1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十三年三月三日(木曜日)
午後一時四十一分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第二十號
昭和十三年三月三日
午後一時開議
第一 昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(輸出入品等に關する臨時措置に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 日滿司法事務共助法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 民事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 外國裁判所の囑託に因る共助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 職業紹介法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 商業組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 昭和十二年法律第八十四號中改正法律案(支那事變に關する臨時軍事費支辨の爲公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會
第九 關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 陸上交通事業調整法案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━
〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
(第一號)昭和十三年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)昭和十三年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
昭和十二年法律第八十四號中改正法律案(支那事變に關する臨時軍事費支辨の爲公債發行に關する件)
關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する法律案
昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案
陸上交通事業調整法案
(以上三月二日提出)
一昨二日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
商業組合法中改正法律案
一昨二日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
國民健康保險法案
一議員より提出せられたる議案左の如し
支那事變に際し召集中の者の選擧權及被選擧權等に關する法律案
提出者
櫻内幸雄君 平野光雄君
末松偕一郎君 手代木隆吉君
眞鍋儀十君 多田滿長君
松尾四郎君 武知勇記君
菊池良一君 松田竹千代君
平川松太郎君 川島正次郎君
松村光三君 東武君
熊谷直太君 武田徳三郎君
牧野良三君 芦田均君
西村茂生君 紅露昭君
井上知治君 原口初太郎君
馬事振興に關する建議案
提出者
小笠原八十美君 小山田義孝君
岡田喜久治君 野溝勝君
土田莊助君
野澤名入間鐵道敷設に關する建議案
提出者 林平馬君
只見より古町館岩を經て田島に至る鐵道速成に關する建議案
提出者 林平馬君
須賀川長沼間鐵道速成に關する建議案
提出者 林平馬君
川口只見間鐵道速成に關する建議案
提出者 林平馬君
野岩羽鐵道速成に關する建議案
提出者 林平馬君
櫻井奧津間鐵道速成に關する建議案
提出者 松尾四郎君
沖繩縣航路國營に關する建議案
提出者
盛島明長君 崎山嗣朝君
仲井間宗一君 漢那憲和君
沖繩縣に無水アルコール工場設置に關する建議案
提出者
盛島明長君 仲井間宗一君
崎山嗣朝君 漢那憲和君
沖繩縣宮古郡に飛行場設置に關する建議案
提出者
盛島明長君 崎山嗣朝君
仲井間宗一君 漢那憲和君
省線西成線高架改築竝電化促進に關する建議案
提出者
塚本重藏君 井上良次君
内藤正剛君 上田孝吉君
養蠶家竝中小蠶絲業者の業務安定に關する建議案
提出者
野溝勝君 須永好君
山崎釼二君 三宅正一君
生絲國内消費奬勵に關する建議案
提出者
須永好君 野溝勝君
山崎釼二君 三宅正一君
(以上三月一日提出)
千葉金澤長崎三醫科大學附屬藥學專門部竝富山藥學專門學校の大學昇格に關する建議案
提出者
土屋清三郎君 中村不二男君
篠原陸朗君 寺島權藏君
喜多壯一郎君 清水留三郎君
自家用濁酒釀造許可に關する建議案
提出者 土屋清三郎君
(以上三月二日提出)
一去一日政府より昭和十一年度國有財産増減總計算書及之に添附すべき各省の同増減報告書竝會計檢査院檢査報告を受領せり
一去一日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第一部選出
豫算委員 片山哲君(三輪壽壯君補闕)
第五部選出
豫算委員 川崎克君(古屋慶隆君補闕)
第五部選出
豫算委員 松田喜三郎君(作田高太郎君補闕)
第九部選出
豫算委員 鈴木文治君(須永好君補闕)
一去一日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
豫算委員
理事 片山哲君(理事三輪壽壯君二月二十八日委員辭任に付其補闕)
一去一日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出豫算委員 田万清臣君
第五部選出豫算委員 中井一夫君
第六部選出豫算委員 牧山耕藏君
一去一日議長に於て選定したる委員左の如し
樺太地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出)外一件委員
鈴木憲太郎君 木原七郎君
牧山耕藏君 木檜三四郎君
松尾四郎君 堀内良平君
仲西三良君 沖島鎌三君
葉梨新五郎君 小山田義孝君
星一君 塩川正藏君
立川平君 小野廉君
林路一君 赤松克麿君
田原春次君 中原謹司君
一去一日に於ける特別委員の異動左の如し
商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外二件委員
辭任 松尾孝之君 補闕 金澤正雄君
辭任 立川平君 補闕 江原三郎君
重要鑛物増産法案(政府提出)外一件委員
辭任 原玉重君 補闕 長野長廣君
社會事業法案(政府提出)外二件委員
辭任 出井兵吉君 補闕 松尾孝之君
一昨二日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
豫算委員 佐竹晴記君(田万清臣君補闕)
第五部選出
豫算委員 原口初太郎君(中井一夫君補闕)
第六部選出
豫算委員 高橋壽太郎君(牧山耕藏君補闕)
一昨二日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出豫算委員 小川郷太郎君
一昨二日委員長及理事互選の結果左の如し
樺太地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出)外一件委員
委員長 沖島鎌三君
理事
鈴木憲太郎君 木原七郎君
葉梨新五郎君 小山田義孝君
一昨二日に於ける特別委員の異動左の如し
不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出)外四件委員
辭任 山崎釼二君 補闕 河合義一君
臨時租税増徴法中改正法律案(政府提出)外七件委員
辭任 川崎末五郎君 補闕 愛野時一郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=0
-
001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、第一部選出決算委員
西方利馬君、右常任委員ノ辭任申出ガアリマ
ス、之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=1
-
002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可スルニ決シマジタ、其部ノ諸
君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ、御屆アランコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=2
-
003・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際河上丈太郞君外一名
提出、帝都治安維持ニ關スル緊急質問ヲ許
可セラレンコトヲ望ミマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=3
-
004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=4
-
005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス-政府ハ此議事日程變更ニ同意セラレ
マシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、帝
都治安維持ニ關スル緊急質問ヲ許可致シマ
ス-提出者河上丈太郞君
帝都治安維持ニ關スル緊急質問
(河上丈太郞君外一名提出)
〔河上丈太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=5
-
006・河上丈太郎
○河上丈太郞君 本日午前八時半頃、社會
大衆黨執行委員長安部磯雄先生ノ私宅ヲ數
名ノ壯漢ガ訪問ヲ致シマシタ、安部委員長
ハ年來ノ生活改善ノ理想カラ致シマシテ、
在來住ハレタ邸宅ヲ去ッテ、最近「アパート」
ニ簡易生活ヲシテ居ルノデアリマス、七十
三歲ノ先生ガ老夫人トサウ云フ簡易生活ヲ
シテ居ル所ニ、數名ノ壯漢ガ今日訪問ヲシ
テ面會ヲ求メラレマシタ、何時デモ奧樣ガ
出ラレテ、一應其訪問者ノ氏名ヲ尋ネテ、
其後ニ先生ガ面會サルヽ習慣ニナッテ居リマ
シタガ、今朝奥樣ガ炊事ノ都合デ手ガ離レ
ラレナイノデ、安部先生ガ直接應接間マデ
出タノデアリマス、壯漢ガ四名ダト傳ヘラ
レテ居リマス、其中ノ一名ガ先生ガ「ドア」
ヲ開ケテ應接間ノ入口ニ出ルヤ否ヤ、一 一〇
モ發セズシテ、四名ノ壯漢ノ中ノ一名ガ、
隱シテ居リマシタ所ノ「ステッキ」ヲ振上ゲ、
先生ノ眉間ヲ打ッテ、鮮血淋漓タルモノガ
アッタノデアリマス、「ステッキ」ガ折レマシ
タ、壯漢等ハ先生ニ暴行ヲ加ヘルヤ否ヤ、矢
庭ニ逃ゲテシマヒマシテ、姿ヲ隱シテシマッタ
ノデアリマス、事件ノ經過ハ斯ノ如クデ
アリマス、醫者ノ診察ニ依リマスルト、眉間
ニ五糎ノ打撲裂傷ヲ受ケ、二週間ノ靜養ヲ要
スルト云フコトデアリマス、安部磯雄先生
ガドウ云フ人デアルト云フコトハ、日本國
民ドナタモ御承知デアルト私ハ信ジテ居ル
(拍手)安部先生ハ議會政治家トシテハ、其
年月ハ長クハゴザイマセヌケレドモ、安部
先生ガ日本ノ衆議院ニ存在スルコトハ、我
ガ國民ノ名譽デアルト多クノ人ハ信ジテ居
ルノデアリマス(拍手)單ニ日本ノミナラズ、
先生ハ議會政治家トシテ多クノ尊敬ヲ受ケ
テ居ラレル、其先生ニ向ッテ、此暴行ガアッ
タト云フ事實ニ付テ、帝都ノ治安維持ニ關
シマスル內務大臣ノ責任ヲ御尋致シタイト
考ヘルノデアリマス、內務大臣ハ此事實ヲ
ドウ見ラレルカ、內務大臣ハ此事實ヲドウ考
ヘラレルカ、內務大臣ハ率直ニ其考ナリ、
其責任ナリヲ、玆ニ斷言ヲシテ戴キタイト
思フノデアリマス
先般來帝都ノ治安維持ニ關シマシテハ、
或ハ委員會ニ於テ、或ハ本會議ニ於キマシ
テ論議ヲ盡サレテ居リマス、曾テ二月八日
ノ豫算委員會ニ於テハ、同僚米窪君ノ、日
本主義ノ時流ニ乘ッテ、國民精神總動員ノ蔭
ニ隱レ、自分等ノ不純ナル目的ヲ達ショウ
トスル、サウ云フ一部ノ運動ニ對シテハ、
斷乎タル處置ヲ執ル積リデアルカドウカト
云フ質問ニ對シテ、內務大臣ハ「御話ノ次第
ハ能ク分リマシタ、假令標榜スル所ガ日本
主義デアラウガ、皇道主義デアラウガ、治安
維持ヲ紊ルヤウナ行爲ハ、斷ジテ假借致シ
マセヌ」ト答ヘテ居ルノデアリマス、內務大
臣ノ所信ハ分ル、更ニ又二月十九日、政民
兩黨本部ノ占據事件ニ關スル內務大臣ノ報
告ノ中ニ、「今後帝都ノ治安確保ニ付キマシ
テハ、全力ヲ盡シ萬全ヲ期スル決心デアリマ
ス」ト御報告ニナッテ居ル(拍手)斯ウ云フ御
答辯ヲ爲サレテ居ル、末次內務大臣ガ僅カ一
言デアリト雖モ、全力ヲ盡シ萬全ヲ期スル決心
デアルト云フ言葉ハ、千鈞ノ重味ガアル言葉ト
私ハ聽イタノデアリマス、ナゼナラバ內務
大臣ハ軍人ノ出身者デアル、軍人トシテノ
覺悟ヲ持タレテ居ル御方デアル、自分ノ言ニ
對シテ責任ヲ持タルヽコトヲ以テ、アナタノ
過去一生涯ノ修養ノ基本トサレタ御方デア
ルト私ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手)內
務大臣ガ空言デ斯ウ云フ事ヲ申シタノデハ
ナイト信ジテ居リマス、然ルニ此言明ノアッテ
カラ僅ニ二週間モ經タナイ中ニ、老齡ナル
安部磯雄先生ニ對シテ、今朝ノ如キ暴行行
爲ガ帝都ノ眞中ニ於テ行ハレテ居ルコト
ハ、内務大臣ハ其所信ニ對シ自ラ省ミル所
ガアッテ然ルベキノミナラズ(「ヒヤ〓〓」拍
手)其責任ニ對シテ期スル所ガ無クテハナ
ラヌト私ハ信ジテ居ルノデアル(「ヒヤ〓〓」
拍手)最近政府官僚ノ人々ノ言ヤ善シ、議會
ニ於ケル答辯ハ美シイ、尤モラシイ、ケレ
ドモソレニ對スル斷乎タル責任ヲ執ラザル
コトガ、今日ノ官僚政治ノ最モ弊デアルト
私ハ信ジテ居ルノデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)
政府ノ諸君ハ言葉ハ下手デモ宜シイ、イザ
ト云フ時ニ責任ヲ持ッテコソ初メテ(「ヒヤ
ヒヤ」拍手)政治家トシテノ、或ハ政府ニ立
テル、否、軍人トシテノ內務大臣ノ態度デナ
クテハナラヌト私ハ考ヘル、內務大臣ハ本
日ノ不祥事件ヲドウ御考ニナルカ、ソレニ
對スル責任ハドウカト云フコトヲ、私ハ御
尋致シタイノデアル
先般來我ガ社會大衆黨ニ對シマシテハ、
色々ノ方面カラ黨ニ對スル所ノ或ハ行動、
或ハ言論ガ橫行シテ居ルノデアル、大衆黨
ヲ殲滅スベシト云ヒ、或ハ大衆黨ノ代議士
ニ向ッテ强制的ニ辭職ヲ要求スル、或ハ大衆
黨所屬ノ代議士ノ家庭ヲ訪問シテ、而モ多
數ヲ擁シテ連續訪問シテ斯ル行爲ヲサレテ
居ル、併シ吾々ハソレヲ今日マデ默ッテ參
リマシタ、併ナガラ大衆黨ニ對スル色々ナ
ル言說ノ一例ヲ玆ニ中上ゲマスナラバ、皇
道日報ノ一月二十四日號ニ、我黨幹部ノ住
所氏名ヲ全部列擧シテ居リマス、サウシテ
其日報ノ同一紙面ノ他ノ部分ニ於テハ、堀
內信水中將ノ署名ヲ以テ、「彈壓ナド手緩キ
モノデハ駄目ナリ、有無ヲ言ハセズ殲滅ス
ベキモノナリ、其手段ハ「スターリン」ガ反政
府嫌疑者ヲ××スルニ倣フベシ、斯ンナ手段
ハ大イニ學ンデ宜シイ」、斯ウ云フコトガ書
カレテ居ルノデアル、更ニ又同一紙面ニ無名
者ト致シマシテ、「社大黨ヲ殲滅スルニ權力
ニ依ル彈壓ヲ期待スル日本主義陣營ノ他力
本願的ナ無氣力ナ熊度ヲ寧ロ憐ム、堂々××
ヲ以テ決戰、一擧殲滅ヲ期スベシ」、斯ノ如ク
一方ニハ黨幹部ノ住所氏名ヲ列擧シ、他ノ
紙面ニ於テハ、或ハ「スターリン」ガ反政府
嫌疑者ニ對スル態度ヲ學ブベシトカ、或
「堂々××ヲ以テ決戰、一擧殲滅スベシ」ト
云フ風ナ言辭ヲ載セタルモノガ、堂々ト內
務省ノ御承認ヲ得テ發行サレテ居ルノデア
リマス
更ニ又先般總動員法案ガ本院ニ提案サレ
マシタ時ニ、我黨ノ淺沼稻次郞君ガ內務大
臣ニ質問ヲ致シタ、其質問ノ文句ハ「或ル演
說會場ノ如キハ、吾々ノ黨首安部磯雄先生
ニ對シテ、殺セトハ申シマセヌガ、生カシ
テ置イタライカヌト云ッタヤウナコトヲ言ッ
テ演說ヲシテモ、ソレヲ取締ラヌト云フヤ
ウナ傾向ガアルト思フノデアリマス」、斯ウ
云フ質問ヲシテ居ル、安部磯雄先生ヲ殺セ
トハ言ハヌケレドモ、生カシテ置イテハイ
カヌト云フヤウナ演說ガ、帝都ノ眞中ニ於
テ堂々ト演說サレテ、內務當局ハ之ニ對シテ
何等ノ取締ヲモシテ居ナカッタノデアル(拍
手)吾々ハ此皇道日報ノ記事ヲ通ジ、或ハ帝
都ニ於ケル演說會ノ事情ヲ通ジマシテ、或
ハ惧ル、安部磯雄先生ノ身邊ニハ、何カノ
不祥事件ガ起ルノデハナイカト、感ゼラレル
ヤウナ事情ハ、少クトモ帝都治安取締ノ責
任アル所ノアナタニ於テハ、豫知セザルコ
トデハナクシテ、豫知スベキコトデアルト
私ハ信ジテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」
拍手)何等突然ニ起ック所ノ出來事デハ
ナクシテ、旣ニ我黨ノ淺沼君カラアナタニ
ハ豫〓シテ居ルデハナイカ、サウ云フ演說
ガ橫行シテ居ルト云フ事實ハ、アナ
タノ頭ノ中ニ入レテ居ルデハナイカ、
其事實ニ對シテアナタハ如何ナル責任ヲ執
ラレルノカ、私ハ率直ニ御尋ヲ致シタイ、
私ハ色々ナ問題ニ付テ御尋ヲシタイ點ガア
ルケレドモ、暴行行爲ノ取締ヲアナタハド
ウ考ヘルカ、立憲政治下ニ於テ言論ヲ以テ
鬪フト云フコトニ付テハ、是ハ宜シイ、ケ
レドモ暴行行爲ヲ以テ橫行スルト云フコト
ハ、モウ帝都ノ治安ガ根柢カラ破壞サレテ
居ル事實デアルト私ハ考へル(拍手)內務大
臣ハ果シテソレニ對シテ如何ナル態度ヲ執
ラレルノカ、殊ニ今ハ議會開會中デスヨ、
アナタモ立憲政治ノ歷史ヲ御承知デアリマ
