1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
國民健康保險法案(政府提出)
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會議
昭和十三年二月十五日(火曜日)午後一時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 添田敬一郎君
理事 喜多壯一郎君 理事 青木亮貫君
理事 小笠原八十美君 理事 北勝太郎君
理事 佐竹晴記君
高田耘平君 清水留三郎君
寺島權藏君 中崎俊秀君
松田喜三郎君 木原七郎君
山田順策君 成島勇君
野方次郎君 高見之通君
樋口善右衞門君 森榮藏君
西川貞一君 岩元榮次郎君
本田義成君 松尾孝之君
土倉宗明君 塩川正藏君
小野廉君 安倍寛君
守屋榮夫君 河合義一君
田中耕君 田中養達君
出席政府委員左の如し
厚生政務次官 工藤鐵男君
厚生參與官 山本芳治君
保險院長官 進藤誠一君
保險院總務局長 佐藤基君
保險院社會保險局長 清水玄君
本日の會議に上りたる議案左の如し
國民健康保險法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=0
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001・添田敬一郎
○添田委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、昨
日質問ノ打切ヲ致シマシタガ、本日ハ直チ
ニ討論ニ入リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=1
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002・喜多壯一郎
○喜多委員 國民健康保險法案ニ付テ、立
憲民政黨ヲ代表シテ私ハ次ノヤウナ附帶條
件ヲ付シ、政府提出ノ原案ニ贊成スル者デ
アリマス、卽チ
第一ハ政府ハ將來補助金ヲ增額シ國民
健康保險組合普及ノ促進ヲ圖ルベシ
第二ハ國民健康保險法ヲ施行スルニ當
リ醫療內容ノ低下ヲ來サシメザルヤウ特
ニ留意スベシ
第三ハ政府ハ第二十四條ノ規定ニ依ル
規約ニ付キ規約例ヲ制定シ、其中ニ國民健
康保險組合ハ診療以外ノ藥品及ビ賣藥ノ
給付ヲ爲スコトヲ得ザル旨ヲ規定シ、且
ツ其規定ヲ缺クモノハ之ヲ認可セザルコ
トト爲スベシ
以上三箇條ノ附帶決議ヲ付シテ、政府提
出ノ原案ニ贊成スル理由ヲ以下申述ベマス
一國ノ榮枯盛衰ガ、國民其モノノ健康狀
態ニ依ッテ支配サレルコトハ說明ノ必要モ
ナイ、國民ノ健康ソレ自體ガ國家ノ原動力
タルコト亦說明ノ限リデナイ、國家ノ產業
ノ發達モ、國ノ富、國ノ財力ノ增進モ、又
ハ國防力ノ充實擴大ト云フコトモ、結局ハ
國民ノ健康其事ニ依ッテ決定付ケラレルコ
トハ明白ナル事實デアル、隨テ國家ガ國民
ノヨリ良キ健康ノ維持增進ノ爲ニ、國策ヲ
確立スルコトハ、或ル意味デ廣義國防對策
ノ土臺石デアルト信ズル、然ルニ今日マデ
ノ我國ヘ、其過去半世紀以上ニ亙ッテ、有ユル
方面デ飛躍的發展ヲ見セテ來タニモ拘ラズ、
國家活動力ノ源泉トモ云フベキ國民健康ノ維
持增進ノ對策ニ付テハ、著シク消極的デアッ
タノミカ、寧ロ退嬰的デアッタト云フコト
ハ、蔽フベカラザル國家的怠慢デアリ、又政
策的缺陷其モノデアッタト言ハナケレバナ
ラナイ、今日我國ガ支那事變ニ直面シテ、
特ニ長期抗戰體制下ノ大難局ヲ切拔ケテ行
ク爲ニハ、精神上ト肉體上ノ兩方面デ不撓
不屈、鐵ノヤウナ頑健ナ生活力ヲ持ツ日本
國民ヲ、一人デモ餘計增加サセルコトガ刻
下ノ急務中ノ急務デアルノミナラズ、長期
抗戰要素中ノ最大要素ヲ强化スルコトデア
ルト斷定シテ差支ナイト思フ、國民健康保
險法案ハ、日本ノ從來ノ物的資源ヲ求メル
ニ急デアッテ、人的資源ヲ輕ンジタト云フ惡
風弊害ヲ是正セントスル、大キナ目的ヘノ
一步前進デアルト同時ニ、又今日ノ時局對
策ノ根幹デアルト認識スレバコソ、吾々ハ
無修正デ政府提出ノ原案ニ贊成スル、國家
的立場カラ見テ斯樣ニ重大ナル意義ヲ持ツ
國民健康保險法案ハ、更ニ個人ノ立場カラ
之ヲ觀察シテモ、ソコニハ國家的意義ニ劣
ラナイ重要ナ使命ガ含マレテ居ルコトヲ發
見スル、サウシテ國民ノヨリ良キ健康狀態
ノ維持增進ト云フ事實ハ、國家的ニモ、又
民族的ニモ重大事デアルト共ニ、國民ノ一
人一人、卽チ個人々々ニ取ッテモ、其個人々々
ノ幸福ト生活安定ト云フコトヲ決定スル
コトデアルカラ、是ハ決シテ等閑ニ附スル
譯ニハ行カナイ、サウシテ國民ノヨリ良キ
健康ノ維持增進ト云フコトハ、如何ナル方
法手段ヲ講ジテモ積極化サレナケレバナラ
ナイ、國民ノ一人々々ガ健康體デ、其生活
能力ヲ完全ニ發揮シテ居ルカ否カノ問題ハ
個人ノ幸不幸ヲ決定スルノミナラズ、國家
ノ幸不幸ヲ決定スルコトデアルカラ、國家
ハ國家其ノモノノ爲ニモ、亦病メル者、傷
ケル者ニ對シテモ萬難ヲ排シテ醫療診療ノ
受ケラレルヤウニシテ置イテ、健全ナル精神
ハ健全ナル肉體ニ宿ルト云フ諺ノヤウニ、國
民ヲ指導シテ行ク責任ガアル、此事實ニ對シ
テハ、今日ノ進ンダ國家生活ノ下デハ、國民
ハ國家ニ對シテ當然之ヲ與ヘヨト要求ス
ル權利ガアルト思フ、併シ個人ノ病氣負
傷トソレニ對シテノ醫療診療、或ハ醫療診
療上ノ給付ト云フコトニ付テハ、個人自ラノ
責任ニ依ッテ又解決シナケレバナラナイコト
デアルカラ、結局國民ノヨリ良キ健康維持
增進ノ對策ト云フコトハ、一面デハ國家
ノ力ヲ與ヘル必要ガアルト同時ニ、他面デ
ハ個人ガソレニ協力スベキ本質ヲ持タネバ
ナラヌト思フ、ダカラ國民ノ健康ハ國民生
活ノ基礎デアリ、個人生活ノ土臺石デアル
ト云フコトカラ言ッテモ、之ヲ在來ノ醫ハ
仁術ナリトカ、或ハ醫者ハ金儲ケヲシナク
テモ宜イノダト云フ風ナ、極ク狹イ慈善的
ナ風ニ委セテ置クト云フコトハ許シ難イ、
サリトテ今日ノヤウニ、日本ノ資本主義ガ
高度ノ發達ヲシテ來テ、總テガ營利本位ノ
經濟組織トナッテシマッテハ、金儲ケ主義、
搾取主義トナルコトハ必然ナノデアルカ
ラ、醫術モ、醫療モ、診療モ當然ソコニ落
込ンデ來ル、ケレドモ落込ンデ來ルカラト
云ッテ、國家ハ之ヲ放置シテ置クト云フコト
ハ、國家其モノモ無責任ダト言ハナケレバ
ナラヌ、ソコデ今日ノ時代ノ傾向ノ下デハ、
國家ト國民個人ガ相協力シテ行クト同時
ニ、又其國民ノ中ノ個人々々ガオ互ニ扶
ケ合ッテ、國民ノヨリ良キ健康狀態ノ爲ニ貧
シイ者、或ハ經濟的ニ困ッテ居ル者デモ思
切ッテ、安心シテ醫療診療ヲ受ケルコトガ出
來ル制度ガ作ラレテ來ナケレバナラナイ、
今日ノ日本ニ取ッテハ是ハ非常ニ必要デアッ
タガ、不幸ニシテ立遲レテ居タ感ガアル、
遲レ馳セデアルガ今囘國民健康保險法案ガ
現レテ來テ、其缺陷ヲ補ッテ行クト云フ風ニ
進ンデ行クコトニナッテ、吾々ハ本案ニ對シ
テ其成立ヲ衷心カラ希望シタノデアル
飜ッテ日本ノ在來ノ醫療間題ヲ檢討シテ
見ルト、ソコニハ深刻ナ社會問題ガ「サゼ
スト」サレテ居ル、暗示サレテ居ルト斷言
スルコトガ出來ル、病氣ニナッテモ金ガナイ
爲ニ安ンジテ醫療診療ヲ求メルコトガ出來
ナカッタト云フコトハ、農漁山村ト言ハズ、
都會ト言ハズ、勤勞階級ヤ中產階級ヲ通ジ
テノ社會的傾向トシテ、年々歲々强メラレ
テ來タ、此勤勞階級ヤ、中產階級ノ人々ガ醫
療的ニ、診療的ニ遠ザケラレテ居ルト云フコ
ト、或ハ見捨テラレテ居ルト云フコトノ原
因ヲ、單ニ醫者ガ儲ケ過ギルトカ、藥價ガ
高過ギルカラダトカ云フ風ニ、醫療診療ヲ
爲ス者ノ責任ダト、一〓ニ開業醫ナドニ負
ハセルヤウナコトハ、根本的ニ誤ダト言ハ
ナケレバナラナイ、資本主義社會組織ノ根
本ガ個人的營利ヲ基礎トシテ居ル以上、如
