1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年二月十五日(火曜日)
午後一時十七分開議
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議事日程 第十二號
昭和十三年二月十五日
午後一時開議
質問
一 千葉縣緑海村に於ける縣當局の失政暴状竝之か革正に關する質問(土屋清三郎君提出)
二 小串鑛山慘事に關する質問(須永好君外一名提出)
三 戰死者賜金に關する質問(深澤豐太郎君外一名提出)
四 賣藥制度に關する質問(清水留三郎君提出)
五 新聞記者の資格制定に關する質問(飯村五郎君提出)
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第一 恩給金庫法案(政府提出) 第一讀會
第二 恩給法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 庶民金庫法案(政府提出) 第一讀會
第四 無盡業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 重要鑛物増産法案(政府提出) 第一讀會
第六 日本産金振興株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第七 支那事變特別税法案(政府提出) 第一讀會
第八 臨時利得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 臨時租税措置法案(政府提出) 第一讀會
第十 日滿國税徴收事務共助法案(政府提出) 第一讀會
第十一 昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 造幣局東京出張所廳舍其の他の新營費に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 對支文化事業特別會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 支那事變に關する臨時軍事費の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 軍の需要充足の爲の會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
土屋〓三郞君提出千葉縣綠海村ニ於ケル
縣當局ノ失政暴狀竝之カ革正ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
須永好君外一名提出小串鑛山慘事ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
深澤豐太郞君外一名提出戰死者賜金ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
〓水留三郞君提出賣藥制度ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
飯村五郞君提出新聞記者ノ資格制定ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
(以上二月十五日受領)
千葉縣綠海村ニ於ケル縣當局ノ失政暴
狀竝之カ革正ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年十二月二十七日
提出者土屋〓三郞
千葉縣綠海村ニ於ケル縣當局ノ失政
暴狀竝之カ革正ニ關スル質問主意書
方今地方人民共通ノ脅威ハ實ニ官僚獨善
ノ失政ト之ヲ蔽ハムカ爲ノ警察權濫用ニ
アリ卽チ法科中心ノ吏制ノ弊トシテ民情
ヲ察セス偏ニ法規ヲ以テ民ヲ牧セムトス
ル結果勢ヒ官僚的偏見ニ陷リ之カ爲人民
ノ反對ニ遭フヤ官ノ威信ヲ傷クルモノト
爲シ威力ヲ以テ之ヲ壓伏セムト企テ遂ニ
警察權濫用ニ墮スルニ至ル怯懦卑屈ノ
人民ハ遂ニ其ノ威力ニ慴伏スヘシト雖モ
人民ニ悉ク怯懦卑屈ニアラス彈壓甚シ
ケレハ勢ヒ自衞ノ活路ヲ求メテ苛政ニ
抗スルニ至ル千葉縣山武郡綠海村ニ起
レル所謂〓海村問題ハ其ノ最モ顯著ナ
ル實例ニシテ端ヲ六年前小學校舍ノ位
置問題ニ發シ村內上下兩側ニ分レテ相
爭フヤ當時ノ縣當局ハ村會一致ノ懇請
ヲ容レ公平ニ中央適當ノ地ヲ指定シテ建
築セシメタルニモ拘ラス其ノ後村政ノ均
勢破レテ實權上側ニ移ルヤ前縣當局ハ輕
卒非常識ニモ建築未タ五年ニ過キサル校
舍ヲ僅々百二十間上側へ移築スルノ申請
ニ認可ヲ與へ下側村民カ之ヲ不當ナリト
シテ累次反對陳情ヲ爲スヤ縣當局ハ同村
上側出身ノ警吏ヲ以テ所轄署長ト爲シ極
力下側村民ヲ彈壓シ其ノ效ナキヲ知ルヤ
遂ニ昨年七月二十六日夜半縣下ノ警察官
ヲ動員シテ一隊ヲ以テ下側部落ヲ封鎖シ
一隊ヲ以テ小學校舍ヲ包圍シ當時猶ホ授
業期間中ノ校舍ヲ急襲壞取シテ之ヲ上側
ニ搬去セシメ其ノ際〓育勅語謄本奉安ニ
關シ重大ナル失態ヲ釀シタルノミナラス
其ノ結果トシテ下側村民ハ私設〓海小學
塾ヲ起シテ兒童ヲ收容〓育シ同時ニ上側
村民ト分レテ〓海村トシテ獨立シ以テ永
久ニ苛政ヨリ囘避セムトスルニ至レリ爾
來今日ニ至ル迄一年有半縣當局不斷ノ壓
迫ニ抗シ二千ノ村民カ三百ノ兒童ヲ私塾
ニ擁シテ死守屈セサルノ實情ハ恐ラク全
國未曾有ノコトニシテ其ノ詳細ハ嚮ニ本
員ノ第七十囘帝國議會ニ於ケル林內閣ニ
對スル質問主意書ニ之ヲ盡クセリ
爾來幾許モナク林內閣退却シテ近衞內閣
成立シ組閣早々國內相剋ノ解消ニ努ムル
ノ聲明アリ次イテ縣當局モ更迭シ加フル
ニ支那事變ノ勃發アリ官民一致報國ノ非
常時ニ際會ス縣民皆謂へラク機會ハ好シ
新縣當局ハ必スヤ認識ヲ新ニシ善處解決
スヘシト下側村民亦深ク之ニ期待シ陳情
數次ニ及ヘリ何ソ計ラム新縣當局ハ一層
獨善的ニシテ何等問題ノ眞相ヲ究ムル所
ナク一村一校ヲ原則トシテ知事ノ威力ヲ
以テ之ヲ屈服セシメムトシ其ノ失敗ニ終
ルヤ忽チ警察權濫用ニ出テロヲ村稅ノ整
理ニ藉リ暴力團ト警察隊トヲ以テ下側部
落ヲ威迫シ不安ノ餘リ出村陳情セムトシ
タル村民ニ對シ數倍ノ警察隊ヲ以テ暴力
傷害ニ依リテ中途ニ之ヲ阻止セシメ黴宵
其ノ宿所ヲ包圍シ更ニ翌日街頭ニ之ヲ强
襲シテ不法ニ檢束拘置スル等暴狀言語ニ
絕ス目擊ノ市民皆眉ヲ顰メサルハナシ然
ルニ縣當局ハ猶ホ慊ラス〓海小學塾ノ潰
滅ヲ企テ戶每ニ警官ヲ派シテ塾ノ解散ト
父兄ノ處罰トヲ以テ威嚇シタルモ却テ益、
部民ノ怨嗟ヲ高ムルニ終ルヤ最近ニ至リ
村吏ヲシテ戶每ニ金錢供與獎學ノ名ニ於
テ父兄學童一
六圓宛名豊富リ各)ヲ以テ其ノ反目スル上側へノ轉
校ヲ誘惑セシメ權力ト金力トヲ交互ニ惡
用シテ一意私塾ヲ潰滅シ以テ失政ノ跡ヲ
蔽ハムトスルノ醜態ヲ演スルニ至レリ凡
ソ〓育ノ神聖ヲ冒瀆シ日本精神ヲ茶毒ス
ルコト之ヨリ甚シキハナシ
ミ抑〓〓海部民モ亦齊シク陛下ノ赤子ニ
シテ普ク政澤ニ浴スヘキモノナリ其ノ〓
黨ハ或ハ戰線ニ立チ或ハ銃後ヲ守リ日夜皇
軍ノ戰勝ヲ祈ルノ情ニ於テ寸毫モ他ト異
ル所ナシ然ルニ一旦地方官僚失政ノ犠牲
トナリテ日夜不安焦躁ノ裡ニ呻吟シ甚シ
キニ至リテハ男ハ皇命ヲ奉シテ出テテ決
死ノ聖戰ニ從ヒツツアルニモ拘ラス銃後
ヲ守ルノ家族ハ絕エス警察ノ威迫ヲ受ケ
剩へ老父ハ警官ノ暴行凌辱ニ負傷シ更ニ
其ノ子女ハ其ノ學塾ヨリ逐ハレムトシ其
ノ結果出征將兵ノ家族ヲシテ恰モ敵國ニ
在ルノ感アリトシテ泣カシムルニ至ル斯
ノ如キハ眞ニ軍國ノ一大不祥事ニシテ苟
モ血アリ淚アル者ノ到底坐視スル能ハサ
ル所ナリ况ンヤ戰局ノ前途益〓多難ニシテ
國民精神總動員ノ必要愈。切ナルモノアル
ヲヤ今ヤ現縣當局ハ全然本件解決ノ能力
ヲ缺キ而モ現地ノ民情ハ一日モ放置スル
ヲ許サス卽チ茲ニ本員自ラ目睹セル事實
ト的確ナル證左ヲ基礎トシ事態ノ大要ヲ
錄シテ政府ニ質ス政府ハ其ノ組閣當時ノ
聲明ヲ顧ミ又現下內外ノ非常時局ニ照シ
直ニ監督權ヲ發動シテ速ニ適正ナル解決
ヲ圖リ以テ二千ノ〓海部民ヲシテ陛下
ノ赤子トシテ再ヒ天日ヲ仰クヲ得シムル
ト共ニ嚴ニ吏僚ヲ戒飭シテ將來地方ニ於
ケル官僚獨善ノ謬想ト人權蹂躪ノ禍根ヲ
斷滅シ仍テ以テ萬民一致愈〓益〓奉公ノ至
誠ヲ君國ニ捧クルヲ得シムルノ意ナキヤ
內閣總理大臣、內務大臣、文部大臣及陸
軍大臣ノ答辯ヲ求ム
右及質問候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員土屋〓三郞君提出千葉縣綠海
村ニ於ケル縣當局ノ失政暴狀竝之カ革正
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員土屋〓三郞君提出千葉縣綠
海村ニ於ケル縣當局ノ失政暴狀竝之カ
革正ニ關スル質問ニ對スル答辯書
千葉縣綠海村ノ村治問題ニ關シテハ
曩ニ第七十囘帝國議會ニ於テ土屋〓三
郞君ノ質問趣意書ニ對シ提出シタル答
辯書ヲ以テ其ノ〓要ヲ記述セル通ニシ
テ其ノ後縣當局ハ引續キ一村一校ノ方
針ヲ堅持シ下側部落民ニ對シテハ其ノ
要望ニシテ右根本方針ニ副フモノナル
限リ之ヲ容認スベキ旨ヲ卒直ニ反覆說
明シ特ニ時局ノ重大ナルニ鑑ミ其ノ行
動ヲ愼ミ圓滿ナル解決ニ努力スベキ旨
ヲ說示シ來レルモ其ノ間毫モ威力ヲ以
テ之ヲ屈服セシメムトシタル事實ヲ認
メズ
二、同村ニ於テハ村ノ財政確立上滯納整
理ノ必要ヲ認メ昭和十二年九月專任滯
納整理吏員ヲ任命シテ全村ニ涉リ滯納
整理ニ著手セリ然ルニ村稅滯納者ノ大
部分ガ下側村民ニ屬スルヲ以テ下側幹
部ハ靑壯年ヲ煽動シ暴力ヲ以テ之ヲ阻
止スベキ旨ノ不穩ナル決議ヲ爲サシメ
タル事實アリタルヲ以テ之ヲ知リタル
所轄警察署長ハ萬一ノ場合ヲ憂慮シ治
安維持上私服警察官一名ヲ派遣シ間接
的ニ警戒ヲ爲サシメタル事實アルモ質
問ノ如クロヲ村稅ノ整理ニ藉リ暴力團
ト警察隊トヲ以テ下側部落民ヲ威迫シ
タルガ如キ事實ナシ
三、下側ノ幹部ハ前記滯納整理ヲ中止セ
シムベク多數ノ部落民ヲシテ中央ニ陳
情セシメムトシ昭和十二年十月十九日
ニ至リ遂ニ大擧上京ヲ企ツルニ至レリ
仍テ所轄警察署長ハ時局柄其ノ行動ノ
不穩當ナルヲ認メ諭旨ノ上代表者ノミ
ノ上京ヲ慫慂シタルニ拘ラズ翌二十日
之ヲ肯ンゼズ飽クマデ全員上京セムト
シタルヲ以テ其ノ公安ヲ害スル虞アル
ヲ認メ已ムヲ得ズ十數名ノ者ヲ檢束シ
夫々嚴戒ノ上始末書ヲ徵シ釋放シタル
事實アルモ質問ノ如ク村民ニ數倍スル
警察隊ヲ以テ之ヲ阻止シ又ハ警察官ガ
暴力傷害ヲ加へタルガ如キ事實ナシ
四、戶每ニ警官ヲ派シテ村民ヲ威嚇シ云
云ノ事實ニ付調査スルニ昨年十二月以
來下側部落民ノ指導者ニシテ〓海村創
立實行委員長タル小倉某一派ガ從來ノ
態度ヲ一變シ圓滿ナル解決ヲ圖ラムト
スルニ至リ一般部落民ニ於テモ漸次事
態ヲ正視自覺スルニ至リ其ノ結果進ン
デ子弟ヲ中央小學校ニ登校セシメント
スル情勢トナリ本年一月八日ノ學期始
メニハ下側全部落ヲ通ジ約六十名ノ新
登校者ヲ見ントスルニ至レルヲ以テ此
ノ情勢ヲ見タル反對側ノ幹部ハ種々對
策協議ノ結果此際全力ヲ擧ゲテ兒童ノ
登校ヲ阻止スルト共ニ結束ノ强化ヲ圖
ルコトニ決定シ各部落ニ亙リ父兄ヲ訪
問シ總ユル手段ヲ用ヒテ兒童ノ登校ヲ
阻止シタル爲新登校者ノ數ハ豫定ニ比
シ激減ヲ見ルニ至レリ縣當局ニ於テハ
斯ノ如キ幹部ノ行動ハ本件ノ圓滿解決
上大ナル支障アルノミナラズ兒童ノ將
來ニ對シ寔ニ忍ビ難キモノアルト同時
ニ義理的關係其ノ他ヨリ幹部ニ阻止サ
レ已ムナク兒童ノ登校ヲ見合セツツア
ル父兄ニ對シテハ寧ロ同情スベキモノ
アリトシ斷乎トシテ適當ナル取締ヲ加
フルヲ妥當ト認メ之等登校ヲ阻止セル
幹部數名ヲ所轄警署ニ招致シ嚴重將
來ヲ戒筋シ始末書又ハ聽取書ヲ徵スル
ト共ニ內一名ニ對シテハ拘留三日ノ處
分ヲ言渡シタル事實アルモ戶每ニ警察
官ヲ派シタル事實及塾ノ解散ト父兄ノ
處罰トヲ以テ村民ヲ威嚇シタルガ如キ
事實ナシ
五、金錢供與ノ問題ニ付テハ同村當局ハ
下側ニ於ケル不就學兒童ノ將來ヲ憂慮
シ之ガ登校方ニ關シテハ常ニ機會アル
每ニ情理ヲ盡シ勸奬シ來リタルモ殊ニ
學年末ニ差掛リ一層其ノ必要ヲ感ジ昨
年十二月三十日村會ヲ開キ滿場一致ヲ
以テ兒童就學奬勵費二千圓ノ議決ヲ爲
シ是等兒童中長期缺席ノ者ニシテ家庭
資產ノ狀況ヲ斟酌シ新ニ登校スル兒
童ニ對シ一人金五圓乃至八圓ノ割合ヲ
以テ就學奬勵費ノ交付ヲ爲スコトトシ爾
來其ノ方針ノ下ニ銳意就學ノ勸奬ニ努
メタル事實アリ其ノ結果一月八日ヨリ
同二十五日迄ニ於テ就學ヲ見タル兒童
數三十二人其ノ支給額ハ百七十圓ニ達
シタルガコハ一ニ〓育上不就學兒童ノ
將來ヲ憂慮シ一日モ速ニ其ノ不合理ナ
ル狀態ヲ脫セシメンガ爲其ノ家庭資產
ノ狀況ヲ考慮シ比較的生活困難ノ者ニ
對シ就學ヲ奬勵シタルニ過ギザルモノ
ト認ムベク之ヲ以テ誘惑買收ト同一視
スベキモノニ非ズト認ム
要スルニ質問ノ事項ニ關スル事實以
上ノ如クニシテ、本件ニ關シ、千葉縣
知事ガ其ノ威力ヲ用ヒ又ハ警察權ヲ濫
用シタル等ノ事實ハ全ク之ヲ認メ難キ
ノミナラズ、縣當局ノ之ニ對スル根本
方針ハ適切妥當ナリト認メラルルヲ以
テ今後一層縣當局ヲ督勵シ以テ速カナ
ル解決ヲ成サシムル方針ナリ
右及答辯候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
陸軍大臣杉山一元
文部大臣侯爵木戶幸
內務大臣末次信正
小串鑛山慘事ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十二年十二月二十七日
提出者須永好
外一名
小申鑛山慘事ニ關スル質問主意書
昭和十一年十一月二十日秋田縣尾去澤鑛
山中澤堆積場扞止堤防決潰ノ慘事ガ起ツ
タ直後卽チ第七十囘帝國議會開會ノ劈頭
本員等ノ同僚ハ右ニ關スル質問主意書ヲ
提出シ鑛山災害ノ頻發竝之ガ監督ニ就イ
テ政府ノ注意ヲ喚起シタノデアル然ルニ
其ノ後期年ナラズシテ靜岡縣伊豆持越金
山ノ瓦斯爆發アリ次イデ群馬縣小串鑛山
ノ慘事ヲ見ルニ至ツタノハ本員等ノ深ク
遺憾トスル所デアル
此ノ一箇年間ニ起ツタ三大鑛山災害中持
越金山ヲ除ク他ノ二鑛山卽チ尾去澤鑛山
ト小申鑛山トガ共ニ採掘坑道外ニ於テ災
害ヲ惹起シタ點ハ特ニ注目ニ値スルモノ
ト謂ハザルヲ得ナイ之ニ關聯シテ次ノ二
點ニ就イテ先ヅ政府ノ答辯ヲ要求スルモ
ノデアル
小申鑛山慘事ノ原因ニ關シ政府ノ調
査蒐集サレタル資料ヲ詳記シテ政府ノ
所見ヲ率直明確ニ發表サレタイ
二右鑛山ノ用排水裝置、精鍊所、鑛夫
住宅等ノ建設許可ノ際其ノ設計竝同地
ノ地質、地形ニ就イテ考慮セラレタル
ヤ否ヤ尙ホ前述シタ如ク最近ノ鑛山災
害ハ坑道外ニ於テ起リ從業員以外ノ家
族住民カラ多數ノ死傷者ヲ出シツツア
ルコトハ刮目スベキ現象デ之ガ對策ト
シテ住宅、小學校建設地、工場敷地等
ニ就イテハ地形、地質ヲ考察シ安全ヲ
期スルヤウ法規上明記スルコトガ必要
デアルト考ヘルガ政府ニ其ノ意思ガア
ルカ否カ
生產力擴充ハ昭和十二年初頭ヨリ政府ガ
力說唱道シ來ツタ所デアルガ其ノ生產力
擴充ハ生產額ノ增加ニノミ著目スル小乘
的政策ニ流レ勝デ生產ノ重要要素タル勞
働力保護ニ缺ケタ點ガナイデモナイ斯ク
テ俗諺ノ「一文惜シミノ百失ヒ」ニ類スル
今囘ノ如キ慘事ヲ惹起シタトモ見ラレ得
ルノデアルガ之ニ關シ
三鑛山勞働者ト云フ「人的要素」ノ監督
ヲ今日ノ如ク物的生產力擴充ノ直接指
導者デアル商工省ノ下ニ併託シテ置ク
ノヲ果シテ妥當デアルト思料セラレル
カ否カ
小串鑛山ハ北海道硫黄株式會社ノ經營ス
ルモノデアルガ同會社ニハ四百九十二萬
七千五百圓ノ三井鑛山株式會社ノ資本ガ
注ガレ三井鑛山株式會社ハ北海道硫黃株
式會社ヲ完全ニ支配スル地位ヲ占メテ居
ル然ルニ我ガ國最大ノ資本ヲ背景ニシナ
ガラ北海道硫黄株式會社ノ罹災從業員及
其ノ家族等ニ對スル救援慰藉ハ冷淡ノ譏
リヲ免レズ又會社ト罹災者間ニモ種々ノ
紛爭ヲ惹起シテ居ルト聞クガ之ニ關シ
四政府ハ北海道硫黄株式會社或ハ三井
鑛山株式會社ニ對シ罹災者救援或ハ慰
藉ニ關シ何等カノ手段ニ出デタルコト
ガアルカ否カ若シアリトスレバ其ノ詳
細ヲ發表サレタイ
鑛山等ニ一度災害惹起スルヤ地元市町村
ハ勿論隣接市町村ガ勞力提供ニ物品寄與
ニ多額ノ犧牲ヲ拂フハ我ガ國民ノ醇風デ
アツテ誠ニ同慶ニ堪へナイモノデアルガ
窮乏セル農山漁村ニ斯ル負擔ヲ拂ハシメ
テ晏如トシテ居ルトキハ農山漁村民ノ窮
乏ハ更ニ拍車ヲ加ヘラレルコトトナル之
一個四
五政府ハ何等カノ方法ヲ以テ斯ル犠牲
ニ報イル途ヲ開カムトスル意思ガアル
カ又小申鑛山當局ニ對シ斯ル犠牲ニ報
イヨト勸說シタコトガアルカ否カ
勞働者ガ自己ノ職場ノ災害ニ對シ極メテ
銳敏ナル豫感ヲ持ツテヰルコトハ旣ニ尾去
澤鑛山慘事質問主意書ニ於テ本員等ノ同
僚ガ强調シタ所デアリ今次ノ小串鑛山ニ於
テモ災害突發約一箇月前火藥庫下方貯水
池ニ陷沒起リ災害ノ豫感ガ强ク勞働者ニ
働キカケテ居タノデアル此ノ豫感ヲ組織
的ニ生カシ以テ災害防止ニ利用スルコト
ハ一日モ忽セニシ得ナイモノト思考スル
斯ル見地カラ
六政府ハ各鑛山ニ勞資兩者ノ代表ヲ以
テ組織スル災害防止勞資共同委員會ヲ
組織スル意思ガアルカ否カ
右及質問候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員須永好君外一名提出小串鑛山
慘事ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員須永好君外一名提出小串鑛
山慘事ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-ニ關シテ
本災害ノ原因ニ關シテハ災害直後商工
省及東京鑛山監督局ヨリ係官ヲ派遣シ
詳細調査セシムル所アリシガ更ニ十一
月二十五日夫々係官ヲ現地ニ派遣シテ
調査ヲ爲シタル內務省、地震〓究所、
商工省竝ニ東京鑛山監督局ノ合同協議
會ヲ開催シ愼重檢討ヲ遂ゲタル結果左
ノ結論ヲ得タリ本災害ハ崩壞地帶ノ基
磐ヲ構成セル安山岩及角礫凝灰岩ノ表
面ガ粘土化シ此ノ粘土層ハ長キ年月ノ
間引續キ風化作用ニ因リ次第ニ發達シ
爲ニ土砂ノ滑動ヲ支持スル力漸次消耗
スルニ至リタルガ偶連續セル降雨ニ因
リ粘土層ノ上部ニ在ル土砂地帶ガ多量
ノ雨水ヲ包含スルニ至リ滑動ヲ助長シ
タル結果遂ニ粘土層ヲ界トシテ滑動ヲ
起シ之ニ基因シテ同時ニ起レル上部土
砂ノ沈下ハ此ノ滑動ニ衝擊ヲ與ヘ爲ニ
一瞬ニシテ强力ナル流出的崩壞ヲ惹起
シタルニ起因スルモノナリ
二ニ關シテ
鑛業用建設物及工作物ノ保安ニ關スル
警察事務ハ鑛業法第七十一條ノ規定ニ
依リ商工大臣及鑛山監督局長之ヲ行フ
所ナリ而シテ鑛業權者製鍊場又ハ鑛夫
住宅ヲ設置セントスル場合ニ於テハ鑛
業警察規則第五十五條及第五十六條ノ
規定ニ依リ其ノ設置ニ付鑛山監督局
長ノ認可ヲ受ケ又ハ鑛山監督局長ニ對
シ屆出ヲ爲スコトヲ要スルモノナルガ
認可申請又ハ屆出ニ際シテハ設置場所、
建物ノ設計〓要及附近ノ地形、地目等
ヲ明カニシ且之ヲ圖示スルコトヲ要ス
ルモノナリ若シ該建設物ノ設置ガ保安
上支障アリト認ムルトキハ製鍊場ニ付
テハ認可ヲ爲サズ、鑛夫住宅ニ付テハ
鑛業警察規則第七十六條ニ依リ改造、
修理其ノ他適當ナル處置ヲ命ズルコト
ヲ得ルモノナリ斯ノ如ク政府ニ於テハ
此種建設物ノ設置ニ際シテハ其ノ設計
竝ニ建設地ノ地形等ニ付充分考慮シ苟
モ保安上危險ナカランコトヲ期シツヽ
アル次第ナリ問題ノ小串鑛山ノ製鍊場
及鑛夫住宅ニ就テモ夫々正規ノ手續ニ
依ル認可申請又ハ屆出アリタルモノニ
シテ當局ニ於テモ其ノ鑛山地帶ノ地形
ニ鑑ミ特ニ雪崩等ヲ考慮ニ入レタル上
別段支障ナキモノト認メ其ノ使用ヲ許
可シタルモノナリ
三ニ關シテ
生產力ノ擴充ハ政府ノ特ニ意ヲ注ギツ
ツアル所ナルガ之ガ爲ニ人的要素ノ保
護ヲ忽ニシ又ハ災害ノ防止ヲ怠ルガ如
キハ社會正義上將又生產力擴充ノ目的
達成上ヨリ見ルモ決シテ等閑ニ附シ得
ザル所ナルヲ以テ政府ニ於テハ一面生
產力ノ急速ナル擴充ヲ圖ルト共ニ他面
苟モ勞働者ノ保護ニ缺クル所ナカラン
コトヲ期シツツアリ
現在鑛山ニ於ケル勞働者ノ保護ニ關シ
テハ原則トシテ鑛山監督局長之ニ當ル
モノナルガ鑛山監督局長此ノ事務ヲ行
フニ當リテハ勞務ノ監督ニ付テハ厚生
大臣ノ、災害ノ防止ニ付テハ商工大臣
ノ指揮ヲ受クルモノナリ而シテ政府ハ
鑛業勞働者ノ保護ヲ全ウセンガ爲ニ此
等監督機構ノ整備擴充ニ銳意努力シ來
リタルガ今後監督機構ニ付テモ愼重考
究ヲ遂ゲ所期ノ目的達成ニ努力スル方
針ナリ
四ニ關シテ
罹災者及其ノ家族等ニ對スル救護慰藉
ニ付テハ東京鑛山監督局ニ於テ終始鑛
業權者タル北海道硫黄株式會社ヲ指導
督勵シテ萬遺憾ナカラシムルコトニ努
メタリ卽チ災害發生スルヤ會社側ニ於
テハ鑛山在住者全員ニ對シ食料、薪炭
其ノ他生活必需品ヲ無償ニテ支給スル
コトトシ尙當用金及見舞金ヲ應急給與
シタルガ更ニ罹災者ニ對スル弔慰金等
ニ付テモ從業員死亡者ニ付テハ總テ之
ヲ業務上ノ死亡トシテ取扱ヒ法定扶助
料退職手當金、葬祭料、香奠ヲ給與
スルノ外特別弔慰金トシテ一人當一千
圓ヲ支給シ尙死亡者ニ遺族アルトキハ
其ノ遺族ノ數及年齡ニ依リ更ニ之ヲ加
給スルコトトセリ重傷者ニシテ負傷治
癒後勞務ニ從事スルコト能ハザル者ハ
死亡者ト同樣ニ之ヲ取扱ヒ以下之ニ準
ジテ負傷ノ程度ニ從ヒ應分ノ給與ヲ爲
スコトトシ又從業員以外ノ罹災者ニシ
テ死亡シタル者ニ對スル弔慰金モ六百
圓乃至一千圓ヲ支給スルコトト爲シタリ
五ニ關シテ
本災害ノ發生スルヤ地元及隣接市町村
ノ消防組及靑年團等ハ急遽應援ノ爲ニ
來山、屍體ノ發掘作業其ノ他ノ勞務ニ
從事シ災害ノ善後措置ニ關シ援助ヲ續
ケタルガ此等ノ者ニ對シ會社側ニ於テ
ハ食糧ヲ給與スルト共ニ一人二圓ノ日
當ヲ支拂ヒ其ノ援助ニ報イタリ尙東京
鑛山監督局ニ於テハ災害ノ善後措置一
應終了シタル時ハ更ニ應分ノ謝意ヲ表
スベキ旨勸奬シ置キタルガ會社側ニ於
テハ最近ニ至リ關係各方面ニ對シ相當
ノ謝禮ヲ爲スコトトセリ
六ニ關シテ
災害ノ發生防止ニ付テハ勞働者ノ協力
ニ俟ツ所大ナルコトハ言ヲ俟タザルモ
ノナル處鑛山ニ依リテハ安全委員會其
ノ他之ニ準ズルモノヲ組織シ勞資相協
調シテ災害防止ニ努メ相當ノ成績ヲ擧
ゲツツアルニ鑑ミ政府ニ於テモ斯ル組
織ニ付テハ今後極力其ノ奬勵ニ努ムル
方針ナリ
右及答辯候也
昭和十三年二月十五日
商工大臣吉野信次
厚生大臣侯爵木戶幸
戰死者賜金ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年一月二十三日
提出者深澤豐太郞
外一名
戰死者賜金ニ關スル質問主意書
今次支那事變ニ際シ戰死者ノ遺家族扶助
救濟ノ爲ノ賜金事項ヲ改正シ之ヲ從來ヨ
リモ增額スルコトハ時代ノ趨向ト物價ノ
變動、貨幣價値ノ下落等ニ鑑ミ痛切ニ要
望セラルル所ナリ政府モ亦玆ニ著眼シ之
カ改正ヲ告示セラレタリト聞クカ突如昭
和十二年十一月七日ノ東京日日新聞第
二萬二千十五號)ハ
「階級上下ニ關セズ
戰死者ニ同額賜金
五千圓程度·規定改正〓究」ト題シ左
ノ事項ヲ揭載報道セリ卽チ
「政府ハ今次ノ支那事變ヲ一轉機トシ
テ戰死傷者ニ對スル賜金規定ノ向上ニ
ツイテ〓究中デアルガ、瀧企畫院總裁
ハソノウチ戰死者ノ遺家族扶助救濟ノ
タメノ賜金事項ノ改正ハ最モ焦眉ノ懸
案ナリトシ從來ノ規程ヲ根本的ニ改正
スベク具體案ノ作製ヲ同院事務當局ニ
命ジタ、卽チ今次改正サレントスル最
大眼目ハ從來戰死者ノ階級別ニヨツテ
ソレゾレ賜金ニ差等ヲ付シテヰタガ本
人ノ勳功ハ後日ニオイテソレゾレ〓究
ノ上コレガ表彰ニ遺憾ナキヲ期スルコ
トトシ、差シ當ツテ戰死ノ公電ガアレ
バ將校タルト下士官兵タルトヲ問ハズ
一率ニ同額賜金ヲ本人ノ遺家族ニ交付
セントスルモノデアル、コレニヨツテ
ソノ遺家族ハ農家ニアツテハ田地一町
步程度ヲ購入シ得テ自作農ノ基礎ヲツ
クリ中商工業者ノ場合モコレヲ資金ト
シテソレゾレ自活シ得ル限度ヲ目標ト
シテ考究サレテヰル、シカシテコレガ
標準トナル賜金額ハ大體五千圓程度ト
見ラレテヰル、ナホ戰傷病者ニツイテ
モソレゾレ改正サレルハズデアルガコ
ノ方ハ後〓シトナシ戰死者ニ對シテノ
ミ速カニ具體案ヲ作成ノ上近ク閣議ニ
正式決定ヲ見ルハズデアル、コレニ要
スル豫算ハ過般ノ議會デ成立シタ軍事
豫算ノ豫備金約二億圓ノ中カラ支出セ
ントスルモノデアル」ト
以上ノ記事ハ直ニ國民ニ重大ナル反響ヲ
喚起シ遺家族ハ之カ爲ニ悲嘆ノ裡ニモ國
家ノ厚遇ニ慰安ヲ感シ戰場ニ在ル軍人ハ
陣歿セル戰友ノ爲ニ後顧ノ憂ノ薄ラケル
ヲ喜ヒ今ヤ國ヲ擧ケテ之ヲ信シツツアル
ノ狀態ナリ仍テ左ノ事項ニ對シ政府ノ明
答ヲ求ム
一前揭ノ新聞記事ハ事實ナリヤ否ヤ
-事實ニアラスシテ政府ノ所見別ニ存
スルモノアラハ其ノ所見如何
一近衞首相及瀧企畫院總裁ハ「將校下
士官兵同額云々」ヲ適正ナリト信スルヤ
一事實ニアラストセハ何故ニ揭載ヲ許
シタルヤ
-事實ニアラストセハ何故ニ直ニ取消
ヲ爲ササリシヤ
-之ヲ此ノ儘放任シ置クコトノ國民及
事變ニ與フル影響ニ付考慮シタルヤ速
ニ眞相ヲ明白ニシテ國民ノ惑ヒヲ解ク
ノ必要ナキヤ
速ニ内閣總理大臣及軍部大臣ヨリ明確ナ
ル答辯ヲ與ヘラレムコトヲ希望ス
右及質問候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員深澤豐太郞君外一名提出戰死
者賜金ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員深澤豐太郞君外一名提出戰
死者賜金ニ關スル質問ニ對スル答辯書
戰死將兵遺族ニ對スル賜金規定ニ關
スル新聞記事ハ政府ノ關知セザル所ナ
ルモ遺族ノ保護救濟ノ必要ニ關シテハ
政府モ痛感シ目下折角努力ヲ爲シツツ
アリ
二、遺族ノ保護救濟トシテハ一時賜金ノ
外恆久的施設、例ヘバ恩給法ノ改正、
銃後ノ施設等アリテ此等ハ相關聯セル
ヲ以テ綜合的見地ヨリ最適切ナル方策
ヲ考究中ナリ
右及答辯候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
陸軍大臣杉山元
海軍大臣米內光政
賣藥制度ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年一月二十五日
提出者〓水留三郞
賣藥制度ニ關スル質問主意書
醫師ノ居住セサル農山漁村ノ人々、貧困
ニシテ醫師ノ治療ヲ受クルコト能ハサル
人々及急傷病患者ニシテ醫師ノ診察ヲ受
クル暇ナキ場合ノ人々ニトリテ賣藥ハ唯
一無二ノ福音ナリ如何ニ醫療制度普及セ
ラルルトモ賣藥亦根絕スルモノニアラサ
ルナリ隨テ賣藥制度全般ニ涉ツテ檢討シ
之ヲ改善スルコトハ刻下ノ急務ナリト信
ス政府ハ賣藥制度ノ改善ニ付テ如何ナル
具體案ヲ有セラルルヤ以下各項目ニ付テ
政府ノ明確ナル答辯ヲ求ム
-賣藥ノ製造、配合ニ關スル件
1賣藥ノ製造、配合ハ旣得權者ヲ除
キ之ヲ藥劑師ニ限定スル意思ナキ
ヤ
2醫師ニ付與セラレタル賣藥ノ製
造配合ハ旣得權者ヲ除キ今後其ノ
特權ニ制限ヲ加フル意思ナキヤ
3賣藥及賣藥部外品ノ製造及配合ニ
關スル認可ハ地方官廳ニ於テ決定セ
シメス中央官廳ニ於テ統一スル意思
ナキヤ
二賣藥ノ販賣ニ關スル件
1賣藥ノ販賣ハ既得權者ヲ除キ之ヲ
藥劑師及藥種商ニ限定スル意思ナキヤ
2對症賣藥ハ如何ナル程度ニ於テ之
ヲ取締リツツアリヤ
3賣藥ノ行商人及賣子ハ之ヲ免許制
トシ旣得權者ヲ除キ藥劑ニ關スル一
定ノ〓育アル者ニ限定スル意思ナキ
ヤ
三新藥、新製劑及賣藥部外品ノ取締ニ
關スル件
1新藥、新製劑ハ賣藥法ニ依リテ取
締ル必要ナキヤ
2新藥、新製劑ハ賣藥ト區分スルノ
方法ヲ講スル必要ナキヤ
3醫師用藥品トシテ製造、配合シタ
ル新藥及新製劑ヲ一般民衆ニ賣リ出
スハ素人ノ自己治療ヲ誘致スル虞ナ
キヤ之ニ對スル指導監督ヲ如何ナル
方法ニ於テ爲シツツアリヤ
4賣藥、新藥、新製劑及賣藥部外品
ハ藥品ノ內容ニ依リテ分別セラルル
ヨリ寧ロ營業者ノ考へ方一ツニ依ル
場合多キモ政府ハ賣藥法ヲ改正シテ
之ヲ統制スル意思ナキヤ
5疾病ノ治療、豫防及精力ノ增進等
ニ效アリトシテ一般公衆ニ販賣スル
滋養藥ハ凡テ之ヲ統一シテ賣藥法ニ
依リテ免許制ト爲ス意思ナキヤ
四賣藥ノ內容公示ニ關スル件
1賣藥ノ內容ハ公示セシムル意思ナ
キヤ
2賣藥ノ內容公示ハ主要藥品ニ限定
スル意思ナキヤ
五賣藥等ノ廣〓取締ニ關スル件
1虛僞誇大ナル賣藥、新藥、新製劑
及賣藥部外品ノ廣〓ニ對シ政府ハ如
何ナル取締ヲ勵行シツツアリヤ
2獨逸ニ於ケル經濟廣〓法ノ如ク北
米合衆國ニ於ケル癌、結核ノ廣〓取
締ノ如ク我カ國ノ賣藥法ヲ改正シテ
廣告取締ヲ一層擴大强化スル必要ヲ
認メサルヤ
六賣藥等ノ定價ニ關スル件
1賣藥、新藥、新製劑及賣藥部外品
中ニハ廣〓ヲ利用シ實質ヲ省ミス暴
利ト認ムヘキ格外ノ定價ヲ附スル者
アリ是等ノ考ニ對シテ何等カノ制式
方法ヲ加フル必要ナキヤ
2賣藥等ノ定價勵行、濫賣矯正ノ爲
賣藥等ノ製造及販賣業者ニ對シ自治
統制ヲ爲サシムル必要ナキヤ自治統
制困難ナリトセハ國家統制ノ必要ナ
キヤ
七賣藥ノ課稅ニ關スル件
1大正十五年三月大衆課稅ト認メテ
廢稅トナリシ賣藥印紙稅ヲ復活スル
意思ナキヤ
2賣藥印紙稅ヲ復活スルトセハ新藥、
新製劑及賣藥部外品モ之ニ包含セシ
ムル意思ナキヤ
3賣藥印紙稅ヲ復活スルトセハ醫
師齒科醫師、獸醫及藥劑師ノ調劑
スル藥ニモ課稅スル意思ナキヤ
4內容ヲ公示セサル賣藥ニ對シテノ
ミ課稅スル意思ナキヤ
5大衆課稅トナラサル程度ニ於テ中
流以上ノ家庭ニ於テ主トシテ使用ス
ル藥ニシテ藥ニアラサル贅澤ナル種
類ノモノニ對シテ化粧品類ト共ニ課
稅スル必要ナキヤ
6賣藥印紙稅ヲ復活セス賣藥ニ對ス
ル免許方數稅ノ形式ニ依ル意思ナキ
ヤ
八全購聯ノ賣藥製造ニ關スル件
1昭和十二年三月九日第七十囘帝國
議會衆議院本會議ニ於ケル國民健康
保險法案ノ質疑應答中私ノ質問ニ對
シ小平農林省經濟更生部長ハ「全國
購買組合聯合會ハ藥ノ製造工場ヲ
持ッテ居リマセヌノデ、藥劑師ヲ置キ
マシテ嚴重ナル監督ノ下ニ、他人ノ
工場ニ於テ製造シタルモノヲ受ケ入レ
テ居ルノデアリマシテ、其實質ニ於テ
ハ全購聯ガ自ラ製造シテ居リマセヌ
云々」ト明瞭ニ全購聯ノ賣藥製造ヲ否
定シテ居ルニ拘ラス全購聯雜貨部家
庭藥主任山口綱作氏ハ同年七月五日
丸ノ內會館ニ於ケル醫藥記者招待會
ノ席上次ノ如キ意見ヲ公表セリ
「全購聯自ラノ工場ヲ以テ自分ノ
滿足スル製品ヲ造ツテ配給シナケ
レバ駄目デアルト覺ツテ現在ノ樣
ナ事業ノ組織ニ改メタノデアリマ
ス、夫レハ昭和九年十一月カラデ
アリマス、先ヅ大阪ノ或ル賣藥工
場ヲ賃借致シマシテ原料カラ製品
ニ至ルマデ全ク自分ノ計算ニ於テ
事業ヲ開始シマシタ云々」
果シテ何レノ言カ正シキヤ山口氏ノ
言正シキモノナリトセハ政府ハ調査
ノ粗漏ナル點ニ於テ責任ヲ負ハサル
ヘカラス之ヲ知ツテ答辯シタリトセハ
政府ハ議會ヲ通シテ國民ニ向ヒ〓僞
ノ言辭ヲ弄シタリト謂フヘク政府ノ
責任アル答辯ヲ要求ス
2「全購聯ガ大阪ノ賣藥工場ニ於テ
自ラ製造シテ居ルノデハナイ」トノ
政府ノ言明ヲ正シキモノト假定シ全
購聯カ大阪ノ賣藥工場ニ對シテ委託
製造ノ形式ヲトリツツアリト認メタ
ル場合委託製造ハ賣藥法ニ牴觸スル
トハ考ヘサルヤ
3賣藥ノ如キ人體ニ直接影響ヲ及ホ
ス特殊ノモノヲ一般商品ト同樣ニ全
購聯ニ於テ製造スルハ保健上ニ何等
ノ故障ナシト考ヘラルルヤ
4生產者、消費者間ニ介在スル中間
配給機關ヲ排除スルハ農村振興ノ理
想トシテ認ムヘキ點アルモ之ニ依テ
生スル關係商人ノ失業ニ對シ政府ハ
如何ニ考慮セラレツツアリヤ數多キ
恩典ニ浴スル全購聯ノ賣藥製造ニ依
テ一般賣藥業者ノ蒙ムル打擊ハ甚大
ナリ政府ハ全購聯ノ賣藥製造ヲ現狀
ノ儘ニ放任シテ置ク考ナリヤ全購
聯ノ賣藥製造ニ依テ失業スル一部ノ
賣藥業者ニ對シ何等カノ救濟方法ヲ
講セストモ差支ナシト考ヘラルルヤ
九國民健康保險組合ノ賣藥配付ニ關ス
ル件
1昭和十二年三月九日第七十囘帝國
議會衆議院本會議ニ於ケル國民健康
保險法案ノ質疑應答中私ノ質問ニ對
シ河原田內務大臣ハ「組合ニ於テ賣
藥ヲ備ヘテ、組合員ニ配付スルト云
フコトハ、サセナイ方ガ宜イヤウニ思
フノデアリマス云々」ト答辯セラレタ
ルカ政府ハ此ノ方針ニ何等ノ變更ナ
キヤ賣藥ノ配付ハ假令組合ノ自治ニ
一任スルトスルモ政府ノ指導精神ニ
ハ變リナキヤ
2政府ハ進ンテ國民健康保險組合ヲ
シテ組合員ニ賣藥ヲ配付セシメサル
ヤウ法令ヲ以テ規定スル意思ナキヤ
3國民健康保險組合ノ規約中ニ賣藥
ヲ配付セシメサル旨ヲ明記セシメ
其ノ規定ヲ明記セサル組合ニ對シ
テハ認可セサル方針ニ出ツルノ意思
ナキヤ
十公營賣藥ニ關スル件
1政府ハ公營賣藥ヲ奬勵スル意思ナ
リヤ
2靑森縣南津輕郡柏木町ニ於テ經濟
更生ニ名ヲ藉リテ縣社會事業協會ノ
賣藥ヲ服用セシメムカ爲ニ既ニ配置
シアル他ノ賣藥ヲ一括返還シタル事實
アリ斯ノ如キ行爲ニ關シ如何ナル見
解ヲ有セラルルヤ
十一製藥ノ國家管理ニ關スル件
1人命ニ重大影響ヲ與フル製藥ノ如
キ事業ヲ營利ノ對象物タラシムルコ
トニ關シ政府ハ如何ナル見解ヲ有セ
ラルルヤ
2治療ニ要スル藥品ノ價格ヲ統制シ
テ醫師及藥劑師ノ提供スル藥ノ代價
ヲ低廉ナラシムル爲將又有效適切ナ
ル藥ヲ製造セシムル爲製藥事業ヲ國
家管理タラシムルコトニ付テ政府ハ
如何ニ考慮セラレツツアリヤ
十二賣藥ノ移輸出奬勵ニ關スル件
文化ノ向上、保險組織ノ發達、醫療
機關ノ普及等ニ伴ヒ從來賣藥ニ親シ
メル者ノ漸次醫療ノ恩惠ニ浴スルニ
至ルコト蓋シ自然ノ趨勢ナリ賣藥ノ
移輸出ハ單ニ賣藥業者救濟ノ爲ノミ
ナラス輸出貿易增進及對外爲替調節
ノ爲必要ナリト信ス政府ハ賣藥ノ外
地及海外進出ニ對シ如何ニ考慮セラ
レツツアルヤ賣藥ノ移輸出奬勵ニ付
テ具體案アラハ承リタシ
十三賣藥ノ法規統一ニ關スル件
1朝鮮、臺灣等ニ於ケル賣藥法規ヲ
統一シ內地法ヲ外地ニ施行スル意思
ナキヤ
2我カ國ト滿洲國及中華民國新政府
トノ間ニ於テ賣藥法規ヲ統一スル意
思ナキヤ
十四賣藥ノ關稅協定ニ關スル件
我カ國ハ滿洲國及中華民國ヨリ藥草
及製藥原料ヲ輸入シ賣藥ヲソレ等ノ
國々ニ輸出セルカ此ノ際我カ國ト滿
洲國及中華民國新政府トノ間ニ於テ
相互協定ヲ爲シ互ニ其ノ關稅率ヲ低
下セシムル意思ナキヤ
十五賣藥制度調査會設置ニ關スル件
賣藥制度全般ニ涉ツテ調査スル爲官
民各方面ノ人材ヲ網羅シテ賣藥制度
調査會ヲ設置スル意思ナキヤ
右及質問候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員〓水留三郞君提出賣藥制度ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員〓水留三郞君提出賣藥制度
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-賣藥ノ製造配合ニ關スル件
一賣藥ノ調製ニ付テハ目下ノ所藥劑
師ニ限定スルノ意思ナシ
二醫師ノ賣藥調製ニ關スル規定ニ付
テハ目下ノ所變更スルノ意思ナシ
三賣藥及賣藥部外品免許取扱方針ニ
關シテハ地方長官ト充分連絡シ其ノ
統一ヲ期スル必要アルモ其ノ免許ハ
各地方長官ヲシテ之ニ當ラシムルヲ
便宜トス
二賣藥ノ販賣ニ關スル件
一賣藥ノ販賣ハ藥劑師及藥種商ノ外
ハ之ヲ極力制限シ居ルニ付目下ノ所
更ニ其ノ制限ヲ强化スルノ意思ナシ
二賣藥營業者ガ賣藥ヲ販賣スルニ當
リ夫々賣藥ノ效能書ニ從ヒ購求者ノ
申出ヅル病症ニ適應スル既製ノモノ
ヲ適宜選定販賣スルハ差支ナキ方針
ナリ
三賣藥ノ行商人及賣子ヲ許可制ト爲
シ其ノ許可ノ條件ニ一定ノ知識ヲ要
求スルヤ否ヤニ付テハ將來考究ノ要
アリト認ム
三新藥、新製劑及賣藥部外品ノ取締ニ
關スル件
-自ラ性能ヲ異ニスル所謂新藥、新
製劑ヲ賣藥法ニ依リ取締ルコトハ困
難ナリ
二所謂新藥、新製劑ト賣藥トハ自ラ
性能ヲ異ニスルヲ以テ此ノ區別ノ紛
ハシキモノニ付テハ將來相當取締ヲ
講ズル必要アリト認ム
三新藥、新製劑ニ付テハ其ノ毒劇性
ヲ含有スルモノニ付テハ毒劇藥ノ指
定ヲ爲シ之ヲ取締リ虛僞誇大ノ廣〓
ニ付テハ嚴重取締ヲ爲スノ外賣藥類
似ノ廣告ニ付テモ相當取締ヲ爲シ居