セウ、議員ノ言論ノ自由ヲ尊重スルガ爲ニ、
其身邊ニ對シテハ、國家ノ權力ヲモ行ヘナ
イ所ノ、大キナル特權ヲ議員ハ持ッテ居リ
マスゾ、其議會開會中ニ於キマスル所ノ議
員而モ我黨ノ執行委員長タル地位ニ在リ
而モ老年ナル所ノ此安部先生ニ向ッテ暴力
ヲ加ヘルニ至ッテハ、アナタノ議會開會中ニ
於ケル帝都治安維持ノ取締ノ責任ニ對スル
所ノ認識ヲ私ハ疑ハザルヲ得ナイ(拍手)普通
ノ時トハ違フ、而モ今日ハ外ニ戰爭ヲシテ
居ル最中デアリ、國民ノ心カラノ協力ガ議
會ノ中ニ反映シ、統一サレテ出テ行ク所ニ、
初メテ日本ノ强サガアラウトスル時ニ當ツ
テ(「ヒヤ〓〓」拍手)暴力ヲ用ヒテ危害ヲ加
フルニ至ル、內務大臣トシテ其責任ヲドウ
執ラレルカ、私ハ內務大臣ノ斷乎タル所信
ト、其責任ニ對スル態度ヲ明ニシテ戴キタ
イ、多ク私ハ申サナイ、單ナル所ノ答辯ヲ
上手ニシヨウト云フヤウナ吝ナ考ハ捨テ、
シマッテ、アナタハ軍人ラシク、此安部先生
ニ對スル暴行事件ニ關シ、帝都治安維持ニ
關シテ、アナタノ責任アル所ノ答辯ト態度
トヲ、此議場ニ於テ發表サレンコトヲ私ハ
偏ニ希フ者デアル、安部先生ノ御病狀ノ將
來ハ、ドウナルカ能ク分リマセヌケレドモ
二週間ノ靜養ヲシナケレバナラナイ所ノ、
相當ナ負傷ヲ受ケテ居ル事實デアリマス、
恐ラクハ日本ノ最近ノ議會ノ歷史ニ於テハ
ナイコトデアリマス、幸ニ今日此處ニ近衞
總理大臣ハオ居デニナル、陸海軍大臣モオ
居デニナル、其他ノ閣僚モオ居デニナル、
斯ウ云フ事實ヲ近衞サン以下閣僚ハドウ見
ラレルカ、斯ウ云フ出來事ガ起ッテ、日本ノ
議會政治ガドウナルカト云フ風ナコトニ付
テノ御考ヲ、總理大臣-私ハ所見ヲ承ラ
ナイケレドモ、ドウ考ヘルカ、深刻ニ考ヘ
テ戴キタイ、問題ハ簡單デハナイ、深刻ナ
問題ダ、其深刻ナル問題ヲ總理大臣以下各
閣僚ガ、十分ニ認識サレルコトガ必要デハナ
カラウカト思フ、帝都治安維持ニ關シテハ、
單ニ內務大臣バカリデハナク、政府全體ノ
責任ニ於テ守ルコト、議員ノ議會開會中ニ
於ケル所ノ行動ニ關シテハ、政府ハ全責任
ヲ以テ之ヲ守ルコトガ當然デアラウト私ハ
考ヘテ居ル、簡單デアリマスルケレドモ、
以上事實ヲ述べ、其質問ノ要點ヲ述ベマシ
テ、私ノ質問ヲ終リマスルガ、ドウカ內務
大臣ハ、軍人ラシク責任ヲ明ニシテ御答辯
アランコトヲ希望スル次第デアリマス(拍
手)
〔國務大臣末次信正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=6
-
007・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 河上君ノ御質問
ニ御答致シマス、安部磯雄氏ガ暴漢ニ襲ハ
レ負傷サレマシタコトハ、當局ノ調モ略〓同
樣デアリマシテ、洵ニ遺憾ナル出來事デア
リマス、安部氏ニ對シテハ洵ニ御氣ノ毒ニ
堪ヘナイ次第デアリマス、本件ニ付キマシ
テハ、目下極力搜査中デアリマシテ、斷乎
タル措置ヲ執ルベキハ申ス迄モアリマセヌ、
議員ノ審議權ヲ擁護シ、其身邊ヲ保護シマ
スコトハ、當局ノ最モ留意スル所デアリマ
シテ、之ニ付キマシテハ最善ノ手段ヲ盡シ
マス決心デアリマス
〔河上丈太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=7
-
008・河上丈太郎
○河上丈太郞君 私ハ內務大臣ニ向ッテ今
ノヤウナ御答辯ヲ御尋シクノデハナイ、勿
論犯人ガマダ分ラナイコトモ能ク承知シテ
居リマス、之ヲ搜査シテ嚴重ニ處罰スルト
云フヤウナコトモ、當リ前ノコトデアリマ
ス、之ヲ縛リモセズ、處罰モシナカッタラ大
騷ギダ、サウ云フヤウナ答辯ヲ私ハ末次サ
ンニ求メテ居ルノデハナイ、サウ云フコト
ハアナクノ下僚ノ御方ガ適當ニヤッテ下サ
ル、ソレデハナイ、斯ウ云フコトニ對スル
內務大臣トシテ、國務大臣トシテノ責任ヲ、
ドウアナタガ執ラレルカト云フ、其政治的
ナ良心ヲ私ハ御尋シテ居ルノデアル(拍手)
アトノコトハ適當ナ人ガ適當ニヤッテ吳レ
ル、罪ガ重イトカ輕イトカ、ソレヲ吾々ハ
問ハナイ、ソンナコトヲ私ハ此處デ申上ゲ
ル馬鹿ヂヤナイ、私ガアナタニ御尋スルノ
ハ、微力ナリト雖モ一個ノ政治家トシテ、
アナタニ向ッテ政治的良心ヲ御尋シテ居ル
ノデスゾ、私ハ微力デアリマスケレドモ、
一個ノ政治家トシテ、アナタノ政治的良心
ヲ御尋シテ居ルノデアル、ソレヲアナタハ
御答辯ヲ願ヒタイ、ソレヲ回避致シマシテ、
唯搜査ヲスルトカ、或ハ嚴罰ニ處スルト云
フ、ソレハ問題ヂヤナイ、私ハ重ネテ御答
辯ヲ要求シマス、政治的良心ヲ披瀝シテ下
サイ、一言デ宜イ、多クハ言ハナクテ宜イ、
私達國民全體ヲシテ安心セシムルヤウナコ
トヲ一言言ッテ下サイ、若シモ內務大臣ガ、
斯ノ如キ答辯ヲサレルナラバ-幸ニ此處
ニ近衞サンガオ居デニナル、總理大臣ガオ
居デニナル、近衞サンハ恐ラク安部先生ヲ
御承知デアラウ、人格、見識、經歷、總テ
御承知ト思フ、サウ云フ方ガ暴漢ノ爲ニ、
議會開會中暴行ヲ加ヘラレタ事實ニ對シ、
總理大臣ハドウ之ヲ御覽ニナッテ居ルノカ、
總理大臣ハドウ云フ風ニ之ヲ感ジテオ居デ
ニナルノカ、恐ラクハ私バカリヂヤナイ、
國民全體ガ聽キタイ聲デアラウト私ハ信ジ
テ居ル、內務大臣、願クハ政治的良心ヲ披
瀝シテ戴キタイ、サウシテ總理大臣ハ此事
件ヲドウ見ラレルカ、此事件ガ議會政治ニ
ドウ云フ關係ガアルカト云フコトノ、深刻
ナル所ノ觀察ヲ總理大臣カラ御述ニナルコ
トヲ私ハ要求スル、ドウカ總理大臣、一 一
デモ宜イ、言ッテ下サイ、此壇上ニ立ッテ吾々
ヲ安心サセルヤウナコトヲ言ッテ下サイ、
ソレヲ御願致シマシテ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=8
-
009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣末次信正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=9
-
010・末次信正
○國務大臣(末次信正君) 御答致シマス、
內務大臣ノ全責任ニ於テ取締リマス
(「總理大臣ハドウシタ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=10
-
011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣公爵近衞文麿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=11
-
012・近衞文麿
○國務大臣(公爵近衞文麿君) 今朝安部磯
雄君ガ數名ノ暴漢ノ爲ニ襲擊セラレマシタ
ト云フコトヲ承リマシテ、私ハ實ニ驚愕致
シマシタ、同君ニ對シマシテ深甚ノ同情ノ
念ヲ禁ズル能ハザルモノデアリマス(「議會
ニ對シテハドウデスカ」ト呼フ者アリ)斯ノ
如キ治安ニ關係ノ事柄ガ時々起リマスコト
ハ(「頻發シテ居リマス」ト呼フ者アリ)政府
ト致シマシテモ洵ニ遺憾ニ存ズルノデアリ
マシテ、今後ハ一層治安維持ニ向ッテ努力ヲ
致ス考デアリマス、殊ニ議會中ニ於キマシ
テ、議員ノ諸君ノ關係ニ於キマシテハ、啻
ニ內務當局ノミナラズ、政府全體ノ責任ニ
於テ之ヲ保護致シタイト考ヘテ居リマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=12
-
013・河上丈太郎
○河上丈太郞君 內務大臣ノ答辯ニ付テハ
心カラ遺憾ニ存ジマス、又其答辯ニ對シマ
ス所ノ吾々ノ態度及ビ行動ニ付キマシテ
ハ、他日何等カノ機會ヲ以テ、意思表示ヲス
ル機會ガアラウト思ヒマス(「今ヤレ」「意氣
地ガナイゾ」ト呼フ者アリ)之ヲ以テ私ノ質
問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 日程第一、昭和十二
年法律第九十二號中改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス-商工政務次官
第昭和十二年法律第九十二號中改
正法律案(輸出入品等ニ關スル臨時
措置ニ關スル件)(政府提出、貴族院
送付)第一讀會
昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案
昭和十二年法律第九十二號中左ノ通改正
ス
第二條ノ二前條ノ物品ノ需給ニ關係ア
ル產業ヲ營ム者又ハ其ノ組織スル團體
ハ當該物品ノ需給關係ヲ調整スル爲政
府ノ認可ヲ受ケ需給調整協議會ヲ組織
スルコトヲ得
前項ノ者需給調整協議會ヲ組織セザル
場合ニ於テ政府支那事變ニ關聯シ國民
經濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要アリ
ト認ムルトキハ前項ノ者ニ對シ需給調
整協議會ノ組織ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ組織ヲ命ゼラレタル
者其ノ認可ヲ申請セザルトキハ政府ハ
規約ノ作成其ノ他組織ニ關シ必要ナル
處分ヲ爲スコトヲ得
需給調整協議會ノ成立アリタルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員タル資
格ヲ有スル者ハ其ノ會員トス
第二條ノ三政府ハ支那事變ニ關聯シ國
民經濟ノ運行ヲ確保スル爲特ニ必要ア
リト認ムルトキハ需給調整協議會ニ對
シ當該物品ノ需給關係ノ調整ニ關シ必
要ナル決定ヲ爲スベキコトヲ命ジ又ハ
需給調整協議會ノ會員ニ對シ需給調整
協議會ノ決定ニ從フベキコトヲ命ズル
コトヲ得
第二條ノ四本法ニ定ムルモノノ外需給
調整協議會及需給調整協議會ニ依ル需
給關係ノ調整ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條中「前條」ヲ「第二條」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=14
-
015・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 只今議題ト相
成リマシタ昭和十二年法律第九十二號中改
正法律案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス
此法律ハ御承知ノ通リ、輸出入品等ニ關
スル臨時措置法ト稱セラレルノデアリマシ
テ、前議會ニ御協賛ヲ得タモノデアリマス、
此法律ノ制定ノ趣旨ハ、支那事變ニ際シマ
シテ、國民經濟ノ運行ヲ確保スル爲ニ、政
府ニ於テ必要ト認メマシタ場合ニハ、輸入
或ハ輸出ノ制限、禁止ヲ致シマシタリ、又此
輸入ノ制限等ヲ致シマシタ場合ニ於キマシ
テ、其物、或ハ又之ヲ原料トスル製品等ガ
不足ヲ來シマスヤウナ場合ニハ、是ガ需給
ノ調整ヲ爲シ得ルコトヲ規定致シタノデア
リマス、而シテ事變ノ進行ニ伴ヒ、本法施
行ノ實績ニ鑑ミマシテ、物資ノ需給調整ノ
方針トシテハ、政府ガ一方的ニ命令ヲ爲ス
コト以外ニ、其物ノ需給ニ關係ノアル業者
ノ團體ヲシテ、自治的ニ是ガ方策ヲ決定セ
シムルコトガ、適當ト認メラレル場合ガ少
クナイノデアリマス、ソレニハ現行ノ法律
ノ規定ヲ以テシテハ不十分ナ點ガゴザイマ
スノデ、今囘之ヲ改正補充セントスルモノ
デアリマス
改正ノ要點ヲ簡單ニ御說明申上ゲマスト、
上述ノ目的ノ爲ニ需給調整協議會ト云フ機
關ヲ設ケマシテ、當該物品ノ需給ニ關係ノ
アル產業團體、例ヘバ輸出、輸入、生產、配
給使用等ノ各部門ニ組織セラレテ居リマ
スル團體ヲ、之ニ參加セシメマシテ、調整
ニ關スル方策ヲ協議セシメントスルモノデ
アリマス、更ニ必要ニ應ジマシテ、政府ハ
關係產業團體ニ對シテ、此協議會ノ組織ヲ
命ジ得ルコトト致シマスト共ニ、協議會ニ
對シテ必要ナル決定ヲ爲スベキコトヲ命命
又ハ協議會ノ會員ニ對シマシテ、協議會ノ
決定ニ從フベキコトヲ、命ジ得ルコトト致
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、何卒御
審議ノ上御協贊アランコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=15
-
016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-渡邊玉三郞君
〔渡邊玉三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=16
-
017・渡邊玉三郎
○渡邊玉三郞君 只今議題トナリマシタル
輸出入品等ニ關スル、臨時措置ニ關スル改
正法律案ニ付キマシテ、質疑ヲ試ミントス
ルモノデアリマス、事變以來軍需資材ノ輸
入等ノ爲ニ、國際收支ノ適合ヲ圖ルノニハ、
不用品ハ勿論デアルケレドモ、必要品マデ
輸入ノ制限ヲシテ、需給ノ調整ヲ圖ル爲ニ
ハ、統制ヲ强化スルコトハ肯定スルノデア
リマス、又此統制强化ノ爲ニ、種々ナル法
規ガ氾濫シテ、國民ハ洵ニ困ッテ居ルノデ
アリマスケレドモ、併ナガラ商工省ノ事務
當局ガ、非常ニ御熱心ニ御努力ニナッテ居ル
コトモ認メルノデアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
憲法上保障セラレタル營業ノ自由ヤ、經
濟活動ノ制限ノ命令ヲセラレルノデアリマ
スカラ、各當業者ガ商工省ニ陳情シテ、門
前ハ每日市ヲナス有樣デ、一層事務當局ノ
御苦勞ヲモ感謝スルノデアリマスガ、所謂
本法ハ力ノ政治デアリマス、此本法ニ依ッテ
机上論ダケデ、實業ノ經驗ナキ役人ガ統制
スルノデアルカラ、輸出貿易ヲ阻碍シテ、
國民ノ必要品ガ不自然ナル物價騰貴ヲ招來
致シマシテ、尙又其反面ニハ中小商工業者
ヲ壓迫シ、萎縮セシメテ居ルノデアリマス、
卽チ角ヲ矯メテ牛ヲ殺スノ結果ヲ來サザル
コトヲ冀フ次第デアリマス、私ガ思ノ儘ヲ
言フナラバ、其結果ノ所謂一步前デアルト
疑フノデアリマス、私ハ此觀點カラ三項ノ
質問ヲ致シマシテ、政府ノ御答辯ヲ要求シ、
私ノ疑ガ解ケルナラバ幸デアルト思フノデ
アリマス、第一ハ、本法ニ諮問機關ヲ設ク
ルノ必要アリト認ム、當局ノ所見如何、第
二ハ、輸出貿易振興策ト中小商工業保護ノ
措置如何、第三ハ、高價粗惡品ヲ排除シ、國
民經濟ノ實際ニ適合スベシ、以上ノ三問デ
アリマスケレドモ、御答辯ヲ要求スルノハ
各省ニ亙ルコトヲ豫メ申上ゲテ置キマス
第一、此法律ニ於テハ諮問機關ガナイノ
デアリマシテ、此諮問機關ヲ設クルノ必要
アリト認ムルノデアリマスガ、政府ノ所信
ハ如何デアリマセウカ、此提出ノ改正案ハ、
只今說明ノアリマシタコトヲ要約致シマス
ルナラバ、國民經濟ノ運行ヲ確保スル爲
ニ、卽チ力ヲ以テ統制セントスル國策ノ取
次所デアリマス、只今當局ノ說明ハ、自治
的ニ作ルノデアルト仰シヤルノデアルケレ
ドモ、是ハ唯國策ヲ取次グダケデアリマス、
需給調整協議會トシテ設ケラルヽコトハ、
私ハ之ニ反對スルノデハナイ、併ナガラ本
法ガ戰時體制下ノ非常立法デアリ、國民經
濟ノ運行ノ上ニ必要ナリトスルナレバ、異
論ハ持チマセヌケレドモ、昨年ノ十月本法
律ヲ施行サレマシテカラ、僅ニ數箇月間デ
アリマスガ、國民ハ大ナル不安ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、殊ニ昨年ノ十二月二十七日
ニ商工省令第三十四號、或ハ第三十五號ヲ
發令ニナリマシテ、サウシテ幾多ノ毛織物、
綿織物ノ「スフ」混用シテ調整ヲ圖ラレタノデ
アリマスガ、其混用令等ニ依リマシテ、其
影響ハドウデアリマスカ、一ツノ極メテ簡
單ナル卑近ナル例ヲ申シマスレバ、全國ノ
「デパート」ニ寒中ニ於テ、眞夏ニ著ル浴衣
地ガ陳列サレテ、今飛付クヤウニ一般民衆
ガ買フノデアリマス、是ハ恐ラク僅カノコ
トデアリマスケレドモ、我國未曾有ノコト
デアルト思フノデアリマス、是ハ何ヲ物語
ルモノデアルカ、商工大臣ヤ大藏大臣ガ、
輸入ノ原料ヲ以テ造ッタ國內ノ消費ヲ節約
セヨト申サレテモ、國民ガ協力セヌノデハ
アリマセヌ、其道理ガ分ラヌノデアリマス、
又東京ノ市場ニ於テ晒木綿ガ昨年ノ十一月
ノ上旬ニ、是ハ問屋ノ相場デアリマスガ、
五十錢五厘デアッタ、ソレガ一月十八日ニ
ハ八十五錢デアル、二月九日ニハ一圓二十
錢デアル、ソコデ商工當局ハ驚イテ、二月
十日カラ東京ノ問屋ニ向ッテ一週間販賣ヲ
自發的ニ停止セシメタ、自發的トハ言ヒマ
スケレドモ、是ハオ上カラノ御用デ已ムヲ
得ズ停止シタノデアリマス、私ハ今此場
ニ於テ暴利取締ヲ云々論ズルモノデハナ
イノデアリマス、私ノ要點ハ其措置ガ宜
シクナイ、其措置ガ適當デナイ云フコト
ヲ言フノデアリマス、國民ニ消費ノ節約
ガ理解ガ出來ナイ、無理ガアル、今次ノ事
變ト、サウシテ晒木綿ノ「ステープル·ファ
イバー」ハ品ガ惡イニ決ッテ居ルト云フ言ヒ
草ガ世ノ中ニアリマス、是ガ適當ナル相
場、私ハ敢テ此相場ヲ幾ラトハ申シマセヌ
又、適當ナル相場ニ引下ゲルコトガ必要デ
アル、商工當局ノ之ニ對シテノ對策ハドウ
デアルカ、又此問題ハ、大臣ハ一人モオ居
デニナリマセヌケレドモ、最モ重要ナル問
題デアルト思ヒマス、只今衆議院ニ於テ極
メテ愼重ニ審議サレテ居リマスル國家總動
員法案、其國家總動員法案ノ第三條ノ一ニ
ハ「總動員物資ノ生產、修理、配給、輸出、輸
入又ハ保管ニ關スル業務」トアルノデアリマ
スカラ、所謂此輸出入ノ措置法ト、ソレガ
國家總動員法ノ第三條ノ一トハ、同ジ形ニ
ナルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ問題デ
アリ、而モ國家總動員法ノ第五十條ニハ「政
府ノ諮問ニ應ズル爲國家總動員審議會ヲ置
ク」トアルノデアリマス、私ハ此重要ナル法
案デ、唯獨善的ニ威壓シ力ヲ以テ、當局ハ
自治的ト云フケレドモ、命令ヲ以テ行フ、
斯ウ云フコトデハイケナイト思フ、聖德太