何ニ國家的ニ必要デアッテモ、又國民的ニ緊
要ナ事デアッテモ、又如何ニ個人生活ノ上カ
ラ言ッテモ、缺クコトガ出來ナイ事デアッテ
モ、金ガナイ、貧乏ダ、困ルカラト云フヤ
ウナ、經濟的壓力カラ無視サレテシマフト
云フコトモ、今日ノ國家生活ノ上カラ言ッテ、
等閑ニ附スル譯ニ行カナイ、又醫者ニシテ
モ、醫ハ仁術ナリトカ、博愛ダカラト云フ
ヤウナコトデ進ンデ行ク譯ニ行カナイ、自
ラ食ッテ行カナケレバ死ンデシマフシ、生活
能力ヲ失ッテシマフ、斯ウ云フ事ハ一言ニシ
テ言ヘバ、醫療診療ノ制度ガ、卽チ國民ノヨ
リ良キ健康維持增進ノ根本制度デアル開業
醫制度、或ハ診療行爲トカ、診療給付制度ト
カ云フヤウナモノガ、資本主義的營利本位
ノ舊弊カラマダ解放サレテ居ラナイト云フ
コトヲ證據立テヽ居ルノデアル
ソコデ日本ノ現今ノ醫療問題ハ、旣ニ個
人問題カラ一轉シテ、深刻ナ社會問題トナ
リ、又國家問題トナック、資本主義的社會組
織ノ根幹デアル個人的營利ヲ修正スルト言
フカ、或ハ國家ガ「コントロール」スルト云
フ所マデ進ンデ來ナケレバナラナイガ、其
以前ニ相互扶助的ナ社會生活ノ原理ガ、此
醫療制度ノ上ニ現實化サレテ來タト云フコ
トハ、國民健康保險法ニ付テ多分ニ發見ス
ルコトガ出來ル、日本ノ勤勞階級、中產階
級卽チ每日働イテ食ッテ行ク、働イテ生活
シテ行クト云フ階級ハ、ソレガ農漁山村
デアラウト、或ハ都市ニ住ム者デアラウ
ト何レヲ問ハナイ、病氣、疾病、負傷デ
モスルト、其窮乏ナ貧困ナ經濟生活ハ、
根コソギ破壞サレテシマフ、彼等ハ病氣ヲ
恐レル以上ニ、貧困ト窮乏ト云フコトヲ恐
レテ來ル、ダカラ今日ノ我國デハ貧困窮乏
ナルモノハ、ヨリ高イ罹病率ヲ示シテ居ル
シ、罹病率ノ高イノハ經濟的ニ多クノ貧
困、或ハ窮乏ノ中ニ追込マレテ來テ居ル、
此社會的缺陷、卽チ資本主義組織ノ受難者
トモ言フベキヤウナ此勤勞階級ト中產階
級ノ大衆ヲシテ、疾病、負傷ニ依ル貧困、窮
困ノ破產狀態カラ救フコトダケデモ、國家
ハモット手ヲ擴ゲ足ヲ伸バシテ、財政力ト、
設備ト、制度トヲ完備サシテ與ヘテ行カナ
ケレバナラナイ、併シソレニ伴フニ本法案
デハ、所謂相互救濟ノ精神ニ基イテ、言葉
ヲ換ヘテ言ヘバ保險的根據ニ依ッテ、一般國
民ノ醫療費ノ經濟的重壓ヲ除イテ、サウシ
テ診療ノ平易化、醫療ノ普及化ト云フヤウ
ナコトヲ、國家ノ力デ計畫シタ對策デアル
カラ、或ル意味デ時局ニ對應スル政策デア
ルト共ニ、又日本ノ國策ノ一ツデアルトモ
言フコトガ出來ル、同時ニ最近謳ハレテ居
ル事變ニ伴フヤウナ、一種ノ不安ナ社會生
活ノ幾分カデモ、卽チ病メル者、傷ケル者
ニ對シテダケデモ、或種ノ安全サト云フカ、
安定サヲ與ヘルト云フコトヲ期待スルコト
ガ出來ル、此意味デ吾々ハ政府原案ヲ無修
正デ通スコトニ贊成スル
併シ政府當局ニ對シテ一言シタイコトハ、
吾々ガ無修正デ贊成ハシテモ、本案ニ對シ
テハ打消シ難イ不滿、不足ハ十二分ニ持ッテ
居ル、卽チ吾々ハ法案ノ內容ニ對シテモ、
或ハ法案ヲ實施スルニ對シテノ財政的ナ根
據ニ對シテモ、全面的ニハ滿足ハシテ居ナ
イ、其滿足シテ居ナイ點ガ、實ハ附帶決議
ノ第一、第二、第三トナッテ來テ居ル、隨テ
此附帶決議ハ附帶決議デハアリマスガ、政
府ハ等閑視シ、或ハ之ヲ輕視スルト云フコ
トガアッテハ、吾々ハ斷乎トシテ重ネテ鬪ッ
テ行カナケレバナラナイ、トモスルト政府
ハ中々橫著ニナッテ來テ、附帶決議ナドト
云フコトヲ輕ンズル弊風ガ、益〓甚シクナッ
テ來ルカラ、此附帶決議ニ對シテダケハ、
一ツ新シイ省デアルダケニ褌ヲ緊メテ取掛
カル必要ガアルト云フコトヲ一言スル
本法案ガ國民生活ノ安定ヲ來サシムベキ
方面、卽チ社會問題化シツヽアル現在ノ醫療
費ノ重壓ヲ取除ク點ニ付テ、大體吾々ハ此法
案實施ニ付テノ豫算額ガ、餘ニ少額デアル
コトニ非常ナ不滿ヲ持ツ、是デ全國ニ普及
シテ行カウト云フ中々法螺ニ等シイヤウナ
橫著ナ答辯ヲシテ居ルガ、出來ルモノデナ
イト思フ、單ナル貧弱町村ニ對シテノミカ、
事ニ依ルト最モ先ニヤッテ行カナケレバナ
ラナイ無醫村ニ對シテダケデモ、近々ノ內
ニハ出來ヤセヌデハナイカト云フ不安ヲ持
ツ、是ト同時ニ又其出來タ組合ニ對スル補
助金ノ支出モ、當然少額トナルヤウナ金額
デアルカラ、此程度ノ豫算デ之ヲ行ッテ行ク
ト云フコトハ、折角ノ國策デハアルガ、金
ノ方面デ貧弱國策タルノ謗ハ免カレ難イト
思フ、殊ニ實ヲ言フト此法案ヲ實施スル爲
ニ、厚生省ナル一省ガ出來タト云フ風ニ吾々
ハ解釋スル、後ノモノハ附タリダラウト
思フ、此法案ノ實施ニ對シテ財政力ノ微弱
デアルト云フコトハ、厚生省ガ出來テモ、
出來ナカッタ內務省時代ノ提案時代デモ變
リガナイ、此點ハ厚生省ノ面目ト云フヨリ
モ、寧ロ一省ノ面目如何ヨリモ、國民健康
保險法ノ爲ニ、一ツ次年度ハ大イニ財政當
局ヲ鞭撻シ、理解セシメテ補給スル、擴大
充實スルト云フ風ナ態度ニ出テ行ッテ貰ヒ
タイト思フ、旣ニ此法案ハ第七十帝國議會
ニ提出サレテ、隨分其法案ノ不備不完全ナ
ル方面ヲ、四方八方カラ突カレタ、突カレ
ク御蔭デ厚生省案トシテ出テ來タ今度ノ案
ハ、相當ニ啓發サレタ點ガ見エルコトハ喜
バシイケレド、何トシテモ、完全ダトハ言ヘ
ナイ、同時ニ豫算ガ非常ニ少イト云フ點ニ
付テ、其不完全サガ暴露サレテ居ル、不完
全デアリ又未ダシト云フ感ジハスルケレ
ドモ、事實ハ一日モ速ニ行ハレテ來ルコトヲ
希望スル、死兒ノ齡ヲ數ヘルヤウデアルガ、
是ガ去年實施サレテ居ッタラ、定メシ今日ノ
時勢上勤勞階級ヤ、中產階級モ可ナリノ安
全サト云フカ、安定サヲ持ッタト思フニ付ケ
テモ、吾々ハ此次ノ年ニ一ツ力强イ豫算額
ヲ示サレンコトヲ希望スル
更ニ一言シタイコトハ、第七十議會デ論
議ノ中心ニナッタ所謂代行問題デアリマス
ガ、此點ハ今度ノ政府提出案ニ依ルト「營
利ヲ目的トセザル社團法人ニシテ其ノ社員
ノ爲ニ醫療ニ關スル施設ヲ爲スモノハ」ト
法文ニ於テ既ニ代行ノ限界ヲ明示サレタ、
卽チ以前ノヤウナ、七十議會ニ於テ爲サレ
タヤウナ摩擦相剋ハ減少シテ居ルト思フケ
¥〓、此點ニ付テハ未ダ相當ニ委員ハ各と
其立場々々ニ依ッテ意見モアリ、論議スベキ
事實モ旣ニ持ッテ居ル、持ッテ居ルノデス
ガ、昨十四日ノ委員會ノ席上デ、添田委員長
ハ本法案特別委員ノ懇談會ノ打合セニ基イ
テ、木戶厚生大臣トノ間ニ代表的質疑應答
ヲサレタ、其中ニ國民健康保險組合創設ニ
當ッテハ、事務所、事務員其他ノ經費ヲ節約
スル爲メ、產業組合、町村役場ノ設備ヲ利
用シ得ルコトニ付テ責任アル答辯ガ、木戶
厚生大臣カラナサレテ居ルカラ、吾々ハ政
府當局ノ誠意ヲ信ジテ、是レ以上ニ求メル
コトハセヌガ、是モ今日ノ時局ト本法案成立
トノ關係ニ於テ、吾々ガ或ル意味デ讓ッタト
モ言ヒ得ル位ニ考ヘテ宜イ點デアリマスガ、
要スルニ一日モ早ク實現サシタイト云フコ
トニ於テハ、同時ニ實現サシテ惡イ點ハ、
將來改善改造シテ行キタイト云フ立場カラ、
此點モ政府當局ハ十二分ニ認識サレテ行カ
レンコトヲ希望スル、斯樣ナコトデ、ヤハ
リ政府原案ニ贊成スルコトニシタイ
更ニ附帶決議ノ第二ノ事項デアルガ、是ハ
國民健康保險法ノ實施ニ當ッテハ、醫療內容
ノ低下ヲ來サザル樣政府ハ努力スベシト云フ
コトデアルガ、是ハモウ說明スル必要ガナイ、
當然過ギル程當然デアルガ、政府ガ怠ッテハ
イカヌカラト云フ、吾々ノヨリ以上ノ鞭撻
心ヲ政府ニ說明シタコトナノダ、此事ニ付
テモ、第四十六條ノ規定ハ、醫療機關ノ自
由選擇ヲ、廣イ範圍ニ於テ確保スル意思表
示デアルカト、昨十四日ノ委員會ニ於テ、
添田委員長ガ代表的質疑ノ中ニ加ヘラレテ
居ッタガ、ソレニ對シテモ木戶厚生大臣ハ、
同ジ解釋ノ態度ヲ執ッテ行クト謂ハレテ居
ルノデアルカラ、是レ以上吾々ガ要求スル
コトモ、亦說明スルコトモ蛇足デアルカラ
省略スル
附帶決議ノ第三項ハ賣藥業者ニ對スル問
題デアル、國民健康保險制度ハ、醫療ヲ普