レリ
四藥品取締法規ハ其ノ制定相當古キ
モノモアリ且ツ多岐ニ互リ統一ヲ缺
クノ憾ナキニアラザルヲ以テ將來之
ヲ適宜整理統合スル必要アルヲ認ム
五例示ノ滋養藥ハ其ノ用途ニ依リ賣
藥新藥、新製劑及賣藥部外品ノ何
レカトシテ取扱ヒ夫々所定ノ取締ヲ
勵行中ナルガ目下ノ所遺憾ノ點ヲ認
メズ
四賣藥ノ內容公示ニ關スル件
一賣藥ノ內容ヲ一般的ニ强制公示セ
シムルノ意思ナシ
二前號關聯
五賣藥等ノ廣〓取締ニ關スル件
-賣藥、新藥、新製劑及賣藥部外品
ノ虛僞誇大ナル廣〓ニ付テハ其ノ實
害ノ程度ニ應ジ夫々取締ヲ勵行中
二賣藥法ヲ改正シ廣〓取締ヲ一層强
化スルコトニ付テハ將來考究ノ要ア
リト認ム
六賣藥等ノ定價ニ關スル件
-賣藥、新藥、新製劑及賣藥部外品
ノ價格ニシテ其ノ實質ヲ省ミズ暴利
ヲ貪ルモノト認メラルルモノノ取締
ニ付テハ將來相當考究ノ要アリト認
ム
二賣藥販賣業者間ノ定價勵行、濫賣
矯正ノ爲ニハ商業組合組織ヲ奬勵シ
テ同業者間ノ自治的統制ニ俟チツツ
アリ現ニ賣藥關係ノ商業組合ハ其ノ
數三十ヲ算フ今後益〓商業組合組織
ノ結成ヲ促進シテ自治的營業統制ヲ
强固ナラシムルノ要アルヲ認ム國家
統制ノ要否ニ就テハ今後充分考究ス
ル考ナリ
七賣藥ノ課稅ニ關スル件
賣藥ニ對シテハ課稅ノ意思ナキモ化粧
品ト認メラルルモノニ付テハ課稅方ニ
關シ目下考慮中ナリ
八全購聯ノ賣藥製造ニ關スル件
-全國購買組合聯合會ハ賣藥法ノモ
トニ於テハ賣藥營業者トシテ同法第
二條ノ規定ニ依リ監督官廳ノ免許ヲ
受ケ居レルモノナリ唯同聯合會ハ自
ラ工場ヲ所有セザル關係上他ノ製造
工場ヲ使用シ同聯合會所屬ノ藥劑師
ノ指揮監督ノモトニ同工場ニ於テ賣
藥ヲ調製スルモノニシテ第七十議會
ニ於テ政府委員ヨリ全國購買組合聯
合會ハ自ラ賣藥ノ製造ヲ爲サズト答
辯シタルハ此ノ間ノ事情ヲ意味スル
モノナリ
二賣藥ノ委託製造ハ賣藥法ニ抵觸ス
ルモノト認ム
三現在全購聯ニ於ケル賣藥ノ調製ハ
賣藥法ノ規定ニ從ヒ管理人タル藥劑
師ヲ置キ之ヲ爲シ居ルヲ以テ保健上
別段支障ナシト認ム
四賣藥販賣業者ニ對シ極力商業組合
組織ヲ奬勵シテ共同ノ力ニ依ル經營
ノ合理化、販賣機構ノ組織化ヲ計リ
以テ自助的方法ニ依ル業界ノ改善ヲ
計ラシメツツアリ、尙產業組合トノ
關係ニ就テハ互ニ其ノ相剋ヲ避ケ其
ノ間ニ協調方針ヲ採ルベキコトニ決
シ地方長官ニモ此ノ方針ヲ通達シテ
之ガ遂行ニ萬遺憾ナキヲ期シツツア
リ
九國民健康保險組合ノ賣藥配付ニ關ス
ル件
國民健康保險組合ヲシテ賣藥ノ給
付ヲ爲サシメザル樣指導セントスル
ノ方針ニ付テハ今囘提出ノ國民健康
保險法案ニ關シテモ變更スル所ナシ
二國民健康保險組合ヲシテ賣藥ヲ給
付ヤシメザルコトニ付テハ之ヲ法令
ヲ以テ規定セズシテ組合ノ規約中ニ
明示セシムル樣指導スル方針ナリ
三組合規約中ニ賣藥ヲ給付セザル旨
明記セザルモノニ對シテハ組合ノ設
立ヲ認可セザル方針トスル考ヘナリ
十公營賣藥ニ關スル件
政府ハ公營賣藥ヲ奬勵スルノ意思
ナシ
二各戶ノ配置賣藥ヲ收集一括シテ之
ヲ營業者ニ返還シ依ッテ紛議ヲ惹起
シタルハ事實ナリト認ムルモ其ノ經
緯ニ就テハ尙愼重調査中ナリ
±製藥ノ國家管理ニ關スル件
一二製藥國營ノ如キハ現在ノ制度
ト著シク異ナリ利害得失ヲ伴フ問題
ナルヲ以テ充分檢討スルニアラザレ
バ結論ヲ得難ク本件ハ醫藥制度調査
會ニ於ケル重要案件ノ一ナリト思料
ス
猶藥價ノ低下ニ就テハ藥品需給ノ圓
滑ト併セ充分考慮ヲ拂ヒ居レリ
十二賣藥ノ移輸出奬勵ニ關スル件
賣藥ノ海外輸出額ハ昭和十年二百四十
万圓、同十一年二百九十万圓、同十二
年二百八十万圓ニ達セルトコロ益〓之
ガ輸出ハ伸張スベキモノト認メラル、
當局ニ於テモ今般新ニ各地ニ設置セラ
レタル貿易斡旋所等ノ施設ヲ活用シ賣
藥輸出ノ增進ニ努力スル考ヘナリ
十三賣藥ノ法規統一ニ關スル件
-外地ニ於テハ現在藥劑師ノ資格ナ
キ者ニ對シテモ賣藥ノ製造營業ノ許
可ヲ與ヘ居レルガ右ハ外地ニ於ケル
文化程度ニ鑑ミ已ムヲ得ザルモノナ
リト認メラルルヲ以テ現行ノ儘ヲ以
テシテハ內地賣藥法規ヲ外地ニ施行
ン酸味
二麻藥ノ取締ニ關シテハ客年滿洲國
ハ本邦取締法規ト同趣旨ノ取締法規
ヲ制定シタリ、一般賣藥制度ニ關シ
滿洲國ニ於テハ個々ノ事項ニ付既ニ
法規ノ制定ヲ見タルモノモアレド未
ダ本邦賣藥法ニ該當スルモノハ制定
セラレ居ラザルガ如シ、何レニセヨ
日滿兩國聯絡シテ同趣旨ノ法規ノ制
定ヲ見ルコトハ結構ト考ヘ居レリ、
中華民國新政府トノ關係ニ付テハ意
見ヲ述ブルハ時期尙早ト思考ス
十四賣藥ノ關稅協定ニ關スル件
本邦ト滿洲國及中華民國新政府トノ間
ニ於テ藥草、製藥原料及賣藥ニ關シテ
關稅協定ヲ締結スルコトニ關シテハ猶
攻究ノ要アリト認ム
十五賣藥制度調査會設置ニ關スル件
賣藥制度ノ根本諸問題ニ付テハ醫藥制
度ノ根幹ニモ關聯スルトコロ尠カラザ
ルヲ以テ醫藥制度調査會ニ於テ調査〓
究ヲ遂ゲントス
右及答辯候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
臣廣田弘毅
賀屋興宣
商農大外工業費 用 意 大 分 熱 大 分 熱 食 味臣臣臣伯爵有馬賴寧
吉野信次
拓務大臣大谷尊由
厚生大臣侯爵木戶幸
新聞記者ノ資格制定ニ關スル質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年一月二十七日
提出者飯村五郞
新聞記者ノ資格制定ニ關スル質問主
意書
新聞記者ハ所謂社會ノ木鐸ナリ而シテ社
會一切ノ批評家ナリ記者ノ一言一句ハ卽
チ輿論ノ聲トナリ世道人心ニ影響スル所
洵ニ甚大ナリト謂フヘシ思想國難ノ高唱
力說セラルル今日殊ニ其ノ然ル所以ヲ痛
感セサルヲ得ス國家社會ノ安寧秩序、進
步發達、幸福繁榮ニ極メテ密接絕大ナル
關係ヲ有スル新聞記者ノ業務ハ重且ツ大
ナリト謂フヘシ實ニ新聞記者ハ無名ノ社
會〓育家、無名ノ指導者、無名ノ裁判官
ナリ故ニ新聞記者ノ人格如何、學識經驗
如何、品位見識如何ハ直ニ以テ國家社會
ノ進步、繁榮ニ影響スルヤ論ヲ俟タス仍
テ新聞記者ノ資格認定ニ關スル規定ヲ設
クルハ卽チ國家社會ノ進步、發達、幸福
ヲ增進スル所以ニシテ國家ノ須要且ツ緊
急ノ事ナリト確信スルモノナリ然ルニ之
ニ關シ何等ノ規定ナク天下何人ト雖モ新
聞記者タリ得サル者ナキ現狀ナリ辯護士
ニ辯護士法、計理士ニ計理士法、醫師ニ
醫師法アリ其ノ他現今社會ノ公的地位ハ
何レモ各〓相當ノ資格ニ俟タサルハナシ
國家社會ノ安寧秩序、進步發達ニ極メテ
密接且ツ絕大ナル關係ヲ有スル新聞記者
ノ資格ニ付テ何等ノ規定存セサルハ吾人
其ノ理ヲ解シ能ハサル所ナリ政府ハ速ニ
新聞記者ノ資格認定ニ關スル適當ナル法
令ヲ制定スルノ意思ナキヤ政府ノ所見如何
右及質問候也
昭和十三年二月十五日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員飯村五郞君提出新聞記者ノ資
格制定ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員飯村五郞君提出新聞記者ノ
資格制定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
新聞紙ハ社會ノ木鐸トシテ世道人心ニ影
響ヲ及ボシ國家ノ進展ニ關係スル所大ナ
ルモノアリ之ニ掌ハル新聞記者ノ人格、
識見如何ガ從ツテ緊要ノ問題タルハ論ナ
キ所ナリ、政府ハ玆ニ稽ヘ新聞記者ノ地
位資格等ニ關シ從來ヨリ調査〓究ヲ續
ケ來リタルモ未ダ成案ヲ得ルニ至ラズ
出版法制全般ニ對スル改正ノ問題ト共ニ
成ルベク速ニ結論ヲ得ベク愼重考究中ナ
リ
右及答辯候也
昭和十三年二月十五日
內務大臣末次信正
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
茲ニ揭載ス〕
一議員ノ異動左ノ如シ
新潟縣第三區選出議員大竹貫一君退職者
トナリタリ
茨城縣第三區選出議員赤城宗德君退職者
トナリタリ
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
恩給法中改正法律案
重要鑛物增產法案
日本產金振興株式會社法案
支那事變特別稅法案
臨時利得稅法中改正法律案
臨時租稅措置法案
日滿國稅徵收事務共助法案
(以上二月十三日提出)
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
辯護士法中改正法律案
提出者中村高一君
北海道ニ於ケル鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君山本厚三君
一柳仲次郞君東武君
板谷順助君東條貞君
南條德男君松尾孝之君
田代正治君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
北海道帝國大學ニ水產學科及人文科學ニ
關スル學部設置ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君山本厚三君
一柳仲次郞君東武君
板谷順助君東條貞君
南條德男君松尾孝之君
田代正治君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
官幣大社札幌神社ニ明治天皇合祀ニ關ス
ル建議案
提出者
木下成太郞君山本厚三君
東武君一柳仲次郞君
澤田利吉君手代木隆吉君
坂東幸太郞君大島寅吉君
南雲正朔君松浦周太郞君
遠山房吉君板谷順助君
東條貞君南條德男君
松尾孝之君田代正治君
北海道農工商漁業金融政策ニ關スル建議
案
提出者
木下成太郞君山本厚三君
東武君一柳仲次郞君
澤田利吉君手代木隆吉君
坂東幸太郞君大島寅吉君
南雲正朔君松浦周太郞君
遠山房吉君板谷順助君
東條貞君南條德男君
松尾孝之君田代正治君
北海道ニ無水アルコール工場設置ニ關ス
ル建議案
提出者
山本厚三君木下成太郞君
一柳仲次郞君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
東武君板谷順助君
東條貞君南條德男君
松尾孝之君田代正治君
北海道拓殖計畫改訂案樹立促進ニ關スル
建議案
提出者
山本厚三君木下成太郞君
一柳仲次郞君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
東武君板谷順助君
東條貞君南條德男君
松尾孝之君田代正治君
北海道ニ於ケル港灣修築速成ニ關スル建
議案
提出者
山本厚三君木下成太郞君
東武君一柳仲次郞君
澤田利吉君手代木隆吉君
坂東幸太郞君大島寅吉君
南雲正朔君松浦周太郞君
遠山房吉君板谷順助君
東條貞君南條德男君
松尾孝之君田代正治君
松戶我孫子間電化速成等ニ關スル建議案
提出者成島勇君
雪害對策樹立ニ關スル建議案
提出者
山田六郞君伊藤五郞君
森田重次郞君卯尾田毅太郞君
土田莊助君喜多壯一郞君
今成留之助君
利根川遊水地工事速成ニ關スル建議案
提出者成島勇君
釜石本莊間鐵道全通ニ關スル建議案
提出者
田子一民君信太儀右衞門君
高橋壽太郞君中田儀直君
中部千島開放ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君山本厚三君
東武君一柳仲次郞君
板谷順助君東條貞君
南條德男君松尾孝之君
田代正治君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
北千島漁業開發竝自主的統制ニ關スル建
議案
提出者
山本厚三君木下成太郞君
一柳仲次郞君東武君
板谷順助君東條貞君
南條德男君松尾孝之君
田代正治君澤田利吉君
手代木隆吉君坂東幸太郞君
大島寅吉君南雲正朔君
松浦周太郞君遠山房吉君
(以上二月十二日提出)
武雄彼杵間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
一ノ瀨俊民君藤生安太郞君
(以上二月十四日提出)
一昨十四日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
商法中改正法律案
商法中改正法律施行法案
有限會社法案
日滿司法事務共助法案
一去十二日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第五部選出
建議委員坂本宗太郞君(簡牛凢夫君
補闕)
一去十二日常任委員理事補闕選擧ノ結果左
ノ如シ
建議委員
理事坂本宗太郞君(理事簡牛几夫君
二月十日委員辭任ニ付其ノ補
關
一去十二日辭任シタル常任委員左ノ如シ
第八部選出豫算委員石坂繁君
一去十二日特別委員理事補關選擧ノ結果左
ノ如シ
國民健康保險法案(政府提出)委員
理事喜多壯一郞君(理事武知勇記君
二月五日委員辭任ニ付其ノ補
關
一昨十四日第四部選出請願委員赤城宗德君
ハ退職者トナリタリ
一昨十四日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如
第八部選出
豫算委員鈴木正吾君(石坂繁君補
關
一昨十四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
農地調整法案(政府提出)委員
辭任南鼎三君補關木本主一郞君
辭任土田莊助君補關小畑虎之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=1
-
002・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マート、御諮リ致シマス、建議委員長竝ニ國
民健康保險法案、農地調整法案ノ各委員長
ヨリ、本日會議中委員會ヲ開キタイトノ申
出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=2
-
003・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
ひく、仍テ之ヲ許可致シマス、本日ノ日程
ニ揭ゲマシタル質問一乃至五ハ、何レモ政
府ヨリ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日程
ヨリ之ヲ省キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=3
-
004・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第十一乃至第
十七ノ七案ヲ一括シテ繰上ゲ上程シ、其審
議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=4
-
005・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=5
-
006・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第十一、昭和十三年度一般會計歲出ノ
財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律案、
日程第十二、昭和七年法律第一號中改正法
律案、日程第十三、造幣局東京出張所廳舍
其ノ他ノ新營費ニ關スル法律案、日程第十
四、對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關ス
ル法律案、日程第十五、支那事變ニ關スル
臨時軍事費ノ財源ニ充ツル爲特別會計ヨリ
爲ス繰入金ニ關スル法律案、日程第十六、
朝鮮事業公債法中改正法律案、日程第十七、
軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關スル
法律案、右七案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ
開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委
員長一松定吉君
第十一昭和十三年度一般會計歲出ノ
財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十二昭和七年法律第一號中改正法
律案(滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ
爲公債發行ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十三造幣局東京出張所廳舍其ノ他
ノ新營費ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十四對支文化事業特別會計法ノ特
例ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十五支那事變ニ關スル臨時軍事費
ノ財源ニ充ツル爲特別會計ヨリ爲ス
繰入金ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十六朝鮮事業公債法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十七軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ
特例ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和七年法律第一號中改正法律案滿
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長一松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營費
ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關ス
ル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ
充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關
スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長一松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提
四
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年二月十四日
委員長一松定吉
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關
スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十四日
委員長松定吉
衆議院議長小山松壽殿
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=6
-
007・一松定吉
○一松定吉君 只今議題トナリマシタ昭和
十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル法律案外六案ニ對シマスル
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマ
ス、順序ト致シマシテ此七法律案ノ內容ヲ
簡單ニ申上ゲマス
第一ノ法律案ハ、政府ニ於キマシテ、昭和
十三年度一般會計ノ歲出豫算ノ實行上必要
ナル、所謂赤字公債發行ノ權限ヲ得ントス
ル法律案デゴザイマス、諸君御承知ノ如ク、
昭和十三年度一般會計ノ歲出豫算額ハ、經
常部竝ニ臨時部ヲ合セマシテ、二十八億六千
七百七十九万餘圓デアリマス、而シテ歲入豫
算額ハ經常部、臨時部ヲ合セマシテ、一一十一
億七千三百六十三万餘圓デアリマスカラ、
此歲入歲出ヲ差引致シマスルト、六億九千
四百十六万餘圓ノ不足ヲ生ズルノデアリマ
ス、然ルニ此不足金ノ中、法律ニ依ッテ調達
スルコトノ出來マスル震災善後公債ト、道
路公債ト、滿洲事件公債トノ合計金額一億
三千六百三十六万餘圓ヲ差引キマシテモ、
尙ホ五億五千七百七十九万餘圓ノ不足ヲ生
ズルノデアリマス、此不足金額ノ財源ヲ本
法ノ赤字公債ニ依ラントスルノデアリマ
ス、是ト同時ニ歲出豫算ノ中何程カノ金ハ、
例年ノ通リニ翌年度ニ繰越サルヽ結果トナ
リマスルカラ、此分ニ付テハ翌年度ニ於テ
公債ヲ發行スルコトノ出來ルヤウニト云フ
コトガ、此法律案ノ骨子デゴザイマス
第二ノ法律案ハ、滿洲事件ニ關スル經費
支辨ノ爲公債發行ニ關スル法律案デアリマ
ス、滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲ノ公債
發行ニ付キマシテハ、現行法ニ依リマスル
ト、公債發行ノ限度ノ法定金額ハ、諸君御
承知ノ如ク十二億六千四十万圓デアリマ
ス、昭和十二年度ノ滿洲事件ニ關スル公債
財源所用額十二億六千三十餘万圓ニ相當ス
ルモノデアリマス、然ルニ昭和十三年度一
般會計ニ於テ必要ナル滿洲事件費ハ一億四
千四百十一万餘圓デアリマス、此中滿洲國
ノ國防費ノ分擔金受入金、及ビ昭和十一年
度決算上ノ歲出不用額ニ相當スル金額、合
計千九百五十万餘圓ヲ差引キタル殘額金、
卽チ一億二千四百六十一万餘圓ヲ公債ニ依
ラントスルノガ本案デアリマス、今日マデ
ノ本公債發行ノ限度ハ十一一億六千四十万圓
デアリマスルカラ、之ニ不足額ノ一億二千
四百六十万圓ヲ加ヘマシテ、十三億八千五
百万圓ニ改正シヨウト云フノガ本案ノ骨子
デアリマス
第三ノ法律案ハ、造幣局東京出張所廳舍
其他ノ新營費ニ必要ナル經費ニ充ツル爲
メ、造幣局資金ノ中カラ三十五万圓ヲ一般
會計ニ繰入レマシテ、若シ支出未濟ノ金ヲ
生ジタ時ニハ、翌年度ニ繰越使用セントス
ル法律案デアリマス、諸君御承知ノ如ク、
造幣局東京出張所ノ廳舍ハ朽廢破損、且ツ
狹隘ノ爲ニ改築スル必要ガアルノデゴザイ
Wく、ソレバカリデハアリマセヌ、產金法
ノ實施ニ伴ヒマシテ、東京出張所ニ於テモ
金銀地金ノ精選及ビ品位ノ證明ヲ行フコト
トナッタノデアリマスルカラ、是等ノ諸〓ノ設
備ノ新設等ニ要スル經費ニ充テル爲ニ、造
幣局資金ノ中カラ三十五万圓ヲ拂出シマシ
テ、之ヲ一般會計ニ繰入レ、若シ繰入金ノ
申デ支出ノ未濟ガアッタ時ニハ、之ヲ翌年度
ニ繰越シテ使用スル權限ヲ得ントスル法律
案デアリマス
第四ノ法律案ハ、對支文化事業特別會計
ノ歲出額ノ最高限度ヲ引上ゲルト共ニ、收
入不足ニ依リ決算上不足ヲ生ジタ場合ニ於
テハ積立金カラ之ヲ補足シ得ルノ途ヲ開
カントスルノ法律案デアリマス、對支文化
事業特別會計ノ歲出額ハ、現行法ニ依リマ
スルト、寄附金ニ依ルノ外每年度四百万圓
ヲ超過スルコトガ出來ナイコトニナッテ居リ
さく、然ルニ支那事變發生後ニ於ケル
諸般ノ情勢ニ鑑ミマスルナラバ、此事
業ハ積極的ノ活動ヲ必要ト致スノデアリマ
スルカラ、其目的ヲ達成スル爲ニ、現行制限
額ノ四百万圓ヲ六百万圓マデ增額セントス
ルノガ本案ノ骨子デアリマス
第五ノ法律案ハ、支那事變ニ關スル臨時
軍事費ノ財源ニ充ツル爲メ、每年度豫算ノ定
ムル所ニ依リマシテ、昭和十三年度ニ於テ
通信事業特別會計ヨリ千六百万圓、帝國鐵
道特別會計ヨリ四千万圓、關東局特別會計
ヨリ三百五十万圓、朝鮮總督府特別會計ヨ
リ千七百五十万圓、臺灣總督府特別會計ヨ
リ千百万圓、樺太廳特別會計ヨリ二百三十
万圓、是等ノモノヲ臨時軍事費特別會計ニ
繰入レルコトト致シマス、此繰入ニ關シマシ
テハ法律ノ制定ヲ必要ト致シマスルノデ、本
案ヲ提出シ審議ヲ求メラレタノデアリマス
第六ノ法律案ハ、朝鮮總督府特別會計ニ
於キマシテ、昭和十三年以降ノ繼續費トシ
テ計上致シマシタ鐵道建設及ビ改良費ノ追
加額、金增產計畫ニ伴フ送電施設費、是等
ノモノハ性質上、及ビ特別會計歲計ノ現狀
ニ鑑ミマシテ、是ガ財源ヲ公債ニ依ルコト
トシタノデアリマス、現行法ニ依ル公債發
行限度ハ、御承知ノ如ク八億四千百五十万圓
デアリマス、故ニ此以上ニ五千七百万圓ヲ
增額致シマシテ、八億九千八百五十万圓ニ
改正セントスルノガ本案デアリマス
第七ノ法律案ハ、軍ノ需要充足整備ノ圓
滑ヲ圖ル爲メ、會計上ノ臨時應急的處置ト
シテ、當分ノ間現行ノ會計法ニ定メテアリ
マスル前金拂、〓算拂ト云フモノノ制限ヲ
取除ケテ、其範圍ヲ擴張セントスル案デア
リマス、此法律案ハ、現下ノ時局ニ伴ヒマ
シテ、軍ノ需要スル物資ノ數量ハ著シク增
加ヲ來シ、多數ノ中小商工業者ニ對シテ頗ル
多量ノ註文ヲ發スルノデナケレバ、軍ノ需
要ヲ充スコトガ困難デアルト云フ實情ニ鑑
ミマシテ、是等ノ軍需品供給者ニ對シ代金
等ノ支拂ニ付キ能フ限リノ便利ヲ與ヘ、軍
需品ノ充足ヲ圓滑ナラシメ、以テ軍ノ行動
ニ支障ナカラシムル爲ノ必要ガアリマスカ
ラ、現行ノ會計法ニ定メテアリマスル物件
ノ製造若クハ買入、又ハ工事等ニ付テハ、
前金拂若クハ〓算拂ヲ禁止シテ居リマスル
ノデ、之ヲ止メテ物資調達ノ便益ヲ圖ラン
爲メ本案ヲ提出シタト云フ說明デアリマシ
タ
以上法案ノ內容ニ對シマスル〓略ノ御話
ヲ申上ゲマシタノデ、以下審議ノ經過竝ニ
結果ヲ御報告申上ゲマス、委員會ハ一月二
十七日カラ昨十四日マデノ間、十一囘ニ亙
リマシテ開會ヲ致シマシタ、此間今成留之
助君、森下國雄君、田村秀吉君、池田秀雄
君、池本甚四郞君、櫻井兵五郞君、小谷節
夫君、松川昌藏君、濱地文平君、江羅直三
郞君、川崎巳之太郞君、星一君、藤本捨助
君、山崎常吉君、野溝勝君、川村保太郞君、
田川大吉郞君、馬場元治君ナドニ於キマシ
テ、熱心ニシテ適切ナル御質疑ガアッタバカ
リデアリマセヌ、委員デアリマセヌ所ノ議
員眞鍋儀十君、羽田武嗣郞君、綾部健太郞
君ノ諸君ハ、委員長ノ許可ヲ得マシテ、最
モ機宜ニ適スル質疑ヲ致サレタノデアリマ
ス、之ニ對シ政府側ヨリハ外務大臣、大藏
大臣、海軍大臣、司法大臣、拓務大臣、商
工大臣、及ビ各政府委員ガ御出席ニ相成リ
マシテ、ソレ〓〓懇切丁寧ナル御答辯ガア
リマシタ
以上質疑應答ノ詳細ハ速記錄ニ依リ御諒
承ヲ御願致シタイノデアリマスルガ、其中
二三ノモノヲ抽出致シマシテ御報告ヲ申上
ゲマス、先ヅ今度ノ日支事變ニ關シテ必要
費ヲ支出シテ居ル我國ノ費用其他ノ損害等ニ
付テ、支那ニ損害賠償ヲ請求シナケレバナ
ラヌノデアルガ、蔣政權ガ沒落シタ後ニ於
テ、若シ賠償金ヲ取ルト云フコトデアレバ、
我ガ日本帝國ノ支持シテ居ル新政權ヲ相手
ニシナケレバナラナイガ、左樣ナコトニシ
テ事實上賠償金ヲ取ルコトガ出來ルカト云
フ委員ノ質問ニ對シマシテ、政府ハ勿論賠
償金ハ必ズ之ヲ取ルダケノ覺悟ヲ決メテ居
ルノデアルガ、併ナガラ場合ニ依ッテ取レ
ナイ場合モアラウ、サウ云フ場合ニハ何モ
金ニ限ラヌデハナイカ、金以外ノ方法ニ
依ッテ賠償金ニ相當スル辨濟ヲ受ケルコ
トハアル、若シ取レナイヤウナ場合ニハ
現地ヲ占領シテ居ル狀態ガ或ハ繼續スル
ヤウナ場合ガナイトモ限ラヌノデアル、是
等ノ點ハ其時ニ際シテ相當考慮スル考ヲ
持ッテ居ルト云フ政府ノ答辯デアリマシタ
獨逸ノ舊植民地返還問題ガ論議セラレマ
シタガ、委員ノ主張ト致シマシテハ、是一
斷乎トシテ請求ヲ拒絕スベキモノデアルト
云フ意見デアルガ、ドウダト云フ質問ニ對
シマシテ、海軍大臣ハ、海軍省ノ決意トシ
テ今責任ヲ以テ此席デ直チニ答ヘルト云フ
コトハ出來ナイケレモド、御意見ヲ尊重ス
ルト云フ程度ニ於テ御諒承願ヒタイト云フ
コトデアッタノデアリマス
日支事變ニ對スル作戰ノ將來ノ見透シ如
何ト云フ質疑ガアリマシタガ、ソレハ今日
カラ豫測シテ申上ゲルコトハ出來ナイト云
フ答辯デアリマシタ
滿洲事件費ハ將來滿洲カラ之ヲ支出セシ
ムルヤウニシナケレバナラヌデハナイカト
云フ質問ニ對シマシテハ、陸軍大臣ハ四圍ノ
情勢カラ考ヘテ、今直チニ之ヲ實行スルト
云フ譯ニハ行カナイ、ソレハ相當ノ時期ヲ
待チ、相當ノ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌ問
題デアルトノ答辯デアリマシタ
戰死傷病者ノ優遇ニ對シマシテ、現行法
デハ戰死者若クハ傷病者ニ對スル優遇ガ甚
ダ行屆イテ居ナイ、是ハ國家ノ爲ノ此大切
ナル犧牲者ニ對シテハ、相當滿足出來ルダ
ケノ優遇ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌデハ
ナイカト云フ委員ノ主張ニ對シマシテ、ソ
レハ其通リデアル、大イニ考慮シテ必ズ滿
足ヲ得ルヤウナ方法ヲ盡シタイ考デアルト
ノ親切ナル答辯デアリマシタ
對支文化事業ニ關シマシテ、一體此對支
文化事業ノ費用トシテ、三百万圓ヤ四百万
圓ノ金ヲ僅カ六百万圓ニ增額シタカラトテ、
ソレハ不十分デハナイカ、今日ノ日支間ノ
親善ト云フコトニ大イニ貢獻アラシムル爲
ノ對支文化事業デアル以上ハ、惜氣モナク
相當ノ費用ヲ支出シテ效果アラシムルヤウ
ニシナケレバナラヌノデハナイカト云フ問
題ニ對シマシテハ、御尤デアル、將來大イ
ニ考慮致シマスト云フ政府ノ答辯デアリマ
シタ、對支文化事業ノ效果的ノ仕事トシテ
ハ、日本人ガ支那語ヲ大イニ〓究シナケレ
バナラナイ、支那人ヲシテ日本語ヲ大イニ
修得セシメナケレバナラナイト云フ主張ニ
對シマシテハ、御尤デアルカラ左樣ナ方針
ヲ以テ進ム積リデアルトノ答辯デアッタノ
デゴザイマス尙ホ對支文化事業ト致シマ
シテハ、映畫ニ依ッテ日本ノ實力ヲ支那人
ニ十分知得セシメマシテ、彼等ノ日本帝
國ニ對スル認識不足ヲ是正シ、一面ニハ支
那文化ノ向上ニ資セナケレバナラヌノデハ
ナイカト云フ主張ガアリマシタガ、政府ハ
御尤デアルカラ、大イニサウ云フ方面ニ努
力スル積リデアルト云フ答デアリマシタ、
支那ノ留學生問題ニ對スル質問ガアリマシ
タガ、ソレ等ノ點ニ對シマシテモ、十分ニ
考慮ヲ拂フト云フ答辯デアッタノデアリマ
ス、蒙古民族ノ衞生問題ニ對シマシテ、七
百万ノ蒙古民族ハ衞生上憂慮スベキ疾患ヲ
持ッテ居ルカラ、是等ノ者ニハ對支文化事業
ヲ擴張シテ、相當協力シテ之ヲ救護スル必
要ガアルノデハナイカト云フ主張ニ對シマ
シテ、廣田外務大臣ハ尤デアル、其點ニ付
テハ善隣協會ノ方デ此點ニ考慮ヲ拂ヒ、相
當ノ補助金ヲ文化事業方面カラ支出シテ居
リマスガ、尙ホ一層努力スルト云フ答辯デ
アッタノデアリマス
北支資源開發問題ニ對シマシテ、支那ニ
於ケル鹽ノ問題、棉花ノ問題、鐵ノ問題、
支那ノ治水ノ問題、斯ウ云フ點ニ付テ剴切
ナル質問アッタノデアリマスガ、ソレ等ニ
付テ適當ナル考慮ヲ拂ヒ、種々政策ヲ考究
或ハ實施シツヽアルト云フ答辯デアッタノ
デアリマス、上海方面ニ於ケル復興問題、
靑島方面ノ復興問題ニ對シマシテハ、十分
ニ努力ヲシ、上海方面ノ事業ニ付テハ-
ツノ國策會社ヲ立テテ、統制アル經營ヲヤッ
テ行キタイ考デアルト云フ答辯デアリマシ
ク、靑島ノ復興問題ニ對シマシテハ、大イ
ニ御同情申上ゲル、故ニ十分ニ調査ノ上善
處致シマスト云フ答辯デアッタノデアリマス
外務省ハ今囘ノ支那事變ニ際シテ宣傳ガ
下手デアル、斯ウ云フヤウナコトハ經費ガ
足リナイカラデモアラウ、故ニ大イニ經費
ノ增額ヲシテ、諸外國トノ交際ニ付テ遺憾
ナカラシムルヤウナ方法ヲ講ジナケレバナ
ラヌノデハナイカ、サウ云フ方面ニ付テハ
吾々ハ非常ナル努力ヲ拂フ積リデアルト云
フコトヲ、委員ノ方カラ外務大臣ニ申上ゲ
タノデアリマス、外務大臣モ今囘ノ宣傳ニ
付テ、日本ガ十分ニ功績ヲ擧ゲルコトノ出
來ナカッタコトハ、遺憾ニ思ッテ居ル、併ナ
ガラサウ云フコトハ大イニ是正ノ途ヲ講ジ
テ居ル、費用增加等ニ付キマシテハ、相當
ノ時機ニ相當ノ增額ヲ要求スル者デアルケ
レドモ、今卽時ト云フ譯ニハ行カナイト云
フ趣旨ノ答辯デアッタノデアリマス、斯ノ如
キ質問及ビ答辯ガアリマシタ、其他ノコト
モ悉ク必要ナ主張デアリ、答辯デアリマス
ルカラ、ソレハ速記錄ニ於テ御覽ヲ願ヒタ
イノデアリマス
各委員ノ質疑ヲ終リマシテ、七案ヲ一
括シテ議題ニ供シ、討論ニ入リマシタ、
民政黨及ビ政友會、社會大衆黨、第一倶
樂部、第二控室、東方會等、ソレ〓〓代
表ノ委員諸君カラ適切ナル意見ヲ述ベラ
レマシテ、本案ニ對シテハ何等ノ修正ヲモ
加フルコトナク、贊成デアルト云フ御意見
デアリマシタ、採決ノ結果總員起立、全會
一致ヲ以テ可決致シクノデゴザイマス、皆
樣ニ於カレマシテモ何卒此委員會ノ意思ヲ
尊重セラレマシテ、滿場一致可決確定セラ
レンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=7
-
008・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 七案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=8
-
009・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ七案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=9
-
010・服部崎市
○服部崎市君 直チニ七案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=10
-
011・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=11
-
012・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ七案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
ニ關スル件)第二讀會(確定議)
造幣局東京出張所廳舍其ノ他ノ新營費
ニ關スル法律案第二讀會(確定議)
對支文化事業特別會計法ノ特例ニ關ス
ル法律案第二讀會(確定議)
支那事變ニ關スル臨時軍事費ノ財源ニ
充ツル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關
スル法律案第二讀會(確定議)
朝鮮事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
軍ノ需要充足ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關
スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=12
-
013・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、七案共委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=13
-
014・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、裁判所
ノ設立ニ關スル法律案、及ビ大正二年法律
第九號中改正法律案ノ兩案ヲ一括議題ト爲
シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=14
-
015・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=15
-
016・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、裁判
所ノ設立ニ關スル法律案、大正二年法律第
九號中改正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メ
マス-永田良吉君
裁判所ノ設立ニ關スル法律案(政府提
出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
