1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付)
有限會社法案(政府提出、貴族院送付)
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會議
昭和十三年三月三日(木曜日)午前十時三十七分開議
出席委員左の如し
委員長 野村嘉六君
理事 西田郁平君 理事 仲井間宗一君
理事 宮崎一君 理事 石坂繁君
一松定吉君 内藤正剛君
田村秀吉君 山本粂吉君
江原三郎君 宮澤清作君
金澤正雄君 中野治介君
崎山嗣朝君 永山忠則君
佐竹晴記君 菊地養之輔君
由谷義治君
三月一日委員立川平君及松尾孝之君辭任に付其の補闕として江原三郎君及金澤正雄君を議長に於て選定せり
同月三日理事立川平君の補闕として木村作次郎君理事に當選せり
出席國務大臣左の如し
司法大臣 塩野季彦君
出席政府委員左の如し
司法政務次官 久山知之君
司法省民事局長 大森洪太君
司法省刑事局長 松阪廣政君
本日の會議に上りたる議案左の如し
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付)
有限會社法案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=0
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001・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ開會致シマス、御
諮リ致スコトガアリマス、理事立川平君ハ
委員ヲ辭任セラレマシタノデ、理事ノ補闕
選擧ヲ行ハネバナリマセヌ、先例ニ依リマ
シテ委員長ニ於テ指名スルコトニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=1
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002・野村嘉六
○野村委員長 御異議ナイト認メマス、ソ
レデハ木村作次郞君ニ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=2
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003・内藤正剛
○內藤委員 此際參考資料ヲ政府ヨリ御提
出ヲ願ヒマス、成ベク兩三日ノ中ニ御提出
ヲシテ戴キタイト思ヒマス、ソレハ過日豫
算總會ニ於テ、最近マデ官吏タリシ人デ退
官ノ後、ソレ〓〓特殊會社ノ重役ノ任ニ御
就キニナッタ方ガ多數アリマシテ、其統計表
ガ豫算委員會ニ提出サレテ居リマスカラ、
政府トシテハ御出シニナルノガ樂デアラウ
ト思ヒマス、ドウゾサウ云フコトニ御願致
シマス、尙ホモウ一ツ別ノ方面デ退官者ニ
シテ、內地デ言ヘバ高等官三等以上ニ匹敵ス
ル滿洲國ノ官吏ニ御就キニナリマシタ方ノ
氏名及ビ其人數ガ分レバ、出シテ戴キタイ
ト思ヒマス、ソレカラ第三ニハ出來得ルナ
ラバ、其人ノ俸給ヲ其上ニ現シテ戴キタイ
ト存ジマス、ソレハ過日モ本會議デ私ガ片
鱗ヲ申上ゲテ置キマシタガ、退職官吏ハ法
ノ定ムル所ニ依ッテ恩給ガ支給サレル、併シ
他ノ職務ニ就クコトニ依ッテ年收ガ可ナリ
多キナ金額ニ達シタ人ハ、恩給ノ金額ノ
部ガ支給セラレヌト言ヒマスカ、低減サレ
ルコトニナッテ居リマス、ソレデ私ガ特ニ
此參考資料ヲ求メタ理由ハ、從來內地ノ官
吏ニシテ退官後滿洲國ニ行カレタ方ハ、滿
洲國ニ於テ相當大キナ金額ノ支給ヲ受クル
モ、內地デハ所得稅ヲ課スルコトガアリマ
セヌ、ソレカラ昨年議會デ間題トナリマシ
