第73回帝国議会　衆議院　恩給金庫法案外一件委員会　第9号　昭和13年3月2日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　付託議案
  　　恩給金庫法案（政府提出）
  　　恩給法中改正法律案（政府提出）
  　　庶民金庫法案（政府提出）
  　　無盡業法中改正法律案（政府提出）
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  　　　　會議
  昭和十三年三月二日（水曜日）午前十時三十四分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　前田房之助君
  　　　理事　最上政三君　理事　小笠原八十美君
  　　　理事　坂東幸太郎君　理事　江藤源九郎君
  　　　理事　森幸太郎君
  　　　　　　高橋義次君　村瀬武男君
  　　　　　　曾和義弌君　依光好秋君
  　　　　　　小高長三郎君　伊豆富人君
  　　　　　　林路一君　松本治一郎君
  　　　　　　塚本重藏君　今井新造君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　内閣恩給局長　高木三郎君
  　　　　　　　法制局長官　船田中君
  　　　　　　法制局參事官　樋貝詮三君
  　　　　　　法制局參事官　森山鋭一君
  　　　　　　陸軍政務次官　加藤久米四郎君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　恩給金庫法案（政府提出）
  　恩給法中改正法律案（政府提出）

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• 001・最上政三

  ○最上委員長代理　只今ヨリ開會致シマス

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• 002・船田中

  ○船田政府委員　昨日高橋君カラ恩給金庫
  ノ本質論ニ付テ、御質問ガアリマシテ、
  應政府ノ所見ヲ申上ゲテ置イタノデアリマ
  スガ、尙ホ盡サザル所ガゴザイマスカラ、
  今日之ヲ補足シタイト存ジマス、申ス迄モ
  ナク本金庫ガ民法三十四條ノ所謂公益法人
  デナイコトハ明カデアリマス、御承知ノ通
  リ民法ハ公益法人ト營利法人トニ分ケテ居
  リマシテ、營利法人ニアラザルモノハ公益
  法人、公益法人ニアラザルモノハ營利法人
  ト云フヤウニ、兩者ヲ截然ト區別致シテ居
  リマス、所ガ本金庫ノ如キハ、營利法人カ
  公益法人カ、其何レニ屬スルカ、斯ウ云フ
  コトヲ申サレマスルト、民法上ノ公益法人
  ト云フ譯ニハ參ラヌト思ヒマス、併シ又營
  利法人デナイコトモ是亦言フ迄モアリマセ
  又、殊ニ商行爲ヲ爲スコトヲ業トシテ居ル
  會社デナイコトモ、是亦言フ迄モナイノデ
  アリマシテ、此營利法人ト公益法人トノ中
  間的ノ性質ヲ持ッテ居ルモノガ實際社。會ニ
  於テハ相當多イノデアリマシテ、隨テ其中
  間的性質ヲ持ッテ居リ、何レノ範疇ニモ屬ス
  ルコトガ出來マセヌカラ、玆ニ特別法ノ必
  要ヲ感ズル譯デアリマス、本金庫ハ出資金
  ニ付テ、配當ヲスルト云フヤウナコトガア
  リマスノデ、其個々ノ行爲ヲ見マスト、恰
  モ營利ヲ目的トスルガ如クニ見エル場合モ
  アリマス、營利行爲ト見ラレルヤウナ行爲
  ヲスル場合モ決シテナイトハ申上ゲラレナ
  イノデアリマス、併シ金庫ノ主タル目的ハ
  營利デハアリマセヌ、度々御說明申上ゲテ居
  ル通リニ、受恩給者ニ對スル低利ノ金融竝
  ニ福利施設ヲ營ミマシテ、結局最終ノ目的
  ハ受恩給者ノ良キ相談相手ニナルト云フ公
  益的ノ目的ヲ以テ設立セントスルモノデア
  リマス、隨テソレ等ノ特別ノ性質ニ鑑ミマ
  シテ、玆ニ特別法ニ依ル法人ト致シタ譯デ
  アリマス、此金庫ニ類似ノ法人ハ他ニモ幾
  多存在致シテ居リマス、例ヘバ產業組合ニ致
  シマシテモ、或ハ產業組合中央金庫、或ハ
  商工組合中央金庫ノ如キ、何レモ營利法人
  デモナシ、又民法ノ所謂公益法人デモナイ、
  其中間的ノ性質ヲ持ッテ居ルモノデ、特別法
  ニ依ッテ其存立ヲ認メラレテ居ルモノハ
  他ニ幾ツモアリマス、隨テ是等ノ實例ニ徵
  シテ見マシテモ、此金庫ノ性質ハ十分御分
  リニナルコトト考ヘマス、尙ホ此金庫設立
  ノ必要ナル理由ハ度々申上ゲマシタヤウニ、
  恩給制度本來ノ性質モサルコトデアリマス
  ガ、一面實際社會ニ於ケル已ムヲ得ザル必
  要ト云フコトガ、此金庫設置ニ至リマシタ
  理由デアリマシテ、卽チ背ニ腹ハ替ヘラレ
  ヌト云フ爲ニ、折角戴イテ居ル恩給證書ヲ
  擔保ニシテ金ヲ借リルト云フヤウナコトガ、
  實際社會ニ於テハ澤山行ハレテ居ル、而モ
  ソレニ對スル金融業者トノ關係ニ於テハ、
  政府ハ必シモ貸手ノミガ惡イトカ、借手ガ
  惡イトカ云フコトハ申上ゲマセヌケレドモ、
  先般モ當委員會ニ於テ幾多ノ實例ヲ御擧ゲ
  ニナリマシタガ如クニ、借手、貸手、何レ
  ノ方面ニ於テモ幾多ノ弊害ガゴザイマス、
  隨テソレ等ノ弊害ヲ除イテ、本來ノ恩給制
  度ノ立前ニ還リ、其有難イ恩典ノ趣旨ヲ徹
  底致シマスルト共ニ、又一面ニ於テ社會ノ
  實際ノ必要ニ應ズルト云フコトカラ考ヘマ
  シテ、本金庫ノ設置ハ一日モ忽セニスルコ
  トノ出來ナイ必要ニ迫ラレテ居ルト考ヘル
  ノデアリマス、殊ニ受恩給者ノ多クノ者ハ
  下級軍人ト申シマスカ、其俸給ノ少イ下士
  官兵ト云フヤウナ者ガ實際ニ於テ大多數ヲ
  占メテ居リマス、隨テ今次ノ事件ノ後ニ於
  キマシテハ、又一層サウ云フ必要ヲ痛感ス
  ルト考ヘマスカラ、隨テ今期議會ニ於テ之
  ヲ提出致シマシテ、是非共一日モ早ク其實
  現ヲ期シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
  此點モ昨日高橋君カラ卒然トシテ金庫法案
  ヲ出サレタト云フ御非難デアリマシタガ、
  政府ハ決シテ卒然トシテ出シタノデハナク
  シテ、昨年モ議會ニ提出ヲ致シマシタガ、
  不幸ニシテ御協贊ヲ得ナカッタノデアリマ
  ス、併シ當時相當長期間ニ亙ッテ論議ガ盡サ
  レテ居リマシタ、其時ト今日ト較ベマシテ、
  今日ハ更ニ一層設立ノ必要ヲ痛感スル次第
  デアリマス、此點モ併セテ御諒承ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス

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• 003・高橋義次

  ○高橋委員　政府委員ノ御答辯中、受恩給
  者ノ現狀ヲ或ル統制セラレタル妥當ナ機構
  ヲ以テ救濟スベシト云フ趣旨ニ於テハ、私
  ハ全ク同感デアリマス、唯問題ハソレハ本
  法案、卽チ今御提案ノ恩給金庫ガ唯一無二
  ノモノデアルカドウカト云フコトニ付テハ
  大イニ〓究ノ餘地ガアルト思フ、特ニ法的
  本質論ニ於テノ只今ノ御答辯中、信用組合、
  產業組合ニ關スル點ハ、其仕事ノ內部ガ私
  ハ此金庫法案トハ異ナルト思フ、ノミナラ
  ズ特別法ヲ玆ニ構成スル場合ニ於テモ、→
  般法ノ眞精神ヲ全ク蔑ロニスル譯ニハ行カ
  ナイ、ソコデ民法ノ規定ハ公益法人ヲ規定
  シテ祭祠、宗〓、慈善、學術、技藝等ヲ玆
  ニ揭示シテ、所謂公益ニ關スル其本質ヲ茲
  ニ揭ゲテ居リマス、隨テ之ニ擬ラヘルベキ
  モノガ公益ノ範圍ニ屬スルモノト考ヘテ行
  カナケレバナラナイノデアリマス、ソコデ公
  益營利中間ノ是ガ存在デアルト云フ御意見
  デアルガ、サウスレバ少クトモ公益ト云フ
  モノノ觀念ヲ織込ンダ法案デアルト考ヘナ
  ケレバナラヌガ、其公益ト云フモノノ觀念
  ヲ織込ンダ點ハ主トシテ低利資金ノ貸出
  シ、斯ウ云フコトガ第一ノヤウニ伺ッテ居
  リマス、併シ此委員會デモ屢〓現ハレテ居ル
  通リ年六分ノ利子ト云フモノハ決シテ低利
  デハナイ、ソレハ或ル程度ニ於テ調節スル
  ト云フ局長ノ仰セデアリマスケレドモ、是
  ダケノ事業費ヲ出シテ、之ヲ經營ナサルト
  云フニハ、ヤハリ金庫ノ自立自營ノ上カラ
  言ッテモ、甚シク安クハ出來ナイデハナカラ
  ウカト私ハ想像スル、サウスルト先ヅ政府
  ノ揭ゲル第一點ノ低利、卽チ公益ノ觀念ヲ
  物語ルノダト云フコトノ仰セガ、ドウモ少
  シ乏シイヤウニ考ヘラレル、良キ相談相手
  ト云フコトモ、是モ何モ本金庫ノ設立ニ依ッ
  テデナケレバ良キ相談相手ニナレヌト云フ
  ノデハナイト思フ、良キ相談相手ハ是ハ民
  間ノ企業デアルナラバ、如何ニ法律上ノ統
  制ヲ加ヘテモ、或ハ監督ヲシテモ及バナイ
  ト云フ場合ガアルコトモ豫想致サレマス
  ガ、私共ハ斯ウ云フ固苦シイモノヲ今ノ時
  局ニ强ヒテ作ラヌデモ、或ハ郵便局ノ窓口、
  サウ云フ所デ極メテ簡易迅速、且ツ全國ニ
  普遍的ニ、サウ云フヤウナ方法ヲ採ルコト
  ニ、統制アル機構ヲ玆ニ打立テルト云フコ
  トガ、多額ノ事業費ヲ玆ニ打込ム、ソレカ
  ラ大掛リナ陣容ヲ整ヘテ行クト云フヤウナ
  コトヲセヌデ、私ハ目的ハ達シ得ラレルト
  思フ
  〔最上委員長代理退席、委員長著席〕
  ソレデアリマスカラ、此金庫ノ存在ヲ强ヒテ
  公益ノ分子ガアルノダトカ何トカ云フコト
  ニ結論シテ、サウシテ極端ニ申セバ公益理想
  ノ法人ヲ設立スルノ必要ガ私ハドウモ無サ
  サウニ考ヘラレル、公益的トカ或ハ公益ノ
  分子ヲ含ムト云フコトガ、ドウモドノ點カ
  ラモサウシテ見ルト考ヘラレヌガ、强ヒテ
  考ヘマスレバ、此構成ハ役員ハ政府ガ任命
  スルトカ、ソレカラ主務大臣ガ監督スルト
  カ何トカ云フコトノ規定ガアリマスガ、サ
  ウ云フ制度ナルガ故ニ、質的ニ公益ノ觀念
  ヲ附與スルモノダトモ考ヘラレマセヌ、又
  他ノ一例ヲ申上ゲレバ、只今申上ゲタ郵使
  局ノ窓ロデ之ヲ扱ハシムルト云フヤウナコ
  トデモ、サウ云フヤウナ監督統制ハ十分出
  來得ルコトデアルト思フ、サウ考ヘテ來ル
  ト、公益ト云フモノノ分子ヲ織込ンダ觀念
  ガ此法案ニアルカドウカト云フコトハ、大
  イニ疑ナキヲ得ナイ、是ハ若シ政府委員ノ
  御答辯ガ只今ノ通リデアルトスレバ、結局
  見解ノ相違ト云フコトニナリマスカラソ
  レハ私ハ何處マデモ固執ヲ致シマセヌガ、
  兎モ角少クトモ此點ニ付テノ御所見ヲ承ッ
  テ見タイ、今政府ノ計畫セラレテ居ラルヽ
  此企テ、卽チ受恩給者ノ現下ノ實情ニ鑑ミ
  テ、特ニ痛切ニ統制アル妥當ナ救濟ヲ必要
  トスルノダト云フコトハ同感ナノデス、私
  共モ一日モ速ニサウシタイ、唯其使命ヲ果
  サシムル機關ト云フモノガ、本金庫デナケ
  レバナラヌト云フコトハドウモ考ヘラレ
  又、幾度モ申上ゲルヤウデアリマスルガ、
  多額ノ事業費、ソレカラ利益配當ヲ豫想
  シ、利息補償料ト云フモノモ決シテ安クハナ
  イ、況ヤ此爲ニ相當ノ金ヲ此方面ニ注入
  スルコトニ依ッテ、若干ノ國債消化力ニ
  影響ナシトモ言ヘナイ、況ヤ此金庫ノ設
  立ニ依ッテ是ダケノ資力ヲ傾倒シテ居ルニ
  拘ラズ、稅金ト云フモノハ取ラナイ、サウ
  スルト此點ニ於テモ國家ノ收入ハ減少スル
  ト云フコトニナルト思フ、サウ云フヤウナ
  存在ガ何ガ故ニ私ハ必要カト思フ、ドウモ
  其點ハ質的ノ疑ト云フコト、是ハ意見ノ相
  違ト致シマシテモ、必要性ニ對スル私ノ理
  解ガマダピッタリ來ナイノデアリマス、其點
  ニ付テノ御所見ヲ伺ヒタイ

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• 004・船田中

  ○船田政府委員　私ハ高橋君ガ法律家デア
  ラレルモノデスカラ、ソコデ法律論ト實際
  論トヲ分ケテ申上ゲタノデアリマス、法理
  論トシテハ御承知ノ通リ、民法ハ公益法人
  ニアラザレバ營利法人、營利法人ニアラザ
  レバ公益法人ト、截然ト分ケテ居ルコト
  ハ、高橋君御指摘ノ通リデアリマス、併シ
  實際社會ニ於テハ營利法人デナクテ、サウ
  シテ民法ノ所謂公益法人デナイモノガ相當
  澤山アリマス、是ハ法理論トシテモ、十分
  其本質論ニ付テ色々ノ御議論ハ出ルト思ヒ
  マスガ、實際ニ於テハサウ云フモノハ澤山
  アルコトハ、御存ジノ通リデアリマス、產
  業組合ノ如キモ、組合員ニ利益ガアッタ場合
  三、配當ヲ致シテ居リマス、併ナガラ何
  人ガ、此產業組合ハ營利ヲ目的トシテ存
  在シテ居ルモノデアルト云フコトヲ言フ
  者ガアラウカ、隨分議會ノ御議論トシテ
  ハ、產業組合ガ營利行爲若クハ營利ニ準ズ
  ルヤウナ行爲ヲシテハイカントカ何トカ云
  フヤウナ御議論ハアリマス、併ナガラ產業
  組合ガ營利法人デアルト云フコトハ、是ハ
  法理論トシテハ、私ハ立チ得ナイダラウト
  思ヒマス、ヤハリ是ハ公益的ノ目的ノ爲ニ
  存在スルモノ、併シ其個々ノ行爲ヲ見レバ、
  營利ヲ追求シテ居ルト云フヤウナ營利行爲
  ニ當ルモノモアラウト思ヒマス、是ハ全體
  トシテ、其本質論ヲ御議論ヲ願ハナケレバ
  ナラヌト思ヒマス、私ハ決シテ高橋君ト法
  理論ヲ論爭シヨウト云フ意味デハアリマセ
  ヌガ、法理論トシテハ、此法人ノ本質論ニ
  付テ色々御議論ガアリマセウ、サレバコソ
  此特別法ヲ必要トスルノデアリマシテ、民
  法ニ所謂營利法人トスルナラバ、何モ此特
  別法ヲ必要トシナイノデアリマス、其點ハ
  ドウゾ先程私申上ゲ、又昨日私ノ申上ゲタ
  コトヲ通讀ヲシテ戴イタナラバ、御諒解ガ
  行クコトト存ジマス
  ソレカラ此六分ノ貸付利子ヲ取ルト云フ
  コトハ、低利トハ言ヘナイヂヤナイカ、
  隨テ公益的ト言ヘナイヂヤナイカト云フ
  御議論モ、是ハ一部分ダケヲ御覽ニナレ
  バ、產業組合或ハ其他ノ公益的ノ〓體ニ
  於テ貸付ケテ居ル利子ガ六分以下ノモノ
  モナイトハ申シマセヌ、併シソレハ極メ
  テ小數デアリマシテ、受恩給者ニ取ッテ有
  利ナモノガ、六分以下ノ貸付ヲシテ居ル
  ノデアリマシテ、全體的ニ見マスト云フト
  非常ナ高利デゴザイマス、是ハ幾多實例ガ
  出テ居リマスル通リニ、隨分高イ利息デ現
  在受恩給者ニ金融ヲ致シテ居ルト云フノガ
  社會ノ實情デアリマス、デスカラシテ、其全體
  的ノ高利デ貸シテ居ルモノヲ出來ルダケ引下
  ゲヨウ、サウシテ低利デ融通ヲ簡便ニスル
  ヤウニ致シタイト云フノガ、此恩給金庫設
  立ノ主タル目的デアリマシテ、是ハ全體ト
  シテ御覽ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、成
  程事業費等ニ付キマシテモ、相當多額ニ計
  上サレテ居リマス、併シ是ハ恩給局長モ度々
  申上ゲテ居リマスル通リニ、其事業費ノ中
  ニハ報酬モアリ、或ハ賞與モアリ、或ハ出
  張旅費等モ含ンデ居リマスルガ是ハ出來ル
  ダケ餘裕ヲ見タ事業費ヲ計上致シタノデア
  リマシテ、國家ノ豫算ト違ヒマシテ、是ハ
  金庫ノ性質ニ顧ミマシテ、出來ルダケ節約シ
  テ、サウシテ一般ノ受恩給者ノ利益ニナル
  ヤウニヤッテ行キタイ、隨テ其經營ノ任ニ當
  ル人モ、官界ト言ハズ、財界ト言ハズ、各
  方面ヲ見渡シテ、最モ立派ナ人ヲ得タイト
  云フ考デ、今決シテ之ヲ豫定致シテ居ル譯
  デハアリマセヌ、ソレカラ此報酬等ニ付キマ
  シテモ、是ハ他ノ色々ナ特殊會社等ニ付テ
  モ度々御議論ガ出ル所デアリマスケレドモ、
  是ハ私等ノ考デハ、報酬ハ相當多額ナモノ
  ヲヤラナケレバ、迚モ良イ人ハ來マセヌ、
  ソレデ最近官僚獨善トカ何トカ言ッテ、官吏
  ノ古手ガ段々會社ニ入ル、是ハ私モ議員生
  活ヲシテ居リマスカラ、サウ云フコトニ付
  テハ痛感ヲスルノデアリマスガ、大體ニ於
  テ特殊會社ノ重役ノ手當、或ハ賞與ト云フ
  モノハ非常ニ少イ、隨テ民間ノ良イ人ガ來
  ナイ、勢ヒ官吏ノ古手ガ行クト云フヤウナ
  コトニナルノデアリマシテ、是ハ議會ニ於
  テハ報酬ハ寧ロ政府ノ提案ヨリモウント出
  シテヤルト云フコトニナレバ、立派ナ人ハ
  必ズ來マス、サウシテ是ハ其人ニ對スル報
  酬バカリデナク、其人ノ信用ガアレバ、結
  局低利ノ金ヲ集ムルコトガ出來ル、卽チ資
  金「コスト」ヲ低下スルト云フ非常ナ大キナ利
  益ガアルノデアリマスカラ、是ハウント報
  酬ヲ出シテ、良イ人ヲ得ルコトガ私ハ必要
  ダト思ヒマスガ、併シソレニ致シマシテモ、
  本金庫ト致シマシテハ、出來ルダケサウ云
  フ點ニ付テ節約ヲ圖リマシテ、サウシテ受
  恩給者全般ノ利益ニナルヤウニ經營ヲシテ
  行カウ、斯ウ云フ譯デアリマス、又產業組
  合等ニ於テモ隨分低利ナ金ヲ貸シテ居ルカ
  ラシテ、サウ云フヤウナ機關ニヤラシタラ
  ドウカ、或ハ郵便局ノ窓ロデヤラシタラド
  ウカ、斯ウ云フヤウナ御議論モアルト思ヒ
  マスガ、併シ現在ノ郵便局ニ此貸付ノ仕事
  マデモヤッテ貰フト云フコトハ、機構ノ上ニ
  於テ是ハ到底不可能ダト思ヒマス、ソレカ
  ラ產業組合ノ中ニハ相當成績ヲ擧ゲテ居ル
  モノモアルコトモ存ジテ居リマスケレドモ、
  併シサウ云フモノニ代行サセルト云フコトニ
  ナリマスト、有利ナ貸付ハ幾ラデモヤリ手
  ガアルノデアリマス、併ナガラ恩給金融ト
  致シマシテハ、癈疾ノ者、或ハ老年ノ者ニ
  對スル貸付ト云フヤウナ、多クノ金融業者
  ノ厭ガル貸付モヤッテヤルト云フコトガ、此
  金庫ノ目的デアリマシテ、隨テサウ云フモ
  ノヲ全體トシテ見テ、玆ニ補償料ト云フモ
  ノトノ關係モ出テ來ルノデアリマシテ、サ
  ウ云フ點モ併セテ御考ヲ願ヒタイト存ズル
  ノデアリマス、恩給金庫ノ必要性ニ付キマ
  シテハ、度々申上ゲテ居リマスカラ茲ニ繰
  返シマセヌケレドモ、全體トシテ御覽ヲ願
  ヒタイト云フコトヲ、一言附加ヘテ置キマ
  ス

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• 005・高橋義次

  ○高橋委員　勿論全體トシテノ觀點カラ、
  私共ハ其必要性ヲ政府ト同樣ニ考ヘルモノ
  デアリマシテ、唯繰返シテ申シマスガ、其
  組織トシテ此本案ヲ除イテハ他ニナイノカ
  ト云フコトヲ伺フノガ目的デアッタノデア
  リマス、ソレデ第一點ハ只今ノ御答辯中本
  質論ニ付テハモウ是レ以上ハ意見ノ相違ニ
  ナリマスカラ私ハ言葉ヲ重ネマセヌ、唯他
  ノ法人ノ組織等ニ照シテ見テ、此金庫法案
  ガ公益ノ觀念ヲ包含スルト云フコトハ、全
  然ナイトハ申シマセヌガ、極メテ少イモノ
  デアリマス、寧ロ機構カラ申セバ營利的ノ
  性質ガ多分ニ織込マレテ居ルノヂヤナイカ
  ト云フ私ノ解釋カラ只今マデ御尋致シマシ
  タ、學者モ大體兩者ノ區別ノ標準トシテハ、
  配當ノ有無ト云フコトニ考ヘテ居ルノガ多
  數デアルト思ヒマス、其點ニ付テ是以上私
  ハ言葉ヲ重ネマセヌ、只今ノ御答辯中、是
  ハ何モ追究スル意味デ伺フノデハアリマセ
  ヌガ、郵便局デ取扱ハセルコトガ現在ノ機
  構デハ不可能デアルト云フヤウナコトガアッ
  タヤウニ思ヒマスガ、其片鱗ダケデモ宜シ
  ウゴザイマスカラ、ドウ云フ點ガ不可能ノ
  機構デアルノカ、其機構ヲ或ル程度迄改革
  スルコトニ依ッテ其使命ヲ十分ニスルコト
  ガ出來ルノデナイカ、全國ニ普遍的ニ存在
  シテ居ルト云フ其組織カラ云ッテモ極メテ簡
  便ニ行ハレルノヂヤナイカ、斯ウ云フヤウ
  ニ考ヘラレマスカラ、其點ニ付テ要點ダケ
  デ宜シウゴザイマスカラ、御尋シタイト思
  ヒマス

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• 006・船田中

  ○船田政府委員　今ノ高橋君ノ御質問デア
  リマスガ、郵便局デヤルト云フヤウナコト
  ニナルト、結局官營ト云フヤウナ問題ニモ
  ナッテ來ルト思ヒマス、併シ恩給金庫ヲ官營
  デヤルト云フコトハ、恩給金庫ノ性質カラ
  考ヘテ適當デハナイト存ジマス、又郵便局
  ハ御承知ノ通リニ、一般民衆ニハ一番親シ
  ミ易イ役所デアリマスガ、旣ニ色々ノ仕事
  ヲヤッテ居リマス上ニ、恩給金庫ト云フヤウ
  ナ性質上官營トシテ疑問ノアルモノマデ郵
  便局ニ委託事務トシテヤラセルト云フコト
  ハ、是ハ郵便局本來ノ性質機能ニ鑑ミテ適
  當デハナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=6

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• 007・高橋義次

  ○高橋委員　只今ノ御答デハ、マダ中心ニ
  觸レテ居ラヌヤウナ感シガ致シマスガ、此
  點ハ此程度ニ致シマス
  更ニ恩給金庫ニ於キマシテ、利益配當ヲ
  ナクシテ、貸付利率ヲ極メテ激減スルト云
  フヤウナコトニ付テノ政府ノ御所見ハ如何
  デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=7

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• 008・船田中

  ○船田政府委員　此問題ニ付キマシテモ、
  先般來度々申上ゲテアリマスル通リニ、利
  益配當ヲスルト云フコトハ、決シテ恩給金
  庫ノ本旨デハナイノデアリマス、先般モ申
  上ゲマシタヤウニ、初年度ニ於キマシテ拂
  込マセル資金ハ、政府出資ガ百万圓、後ノ
  五百万圓ハ宮內省、或ハ官業共濟組合等ノ
  出資ニ俟ツノデアリマシテ、民間ノ公募ト
  云フコトハ恐ラク實際ニ於テハ極メテ小額
  若クハ全然無イカモ知レマセヌ、サウシテ
  貸付資金ハ主トシテ借入金、恩給債劵ノ發行、
  卽チ會社デ申セバ社債ヲ募集シテ、其財源
  ニ依ッテ得タ資金ヲ貸付ケル、斯ウ云フコト
  ニナルノデアリマスカラ、配當ト云フコト
  ハ、金庫本來ノ目的トスル所デハナイノデ
  アリマス、隨テ今御話ノ通リニ一厘デモ安
  イ資金ガ得ラレマスレバ、ソレダケ受恩給
  者ニ對シテ安イ金融ガ出來ルト云フコトニ
  ナルノデアリマシテ、此金庫ヲ設立シタ後
  ニ於キマシテモ出來ルダケサウ云フコトニ
  致サウト云フ考ヲ持ッテ居ル譯デアリマス

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• 009・高橋義次

  ○高橋委員　昨日ノ恩給局長ノ御答辯デモ
  利益アル場合ニノミ利益ノ配當ヲスルノダ、
  是ハ問題デアルト思フ、程度ノ問題デアリ
  マスガ、利益ガ多クナッタ場合ニ-是ハ
  大方針ヲ伺ッテ置クノデスガ、民間出資ノ配
  當ヲ先ニシテ政府ノ出資ニ對シテハ取ラナ
  イト云フヤウナコトニ付テモ御考ヲ御持チ
  ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=9

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• 010・高木三郎

  ○高木政府委員　其點ハ前ニモ申上ゲタコ
  トガアルト存ジマスガ、十年間ハ政府ノ出
  資ニ對シテハ配當セズ、又ハ一般ノ配當ヨ
  リモ減少セシメルト云フコトヲ當初カラ豫
  定致シテ居リマス

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• 011・高橋義次

  ○高橋委員　成ベク質問ノ重複ヲ避ケタイ
  ノデスガ、私ノ居リマセヌ時ノ御質問ハ思
  ハズ重複スルカモ知レマセヌガ、私ノ御尋ス
  ル要點ハ十年間ダケノコトヂヤナイノデス、
  將來長キニ亙ル御方針トシテノコトヲ伺ッ
  テ居ルノデス

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• 012・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ所遠キ將來ト云フ
  コトモ考ヘラマセヌノデ、差向キ十年間ノ
  計畫ヲ立テタノデゴザイマスガ、大體ノ考
  ト致シマシテハ、十年後ニナリマシタナラ
  バ、金庫ノ基礎モ確立スルデアリマセウシ、
  其時ニナッテ又適當ナ方法ヲ將來ノ爲ニ考
  ヘタラ宜シイノデナイカト、取敢ヘズ十年
  間ノ計畫ヲ立テマシタ

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• 013・高橋義次

  ○高橋委員　金庫法案二十五條デゴザイマ
  スガ、此點ハ前ノ質問者モ觸レタヤウデア
  リマスカラ、私別個ノ角度カラ伺フノデス
  ガ、一項二項ノ但書デス、是ハ政府トシテ
  ハ大體此點ヲ承認セシメテ貸出ノ御契約ヲ
  ヤラレル、事實サウナサルノデナイカト考
  ヘラレマスガ、サウスルト全ク是ハ空文ニ
  歸スルト思フノデスガ、其點ニ付テノ實際
  ト形式トノ調和ヲ適當ニ取ルコトガ成文ノ
  體裁上必要ヂヤナイカト思フ觀點カラ御尋
  スルノデス

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• 014・高木三郎

  ○高木政府委員　第二十五條ノ但書ハ特別
  ノ場合ト云フ風ニ考ヘテ居リマス、原則ト
  致シマシテ效力ハ本人以外ニハ及バヌ、要
  スルニ本人ノミデ打切ルト云フ考デアリマ
  ス