子ノ憲法ニハ「夫レ事ヲバ獨リ斷ズ可カラ
ズ、必ズ衆ト與ニ宜シク論ズベシ」トアル如
クニ、私ハ諮問委員會ヲ之ニ設クベキデア
ルト思フ、商工當局ハ其意思アリヤ否ヤ、
又需給調整協議會ヲ設クルコトニシタノ
ハ、是ハ先ニモ申シマス通リ、本法ノ要旨
ハ、之ヲ一口ニ言ヒマスナラバ、政府ノ力
ノ取次所デアリマス、又或ハ綿業調整委員
會トカ、綿業協議會ト云フモノガアルデ
ハナイカト云フ御言葉デアルカモ知レマセ
又、是ハ大會社ガ自己擁護ノ爲ニ出來テ居
ル會デアリマシテ、敢テ本法ノ諮問ノ機關
トハナラナイノデアリマス、又貿易審議會
ニ於テモ、本法トハ關聯ハシテ居リマシテ
モ、本法ニ依ッテ總テノ運行ヲ圖ル上ニ於テ
ノ諮問機關デハナイ、斯樣ナ重要ナ法案ニ
諮問委員會ヲ設ケル必要ガアルコトヲ御認
メニナリタイ、卽チ中小工業者ノ眞ノ現狀
ヲ知ッテ居ル者ヲ含メテ、諮問委員會ヲ設ク
ルノ必要アリト思フノデアリマス、一昨日
モ本會議ニ於テ、我黨ノ先輩カラ斯ウ云フ
話ガアリマシタ、同ジ頭ヲ竝ベテモ同ジ智
慧ノ外ハ出ナイト云フ言葉ガアッタノデア
リマスガ、全ク私ハ此問題ニ付テハ至言デ
アルト思フノデアリマス、商工當局ノ所信
ヲ御伺致シマス
次ニ第二問デアリマス、輸出振興ト中小
商工業保護ノ措置如何、輸出貿易中、我ガ
纖維工業ガ其大宗デアルコトハ申ス迄モア
リマセヌ、併ナガラ最近、殊ニ此法律ガ施
行サレマシテカラ、不振デアルコトヲ憂ヘ
ルノデアリマス、我國ガ輸出依存ノ國策ヲ
以テ、國際收支ノ適合ヲ圖ラザルベカラザ
ルコトハ申ス迄モナイノデアリマス、試ミ
ニ昨年昭和十二年ノ貿易ヲ申シマスト、綿
織物ノ輸出ガ二十六億四千四百餘万碼、金
額ガ五億七千三百餘万圓デアリマス、毛織
物ガ三千五百五万碼デ、五千八十二万餘圓、
人絹ノ織物ガ四億八千五百十二万碼デ、
億五千四百八十六万餘圓、其他「メリヤス」、
人絹、絹織物、綿絲ト云フヤウナモノヲ入
レマス、所謂生絲ヲ除イテノ纖維工業ノ製
品ノ輸出ヲ見マシテモ、十億三千二百餘万
圓ニ達シテ居ルノデアリマス、私ハ此大ナル
貿易上ニ於テノ大宗デアル纖維工業製品ノ
輸出ガ、殘念ナガラ減退スルコトナキヤ、
政府ノ見透シヲ承リタイト思フノデアリマ
ス、續イテ承リタイ重要ナル問題ハ、又
昨日卽チ三月一日ヨリ實施サレテ居ル綿絲
ノ配給ニ付テ、當局ハ懸命ノ努力ヲサレテ
居ルノデアリマスガ、極メテ不圓滿デア
ル、之ヲ簡單ニ申シマスレバ、コンナコト
ハ初カラ能ク分ッテ居ル、綿絲ニハ百何十ト
云フ銘柄ガアルノデアリマス、番手ガアル
ノデアリマス、其番手モ示サズニ、無茶苦
茶ニ配給劵ヲ渡シテ、配給ノ方法ヲ決定サ
レマシテモ、其配給劵ニ依ッテ好ム絲ヲ買フ
コトガ出來ルト思フノデアルカ、織物製造
業者ハ其欲スル絲ヲ買フコトガ出來ルト思
フコトガ抑〓間違ッテ居ル、「ストック」ノ用意
ガアレバ出來ルカモ知レヌ、ソレモナイ、
丁度政府ガ配給劵デ、「デパート」ニ於テ
商品劵デ買物ガ出來ルヤウナ積リデ、御渡
シニナッテ居ルノデアリマセウケレド
モ、ソンナ机上ノ數字デ配給ガ出來ルモ
ノデハアリマセヌ、左樣ニ御考ニナッテ
居ルノハ大間違デアル、絲ガナクテ織物ガ
出來ル筈ガアリマセヌ、尙ホ私ハ此四月カ
五月ニナリマスルト、綿絲ヲ使用スル織物
產地ニ大混亂ガ起ルト思フ、此點ニ付キマ
シテモ、私ノ見透シ違ヒニナランコトヲ望
ム者デアリマス、此一週間內ニ於キマシテ
干、各產地ハ絲ヲ買フコトガ出來ズニ、商
工省ヘ泣付イテ來ルコトハ、モウ能ク分ッテ
居リマス、ソレデ一箇月位ハ泣キ〓〓暮シ
テモ、遂ニハ辛抱ガ出來ナクナル、參考ニ
二月中ノ現狀ヲ此際御承知下サル爲ニ申上
ゲマス、綿絲ノ公定價格ガ御決定ニナッテ居
ル、綿絲ノ公定價格ハ何等ノ意義ヲナサナ
イ、三月中ニ日本中ノ絲屋デ綿絲ノ公定價
格デ賣ル者ハ一人モアリマセヌ、此絕對ナ
イト云フヤウナ問題ニ付テ、商工省ハ顏色
アリヤ、ドンナ方針ヲ持ッテ居ッタノカ、卽
チ絲屋へ絲ヲ買ヒニ行キマスト、包ミ金ヲ
要求スルノデアリマス、包ミ金ヲ出サナケ
レバ其絲ガ買ヘナイ、又若シ其買ヒニ行ッタ
織物屋ガ理窟ヲ言ヒサウナ者デアルナラバ、
假令包ミ金ヲ出シテモ賣リマセヌ、暴利取
締トカ、其他ノウルサイ問題ガ起ルトイケ
マセヌカラ、モウ包ミ金ヲ出シテモ賣ラナ
イ、已ムヲ得ズ素人ヲ賴ンデ、サウシテ高
イ値デ絲ヲ買ッテ貰ウテ、絲ノ仕入ヲスルノ
デアル、斯ウ云フヤウナ狀態デアッテ、後デ
分ルトイカヌカラ絲ヲ現金デナケレバ賣リ
マセヌ、小切手デ賣リマスト、後デ暴利問
題ガ起ルトウルサイ、金ガ何處へ行ッタト云
フコトガ分ル、機屋ガ絲ヲ買フニモ、現金
ヲ持ッテ行カナケレバ賣ラナイ、又甚シキモ
ノニナリマスト「ベレンス」染ト云フ染ガア
リマス、「ベレンス」染ト云フノハ、一旦染
メタモノヲ水ノ中へ入レルト、直グ剝ゲテ
シマフノデアリマス、所謂無效無害ノモノ
デアリマス、此「ベレンス」染ト云フ染ヲ、
一丸卽チ十「ポンド」ニ五錢カ八錢掛ケテ染
メテ、是ハ染メタ絲デアルカラ高イト、斯
ウ云フ言譯ヲシテ此絲ヲ賣ッテ居ル、又此絲
ヲ買ハザレバ中小工業者ハ仕事ヲスルコト
ガ出來ナイ、高イ絲デハ織物ガ採算ニ合ハ
又、是ガ二月ノ有樣デアリマス、絲ヲ買フ
コトガ出來ナケレバ工業主モ職エモ、中小
工業ハ共稼ギデアリマスガ、是ガ共々ニ仕
事ガ出來ナイカラ生活ガ出來ヌ、幾ラ苦シ
クテモ高イ相場ヲ以テ買フ外ハナイ、尙ホ
此反面ニ統制ガ不始末デアルコトヲ御承知
願ヒタイ、吾々ハ此統制ノ不始末デアリ、
過誤デアルコトニ洵ニ遺憾ヲ禁ジ得ナイノ
デアリマス、綿絲ノ配給ガ理想的ニ行ハレ
ルコトハ、私ヲシテ言ハシメレバ、尙ホ前
途遼遠ナリト思フノデアリマス、之ニ對シ
テ當局ハ如何ニ善處サレントスルノデアル
カ、本議場ヲ通ジテ業界一般ノ爲ニ、國民ノ
爲ニ、明快ナル御答辯ヲ改エム次第デアリマス
尙ホ此問題ニ付テハ、私ハ商工省ダケノ
責任ダトハ申シマセヌ、大藏當局ニモ責
任アリト考ヘルノデアリマスガ、大藏省
ガ爲替管理ニ力ヲ入レ過ギテ、輸出品ノ原
料デアル棉花ノ輸入ニマデケチ〓〓セラレ
ル、其影響モアルト思フノデアリマス、工業
ノ原料資源ト云フモノハ、相當ニ「ストック」
ガナケレバ、決シテ十分圓滿ニ行クモノデ
アリマセス、國內ノ需要ノ棉花ニ付テモ、
本當ニ窮スルマデハ爲替許可ヲシナイコト
干、今日ノ狀態ヲ招イタ原因ノ一ツデアル
ト思フノデアリマス、國內ノモノニ對シテ
ハ、何ト申シマスカ、自分ガ分ラヌモノデ
アルカラ、爲替許可ヲ與ヘズニ、干乾ニシ
テ、サウシテ陳情スル者ニハ許可ヲ與ヘテ
行ク、丁度田舍へ行ケバヨク軒端ニ燕ガ巢
ヲクヒマスガ、燕ナドハ雛鳥ガ腹ガ空イテ
チイ〓〓鳴クト、親燕ガ餌ヲ充ガヒマスガ、
吾々中小工業者ハ御役所ニハヨウ行カナイ、
デアルカラ其聲ガ當局ニ響カナイ、斯ウ云フ
ヤウナ關係デアルカラ商工省ノ配給ニモ、棉
花ノ輸入ニ付テハ、大藏省モ將來ヲ達觀シテ
ヤッテ貰ハナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、國際收支ノ適合ヲ圖ルニハ、國內ノ需要
ヲドレダケ節約スベキデアルカ、斯ウ云フ
コトヲ國民ニ發表スル必要ガアル、知ラシ
ムベカラズ、由ラシムベシノ方針ヲ以テ、
ソレヲ發表シナイ、ソレガ洵ニ誤ッタコト
デアルト思フノデアリマス、故ニ之ヲ是非
發表シテ戴キタイト思ヒマスガ、若シ大藏
當局ガソレハ發表ハ罷リナラヌト言ハレマ
シテモ、私ハ能ク知ッテ居リマス、何故分ル
カト申シマスト、日本ニ於テ「ステープル·
ファイバー」ハ昭和十一年ニ二万五千瓲シ
カ出來テ居リマセヌ、昭和十二年ニハ七万
瓲餘ノ生產ガアリマシテ、ソレヲ此措置法
ニ依ッテ三割棉花ニ混ゼルノデアリマスカ
ラ、此數字ヲ以テ逆算スレバ、直グ棉花ハ
想像ガ付クノデアリマス、デアルカラ之ヲ
御隱シニナッテモ何等利益ハナイ、知ッタ者
ダケガ分ッテ居ッテ、知ラヌ者ハ分ラヌト云フ
ヤウナコトハ非常ニ困ル、又最近「ステープ
ル·ファイバー」ガ增產サレマスケレドモ、
昭和十二年十二月、卽チ昨年末ニ於テハ、
之ヲ梱數スレバ四万四千梱デアル、是レ以
上ハ私ハ申シマセヌ、是デアナタ方ノ御答
辯ニナル材料トシテ置キマスカラ、正直ニ、
率直ニ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、又
商工省、或ハ外務省ニ關係ガアルカ知レマ
セヌガ、外務當局ガ居ラレマシタラ御答辯
願ヒタイ-居ラレヌヤウデアリマスネ-
此輸出ノ點ニ付テ御尋致シマス、輸出ハ滿
洲關東州ニ向ケマスルモノガ減少致シマ
スコトハ、是ハ承知ヲシテ居リマスカラ、
敢テ承リマセヌ、併ナガラ求償主義ニ依ッ
テ、相手國ト我國トノ輸出入ノ關係カラ、
我國ガ輸入ヲ制限スル結果減少スベキコト
ガアルト思ヒマス、此點ニ付テ當局ハドン
ナ御考デアルカ、又北支ノ輸出ニ付キマシ
テ御見込等ヲ承リタイ、人絹織物ガ、最近
北支新政權ガ出來テカラ、高率關稅ノ爲ニ
輸出ガ出來ナイ、是ハ國民ガ皆案外ニ思ッテ
居リマス、是ノ引下ノ交涉ヲシテ、是ガ促
進ヲ圖ルノ意圖アリヤ、又北支ノ蒙〓羊毛
同業會ト云フモノガ、國策會社ト申シマス
カ、出來タノデアリマス、是デ北支カラノ
羊毛ノ輸入ヲ制限セズニ入レルノ意思ガア
ar
ルカドウカ、此點ヲ承リタイ、又北支ノ棉
花ノ輸入ヲ圖ルノデアルカ、又ハ北支政策
トシテ、北支ニ紡績會社ヲ設ケテ、向フデ
其絲ヲ使フト云フ意圖ヲ有スルノデアル
カ、次ニ北支ヨリ羊毛、棉花ヲ輸入シテ、
我國ヨリ織物其他ヲ輸出シテ、有無相通ズ
ルコトガ、所謂宣撫工作上ニモ必要デアル
ト思フノデアリマスガ、當局ノ方針ハ如何
デアリマスカ
其他詳細ナルコトハ他ノ機會ニ讓ルコト
ト致シマスガ、次ニ質問シタイノハ、中小
工業ノ保護ノ處置デアリマス、先ヅ綿布ノ
輸出ニ付テ、綿絲ノ配給ヲ過去ノ實績ヲ循
環スルコトハ、遂ニ中小工業ガ倒レルコト
ニナル、中小工業ガ買フ綿絲ハ配給機關ヲ
經テ、サウシテ其配給機關ニ口錢ヲ支拂フ
ノデアリマス、之ヲ假ニ一%トスルナラバ、
一貫作業ヲスル紡績會社ニ順次其實績ガ移
ルノデアリマシテ、綿絲ノ相場ヲ三百圓ト
スレバ、元賣、卸賣、小賣等ヲ經マシテ、
サウシテ中小工業ニ入ル時ニハ三百六圓ノ
元ニナル、一貫作業ノ紡績會社ハ實績ヲ殘
ス爲ニ、三百圓ヨリハ「ダンピング」スルノ
デアリマス、是ハ是マデノ貿易ノ實情ニ依
リマシテ幾多ノ例ガアルノデアリマス、結
局紡績會社ハ三百圓デ利益ガアルノデアリ
マスカラ、「ダンピング」致シマシテモ、實
際ノ「ダンピング」デハナイ、中小工業ハ三
百六圓ガ本當ノ元デアルカラ、其原價ハ三
百六圓ト組合費ガ加算サレルノデアルカ
ラ、循環致シマスル內ニ、遂ニハ中小工業
ハ大工場ニ競爭ガ出來ヌ、結局生存ガ出來
ヌ、隨テ其從業員デアル農村ノ子弟ト工場
主共々ノ生活問題デアルト思フノデアリマ
ス、此點ハ如何ナル考ヲ有セラルヽヤ、御
答辯ヲ得タイノデアリマス、尙ホ此際附加
ヘテ申シマスガ、斯ウ云フ混用令ガ出マシ
テカラ、色々ナ絲ヲ混ゼ合シテ加工シテ造
ルノデアリマス、私ハ常ニ思ヒマス、發明ハ
保護スベキモノデアリマスケレドモ、發明
デナイモノヲ特許局ガ事ヲ知ラズニ特許シ、
爲ニ及ボス產地ノ迷惑ハ非常ナモノデ、隨
分各產地トモサウ云フ問題ニ惱マサレテ居
リマス、此混用令ガ出テ、總テノ絲ニ混用
スルコトヲ强制サレテ居ルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ問題ニ付テハ、政府ハ斯ウ
云フモノヲ沒收スル必要ガアルト思フ、其
意圖アリヤ否ヤヲ承リタイト思フノデアリ
マス、一向ドナタモ政府委員ガ見エヌデ、
私ハ質問ニ不便ヲ感ズルガ、斯樣ナ始末デ
中小工業ハ非常ナ困憊ニ直面シテ居ル、今
陸海軍當局ハオ居デニナリマセヌガ、此本
會ノ速記錄ヲ通ジマシテ、當局ニ御傳ヘヲ願
ヒタイ、ソレハ中小工業ガ斯樣ナ窮狀ニナッ
テ居ルノデアリマスカラ、廣義國防ノ見地
カラ、軍需ノ織物ハ此窮乏ノ產地へ註文セ
ラレタイノデアリマス、是マデハ陸軍デモ、
海軍デモ、大工場へ註文サレル癖ガアルノ
デアリマス、大工場ガ便利デアルト云フコ
トハ思フノデアリマスガ、多少ノ不便ハ御
忍ビ願ッテ、値段ハ高クトハ勿論申シマセヌ、
斯ウ云フ點ニ付キマシテ、所屬ノ工業組合
ヲ通ジテ指定ノ工場ヘ註文下サルコトニ、
商工當局カラ陸海軍兩省ヘ御取次ヲ願ッテ
置キマス
第三問、良品廉價ニアラズシテ、高價粗
惡品ヲ排除スベキデアル、國民經濟ノ實際
ニ適應スベキデアル、本法ノ措置ニ付キマ
シテハ-內務省ノ方ハオ居デニナリマセ
ヌカ-內務省ノ方ノ出席ヲ要求致シマス
(「政府委員ガ居ラヌデ法律案ヲ審議スルコ
トガアルカ」ト呼フ者アリ)-今來ラレマ
スカ-是ハ順序トシテ內務省ニ對シ私ノ
發言ヲ繼續シテ行キマス、本法案ノ措置ニ
付テ巡査ノ服デス、巡査ノ冬服ハ紡毛絲デ
造ッタモノデアリマスカラ、「ステープル·ファ
イバー」ヲ三割入レルコトニナルノデア
リマス、其三割入レタ巡査ノ冬服ガ、著
假ニ四封度ト致シマシテ、ソレガ今日ノ時
價ト致シマスナレバ、一著デ六十錢安クナ
ルノデアリマス、是ハ商工當局ハ御承知ニ
ナッテ居ルコトダラウト思ヒマスガ、巡査ノ
服ガ一著デ六十錢安クナル、此措置ガ國策
デアルトシテ順應スルコトガ、ソレガ御國
ノ爲ニナルカ、又巡査ノ冬服ノ如キモノハ、
「ステープル·ファイバー」ガ三割入ッテ居レ
バ、三年著ルモノガ二年ホカ持タヌノデア
リマス、耐久力ガ乏シイカラ二年目ニハ支
給シナケレバナラヌ、斯ウスルナレバドノ
點ガ國際收支ニ適合スルノデアルカ、又商
工省令第三十五號デ巡査ノ夏服ヲ純綿ヨリ
高イ「ステープル·ファイバー」ヲ三割强制混
紡スルノデアリマスガ、從來ノ如ク洗濯ス
ルナレバ、半分シカ持タヌノデアリマス、
半分ノ耐久力ノ物ガ經濟ノ實際ニ適合スル
カドウカ、國際收支ノ上ニ如何ナル點ガ國
策ニ適應スルト言ハレルノデアルカ、此點
ニ付テ、巡査ノ被服ニ關シマシテハ商工當
局カラ御答辯ハ宜シクナイト思ヒマス、ア
ナタ方ハ宜イト思ッテオイデニナルデアリ
マセウガ、誤ッテ居ルカラ、內務省カラ承リ
タイノデアリマス、又鐵道省モ遞信省モサ
ウデアル、從業員ニ官給ノ服ヲ著セテ居ル、
併シ良品廉價ノ反對ノ、耐久力ニ乏シイ被
服ヲ給與スルコトハ誤ッタ國策デアルト思
フノデアリマス、私ハ一昨年以來「ステー
プル·ファイバー」ノ混用ニ付キマシテハ、
相當〓究ヲ續ケテ居リマス、或ハ商工省ニ
〓究所ガアルト仰シヤルカモ知レマセヌガ、
私ハソレ以上ニ〓究ヲ續ケテ居ル積リデア
リマス、デアリマスカラ、其結果カラ言ヒ
マスナラバ、毛ノ消費ヲ少クスルニハ、巡
査ノ如キ活動スル人ノモノヤ、鐵道省ヤ遞
信省ノ從業員ト云フモノハ(「委員會デヤレ」
ト呼フ者アリ)能ク御聽キナサイ-「スフ」
ニ代ヘテ棉花ヲ入レルコトガ適當デアルト
思フノデアリマス、假ニ此本案ニ依ッテ措
置サレマス時ニ、私ノ著テ居ル洋服ヲ例ニ
申シマス、此洋服ヲ四「ポンド」デ造ルモノト
致シマスレバ、今日ノ相場カラ言ヒマスト、
「ステープル·ファイバー」ヲ二割入レテ四
十錢安ク付クノデアリマス、四五十圓スル
物ガ四五十錢安ク付イテ、ソレガ國民ノ經
濟ニ適合スルカ、私ハ商工省ニ御伺スルノデ
アリマスガ、輸出ヲ奬勵シ、國內消費ノ節
約ヲ圖ルガ有益ナル國策デアルト思フノデ
アリマスガ、用途ノ實情ニ鑑ミテ、毛織物
ニ純綿ヲ配給スベキモノニハ快ク配給スベ
キデアル、ソレハ全部トハ申シマセヌ、其
適當ナル物ニハ左樣ナ方法ヲ講ジ、國民ノ
協力ヲ求ムベキデアル、「ステープル·ファ
イバー」ノ原料ノ「パルプ」モ輸入品デアル
カラ、大キナ差ハナイ筈デアル、耐久力ノ
點カラ考慮セラレテ此措置ヲ變更セラレタ
イト望ムノデアリマス、「ステープル·ファ
イバー」ノ混用ニ付キマシテハ、既ニ廣田
內閣ノ小川商工大臣時代カラ奬勵サレタノ
デ、多大ノ效果ヲ現ハシテ居リマス、織物
製造ニ關スル技術、組織、意匠等巧ミニ應
用シテ、其用途等ニ依ッテハ「ステープル·ファ
イバー」ノ混用ヲ一層奬動スベキデアル
ガ、規則、法規ニ依ッテ無常識ニ强制スルコ
トヲ改正スベキデアルト主張スルノデアリ
マス、軍需品デアルトカ、或ハ帆布、洋傘
ノヤウナ十數種ニ純綿ノ使用ヲ除外例トシ
テ認メラレルノデアルガ、實際ニ卽シタ措
置ヲスベキデアルノデアリマス、一斤ノ「ス
テープル·ファイバー」ヲ造ルニハ原料トシ
テ「パルプ」ガ一斤二分要ル、斯ウ云フ點カラ
國內資源ヲ得ントスレバ治水ノ關係モアリ、
其措置ニ於テノ深甚ノ〓究ヲサレタイ、世
間デハ、企畫院ガ出來マシテカラ、總テノ
計畫經濟ニ計畫ヲ立テルコトガ遲イ、所謂
計畫ガ立タヌカラ、企畫院ガ出來タト云フ
コトヲ言フノデアリマスガ、甚ダ遺憾ニ思
フノデアリマス、棉花ヲ輸入スルニモ、羊
毛ノ輸入ニモ、企畫院ヤ、大藏省ヤ、商工
省ガゴチヤ〓〓交涉、調査、〓究デ日時ヲ
遷延シテ、輸出貿易ノ上ニモ、國運ノ進展
ヲ妨ゲ、國民經濟ヲ衰亡ニ導クコトナキヤ
ヲ憂ヘルノデアリマス、私ハ以上ノ諸點ニ
付テ親切明快ナル當局ノ御答辯ヲ要求致シ
マス(拍手)
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=17
-
018・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 御答申上ゲマ
ス、只今渡邊君カラ洵ニ御熱心ナ剴切ナル
御注意、御質問ヲ戴キマシテ、御親切ナル
御注意ノ點ハ、今後商工當局ニ於キマシテ
行政ヲ行ヒマスル上ニ於テ、深ク參考ニ致
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、大體ノ
御答辯ヲ申上ゲマシテ、詳細ノコト、殊ニ
技術的ノ點ニ付キマシテハ、委員會ニ讓ル
コトヲ御許ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
第一點ノ措置法施行ニ付キマシテ、諮問
委員會ヲ設クルノ意思ハナイカト云フ御質