テ、慥カ去年ノ八九月デアッタカモ知レマ
セヌガ、規則ガ變リマシテ、滿洲國デハ少
額ノ所得稅ヲ課シテ居ルコトニナッテ居リ
マスケレドモ、併シ內地ノ方ノ分ハドウナッ
テ居ルカ、一緒ニ課ケナイラシイノデ、是
モ變ダト思ヒマスカラ、ソレモ戴キタイト
思ヒマス、是ハ私共ノ考へ方ハ、商法ノ改正
案ニ關シテ、此間申上ゲマシタ如ク、取締
役ニシテ株式ヲ持タヌ者ガアッテ宜イカ惡
イカト云フ議論ニモ影響シマスノデ、參考
資料ニ提出ヲ御願致ス譯デアリマス、ソレ
カラ是ハ別ニ參考資料デハアリマセヌガ、
將來問題トモナルト思ヒマスノデ、此際ニ
豫メ「ヒント」ヲ與ヘテ置イテ、政府ニ御〓究
ヲ願ッテ置キタイト思フノデス、ソレハ有限
會社法案ニ付テ法ノ規定スル所、資本ハ比
較的ニ少イヤウデアリマス、若シ是ノ惡用
ニ依リマスルナラバ、例ヘバ同族會社ノヤ
ウナモノハ、利益ダケハ其會社ニ集中セシ
メテ、サウシテ餘リ利益ノ擧ラヌモノダケ
ハ、普通商法ノ規定ニ依ル會社ニスル傾モ
ナイトモ言ヘヌノデアリマシテ、扱ヒ方如
何ニ依リマシテハ、資本家階級カ、何ト言
ヒマスカ、利益ヲ壟斷セントスル傾キ、若
クハ自分ノ身ヲ保護スルニ汲々タル餘リニ、
良イ制度ヲ惡ク使ハヌトモ限リマセヌ、此
事柄ヲ特ニ〓究ヲシテ見タイ、又其點ニ付
テ質疑ヲシテ見タイト思ヒマスノデ、今カ
ラ御用意ヲ御願シテ置ク次第デアリマス、
尙ホ議事進行デアリマスガ、速記ニ付テ委
員長ニ希望致シマス、例ヘバ過日本會議ニ
於テ私ガ大東土地會社ト申上ゲタノニ、速
記錄ヲ見マスト大同土地株式會社トナッテ
居ル、斯ウ云フ文字ノ間違ヒガ起ル、瓶子ハ
平氏ニ通ジ、醋甕ハ眇ニ通ズト云フコトハ
日本外史デ習ヒマシタガ、サウ云フヤウナ
間違ヒハ、何カノ機會ニ於テ訂正ヲシナケレ
バナラヌト思ヒマスノデ、ドウゾ委員長ニ
於カレマシテハ今後議員ノ一擧手一投足
申上ゲル言葉デ間違ッタ事柄ニ付テハ、
特別ナ御考慮ヲ煩ハシタイト云フコトヲ、
議事進行ノ初メニ希望致シテ置キマス、問
題ハドウナルカ分リマセヌカラ、豫メ申上
ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=3
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004・大森洪太
○大森政府委員 只今ノ參考資料御要求ノ
點デアリマスガ、早速其準備ニ取掛リタイ
ト思ヒマス、但シ主ニ他官省ノ關係ニ屬シ
マスルカラ、直グ準備ニ取掛リマスケレド
モ、或ハ御提出ガ極メテ早急ノ間ニ合ヒ兼
ネルカモ知レナイノデアリマス、此點ハ豫
メ御諒承ヲ願ッテ置キマス、ソレカラ第二
ニ、有限會社ニ關シテ、今後ノ質疑應答ニ
付テ豫メ御注意ヲ下サイマシテ、此點ハ御
懇情ヲ多謝スル次第デアリマス、御指摘ノ
點ニ付キマシテハ、私共立案ノ際ニモ之ヲ
考慮致シマシテ、有限會社ノ濫用ト云フコ
トニ付テ、專ラ實際的見地ニ立チマシテ、之
ヲ防止スル種々ノ措置ヲ講ジタノデアリマ
ス、ソレ等ノ點ニ付キマシテハ、尙ホ條文
ニ就テ色々御審議モアリマセウカラ、其際
ニ申述ベタイト存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=4
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005・野村嘉六
○野村委員長 只今委員長ニ對スル速記ノ
正確ニ關スル御注意ニ付テハ、事務當局ニ
十分申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=5
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006・山本粂吉