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• 015・高橋義次

  ○高橋委員　但書ニハ「特約ヲ以テト」云フ
  コトニナッテ居リマスガ、此特約ハ實際殆ド例
  外デナシニ、原則的ニヤラセルノデナイカ
  ト云フコトヲ御尋スルノデアリマス

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• 016・高木三郎

  ○高木政府委員　其點ハ屢〓前囘ニモ申上ゲ
  テアルノデスガ、サウ云フヤウニ考ヘテ居
  リマセヌ、本當ノ例外ノ場合ニ於テ特約ヲ
  結ブ、ソレガ爲ニ補償料ヲ相當餘裕ノアル
  ヤウニ組ンデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=16

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• 017・高橋義次

  ○高橋委員　ソレカラ二十八條デアリマス
  ガ、「恩給ヲ擔保ニ供シタル者再ビ就職シ恩
  給ヲ停止セラルル場合ニ於テハ」云々ノ此規
  定ハ、從來例ヘバ產業組合、信用組合等ガ
  取扱フ時ハ斯ウ云フヤウナ實際ノ取扱ヲヤッ
  テ居ラヌヤウニ私聞イテ居リマスガ、サウ
  スルト此恩給金庫ニ依ッテ却ッテ受恩給者ニ
  民間ニ於ケル取扱ノ實際ニ之ヲ較ベテ不利
  益ガ與ヘラレルヤウニ考ヘラレマスガ、此
  點ニ付テハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=17

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• 018・樋貝詮三

  ○樋貝政府委員　此點ハ產業組合等ニ於キ
  マシテハサウ云フヤウナ場合ナラバ、御說ノ
  ヤウニ或ハ全額償還ヲサセルトカ、或ハ外
  ニ保證人ヲ立テサセルトカ、色々ト組合ナ
  ドニ依ッテ違ッテ居リマスカラ、何カソレニ
  代ルベキモノヲ得ルト云フコトニ致シマス
  シ、元々今日擔保ヲ禁止シテ居リマスノデ
  俸給ナドヲ借金ノ爲ニ差押ヘガ來マスト、
  御承知ノヤウニ事實上ハ官吏ノ身分トシテ
  ハ公認サレテ居ナイヤウナ借金ヲ致シマシ
  テ、每月月給ヲ差押へラレルト云フヤウナ
  コトハ官吏ノ體面ヲ汚スコトニナルカラ何
  トカスルト云フヤウナ弱イ所モ持ッテ居ル
  モノデスカラ、金ヲ返シテ何トカ事實上ノ
  解決ヲシナケレバ仕樣ガナイカラ、俸給ヲ
  差押ヘルト云フヤウナコトデ、强イ談判ヲ
  シテ解決ヲシテ居ルノガ事實デアリマス、斯
  ウ云フ今度ノ法律ノヤウナ、公認シタヤウ
  ナ規定ハ、御說ノヤウニ何處ニモナイノデ
  アリマス、事實上サウ云フヤウナ一種ノ强制
  力ヲ持ッテ居ルノデ、間接ニ厭ナコトヲ楯ニ
  取リマシテ解決ヲ付ケテ居ルヤウデアリマ
  ス、產業組合バカリデナシニ、他ノ一般ノ
  金ヲ貸シテ居ル者ナドモサウ云フヤウニヤッ
  テ居ルヤウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=18

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• 019・高橋義次

  ○高橋委員　受恩給ノ權利ハ一身ニ專屬ス
  ル權利デ、融通性ノナイモノデアルト云フ
  從來ノ御答辯ニ依ッテノ政府ノ御所見ハ、サ
  ウ承ッテモ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=19

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• 020・樋貝詮三

  ○樋貝政府委員　從來ノ法律ニ依リマシテ
  ハ、洵ニ御說ノ通リデアリマス、此恩給金
  庫法ガ出來マシテ、恩給金庫法ニ依ッテ認メ
  ラレル限度ニ於テ部分的ニ是ダケノ例外ガ
  作ラレルコトニナルト云フコトハ御覽ニナ
  リマシタ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=20

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• 021・高橋義次

  ○高橋委員　結局恩給法第十一條ノ但書ノ
  點ノ法律上ノ解釋ヲ確定シテ置キタイノガ
  私ノ目的ナノデス、ソコデ御尋ヲ致シマス
  ガ、例外ハ御認メニナルガ、兎ニ角融通性
  ハナイモノデアルト云フコトノ解釋デアラ
  レルノデスガ、マア法律上ノ行爲ハ或ハ適
  法ノ行爲トカ、或ハ不法ノ行爲トカ、或ハ
  法認ノ行爲トカ、大體三ツニ分レテ解釋サ
  レテ居ルヤウデアリマスガ、政府ハ此三ツ
  ノ中ドノ範疇ニ受恩給權利ハ入ルモノダト
  云フ御解釋デアリマスカ、又ソレ以外ノ特
  別ナ行爲デアルト云フ御解釋デアリマス
  カ、其點ヲ一ツ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=21

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• 022・樋貝詮三

  ○楊貝政府委員　恩給ヲ受ケルノ權利ノ處
  分行爲ハ一般ニ法律ハ禁止シテ居リマス、
  ソレデ十一條ノ但書ニ依リマシテ、法律ヲ
  以テ定メタ場合ダケ、而シテソレヲ恩給金
  庫ニ擔保トスル場合ダケニ限ッテ禁止ノ解
  除ヲ爲スト云フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=22

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• 023・高橋義次

  ○高橋委員　其所謂違法ト云フコトニ當ル
  カ當ラヌカ分ラヌノデアリマスガ、今ノ政
  府委員ノ御答ニ依ッテモ、違法解除ノ本質ト
  申シマスカ、結局恩給金庫ノ本質論モソレ
  ニ加ハッテ、又蒸返シニナルヤウナ感ジハア
  リマスガ、兎ニ角十一條一項ヲ改メテ改正
  立法ヲ御要求ニナッテ居ル譯デスカラ伺フ
  ノデアリマスガ、「但シ特別法ノ定ムル所ニ
  依リ恩給金庫ニ擔保ニ供スルハ此ノ限ニ在
  ラス」ト御規定ニナッタ其立法ノ理由ト申シ
  マスカ、本質論ト申シマスカ、唯是ダケニ
  限ッテ禁止ノ解除ヲスルト云フコトニ付テ
  ノ理由ヲ一ツ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=23

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• 024・樋貝詮三

  ○樋貝政府委員　御尋ノ趣旨ガ或ハ私ガ申
  上ゲルコトト多少喰違フカモ知レマセヌ
  ガ、御尋ノ趣旨ハ斯ウ云フコトデハナイカ
  ト想像致シマス、ソレハ一般ニ恩給ヲ擔
  保ニ供スルコトハ禁止シテ居リナガラ、
  恩給金庫ダケニ何故許スノカ、許スナラバ
  他ノ機關、例ヘバ特殊ノ銀行トカ、或ハ進
  ンデハ產業組合トカ、色々機關ガアラウデ
  ハナイカ、サウ云フモノニモ許シテ宜イデ
  ハナイカ、何故ニ恩給金庫ダケニ限ッテ許
  スノカ、斯ウ云フ御尋デハナイカト思ッテ
  居リマス、若シサウデアルトスルナラバ、
  恩給金庫設立ノ趣旨ヲ申上ゲナケレバナラ
  ヌコトニナリマス、是ハ恐ラク或ハ法制局
  長官カラ、或ハ恩給局長カラ申上ゲテ居ル
  コトデアラウト存ジマスガ、恩給受給者ト
  云フモノハ其數ニ致シマシテ約五十万人バ
  カリデアリマス、ソレデ先程法制局長官カ
  ラモ申上ゲマシタヤウニ、之ニ對シテハ不
  具者、或ハ老年者、或ハ幼年者トカ云フヤ
  ウナ者ニモ貸付ヲスルコトヲ目的ト致シテ
  居リマスノデ、一般金融業者ガ爲シテ居ル
  ガ如クニ、利益ノアル部分、言換ヘレバ安全
  ナ部分ダケヲ撰ンデ貸スト云フヤウナ營利
  目的デハナイノデアリマシテ、事業全體ト
  シテハ算盤ノ方カラ申セバ、不利益ナ部分
  ヲモ含ンデ、ソレニモ貸付ヲスルト云フ
  コトヲ元々目的ト致シテ居ルノデアリマ
  ス、サウ云フ部分ヲ背負フ爲ニハ、ドウシ
  テモ全體ヲ打ッテ一丸ト致シマシテ、全體ノ
  貸付金、其他ヲ確保致シマセヌト、貸付者
  ニ當ル者ハ維持ガ出來マセヌ、數箇アル中
  ノ一ツノモノ、有利ナモノダケ撰ッテ幾ツカ
  ヤルト云フコトニナレバ、結局不利益ナモ
  ノ具體的ニ申セバ、保險モ付ケラレナイ
  ヤウナ老幼者トカ、或ハ不具者ト云フモノ
  ガ後ニ殘サレテシマフ、ソレデハ恩給擔保
  ナドヲ認メルト云フ趣旨ニ遠ザカッテシマ
  フコトニナリマス、公益的性質ヲ非常ニ
  失ッテシマフ、サウ云フ立場カラドウシテ
  モ一個ノ金庫-金庫ト名前ヲ付ケルカ銀
  行ト名前ヲ付ケルカハ別ト致シマシテモ、
  サウ云フ風ナモノデ統括シテ、ソレヲ全體
  打ッテ一丸トシテ、サウシテ其全體ノ統計ニ
  基イテ、其算出ノ基礎ノ下ニ貸付ヲ行ハナ
  ケレバ、ドウシテモ永續シナイト云フコト
  ガ考ヘラレマスノデ、ソレデ此恩給金庫ヲ
  設立スルト云フコトニナリマシタ
  次ニ、ソレナラバ旣存ノ一ツノ機關ニ委
  セタラドウカ、例ヘバ特殊ノ農工銀行ト
  カ、或ハ日本銀行ナドハ、斯ウ云フ小サイ
  コトハ受ケモ致シマスマイガ、サウ云フモ
  ノニ賴ンデヤッテ貰ッタラドウカト云フコト
  デアリマスガ、既存ノ機關ハ何レモ特殊ノ
  目的ヲ持ッテ居リマスノデ、極ク閑ナ時ナラ
  バ、此恩給擔保ノヤウナコトニモ熱心ニ
  ヤッテ貰ヘマセウケレドモ、資金ノ涸渴スル
  ヤウナコトニナリ、非常ニ外ノ方ノ需要ガ
  多クナルトスレバ、本來ノ目的ノ爲ニ不熱
  心ニナルコトハ疑ナイコトデアリマス、又
  附帶的ノ諸種ノ救療事業ノ如キニ至リマシ
  テハ、サウ云フ所デヤッテ貰ハウト云フコト
  ハ無理デアリマス、ドウシテモ新シク一ツ
  作ルヨリ外仕方ガナイト云フコトニ結論ハ
  到達シタヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=24

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• 025・高橋義次

  ○高橋委員　只今ノ御說明ト從來ノ政府委
  員ノ御說明デ、御提案ノ御趣旨ハ大體諒承
  致シマシタガ、特ニ此場合私カラ御尋ヲシ
  テ置キタイノハ、本立法ハ昨日モ政府委員
  カラ御答ニナリマシタ通リ、社會立法デア
  ルト云フコトノ觀點カラ、多數色々ナ陳情
  ヲシテ居リマス從來ノ金融業者ノ方面ノ立
  場モ一ツ檢討シテ置キタイト考ヘルノデア
  リマス、ソレデ御尋ガ重複致シマスレバ恐
  縮致シマスルガ、貸付總額ガ印刷物ナドヲ
  見マスト、二億四千万圓ニナッテ居リマスガ
  恩給金融業者ガドレ位アルカト云フコトガ
  マダ私ハ諒解致シテ居リマセヌ、其點若シ
  御分リナラ御示シ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=25

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• 026・高木三郎

  ○高木政府委員　金融業者ガドレダケノ數
  アリマスカト云フコトハ、マダ完全ナ調ベ
  ガゴサイマセヌガ、金融サレテ居リマス額
  ニ付キマシテハ、是モ前囘以來度々申上ゲ
  タノデスガ、大體恩給年金ヲ擔保ト致シマ
  ス金融ニ於キマシテ、ドレダケガ擔保金融
  デアルカト云フ正確ナ數ヲ調査スルコトハ、
  實ハ困難デアリマス、唯貯金局ニ於キマス
  ル代理受領ノ形式ニ依ッテ受取ッテ居リマス
  モノカラ推定致シマシテ、大體二割程度ト
  云フ風ニ考ヘラレテ居リマス、デアリマス
  カラ、代理受領以外ノ形式デ取ッテ居ルモノ
  モアラウト考ヘマスノデ、大體ノ基準ト致
  シマシテハ二割乃至二割五分程度デアルト
  云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=26

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• 027・高橋義次

  ○高橋委員　私共ヘ陳情致シテ參ッタ計數ハ
  約六万人、其家族ヲ合セレバ約三十万人ト
  云フ計數ヲ示シテ居ルノデス、只今御示シ
  ノ割合ガサウ云フヤウニナルカドウカ分リ
  マセヌガ、サウ云フヤウナ計數ヲ齎シテ參ッ
  テ居ルノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付テノ
  私共ノ考デアリマスガ、此中ニハ、甚シク
  不良ノモノモアルト思フノデス、昨日產業
  組合中央會ノ表示ヲ致シテ居リマシタ利子
  ノ中ニハ、金庫法案ノ此御目論見ヨリモ安
  イモノガ兎ニ角若干アル、サウ云フ觀點カ
  ラ申シマスレバ、此金融業者ノ中ニハ、ヤ
  ハリ相當人情ニ卽シ暴利ヲ貪ルコトヲ敢テ
  シナイト云フヤウナモノガアルコトヲ豫想
  セラレルト思フノデアリマス、ソレ等ノ點
  ニ對シテ政府ハ何等カノ御考ヲ御持チニナッ
  テ居ルカドウカト云フ點ヲ伺ッテ置キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=27

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• 028・高木三郎

  ○高木政府委員　前段ノ代理受領ノ人員ハ
  大體ニ於テ御質問ノ通リ六万三千人デアリ
  マス、其全部ガ擔保金融カドウカハ先程申
  シマシタ通リ明瞭デアリマセヌガ、兎ニ角
  大體取調ベマシタ代理受領ノ人員ガ六万三
  千人、ソレニ對スル金額ガ二千万圓、ソレ
  デアリマスカラ假ニ三年分ト致シマシテ六
  千万圓ト云フコトニナリマス、ソレカラ產
  業組合トシテ貸付ケテ居リマス中非常ニ低
  率ノモノガアリマスガ、是ハ恐ラク現在ノ資
  金「コスト」ノ關係カラ致シマシテ、六分以下
  デ貸付ヲスルト云フコトハ不可能デハナイ
  カト考ヘマス、或ハ非常ニ安イ時分ノ金ノ殘
  リデアルカ、或ハ何カ特殊ノ事情デ他ノ理
  由ガ入ッテ居ルノヂヤナイカト思ハレルノデ
  ス、昨日ノ表ヲ御覽ノ通リ、六分以下ト云フ
  ノハ極メテ僅カノモノデアリマス、大體產
  業組合等ニ於テ行ハレテ居リマスノモ七分
  以上、甚シクナリマスト一割ト云フヤウナ
  モノガアルノデアリマス、又一方金融業者
  ノ行ッテ居リマスモノニ付テハ、大體年一割
  五分、手數料等ハ場合ニ依ッテ非常ニ遠フノ
  デアリマスガ、昨日モ一二ノ例トシテ申上
  ゲマシタヤウニ、額面二千七百圓ノ借用金
  ニ對スル手數料、利息、雜費トシテ八百三
  十五圓ヲ取ッタト云フヤウナ例モアル、是等
  ハ非常ニ顯著ナ例ダト思ヒマス、地方等ニ
  於キマシテハ、ソレ〓〓ノ事情ガ違ヒマス
  ノデ、或ハソレヨリモ安イ利子デ貸シテ居
  ルモノモアルデアラウト考ヘラレルノデア
  リマスガ、唯恩給局ノ立場ト致シマシテ、
  ソレデハドレダケノ利子ナラバ高利ヂヤナ
  イカト云フヤウナコトデ、區分スルト云フ
  コトモ中々困難ナコトト考ヘルノデアリマ
  ス、又表向ノ問題ト致シマシテハ、先日來
  屢〓申上ゲマシタヤウニ、擔保禁止ノ規定カ
  ラ致シマシテ、之ヲ表向ノ問題トシテ肩替
  リスルトカ何トカ云フコトヲ此處デ申上ゲ
  ル譯ニハ行キ兼ネルト思フノデアリマスガ、
  私共ノ考ト致シマシテモ、是モ屢〓申上ゲテ
  居ルノデアリマスケレドモ、受給者ニ不德ヲ
  奬勵スルト云フ考ハ毛頭アリマセヌノデ、
  受給者ト債權者トノ側ニ於キマシテ適當ニ
  妥協ガ付キマスレバ、其妥協サレマシタ部
  分ニ付キマシテ相當斡旋ヲスルト云フダケ
  ノ用意ハ十分持合セテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=28

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• 029・高橋義次

  ○高橋委員　昭和十二年七年二十一日ノ勅
  令デゴザイマスガ、此勅令ノ以前ト以後ト
  ニ於テノ再交付ヲナサル決定ノ標準ニ相違
  ガアリマスカ、相違ガアリマセヌカ、アリト
  スレバ具體的ニ伺ッテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=29

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• 030・高木三郎

  ○高木政府委員　從來ノ規定ニ依リマス
  ト、忘失毀損ノ場合ニ基因致シテ居ッタノ
  デアリマスガ、昨年勅令ヲ改正致シマシテ
  カラ、稍、其條件ヲ緩和致シマシテ、ソレガ
  爲ニ再交付ノ數ハ從前ヨリモ殖エテ居リマ
  ス、併ナガラ是モ前囘來屢。問題ニナッテ居ツ
  タノデアリマスルガ、私共ノ考ヘル所ニ依
  リマスルト、恩給局ガ矢鱈ニ踏倒シノ爲ニ
  再交付ヲ致スト云フヤウナ考ハ少シモナイ
  ノデアリマシテ、事情カラ見マシテ非常ニ
  囘收不能デアリ又總テノ觀點カラ考ヘマシ
  テ相當惡辣ダト考ヘラレルヤウナ部分ニ對
  シテ再交付ヲ致シテ居リマス、ソレモ恩給
  局ノ事務ノ輻湊致シテ居リマス關係上、手
  廻リ兼ネテ居リマスノデ、マダ出シマシタ
  件數ト云フモノハ僅ニ四百件餘リデアリマ
  ス、ソレ程大キナ影響ヲ與ヘタモノトモ考
  ヘテ居ラナイノデアリマス、尙ホ今囘ノ恩
  給法改正案ノ十一條ノ二項ニ依リマシテ、
  將來ハ擔保禁止ニ違背シタ場合ニハ支給廳
  ニ通知致シマシテ恩給ノ支給ヲ差止メルヤ
  ウニナッテ居リマスガ、是ハ受給者側ニ對ス
  ル一ツノ制裁ト考ヘテ居ルノデアリマス、
  之ニ依ッテ受給者ニ反省ヲ求メル、受給者ノ
  反省ヲ求メルト同時ニ、債權者側ニ於テモ
  非常ナ惡辣デアリ又妥當デナイ條件ヲ以テ
  對抗スルト云フヤウナ場合ニ於テ、再交付
  ノ途ヲ開イテ居リマス、兩方面相俟ッテ妥協
  ガ付クヤウニト云フ風ニ恩給局トシテハ
  狙ッテ居ルノデアリマシテ、其一方ニ偏ルト
  云フヤウナコトハ毛頭考ヘテ居ラナイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=30

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• 031・高橋義次

  ○高橋委員　從來ノ此恩給債權ニ對スル貸
  付中所謂契約自由ノ原則ニ從ッテ眞ニ其債
  權ノ受領ノ委任ヲスル、名實共ニサウ云フ
  契約內容ノモノガ絕無デアッタトハ言ヘナ
  イト思フ、ソレガ擔保ニ供スルト云フ意思
  ノ介在スルコトニ依ッテ、ソレハ大審院ノ判
  例モアルノデアリマスカラ、判例ガアレバ
  ハッキリ致シマスガ、此兩者ノ分界ヲハッキ
  リナサルコトガ再交付ナサル時ノ必要條件
  デハナイカト思フ、此法案ノ施行後直ニト
  云フ譯ニハ行カヌデセウカラ、其間ニ可ナリ
  ノ期間ガアルコトデアラウト思ヒマスガ、
  所謂契約自由ノ原則ニ從ッテ眞ニ債權受領
  ノ委任ニ過ギナイト云フモノ、是ハ固ヨリ
  有效ナモノデアルニ違ヒナイ、ソレト擔保
  意思ノ介在デ大審院ノ判例ノ如キモノ、其
  分界ヲドウ云フ風ニ事實上御取扱ニナル方
  針デアルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=31

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• 032・樋貝詮三

  ○樋貝政府委員　只今ノ御尋ト少シ外レテ
  居リマスガ、私丁度アノ勅令ノ改正ノ當時
  恩給局長デアリマシタノデ、其關係上カラ
  中上ゲマスト、恩給證書ノ再交付ハ受給證
  書ガ使ヘナイヤウニナッタト云フコトヲ理
  由ニ交付致スノデゴザイマス、ソレガアノ
  改正前ニ於キマシテ其場合ヲ忘失毀損ト云フ
  コトニ致シタノデアリマス、忘失ト云フノハ
  法律家デアラルル高橋サンニ申スノモ變ナ
  モノデゴザイマスガ、有形的ニ何處ニ無ク
  ナッタカト云フコトノ外ニ、受給者ノ眼カ
  ラ見テ全然使ヒ得ナイ、何處ニアルカ分ラ
  ナイト云ッタヤウナ場合モ、普通ノ手段ヲ盡
  シテ探シ得ナイ場合モ忘失ト考ヘテ宜シイ
  ト思フノデゴザイマス、所ガ從來ハ成ベク
  嚴格ニ之ヲ解釋シヤウト云フコトデ、窮窟
  ニ致シテ居リマシタガ、最早十年近クニモ
  ナリマスガ、忘失ト云フノハ眼ニ見エテ居
  ル所デ燒カレタリスルノデナケレバ忘失デ
  ナイナドト言フベキモノデナイ、モウ少シ
  ソレハ廣イ意味ヲ持ッテ居ルノダト云フヤ
  ウニ段々考ヘラレマシテ、從來是ガ證書ヲ
  再交付致シテ居ッタヤウナ譯デアリマス、昨
  年七月ノ勅令改正ハ、其趣旨ヲ寧ロハッキリ
  致シマシタヤウナコトデアリマス、使用困
  難ト云フヤウナ言葉ヲ以テ之ヲ現ハシテ居
  リマスケレドモ、趣旨ニ於テハ大シタ相違
  ガアルノデハナイ、恩給證書ハ今申シ掛ケ
  テ居リマシタノデスガ、受給者ガ其證書ヲ
  自分ノ爲ニ使フコトガ出來ナイヤウニナッタ
  カドウカト云フコトヲ標準ニ致シマシテ再
  交付スルカシナイカト云フコトヲ決メテ參
  ルノデアリマス、ソレハドウ云フ理由デ使。
  フコトガ出來ナイヤウニナッタカ、忘失シタ
  カト云フコトハ、實ハ第二段ニ考ヘル體ノ
  モノデアリマス、ソコデ恩給局ト致シマシ
  テハ、貸借關係ノ方ニハ觸レタクナイ、又
  觸レナイト云フ方針デ居リマス、金ノ貸シ
  タ借リタノ方ハ、申スマデモナク貸シタノ
  カ或ハ借リルノカト云フヤウナコト、ドン
  ナ金額ヲ借リタカ貸シタカト云フコトノ判
  斷ハ、是ハ司法裁判所ノ管轄スベキモノデ、
  固ヨリ行政廳デアル恩給局ノ關知スル所デ
  ハアリマセヌガ、恩給局ト致シマシテハ、給
  與スル所ノ恩給ノ-其給與ノ方法トシテ
  使ヒマス所ノ證書、一ツノ證據トシテ使フ
  所ノ證書、ソレヲ二度目ニ交付スルカシナ
  イカト云フ點ニ限局シテ判斷ヲ致シ、再交
  付スルカ否カヲ決定致シテ居ッタヤウナ譯
  デアリマス、デアリマスカラ昨年ノ勅令改
  正ニ依リマシテモ、其本質ハ少シモ變ッテ居
  リマセヌ、更ニ恩給給與ニ付キマシテハ恩
  給證書ト云フモノヲ使ハズニ、全然證書ナ
  ドハ扱ハヌコトニシテ給與スルノモ一ツノ
  方法デアリマス、恩給證書ヲ全廢スル、別
  途ノ方法ヲ以テ給與スルト云フコトモ、是
  ハ一ツノ方法デアリマス、是ハ自由ニ出來
  ルコトデアリマス、無論今日ハ證書ヲ使ッテ
  給與スル、ソレヲ方法トシ手段トシテヤッテ
  居リマスガ、是ナドハ廢メル時ニハ廢メテ、
  別ナ方法デモ給與スルコトモ出來ルト私ハ
  考ヘテ居リマス、サウ云フヤウナ譯デ、今
  ハ證書ニ依ルコトニナッテ居リ、又證書ニ付
  キマシテハ、只今申上ゲタヤウナコトデ參ッ
  テ居ルノデアリマシテ、ドウモ動モスレバ
  脫法的ニソレヲ擔保ニ供セラレルト云フヤ
  ウナ、債權債務ノ方へ引付ケラレルヤウナ
  コトガ有リ勝チナモノデアリマスカラ、私
  恩給局長在職中モ嚴ニ局員ヲ戒メテ、債權
  債務ノ方面ニ付テ介入スルコトハナラナイ
  リ、ソレハ參考ニ過ギナイ、唯恩給局トシ
  テハ受給者ノ詐欺ニ加功スルヤウナ、サウ
  云フ行動ヲ執ルベキモノデナイト云フヤウ
  ナコトヲ消極的ニ申シマシテ、全ク證書ガ
  存在スルヤ否ヤ、而シテ證書ノ存在セザル
  ニ至ル原因ガ本人ノ故意ニ基クヤウナ場
  合、見テ居ル所デ燒イテシマッテ又再交付シ
  テ吳レト云フヤウナコトヲ言ッテ來テモ給
  付スル譯ニハ行キマセヌ、サウ云フ種類ニ
  屬セザルカ否カト云フコトヲ能ク考ヘヨト
  云フコトヲ申シテ居ッタ次第デアリマシテ、
  債權、債務トノ關係、此實際ニ恩給局ガ中
  ニ入ルコトヲ嚴ニ警メテ居ッタ譯デアリマ
  ス、恩給金庫ガ出來マスト昨年モ申シマシ
  タ譯デスガ、今度入レマス十一條ノ第二項
  ノ如キ、差止-是ハ停止デハアリマセヌ
  ガ、一時支給スル金ヲ控ヘテ置クト云フダ
  ケノコトデ、是ハ現在デモ遞信省令デモヤ
  リ得ルコトデアリマスケレドモ、特ニハッキ
  リシテ置イタ方ガ宜イト云フコトデ法律ノ
  方ニ明ニシマシテ、是ハ先程高木恩給局長
  カラ申上ゲマシタ通リニ、受給者ノ方デ餘
  リニ不當ナコトヲ言ッテ居ッタノデ、乘移リノ
  場合ナドヲ考ヘルノデアリマスガ、後々マ
  デ橫ニ車ヲ押スト云フヤウナ狀態ニナレ
  バ、是デ差止ヲヤリ得ル、現在ノ法規デモ
  出來マスケレドモ、法律ニ根據ヲ置イタ方
  ガハッキリスルト云フコトデ、此法デ抑ヘル
  コトガ出來ルシ、又金融業者ノ方デ不當ナ
  註文ヲスルモノガアリマスケレドモ、不當
  ナルコトヲ言ッテ居ルナラバ、其方面ハ證書
  再交付ノ方法ニ依リ、或ハ又一步進メレバ
  證書ト云フモノヲ全廢スル方法ニ依リ、サ
  ウ云フコトハ制限スルコトガ出來ル、最モ
  公平妥當ナルコトニ依ッテヤルノガ、是ガ國
  家的ニ見テ宜イノデハナイカト云フコトヲ
  考ヘタ次第デアリマス、前後ノ事情ヲ申上
  ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=32

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• 033・高橋義次

  ○高橋委員　詳細ナ御答辯ヲ承リマシタ
  ガ、勿論只今御尋ノ趣旨ハ、當局ト債權債
  務ノ關係ガドウ斯ウト云フヤウナコトハ一
  寸私豫想シテ御尋シタノデハナイノデアリ
  やっ、尙ホ具體的ニ申上ゲマスレバ三十六
  條一項ノ亡失、毀損、是ハ只今ノ御答辯ノ通
  リデアルト私モ考ヘル、御尋セントスル趣
  旨ハ第二項ノ「恩給證書ヲ呈示ノ用ニ供ス
  ルコト困難ナル狀況ニ在ル場合」、此場合ハ
  具體的ニソレ〓〓當局ガ御判斷ナサルト思
  フ、之ヲ御判斷ナサル場合ニ如何ナル標準
  ヲ以テ呈示ノ用ニ供スルコトガ困難ナル狀
  況ニアルト判斷ナサルカ、聞ク所ニ依リマ
  スレバ、內容證明ヲ以テ債務者ガ債權者ニ
  對シテ、豫テ恩給受領ノ委任ヲシテ置イタ
  ガ、都合ガアルカラ其契約ハ解除スルト云
  フコトノ內容證明ヲ添附シテ當局へ差出セ
  バ、當局ハ直チニ慥カ第一一項ト考ヘマスガ、
  之ヲ以テ再交付ノ理由トシテ御取扱ニナッ
  テ行クト云フコトデアリマスカ、其點如何
  ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=33

