1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年一月二十七日(木曜日)
午後一時十五分開議
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議事日程 第六號
昭和十三年一月二十七日
午後一時開議
第一 (第一號)昭和十二年度歳入歳出總豫算追加案
第二 昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會
第四 造幣局東京出張所廳舍其の他の新營費に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 對支文化事業特別會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 兵役法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 國民健康保險法案(政府提出) 第一讀會
第八 支那事變に關する臨時軍事費の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 軍の需要充足の爲の會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 農地調整法案(政府提出) 第一讀會
第十二 臨時租税増徴法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 所得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 相續税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十五 登録税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 酒造税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十七 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十八 麥酒税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十九 大正九年法律第十二號中改正法律案(所得税法の施行に關する件)(政府提出) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
裁判所の設立に關する法律案
大正二年法律第九號中改正法律案(裁判所管轄區域に關する件)
(以上一月二十六日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
民族優生保護法案
提出者 八木逸郎君
大楠公遺蹟顯彰に關する建議案
提出者 曾和義弌君
水澤遠野間鐵道敷設に關する建議案
提出者
志賀和多利君 泉國三郎君
水澤大船渡間省營バス運轉に關する建議案
提出者
志賀和多利君 泉國三郎君
青年學校補習費増額に關する建議案
提出者
庄司一郎君 大石倫治君
戰病死者町村葬に關する郵便物無料取扱に關する建議案
提出者 古島義英君
(以上一月二十五日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
賣藥制度に關する質問主意書
提出者 清水留三郎君
(以上一月二十五日提出)
一去二十五日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
六八 金澤正雄君
七六 小高長三郎君
一去二十五日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
内閣恩給局長 高木三郎
内閣東北局長 桑原幹根
内閣紀元二千六百年祝典事務局長 歌田千勝
第七十三囘帝國議會政府委員被仰付
外務省歐亞局長 井上庚二郎
外務省亞米利加局長 吉澤清次郎
第七十三囘帝國議會外務省所管事務政府委員被仰付
厚生書記官 福本柳一
第七十三囘帝國議會厚生省所管事務政府委員被仰付
一昨二十六日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
遞信書記官 有田喜一
第七十三囘帝國議會遞信省所管事務政府委員被仰付
一去二十五日常任委員長補闕選擧の結果左の如し
豫算委員
委員長 田子一民君(委員長若宮貞夫君昨二十四日委員辭任に付其の補闕)
一去二十五日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第一部選出
豫算委員 岡田忠彦君(若宮貞夫君補闕)
一去二十五日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第九部選出豫算委員 杉浦武雄君
一昨二十六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第九部選出
豫算委員 由谷義治君(杉浦武雄君補關)
一去二十五日議長に於て選定したる委員左の如し
電力管理法案(政府提出)外三件委員
俵孫一君 三好榮次郎君
小柳牧衞君 平川松太郎君
加藤鯛一君 松村謙三君
紫安新九郎君 松尾四郎君
小山倉之助君 堀内良平君
齋藤直橘君 岡田喜久治君
大島寅吉君 岡野龍一君
牧野賤男君 川島正次郎君
田邊七六君 南條徳男君
中田儀直君 武田徳三郎君
土倉宗明君 大野伴睦君
田中好君 大本貞太郎君
増永元也君 綾部健太郎君
清瀬規矩雄君 佐藤啓君
青木精一君 長谷長次君
窪井義道君 冨吉榮二君
麻生久君 三宅正一君
小山亮君 青木作雄君
一昨二十六日委員長及理事互選の結果左の如し
電力管理法案(政府提出)外三件委員
委員長 俵孫一君
理事
三好榮次郎君 小柳牧衞君
牧野賤男君 田中好君
窪井義道君 冨吉榮二君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、豫算委員長ヨリ本日
本會議中竝ニ自今本會議中ト雖モ委員會ヲ
開キタイトノ申出ガアリマス、之ヲ許スニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマスー-日程第一、
第一號、昭和十二年度歲入歲出總豫算追加
案ヲ議題ト致シマス、豫算委員長ノ報〓ヲ
求メマス-田子一民君
第(第一號)昭和十二年度歲入歲出
總豫算追加案
報〓書
一(第一號)昭和十二年度歲入歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年一月二十六日
豫算委員長田子一民
衆議院議長小山松壽殿
〔田子一民君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=2
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003・田子一民
○田子一民君 只今議題トナリマシタ昭和
十二年度歲入歳出總豫算追加案第一號ニ付
キマシテ、豫算委員會ニ於ケル審議ノ經過竝
ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス、今回政府ノ提
出ニ係ル昭和十二年度歲入歲出總豫算追加
案第一號ハ、軍事扶助費ノ增額ニ要スル經費
ヲ計上致シタノデアリマス、昭和十二年度
ニ於キマスル軍事扶助法施行ノ爲ニ要スル
軍事扶助費ノ當初豫算額ハ三百八十餘万圓
デアリマシタ、然ルニ今次事變ノ勃發ニ伴
ヒマシテ、應召軍人ノ增加多數ヲ加ヘマシ
テ、扶助ヲ要スル者ガ急增致シタノデアリ
マス、是ガ爲ニ曩ニ第七十二囘帝國議會ニ
於キマシテ千五百万圓ヲ追加致シマシタ、
其後ニ尙ホ不足ヲ生ジマシタ爲ニ、政府ハ
昨年十二月下旬取敢ズ第一豫備金ヨリ五百
万圓ヲ支出致シタノデアリマス、而シテ今
囘ハ更ニ二月以降年度內所要經費ト致シマ
シテ、千五百二十万圓ヲ追加豫算トシテ計
上致シタノデアリマス、卽チ本年度ニ於キ
マスル軍事扶助費ノ總額ハ三千五百餘万圓
トナリマス、而シテ是ガ財源ト致シマシテ
ハ、昭和十二年度豫算實行上ノ歲入超過額
ヲ以テ支辨スルコトト致シマシタノデ、別
ニ歲入豫算ヲ計上致シテ居リマセヌ
本案ハ去ル二十四日議會ニ提出セラレマ
シテ、豫算總會ハ昨二十六日午前十時ヨリ
開會致シマシテ、賀屋大藏大臣、木戶厚生
大臣ヨリソレ〓〓提案理由ノ御說明ガアリ
マシタ、委員會ニ於キマシテハ、本案ハ事
變下ニ於キマシテノ軍事扶助法運用ニ伴フ
當然ノ結果デアリマスシ、又一面ニ於キマ
シテハ、扶助額限度ヲ高ムルノ必要ヲ生ジ
テ居ルコトヲ認メマシテ、緊急且ツ已ムヲ
得ザルモノト認メマシタ、隨ヒマシテ別ニ
質疑討論ヲ用ヒズ、直チニ採決ニ入リマシ
テ、原案贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマシタ
所全員之ニ對シ贊成ヲセラレマシテ、卽
チ可決致シタノデアリマス、此段御報告申
上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 採決致シマス、委員
長報告ノ通リ決スルニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ
求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員、仍テ委員
長報告ノ通リ全會一致可決確定致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=5
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006・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第二乃至第五
ノ四案ト共ニ、日程第八乃至第十ノ三案ヲ
一括議題ト爲シ、其審議ヲ進メラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
二、昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案、日程第三、
昭和七年法律第一號中改正法律案、日程第
四、造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營費ニ
關スル法律案、日程第五、對支文化事業特
別會計法ノ特例ニ關スル法律案、日程第八
支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ充ツ
ル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律
案日程第九、朝鮮事業公債法中改正法律
案〓日程第十、軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法
ノ特例ニ關スル法律案、右七案ヲ一括シテ
第一讀會ヲ開キマス-大藏大臣賀屋興宣
君
第二昭和十三年度一般會計歲出ノ財
源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律
案(政府提出)第一讀會
第三昭和七年法律第一號中改正法律
案(滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲
公債發行ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會
第四造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ
新營費ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
第五對支文化事業特別會計法ノ特例
ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
第八支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ
財源ニ充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰
入金ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
第九朝鮮事業公債法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
第十軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例
ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案
第一條政府ハ昭和十三年度一般會計歲
出ノ財源ニ充ツル爲他ノ法律ニ依リ起
債シ得ル金額ノ外五億五千七百八十萬
圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲
スコトヲ得
第二條政府ハ昭和十三年度一般會計歲
出豫算翌年度繰越額ノ財源ニ充ツル爲
他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額ノ外昭
和十四年度ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ借
入金ヲ爲スコトヲ得但シ前條ノ規定ニ
依ル公債又ハ借入金ト通ジテ前條ノ制
限額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條前二條ノ規定ニ依ル公債ノ發行
價格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場合
ニ於テハ前二條ノ制限以外ニ公債ヲ發
行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年法律第一號中左ノ通改正ス
「十二億六千四十萬圓」ヲ「十三億八千五
百萬圓」三段人。
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營費
ニ關スル法律案
昭和十三年度ニ於テ造幣局東京出張所廳
舍其ノ他ノ新營ニ要スル經費ニ充用スル
爲造幣局資金ノ内三十五萬圓ヲ限リ一般
會計ニ繰入ルルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ繰入ルベキ金額ノ歲出
豫算ニ於ケル支出殘額ハ之ヲ翌年度ニ繰
越シ使用スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關ス
ル法律案
對支文化事業特別會計ノ歲出額ハ昭和十
三年度以降當分ノ內對支文化事業特別會
計法附則第四項ノ規定ニ依ルモノト合シ
三百萬圓ヲ限リ同法第七條ノ制限額ヲ超
過スルコトヲ得
前項ニ規定スル年度ニ於テ所屬證劵ノ償
還元利金ノ收入不足ニ因リ同特別會計ノ
決算上不足ヲ生ジタルトキハ積立金ヨリ
之ヲ補足スベシ
附則
本法ハ昭和十三年度ヨリ之ヲ施行ス
支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ
充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關
スル法律案
政府ハ支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財
源ニ充ツル爲每年度豫算ノ定ムル所ニ依
リ通信事業、帝國鐵道、關東局、朝鮮總
督府、臺灣總督府及樺太廳ノ各特別會計
ヨリ臨時軍事費特別會計ニ繰入金ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ規定ニ依ル繰入金ニ付テハ後日一
般會計ヨリ之ニ相當スル金額ヲ右繰入ヲ
爲シタル各特別會計ニ繰入ルベシ
第一項ノ規定ニ依ル通信事業及帝國鐵道
ノ各特別會計ノ繰入金ハ當該特別會計ノ
資本勘定ノ歲出トス
附則
本法ハ昭和十三年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
朝鮮事業公債法中改正法律案
朝鮮事業公債法中左ノ通改正ス
第一條中「八億四千百五十萬圓」ヲ「八億
九千三百五十萬圓」二九六人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關
スル法律案
軍ノ需要充足ノ爲必要アル場合ニ限リ國
務大臣ハ會計法第二十一條但書ノ規定ニ
拘ラズ當分ノ内勅令ノ定ムル所ニ依リ前
金拂又ハ〓算拂ヲ爲スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣賀屋興宜君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債發行ニ關スル法律案外六件ノ
法律案ニ付提出ノ理由ヲ說明致シマス
先ヅ昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債發行ニ關スル法律案ハ、歲入
補塡公債ニ關スルモノデアリマシテ、昭和
十三年度一般會計歲出ノ財源ト致シマシテ
ハ、現行ノ震災善後公債法及ビ道路公債法
ニ依ル公債、竝ニ次ニ說明致シマスル滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲ノ公債法中改正
法律案ニ依ル公債ヲ發行致シマスル外、歲
入ノ不足ヲ補塡スル爲メ五億五千七百八十
万圓ノ公債ノ發行ヲ必要トスルノデアリマス
ルガ、是ガ爲メ別ニ起債ノ權能ヲ得ルコト
ガ必要デアリマス、尙ホ昭和十三年度歲出
豫算中、若干ノ金額ハ例年ノ如ク翌年度ニ
繰越サルヽ結果ニナルデアラウト存ゼラレ
マス所、其繰越額ノ財源タル公債ハ、必シ
モ之ヲ昭和十三年度內ニ發行スル必要ガア
リマセヌノデ、翌年度ニ於テ發行シ得ルコ
トト致シマスルヲ適當ト認メタ次第デアリ
マス
次ニ昭和七年法律第一號中改正法律案
ハ滿洲事件公債ニ關スルモノデアリマシテ、
滿洲事件ニ關スル經費ニ關シマシテハ、現
行ノ昭和七年法律第一號ニ依リ昭和十二年
度マデノ經費ハ之ヲ支辨シ得ルコトニ相
成ッテス居リマス所、昭和十三年度ニ於テ必
要ナル經費一億四千四百十餘万圓ノ中、滿
洲國國防費ノ分擔金受入等ノ金額ニ相當ス
ルモノヲ差引キマシタル一億二千四百六十
餘万圓ハ、今日ノ財政狀況竝ニ本經費ノ性
質ニ顧ミマシテ、從來ノ如ク之ヲ公債財源
ニ依ルコトトスル爲メ、現行法ニ依ル公債
ノ發行限度ヲ增額スル必要ガアルノデアリ
マス
次ニ造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營
費ニ關スル法律案ハ、造幣局資金ノ一般會
計繰入ニ關スルモノデアリマス、造幣局東
京出張所ノ廳舍ハ腐朽破損甚シク、且ツ狭隘
ノ爲メ、改築ノ必要ニ迫ラレテ居リマスノ
ミナラズ、今囘產金法ノ實施ニ伴ヒマシテ、
同所ニ於テモ金銀地金ノ精製品位ノ證明ヲ
スルコトト致シマシタノデ、是ガ諸設備ノ
新設等ニ要スル經費ニ充用スル爲メ、造幣
局資金ノ中三十五万圓ヲ拂出シ、一般會計
ニ繰入ルヽ等ノ必要ヲ生ジタ次第デアリマ
ス
次ニ對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關
スル法律案ニ付說明申上ゲマス、對支文化
事業特別會計ノ歲出額ハ、同特別會計法ノ
現行規定ニ於キマシテハ、寄附金ニ依ルモ
ノノ外、每年度四百万圓ヲ超過シ得ナイコ
トト相成ッテ居リマス所、支那事變發生後
ニ於ケル諸般ノ情勢ニ顧ミマスルニ、補助
費及ビ助成費ヲ增加スル等ノ必要ガアリマ
スノデ、昭和十三年度以降當分ノ內、右ノ
制限額ヲ六百万圓マデ增額致シマスルト共
ニ、其間本會計ニ於キマシテ、萬一所屬證
劵ノ償還元利金ノ收入不足ニ因リ決算上不
足ヲ生ジマシク時ハ、積立金ヨリ之ヲ補足
シ得ルノ途ヲ開イテ置クヲ適當ト認メタノ
デアリマス
次ニ支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財
源ニ充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ
關スル法律案ニ付說明致シマス、支那事
變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ充ツル爲
メ、每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ特別會計ヨ
リ臨時軍事費特別會計ニ繰入金ヲ爲スノ必
要ヲ認メマシテ、昭和十三年度ニ於テハ通信
事業特別會計ヨリ千六百万圓、帝國鐵道特
別會計ヨリ四千万圓、關東局特別會計ヨリ
三百五十万圓朝鮮總督府特別會計ヨリ千七
百五十万圓、臺灣總督府特別會計ヨリ千百
万圓及ビ樺太廳特別會計ヨリ二百三十万圓
ヲ、ソレ〓〓臨時軍事費特別會計ニ繰入ルヽ
コトト致シマシタ所、右繰入ニ關シマシテ
ハ法律ノ制定ヲ必要ト致シマスルノデ、本
法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス
次ニ朝鮮事業公債法中改正法律案ニ付說
明致シマス、朝鮮總督府特別會計ニ於テ、昭
和十三年度以降ノ繼續費トシテ計上致シマ
シクル鐵道建設及ビ改良費ノ追加額四千餘
万圓、竝ニ金增產計畫ニ伴フ送電施設費三
千六百万圓ハ、其經費ノ性質及ビ同特別會
計歲計ノ現狀ニ顧ミマシテ、是ガ財源ヲ公
債ニ依ルコトヽ致シマシタル等ニ依リ、現
行朝鮮事業公債法ノ公債發行限度ヲ增加ス
ルノ必要ガアリマスルノデ、本法律案ヲ提
出致シマシタ次第デアリマス
最後ニ軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特
例ニ關スル法律案ニ付說明致シマス、現下
ノ時局ニ伴ヒ、軍ノ需要スル物資ノ數量ハ
著シク增嵩ヲ來シテ居リマスル所、是ガ調
達ノ圓滑ヲ圖リ、軍ノ行動ニ支障ナキヲ期
シマスルコトハ、喫緊ノ要務デアリマスル
ノデ、此際會計上ノ臨時應急的ノ措置トシ
テ、現行會計法ノ特例タルベキ法律ヲ制定
シ、當分ノ內、前金拂又ハ〓算拂ノ範圍ヲ
擴張スルコトヲ適當ト認メ、本法律案ヲ提
出致シタ次第デアリマス
以上七件ノ法律案ニ付何卒御審議ノ上
速ニ協贊ラ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-池田秀雄君
〔池田秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=10
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011・池田秀雄
○池田秀雄君 私ハ對支文化事業特別會計
法ノ特例ニ關スル法律案ニ付テ、二三政府
ニ對シテ質問ヲ致シタイノデゴザイマス
〔議長退席、副議長著席〕
本案ハ一見極メテ輕小ナル案ノヤウデゴザ
イマスルケレドモ、私ノ見ル所ヲ以テ致シ
マスレバ、甚ダ重要ナル意義ヲ持ッテ居ルヤ
ウニ思ヒマス、若シ政府ノ提案ニシテ左程
重要ナル意義ガナイト致シマスレバ、私ハ
此際ニ於テ重要ナル意義ヲ持タセナケレバ
ナラヌモノデアルト考ヘルノデゴザイマス、
此意味ニ於キマシテ私ハ對支文化事業ニ
付キマシテ、根本的ナル一一三ノ點ニ付キマシ
テ政府ニ質問ヲ致シタイノデゴザイマス
今囘ノ事變ガ我國ニ取リマシテ未曾有ノ
大事變デアリ、又支那ニ取リマシテモ慣レ
テハ居ルト申シマスケレドモ、稀有ノ大事
變デアルコトハ疑モアリマセヌ、而シテ此
事變ガ我國ノ目的ハ領土ニアラズ提携ニア
リ、東亞永遠ノ平和ヲ確保センガ爲デアル
ト云フコトハ、昨年ノ臨時議會ニ於テ畏ク
モ陛下ノ賜リタル詔勅ニ依ッテ炳乎トシテ
明ナル事實デゴザイマス、斯ノ如キ公明正
大ナル目的ヲ持ッテ居ル我國ハ、何故ニ隣邦
ト干戈ヲ執ッテ相戰ハザルベカラザルカ、何
故ニ提携スル前ニ相手ヲ叩カザルベカラザ
ルカ、甚ダ悲シムベキコトデハアリマスル
ケレドモ、致シ方ナイ事實デゴザイマス、
然ラバ其原因ハ那邊ニ存在スルカト申シマ
スレバ、蔣介石政府ノ排日、侮日、抗日、或
ハ野心アル第三國ノ煽動等、數ヘ擧ゲテ見
マスレバ數限リモアリマセヌ、併ナガラ其
原因ヲ一層深ク掘下ゲテ見マスレバ、私ハ此
兩國ノ間ニ於テ近年思想、感情等ガ段々ニ
隔離シテ居タ點ニ、其根本ノ原因ガアルト
確信ヲ致シテ居リマス、凡ソ國家ト國家ト
ノ本當ナル親善關係ハ、其國ト國トノ間ニ於テ
文化思想ノ共通ノ基礎ガアルト云フコトガ、
本當ニ永遠ナル握手、平和ノ基礎デアルト
私ハ信ジテ居ルノデアリマス、例ヲ擧ゲテ
申シマスレバ、例ヘバ英米ノ如キ實ハ兩虎
相食ム、兩雄竝ビ立タザルヤウナ境遇ニア
ル關係ニアル、然ルニ亞米利加ガ英吉利ト
喧嘩別レヲシテ、サウシテ別ノ國ヲ建テマ
シテ以來幾度カ衝突ヲ致シマシタ、併ナガ
ラ結局兄弟喧嘩ノヤウナモノデ、何時ノ間
ニカ手ヲ握ッテ居リマスルモノハ、此兩國
ガ同一ナル文化ノ基礎ノ上ニ立チ、思想ノ
間ニ於テ一點相通ズル爲ニ、手ヲ握ッテ居ル
ト云フコトニ疑ヒハナイト思フノデゴザイ
マス、我國ト支那トノ關係ヲ顧ミテ見マス
レバ、實ハ二千年來友好關係ノ國家デア
ル、其間ニ蒙古ガ外來民族トシテ中國ヲ支
配シマシタ時ニ、唯一度例外トシテ相戰ッ
タコトガアリマスケレドモ、其以外ノ場合
ニ於キマシテハ、二千年以來友好關係ニア
ル、其原因ハ何處ニアックカト申シマスレ
バ、私ノ見ル所ヲ以テ致シマスレバ、政治
道德ノ上ニ於テハ儒〓、宗〓ノ上ニ於テハ
佛〓ト云フ共通文化、共通思想ノ上ニ立ツ
タノガ、是ガ二千年來友好關係ヲ持續シ
タ所以デアルト思フノデゴザイマス、
然ルニ近年ニナリマシテ、歐羅巴ノ帝國
主義思想竝ニ資本主義經濟ガ東洋ニ進出シ
テ參リマシテ、此兩國ノ間ノ儒〓、佛〓等
ハ其實力ヲ失ヒ、兩國民ノ人心ヲ支配スル
コトガ出來ナクナッタト云フ點ニ於テ、此日
支ノ間ノ相閱グ眞ノ原因ガ存在シテ居ルト
私ハ信ジテ居ルノデゴザイマス、今ヤ我ガ
皇軍ハ支那ノ南ニ於テ、北ニ於テ連戰連
勝、我ガ皇威ヲ輝カシテ居リマスルコトハ、
吾々國民ノ日夕感謝シテ措カザル所デゴザ
イマスルガ、此皇軍ノ今日ノ御苦勞ニ對シ、
眞ニ我國ノ日支ノ提携、東洋ノ平和ト云フ
コトヲ確保スルニ付キマシテハ、吾々國民
ハ、政府モ吾々モ共ニ著々トシテ其準備ヲ
進メ、其實行ヲ爲サナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、然ラズンバ千里ノ曠野ニ骨
ヲ曝ス所ノ我ガ忠勇ナル皇軍ノ諸君ニ對シ
テ、吾々ハ何ノ面目ガアルカト言ハナケレ
バナラヌト思フノデゴザイマス、然ラバ眞
ノ提携ト云フコトノ基礎ハ何處ニアルカト
申シマスレバ私ハ思想上ノ提携竝ニ經濟
上ノ提携、此二ツガ提携ノ基礎ヲ成スモノ
デアル、若シ此二ツノ提携ガ出來マスレバ、
政治上ノ提携ハ自然ノ數デアル、是ハ當然
出來ルベキモノデアルト考ヘルノデゴザイ
マス、私ハ今日經濟上ノ提携ノ點ニ付テハ
申上ゲマセヌ、是ハ我國ニ於テ囂々タル輿
論トナリ、又他ノ諸君カラ各種ノ場合ニ於
テ論議ナサルコトト思ヒマスルカラ、經濟
上ノ提携ノ問題ニ付キマシテハ私ハ申上ゲ
マセヌ、唯思想上ノ提携ニ付テ申上ゲテ見
タイノデゴザイマス
只今申上ゲマシタ通リニ、我國ト支那ト
ノ關係ガ、元來共通ノ文化ノ上ニ立チ、共
通ノ思想ノ上ニ立ッテ居ッタモノガ、西洋ノ
帝國主義竝ニ西洋ノ資本主義經濟ノ侵入ニ
依リマシテ、其間ニ龜裂ヲ生ジマシテ、遂
ニ今日相戰フヤウニナッテ居リマスルガ、私
共ハ此兩國ガ本當ニ相提携セントスルナラ
バ、東洋精神ヲ復興スルト云フコト、東洋
文化ヲ復興スルト云フコト、語ヲ換ヘテ申
シマスレバ、吾々ガ東洋本來ノ精神ニ立還
ルト云フコトデアリマス、東洋本來ノ面目
ニ立還ル、ソコニナッテ初メテ吾々日本ト支
那トノ眞ノ提携ガ出來ルト考ヘルノデゴザ
イマス、併ナガラ斯ノ如ク相手離スルニ至ツ
タノハ一日ノ故デハアリマセヌ、我國ニモ
西洋ノ帝國主義思想竝ニ資本主義經濟ハ侵
入シテ參リマシタガ、支那ニ於テハ我國ヨ
リモ早ク侵入致シマシタケレドモ、併ナガ
ラ此思想ガ澎湃トシテ全支那ヲ蔽フニ至リ
マシタノハ、我國ヨリモ遲イノデゴザイマ
入、而シテ我國ハ今ヤ西洋文化ノ沒落ガ眼
前ニアルト云フコトヲ感知致シマシテ、我
國ニ於キマシテハ本來ノ精神ニ立還ル、日
本精神ニ立還ルト云フコトニ目ガ覺メテ參ツ