○山本委員 參考資料ノコトデスガ、昨年
ノ商法改正ノ衆議院ノ委員會ニ於ケル意向
ハ大體纏ッタノデスカラ、アノ時ニ於ケル修
正案ガアルノデスガ、ソレガ私ノ見ル所デ
ハ參考資料ニ無イヤウデアリマスカラ、念
ノ爲ニ若シオアリデシタラ、次囘ノ委員會
マデニ御提出願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=6
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007・大森洪太
○大森政府委員 今日午後大臣ヨリ提案理
由ヲ申述ベルコトニ致シマス、ソレニ引續
キマシテ若シ時間ガアリマスルナラバ、私
ヨリ補足的ニ說明ヲ申上ゲタイト存ジテ居
リマス、其際ニ昨年此委員會ニ於キマシテ
問題ニナリマシタ點、及ビ其問題ニナリマ
シタ點ヲ私共ガ參酌シ、尊重ヲ致シマシテ
多數ノ御意向ト思ハレマスルモノヲ、此原
案ニ出シタノデアリマス、ソレヲ口頭デ申
述ベタイト存ジテ居リマス、左樣御諒承ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=7
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008・野村嘉六
○野村委員長 提案ノ理由ヲ大臣ヨリ聽ク
コトニ致シタイト思ヒマス、ソコデ大臣ハ
午前中ハ差支ガアルサウデアリマスカラ、
本委員會ハ午後一時マデ休憇シテ、午後一
時カラ開會スルコトニ致シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=8
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009・内藤正剛
○内藤委員 先程ノ參考資料ガ出ルヤウデ
アリマスカラ、出來レバ其方ノ普通ノ俸給
額ト賞與額ヲ併セテ書イテ下サイマスヤウ
ニ、ソレハアル筈デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=9
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010・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ午後一時マデ休憩
致シマス
午前十時四十七分休憩
午後一時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=10
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011・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ是カラ開會ヲ致シ
マス-司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=11
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012・塩野季彦
○鹽野國務大臣 只今議題ニナリマシタ三
箇ノ法案ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ御說
明申上ゲマス、先ヅ商法中改正法律案ノ制
定ノ趣旨竝ニ經過ニ付キマシテハ、本會議
ノ際ニ其〓要ヲ申述ベタノデゴザイマスガ、
現行商法ハ明治三十二年ノ制定ニ係リ、其
施行後既ニ約四十年ヲ經過シテ居リマス、
其間ニ明治四十四年ニ一部ノ改正ガ行ハレ
マシタガ、是ハ最少限度ノ補修ヲ加ヘタ程
度ノモノデアリマシテ、要スルニ現行規定
ハ全般ヲ通ジマシテ、現在ノ社會事情、殊