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• 034・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ實際ノ取扱ト致シ
  マシテハ、御話ノ內容證明ノ督促ノ外ニ、
  尙ホ〓末書ヲ取ッテ居リマス、此顯末書ハ要
  スルニ吾々ノ事務上ノ參考デアリマシテ、
  前局長樋貝サンカラモ申上ゲ、私カラモ申
  上ゲマシタヤウニ、恩給局ノ方針ト致シマ
  シテハ、債權、債務ノ關係ニ深入ヲシナイ、
  併ナガラ呈示困難ナリト云フ事實ノ認定ノ
  參考ノ資料トシマシテ、〓末書ヲ出サセマ
  シテ、〓末書ニ依ッテ詳細取調ベマシタ上デ
  判斷ヲ致シマス

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• 035・高橋義次

  ○高橋委員　其最後ノ一點ダケ伺ッテ置キ
  タイノデス、〓末書ト云フモノノ要點デス
  ガ、ソレガ受恩給者ノ主張其モノガ擔保
  ノ要ニ供シタンダト云フヤウナ場合ハ、是
  ハ御取扱上大審院ハ無效ノ判決ヲ下シテ居
  ルノデスカラ、御取扱ヒ易イト思フノデア
  ルガ、眞ニ契約自由ノ原則カラ、單ニ債權
  ノ受領ヲシタニ過ギナイノダ、斯ウ云フヤ
  ウナモノガ絕無トハ言ヘナイト思フ、其同
  ジ資料ノ中デ之ヲ判斷スル標準ト言ヒマス
  カ、方法ト言ヒマスカ、ソレヲ御伺スルコ
  トガ出來レバ伺ヒタイ、ソレガ要點ナンデ
  ス

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• 036・高木三郎

  ○高木政府委員　大體〓末書ニ添付致シテ
  參リマス、當事者間ノ契約書等ニ依リマシ
  テ判斷ヲ致シマス、隨テ大體普通ニ行ハレ
  テ居リマス擔保金融ノ場合ニハ表面ノ形式
  ハ兎モ角ト致シマシテ、特約書等ニ依ッテ擔
  保ノ實質的契約ヲ致シテ居リマス、ソレニ
  依ッテ判斷スルノデアリマス

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• 037・高橋義次

  ○高橋委員　サウスルト其受給者ノ主張ヲ
  唯一ノ根據トシテ御取扱ニナッタ、斯ウ云フ
  コトニ伺ッテ宜シイデスカ

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• 038・高木三郎

  ○高木政府委員　受給者ノ主張ノミヲ以テ
  ト云フ譯デハアリマセヌデ、尙ホ其際ニ疑ハ
  シイ點ガアリマスレバ、照會ヲ發スル、或
  ハ市內デアリマスレバ本人ノ出頭ヲ求メマ
  シテ詳細ニ取調ベテ居リマス

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• 039・高橋義次

  ○高橋委員　大審院ノ判例ノ第八卷七百七
  十九號、其判例ニハ恩給受領權者ガ恩給ノ
  受領ヲ自己ノ債權者ニ委任スルト同時ニ、
  債權者ガ受領シタル恩給ヲ以テ債權ノ辨濟
  ニ充當スルコトヲ約スルハ、恩給ヲ以テ他
  人ノ權利ノ目的ト爲スニ非ザルヲ以テ有效
  ナリ、又同ジク判例ニ、擔保ニ供スルノ目
  的ヲ以テ恩給證書ヲ交付スルハ不法ノ原因
  ニ因ル給付ト謂フヲ得ザルモノトス、斯ウ
  云フ判例ガアルノデアリマスガ、此判例ノ
  趣旨カラ致シマシテ、勿論是ハ繰返シテ申
  シマスガ、惡金融業者ガ特殊ナ債權デアリ、
  恩給受領權ノ申請ヲ侵害スル、其點ハ大イ
  ニ打破シナケレバナラヌト思フノデアリマ
  スガ、法律ノ原則デアル、繰言ナガラ契約
  ノ自由ノ原則ニ從ッテ、眞ニ斯ウ云フ約束
  ガアルモノハ有效ダ、是ハ法律上當然ノコ
  トデアル、其當然ヲ判例ニ現ハシタニ過ギ
  ナイモノデアルト思フ、此點ハ判例モ之ヲ
  示シテ居ルコトデアリ、法ノ根本精神ニ照
  シテ見テモ、其他道德的ナ立場カラ考ヘテ
  干、當然保護スベキモノデアルト思フガ、
  其保護ニ缺クル所ナキ周到ナ御取扱ヲ當局
  ニ望ムノガ私ノ目的ナンデス、只今ノ御答
  辯ダケデハ稍〓形式ダケノ御調査、疑ハシ
  ケレバ債務者ヲ御呼ビニナッテ御尋ニナル
  ト云フコトデアリマスガ、債權者ヲ御呼ビ
  ニナッテ御尋ニナッタ實例ハオアリニナリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=39

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• 040・高木三郎

  ○高木政府委員　債權者ヲ呼出シマシテ調
  ベタ實例ト云フモノハゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=40

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• 041・高橋義次

  ○高橋委員　私ハ繰言ナガラ徒ニ不良金融
  業者ヲ保護スルト云フヤウナ大ソレタ考ハ
  勿論寸毫モナイノデアリマス、唯船田法制
  局長官モ御述ベノ如ク、本立法ハ社會立法
  デアルト云フ點ニ付テハ、私モ左樣ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマスガ、善良ナ取引ノ衝ニ
  當ッタ者、寧ロ恩惠トシテ之ヲ施シタ者、ソ
  レカラ其他極メテ同情ノ動機ニ基イテ取引
  ノ衝ニ當ッタ者、ソレカラ假令單純ナ金融ト
  シテモ、決シテ高利ニ趨ラズ、本當ニ債務
  者ノ急場ヲ救フト云フ氣持カラ出發シタ良
  心的ナ態度ノ者ニ對シテハ、是ハ社會問題
  ト云フモノノ取扱ノ立場カラ見テ、正シイ
  公正ナ取扱ヲ私ハシテヤリタイ、斯ウ云フ
  考カラ御尋ヲシタ譯デゴザイマスガ、當局
  ニ望ム所ハモウ少シ一方ニ於ケル判例ノ趣
  旨ニモ參酌ナサッテ、サウシテ適切ナ具體的
  ノ御取扱ヲ願ヒタイ、左樣ニ希望致シテ置
  キマス、ソレカラ大體時間モ迫ッテ參リマス
  カラ或ハ漏レタコトガアレパ、他ノ方ノ質
  問ノ繼續中、更ニ補充ノ御尋ヲ申上ゲルカ
  モ知レマセヌガ、此程度ニ致シマス、只今
  個々ノ質問ノ間ニ織込ンデ申上ゲマシタル
  通リ、此金庫法案ト云フモノハ、船田政府
  委員モ、先程郵便局ガ官營デアルト云フヤ
  ウナ感ジヲ齎スト云フヤウナ御意見ヲ御述
  ベニナッテ居ラレマシタガ、寧ロ世間ハ
  此恩給金庫ガ官營ノヤリ方ナノダト云フヤ
  ウニ考ヘテ居ル向キガ多イノデス、成程嚴
  格ナ法律ノ解釋カラ申セバ、無論官營デナ
  イコトハ明カデスガ、ドウモ斯ウ云フヤウ
  ナ構成デ、何モ彼モオ役所ノ指令監督ヲ
  以テ之ヲ組織スル、遂行スルノダト云フ
  ヤウナコトニ付テ、何等カ只今マデノ民間
  デ行ハレタ金融ガ、ドウモオ役所ノ苦シイ
  型ニ嵌メラレルノダト云フヤウナ、氣持ヲ
  持ッテ居ル者ガ多イヤウデアリマスガ、其實
  感カラ申シテ、ドウモ此一般的ナ近時世上
  ノ動向カラ見テモ、ドウモ總テガ官吏萬能
  ノ方向ニ誘致セラレツヽアルノダト云フヤ
  ウニ考ヘラレル事實サウナッテ居ルコトヲ
  私ハ申上ゲタイ、ソコデ寧ロ郵便局ノ窓口
  ト云フモノハ、前ニ船田法制局長カラモ仰
  シヤッタ通リ、本當ニ民衆的ナ、平易ニ行ケ
  ル場所デアリマスカラ、サウ云フ方ガ、ヤ
  ハリ受恩給者、卽チ債務者側ノ方モドウモ
  足ヲ運ビ易イノダト云フヤウニ考ヘラレ
  ル、其一ツノ理由カラモ私ハ先程郵便局取
  扱ノ問題ヲ携ゲテ御尋シタノデアリマス、
  要スルニ私共ハ、恩給金庫ノ設立ト云フモ
  ノノ眞ニ不可缺ナ重要性ハ何處ニ在ルカト
  云フコトガ中々現在モ摑メナイ、摑メナイ
  カラ、私共ハマダ是ガ最モ必要ナ法案ナノ
  ダト云フコトガハッキリト私共ノ頭ニハマ
  ダ參リマセヌ、尙ホ今迄ノ速記錄ヲ拜見シ、
  是カラノ同僚諸君ノ御尋ヲ綜合致シマシテ、
  若シ漏レテ居タ所ガアレバ、御尋スルコト
  ヲ留保シテ、只今マデノ法律ニ關シマシテ
  ノ御尋ハ、之ヲ以テ終了致シマス
  尙ホ最後ニ、冒頭ニ申上ゲテ置イタ通リ、
  恩給年金ニ關シマシテハ、只今マデノ同僚
  ノ委員各位ノ質問、竝ニ是カラノ各委員ノ
  質問ヲ拜聽致シマシテ、若シ漏レテ居ル點
  ガアレバ補充的ニ質問致シタイト思フノデ
  アリマスルガ、此際特ニ唯原則的ナ私ノ考
  ヲ政府ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、恩
  給年金等ハ國民トシテ國家ニ赤誠ヲ捧ゲタ
  尊ブベキ恩賞デアルコトハ申ス迄モアリマ
  セヌガ、唯此間ニ、通常ノ無難ニ或ル期間
  ヲ經過シタニ過ギナイト云フ筋ノモノト、
  身命ヲ賭シテ、卽チ命ヲ的ニ賭ケテ、君國ノ
  爲ニ危難ノ場所ニ來往シテ、或ハ生命ヲ失
  ヒ、或ハ傷イタト云フ、此愛國者ニ對スル
  恩賞トハ、其程度、方法ト云フモノニ自ラ
  其根柢ニ於テ差異ナキヲ得ナイノハ當然デ
  アルト考ヘルノデアリマス、ソコデ總テノ
  此改正ノ御取扱ハ、ソレヲ基調トシ、出發
  點トシテ、當局ノ御取扱ヲ願ヒタイ、此點
  ダケヲ、私希望ヲ申上ゲテ本日ノ質問ヲ終
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=41

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• 042・前田房之助

  ○前田委員長　皆樣ニ御希望致シマス、本
  委員會ハ、御承知ノ如ク既ニ九囘開會ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、隨テ出來レバ本日
  ヲ以テ大體ノ質問ヲ終了致シタイト考ヘテ
  居リマスノデ、ドウゾ成ベク重複ヲ避ケテ
  御質問ヲ願ヒタイト存ジマス、本日ハ午後
  一時マデ休憩ヲ致シマス
  午後零時休憩
  午後一時四十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=42

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• 043・前田房之助

  ○前田委員長　休憩前ニ引續キ委員會ヲ開
  キマス-小高長三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=43

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• 044・小高長三郎

  ○小高委員　私ガ政府ニ御尋シタイ點ハ、
  大體ニ於テ金鵄勳章年金ヲ增額シテ戴キタ
  イ、此趣意ガ私ノ今囘本金庫ニ付テ御質問
  申ス所以デアルノデアリマス、只今休憩中
  ニ、雜談的デハアリマスルガ、森山政府委
  員ヨリ、是ハ旣ニ閣議ヲ經タ問題デ、ソレ
  ニ對シテ將來增額ヲ考慮シヨウト云フコ
  トハ、政府トシテハ申スコトガ困難デアルト
  云フ御話ヲ伺ッタノデアリマス、併シ閣議ノ
  意見ナルモノハ、必シモ是デ決定シタト云
  フ意味ニ私ハ解スルコトガ出來ナイノデア
  リマス、此點ヲ政府委員ニ御伺シテカラ、
  各條項ニ亙ッテ或ル程度マデ御質問申上ゲ
  テ見タイト思フノデアリマス、モウ一遍公
  式ニ森山サンカラ御答ヲ得ラレヽバ幸ヒダ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=44

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• 045・森山鋭一

  ○森山政府委員　金鵄勳章年金ノ增額ノ問
  題ニ付キマテハ、從來度々議會ニ於ケル請
  願ニモ現レテ居リマス、又成規ノ質問書ノ
  提出モアッタノデアリマシテ、之ニ對シテハ
  ソレ〓〓政府ノ所見ヲ開陳シ、又答辯ヲ
  致シテ居ルノデアリマス、其要旨ハ、金鵄
  勳章年金ト云フノハ武動拔群ナル方々ニ對
  スル榮譽ノ表彰トシテ御下賜ニナリ、金鵄
  勳章其モノニ併セテ御下賜ニナル恩賞デアッ
  テ、生活費給與ト云フヤウナ性質ヲ帶ビテ
  居ナイモノデアルト云フ點ト、旣ニ昭和二
  年ニ或ル程度ノ增額ガアッタガ爲ニ、現在ニ
  於テハ之ヲ增額スルコトハ必要ヲ認メナイ
  ト云フヤウナ趣旨ナノデアリマス、只今座
  談的ニ申上ゲテ居ッタコトニ付テ御質問ガアッ
  タノデアリマスガ、ソレハ昨年ノ二月二十
  三日附デ內閣總理大臣カラ、衆議院議員中
  村又一サンカラ提出ニ相成ッタ戰役受勳者
  待遇ニ關スル質問ニ對シテ、今私ノ申上ゲ
  タヤウナ趣旨ノ答辯書ヲ提出シテ居ルノデ
  アリマス、其事ヲ申上ゲタノデアリマシテ
  今御述ニナリマシタヤウニ、是ハ政府トシ
  テ正式ニ答辯書ヲ提出シテ居ルノデアリマ
  スカラシテ、勿論是ニハ相當ノ〓究モシ考
  慮モ加ヘテノコトデアリマス斯ルガ故ニ今
  之ヲ輕々シク變更シテ政府委員カラ答辯ス
  ルコトハ出來ナイト云フヤウナ意味ヲ座談
  的ニ申上ゲタノデアリマス、今日色々尙ホ
  御質問モアルヤウデアリマスガ、ソレニ付
  テハ勿論政府委員トシテ答辯シテ宜シイ事
  柄ハ喜ンデ御答辯ヲ申シタイト考ヘテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=45

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• 046・小高長三郎

  ○小高委員　モウ一點私ハ御尋シテ見タイ
  ノデアリマスガ、只今森山政府委員カラモ
  御話ノアッタ通リ、是ハ旣ニ決定サレテ、サ
  ウシテ前代議士ノ中村又一君ニ答ヘテアル
  カラシテ、政府ノ方針ガ或ル程度マデ決定
  サレタモノデアル、是以上ノ御答辯ハ出來
  得ナイト云フコトヲ聽キマシタガ、日露戰
  爭ニ從軍サレマシタ此帶勳者ハ、多クハ六
  十過ギタ人或ハ六十ニ近イ人デアル、是ガ
  假ニ生活困難ナル場合、金鵄勳章ハ只今森
  山サンノ仰シヤル通リ確ニ恩賞デアリマス
  ケレドモ、之ニ對シテハ一時金ナリ何カ附
  加サレテ居リマスルガ、其一時金デハ其時ダ
  ケノコトデ永遠ノ帶勳者ノ生活費ニハナリ
  得ナイノデアリマス、其點ヲ吾々同志ハ非
  常ニ社會ノ上カラ見テ、假ニ今囘ノ事變ニ
  依ッテ拔群ノ功績ノ結果、其恩賞ニ浴スル場
  合ハ、必ズ或ル程度ノ年金モ附ケラレルコ
  トト私ハ想像スルノデアル、是ハ現在ノ國內
  情勢竝ニ有ユル方面ノ輿論デアリマシテ、
  今囘ノ事變ニ從軍サレタ人ヲ十分優遇シナ
  ケレバナラヌト云フコトハ、屢〓吾々ガ帝
  國議會ニ提案シタノデアリマス、斯ルガ故
  ニ只今當局トシテ之ニ向ッテ直グソレデハ
  將來之ヲ考ヘヨウト云フ御答ハ得ナイ迄モ
  是等老兵ガ、而モ日露戰爭當時ニハ特別ナ
  ル恩賞ニ浴シテ居ル者ガ生活困難ナル場合
  ハ、何トカ之ヲ國デ救フ方法ハナイカ、吾
  吾ハ必シモ年金增額バカリヲ要求スルモノ
  デハアリマセヌ、此點ハ篤ト政府ニ於テハ
  御考慮願ヒタイノデアリマス私ハ先ヅ第一
  ニ御質問申上ゲタイ點ハ、提案理由書ニモ
  アル通リ、恩給及ビ動章年金ハ其性質及ビ
  現行法規ニ鑑ミ、之ヲ擔保ニ供スベキモノ
  デハナイコトハ明カデアリマス、然ルニ金
  融ノ途ヲ講ズルコトハ如何ニモ便宜主義ト
  ハ言ヘ、脫法的ニアラザルヤト云フ點ヲ御
  尋シテ見タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=46

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• 047・森山鋭一

  ○森山政府委員　恩給竝ニ勳章年金ヲ擔保
  ト致シマスル金融ニ付キマシテハ、御說ノ
  通リ原則ト致シマシテハ法律ガ禁止シテ居
  ル所デアリマシテ、是ハ違法ト言ハザルヲ
  得ナイノデアリマスガ、唯實際ノ問題ト致
  シマシテ、巳ムヲ得ザル場合ニ於テ恩給及
  ビ年金ヲ擔保トシテ金融ノ途ヲ講ジテ居ル
  ト云フコトハ、實際ノ狀態ナイノデゴザイ
  マシテ、此實際ノ狀態ヲ合法化セシムル爲
  ニ此金庫法案ヲ提出致シマシタ譯デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=47

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• 048・小高長三郎

  ○小高委員　モウ一點御尋シテ見タイノハ、
  本金庫法ノ成立ニ依リ便宜ニ恩給及ビ年金
  ヲ一時ニ多額ノ融通ヲ受ケタル者ハ之ヲ消
  費シテシマヘバ一定年限、卽チ返濟ヲ終ル
  マデ恩給年金ノ受領ハ恩給金庫ニ代理受領
  セラレテ、却テ困難ニ遭遇スル者ガ多數ア
  ルト思ヒマスガ、此點ニ付テ如何ニ御考ニ
  ナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=48

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• 049・高木三郎

  ○高木政府委員　御尋ノ點ハ私共モ常ニ心
  配ヲ致シテ居ル所デアリマシテ、從來年金
  恩給ヲ擔保ト致シマシタ金融ニ付キマシテ
  モ、只今仰セニナリマシタヤウナ弊害モ少
  クナイト思フノデゴザイマス、單ニ疾病デ
  アルトカ、或ハ兒童ノ就學トカ云フヤウナ
  コトニ依リマシテ、一時ノ窮乏ノ爲ニ已ム
  ヲ得ズ擔保ニ供スルト云フヤウナ事例ノ場
  合ニ於キマシテハ、事情之ヲ大イニ諒トス
  ベキモノガアルト考ヘルノデアリマスガ、
  此恩給ナリ、或ハ年金ナリヲ資金化致シマシ
  テソレニ依ッテ他ノ事業ヲ營ムト云フヤウ
  ナ場合ニ於キマシテハ、御說ノ通リ所謂元
  モ子モ無クナスト云フヤウナ狀態ニ陷ル例
  ガ相當アルノデアリマシテ、實際ノ例ヲ見
  マシテモ私共ガ年金及ビ恩給ヲ擔保トシテ
  貸付ヲシマス場合ニ於テ、餘程其點ヲ考慮
  シナケレバナラナイト考ヘマス、私共ノ考
  ヘテ居ル所ニ依リマスト、恩給金庫ノ成立
  致シマシタ後ニ付キマシテハ、ソレ等ノ點
  ニ十分ノ考慮ヲ拂ヒマシテ、貸付金ノ使途
  ナリ、或ハ償還方法ナリニ付キマシテ、適
  當ナ方策ヲ考ヘマシテ、只今ノ御話ノヤウ
  ナ弊害ノ起ラナイヤウニ致シタイト考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=49

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• 050・小高長三郎

  ○小高委員　恩給ニ長期幾年分位マデヲ貸
  付ケル方針ナリヤ、又年金モ恩給ト同樣何
  年分ヲ金融スル考ナリヤ如何ヲ御尋シテ見
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=50

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• 051・高木三郎

  ○高木政府委員　大體私共ノ考ヘテ居リマ
  ス基準ト致シマシテハ、餘リニ長キニ亙ル
  期間ノ貸付ヲ致シマスコトハ、只今御話ノ
  アリマシタヤウニ、却テ濫費、浪費ヲ助長
  スル結果ニナルダラウト考ヘマスノデ、餘
  リ長イ期間貸付ケルト云フコトハ考ヘナケ
  レバナラヌト思ヒマス併シ一面只今マデノ
  一般金融業者ノ扱ッテ居リマシタ貸付ノ期
  間等ヲ參酌致シマスト、大體三年乃至五年
  ニナッテ居リマス、金庫ノ今度ノ計畫ト致シ
  マシテハ最高五年、平均三年ト云フコトニ
  計畫ヲ致シテ居リマス、此點ハ恩給、年金
  トモ同樣デアリマスガ、其範圍內ニ於テ適
  當ナル貸付ヲ行ヒタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=51

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• 052・小高長三郎

  ○小高委員　恩給金庫ハ事務所ヲ全國ニ何
  箇所位設置スル考ナリヤ、而シテ全國各地
  ノ恩給、年金ノ受給者ニ平等ニ本金庫ノ便
  宜ヲ與ヘ得ルモノト思料シ宜シキヤ否ヤ、
  之ヲ一寸伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=52

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• 053・高木三郎

  ○高木政府委員　金庫ノ取扱ニ付キマシテ
  ハ、要綱ニ揭ゲマシタヤウニ、支所ヲ大阪
  外四箇所、出張所ヲ主ナル縣廳所在地ニ置キ
  マス豫定デアリマスガ、尙ホソレ以外ニ各
  地方ノ狀況ニ應ジマシテ、ソレ〓〓ノ代理
  店、取扱店等ヲ置キマス積リデアリマス、
  唯之ヲ僻阪ノ農村マデ及ボスト云フコトハ
  事務費ノ關係上急速ニ實現スルコトハ困難
  ダト考ヘマスノデ、差向キ最モ急ヲ要スル
  モノカラ施設ヲ致シマシテ、漸次擴充致シ
  テ、其結果恩給年金受給者全般ニ及ボスヤ
  ウニ致シタイト考ヘテ居リマス、尙ホ機關
  ノ十分行屆キマセヌ所ニ於キマシテハ、通
  信ニ依ル貸付等ノ方法モ考慮致シテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=53

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• 054・小高長三郎

  ○小高委員　當金庫ハ資本金三千万圓デア
  リマシテ、五百万圓ハ政府出資ニシテ二千
  五百万圓ハ民間ガ出資スルコトニナッテ居
  ルノデアリマスガ、民間出資者ハ全ク該金
  庫ニ付キ年度ノ收支計算、恩給債券ノ發行、
  役員ノ選任等ニ對シテ出資者總會ノ決議承
  認等ノ方法ニ依ル權限モ何等規定セラレザ
  ル如クナルガ、是レ官業主義ノ感アリ、適
  當ナラズト思フガ、政府當局ハ如何ニ御考
  ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=54

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• 055・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ御尋ハ御尤ダト考
  ヘルノデアリマスガ、此金庫ハ出來得ル限
  リ官業主義ニナリマセヌヤウニ、民間ノ資
  本ヲモ取入レマシテ、官營ト云フヤウナ氣
  分ガ少イヤウニ組織致シタイト考ヘマスノ
  デ、出來得ル限リサウ云フ方面ニ努力致ス
  積リデアリマス、但シ資本金ヲ求メマス、
  方面ハ成ベク此金庫ニ理解ヲ有スル方面デ
  アッテ、公ノ性質ヲ持ッタ方面カラ出資者ヲ
  求メタイト考ヘテ居リマス、此點ハ大
  體既ニ腹案モ出來テ居ルノデアリマス、
  唯其足ラザル點、竝ニ受給者及ビ出資者側
  ノ意向ヲ反映致スヤウニト云フ積リカラ致
  シマシテ、其一部分ヲ公募致シタイト云フ
  考デ居リマスノデ、全部ノ出資者ノ意見ヲ
  代表スル出資者總會ト云フヤウナモノハ設
  ケナイノデアリマスガ、是ハ前ニモ一寸御
  說明申上ゲタト考ヘマスガ、評議員會ヲ置
  キマシテ、其評議員トシテハ適當ナル人ヲ
  選任致シマシタナラバ、只今ノ御懸念ノ點
  ハ大體御心配ノヤウナコトノナイヤウニ取
  計ヒ得ルコトト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=55

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• 056・小高長三郎

  ○小高委員　本金庫ノ役員ハ理事長及ビ理
  事及ビ監事ハ出資者中ヨリセラレルコト其
  性質上當然ナリト思フガ、幾株位出資箇數
  ヲ持チマシタラ役員ノ資格條件ガ具ハルモ
  ノデアリマスルカ、此點ヲ御尋シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=56

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• 057・高木三郎

  ○高木政府委員　役員ガ其金庫ノ出資ヲ致
  シマスカドウカト云フコトニ付キマシテ
  ハ、別段法規上ノ規定ガ、ナイノデアリマ
  ス、是ハ最近ニ株式會社等ニ付テモ、寧ロ
  反對ノ立法例ガ出來ルヤウナ情勢ニナッテ
  居ルノデアリマスルガ、役員ハ必シモ會社
  ノ株主デナクテモ宜イノデハナイカ、同樣
  ニ此金庫ニ付キマシテモ、金庫ノ出資者デ
  アルト云フコトヨリモ、寧ロ此金庫ヲ運營
  致シテ行キマス上ニ適當ナル人ヲ求メルト
  云フコトガ大切デハナイダラウカ、此點ハ
  能ク御承知ノ通リデアリマスガ、株式會社
  等ニ於キマシテモ、又銀行ニ於キマシテ
  モ、株主デナケレバ役員ニナリ得ナイト云
  フ爲ニ、株主タルコトヲ僞裝シテ役員ト
  ナッテ居ルト云フヤウナ實例モアルノデア
  リマシテ、サウ云フ形式的ノコトヲヤリマ
  セヌデ、寧ロ人物本意ニ本當ニ金庫ノ本質
  ヲ諒解致シマシテ、金庫ノ運營ノ爲ニ役立
  ツト云フ人ヲ求メルコトガ私共ハ宜シイノ
  デハナイカト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=57

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• 058・小高長三郎

  ○小高委員　本金庫ノ評議員モ同樣ト解釋
  シテ宜シイモノデアルヤ否ヤ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=58

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• 059・高木三郎

  ○高木政府委員　評議員ニ付キマシテモ同
  樣デゴザイマシテ、別段出資者タルコトヲ
  必要條件トハ致シテ居リマセヌガ、先刻申
  上ゲマシタヤウニ、評議員中ニハ出資者ノ
  意向ヲモ代表シ得ルヤウナ人ヲ選任致シタ
  イト考ヘマスノデ、多分出資者中カラモ適
  當ナ評議員ヲ選出スルコトニナルト考ヘマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=59

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• 060・小高長三郎

  ○小高委員　恩給年金ノ受給者ニシテ六十
  歲以上、殊ニ七十歲以上ト云フガ如キ老齡
  者ニ對シ、幾年分位マデ貸付ケル方針デア
  リマスカ、其點ヲ御尋シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=60

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• 061・高木三郎

  ○高木政府委員　貸付ノ限度ニ付キマシテ
  ハ、マダ具體的ノ基準ヲ持ッテ居リマセヌ
  ガ、併シ此金庫ノ目的ガ或ル一面ニ於キマ
  シテハ、只今仰セニナリマシタヤウナ老齡
  者ニ金融ノ途ヲ開クト云フコトガ從來ノ
  般市井ニ於テ行ハレテ居リマス金融業者ノ
  缺陷ヲ補フ意味ニ於テ必要デアルト考ヘマ
  スノデ、出來得ル限リソレ等ノ人達ニ均等
  ニ此機關ノ利益ヲ受ケルヤウニ致シタイト
  考ヘテ居ルノデアリマス、隨テ是ハ保險ヲ
  付ケルコトガ出來マセヌノデ、補償料ト云
  フコトノ問題ニナルト思ハレマスガ、補償
  料ガ相當或ハ高クナルカモ分ラヌト思ヒマ
  ス、併ナガラ兎モ角補償料ヲ徵シマシテ、
  尙又必要ガアルト云フコトデアリマスレ
  バ、午前ノ委員會ニ於テ問題トナッテ居リマ
  シタ金庫法二十五條ノ一項但書ヲ活用致シ
  マシテ、遺族ノ承諾ガアリマスレバ、其遺
  族ノ承諾ニ依ッテ特約ヲ致シマシテ、或ル程
  度ノ制限以上ニ貸付ヲ行フコトガ出來ルト
  考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=61

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• 062・小高長三郎

  ○小高委員　高額恩給ニシテ老齡者ニ長年
  間分ヲ貸付ケテ死亡ノ場合ヲ理論的ニ想像
  スル時ハ、弱年ニシテ少額恩給者等ノ場合
  ニ比シ、差別的待遇ノ結果ヲ生ズルモノト
  思フガ、政府ノ御考ハドウ解釋ナサイマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=62