テ居リマスルケレドモ、支那ニ於テハ今尙
ホ目ガ覺メテ居リマセヌ、尙ホ三民主義デ
アルトカ、或ハ共產主義デアルトカ云フ迷
夢ニ惑溺ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、三
民主義ハ孫文ノ唱ヘタル所デゴザイマスケ
レドモ、元來舶來思想ニ過ギナイ、共產主
義ガ舶來デアルコトハ言フ迄モアリマセ
又、此點カラ吾々ハドウシテモ支那ノ三民
主義、共產主義ト云フ點ヲ打破シテ行クト
云フコトデナケレバナラヌト思フノデゴザ
イマス、三民主義ニ對シ彼此レ議論スレバ、
何時マデ論ジテモ論ジ盡シマセヌケレドモ、
王道ヲ以テ立ッテ居リマスル滿洲國ノ建國
宣言書ニ於テ「何ヲカ民生ト曰フ、實ニ之
ヲ民ヲ死ニ置クナリ、何ヲカ民權ト曰フ、
惟々利ヲ專ラニスルナリ、何ヲカ民族ト曰
フ、惟々黨アルヲ知ッテ國アルヲ知ラズ」ト
云フ宣言ヲ致シテ居リマスルガ、私共ハ此
宣言ハ實ニ骨ヲ抉ル痛快ナル宣言デアリ、サ
ウシテ本當ノ心底ニ觸レタル宣言デアルト
考ヘルノデゴザイマス、今日三民主義ノ害
毒ニ惱ンデ居ル支那國民ハ、此宣言ニ對シ
テ痛快ヲ叫バザル者ハアリマスマイ、尙又
共產主義ニ對シテモ、私共ハ元來支那人ガ
之ヲ理解シ喜ンデ居ルモノトハ信ジマセヌ、
唯單ニ一部ノ「インテリ」ガ之ヲ弄ンデ居ル
ニ過ギナイト思フノデゴザイマス、元來支那
ノ儒〓ト共產主義トハ絕對ニ相容レザル思
想デアル、御承知ノ通リ儒〓ハ近キヨリ遠キ
ニ及ボスト云フ、所謂人情主義ニ立ッテ居リ、
常識主義ニ立ッテ居リマシテ、共產主義ノ
一律平等ノ思想トハ絕對ニ相容レルモノデ
ハアリマセヌ、尙又儒〓ハ道德政治ノ根柢ノ
上ニ立ッテ居ッテ、サウシテ共產主義ノ權力
獨裁ニ依ル、アノ「ボルシェビズム」トハ相容
レルモノデハアリマセヌ、是等ノ點ヲ支那
ノ民族ガ眞ニ四千年間自國デ生レタ所ノ思
想自國デ生レタル根本觀念ニ目覺メルナ
ラバ、私ハ三民主義デアルトカ、或ハ共產主
義ト云フ「バタ」臭イ思想ハ、之ヲ支那人ノ心
ノ中カラ取拂ハシムルニ何等ノ難キヲ見ナ
イト思フノデゴザイマス、今日支那人ノ渴
望シテ居ル所ハ、三民主義デモナケレバ共產
主義デモアリマセヌ、唯本當ニ安居樂業ノ
地ヲ求メタイ、所謂王道國家ガ欲シイ、一律
平等ノ共產主義デナク、本當ニ近キヨリ遠
キニ及ボス、古來ノ道德生活ガシクイノデ
アリマス、ソレデ私共ハ、今日我國ハ支那
ニ對シテ眞ノ提携ヲ欲シ、東洋永遠ノ平和
ヲ目的ト致シマスルガ、政府ニ於キマシテ
ハ此點ニ於テ、本當ニ支那ノ國民ヲ助ケ、
北京政府ヲ助ケテ行ク所ノ決心ヲ持ッテ居
ラルヽヤ否ヤ、屢次ノ宣言ニ依リマスレバ
私共ハ其決心ヲ持ッテ居ラルヽト信ジマス、
併ナガラ斯樣ナ見地カラ見テ參リマスレバ、
外務省デ持ッテ居ラルヽ所ノ對支文化事業
ト云フモノハ、餘リニ貧弱ナモノデハアリ
マセヌカ、僅ニ二千万ノ基本金ヲ以テ、
體何ガ出來ルデゴザイマセウ、年々三百万
圓ヲ支出シテ、サウシテ一體此全支那ニ亙ツ
テ吾々ト共通ノ文化ノ上ニ立ツト云フヤウ
ナ大事業ガ、果シテ爲シ得ルモノデアリマ
セウヤ否ヤ、此對支文化事業ノ出來掛ケハ
今更申上ゲル迄モナク、我國ガ苦杯ヲ喫シ
タアノ華盛頓會議以後、山東還付ノ際ニ於
テ、英國ヤ亞米利加ガ其以前ヨリモ盛ニ文
化侵略ヲ致スト共ニ、團匪事件ノ賠償金ヲ
支那ニ還付シ、所謂之ヲ惡イ言葉デ申シマ
スレバ、支那ノ御機嫌取ヲ致シマシタ時、
我國モヤハリ之ニ追隨セザルヲ得ザルヤウ
ナ狀態ニナリマシタ、サウシテ團匪事件ノ
賠償金ト山東還付ニ伴フ利權ノ或ル部分ヲ
割イテ二千万弱ノ基本金ヲ設ケテ、サウシ
テ今日ノ文化事業ガ爲サレテ居ルノデゴザ
イマス、一年僅ニ三百万圓位ヲ支出シテ、
此事業ヲ爲スト云フコトニナッタノデゴザ
イマス、而モ此三百万圓ニ於テ何ヲ爲シテ
居ルカト申シマスレバ、北京ニ於ケル人文
科學〓究所、上海ニ於テ自然科學〓究所、
或ハ東方文化學院ト云フヤウナモノヲ經營
シ、尙ホ東亞同文書院、或ハ日華學會、或
ハ支那ニ於ケル居留民國ニ補助金ヲヤッテ
居ルノデゴザイマス、三百万圓ノ金ヲ蛸ノ
手ヲ分ケルヤウニシテ之ヲ分配シテ居ラレ
マス、是等ノ事業タルヤ私ハ結構ナコトデ
アルトハ思ヒマスルケレドモ、併ナガラ斯ノ
如キコトヨリモ、尙ホ一層根本的ナ對策ヲ
今日樹立スベキ時デハナイカト思フ、是等
ノ事業ハ繼續シテ行クベキモノデアルトハ
思ヒマスルケレドモ、吾々ハ政府ニ於テ眞
ニ東洋文化、或ハ思想ノ共通ト云フ大政策
ヲ樹立シテ、是等ノ事業ハ其事業ノ附帶事
業トシテ爲スベキモノデハナカラウカト思
フノデゴザイマス、此點ニ付キマシテ私ハ
政府ハ今日ノ場合ニ於テ、從來ノ行キ方ヨ
リ一大飛躍ヲ爲シ、眞ニ東洋平和ノ確保ノ
爲ニ日支ノ共通ノ文化ヲ樹立スルト云フ立
前カラ、雄大ナル計畫ヲ立ツル所ノ御意思
ハアリマセウヤ否ヤ、今日ガ斯ノ如キ計畫
ヲ立テラレルナラバ最モ好イ機會デアルノ
ミナラズ、爲サヾルベカラザル時デアルト
思フノデゴザイマスガ、政府ノ御所見ハ如
何デゴザイマスカ
第二ノ問題ハ具體的ノ問題ニナッテ參リ
マスルガ、以上申上ゲタル目的ヨリ致シマ
シテ、私ハ支那四億万民衆ノ民心ノ嚮フ所
ヲ示ス意味ニ於テ、ドウシテモ吾々ハ今日
放ッテ置ケナイコトガアルト思フノデゴザ
イマス、ソレハ曲阜ニ於ケル孔子廟、御承
知ノ通リ蔣介石氏ガ國民政府ヲ樹立致シマ
シタ際ニ於キマシテハ、「レーニン」ノ宗〓
ハ阿片ナリト云フ、アノ「スローガン」ニカブ
レマシテ、孔子廟ハ之ヲ叩壞シ、或ハ四書
五經ハ之ヲ廢棄スルト云フヤウナ態度ニ出
テ居ッタノデゴザイマス、併ナガラ支那民衆
ノ根强キ古來ノ思想ハドウシテモ之ヲ許シ
マセヌ、故ニ流石ノ蔣介石氏モ其後孔子廟ヲ
稍〓尊敬シ、或ハ儒〓ヲ壓迫スルコトノ態
度ヲ緩メタノデゴザイマス、併ナガラ私ハ近
年孔子廟ニ行ッテ見マセヌケレドモ、恐クハ
全國民ノ嚮フ所ヲ示ス師表タルベキ孔子廟
デハナカラウト信ジテ居リマス、吾々ハ今日
此際ドウシテモ國民ノ嚮フ所ヲ示ス意味ニ
於テ、孔子廟ノ修繕ヲナサナケレバナラヌト
思ヒマス、尤モ吾々ハ支那ノ人氣取ニ斯ノ如
キコトヲ申スノデハアリマセヌ、何トナレ
バ我國ニハ元來孝道ト云フモノガアリマス
ルケレドモ、孔子〓ハ孝道ニ付テ多大ナル
稗益ヲ爲シテ居ルモノデゴザイマス、尙又
孔子ヲ尊崇スルト云フコトハ東洋精神ノ復
興、東洋文化ノ復興ト云フ點カラ見マシテ、
ドウシテモ此際爲サナケレバナラヌコトト
思フ(拍手)
斯ノ如キコトハ元來北京政府ガ爲スベキ
コトデアリマスルガ、若シ北京政府ガ第一
著手トシテ之ヲ爲スナラバ、之ニ越シタコ
トハアリマセヌ、併シ若シ北京政府ニシテ
經費多端、或ハ政務〓忙デ此點ニ目ヲ著ケ、
著手スルコトガ出來ナイナラバ、吾々ハ我
國ニ於テ之ヲ援助スルニ於テ何ノ差支ガア
リマセウ、元來西洋ノ文化侵略ハ、支那ニ
ナイ思想ヲ植付ケヨウトシテヤッテ來タノ
デゴザイマス、併ナガラ今囘ノ吾々ノ主張
スル所ハ、元來支那ノ持ッテ居ルモノヲ支那
ニ取返サセヨウト云フニ過ギナイノデアリ
マッハ、此點カラシテ吾々ハ西洋ノ學校或ハ
〓會等ノ問題トハ、大イニ趣ヲ異ニシテ居ル
ノデゴザイマス、御承知ノ通リ西洋ガ支那
ニ耶蘇〓ヲ持來リマシタコトハ、古イコト
デゴザイマスケレドモ、最近ノ動キハ明末
カラ來テ居リマス、今ヤ〓會ノ數ハ八千八
百八十ヲ算スルノデゴザイマス、學校ノ數
ハ如何ト申シマスレバ、上ハ大學、專門學
校ガ十八アリ、小學校ガ六千アリ、七千ノ
多數ノ學校ヲ經營シテ居ル、此多數ノ學校、
〓會ニ依ッテ〓養セラレタル所ノ人ガ侮日、
排日、抗日ニ和スルノハ當然ノコトデゴザ
イマセウ、吾々ハ併シナガラ外來思想ヲ以
テ之ニ押賣リセントスル者デハアリマセ
ヌ、支那四億万ノ爲ニ、支那ガ元來持ッテ居ッ
タ所ノ思想ヲ復興セシメヨウト云フノデゴ
ザイマス、其第一著手トシテ、孔子廟ヲ修繕
スルコトニ援助ヲサレル意思ハナイカ否ヤ
ト云フコトヲ私ハ御尋スルノデゴザイマス
此點ニ付キマシテモウ一ツ承リタイコト
ガゴザイマス、私ハ只今申上ゲマシタ通
リニ、吾々ノ日支提携ト云フコトハ東洋文
化ノ基礎ノ上ニ立ツ-東洋思想ノ基礎ノ
上ニ立タナケレバナラヌト申シテ居リマス
ルガ、御承知ノ通リ支那ハ文化燦然タル國
デアリ、其文獻ノ豐富ナル世界ニ類ヲ見マ
セヌ、思想ノ豐富ナル、複雜多岐ナル亦世
界ニ類ヲ見マセヌ、之ヲ累積シタモノガ四
庫全書デゴザイマスルガ、私ハ外務省ノ對
支文化事業部ノ事業ノ項目ヲ見テ參リマス
レバ、四庫全書ノ補遺竝ニ續篇ノ編輯ト云
フコトヲヤッテ居ラルヽヤウデゴザイマス、
是ハ甚ダ結構ナコトデゴザイマスルガ、併
シナガラ康熙乾隆以來既ニ出來上ッテ居ル
四庫全書ノ原本ガ存在シテ居ル、サウシテ
〓末ノ衰亡ノ時ニハ、アノ四庫全書ノ刊行
ガ出來ナカッタ、四庫全書ノ補修竝ニ續篇ノ
編輯、結構デハゴザイマスルケレドモ、二
百年來支那ノ碩學鴻儒ガ集成堆積シタ四庫
全書ノ印行ヲ、今日文化事業部デハ助ケテ
爲サル意思ハアリマセヌカ、是ハ私ハ東洋
文化ノ復興、東洋精神ノ復興ト云フコトニ
先鞭ヲ付ケテ、大ナル功績ガアルベキモノ
ト信ズルノデゴザイマス、此點ニ付キマシ
テ私ハ外務大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイノデゴ
ザイマス
第三ニモウ一ツ伺ヒタイノハ、私ハ此對
支文化特別會計法ヲ拜見致シマスレバ、第
五條ニ衞生ト云フコトガ其目的ノ一ツノヤ
ウニナッテ居リマス、サウシテ又文化事業部
デ經營シテ居ラレル學界ニ非常ニ貢獻シテ
居ラルヽ所ノ、上海ノ自然科學〓究所ノ〓
究項目ヲ拜見致シマスレバ、阿片ト云フコ
トヲ私ハ一ツモ發見致シマセヌ、私ハ此點
ヲ甚ダ奇異ニ感ジテ居リマス、元來アレダ
ケ廣汎ナ〓究科目ガアッテ、何故ニ阿片ノ
〓究科目ガ除外サレテ居ルカ、私ニハ理解
ガ出來マセヌ、御承知ノ通リ支那四億ノ大
敵ハ阿片デゴザイマス、今日支那ガ曾テ隆
隆タル文化國デアリ、赫々タル中國トシテ
隆盛ナル國家ガ今日ノ境遇ニ沈淪致シマシ
タノハ、阿片ノ害毒ガ其最大原因ヲ成シテ
居ルト私ハ信ジテ居リマス、此阿片ノ侵入
ハ御承知ノ通リ英國ノ帝國主義ガ〓朝ノ禁
ヲ犯シテ入ッテ來タモノデゴザイマス、乾隆
帝ノ時旣ニ阿片ノ禁令ヲ下シテ居リマスル
ガ、英國ハ之ヲ顧ミズ、遂ニ阿片戰爭マデ
起シテ、支那ニ侵入シテ害毒ヲ及ボシテ居
リマス、此害毒タルヤ、支那ニ阿片ヲ密輸
入致シマシタル元兇タル「ヘスチング」ガ旣
ニ其害毒ヲ言明シテ居ル位デゴザイマス、
阿片ニ付キマシテハ國際聯盟ニ於テ之ヲ取
上ゲテ防遏ニ稍〓力ヲ效シテ居リマスケレド
モ、國際聯盟ノ働キガ果シテドレダケ支那
ノ阿片ヲ止ムルニ於テ效果ガアルカ私ニハ
信ズルコトガ出來マセヌ、私共ハ眞ニ支那
四億ノ國民ヲ助ケテ行クニハ、ドウシテモ
此阿片ヲ禁遏シテ行クト云フコトニ途ヲ進
メテ行カナケレバ、眞ノ支那ノ復興ハ出來
ナイト考ヘテ居ル、故ニ眞ニ支那ヲ助ケン
ト欲スルナラバ、阿片ヲ絕滅スルコトニ協
力シナケレバナラヌ、幸ニ我國ニ於キマシ
テハ後藤新平伯ガ臺灣總督府ノ民政長官時
代ニ於テ、阿片ノ漸減方針ヲ執ッテ多大ナル
功績ヲ遺シタル經驗ヲ持ッテ居リマス、私ハ
斯ウ云フ點カラ見テ上海ノ自然科學〓究所
等ニ於キマシテハ、阿片ノ害毒ヲ如何ニシ
テ除クカト云フ學理的〓究ヲシ、尙ホ合理
的政策ヲ立テテ、サウシテ支那四億ノ民衆
ヲ救フベキデハナイカト云フコトヲ痛感致
スノデアリマス(拍手)上海ノ自然科學〓究
所ニハ事實上ヤッテ居ラルヽカ知レマセヌ
ケレドモ、其項目ヲ發見致シマセヌ、私
此點ニ付テ御伺致ス次第デゴザイマス
要スルニ私ハ日支ノ提携ヲ本當ニセント
欲スルナラバ、日支間ノ文化、思想ヲ共通
ナラシムルト云フ點ガ眼目デナケレバナラ
ヌト思フノデゴザイマス、此點カラ申シマ
スト、私ハ今囘ノ事變ニ對シテ文化事業ノ
使命ト云フモノハ、國防ノ充實ト生產力
ノ擴充ト、竝ニ戰傷死者ノ善後處理ト云
フコト、此三ツハ相竝ンデ本當ニ重大ナ
ル意義ヲ有シテ居ルモノト思フノデゴザイ
マス(拍手)然ルニ政府ノ提案ヲ見マスレ
バ、私共ハ從來三四万圓ヲ使ッテ居ックモノ
ヲ、六百万圓マデ使ヒ得ルト云フヤウナ提
案ヲ爲サレタガ、提案ヲ爲サザルヨリハ結
構デハアリマスルケレドモ、尙ホ一步ヲ進メ
テ本當ニ東洋平和樹立ノ爲ニ一大計畫ヲ此
際樹立スル所ノ御考ヲ持ッテ居ラレルヤ否
ヤ、此點ヲ御伺致シタイノデアリマス(拍手)
〔國務大臣廣田弘毅君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=11
-
012・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 池田君ノ御質問
ニ御答致シマス、今囘ノ事變ハ色々ノ原因
ニ基イテ發生致シタノデアリマスルガ、其
中ニ從來日支兩國民間ニ於ケル文化的連絡
ノ缺乏ガ其一ツノ大ナル原因デアリマシ
テ、此點ニ付キマシテハ私ノ過日ノ演說中
ニモ論及致シタノデアリマス、隨テ將來此
文化事業ニ一層ノ力ヲ盡スベキコトハ當然
デアルト思フノデアリマス、御承知ノ通リ
從來ノ外務省デ致シテ居リマスル文化事業
ハ、數年前マデハ殆ンド日本デハ此支那ノ
文化事業ニ注意ヲ拂ハナカッタ時代モアリ
マスルシ、ソレニ對スル資金ノ途ヲ開ク爲
ニ辛ウジテ支那カラ得マス所ノ賠償金、其
他ヲ基礎ニ二千万有餘圓ノ資金ヲ作リマシ
テ、其利子ニ依ッテ斯ル事業ヲ致シテ參ッテ
居ッタ、是ハ洵ニ姑息ナ方法デアリマシテ、
其基礎タル二千万圓ガ甚ダ微弱デアルノミ
ナラズ、其利子ニ依ッテヤルト云フヤウナ性質
ノ事業デハ元來ナイノデ、是モ時勢ノ然ラ
シムル所、一時斯ル方法ヲ執ッテ參ッタノデ
アリマスガ、今日以後ニ於キマシテハ、到底
斯ウ云フコトデハ間ニ合ハナイト信ズルノ
デアリマス、隨テ將來ドウ云フ方法ニ依ッテ
行クカト云フコトニ付キマシテ、先ヅ北支
方面ニ於キマシテハ、支那人ニ依ル一ツノ
政權ガ成立致シタノデアリマシテ、軍部其他
ノ官憲ニ於キマシテ十分是等ト連絡ヲ取リ
マシテ、北支方面ノ〓育事業、其他有ユル
文化施設ニ協力シテ進ンデ參リタイト思ッ
テ居ルノデアリマス、尙ホ外務省ト致シマ
シテモ、今囘ノ文化事業費ノ增加ノ點ハ、
從來ヤリ來ッテ居リマシタル事業ヲ今日ノ
必要ニ應ジマシテ、相當擴張スル程度ノ計
畫ヲ立テテ其方ノ費用ニ充ツル爲ニ、今囘
增額ヲ希望致シテ居ルノデアリマシテ、是
等ハ決シテ將來外務省ガ支那ニ對シテ致シ
タイト思ッテ居リマスル文化事業ノ無論全
部デナイノミナラズ、一小部分ニ過ギナイト
私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、文化事業ト
シテ致スベキ仕事ハ多々アルノデアリマシ
テ、十分ニ軍ノ占據區域ニ於ケル有ユル施
設ト相俟ッテ又外務省ト致シマシテモ、別ニ
考究シテ之ニ處スベキ方法ヲ立テタイト考
ヘテ居ルノデアリマス
尙ホ對支文化事業ノ一部トシテ山東省、ニ
アリマスル孔子ノ廟ノ修繕ノ事ヲ考ヘテ居
ルカト云フコトデゴザイマスガ、是モ洵ニ
結構ナコトダト存ズルノデアリマス、現在
ノ計畫ノ中ニハ其事ハ入ッテ居ナイノデア
リマスガ、相當考究スベキ價値アル問題ダ
ト思フノデアリマス、況ヤ孔子廟ノミナラ
ズ、北支方面ニ於ケル隨分古イ東洋文化ノ
粹ヲ萃メテ居ルヤウナ建造物モ多々アリマ
スノデ、是等ノコトニ付キマシテモ、ソレ〓〓
〓究ヲ致シテ居ルノデアリマス、尙ホ現
在文化事業ノ一部トシテ四庫全書ノ〓究
等ヲ致シテ居リマス、此印刷等ノコトモ相
當考慮ハ致シテ居ルノデアリマスガ、何レ
是ハ愈〓著手致シテ居リマスル四庫全書ニ
關スル事業ガ終リマシタ上ニ考究致シタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス
尙ホ支那トノ文化連絡ノ爲ニモ阿片ノ〓
究殊ニ其害毒ヲ支那民衆ニ知ラスルト
云フコトハ最モ重大ナルコトデアルト云フ
御意見ハ洵ニ同感デアリマス、ソレニ付キ
マシテハ、私ノ見ル所デハ日本ハ臺灣ヲ領
有致シテ參リマシテ以來、此阿片ニ付テハ
非常ナ深イ〓究ヲ積ンデ居ルノデアリマス
ノデ、ソレヲ參考トシテ將來支那ニ對シテ
ハ色々ノ場合ニ利用シ得ルト思フノデアリ
マス、其邊ノ事情カラ或ハ上海ノ自然科學
〓究所デハ特ニ〓究ノ必要ヲ認メテ居ナイ
ノデハナイカト存ズルノデアリマス、大體
池田君ノ御質問ノ四ツノ點ニ付キマシテハ
以上ノ說明ヲ申上ゲタイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=12
-
013・池田秀雄
○池田秀雄君 本席ヨリ發言ノ御許ヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=13
-
014・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=14
-
015・池田秀雄
○池田秀雄君 私ハ再質問ハ致シマセヌ、
唯私ハ只今申上ゲタル諸點ニ付キマシテ
ハ、政府ニ於テ重大ナル計畫ヲ立テテ實行
ニ移サレンコトヲ希望スルト云フコトヲ申
上ゲテ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=15
-
016・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小谷節夫君
〔小谷節夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=16
-
017・小谷節夫
○小谷節夫君 只今池田君カラモ御質問ガ
ゴザイマシタガ、私モ只今議題トナッテ居リ
マスル對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關
スル法律案ニ關聯致シマシテ、池田君トハ
多少異ッタル觀點カラ、對支文化事業ノ根本
義及ビ對支方針ノ一面ニ對シマシテ政府ノ
所見ヲ質シタイト存ズルノデアリマス
私ハ此質問ニ入ルニ先ダチマシテ、支那
在留民ノ一員ト致シマシテ、特ニ皆樣ノ御
許ヲ得マシテ、今囘ノ事件ノ爲ニ戰傷病死
ヲセラレマシタ方々ノ御冥福ヲ祈リ、又戰
傷病者ノ一日モ速ク平癒セラレンコトヲ望
ミ、更ニ出征將士各位ノ武運長久ヲ祈リタイ
ト存ズルノデアリマス、偖テ事件ハ當初帝國
政府ノ希望シタ所ニ反シ、段々ト擴大シテ
現地解決、事件不擴大ナドト云フ言葉ハ過
去ノ夢トナッテシマヒマシテ、今ヤ全支ニ亙
リ全面的激突トナッテシマッタノデアリマス、
併シ私ハ此事變ガ今日ニ於テ發生シ、今日
迄ノ結果ヲ得タコトハ全ク天祐デアルト信
ズルノデアリマス、戰場ニ於ケル天祐神助
ノ奇蹟的逸話ハ新聞ニ雜誌ニ枚擧ニ遑ナイ
程ニ列擧セラレテ居リマスガ、私ノ擧ゲテ
見タイモノハ、先ヅ第一ニ此事件ガアノ出鱈
目ナ、アノ非立憲ナ、アノ非擧國一致ノ林內
閣ノ時ニ起ラズシテ、今日ノ近衞内閣ニ於テ發
生シタコトデアリマス、私ハ何モ近衞首相及ビ
其內閣ニ御追從ヲ言フ譯デモナク、又其必
要モアリマセヌガ、兎ニ角支那ノ領土保全
ヲ高唱シ、東亞同文會ノ會長トシテ一生涯
ヲ支那問題ニ捧ゲラレタ近衞篤麿公ノ衣鉢
ヲ繼ギ、支那ニ對シテハ十二分ノ理解ト同
情トヲ持ッテ居ラレル其近衞總理大臣マデ
ガ、遂ニ勘忍袋ノ〓ヲ切ッテ、之ヲ膺懲シナ
ケレバナラヌト云フコトニナッタノデアル
ト云フコトガ、内閣ノ求ムルヲ俟タズシテ、
國民ノ方ガ早ク旣ニ一致シテ支那討ツベシ
ト云フコトニナッタノデ、此小氣味ノ好イ擧
國一致ガ立ドコロニ結成シタコトハ、國內
ニ對スル一ツノ天祐デアッタト信ズルノデ
アリマス(拍手)
更ニ支那ニ付テ見マスルニ、此事件發生
當時蔣介石、汪兆銘ノ一派ハ必シモ事件ノ
擴大ヲ欲セズ、特ニ蔣介石ノ如キハ三、五
年ノ後大イニ用意成ルノ日ニ於テ、日本ニ
對シ一泡吹カシテヤリタイ位ノ肚積リデ
アッタノガ、主戰論者ニ引摺ラレテ、遂ニ今
日ノ結果ヲ見ルニ至ッタノダト聞ク程デ、此
以上三年モ五年モ排日抗日ノ〓育ヲ徹底シ、
侮日ノ思想ヲ培養シ、武器ヲ用意シ、兵備
ヲ整ヘタ後ニ今囘ノ如キ事件ガ勃發シタト
シタナラバ、其犠牲ハ到底今日ノ如キモノ
デアリ得ナカッタコトハ勿論デアリマス、此
意味ニ於テ蘆溝橋デ我軍ニ鐵砲ヲ擊チ掛ケ
テ吳レタ支那ノ兵隊共ニハ感狀ヲ與ヘテモ
宜イ位デアリマシテ、是レ正ニ天祐デアリ、
神助デアッタト言ヒ得ルト思ヒマス、更ニ
我國ニ取ッテ最モ厄介ナ某國ガ、外其國際
情勢ト、內其國內情勢トノ爲メ、其全力ヲ
擧ゲテ東洋ノ天地ニ向ヒ、支那ヲ援ケ日本
ヲ壓迫シ能ハザル時期ニ於テ今囘ノ事件ノ
發生ヲ見タコトハ、何處マデモ天祐デアル
ト謂フベキデアルト信ジマス、斯ノ如クニシ
テ皇軍ハ百戰百勝、擊ッテ破ラザルハナク、
攻メテ取ラザルハナク、近ク徐州ノ敵ヲ屠リ終
ラバ、北支那カラ上海戰線ヘ掛ケテ、支那領
土ノ半バハ皇軍ノ威武ノ下ニ席卷セラレタ
コトニナル譯デ、洵ニ御同慶ノ至リト申ス
ベキデアリマス、更ニ畫龍點晴ノ二三ノ工作
ニ出デタナラバ、幾ラ長期抗日ヲ叫ビ、如
何ニ强ガリヲ唱ヘテ居ッテモ、蔣介石一派ノ
自滅ヲ待ツノ日ハ單ナル時日ノ問題ニ止マ
ルコトハ何人モ肯定シ得ル所デアリマス、以上
ノ如ク我ガ軍事行動ニ付テハ、國民ノ總テ
ガ十分ノ自信ヲ有スル譯デアリマスガ、其
後ニ來ルモノニ對シテハ、過去ノ實績ニ徵
シテ是ハ又國民ノ總テガ多少ノ不安ヲ懷カ
ナイ者ノナイコトモ亦蔽フベカラザル事實
デアリマス、戰爭モマダ〓〓是カラダト言
ヒ得ルデアリマセウガ、戰後經營ニ至ッテハ
ソレコソ眞ニ是カラデアリ、斯ク迄天祐ニ
惠マレタ絕好ノ機會ニ、天ノ與フル所ヲ取
ラザレバ殃ハ却テ其身ニ及ブノミデハナ
ク、多クノ犠牲者ニ對シテモ洵ニ申譯ノナ
イ譯デ、當局者ニ眞ニ命懸ケノ努力ヲ要求
スル所以デアリマス
現地ニ於ケル戰後經營ノ第一步ハ、占領
地域內ニ於ケル民衆ノ生活ノ安定デアリマ
ス、蔣介石ノ時代ノ方ガ生活ガ樂デアッタ
ナドト云フガ如キ觀念ヲ塵程デモ持タセル
ヤウナヤリ方デハ、今度ノ事變ノ目的ハ達
シタモノトハ言ハレマセヌ、併シ此點ニ對
シテハ昨日マデノ本會議ニ於ケル一般施政
ニ對スル各派ノ質問ニ對シ、政府ノ答辯セ
ラレタ所及ビ豫算委員會ニ於ケル質疑應答
ニ依リ、農村對策、產業ノ開發貿易ノ助長、
貨幣制度ノ確立、關稅ノ改訂、交通ノ整備
等有ユル點ニ付テ大體ハ聽クコトヲ得
マシタ、更ニ他ノ機會ニ於テ詳細聽クコト
モ得マセウシ、尙ホ現地當局モ懸命ノ努力
ヲ拂ッテ居ラレルコトト思ヒマスノデ、一日
モ早ク所期ノ目的達成ノ域ニ入ランコトヲ
望ムモノデアリマス、生活問題ト竝行シテ
現地ニ於テ戰後經營ノ重點ヲ置カネバナラ
ヌ點ハ、思想、〓育方面ノ所謂文化工作デ
アリマス、此點ニ付テモ先日我黨ノ安藤議
員ヨリ質問ガアリ、更ニ昨日ノ豫算委員會
ニ於ケル砂田議員ノ質問ニ依リ、又只今ノ
池田君ノ質問ニ對シ、政府ノ述ベラレタ所
ニ依ッテ政府ノ所見ノ一端ハ聽クコトヲ得
マシタガ、本日茲ニ對支文化事業法案ノ上
程ヲ見マシタノデ、重ネテ少シク承ッテ見
タイト存ズルノデアリマス
由來蔣介石一派ハ一ノ成金軍閥、成金政
治家ニ過ギマセヌ、善政ヲ以テ四億ノ民衆
ヲ統治シタノデモナク、德ヲ以テ國民ヲ導
イタモノデモアリマセヌカラ、支那ノ兵隊
共ガ食フヤ食ハズノ賃銀デ蔣介石樣ノ爲ニ
命ヲ捨テ、宋家一門ノ爲ニ鉾ヲ執ッテ、負
ケルニ決ッテ居ル此戰ヲ日本ニ向ッテ挑マナ
ケレバナラヌ理由ハナイノデアリマス、
彼等ガ豫想ニ反シテ頑强ナル抵抗ヲ日本軍
隊ニ試ミタ所以ノモノハ、一ニ排日抗日〓
育ト、侮日ノ思想ト、强制的ノ徵募、督戰
隊ノ監督等ニ依ル暴力ノ濫用ニノミ因ッタ
モノデアリマス、併シ今日マデノ軍事行動
ノ實績ニ見テ、日本ヲ輕侮シテ居ッタコト
ノ誤デアッタコトハ、占領地域內ノ總テノ支
那人ニ能ク徹底シタ筈デアリマス、蔣介石
ノ暴力ノ及バナイ占領地域內ノ民衆ハ、强
制的ノ徵募カラ免レテ、雀躍シテ居ル譯デ
アリマス、此際彼等ニ今日マデノ排日抗日
〓育ノ日本ニ取ッテ百害アッタバカリデナ
〃、彼等ニ取ッテモ一利ナイモノデアッタコ
トヲ一日モ早ク徹底セシメ、心カラ日本ニ
縋リ、新政權ニ賴ラシメル工作ガ必要デア
リマス、事變前排日抗日ノ喧シカッタ最中
デモ、私共ガ自分ノ經營スル漢字新聞デ
支那民衆ノ味方トシテ、支那軍閥ノ暴狀
ヤ、其苛斂誅求ヲ攻擊スル場合、新聞ノ
發行部數ハ急ニ增加シ、相當有力ノ支那
人ガ私ノ手ヲ握ッテ、君ハ我等ノ舌ダ、
我等ノ言ハント欲シテ言フ能ハザル所ヲ
能ク言ウテ吳レル、洵ニ感謝ニ堪ヘヌ、君
ノ新聞ハ我等ノ代辯機關ダナドト言ッテ、
ヨク喜ンデ呉レクモノデアリマス、コンナ
漢字新聞經營ナドヲ如何ニモ道樂カ醉狂デ
モヤッテ居ルカノ如ク個人ノ經營ニ委セテ、
外務省ナドガ力一ツ入レテ吳レヌト云フ有
樣ダカラ、一事ガ萬事、排日抗日思想ガ燎
原ノ火ノ如ク四百餘州ヲ風靡スルニ至ッタ
ノデアリマス(拍手)然ルニ外務省ノ文化事
業ノ資金ノ中ニハ、只今六百万圓ニ增額セ
ラレルト云フヤウナ案ハ出テ居リマスルガ、
大體ニ膠濟鐵道ノ四千万圓ノ支那ノ國庫債
劵ガ繰入レラレ、其債劵ノ利子二千百四十
万圓ノ中カラモ經費ノ中ニ支辨セラレテ居
ル筈デアリマスガ、今後此資金及ビ利子ハ
入ラヌモノト見ネバナラズ、今日迄デモ思
フヤウナ資金ハナク、ヤリタイ事ハ山程アッ
テモ、思フヤウナ活動ノ出來ナカッタモノ
ガ、其財源ガ涸渴スルト云フノデハ、是マ
デ通リノ活動サヘモ出來ヌト云フコトニナ
リマス、更ニ對支ト言ッテ見タ所デ、上海ノ
居留地以外ニハ悉ク軍部ガ新政權ト握手シ
テ、總テノ工作ヲヤッテ居ル譯デアリマスカ
ラ、上海以外デハ軍部ノヤッテ居ル仕事ト
牴觸ヲ免レナイノハ當然デアリマス、文化
工作ガ旨ク行クト云フコトハ、外務大臣ノ
屢〓言明セラレル如ク、武力ヲ用ヒズ、否寧
ロ之ヲ背景トシテ外交ヲ行フト云フコトニ
役立ツ所以デアリ、今日ノ占領地帶ニ最モ喫
緊ノ要務デアルト思ヒマスルガ、政府ハ今日
マデ外務省ノヤッテ居ッタ文化事業ガ、英米ノ
ソレニ比シテサヘ比較的現實ニ卽セズ、又兩
國民ノ理解提携ニ對シ比較的效果ノ少ナカッ
タ一面ノアッタコトヲ反省考慮シ、此外務省
ノ文化事業ヲ新政權ノ文化工作トノ間ニ如
何ナル連繫ヲ取ッタナラバ宜イカト云フコ
トト、又將來如何ナル工作ニ出ントスルモ
ノデアルカト云フコト、私ハ昨夜ノ夕刊
新聞ニ見ル如ク、自分ガ宋美齢ト手ヲ携へ
テ逸早ク南京ヲ逃出シタコトハ棚ニ上ゲ
テ、韓復架及ビ多クノ將領ヲ大量屠殺シテ
居ルガ如キ、不合理ナル蔣介石ノヤリ方ヲ
始メ、抗日排日ノ迷妄ヲ放送ニ、映畫ニ、
新聞ニ、雜誌ニ、有ユル手段ニ依ッテ民衆
ニ徹底セシムルコトガ蒙ヲ啓キ、反省ヲ促
ス最モ效果的ナ手段デアルト思ヒマスガ、
政府ノ是等ニ對スル抱負經綸ヲ承リタイノ
ガ質問ノ第一點デアリマス(拍手)
次ニ先程膠濟鐵道ノ問題ニ觸レマシタガ
此膠濟鐵道ハ華府會議ノ結果靑島ヲ支那ニ
還附スルト共ニ、反古ニモ等シイ中華民國
ノ國庫債劵四千万圓ト引換ヘニ支那ニ讓渡
セラレタモノデ、千餘ノ生靈ヲ犠牲トシ、
二億ノ國帑ヲ費シタモノヲムザ〓〓ト支那
ニ渡シ、支那人ノ歐米依存觀念ヲ助長シ、
侮日ノ思想ヲ培養シタル以外ニ何等得ル所
ナク(拍手)其時以來私共ヲシテ悲憤慷慨サ
セテ居ルモノデアリマス、若シアノ時アン
ナ馬鹿ナコトヲシテ居ナカッタナラバ、今時
分ニハ山東省ニハ內地人ガ十万人ヤ二十万
人ハ發展ヲシテ居ッテ、今度ノ引揚ノヤウナ
敗戰ニモ等シイミットモナイ態ヲシテ、二万
人ノ大日本帝國ノ臣民ガ、支那人カラ後ロ
指ヲ指サレナガラ内地ニ引揚ゲ、而モ其留
守中ニ紡績工場ヲ始メ、三億ノ權益ガ灰燼
ニ歸スルト云フヤウナ慘メナ思ヒハシナク
テモ濟ンダコトデアラウト思フノデアリマ
ス(拍手)既往ハ詮ナシトスルモ、折角犧牲
ヲ拂ッテ靑島ヤ山東鐵道ヲ還シテヤッテモ、
還シテヤッタ甲斐ハナク、還附ヲ無意義ナラ
シメ、華府會議ノ條約ハ更ニ實行シナイノ
ミカ、今度ハ又天人倶ニ赦サヾルアノ暴擧
ヲ敢テシタコトデモアリマスレバ、將來新
政權トドンナ取極メヲスルトシテモ、靑島
ト膠濟鐵道トハ必ズ還附前ノ狀態ニ引戾ス
コトヲ當然ト信ズル者デアリマス(拍手)上
海ノ停戰區域內ニ「トーチカ」ヤ塹壕ヲ造ッ
テ澤山ノ機牲者ヲ出シタ所ナドモ、純然タ
ル日本ノ統治下ニ置クベキモノト信ジマス、
是ハ幾ラ領土的野心ノ無イコトヲ口癖ノヤ
ウニ唱ヘテ居ラレル內閣諸公トシテモ、支
那人デモ外國人デモ一人ノ異存ノアルベキ
筈ハアリマセヌ、此質問ニ對シテ御同感ナ
ラバ御同感トノ御答辯ガ承リタイガ、マダ
ソコマデノ御〓究ガ出來テ居ラヌナラバ、
此點ニ對シテハ特ニ十分ノ御考慮ガ願ヒタ
イノデアリマス、是ガ質問ノ第二點デアリ
マス
靑島ノ問題ガ玆ニ現レマシタガ、二十餘年
間汗ト脂トデ築キ上ゲタ權益、財產ヲ抛棄
シテ、僅カバカリノ手廻リ品ダケヲ携ヘテ靑
島ヲ引揚ゲタ時ノ感慨ハ、直接其境遇ニ立ッ
タ者デナケレバ到底想像ノ及バナイ所デア