大正二年法律第九號中改正法律案裁
判所管轄區域ニ關スル件(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一裁判所ノ設立ニ關スル法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年二月十五日
委員長永田良吉
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一大正二年法律第九號中改正法律案裁
判所管轄區域ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十五日
委員長永田良吉
衆議院議長小山松壽殿
〔永田良吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=16
-
017・永田良吉
○永田良吉君 只今ヨリ兵役法中改正法律
案委員會ニ併託ニナリマシタ裁判所ノ設立
ニ關スル法律案、及ビ大正二年法律第九號
中改正法律案、右兩案ノ委員會ノ經過ト結
果ヲ至極簡單ニ御報〓申上ゲマス、先ヅ此
二法案ノ要點ヲ至極簡單ニ申上ゲマス、裁
判所ノ設立ニ關スル法律案ハ、樺太ノ知取
ニ新シク裁判所ヲ設置スルト云フノガ法案ノ
骨子デアリマス、而シテ大正二年法律第九
號中改正法律案ノ要旨ハ、之ニ伴フ區域ノ
改正デアリマス、此兩案ノ委員會ハ去ル八
日及ビ十日、本日ノ三日間ニ亙リ開會セラ
レマシタガ、最初ニ司法大臣ノ提出案ノ說
明ガアリマシタ後、直チニ質疑ニ移リマシ
タガ、我黨ノ沖島君竝ニ庄司君、民政黨ノ
長井君、社會大衆黨ノ中村君等ヨリ質疑ガ
重ネラレ、政府委員カラ懇切ナル答辯ガア
リマシテ、本日討論ニ入ッタ譯デアリマス、
討論ニ際シマシテハ、我黨ノ沖島君ヨリ、
過日岡田嘉子ト杉本良吉ノ、アノ越境問題
デ大變著名ニナリマシタ敷香、及ビ惠須取
ニ、將來裁判所ヲ設置セラレタイト云フヤウナ
希望ヲ述ベラレテ、本案ニ贊成ノ意思ヲ表
明サレマシタ、又民政黨ノ伊藤君カラモ、
將來裁判所ノ設置ニ對スル希望等ヲ御述ニ
ナリマシテ、本案ニ贊成ヲサレマシタ、斯
クテ討論ハ終結致シマシテ、直チニ採決ニ
入リマシタガ、滿場一致原案ニ贊成ヲ致サ
レマシタ、右簡單ニ御報告ヲ申上ゲマス、
何卒御贊成アランコトヲ希望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=17
-
018・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 兩案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=18
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019・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=19
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020・服部崎市
○服部崎市君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=20
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021・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=21
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022・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
裁判所ノ設立ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
大正二年法律第九號中改正法律案裁
判所管轄區域ニ關スル件)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=22
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023・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案共委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第一及ビ第二ハ便宜上一括議題ト爲スニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=23
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024・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第一、恩給金庫法案、日程
第二、恩給法中改正法律案、右兩案ヲ一括
シテ第一讀會ヲ開キマス-法制局長官船
田中君
第恩給金庫法案(政府提出)
第一讀會
第二恩給法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
恩給金庫法案
恩給金庫法
第一章總則
第一條恩給金庫ハ法人トス
第二條恩給金庫ハ主タル事務所ヲ東京
市ニ置ク
恩給金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要
ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ
得
第三條恩給金庫ノ資本金ハ三千萬圓ト
シ之ヲ三十萬口ニ分チ一口ノ金額ヲ百
圓トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
政府ハ五百萬圓ヲ限リ恩給金庫ニ出資
スベシ
第四條恩給金庫ハ出資ニ對シ勅令ノ定
ムル所ニ依リ出資證劵ヲ發行ス
第五條恩給金庫ノ出資者ノ責任ハ其ノ
出資額ヲ限度トス
出資者ハ恩給金庫ニ拂込ムベキ出資額
ニ付相殺ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得
ズ
第六條出資者ハ恩給金庫ノ承認ヲ經テ
其ノ持分ヲ讓渡スルコトヲ得
第七條拂込ヲ怠リタル出資者ニ對シ恩
給金庫ガ一月以上ノ相當ノ期間ヲ定メ
拂込ノ請求ヲ爲シタルニ拘ラズ出資者ガ
拂込ヲ爲サザル場合ニ於テ持分ノ讓渡
ヲ恩給金庫ノ原簿ニ登錄シタル後二年
ヲ超エザル讓渡人アルトキハ恩給金庫
ハ之ニ對シ期限ヲ定メ拂込ヲ請求スル
コトヲ得此ノ場合ニ於テ最モ先ニ滯納
金額ノ拂込ヲ爲シタル讓渡人ハ其ノ持
分ヲ取得ス
前項ノ規定ニ依ル出資者及讓渡人ノ拂
込ナキトキハ恩給金庫ハ主務大臣ノ認
可ヲ受ケ該持分ヲ賣却スルコトヲ得賣
却ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿
タザルトキハ從前ノ出資者ヲシテ其ノ
不足額ヲ辨濟セシムルコトヲ得其ノ者
ガ二週間內ニ之ヲ辨濟セザルトキハ前
項ノ讓渡人ニ對シテモ其ノ辨濟ヲ請求
スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ恩給金庫ガ損害賠償及
定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ爲ス
コトヲ妨ゲズ
第八條恩給金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項
ヲ規定スベシ
-目的
二名稱
三事務所ノ所在地
四資本金額及資產ニ關スル事項
役員及會議ニ關スル事項
業務及其ノ執行ニ關スル事項
九八七六五恩給債劵ノ發行ニ關スル事項
會計ニ關スル事項
公〓ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更
スルコトヲ得
第九條恩給金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第十條恩給金庫ニハ所得稅及營業收益
稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズ
ベキモノハ恩給金庫ノ事業ニ對シテハ
地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ
事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可
ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
朝鮮、臺灣、關東州、樺太及南洋群島
ニ於ケル課稅ニ關シテハ勅令ヲ以テ之
ヲタノ、
第十一條恩給金庫ニ付解散ヲ必要トス
ル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置
ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條恩給金庫ニ非ザル者ハ恩給金
庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコト
乙酸、
第二章役員
第十三條恩給金庫ニ理事長一人、理事
三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十四條理事長ハ恩給金庫ヲ代表シ其
ノ業務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ恩給金庫
ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ恩給金庫
ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキ
ハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長缺員ノト
キハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ恩給金庫ノ業務ヲ監査ス
第十五條理事長、理事及監事ハ主務大
臣之ヲ命ズ
理事長及理事ノ任期ハ五年、監事ノ任
期ハ三年トス
第十六條理事長及理事ハ他ノ職業ニ從
事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條恩給金庫ニ評議員二十人以內
ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要事項ニ
付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルトキハ
之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ三年ト
ス
第三章業務
第十八條恩給金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
恩給法ニ依ル恩給ヲ擔保トスル貸
付
二動章年金(以下單ニ年金ト稱ス)ヲ
擔保トスル貸付
三恩給法以外ノ法令(地方公共團體
ノ條例ヲ含ム)ニ依ル恩給ヲ擔保ト
スル貸付
四恩給及年金ノ代理受領竝ニ受領シ
タル金錢ノ寄託ノ引受
五前各號ノ業務ニ附帶スル事業
第十九條恩給ハ其ノ裁定前ト雖モ給與
ヲ受クベキコトノ確實ナルモノニ付テ
ハ之ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ爲ス貸付ノ金額ハ
裁定後ニ爲ス貸付ノ標準金額ノ半額ヲ
超ユルコトヲ得ズ
第二十條恩給金庫ハ先ヅ恩給又ハ年金
ノ支給金ヲ以テ貸付金ノ元利ニ充當ス
ベシ
前項ノ規定ニ依リ充當ヲ爲シタル殘餘
ノ貸付金ニ付テハ恩給金庫ハ主務大臣
ノ認可ヲ受ケ其ノ債權ヲ抛棄スルコト
ヲ得
第二十一條恩給金庫ハ其ノ債權ヲ確保
スル目的ヲ以テ命令ノ定ムル所ニ依リ
債務者ニ代リテ恩給及年金ニ關スル請
求其ノ他ノ行爲ヲ爲スコトヲ得
第二十二條恩給金庫ハ左ノ方法ニ依ル
ノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ
得ズ
-國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタル有價證劵ノ取得ヲ爲スコ
ト
二大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又
ハ郵便貯金ト爲スコト
第二十三條恩給金庫ハ資本金ノ十分ノ
一以上ノ拂込アリタルトキハ其ノ業務
ヲ開始スルコトヲ得
第四章擔保ノ效力
第二十四條擔保ニ供セラレタル恩給又
ハ年金ハ恩給金庫ノミ其ノ支拂ヲ求ム
ルコトヲ得
第二十五條公務員(之ニ準ズル者ヲ含
ム)ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ擔保
ニ供シタルトキハ其ノ效力ハ其ノ遺族
ノ受クベキ恩給又ハ年金ノ上ニ及ブコ
トナシ但シ特約ヲ以テ承諾ヲ爲シタル
遺族ノ受クベキ恩給又ハ年金ニ付テハ
此ノ限ニ在ラズ
遺族ガ其ノ受クル恩給又ハ年金ヲ擔保
ニ供シタルトキハ其ノ效力ハ擔保ニ供
シタル者ノ後順位者ノ受クベキ恩給又
ハ年金ノ上ニ及ブコトナシ但シ特約ヲ
以テ承諾ヲ爲シタル後順位者ノ受クベ
キ恩給又ハ年金ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第二十六條恩給ヲ擔保ニ供シ恩給金庫
ヨリ貸付ヲ受ケタル者ハ其ノ債務ノ完
濟ニ至ル迄ハ其ノ恩給ヲ受クルノ權利
ヲ抛棄スルコトヲ得ズ
第二十七條再就職其ノ他ノ事由ニ因リ
恩給ガ改定若ハ更正セラレ又ハ年金ガ
進級增額若ハ更正セラルル場合ニ於テ
恩給金庫ガ改定、進級增額又ハ更正前
ノ恩給又ハ年金ニ付擔保權ヲ有スルト
キハ恩給金庫ハ當然新恩給又ハ新年金
ノ上ニ擔保權ヲ有ス
第二十八條恩給ヲ擔保ニ供シタル者再
ビ就職シ恩給ヲ停止セラルル場合ニ於
テハ恩給金庫ハ恩給ノ支給金ヲ以テ辨
濟ヲ受クベキ金額ノ範圍內ニ於テ其ノ
者ノ受クベキ俸給中ヨリ貸付金額ノ辨
濟ヲ受クルコトヲ得。
第二十九條恩給又ハ年金ヲ擔保トスル
ニハ其ノ證書ヲ恩給金庫ニ交付スベシ
但シ恩給ノ裁定前豫メ之ヲ擔保トスル
場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條恩給ノ裁定前豫メ之ヲ擔保ト
シテ貸付ヲ爲シタルトキハ恩給金庫ハ
遲滯ナク裁定廳ニ其ノ要旨ヲ申告シ置
クコトヲ要ス
第三十一條前條ノ規定ニ依ル申告ヲ受
ケタル件ニ付恩給給與ノ裁定ヲ爲シタ
ルトキハ裁定廳ハ恩給證書ヲ恩給金庫
ニ交付スベシ
第三十二條裁定ヲ經タル恩給又ハ年金
ヲ擔保トシテ貸付ヲ爲シタルトキハ恩
給金庫ハ遲滯ナク恩給ノ裁定廳又ハ賞
動局及支給廳ニ其ノ旨ヲ申〓スベシ擔
保權ノ消滅シタルトキ亦同ジ
第三十三條恩給金庫ニ擔保ニ供セラレ
タル恩給又ハ年金ニ付證書ノ再發行ヲ
爲ス場合ニ於テハ新證書ハ之ヲ恩給金
庫ニ交付スベシ擔保ニ供セラレタル恩
給又ハ年金ヲ改定、進級增額又ハ更正
スルニ當リ新ニ證書ヲ發行スル場合亦
同ジ
第三十四條本章ニ規定スルモノノ外恩
給又ハ年金ノ擔保ノ實行ニ關シ必要ナ
ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ舍ム
第五章恩給債劵
第三十五條恩給金庫ハ拂込資本金額ノ
十五倍ヲ限リ恩給債劵ヲ發行スルコト
ヲ得但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有價
證劵ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第三十六條恩給債券ハ額面金額五十圓
以上トシ無記名利札附トス但シ應募者
又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコ
トヲ得
恩給債劵ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行
スルコトヲ得
第三十七條恩給金庫ハ恩給債劵借換ノ
爲一時第三十五條ノ制限ニ依ラズ恩給
債劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ恩給債劵ヲ發行シタ
ルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面
金額ニ相當スル舊恩給債劵ヲ償還スベ
シ
第三十八條恩給債劵ハ賣出ノ方法ヲ以
テ之ヲ發行スルコトヲ得
第三十九條恩給金庫ニ於テ恩給債劵ヲ
發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第四十條恩給債劵ノ消滅時效ハ元金ニ
在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年
ヲ以テ完成ス
第四十一條所得稅法、資本利子稅法及
有價證劵移轉稅法中國債以外ノ公債ニ
關スル規定ハ恩給債劵ニ之ヲ準用ス
第四十二條本章ニ規定スルモノノ外恩
給債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六章會計
第四十三條恩給金庫ノ事業年度ハ一月
ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第四十四條恩給金庫ハ每事業年度ニ於
テ準備金トシテ剩餘金ノ十分ノ一以上
ヲ積立ツベシ
第四十五條恩給金庫ハ成立後二十事業
年度ノ間ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政府
ノ出資ニ對スル剩餘金ノ配當ヲ減額シ
又ハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第四十六條恩給金庫ハ設立ノ時及每事
業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照
表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之
ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
出資者及債權者ハ業務時間內何時ニテ
モ前項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコ
トヲ得
第七章監督
第四十七條恩給金庫ハ內閣總理大臣及
大藏大臣之ヲ監督ス
第四十八條恩給金庫ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分ヲ爲
スコトヲ得ズ
第四十九條恩給金庫ハ每事業年度ノ初
ニ於テ貸付利率ノ最高限度其ノ他貸付
ニ關スル條件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ
受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同
ジ
第五十條主務大臣ハ恩給金庫ニ對シ業
務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サシメ、
檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令
ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十一條主務大臣ハ特ニ恩給金庫監
理官ヲ置キ恩給金庫ノ業務ヲ監視セシ
ム
第五十二條恩給金庫管理官ハ何時ニテ
モ恩給金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査
スルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ必要アリト認ムルト
キハ何時ニテモ恩給金庫ニ命ジテ業務及
財產ノ狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
恩給金庫監理官ハ恩給金庫ノ諸般ノ會
議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第五十三條役員ガ法令、定款若ハ主務
大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル
行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ
解任スルコトヲ得
第八章罰則
第五十四條左ノ場合ニ於テハ恩給金庫
ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百圓以上千
圓以下ノ過料ニ處ス
-本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザル
トキ
二本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタル
トキ
三第二十二條ノ規定ニ違反シ業務上
ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
四第三十五條又ハ第三十七條第二項
ノ規定ニ違反シ恩給債劵ノ發行ヲ爲
シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
五主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分
ニ違反シタルトキ
六第五十二條ノ規定ニ依ル恩給金庫
監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避
シ又ハ其ノ命ズル報告ヲ爲サザルト
キ
第五十五條左ノ場合ニ於テハ恩給金庫
ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
-本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ
登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登
記ヲ爲シタルトキ
二第四十六條ノ規定ニ違反シ書類ヲ
備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載ス
ベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載
ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナク
シテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第五十六條第十二條ノ規定ニ違反シ恩
給金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタ
ル者ハ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處
ス
第五十七條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
第五十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第五十九條主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ
恩給金庫ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ
處理セシム
第六十條設立委員ハ定款ヲ作成シ主務
大臣ノ認可ヲ受ケタル後出資者ヲ募集
スヘ)
第六十一條設立委員ハ出資者ノ募集終
リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ
提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員
ハ遲滯ナク出資第一囘ノ拂込ヲ爲サシ
ムルコトヲ要ス
第六十二條出資第一囘ノ拂込完了シタ
ルトキハ出資者ノ總會ヲ招集スベシ
前項ノ總會終結シタルトキハ恩給金庫
ハ之ニ因リテ成立ス此ノ場合ニ於テハ
設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ恩給金
庫理事長ニ引繼グベシ
第六十三條本法ニ規定スルモノノ外恩
給金庫設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第六十四條登錄稅法中第六條ノ二ヲ第
六條ノ三トシ第六條ノ次ニ左ノ一條ヲ
加フ
第六條ノ二恩給金庫カ恩給債劵ニ付
登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ
登錄稅ヲ納ムヘシ
一恩給債劵又ハ其ノ第二囘以後ノ拂
込每囘拂込金額千分ノ二
二登記事項ノ變更、消滅又ハ廢止
每一件金十圓
從タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各號
ノ登記ヲ受クルトキハ每一件金二圓ノ
登錄稅ヲ納ムヘシ
第六十五條登錄稅法第十九條第七號中
「產業組合」ノ上ニ「恩給金庫、」ヲ、「産
業組合法」ノ上ニ「恩給金庫法、」ヲ加フ
第六十六條印紙稅法第五條中第五號ノ
次ニ左ノ一號ヲ加フ
五ノ二恩給金庫ノ發スル出資證劵又
ハ貸付業務ニ關スル證書帳簿
恩給法中改正法律案
恩給法中左ノ通改正ス
第十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
恩給ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ
擔保ニ供スルコトヲ得ス但シ特別法ノ
定ムル所ニ依リ恩給金庫ニ擔保ニ供ス
ルハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ裁定官
廳ハ支給廳ニ通知シ恩給ノ支給ヲ差止
ムヘシ
第十六條第三號中「實業補習學校」ヲ靑
年學校ニ改ム
第二十四條第二號中「感化院職員」ヲ「少
年〓護院職員」三尺く
同條ニ左ノ一號ヲ加フ
五在滿學校組合待遇職員令ニ依リ判
任官以上ノ待遇ヲ受クル者
第四十六條ノ二第一項中「退職後一年內」
ヲ「退職後三年內」ニ改ム
第五十九條第三項中「實業補習學校」ヲ
「靑年學校」ニ改ム
第五十九條ノ二第一項第一號中「計算ス」
ノ下ニ左ノ如ク加フ
退職又ハ死亡前一年內ニ昇給アリテ退
職又ハ死亡ノ際昇給ナカリシトキ亦同
シ
同條第四項ヲ左ノ如ク改ム
實在職期間一年未滿ナルトキハ俸給ノ
關係ニ於テハ就職前モ就職當時ノ俸給
ヲ以テ在職シタルモノト看做シ計算ス
第六十二條第三項中「小學校、」ノ下ニ「靑
年學校」、ヲ加フ
第六十五條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル時
ヨリ五年內ニ退職セサリシ場合ニ於テ
ハ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル時ヨ
リ五年ヲ經過シタル日ニ於ケル階等ヲ
以テ退職當時ノ階等ト看做ス
第六十五條ノ二第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ普通恩給ヲ併給セラルル場合ニ於
テハ別表第三號表ノ金額ノ十分ノ七·
五ニ相當スル金額ヲ以テ傷病年金ノ年
額トス
第六十六條第一項中「一年」ヲ「三年」ニ
改ム
第六十六條ノ二下士官以下ノ軍人前條
ノ規定ニ依リ傷病賜金ヲ受ケタル後四
年內ニ第四十六條第二項又ハ第四十六
條ノ二第二項ノ規定ニ依リ增加恩給又
ハ傷病年金ヲ受クルニ至リタルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病賜金ノ一部
ヲ返還セシム
第七十五條扶助料ノ年額ハ左ノ各號ニ
依ル
-第二號乃至第四號ニ特ニ規定スル
場合ノ外ハ公務員又ハ之ニ準スヘキ
者ニ給セラルル普通恩給年額ノ十分
ノ五ニ相當スル金額
二公務員又ハ之ニ準スヘキ者戰鬪又
ハ戰鬪ニ準スヘキ公務ニ因ル傷痍疾
病ノ爲死亡シタルトキハ前號ノ規定
ニ依ル金額ニ退職當時ノ階等ニ依リ
定メタル別表第五號表ノ率ヲ乘シタ
ル金額
三公務員又ハ之ニ準スヘキ者普通公
務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタルト
キハ第一號ノ規定ニ依ル金額ニ退職
當時ノ階等ニ依リ定メタル別表第六
號表ノ率ヲ乘シタル金額
四增加恩給ヲ併給セラルル者公務ニ
起因スル傷痍疾病ニ因ラスシテ死亡
シタルトキハ第一號ノ規定ニ依ル金
額ニ退職當時ノ階等ニ依リ定メタル
別表第七號表ノ率ヲ乘シタル金額
前項第二號乃至第四號ニ規定スル場合
ニ於テ扶助料ヲ受クル者ノ同一戶籍內
ニ扶助料ヲ受クヘキ要件ヲ具フル遺族
カ扶助料ヲ受クル者ヲ合シ三人以上ア
ルトキハ其ノ扶助料年額ニ遺族ノ人員
ニ依リ定メタル別表第八號表ノ率ヲ乘
シタル金額ヲ加給ス但シ同一戶籍內ニ
扶助料ヲ受クル者二人以上アル場合及
二以上ノ扶助料ヲ併セ受クル者アル場
合ニ於ケル加給ニ付テハ勅令ノ定ムル
所ニ依ル
第九十一條第一項中「(關東廳及其ノ所屬
官署職員ニ付テハ南滿洲鐵道附屬地ヲ
傷
甲
號
乙
號
含ム)」ヲ削リ
同項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
關東局職員ニシテ滿洲國新京特別市ニ
別表第二號表ヲ左ノ如ク改ム
第二號表
階
等
病原症狀等差
因
特別項
第一項
第二項
戰鬪又ハ
戰鬪ニ準第三項
スヘキ公第四項
務
第五項
第六項
第七項
特別項
第一項
第二項
第三項
普通公務
第四項
第五項
第六項
第七項
別表第三號表ヲ左ノ如ク改ム
奏
勅親任任至三等乃
五等
勅任待遇奏任
將官佐官
圓圓
二、四〇〇一、九八〇
二、〇〇〇一、五七五
一、六〇〇一、二六〇
一、二八〇込ん○
一、〇〇〇七五〇
0^0300
五三四至^00
圓圓
一、九二〇一、五八四
一、六〇〇一、二六〇
一、二八〇一、〇〇八
一、〇二四七八八
CAO六〇〇
六〇〇四八〇
四二八三三〇
特別項ハ各號第一項ノ金額ニ其ノ十分ノ五以内ノ金額ヲ加ヘタルモノトス
任
六等乃
至九等
待遇
尉官
圓
一、五六〇
一、二五四
一、〇〇三
七七七
五九七
四六〇
2014
圓
一、二四八
一、〇〇四
A〓〓
六一四
R·C
三六八
二四六
判
一等
判
准士官
圓
一、四〇四
一、一二八
九〇三
六九〇
五八八
四一四
二七六
圓
一、一二四
カルエ
ときは
五五二
四三三
三三二
三三
在勤スルモノハ前項ノ規定ノ適用ニ付
テハ關東州ニ在勤スルモノト看做ス
同條第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ改ム
一等等
三
任待
下士官
圓
一、二八七
一、〇三四
八六八
六三三
四人街
三八〇
二五三
圓
一、〇三〇
八二八
大人民
80c
三八八
三〇四
二〇三
任
四等
遇
兵
圓
一、一七〇
九九〇
七五二
天山五
WHICH
三四五
二二〇
圓
九三六
七五二
六〇二
四八〇
(三浦三)
二七六
八百
階判任
一等等四等
傷等等
病判任待
原症狀等差週
因准士官下士官兵
圓圓圓
甲第一款三四八三一九二九〇
戰鬪又ハ第二款二六四二四二二二〇
戰鬪ニ準
スヘキ公第三款二一六一九八一八〇
務
號第四款一八〇一六五1-8-
圓圓圓
乙第一款二七九二五六LINHT一
第二款二一二一九四一七六
普通公務
第三款一七三一五九一四四五
號第四款一四四一三二一二〇
高等官及同待遇者ニ給スヘキ金額ハ判任一等ノ者ニ給スヘキ金額ニ其ノ十分ノ一ニ相
當スル金額ヲ加ヘタルモノトス
別表第四號表ヲ左ノ如ク改ム
第四號表
傷病原因症狀等差下士官兵傷病原因症狀等差下士官兵
第一目圓圓第一目圓圓
六六〇六〇〇五二八四八○
甲乙
戰鬪又ハ第二目四九五四五〇第二目三九六三六〇
戰鬪ニ準普通公務
スヘキ公第三目三三〇三〇〇
務第三目二六四二四〇
號號
第四目一六五一三〇第四目一三二一二〇
別表ニ左ノ四表ヲ加フ
第五號表
將官佐官尉官准士官下士官兵
階奏任判任
親任三等乃六等乃二等海軍陸軍上等兵陸軍一等兵陸軍二等兵
勅任至五等至九等等等四等
等一等兵海軍二等兵海軍三等兵海軍四等兵
勅任待遇奏任待遇判任待遇
割割割割割割割割割割
率一四二六六元三、三三四三六三六三六
將官佐官一尉官准土官下士
階奏任判
親任
勅任三等乃六等乃一等等
等至五等至九等三等
勅任待遇奏任待遇判任待
割割割割割
率一九·二二·〇二二·四二二·四二三分
第七號表
將官佐官尉官准士官下士
階奏任判
親任三等乃六等乃
勅任一等等
等至五等至九等三等
勅任待遇奏任待遇判任待
割割割割割
率一四分店一五·六三六、二六·1·0·
第八號表
階親任奏
等勅任三等乃至五等
遺骸ノ數勅任待遇奏任
將官佐官
割割
三人〇·五一·〇
割
四人一·〇一、五五
割割
五人以上一五二·五
附則
第一條本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第二條本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ
依リ增加恩給又ハ扶助料ヲ受ケ又ハ受
クベキ者ニシテ本法所定ノ增加恩給又
ハ扶助料ノ金額ヲ受ケザルモノニハ當
該金額ニ其ノ金額ト本法所定ノ各相當
增加恩給又ハ扶助料ノ金額トノ差額ヲ
勅令ノ定ムル所ニ依リ昭和十三年四月
一日ヨリ增給ス
第三條本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ
依リ傷病年金ヲ受ケ又ハ受クベキ者ニ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ昭和十三年四
官
任
海
四等
遇
割割
三四八二七·二
官
任
海
四等一等兵
遇
割割
一八·六二·〇·四
任
六等乃至九等
待遇
尉官
割
一二〇
割
三·〇
割
四三〇
第四條
兵
軍陸軍上等兵陸軍一等兵陸軍二等兵
一等兵、海軍二等兵海軍三等兵海軍四等兵
割割割
三八·三八·二八·
軍陸軍上等兵陸軍一等兵陸軍二等兵
海軍二等兵海軍三等兵海軍四等兵
割割割
二一·六二一·六二一·六
判任
一等三等等四等
判任待遇
准士官下士官兵
割割割
一一〇二·五二·五
割割割
三一〇三三五三五
割割割
四·〇四·五四·五
月一日ヨリ左記下欄相當ノ增加恩給又
ハ傷病年金ヲ給ス
現症狀等差改正症狀等差
傷病年金第一款增加恩給第七項
傷病年金第二款傷病年金第一款
傷病年金第三款傷病年金第二款
傷病年金第四款傷病年金第三款
本法施行ノ際恩給法第七十五條
第二項ノ規定ニ依リ加給ヲ受ケ又ハ受
クベキ者ニ付テハ其ノ扶助料年額ガ改
正後ノ同條第一項第二號乃至第四號及
同條第二項ノ規定ニ依リ受クベキ扶助
料年額ヨリ多キトキハ其ノ加給期間ヲ
經過スル迄改正規定ニ拘ラズ仍從前ノ
規定ニ依ル
第五條本法施行前賑恤金(之ニ準ズル
モノヲ含ム)又ハ傷病賜金ヲ受クベキ
事由ヲ生ジタル者ト雖モ其ノ症狀傷病
年金ヲ給スベキ症狀ニ該當スルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病ノ程度ヲ査
定シ將來ニ向ツテ之ヲ給ス