ニ商事生活ノ實際ニ照シ、不備ノ廉ガ少ナ
イノデアリマス、殊ニ會社ニ關スル規定ニ
至リマシテハ、特ニ缺點ガ多イノデアリマ
ス、就中會社組織ニ依ル企業ガ日ニ月ニ盛
トナリマシタニ拘ラズ、之ニ關スル法規ガ
周到デナイ爲ニ、發起人、取締役等ノ責任
其他重要ナル法律關係ガ、兎角明確ヲ缺キ
マシテ、多數ノ人々ノ權益ニ不安ヲ與ヘマ
シタコト、殊ニ會社ノ事業ガ蹉跌シマシタ
ナヤウナ場合、諸方面ニ廣ク測ラザル損害
ヲ及ボシマシタコトハ、洵ニ遺憾ニ堪ヘナ
カッタノデアリマス、仍テ政府ハ昭和四年內
閣ニ法制審議會ヲ設置シテ、朝野ノ權威者
三十餘名ヲ其委員ニ任命致シマシタ、其第
一ノ事業トシテ商法全般ニ亙ル改正要綱ヲ
同審議會ニ諮問致シマシタル所、同審議會
ハ實業界、法曹界、學界等、各方面ノ意見
ヲ徴シマシテ、愼重ニ審議致シマシタ結果、
昭和六年七月ニ先ヅ商法中急速ニ改正ヲ要
シマスル第一編總則及ビ第二編會社ノ二編
ニ付キ、二百六項目ニ亙ル周到ナル改正要
綱ヲ決定シテ、政府ニ對シテ答申セラレタノ
デアリマス、政府ハ右改正要綱ヲ世間ニ公ニス
ルト共ニ、昭和七年十月司法省內ニ商法總則
及ビ會社編改正調査委員會ヲ設ケ、改正法
律案ノ立案ノ任ニ當ラシメマシタル所、同委
員會ハ右改正要綱ヲ基礎トシテ、銳意審議
立案致シマシタ結果、昭和十年十二月改正
法律案ノ立案ヲ完了致シマシタ、而シテ政
府ハ取敢ヘズ右法律案ヲ世間ニ公表シテ、
之ニ對スル意見ヲ徵シ、其後右法律案ニ若
干ノ修正ヲ加ヘマシタルモノヲ、去ル第七
十囘帝國議會ニ提案致シマシタル所、御承
知ノ如ク貴族院ニ於テ一一一ノ修正ガアッテ
可決セラレ、本院ノ委員會ニ於テモ愼重
御容議ヲ重ネテ戴イタノデアリマスガ、御
承知ノ如キ事情ニ依リ遂ニ成立ヲ見ルニ至
ラナカッタ次第デアリマス、仍テ曩ニ提案致
シマシタ法律案ニ、貴族院ニ於ケル修正其
他一二ノ修正ヲ加ヘマシタルモノヲ本案ト
致シマシテ、今囘玆ニ提案スルニ至ッタ次
第デアリマス、前囘提案ノモノト本案トノ
異ル點ハ、前囘ノ貴族院ノ修正ト本院ノ委
員會ニ於ケル多數ノ御意向トヲ尊重シテ、
二三ノ改正ヲ加ヘテアルダケデアリマス
本案ハ商法第一編及ビ第二編、卽チ商法
中一部ノ改正ヲ目的トスルモノデアリマス、第
四編ノ手形編ニ對シマシテハ、旣ニ議會ノ
協贊ヲ經マシテ、手形法及小切手法ノ制定
ヲ見テ居リマス、又第三編商行爲及ビ第五
編海商ノ二編ニ對シマシテハ、昭和十一年
ノ末ニ法制審議會ニ於キマシテ、改正要綱
ガ決定セラレ、目下政府ニ於テ改正法律案
ノ作成ニ付キ調査〓究ヲ進メテ居ル次第デ
アリマス、右ノ如ク本案ハ商法中一部ノ改
正ヲ目的トスルモノデハアリマスガ、其內
容ハ商法第一編及ビ第三編ニ對シ、殆ド全
般的ノ改正ヲ企テタモノデアリマシテ、改
正ヲ加ヘマシタ點ハ相當多數ニ上ッテ居リ
マス、今比較重要ト認メラレルモノヲ列擧
致シテ見マスルト、第一編總則編ニ付キマ
シテハ、商號ニ關スル規定ヲ補充シマシタ
點營業讓渡ノ場合ノ權利關係、殊ニ營業
讓受人ノ責任ニ付キ新ナ規定ヲ設ケマシタ
點等デアリマシテ、第二編會社編ニ付キマ
シテハ、會社全般ニ關シテ、會社ハ本店ノ所
在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スニ依リ、成立
スルモノトシマシタ點、會社ノ繼續ヲ廣ク
認メマシタ點、會社ノ合併無效ノ訴ノ制度
ヲ創設シマシタ點、會社ノ設立無效ノ訴ニ
關スル規定ヲ改正シマシタ點、罰則ニ付キ
全般的改正ヲ加ヘマシタ點、合名會社及ビ
合資會社ニ關シマシテハ、社員ノ責任ヲ明
確ニシマシタ點、株式會社ニ關シマシテハ、
定款ハ公證人ノ認證ヲ受クベキモノトシマ
シタ點、現物出資ト同視スベキ、所謂財產
引受及ビ事後設立ニ付キ規定ヲ新ニ設ケマ