リマス(拍手)薄レ行ク靑島ノ山ヤ街ノ姿ヲ
甲板上カラ眺メタ何人モガ暗然タラザルヲ
得ナカッタノデアリマス、中ニハ聲ヲ立テテ
泣ク人ガアリマシタ、私ハ其人々ヲ慰メテ、
東京ノ地震ノ時ニハ鞄一ツ持ツコトモ出來
ズ、命カラ〓〓逃出シタ人モアル、地震ニ
デモ遭ッタト思ッテ諦メル外ハアルマイト言
フト、其人達ハ異口同音ニ、地震ハ天災ダ
カラ諦メルコトガ出來マス、私共ノハ天災
デハナクシテ人災ナノダカラ諦メルコトガ
出來ヌト言フノデアリマス(拍手)曩ノ靑島還
付ト云ヒ、今度ノ總引揚ト云ヒ、ドチラモ
人災デアルコトニ間違ヒアリマセヌ、華盛
頓會議ニ行ッタ大頭株デ足一步靑島ノ土ヲ
踏ンダ人ガ一人モ無イ、還付後靑島ニ來テ、
惜シイ所ヲ還シタモノダト、他人ガヤッタコ
トノヤウニ述懷シテ居ル人サヘモアッタノ
デアリマス、今度モ陸軍ノ或ル樞要ノ地位
ニ居ル人ニ私ガ御目ニ掛ッタ時、靑島ハドウ
シテ引揚ゲタノダト言ハレタ時ニハ、私ハ
啞然タラザルヲ得ナカッタノデアリマス、上
海ト靑島ダケハ現地保護デ行クノダト責任
アル當局者ガ聲明スレバ、軍隊上陸ノ際
ノ御用ヲ伺ハンガ爲ニ、色々ノ商人ガ色
色ノ準備ヲスルノハ當然デアリマス、食
料ヤ、雜貨ヤ、衞生材料ヤ、木材ヤ、煉瓦
ヤ現金ノ總テヲ品物ニ代ヘテ、軍隊ノ上陸ヲ
今日カ明日カト待チ構ヘテ居ル時ニ、足下
カラ島ノ立ツヤウナ引揚命令デアリマス、
八月二十七日ノ朝命令ガ出テ、三十日ノ晩
マデニ船ニ乘込メト云フノデアリマス、平
素ノ定員ノ三倍、四倍ノ人ガ船ニ乘ルノデ
アリマスカラ、手荷物ニ制限ノアルコトハ
勿論デアリマス、然ルニ舊紡績工場ヲ初メ、
留守中灰燼ニ歸シタモノモ多ク、幸ニ燒カ
レナカッタモノモ生命カラ二番目ノ權益、財
產ノ破毀掠奪ニ遭ハナカッタモノハ頗ル稀
ト云フ狀態デアリマス、靑島陷落ト聞イテ
靑島引揚民ノ叫ング萬歲ノ聲ハ、同ジ萬歲
デモ南京陷落ト聞イテ肚カラ叫ンダ萬歲ノ
聲トハ違ッテ、咽喉ニ詰ッタヤウナ萬歲ノ聲デ
アッタ(拍手)ト云フコトヲ私ハ玆ニ申上ゲ
ルノデアリマス、是等ノ人々ノ悲痛ナ心中
ヲ御想像ガ願ヒタイノデアリマス、人ニ海
外發展ヲ奬メテ來タ身デモ、二度マデ國策
ノ犠牲トナリ、ソレニ相當年ヲ取レバ
モウ一度行ッテ賽ノ河原ノ石積ミヲヤラウ
ナドト云フ元氣ハナクナリマス、是等ノ連
中ニ對シテハ政府ハ特ニ所謂民ノ疾苦ヲ
察シ、又自分ノ責任ヲ自覺シテ貰ハネバ
ナリマセヌ、然ルニ政府ハ引揚ゲル時ニハ
澤山ナ船ヲ廻シテ無賃デ日本ニ連レ歸リ、
日本デ四箇月ノ間「ルンペン」生活ヲ送ラ
セテ置イテ、其擧句今度歸ル時ニハ十八日
神戶出帆ノ諏訪丸、十九日出帆ノ黑龍丸デ
歸ッタ千人以外ノ者ニハ、一一割引デオ金ヲ拂ッ
テ乘ッテ行ケト云フニ至ッテハ、幾ラオ役人
ガ月給デ以テ樂ニ暮シテ居ルカラト言ッテモ、
餘リニ思遣リガ無サ過ギルト思ヒマス(拍
手)上海事件ノ時ニハ本會議デ卽決可決デ
復興資金ガ出テ居ルノニ、今度ハソンナ處
置ニサヘ出テ居ナイノデアリマス、私ハ攻
擊シテ見テモ、愚痴ヲ言ッテ見テモ追付カ
又、過去ヲ論ズルノハ止メマセウ、殊ニ擧
國一致ノ必要ナ今日、アヽモシタラ宜カッ
タ、斯ウモシタラ宜カッタニト云フコトハ此
際申シマセヌ、此際ハ唯過去ノ失策ヲ償ウテ
餘リアルダケノ將來ニ對スル善處ヲ要望シ
タイノデアリマス、政府ハ手ブラデ燒野原
ニ立チ茫然トシテ居ル靑島、濟南ヲ初メ山
東一帶ノ在留民ハ固ヨリ、一般支那引揚民
ニ對シ一、原住地ニ歸還スル歸還費ノ支給、
二、元ノ營業ニ復歸シ得ルマデノ〓ヒ繋ギ
ノ、卽チ復業費ノ給與三、復舊、復興費ノ
貸與等ヲ一日モ早ク立案致シ、本會議デ卽
決可決ノ擧ニ出デラレンコトヲ望ム者デア
リマス、外務大臣ハ先日ノ議場デ、從來ノ
營業者ガ復舊スルマデハ、他ノ同一營業者
ニ新ナル許可ヲ與ヘヌト云フ營業優先權ノ
承認ヲ言明セラレ、又支那側カラ損害賠償
ヲ取ルコトヲモ言明セラレマシタガ、賠償金
ヲ貰フノヲ待ッテ居ッテハ、復舊モ復興モ出
來ル譯ノモノデハアリマセヌカラ、取敢
ズ復舊復興ノ費用ハ賠償金ヲ見返リ擔保ト
シテ低金利デ政府カラ貸付ケラレンコトヲ
希望スル者デアリマス、政府トシテハソレ
位ノコトヲシテヤル義務ト責任トノ存在ス
ルコトヲ信ズル者デアリマス(拍手)
以上三點、卽チ文化事業ノ根本義、靑島
及ビ山東鐵道ノ問題、支那引揚民ニ對スル
處置ニ對シ、外務大臣ノ親切丁寧ナル御答
辯ヲ承リタイト存ズルノデアリマス、私ノ
質問ハ文化事業法ニ名ヲ藉リテ、見當違ヒ
ノ質問ヲ爲シタガ如ク聞エル點ガアルカモ
知レマセヌガ、質問ノ當初ニ於テ本法案ニ
關聯シテト斷ッテモ居リマスルシ、又支那ニ
對シテ如何ニ文化事業ニ努力シヨウトモ、
支那ニ在住スル日本人ガ、日本政府ニ信賴
シ得ナイヤウデハ、文化事業ナド何等價値
ナシト信ズル點ニ於テ、全然無關係デナイ
コトヲ附言シテ置ク次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣廣田弘毅君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=17
-
018・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 只今小谷君ノ御
質問ニ御答致シマスガ、文化事業其モノニ
關シマスル小谷君ノ御所論ハ洵ニ適切ナ事
柄デアリマシテ、私ト致シマシテ非常ニ參
考トスベキ點ガ多イノデアリマス、十分其
點ニ注意ヲ致シテ文化事業ノ振興ニ當ッテ
參リタイト思フノデアリマス
次ニ膠濟鐵道ノ問題ニ付テノ小谷君ノ御
所見ハ、殊ニ山東ニ長ク滯在サレタ方ト致
シマシテハ、無論當然ノコトデアリマスガ、
是ガ啻ニソレノミナラズ、日本國民全般ノ
感想モ大體サウ云フ點ニアルト私ハ了解致
シテ居ルノデアリマス(拍手)彼ノ山東ニ於
ケル今囘ノ支那側ノ暴狀ニ對シマシテハ、
日本ハ眞ニ隱忍ニ隱忍ヲ重ネテ參ッタノデ
アリマス、此點ハ啻ニ支那人ノミナラズ、
世界各國ニ於テモ、其日本ノ隱忍ガ非常ニ
度ヲ過ギテ居ック位ニ思ッテ居ル方面モアル
カノヤウニ感ジテ居ッタノデアリマス、隨テ
山東ノ將來ニ付テハ、ソレ等ノ點ヲ十分考
慮致シマシテ、國民ノ期待ニ副フ解決方法
ニ出テ參リタイト存ズルノデアリマス
尙ホ從來長ク山東方面ニ居ッテ經營ニ當ッ
テ居ラレク方々ノ爲ニハ、其事業ノ囘復ノ
爲ニハ、十分ノ援助ヲ致サナケレバナラヌ
ト政府ト致シマシテ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、隨テ其方法ニ付キマシテハ現在ニ於テ
モ十分〓究致シテ居ルノデアリマシテ、必
ズ或ル方法ヲ立テテ實際ノ援護、支援ノ途
ヲ講ジテ參リタイト思フノデアリマス、以
上小谷君ノ御質問ニ對シテ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=18
-
019・小谷節夫
○小谷節夫君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ發言スルコトノ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=19
-
020・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=20
-
021・小谷節夫
○小谷節夫君 外務大臣ノ只今ノ御答辯ハ
大體ニ於テ私モ諒承致シマス、唯最後ノ御
話ノ山東在留民ニ對スル問題ハ、實ハ皆非
常ニ困ッテ居ル狀態デゴザイマスルカラ、
餘リ長ク考慮シテ戴イテ居リマスト、其間
ニ時機ヲ失シテシマフヤウナ虞ガゴザイマ
ス、先程ノ演說ノ中ニモ申シマシタ通リ、
上海事變ノ後デハ此救濟ニ馳セ付ケル時分
三、本議場デ以テ卽決可決ノ擧ニ出ラレ
テ居ルヤウナ前例モアルノデゴザイマス、
ドウカ一日モ早ク此窮狀ヲ救フヤウニシテ
戴キタイト思フノデアリマス、尙ホ文化事
業ノ細カイ點ニ付キマシテハ、何レ委員會
デ質問ヲ申上ゲヨウト思ヒマスカラ、私ノ
質問ハ之ヲ以テ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=21
-
022・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 松尾三藏君
〔松尾三藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=22
-
023・松尾三藏
○松尾三蔵君 私ハ本日上程セラレマシタ
ル所ノ政府提案朝鮮事業公債法中改正法律
案ニ對シ、其趣旨目的ガ鮮內文化振興ノ上
ヨリ、緊要缺クベカラザルモノデアルコト
ヲ確信致シ、雙手ヲ擧ゲテ之ニ贊成ノ意ヲ
表スル次第デゴザイマス、併シ私ハ本案ニ
賛成ヲ致シマス趣旨ヲ擴充致シマシテ、聊
カ私ノ所見ヲ開陳シ、內鮮融和ノ根本方針ニ
付キ政府ノ所見ヲ簡單ニ御伺致シタイ次第
デゴザイマス
固ヨリ私ハ歷代ノ政府ガ日韓合併以來、
其至難中ノ至難トサレテ居リマス植民政策
ノ遂行ニ當ラレ、當時三十年ノ長キニ亙リ
內鮮融和ノ實ヲ擧ゲラレ、朝鮮ニ於ケル產
業經濟ノ開發、〓育文化ノ振興ニ力ヲ致サ
レ、特ニ困難ナル思想ノ向上ニ御努力ヲ拂ハ
レタ御苦勞ニ對シテハ、衷心ヨリ敬意ヲ表
スル次第デゴザイマス、併ナガラ私ノ見ル所
ヲ以テ致シマスルナラバ、今日ノ實情カラ
見マシテ、尙ホ內鮮融和ノ上ニ遺憾ノ點ガ
多々アルコトヲ見逃ス譯ニハ參ラヌノデゴ
ザイマス、私ハ內鮮融和ノ根本義ハ眞ニ內
鮮人間ニ於ケル社會的差別待遇ヲ一掃シ
テ、渾然一體ノモノタラシムルニアルト思
ヒマス、ソレニハ內鮮人間ニ於ケル風俗、
言語、制度、慣習ノ渾然タル一致ヲ必要ト致ス
ノデアリマスガ、一日モ速ニ其理想ヲ達成致
シマスルニハ、今一段ト半島人ニ對スル〓
育文化ノ徹底ヲ圖ラネバナラヌト思フノ
デゴザイマス(拍手)實情ニ就テ見マスレ
バ、例外ハアリマセウケレドモ、一見シテ
內地人ト半島人トノ區別ガ見エマシテ、如
何ニモ半島人ノ〓育程度ノ劣ルモノアルヲ
感ズルノデアリマシテ、內鮮融和完成ノ上
ヨリ洵ニ遺憾ニ堪ヘマセヌ、政府ハ今日ニ
於ケル朝鮮ノ〓育施設竝ニ其指導方針ヲ以
テ、旣ニ完璧セルモノト考へテオ居デニナ
ルノカドウカヲ、御伺致シタイ次第デゴザ
イマス
更ニ政府ハ本案ノ御提出ニ依リ、朝鮮文
化振興ニ要スル財源捻出ヲ企圖サレテ居ル
ノデアリマスルガ、更ニ一步ヲ進メテ半島
人〓育ノ徹底ヲ期スル爲ニ必要ナル經費ヲ
計上スルノ御考ガアルカドウカ、御伺致シ
タイ次第デゴザイマス、只今申述ベマシタ
ルコトハ、內鮮融和ノ根本ニ關スル問題デ
アリマスルカラ、拓務大臣竝ニ朝鮮總督府
當局ノ御答辯ヲ煩ハシタイト考ヘマス
次ニ內鮮人間ニ於ケル差別撤廢ニ關スル將
來ノ御方針ニ付キ、御〓示ヲ得タイト思ヒ
マス、前ニ述ベマシタル如ク、政府ノ御努
力ニモ拘ラズ、日韓合併以來茲ニ三十年ノ
歲月ヲ經テ居リマスルガ、洵ニ遺憾ナガラ
眞ノ內鮮人間ノ融和ガ出來テ居ナイコトハ、
殘念ニ堪ヘナイ次第デゴザイマス(拍手)今
日ノ如ク何事ニ付テモ內地人ト半島人トガ
相反目スルカノ感ヲ林ジ得ナイ實例ヲ偶、と
見受ケマスコトハ、爲政者トシテ大イニ考
ヘネバナラヌ事柄デアルト思フノデゴザイ
マス(拍手)惟フニ日韓合併ノ眞ノ目的ハ、
大亞細亞政策遂行ノ爲メ、兩者融合相提
携シテ渾然一體ト成リ、東洋平和ノ確立
ト人類永遠ノ福祉ヲ招來スルニアッタコト
ハ玆ニ言ヲ要シマセヌ、然ルニ今日ノ如
ク同ジ帝國ノ臣民、畏多クモ陛下ノ忠良ナ
ル所ノ赤子デアリナガラ、內鮮人間ニ差別
的待遇ノ行ハレテ居ルコトハ上御一人ノ一
視同仁ノ大御心ニ對シ奉リマシテモ、私共ノ
理解ノ出來ナイ所デゴザイマス(拍手)私ハ
去ル七十一議會ニ於キマシテ、內鮮融和ニ
關スル建議案ノ提出ヲ致シ、朝鮮ニ徵兵制
度ヲ施行スル端〓ト致シマシテ、志願兵制
度ノ樹立ヲ當局ニ要望致シマシタル所、新
聞紙ニ依リ、來ル四月ヨリ四百名ノ志願兵
ヲ採用スルコトニ決定致シタコトヲ見マシ
テ、內心非常ニ滿足ヲ致シテ居ルヤウナ次
第デゴザイマス(拍手)政府ハ將來更ニ之ヲ
擴充致シマシテ、其成績如何ニ依リ徵兵制
度ヲ施行セラルヽ御方針ガアルカドウカヲ、
陸軍大臣ノ御答辯ヲ願ヒタイト思フノデゴ
ザイマス(拍手)
更ニ內鮮人間ニ於ケル差別問題ハ、小サナ
ル社會問題トシテ見逃スコトノ出來ナイ
實例ガ多々アリマスルガ、例ヘバ半島人ノ
就職問題ニ致シマシテモ、其姓ガ金、李又ハ
朴トカ內地人ト判然區別ガ付イテ居リマス
爲ニ、其印象トシテ半島人ガ侮蔑ノ眼ヲ以
テ見ラレ、往々不調ニ終ルヤウナ事實ガア
ルノデゴザイマス、固ヨリ其姓ヲ見タダケ
デ侮蔑スル內地人モ惡イノデゴザイマスルガ、
其原因ヲ今日マデ除去スル方策ヲ講ジテナイ
當局ニモ、多少ノ責任ハ免レナイカト思フノ
デゴザイマス(拍手)要ハ半島人ノ〓育、品
位ノ向上ニ俟ツノ外ハゴザイマセヌガ、政
府ハ眞ノ內鮮融和ノ上カラ風俗、言語、姓、
憎習等ニ付キ、何カノ對策ヲ講ゼラレル必要
ガアルト思ヒマスカラ、所見ヲ拓務大臣ニ
御伺シタイト思フノデゴザイマス(拍手)
今ヤ支那事變ハ長期應戰ニ、益〓惡化ノ
情勢ニアリマス、是ガ事變ノ收拾ニハ內鮮
一體、擧國協力ノ實ヲ擧ゲネバナラヌ此非常
重大ノ秋ニ方リ、國防上ヨリ申シマシテモ
眞ノ内鮮融和ハ、緊急缺クベカラザルコ
トト思ヒマスルガ、其根本方針ノ御〓示
ヲ得レバ幸ト存ジマス、右ノ點ニ付キマシ
テ關係當局ノ御答辯ヲ御願致シタイ次第デ
ゴザイマス(拍手)
〔政府委員大野綠一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=23
-
024・大野緑一郎
○政府委員(大野綠一郞君) 只今ノ御質問
ニ對シテ私ヨリ御答ヲ致シマス、內鮮融和
ノ徹底ヲ圖リマスルコトハ、歷代ノ總督府
ノ方針デゴザイマシテ、今日ノ内外ノ情勢
カラ益〓努力ヲ致シテ居ル譯デアリマス、
殊ニ半島ノ〓育ノ方面ニ於キマシテハ、今
日ノ情勢ト致シマシテ、帝國臣民トシテノ
白覺ヲ持タセ、且ツ誇ヲ持タセルト云フコ
トニ於テ、非常ニ努力ヲ致シテ居ルノデア
リマス、此度ノ事變ニ當リマシテ、半島ニ
溢レタル赤誠ノ狀況ハ、能ク松尾サンノ御
承知ノ通リデゴザイマスルガ、更ニ〓〓總
督府ニ於キマシテハ、初等〓育ヲ擴充シ、國
民〓育ノ徹底ニ努力致シテ居ルノデアリマ
ス、其趣旨ヲ以チマシテ、〓育ノ普及程度
ニ付キマシテモ、此度ノ豫算ニ於キマシテ、
更ニ速度ヲ早メテ計畫ヲ促進致シテ居ルヤ
ウナ譯デアリマシテ、是ハ別途豫算ニ於テ
御審議ヲ煩シテ居ル次第デアリマス
志願兵制度ニ關シマシテ、徵兵制度ノ問
題ニ付テノ御質疑ガアリマシタガ、是ハ何
レ關係大臣ヨリ御答辯ガアルコトト思ヒマ
シテ、私ハ總督府ノ關係ヨリ申シマスル
ト、今日ノ志願兵制度ノ問題ハ、徵兵制度
ト直接ノ關係無シニ、朝鮮ニ於テ徵兵制度
ガ施行セラルベキヤ否ヤト云フコトハ、將
來各般ノ情勢ニ依ッテ更ニ考慮セラレルモ
ノト考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ風俗、
言語、慣習等ニ付キマシテ、內鮮ノ融和ヲ
促進シ、內鮮一體ノ實ヲ擧ゲル上ニ於キマ
シテハ、色々ト努力ヲ致シテ居リマス、殊
ニ國語ノ奬勵ニ付キマシテハ、〓育ノ全般
ニ於テ非常ナ努力ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、又風俗、習慣等ニ付キマシテモ、總督府
內ニ於テ是等ヲ調査スル委員會ヲ拵ヘマシ
テ、在來ノ慣習、又我國ノ風俗トノ融合一
致ノ上ニ於テ、適當ナル方法ヲ講ジタイト
考ヘテ居ル次第デアリマス、尙又御質疑ガ
アリマシタ半島ニ於ケル戶籍ノ問題デアリ
マスルガ、是等ニ付キマシテモ內鮮一體ノ
實ヲ促進スル上カラ、名前等ニ付キマシテ
モ、內地ノヤウナ名前ヲ從前ハ用ヒシメナ
カッタノデアリマスルガ、今囘之ヲ用ヒシ
メルヤウナ方法モ採ッテ居ル譯デアリマス、
大體ノ事柄ダケヲ御答致シマス
〔政府委員八角三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=24
-
025・八角三郎
○政府委員(八角三郞君) 只今大野政府委
員ヨリ御答辯致シマシタト同樣デゴザイマ·
ス
〔政府委員町尻量基君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=25
-
026・町尻量基
○政府委員(町尻量基君) 只今朝鮮ニ於キ
マスル徴兵制度施行ノ前提トシテ、今度ノ
志願兵制度ヲ施行シタノカ、ドウカト云フ
點ニ關シマスル御質問ガゴザイマシタガ、
大臣ニ代リマシテ陸軍ノ考ヘテ居リマスル
趣旨ヲ簡單ニ御答ヲ申上ゲマス、朝鮮ニ於
キマスル兵役制度ノ關係ハ、各般ノ諸施設
竝ニ各方面ノ狀況等カラ考ヘマシテ、徵兵
制度ヲ施行スル前提デアルト今確實ニ申上
ゲル迄ニハ至ッテ居リマセヌ、併ナガラ將
來十分ニ能ク〓究ヲ致シマシテ、努メテ是
等ノ制度施行ヲ進メテ行キタイト云フ程度
ノ〓究ニ進ンデ居ルコトヲ申上ゲテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=26
-
027・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 朴奉寿君
〔朴春琴君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=27
-
028・朴春琴
○朴春琴君 私ハ再ビ此壇上ニ於キマシテ
自分ノ所信ヲ皆樣ノ前ニ申上ゲルト云フコト
ハ、私ノ最モ光榮ト思フ所デアリマス、只
今上程ニ相成ラレク三案ニ對シテ、政府ニ
二三點申上ゲタイト思フノデアリマス、第
一ハ對支文化事業特別會計ノ特例ニ關スル
法律案デアリマス、第二ハ朝鮮事業公債ニ
關スル法案デアリマス、此法案ニ對シテ二
三點關聯致シマシテ當局ニ同ヒタイト思フ
ノデアリマス、其前ニ私ハ皆サンニ御禮ヲ
申上ゲタイト思フノデアリマス、其御禮ト
申シマスノハ、朝鮮ニ志願兵制度ガ制定セ
ラレタコトデアリマス、御承知ノ通リ日韓
併合ヲ行ヒマシテ今年ハ丁度二十八年ニナッ
テ居ルト私ハ思フノデアリマス、其二十八
年間、大日本帝國ト韓國ト併合當時ニ畏多
クモ明治大帝ガ、韓國二千万ノ人民ニ對シ
テ一視同仁デアルト云フコトヲ仰セラレタ
ノガ、今日此明治大帝ノ一視同仁デアルト云
フコトガ實現セラレタノガ、此志願兵制度
デアリマス、是ハ私ハ屢〓犬養內閣當時カ
ラ或ハ請願委員會ナリ、又建議委員會ナリ
ニ對シテ、一日モ早ク之ヲ與ヘテ貰ヒタイ
ト云フコトヲ主張シテ居リマシタケレド
モ、中々其主張ガ今日マデ通ラナカッタノ
ガ、幸ニ今度ハ皆サンノ平素ノ朝鮮ニ對ス
ル御指導ト御同情ニ依リマシテ、今囘此志
願兵制度ガ制定セラレタト云フコトハ、半
島二千三百万ノ新日本人ハ心カラ悅ンデ居
ルト同時ニ、小サイ赤坊ガ大キナ大人ニ
ナッタヤウナ氣持デ居ルト云フコトハ事實
デアリマス(拍手)ソレニ對シテ平素非常ニ
心配シテ戴イテ居ル九千万ヲ代表シテ居ラ
レル議員皆サンニ對シテモ、現內閣總理大
臣首メ各閣僚ノ方々ニ對シテモ、甚ダ僭越
デアリマスガ、半島新附二千三百万ノ代表
ト致シマシテ、私衷心ヨリ御禮申上ゲル次
第デアリマス(拍手)御承知ノ通リ私、人ハ
日本人デアリマスケレドモ、內地ニ來テ覺
エタ言葉デ演說シテ居ルノデアリマスカ
ラ、中々頓珍漢ノ言葉モ多イシ、言ヒ惡イ
點ガアリマスケレドモ、其點ハ大ニ割引シ
テ聽イテ戴キタイト思フノデアリマス拍
手)
私ハ朝鮮事業公債法案ニ對シテ或ハ拓務
省朝鮮政務總監ニ二三承リタイト思フノ
デアリマス、尙ホ私ガ政府ニ承リタイト云
フヤウナ時ハ、何時モ大臣ハ一人モ居ラナ
イ、今度ハ幸ヒ大臣ガオ居デニナッテ居リ
マスカラ、一層ノ勇氣ヲ以テ私ハ御話申上
ゲタイト思フノデアリマス、私ハ今迄ノ政
治ニ非常ニ缺陷ガアルト思フノデアリマ
ス、此政治ノ缺陷ハ直シテ行カナケレバ相
成ラヌ、內鮮ヲ併合致スト云フコトハ、私
ハ率直ニ申上ゲタイト思フガ、一體內地ト
朝鮮トヲ併合シタ意味ハ何處ニアルカ、內
地カラ言ヘバ東洋平和ノ基礎ノ爲ニ併合シ
〃、斯ウ申シテ居リマス、成程東洋平和ノ
基礎ノ爲ニ併合シタニハ違ヒナイデセウ、
モウ一步進ンデ私ハ考ヘルナラバ、東洋平
和ハ固ヨリ宜イガ、第一ニハ日本ノ年々百
數十万ノ人口增加ノ解決ヲ付ケルト云フ意
味モ、率直ニ申上ゲレバ、含ンデ居ルノヂ
ヤナイカト思フノデアリマス、然ラバ日本
ガ朝鮮ヲ併合シテ、此半島所謂面積カラ言
ヘバ內地ノ本土ト一ツモ變リハシマセヌ、
然ルニ今日マデ內地デ生レタ人ガ朝鮮ニ幾
ラ行ッテ居リマスカ、内地ノ百數十万ノ人口
問題ノ解決ニハ無論朝鮮ニ行カナケレバナ
ラヌト云フ今日ニ於テ、幾ラ行ッテ居ルカト
云フト、六十万位シカ行ッテ居ラナイ、ソレ
カラ又アベコベニ朝鮮デ生レタ日本人ハ內
地ニ七十万以上來テ居ルト云フ始末、內地
ノ人カラ言ヘバ朝鮮ハ殖民地ダト言フ、私
共カラ考ヘレバドッチガ殖民地カ一寸モ譯
ガ分ラナイ(拍手笑聲)然ラバ何ガ故ニ內地
デ生レタ日本人ガ朝鮮ニハ殖エナイカ、殖
エナイ原因ハ政治ニ缺陷ガアル、例ヘバ之
ヲ特ニ私ハ大藏大臣ニ承リタイト思フガ、
一體內地ノ方々ハ自分ノ領土ヲ忘レテシマ
フ、朝鮮ハ日本ノ國カ他國カ譯ガ分ラヌヤ
ウナコトヲ言ッテ居ル、下ノ關ヘ行ク迄ハ日
本ノ國ト皆思ッテ居ル、今度下ノ關カラ釜山
へ渡ル時ハ丁度歐米へ行クヤウナ氣持ヲ與
ヘトオ前鞄ヲ出セト云フヤウナコトデ、
調ベヲ嚴シクヤッテ居ル、ソレカラ又釜山ニ
著イタラバドウカ、アスコハ自分ノ國內ノ
北海道ノ如ク、自分ノ國內ノ朝鮮デアルニ
モ拘ラズ、其朝鮮デ用ヲ足シテ、內地へ歸
ル時ニ、アノ釜山ノ棧橋デ兵隊見タイニ人
ヲ竝ベテ置イテ、オイ朝鮮ノ札ヲ取替ヘナ
ケレバ內地デハ通用ガ出來ナイ、今船ガ出
ヤウト云フ時ニ札ヲ取替ヘナケレバ、アレ
ハ日本ノ國デ通用出來ナイト云フコトヲ、
私共ハ本當ノ日本人ノ氣持デ見ル時ニ、併
合シタ同一國內ト云フカ、同一國民ト云フ
カ、恐ラク外國人ガ見テモ是レ以上見苦シイ
コトハナイト思フ(拍手)自分ノ國デ發行シ
タ其紙幣ガ、他國ノ滿洲國ヤ支那デハ通用
ガ出來テ、サウシテ釜山カラ日本ヘ來ル時
ハ煙草一ツ買ッテ吸フコトガ出來ナイ、左樣
ナシミッタレナ政治デアッタラ、何時マデ
經ッテモ日本人ハ朝鮮ニ殖エルモノデハナ
イト思フ(拍手)之ヲ大イニ私ハ大藏大臣ニ
ドウ考ヘテ居ルカト云フコトヲ御尋致シタ
イト思フノデアリマス
ソコデ今度ノ北支問題ノ如キモ、私ハ朝
鮮デ生レタ朴春琴デアリマスカラ、恐ラク
支那人ノ心持ハ能ク知ッテ居ルト思ヒマス、
何故知ッテ居ルカト云フト、自分ガ現在朝
鮮ニ行キマシテ、朝鮮ノ人ガ愬ヘル氣持、
ソレヲ聽ク時私ハ恐ラク滿洲人ナリ支那人
モ左樣デハナイカト思フコトガアル、ソニ
デ私ハ北支事變ニ付テ、或ハ御參考ニナル
點ガアルカトモ思ヒマスノデ、自分ノ意見
ヲ申上ゲテ、政府ノ答辯ヲ求メタイ、一般
私ニ言ハセレバ日〓戰爭以來-尤モ
日〓戰爭ハ私共子供ノ時分ノ事デアル
カラ分リハシナイガ、大體ニ於テ私共聞
ク所ニ依リマスレバ、又支那人ノ氣持ヲ考
ヘルト、今マデ歷代支那ニ對スル日本ノ失
敗ト云フモノハ、私ガ申上ゲル迄モナ
ク皆樣ガ能ク御承知ノコトト思ヒマス、
例ヘバ今ノ蔣介石デナクテモ、張作霖ガ東
三省ノ政治ヲ行ッテ居ル時モ、アノ張作霖ヲ
助ケテ置キサヘスレバ、日本ノ言フコトヲ
何デモ聽イテ吳レルト云フノデ、ソコデ日
本ガ之ヲ應援シ援助シタ、サウシテ一馬賊
ガ日本ノ力ニ依ッテ支那ノ大元帥ニマデナッ
タ、ソコデ今度ハ己ノ力ガ段々附イテ來ル
ト、ドッコイシヨ、日本ノ言フコトハ肯カナ
イデ、日本ニ槍ヲ向ケル、サウスルト日本
人ハ正直ト云フカ氣ガ短イト云フカ、此張
作霖ノ野郞怪シカラヌト言ッテ拳骨ヲ吳レ
ル、又今度ハ今問題ニナッテ居ル蔣介石ノ如
キモ、蔣介石ガ日本ニ來タ時ハ何ト言ッタ
カ、私ガ支那ノ政權ヲ取ルナラバ、必ズ日
本ノ言フコトヲ肯イテヤルカラ、兎ニ角有
ユル方面ニ日本ノ力ヲ貸シテ戴キタイ、ソ
コデ是亦日本ノ力ヲ貸シテ彼ガ支那ノ政權
ヲ取ッタコトハ事實デアル、所ガ政權ヲ取ッ
タ曉ハドウデアルカ、所謂排日侮日ガ因デ
今ノ日本ノ所謂國家ノ一大問題ガ起ッテ居ル、
是ト云フノモ私考ヘルニ、今迄ノ日本ノ政治
ハ佛造ッテ魂入レズ、同ジ現內閣ノ閣條ニシテ
モ、總理大臣ト、外務大臣ト、陸軍大臣ト言
フコトニ相違ガアル、ソコデ此國家ノ一大
問題ニ當ッテハ現内閣ノ閣僚ノ方々ハ總テ
同ジ步調ヲ取ラナケレバナラヌト思フ
ソレデ今日蔣介石政權ハ否認シテ居ル、
蔣介石ノ政權ハ對手ニシナイト言フ、成程
ソレハ蔣介石ノ政權ハ今日ニナッテ見ルト
云フト、アレハ支那四億ヲ統一スベキ政府
デハナクテ、アレハ一馬賊ノ取扱ヲシテモ差
支ナイ、是ハ對手ニシナクテモ宜イガ、然
ラバ今後ノ日本ノ行クベキ途ハ、或ハ新政
權ノ成立ニ依ッテ、ソレト日支親善ヲ圖ルト
云フ、ソレハ洵ニ結構デアリマス、立派ナ
政權ガ出來テ、其政權ト日本ト本當ニ相提
携シテ、東洋平和ノ爲ニナレバ洵ニ日本ハ
望ム所デアルシ、又其處マデ行カナクテハ
相成ラヌト思ヒマスガ、併シソコハ餘程肚
ノアル政治家ガアッテ、サウシテ此新政權ニ
關與スル政治家ヲ如何ニシテ選ブカ、恐ラ
ク彼等ハ今ハ二ノ足ヲ踏ンデ居ルノデハナ
イカト思フ、何故二ノ足ヲ踏ムカト云フト、
日本ハ蔣介石ノ政權ハ認メナイ、對手ニシ
ナイ、斯ウ申シテ居リマスケレドモ、支那
人カラ言ヘバ蔣介石ノ政權ト云フモノハ、
今ハ唯偉イモノトマダ考ヘテ居ル、ソコデ
大體支那人ナリ、舊韓國時代ノ、所謂親日ノ
朝鮮ノ人ナリ、使フ時ハ一生懸命使ッテシマ
フケレドモ、世ガ平和ニナルト却テ虐待ス
ルト云フコトヲ能ク言ッテ居ル、ソコデ今ノ
新政權ノコトデス、恐ラク支那ヲ代表スベ
キ人物ハ、今日ノ蔣介石ノ政權ヲ否認シナ
ガラ、新政權ト云フモノヲ設ケテ日本ト本
當ニ相提携シタイト云フヤウナ人ガ、マダ
隱レテ居ルノデハナイカト思フ、何デ隱レ
テ居ルカト云フト、今ハ私共ガ出テ行ッテサ
ウシテ日本ト相提携シタイト云フ氣持ガア
ルケレドモ、萬一蔣介石ノ政權ト云フモノ
ガ段々力ガ付イテ來テ、終ヒニハ吾々ハ國
賊ト取扱ハレ、終ヒニ首ヲ取ラレルト云フヤ
ウナ虞ガアルカラドウダラウ、斯ウ言ッタヤ
ウナ二ノ足ヲ踏ンデ居ルト云フコトハ、私
ハ事實デハナイカト思フ、ソコデ新政權ガ
出來レバ、此人達ハ眞ニ日本ト相提携シタ
イト云フヤウナ心持デ出テ來ル人ナラバ、
是ガ萬一蔣介石ノ政權ニ依ッテ彼等ノ首ガ
取ラレルト云フヤウナ懸念ガアルナラバ
此懸念ヲ一掃スルト同時ニ、オ前達ガ死ン
デモ日本ガ後ニ附イテ居ルカラ、死ンデモ
骨ハ拾ッテヤルカラト云フコトデ、力强ク日
本ガ之ニ仕向ケナイト云フト、恐ラク私ハ
力强イ新政權ト云フモノハ出來ナイト思フ
(拍手)
ソコデ一方ハドウカト云フト今ノ支那ニ·
對スル日本ガ、領土的ノ野心ガナイ、是一
私ガ申上ゲナクテモ皆サン能ク御承知ダラ
ウト思ヒマスガ、朝鮮ニ行ッテモ、或ハ內地
ノ方々モ朴サンドウモ日本ハ駄目ダヨト言
フ、何デ駄目ダト言フト、何時モ日本ハ戰
爭ハ勝ツケレドモ、最後ニナルト得ルベキ
所ハ一ツモ無イヨ、ソコガ所謂日本ノ缺點
デアルト言フ、成程私共ガ考ヘテモ、先ヅ
其言フコトハ違ヒナイト考ヘテ居ル、今迄
ノ三囘ノ戰爭ハ勝ッタ、勝ック曉ニハドウカ
ト云フト何モ得ルベキ所ハナイ、殊ニ今日
ハ世界ニ向ッテ色々ナ立場モアルデセウ、ア
ルケレドモ、日本ハ支那ニ對スル領土的ノ
野心ガナイト言フ、領土的ノ野心ガナイト
云フコトナラバ何ガ故ニ酷寒零下三十度ノ
所ヲ皇軍ガ國ノ爲ニ第一線ニ立ッテ戰ッテ居
ル、數十億圓ノ國帑ヲ費シ、貴重ナ生命ヲ
捨テヽ居ル、何モ領土的ノ野心ガナイト云
フコトナラバ、新政權ガ出來シバ綺麗ニ支
那ニ返シテシマフ位ナラバ初カラヤラナイ
方ガ宜イ、而シテ日本ガ領土的ノ野心ガナ
イト云フコトヲ幾ラ言ッタッテ、國際聯盟、
所謂歐米諸國カラ言ヘバ、ソレハ日本人ハ
口バカリダト、幾ラ正シイコトヲ言ッテモ相
手ガ橫車ヲ押シテ解釋シテ居ル、ソコデ例ヘ
バ外務大臣ノ如キモ、白人ノ氣持ト云フモノ
ハ無論知ッテ居ルト思ヒマスガ、彼等ハ動モ
スレバ正義人道、民族自決ト言フ、所ガ私ハ
一言皆樣ニ參考ニナルコトヲ申上ゲタイト
云フノハ、今カラ十何年前ニ、是ハ歐米ト
申シテモ差支ナイノデアリマスガ、米宣〓
師アタリガ朝鮮ニ來テ居ルガ、內鮮一體
ノ融和親善ヲ破壞スルト云フノハアノ人
達デアル、然ルニ動モスレバ正義人道、民族
自決ト言フヤウナ立派ナ白人ガ朝鮮ノ或ル
林檎畑ヲ或ル米人ガ持ッテ居ル、九歲ニナル
子供ガ其林檎ヲ一ツ取ッテ食ベクト云フ、サ
ウシタ所ガ其米人ガ其子供ヲ捕ヘテ行ッテ、
サウシテ繩デ縛リ付ケテ一晩其處ニ留メテ、
サウシテ翌日東カラオ天道樣ガ上ッテ來ル
ト、其處ニ縛ラレタ子供ノ親ガ、モウ子供
