1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年二月十七日(木曜日)
午後一時三十二分開議
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議事日程 第十三號
昭和十三年二月十七日
午後一時開議
第一 重要鑛物増産法案(政府提出) 第一讀會
第二 日本産金振興株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第三 支那事變特別税法案(政府提出) 第一讀會
第四 臨時利得税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 臨時租税措置法案(政府提出) 第一讀會
第六 日滿國税徴收事務共助法案(政府提出) 第一讀會
第七 商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 有限會社法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 日滿司法事務共助法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
社會事業法案
(以上二月十五日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
辯護士法中改正法律案
提出者
内藤正剛君 手代木隆吉君
濱野徹太郎君 中山福藏君
酒造税法中改正法律案
提出者 古島義英君
支那事變の爲召集せられたる者の選擧權竝議員の資格に關する法律案
提出者
中村高一君 田原春次君
菊地養之輔君 野溝勝君
入營者職業保障法中改正法律案
提出者
淺沼稻次郎君 三輪壽壯君
河野密君 米窪滿亮君
須永好君
肥料專賣に關する建議案
提出者
岡本實太郎君 村上國吉君
帝國在郷軍人會國庫補助金増額に關する建議案
提出者
高橋壽太郎君 伊藤東一郎君
漢那憲和君
鍼灸醫師法制定に關する建議案
提出者 中井一夫君
北海道土地賃貸價格特別課率制定に關する建議案
提出者
遠山房吉君 坂東幸太郎君
一柳仲次郎君 澤田利吉君
松浦周太郎君 手代木隆吉君
山本厚三君
府社千早神社昇格竝舊城阯維持保存に關する建議案
提出者 田中萬逸君
輸出織物業者救濟に關する建議案
提出者
中村高一君 須永好君
松永義雄君 野溝勝君
交通省設置に關する建議案
提出者 山田清君
高瀬川改修促進に關する建議案
提出者
森田重次郎君 松浦周太郎君
府縣道改良助成費増額に關する建議案
提出者
伊藤東一郎君 内藤守正君
渡邊玉三郎君
木曾川下流増補工事促進に關する建議案
提出者
伊藤東一郎君 大野一造君
渡邊玉三郎君
健康保險法改正に關する建議案
提出者
塚本重藏君 井上良次君
永江一夫君
勞働力の保護擴充に關する建議案
提出者
鈴木文治君 塚本重藏君
西尾末廣君
(以上二月十五日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
工場其の他職場に於ける入浴設備法規制定に關する質問主意書
提出者 小池四郎君
(以上二月十五日提出)
一去十五日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
四 杉山元治郎君
三五 安部磯雄君
三六 亀井貫一郎君
一去十五日政府より昭和十一年四月一日より同十二年三月三十一日に至る朝鮮總督府所屬、臺灣總督府所屬及樺太廳所屬官有財産増減異動報告を受領せり
一去十五日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第四部選出
請願委員 高岡大輔君(赤城宗徳君補闕)
一去十五日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
農地調整法案(政府提出)委員
理事 高岡大輔君(理事赤城宗徳君二月十四日議員退職に付其の補闕)
一去十五日部長及理事補闕選擧の結果左の如し
第四部
部長 熊谷直太君(部長大竹貫一君補闕)
第八部
理事 羽田武嗣郎君(理事赤城宗徳君補闕)
一去十五日議長に於て選定したる委員左の如し
恩給金庫法案(政府提出)外一件委員
前田房之助君 坂東幸太郎君
最上政三君 松田正一君
清水徳太郎君 川合直次君
服部英明君 高橋義次君
釘本衞雄君 村瀬武男君
小笠原八十美君 森幸太郎君
小高長三郎君 坪山徳彌君
池田七郎兵衞君 依光好秋君
馬岡次郎君 曾和義弌君
庄晋太郎君 倉成庄八郎君
江藤源九郎君 林路一君
伊豆富人君 塚本重藏君
松本治一郎君 今井新造君
三浦虎雄君
一去十五日に於ける特別委員の異動左の如し
臨時租税増徴法中改正法律案(政府提出)外七件委員
辭任 一柳仲次郎君 補闕 渡邊玉三郎君
一去十四日農地調整法案(政府提出)委員赤城宗徳君は退職者となりたるに付其補闕として石坂繁君を去十五日議長に於て選定せり
一昨十六日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
大藏書記官 田中豐
第七十三囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
一昨十六日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
四 安部磯雄君
三五 亀井貫一郎君
三六 杉山元治郎君
一昨十六日委員長及理事互選の結果左の如し
恩給金庫法案(政府提出)外一件委員
委員長 前田房之助君
理事
坂東幸太郎君 最上政三君
小笠原八十美君 森幸太郎君
江藤源九郎君
一昨十六日に於ける特別委員の異動左の如し
農地調整法案(政府提出)委員
辭任 長井源君 補闕 坂下仙一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=0
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001・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、此際新ニ議席ニ著カレマシタ議員ヲ
御紹介致シマス、第三百八十二番茨城縣第
三區選出議員山本条吉君
〔山本条吉君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=1
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002・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第三乃至第六
ノ四條ヲ繰上ゲ一括上程シ、其審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=2
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003・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=3
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004・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシ
ク、日程第三、支那事變特別稅法案、日程
第四、臨時利得稅法中改正法律案、日程第
五、臨時租稅措置法案、日程第六、日滿國
稅徵收事務共助法案、右四案ヲ一括シテ第一
讀會ヲ開キマス-大藏大臣賀屋興宣君
第三支那事變特別稅法案(政府提出)
第一讀會
第四臨時利得稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會
第五臨時租稅措置法案(政府提出)
第一讀會
第六日滿國稅徵收事務共助法案政
府提出)第一讀會
支那事變特別稅法案
支那事變特別稅法
第一條當分ノ内本法ニ依リ所得稅、法
人資本稅、砂糖消費稅及取引所稅ヲ增
徵シ利益配當稅、公債及社債利子稅、
通行稅、入場稅、特別入場稅及物品稅
乙酸、
第二條所得稅中法人ノ普通所得及〓算
所得ニ對スル所得稅ニ付テハ臨時租稅
增徵法第二條ノ規定ニ拘ラズ所得稅法
第二十一條ニ規定スル稅率百分ノ五ヲ
百分ノ十二·五、百分ノ十ヲ百分ノ二十
二·五トシタル場合ノ差增額ニ相當ス
ル稅額ヲ增徵ス
所得稅中法人ノ超過所得ニ對スル所得
稅ニ付テハ同法第二十一條ニ規定スル
稅率ヲ以テ算出シタル稅額ノ百分ノ十
ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
前二項ノ規定ニ依ル普通所得及超過所
得ニ對スル所得稅ノ增徵稅額ハ普通所
得ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヨリ普
通所得及超過所得ニ對スル所得稅額(所
得稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ普
通所得ニ對スル所得稅ニ加算スル稅額
ヲ含マズ)ト臨時利得稅額トノ合計金
額ヲ控除シタル殘額ヲ超ユルコトヲ得
ズ
第三條所得稅中同族會社ノ普通所得ニ
對スル所得稅ニ加算スル稅額ニ付テハ
臨時租稅增徵法第四條ノ規定ニ拘ラズ
所得稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ
算出シタル稅額ノ百分ノ八十七·五ニ
相當スル稅額ヲ增徵ス
同族會社ノ普通所得ニ對スル所得稅ニ
加算スル稅額ハ普通所得ノ百分ノ六十
ニ相當スル金額ヨリ普通所得及超過所
得ニ對スル所得稅額(所得稅法第二十
一條ノ二ノ規定ニ依リ普通所得ニ對ス
ル所得稅ニ加算スル稅額ヲ含マズ)、臨
時利得稅額及前條ノ規定ニ依ル增徵稅
額ノ合計金額ヲ控除シタル殘額ヲ超ユ
ルコトヲ得ズ殘額ヲ超エザル場合ニ於
テ前項ノ規定ニ依ル增徵ニ因リ之ヲ超
ユルニ至ルトキハ其ノ增徴稅額ニ付テ
亦同ジ
第四條所得稅中第二種甲及乙ノ所得ニ
對スル所得稅ニ付テハ所得稅法第二十
二條第一項及臨時租稅增徴法第五條ノ
規定ニ拘ラズ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課
ス
甲
國債ノ利子
利率年四分以
下ノモノ百分ノ二
利率年四分ヲ
超ユルモノ百分ノ二·五
國債以外ノ公債ノ利子
利率年四分五
厘以下ノモノ百分ノ六·五
利率年四分五
厘ヲ超ユルモ
ノ百分ノ七·五
社債ノ利子
利率年四分五
厘以下ノモノ百分ノ八
利率年四分五
厘ヲ超ユルモ
ノ百分ノ九·五
其ノ他百分ノ八
乙百分ノ十二·五
第五條所得稅中第三種ノ所得ニ對スル
所得稅ニ付テハ所得稅額ノ百分ノ二十
五ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
前項ノ規定ニ依ル增徵稅額ハ第三種所
得ノ百分ノ五十五ニ相當スル金額ヨリ
第三種ノ所得ニ對スル所得稅額ヲ控除
シタル殘額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第六條所得稅法第二十條ノ規定ニ拘ラ
ズ第三種ノ所得千圓以上ナルトキハ所
得稅ヲ課ス
前項ノ所得ハ所得稅法第十五條、第十
六條及第十六條ノ三ノ規定ニ依ル控除
ヲ爲シタル殘額ニ依リ、戶主及其ノ同
居家族ノ所得又ハ戶主ト別居スル二人
以上ノ同居家族ノ所得ハ其ノ合算總額
一段八)
前條ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ課セ
ラルル所得稅ニ付テハ之ヲ適用セズ
第七條第三種ノ所得ニ付所得金額決定
後翌年所得金額決定前ニ於テ營業ヲ
法人ニ繼續セシメタル者ノ當該營業ノ
實際所得額ガ決定所得額ヲ超過スルト
キハ其ノ超過額ハ之ヲ所得金額ノ決定
ニ付脫漏アリタルモノト看做シ翌年ニ
於ケル所得調査委員會ノ調査ニ依リ政
府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコト
ヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該營業ノ實際所得
額ハ其ノ年ニ於ケル收入金額ヨリ必要
ノ經費ヲ控除シタル金額ニ依ル
第八條法人資本稅ニ付テハ法人資本稅
法第八條第一項ニ規定スル稅率千分ノ
一ヲ千分ノ一·二トシタル場合ノ差增
額ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
第九條砂糖消費稅ハ砂糖消費税法第三づ
條及臨時租稅增徵法第十七條ノ規定ニ
拘ラズ左ノ稅率ニ依ル
-砂糖
第一種砂糖色相和蘭標本第十一號
未滿ノ砂糖
甲樽入黑糖及樽入白下糖但シ分
蜜シタルモノ、黑糖及白下糖以
外ノ砂糖ニ加工シテ製造シタル
モノ竝ニ全部又ハ一部ノ新式機
械ニ依リ製造シタルモノヲ除ク
百斤ニ付一圓三十錢
乙其ノ他ノモノ
百斤ニ付三圓四十錢
第二種砂糖色相和蘭標本第二十二
號未滿ノ砂糖
百斤ニ付七圓二十錢
第三種砂糖色相和蘭標本第二十二
號以上ノ砂糖
百斤ニ付八圓七十錢
第四種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其
ノ他類似ノモノ
百斤ニ付十一圓
二糖蜜
第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生
ズル糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超エ
ザルモノ
百斤ニ付四圓
乙其ノ他ノモノ
糖分ヲ蔗
糖トシテ
計算シタ
ル重量百
斤ニ付八圓七十錢
第二種其ノ他ノ糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超エ
ザルモノ
百斤ニ付一圓三十錢
乙其ノ他ノモノ
百斤ニ付三圓四十錢
三糖水百斤ニ付七圓二十錢
第十條砂糖消費稅ニ付徵收ヲ猶豫シ得
ル期間ハ砂糖消費稅法第四條第一項但
書ノ規定ニ拘ラズ之ヲ三月內トス
第十一條取引所稅中第二種有價證劵ノ
賣買取引ニ對スル取引稅ニ付テハ臨時
租稅增徵法第十八條第二號ノ規定ニ拘
ラズ取引所稅法第五條ニ規定スル稅率
萬分ノ一·五ヲ萬分ノ四、萬分ノ二·五ヲ
萬分ノ六トシタル場合ノ差增額ニ相當
スル稅額ヲ增徵ス
第十二條利益配當稅ハ本法施行地ニ本
店ヲ有スル法人ヨリ利益ノ配當ヲ受ク
ル者ニ之ヲ課ス
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所
得稅ヲ課セラレザル者ニハ利益配當稅
ヲ課セズ
第十三條利益配當稅ハ前條ノ法人ヨリ
支拂ヲ受クル利益ノ配當ニ付之ヲ賦課
シ配當金中配當率年七分ノ割合ヲ以テ
算出シタル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ
十ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十四條利益配當稅ハ配當金支拂ノ際
支拂者ニ於テ徵牧シ翌月十日迄ニ之ヲ
政府ニ納ムベシ
第十五條公債及社債利子稅ハ本法施行
地ニ於テ公債又ハ社債ノ利子ノ支拂ヲ
受クル者ニ之ヲ課ス
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所
得稅ヲ課セラレザル者ニハ公債及社債
利子稅ヲ課セズ
第十六條公債及社債利子稅ハ本法施行
地ニ於テ支拂ヲ受クル公債又ハ社債
(外貨債特別稅法第一條第二項ニ規定ス
ル外貨債ヲ除ク)ノ利子ニ付之ヲ賦課
シ利子金額中國債ニ在リテハ利率年四
分、國債以外ノ公債及社債ニ在リテハ
利率年四分五厘ノ割合ヲ以テ算出シタ
ル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ十ニ相當
スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十七條公債及社債利子稅ハ利子金額
支拂ノ際支拂者ニ於テ徵收シ翌月十日
迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第十八條利益配當稅ヲ課セラルル利益
ノ配當又ハ公債及社債利子稅ヲ課セラ
ルル公債又ハ社債ノ利子ニ付所得稅
(第一種所得稅ヲ除ク)又ハ資本利子稅
ヲ課スル場合ニ於テハ其ノ利益配當金額
又ハ利子金額ヨリ利益配當稅又ハ公債
及社債利子稅相當額ヲ控除シタル殘額
ヲ以テ其ノ配當金額又ハ利子金額ト看
做ス
第十九條通行稅ハ、汽車、電車、乘合
自動車及汽船ノ乘客ニ左ノ區別ニ依リ
之ヲ課ス
五十粁未滿
等六錢
二等三錢
五十粁以上
等十錢
二等五錢
三等二錢
百粁以上
一等三十錢
二等十五錢
三等五錢
百五十粁以上
等六十錢
二等三十錢
三等十錢
三百粁以上
等一圓二十錢
二等六十錢
三等二十錢
五百粁以上
一等一圓八十錢
二等九十錢
三等三十錢
八百粁以上
一等二圓四十錢
二等一圓二十錢
三等四十錢
囘數乘車船ノ契約ヲ爲シタル場合ニ於
テハ通行稅ハ左ノ區別ニ依リ之ヲ課ス
囘數二十囘以
下ナルトキ前項稅額ノ五倍
囘數五十囘以
下ナルトキ前項稅額ノ十倍
囘數五十囘ヲ
超ユルトキ前項稅額ノ二十倍
定期乘車船ノ契約ヲ爲シタル場合ニ於
テハ通行稅ハ左ノ區別ニ依リ之ヲ課ス
契約期間一月
內ナルトキ第一項稅額ノ五倍
契約期間三月
內ナルトキ第一項稅額ノ十倍
契約期間六月
內ナルトキ第一項稅額ノ二十倍
契約期間六月
ヲ超ユルトキ第一項稅額ノ三十倍
團體乘車船ノ契約ヲ爲シタル場合ニ於
テハ通行稅ハ左ノ區別ニ依リ之ヲ課ス
人員百人以下
ナルトキ第一項稅額ノ五倍
人員二百人以
下ナルトキ第一項稅額ノ十倍
人員二百人ヲ
超ユルトキ第一項稅額ノ二十倍
貸切乘車船ノ契約ヲ爲シタル場合ニ於
テハ通行稅ハ左ノ區別ニ依リ之ヲ課ス
一等及二等貸切運賃ノ百分ノ十
三等貸切運賃ノ百分ノ五
前項ノ規定ニ依ル稅額ハ第一項稅額ニ
乘客定員數ヲ乘ジタル金額ヲ超ユルコ
トヲ得ズ
第一項乃至第三項ニ規定スル通行稅ハ
十二歲未滿ノ乘客ニ付テハ其ノ半額ト
ス
第二十條左ノ場合ニ於テハ通行稅ヲ課
セズ
一三等乘客ニシテ其ノ乘車船區間五
十粁未滿ナルトキ
二陸海軍ノ團體トシテノ乘車船ニシ
テ命令ノ定ムルモノナルトキ
第二十一條左ノ各號ノ一ニ該當スルト
キハ第十九條第一項及前條第一號ノ乘
車船區間ノ粁程ノ計算ハ命令ヲ以テ之
マルト
-往復乘車船又ハ〓遊乘車船ノ契約
ヲ爲シタルトキ
二運賃ガ均一制又ハ區間制ニ依リ定
メラレタルトキ
第二十二條汽車、電車、乘合自動車又ハ
汽船ニシテ其ノ等級ヲ一等、二等及三
等ニ分タザルモノニ付テハ第十九條第
一貫、第五項及第二十條第一號ノ等級
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム乘客定員數ノ定
ナキ車船ニ付貸切乘車船ノ契約ヲ爲シ
タル場合ニ於ケル第十九條第六項ノ乘
客定員數ニ付亦同ジ
第二十三條通行稅ハ汽車、電車、乘合
自動車又ハ汽船ニ依ル運輸業ヲ營ム者
(以下運輸業者ト稱ス)運賃領收ノ際之
ヲ徵收シ翌月十日迄政ニ府ニ納ムベシ
特別ノ事情アル運輸業者ニ付テハ前項
ノ納期限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條汽車、電車、乘合自動車又
ハ汽船ニ依ル運輸業ヲ營マントスル者
及運輸業者ニ代リテ乘車船劵ヲ販賣セ
ントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ旨ヲ豫メ政府ニ申〓スベシ之ヲ廢止
セントスルトキ亦同ジ
第二十五條運輸業者又ハ運輸業者ニ代
リテ乘車船劵ヲ販賣スル者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ其ノ業務ニ關スル事項ヲ
帳簿ニ記載スベシ
運輸業者又ハ運輸業者ニ代リテ乘車船
劵ヲ販賣スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ業務ニ關シ必要ナル事項ヲ政府
ニ申告スベシ
第二十六條入場稅ハ左ニ揭グル第一種
ノ場所ニ入場スル者又ハ第二種ノ場所
ノ設備ヲ利用スル者ニ之ヲ課ス
第一種
-演劇、活動寫眞、演藝又ハ觀物
(相撲、野球、拳鬪其ノ他ノ競技ニ
シテ公衆ノ觀覽ニ供スルコトヲ目
的トスルモノヲ含ム)ヲ催ス場所
二競馬場
三前二號ニ揭グルモノヲ除クノ外
一定ノ催物又ハ設備ヲ爲シ公衆ノ
觀覽又ハ遊戯ニ供スル場所ニシテ
命令ヲ以テ定ムルモノ
第二種
一舞踏場、麻雀場、撞球場
二ゴルフ場、スケート場
第二十七條入場稅ハ入場料ノ百分ノ十
トス
本法ニ於テ入場料トハ名義ノ何タルヲ
問ハズ第一種ノ場所ニ入場シ又ハ第二
種ノ場所ノ設備ヲ利用スル爲ニ支拂フ
ベキ金額ヲ謂フ
前項ノ入場料ノ算定ニ關シテハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二十八條第一種ノ場所ノ入場料ガ一
人一囘十九錢ニ滿タザル場合ニハ入場
稅ヲ課セズ
前項ノ規定ハ囘數、定期又ハ貸切ニテ
入場ノ契約ヲ爲シタル場合ニハ之ヲ適
用セズ
第二十九條第一種ノ催物(第一種ノ場
所ニ於ケル演劇、活動寫眞、演藝、觀
物、競馬其ノ他ノ催物ヲ謂フ以下同ジ)
若ハ設備ノ主催者若ハ經營者又ハ第二
種ノ場所ノ經營者ガ命令ノ定ムル所ニ
依リ其ノ入場料又ハ收益ノ總額ヲ慈善
事業其ノ他命令ヲ以テ定ムル目的ニ充
ツル場合ニ於テハ入場稅ヲ免除ス
第三十條入場稅ハ第一種ノ催物若ハ設
備ノ主催者若ハ經營者又ハ第二種ノ場
所ノ經營者入場料領收ノ際之ヲ徵收シ
翌月十日迄ニ政府ニ納ムベシ但シ常時
開設ニ非ザルモノニ付テハ命令ヲ以テ
定ムル場合ヲ除クノ外終了後直ニ政府
ニ納ムベシ
第三十一條第一種ノ催物若ハ設備ヲ開
催若ハ經營シ又ハ第二種ノ場所ヲ經營
セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
其ノ旨ヲ豫メ政府ニ申〓スベシ之ヲ廢
止セントスルトキ亦同ジ
第三十二條第一種ノ催物若ハ設備ノ主
催者若ハ經營者又ハ第二種ノ場所ノ經
營者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務
ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スベシ
第一種ノ催物若ハ設備ノ主催者若ハ經
營者又ハ第二種ノ場所ノ經營者ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ業務ニ關シ必要
ナル事項ヲ政府ニ申〓スベシ
第三十三條特別入場稅ハ運動競技ニシ
テ學生生徒又ハ該競技ヲ爲スコトヲ業
トセザル者ノ行フモノニ付觀覽ノ爲競
技場ニ入場スル者ヨリ料金ヲ徴スル場
合ニ於テ其ノ入場者ニ之ヲ課ス
第三十四條特別入場稅ハ特別入場料ノ
百分ノ十トス
本法ニ於テ特別入場料トハ名義ノ何タ
ルヲ問ハズ前條ノ競技場ニ入場スル爲
ニ支拂フベキ金額ヲ謂フ
第二十七條第三項ノ規定ハ特別入場稅
ニ付之ヲ準用ス
第三十五條特別入場料ガ一人一囘十九
錢ニ滿タザル場合ニハ特別入場稅ヲ課
セズ
第二十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合
ニ付之ヲ準用ス
第三十六條特別入場稅ハ運動競技ノ主
催者特別入場料領收ノ際之ヲ徵收シ競
技終了後直ニ政府ニ納ムベシ但シ命令
ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ翌月十日迄
ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第三十七條第二十九條、第三十一條及
第三十二條ノ規定ハ特別入場稅ニ付之
ヲ準用ス
第三十八條物品稅ハ左ニ揭グル物品ニ
シテ命令ヲ以テ定ムルモノニ之ヲ課ス
第一種
甲類
一貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒ
タル製品
二眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
三貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ
用ヒタル製品
四鼈甲製品
五珊瑚製品
乙類
六時計
七萬年筆、金ペン及シャープペ
ンシル
八身邊用細貨類
九化粧用具
十喫煙用具
十一帽子、杖、鞭及傘
十二皮革製又ハ金屬製ノ鞄及ト
ランク
十三靴及履物
十四書〓及骨董
十五室內裝飾用品
十六照明器具
十七圍碁及將棋用具
十八家具
十九漆器、陶磁器及硝子製器具
ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十貴金屬ヲ鍍シ又ハ張リタル
製品ニシテ別號ニ揭ゲザルモノ
二十一毛皮又ハ毛皮製品
二十三羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒ
タル製品
二十三皮革製品ニシテ別號ニ揭
ゲザルモノ
二十四メリヤス、レース、フェ
ルト及同製品
第二種
甲類
寫眞機、寫眞引伸機、映寫機、
同部分品及附屬品
二寫眞用ノ乾板、フィルム及感
光紙
三蓄音器及同部分品
四蓄音器用レコード
五樂器、同部分品及附屬品
六雙眼鏡及隻眼鏡
七銃及同部分品
八藥莢及彈丸
九ゴルフ用具、同部分品及附屬
品
十娛樂用ノモーターボート、ス
カール及ヨット
十一撞球用具
十二ネオン管及同變壓器
十三喫煙用ライター
乙類
十四ラヂオ聽取機及同部分品
十五受信用眞空管及擴聲器
十六扇風機及同部分品
十七煖房用ノ電氣、瓦斯又ハ礦
油ストーブ
十八冷藏器及同部分品
十九金庫及鋼鐵製家具
二十乘用自動車
二十一化粧品
第三種
一燐寸
二酒類但シ濁酒及果實酒(酒精及
酒精含有飮料稅法第三條ノ三ニ規
定スルモノ)ヲ除ク
同一物品ニシテ第一種及第二種ニ該當
スルモノハ之ヲ第二種トシ、甲類及乙
類ニ該當スルモノハ之ヲ甲類トス
第三十九條物品稅ノ稅率左ノ如シ
第一種
甲類物品ノ價格百分ノ十五
乙類物品ノ價格百分ノ十
第二種
甲類物品ノ價格百分ノ十五
乙類物品ノ價格百分ノ十
第三種
一燐寸千本ニ付五錢
二酒類
イ〓酒、白酒、味淋、燒酎及麥酒
一石ニ付五圓
ロ葡萄酒(酒精及酒精含有飮料
稅法第三條ノ二ニ規定スルモノ
以下同ジ)
一石ニ付十五圓
ハ其ノ他ノ酒類ニシテ酒精及酒
精含有飮料稅法ノ適用ヲ受クル
モノ一石ニ付七圓
第四十條前條ノ價格ハ第一種ノ物品ニ
付テハ小賣業者ノ販賣價格、第二種ノ
物品ニ付テハ製造場ヨリ移出スル時ノ
價格トス但シ保稅地域ヨリ引取ラルル
第一種又ハ第二種ノ物品ニシテ引取人
ヨリ稅金ヲ徵收スルモノニ付テハ引取
ノ際ニ於ケル價格トス
前項ノ價格及燐寸ノ本數ノ計算ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條物品稅ハ第一種ノ物品ニ付
テハ販賣セラレタル物品ノ價格ニ應ジ
小賣業者ヨリ、第二種又ハ第三種ノ物
品ニ付テハ製造場ヨリ移出セラレタル
物品ノ價格又ハ數量ニ應ジ製造者ヨリ
之ヲ徵收ス但シ保稅地域ヨリ引取ラル
ル物品ニ付テハ命令ヲ以テ定ムル場合
ヲ除クノ外引取ラレタル物品ノ價格又
ハ數量ニ應ジ引取人ヨリ之ヲ徵收ス
第四十二條物品稅ハ第一種第十四號ニ
掲グル物品ニ付テハ其ノ物品ガ入札其
ノ他競爭ノ方法ニ依リ賣買セラルル場
合ニシテ命令ヲ以テ定ムル場合ニ限リ
之ヲ課ス
前項ノ場合ニ於テハ其ノ札元又ハ之ニ
準ズベキ者ガ小賣業者トシテ當該物品
ヲ販賣スルモノト看做ス
第四十三條製造場以外ノ場所ニ於テ販
賣ノ爲化粧品ヲ容器ニ充塡シ又ハ改裝
スルトキハ之ヲ化粧品ノ製造ト看做ス
第四十四條酒類ヲ製造場內ニ於テ飮用
シタルトキハ之ヲ製造場ヨリ移出シタ
ルモノト看做ス
第四十五條第一種ノ物品ノ小賣業者ハ
每月其ノ販賣シタル物品ニ付其ノ品名
每ニ數量及價格ヲ記載シタル申告書
ヲ、第二種ノ物品ノ製造者ハ每月其ノ
製造場ヨリ移出シタル物品ニ付其ノ品
名每ニ數量及價格ヲ記載シタル申〓書
ヲ、第三種ノ物品ノ製造者ハ每月其ノ
製造場ヨリ移出シタル物品ニ付其ノ品
名每ニ數量ヲ記載シタル申告書ヲ翌月
十日迄ニ政府ニ提出スベシ
第一種、第二種又ハ第三種ノ物品ヲ保
稅地域ヨリ引取ル者ハ命令ヲ以テ定ム
ル場合ヲ除クノ外引取ノ際其ノ物品ニ
付前項ニ準ズル申〓書ヲ政府ニ提出ス
ベシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ
申告ヲ不相當ト認メタルトキハ政府ハ
其ノ課稅標準額ヲ決定ス
第四十六條小賣業者ガ其ノ販賣シタル
第一種ノ物品ノ返還ヲ受ケタル場合ニ
於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ返還ヲ受
ケタル月分以降ノ課稅標準額ヨリ其ノ
物品ノ價格ヲ控除ス製造場ヨリ移出シ
タル第三種ノ物品ヲ同一製造場內ニ戾
入シタル場合亦同ジ
製造場ヨリ移出シタル第三種ノ物品ヲ
同一製造場內ニ戾入シ又ハ酒類ヲ製造
場外ヨリ移入シタル場合ニ於テハ命令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ物品ヲ製造場ヨ
リ移出スルモ更ニ物品稅ノ徵收ヲ爲サ
ズ
第四十七條物品稅ハ每月分ヲ翌月末日
迄ニ納村スベシ但シ第四十一條但書ノ
場合ニ於テハ引取ノ際之ヲ納付スベシ
命令ノ定ムル所ニ依リ第二種又ハ第三
種ノ物品ニ付物品稅額ニ相當スル擔保
ヲ提供シタルトキハ一月內物品稅ノ徵
收ヲ猶豫スルコトヲ得
第四十八條命令ノ定ムル所ニ依リ政府
ノ承認ヲ受ケ他ノ製造場又ハ藏置場ニ
移入スル目的ヲ以テ製造場ヨリ移出シ
又ハ保稅地域ヨリ引取ル第二種ノ物品
又ハ燐寸ニ付テハ第四十一條ノ規定ヲ
適用セズ
前項ノ場合ニ於テハ移出先又ハ引取先
ヲ以テ製造場ト看做シ移出先又ハ引取
先ノ營業者ヲ以テ製造者ト看做ス
第一項ノ物品ニシテ政府ノ指定シタル
期間內ニ移出先又ハ引取先ニ移入セラ
レタルコトノ證明ナキモノニ付テハ製
造者又ハ引取人ヨリ直ニ其ノ物品稅ヲ
徵收ス但シ災害其ノ他已ムコトヲ得ザ
ル事由ニ因リ滅失シタルモノニ付政府
ノ承認ヲ受ケタルトキハ物品稅ヲ免除
ス
第四十九條命令ノ定ムル所ニ依リ政府
ノ承認ヲ受ケ製造場ヨリ移出シ又ハ保
稅地域ヨリ引取ル物品ニシテ左ノ各號
ノ一ニ該當スルモノニ付テハ物品稅ヲ
免除ス
-第二種ノ物品ノ製造ノ用ニ供スル
第二種ノ物品
二酒類製造ノ用ニ供スル葡萄酒
前條第三項ノ規定ハ前項ノ物品ニシテ
政府ノ指定シタル期間內ニ移出先若ハ
引取先ニ移入セラレタルコトノ證明ナ
キモノ又ハ其ノ用途ヲ變更セラレタル
モノニ付之ヲ準用ス
第五十條左ニ揭グル物品ニ付テハ命令
ノ定ムル所ニ依リ物品稅ヲ免除ス
-輸出スルモノ
二學術〓究用ニ供スルモノ
三其ノ他命令ヲ以テ定ムル用途ニ供
スルモノ
第四十八條第三項ノ規定ハ前項ノ物品
ニシテ政府ノ指定シタル期間內ニ輸出
シ又ハ其ノ用途ニ供セラレタルコトノ
證明ナキモノニ付之ヲ準用ス
第五十一條第一種ノ物品ノ小賣業ヲ營
マントスル者又ハ第二種ノ物品若ハ燐
寸ヲ製造セントスル者ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ政府ニ申〓スベシ其ノ小賣業
又ハ製造ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第五十二條第一種、第二種又ハ第三種
ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ其ノ製造、貯藏又ハ販賣
ニ關スル事實ヲ帳簿ニ記載スベシ
第一種ノ物品ノ小賣業者又ハ第二種若
ハ第三種ノ物品ノ製造者ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ其ノ製造又ハ販賣ニ關シ必
要ナル事項ヲ政府ニ申〓スベシ
第五十三條第十四條、第十七條、第二
十三條、第三十條又ハ第三十六條ノ規
定ニ依リ徵收スベキ稅金ヲ徵收セザル
トキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セ
ザルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ各
其ノ徵收義務者ヨリ徵收ス
第五十四條收稅官吏ハ通行稅ニ付運輸
業者又ハ運輸業者ニ代リテ乗車船劵ヲ
販賣スル者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ其ノ
業務ニ關スル帳簿書類ヲ檢査スルコト
ヲ得
收稅官吏ハ入場税ニ付第一種ノ催物若
ハ設備ノ主催者若ハ經營者又ハ第二種
ノ場所ノ經營者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ
其ノ業務ニ關スル帳簿書類其ノ他ノ物
件ヲ檢査スルコトヲ得
前項ノ規定ハ特別入場稅ニ付之ヲ準用
ス
收稅官吏ハ物品稅ニ付第一種、第二種
又ハ第三種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者
ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ左ニ揭グル物件
ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監督上必要ノ處分
ヲ爲スコトヲ得
-第一種、第二種又ハ第三種ノ物品
ニシテ製造者又ハ販賣者ノ所持スル
モノ
二第一種、第二種又ハ第三種ノ物品
ノ製造、貯藏又ハ販賣ニ關スル一切
ノ帳簿書類
三第一種、第二種又ハ第三種ノ物品
ノ製造、貯藏又ハ販賣上必要ナル建
築物、機械、器具、材料其ノ他ノ物
件
第五十五條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依
リ利益配當稅又ハ公債及社債利子稅ヲ
通脫シタル者ハ其ノ通脫シタル稅金ノ
三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處シ直
ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ自首シタル者
又ハ稅務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪
ヲ問ハズ
第五十六條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依
リ物品稅ヲ通說シ又ハ通脫セントシタ
ル者ハ其ノ逋脫シ又ハ通脫セントシタ
ル稅金ノ五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直
ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ罰金額ガ二十
圓ニ滿タザルトキハ之ヲ二十圓トス
第五十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-政府ニ申〓セズシテ第一種ノ催物
若ハ設備ヲ開催若ハ經營シ又ハ第二
種ノ場所ヲ經營シタル者
二第四十五條ノ規定ニ依ル申告ヲ怠
リ又ハ詐リタル者
三政府ニ申〓セズシテ第一種ノ物品
ノ小賣業ヲ營ミ又ハ第一一種ノ物品若
ハ燐寸ヲ製造シタル者
第五十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第二十五條第一項、第三十二條第
一項又ハ第五十二條第一項ノ規定ニ
依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ
帳簿ヲ隱匿シタル者
二第二十五條第二項、第三十二條第
二項又ハ第五十二條第一一項ノ規定ニ
依ル申〓ヲ怠リ又ハ詐リタル者
三第五十四條第一項、第二項又ハ第
四項ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ質問ニ
對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ
爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨
ゲ若ハ忌避シタル者
第五十九條第五十五條及第五十六條ノ
罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第
三項但書、第三十九條第二項、第四十
條第四十一條、第四十八條第二項、
第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用
セズ
第六十條第一種、第二種又ハ第三種ノ
物品ノ製造者又ハ販賣者ノ代理人、戶
主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業
者ガ其ノ業務ニ關シ本法中物品稅ニ關
スル規定ニ違反シタルトキハ其ノ製造
者又ハ販賣者ヲ處罰ス
第六十一條北海道、府縣、市町村其ノ
他ノ公共團體ハ本法ニ依リ增徵スル稅
額(第七條ノ規定ニ依リ增額ト爲ル部
分ヲ含マズ)又ハ本法ニ依リ課スル利
益配當稅、公債及社債利子稅、通行稅、
入場稅、特別入場稅及物品稅ニ付附加
稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情
アル市町村ニ限リ內務大臣及大藏大臣
ノ許可ヲ受ケタルトキハ第六條ノ規定
ニ依リ課スル所得稅ノ附加稅ヲ課スル
コトヲ得
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ第一種ノ場所ノ入場者又ハ第二種
ノ場所ノ設備利用者ニ對シ入場稅ノ課
稅標準タル入場料ヲ標準トシテ地方稅
ヲ課スルコトヲ得ズ
前項ノ規定ハ特別入場稅ニ付之ヲ準用
ス
第六十二條政府ハ當分ノ內酒造組合法
ニ依リ設立シタル酒造組合中央會ニ對
シ徵稅上必要ナル設備ヲ爲シ又ハ徵收
事務ノ補助ヲ爲スベキコトヲ命ズルコ
トヲ得
前項ノ場合ニ於テハ酒造組合中央會ニ
對シ命令ノ定ムル所ニ依リ交付金ヲ交
付スルコトヲ得
第六十三條本法ニ於テ保稅地域ト稱ス
ルハ關稅法ノ定ムル所ニ依ル
附則
第六十四條本法ハ昭和十三年四月一日
ヨリ之ヲ施行ス
第六十五條北支事件特別稅法ハ之ヲ廢
止ス
法人ノ昭和十三年三月三十一日以前ニ
終了シタル各事業年度分ノ所得特別稅
及臨時利得特別稅、昭和十三年三月三
十一日以前ニ販賣、製造場ヨリノ移出
又ハ保稅地域ヨリノ引取ヲ爲シタル北
支事件特別稅法第二十條ニ揭グル第一
種又ハ第二種ノ物品ニ對スル物品特別
稅其ノ他昭和十三年三月三十一日以前
ニ於テ賦課シ若ハ賦課スベカリシ又ハ
徵收シ若ハ徵收スベカリシ北支事件特
別稅ニ關シテハ仍舊法ニ依ル
前項ノ規定ニ依ル北支事件特別稅ノ收
入ハ之ヲ臨時軍事費特別會計ノ歲入ト
ス
第六十六條所得稅中第一種ノ所得稅ニ
付テハ普通所得及超過所得ニ對スル所
得稅ハ昭和十三年四月一日以後ニ終了
スル事業年度分、〓算所得ニ對スル所
得稅ハ昭和十三年四月一日以後ニ於ケ
ル解散又ハ合併ニ因ル分ヨリ、第三種
ノ所得稅ニ付テハ昭和十三年分ヨリ本
法ヲ適用ス但シ第七條ノ規定ハ昭和十
二年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
第六條ノ規定ニ依リ第三種ノ所得ニ付
新ニ納稅義務ヲ有スルニ至リタル者ハ
昭和十三年四月十五日迄ニ其ノ所得金
額ヲ申〓スベシ
前項ノ場合ニ於テハ所得金額ノ申〓ト
同時ニ所得稅法第十六條又ハ第十六條
ノ三ノ規定ニ依ル控除ヲ申請スルコト
ヲ得
法人ノ昭和十三年四月一日以後ニ終了
スル各事業年度分ノ所得ニ對スル所得
稅及支拂期ノ昭和十三年四月一日以後
ニ在ル貸付信託ノ利益ニ對スル所得稅
ニ付テハ北支事件特別稅中ノ第二種所
得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ之ヲ第
二種ノ所得ニ對スル所得稅ト看做シ所
得稅法第二十一條第二項及第三項又ハ
第二十二條第二項及第三項ノ規定ヲ適
用ス
第六十七條法人資本稅ニ付テハ昭和十
三年四月一日以後ニ終了スル事業年度
分ヨリ本法ヲ適用ス
第六十八條昭和十三年六月三十日迄ニ
製造場又ハ保稅地域ヨリ引取ラルル砂
糖糖蜜及糖水ノ消費稅ニ付テハ第十
條ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以テ特別ノ徵
收猶豫期間ヲ定ムルコトヲ得
第六十九條本法施行ノ際製造場又ハ保
稅地域以外ノ場所ニ於テ同一人ガ二萬
斤以上ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ所持ス
ル場合ニ於テハ其ノ者ニ於テ本法施行
ノ日ニ之ヲ製造場ヨリ引取リタルモノ
ト看做シ砂糖消費稅ヲ課ス此ノ場合ニ
於テハ第九條ニ規定スル稅率ニ依リ算
出シタル稅額ト臨時租稅增徵法第十七
條ニ規定スル稅率ニ依リ算出シタル稅
額トノ差額ヲ以テ其ノ稅額トシ命令ノ
定ムル所ニ依リ之ヲ徴收ス
前項ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ所持者ハ
其ノ所持スル砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ種
別、數量及貯藏ノ場所ヲ本法施行後一
月內ニ政府ニ申告スベシ
第七十條本法施行前ヨリ引續キ汽車、
電車、乘合自動車又ハ汽船ニ依ル運輸
業ヲ營ム者又ハ運輸業者ニ代リテ乘車
船劵ヲ販賣スル者本法施行後一月內ニ
其ノ旨ヲ政府ニ申〓スルトキハ本法施
行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申告シタルモ
ノト看做ス
本法施行前ヨリ引續キ第二十六條ニ規
定スル第一種ノ催物若ハ設備ヲ開催若
ハ經營スル者、同第二種ノ場所ヲ經營
スル者又ハ運動競技ヲ開催スル者本法
施行後一月內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申〓ス
ルトキハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依
リ申〓シタルモノト看做ス
本法施行前ヨリ引續キ第三十八條ニ揭
グル第一種ノ物品ノ小賣業ヲ營ム者又
ハ同第二種ノ物品若ハ燐寸ノ製造ヲ爲
ス者本法施行後一月內ニ其ノ旨ヲ政府
ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ニ於テ
本法ニ依リ申告シタルモノト看做ス
北支事件特別稅法第二十條ニ揭グル第
一種ノ物品ノ小賣業ヲ營ム者又ハ同第
二種ノ物品ノ製造ヲ爲ス者ニシテ同法
ニ依リ其ノ旨ヲ申〓シタルモノハ第五
十一條前段ノ申〓ヲ要セズ
第七十一條第三十八條ニ揭グル第二種
ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ガ本法施行
ノ際製造場又ハ保稅地域以外ノ場所ニ
於テ同條各號ニ揭グル品名每ニ價格三
千圓以上ノ第二種ノ物品(第一號乃至
第五號ニ揭グル物品ヲ除ク)ヲ所持スル
場合ニ於テハ其ノ場所ヲ以テ製造場、
其ノ所持者ヲ以テ製造者ト看做シ之ニ
物品稅ヲ課ス此ノ場合ニ於テハ本法施
行ノ日ニ於テ其ノ物品ヲ製造場ヨリ移
出シタルモノト看做シ命令ノ定ムル所
ニ依リ其ノ物品稅ヲ徵收ス
前項ノ規定ハ同第三種ノ物品ノ製造
者又ハ販賣者ガ本法施行ノ際製造場又
ハ保稅地域以外ノ場所ニ於テ千萬本以
上ノ燐寸又ハ三十石以上ノ酒類ヲ所持
スル場合ニ付之ヲ準用ス
前二項ノ製造者又ハ販賣者ハ第二種ノ
物品ニ付テハ其ノ品名每ニ數量、價格
及貯藏ノ場所、第三種ノ物品ニ付テハ
其ノ品名每ニ數量及貯藏ノ場所ヲ本法
施行後一月內ニ政府ニ申〓スベシ
第七十二條明治四十年法律第二十一號
第一條第一項ニ左ノ六號ヲ加フ
十二利益配當稅
十三公債及社債利子稅
十四通行稅
十五入場稅
十六特別入場稅
十七物品稅
第七十三條明治四十四年法律第四十五
號第二號中「骨牌稅法」ノ下ニ「、支那事
變特別稅法」ヲ加へ同法第三條中「骨牌
稅法」ノ下ニ「、支那事變特別稅法」ヲ加
ヘ「骨牌又ハ」ヲ「骨牌、支那事變特別
稅法第三十八條ニ揭クル物品又ハ」ニ
改メ同法ニ左ノ一條ヲ加フ
第四條樺太ニ於テハ本法ノ施行ニ關
シ必要アルトキハ勅令ヲ以テ別段ノ定
ヲ爲スコトヲ得
第七十四條大正九年法律第五十一號中
「北支事件特別稅法第二十條ニ揭クル
第二種ノ物品」ヲ「燐寸、支那事變特別
稅法第三十八條ニ揭クル第二種ノ物
品」ニ改ム
第七十五條樺太酒類出港稅法第二條中
「燒酎ニ付テハ酒造稅法、酒精又ハ酒精
含有飮料ニ付テハ酒精及酒精含有飮料
稅法ノ造石稅」ヲ「移出先ニ於ケル內國
稅ノ稅率」ニ改ム
第七十六條本法ハ支那事變終了後其ノ
翌年十二月三十一日迄ニ之ヲ廢止スル
モノトス
臨時利得稅法中改正法律案
臨時利得稅法中左ノ通改正ス
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第一號及第二號ノ利得ハ各之ヲ甲
種利得及乙種利得ノ二種トス
第四條法人ノ現事業年度ノ利益ガ昭和
六年十二月三十一日以前三年內ニ終了
シタル事業年度ノ全部(甲旣往事業年度
ト稱ス以下同ジ)ノ平均利益ヲ超過ス
ル場合ニ於テ其ノ超過額ヲ法人ノ甲種
利得トシ昭和十一年十二月三十一日以
前三年內ニ終了シタル事業年度ノ全部
(乙既往事業年度ト稱ス以下同ジ)ノ平
均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過
額ヲ法人ノ乙種利得トス
第四條ノ二前條ノ規定ニ依リ利得ヲ計
算スルニ當リ左ノ各號ノ一ニ該當スル
場合ニ於テハ各其ノ定ムル所ニ依リ平
均利益ヲ計算ス
-甲既往事業年度又ハ乙旣往事業年
度ノ平均利益ノ平均資本金額ニ對ス
ル割合ガ甲既往事業年度ニ在リテハ
年百分ノ七未滿、乙既往事業年度ニ
在リテハ年百分ノ十未滿ナルトキハ
甲既往事業年度ニ在リテハ平均資本
金額ニ對シ年百分ノ七、乙既往事業
年度ニ在リテハ平均資本金額ニ對シ
年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル
金額ヲ以テ各其ノ旣往事業年度ノ平
均利益トス
二法人ノ第一次事業年度ガ昭和七年
一月一日以後ニ於テ終了シタル場合
ニ於テハ其ノ法人ニ付テハ現事業年
度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ七ノ割
合ヲ以テ算出シタル金額ヲ以テ甲旣
往事業年度ノ平均利益トシ第一次事
業年度ガ昭和十二年一月一日以後ニ
於テ終了シタル場合ニ於テハ其ノ法
人ニ付テハ現事業年度ノ資本金額ニ
對シ年百分ノ七ノ割合ヲ以テ算出シ
タル金額ヲ以テ甲既往事業年度ノ平
均利益トシ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ
算出シタル金額ヲ以テ乙既往事業年
度ノ平均利益トス
三現事業年度ノ資本金額ガ甲既往事
業年度又ハ乙既往事業年度ノ平均資
本金額ニ對シ增減アルトキハ比較セ
ラレタル既往事業年度ノ平均利益ノ
平均資本金額ニ對スル割合ヲ現事業
年度ノ資本金額ニ乘ジテ算出シタル
金額ヲ以テ其ノ既往事業年度ノ平均
利益トス此ノ場合ニ於テ第一號ノ規
定ヲ適用スルニ當リテハ現事業年度
ノ資本金額ヲ以テ其ノ旣往事業年度
ノ平均資本金額ト看做ス
四現事業年度ノ期間ガ甲旣往事業年
度ニ屬スル各事業年度又ハ乙既往事
業年度ニ屬スル各事業年度ノ期間ト
異ルトキハ既往ノ各事業年度ノ利益
ハ現事業年度ノ月數ノ既往各事業年
度ノ月數ニ對スル割合ニ依リ之ヲ換
算ス
第四條ノ三法人ノ甲種利得ニシテ臨時
利得稅ヲ課セラルル乙種利得ニ屬スル
モノアルトキハ其ノ部分ハ之ヲ甲種利
得ヨリ控除ス
第四條ノ四法人ノ甲種利得又ハ乙種利
得ノ金額年千圓未滿ナルトキハ甲種利
得又ハ乙種利得ニ對スル臨時利得稅ヲ
課セズ但シ前條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲
シタル爲甲種利得ノ金額ガ年千圓未滿
ト爲ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七條中「既往事業年度」ヲ「甲既往事業
年度又ハ乙既往事業年度」ニ改ム
第九條個人ノ利益ガ昭和六年以前三年
ノ平均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ
超過額ヲ個人ノ甲種利得トシ昭和十一
年以前三年ノ平均利益ヲ超過スル場合
ニ於テ其ノ超過額ヲ個人ノ乙種利得ト
ス
第九條ノ二前條ノ規定ニ依リ利得ヲ計
算スル場合ニ於テ昭和六年以前三年ノ
平均利益ガ三千圓未滿ナルトキハ三千
圓、昭和十一年以前三年ノ平均利益ガ
五千圓未滿ナルトキハ五千圓ヲ以テ各
其ノ平均利益トス
第九條ノ三個人ノ甲種利得ニシテ臨時
利得稅ヲ課セラルル乙種利得ニ屬スル
モノアルトキハ其ノ部分ハ之ヲ甲種利
得ヨリ控除ス
第九條ノ四個人ノ利益ガ一萬圓未滿ナ
ルトキハ甲種利得ノ金額ヨリ二千圓ヲ、
一萬五千圓未滿ナルトキハ乙種利得ノ
金額ヨリ二千圓ヲ控除ス
個人ノ利益ガ一萬圓以上ナル場合ニ於
テ甲種利得ノ金額千圓未滿ナルトキ又
ハ一萬五千圓以上ナル場合ニ於テ乙種
利得ノ金額千圓未滿ナルトキハ甲種利
得又ハ乙種利得ニ對スル臨時利得稅ヲ
課セズ但シ前條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲
シタル爲甲種利得ノ金額ガ千圓未滿ト
爲ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十條ノ二營業ヲ繼續シ又ハ營業繼續
ト認ムベキ事實アル個人ニ付テハ命令
ノ定ムル所ニ依リ前營業者ノ平均利益
ヲ其ノ平均利益ト看做ス
個人ノ營業ノ時間ガ一年未滿ナル場合
ニ於ケル平均利益ノ計算ニ付テハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條個人ノ利益ガ六千圓未滿ナル
トキハ甲種利得ニ對スル、一萬圓未滿
ナルトキハ乙種利得ニ對スル臨時利得
稅ヲ課セズ
第十四條法人ノ臨時利得稅ハ左ノ稅率
ニ依リ之ヲ賦課ス
甲種利得利得金額ノ百分ノ十
七·二五
乙種利得利得金額ノ百分ノ三
十
現事業年度ノ資本金額十萬圓以下ナル
法人ニ限リ前項ニ規定スル乙種利得ニ
對スル稅率百分ノ三十ハ之ヲ百分ノ二
十五トス
法人ノ甲種利得又ハ乙種利得ニ付前二
項ノ規定ニ依リ算出シタル稅額ガ其ノ
利得金額中年千圓ヲ控除シタル金額ヲ
超過スルトキハ其ノ超過額ニ相當スル
甲種利得又ハ乙種利得ニ對スル臨時利
得稅ヲ免除ス
第十四條ノ二個人ノ臨時利得稅ハ左ノ
稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲種利得利得金額ノ百分ノ十
一·五
乙種利得利得金額ノ百分ノ二
十
前條第三項ノ規定ハ個人ノ甲種利得又
ハ乙種利得ニ付前項ノ規定ニ依リ算出
シタル稅額ガ其ノ利得金額中千圓ヲ控
除シタル金額ヲ超過スル場合ニ付之ヲ
準用ス但シ第九條ノ四第一項ノ規定ニ
依リ控除ヲ爲ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十四條ノ二個人ノ利得ニ付利得金
額決定後翌年利得金額決定前ニ於テ營
業ヲ法人ニ繼續セシメタル者ノ當該營
業ノ實際利得額ガ決定利得額ヲ超過ス
ルトキハ其ノ超過額ハ之ヲ利得金額ノ
決定ニ付脫漏アリタルモノト看做シ翌
年ニ於ケル所得調査委員會ノ調査ニ依
リ政府ニ於テ其ノ利得金額ヲ決定スル
コトヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該營業ノ實際利得
額ハ其ノ年ニ於ケル收入金額ヨリ必要
ノ經費ヲ控除シタル金額ニ基キ之ヲ計
算ス
第二十五條中「前條」ヲ「第二十四條」ニ改
ム
附則第二項中「昭和十三年十二月三十一
日ヲ含ム」ヲ「支那事變終了ノ年ノ翌年十
二月三十一日迄ニ終了スル」ニ、「昭和十
三年分」ヲ「支那事變終了ノ年ノ翌年分」
三次人
附則
第一條本法ハ昭和十三年四月一日ヨリ
之ヲ施行ス
第二條法人ノ臨時利得稅ニ付テハ昭和
十三年一月一日以後ニ終了スル事業年
度分ヨリ、個人ノ臨時利得稅ニ付テハ
昭和十三年分ヨリ本法ヲ適用ス但シ第
二十四條ノ二ノ規定ハ昭和十二年分臨
時利得稅ヨリ之ヲ適用ス
第三條臨時租稅增徵法第十九條ノ規定
ハ昭和十三年一月一日以後ニ終了スル
法人ノ各事業年度分ノ臨時利得稅及昭
和十三年分以降ノ個人ノ臨時利得稅ニ
付テハ之ヲ適用セズ
第四條昭和十三年三月三十一日迄ニ終
了シタル法人ノ各事業年度分ノ臨時利
得稅ニ付テハ第十四條ノ改正規定ニ拘
ラズ甲種利得ニ對スル臨時利得稅ノ稅
率ヲ利得金額ノ百分ノ十五トス
第五條北支事件特別稅法第八條ノ規定
ヲ適用スル場合ニ於テハ法人ノ甲種利
得ニ對スル臨時利得稅額ヲ以テ同條ニ
規定スル臨時利得稅額トス
第六條臨時利得稅法第十六條ノ規定中
三月十五日トアルハ昭和十三年ニ限リ
四月十五日トス
臨時租稅措置法案
臨時租稅措置法
第一條當分ノ內本法ニ依リ田畑地租、
營業收益稅、鑛產稅、特別鑛產稅及織
物消費稅ヲ輕減又ハ免除シ砂金以外ノ
砂鑛ニ付特別砂鑛區稅ヲ課ス
第二條個人ノ田畑自作ノ所得ガ平常所
得ニ對シ二割五分以上減少シタルトキ
ハ其ノ納付スル田畑地租ヲ輕減ス
第三條田畑地租ノ輕減額ハ田畑自作ノ
所得ガ平常所得ニ對シ減少シタル割合
ニ從ヒ左ノ割合ノ金額トス
減少割合ガ二割五
分以上三割五分未
滿ナルトキ田畑地租額ノ
二割
同三割五分以上五
割未滿ナルトキ田畑地租額ノ
三割
同五割以上七割未
滿ナルトキ田畑地租額ノ
四割
同七割以上ナルト
キ田畑地租額ノ
五割
前項ノ輕減額ハ自作ノ田畑ニ對スル其
ノ年分ノ地租額ニ付之ヲ計算ス
第四條平常所得ハ昭和十一年以前三年
ノ田畑自作ノ平均所得ニ依ル但シ昭和
十二年一月一日ヨリ新ニ田畑自作ヲ開
始シタル者ニ付テハ昭和十二年ノ所得
口座八
前項ニ規定スルモノヲ除クノ外平常所
得ノ算定ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
第五條田畑地租ノ輕減ヲ受ケントスル
者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ政
府ニ申請スベシ
第六條田畑地租ノ輕減ヲ申請シタル者
ノ田畑自作ノ所得ハ政府ノ調査ニ依リ
其ノ年第三種ノ所得金額ヲ決定スル時
期ニ於テ政府之ヲ確定ス
第七條所得稅法第十四條第一項第六號
ノ規定及同條第三項中相續シタル資產
ノ所得計算ニ關スル規定ハ本法ニ依ル
田畑自作ノ所得ノ計算ニ付之ヲ準用ス
第八條法人又ハ個人ノ營業(個人ニ付
テハ營業收益稅法第二條ニ揭グル營業
ヲ謂フ以下同ジ)ノ純益ガ平常純益ニ
對シ二割五分以上減少シタルトキハ其
ノ納付スル營業收益稅ヲ輕減ス
第九條營業收益稅ノ輕減額ハ營業ノ純
益ガ平常純益ニ對シ減少シタル割合ニ
從ヒ左ノ割合ノ金額トス
減少割合ガ二割五
分以上三割五分未
滿ナルトキ營業收益稅額
ノ二割
同三割五分以上五
割未滿ナルトキ營業收益稅額
ノ三割
同五割以上七割未
滿ナルトキ營業收益稅額
ノ四割
同七割以上ナルト
キ營業收益稅額
ノ五割
第十條法人ノ平常純益ハ昭和十一年以
前三年內ニ終了シタル各事業年度ノ平
均純益ニ依ル但シ第一次ノ事業年度ガ
昭和十二年中ニ終了シタル法人ニ付テ
ハ昭和十二年中ニ終了シタル各事業年
度ノ平均純益ニ依ル
個人ノ平常純益ハ昭和十一年以前三年
ノ平均純益ニ依ル但シ昭和十二年一月
一日ヨリ新ニ營業ヲ開始シタル個人ニ
付テハ昭和十二年ノ純益ニ依ル
前二項ニ規定スルモノヲ除クノ外法人
又ハ個人ノ平常純益ノ算定ニ關シ必要
ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條營業收益稅ノ輕減ヲ受ケント
スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨
ヲ政府ニ申請スベシ
第十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合
ニ於テハ營業收益稅ヲ輕減セズ
-法人ノ營業ノ純益ガ年六千圓以上
ナルトキ又ハ資本金額ニ對シ年百分
ノ七ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ
超ユルトキ
二個人ノ營業ノ純益ガ六千圓以上ナ
ルトキ
三法人ノ資本金額ガ二十萬圓以上ナ
ルトキ
第十三條營業收益稅法第四條第一項ノ
規定ハ本法ニ依ル法人ノ營業ノ純益ノ
計算ニ付、同法第六條ノ規定ハ本法ニ
依ル個人ノ營業ノ純益ノ計算ニ付之ヲ
準用ス
所得稅法第六條乃至第八條ノ規定ハ本
法ニ依ル法人ノ資本金額ノ計算ニ付之
ヲ準用ス
第十四條田畑自作ノ所得又ハ個人ノ營
業ノ純益ニ付當初確定額ニ比シ減損ア
ル場合ニ於テハ政府ハ申請ニ依リ第二
條乃至第四條又ハ第八條乃至第十條及
第十二條ノ規定ニ準ジ田畑地租又ハ營
業收益稅ヲ輕減シ又ハ其ノ輕減稅額ヲ
變更スルコトヲ得
前項ノ規定ハ田畑自作ノ所得ガ所得確
定後相續又ハ贈與ニ因リ減損シタル場
合又ハ營業ノ純益ガ純益金額決定後營
業繼續ニ因リ減損シタル場合ニハ之ヲ
適用セズ
第一項ノ申請ハ翌年一月三十一日迄ニ
之ヲ爲スコトヲ要ス
第十五條前條ノ場合ニ於テ營業ノ純益
金額ガ當初決定額ニ比シ四分ノ一以上
ノ減損ト爲ルトキハ其ノ實際純益額ニ
基キ計算シタル營業收益稅額ニ付前條
ノ規定ニ依ル輕減又ハ變更ヲ爲ス
第十六條個人ノ營業收益稅ニ付純益金
額決定後翌年純益金額決定前ニ於テ營
業ヲ法人ニ繼續セシメタル者ノ當該營
業ノ實際純益額ガ決定純益額ヲ超過ス
ルトキハ其ノ超過額ハ之ヲ純益金額ノ
決定ニ付脫漏アリタルモノト看做シ翌
年ニ於ケル所得調査委員會ノ調査ニ依
リ政府ニ於テ其ノ純益金額ヲ決定スル
コトヲ得
前項ノ場合ニ於テ當該營業ノ實際純益
額ハ其ノ年ニ於ケル收入金額ヨリ必要
ノ經費ヲ控除シタル金額ニ依ル
第十七條第十四條第一項ノ申請アリタ
ルトキハ政府ハ其ノ處分ノ確定スルニ
至ル迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第十八條昭和十三年一月一日以後鑛區
ノ合併、分割又ハ分合ニ依ラズシテ設
定セラレタル採掘權ニ基キ其ノ鑛區ヨ
リ產出シタル鑛物ニシテ命令ヲ以テ指
定スルモノニハ鑛產稅又ハ特別鑛產稅
ヲ課セズ
第十九條命令ヲ以テ指定スル鑛物又ハ
其ノ鑛產物ノ每年ノ產出數量ガ昭和十
二年中ニ於ケル產出數量ヲ超過シタル
鑛業ノ鑛業權者ニハ其ノ超過部分鑛
物及鑛產物ノ產出數量ガ何レモ超過シ
タルトキハ其ノ超過割合ノ大ナル一方
ノ超過部分)ニ付鑛產稅又ハ特別鑛產
稅ヲ免除ス
自己ノ掘採シタル鑛物ト他人ヨリ取得
シタル鑛物トヲ合併シ製鍊スル場合ニ
於テ其ノ取得鑛物ヨリ算出シタル鑛產
物ノ數量ハ前項ノ鑛產物ノ產出數量ニ
之ヲ算入セズ但シ其ノ取得鑛物ノ數量ガ
自己ノ掘採シタル鑛物ノ數量ヲ超過スル
トキハ其ノ超過部分ノ鑛物ヨリ產出スル
鑛產物ノ數量ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
昭和十二年以後鑛業ノ全部又ハ一部ノ
繼續アリタル場合ニ於テハ當該部分ヨ
リ昭和十二年中ニ產出シタル鑛又ハ其
ノ鑛產物ノ數量ハ之ヲ繼續者ノ昭和十
二年中ノ鑛物又ハ其ノ鑛產物ノ產出數
量ニ加算シ被繼續者ノ昭和十二年中ノ
鑛物又ハ其ノ鑛產物ノ產出數量ヨリ除
算シ第一項ノ超過部分ヲ計算ス
前項ノ繼續アリタル場合ニ於テハ被繼
續者ガ當該部分ヨリ其ノ年ニ於テ產出
シタル鑛物又ハ其ノ鑛產物ノ數量ハ之
ヲ繼續者ノ其ノ年ニ於ケル鑛物又ハ鑛
產物ノ產出數量ト看做ス
第二十條砂金以外ノ砂鑛ノ採取ヲ目的
トスル砂鑛權者ニハ左ノ稅率ニ依リ每
年特別砂鑛區稅ヲ課ス
河床砂鑛區域
一町每ニ金三十錢
河床ニ非
ザルモノ砂鑛區域
千坪每ニ金三十錢
前項ノ場合ニ於テ一町未滿又ハ千坪未
滿ノ端數ハ之ヲ一町又ハ千坪トシテ計
算ス
特別砂鑛區稅ノ賦課徵收ニ關シテハ鑛
區稅ノ賦課徵收ニ關スル規定ヲ準用ス
北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ特別砂鑛區稅ニ付附加稅ヲ課スル
コトヲ得ズ
第二十一條命令ヲ以テ定ムル混紡絲ハ
之ヲ織物消費稅法第一條及第一條ノ二
ニ規定スル綿又ハ綿絲ト看做ス
第二十二條綿絲又ハ前條ノ規定ニ依リ
綿絲ト看做シタル絲ト人造絹絲トヲ以
テ組成シタル織物ニシテ命令ヲ以テ定
ムルモノハ織物消費稅法第一條ノ二ノ
規定ニ拘ラズ之ヲ綿織物ト看做ス
第二十三條本法ニ依リ輕減又ハ免除セ
ラルル租稅ハ法令上ノ納稅資格要件ニ
關シテハ輕減又ハ免除セラレザルモノ
ト看做ス
附則
第二十四條本法ハ昭和十三年四月一日
ヨリ之ヲ施行ス
第二十五條田畑地租ニ付テハ昭和十三
年分ヨリ、營業收益稅中法人ノ營業收
益稅ニ付テハ昭和十三年一月一日以後
ニ終了スル事業年度分、個人ノ營業收
益稅ニ付テハ昭和十三年分ヨリ本法ヲ
適用ス但シ第十六條ノ規定ハ昭和十二
年分營業收益稅ヨリ之ヲ適用ス
第二十六條鑛產稅及特別鑛產稅ニ付テ
ハ昭和十三年分ヨリ本法ヲ適用ス
第二十七條昭和十三年分ノ特別砂鑛區
稅ニ付テハ昭和十三年四月以後ノ月割
ヲ以テ其ノ稅額ヲ計算シ同年五月三十
一日迄ニ之ヲ納付セシム
第二十八條左ニ揭グル織物又ハ之ヲ以
テ製造シタル物品ニ付テハ仍從前ノ例
·松代)
-本法施行前消費稅ヲ課スベカリシ
モノ
二本法施行前輪出若ハ朝鮮移出ノ目
的ヲ以テ又ハ織物消費稅法第七條ノ
規定ニ依リテ消費稅ヲ納付セズシテ
製造場又ハ保稅地域ヨリ引取リタル
モノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
四本法施行前消費稅ヲ納付シテ輸出
シ又ハ朝鮮ニ移出シタルモノ
第二十九條本法施行前消費稅ヲ納付シ
タル織物ニシテ本法ニ依リ消費稅ヲ課
セザルコトト爲リタルモノ又ハ之ヲ以
テ製造シタル物品ヲ本法施行後輸出シ
又ハ朝鮮ニ移出スルモ織物消費稅法第
三條第二項ノ規定及大正九年法律第五
十一號ヲ適用セズ
第三十條本法ハ支那事變終了後其ノ年
ノ翌年十二月三十一日迄ニ之ヲ廢止ス
ルモノトス
日滿國稅徵收事務共助法案
日滿國稅徵收事務共助法
第一條國稅、督促手數料、延滯金若ハ
滯納處分費ヲ徴收セラルベキ者又ハ其
ノ者ノ財產ガ滿洲國內ニ在ルトキハ當
該官吏ハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿洲國
ノ當該官吏ニ其ノ徵收ヲ囑託スルコト
ヲ得
第二條滿洲國ノ國稅、督促手數料、延
滯金若ハ滯納處分費ヲ徵收セラルベキ
者又ハ其ノ者ノ財產ガ帝國內ニ在ル場
合ニ於テ滿洲國ノ當該官吏ノ囑託アル
トキハ當該官吏ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ滿洲國ノ當該國稅、督促手數料、延
滯金又ハ滯納處分費ヲ徵收シ之ヲ滿洲
國ノ當該官吏ニ送付スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル徵收金ノ徵收ハ別
段ノ規定アル場合ヲ除クノ外帝國ノ當
該法令ニ依ル
第三條前條ノ規定ニ依ル徵收金ハ國稅
徵收ノ例ニ依リテ徵收スルコトヲ得べ
キ請求權ニ次ギ先取特權ヲ有ス
第四條第二條ノ規定ニ依ル徵收金ノ滯
納處分ニ對シ不服アル者ハ國稅滯納處
分ノ場合ニ準ジ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁
判所ニ出訴スルコトヲ得
第五條第二條ノ規定ニ依ル徵收金ノ徵
收及送付ノ費用ハ帝國ノ負擔トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
國稅徵收法第四條ノ一第二號ヲ左ノ如ク
改ム
二府縣稅其ノ他ノ公課又ハ徵收ノ囑
託ヲ受ケタル滿洲國ノ國稅ニ付滯納
處分ヲ受クルトキ
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=4
-
005・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ支那事變特別稅法案外三件ノ政府提
出法律案ニ付キ、其大要ヲ說明致シタイト
存ジマス
先ヅ支那事變特別稅法案竝ニ臨時利得稅
法中改正法律案ニ付テ說明申上ゲマス、支
那事變ニ關スル臨時軍事費ニ付キマシテハ、
第七十一議會及ビ第七十二議會ノ御協贊ヲ
得マシテ、是ガ經費ヲ支辨シ來ッテ居ルノ
デアリマスルガ、今囘更ニ之ヲ增額スルノ
必要ヲ生ジマシタノデ、不日臨時軍事費追加
豫算案ヲ提出致ス積リデアリマス、此追加豫
算案ノ其財源ノ大部分ハ、之ヲ公債ニ俟ツ
コトト致シタイト存ジマスルガ、其一部ハ銃
後ノ國民ニ於テ其分ニ應ジ、租稅ヲ以テ負
擔スルヲ適當ト認メラレマスノデ、玆ニ增
稅案ヲ提出致シタ次第デアリマス、租稅ノ
增徵ニ當リマシテハ、政府ハ國民ノ負擔力
ニ留意シ、所得稅ヲ中心トシテ增收ヲ圖ル
コトト致シ、又事變ノ影響ニ因リ利益ノ著
シク增加シタルモノニ對シテハ、新ニ標準
ヲ設ケテ其增加利益ニ課稅スルト共ニ、比
較的擔稅力アル方面ノ消費スル物品又ハ行
爲ニ課稅スル爲メ、物品特別稅ノ範圍ヲ擴
張シ、新ニ通行稅、入場稅ヲ新設スルコト
ニ致シタノデアリマス、尙ホ昨年御協贊ヲ
得マシテ、目下施行セラレテ居リマスル北
支事件特別稅ハ、今囘ノ增稅案ノ施行ト共
ニ廢止セラルヽ豫定デアリマス
是ヨリ法案ノ內容ニ付テ說明ヲ致シマ
ス、所得稅ニ付テハ、其負擔ヲ二割五分程
度引上ゲルコトニ致シマシタガ、北支事件
特別稅ニ於テ、稅額ノ一割程度ノ增徵ヲ行ッ
テ居リマスルカラ、今囘ノ增徵ニ依ル負擔
ノ增加ハ一割五分程度デアリマス、尙ホ法
人ノ所得稅ニ付テハ、超過所得ニ對スル增
徴額ハ、北支事件特別稅ト同樣之ヲ一割ノ
程度ニ止メ、第二種所得稅ニ付テハ、國債
ノ消化竝ニ產業資金ノ疏通等ヲ考慮致シマ
シテ、國債ノ利子ニ付テハ、利率年四分以
下ノモノニ對シテハ增徵ヲ見合セ、又地方
債竝ニ社債ノ利子ニ付テハ、利率年四分五
厘以下ノモノ、銀行預金ノ利子、貸付信託
ノ利益ニ付テハ、其增徵率ヲ少ク致シテ居
ルノデアリマス、第三種卽チ個人ノ所得稅
ニ付キマシテハ、其課稅ノ最低限千二百圓、
ヲ千圓ニ引下ゲマシテ、國民ノ所得稅ヲ負
擔スル範圍ヲ廣ク致シマシタノデアリマ
ス、臨時利得稅ニ付テハ、北支事件特別稅
ト同樣ノ課稅デアリマスガ、更ニ支那事變
ノ影響等ニ因リマシテ、利益ノ增大スルモ
ノニ對シマシテハ、此際增徵スルヲ適當ト
認メマシテ、昭和九年、十年、十一年ノ三
箇年ノ平均利益ヲ超過スル利得ニ對シ、法
人ニ付テハ百分ノ三十、個人ニ付テハ百分
ノ二十ノ稅率ニ依リ、新ニ課稅スルコトニ
致シタノデアリマス、尤モ資本金十万圓以
下ノ法人ニ付テハ、其稅率ヲ百分ノ二十五
ト致シマシテ、小資本ノ法人ニ對シテハ、
增徵ニ依ル負擔ノ增加ノ緩和ヲ圖ッタノデ
アリマス、尙ホ各種ノ租稅ノ增徵ノ結果、
其負擔ガ特ニ過重トナル場合ガアリマスル
ノデ、其負擔ノ緩和ヲ爲ス規定ヲ設ケマシ
タ次第デアリマス、利益配當稅及ビ公債、
及ビ社債利子稅ハ、配當ニ付テハ配當率年
七分ヲ超エル金額、國債ニ付テハ利率年四
分、其他ノ公債及ビ社債ニ付テハ、利率年
四分五厘ヲ超ユル金額ニ對シ、百分ノ十ノ
稅率ヲ以テ課稅スルコトニナッテ居リマス
ルガ、是ハ北支事件特別稅ト同樣デアルノ
デアリマス、又法人資本稅ニ付テハ、新
二割ヲ增徵スルコトト致シマシタ、次ニ砂
糖消費稅ニ付テハ、稅額ニ付キ平均約一割
ノ增徵ヲ爲スト共ニ、其徵收ヲ猶豫スル期
間ヲ此際三箇月短縮スルコトト致シ、取引
所稅ニ付テハ、株式ノ賣買取引ニ對スル取
引稅ノ稅率ヲ、長期ニ付テハ約三割三分ヲ
引上ゲ万分ノ六ニ、短期ニ付テハ約四割八
分ヲ引上ゲマシテ、万分ノ四ニ致シタノデ
アリマス、通行稅ニ付キマシテハ、汽車、
汽船等ノ乘客ニ對シ課稅スルコトニ致シタ
ノデアリマスルガ、五十粁未滿ノ短距離三
等乘客ニ對シマシテハ、其負擔力ヲ考慮
シ、課稅ヲ致サナイコトニ定メタノデアリ
マス、其稅率ハ最低三等乘客五十粁以上ノ
モノ二錢ヨリ、最高一等乘客八百粁以上ノ
モノ二圓四十錢ニ至ル迄トシ、距離ト等級
ニ應ジタル階級定額稅率ヲ設ケルコトニ致
シタノデアリマス、次ニ入場稅ニ付テハ劇
場、活動寫眞館、舞踏場、「ゴルフ」場、野
球場、競馬場等ノ入場者ニ對シ、大體其入
場料金ノ百分ノ十ノ稅率ヲ以テ課稅スルコ
トニ致シ、又學生ノ運動競技等ヲ觀覽スル
爲メ入場スル者ニ對シマシテハ、特別入場稅
ヲ課スルコトニ致シタノデアリマス、又物
品稅ニ付テハ、北支事件特別稅法ニ依リ物
品特別税ヲ設ケタノデアリマスルガ、今囘
更ニ其課稅品目ノ範圍ヲ擴張致シマシテ、
比較的擔稅力アル方面ノ消費スル物品ニ課
稅スルコトニ致シタノデアリマス、其稅率
ハ北支事件特別稅法ニ於テハ、一律ニ百分
ノ二十デアリマシタガ、今囘ハ之ヲ稍く、引下
ゲマシテ、百分ノ十五及ビ百分ノ十ニ改メ
ルコトニ致シタノデアリマス、其外酒類及
ビ燐寸ニ對シマシテモ物品稅ヲ課スルコトトシ、
其稅率ハ〓酒、白酒、味淋、燒酎、麥酒ニ付テ
ハ一石ニ付キ五圓、酒精及ビ酒精含有飮料
ニ付テハ一石ニ付キ七圓、葡萄酒ニ付テハ一
石ニ付キ十五圓、燐寸ニ付テハ千本ニ付キ五錢
ノ割合デアリマス、以上申述ベマシタ增稅計畫
ニ依リマシテ、平年度ノ收入ハ所得稅ニ於
テ一億二千六百餘万圓、臨時利得稅ニ於テ
三千九百餘万圓、利益配當稅ニ於テ三千九
百餘万圓、公債及ビ社債利子稅ニ於テ二百
餘万圓、法人資本稅ニ於テ三百餘万圓、砂
糖消費稅ニ於テ一千餘万圓、取引所稅ニ於
テ九百餘万圓、通行稅ニ於テ八百餘万圓、
入場稅及ビ特別入場稅ニ於テ一千百餘万
圓、物品稅ニ於テ六千四百餘万圓、合計ニ於
テ約三億一千八百万圓ノ增收トナル見込デ
アリマスガ、初年度タル昭和十三年度ニ於
キマシテハ、約三億六百万圓ノ增收ノ見込
デアリマス、是等ノ收入ハ、煙草ノ一部ノ
値上ニ因ル昭和十三年度ニ於ケル增收約一
千餘万圓ト共ニ全部臨時軍事費ノ財源ニ充
當スル豫定デアリマス
次ニ臨時租稅措置法案ニ付テ說明申上ゲ
マス、自作農者又ハ中小商工業者ノ中ニハ、
支那事變ノ影響等ニ依リマシテ、其收益ノ
相當減少シテ居ルモノモアルト認メラレマ
スルノデ、是等ノ人々ノ負擔スル地租又ハ
營業收益稅ヲ、現行法ノ儘賦課徴收スルコ
トハ適當デナイト存ゼラレマスルノデ、玆
ニ臨時的措置ト致シマシテ、特ニ地租及ビ
營業收益稅ノ稅額ヲ輕減シ、收益ノ減少致
シマシタ是等ノモノニ對シ、其負擔ヲ輕減
致シタイト存ジテ居ル次第デアリマス、尙
ホ本案ノ施行ニ伴ヒマシテ、地方附加稅及ビ
地方稅ニ付テモ相當輕減セラルヽコトトナ
ルノデアリマス、又我國ニ於キマシテ、此
際必要トスル鑛物ノ產出ノ助長ヲ圖ル趣旨
ヲ以チマシテ、金鑛、銅鑛、亞鉛鑛、錫鑛
等ノ鑛物ニ付キ、新ニ採掘權ヲ設定シタル
場合、及ビ昭和十二年中ノ產出數量ヲ超過
シタル場合ニ付テハ、其鑛物ニ付キ鑛產稅
ヲ免除スルコトト致シ、又砂金以外ノ砂鑛
ニ付キ特別砂鑛區稅ヲ課スルコトト致シマ
シタガ、是ハ是等ノ砂鑛區ニ付キ、其採掘量
ヲ增加セシメントスル趣旨デアリマス、其
他棉花ノ節約ニ資スル爲メ「ステープル·
ファイバー」、麻等ヲ混紡シタル綿絲ニ依ル織
物ノ一部ガ、現在課稅セラレテ居リマスル
ノヲ、課稅ノ外ニ置クコトト致シタノデア
リマス、以上申シマシタ臨時的措置ニ依リ
マシテ、大體平年度ニ於キマシテハ、地租、
營業收益稅、鑛產稅、織物消費稅等ノ減收
額合計約四百餘万圓、地方稅ニアリテハ、
地租附加稅、營業收益稅附加稅等ノ減收額
合計六百餘万圓、國及ビ地方ヲ合セマシテ
約一千万圓ノ減稅トナル見込デアリマスル
次ニ日滿國稅徵收事務共助法案ニ付テ說
明申上ゲマス、近時滿洲國ノ發展ニ伴ヒマ
シテ、日滿兩國間ノ交通頻繁ニナリツヽア
リマスルノニ鑑ミマシテ、兩國相互間ニ國
稅徵收事務ノ共助ヲ爲シ得ルノ途ヲ開クコ
トト致シマシテ、玆ニ其法案ヲ提出致シタ
次第デアリマス
以上ハ支那事變特別稅法案外三件ノ〓要
ノ說明デアリマスルガ、尙ホ詳細ノ點ニ付
キマシテハ、委員會ニ於キマシテ說明申上
ゲルコトト致シマス、何卒御審議ノ上速ニ
御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=5
-
006・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通〓ガアリ
やっ、順次之ヲ許シマス-紫安新九郞君
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=6
-
007・紫安新九郎
○紫安新九郞君 諸君、私ハ只今上程セラ
レマシタル支那事變特別稅法案ニ對シテ政
府ニ質問セントスルモノデアリマス、日支
事變勃發直後、海外諸國ハ我國財政ノ前途
ニ對シテ、果シテ持久戰ニ堪へ得ルモノデ
アルカドウカト云フコトノ疑問ヲ挿ンデ居ッ
タノデアリマスルガ、玆ニ廣袤千里ニ亙ル
トモ云フベキ戰線ニ近代戰ヲ進ムルコト半
歲而モ財政上ニ於テハ微動スラナキ事實
ヲ以テ、支那ヲ膺懲シツヽアルト云フコト
ハ、吾々ハ國民ト共ニ洵ニ同慶ニ堪ヘザル
次第デアリマス、今ヤ事變ハ長期ニ入ッタノ
デアリマスルカラシテ、問題ハ過去ニナク、
正ニ將來ニアリト言ハナケレバナラナイ
ノデアリマス、卽チ時局ハ國民白熱ノ協
力ヲ要シ、國家的緊張ノ最高度ヲ要求致シ
テ居ルノデアリマス、國民ハ國家ニ對シ
進ンデ增稅ヲ迎ヘナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、此度政府ガ要求致シマシタル
所ノ增稅ハ、總額約三億圓餘デアリマス、
外ニ煙草値上增收ガ一千万圓デアリマスル
ガ、實際ニ當リマシテ端數ヲ考ヘ、自然增
收ヲ考ヘマスルト、或ハ四億圓近クニナル
カモ知レナイノデアリマス、政府ノ今度ノ
增收程度ヲ三億圓餘ノ見當ト致シマシタコ
トハ、ドンナ所カラ割出シタノデアルカ判
明致シマセヌガ、假ニ之ヲ國債ノ利子ニ充
當スルト云フ見地カラ申シマスレバ、現在
ノ國債ノ利廻三分七厘デアリマスルカラシ
テ、事變費ヲ假ニ百億圓トスルナラバ、此
國債ノ金利ハ今度ノ增稅ダケデ賄ッテ行ケ
ル譯デアリマス、斯樣ニ觀察致シマスレバ
增稅額其モノハ大體ニ於テ妥當デアルト信