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• 063・高木三郎

  ○高木政府委員　差別的ト云フ意味ガ一寸
  判然致シ兼ネルノデアリマスガ、利率ハ全ク
  同樣デアリマス、又貸付額ノ最高限ニ付キ
  マシテハ、只今申上ゲマシタヤウニ、或ル
  程度ニ年齡ノ制限ニ依リマシテ-例ヘバ
  平均三年掛リマスノガ一一年半トカ二年トカ
  云フコトニナルカモ分ラヌト思フノデアリ
  マスガ、其點ハ二十五條ノ活用ニ依リマシ
  テ、遺族ニ效力ヲ及ボスコトヲ遺族ガ承諾
  致シマスレバ、或ル年次延バスコトモ出來
  ルト考ヘマスカラ、其點ノ差別ハナイト考
  ヘマス、唯補償料ノ點ニ於キマシテハ、是
  モ前數囘ノ委員會ニ於テ申上ゲマシタヤウ
  ニ、補償料ハ豫算上平均三分ト計上致シテ
  アリマスガ、是ハ各人ノ年齡ニ依ッテ違フノ
  デアリマス、補償料中ノ〓ネ二分ニ相當ス
  ル額ハ準生命保險料ト云フ風ニ考ヘテ居リ
  やっ、隨テ二分以下ノモノモアリ、或ハ二
  分以上高額ノ補償料ニナル場合モアルノデ
  アリマシテ、其點ハ差別ガアルト言ヘバア
  ルノデアリマスケレドモ、是ハ生命保險等
  ニ於キマシテ保險料ガ年齡ノ高イモノニ付
  テ高イノト同樣デアリマシテ、已ムヲ得ナ
  イ結果ダト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=63

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• 064・小高長三郎

  ○小高委員　恩給ハ裁定前ト雖モ給與ヲ受
  クベキ豫定額ノ半額マデ之ヲ擔保トシテ貸
  付クルコトヲ得マスガ、動章年金ノ如キハ、
  此條項ノ恩典ニ浴シ得ズト思フガ如何、尙
  ホ一時賜金ノ如キモ、此條項ニ依ル貸付ヲ
  ナス方針ナリヤ如何ト云フコトヲ御尋致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=64

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• 065・高木三郎

  ○高木政府委員　裁定前ノ貸付ニ付キマシ
  テハ、御承知ノ通リ恩給法ニ於キマシテハ、
  恩給ヲ受クルノ權利ハ裁定前ト雖モ既ニア
  ルノデアリマス、裁定ハ私共ノ解釋スル所
  ニ依リマスト、一定ノ要件ヲ備ヘマシタ所
  ノ受給者ハ既ニ恩給ヲ受クルノ權利ヲ有ス
  ルノデアリマスガ、ソレヲ確認スル手續ガ
  裁定デアルト云フ風ニ考ヘテ居リマス、隨
  テ裁定前ト雖モ權利ハ存在致シマスノデ、
  ソレヲ擔保ト致シマシテ貸付ヲ行ハント
  スルノデゴザイマスガ、年金ニ付キマシテ
  ハ裁定ト云フコトガナイノデアリマス、隨
  テ裁定前ノ貸付ト云フヤウナコトハ起リ得
  ナイノデアリマス、一時金ニ付キマシテハ、
  是ハ金庫ノ附帶業務トシテ行ハレナイコト
  モナイノデアリマスガ、實ハ其點ハ庶民金
  庫ノ方デ行フ豫定ニナッテ居リマスノデ、恩
  給金庫ト致シテハ、只今豫想致シテ居リマ
  セヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=65

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• 066・小高長三郎

  ○小高委員　恩給ハ本人及ビ遺族ノ二代ニ
  連續給與セラルヽモノナルガ、本人ノ恩給
  ハ擔保トナリ死亡ノ場合、多額ノ殘債アル
  モ遺族ノ受クル扶助料ノ上ニ及ボスコトナ
  シトノ立前ナルガ、恩給金庫ノ出資ハ民間
  ヨリ多額ヲ爲シ得ル性質上、恩給貸付ノ負
  債ハ本人及ビ本人死亡ノ場合恩給ヲ受ケル
  遺族ト連帶證書ニ依リ貸付クルコト公正ナ
  リト思フガ、如何ニ御考ニナリマスカ、而
  シテ貸付金囘收ヲ嚴重ニシ、成ベク低利ニ
  貸付クルコト可ナリト思フガ如何ニ御考ニ
  ナリマスルヤ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=66

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• 067・高木三郎

  ○高木政府委員　御尤ノコトト考ヘルノデ
  アリマスガ、大體私共ノ考ヘテ居リマス所
  ニ依リマスト、本人ノ受ケマス恩給ト、遺
  族扶助料トハ相關聯スルモノデハアリマス
  ガ、權利自體ハ違フト考ヘテ居リマス、隨
  テ恩給ヲ擔保ト致シマシタ場合ニ、當然遺
  族扶助料ニ及ボスト云フコトハ適當デナイ、
  ソレデ原則ト致シマシテハ本人ノ恩給ニ止
  メマシテ、遺族ノ扶助料ニ付キマシテハ特
  約ガアル場合ノ外、ソレニ效力ヲ及ボサナ
  イト云フ規定ヲ置イテアリマス、尤モ金庫
  ト致シマシテハ、一般民間カラモ資金ヲ取
  入レマス關係上、出來得ル限リ資金ノ囘收
  ニ努メルト云フコトハ當然デアリマスノデ、
  本人ガ死亡致シマシタ場合ニ他ノ方法デ辨
  濟ヲ受ケラレルヤウデアレバ、出來得ル限
  リ辨濟ヲ求メマスガ、尙ホ辨濟ガ不能デア
  ルト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、別ニ
  是ト併行致シテ居リマス所ノ、生命保險ヲ
  持ッテ居リマスモノデアリマスレバ生命保
  險ノ保險金ニ依ッテ、生命保險ヲ提供シテ居
  リマセヌモノニハ補償料ニ依ッテ自家保險ヲ
  致シテ居ルノデアリマスカラ、ソレニ依ッテ
  本人ノミノ債務トシテ打切リタイト云フ風
  ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=67

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• 068・小高長三郎

  ○小高委員　今囘ノ恩給ハ金鵄勳章年金ト
  同ジク、恩給制度ノ最初ニ勅令ニ依ッテ制定
  サレタト思ヒマスルガ、其ノ通リデアリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=68

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• 069・高木三郎

  ○高木政府委員　恩給、年金ノ關係カラ申
  シマスト、恩給ノ方ガ古イノデアリマシテ、
  ハッキリシタ材料ヲ持ッテ居リマセヌガ、慥
  カ明治五年頃ニ、旣ニ只今ノ恩給ノ基本ニ
  ナルヤウナ規則ガ出テ居ルノデアリマス、
  年金ハズット後ニナリマシテ、明治二十七年
  頃ト考ヘテ居リマス、隨テ其兩者ノ間ノ關
  係ハ、同ジ系統カラ來タモノデハナイト存
  ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=69

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• 070・小高長三郎

  ○小高委員　金鵄勳章年金ハ憲法第十五
  條、恩賞大權ニ基キ國家ノ給與スル恩典ナ
  リト思ッテ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=70

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• 071・森山鋭一

  ○森山政府委員　只今ノ御尋ハ御意見ノ通
  リ、憲法ノ恩賞大權ノ發動ニ依ルモノダト
  考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=71

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• 072・小高長三郎

  ○小高委員　恩給ト金鵄動章年金ハ國體ノ
  精神ニ鑑ミマシテ、何レガ重イノデアリマ
  セウカ、此點ヲ一寸伺ッテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=72

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• 073・高木三郎

  ○高木政府委員　恩給ト金鵄勳章年金等ト
  ハ、其性質ガ違ッテ居リマスノデ、何レガ重
  イト云フコトヲ申上ゲルコトハ出來ナイノ
  デハナイカト思ヒマス、恩給ノ方ハ法規ニ依
  リマシテ、一定ノ條件ガ具ハリマスレバ當
  然ニ給與セラルヽモノデアリマスルシ、年
  金ノ方ハ一種ノ行賞デアリマスノデ、當然ニ
  給與セラレルト云フモノデモアリマセヌカ
  ラ、兩者ノ間ノ性質ニ相違ガアリマス結果、
  何レガ重イト云フコトヲ申上ゲ兼ネルト存
  ズルノデアリマス
  尙ホ此際一寸先程ノ說明ヲ補足シテ申上
  ゲタイト思フノデアリマスガ、先程一時資
  金ヲ恩給金庫デ貸付ケルカト云フ御尋ニ付
  キマシテ、一時資金ハ庶民金庫ニ於テ行フ
  ト云フコトヲ申上ゲタノデアリマスガ、是
  ハ論功ニ依ル一時資金ノ意味デアリマシ
  テ、恩給法ニ依ル一時恩給ニ對シテハ、恩給
  金庫ニ於テ貸付ヲ致スコトニナリマスノデ、
  序ニ補足ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=73

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• 074・小高長三郎

  ○小高委員　只今高木サンカラ御答ガアリ
  マシタガ、私ハ金鵄勳章年金ト云フモノハ、
  或ル程度マデ恩給同樣ノヤウニ考ヘラレル
  ノデアリマスガ、恩給ト金鵄勳章年金ニ付
  テハ相違ガアルト云フ御話デアリマスガ、
  吾々ハ如斯考ヘテ居リマセヌガ、前提ニ申
  上ゲタ通リ、國家ノ爲ニ從軍サレマシテ、
  拔群ノ功ニ依ッテ金鵄勳章ヲ得タ、是等老後
  モ安全ニ生活ノ出來ルヤウニ、是非トモ重
  ネテ御願シマスガ、政府ニ於テ考慮願ヒタ
  イノデアリマス、恩給ハ國家ニ對スル一定
  年限ノ勤務奉公ニ對シ給與セラレルシ、金
  鵄勳章年金ハ一死奉公、武功拔群ノ者ニ給
  與セラレテ居ルモノナルガ、現在ノ金鵄勳
  章年金額ハ、過去四十年間ノ恩給ノ增額改
  正ニ對比シテ相當ナリト政府ハ御考ニナリ
  マスカ、此點ヲ御尋シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=74

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• 075・森山鋭一

  ○森山政府委員　勳章年金ニ付テハ先程申
  上ゲマシタヤウニ、是ハ何處マデモ武勳拔
  群ナル方々ニ對シテ、其榮譽ノ表徵トシテ
  御下賜ニナル其勳章ニ併セテ、ヤハリ榮譽
  ノ表徵ト云フ意味ニ於テ御下賜ニナル所ノ
  恩賞デ、生活費給與ト云フ性質ヲ帶ビテ居
  ルモノデハナイト思フノデアリマス、併ナ
  ガラ年金ハ正ニ財產的ノ給付デアリマスカ
  ラ、無論物價ノ變動ト云フヤウナコトモ考
  へ合セテ、其多イ少イヲ論議スルノハ如何カ
  ト思フノデアリマスガ、少クトモ財產的ノ給與
  デアリマスカラ、其性質ハ勿論生活費給與ト云
  フモノデハナイノデアリマスケレドモ、ヤハリ
  之ヲ多少增額スルノガ必要ダト云フ考デ、
  旣ニ昭和二年ニハ多少ノ增額ヲセラレテ居
  ルノデアリマス、隨テ動章年金ヲ絕對ニ增
  額スベキ性質ノモノデハナイトハ考ヘナイ
  ノデアリマス、唯御存ジノ通リ國費極メテ
  多端ノ折柄デアリマシテ、財政ノ現狀ニ徵
  シテ今之ヲ增額スルト云フコトハ非常ニム
  ツカシイ問題ダト考へテ居ルノデアリマ
  ス、年金ノ額ガ其御制定ノ當時ト比較シ
  テ、物價ノ變動ト云フヤウナコトト考ヘ合
  セテ、決シテ是デ十分ダトハ考ヘテ居ナイ
  ノデアリマス、若シモ財政ノ餘裕ガアッテ、
  之ヲ增額シ得ルナラバ、增額シタイトモ思
  フノデアリマスガ、現在ノ財政狀態ニ於テ
  ハ之ヲ實現スルノニ相當困難デアル、勳章
  年金受給者ニ對シテハ、確ニ御氣ノ毒ナ所
  ハアルノデアリマスケレドモ、國家全體ノ
  財政ト云フヤウナコトト考ヘ合セルト、
  中々之ヲ增額スルト云フヤウナコトニ致ス
  ノハ困難デアル、斯ウ云フ風ニ申上ゲルヨ
  リ外ハナイノデアリマス

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• 076・小高長三郎

  ○小高委員　只今政府委員ハ、國家ノ財政
  ノ立前カラ增額ハ困難デアルト云フ御說明
  デアリマスガ、金鵄勳章年金ト云フモノ
  ハ、年々減ッテ行クノデアリマス、一ヵ月
  於テ恩給ハ減ルカト云フト、私ガ御說明申
  上ゲヌデモ、政府委員御承知ノ通リ、年々
  增加シテ行クノデアリマス、此點カラ行キ
  マシテモ、私ハ金鵄勳章ト云フモノハ特別
  ニ御考慮ヲ願ヒタイ、同時ニ私ハ金鵄勳章
  年金ト、比較ト云ッテハ失禮デアリマスガ、
  比較ノ意味ヲ以チマシテ、若シ御手許デ御
  說明ナリ書類デ拜見出來マスレバ結構デア
  リマスガ、明治二十七八年頃ノ陸軍上等兵
  及ビ伍長或ハ巡査又ハ小學校〓員、訓導等
  ノ恩給額ハ如何程ニナッテ居ルカ、又前述ノ
  モノノ現在ノ恩給額如何ヲ御說明願ヘマシ
  タラ伺ヒタイノデアリマス-只今調査ニ
  御手間ガ取レヽバ別ノ項ニ移ッテ御尋シタ
  イト思ヒマス、御尋シタイ點ハ、金鵄勳章年
  金ハ明治二十八年日〓戰役ノ論功行賞ノ際
  一般的ニ實施セラレ、功七級年金百圓ニシ
  テ當時米三十俵ヲ購フニ値スル金額ナリシ
  ニ、今日ハ米三十俵ノ値ハ何程ナリト思ヒ
  マスルカ、卽チ當時ニ於テハ金百圓ノ給與
  ニ依リ功七級ノ待遇ヲ取扱ヒタリト思料ス
  ルガ、ソレデ宜シウゴザイマスカ、此點ヲ
  御伺シマス

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• 077・森山鋭一

  ○森山政府委員　只今ノ御尋ノ點ハ、物價
  ノ動キ等ト對比シテ考ヘレバ、現在ノ額ガ
  非常ニ少イト云フコトハ勿論政府モ認メテ
  居ルノデアリマス

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• 078・小高長三郎

  ○小高委員　是ハ吾々同僚ガ議會ニ於テ時
  ノ永田軍務局長ヨリ伺ッタノデアリマスル
  ガ、永田軍務局長ハ此金鵄動章年金問題ニ
  付テ爾ク御答辯ヲナスッテ居ルノデアリマ
  ス、金鵄勳章年金ハ單ニ御褒美ト云フバカ
  リデナク、武功拔群ノ殊動者トシテ、名譽ノ
  體面ヲ保持セシムル御思召ガ含マレテ居ル
  モノデアル云々ト述ベテ居ラレマスルガ、
  政府委員ニ於カレテモ、之ヲ御認メニナリ
  マスヤ否ヤ御尋スル次第デアリマス

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• 079・森山鋭一

  ○森山政府委員　先ニ他ノ政府委員ガ御述
  ニナッタコトヲ御引用ニナッテ、ソレト同ジ
  ヤウナ御考ヲ持ッテ居ルカト云フ御質疑デ
  アリマスガ、大體御同感デアリマス

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• 080・小高長三郎

  ○小高委員　先刻來屢〓政府委員ノ御言葉
  ニ現ハレテ居ルヤウニ、政府ハ金鵄勳章年
  金ニ付テハ榮譽ノ表彰デアル、金錢ノ上下
  ヲ必ズシモ論議スベキデナイト云フ意味ヲ
  御述ニナッテ居ラレルノデアリマスガ、明治
  二十八年制定セラレ、實施セラレタル金鵄
  勳章年金功七級ノ者ニハ百圓ヲ給シテ、其
  百圓ナルモノハ當時ノ生活狀態カラ見テ必
  シモ安クハナイノデアリマス、然ルニ當
  時此位ガ適當デアルト審議ノ結果ガ決定ヲ
  シタルモノデアルト思ヒマスルガ、政府ニ
  於カレテモ左樣御考ヲ持ッテ居ラレルヤ否
  ヤ、卽チ此名譽ノ表彰ニ必要ナリトシテ百
  圓トカ三百圓トカ物質的ニ待遇ガ制定セラ
  レテ居ル以上、他ノ國家ノ給與ガ、恩給デア
  ルトカ賜金デアルトカ、俸給等ガ、-價
  値ノ變動ニ依ッテ、五十圓ガ百圓トナリ、或
  ハ百五十圓トナリ更ニ二百圓ト增額向上シ
  タ以上、金鵄勳章年金モ亦金ノ給與デアル
  以上ハ、同率ノ改正ヲ爲サルコトガ當然ト
  思ヒマスルガ、政府ハ如何ニ御考デアリマ
  スカ

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• 081・森山鋭一

  ○森山政府委員　金鵄動章年金御制定ノ當
  時、功七級ニ對シテ百圓ノ年金ヲ御下賜ニ
  ナルト云フコトヲ御決定ニナリマシタ、其
  根據ト申シマスカ、標準ト申シマスカ、ソ
  レガ何デアルカト云フコトニ付テハ、今之
  ヲ審カニ致シマセヌノデ、何トモ御答ヲ致
  シ兼ネルノデアリマスガ、最初ハ金鵄勳章
  ダケ御下賜ニナッテ、年金ヲ御下賜ニナラナ
  イ制度デアッタノデアリマスガ、其後旭日章
  ニ對シテハ特ニ年金ヲ御下賜ニナル制度ニ
  ナッテ居リマスノデ、旭日章ニ對シテ年金ガ
  御下賜ニナルノニ、金鵄勳章ニ對シテ年金ガ
  御下賜ニナラナイノハ聊カ權衡ヲ失シヤシ
  ナイカト云フヤウナコトノ考慮ノ下ニ、金
  鵄勳章ニモ亦年金ヲ御下賜ニナル制度ヲ御
  立テニナッタト記憶シテ居ルノデアリマス、
  先程申上ゲマシタヤウニ、御制定當時、功
  七級ヲ百圓ト御決定ニナッタ其根據ハ如何
  デアルカ、何トモ申上ゲ兼ネルノデアリマ
  スガ、恐ラクハ其當時ノ旭日年金等ト比較
  シテ御決定ニナッタノデハナイカト推察致
  シマス

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• 082・小高長三郎

  ○小高委員　吾々金鵄勳章年金ニ付テ常ニ
  議會デ提案スル理由ト云フモノハ、戰役殊
  動者ノ名譽ヲ維持センガ爲ニ又彼等ノ國家
  ニ盡シタル功勞ニ報イルガ爲ニモ年金ノ增
  額少クトモ恩給並ニ必要デアルト思フノ
  デアリマスガ、政府ノ御考如何

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• 083・森山鋭一

  ○森山政府委員　勳章年金ノ性質ニ付テハ
  度々申上ゲマシタヤウニ、本來ノ性質ハ金
  鵄勳章其モノト同ジヤウニ榮譽ノ表徵ダト
  考ヘテ居リマス、卽チ是ガ生活費ニ給與ト
  云フ性質ヲ帶ビテ居ルモノデハナイト考ヘ
  テ居リマス、隨テ之ヲ恩給トカ、或ハ俸給
  トカ云フヤウナ本來生活費ノ給與ノ性質ヲ
  帶ビテ居ルモノト比較シテ、一方ガ非常ニ
  增額サレテ居ルカラ金鵄勳章年金ニモ亦增
  額スベシト云フ風ニ本來ノ性質ノ違ッタモ
  ノト對比シテ多イ少イヲ論議スルノハ適當
  デハナイト考ヘテ居リマス

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• 084・小高長三郎

  ○小高委員　ソレガ私ハ吾々同志ガ頗ル政
  府當局ニ不滿ヲ持ツ所以ナノデアリマス、
  人ハ生活ノ保障ノナイ限リハ不安ヲ懷クノ
  デアリマス、日露戰爭ニ於テ假ニ拔群ノ勳
  功ニ依リ、金鵄勳章竝ニ年金ヲ國カラ頂戴
  スルヤウニナリマスレバ、ソレヲ恩給デア
  ルトカ是等ノ比率ト同樣ニ吾々ニモ國ガ或
  ル程度マデ生活ヲ守護シテ吳レテモ宜カラ
  ウト斯ウ云フ感ジヲ懷カレルノデアリマス、
  唯アナタ方政府當局ガ見ルヤウナモノデ
  ナク、人ノ生活、況シテ斯ウ云フ戰役ニ勳
  功ノアル人ハ、國家ガ十分御考ニナラナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、近時支那
  事變ニ於テハ殊勳者ガ數万ニ上ルト思ヒマ
  スルガ、是等武功拔群ニ依リ受クル金鵄勳
  章年金ノ優遇ハ、明治大帝ノ大詔「金鵄勳
  章ヲ創設シ、將來武功拔群ノ者ニ授與シ、
  永ク天皇ノ威烈ヲ光ニシ、以テ其忠勇ヲ
  奬勵セントス」トノ精神ヲ實現スルモノト思
  フガ、此際改革ノ意思ナキヤト云フコトヲ
  御尋シタイノデアリマス

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• 085・森山鋭一

  ○森山政府委員　先程モ申上ゲマシタヤウ
  ニ、金鵄勳章年金ノ增額ノ問題ニ付テハ、
  昨年既ニ政府ニ依ッテ〓究ヲ遂ゲテ、衆議院
  議員中村又一サンノ成規ノ質問書ニ對シテ、
  内閣總理大臣ヨリ答辯書ヲ出シテ居ルノデ
  アリマスガ、其趣旨ニアル通リ、目下ノ所
  デハ增額ノ必要ヲ認メナイト云フ意思ヲ
  持ッテ居ッタノデアリマス、只今更ニ支那事
  變ニ際シテ、又金鵄勳章年金ヲ御下賜ニナ
  ルコトニナラウト思フガ、此際之ヲ增額シ
  テ御下賜ニナルヤウニスル意思ハナイカド
  ウカト云フコトヲ新シキ問題トシテ御質疑
  ニナッタノデアリマスガ、之ニ對シテハ今直
  チニ私ヨリ增額スルトカシナイトカ云フコ
  トヲハッキリ申上ゲル自由ヲ持タナイノデ
  アリマス、唯此御意見ノ次第モアッタノデ
  アリマスカラ、各方面共能ク評議ヲ致シマ
  シテ、十分〓究ヲ遂ゲナケレバナラヌノデ
  ハナイカト考ヘテ居リマス

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• 086・小高長三郎

  ○小高委員　只今御言葉ヲ伺ッテ私ハ非常
  ニ滿足ヲシタノデアリマス、最初政府ノ答
  辯サレルコトハ、國家ノ財政ノ見地カラ、
  ドウシテモ、現在年金ヲ上ゲルコトハ出來
  得ナイト云フ斷定的ニ仰セラレルカラ、私
  ハツイ有ユル點カラ一ツ政府ニ御考慮願
  ヒタイト申上ゲルノデアリマシテ、曾テ陸
  軍省ノ故永田軍務局長ノ答辯サレタモノガ
  玆ニ速記ニ殘ッテ居リマス、政府ノ御考慮ヲ
  願フ意味ニ於テ私ガ是ヨリ朗讀ヲ致シマス、
  御諒承願ヒタイノデアリマス、「政府委員永
  田鐵山君、私ノ信ジマス所デハ、必シモ金
  鵄動章其モノガ優遇ヲ意味スルモノデハナ
  ク、ヤハリ之ニ伴ッテ居リマス年金ト云フモ
  ノガ、勿論優遇ノ趣旨ノ中ニ含マレテ居ル
  ノデアリマスト思ヒマス、物質方面ニ付
  キマシテモ、優遇ヲ改メロト云フ御趣旨ニ
  付キマシテ勿論異存ノナイ所デアリマス、
  特ニ精神的待遇方面ニ重點ヲ置イテヤッテ
  居リマスカラ、此請願ガ採擇ニナリマシタ
  ナラ、誠意ヲ以テ實行致シタイ積リデアリ
  マス、年金ノ增額ト申上ゲマスコトハ、唯極
  ク僅カバカリノ增額ト云フコトデハ無意味
  デゴザイマス、相當大規模ノ增額ヲ致シタ
  イコトト思フノデアリマス、篤ト〓究ヲ要
  スルノデ、今日マデ實現ガ困難デアッタコ
  トト考ヘマス」斯ウ云フヤウナコトヲ永田故
  陸軍軍務局長ガ述ベテ居ラレルノデアリマ
  ス、元來此年金ハ私ガ申上ゲル迄モナク、
  金鵄勳章ヲ受ケラレタ明治二十七年ノ制定
  ニ係ル勅令第百七十三號ヲ以テ交付セラレ、
  一般下士卒ニ受ケラルヽ功七級年金ハ六十
  五圓ト定メラレマシタガ、功一級以下各級
  年金ト共ニ日〓戰役ニ際シテ、愈〓其功績
  ニ對シテ行賞ヲ實施スルニ當リマシテ改正
  スルコトトナリ、功七級年金ノ六十五圓ハ
  寡少デアルト云フ理由カラ、卽チ翌二十八
  年勅令百十號ヲ以テ同年金ハ金百圓ニ增額
  セラレ、之ヲ實施サレタモノデアリマス、
  政府ハ以上ノ關係理由等カラ見マシテ、今
  日ノ場合年金ノ改正ハ當然ト思フノデアリ
  やっ、我國ニ於キマシテハ、一般恩給ノ總
  年額ハ大正元年ニ於テ僅ニ二千万圓デアッ
  タモノガ昭和五年ニ於テ驚クナカレ一億四
  千三百八十万圓トナリ、正ニ七倍ノ增額デ
  アリマス、之ニ較ベマシテ金鵄勳章年金ハ、
  大正元年度ニ於テ總年額千百万圓デアッタ
  モノガ、昭和九年ノ現在ニ於テ約千百万圓、
  昭和二年度ノ改正增額竝ニ最近新ニ受ケタ
  者ノ年金モ加ヘテ、其財源ハ二十年間何等ノ
  增加トナッテ居ラナイノデアリマス、今日ニ
  於テハ平和ノ續ク限リ金鵄勳章年金ハ其人
  員年々先刻申上ゲタ通リ減ズルノデアリマ
  ス、國家ノ負擔ハ減少サレマスレバ、ソレ
  ダケノモノガ動章年金デ減ル以上ハ、少ク
  トモ此點ダケデモ十分政府ハ御考慮願ヒマ
  シテ、減少サレル金額ダケデモ增加額ニ加
  ヘテヤル御考ヲ持ッテ戴キタイノデアリマ
  ス、恩給ハ旣ニ中央ダケデ年額二億圓ニモ
  達セントスル今日ニ於テ、年金ノ改正ハ殆ド
  二十年間放任シテ置クト云フ狀態デアリマ
  スカラ、年々歲々是等ノ運動ガ猛烈ニナッテ
  來ルノデアリマス、ドウゾ繰返シテ申上ゲ
  ルヤウデアリマスルガ、政府ハ一層ノ御考
  慮ヲ願ヒタイノデアリマス、先刻ノ御答辯
  ガアリマシタラ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=86

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• 087・高木三郎

  ○高木政府委員　只今手許ニ材料ガアリマ
  セヌノデ、取寄セテ居リマスガ、大體ニ於
  キマシテ戰死者遺族ノ計數カラ判斷致シマ
  シテ、明治四十四年頃マデノ上等兵ノ額ハ、
  年額五十五圓、其後變動ガアリマシテ、大
  正十二年ガ一番大キイ變動デアリマスガ、
  百八十圓デアリマス、ソレガ現行額ニナッテ
  居リマス、ソレカラ一等兵ニ付キマシテハ
  四十四年マデ五十圓、大正十二年ノ改正デ
  百六十五圓ニナッテ居リマス、巡査、看守等
  ニ付キマシテハ、俸給ヲ基準ト致シマシタ
  關係上、ソレ〓〓相違ガアルノデアリマス
  ガ、大體只今申上ゲマシタ額ト大差ナキ額
  ト御諒承願ヒタイノデアリマス

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• 088・小高長三郎

  ○小高委員　功一級二級等ハ別ト致シマシ
  テ、功七級金鵄勳章ヨリ同年金ヲ除外閑却シ
  テ、所謂國民ノ美望シタル功七級金鵄勳章
  ノ價値ヲ實際ノ問題トシテ如何ニ政府ハ見
  ラレテ居リマスルヤ、此點モ御尋致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=88

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• 089・森山鋭一

  ○森山政府委員　金鵄勳章年金ハ、榮譽ノ
  表徵タル金鵄勳章其モノニ併セテ御下賜ニ
  ナル所ノ恩賞デアリマシテ、隨テ假令金鵄
  勳章年金ガナクテモ、榮譽ノ表徵タル金鵄
  勳章其モノノ價値ニ變リハナイト思フノデ
  アリマス、要スルニ金鵄勳章及ビ金鵄勳章
  年金ハ、之ヲ合セテ武動拔群ナル人々ニ對
  シテ其榮譽ヲ表彰スル爲ニ御下賜ニナル
  ツノ恩賞デ、金鵄勳章年金ヲ若シ金鵄勳章ヨ
  リ之ヲ除外シタナラバ、言換レバ、金鵄勳
  章ノミノ恩賞トナッタナラバ、ソレデ果シテ
  多クノ人ノ美望スル金鵄勳章ノ價値アリヤ
  否ヤト云フヤウナ御質疑ノヤウデアリマス
  ガ、假令年金ヲ除外シテモ金鵄勳章ノ價値
  ニ差異ナキモノダト政府委員ハ考ヘテ居リ
  マス