ガ居ナクナッテ居ルカラシテ何處へ行ッタカ
分ラヌト方々探シテ居ル、ソレヲ縛付ケテ
置イテ、今度ハ熱ガドンノ〓昇ッテ居ルノニ
硝酸銀ヲ以テ盜賊ト云フコトヲ燒付ケテ居
ル、所ガ今度ソレガ漸ク分ッタ爲ニ親達ガ子
供ヲ取リニ行ッタ、サウスルト貴樣ノ子供ガ
俺ノ家ノ林檎畑デ林檎ヲ盜ンダカラ其罰金
トシテ一週間林檎畑ノ草ヲ採レト言フノデ
ス、ソレカラ其子供ガ盜賊ト燒付ケラレテ
居ルカラシテ、朝鮮ノ人ハ正直デ、外ニ出
シテ置ケバ巡査ガ泥棒ト云フコトヲ書イテ
アルカラ連レテ行カレテハ困ルト云ウテ「オ
ンドル」ノ中デ育ッテ居ル、吾々ガ之ヲ發見
シテ大イニ是ハ表向ニヤラナケレバナラヌ、
如何ナ白人ニシテモ法治國ノ日本ニ來テ私
刑ヲ行フト云フコトハ、是ハ徹底的ニヤッ
付ケナクチヤナラヌト云フコトデ吾々ハ盛
ンニ輿論ヲ起シタ、サウスルト或人ガ、イ
ヤドウモ國際聯盟ガ恐ロシイカラ是ハ餘リ
酷イ目ニ遭セナイガ宜イト言フ、其當時ノ
外交官アタリハサウ云フ考ヲ持ッテ居ッタ、
自國民ガ兎ニ角盜賊ト云フコトヲ燒付ケラ
レテ居リナガラ、又苟モ日本ト云フ法治國
ニ於テ私刑ヲ行ッテ居ル其人ニ對シテ、國際
聯盟ヲ恐レル爲ニ、マア仕樣ガナイカラ勘
辨シテヤレト云フヤウナ外交官ガ今マデ隨
分居ックト思フ、今度モサウ云ックヤウナ外交
ヲヤッテ貰ックナラバ日本ガ迷惑デアル、何
モ領土ノ野心ガナイト言フ、ソコデ私共ハ
ハッキリ日本ノ言フコトヲ天下ニ明ニスル
ト云フコトガ私ハ宜イノデハナイカト思フ、
初カラ日本ハ領土ノ野心ハ無イケレドモ、
支那人ノ爲スコト、スルコトハ所謂穩當デ
ハナイ、ソコデ今度ノ事變ハ支那人自ラ所
謂日本ニ對シテ槍ヲ向ケテ居ルカラ、日本
ハドウシテモ自衞上萬已ムヲ得ズニヤッテ
居ルノダ、併ナガラ領土ノ野心ガ有ルカ無
イカハ、支那人ノ出ヤウニ依ッテドウニデモ
ナルト云フコトヲ私ハ言ウテ宜イト思フ(拍
手)日本ガ自ラ領土ノ野心ハ何モアリマセ
ヌト言ッタ所ガ、英國アタリハ曾テ日本ト日
英同盟ヲ作ッテ、サウシテ印度ヲ片ッ端カラ
押ヘテ置イテ、自分ノ國內ノ安定ガ付クト、
日本人ヲ他人扱ニスル、ソレハ酷イ、今度
ノ事變デ恐ラク世界デ一番酷クヤルノハ英
國人デアルト思フ、英國人ハアノ正義人道、
或ハ民族自決ト云フコトヲ言フケレドモ、
今日ノ英國ガ印度ニ對スルヤリ方ハドウデ
アルカ、日本ハ朝鮮ヲ併合シテ、朝鮮ノ人
ガ不平ヲ言ッタカラト云ツテ、飛行機ヲ以テ
朝鮮ニ爆彈ヲポコ〓〓落シタコトハナイ、
アンナ立派ナ正義人道、民族自決ト云フヤ
ウナコトヲ言フ英國人ガ、印度ニ少シ不平
ガ起ルト、飛行機ヲ持ッテ行ッテ空カラ爆彈
ヲ落シテ、片ッ端カラ殺シテシマフ、コン
ナヤウナ人間ト今マデ日本ガ兄弟ニナッタ
ト云フコトハ、私ハ其當時ノ手落ヂヤナイ
カト思フ、兄弟ニナッタナラバ、兄弟ニナッ
クヤウナ好イ氣持デヤッテ呉レルノナラ宜
イケレドモ、兎ニ角今度一番英國人ガ日本
ニ對シテ酷イ、デアリマスカラアレ等ニ對
シテモ-私ハロガ惡イト云フカ、英國ハ
國際聯盟ノ雲助ミタイナモノダト思フ箱
手)
併シ之ニ對シテ日本ハ何ニモ憚ル必要ハ
ナイヂヤナイカト思フ、打突カッテ見レバ案
外脆イカモ知レヌ、サウヂヤアリマセヌカ、
日〓戰爭ヲシナイ前ニ、當時ハ舊韓國時代
デ、支那ハ洵ニ大國デ、手ノ著ケヨウガナ
カッタ、其當時日本ハ支那ヲ非常ニ恐レテ
居ック、小村公使ガ朝鮮ニ行カレタ際、アノ
金玉均ノ如キハ、日本ト一日モ早ク併合シ
タイ、日本ト一日モ早ク本當ノ融和親善ヲ
ヌルニハ勢力ヲ得ナケレバイケナイカラ、
日本ノ力ヲ貸シテ下サイト言ッタ、サウスル
ト小村侯ハドウカト云フト、アヽ宜シイト
約束シタ、ソレカラ愈、小村侯ト金玉均ガ相
提携シテ實行スルト言ッタ、其時既ニモウ
支那ノ兵ガヤッテ來タ、是ハ大變ダト云フコ
トデ今度金玉均ト小村侯トガ約束シタコト
ハ破談ニナッテシマッタ、結局金玉均ハ體ノ
置場ガナイカラ仁川ニ逃ゲテ日本ニ亡命シ
テ來タ、所ガ其位支那ヲ恐レテ居ッタ日本ガ
打突カッテ見タラ、是レ以上脆イコトハナイ、
ソレト同ジヤウニ私共ハ今日ノ我ガ九千万
國民ノ肚ガシッカリ決マラナクテハイケナイ、
九于万國民ガ一體トナルナラバ、恐ラタ私
ハ恐レル所ハナイト思フ、併シ米國、假期
英國デモ、今ニ日英戰爭ガアルダラウトカ、
或ハ今度露西亞ガ攻メテ來ルトカ、色々ナ
コトヲ言ッテ居リマスケレドモ、今マデ
日本國民ハ他民族ニ一ツモ征服サレタコト
ガナイ、日本ハ神ノ國デアルカラ、私ハ
戰ッテモ必ズ向フハ支那ト同ジヤウニ脆ク
行クノデハナイカト思フ、ソレ以外ニ今日
本自ラドウモ領土ノ野心ガナイト云フヤウ
ナコトヲ言フト、戰地ニ於テ、戰死シタ人
ノ氣持ナリ又其家族ニ對シテモ、領土ノ野
心ガナイモノニ、例ヘバ兄弟ガナクナッタ
トカ、或ハ今度子供ヲ失ッタトカ、コンナ
ヤウナ人ノ氣持カラ考へルナラバ、マダ日
本ガソンナコトヲ言フコトハ早イヂヤナイ
カト私ハ思フ(拍手)
現在ニ於テモ今ノ新政權ト云フモノノ結果
ヲ国クスルニハ、アノ蔣介石政權ト云フモノ
ヲ何處マデモヤラナクチヤナナライ(拍手)ヤ
ルニハ只今マデノヤウニ出來物ガ一ツ出來
レイク、其上ニ膏藥ヲ貼ルヤウナコトデハイ
ケナイ、是ハ根本的切開ヲシナクチヤイケ
ナイ、之ヲ切開スルニハ所謂蔣介石政權ト
云フモノヲ、影モ形モナイヤウニシナクチ
ヤナラナイ、ソレデコソ初メテ日本人ニ再
ビ刄向フナラバ、又アノ張作霖トカ蔣介石
見タヤウニナルノダト云フコトヲ支那人ニ
見セナケレバ、眞ノ新政權ト云フモノハ私
ハ完全ニ出來ナイト思フ(拍手)
ソコデ今ノ朝鮮ニ於ケル人口問題ニ付テ
モ、是ハ時間モ制限サレテアリマスカラ、
何レ豫算委員會デユックリ政府ニ對シテ質
問ヲシタイコトガアリマスガ、今日ハ內地
ノ下關ト釜山トノ間ニ一ツノ大キナ關ヲ設
ケテ居ル、アノ不便ヲ撤廢シナタチヤナラ
ナイ、卽チ關稅ノ撤廢ヲシテ貰ヒタイ、關
稅ト云フモノハドノ位カト云フト、僅ニ一
年ニ五百万圓位ダラウト思ヒマス、此五百
万圓位ノ關稅ノ爲ニ曩ニ申上ゲタ通リ、コ
チラカラ行ク人ニモ不便ヲ與ヘル、向フカ
ラ來ル人ニ對シテモ不便ヲ與ヘル、ソレガ
爲ニ併合シテ二十八年、伊藤公ガ統監時代
ノ十年、三十有餘年、四十年ノ間ニ日本人
ガ僅ニ六十万人位朝鮮ニ行ク位ナラバ、何
ガ故ニ日本ハ朝鮮ヲ俳合シタカト云フコト
ヲ考ヘナクチヤナラナイ、私ハ併合シタ本
當ノ意味カラ言ヘバ、少クトモ日本人ガ四
百万ヤ五百万ハアノ半島ニ行カナケレバナ
ラナイト思ヒマス(拍手)今日ハ一ツモ行カ
ナイ、モウ一ツハ朝鮮ニ居ラレル內地人カ
ラ言ヘバ、現在二重國籍デ生活シテ居ル、
此二重國籍デ生活スルコトハ朝鮮ニ居ル內
地人アタリハ之ヲ不便ニ感ジテ居ル、例へ
バ下關ニ行クマデハ選擧權ガアッテモ、向
フニ渡レバ選擧權ヲ奪ヒ取ッテシマフ、斯
ウ言ッタヤウナコトガアリマシテ、總テノ
爲スコトスルコトニ不便ヲ與ヘルト云フコ
トハ事實デアリマス、ソレデアリマスカラ
此關稅ヲ撤廢致シ、サウシテ內鮮ノ交通ヲ
自由自在ニヤルト云フコトデ、初メテ同一
國デアリ同一國民デアル、今度ノ志願兵
制度ガ制定セラレタ後ニ、モウ旣ニ三倍
ノ申込ガアル、四百人ト云フモノハ數ハ
微々タルモノデアリマスケレドモ、人間
ノ氣持カラ言ヘバ、恐ラク現內閣ノ國策
トシテハ是レ以上大キナ國策ハナイト思フ
(拍手)朝鮮ノ南總督ハアノ志願兵制度ガ
制定セラレテ、朝鮮ニ再ビ南サンガ御歸リ
ニナル時ニハ、各驛デ萬歲々々デマルキリ
南サンヲ人デ埋メタト云フコトデアル、私
ハ〓育機關ノコトモ今度改正ニナルト云フ
コトヲ聞イテ居リマスガ、果シテドノ程度
マデノ改正ヲサレルカドウカ、是ハ豫算委
員會デ私ハ詳シク承リタイト思ヒマス、今
度ノ北支事變ニ對スル半島二千万ノ人ノ愛
國心ハ、恐ラク日本デ生レタ皆サンヨリ劣
ラナイ、皆兎ニ角干人針ヤ或ハ國防獻金
ヤ、有ユル方面ニ努メテ居ル、中ニハ自分
ノ指ヲ切ッテ血書デ以テ日ノ丸ヲ書イテ、
「內鮮一體」トシテ戰地ニドン〓〓送ッテ居
ル、是ハ恐ラク數十名デセウ、今度ノ志願
兵制度ガ制定セラレテカラハ、兎ニ角申込
ムト云フ人ハ大半指ヲ切ッテ書イテ申込ン
デ居ル、此一點カラ言ウテモ、內鮮融和ト
言フノデハモウ古臭クテ、内鮮一體ハ完全
デアル、ソコデ恐ラク朝鮮デ生レタ新國民
二千万ト云フ此人等ニ、將來ノ皆サンノ行
キ方ニ依ッテ、大和民族ノ魂ヲ完全ニ植付ケ
ルト云フコトガ私ハ出來ルト思フ、デアル
カラシテ之ヲ導イテ、此弟ヲ一日モ早ク立
派ナ日本ノ國民ニサセタイト云フコトハ、
所謂當局竝ニ議員皆サンノ指導如何ニ依ッ
テ私ハ成ルト思ヒマス、デアリマスカラ今
言ッタ關稅ノ撤廢ガ出來ルカドウカ
ソレカラ支那文化、是ハ精神的ノ文化モ
色々アリマスガ、第一此間國務大臣ニ質問
シタ民政黨ノ川崎氏ガ、所謂支那語ヲ覺エ
ナクチヤナラヌトカ、或ハ支那人ガ日本語
ヲ覺エルヤウナ機會ヲ作ラナケレバナラヌ
ト云フコトヲ言ウテ居リマスガ、洵ニ私共
ハ是ハ宜イト思ヒマス、今マデ朝鮮統治ガ
遲レタト云フコトハ、通譯政治ガアルガ爲
ニ遲レテ居ル、何デアルカト云フト、一人
ノ犯罪人ヲ調ベルニシテモ、第一言葉ガ判
ラヌカラ通譯ヲ雇ッテ、サウシテ乙カラ甲
ニ傳ヘテ、甲カラ丙ニ來ルカラ、結局差向
ヒナラ一時間デ濟ム所ヲ三時間モ掛ッテ、其
人ノ意思ヲ本當ニ日本人ガ呑込ムコトガ出
來ナイ、日本人ノ意思モ先方ニ打込ムコト
ガ出來ナイヤウナ政治ヲ行ッテ居リマスカ
ラシテ、ソコデ色々ノ誤解ガ生ズル、或ハ
害ガ生ズル(拍手)此支那人ニ對シテ徹底的
ニ所謂日本語ヲ〓ヘルト云フコトト、或
日本人ガ少クトモ是カラ北支ト提携スルナ
ラバ、支那ノ政治ニ對シテ多少日本ガ關與
シテ行カナケレバナラヌト云フヤウナ立場
カラ、日本人ガ支那語ヲ覺エル、英語ト云
フモノハ後デ宜イ、ヤリ拔ケラレル國ノ言
葉ヲ熱心ニ覺エルヨリ、吾々東洋人ノ所謂
東洋文化ニ還ル、ソコデ追々大和民族ノ魂
ヲ支那人ニ植付ケルト云フヤウナコトヨ
リ、日本人ガ自ラ支那人ヲ可愛ガル、惡イ
奴ハ徹底的ニヤッツケテ宜イケレドモ、善
イ奴ニハ味方ニナッテ、眞ノ兄弟ノヤウニ
可愛ガラナケレバナラヌト云フコトガ、政
治ノ重點ヂヤナイカト思フ、大體今マデ日
本人ガ失敗々々ト重ナルト云フコトガ、正
直ト氣ガ短イト云フコトデアル、此正直ト
氣ガ短イト云フコトガ、一番初メハ能ク面
倒ヲ見ル、能ク面倒ヲ見ルケレドモ、終ヒ
ニ一寸シタコトガアルト、モウ此位デ我慢
ヲシナケレバナラヌト云フ所ヲ我慢ガ出來
ナイデ、此野郞ト云フノガ何時モ失敗ノ因
デアル、ダカラ此正直ト氣ガ短イト云フコト
ガ失敗デアル、デアリマスカラシテ、今度ハ日本
ガ本當ノ大日本帝國デアリマスカラシテ、大國
ノ氣分ヲ以テ、吾々日本ヲ諒解シ、吾々日本
ト一〓ニ步調ヲ取ッテ行キタイト云フ人ハ、
之ヲ眞ニ兄弟ノ如ク愛シ、惡イ奴ハ徹底
的ニ罰スル、此點ニ於テハ所謂支那文化ニ
對シテドノ程度マデ行ッテ居ルカドウカ、或
ハ朝鮮ニ關稅撤廢ト云フモノガ出來テ、本
當ニ內鮮ガアノ關ヲ設ケズニ自由自在ニ交
通ガ出來テ、眞ニ此非常時日本ニ對シテ九
千万ガ一體トナッテヤッテ行クベキ、其事ガ
出來ルカドウカト云フコトニ付テ、誠意ア
ル御答辯ヲ御願致シタイト思フノデアリマ
ス(拍手)
〔政府委員大野綠一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=28
-
029・大野緑一郎
○政府委員(大野綠一郞君) 御質問ノ點ニ
御答致シマス、輸入稅ノ撤廢ニ付キマシテ
ハ、昭和十二年度ヨリ徐々ニ之ヲ撤廢スル
コトニ致シテ居リマシテ、三分ノ一ヅヽ十
二年、十三年、ソレカラ十四年、十五年ト
掛リマシテ、全部撤廢スルコトニナッテ居リ
マス
〔政府委員太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=29
-
030・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 日本銀行劵ト朝
鮮銀行劵トノ通用區域ガ違ヒマス爲ニ御不
便ノアルコトハ、御指示シノ通リデアルト
思ヒマス、併ナガラ現在朝鮮銀行劵ト日本
銀行劵ト通用區域ノ違ッテ居リマスノハ、特
殊經濟事情ニ因ルコトモ御考ヲ願ヒタイノ
デアリマス、又長ク此朝鮮銀行劵ニ慣レテ居
ルト云フコトモ考ヘナケレバナリマセヌ、
更ニ朝鮮銀行劵ハ發劵銀行デアルノミナラ
ズ、普通銀行ノ仕事モシテ居ルト云フコト
モ考ヘナケレバナリマセヌ、問題ハ臺灣ニ
於ケル豪灣銀行劵トノ關係モアリマシテ、
內地ノ日本銀行劵ト外地ノ是等ノ銀行劵ト
ノ關係ハ、所謂通貨統一問題ニ關聯シテ居
ルノデアリマス、此重大ナル問題ニ付テハ
篤ト考ヘタイト考ヘマス
〔政府委員松本忠雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=30
-
031・松本忠雄
○政府委員(松本忠雄君) 朴春琴君ノ仰セ
ニナッタ日支ノ文化工作ノ爲ニ、支那ニ日本
語ヲ普及スルノ必要ナルコトハ御同感デゴ
ザイマス、只今御協贊ヲ願ッテ居リマスル對
支文化事業ノ來年度ノ事業ノ一ツ、ノ重要ナ
項目ト致シマシテ、其事ヲ計上シテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=31
-
032・朴春琴
○朴春琴君 自席デ簡單ニ申上ゲタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=32
-
033・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=33
-
034・朴春琴
○朴春琴君 私ハ今大藏政府委員ノ御答辯
ヲ承リマシタガ、併シ特殊ノ事情ガアルト
云フコト、私ハ其特殊々々ト云フコトハ穩
カデハナト思ヒマス、ソレハ特殊ノ事情モ
アルデセウ、併ナガラ此特殊ノ事情ガア
ルト云フコトノ爲ニ、何時モ內鮮ト云フモ
ノハ、何ント云フカ、精神的ノ一體トナラヌ
ト云フコトガ多イノデアリマスガ故ニ、吾々
ハ朝鮮ノ統治上總テ內地ノ延長ト云フコ
トヲ考ヘテ居ルノデアリマス、今デモ內地
ノ延長ヲスベキコトハ澤山アル、例ヘバ鐵
道トカ、電信トカ、司法トカ云フモノハ、
ドシ〓〓私共ハ內地ノ延長ヲスレバ宜イト
思ヒマス、ソコデ今ノ內ニ朝鮮ヲ內地ノ延
長ニシテシマフト云フト、朝鮮總督府ノ權
威ガ鈍クナルト云フコトガアルガ、朝鮮總督
府ハ無クテモ構ハナイト思フ、徹底的ニ內地
ノ延長ヲスレバ私共ハ宜イト思フ、サウス
レバ何モ朝鮮ニ親任官ヲ一一人置カナクテモ
宜イ、内地ト同ジコトヲヤッテ貰ヘバ宜イ、
此事ヲ此前ノ前ノ議會ニ私ガ質問致シク時
ニ、オイ朴君、朝鮮ハ支店ヂヤナイカ、朝
鮮ハ支店ダカラ、君却テソンナコトハ言ハ
ナイ方ガ宜イト云フコトヲ言ハレタ方ガア
リマスケレドモ、支店デモ結構ヂヤナイカ、
私共ガ現在不便ヲ感ジテ居ル、ソレニ對シ
テ便宜ヲ與ヘレバ宜イ、同ジ國內デアリ
ナガラ朝鮮人ガ日本ニ來レバ煙草一ツ買ヘ
ナイヤウナ、サウ云フ特殊ナ關ヲ設ケナク
トモ宜イト思ヒマス、デアリマスカラ此問
題ハ一日モ早ク大藏省ハ考ヘテ撤廢シテ貰
ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
〔政府委員太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=34
-
035・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 朴春琴君ニ重ネ
テ御答申シマス、私ガ特殊ト申シマシタハ
經濟事態ニ付テ言フノデアリマシテ、日本
ト朝鮮トノ間ガ抱付クヤウナ親シイ、何等
ノ垣根ガナイト云フコトハ申シ上ゲル迄モ
ナイノデアリマス、御答致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=35
-
036・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=36
-
037・服部崎市
○服部崎市君 日程第二乃至第五及ビ第八
乃至第十ノ七案ヲ一括シテ議長指名二十七
名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=37
-
038・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=38
-
039・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第六、兵役法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス-陸軍大臣杉山元君
第六兵役法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
兵役法中改正法律案
兵役法中左ノ通改正ス
第十一條削除
第十二條中「ニシテ前條ノ規定ノ適用ヲ
受ケザル者」ヲ削ル
第十三條中「前二條」ヲ「前條」ニ改ム
第十四條第一號ヲ左ノ如ク改ム
靑年學校ノ課程又ハ之ト同等以上
ト認ムル課程ヲ修メタル者ニシテ品
行方正學術勤務ノ成績優秀ナル者
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第一號ニ規定スル課程ノ修得ノ程
度及認定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之
ヲルト
第十五條中「前四條」ヲ「前三條」ニ改ム
第十六條中「第十一條」ヲ「第十二條」ニ改
ム
第五十七條ニ左ノ二項ヲ加フ
靑年學校ノ課程又ハ之ト同等以上ト認ム
ル課程ヲ修メタル者ニ對シテハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ前項ノ召集ヲ爲サザル
モノトス
前項ニ規定スル課程ノ修得ノ程度及認
定ニ關シテハ第十四條第二項ノ規定ヲ
準用ス
附則
本法ハ昭和十三年十二月一日ヨリ之ヲ施
行ス
第五十七條ノ改正規定ハ昭和十二年以前
ニ於テ第一補充兵役ニ編入セラレタル者
ニ之ヲ適用セズ
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=39
-
040・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 兵役法中改正法律
案提出ノ理由ヲ說明致シマス、現在靑年學
校又ハ是ト同等以上ト認メマス課程ヲ修メ
マシタ者デ、步兵以外ノ兵科ニ屬シマス者
ハ在營期間〓ネ二箇年デアリマスガ、步兵
トシテ入營致シテ居リマス者ハ、其在營期
間ヲ六箇月短縮ヲシテ居ルノデアリマス、
昭和二年ニ本法ガ制定セラレマシタ當時ニ
於キマシテハ、步兵ノ訓練モ他兵科ニ比較
致シマシテ簡單デアリマシテ、在營期間ノ
短縮モ可能デアルト認メテ居ッタノデアリ
マスガ、今日ニ於キマシテハ步兵ノ裝備ハ
著シク複雜トナリ、又機械化セラレテ居リ
マスバカリデナク、其戰鬪法モ亦頗ル複雜
トナリマシタコトハ、此度ノ事變デ具サニ
經驗セラレタ所デアリマス、加之瓦斯防
護對戰車、對飛行機等ノ戰鬪ヲモ訓練致
サネバナリマセヌノデ、假令靑年學校修了
者デアリマシテモ、一年六箇月ノ在營期間デ
ハ到底〓育ヲ完了シ得ザル狀態トナッタノ
デアリマス、今次ノ事變ニ於キマシテ、支
那ノ如キ軍隊ガ新式兵器ヲ使用シテ居リマ
シテモ、之ニ對スル戰鬪法ハ餘程訓練ヲ重
ネナケレバ損害ガ多イト云フ事柄ハ、實戰
ニ示サレタ貴重ナル經驗デアリマシテ、特
ニ隣邦デアリマスル「ソ」聯邦ガ、其獨裁政治
ニ依リマシテ世界驚異ノ軍備ヲ充實シ、兵
器器材ノ面目ヲ一新シテ居リマスコト
等カラ考ヘマシテ、現在ノ儘デハ忍ビ得ザ
ルコトヲ痛感スルノデアリマス、卽チ戰時
ノ損害ヲ努メテ減少致シマシテ、速戰卽決
ノ目的ヲ達成致シマスル爲ニハ、更ニ國軍
ノ訓練ヲ積ミマシテ、其精銳ヲ期サナケレ
バナラヌ次第デアリマス、此樣ナ國防上ノ
必要カラ、今囘靑年學校又ハ是ト同等以上
ト認メマスル課程ヲ修メマシタ者デ、步兵
トシテ入營致シマシタ者ニ對シマシテモ、
他兵科ノ者ト一律ニ〓ネ二箇年ノ在營制ヲ
實現致シタイノデアリマス、之ニ關聯致シマシ
テ靑年學校ノ〓育ハ自ラ優良ナル壯丁ヲ養
成シテ居リマスカラ、一年歸休ニ致シマス
者ハ、成ベク靑年學校修了者中ヨリ之ヲ選
定スルコトトシ、又目下第一補充兵ノ〓育
召集ハ全員ニ付テ行ッテ居ラヌノデアリマ
スガ、靑年學校修了者ノ召集ハ、召集所要
ノ人員ニ對シテ不足ヲ告ゲマス場合、又ハ
自ラ召集ニ應ゼンコトヲ志願スル者ノアリ
マシタ場合等ノ外ハ之ヲ免除致シマシテ、
先ヅ靑年學校ノ課程ヲ修メザル者ヲ以テ〓
育召集要員ヲ得ルコトニ努メマシテ、之二
依リマシテ全ク軍事ノ經驗ノ無イ者ヲ直チ
ニ戰場ニ送ルコトヲ避クルヤウニ致シタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、何卒御審議ノ
上速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=40
-
041・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通告ガアリ
マス、之ヲ許可致シマス-長野綱良君
〔長野綱良君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=41
-
042・長野綱良
○長野綱良君 私ハ只今上程ニナッテ居リ
マスル兵役法ノ改正案ニ關係ヲ致シマシ
テ、政府ニ御尋ヲ致シタイノデアリマス、
質問ノ要點ハ徵兵滿二十歲ヲ滿十八歲ニ低
下ハ出來ナイカト申スコトデアルノデアリ
マツ、其問題ハ極メテ簡單デアリマスルケ
レドモ、是ガ〓育上ニ連鎖ヲ持チ、思想上
ニ、國防力ノ上ニ、將又產業能力ノ上ニ非
常ナ重大ナル關係ヲ持ッテ居ルノデアリマ
ス、現在ノ制度カラ見マスレバ、滿二十歲
ニ達シタ者ヲ檢査ヲ致シテ、取リ年二十歲
或ハ二十一歲ニ達シタ者ヲ軍隊ニ入レルコ
トニ相成ッテ居ルノデアリマス、又外ニ志
願ヲナサレバ十七歲カラ之ヲ採用スルコト
ニ相成ッテ居リマシテ、相當ナ成績ヲ擧ゲ
テ居ルノデアリマス、私ハ此十八歲ニ低下
スルコトニ付キマシテ、以下簡單ニ其理由
ヲ申述ベタイト考ヘテ居ルノデアル
我國ノ手ヤ足トナッテ活動致シテ居ル所
ノ國民ノ大部分、今日兵隊トシテ參ッテ居リ
マシテ第一線ニ活躍ヲ致シテ居ル所ノ大部
分ノ兵隊ト申シマスル者ハ、義務〓育ヲ了
ヘテサウシテ靑年訓練ヲ受ケタ者ガ大部分
デアルノデアル、然ルニ此大部分ノ國民ノ
〓育ニ付テ國家ガ注意ヲ拂ハナカッタコト
ヲ、私ハ甚ダ遺憾ニ考ヘテ居ル者デアル、
吾々ガ平素地方自治體ニ居リマシテ、此事
ヲヤカマシク唱ヘタ結果ガ、小學校ノ外ニ
實業補習學校ヲ設ケ、更ニ靑年訓練所ト云
フモノヲ設ケタノデアリマス、併ナガラ同
ジ筋ヲ行クモノヲ、幾ツモ制度ヲ設ケルト
云フコトハ甚ダ惡イカラ、速ニ之ヲ靑年訓
練所ニ統一スベキモノデアルト云フコト
ヲ、吾々ハ力說ヲ致シテ參ッタノデアリマ
ス、松田文部大臣ガ御就任ニナリマシタカ
ラ、私ハ獻策ヲ致シマシテ、松田文部大臣
ノ時代ニ、此事ガ卽チ補習〓育ト靑年訓練
所ト云フモノガ統一サレタノデアル、併ナ
ガラ吾々ハ其效果ヲ尙ホ不足ト思ッテ居ッタ
ノデアリマスルガ、此度日支ノ戰爭ニ於テ
陸軍ガ御經驗ニナリマシタ結果、之ヲ靑年
訓練トシテ義務〓育ニ致シタコトハ、洵ニ
結構ナルコトト考ヘルノデアリマス、然
ル所其靑年訓練ヲ如何樣ニヤルカト內容
ヲ調ベテ見マスレバ、小學校ノ義務〓育
ヲ六年ヤッテ、一部ハ高等小學校ニ二箇
年入ル、他ノ大部分ハ高等小學校ニ入ラ
ヌデ靑年訓練ヲ受ケルノデアル、其間ハ
ドウスルカト申シマスルト云フト、一面
年ノ普通科ヲ授ケルト斯ウ云フコトニナッ
テ居ル、高等小學モ靑年訓練モ、其目的ト
スル所ハ、智能ヲ啓發シ、德操ヲ磨イテ、
身體ヲ發達セシムルニアルト斯ウナッテ居
ルノデアル、是カラ先ハ何レ學制改革ニ關
係ガアリマセウカラ、文部省ノ方モ御聽ヲ
願ッテ御〓究ヲ願ヒタイノデアリマス、同ジ
目標ニ進ム者ヲ高等小學、靑年訓練ト二ツ
竝行サセテ置ク必要ハ私ハナイト思フノデ
アル、須ク國民〓育ハ之ヲ單一化シテ一筋
ニ國民ヲ〓育シ仕上ゲルト云フコトガ、極
メテ大事ナコトデナイカト私ハ考ヘル拍
手)
私ノ議論ノ如ク致シマスレバ、義務〓育
ヲ六年ヤッテ、サウシテ二箇年ノ間ハ之ニ普
通科ヲ課ス、サウシテ後三年間今日行ハレ
テ居ル所ノ靑年訓練ヲ施スノデアル、サウ
致シマスルト云フト、義務〓育六年ヲ了ヘ
テ早生レノ人ハ十三、遲生レノ人ハ十四歲
デ靑年學校ノ方ニ入ッテ參リマスルカラシ
テ、此靑年學校ノ生徒ハ十八歲又ハ十九歲
ノ取リ年ニ於テ、大體靑年訓練ヲ終ヘルコ
トト相成ルト思フノデアル、一方小學校ヲ
經テ中等學校ニ進ム人モ、大體十八九歲ニ
於テ中等〓育ヲ了ルト考ヘルノデアル、其
中等〓育ヲ了リ、靑年訓練ヲ了ッタ其後ト
云フモノガ、私ハ極メテ思想上大事ナ時デ
アルト考ヘル(拍手)今日專門家ノ〓究ニ依
リマスルト、人間ハ大體十九歲ニ於テ完成
ニ至ルト申シテ居リマス、ソレデアリマス
カラシテ、此十九歲頃ト云フモノハ極メテ
大切ナ時デアリマスカラ、此時ニ軍隊ニ直
グニ入レルノデアリマス、サウシテ其處デ
志操ヲ練リ、體力ヲ練ル、サウシテ完全ナ
人間ニ此處デ仕上ゲテシマフノデアリマス、
サウ致シマスルト、私ハ非常ナル好イ結果
ヲ來シハシナイカト思フノデアリマス、何
故カト申シマスルト、今日ノ戰爭ハ科學戰
デアリマス、非常ニ敏捷ナ仕事ヲ要スルノデア
リマス、兵隊トシテハ非常ニ機敏デナケレバ
イケナイ、機敏ニスルニハ年ヲ若クスルコ
トガ必要デアルノデアリマス、今日我國ノ
國軍ガ機ニ應ジ、變ニ處シテ、サウシテ敏
活ナル處置ガ出來ルト云フコトガ、勝チヲ
占メル唯一ノ點デアルト私ハ考ヘル(拍手)
卽チ此雋敏デアルト云フ點ガ、世界ノ國々
ノ國民ノ及バザル特徴デアラウト私ハ考ヘ
ママーサウ云フ意味カラ私ハ此徵兵年齡ハ
二箇年低下スルガ宜シイト思フノデアリマ
ス、徵兵年齢ガ二箇年低下致シマスルト、豫
後備ノ兵隊モ亦隨ッテ若クナッテ參ルノデア
リマス、今日吾々ガ戰線ヲ見舞ッテ見マスル
ト云フト、可ナリニ年ヲ取ッタ人ガ戰線ニ參ッ
テ居リマス、年ヲ取ッテカラハ心ガ如何ニ
逸ッテモ身體ガソレニ及バヌト私ハ考ヘル
ノデアリマス、ソレデアリマスカラ豫後備
ノ人ノ年齡ガ低下スレバ低下スル程、豫後
備ノ戰鬪力ヲ增加致スト云フコトニ相成ル
上海、マス(拍手)私ノ說ノ如ク致シマス
レド、ソコデ十八歲又ハ十九歲ニ於テ二箇
年ノ現役ヲ勤メルト云フコトニナリマスル
ト、二十歲或ハ二十一歲デ家庭ニ歸レルコ
トニ相成ルノデアリマス、サウナリマス
ルト、家庭ニ於テモソコニ立派ナ志操ノ固ッ
タ身體ノ出來タ人ガ歸ッテ來ルノデアル、サ
ウシテ今日デアリマスレバ二十歲カラ二
十一歲ノ人ガ兵隊ニ入ッテ、是ガ二箇年勤メ
ルノデアルカラ、ソコニ相當ノ期間ガアル
相當ノ期間ガアルカラ、是ガ二箇年モ早ク
自分ノ方向ヲ定メテ働クト云フコトニ相成
リマスレバ、我國ノ生產能力ノ上ニ於テ非
常ナル關係ヲ持ツコトト私ハ考ヘルノデア
リマス、斯ウ云フ理由デ私ハ此一一箇年低下
ト云フコトハ極メテ必要ナコトデハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、「ソ」聯邦ハ最近徵
兵ヲ二十一歲カラ十九歲ニ低下サシテ居リ
やマ、勿論生活、風土ガ違ヒマスカラ、是
ハ一樣ニハ論ゼラレマセヌ、先ヅ他國ノコ
トハ別ト致シマシテ、我國ノ現實ノ問題ト
致シマシテ、今日日本ノ靑年、此心身共ニ
發達シテ居ル所ノ日本人ト致シマシテハ、
滿二十歳ヲ十八歲ニ低下致シマシテモ、決
シテ私ハ今日ノ戰鬪力ヲ減退スルドコロデ
ハナシニ、寧ロ一層我國ノ國防力ヲ增加ス
ルノデハナイカト斯ウ考ヘマスノデ、之ニ
對スル政府ノ御所見ヲ承リタイノデアリマ
ス(拍手)
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=42
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043・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 長野君ニ御答致シ
やく、只今壯丁ノ適齡ヲ十八歲ニ低下シテ
ハドウカト云フ御尋デゴザイマス、此點ニ
付キマシテハ年齡ヲ低下致シマスル事柄ハ、
長野君ノ御話ノ如ク社會上、家庭上等カラ
考ヘマスルト好都合ノ點モアルト存ズルノ
デアリマス、併ナガラ現在ノ制度ハ民法上ノ
成年ト一致致シテ居ルバカリデナク、普ク兵
業ニ適シ、兵業ニ堪ヘ得ル體質ヲ備へ得ル年