第六條恩給法施行前ニ戰鬪又ハ戰鬪ニ
準ズベキ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ若ハ疾病
ニ罹リ之ガ爲死亡シ又ハ此ノ種ノ公務
ニ因リ增加恩給(之ニ準ズルモノヲ含
ム)ヲ受ケタル軍人ノ寡婦、父母又ハ祖
父母ニシテ軍人死亡ノ當時軍人ト同一
戶籍內ニ在リタルモ軍人現役中陸海軍
兵籍簿ニ登記セラレザリシ等ノ特別事
由ニ因リ扶助料ヲ受クルノ資格ナカリ
シ者ニハ昭和十三年四月一日ヨリ之ニ
扶助料ヲ給ス但シ其ノ軍人ノ遺族ニシ
テ同日ニ於テ現ニ扶助料ヲ受クル者ア
ルトキハ當該扶助料權者失權シタル後
恩給法ニ規定スル順位ニ依リ之ヲ給
ス
前項ニ規定スル者ト雖モ軍人死亡ノ當
時ニ於テ前項ノ事由以外ノ事由ニ因リ
扶助料ヲ受クルノ資格ナカリシ者又ハ
其ノ後ニ失權事由アリタル者ニハ扶助
料ヲ給セズ
第一項ノ扶助料ニ付テハ昭和八年九月
三十日以前ノ軍人ノ遺族ノ扶助料ニ關
スル規定ニ依リ其ノ年額ヲ定ムルノ外
恩給法ニ依リ之ヲ給ス
第一項ノ扶助料ニ付テハ恩給法第五條
ニ規定スル請求期間ハ昭和十三年四月
一日ヨリ之ヲ起算ス
第七條北海道廳森林監守ヨリ引續キ同
廳森林主事ト爲リ恩給法施行後退職シ
タル者ニハ其ノ在職年ニ森林監守ノ勤
續年月數ヲ通算シ昭和十三年四月一日
ヨリ其ノ者ノ受クル年金タル恩給ヲ改
定シ又ハ新ニ之ニ普通恩給ヲ給ス
前項ノ規定ハ前項ニ規定スル者ノ遺族
ノ年金タル扶助料ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テハ恩給法第五條ニ
規定スル請求期間ハ昭和十三年四月一
日ヨリ之ヲ起算ス
〔政府委員船田中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=24
-
025・船田中
○政府委員(船田中君) 恩給金庫法案ニ
付提案ノ理由ヲ申上ゲマス、本案ハ第七
十議會ニ政府ヨリ當院ニ提出致シマシテ審
議未了トナリマシタモノト、殆ド同一内容
ヲ有スルモノデアリマスルガ、更ニ一應要
點ヲ御說明致シタイト存ジマス、恩給ハ元
來一身ニ專屬スベキモノデアリマシテ、之
ニ依ッテ受給者及ビ其家族ガ生活ノ資ニ供
スベキ性質ノモノデアリマス、故ニ之ヲ他
人ニ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ、法律
ヲ以テ禁止シテ居ルノデアリマスガ、受給
者ハ現在ノ給與ニ依ッテハ生活ノ餘裕ト云
フヤウナモノヲ持ツ程度ニ至ッテ居リマセ
ヌノデ、一朝不慮ノ災厄ニ遭遇シ、又ハ疾
病ニ罹ルト云フヤウナ、不時ノ失費ヲ必要
トスル場合ニ於キマシテハ、已ムヲ得ズ之
ヲ擔保ニ供シテ金融ヲ受ケルト云フ者モ少
カラザル實狀デアルノデアリマス、而シテ
從來一般金融業者ノ行ヒツヽアル金融ノ方
法ハ金利ガ非常ニ高イノミナラズ、時ニ
ハ恩給證書ハ金融業者間ヲ轉々致シマシテ、
負債完了後ニ於テモ、遂ニ其所在スラ知ル
コトガ出來ナイヤウナ場合モアリマシテ、
其弊害甚シク、何トカ恩給受給者ノ生活安
定上、適當ナル方策ヲ講ゼラレタシトノ要
望ガ少クナイノデアリマス、加之老幼者及
ビ癈疾者等、最モ救濟ヲ必要トスル者ハ、
金融ノ途ヲ杜絕サレテ居ル實狀デアリマス、
是等ノ點ニ付キマシテハ、大正十二年恩給
法制定當時ノ當院ノ附帶決議ニモゴザイマ
スシ、又近クハ昭和八年恩給法中一部改正
ノ際ニモ、當院ノ希望條項ノ一トシテ「政府
ハ恩給金融ニ關シ速ニ適當ナル方法ヲ講セ
ラレ度」トノ決議ガアリマシタル如ク、屢
問題トナッタ所デアリマス、以上恩給金融ニ
付キ申述ベマシタコトハ、多少ノ事情ヲ異
ニ致シマスルガ、勳章年金ニ付テモ同樣デ
アリマシテ、折角殊勳者優遇ノ爲メ與ヘラ
レタル年金ガ、徒ニ金融業者ヲ利スルト云
フ實例ハ非常ニ多イノデアリマス、政府ハ
之ニ對シ種々適當ナル方策ヲ攻究致シマシ
タ所、政府自身積極的ニ金融機關ノ設立ヲ
企圖シ、從來ノ弊害ヲ除去スルヲ以テ、最
善ノ方策ト認メタノデアリマスガ、政府自ラ
全部ノ資金ヲ支出シ融通ヲ行ヒマスコトハ、
今日ノ財政狀態ヨリ見テ困難ナル事情モア
リマスノデ、資金ノ一部ヲ政府負擔トシ、更ニ
民間ノ資力ヲモ取入レ、政府ハ之ニ十分ナル
保護監督ヲ加ヘテ、政府自ラスルト略〓同樣
ノ效果ヲ收ムルコトヲ目標トシ、玆ニ恩給金庫
ナル一金融機關ヲ法律ヲ以テ特置シ、之ヲ
シテ公正妥當ナル條件ノ下ニ、恩給年金受給
者ノ爲ニ金融ヲ行ハシメントスルニ至ッタノ
デアリマス、恩給金庫ハ以上ノ目的ノ外附
帶業務ト致シマシテ受給者ノ福社增進ニ
貢獻スベキ事業ヲモ營ム豫定デアリマシ
テ、其性質ハ公益的ノモノデゴザイマス
次ニ恩給法中改正法律案ニ付テ提案ノ理
由ヲ申上ゲマス、先ヅ第一ハ、只今申上ゲ
マシタ所ノ恩給金庫法案ニ關聯致シマシ
テ、恩給擔保禁止ノ原則ニ對シ、恩給金庫
ノ爲メ例外ヲ認メントスルノデアリマス
次ニ時局ニ鑑ミ傷痍軍人竝ニ戰死者、公
務死者增加恩給受給者等ノ遺族優遇ノ爲メ
增加恩給、傷病年金及ビ遺族扶助料ヲ增額
スルノ必要ヲ認メ、之ニ關スル規定ヲ更メン
トスルノデアリマス、卽チ增加恩給ニ付キ
マシテハ、大正十二年恩給法制定以來改正
ヲ行ッテ居ナイノデアリマスガ戰傷病者ノ
實情ニ照シマスルト、尙ホ幾分ノ增額ヲ必
要トスルノデアリマス、特ニ症項高キ者ニ
付テハ、醫療介護等ニ相當ノ費用ヲ要シマス
ノデ、特ニ高症者ニ重ク優遇ノ實ヲ擧ゲン
トスルモノデアリマス、而シテ增加恩給程
度ニ達セザル者ニ給スル傷病年金等ニ付キ
マシテモ、出來得ル限リ待遇上ノ均衡ヲ得
ル如ク改正致シマシタ、戰死者、公務死者
遺族ニ付キマシテハ、最モ同情ニ値スルモ
ノデアリマシテ、國家トシテ出來得ル限リ
優遇ノ實ヲ擧グルガ爲メ、從來ニ比シ大幅
ノ扶助料額增加ヲ致ス積リデアリマス、卽
チ下ニ厚クスルノ主義ヲ以テ、現行ノ扶助
料額ニ對シ、戰死者ニ付テハ八割乃至二割
ノ增額ヲ行ヒ、更ニ實際ノ生活ニ卽セシム
ル爲メ、遺族ノ員數ニ應ズル加給制度ヲ創
設シ、是亦下ニ厚クスルノ趣旨ヲ以テ、改
正扶助料額ノ四割五分以內ノ增給ヲ致スコ
トニナッテ居リマス、又大正十二年ノ恩給法
施行前ニ、戰鬪又ハ之ニ準ズベキ公務ノ爲
ニ傷痍ヲ受ケ、又ハ疾病ニ罹リ、是ガ爲ニ
或ハ增加恩給ヲ受ケ、或ハ之ヲ受ケズシテ
死亡シタル軍人ハ、相當數多イノデアリマ
スガ、其中或者ノ遺族ハ軍人死亡當時一戶
籍內ニ在リナガラ、兵籍簿ニ載ッテ居ラナ
カッタト云フヤウナ特殊ノ事由デ、其當時ノ
法律ニ依ッテハ扶助料ヲ受ケ得ラレナカッタ
ノデアリマス、是等ノ者ハ國家ノ爲メ身ヲ
犧牲ニシタ者ノ遺族デアリマシテ、洵ニ同
情ニ値スルモノデアリマスカラ、之ヲ現行
恩給法ニ於ケルト同樣ニ待遇シ、之ニ扶助
料ヲ給スルノ途ヲ開キタイト存ズルノデア
リマス尙ホ大正七年以前ノ北海道ノ森林
監守ハ現行恩給法ノ制定當時在職シテ居
タナラバ、恩給法上ノ待遇職員トシテ指定
セラレ、恩給ノ特典ヲ受ケタノデアリマセ
ウガ、形式上ノ理由ヨリ當時之ニ恩給ヲ給
スルノ資格ヲ認メナカッタノデアリマス、故
ニ今囘是等ノ者ニモ一定ノ條件ノ下ニ、待
遇職員同樣ノ待遇ヲ與へヨウト致スノデア
リマス
以上ノ外滿洲國治外法權ノ撤廢其他ノ事
由ニ依リ、恩給法ノ規定整理等ノ爲メ、數
項ニ亙リ恩給法中改正ヲ行ハントスルノデ
アリマス、詳細ハ委員會等ニ於テ御說明申上
グルコトト致シマスガ、何卒御審議ノ上速
ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=25
-
026・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通告ガアリ
マく、之ヲ許シマス-坂東幸太郞君
〔坂東幸太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=26
-
027・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 只今上程セラレマシタ中
ノ恩給金庫法案ニ付キマシテ以下數項ノ御
尋ヲ致シマス、先ヅ第一ニハ、恩給金庫ハ
恩給受給者金融ノ目的ヲ達シ得ナイデハナ
カラウカト云フ所ノ私ノ疑問デアリマス
御承知ノ通リ現在恩給金額ハ全部ヲ合算シ
マスルナラバ、約二億二千万圓位アルノデ
アリマス、ソコデ三箇年ノ金融ヲ受ケマス
ルナラバ六億六千万ノ貸與資金ガ要リ
きく、先ヅ其半分ノ者ガ借ルトシテモ、尙
ホ三億三千万ノ資金ガ必要トナッテ來ルト
思フノデス、ソコデ現在民間竝ニ軍人後援
會等ノ金融ノ總額ハ、約二億圓ト註セラレ
テ居ルノデアリマス、然ルニ此法案ニ依リ
マスト、全部ノ資金ガ三千万圓デ、而モ債
劵ノ發行ハ拂込金額ノ約十五倍ト云フヤウ
ニナッテ居ルノデアリマス、ソコデ此資金ヲ
得ルニ付テ果シテ成算アリヤ否ヤト云フコ
トカラ、先ヅ第一番ニ考ヘテ見ナケレバナ
ラナイノデアリマス、債劵ヲ發行スル場合
ニ當リマシテ、恩給金庫ガ得ントスル方面
ハ言フ迄モナク一方ニ於テハ預金部デアル、
又一面ニ於テハ民間デアリマス、然ルニ軍
事公債ノ增發ニ依リマシテ、預金部カラハ
之ヲ借ルコトガ甚ダ困難ナ狀態ニアルノデ
ス、例ヘバ昭和十二年度ノ預金部ノ狀況ヲ
見マスルト、其資金ノ貸出ハ政府ノ國債ニ
約四億五千万圓、其他市町村及ビ產業組合
等ニ對シマシテハ、殆ド僅少ノ資金シカ貸
シテ居ラナイ、サウ致シマスナラバ、今後
恩給金庫ガ預金部ノ方面カラ金融ヲ得ルト
云フコトハ困難ナ狀態ニアル、又民間ノ方
面カラト考ヘルト云フト、無論是亦中々困
難ダト思フ、成程此法律案ノ中ニ割引ヲ以
テ債劵ヲ出スト云フコトガアリマスガ、若
シ割引シテ高利ヲ拂ヒマスナラバ、到底安
イ金融ヲ爲スコトガ出來ヌ、況ヤ恩給金庫
ノ組織ノ內容ヲ考ヘテ見マスナラバ是ハ
寧ロ相當大仕掛デヤルニ違ヒナイ、卽チ一
面ニハ高イ金ヲ借リル、又一面ニハ多クノ
經費ヲ要シマスルナラバ、到底安イ金融ヲ
爲シ得ベキモノデハナイ、斯ウ私ハ考ヘル、
隨テ此恩給金庫ガ斷ジテ低利金融ノ目的ヲ
達シ得ナイト考ヘルノデアリマス、之ニ對
シマシテ政府當局ノ御意見ヲ拜聽致シマス
第二ニ於キマシテハ、恩給金庫ノ設定ハ、
恩給ノ恩典ニ浴セザル人々ニ對シテ、差別
待遇ノ程度ヲ高メルモノデハナイカサウ
云フ私ノ疑問デアリマス、申ス迄モナク現
在ノ恩給ノ受給者ハ、非常ナ大恩典デアル
ト思フ、卽チ恩給法中ニ規定ナキガ爲ニ、
恩給ヲ受ケラレナイ階級ガ澤山アル、軍人
デ申シマスナラバ、皇軍百万、此百万中恩
給年金ノ恩典ヲ受ケル人間ハ三万カ五万
ニ過ギナイ、九十何万ハ恩給ノ恩典ヲ受ケ
ナイ、此恩給ヲ受ケル階級ト受ケナイ階級
ト比較シマスナラバ、現在ノ恩給デモ相當
ナ差別待遇デアル、其上ニ國家ガ多クノ金
ヲ投ジ、犠牲ヲ拂ッテ金融ノ途ヲ講ズルト云
フコトハ、是ハ卽チ差別待遇ヲ益〓甚シク
スルモノデアル、斯ウ云フ疑ガアル、之二
關シマシテ政府ノ御答辯ヲ要求致シマス
第三ニハ恩給金庫ヲ設ケテ受給者ノ恩給
ヲ資金化スルト云フコトハ、明治大帝ノ大御
心ニ反シヤシナイカト云フ重大ナル御尋デ
アリマス、何ヲ以テ爾カ言フカト申シマス
ルト、政府當局ハ或ル委員會ニ於テ斯ウ云
フ答辯ヲシテ居リマス、之ヲ私ハ明瞭ニ致
シマス、卽チ第七十一議會、昭和十二年八
月二日ノ請願委員會デ、前恩給局長ノ樋貝
政府委員ノ答辯デアリマス、「御承知ノ如ク
現在ノ恩給制度ハ明治ノ初メニ於キマシテ、
明治大帝ノ深キ思召ヲ以テ御制定ニナリマ
シタ軍人恩給法ガ初メテデ、其後之ヲ文官
ニ及ボシ或ハ巡査看守ニ及ボシマシタ次第
デアリマスルガ、其思召ト致シマシテ此制
度ガ作ラレマシテ、今日當事者ニハ權利ト
シテ之ヲ與ヘルト云フコトノ制度ニハナッ
テ居リマスケレドモ、元々全體ガ恩典デア
リ、深キ思召ニ出發シテ居ルモノデアリマ
ス、之ヲ處分スルコトヲ公許スルガ如キハ
全ク吾々ハ公民トシテ避ケナケレバナラナ
イト云フ考ヲ有ッテ居リマス」云々、次デ日ク
「又本來恩給ハ本人ニ、殊ニ年金ニ致シマス
ル理由ハ、本人ノ其生活ヲ補塡スル爲ニ終
身ニ亙ッテ給與スルモノデアル、之ヲ一時ノ
便宜、殊ニ資本化スル爲ニ擔保ニ供シ、或
ハ處分スルト云フコトハ、本來ノ恩給ノ趣
旨デハアリマセヌ」、斯ウ明瞭ニ答辯シテ居
リマス、然ラバ恩給ヲ一時ニ資金化スルノ
ハ趣意デハナイ、ソレハ恩給受給者竝ニ其
遺家族ニ對シテ分割シテ與ヘルト云フコト
ガ、明治大帝ノ思召デアルトスルナラバ
法律ヲ設ケテ而シテ資金化スルト云フコト
ハ、卽チ明治大帝ノ思召ニ反スルモノデア
ル、吾々議會ハ明治大帝ノ思召ニ反スル法律
ヲ作ルコトハ出來ナイト思ヒマスガ、此點ニ
對シマシテ明確ナル御答辯ヲ要求致シマス
第四ニ於キマシテハ、恩給金庫ヲ設ケテ、
是ガ爲ニ財政上、金融上、多大ノ犠牲ヲ拂
ハズトモ、現行法ノ改善及ビ金融業者等ヲ
利用スルコトニ依ッテ、恩給受給者ノ金融
ノ目的ヲ達シ得ルデハナイカ、斯ウ云フ
私ノ疑問デアリマス、只今法制局長官ハ非
常ニ金利ガ高イト申シマスガ、事實ハ餘程
違ッテ居ル、今恩給ノ金融ニ關シマシテ、若
シ政府ガ適當ニ法律ヲ改正シテ、擔保ノ途
ヲ開ク、其他ノ方法ヲ講ジマスナラバ高
クナクテモ借リル途ハ澤山アル、此恩給金融
ガ高イト云フコトハ、ソレハ「ブローカーL
ガ取ッテ居ルノデス、若シ法律ヲ以テ「ブロー
カー」ヲ禁止シマスナラバ、安ク借リル
途ガアル、其途ガアリマスナラバ、國家ガ
多クノ犠牲ヲ供シテ金融ノ途ヲ開カナクト
モ、少シモ金ヲ出サナクテモチヤント金融
ノ途ガ付クト云フコトガ考ヘラレル、此點
ニ關シマシテ政府ノ御答辯ヲ要求致シマス
最後ニ第五點ト致シマシテ、恩給金庫法
提出ニ前後シテ發布セラレマシタ昭和十二
年七月二十一日ノ閣令第四號ハ、恩給金融
業者ノ債權ヲ踏倒ス機會ヲ與フル謂ハヾ
思想惡化ノ種子ヲ蒔ク所ノ惡令デハナイ
カ、サウ云フ私ノ疑問デアリマス、ソコデ
ドウ云フ點カト申シマスト云フト、第七十
議會ニ恩給金庫法案ガ提出サレマシタ時
ニ、恩給金融業者方面カラ種々ナル反對材
料ヲ提供シタヤウデアリマス、ソコデ恩給
局ノ官吏ハ憤慨シテ、今ニ見テ居レト云フ
ヤウナコトヲ公然言ウタサウデアルガ、ソ
レカアラヌカ、其後閣令ガ發布サレタノデ
アリマス、恩給ノ再交付ニハ、其手續條件
トシテ債權債務ノ明細書ノ提出方ヲ命ジテ
アルノデアリマスカラ、恩給局トシテハ之
ヲ詳細知ッテ居リマスニ拘ラズ、知ラヌ顏
デ今日マデ再交付シタ申請者ノ數ハ四千何
百名、之ニ對シテ踏倒サレタ金融業者ノ損
害ハ實ニ三百餘万圓ニ達シテ居ル、不思
議ナコトハ軍人後援會ヘノ擔保トナッテ
居リマス所ノ恩給證書ニハ全然再交付シテ
居ラナイ、一體是ハドウ云フ譯デアリマス
カ、又軍人後援會モ、普通金融業者モ、恩
給ヲ事實上擔保トシテ金融ヲ爲スコトニ於
テハ同一デアル然ルニ兩者ニ對シテ其取
扱ヲ異ニスルト云フコトハ決シテ公明ナ
ル政治デアルト云フコトハ出來ナイト吾々
ハ考ヘテ居ル、聞ク所ニ依リマスルト云
フト恩給金庫ヲ設定ノ曉ニハ軍人後援
會ノ恩給受給者ニ對スル貸金ハ、全部恩給
金庫ニ肩替ヲスルト云フ內約ガアルト云フ
話ガ今爲サレテ居ル、或ハ再交付申請者ト
恩給局トノ官吏ガ、之ニ對シテ爭ヲ生ジマ
シテ、恩給證書再交付申請者ガ椅子ヲ投ゲ
テ大亂鬪ヲヤッタ事實ガアル、此樣ニ見テ參
リマスト云フト此閣令ナルモノハ、徒之
此二億何千万圓ノ恩給金ヲ貸シテアル所ノ
人々ノ、其債權ヲ踏倒スヤウニチヤント濫
用サレテ居ル、私ハ此處ニ持ッテ居リマス
ガ、恩給證書ノ再交付ヲ受ケテ、更ニ之ヲ
濫用シテ金ヲ借リテ居ルコトヲ知ッテ居ル、
知ッテ居ルニモ拘ラズ、恩統局デハ平氣デ
再交付シマス、卽チ金ヲ拂ハナイデ、又ソ
レヲ持ッテ行ッテ金ヲ借リテ居ル、アノ閣令
ノ條文カラ見マスト、何遍デモ再交付ガ出
來ルカラ、何遍デモ踏倒スコトガ出來ル、
故ニ此閣令ハ全ク債權者ヲ害スルノミナラ
ズ、社會正義ノ精神ニ反スル所ノ、亂暴極
マル閣令デアルト考ヘル、此點ニ關シマシ
テモ政府當局ノ明瞭ナル、又最モ的確ナ
ル答辯ヲ要求シタイト思ヒマス、若シ私ノ
疑問ガ晴レマスルナラバ無論贊成シマスル
ガ、疑問ガ晴レナイ時分ニハ、無論斷乎ト
シテ反對シナケレバナラヌ、ドウカ政府ハ
明瞭ニ納得出來ルヤウナ御答辯ヲ茲ニ要求
致シマス
〔政府委員船田中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=27
-
028・船田中
○政府委員(船田中君) 只今坂東君カラ御
質問ガアリマシタコトハ、私能ク聽取レナ
カッタコトガアリマスノデ、其點ニ付キマシ
テハ更ニ御質問ヲ願ヒタイト存ジマスガ、
聽取レタ範圍ニ於テ御答ヲ申上ゲマス、第
一、恩給金庫法案ニ依ッテ目的ヲ達スル
コトガ出來ナイデハナイカ、資金ガ十分ニ
集マラヌデハナイカト云フノガ、大體ノ御
質問ノ要旨ト聽キマシタノデスガ、資金ノ
調達ニハ十分ノ自信ヲ持ッテ居リマス、隨テ
目的ヲ達成スルコトハ出來ヨウト考ヘテ居
リマス、ソレカラ第二ノ御質問ハ受給者
ト其他ノ者トノ間ニ於テ、非常ナ差別待遇
ニナルデハナイカト云フヤウナ御質問ノ要
旨ニ聽キマシタガ、此點ニ付キマシテハ
今度ノ恩給金庫ノ計畫ニ依リマスト云フト、
サウ云フ點モ懸念ヲ致シマシテ、出來ルダ
ケ自給自足的ニヤッテ行クト云フ考デ居リ
マス隨テ著シキ差別待遇ニナルト云フヤ
ウナコトヲ政府ハ考ヘテ居リマセヌ、ソレ
カラ第三ノ點ハ、明治大帝ノ御聖旨ニ反ス
ルヤウナコトニナラヌカト云フヤウナ御質
問デアリマシタガ、此點ハ私能ク了解シ兼
ネタノデアリマス、決シテ明治大帝ノ御聖
旨ニ反スルヤウナ考ヲ持ッテ居ルモノデハ
ゴザイマセヌ、ソレカラ第四番目ニ、新
恩給金庫ト云フヤウナ特別ノ幾關ヲ設ケズ
トモ、現在ノ金融諸機關ヲ利用シタナラバ、
ソレデ十分目的ヲ達スルデハナイカト云フ
ヤウナ御質問ノヤウデゴザイマシタガ、從
來ノヤリ方デ行キマスルト云フト、幾多
ノ弊害ガアリマシテ、其點ハ旣ニ坂東君
モ御承知ノコトト存ジマス、〓シテ既設
ノ金融機關ニ於キマシテハ、利益ノアル
モノナラバ喜ンデヤリマスケレドモ、不
利益ナ方面ニ對シテハ、資金ヲ放出スルト
云フヤウナコトガナイノデアリマス、隨テ
其間ニ幾多ノ弊害ガアリマスルノデ、其弊
害ヲ矯正スルガ爲ニモ、此新ナル恩給金庫
ト云フモノガ必要デアラウト存ジマス、第
五ノ恩給證書ノ再交付ノコトニ付キマシテ、
是亦軍人後援會等ニ對スル待遇ニ於テ、差
別的ニナッテ居ルデハナイカト云フヤウナ、
御懸念ノヤウニ拜承致シタノデアリマスガ、
此恩給證書ノ再交付ニ付キマシテハ、相當
多數ノ申請者ガゴザイマス、現在恩給局ニ
參ッテ居リマスルモノダケデモ、約五千件ニ
及ンデ居ルノデアリマシテ、其中一割ニモ
足ラナイ四百件バカリノモノヲ再交付ヲ致
シマシテ、其間ニ於テハ決シテ差別待遇ト
云フヤウナコトハ致シテ居リマセヌ、尙ホ
足ラナイ所ハ御質問ニ依リマシテ、又御答
ヲ申上ゲルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=28
-
029・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 自席デ御許ヲ願ヒマ
ス-只今政府委員ノ御答辯ハ、事實トシテ
モ相違シテ居リマスシ、全部ニ互ッテ納得ハ
出來ナイノデアリマスガ、ソレ等ノ點ハ何
レ適當ナ機會ニ申上ゲルコトニ致シマシテ、
本席デハ之ヲ以テ私ノ質問ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=29
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030・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 深澤豐太郞君
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=30
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031・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 私ハ恩給法中改正法律案
ト之ニ關聯シタ事項ニ付テ御伺ヲ致シマ
ス、恩給法中改正法律案ノ提出理由書ニ於
テ、政府ハ出征軍人ノ家族及ビ其遺族ヲ救
濟スル爲メトアルノデアリマス、私ハ此場
合本議場ニ於テ、政府ニ明瞭ニシテ戴キタ
イ一點ガアルノデアリマス、ソレハ卽チ昨
年末ニ於テ瀧企畫院總裁談ナル名ニ於テ
全國ニ重大ナル「ショック」ヲ與ヘマシタ五千
圓賜金云々ニ付テデアリマス、私ハ此全戰
死者ニ對シテ差等ヲ附ケズ、戰死ノ公報ト
共ニ五千圓ヲ交付スル、五千圓ノ賜金ヲ與
ヘルト云フ政府ノ聲明ガ、如何ニ重大ナル
影響ヲ及ボシテ居ルカヲ、政府當局ハ十分
ニ御考ヲ願ヒタイノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)
此事ガ一タビ傳ヘラレマシテ以來、殆ド
國民ノ常識トシテ、而モ常識トシテ信ゼザ
ルヲ得ザルヤウニ發表セラレテアッタ、近ク
閣議ニ付シテ決定スルトマデ傳ヘラレタノ
デアリマス、此事ガ未ダニ有耶無耶ノ間ニ
付サレテ居ル、政府ノ各機關ニ就テ之ヲ質
シマスレバ、サウ云フコトヲヤルト言フ者
モアリ、ヤラナイト言フ者モアル、併シ是
ハ一ニ軍部ノ-何ト申シマスカ、軍部ノ
御一存デ出來ルコトデアリマス、他ノ官廳
ノ關與スベキ所デナイノデアリマス、此場
合軍部當局ニ於キマシテハ、五千圓ハ與ヘ
ルノカ與ヘナイノカ、先ヅ今日マデノ委員
會等ニ於ケル論議ヲ見マスレバ、五千圓增
額ハ不可能デアル如クデアリマス、不可能
デアルナラバ不可能デアルト、ハッキリ言ッ
テ貰ヒタイ、又五千圓ニ達セザルモ、幾分
增額ノ意思アリト云フノデアルナラバ增
額ノ意思アル旨ヲ明ニシテ貰ヒタイ、昨年
改正シタバカリデアルカラ、增額ノ意思ナ
シト云フノデアルナラバ、此議場ヲ通ジテ
增額ノ意思ナシト云フコトヲ明ニ致シテ貰
ヒタイノデアリマス、其理由ハ之ヲ省略ヲ
致シマスルガ、今日ハ之ヲ明ニ致シテ置ク
コトガ、國情ニ照シテ最モ必要ナコトデア
ルト存ジマスルカラ、之ヲ先ヅ御質問致ス
ノデアリマス(拍手)
第二ニ御伺ヲ致シタイコトハ、本法ノ改正
案ハ、大體今次ノ事變ニ原因致シテ居ルモ
ノデアルコトハ、理由書ニ於テ明カデアリマス、
然ルニ本事變ニ際シテ、政府ハ特ニ恩給局
長ヲ戰地ニ派遣シテ、各第一戰ノ部隊ニ就
テ其實情ヲ調査シ、又ハ實戰ニ參加シテ居ル
人々ガ、如何ナルコトヲ熱望シテ居ルカヲ
具サニ知ッテ、御歸リニナッタ筈ナノデアリ
マス、私共ハ丁度其行ト行ヲ共ニシタコト
ガアリマスガ、戰地ノ實際ノ狀態ハ、寶ハニ
熱烈ナルモノガアル、其熱烈ナルモノハ現
在戰ッテ居ル人々デハナイノデス、現在戰ッ
テ居ル兵隊サン達ガ、自分達ノ戰友ノ陣歿
セラレタル人々ノ家族ノ身ノ上ヲ思ヒマス
ル其熱烈ナル情ハ吾々ノ想像ノ外ニアル
ノデアリマス、此戰友ノ遺族ヲ思フ熱列ナ
ル第一線ノ狀況ヲ、具サニ視察セラレテ歸
ラレタ恩給局長ハ、歸ルト同時ニ其職ヲ罷
メラレタノデアリマス、第一線ノ人々ハ、
此恩給局長ノ到ル處デ話サレタル其意思ガ、
政府ノ意思デアルト信ジテ、軈テソレガ實
現スルデアラウコトヲ期待シテ居ルト、
歸ッテ直チニ他ノ職ニ轉ゼラレタ、ガッカリ致
シテ居ルコトデアラウト思フノデアリマス、
其ガッカリ致シテ居リマスルコトガ、此改正
案ヲ通ジテ見ルコトガ出來マス、當時ノ恩
給局長ガ第一線ニ於テ漏サレタ意思ハ斯ノ
如キモノデハナカッタ、モット熱烈ナルモノ
デアッタト私ハ確信ヲ致シテ居リマス、斯樣
ナ狀態デ恩給局長ハ更迭ヲセラレマシタガ、
兎ニ角政府ハ此事變ヲ契機トシテ改正ノ必
要ヲ認メラレテ玆ニ案ヲ出サレタノデア
リマス、私ハ今度ノ恩給局長モ實際視察セ
ラレテ、第一線ノ實情ヲ調査シ、又銃後ノ
實情ヲ調査シテ、此案ヲ制定セラレタカド
ウカヲ御伺ヲ致シタイ、政府ノ人事行政ガ
此重大ナル場面ニ際會シテ、而モ態と派遣シ
テ調査シタル者ヲ其職カラ退ケルト云フ
ヤウナ人事行政ガ、如何ニモ殘念ニ思ハレ
ルノデアリマス
第三ニ御伺ヲ致シタイコトハ、此非常時
ニ當ッテ恩給ヲ以テ衣食シテ居リマスル人
人是ハ私論ズル限リデアリマセヌ、恩給
ノ目的其モノデアリマスルカラ論ジマセヌ、
ケレドモ此高額ノ恩給ヲ受ケテ居リマス
者ノ中デ、長ク政府ノ役人ヲ致シテ居リマ
シタ者デ、役人當時以上ノ高錄ヲ以テ民間
ニ就職致シテ居ル者ガ少クナイノデアリマ
ス、其民間ニ就職致シテ居ル者モ、其力量
手腕ニ依ッテ就職致シテ居ル者ハ兎ニ角、自
分ノ監督致シテ居ッタ、謂ハバ遞信省ノ方
方ガ放送局ナリ、或ハ電氣會社ナリ、鐵道
省ノ方ガ私設鐵道會社ナリ、數ヘ上ゲレバ
際限モアリマセヌ、若シ名前ヲ言ヘト云フ
ノナラバ、恐ラク一日掛ッテモ言盡セナイ
程アルデアリマセウ、此在官當時ヨリモヨ
リ多クノ俸給ヲ取ッテ居ラレル方々ニ對シ、
此非常時、而モ長ク官吏ヲ致シテ居ッテ、政
府ノ、否、國恩ヲ感ズルコト庶民以上デナ
ケレバナラナイ人々ニ對シテ、其裕福ナル
者ガ此恩給ヲ受ケルカ受ケナイカ-受ケ
ルカ受ケナイカデハナイ、現ニ受ケテ居ル
ノデアルカラ、政府ハ是等ニ對シテ何等カ
ノ措置ヲ執ルノ考ハナイカ、恩給ヲ辭退セ
シムル意思ハナイカ、停止セシメルノ意思
ハナイカ、之ヲ御伺致シマスト共ニ、若シ
恩給ヲ辭退シ、或ハ政府ヨリ停止スルノ意
思ガナイト致シマシテモ、勞働者ノ俸給ス
ラモ愛國公債ヲ持テ、戰時公債ヲ持テト政
府ハ慫慂致シテ居ル際デアルカラシテ、斯
樣ナ人々ノ恩給コソ此場合公債ヲ以テ交
付スルコトガ適當デハナイカト思フ、此點
ニ付テ政府ハ考慮シタコトガアルカナイカ
ト云フコトガ、大體ノ質問デアリマス
次ニ御伺ヲ致シタイコトハ此改正ノ趣
旨ガ、傷痍軍人及ビ遺家族ニ對スル改正ガ
重點デアリマスガ、傷痍軍人ニ對スル恩給
ノ中デ、今日マデ叫バレテ居リマスル重大
ナ不公平ガアルノデアリマス、其不公平ナ
ル狀況ハ、日〓、日露ノ人々ハ旣ニ長年月
ヲ過ギテ居リマスルカラ、多クノ問題ハ起
キナイデアリマセウガ、軈テ多數ノ傷痍
軍人ガ、此恩給法ノ恩惠ニ與カルコトニ
ナッタ場合ニ於テ今日マデノ如ク非常
ナル差等ガアリ、甲第一項ヨリ第六項ニ
至ル迄ハ增加恩給ヲ貰ッテ居リマス、ケ
レドモ第一款ヨリ第四款ニ至ル迄ハ增加
恩給ガナイ其間ノ隔リハ今日マデヲ以
テ見マスレバ第六項症ノ者ハ四百六十
圓ヲ貰ッテ、其次ニ續キマスル者ハ二百
二十圓ニ下ッテ居ル、四百六十圓ヨリ二百
二十圓ニ飛ンデ居リマス、此間ノ隔リヲ少ク
スル爲ニ、第一款症ヲ第六項症ノ次ノ第七
項症ニ上ゲタ如クニ改正セラレテ居リマス
ケレドモ、然ラバ七項症ト第一款症、其次
ニ續クモノトノ隔リハ、又是ト同樣ニナッテ
居ル、實際ノ傷痍ノ有樣ヲ見レバ全ク何等
ノ相違ガナイ、斯樣ニ細カク分ケテアルノ
デアリマスカラ、此一款症ヨリ六項症ニ至
ル間ハ、殆ド紙一重ノ差デアルノニ、四百
六十圓ト二百二十圓トノ差ガアル、是レ以
下ノ者ニ對シテモ、其率ハ兎ニ角トシテ、
增加恩給ヲ支給スルノ意思ハナイカ、ソシ
テ此法律ノ恩惠ヲ公平ニ與ヘルヤウニスル
意思ハナイカドウカト云フコトヲ御伺ヲ
致シマス、而シテ傷痍軍人ニ對スル國家ノ
恩惠ハ、單ニ金錢バカリニ依ッテ償ハレル
モノデハアリマセヌ、此間モ豫算委員會ニ
於テ問題ニナリマシタ傷痍軍人記章、其記
章ニ綬ガ附クトカ附カナイトカ云フコトニ
依ッテ、政府ハ傷痍軍人ノ記章ノ制定ヲ躊躇
セラレテ居ルヤニ聞クノデアリマスガ、私
共ハ日〓、日露以後ノ所謂癈兵ノ生活狀態
ヲ見テ、或ル場合ニ於テハ癈兵タルコトヲ
不名譽トスルガ如キ情勢サヘ國內ニ醞釀サ
レタ、ソレガ今度ノ事變ニ於テハ斯ノ如キ
コトヲ絕無ナラシメナケレバナラナイ、同
時ニ癈兵タルコト、傷痍軍人タルコトヲ絕
大ノ名譽トスルコトニ努メナケレバナラナ
イト思フノデアリマス、ソレニハ綬ヲ附ケ
タ徽章ヲ佩バシメルノニ何ノ不思議ガアル
デアリマセウ、世界各國ニ於テハ、歐洲大
戰後ノ傷痍軍人ノ徽章ニ綬ヲ附ケタ處モ少
クアリマセヌ、ノミナラズ獨逸ノ戰後ノ如
キハ一般ノ乘客ハ傷痍軍人ガ鐵道列車ニ
乘ッテ來レバ、皆席ヲ讓ッテ傷痍軍人ヲ先ニ
乘ラシメル、而モ傷痍軍人ノ座席ハ特ニ開
ケテ置クト云フ位ノ優遇ヲ致シテ居ッタノ
デアル、私共ハ尙ホ至ラザルコトノ多イコ
トヲ感ズルノデアリマス、此傷痍軍人徽章
ニ付テモ、勳章ニ準ズル位ノ心持ヲ以テ速
ニ制定セラレンコトヲ希望致シテ置キマス
同時ニ是ハ傷痍軍人ノ恩給問題トハ離レ
マスケレドモ現ニ鐵道省ハ傷痍軍人ニ對
シテ長年議會ノ請願建議ヲ採用セラレテ汽
車ノ無料乘車ヲ許シテ居ルノデアリマス、
然ルニ其無料乘車ノ狀態ヲ見マスルト、第
一項症ヨリ第四項症ニ至ル者ハ年ニ十二
囘五項症六項症ノ如キハ四囘、一款症ヨ
リ四款症ニ至ル者ハ二囘トナッテ居ルノデ
アリマス、此一項症ヨリ四項症ニ至ル者ハ
實ハ重症者デアリマス、殆ド起居ノ自由ナ
ラザル人々ニハ十二囘ヲ與ヘテ、傷痍軍人
デアッテモ自分デ身動キノ出來ル一款症乃
至、四款症ニ至ッテハ年ニ二囘デアルガ、十
二囘、四囘、二囘ハ餘リ隔リガアリ過ギ
ル恩給額ニハ隔リガアッテモ、傷痍軍人ト
シテ待遇スル場合ニ於テハ、此間ヲ平等ニ
スルカ、然ラザレバ其隔リヲ少クスルコト
ガ公平ナ扱デハナイカト思フノデアリマ
ス、鐵道當局ニ於テ特ニ此間ニ留意セラレ
ンコトヲ希望致シマスト共ニ、實際ノヤリ
方ヲ見マスルト、鐵道省ヘ無料乘車劵ノ交
付ヲ願ヒマスルノニハ一週間前ニ屆出ヲ
シナケレバ乘車劵ガ手ニ入ラナイト云フ有
樣デアル、一朝用事ガアッテ出掛ケルナドト
云フ時ニハ絕對ニ通用ノ出來ナイ切符ヲ
與ヘテ居ル、願出テ許可ガアッテ、切符ガ屆
キマスル間ニ、東京附近デ四日間、大阪九
州方面、北海道方面ハ一週間モ掛ルト云フ
有樣デアル、是デハ實際無料乘車劵ヲ與ヘ
テ居ッテモ與ヘザルニ等シイ狀態ニナルノ
デアリマス、斯樣ナ煩雜ナル手續ヲ省イ
テ、市町村長ノ證明ガアレバ各驛長ガ之ヲ
交付スルコトノ出來ルヤウニ繁文縟禮ヲ省
ク考ハナイカ、鐵道當局ハ居ラナイヤウデ
アリマスケレドモ、軍當局カラモ鐵道當局
ニ此事ノ御懇談ヲ御願シタイノデアリマ
ス、鐵道省ガ無料乘車ヲ許シマシテ以來、
民間ノ鐵道モ亦之ニ準ズル待遇ヲ致シテ居
リマス、私設鐵道モ傷痍軍人ニ對シテ鐵道
省ニ準ズル無料乘車劵ヲ與ヘルカ、然ラズ
ンバ半額劵ヲ與ヘルト云フヤウナコトヲ致
シテ居ル、是ガ又實ニ全國亂雜ヲ極メテ居
リマス、與ヘルモノモアレバ與ヘナイモノ
モアル、半額ノモノモアレバ無料ノモノモ
アル甚シキハ是ハ申上ゲテ宜イカドウ
カ分リマセヌガ、傷痍軍人ヤ在〓軍人ノ怨
嗟ノ的ニナッテ居ルモノスラアル、例ヲ擧ゲ
テ言ヘバ私共ノ方ノ富士山麓鐵道トカ何
トカ云フ自動車、鐵道ヲ經營セントスルモノ
ハ、之ヲ膠モナク拒絕シタト云フコトデ、
在〓軍人傷痍軍人ノ憤激ヲ買ッテ居ルト云フ
コトデスガ、斯樣ナコトハ宜シクナイト思
フ、鐵道省ハ宜シク自分ノ監督致シマスル
所ノ運輸業者ニ對シテ、鐵道或ハ「バス」等
ニ對シテ相當ノ基準ヲ定メテ、此傷痍軍人優
遇ノ途ヲ講ゼシムル意思ハナイカ
獨リ鐵道ヤ「バス」バカリデハナイ、今日
ノ狀態ヲ見マスルト、吾々ノ地方ニ於テハ、
各活動常設館ガ是亦期間ヲ定メテ入場劵ヲ
交付致シテ居リマス、劇場卽チ芝居ヲヤル
小屋ナドハ半額劵ヲ交付致シテ居リマス
是モ亦半額劵ヲヤッテ居ルモノモアレバ、
ヤッテ居ラナイモノモアル、斯樣ナ有樣デ民
間ニ於ケル待遇ガ亂雜ヲ極メテ居ルノデア
リマスルガ、內務省ハ之ニ對シマシテ相當
ノ基準ヲ定メテ取扱ヲ全國平等ニスルヤウ
ナ御考ハナイカ、斯樣ナ所ニ意ヲ用ヒテ、
獨リ恩給ニ依ッテ慰安ノ途ヲ與ヘルバカリ
デナシニ、國家各般ノ機關ヲ通ジテ傷痍軍
人ニ對スル敬意ト慰安トヲ與ヘラレルニ於
テ甲乙ノナイヤウニスルコトガ、眞ニ傷痍
軍人ヲ慰安スルノ途デハナイカト思フノデ
アリマス、是等ノコトニ付キマシテ、政府
當局ノ考慮ヲ煩スト共ニ、何等カノ處置ヲ
執ルノ意思アリヤ否ヤニ付テ御伺ヲ致シタ
イノデアリマス、以上ヲ以テ私ノ質問ヲ終
リマス(拍手)
〔政府委員船田中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=31
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032・船田中
○政府委員(船田中君) 深澤君ノ御質問ニ
御答ヲ致シマス、第一ニハ瀧企畫院總裁ガ
五千圓ノ賜金ニ付テ云々サレタト云フヤウ
ナ問題デゴザイマスガ、是ハ其當時ノ事情
ヲ御說明申上ゲレバ御諒解ガ行クコトト存
ジマス、從來恩給或ハ賜金等ノ交付ニ付キ
マシテ、其手續ガ極メテ煩雜デアル、隨テ
授給サレルマデニ相當ナ時日ヲ要スルト云
フコトニ對スル苦情ガ相當多カッタノデア
リマス、之ニ對シマシテ、瀧企畫院總裁ガ
此時局ニ鑑ミマシテ、出來ルダケ速ニ賜金
ノ交付ヲスルヤウナ途ヲ開キタイト云フコ
トヲ申シマシテ、ソレニ付テ〓究ヲ致シタ
ノデアリマス、其間ノ事情ガ新聞ニ誤リ傳
ヘラレマシテ、五千圓云々ト云フ極メテ大
キナ數字ガソコニ現レテ參リマシテ、其結
果ト致シマシテ世間ニ非常ナ衝動ヲ與ヘタ
ノデアリマス、斯樣ナコトニナリマシタコ
トハ洵ニ遺憾ニ存ジマスルガ、其動機ニ付
キマシテハ只今申上ゲマシタヤウニ、政府
ト致シマシテ出來ルダケ、速ニ恩給ノ授給、
或ハ賜金ノ下付ト云フコトニ付テ、何等カ
ノ便法ヲ設ケタイト云フヤウナ考カラ出マ
シタノデ、其間ノ誤解ヲ生ジマシタコトハ
遺憾デゴザイマスルガ、其事情ハ御諒解ヲ願
ヒタイト存ジマス、隨テ政府ト致シマシテハ
目下ノ所畫一的ニ賜金等ニ付テ五千圓ト云
フヤウナ多額ノ賜金ヲ支給スルト云フコト
ニ付テハ、具體的ニ考慮ヲ致シテ居リマセヌ
ソレカラ第二ノ御尋ノ點ハ樋貝前恩給
局長ガ、恩給局長ト致シマシテ占領地域ニ
出張ヲ致シマシテ、具サニ前線部隊或ハ其
他一般ノ情勢ヲ視察ヲ致シマシテ歸リマシ
テ、間モナク恩給局長ヲ辭メタト云フ問題
デゴザイマスルガ、樋貝前恩給局長ハ恩給
局長ガ專任デゴザイマセヌデ、法制局參事
官ガ本務デアッタノデアリマス、現ニアルノ
デアリマス、サウシテ恩給局長ヲ兼務致シ
テ居リマシタ、是ハ本年度カラ恩給局長ノ
俸給ヲ取リマシテ專任ノ恩給局長ヲ置クコ
トニナッテ居ッタノデアリマス、樋貝前恩給
局長ハ、恩給法ニ付テノ造詣ガ深イモノデ
アリマスルカラ、特ニ今囘ハ戰地ニ參リマ
シテ、其實情ヲ具サニ調査ヲシテ貰ヒマシ
テ、サウシテ其調査ニ基キマシテ、只今提
案ヲ致シマシタ恩給法ノ改正ヲ計畫致シタ
ノデゴザイマス、隨ヒマシテ樋貝恩給局長
ガ調査ニ參リマシタコトハ、此新シイ改正
案ニ於テ十分其調査ヲ基礎ト致シテ居ルノ
デアリマシテ、決シテ恩給局長ガ出張ヲ致
シマシタコトガ無駄ニナッテ居ルノデハゴ
ザイマセヌ、殊ニ高木現恩給局長ハ、曾テ
恩給局ノ書記官ヲシテ居ラレ、又滿洲國ノ
役人モシテ居ラレマシテ、其道ニ付テハ專
門的知識ヲ持ッテ居ル方デアリマスルカラ、
十分樋貝前恩給局長ノ役ヲ繼イデ、此業務
ヲヤッテ行ク上ニ差支ハナイト考ヘテ居リマス
第三ニハ高額受恩給者ノ民間就職ノ問題
デゴザイマスガ、之ニ付キマシテハ只今深
澤君ノ御指摘ノヤウナ、洵ニ苦々シイ問題モ
アリマスカラ、多額所得者ノ恩給停止ト云
フ問題ニ付キマシテモ、政府ハ一應考慮致
シタノデアリマスルガ、之ニ付キマシテハ
更ニ考慮スベキ點ガゴザイマスノデ今囘
ノ改正案ニハ之ヲ法文化スルコトハ致サナ
カッタノデアリマス、併シ勿論恩給ハ辭退ガ
出來ルノデアリマスカラ、高額受給者ガ恩
給ノ辭退ヲ申出タト云フヤウナ場合ニ於キ
マシテハソレハ當然受付ケテ宜シイ問題
ト考ヘマス、又公債ヲ持タセテハドウカト
云フヤウナ問題ニ付キマシテモ、是ハ受恩
給者ノ自發的行動ニ俟ツベキモノト考ヘマス
ソレカラ第四ノ傷痍軍人ニ對スル增加恩
給ノ問題ニ付テ不公平ガナイカドウカ、症
項ノ低イ者ニ對スル增加恩給ヲ考ヘテハド