ズルノデアリマス、今囘ノ增稅ハ臨時軍事
費ノ財源ニ充當セラレルトスルナラバ、此
兩者ハ密接不離ノ關係ニアルニ拘ラズ-
軍事費ハ本日ノ新聞ニハ出テ居リマシタガ、
マダ本院ニハ提出セラレナイカラ、此雙方
ヲ睨ミ合ハスコトハ出來ナイノデアリマス
ルガ、政府ハ一體ドレ程ノ軍事費ヲ提出セ
ントスルノデアルカ、先ヅ之ヲ御伺致シマ
ス
ソレカラ又增稅ハ是デ打切ニナルノデア
ルカドウカト申シマスト、時局今後ノ推移
ヲ想像致シマスルト、今囘ダケデ打切ニナ
ルモノトハ思ヘナイノデアリマス、今日ヨ
リ見透シノ付クモノダケデモ、二ツノ大イ
ナル問題ガ橫ハッテ居ルト思フノデアリマ
ス、第一ハ、事變以外ノ一般歲出ニ於テモ
事變ノ爲メ極力切詰メタト申シマシテモ、
尙ホ赤字公債六七億圓ハ依然トシテ存續シ
テ居ルノデアリマス、第二ハ、現實ニ日支
ノ間ニ於テ砲火ヲ交ヘナイ程度ニ至リマシ
テモ、軍事費ノ急激ナル減少ハ想像シ得ナ
イノデアリマス、事變ガ一段落ヲ〓ゲマシ
テモ、尙ホ相當巨額ナル支那駐在軍事費ヲ
要スルコトト思フノデアリマス、尙ホ其上
ニ世界ノ海軍擴張ニ伴ヒマシテ、我ガ海軍
ノ擴張費ニモ相當ナル費用ヲ要スルコトト
思フノデアリマス、斯樣ニ考ヘテ參リマス
ト云フト、增稅ハ今度ノ增稅ダケデ打切ラ
レルモノトハ思ヘナイノデアリマス、更ノ
必ズヤ相當ノ增稅ガ出テ來ルコトト致シマ
スレバ、其增稅ハ現在ノ儘ノ稅制ノ下デ施
行スルコトハ、斷ジテ吾々ノ贊成セザル所
デアリマス、凡ソ增稅ヲ斷行セントスルノ
三、現行稅法ノ不公平ノ點ヲ修正シ、負
擔關係ノ地均シヲ豫メ用意シナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、サウデナイト現行
稅法ノ缺點ヲ强化シ、負擔關係ノ凸凹ノ上
ニ、一層此凸凹ヲ大ナラシムルノデアリマ
ス、隨テ增稅ヲ行フ際ニハ、其前提條件ト
シテ、現行稅法ノ不公平ヲ除キ置カナケレ
バナラナイノデアリマス、然ルニ賀屋藏相
ノ先月二十二日本院ニ於テ爲サレタル所謂
施政演說ノ中ニ、斯樣ナ事ヲ申シテ居ラレ
ルノデアリマス、租稅制度ノ中央及ビ地方
ヲ通ズル全般的改革ニ付テハ、政府ニ於テ
モ豫テヨリ其必要ヲ認メ調査ヲ進メテ參ッ
タノデアル、偶〓支那事變勃發シ、稅制ノ基
礎トナルベキ經濟事情、及ビ國民ノ負擔力
ニ相當ノ變化ヲ生ジツヽアルノデ、之ヲ見
合セルコトト致シマシタト申サレタノデア
リマス、經濟事情ヤ國民ノ負擔力ハ、殆ド
何時ノ時代デモ變化シテ止マザルモノデア
リマス、之ヲ以テ財政的根本策ノ樹立ヲ見
合スト云フコトハ、甚ダ當ヲ得ナイモノデ
ハナカラウカト思フノデアリマス、稅制改
革ハ寧ロ非常時ナルガ故ニ之ヲ行フベキデ
アラウト思フノデアリマス、日露戰爭、世
界大戰ヲ契機ト致シマシテ、我國ニ稅制改
革ノ行ハレタルコトハ言フ迄モナク、各國
ノ所得稅ノ歷史ヲ見マシテモ同樣ノ結論ヲ
得ルノデアリマス、政府ハ何故ニ日支事變
ニ藉口シテ、租稅體系ノ完璧ヲ期スル根本
的改革ヲ樹立スルノ態度ニ出ナカッタノデ
アルカ、之ヲ御伺致シマス
次ニ本增稅ハ何時マデ施行シテ行ク積リ
デアルカト云フコトデアリマス、換言スレ
バ軍事上ノ事變終了ト、財政ノ關係トハ同
時ニ之ヲ認ムルノデアルカドウカト云フコ
トデアリマス、本增稅ハ其名稱ノ如ク、支
那事變ニ處スル特別稅法デアリマス、又其
條文ノ中ニモ本法ハ支那事變終了後其翌年
十二月三十一日マデニ之ヲ廢止スルモノト
アリマス、併ナガラ既ニ長期抗戰ノ立前デ
アル以上ハ、事變ハ必ズヤ相當ノ長期ニ亙ッ
テ繼續スルモノト認メナケレバナラナイノ
デアリマス、又事變終了ノ後一箇年餘デハ、
直チニ之ヲ廢止スルト云フコトハ實際ニハ
出來ナイカト私ハ思フノデアリマス、何故
デアルカト申シマスルト、軍事的ノ事變終
了ハ區切リガ立ツノデアリマスルガ、財政上
ヨリ見ル事變終了ハ軍事的事變終了ト同一
ニハ見ラレナイカラデアリマス、其適切ナ
ル先例ハ滿洲事變ガ示シテ居ルノデアリマ
ス、蔣政權ハ對手ニシナイデ、新政府ヲ對
手トスルト云フ長期戰爭化シタ今度ノ事變
ノ性質カラ申シマスルト、恐ラク何時事變
ガ終了シタト云フガ如キ劃然タル財政上ノ
時期ヲ定メルト云フコトハ、容易ニ出來ナ
イノデハナカラウカト思ハレルノデアリマ
ス、事變勃發以來是マデノ我ガ事變對策ハ、
之ヲ極メテ短期ノモノト認メテノ應急策デ
アッタヤウニ見ラレルノデアリマス、隨テナ
ンデモ小出シニシテ來ルノデアリマス、持
久戰ト云フ方針ガ決定シタ以上ハ、當然ニ
財政策モ稅制問題モ、新事態ニ卽應シタル
根本策ヲ樹立シナケレバナラナイト思フノ
デアリマス、况ヤ臨時租稅增徵法ト新稅法
デ昭和十二年度ニ二億六千五百万圓ノ增稅
ヲ斷行スルニ當ッテ、結城藏相ハ第七十議
會デ昭和十三年度カラ中央地方ヲ通ズル稅
制ノ根本的改革ヲ爲スベキ旨ヲ約束シタ程、
現行稅制ニハ一大缺陷ガアルデハアリマセ
ヌカ、政府ハ政府ノ所謂事變終了セザル間
ハ、何時マデモ本稅法ヲ施行シテ行ク積リ
デアルカ、又事變ニ對スル財政上ノ關係
モ、軍事上ノ事變終了ト同時ニ、終了スル
モノト思ッテ居ルノデアルカ、之ヲ御伺致シ
マス
次ハ稅制ノ內容ニ對スル問題デアリマス、
先ヅ直接稅ト間接稅トノ振合デアリマス、
三億圓增稅ノ中前者ハ約二億圓、後者ハ約
一億圓デアッテ、大體ニ於テ妥當ナル分配ト
思フノデアリマス、又酒類ノ增徵ヲ酒精ノ
增徵ニ依ラズ、物品特別稅ニ加ヘテ庫出課
税制ト爲シ、更ニ營業收益稅地租等ニ對シ、
事變ニ因ル中小商工業者竝ニ自作農等ノ打
擊ヲ緩和スル爲、特別ノ輕減ヲ設ケタル點
ナドハ、政府ガ細心ノ注意ヲ拂ッテ居ルコト
ヲ認ムルニ吝カナラザルモノデアリマス、
併シ本增稅案內容ニ對スル問題ハ、各種資
本ノ間ニ於ケル負擔ノ不公平デアリマス、
大雜把ニ之ヲ申スナラバ、金融資本ニ對シ
ハ極メテ輕微ナル事變費負擔ヲ課シ、產業
資本竝ニ勤勞所得ノミ重稅ヲ課スルト云フ
問題ガ橫ハッテ居ルノデアリマス、換言スレ
バ、國債ヲ優遇シテ株式ヲ虐待シテ居ルト
思フノデアリマス、今度ノ增稅案ハ酒、燐
寸、其他ノ物品特別稅、交通稅、入場料稅
デ合計九千三百万圓、外ニ煙草ノ値上デ
一千万圓、總計二億圓餘ノ所謂大衆課稅ヲ
施行セントスル上ニ、第三種所得稅ニ於テ
モ是迄ノ免稅點千二百圓ヲ千圓ニ引下ゲ
テ、銃後ノ國民義務ヲ一般化シテ居ルノデ
アリマス、然ルニ此間ニ於テ其所得ノ性質
上最モ負擔力アル國債、地方債、社債、銀
行預金ノ利子ヤ、信託預金ノ利益ニ對スル
增稅ハ、ホンノ稅率ノ端數ヲ整理シタカト云
フ程度ニ過ギナイノデアリマス、其第三種所
得稅ガ最モ大キナ增稅デアリマス、稅額モ六千
四百万圓ニ上リ、物品課稅ト共ニ今度ノ增稅
ノ雙璧ヲ爲スモノト言ハナケレバナラヌノ
デアリマス、卽チ第一種、第三種所得、ソレハ
勤勞所得乃至產業所得デアリマス、此物資缺
乏ノ非常時ニ於テ國家ハ最モ之ヲ尊重シナ
ケレバナラナイ程度ノモノデアルニ對シテ、
百分ノ二十五ノ增徵ヲシナガラ、國債所得
ニ對シテハ利率年四分以下ノモノハ百分ノ
二、利率年四分ヲ超ユルモノハ百分ノ二·五
ヲ課スルノデアリマス、國債以外ノ公債社
債ニ至リマシテハ、殆ド國債課稅ニ對スル
申譯ニ過ギナイ程輕微ナモノデアリマス、
一億ノ大衆課稅ヲ敢行スル必要ニ迫ラレテ
居ル非常時ニ於テ、負擔能力最モ多キ金融
資本ニ對シテ、斯ノ如キ輕微ナル課稅ニ止
メ置イタノデアリマスルガ、是ハドウ云フ
譯デアルカ、此點ニ付テ私ガ忖度スルナラ
バ、政府ハ今後ニ於テ數十億圓ノ公債發行
ヲ控ヘテ居ル、此場合ニ他ノ資本ト同樣ニ
國債ニ課稅スルナラバ、國債ノ消化ガ困難
ニナルト斯樣ニ考ヘテ、ソレデ今度ノ增稅
案ニ對シテハ、國債ニ對シテ極メテ輕微ナ
ル課稅ヲ爲サントスルノデアル、併シ是ハ
一寸考ヘルト尤ノヤウニ思ハレマスルガ、
是ハ經濟界ノ實際ノ眞相トハ遠ザカッテ居
ルモノト言ハネバナラヌノデアリマス、何
トナラバ國債ニ課稅致シマシテモ、國債ノ
市價其モノガ別段ニ變化スルモノデハナイ
ノデアリマス、國債ニ課稅スルナラバソレ
ダケ金利ノ水準ガ下ルノデアリマス、又國
債ノミヲ免稅スルナラバ、ソレダケ金利ノ
水準ガ上ルノデアリマス、此理窟ハ吾々ノ
素人論デハナイノデアリマス、其證據ニハ
一昨年六月五日、手形交換所聯合會ニ於ケ
ル理事長ノ森氏ハ、斯樣ナル演說ヲシテ居
ルノデアリマス、低金利ハ公債消化ニモ產
業發達ニモ勿論必要デアルガ、將來低金利
ニナルガ如キ觀念ヲ一般ニ懷カシムル時ハ、
却テ不健全ナル投機心ヲ誘發シテ、低金利
ノ效果ヲ薄弱ナラシメル虞ガアル、ソレカ
ラ又今日ハ特ニ國債ノ利廻ガ、總テノ金利
ノ標準ニナッテ居ルカラ、今後國債ノ借換ヤ
新規發行ニ際シテハ、其波及スル所ヲ篤ト
考察スルコトガ望マシイノデアル、手形交
換所理事長ノ森氏ハ、斯樣ニ申シテ居ルノ
デアリマス、今日ノ國債ノ利廻ト云フモノ
ガ、總テ金利ノ標準ヲ爲シテ居ルノデアリ
マスルカラシテ、國債ノ課稅ヲ免除シタカ
ラト言ッテ、ソレデ國債ノ消化ガ宜シイトハ
言ヘナイノデアリマス、何トナレバ國債ニ
課稅シテ居ナカッタナラバ、市場ニ於テハ直
チニソレダケヲ市價ニ織込ンデシマフノデ
アリマス、ソコデ買手カラ言フナラバ、國
債ヲ買フノモ、公債ヲ買フノモ、社債ヲ買
フノモ、將タ株式ヲ買フノモ採算關係ハ元
ノ儘ニ殘ッテ居ルノデアリマス、以上述べマ
シタル所ハ、是ハ單ニ負擔ノ不公平ト云フ
問題ニ止ラヌノデアリマス、其譯ハ今日ノ
非常時ニ於テ我ガ產業ニ不自然ナル多大ノ
壓迫ヲ加ヘルカラデアリマス、私ハ繰返シ
テ申シマスル、金融資本所得ニ對スル課稅
ト大衆負擔トハ、如何ニモ均衡ヲ得テ居ナ
イノデアリマス、金融資本所得ニ對シテ僅
ニ百分ノ〇·五ノ增徵シカシナイノニ、大衆
負擔稅中最モ適切ナル大衆負擔稅トモ言フ
ベキ煙草ニ對シテハ、最低五分九厘、最高
二割五分ノ値上ヲシテ居ルノデアリマス、
日露戰爭ノ明治三十七年ニ財政上ノ必要ニ
基イテ煙草專賣法ガ實施サレテカラ、今度
ノ値上デ八度ノ煙草定價ノ改正ヲ行ヒ、其
中値下ハ一囘デ、七囘ハ値上デアリマス、
煙草ハ專賣ダカラ政府ガ勝手ニ出來ルトハ
申シナガラ、兎ニ角今度ノ値上ハ飛躍的ノ
値上ト言ハザルヲ得ヌノデアリマス、又第
三種所得ニ對スル增稅ハ一寸考ヘマスルト、
單ニ個人ノ所得ガ減少スルト云フ問題ノ如
クニ見ラレルノデアリマスルガ、事實ハ決シ
テ左樣ナル問題ニ止ルモノデハナイノデアリ
マス、實ハ一國資本金ノ動キヲ左右スル所ノ
重大ナル結果ヲ招來スルノデアリマス、本稅
法ニ於テハ高利ナル時代ノ國債所有者ニ對
シテハ、頗ル輕微ナル源泉課稅ヲスルノデ
アリマスガ、株式ノ所得ハ第三種所得ニ綜合
セラルヽ結果、基本稅法ノ累進率ニ應ジテ
附加稅ヲ課セラレ、更ニ右ノ累進率ニ應ジテ
再三臨時的增稅ヲ受ケルト云フ、甚シキ不
公平ナル負擔ヲ爲シテ居ルノデアリマス、
株式所得ハ綜合課稅ガ加ヘラレルカラ、所
得階級別ニ依ッテ利廻ガ變化スルノデアリ
マス、卽チ利〓ハ高級所得階級每ニ低下ス
ルノデアリマス、本稅法ニ依ル所得稅ノ上
ノ率ヲ上ゲルト云フコトハ、感情的カラ申
シマスルト痛快ヲ感ズル人モアルデアリマ
セウガ、此所得稅ノ上ノ率ヲ無暗ニ上ゲル
結果ハ一般民衆ニ對シテ思ハザル影響ヲ與
フルモノデアリマス、卽チ生產資本ニ對ス
ル非常ナル壓迫トナルノデアリマス、凡ソ
今日ノ時局ニ於テ、我國ガ第一ニ必要トシ
テ居ルモノハ、大規模ニシテ急速ナル生產
力ノ擴充デアリマス、是ハ一般民衆ノ生活
ニ密接ナル利害關係ヲ持ッテ居ルノデアリ
マス、而シテ生產力ヲ擴充スルノニ、第
ニ必要トナルモノハ何デアルカト云フト、
長期ノ固定資本デアリマス、其長期ノ固定
資本ノ調達ハ、今日ノ經濟組織ノ下ニ於テ
ハ、先ヅ自己資本卽チ株式ノ所得ガ根幹ト
ナルヨリ外ハナイノデアリマス、尤モ今日
マデニ基礎ノ相當安定シ、資金モ頗ル豐富
デアル既成事業ハ別ト致シマシテ、今日ノ
我國ガ最モ必要ナリト思フ所ノ生產力擴充
ハ、新興產業ノ發展デアリマス、又マダ海
ノモノトモ山ノモノトモ分ラナイ新事業ノ
發展デアルノデアリマス、然ルニ此際ニ株
式虐待ノ稅制ヲ布クト云フコトハ、國策的
ニ重要デアル事業ノ資金ヲ、調達難ニ陷ラ
シムルモノデアリマス、政府ノ言フ生產擴
充ノ國策ニ逆行スルモノデアルト思フノデ
アリマス、吾々ハ今日ノ日本程生產力擴充
ヲ急トスル秋ハナイト思フノデアリマス、
最近ノ新聞ニ依リマスト、晒木綿ノ値段ガ
僅カ二週間デ倍ニナリ、一般民衆モ金持モ
反物屋ノ店頭ニ殺到シテ居ルト云フコトデ
アリマス、是ハ一例ニ過ギナイノデアリマ
スガ、各種ノ方面ニ於テ是ト似タリ寄ッタリ
ノコトハ、殆ド枚擧ニ遑ガナイノデアリマ
ス
最後ニ私ハ簡單ナルコトニ付テ二三御伺
ヲ致シマス、第一ハ臨時利得稅ヲ何故單一
ニシナカッタノデアルカト云フコトデアリ
マス、臨時利得稅ニ付テハ從來ノ基準ニ依
ル利得ノ外、更ニ事變ノ利得ヲ捉へルガ爲
ニ、別ニ基準年度ヲ設ケテ課稅セントスル
モノデアリマスルガ、斯樣ニ致シマスルト、
利得ノ査定其他徵稅手續ヲ甚シク複雜ナラ
シメルノデアリマス、何故ニ政府ハ是ガ課
稅ヲ單一化シナカッタデアリマセウカ、第
二ハ法人個人共ニ基本稅ノ外ニ臨時租稅增
徴法ニ依リ、更ニ支那事變特別稅ニ依リ重
複シテ課稅セラレテ居ルノデアリマスカ
ラ、法人個人共ニ課稅額ノ最大限度ヲ規定
スルコトガ妥當デアラウト私ハ思フノデア
リマス、政府ハ何故ニ最大限度ノ規定ヲ設
ケナカッタデアリマセウカ、第三ハ法人ノ固
定資產ニ對シテハ減價銷却ヲ是認シテ居ル
ノデアリマスカラ、個人ニ對シテモ減價償
却ヲ是認スルト云フコトガ妥當デハナイデ
セウカ、第四ハ本稅ハ輸出品ニ對シテハ免
除セラレテ居ルノデアリマスルガ、輸出先
ニ於テハ稅額ヲ含メタト同樣ノ價格ヲ基礎
ト致シマシテ關稅ヲ課シ、中ニハ右ノ本稅
ヲ以テ不當廉賣ナリトシテ所謂報復關稅ヲ
課シテ居ル場合ガ少クナイノデアリマス、
ソコデ斯樣ナル輸出ノ障碍ヲ除クガ爲ニ
ハ、最初ニ輸出向ノ物品ニ對シテハ特別稅
ヲ課セナイヤウニスルコトガ輸出奬勵上最
モ必要デハナイデアリマセウカ、此點ニ對
シマシテハ私共ハ大阪ニ於テ常ニ輸出商ヨ
リ此困難ナル事情ヲ聞キ、之ヲ痛切ニ感ジ
テ居ル者デアリマス、今ヤ時局ハ極メテ重
大デアリマス、我ガ皇軍ガ酷暑嚴寒ノ裡ニ
於テ忠勇義烈ナル働ヲ爲シテ居ルノニ對シ
マシテモ、國民ハ各〓其分ニ應ジテ銃後ノ御
奉公ニ努メンケレバナラヌノデアリマス、
唯稅法上ニ於ケル負擔ノ不公平ニ對シテハ
出來得ル限リ之ヲ避ケナケレバナリマセ
又、以上申述ベタル所ヲ以テ私ノ質問ト致
シマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=7
-
008・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ御質問ニ
對シマシテ御答申上ゲマス、增稅ヲ致スニ
シテモ、負擔ノ公平ヲ期スベシト云フ御趣
旨ニ付キマシテハ、全ク御同感デアリマス、
以下御質問ノ諸點ニ付キマシテ順次御答ヲ
申上ゲマス
今囘追加豫算ト致シマシテ提出致シマス
ル臨時軍事費ハ大體四十八億圓ニ餘ル見込
デ居リマス、次ニ稅制整理ヲ致シ負擔ノ均
衡ヲ圖ッタ上デ增稅ヲ爲スベシト云フ御說
ハ、御趣旨ニ於テハ同感デアリマスルガ、
只今ノ時局ニ依リマシテ或ハ急激ニ稅ノ負
擔力ノ增加スルモノ、又減少スルモノガア
リマスルノデ、此際ニ負擔ノ公平ヲ圖リ、恆
久的ノ稅制ヲ立テマスルコトハ其時期デア
リマセヌ、故ニ已ムヲ得ズ之ヲ延期致シマ
シテ今囘ノ增稅ニ於テハ成ベク是等ノ事情
ヲ考慮致シマシテ、負擔力ノアル方面ニ稅
ノ課リマスヤウニ按排ヲ致シタノデアリマ
ス、本稅ノ終期ガ事變ノ終リマスル年ノ翌
年マデトナッテ居リマスルノモ、成ベク早
ク稅制整理ヲ致シテ、其基礎ノ上ニ增稅ヲ
致スノガ本筋デアリマスルシ、又將來ハ增
稅ノ額ニ付キマシテモ只今考ヘテ居リマス
ルヨリハ變ッタ考ガ起リ得ル餘地モアリマ
スルノデ、一應左様ニ終期ヲ付シテ置キマ
シタ、其際ニ適當ナル全部的ノ案ヲ立案シ
タイ、斯樣ナ趣旨デアルノデアリマス
尙ホ今囘ノ增稅ハ公債社債等ノ金融資本
ニ增加スルコト薄クシテ、產業資本ニ增徵
スルコトガ厚イト云フ御說デアリマスルガ、
是ハ只今ノ經濟界ノ現狀已ムヲ得ナイコト
デアリマスルノミナラズ、產業資本ノ疏通
ヲ圖リマスル爲ニ斯樣ナコトヲ致シタノモ
重大ナル一ツノ理由デアリマス、國債ニ付
キマシテ、是ガ消化ニ付キ各方面ニ於テ色
色ト御心配ニナッテ居ルコトハ御尤デアリ
マス、是ガ消化ニ付テハ萬全ノ策ヲ執ラナ
ケレバナラナイノデアリマス、而シテ只今
ノ金利水準ハ數年來國債ニ於テハ五分利ヨ
リ三分半利、利廻三分六厘六毛程度ニ低下
ヲ致シテ居ルノデアリマス、此際國債ニ課
稅ヲ致シテモ國債ノ價格ガ變ラズ、何等資
本ノ集中ニ變化ナイトハ申上ゲ惡イノデア
リマス、只今銀行預金ヲ以チマシテ國債ヲ
購入スル場合ニ於テ、其「マージン」ノ少ナ
イコトハ定說デアリマス、之ニ國債ニ尙ホ
重課致シマスレバ其邊色々ノ變化ヲ起ス事
情ニアリマシテ、只今ノ金融情勢上極メテ
不適當ナノデアリマス、ソレ故ニ國債ニ付
キマシテハ殆ド增課ヲ致サナカッタ次第デ
アリマス、又社債ニ付キマシテモ同樣近年
ノ低金利ノ影響ヲ受ケマシテ、株式ノ利廻
トノ釣合ニ於テ社債ノ方ガ寧ロ低下ノ度ガ
著シイノデアリマス、是ハ昨年ノ臨時增徵
ニ於キマシテ比較的株ニ增課サレタヤウデ
アリマスルガ、其結果ハ昨年ニ於キマシテ
社債ノ發行ガ殆ド出來マセヌデシタガ、株
式ノ新規ノ拂込其他ガ極メテ旺盛デアッタ
事實ニ徴シマシテモ、只今ノ金利水準ニ於
テ社債等ニ重課致シマスルコトハ、適當デ
ナイト云フコトガ明カデアルト思ヒマス、
社債ハ御承知ノ如ク重要ナル產業資金デア
リマス、此際生產擴充ノ爲ニハ社債ノ發行
ヲ圓滑ナラシムルコトガ極メテ必要デアリ
マスルノデ、特ニ其邊ニ留意ヲ致シテ斯樣
ナ處置ヲ執ッタ次第デアリマス、併シ今申
上ゲマシタ國債社債等ノ特別待遇ハ、是
ハ現在ノ金利水準ニ近イモノニ限リマシテ、
國債ニ於テハ四分以上、社債等ニ於テハ四
分五厘以上ノ從來カラ殘ッテ居リマスル高
利債ニ付テハ、ヤハリ二割五分ト云フ他ノ
所得税ト同率ノ增徵ヲ致シテ居リマス、尙
ホ其外高率ノ有價證劵ト致シマシテ、其四
分五厘、或ハ四分ヲ超ユルモノノ一割其モ
ノヲ別ニ增課致シテ居ル次第デアリマス、
此點ニ付キマシテハ、負擔ノ均衡上相當ナ
ル留意ヲ致シテ居ルノデアリマス
又臨時利得稅ヲ其儘存置シテ置イタノハ、
ドウ云フ譯カト云フ御話デアリマスルガ、
是ハ今囘ノ事變ニ因リマシテノ負擔力ノ增
加ヲ致シタ部分ヲ增徵スル必要ヲ認メマシ
テ、ソレニハ從來ノ臨時利得稅法ヲ改正ヲ
致シマシテ、最近ノ基準年度以上ノ利益ニ
付キマシテ取リマスルコトガ一番適當デア
ルノデ、斯樣ナ處置ニ致シタノデアリマ
ス
又各種ノ稅法ニ依ッテ課稅ヲセラレル結
果或ル一ツノ納稅者ニ取ッテ非常ナル過
重ノ場合ガアル、其場合ニ付テ課稅ノ最大
限度ノ規定ヲ設ケザルヤト云フ御話デアリ
マスルガ、其點洵ニ御尤デアリマシテ、今
囘ノ提案ノ中ニモ、所得稅ヲ基準トシテ課
シマスルモノニ付キマシテハ、其地方ノ附
加稅等ヲモ考慮シマシテ、最大限ガ或ル程
度ニ止マリマスル如ク、負擔ノ最大限ヲ緩
和スルノ規定ヲ設ケテアル次第デアリマ
ス、又個人ニ付テ減價償却ヲ考ヘテハドウ
カト云フ御話デアリマス、是ハ理論トシテ
洵ニ御尤デアリマスルガ、個人ニ付テハ正
確ニ資本ト云フ觀念ヲ稅法ノ上デ摑ムコト
ガ困難ナノデアリマス、已ムヲ得ズ現在ノ
狀況ニ止ッテ居ルノデアリマス、尙ホ今囘ノ
增稅ニ付キマシテハ、輸出品ニ課稅セザル
コトハ御話ノ如クデアリマスルガ、併シ或
國ニ於テハ國內ニ於テ課稅セラレタル場合
ニ、其課稅マデモ込メテ輸入物品ノ價格ヲ
算定スルモノナキヤト云フ邊ノ御心配ノヤ
ウデアリマスルガ、只今ノトコロ課稅致シ
マスルモノニ付キマシテハ、其心配ハナイ
モノト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=8
-
009・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 森田福市君
〔森田福市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=9
-
010・森田福市
○森田福市君 私ハ只今上程ニ相成ッテ居
リマスル增稅案ニ關聯致シマシテ、政府當
局ニ質シテ見タイト存ズルノデアリマス、
國民ノ負擔ノ增加スルコトデアリマスカ
ラ、御尋シテ見タイ點ハ多岐ニ亙ルノデア
リマスルガ、時間ノ關係上成ベク要綱ヲ定
メテ簡單ニ御尋申上ゲテ見タイト存ジマ
ス、此度ノ增稅案ヲ政府ガ御出シニナッタ
ノニ付キマシテハ、其法案ノ精神ガ私ハ何
レニアルカト云フコトヲ、政府ノ代表者ニ
依ッテ御答ガ願ヒタイ、總理大臣ノ御出席ヲ
御願シタノデアリマスガ、御見エニナラナ
イサウデアリマスカラ、大藏大臣カラデ結
構デアリマス、今度ノ增稅ヲオヤリニナッタ
ノハ、支那事件ニ關シテ國民一般ニ、此支
那事件費ノ負擔ヲ平素ノ負擔ヨリ增加サス
ベキコトガ、國民精神總動員ノ一端トシ
テ、擧國一致ノ態勢ヲ執ル爲ニ宜イト云フ
意味デ、此增稅ヲナサッタノデアリマスカ、
又サウデハナクテ、政府ノ經濟ヲ賄フ上ニ
於テ、收入ノ增加ヲ圖ル爲ノ增稅デアルノ
デアリマスカ、此點ヲ國民ニ本議場ヲ通ジ
テ、政府ノ考ヘテ居ラレル點ヲハッキリトサ
シテ貰ヒタイノデアリマス、總理大臣ニ御
尋申上ゲタイノデアリマスガ、先程ノ御話
ノヤウニオ出マシニナラナイサウデアリマ
ス、書記官長ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=10
-
011・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 總理大臣ハ目下重
要會議中デ出席致シ難イ趣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=11
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012・森田福市
○森田福市君(續) 其事ハ先程承ッタノデ
アリマスガ、先程書記官長ガ御見エニナッタ
ヤウデアリマスガ、是モ今御見エニナラヌヤ
ウデアリマスカラ、ヤハリ私ハ質問ノ順序
トシテ申上ゲテ見マスカラ、政府ノ御方カ
ヲ御傳ヘヲ願ッテ、機會ノアル時ニ本會議ニ
於テ御答ガ願ヒタイト存ジマス
先ヅ總理大臣ニ御尋申上ゲタイト存ジマ
スルノハ、屢〓本會議ニ於テ、或ハ其他ニ
於テ、議會政治ヲ尊重シ、政黨ト協力ヲシ
テ非常時局ニ處シテ行クト云フコトヲ聲明
シテ居ラルヽノデアリマス、併ナガラ電力
管理案ニ於テモ、又噂ニ上ッテ居リ、近ク本
院御提出ニナルヤノ國家總動員法案ニ於テ
モ、何レモ吾々ノ見ル所デハ、其反對ノヤウ
ニシカ見エナイノデアリマス、過日ノ電力管
理案ニ對スル總理ノ御答ノ中ニモ見エマス
ルヤウニ、本案通過ノ爲ニハ相剋摩擦ヲモ
敢テ厭ハナイ、斯ウ云フ風ニ仰シヤッテ居
ラレルノデアリマス、又戰時體系ノ統制强
化ヲ益〓助長促進スル爲ノ諸方策ガ、斯ク議
會ニ對スル挑戰的態度ニ見エルコトハ、吾々
ノ最モ遺憾トスル所ナノデアリマス、總
理ノ考ヘテ居ルコトデアルト世間ノ人ガ見
テ居ル中ニハ、左ノ如キコトガ一般ニ傳ヘ
ラレテ居ルノデアリマス、現内閣ハ一部統
制論者ノ言フガ如ク「イデオロギッシュㄴノ
態度デ、一〓ニ資本主義ハイケナイ、資本
主義ハ誤リノモノデアリ、弊害ヲ齎スモノ
デアルトシテ、之ニ對シテハ新シイ經濟體
系隨テ政治ノ新體系ヲ作上ゲンケレバナ
ラヌト云フヤウナ考デ臨ンデ居ラレルノデ
アル、隨テ資本主義的ナ議會、獨リ貴族院
ノミニ止メズ、是ガ漸進的是正ノ方途トシ
テ、新黨樹立ノ「イニシアチーブ」ヲ、自ラ
進ンデ積極的ニ取ラウト云フ理想ヲ持ッテ
居ルノデアル、其一ツノ方法トシテハ、重
要ナル法案ヲ提出協贊ヲ求メ、以テ政府ガ
國策遂行上不便デアルト考ヘテ居ラレルヤ
ウナ議論ヲ排スルコトガ出來、ソコニハ政
黨間ノ對立及ビ摩擦モ無クナル結果、極メ
テ能率的ニ政務ヲ掌ルコトガ出來ルト思ウ
テ居ラルヽト云フコトデアリマスルガ、
果シテ左樣ナ考デアリマセウカドウカ、此
點ハ總理大臣ヨリ、ハッキリトシタ御答ガ
願ヒタイト思フノデアリマス
次ニ近衞內閣ガ本議會ニ提案サレテ居ル
重要法及ビ重要政策ハ、上述ノ意義ヲ暴露
シテ居ルト思ハレルニ拘ラズ、今囘ノ增稅
問題ニ於テハ、甚シク申譯的ナ、不徹底極
マル、而モ複雜多岐ニ亙ル法案ヲ御出シニ
ナッタノデアリマス、刻下重大時局ニ際會致
シマシテ、國民全體ガ戰線ノ軍人ト同ジ思
ヒデ、銃後ノ護ヲ果シ、滅私奉公ノ誠ヲ效
ス爲ニハ、今後ノ長期抗戰ニ十分堪へ得ル
所ノ、財政的根本政策ノ確立ニ俟タンケレ
バナラヌノデアリマス、然ルニ提出サレタ
增稅案ナルモノヲ見マスルノニ、其額ハ三
億圓ト稱シテ居リマスケレドモ、旣ニ御承
知ノ通リニ、中一億圓ハ昭和十二年度ノ豫
算ノ中ニ支那事件特別稅トシテ織込ンデア
