲ新ニ設ケルト云
フヤウナ問題、其他各般ノ施設ニ付キマシ
テ、ソレ〓〓具體的ノ對策ヲ〓究シテ、是
ガ答申ニナッテ居リマス、隨テ其中デ豫算ヲ
伴ヒマスモノニ付キマシテ、出來ルダケ早
ク追加豫算トシテ本議會ニ提出ヲスル、又
制度トシテ認ムベキモノハ、之ヲ出來ルダ
ケ早ク制度化スル、又豫算モ要ラナイ、制
度モ必要トシナイト云フヤウナモノニ付キ
マシテ、行政處分トシテ取扱ノ出來マスル
モノニ付テハ、出來ルダケサウ云フ施設
ヲ講ジマシテ、サウシテ國家トシテ出來ル
ダケノ傷痍軍人優遇ノ途ヲ講ジタイ、併シ
是ハ吳レ〓〓モ國家ノ恩惠ニ依ッテ唯慈善
事業ト云フヤウナ趣旨ニ於テヤルノデハナ
イト云フヤウニシテ、隨テ國家ノ恩惠ニ狎
レテ傷痍軍人ガ却テ堕落ヲスルト云フコト
ハナイヤウニ、何處マデモ傷痍軍人トシテ
ノ軍人ノ體面ヲ保ツコトノ出來ルヤウニ、
萬般ノ政策ヲ實行シテ行キタイト云フ考ヲ
以テ進ンデ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=36
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037・最上政三
○最上委員 ドウモ政府ノ今マデノヤリ口
ヲ見ルト、是カラ厚生省ニ於テ審議會等ニ懸
ケテ對策ヲ講ズルノダト云フヤウナコトニ
取レマスガ、是デハ實際ノ實情ニ適セナイ、
旣ニ傷病兵ノ中ニ於テモ、モウ全癒シテ居
ル人モアラウシ、又政府ノ發表ニ依レバ、
近ク一部ノ兵ノ交替ヲ爲スト云フコトガ
アッテ、軈テ續々召集サレタ人々モ歸ルト思
フ、召集サレタ無傷ノ人々ニ對シテハ、職
業保障規則ニ依ッテ官公署ナリ、或ハ大會
社等ニ於テハ採用サレルデアリマセウガ、傷
ツケル所ノ傷病兵ニ付テ、今政府ガ何等ノ
對策ヲ持タナイト云フヤウデハ甚ダ私ハ是
等傷病兵優遇ニ對シテドウカト思フ、又思
想上ノ問題ニ付テモドウカト思フノデアリ
マス、ソレモ會社トカ他ノ方面ノコトナラ
審議會等ニ於テヤッテモ宜イガ、官公署ニ於
テハ現ニ應召サレテ居ル人々ガ多イノデス、
其中ニハ傷ツケル者モ多イ、其人々ヲドウ
スルカト云フコト位ハ、法制局ニ於テハ〓
究シテ居ラナケレバナラヌコトデアルト思
フノデアリマス、然ラバ私ハ陸軍當局ニ伺
ヒタイノデアリマスガ、陸軍當局ハ此問題
ニ付テ、會社トカ工場ノ人々ハ兎モ角トシ
テ、政府事業トシテ、官公署ノ人々ガ傷ツ
イテ腕ガナイ、足ガナイト云フ者ガ歸ッテ
來タ時ニ、ドウスルカ、現在應召者ニハ給
料ヲ支給シテ居ルデセウ、給料ヲ支給シテ
居レバ差支ナイト思ハレルガ、給料バカリ
デハナク、精神上ニ於テ自分ガ働キタイト云
フ人々ガアッタ場合ニ、現在ノ官公署ニ於ケ
ル內規ニ依ッテ、ソレ等ノ不具癈疾者-是
ハ一般ノ不具癈疾者ト違ヒマスガ、ソレ等
ノ負傷者ヲ使フカドウカ、之ニ付テ陸軍ノ
政府委員ニ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=37
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038・加藤久米四郎
○加藤政府委員 軍ト致シマシテハ御承知
ノ通リニ軍事扶助擴充計畫ト云フモノガア
リマス、全部ヲ申上ゲル所ニハ參リマセヌ
ガ、此計畫ヲ實行スルコトヲ各省關係ノ
ソレ〓〓ニ對シテ、今日マデ要求シテ參ッテ
居リマス、其一部分ト申シマスルカ、重要
ナル部分ヲ先程他ノ政府委員カラ御答シタ
譯デアリマス、今カラ傷病軍人ノ保護ヲ陸
軍トシテハ考ヘテ居ルノデハナイノデアリ
マシテ、此事變ガ勃發致シマスルト同時ニ、