及スルコトガ大眼目デアルガ、醫療ヲ普及
スルコトニ付テ必然的ニ出テ來ルコトハ、同
時ニ數百年來日本デ存在シテ居ッタ地方民
ニ對スル配置賣藥ト云フコトノ間ニ於ケル
一ツノ相剋摩擦ナノダ、配置賣藥業者ガ今
日マデ日本ノ發達シナイ不完全ナ幼稚ナ醫
療診療狀態ノ中ニ、非常ナ貢獻ヲシテ來タ
ト云フコトハ、是ハ認メナケレバナラナイ、
又此制度ガ出來ルコトニ依ッテ、是等ノ配置
賣藥業者ニ對シテ直接急激ナ變動、影響ヲ
與ヘルト云フコトモ、成ベク吾々ハ避ケテ
行キタイト云フ考ガアル、特ニ賣藥業者三
百万人ノ生活ニ脅威ヲ與ヘルト云フ風ナコ
トモ、是ハ政府トシテ當然考ヘナケレバナ
ラナイ責任ガアル、此點ニ付テハ吾々ハ第
七十帝國議會ニ於テモ、衆議院ハ内務省案
トシテ出サレタ「國民健康保險組合ハ診療以
外ノ藥品及賣藥ノ給付ヲ爲スコトヲ得ザル
旨第二十六條ノ規定ニ依ル規約ニ明示スベ
シ」ト附帶決議ヲ付シタ、今度ハ更ニ其趣旨
ヲ徹底セシメル爲ニ、第三項ノ附帶決議ヲ
付シタノデアリマスカラ、此點ハ醫藥分業
調査會ナドデ既ニ出來ルノダカラ、十二分
ニ政府ハ此附帶決議ヲ實行スルノ誠意ヲ持ッ
テ進ンデ行カレタイト希望スル、此他種々
ノ希望條項ガアリマスガ、〓ネ委員長ノ代
表質疑ノ中ニ含マレテ居リマスカラ省略ヲ
スル、唯醫療類似ノ諸診療行爲ノ取締ニ付
テハ、各府縣ニ於テ取締規定ガ制定サレテ
居ルカラ、十分ダラウト云フ風ナ態度ガ、
委員會ノ質疑デ政府カラ答ヘラレテ居ル
ガ、モット眞劍ニナッテ、眞ニ國民健康保險
維持ノ爲ニ、良イモノハ良イトシ、惡イモ
ノハ惡イトシテ、之ニ對スル自然淘汰ヲ待
ツノデナクシテ、權力的淘汰ニ依ッテ區分シ
テ行ク必要ガアルト云フコトヲ一言シテ置
キタイ、又國民健康保險制度ヲ制定スル政
府ノ意圖ガ、眞ニ國民生活ノ安定ト、國民
ノヨリ良キ健康ノ保持增進ヲ期セントスル
ノニアルノダカラ、本案ノ實施ニ付テハ
十二分ノ用意ト準備トヲ以テ努力セラレン
コトヲ切望スル、殊ニ此制度ハ事業ノ内容
カラシテ自然的ニ地方ニ分散サレル、同時
ニ地方ノ實情ニ委ネラレル點ガ多イノデア
ルカラ、其運用ニ付テハ十分指導監督ニ留
意サレタイト思フ、地方ノ實情ニ卽シテ本
制度ハ圓滿ナル經營ヲ見テ、所謂本法案制
定ノ所期ノ眞意ヲ達セラレンコトヲ吾々ハ
希望スル、新聞紙ノ傳フル所ニ依ルト、厚
生省デハ此法案ガ成立シテ實施スルニ當ッ
テ、或ハ地方廳ニ於ケル今日ノ行政機構卽
チ總務、經濟、學務、警察ノ四部門ノ外ニ、
或種ノ部門ヲ置カウカト云フ風ナコトモ傳ヘ
ラレテ居ルシ、或ハ昨日ノ委員ノ質疑ニ付
テ、大臣ハ其點ニ付テ、マダ何等ノ考ガナ
イト言ハレタヤウデモアルガ、作ラレテモ
作ラレナクテモ、要ハソレハ枝葉ノコトダ
ト思フ、要スルニ此法案ニ依ッテ實施サ
レル國民健康保險組合ノ運用ガ、今マデ
ノヤウナ役所仕事デアリ、官僚ノ御手柄
仕事デアルヤウデハ到底私共ハ旨ク行カナ
イト思フ、トモスルト官僚獨善呼バリナン
ト云フモノハ、中央ニ於ケル役人ノ獨善的
ナコトモ隨分眼ニ付クガ、同時ニ地方ニ於
テ直接地方民ト接觸スル官吏ノ心構ヘノ惡
イ點ガ、今日此聲ヲ大ニシタト思フ、御役
所ノ爲ニ作ル制度デハナクシテ、先程來申
上ゲタ通リ日本ノ爲ニ、日本ノ國民ノ爲ニ、
特ニ働イテ居ル勤勞階級、中產階級ノ爲ニ
作ルノデアルカラ、此部門ニ屬シテ働ク役
人達ハ、眞實國家ノ爲ニ、國民ノ爲ニ、大
衆ノ爲ニト云フ非官僚獨善的ナ、大衆的ナ、
全體本位ノ心構ヘデ行カナケレバ、旨ク行
キマセヌゾト一言シテ置キタイト思フ、第
一ニ其點ニ付テ私共眼ニ付クコトハ、折角
此法案ヲ中心ニシテ實施サレル時ノ仕事ト
シテノ厚生省ガ出來テ居リナガラ、今日兼
任大臣デアルナドト云フヤウナコトハ、近
衞内閣ノ一種ノ欺瞞ダト私ハ思フ、何モ私
ハ木戶厚生大臣恃ムニ足ラズ、御身體ガ小
サイカラト云フノデハナクシテ、大キイカ
ラト云ッテ期待ノ出來ヌ者モアリマスガ、ソ
ンナ意味デナクシテ、第一近衞內閣自身ガ、
一ツ此法案ニ依ッテノ國策ヲ行フノダト云フ
意味カラ、速ニ近衞內閣ハ專任大臣ヲ置ク
位ノ決斷力ヲ要スルト思フ、以上ノヤウナ
理由ヲ付シテ、私ハ立憲民政黨ヲ代表シテ、
政府提出原案ニ對シテ贊成スル所以デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=2
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003・添田敬一郎
○添田委員長 西川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=3
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004・西川貞一
○西川委員 私ハ立憲政友會ヲ代表致シマ
シテ、只今議題ニナッテ居リマスル國民健康
保險組合法案ニ贊成ノ意ヲ表シ、併セテ只
今喜多委員ヨリ提議サレマシタル附帶條件
ニ贊成スル者デアリマス、以下簡單ニ贊成
ノ理由ヲ述ベマス
國民ノ保健衞生ノ問題ガ極メテ重大デア
リマスルコトハ、何時ノ時代ニ於キマシテ
モ、何處ノ國ニ於キマシテモ變ル所ハナイ
ノデアリマスガ、特ニ最近ノ我國ニ於キマ
シテハ、現下ノ時局ニ對シマシテ、有ユル
意味ニ於テ國民ガ强クナクテハナラヌ、民
族ガ質的ニモ量的ニモ强力デナクテハナラ
ヌト云フ時局ノ要請ニ基キマシテ、而モ一
面我ガ國內ノ現狀ハ、國民ノ體位ハ年々低
下ノ實情ニアル、國民ノ體位ノ低下シツ
アル其原因ヲ繹ネマスレバ、國民ノ病氣ニ
罹ル機會ガ、色々社會的ナ事情ノ爲ニ非常
ニ增加シテ居ルニモ拘ラズ、之ニ伴フ所ノ
醫療施設、國民ガ醫療ヲ受クベキ機會ハ、
寧ロ逆行的ノ狀態ニアルト云フ此根本的事
實ニアルト、吾々ハ考ヘルノデアリマス、
此委員會ニ於キマシテモ、屢〓或ハ賣藥ノ誇
大廣告取締ニ付テ、或ハ醫師類似行爲ノ取
締ニ付テ、或ハ淫祠邪〓、迷信等ノ取締ニ
付テモ色々論議サレタノデアリマスガ、サ
ウ云フ不愉快ナ、陰慘ナ現象ガ國內ニ起ッテ
居リマス、其基ク所ハ何デアリマセウカ、
國民ハサウ云フモノニ行キタクハナイノデ
アリマシテ、正シイ醫療ヲ受ケタイ、合理
的ナ醫療ヲ受ケタイト思ッテモ、經濟的制約
ノ爲ニ其醫療ヲ受ケルコトガ出來ナイコト
ガ、是等ノ有ユル陰慘ナル問題ヲ生ンデ居
ル根本原因デアリマシテ、此根本ノ原因ヲ
取去ラナカッタナラバ、政府ガ如何ニ努力サ
レマシテモ、此問題ノ解決ヲ圖ルコトハ出
來ナイノデアリマス、而シテ斯ル國民ノ熱
烈ナル要求ニ基キマシテ、此制度ハ立案サ
レタコトト思フノデゴザイマスガ、只今私
共ハ本案ニ贊成ヲシ、軈テ此法律ヲ世ノ中
ニ送リ出サウト致シマシテ靜ニ顧ミマスル
時ニ、國民ノ醫療費ノ輕減ノ欲望ガ餘リニ
モ强イノニ照シテ、此制度ニ依ッテ與ヘラレ
ル實質ガ、餘リニモ貧弱ナノニ寧ロ私共ハ
內心忸怩タルモノガアルノデアリマス、政
府ニ於カレマシテハ昭和九年ニ於テ此案
ヲ立案ヲサレマシテ、昭和九年ヨリ今日
ニ至ル間ニ於ケル我國ノ急激ナル時局ノ
變化、此時局ノ變化ガ要求致シマス所ノ
事柄ニ對シテ、政府ノ態度ニハ何等ノ進
展ガナイ、何等ノ進步ガナイ、昭和九年
ニ立案サレマシタ當時ノ狀態ノ其儘ヲ、
此處ニ提出サレテ居ルト云フコトハ、私
共ハ當局ノ時局ニ對スル認識ノ不足ニ、寧
ロ驚カザルヲ得ナイノデアリマス、私共
ハ出來ルナラバ斯ノ如キ不徹底姑息ナル
法案ハ之ヲ葬ッテ、吾々議員ニ於テヨリ完全
ナル法案ヲ提出シ、是ガ成立ヲ圖リタイト
云フ希望ハ持ッテ居ルノデアリマスケレド
モ、我國ノ政界ノ實情ニ於キマシテハ、議
員提出ノ法律案ノ成立ガ中々容易デナク、
假ニ是ガ成立致シマシテモ、是ガ實施ニ當
リマシテハ、何處マデモ當局ノ誠意ニ俟タ
ナクテハナリマセヌ、其關係ニ於キマシテ、