ルノデアリマス、サウスルト今囘ノ增稅ハ
正味二億デアリマス、其課稅標準ハ產業資
本家ヲ殲滅シ、又一方ニハ大衆ノ負擔トナ
ル色々ナ名目デ課稅ヲ設ケラレテ居ルノデ
アリマス、昨年ヨリ今年ニ掛ケテ物價ノ騰
貴ト收入ノ寡少ニ喘グ國民ノ、大多數ノ生
活ニ必然的ニ利害ノアル課稅デアリマシテ、
政府ノ國策タル生產力ノ擴充、又ハ國民生
活ノ安定ニ對スル二大方針トハ甚シク、或
ハ根本的ニ矛盾スル結果トナッテ居リハセ
ヌカト考ヘルノデアリマスガ、此點ニ關ス
ル總理大臣ノ御考ヲ伺ヒタイノデアリマス、
以上二點ニ對シテハ、政府ノ御方カラ總理
大臣ニ御傳ヘヲ願ッテ、其御返事ヲ拜承致シ
タイト思フノデアリマス
次ニ大藏大臣ニ御尋申上ゲタイノデアリ
やっ、先程總理ヘノ御尋ニ對シテモ申上ゲ
マシタヤウニ、現政府ノ國策デアル生產ノ
擴充ト增稅トハ、根本ニ於テ政策ニ矛盾ガ
アルノデアリマス、而モ今囘ノ增稅ハ產業
資本家ニ對シテ殺人的偏壓ヲ下ス增稅デア
ルト、申上ゲテモ過言デハナイト存ズルノデ
アリマス、恐ラク今回ノ營利法人ノ納ムル稅
ト、營利法人ガ納メマシタ後ニ何程カノ利益
ヲ配當シ、個人ガ之ヲ受ケテ第三種ノ所得稅
ヲ納メマスト、其殘リヲ以テハ到底有價證劵
ノ代價ニ相當スル金融資本家ニ拂フ銀行利
子ハ、一錢一厘モ殘ラナイノミナラズ、不足
ヲ來スコトハ數字ガ、假ノ計算ヲシテ見テ
モ、ハッキリト分ル通リデアリマス、殊ニ政府
ハ生產力ノ擴充ヲ圖ルト仰シヤイマスルガ、
第一線ニ立ッテ居ル產業資本家ガ、事業ノ投
資ヲ行ヘナイヤウナ政策ヲ採ッテ、ソレデ生
產ノ擴充ハ何人ノ手ニ依ッテ行フト御考ニ
ナルノデアリマセウカ、殊ニ此事變ニ因ッテ非常
ナ利益ヲ得テ居ル者ニ、所謂軍需工業家、重工
業家ニ對シテハ、重イ課稅ヲシテモ耐ヘ得
ルト仰シヤルノデアリマスガ、私ハ政府ノ
方針デアリ、國家ノ擧國一致ノ考デアル長
期抗戰ニ打勝ツ爲ニハ、此方面ノ利潤ハ其
儘其會社ニ殘シ置イテ、擴張ニ充テナケレ
バナラヌノデハナイカト考ヘルノデアリマ
ス、資本ヲ取上ゲ、サウシテ生產擴充ノ準
備ヲシヨウトシテ、資本ヲ何處カラ求メテ
致スノデアリマセウカ、本當ニ生產其他ノ
生產擴充ヲ圖ラウト致シマスナラバドウ
シテモ私ハ資本其モノニ最モ重キヲ置イテ
行カナケレバナラヌ、其資本ハ金融資本家
カラ產業資本家ガ借リ易ク、サウシテ借リ
テ金融資本家ニ相當ナ金利ヲ支拂ッテ、サウ
シテ其殘ッタ金ノ中デ稅金ヲ拂フ、其產業資
本家ノ生活ニ耐ヘ得ル程度ノモノデナケレ
バナラヌノデアラウト考ヘルノデアリマス、
殊ニ折角近來長足ノ進步發達ヲシタ我國ノ
產業ヲ、此增稅ヲ機會ニ萎縮退嬰ニ陷レル
コトハ、火ヲ諸ルヨリモ明デアルト考ヘル
ノデアリマス、殊ニ此政府ノ御話ニ、先程
大藏大臣ニ、紫安君カラ御尋ニナッタ答ヲ
私ハ聽取レナカッタノデアリマスガ、所得稅
ノ緩和點ヲ設ケタコトヲ御話ニナリマシタ、
一般所得税ノ緩和點ハ百分ノ五十ヲ以テシ、
其他ノ稅ヲ加ヘテ十分ノ八マデノ稅ヲ課ス
ルト云フ案ラシイノデアリマス、所得ノ總
額ノ中カラ十分ノ八ノ諸稅-直接國稅及
ビ地方稅ノ負擔ヲシテ、殘リ二ヲ以テ金利
ヲ賄フ餘地ガアルデアリマセウカ、私ハ恐
ラク是等ノ點ハドウ計算ヲ試ミテ見マシテ
モ國稅ト地方稅、金利ヲ負擔スルコトハ絕
對ニ不可能デアルト考ヘルノデアリマス、
尤モ政府ハ課稅ニ際シテ、大藏大臣ハ株式
配當ノ如キモノハ其十分ノ二ヲ控除シテア
ルカラ、之ヲ持出セバ足ルデハナイカト云
フ御意見ガアルカモ存ジマセヌガ、ソレヲ
加ヘテ以テ漸ク私ハトン〓〓ニナルト思フ
ノデアリマス、十分ノ八ノ緩和點ノ總額ニ
對シテ、地方稅ガ約四割要リマセウ、サウ
スルト所得十ニ對スル十二割ノ負擔デアリ
マスカラ、先程ノ控除シテアル二割ヲ加ヘ
テ、漸ク其資本家ハトン/〓ニナルモノト
考ヘラレルノデアリマス、隨テ其餘地ハ一
文モナクナル、是デモ產業資本家ガ今後投
資ヲ行フコトガ出來ルデアリマセウカ、生
產ノ準備擴張ガ出來ルデアリマセウカ、重
工業ナリ其他ノ軍需工業ガ利益ガアルト假
定致シマシテモ、其悉クヲ取上ゲテ、尙ホ
生產擴充ノ資金ハ何レカラ得ルノデアリマ
セウカ、寧ロ斯樣ナ稅制ヲ起シタガ爲ニ我
國ノ折角長足ニ發達シテ居ル產業ヲ、寂滅
ザスコトニナルト考へルノデアリマス、又
政府ガ何時カノ機會ニ於テ法人ト個人トハ
別々ノ人格デアルカラ、稅ハ一向二重ニハ
ナラナイト云フヤウナ說明ヲシテ居ラレマ
シタガ、私ハ其點モ政府ノ御話ヲ肯定致シ
兼ネルノデアリマス、株式會社卽チ營利法
人個人ガ資本ヲ集メテ出來タノガ營利法
人デアリマスカラ、營利法人ヲ個人ガ集ッ
テ作ッテ、サウシテ其法人ガ儲ケタ利益ニ對
シテ稅金ヲ拂ッタ殘リヲ、其個人ノ株主ニ配
當スルノデアリマス、其個人株主ニ超過配
當所得稅、或ハ一般ノ所得稅等ヲ納メテ殘ッ
タモノガ、本當ノ資本家ノ手ニ殘ル金デア
ルノデアリマス、サウスルト個人ノ所得ト
法人ノ所得トハ、決シテ之ヲ別々ニ勘定ス
ベキ性質ノモノデアリマセヌカラ、答辯ニ
當ラレマシテ、左樣ナ矛盾シタ答辯ヲナサ
ラナイヤウニ此點ハ豫メ私ハ御話ヲ申上ゲ
テ置クノデアリマス
第二點ハ增稅ハ物價ヲ騰貴セシメルト云
フコトダケハ、大藏大臣モ御認メニナルノ
デアリマスカ、增稅ヲ行ハレルコトニ依ッ
テ營利法人モ、個人モ其生產加工品ニ對シ
マシテハ、何レモ稅ヲ加ヘテ販賣スルコト
ハ申ス迄モアリマセヌ、サウスルト從來ノ
稅ヲ加算シテ賣ッテ居ッタモノハ、今度ノ增
稅ニ依ッテ百圓ノ賣上ゲ高ニ對シ、何程カノ
增稅ト云フモノヲ加ヘテ販賣スルノデアリ
マスカラ、隨テ物價ハ勢ヒ上ッテ參リマス又
其物價ガ上ル爲ニ增稅ヲ加ヘナイ物マデ、
道伴レニサレテ物價ノ上ルコトモ、是モ否
メナイ點デアラウト考へルノデアリマス、隨
テ此轉嫁稅デアリマス所ノ色々ノ稅ヲ增稅サ
レテ、殊ニ物品稅ノ如キモノハ直接ニ物價ヲ
高カラシメル原因ヲ起シ、延イテハ物品ガ
高クナルト云フコトハ、大衆國民ノ生活ヲ、一層
窮迫ニ陷レルコトニナルノデアリマス、殊ニ政
府ハ此時局ニ依ッテ所得ノ增加シタモノカラ之
ヲ取ル爲ニ、今度ノ增稅ヲスルノデアルト
言ウテ居ラレマスルガ、時局ノ影響ヲ受ケテ
利益ヲ得タ者ヨリモ、時局ノ影響ヲ受ケテ其
失費ノ重ナッテ居リ、收入ノナイ國民ノ方ガ
多數デアルト云フコトハ、御承知デアルノ
デアリマセウカ、卽チ農民デアルトカ、漁
民デアルトカ、月給取、日給取、其他勞働
者ノ如キ者デ、軍需工業ニ關係シテ居ナイ
方面ノ人々ハ、更ニ此際此時局ノ御蔭ヲ受
ケテ增收ヲ來シテ居ラヌコトハ、御承知ノ
通リデアリマス、隨テ是等ノ人々ノ支出ノ
增加、負擔ノ增加バカリヲ受ケサセルコト
ガ果シテ國家社會ノ爲ニ、當ヲ得タ負擔デ
アルト言ヒ得ルデアリマセウカ、吾々ノ考
ヘル所デハ、此時局ノ爲ニ非常ニ所得ノ增
加シタ人々ニ對シテ負擔セシメルコトハ、
他ニ幾ラデモ方法ガアルト考ヘラレルノデ
アリマス、收入ノ增加ノナイ方面ノ人々ニ、
負擔ヲ多クサスヤウナコトハ、此際考慮ヲ
要スルコトデアルト考へラレルノデアリマ
ス、非常時ナルガ故ニ考慮ヲ要スル時デア
ルト考ヘルノデアリマス、殊ニ長期抗戰ニ
亙リマスル以上ハ、一層國民ノ生活ヲ安定
サシテ行クコトガ、長期抗爭ニ堪へ得ル所
以デアルト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
殊ニ月給取ニ於キマシテハ、昭和五年デアッ
タト考ヘマスルガ、或ル程度ノ減俸ヲ斷行
シテ、今尙ホ復活シテ居ナイヤウニ考ヘテ
居ルノデアリマス、隨テ政府ハ一部ノ國民
ノ收入ノ增加ヲ來セル爲ニ、前段申上ゲマ
シタヤウナ、收入ノ增加セザル國民ニ重キ
負擔ヲサスト云フコトハ、一層考慮ヲシテ
戴キタイ、大藏當局ハ一體ドノ邊ニ目安ヲ
置イテ、本增稅案ヲ作リ上ゲラレタノデア
リマセウカ、此點ヲ明瞭ニ願ヒタイト存ジ
マス(拍手)
第三點ハ、斯クシテ物價ヲ高クセシメラ
レマシタ結果ハ、輸出ヲ自然ニ阻止スルコ
トニナルト云フコトハ御認メニナリマスカ、
增稅ヲ行フコトニ依ッテ物價ガ上リマスレ
バ、勢ヒ勞働賃或ハ原料モ値上リヲ來スノ
デアリマス、其結果ハ輸出ロ四ノ「コスト」ヲ上
ゲルコトハ、是モ明瞭デアリマス「コスト」ヲ
引上ゲルコトニナル結果、旣ニ此增稅ヲ行
ハヌデモ日ニ月ニ物價ガ上ッテ居リマスル關
係上、昨年ノ十一月以來月々輸出ハ減退シ
テ居ルコトモ、政府ハ御承知ノ通リデアリ
マス、ソレハ何ノ爲デアルカト云ヘバ、大部
分ハ生產「コスト」ガ上ル關係ガ多イト思ハ
レルノデアリマス、卽チ外國ニ輸出シテモ、
原價ガ高ク付ク關係上賣レナイト云フ結果
ガ、輸出ノ減退ヲシタ根本ノ原因デナケレ
バナラヌノデアリマス、今囘又增稅ヲシテ
國內物價ヲ高メテ行クト云フコトハ、國際
貸借ニ最モ大切ナ輸出ノ減退ヲ來スコトニ、
拍車ヲ掛ケルヤウニナルト私ハ思フノデア
リマス、增稅ヲヤルニ付テハ、餘程ノ考慮
ヲシナケレバナラヌノデアリマス、此點ニ
關シテ政府ハ如何ナル目算ト御考ヲ持ッテ
居ラレルノデアリマセウカ、此輸出減退ニ
ナル虞ノアルコトニ對スル政府ノ對策ヲ承
リタイノデアリマス
第四點ノ御尋ハ、增稅ノ立案ヲスルニ際
シマシテ、更ニ產業資本家ヲ偏壓シ、金融
資本家ヲ偏護セラレタ點ハ、先程ノ紫安君
ノ御質問ニ對シテ御答ガアッタノデアリマ
スガ、私ハアノ御答デハ滿足ハ出來ナイノ
デアリマス、現在金融資本家ハ、ドウ云フ
偏護ヲ受ケテ居ルカト申シマスルト、御承
知ノ通リ現在ノ稅制ニ於キマシテ、營業收
益稅ノ中カラ地租若クハ賃貸料、卽チ家賃
ト云フヤウナモノハ、引クコトニナッテ居リ
マスカラ、之ヲ差引カレルノデアリマス、
又第一種所得稅ノ中カラ第二種所得稅、卽
チ公債ノ資本利子稅、或ハ所得稅ト云フ
モノハ、引クコトニナッテ居リマスルカ
ラ、金融資本家デアル所ノ銀行若クハ保險
會社等ハ、恐ラク營業收益稅ト第一種所得
稅ヲ納メテ居ラヌノデアリマス、此事ハ政
府ハ御承知デアッテ、機會アル每ニ改正スル
ト言ハレテ居リマスルガ、今尙ホ改正ニナッ
テ居ラヌノデアリマス、然ルニ今又再ビ此
增稅ヲ載スルニ當ッテ、金融資本家ノ持ッテ
居ル公債、社債等ニ對シテハ、更ニ增稅ヲ
ナサラヌノデアリマス、唯申譯的ニ年四分
以上ノ國債、其他ノ社債等ニ對シテハ、稅
ヲ取ルト仰シヤルノデアリマスガ、年四分
以上ノ國債ハ何ガアルデアリマセウ、恐
ラクハ甲號五分利、雜五分利、特別五分利
ト云フヤウナ、僅少ナ公債ガ殘ッテ居リマス
ガ、是ハ悉ク政府ノ預金部デ御持チニナッテ
居ル筈デアリマス、隨テ之ニ稅ヲ增加スル
モ、セザルモ、政府ノ收支ニハ何ノ關係モ
ナイノデアリマス(拍手)斯ウ云フ風ニ金融
資本家ヲ偏護サレテ居ルノニモ拘ラズ、
層擁護セラルヽノハ、要ハ公債ノ募集ニ應
ジテ貰ヒタイト云フ爲ニ、オヤリニナッテ
居ルノダロウト思ヒマスルガ、私ハ斯ウ云
フ公債ノ募集ヲスル時ナドノ準備ノ爲ニ、
此資金統制法ト云フ法律ガアルノデハナイ
カ、株式ナリ其他ノ方面ニ資金ノ逃ゲテ行
クコトヲ抑ヘテ、サウシテ其資金ヲ國債ニ
振向ケサス爲ニ、彼ノ認可許可制度ヲ採ッタ
ノデハアリマセヌカ、サウスレバ別ニ稅ヲ
上ゲタカラトテ、公債ノ募集ガ難事ニナル
筈ハナイノデアリマス、ナルト思ヘバ、他ノ
方面ニ逃ゲテ行ク資金ヲ抑ヘテ銀行預金ニ
セシメ、其普通銀行ガ日本銀行へ無利子ノ
預金ヲスルヤウニナッタ時ニ、初メテ公債ト
引換ガ出來ルノデアリマス、隨テ金融資本
家ヲ徒ニ擁護セヌデモ、公債ノ募集ニハ何
等不自由ヲ感ジヌ點ガアルノニモ拘ラズ、斯
樣ナコトヲ爲サッタト云フコトハ、御考ガド
ノ邊ニアルノデアリマセウカ、拜承致シタ
イノデアリマス(拍手)
尙ホ第五番目ニ御尋申上ゲマスノハ、是
ハ大藏大臣ト私ハ全然考ガ違フノデハナイ
カト思ヒマスガ、併シ大藏大臣ノ考ガ變ッテ
居レバ、結構ナノデアリマスカラ、御尋致シ
マス、大藏大臣ハ今尙ホ爲替相場ヲ維持ス
ルノガ宜イト御考ニナッテ居ルカドウカ、此
點デアリマス、爲替相場ヲ維持スルコトガ、
今尙ホ國家ノ爲ニ宜イト考ヘテ居ラルヽナ
ラバ、吾々ト意見ガ違フノデアリマスガ、
私ハ或ル程度爲替相場ノ下落スルコトニ依ッ
テ、輸入品ガ高クナルコトハ認メマス、輸入
品ガ高クナルコトニ依ッテ、軍需品其他必要
ナ物ニ多少ノ高價ヲ來ツテ、是亦不便デア
ルト云フコトモ考ヘマス、考ヘマスガ、政府
ハ悉ク此國際貸借ノ收支ニ付テハ、何時モ
輸入ニノミ重キヲ置イテ居ラルヽノデアリ
マス、輸入ニノミ重キヲ置イテ居ラルヽケ
レドモ、私ハ政府ノ考へ方ヲハッキリト變へ
テ貰ヒタイ、輸入ト云フコトニ重キヲ置カ
ズ、政府ノ國策ヲ輸出ニ重キヲ置カレヽバ、
爲替ノ問題ハ自然ニ解消スルト思フノデア
リマス(拍手)寧ロ今日輸出ガ減退シテ居
リ、國內物價ガ上ッテ居ル時ニハ、爲替ノ下
落スルコトニ依ッテ、輸出ガ仕易クナルコト
ハ申ス迄モアリマセヌ、隨テ爲替ガ下落ヲ
シテ、我國ノ輸出ガ相當量ニ多クナッテ、輸
入スル金額ヨリモ輸出スル金額ノ方ヲ多ク
サスヤウニスルコトニ依ッテ、國際收支ノ均
衡ヲ取リ得ルノデアリマス、政府ハ輸入ノ
コトニノミ頭ヲオ痛メニナラズ、寧ロ輸出
ノ方面ニ力ヲ盡シテ戴キタイ、卽チ今オヤ
リニナッテ居ルヤウナ、輸入ヲ一カラ十マデ
阻止スルコトハ廢メテ戴キタイ、現在ハ原
料ヲ輸入シテ、之ニ我國ノ原料ヲ加ヘ、之
ニ勞働者ノ加工賃ヲ加ヘテ輸出スルト云フ
コトヲ阻止ナサッテ居ルノデアリマス、「イラ
ク」ノ國ノ如キハ、御承知ノ通リニ我國ガ十
万圓アノ國カラ買ヘバ、彼ノ國ハ我國カラ
四十万圓買フト云フ約束ニナッテ居ルノデア
リマスガ、其十万圓ノ物ヲ買フ爲替ヲ許可
セラレヌガ爲ニ、アノ國ガ我國カラ四十万
圓ノ物ヲ買ハナカッタコトモ明カデハアリマ
セヌカ、是等ノ點ニ關シテ、私ハ是等ガ官
僚政治ノ弊ノ甚シイモノデアッテ、官僚政治
ガ國家ニ損失ヲ與ヘタモノデアルト考ヘテ
居ルノデアリマス(拍手)爲替政策トシテ一
志二片ヲ維持スル爲ニ、有リモシナイ正貨
ヲドン〓〓外國へ出シテ行クコトガ、本當
ニ國家ノ爲ニナルカナラヌカト云フコトニ
付テハ、大藏大臣ハ深甚ノ考慮ヲ私ハ願ヒ
タイト考ヘルノデアリマス、寧ロ私ハ爲替
相場ノ維持ト云フコトヲ考ヘ直シテ戴キタ
イ、サウシテ爲替相場ガ多少下落シテモ、
ソレハ輸出ニ便利ニナッテ行クカラ、輸出ノ
方ニ重キヲ置イタ政策ヲ執ッテ戴キタイ、サ
ウシテ正貨ノ流出スルコトヲ少クスルヤウ
ナ方法ノ御考ハナイカト云フコトデアリマ
ス
第六番目ニ私ガ御尋申上ゲタイノハ、斯
ノ如キ增稅ヲ行ウテ、政府ハ昭和十二年度ヨ
リモ正味二億圓ノ增收ヲ圖ラウトセラレルノ
デアリマスガ、私ハ果シテソレガ政府ノ增收ニ
ナルカドウカト云フ點ニ頗ル疑問ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、ソコデ消費ヲ一番多クセラ
ルヽノハ政府デアリマス、殊ニ本年ノ如キ
ハ一般豫算ニ於テ約三十億圓、又近ク此議
場ニ現レマス所ノ臨時軍事費ノ如キモノモ、
只今ノ御話ニ依ルト四十八億圓以上デアル
ト仰シヤッテ居ラレマスカラ、彼此レ合セテ
見マスト、七十五億圓乃至八十億圓ノ間
ニナルデアリマセウ、其他特別會計ニ於
テ亦多額ノ歲出ガアルノデアリマスカラ、
是等ヲ考ヘマスト、何トシテモ政府ガ一番
ノ消費者デアリマス、此多額ノ消費ヲ政府
ガセラレマスモノヲ、假ニ七十億圓ノ消費
ト假定致シマシテモ、此增稅ヲ行ウタガ爲
ニ物價高ヲ招來スル、政府ガ如何ナル手段
ヲ講ズルト雖モ、此物ガ高クナルコトヲ阻
止スルコトハ出來ナイデアラウト存ジマス、
物價ノ騰貴ヲ阻止スルコトガ出來ヌト假定
致シマスレバ、政府ガ昨年ノ十一月乃至十
二月頃ニ編成セラレマシタ所ノ豫算ヲ、本
年四月以後ニ愈〓實行ニ移スト致シマシタ場
合、果シテ政府ハ豫期ノ單價ヲ以テ豫期ノ
事業ノ遂行ヲ爲シ得ルデアリマセウカ、恐
ラク吾々ノ見ル所ヲ以テセバ、最低デモ五
分、最高デモ二割程度ノ物價ハ上ルモノト
見ナケレバナリマセヌ、七十億ノ消費ヲスル
所ノ政府ガ、假ニ物價ガ五分上ッタト致シマ
スレバ、三億五千万圓、一割上レバ七億
圓ノ物價高ニ依ル支出ノ增加ヲ致スカ、然
ラザレバ豫定ノ事業若クハ軍事行動ノ實行
ヲ狭メテ行クカノドチラカニナラナケレバ
ナリマスマイガ、何レニシテモ、物ガ高ク
ナッタダケハ豫定ノ豫算ヲ以テ賄ヒ切レヌ
ト云フコトハ、大藏大臣モ御認メニナルデ
アラウト思フノデアリマス、サウスルト、
右ノ手デ國民カラ二億圓乃至三億圓ノ稅增
收ヲ圖ックト致シマシテモ、左ノ手デ三億五
千万圓乃至七億圓ノ支出ノ增加ヲ來スヤウ
ナコトヲ致シマスカ、或ハ事業ヲ縮小致シ
マスカ、ドチラニ致シマシテモ、ソレガ假
ニ收入ト支出トガ均衡ガ取レタトシテモ、
是ガ物價高ヲ誘致シタ爲ニ、政府以外ノモ
ノニ物價高ニ依ル苦ミヲ增スコトダケデモ
大キナ損デハアルマイカト考ヘルノデアリ
マス(拍手)恐ラク政府ハ稅收入ニ依ッテ得
タ金ヨリモ、物價高ニ依ッテ支出ノ增加ヲ來
ス方ノ損失ガ多イト云フコトハ明瞭デアラ
ウト私ハ考ヘルノデアリマス、一部ノ聲ニ
脅カサレテ增稅ヲ斷行シ、以テ何程カノ收
入ノ增加ヲ來シタ代リニ、大キナ政府拂ノ
損失ヲ起スヤウナ原因ヲ御作リニナルト云
フコトハ、非常ナ考ヘ物デアルト思フノデ
アリマス、大藏大臣ハ此增稅ニ依ッテ得タ金
ト、物價高ニ依ッテ豫算ヨリモ多ク失フト
云フ點ニ付テハ、如何ナル御考ヲ持ッテ居
ラレルノデアリマセウカ、其點吾々ニ得心
ノ行クヤウナ御答ガ願ヒタイト存ズルノデ
アリマス
第七番ハ本增稅案ノ中ニ、臨時利得稅ノ
改正法律案ヲ上程シテ居ル點ニ付テ伺ヒタ
イノデアリマス、現在ノ臨時利得稅ハ、昭
和四、五、六年ノ基準年度ヲ持ッテ居ル利得
稅デアリマス、今度政府ガ新ニ設ケラレマ
ス臨時利得稅ハ昭和九、+、十一年ヲ基準
年度トスル臨時利得稅デアリマス、政府ハ
此前者ノ利得稅ト後者ノ利得稅ハ決シテ重
複デハナイト云フコトヲ何レノ機會、何
レノ場所ニ於テモ仰シヤッテ居ラレルノ
デアリマスガ、私ハ二重ニナル所アリ、免
ルヽモノアリ、此二點ニ付テ大藏大臣ニ御
尋申上ゲタイノデアリマス、大藏大臣ハ二
重ニナル點ハナイト仰シヤッタノデアリマ
スガ、二重ニナル點ガアリ、而モ免ルヽ點
ガアリ、最初ノ基準年度ヲ持タズ、次ノ基
準年度ヲ持ッテ居ルモノト、卽チ最初ノ基
準年度カラ取ラレテ居ルモノト、然ラザル
モノ、前者ハ資本ノ百分ノ七以上、今度
ノハ資本ノ百分ノ十以上、一割デアリマ
ス、其間ノ三分ハ基準年度ヲ持ッテ居ラ
又、新基準年度カラダケノモノハ是ハ免ルヽ
ノデアリマス、然ラザルモノハ免レヌコト
ニナルノデアリマスカラ、此點ガ二重ニナ
ルモノト然ラザルモノト、不公平ナ稅ノ負
擔ヲ受ケルコトダケハ、今御出シニナッテ居
ル稅法ヲ其儘咀嚼シテ行ッタナラバ何トシ
テモ免レヌノデアリマス、又複雜極マル案
デアリマシテ、恐ラク大藏大臣ト雖モ、私
ハ此案ニ對シテ「メモ」ヲ持タズニ完全ナ御
答ハ難カシイノデハナイカト思フ、殊ニ今
度ノ免稅點ニ付テ吾々ガ一番遺憾ニ思ッテ
居ルノハ、法人ニ於テハ資本ヲ認メテ居
ル、法人ノ基準年度ヲ持タナイモノニ對シ
テハ、百分ノ十ヲ超過スルモノニ對シテ百
分ノ三十ノ課税ヲスルト仰シヤルガ、個人
ノ利得稅ニ對シテハ、一ツノ資本モ御認メ
ニナッテ居ラヌ、卽チ五千圓ヲ超ユル個人ニ
對シテハ、一律對等ニ百分ノ二十ノ課稅ヲ
スルト仰シヤルノデアリマス、サウ致シマ
スト、營利法人ガ百万圓ノ資本ヲ以テ十万
圓ノ所得ヲ擧ゲルコトハ普通デアリマス、
此普通ノ場合ニハ、第二番目ノ臨時利得稅
ハ免レルノデアリマス、然ルニ個人ガ百万
圓ノ資本ヲ運用シテ十万圓ヲ儲ケレバ、九
万五千圓ニ對スル百分ノ二十ノ稅ヲ拂フカ
ラ、一万九千圓ト云フ稅ヲ負擔スルコトニ
ナルノデアリマス、是等ノ點ガ不公平ナ稅
デナクシテ何ヲ公平ト云フノデアリマセウ
カ、私ハ此臨時利得稅ハ、恐ラク完全ニ此
基準年度ヲ計算サスコトハ、此新年度カラ
實行スルノニ、此基準年度ノ所得ヲ計算ス
ルコトダケデモ、完全ニハ行ヒ切レヌモノ
デアルガ、況シテ二重課税ニナラザルモノ
ト、免レヌモノトノ計算ハ、一線ニ立ッテ居
ル稅務官吏ニハ不可能ナコトデアルト考ヘ
ルノデアリマス、何故此臨時利得稅ヲ政府
ハ一ツニ單純化サレナカッタノデアリマス
カ、基準年度ヲ簡單ニ一ツニシ、之ヲ單純
化シテ課稅ヲ行ヘバ、徵稅ヲ行フ出先ノ官
吏課稅ヲ受ケル所ノ國民モ簡單ニ分ルノ
デアリマス、殊更複雜多岐ニ亙ラシメラレ
タ理由ガ拜承致シタイノデアリマス
最後ニ御尋申上ゲル點ハ、私ハ大藏大臣
自ラモ御記憶ニナッテ居ルデアラウト考へ
マスガ、國民ノ一ツノ所得ニ對シテ、現在
デモ複雜多岐ニ亙ッテ居ル稅種類ヲ、今又增
稅ニ名ヲ藉リテ一層複雜化セシメテ居ラレ
ルコトヲ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス、昨
年ノ通常議會ニ於テ、時ノ結城藏相ニ依ッテ
相當ノ增稅ガ行ハレタコトハ御承知ノ通リ
デアリマス、又昨年ノ特別議會ニ於テ、現
大藏大臣ノ手ニ於テ增稅ヲ行ハレタコトモ
御承知ノ通リデアリマス、然ルニ一年經ツ
ヤ經タヌ今日、今又玆ニ增稅ヲ行ハウト云
フ案ヲ御出シニナッタノデアリマス、如何
ニモ大藏當局ハ稅制ニ對スル見透シガ全然
付イテ居ラヌノデアリマス、サウシテ何時
モ御出シニナル案ガ臨時的ノ立法ノミデア
リマシテ、稅ノ種類ト云フモノガ非常ニ
複雜ニナッテ來タノデアリマス、前段ニモ申
シマシタヤウニ、假ニ政府ガ稅率ヲ上ゲテ
モ、私ハ稅收入ノ增收ヲ圖ラウトスルコト
ハ難カシイノデハナイカト考ヘルノデアリ
やく、一般國民ノ所得ヲ增加セザル政策ノ
下ニ於テ、稅率ヲ上ゲタダケデ國ノ稅收入
ガ殖エルト思ッテ居ラレルノデアリマセウ
カ一月給取、或ハ一日給取ガ、其月給ニモ、
其日給ニモ一ツノ增收ガナクシテ、平素ノ
通リ酒ニシテモ、煙草ニシテモ、或ハ其他ノ
消耗品ニシテモ消費ガ出來ルデアリマセウ
カ、苟モ自分ノ收入ガ增シテ居ラヌノニ、消費
スル物ノ價ダケガ上ッタノデアリマスカラ、
其消費スル物ノ量ヲ節約セザルヲ得ナイヤ
ウナ結果ニナリハセヌデアリマセウカ、サ
ウスルト政府ハ折角稅率ヲ增額致シマシテ
モ、數量ノ消費ガ減ッテ來マスル結果トシ
テ、稅額ハ依然トシテ變リハナイノデアリ
マスマイカ、斯ウ云フ點ヲ考ヘマシテモ、
恐ラク政府ハ豫期ノ稅收入ヲ得ルコト能ハ
ズシテ、物價高ノ爲ニ思ハザル政府ノ支出
ノ增加ヲ來シ、結局ハ此增稅ハ大キナ失敗
ニ了ルノデハナカラウカト考ヘラレルノデ
アリマス、是等ハ總理大臣ヲ初メトシテ、
大藏當局ハ深甚ナル考慮ヲ爲サルベキ筈デ
アルト考ヘルノデアリマスガ、一旦出シタ
法案デアルカラ、其善惡ノ如何ヲ問ハズ、
國家ノ爲、不爲ノ如何ヲ問ハズ、非常時ニ
名ヲ藉リテ、擧國一致ノ美名ノ下ニ、本案
ヲ通過サセルコトガ、面目ヲ維持スル所以
デアルト御考ニナッテ居ルノデアリマセウ
カ、私等ノ考ヘマスル所デハ、結局國ノ經
濟カラ考ヘマスレバ、又負擔スル所ノ國民
ノ立場カラ考ヘマスレバ、此稅種類ハ本當
ハ地方ト中央ヲ通ジタ整理ヲ行ウテ、國民
ノ所得ニ對シテハ、一ツノ單純化シタ稅法
ノ下ニ、國民ニ得心ヲ與ヘテ負擔サスコト
ガ、一番適正デハナイカト考ヘルノデアリ
マス(拍手)寧ロ此際政府ハ此案ヲ出直ス考
ハナイカ、要スルニ單純化サシタ法律其モ
ノニ作ッテ出セバ宜イノデアリマシテ、政
府ハ支那事變ノ見透シガ付カナケレバ、稅
制ノ整理ヲ行フコトガ出來ヌヤウニ仰シヤ
ルノデアリマスガ、吾々ノ見ル所デハ、今
臨時々々ノ名ヲオ被セニナッテ居リマスル
ガ、戰後ノ經濟ヲ切盛リスル上カラ考ヘマ
シテモ、一旦稅ヲ取ッタモノヲ取止メルヤウ
ナコトニ、我國ノ經濟ガ縮小シテ來ルデア
リマセウカ、此多額ナル公債ヲ發行シテ、
戰後ハ一層經濟ニ逼迫ヲ加ヘテ來ルコトハ、
私ハ議論ノ餘地ガナイト考ヘルノノアアリ
マス(拍手)隨テ今カラ政府ハ恆久的ノ稅制
ノ下ニ、國民カラ相當多額ナ增稅ヲ得心ヲ
サセテ取ルヤウナ方法デアレバ宜イノデア
リマス、今ノヤウナヤリ方デハ、恐ラク何
人ガ此稅法ニ關シテ通ジテ居ルト仰シヤラ
レテモ、一ツノ所得ニ對スル各種ノ稅種類
ヲ記憶スルコトスラ困難デアルト考ヘマス
ルガ故ニ、政府ハ此點ニ出直ス考ガアルカ
ナイカト云フコトヲ御伺スルノデアリマス
マダ一點最後ニ御尋申上ゲタイト思フコ
トガアルノデアリマス、政府ハ今囘ノ五千
圓ヲ超エル退職手當ニ課稅ヲ爲サルヤウニ
ナッテ居リマス、五千圓ヲ超エル金額ニ課稅
ヲスルコトハ、吾々ハ寧ロ少ナ過ギハセヌカ、
同ジ取ルナラモウ少シ下カラ課稅ヲスベキ
デハナイカ、併ナガラ政府ノ免レヨウトシ
タ點ハ、ドノ點デ五千圓ニシタカト云フコ
トハ、民間ノ退職手當ヲ目當テニ置カレテ
居ルノデアリマス、要スルニ役人ノ退職手
當ト云フモノハ、金額ガ五千圓以下ノ者ノ
方ガ多イカラ、是等カラ取ラナイヤウナ線
ヲ御設ケニナッテ居ルモノト考ヘラレルノ
デアリマス(拍手)役人ハ-私ハ役人ヲ攻
擊スルノデモ何デモアリマセヌガ、役人ノ
御方ノ退職手當ハ二重ニナルノデス、御承
知ノ恩給ガ付イタ上ニ退職手當ガアル、會
社員ヤ銀行員ノ退職手當ニハ恩給ガ付イテ
居リマセヌ、隨テ退職手當ヲ貰ッタラ、金利
ト元ヲ食ッテ老後ノ生活ヲ行ッテ行クノデア