治療上ノコトヲ先ヅ第一ニ考慮致シマシテ、
歐洲大戰ノ先例ニ鑑ミマシテ、從來ノ治療
ニ未ダ會ッテナカッタ特殊ノ治療法ヲ行フ病
院ヲ建設スル、或ハ其專門ノ軍醫ヲ集メル
ナド相當ニ致シテ居ルコトヲ、今日茲ニ申
上ゲテモ差支ナイト思ヒマス、ソレハ治療
上ノコトデアリマスガ、生活上ノコトニ關
シマシテハ、先程申シマシタ各省ニ關係致
シテ居リマスル事柄ヲ、實ハ軍ト致シマシテ
其實行ヲ要求スル原動力ニナッテ居ルノデ
アリマスガ、厚生省ニ於テ是カラ〓究スル、
是カラ計畫ヲスルト云フノデハナク、實行
スルト云フコトニナッテ居ルノデアリマシ
テ、御承知ノ通リ內務省カラ分離ヲ致シマ
シテ、厚生省ト云フ新設省ガ出來タノデア
リマシテ、其處デ此仕事ヲ實行スルコトニ
ナッテ居リマスカラ、最上君ガ仰セニナリマ
シタ各省ニ跨ガル色々ノ仕事ハ、當然是ハ
實行シナケレバナラヌ、軍トシテハ是ハ實
行シテ貰ハナケレバナラヌト思ヒマス、ソ
レダケ申上ゲマシテ、先程他ノ政府委員カ
ラ申上ゲマシタコトト對照シテ御考ヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=38
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039・最上政三
○最上委員 私ノ御聞シタイト思フノハ實
際問題デアリマス、是カラ色々厚生省デ審
議會ニ付議シテ對策ヲ講ズルト云フコトハ
兎モ角トシ、目前ノ問題トシテ、旣ニ軍ニ於
テハ一部ノ出征兵士ノ交替ヲ行ヒ、又同時
ニ傷病兵ガ續々歸ッテ來テ、ソレ〓〓各方面
ノ病院デ治療シテ居ル、中ニハ癒ッタ人モア
リマセウ、官公署ニ於テハ是等傷病兵ニ對
シテ、若シモ其人ガ歸ッテ來テ、自分ハ月給
ハ貰ッテ居ッタガ、旣ニ大分快クナッタカラ、
精神的ニ考ヘテモ是カラ働カナケレバナラヌ
ト思フカラ偖テ使ッテ下サイト言ッタ場合、
現在官公署ニ於テハ採用規則ガアリマスガ、
今囘ノ事變デアルカラ其規則ニ關係ナクド
シドシ採用スルカドウカ、其問題デアリマ
ス、此問題ヲ當局トシテ考へナケレバナラ
ヌ、官公署カラ應召シタ人ハ、今金ヲ貰ッテ居
ルカラ宜イト雖モ、日本國民デアリマスカ
ラ癒レバ再ビ出テ働キタイト云フ氣持ガア
ル、サウ云フヤウナ精神上ノ慰安ヲスル對
策トシテ、目前ノ問題ニ付テ當局ニ於テ御
考ガナイト言フコトガ出來マイト思ヒマス、
其人々ガ自分ハ國家カラ俸給ヲ貰ッテ便々
トシテ居ルノハ惡イカラ、使ッテ貰ヒタイ
ト言ッタ場合ニ官公署ハドウスルカ、使フカ
ドウカ、ソレニ付テ御聞致シタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=39
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040・船田中
○船田政府委員 出征ヲ致シマシタ將兵ノ
中ニハ多數ノ官吏ガゴザイマス、ソレ等ニ對
シマシテハ、全然官廳ニ於テハ現職ノ者ト
同等ノ待遇ヲ與ヘテ居リマヌ、卽チ俸給ニ
付テハ全額ヲ支給シテ居リマス、ソレカラ
定員外ノ取扱ヲ致シマセヌデ、ヤハリソレ
モ定員ノ中ニ入レテアルノデアリマス、隨
テソレ等ノ出征兵士ニシテ官吏ノ身分ヲ持ツ
テ居リマス者ガ復員ヲ致シマシテ、公務ニ
就クコトガ出來ルト云フ者ハ、勿論之ヲ從
來通リ役所トシテ使用スルノデアリマス、
併ナガラ傷害ノ爲ニ公務ヲ行フコトガ出來
ナイト云フ者ニ付キマシテハ、是ハ休職ト
カ退職トカト云フコトニナリマセウカラ、
ソレ等ノ者ニ付テハ別個ノ方法ヲ考ヘナケ
レバナリマセヌ、又先程私ノ說明デ足リナ
カッタ點デアリマスガ、傷痍軍人保護對策委