問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、輸出入品ノ
需給調整ニ關シマシテハ、從來ヨリ、廣ク
民間實業家ノ經驗知識ヲ吸收致シマシテ、
間違ナキヤウニ努メテ參ッテ居ッタノデア
リマス、御承知ノ通リ各種ノ專門委員ヲ囑
託致シマシテ、ソレ等ノ人々ニ御協力ヲ願ッ
テ參ッテ來テ居ルノデアリマシテ、今囘改正
法ノ企圖致シテ居ル所ノ點モ、只今渡邊君
ガ御心配相成リマシタ點ト同ジコトヲ心配
致シマシテ、需給調整協議會ヲ作リマシテ、
民間ノ實業界ノ知識經驗ヲ本法施行ニ協力
シテ戴カウト云フ趣旨ニ外ナラナイノデゴ
ザイマスカラ、ドウゾ御諒承ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス、例ヘバ國際收支ノ今後
ノ見透シデアルトカ、或ハ國防資材ノ關係
ナドノヤウナ、事苟モ機密ニ屬シマスルモノ
ヲ除キマシテハ、出來得ル限リ貿易審議會
ニ諮リマシテ、サウシテ此臨時措置法ノ施
行上重要ナル事項ニ付キマシテノ、御意見ヲ
伺フヤウナ方針ヲ採ッテ居ルノデアリマス、
唯御承知ノ通リ今日ノ產業經濟ノ實情カラ
見マシテ、其變轉急激ナル餘リ、審議會ニ
御諮リスル遑ナク、命令處分ヲヤッテ居ルモ
ノナドニ付キマシテハ、後日ニ於テ審議會
ニ御報告ヲ申上ゲマシテ、サウシテ同會ノ
御諒解ヲ求メテ、本法ノ圓滑ナル施行ヲ致
スコトニ當局ハ注意ヲ致シテ居ルヤウナ次
第デアリマスカラ、本法施行ニ付テ諮問委
員會ヲ作ル考ハアリマセヌ、此點ハ御諒承
願ヒタイト思フノデアリマス
次ニ我國輸出貿易ノ見透シニ付テノ御意
見ヲ縷々拜聽致シマシタガ、當局ト致シ
マシテハ、輸出製品ノ原料タルベキ物ノ輸
入ニ對シマシテハ、其輸入ハ抑制致シマセ
ヌデ、十分ニ且ツ圓滑ニ輸入ヲシテ、以テ
極力輸出ヲ振興シタイト云フ原則ハ固ク維
持ヲ致シテ居ルノデゴザイマスケレドモ、
御承知ノ通リ、昨年下半期以來亞米利加ニ
於ケル經濟界ノ不況、或ハ又原料國ニ於ケ
ル農產物價格ノ低落ニ因リマス所ノ購買力
減退、隨テ不況ト云フヤウナコトヤ、或
日支事變勃發以來、我國ノ公正ナル態度ヲ
理解セザル人々ニ依ッテ起サレタル排日「ボ
イコット」ト云フヤウナモノノ爲ニ、今後ニ
於キマスル我國ノ輸出ト云フモノハ、遽ニ
樂觀スルヲ得ザルコトハ御示ノ通リデゴザイ
マス、殊ニ纖維工業ノ輸出ハ只今御話モゴ
ザイマシタヤウニ、我ガ輸出ノ大宗デアリ
マシテ、極メテ重要デアリマスノデ、此輸
出製品ニ要スル原料ノ輸入ト云フコトニ對
シマシテハ、當局ト致シマシテハ、特別ノ
考慮ヲ加ヘマシテ、少クトモ最惡ノ場合ニ
於キマシテモ、從來ノ輸出額ヲ維持スルコ
トニ極力努メテ、色々ノ方策ヲ執リタイト
考ヘテ居ルノデアリマス、北支ノ人絹織物
關稅ニ對スル善後處置ニ付キマシテハ、目
下關係各省ニ於キマシテ協議ヲ致シテ居ル
ヤウナ次第デゴザイマス、ソレカラ北支那
カラ參リマスル羊毛ノ輸入ニ付キマシテハ
特別ノ考慮ヲ加ヘマシテ、是ガ輸入ヲ促進
スルコトニ努メタイト考ヘテ居ルノデアリ
マス
更ニ中小工業ニ對スル御憂慮ノ點ニ對シ
テ御答ヲ申上ゲマスルガ、輸入制限ノ結果、
原料供給ガ潤澤デアリマセヌデ不圓滑ヲ來
シマシタ爲ニ、是等ノ物ヲ造ッテ居リマスル
中小工業ノ人達ガ、其經營ニ少ナカラザル
打擊ヲ受ケマシタコトハ、當局トシテ洵ニ
御同情ニ堪ヘナイノデゴザイマシテ、商工
省ト致シマシテハ、ソレガ輸出品ノ原料デ
アリマス限リハ、出來ルダケ何トカ此輸入
ヲ認メテ、輸出振興ニ努メルト共ニ、中小工
業ニ對シマシテハ、其配給ノ點ニ特ニ留意
ヲ致シマシテ、間違ノナイヤウニト努メテ
居ル次第デゴザイマス、唯御承知ノ通リ日
支事變以來ノ今日ノ國際情勢ノ切迫セル狀
況カラ見マスト、平和產業方面ニ於キマシ
テハ、一方軍需資材ノ輸入力ヲ高メ且ツ確
保スルト云フコトヲ考慮致シマス關係上、
平和產業ノ方ノ原料輸入ガ或ル程度ノ不便
ヲ餘儀ナクセラレテ居ルコトハ御示ノ通リ
デゴザイマシテ、非常ニ不當ナル苦境ニ立
ツト云フヤウナコトノナイヤウニ、其原料
ノ配給ヲ公平ニスルヤウニ努力ヲ致シマス
ル考デゴザイマス
更ニ軍需品ノ民間ニ對スル註文ガ從來大
キナ工業家ノ方ニ偏在スルノ形ガアルコト
ハ遺憾デアルト云フ御意見デゴザイマシタ
ガ、今後ニ於キマシテハ、能ク陸海兩省ト
協力致シマシテ、中小工業ノ方々ニモ公平
ニ其註文ヲ配分スルト云フコトニ、商工省ハ
全力ヲ盡シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
是ハ綿製品ニ付テ特ニ御示ノヤウナ傾向ノ
アリマシタコトヲ遺憾ト致シテ居ルノデゴ
ザイマスガ、綿製品以外ノ、或ハ鐵ノ關係
ノ小サナ工業者ナドハ、工業組合ヲ作ラセ
マシテ、サウシテ軍需品ノ註文ニ付キマシ
テハ、商工省ガ間ニ入リマシテ、遺憾ナキコ
トヲ期シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス
最後ニ「ステープル·ファイバー」ニ付キマ
シテ、色々御意見ガゴザイマシタガ、商工
省ト致シマシテ見ル所ヲ率直ニ此機會ニ申
上ゲテ置ク方ガ宜カラウト考ヘルノデアリ
や 、「ステープル·ファイバー」ノ品質ト
云フモノニ付キマシテハ、從來兎角ノ批評
ノアリマシタコトハ、能ク承知ヲ致シテ居
ルノデゴザイマスケレドモ、御承知ノ通リ
日進月步ノ勢ヲ以テ其品質ニ於キマシテモ、
段々改善セラレテ居ルヤウニ、商工省ト
シテハ認メテ居ルノデゴザイマス、殊ニ政
府ノ實施シテ居リマス所ノ綿絲トノ混紡品
ニ付キマシテハ、相當程度ノ强力ヲ持ッテ居
ルモノデアルト、私共ハ考ヘテ居ルノデゴ
ザイマシテ、サシタル心配ハ要ラヌヤウニ
當局トシテハ考ヘテ居ルノデアリマス、尤
モ國內需要ノ中ニ於キマシテ、「ステープ
ル·ファイバー」混紡デハ役ニ立タナイ特殊
ノ物ニ付キマシテハ、例外ヲ設ケマシテ、例
ヘバ花筵ノ經絲デアルトカ、或ハ其他「ス
テープル·ファイバー」ヲ入レルコトヲ不手
際ト致シマス物ニ付テハ、例外ヲ設ケテ居
ルヤウナ次第デゴザイマス、價格ノ點ニ付キ
マシテモ、只今御示ノヤウナ事實ハゴザイ
マスケレドモ、唯綿絲ガ最近格段ニ格安ノ今
日ニ於キマシテハ、綿布ニ比較致シマシテ、
「ステープル·ファイバー」ノ製品ガ若干高
イノデアリマスケレドモ、御承知ノ通リ今
後我國ニ於キマシテ「パルプ」ノ自給計畫ガ
確立致シマスルト共ニ、價格モ漸次低下致
シマスルコトヲ、當局トシテハ期待致シテ居
ルノデアリマシテ、コヽ暫クハ日支事變ト
云フ重大ナル時期ニ必要ナル物ノ輸入力ヲ
確保スル意味ニ於キマシテ、國際收支ノ適
合ノ見地カラ見マシテ、個人經濟ニ於テ或
ル程度ノ御不便ヲ忍ンデ戴キタイト云フコ
トガ、商工省ノ今日ノ考デアルノデゴザイ
マス、詳細ナコトハ又委員會ニ於キマシテ、
御答辯致スコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=18
-
019・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 太田政府委員
〔政府委員太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=19
-
020・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 渡邊サンノ貿易
ニ關聯シタ爲替ノコトニ付テノ御質問ニ御
答申上ゲマス、旣ニ度々申上ゲマシタ通リ
爲替ヲ維持シテ行クト云フコトハ、只今ノ
經濟政策ノ根幹ニナッテ居ルノデアリマス、
其意味ニ於キマシテ、今迄ノ自由ノヤリ方
ニ制限ヲ加ヘ、遺憾ナク此時局ニ對應スル
爲ニ、必要ナ品物ヲ得タイ、斯ウ云フ狙ヒ
ノ下ニ計畫ヲ立テマシテ、各種ノ品物ニ付
キ、軍需品、民需品ヲ問ハズ、其計畫ノ下
ニ輸入關係ヲ處理シテ居ルコトハ、只今木
暮君カラ言ハレタ通リデアリマス、而シテ
此事柄ガ平和產業ニ御迷惑ニナル點ノ少ク
ナイト云フコトモ承知シテ居リマス、併シ
問題ハ輸出貿易ノ伸張スベキコト、竝ニ渡
邊サンノ極力力ヲ入レテ御述ニナリマシタ、
中小商工業ノ爲ニ圖ラナケレバナラヌト云
フコトハ、申ス迄モナイコトデアリマス、
此意味ニ於キマシテ割當テラレタモノデア
リマシテモ、サウ云フ點ニ留意致シマシテ
處理シテ居ルノデアリマス、御引例ニナリ
マシタ棉花ノ如キニ於キマシテモ、商工省
ニ於テ臨時措置法ニ依リ許可ヲサレタ場合
ニ於キマシテハ、大藏省トシテハ速ニ其處
理ヲシテ居ル譯デゴザイマシテ、大藏省デ
手ヲ加ヘル部分ハ斯ウ云フ點ニ於テハ毛頭
ナイノデゴザイマス
第二ニ滿洲ノ關係、北支ノ關係ニ付テノ
御質問ガゴザイマシタ、此點ハ所管省トシ
テ色々御話申スベキコトガゴザイマセウガ、
大藏省ノ爲替政策ト申シマシタナラバ、滿
洲ト日本トノ關係ハ一體トナッテ爲替ヲ考
ヘテ居リマス、日本ノ輸出輸入、滿洲國ノ
輸出輸入、日本ノ貿易外ノ受取勘定、支拂
勘定、滿洲國ニ於ケル貿易外ノ受取勘定、
支拂勘定、之ヲ日滿一體トシテ出ガ幾ラニ
ナル入ガ幾ラニナルト云フ立前ノ下ニ、爲
替政策ヲ立テヽ居ルノデゴザイマス、此點
ニ於キマシテハ日本ノ圓ト滿洲國ノ貨幣價
値トノ關係ハ同率ニアリ、一體ヲ成シテ居
ルノデゴザイマシテ、此點ニ於テ爲替政策
ヲ遵奉シテ居ルノデゴザイマス
北支ニ付キマシテハ事未ダ確定スル所マ
デ行ッテ居リマセヌガ、御案內ノ通リ北支ヲ
一ツノ地域ト見マシテ、此處ニ入ルモノガ
幾ラアル、出ルモノガ幾ラアル、貿易外ノ
勘定ガ幾ラアルト云フコトヲ考ヘテヤラナ
ケレバナラヌノデゴザイマスガ、貨幣制度
ト致シマシテモ、近ク實現ニ移ルコトニナ
リ、又銀行トシテハ旣ニ創立總會ヲ開キ、
近ク開業スルコトニナッテ居ル中國聯合準
備銀行ニ於キマシテ、爲替ノ政策ヲ統一ス
ルコトニナッテ居リマスルガ、我國ノ圓トノ
關係ニ於テドウナルカト云フコトニ付キマ
シテハ、最モ注意ヲ要スル點カト思ヒマス、
勿論日本ガ唯圓ノ範圍ヲ擴張シ、之ヲ抱キ
込ムト云フダケデ問題ガ濟ムノデハゴザイ
マセヌ、弗デ買ッタ品物ヲ北支那へ賣ル、ソ
レガドウ云フ金デ入ッテ來ルカト云フヤウ
ナ關係、竝ニ今マデ支那國內ニ於テ中支カ
ラ北支へ來タモノガアッタ、北支カラ中支ヘ
出タモノガアッタガ、サウ云ッタモノガ新シ
キ今度ノ經濟機構ノ下ニ於テドウ云フヤウ
ニ經濟ガ發展シテ行クカト云フコトハ、別
ニ考ヘナケレバナラヌ點デゴザイマス、申
上ゲル迄モナク、此北支ヲ一體トシタ經濟
ノ伸ビ行ク爲ニ、爲替ノ關係ニ於キマシテ
干、日本ノ圓トノ關係ニ於キマシテ、此北
支ノ經濟開發ノ線ニ沿ウテ、日本ノ爲替政
策ヲソレニ合セテ行フト云フコトハ申上グ
ル迄モアリマセヌ
關稅其他ノ點ニ付キマシテハ、所管省モ
違ヒマスルノデ私カラ申上ゲル段デハゴザ
イマセヌ、簡單ニ御答申上ゲマス(拍手)
〔政府委員犬養健君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=20
-
021・犬養健
○政府委員(犬養健君) 渡邊サンノ御質疑
ニ對シマシテ簡單ニ遞信省ガ從業員ニ對シ
マシテ「ステープル·ファイバー」混用品ヲ
服ニ用ヒルコトニ至リマシタ經緯ヲ申上ゲ
マス、渡邊サンノ御質疑ノ通リ、遞信省ニ
於キマシテハ、從業員ニ二割ノ混用品ヲ實
施スルコトニ致シマシタ、實施スルニ至リ
マス迄ニ〓究シタコトガ二點ゴザイマス
ソレハ第一ハ水ニ弱イト云フコト、第二
ニハ耐久力ガ如何デアラウカト云フ點デゴ
ザイマス、水ニ弱イノデハナイカト云フ點
ニ付キマシテハ、何分ニモ下級ノ激シイ勞
働ヲスル從業員ノコトデアリマスカラ、外
套ニ用ヒルコトハ今ノ所止メテ居リマス、
次ニ耐久力ニ付キマシテハ、本物ヨリハド
ウモ弱イコトハ事實デアリマス、併シ經濟
問題カラ申シマスルト、混用品ヲ用ヒマス
ト大體一著分ノ一割ノ節約ガ出來ルノデア
リマス、此一割ノ節約ガ出來ルト云フコト
カラ睨ミ合セマシテ、多少耐久力ガ弱クテ
モマア用ヒテ惡クアルマイ、殊ニ國策ニ順
應スルト云フコトデアルカラト云フノデ、
之ヲ採用致シタノデアリマス、斯樣ナ次第
デアリマシテ、今後トモ御質疑ノ趣旨ヲ能
ク體シマシテ、十分愼重ニ考慮ヲ絕エズ致
シテ參リタイト思ヒマス、一寸經緯ヲ御報
告致シタ次第デゴザイマス(拍手)
〔政府委員勝田永吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=21
-
022・勝田永吉
○政府委員(勝田永吉君) 巡査ノ、服地ニ
「ステープル·ファイバー」ヲ混用シタモノ
ヲ用ヒル件ニ付キマシテ、簡單ニ御答申上
ゲマス、「ステープル·ファイバー」混用ト
云フコトハ今日國策トシテ決定シテ居ルノ
デアリマス、隨テ內務省トシテモ此國策ニ
順應致シマシテ、巡査ノ制服ニ付キマシテ
モ、混用品ヲ用ヒルコトニ各地方官憲ニ示
達致シテ居リマス、唯先程モ犬養政府委員
カラ申サレタ通リニ、雨露ニ暴サレル特殊
ノ被服ニ付テハ、暫ク之ヲ見合セテモ宜イト
云フ旨ヲ併セテ通達シテ居ルノデアリマス、
具體的ニ申シマスレバ、外套デアリマストカ、
帽子ニ付チハ特別ニ考慮致スコトニ致シマシ
テ、大體ニ於テ國策ニ順應致シマシテ、二
割程度ノ「ステープル·ファイバー」混用品
ヲ用ヒルコトニ致シテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=22
-
023・渡邊玉三郎
○渡邊玉三郞君 只今色々御鄭重ナル御答
辯ヲ賜リマシタケレドモ、私ノ質疑ノ要點
ヲ外レテ居ルコトヲ遺憾ト致シマスガ、何
レ詳細ハ委員會等ニ於テ承ルコトニ致シマ
シテ、私ハ此程度デ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=23
-
024・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 田中源三郞君
〔田中源三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=24
-
025・田中源三郎
○田中源三郞君 只今御提案ニナリマシタ
法案ニ對シマシテ、其運用ニ關シテ重要ナ
ル數點ヲ御伺致シタイト思ヒマス、昭和十
二年法律第九十二號ノ目的ナルモノハ、我
國ノ對外貿易ガ我國ノ發展上ニ其基礎ヲナ
スモノデアルト云フ點ヨリ考ヘテ、特ニ重
要ナル事項ト私ハ考ヘルノデアリマス、隨
テ昨年ノ議會ニ提案ニナリマシタ輸出入品
等ニ關スル臨時措置法ノ審議ニ當リマシテ、
私ハ政府ニ對シテ、是ガ官僚ノ獨善的ナ統
一法デ、急速ナル爲替管理ニ基ク極端ナル
强化政策ヲ採ラルヽコトニ相成リマスレ
バ、我國ノ對外貿易ハ輸出入トモ極度ニ萎
縮致シマシテ、折角過去ニ於テ獲得致シマ
シタ我國ノ海外市場ハ、外國ニ侵犯サレル
コトニナルノミナラズ、將來之ヲ囘復スル
コトハ容易ナラザルコトデアルト云フコト
ヲ申シマスト共ニ、爲替管理ニ依リマス所
ノ國內物貨ノ不足ヲ來シマシテ、是ガ消費
ニ基ク物價ノ昂騰ヲ促シテ、國民生活ノ安
定ヲ脅カスニ至ル虞ガアルト考ヘマス
ルガ故ニ、政府ハ特ニ此點ニ留意ヲ致シ
マスト共ニ、民間ノ實業企業團體ト共ニ、
眞ニ國難打開ノ見地ニ立ッテ國家的產業
ノ下ニ自治ヲ以テ之ヲ打開シ、政府又其
指導監督ヲ誤ルコトナキヤウ、私共ハ十
分警告ヲ致シテ置イタ次第デアリマス、
然ルニ昨年ノ九月以降本案ガ實施サレマシ
テ、現今ニ至ルマデノ運用ノ跡ヲ見マスル
場合ニ於キマシテハ、洵ニ私共ハ遺憾ノ點
ガ多イコトヲ見ルノデアリマス、其結果ト
致シマシテ、勿論國際收支ノ均衡上、爲替
相場ノ維持ヲ致スト云フコトハ重大ナル點
デアリマスルガ、近來我國ノ貿易ノ輸出入
ハ非常ニ低落ノ一途ヲ辿ッテ居リマス、其
反面ニ内地ニアリマスル所ノ物ノ價ハ〓騰致
シテ來テ居リマス、亞米利加ニ於テモ、或ハ
英國ニ於テモ、我國ヨリ物價ノ高低ニ於テ
一割乃至二割ノ開キヲ見セテ居リマス、卽チ
今日日本ハ亞米利加ヨリ、或ハ英國ヨリ一
〇%或ハ二〇%物價高ノ狀態ニアルコトハ
明カデアリマス、又曾テ大藏大臣ハ、成程爲
替水準維持ノ爲ニハ爲替管理ヲ强化致スケ
レドモ、之ニ依ッテ直チニ我國ノ對外貿易
ガ極端ナル萎縮ヲ致スト云フコトハナイ、
又左樣ニ皆樣ガ心配サレル程我國ノ物價ハ
〓騰スルモノデハナイ、斯樣ナ言葉ヲ申サ
レタコトヲ私共承知致シテ居ルノデアリマ
スガ、果シテ大藏當局ガ申サレタ其言葉通
リニ、今日ノ我國ノ經濟界、我國ノ貿易ノ
現情ガアルデアラウカ、私共ハ洵ニ此大藏
大臣ノ言葉ト綜合致シマシテ、今日ハ遺憾
ノ感ヲ持ツ者デアリマシテ、現情ノ儘我國
ノ對外貿易ガ進ンデ參リマスナラバ、私共
ハ前途洵ニ心痛ニ堪ヘナイ狀態デアルト思
フノデアリマス、斯ノ如キ貿易上ノ減ヲ來
スト云フコトハ、單ニ爲替水準ヲ維持スル
ト云フコトノ强化政策ノミニ於テ來ッタモ
ノデアルト、大藏大臣ハ申サレルノデアリ
マスケレドモ、私共ガ考ヘテ見マスルニ、
平時ニ於キマシテ我國ノ物資原料ノ完全ナ
ル調査ヲ遂ゲテ置イテ、一朝事アル場合ニ
ハ、之ニ對スル所ノ十分ナル用意ガ政府當
局ニ缺ケテ居ッタコトハ、是ハ政府ガ如何ニ
申サレテモ、缺ケテ居ッタ點ガアルト私共
ハ信ズルノデアリマス、又隨テ此缺ケテ居
ル點ヲ對外貿易ノ上ニ於テ、其足ラザル所
ヲ補フヤウナ用意ガ政府ニ缺ケテ居ッタト
云フコトヲ、私ハ申上ゲルノデアリマス、
政府ハ長期持久戰ニ對シテ國內資源、民間
原料、或ハ軍需資源ニ對シテ平素ヨリ能ク
調査致シテ、一朝有事ノ際ニ對應致スベキ
所ノ方策ヲ樹立致シテ置クベキ筈デアルノ
デアリマス、併ナガラ政府ニ於テ左樣ナ用
意ガ缺ケテ居ック結果、今次ノ事變ニ當リ
マシテハ、一ツ〓〓其日暮シ的ナ政策ヲ出
シテ行キマシテ、サウシテ一方ニハ、唯軍
備資材ガ多ク要ル爲ニ、軍備資材ノ輸入ガ
殖エテ行クノダカラ、貿易ノ方ハ大キナモ
ノヲ頭カラ其輸入ヲ抑ヘテ行クヨリ外仕方
ガナイト云フヤウナ、其日暮シ的ナ政策ヲ