ウカト云フヤウナ趣旨ノ御質問デゴザイマ
シタガ、御承知ノ通リ第七項ト第一款トノ
隔リハ、現行法ヨリモ少クナッテ居リマス
此境目ニアリマスル場合ニ於テハ此境目
ガ何處ニアリマシテモ結局多少ノ隔リノ
出來ルト云フコトハ是ハ致シ方ノナイコ
トデアリマシテ、此點ハ惡シカラズ御諒承
ヲ願ヒタイト存ジマス、症項ノ低イソレ以下
ノ者ニ對スル增加恩給ノ問題ニ付キマシテ
ハ、目下ノ所政府ハ其事ヲ考ヘテ居リマセヌ
ソレカラ第五ノ傷痍軍人ニ對スル恩給以
外ノ優遇ノ問題デゴザイマスガ、是ハ恩給
法直接ノ關係デハアリマセヌデ、現ニ厚生
省ニ於テ具體的ノ法案ヲ考慮中デゴザイマ
ス、又此議會ニモ提案サレルモノガ多々ア
ルト存ジマス、以上御答辯申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=32
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033・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 最上政三君
〔最上政三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=33
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034・最上政三
○最上政三君 私ハ只今上程ノ恩給法中改
正法律案ニ關聯シテ、主トシテ下士兵ニ對
シマシテ、第一ハ戰死者ノ一時賜金竝ニ遺
族扶助料ノ件、第二ハ傷病年金ノ件、第三
ハ論功行賞ノ件、第四ハ受恩給者ノ賜金運
用ニ關スル指導ノ件、第五ハ老兵年金運動
ニ鑑ミ養老年金ノ件ニ付テ政府當局ニ質サ
ントスル者デアリマス、實ハ陸海軍大臣ノ
御答辯ヲ願ヒタイノデアリマスガ只今兩
大臣ハ貴族院ノ豫算會議ニ出席中トノコト
デアリマスカラ、ドウカソレ〓〓ノ政府委
員ニ依ッテ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、
唯斷ッテ置キタイノハ以下私ガ申サントス
ルコトハ多クハ年金トカ或ハ賜金ニ關係シ
テ居ルノデアリマス、勿論我ガ忠勇ナル將
士ハ陛下ニ對シテ死ハ鴻毛ノ輕キト考
へ又遺家族モ國家ニ誠忠デアル以上、決
シテ是等物質問題ニ付テハ兎ヤ斯ウ言ハナ
カラウト私ハ思フノデアリマス、故ニ私ガ
言ハントスルコトハ議員トシテノ意見トシ
テ御聽ヲ願ヒタイノデアリマス
第一ハ戰死者ニ對スル一時賜金ノ問題デ
アリマス、此一時賜金ニ付テハ昨年ノ特別
議會ニ於テモ當議場デ、戰死者ト戰傷者ト
ノ間ニ於ケル待遇ニ隔リガアルト云フ點ヲ
色々論ゼラレタノデアリマスガ、今囘政府
ガ提案シタ此恩給法中改正案ヲ詳細ニ調べ
テ見テ、益〓其感ヲ深クシタノデアリマス、
只今船田法制局長官ハ本案ノ說明トシテ、
戰死者ニ對スル優遇ノ爲ニ特ニ政府ハ大幅
ノ扶助料ノ增額ヲシタト言ッテ居ルノデア
リマスガ、私ハ船田長官ノ其言ヲ聽キ、是
レ以外ニ特別賜金ニ於テデモ手心ガアレト
思ッテ居タ、只今深澤議員ノ言フガ如ク瀧企
畫院總裁ガ五千圓說ヲ申述ベラレタト云フ
コトヲ聞キマシタカラ、其特別賜金ニ於テ
多少增額ガアルト私ハ考ヘテ居ッタノデア
リマス、然ルニ法制局長官ノ今ノ說明ニ依ッ
テ見マスト、僅ニ戰死者ニ對スル政府ノ優
遇ト云フノハ扶助料ノ增額ダケデアルノデ
アリマス、然ラバ其扶助料ハドノ位デアル
カト申シマスト、五箇年間ノ三割ノ加給ヲ
入レテ見マスト、僅ニ年ニ九十圓ノ增額デ
アリマス、之ヲ月ニシテ見マスト驚ク勿レ
七圓五十錢デアリマス、其他家族三人以上
ノ者ニ對シテ多少ノ增額ガアルトノコトデ
アリマスガ、此七圓五十錢デ政府ハ滿足シ
テ居ラレルノデアリマセウカ、私ハ甚シク
法制局長官ノ言ニ對シテ遺憾ヲ感ズルノデ
アリマス、實ハ昨年末デアリマシタカ、政
府有力者ガ五千圓說ヲ唱ヘラレタ時ニ、私
ハ今囘ノ此改正法案ニ於テハ恐ラク相當ナ
ル增額ガアリ、同時ニ特別賜金モ相當增額
ガアルト思ッテ居ッタノデアリマス、而シテ
最近今囘ノ事件ニ對スル一部戰死者ニ賜金
ガ旣ニ下ッタトノコトデアリマス、其賜金ノ
額ハドノ位デアルカト云フニ、滿洲事件當
時ニ比ベレバ今日ハ相當年月モ經テ居リマ
ス又諸物價モ暴騰シテ居リマスカラ、賜
金ハ滿洲事件ノ戰死者ニ對スル賜金ニ比ベ
レバ相當增額サレタモノト思ヒキヤ、現
支給サレタ賜金ノ內容ヲ見ルト、餘リ增額
シテ居ラナイノデアリマス、今滿洲事件ノ
一時賜金ヲ見ルニ、勿論功績ノ如何、又時
期ノ如何ニ依ッテ違フデアリマセウガ、私ノ
調査シタ所ニ依リマスレバ下士約千八九
百圓デ兵千三四百圓程度デアリマス
此中ニハ下士ニ於テ二百五十五圓ノ死亡
賜金ガ含マレテ居リ、又四十五圓ノ埋葬
料ガ含マレテ居リマス、兵ニ於テハ百八
十圓ノ死亡賜金ガ含マレテ居リマス、又
三十七圓ノ埋葬料ガ含マレテ居リマス
故ニ之ヲ差引ケバ國家ガ是等戰死者ニ對
スル特別賜金トシテハ、下士約千五百圓、
兵千百圓デアリマス、春秋ノ筆法ヲ以テ
スレバ國家ハ名譽ノ戰死者ニ對シ之ヲ遇
スルニ僅カ下士ニ於テ千五百圓、兵ニ於
テ千百圓ナリト言フコトガ出來ルノデアリ
やく、今日市井ノ交通事故ニ於テサヘ
死者ニ對シテ千圓位ノ慰藉料ヲ出スコトハ
往々アルノデス、然ルニ國家ノ爲ニ身ヲ犠
牲ニシテ、其特別賜金ガ僅ニ下士ニ於テ千
五百圓、兵ニ於テ千百圓ト云フコトハ何事
デアリマセウ、或ハ當局者ハ言フデセウ、
今囘恩給法ヲ改正スルノハ、一時賜金ヲ多
額ニ出スヨリカ、永久ニ其恩典ニ浴セシム
ベク、先ヅ茲ニ遺族扶助料ヲ增額シタノデ
アルト、併シ遺族扶助料ト特別賜金トハ全
然其性質ヲ異ニシテ居ルモノデアリマス、
卽チ扶助料ハ家族ニ對スル恩典デアリ、特
別賜金ハ戰死者ニ對スル慰藉デアッテ、全ク
其性質ガ違フノデアリマス
尙ホ今囘ノ改正ニ依ッテ見マスルト、戰死
者ト戰傷者ニ對スル待遇ガ甚シク隔リガ出
來タト云フ感ジガ致スノデアリマス、斯ク
言ヘバトテ私ハ決シテ現在ノ戰傷者ニ對ス
ル年金ガ多イト言フノデハアリマセヌ、傷
病兵ニ對スル年金ハ多カランコトヲ望ムノ
デアリマスガ、之ヲ戰死者ト戰傷者ノ待遇
ヲ比ベテ見ルト、ソコニ雲泥ノ差異ガアル
ノデアリマス、今現行法ニ依ッテ戰死者ト戰
傷者ノ差異ヲ申上ゲマスルト、戰死者ハ先
ニ申シタ一時賜金ノ外ニ五箇年間ハ伍長ガ
年二百九十三圓、月額二十四圓デアリマス、
上等兵ハ年二百三十四圓デ月額十九圓デア
リマス、其他一二等兵ノ遺族ニ至ッテハ十數
圓ニ過ギナイノデアリマス、是ハ戰死後五
箇年ダケデアッテ、六箇年目カラハ下士約十
八圓、上等兵ガ十五圓シカ今ノ遺族扶助法
ニ依レバ貰ハレナイノデアリマス之ヲ以
テ見テモ如何ニ少イカガ分ルノデアリマ
ス、今日ノ出征家族扶助料ニモ達シナイ遺
族扶助料ヲ支給シテ居ルト云フヤウナ現狀
デアル、國家ノ爲ニ名譽ノ戰死者ヲ出シタ
遺家族ニ對シテハ、甚ダ少額デアルト考ヘ
ルノデアリマス、然ルニ政府ハ扶助料ノ一
部ヲ改正シ、又遺族ニ對シテハ家族三人以
上ノ場合ニハ多少ノ增額ヲシタト稱シテ、
只今法制局長官ガ申スヤウニ、サモ優遇デモ
シタカノ如ク吹聽シテ居ルノデアリマス、
私ハ更ニ此戰傷者ト戰死者ノ間ニ於ケル待
遇ガドウ違フカ論及シテ見タイ、卽チ戰死
者ノ遺族ハ特別賜金トシテ、是ハ死亡賜金
其他埋葬料ハ含ミマセヌ、特別賜金ヲ先ニ
申ス兵約千百圓ト見テ、ソレニ改正案ニ依
ル扶助料三百二十四圓ヲ加算スルト、合計
千四百二十四圓ニナルガ、是ガ今度ノ事件
ニ於ケル名譽ノ戰死者ノ遺家族ニ下ル初年
度ノ總額デアリマス、一方傷病年金ハ今囘ノ
改正法ニ依ッテ第一項ヨリ第七項ノ項ガ出
來マシタ、先ヅ第一項ノ比較的重イ所ノ戰
傷者ハ何程年金ガ支給サレルカト申シマス
ト、普通恩給ガ百八十圓、是ハ兵デアリマ
スガ、增加恩給ガ第二號表ノ第一項トシテ
千百七十圓、其合計千三百五十圓ガ下ルノ
デアリマス、名譽ノ負傷セル人ガ比較的重
イノデアリマスガ、負傷者ニハ國家ガ每年
千三百五十圓ヅヽ年金ヲ支給スルノデアリ
やく、然ルニ國家ノ爲ニ名譽ノ戰死者ヲ出
セル遺族ニ對シテハ初年度ニ於テハ僅ニ千
四百二十四圓ニシテ、次年度ニ於テハ戰傷
者ノ年金ニ比ベルト四分ノ一ニ過ギナイ二
十數圓ヅヽシカ、遺族扶助料ガ下ラナイト
云フヤウナ現狀デアリマスドウシテ法制
局長官ノ言フ如ク戰死者ニ對シテ特ニ優遇
シタト云フコトガ出來ルデアリマセウカ、
絕對ニ私ハ出來ナイト思フノデアリマス、
是バカリデハアリマセヌ、金鵄勳章ニ付テ
モサウデアリマス、負傷者ハ金鵄勳章ハ永
久デアリマス、戰死者ノ遺家族ハ金鵄勳章
ハ五箇年デ其支給ガ取止メラレルノデアリ
ママ、又小サイコトデアリマスガ、鐵道ノ無
料乘車劵ニシテモサウデアリマス、先ニ深澤君
モ申シタ如ク、戰死者ノ遺族ニ對シテハ自分
ノ子供ガ靖國神社ニ祀ラレテ、年ニ一度ノ例
祭ニスラ「パス」ヲ貰ッテ行ケナイト云フヤウ
ナ狀態デアリマス、然ルニ戰傷者ニ對シテハ
긍かえ モ給與サレテ居ルト云フ現狀デアッ
テ、是等ヲ見テモ如何ニ戰死者ト戰傷者ト
ノ間ニ於テ、其待遇ガ異ッテ居ルカ慨歎ニ堪
ヘナイト共ニ、政府ハ是等ノ點ニ付テドウ
考ヘテ居ルカ、又恩給法ハ此程度ニシテ、更
ニ政府ノ一部ニ於テ唱ヘラレテ居ル五千圓
說五千圓デナクテモソレ相當ノ特別賜
金ノ增額ヲスル意思アリヤ否ヤニ付テ御答
辯ヲ願ヒタイノデアリマス(拍手)
第二ニハ傷病年金ニ付テデアリマス、政
府ハ今囘增加恩給ノ一部ヲ改正シ、現規定
ニ比ベルト約五分乃至二割ヲ增額スルト共
ニ、上ニ薄ク下ニ厚ク、又重症者ニハ特ニ
優遇ノ方法ヲ講ジタト云フコトデアリマス、
本案ヲ見ルト多少サウ云フヤウナ點モアリ
マスカラ、私ハ此點ハ大イニ感謝致シマス、
偖テ改正サレタル增加恩給ノ月額ハ何程デ
アルカト申シマスト、第二號表、甲號ニ依ッ
テ算出スルト、普通恩給ハ別ニシテ增加恩
給ダケ計算シマスト、兵第一項症ガ月額九
十七圓、第二項症ガ七十八圓、第三項症ガ
六十二圓、第四項症ガ四十七圓、第五項症
ガ三十六圓、第六項症ガ二十八圓、今度出
來タ第七項症ガ十九圓トナッテ居ルノデア
リマス、此中ノ第一項乃至第三項ハ相當重
症者デ附添人ヲ必要トスルヤウナ人々デア
ルカラ隨テ其數ハ餘リ多クナイノデアリ
さく、第一項症ニテ九十七圓貰ヘルトスレ
バ澤山ノヤウニ考ヘラレルノデアリマス
ガ、此一項症乃至三項症受給者ハ比較的少
イノデス、十一年末現在ノ增加恩給ノ受給
者ヲ調ベテ見マスルト特別項ガ二十七名、
第一項症ガ百三十五名、第二項症ガ二百八
十七名、第三項症ガ千二百七名ニナッテ居ル
ノデアリマス、又第四項症ガ七百十九名、
第五項症ガ三千三百十四名、第六項症ガ四
千二百六十二名ト云フ數ニ上ッテ居リマス、
是等ヲ見テモ受恩給者ノ多クハ四項以下ノ
人々デアッテ、其額ハ何レモ三四十圓程度ノ
人々デアルノデアリマス、之ニ付テ私ハ今
囘ノ增加恩給ノミナラズ、何等カノ救濟手
段ヲ講ゼナケレバナラヌト思フノデアリマ
スガ、政府ハ之ニ付テドウ云フ考ガアルカ、
私見デアリマスガ、政府ハ傷病軍人ニ對シ
テ官營事業デアルトカ、其他大會社、大
工場等ニ、强制的ニ、是等ノ負傷者ヲ使用
セシメルト云フ對策ヲ講ズル意思ナキヤ、
又現在ノ官公署ニ於テハ、何等ノ支障ナキ
者ハ、歸還スレバ直チニ採用スルノデアリ
マスガ足ガナイトカ、手ガナイトカ重症
者ニ對シテハ、之ヲ採用スルカ否カハ疑問
視セラレテ居ルノデアリマス、故ニ政府ハ
斯ウ云フヤウナ重症者ニ對シテ、現在ノ官
公署竝ニ大會社、大工場等ニ於テハ如何ニ
之ヲ爲スカヲ調査シ、更ニ政府ハ之ニ付テ
如何ナル對策ガアルカ、是等ノ問題ニ付テ
詳シク御說明ガ願ヒタイノデアリマス
第三トシテハ、論功行賞ノ點デアリマス、
此問題ハ、目下戰時中デアリマスノデ、行
賞問題ヲ此處デ言フノハ當ヲ得ナイカモ知
レマセヌ、併シ私ノ言ハントスル行賞ハ
今囘ノ事件ニ依ッテ名譽ノ戰死ヲセル人々
ノ遺族ニ對スル行賞デアルノデアリマス、
恐ラク政府ニ於テモ是等地方ノ遺族ノ人々
カラ、墓標ニ勳功ヲ記入シタイカラ、成べ
ク早ク位階勳等ヲ知リタイト云フ聲ヲ聞ク
デアリマセウ、又勳章ヲ靈前ニ飾ッテ慰メタ
イカラト云フ聲ヲ聞クデアリマセウカラ、
私ハ成ベク早ク戰死者ニ對スル論功行賞ヲ
發表シテ戴キタイコトヲ政府ニ希望スルノ
デアリマス、聞ク所ニ依レバ、政府ハ畏キ邊リ
ノ御聖旨ニ副ヒ奉ランガ爲ニ、論功行賞ヲ急
イデ居ラレルトノコトデアリマス、一說ニハ四
月二十六日ノ靖國神社臨時大祭ノ前ニ行賞
ノ發表ガアルトノ說ガアリマスガ、是ハ事實デ
アルカドウカ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、
又一時賜金ノ問題デモサウデアリマス、今
囘ノ事件ニ於テ一時賜金ノ給與サレタ者ハ
僅ニ千數名デアルサウデアリマス、先頃陸
軍當局ガ議會ニ於テ戰死者ノ數ヲ發表サレ
タガ、ソレニ依リマスト現ニ二万餘ノ戰死
者アリ、其後ニ於テモ相當ノ戰死者ガアル
ト思ハレマス、又海軍ニ於テモ戰死者ハア
ルノデアリマスカラ、其數ハ多數アルコト
ト思フノデアリマス、此多數ノ戰死者ニ對
シテ一時賜金ヲ給與シタ者ガ千數百名デア
ルトハ、甚ダ遲キ憾ガ致スノデアリマス、
ドウカ是等ノ人々モ成ベク早ク一時賜金ノ
支給サレルコトヲ望ンデ居リマスカラ、政
府ハ之ニ對シテモ善處セラレンコトヲ希望
致スノデアリマス
第四トシテ、受恩給者ノ資金運用ニ關シ
テ政府ノ指導方針ヲ聽キタイノデアリマス、
御承知ノ如ク現在受恩給者ハ、恩給法デ禁
ゼラレテ居ルニモ拘ラズ、之ヲ擔保トシテ
一部ノ金融業者カラ金ヲ借リテ居ルノデア
リマス、此傾向ハ下士以下ノ軍人ニ最モ多
イト云フ說ガアリマス、大正十二年ノ恩給
法改正ノ當時ハ、是等受恩給者ニシテ恩給
ヲ擔保トシテ金ヲ借リテ居タ人ハ、五六割
ノ數ニ達シテ居タト云フコトヲ、政府當局
ガ發表シテ居リマス、其後大分整理サレタ
ト雖モ、今日ニ於テマダ三割位ハ、金融業
者カラ法律ヲ以テ禁止セル所ノ證書ヲ擔保
トシテ金ヲ借リテ居ルト云フ現狀デアリマ
ス、之ヲ救濟スベク政府ハ今囘恩給金庫法
ヲ提案サレタコトト思フノデ、私モ是等從
來ノ受恩給者ノ金融ニ惱ンデ居ル者ヲ救フ
コトニハ贊成デアリマス、唯今後ニ於テ、
今囘ノ事件等ニ依リ、行賞ヲ受ケ、或ハ年
金ヲ貰フ人々ガ、此恩給金庫ニ依ッテ金ヲ借
リラレルト云フコトガ、思想上、又ソレ等
受恩給者ノ將來ニ取ッテドウデアラウカ、私
ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、今日マ
デノ受恩給者ナラ免モ角トシテ、今後下賜
サルベキ年金受給者ハ、年ニ四囘郵便局ニ
行ケバ年金ハ支給サレルノデアリマス、然
ルニ玆ニ恩給金庫法ガ出來、サウシテ一時
ニ多額ナル金ヲ借リラレルト云フヤウナ制
度ヲ設ケタ場合ニ於テハ、或ハ惧ル一攫千
金ヲ夢ミテ之ヲ借リルト云フヤウナ者ナキ
ニシモアラズデアリマス、私ハ決シテ今日
ノ年金額ハ多イトハ言ヒマセヌ、多イトハ
言ヒマセヌガ、細々ナガラ此年金ニ依ッテ
暮シテ行カウト云フ、善良ナル受恩給者ニ
迄モ、或ハ惧ル、一時多額ナル金ヲ借リテ
一仕事ヲシヨウト云フ如キ、考ヲ與ヘル
カヲ虞レルノデアリマス、私ハ是等ニ對シ
テ、政府ハ恩給法ノ趣旨ニ適フベク、今後
ノ恩給受給者ニ對シテハ、此金庫法ヲ適用
シナイト云フヤウナ制度、或ハ特別ノ規定
デモ設ケル意思ナキヤ否ヤニ付テ御答辯ヲ
願ヒタイノデアリマス、更ニ賜金及ビ行賞
等ノ賜金運用ニ對シテ、當局ニ於テハ御考
慮ニナッテ居ルサウデアリマスガ、聞ク所ニ
依レバ農林當局ニ於テハ是等ノ賜金ヲ自作
農奬勵ノ爲ニ何等カノ對策ヲ講ジツヽアル
ヤウデアリマスガ、其對策ハドウ云フ方法
デ爲スカ、其他內務省デアルトカ、厚生省
デアルトカ、陸海軍當局ニ於テハ、是等ノ
指導方法ヲドウ云フ方針ヲ以テ爲スカ辯明
ヲ煩シタイノデアリマス
第五トシテ最後ニ伺ヒタイノハ養老年金
ニ關スルコトデアリマス、非常時局ノ今日、
養老年金ノコトヲ云々スルノハドウカト思
ハレマス、併ナガラ先頃ノ議會ニ於テモ從軍
者ノ老兵ノ人々、年寄ノ人々ガ老兵年金實施
ニ關スル請願書ヲ此議會ニ提案シタコトガ
アリマス、議會ニ於テハ滿場一致通過致シマ
シタ例モアルシ、又昨今新聞紙上ヲ能ク見ル
ト、或ハ日露ノ勇士ガ生活難ノ爲ニ竊盜ヲ働
イタトカ、或ハ日〓戰爭ノ老勇士ガ食ヘナ
クシテ行仆レタト云フヤウナ、甚ダ哀ナル
コトヲ聞クノデアリマス、私ハ斯樣ナ國家
ノ爲ニ忠勤ヲ擢ンデテモ、其晩年ニ年ヲ取ッ
テ、自分デ働クコトガ出來ナイト云フ人々
ガ、人ノ世話ニナッタリ、或ハ救濟サレテ、
養老院等ニ行クヤウナ人々ノアルコトハ、
甚ダ遺憾ト思フノデアリマス、故ニ私ハ是
等ノ老人ニ對シテ救濟スル必要ガアルト思
フ、今日デハ軍人バカリガ國家ニ御奉公ス
ルモノデハアリマセヌカラ、養老年金ノ如
キモ軍人ノミデナク、一般ノ老年者ニ迄モ
及ボスヤウナ施設ヲ爲ス考ガアルカドウカ
政府ニ伺ヒタイ、旣ニ英國其他ノ國ニ於テ
ハ養老年金ノ制度ガアルノデアリマス、現
近衞內閣ハ革新政策ヲ標榜シタ內閣デアリ
やく、故ニ私ガ今申上ゲタ養老年金等ニ付
テモ、政府ハ近ク是ガ調査ヲスル考ナキヤ
否ヤ、以上五點ニ付テ當局ノ答辯ヲ求メタ
イト存ズル者デアリマス
〔政府委員船田中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=34
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035・船田中
○政府委員(船田中君) 最上君ノ御質問ニ
御答ヲ申上ゲマス、第一ニ戰死者ニ對スル
時賜全ノ問題ニ付キマシテ、先程モ御答ヲ
申上ゲマシタヤウニ、新聞紙上ニ於テ誤解
ヲ招キマシタコトハ洵ニ遺憾ニ存ジマス、
一時賜金ノ問題ハ主トシテ陸軍省ノ所管ノ
問題デゴザイマスカラ、陸軍政務次官ヨリ
御答辯ノアルコトト存ジマス、ソレカラ戰
死者ト戰傷者トノ間ノ隔リガ大キ過ギルデ
ハナイカト云フ御質問ガアリマシタガ、戰
傷者ニ付キマシテハ御承知ノ通リ療養介護
ヲ要スル者ガ少クナイノデアリマシテ、隨
テソレニ對シテ相當增加ヲ致シマスルコト
ハ適當ト考ヘマシテ、今囘ノ改正案ノ中ニ
ソレヲ主タル要項トシテ入レタ譯デアリマ
ス
ソレカラ第二ノ御質問ハ增加恩給ノ金額
ガ少ナ過ギルデハナイカト云フ御質問デア
リマシタ、今囘ノ增加恩給ノ增額ニ付キマ
シテハ、重症者ニ厚ク致シタノデアリマス、
デ是ハ今次ノ事變ニ鑑ミマシテ、今次ノ事
變ガ兵器ノ發達其他戰闘ノ方法ノ變ッタコ
ト、色々ノ事情カラ致シマシテ、今次ノ事
變ニ於キマシテハ重傷者ガ非常ニ多イノデ
アリマス、隨テソレ等ノ實情モ十分調査ヲ
致シマシテ、其實情調査ニ基イテ、今囘ノ
改正案ヲ立案致シタ次第デゴザイマス、尙
ホ念ノ爲メ申上ゲテ置キマスガ、兵ノ戰死
者ニ對スル扶助料ハ、最低ガ二百七十圓ト
ナッテ居リマス、現行恩給法ニ於キマシテ
ハ百二十圓デアリマス、隨テ八割ノ增加ニ
ナル譯デアリマス、併シ戰死者ハ大抵一級
進級スルノガ例デアリマスルカラ、隨テソ
レ等ニ依リマスト云フト、大體二百九十七
圓ノ年額ニナル、隨テ月額約二十五圓ト云
フコトニナルノデアリマシテ、勿論是デ十
分ナリト考ヘラレナイカモ知レマセヌケレ
ドモ、現行恩給法ニ比較ヲ致シマシテ、相
當ナ增額デアルト存ジマス
第三ノ點ハ陸軍ノ政府委員カラ御答辯ヲ
申上ゲルコトニ致シタイト存ジマス
第四ノ受恩給者ノ賜金運用ノ問題デゴザ
イマスガ、恩給金庫ト云フヤウナモノヲ作ッ
テ金ヲ貸出シタナラバ經濟上思想上ニ惡
イ影響ヲ與ヘルデハナカラウカト云フヤウ
ナコトニ付キマシテノ御懸念デゴザイマ
シタガ、是ハ恩給金庫ガ出來マシテモ決シ
テ金ヲ貸スコトヲ奬勵スルノデモナシ、又
强制スルノデモアリマセヌシ、全ク不時ノ
出費ノ場合ニ於キマシテ、割合ニ低利ノ金
ヲ借リルコトガ出來ルト云フ途ヲ開キタイ、
サウ云フ趣旨カラ致シマシテ、恩給金庫ヲ
創設スルコトニ致シマシタノデアリマシテ、
只今最上君ノ御質問ノ中ニアリマシタヤウ
ナ御懸念ノ點ハ萬ナカラウト存ジマス、隨
テ將來ノ受恩給者ニ對シマシテモ勿論金融
ノ途ヲ開クト云フコトニ致シタイト存ジマ
ス
第五ノ養老年金ノ問題デゴザイマスガ、
是ハ恩給法ニ直接ノ關係ハゴザイマセヌ、
厚生省ガ出來ルコトデアリマスルカラ、是
亦厚生省ニ於テ〓究スベキ問題ト存ジマス、
私ノ方ヨリ能ク厚生省ノ方ニ只今御質問ノ
要旨ヲ御傳ヘスルコトニ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=35
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036・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 田中邦治君-田
中君一寸御待チ下サイ--加藤陸軍政務次
官
〔政府委員加藤久米四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=36
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037・加藤久米四郎
○政府委員(加藤久米四郞君) 只今一時賜
金ノコトニ付テノ御質問デゴザイマシタ、
一時賜金ハ事變突發以後昨年ノ十月ノ初旬
ニ改正ヲサレマシテ、增額ヲサレタノデア
リマス、其增額ヲサレマシタ事柄ニ付テ一
應申上ゲテ置キマス、從來ノ率ヲ改正致シ
マシテ、增加ノ率ヲ成ベク下級ニ厚ク、上
級ニ薄ク致シタノデアリマス、卽チ兵ニア
リマシテハ八割增ニナッテ居リマス、下士官
ニアッテハ五割增デアリマス、准士官尉官ニ
アリマシテハ四割增デアリマス、佐官ニナ
リマシテハ三割增デアリマス、將官ニアリ
マシテハ二割增デアリマス、此等差ヲ附ケ
マシテ遺族扶助料ノ改正ヲ致シタノデアリ
マス、ソレデ一律ニ同一ノ金額ヲ與ヘルト
云フ意見モ耳ニ致シテ居リマス、併シ一律
ニト云フコトハ不穩當ナルモノト致シマシ
テ、此等差ヲ附ケタノデアリマス、併シ下
級ニ厚ク上級ニ薄ク致シタノデアリマス
尙ホ先程御質問ニナリマシタ一時賜金ヲ
交付致シマスル手續ノ遲イコトニ付テノ御
意見ガゴザイマシタ、此事ハ隨分從來喧シ
ク言ハレテ居ルノデアリマス、少シク此手
續ノコトヲ申上ゲマス、元來所屬部隊ニ於
キマシテハ所要ノ書類ヲ遺族ニ送ッテヤリ
マシテ、遺族ハ是ト共ニ願書及ビ戶籍謄本ヲ
取纏メマシテ、所屬ノ部隊ヲ經テ陸軍省ニ
提出スベキコトニ相成ッテ居ッタノデアリマ
ス、是デハ非常ニ煩瑣デアリマシテ、迅速
ニ其目的ヲ達スルコトガ出來マセヌノデ、
今囘ハソレヲ簡略ニ致シマシテ、卽チ遺族
ハ願書及ビ戶籍謄本ヲ留守部隊ニ送付シ
テ、留守部隊ノ方デ是等書類ヲ整理シテ、
所屬部隊ニ代ッテ之ヲ作製致シマシテ、陸軍
省ニ提出シテ、サウシテ事務ノ簡捷ヲ圖ッテ
居ルノデアリマス、ソレデモット早クスベ
キコトガ私ハ必要ダト存ジマス、併シモノ
ニハ正確ヲ期スルト云フコトモ亦必要デア
リマス、ソレデアリマスカラ、現在ノヤリ
方ニ於キマシテハ、先ヅ是レ以上ニハヤリ
ヤウガナイノデアリマスケレドモ、尙ホ特別
賜金賜與ニ付テト云フ印刷物マデモ拵ヘマ
シテ、之ヲ死亡致シマシタル者ニ直チニ陸
軍省カラ送付ヲ致シマシテ、其書類、雛形、
用紙、心得書ナドモ總テ之ニ屆ケルノデア
リマス、成ベク早ク願書ヲ出シテ吳レヽバ
直チニ一時賜金ヲ交付スルコトニナッテ居
ルノデアリマスケレドモ、ドウモ從來ノ例
ニ依リマスト、左樣ニ思フヤウニ早ク參ラヌ
ノデアリマス、其參ラヌト云フコトハドウ云
フ所ニアルカト云フト、從來ハ巧遲-拙
速ト云フヨリモ、寧ロ確實ニト云フコトガ
重ンゼラテ居ッタ慣習カラ致シマシテ、現ニ
陸軍ニ達シマシタル死亡報〓ガマダ六千デ
アリマス、願書ノ到達致シテ居ルモノガ約
千九百デアリマス、此手續ノ遲滯ノ原因ハ
ドウ云フコトカト云フコトヲ更ニ最近又調
ベテ見タノデアリマス、サウ致シマシタラ
其最大ノ原因ハ出動部隊ガ作戰行動ノ爲ニ
留守部隊ヘノ死亡通牒ガ著シク遲レルノデ
アリマス、作戰ノ方ニ多ク氣ヲ取ラレテ死
亡通知ノ方ガ遲レルノデアリマス、之ニ且
又正確ヲ期スル爲ニ遲レルノデアリマス、留
守部隊ニ於ケル諸般ノ業務ガ又繁多デアッ
テ、サウシテ執務者ノ能率ガ今マデ擧ラ
ナイ模樣ガアッタノデ、俄ニ人員ヲ增加シ、
係員ヲ殖ヤシテ此事ノ進捗ヲ圖ッテ居ルノ
デアリマス、斯ウ云フヤウナ實情デアリマ
スカラ、成ベク早ク進マセタイト云フ考ヘ
方デアルノデアリマス
ソレカラ金鵄勳章ノ問題ニ致シマシテ
モ、成ベク早ク行賞ノ手續ヲ取運ビタイト
存ジマシテ、現ニ賞勳局總裁ガ現地ニ參ッテ
居リマス、事情取纏メノ上、成ベク早ク取
纏メル方法ヲ講ジテ歸ッテ參ルノデアリマ
ス、其上ニ論功行賞ノ方面ニ、成ベク早ク
遺族ノ滿足ノ行クヤウニ、物心兩界ニ亙ッテ
慰安ヲ與ヘルヤウニ努メタイト思ッテ居リ
マス、大體是ダケ御答ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=37
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038・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 田中邦治君
〔田中邦治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=38
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039・田中邦治
○田中邦治君 恩給法中改正法律案ニ付キ
マシテ、私ハ第二號表ニ付テ意見ヲ持ッテ
居ッタ者デアリマシタガ、先刻深澤議員ノ質
問ニ依リマシテ其要ヲ得タノデ省略致シマ
スルガ、之ニ關聯致シマシタ件ニ付テ極メ
テ重大問題デアルト考フル者デアリマスノ
デ、簡單ナガラ玆ニ一言申述ベテ見タイト
思フ者デアリマス、勿論本案ノ上程ヲ見マシ
タコトハ、吾々銃後ノ護ヲ爲ス者ノ洵ニ意ヲ
强ウスル者デアリマスノデ、國家ノ爲メ極
メテ慶賀ニ堪ヘナイ次第デアリマスガ、
面又甚ダ遺憾ナル點ガ殘サレテアルト私ハ
思考致ス者デアリマス、如何ニ恩給法ノ改
正ニ依ルモ、亦昨年十月一日陸軍省告示第
三十九號ヲ以テ規定セラレマシタ戰歿者ノ
特別賜金賜與規程ノ恩典ニ浴セシメント致
シマシテモ、現在ノヤウナ傷病疾病ノ原因
ヲ認ムベキ所屬部隊長ノ作成致シマシタ證
據書類ト、竝ニ軍醫又ハ醫師ノ作成シマシ
タ死亡診斷書及ビ其ノ病歷書ト云フモノニ
改正ヲ加ヘナケレバ、玆ニ非常ナ不公平ナ
出來事ヲ招來致スモノデアル、斯ウ私ハ固
ク信ズル者デアリマス、是ニ於テ此際其實
例ノ一端ヲ申上ゲテ、軍部當局ノ御一考ヲ
煩ハシタイト思フ者デアリマス
私ハ町長ヲ致シテ居リマス關係上、昨年
ノ八月應召兵トシテ歡呼ノ聲ニ送リマシタ
多數ノ兵士ノ中、一特務兵ガアリマシタ、
此特務兵ハ其後戰地ニ向ヒマシテ、奮戰ノ
結果名譽ノ負傷ヲシタノデアリマス、其負
傷モ氣ノ毒デアリマスルガ、身體ニ八箇所
ト云フ爆彈カ砲彈ノ破片ヲ受ケタノデアリ
マセウ、ソレダケノ傷ヲ負ヒマシタノデ內
地へ送還セラレテ、內地ニ於テ治療ヲ受ケ
ツヽアリマシタガ、其治療ニ依ッテ幸ニモ
治癒シタト云フノデ、療養所へ保養ノ爲ニ
送ラレタノデアリマス、然ル處此療養所ニ
於テ發熱致シ、其爲ニ原隊ノ病院マデ送還
セラレタノデアッテ、原隊ノ病院ニ於テ治療
中病氣ガ急變致シタト云フノデ、先月ノ下
旬急遽親許ト役場へ其旨ノ通知ガアリマシ
タカラ、私ハ是ニ於テ役場ヨリ軍人分會長
兼兵事主任ヲ遣ハシ兩親モ亦早速病院ヘ駈
付ケサシタノデアリマシタ、然ル處其兵事
主任カラノ電話ニ接シテ見マシタ所ガ、其
電話ノ要點ニ依リマスルト、其兵士ハ氣ノ
毒ナガラ殆ド死ト云フコトハ時間ノ問題デ
アル、而モ遺憾ナガラ一等症ノ取扱ヲ爲ス
コトハ出來ナイ、二等症ノ扱ヨリ外致シ方
ナイト云フ次第ニナルノデアルト病院長カ
ラ只今聞カサレテ、驚イテ私ニ對シテ電話
ヲ掛ケルノデアルト云フコトデアリマシタ
ノデ、私モ其日ハ殆ド夜ノコトデアリマシ
タカラ、其翌日急遽其病院マデ其兵士ヲ慰
問ニ行キマシタ、然ル處父親ガ枕頭ニ居リ
マシテ曰ク、自分ノ忰ハ殆ド自分ノ駈付ケ
タ時ニ自分ノ來タコトヲ知ラナイデ、唯譫
言ニ戰地ニ於ケルコトト、馬ノ取扱ノコト
ヲノミ身振リヤ何カシテ、魘サレテ居ルニ
過ギナイノデ、如何ニ自分ガ來タコトヲ知
ラシメヨウトシテモ遂ニ之ヲ受入レルコト
ガ出來ナカッタ、而シテ只今ハ此儘スヤ〓〓
ト唯眠ッテ居ルノミデス、何等受ケ答一ツス
ルコトガ出來ナイ、而モソレハマダシモノ
コトデアルガ、昨日聞カサレタ院長殿ノ言
葉ハ洵ニ自分ハ承服出來ナイ、ナゼカト言
ハハ、戰地ニ於テ負傷シテ來テ、內地へ還
送セラレテ治療ヲ受ケツヽアッテ、玆ニ此樣
ナ狀態ニナッテ居ルニモ拘ラズ、是ハ其傷ガ
原因デナクシテ、餘病ガ發生シタノデアル
カラ、遺憾ナガラ一等症トシテノ扱ハ出來
ナイト言ハレルコトハ洵ニ親ノ身トシテ
ハ極メテ悲シムベキ事デアルト云ッテ、如何
ニモ歎ハシイ面持デアリマシタノデ、私モ
其際、此大事變ノ際ニ理窟ハ如何ナル點ニ
アラウガ、セメテ軍醫トシテノ取扱ニ於テ
幾ラモ臨機應變ノ處置ト云フモノガ執レサ
ウナモノデアル、一旦病院長ノ意見ヲ聽キ、
尙ホ係軍醫ニ其意向ヲ確メヨウト思ヒマシ
テ、面會ヲ求メマシタ、遺憾ナガラ病院長
ニハ面會スルコトガ出來ナカッタノデアリ
マシタガ、幸ヒ係軍醫ニ面會致シテ、其軍
醫ノロカラ如何ナル理由ヲ以テ一等症トス
ルコトガ出來ナイカト云フコトヲ聞キマシ
タ所ガ、軍醫ノ曰ク、一旦負傷シタ傷ハ治
癒シクノデアッテ、ソレヲ療養所ニ於テ保
養セシメツヽアッタ際ニ發熱致シタカラ、
入院セシメテ診斷シタ結果ハ、案外ニモ傷
ガ原因デナクシテ、更ニ新シク結核菌ガ腦
ヲ侵シタ爲ニ、只今ノ病狀ヲ呈シテ居ルノ
デアル、是ハ自分ノ診斷ノ結果立派ニ其
兆候ガ現レテ居ッタカラ、之ヲ院長ニ報〓
シ、院長ヨリ此事ヲ其父親ト兵事係ニ宣〓
セラレタノデアル、斯ウ言ハレマシク時ニ
於テ、私ハ反問致シタノデアリマス、其父
親モ中シテ居リマシタ、如何ニ結核菌ガ腦
ヲ侵シタカラト云ッテモ、ソレガ直接ノ原因
デアルト云フコトハ絕對承服出來ナイ、ナ
ゼカト言ヘバ其兵士ガ出征シテ戰傷ヲ受ケ
ク、其爲ニ身體ガ衰弱シタノデアル、其衰
弱シタ機ニ乘ジテ結核菌ガ腦ヲ侵スヤウナ
症狀ヲ呈シタノデアラウ、然ル處軍醫ハ單
純ニ結核菌其モノガ今日ノ病氣ノ原因デア
ルト云フコトヲ斷言致シタノデアリマス、
是ニ於テ餘リニモ氣ノ毒デアル、是ハ獨リ
吾々ノ接シテ居ル兵士ノミデナク、全國的
ニ今日斯ル扱ヲ受ケル兵士ガ相當澤山アル
デアラウ、ソレデハ洵ニ銃後ノ護ヲ爲ス上
ニ於テ故障ヲ生ズル、デアルカラ出來得ベ
クンバ此際-法ハ法デ若シアッテ見タ所
ガ、其法ナルモノハ軍醫、詰リ醫師ト云
フ特殊ナ業務ヲ持ッタ者ノミニ於テ承知ノ
出來ル、サウ云フ病原デアルノデアッテ、
般國民トシテ、サウ云フ際ニ於ケル此病症
ヲ以テ第二等症ニスルト云フヤウナコトハ
ドウシテモ承服スルコトガ出來ナイモノデ
アルカラ、何トカナラヌモノデアルカト云
フコト迄追究致シマシタガ、奈何セン、斷
乎トシテ在ル法ハ抂ゲルコトガ出來ヌ、若
シソレヲヤリタケレバ上司ノ命ニ依ル外ハ
ナイト云フコトデアリマシタノデ、私ハ直
チニ上京致シマシテ、陸軍ノ政府委員室ニ
參リマシテ、中川中佐殿ト比佐政務官ノ兩
氏ニ對シテ實情ヲ愬ヘテ、ドウカナラヌモ
ノデアラウカト言ヒマシタ所ガ、ソレハ實
際同情サレルコトデアルカラ何トカ相當考
慮ヲシテ見マセウト言ハレタ、サウ云フコ
トノミデアッタ、遂ニ其兵士ハ其翌日死亡致
シマシタガ、此問題ハ軍醫ノ主張通リ二等
症ノ扱ヒヲ受ケタ、今日私ハ此兵士ニ對シ
マシテハ餘リニモ氣ノ毒デアリマスノデ、
此二十日他ノ戰死者ト共ニ町葬ヲ執行フ豫
定ニシテ居リマスルガ、是ハ兎ニ角ト致シ
マシテモ、全國ニ於テ同一問題ハ相當ア
ラウカト私ハ思フノデアリマス(拍手)此際
斯ルコトハ重大問題ト私ハ思フノデアリマ
ス、此問題ニ對シマシテ軍部當局ハ醫師ノ
診斷ト云フ點ニ付テ相當改正セシメル御方
針ハナイモノデアラウカ、私ハ今日ノ大事
變ニ於テハ古イ法律ヤ規則ハ成ベク實情ニ
卽スルヤウニ改正シテ貰ヒタイト思ヲモノ
デアリマス、近衞總理大臣ノ施政方針ノ御演
說中ニ「戰死傷病者ト其遺族家族ニ對スル
扶助援護ニ付キマシテハ、適切機宜ノ措置
ヲ講ズル積リデアリマス」ト、斯ウ言ハレテ
居ルノデアリマスノデ、此適切機宜ノ措置ト云
フコトハ斯ルヤウナ事件ノ所ニ相當講ゼラ
レテ然ルベキモノデアルト私ハ信ズルモノ
デアリマス(拍手)何レ此問題ニ付テノ政府
ノ御一考ヲ煩ハス爲ニ建議案トシテ提出致
シタイト思フモノデアリマスルガ、取敢ズ
今日加藤政府委員ガ見エテ居ルヤウデスカ
ラ、セメテ加藤政府委員ノ之ニ對スル御所
見ヲ伺ヒタイモノデアリマス(拍手)
〔政府委員加藤久米四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=39
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040・加藤久米四郎
○政府委員(加藤久米四郞君) 只今御質問
ノ件ハ非常ニ難カシイ問題デアリマス(「難
カシイコトハナイ、金サヘヤッタラ宜シイノ
ダ」ト呼フ者アリ)中々サウハ參ラヌノデア
リマス、專門ノ技術ヲ持ッテ居リマスル軍醫
ノ診斷ヲ認メナイ譯ニハ參リマセヌ、ソレ
デアリマスカラ、負傷ヲ致シマシテ、サウ
シテ全快ヲシナイ間ハ、ソレガ直接原因ト
ナッテ病氣ヲ惹起シタ場合ニ於テハ、ソレハ
御說ノヤウナモノニハナラヌノデアリマス、
但シ一旦全快ヲ致シマシテ、ソレカラ更ニ
他ノ原因デナッタ場合ニハ、ヤハリ戰死トシ
テ取扱フ場合ト、ソレカラ然ラザル場合ト
ガアリマス、ソレハ此處デ申上ゲルコトハ
或ハドウカト思ヒマスルケレドモ、本人ノ
不注意ニ依ッテ起ル場合モアリマス、サウデ
アリマスカラ、其診斷ハ軍醫ノ診斷以外ニ
ハ見ヤウガゴザイマセヌ(「公務ノ爲ニ病氣
ニナッタンダ」ト呼フ者アリ)ソレハ公務ノ爲
ニ死亡ヲ致シマシタト云フノデ、ソレハ···
(「謹聽」「默ッテ聽ケ」ト呼ヒ其他發言スル者ア
リ)其時ニ戰死者トナルカ、或ハナラザルカ
ノ問題デアリマス、第二等症ノ問題デアリ
マく、ソレデアリマスルカラ、其事ハ事實
問題デアリマス、事實問題デアリマスルカ
ラ、此處デ言葉デ以テ御答辯申上ゲテ是デ
解決スルコトハ出來ナイノデアリマス、ソ
レデアリマスルカラ、左樣ナ場合ニハ左樣
ナコトノナイヤウニ注意スルト云フコトハ
私此處デ申上ゲマスルケレドモ、私ガ此處
デ此問題ヲ解決スルト云フコトニハ參ラヌ
ノデアリマス、サウデアリマスルカラ是デ
ドウゾ御諒解ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=40
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041・田中邦治
○田中邦治君 簡單デスカラ自席カラ御許
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=41
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042・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=42
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043・田中邦治
○田中邦治君 只今全快シタ後デ出タ病氣
デアルカラ云々ト加藤政府委員ハ言ハレマ
シタガ、併シ一旦治癒致シマシタナラバ、
ナゼニ召集解除ヲサセナカッタカ、マダ應召
中デアル、而シテ私ハ、此ノ法律ハ古イ法
律デアッテ、一シキリ西洋文化ヲ謳歌シタ時