員會ト云フノハ、モウ旣ニ對案ヲ〓究調
査ヲ致シマシテ、成案ガ出來テ厚生大臣ニ
答申ニナリマシテ、サウシテ厚生省ニ於テ
ソレ〓〓實行ヲ致シテ居ルモノガアルノデ
アリマス、殊ニ今次ノ事變ガ始ッテ以來間
モナク、內務省社會局ニ臨時軍事援護部ト
云フモノヲ設ケマシテ、ソレ等ノ問題ニ付
キマシテモ十分〓究モシ、又對策モ講ジツヽ
アッタノデアリマシテ、其臨時軍事援護部
ハ厚生省ノ新設ト共ニ厚生省ニ移リマシテ、
引續キソレ等ノ問題ニ付キマシテ對策ヲ講
ジツヽアルノデアリマス、此上共ニ萬全ヲ
期シテ行キタイト考へマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=40
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041・最上政三
○最上委員 只今法制局長官カラ異ナコト
ヲ伺ッタ、ソレハ現在官吏ニシテ應召セル者
ハ俸給ノ全額ヲ支給シテ、歸ッテ來レバ直チ
ニ之ヲ採用スル、是ハ勿論サウデアリマセ
ウ、職業保障ノ立前其他カラ當然斯クアラ
ネバナラヌノデアリマスガ、唯其最後ニ附
加ヘテ申サレタ言葉デアリマスガ、若シモ
ソレ等ノ人々ガ職ニ從事スルコトガ出來ナ
イト云フ場合ニ於テハ、休職或ハ退職ヲシテ
貰フト云フ御言葉ガアッタヤウデアリマス、
私ガ聞キタイノハ此點デアリマス、又一般ノ
人ノ聞キタイノモ是デアリマス、法制局長
官ガ如何ニ政治家出身デアッテ、事務的裁量
ヲスルト雖モ、官廳ニハ夫々定員ガアッテ餘
分ニ使ヘナイ、多クハ其定員ノ範圍ニ於テヤ
リ繰ハシテ居リマセウガ、成ベク定員ヲ埋
メズシテヤッテ居ルノデス、私ノ知ル範圍ニ
於テハサウデアル、臨時雇員トカ其他ヲ使ッ
テ其定員ノ範圍ニ於テヤッテ居ル、ソコヘ手
ノ無イ官吏ガ歸ッテ來、足ノ無イ官吏ガ歸ッ
テ來テ、俺ガ仕事ヲスルト言フヤウナ場合ニ、
オ前ハ仕事ガ出來ナイカラ休職ニスル、退
職ニスルト云フコトハ、政府ノ是等傷病兵ニ
對スル態度トシテハドウカト思フ、是ガ問
題ナンデアル、サウ云フ時ニハドウスルカ、
私曾テ歐洲大戰後歐米ニ參ッテ、ソレ等ニ付
テ各地ノ官公署ヲ見マシタガ、其處ニハ守
衞デアルトカ、其他餘リ勞力ヲ要シナイ仕
事ニ手ノ無イ人、足ノ無イ人ヲ從事サセテ
居ッタ、是ハ歐洲大戰後政府ノ對策トシテ、
今マデ官吏トシテ働イテ居ッタ人ガ元通リ働ケ
ナイ場合ニハ守衞ニスル、或ハ其他公立ノ
博物館ノ看守ニスルト云フ工合ニ、斯ウ云
フコトヲサスベキ規則ガ佛蘭西等ニ於テハ
出來テ居ルノデス、之ニ依ッテ是等傷病兵
ニ其資格ヲ戰前ト同ジヤウニ-同ジデハ
ナイガ、多少其負傷ノ程度ニ依ッテ使ヘル
者ハ使ッテ居ルト云フノガ現狀デアル、私
ノ聞キタイノハ是デアル、若シモ歸ッテ來
タ人ガ、自分ハ政府カラ月給ヲ貰ッテ、今後
當分ハ其儘デ居ラレルデアルガ、ソレデハ
相濟マヌカラ働キタイト言ッタ場合ニ、政府
ガ其人々ヲ退職サストカ、休職シテ貰フト
カ云フコトデハ、到底是等ノ傷病兵ハ承知
スルモノデハナイノデス、又思想上ニモ甚
ダ惡結果ヲ來ス、ソレダカラ豫メ政府ニ於
テ斯ウ云フ人々ニ對シテドウスルカト云フ
方針ヲ玆ニ立テテ置カナイコトハ、私ハ迂
闊千萬デアルト思フ、之ニ付テ更ニ明快ナ
ル御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=41
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042・船田中
○船田政府委員 只今最上君ノ御心配ニナ
ルヤウナ點ハ、先程私ガ申上ゲマシタヤウ