リマス、隨テ是等ノ人々カラ若シ稅ヲ取ルノ
ガ當然デアルト考へタナラバ、恩給ニ加ヘ
テ退職手當ヲ貰フ官吏、若クハソレ等ノ人々
ニ準ズル人々カラモ、此退職手當ニ對スル
課稅ヲ爲スベキコトガ公平デナイト、大藏
大臣ハ考ヘルノデアリマセウカ(拍手)此點
ヲ大藏大臣カラ、御答ヲ願ヒタイト存ジマ
ス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=12
-
013・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 私ニ對シマスル
御質問ニ付キマシテ御答申上ゲマス、增稅
ノ目的ハ何處ニアルカト云フ御話デアリマ
ス、增稅ノ目的ハ、擧國一致全國民ガ此時
局ニ御奉公ヲスル、就キマシテハ銃後ノ國
民ハ色々ノ御奉公ヲ致シマスルガ、金錢ニ
依ッテ此戰費ノ調達ニ貢獻ヲスルト云フ精
神ガ、一番大切ナ點デアリマス、又併セテ
經濟財政上ニモ貢獻ヲスル所ガアル譯デア
リマス、數十億ノ公債ヲ出シマスル場合デ
アリマスルカラ、動モスレバ氣ガ大キクナ
ルノデアリマスルガ、是ハ事變後國民ニ負
擔ヲ遺スモノデアリマスルカラ、出來ルダ
ケ現代ノ國民ハ負擔ヲ爲シ、サウシテ後代
ノ國民ニ對シテ其負擔ヲ少クスルト云フコ
トヲ努メルノガ、財政上ノ本旨デアリマス、
又斯ル增稅ノ精神的效力トシテ、合理的ナ
ル消費ノ節約ヤ、此際ニ於ケル放漫ナル思
想ヲ戒シメマスルヤウナコトハ、國家ノ經
濟狀態ヲ良好ニ導クノニ與ッテ力ガアルノ
デアリマス、左樣ナ考ノ下ニ今囘ノ增稅ヲ
企テタ次第デアリマス
次ニ生產力ノ擴充ニ今囘ノ增稅ハ支障ハ
ナイカト云フ御話デアリマシテ、其主要ナ
ル點ハ、餘リニ擔稅者ニ多額ノ負擔ヲスル
コトニナル爲ニ、企業心ヲ阻碍ハシナイカ
ト云フ御趣旨ト拜シマスルガ、昨年ノ臨時
增徵ヲ致シマシテ、相當徵稅額ハ殖エタノ
デアリマスルガ、御承知ノ如ク一般ノ企業
心ハ極メテ旺盛デアリマシテ、昨年ノ如キ
ハ曾テ例ノナイ程各種ノ企業ガ增加致シタ
譯デアリマス、昨年ノ後半ニ於キマシテハ、
資金調整法ニ依リマシテ、一部ノ產業ニ限ッ
テ新設、擴張、改良ヲ認メマシタノデアリ
マスルガ、ソレニ致シマシテモ非常ナル新
設、擴張ヲ見タヤウナ次第デアリマス、又
增稅ヲ致シマシテモ、其收益ニ餘リサシタ
ル影響ガナイヤウナ狀態デアルノデアリマ
スルノデ、今囘ノ程度ノ增稅ニ依リマシテ、
國家ノ爲メ有用ナル產業ニ對シ、企業心ヲ
萎縮致シマシテ生產擴充ニ困ルコトハ、
決シテナイト信ジテ居ルノデアリマス
(「ノー〓〓」)
又此增稅ハ法人ニ於テ最高八割マデヲ取
ルコトニナリ、之ニ地方附加稅ヲ加ヘレバ
更ニ四割、併セテ十二割、利益ノ上ニ更ニ
二割モ取ルコトニナリハセヌカト云フ御尋
デアリマスルガ、是ハ稅法ガ複雜デアリマ
スルノデ、一應御尤ノ御疑問デアリマスル
ガ、此最高ノ課稅ノ制限ハ、普通ノ法人個
人ニ於キマシテハ、國稅ノ外地方稅マデモ
合セマシテ、七割以上ニハナラナイヤウナ
仕組ニナッテ居リマス、同族會社ハ多少ソレ
ヨリ增加致シマス、而モ此七割マデ參リマ
スル場合ハ、會社デ申シマスルナラバ、利
益ガ一年ニ於テ、資本金ノ七割モアルヤウ
ナ場合ノミニ限ルノデアリマスルカラ、之
ヲ外國等ノ立法ニ比較致シマシテモ、左程
個人及ビ法人ニ取ッテ重大ナル賦課トハ考
ヘマセヌ、此時局ニ於テハ已ムヲ得ザル徵
稅デアルト考ヘルノデアリマス
ソレカラ個人ト法人トハ一一重ノ課稅トナ
ルト云フ御說デアリマス、是ハ御意見ノヤ
ウニ拜聽致シマシタガ、我ガ稅法ハ兩者人
格ガ異リマスノデ、常ニ課稅主體トシテハ
兩方ヲ別々ニ考ヘテ居ル次第デアリマス
次ニ此增稅ノ結果、物價騰貴ヲ招來ハシナ
イカト云フ御說デアリマスルガ、今囘ノ增
稅ハ御承知ノ如ク、直接稅ガ三分ノ二、約
二億デアリマス、間接稅、消費税ガ約三千
餘万圓、物品特別稅等ガ六千餘万圓、其約
一億圓ガ問題ニ相成ルノデアリマスルガ、
是ハ當業者ト致シマシテモ、此時局ニ御奉
公致ス精神カラ、此增稅ニ名ヲ藉リテ、增
稅額以上ニ物價ヲ引上ゲルヤウナコトハ、
斷然我ガ國民ニハナイト信ジマスルノミナ
ラズ、政府ノ方ニ於キマシテモ、此點ニ關
シマシテハ十分ニ注意ヲ致シマシテ、當業
者ニ明ニ其自覺ヲセシメルヤウニ努メル積
リデアリマス、又之ニ違反ヲ致シマス者ニ
ハ、十分ナル取締ヲ致ス積リデアリマス
次ニ一般ノ所得ノ增加セザル者ニ付テモ
負擔ガ及ブト云フ御話デアリマスルガ、是
ハ御話ノ如ク及ビマスル場合モアリマスル
ガ、國民全般ガ時局ニ對シテ犧牲ヲ拂フト
云フ精神カラ、此點ハ已ムヲ得ヌコトト存
ズルノデアリマス、此大ナル時艱ヲ克服致
シマスノニ、總テ平常通リニハ遺憾ナガラ
參リマセヌ次第デアリマス、併ナガラ尙ホ
時局ニ依リマシテ著シク影響ヲ被リマス人々
ニ對シテハ、先刻申上ゲマシタ如ク、若
干ノ減稅計畫モ考ヘテ居ル次第デアリマ
ス
尙ホ輸出ノ妨害ニナリハシナイカト云フ
御話デアリマスルガ、今囘ハ原料品ノ如キ
物ニハ課稅ヲ致シテ居リマセヌ、又輸出品
ニハ課稅ヲ致シマセヌノデアリマスルカラ、
一般ニ增稅ニ藉口シテ、不當ニ物價ヲ吊上
ゲル者ナキ限リハ、左樣ナ心配ハナイノデ
アリマス
次ニ金融資本家ヲ遇スルコト厚キニ過ギ
ハシナイカト云フ、重ネテノ御質問デアリ
マスルガ、是ハ先程紫安君ニ對シテ御答辯申
上ゲマシタ如ク、只今ノ社債ハ漸ク今年カ
ラ發行ガ出來ルヤウナ狀態デアルノデアリ
マス、之ニ增加致シマスヤウナコトハ、產
業資本其モノノ疏通ヲ阻碍致スコトトナル
ノデアリマス、又公債ニ付キマシテハ、先
程申上ゲマシタ通リ、只今ノ金利水準カラ
申シマシテ、之ニ課稅致シマスコトハ、稅
込メ金利ノ逆轉ヲ生ジマシテ、經濟上思ハ
シカラヌ現象ヲ起スノデアリマス、金融資
本家ソレ自身ニ致シマシテモ、近來低金利
ノ打擊ニ依リマシテ、甚シキ利得ヲ得タト
云フ實情ハゴザイマセヌノデ、ソレハ斯ル
會社ノ株式ト產業關係ノ株式トノ値段ヲ見
マシテモ、此點ハ分ルコトト考へルノデア
リマス
尙ホ資金調整法ハ獨リ公債ノ消化ノミナ
ラズ、時局ニ有用ナル產業ノ方面ニ資金ノ
供給ヲ圖ルコトヲモ、主眼ト致シテ居ルノ
デアリシテ、兩々相俟ッテ此方面ニ貢獻ヲシ
タイト思フノデアリマス
又爲替相場ノ維持ニ付キマシテモ御尋デ
アリマスルガ、是ハ只今ノ所デハ、爲替相
場ヲ引下ゲマシテモ、輸出ニ貢獻ヲ致シマ
スコトハ、國際間ノ經濟事情ニ於キマシテ、
多キヲ望ムコトハ出來ナイト思フノデアリ
マス、輸入ニハ御承知ノ如ク損失ヲ致シマ
スルノデ、國際收支ノ改善ニ付キマシテハ、
貢獻スル所ナキノミナラズ、一タビ斯樣ナ
政策ヲ執リマスルコトハ、國內ノ經濟界ヲ
混亂シ、庶民階級ノ生活ニ重大ナル脅威ヲ
與フルノ虞ナキニシモアラズト考ヘテ居ル
ノデアリマス、何レノ戰爭ノ場合ニ於キマ
シテモ、歐洲諸國ニ於キマシテモ、米國ニ
於キマシテモ、戰時中ハ爲替相場ノ維持ニ
主力ヲ注イデ居ルノデアリマス、必ズ是ハ
現在ノ政策ヲ維持スルノ必要ヲ感ジテ居ル
ノデアリマス
尙ホ此增稅ノ結果、物價ヲ騰貴セシメテ、
歲出ヲ增加セヌカト云フ御心配デアリマス、
是等ノ點モ十分考慮致サナケレバナラヌ點
デアルノデアリマスガ、只今ノ課稅物品ハ、
政府ノ消費致シマスル物ハ極メテ少イノデ
アリマシテ、且ツ軍需品等ハ物品特別稅等
ヲ課セナイコトニ致シテアリマスノデ、此
點ハ御尤ナ心配デアリマスルガ、斯樣ナ惡
影響ハナイト存ズルノデアリマス
臨時利得稅ニ付キマシテハ、必ズ二重ニ
モナリマセヌシ、又免レルモノモナイノデ
アリマス、新シキ法人等ニ於キマシテモ、
七分ヨリ一割ノ間ハ、從來ノ臨時利得稅ノ
率ニ依リマシテ徵稅ヲサレルノデアリマス、
一割以上ハ新率ニ依ルノデアリマス、又
割以上ノ分ニ付キマシテハ、新率ト舊率ハ
重複シテ課稅シナイノデアリマスカラ、二
重課稅ニハナラナイコトト考ヘテ居ルノデ
アリマス
又個人ニ付キマシテノ御說デアリマスル
ガ、是ハ御議論甚ダ御尤ナ所ガアルト考ヘ
ルノデアリマス、併ナガラ個人ニ付キマシ
テハ、資本金額ヲ捉フルコトガ容易デアリ
マセヌノデ、止ムヲ得ズ斯樣ナ立法ニ致シ
タノデアリマスルガ、今囘ハ五千圓以上ノ
利得ニシテ、且ツ所得ガ一万圓ヲ超ユル場
合ニノミ課稅ヲ致スコトニシ、相當ノ緩和
ヲ圖リタイ意思デアルノデアリマス
尙ホ此稅法ハ甚ダ複雜デアルノデアリマ
スルガ、是ハ執務ノ實際ニ當リマシテハ、
色々事務的ニ緩和ヲ致シマシテ、成ベク簡
明ニ何人ニモ分リ易イヤウナ方針ヲ執ラウ
ト思フノデアリマス
更ニ今囘ノ提案デハアリマセヌガ、先般
ノ部分的ノ稅法ノ改正ノ際ニ於ケル提案
中、五千圓以上ノ退職手當ニ對シテ課稅ヲ
スルト云フ案ガアリマスルガ、是ノ動機
ハ別ニ御示ノ如ク官吏ニ利益ヲ與フルト
云フ風ナ考ハ毫モアリマセヌ、官吏ハ中々
四千圓トカ五千圓トカ云フ退職手當ニナル
場合ハ極メテ少イ、遙ニ平均ハ其下ナノデ
アリマス、此五千圓ト云フ目安ハ、急激ニ
一時ノ所得ニ對シテ、少額ノモノ迄モ徵稅
スルコトヲ避ケマシタ以外ニ他意アリマセ
又、何卒御諒承ヲ願ヒタイト存ズルノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=13
-
014・森田福市
○森田福市君 簡單デゴザイマスカラ此席
カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=14
-
015・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=15
-
016・森田福市
○森田福市君 只今ノ大藏大臣ノ御答辯ニ
對シマシテハ、殆ド全部肯定致シ兼ネルノ
デアリマスガ、就中一點ダケ申上ゲテ置キ
タイト思ヒマス、私ガ總所得ノ十分ノ八デ
打切ルト言ック點ニ對シテ、大藏大臣ハ十分
ノ七デアルト御答ニナッタノデアリマス、ア
ナタノ方ノハ所得稅、超過所得、臨時所得
稅、此三ツヲ合シテ十分ノ七ニナッテ居ルノ
デアリマス、此外ニ營業收益稅或ハ資本稅
等ヲ加算致シマスレバ、十分ノ八以上ニナ
ルノデアリマス、計算ダケハ間違ハナイヤ
ウニ、正確ナ御答辯ヲセラレンコトヲ希望
致シテ置キマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=16
-
017・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今御示シノ營
業收益稅等モ加算致シマシテ、普通法人ニ
於キマシテハ十分ノ七デアリマス、是等ハ
詳細ナ檢討ヲ要シマスノデ、尙ホ委員會ニ
於キマシテ詳シク申上ゲタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=17
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018・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 矢野庄太郞君
〔矢野庄太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=18
-
019・矢野庄太郎
○矢野庄太郞君 兩君ノ質問ハ巨細ニ亙リ
マシテ、私ノ問ハント欲スル所ハ殆ド無イ
ノデアリマス、併シ尙ホ二三ノ點ニ付テ政
府ノ答辯ガ不十分デアッタト感ゼラレル事
柄ニ付テ、重複デアリマスケレドモ質問ヲ致
シテ見タイト思ヒマス
森田君カラ指摘サレタヤウニ、今度ノ增
稅ノ金額ハ三億圓デアルケレドモ、實ハ二
億圓ノ增稅ニナルノデアリマス、ソレニ對
シテ後ニ現レテ來ル所ノ軍事費ヲ見ルト、
新聞ノ記事竝ニ大藏大臣ノ說明ニ依レバ、
四十八億數千万圓ニ上ルト云フコトデアリ
マス、此四十八億數千万圓ノ歲出ニ對シテ、
僅ニ二億圓ノ增稅ヲスルト云フノデアリマ
ス、百圓費用ガ要ルノニ四圓ダケ稅金ヲ取ッ
テ、殘リ九十六圓ハ借金デヤラウト云フノ
ガ、此抑〓ノ政府ノ案デアルノデアリマス、
ソコデ私ハ先ヅ政治的ニ考ヘマシテ、增稅
ノ目標ヲ政府ハ何處ニ置イテ居ルノデアル
カ、百圓費用ガ要ルト云フノニ、僅ニ四圓
ダケ增稅ヲスルト云フノデアルカラ、增稅
ノ目標ガ何處ニアルカト云フコトヲ、先ヅ
確メテ置カネバナラヌト思フノデアリマ
ス、ソレニ對シテ只今森田君カラノ質問ニ答
ヘテ大藏大臣ハ、增稅ノ目標ハ一ツハ銃後
御奉公ヲ「シンボル」スルモノデアルト、答辯
サレタノデアリマス、昨年ノ事變勃發後ノ
特別議會ニ於テモ、北支事變特別稅一億圓
ヲ新設スル場合ニ、大藏大臣ハヤハリ同樣
ナ說明ヲ此席デセラレテ居ッタノデアリマ
ス、私ハ銃後國民ガ御奉公ノ爲ニ稅ヲ納メ
ルト云フコトニ對シテ、何等異議ヲ挾ム者
デハナイ、又之ニ贊成スル者デアリマスケ
レドモ、若シ左樣ナ道德的、或ハ精神的ニ
目標ヲ置クトスルナラバ、コヽデ法律案ヲ
制定シテ衆議院デ協賛ヲ求メ、又貴族院デ
協賛ヲ求メルト云フヤウナ煩雜ナル手續ヲ
執ラズシテ、政府自ラ街頭ニ立ッテ、オ手
ノモノノ國民精神總動員ノ運動ニ依ッテ獻
金ヲ募集スルコトガ、私ハ金額ニ於テモ多
ク入ルシ、又手續ニ於テモ極メテ簡單デハ
ナイカト思フノデアリマス
次ニ大藏大臣ハ、增稅ノ目標ハ財政的デ
アリ、又經濟的デアルト云フコトヲ答辯シ
テ居ルノデアリマスルガ、其答辯タルヤ極
メテ曖昧デアッテ、ハッキリ致シマセヌ、今
少シ明瞭ニ財政的ノ目標、經濟的ノ目標ガ
何處ニアルカト云フコトヲ此處デ聲明ヲシ
テ、國民ニ此處マデハ稅金ヲ取ルノダ、此主
義デ增稅ヲスルノダト云フコトヲ、納得サ
セル必要ガアルト思フノデアリマス、吾々ノ
同志ニ依ッテ、曾テ增稅ハ赤字公債ノ利子ヲ
賄フ爲ニ、增稅ヲスベキデアルト云フコト
ヲ此席上ニ於テ主張サレタコトガアリマス
ガ、ソレハ最早過去ノ夢デアッテ、今日私共ハ
左樣ナ古イ主張ヲ、尙ホ守ラントスル者デハ
ナイノデアリマス、併ナガラ財政的ナ、又
經濟的ナ目標ヲコヽデ檢討スル場合ニハ、
第一ニ增稅ノ目標ハ公債ノ利子ヲ賄フ爲ニ
ヤルノカドウカ、是ガ質問セネバナラヌ一
點デアリマス、第二點トシテハ、只今申述
ブルガ如クニ五十億ノ軍事公債ヲ出サナケ
レバナラナイ此場合ニ於テ、僅ニ二億圓ノ
增稅デ、果シテ惡性「インフレーション」ヲ
防止シ、通貨ノ一大膨脹ヲ防止シ、物價ノ
濫騰ヲ防イデ、國民生活ノ脅威ヲ免レシム
ルコトガ出來ルカ、三千年ノ歷史ヲ有スル
我ガ日本ノ經濟機構ノ動搖ヲ防グコトガ出
來ルカト云フコトガ、第二點ニ於テ聽カン
ト欲スル所デアリマス、又第三點トシテ增
稅ノ目標ヲ御尋シタイコトハ、曾テ增稅ハ
產業ノ振興ヲ阻碍スルガ故ニ之ヲ避ケナケ
レバナラヌト云フ主張ガ、可ナリ强ク行ハ
レタノデアリマス、ヤハリ今日ニ於テモ增
稅ハ產業ノ振興ヲ阻碍スルカラ成ベク之ヲ
避ケタイ、仍テ五億圓、十億圓ノ增稅ヲ欲
スルノデアルケレドモ、二億圓ニ止メタノ
デアル、政府ガ斯ウ云フ見解ヲ持ッテ居ル
ノカドウカ、此點ヲ確メテ見タイト思フノ
デアリマス
次ニ增稅ノ目標トシテ確メテ見タイコト
ハ、消費ノ統制ヲ目論ンデ居ルノデアルカ
ドウカ、增稅ヲスルコトニ依ッテ國民ニ消
費節約ヲ强制セントスルノデアルカドウ
カ、此點ヲ確メテ見タイト思フノデアリマ
ス
次ニ私ハ細カイ問題ニ付テ、二三點政府
ノ意向ヲ確メテ見タイト思フノデアリマ
ス、今囘ノ增稅案ガ出マスト、新聞デ一番
ドノ方面デ增稅ヲ歡迎シタカト云ヘバ、先
刻森田君ヤ又紫安君カラ言ハレタ如クニ、
金融界ニ於テ歡迎ヲシテ居ルノデアリマ
ス、金融界デ歡迎ヲスルト云フコトハ、金
融資本ニ對スル增稅ノ割合ガ少ナカッタト
云フコトヲ、意味スルモノデアルト思フノデ
アリマス、ソレニ對シテ只今大藏大臣ハ、
社債ノ發行ガ出來ナイカラ巳ムヲ得ズ金融
資本ニ輕クナッタノデアル、是ハ生產力擴
充ノ資本ノ融通ニモ關係スルモノデ、已ム
ヲ得ナイ處置デアルト答辯セラレテ居ルノ
デアリマス、併ナガラ私思フニ、日本銀行
カラ興業銀行ヘ融通致シテ居ル所ノ貸付ノ
日步ヲ少シ下ゲタナラバ、社債ニ課稅スル
コトガ出來ルノデハナイカト思フノデアリ
マス(拍手)日本銀行カラ興業銀行ヘノ貸付
ノ日步ハ、此席上ニ於テ私ガ發表スルコトハ
差控ヘテ置キマスルケレドモ、稍〓高イ感ガ
アルノデアリマス、故ニ日銀カラ興銀ニ融
通スル所ノ資金ノ利子ヲ下ゲタナラバ、社
債ニ課稅スルコトハ易々タルモノデアラ
ウト思フノデアリマス、然ラバ日本銀行ハ
ドウシテ立チ行クカト云ヘバ、御承知ノ通リ
日本銀行ハ、兌換劵ノ發行權ト云フ貨幣ヲ
新造スル所ノ權能ヲ持ッテ居ル銀行デアッ
テ、サウシテ而モ一割配當致シテ居ルノデ
アルカラ、此高率配當ヲ少シ減少スルナラ
バ、興銀ニ對スル融資ノ利下ハ易々タルモ
ノデアラウト思フノデアリマスルガ、此點
ニ對シテ大藏大臣ハ、如何ナル見解ヲ持ツ
テ居ルノデアリマスルカ
次ニ伺ッテ見タイト思ヒマスルコトハ、
土地資本ト金融資本ト產業資本ニ對スル課
稅ノ權衡ニ付テ、只今特ニ森田君カラ詳細
ナル質問ガ行ハレタヤウニ拜聽致シタノデ
アリマス、私モ只今申ス通リニ金融資本ニ
對スル課稅ハ輕イト思フノデアリマス、ソ
レデ增稅案ガ發表セラレマスト、直グニ金
融資本ト土地資本ニ對スル課稅ノ比率ヲ計
算致シテ見タノデアリマス、表ハ頗ル細カ
イノデ斯樣ナ席上ニ於テ皆樣ニ發表シテ聽
イテ戴クノハ頗ル不便デアリマスノデ、議
長ノ御許ヲ得テ、是ハ速記課ニ留メテ置キ
タイト存ジマスガ、其大キイ數字ヲ讀上ゲ
テ見マスルト、土地デ所得ガ一千三百圓得
ルモノ、公債デヤハリ所得ガ一千三百圓得
ルモノ、社債デヤハリ一千三百圓ノ所得ヲ
得ルモノ、此モノニ付テ各稅ヲ集計シテ見
マスルト、土地ニ對スル課稅ハ百六圓デ
アーステー公債ニ對スル課稅ハ七十八圓デアッ
テ、社債ニ對スル課稅ハ百五十六圓ト云フ
數字ヲ得タノデアリマス、之ヲ見ルト社債
ハ可ナリ重クナルノデアリマスルケレド
モ、コヽデ吾々ガ更ニ檢討シナケレバナラ
ヌコトハ、地ノ所得ハ御承知ノ通リニ綜
合課稅ノ累進率ノ所得稅ガ課カル外ニ、地
方ニ住ンデ居リマスル爲ニ、高イ戶數割ガ
課カルノデアリマス、之ニ假ニ百圓ノ戶數
割ガ課カルトスルナラバ、此土地ニ依ル一
千三百圓ノ收益者ノ稅金ハ二百六圓デアッ
テ、一番高クナルノデアリマス、假ニ是ガ
五十圓ノ戶數割ガ課カルト見マシテモ社債
ト變ラナイ、所ガ御承知ノ通リニ土地カラ
生ズル所得ハ、只今申ス通リニ累進率ノ所
得稅ガ課リマスルカラ、所得ノ金額ガ增セ
バ增ス程多ク幾何級數的ニ稅金ヲ納メナケ
レバナラヌト云フコトニナルノデアリマ
ス、此點ニ付テ大藏省デハドウ云フ考ヘ方
ヲ持ッテ居ルノデアリマスカ、之ヲ確メテ
置キタイト思ヒマス、ソレカラ產業資本ニ
對スル課稅ト金融資本ニ對スル課稅ハ頗ル
複雜デアッテ、私ノ如キ何等ノ調査機關ヲ
持タナイ個人デハ、之ヲ數字的ニ比較スル
コトハ極メテ困難デアッテ、常識デ直感デ
行ッテ產業資本ニ對スル課稅ガ高イト、斯
ウ云フ風ニ考ヘルニ過ギナイノデアリマス
ガ、政府ニ於テ之ヲ比較スル數字ヲ御持チ
ニナッテ居ルナラバ、此席上又ハ委員會ノ
席上ニ於テ發表シテ貰ヒタイト思フノデア
リマス、ソレヲ見ルノニハ先ヅ第一ニドウ
スレバ宜イカト云フコトヲ私ハ政府ニ注意
致シテ置キタイト思ヒマス、ソレハ銀行ト
信託ト保險會社ノ拂込資本金ト積立金ト利
益金ト、サウシテ所得稅ヲ幾ラ納メテ居ル
カト云フコトヲ、先ヅ數字ヲ取ラナケレバ
ナラナイ、次ニ其他ノ產業株式會社ニ對ス
ル同樣ナ數字ヲ取ラナケレバナラナイ、其
數字ヲ比較スルコトニ依ッテ、產業資本ニ
對スル課稅ガ、金融資本ニ對シテ幾何程重
クナッテ居ルカト云フコトガ、略〓想像ス
ルコトガ出來ルデアラウト考ヘルノデアリ
マス
次ニ政府ニ伺ッテ見タイコトハ、地方稅
ノ整理問題ト交付金ノ問題デアリマスガ、
是ハ旣ニ紫安君及ビ森田君ニ依ッテ詳細ニ
質問セラレテ居リマスルノデ、私ハ重複ヲ
避ケテ唯一點ダケ伺ッテ見タイ、今度觀覽
稅ハ地方稅ヲ國稅ニ取上ゲルコトニナルト
承知致シ居ルノデアリマスガ、果シテサウ
デアルカ、若シ觀覽稅ノ地方稅ヲ國稅ニ取
上ゲテ行クト云フノナラバ、何カソコニ地
方稅ノドレ〓〓ハ國稅ニ取上ゲテ、其財源
ヲ以テ地方ニ交付スルノダト云フ一ツノ方
針ガ立タナケレバナラヌト考ヘルノデアリ
マイ、七千万圓ガ一億圓ニナリ、一億圓ガ
一億五千万圓ト交付金ノ增加スルコトハ、
地方民ハ固ヨリ吾々モ之ヲ歡迎スルノデア
リマスケレドモ、吾々地方民ハ決シテ政府
ニ對シテ徒ラニ憐ミヲ乞フモノデハナイノ
デアリマス、故ニ政府ハ一定ノ方針ヲ立
テヽ、此方針ニ依ッテ斯樣ニシテ交付金ヲ出
スノデアルト云フ、其確立シタ所ノ方針ヲ
示サナケレバナラヌト考ヘルノデゴザイマ
スガ、觀覽稅ヲ國稅ニ引上ゲルニ付テ如何
ナル方針ヲ持ッテ居ルノデアルカ、ソレヲ
伺ッテ置キタイト思フノデアリマス
其次ニ伺ッテ見タイノハ、法人課稅ニ付テ
ノ不權衡デアリマス、ソレハ只今森田君カ
ヲ又紫安君カラ法人ニ對スル課稅ガ非常ニ
重イト云フコトヲ指摘セラレテ居リマスノ
デ、ソレヲ重ネテ伺ハントスルノデハアリ
マセヌ、私ノ聽カントスル所ハ、甲ノ法人
ニ對スル課稅ト、乙ノ法人ニ對スル課稅ト
ヲ比較シテ、權衡ヲ失シテ居ルガ、ソレニ
對スル政府ノ考ヘ方ハドウデアルカト云フ
コトデアリマス、極メテ失禮デアリマスケ
レドモ、一寸此處ヘ例ヲ中述べテ見タイト
思ヒマス、五万圓ノ利益ヲ擧ゲテ居ル法人
ハ二万圓或ハ三万圓ノ稅金ヲ取ラレル、是
ハ稅金ノ「パーセンテージ」ハ別ニ〓究シタ
モノデハナイ、唯例トシテ申述ベテ居ルノ
デアリマス、五万圓ノ利益金ヲ擧ゲル法人
ガ二万圓又ハ三万圓ノ稅金ヲ取ラレル、マ
ルデ稅金ヲ納メル爲ニ働イテ居ルヤウナ觀
ヲ呈スル、所ガ十万圓ノ利益ヲ擧ゲル法人
ニハ一万圓ソコ〓〓ノ稅金シカ課シテ居ラ
ナイ、私ハ是ガ頗ル所謂常識ニ外レテ居ル
ト思フノデアリマス、所ガ大藏省ニ於テ稅
法ノ立前カラ言フト、五万圓ノ法人ハ二十
万圓ノ資本金デアッテ、二割五分ノ利益ヲ
擧ゲテ居ルカラシテ、利益金ニ對シテ四〇
%又ハ六〇%ト云フ高イ率ノ稅金ヲ課ケル
ノデアル、所ガ十万圓ノ利益ヲ上ゲテ一万
圓ソコ〓〓ノ稅金シカ納メナイ所ノ法人
ハ、百万圓ノ資本金デアッテ、其利益率タ
ルヤ僅ニ一割デアルカラシテ、稅金ガ低イ
ノダトカ云フ風ニ答辯セラレルノデアリマ
ス、是ハ一見理論ニハ間然スル所ガアリマ
セヌ、併ナガラ更ニ之ヲ檢討シテ見ルト、
常識ニ非常ニ懸離レテ居ルノデアリマス、
何故常識ニ懸離レテ居ルカト云ヘバ、其二
十万圓ト云フ資本金、或ハ百万圓ト云フ資
本金ヲ決定スルノハ誰ガスルノデアルカ、
資本金ガ多ケレバ多イ程利益金ノ絕對ノ金
額ハ變ラナイデモ、其割合ガ低クナルカラ
シテ稅金ガ低クナル、ソレカラ二十万圓ト
云ヒ百万圓ト云フ資本金ハ誰ガ決メルノデ
アルカト云フト、大藏省ニ言ハスト稅務官吏
ガ決定スルト斯ウ云フノデアル、所ガ決シ
テ事實ニ於テハ稅務官吏ガ決定スルモノデ
ハナイノデアリマス、大抵大キナ會社ノ資
本ハ水腫レニナッテ居ル、水腫レニナッテ居
ルト云フコトハ、資本金ガ實際ノ資本金ヨリ
ハ多クナッテ居ル、ソレハ利益金ニ比較シテ
稅金ヲ納メル場合ニ其利益率ガ低クナルカ
ラシテ、稅金ガヤハリ低クナルト云フコト
ニナルノデアル、故ニ其二十万圓或ハ百万圓
ト云フ資本金ノ決定ヲスルモノハ稅務官吏
デナクシテ納稅者自身デアル、大抵ノ納稅
者ハ稅金ノ低クナルコトヲ希望スルカラ、
皆競ウテ水膨レノ資本ニスルノデアリマス、
敢テ私ハ電力會社ガ水膨レノ資本ヲ持ッテ
居ルト云フコトヲ言ッテ居ルノデハナイガ、
ドノ會社デモ巨大資本ノ會社ハ皆水膨レノ
資本ヲ持ッテ居ルノデアル、私ハ先日或ル會
社ノ株主カラ斯ウ云フ話ヲ聽イタノデアリ
さく、現在一割ノ配當ヲ受ケテ居ルガ、水
膨レヲ搾リ切ルト四割ノ配當ニナルト云フ
ノデアル、一割ト四割トデハ、今申ス通リ
稅金ガ非常ニ變ッテ來ルノデアル、此點ニ對
シテ政府當局ハ如何ナル見解ヲ持ッテ居ル
カ、又今後如何ニ對處セントスルノデアル
カ、此點ヲ伺ッテ置キタイト思フノデアリ
マス(拍手)
次ニ稅法ノ根本的改正ニ付テ、一言大藏
大臣ニ伺ッテ置カナケレバナラヌコトハ、大
藏大臣ハ稅法ノ根本的改正ハ、時局ノ爲ニ
經濟界ガ變化ニ富ムカラ、今之ヲ改正シテ
モ、卽チ今日負擔ノ公平ヲ期スベク規定ヲ
置イテモ、明日ハ其負擔ノ均衡ガ破レルカラ
根本的ノ改正ハ出來ナイト言ッテ居ルノデ
アリマスガ、私ハ是ハ理窟ニ合ハヌト思フ、
素人瞞シデアルト思ッテ居ル、物價デアルト
カ、景氣デアルトカ云フモノハ、時局ニ因ッ
テ變化ニ富ムモノデアル、今日アッテ明日ヲ
知ルベカラズデアリマス、富ノ分布或ハ富
ノ移行ハ、平時ニ比較シテハ迚モ激烈デアッ
テ、或者ハ儲ケルカト思ヘバ、他ノ者ハ損
ヲスル、是ハ其通リデアリマス、大藏大臣
ノ言フ通リデアル、景氣又ハ物價ガ變化ニ
富ムト云フコトハ、大藏大臣ノ言フ通デア
リマスケレドモ、稅法ノ立前、多ク儲ケタ
者ニ多ク稅金ヲ課ケルヤウニ、又損ヲシタ
者ニハ稅金ヲ課ケナイヤウナ立前ノ稅法サ
ヘ作ッテ置イタラ宜イノデアル、甲ガ多ク儲
ケヤウト、乙ガ損ヲシヤウト、富ノ分布移
行ガドンナニ激シカラウト、ソレハ全然關