執ラレルカラ、今日ノ我國ノ貿易ハ益〓萎
縮一點張リノ低落ヲ迪ッテ行クト云フコト
ニ相成ッテ來タノデアリマス、此點ニ付テ
ハ何ト政府ガ仰シヤッテモ、明ニ政府ノ失
態デアリ、政府ノ用意ノ缺ケテ居ルト云フ
コトヲ申上ゲルノデアリマス(拍手)ソコデ
私ハ今次ノ事變ニ對シテ、此法案ヲ見マス
ル前ニ、度々本會議、或ハ豫算委員會ニ於
テ、大藏當局ナリ、或ハ商工當局ハ、ドウ
モ我國ノ爲替水準ヲ維持シテ行クト云フ點
カラ考ヘテ見ルナラバ、斯ウスルヨリ致シ
方ガナイト云フ答辯ヲ何時モ爲サルノデア
リマス、私ハ昨年七月ノ臨時議會ニ於テモ
申上ゲテ居ル、此輸出入ニ對スル臨時處置
法ノ委員會デモ申上ゲテ居ル、何レ斯ウ云
フ時ガヤッテ來ル、或ハ長期抗戰ヲヤッテ行
クト云フヤウナ時ニ至リマスナラバ、豫メ
爲替相場ヲ維持スル爲ニ、一方ニ必要ナル
所ノ國內ノ工業原料ノ輸入ヲ極度ニ防遏ス
ルダケデハイケマセヌ、海外ニ居ル所ノ外
交官ヲ動員シ、民間ノ實業家ト相提携シテ、
物ノ經濟ニ依ッテ行クト云フコトヲ致サナケ
レバ、到底十分ナル所ノ補給ヲ致スト云フ
コトハ出來ナイ、益〓日本ハ孤立シタ所ノ政
策ニ陷ッテ行クノデアルト云フコトヲ屢〓〓申
上ゲテ居ルノデアル、若夫レ政府ガ昨年來
物ノ經濟ニ對シテ亞米利加及ビ印度、其他ノ
各國ニ向ッテ民間竝ニ外交官ヲ極度ニ動員ヲ
致シテ、其國民ニ今次事變ニ對シテ日本ガ
執ッテ居ル政策ハ正シイノデアル、日本ハ正
シイ事ヲヤッテ居ルノデアルカラ、日本ニ對
スル所ノ貿易ニ對シテハ、君ノ方ハ心カラ援
助シテ戴キタイト云フ所ノ諒解ヲ求メテ行
キマスナラバ、卽チ爲替ノ水準ヲ維持シテ、
是ハ直チニ決濟ヲセズトモ、「クレヂット」ヲ
組ムト云フコトガ出來ルノデアリマス、
又延取引ガ出來ルト云フコトモアルノデア
リマス、現ニ亞米利加ニ於テモ、印度ニ於
テモ延取引ヲスルト云フコトハ、其國ノ
實業家ト我國ノ當業者トノ間ニ話ガアッタ
ノデアリマス、私ハ此點ニ付テ警〓ヲ致シ
タノデアル、當時吉野商工大臣ハ御說御
尤デアル、直チニ左樣ニ致スヤウニ考ヘル
ト云フコトヲ、委員會ニ於テ言明致シテ置
キナガラ、之ニ對シテ何等ノ措置モ御執ニ
ナッテ居ラナイノデアル(「ヒヤ〓〓」)現在
印度ニ於テハ延取引ヲヤッテモ宜イト云フ
コトヲ言ッテ居リマス、サウ云フコトニ對
シテ政府ノ御努力ガ足リナイト云フコトノ
結果ガ、今日集ッテ來テ益〓工業原料ニ致シ
マシテモ、軍備資材ニ致シマシテモ、國內
ニ輸入致スコトニ非常ニ困難ヲ感ジテ來テ
居ル狀態デアルノデアリマス、私ハ政府ガ
是等ノモノニ對シテ努力ヲ拂ッテ戴カナカッ
クト云フコトハ、洵ニ遺憾ニ堪ヘナイノデ
アリマス(拍手)
尙ホ私ガ申上ゲタイコトハ、亞米利加ニ
於キマシテモ、棉ノ如キハ非常ニ豐作デ
アッタ、豐作デアッテ亞米利加ノ百姓ハ困ッテ
居ル、ドウカシテ之ヲ賣リタイ、斯ウ云フ
コトヲ言ッテ居ル、所ガ日本ハ日本ノ貿易
ノ非常ニ主要ナ部分ヲ占メテ居ル綿布ノ根
源デアル此棉ハ、大抵ハ一年間分ヲ〓ネ纏
メテ亞米利加等カラ買ッテ置クノデアル、斯
ウ云フ安イ時ノ「チャンス」ヲ捉ヘテ棉ヲ買ッ
テ置イテ、サウシテソレヲ漸次綿製品トシ
テ海外ニ賣出シマスカラ、英國ノ「ランカ
シャ」紡績ヲ壓迫致シテ、今日日本ニ入ッテ參
リマス棉ノ六割ヲ外國ニ出シテ居ルト云フ
ヤウナ、殷盛ヲ極メタ狀態ニマデ此綿業界
ガ發達シテ來タノデアル、又亞米利加ニ對
シテ日本ハ片貿易デアル、日本ハ亞米利加
カラ輸入バカリシテ居ル、日本カラ買ッテ
吳レル所ノ主要ナル部分ハ生絲ダケデア
ル、然ラバ此片貿易ニ對シテ、何故亞米利加
ニ向ッテ「バーター」ヲ採ッテ行カナカッタカ、
求償主義ハ斯ウ云フ時ニ用ユベキモノデハ
ナイカ、外交官ハ一體何ヲシテ居ッタノダ、商
務官ハ一體何ヲシテ居ッタノダ(「ヒヤ〓〓」)
一面ニ於テハ濠太刺利ニ對シテハ「バー
ター」ヲ採ラレ、英國ニ於テハ「オッタワ」
會議以來關稅ノ障壁ヲ設ケテ、我國ノ貿易
品ハ平素デサヘモ是ガ輸入ヲ抑壓サレル現
狀ニアル時ニ當ッテ、サラデダニ國家ガ斯
樣ナ事態ニアル場合ニ於テハ、少クトモ政
府自ラ民間ト協力ヲ致シテ、亞米利加ニ
向ッテ逆ニ日本カラ「バーター」ヲ採ルベキ
筋合ノモノデアルト思フ(拍手)總テ政府ガ
努力ヲ拂ハズシテ置イテ、唯有ルダケノ金
ヲ持ッテ居ッテ、貿易ノ總額ヲ決メテ置イ
テ、戰爭ガ長延イテ金ヲ拂ッテ行ケバ、金
ガ足リナクナッテ、爲替維持ノ上ニ於テ困
ルカラ、一方ヲ削レ、一方ヲ削レト云フヤ
ウナ、日和見主義ナ政策ヲ採ラレル、斯樣
ナ政策ナラ何人ト雖モ執レル、斯ウ云フヤ
ウナコトヲナサッテ置イテ、マダ〓〓平然ト
シテ今日爲替水準維持ノミニ汲々トシテ、
貿易ノ進展策ニ對スル所ノ政府ノ所信ト云
フモノハ、一遍ダニ本會議竝ニ豫算總會ニ
於テ發表サレタコトガナイヂヤアリマセ
ヌカ(拍手)私ハ今日斯樣ナコトヲ考ヘテ見マス
ル時ニ於キマシテ、政府ニ對シテ特ニ申上
ゲタイコトハ、今日ハ非常ニ外國ノ感情モ
惡クナッテ居ル、先程私ガ申シタ「クレヂットL
設定、或ハ延取引ノ問題ノアッタ時ニハ、亞
米加利ニ於テモ、印度ニ於テモ其通リデ
アッタ、所ガ「パネー」號事件ガ發生致シテ
來テ、ドウモ個人トシテノ延取引ハヤッテ
モ宜イガ、之ヲ「クレヂット」ヲ組ムトカ、國
トシテ新ナ信用ノ下ニ物資ヲ供給スルト
云フコトハ、困難ダト云フコトヲ言ッテ居
ル、斯ウ云フヤウニ段々感情ガ惡クナッテ
行ク、或ハ貿易外ノ收支カラ見マシテ
〓、今日正シイ所ノ日本ノ信用ヲ誤解シ
テ居リマスル爲ニ-貿易外ノ收支ノ最
モ多イ所ノ金ハ何デアルカト云フト、觀
光客ガ日本ノ內地ニ落ス金デアル、約一億
カラ落ス所ノ金ガ-本年ハ何人程入ッテ
來タカ、殆ド觀光客ト云フ者モナイノデ
アリマス、斯樣ニ貿易外ノ收支ヲ見マシテ
モ、或ハ又今日極端ナ爲替ノ管理ノ下ニ於
キマシテ、我國內ニ於テ製品サレル所ノ品
物ハ、從來ノ平時ニ於キマスル製品ヨリモ、
非常ニ生產「コスト」ガ高クナッテ來テ居ル、此
生產「コスト」ノ高クナッテ來テ居ルコトガ、對
外貿易ノ上ニ於テ非常ナ不利ヲ來シテ居ル
所ノ原因デアル、今日ハ斯樣ニ生產「コストㄴ
ガ高クナッテ來テ、對外貿易-我國ノ品物
ヲ輸出スル場合ニ不利ナ條件ニアリ、外國
ノ感情モ好クナイ、國內ハ公債ヲ增發致シ
テドシ〓〓ト軍需工業ニ注ギ込ンデ行クト
云フヤウナ時ニ對シテ、此儘デ行キマスル
ナラバ、將來假ニ平和ガアルト致シマシテ
モ、今日ノ此日本ノ國ガ一度持ッタ所ノ世界
ノ貿易市場ヲ維持シテ行クト云フコトハ、
洵ニ困難ノ狀態デアルノデアリマス、隨テ
政府ハ將來我國ノ貿易ノ振興政策ニ對シテ
ハ、如何ナル政策ヲオ持チニナッテ居ルカ、
之ヲハッキリト此議場ニ於テ御示シヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス(拍手)
次ニ私ガ申上ゲタイコトハ爲替管理ノ問
題デアリマス-大藏政務次官御出席ニナ
リマシタカ(「呼ンデ來イ」「大藏大臣ヲ呼べ」
ト呼フ者アリ)私ハ政府委員デハ-大藏
次官若クハ大臣デナイナラ御免ヲ蒙リタイ、
何故ナラバ私ノ要求スルコトハ悉ク話ガ變ッ
テ來ルノデアリマシテ、一定ノ信念ノアル
御答辯ヲ得ラレナイカラ、大臣若クハ政務
次官ノ御出席ヲ先程カラ要求致シテ居ルノ
デアリマス、爲替管理ノ問題デアリマスガ、
先程渡邊サンガ爲替管理ノコトニ付テ御話
ガアリマシタケレドモ、爲替管理ノ問題ハ
屢〓論ジラレテ居ルノデアリマスケレドモ、
爲替ノ問題ニ付テハ商工省ノ方デハ、斯ウ
云フ風ナモノニ對シテハ是ダケノ許可ヲ致
シテモ宜カラウ、之ニ對シテ大藏省ノ爲替
局ノ方デハ、イヤ是ハドウモイケナイ、斯
ウ云フ風デ何時デモ統一シタ所ノ方針ノ下
ニ許可ガナイノデアリマス、是ハ何故カト
申シマスルナラバ、大藏省ト商工省トノ二
本立デ行ッテ居ル、二本立デアル、譬ヘテ申
シマスルナラバ印度ニ於テ棉ヲ買ッタ所ガ、
百圓ノ棉デアル、此百圓ノ棉ヲ引取ラナケ
レバナラナイ、其時ニ大藏省ノ爲替局長ニ
引取方ヲ許シテ貰ヒタイト云フト、ソンナ
馬鹿ナ高イ棉ヲ引取ルト云フコトハイカヌ
ヂヤナイカ、是ハ許スコトガ出來ナイ、斯
ウ爲替局長ガ言フ、商人ハ前以テ百圓ノ棉
ヲ約束シテ前ニ買ウテ居ルノデアル、之ヲ
引取ラヌト云フコトニナリマスト、印度ノ
商人ハ日本ハ高イ所ノ物ヲ買ッテ居ルカラ
シテ、是ガ値ガ下ッタカラシラ引取ラナイデ、
此約束ヲ「キヤンセル」スルノダト云フコトデ、
印度ハ非常ニ怒ッテ、サウシテ日本ニ對スル
所ノ綿布ノ輸入ヲ止メロト云フ所ノ「ボイ
コット」ヲ印度ノ商人ガヤリ出シタ、仕方ガナ
イカラシテ漸ク其事情ヲ說イテ、印度ニ向ツ
テ諒解ヲ得タ次第デアル、斯樣ニ何時モ爲
替許可ニ對シテ、貿易ノ本源ヲ知ラズシテ、
單ナル金其モノニ對シテ許可ヲスル、一方
ニ於テハ物ノ經濟ニ依ッテ物ヲ生ミ、信用ニ
依ッテ物ガ生ムト云フ方針モ採ラナイ、又只
今申シタ通リニ爲替其モノニ對シテハ唯額
サヘ抑ヘテ行キサヘスレバ宜イト云フヤウ
ナ政策ヲ採ラレル爲ニ、丁度商工省ト大藏
省ト二本立ノ方法デ行ッテ居ル、此二本立ガ
今日ノ我國ノ貿易伸展ヲ非常ニ阻碍致シテ
居ル原因デアル(拍手)之ヲ改メテ統一ヲ致
シテ、民間ノ貿易業者或ハ機業家、或ハ商
エ、農林、大藏ノ爲替局、貿易局ヲ打ッテ
丸ト致シタ貿易廳ナルモノヲ設置致シテ、
之ヲ綺制ヲ致シテ、決ッタ方針ノ立ッタ、貿
易ノ基礎ノ上ニ於ケル所ノ命令ヲ出ス、總
括的ナ廳ヲ拵ヘテ、サウシテソレニ依ッテ
貿易ノ振興ヲ促シテ行カナカッタナラバ、益〓
跛行的貿易ニナリ、益、く是等ノ事務當局間ノ
連絡不統制ニ依ッテ、營業者ガ迷惑ヲ致シ
テ、私ハ日本ノ貿易業ガ今日ヨリ一層不振
ヲ來スモノデアルト思フノデアリマスルガ
(拍手)商工當局竝ニ大藏當局ハ何等カ此間
ニ於テ御協議ノ上、之ニ對スル所ノ政策ヲ
御立テナサル所ノ考ヲ持ッテ居ラレマスル
カ(拍手)若シ之ニ對スル所ノ御準備ガア
リマスルナラバ、日本ノ貿易業者ハ非常ニ
今日迷ッテ居ル狀態デアリマスルカラ、明
ニ議場ヲ通ジテ國民ニ御示ヲ願ヒタイト存
ズルノデアリマス(拍手)
私ハ第三ニ御伺致シタイ所ノ問題ハ、是
ハ大藏、商工當局ヲ通ジテ總理ニ御話ノ
上、適當ナル機會ニ御囘答ヲ願ヒタイト思
ヒマスルコトハ、本法存續ノ問題デアリマ
ス、此本法存續ノ問題ハ、昨年ハ此法律案
ハ臨時措置法トナッテ居ッタノデアリマス、
而シテ斯樣ナ法律案ガ出マシタル場合ニ於
テ、一體事變終了トハ如何ナルコトヲ指サ
スノデアリマスルカト言ッテ、相當議論ニ
ナリマシタ所ガ、政府ハ閣議ヲ開イテ將來
勅裁ヲ經テ、兩國間ノ和平ノ協定ヲ致シ
テ、用兵作戰ノ要ナキニ至ッタ時ニ、此法
律ヲ廢止スルノデアル、時期トハソレヲ指
スモノデアルト言ハレタノデアリマス、併
ナガラ今日考ヘテ見マスルナラバ、成程蔣
政權、國民政府ガ支那ニアッテ、サウシテ
國民政府ガ參ッテシマッテ、日本ト和平協
定ヲ致スト云フナラバ、或ハ先般閣議ニ於
テ統一サレタ所ノ御答辯ノ趣旨ニ副フカモ
知レナイト思ヒマスルガ、今日我ガ政府ハ
蔣政權ヲ認メナイト云フコトヲ申シテ居ル
ノデアリマス、然ラバ新ニ生レテ出テ來ル
所ノ新政權ヲ對手ト致シテ、和平協定ヲ致
サナケレバナラヌト云フコトニナル、其新
政權ヲ對手トシテ和平協定ヲ致スト云フコ
トニ致シマシテモ、中々相當長イ間ノコト
ト私共ハ思ハレル、又陸軍大臣ハ貴族院竝
ニ衆議院ニ於テ、相當支那ニ於テハ長期ニ
亙ッテ駐兵用兵ノ要アリト申シテ居ルノデ
アリマス、私ハ本法ガ臨時措置法デアリ、
而シテ國內ノ貿易業者ニ對スル此法ノ實施
期間ト云フモノガ、何時マデアルノカト云
フヤウナ點ニ付テ非常ニ貿易業者ガ迷ッテ
居ルト思フノデアリマス、今日ニ於キマシ
テハ所謂和平協定ノ行ハレル時期-本法
ヲ廢止サレル所ノ時期ト云フモノノ見透シ
ガ付カヌノデアリマス、此際政府ハ新ナル
所ノ見解ヲ以テ何時ニナレバ-ドウシタ
時ニ於テ所謂和平協定ガ出來ルカ、ドウシ
タ時ニ於テ此法律案ガ廢止サレルカト云フ
所ノ時期ヲ明ニサレル要ガアルマイカト思
フノデアリマス、此點ニ付テ政府委員ヨリ
總理大臣ニ御話ノ上、私ハ總理ヨリハッキ
リト御囘答ヲ承リタイト思フノデアリマ
ス
次ニ私ハモウ一點御伺致シタイノデアリ
やく、本法案ニ於テ輸入制限ヲ受ケ、或ハ
禁止サレタ所ノ品物ガアルノデアリマス、
私ハ質疑ヲ致ス冒頭ニ於テ申シタノデアリ
マスガ、前議會ニ於テ臨時措置法ヲ審議致
ス場合ニ必ズヤ物價ノ昂騰ヲ來スカラ、消
費ノ統制ヲ行ッテ、物價ノ昂騰ヲ抑壓シテ、
國民生活ノ不安ヲ除クヤウニ致シテ貰ヒタ
イト云フ我黨ノ附帶決議ヲ付ケテ本案ニ贊
成ヲ致シタノデアリマス、所ガ之ヲ見マス
ルト、輸入制限ノ現行ノ二條第二項ニ於テ
「製品ノ配給、讓渡、使用又ハ消費ニ關シ必
要ナル命令ヲ爲スコト」又改正ノ第二條ノ
三ノ方ニハ「物品ノ需給關係ノ調整ニ關シ
必要ナル決定」トアルノデアリマス、是ハ
私ニハ洵ニ廣イ意味ノヤウニ考ヘラレテ、
一寸受取リ惡イ點ガアルノデアリマスル
ガ、政府ハ此法律ニ依リマシテ、今日迄ニ
於キマシテ、是等ノ物價ノ統制ヲサレタコ
トガアルカドウカ、又物價ノ統制ヲサレ-
此法律ヲ規定致ス上ニ於キマシテハ必ズヤ
物價統制ヲ致サナケレバナラヌコトト思フ
ガ、消費ノ統制、物價ノ統制ガ、國民ニ與
ヘタル所ノ影響等ガ如何ナル事態ニナッテ
居リマスルカ、詳細ニ御示ヲ願ヒタイト思
フノデアリマス、又私ガ更ニ御伺致シタイ
コトハ、今後一般的ニ適用ヲ受ケル所ノ物
ノ上ニ於キマシテ、ソレ等ノモノガ評議
會、或ハ協議會ト云フヤウナモノニ掛ケラ
レテ、ソレニ依ッテ物價ガ統制サレルト云
フコトデアリマスルナラバ、是ハ半面ニ强イ
「トラスト」ヲ以テ强化サレタル「カルテル」
ヲ施行サレルモノト考へテ行カナケレバナ
ラヌ、此「カルテル」ガ益〓物價ヲ騰貴致シテ來〓
ルダラウト私ハ思フノデアリマス、私ノ此
質疑ニ對シテ、政府ハ民間ノ自治ニ於テ物
價ヲ抑制シ、サウシテ消費ノ統制、配給ノ
統制ヲ致シテ行クノデアッテ、之ヲ監督
致シテ行クカラ、決シテ御心配ハナイト云
フ御答辯ヲ爲サルカモ知レナイト思フノデ
アリマス、併ナガラ昨年臨時措置法ヲ施行
サレテ以來、今日マデハ、先程渡邊君ノ言
ハレタ通リ、冬ニ浴衣ニ羽ガ生エテ飛ブ、晒
ノ布ガ數倍ニモ値上リヲスルト云フ風デ、
此法ノ中ニ一種ノ拔ケ道ガアルノデハアル
マイカト私ハ思ヒマス、眞ニ配給ノ統制、
消費ノ統制、價格ノ統制ガ之ニ依ッテ完全ニ
行ハレテ行クカドウカ、本法ノ目的ヲ達成
シヨウト思フナラバ、ソコニ向ッテソレガ完
全ニ行ハレテコソ、目的ガ達成サレルト私
ハ思フノデアリマス、之ニ對シテ政府ノ所
見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、以上私
ノ質疑ヲ致シマシタ四項目ニ亙ッテ、出來得
ル限リ詳細ナル御答辯ヲ煩ハシタイト存ズ
ルノデアリマス(拍手)
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=25
-
026・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 田中君ノ御質
問ニ御答ヲ申上ゲマス、第一點ハ我國ノ貿
易ガ、著シク入超ニアル國ニ對シマシテ、
求償的ノ貿易ノ要求ヲ爲スベシト云フ御意
見デゴザイマス、是ハ洵ニ御尤ナ御意見デ
ゴザイマシテ、當局ト致シマシテモ贊意ヲ
表スル次第デゴザイマスルガ、唯我國ニ對
シテ入超關係ニアル所ノ國々ニ對シマシテ、
求償的ノ貿易ノ要求ヲ致シマスルト云フコ
トハ、其主義ニ於キマシテハ洵ニ結構ナコ
トデゴザイマスルガ、此點ニ付テハ貿易以
外ニ其當時ニ於ケル所ノ政治上ノ關係ト云
フヤウナモノヲ十分考慮致シマシテ、當方
カラ致シマスル要求ノ時期デアルトカ、內
容デアルトカ云フヤウナモノヲ篤ト〓究シ
テ、決定スベキモノデゴザイマシテ、中々
其取扱ニ困難ナル點ガ多イノデゴザイマス
ルガ、政府ハ御趣旨ノ在ル所ヲ能ク忖度致
シマシテ、今後ニ於キマシテモ、十分本邦
ガ入超國タル相手國ニ對シマシテ、求償的
ノ貿易ノ要求ヲ致スコトニハ全力ヲ盡ス考
デゴザイマス
第二點ノ爲替管理ニ付キマシテハ、從來
煩雜デ當業者ヲ煩ハスコト頗ル多イカラ、
之ヲ一元的迅速ニスル考ハナイカト云フ御
趣旨ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、爲替管
理ニ付キマシテハ、色々ノ議論ノアルコト
ハ承知ヲ致シテ居リマスケレドモ、何シロ
日支事變ヲ契機ト致シマシテ、戰爭ニ勝ツ爲
ニ必要ナ軍需資材ノ輸入力ヲ確保增大致シ
マスル爲ニ、已ムナク國民生活ニ必要ナ品
物ニ對シマシテモ、輸入ヲ抑制禁止スルト云
フヤウナ手段ニ出マスル關係上、新シキ行
政ヲ行ヒマシタ意味ニ於キマシテ、手際ガ
必シモ宜カッタトハ考ヘテハ居ラナイノデ
ゴザイマス、併ナガラ從來ニ於キマシテモ、
商工、大藏、農林其他關係各省ト常ニ緊密
ナル連絡ヲ取リマシテ、商工省ニ於テ許可
スベシト致シマシタモノハ、必ズ大藏省ニ
於テ許可スルト云フヤウナ方針ヲ執ッテ參ッ
タノデゴザイマシタガ、併シ更ニ政府ハ今
後ニ於キマシテハ、物資需給ノ調整ヲ圖リ
マシテ、輸出入統制ノ極メテ圓滿ナル遂行
ヲ期スル意味ニ於キマシテ、近ク政府部內
ニ適當ナル機關ヲ特設致シタイ考ヲ持ッテ
居ルノデゴザイマス、而シテ輸出入統制ノ
運用ニ付キマシテハ、唯机上ノ空論ニノミ
據ルコトナク、實際民間ノ實情ニ通ジテ居
ル所ノ人達ノ御意見ヲ參酌シ、且ツ民間ノ
經驗知識ヲ吸收致シマシテ、圓滑ナル遂行
ヲ期シタキ考デ、從來ニ於キマシテモ商工
省デ幾多ノ專門委員ノ方々ヲ囑託致シテ居
ルヤウナ次第デゴザイマス
次ニ輸出振興ノ國策ガ立ッテ居ラヌデハ
ナイカト云フヤウナ御話デゴザイマシタカ
ラ、此點ニ付テ御答ヲ申上ゲマス、先程モ
渡邊サンノ御質問ニ御答申上ゲマシタ通リ
ニ、日支事變勃發以來、我國ノ公正ナル日支
事變ニ對スル態度ト云フモノヲ、故ラニ誤解
致シマシテ、幾多ノ排日「ボイコット」ト云フ