齡ハ、今日考ヘテ居リマスル所ノ二十歲デ
アルト考ヘテ居リマス、御話ノ中ニ今日旣
ニ十七歲ヨリ採用モシテ居ルデハナイカト
云フ御尋モゴザイマシタガ、是ハ十七歲デ
志願ヲ致シマスル者ハ採用スルコトニナッ
テ居リマスルガ、其志願兵ハ體格ガ優秀
ナル者ヲ採用シテ居ルノデアリマシテ、其數
ハ少數デアリマシテ、之ヲ以テ直チニ一般
ト比較ヲシテ、一律ニ全部ヲ若クスルト
云フ譯ニハ參リ兼ネルノデゴザイマス、殊ニ
御承知ノ如ク靑年ノ體格ガ近年ニ於キマシ
テ漸次低下ヲ致シマシタ、是等ノコトカラ
考ヘマスルト、一層年齡ヲ低下致シマスル
ト云フ事柄ハ、適當デナイヤウニ感ジテ居
ルノデアリマス、隨テ陸軍ト致シマシテハ、
將來特別ノ事情ガ發生致シマセヌ限リハ、
近ク此適齡ヲ變更致シマスト云フコトハ考
ヘテ居リマセヌ、又若シ將來之ヲ變更致シ
マスル場合ニ於キマシテハ、一般ニ關係ヲ
致シマスルコトガ極メテ大ナルコトガアリ
マスルノデ、愼重ニ〓究致シタイト考ヘテ
居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=43
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044・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 田原春次君
〔田原春次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=44
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045・田原春次
○田原春次君 支那事變ノ經驗ニ鑑ミテ兵
役法ヲ改正サレルト云フコトデアリマスル
ガ、ソレデデゴザイマシタナラバ、私共ガ
常々考ヘテ居リマスル二三ノ兵役法ニ追加
シテ貰ヒタイ點ガデゴザイマスルノデ、之ヲ
併セマシテ御質問申上ゲタイト思フノデア
リマス、私ノ質問ハ大體六ツアリマスルガ、
第一カラ第五マデハ陸軍大臣ニ、ソレカラ
第六ヲ海軍大臣竝ニ鐵道、大藏、厚生省ノ
大臣諸君ニ御返事ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス、第一ハ在營期間ノ延長ニ伴フ現役
兵ノ給與改善問題デアリマス、第二ハ靑年
訓練所費竝ニ靑年訓練所員服裝等ノ國庫支
給問題デゴザイマス、第三ハ地方議員應召
資格規定ヲ緩和シテ、應召解除ト同時ニ復
職出來ルヤウナ規定ヲ、兵役法ニ明示スル
意思ガアルカドウカト云フ問題デゴザイマ
ス、第四ハ技術徵兵制ヲ擴大シマシテ、齒科
軍醫ヲ明瞭ニ認メル御意思ガアルカドウカ
ト云フ問題デゴザイマス、第五ハ小學校〓
員ヲ更ニ適當ニ再〓育ヲシテ、國民兵役少
尉任官ノ途ヲ開イテ貰ヒタイノダガ、其御
意思ガアルカドウカト云フ問題デゴザイマ
ス、年齡低下ノ問題ハ長野氏ノ御質問ニア
リマシタカラ省イテ置キマス、第六ハ戰傷
兵士ヲ國營工場其他ニ就職出來ル如ク、特
別規定ヲ兵役法其他ノ關係法規ニ明瞭ニシ
テ貰ヒタイガ、其御意思ガアルカドウカト
云フ此六ツデゴザイマス、簡單ニ其各項目
ニ亙リマシテ御說明ヲ申上ゲマス
第一ノ在營期間ノ問題デアリマスルガ、
是ハ御趣旨ノ如ク步兵科ガ二箇年ニナルコ
トハ能ク分リマシタガ、併ナガラ今マデ一
年半デアッタノデアリマスルカラ、更ニ四五
箇月延長ニナリマスコトニ依リマシテ、特
ニ農村方面デハ色々耕作關係デ不便ノアル
コトハ事實デゴザイマス、併ナガラ國民皆
兵ノ立前カラ全部入ルコトデゴザイマスカラ、
ソレニ依リマシテ私共ガ希望シタイコ
トハ、現役兵士ノ給與ヲセメテ今ノ倍額位
ニ增額出來ルヤウニ、大藏省ト御相談ノ上
デ實行シテ下サル御意思ガアルカドウカト
云フ問題デゴザイマス、私モ兵籍ニアリマシ
テ經驗ガアルノデアリマスルガ、二十歲前後
ノ発育盛リノ現役兵ハ、迚モアノ飯盒ノ飯
一ツ位デハ足ラナイノデアリマシテ、ドウ
カシテ二杯以上食ヒタイト云フ考ヲ持ツノ
デアリマス、デアリマスカラ、夜ノ酒保デ
ハ殆ド饂飩ヤラ大福餅ヲ爭ッテ食フヤウナ
譯デアリマスカラ、假令食糧ガ規定通リニ
給與サレテ居リマシテモ、ドウシテモ小遣
錢ガ欲シクナルノデアリマシテ、今デモ自
宅カラ金ヲ送ッテ貰ッテ居ルコトハ事實デ
アリマス、今回在營年限延長ニ件ヒマシテ、
其家庭上ノ不便ハ第二ト致シマシテモ、セ
メテ軍隊在營中ハ其給與ニ依リマシテ通信
費、或ハ讀書費、或ハ諸々ノ私物購入費、或
ハ娯樂費、或ハ問食費等ガ賄ヘル程度ニ增額
シテ戴キタイ、近來物價モ上ッテ居ルコトデアリ
マスカラ、是非此點ハ大藏省ト御相談ヲサレマ
シテ、御實行下サレルヤウナ御意思ガアリマスカ
ドウカト云フコトガ第一點ノ質問デアリマス
第二點ノ質問ハ、靑年訓練所費ヲ國費支
辨ニシテ貰ヒタイト云フコトト、靑年訓練生
徒ノ服裝、之ヲ國庫支辨デ御渡シ願ヒタイト
云フコトデアリマス、理由ハ簡單デゴザイ
マス、貧弱町村ガ困ッテ居ル實情ニアルカラ、
之ヲ兵役法改正ニ際シテ明瞭ニ法規化シテ
戴キタイガ、其御意思ガアルカドウカト云
フコトヲ、是亦第二問ト致シマシテ陸軍大
臣ニ御尋申上ゲマス
第三ハ地方議員應召失格回復制ノ問題デ
ゴザイマス、御承知ノ如ク今囘ノ事變ニ於キ
マシテ、縣會議員、府會議員、市會議員、
町村會議員、可ナリ多クノ議員諸君ガ出征シ
テ居リマス、然ルニ出征ト同時ニ是ハ失格
ヲ致シマス、一體議員ノ失格ト云フコトハ、
選擧違反カ何カヲヤリマシテ、判決ガ確定
シテカラ失格スベキモノデアリマシテ、名譽
アル出征者ニ選擧違反ト同ジ失格ヲ與ヘル
ト云フコトハ、是ハ間違ッテ居ルト思ヒマス、
特ニ地方ノ議會等ニ於キマシテハ、例ヘバ
村會ニ於キマシテモ、一番最低限度ノ十二
名ノ定員ノ處デモ一人位ガ應召中留守ニナ
リマシテモ、地方ノ村政ノ運用ニハ差支ナ
イノデアリマシテ、兵役法ノ第六十一條第
三項デアルト思ヒマスガ、町村會ノ會期中若
シ勤務演習ニ召集サレタ場合ハ、其勤務演
習ヲ免除若クハ延期出來ルコトニナッテ居
リマス、府縣町村會ノ會期中デモ勤務演習
ハ免除或ハ延期ニナルノデアリマスカラ、
事變又ハ戰爭ニ出征シタ場合ニ、其出征中
ノ失格ハ宜シイケレドモ、歸ック後ハ當然議
席ニ著ケルコトニシテ戴キタイ、特ニ我黨
ノ議員デ、是ハ新潟ヤ神戶ノ實例デアリマス
ガ、市會議員ヤ縣會議員ニ當選スルト同時ニ、
今迄勤メテ居ック電車ノ車掌ナドノ地位ヲ取
上ゲラレテ、生活トシテハ歲費ダケデ生活シ
ナケレバナラヌ人ガアル、所ガソレガ出征
スルト同時ニ、途端ニ家庭ノ生活ガ困ル爲
ニ、軍事扶助法ノ適用ヲ其家族ハ受ケルヤ
ウニ、其市會ナリ其縣會ニ陳情シナケレバ
ナラヌト云フコトニナリマス、軍事扶助法
ノ費用ヲ節約スル意味カラ云ッテモ、當然府
縣市町村會議員ノ歲費ハ決ッテ居ルノデ
アリマスカラ、之ヲ缺員ノ儘ニシテ貰ヘレ
バ、費用ノ點カラ言ッテモ宜イノヂヤナイ
カト思ヒマス、此點ハ內務當局デ色々御整
理ヲ爲サルニ及バズ、寧ロ兵役法ニ明瞭ニ
御記載下サイマスルコトニ依リマシテ、今囘
ノ事變ニ出征シテ居リマスル多數ノ地方議
員諸君ガ歸リマシタ場合ニ、再ビ地方自治
體ニ貢獻出來ルヤウナ方法ヲ開イテ戴キマ
スル御意思ガアルカドウカト云フコトガ、
第三點ノ質問デアリマス
第四ハ技術徵兵制ヲ擴大シテ貰ヒタイ
ガ、其御意思ガアルカドウカト云フコトデ
アル、其一ツノ例トシテ齒科軍醫ノ
例ヲ擧ゲマス、御承知ノ如ク商科大學ヲ卒
業シマシタ者ハ主計將校ニナレル、或ハ甚
シキモノハ法律學ヲ專攻シタ大學ノ卒業生
ガ、主計將校ニナレルノデアリマス、算盤
ヲ彈クコトヲ知ラナイ法科出身ノ者ガ主
計將校ニナリ、或ハ又工科大學ヲ卒業シ
タ工學士ガ工兵中尉ニナレルヤウナ途ガ開
イテゴザイマス、然ルニ齒科軍醫ダケハ其
制度ガナイノデアリマス、今日全國ニ齒
科醫專ガ澤山ゴザイマシテ、數万ノ齒
科開業醫ガゴザイマスルガ、何レモ本科生
トシテ入隊スルノデアリマス、今囘ノ事變
デ、私ハ昨年夏ト冬トノ二度現地ヲ御慰問
申上ゲマシタガ、內地デ齒科醫ヲ開業シテ
居ル方デ應召サレマシテ、特務兵ニナリマ
シテ、慣レナイ馬ヲ曳張ッテ居リマシタガ、
馬ニ曳張ラレテ行ッテ居ル所ノ特務兵ガアッ
タノデアリマス、斯ウ云フ點ヲ考ヘマスト、
齒科軍醫ト云フモノヲ永年全國ノ齒科醫師
會デ陳情シテ居ツタノデアリマスルガ、建議
案モ屢〓通ッテ居リマスケレドモ實現ガゴザ
イマセヌ、此機會ニ、兵役法ノ改正ニ際シ
マシテ、陸軍竝ニ海軍ニ於キマシテ、齒科
軍醫制ヲ明記シテ戴キタイノデアリマスル
ガ其御意思ガアリマスカドウカ
第五ハ小學校〓員ノ國民兵役少尉任官ノ
途ヲ開ク方法アリヤ否ヤ、御承知ノ如クニ
短期現役兵ト致シマシテ五箇月ノ在隊期間
デ以テ下士適任證、若クハ優秀ナ者ハ伍長
ニナルノデアリマスルガ、是ハ全國ノ小學
校〓員ノ洵ニ一面ノ無邪氣ナ希望デアリマ
スルケレドモ、ドウモ兵隊ヲ終ッテ小學校ニ
歸リマスト云フト、小學校ノ生徒達ガ新兵
サン新兵サント言ウテ困ル、ソレハ階級
ノ低イ下士デアルカラ、何トナシニ肩身ノ
狹イト云フヤウナコトモ一ツノ理由ニナッ
テ居リマス、短期現役兵ノ出身者全部トハ
申シマセヌケレドモ、優秀ナル者ニハ更ニ
小學校〓員トシテ勤務中ニ、例ヘバ夏休ニ
一箇月位、三年間位〓育召集ヲ致シマシテ、
國民兵役ノ少尉ノ資格ヲ與ヘル位ノコトガ
アッテモ宜イノヂヤナイカト思フノデアリ
マスガ、斯ウ云フ御意思ガアルカドウカト
云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス
第六ハ戰傷兵士ヲ國營工場ニ特別採用ス
ル規定ヲ、明確ニスル御意思ガアルカト云
フ問題デアリマスルガ、是ハ先日ノ東京市
內ノ新聞ノ投書欄ヲ拜見致シマシタガ、目
黑ノ方デ或ル戰役ニ於キマシテ、足ヲ切ラ
レテ跛ニナリマシタ方ガ散步シテ居リマス
ト、後カラ中學生ガ三人バカリ跛ノ眞似ヲ
シテ步イク、道ヲ通ッテ居ル者ガ皆笑ッテ居ッ
ク、其戰傷退役兵士ハ之ヲ見テ淚ヲ流シテ
居ッタノデアリマス、斯樣ニ中學生ナドガ冷
笑スルト云フコトモ、怪シカラヌノデアリ
マス、是ハ今朝ノ東京朝日新聞ノ社會面ニ
出テ居ッタノデアリマスルガ、戰傷退役兵士
ニ、明瞭ニ分ルヤウナ徽章ヲ著ケサセテ
貰ヒタイ、ソレモ在〓軍人ノヤウナ小サナ
モノデハ分リマセヌ、寧ロ此腕ニ丁度憲兵
ガ著ケマスヤウニ「名譽ノ戰傷兵」ト云フヤ
ウナ大キナモノヲ著ケマシテ、サウシテ丁
度世界大戰後ニ獨逸ナドデサウ云フ兵士ガ
澤山步イテ居リマシタガ、空ヲ向イテ意氣
揚々ト步ケルヤウニ、吾々ハ身體ヲ以テ大
戰ニ參與シ、サウシテ名譽アル傷ヲ負ッタ
ノデアルト云フ位ニ、俯向イテ步クノデナ
ク、眞直グニ向イテ步ケル位ノ社會的ノ榮
譽ヲ與ヘテ貰ヒタイ、斯ウ云フヤウナ待遇
ヲシテ貰フト同時ニ、更ニモウ一ツハ是ハ
私ノ縣ニ於ケル實例デゴザイマスルガ、大
キナ日本ノ財閥、五大財閥ノ一ツデ經營シ
テ居リマスル炭坑ニ於キマシテ、其炭坑ノ
近クニ住ンデ居リマスル在〓軍人ガ「何時
俺ハ召集サレルカモ知レヌカラ、セメテ十
日デモ二十日デモ炭坑デ働イテ、五圓デモ
十圓デモ家ニ殘シテ置カウ」ト云フノデ坑
夫ヲ志願シタ、近來ハ炭坑ハ勞力不足デ九
州ノ炭坑ナドハ東北マデモ坑夫ヲ募集シニ
行ク、ソコデ其人ハ履歷書ヲ出シタラ、「君
ハ在〓軍人デアルカラ何時召集サレルカモ
知レヌカラ、コンナ所ニ働カナイデ家デ待ッ
テ居ッタガ宜イヂヤナイカ」ト言ッテ拒絕サ
レタ、何故カト申シマスト、大會社、工場、
炭坑等デソレ迄勤メテ居ッタ職工サン達ガ
出征シマスト、給料ノ七割ヲ留守中支給スル、
是ハ洵ニ結構ナコトデアリマスガ、其紙一
枚裏ヲ拜見シマスト、新シク採用スル場合
ニ、若シ在〓軍人出身ノ者ヲ採用スルト、
ソレガ出征シタ場合ニハ一箇月カ二箇月働
イテ貰ッテ、後何年モ留守中ノ給料ノ七割ヲ
ヤラネバナラヌ、是デハ引合ハナイト云
フノデ、五大財閥ノ一ツノ經營シテ居ル炭
坑ノ勞務係ハ、其農村居住ノ在〓軍人ヲ採
用シナカッタノデス、斯樣ニ民間工場ハ此
國家非常時ニ於テモ採算主義デアル、ダカ
ラ一步先ンジテ兵役法ニ明記シテ、丁度世
界大戰ニ獨逸ガ敗ケマシテ、多數ノ傷兵ガ
出ク、名譽アル不具ノ軍人ガ澤山出タノデ
アリマスガ、ソレニ對シテ、獨逸ノ「クルツ
プ」工場ニ於テハ、左手ノナイ者ニハ右手
デ出來ル仕事ヲ與ヘ、或ハ安全剃刀ノ穴ヲ
開ケル仕事等ヲ與ヘマシテ、餘生ヲ樂シマ
セルダケノ收入ヲ與ヘタノデアリマス、私
ハ先般佐世保ノ海軍病院ニ衆議院ヲ代表シ
テ御慰問申上ゲタノデアリマスガ、其時ニ
私共ハ海軍ノ工廠長ニ會フ機會ガアリマシ
テ、御質問申上ゲタノデアリマス「獨逸ニ
實例ガアルカラ、日本ノ陸海軍デモ、砲兵
工廠ナリ海軍工廠ナリデ、特ニ戰傷兵士ヲ
採用スルヤウナ方法ハアリマセヌカ、旣
見レバ此病院ニモ數百名ノ者ガ腕ヲ切ラ
レ、足ヲ切ラレテ居ルノヂャアリマセヌ
カ、イツ何時是等ハ退役スルカモ知レス
ガ、俺ハ家ニ歸ッテモ百姓モ出來ナイ、一人前
ノ仕事モ出來ナイト思ヒツヽ病院ニ居ル、
此人達ノ氣持ヲ考ヘタナラバ、是ハ一ツ何
トカ考ヘテ貰ヘマセヌカ」ト聞キマシタ
所ガ、其海軍工廠ノ當局者ガ答ヘテ曰ク「ソ
レハ何デモアリマセヌ、若シ海軍省當局ニ
於テ、或ハ陸軍當局ニ於キマシテ、職工
採用規程ノ中ニ但書ヲ入レテ、普通ノ職工
ハ身體ガ完全デ、視力或ハ握力等ノ色々ノ制
限ガアルケレドモ、ソレ等ノ採用規程ノ
後ニ僅カ一項目但書ヲ入レテ、但シ戰爭
又ハ事變ニ因リテ怪我ヲシタ者ニ對シテ
ハ、ソレニ適スル仕事ノアル場合ニ之ヲ採
用スルコトヲ得ルト云フコトニナリマシタ
ナラバ、何時デモ採用致スコトガ出來マス」
斯ウ佐世保ノ海事當局者ハ言ッテ居ッタ、
此規定ヲ挿入シテ戴キマスナラバ、是ハ別ニ
豫算ハ伴ヒマセヌ、例ヘバ兩足ノナイ者ハ
電話ノ交換手ガ出來ルノデアリマセウ、片
手ノナイ者デモ製圖工ガ出來ルカモ知レ
又、或ハ寫眞エモ出來マセウ、文撰ヤ植字
エモ出來マス、或ハ受付、或ハ守衞、「ラヂ
オ」係、電話係ト云フヤウニ、兎モ角曾テ
十數年前ニ獨逸ノ「クルップ」工場デ實行シ
タヤウニ、戰傷退役兵士ニ對スル特別採用
規定ヲ兵役法ノ中ニ明瞭ニ入レテ戴キタイ、
其御意思ガアルカドウカ、是ハ別ニ豫算ヲ
伴フコトデハアリマセヌ
第五マデハ杉山サンニ御願シマシテ、今
ノ海軍問題ガアリマスカラ、海軍大臣ニ最
後ノ問題ニ付テ御返事ヲ願ヒタイノデアリ
マス、又鐵道大臣ガ見エテ居リマスカラ、
是ハ簡單ニ御質問申上ゲタイノデアリマス
ガ、今ノ精神ヲ鐵道省ニ於テモ活カシテ戴
キマシテハ能ク東京驛ナドデ「ラウド·スピー
カー」デ、今度到著致シマス汽車ハドノ
「プラットホーム」ニ入リマスト言ッテ居リマ
スガ、アレナドハ兩足ガナイ兵士デモ、片手
ガナイ兵隊デモ出來マスカラ、サウ云フ特
別ノ採用規定ヲ鐵道省デ御考慮願ヘルカド
ウカ、更ニ厚生大臣モ見エテ居リマスガ、
厚生大臣ニ於カレテハ、兵役法ニ色々ナ關
係デ、是ノ挿入ガ不可能トシタ場合デモ、
民間工場國營工場ナドニ强力ナル指令ヲ出
サレテ、ドシ〓〓サウ云フ戰傷ニ依ル所ノ
退役兵士ヲ採用セヨト云フヤウナ指令ヲ出
シテ戴キマスル御氣持ガアリマスカ、此諸
諸ノ點ヲ御伺ヒ申上ゲテ私ノ質問ヲ終リタ
イト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=45
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046・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 田原君ニ御答へ致
シマス、第一ハ給與ノ增加ノ件デアリマス
ルガ、洵ニ御尤ノ御意見デアリマス、併ナ
ガラ之ヲ增加致シマスルコトニ付キマシテ
ハ、豫算其他各方面ニ幾多ノ問題ガアリマ
スルノデ、今日ノ給與額其モノト雖モ、十
分ニ〓究ヲシテ定メラレタモノデハアリマ
スガ、將來ニ於キマシテモ此點ニ付テハ十
分ニ考慮致シタイト考ヘテ居リマス
第二ノ齒科軍醫ノ設定ノ件デアリマス
ガ、此件ニ關シマシテハ、陸軍ニ於キマシ
テ、夙ニ〓究ヲ致シテ居リマス、現ニ只今ノ所
デハ、平時ニ於テハ三等陸軍病院以上ニ囑託
醫ヲ置キマシテ、病院ニ於キマシテハ所要
ノ衞生機關ノ中ニ、各〓齒科醫ヲ包含セシ
メルヤウニ考慮致シテ居ルノデアリマシテ、
之ニ依ッテ平戰兩時ニ於ケル齒科ノ診療ニ付
キマシテハ、支障ノナイ程度ニ進ンデ居ル
ノデアリマス、併ナガラ將來此齒科衞生制
度ヲ設定シマスルコトニ付キマシテハ、更
ニ愼重ニ〓究致シマシテ、處置ヲ致シタイ
ト考ヘテ居リマス
次ハ短期現役兵ニ付テノ御尋デアリマス
ガ、現行ノ短期現役兵制度ニハ種々不合理
ノ點ヲ認メテ居リマスノデ、目下之ヲ改正
致シタイト考ヘテ居リマス、併ナガラ未ダ
法律改正ノ程度マデ〓究ガ進ンデ居ラヌノ
デアリマスカラ、御承知ヲ願ヒタイト思ヒ
マス
次ハ傷痍軍人ノ待遇ニ付テデアリマス、
第一、傷痍軍人ノ徽章ニ付テ御意見ガアリ
マシタ、洵ニ御尤デアリマシテ、既ニ當局
ニ於キマシテモ此名譽アル傷痍軍人ノ名譽
ヲ一層發揮シ得ル如ク、現在ノ徽章ヲ改正
致シタイト存ジマシテ、旣ニ〓究ヲ致シテ
居リマス、其內ニ實現ガ出來ルコトデアル
ト存ジテ居リマス
次ニ傷痍軍人ノ工廠ニ就職スル件デアリ
マスガ、此件ニ付キマシテハ應召前ニ就職
ヲ致シテ居リマシタ工廠ニ、復員後歸ッテ來
マシタナラバ、直チニ之ヲ採用致スコトニ
考ヘテ居リマス、又傷痍ノ程度ニ依リマシ
テ元ノ工場ニ歸ッテ來マシテモ、服務スルコ
トノ出來マセヌヤウナ者ハ、他ノ之ニ適ス
ルヤウナ工廠ニ採用シ得ルヤウニ考ヘテ居
リマス、其他應召前ニ工廠ニ就職ヲ致シテ
居リマセヌ者デモ、負傷ノ爲ニ工廠ニ入リ
タイト考ヘテ居リマスル者ニ付キマシテ
ハ、優先的ニ之ヲ採用スルコトニ考ヘテ居
ルノデアリマス、此件ハ陸軍ニ關スル限リ
デアリマスガ、他ノ國營工場一般ニ對シマ
シテモ、斯ノ如キ制度ノ下ニ傷痍軍人ヲ待
遇致シマスヤウニ、關係ノ當局ト目下〓究
ヲ重ネテ居ル次第デアリマス、尙ホ靑年訓練
ニ關スル件、地方議員應召失格ノ場合ニ於
ケル問題ニ付キマシテ御尋ガアリマシタガ、
是ハ各〓主務ノ大臣ガ居ラレマスルノデ、
其大臣ノ方カラ御答ヲシテ戴クコトニ致シ
タイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=46
-
047・米内光政
○國務大臣(米内光政君) 只今ノ第四ト第
六ノ御質問ニ對シテ御答致シマス、第四ノ
齒科醫ハ御承知ノ通リ、海軍ニ於キマシテ
ハ囑託ノ制度トナッテ居リマス、此現在ノ囑
託制度ヲ改善致スベク目下〓究中デアリマ
ス
第六ノ職場ヲ與、ヘルコトノ御質問デアリ
マスルガ、海軍工廠等ニ於キマシテハ、不
具者ト雖モ使用シ得ル職場ガ多々アルノデ
アリマス、今次事變ニ於キマシテ大多數
ノ職工ガ召集サレテ居リマスガ、是等ガ復
員致シマスト其職場ニ復活スルノミナラズ、
又不具者トナッテ歸リマシタ場合ニ於キマ
シテモ、前ノ職ニ適シナイ場合ニハ、轉職
ヲヤラセルコトガ出來ルノデアリマス、是
ハ海軍工員身體檢査規則ヲ改正致シマスレ
バ、ドウニデモ出來ル問題デアリマシテ、
是ハ先般來其改正ニ付キマシテ〓究中デゴ
ザイマス(拍手)
〔國務大臣中島知久平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=47
-
048・中島知久平
○國務大臣(中島知久平君) 田原君ニ御答
致シマス、國家ノ功勞者タル戰傷者ニ對
シ、出來ルダケ其就職ノ途ヲ講ズルト云フ
コトハ、銃後國民ノ當然ノ義務デアルト信
ズルノデアリマス、隨テ鐵道省ト致シマシ
テモ、出來ルダケ其途ヲ講ジタイト考ヘマ
ス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=48
-
049・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 田原サンニ
御答ヲ申上ゲマス、只今傷痍軍人ノ就職問
題ニ付キマシテハ、國營工場ニ採用シマス
問題ハ、旣ニ關係各省大臣カラ御答ガゴザ
イマシタ、私共ノ方デ特別ノ協議ヲ致サナ
クトモ、相當ニ此問題ハ解決シ得ルコトト
思ッテ居リマス、唯一般會社ニ付キマシテ
ハ、相當ニ今後共努力ヲ致シマシテ、傷痍
軍人ガ將來就職ノ途ヲ失ハナイヤウニ、熱
心ナル努力ヲ致シタイト考ヘテ居リマス、ソ
レカラ其外ノ就職以外ニ付キマシテモ、例
ヘバ先程御話ノ優遇ノ問題等ニ付キマシテ
ハ、陸軍大臣カラモ御答申上ゲタ通リ、傷
痍軍人タル徽章ニ付キマシテハ、特ニ〓究
ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、將
來共傷痍軍人ト云フ其名譽アル誇ヲ失ハセ
ナイヤウニ、萬般ノ〓究ヲ致シテ居ル次第
デゴザイマス
ソレカラ靑年學校ノ〓練科ノ靑年訓練ニ
付キマシテ、全額ヲ國庫負擔ニ出來ナイカ
ト云フ御尋ガゴザイマシタガ、此問題ハ財
政トノ關係モゴザイマスガ、出來レバ成ル
ベク地方費負擔ニ加へマシテ、國庫ヨリモ
相當ノコトガシタイト考ヘテ居リマス、此
點ハ財政關係モゴザイマシテ、只今明瞭ナ
ル御返事ヲ致シ兼ネル次第デアリマス(拍
手)
〔國務大臣末次信正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=49
-
050・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 御答致シマス、
今次事變ニ關シテ召集セラレマシタ地方議
會ノ議員ノ資格ニ付テノ御尋デアリマス、
此問題ハ中々重要ナ問題デアリマシテ、唯
是一ツヲ切離シテ考ヘマスレバ割ニ簡單デ
アリマスガ、是ト同時ニ考ヘナケレバナラ
ヌ極メテ重要ナル問題ガアリマス、選擧權
ノ失格ノ如キガ是デアリマスガ故ニ、併セ
テ考ヘナケレバナラヌ重要問題モアリマス
ノデ、目下愼重ニ〓究ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=50
-
051・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ハ終了致シマ
シタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧
ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=51
-
052・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=52
-
053・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=53
-
054・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
七、國民健康保險法案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-厚生大臣木戶幸一君
第七國民健康保險法案(政府提出)
第一讀會
國民健康保險法案
國民健康保險法
第一章總則
第一條國民健康保險ハ相扶共濟ノ精神
ニ則リ疾病、負傷、分娩又ハ死亡ニ關
シ保險給付ヲ爲スヲ目的トスルモノト
ス
第二條國民健康保險ハ國民健康保險組
合(以下組合ト稱ス)之ヲ行フ
第三條保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル
徵收金ヲ徵收シ又ハ其ノ還付ヲ受クル
權利及保險給付ヲ受クル權利ハ一年ヲ
經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ時效ノ中斷、停止其ノ他ノ事項
ニ關シテハ民法ノ時效ニ關スル規定ヲ
準用ス
組合ガ規約ノ定ムル所ニ依リテ爲ス保
險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル徵收金ノ
徵收ノ〓知ハ民法第百五十三條ノ規定
ニ拘ラズ時效中斷ノ效力ヲ有ス
第四條國民健康保險ニ關スル書類ニハ
印紙稅ヲ課セズ
第五條保險給付トシテ支給ヲ受ケタル
金品ヲ標準トシテ租稅其ノ他ノ公課ヲ
課セズ
第六條保險給付ヲ受クル權利ハ之ヲ讓
渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第七條組合若ハ組合ノ事業ヲ行フ法人
又ハ保險給付ヲ受クベキ者ハ被保險者
又ハ被保險者タリシ者ノ戶籍ニ關シ戶
籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ
對シ無償ニテ證明ヲ求ムルコトヲ得
第八條保險料其ノ他本法ノ規定ニ依ル
徵收金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ組
合ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅
ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ
ハ組合ハ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村
ニ交付スベシ
市町村ガ前項ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ
三十日以內ニ其ノ處分ニ着手セズ又ハ
九十日以內ニ之ヲ結了セザルトキハ組
合ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ處分ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村制第
百十一條第一項及第四項ノ規定ヲ準用
ス
第一項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ
順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノ
ノ徵收金ニ次ギ他ノ公課ニ先ツモノト
ス
第二章國民健康保險組合
第一節總則
第九條組合ハ左ノ二種トス
-普通國民健康保險組合
二特別國民健康保險組合
組合ハ法人トス
第十條普通國民健康保險組合ハ其ノ地
區內ノ世帶主ヲ組合員トシ、特別國民
健康保險組合ハ同一ノ事業又ハ同種ノ
業務ニ從事スル者ヲ組合員トシ之ヲ組
織ス
第十四條第一項但書ノ規定ニ依リ被保
險者タル資格ナキ者ハ組合員タルコト
ヲ得ズ但シ其ノ世帶ニ被保險者タル資
格アル者アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
普通國民健康保險組合ノ地區ハ市町村
ノ區域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキ
ハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
第十一條組合ヲ設立セントスルトキハ
發起人ハ規約ヲ作リ組合員クラントス
ル者ノ同意ヲ得テ地方長官ノ認可ヲ受
クベシ
組合ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第十二條組合ノ規約ニハ左ノ事項ヲ記
載スベシ
一組合ノ名稱
二事務所ノ所在地
三組合ノ地區(特別國民健康保險組
合ニ在リテハ組合員ノ範圍)
四組合員ノ加入及脫退ニ關スル事項
五被保險者ノ資格ノ得喪ニ關スル事
項
六其ノ他重要ナル事項
第十三條普通國民健康保險組合ニ付其
ノ組合員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ
二以上組合員タル場合ニ於テ地方長官
必要アリト認メ其ノ組合ヲ指定シタル
トキハ組合員タル資格ヲ有スル者(特別
ノ事由アル者ニシテ命令ヲ以テ定ムル
モノヲ除ク)ハ總テ組合員ト爲ルモノ
トス
第十四條組合ハ組合員及組合員ノ世帶
ニ屬スル者ヲ以テ其ノ被保險者トス但
シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ此ノ限
ニ在ラズ
→健康保險ノ被保險者
二他ノ組合又ハ組合ノ事業ヲ行フ法
人ノ被保險者
三特別ノ事由アル者ニシテ規約ヲ以
テ定ムルモノ
前項ノ規定ニ拘ラズ組合ハ規約ノ定ム
ル所ニ依リ組合員ノ世帶ニ屬スル者ヲ
包括シテ被保險者ト爲サザルコトヲ得
第十五條組合ハ規約ノ定ムル所ニ依リ
規約違反者ヨリ過怠金ヲ徵收スルコト
ヲ得
第十六條組合ハ事業ニ支障ナキ場合ニ
限リ被保險者ニ非ザル者ヲシテ組合ノ
施設ヲ利用セシムルコトヲ得
組合ハ前項ノ規定ニ依リ組合ノ施設ヲ