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• 090・小高長三郎

  ○小高委員　拔群ノ功勞ヲ認メル限リニ於
  テハ、今ノヤウナ御答辯ハ私ハアリ得ナイ
  ト思フノデアリマスガ、先刻森山サンカラ
  相當吾々ノ主張ニ近イ點ヲ御說明ナサレマ
  シタノデ多クヲ申上ゲマセヌ、此金鵄勳章
  年金增額ノ問題ニ付テハ、衆議院ノ如キハ
  十數囘請願サレテ採擇ニナッテ居ルノデア
  リマス、而モ貴族院ニ於テモ每囘採擇ニナッテ
  居ルニ拘ラズ、ドウモ政府ガ之ニ對シテ年々
  同ジヤウナ答辯ヲシテ、御考慮ヲセラレナ
  イト云フコトヲ非常ニ遺憾トスルモノデア
  リマスガ、近衞內閣ナルガ故ニ、近衞公爵カ
  ラ特ニ此問題ニ付テ、昭和九年ノ時ノ內閣
  總理大臣子爵齋藤實閣下ニ提出シマシタ意
  見書ヲ此處デ朗讀致シマス「意見書戰役殊
  勳者待遇改善ノ件、東京市麻布區笄町八十
  番地辯護士中村又一外五百四十二名提出
  右ノ請願ハ金鵄勳章年金ハ曩ニ一部ノ增
  額ヲ見タルモ、尙俸給、恩給其ノ他ノ國家
  諸般ノ給與ニ比シ其ノ額匹儔セス、斯クテ
  ハ士氣振興上遺憾ナルニ依リ、同年額ハ之
  等諸給與ト同比率ニ改正增額セラルヽ等戰
  役殊勳者優遇ノ途ヲ速ニ講セラレタシトノ
  旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
  キモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
  依リ別册及送付候也昭和九年三月貴族院議
  長公爵近衞文麿內閣總理大臣子爵齋藤實
  殿」斯ウ云フ具合ニ貴族院デモ特ニ意見
  書ヲ添ヘテ時ノ內閣總理大臣ニ出サレタノ
  デアリマス、吾々ハ此問題ニ付テ只今森山
  政府委員ノ御答辯ニアリマシタヤウナ、金
  鵄勳章ハ年金ヲ除外シテ論ズルコトハ出來
  ナイ、此例ハ屢〓出タノデアリマスガ、吾々
  ハ是等老兵ガ國家ノ爲ニ盡シテ、年金ヲ貰ッ
  タガ、ソレハ旣ニナイ、生活ニモ困難ダ、
  唯金鵄勳章ト云フ有難イ恩賞ヲ得テ居ルダ
  ケデ、生活上堪エラレナカッタラ、私ハ國家
  ガ此者ヲ或ル程度マデ救濟スル方法ニ付テ、
  御考慮ヲ爲サルコトガ當然デアルト思フノ
  デアリマス、其意味ヲ以チマシテ、私ハ以
  上御質問申シタ所以デアリマス、何分政府
  ニ於カレマシテモ、十分御考慮下サイマシ
  テ、吾々ノ趣意ヲ達成スルヤウニセラレン
  コトヲ切望致シマシテ、委員諸君ニモ長イ
  時間ヲ御借用シタコトヲ御詫申上ゲマシテ、
  私ノ質問ヲ終リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=90

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• 091・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ恩給法ノ改正ノ中デ、陸
  軍當局ノ御意見ヲ承リタイ點ガ一二點アリ
  マスガ、政府委員ガ御見エニナラヌヤウデ
  アリマスカラ、是ハ後〓シニシマシテ、恩
  給金庫法案ノコトニ關聯シマシテ、二三質
  問ヲ致シタイト思ヒマス、只今マデ多クノ
  同僚各位カラ熱心ナル質疑ガ交サレマシタ
  ノデ、大體私ノ御伺シタイト思ッテ居リマシ
  タコトノ大部分ハ旣ニ質疑ガ行ハレタノ
  デ、私モ諒承スル點ガ非常ニ多カッタノデア
  リマス、ソレ等ノ點ハ出來ルダケ私ハ省略
  シタイト考ヘテ居リマス、委員會ニモ努メ
  テ出席シマシテ、各位ノ御意見ヲ能ク承リ
  マシタノデ、重複ヲ避ケタイト思ヒマスガ、
  尙ホ重ネテ御伺ヒシタイコトモアリマス
  ル、併シ意見ハ十分ニ承ッテ居リマスルカ
  ラ、私ノ質問モ出來ルダケ簡潔ニシ、御答
  辯モ亦要領ヲ得テ簡潔デアリマスナラバ、
  私ハ滿足スルモノデアリマス、第一番ハ恩
  給金庫ヲ設立致シマシタナラバ、先ヅ第一
  番ニ誰デモガ願フ所ハ、出來ルダケ簡便ニ、
  又利子ヲ安クシテ金融ノ途ヲ開イテ貰ヒタ
  イ、斯ウ考ヘルノガ此恩給金庫設立ノ對象
  トナル受給者ノ願フ所デアルト思ヒマス、
  隨ヒマシテ利子ヲ出來ルダケ安クスルヤウ
  ニト云フ質疑ガモウ相當多方面カラ繰返サ
  レタノデアリマス、私モ此點ガ最モ重要ナ點
  ダト思ヒマスノデ、尙ホ重ネテ一二點御伺
  シタイノデアリマスガ、私ハ七十議會以來、
  此恩給金庫法ノ利子ハ五分以下ニ止メテ貰
  ヒタイト云フコトヲ主張シテ居リマシテ、
  今モ同樣ナコトヲ願ッテ居ルノデアリマス、
  サウスルコトノ爲ニハ、ドウ致シマシテモ
  利息ノ安イ資金ヲ使フト云フコトガ必要ニ
  ナッテ來ルノデアリマスガ、此點ニ付テハ政
  府ノ方デモ色々ト御配慮ニナッテ居ルコト
  ヲ伺ッテ、諒トシテ居ルノデアリマスガ、唯
  憾ムラクハ政府ノ出資金ガ少イガ爲ニ結局
  利子ヲ六分ニシナケレバナラヌト云フヤウ
  ナコトニナッテ居ルノデアリマス、出資金、
  利息ノ出來ルダケ安イモノヲ金庫ニ借リテ
  來ルト云フコトガ一ツノ方法デアルノト、更
  ニ、事業費ト云フモノヲ出來ルダケ節約シ
  テ、經費ヲ省イテ行クト云フ、此二方面ヲ
  考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、出資ノ方
  面ニ付テハ大體色々伺ッテ居ルノデアリマ
  スカラ、此上トモ其方面ニ御盡力ヲ御願ス
  ルコトニシテ、唯私ノ希望ハ今御計畫ニナッ
  テ居リマスル政府ノ出資金ヲ何トカシテ、
  モウ少シ增額シ、配當ノ要ラナイ金ヲ使フ
  ヤウニシタイ、斯ウ考ヘルコトト、ソレカ
  ラモウ一ツハ何トカシテ此出資金ニ對スル
  配當ノ要ラナイ資金ノミヲ吸收スルト云フ
  コトガ出來ナイダラウカ、其點ニ付テモウ
  一應突進ンダ御意見ヲ承リタイト思ヒマス、
  ソレカラ今度ハ支出ノ方面デ出來ルダケ經
  費ヲ節約シナケレバナリマセヌガ、是モド
  ナタカノ御質問ニアリマシタガ、報酬ガ餘
  リニ高過ギルノデハナイカト思ヒマス、私
  共ハ斯ウ云フ方面ニハ極メテ經驗ガナイノ
  デアリマシテ、職場ニ働イテ居リマスル勞
  働者トシテハ、其邊ノ事情ガ能ク分ラナイノ
  デアリマスガ、ドウモ吾々ノ眼カラ見ルト、
  斯ウ云フ地位ニ立タレル人ノ報酬ガ餘リ高
  過ギルト云フコトヲ私共ハ何時モ考ヘマス、
  但シ私共ノ考ガ實際ニハ當ッテ居ラナイノ
  カモ知レマセヌガ、私ハ斯ウ云フコトヲ考
  ヘマス、此恩給金庫ト云フモノガ設置セラ
  レマシタナラバ、此金庫設置ノ趣旨ニ鑑ミ
  マシテ、出資金ニ對スル方面ニ於テモ、
  ツ奉公ノ精神ヲ現ハシテ、進ンデ資金ヲ出
  ス方面ガナケレバナラヌト考ヘマス、當局
  ノ說明ヲ聽イテ居リマスト、此成績ヲ擧ゲ
  ルト擧ゲナイトハ結局人ノ問題ダ、運用ノ
  問題ダ、ソレデ此方面ニ理解アリ且ツ手腕
  ヲ持ッテ居ル人ヲ役員ニシナケレバナラヌ、
  其事ノ爲ニハヤハリ相當ナ高イ報酬ヲ與ヘ
  ナケレバ、其人ヲ得ラレナイト云フ答辯ヲ
  繰返シテ聽イテ居リマス、併シ今我國ニ於
  テ此金庫ヲ設置スルニ當ッテ、ソレ程手腕
  アル人ヲ持ッテ來ナケレバ此事業ノ運營ガ
  出來ナイノダト云フコトモ吾々ハ理解ガシ
  難イノデス、モウ少シサウ云フ高イ報酬ヲ
  出サヌデモ此仕事ガ行へル人ガ得ラレルノ
  ヂヤナイカト考ヘマス、殊ニ此報酬十万一
  千圓ト云フ金ハ、是ハ十人ニ足ラナイ極メ
  テ僅カナ役員ニ與ヘラレル報酬ト考ヘマス、
  サウシテ其他ニ多クノ職員ヲ要スルコトデ
  アリマセウガ、其職員ノ俸給ト云フモノガ
  二十九万四千圓デアリマシテ、役員ノ報酬
  ト給料ト云フモノヲ比ベテ見ルト給料ガ非
  常ニ少イノヂヤナイカ、一體此給料ノ與ヘ
  ラレル人員數ト云フモノハ何人位デアルカ
  ト云フコトヲ伺ヒタイノト、モウ一ツハ次ニ
  アル賞與デアリマスガ、此十六万四千圓ノ
  賞與ハ報酬ヲ取ル人ニハドレ位ノ賞與ガ與
  ヘラレ、或ハ給料ヲ取ル人ニハドレ位ノ賞
  與ガ與ヘラレルノデアリマセウカ、一應御
  答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=91

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• 092・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ御質問ノ點ハ洵ニ
  御尤デアリマシテ、私共モ金庫ヲ運營シテ
  行キマス上ニ付テ非常ニ大切ナコトダト考
  ヘルノデアリマス、第一ノ出資金ノ問題ニ
  付キマシテハ、是ガ本當ノ官營ニナラナイ
  半官半民ト云ッタヤウナ形デ金庫自體ガ自
  給自足ヲ致シテ行キマスコトガ此金庫ノ特
  質デアリマス關係上、ヤハリ出資ノ一部ヲ
  民間ニ求メナケレバナラヌト云フコトニナ
  ルダラウト思ヒマス、サウ致シマスト無配
  當デ出資ヲシテ吳レルト云フ篤志家ガ中々
  求メ難イダラウト云フ風ニ考ヘラレマス、
  ソレデアリマスカラ、前囘來屢〓御說明申上
  ゲマシタヤウニ、此金庫ノ資本金ト云フモ
  ノハ、唯金庫ノ財的基礎ヲ固メルト云フ程
  度ニ止メテ置キマシテモ、運用資金ハ他ノ
  方面ニ求メルト云フ考デアリマスノデ、假
  ニ此中ノ政府ノ出資金五百万圓ヲ多少殖ヤ
  シマシテモ、ソレハ大シテ事實ノ上ニ影響
  ヲ及ボサナイノヂヤナイカト考ヘマス、結
  局利子ガ安クナルカナラナイカト云フコト
  ハ、貸付借入金ノ資金「コスト」ノ問題ニ落付
  クダラウト考ヘテ居リマス、成ベク安イ金
  ヲ借リテ來マシテ、安ク貸スト云フ方針ヲ
  執ルノガ一番宜イノデハナカラウカ、又出
  資者ノ側カラ致シマシテ、各方面ノ出資者
  ヲ加ヘテ置キマスト云フコトガ、ヤハリ金
  庫ノ一ツノ信用ヲ得ルト云フ上ニ於テ、又
  事業ヲ運營シテ行ク上ニ於キマシテモ何カ
  ト利便ガアルノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘ
  テ居ル次第デアリマス、最小限ニ於テ出資
  ヲ求メマシテ、運用資金ハ之ヲ借入金等ニ
  求メルト云フ方針デアリマスカラ、其點ハ
  政府ノ出資ヲ殖ヤストカ、或ハ又全部政府
  ガ出資スルト云フコトニ假ニナリマシテモ、
  貸付ノ利子ニ影響スル額ト云フモノハ、ソ
  レ程大キナ額デハナイモノト考ヘマス、是
  ハ庶民金庫ノ方ノ關係ナドヲ考ヘマスト、
  ヤハリ同樣デアリマシテ、庶民金庫ノ方ニ
  於テモ、資本金ヲ運用スルト云フヨリモ、
  ヤハリ運用資金ハ借入金或ハ庶民債劵ニ求
  メルト云フ方針ヲ執ッテ居ラレルノデスガ、
  其點ハ恩給金庫ニ於テモ同樣デアラウト考
  ヘマス、一面事業費ノ方ニ付キマシテハ、
  是ハ成ベク節約スルト云フコトハ御說ノ通
  リニ是非必要ナコトデアリマシテ、出來得
  ル限リ節約ヲ致シタイト考ヘテ居リマスガ、
  唯實際ノ運用ニ當リマシテ、金ガ少クテ十
  分ナ活動ガ出來ナイト云フヤウナコトノア
  リマセヌヤウニ、事業費ハ相當潤澤ニ組ン
  デアリマス、マダ具體的ノ內容ニ付キマシ
  テハ、ハッキリシタコトヲ申上ゲ兼ネルノ
  デアリマスガ、報酬ノ點ニ付キマシテハ、
  是モ先程來色々御意見ヲ伺ッタノデアリマ
  スケレドモ、ヤハリ或ル程度ニ報酬ヲ出サ
  ナケレバ良イ人ハ來ナイ、非常ナ篤志家ガ
  アリマシテ、ヤッテ吳レルト云フコトニナレ
  バ非常ニ仕合セデアリマスケレドモ、唯單
  ニ報酬ヲ貰フ爲ニ來ルト云フヤウナ人ヲ求
  メルノデアリマシタナラバ、如何ニ安イ報
  酬デアリマシテモ實際ノ運用ガ旨ク行カナ
  イト云フ結果ニナッテ、却テ不利益ニナル、
  此恩給金庫ノ役員ハ他ノ職務ヲ兼ネルコト
  ガ出來マセヌノデ、專心之ニ從事シナケレ
  バナラヌト云フコトニナリマスノデ、假
  民間ニ適當ナ人ヲ求メルト云フヤウナ場合
  ニ於キマシテハ、相當ノ報酬ヲ出サナケレ
  バ適當ナ人ヲ得ラレナイト云フ結果ニナル
  ノデハナカラウカ、併ナガラ之ヲ實際運用
  致シテ行キマス上ニ付キマシテハ、出來得
  ル限リ適當ナ人ヲ出來得ル限リ安ク求メ
  ルト云フコトニ付テハ、十分ノ努力ヲ致ス
  積リデアリマシテ、豫定ノ計算ニハ斯ウ出
  テ居リマスガ、必シモ此通リ實行スルト云
  フ積リデモナイノデス、又此俸給ガ比較的
  少イヂヤナイカト云フ御尋デアリマシテ、
  此點ハ先般慥カ松田サンノ御質問デアッタ
  ト思ヒマスガ、其際ニモ申上ゲマシタヤウ
  ニ、私共ハ定額俸給ヲ高クシマシテ賞與ヲ
  少クスルカ、或ハ賞與ノ方ヲ比較的多クシ
  テ定額俸給ヲ減ラスカト云フコトノ利害ノ
  問題ニナリマスト、是ハ餘程議論ガアルダ
  ラウト思フノデゴザイマス、私共ノ見ル所
  ニ依リマスト、兎角定額ノ俸給ト云フモノ
  ハ當然ニ貰ヘルモノダト云フヤウニ考ヘラ
  レ勝チデアリマシテ、ソレハ雇人ト云フ
  側カラモ一般ノ心理ヂヤナイカト云フ風ニ
  考ヘルノデス、寧口定額給與ハ幾分低クト
  モ、其人ノ勤惰ノ成績ニ依リマシテ賞與ヲ
  加減スルト云フ方ガ實效ガ擧ガルノヂヤナ
  イカ、此點ハ松田サンノ御說ト私ノ考ハ全
  然反對デアリマスガ、サウ云フ意味ニ於テ
  比較的賞與ヲ餘計ニ見積ッテ居ルノデス、ソ
  レカラ又此金庫ノ本質ヲ十分諒解シテ居リ
  マス人デアレバ、サウ云フコトハナイト思
  フノデアリマスケレドモ、從業員ノ立場カ
  ラ考ヘマスレバ、ヤハリ一般ノ銀行、會社
  ト云フヤウナモノヲ比較ニ考ヘマシテ、此
  金庫ガ給與ガ少イトカ何トカ云フヤウナコ
  トヲ考ヘ易イコトダト考ヘルモノデアリマ
  スルカラ、少クモ一般ノ從業員等ニ付キマ
  シテハ民間ノ一般銀行會社等ノ釣合等モ多
  少考ヘマシテ、給與ヲシナケレバ、適當ナ
  人間ハ得ラレナイノデアリマス、私共ノ考
  ヘルノハ、無論役員幹部ニ相當ナ人ヲ得ル
  コトガ必要デアリマスト同時ニ、此從事員
  ニ付キマシテモ、出來得ル限リ適當ナ人ヲ
  得タイト考ヘテ居リマス、是ハ金ヲ借リル
  側ト云フ見地ニ立チマスト、何時モ引ケ目
  ヲ感ズルモノデアリマシテ、金ヲ借リニ大
  威張デ行ク場合ハ比較的少ナイノデ、何時
  デモ何トナク引ケ目ヲ感ズルト云フコトガ
  普通デアリマスノデ、恩給金庫アタリニ
  付テモ、ヤハリ其點ハ餘程考ヘナケレバナ
  ラナイヂヤナカラウカ、所謂官僚的ニナリ
  マシテ、オ役所式ニナルト云フヤウナコト
  ハ、從來ノ市井ノ金融業者等ノ關係等カラ
  考ヘマシテ、餘程注意シナケレバナラヌコ
  トデアルト思フノデアリマス、隨テ金庫ニ
  從事致シマス職員ナドニ付キマシテモ、隨
  分サウ云フ點ヲ考慮シテ、採用シテ行キタイ
  ト云フヤウニ考ヘテ居リマス、學校ヲ出タテ
  ノマダ經驗モ無イト云フヤウナ者ヲ頭數ダ
  ケ揃ヘルト云フコトデナクテ、相當社會ノ
  荒波ヲ渡ッテ來マシテ、十分理解ノアルモッ
  ト平タク申シマスレバ、借金ノ經驗デモ十分
  アルヤウナ人ヲ使フ方ガ私共宜イノデハナ
  イカト云フ風ニ考ヘテ居リマス、サウ云フ
  點カラ考ヘマシテ、給與ガ多少多クナルト
  云フヤウナコトモ已ムヲ得ナイヂヤナイカ
  ト云フ風ニモ考ヘテ居リマスガ、唯實行ノ
  上ニ於キマシテハ、御話ノヤウナ點ヲ十分
  考慮致シマシテ、適當ニ節約ヲ致シテ行キ
  タイト云フ風ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=92

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• 093・塚本重藏

  ○塚本委員　今ノ此〓算セラレテ居リマス
  ル給料ヲ以チマシテ、ドレ位ノ人員ヲ御使
  ヒニナル豫定デアリマスカ、ソレカラ賞與
  ノ內譯モ御伺シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=93

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• 094・高木三郎

  ○高木政府委員　大體今豫定トシテ居リマ
  ス人員ハ三百人ト云フ風ニ豫定致シテ居リ
  やく、ソレカラ賞與ノ率ハ三箇月乃至六箇
  月程度ト云フコトニ考ヘテ居リマスガ、其
  中役員ニドノ程度出スカト云フコトハ、具
  體的ニマダ考ヘテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=94

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• 095・塚本重藏

  ○塚本委員　報酬ニ比ベテ給料ガ安イデハ
  ナイカト考ヘラレタ點ハソコデアリマシテ、
  約三百人ノ人ヲ使ヒマシテ、二十九万四千
  圓デアル、片方ノ役員ハ十人足ラズデ十万
  一千圓デアル、役員ト從業員トノ懸隔ガ餘
  リニモ甚ダシイ結果ニナルト、斯ウ思ハレ
  ルノデス、ソレカラ私ハ從業員ハ出來ルダ。
  ケ優遇シテ貰ヒタイト思ヒマスガ、是レ程
  ニ差ヲ付ケナケレバナラヌモノカドウカ、
  ソレカラ報酬ヲ貰フ役員ニ致シマシテモ、
  給料ヲ戴ク從業員ニ致シマシテモ、或ハ傷
  痍軍人、將校等サウ云フ人々ノ中カラモ物
  色スレバ或ハ適當ナ人ガ經濟的ニ得ラレル
  ノデハナイカト考ヘラルヽノデアリマス、斯
  ウ云フ點ハ一ツ十分ニ經費ヲ節約シ、且ツ
  能率ヲ擧ゲル方面ニ御配慮願ヒマシテ、要ハ
  貸付ノ利子ヲ出來ルダケ安ク行ハレルヤウ
  ニ御配慮ヲ願ヒタイ、ソレハ事業關係ノ方
  面ト資金捻出ノ方面トニ於テ、兩方面カラ
  ソレヲ考ヘマシテ、利子ヲ五分以下ニ切下
  ゲルコトガ出來ルヤウニ、一ツ運營ニ努力
  シテ貰ヒタイト思ヒマス、ソレカラ第二ハ
  何ト申シマシテモ簡便ニ容易ニ此金庫ヲ利
  用セシメルト云フコトガ必要ダト思ヒマス、
  此點ニ付キマシテ、東京ニ本部ヲ置キマシ
  テ大阪、名古屋、廣島、福岡、仙臺ニ支所
  ヲ設ケラレルノデアリマスガ、其他全國便
  宜ノ地ニ出張所ヲ置クト云フコトニナッテ居
  リマスガ、出張所ノ大體ノ數、何處々々ト
  云フコトハ分リマスマイガ、大凡便宜ノ地
  ニ置クト云フ此出張所ハドノ程度ニ置カレ
  ル積リデアリマスカ、地方ニ於キマシテハ、
  「官廳其ノ他ニ業務ノ執行ニ關スル事務ノ
  一部ヲ取扱ヲ委託スルコトアルベシ」斯ウ
  書カレテアリマスルガ、茲ニアリマス「地
  方ニ在リテハ、官廳」ト云フ官廳ハ何ヲ指ス
  ノデアリマスカ、例ヘバ府廳デアルトカ縣
  廳ト云フモノヲ指スノデアリマスカ、其他
  ニ玆ニ謂フ官廳ニ含マレテ居ルモノガ何々
  ダカ、ソレカラ「其ノ他ニ」ト云フ「其ノ他」
  ハドウ云フモノガ含マレテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=95

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• 096・高木三郎

  ○高木政府委員　出張所ノ豫定ニ付キマシ
  テハ、マダ十分ノ〓究ヲ致シテ居ラナイノ
  デアリマスガ、大體只今考ヘテ居リマスノ
  ハ京城、臺北、大連、札幌、金澤、熊本等
  ノ各都市、若シ必要ガアリマスレバ尙ホ全
  國主要ノ都市ニ漸次擴充致シテ行キタイト
  云フ風ニ考ヘテ居リマス
  次ニ「地方ニ在リテハ官廳」トアリマスガ、
  此官廳ハドウ云フモノヲ利用スルカ、是モ
  マダ具體的ノ問題ハ考ヘテ居ラナイノデス
  ガ、或ハ市町村役場デアリマストカ、郵便
  局デアルトカ云フヤウナコトガ起リ得ルモ
  ノト考ヘマシテ、玆ニ官廳ト云フコトヲ加
  ヘテ置イタノデアリマス、其他ノ業務ノ執
  行ニ關スル事務ノ一部ト云フ其他ト申シマ
  スノハ、旣設ノ機關デアリマスル所ノ銀行
  トカ會社トカ云フヤウナモノニ代理ヲ委託
  スルヤウナ場合モアリ得ルカト考ヘテ居リ
  やく、要スルニ金庫ト致シマシテハ、劃
  的ニドウ云フ機關ニ之ヲ委セルト云フヤウ
  ナコトハ考ヘテ居リマセヌ、適當ナ場所ニ
  適當ナ施設ヲ利用シヨウト云フ積リデアル
  ノデス、ソレデアリマスカラ、旣設ノ機關、
  例ヘバ產業組合ト云フヤウナ所デ相當ノ成
  績ガ擧ッテ居ル、其所ガ一番便利ダト云フコ
  トデアリマスレバ、其所ヲ金庫ノ代理店ナ
  リ或ハ取扱店ナリニ致シマシテ、ソレ等ノ
  旣設ノ機關ヲ或ル程度ニ利用致シテ行キタ
  イト云フヤウニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=96

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• 097・塚本重藏

  ○塚本委員　是マデノ方々ノ質問應答ニ依ッ
  テ、郵便局ヲ利用スルコトハ困ルト云フ御
  答辯ヲ得テ居ッタノデスガ、今局長ノ答辯ニ
  依リマスト、官廳ト云フモノノ中ニ、郵便
  局或ハ町村役場等ガ含マレルト云フコトデ
  アッタガ、是ハ實際ニ郵便局ヲ利用スルヤウ
  ニシテ戴ケルノデアルカ、或ハ市町村役場
  ヲ利用スル、取扱ガ行ハレルヤウニナルノ
  デアルカ、其點ヲ重ネテ御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=97

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• 098・高木三郎

  ○高木政府委員　郵便局ヲ利用致シマスニ
  付キマシテハ、最初大分考ヘタノデスガ、
  之ニ付キマシテモ、色々利害ガアルノデア
  リマシテ、一面カラ考ヘマスト、郵便局ガ
  一般民衆ニ接觸シテ居ル機關デアルカラ、
  郵便局ヲシテ扱ハシメルガ宜イト云フ意見
  モアリマスシ、又一面カラ言ヒマスト、郵
  便局ト云フモノハヤハリ官僚ノ出先デアリ
  マスノデ、非常ニ規則的ニヤカマシイ、又
  窓口等デ公ニ扱ハレルト困ルト云フヤウナ
  意見モアルノデアリマス、ケレドモ亦一面
  郵便局ヲ利用スルト云フコトニナリマスレ
  バ遞信省方面ニ十分ナ諒解ヲ得ナケレバ
  ナリマセヌノデ、只今直チニ郵便局ヲ利用
  スルカドウカト云フコトヲ御答申上ゲ兼ネ
  ルノデスガ、地方町村役場等ニ付キマシテ
  モ、同樣ノ意味ニ於キマシテ、ハッキリ如何
  ナル機關ヲ利用スルカト云フコトヲ決メ兼
  ネマシタノデ、官廳其他ト云フコトデ漠然
  ト書イタノデアリマス、實際ノ問題ニナリ
  マシテ後ニ、今少シ十分ノ〓究ヲ致シマシ
  タ上デ、取扱機關ヲ定メテ行キタイト云フ
  考デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=98

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• 099・塚本重藏

  ○塚本委員　是ハ第二ノ質問ニ次ギマシテ
  非常ニ重要ナコトデアリマシテ、是ガ實際
  受給者ニドノ程度ニ便利ニ利用セラレルカ
  ト云フコトハ、此處デ其死活ノ問題ガ分レ
  テ來ルト思ヒマス、例ヘバ大阪ニハ支所ガ
  一ツ出來ルガ、其支所一ツダケデハ受給者
  ハソレヲ利用スルノニ甚ダ不便ヲ感ズルノ
  デアリマス、郵便局ガ利用セラレマスナラ
  バ、之ニ越シタコトハナイノデアリマスガ、
  ソレガ出來ナケレバ、セメテ町村役場或ハ
  都市ニ於キマシテハ市役所竝ニ區役所ノ兵
  事係トカト云フヤウナ所デ、是ノ取扱業務
  ヲ行ハシメタナラバ、非常ニ宜クハナイカ
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、更ニモウ一ツ
  考ヘラレルコトハ、各地ニ在〓軍人會ガアッ
  テ、在〓軍人會ノ分會ガソレ〓〓アリマス
  ガ、サウ云フ在〓軍人會ノ分會ノ事務所デ
  之ヲ取扱フト云フコトモ考ヘラレマスガ、
  サウ云フ點ニ付テ何カ御考ガアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=99

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• 100・高木三郎

  ○高木政府委員　在〓軍人會ノコトニ付キ
  マシテハ、私共モ利用ガ出來レバ、出來得
  ル限リ利用致シタイト考ヘテ居リマス、實
  ハ內交涉中デゴザイマシテ、在〓軍人會ノ
  幹部ニ其事ヲ申入レテアリマス、唯在〓軍
  人會ノ規定其他カラ致シマシテ、果シテコ
  チラノ希望通リニ應ジラレルカドウカト云
  フコトハ、マダ此處デ申上ゲルコトハ出來
  ナイノデゴザイマスケレドモ、私共一個ノ
  考ト致シマシテハ、地方ノ事情モ能ク分リ、
  又利用者ノ大部分ガ軍人乃至軍人ノ遺家族
  デアリマス關係上、在〓軍人會等ガ活動ヲ
  シテ吳レマシタナラバ、大變便利デハナイ
  カト云フ風ニ感ジテ居リマス、今後トモサ
  ウ云フ方面ニハ十分連絡ヲ取リマシテ、出
  來得ル限リ利便ナ方法ヲ講ジタイト云フ風
  ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=100

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• 101・塚本重藏

  ○塚本委員　サウシテ貰ヘマスナラバ、利
  便デモアリ、且ツ之ニ依ッテ相當人件費ガ省
  カレル結果ニナリハシナイカ、私サウ云フ
  兩方面ノコトヲ考ヘテ、是等ノコトヲ考ヘ
  テ居ル譯デアリマス、モウ質疑モ殆ド終ッテ
  採決ニ迄入リ、之ヲ貴族院ニ廻ハサウト云
  フヤウナ時期ニナッテ居ルニモ拘ラズ、マダ
  此點ニ付テ確タル方針ノ出來テ居ラヌコト
  ハ甚ダ遺憾デアリマスガ、出來ルダケ一ツ
  利便ナ方法ヲ講ジテ貰ヒタイト考ヘマス、
  出來ルナラバ市區町村役場ノ兵事係、或ハ
  在〓軍人會ニ於テ之ヲ取扱ハシムルト云フ
  コトガ適當ナ方法デハナイカト考ヘマス
  ソレカラモウ一ツ御聽シテ置キタイノハ、
  內地デハソレデ宜イノデアリマスガ、外地
  ニ於テハドウ云フ取扱ガ出來ルノデアリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=101