係ノナイコトデアル、時局ノ爲メ財界ガ變
化ニ富ムカラ、稅法ノ改正ガ出來ナイト云
フコトハ、私ニハ了解出來ヌノデアルガ、
大藏大臣ハ果シテドウデアルカ、ソレノミ
ナラズ私ハ時局ニ依ッテ景氣ノ性質ガ變ッテ
參ルト思フ卽チ今迄ノヤウニ、景氣ガ自然
的運行ヲヤラナイデ、政府ガ色々統制ヲ加
ヘタリ强制手段ヲ加ヘマスノデ、景氣ノ性
質ガ根本的ニ變ッテ來ル、デアルカラ之ニ對
應スル爲ニ稅法ノ改正ヲシナケレバナラヌ
ト考ヘテ居ルノデアリマスガ、此點ニ對シ
テ大藏大臣ハ如何ナル所見ヲ持ッテ居ルノ
デアルカ、外國ノ例ヲ申スコトハ甚ダ失禮
デアリマスケレドモ、世界大戰ニ於テハ多
クノ國ガ禁酒國ニナッテシマッタノデアリマ
ス、大藏省ニ於テハ酒ガ此頃大變賣レルカ
ラ、酒稅ノ上リ高ハ多イダラウト云フコト
ヲ言ッテ居リマスケレドモ、現在ノヤウナ戰
爭狀態ニ於テナラバ、ソレハ大藏省ノ言ハ
レル通リデアリマスケレドモ、戰局ガ擴大
シテ、國際關係ガ益〓複雜ニナッテ行クナラ
バ、私ハ或ハ酒ノ賣行ト云フヤウナモノモ
減少スルノデハナイカト思フノデアリマス、
故ニ此點カラ考ヘテモ、稅法ヲ改正シテ氣
ニ入ラナイ所ノ賣上稅、或ハ又財產稅ト云
フヤウナモノヲ、取敢ズ用意ヲスル必要ガ
アルノデハナイカ、是ハ私個人ノ意見デア
リマスケレドモ、左樣ニ考ヘテ居ルノデア
リマス
次ニ事變稅ニ付テ一三御尋ヲシテ置キタ
イト思フノデアリマスガ、我ガ日本ノ稅法
ニ於テ勤勞所得ト云フノハ、一體ドウ云フ
意味ヲ持ッテ居ルノデアルカ、其勤勞所得
ト云フ意味ガ私ニハ、ハッキリシナイノデ
アリマス、勤勞者ニハ申ス迄モナク肉體的
勤勞者ト精神的勤勞者ノ二ツガアルノデ
アル、【其稅法ノ所謂勤勞者ト云フノハ、
私ノ今言フ中ノ如何ナル種類ノ勤勞者ヲ指
スノデアルカ、肉體的勤勞者竝ニ精神的勤
勞者ノ雙方ヲ包含スルノデアルカ、或
ハ精神的勤勞者ノミヲ指スノデアルカ、
此點ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス、
大藏大臣ハ、只今增稅スルノハ、其意義ハ
精神的デアリ、道德的デアッテ、愛國心ニ愬
ヘテ稅金ヲ取立テヽ行キタイト云フノデア
ル、サウスレバ日本國民トシテ肉體的勤勞
ニ從事スル者モ、精神的勤勞ニ從事スル者
モ、稅金ヲ納メナケレバナラヌト云フ觀念
ニ於テハ、此非常時局下ニ於テ變ル所ハナ
カラウト思フ、サレバ所得稅ニ於ケル勤勞
所得ト云フノハドウ云フ意味ニ解釋シテ、
如何ナル範圍ニ於テ課稅スルノデアルカ、
ソレヲ聽イテ見タイト思フノデアリマス
次ニ乙種臨時利得稅ト云フノヲ創設シテ
居リマス、是ハ戰時利得稅デアッテ、國民ノ
一部ガ「クリーク」ノ水ヲ飮ンデ生命ヲ犧牲
ニ供シテ鬪ッテ居ル、然ルニ一方ニ於テハ戰
時利得デウント儲ケルト云フ場合ニ、此戰
時利得ニ對シテ課稅スルコトハ當然ノ處置
デアッテ、二三年前ニ亞米利加ノ上院ニ於
テ、軍需工業調査委員會ヲ設ケテ、稅制ニ
對スル調査〓究ヲシタ際ニモ、戰時利得ハ
其九〇%マデ取ッテ宜イト云フヤウナ報〓
書ヲ出シテ居ルヤウニ記憶致シテ居ルノデ
アリマス、私此點ニ付テ敢テ異論ヲ申述ブ
ル者デハナイノデアリマスケレドモ、體
重工業デアルトカ、化學工業デアルトカ、
或ハ軍器ヲ造ルト云フヤウナ直接ノ軍需工
業ニ於テハ、其設備ハ迚モ十五年モ二十年
モ使ヘルモノデハナイノデアリマシテ、五
年カ八年デ設備ハ「ゼロ」ニナルノデアル、
左樣ナ生命ノ短イ設備ヲ以テシテ、今日儲
カルカラト云フノデ皆取ッテ行カレタ場合
二、平和時代ニナッタ時、或ハ平和時代ニ
ナラナクテモ、五年カ八年ノ後ニハ多大ノ
利益ハ擧ラナイノミナラズ、其設備ハ皆損
ノ勘定ニシナケレバナラヌト云フコトニナ
ルノデアルガ、資本銷却ノ點ニ付テ大藏省
ハ如何ナル取扱ヲセントスルノデアルカ、
之ヲ聽イテ置キタイト思フノデアリマス
ソレカラ最後ニ伺ッテ見タイト思ヒマス
ノハ、只今森田君カラモ一言セラレタヤウ
ニ、現在ノ日本ノ稅法ハ迚モ複雜多岐デア
リマス、恐ラクハ稅務官吏ト雖モ具體的ノ
事實ニ對シテ、直チニ稅法ヲ適用スルコト
ハ出來ナイト私ハ思フノデアリマス、政府
當局デモ稅法ノ分ッテ居ル方ハ、名指シヲシ
テハ失禮デアリマスガ、其處ニ居ラレル國
稅課長ト主稅局長ト石渡次官位ダラウト思
フ、大藏大臣モ恐ラク分ルマイト思フ、極
メテ簡單ナル設例ヲ申上ゲマスナラバ、公
債ノ利子ト社債ノ利子ト、ドチラニドレダ
ケ重ク稅金ガ課カルカト云フコトヲ計算シ
テ見ヨウトシテモ、是ハ御承知ノ通リ比例
稅デアルカラ、極メテ簡單ナ徴稅事項デア
リマスケレドモ、ソレヲ見ヨウト思フナラ
バ、第一ニ所得稅法、資本利子稅法、臨時和
稅增徵法ト北支事件特別稅法、ソレカラ今
度此處ニ提案セラレテ居ル支那事變特別稅
法ヲ持ッテ來テ、算盤ヲ彈イテ見ナケレバ分
ラヌ、ソレヲ持ッテ來テ分ルノナラバ宜イ
ガ、尙ホ算盤ヲ彈カナケレバ、社債ノ利子
ニ對シテ幾ラ稅金ガ課リ、公債ノ利子ニ對
シテドレダケノ稅金ガ課ルト云フコトハ、
分ラナイノデアル、況シテヤ個人ノ營業主
ヤ法人ガ幾ラ稅金ヲ納メナケレバナラヌカ
ト云フコトニ至ッテハ、專門ノ稅法〓究者ヲ
雇ハナケレバ分ラナイノデアリマス、私ハ
議會ヲ有シテ居ル文明國デ、コンナ複雜難
解ナ稅法ヲ持ッテ居ル國ハ恐ラクナイデア
ラウト思フノデアリマス(拍手)若シ斯樣ナ稅
法ニ依ッテ發セラレタ徴稅令書ガ民間ニ於
ケル債權債務ノ仕切書デアッタトシタナラ
バ迚モ爭ガ頻發シテ一年經ッテモ二年經ッ
テモ金ハ一錢モ入ッテ來ナイト私ハ思フノ
デアリマス、ソレデ政府ノ方ニ於テ此複
雜ナル所ノ稅法ヲ整理スルノ用意ガアルカ
ドウカ、今期議會中ニ整理シテ之ヲ提案ス
ルノ用意ガアルカナイカ、若シ其用意ガナ
イトスルナラバ、國民ヲシテ一目瞭然、自
己ノ納ムル稅金ガ幾何ニナルカヲ計算スル
ニ便宜ナル所ノ稅率一覽表ヲ作ッテ、此議會
ヲ通ジテ國民ニ發表シテ貰ヒタイト思フノ
デアリマス、私ハ此考へ方カラ先日、モウ
二週間位前ニ大藏次官ニ對シテ、私私信デ
其事ヲ依賴シテ居リマス、其私信ノ全文ヲ
此處デ讀上ゲルコトハ煩雜デアリマスカ
ラ、議長ノ御許シヲ得テ速記ニ留メテ置キ
タイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=19
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020・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答申上ゲマス、
此增稅額ノ目標デアリマスガ、是ハ國民ノ
此際ニ戰費ヲ增稅ニ依ッテ支辨スベク努ム
ベキモノデアリマスガ、產業ノ振興ト云フ
コトモ考ヘナケレバナリマセヌ、又國民生
活ニ對シテ過重ナル壓迫ト云フコトモ考ヘ
ナケレバナリマセヌ、其二點ヲ考慮シマシ
テ、稅率ヲ盛リマシタ結果、アノ金額ニナ
リマシタ次第デアリマス、戰後ドノ位經常
財源ヲ增スベキ必要ガアルカ、御示シノ如
ク事變公債ノ利子デアリマスルトカ、其他
恩給、色々此事變ニ依リマシテ、經常財源ノ
增加スルモノガアラウト考ヘルノデアリマ
ス、ソレハ恐ラク事變ガ長期ニ互リマスレ
バ、只今ノ增稅ノ程度ヨリ尙ホ多キモノモ
アランカト考ヘルノデアリマスガ、是ハ未
ダ前途ヲ豫測スルコトガ出來ナイノデアリ
マス、サウ云フ點カラ考ヘマシテ、此增稅
ノ金額ヲ以テ直チニ公債利子ノ支辨ニ充テ
ルトハ申上ゲ兼ネマスケレドモ、將來經常
的增稅ヲ致シマスルニ付キマシテモ、事變
中ノ如キ、多少ノ跛行性ハアリマシテモ、
國民一般ノ所得ガ非常ニ增加致シマスル際
ニ於テ、增稅ヲ行フコトハ必要デアルト考
ヘテ居ルノデアリマス、之ニ依ッテ惡性「イ
ンフレーシヨン」ヲ防ギ得ルカト云フ御話
デアリマスガ、御承知ノ如ク經濟界ノ問題
ハ、單ニ此一手二手デ行キ得ルト云フ譯デ
ハアリマセヌノデ、度々申上ゲマシタル如
ク、國際收支ノ維持、物資ノ需給調整、生
產力ノ擴充、色々ノ方面、殊ニ貯蓄ノ奬勵、
半面ニ合理的ノ消費節約ヲ必要トスルノデ
アリマスガ、是等ノ政策ト相俟チマシテ、
增稅モ惡性「インフレーション」防止ノ一助
ニナルモノト考ヘテ居リマス、尙ホ產業ノ
振興ヲ阻碍スルコトノ不可ナル所以ハ、是
ハ私共モ全ク同感デアルノデアリマス、隨
テ唯稅額ノ多キヲ望ンデ稅率ヲ多クスルト
云フコトハ愼ムベキコトト思フノデアリマ
ス、同樣ニ國民生活ノ點モ考ヘナケレバナ
リマセヌ、隨テ煙草ニ於キマシテモ、大衆
ノ消費致シマスルモノハ、昨年前囘ノ値上
ガ相當割合ガ强イ點モアリマシタノデ、兩
者相兼ネ考ヘマシテ、今囘ハ見合セタ次第
デアリマス、消費節約ヲ强制スルカト云フ
御話デアリマスルガ、是ハ消費節約ヲ是非
國民ニシテ貰ハナケレバナリマセヌ、度々
申上ゲマスル如ク、事變ニ依ッテ收入ヲ增
シマシタル人ハ其增加ノ牧入、又一般國民
ハ輸入關係ノ物資ノ消費ノ節約ヲシテ貰ハ
ナケレバナリマセヌガ、此消費ノ節約ニ依
リマシテモ、增稅ヲ支辨致シマスル財源モ
個人トシテ出來得ル譯デアリマス
尙ホ金融ノ方面ニ稅ガ薄イト云フ御話デ
アリマスルガ、是ハ前モ申シマシタ如ク、
金融資本ノ方面ハ低金利ニ依ッテ非常ナル
收入減ヲ起シテ居リマス、產業方面ハ反對
ニ寧ロ收益モ增加シテ居ルノデアリマシテ、
此金融ガ產業資本ニナリマス關係ヲ考ヘレ
バ、金融資本ノ集積蓄積ヲ私共ハ心掛ケナ
ケレバナラヌ次第デアリマスルカラ、其故
ニ低利ノ國債竝ニ產業資金トナリマスル社
債其他ノ蓄積ニ關シマシテ、稅率ヲ增加致
サナカッタ次第デアリマス、日銀ノ興業銀行
ニ對スル貸付利率ヲ安クスルト云フ點ハ、
場合ニ依ッテハ必要カト考ヘマスルガ、日本
銀行ガ產業資金ヲ出シマスルコトハ一種ノ
繫ギデアリ、例外デアリマス、產業資金ハ
一方固定設備ヲ要スルモノデアリマスカラ、
必ズヤ國民ノ貯蓄、蓄積ニ俟ツヲ本體ト
致スノデアリマス、隨ヒマシテ國民ノ蓄積
貯蓄ヲ奬勵致ス意味ニ於キマシテモ、只今
ノ狀況ニ於キマシテハ、是レ以上課稅ヲ增
シマシテ、事實上ノ低金利ヲ招來スルコト
ハ適當デナイノデアリマス、我國ノ生產力
ニ超過セントスル大ナル事業ヲ今致シテ居
ル際デアリマスカラ、資本ノ蓄積ノ極メテ
樂デアリマス時代、金利ノ自然的ニ低下ス
ル時代トハ、餘程此趣ヲ變ヘテ參ラナケレ
バナリマセヌ、是等ノ點モ只今ハ恆久的稅
制整理ヲ致スノニ適當シナイ時期デアルノ
デアリマス
尙ホ土地、社債、公債ニ關スル色々御比
較モアリマシタガ、只今ノ公債、社債ニ對
シマスル考ハ、右樣ノ下ニ出發致シテ居ル
ノデアリマス、昨年ニ於ケル一種ノ新資本
投資ノ跛行性、株式ノ拂込ノミニ偏リマシ
テ、社債ノ發行ノ出來マセヌデシタ時代ヲ
モウ少シ常態ニ引返ス必要ハアルト思ッテ
居ルノデアリマス
尙ホ觀覽稅ニ付キマシテ、地方ニ於テハ
減稅ヲスルカドウカト云フ御話デアリマス
ガ、此觀覽稅ヲ國稅デ取リマスル結果、
部ノ觀覽興業物ニ對シマスル地方稅ノ輕減
ヲ必要トスル分ガアリマス、其地方團體ノ
收入ノ減少ニ對シマシテハ、國庫ヨリ交付
金ヲ支給スル積リデ居リマス
利益ノ少イ法人ニ却テ稅ガ高ク、利益ノ
多イ方面ニハ稅ガ少イト云フ御話ハ、矢野
君御說明ノ如ク絕對金額ハ少クテモ、利益
率ノ多イ方面ニハ御話ノヤウナ制度ニ相
成ッテ居リマスルガ、是ハ已ムヲ得ナイ點デ
アリマシテ、只今ノ資本金ハ拂込資本ノミ
ナラズ、積立金等、實際ノ資本ト云フコト
ヲ見テ居リマス、又水膨レ云々ノ御話ガア
リマシタガ、斯ルモノモ多少アリマセウ、
併シ其際ニハ寧ロ努メテ利益ヲ不健全ニモ
多ク出スヤウナ傾向ガアル位デアリマス、
此邊カラ非常ナル不公平ハナイト思ヒマス、
但シ此小法人ニ付キマシテハ、資本ノ力ヨ
リ企業ニ當リマス人的要素ガ相當多イト云
フ說ハ、或ル程度ニ於テ首肯スベキモノト
認メマスノデ、今囘ニ於キマシテモ小法人
ニ對スル事變利得ハ其率ヲ輕減致シテアル
次第デアリマス
尙ホ此稅制ノ改正ハ此際デモ出來ルデハ
ナイカト云フ御話デアリマスガ、例ヘバ都
市ト農村ニ致シマシテ、都市方面ニ厚クス
ルニ致シマシテモ、只今ハ都市ノ一部ハ非
常ニ軍需工業等ノ爲ニ活況ヲ呈スルモノモ
アリマスルガ、輸出工業等ノ關係上、收益
ノ減ルモノモアリマス、サウ云フ風ニ常態
ヨリ異ッタル有樣デ出テ居リマスルノデ、且
ツ是ガ事變ガドノ位續キマスルカ、又其發
展ノ程度如何デハ、利得及ビ損失ノ狀態ガ、
必シモ豫測シ得ナイノデアリマスカラ、此
際ニ於テ恆久的ノ稅制整理ヲ致シマスルコ
トハ、是ハドウモ適當デナイト考ヘテ居ル
ノデアリマス、勤勞所得トハ如何ナル意味
デアルカ、是ハ肉體、精神共、二入ッテ居リ
マスル次第デアリマシテ、今囘ノ增稅ガ精
神的方面ニアリト申シマスルノモ、是ハ肉
體勞働ヲ致シテ所得ヲ得ル方面モ、精神的
勞働ニ依ッテ所得ヲ得ル方面モ、資產所得
ニ依ッテ利得ヲ得ル方面モ、一樣ニ其精神デ
ハ同一デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、
尙ホ戰時利得ニ付キマシテハ、軍需工業等
ニ付テハ、其命脈ノ短イモノハナイカト云
フ御說デアリマスガ、其銷却率ニ付キマシ
テハ、實情ニ應ジテ適當ニ考慮致シタイト
思フノデアリマス、稅法ノ複雜ナコトニ付
キマシテハ、御示シノ趣ニ似タ所ガアリマ
シテ、其邊ハ私モ甚ダ御氣ノ毒ニ存ジテ居
ルノデアリマス、御話ノヤウニ成ベク是ガ
容易ク分リマスヤウナ補助手段ヲ講ジタイ
ト思ヒマス、一覽表ヲ作ルト申シマスル
カ、左樣ナ邊ニハ極メテ力ヲ盡シテ、何等
カ便宜ノ方法ヲ講ジタイト考ヘテ居リマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=20
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021・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 鶴惣市君
〔鶴惣市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=21
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022・鶴惣市
○鶴惣市君 私共ハ昨年ノ夏ノ特別議會ニ
於キマシテ、アノ結城增稅ヲ斷行シ、更ニ
九月ノ臨時議會ニ於テモ、重ネテ賀屋增稅
ヲ通過セシメテ參ッタノデアリマス、而シテ
今又四箇月ヲ出デザル今日、更ニ第三次ノ
增稅ニ遭遇致シタノデアリマス、斯ノ如ク
頻々ト其都度々々ノ必要ニ應ジマシテ、增
稅ヲ敢行セラルヽト云フコトニナリマスレ
バ、或ハ來ルベキ機會ニ於テモ更ニ第四次、
第五次ノ增稅ヲヤラルヽノデハナイカト云
フ懸念ノ下ニ、國民ト共ニ心配シテ居ルノ
デアリマス、固ヨリ今日ノ時局ハ、之ヲ歷
史的ニ見マシテモ、皇國未曾有ノ非常時デ
アルコト無論デアリマスガ故ニ、私ハ敢テ
今囘ノ增稅ニ異議ヲ唱ヘントスル者デハ斷
ジテアリマセヌ、寧ロ銃後ノ國民的義務ノ
上ニ於テ、當然ノ處置デアルトサヘ思ッテ居
ルノデアリマス、併ナガラ本增稅案ノ如ク、
其都度々々ノ必要ニ應ジマシテ、何等ノ體
系モナク、何等ノ基礎モナク、卑俗ナ言葉
デハアリマスルガ、出タトコ勝負的ナ無計
畫極マル增稅案デハ、第一國民ガ不安デナ
ラナイコトヲ御警告申上ゲタイノデアリマ
ス(拍手)殊ニ今次事變ハ長期抵抗トナッタ
今日デアリマス、今議會ニ於ケル內閣ノ御
所信ニ依リマシテモ、帝國ノ對支行動ハ長
期戰タルコト既ニ明白デアリマス、隨テ今
次事變ハ相當長期ニ亙ルモノト覺悟シナケ
レバナリマセヌノデアリマスガ、果シテ此
增稅案ヲ以テ、此長期戰化シタル新事態ヲ、
澁滯ナク處辨シ得ルヤ否ヤト云フコトニ付
テハ、私ハ先ヅ政府當局ノ御所信ヲ承リタ
イノデアリマス
顧ミマスレバ事變勃發以來、最近ニ至ル
政府當局者ノ事變對策ハ、大體ニ於テ之ヲ
極ク短期ノモノト假定シテノ應急策デアッ
タト思フノデアリマス、是ハ去ル第七十二
議會ニ於ケル政府當局者ノ御答辯ニ依リマ
シテモ明カナ所デアリマス、然ルニ今ヤ事
變ハ其假定ヲ裏切ッテ、明確ニ長期戰化シ
タ今日デアリマス、卽チ此新事態ニ對シマ
シテ、政府ハ當然ニ財政政策モ、稅制ノ問
題モ、之ニ卽應スベキ所ノ根本的ナ對策ヲ
樹立シナケレバナラナイ筈デアルニ拘ラ
ズ、本增稅案ニハ遺憾ナガラ何等一片ノ改
善ノ痕跡スラ發見ガ出來ナイノデアリマ
ス、別シテ現行稅制ハ其一大缺陷アルニ於
テ、既ニ改革ノ急務ヲ痛感セラレ、更ニ第
七十一議會ニ於テハ、時ノ結城藏相自ラ明
確ニ、近キ將來ニ於テ稅制改革ヲ斷行スベ
キ用意ガアルト約束サレテ居ルノデアリマ
ス、然ルニモ拘ラズ本案ニハ何等改善ノ痕
跡サヘナキノミカ、一大缺陷ヲ密封シタ
儘屋上屋ヲ重ヌルガ如キ稅制計畫ヲ樹立
セラレテ居ルト云フコトハ、何ト致シマシテ
モ私共ノ諒解ニ苦シム所デアリマス(拍手)
無論本增稅案ガ臨時的ノモノデアルコト
ハ、特別法ノ名ノアルコトニ依ッテモ明白
デアリマス、又政府ノ御說明ニ依リマシテ
モ、本增稅ノ實施ハ、
年ト限定セラレテ居ルノデアリマスガ、併
ナガラ實際的ニ見テモ、長期戰化シタル事
變ノ性質上、何時事變ガ終了シタカト云フ
ガ如キ、ハッキリシタ時期ヲ劃スルト云フ
コトハ、彼ノ滿洲事變ガズル〓〓ベッタリ
式デ終了シタト同樣ニ、極メテ困難デアラ
ウト思フノデアリマス、況ヤ豫算總會ニ於
ケル質疑應答ノ內容カラ推論致シマシテ
モ、戰後ト雖モ尙ホ相當ノ駐支軍隊ヲ必要
トサレル今日ニ於テ、本增稅ノ實施ガ相當
恒久性ヲ帶ビテ居ルト云フコトハ、實ニ避
ケ難イ一種ノ宿命デアルト言ッテモ宜イノ
デアリマス、卽チ私ノ見ル所ニ依リマスレ
バ、斯ノ如ク長期戰化シタル今日デアル以
上、根本的、基本的財政上ノ對策ヲ樹立
シ、而シテ其完全ナル財政計畫ノ基礎ノ上
ニコソ、初メテ本增稅ノ如キモノハ盛ラナ
ケレバナラナイト信ズルノデアリマス、或
ハ此質問ニ對シマシテ、政府ハ此新事態ガ
不測ノ間ニ發生シタガ爲ニ、其根本的財
政上ノ對策ヲ樹立スベキ餘裕ガナカッタ
ト言ハルヽデアリマセウカ、實情ハ或ハ
其通リデアルカモ知レマセヌガ、然ラバ本
增稅案ハ萬已ムヲ得ヌモノトシテ、來ルベ
キ七十四議會ニ於キマシテ、改メテ財政上
ノ根本對策ヲ樹立シ、所謂新事態ニ副フ所
ノ稅制改革ヲ斷行スベキ御用意ガアルカ否
ヤト云フコトヲ、此場合明確ニ御答辯ヲ戴
キタイノデアリマス
更ニ御尋シタイコトハ、本增稅ノ本質ニ
付テデアリマス、今囘ノ增稅ハ酒、砂糖、
燐寸其他ノ物品、特別稅、通行稅、入場稅
ヲ合セマシテ九千三百万圓、外ニ煙草ノ値
上ニ依ル一千万圓ヲ加ヘテ、總計一億万圓
大體事變終了後一箇ノ所謂大衆課稅ヲ致シテ居ルノデアリマス、
而シテ又第三種所得稅ニ於テモ、從來ノ免
稅點千二百圓ヲ一躍千圓トシ、名實共ニ國
民大衆ノ非常時的分擔ヲ、相當苛烈ニ强化
サレテアルノデアリマス、固ヨリ日本國民
デアル以上ハ、此皇國未曾有ノ大國難ニ處
シテハ、是位ナ分擔ハ敢テ意トスルニ足ラ
ヌノデアル、國家ノ爲ナラバ、場合ニ依ッテ
ハ全財產ヲ擲ッテデモ敢テ悔マナイノデア
リマス、現ニ支那大陸ノ新戰場ニハ、勇烈
果敢ナル大衆ノ御子弟ガ、身命ヲ皇國ノ爲
ニ犧牲ニ供シ、尙且ツ忠烈日本ノ名譽ノ爲ニ
萬歲々々ヲ叫バレテ居ルヤウナ有樣デアリ
マス、併ナガラ同ジ陛下ノ赤子トシテ、一
視御同仁ノ御仁慈ニ遍ネカルベキ國民ノ中
ニ、階級ヲ區分シテ偏重スルガ如キ政治ヲ
行フコトハ、斷ジテ許サナイ所デアリマス、
卽チ本案ノ內容ニ依リマスレバ、最モ負擔
力アル金融資本ニ對シテハ、殆ド增稅ノ痕
跡ナキニ拘ラズ、獨リ大衆資本ニ對シテハ、
過重ノ負擔ヲ課セラレントスル傾向ガアル
ノデアリマス、具體的ニ申シマスレバ、金
融資本卽チ公社債竝ニ預金利子ナドノ第二
種所得ニ對シマシテハ、全然事件費ノ負擔
ヲ課ケナイ程度ノ增稅デアルニ拘ラズ、第
一種、第三種ノ所得、所謂產業所得乃至勤
勞所得ニ對シマシテハ、實ニ大膽ナル增徵
率ヲ賦課セントシツヽアルノデアリマス、
固ヨリ原案ニ依リマスレバ、第二種ト雖モ、
一應ハ一律ニ二割五分ノ增徵ヲ實施シテ居
ルカノ如ク見エマスルガ、之ヲ仔細ニ檢討
致シマスレバ、利率年四分ヲ超エザル國債
ニ付テハ增徵ヲ行ハズト規定シ、更ニ銀行
預金利子、貸付信託ノ利益率ニ付テハ、年
四分五厘ヲ超エザル地方債及ビ社債利子ニ
限リ、地方債利子ノ百分ノ六·五、其他百分
ノ八ト制限シ、此苛烈ナル增徵ノ及バザラ
ンコトニ努メテ居ラルヽヤウナ感ジガ致シ
マス、現在ニ於ケル我ガ起債利率ハ國債三
分五厘、社債四分三厘デアリマスガ故ニ、
此規定ニ依リマスルト、今囘此二割五分ノ
增徵ヲ受ケル者ハ、過去ノ所謂高利債ニ止
アリ、其總額モ極メテ微細ナモノデゴザイ
マス、隨テ國債ハ自然從來ノ百分ノ二ノ儘
デアリ、公社債ト預金利子所得ハ、大體ニ
於テ從來ノ百分ノ六·五、百分ノ八程度デアリ
マスカラ、現在ノ增稅、結城增稅ニ依ルモ
ノトノ比較ハ、僅ニ百分ノ〇·五ニ過ギナイ
ノデアリマス、斯ノ如ク一方ニハ百分ノ二
十五ノ增徵ヲ課スルニ寸毫モ假借ナキ政府
當局ガ、一方ニハ最モ負擔能力アル金融資
本ニ對シテハ、僅ニ百分ノ〇·五ヲ以テ見逃
サントサルヽガ如キハ、果シテ之ヲ以テ
政府ノ所謂負擔ノ均衡ヲ保チ得ラレタト
言ヒ得ラレルデアリマセウカ、實ニ擧國
一致ヲ紊スモノハ犠牲ノ不均衡-ニア
リト云フコトヲ知ラナケレバナラヌノデ
アリマス、是ハ數字ガ實證スル現實ノ
問題デアリマスガ、之ニ對スル賀屋大藏大
臣ノ責任アル御答辯ヲ私ハ承ッテ見タイト
思ヒマス
曩ニ申上ゲマシタ如ク、此現行稅制ノ不
備ニ付テハ、旣ニ每度ノ議會ニ於テ指摘セ
ラレツヽアル所デアルガ、更ニ私ヲシテ言
ハシムレバ、此富裕階級偏護ノ傾向ハ、有
ユル現行法ノ隅々ヲ通ジテ、最早救ハレザ
ル迄ニ行渡ッテ居ルノデアリマス、例ヘテ申
シマスレバ、第三種乃至第一種ノ所得ガ、
金融資本所得者タル第二種所得ニ對シテ著
シク公平ヲ缺イテ居ル如ク、更ニ各種所得
ノ部門ニ亙ッテモ、此傾向ハ著シク顯著デア
リマス、卑近ナ譬デハアルカ、假ニ營業收
益稅ノ一例ヲ捉ヘテ見マシテモ、第一種タ
ル法人收益ニ對シテハ、使用物ノ減價銷却
ヲ認メ、之ヲ控除スルノ恩典ヲ與ヘテ居ル
ニ拘ラズ、零細ナル第三種所得收益者ニ對
シテハ、其恩典サヘ與ヘテ居ナイノデアル、
又同ジク個人收益ニ於テモ、使用人ヲ雇傭
シ得ル階級ニハ、使用人ノ給料、食費其他
ヲ控除スルニ拘ラズ、使用人ヲ雇傭シ得ザ
ル、氣ノ毒ナル階級ニハ、如何ニ使用人ニ
準ズベキ家庭人ノ協力アルモ、何等之ヲ控
除スベキ恩典サヘ與ヘテ居ナイノデアル
(「ヒヤ〓〓」)是ハ單ナル營業收益稅ノ一例
ニ付テデアリマスガ、此弊風ハ獨リ是ノミ
ニ止マリマセヌ、有ユル現行法ノ部門ニ亙ッ
テ浸透ヲ致シテ居ルノデアリマス、國民ノ
不平ハ負擔ノ過重ノミニ依ッテ起ルモノデハ
斷ジテアリマセヌ、殊ニ今日ノ時局ニ於テ
尙更然リデアリマス、國家ガ必要トスレバ、
國民ハ全財產ハオロカ、身命ヲ擲ッテデモ敢
テ悔ナイノデアリマス、併ナガラ階級ヲ區
分シテ偏重スルガ始キ政治下ニアッテハ、假
令ソレガ如何ニ零細ナコトデアッテモ、許容
スル譯ニハ斷ジテ參ラナイノデアリマス、
共ニ歎キ、共ニ苦勞シ、共ニ喜ブ、此ノ政
治機構ニアッテ、初メテ國家總動員ノ國民的
結合ハ求メラレルノデアリマシテ、彼ノ極
寒零下ノ將兵一同ガ、一本ノ煙草デモ分ケ
喫ムト云フ、アノ麗ハシイ家庭的相互扶助
ノ精神コソ、實ニ非常時國民ノ心構ヘデナ
ケレバナラヌト私ハ信ズルノデアリマス、
然ルニモ拘リマセズ、政府ノ施設ハ動モス
レバ、此眞精神ヲ沒却シテ、富裕階級偏重
ニ傾キ、本增稅案ノ如キ驚クベキ不公平ヲ
暴露スルニ至ックト云フコトハ、特ニ時節柄
私ノ最モ遺憾ニ堪ヘナイ所デアリマス(拍手)
凡ソ租稅ノ要諦ハ上ニ厚ク下ニ薄シデナケ
レバナリマセヌ、持テル者ヨリ多ク取ッテ、
持タザル者ヨリ少ク取ル、是ハ原則デナケ
レバナリマセヌ、今囘ノ增稅案ニ致シマシ
テモ、金融資本擁護ノ立前ヲ一擲致シテ、
一律ニ增稅ヲ斷行致シマスレバ、本增稅案
額ニ依ル三億圓程度ノ財源ハ、何モ零細國
民ニ迄負擔ヲ分タズトモ、優ニ捻出ガ出來
ルト私ハ思フノデアリマス、殊ニ今次事變
ニ對スル世界諸國ノ言論界ハ、日本ノ經濟力
ヲ侮蔑シテ、如何ニモ長期戰ニ耐ヘザルモノ
ノ如ク吹聽シ、又相手國タル國民政府其モノ
ヲシテ斯ク信ゼシメテ居ルト云フコトハ、遺
憾ナガラ現實ノ問題デアリマス、固ヨリ此
謬見ガ如何ニ滑稽極マルモノデアルカト云
フコトハ、現實ニ於ケル日本ノ經濟的實力
ガ雄辯ニ立證スル所デアルガ、サリトテ本
增稅案ノ如ク、恰モ零細國民ノ犧牲ヲ迄動
員シナケレバ、非常時財源ノ捻出ガ困難デ
アルト云フガ如キ政策ヲ執ラレルト云フコ
トハ、日本ノ眞ノ經濟的實力ヲ世界ニ宣示
スル上ニ於テモ極メテ拙劣デハナイカト、
私ハ信ズルノデアリマス、又之ヲ實質的ニ
見テモ、事變ハ既ニ長期戰化シクル今日デ
アル、而モ其初步トモ言フベキ今日、今カ
ラ斯ノ如キ零細大衆ノ犠牲マデモ動員スル
ガ如キコトデハ、外人ダケデハアリマセヌ、
第一吾々自體、政府ノ財政計畫ヲ危ミタクナ