利用スル者ニ對シ規約ノ定ムル所ニ依
リ利用料ヲ請求スルコトヲ得
第十七條本法ニ規定スルモノノ外組合
ノ管理、財產ノ保管及利用方法其ノ他
組合ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二節事業
第十八條組合ハ被保險者ノ疾病又ハ負
傷ニ關シテハ療養ノ給付、分娩ニ關シ
テハ助產ノ給付、死亡ニ關シテハ葬祭ノ
給付ヲ爲ス但シ特別ノ事由アル組合ハ
助產ノ給付又ハ葬祭ノ給付ヲ爲サザル
コトヲ得
組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ給
付ニ併セテ其ノ他ノ保險給付ヲ爲スコ
トヲ得
特別ノ事由アル組合ハ規約ノ定ムル所
ニ依リ第一項ノ給付ニ代ヘテ療養費、
助產費又ハ葬祭費ヲ支給スルコトト爲
スコトヲ得
第十九條療養ノ給付、助產ノ給付又ハ
葬祭ノ給付ヲ爲ス組合其ノ給付ヲ爲ス
コト困難ナル場合其ノ他必要アル場合
ニ於テハ其ノ都度之ニ代ヘテ療養費、
助產費又ハ菲祭費ヲ支給スルコトヲ得
第二十條組合ハ療養ノ給付ニ要スル費
用ノ一部ヲ其ノ給付ヲ受クル者(給付ヲ
受クル者組合員ニ非ザル場合ニ於テ
ハ其ノ屬スル世帶ノ組合員)ヨリ徵收
スルコトヲ得
第二十一條組合ハ被保險者ノ健康ヲ保
持增進スル爲左ノ施設ヲ爲スコトヲ
得
一疾病又ハ負傷ノ豫防ニ關スル施設
二健康診斷ニ關スル施設
三保養ニ關スル施設
四其ノ他健康ノ保持增進ニ關スル施
設
第二十二條組合ハ其ノ事業ニ要スル費
用ニ充ツル爲組合員ヨリ保險料ヲ徵收
ス
組合ハ特別ノ事由アル者ニ對シ保險料
ヲ減免シ又ハ其ノ徵收ヲ猶豫スルコト
ヲ得
第二十三條組合ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ一定期間保險給付ヲ受クル者ナカリ
シ世帶ノ組合員(組合員ノミヲ被保險
者トスル組合ニ在リテハ保險給付ヲ受
ケザリシ組合員)ニ對シ其ノ期間ノ保
險料ノ一部ヲ拂戾スコトヲ得
第二十四條保險給付ノ種類範圍支給期
間及支給額、保險料ノ額徵收方法及減
免其ノ他保險給付及保險料ニ關シ必要
ナル事項ハ規約ヲ以テ之ヲ定ムベシ
第三節管理
第二十五條組合ニ組合會ヲ置ク
組合會ハ組合會議長及組合會議員ヲ以
テ之ヲ組織ス
組合會議長ハ理事長ヲ以テ之ニ充ツ理
事長故障アルトキハ其ノ代理者議長ノ
職務ヲ行フ
組合會議員ハ組合員ニ於テ之ヲ互選ス
第二十六條組合會ノ議決スベキ事項左
ノ四
-收入支出ノ豫算
二事業報〓及決算
三收入支出ノ豫算ヲ以テ定ムルモノ
ノ外新ナル義務ノ負擔又ハ權利ノ抛棄
四準備金其ノ他重要ナル財產ノ處分
五組合債
六規約ノ變更
七其ノ他重要ナル事項
前項第一號及第四號乃至第六號ニ揭グ
ル事項ノ決議ハ地方長官ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十七條組合會ハ組合ノ事務ニ關ス
ル書類ヲ檢閱シ、理事ノ報〓ヲ請求シ
又ハ事務ノ管理、議決ノ執行及出納ヲ
檢査スルコトヲ得
組合會ハ議員中ヨリ委員ヲ選擧シ前項
ノ組合會ノ權限ニ屬スル事項ヲ行ハシ
ムルコトヲ得
第二十八條組合ニ理事數人ヲ置ク
理事ハ組合會ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ
選任ス但シ特別ノ事由アルトキハ組合
員ニ非ザル者ノ中ヨリ之ヲ選任スルコ
トヲ妨ゲズ此ノ場合ニ於テハ其ノ選任
ニ付地方長官ノ認可ヲ受クベシ
普通國民健康保險組合ニ在リテハ特別
ノ事由ナキ限リ前項ノ規定ニ拘ラズ理
事中ニ關係市町村長又ハ其ノ委任ヲ受
ケタル吏員ヲ加フルモノトス
第二十九條理事ノ中一人ヲ理事長トス
理事長ハ理事ニ於テ之ヲ互選ス但シ前
條第三項ノ規定ニ依ル理事アルトキハ
特別ノ事由ナキ限リ之ニ付選任ス
理事長ハ組合ヲ代表ス
理事長故障アルトキハ規約ノ定ムル所
ニ依リ他ノ理事其ノ職務ヲ代理ス
第三十條組合會成立セズ又ハ其ノ議決
スベキ事項ヲ議決セザルトキハ理事ハ
地方長官ノ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スベキ
事項ヲ處置スルコトヲ得
第三十一條組合會ニ於テ議決スベキ事
項ニ關シ臨時急施ヲ要スル場合ニ於テ
組合會成立セザルトキ又ハ之ヲ招集ス
ルノ暇ナキトキハ理事之ヲ專決スルコ
トヲ得
第三十二條前二條ノ規定ニ依リ處置ヲ
爲シタルトキハ理事ハ次囘ノ會議ニ於
テ之ヲ組合會ニ報〓スペシ
第三十三條組合ハ規約ノ定ムル所ニ依
リ理事長及理事以外ノ役員ヲ置クコト
ヲ得
第四節分合及解散
第三十四條組合分割、合併又ハ解散ヲ
爲サントスルトキハ組合會ニ於テ之ヲ
議決シ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第三十五條合併後存續スル組合又ハ合
併ニ因リテ成立シタル組合ハ合併ニ因
リテ消滅シタル組合ノ權利義務ヲ承繼
ス
分割ニ因リテ成立シタル組合ハ分割ニ
因リテ消滅シタル組合又ハ分割後存續
スル組合ノ權利義務ノ一部ヲ承繼ス
前項ノ規定ニ依リ承繼スル權利義務ノ
限度ハ分割ノ議決ト共ニ之ヲ議決シ地
方長官ノ認可ヲ受クベシ
第三十六條組合ハ解散ノ後ト雖モ〓算
ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スルモ
ノト看做ス
第三十七條組合解散シタルトキハ理事
〓算人ト爲ル前項ノ規定ニ依リテ〓算
人タル者ナキトキハ地方長官〓算人ヲ
選任ス〓算人缺ケタルドキ亦同ジ
〓算人ハ組合ヲ代表シ〓算ヲ爲スニ必
要ナル一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
〓算方法及財產處分ニ付テハ地方長官
ノ認可ヲ受クベシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ〓算
方法及財產處分ノ變更ヲ命ジ又ハ〓算
人ヲ解任スルコトヲ得
第三章國民健康保險組合聯合會
第三十八條組合及組合ノ事業ヲ行フ法
人ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲國民
健康保險組合聯合會(以下組合聯合會
ト稱ス)ヲ設立スルコトヲ得
組合聯合會ハ法人トス
第三十九條組合聯合會ヲ設立セントス
ルトキハ規約ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ
受クベシ
組合聯合會ハ設立ノ認可ヲ受ケタル時
ニ成立ス
第四十條組合聯合會ノ規約ニハ左ノ事
項ヲ記載スベシ
-組合聯合會ノ目的及事業
二組合聯合會ノ名稱
三事務所ノ所在地
四加入及脫退ニ關スル事項
五經費ノ分賦ニ關スル事項
六其ノ他重要ナル事項
第四十一條組合聯合會ニ總會、理事長
及理事ヲ置ク
總會ノ組織竝ニ理事長及理事ノ選任ニ
關スル事項ハ規約ヲ以テ之ヲ定ムベシ
第四十二條第十五條乃至第十七條、第
二十六條、第二十七條、第二十九條第
三項第四項及第三十條乃至第三十七條
ノ規定ハ組合聯合會ニ之ヲ準用ス
第四章監督及補助
第四十三條主務大臣及地方長官ハ組合
若ハ組合ノ事業ヲ行フ法人又ハ組合聯
合會ニ對シ其ノ事業及財產ニ關シ報〓
ヲ爲サシメ、其ノ狀況ヲ檢査シ、規約
ノ變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命
令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十四條組合若ハ組合ノ事業ヲ行フ
法人又ハ組合聯合會ノ役員ニ欠缺若ハ
故障アルトキ又ハ其ノ役員其ノ執行ス
ベキ職務ヲ執行セザルトキハ地方長官
ハ官吏又ハ其ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ
職務ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要
スル費用ハ組合若ハ組合ノ事業ヲ行フ
法人又ハ組合聯合會ノ負擔トス
第四十五條地方長官ハ組合若ハ組合ノ
事業ヲ行フ法人又ハ組合聯合會ノ決議
又ハ役員ノ行爲ガ法令、規約、主務大
臣若ハ地方長官ノ命令若ハ處分ニ違反
シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ
ト認ムルトキ又ハ其ノ事業若ハ財產ノ
狀況ニ依リ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認
ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ解職
シ又ハ組合若ハ組合聯合會ノ解散ヲ命
ジ若ハ組合ノ事業ヲ行フ法人ニ對シ第
五十四條ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四十六條組合又ハ組合ノ事業ヲ行フ
法人ノ被保險者ニ對シ診療又ハ藥劑ノ
支給ヲ爲ス醫師、齒科醫師又ハ藥劑師
ノ範圍ハ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第四十七條國庫ハ豫算ノ範圍內ニ於テ
組合及組合ノ事業ヲ行フ法人ニ對シ補
助金ヲ交付スルコトヲ得
道府縣及市町村ハ組合及組合ノ事業ヲ
行フ法人ニ對シ補助金ヲ交付スルコト
ヲ得
第五章國民健康保險委員會、訴
願及訴訟
第四十八條保險給付ニ關スル決定ニ不
服アル者ハ國民健康保險委員會ニ審査
ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキ民事
訴訟ヲ提起スルモノトス
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シ
テハ裁判上ノ請求ト看做ス
第四十九條第四十六條ノ規定ニ依ル認
可ノ申請アリタルトキハ地方長官ハ國
民健康保險委員會ノ意見ヲ徴シ之ガ處
分ヲ爲スベシ
第五十條組合若ハ組合ノ事業ヲ行フ法
人又ハ組合聯合會ト醫師、齒科醫師、
藥劑師其ノ他ノ者又ハ其ノ團體トノ間ニ
於ケル保險給付ニ關スル契約ニ關シ紛
爭ヲ生ジタルトキハ國民健康保險委員
會ハ當事者ノ請求ニ依リ其ノ解決ニ付
幹旋ヲ爲スコトヲ得
第五十一條本法ニ規定スルモノノ外國
民健康保險委員會ニ關シ必要ナル事項
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十二條組合ノ爲シタル保險料其ノ
他本法ノ規定ニ依ル徵收金ノ賦課若ハ
徵收ノ處分又ハ第八條ノ規定ニ依ル滯
納處分ニ不服アル者ハ地方長官ニ訴願
シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ主務大臣ニ
訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコト
ヲ得但シ二以上ノ道府縣ニ跨ル組合ニ
關スルモノニ在リテハ主務大臣ニ訴願
シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルモノトス
前項ノ規定ニ依ル訴願ニ關シテハ組合
ヲ訴願法ノ規定ニ依ル行政廳ト看做ス
第五十三條本章ニ規定スル審査ノ請求、
訴ノ提起又ハ訴願若ハ行政訴訟ノ提起
ハ處分又ハ決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨ
リ三十日以內ニ之ヲ爲スベシ此ノ場合
ニ於テ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八
條第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ
民事訴訟法第百五十八條第二項及第百
五十九條ノ規定ヲ準用ス
第六章雜則
第五十四條營利ヲ目的トセザル社團法
人ニシテ其ノ社員ノ爲ニ醫療ニ關スル
施設ヲ爲スモノハ命令ノ定ムル所ニ依
リ地方長官ノ許可ヲ受ケ組合ノ事業ヲ
行フコトヲ得
第五十五條本法中地方長官トアルハ二
以上ノ道府縣ニ跨ル組合若ハ組合ノ事
業ヲ行フ法人又ハ組合聯合會ニ付テハ
之ヲ主務大臣トス
第五十六條本法中町村又ハ町村長トア
ルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在リテハ
之ニ準ズベキモノトス
第五十七條組合若ハ組合ノ事業ヲ行フ
法人又ハ組合聯合會第三十七條第五項
又ハ第四十三條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シ又ハ處分ヲ拒ミ若ハ妨ゲタルトキ
ハ其ノ役員又ハ〓算人ヲ百圓以下ノ過
料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=54
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055・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 玆ニ國民健
康保險法案ヲ提出スルニ當リマシテ、提案
ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマス、御承知ノ如
ク政府ハ曩ニ本法案ヲ第七十囘帝國議會ニ
提案致シマシタ、而シテ衆議院ニ於キマシ
テハ一部修正ノ上可決サレ、貴族院ニ於キ
マシテモ委員會ニ於キマシテ衆議院ノ修正
通リ可決サレタノデアリマスガ、衆議院解
散ノ爲メ貴族院ハ停會トナリ、本法案ハ不
成立ニ終ッタノデアリマス、然ルニ本法案
ハ現下ノ情勢ニ鑑ミ、殊ニ銃後社會的諸施設
ノ整備充實ニ資スル上カラ申シマシテ、
日モ速ニ之ヲ成立セシムルノ必要アリト認
メマスルノデ、之ヲ本議會ニ提案致シタ次
第デアリマス
凡ソ國民ノ健康ガ國力仲展ノ原動力デア
ルコトハ申スマデモナイコトデアリマシテ、
其保持增進ヲ圖ルコトハ極メテ必要デアル
ト考ヘマス、而シテ是ガ爲ニハ幾多ノ方法
ガアリマセウガ、傷病ニ際シ必要ナル醫療
ヲ受ケシメ、速ニ健康ノ囘復ヲ圖ルコトハ
最モ肝要ナ事デアリマス、然ルニ醫療ヲ受
ケルコトニ關シ第一ニ問題トナルノハ醫療
費ノ負擔デアリマシテ、殊ニ最近ニ於ケル
農山漁村居住民、都市中小商工業者等ノ疲
弊ハ深刻ナルモノガアリ、斯ル人々ニ取ッテ
醫療費ハ相當經濟的重壓トナッテ居ルノデ
アリマス、此醫療費問題ヲ根本的ニ解決ス
ルニハ、共同ノ力ト平素ノ用意トニ依ル保
險組織ヲ以テ最良ノ策タルコトヲ認メ、本
法案ヲ作成シタ次第デアリマス、本法案ノ
骨子ト致シマス所ハ、相扶共濟ノ精神ニ則
リ、國民健康保險組合ヲ設置セシメ、此組
合ヲシテ健康保險事業ヲ爲サシメントスル
ノデアリマス、本組合ハ原則トシテ從來〓
土的團結ヲ有スル市町村ノ區域ニ依ルコト
トシ、補充的ニ職業的組合ヲ組織スル途ヲ
モ開イテ居ルノデアリマス、斯ノ如ク本事
業ハ國民健康保險組合ヲシテ之ヲ行ハシム
ルコトヲ立前ト致シテ居リマスルガ、農山
漁村ニ於キマシテハ、營利ヲ目的トセザル社
團法人ニシテ、其社員ノ爲ニ醫療ニ關スル
施設ヲ行ヒ、之ニ關シ相當ノ經驗ヲ有シ訓
練ヲ經テ居リ、本事業ヲ完全ニ遂行シ得ル
能力ヲ有スル者ガアル場合ニ於キマシテハ、
別ニ國民健康保險組合ヲ設立セズトモ、
定條件ノ下ニ其法人ヲシテ國民健康保險組
合ノ事業ヲ行ハシムルコトヲ得ルノ途ヲ開
キマシテ、地方ノ實情ニ適合センコトヲ期
シタノデアリマス
本組合ノ事業トシテハ療養ノ給付ヲ中心
ト致シマスガ、組合ノ事業及ビ經營方法ハ、
各組合ノ實情ニ應ズルコトガ肝要デアリマ
スノデ、事業ノ內容ハ〓ネ組合ヲシテ自治
的ニ決定セシムルコトトシテ居リマス
尙ホ本制度ハ右ノ如キ趣旨ニ依リ醫療費
問題ヲ解決シ、以テ國民ノ健康ヲ保持增進
セントスルノデアリマスガ、醫療機關トノ
關係ハ最モ重要デアリマスノデ、本法案ニ
於キマシテハ組合ノ醫療組織ニ對スル監督
規定ヲ新タニ設ケ、可及的ニ從來ノ醫療制
度ニ影響ヲ與フルコトナキヤウ、特ニ留意
致シタノデアリマス、本制度ノ案ノ骨子ニ
付キマシテハ、既ニ一昨々年社會保險調査
會ニ諮問致シ、滿場一致ヲ以テ可決セラレ
タモノデアリマス、更ニ第六十九議會ニ於
キマシテ、國民健康保險法制定ニ關スル
建議ガアリ、又一昨年六月社會事業調査
會ニ於テモ、本制度ノ速カナル施行ヲ要望
セラレタノデアリマス、本法案ハ是等ノ建
議及ビ答申ニ基キ銳意〓究ノ結果、玆ニ立
案作成サレタ次第デアリマス、先ニ申上ゲ
マシタヤウニ、本法案ニ關シマシテハ、第
七十囘議會ニ於テ衆議院ノ御修正ガアッタ
ノデアリマス、修正ノ要點ハ、原案第九條
ノ營利ヲ目的トセザル社團法人ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ國民健康保險組合ノ事業ヲ行
フコトヲ得ル旨ノ、所謂代行ニ關スル規定
ヲ昭和十二年三月十一日ニ於テ、現ニ醫療
事業ヲ行フ醫療利用組合ニ限定シ、其旨ヲ
附則ニ規定スル點ニアッタノデアリマス、修
正ノ御趣旨ハ代行ヲ例外的ノモノトシテ制
限セントスルニアッタモノト存ズルノデア
リマス、代行ノ制限方法ニ付キマシテハ、
第七十囘議會ノ修正案ノ如ク、一定期日マ
デニ成立セル組合ニ限ルト云フ方法モア
リマスケレドモ、其後種々ノ論議ニ鑑ミ、
當局ニ於キマシテモ更ニ檢討ヲ重ネ、旁に、
社會保險調査會ニモ特ニ代行ノ問題ニ關シ
審議ヲ願ヒマシタ結果、寧ロ質的ニ內容的
ニ論ジテ限定致スコトガ適當デアルトノ結
論ヲ得タノデアリマス、而シテ代行許可ニ
當リマシテハ、嚴格ナル標準ニ依り嚴選致
ス方針ニ致シテ居リマシテ、院議ノ御趣旨
ハ十分尊重致シマシテ、茲ニ本法案ヲ作成
シタ次第デアリマス、何卒愼重御審議ノ上
御協賛アランコトヲ切ニ望ム次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=55
-
056・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、通告順ニ依リ之ヲ許可致シマス-
中村梅吉君
〔中村梅吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=56
-
057・中村梅吉
○中村梅吉君 只今上程ニ相成リマシタ國
民健康保險法案ハ曩ニ第七十議會ニ於キマ
シテ愼重論議ヲ續ケラレタ問題デアリマス
ルカラ、私ハ努メテ簡潔ニ數箇ノ質疑ヲ試
ミタイト思フノデアリマス、唯段々時間モ
遲クナリマスルカラ、時間節約ノ關係上、
質疑致シタイ項目ヲ先ニ申上ゲマシテ、極
ク簡單ニ此質疑事項ニ對シテ私ノ見解ヲ申
シ加ヘタイト思フノデアリマス
第一ニ私ノ伺ヒタイト思ヒマスノハ醫療
機關ノ問題デアリマス、第二ハ只今御說明
ノ中ニモアリマシタ組合代行機關ノ限界ニ
關スル問題デアリマス、第三ハ醫療內容ノ
低下ヲ如何ニシテ防止スルカト云フ問題デ
アリマス、第四ハ保險組合ヲシテ藥品及ビ
賣藥ノ給付ヲ爲サシメザルコトノ問題デア
リマス、第五ハ貧困者ニ對スル保險料ノ減
免猶豫ノ問題デアリマス、最後ニ國民ノ體
位向上ニ關スル根本觀念ニ付テ極メテ簡單
ニ厚生大臣ノ御所見ヲ承リタイト思ヒマス
此醫療機關ノ問題ニ付キマシテハ前議會
ニ於テ非常ナ論議ノアッタ所デアリマスガ、
其後醫師會ト產業組合ト政府トノ間ニ協調
ガ遂ゲラレマシテ、幾分ノ緩和ヲ見マシタ
コトハ、吾々ノ洵ニ御同慶ニ堪ヘナイ所デ
アリマス、而シテ其協調ノ結果、新ニ本法
案ニ設ケラレマシク第四十六條ニ付キマシ
テハ、遺憾ナガラ吾々ハ幾多ノ疑義ヲ包藏
スルモノデアリマス、此新ニ設ケラレマシ
タ四十六條ニ依リマスルト、「組合又ハ組合
ノ事業ヲ行フ法人ノ被保險者ニ對シ診療又
ハ藥劑ノ支給ヲ爲ス醫師、齒科醫師又ハ藥
劑師ノ範圍ハ地方長官ノ認可ヲ受クベシ」
醫療機關ノ問題ト關聯シテ第四十六條ガ存
在スルノデアリマスガ、醫療機關ノ選擇ヲ
努メテ被保險者ノ自由選擇ニ委ネルコトガ
必要デアルト云フコトハ、第七十議會ニ於
ケル論議ノ中心デアリマシテ、隨テ七十議
會ノ際ニ於キマシテモ、其附帶決議ノ中ニ
斯ウ云フコトヲ議決致シテ居リマス、「內務
省令ニ依リ被保險者ヲシテ廣ク醫師、齒科醫
師藥劑師其ノ他一切ノ醫療機關ヲ自由ニ
選擇セシムルヤウ規定スベシ」、斯ウナッテ
居リマスガ、本法案ニ於キマシテハ、地方
長官ノ許可ト云フ、ソコニ一ツノ限界ト申
シマスカ、制限ト云フモノガ出來テ參リマ
シタ、是ハ從來ヨリ要望サレマシタ醫療機
關ノ自由選擇ト云フコトノ原則ニ反スルノ
デハナイカ、同時ニ又アレ程熱烈ナ意見ニ
依ッテ決定致サレタ前議會ノ院議ヲ無視ス
ルモノデハナイカト云フヤウニ私ハ考ヘル
ノデアリマス、此點ニ付テ御所見ヲ承リタ
イト思ヒマス
第二ハ組合代行機關ノ限界ニ付テヾアリ
マスガ、此點モ只今御說明中ニアリマシタ
ヤウニ、前議會ノ原案第九條トシテ論議ノ
中心トナリ、遂ニ第九條ハ削除サレマシテ、
新ニ雜則ノ中ニ、今御說明ノ中ニアリマシ
タヤウナ條項ガ加ヘラレ、修正ヲ行ハレタ
ノデアリマス、而シテ當局大臣ノ御說明ニ
依リマスレバ、前會ノ修正ニ於テ此制限ヲ
設ケタ、卽チ昭和十二年三月三十一日現在
ニ於テ醫療ノ事業ヲ行フモノハ、命令ノ定
ムル所ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受ケテ組合
ノ事業ヲ行フコトヲ得、卽チ代行機關タラ
シムルコトガ出來ル、斯ウ云フ制限ガアッ
タノデアルガ、其後〓究ノ結果制限ヲシナ
イ方ガ宜イ、質的ニ行ク方ガ宜イノダト云
フ御所見デアリマシタ、併ナガラ私ガ考へ
マスルニ、質的ニ行クト申シマスガ、他ノ
營利ヲ目的トセザル社團法人ト、此國民健
康保險ヲ目的トスル法人トハ、自ラ眼目ガ
異ルノデアリマス、例ヘバ漁業組合デアル
トカ、或ハ產業組合デアルトカト云フヤウ
ニ、一定ノ他ノ產業上ノ目的ヲ持ッテ生レタ
モノノ社團法人ノ場合ニ於キマシテハ、固
ヨリ其法人ヲ代表スベキ人或ハ役員、理事
ト云フヤウナモノニ、自然サウ云フ組合設
立本來ノ目的ニ適フ人材ガソコニ當ッテ居
ルノデアリマス、隨テ左樣ナ組合ニ此大切
ナ國民健康保險ノ仕事ヲ委ネルト云フコト
ハ、努メテ狹小ノ範圍ニ止メナケレバナラ
ヌト云フコトハ、私ハ論ヲ俟タナイ所デア
ラウト思フノデアリマス、隨テ前議會ニ於
テハ、昭和十二年三月三十一日現在ト云フ
一定ノ限界ヲ設ケタ、限界ヲ設ケタノニ拘
ラズ、政府ハ其條項ノ修正ヲ無視シテ、其
限界ヲ今度ハ撤廢ヲ致シテ居ル、斯樣ナコ
トハ非常ニ吾々ハ遺憾トスル所デアリマス、
只今申シマシタ他ノ目的ヲ以テ設立セラレ
タ社團法人ニ、斯樣ナ仕事ヲ委ネルコトノ
可否ニ付テ私ハ大ナル疑義ヲ持ッテ居ル、幸
ニシテ當局大臣ノ御說明ニ依ッテ吾々ノ諒
解シ得ルモノガアレバ極メテ仕合セデアル
ト思ヒマスノデ、此點ニ付テ伺ヒタイト思
フノデアリマス
次ニ醫療內容ノ低下ヲ如何ニシテ防止ス
ルカト云フ問題デアリマス、健康保險實施
ノ結果醫療ノ內容ガ低下スルノデハナイカ
ト云フコトニ付テハ、一般ニ危惧致サレテ
居ル所デアリマス、政府ノ言フ所ニ依レ
バ、或ハ醫師會ノ言ハレル所ニ依リマスト、
醫療內容ハ低下セヌト、斯ウ云フノデアリ
マスガ、併シ現在工場其他ニ行ハレテ居ル
健康保險組合ノ實績ニ鑑ミマスル時ニ、醫
療ノ內容ガ他ノ醫療ニ比較シテ低下致シテ
居ルト云フコトハ、爭フベカラザル事實デ
アリマス、折角是ダケ重要ナ國策ヲ遂行ス
ルニ當リマシテ、萬一ニモ醫療ノ內容ガ低
下スルヤウナ憂ガアリマシタナラバ、是八
實ニ由々シキ問題デアルト私ハ思フノデア
リマス、ソコデ之ヲ如何ニシテ防止スルカ、
左樣ナ心配ノナイヤウニスルカト云フコト
ハ、私ハ當然今日カラ考ヘテ置カナケレバ
ナラヌト思ヒマス(拍手)或ハ此點ニ付キマ
シテハ醫藥分業ノ問題モアリマス、成程理
想カラ言ヒマスト、此醫療ノ低下ヲ完全ニ
防止スルノニハ、診斷ト云フ機關ト、投藥ト云
フ機關トヲ完全ニ分離スルコトガ一番私ハ理
想デアルト思ヒマス、併シ今直チニ診斷、投
藥ヲ是ガ爲ニ分離致シマスルコトハ、動モス
レバ社會的ニ大キナ影響ヲ與ヘマス、ソニ
デ私ハ少クトモ醫療ニ携ハル、診斷投藥ヲ
行ヒマスル者ヲシテ、代行機關トシテ醫療
ヲ致シマス場合ニ於テハ、少クトモ診斷、
投藥ニ際シテ、其投藥ヲシタ藥ノ內容ヲ證
明スル意味ニ於テ、處方箋ヲ發行セシムル
ト云フコトヲ嚴格ニ致シタナラバドウデア
ラウカ、要スルニ醫療低下ハ何ニ依ッテ疑
ハレルカト云ヒマスト、動モスレバ斯樣ナ
社會政策的ノ事柄ニ關スル醫療ニ付テ、理
想ニ反シテ安イ藥劑、粗惡ノ藥劑ガ使用セ
ラルヽノデハナイカト云フ心配ガアル、之
ヲ完全ニ防グニハ粗惡ノ藥劑ヲ投藥スルコ
トノ出來ナイヤウニ、其內容ノ證明ノ意味
ニ於テ處方箋ヲ發行セシムルコトガ宜イノ
デハナイカ、此處マデ行ケバ醫療內容低下
ノ防止ト云フモノハ完全ニ其目的ヲ達セシ
ムルコトガ出來ル、斯樣ニ考ヘマスノデ、
之ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
次ニ組合ヲシテ藥品及ビ賣藥ノ給付ヲナ
サシメルカドウカト云フ問題デアリマス、
是モ前議會ニ於テ非常ニ問題ニナリマシテ、
附帶條項中ニ加ヘラレ、組合ハ藥品及ビ賣
藥ノ給付ヲナサシメテハイカヌ、政府モ亦
之ニ對シテ委員會ニ於テモ其他ノ機會ニ於
テモ明ニ藥品及ビ賣藥ノ給付ヲナサシメナ
イト云フ言明ヲサレテ居リマス、此點ハ此
國民健康保險法ノ中デ非常ニ重要ナ問題デ
アルト思ヒマス、其後政府モ迭ッテ居リスマ
カラ、果シテ現政府ハ當時ノ政府ノ言明ト
同ジ御考ヲ今日モ持ッテ居ラレルカドウカ、
同ジ御方針ヲ以テ實施ニ當ラレルカドウ
カト云フコトニ付テ御所見ヲ承リタイト思
ヒマス、ノミナラズ更ニ尙ホ此問題ニ付キ
マシテハ、前ノ議會ニ於テハ組合ノ規則中
ニ必ズ其問題ヲ挿入セシメヨト云フコトデ
アリ、政府モ亦之ニ對シテ贊同ノ意ヲ表シ
テ居ッタノデアリマスガ、現政府ニ於テハ同
樣ノ方針ヲ踏襲セラルヽカドウカト云フコ
トヲ伺ヒタイト思ヒマス
次ニ貧困者ニ對スル保險料ノ減免及ビ徵
收ノ猶豫デアリマス、此保險料ノ減免及ビ
徴收猶豫ノ問題ハ第二十二條ニ規定サレテ
居リマスガ、甚ダ私共ハ此點ハ遺憾ニ堪ヘ
ナイ、成程第二十二條ニ於テハ「組合ハ特別
ノ事由アル者ニ對シ保險料ヲ減免シ又ハ其
ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得」ト規定シテ居リ
マスガ、全ク組合ノ任意ニ委ネテ居ルノデ
アリマス、而シテ組合ノ組合長、或ハ役員、
幹部ハ成ベク組合ノ財政ヲ鞏固ニシタイト
云フコトヲ念願サレルコトハ固ヨリデアリ
マス、左樣ニ役員幹部ガ念願ヲ持ツノ餘リ、
折角貧困其他特別ノ事情アル者ニ對シテ保
險料ノ減免或ハ徵收豫猶ヲスルコトガ出來
ルヤウナ規定ハアリマシテモ、役員ノ肚積
リニ依ッテ左樣ナ社會政策的ナ此大事ナ條
文ノ適用範圍ヲ、極メテ狹ク縮小サレハシ
ナイカト云フコトヲ私共ハ憂フルノデアリ
マス、本法案ハ社會保健等ノ重要ノ使命ヲ
持ッテ居ルニ鑑ミマシテ、私ハ左樣ナ憂ノナ
イヤウニ、左樣ナ不都合ノ結果ニ陷ラナイ
ヤウニ、政府ハ本法ノ實施ニ當ッテ餘程適切
ナル方策ヲ講ゼラレル必要ガアルト思ヒマ
ス、ソレニ對シテ政府ハ如何ナル用意ト腹
案ヲ持ッテ居ラレルカ、之ヲ伺ヒタイト思ヒ
マス
最後ニ私ハ國民體位ノ向上ニ關スル根本
觀念ニ付テ少シク伺ヒタイト思ヒマス、殊
ニ今ヤ厚生省ハ非常ナル抱負ヲ以テ近衞內
閣ノ手ニ依ッテ生レマシタ、木戶厚生大臣ハ
此抱負ヲ有スル厚生省ノ初代ノ大臣トシテ
御就任ニナラレタ、洵ニ御同慶ノ至リデア
リマス、唯國民體位ノ向上ト云フコトハ醫
療ノ徹底ノミニ依ッテ行ハレルモノデハナ
イ、醫療ト云フコトハ固ヨリ大切デアリマ
スガ、醫療ト同時ニ國民ノ健康ノ維持增進
ニ關スル知識ノ普及ト云フコトガ必要デア
ル、更ニ體育ト云フコトモ必要デアル、是
等ノ問題ガ一體トナッテ初メテ國民ノ健康
ノ保持增進ガ私ハ完成サレルノデハナイカ
ト思フノデアリマス、隨テ一口ニ申シマス
ト今日竝ニ將來ノ國民保健ニ關スル問題ハ、
治療衞生ト云フ問題カラ、更ニ指導衞生ト
云フコトニ進マナケレバイカヌノデハナイ
カ、一例ヲ吾々ノ日常生活ニ最モ手近ナコ
トニ採ッテ見マスト、オ互ガ常食トシテ居ル
米ニ付テ、果シテ玄米ガ宜シイノカ、或
半搗米ガ宜シイカ、胚芽米ガ宜シイカ、ソ
レトモ白米デモ宜シイノカ、ハッキリシタ觀
念ガナイノデアリマス、是等ノ食糧ノ問題
ナドニ付キマシテモ國民ガ榮養食ヲ攝取シ
ナケレバ健康ノ增進ヲスルコトガ出來ナイ
ト云フコトハ固ヨリデアル、然ルニ其食
糧ノ問題ニ付テモ食糧販賣業者ヤ、或ハ新
藥販賣業者ト云フヤウナ人達ガ、各〓勝手
放題ノ我田引水ノ學說ヲ發表シテ、國民ハ
依ルベキ所ヲ知ラナイノデアリマス、私ハ