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• 102・高木三郎

  ○高木政府委員　外地ノ問題ニ付キマシテ
  ハ、主ニ滿洲方面、臺灣方面等デアラウト
  考ヘテ居リマスガ、是等ニ付キマシテハ、
  只今ノ所具體的ノ方策ト云フモノハマダ樹ッ
  テ居ラヌノデアリマス、私ハ滿洲ニ居リマ
  シタ關係上滿洲ノ狀況ヲ見マスト、ヤハリ
  都會地ニ相當纏ッタル金融業者ト云フモノ
  ガアリマシテ、丁度昨年デアリマシタカ、
  餘リ是等ノ跳梁ガ激シイト云フノデ、警察
  ノ方ガ活動致シマシタヤウナ例モアッタノ
  デアリマス、ソレ等ノ實情ヲ參酌致シマシ
  テ、適當ナ場所ニ適當ナ代理店、取扱店等
  ヲ置ク必要ガアルト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=102

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• 103・塚本重藏

  ○塚本委員　尙ホ此代行機關ノ問題デアリ
  マスガ、曩ニ場合ニ依ッテハ、產業組合等ニモ
  取扱ハサシテハドウカト考ヘテ居ルト云フ
  御答辯デアリマシタガ、是ハ前ノ議會デハ
  產業組合ニ取扱ハスコトハ考ヘテ居ラヌト
  云フ御答辯ヲ得テ居リマシタガ、今度ハ產
  業組合等ニモ取扱ハシテハドウカト云フ御
  方針ノヤウニ變ッテ居ルヤウニ伺ヒマシタ
  ガ、產業組合ノ外ニ、市街地ノ信用組合デ
  アルトカ、ソレカラモウ一ツハ帝國軍人後
  援會、或ハ義濟會、是等ノモノニ付テモ事
  業ヲ一部委託スルコトガアルノデスカ、伺ッ
  テ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=103

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• 104・高木三郎

  ○高木政府委員　私ノ申上ゲマシタノハ、
  前議會デ政府委員ガ答辯致シマシタ所ト、
  實質ニ於テハ變リハナイノデアリマシテ、
  代行機關ト申シマスケレドモ、所謂代行機
  關トシテ全部ヲ委託シテシマウト云フ意味
  デハアリマセヌデ、適當ノ機關ガアリマス
  レバ、其適當ノ機關ヲ恩給金庫ノ手足トシ
  テ使フト云フ意味ナノデアリマス、其點ハ
  前議會ニ於ケル政府委員ノ考モ同一デアッ
  タラウト考ヘマス、ソレデアリマスカラ、
  例ヘバ產業組合ナリ或ハ信用組合ニ付テ申
  シマスレバ、相當ナ信用ガアリマスレバ、
  其或ル部分ヲ恩給金庫ノ手足ト致シマシテ、
  其處デ實際ノ仕事ヲ扱ハシメルト云フコト
  ニ致スノモ宜イデハナイダラウカ、軍人後
  援會等ニ付キマシテモ、大體只今考ヘテ居
  リマスノハ、其會ノ成立チノ特殊デアルト
  云フ點カラ考ヘマシテ、又擔保金融ガ一般
  金融業者ノ行フヤウナ目的ノモノデハナイ
  ノデアリマスカラ、是ハ出來得レバ、其儘
  使用致シマシテ、金庫ノ一ツノ「ブランチ」
  トシタイト云フヤウナ考ヲ持ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=104

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• 105・塚本重藏

  ○塚本委員　モウ一ツ帝國軍人後援會及ビ
  義濟會ノコトニ關シマシテ、先程恩給局長
  ト私語致シマシタ場合ニ、是等ノ年金或ハ
  恩給ヲ擔保トシテ融通シテ居リマスル貸付
  金ハ、全部恩給金庫ニ肩替リサセルノダト
  云フヤウナ御話ガアリマシタガ、ソレハ恩
  給金庫ノ事業開始ト共ニ、直ニサウ云フコ
  トガ行ハレルノデアリマセウカ、御伺致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=105

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• 106・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ所デハ軍人後援會、
  義濟會等ハ大體纏ッテ居リマスノデ、肩替リ
  ト申シマスカ、何ト申シマスカ、其儘ニ切
  替ヘ得ルヤウナ狀態ニナッテ居リマスノデ、
  出來得レバ、サウ云フコトニ致シタイト考
  ヘテ居リマス

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• 107・塚本重藏

  ○塚本委員　ソレカラモウ一ツ恩給金庫ノ
  事業開始ニ當ッテ大事ナコトハ、又此恩給金
  庫ノ特長トシテ居リマスルコトハ、從來ノ
  金融機關デハ取扱ッテ貰フコトノ出來ナカッ
  タ年寄デアルトカ、或ハ病弱者デアルトカ
  云フヤウナ弱體受給者ガ、幸ニシテ此出來
  マスル恩給金庫ニ依ッテ、金融ノ途ガ開ケル
  ト云フ所ニ非常ナ特典ガアルト思ヒマス、
  此特典ハ何處迄モ生カシテ行カナケレバナ
  ラヌト思ヒマスガ、唯心配スルノハ、資金
  ニ對シテ五分五厘ノ配當ヲシナケレバナラ
  ヌトカ、或ハ事業費ガ相當多額ヲ要スルト
  カ云フヤウナコトカラシテ、相當ヤハリ成
  績ヲ擧ゲナケレバナラヌト云フコトノ爲ニ、
  兎モスレバ弱體受給者ト云フモノニ對スル
  金融ノ途ガ十分ニ拓カレナイヤウナ結果ニ
  ナリハシナイカト云フコトヲ虞レルノデア
  リマス、ソレデハ此恩給金庫ノ設置ノ意義
  ト云フモノガ甚ダ薄弱ニナッテ來ルト思ヒ
  マス、ソレガ取扱ヘルコトガ此恩給金庫ノ
  特長デアルト思ヒマスノデ、十分是等ノ弱
  體受給者ニ對スル取扱ヲ懇切丁寧ニ、此希
  望ニ副フヤウニシテ戴キタイト思ヒマス、
  其心配ノ一ツハ、是ハドナタカノ御質問ニ
  モアリマシタヤウニ、恩給金庫法ノ第二十
  五條ノ但書ガアルコトデアリマス、斯ウ云
  フモノガ弱體受給者ノ上ニ强力ニ行ハレテ
  行クコトデアッテ、結局ドウモ思ハシイ成績
  ガ擧ラナイト云フヤウナ結果ニナッテハイケ
  ナイト思ヒマス、其點ニ付テサウ云フ心配
  ハナイト云フ確信ヲ持ッテ居ラレマスカ、御
  伺致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=107

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• 108・高木三郎

  ○高木政府委員　御說ノ通リデコザイマシ
  テ、此金庫ノ出來マス一ツノ大キナ眼目ト
  致シマシテ、從來救ハレテ居ラナイ老年者、
  弱體者等ニ對スル貸付ガ非常ニ重要ナコト
  ダト考ヘマスノデ、其點ニ付キマシテハ十
  分考慮致シマシテ、御話ノヤウナ虞ノナイ
  ヤウニ致シタイト考へマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=108

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• 109・塚本重藏

  ○塚本委員　次ニ、今日相當多ク、法律ガ
  禁止シテ居ルニモ拘ラズ恩給證書、年金證
  書ヲ擔保ニシテ金ヲ借リテ居リマスル者ガ
  アルトハ、モウ是ハ周知ノ事實デアリマス
  ガ、是ガ法律上公然ト認メラレテ、而モ此
  半官半民ノ恩給金庫ト云フヤウナモノガ設
  置サレマシタナラバ、恩給證書或ハ年金證
  書ヲ利用致シマシテ、金融ヲ請フ者ハ、從
  來ニ增シテ非常ニ多クナッテ來ルト思ヒマス
  ガ、其邊ノ見透シハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=109

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• 110・高木三郎

  ○高木政府委員　私共モ大體サウ云フ風ニ
  考ヘルノデゴザイマシテ、金庫ガ完全ニ圓
  滿ニ發達シテ來マスコトニナリマスレバ、
  比較的利用者ハ多クナルダラウト考ヘテ居
  リマス、併ナガラ其點ハ先程小高サンカラ
  ノ御尋デアリマシタト思ヒマスガ、其際ニ
  御答致シマシタヤウニ、此金庫ガ出來マシ
  タ爲ニ、金庫ヲ利用シテ借金ヲシテ濫費浪
  費ニ陷ルト云フヤウナコトノアリマセヌヤ
  ウニ、貸付ニ當リマシテハ十分注意ヲ致ス
  積リデ居リマスノデ、一時ニサウ急激ノ增
  加ガアルト云フ風ニモ考ヘラレナイノデア
  リマス、唯漸時受給者モ殖エテ參リマスシ、
  又金庫ガ比較的簡易低利ニ金融スルト云フ
  コトニナリマスレバ、利用者ハ漸時殖エテ
  參ルコトト考ヘマス、ソレニ對應スルダケ
  ノ施設ハ十分攻究致サナケレバナラナイト
  考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=110

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• 111・塚本重藏

  ○塚本委員　私モ大體サウ云フ風ニ見ルノ
  デアリマスルガ、更ニソレバカリデハアリ
  マセヌ、今マデハ法律ガ禁止シテ居ッタノ
  デアリマスルカラ差控ヘテ居リマシタ者
  モ、法律ニ依ッテソレガ認メラレ、サウ云フ
  特殊ノ機關ガ出來マスナラバ、是ノ利用者
  ト云フモノハ相當急激ニ殖エテ參ルト思ヒ
  マス、ソレデコソ又之ヲ設立シタ價値ガ現
  ハレテ來ルノダト思フノデス、サウ云フ風
  ニ利用者ガ殖エテ來ルト云フコトト、更ニ
  今局長ノ御話ニモアリマシタヤウニ、支那事
  變ノ爲ニ受給者ガ急激ニ增加シテ居リマセ
  ウシ、更ニ又官廳方面ニ於キマシテモ、省
  ガ殖エタリ、或ハ部局ガ新設セラレタリ、
  或ハ擴張セラレタリ致シマシテ、此恩給ヲ
  受クル人ノ數ガ年々相當急激ニ增加ヲ示シ
  テ參ルヤウナ風ニ私ハ見テ居リマス、サウ
  云フ各事情カラ致シマシテ、益〓恩給金庫
  ノ利用者ガ殖エテ來ルト思ヒマス、ソコデ
  私ノ心配致シマスノハ、政府提出ノ參考資
  料ニモアリマスヤウニ、借替ガ十分ニ圓滑
  ニ出來ルカドウカト云フ問題デゴザイマ
  ス、是ハ又非常ナ重大ナ問題デアリマシ
  テ、現ニ此市井ニアリマスル惡辣ナル高利
  貸等ニ窘メラレテ居リマスル多クノ受給者ヲ
  救ヒ出サナケレバナラヌ使命ヲ持ッテ居ル
  ノデアリマス、所ガサウ云フ風ニ一方ニハ
  利用者ガドン〓〓殖エテ來ル、ソレカラ一
  方ニハ今貸出シテ居リマスモノヲ肩替リサ
  セナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘテ見マ
  スト、政府ノ提出セラレマシタ資料ニ依リマ
  シテモ、大體代理受領者ノ受取リマス金額ガ
  二千五百万圓トナッテ居リマス、而モ其備考
  欄ニ於キマシテハ、想像スルノニ實際ニ於
  テハ此二倍ニモ達シテ居ルノデハナカラウカ
  ト云フコトヲ揭ゲテ居リマス、二倍トシマ
  スト五千万圓、ソレニ支那事變ノ影響其他
  ニ依リマシテ受給者ガ殖エテ參リマス、更ニ
  恩給金庫ノ設置ニ依リマシテ利用者ガ一層
  殖エテ來ルト云フコトヲ想像シマスト、大
  體當初一億圓位ノ金ヲ持ッテ掛ラナケレバ、
  十分ニ此機關ヲ利用シマスル人々ノ希望ヲ
  達スルコトハ困難デハナカラウカト思ヒマ
  ス、而モ今ノ事業計畫ニ依リマスト、之ヲ
  完全ニ借替サシテシマヒマス爲ニハ、此計
  畫カラ言ヒマスナラバヤハリ二年、三年
  ノ歲月ヲ要スルト思ヒマス、サウシマスナ
  ラバ、其間何カ經過的ノ方法ヲ御考ニナッテ
  居リマスカ、此事業計畫デサウ心配シタコ
  トハナイト考ヘテ居ラレルト私ハ思フノデ
  スケレドモ、私共ノ考ヘル所デハサウ云フ
  風ニ現在ニ於テスラ約五千万圓ノ金ガナケ
  レバ肩替リヲサシテヤレナイ、而モ此新シ
  イ金庫ノ設置ニ依ッテ利用ノ希望者ガ殖エ
  テ來ル、ソレ等ノ多クノ希望ヲ達スル爲ニ
  ハ此事業計畫ノ〓要ヲ以テシマシテハ十分
  ニ目的ヲ達セラレナイ、他ノ委員カラモ御
  質問ガアッタノデアリマスガ、私ハ別ニサウ
  云フ別個ノ方面カラ考ヘマシテ、ドウモ肩
  替リガ十分ニ出來ナイノデハナイカ、十分
  ニ此金庫利用者ノ希望ヲ容レルコトガ出來
  ナイノデハナイカト云フ心配ガアリマス、
  ソレガ早ク行ハレナケレバ、依然トシテ好マ
  シカラザル事柄ガ續ケラレテ行クノヂヤナ
  イカ、更ニモウ一ツ私ガ心配スルノハ、曩
  ニ質問シマシタ帝國軍人後援會、或ハ義濟
  會ト云フモノガ、先ヅ第一番ニ容易ニ肩替
  リガ出來ルカラ肩替リヲサスト云フヤウナ
  方針デアルトシマスト、私ハ先ヅ第一番ニ
  救ウテヤラナケレバナラヌ市井ノ恩給金融
  業者ニ窘メラレテ居ル人々ヲ救フト云フ方
  面ガ却ッテ後〓シニナルノデハナイカ、ソレ
  デハナラヌト思フ、私ハ比較的弊害ノ少イ軍
  人後援會デアルトカ、義濟會ノ方ハ後廻シニ
  シテモ、一番弊害ノ多イ所カラ先ヅ救濟ノ
  手ヲ伸ベテ、改善ノ途ヲ圖ッテヤラナケレ
  バナラヌト思フ、サウシマスノニハ非常ニ
  資金ガ少イノデアリマスガ、此點ニ關スル
  所信ヲ承ッテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=111

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• 112・高木三郎

  ○高木政府委員　只今ノ御說ハ御尤デアリ
  マスガ、實ハ一般金融業者カラ乘替ヘマス
  モノニ付キマシテハ、技術的ニ考ヘマシテ
  モサウ急速ニ直グ肩替リスルコトハ不可能
  デハナイカト考ヘテ居リマス、是ハ利率其他
  ノ條件ガ違ッテ居リマスカラ、債權者ト受給
  者トノ間ノ或ル程度ノ妥協ヲ要スルコトニ
  ナリマスノデ、妥協ノ付イタモノカラ順次
  處理シテ行クコトニナリマスレバ、ヤハリ
  技術的ニ相當期間ガ掛ルノデハナイダラウ
  カ、ソレデ當初ノ第一年ノ半年分ノ豫想ト
  致シマシテハ、四千万圓ノ借入金ト六百万
  圓ノ資本金ヲ充當致シマスレバ、大體其程
  度ニシカ行カナイノデハナイカト思フ、此
  計畫ニ於キマシテハ、實ハソレ迄モ出來ナ
  イデアラウト云フ見込デ、新規貸付金ヲ三
  千二百万圓ト見テ居ルノデゴザイマスケレ
  ドモ、是ハ又少シク餘裕ガ無サ過ギルヤウ
  ニモ考ヘルノデス、先日ドナタカラカ御指
  摘ニナリマシタ資金殘高ガ多過ギルヂヤナ
  イカト云フ御話モアッタノデスケレドモ、之
  ヲ滿足ニ利用シテ行クコトニナリマスレ
  バ、借入金四千万圓ト六百万圓ノ資金、尙
  ホ貸付ヲシマスト、直グ其三月目カラ囘收金
  ガ入ッテ來マス、ソレ等ノ金ヲ運用シマシテ、
  初年度五千万圓位ノモノハ十分消化シ得ル
  ト考ヘテ居リマス、若シソレデ尙ホ不十分
  デアルト云フコトデアリマスレバ、借入金
  其他ノ方法ニ依ッテ此計畫外ニ隨時增シテ
  行ッテモ差支ナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=112

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• 113・塚本重藏

  ○塚本委員　サウシマスルト、ヤハリ政府
  ノ方デハ此乘替其他ハ一時ニ行ハレヌデモ
  宜イト云フ御考デアリ、尙ホ又一般市中ニアリ
  マス所ノ恩給立替業者等ノ方面ト話合ヲ付ケ
  ルノニ相當暇ガ要ルト云フ御話デアリマス
  カラ、ヤハリ是ハ兩三年シナケレバ完全ナモ
  ノニハナラヌト云フコトヲ御認メノ上デヤ
  ラレルヤウニ思ヒマスガ、サウ考ヘテ置イ
  テ宜イデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=113

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• 114・高木三郎

  ○高木政府委員　實際問題トシマシテハ、
  ヤハリ御話ノヤウニナルコトト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=114

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• 115・塚本重藏

  ○塚本委員　サウシマスト、此恩給法ノ改
  正ノ方ニ移ルノデアリマスガ、恩給法ノ改
  正ノ第一番ニアリマスガ、十一條ノ第二項
  ノ「前項ノ規程ニ違反シタルトキハ裁定官
  廳ハ支給廳ニ通知シ恩給ノ支給ヲ差止ムヘ
  シ」ト云フノハ、此恩給金庫法ノ事業開始
  ト共ニ是ハ嚴格ニ行ハレル方針デアリマセ
  ウカ、御伺シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=115

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• 116・高木三郎

  ○高木政府委員　此點ハ先程樋貝政府委員
  カラ御答致シマシタケレドモ、此十一條ノ
  書キ方ニ含蓄ヲ持ッテ居ル譯デアリマス、ソ
  レハ此規定ニ違反シタナラバ直チニ支給ノ
  差止ヲスルト云フコトニナリマスト、少シ
  行過ギル場合ガアルカモ知レマセヌ、ソコ
  デ是ハ裁定廳ガ判斷ヲ致シテ、裁定廳ガ支
  給廳ニ通知ヲ致シマシテ、支給廳ヲシテ差
  止ヲセシムルト云フコトデゴザイマスカラ、
  裁定廳ノ裁量ノ範圍內ニ於テ適當ニ運用ス
  ルコトガ出來ルヤウニナッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=116

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• 117・塚本重藏

  ○塚本委員　此點ハ私ハ出來ルダケ早ク問
  題ガ解決スルヤウニシテ貰ヒタイト希フ
  ノデスガ、ソレダカラト云ッテ、此金融業者
  トノ間ニ要ラザル摩擦ヲ起スコトハ勿論避
  ケテ行カナケレバナリマセヌ、ソレヲ避ケ
  ナガラ一ツ出來ルダケ斯ウ云フ方面ノ受給
  者ヲ早ク救ッテヤルト云フ方面ニ、一段ノ努
  力ヲ加ヘラレンコトヲ御願シテ置キタイト
  思ヒマス
  ソレカラ恩給法ノ改正デアリマスガ、戰
  病死者、傷痍軍人竝ニ其遺族ノ待遇改善ニ
  關シマシテ、此恩給法ノ改正ガ提案セラレ
  マシタコトハ、非常ニ欣快ニ堪ヘナイノデ
  アリマスガ、唯此待遇改善ノ內容ニ付キマ
  シテ、尙ホ幾多ノ不十分ナ點ガアルコトハ、
  多クノ委員諸君カラ御指摘ニナッタ通リデ
  アリマス、私ノ質疑シタイト考ヘテ居リマ
  シタコトモ、旣ニ殆ド大部分質疑ガ盡サレ
  タノデ、私ハ重ネテ是ハ質疑致シマセヌ、
  唯私ハ各委員ノ質疑ヲ聽イテ居リマシテ、
  最初ノ最上君ノ質疑竝ニ江藤委員ノ質疑ニ
  對シマシテ、全ク同感ノ一人デアッタノデア
  リマス、此事ダケヲ表明シテ置キマシテ、
  其點ハ一切質問ヲ省略シマスガ、唯恩給法
  ノ改正ニ關聯シマシテ、一二伺ッテ置キタイ
  コトハ、是ハ本會議デモドナタカ質問ニナッ
  テ居リマシタガ、現在恩給ヲ受ケテ居ッテ、
  他ノ會社デアルトカ、或ハ其他ノ方面ニ相
  當多額ノ給料ヲ貰ッテ就職シテ居ル者ガア
  ル、斯ウ云フ者ニハ恩給ヲ一時支給ヲ中止
  シタラドウカト云フ意見ガアッタガ、全ク同
  感デアリマス、サウ云フ取扱ガ今日ノ恩給
  法デハ出來ナイモノデセウカ、御伺致シタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=117

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• 118・高木三郎

  ○高木政府委員　此點ニ付キマシテモ、先
  般御答シタト考ヘテ居リマスガ、現在ノ恩
  給法ノ規程ニ於キマシテモ或ル程度ノ支給
  停止ヲ致シテ居リマス、結局其支給停止ノ
  程度ノ問題ト云フコトニナルト考ヘマスガ、
  是ハ實ハ昭和八年ニ改正致シマシテ、高額
  所得者ノ恩給停止ノ規定ガ出來タノデアリ
  マス、之ヲ今日更ニモウ少シ率ヲ增スカド
  ウカト云フコトニナリマスト、尙ホ多少〓
  究ノ餘地ガアルト云フ風ニ考ヘマスノデ、
  今囘ノ恩給法ノ改正ニハ之ヲ出サナカッタノ
  デアリマス、併シ根本ノ問題ト致シマシテ
  ハ、尙ホ〓究スル餘地ガアルト考ヘテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=118

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• 119・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ以下二三恩給法ノ根本的
  ナ改正ノコトニ關シテ御伺シタイト思ヒマ
  ス今ノモ其一ツデアリマスガ、更ニモウ
  一ツハ、曩ニ恩給局長トモ私語シタ點デア
  リマスガ、今日ノ恩給法ヲ根本的ニ改正ス
  ル必要ヲ私ハ痛感シテ居ルノデアリマス、
  言フ迄モナク今日ノ恩給法ハ、軍人、官吏
  ヲ主トシテ恩給ガ與ヘラレルヤウナコトニ
  ナッテ居ルノデアリマスガ、ドウモ恩給法ノ
  適用ヲ官吏ト軍人トダケニ-其他一二附
  隨スルモノガアリマスガ、主トシテソレダ
  ケニ恩給ヲ與ヘテ置クト云フコトガドウカ
  ト思フ、私ノ理想ハ七十議會ノ本會議デモ
  申上ゲテ置イタノデアリマスガ、斯ウ云フ
  風ナ結局制度ニ改メルコトハ出來ナイカト
  云フコトヲ申上ゲマシテ、當然是ハ恩給法
  ノ根本的ナ改正ト云フモノガ將來問題トナ
  ルト思ヒマスカラ、今日カラ考ヘテ置イテ
  宜イモノダト考ヘマス、私ハ啻ニ軍人ヤ官
  吏ダケデナク、日本ノ國民全體ニ恩給ナリ
  或ハ年金ヲ與ヘル方法ヲ考ヘタラドウカト
  思ヒマス、サウシマシテ此ノ方法ト名前
  ハドウ云フコトニナルカ知レマセヌガ、
  國民ノ退職賜金ト申シマスカ、國民ノ功勞
  賜金ト申シマスカ、サウ云フヤウナモノニ
  シテ兎ニ角或ル職場、或ル職務ニ勤メマシ
  タ者ニ對シマシテハ、之ニ一時賜金トシテノ
  退職賜金或ハ功勞賜金ト云フモノヲ與ヘテ打
  切ッテシマフ、サウシテ五十歲トシマスカ六
  十歲トシマスカ、五十五歲トシマスカ、兎ニ
  角或ル一定ノ年齡ガ來ルマデハ恩給トカ年
  金トカ云フモノハ支給シナイ、働ク能力ア
  ル間ハ皆ソレ〓〓自活ノ道ヲ立テテ行クト
  云フ方法ヲ執ラシメテ、最後ニ相當年齡ニ
  達シマシタナラバ之ニ國民年金ト申シマス
  カ、或ハ養老年金ト言ヒマスカ、サウ云フ
  ヤウナ年金ヲ與ヘル制度ニ改メテハドウカ
  ト考ヘマシテ、七十議會ニモ之ヲ述べテ置
  イタノデアリマスガ、サウ云フヤウナ根本
  的ナ改正ヲ行フト云フコトニ付テ何カ御考
  ガアリマスカ、今御考ガナクテモ私ガ申上
  ゲマシタヤウナコトニ對シマスル只今ノ御
  心持、サウ云フモノモ伺ッテ置キタイノデ
  アリマス
  ソレカラ先程ノ御答辯ニアリマシタ高額
  所得者ニ對シテハ恩給ヲ一時停止スルコト
  ハ今モ行ハレテ居ルトノ御話デアリマシタ
  ガ、高額所得者或ハ富裕ナ生活ヲシテ居ル
  者或ハ又年ノ若イ者、サウ云フ者ニ對シ
  マシテ恩給ヲ一時停止スルト云フヤウナ方
  法モ考ヘラレルノデハナイカト思ヒマスノ
  デ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=119

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• 120・船田中

  ○船田政府委員　塚本君ノ前段ノ御質問ハ
  先般本議場ニ於テモ申上ゲマシタヤウニ、
  恩給法自體ノ問題ト致シマシテハ目下ノ所サ
  ウ云フ考ヲ持ッテ居ラナイノデアリマス、卽
  チ官吏軍人等ニ對スル恩給制度ヲ俄ニ根本
  的ノ改廢ヲスルト云フコトニ付テハ考ヘテ
  居リマセヌ、併シ恩給ガ經常費トシテ年々
  多額ニ上ッテ居リマシテ、今日ニ於テハ制度
  自體ノ問題トシテモ亦國家ノ財政ノ問題ト
  シテモ相當考究スベキ點ニハ達シテ居ルノ
  デアリマス、併シ同ジ官吏ノ中ニ於キマシ
  テモ警察官吏ト其他ノ文官ト分ケテ考ヘナ
  ケレバナリマセヌシ、又軍人ト一般文官ト
  ハ分ケテ考ヘナケレバナラヌ、若シ將來根
  本的ノ問題ヲ考ヘルト致シマシテモ、軍人
  及ビ警察官ト云フモノニ付キマシテハ是
  ハ俄ニ恩給ヲ廢メテシマフト云フヤウナコ
  トハ迚モ出來ナイト思ヒマス、ソレカラ
  一般文官ニ付テハ然ラバドウスルカト云フ
  問題、是ハ退職保險ト云フヤウナ問題ニ付
  テ考ヘテ見ル途ハアルト思ヒマス、目下考
  ヘテ居ルノデハアリマセヌケレドモ、是 、
  官吏ト同ジヤウニ國家ノ爲ニ或ハ地方ノ公
  共ノ仕事ヲヤッテ居リマスル市町村吏員ノ
  恩給ニ關スル問題、是ナドモ隨分氣ノ毒ナ
  狀況ニアリマス、隨テ官及及ビ官吏ト同ジ
  ヤウナ立場ニアリマスル者ニ付テハ一般的
  ニ退職保險ト云フヤウナモノモ考ヘテ見ル
  必要ガアルノデハナイカト思ヒマス、ソレ
  カラ養老年金ト云フヤウナ問題ハ、是ハ一
  般的ノ社會保險ノ一ツノ制度トシテ勞働者
  或ハ中小商工業者、農民ト云フヤウナ者ニ
  付テ全般的ニ社會保險ノ制度トシテ考ヘテ
  見ル必要ハアルト思ヒマスガ、ソレ等ノ點
  ハ今後主トシテ厚生省ニ於テハ〓究シテ行
  ク問題ダト考ヘマス、若シ茲ニ保險官營ト
  云フヤウナコトデモ將來行ハレルコトニナ
  レバ、斯ウ云フ退職保險トカ或ハ社會保險、
  健康保險ト云フヤウナモノガ割合ニ簡便ニ
  爲シ得ル途ハアルト思ヒマス、〓究題目ト
  シテハ非常ニ貴重ナ題目ダト考ヘテ居リマ
  スガ、恩給制度ト相關聯シテ今日政府ハ其
  點マデハ考ヘテ居リマセヌソレカラ高額恩
  給受給者ニ付テノ問題ハ、是ハ先程恩給局
  長ガ申述ベマシタヤウニ、現行恩給法第五
  十八條ノ規定中ニアルノデアリマス、併シ
  此問題モ主トシテ本人ノ自發ニ俟ツベキモ
  ノガ多イノヂヤナイカト思フノデアリマス、
  ソレカラモウ一ツハ今度ノ議會ヲ通ジマシ
  テ所謂官僚獨善排擊ト云フヤウナ聲ガ非常
  ニ强イノデアリマシテ、色々ノ點ニソレガ
  現レテ來テ居リマス、從來ノ例ニ依リマス
  ト、官吏トシテ相當ナ地位ニ上ッテ居ッタ者
  ガ民間ノ特殊會社ニ入リ、而モ相當多額ノ
  恩給ヲ受ケナガラ、又一面ニ於テ其會社カ
  ラ多額ノ報酬ヲ受ケルト云フヤウナコトガ
  アリマスルノデ、ソレガ大分各方面ノ注目
  ヲ惹イテ居ルノデアリマス、此問題ハ官吏
  制度全般ノ改善問題ト同時ニ考ヘテ行クベ
  キモノデハナイカト思ヒマシテ、現ニ政府
  ニ於キマシテハ文官制度全般ニ付テ目下具
  體案立案中デアリマス、サウ云フ點モ併セ
  テ考究ヲ致シテ居リマス