ヤウナモノガアリ、又亞米利加ノ昨年下半
期以後ニ於ケル所ノ經濟界ノ不況ヤ、或ハ
原料國ノ農產物ノ價格ノ低落ニ因ル購買力
ノ減退ト云フヤウナコトガ相俟チマシテ、
我國ノ輸出ノ前途ハ必シモ樂觀ハ許サヾル
狀態ニ在ルコトハ御話ノ通リデゴザイマス
ルガ、政府ト致シマシテハ、從來海外ノ販
路擴張ノ爲ニ執リ來リマシタ所ノ輸出補償
制度、海外貿易斡旋所ノ設置トカ、或ハ海外
市場ノ調査ト云フヤウナ、色々ノ施設ヲ是
カラハ益〓擴充强化致シマスルコトハ勿論
デゴザイマスルガ、更ニ一段ト努力ヲ致シ
マスル點ハ、輸出用原料品ノ輸入許可、爲
替許可ト云フモノハ、成ベル出來ルダケ
迅速ニ之ヲ致シマスルト共ニ、輸出製品ト
輸入原料トノ間ニ密接ナル連絡ノアル商品
ニ付テハ、一定ノ輸出ヲ爲シク場合ニ、之
ニ相當スル原料ノ輸入ヲ認メテヤル、或
又輸出品ノ原料ニ使用セラルヽコト明ナル
物ハ、關係業者若クハ團體ニ輸出上ノ責任
ヲ負ハセマスル等ノ臨機應變ノ措置ヲ講ジ
マシテ、原料ノ輸入ヲ容易ナラシメ、延イ
テハ輸出價格ノ低下ヲ圖ラウト云フコトヲ
考ヘテ居ルノデアリマス
第二點ト致シマシテハ、只今申上ゲマシ
タヤウニ、對外通商關係ニ於キマシテ、本
邦側ノ輸入ヲ利用シテ、輸出增進ニ資シマ
スト共ニ、日本ガ入超關係ニアル國ニ對シ
マシテハ、求償的、貿易ノ見地カラ、此輸
出ノ增進ヲ圖ルシ、又求償的貿易關係ニア
ル國カラ參リマスル輸入ニ對シマシテハ、
特ニ考慮ヲ拂ヒマシテ、出來得ル限リ此輸
入ヲ許可シテヤルト云フヤウナコトデ、出
來得ル限リ海外ノ販路ヲ擴張スルコトニ努
メタイト思フノデアリマス
第三ニハ本邦品ニ對スル「ボイコット」運
動ハ、相當ニ激シキモノガアルノニ鑑ミマ
シテ、國内ノ貿易關係諸團體及ビ海外ニ於
ケル貿易關係諸機關ヲ動員致シマシテ、今
囘ノ日支事變ノ眞相ヲ正確ニ知ラシムル爲
ニ宣傳ヲシ誤解ヲ解イテ、邦品「ボイコットㄴ
ノ緩和ニ努メルト云フヤウナコトヲ致ス積
リデアリマス、其他配給統制、物價統制等
ノ色々ナ國內政策ノ實行ニ當ッテモ、常ニ輸
出振興ト云フコトヲ最モ重要ナル眼目ノ一
ツトシテ考慮致シマシテ、只今御示シノ如
ク輸出ハ我國ノ極メテ重要ナル產業デアリ
マスコトニ鑑ミ、力ヲ致シタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス
最後ニ日支事變關係デ輸入ヲ抑制禁止致
シマシテ、品不足ニナリマシタ所ノ品物ニ
對シテ、物價騰貴ヲソコニ招來スルガ、ド
ウ云フ對策ヲ持ッテ居ルカト云フコトデゴ
ザイマス、品不足ニ伴ヒマシテー-言葉ヲ
換ヘテ申シマスルト、輸入數量ヲ制限抑制
致シマスル關係上、今迄ヨリモ其品物ノ供
給ガ潤澤デナクナッテ來ル、然ルニ需要ノ方
ハドウデアルカト云フト、國策ヲ理解セザ
ル所ノ、遺憾ナル一部ノ消費者ノ態度ト云フ
ヤウナモノニ依リマシテ、寧ロ需要ハ增加
スルヤウナ形ヲ取ッテ居ル、此需要供給ノ適
合セザル所ニ物價ノ昂騰ト云フモノヲ生ズ
ルノデゴザイマスノデ、政府ニ於キマシテ
ハ、原則トシテ生產力擴充、或ハ又是等ノ不
足セル品物ニ對シマスル代用品ノ使用、或
ハソレ等不足セル品物ニ對スル消費ノ節約
等ニ依リマシテ、壞サレマシタ所ノ需要供
給ノ「バランス」ノ回復ヲ圖ルコトヲ、原則
的ニハ第一義ト致シテ居ルヤウナ次第デゴ
ザイマス、臨時應急ノ措置ト致シマシテハ、
暴利取締令及ビ今囘改正提案致シテ居リマ
スル所ノ輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關
スル法律ノ適切ナル運用ニ依リマシテ、只
今御指摘ニナリマシタヤウニ、第二條ニ依
リマシテ取引狀況ノ定期的ノ報〓、命令、
販賣價格ノ表示、或ハ最高價格ノ公定等ニ
依ッテ、急激且ツ不當ナル物價ノ騰貴ヲ抑制
セント致シテ居ルノデゴザイマシテ、例へ
バ綿絲ノ如キ或ハ護謨ノ如キモノニ付キマ
シテハ、此法律ノ命令ニ依リマシテ、最高
價格ノ公定ヲ致シテ居リマシテ、其不當ナ
ル暴騰ヲ抑制スルコトニ努力ヲ致シテ居ル
コトハ、皆樣ノ御承知ノ通リデゴザイマ
ス、更ニ唯法規命令ノミニ依ッテ、經濟界ニ
於ケル物價ノ統制ニ萬全ヲ期スルト云フコ
トハ中々困難デアリマスノデ、近ク中央地
方ヲ通ジマシテ、消費者ノ代表ヲ加ヘタル
所ノ、物價ニ對スル監視ノ委員會ト云フヤ
ウナモノヲ設置致シマシテ、官民一致、民
間ト官吏ト協力致シマシテ、我國ノ重大ナ
ル經濟問題ト、今後騰ラウトシテ居ル物價
ノ適當ナル統制ヲ圖ラウト致シテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマス
〔政府委員中村三之丞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=26
-
027・中村三之丞
○政府委員(中村三之丞君) 爲替許可ノ過
程ニ於キマシテ、商工省ノ認メマシタモノ
ヲ、資金關係ヲ綿密ニ調査致シマスル關係
上、大藏省ノ爲替局ニ於テ多少ノ時日ヲ要
シマシタル點ガ昨年アリマシタコトハ頗ル
遺憾ニ存ジマス、然ルニ現今ニ於キマシテ
ハ、商工省ノ認メタモノハ、爲替局ニ於テ
速ニ認メテ居リマシテ、商機ヲ逸セシメザ
ルヤウ、十分努力ヲ致シテ居ルノデアリマ
シテ、今後商工省ト大藏省ノ爲替局ガ一體
トナリマシテ、萬遺憾ナキヲ期シテ居ル次
第デアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=27
-
028・田中源三郎
○田中源三郞君 簡單デアリマスカラ、此
席カラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=28
-
029・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=29
-
030・田中源三郎
○田中源三郞君 只今政府委員ヨリノ御答
辯ヲ拜承致シマシタガ、尙ホ十分ニ質スベ
キ點アリト存ジマスルガ、詳細ハ委員會ニ
讓ルコトト致シマシテ、唯一點伺ッテ置キ
タイ點ガアリマス、ソレハ大體商工省ニ於
キマシテ、本年度ノ貿易、來年度卽チ昭和
十三年度ノ貿易、或ハ昭和十四年度ニ跨ッタ
貿易、是等ノ貿易ノ上ニ於キマシテ、軍需
資材ニ要スル所ノ輸入ヲ見越シ、其殘額ニ
於テ工業輸出品ニ必要ナル所ノ工業原料等
ノ割當ヲ致スト云フヤウナ御用意ガ出來テ
居ルカドウカト云フコトヲ伺ヒタイノデア
リマス
ソレカラ只今大藏省ノ政府委員ヨリ御答
辯ガアリマシタガ、私ノ質問ヲ致シマシタ
要點ハ左樣ナ點デハナイノデアリマス、今
後商工省ト打ッテ一丸トナッタモノ、大藏省
ノ爲替局ヲ大藏省ヨリ分離ヲ致シ、商工省
ノ貿易局ト合シ、他ノ民間ノ有力ナル人材
ヲ集メテ、產業貿易ニ關スル爲替許可ヲ合
セタ所ノ一ツノ事務廳ヲ作ルカドウカト云
フコトニ付テ、商工、大藏ノ內部間ニ何カ
御相談ガ出來テ、之ニ對スル所ノ用意ガア
ルカト云フコトヲ伺ッタ、此點ニ付テハッキ
リト御答辯ヲ願ヒタイ
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=30
-
031・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 御答申上ゲマ
ス、第一點ノ御質問ニ對シマシテハ、政府
部内各省ニ於キマシテ、密接ナル連絡協調
ヲ取リマシテ、現時ノ國民經濟ノ必要ニ鑑
ミマシテ、必要ナル軍事資材ヲ入レル以外
ノ輸入力ニ應ジマスルモノニ付キマシテ
ハ、一ツノ成案ヲ得テ居ルノデゴザイマス
ルガ、其內容ニ付キマシテハ申上ゲル譯ニ
ハ參リマセヌコトヲ御許ヲ願ヒタイト思ヒ
マス、但シ其各省ノ間デ、國民經濟ノ上カ
ラ見テ、緩急輕重ヲ能ク圖リマシテ、サウ
シテ大體或ル長イ期間ノ間ニ輸入スベキ數
量ト云フモノヲ決メマシテ、成ベク長イ期
間ノ間ニ爲替ナドモ今後ハ許シタイト云フ
考ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス
第二ノ點ニ付キマシテハ、先程御答申上
ゲマシタ通リニ、從來ニ於キマシテモ、商
工、農林、大藏各關係官廳ノ間デ密接ナル
連絡ヲ取ッテ居リマシタガ、更ニ〓〓輸出入
品ノ需給統制ニ關シマシテ圓滑ヲ期シタイ
ト考ヘマシテ、政府部內ニ於キマシテ一元
化スルヤウナ考ヘ方ヲ以ッテ折角進ンデ居
ルヤウナ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=31
-
032・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 坂東幸太郞君
〔坂東幸太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=32
-
033・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 私ハ昭和十二年法律第九
十二號中改正法律案ニ關シマシテ、「パル
プ」ノ增產計畫ニ付キマシテ簡單ニ數項ノ
質疑ヲ致シマス、「パルプ」ノ增產ニ努力ス
ルト云フコトハ勿論急務デアリマスルガ、
更ニ消費ノ實體ヲ合理化シテ、所謂廢品ト
ナッタソレヲ、原料市場ニ還流的ニ蒐集シテ、
再ビ之ヲ製品化シテ需要市場ヘ放出スルト
云フコトモ重要ナル問題デアルト思ヒマス、
化學者ノ謂フ「元素ハ不滅デアル」ト云フコ
トハ、ソレハ別ト致シマシテモ、物資ノ需
要ノ實際ガドノヤウナモノデアルカト云フ
コトヲ見極メルナラバ、卽チ製品ガ使用セ
ラレ廢品ニ至ル迄ノ經過、例ヘバ印刷物或
ハ包裝其他各種ノ紙工品ガ、ドノヤウニ使
ハレテ廢品トナルニ至ルカト云フコトヲ、
全國民ニ合理的ニ知ラシメテ、ソレ等ノ品
ヲ原料市場ニ送リ出スト云フコトヲ考ヘシ
ムルト云フコトハ極メテ必要デアル、若シ
是等ノ廢品ヲ原料市場ニ出シマスルナラバ、
大量ノ原料品ヲ得ルコトガ出來ルノデアリ
マス、元來日本人ハ日常生活上ニ於テ不徹底
ナ不經濟ナ考ヲ、恰モ見榮ノ如ク考ヘラレ
ルヤウナ缺點ガアルノデゴザイマス、例ヘバ
衣服類等ニ於キマシテモ、不必要ニ貯藏ス
ルコトヲ見榮ノ一ツト爲シ、又一方紙屑ナ
ド不必要ナ品ヲ賣ルト云フコトハ、何ダカ
貧乏ノ爲デアルカノヤウナ考ヲ持ッテ居ル者
モ澤山アリマス、ソシテ夫レヲ塵芥ノ中ニ
棄テテ顧ミナイ、又一口ニ濫費ヲ現ハス言葉
トシテ「紙屑同樣」ト言ヒマスルガ、全國ノ官公
署ノ數ハ恐ラク數万アリマセウ、其數万ノ官公
署ニ於キマシテ不用ノ書類若クハ不用ノ紙
屑サウ云フモノハ全部燒棄又ハ廢棄サレ
テ居ルノデアリマス、要スルニ消費ニ對スル
考へ方ガ甚ダ不徹底デアリ、不合理デアリ、
其不合理ヲ以テ寧ロ誇トスラ考ヘテ居ル傾
向ガアリマス、之ヲ是正スルナラバ、廢物
ヲ原料ニ還元セラルヽモノガ頗ル多量ニ上
ルモノデアラウト考ヘルノデアリマス、生
產ハ其設備ノ擴張ニ依ッテ、時間ト勞力サヘ
惜マナケレバ比較的實現ガ早イガ、一方無
駄ニ之ヲ消費スル從來ノ傾向ヲ是正スルナ
ラバ、或ハ今日計畫スル「。パルプ」生產ノ幾割
カニ該當スルダケノ原料ヲ廢品カラ得ルト
云フコトハ、必シモ困難デナイト思ヒマ
ス、之ニ依リテ生活ノ合理化ト資源ヲ併セ
得ラルヽモノダト思フノデアリマス、今度
國民精神總動員ガ行ハレマシテ、各家庭ニ
於キマシテ紙ノ節約ト云フコトガ〓ヘラレ
テ居リマスガ、ソレハ單ニ節約ト云フコト
デアリマシテ、更ニ之ヲ一步進メテ、吾々
ハ斯ク〓〓ノ利用、卽チ資源ノ保有上節約
ハ義務デアルト云フコトヲ徹底セシメテ、
寧ロ廢品ヲ一刻モ早ク市場へ送出シテ、原
料タラシムルコトヲ考へサセナケレバナラ
ヌト考ヘマス、「パルプ」一瓲ハ丸太約十五
石ヲ原料トスルノデアリマスルカラ、
一例トシテ石灰窒素肥料ノ紙ノ袋ニ付テ申
上ゲマスナラバ、肥料會社ノ買取洩ダケデ
干、一箇年ニ四五千瓲位アルサウデアリマ
ス、然ラバ是ダケデモ丸太七八万石カラ製
造スル「。パルプ」ガ廢棄セラレテ居ルト云フ
コトニナルノデゴザイマス、故ニ各種ノ廢
棄物トシテ廢棄セラレテ居リマスル紙製品
ノ包裝其他ノモノハ、一箇年ニ丸太數十万
石或ハ數百万石ニ該當スル多量ノモノデア
ルト思フノデアリマスガ、政府ハ是等ノ廢
物ヲ洩ナク原料化スルコトニ付テ、如何ナ
ル考ヲ有スルカト云フコトニ付テ御伺致シ
マス
次ニ藁ノ「パルプ」ニ付テ御伺致シマ
ス、藁デ「パルプ」ガ取レルト云フコトハ敢
テ申上ゲル迄モナイ、卽チ藁一貫デ約五六
百匁ノ「パルプ」ガ取レル筈デス、ソコデ一
反步ノ藁ハ約百貫内外トシテ五六十貫ノ
「パルプ」ガ取レマス、之ヲ計算致シマスナ
ラバ、全國ノ三百餘万町ノ水田カラ生產ス
ル藁カラハ、五六百万瓲ノ「パルプ」ガ出來
ルノデアリマス、故ニ粗惡ナ「パルプ」デア
リマスガ、之ヲ混用スル途ヲ立テルト云フ
コトモ必要デアルト考ヘマス、之ニ付キマ
シテ政府ノ御所見ヲ御伺致シマス、偖テ今
囘政府ハ「パルプ」ノ增產計畫ノ一ツトシ
テ、慥カ一億圓ノ新「パルプ」會社ヲ作ラス
サウデアリマス、之ニ官有林ノ林木ハ政府
カラ其原料トシテ供給スル、民有林デアリ
マスナラバ、斡旋シテ新會社ニ原料ヲ供給
サス途ヲ立テテ居ルヤウデアリマスガ、斯
ル場合ニハ政府ハ如何ナル計算ニ依ッテ其
賣拂價格ヲ決定スルカト云フ所ノ、其基礎
數字ヲ御伺シタイノデアリマス、又現在ハ
工場ガ王子製紙以外ニモ、例ヘバ北越製紙
會社モアレバ其他澤山アリマスガ、此既設
ノ工場ニ對シテ、原料ノ供給ニハ政府ハ如
何ナル方針ヲ執ルカト云フコトヲ御伺致シ
マス、以上數點明確ナル御答辯ヲ要求致シ
マス
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=33
-
034・木暮武太夫
○政府委員(木暮弐太夫君) 坂東君ノ御質
問ニ御答申上ゲマス、紙屑其他ノ廢品ハ、
政府ト致シマシテモ之ヲ囘收シテ、更ノ
「パルプ」ニスルコトニ一般ヲ慫慂シ、努力
ヲ盡シテ居ルヤウナ次第デゴザイマスカ
ラ、御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカ
ラ政府ハ御承知ノ通リ國際收支ノ改善ノ見
地ニ立チマシテ、我ガ國內ニ於ケル「パルプ」
增產計畫ヲ樹立致シタノデゴザイマス、只
今御示ノ如ク新ニ「パルプ」十六万瓲ヲ國內
ニ於テ生產スル爲ノ目的ヲ以テ、新ニ民間
會社ノ設立ヲ圖ルコトトナリマシタノデゴ
ザイマスルガ、之ニ必要ナル資材ト申シマ
スルカ、材木ハ主トシテ北海道及ビ內地ノ
官有林カラ增伐シテ供給スルト云フコトニ
ナッテ居ルノデゴザイマス、ソレノ賣拂價格
ハドウデアルカト云フヤウナ御話デゴザイ
マスルガ、サウ云フコトハ其時ノ經濟情勢
ニ應ジテ取決メラルヽコトト信ズルノデゴ
ザイマス
次ニ新シイ會社ニ依リマセヌデ、旣設ノ
設備ヲ動員致シマシテ、增產スルト云フコ
トモ考ヘラレルノデゴザイマシテ、現下國
際收支ヲ改善スルト云フ狀況ニ鑑ミマシテ、
一日モ速ニ「パルプ」ノ增產ヲ圖ル必要ガア
ルト云フコトデ、旣設會社ニ或ハ若干ノ修
繕ヲ命ズルトカ、或ハ一部設備ノ增加ヲ圖
ラセルト云フヤウナコトデ、早急ニ其設備
能力ヲ增加シ得ルモノニ對シテハ、其增設
ヲ指示シテ、極力「パルプ」ノ增產ニ努メサ
シテ居ルヤウナ次第デゴザイマシテ、是ノ
資材ノ若干ト云フモノハ、極ク短イ期間ニ
限リマシテ、政府ノ官有林カラ增伐シテ拂
下ゲ、或ハ民間ノ材木ヲ供給スル斡旋ヲス
ルト云フ考ヲ以テ進ンデ居ル次第デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=34
-
035・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 簡單デスカラ自席デ御許
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=35
-
036・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=36
-
037・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 只今政府委員ノ御答辯
中、藁ノ「パルプ」ニ關スル御答辯ガアリマ
セヌガ、其點ヲ御伺致シマス
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=37
-
038・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 御答ヲ申上ゲ
やく、藁ヲ原料トスル「。パルプ」ハ、技術的
ニ見マスルト、相當ニ考慮ヲシ得ラルヽモ
ノデゴザイマスルガ、御承知ノ通リ其原料
ヲ集メルト云フヤウナコトガ中々難シイノ
デアリマシテ、隨テ技術的ニハ、藁カラ
「パルプ」ヲ作ルト云フコトハ相當ニ〓究サ
レ、又考慮サレテ居ルノデゴザイマスル
ガ、之ヲ工業的ニ生產スルト云フ場合ニハ、
或ハ困難ガアルノデハナカラウカト考ヘテ
居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=38
-
039・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 此席ヨリ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=39
-
040・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=40
-
041・坂東幸太郎
○坂東幸太郞君 詳細ハ委員會デ御質問致
シマス、是デ私ノ質問ヲ打切リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=41
-
042・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 松永義雄君