サウ云フヤウナ點ニ付テ政府ハ一ツノ大
方針ヲ樹テル、指導方針ヲ確立スル、食糧
ニ付テハ斯ウ、大方針ヲ確立シテ、サウシ
テ國民ノ依ルベキ所ヲ明ニシテ貰ヒタイ、
是ガ私ノ望ム所デアリマス、此指導衞生ノ
大切ナコトニ付キマシテハ、我國ニ於テ
モ十分理解ヲ持ッテ居ラルヽ方ガ當局ノ中
ニモデゴザイマス、內務省ニ齋藤博士ト云
フ方ガ居ラレル、私ハ聞及ンデ居ル話デア
リマスガ、或ハ野邊地ト云フ博士ガ居ラレ
ル、是等ノ人達ハ非常ニ指導衞生ト云フモ
ノニ强イ關心ヲ持タレ御熱心デアリマシテ、
昭和五年デアリマシタカ、亞米利加ノ富豪
デアル「ロックフェラー」東洋財團カラ約四百
万圓ノ指導衞生ニ關スル基金ノ醵出ヲセシ
六、、サウシテ今日デハ約四百万圓ノ金ガ
指導衞生ノ爲ニ運用致サレテ居ル、都會地
ニ於キマシテハ東京市ノ京橋區ニ衞生地區
ガ設ケラレテ保健區ガ建設セラレ、農村ニ
於テハ埼玉縣ノ所澤ニ保健地區ガ設立セラ
レテ其處ニ保健館ガ建設セラレ、或ハ又
理〓ノ中ニ公衆衞生院ト云フモノガ約三百
二十万圓バカリノ豫算デ建設ノ運ビニナリ
マシテ最近竣工セラレルサウデアリマス、斯
ノ如ク外國人デスラモ我國ノ指導衞生ト云
フモノニ深イ關心ヲ持ッテ四百万圓ノ資金
ヲ御寄附ニナック、洵ニ吾々ハ感謝ニ堪ヘナ
イ、而シテ左樣ナ寄附金ヲ受取ッテマデ斯ウ
云フ指導衞生ニ關スル仕事ヲ貫徹シタイト
云フ御熱意ヲ齋藤博士ヤ野邊地博士ガ持ッ
テヤッテ居ラレル、洵ニソレ等ノ人達ニ對
シテモ私共ハ感謝ニ堪ヘナイ、所ガ斯クシ
テ外國人カラ四百万圓ノ是等ノ資金ヲ受取ッ
テ、ソレ〓〓ノ途ニ運用致サレテ、其實績ヲ
擧ゲヤウトセラレツヽアリマスガ、其事柄
ガ昭和五年デアル、ソレ以來今日マデノ間ニ
然ラバ我國ノ國內ニ於テハ指導衞生、國民
ノ體力保持增進ニ關スル所ノドレダケノ仕
事ガサレテ居リマスカ、殆ド擧ゲルベキモ
ノガナイト云フコトハ私ハ遺憾ニ堪ヘナイ
ノデアリマス、是ハ私決シテ衞生當局ヲ非
難スル者デハアリマセヌ、衞生當局ニハ今
申シマシタヤウニ既ニ齋藤サンヤ何カノヤ
ウニ、サウ云フ方面ニ理解アル熱心ナ方ガ
多數居ラレルノデゴザイマスルガ、中々ソレ
ガ實現出來ナイ、大藏省ノ關係ヤ、豫算ノ關
係ヤ事業ノ實行ニ關シマスト云フト、中々學
者ノ力ダケデハ困難ナモノト見エマス、ソ
コデ私ハ其指導衞生ノ徹底ニ付テノ輿論ノ喚
起ヲ致シタイ、ドウカ當局大臣トシテ-厚
生省ノ仕事ヲ今後完成セラレントシテ意氣
込ンデ居ラレル木戶厚生大臣ニ於カレマシ
テハ、他ノ關係當局ト協力ヲセラレマシテ、
是非トモ其指導衞生ニ關スル立派ナ方針ヲ
確立セラレ、國民ノ健康保持增進ノ爲ニ貢
獻セラレンコトヲ熱望シテ巳マナイノデア
リマス、此點ニ付テハ私ハ極メテ簡單デ結
構デゴザイマス、此國民體位ノ向上ニ關ス
ル問題ニ付キマシテ、木戶厚生大臣ノ抱負
ヲ拜聽致シタイト思フノデアリマス、以上
ヲ以チマシテ私ノ質問ヲ終リマス、色々述
ベタイコトモアリマスルガ、時間ガ段々遲
レマスノデ、其他ノ點ハ委員會ニ讓リタイ
ト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=57
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058・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今ノ御尋
ノ第一點ハ醫療機關ノ自由選擇ニ付テ、法律
ノ第四十六條ノ規定ニ地方長官ノ認可ヲ要ス
ルト云フ規定ガアルカラ、自由選擇ヲ制限シ
テ居ルノデハナイカト云フ御尋デアリマシタ、
此點ハ法律ヲ制定致シマシタ趣旨ハ、醫療
機關指定ノ公正及ビ被保險者ノ自由選擇ノ
確保ヲ期スル意味ニ於キマシテ、監督上遺
憾ナキヲ期スル爲ニ設ケタノデゴザイマス、
尙ホ此點ニ付キマシテ國民健康保險委員
會等ノ、地方長官ハ意見ヲ徵スルコトニモ
ナッテ居リマスノデ、醫療機關ノ自由選擇ニ
付テハ制限ヲスルト云フ意思ハ毛頭ナイコ
トヲ申上ゲテ置キマス
ソレカラ代行ノ問題ニ付キマシテ、政府
ハ第七十議會ノ衆議院修正案ト變ック案ヲ
出シテ、院議ヲ尊重シナイノデハナイカト云
フ御尋デゴザイマスガ、是ハ先程法案ノ說明
ニ申上ゲマシタ通リ、政府ニ於キマシテハ
院議ヲ尊重致シマシテ、唯一定期日マデニ
設立セルモノニ限ルト云フヨリモ、寧ロ質
的ニ內容的ニ論ジテ之ヲ限定致シマス方ガ、
適當デアルト云フ考ニ依リマシテ之ヲ決
定致シタ次第デアリマシテ、隨テ將來許可
條件ヲ具備スルモノニ付キマシテモ、極メテ
嚴選ヲ致シマシテ、國民保健事業ヲ完全ニ
遂行シ得ル能力アルモノニ限ッテ、之ヲ認メ
ルト云フコトニ考ヘテ居ル次第デゴザイマ
ス
第三ノ點ハ醫療內容ノ低下防止策トシテ
ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フ御尋デ
ゴザイマスガ、此點ニ付キマシテハ當局ト
致シマシテハ、萬一內容低下等ガゴザイマ
シテハ、是ハ由々シキ問題デアリマスルノデ、
診療報酬及ビ診療內容ニ關シマシテ嚴重ニ
組合ヲ指導監督シ、萬遺憾ナキヲ期スル考
デ居リマス、例ヘバ診療報酬ノ決定ニ際シ
マシテモ地方ノ料金等ヲ斟酌致シマシテ、
從來ノ慣習ヲ十分尊重セシムル方針デアリ
さく、旁〓診療報酬等ニ關シマシテ萬一紛
爭ガアル場合ニハ、國民健康保險委員會
ノ斡旋ニ依ッテ公正ナル解決ヲ期スル方針
ヲ執ッテ居ル次第デアリマス、而シテ先程御
話ノ處方箋ヲ出サセルカドウカト云フ點ニ
付キマシテハ、之ヲ當局ト致シマシテハ强
制スル意思ハゴザイマセヌ、サウ云フ方針
ニ依リマシテ醫療低下ガ防止シ得ラレマス
ルナラバ非常ニ結構ナコトト考ヘテ居ルノ
デアリマス
ソレカラ第四ノ點ハ組合ヲシテ診療以外
ノ藥品及ビ賣藥ノ給付ヲ前政府ノ言明致シマ
シタ通リ爲サシメナイ方針デアルカト云フ
御尋デゴザイマスガ、今囘ノ法案ニ於キマ
シテモ組合ヲシテ診療以外ノ藥品及ビ賣藥
ノ給付ヲ爲サシメナイ方針デ居リマス、而
シテ此處置ハ組合ノ規約令中ニ之ヲ明示ス
ル考デゴザイマス
ソレカラ第五ノ御質問ハ保險料ノ貧困者
ニ對スル減免猶豫ニ關スル問題デゴザイマ
ス、本制度ハ地方ノ實情ニ於テ之ヲ運營セ
シメル方針デアリマスルノデ、此問題ニ付
キマシテモ、地方ノ實情ニ應ジテ、自治的
ニ之ヲ運用セシメルノガ、却テ無理ガナク、
適當デアルト考ヘテ居リマス、而シテ政府
ハ努メテ懇切ナル指導監督ヲ行フ積リデ居
リマス
最後ニ國民體位向上ニ關スル根本ノ觀念
ニ付テノ御尋デゴザイマシタガ、此點ニ付
キマシテハ、只今ノ御說ニ私共モ全然同感
デアリマス、厚生省ニ於キマシテハ、體力
局ト云フヤウナ專門ノ局モ設ケマシテ、消
極的ノ醫療其他ノ問題ノミナラズ、積極的
ニ體位ノ向上ニ付テハ努力スル考ヲ持ッテ
居ル次第デアリマス(拍手)
〔西川貞一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=58
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059・西川貞一
○西川貞一君 本案ハ第七十議會ニ提出サ
レマシタ當時ニ於キマシテ、各方面カラ徹
底的ニ論議ハ盡サレテ居ルノデゴザイマス、
然ルニ第七十議會ニ提案ヲサレマシタ當時
ト今日トハ、其期間ハ僅ニ一年間ノ隔リデ
アリマスケレドモ、其間ニ於テ内閣モ更迭サ
レテ居リマス、議會ハ解散サレマシテ、新
選擧ガ行ハレ、新シイ議會ガ成立シタノデ
アリマス、ノミナラズ我國未曾有ノ大事件
デアリマスル所ノ日支事變ガ發生致シマシテ、
此國民ノ體力ノ問題、健康ノ問題ニ關シマ
シテハ、劃期的ノ重大ナル考察ヲ加ヘナクテ
ハナラナイ時期ニナッテ居ルノデゴザイマス、
更ニ此國民ノ體力ノ問題、健康ノ問題ニ
關シマシテ、新ニ一省ヲ設ケ、此事務
ヲ專管セシムル必要ヲ生ジ、厚生省ガ生レ
テ居ルノデゴザイマス、斯ノ如キ狀況ノ變
化ニ伴ヒマシテ、玆ニ前第七十議會ニ提案
ヲサレマシタ、殆ド其儘ノ骨子ヲ有スル此
法案ガ提出サレマシタルコトガ、此時勢ノ
要求ニ對シテ果シテ適當ナリヤ否ヤ、私ハ先
ヅ此點ヲ御伺シナクテハナラヌノデアリマス
(拍手)特ニ本案ガ只今ノ形ニ於テ宜シイモ
ノデアルナラバ、解散後ノ總選擧後ニ於テ
召集サレマシタ特別議會ニ於テ提案ヲサレ、
速ニ成立ヲ圖ルベキデアッタノデアリマス、
然ルニ當時ノ情勢ハ、國民ノ體力健康ノ間
題ニ關シマシテ、新ニ一省ヲ設ケナクテハナ
ラヌト云フ緊迫シタ情勢ノ下ニアリマシ
テ、隨テ本案ハ新設ノ保健社會省ニ於テ改
メテ檢討ヲ加ヘルノ必要アリトノ名目ノ下
ニ、特別議會ニ提案ヲ見合サレタノデゴザ
イマス、斯ル經緯ニ考ヘマシテ本案ハ當
然厚生省ニ於テ愼重ナル再吟味ヲ加ヘラ
V、厚生省ノ指導精神ヲ織込ンデ提案サレ
ナクテハナリマセヌ、少クモ厚生大臣ノ經綸
ノ一端ハ本案ノ內容ニ具體的ニ示サレナクテ
ハナラヌノデアリマス、國民ハ之ヲ期待シ
テ居ルノデアリマス、然ルニ御提案ノ原案
ヲ見マスルノニ、果シテ其意味ニ於ケル所
ノ再檢討ガ行ハレタリヤ否ヤ、果シテ近衞
內閣ガ天下ニ公約致シマシタ本案ニ關シテ、
再檢討ヲ試ミタリヤ否ヤ、私ハ甚ダ疑問ト
スルノデアリマス、若シ檢討サレタリトス
ルナラバ、如何ナル指導精神ノ下ニ檢討サ
レマシタカ、私ハ新設厚生省ノ指導精神
其モノヲ問ハナクテハナリマセヌ、厚生省
ノ指導精神ニ關シマシテハ、先日近衞首相
カラモ御答ガアッタノデアリマスルガ、社會
愛デアルトカ、國民大衆愛デアルトカ云フ
ヤウナ、口先ノ問題デハアリマセヌ、サウ
云フ〓念デハアリマセヌ、少クモ厚生省ハ
我國現段階ニ於ケル社會問題ノ中心ヲ把握
シ、社會政策ノ體系ヲ打立テ、逐次之ヲ實
行スルモノデナクテハナリマセヌ(拍手)
而モ木戶厚生大臣ハ、我國現下ニ於ケル所
ノ社會問題ノ中心ヲ如何ニ把握サレテ居リ
マスルカ、其點ヲ私ハ御伺シタイノデアリ
マス
私ハ現下ニ於ケル我ガ社會問題ハ、少ク
モ滿洲事變ヲ契機ト致シマシテ、劃期的ノ
變化ヲ遂ゲテ居ルト云フコトヲ指摘シナク
テハナラヌノデアリマス、由來我國ハ世界
第一ノ人口過剩國デアリマシテ、此人口過
剩デアルト云フ事實カラ、有ユル困難ナル
社會問題ガ生レテ來テ居ッタノデゴザイマス、
隨テ滿洲事變前ニ於ケル我國ノ社會政策ナ
ルモノハ、人口政策ニ關シマシテ、一ツノ
消極的態度ヲ執リ、一時ハ產兒制限問題ス
ラモ眞面目ニ〓究サレナクテハナラナイヤ
ウナ情勢ニアッタノデアリマス、然ルニ滿洲
事變ハ我國ノ人口問題、社會問題ノ上ニ劃
期的ノ變革ヲ齎シタノデアリマシテ、我國
ハ新シク大陸ニ民族發展ノ新天地ヲ打開
シ、盟邦滿洲國ニ大和民族ガ續々移住シ、
皇道ノ輸血ヲ試ミルコトガ、我ガ大陸政策ノ
基本トシテ要求サレルコトニナッタノデア
リマス、此新事實、新情勢ニ基キマシテ、
人口問題ハ積極的ニ、所謂產メヨ殖エヨ、
地ニ滿テヨノ方向ニ向ッテ展開シタノデア
リマス、然ルニ我ガ國民ハ此新シイ情勢ノ
下ニ於ケル人口問題、社會問題ニ關シマシ
テ、靜ニ反省ヲスルノ餘裕ヲ與ヘラレズシ
テ、時局ハ慌シクモ三度轉向シタノデアリ
マス、卽チ今次支那事變ノ勃發ハ我ガ大和
民族ニ未曾有ノ重大使命ヲ課シ、戰爭ノ遂
行ハ勿論、戰後ニ於テ大和民族ハ其欲ス
ルト欲セザルトニ拘ラズ、亞細亞ノ經營者
トシテ、全亞細亞ノ指導者トシテ、開拓者
トシテ、世界史上未曾有ノ輝カシキ、而モ
崇高ニシテ重大ナル使命ニ當面シタノデア
リマス、日支事變ト其後ニ來ルモノガ日本
民族ニ要求スルノハ、其實力ノ增大デナク
テハナリマセヌ、然リ民族ノ力デアリマ
ス、數ニ於テ質ニ於テ民族ノ力ヲ增强スル
コトデアル、體力、健康、智能、意思、ソ
レ等ノ綜合ニ依ル民族ノ德、之ニ基ク軍事
的政治的、社會的、經濟的、產業的ノ能
力ヲ以テシナカッタナラバ、此時局ヲ擔當
スルコトハ出來マセヌ(拍手)玆ニ我國ノ人
口問題、社會問題ハ、十年足ラズノ間ニ三轉
シタノデアリマス、卽チ往年ノ消極政策ヨ
リ滿洲事變以後ノ積極政策、而シテ支那事
變ガ要請スル絕對的增强政策、絕對的ノ民
族ノ力ノ增强政策へ轉換シタノデアリマ
ス、是レ現段階ニ於ケル我國社會政策ノ基
調デアリマス、厚生省ノ中心的使命ハ此處
ニナクテハナラヌト思フノデゴザイマス
以下此時局ノ要求スル根本ノ名題ニ基キ
マシテ、玆ニ提案サレマシタ原案ガ、果シ
テ此時局ノ認識ノ下ニ於ケル國家的要求ニ
副フモノデアルカ否カ、吟味シナクテハナ
ラヌノデゴザイマス
第一ニ民族ノ力ヲ增强致シマスルコトニ
關聯シマシテ、考ヘナクテハナラヌコトハ、
此時局ヲ擔フ人的ノ力、國民ノ力、民族ノ力
ガ何處カラ生レテ居ルカト云フ事實デアリ
マス、私ハ此點ニ關シマシテ、今次事變ニ
於テ私共ガ最モ心强ク存ジマスルノハ、我
國農村ノ人的資源ガ如何ニ强キ彈力性ヲ持ッ
テ居ルカト云フコトデゴザイマス、私ハ此
點ニ關シマシテ、兎角世上ニ誤解ガアリマ
シテ、內外ニ及ボス影響少カラザルモノガ
アルト思ヒマスルノデ、今次事變ノ下ニ於
ケル我國農村ノ人的資源ガ、如何ニ强キ彈
力性ヲ持ッテ居ルモノデアルカト云フ一端
ヲ此處ニ述べサセテ戴キマス、卽チ現在我
國ノ農村ハ、應召者及ビ軍需工業方面ニ勞
力ヲ吸收サレマシテ、非常ニ勞力ガ缺乏シ
テ居ル、ソレガ爲ニ農業生產力ノ減退ヲ來
ス虞ガアルト云フヤウナコトガ、兎角論議
サレテ居ルノデゴザイマスルガ、私共ガ眞
面目ニ農村ニ就キマシテ調査シタル所ニ依
リマスルト、決シテ我國農業ノ生產力ノ上
ニ惡影響ヲ及ボス程ノ勞力缺乏ハ未ダ來シ
テ居ナイノデアリマス、卽チ今次ノ事變ニ
應召致シマシテ農村ヨリ出テ行キマシタ勞
力ハ、農業勞力ニ於ケル約四%ニ過ギナイノ
デアリマス、而モ世界一ノ過小農國デアッテ、
殆ド慢性的失業狀態ニアルガ如キ我國農村
ノ實情ニ於キマシテ、四%ノ勞力ヲ失ヒマシ
タ位ノコトデ、我ガ農業生產力ハビクトモ
シナイノデアリマス、其善後ノ處置ニ付テ
指導ヲ過タズ、施設ヲ過タナカッタナラバ、
決シテ其點ハ悲觀スル必要ハナイノデアリ
マス、ノミナラズ私ノ居住致シテ居リマス
ル山口縣ノ如キ工業縣ニ於キマシテハ、此
日支事變ニ於ケル應召者ノ外ニ、軍需工業
其他一般工業ノ發展ニ伴ヒ、其方面ニ吸收
致サレマシタル所ノ勞力ハ、應召者以上ノ
數ニ上ルノデゴザイマスルガ、應召者以上
ノ勞力ガ農村ヨリ出テ行クト致シマシテモ、
尙ホ農業生產力ヲ維持スルニ左程悲觀スベ
キモノハナイノデアリマス、此點ハ非常ニ
心强イノデアリマスルケレドモ、玆ニ我々
ノ看過スル事ノ出來ナイ事實ハ、現在ハ斯
ノ如ク人的資源ガ彈力ニ富ンデ居リマスル
ガ、其將來如何ト云フコトヲ考ヘル場合ニ、
我々ハ本案審議ニ當ッテ晏如タリ得ナイノ
デアリマス、卽チ現在農村ヨリ都市ニ吸收
サレ、鑛工業勞働者トシテ出テ行キマスル
者ハ、總テ體力ノ强イ者、健康狀態ノ宜シ
イ者デゴザイマス、ソレ等ノ者ガ、農村ノ
生活狀態ガ非常ニ低劣デアリ、都會ニ於ケ
ル生活ガ遙ニ程度ガ高イ爲ニ、ドン〓〓都
會ニ吸收サレテ行キマスル後ニハ、我國國
力ノ支柱トナリマスル農村ニ居住致シマス
ル者ハ、甚シク體力ノ低劣ナル、健康狀態
ノ不良ナル者ガ殘ルノデゴザイマスル、ソ
レノミデハアリマセヌ、農村ヲ去ッテ都會ニ
出マシタル者ガ急激ナル生活狀態ノ變化、
又我國鑛工業ハ極メテ重イ負擔ヲ勞働者ニ
課シテ居リマスルシ、又彼等ノ保健衞生ノ
設備ハ甚シク宜シクナイ、是ガ爲ニ農村ヨ
リ出マシタ靑年ノ多クハ幾許モナクシテ健
康ヲ損ジ、其多クハ肺結核患者トナリマシ
テ〓里ニ歸ッテ來ルノデゴザイマス(拍手)
然ルニ一タビ農村ヲ去ッテ鑛工業ニ働イテ
居ル內ニ病氣ニナッテ、病氣ノ體ヲ抱ヘテ農
村ニ歸リマシタ者ニ、如何ナル運命ガ待ッテ
居ルノデアリマセウカ、彼等ハ家計ガ樂デア
ルカラ出テ行クノデハアリマセヌ、經濟ガ逼
迫シテ出稼ヲシナカッタナラバ生活ヲスル
コトガ出來ナイカラ出テ行クノデアル、出テ
行ッタ者ガ仕送リヲシテ呉レナクテハ維持
スルコトノ出來ナイ實家ノ經濟ニ於キマシ
テ、金ヲ送ッテ吳レル筈デアッタ子女ガ病氣
ニナッテ歸ッテ來タカラト云ウテ、之ヲ療養ス
ルノ力ハ農家ニハアリマセヌ、ソレガ爲ニ
大部分ノ若イ結核患者ハ何等療養ノ機會ヲ與
ヘラレズ、實ニ陰慘ナル生活ヲシテ居リマス、
四隣ニ結核菌ヲ撒布致シマシテ、現在ノ農村、
特ニ新シク鑛工業ノ勃興致シマシタル地方ノ
農村ハ、宛然結核菌ノ巢窟タルノ觀ガアル
ノデゴザイマス、而モ我國ノ結核問題ガ、
國民ノ健康問題ノ將來ニ如何ニ由々シキ問
題ヲ投ジテ居ルカト云フコトハ、當局ガ能
ク御承知ノ通リデアリマス、隨テ私ハ之ヲ
深ク問ヒマセヌガ、唯斯ノ如クシテ農村ノ
健康ガ著シク蝕マレツヽアル現在ニ於キマ
シテ、而モ現在農村ノ醫療ガ如何ニ困難デ
アルカ、之ニ關シテ侯爵木戶幸一閣下ノ御
認識ヲ得ル爲メ一ツノ話ヲサセテ戴キタイ
ノデアリマス、私ノ地方ノ山村ニ於キマシ
テハ、極ク輕イ病氣ニ罹ッテ醫者ヲ一度呼
ビマシテモ、自動車ヲ差向ケテ呼バナクテ
ハナリマセヌカラ、車代、往診料、藥價等デ
ドウシテモ十圓ハ掛リマス、或ハ木戶厚生
大臣ハ十圓ト云フ金ガ如何ナル苦痛ヲ農民
ニ齎スモノデアルカト云フコトニ付テハ、
御想像ガ出來ナイノデアラウト思フノデア
リマス、然ルニ現金收入ノ極メテ乏シイ農
民ニ取リマシテ、此十圓ガ如何ニ大ナル負
擔デアルカ、私ノ知ッテ居リマス者ガ、昨年
ノ夏暑イ盛リニ山へ行ッテ働イテ居ル內ニ、
日射病ニ罹ッテ卒倒シタノデアリマス、其男
ヲ連レテ歸リマシテ色々手當ヲシタ結果、
其男ハ蘇生致シマシタガ、生返リマシタ途
端ニ口ヲ開イテ其男ガ何ト言ッタカト云フ
ト、醫者ヲ呼ブナト言ッタノデアリマス、私
ハ此話ヲ聞キマシタ時ニ、實ニヲカシクテ
吹出シタノデアリマスガ、其後ニ醫者ヲ
呼ブナト言ウタ其男ノ心理ヲ思ヒマス時
ニ、私ハ淚ナキヲ得ナカッタノデアリマス、
彼ハ暈ヒガシテ今自分ガ倒レサウニナッタ
時ニ、自分ノ命ヲ考ヘルヨリモ先ニ、オ醫
者ヲ呼ンダラ十圓要スル、其十圓ガ如何ニ
自分等ノ家族ヲ苦シメルモノデアルカト云
フコトヲ考ヘタニ違ヒナイ、彼ガ蘇生スル
ヤ、死ンデモ宜イカラ醫者ハ呼ブナト言ウ
タ其悲痛ナル言葉、是ハ貧窮農村ニ生活シ
テ見ナケレバ、此死ンデモ宜イカラ醫者ヲ
呼ブナト云フ感ジハ分ラナイノデアリマス
(拍手)而モ現在我國ノ醫科學ハ年々進步發
達致シマシテ、醫者ノ數ハ年々殖エテ居リ
やく、是モ當局ハ能ク御承知デアリマス、
卽チ昭和五年末ヨリ十年末マデニ六千十五
人ヲ增シテ居リマスガ、農村ニ在ル者ハ反
對ニ千二百三十八人ヲ減ジテ居ルノデアリ
マス、死ンデモ宜イカラ醫者ヲ呼ブナト云
フ此農民、斯ウ云フ人間ヲ相手ニシタノデ
ハ今日ノ開業醫ハ經營ガ出來マセヌ、ソコ
デ醫者ハ其農民ヲ拾テヽ段々都會ニ集ッテ
來ツヽアル、是ハ當局ガ能ク御承知デアル、
然ルニ私ハソレ程醫者ガ集中スル都會ニ於
テ、果シテ都會生活者ノ全部ガソレ等醫者
ノ關心內ニアリヤ否ヤニ付テハ、多大ノ
疑惑ヲ持タザルヲ得ナイ、私ハ先日東京ニ
參リマシテ、自分ノ知己ノ若イ「サラリー
マン」ノ家庭ヲ訪問致シマシタ、其家庭ニ
於キマシテハ子供ガ病氣ニナッテ居リマシ
テ、今醫者ガ診察ヲシテ、此病狀ハ相當ニ
惡イカラ入院ヲサセナクテハナラナイ、入
院ヲサセナクテハ危險デアルト言ウテ歸ッタ
ノデアリマス、然ルニ夫婦ノ者ハ腕組ミヲ
致シマシテ考ヘテ居ル、ドウシタノカト聽
キマスルト、子供ノ病氣ノ狀態ガ惡イノデ、
醫者ハ入院サセナクテハイケナイト言フ、
ソレデハ入院サシテハドウカ、入院ハサセ
タクナイノデスト、黯然トシテ淚ヲ催シテ
居ルノデス、都會ニハ醫者ハ集ッテ來テハ
居リマスルガ、併ナガラソレハ薄給ノ「サラ
リーマン」ノ手ニハ屆カナイ、距離的ニ言
ヒマスナラバ、醫者ハ隣リニ居ルカモ知レ
マセヌガ、經濟的ニハ都會ノ大部分ノ大衆
ト極メテ緣遠イ所ニ醫者ハアルノデアリマ
ス、サウシテ見ルト、今日ノ醫療問題ニ苦
ンデ居リマスルノハ、絕エズ私共ガ關心ノ
中ニ置イテ居リマスル農村ノミデハナイ、
都會ニ於キマシテハ、又一般庶民階級ハ斯
ノ如キ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、斯ル
困難ヲ克服スベク、解決スベク此保險法案
ハ提出サレタノデアリマセウ、私ハ御提出
ノ御趣旨ニ對シマシテハ衷心贊成スル者デ
アリマス、然ルニ私ガ御質問申上ゲナク
テハナリマセヌノハ、第一現在ノ國民醫療
費ニ付テノ認識デアリマス、當局ハ、現在
ハ農村方面ニ於ケル醫療費ヲ、一世帶當リ
二十四圓ト見積ッテ居ラレルヤウデアリマ
スガ、此二十四圓ト云フモノハ、國民ガ其
健康保持ノ爲ニ必要ナル診療ヲ十分ニ受ケ
テノ代價デアルト思ハレルカ否カ、此點ヲ
伺ヒタイ、事實ハ決シテサウデナイノデア
リマス、私共ガ忠實ニ調査シタ所ニ依リマ
スルト、凡ソ其一家ノ仕拂フ醫療費ハ、其
者ノ收入ニ應ジテ比例的關係ニナッテ居
ル、收入ガ多イ家ハ醫療費ヲ餘計拂ッテ居リ
やく、收入ノ少ナイ者ハ醫療費モ少ナイ、
卽チ現存一世帶當リ二十四圓ヲ擧ゲテ居ラ
レマスル此醫療費ハ、現在ノ醫藥代金ガ非
常ニ高イト云フ事實ト、一般國民ノ收入ガ
極メテ低イト云フ事實ト、此兩方カラ挟撃
サレ、壓縮サレタ不完全ナル醫療ノ代償ト
シテノ二十四圓デアリマス、隨テ此案ニ依
リマシテ、此二十四圓ノ中ノ四圓カ五圓カ
ヲ政府ニ於テ補助シ、アトノ二十圓ヲ保險
ノ方法デ調達スルト云フヤウナ方法ヲ講ゼ
ラレタノデアリマスルナラバ、ソレハ農家
ノ經濟ヲ調整スルト云フ目的ニハ適合スル
カモ知レマセヌ、農林省所管ノ經濟更生事
業ノ一ツトシテハ宜シイカモ知レマセヌ、
然ルニ少クモ國民ノ健康ヲ良クシ、其體位
ヲ向上セシメントスル厚生省ノ根本使命ニ
照ラシテ考ヘマスル時ニハ、現在ノ醫療
費ヲ調達スルダケデハ其目的ヲ達シ能フモ
ノデハ斷ジテナイノデアリマス、然ラバ之
ニ對シマシテ如何ナル對策ヲ講ズベキデア
ルカ、私共ノ地方ノ農村ハ比較的經濟狀態
ガ良イノデアリマスカラ、醫療費ハ一世帶
當リ四十圓ヲ支出シテ居リマス、北海道ノ
或ル地方ニ於キマシテハ、同僚ノ北議員ノ
話ニ依リマスルト、七、八十圓ノ醫療費ヲ
支出シテ居ルサウデアリマス、少クモ完全
ナル醫療費ヲ支出シヨウト致シマスルナラ
バ、完全ナル醫療ニ要スル費用ヲ調達ショ
ウト致シマスルナラバ、百圓位ハ必要デア
ルカモ知レマセヌ、而モソレダケ多額ノ費
用ヲ現在ノ庶民階級ガ負擔ヲスル能力ハナ
イ、隨テ其負擔能力ノナイ庶民階級ニ對シ
テ、國庫ノ補助ヲウント增額サレルカ、其
目的ニ適合スル程ノ補助ヲ增額サレルト云
フコトモ一ツノ方策デアリマセウ、併シソ
レガ出來ナイトスレバ、現在ノ醫療費其モ
ノヲ切下ゲルノ方法ヲ講ジナクテハナリマ
セヌ、現在ノ高價ナル醫療費其モノヲ切下
ゲルト云フコトヲ考ヘナカッタナラバ、此保
險法ヲ制定致シマシテモ、其目的ヲ達スル
コトハ出來ナイノデアリマス(拍手)然ラバ
此醫療費ヲ切下ゲルト云フ方法ニ付テハ、
如何ナル方策ヲ講ズベキカ、私ハ現在ノ開
業醫制度其モノニ關シマシテモ、內面的ニ
改革スベキ問題ハ多々アルト思フノデアリ
マス、旣ニ經濟機構ハ根本的、革命的ノ變
革ヲ遂ゲテ居リマス、此革命的ノ變革ヲ遂
ゲツヽアル經濟機構ニ卽シマシテ、開業醫
制度ハ內面的ニ改善ヲスベキモノモ多々ア
リマセウ、然ルニ從來當局ノ聲明ニ依リマス
ルト、現在ノ醫療費ノ切下ゲモ醫家ノ負擔
ニ於テ爲スコトハ困難デアルト言ハレテ居
ル、ソレモ私ハ納得致シマス、醫家ノ負擔
ニ於テ醫療費ヲ輕減スルコトガ困難デアル
ナラバ、或ハ醫療機關ノ國營ヲ斷行サレル
カ、何等カ國家的施設ヲ以テ此問題ヲ解決
セラレル意圖ガアルカドウカ(拍手)若シ國
家的施設ヲ以テ此問題ヲ解決スル力ガ現在
ノ當局ニナイトスレバ、最後ニ殘サレタ一ツ
ノ方策トシマシテハ、少クモ國民ノ自治的組
織ヲ以テスル醫療費切下ゲノ方法ガアルナ
ラバ、之ヲ指導シ、奬勵スルコトハ當局當然ノ
責任デナクテハナラヌト私ハ考ヘル(拍手)當
局ガ現在ノ厖大ナル醫療費ニ對シテ思切ッ
ク補助ヲスル力ガナク、國家的施設ヲ以テ
之ヲ解決スル力ガナイナラバ、國民ノ自治
的組織ヲ以テ之ニ當ラシメルナラバ出來ル、
出來ル實例ハ多々アルノデアリマス、卽チ
現在ノ醫療利用組合ニ依リマスレバ、大體
ニ於テ醫療費ハ半減サレテ居ルノデアリマ
ス、私ハ敢テ醫療利用組合ノミヲ申スノデ
ハアリマセヌ、私ノ地方ニ於キマシテモ、
各地ニ於テ村營ノ診療所ヲ設ケテ居ル、村
營ノ診療所ニ依リマシテモ、ヤハリ半減ハ
サレテ居ルノデアリマス、然ルニ興味アル
事實ハ木戶侯爵ノ御〓里ニ近イ山口縣阿武
郡嘉年村デハ或ル靑年醫師ガ、自分ハ百姓
ノ子供デアルカラ醫者ニナッタカラト云ウ
テ、二百圓モ三百圓モ月給ヲ貰フ必要ガナ
イ、月給ハ百圓以下デ宜イ、自動車ニ乘ッテ
駛ラナクトモ「オートバイ」デ十分ダ、僅ニ百
圓ノ月給デ「オートバイ」デ駛リ廻ッテ診療
シテ吳レマス、サウスルト其村ニ開業シテ居
ラレマシタ老人ノオ醫者サンガ、私モ長イ
間開業シテ居ッタガ、若イ者ガスルカラ、モ
ウ私ハスル必要ハアルマイト、自ラ其開業
醫ハ廢業サレマシテ、村營診療所ノ顧問ニ
無料デ住ミ込ンデ、若イ者ガ出テ居ル留守ヲ
預ッテ下サル、此朗カナル光景ノ下ニ此嘉年村
ニ於テハ、醫療費ハ一躍四分ノ一ニ切下ゲ
テ居ルト云フ事實ガアルノデアリマス、此
事實ニ刺戟サレマシテ私ノ地方デハ、村產
業組合等ノ力デ、村內農民ノ秀才ノ子弟ヲ
醫學校ニ送リマシテ、自分ノ手デ醫者ヲ養
成シテ、將來自分ノ村ノ醫療ニ當ラセヨウ
ト云フ傾向モ屢〓起ッテ居ル、斯ノ如ク致シ
マシテ國民ノ自治的組織ヲ以テ致シマシテ
モ、醫療費ヲ切下ゲル方法ハ多々アルノデアリ
マス、唯茲ニ奇怪ナノハ是等ノ自治的組織
ニ依ル醫療費輕減ノ方法ニ關シマシテ、當局
ノ熊度甚ダ曖昧デアリマス、前議會ニ於テ
本案ガ審議サレマシタ時ニ、當局ハ頻リ
ニ醫療利用組合ニ對シテハ、積極的ニハ
奬勵シナイト云フ意味ノコトヲ言明サレタ
ノデアリマス、吾々ハ此言葉ヲ醫療利用組
合ガ此國民健康保險組合ヲ代行スルコトニ
付テハ、積極的ニ奬勵シナイ、斯ウ云フ意
味デアッタト解釋シタノデアリマス、然ルニ
事實ハ此代行問題ノミニ止ラズ、醫療利用
組合ヲ全面的ニ彈壓ハサレズトモ、少クモ
新シク生レルモノニ對シマシテハ、抑制的
態度ヲ執ッテ居ラレルカノ如ク見エルノデ
アリマス、私ノ縣ニ於キマシテモ只今周東
三郡醫療組合ナルモノヲ計畫シ、旣ニ三年
ニ亙ッテ當局ニ認可ヲ申請シテ居リマスル
ガ、兎角ノ理由ヲ附シテ中々御許可ニナラ
ナイ、又豐浦郡ニ於キマシテモ醫療利用組
合ノ設立ヲ計畫致シテ居リマスルガ、當局
ノ態度甚シク冷淡デアル、私ハ此機會ニ於
テ木戶厚生大臣カラ、私ガ只今マデ述べマ
シタル前提ヲ考慮ノ中ニ置カレテ、而シテ
此自治的組織ニ依ル國民ノ醫療費輕減方策
ニ對シテハ、如何ナル態度ヲ以テ厚生當局
ハ臨マレルノデアルカ、之ヲハッキリト言明
ヲ願ヒタイノデアリマス
更ニ私ハ此法案ガ假令成立致シマシテモ
是ガ代行ヲ單ニ利用組合ノミナラズ、一般產
業組合其モノニ認メナカッタナラバ、容易ニ
是ハ普及スルモノデナイト云フ點ハ、前議
會ニ於テ論議ノ焦點デアリマシタカラ、私
ハ此問題ハ敢テ繰返シマセヌ、然ルニ私ガ
甚シク奇怪ニ思ヒマスルコトハ、當局自ラ
ガ此組合ノ速ニ普及スルコトニ付テハ、希
望シテ居ラレナイノデアル、詰リ當局ガ計
上シテ居ラレマスル所ノ、持ッテ居ラレ
マスル所ノ豫算ガ甚シク過少デアルガ爲ニ
(「コッチヲ向イテヤレ」ト呼フ者アリ、笑聲)
國民ガ熱烈ニ要求シテ居リマスル此國民
健康保險組合ヲ一タビ設立シタナラバ、
各方面カラ設立ノ要求ガアルニ違ヒナ
イ、サウスルト豫算不足ノ爲ニ甚シク
困ルカラ、成ベクナラバ普及シナイヤウナ
方法ヲ希望シテ居ルノデハナイカ(「委員會
デヤレ」「默レ」ト呼フ者アリ)此點ハ私ハ馬
場前內務大臣ノ當時ニ馬場サンヲ訪問シマ
シテ、此組合ハ產業組合ニ之ヲ代行セシメ
ナカッタナラバ、容易ニ普及スルモノデナイ
ト云フコトヲ申シマシタル所ガ、又產業組
合ノ代行ガイケナケレバ市町村其モノニ經
營サセテモ宜イ、市町村其モノニ經營サセ
ルカ、產業組合ノ代行ヲ許スカ、兎モ角モ
新シイ保險組合ト云フモノヲ別箇ニ作ルト
云フヤウナ煩瑣ナル手續ヲセズニ、是ガ利
用出來ルヤウナ方法ヲ講ジナカッタナラバ、
普及スルモノデハナイト云フコトヲ申シマ
シタル所ガ、馬場內務大臣ハ、ソレハソ
レガ宜イニ決ッテ居ルヨ、ソレガ宜イニ決ッ
テ居ルケレドモ、豫算ガ君僅ニ四十五万圓
ソコラシカナイ、町村ニモヤラセ、組合ニ
モヤラセ、アッチモヤル、コッチモヤルト云
フコトニナッタラ困ルデハナイカト云フコ
トヲ、馬場サンガ仰シヤッタ、ソレガ事實
デアルカ否カ、今ハ死人ニ口無シ、確メル
方法ハアリマセヌガ、サウ云フ意圖ヲ當局
ハ持ッテ居ラレルノデハナイカト私ハ竊ニ
疑フノデアリマス、是ニ於テ私ハ最後ニ大
臣ノ認識ヲ願ハナクテハナラヌ問題ガアル、