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• 121・塚本重藏

  ○塚本委員　陸軍政務次官ノ方デ早ク質問
  シテ吳レト云フ要求ガアリマスノデ、直グ
  其方ニ移リタイト思ヒマスガ、今官吏トシ
  テノ法制局長官カラノ御話ヲ伺ヒマシタガ、
  此點ニ對シテ軍部ノ意見ハドウデアリマセ
  ウカ、今ノヤウナ軍人ヲ特別ニ取扱フ恩給
  法ヲ嚴トシテ置イテ置カナケレバイケナイ
  ト云フ御考デアリマスカ、相當ナ根本的ナ
  改革ヲ考ヘル必要ガアルト御考ニナリマス
  カ、更ニ又私ガ今申シマシタヤウナ、假
  或ハ退職賜金ト申シマスカ、功勞賜金トカ
  云フモノヲ一方ニ與ヘテ、サウシテ或ル一
  定ノ年齡ニ達シテカラ年金ヲ與ヘルト云フ
  ヤウナ制度-勿論是ハ遺族ノ年金ニ付テ
  ハ別デアリマス、ソレハ別ニ與ヘナケレバ
  ナラヌト思ヒマスガ、サウデナイ男子ニシ
  テ壯健ナ者ニ對シマシテハ、サウ云フヤウ
  ナ改正ヲ行フト云フコトニナリマスルト、
  軍ノ方デハソレヲドウ御考ニナリマスカ、
  軍人ノ心理上ニドウ云フ影響ヲ齎スト御考
  ニナリマスカ、一般ノ國民ニドウ云フ影響
  ヲ與ヘマスカ、御感想ヲ承リタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=121

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• 122・加藤久米四郎

  ○加藤政府委員　一般官吏制度ニ關シテハ、
  只今法制局長官ガ申述ベラレタ通リノ方針
  デアラウト存ジマス、軍ノ方ト致シマシテ
  ハ、制度ニ關シマシテハ、申ス迄モゴザイ
  マセヌガ、一般統帥ニ關スル問題デゴザイ
  マスルノデ、此處デ私ガ身分上ノ變更若ク
  ハ其待遇ナドニ付テ申述ベル自由ヲ有シナ
  イノデアリマス、軍人ハ上元帥ヨリ下兵ニ
  至ル迄、日本ノ特殊ノ建軍ノ本旨ガゴザイ
  マシテ、忠君愛國ノ念ヲ根幹ト致シマシテ、
  死ヲ賭シテ國難ニ殉ズルト云フ此立前カラ
  出テ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカ
  ラ、軍ハ軍トシテ取扱ッテ居リマス、身分ノ
  アル軍人ハヤハリ特殊ニ考ヘナケレバナラ
  ヌ軍ハト思ヒマス、是ハ官吏制度ニ關シテ
  ノ問題デアリマス、併シ只今一般恩給ノ問
  題ニ付テノ御質問デゴザイマシタガ、是ハ
  政府ニ於テ今後恩給制度ノ一般的〓究ヲセ
  ラレルコトガアリマスル場合ニハ、是ハ〓
  究事項トシテ取扱ハルベキモノト存ジマス
  ルガ、軍ト致シマシテハ、更ニ特別ニ其待
  遇若クハ此改正ノ意圖ヲ只今持ッテ居リマ
  セヌ

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• 123・塚本重藏

  ○塚本委員　次ニ御伺シタイノハ、現行恩
  給法ノ適用ヲ受ケテ居リマセヌ所ノ軍屬ノ
  待遇ニ關スル問題デアリマスガ、之ニ付キ
  マシテ、特別ニ何カ恩給法ノ適用ヲ受ケナ
  イ軍屬ニ對シマシテ、殊ニ今度ノ支那事變
  ニ關シマシテ、之ニ從事シテ居リマス所ノ
  軍屬ニ對シマスル待遇ノ優遇ノ方法ヲ何カ
  御考ニナッテ居リマスカ、御伺シテ置キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=123

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• 124・加藤久米四郎

  ○加藤政府委員　塚本君ノ御質問ハ軍屬デ
  戰死ヲシタ人ト云フ意味デゴザイマスル
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=124

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• 125・塚本重藏

  ○塚本委員　其他戰死シナイ者デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=125

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• 126・加藤久米四郎

  ○加藤政府委員　其他戰死シナイ者モゴザ
  イマスルガ、軍屬ハ所謂陸軍文官トシテノ
  規定ノ下ニ恩給年限ニ達スレバソレ〓〓恩
  給ヲ支給サレテ居リマス、又戰死ヲシタ場
  合ニ於ケル取扱ハ、軍屬トシテノ一時賜金
  ノ詮議モアルノデアリマス、同時ニ靖國神
  社合祀ノ儀ヲ仰セ出サレルコトモアルト存
  ジマス-間違ヒマシタ、今ノ軍屬ガ文官
  タル資格ノアル軍屬ト、ソレデナイ軍屬ト、
  二ツノ意味デゴザイマシタラ、文官タル資
  格ノアル軍屬ハ恩給ガ支給ニナリマスガ、
  サウデナイ者ハ、例ヘバ是ハ例ヲ以テ申上
  ゲルノデアリマスルガ、從軍ヲ致シマシタ
  ル新聞記者デアルトカ、サウ云フ人ガアリ
  マスルナラバ、ソレバ戰死ヲ致シマス場合
  ニハ軍屬トシテ取扱ヲ致シマス

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• 127・塚本重藏

  ○塚本委員　今ノ御話ニ關聯シマシテ、軍
  屬ハ軍屬トシテ取扱ヲ受ケルノデアリマス
  ガ、軍屬ニアラザル者ニ付テモ考ヘテヤル
  必要ガアルノデナイカト思ヒマス、例ヘバ陸
  軍ニ於キマシテモ海軍ニ於キマシテモ、澤
  山ナ運送船ナンカヲ公用船トシテ軍ノ方デ
  指名セラレマシテ、ソレ〓〓ノ任務ニ就カ
  シメラレテ居ルノデアリマスガ、之ニ從事
  シテ居ル者ガ偶〓戰ノ場合ニ死ニマシタ場
  合ニハ、詰リ戰死ヲシマシタ場合ニハ軍屬
  トシテノ取扱ヲ受ケルノデアリマス、戰死
  ヲシナイ者ハ軍屬ノ取扱ヲ受ケナイデ居ル
  ノデアリマスガ、是等ニ付テモ何カ特殊ニ
  今度御考ニナッタコトガアリマスカ、ソレハ
  唯船ノ場合デ申シマスト、或ル船會社トノ
  雇傭契約ニ依ッテ働イテ居ルンダ、ソレハ軍
  ノ方デ待遇上ノコトニ付テ何等考慮スル餘
  地ナシ、斯ウ御考ニナッテ居ルノデアリマス
  カ、何トカ是等ノコトニ付テモ考ヘテヤラ
  ナケレバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマス
  カ、御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=127

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• 128・加藤久米四郎

  ○加藤政府委員　只今ノ御質問ノ軍屬ト云
  フノハ、サウ云フ場合ノハ軍夫ト申シテ居
  リマス、傭船ノ場合ニ於ケル汽船會社ト其
  乘組員トノ雇傭契約ト云フ御話ガアリマシ
  タガ、ソレハ其通リデアリマス、併シ今徵
  用サレル場合ガアリマスガ、ソレハサウ云
  フ場合ニ於キマシテハ、戰死ヲ致シマスル
  ト大抵軍屬ノ取扱ヲ受ケテ居リマス、戰死
  ヲシナイ場合ハ物質的ニ特ニ日給ヲ加算致
  シマスルトカ、一時ニ多クノ手當ヲ與ヘマ
  ストカ、サウ云フ便宜ノ方法ヲ執リマスガ、
  ドレダケノ定額ノモノヲ與ヘルト云フコト
  ハ只今申上ゲル迄ニナッテ居リマセヌ、現地
  ニ於キマシテ戰死ヲ致シマシタヤウナ軍夫
  ハ、ヤハリ軍屬トシテ野戰部隊ニ於テ取扱ッ
  テ居リマス、併シサウデナイ人モ假ニアリ
  得マシタラ、多額ノ日當ヲ一時ニ與ヘマス
  トカ、サウ云フ物質上ノ優遇ハ與ヘテ居ル
  ノデアリマス、戰死デアリマスレバ勿論靖
  國神社合祀ヲ仰出サレルコトモアラウト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=128

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• 129・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ其次ニ御伺シタイノハ、
  從軍記章ト云フモノハドノ範圍ニ御渡シニ
  ナッテ居ルノカ知レマセヌガ、出來ルコトナ
  ラ、此從軍記章ハモウ少シ廣イ範圍ニ御渡
  シ願ヘレバ結構ダト思フノデアリマス、例
  ヘバ今ノ公用船ニ致シマシテモ、水夫長、
  火夫長ナドニハ從軍記章ガ渡ルヤウデアリ
  マスガ、其他ノ一般船員ハ、同ジ船ニ乘ッテ
  居リナガラ、其頭デアル水夫長、火夫長ニ
  ハ渡ルケレドモ、ソレ以外ニハ渡ラヌ、或
  ハ是ハドウカ知レマセヌガ、私共日獨戰爭
  ノ場合ニ舞鶴ノ海軍工廠ニ居リマシテ相當
  多額ノ金ヲ後デ戴イタ譯デアリマスガ、此
  場合ニ於テモ或ル上級ノ人々ハ何カ從軍記
  章ノヤウナモノヲ貰ッタトカ云フ話モ聞イ
  テ居リマス、或ハ陸軍工廠等ニ於テモサウ
  ダラウト考ヘマス、之ヲ何處マデ廣クスル
  カト云フコトハ問題デアリマスケレドモ、
  今ノ船ノヤウナモノナラ、本當ニ同ジ船ノ
  中ニアッテ一緒ニ同ジヤウニ働イタ者ガ、水
  夫長、火夫長ダカラ從軍記章ガ貰ヘル、サ
  ウデナイソレ以下ノ者ハ貰ヘナカッタト云
  フコトデハドウカト考ヘマス、モウ少シ此
  從軍記章ヲ渡ス範圍ヲ廣メテ戴キタイト思
  ヒマスガ、御所見ハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=129

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• 130・加藤久米四郎

  ○加藤政府委員　塚本サンノ御話ニナリマ
  シタ日露戰爭當時ノ範圍ト滿洲事變以來ノ
  範圍トデハ、大變廣ガッテ居リマシテ、今ハ
  成ベク多ク賜ハルコトニ詮議相成ッテ居リ
  マス、ソレハ御承知ノ通リニ其人ノ身分ト
  其人ノ戰爭又ハ事變ニ付テ働イタ種類ニモ
  依ルノデアリマスルカラ、抽象的ニ申上ゲ
  ラレマセヌケレドモ、是ハヤハリ從軍記章
  トシテ賜ルノデアリマスカラ、陸海軍當局
  者ガソレ〓〓調査ノ上御裁可ヲ得ルコトニ
  ナッテ居リマスノデ、今其範圍ヲ豫メ明確ニ
  申上ゲラレマセヌケレドモ、成ベク多ク、
  濫賞ニ流レズ、而モ之ニ漏レナイヤウニ致
  シタイト云フ氣持ヲ持ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=130

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• 131・塚本重藏

  ○塚本委員　私ノ質問ハ大體此程度デ終リ
  マスガ、出來ルダケ簡單ニ質問致シマシテ、
  答辯ヲ簡單ニ要領ヲ得テ御願シタイト云フ
  コトヲ最初ニ申上ゲマシタガ、懇切丁寧ナ
  ル答辯ヲ得マシテ、感謝ニ堪ヘマセヌ、私
  ハ質問ヲ終ルニ當リマシテ、自ラ體驗シタ
  コトガアリマスノデ、申上ゲマシテ今後ノ
  參考ニ資シテ戴キタイト思ヒマス、ソレハ
  現行法第二十四條ノ中ノ各項症別ニ色々ト
  障碍ノ程度ガ列擧シテアリマスガ、若シ兩
  眼ガ全ク失明シテシマッタト云フヤウナ場
  合デアリマスナラバ、是ハ特別項症ニナル
  ト思ヒマスガ、如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=131

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• 132・高木三郎

  ○高木政府委員　其點ハ昨日江藤委員ニ御
  答致シタノト同一ヂヤナイカト考ヘルノデ
  アリマスガ、實ハ恩給法ノ施行令第二十四
  條ノ第一項症制定當時ニ於キマシテハ、專
  門家ノ意見ト致シマシテ、「兩眼ノ視力ガ視
  標〇·一ヲ〇·五メートル以上ニテハ辨別シ
  得サルモノ」ト云フノハ、全盲ニ當ルト云
  フ積リデ斯ウ云フ規定ヲ制定致シタノデア
  リマス、所ガ其後ニ於キマシテ、明暗ノ識
  別ヲシ得ル程度ノモノトサウデナイモノト
  ヲヤハリ區別シタ方ガ相當ヂヤナイカト云
  フ議論モ大分アリマシタノデ、此點ニ付キ
  マシテハ何レ等差例ヲ變更致サナケレバナ
  リマセヌノデ、其際ニ十分〓究ヲ致シタイ
  ト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=132

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• 133・塚本重藏

  ○塚本委員　私ハ此第一項症ノ「視標〇·
  ヲ〇·五メートル以上ニテハ辨別シ得サル
  モノ」ト云フノト、全ク見エナイ者トハ非常
  ナ差ガアルト思ヒマスノデ、全ク失明シテ
  居ル者ハ特別項症ニ當ルンダト解シテ居ッ
  タノデス、所ガソレモ第一項症ダト云フコ
  トデアリマスガ、私ノ此處デ申上ゲテ置キ
  タイト思フノハ、耳ト眼トヲ比較致シマシ
  テ、耳ノ方ガ眼ヨリモ輕ク取扱ハレテ居ル
  ト云フ點デアリマス、是ハ私共マダ嚴格ニ
  申上ゲルコトハ出來マセヌガ、圖ラズモ不
  幸ニ致シマシテ、私ガ此七十三議會ノ召集
  ヲ受ケテ東京ニ參リマシタ翌日、感冒ヲ冒
  シテ上京シマシタコトガ原因トナリマシテ、
  急性中耳炎ヲ患ヒマシテ、兩耳トモ日本醫
  大デ切開シマシテ、入院シテ、最近漸ク退
  院シテ出テ來タノデアリマスガ、其時ハ私
  全ク兩耳トモ何ヲモ聽クコトノ出來ナイ、
  全クノ金聾ニナッテシマッタ、漸ク今年ノ一
  月ノ十日頃カラ耳許ニ口ヲ當テテ大聲ヲ發
  シテ貰ヘバソレガ微ニ聽エル程度ニナリマ
  シタ、約二週間程ト云フモノハ全ク金聾デ
  アッタノデアリマシテ、私自身トシマシテハ
  得難イ經驗ヲシタト思フノデスガ、非常ナ
  苦痛デアッタコトハ言フ迄モアリマセヌ、ソ
  レカラ色々ナ話ヲ各方面デ聞イテ居リマス
  ルト、全ク眼ガ見エナイノト全ク耳ガ聽エ
  ナイノトハドチラガ苦痛ナノカト云フコト
  ニ付テ色々ト多クノ人々ノ話ヲ聞イテ居リ
  マシタ所ガ、ソレハ眼ガ見エナイヨリモ耳
  ガ聽エナイ方ガ苦痛ナンデアルト云フコト
  ヲ聽カサレタノデアリマス、大阪ニ於キマ
  スル盲聾啞學校デ、ソレ等ノ不幸ナル人々
  ノ〓育ニ專念シテ居リマス人カラモ、サウ
  云フ話ガアッタサウデアリマスガ、全ク眼ノ
  見エナイ者ト全ク耳ノ聽エナイ同一人ニ就
  テ、ドチラヲ早ク治シテ欲シイト考ヘルカ、
  斯ウ質問スレバ、早ク耳ヲ治シテ貰ヒタイ、
  耳ガ聽エルヤウニナリタイト思フ、眼ハ見エ
  ナクッテモ「ラヂオ」ヲ聽キ、或ハ色々ノ音樂
  其他ノ話ヲ聽クコトガ出來レバ非常ニ幸デア
  ル、併シ眼ガ見エテモ、モノヲ聽クコトノ
  出來ナイ程苦痛ナコトハナイ、早ク何トカ
  シテ先ヅ最初ニ聽エルヤウニナリタイト云
  フコトヲ要求スルサウデアリマス、眼ヨリ
  ハ耳ノ方ガ人生ニ取ッテハ辛イト云フコト
  ヲ言ッタト云フコトヲ私ハ聽カサレタノデ
  ス、私ハ前ニ聖女「ヘレン·ケラー」ガ日本へ來
  マシタ時ニモ、大阪デ面會シマシタガ、其
  時ニモ、サウ云フコトヲ私經驗シヨウトハ
  思ッテ居リマセヌデシタカラ、深ク話シマセ
  ヌデシタケレドモ、兎ニ角耳ノ聽エナイト
  云フコトガ非常ナ苦痛デアルト云フ實感ヲ
  聽イタコトガゴザイマス、是ハ斯ウ云フコ
  トヲ經驗シタ者ハ殆ド無イノデアリマスル
  カラ、私共モ初メハヤハリ眼ノ見エナイト
  云フコトガ耳ノ聽エナイコトヨリモ苦痛ダ
  ラウト考ヘテ居ッタノデスガ、自ラサウ云フ
  コトヲ體驗シテ、耳ノ全ク聽エナイ苦痛ト
  云フモノヲ味ハッテ參リマシタ、ソレカラ各
  方面ノ意向ヲ聞イテ居リマスト、ソレハ眼
  ガ見エナイヨリモ耳ノ聽エナイ方ガ苦痛ナ
  ンダト云フコトヲ聽カサレテ居ルノデアリ
  マスカラ、此點ハ今後ノ參考ニ資シタイト
  思ヒマシテ、私ノ體驗ヲ御話申上ゲタ次第
  デアリマス、長ラクノ時間ヲ拜借シマシテ
  洵ニ相濟ミマセヌデシタ、是デ私ノ質問ヲ
  終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=133

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• 134・前田房之助

  ○前田委員長　小笠原君ヨリ塚本君ノ質問
  ニ關聯シテ質問シタイトノ申出ガアリマス、
  此際之ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=134

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• 135・小笠原八十美

  ○小笠原委員　先輩諸彥ノ詳シイ御質疑ガ
  アリマスノデ、私ハモウ質問ヲ止メヨウト
  思ッテ居リマシタガ、唯最後ニ於キマシテ、
  前ニ各位ヨリ御質疑ヲ爲サレタ點ノ中デ、
  マダ私ニ分リ兼ネテ居ル點ヲ簡單ニ一ツ御
  尋致シタイト思フノデアリマス
  ソレハ此恩給金庫デ、六大都市ノ者ハ如
  何ニモ幸福デアルト云フヤウナコトガハッキ
  リ分ッタノデアリマスガ、町村關係ノ者ハ書
  信デモ金融ノ途ハ足リルンダト云フ局長サ
  シノ御答辯ガアッタノガ一ツ、一方ニハ信用
  組合ニ對シテ一部代行セシメルト云フヤウ
  ナ御話モアッタノデアリマスガ、其點ガマダ
  私ニハハッキリセヌノデアリマシテ、是ハ町
  村ニ取リマシテハ重大ナ問題デアリマス、
  町村ノ兵隊モ澤山出テ居リマスシ、受給者
  モ相當ニアルノデアリマシテ、是等ノ金融
  ト云フモノハ非常ニ重要ナ關係ガアリマス
  ノデ、特ニ此點ヲ具體的ニ能ク御說明ヲ願
  ヒタイノデアリマスガ、地方ノ町村ノ信用
  組合ト云フモノハ、御承知ノ通リ町村デハ
  大抵信用組合ノ組合長ナンカハ町村長又ハ
  町村ノ行政機關ト關係アル人ガ之ニ當ッテ居
  テレル、單ナル金融ノ相互機關トハ多少趣
  ヲ異ニシテ居ルヤウナ事情ニナッテ居リマス
  ノデ、是ハモウ政府ノ方デ御認ノコトト思
  フノデアリマス、尙ホ信用組合ハ單ニ積極
  的ノ金融ヲ爲ス機關トハ限ラレテ居ナイノ
  デアリマシテ、卽チ生計資金ヲ貸出スノガ
  其使命ノ一ツトナッテ居ル、斯ウ云フ點ハ政
  府ノ方デモハッキリ御認メニナッテ居ラレル
  ダラウト思フノデアリマスガ、此點ヲ先ヅ
  一ツ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=135

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• 136・高木三郎

  ○高木政府委員　農村ノ問題ニ付キマシテ、
  多少私ノ申上ゲタコトガ不十分デアッタカト
  考ヘルノデアリマスケレドモ、今囘ノ金庫
  ハ農村ヲ全然無視シテ居ルト云フ考デハナ
  イノデアリマシテ、出來得ル限リ廣ク取扱
  機關ヲ擴充スルコトガ必要ダト云フ意味ニ
  考ヘテ居ルノデアリマス、唯既設ノ金融機
  關ト云ヒマスカ、一般市井ノモノヲ考ヘマ
  スト、取扱ニ於テハ農村ヨリモ都會地ニ集
  中シテ居ルモノガ多イト云フコトヲ申上ゲ
  タニ過ギナイノデアリマス、ソコデ地方ニ
  ドウ云フ取扱機關ヲ以テヤラシメルカト云
  フコトニ付キマシテハ、尙ホ〓究ノ餘地ガ
  十分アルト考ヘテ居リマス、產業組合等ガ
  或ル程度ニ行ッテ居ルコトモ私共承知致シテ
  居リマスシ、又ソレ等ノ機關ヲ絕對ニ利用
  シナイト云フ積リデモナイノデアリマス、
  出來得ル限リ斯ウ云フ旣設ノ機關ヲ或ル程
  度ニ利用シテ行キタイ、併シソレヲ金庫ノ
  代行機關ト云フコトニシテ總テヲ委シテシ
  マフト云フ意味デハナクシテ、金庫ノ代理
  店取扱機關トシテソレ等ノ機關ヲ利用シ
  テ行キタイ、ソレニ依ッテ地方ニ於ケル恩給
  擔保金融ノ需要ニ應ゼシメタイト云フ風ニ
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=136

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• 137・小笠原八十美

  ○小笠原委員　ドウモ色々委員會ガ澤山ア
  ルノデアリマスケレドモ、此恩給ノ委員會
  ノ答辯程漠然トシテ、吾々ハ田舍ノオ土產
  ニドウ申シテ宜イカ分ラヌ、廣ク金融ノ途
  ヲ擴充スルト云フコトハ結構ナコトデアリ
  マス、サレバトテ其信用組合ニドウスルカ
  ト云フコトハ將來十分〓究スルト云フ程度
  デハ、之ヲ審議スルノニドウ云フ風ニ審議
  シテ來タト言ハレタ場合ニ、地方ノ方ノ金
  融ハ斯ウ云フ風ニナッタト云フコトヲ吾々ガ
  言フコトガ出來ヌ、議會デ議決シタ後デア
  ナタ方ガ決定シタコトヲ待ッテ居ルノデハ、
  吾々ハ田舍ノ方へ行ッテ聽カレテモ答辯ニ困
  ル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、サ
  ウナルト議會ト云フモノハ大雜把ナモノヲ
  決メテ、アトハ政府ニ一任シテシマッテ、サ
  ウシテ決定シテシマフコトニナルノデアリ
  マス、此點ヲ吾々ハ困ッテ居ルノデアリマス
  私ハ今齒ヲ治療シテ居リ、東北ノズー〓〓
  辯デ、分ラヌ所ハ重ネテ聽イテ戴キタイ、
  尙ホ都會地ニ金融利用者ガ多イ、斯ウ云フ
  コトヲ申サレマスガ、是ハ都會ハ人口モ多
  イシ、需要者モ多イノデアリマスカラ、ソ
  レハソレニ相違ナイノデアリマスガ、從來
  金融ヲ受ケテ居ル農村、漁村等ノ者ハ、金
  融機關ガナイ爲ニ、態々仙臺ナリ或ハ東京
  ナリト云フヤウニ、東北ノ方デモ大都市ノ
  方ニ其金融ヲ求メル爲ニ多額ノ費用ヲ掛ケ
  テヤル、或ハ地方ノ「ブローカー」ノ手ニ依ッ
  テ是等ヲ〓サレルノデアリマス、或ハ又金
  ヲ借リル關係デ、東京ノ方ガ便利ダト云フ
  ノデ、東京ニ寄留シテ東京ノ者ニナッテ利用
  スル者ガ多イト云フ譯デアリマス、都市ノ
  方ガ益〓利用者ガ多イト云フコトヲ言ッテ居ル
  ノデアリマスガ、サウ云フコトヲ詳シクア
  ナタモ御調ベニナッテ居ルコトト思フ、都會
  地ト云フコトニノミ金融機關ノ利用ニ對シ
  テ重キヲ置イテ居ルノデアルカ、サウ云フ
  コトヲ御調ベニナッテ居ルノデアルカドウ
  カ、ソコヲ一ツ御答ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=137

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• 138・高木三郎

  ○高木政府委員　地方デ信用組合ノ貸付ケ
  テ居リマス額ハ大體分ッテ居リマス、其額ハ
  約五百万圓程デアリマシテ、信用組合以外
  ノ個人的ニ貸シテ居リマス額ト云フモノハ、
  ソレダケハ調査致シタコトハゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=138

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• 139・小笠原八十美

  ○小笠原委員　此恩給金融ニ對スル高利貸
  ノ弊害ヲ避ケル爲ニ、非營利ニシテ此種
  金融ニ比較的理解ノアル機關ノ設立ヲ希望
  シ、ソレヲ設立セシメタ信用組合ガ出來テ
  居ルト云フコトハ、アナタ方ハ御認メニナッ
  テ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=139

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• 140・高木三郎

  ○高木政府委員　認メテ居リマス、サウ云
  フ風ナ專門ノ信用組合ガアルコトモ私共ハ
  聽イテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=140

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• 141・小笠原八十美

  ○小笠原委員　サウスルトヤハリ恩給擔保
  ト云フコトハ、大藏省デモ農林省デモサウ
  云フ機關ヲ認メテ認可シテ居ルノデアリマ
  スルカラ、之ヲ擔保ニ受ケルコトハ脫法行
  爲ダト云ッテモ、政府デ今迄認メテ來タト云
  フコトハ明カデアリマス
  尙ホ都市トカ町村ニ於テ金融ヲ受ケル需
  要者ヲ調ベテ見マスルト、其多クノ者ハ非
  常ニ忙シイ金ノ利用バカリ致シテ居ルヤウ
  デアリマス、借金ニ攻メラレテドウニモ出
  來ナクナッタトカ、或ハ病氣、火災ト云フヤ
  ウナコトデ金融ニ非常ニ攻メラレタ場合ニ
  多ク之ヲ利用シテ居ルノデアリマス、斯ウ
  云フ關係ニナッテ居ル幾多ノ例ガアリマス
  ノデ、町村關係ノ需要者ニ書信ヲ以テスル
  手續ニ依ッテ其要求ヲ滿足セシメルコトハ
  到底出來ナイヤウニ思ハレルノデアリマス、
  過般ドナタカノ御尋ニ對シテ書信デ足リル
  ト云フ意味ニ私ハ承ッタノデアリマスガ、今
  モ同樣ナ御考デアラレマスカ、尙ホ一ツ御
  伺ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=141

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• 142・高木三郎

  ○高木政府委員　只今信用組合等ニ於テ行
  ハレテ居リマスル貸付ニ付キマシテモ、ヤ
  ハリ相當ノ手續ト日子ヲ要シテ居ル、其點
  カラ考ヘマスト、書信ヲ以テ扱ヒマシテモ
  十分間ニ合フノデハナカラウカ、又今度ノ
  金庫ノ貸付ケマス出資ハ、是ハ本質カラ申
  シマシテ屢〓問題ニナッテ居ッタノデアリマス
  ガ、元來ハ年金ヲ擔保トシテ金ヲ貸スト云
  フコトハ望マシイコトデハナイト思ヒマス、
  積極的ニドン〓〓貸シテヤルト云フ性質ノ
  モノデナクシテ、已ムヲ得ザル場合ニ之ヲ
  貸スト云フ趣旨ナノデアリマスカラ、其點
  ハ御心配ニナル程ノコトハナイノデハナイ
  カト思ヒマス、十分出來ルダケ地方機關ノ
  擴充ハ圖リマスガ、尙ホ足ラザル所ハ通信
  等ノ方法ヲ以テ行ッテモ、ソレガ爲ニ著シク
  不便ヲ感ズルト云フコトハ恐ラクナカラウ
  ト考ヘテ居リマス、又現ニ地方等ニ於テ行
  ハレテ居リマスル擔保貸付ノ狀況ヲ見マシ
  テモ、例ヘバ生命保險ヲ附ケルトカ云フヤ
  ウナコトガ條件ニナッテ居リマスレバ、ヤハ
  リ生命保險ヲ附ケルニ付テノ相當ノ日子
  ガ掛ルダラウト考ヘラレマス、デアリマス
  カラ從來ニ比較致シマシテ、非常ニ遲レル
  ト云フコトモ私共ナイト考ヘマスシ、其點
  ハ運營ノ上ニ十分ノ注意ヲ致シタナラバ、
  御懸念ノヤウナコトハナイダラウト考ヘマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=142