シタ點、募集設立ノ場合ニ於テモ、一七ノ
事項ニ付キ、裁判所ノ選任シタル檢査役ノ
檢査ヲ受クベキモノトシマシタ點、所謂預
合ニ關シ適當ナル禁止規定ヲ設ケマシタ
點記名株式ニ付キ裏書讓渡ノ制度ヲ設ケ
マシタ點、優先株、後配株等種類ヲ異ニス
ル株式ノ發行ヲ認メ、且ツ會社設立ノ場合
ニ於テモ之ヲ發行シ得ルモノトシマシタ點、
株主總會ノ決議取消ノ訴ニ關スル規定ヲ改
メ、且ツ決議無效ノ確認ノ訴ニ關シ、規定
ヲ新ニ設ケマシタ點、株主總會ノ特別決議
ヲ必要トスル事項ヲ明確ニシマシタ點、取
締役又ハ監査役ハ、定款ニ別段ノ規定ナキ
限リ、株主中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要シ
ナイモノトシマシタ點、少數株主權ノ行使
ニ付キ、若干ノ制限ヲ加ヘマシタ點、社債
ニ關スル規定ニ重要ナ補修ヲ加ヘ、且ツ社
債權者集會ノ制度ヲ新設シマシタ點、資
本增加ニ關スル規定ニ重要ナル改正ヲ加
ヘマシタ點、各種株式ノ相互ノ轉換ヲ認
ムルト共ニ、株式ニ轉換シ得ル社債ノ發行
ヲモ認メマシタ點、資本ノ增加又ハ減少
ノ無效ノ訴ニ關シ、規定ヲ新ニ設ケマシタ
點會社ノ整理ノ制度ヲ新ニ設ケマシタ
點合併ニ關スル規定ニ必要ナ補修ヲ加ヘ
マシタ點、特別〓算ノ制度ヲ新ニ設ケマシ
タ點等デアリマス、尙ホ商法中改正法律施行
法案ハ、商法ノ改正ニ伴ヒ新舊法ノ調和ヲ
圖ル爲メ、其他施行上必要ナル事項ヲ規定
致シタモノデアリマス、以上ノ外詳細ノ點
ニ付キマシテハ、必要ニ應ジマシテ、政府
委員ヨリ十分ニ說明ヲ致サセル積リデアリ
やっ、尙ホ本法改正案ハ、現行法ニ對シ相
當重要ナ改正ヲ加フルモノデアリマスノ
デ、幸ニ御協賛ヲ得テ公布セラレマシタ場
合ニ於テハ、公布後或ル期間其施行準備ニ
充テ、ソレカラ實施致シタイト考ヘテ居リ
やっ、本會議ノ際ニモ申上ゲタ所デゴザイ
マスガ、今囘ノ事變ニ關聯シ、國民經濟ノ
運行ヲ確保スルノ必要ガ、日ニ日ニ其度ヲ
加ヘツヽアルコトハ、申ス迄モナイ所デア
リマス、隨テ本案ニ於ケルガ如キ會社制度
ノ堅實ヲ圖ル爲ノ新方策ヲ立テマスルコト
ハ、今日ニ於テ愈〓急務トナッテ參ッタノデ
アリマス
次ニ有限會社法案ノ提案理由ヲ申上ゲタ
イト存ジマス、本案制定ノ趣旨ニ付キマシ
テハ、本會議ノ際ニ極メテ簡單ニ其〓要ヲ
申述ベタノデゴザイマスガ、我ガ商法ニ於
キマシテハ、御承知ノ如ク、合名會社、合
資會社、株式會社及ビ株式合資會社ノ四種
類ノ會社ヲ認メテ居リマシテ、各會社共ソ
レゾレ其特色ヲ有シテ居ルノデアリマスル
ガ、就中最モ重要ナ活動ヲ致シテ居リマス
ノハ株式會社デアリマシテ、當委員會ニ
於テ御審議ヲ願ッテ居リマスル商法中改正
法律案ニ於テモ、努力ヲ株式會社ノ法規ニ
集中シテ居ル次第デアリマス、御承知ノ如
ク株式會社ヲ組織シマスル社員、卽チ株主
ノ責任ガ有限ニナッテ居リマスコトガ、企業
組織トシテ歡迎セラレルノデアリマスガ、
通例株式會社ノ株主ノ數ハ、甚ダ多イノデ
アリマシテ、或ル株主ト他ノ株主トノ間ニ
聯絡ノナイノガ普通デアリマスルシ、又廣
ク株式ノ賣買ガ行ハレマシテ、株主ノ異動
ハ常ニ生ジテ居ルノデアリマス、然ルニ株
式會社ノ株主ト同ジク有限責任デハアリマ
スルケレドモ、相互ニ信賴關係ノ篤イ少數
者ニ依ッテノミ組織スル特殊ノ法人モ、亦營
業ニ甚ダ適當ナ形態デアリマシテ、御承知
ノ如ク英國ニ於テ先ヅ發達シ、獨佛等ノ諸
國モ既ニ之ヲ是認シテ居ルノデアリマス、
我國ニ於キマシテモ、實業界ニ於テ大分以
前カラ其要望ガ强クナッテ居タノデアリマ
シテ、昭和六年七月法制審議會ハ、商法改
正要綱ノ諮問ニ對スル答申ノ一項目トシテ
「外國法上ノ有限責任會社又ハ英國法上ノ
私會社ニ該當スル特別ノ會社ヲ認メ之ニ付