〔松永義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=42
-
043・松永義雄
○松永義雄君 私ノ御質問致シタイノハ、約
四點ニ亙リマシテ、商工省ニ對シテハ其全
部、厚生省ニ對シテハ第二點ノ一部ニ付テ
御伺致シタイト思フノデアリマス、大藏大
臣ガ一志二片ノ堅持ヲ圖ラレ、國際收支ノ
均衡ニ向ッテ努力セラレルコトハ、私共諒ト
致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ本年ノ
一月ノ輸出額ヲ見マシテモ、其額一億六千
三百万圓デアッテ、昨年ノ同期ニ比較致シマ
シテ、約二割減ト云ッタ發表ニナッテ居ルノ
デアリマス、更ニ先行キ此二箇月間ノ我國輸
出上ノ輸出手當ヲ見マスト云フト、是亦約二
割減ト推定致サレテ居ルノデアリマス、果
シテ然ラバ昨年ノ輸出總額三十三億圓ニ對
照致シテ見マスト、今年ノ輸出總額ト云フ
モノハ、略、判斷出來ルト思フノデアリマス、
之ニ對シテ言フ迄モナク貿易外ノ收入超過
ヲ數ヘル、或ハ又金ノ增產ニ依ッテ、此輸入
超過ノ相殺ノ道具ニ使用スルト云フコトハ、
是ハ常識デアル、サリナガラ其相殺ノ額ヲ
以テシテモ、ドレ位ノ決濟額ニナルカト云
フヤウナコトハ、玆ニ私ガ申上ゲル迄モナ
ク明ナ事實デアル、ソレ故ニ政府ニ於カレ
マシテハ輸入ノ制限ヲシナケレバナラズ、
或ハ又消費ノ節約ヲシナケレバナラヌト云
フコトヲ盛ニ勸奬サレテ居ルノデアリマス
ガ、輸入ノ制限ガ延テハ輸出ノ減退トナリ、
益〓國際收支ノ均衡ヲ破ルニ至ッテ、今日正貨
準備ノ危機スラ傳ヘラレテ居ルト云フコト
ハ、是ハ世間ノ承知シテ居ル所デアル、隨
テ吾々トシテ見レバ、今更獨逸ノ輸入管理ト
云フモノヲ鵜呑ニ眞似スル必要ハナイ、千九
百三十三年、三十四年ニ「ヒットラー」時代
ノ經濟危機ニ於テ行ハレマシタ其輸入管理
ト云フモノハ、國內消費ヲ目的トシタ外國
商品ノ輸入制限デアッタ、輸出ノ爲ノ原料ノ
輸入ノ制限デナカッタカト云フコトハ、是ハ
物ノ本ニ書イテアル通リデアル、果シテ然
ラバ我國ハ獨逸ノ國情ト事ヲ異ニシ、積極的
ニ發展シテ行ク所ノ今日ノ情勢ノ下ニ於テハ、
輸出ノ爲ノ原料ノ輸入ノ緩和ヲ圖ラナケレ
バナラヌト云フコトハ、是ハ言フ迄モナイ、
先程來幾多平和產業ニ付キマシテ、其輸出
ノ振興策ニ付テ力說セラレテ居ルノデアリ
マスガ、我國明治以來今日ニ至ル迄約七十
年ノ間、平和產業ハ輸出產業ノ中デ以テ重
大ナル地位ヲ占メテ居ッタコトハ喋々ヲ要シ
ナイ、併ナガラ同時ニ又歐洲大戰爭後ニ於キ
マスル重工業ノ發達ト云フモノハ、是亦注
目ニ價スルモノデアリマシテ、今日ノ事變
ヲ契機ト致シマシテ、驚クベキ發展ヲ遂ゲ
テ居ルト云フコトハ、數字ニ於テハッキリ
現レテ居ル所デアル、成程輸出產業ト云フ
モノガ、平和產業ニ依ッテ非常ナ大キナ力ヲ
得テ居ックコトハ事實ダ、今日ノ此日支事變
ニ當リマシテ、重工業ノ著シキ發展ヲ偏重
主義ダト言ッテ批評ヲ下ス者ガアリマスケレ
ドモ、今日ノ重工業ノ發展ハ、我國產業ノ
發展カラ見マシタナラバ、必然的段階デア
ルト謂ハナケレバナラヌ、此日支事變ヲ通
ジテ拍車ヲ加ヘタモノト考ヘル方ガ妥當ナ
リト私共ハ信ズル、故ニ今日輸出ノ爲ノ原
料ノ輸入ヲ緩和スルト云フコトハ、啻ニ平
和產業ニ限ルベキコトデハナイ、日滿支ヲ
一丸トシタル經濟ノ計畫ヲ確立スルニ當リ
マシテ、此重工業ノ必然的發展ト貿易トノ
關係ハ如何ナルモノデアルカト云フ御認識
ヲシテ戴クト同時ニ、其見透シニ付テハ如
何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フコトヲ御伺
シタイ、更ニ今日ノ此平和產業ガ我國國民
經濟ノ運營ニ對シ、同時ニ又貿易ノ上ニド
ウ云フ地位ヲ占メテ行クカト云フ御見透シ
ヲ一ツ御伺致シタイ
更ニ次イデ、言フ迄モナク是等ノ產業製
品ノ輸出ノ爲ニ、其原料ノ輸入ニ對シテウ
ント緩和スルト同時ニ、輸出ヲ振興シテ初
メテソコニ一志二片ト云フモノガ堅持サレ
ルモノデアルト信ズル、私ト致シマシテハ、
政府ニ於キマシテ輸出ノ振興ニ對シテ積極
的ニ之ヲ進メル所ノ、決ッタ肚ガ出來テ居ル
カドウカト云フコトヲ御伺致シタイ
第二ニ質問致シタイコトハ、自主統制ノ
限度ト云フコトデアリマス、是ハ去年ノ
秋ノ議會ニ於キマシテ、大藏大臣竝ニ商工大
臣ハ大キナ立看板ヲ立テテ、自主統制ト云フ
モノヲ立派ナ「スローガン」トシテ吾々ノ前
ニ提供サレタ、サウシテ其自主統制ガ我
ガ國民經濟ノ上ニドウ云フ風ニ反映シテ來
タカ、昨年ノ夏ノ議會ニ於キマシテ制定セ
ラレマシタ貿易組合法ニ於キマシテ、强制
的ニ組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得ルト云フ
規定ガアル、所ガ私ノ寡聞ナル、未ダ曾テ
其法律ニ依ッテ組合ノ出來タト云フコトヲ
聽イタコトガナイ、唯僅ニ中南米ニ對スル
「バーター·システム」ノ結果トシテ輸出組
合ガ出來タ、或ハ棉花ノ輸入ニ關シマシテ、
紡績會社、或ハ棉花會社ノ協議會ト云フ
モノガ出來テ居ルガ、固ヨリ是トテモ政府
ノ命令ニ依ッテ出來タモノデハナイ、或ハ勸
誘ニ依ッテ出來タカモ知レマセヌガ、昨年ノ
秋ノ議會以後ニ於キマス所ノ我ガ國民經濟
ノ狀況ハ、ドウナッテ居ルカト言ッタ、其一點
ニ付テ御話申上ゲルナラバ、旣ニ此事タル諸
君御承知ノ通リ、一昨年ノ爲替管理法ノ施
行規則ノ改正ノ結果、政府ノ意圖ニ反シテ
往年ノ弗買ノ二ノ舞ヲ演ジマシテ、棉花ノ
滔々タル思惑輸入ヲ見タト云フコトハ、是
ハ新聞紙上ニ揭ゲテアル、而モ昨年ノ上半
期ニ於キマス所ノ棉花ノ見越輸入ト云フ額
ハ、恐ラクハ二割以上ニ達シテ居ルダラウ
ト云ッテ想像サレタ、而モ後半期ニ至リマシ
テ、皮肉ナコトニハ、ソレ程ニ澤山日本ニ
棉花ガ入ッテ居ルニモ拘ラズ、大紡績會社ノ
倉庫ハ棉花デ以テ充滿致シテ居ル、然ルニ
中紡績會社ノ倉庫ノ中ハ空ッポデアル、而モ
其配給ニ至ッテハ、宋襄ノ仁スラ見ルコトガ
出來ナカッタ、尙又最近新聞デヤカマシク
書立テラレテ居ル、先程御話ガアッタ晒一反
ノ例ヲ取ッテモ能ク分ル、今日晒一反ガ一圓
二十錢シテ居ル、而モ昨年ノ十二月中頃ニ
於キマシテハ、一反僅カ五、六十錢位ニ過
ギナカック、綿絲一梱二十番手ガ二百三十五
圓ト踏ンデ、問屋ノ手數料ガ二分、工賃ヲ
五錢トシテ、利益二錢ト勘定ヲ加ヘテモ、
晒一反ノ値段ト云フモノハ五十錢ヲ出デナ
イモノデアル、然ラバ其間ニ於テ問屋デア
ルカ、或ハ紡績會社デアルカ、如何ナル所
ニ於テカ、驚クベキ暴利ガ貪ラレテ居ルト
云フコトヲ私共ハ判斷出來ル、而モ最近「デ
パート」ヘオ出デニナッタ方ハ御氣付デモア
ラウガ、昨年夏ノ頃浴衣一反二圓七十錢シ
タモノガ、春マダ淺イ今日ニ於テ、旣ニ五圓
八十錢ト云ッタ正札ニ置換ヘラレタ、政府ノ
言フ所ノ自主統制ト云フモノハ、果シテ何處
ニアリヤト云フコトヲ私ハ伺ヒタイ(拍手)
自主統制ノ組織段階ト云フモノガ、果シテ
何處ニアリヤト云フコトヲ御伺致シタイノ
デアル、ソコデ其自主統制ノ結果、中小工
業ノ難澁シタ話ハ喋々スルヲ俟タナイノデ
アリマスガ、是モ先程來同僚諸君カラ御質
問ノアリマシタ、統制ノ指導ヲ以テ任ゼラ
レテ居ル筈デアル商工省ニシタ所ガ、或ハ
大藏省ニシタ所ガ、折角商工省ニ參ッテ是ダ
ケノモノヲ輸入スルカラト言ッテ、オ百度ヲ
踏ンダ其擧句、漸ク許可ヲ得テホットシテ、
大藏省ニ廻ッテ行クト、何時其許可ガ下ルカ
分ラナイ、遂ニ商機ヲ失シテシマッテ、民間
ニ及ボシタ影響ニ付テハ甚ダ遺憾デアルト
云ッタ御話ガアリマシタガ、今日商工省ナ
リ、或ハ又大藏省ノ爲替管理局ニ對シ、其
上ニ一ツノ御役所ヲ設ケテ、是等ノ御役所
ヲ統制スル機關ヲ設ケテ吳レナイカト云フ
ヤウナ悲鳴ガ、商人ノ中カラ揚ッテ居ルト
云フコトハ御承知デアル、ソレガ今商工省
ノ御答辯ニ依ルト、一元化シタ一ツノ組織
ヲ御作リニナルト云フ御話デアル、此法律
ノ結果、臨時需給調整局ト云フ御役所ガ
出來ルト云フ話デアリマス、私ノ質問
致シタイノハ、此新ニ現レテ來ル所ノ
需給調整局ト云フ御役所ノ權限ハ
ドレ程ノ範圍ノモノデアルカ、爲替
管理局ノ管理ノ權限ヲ移シテ處理スルニ至
ルノカ、ソレトモ現場ニ行ッテ監督スル現場
監督ニ止マルノカ、ソレトモ指導ノ源デア
ル一ツノ「プレーン·トラスト」ヲ作ルト云フ
ノカ、貿易局トノ關係、此處ニ新ニ生レン
トスル需給調整局ノ權限ニ付キマシテ御尋
致シタイト思フノデアリマス
ソレカラ私ハ厚生大臣ニ御尋致シタイノデ
アリマスガ、御承知ノ通リ、自主統制ノ結果、
中小商工業者ニ對シテドウ云フ影響ヲ及ボ
シテ居タカ、事實ハ自主統制デナクテ自由放
任ニ任セラレテ居タト思フ、棉花、綿絲、晒
ノ例ヲ取リマシテモ明カナ通リ、中小工場
ニ於キマシテハ、問屋ニ行ッタトテ「プレミ
アム」附キデ貰フノハマダ宜イ方デ、情實
因緣ガナケレバ綿絲ガ貰ヘナイ、其爲ニ機
屋ハ仕事ヲ休マネバナラヌト云フヤウナ始
末デアル、原料ガ少イ、而モ原料ガ高イト
云フコトニナレバ、勢ヒ生產費ガ高クナッテ
商賣ニ合ハナイ、中小商工業者ハ斯ウシテ
自主統制ノ名前ノ下ニ放任セラレタル所
ノ、自由競爭ノ物價騰貴ニ乘ズル金儲ケノ
間ニ在ッテ、ミス〓〓仕事ガアッテモ原料ガ
ナイ爲ニ、落魄シテ行カネバナラヌト云ッタ
ヤウナコトガ今日ノ實情デアル、之ニ對シ
テ仕事ヲ轉換シタラ宜イ、或ハ又其處デ働
イテ居ル所ノ勞働者ハ轉職シタナラ宜イ
ト、容易ク一語ヲ以テ解決スルヤウナ御言
葉ヲ使ハレルノデアリマスガ、斯ウシタ組
織ノ上カラ來ル必然的勢ノ中小商工業者ノ沒
落竝ニソコニ雇ハレル所ノ勞働者ガ街頭
ニ放リ出サレル失業對策問題ニ付テハ、厚
生省ニ於キマシテハドウ云フ風ニ之ヲ考ヘ
テ行カレルカ、之ヲ御尋致シタイト思フノ
デアル
第三ニ御質問致シタイコトハ、民間人材
ノ登用ト云フコトデアリマス、此事タル既
ニ此會議ニ於キマシテモ、或ハ委員會ニ於
キマシテモ、幾多官僚獨善主義ノ排擊、或
ハ文官任用令ノ改正、同時ニ民間ノ人材ヲ
登用シナケレバナラヌト云フ御話ガゴザイ
マシタ、更ニ又私ガ此處デ今更ノヤウニ蒸
返ス必要モナイト思フノデアリマスガ、唯
一點貿易ニ關シマシテ政府ノ御反省ヲ求メ
タイ、抑〓海外貿易ノ販路ノ開拓ト云フモノ
ハ誰ガヤッテ來タカ、海外貿易ノ販路ノ開拓
ハ、言フマデモナク行商人デアル、第一線
ニ立ッテ、ソレコソ身ヲ危險ニ曝シ、卑近ノ
例デハアルケレドモ、「クリーク」ヲ渡リ、
或ハ「トーチカ」ヘ突擊シテ行クヤウナ氣魄
ト熱情ヲ持ッテ商賣ヲヤッテ來タ者ハ、決シテ
官僚デモナケレバ、財閥デモナイ、斯ウシタ
行商人ガアル、幾多奧地ニ入ッテ奮鬪シタカ
ラコソ、我國ノ貿易ト云フモノガ發展シテ
來タ、吾々ハ玆ニ今更通州事件ノ犠牲者ヲ想
出スマデモナイ、往年ノ濟南事件ニ於ケル
吾等同胞商人ノ犠牲ヲ私共ハ追憶致シタイ
ノデアル、一旦ハ斯ウシタ僅カナ資本デ以
テ裸一貫デ奥地ニ入リ、好イ商賣ダト云ッテ
見付ケテ來レバ、後カラ財閥ガ行ッテ、大キ
ナ組織ト、大キナ資本トヲ以テ奪取ッテシマ
フ、今日國民協力一致ト云フモノガ力說セ
ラレルケレドモ、財閥ヤ、或ハ官僚ダケデ
以テ商賣ガ出來ル筈ハナイ、僅カナ資本ヲ
以テ裸一貫デ飛込ンデ行クヤウナ、斯ウシ
タ行商人ナリ、或ハ內地ニ於キマシテハ
「ブローカー」、或ハ雜工業者-中小商工
業者ト云フモノヲ善導シテ行カナケレバ、
眞ニ販路ノ開拓ト云フモノハ行ハレナイト
私ハ信ズルノデアル、故ニ政府ニ於テハ財
閥ノ雇人デアル、「エキスパート」專門委員
ト云フモノヲ選任ナサッテ、御相談ナサルコ
トモ結構ナコトダ、或ハ政府自ラ現場ニ
行ッテ監督ナサルコトモ必シモ惡イトハ言
ハヌ、ダガ併シ斯ウシタ眞ニ裸一貫ヲ以テ
販路ノ開拓ヲ圖ル所ノ中小商工業者ト云フ
モノヲ相談相手ニ、之ヲ善導スルヤウナ組
織ヲ作ラナケレバナラヌト考ヘルノデアル
ガ、之ニ對スル政府ノ考ハドウデアリマス
カヲ伺ヒタイ
第四ニ御尋致シタイノハ、輸入國策會社
ノ設置、竝ニ配給ニ關スル所ノ新經濟組織
ノ設置、其他ニ付テ如何ナル御考アリヤヲ
御尋致シテ見タイ、先程モ御尋ガアッタ、昨年
ノ秋ノ議會ニ於キマシテ、此改正案ノ本法
デアル輸出入ニ關スル臨時措置法、或ハ其他
ノ法律案ニ於テ、此法律ノ效力ハ事變後
一箇年ニ於テ相濟ム、其事變ノ意義如何ト
云フコトニ付キマシテ幾多ノ論議ガ行ハレ
タコトハ、尙ホ吾々ノ記憶ニ新タナル所デ
アル、サリナガラ現在ノ此日本ヲ靜ニ見マ
シテ、假令事變ガ濟ンダカラト云ッテ、此日
本ガ事變ノ昔ニ歸ラウ筈ハナイノデアル、
今日ノ新日本ノ發展ト云フモノハ、我國民
族ノ發展ノ上カラ必然ノ勢デアル、今日ノ
配給ニ關シテモ、生產ニ關シテモ、總テノ
組織ト云フモノハ、平和時代ノ組織機構ヲ
以テハ量ルコトガ出來ナイ、戰時體制下ノ
經濟組織ナリ、機構ヲ以テ進ンデ行カナケ
レバナラヌト云フコトハ言フマデモナイガ、
今日新タナル軌道ノ上ニ乘ッタ此新日本ノ
經濟組織ト云フモノハ、新タナル組織、新
タナル機構ニ向ッテ進ンデ行カナケレバナ
ラヌ、重要產業統制法ト云フ法律ガアル、
今日モ尙ホ其效力ヲ存續シテ居ルケレドモ、
殆ド過去ノ遺物ニ過ギナイ、生產ヲ制限シ
生產ト販賣ヲ低廉ナラシムル爲ニ、「カルテ
ル」組織ニ對シテ保護ヲ加ヘテ來タ規定デ
アルガ、其規定ハ一部ノ大キナ企業家ノ繁
榮ヲ來シタケレドモ、中小商工業者ヲシテ
產業合理化時代ヲ通ジ、幾多ノ悲劇ヲ演ゼ
シメタト云フコトハ、尙ホ吾々ノ記憶ニ新
タナル所デアル、今日ハ生產力ヲ擴充シ、
國民協力一致ヲ唱道セラレル、此新タナル
日本ノ建設ニ當リマシテハ、從來ノヤウナ
獨占的ナ經營、利己主義的ナ經營ニ委シテ
行ッタノデハ、躍進的ニ日本ガ進ミ得ルト云
フ所ノ自信ハ持ツコトガ出來ナイノデアル、
而モ又御承知ノ通リ昭和七年ニ爲替管理法
ト云フ法律ガ出來タ、サウシテ其後ニ許可
額ハ一万圓、或ハ千圓、百圓ト下ッタ、常ニ
現レル所ノ政策ト云フモノガ一時的デアル、
而モ昨年ノ夏ノ議會ニ於キマシテハ貿易調
整法ガ出ル、或ハ貿易組合法ガ出ル、貿易
ノ統制ヲ爲サントスル法律ガ布カレタト云
フコトハ、强チ非難スベキ限リデハナイケ
レドモ、現レテ來ル所ノ法律ト云フモノハ、
總テ一時的、部分的デアル、而シテ今日茲
ニ新タナル需給調節ニ關スル法律ガ提案サ
レルニ至リマシタケレドモ、私ハ其法律ノ
精神ト云フモノ、運用ト云フモノハ、ドウ
云フヤウニ行ハレテ行クカト云フコトヲ御
尋シタイ、結論カラ申シマスルナラバ、「ピ
ラミッド」ノ型ノ如クニ、輸入會社ハ國策會社
ニシタ所ガ、如何ナル精神ヲ持タウガ、其
精神ハ要スルニ今日ノ我ガ國際收支、新タ
ナル日本ノ發展ニ適合スルヤウナ一ツノ輸
入會社ヲ作ル、サウシテ「ピラミッド」ノ型
ノヤウニ、國內的ニハ商品別、或ハ又職業
別、產業別ノ組合組織ヲ作ッテ連繫ヲ執ッテ
行カナケレバナラヌ、此法律ヲ見マスルト、
單ニ需給ト云フ言葉ガ揭ゲテアルニ過ギナ
イ、サリナガラ今日ノ物價ト云フモノハ、
自由ニ放任シテ置イタノデハ、奔騰スルニ
委セテ、吾々民衆ハ其日ニ困ラナケレバナ
ラナクナル、暴利取締ニ依ッテ抑ヘルコト
モ一ツノ方法デアリ、組織ニ依ッテ之ヲ抑
ヘテ行クノモ一ツノ方法デアラウガ、政府
ニ於テハ此法律ニ依ッテ組織サレル所ノ生
產竝ニ配給組織ヲ「ピラミッド」ノ型ノヤウ
ニ、商品別、職業別、產業別ノ統一シタル
組織ヲ作ラレル御意思アリヤ否ヤト云フコ
トヲ御伺シタイ
更ニ私ガ之ニ付キマシテ御伺シタイコト
ハ、國家總動員法トノ聯關デアリマス、國
家總動員法ノ第三條、第八條、第九條ニ於
キマシテハ、輸出入竝ニ配給ニ關シテハ必
要ナル命令ヲ發スルト云フ規定ガアル、ソ
コデ國家總動員法ハ、現在アル法律ノ或モ
ノヲ綜合シタモノデアルト云フ御說明ガアッ
タト云フコトヲ私ハ聞イテ居ル、併シ今日
ノ法律ニ依ッテ、今日ノ組織ニ處スルノハ、
或ハ今日ノ事情ニハ適スルカモ知レナイガ
國家總動員ト云ッタヤウナ非常ノ時代ニ於
キマシテ、果シテソレガ適合スルカドウカ
ハ疑ハシイ、然ラバ卽チ政府ガ今度ノ法律
ニ依ッテ作ラレル所ノ組織ハ、新タニ生レ出
テ來ル所ノ國家總動員法ノ命令ニ依ッテ出
來テ來ル所ノ組織ト差異ガアルノカ、同ジ
デアルカ、其點ニ付キマシテ御尋シタイ、
以上第一點乃至第四點ハ商工省ニ御尋シ、
第二點ノ中、中小商工業者ニ關スル點ニ付
キマシテハ、厚生省ニ御尋致シタイト思フ
ノデアリマス
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=43
-
044・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 松永サンノ御
質問ニ御答ヲ申上ゲマス、非常ニ該博ナ御
意見ガ多カッタノデ、或ハ伺ヒ洩レガアル
カモ知レマセヌガ、伺ヒ洩レノ點ハ委員會
デ詳細ニ御說明申上ゲルコトニ致シタイト
思ヒマス、第一點ノ重工業製品ノ輸出ニ對
シテ、政府ハドウ云フ對策ヲ持ッテ居ルカ
ト云フ御尋デゴザイマスガ、我國ノ輸出貿
易ノ最近ノ趨勢ヲ見マスルト、重工業製品
ト云フモノハ非常ニ進出シテ居ルノデアリ
マシテ、政府ニ於キマシテハ、是ガ指導助
長ニ付キマシテハ、相當ニ力ヲ致シテ居ル
ノデゴザイマス、例ヘバ海外市場ノ調査ヲ
致シマスルトカ、或ハ旣ニ設ケマシタ機械
試驗所ノ設備ヲ利用スルヤウナコトニ依リ
マシテ、新タニ我國ノ重要ナル輸出品トナ
リマシタ重工業製品ノ輸出ノ前途ニ對シマ
シテハ、只管指導助長ヲ怠ラナイ考デ居ル
ノデアリマス、唯現在ニ於キマシテハ、御
承知ノ通リ日支事變勃發以來、國內ニ於キ
マシテ軍需資材ノ必要、及ビ生產擴充資材
ノ必要ト云フコトハ、目前ニ迫ッテ居リマ
スノデ、外國ニマデ之ヲ輸出スル餘裕ハナ
イノデアリマス、併ナガラ事變後ニ於キマ
シテ、此事變下ニ於テ擴張サレマシタ重工
業ノ製品ノ販路ヲ海外ニ求メルト云フコト
ハ、極メテ重大ナルコトデアリマスノデ、
今日カラ商工省ト致シマシテハ、今後ニ備