ニ、復員致シタ場合ニ官廳トシテハ其儘使
フノデアリマス、詰リ公務執行上ニ支障ナ
キ者ハ、勿論復員ヲシタ場合ニ於テ從來通リ
役人トシテ働イテ貰フノデアリマス、私ノ
申シマシタノハ傷痍ヲ受ケタ爲ニ到底公務
執行ニ堪ヘラレナイト云フ者ニ付テ申上ゲ
タノデ、サウ云フ者ハ勿論退職トカ、休職
トカ云フコトニナルノデアリマセウガ、併
シソレニ付テハ別途ノ方法ヲ講ズルヤウニ、
傷痍軍人保護對策委員會等ニ於テモ〓究ヲ
致シテ居リマシタト云フコトヲ申シタノデア
リマシテ、只今最上君ノ御指摘ニナッタヤ
ウナ者ハ、大部分之ヲ復員ノ場合ニ於テ、
役所ニ於テ從來通リ使用シテ行クコトト存
ジマス、佛蘭西ノ例ヲ御取リニナリマシタ
ガ、是ハ御承知デアリマセウガ佛蘭西ヤ獨
逸邊リデハ、初メハ今日日本ノ政府ガ考ヘ
テ居ル程ニ出征軍人ニ對シテ親切ナル考ヲ
持ッテ居ラナカッタノデアリマス、ソコデ御
承知ノ通リ大戰後ニ於テ、佛蘭西、獨逸、
亞米利加等々ノ國ニ於キマシテ、出征軍人、
殊ニ老兵ノ問題ニ付テ非常ナ大騷動ガ起リ
マシテ、サウシテ其後ニ於キマシテ、獨逸
ヤ佛蘭西ニ於テモ、老兵殊ニ老癈兵等ニ對シ
テ所謂傷痍軍人ニ對シテ、之ヲ出來ルダケノ
優遇ヲシヨウト云フコトニナッタヤウニ聞
イテ居リマス、併シ我國ニ於キマシテハ、
從來ノ戰役ノ例ニ依リマシテ、御承知ノ通
リ他國ニ比較致シマシテ、非常ナ優遇ヲ致シ
テ居ルト云フコトハ、是ハ我國ノ非常ナ美
風ト私ハ考ヘルノデアリマス、今度ノ事變
ニ於キマシテモ、サウ云フ點ニ於テハ萬遺
憾ナキヲ期シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=42
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043・最上政三
○最上委員 私ハ只今法制局長官ノ重ネテ
ノ御答辯ニ依ッテ、多少滿足スルコトガ出來
タノデアリマスガ、更ニ一言御注意ヲ申シ
テ置キタイノハ、是等傷病兵ガ歸還シテ復
員シタ場合ニ於テハ、之ヲ採用スルト言ヘ
バ採用スルデアリマセウガ、唯其場合ニ於
テハ各官廳ハ皆定員定率ニ依ッテ縛ラレテ
居ルノデ、其範圍ニ於テヤル以上ハ、腕ノ
不自由ナモノトカ、其他ノ人々ニ於テハ、
其定員ノ中ニ於テモ、色々支障ヲ來ス、又
其他重傷者ニ對シテ、ドノ程度マデ採用ス
ル、ドノ程度マデハ休職ニスルト云フ、マ
ダ何等ソレ等ニ對スル方針ガ決定シテ居ラ
ナイヤウデスカラ、成ベク早クソレ等ノ方
針ヲ決定シテ、厚生省デヤルコトヨリ、早
ク此方針ヲ決定シテ、是等傷病兵ヲシテ安
ジテ職ニ〔服セシムルヤウナ方針ヲ執ッテ戴
キタイト、考ヘルノデアリマス、更ニ御伺
シタイノハ、今囘ノ賜金運用ニ對シテ、多
少ノ指導ヲシナケレバナラヌト云フコト
ハ、先刻陸軍政務次官ノ御話ニモアル如ク、
是等ニ對シテ政府ハ如何ナル對策ガアル
カ、聞ク所ニ依ルト、農林當局ニ於テハ自
作農奬勵ノ爲ニ、此賜金ヲ以テ土地ノ買入
等ヲ爲サシムルト云フ方策ヲ廻ラシテ居ル
サウデアリマスガ、是等ニ付テ政府ニ於テ
知ル範圍ニ付テ御聽シタイ、又賜金下賜ニ
對シテ色々家庭爭議ガ出來ルサウデアリマ
スガ、是等ノ家庭爭議ニ付テハ、政府ハド
ウ云フ手段ヲ講ゼラレル御考デアリマスカ、
此點ニ付テ御話ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=43
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044・加藤久米四郎
○加藤政府委員 先程申上ゲマシタ一時賜
金ノ交付後ノ問題デアリマスガ、現在デハ