吾々ハ寧ロ淚ヲ呑ンデ姑息不徹底ナル案デ
アリマシテモ、現在ノ實情ヨリモ少クモ一
步前進スルモノト考ヘマシテ、贊成ヲスル
者デゴザイマス、而モ吾々ノ附帶條件ニ依ッテ
要求シテ居リマス補助金ノ豫算ノ增額ニ
關シマシテハ、此委員會ニ於キマシテ大藏
省ノ政府委員ハ、第一年度ニ於ケル實績ヲ
見タ上デ、第二年度以下ノ豫算ノ支出ヲ考
ヘルト云フコトヲ約束シテ居リマス、隨テ
第二年度以下ニ於テ、豫算ノ增額ヲ受ケ得
ルカ否カハ、此第一年度ニ於ケル實績ノ如
何ニ基ク所デアリマシテ、第一年度ニ於ケ
ル實績ヲ擧ゲルト云フコトニ付テハ、當局ノ
責任極メテ重大デアリマス、然ルニ私ハ當
局ガ此法律ヲ實施サレマスニ當リマシテ、
色々ノ不安ヲ持ツノデアリマス、第一ハ政
府當局、特ニ厚生省當局ノ、現在ノ農村經
濟機構ニ對シマスル重大ナル認識不足デア
リマス、私共ハ當局ノ斯ノ如キ認識不足ニ
依ッテ、果シテ農村ニ此法律ニ依ル組合ガ
普及スルカドウカニ、多大ノ疑問ヲ持ツノ
デアリマス、而モ此法律ガ農村ニ普及シ易
イヤウナ形ニ於テ代行規定ヲ設ケズ、普及
困難ナル形ニ於テ成立致シマシタコトハ、
世間ノ人ハ醫師會ト產業組合ノ相剋摩擦ニ
基クカノ如クニ考ヘテ居リマシタガ、此委
員會ニ於ケル質問應答ニ依ッテ、サウ云フ原
因デナクシテ、是レ全ク當局ノ農村政策ニ
對スル認識不足ニ基イテ居ルコトガ、明カ
ニナッタノデアリマス、隨テ代行機關ガ不
完全デアルガ爲ニ、普及ガ妨ゲラレタトシ
タナラバ、其全責任ハ當局ガ自ラ負ハレナ
クテハナラヌノデアリマス、此點ハ當局ハ
十分ニ銘記シテ置イテ戴キタイノデアリマ
ス、要スルニ當局ハドンナニ立派ナ「バス」ガ
其處ヲ通ッテ居ッテモ、其「バス」ニ乘ルノハ厭
ダ、自分ハ「ダットサン」デモ宜イカラ自家
用車ニ乘ッテ步キタイ、斯ウ云フ御考ガ此
法案ノ根柢ニハ潜ンデ居ルノデアリマス、
「ダットサン」ニ乘ッテ御步キニナッテモ宜イ
ノデアリマスガ、併シ此組合ノ普及ニ對シ
マシテハ、當局ガ全責任ヲ負ウテ居ラレル
ト云フコトハ、十分ニ御銘記ヲ願ヒタイノ
デアリマス、其他吾々ハ種々申上ゲタイ希
望等ヲ持ッテ居リマスケレドモ、時間ヲ節約
シマス意味ニ於キマシテ、成ベク之ヲ省略
致シマス、要スルニ此法律ニ依ル組合ノ普
及ニ對シマシテハ、當局ガ極メテ重大ナル
責任ヲ持ッテ居ラレル、四百四病ノ辛サヨ
リモ貧程辛イ病ハナイト云フコトハ、古來
カラ俗間ニ謳ハレテ居ルコトデアリマスガ、
貧乏デアルガ爲ニ、病氣ノ際モ診療ヲ受ケ
ルコトガ出來ナイト云フ狀態ニアリマス、
大部分ノ我ガ國民ノ現實ノ狀況ニ對シマシ
テ、眞ニ熱情ヲ以テ、深キ同情ヲ以テ此法
律ノ執行ニ當ラレ、其重大ナル責任ヲ果サ
レンコトヲ希望致シマシテ、本案ニ贊成ヲ
シ、併セテ附帶決議ノ趣旨ニ關シマシテハ、
旣ニ此委員會ニ於キマシテ質疑應答ガ繰返
サレ、其意ノ存スル所ハ十分ニ御認識ノコ
トト存ジマスカラ、此決議ノ條項ニ關シマ
シテモ、十分ノ誠意ヲ以テ、是ガ施行ニ當
ラレンコトヲ希望スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=4
-
005・北勝太郎
○北委員 私ハ第一議員倶樂部ヲ代表シマ
シテ、聊カ意見ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
私ハ共同組合ノ代行ニ關シマシテハ、强イ主
張ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、時局ニ鑑ミマ
シテ洵ニ不滿足ナガラ本案ニ贊成ヲ致ス者
デアリマス、併シ此場合申上ゲテ置カナケレ
バナラヌコトハ、醫療內容ノ低下セザルヤウ
ニトノ希望條件、是ハ實際問題トシマシテハ、
結局金ヲ殖ヤスヨリ方法ガナイト思フノデ
アリマス、現ニ過般來醫師側ノ委員ノ方々
カラ指摘サレマシタ如ク、金ガ足ラヌノガ
此仕事ノ癌デアルカラ、醫療內容ノ低下ハ
必然ノ結果トシテ現ハレテ來ルモノト見ナ
ケレバナラヌノデアリマス、政府ハ一戶平
均約十四五圓ノ金ヲ徵收シテ、組合ノ經營
ヲサセル積リダト答ヘラレテ居ルノデアリ
マスガ、實ハ是ハ大キナ負擔デアリマス、
然ルニ更ニ此上負擔ヲ增加スルト云フヤウ
ナコトハ、農村ノ現情カラ見マシテ全ク不可
能ノコトデアリマスカラ、單ニ經濟的ノ見
地カラ致シマシテモ、共同組合ニ代行サセ
テ、先以テ多大ナル出費、卽チ事務上ノ經
費ヲ節約シナケレバナラヌノデアリマス、
又屢〓、申上ゲマシタヤウニ、代行ニナリマス
ト赤字ガ出テモ、母體ヲ爲ス所ノ組合ト共
通經濟トナルノデアリマスルカラ、始末ガ
シ易イ、尙ホ進ンデ其母體組合ノ剩餘金ヲ
モ、本事業ニ使用セシムルコトガ出來ルノ
デアリマシテ、此金ノ不足ノ問題、醫療內
容ノ低下ノ防止ト云フ問題ハ解決ガ付クノデ
アリマス、卽チ代行ニ依ルコトガ最モ捷徑
デアルト私ハ信ズルノデアリマス、人往々
ニシテ產業組合ガ、ソンナ所マデ入リ込マ
ヌデモ宜イデハナイカト思ハルヽカモ知レ
ヌノデアリマスガ、ソレハ產業組合ニ對シ
テ穿違デアリマス、產業組合ハ物ヲ取扱フ
機關ナドト考ヘラレ、單ニ利益追求ノ團體
ト思ハレテハ、是ハ洵ニ大迷惑デアリマス、
此處マデ入リ込ンデ行カナケレバ、組合ノ
運營モ出來マセヌシ、使命モ果サレヌノデ
アリマス、御笑ヒニナルカモ知レヌガ、早
イ話ガ組合ガ此處マデ入リ込マヌト第一組
合ノ貸シタ金ガ取レヌ、此貸シタ金ガ取レ
ヌト云フコトハ、卽チ金ヲ借リタ人ガ返ス
コトガ出來ヌト云フコトデアル、是ハ次ニ
借リル資格ヲ失フト云フコトニナルノデア
リマシテ、其人ハ經濟的ニ農村カラ締出シ
ヲ食フ、卽チ自殺行爲トナッテシマヒマシ
テ、直グニ暮シガ立タナクナルノデアリマ
ス、氣ノ毒ナ程小サイ經濟ノ農民生活デア
ル、此小サイ經濟ノ農民生活ヲ維持サセル
爲ニハ、當然組合ガ此處マデ乘出サナケレ
バナラナイノデアリマシテ、產業組合ノ本
質ハ實ニ此處ニアルノデアリマス、而シテ
此法律ガ出來マシテモ、此儘ノ進ミ方デハ、
貧村程國民健康保險組合ノ設立ガ遲レル、
後〓シニナルノデアリマス、此事變下ニ於
テ、最モ保護ヲ要スベキ是等ノ貧村ガ、斯ノ
如クナリマスルコトハ全ク忍ビナイ所デア
リマス、政府ハ宜シク代行ニ關シマシテハ、
徒ニ杓子定規ノ解釋ヲ爲スコトナク、第五
十四條ノ精神ヲ能ク把握シテ、醫師ノ現狀
ニノミ偏セズ、又醫師ノ包藏致シツヽアリ
マスル心配ハ全ク𣏌憂デ、何等實質上ノ弊
害ナイモノト認定サルヽモノニ付キマシテ
ハ、宜シク法ノ精神ヲ活カシテ、一日モ早
ク全國貧村ニ其普及ヲセシムル手段ヲ講ゼ
ラレンコトヲ望ンデ巳マヌノデアリマス
以上申上ゲマシタコトヲ要約致シマスル
ト、政府ハ代行組合認可條項ニ付テハ、徒
ニ狹義ノ解釋ヲ爲サザルヤウ注意セラレタ
シ、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、第
二項ハ醫療組合ノ認可申請ニ對シマシテ、
往々道府縣衞生課ニ於テ、故ラニ之ヲ阻止
スル傾キガアリマスノデ、之ヲ十分監督セ
ラレタシト云フノデアリマスガ、是ハ昨日
大臣ニ詳細申上ゲテ御答辯ヲ得タノデアリ
マスルカラ、本日ハ此內容ニ付キマシテハ
申上ゲルコトヲ省略致シマス
次ニ賣藥ノコトニ付キマシテ此場合一言
セザルヲ得ナイノデアリマス、賣藥ハ今直
グニ保險組合デ配給スルノデハナイノデア
リマスカラ、之ヲ聞流シテ置イテモ宜イ
デハナイカト云フ風ニ思ハレル向キガアル
カモ知レナイノデアリマスガ、必シモサウ
單純ニ考ヘテハナラヌト思フノデアリマス、
吾々農村居住者ノ家ニハ、藥屋サンガ二十
人以上モ來テ、澤山ノ賣藥ヲ置イテ行クノ
デアリマス、一人デ出來ル仕事ニ二十倍ノ
配給費ヲ使フ、其外ニ無駄ナ非常ナ澤山ノ
資本ヲ寢カセテ置クノデアリマスガ、ソレ
等ノ無駄ハ全部消費者ニ轉嫁サレテ居ル爲