現在ノ事變ノ下ニ於キマシテ、最モ大切ナ
コトハ物資デハアリマセヌ、人間デアリ
マス、賀屋藏相ハ頻リニ物ノ經濟ヲ說イテ
得々タル顏ヲシテ居ラレルガ、物ノ經濟ヨ
リモ人ノ經濟ニ著目シナカッタナラバ(「ヒ
ヤヒヤ」)此時局ヲ擔當スルコトハ出來ナイ
ノデアリマス(拍手)而モ國民ノ人的要素ニ
關スル問題、國民ノ保健ノ問題、體力ノ問
題之ニ關シマシテ提出ヲサレマシタ議案
ハ、本議會ニ於キマシテ本案唯一件デアル、
然ルニ本案ハ昭和九年ニ問題トナッテ、昭
和九年ニ起ッタ案デアル、昭和九年ト今日ノ
間ニ於ケル此大ナル時局ノ變化ニ對シテ、
當局ハ如何ナル認識ヲ持ッテ居ラレルカ、少
クモ當局ハ現下ニ於ケル時局ノ重大性ヲ認
識サルヽナラ、速ニ是ガ施行ニ依ル豫算ヲ
增額シテ、前議會ノ際ニ示サレマシタル豫
定ニ依リマスルト、十箇年後ニ保險加入ヲ
要スル者ノ六割ヲ加入セシムルト云フヤウ
ナ洵ニ生溫イ、國民ヲ愚弄スルガ如キ計畫
ニナッテ居ルノデゴザイマスルガ、之ヲ一擧
ニ全部本年度ニ於テヤリマシテモ、其經費
ハ三千万圓足ラズデ濟ムノデアリマス、此
厖大ナル國費ヲ計上シテ支那事變ニ當ッテ
居リマスル我國財政ノ下ニ於キマシテ、
僅ニ三千万圓ノ經費ヲ國民ノ最モ大切ナル
健康問題、體力ノ問題ニ出セナイト云フコ
トハ、私共ハ首肯スルコトガ出來マセヌ
(拍手)若シ當局ニシテ時局ニ對スル認識ガ
アルナレバ、而モ此三千万圓ハ物ニハ關係
ノナイ經費デアリ、大藏大臣ガロヲ酸ッパク
シテ居ラレマスル物ヲ多ク消費スル問題デ
アリマセヌ、三千万圓ノ金ヲ貧窮ナル農民、
庶民階級ニ課スルカ、ソレヲ國家ガ出スカ、
國ノ財布カラ出スカ、國民ノ財布カラ出ス
カト云フ問題デアッテ、國家財政ノ大局ニ關
聯スル問題デアリマセヌ、當局ニ認識ガア
レバ直チニ行ハレルコトデアリマス、此問
題ニ對スル當局ノ認識如何、當局ハ直チニ
之ニ對スル追加豫算ヲ計上シテ、初年度ニ
於テ全國ニ普及スルノ方法ヲ執ル誠意アリ
ヤ否ヤ、明確ニ此席ニ於テ御答辯ヲ願ヒタ
イノデアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=59
-
060・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 西川サンノ
御質問ニ御答致シマス、第一ノ問題ハ今囘
ノ提案ハ厚生省ニ於テ如何ナル見地ヨリ之
ヲ再檢討シタカト云フ御尋デゴザイマス、
當局ハ現下內外ノ情勢ニ鑑ミマシテ、愼重
ニ再檢討致シマシテ、今日ノ場合此法案ヲ
以テ適當ナリト考ヘテ提案シタ次第デゴザ
イマス、第二ノ一戶當リノ醫療費ニ付テノ
御尋デゴザイマスガ、是ハ固ヨリ一應ノ目
安デゴザイマス、併ナガラ諸般ノ資料カラ
算定シタモノデアリマシテ、大體適當ナル
醫療ヲ受ケ得ルト考ヘテ居ル次第デゴザイ
マス、尙ホ醫療利用組合ニ對シテハ、先刻提
案ノ說明ニ於テ申上ゲマシタヤウナ趣旨ニ
於テ之ヲ認メル考デ居リマス、第三ノ時局
ニ鑑ミマシテ一刻モ早ク此組合ヲ全國ニ普
及スル必要ガアルカラ、追加豫算ヲ提出ス
ル意思アリヤ否ヤト云フ御尋デゴザイマス
ガ、本制度ハ其性質上其初ニ當リマシテ
ハ、相當懇切ナル指導監督ヲ必要トス
ルノデアリマシテ、又堅實ナル組合ノ
普及發達ヲ期スル爲ニハ、一日モ早ク
普及スルコトハ望ミマスルガ當初ニ於テハ、
此程度ヲ以テ適當ト考へ、今日ノ豫算ヲ要
求シタ次第デアリマシテ、追加豫算ヲ提
出スル所ノ考ハ今日ハ持ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=60
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061・西川貞一
○西川貞一君 大臣ノ御答辯ハ甚シク不滿
足デアリマスルノミナラズ、時局ノ認識ニ
對シテ甚シク距離ノアルコトヲ發見致シマ
シタ、隨テ私ハ委員會ニ於キマシテハ、更
ニ猛烈ナル追究ヲ申上ゲルカモ分リマセヌ
(拍手)其御考ヲ以テ委員會ニ於テ再ビ相見
エラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=61
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062・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 北勝太郞君
〔北勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=62
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063・北勝太郎
○北勝太郞君 先程モ御述ニナリマシタヤ
ウニ、本案ハ第七十議會ニ於テ既ニ論議ヲ
交ハサレク問題デアリマスルガ故ニ、今更
多クヲ申述ブルコトヲ避ケマシテ、極メテ
簡單ニ二三ノ質問ヲ致シタイト思ヒマス、
今囘ノ提案ニ依リマスルト、政府ハ醫師會
ノ意見ニ引摺ラレタカ、代行組合ニ付テハ
著シク狹義ノ解釋ヲ加へ、窮屈ノ取扱ヲナ
サル如クニ思ハレルノデアリマスガ、斯ク
ナリマシテハ、此保健事業ノ普及發達ノ上
ニ非常ナ障碍トナルト思ハルヽノデアリマ
ス、是ガ理由ハ色々アリマスガ、就中最モ
大ナル理由ハ、此種ノ組合ヲ新ニ設立スル
ト云フコトハ、實ニ一朝一夕ノコトデハ出
來ナイノデアリマス、一體政府ハ國民ノ保
健衞生ガ大事ナノカ、醫師會ガ大事ナノカ、
國民ハ政府ノ此態度ニ對シテ多大ノ疑惑ヲ
持タザルヲ得ナイ、又全國ノ農民ハ此政府
ノ仕打ニ對シマシテハ大ナル不滿ヲ藏シテ
居ルモノデアルノデアリマス、今ヤ對支長
期戰爭ノ遂行ニ當リマシテ、總テノ生產ノ
原動力デアリマスル、所謂金ヨリモ物ヨ
リモモット大切ナル人間ノ問題ヲ、等閑ニ
付スベキデナイコトハ申ス迄モナイノデア
リマス、殊ニ壯丁ノ體力問題ハ戰爭ニ直接
ノ關係アル問題デアリマス、政府ハ須ク臨
時暫定ノ立法ニ依ッテデモ、國民ノ健康保持
ニ力ヲ效サナケレバナラヌニモ拘ラズ、極
メテ消極的ノ態度ヲ執ラルヽコトハ、全ク
理由ヲ成サナイト思フノデアリマス、政府
ノ所見果シテ如何、之ヲ承リタイト思フ、
特ニ壯丁ノ卽日歸〓者ノ尠カラヌ現狀ニ鑑
ミマシテ、陸相ノ御意見ヲ承リタイト思フ
ノデアリマス、陸相ハオキデニナリマセヌ
ガ、陸軍關係ノ方カラデモ宜シイ、之ニ對
スル御意見ヲ承レバ結構デアリマス
質問ノ第二點ハ曾テ吾人ガ指摘シタル如
ク、政府ノ此補助助成ノ程度デハ國民ガ其
經費ノ負擔ニ堪ヘ得ルカドウカト云フコト
デアリマス、新聞紙ノ傳フル所ニ依リマス
ト、今日マデ此類似組合ハ何レモ其經濟ハ
赤字ガ出テ居ルト云フコトデアリマス、殊
ニ是ガ正規ノ保健組合ト云フモノニナリマ
シタ曉ニハ、事務ノ增加ノ爲ニ政府ノ補助
金ノ如キハ殆ド人件費ニモ足ラナイコトニ
ナッテシマフダラウト考ヘラレルノデアリ
マスガ、政府ハ此補助金ヲモット〓〓增額ス
ル考ハナイカ、又代行組合ノ方ヲ奬勵シテ、
其事務上ノ無駄、其經費ヲ省イテ、サウシテ
組合員ノ負擔ヲ緩和スル一助タラシメル御
考ハナイカ、之ヲ承ッテ置キタイト思フノデ
アリマス
次ニ保險組合ノ經濟ヲ左右スルモノハ、
强チ病人ノ數デモナケレバ、其質デモナイノ
デアリマシテ、私共ノ經驗ニ徵スレバ、是ハ
醫師ガ營利的ニ診療スルカ否カ、之ニ繫カ
ルノデアリマス、先程中村君カラ醫療內
容ノ低下ヲ防グ爲ニ、藥ノ處方箋ヲ出シタ
ラドウカト云フ工合ニ言ハレタノデアリマ
スガ、是ハ中々御名案デアルトハ思ヒマス、
併ナガラ患者ガ藥ヲ分析スルコトガ出來
ナケレバ、是ハ駄目デアリマス、兎ニ角政
府ガ保險醫ニ對シテ如何ニ醫療ノ內容ヲ監
督査定セントシマシテモ、現在ノ如ク醫療
ガ營利ノ對象物トサレテ居ル以上、適切ナ
ル方法無シト斷ゼザルヲ得ナイノデアリマ
ス(拍手)之ヲ防グニハ營利ヲ目的トシナイ、
所謂相互組織ノ醫療組合ニ依ルコトガ最モ
捷徑デアルト考ヘルノデアリマスガ、當局
ハ如何ニ之ヲ考ヘラレルノデアルカ、此點
ヲ承ッテ置キタイト思フ
其他醫療施設ノ都市ニ集中スルノ弊ヲ矯
正スル爲ニモ、地方ノ眞摯ニシテ熱心ナル
民意ヲ容レテ、此保險組合ノ成立ト竝行シ
テ、醫療組合ノ認可ヲ爲サルノデナケレバ、
保險組合ガ出來マシテモ實效ハドウシテモ
擧ゲルコトハ出來ナイト信ズルノデアリマ
ス、少クトモ從來ノ如キ認可ヲ强ヒルガ如
キ態度デハイカヌ、所謂先程西川君ノ言ハ
レタ醫療組合ヲ抑制スルヤウナ傾向ハ斷ジ
テイカヌト思ヒマスガ、當局ハ此點ニ對シ
テ如何ナル御考ヲ御持チデアルカ、以上ノ
諸點ニ對シテ明快ナル御答辯ヲ得タイト思
フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=63
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064・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 北サンニ御
答申上ゲマス、第一點ハ補助金ガ非常ニ少イ
ノデ、是デハ人件費位ニシカ當ラナイノデ
ハナイカト云フ御質問デゴザイマス、補助
金ノ目安ハ大體現行健康保險ト同樣、保險
給付金ノ一割程度ヲ標準トシテ居ルノデア
リマスガ、殊ニ貧弱町村ニ設立セラルヽ
モノニ對シテハ之ヲ增額スルノ外、組合設
立ノ當初ニ當リマシテハ、特ニ各組合ノ補
助金ヲ增額シテ居ルノデアリマスカラ、大
體此程度デ適當デハナイカト考ヘテ居ル次
第デアリマス
ソレカラ醫療利用組合ニ付キマシテハ、
先程モ申上ゲマシタヤウニ、大體ニ於テ制
限的ニ之ヲ認ムル方針ニ致シテ居リマス
ガ、醫療機關ノ缺如セル僻阪ノ地ニ之ヲ設
置スルガ如キハ、是ハ醫療普及ノ見地カラ
シテモ望マシイコトト考ヘマスノデ、是等
ニ付キマシテハ其設立ノ目的、財政ノ基礎
等ヲ考慮致シマシテ許可ヲ致ス考ヲ持ッテ
居ルノデアリマス
ソレカラ此時局ニ際シテモウ少シ積極的
ナ態度デ之ヲ促進シナクテハイカヌデハナ
イカト云フ意味ノ御尋デゴザイマシタガ、私
共モ消極的ナ意思ハ一ツモ持ッテ居リマセヌ
ガ、普及ノ緩急ト云フコトハ、之ヲ徹底セシメ
マス爲ニハ、必シモ非常ナ速力デ之ヲ進メ
マスコトガ、十分一般ニ徹底スルヤ否ヤニ
付テハ相當考慮ヲシナケレバナラヌト存ジ
マシテ、今日ノ程度ノ提案ヲ致シタ次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=64
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065・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 佐竹晴記君
〔佐竹晴記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=65
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066・佐竹晴記
○佐竹晴記君 厚生大臣ニ御尋致シマス、
第一ハ保險行政ニ關スル統一ヲ期スル意思
ナキヤ否ヤト云フ點ヲ御尋申上ゲマス、吾
吾多年ノ要望タリシ厚生省ガ新ニ生レマシ
タコトハ洵ニ欣快ニ堪ヘナイ所デアリマ
ス、然ルニ其最モ重要ナル生命保險ニ付テ
ハ之ヲ分離シ、厚生省ノ下ニ統一セラレナ
カッタノハ一體如何ナル理由ニ基クモノデ
ゴザイマセウカ(拍手)吾々ハ生命保險タル
ト、簡易保險タルト、或ハ國民健康保險タ
ルトヲ問ハズ、其保險行政ハ能ク之ヲ統一
シ、調和シ、强化スベキモノデアルト考ヘ
マスガ、厚生大臣ノ御所見如何(拍手)
第二ハ國民ノ健康保持增進ニ關スル問題
ヲ、當局ハ甚ダ輕視シテ居ルデハナイカト
云フ點デアリマス、昨年七月暴虐支那膺懲
ノ聖戰ノ火蓋ガ切ラレマシテ以來、百万ノ
兵ガ動員サレタト言ハレテ居リマス、我ガ
勇敢ナル將兵ノ健康ト氣魄トハ、有ユル障
碍ヲ突破シ、北支ヲ席卷シ、上海ヲ平定シ、
遂ニ首都南京ヲ攻略致シマシテ、今ヤ著々
トシテ東亞安定ノ大業ヲ進メツヽアルノデ
アリマス、此將兵ノ健康ト、其健康ナル肉
體ニ宿ッテ居リマス所ノ勇猛果敢ナル氣魄
コソハ、兵器ヨリモ彈藥ヨリモ先ヅ第一ニ
要求サルベキモノデアッタト云フコトハ、何
人モ否定出來ナイ所デアラウト私共ハ信ズ
ル、果シテ然ラバ如何ナル犧牲ヲ拂ッテモ兵
器彈藥ノ充實ヲ期センケレバナラヌト同樣
ニ、如何ナル犧牲ヲ拂ッテモ此國民ノ健康ハ
平素ヨリ之ヲ培養シ、其保持增進ニ努ムベ
キ責務アルコトハ、蓋シ當然ナリト言ハン
ケレバナラヌト思フノデアリマス、今ヤ長
期抗戰トナリ、政府ハ有ユル障碍ヲ排シテ
資金ノ調整ヲ圖リ、物資ノ統制、生產力ノ向
上ヲ期シ、國民總動員ノ態勢ヲ整ヘテ時艱克
服ニ邁進致シテ居リマスル以上ハ、人ノ方面
ニ於キマシテモ之ニ劣ラヌダケノ十分ナル施
設ヲシナケレバナラヌコトハ、先程西川君ノ
言ハレタ通リデアルト私共ハ思フ、卽チ百万
ノ將兵ニ續ク優秀ナル後續部隊タルベキ靑年、
其多クハ貧乏ナ農村ノ子弟デアリマセウ、
中小工業者ノ子弟デアリマセウ、其靑年ノ
健康ヲ保持增進スルコトヲ要シ、之ニ付テ
ハ軍ガ每年施行サレマス徵兵檢査ノ結果ニ
一喜一憂致シテ居リマスコトモ、蓋シ當然
ノコトト思フ、更ニ銃後ノ護リヲ固ウ致シ
マシテ、出征者ヲシテ後顧ノ憂ナカラシム
ベク、生業ニ勵ンデ居リマス者、或ハ又生
產力擴充ニ一生懸命デアリマス勤勞者ノ、
其保健ヲ全カラシメマシテ、眞ニ國民總動
員ノ實ヲ擧ゲルヤウニ思切ッタ施設ヲ爲ス
ベキハ、蓋シ政府當然ノ責務デアルト私ハ
思フノデアリマス(拍手)然ルニ此保健問題
ニ付キマシテハ、其對策甚ダ貧弱デゴザイ
マシテ、昭和十三年度ノ厚生省ノ豫算ノ如
キハ、實ニナッテ居ナイト言ウテモ差支ナ
イト思フ、國民健康保險制度ノ創設ニ關ス
ル費用ノ如キハ、僅ニ二十万一千六百三十
圓ヲ計上致シテ居リマス、前年陸軍ガ結核
兵士ヲ收容致シマス國立療養所晴嵐莊ノ擴
張費ヲ計上致シマシタ時ニ、其金額實ニ二
百ト五十万圓ニ相成ッテ居リマス、全國民
ノ健康ニ關スル健康保險ノ經費ガ其十分ノ
一ニモ足リナイト云フノハ、餘リニモ貧弱
デハナイカト私共ハ思フ、國民健康保險ニ
對スル補助金ハ一箇年一人ニ付テ一圓、
戶五圓當リト政府ハ見當ヲ付ケテ居リマ
ス、而モソレガ次第ニ增加スルカト申シマ
スト、サウデハナイ、三四年目ニハ一人七
十錢、五年目以降ハ一人當リ金五十錢ト云
フニ至リマシテハ、甚ダ心細イ限リデハナ
イカト私ハ思フノデアル(拍手)是デ果シテ
農山漁村ノ健康保持ノ問題ガ解決セラレル
ト御言明ガ出來ルデアリマセウカ、兵器ヨ
リモ彈藥ヨリモ人ノ生命ト健康ガ先ダトセ
ラレタナラバ、如何ナル犠牲ヲ拂ッテモ今
少シクドッシリト補助金ヲ御出シニナリマ
シテ、國民健康保持增進ノ對策ヲ御樹テニ
ナルダケノ御決意ハナイデゴザイマセウ
カ、更ニ又豫算ガ取レナイト致シマシテ
モ、本當ニ熱意ガゴザイマスナラバ、モッ
トモット進ンダ幾ツモノ對策ハアル譯デアリマ
ス、金ハナクテモ勞働者ノ過勞ヲ防ギマス
爲ニ、時間ノ制限ノ法規ヲ作ルコトモ出來
ル、榮養ノ充實ヲ期シマス爲ニ、最低賃銀
制ヲ布クコトモ出來ル、以テ國民體位向上
ノ積極策ハ金ガナクテモ幾ラデモヤレルノ
デアリマス(拍手)其實現ノ御意思ハナイデ
アリマセウカ、更ニ又此國民健康保險法ガ
出來マシタ後ハ、更ニ進ンデ「サラリーマ
ン」ノ保險制度ヲ確立致シマス御熱意ハナ
イデゴザイマセウカ、今ヤ厚生省ハ獨立致
シマシテ、其呱々ノ聲ヲ擧ゲマシテ、愈〓、
益〓、革新政策ニ乘出サウト云フ時ニ、ソレ
位ナコトガ出來ナイデハ、伴食大臣ガ一人
殖エタト云フ以外ニ何モノモナイコトニナ
ルデハアリマスマイカ(拍手)政府當局ノ所
信ト御決意ヲ承リタイト存ズル次第デアリ
マス
第三ハ、何故ニ七十議會ニ御出シニナリ
マシタ案カラ九條ヲ削ッテ之ヲ雜則ニ繰下
ゲ、所謂代行機關トシテ醫療組合ダケヲ御
認メニナッタデアリマセウカ、本案ノ目的
ハ療養ヲ受ケ得ナイ者ニ、其機會ヲ與フル
ト云フコトガ眞ノ精神デアリマス、山間僻
地ノ農民、貧乏ナ漁村民ニ至リマスマデ醫
療ノ徹底普及ヲ圖ラウト云フコトガ其目的
デアリマス、ト致シマスナラバ、元ノ案ガ
能ク其趣旨ニ適ッテ居ルデハナイカト存ジ
マスガ、何故ニ之ヲ變更ニナッタデアリマ
セウカ、元ノ案ハ營利ヲ目的トシナイ、社
團法人ハ命令ノ定ムル所ニ依ッテ組合ノ事
業ヲ行フトアリマス、勅令デハ、醫療組合
ダケヲ認ムル肚デアッタカハ分リマセヌ
ガ、兎ニ角法律案トシテハ別ニ限定ヲ致シ
テ居リマセヌ、隨ヒマシテ一般產業組
〓工業組合等ニモ代行ヲサセルコト
ガ出來ルダケノ、少クトモ立前ニハナッ
テ居タノデアリマス、四百ヤ五百戶位
ノ小サナ村デ新シイ保險組合ヲ作ラウト致
シマシテモ、ソレハ中々立ッテ行キマセ
ヌ、產業組合ニ併置サセマスナラバ、事務
費モ儉約ガ出來マセウシ又基礎モ定マル、
信用、販賣、購買等ノ剩餘金ヲ廻シテ、旨
ク運營致シテ參リマスコトモ出來ルノデア
リマス、ソレニ產業組合ノヤウナ相互扶助
ノ組合訓練ガ出來テ居リマスモノデナケレ
バ、成功ハ中々覺束ナイト私共ハ信ズル、
ソコデ之ニ代行セシメマスルナラバ、全國
三千五百ニ達シマスル我ガ日本ノオ醫者ノ
居リマセヌ村、卽チ無醫村モ次第ニ減少ヲ
致シマシテ救ハレルデアラウ、ソレコソ醫
療ノ普及徹底ヲ期セント致シマス本法案ノ
眞ノ目的デアルト言ハンケレバナラヌト私
共ハ思フノデアリマス、然ルニ本案ハ此一
般產業組合ノ代行ヲ認メズ、單ニ醫療設備
ノアル社團法人ノミニ、其代行ヲ許サウト
云フノデアリマシテ、是デハ無醫村ヲ救フ
ナドト云フコトハ全ク出來マセヌ、折角法
律ハ出來マシタガ一向組合ハ增加ヲ致シマ
セヌ、成績ハ擧ラヌト云フ結果ニナリハシ
ナイノデゴザイマセウカ(拍手)若シ夫レ政
府ニ致シマシテ、サウデハナイト仰シヤイ
マスナラバ、然ラバ其理由ヲ御尋致シタイ、
ト同時ニ一體何年目ニドレダケノ組合ガ殖
エテ、ドレダケノ人ガ加入致シマシテ、ドレ
ダケノ成績ヲ擧ゲ得ルカト云フコトヲ、計
數ヲ以テ此際示サレンコトヲ熱望スル次第
デアリマス(拍手)
第四ニハ國民健康保險ノ事業ハ、其運營
ヲ市町村ノ公營ト爲サシメルコトガ寧ロ適
當デハナイカ、斯ウ云フ意見ガアリマス
ガ、政府當局ノ御所見ヤ如何、今囘ノ提案
ニ依リマスレバ、其事業ハ主ニ此國民健康
保險組合ガ自治的ニ運營スルコトニナッテ
居ルノデゴザイマス、ソコデ或者ハ申シマ
ス、貧乏人バカリガ入ッテ金持ハ加入シナ
イデアラウ、ダカラ强制加入ヲナサシメナ
ケレバ其組合ハ潰レハシナイカ、若シソン
ナ御心配ガアリマシタナラバ、公營ニスレ
バ直チニ其問題ハ解消スル、又議論ノ喧シ
イ所ノ產業組合代行ノ問題ニ致シマシテモ、
產業組合ガ代行スレバ、反產運動者ノ中小
商工業者ガ加入ヲスマイ、斯樣ニ仰シヤル
人ガアル、若シサウダト致シマスルナラバ、
尙ホ一層之ヲ市町村ノ公營トスルノ必要ガ
アルノデハナイカ、斯樣ナ議論モ立ツデハ
ナイカト思フ(「ヒヤ〓〓」)ソコデ政府ガ示
シマスガ如ク、本法ハ一町村ヲ單位ト致シ
マシテ、其互助的精神ニ依ッテ各市町村每
ニ之ヲ設ケルト云フニ在ルト致シマスレ
バ、其互助的精神ノ統轄者タル所ノ市町村
自身ガ之ニ當ルト云フコトガ、洵ニ自然ノ
相デハナカラウカ、斯樣ニ思フ(拍手)斯ク
シテコソ初メテ其運營モ亦非常ニ圓滑ニ行
クト同時ニ、公營ニ致シマスレバ、ソコデ
初メテ本當ニ苦ンデ居リマス所ノ地方ノ農
山漁村ニ至リマスマデ、隈ナク徹底普及致
シマシテ、眞ニ本法律案ノ企圖致シマス目
的ガ達成セラレルデアラウト私共ハ思フ、
ソレデナケレバ無醫村ノ此難問題ヲ解決ス
ル所ノ途ハ外ニナイデハナイカ、斯樣ニ思
フノデアリマスルガ、政府ノ御所見如何
(拍手)
最後ニ被保險者ノ醫療機關選擇ノ自由ノ
問題ヲ、何故ニ法規ノ上ニ之ヲ明記シナ
カッタノデアルカ、此點ヲ御尋シタイト思フ
ノデアリマス、先ヅ問題トナルノハ醫師會トノ
團體契約デゴザイマス、醫師會デハ團體契
約ヲ結バナケレバ、眞ノ醫療機關ノ選擇ノ
自由ハ得ラレナイト、斯樣ニ仰シヤッテ居
ラレマス、所ガ事實ハ全然之ニ相違致シテ
居リマス、現行勞働者災害保險法ニ於キマ
シテモ、醫師會ト團體契約ヲ結ンダ結果ハ、
一體ドウナッテ居ルカ、被保險者ガ醫療組合
ノオ醫者サンニ掛ラウト致シマシテモ、之
ヲ保險醫ニ指定サレテ居リマセヌ爲ニドウ
ニモナラヌ又酷イノニナリマスルト、醫師會
ノ會長サント或ルオ醫者サントガ、感情上
ノ疎隔ヲ來シタト云フノデ、其幹部ニ反對
ノ意見ヲ有ッテ居ル人々ヲ保險醫ニ指定ヲ
致シマセヌ、例ヘバ一村ニタッタ一人ノオ
醫者サンガアルトシテ、ソレニ掛ラウト致
シマシテモ、ソレガ保險醫ニ指定サレテ居
ナイ爲ニ、折角私共ガ熱望ヲ致シマシテモ、
如何トモスルコトノ出來ナイト云フヤウ
ナ、極メテ不合理ナル事態ガアルデハナイ
カ(拍手)內務省ニ於キマシテハ、社會局ガ
醫師大會ニ於キマシテ、斯樣ニ發表セラレ
テ居リマス、一部ノ醫師ノミガ組合ノ專屬
トナリ、他ノ醫師ガ除外セラレルガ如キコ
トハ認メナイ、斯樣ニ言明ヲ致シテ居リマ
ス、而シテ内務省令要綱ト致シマシテ示サ
レタ所ニ依リマスレバ、斯樣デアリマス
「療養ノ給付ニ付テハ組合ハ特別ノ事情ナ
キ限リ一般ノ醫師、齒科醫師、藥劑師其ノ
他ノ醫療機關ヲ組合ノ醫療機關トシテ指定
シ被保險者ニ醫療機關選擇ノ自由ヲ認ムベ
キコト」トアリマス、斯ノ如ク選擇ノ自
由ヲ明言シナガラ、其一面ニ於テ、內務
大臣ハ衆議院ノ本會議ニ於テ、田中養達
氏ノ御質問ニ答ヘテ曰ク、醫師會トノ團
體契約ニ付テハ、法文中ニハ之ヲ明定
シナイガ、省令中ニ之ヲ設クル豫定ナ
リト答辯セラレテ居ルノデアリマス、
之ニ依レバ選擇ノ自由ヲ認メルト言ヒナガ
ラ、一面ニ醫師會ト團體契約ヲ爲スコトヲ
認メ、著シク一般被保險者ノ選擇ノ自由ヲ
阻碍スル虞ナキヤノ狀態ニ置カレテ居ルノ
デアリマス、政府ハ現行勞働者災害保險法
ニ於ケル醫師會トノ團體契約ノ弊ヲ矯正サ
レマスダケノ御熱意ハナイデゴザイマセウ
カ、又更ニ進ンデ醫師會トノ團體契約ヲ認
メズ、被保險者ハ何レノ醫師、齒科醫師、
藥劑師ト雖モ、自由ニ選擇スルコトヲ得ト
ハッキリ何故御規定ヲ爲サラヌノデゴザイ
マセウカ、以上五點ニ付テ明快ナル御答辯
ヲ煩ハシマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=66
-
067・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 佐竹サンノ
御質問ニ御答辯致シマス、第一問ノ厚生省
ノ監督ノ保險醫ニ於テハ、何故ニ生命保險
ノ監督ヲ取ラナカッタカト云フコトデアリ
マシタガ、此點ハ人的保險制度ノ全般ノ合
理的發展ヲ企圖シマス上ニ於キマシテハ、
生命保險、社會保險、簡易保險ノ三者ヲ綜
合スルハ、一面適當ナヤウニ考ヘラレルノ
デアリマスルガ、又一面政府ノ民營生命保
險ニ對スル關係ハ監督官廳ノ立場ニ在リマ
シテ、簡易保險ト健康保險ニ對スル關係ニ
於キマシテハ、主トシテ事業經營主體トナッ
テ居ルノデアリマシテ、此關係ニ付キマシ
テ色々ト論議モアリマシタノデ、此際ハ生
命保險ダケヲ除外シタヤウナ次第ナノデア
リマス
ソレカラ第二點ノ本制度ハ國庫ノ補助金
ガ僅少デハナイカト云フ御尋デアリマシタ
ガ、本制度ハ其性質上、初メニ當リマシテ
ハ組合ヲ懇切ニ指導監督ヲシナケレバナリ
マセヌノデ、堅實ナル組合ノ發展ヲ期スル
爲ニ、漸進的ナ方針ヲ執リマシタ次第デア
リマス
ソレカラ第三問ノ療養費ノ被保險者一人
當リ五圓ノ見積ハ寡少デハナイカト云フ御
尋デアッタト存ジマスガ、保險給付ノ內容
ハ、地方ノ實情ニ依ッテ之ヲ定メマスノデ、
一〓ニハ申上ゲルコトガ出來マセヌガ、從
來行ハレマシタ各種ノ農家經濟調査等ノ數
字ニ依リマスレバ、大體此程度デアラウカ
ト豫想サレタノデゴザイマス、又現行健康
保險ニ於キマシテハ八九圓デアリマスガ、
是ハ一部負擔制度ガナイ爲デアリマシテ、
コチラノ方デハ是デ結構ダラウト考ヘタノ
デゴザイマス
ソレカラ第四問ノ醫療普及ノ爲ニハ代行
ヲ制限セズニ、廣ク產業組合等ニ認メル必
要ガアルノデハナイカト云フコトデゴザイ
マスガ、此點ハ大體ニ於キマシテ、國民ノ
生命及ビ健康ニ關スル事業ヲ行フノデアリ
マスカラ、今囘ハ醫療ニ關係ヲ持チマスル
施設ヲ爲スモノニ向ッテ、之ヲ限定シタ次第
デゴザイマス
ソレカラ本制度ハ市町村營又ハ國營ヲ適
當トスルノデハナイカト云フ御尋デゴザイ
マシタ、本制度ハ大體區域ヲ市町村ノ區域
ニ致シテ居リマスガ、所謂一般行政事務ト
ハ著シク其性質ガ違ッテ居リマスノデ、本制
度ノ運用ニ當リマシテハ、組合組織ニ依ル
方ガオ互ノ道德感、責任感等ノ徹底ヲ期シ
得ルノデハナイカト考ヘマシテ、組合組織
ニ依ルヲ適當トシタノデゴザイマス
ソレカラ其計數ニ付テノ御尋デゴザイマ
スガ、此計數ニ付キマシテハ、大體ノ腹案ハ
持ッテ居リマスガ、マダ各方面トノ打合セ
モ付キマセヌノデ、何年ノ間ニドノ位ト云
フコトハ、只今申上ゲ兼ネテ居リマスル
ガ、何レ委員會等ニ於テ申上ゲタイト考ヘ
テ居ル次第デゴザイマス(拍手)
ソレカラ團體契約ニ關スル問題デアリマ
スガ、是ハ本制度ガ大體ニ於テ地方ノ實情
ニ適合セシムル爲ニ、自治的ニ之ヲ行ハセ
ルノデアリマスカラ、地方ノ實情ニ依リマ
シテ團體契約ヲ可トスル場合ニハ、團體契
約ヲ認メルコトニ致シマスガ、又或ル場合
團體契約ガ却テ醫者ノ自由選擇ヲ害スルヤ
ウナ場合ニハ、必シモ團體契約ヲサセルト
云フコトハ致サナイ積リデ居リマス、大體
是ダケダト存ジマスガ御答致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=67
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068・佐竹晴記
○佐竹晴記君 尙ホ色々突入ッテ御質問シ
タイ點ガアリマスガ、時間ガ遲クナリマシ
タノデ、何レ委員會ニ於テ御質問ヲ申上ゲ
ルコトニ致シマス、私ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=68
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069・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ハ是ニテ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=69
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070・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名三十六名ノ
委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=70
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071・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=71
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072・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=72
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073・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=73
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074・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=74
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075・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時三十三分散會
衆議院議事速記錄第六號中正誤
頁段行誤正
九二二二非當ナ非常ナ
。一一一六詢洵
一〇九二一九線依ッテ線ニ依ッテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X00719380127&spkNum=75
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