從前ト少シク形式ヲ異ニ致シマシテ、迅速
ニ確實ニト云フコトニナッテ居ルコトハ御承
知ノ通リデアリマス、其際各聯隊區司令部
ニ於テ、正式ノ名稱ハ付イテ居リマセヌガ、
人事相談的ノ仕事ニ應ズル職員ヲ、成ベクサ
ウ云フ憂ノナイヤウニ指導シ、殊ニ親族間
ニ於ケル不和其他ニ付テ、更ニ最上君ノ言
ハレマシタ投資ト云ヒマスカ、利用ト云ヒ
マスカ、サウ云フ方面ノ事マデモ實ハ相談
ニ應ジタイト云フノデ、其準備手續ヲシテ
シマッテ居リマス、ガ併シ聯隊區司令部ヘ相談
ニ來ナイモノヲ、强制的ニ呼付ケタ事實ガ
アルカドウカト云フコトニナルト、一面其
憂ナキ能ハズデス、併シ各在〓軍人會或ハ
市町村役場ナドノ公共團體ト密接ナル連絡
ヲ取リマシテ、サウ云フコトノナイヤウニ、
軍人遺家族ノ體面ヲ保持スル爲ニ、萬遺憾
ナキヲ期シテ行キタイト云フコトニ付キマ
シテハ、十分努力致ス積リデアリマス
今御話ニナリマシタ負債整理、或ハ自作
農創定問題ニ付キマシテハ、私ノ方ノ所管
デゴザイマセヌカラ、農林省ノ方カラ、サウ
云フコトニ付テノ案ヲ立テテ見タイト云フ
コトハ實ハ聞イテ居リマスガ、其運用スベ
キ基金ノ程度、範圍或ハ如何ニシテソレヲ
取扱フカト云フコトニ付キマシテハ、是ハ
陸軍直接ノ仕事デハゴザイマセヌノデ、此
思想及ビサウ云フ方法ニ付キマシテハ、私
共非常ニ結構ナコトト思ッテ居リマス、出來
ルダケ其計畫ニ御手傳ヒ申上ゲテ實現シタ
イト云フヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=44
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045・最上政三
○最上委員 私ハマダ杉山陸軍大臣、厚生
大臣、或ハ風見書記官長ニ御出席ヲ願ッテ、
是等ニ付テ質問ガ殘ッテ居リマス、併シ他ノ
人モ質問ガアリマセウカラ、私ハ杉山陸軍
大臣、厚生大臣、風見書記官長ニ對スル質
問ハ後ニ〓シテ、此程度デ差控ヘテモ宜イ
ノデアリマス、又續イテヤレト云フコトデ
アレバヤッテモ宜イノデアリマスガ、如何デ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=45
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046・前田房之助
○前田委員長 今日ハ四時マデアナタニ質
問ヲ御繼續願ッテモ宜イト思ヒマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=46
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047・最上政三
○最上委員 サウスルト、杉山陸軍大臣カ
或ハ厚生大臣カ風見書記官長ヲ一ツ御招キ
下サッテ、繼續シテモ宜シウゴザイマスシ、
又私ハ後〓シデモ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=47
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048・前田房之助
○前田委員長 ソレデハ本日ハ是デ散會ヲ
致シマシテ、明日ハ午前十時カラ開會致シ
マス
午後三時三十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00319380221&spkNum=48
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