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• 143・小笠原八十美

  ○小笠原委員　ソレハモウ議論ニナルカラ
  申上ゲマセヌケレドモ、ソレハ大變違フノデ、
  地方機關ニ相當ナ金融機關ヲ代行デナクテ
  モ何カニ依ッテ代ルモノヲ、相當ニ金ノ掛ラ
  ヌデモ出來ル範圍內ニ於テ便宜ヲ圖ルト云
  フコトデアレバ、是ハ別デアリマスケレド
  モ、唯通信機關ニ依ッテ日子ガ掛ラヌデ云々
  ト言ウテモ、百姓ヤ町村ノ受給者ノ中ニハ
  中々サウウマク書信デ便利ヲヨク金融ヲ
  スルト云フヤウニ氣ノ利イタ者ハサウ多ク
  ナイノデス、隨テ玆ニ「ブローカー」ガ入ッタ
  リ色々ナ事ヲシテ却テ非常ナ高利ニナルヤ
  ウナコトニ陷ルシ、又急場ヲ要スル時分ニ
  ハ、金ガ來ル間ニ相當高利ナモノヲ利用シ
  ナクチヤナラヌト云フコトニ迫ラレテ來ル
  コトハ火ヲ睹ルヨリ明カデアリマスカラ、
  是ハ餘程アナタ方ノ方デ考へ直サヌト、地
  方ニ對シテ此機關ヲ設ケルトカ擴充スルト
  カ云フコトヲ申サレマスガ、具體的ニドウ
  スルトカ、是カラ〓究デナク斯ウスルト云
  フコトヲ決メテ御示下サルト一番吾々ハ有
  難イ、ソレガナクテ地方ノ議員ハドノ議員
  デモ皆御困リダラウト思ッテ居ルノデアリ
  マス、一體政府ノ方ノ施設ハ、銃後關係ノ
  事業ニ於テハ、內務省デモ厚生省デモ都市
  ニ重點ガ置カレテアッテ、洵ニ其實ハ明ニナッ
  テ居リマスガ、出征軍人ノ町村出征ノ數ハ多
  イニモ拘ラズ閑却サレテ居ルノデアリマスガ、
  此恩給金庫ノ施設モ信用組合ヲ有機的ニ利
  用スル必要ハ當然アルト思フノデアリマスル
  ガ、此點ガモウ少シ具體的ニ、斯ウ云フ風ニ
  スル、ダカラ地方町村モ安心ガ出來ルノダ
  ト云フ程度ノコトヲ、明後日アタリ迄ニハッ
  キリサシテ戴クヤウニ御願シタイノデアリ
  マスガ、ソレハ到底後デナクテハ〓究出來
  ナイデセウカ、餘リ面倒ナコトデハナイノ
  デアリマス、例ヲ引イテ斯ウ〓〓云フ譯ダ、
  斯ウ例ヲ引イテモ宜イノデアリマスガ、ソ
  レ位ノ御答ハ出來ルト思ヒマスガ、如何デ
  ゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=143

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• 144・高木三郎

  ○高木政府委員　實ハマダ此法案ハ御審議
  ノ最中デアリマシテ、通過スルカシナイカ
  ト云フコトモマダ分リマセヌヤウナ狀態ノ
  時ニ於テ、其時分ニ是レノ〓ノ機關ヲ斯ウ云
  フヤウニ使フノダト云フヤウナ具體的ノコ
  トヲ申上ゲルト云フコトモ如何カト思フノ
  デアリマス、ソレデアリマスカラ、私共ノ考
  ヘテ居リマスノハ、假ニ成立致シマシテ實
  行スルト云フ時ニナッタナラバ、旣設ノ機關
  ヲ出來得ルダケ利用スル、其旣設ノ機關ハ
  如何ナル機關ヲ利用スルカト云フコトニナ
  リマスレバ、或ル場合ニ於テハ產業組合、
  信用組合等ヲ利用スルコトモアリマセウシ、
  或ル場合ニ於テハ町村役場等ヲ利用スルコ
  トモアルデアリマセウシ、或ル場合ニ於テ
  ハ銀行、會社等ヲ利用スルヤウナ場合モア
  リ得ルト考ヘルノデゴザイマシテ、ソレハ
  各地方々々ノ事情ニ依ッテ違フコトデアリ
  マシテ、劃一的ニ如何ナル機關ヲシテ取扱
  ハシメルカト云フコトヲ只今御答スルコト
  ハ困難ダト思ヒマス、ソレカラモウ一ツハ、
  是モマダ具體的ニ申上ゲルコトハ出來ナイ
  ノデアリマスガ、私共モ實ハ心配致シテ居
  リマスコトハ、地方農村等ニ於テ恩給金庫
  ヲ利用スル場合ニ、寡婦トカ幼年者等ニ
  於テハ、手續等ニ中々十分慣熟致シマセヌコ
  トモアルダラウト考ヘマスノデ、其點ハ先
  程塚本サンノ御質問ノ中ニモアリマシタヤ
  ウニ、在〓軍人會等ノ機關ガ或ル程度ノ活
  動ヲシテ戴ケレバ大變相互ノ爲ニ仕合セダ
  ト考ヘテ居リマス、若シソレ等ノ機關ガ或
  ル程度ニ活動ヲシテ戴クコトニナリマスレ
  バ、只今御話ニナリマシタヤウナ御心配ハ
  無クナルト考ヘマス、其點ハ先程モ申上ゲ
  マシタヤウニ、一應ソレ〓〓內交涉ハ致シ
  テ居リマスケレドモ、只今ノ程度ニ於テハ
  斯ク〓〓ノ機關ヲ斯クノ〓ニ利用スルノダ
  ト云フコトヲ明瞭ニ御答スル程度ニ立至ッ
  テ居ラナイノデゴザイマスカラ、其邊デ御
  諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=144

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• 145・小笠原八十美

  ○小笠原委員　私ハ何モ明瞭ニ斯々斯ウ云
  フコトニスルト云フコトノ具體的ノ御答辯
  ヲ御願シテ居ルノデハアリマセヌガ、サウ
  致シマスルト、只今ノ御話ニ依ッテ兎ニ角
  地方ニハ銀行ナリ信用組合ヲ利用シテ、此
  地方的ノ受給者モ恩給金庫ノ容易ク利用出
  來ルヤウナ方法ニハ努メテナサルト、其女
  トダケハサウ承ッテ宜イデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=145

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• 146・高木三郎

  ○高木政府委員　御話ノ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=146

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• 147・小笠原八十美

  ○小笠原委員　ソレカラ此信用組合ハ、度
  度ドナタカノ御質問デ御答ガアッタヤウデ
  アリマスケレドモ、相當ノ多額ノ恩給金融
  ヲ行ッテ居ルノデアリマス、其金額モ五百五
  十万圓カ幾ラカノ金額ニナッテ居ルト云フ
  コトヲ伺ッテ居ルノデアリマスガ、是ハ先
  刻ドナタカニ御答ヘニナッタヤウニ、軍人後
  援會ノ金融關係ト同樣ニ金庫ノ設立ト同時
  ニ肩替リヲナサルト云フコトニナリマスノ
  デスガ、是モ餘程地方的ニハ心配シテ居ル
  ノデ、若シ是ガ再交付サレテ囘收不能ニ終
  ルヤウナコトニナリマスト、立タナイ信用
  組合ガ全國ニ多數出來テ來ル、倒レテシマ
  フノガ多數出來テ來ルト斯ウ云フ重大ナ關
  係ガアリマスカラ、其點ニ付テハ肩替リヲ
  スルト云フコトガハッキリシテ居ルト云フ
  コトニ伺ッテ宜シイデスカ、尙ホ肩替リナ
  サルト云フコトニナリマスレバ、其金利關
  係モ現在行ッテ居ル金利其他ニ依ッテ其儘肩
  替リガ出來ルカドウカト云フコトヲ伺ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=147

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• 148・高木三郎

  ○高木政府委員　其點ニ付キマシテハ、私
  ノ考ト致シマシテハ軍人後援會トカ產業組
  合等ニ限ラズ、一體政府ノ方針トシテ借倒
  シヲ奬勵スルト云フヤウナコトハ毛頭考ヘ
  テ居ナイノデアリマシテ、出來得レバ圓滿ニ
  解決セシムルコトニ努力スルト云フコトガ
  私共當然ダト考ヘテ居リマス、ソレデアリ
  マスカラシテ肩替リト申シマスト言葉ノ上
  カラ良イカ惡イカ分リマセヌガ、少クモ兩
  方ノ話合ガ付キマスレバ、金庫ニ從來ノ債
  權ヲ移轉セシムルト云フヤウナコトニ、出
  來ル限リ盡力サセルヤウニ努メサセタイト
  考ヘテ居リマス、其條件等ニ付キマシテハ、
  是ハ各個ノ組合ニ依ッテ違フヤウデゴザイ
  マスカラ、先程ノ參考資料デ御覽ヲ願ヒマ
  シタ通リニ、或ル產業組合ニ於テハ六分以
  下デ貸付ヲシテ居ルト云フ所モアリマスシ、
  又一割以上デ貸付ヲシテ居ルト云フ所モア
  リマスノデ、其儘ノ條件デ引繼ヲスルカド
  ウカト云フコトハ一寸今申上ゲ兼ネルノデ
  ゴザイマスガ、其邊ハ之ヲ實行シテ行キマ
  ス上ニ付テ尙ホ十分打合セタイト考ヘテ居
  リマス、其點ハ旣ニ產業組合中央會幹部ノ
  方トモ御會ヒ致シマシテ御話ヲシテアルノ
  デゴザイマス、或ル程度ノ諒解ハサレテ居
  ルコトト私ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=148

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• 149・小笠原八十美

  ○小笠原委員　サウ致シマスルト、只今ノ
  ヤウニ債權債務兩方ニ於テ妥協ガ出來サヘ
  スレバト斯ウ云フコトデアリマスガ、ソレ
  ハ軍人後援會ニ限ラズ、信用組合ニ限ラズ、
  一般金融業者モ同一ノヤウニ只今御答ニナッ
  タノデアリマスガ、併シソレハ表面ノ立前
  トシテハサウ云フ御答辯ニナルカ知レナイ
  ケレドモ、中々民間ハサウハ參リマセヌ、
  惡質トカナントカ云フ言葉ヲ民間ニ浴セテ
  居ルノデゴザイマスガ、再交付ノ御取扱ナ
  ドモサウ云フ所ニ出來テ居ルノデアリマス
  ガ、私ノ今御尋シテ居ルノハ、兎ニ角民間
  ハ惡質デアラウガアルマイガソレハ切放シ
  テ、信用組合ニ止メテ今伺ッテ居ルノデアリ
  マスケレドモ、信用組合ノ方ハ信用組合
  ノ理事者ト政府ノ方ト折衝シテ、今御答ニ
  ナッタヤウナ程度デ、先以テ信用組合ノ方ダ
  ケハ金利ハ多少違フノヲ統一シテ、元金ニ
  損ヲ掛ケナイデ、幾分高利ニナッタダケノ利
  子ヲ負擔セシメテ、ソレヲ肩替ノ程度ニス
  ルト云フコトニ納得セシメルト云フノデア
  リマスカ、或ハソコハ半分ニ負ケナケレバ
  返サヌトカ、再交付ヲ求メルノダト債務者
  ノ方ガ主張スレバ、相手ノ方モヤハリ半分
  ニデモ折衝シナケレバナラヌトカ、ソレデ
  ハ再交付スルトカシナイトカ、サウ云フ場
  合ハドウナルノデセウカ、ソレハアナタ方
  ノ匙加減デ折衝ニナルノデ、ドウシテモア
  ナタ方ハ再交付シナイト云フコトニナレバ、
  ソレハ信用組合ハ營利デ取扱ッテ居ルモノデ
  ナイカラ、其方ハ宜イカラ妥協スル、決シ
  テ再交付シナイト云フヤウナ堅イ決心ヲ以
  テ折衝シテ戴ケバ、債務者ノ方モ肩替ノ方
  ハ損ヲ掛ケナイデ濟ムダラウケレドモ、併
  シ妥協ガ付カナケレバ再交付ヲスルト云フ
  コトデアレバ、ヤハリ債權者ガ損ヲスルト
  カ何トカ云フコトニナルノデスガ、是ハ軍
  人後援會トカ信用組合トカニ對シテハ、サ
  ウ云フコトハナイノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=149

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• 150・高木三郎

  ○高木政府委員　具體的ノ問題ニ付テ一寸
  御答致シ兼ネルノデアリマスガ、少クトモ
  私共ノ考ヘテ居リマスノハ、雙方トモ妥當
  ナ條件デ解決ヲスルト云フコトヲ希望スル
  ノデアリマシテ、其一方ガ著シク不當ナ要
  求ヲスルト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、
  適當ナ方法ヲ考ヘナケレバナラヌト思ヒマ
  スケレドモ、元來ガ金ヲ借リタ貸シタト云
  フ關係ハ、當事者間ノ自由意思ニ依ッテ居ル
  譯デアリマスカラ、出來ル限リ兩者ノ間ガ
  圓滿ニ纏マリサヘスレバ宜イノデアリマシ
  テ、其條件ハ斯ク〓〓ニシナケレバイカヌ
  ト云フヤウナコトヲ、恩給係リ其他ノ政府
  當局ガ立入ル必要ハナイノヂヤナイカ、兩
  者ノ間ヲ斡旋シマシテ、妥當ナル妥協ガ付
  イタ分ニ付テハ、金庫モ之ヲ肩替シテ行ク
  ト云フコトニ、或ル程度ノ斡旋ヲスルト云
  フコトニ御考ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=150

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• 151・小笠原八十美

  ○小笠原委員　只今ノ政府ノ御考ハ民間ニ
  對シテモ同樣ナコトハ勿論デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=151

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• 152・高木三郎

  ○高木政府委員　私ハ民間ニ對シテモ大體
  同樣デ宜カラウト思フノデゴザイマス、惡
  辣ナ高利貸ダトカ何トカ云フヤウナコトヲ
  申シマシテモ、ソレハ過去ノ問題デアリマ
  シテ、之ヲ惡辣ダカラ踏倒シテヤルガ宜イ
  ノダト云フヤウナコトヲ考ヘテハ居ラナイ
  ノデアリマス、從來惡辣デアッテモ反省シ
  テ、又受給者ノ方デモ非常ニ惡質ナ奴ガアッ
  タガ、ソレガ反省シテ、双方ノ間ニ話ガ纒
  マッテ、借替ヲシテ吳レト云フヤウナコトガ
  成立チマスレバ、十分斡旋スルコトガ、金
  庫トシテノ仕事ノ上カラ當然ノコトダト考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=152

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• 153・小笠原八十美

  ○小笠原委員　只今ノ御答ハ洵ニ立派デ、
  私モ其通リデアルモノダト考ヘテ居リマス、
  然ルニ是マデ再交付シタ事情ヲ能ク業者ア
  タリカラ今日モ聽イテ見マスト、又先刻局
  長サンガドナタカノ質問ニ對シテ御答ニナ
  リマシタガ、債權者ノ方ハ少シモ調ベズニ
  債務者ノコトノミ調ベテ、ソレデ再交付ヲ決
  定スル、斯ウ云フコトニナリマスト、是ハ果シ
  テ債權者ガ圓滿ナ解決ダト認メルデアリマ
  セウカ、相當ニ債務者ダッテ嘘ヲツクノモア
  レバ、質ノ惡イノモアル、又アナタ方ガ債
  權、債務ト恩給トハ自ラ是ハ別ナモノデアル、
  又債務者ガ金ヲ借リテ居テ、恩給證書ヲ更
  ニ再交付サレテモ、自分デ返スノダ、斯ウ
  言ッテ居リマスト、アナタ方ハ債務返濟ノ時
  ニ決シテ踏倒スコトハナイト御言ヒニナリ
  マスガ、ソレハ奇怪千萬ナコトダト考ヘテ
  居ル、ナゼナラ恩給證書ヲ再交付シタラ最
  後、妥協シテ半分ニ負ケルカラ吳レト言ツ
  テモ、イヤ、私ハ生活ニ追ハレテ居ルカラ
  ト言ッテ相手ニナラヌ、アナタノ論ハ議論ト
  シテハ立ツカモ知レマセヌガ、實際ノ問題
  トシテハ行ハレマセヌ、摩擦ハ何時マデモ
  續ク、斯ウ云フコトニナルノデアリマスガ、
  アナタ方ハ理論バカリ仰シヤラズニ、實際
  問題モ一ツ〓究シテ、民間ノ方ノ再交付ニ
  對シ能ク兩方ノ意見ヲ聽イテ見テ、妥協セ
  シメルヤウニ斡旋スルト云フノガ本當ノ斡
  旋デハナイカト思フ、今迄ハ惡質デアッテ
  モ、ソレガ正シクナレバ過去ノコトニ對シ
  テハ追究シナイト云フコトハ立派デアルケレ
  ドモ、是マデ執ラレタ所置ハサウデハナイ、
  是ハ少シ懲ラシメテヤラナケレバ委員會デ
  ウルサイト云フコトヲ考ヘテ懲ラシメニヤッ
  タコトカモ知レヌガ、今度アノ調子デヤラ
  レテハタマラナイヤウニ考ヘルノデアリマ
  ス
  モウ一ツ伺ヒタイノハ法制局長官ノ御說明
  ニ受給者タルノ體面ヲ保タシメ云々ト云フ
  コトガアル、體面ヲ保タシメルト云フコト
  ニ對シテ、若シモ債權ト擔保ガ別ダトシテ、
  切離シテシマッテ、アナタ方ガ再交付シテ
  ヤッタト假定シマス、サウスルト債務者ノ方
  デ相當名譽アル人ガ澤山破產者ニナリマス、
  其場合ニ其責任ハ誰ガ負ヒマスカ、今マデ
  ニ四百三十件モ再交付シテ居ルガ、アレハ
  更ニ返ス氣ガナイ、サウスルト四百三十人
  ハ破產ニナッテシマウ、其破產者ガ、半數以
  上三分ノ二ニ至ッテモ、アナタ方ハ體面ガ
  維持出來ルト思ヒマスカ、實際問題トシテ、
  サウ云フ場合ノアナタ方ノ體面ト云フコト
  ニ對スル御認識ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=153

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• 154・高木三郎

  ○高木政府委員　法制局長官ノ說明サレマ
  シタ體面ヲ維持スルト云フコトハ、受給者
  ガ品性ヲ維持スルト云フ意味ダト私共ハ解
  釋シテ居リマス、現在ノヤウナ狀態デハ受
  給者ガ體面ヲ維持スルトカ、品性ヲ維持ス
  ルコトガ出來ナイノデアルカラシテ、恩給
  金庫ヲ作ッテ財政的壓迫ヲ免レシメテ、體面
  ヲ維持サセヨウト云フコトヲ考ヘテ居リマ
  ス、トコロガ現在ノ狀態ニ於テハマダ金庫
  ガ出來テ居ラナイカラ、品性ノ保持出來ナ
  イ者モ現ニ幾ラモアル、私共ガ實際ニ扱ッテ
  居ル間ニ於キマシテモ、甚ダ歎カハシイ次
  第デアリマシテ、私ハ軍隊〓育ヲ受ケタノ
  デアリマスガ、軍隊ニ於テハ聯隊長トカ旅
  團長ハ實ニ神樣ノヤウニ考ヘラレテ居ル、
  其聯隊長トカ旅〓長トカ云フヤウナ人ガ、
  一朝野ニ下ッテ、惡イコトカドウカ知ラヌ
  ガ、高利貸カラ金ヲ借リテ、其爲ニ品性ヲ
  傷ケルヤウナ行爲ヲヤルヤウニナル、是ハ
  實ニ受給者ノ側カラ考ヘテ實ニ歎カハシイ
  コトデアリマスカラ、將來サウ云フコトノ
  ナイヤウニト云フ意味デ、此金庫ヲ成立セシ
  メタイト云フノデアリマスカラ、將來ハサ
  ウ云フモノガナクナルデアラウト云フコト
  ヲ言ッテ居ルノデアリマス、現在ニ於ケル狀
  態カラ考ヘマスレバ、御承知ノ通リ甚ダ面
  白カラザル現狀ニアルト考ヘテ居ルノデア
  リマス、隨テ一日モ早ク此金庫制度ヲ確立
  シマシテ、サウ云フヤウナ紛爭ナリ、或ハ嫌
  ナ心苦シイ結果ヲ來サナイヤウニ致シタイ
  ト云フコトガ私共ノ念願デアリマス

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• 155・小笠原八十美

  ○小笠原委員　御說御尤モデアリマスガ、
  アナタ方ハ高イ所カラ御覽ニナッテ、民間ニ
  下ッタ少將ガ立派ダトカ神樣ノヤウダトカ
  言ヒマスケレドモ、金ニハ神モ佛モアリマ
  セヌ、金ガ無クナッテシマヘバ品位ハ下ッテ
  シマヒマス、サウシテ其金融ヲ受ケテ居ル
  連中ニ對シテ體面ヲ保タシメルト言ウテ、
  借金ハ借金、擔保ハ擔保デ引離シテハ債權
  者ガ默ッテ居ラヌ、之ニ對シテ破產セシム
  ル、破產者トナッテ體面ガ維持出來マスカ、ソ
  コハアナタ方此金庫ノ運用ニ依ッテハ重大ナ
  缺陷ガ玆ニ生ズルト思フ、今マデノ再交付
  シタモノハ此短イ間ニ於テモ旣ニ勅令ト云
  フモノニ對シテハ殆ド誰モ踏倒シノ實情ニ
  アルト思フ、ソレヲ再交付サレテ、幾ラカ
  デモ入金サレタ者ガ一人デモアリマスカ、
  債權者ノ方ハ少シモ御調ベニナラズニオヤ
  リニナルト云フコトハ、ソレハ破產スルナ
  ラスルデドウデモ宜イト言ッテ尻ヲ捲ッタ話
  デアル、斯ウ云フコトニセシムルノハ如何
  ニモ遺憾ガアル、今後是ガドウナルカト云
  フコトニ對シマシテハ、アナタ方餘程民間
  ノ業者デモ信用組合デモ又軍人後援會デモ
  能ク諒解ヲ求メレバ求メタデ宜イケレドモ、
  今申上ゲマシタ通リニ惡質ダト言ッテ、惡質
  ハ年一割五分デ貸シテ居ルカラ惡質ダト言
  フガ、借リル方ハ承諾ヅクデ借リタモノヲ
  惡質ト見ルノハドウカ、一割手數料ヲ取
  ル、併シ是デモ質屋ヨリハ安イ、サウ云フ
  モノヲ惡質ト云フノデ直ニ再交付シテブツ
  倒シ主義デヤルト云フノハ重大デアリマ
  ス、勿論千五百圓借リテ八百圓モ取ッタヤ
  ウナ、サウ云フノハ惡辣デアル、ソレニ制
  裁ヲ加ヘルノハ宜イガ、普通アナタ方ガ認
  メテ一割五分利子ヲ取ッタ、一割ノ手數料ヲ
  取ッタ、ソレガ惡質ダト言ハレルヤウデアリ
  マス、惡質ト云フ程度ハアナタ方ハ其程度
  ノコトモ惡質ト御覽ニナルノデアリマス
  カ、其邊ノ御見解ニ付テ御伺シタイ

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• 156・高木三郎

  ○高木政府委員　ドウ云フ程度ノコトヲ惡
  質ト言フカト云フコトハ一寸御答致シ兼ネ
  マスガ、私ハ必ズシモ高利ヲ貪ッタナドト
  云フノデ直ニ惡質ダトハ言ヘナイト思フ
  ノデアリマス、其點ハ寧ロ利息ノ問題ヨリ
  モ何ヨリモ非常ニ惡イ手段ヲ講ジマシテ受
  給者ヲ苦シメルト云ッタヤウナ性質ノモノ
  ノ方ガ寧ロ惡質ヂヤナイカト云フヤウニ考
  ヘテ居ルノデアリマス、例ヘバ自分ハ債權
  ヲ獲得シマシテ、ソレヲ轉々サセテシマッ
  テ、證書ガ何處へ行ッタカ分ラヌト云フヤ
  ウナ狀態ニシテ居ルト云フコトニナリマス
  レバ、最初ノ利子ガ幾ラ安クタッテ惡質ト云
  フコトニナルト思フノデアリマス、ソレデ
  スカラ惡質ノ定義ヲ何處ヘ置クカ、一割ダ
  カラ惡質ダトカ、二割ダカラ惡質ダトカ云
  フコトハ一寸御答致シ兼ネルト思フノデア
  リマス、デアリマスケレドモ私共ノ考ヘテ
  居リマスノニハ、只今マデノ再度證書ノ交
  付ト云フコトハ或ル程度ニ於テ債權者側ニ
  モ反省ヲセシムルダケノ效果ハアッタラウ
  ト思ヒマス、今後ニ於テ金庫ガ出來レバ斯
  樣ナ紛爭ト云フモノガ無クナル譯デアリマ
  シテ、自然再度證書ノ交付ト云フヤウナ問
  題ガ消滅スルヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ
  居リマス、唯非常ナ所謂惡質ノモノガアッ
  テ、ドウシテモ雙方ノ間ノ妥協ガ纏マラナ
  イト云フヤウナ場合ニ於テ、初メテ發動サ
  レテ居ルノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ居リ
  リマス、隨テ只今ノ所デハドシ〓〓再度證
  書ヲ發行シテ踏倒シヲ奬勵スル、高利貸ニ
  對スル報復手段トシテヤッテ居ルノダト云
  フヤウナ考ハ、私共實ハ持合ハシテ居ラヌ
  ノデアリマス

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• 157・小笠原八十美

  ○小笠原委員　サウ云フ御心持ノ御持合セ
  ノアラレナイコトハ當然デアリマスガ、サ
  ウスルト、是マデ再交付サレタノハ餘程惡質
  ナモノト見テ再交付ナサレタノデアリマス
  カ

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• 158・高木三郎

  ○高木政府委員　只今マデノモノニ付キマ
  シテハ大體先程樋貝政府委員ガ御說明ニナ
  リマシタヤウニ、廣義ノ忘失ト云フヤウニ
  考ヘマシテ發行致シテ居ッタヤウデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=158

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• 159・小笠原八十美

  ○小笠原委員　惡質ト見ナクテモ、忘失ト
  考ヘテ今後モ再交付ヲ續ケル譯デアリマス
  カ--サウスルトヤハリ踏倒シ主義ニナル
  ノデハナイカト考ヘラレマスガ、其點ニ付
  キマシテ金融業者ノ話ニ依レバ、再交付シ
  タモノヲ一々持ッテ參リマシテ、ドウ云フコ
  トガ惡質デアルカ御說明申上ゲタイ、政府
  ノ方デハ吾々カラ聽カナイカラ誤解シテ居
  ル點モアルデセウ、如何ニモ甲カラ千圓借
  リテ居テ、モウ百圓欲シイ、サウスルト乙カ
  ラ千百圓借リテ千圓ヲ甲ニ戾スカラ唯百圓
  シカ受取ッテ居ナイ、サウ云フ所ニ誤解ガ澤
  山アルト思フ、ソレ等ヲ總テ惡質ト見ラレ
  ル、吾々ハ能ク辯解シタノダガ聽カレナイカ
  ラ、能ク議員諸君ニ說明シタイト申サレテ
  居ッタノデアリマスガ、唯アナタ方ノ權限デサ
  ウ認メタ者ハ再交付スルノダト言ヘバ、再
  交付ト云フモノハ恐ロシイモノダト云フコ
  トニ伺ッテ置クヨリ仕方ガナイ、マア政府ヲ
  信用シテ置ケト言ハレルナラ、ドンナニモ
  御信用申上ゲマスガ、併ナガラ本當ニ民間
  ニ對シテ摩擦ヲ生ズルト云フコトハ重大ナ
  ル關係ガアルト思ヒマスカラ、能ク質スベ
  キハ質シ、アナタ方モ說明スル所ハ說明シ
  テ諒解ヲ盡スベキ必要ガアルト思フ、唯其
  點デ樋貝政府委員ガ言ハレタヤウニ、理窟
  ハ餘程巧イ、巧イケレドモ、實際ハソレデ
  ハ問題ニナリマセヌ、サウデナクテモアナ
  タ方事務官ノ方々ニ對シテハエライ彈壓主
  義ダ、ブッ倒シ主義ダト云フノデ非常ナ怨ミ
  ヲ有ッテ居ル、現ニアナタ方ガオヤリニナッ
  テ居ルコトニ對シテモ、一方ヲ調ベナイト
  云フコトハ私共トシテモ承服出來ナイ所ガ
  アル、サウ云フコトデヤラレルト、如何ニ
  高利貸ダッテ可哀サウダ、之ヲ殺スニハ又殺
  ス途ガアル、サウ云フコトデハナカ〓〓圓
  滿ニ行ク途ハナイト思ヒマスガ、其點ニ付
  キマシテハ尙ホ明日ハ協議會モアル、又政
  府ノ方カラモ斯ウ云フ堅イ場合デナク、協
  議會ノ場合ニ能クアナタ方ノ意ノアル所ヲ
  伺ッテ、其方面デモ宜イカラ纏ッタ何トカ安
  心ノ出來ルヤウナ方法ニ一ツ御相談ヲ願ッ
  テ、サウシテ是ハ圓滿ニ纏ル方法ヲ取リタ
  イ、斯ウ思フノデアリマスカラ、私ハ是デ
  打切ッテ置キマス

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• 160・坂東幸太郎

  ○坂東委員　議事進行デアリマスガ、此點
  ニ關シテ私ノ質問ハマダ殘ッテ居リ、答辯モ
  マダ滿足ヲ得テ居ラヌノデスガ、明日ハ開
  會ニナリマスカ

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• 161・前田房之助

  ○前田委員長　明日ハ開會致シマス

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• 162・坂東幸太郎

  ○坂東委員　サウスレバ其時此點ニ關シテ
  私ハ御伺致シマス

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• 163・前田房之助

  ○前田委員長　是ニテ通〓ニ依リマス委員
  諸君ノ質疑ヲ終了致シタノデアリマス、隨
  テ明日一部留保ノ分竝ニ簡單ナル質疑ヲ許
  シテ、サウシテ質疑ヲ打切リタイト思ヒマ
  ス、御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=163

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• 164・前田房之助

  ○前田委員長　御異議ナシト認メマス、本
  日ハ是ニテ散會致シマス、明日ハ午前十時
  半ヨリ開會致シマス
  午後五時十分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007310156X00919380302&spkNum=164

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