ニ、全購聯デ配布シテ居ル藥ノ三四倍モ高
クナッテ居ル(「ソンナコトハナイ」ト呼フ
者アリ)イヤ實際デス、アナタ方ハ實情ヲ
知ラヌ··
〔「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=5
-
006・添田敬一郎
○添田委員長 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=6
-
007・北勝太郎
○北委員 是ガ爲ニ農家ハ年五圓位デ濟ム
藥代ヲ、二十圓モ拂ハナケレバナラヌ理由
ハナイ、配置賣藥ガ若シ他ノ脅威ヲ受クル
コトガアルトスルナラバ、是ハ實ニ良質低
廉ハ他ノ商品ヲ驅逐スルト云フ此鐵則ニ支
配サルベキデアリマス、デアリマスカラ先
以テ其點ノ改善ニ著眼セシムルコトガ親切
ナ行キ方デアル、徒ニ法令ノ力ニ縋ッテ消費
者ヲ犧牲ニスルト云フヤウナコトガ、採リ
上ゲラレテハナラヌト思フノデアリマシテ、
此點ニ付テ當局ノ注意ヲ喚起シテ置ク次第
デアリマス、私ハ以上ノ理由ヲ付シマシテ、
本案ニ贊成致ス者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=7
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008・添田敬一郎
○添田委員長 佐竹君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=8
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009・佐竹晴記
○佐竹委員 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シマ
シテ、希望條件ヲ付シテ、原案ニ贊成致シ
マスト同時ニ、附帶決議ニモ贊成ヲ表シマ
ス、原案竝ニ附帶決議ニ贊成致シマス理由
ハ、多クヲ申上ゲル必要ハゴザリマセヌ、
不十分ナガラモ玆ニ此重大ナル社會立法ノ
成立ヲ見ント致シテ居リマスコトヲ喜ブ者
デゴザイマス、偖テ私ノ付セント致シマス
希望條件ハ
第一、國民體位向上ノ爲メ工場、鑛山、商
店ニ於ケル勞働時間ヲ制限シ、幼年工、
姙產婦ノ保護竝ニ勞働者ノ榮養ニ關ス
ル保護制度ヲ樹テ、庶民階級ノ住宅改善
策ヲ確立セラレ度シ
第二、醫學〓育制度ノ改善ヲ圖リ、廣ク
醫療機關ノ普及徹底ヲ期スルト共ニ、全
國三千五百ニ及ブ無醫村ヲ絕無タラシム
ベキ根本對策ヲ樹立シ速ニ之ヲ遂行セラ
レタシ
第三、本法實施ニ當リテハ現行健康保險
法實施ノ實情ニ鑑ミ其弊害ヲ除去シ其運
營ノ圓滑ヲ期セラレ度シ
此三點デアリマスガ、今私ハ此希望條件ニ
付テ其大要ヲ申上ゲタイト存ジマス、先ヅ
第一ノ條件デゴザイマスガ、病氣ニ罹ッタ者
ヲ癒サウト致シマスルコトハ、卽チ治療醫
學ハ醫療問題ノ末デゴザイマス、病氣ニ罹
ラナイヤウニ未然ニ之ヲ防ガウト致シマス
豫防醫學コソ先デアリマス、否、豫防醫學
ヨリモ更ニ積極的ニ榮養、休養、住宅、勞
働體育等ノ諸問題ノ改善ヲ圖リマシテ、
國民生活ノ安定ト向上ヲ期スルト云フコト
ガ、國民ノ健康保持增進ノ根本問題デアル
コトハ、論ズル迄モナイコトデアルト思フ
ノデアリマス、世間デハ病氣スルカラ貧乏
スルト申シマスガ、ソレヨリモ貧乏スルカ
ラ病氣ニナルト云フノガ本當ダト私共ハ考
ヘテ居リマス、日當リノ良イ〓潔ナ住宅ニ
住ンデ居ッテ、十分ノ榮養ヲ攝ッテ、適當ナ
勤勞ニ服シテ、十分ナル休養ヲ致シマスナ
ラ、性來弱イ者デナイ限リサウ病氣ニ罹ル
筈ハナイト思フノデアリマス、本法案ニ於
キマシテモ、第二十一條ニ於キマシテ、啻
ニ治療問題ノミナラズ、進ンデ健康ノ保持
增進ノ爲ニ諸施設ヲ爲シ得ル旨ヲ規定シテ
居リマスガ、併シ此施設程度ノモノニ依リ
マシテハ、到底此根本問題ヲ解決スルコト
ハ不可能デアルト私共ハ思フノデアリマス、
私ハ只今希望條件ノ第一項ニ申上ゲマシタ
各種ノ制度ヲ實施致シマシタナラバ、相當
ノ成績ヲ擧ゲ得ルト信ズルト同時ニ、之ヲ
實施スルコトノ急務中ノ急務ナルコトヲ痛
感スル者デアリマス、現下非常時局ニ當リ
マシテ、生產力ヲ擴充スルニ急ナル時、各
軍需工業ニ從事ヲ致シマス勞働者ノ如キハ、
朝ハ五時或ハ六時カラ夜ハ九時カラ十時マ
デ、更ニ深夜ノ夜業迄モ繼續シテ居ル實情
デアリマス、試ミニオ互ニ付テ之ヲ考ヘマ
シテモ分リマスガ、午後ノ一時過ギニ本會
議ガ開カレテ午後六時過ギニナリマスト、
モウ倦怠ヲ覺エマスノカ、愚圖々々ト話ガ
出ルシ、議席ガガラ空キニナリ、早ク質問
ヲ打切ッテ歸ラウト致シマス連中サヘモ出
テ來ル有樣デアリマス、午後一時カラ午後
六時頃迄ノ審議デスラソレデアリマス、
ソレガ朝ノ五時、六時カラ夜ノ十時マデ
一生懸命ニ、而モ過重ノ勞働ヲ强ヒラレテ
居ル、或ハ生活難カラ僅カノ夜業料ヲ頂戴
シタイバカリニ、無理ニ勞務ニ服シテ居リ
マス爲ニ
〔委員長退席、靑木委員長代理著席〕
一體其健康ガ續クデアラウカト、誰シモ同
情ヲ拂ハズニハ居ラレナイ、最近內務省ノ
發表スル所ニ依リマスレバ、工場勞働者ノ
業務中ニ於ケル負傷者、又ハ死亡ヲ致シマ
ス者ガ著シク增加ヲシテ居ルノニ驚クノデ
アリマス、是固ヨリ工場ガ不足デアッテ、設
備不完全ニ原因シテ居ルモノガ相當アルノ
デアリマセウガ、併シ其多クハ過勞ノ爲ニ
注意力ガ減退致シマシタ結果デアルト私ハ
思フノデアリマス、今ヤ長期抗戰ニ入リマ
シテ、彌〓倍、生產力擴充ノ要ガ緊切デアリマ
ス、此時ニ直接其衝ニ當ッテ居リマス勞働者
ノ健康保持ト云フ問題ハ、最モ重大ナルモ
ノデアリマシテ、之ヲ消磨スル虞ナキヤヲ
憂慮セザルヲ得ナイノデアリマス、吾々ハ
此際ニ勞働時間ニ一定ノ制限ヲ加フルノ制
度ヲ確立シ、又適當ナ休養ヲ與フルト同時
ニ、最低賃銀制ヲ布イテ、十分ノ榮養ヲ攝
ルコトガ出來ルダケノ生活ノ餘裕ヲ與ヘ、
勞働力ノ培養ヲ致スト云フコトハ喫緊ノコ
トデアルト考ヘルノデアリマス、又商店ノ
店員ヤ紡績會社ノ女工達ノ生活狀態ヲ見マ
スノニ、其勤務ハ相當エライ、其上ニ食事
ナドハ實ニ是ハ御話ニナリマセヌ、過日井
上委員ヨリ此點縷々申上ゲテ居リマスガ、
更ニ女工ノ點ニ付テ私共調査致シマシタ所
ニ依リマスレバ、高砂町ニ於ケル鐘淵紡績
ノ女工達ハ、醤油一升八錢、味噌百匁三錢
ト云ッタヤウナ程度ノモノヲ用ヒラレテ居
ル、一般ノ狀態カラ御覽ニナリマスナラ
バ、一般ノ市民ハドンナ家デモ少クトモ醬油
一升二三十錢程度ノモノ、龜甲萬デ五十錢
位ノモノヲ食ベテ居ル、ソレガ僅カ八錢ダ
ト云フ、味噌ニ至リマシテハ奈良漬ノ粕ナ
ンカヲ是ヘ混入致シマシテ、馬カ犬カニ食
事ヲ與ヘルガ如キオ話ニナラヌ狀態ニア
ル、實ニ斯ノ如キ狀態デアリマスノデ、他
ハ萬事推シテ知ルベシダト私共ハ思フノデ
アリマス、發育時代ノ靑年子女ニ、十分ノ
榮養ト體育トヲ與ヘナイト云フコトハ、實
ニ憂フベキコトデアルト私共ハ考ヘルノデ
アリマス、殊ニ幼年工ヤ姙產婦ノ如キ特別
保護ヲ加フベキ者ニ對シマシテハ、十分ノ
注意ヲ拂ハナケレバナラヌ
〔靑木委員長代理退席、委員長著席〕
斯樣ニ日本ノ將來ヲ背負ッテ立ツベキ若イ
男女ノ勤勞者ニ保護ヲ加ヘテ、其健康ノ保
持增進ヲ圖ルコトハ、是レ卽チ國力ノ充實
ヲ期スル所以デアルト私ハ思フノデアリマ
ス
又住宅問題ニ付キマシテモ、餘リニ其對
策ガ貧弱デアルト思フ、曩ニ政府庇護ノ下
ニ同潤會トカ云フモノガ設立サレタノデア
リマスガ、是ハ庶民階級ノ生活問題解決ノ
爲ニ乘出シタデアリマセウケレドモ、今ヤ
中流以上ノ人ノ獨占スル所トナッテ居ル、下
町ノ方ニ出來テ居リマスル同潤會ノ貸間ヤ
貸家ナドハ、申込ガ殺到致シマシテ、抽籤
ヲシナケレバ決定スルコトガ出來ヌト云フ
實情ニアル、又聞ク所ニ依リマスレバ、何
カ大森ノ向フ方ノ雪ケ谷トカ云フ所ダサウ
デアリマスガ、其處ノ住宅ノ如キハ、御役