ルノデゴザイマス、ソレモ國家ノ財力ガ極度
ニ逼迫シテ居ルト云フコトデアリマスレバ兎
モ角モ、我ガ偉大ナル金融資本ハ尙ホ綽々ト
シテ不退轉ノ態勢ヲ保持致シテ居ルノデアル、
大藏大臣ハ世界ノ此逆宣傳ニ對シテハ、聲
ヲ嗄ラシロヲ酸ッパクシテ頻ニ其誤謬ヲ啓
蒙シ、長期抵抗恐ルヽニ足ラズト大見得ヲ
切ッテ居ラレルヤウデアルガ、果シテ然ラバ
本增稅ニ於テモ、斯ノ如キ不體裁ナル零細
國民ノ犠牲ヲ一擲シ、日本ノ財力ハマダノ
是等ノ犠牲ニ俟タズトモ、一部國民ノ負
擔ダケデ十二分ニ捻出ガ出來ルト云フコト
ヲ、實踐ニ於テ世界ニ宣示サレルト云フコ
トガ、日本ノ眞ノ實力ヲ顯現スル上ニ於テ
百ノ效果ガアラウト思フノデアル、之ニ對
スル大藏大臣ノ所信ヲ承リタイノデアリマ
ス、又今日ノ日本ノ實力カラ言ッテモ、長期
戰ニ對スル大衆國民ノ餘力ヲ將來ニ保持ス
ル上ニ於テモ、サウスルコトガ極メテ緊要
デアルト私ハ思フノデゴザイマス、以上各
項目ニ互ッテ私ハ大藏大臣ノ御答辯ヲ要求
致シタイノデアリマス
之ヲ今一度要約致シマスレバ、第一、政
府ノ事變新事態ニ對スル根本的財政計畫ノ
樹立デアリマス、第二、稅制改革ハ旣ニ第
七十一議會當初カラノ要望デアルガ、今日
尙ホ何等ノ爲スナキハ如何ナル理由ニ依ル
モノカ、若シ計畫アリトスレバ、來ルベキ
議會ニ斷行スル意思ガアルヤ否ヤ、第三、
本增稅案ハ其本質ニ付テ、金融資本偏護ノ
不公平ヲ暴露シテ居ルガ、果シテ之ヲ以テ
政府ノ負擔公平ヲ期シ得タリト言ヒ得ルヤ
否ヤ、第四、單ニ三億圓程度ノ捻出ダケデ
アルナラバ、第二種所得ニ對シテモ一律ニ
增徵スルコトニ依ッテ、第一種、第三種ノ增
徵率ハ著シク緩和サレルコトニナルト思フ
ガ如何、第五、日本ノ經濟力蔑視ニ對スル
世界ノ認識不足是正ノ上カラモ、國民大衆
ノ財力ヲ將來ニ殘ス爲ニモ、斯ノ如キ零細
國民ノ犠牲ヲ一擲スルコトハ極メテ緊要ナ
コトト思フガ、之ニ對スル政府當局ノ御所
見如何、私ハ大體以上ノ五項目ニ亙ッテ大藏
大臣ノ御親切ナ御答辯ヲ求メタイノデゴザ
イマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答申上ゲマス、
此戰時ノ財政政策ヲ根本的ニ立ツベシト云
フ御說デアリマスガ、御尤デアリマス、政
府ハ去ル臨時議會ニ提案ヲ致シマシテ御協
贊ヲ經マシタ戰時立法ヲ中心トシマシテ、
度々申上ゲマスルヤウナ、單純ニ財政政策
ノミナラズ、其遂行ヲ可能ナラシメル基本
ノ經濟政策ニ邁進ヲ致シテ居ルモノデアリ
マス
次ニ稅制整理ヲ何故ヤラナイカト云フ御
話デアリマスルガ、是ハ只今マデノ御質問
ニ度々御答申上ゲマシタ通リノ事情デアリ
マツ、來議會ニ必ズ出スカト云フ仰セデア
リマスガ、稅制整理ヲヤリマセヌ理由ハ、
只今申述ベマシタヤウナ所ニアルノデアリ
マスルカラ、事變ノ前途未ダ豫測出來マセ
ヌ際ニ、來議會ニハ必ズヤリマスト云フコ
トハ、是ハ只今ノ所申上ゲ兼ネルノデアリ
マス、併ナガラ出來ルダケ之ヲ早クヤル、
斯ウ云フ意思ハ十分ニ持ッテ居ルノデアリ
マス
次ニ金融資本ニ對シテ云々ノ御話デアリ
マス、是モ度々申上ゲタノデアリマスルガ、
第一ニ御考ヲ願ヒマスルコトハ、郵便貯金
乃至銀行貯金等ノ利子デアリマス、先刻モ
申上ゲタヤウニ、資本ノ蓄積ノ必要デアリ
マスル際ニ、我ガ生產能力ニ超エテ各種ノ
生產ヲ必要トスルヤウナ際ニハ、急激ニ低
金利ニ致スト云フコトハ、是ハ不可能デア
リマシテ、經濟ノ實勢ニ逆行スルモノデア
リマス、隨ヒマシテ只今ノ金利水準ヲ維持
シテ參リマス爲ニハ、多數ノ貯金者-金
融資本家ト申スヨリモ多數ノ銀行ノ預金者
等ニ、此上事實上ノ利息ヲ少ク致シマスル
コトハ、金融情勢ガ相當緩和シテ參リマシ
タ後ニ於テ致スベキ所デアルト思フノデア
リマス、隨テ預金ニモ課稅ヲ避ケタノデア
リマス、而シテ只今ノ預金利率甲種銀行三
分三厘ニ於テハ、稅込ミ利廻ノ三分六厘ノ
公債ヲ持チマスコトハ餘リ樂デハナイノデ
アリマス、寧ロ公債金利ヲ水準ト致シマシ
テ、銀行預金利子ノ如キハ、是ハ金融狀態
ガ緩和致セバ寧ロ引下ノ考ヲスル方ガ正當
デアルノデアリマス、其上ニ更ニ引下ヲ困
難ナラシムルヤウナ課税ヲ致スコトハ適當
デアリマセヌ、是ハ寧ロ國民大衆ノ貯蓄ヲ
今後奬勵致シマス際、多數ノ國民ニ對スル
貯蓄ノ奬勵カラ考ヘマシテモ、適當デナイ
ノデアリマス、而シテ斯ノ如ク致シマスル
コトハ、其貯蓄ノ奬勵ヲシテ產業資金竝ニ
公債ノ消化ニ向ハセルノデアリマス、此產
業資金ノ充實、公債ノ消化ガ出來マセヌ時
ニハ、其處ニハ此事變ノ目的ヲ達スル爲ニ
非常ナル障碍ガ起ルノミナラズ、經濟界ニ
惡影響ヲ與ヘルノデアリマス、庶民ノ生活
其モノニモ惡影響ヲ與ヘルコトニナルノデ
アリマス、此社債ヤ預金ノ利子、公債ノ利
子ノ低利ノモノニ付キマシテ引上ゲマセヌ
コトハ、金融資本ノ擁護ニアラズシテ、時
局ニ必要ナル對策トシテ已ムヲ得ナイ所デ
アルノデアリマス
次ニ此時局ニ對シテ應分ノ負擔ヲスルコ
トハ當然デアリ、而モ其負擔タルヤ下ニ薄
ク上ニ厚ク、負擔力ニ於テ公平ナラザルベ
カラズ、此御說ハ全然御同感デアリマス、
政府ハ其御趣旨ニ副ヒマスルヤウ、成ベク
下ニ薄ク-所得ノ少キ者ニ薄ク、所得ノ
多キ者ニ厚イヤウニ臨時利得稅其他物品稅
ニ於テモ、工夫ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、尙ホ此稅制ハ直接稅ニ於テ二億圓、奢
侈稅的ナモノニ於テ六千餘万圓、間接稅的
ノモノニ於テ三千餘万圓デアリマスルコト
ハ、從來ノ我國ノ增稅等ニ比較致シマシテ
モ、擔稅力ヲ中心トスル觀念ハ深イト申シ
マシテモ決シテ劣レルモノデハナイト考ヘ
ルノデアリマス、尙ホ斯ノ如キ增稅ヲ致ス
コトハ少額所得者ニモ及ブノデアッテ、日本
ノ經濟力ヲ寧ロ低ク「エスチメート」セシム
ルモノデハナイカト云フ御意見デアリマス
ガ、實際技術上ノコトハ總テ物ガ細カイモノ
デアリマス、統制ノ如キモノモ非常ニ細カ
ク所得稅一本ヲ中心ニ立テ、ソレヲ直接間
接補完致シマスル爲ニ色々ノ補完稅トカ、
消費稅トカノ筋道ヲ立テルノデアリマス、
是ハ財政ノ專門家カラ見マシタラ、是ガ故
ニ日本ノ經濟力ハ憐ムベキモノデアルトカ、
或ハ弱イモノデアルトカ云フ考ハ全然起ル
心配ハナイト存ジテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=23
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024・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 山川賴三郞君
〔山川賴三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=24
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025・山川頼三郎
○山川賴三郞君 私ハ支那事變特別稅法案
ニ付キマシテ、大藏大臣ニ御伺申上ゲタイ
ノデゴザイマス、私ノ御尋シマスルコト
ハ、今ニナリマスト、大方モウ皆サンニ依ッ
テ言盡サレマシテ、僅カシカ殘ッテ居リマセ
ヌ、重複セヌヤウニト思ッテ居リマスケレド
モ、ヒヨットシタラ少シ位重複スルカモ存ジ
マセヌガ、ドウゾ御許ヲ願ヒタイト思ヒマス
卽チ支那事變ノ爲ニ支出ヲ要シマスル
數十億圓ノ軍事費調達ニ付キマシテノ大藏
大臣ノ御苦心ニハ、深ク感謝スル者デゴザ
イマスガ、玆ニ御尋致シタイノハ、大藏大
臣ハ常ニ我國ノ財力ガ相當ノ實力ヲ持ッテ
居ルト言ハレテ居リマスノニ、三億圓ノ金
ヲ大層ナ手續ヲシテ、租稅增徵ニ俟タナケ
レバナラヌカト云フコトヲ御尋シタイノデ
アリマス、數十億圓ノ歲計カラ見マシタナ
ラバ、三億圓ハ五十步百步デアリマス、之
ヲ增稅ニ俟タナイデモ、國家財政上ノ信用
ハ何等影響ガナイト思フノデアリマス、サ
ウシマシテ之ヲ增徵スル爲ニハ、只今上程
ニナッテ居リマスル法案ノ通リ、各階級ニ
亙ッテ殆ド打擊的ナ課稅デアリマス、抑モ政
府ノ增稅ノヤリ方ヲ察知シマスルノニ、曩
ノ第七十一議會ノ增稅一億圓、ソレカラ軈
テ來ルベキ北支事件ノ公債二十五億圓餘ヲ
御見込ニナッテ、其利子額ニ相當スル一億
圓、斯ウ云フノデハナカッタデアリマセウ
カ、今囘ノ三億圓ノ中カラ前ノ一億圓ヲ引
イテ、アト二億圓ノ增稅モ、亦一般會計竝
ニ事件費公債發行額ノ五十餘億圓ヲ見込ン
デノ利子額ニ該當スルノデアリマス、卽チ
政府ハ非常時局ニ際シテ、セメテ公債ノ利
子ダケナリトモ增稅ニ依ラントスルノハ、是
ハ舊式ノ財政理論カラ出發シタモノト解セラ
ルヽノデアリマス、サウシマシテ斯ノ如キ腰ダ
メ的デ、徹底セル理論的目標ヲ有セザル增稅
ヲ行ッテ、益〓國民負擔ノ不均衡ヲ招來シ、殊ニ
戰爭ニ依ッテ恩惠ヲ受ケザル農山漁村地方
財政ノ負擔ヲ極度ニ增加シ、加之斯ル方針
ヲ執リツヽ行ク時ハ、次々ニ第二、第三、
第四ノ增稅モ已ムヲ得ザルコトニナッテ、我
國租稅制度ヲ紊亂セシムルノ結果トナルコ
トハ、火ヲ睹ルヨリモ明デアルト思フノデ
アリマス、故ニ戰時中ハ成ベク財界ニハ動
搖ヲ與ヘナイヤウニシ、不足額ノ總テヲ公
債ニ依ッテ支辨シテ置イテ、成ベク速ニ稅制
ノ根本整理ヲ斷行シ、是ト同時ニ增稅ヲ行
フコトガ合法的ナヤリ方デアラウト私ハ思
惟スルノデアリマス、例ヘバ國民ノ負擔力
ガ多少殘ッテ居ルニシタ所ガ、餘裕ガアルニ
シタ所ガ、之ヲ皆一時ニ取上ゲテシマハナ
クテモ、少シハ殘シテ置クコトガ信用ヲ高
メル所以デアラウト信ズルノデアリマス、
本案所得稅又ハ相續稅ノ如キ隨分苛稅ト思
ヒマスガ、上層階級ハ之ヲ忍ビ得ルデアリ
マセウガ、中層、下層ハ中々重稅デアリマス
シテ、是ガ實施ノ上ハ尠カラザル影響ノアル
コトト信ズルノデアリマス、(拍手)何ガ故
ニ斯ル危險ヲ冒シテマデ、一部增稅ノ方途
ニ出デラレマシタカヲ御伺致ス次第デアリ
マス
次ニハ所得稅ノ最低額ヲ千圓ニ低下セラ
レマシタ理由ニ付キマシテ御尋シタイノデ
アリマス、近時國庫ハ軍需品又ハ重工業方
面ニ厖大ナル金ヲ支拂ハレテ居ルカラ、國
民一般ニ相當經濟ニ餘裕ガ出來テ居ルト御
心得ニナッテ、所得稅ノ最低額ヲ千圓ニマデ
引下ゲラレタデアリマセウガ、都市ノ方面
ニハ十分擔稅力ガアルト存ジマスガ、私ハ
窮乏セル農村ノ實情ニ照シマシテ、其影響
ヲ憂フルノデアリマス、時局ノ爲ニ農村ハ
財政上何等好イ影響ヲ受ケタコトハナイ、
ノミナラズ出征兵ノ應召、又ハ馬匹ノ徵發
等ニ依ッテ、益〓其度ヲ高メツヽアル貧弱
ナル狀態ニ置カレテ居ルコトハ御承知ノコ
トト思ヒマス、然ルニ僅々年收千圓ノ勤勞
所得者ニマデ課稅スルコトハ、貨幣價値低
下ノ今日デハ、日露戰爭當時カラ比べルト
五百圓以下ニ相當シマシテ、農村納稅者ノ
數ヲ激增シ、現在ノ數倍ニ上ルコトハ疑ヲ
容レザル所デアリマシテ、是ガ爲ニ中產階
級ヲ窮迫沒落セシメ、國民中堅層ヲ失ヒ、
思想上洵ニ憂慮ニ堪ヘザルモノガアリ、確
ニ是ハ大衆課稅デアリトシテ、所得稅ノ性
質ニ背クカト思ヒマスルカラ、最低ヲ千二
百圓ニ据置クカ、又ハ農村關係ノ所得ニ對
シテハ、特別ノ考慮ヲ拂ッテ免除規定等ヲ
設クル必要アリト思ヒマスルガ、之ニ對シ
テ大臣ノ御答辯ヲ願ヒマス
次ニ御伺シタイノハ山林所得對加算法ニ
付テデアリマス、我國ノ山林面積ハ總面積
ノ六割以上ヲ占メテ、產業資源ニ重大ナル
關係ヲ有スルコトハ、今更申ス迄モナイコ
トデアリマス、然ルニ從來ヨリ兎角山ノコ
トヲ閑却スル傾ガアリマス、山ノ租稅ニ付
テ見マシテモ、不合理ナ取扱ノ頗ル多イノ
ハ遺憾ニ存ズルガ、玆ニ一二其事ヲ申上ゲ
テ見マスルニ、所得稅法第二十三條但書ニ、
所得ニ付テ其所得ヲ五分シタルト云フ文字
ガアリマス、又稅額ハ金額ニ五倍シタ
ルモノヲ以テト云フ五ト云フ字ガアリ
そく、モウ一ツ詳シク申上ゲマスト、
第二十三條但書中同法第十四條第一項第
二ノ所得ニ付テハ「其ノ所得ヲ五分シタル
金額ニ對シ此ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル
金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ其ノ稅額トス」
此五分ヲ二十分ニ、五倍ヲ二十倍ニ直シテ
戴キタイト云フ件デアリマス、其理由トシ
テハ山林ノ所得ト云ヒマスモノハ雜木林ハ
二十年目位、植林ハ四十年カラ六十年目ニ
伐採スルノデスカラ、少ク共二十分シテ二
十倍スルノガ合法ニ近イト信ズルノデアリ
マス、森林業者ト云フモノハ愛林觀念カラ
國家百年ノ大計ヲ圖ッテ居ラレルノデアリ
マスガ、純眞ナル農民ガ長年月ニ亙ッテ蓄
積シテ來タ勞働所得ニ對シテ課稅スルト云
フコトハ、抑〓不可ナノデアルト思フノデア
リマス(拍手)總テ數十年目ニ收穫シタル果
實デアル、數十年掛ッテ出來上ッタ所ノ果實
デアルト云フコトヲ認メテ、合法的ナ算出
法ニ改メラルヽコトガ緊要ナリト思フノデ
アリマスルガ、之ニ對スル大藏大臣ノ御所
見ヲ承リタイノデアリマス
次ニハ山林所得ノ控除ニ付テデアリマ
ス、山ノ人間ダカラ山ノコトバカリ申上ゲ
マスガ、全國山林會聯合會ノ調査ニ依リマ
スルト、各府縣又ハ稅務署管內每ニ色々ナ
取扱コナッテ、其控除率ガ違フノデアリマ
ス、控除率ハ林木ノ樹種ヤ樹齡ヤ或ハ主伐
間伐其他ニ依ッテ控除率ヲ定メラレテ居ル
ノデアリマスルガ、其實例ニ依ッテ見マスル
ト、用材主伐ニ付テ全國的ニ見マスルト、
同ジ物デ最高ガ八割カラ最低ガ一割五分マ
デノ差ガアル、薪炭林ニハ最高額ガ九割、
最低ガ一割マデアルノデアリマス、竹林ガ
最高ガ九割カラ最低ガ一割マデアルノデア
リマス、又府縣ニ依ッテ非常ナ相違ガ出來
テ居ルノデアリマス、千圓ニ賣ッタ山代ノ
中デ九百圓ヲ引イタ百圓ニ稅金ヲ課ケル處
ト千圓ノ山代ノ中デ百圓引イテ九百圓ニ
稅金ヲ課ケル處トガ、日本ノ國ノ中ニ同ジ
物ニアルノデアリマス(拍手)コンナ馬鹿ナ
稅ノ課ケ方ガアルモノデアリマスカ、私ハ
租稅ト云フモノハ大抵畫一的ニ行ハレテ居
ルモノト思ッテ居ッタノデアリマスガ、以上
ノ實際ヲ見マシテ驚イタノデアリマス、斯
ノ如キ不均衡ハ是非是正スベキデアリ、多
年蓄積シテ來タ勤勞所得デアルカラ、高率
ナ控除ヲ認メテ全國的ニ統一ヲ圖ル要アル
コトヲ認メルノデアリマス、之ニ對シテ御
答辯ヲ願ヒマス
マダ仰山アリマスルケレドモ、モウ拔
キマス、御辛抱ヲ願ウテ居ルノニ濟ミマ
セヌカラ、是モ拔キマス(「遠慮スルナ」ト
呼フ者アリ)最後ニモウ一ツダケ伺ヒタ
イ、ドウゾ御辛抱ヲ願ヒマス、最後ニハ
臨時財政補給金ノコトデアリマスガ、是
ハ直接デハアリマセヌ、關聯事項デアリマ
ス、此事ハモウ旣ニ各處ニ於テ各議員カラ
屢〓御尋ニナリ、ソレ〓〓御答辯ニナッテ居
ルコトデアリマスケレドモ、私ハ一寸變ッタ
方カラ尋ネテ見タイノデアリマス、中央集
權ノ惰勢ハ年々財力ガ中央ニ集中スルカ
ラ、二三年目ニハ何等カノ方法ニ依ッテ之
ヲ地方ニ還元シナケレバ農村ハ立行カヌノ
デアリマス(拍手)是ハ農村ノ生產物ハ買手
ニ依ッテ相場ガ決メラレルノデアリマスガ、
農村ノ買フ品物ハ賣ル人ニ依ッテ決メラレル
ノデアリマス、此矛盾セル所ノ古來カラノ習
慣ガ存續スル限リ、農村ハ立行カヌコトハ
決ッテ居リマスルカラ、中央カラセングリ〓〓
金ヲ返シテ貰ハナケレバ、農村ハイカヌヤ
ウニナッテシマフノデアリマス(拍手)從來救
濟事業デアルトカ、或ハ七十二議會ノ時デ
モ負債整理法トカ、其他色々ノ農村ヲ助ケ
ル所ノ法ヲ設ケテ、サウシテ還元ハシテ來
ル、何モ知ラズニ還元シテ來ルケレドモ、
原理ハ此法ニ依ッテ來ルノデアリマスガ、併
シ餘リ結構ナ法ハナカッタガ、完全ナル還元
法トシテハ昨年度カラ行ハレタ臨時財政補
給金制度デアリマス、是ハ洵ニ完全ナル還
元法デアルト私共モ喜ンデ居ルノデアリマ
ス、十三年度ニ於テモ前年度同樣一億圓ヲ
交付セラルヽコトニナッテ居リマスルガ、其
後町村ニ於テハ新ニ歲出ガ增加シ、又歲入
ノ缺陷ガ出來ル爲ニ、五千五百万圓バカリ
ノ不足ヲ生ズルコトニナッテ居リマスノデ、
何トカ還元法ヲ付ケテ貰ハナケレバナラヌ
ト云フコトニナッテ來タノデアリマス(拍手)
更ニ多數ノ應召兵ノ出發ニ際シマシテ、各
家庭ニ於テ費消シタル所ノ金ハ、少クモ一
億五千万圓ハ要ッテ居ルノデアリマス、農村
ノ經濟ハソレガ爲ニ非常ニ窮迫シテ居ル實
情ナノデアリマスカラ、進化ハ死滅、衰へ
行ク都市體力ノ補充ハ農村デアリマス、農
村ハ中堅思想ノ涵養地デアリマス、數多軍
人ノ供用地デアリマス(拍手)特ニ今次ノ事
變ニ際シマシテモ、都市在住者ガ其〓里カ
ラ出征シタ者ガ非常ニ多イノデアリマス、
眞逆ノ時ニハ皆〓里ニ歸ッテ來ルノデアリ
マリー戰死者ノ墳墓地デアリマス、傷痍軍
人ノ安住地デアリマス、遺家族ノ安住地ナ
ルコト等ヲ思ヒマスルナラバ單ニ農村問
題ニ止マルノデハナイ(拍手)廣義國防ノ上
カラモ、長期持久戰ノ上カラモ、農村ヲ救
フノハ現下ノ最大要務デアルコトヲ信ズル
者デアリマス(拍手)以上ノ理由ニ依リマシ
テ町村ノ財政缺陷補塡ノ爲ニ、更ニ五千万
圓增額交付ヲシテ、農村ヲ救濟セラレンコ
トヲ希望シテ已マナイ者デアリマス(拍手)
何卒內閣諸公、分ケテ大藏大臣ニ格別ノ御
考慮ヲ煩シタイノデゴザイマス、以上數點
ニ亙ッテ御答辯ヲ御願致シマス(拍手)
〔國務大臣賀屋興宜君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=25
-
026・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御答申上ゲマス、
今囘ノ增稅ノ理由ニ付キマシテハ國民銃後
ノ御奉公ヲ主トシ、兼ネテ財政經濟上ノ理
由ニ基キマスルコトハ申上ゲタ通リデアリ
マス、尙ホ稅額ハ公債ノ利子デアルカドウ
カト云フ御尋デアリマスルガ、事變デ增加
致シマシタ經常費ヲ經常收入デ賄フコトハ、
極メテ適切ト存ジマスルガ、未ダ事變ノ終
局ヲ見マセヌノデ、公債ノ利子ニ該當スル
ヤ否ヤ、是ハ分リ兼ネル次第デアリマス、
稅制ノ整理ニ付キマシテハ御說ノ如ク成ベ
ク是ハ早ク致シタイト思ッテ居リマス、戰後
一時ニ增稅ヲ致シマスルコトハ、是ハ却テ
經濟ノ實情ニ副ハナイ點モアリマスルノデ、
其點カラモ今囘ノ增稅ノ御協賛ヲ得タイト
思ッテ居ルノデアリマス
國民ニ負擔力ヲ殘セト云フ仰セ、御尤デ
アリマス、成ベク此點ニモ氣ヲ付ケテ參リ
タイト思ヒマス、尙ホ千圓ニ所得稅ノ免稅
點ヲ引下ゲマシタノハ、國民ノ懷ニ餘裕ガ
アリト申スヨリモ、總テノ國民ニ銃後ノ御
奉公ガ、成ベク廣ク行渡ルヤウニト云フ觀
點カラ出發致シタモノデアリマス、山林ノ
所得ニ付キマシテハ、御說ノ如ク現行法ニ
於キマシテモ、之ヲ相當緩和致ス工夫ハ講
ジテアリ、今囘ノ增徵率モ他ノモノヨリハ、
山林所得ハ結論ニ於テ緩和サレルコトニ相
成ッテ居ルト思フノデアリマス、尙ホ所得ノ
控除率ガ非常ニ差異ガアルト云フ御話デア
リマスルガ、是ハ山林ノ位置、運搬ノ狀況、
植林樹種等色々ノ事情ガアリマスノデ、ソ
レゾレ區分ガアルノデアリマス、尙ホ此點
ニ付キマシテハ詳細ナコトハ、或ハ委員會
ニ於テ御質問ガアリマスレバ申上ゲタ方ガ
適當ト思ヒマス
臨時財政調整補給金ニ付キマシテハ、極
メテ農村ノ爲ニ御熱心ナル御質問デアリマ
シタ、政府モ是ガ增額ニ付テ只今考慮中デ
アルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=26
-
027・山川頼三郎
○山川賴三郞君 只今ノ御答辯ハ甚ダ簡單
明瞭ノヤウニ思ヒマシタガ、是ハ又委員會
デ十分伺フコトニシマシテ、本日ハ私ノ質
問ハ是デ打切ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=27
-
028・服部崎市
○服部崎市君 四案ニ對スル殘餘ノ質疑ハ
他ノ日程ト共ニ延期シ、次會ニ之ヲ繼續ス
ルコトトシ、本日ハ是ニテ散會セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=28
-
029・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君提出ノ動議
〔矢野庄太郞君演說參照〕
所得
店*米酒顧問日本日山口山好米酒11事
+
2,7000円33段880
+第一四一七一800円
所丼+長寿輸熊本
会有3,5000円33526
回2,6000円G31.85
計3,2000円いくすTOI
回2,1600円6分114.22
今、土地ト公債ト社債ニ付キ同一所得
額ノ場合、卽チ公債ニヨル所得年一千三
百圓、土地ニヨル所得モ、社債ニヨル所
得モ同ジク一千三百圓トシ、コノ場合何
レガ稅負擔ガ重イカ、又輕イカヲ比較シ
テミルニ、
土地ニ於テハ年一千三百圓ノ所得ヲ得
ルモノハ、米價三十三圓、一段一石二斗
ノ年貢トスレバ約三町三段、一段八百圓
トシテ約二万七千圓ノ所有者デアル、シ
カシ土地所有者ニ對スル地租ノ賦課ハ賃
貸價格ニ對シテデアルカラ一千三百圓
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=29
-
030・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時五分散會
1,300回
角印証書計輪200
(附加稅共)(附加稅共)書藍
8818.44106.44COH
斗書池袋+편學発証
+1四益
520TO6.〇
48.6826107.538.2
520USANa0
46.1332.50192.85〓AO
ヲ、本年度カラ實施スル賃貸價格基準米
價一石二十二圓ニ改訂スルト八百八十圓
トナリ、地租ハコレニ對シテ課セラレ
ル、而シテ地租ノ稅率ハ百分ノ三·八、
附加稅ハ本年度ハ本稅ノ約一倍八分デア
ルカラ、合計稅率ハ約一〇パーセントト
ナリ、稅額ハ約八十八圓トナル次ニ所
得稅デアルガ、コレハ實際ノ所得一千三
百圓ニ對シテ課セラレ、附加稅共デ十八
圓地租ト合計デ百六圓トナル
次ニ公債ニ於テハ、利率三分五厘(五
分)ノモノヲ例ニトルト、一千三百圓ノ
元本ハ三万五千圓(二万六千圓)デアル
而シテ第二種所得稅ハ二%(二、五%)、
稅額二十六圓(三十一圓)、資本利子稅ハ
四%デ五十二圓(四十八圓)、利子配當特
別稅ハ(二十六圓)國債ノ免稅點ハ四分以
上故無稅トナリ、サレバ以上ノ合計ハ七
十八圓(百七圓)デアル
社債ハ四分三厘(六分)トスレバ元本三
万二百圓(二万一千六百圓)、而シテ第二
種所得稅ノ稅率ハ臨時增徴分、事變特別
稅增徵分ヲ加ヘルト百分ノ八(九·八一)、
稅額百四圓(百十四圓)、資本利子稅ハ五
十二圓(四十六圓)、利子配當特別稅(三)
十二圓)ノ免稅點ハ四分五厘故超過分ハ
ナク、以上ノ合計ハ百五十六圓(百九十
二圓)トナル
以上ノ例ニヨルト社債ガ一番重ク、次
ニ土地、公債ト云フ順ニナッテハヰルガ、
シカシ社債ヲ持ツモノハ、大部分都會ニ
住ミ、而モ多ク金融機關、保險會社、又
ハ團體等デアル、シカルニ土地ヲ持ツモ
ノハ殆ド田舍ニ住ンデ居リ、大部分ハ貧
樣式ノ例
稅種本稅率
基本法臨時增徵法事變法合計
弱ナ中小地主デアル、サレバ土地所有者
ハ、コノ上ニ重イ戶數割ヲ賦課サレルノ
デ、結局實際上ハ未ダ土地所有者ノ方ガ
證劵所有者ヨリ重課サレテ居ルノデア
ル
今或ル特定ノ法人又ハ個人ガ自己ノ稅
金ヲ幾何納メルカヲ算定スル場合、現在
ノ稅法ハ基本稅法ニ加へテ臨時增徵法ガ
アリ、支那事變特別稅法(案)ガアリ、非常
ニ複雜ニシテ容易ニ計算シ得ナイ、シカ
シ政府トシテモ今直チニ稅法ヲ整理スル
事ハ困難ナ事デアラウ、サレバ此ノ際議
會ヲ通ジテ一般國民ノ租稅計算ニ便スル
爲メ、簡單ニシテ便利ナル稅率一覽表又
ハ和稅計算表(例ヘバ第一種所得稅ニ於テ
ハ基本法、臨時增徴法、事變法ヲ加ヘテ本
稅ノ稅率ハ幾何、尙コレニ、十二年度豫
算ニヨッテ實際上ノ附加稅率、-交附金
配分ニヨル減少ヲモ含メテ-又ハ制限
率ヲ加ヘタルモノノ如キヲ稅種別ニ、)ヲ
發表サレ度シ
附加稅率本稅附加摘要
稅合計
(制限率免稅點控
府縣市町村合計除率其他計算上必要
ナル事項ヲ計載)
衆議院議事速記錄第四號中正誤
三九頁三段一二行ノ次ニ左ノ五行ヲ加フ
一去一月二十二日部長補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第五部
部長賴母木桂吉君(部長飯塚春太郞君補
闕
衆議院議事速記錄第十二號中
正誤
頁段行誤正
三二四一三三割二分二割二分
同同同苦吉利英吉利
衆議院議事速記錄第十三號中
正誤
頁段行誤正
二三八三三港灣修築港灣漁港修築
二五七二三四-三五單ナルゴ單ナル「ブロ
レタリヤ」レタリヤ」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X01419380217&spkNum=30
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