代ニ陸軍ガ採入レテ出來タ法律デアルト云
フコトヲ聞イテ居リマス、ソレガ其儘ニナッ
テ居リマス、外國人ナラ承服致スカモ知レ
マセヌガ、今日ノ日本人ハ一軍醫ノ診斷書
ニ依ッテ、斯ル重大問題ヲ輕々シク取扱ハレ
ル軍部當局ノ態度ニ付テハ、餘リニモ冷淡
過ギル扱ヒ方ヂヤナイカト考ヘテ居ルノデ
アリマスルカラ、一ツ深甚ナル御考慮ヲ軍
部當局ニ煩ハス者デアリマス
〔政府委員加藤久米四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=43
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044・加藤久米四郎
○政府委員(加藤久米四郞君) 更ニ申上ゲ
テ置キマスガ、他ノ原因デ起ッタ病氣ト私申
シタノデハゴザイマセヌ、サウ云フ場合モ
アリ、然ラザル場合モアリ、是ノ區別診斷ハ
軍醫ノ判定ニ依ル、斯ウ申シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=44
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045・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 阿部茂夫君
〔阿部茂夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=45
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046・阿部茂夫
○阿部茂夫君 本員ハ極メテ簡單ニ、同僚
議員諸君ノ御質問ニナリマシタ點ト重複ヲ
避ケマシテ、二三點政府當局ニ御質問ヲ申
上ゲル者デアリマス、最近動モスルト國民
生活ノ安定ノ問題ヲ中心ト致シマシテ、色々
ト取沙汰サレテ居リマスル時代ニ於キマ
シテ、恩給法中改正ガナサレ、或ハ恩給金
庫法ガ提案サレ、又近キ內ニ庶民金庫法ガ
提案サレル、洵ニ時代ノ要求カラ致シマシ
テ、政府當局ノ勞ヲ私共多トスル者デアリ
やく、併シ恩給法ノ改正ニ致シマシテモ、
金庫法ノ適用ニ致シマシテモ、內容ヲ檢討
致シマスル場合ニ、全幅的ニ贊成スルコト
ノ出來ナイ、今少シク詳細ナル御說明ヲ何
ハナケレバナラヌト感ズルノデアリマスガ、
詳細ナル點ニ付キマシテハ、何レ委員會ノ
席上ニ於テ申上ゲルコトニシマシテ、左ノ
三點ニ付テ簡單ニ御伺ヲ申上ゲマス
第一點ハ、恩給法改正ニ對シテ率ヲ引上
ゲテ居リマスガ、其上ゲタ率ノ根據ハ、何
ヲ根據ニシテ御引上ニナッタカ、尙ホ若シソ
レニ依ッテ十分デナイト云フヤヤウナコト
ガアリマスルナラバ、政府當局ハ修正ヲシ
テ、增額ヲ爲ス御意思ヲ御持合セデアルカ
ナイカト云フ點ヲ御聽キシタイ、卽チ申ス
迄モナク、我ガ將士ガ祖國ノ爲メ、民族ノ
爲ニ一身ヲ犠牲ニシ、一家ヲ犠牲ニシテ戰
場ニ戰死サレマシテ、其遺家族ニ對シマシ
テ、銃後ノ問題トシテノ生活ノ安定ヲ國家
ガ擧ゲテ圖ルト云フコトハ、勿論當然ナコ
トデアリマス、隨テ今囘是ガ增額ヲサレ、
其扶助ノ應用ノ範圍ヲ擴大サレマシタコト
ハ、洵ニ機宜ヲ得タコトトハ存ジマスガ、
其内容ヲ檢討致シマスルト、昭和十年度ノ
陸軍省ノ統計豫算ニ依リマスト、同年度ニ於
テ陸軍ノ兵ノ恩給人員ガ二百八十二人デ、
其金額ガ十四万三千七百三十三圓、一人平
均ガ五百九圓ニシカ當ッテ居リマセヌ、又
寡婦ノ扶助料ハ、人員ニシテ千七十三人、
金額ガ十万九百八十五圓、一人平均ガ約九
十四圓ニシカ當ッテ居ナイノデアリマス、サ
ウ致シマスト、其少額ナ金ヲ以テ、少クトモ
今日ノ逼迫セル經濟狀態ノ中ニ於テ、果シ
テ國家ガ是等ノ人々ニ對スル謝恩的ナ、或
ハ之ヲ救援スルヤウナ、其意思ガ十二分ニ
恩惠トシテ掛ケラレテ居ルカドウカト考へ
マスルト、是ハ極メテ不十分デアル、然ラ
バサウシタ程度ノ見積ヲサレマシタ基準ハ
一體何處ニアルカ、所ガ今囘ノ改正法ヲ見
マスルト、兵ニ對シテハ八割、下士官ニ對
シテハ五割ノ增額ニナッテ居リマスケレド
モ、過去ノ改正ニ依リマスル五箇年間ニ三
割ノ增額ヲ引キマスト、實際ハ最高ニシテ
僅ニ五割ノ增額ニシカ當ッテ居リマセヌ、況
ヤ准尉若クハ尉官ノ扶助ニ對シテノ增額
ハ、僅ニ一割ニ垂ントシタ程度デアリマス、
然ルニ諸君モ御存ジノ通リ、一般社會ニ於
ケル物價ハ、戰時體制下ニ於テ非常ナル急
騰ニ急騰ヲ重ネテ參リマシタ、昭和七年ニ
ハ物價指數ガ一三七·八デアッタモノガ、昭
和十一年度ニ於キマシテハ一七九·九、現在
ニ於テハ或ハ二〇〇ノ指數ヲ示シテ居ルカ
モ知レマセヌガ、十一年度ニ比シマシテモ
約三割ノ暴騰ヲ致シテ居ルノデアリマス、
此三割ノ暴騰ニ對シテ、果シテ前ノ增額ノ
程度ニ於テ、其遺家族卽チ銃後ノ人々ノ生
活ヲ國家ガ保障スルニ足ル數字デアルカド
ウカト云フコトハ、此數字ヲ以テモ一目明
瞭ナル事實デアリマス、之ニ對シテ政府ハ
十分デアルト御考ニナッタカ其增額ノ基
準ヲ社會ノ物價指數ニ置カレタノカ、ソレ
トモ政府ハ間ニ合セニ此程度デ宜カラウト
云フ數字ヲ投込マレタノカ、其點ヲ一ツ明
瞭ニ御答願ヒタイノデアリマス
第二ニ御質問申上ゲタイ問題ハ、恩給金庫
ノ適用範圍ヲ今少シ擴大スル御意思ガアル
カナイカト云フ問題デアリマス、申ス迄モナ
ク恩給金庫、是ハ多クノ國民ガ待望致シテ居
リマシタ問題デアリマスルガ、御案内ノヤウ
ニ適用ノ範圍ハ、所謂法律ニ依ル恩給者若ク
ハ動章ニ依ル年金者、又ハ法律以外ノ法令、
卽チ地方自治體カラ受ケル所ノ恩給等ノ
範圍ニ限定サレテ居リマスルガ、一般社會
ノ要求カラ致シマスルト、成程恩給金庫ト
云フ言葉ニハナッテ居リマスルケレドモ、現在
ノ社會ノ要求ハ、單ニ恩給ヲ受ケテ居リマ
スル零細ナル生活者ダケガ困窮ヲ致シテ居
ルノデハナイ、モウ少シ私能ク申上ゲマス
ルナラバ、曩ニ商工中央金庫法ガ布カレ、
今又恩給金庫法ガ布カレ、或ハ近キ將來ニ
於テ庶民金庫法ガ布カレルト雖モ、過去ニ
於ケル經驗カラ致シマスルナラバ、其布カ
レタ法律ノ精神ハ率ザ知ラズ、運用ノ範圍
ニ於テ適宜ヲ得テ居リマスセヌ關係上、中
央金庫法ノ如キモノモ或ル少數ナル者ノ範
圍ニ限定サレテ、多クノ社會ニ是ガ浸潤シ
テ居リマセヌ、今度ノ恩給金庫法モソレト
同ジヤウニ、此三ツノ段階ニハ適用サレマ
シテモ、是レ以外ノ銀行、會社、工場若ク
ハ私立學校等ニ於テ孜々營々トシテ働イテ、
最後ニ戴ク所ノ退職金或ハ扶助料、斯ウ云
フモノニ致シマシテモ、先程ドナタカ同僚
議員ニ於テ色々御質問ガアッテ、此恩給ト云
フヤウナモノヲ擔保ニスルコトハ、思想上
穩カデナイト云フ御質問ガアッタヤウデアリ
マスガ、私モ其精神ニハ同感デアリマスケ
レドモ、飜ッテ考ヘテ見マスナラバ、實際生
活上背ニ腹ハ代ヘラレナイト云フ問題ガア
ル、誰モ好ンデ恩給ノ通帳ヲ擔保ニ入レタリ、
質屋ニ持ッテ行ッタリ、高利貸ノ餌食ニスル
爲ニ之ヲ置クノデハナイケレドモ、其日ノ
生活ニ窮シテ來、其日ノ身ノ振リ方ニ困ッテ
來マスナラバ背ニ腹ハ代ヘラレナイ、言
換ヘテ見ルナラバ、恩給金庫ノ通帳デハナ
イ、尊イ生命スラ何モノデモナイヤウナ狀
態ニマデ追詰メラレルヤウナ、生活ノ窮迫
ニ陷ッタ場合ニハ、其前行條件トシテ、假令著
物一枚デモ、或ハ持物總テヲ賣ルヤウナ境
遇ヲ考ヘル時、恩給金庫ノ通帳ヲ質屋ニデ
モ、或ハ無盡ニデモ、或ハ高利貸ニデモ持ツ
テ行カナケレバナラナイト云フコトハ、當
然ノコトデハナイカト私ハ思フ、唯ソレヲ
防止シテ、善良ナル社會ノ生活ヲ平等ノ水
準ニ迄引上ゲテ來テ、以テ此恩給ノ精神ヲ
徹底セシメヨウト云フ、政府當局ノ御考デ
アリマスルナラバ、何ガ原因致スカト言ヒ
マスト結局ハ精神ノ問題ニアラズシテ、
率ノ問題デアル、金ノ高ノ問題デアル、言
換ヘテ見マスルナラバ、サウシタ遺ッタ所ノ
家族ニ對スル所ノ生活ガ、少クトモ今日ノ
文化日本ニ於ケル最低生活デモ出來得ル程
度ニ保障サレルナラバ、何モ好ンデ之ヲ持ッ
テ行クモノデハナイ、ダガ結局銀行、會社、
工場等ニ働イテ居リマスル者ハ、サウ云フ
ヤウナ境遇ニ立至リマシタ場合ニ、其零細
ナル金ト雖モ、低利資金ヲ融通シテ戴ク機
關ガ何モ現在ナイ、隨テ已ムヲ得ズ高利貸
ニ、或ハ無盡ニ、或ハ公設質屋ニ持ッテ行カ
ナケレバナラナイト云フヤウナコトガ、此
恩給金庫法ノ精神トハ多少筋ヲ異ニ致シテ
居リマスルケレドモ、社會生活ノ安定ト云
フ點カラ考ヘマスト、是ニモ何トカシテ應
用シ、及ボスト云フヤウナコトガ出來得ナ
イカドウカ、本員ノ考ヘル所ニ依リマスル
ナラバ、必ズ出來ルト思フ、何故ナラバ工
場ニ働イテ居リマス者モ、銀行ニ働イテ居
リマス者モ、或ハ會社デ働イテ居リマス者
モ、幾割カノ積立テヲチヤントシテ、銀行
三、、會社ニモ、工場ニモ、其積立資金ト
云フモノハ、チヤント公稱資本ノ上ニ出テ
居ル、之ヲ政府ガ何トカ考ヘテ管理ヲシテ、
以テソレニ依ッテ支給サルベキ將來ノ會社、
銀行員等ニ對シテ、零細ナル金ノ必要ノア
ル場合ニハ、高利ノ方面ニ持ッテ行カナイ
デ、低利ノ金ヲ使フ爲ニ、此恩給金庫法等
ノ考ヘ方ニ依ッテ、コヽ迄應用スルヤウナコ
トヲ御考ニナル餘地ガアルカナイカ、是ガ
第二點ノ質問デアリマス
最後ノ質問ハ、是ハ前二ツノ質問トハ多
少趣ヲ異ニ致シテ居リマスガ、政府ハ此際
社會ノ生活ノ不安ヲ除去シ、擧國一致ノ體
勢ヲ强化シ、戰時ニ於ケル國民ノ精神ヲモ
ウ少シ引締メル、斯ウ云フヤウナ見地ニ
立ッテ、而シテ色々ナ社會ノ諸機關カラ-
換言シマスルナラバ、金融ダケノ方面ニ付
テ申シマシテモ、普通銀行、特殊銀行、中
央商工金庫、或ハ庶民金庫、恩給金庫等ノ、
斯ウシタ公設ノモノカラ取除カレタ、他ノ
社會ノ金融ヲ目標トシテ生活致シテ居リマ
スル階級ノ人々ニ、少クトモ文化日本ニ於
ケル最低生活ヲ國家的ニ保障スルト云フ立
場ニ付キマシテ、何トカ考ヘル方法ガナイ
カト云フノガ、私ガ御伺申上ゲル國民年金
制度ヲ急遽設ケル所ノ御意思ガアルカナイ
カ、或ハソレニ對シテ御考ヲサレテ居ルカ
ドウカト云フ問題デアリマス、申ス迄モナ
ク國家社會ニ對シテ、國家ノ仕事ヲスル、
或ハ公共團體ノ仕事ヲスル公吏、卽チ官公
吏ダケガ此恩給等ニアリ付キ得ル所ノ資格
者デアッテ、ソレ以外ニハドウ、モ恩給ト云
フモノヲ併セ考ヘルコトガ出來ナイト云フ
ヤウナ通念ガ往々ニシテ、少クトモ今日マ
デアッタノデアリマスケレドモ私熟、考ヘテぐ
見マスルト、殊ニ今日ノヤウナ國家總動員
法マデモヤラネバナラナイト云フコトヲ考
ヘマスト、其最モ基本的ナル地方ニ於ケル
農民、都市ニ於ケル工場勞働者、或ハ其他ノ
人々ガ營々孜々トシテ、年限デハナイ、十六年
シタラ恩給ニナル、二十年ニ達シタラ年金
ガドウト云フコトデハナクシテ、生レ落チ
テカラ死ヌマデ土ニ親シミ、生レ落チテカ
ラ死ヌマデ海ニ漁リ、生レ落チテカラ死ヌ
マデ「ハンマー」ノ響キト共ニ生ヲ終ヘルヤ
ウナ、此勤勞者大衆ニ對シテ、ソレモ國家
協力ト云フ立場カラ考ヘマスト、一丸ニナッ
テ時艱ヲ克服スル要材デアル、サウ致シマ
スト、此樣ナ階級ニ對スル何モノカヲ、今
日ノ國家ハ考ヘテ居ラナケレバナラナイ
(拍手)サウ致シマスト、少クトモ私ハ、此
樣ナ階級ニ對シテ何カ恩給ニ類スル制度カ
方法ヲ國家ガ考ヘルト云フコトハ、一四、
於テ是等ノ人々ノ社會生活ノ安定ヲ圖リ、
他ノ一面ニ於テハ、國民思想總動員ノ其目
標ガ、社會平和ト、國家ニ於ケル思想ノ善
化サウシテ國民的幸福ヲ感謝スルヤウナ
社會ヲ作ラスト云フコトガ目標デアルナラ
バ、少クトモ此階級ノ生活安定ト云フコト
ヲ此機會ニ考ヘルコトガ、最モ急務デアリ、
妥當ナルモノデアルト考ヘルノデアリマス
(拍手)斯ウ致シマスナラバ、國家ハ此樣ナ
人々ハ單ナル無產者トカ、單ナル、プロレタ
リヤ」トカ云フヤウナ言葉ニ依ッテ、或ハモツ
ト碎ケタ言葉デ申シマスナラバ、百姓ダ、
町人ダ、漁師ダ、斯ウ云フヤウナ言葉ニ依ツ
テ片付ケナイデ、彼等ノ勞力ヲ通シ、勞働
ヲ通シ、日本ノ生產力ノ確立ガアリ、擴充
ガアリ、以テ此時難ヲ克服スル所ノ要材ニ
ナリ得ルモノダト云フ觀念ヲ、政府ガ十分
ニ御持チニナルナラバ、此階級ニ對スル年
金制ヲ設ケテ、ドウニカ將來ニ於ケル生活
ノ安定ヲ、年寄ッテ子供ヤ孫ヤ色々ナ人ニ賴
ラナクテモ生キ得ルヤウナ、安心立命ノ途
ヲ開拓シテヤルコトガ、此際國家ノ平和ヲ
增進スル所以デハナイカト信ズル、デアリ
マスカラ、政府ハ前二ツノ問題ニ加味シテ、
同時ニ國民年金制確立ノ急務ヲ御考ニナル
意思ガナイカ、御考ニナッテ居リマスナラ
バ大體ドノ程度ニ於テ進行サルヽ意思ガ
アルカト云フ點ヲ質問致シマシテ、私ノ質
問ハ終ル次第デアリマス(拍手)
〔政府委員船田中君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=46
-
047・船田中
○政府委員(船田中君) 阿部君ノ御質問ニ
御答ヲ申上ゲマス、第一ノ御質問ハ、恩給
法改正ニ付キマシテ、增加率ノ引上ノ根據
ヲ何處ニ求メタカト云フ問題ノヤウニ拜承
致シマシタガ、ソレニ付キマシテ、引上ノ
率ノ問題デアリマスガ、ソレハ扶助料ニ付
キマシテハ、實際ニ受ケル兵ノ最低ヲ、月
額約二十五圓ト云フモノヲ基準ニ致シマシ
ク、而モ改正法ニ於キマシテハ、遺族ガ三
人以上アリマスル場合ニ於キマシテハ、之
ニ幾分ノ割增シヲスルコトトナルノデアリ
やく、隨テ從來ノ恩給法ニ比較ヲ致シマス
ト云フト、相當ナ增額ニナッテ居リマス、政
府ハ此程度ヲ以テ十分ナリト考ヘテ居ル次
第デアリマス、增加恩給ニ付キマシテハ、
普通恩給ヲ含ミマシテ、最低月額四十五圓
乃至五十圓位ト致シマシテ、傷病ノ程度ノ
重イ者ニ付キマシテハ、更ニ厚クスルト云
フコトヲ方針ト致シテ、改正案ヲ立案致シ
タ次第デアリマス、以上ノヤウナ標準ニ依
リマシテモ、勿論個々ノ人ニ付キマシテハ、
少ナ過ギルト云フヤウナコトモ相當アラウ
ト存ジマスルガ、併シ制度ト致シマシテハ、
今囘ノ改正案ヲ以テ一應滿足スルノ外ハナ
イト存ジマス
第二ノ御質問ハ、恩給金庫ノ適用範圍ノ
問題デアリマシテ、此恩給金庫ノ適用範圍
ヲモウ少シ擴大スル意思ハナイカ、殊ニ少
額俸給生活者等ニ對スル金融ノ問題等モ考
ヘテハドウカト云フヤウナ、御質問ノ要旨
ニ伺ッタノデアリマスガ、ソレ等ノ問題ニ付
キマシテハ、是ハ直接恩給法ノ關係スル限
リデゴザイマセヌカラ、私カラ御答辯申上
ゲルコトハ如何カト存ジマスケレドモ、-
般ノ金融ノ問題等ニ付キマシテハ、次ノ議
題トナッテ居リマス庶民金庫ト云フヤウナ
コトモアリマシテ、ソレ等ノ庶民金庫等ヲ
作ルコトニ依リマシテ、相當ナ金融ノ途ガ
開カレルコトト存ジマス、第三ノ國民年
金制度、或ハ養老年金ト申シタラ宜イカモ
知レマセヌガ、此問題ニ付キマシテモ、是
ハ直接恩給法ノ關係デアリマセヌカラ、是
亦私ヨリ御答辯申上ゲルコトハ差控ヘタイ
ト存ジマスガ、此問題ニ付キマシテハ、主
トシテ厚生省ニ於テ〓究セラルベキ問題ダ
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=47
-
048・阿部茂夫
○阿部茂夫君 厚生大臣オ見エニナッテ居
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=48
-
049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 厚生大臣
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=49
-
050・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今阿部サ
ンノ御質問ハ、私途中カラ入ッテ參リマシ
テ、最後ノ御質問ニ付テハ大體ノ要旨ヲ承
リマシタ、此問題ハ只今政府トシテハ未ダ
考ヘテ居ル域ニ達シテ居リマセヌ、十分考
慮スベキ問題デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=50
-
051・阿部茂夫
○阿部茂夫君 詳細ハ委員會ニ讓リマシテ、
此程度デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=51
-
052・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=52
-
053・服部崎市
○服部崎市君 日程第一及ビ第二ノ兩案ヲ
一括シテ、議長指名二十七名ノ委員ニ付託
サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=53
-
054・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=54
-
055・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=55
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056・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、國民健
康保險法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ
求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=56
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057・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=57
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058・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、國民
健康保險法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長添田敬
一郞君
國民健康保險法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一國民健康保險法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年二月十五日
委員長添田敬一郞
衆議院議長小山松壽殿
附帶決議
一政府ハ將來補助金ヲ增額シ國民健康
保險組合普及ノ促進ヲ圖ルヘシ
二國民健康保險法ヲ施行スルニ當リ醫
療內容ノ低下ヲ來サシメサルヤウ特ニ
留意スヘシ
三政府ハ第二十四條ノ規定ニ依ル規約
ニ付キ規約例ヲ制定シ、其中ニ國民健
康保險組合ハ診療以外ノ藥品及賣藥ノ
給村ヲ爲スコトヲ得サル旨ヲ規定シ、
且ツ其ノ規定ヲ缺クモノハ之ヲ認可セ
サルコトト爲スヘシ
〔添田敬一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=58
-
059・添田敬一郎
○添田敬一郞君 只今議題ニ供セラレマシ
タル國民健康保險法案ノ委員會ノ經過竝ニ
結果ヲ御報告申上ゲマス、申ス迄モナク本
法案ハ曩ニ第七十囘帝國議會ニ提出セラレ
テ、本院ニ於テ一部修正ノ上可決ヲ致シ、
貴族院ニ送付致シタノデアリマスガ、衆議
院ノ解散ニ因ル貴族院ノ停會ノ爲メ不成立
ニ終ッタモノデアリマス、本法案ノ內容ニ付
テハ、第七十囘帝國議會ノ際ニ於テ、十分
論議ハ盡サレタモノデアリマスルガ、國民ノ
保健竝ニ生活ノ安定ニ關スル、最モ重要ナ
ル法案ノ一ツト致シマシテ、各委員ニ於カ
レマシテハ、極メテ熱心且ツ愼重ニ審議セ
ラレ、其抱懷スル諸般ノ意見ヲ述ベテ、國
務大臣竝ニ政府委員ニ對シテ質問セラレタ
ノデアリマス、其詳細ハ之ヲ速記錄ニ就テ
御覽ヲ願フコトニ致シマシテ、私ハ其大體
ニ付キ御報告申上ゲタイト存ジマス
先ヅ第一ニ組合ニ對スル國庫補助金ガ非
常ニ少イデハナイカ、殊ニ國民ノ保健及ビ
生活ノ安定ヲ目的トシテ、厚生省ガ生レタ
ル趣旨ニ鑑ミテモ、本案ガ一般國民ノ醫療
費ノ經濟的重壓ヲ除去シテ、醫療ノ普及ヲ
圖リ、以テ其健康ノ保持增進ニ資スルト共
ニ、國民生活ノ安定ニ資セントスル大抱負
ヲ以テ制定セラレントスルモノナル以上ハ、
國庫ハモット多額ノ補助金ヲ支出シテ、全
國ニ速ニ之ヲ普及徹底セシムル所ノ要ガア
ルノデハナイカトノ質問ガ相當アッタノデア
リマス、政府ハ之ニ對シテ國民健康保險制
度ヲ普及徹底セシムルニ付テハ、其最初ガ
大事デアッテ、懇切ナル指導監督ノ下ニ初
メニシッカリシタ基礎ヲ据エテ、竪實ナル
組合ノ普及發達ヲ圖ル必要ガアルト共ニ、
他面財政上ノ點モ考慮シテ、此程度ノ提案
ヲシタ次第デアルガ、尙ホ今後財政ノ緩急
及ビ組合ノ普及狀熊ヲ考慮シテ、出來得ル
限リ速ニ之ヲ全國ニ徹底セシムル考デアル
トノ答辯ガアッタノデアリマス
第二ニハ被保險者ノ加入ニ關シテ、多額
ノ收入ノアル者ノ取扱ヲ如何ニスルカ、隣
保共助ノ精神ヲ徹底セシメテ、本事業ノ完
全ナル運營ヲ期スル上ニ於テ、多額ノ收入
アル者ヲ强制的ニ加入セシムルノガ適當デ
ハナイカトノ質問ガアッタノデアリマス、
政府ハ之ニ對シテ、國民健康保險組合ノ設
立ニ當ッテハ、共同團結及ビ隣保相扶ノ美風
ヲ尊重助長スル意味ニ於テ、多額ノ收入ノ
アル者モ貧シイ者モ擧ッテ加入スルコトガーテ、
望マシイノデ、又其方針デ組合ヲ指導シテ
行ク考デアルケレドモ、法律ヲ以テ多額ノ
收入アル者ノ加入ヲ强制ヲスルト云フコト
ハ、現在ノ情勢トシテ適當デハナイ、第四
現在存在スル隣保相扶ノ美風ヲ活用シテ、
地方ノ實情ニ合セテ、事實上全町村民加入
ノ實ヲ擧ゲルヤウニ指導シテ行ク方ガ適當
デアルト思料スル旨ノ答辯ガアッタノデア
リマス
第三ニハ法案ノ第四十六條ニ關聯ヲ致シ
マシテ、組合ガ醫療機關ノ範圍ヲ定メル場
合ニハ、之ヲ如何ニ定メシメル方針デアル
カ、又被保險者ニ對シ醫療機關選擇ノ自由
ヲ認メル方針デアルヤトノ質問ガアッタノ
デアリマスガ、之ニ對シ政府ハ、法案第四
十六條ヲ設ケタル趣意ハ、醫療機關指定ノ
公正及ビ被保險者ノ醫療機關選擇ノ自由ヲ
確保スル爲デアッテ、其地方ニ於ケル有ユル
醫療機關ハ之ヲ組合ノ醫療機關トシテ、其
中ニ包含セシムベキ趣意デアル、被保險者
ニ對シテハ廣ク其選擇ノ自由ヲ認メシムル
方針デアル旨ノ答辯ガアッタノデアリマス
第四ニハ法案第五十四條ニ關聯ヲシテ、代
行ハ之ヲ醫療ニ關スル施設ヲ爲ス非營利社
團法人ニ限定シナイデ、一般ノ共同組合ニ
モ廣ク代行ヲ認メルコトガ、保險料ノ徴
收事務費ノ節約等、事務上種々ノ便宜ガ
アリ、又農村等ノ實情ニモ適合ヲシテ、本
事業ノ經營ヲ圓滿ナラシムル所以デナイカ
トノ質問ガアリマシタ、之ニ對シ政府ハ、
本制度ハ保險ノ方法ニ依ッテ醫療ヲ普及シ
テ、國民ノ健康保持增進及ビ其生活ノ安定
ヲ期スル爲メ、新シイ境地ヲ開イテ行カン
トスルモノデアッテ、本事業ノ施行ニ當ッテ
ハ、其目的ノ爲ニ特ニ設ケラレル國民健康
保險組合ニ依ルノヲ原則トスベキ筈デアッ
代行ヲ認ムルニ當ッテモ、上述ノ趣旨ニ
鑑ミテ醫療ニ關スル施設ヲ爲シテ居ッテ、醫
療ノコトニ關シ十分ノ關心ヲ有シ、相當ノ
經驗訓練ヲ經テ、本事業ヲ完全ニ遂行シ得
ル能力ヲ有スル者ニ、之ヲ限定スルノガ適
當デアル旨ノ答辯ガアッタノデアリマス
尙ホ之ニ關シテ政府ハ、本事業ノ執行ニ
當ッテ、國民健康保險組合ガ農村等ニ於ケル
各團體トノ相互連絡ヲ密ニシテ協力ノ實ヲ擧
ゲルコトハ、事業ノ能率ヲ擧ゲル上ニ於テ
モ町村ノ現狀カラ見テモ、甚ダ必要ナル
コトト考ヘルノデ、新シク出來ル國民健康
保險組合ガ、其町村ニアル產業組合ノ事務
所ナリ事務員ヲ、又ハ其町村ノ役場ナリ吏
員ヲ利用スルヤウナコトガ圓滑ニ行ハレル
コトハ、洵ニ望マシイコトト考ヘル旨ノ言
明ガアッタノデアリマス、尙ホ代行方針ノ範
圍ニ關シマシテ、第七十囘帝國議會ノ修正
案ト異ル理由ニ付キマシテハ、先般本會議
ノ席上ニ於テ、國務大臣ヨリ、代行ノ制度
ニ關シテハ、期日ヲ以テ制限ヲスルヨリ
モ、質ニ依ッテ之ヲ制限スル方ガ適當ト思
料スルノデ、今囘提案ノ如ク規定ヲシタノ
デアルガ、代行ヲ許可スルニ當ッテハ、諸種
ノ條件ニ依リ之ヲ嚴選スル方針デアリ、此
意味ニ於テ前議會ノ院議ノ趣旨ハ、十分之
ヲ尊重シタ積リデアル旨ノ言明ガアッタノ
デアリマシテ、本委員會ニ於キマシテハ
此點ニ關シテハ更ニ改メテ質疑ハ重ネラレ
ナカッタノデアリマス、此事ヲ申添ヘテ置キ
マス
第五ニ本制度ノ施行ニ依リ醫療費ノ不當
ナル低減ヲ來シ、却テ醫療內容ノ低下ヲ招
來シテ、本制度所期ノ目的達成ニ背馳スル
虞ハナイカトノ質問ガアッタノデアリマス
ガ、之ニ對シテ政府ハ、本制度ハ醫療費ヲ
保險的方法ニ依ッテ多數ノ人ノ間ニ分配ヲ
シテ、以テ醫療ノ普及ヲ圖ルコトヲ目的ト
スルモノデアッテ、不當ニ醫療費ヲ低下セシ
ムルコトヲ目的トスルモノデハナイ、更ニ
又醫療報酬ノ決定ニ當ッテハ、地方ノ現在ニ
於ケル料金ヲ標準トシテ決定ヲセシムル等、
特ニ愼重ナル注意ヲ拂ッテ組合ヲ指導スル
旨ノ答辯ガアッタノデアリマス
第六ニハ組合ト醫師會トノ團體契約ニ關
スル問題、及ビ組合ヲシテ醫藥分業制度ヲ
採用セシムル問題ニ關シテ、之ニ對スル政府
ノ方針ニ付キ質問ガアッタノデアリマスガ、政
府ハ之ニ對シテ第七十囘議會ニ於テ政府ノ
言明セル所ト、同樣ノ趣意ノ答辯ガアッタノ
デアリマス、尙ホ醫藥分業制度ニ關シテ、
醫藥任意分業制度ヲ徹底セシムル爲ニ、醫
者ハ必ズ被保險者ニ對シ處方箋ヲ交付スル
コトヲ要スルコトトシ、被保險者ハ其處方
箋ニ依ッテ任意ニ當該醫師ナリ、又ハ他ノ藥
劑師ニ就テ藥劑ノ支給ヲ受クルコトトスル
考ガナイカトノ質問ガアッタノデアリマ
スルガ、之ニ對シテ政府ハ、組合ニ對
シ一律ニ右ノヤウナル方法ヲ採用サセルコ
トハ、本法ノ立前カラ言ッテモ、又醫藥制
度ノ現狀カラ言ッテモ、聊カ當ヲ缺クモ
ノト考ヘラレル、併ナガラ地方ノ實情
ニ應ジテ各關係當事者話合ヒノ上デ
右ノヤウナル方法ヲ採用スルコトハ、向
差支ナイコトデアリ、又今般醫藥制度調査
會ヲ設ケルコトトナルノデ、其處ニ於テモ
十分ニ考究サレルコトトナルト思フ旨ノ答
辯ガアッタノデアリマス
第七ニハ賣藥ノ給付ニ關スル問題デアリ
マシテ、本制度ノ實施ニ依リ、賣藥業者ニ
對シ急激ナル影響ヲ與ヘ、其生活ヲ脅威ス
ルコトヲ成ベク避ケル爲ニ、本制度ニ依ル
組合ハ、診療以外ノ藥品及ビ賣藥ノ給付ヲ
爲スコトヲ得ザル旨ヲ組合ノ規約中ニ規定
セシメ、其規定ヲ缺ク規約ハ之ヲ認可セザ
ルコトトスル考ヘハナイカ、更ニ進ンデ之
ヲ法文化スル考ハナイカトノ質問ガアッタ
ノデアリマスガ、之ニ對シテ政府ハ、之ヲ
法文化スルコトニ付テハ、本制度ノ立前上
不適當デアルト思フノデアルガ、第二十四
條ノ規定ニ依ル規約ニ付テ、規約例ヲ制定
シ、其中ニ組合ハ診療以外ノ藥品及賣藥ノ
給付ヲ爲スコトヲ得ザル旨ヲ規定シテ、且
ツ其規定ヲ缺クモノハ之ヲ認可セザルコト
トシ、且ツ此點ハ豫メ地方長官ニ通達シテ、
賣藥業者ニ對シ急激ナル影響ヲ與ヘザルヤ
ウ、十分留意スル旨ノ答辯ガアッタノデア
リマス
第八ニ本法案ニ關聯シテ、現在多種多樣
ノ療術行爲ガ行ハレテ居ルガ、中ニハ法令
ニ牴觸スル虞アルモノ、又ハ衞生上危害ノ
虞アルヤニ見受ラレルモノモアルヤウデア
ルガ、政府ハ之ニ對スル取締ヲ厲行スル意
思アリヤトノ質問ガアッタノデアリマスガ、
之ニ對シテ政府ハ、醫療類似行爲ノ取締ニ
關シテハ、各地方命令ヲ制定セシメ、是ガ
取締ヲ属行シテ居ルガ、將來一層査察ヲ嚴
ニシテ、以テ遺憾ナキヲ期スル旨ノ答辯ガ
アッタノデアリマス
第九ニ、組合員ノ一部負擔ノ問題ニ付キ
マシテ、政府ノ意向ハ凡ソ二割程度ノ一部
負擔ヲ爲サシメル積リデアルト云フ說明ニ
對シテ、實際組合ヲ維持シテ行クガ爲ニハ、
二割程度デハ少キニ過ギハセナイカ、或ハ
二割五分、或ハ三割以上ニセナケレバ實
際ニ於テ維持ガ困難デアルト云フ意味ノ質
問ガアリマシタガ、之ニ對シテ政府ハ二割
ト云フコトハ必シモ限定スル意味デハナイ、
其程度ト云フノデアッテ、地方ノ事情ニ依ッ
テ、適當ニ之ヲ定メシムル積リデアルト云
フ意味ノ答辯ガアッタノデアリマス
以上ハ本法案ニ關スル質疑應答中其重要
ナルモノノ大要デアリマスルガ、次デ討論
ニ入リマシテ、喜多壯一郞君ハ民政黨ヲ代
表シテ、左ノ附帶決議ヲ附シテ贊成意見ヲ
陳述セラレマシタ、其附帶決議ハ次ノ通リ
デアリマス
附帶決議
政府ハ將來補助金ヲ增額シ國民健康
保險組合普及ノ促進ヲ圖ルヘシ
二、國民健康保險法ヲ施行スルニ當リ醫
療內容ノ低下ヲ來サシメサルヤウ特ニ
留意スヘシ
三、政府ハ第二十四條ノ規定ニ依ル規約
ニ付キ規約例ヲ制定シ、其中ニ國民健
康保險組合ハ診療以外ノ藥品及賣藥ノ
給付ヲ爲スコトヲ得サル旨ヲ規定シ、
且ツ其ノ規定ヲ缺クモノハ之ヲ認可セ
サルコトト爲スヘシ
次イデ西川貞一君ハ政友會ヲ代表シテ、
本法案及ビ喜多君ノ提出サレタル附帶決議
案ニ贊成ノ意見ヲ開陳ヲサレマシタ、次ニ
第一議員倶樂部ヲ代表シテ北勝太郞君ハ、代
行ノ許可條件ニ付テハ徒ニ制限的ニ、窮窟ニ解
釋セザルコト、及ビ醫療利用組合ノ認可ヲ
スル場合ニ、適當ニ監督ヲセラレタイト云
フコトノ希望意見ヲ述ベテ、贊成意見ヲ開
陳サレマシタ、又社會大衆黨ヲ代表シテ佐
竹晴記君ハ工場、鑛山、商店等ノ勞働者
ノ勞働時間、其他勞働條件ノ改善、榮養ノ
改善、住宅改善等ニ努力サレタキコト、及
ビ醫學〓育制度ノ改善ヲ圖ルト共ニ、無醫
村ニ對スル醫療機關ノ普及ヲ促進スルコト
ノ希望意見ヲ述べテ、同ジク贊成ノ意見ヲ
述ベラレマシタ、次ニ第二控室ノ田中耕君
ハ、補助金ヲ政府ガ支給スル場合ニ於テハ、
全市町村畫一ニナラズニ、貧弱町村ニ對シ
テハ多ク補助スルト云フ方法ヲ執ッテ貰ヒ
タイ、尙ホ醫療ノ公正ト選擇ノ自由ヲ與ヘ
ル原則ニ基イテ、處方箋制度ヲ執ッテ貰ヒタ
イ、斯ウ云フ希望ヲ申サレマシテ、是亦原
案ニ贊成ヲサレマシタ、最後ニ田中養達君
ハ東方會ヲ代表シテ、患者ノ祕密漏洩ヲ絕
對ニ防止スルコト、醫療機械及ビ醫藥ハ、
徒ニ營利ノ對象タラシメザルコト、又賣藥
ノ無責任ナル誇大廣〓ヲ嚴重ニ取締ルコト
ノ希望意見ヲ述ベテ、贊成ノ意見ヲ開陳サ
レマシタ、採決ノ結果全會一致ヲ以テ、本
法案ハ北君提出ノ附帶決議ヲ附シテ、原案
ノ通リ可決サレマシタ、以上委員會ニ於ケ
ル經過及ビ結果ノ大要ヲ御報告申上ゲタノ
デアリマスルガ、ドウゾ諸君ニ於カレマシ
テモ御贊成アランコトヲ御願スル次第デア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=59
-
060・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=60
-
061・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=61
-
062・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=62
-
063・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=63
-
064・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
國民健康保險法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=64
-
065・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第三及
ビ第四ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=65
-
066・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程第三庶民金庫法案、日程第
四無盡業法中改正法律案、右兩案ヲ一括シ
テ第一讀會ヲ開キマス-大藏大臣賀屋興
宣君
第三庶民金庫法案(政府提出)
第一讀會
第四無盡業法中改正法律案(政府提
四第一讀會
庶民金庫法案
庶民金庫法
第一章總則
第一條庶民金庫ハ庶民金融ノ圓滑ヲ圖
ルコトヲ目的トス
庶民金庫ハ法人トス
第二條庶民金庫ハ主タル事務所ヲ東京
市ニ置ク
庶民金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要
ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ
得
第三條庶民金庫ハ銀行、無盡會社及產
業組合法第一條第四項ノ規定ニ依リ手
形ノ割引又ハ貯金ノ取扱ヲ爲ス信用組
合(以下金融機關ト總稱ス)ヲシテ業務
ノ一部ヲ代理セシムルコトヲ得
庶民金庫ハ金融機關ヲシテ業務ノ一部
ヲ代理セシメントスルトキハ主務大臣
ノ認可ヲ受クベシ
金融機關ハ庶民金庫ノ貸付ヲ代理シタ
ル場合ニ於テハ庶民金庫ニ對シ債務者
ノ爲ニ命令ノ定ムル所ニ依リ債務ノ保
證ヲ爲スコトヲ得
第四條庶民金庫ノ資本金ハ千萬圓トシ
但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加ス
ルコトヲ得
第五條政府ハ千萬圓ヲ庶民金庫ニ出資
スベシ
前項ノ出資ハ國債證劵ヲ交付シテ之ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ大藏大臣之ヲ定ム
第六條庶民金庫ハ定款ヲ以テ左ノ事項
ヲ規定スベシ
-目的
二名稱
三事務所ノ所在地
四資本金額及資產ニ關スル事項
五役員及會議ニ關スル事項
六業務及其ノ執行ニ關スル事項
八七庶民債劵ノ發行ニ關スル事項
會計ニ關スル事項
九公〓ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更
スルコトヲ得
第七條庶民金庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第八條庶民金庫ニハ所得稅及營業收益
稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズ
ベキモノハ庶民金庫ノ事業ニ對シテハ
地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ
事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可
ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九條庶民金庫ニ付解散ヲ必要トスル
事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ
關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十條庶民金庫ニ非ザル者ハ庶民金庫
又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ
得ズ
第二章役員
第十一條庶民金庫ニ理事長一人、理事
三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十二條理事長ハ庶民金庫ヲ代表シ其
ノ業務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ庶民金庫
ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ庶民金庫
ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故アルトキ
ハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長缺員ノト
キハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ庶民金庫ノ業務ヲ監査ス
第十三條理事長、理事及監事ハ主務大
臣之ヲ命ズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任
期ハ二年トス
第十四條理事長及理事ハ定款ノ定ムル
所ニ依リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一
切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權
限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五條理事長及理事ハ他ノ職業ニ從
事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條庶民金庫ニ評議員若干人ヲ置
キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要ナル事
項ニ付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルト
キハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年ト
ス
第三章業務
第十七條庶民金庫ハ左ノ業務ヲ行フ
一割賦償還又ハ定期償還ノ方法ニ依
ル小口貸付
二金融機關ニ對スル小口貸付資金ノ
融通
三金融機關ノ爲ニスル小口貸付ノ損
失補償
四庶民金庫ト前各號ノ取引ヲ爲ス者
ノ預金ノ受入
五前各號ノ業務ニ附帶スル事業
第十八條庶民金庫ハ左ノ方法ニ依ルノ
外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得
ズ
一國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタル有價證劵ノ取得ヲ爲スコ
ト
二大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又
ハ郵便貯金ト爲スコト
第四章庶民債劵
第十九條庶民金庫ハ拂込資本金額ノ十
倍ヲ限リ庶民債劵ヲ發行スルコトヲ得
但シ其ノ貸付金及所有ニ係ル有價證劵
ノ現在高ヲ超過スルコトヲ得ズ
第二十條庶民債劵ハ額面金額五十圓以
上トシ無記名利札附トス但シ應募者又
ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコト
ヲ得
庶民債劵ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行
スルコトヲ得
第二十一條庶民金庫ハ庶民債劵借換ノ
爲一時第十九條ノ制限ニ依ラズ庶民債
劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ庶民債劵ヲ發行シタ
ルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面
金額ニ相當スル舊庶民債劵ヲ償還スベ
シ
第二十二條政府ハ庶民債劵ニ付額面金
額現在高最高一億圓ヲ限リ其ノ元本ノ
償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
政府ガ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證
シタル庶民債劵ノ借換ノ爲前條ノ規定
ニ依リ庶民債劵ヲ發行スル場合ニ在リ
テハ其ノ庶民債劵分ニ付テハ前項ノ制
限ヲ超ユルコトヲ得
第二十三條庶民債劵ハ賣出ノ方法ヲ以
テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十四條庶民金庫ニ於テ庶民債劵ヲ
發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第二十五條庶民債劵ノ消滅時效ハ元金
ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五
年ヲ以テ完成ス
第二十六條所得稅法、資本利子稅法及
有價證劵移轉稅法中國債以外ノ公債ニ
關スル規定ハ庶民債劵ニ之ヲ準用ス
第二十七條本章ニ規定スルモノヲ除ク
ノ外庶民債劵ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章會計
第二十八條庶民金庫ノ事業年度ハ一月
ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第二十九條庶民金庫ノ剩餘金ハ之ヲ配
當セズ
第三十條庶民金庫ハ設立ノ時及每事業
年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表
及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ
各事務所ニ備置クコトヲ要ス
債權者ハ業務時間內何時ニテモ前項ニ
揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第六章監督
第三十一條庶民金庫ハ大藏大臣之ヲ監
督ス
第三十二條庶民金庫ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分ヲ爲
スコトヲ得ズ
第三十三條庶民金庫ハ每事業年度ノ初
ニ於テ貸付利率、融通利率及補償料ノ
最高限度其ノ他貸付、融通及補償ニ關
スル條件ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三十四條主務大臣ハ庶民金庫ニ對シ
業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サシ
メ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル
命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十五條主務大臣ハ特ニ庶民金庫監
理官ヲ置キ庶民金庫ノ業務ヲ監視セシ
ム
第三十六條庶民金庫監理官ハ何時ニテ
モ庶民金庫ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査
スルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ必要アリト認ムルト
キハ何時ニテモ庶民金庫ニ命ジテ業務
及財產ノ狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
庶民金庫監理官ハ庶民金庫ノ諸般ノ會
議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十七條役員ガ法令、定款若ハ主務
大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル
行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ
解任スルコトヲ得
第七章罰則
第三十八條左ノ場合ニ於テハ庶民金庫
ノ理事長、理事又ハ監事ヲ百圓以上千
圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザル
トキ
二本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタル
トキ
三第十八條ノ規定ニ違反シ業務上ノ
餘裕金ヲ運用シタルトキ
四第十九條又ハ第二十一條第二項ノ
規定ニ違反シ庶民債劵ノ發行ヲ爲シ
又ハ償還ヲ爲サザルトキ
五主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分
ニ違反シタルトキ
六第三十六條ノ規定ニ依ル庶民金庫
監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避
シ又ハ其ノ命ズル報〓ヲ爲サザルト
キ
第三十九條左ノ場合ニ於テハ庶民金庫
ノ理事長、理事又ハ監事ヲ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
一本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ
登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登
記ヲ爲シタルトキ
二第三十條ノ規定ニ違反シ書類ヲ備
置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベ
キ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ
爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナクシ
テ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第四十條第十條ノ規定ニ違反シ庶民金
庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者
ハ十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
第四十一條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
第四十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第四十三條主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ
庶民金庫ノ設立ニ關ルス一切ノ事務ヲ
處理セシム
第四十四條設立委員ハ定款ヲ作成シ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十五條定款ニ付主務大臣ノ認可ア
リタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資
ノ拂込ヲ禀請スベシ
第四十六條政府ノ出資ノ拂込アリタルト
キハ庶民金庫ハ之ニ因リテ成立ス此ノ
場合ニ於テハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事
務ヲ庶民金庫理事長ニ引繼グベシ
第四十七條政府ハ第五條ノ規定ニ依リ
交付スル爲昭和十三年度ニ於テ額面千
萬圓ヲ限リ三分半利附公債ヲ發行スル
コトヲ得
第四十八條第十條ノ規定ハ本法施行前
ヨリ行政官廳ノ許可又ハ認可ヲ受ケ使
用スル名稱ニハ之ヲ適用セズ
第四十九條登錄稅法第十九條第七號中
「產業組合中央會」ノ下ニ「、庶民金庫」
ヲ、「產業組合法」ノ下ニ「、庶民金庫法」
ヲ加ヘ同條ニ左ノ一號ヲ加フ
十八庶民金庫ノ業務ノ用ニ供スル不
動產ニ關スル登記
第五十條印紙稅法第五條中第六號ノ次
ニ左ノ一號ヲ加フ
六ノ二庶民金庫ノ業務ニ關スル證書
帳簿及庶民債劵
無盡業法中改正法律案
無盡業法中左ノ通改正ス
第四條中「三萬圓」ヲ「十萬圓」ニ、「一萬五
千圓」ヲ「五萬圓」ニ改ム
第十條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項第四號ノ規定ニ依ル貸付金額中旣
ニ拂込ミタル金額ヲ超過スル額ニ付テ
ハ確實ナル擔保又ハ保證アルコトヲ要
ス
第二十一條ノ二無盡會社ガ合併ノ決議
ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條
第二項ノ規定ニ依リテ爲スベキ催告ハ掛
金者ニ對シテハ之ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十一條ノ三無盡會社ガ合併ノ決議
ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條
第二項但書ノ期間ハ一月迄之ヲ下スコ
トヲ得合併ニ因ル株式併合ノ場合ニ於
テ商法第二百二十條ノ二但書ノ期間ニ
付亦同ジ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前免許ヲ受ケタル無盡會社ニシ
テ本法施行ノ際現ニ存スルモノニ付テハ
第四條ノ改正規定ニ拘ラズ本法施行後五
年ヲ限リ仍從前ノ規定ニ依ル
本法施行前免許ヲ受ケタル無盡會社ニシ
テ前項ノ期限迄ニ第四條ノ改正規定ノ要
件ヲ具備セザルモノガ其ノ期限迄ニ爲シ
タル無盡契約ニ付テハ之ガ完了ニ至ル迄其
ノ契約ニ關スル業務ニ限リ之ヲ繼續スル
コトヲ得
前項ノ場合ニ於テ無盡會社ガ前項ノ業務
以外ニ無盡業ヲ營ミタルトキハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=66
-
067・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ庶民金庫法案及ビ無盡業法中改正法
律案提案ノ理由ヲ說明致シマス
先ヅ庶民金庫法案ニ付テ御說明申上ゲマ
ス、我國ノ庶民金融ノ現狀ヲ見マスルニ、信用組
合、無盡會社、質屋等ノ所謂庶民金融機關ガ
アリマシテ、ソレ〓〓獨自ノ活動ヲ致シテ居
リマスガ、普通銀行、貯蓄銀行及ビ特別銀
行等ニ於キマシテモ、相當此方面ニ貢獻ヲ
致シテ參ッテ居ルノデアリマス、殊ニ政府ハ
過般損失補償制度ノ擴張ヲ行ヒマシテ、是
等旣設金融機關ノ活動ニ積極性ヲ與ヘンコ
トヲ期待シテ居ルノデアリマス、併ナガラ
是等ノミヲ以テ致シマシテハ、庶民階級ニ
對スル金融、殊ニ小口無擔保金融ノ疏通ニ
付テ尙ホ不十分デアルト思ハレルノデアリ
マス、申ス迄モナク所謂庶民階級ハ我ガ國
民中ノ大部分ヲ占メテ居ルノデアリマシテ、
此階級ニ對スル金融ノ圓滑ヲ圖リ、其生活
ノ安定ニ資シマスルコトハ、最モ肝要ノコ
トデアルト信ズルノデアリマス、是ニ於キ
マシテ今囘政府ハ本法案ニ依リ、一千万圓
ノ政府出資ヲ致シ、純非營利ノ庶民金庫
ヲ創設致シマシテ、旣設機關ヲ以テシテハ
十分ナル融資ニ惠マレザリシ中小產業者及
ビ勤勞所得者等ニ對シ、小口信用貸付ノ疏
通ノ圓滑ヲ圖リ、以テ國民生活ノ安定ニ資
セントスル次第デアリマス
次ニ無盡業法中改正法律案ニ付テ說明致
シマス、無盡業法ハ御承知ノ通リ昭和六年
ニ全面的改正ヲ行ッタノデアリマスガ、其後
無盡業ハ更ニ發展致シマシテ、現在無盡會
社數二百四十七、其給付契約高ハ十六億圓
ヲ超ユルノ狀況ト相成ッタノデアリマスル
ガ、斯樣ナ發展ニ伴ヒマシテ、一層其信用
ノ向上ヲ圖リ、且ツ益〓其機能ヲ發揮セシメ
マスルガ爲ニ、無盡會社ノ最低資本金、給
付金限度、貸付ノ制限規定等ニ改正ヲ加フ
ルコトヲ適當ト認メマシタノデ、茲ニ無盡
業法中改正法律案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、何卒御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=67
-
068・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通〓ガアリ
やっ、之ヲ許シマス、松田正一君
〔松田正一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=68
-
069・松田正一
○松田正一君 私ハ議題トナッテ居リマス
ル庶民金庫法案ニ付テ政府ノ御意見ヲ承リ
タイノデアリマス、今日マデ政府ハ中小商
工中央金庫或ハ產業組合中央金庫、マダ外
ニモアリマセウガ、色々中產階級ノ者ニ對
スル金融機關ヲ企テラレテ居ル、ソレガ實
施ニ當ッテ實際ノ成績ヲ眺メテ見マスルト、
一向成績ガ擧ッテ居ラヌト云フコトハ事實
デアル、之ヲ取調ベテ見マスルト、眞ノ中
小商工業者ハ救ハレテ居ラヌ、其名目ハ中
小商工組合ト申シマスケレドモ、十分信用
ノアル者ハ相手ニシテ居ルガ、銀行其他デ
忘レラレテ相手ニシテ吳レヌ者ニハ是ガ發
動致シテ居ラヌ、現在產業組合中央金庫ノ
一億圓ノ金ハ何處へ行ッテ居ルカ、大體公債
ニナッテシマッテ居ッテ、實際ハ其活用ヲ致シ
テ居リマセヌ、ソレデ今此庶民金庫ト云フ
モノヲ作ッテ、眞ニ中小商工業者ノ資金調達
ニ便ナラシメ、又勤勞所得者ニ對シテ金ヲ
貸シテヤルト云フ法律ノ名前ハ好イガ、今
マデノ事例ニ徵シマスルト、果シテ是デ成
績ガ擧ルカドウカ、ソレデ政府ニ御伺致シ
タイノダガ、庶民階級ニ對スル金融ノ圓滑
ヲ圖ルト云フガ、政府ノ思ハレテ居ル所ノ
庶民階級ト云フノハ、一體ドンナモノカ、
此庶民階級ノ定義ヲ承リタイ(「飯ヲ食へナ
イ者ダヨ」ト呼フ者アリ)キット此法律ノ實
施ニ當ッテハ飯ノ食へナイ人ハ忘レラレル
ニ相違ナイ、吾々ノ叫ブ所ハ其階級ヲ謂フ
ノデアル、ダカラ此際念ヲ入レテ定義ヲ承ッテ
置ク必要ガアル、又今大藏大臣モ此金ヲ
貸シテ國民生活ノ安定ヲ圖ルト言ハレル
ガ、果シテ是デ國民生活ノ安定ガ圖レルカ
ドウカト云フコトニ付テ一點承リタイト思
フ、政府ガ金ヲ出シテ貸サウト云フ其一千
万圓ハ何處カラ出テ來テ居ルカ、民間カラ
吸收シタ金デアル、ダカラ公債ニデモソレ
ハ出資出來ルコトニナッテ居ル、其公債ヲ持
ツ金ハ何處カラ集メテ來タカト云フコト、
二分七厘餘リノ利息デ民間カラ吸收シテ來
タ金デアル、ソレヲ此庶民金庫デ貸スノニ
ハ八分デ貸サウト云フ、馬鹿ゲタ高イ金デ
アル、此前ニ議セラレマシタ恩給金庫ノア
ノ金ハ年九分デ貸スト言ハレル、二分七厘
デ集メテ來タ金ヲ三倍以上ノ利息デ貸出
ス、ソレハ餘リヒドイデハナイカ、今民間
デヤッテ居リマスル庶民階級ニ對スル貸付
ヲ見マスノニ、五百圓ノ金ヲ五十箇月月賦
デ貸スモノト致シマスレバ、一番便利ニ借
リテ居ル者ハ、五十箇月ニ九十七圓利息ヲ
拂ッタラ宜イ、此庶民金庫法案ノ率ヲ以テ見
マスト、先ヅ三百圓ヲ主ニ貸出シスルヤウ
ダガ、假ニ五百圓ト致シテ--千圓ト云フ
コトニナッテ居リマスケレドモ、大體ハ三百
圓程度ト云フノデアル、五百圓ト見マシテ、
之ヲ三年以內ニ返サスト云フノダガ、三年
以內ニ返スモノヲ、先ヅ民間デヤッテ居ル五
十箇月ノモノニ換算シテ見マスト、庶民金
庫ノ利息ノ取立ハ五百圓ノ金デ五十箇月
ニ百六十七圓取ッテ居ル、サウスルト民間ガ
一番便利ニ貸シテ居ルノハ、五十箇月ニ九
十七圓、最モ高イモノデハ、五十箇月ニ百三
十四圓取ッテ居ル、是ガ平均ノモノデアル、サ
ウスルト民間デ今庶民金融機關ヲヤッテ居
ルモノト、今度出來ル此庶民金庫ノ貸出利
息トノ差ガ、五十箇月ノ間ニ大ニシテ七十
圓小ニシテ三十三圓庶民金庫ノ方ガ高イ
コトニナル、是デ政府ガ此法案ヲ作ッテ、庶
民金融ヲ圓滑ナラシメ、國民生活ノ安定ヲ
圖ルト言ヒマスルガ、今ノ儘ノ利息デ借リ
タナラバ、勤勞所得者ノ如キハ、生活安定ド
コロノ話デハナイ、コンナ高イ利息デハ恐
ラク生活不安ヲ來シマス、一體政府ガ今迄
ノ低利資金ダトカ、或ハ種々ナル方法ヲ以
テ、政府ノ預金部カラ民間ニ還元サシテ居
ル金ハ、少イモノデ年三分ノ利鞘ヲ取ッテ居
ルガ、其一番少イモノハ、ソレハ微々タル
モノデアリマシテ、庶民階級其他ノモノニ
還元サレテ居ルモノハ、大體三分ノ利鞘ヲ
取ッテ居ル、此庶民金庫ハ五分三厘ノ利鞘ヲ
取ッテ居ル、恐ラク民間デモコンナ利鞘ヲ
取ッテ居ル者ハアリマセヌ、民間ノ金ハ高ク
付イテ居リマス、二分七厘位デハ入ッテ來マ
セヌ、ダカラ此利息ヲ下ゲテヤッテ、サウシ
テ眞ニ勤勞所得者ガ働イテ返シテ行ケル程
度ニシテヤラナケレバナラヌ、三年ノ間ニ
年八分ノ利息ヲ附ケテ返ストシタナラバ、
三百圓ノ金ヲ借リテ、親子五人アッタナラ
バ、到底返セマセヌ、ダカラモット年期ヲ長
クシテヤッテ、サウシテ利率ヲ下ゲテヤラナ
ケレバ、キット此金ヲ使フ者ガアリマセヌ、
此處デ申シテ置キマス、コンナ利デ是ガ通
過致シマシタナラバ、其成績ハ斷ジテ擧リ
マセヌ
ソレデ又法案ノ中ニ書イテアルコトガ面
白イ、銀行トカ、信用組合トカ、外ノ金融
機關ニ之ヲ代行セシメルト書イテアル、誰
ガ之ヲ代行出來マスカ、此高イ金ヲ借リテ
代行シタラ、一割以上ノ金ニナリマス、三
分六厘位ノ公債ガ賣レヌト云フ時ニ、恐ラ
クソンナコトハ出來マセヌ、此條文ニ書イ
タコト自身ガ天下ノ笑ハレモノデゴザイマ
ス、實際ニ普通銀行、其他貯蓄銀行、信用
組合、產業組合ハ此金ヲ借リテ何トシテ廻
シマスカ、社會ノ實際ヲ御承知デナイカラ
サウ云フ風ニ思ハレルノデス、政府ハ曰ク、
是ハ貸シテ損スルカモ知レヌカラ、其損ヲ
見込ンデ利息ヲ高クシテアル、誰レモ金ヲ
貸ス者ガ恐ラク損ヲ見込マヌ者ハ一人モア
リマセヌ、擔保ヲ取ッテ居ッテモ、擔保ガ下
落スレバ損ヲスル、民間ノ金ノ高イノハ皆
ソレヲ見込ンデ居ルノデアルガ、コンナ五
分三厘モ利鞘ヲ取ッテ行クナラバ、大體損ハ
ドレ位ニ見込マレテ居ルノデアルカ、是デ
アッタナラバ大部分損ヲシテモ是デ償ヘル
ヤウニ思ハレル、政府ハ暴利取締令ト云フ
モノヲ作ラレテ、賣惜ミダトカ、買占ダト
カ、或ハ高ク利ヲ取ッテ賣買シタナラバ暴
利取締令ニ掛ケルト云フノダガ、二分七厘
內外デ集メタ金ヲ、三倍以上ノ利息ヲ取ッテ
貸シテ居ッテ、是ハ暴利ニナラヌノカ(拍手)物
ト利息トノ差コソアレ、利息ハ暴利取締令
ニハ掛ラヌカラ宜イト言ハレルカモ知レマ
セヌガ、ソコガ政府ノ反省スベキ所デアル、
利息ト物トノ差コソアレ、暴利ヲ取ッテ居ル
點ハ一ツデアル、政府ハ暴利取締令ヲ發シ
テ世ノ中ノ暴利ヲ取締ッテ居ルガ、政府自ラ
利息ノ暴利ノ取締ヲ受ケルト云フヤウナ、
コンナ法案ニハ吾々ハ直接贊成ハ出來ナイ
ノデアル、成程恩給金庫ト云ヒ、庶民金庫
ト云ヒ、名前ハ立派デアルガ、內容ハザット
斯ノ如シ、庶民金庫、恩給金庫ト云フ美名
ヲ藉リテ、政府ガ利息ノ鞘ヲ稼グト云フ此
法案ニ對シテ、私ノ政府ニ對スル質問ハ、
之ヲ十年位ノ期間ニシテ返濟出來ルコトニ
シ、サウシテ利息ハ五分程度ニ引下ゲテ貰
ヒマスト、勤勞所得者ノ如キハ、五人家內
アルモノトシテ、大體算盤ガ出テ來マスガ、
サウ云フコトニ爲ス意思ハナイカドウカト
云フコトヲ簡單ニ御伺致シマシテ、私ノ質
問ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=69
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070・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答申上ゲマ
ス、庶民階級ト云フ意義如何ト云フコトデ
アリマスガ、私ハ學者デアリマセヌノデ能
ク分リマセヌガ、餘リ財產ノナイ、收入ノ
多額ニナイ國民ノ多數ノ層ヲ考ヘテ居リマ
ス、殊ニ此庶民金庫法案ノ對象ト致シテ居
リマスルモノハ、大體ニ於テ財產ノ無イ人
デアリマス、借金ヲシヨウニモ擔保物ヲ持
タナイ、斯ウ云フ層ヲ對象トシテ考ヘテ居
ルノデアリマス
ソレデ八分ノ金利ガ高イト云フ御話デア
リマスガ、是ハ庶民金庫ガ四分ノ元價ノ
資金ヲ得マシタ時ニ、四分ノ危險率ヲ見
テ、八分ト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデ
アリマス、資金ハ預金部ニ於テ調達致シ
マスルナラバ最低三分二厘乃至三分五
厘デ得ラレルト思ヒマス、其外ノ場合モ
考ヘマシテ、平均四分ト致シテ居リマスル
ガ、平均ヲ致シテモット安イ資金ガ得ラ
レマスルナラバ、ソレニ四分ヲ加ヘタ程
度ニ致スノデアリマス、是ガ何故高イカ安
イカト申ス問題デアリマスルガ、此庶民金
庫ノ組織ハ、全然非營利法人デアリマ
ス、出資ハ國家バカリデアリマシテ、他
出資者ヲ求メテ居リマセヌ、ト申シマスル
ノハ、何等配當ヲ致ス豫定ヲシテナイ非營
利デアリマスルカラ、國家以外ノ出資ヲ今
求メテ居ナイノデアリマス、其上ニ營業費
トシテ年額數十万圓ノ國家ノ補助ヲ致スノ
デアリマシテ、御話ノ如ク是ハ高利ヲ貪ル
モノデナクテ、全然非營利ナノデアリマシ
テ、其點ハ我國始ッテ以來ノ組織デアリマ
ス、銀行等ニ於キマシテ、モウ少シ安イ利
息デ貸セルト云フ御話デアリマスルガ、ソ
レハ大〓ノ場合ニ相當擔保ガアルノデアリ
きく。且又ナイ場合ニ致シマスレバ、平生
ノ取引カラ能ク相手ノ分ッテ居ル先デアリ
やく、サウ云フ人々ハ從來金融ノ便宜ヲ得
テ居ルノデアリマスガ、擔保モ十分ナク、
金融業者ト連絡ノナイ、已ムヲ得ズ高利デ
モ借リルト云フ人ヲ對象ニ致スノデアリマ
ス、現在ノ個人金融業者カラ借リテ居リマ
スル場合ヨリハ、此八分ノ利息デモ相當安
イノデアリマス、尙ホ此業務ニ習熟ヲ致シ
マシテ、債務者ガ誠意ヲ以テ返還ヲ致シマ
スルナラバ、危險率ガ減ッテ參リマス、危險
率ガ半分ニナレバ六分デ貸シマス、零ニナ
レバ四分デ貸シマス、是ハ一ニ債務者自身
ノ考ヘ方ト、此金庫ノ業務ニ習熟スルカド
ウカト云フコトノ如何ニ係ルノデアリマ
ス、少シモ是ハ利鞘ヲ取ル考ハ持ッテ居リ
マセヌ、隨テ他ノ金融機關ニ此金庫ガ資金
ヲ融通致シマスル場合ハ、自分デ得マシタ
資金ノ「コスト」ニ、殆ド其鞘ヲ見ルコトナク
之ヲ貸スノデアリマス、代行ヲ致シマスル
場合モ八分デ貸スノデ、其代行機關ノ各種
ノ危險率等ハ八分ノ中ニ含ンデ居ルノデア
リマス、左樣御承知ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=70
-
071・松田正一
○松田正一君 簡單デスカラ此席ヨリ御許
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=71
-
072・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=72
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073・松田正一
○松田正一君 大臣ノ御答辯ヲ承リマシテ
愈〓私ノ疑問ハ殖エタノデアリマスガ、是ハ
他ノ機會ニ於テ質問ヲスルコトニ致シマシ
テ、本日ハ之ヲ以テ私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=73
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074・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 依光好秋君
〔依光好秋君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=74
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075・依光好秋
○依光好秋君 私ハ只今提案サレマシタル
庶民金庫法案ニ對シマシテ、大藏大臣ト農
林大臣ニ向ッテ二三ノ質問ヲ發シタイノデ
ゴザイマスルガ、農林大臣ハ只今委員會ニ
出席サレテ御出ガナイサウデゴザイマスル
カラ、政務官ヨリ一ツ後デユックリト私ノ申
上ゲルコトヲ御傳ヘ願ッテ、適當ナ機會ニ於
テハッキリトシタ御答辯ヲ要求スル譯デゴ
ザイマス
只今松田君カラ縷々御質問ガゴザイマシ
ク、松田君ハ其道ノ玄人筋デゴザイマス、
非常ニ私共ノ氣付カナイ所ヲ多々御述ニ
ナッタノデゴザイマスルガ、其中ニ私ノ思ト
又同一ノモノモゴザイマシタノデ、此點ハ
省略致シマス
時間モ非常ニ逼迫シテ來マシタノデ、
私ハ大藏大臣ノ所謂大乘的ナ立場ニ立チ
マシテ、玆ニ本法案ノ骨子トスル所、脊
筋トスル所ノモノニ付テ、二三ノ質問ヲ
發シタイト存ズルノデゴザイマス、只今
大藏大臣ヨリ提案理由ノ御說明ヲ承リマ
シテ、尙ホ總則等ニ付テ私共ガ檢討シテ見
マスルト、本法ノ精神トスル所ハ都市ニ於
ケル中小商工業者、及ビ勤勞所得者ノ金融
ノ疏通ヲ圓滑ニ爲スヲ目的トスルモノデ
アッテ、其金融ヲ、現在所謂高利貸ト總稱セ
ラルヽ個人金融業者ニ依存シツヽアル所ノ
階級ヲ對象トシテ資金ノ融通ヲ爲スト云フ
コトガ、1ハッキリリッテ來タノデゴザイマ
ス、大藏大臣モ只今申サレマシタヤウニ、
是等都市ニ住居スル庶民階級ニ對スル金融
機關ト致シマシテハ、現在信用組合、工業
組合、商業組合、無盡會社等ノ專門的ナ各
種機關ヲ有スル外ニ、普通銀行、貯蓄銀行
等ニシテ、專ラ此種金融ニ活動シツヽアル
モノガ相當アルノデゴザイマス、又社會奉
仕的事業ト致シマシテハ、是等ノ方面ニ進
出シテ居ル銀行モ少クナイノデアリマスル
ガ、其金融ノ實體ヲ具サニ檢討シテ見マスル
ト、依然トシテ日步二十錢、四十錢、月利實ニ
六分、高キハ一割二分ト云ッタ法外ナ高金利
デ金融シテ居ルモノガ主體デアルト言フモ過
言デナイ程ニ、惡德金融ガ跋扈致シマシテ、
ソレガ爲ニ泣キツヽアル所ノ庶民階級ガ實
ニ多數アルノデゴザイマス、我黨ハ特ニ此
點ニ留意致シマシテ、昨年モ銃後ノ經濟調
査ニ澤山ノ人ヲ出シマシテ、是等ノ方面ニ
就テ調査致シタノデゴザイマス、政府ガ今
囘是ガ打開策トシテ本案ヲ制定セラレント
スルコトハ、私共洵ニ同感デアリマス、大
イニ多トスルモノデアリマスルガ、併ナガ
ラ庶民金融ノ改善ガ必要デアルカラト云ッ
テ、私共ハ直チニ此庶民金庫法案ガ適切デ
アルトハ言ヒ得ナイノデアリマス、適切デ
アルトシテ直チニ又鵜呑ミニスルコトモ出
來ナイノデゴザイマス、大藏大臣ガ只今言
ハレマシタ所ノ御說明ニ依リマスルト、其
包裝ハ如何ニモ美シイノデアルガ、其中味
ガ果シテ美味滋養物デアルカドウカト云フ
コトハ、實ニ疑ハシイ點ガアルノデゴザイ
マス、吾々ハ此一見如何ニモ美麗デアッテ、オ
イシサウナ庶民金庫法案ノ包ヲ解キマシテ、
劇毒物カ又ハ滋養物カヲ愼重ニ吟味シタ上
デ、初メテ之ヲ口ニシタイト存ズルノデゴ
ザイマス、以下私ハ二三ノ意見ヲ述ベテ政
府當局ノ意ノアル所ヲ質シテ見タイト思ヒ
マス
先ヅ第一ニ私ハ大藏大臣ニ御伺致シタイ
コトハ、中小商工業者及ビ勤勞所得者ニ對
シテ、小口ノ產業資金又ハ生計資金ヲ貸付
スルコト、本金庫ト同樣ナ小口貸付ヲ爲ス
金融機關ニ對シテ、其小口貸付ヲ爲スニ必
要ナル資金ヲ融通スルコト、此二本建デ進
ンデ居ラレルヤウデゴザイマスルガ、政府
ハ此金庫直接ガ庶民ニ對シテ小口貸付スル
コトヲ主トシテ居ルノカ、此點ニ力ヲ入レテ
居ルノカ、但シハ所謂庶民金融機關ト稱ス
ル無盡會社トカ、信用組合トカ、是等ノモ
ノニ力ヲ入レテ居ルノカ、此點デアリマス、
當局ノ意向トシテ傳ヘラレル所ヲ聞キマス
ルト、專ラ庶民金庫自體ガ直接小口貸付ヲ
爲スノデアッテ、庶民金融機關ノ代理貸付ハ
附隨的ニ例外トシテ行フモノデアッテ、隨テ
金庫自體ノ直接貸付ヲ主トスルトノコトデ
アリマスルガ、果シテ然ラバ本金庫ノ何等
庶民階級トハ交涉連絡ノナイ、人物、信用
等ニ付テモ熟知セザル所ノ人々ガ金庫ノ窓
口ニ來ッテ、所用ノ借入申込ノアッタ場合、
之ニ對シテ金庫ハ簡易迅速且ツ低利ニ資金
ヲ融通スルコトヲ主業トスルモノデナケレ
バナリマセヌ、併シ斯樣ナコトハ從來ノ此
種諸事樣ノ實蹟ニ鑑ミマシテ、到底圓滑ヲ
期シ得ルモノデハアリマセヌ、私ハ斯ルヤ
リ方ハ金融企業トシテハ全ク不可能ノコト
デアルト信ズル者デアリマス、故ニ金庫業
務ヲ遂行スルガ爲ニハ、其好ムト好マザル
トニ拘ラズ、本法第三條ニ規定スル所ニ依ッ
テ、是等庶民階級ト常ニ接觸交際ガアリ、
且ツ地盤ヲ有スル所ノ銀行、信用組合、無
盡會社等ヲ利用シテ、是等ノ手ニ依ッテ代理
貸付ヲ行フノ外途ナキモノト考ヘルノデア
リマスルガ、政府當局ハ此點ヲ如何ニ御考
ニナッテ居ルノデゴザイマスルカ、此點ヲ先
ヅ御伺シタイノデアリマス
次ニ本法ノ第三條ヲ見マスルト「庶民金
庫ハ銀行、無盡會社及產業組合法第一條第
四項ノ規定ニ依リ手形ノ割引又ハ貯金ノ取
扱ヲ爲ス信用組合ヲシテ業務ノ一部ヲ代理
セシムルコトヲ得、庶民金庫ハ金融機關ヲ
シテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ、金融機關ハ
庶民金庫ノ貸付ヲ代理シタル場合ニ於テハ
庶民金庫ニ對シ債務者ノ爲ニ命令ノ定ムル
所ニ依リ債務ノ保證ヲ爲スコトヲ得」トア
ルノデアリマス、此代理機關ノ債務ノ保證
ト云フコトニ付テ、果シテ當局ノ御考ニナッ
テ居ルヤウニ、旨ク行クカドウカト云フ點
ヲ質シテ見タイト思フノデアリマス、固
ヨリ本金庫ガ一ツノ金融經營デアル以上ハ、
其經營ガ所期ノ目的通リ成立ッテ行クト云
フコトガ、業務執行上第一ニ考ヘラレネバ
ナラヌコトデアリマシテ、隨テ此貸付金ノ
囘收ガ的確デナケレバナラヌ所カラ、是ガ
代理機關ニ債務保證ヲ爲サシムルト云フコ
トガ、代理認許ノ重大要件トシテ一應ハ考
ヘラレル所デゴザイマスルガ、併シ此場合
是等代理機關ガ自己從來ノ業務ト同一責任
ノ上ニ立クサレテ居ナガラ、代理業務デア
ルカラト云ッテ、自己從來ノ營業領域以
外ニマデ進出シテ、寛大ナル貸付ヲ行フ
モノトハ考へ得ナイノデアリマス、庶民金
融改善ノ根本問題ハ、庶民階級ノ信用ヲ增
大シ、金融機關ガ何時デモ安心シテ融通シ
得ル方法ヲ講ズルカ、又ハ多少ノ囘收不能
ニ依ッテ損失ヲ被ル場合ガアッテモ、金融機
關ノ經營ヲ害セザルダケノ補償方法ヲ講ジ
テヤルカ、此二途何レカニ依ラネバナラヌ
ト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、然ルニ本
金庫ノ代理貸付ヲ行フ場合ニハ、是等金融
機關ハ本金庫ニ對シ債務履行ノ責ヲ負ハネ
バナラヌノデアルカラ、此危險ハ自己本來
ノ貸付ト少シモ變ル所ガナク、隨テ本金庫
ガ如何ニ多クノ運用資金ヲ供給シテ代理貸
付ヲ廣ク行ハシメヨウトシテモ、債務者ノ
信用少ク、又之ヲ知ルコトガ甚ダ困難ナ爲
ニ、貸付ノ囘收ヲ確保シ、安心シテ融通
スルコトガ出來ナイノデアリマシテ、結局
代理機關ノ活動ハ不活潑トナッテシマフ、現
在ノ庶民金融ノ惱ミハ少シモ除カレザル結
果ヲ生ズルコトヲ私ハ考ヘルノデアリマス、
故ニ斯ル規定ノ下ニ銀行、信用組合、無盡
會社等ニ代理貸付ヲ爲サシメテモ、庶民階
級ニ對スル貸付ガ促進サレマシテ、庶民金
融ガ改善サレルモノトハ考ヘ得ナイノデア
リマスルガ、大藏當局ノ御意見ハ如何デア
リマセウカ
第三ニ私ガ御尋致シタイノハ-此處ガ
最モ私ノ尋ネントスル重點デアル、本金庫
ハ結局俸給生活者、就中官吏ノ金融施設ト
シテノミ役立ツコトニナリハセヌカト云フ
點デアリマス、卽チ前述ノ通リ直接貸ニ依ッ
テ、其機能ヲ發揮スルコトハ困難デアリ、
サリトテ代理貸付ニ依ル成果ハ到底期シ難
イトナルナラバ結局國家ガ其生活ヲ保障
シテ居ル所ノ官吏カ、又ハ信用アル會社ノ
社員、ソレ等ノ人々ニノミ此業務ノ發展性
ヲ望ミ得ルコトトナッテシマフノデハナイ
カト考ヘルノデアリマス(拍手)今日高利貸
ガ其常套手段トシテ、債務者ノ俸給其他ノ
收入ノ受取權ノ委任、上席者ノ保證等ヲ要
求スルノハ、何モ物好キニ斯ル面倒ナ手續
ヲ敢テスル譯デハナクシテ、其債權確保ガ斯
ル方法ニ依ル外ナキニ基クモノデアリマス
(拍手)故ニ本金庫ニ於テモ是ト類似ノ方法
ヲ採ルニアラザレバ其業務ハ非常ナ不安
ニ曝サレルコトトナリマス、然ルニ此種ノ
確保手段ハ俸給生活者ニ對シテコソ考ヘラ
レルガ、巷ニ散在スル小商工業者ニ對シテ
ハ、單ニ職業ノ區別トカ、賣上高ノ增減ト
カ、又ハ風聞的ナ信用狀態ノ一部ヲ窺知ス
ルニ止マリ、的確ナ安心ノ出來ル貸付方法
ハ到底考ヘラレヌノデアリマス、近頃高利
貸ノ上得意ガ漸次ニ俸給生活者ニ偏リツ
アルノハ、之ヲ如實ニ物語ッテ居ルト私ハ
思フノデアリマス、故ニ小商工業ニ對シテ
ハ、高金利ニ依リ其囘收不能ニ陷ック損失