人サンノミニ振當テラレテ、一般庶民階級
ニハ一向與ヘラレナイ、其會ノ內部ニ至リ
マシテハ今ヤ利慾ノ爲ニ亂レテ麻ノ如ク、
之ヲ監督スベキ官吏ニ對シテサヘモ、兎角
ノ噂サヘ立テラレテ居ル實情デアル、私ハ
此材料ニ付キマシテハ、多少ノモノヲ持合
セテ居リマスケレドモ、此處デ多クヲ申上
ゲルコトハ當ヲ得ヌト思ヒマスノデ、此程
度デ多クハ申上ゲマセヌガ、兎モ角モ斯
ノ如キ狀態デハ、迚モ住宅問題ノ解決ナ
ドハ出來ルモノデハゴザイマセヌ、今少シ
ク眞劍ニ、眞面目ニ其對策ヲ樹立致スコ
トヲ要シマスルト同時ニ、住宅問題ニシテ
十分ニ解決ヲ致シマスナラバ、國民ノ健
康ノ上ニ好影響ヲ與フル所、蓋シ大ナル
モノガアルト私共ハ思フノデアリマス、以
上ノ事項ハ必シモ豫算ガナクテモ出來ルコ
トナンデアリマス、今唯一ノ社會立法ガ茲
ニ通過シヨウト致シテ居リマス際デゴザイ
マス、進ンデ是ト關聯ヲ致シテ居リマスル
所ノ國民體位向上ノ右諸政策ヲ斷行致シマ
シテ、以テ庶政一新ノ實ヲ擧グルコトハ、
實ニ急務中ノ急務デアルト信ジマシテ、右
諸法制ノ確立ヲ熱望申上ゲル次第デアリマ
ス
次イデ第二ノ點デゴザイマスガ、現在ノ
醫學〓育制度ハ、曩ニ河合委員カラモ指摘
致シマシタヤウニ、專門學校ヲ皆大學ニ昇
格致シマシテ、「コスト」ノ高イ御醫者ヲノ
ミ作ルコトニ偏シテ居リマス(笑聲)御醫者
サンハ年々增加ヲ致シテ行クノニ、地方農
村ノ醫師ガ次第ニ減少シテ行クノハ、確
此醫育制度ノ偏リタルコトガ、重大ナル原
因デアルト私共ハ考ヘル、明治九年ノ醫師
數ガ二万二千三百九人、ソレガ昭和二年ニ
ナリマスルト四万七千百十人、同十年ニ至
リマシテハ五万七千五百八十一人ト云フ激
增ヲ示シテ居ルニ拘ラズ、年一年ト御醫者
ノ居ナイ村ガ殖エテ居ルデハアリマセヌ
カ、昭和二年ニハ二千九百九箇町村デゴザ
イマシタ無醫村ガ、昭和九年ニハ實ニ驚ク
勿レ三千五百二十七箇町村ト云フ數字ヲ示
シテ居リマシテ、醫師ノ激增ニ反比例シテ
居リマス、是レ畢竟制度ノ變革カラ來ルモ
ノデアッテ、昔ハ從來ノ開業醫或ハ醫師試驗
ニ合格致シマシタ者、或ハ府縣ノ醫學校ヲ
出マシタ者、斯ウ云フ人達ガ醫業ニ從事ヲ
致シテ居リマシタ爲ニ、大〓全科醫デゴザ
イマシテ、其大部分ハ農村ニ居住ヲ致シテ
居リマシテ、其經營モ立派ニ立ッテ居タノデ
ゴザイマスガ、次第ニ制度ガ改メラレテ、
醫師ハ總テ學校ヲ出ナケレバナラヌ、又年
ト共ニ舊來ノ醫師ハ次第ニ死亡スルトカ、
其他ノ原因デ減ッテ行ク一方デアリマス、其
一面ニ於テ專門學校ヤ大學ナゾヲ出タ御醫
者サンガ、年々增加ヲ致シテ參リマシテ、
最近デハ只今申上ゲマスルガ如ク、專門學
校ハ醫科大學ニ昇格ヲシテ參リマシタ、サ
ウ云フ具合ニ大變御偉イ、地位ノ高イ御醫
者ダケガ次第ニ增加ヲ致シマシテ、經濟力
ノ弱イ農村ニハ、斯ウ云フ御醫者サンハド
ウモ向カナクナッテ來タ、若イ醫學士ハ又文
化ノ低イ片田舍へ入リ込ムコトヲ欲シマセ
又、斯ウ云フ有樣デ、從來ノ舊時代ノ醫師
デ辛ウジテ醫療機關ヲ充シテ居リマシタ農
村デハ、舊時代ノ醫師ノ減少スルニ伴ヒマシ
テ、御醫者サンノ居ナイ村ト云フモノガ、
次第ニ增加ヲスルト云フ實情ヲ示シテ居リ
マス、政府ガ折角力ヲ御入ニナッテ居リマス
ル無醫村ニ於ケル診療所デモ、又產業組合
ノ經營致シマスル所ノ醫療利用組合ニ致シ
マシテモ、之ニ赴任ヲ致シマスル御醫者ヲ
求メルノニ困難ヲ感ジツヽアル實情デア
ル、又折角雇ッテ參リマシタ御醫者サンガ、
直グ逃ゲ出スト云フ事例サヘアルデハアリ
マセヌカ、斯ウ云フ有樣デハ、今囘玆ニ提
出サレマシタ所ノ國民健康保險法ガ實施サ
レマシテモ、眞ニ廣ク醫療機關ノ普及徹底
ヲ期スルト云フコトハ、餘程困難デハナイ
カト云フコトヲ、私共ハ憂ヘザルヲ得ナイ
ノデアル、ソコデドウシテモ醫學〓育制度
ト云フモノヲ根本的ニ改革致シマシテ、農
村ニモ喜ンデ赴クヤウナ御醫者ヲ作ルヤウ
ニシナケレバナラヌ、一例ト致シマシテ、
例ヘバ農村カラ公費生ヲ出シテ、必ズ農村
ニ於テ開業スルコトヲ約束付ケルヤウナ方
針ヲ立テルト云フコトモ一ツデアリマセ
ウ、又今申上ゲマスル所ノ專門學校ヲ、大
學ニ昇格致シテ居リマスケレドモ、更ニ他
ニ專門學校ヲ造ッテ、農村ヘモ十分ニ進ンデ
行クダケノ御醫者ヲ作ル、更ニ又醫育方針
ニ付キマシテモ、社會學トカ經濟學トカ云
フヤウナモノヲ勉强サセマシテ、農村ヤ下
層民ノ爲ニ進ンデ飛込ンデ行ッテ、仁術ヲ施
スト云フ精神ヲ〓養スルナドハ、是ハ洵ニ
必要デハナイカト思フノデアリマス、斯ウ
云フ有ユル方策ヲ立テマシテ、地方農山漁
村ヘモ醫療機關ノ普及徹底ヲ期スルト云フ
コトガ、洵ニ必要デアルト私共思フノデア
リマス、更ニ政府ノ計畫致シテ居リマス無
醫村診療所ニ付キマシテモ、モット〓〓豫算
ヲ多ク計上サレマシテ、速ニ其普及ヲ圖ラ
レルヤウニ熱望致シテ止マナイ次第デアリ
マス
終リニ第三ノ點デゴザイマスガ、現行健康
保險法實施ノ實情ヲ見マスルノニ、手續其
他ノ形式ノ爲ニ療養ノ機ヲ失シ、或ハ容易
ニ入院スルコトヲ得ザル爲ニ、折角ノ保險
モ用ヲ爲サナイ等、隨分不便又ハ不平ガ出
テ居リマス、本委員會デモ此點ヲ論議サレ
マシテ、屢〓其片鱗ガ現レテ居リマスガ、
又當局ニ於キマシテモ、相當其點ニ付テハ
見聞セラレテ居ルノデゴザイマセウカラ、
具體的ニサウ諄イコトヲ申上ゲルコトハ此
際省略ヲ致シマス、要スルニ現行健康保險
法ノ運營ハ必シモ十分デアルトハ申サレマ
セヌ、十分注意ヲサレマシテ其弊害ヲ除去
シ、過誤ナキヲ期スルト共ニ、圓滿ナル運營
ヲスルコトガ出來ルヤウニ希望ヲ致シテ已
マヌ次第デアリマス、以上ノ希望條件ヲ附
シマシテ、贊成ノ意ヲ表スル次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=9
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010・添田敬一郎
○添田委員長 田中耕君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=10
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011・田中耕
○田中(耕)委員 私ハ第二控室ヲ代表致シ
マシテ簡單ニ意見ヲ申述ベマス、私ハ此國
民健康保險法案ニ對シマシテ、初メテ之ヲ
施行セントスル現在ニ於テモ非常ナ不滿ヲ
持チマスルガ、是ノ將來ニ對シテモ期待ヲ
懸ケルコトノ出來ナイコトヲ、國家ノ爲ニ
遺憾ト思フノデアリマス、何トナレバ、政
府ハ之ヲ革新政策ト言ヒ、或ハ保險國策ト
マデ宣傳致シマシテ、國民ハ第七十議會以
來多大ノ期待ヲ持ッテ居タノデアリマス、今
デモ相當ナ期待ヲ持ッテ居ルノデアリマス
ガ、ソレハ內容ヲ知ラナイ爲メデアルト思
ヒマス、若シ本案實施ノ內容ヲ知ッタナラ
バ、非常ニ失望スルコトト思フノデアリマ
ス、卽チ豫算ガ僅ニ四十二万五千餘圓デ、
補助費ガタッタ十六万六千餘圓ト云フヤウ
十、慈善事業家一人デモ出來ルヤウナ少額
デアル、本年度ノ組合ノ設立豫定ガ僅ニ百
二十組合デ、全國一万二千箇町村ノ百分ノ
一デアルト云フコトヲ思フ時、是ガ新ニ生
レタ厚生省ノ「スタート」ヲ切ル保健國策カ
ト誰シモ驚カザルヲ得ナイコトト思フノデ
アリマス、厚生省ノ方々モ、此貧弱ナル豫
算デハ定メシ御恥シク思ハレルコトト推察
致シマス、唯今年ハ已ムヲ得ナイガ、將來
ニト希望ヲ囑サレテ居ルヤウデアリマスガ
十年後ニシテ漸ク半數ノ六千組合デ、被保
險者數ガ二千五百万人ト云フコトデアル、
而モ豫定通リニ行ッテソレダケデアリマス、
アノ政府ノ豫定表ヲ見マスルト、恐ラク豫定
通リニ進ムコトハ難カシカラウト思ヒマスガ、
サウスルト是ダケノ實現ヲ見ルノモ十五年