キ特別法ヲ以テ規定ヲ設クルコト」ヲ明カ
ニセラレタノデアリマス、之ニ基キマシテ司
法省內ノ商法總則及ビ會社編改正調査委員
會ニ於キマシテ、商法中改正法律案ニ引續キ、
有限會社法案ノ立案審議ヲ進メ、今囘玆ニ
同法案ヲ提出スルノ運ビニ至ッタ次第デアリ
マス、本案ハ第一章總則、第二章設立、第三
章社員ノ權利義務、第四章會社ノ管理、第
五章定款ノ變更、第六章合併及組織變更、
第七章解散、第八章外國會社、第九章罰則、
第十章雜則ニ分レ、八十九箇條ヨリ成ッテ居
リマス、今本案ノ骨子トモ申スベキ要點ヲ
列擧致シテ見マスルト
一、有限會社ハ其目的ヲ商法上ノ會社ト
全ク同一ト致シマシタコト
二、社員ノ責任ハ其出資ノ金額ヲ限度ト
致シマシタコト
三、社員ノ數ノ最大限度ヲ原則トシテ五
十人ト致シマシタコト
四、資本ノ總額ノ最大限度ハ別ニ制限致
シマセヌガ、其最小限度ヲ一万圓ト致
シマシタコト
五、社員ノ持分ハ出資口數ニ分割スルモ
ノトシ、出資一口ノ金額ヲ百圓以上ト
致シマシタコト
六、持分ノ讓渡ニハ社員總會ノ特別決議
ヲ要スルモノトシ、社員相互間ノ讓渡
ニ付テハ、定款ヲ以テ其制限ヲ緩和ス
ルコトヲ得ルモノト致シマシタコト
七、設立ノ際ニ必ズ出資全額ノ拂込ヲ爲
スモノトシ、拂込未濟ノ分ニ付テハ會
社成立當時ノ取締役、監査役及社員ガ
連帶シテ拂込ノ責ニ任ズルモノト致シ
マシタコト
八現物出資又ハ財產引受ニ付其財產ノ
評價ガ不當ナル場合ニハ會社成立當時
ノ社員ガ連帶シテ責任ヲ負フモノト致
シマシタコト
九資本增加ノ場合ニモ右ニ述ベタ所ト
同趣旨ノ規定ヲ設ケマシタコト
+、業務ノ執行ハ取締役ヲシテ之ニ當ラ
シムルコトト致シマシタガ、監査役ヲ
置タト否トハ任意トシ、定款ノ定ムル
所ニ依ルモノト致シマシタコト
十一、社員總會ニ付書面ニ依ル決議ヲ認
メ其他多クノ事項ヲ會社ノ自治ニ委セ
マシタコト
十二、少數社員ノ權利ヲ認メマシタコト
十三、有限會社ト他ノ有限會社又ハ株式
會社トノ合併ヲ認メマシタコト
十四、株式會社ハ其組織ヲ變更シテ有限
會社ト爲スコトヲ得ルモノトシ有限會
社ハ其組織ヲ變更シテ株式會社ト爲ス
コトヲ得ルモノト致シマシタコト
十五、貸借對照表ノ公〓ハ之ヲ强制セザ
ルモノト致シマシタコト
十六、社債ノ募集ハ之ヲ認メザルモノト
致シマシタコト
等デアリマス
其他詳細ノ點ニ付キマシテハ必要ニ應ジマ
シテ、政府委員ヨリ十分ニ說明ヲ致サセル
積リデアリマスガ、要スルニ先程申述ベマ
シタ特殊ノ營業組織ヲ是認シテ、之ニ適應
スル法規ヲ網羅シタモノデアリマシテ、國民
經濟ノ發達ノ爲ニ大イニ稗益スルコトガ出
來ヨウト存ズル次第デアリマス、今囘ノ事
變ニ關聯シ、國民經濟ノ健全ナル運行ヲ確
保スル必要ガ日ニ日ニ其度ヲ加ヘツヽアル
コトハ申スマデモナイ所デアリマスシ、事
變後ノ事態ニ備ヘマスル爲ニ、商法中改正
法律案ト相俟ッテ、會社關係法規ノ完備ヲ期
スルコトハ、今日ニ於テ全ク焦眉ノ急務ト
ナッテ參ッタノデアリマス、何卒十分ニ御審
査下サレ、此法案ノ通過ニ御盡力アランコ
トヲ切望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=12
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013・野村嘉六
○野村委員長 本日ハ此程度デ散會致シマ
ス、明日ハ午前十時カラ開會致シマス
午後一時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007311639X00219380303&spkNum=13
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