ヲ補塡シテ行ク方法ヲ講ズル以外ニ、良方
法ガ考ヘ得ラレナイノデアリマシテ、如何
ニ机上ニ於テ論議ヲサレマシテモ、本金庫
ノ小商工業者ニ對スル效果ハ期待シ得ナイ
ノデアリマス、斯ク論ジ來リマスル時ハ、
如何ニ當局ガ强辯サレマシテモ、本金庫ガ
假リニ旨ク行ッテモ、單ナル俸給生活者ノ金
融機關トナッテシマフト云フコトヲ、私ハ斷
言シテ憚ラナイ者デアリマス(拍手)巷間傳
フル所ニ依リマスレバ、本金庫法案ハ、政
府ガ恩給金庫案ノ提出ヲ迫ラレタ結果、ソ
レノミノ提出ガ官吏偏重ノ政策デアルトノ
非難ヲ免レンガ爲ニ其申譯ニ全俸給生活
者ニ對シテモ、斯ウ云フ施設モアルノデア
ルト云フコトヲ表明センガ爲ニ、强ヒテ考
へ出サレタモノデアルト云フコトデアルガ、
蓋シ此批判ニ對シテ政府當局ハ內心忸怩タ
ルモノナキヤヲ疑フモノデアル、併シ是等
ノ非難ヲ免レテ、當局ガ玆ニ主張スルガ如
キ活潑ナル活動ヲ爲サンガ爲ニハ、本金庫
ハ數年ヲ出デズシデ大ナル損失ヲ招キ、其
經營ハ一頓挫ヲ來スコト火ヲ賭ルヨリ明カ
デアルト思フガ、政府當局ノ之ニ對スル御
意見ハドウデアルカ、ハッキリ御答ヲ願ヒタ
イノデアル尤モ本金庫ハ其出資ノ一千万
圓ハ政府ノ支出ノミニ限ラレ、之ニ對シテ
永久ニ利益配當ヲ爲スノ必要ナク、豫算外
國庫負擔契約ニ依ッテ補助金ガ交付セラ
レ、金利ノ點ヨリシテ專ラ預金部資金又
ハ簡易保險積立金ニ依存スルノ外ナシ
ト考ヘラルヽ發行最高限度一億圓ノ債劵
ハ、其元利支拂ガ保證サレテ居ル、斯ウ
云ッタ金庫ノ經營ガ困難デアルコトヲ
豫想シテ、其救濟策トシテ未ダ曾テ類例
ヲ見ザル所ノ大ナル特典ヲ與ヘラレテ居ル
ト云フコトヲ發見サレルノデアリマス、其
政府ノ機牲トナル特典ヲ利用スルナレバ、
相當效果アル活動ヲ爲スコトハ考ヘラレマ
スルガ、特典ヲ特典ナリトシテ、政府ノ犧
牲ヲ文字通リニ求メルコトトナレバ、之ヲ
農村ニ對スル諸類似ノ施設ニ比較シテ、洵
ニ霄壤ノ相違アルモノト言ハネバナリマセ
ヌ、例ヘバ農村ニ對スル此種類似施設デア
ル所ノ負債整理資金融通ニ見ルモ、其損失
補償ハ僅ニ三割ニ過ギナイノデアリマス、
而モ其損失補償ヲ受クル場合ハ、損失審査
委員會ノ嚴重ナル査定ノ下ニ行ハレルモノ
デアリマス、デアリマスカラ、三割補償ガア
ルカラト云ッテ、ソレヲ融通スル機關ハ左程
寛大ナル貸付ヲ爲シ得ヌ狀態ニ置カレテ居
ルノデアリマス、然ルニ本金庫ニ對スル一
億圓マデノ債劵ノ元利支拂補償ニハ何等
斯ル制限ガ存シテ居ナイノデアリマス、斯
ク言ヘバ當局ハ、一方ハ直接ナル損失ノ補
償デアッテ、他方ハ債劵發行ニ對スル保證デ
アルト主張スルデアラウガ、本債劵ハ如何ニ
割引發行ガ認メラレ、又時代ガ低金利時代
デアアルトハ言ヘ、最終年八步ノ金利ノ融
通ヲ爲シ得ルニ對應シタル「コスト」ノ資金
ヲ求ムル爲ニ發行サルヽ債劵ノ引受ハ、大
藏當局ガ考ヘテ居ルガ如ク、預金部又ハ簡
保積立金ニ依存スルノ外ナシト考ヘラレル
ガ、其點ハドウデアリマセウカ、隨テ特殊
會社ノ從來ノ事例タル外債募集ノ場合ノ元
利支拂保證トハ同文デアッテモ、其性質ハ全
然異ッテ居ル、本金庫貸付金ガ囘收不能ニ
陷ッテ元利ガ支拂ヘヌ場合ニ、ソレヲ支拂フ
ト云フコトヲ意味シテ、損失補償ト何等異
ナラヌ立前ニアルノデアリマス、補償ト保
證ハ用語ハ異ッテ居ルガ、此性質ハ同樣デ
アル、要ハ唯本法ノ採用方法デアッテ、是ガ
甚ダ狡イ方法デアルト云フコトヲ私ハ斷言
スルノデアルガ、此點ニ對シテ政府ノ御所
見ハ如何(拍手)
尙ホ又私ハ第五點トシテ、第十一條ノ役員
規定ニ依リマスト、理事長一人、理事三人、
監事二人ヲ置クトアリマスガ、此理事長、
理事、監事ナルモノハ、一體大藏大臣ハ何
處カラ引張ッテ來テ任命サレルノデアルカ、
私ハ思フ、ソレハ恐ラク大藏省ノ古手官吏
ヲ持ッテ來テ、此處ニ据エルノデハアルマ
イカト思フノデアリマス、果シテ然リトセ
バ、玆ニ一ツノ私ハ疑惧ヲ持ツノデアル、
最近ノ半官半民會社ノ例ヲ見マスト、總テ
官吏ノ古手ヲ持ッテ來テ重役ニ充テテ居ル、
果シテ是デ庶民金融ノ圓滑ガ期セラレルデ
アラウカドウカ、下情ヲ知ラナイ所ノ役人
共ガ、而モ古手ノ役人、恩給ヲ貰ッテ居ル役
人ソレ等ガ斯ウ云ック國家ノ作ック特殊ノ
會社ニ入ッテ、何等連繫ノナイ、何等交渉ノ
ナイ、斯ウ云フ庶民階級ト果シテ斯ウ云フ
取引ガ立派ニ圓滑ニ期待シ得ラレルデアラ
ウカ、甚ダ私ハ疑問ニ堪へナイノデアル(拍
手)
最後ニ私ハ農林大臣ニ御尋シタイノデアリ
マスガ、農林大臣ハ居ラッシャラナイカラ、
政務官カラ一ツ能ク御傳ヘ下スッテ、委員會
デハッキリ御答辯ヲ伺ヒタイ、農林大臣ハ一
體本案ニ對シテ、本當ニ此案ハ良イ案デア
ルト思ッテ居ラレルカドウカ、書イテ置イテ
下サイ(拍手、笑聲)若シ此案ガ良案デアル
ト御贊成ナスッタナラバ、何故農林大臣自身
モ一ツ是ト同ジヤウナ國家ヲ犠牲トシテモ農
村ヲ救フト云ック、大キナ金融機關ヲ御設置
ニナルコトヲ大藏大臣ニ要求シナカッタカ、
是ハ國家ヲ機牲ニシタ案デス、一億圓ト云
フ金ノ囘收ガ付カナクナルト、國家ハ犠牲
ニナルノデアル、ソレデ斯ウ云フヤウナ結
構ナ案ガ提出サレル時代相ニ鑑ミテ、農林
大臣ハ農村ヲ救濟スル一大金融機關ヲ何故
設置サルヽ意思ヲ持ッテ居ラレヌノデアル
カ、今ヤ官僚獨善ノ春風騎蕩トシテ官界ノ
窓口ニ吹キソヨイデ居ルガ、一タど目ヲ農
村漁村ノ窮迫シタル所ノ人々ノ上ニ注グ時
ハ、洵ニ寒心ニ堪ヘヌ、所謂疲弊困憊ノ旋
風ノ中ニ彼等ハ喘イデ居ルノデアル、皇軍
百万ノ忠烈ナル將兵ハ、滿洲、中支、北支
ノ野ニ、海ニ、空ニ、身ヲ切ル寒烈ト鬪ッ
テ、血ヲ以テ祖國ヲ守ッテ居リマス、此多
クノ將士ヲ國ニ捧ゲタ農山漁村ニ於テハ、
サナキダニ疲弊困憊ノ底ニ喘ギツヽアル所
ニ、更ニ一層ノ拍車ヲカケテ、生活ノ不安
ハ日ト共ニ加ハリツヽアル現狀デアリマ
ス、應召家族、遺族ニ對シテハ、國家モ一
般社會モ之ニ對シテ救護扶助ノ方策ヲ樹テ
ラレ、現ニ相當見ルベキ施設ガアルノデア
リマスガ、併シ是等ノ救護對策ハ、依然ト
シテ、官吏其他ノ俸給生活者ニ厚クシテ、
農山村ニ薄キ憾ミガアルノデアリマス、卽
チ當時ノ俸給生活者タリシ將兵ニハ、其家
族ニ對シテ國家ハ官吏タリシ當時ノ全額俸
給ヲ支拂ッテ居ルノデアル、又會社員タリシ
人々ノ家族ニ對シテモ、會社ハ全額ニ近イ
所ノ俸給ノ支拂ヲ續ケツヽアルノデアリマ
スガ、獨リ土ヲ耕シ土ニ生キテ來タ所ノ農
山村ノ出征家族ハドウデアリマスカト云フ
ト、彼等ガ俸給生活者デナカッタ爲ニ、國家
竝ニ社會ノ之ニ對スル露ヒガ甚ダ少イノデ
アリマス(拍手)私ハ昨冬黨ノ命ヲ受ケテ四
國四縣ノ銃後ノ經濟調査ニ出掛ケマシテ、
具サニ農山村ノ實情ヲ見聞シタノデアリマ
スガ、是等出征家族ノ中ニハ是カラハ吾
吾ハ百姓デハ全ク〓ヘヌ、子供ハ將來月給
取リ、就中官吏ニシナケレバナラヌ、斯ウ
云フ官吏萬能ノ世相ニ向ッテ憤懣ノ聲ヲ擧ゲ
テ居ルノヲ聞イテ、私ハ心ヲ寒クシタ次第
デアリマス、是ハ何ヲ物語ルカ、官吏萬能
ノ此聲ガ疲弊セル農村ニハッキリト染ミ込
シダ證左ノ一ツデアル、今度ノ此日支事變
ニ於キマシテモ、確ニ官吏俸給生活者ニハ
厚イガ、農村ニハ薄イ、此眞劍ノ叫ビヲ農
林大臣ガ聽カレタナラバ、是等ノ點ニ付テ
モ大イニ留意サレテ、何カ玆ニ大キナ救濟
施設ヲ施スベキコトガ至當デアルト思フガ、
聞ク所ニ依ルト、當初農林大臣ハ相當ノ農
林施設ヲ立案サレテ、大藏大臣ニ迫ッタノデ
アルガ、其農村豫算ハ殆ド全部削減サレテ
シマッテ、其代リニ本案ノヤウナ非常ニ結構
ナ、一億圓モ國家ガ其犠牲ヲ覺悟デ俸給生
活者ノ救護ニ充テントスル所ノ、庶民金庫
法案ニ變ッテシマッタト云フコトヲ聞クノデ
アリマス、果シテ然リトセバ、農林大臣ハ
モット力强ク、何故ニ農村豫算ノ增額ヲ圖ラ
ナカッタノデアルカ、農林豫算ニ付キマシテ
ハ、此壇上カラ既ニ同僚諸君ガ屢〓痛烈ニ叫
バレマシタノデ、私ハ玆ニ重複ヲ避ケマス
ガ、是ハドウシテモ言ハネバナラヌ、昭和
十三年度ノ總豫算ガ二十八億何千万圓ノ巨
額ニ達シテ居ルノニ、農林豫算ハ其三十分
ノ一ニシカ過ギナイノデアル、而モ一億圓
ノ地方財政交付金ヲ差引ケバ、僅ニ二千万
圓ノ數字ニ止マリ、全ク二階カラ目藥ノ感
ナキヲ得ナイノデアリマス、農林大臣ハ斯
ル世相ニ鑑ミテ、此際緊禪一番、思切ッタ農
民金融機關設置ノ立案ヲナサレテ、借金デ
首ノ廻ラヌ農村ヲ御救ヒナサルノ意思ナキ
ヤ否ヤ、今ヤ借金棒引論ガ農村ノ間ニハ盛
ニ擡頭シテ叫バレテ居ルノデアリマスガ、
農村ノ五十億ノ借金ヲ棒引ニスル勇氣ガア
ルカドウカ、私ハ到底ナカラウト思フガ、
セメテ半分位デモ之ヲ減ジテ、農村ノ負擔
ヲ輕減スル方法ヲ御考ニナッテハドウカ、又
先程申上ゲマシタヤウニ、負債整理ノ國ノ
補償ヲ少クトモ金庫案ノ程度マデ引上ゲル
意思ハナイカアルカ、又大藏大臣ハ農林大
臣ガ此提案ヲ若シ爲サレタ時ニ、之ヲ受入
レルダケノ雅量ヲ御持合セアルヤ否ヤ、是
等ノ點ニ付キマシテ、私ハ農林大臣ハ後廻
シデ宜シイ、大藏大臣ノ率直簡明ナル御答
辯ヲ要求シテ質問ヲ終ル次第デゴザイマス
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=75
-
076・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 私ニ對シマスル
御尋ニ對シマシテ御答申上ゲマスルガ、此
金融機關ハ從來ノ金融機關ヨリ少シ變ッタ
所ヲ行ク積リデアリマス、又行クコトニ依ッ
テ其意味ガアルト思フノデアリマス、從
來ノ金融機關ハ、其元利ノ償還ヲ確保致
シマスル爲ニ、常ニ對物信用ニ重キヲ置
イクノデアリマス、併ナガラ庶民階級、殊
其小ナル方ニ參リマシテハ、對物信用デ
ハ到底金融ノ途ガナイ、併ナガラ金融ノ
途ハドウシテモ此方向ニ進マナケレバ解
決ガ出來ナイノデアリマシテ、是ハ其方向ニ
進マントスル一ツノ企テデアルノデアリマ
ス、別ニ擔保物ハアリマセヌデモ、債務者
ガ償還ノ意念ガ盛デアッテ、且ツ日々ノ生活
カラソレダケヲ割イテ返シ得ルト云フ者ニ
對シマシテ、萬一其債務者ノ健康其他ノ理
由ニ依ッテ是ガ返セナイ場合、火災其他ノ
災厄ニ依リマシテ返セナイヤウナ場合ニ、
ソレヲ餘リ顧慮セズ、債務者ニシテ眞ニ主
觀的ニ債務償還ノ意思ガ確實デアリ、又營
利能力ガアリマスナラバ、其點ニ對シテ金
融ヲシテ行クト云フコトヲ考ヘナケレバ、
今後ハドウシテモイケナイノデアリマス、
サウ致シマスルナラバ、一應多少ノ危險ヲ
蹈込ンデモ之ニ入ラナケレバナラナイノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ之ヲ非營利
法人ト致シ、尙ホ斯ル新シキ方法ノ機關デ
アリマスカラ、其募集致シマスル債劵ニハ
國家ガ元利ノ保證ヲ致スノデアリマシテ、
之ヲ一億圓ヲ全部損ヲシテ貸付ケルト云フ
意思ハ毫モナイノデアリマス、新シク貸付
ノ途ニ相常勇敢ニ進ンデ參リマスル爲ニ
ハ此保證ハ一應必要デアルノデアリマ
ス、左樣ナ方法デアリマスカラ、既設ノ金
融機關ノ熟練サハ借リナケレバナリマセヌ
ケレドモ、頭ハ少シク變ヘテ行カナケレバ
ナラナイ、旣設ノ金融機關ノ、所謂庶民金
融ニ慣レタ人ノ其知識ノ上ニ、今私ノ申上
ゲマシタヤウナ頭ヲ注入シテヤル必要ガア
ルノデアリマス、當初ハ此金庫自ラ多數ノ
店舗ヲ設ケル譯ニハ參リマセヌノデ、各種
金融機關ガ其代理貸付ヲ營ムコトヲ認メル
必要ガアルト思フノデアリマス、是ハ適宜
相當ニ此代理貸付ヲ認メマシテ、又自分ガ
直接ニヤル直接貸付ト併用ヲスル積リデア
リマス、ソレデ信用組合ガ代理貸付ヲ致シ
マスル場合ニ、其債務ヲ保證スルト云フコ
トデアリマスガ、是ハ代理貸付ヲ致ス場合
ニ相當債務者ノ狀況ガ分リマシテ、自ラ危
險ヲ負擔シ得ルト云フ見込ノ付イタ場合デ
アリマス、サウ云フ場合ニハ信用組合ニ對
スル資金ノ融通ハ、先刻申上ゲマシタ危險
料ノ全部若クハ一部ハ之ヲ免除致シマス、
ソレダケ其貸付ヲスル信用組合ハ自ラ危險
ヲ「カバー」致シマスル資源ヲ持ツコトニ相
成ルノデアリマス、此邊ハ信用組合ソレ自
體ノ固有ノ仕事ト相侵サナイヤウニ、適宜
監督ヲ致シテ參ル積リデアリマス、尙ホ此
貸付ノ範圍デアリマスガ、是ハ無論御話ノ
「サラリーマン」其他金融階級モ入リマス
ガ、總テ今申上ゲマシタ物的擔保ヲ持タザ
ル者ニ廣ク行キタイト云フ考デアリマス、
當初カラ何モ彼モト總テハ參リマセヌガ、
廣クサウ云フ階級ニ行ク所ノ新シキ金融手
段ノ一ツノ試ミデアリ企テデアリマス、決
シテ一部ニ局限スル意思ハナイノデアリマ
ス、此機關ノ理事其他監事等ハ、是ハ今申
上ザマシタヤウナ一種ノ機關デアリマスカ
ラ、之ニ對シテ最モ熱心ニ理解ヲ持ツテ働
ク人ヲ必要ト致シマス、政府ハ其適任者ヲ
得ルコトニ努力致ス積リデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=76
-
077・依光好秋
○依光好秋君 簡單デゴザイマスカラ、此
席カラ發言ノ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=77
-
078・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=78
-
079・依光好秋
○依光好秋君 只今ノ大藏大臣ノ御答辯ヲ
承リマシタガ、甚ダ不滿足デアリマス、併
ナガラ時間ノ都合ガゴザイマスノデ、私ハ
詳シイコトヲ總テ委員會ニ讓リマシテ、此
程度デ打切リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=79
-
080・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 井上良次君
〔井上良次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=80
-
081・井上良次
○井上良次君 私ハ最初此本金庫法ノ質問
ニ入リマス前ニ、今日非常時局ノ眞只中ニ
於キマシテ、政府ハ長イ間私共勤勞大衆ガ
待望シテ居リマシタ庶民金庫法案ヲ、非常
ニ困難ナ中ニ、本案ノ內容ハ不滿足ナ點モ
アリマスケレドモ、兎ニ角此議場ニ提案サ
レマシタ其勞苦ニ對シマシテ、私共ハ衷心
カラ敬意ヲ表スル次第デアリマス、最初ニ
御斷リヲ申上ゲテ置キマスガ、私ハ一勞働
者ノ出身デゴザイマシテ、財政經濟金融等ニ
關シマスル重要問題ニ付キマシテハ、マダ
私ハ勉强中デアリマシテ、正直ナ所ハ能ク
分ラナイノデアリマスガ、私ハ長イ勞働生
活ノ苦惱カラ、借金ニ責メラレ、家賃ニ責
メラレテ、悲慘ナ生活ヲシマシタ、此苦惱
ノ經驗カラ本庶民金庫法案ニ對シマスル二
三ノ質問ヲ行ヒタイト考ヘルノデアリマス
其前ニ議員ノ方」申上ゲマスガ、此金庫法
案ハ皆サン方ヲ選擧サレマシタ選擧民ニ取ッ
テハ、直接最モ利害關係ノ深イ法律案デア
リマス、此法律案ヲ審議スルニ(「怒ルナ」
「相手ニスルナ」ト呼フ者アリ)斯ノ如キ不
眞面目ナ狀態デ、是デアナタ方ハ御歸リニ
ナッテ、議會行動ヲ問ハレテドンナ報告ヲシ
マスカ、私共ハモット眞劍ニ考ヘテ居ル譯
デアリマス、私ハ先ヅ此法案ニ對シマスル
三ツノ重要點ニ付テ、質問申上ゲタイノデ
アリマス
先ヅ第一ニ私ハ此金庫案ノ一番ノ缺點ハ、
政府出資ノ資本金ガ少額デアルト云フコト
デアリマス(「其通リ」ト呼フ者アリ)僅カ一
千万圓位ノ金ヲ
〔「不謹愼ナ言葉ヲ使フナ」「議長注意ナ
サイ」「取消セ〓〓」ト呼ヒ其他發言ス
ル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=81
-
082・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 井上君井上
君、只今ノト云フ言葉ハ御
取消ニナッタラドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=82
-
083・井上良次
○井上良次君(續) 今議長ヨリ
ト云フ言葉ハイカヌサウデアリマ
スガ、私ハ勞働者出身デゴザイマシテ、サウ
難カシイ綺麗ナ言葉ハ使ヘマセヌニ依ッテ、
其點ハ一ツアナク方我慢ヲシテ貰ハヌト云
フト困ル、此點ハ一應議長サンニモ、政府
ノ當局ニモ御願ヲシテ置キマス、餘リ私ハ
綺麗ナ上手ナ東京辯ハ使ヘヌノデスカラ、
賴ンデ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=83
-
084・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 今ノ御言葉ハ正式
ニ御取消ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=84
-
085・井上良次
○井上良次君(續) 取消シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=85
-
086・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 宣告致シマス、只今
井上君ハ議長ノ注意ニ依ッテ御取消ニナリ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=86
-
087・井上良次
○井上良次君(續) 僅カ一千万圓位ノ金デ
ハ、其對象トナル曩ニ大藏大臣ノ申シマシ
タ庶民階級ノ數ハ、日本ノ隅々ニ氾濫ヲシ
テ居リマス、政府ハ此法律案、前ニ委員付
託ニナリマシタ恩給金庫法案ニ付キマシテ
ハ、恩給ヲ貰フ方デ金ニ困ル人ダケヲ救濟
シヨウト云フ立前デ、三千万圓ノ資本金ヲ
利用スルコトニナッテ居ルノデアリマス、全
國ニ一體恩給者ハ何人居ルカ、其中デ困ッテ
居ル人ハ何人居ルカ、此困ッテ居ル人ニ對シ
テハ三千万圓ノ金ヲ出シテ、他方擔保モナ
ケレバ今日民間ノ金融施設ニ依ッテハ、到
底救ッテ貰ヘナイ庶民大衆ニ對シテハ一千
万圓ト云フ僅カノ金デ、之ヲ如何ニシテ救
濟シヨウト云フノデスカ、早イ話ガ六大都
市ノ昭和十年十月一日ノ國勢調査ニ依リマス
戶數ヲ調ベマスト、總戶數ハ二百万戶チヨット
デアリマス、之ニ一千万圓ヲ割當テマスト云フ
ト、一軒當リ五圓足ラズデス、勿論皆ガ借ル
譯デハナイケレドモ、六大都市ノ戶數ニ割
當テタダケデモ僅カ五圓シカ當ラナイ、之
ヲ他ノ小都市カラ農村ニ迄分ケテヤッタ日ニ
ハ、二階カラ目藥ドコロデハアリヤセヌ、マ
ルキリ鰻ノ蒲燒ノ佳イ香バカリサセタッテ
少シモ腹ハ膨レハセヌ、勤勞大衆ハ政府ガ
庶民金庫ト云フ、吾々ノ利益ニナル有難イ
金庫ヲ作ッテ吳レタカラ、ヤレ金ガ貸シテ
貰ヘルト思ッテ、大キナ期待ヲ掛ケテ、此法
律案ノ通ルノヲ待ッテ居ル、ダガ待ッテ居ッテ、
イザ借ラウト思ッタラ、ドッコイ待ッタ、サ
ウハ行カス、金ハ足リナイ、斯ウ云フコ
トニナリマスト、大藏大臣ハ此人々ニア
ナタハ會ウテ謝ッテ下サルノデスカ、實
際重大ナル問題デスヨ、金ヲ貸シテヤラウ
ト云ッテ、借レヌト云フコトハ、是ハ普通ノ
民間ノ營利會社ナラバ兎モ角モ、政府ノヤ
ル仕事デアル、其政府ガ困ッテ居ル者ニ金ヲ
貸サウト云フ案デスヨ、ソレニ實際ノ必要
ガ生ジテ借ラウトシマシタナラバ金ガ借
レヌト云フ、此問題ヲ解決スル爲ニハ、ド
ウシテモ政府出資ニ依リマス一千万圓ノ資
本金ヲ、少クトモ五億圓ニ殖ヤス必要ガア
ルト私ハ思ウテ居ル、勿論庶民債劵ニ對シ
マシテ、政府ハ一億圓マデノ債劵ノ發行ニ
對シ、元利ノ保證ヲ致シテ居リマスケレド
干、併ナガラ是ヂヤ足ラヌ、一億圓ヂヤ足
ラヌ、何デ足ラヌト云フコトハ、大藏省ハ
能ク知ッテ居ル、ドウ云フ譯デ能ク知ッテ居
ルカト云フト、大藏省ニ主稅局ト云フノガア
リマスガ、此處デ調べマシタ全國ノ質屋或
ハ又高利貸ガ金融シテ居リマス金ガ何ボア
ルカト云フト)全國ノ質屋ノ貸出金ガ約二
億圓、高利貸ニ約五億圓ヲ借ッテ居リマス、
是ダケノ大キナ金ガ今日民間ノ金融機關カ
ラ「ボイコット」サレテ、止ムニ止マレズ質
屋ノ門ヲ潜ルカ、高利貸ノ袖ニ縋ッテ金融
ノ途ヲ開イテ居ル實情ニアルノデアリマス、
此點カラ考ヘマシテモ、政府ハ少クトモ五
億圓ニ此資本金ヲ增額スルコトガ、今日ノ
實情デハ絕對ニ必要デアリマス、之ニ對ス
ル大藏大臣ノ御答ヲ伺ヒタイノデアリマス、
政府ハ勿論資本金ハ何モ一千万圓シカ文出
シナイノデハナイ、運用ノ必要上入用デアッタ
ラドン〓〓增額シ出資スルノダ、斯ウ云フ
コトヲチヤント規定シテアリマスケレドモ、
ソンナ規定ハ何モスル必要ハナイ、今旣ニ
其必要ガアル、ソレトモアナク方ハ、大資本
金ヲ出シテ旨ク行カナカッタラ困ルカラ、最
初ハ堅イ人ニボチ〓〓貸シテ、次第々々ニ
業務ニ慣レ、色々ノ手續ニモ慣レテ來テ、
見込モ付イテ、是ナラ安全ダト思ウタラ、
次第ニ增額シヨウト御考ヘニナッテ居ルノ
カ、サウナッテ來マスト、ソレハ非常ニ工合
ガ惡イコトニナッテシマフ、ダカラ借リル
者ト借リヌ者トガ出來テ來マスカラ、玆
ドウシテモ政府ニ對スル怨ミノ言葉ガ加ッテ
來ルノデアリマス、此點ハ政府トシテハ
餘程考ヘテ戴キタイ、恐ラク此處ニ御集リ
ノ議員諸君ノ方々ハ、本案ノ政府出資金ノ
增額ニ對シテ反對ハシナイト私ハ思フ、反
對ヲスルヤウダッタラ、ソレハアナタ此次ギ
工合ガ惡イ(「其態度ハ何ダ」ト呼フ者アリ)
其次ニ代行機關ノ問題デアリマスガ、御承
知ノ通リ本金庫ハ銀行及ビ產業組合、信用
組合、或ハ無盡會社等ヲシテ、業務ノ一部
ヲ代行セシメルト云フコトニナッテ居リマ
スガ、私共過去ノ經驗カラ見マスト云フト、
此所謂代行ヲヤルコトニ依ッテ、實際ハ借リ
タイ人ガ借レヌコトニナル點ガアルノデアリ
マス、御承知ノ通リ銀行ハ一種ノ信用デヤッテ
居リマシテ、銀行ガ金ヲ貸シテ、貸シタ金
ノ囘收ガ困難デアルト云フヤウナコトノ噂
ガ立チマスト云フト、銀行自身ノ信用ニ關
ハルノデアリマス、サウ云フ關係カラ銀行
ヲ通シテ金融ヲ行ヒマスト云フ結果ニ於キ
マシテハ、銀行ノ立場カラ考ヘマスト、此人
ナラ金ヲ貸シテモ十分返濟シテ貰ヘルト云
フ見込ノアル人ニ貸スノデアリマス、其關
係カラ銀行ニ信用ヲサレナイ人々ハ、大部
分銀行ヲ通シテ金融ハ恐ラク出來ヌト云フ
コトニナルノデアリマスガ、此點ニ對シテ大
藏大臣ノ御所見ヲ伺ッテ置キタイノデアリ
マス、併シ銀行カラ信用ノナイヤウナ者ニ
金ヲ貸シテモ、本金庫自身モ困ルヂヤナイ
カ、斯ウ云フ御答辯ガアルカモ知レマセヌ
ガ、併シ今日ノ勞働者及ビ中小商工業者程
正直デ實直ナ者ハナイノデアリマス、特ニ
債務ノ辨濟ニ付キマシテハ、非常ニ眞面目
ニ借リタ金ノ返濟ニ對シテノ責任ヲ感ジテ
居ルノデアリマス、之ヲ證明スルニ色々ナ
統計ヲ此處ニ持ッテ居リマスケレドモ、時間
ノ關係デ申上ゲマセヌガ、現ニ大阪府ガ銀
行ノ自己資金ヲ用ヒ、或ハ府自身無擔保ニ
依ル損失補償ノ小口資金ノ融通ヲヤッテ居
リマスガ、此成績ハ大藏大臣モ御存ジノコ
トト存ジマスガ、其成績ハ非常ニ良ク、殆
ド借リタ金ノ大部分ハ返金シテ居ル實情ニ
アルノデアリマス、此成績カラ見マシテモ、
一般勤勞大衆ニ金融ノ途ヲ開イテ、無擔保
デ對人信用ニ依ッテドン〓〓貸シテ居テモ、
決シテ心配ハナイト私ハ考ヘルノデアリマ
スガ、此點ニ對スル大臣ノ御意見ヲ伺ヒタ
イト思フノデアリマス
次ニ曩ニ質問サレタ御方ノ演說ヲ聽イテ
居リマスト、此金庫ニ依ル金融ノ償還期間
ハ三箇年ヲ限度トシテ居ルヤウデアリマス
ガ、若シ假ニ三箇年ト致シマシテモ、其返
濟期間中ニ病氣ヲシタトカ、或ハ又家族中
ニ不時災厄ガ起ッタトカ、或ハ失業シタト云
フ現實ニ返金困難ノ問題ガ生起シマシタ者
ニ對シマシテハ、政府ハ此場合返金ヲ猶豫
スル意思アリヤト云フコトモ伺ッテ置キタ
イノデアリマス
其次ニハ出征兵士ノ遺家族、特ニ中小工
業者ノ生業維持ノ問題デアリマス、此問題
ニ付キマシテハ、東京府ナリ、大阪府ニ於
キマシテモ、旣ニソレ〓〓小口資金融通ノ
途ヲ開イテ居リマスケレドモ、尙ホ其他ノ
都市ニ於テハ徹底シナイ所ガ多イノデアリ
マス、政府ハ是等ノモノニ對シマシテ、先
ヅ此金庫ノ資金ヲ一日モ早ク融通シテ、彼
等ヲ救濟シテヤル方針ヲ執ラレル意思アリ
ヤヲ御伺シテ置キタイノデアリマス
次ニハ質屋取締ノ問題デアリマス、御存
ジノ通リ現在勤勞庶民大衆ハ金融難ニ喘イ
ダ結果、自分ノ持テル僅カニ一枚カ二枚ノ
著物、貧弱ナ家財道具類ヲ持ッテ質屋ノ門ヲ
潛ラネバナラヌ勤勞大衆ガ如何ニ多イカト
云フコトヲ、大藏省ハ能ク御存ジノ筈デア
リマス、此質屋ニ對シマス取締法ハ明治二
十三年デスカニ制定サレ、其後確ニ四十二
三年頃ニ改正ヲシタノミデ、今日マデ殆ド
何等改正ノ手モ著ケズニ放ッテアルノデア
リマス、約三十年ノ長イ間放ッタラカシテア
リマス、故ニ質屋ノ利息ト云フモノハ、三
十年前ニ決メラレタ質屋取締法ノ第九條ニ
依ッテ制定サレタ儘デアリマスカラ、サウ云
フ關係デ箆棒ナ高イ利子デ、如何ニ庶民大
衆ガ惱ミ苦シメラレテ居ルカト云フコトヲ、
吾々ハ實際ノ經驗カラ知ッテ居ルノデアリ
さく、隨テ政府ハ此際質屋取締法ヲ改正致
シマシテ、特ニ其利息ニ對スル制限ヲ付ス
ル意思ガアルカナイカト云フコトヲ、此際
承ッテ置キタイノデアリマス(拍手)最後ニ
高利貸ニ對スル徹底的取締デアリマス、政
府ハ一方庶民ノ金融問題ヲ解決スル爲ニ非
常ナ犠牲ヲ拂ヒマシテ、本金庫法案ヲ制定
シヨウトスル場合ニ、他方ニ於テ高利貸ノ
跋扈ガ、勤勞階級ノ中ヲ橫行サシテ居ルト云
フコトヲ我々ハ見逃ス譯ニハ行カヌノデア
リマス、此高利貸ハ勿論個人營業デゴザイマ
スカラ、取締ハ困難ト存ジマスガ、政府ハ庶
民金融對策ノ上カラ、或ハ又社會風〓ノ上カ
ラ考ヘマシテモ、今日ノ高利貸營業ニ對シテ
一大鐵槌ヲ加ヘマシテ、丁度政府ガ恩給金
庫法ニ於テ、恩給金庫以外ニ於テハ、恩給證
書、年金證書ヲ抵當ニ取ッテ金ヲ貸スコトガ
出來ヌト嚴重ニ規定シテアリマスガ、アレ
ト同ジ立前ニ於テ、庶民金庫以外ニ、絕對
ニ民衆ニ高利ノ金ヲ貸スコトハナラヌト云
フ規定ヲ設ケルコトガ、私ハ絕對ニ必要ダ
ト思ヒマスガ、此點ニ對スル大藏大臣ノ御意
見ヲ伺ヒタイノデアリマス、最後ニ今日ノ勤
勞大衆ハ支那事變發生以來、自ラノ持ッテ
居リマス所ノ生命ヲ投出シマシテ、或者ハ
第一線ニ、或者ハ銃後ニ、又國家ノ爲ニ働キ、
政府ノ色々ナ政策ノ犠牲ヲ忍ンデ、或者ハ
失業ノ塗炭ニ苦ンデ居リマスケレドモ日
本ハ戰ニハ勝タナケレバナラヌ、戰ニ勝ツ
爲ニハドンナ苦ミガアッテモ、吾々ハ我慢ヲ
シナケレバナラヌト云フ、此堅忍持久ノ精
神ニ立脚致シマシテ、有ユル生活苦ト勞働
ノ苦痛ノ中ニ立上ッテ頑張ッテ居ルノデアリ
マス、此實情ヲ政府ガ靜ニ考ヘラレル時ニ
於テ、少クトモ政府ハ金融難ニ惱ム大衆ニ
僅カ一千万圓位ノ庶民金庫ヲ拵ヘテ、其責
任果サレリト考ヘズニ、進ンデ何故ニ彼等
ガ貧乏ニ泣キ、金融難ニ陷ルカ、何故ニ高
利貸ニ苦メラレテ居ルカ、此庶民大衆ガ金
融難ニ陷リ、生活難ニ喘グ原因ノ根本ヲ、
十分ニ解剖シ〓究調査サレテ、之ニ對スル
根本的ナ對策ヲ立テナケレバナラヌ、溝ノ
中デ蚊ガドン〓〓湧イテ居ルノニ、其溝ヲ
少シモ奇麗ニセズニ、上カラ消毒藥ヲ撒イ
テ居ルガ如キ對策デ、ソンナコトヲシテ居ッ
テハソレハ駄目デアリマス、勞働階級ノ唯
一ノ生活手段ハ、自分ノ勞働力ヨリ外ニナ
イ、此勞働力ヲ今日ニ於キマシテハ、營利
生產ノ犠牲ニ供シタ儘放任サレテ居ル、私
ハ先ヅ根本的ニ最低賃銀ト、最長時間ニ對
スル國家的ナ制限ト保護ヲ加ヘナケレバナ
ラヌ、一方ニハ物價ニ對スル統制ヲ加ヘ、
共ニ又一方無統制ナ現在ノ中小商工業ノ營
業ニ統制ヲ加ヘナケレバナラヌ、更ニ進ン
デ商品ノ配給ニ統制ヲ加ヘナケレバナラヌ、
斯クシテ根本的ニ勞働階級全體ノ生活ヲ保
障シ、地位ヲ向上サス場合ニ、初メテ商賣
ハ繁昌スル、商賣ガ忙シクナリマスカラ、
工場モドン〓〓忙シクナル、更ニ貿易モド
ンドン進展シテ參ルノデアル反對ニ勞働
階級ノ生活費ヲ切詰メサシテ、生產力ヲ減
退サシテ、失業ト病氣ノ混亂シタ中ニ勤勞
者ヲ放任シテ置イテ、ソレデ商品ガ賣レ、
營業ガ振興スルト考ヘタラ大キナ間違デス
私共ハサウ云フ立場カラ此際政府ハ一方今
提案サレテ居リマヤウナ緊急處置トシテ、
金融對策モ必要デアリマスケレドモ、此機
會ニ更ニ一步突進ンデ、勞働者ニ對スル、
小賣商人ニ對スル、農村ニ對スル根本的ナ
對策ヲ御樹テニナッテ、何レノ日カモウコン
ナ金融對策ハ必要デナイト云フ明朗ナ新日
本ヲ建設スル爲ニ、政府當局ノ一層ノ御〓
究ト御對策ヲ御願致シマシテ、私ノ質問ヲ
大體是デ終リマス
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=87
-
088・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ御質問ニ
御答申上ゲマス、政府ハ恩給金庫ニ三千万
圓ヲ出シテ、ナゼ庶民金庫ニ一千万圓ヲ出
シタカト云フ御話デアリマスガ、恩給金庫
ノ資本金ハ三千万圓デアリマス、政府ハ其
中五百万圓ヲ出スコトニ相成ッテ居リマス、
本年度豫算デハ百万圓ヲ拂込ミマシタ譯デ
アリマス、庶民金庫ノ方ハ一千万圓本年度
出資致シマス、是ガ資金ガ不足デハナイカ
ト云フ御話ガアリマス、尙ホ此資金ハ一千
万圓ヲ以テスルニアラズシテ、貸付資金ハ
一億圓ノ債劵デアルト云フコトモ御承知デ
アリマスガ、其通リデアリマス、是デハ不足
デハナイカト云フ御話デアリマシテ、完全
ニ庶民金融ノ目的ヲ達シマスル爲ニハ正シ
ク不足デアリマス、併ナガラ前ニモ申上ゲ
マシタヤウニ、是ハ今マデノ金融ノヤリ方
デハイケナイ、新ナル見地ニ入リマスル企
デアリマスノデ、サウ急速ニ參ル譯ニモ行
キマセヌ、急速ニ參リマシテ、其爲ニ國庫
ニ甚ダ大キナ損失ヲ及ボシマスルコトハ、
同時ニ國民ノ負擔ニ係ルコトデモアリマス
ルシ、又一擧ニシテ新ナル方法ガ成功スル
譯ニモ參リマセヌノデ、是ハ一方カラ申セ
バ遺憾デハアリマスガ、漸次此成績ヲ見マ
シテ、又財政上ノ都合モ考へマシテ、增加
ヲシテ參ル積リデアリマス、尙ホ代行ノ際ニ
ハ銀行等ハ之ヲ厭ガルデハナイカ、場合ニ依ツ
テハ資金ノ囘收ガ出來ナイ場合ニハ、サウ云
フモノガアルコトガ銀行トシテ信用ニ關スル
カラト云フ御話デアリマス、洵ニソレハ一ツ
ノ御說デアリマス、併シ相當此代行ヲ希望
スルモノモ金融機關ノ中ニ出ルダラウト云
フ吾々ノ方デハ豫測デゴザイマス、尙ホ是
ハ期限ヲ三年ニ切ルガ、途中デ不時ノ災厄
等ノアッタ場合ニ償還ヲ延期スルカドウカト
云フ御話デアリマス、是等ノ細カイ點ニ付
キマシテハ委員會ニ於キマシテ申述ベルコ
トニ致シマス、出征兵士ノ家族等ニ付テノ
金融ヲ、努メテ優先ヲシテヤルカト云フ御
話デアリマスガ、是ハ御趣旨ノ通リデア
リマス、質屋ヤ高利貸ノ取締ヲヤレト云フ
御話デアリマス、是ハ私ノ所管以外ニモ關
係ガ寧ロ多イノデアリマスガ、大體私共ノ
考ハ、恩給金庫トカ庶民金庫トカ、實際ニ
斯ウ云フモノガ餘リ要ラナイデ濟ムヤウナ
方向ニ進ミタイト思フノデアリマス、其力
ガ充實致シマセヌ前ニ、一切ノ個人金融ヲ
止メルト云フコトハ、未ダ其時期デナイト
思ヒマス、此庶民大衆ノ生活ニ關スル根本
問題ニ付キマシテハ、厚生省ガ出來マスル
理由ノ一ツモソコニアルヤウナ譯デアリマ
ス、十分ニ今後考究ヲ致シタイト思ヒマス、
總テ之ヲ國ノ犠牲ニ於テ致スト云フコトハ、
結局國民ノ負擔ニ相成ルノデアリマスカ
ラ、其邊甚ダ困難ナ點ガアルノデアリマス
ガ、是等ニ付キマシテハ、今後十分努力ヲ
致ス積リデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=88
-
089・井上良次
○井上良次君 簡單デアリマスカラ自席カ
ラ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=89
-
090・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=90
-
091・井上良次
○井上良次君 色々マダ只今ノ御答辯ニ對
シマシテ、再質問ヲ申上ゲタイ點モアリマ
スガ、非常ニ時間ガ遲クナリマシタカラ、
何レ詳シイコトハ委員會ニ於テ申上ゲルコ
トニ致シマシテ、私ノ質問ハ之ヲ以テ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=91
-
092・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=92
-
093・服部崎市
○服部崎市君 日程第三及ビ第四ノ兩案ハ
一括シテ政府提出、恩給金庫法案外一件委
員ニ併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=93
-
094・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=94
-
095・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=95
-
096・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=96
-
097・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=97
-
098・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時六分散會
〔坂東幸太郞君演說參照〕
閣令第四號
大正十二年閣令第七號國庫ノ支辨ニ屬ス
ル恩給中內閣恩給局長ノ管掌ニ係ルモノ
ノ給與細則中左ノ通改正ス
昭和十二年七月二十一日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
第十條中「第三十六條」ノ下ニ第一項ヲ加
フ
第十條ノ二恩給給與規則第三十六條第
二項ノ規定ニ依リ恩給證書ノ再交付ヲ
申請セムトスル者ハ〓ネ別紙樣式第
二十四號樣式ノ二)ニ準シ再交付申請
書ヲ作リ左ノ書類及證書郵送料(郵便
切手十四錢)ヲ添附シ之ヲ內閣恩給局
ニ差出スヘシ
一申請者本人ノ最近ノ寫眞
二恩給證書ヲ呈示ノ用ニ供スルコト
困難ナル事由ヲ詳記シタル〓末書
前項ノ申請書ニハ現住所ノ警察官署、
領事官其ノ他申請者カ本人タルコトヲ
知レル官公署ヨリ本人タルコトノ奧書
證明ヲ受クヘシ
第一項第一號ノ寫眞ハ申請書ニ貼附シ
前項ノ奧書證明ヲ爲ス官公署ノ割印ヲ
受クヘシ
別紙中第二十四號書式ノ次ニ左ノ如ク加
フ
恩給證書再交付申請書
一恩給證書ノ記號番號
一恩給證書ノ日附
一恩給金額
右恩給證書別紙顯末書ノ通呈示ノ用ニ供
スルコト困難ニ付再交付相成度申請候
年月日
退職當時ノ官職名又ハ公務員ト
ノ身分關係
本籍地
現住地氏名印
內閣恩給局長氏名殿
支給郵便局〇〇郵便局
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
(參照)
大正十二年十月一日閣令第七號ノ支辨
ニ屬スル恩給中內閣恩給局長ノ管掌ニ
係ルモノノ給與細則抄錄
第十條恩給給與規則第三十六條ノ規定
ニ依リ恩給證書又ハ裁定通知書ノ再交
付ヲ申請セムトスル者ハ〓ネ別紙樣式
(第二十四號書式)ニ準シ再交付申請書
ヲ作リ左ノ書類ヲ添附シテ之ヲ內閣恩
給局ニ差出スヘシ
(左記略ス)
衆議院議事速記錄第十一一號中
正誤
頁段行誤正
二一五四三四三案二案
二一六一四一億七百餘一億九百餘
万圓万圓
同二三二-三三顯著輕微
二一七一三九三案二案
同二三〇-三一四十餘圓四十餘億圓
二二八二三四繼續者繼續費発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01319380215&spkNum=98
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