後、二十年後ノ將來ニナルノデアリマス、
更ニ玆ニ大ナル不安ヲ懷クコトハ、出來タ
組合ガ果シテ維持繼續出來ルカト云フ問題
デアリマス、今地方自治體ハ公租公課ガ非
常ナル負擔ノ重壓トナッテ居リマス、生命保
險ナドニ加入致シマシテモ、結局途中デ解約
ヲシテシマフト云フ者ガ簇出シテ居ル狀態
デアリマス、斯ウ考ヘテ見マスルト、恐ラ
ク此保險料ハ負擔ニ堪ヘナイデアラウト思
フ、卽チ保險料ノ滯納ト經常費ノ赤字ニ依ッ
テ、遂ニ組合ハ維持出來ナイ結果ニナリハ
シナイカト云フコトヲ憂ヘル者デアリマス、
斯ク觀ジ來リマスル時ニ、現在ノ矛盾セル
醫療制度ニ基礎ヲ置イタ所ノ本法案ニ對シ
マシテハ、將來ニ於テモ遺憾ナガラ希望ヲ
繫グコトハ出來ナイノデアリマス、斯ク申
シマスルト何カ故ラニ反對センガ爲ニ申ス
ヤウデアリマスガ、折角政府ガ自信ヲ以テ
出サレタ法案デアリマスカラ、敢テ反對ハ
致シマセヌ、卽チ期待モシナケレバ、反對
モシナイト云フ程度ニ於テ贊意ヲ表スル次
第デアリマス、唯此機會ニ本案ニ對シマシ
テ希望意見ヲ三項ホド申上ゲテ置キマス
一、政府ハ本案ノ如キモノニ滿足セズ宜
シク醫療ノ根本國策ヲ樹立シ醫業ノ國營
ヲ斷行スベシ
此意味ハ、本案ノ根本的缺陷ハ、國民ノ
保健衞生ト云フコトヲ、經濟力ノ薄弱ナ地
方自治體ニ任シテ居ルト云フコトデアリマ
ス、補助金ヲ交付スルト言ヒマシテモ、
箇年一人五十錢ヤ一圓デハ申譯ニ過ギナイ
ノデアリマス、元來國民ノ健康ハ、國家ガ
責任ヲ持ツベキモノデアリマス、一旦緩急
アレバ天皇陛下萬歲ト叫ンデ屍ヲ曠野ニ
曝ス陛下ノ股肱デアリ、赤子デアリ、九千
万同胞悉ク天業翼贊ノ臣民デアルコトヲ思
ヒマスル場合ニ、卽チ國家ノ國民デアル以
上、國民ノ健康ハ當然國家ガ責任ヲ持タナ
ケレバナラナイ、ソレニハ先ヅ醫業ト云フ
モノヲ個人ノ營業ニ任セテ置クコトガ根本
的ナ誤デアル、宜シク政府ハ將來ニ於テ醫
業ノ國營ヲ斷行シテ醫療ノ根本的矛盾ヲ芟
除スルヤウニ御努力ヲ望ミタイト思フノデ
アリマス
二、本法施行ニ當リ、政府ハ補助金ヲ出
來得ル限リ增額スルト共ニ、劃一的ニセ
ズシテ貧村組合ニハ多額ニ交付スベシ
是ハ富村組合モ貧村組合モ其補助金ヲ均
一ニ致シマスルト、勢ヒ貧村組合ハ醫療內
容ノ低下ヲ來シマス、サウシマスト療養給
付ノ程度ニ於テモ差異ヲ生ズルノデアリマ
ス、醫療內容ヲ低下シナイデ置カウトスル
ナラバ結局保險料ガ高クナリマス、卽チ貧村
組合ノ保險料ハ他ノ組合ニ比較シマシテ著
シク高率負擔トナリ、結局負擔ニ堪ヘズシ
テ、組合ハ赤字トナリ、遂ニ解散ノ悲境ニ立
タナケレバナラナイヤウナ狀態ニナルコトヲ
憂フル者デアリマス、政府ハ宜シク貧村組
合ニ對シマシテハ多額ノ補助金ヲ交付シテ
貰ヒタイト云フノデアリマス
三、政府ハ本法施行ニ際シ醫療機關選擇
ノ自由ヲ與フル原則ト醫療內容ノ公正ヲ
期スル原則ニ準據シ投藥ニハ必ズ處方
箋ノ制度ヲ採用シ何レノ醫師藥劑師ヲモ
自由ニ選擇シ得ル樣爲スベシ
是ハ從來ノ健康保險ニ於キマシテ、醫師ト
藥劑師ト二ツノ醫療機關ガアルニ拘ラズ、
實際ハ醫師ニノミ偏重致シマシテ、藥劑師
ハ全然除外サレテ居ッタ狀態デアリマス、是
ハ現在ノ法令ノ規定ノヤウニ「正當ノ事由
ナクシテ處方箋ノ交付ヲ拒ムコトヲ得ズ」
トカ、或ハ「診療上支障ナキトキハ處方箋
ヲ交付スルコトヲ要ス」ト云フガ如キ消極
的ノ規定デハ、ヤハリ醫師ハ容易ニ處方箋
ヲ出シマセヌ、又患者カラモ、醫師ノ意ニ
逆ッテマデ强ヒテ請求スルコトモセヌト云
フノガ實情デアリマスカラ、一應ハ醫師ニ
處方箋交付ノ義務ヲ命ジマシテ、然ル後ニ
患者ガ其醫師ニ調劑ヲ依賴シヨウガ、藥劑
師ニ依賴シヨウガ、所謂患者ノ自由意思ニ
任セルヤウニスルコトガ、政府ノ所謂醫療
機關選擇ノ自由ヲ與フル所以デアリマス、
此事ハ投藥ニハ必ズ處方箋ノ制度ヲ用フル
ト云フノデアリマス、隨テ法律ノ改正ヲ必
要トスル譯デハアリマセヌ、命令ノ規定ノ
中ニ定メテ置イテ然ルベキモノト思フノデ
アリマス、尙又此處方箋ヲ交付スルコトニ
依ッテ、總テ治療ガ公正ニ行ハレ、患者ニモ
首肯サレル藥價トナリ、藥劑ノ應用ガ適正
トナッテ、誤藥ノ危險ガナクナル、或ハ粗診
粗藥トカ、或ハ一劑ヲ以テ事足ルモノニ二
劑三劑ヲ與ヘルトカ、一週間デ足ルモノヲ
二適間服藥サセルト云フヤウナ不正ナ事、
其他種々ナル弊害ガ一掃サレマシテ、患者
ノ藥價負擔ガ正確トナリ、隨ッテ保險經濟ノ
上ニモ大ナル節減トナルト思フノデアリマ
ス、右ノ理由ニ依リマシテ、投藥ニハ必ズ
處方箋ノ制度ヲ採用スルコトヲ希望スル次
第デアリマス、以上三ツノ希望ヲ付シマシ
テ、消極的贊意ヲ表スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=11
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012・添田敬一郎
○添田委員長 田中養達君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=12
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013・田中養達
○田中(養)委員 私ハ東方會ヲ代表致シマ
シテ、現下ノ社會情勢ニ鑑ミテ、本案竝ニ附
帶條項ニ贊成致シマス、併ナガラ是ガ實際
運用ニ當リマシテハ、組合ノ理事者竝ニ監
督官廳ノ自由裁量ニ任サレタ點ガ多々アル
ノデアリマス、以下五ツノ希望條項ヲ附シ
テ贊成シタイト思フノデアリマス
第一ハ、被保險者ヲシテ最モ廣ク醫師ノ自
由選擇ニ支障ナキ樣注意サレタシ、之ヲ具體的
ニ言ヒマスト、少クトモ各府縣單位カ又ハ大
キナ縣デハ前ノ組合ノ範圍位ニシテ戴キタイ
第二ハ患者ノ祕密ノ漏洩ヲ絕對ニ防止
シテ戴キタイ、是ノ具體的ニハ少クトモ
第一ニ申シマシタヤウニ、府縣單位クラ
ヰニ致シマセヌト、之ヲ防止スルコトハ
絕對ニ出來マセヌ、患者ノ祕密漏洩ニ付テ
ハ、法律ハ醫師ニ對シテ若シ漏洩シタ場合
ニハ六箇月ノ懲役、罰金等ノ重イ刑ヲ以テ
臨マレテ居リマスガ、本案ノ趣旨デ地方町
村理事者ニ之ヲ任シテ置キマスト、勢ヒ每
月醫者ノ請求書ヲ査定セナケレバナラヌコ
トニナリマスノデ、ソレヲ査定サレル町村
ノ五人ナリ七人ナリノ理事者ハ、其內容ヲ
知ルノデアリマスガ、其事自體ガ患者ノ祕
密ノ公開ニナル、此點ハ餘程私ハ注意サレ
マセヌト、僅ノ負擔ハ輕減サレタガ、其爲
ニ其村其地方ノ俗ニ言フ理事者ト稱スル五
人ナリ、七人ナリ、十人ナリノ人等ニ、偶.ミ
自分ノ或ハ自分ノ家族ノ祕密ノ病氣ガ暴露
サレルト云フコトガアルト、是ハ金錢ノ問
題デナイノデアリマス、若シ本案通リニ行
クナラバ、私ハ寧ロ被保險者ハ二重ノ負擔
ニナルト思フ、祕密ノ病氣ノ人ハ、必ズ自
費ヲ以テ餘所ノ醫者ニ診テ貰ヒマス、或ハ
當局者ハ言ハレルカモ知レマセヌ、若シ他
ノ醫者ヲ選ブ場合ニハ、實費給與ヲスレバ
宜イデハナイカ、斯ウ云フコトヲ直グ考へ
ラレマスケレドモ、其實費給與ヲ賴ミニ行
クコト自體ガ、祕密ノ病氣デアルト云フコ
トヲ告白スル結果ニナルノデアリマス、要
スルニ此點ハ餘程注意シテ行キマセヌト、
折角ノ此法案ガ、却テ國民カラ怨マレルヤ
ウナ結果ニナルコトヲ非常ニ惧レルノデア
リマス、其意味ニ於テ少クトモ醫者トノ協
定ハ、府縣單位グライニシテ、而シテ其醫
療內容ノ査定ハ、醫者竝ニ官吏ト稱スル特
殊ナ人ガ之ヲ査定サレルヤウニ、特ニ注意
サレンコトヲ私ハ希望シテ置キマス
第三ハ本法ノ根本精神ハ相互扶助デアル
カラ、其精神ニ則ッテ一町村又ハ一區劃ハ、
貧富ノ別ナク總テ組合員タラシメルコト、
之ニ付テハモウ私ハ說明ヲ要シマセヌ
第四ハ醫療藥品及醫療機械ハ政府ニ於テ
統制精査シテ、是等ヲ徒ニ營利ノ對象物タ
ラシメザルヤウ特ニ注意サレタイ
第五ハ便宜上二ツニ分ケテ、「エー」賣藥
法ヲ改正シテ、賣藥ノ無責任ナル誇大廣告
ヲ嚴重ニ取締ッテ戴キタイ、「ビー」ハ醫療類
似行爲ヲ取締ッテ載キイ
以上五ツノ希望ヲ附シテ贊成スルノデアリ
マスガ、本案竝ニ特ニ附帶條項ノ中ニハ、內
容低下ヲ防グト云フコトハ强ク謳ハレ、委
員會終始通ジテノ問題デアリマスガ、併シ
本日ノ討論ヲ承ッテ居リマシテモ、此醫療內
容ニ付テハ非常ナ誤解ガアリハセヌカト云
フ憂ヲ、實ハ持ッテ居リマスガ、全體醫療內
容ノ低下ヲ防止スベシト云フ位抽象的ナ言
葉ハナイノデアリマス、當局ハ醫療ノ內容
ト云フモノヲドウ考ヘテ居ラルルカ、私ハ
醫療ハ卽チ藝術デアルト思フ、之ヲドウシ
テ低下ヲ防ガレルカ、假ニ一例ヲ以テ言フ
ナラバ、胃病ニ炭酸ガ效クト云フコトハ是
ハ常識デアル、是ハ社會通念デアリマシテ、
醫者ハ勿論素人モ知ッテ居リマス、併ナガラ
重曹ヲ胃病ニ本當ニ完全ニ使ヒ得ラルル者
ハ名醫デアリマス、ソコデ胃病ニ炭酸ヲ使
フノニハ非常ナ經驗ト學理ト、而シテ其醫
者ノ獨創トガ一ツニナッテ、初メテ玆ニ完全
ニ炭酸ガ使ハレルノデアリマス、此事自體
ハ藝術デアリマス、此事ヲ何ニ依ッテ防止
サレルカ、イヤ胃病ノ藥ガ安カッタトカ、高
カッタトカ言ハレマスガ、此醫療ノ內容ノ低
下ヲ云々サレテ居ルノヲ聽イテ居リマスト、
丁度橫山大觀ノ墨繪ハ一幅千圓モ致シマス
ガ、夜店デ賣ッテ居ル團扇ノ畫師ノ墨繪ハ
一圓デ買ヘマス、其繪具其原料ハ同ジ物デ
アッテモ人ニ依ッテソレダケノ差ガアル、原
料ハ何處ガ違フカ、殆ド變リマセヌ、原料
ガ同ジデモ大觀ノハ千圓デアリ、夜店ノ繪
師ノハ一圓デ出來マス、此點ヲ特ニ留意サレ
マセヌト、或ハ產業組合其他ノ連中カ、何
カ知ラヌガ、安イ治療費デ上ガッタト云フ
コトヲ非常ニ誇トサレマスガ、此安イ治療
費ト稱スルモノハ、千圓ノ大觀ノ繪ニアラ
ズシテ一圓ノ夜店ノ繪ヲ買ッテ來タノト同
ジデアル、此一圓ノ繪ヲ强イラレル所ニ、
測リ知ルコトノ出來ヌ不幸ガ存在スルノデ
アリマス、私ハ此點ハ理窟ヲ拔イテ、特
當局者ハ本案運用ノ上ニ非常ニ御注意ニナ
リマセヌト、金錢ニ代ヘラレナイ問題ガ生
ズルト思ヒマス、幸ニ此點ハ希望條項ノ中
ニモ强ク謳ハレテ居リマスカラ、之ヲ特ニ
希望ニ入レテ戴キタイト云フノデハアリマ
セヌケレドモ、ドウカ此コトモ附加へテ戴
キタイ、殊ニ補助金ノ增額及本法ノ普及徹
底ヲ圖ルベシ、斯ウ云フコトモ併セテヤッ
テ戴キタイト云フ希望ヲ附シテ、本案ニ贊
成スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=13
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014・添田敬一郎
○添田委員長 討論ハ終了ヲ致シマシタ、
採決ニ入ルニ先ダチマシテ御諮ヲ致シマ
ス、先ヅ本案ニ付テノ採決ヲ致シ、次ニ附
帶決議ノ採決ヲ致シタイト思ヒマス、之二
別ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=14
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015・添田敬一郎
○添田委員長 是ヨリ採決ヲ致シマス、國
民健康保險法案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ望ミ
マス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=15
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016・添田敬一郎
○添田委員長 滿場一致本案ハ可決セラレ
マシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=16
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017・添田敬一郎
○添田委員長 次ニ附帶決議ニ付テ採決ヲ
致シマス、喜多君提出ノ附帶決議ニ贊成ノ
諸君ノ起立ヲ望ミマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=17
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018・添田敬一郎
○添田委員長 是亦滿場一致ヲ以テ可決セ
ラレマシタ(拍手)北君、佐竹君、田中耕君
田中養達君ヨリ御述ニナリマシタ御意見ハ、
其主ナル點ヲ御意見トシテ伺ッテ、本會議デ
私ヨリ報〓ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=18
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019・佐竹晴記
○佐竹委員 私ハ先程希望條件ト申シマシ
タノハ、希望意見デゴザイマスカラ、左樣
御訂正ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=19
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020・田中養達
○田中(養)委員 內容ノ說明ハ無論省略シ
テ宜イガ、項目ダケハ間違ヒナク竝ベテ言ッ
テ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=20
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021・添田敬一郎
○添田委員長 ソレハ後カラ御相談致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=21
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022・工藤鐵男
○工藤政府委員 重大ナル社會法案モ實情
ニ卽シタ種々ナル御審議ガアリマシテ、今
日本委員會ニ於テ之ヲ可決シテ戴イタト云
フコトヲ、私ハ深ク感謝スル者デアリマス、
而シテ本案ニ伴フ附帶決議ハ軈テ院議トナ
ルノデアリマスカラ、希望條項トハ違ヒマ
シテ、從來ノ取扱ニ依ッテモ本文ニ準ジル如
キ力ヲ以テ、私共ハ之ヲ考ヘナケレバナラ
ヌト思ヒマス、隨テアノ三箇條ハ煎ジ詰メ
タ三箇條デアリマシテ、軈テ本會議デ院議
トシテ御採用ニナルト考ヘマスガ、政府ト
致シマシテハ出來ルダケノ努力ヲ以テ、之
ヲ實現スルコトニ致シマス、玆ニ謹ンデ御
禮ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=22
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023・添田敬一郎
○添田委員長 一寸此際私ヨリ御挨拶ヲ申
上ゲマス、國民健康保險法案ガ此委員會ニ
附議セラレマシテ以來、連日諸君ノ極メテ
熱心ニシテ、且ツ愼重ナル御意見ナリ御質
問ガアリマシテ、圓滿ナル結果ヲ到來スル
ニ至リマシタコトハ、私ト致シマシテモ深
ク感謝ヲ致ス所デアリマス、委員會開會中
ハ兎角不慣レデモアリ、色々ノ失策モアッタ
カト思フノデアリマスガ、寛大ナル諸君ノ
雅量ニ依リマシテ、先ヅ大過ナク結了致シ
マシタコトヲ、私ハ玆ニ厚ク御禮ヲ申上ゲ
マシテ、本會ヲ閉ヅルコトニ致シマス(拍
手
午後二時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311033X00919380215&spkNum=23
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