フルベク銳意準備ヲ致シテ居ルヤウナ次第
デゴザイマス
第二點ハ自治統制ノ限度ト云フヤウナ御
質問デゴザイマシタガ、御承知ノ通リ國民
生活ニ必要ナル原料デアリマシテモ、一方
軍需資材ノ輸入能力ヲ確保增大致シマス爲
ニ、已ムナク輸入ヲ抑制禁止致シマスヤウ
ナ場合ニ、其背後ニ於テ其物ニ關シ、其製
品ニ關シマシテ、國策ニ順應セシメテ配給
其他ノ統制ニ當ラシメル爲ニ、自治的ノ組
合ヲ作ッテ統制ニ從ハセテ居ルノデゴザイ
マシテ、政府ト致シマシテハ、成ベク關係
產業當事者ノ自治的ノ統制ニ依ルコトヲ主
眼ト致シテ居ルノデゴザイマス、當業者ノ
間デ國策ニ順應スルノ意思、雅量ナクシテ、
而シテ其組合ヲ作ラナイ場合ニ、初メテ玆
ニ强制命令ニ依リ統制組合ヲ作ラスト云
フ、是ハ例外的ノ仕組ニナッテ居ルノデゴ
ザイマスカラ、其點ハ御諒承ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス、自治的統制ニ付テ、若
シ國策ニ順應セズ、其他幾多ノ弊害ガアリ
マシタナラバ、其弊害ヲ除却スルコトニハ、
少シモ遠慮ヲ致スモノデハナイノデゴザイ
マス
第三點ト致シマシテハ、物資需給ノ調節
ヲ圖ルコトト、輸出入統制ノ圓滑ナル遂行
ヲ期スル爲ニ、近ク政府部內ニ於キマシテ、
名前ハマダハッキリ決定致シテ居リマセヌ
ガ、適當ナル機關ヲ特設致シタイ考デ、著々
審議ヲ其方向ニ進メテ居ルト云フコトハ、
先程申上ゲク通リデゴザイマスガ、其權
限、其內容等ニ付キマシテハ、只今御話申
上ゲル時機ニ達シテ居ラヌコトヲ遺憾ト致
ス次第デゴザイマス
更ニ中小商工業ニ對スル打擊ニ付キ、色
色御憂慮遊バサルヽ御話ガゴザイマシタ
ガ、輸入ノ抑制ニ依リマシテ、輸入原料ノ
供給ガ潤澤ナラズシテ、中小商工業ノ人々
ニ對シテ色々打擊ヲ與ヘテ居リマスコト
ハ、御同情ニ堪ヘナイト政府ハ考ヘテ居ル
ノデゴザイマスガ、是モ先程申上ゲタ通リ、
公平ナル配給ヲ行ヒマシテ、中小商工業ニ
對スル打擊ノ少クナルコトヲ期シテ居ルノ
デアリマス、而シテ貿易統制其他ノ統制ヲ
行ヒマス場合ニ、大キナ者ニノミ利益ヲ偏
セシメルト云フヤウナコトナク、中小商工
業ニ對シマシテモ、十分ニ保護助長致ス考
デ居ルノデゴザイマス
最後ニ御質問ニナリマシタ輸入ニ關シテ
統制アル强力ナ國策會社ヲ作ッテ、其下ニ幾
多ノ統制機關ヲ作ッテハドウカト云フコト
ハ色々御議論ノアル所デゴザイマシテ、
一ツノ御意見トシテ拜聽致シテハ居リマス
ケレドモ、是ガ經濟界、財界一般ニ對スル
至大ナル影響アルニ鑑ミマシテ、俄ニ贊意
ヲ表スルコト能ハザルヲ遺憾トスル次第デ
ゴザイマス(拍手)
〔政府委員工藤鐵男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=44
-
045・工藤鐵男
○政府委員(工藤鐵男君) 御答致シマス、
松永君ノ產業或ハ經濟統制ノ結果、中小商工
階級ニ好マシカラザル惡影響ヲ與ヘルデア
ラウト云フコトハ、政府モ全然之ヲ認メテ
居リマス(拍手)御熱心ナル此方面ニ對スル御
心配ノ點ハ、ヤハリ政府モ憂ヲ同ジウシテ
居ルト云フコトヲ玆ニ申上ゲ得ルノデアリ
やく、然ラバ其對策如何、是ハ先刻商工關
係ノ政府委員ヨリモ申上ゲマシタ通リ、元
來商工省ハ資金ノ融通ヲ潤澤ニシ、或ハ何
等カノ補助ヲ以テ、之ヲ積極的ニ助長シテ
行クノガ商工當局者ノ責任デアリマス(拍手)
厚生省トシテハ、ソレデモ爲シ能ハザル所
ノ消極的ナ救濟ヨリ外ニ考ヘル途ハナイノ
デゴザイマス、隨テ或モノハ商工省、或ハ農
林省ナドトモ相談致シマシテ、出來得ルダ
ケ其弊害ヲ少カラシメルコトニ、萬全ノ努
力ヲシタイト云フ決意ヲ持ッテ居リマス、而
シテ其對策ハ幾ツモアルノデアリマセウガ、
恐ラクハ差當ッテ此平和產業ノ衰頽ニ伴フ
所ノ中小商工業者ハ、果シテ其商工業ヲヤツ
テ行ケルカト云フコトニナリマスト、ヤッテ
行ケナイ者ガ若シアルトスレバ、或ハ之ヲ
轉業セシムルコトモ、國家ノ責任トシテ考
ヘテ見ナケレバナラヌト思フノデアリマス、
或ハ又商業、工業ハ廢メタガ、何カ勞務者
トシテ働キタイト云フヤウナ場合ガ起ッテ
來マスルト云フト、恰モ御協贊ヲ仰グコト
ニナッテ居リマスル、全國二百有餘ノ職業紹
介所ヲ國營ト致シマシテ、全國的ニ勞務ノ
調整ヲ圖ッテ、左樣ナル人ヲ救濟スルコトモ
亦考ヘナケレバナラヌノデアリマス、失業
對策ハ色々アルデアリマセウガ、何シロ是
ハ大藏當局者ノ心カラノ同意ヲ得ナケレ
バ、先ヅ先立ツモノハ金デアリマスルカラ、
此點ハ頗ル苦慮シテ居ルノデアリマス、嘗
テ本院ニハ屢〓失業保險ノ問題モ起リマシタ、
起リマシタガ、孰レモ其點デドウモ思フヤ
ウナ成績ヲ得ラレナイト云フコトデ、御同
樣洵ニ遺憾ニ考ヘテ居ル次第デアリマスル
カラ、失業對策ニ付キマシテハ、十分本會
議ニ現レテ居リマスル-本院ニ現レテ居
リマスル所ノ妥當ナル御意見ヲ基礎トシテ、
萬全ヲ期シテ、此失業對策ヲ實行致シタイ
ト考ヘテ居リマス、尙ホ具體的ノコトニ關
シマシテハ、委員會ニ於テ相當御答ヲ申上
ゲタイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=45
-
046・松永義雄
○松永義雄君 只今商工政務次官ノ御答辯
ノ中デ、私ノ質問致シタ點ヲ御漏シニナッテ
居ル點ガ多々アルノデアリマシテ、第三ト
致シテ申上ゲマシタ中小商工業者ト云フモ
ノニ、貿易ノ發展ノ爲ニ御相談シテ行クヤ
ウナ組織ヲ御作リニナラナイカドウカ、專
門委員ヲ採用サレルコトモ結構ダガ、サウ
シタコトニ對シテドウ云フ御考ガアルカト
云フコトニ對シテ御尋シマシタガ、御答辯
ガアリマセヌ、尙又第四點ニ於キマシテ、
今度現ハレテ來マスル所ノ產業協議會ノ組
織ト云フモノガ、物價對策、物價ヲ調整シ
テ行ク所ノ力ヲ持ッテ行クヤウナ作用ニナ
サレルノカドウカ、啻ニ暴利取締ニ依ッテ取
締ニナラレルバカリデナクシテ、組織ノ上
カラ-今日自治統制ト言ッテモ、實際ハ自
由放任ニ任サレテ、サウシテ晒一反ニ付テ
モ驚クベキ暴騰ヲ呈シテ居ル、サウシタコ
トニ付テノ質問ニ對シテ答辯ガ漏レテ居ッ
タノデアリマスガ、旣ニ時間モ長ク經ッテ居
リマスコトカラ致シマシテ、是非トモ政府
ニ於カレマシテハ之ヲ御〓究ナサイマシテ、
委員會ノ開カレル時ニ於キマシテ、詳細ナ
ル確然タル御答辯ヲ御願致シタイト云フコ
トヲ希望致シマシテ私ノ質問ヲ打切リタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=46
-
047・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=47
-
048・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名二十七名ノ
委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=48
-
049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=49
-
050・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第二乃至第五ハ便宜上一括議題ト爲スニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=50
-
051・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ日程第二、日滿司法事務共助
法案、日程第三、民法中改正法律案、日程
第四、民事訴訟法中改正法律案、日程第五
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正法律
案、右四案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマ
ス-政府委員久山知之君
第二日滿司法事務共助法案(政府提
出、貴族院送付)第一讀會
第三民法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
第四民事訴訟法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
第五外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法
中改正法律案(政府提出、貴族院送
付第一讀會
日滿司法事務共助法案
日滿司法事務共助法
第一條裁判所又ハ檢事局ハ滿洲國ノ法
院又ハ檢察廳ノ囑託ニ因リ民事及刑事
ニ關シ左ノ事項ニ付司法事務ノ共助ヲ
爲ス
一訴訟書類ノ送達
二證據調
三犯罪ノ捜査
四被疑者又ハ被〓人ニ對スル勾引狀
ノ發付又ハ執行
五逮捕狀ノ發付又ハ執行
六刑事判決ノ執行
共助ハ所要ノ事務ヲ取扱フベキ地ヲ管
轄スル區裁判所又ハ區裁判所檢事局ニ
於テ之ヲ爲ス
第二條受託事項ノ實施ガ法律上許スベ
カラザルモノナルトキ又ハ公益ヲ害ス
ル虞アルトキハ之ヲ爲サザルコトヲ得
受託事項ノ實施ガ捜査、裁判又ハ刑ノ
執行ノ障礙ト爲ルベキ場合ニ於テハ障
礙ナキニ至ル迄之ヲ爲サザルコトヲ得
第三條囑託ニ因ル勾引上ノ發付又ハ執
行ノ實施ガ不相當ナルトキハ是ヲ爲サ
ザルコトヲ得
第四條囑託ニ因ル自由刑ノ執行ノ實施
ガ著シク不相當又ハ不便ナルトキハ之
ヲ爲サザルコトヲ得
第五條前三條ノ規定ニ依リ受託事項ノ
實施ヲ爲サザル場合ニ於テハ速ニ其ノ
旨ヲ囑託官廳ニ通知スベシ
第六條檢事共助ヲ爲スニ付必要アルト
キハ押收、搜索、檢證、被疑者ニ對ス
ル勾引狀ノ發付、被疑者若ハ證人ノ訊
問又ハ鑑定ノ處分ヲ其ノ所屬區裁判所
ノ判事ニ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル請求ヲ受ケタル判事
ハ其ノ處分ニ關シ豫審判事ト同一ノ權
ヲヨハ
判事第一項ノ處分ヲ爲シタルトキハ速
ニ之ニ關スル書類及證據物ヲ檢事ニ送
付スベシ
第七條刑事判決ノ執行ハ司法大臣ヲ經
由シ判決書ノ謄本ヲ送付シテ囑託アリ
タルトキハ死刑及法律ノ認メザル刑ヲ
除キ之ガ共助ヲ爲スベシ
前項ノ囑託ニ因ル執行ニ付テハ刑名同
ジキモノハ之ヲ同一ノ刑ト看做シ滿洲
國刑法ノ徒刑ハ之ヲ懲役ト看做ス
第八條囑託ニ因ル受刑者ノ假出獄ニ關
シテハ帝國ノ法令ニ依ル
第九條囑託ニ因リ罰金、科料若ハ沒收
ノ刑ヲ執行シ又ハ追徵金ヲ徵收シタル
トキハ其ノ金額又ハ物品ヲ滿洲國ニ引
渡スベシ但シ沒收物中價値ナキ者ハ之
ヲ廢棄シ引渡ニ不便ナル物ハ之ヲ公賣
シテ其ノ代價ヲ引渡スコトヲ得
第十條受託官廳受託事項ニ付權限ヲ有
セザルトキハ受託ノ權限アル官廳ニ囑
託ヲ移送シタル上速ニ其ノ旨ヲ囑託官
廳ニ通知スベシ
第十一條受託事項ハ帝國ノ法令ニ依リ
之ヲ實施ス
第十二條民事ニ關スル受託事項ノ實施
ニ要スル費用ニシテ當事者ノ負擔ト爲
ラザルモノハ之ヲ國庫ノ負擔トス
刑事ニ關スル受託事項ノ實施ニ要スル
費用ハ之ヲ國庫ノ負擔トス但シ他ノ法
令ニ於テ別ニ負擔者ヲ定ムルモノハ之
ヲ其ノ者ノ負擔トス
第十三條裁判所又ハ檢事局ハ滿洲國ノ
法院又ハ檢察廳ニ對シ第一條第一項ノ
事項ノ囑託ヲ爲スコトヲ得
第十四條第一條第一項ノ事項ノ囑託ハ
裁判所又ハ檢事局ヨリ滿洲國ノ地方法
院又ハ地方檢察廳ニ對シ直接之ヲ爲ス
コトヲ得但シ刑事判決ノ執行ノ囑託ハ
司法大臣ヲ經テ之ヲ爲スベシ
第十五條滿洲國ノ法院又ハ檢察廳ガ囑
託ニ因リ爲シタル行爲ハ帝國ノ法令ノ
適用ニ關シテハ帝國ノ法令ニ依リ爲シ
タルモノト同一ノ效力ヲ有ス
第十六條滿洲國ノ執行名義ニ依リテ强
制執行ヲ爲スニハ裁判所ノ許可ヲ得ル
コトヲ要ス
第十七條前條ノ認可ノ申立ハ債務者ノ
普通裁判籍又ハ執行ノ目的タル財產ノ
所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
第十八條前條ノ申立ニ對スル裁判ハ非
訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
民事訴訟法五百十五條ノ規定ハ前項ノ
裁判ニ之ヲ準用ス
第十九條執行認可ノ裁判ハ執行力アル
債務名義ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十條第十八條ノ裁判ニ對シテハ卽
時抗告ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ
二週間トス執行認可ノ裁判ニ對スル卽
時抗告ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
第二十一條前五條ノ規定ハ滿洲國法院
ノ爲シタル强制執行ノ停止ヲ命ズル裁
判ニ依リテ强制執行ノ停止ヲ爲ス場合
ニ之ヲ準用ス
民事訴訟法第五百二十二條第二項ノ規
定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(小字及-ハ貴族院修正)
日滿司法事務共助法案中貴族院修正ノ箇
所左ノ如シ
檢事犯罪ノ搜査ノ共助ヲ爲スニ付
第六條檢事共助ヲ爲スニ付必要アルト
强制ノ處分ヲ必要トスルトキハ押收、搜索、
キハ押收、搜索、檢證、被疑者ニ對ス
檢證、
ル勾引狀ノ發付、被疑者若ハ證人ノ訊
問又ハ鑑定ノ處分ヲ其ノ所屬區裁判所
ノ判事ニ請求スルコトヲ得
檢事被疑者ニ對スル勾引狀ノ發付ノ共助ヲ
爲スニ付必要アルトキハ其ノ處分ヲ其ノ所
屬區裁判所ノ判事ニ請求スルコトヲ得
으
前。項ノ規定ニ依ル請求ヲ受ケタル判
事ハ其ノ處分ニ關シ豫審判事ト同一ノ
權ヲ有ス
本條
判事第一項ノ處分ヲ爲シタルトキハ速
ニ之ニ關スル書類及證據物ヲ檢事ニ送
付スベシ
民法中改正法律案
民法中左ノ通改正ス
第四十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
法人ハ其設立ノ日ヨリ主タル事務所ノ
所在地ニ於テハ二週間、其他ノ事務所
ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ登記ヲ爲
スコトヲ要ス
同條第三項中「一週間內ニ」ヲ「其事務所
ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」三四人
第四十六條第二項中「一週間內ニ」ヲ「主タ
ル事務所ノ所在地ニ於テハ一一週間、其他ノ事
務所ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」ニ改ム
第四十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
法人カ主タル事務所ヲ移轉シタルトキ
ハ舊所在地ニ於テハ二週間內ニ移轉ノ
登記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ三週間内
ニ第四十六條第一項ニ定メタル登記ヲ
爲シ其他ノ事務所ヲ移轉シタルトキハ
舊所在地ニ於テハ三週間內ニ移轉ノ登
記ヲ爲シ新所在地ニ於チハ四週間內ニ
第四十六條第一項ニ定メタル登記ヲ爲
スコトヲ要ス
第七十七條中「一週間內ニ」ヲ「主タル事
務所ノ所在地ニ於テハ一一週間、其他ノ事
務所ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ」ニ改
ム
第九十七條ノ二意思表示ハ表意者ガ相
手方ヲ知ルコト能ハス又ハ其所在ヲ知
ルコト能ハサルトキハ公示ノ方法ニ依
リテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ公示ハ公示送達ニ關スル民事訴
訟法ノ規定ニ從ヒ裁判所ノ揭示場ニ揭
示シ且其揭示アリタルコトヲ官報及ヒ
新聞紙ニ少クモ一囘揭載シテ之ヲ爲
ス但裁判所相當ト認ムルトキハ官報及
ヒ新聞紙ノ揭載ニ代ヘ市役所、町村役
場又ハ之ニ準スヘキ施設ノ揭示場ニ揭
示スヘキコトヲ命スルコトヲ得
公示ニ依ル意思表示ハ最後ニ官報若ク
ハ新聞紙ニ揭載シタル日又ハ其揭載ニ
代ハル揭示ヲ始メタル日ヨリ二週間ヲ
經過シタル時ニ相手方ニ到達シタルモ
ノト看做ス但表意者カ相手方ヲ知ラス
又ハ其所在ヲ知ラサルニ付キ過失アリ
タルトキハ到達ノ效力ヲ生セス
公示ニ關スル手續ハ相手方ヲ知ルコト
能ハサル場合ニ於テハ表意者ノ住所地、
相手方ノ所在ヲ知ルコト能ハサル場合
ニ於テハ相手方ノ最後ノ住所地ノ區裁
判所ノ管轄ニ屬ス
裁判所ハ表意者ヲシテ公示ニ關スル費
用ヲ豫納セシムルコトヲ要ス
第百七十四條ノ二確定判決ニ依リテ確
定シタル權利ハ十年ヨリ短キ時效期間
ノ定アルモノト雖モ其時效期間ハ之ヲ
十年トス裁判上ノ和解、調停其他確定
判決ト同一ノ效力ヲ有スルモノニ依リ
テ確定シタル權利ニ付キ亦同シ
前項ノ規定ハ確定ノ當時未タ辨濟期ノ
到來セサル債權ニハ之ヲ適用セス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ登記事由ノ生ジタル場合ニ
於テハ其ノ登記ノ期間ハ仍從前ノ例ニ依
ル
第百七十四條ノ二ノ規定ハ本法施行前ニ
確定シタル權利ニ付テモ亦之ヲ適用ス但
シ本法施行前時效ノ完成シタルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第百七十八條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ訴訟ノ遲滯
ヲ避クル爲必要アリト認ムルトキハ申
立ナキトキト雖公示送達ヲ爲スヘキコ
トヲ命スルコトヲ得
第百八十條第一項但書中「第百七十八條
第二項」ヲ「第百七十八條第三項」ニ改ム
第二百三十六條第一項中但書ヲ削リ同項
ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
訴ノ取下ハ相手方カ本案ニ付準備書面
ヲ提出シ、準備手續ニ於テ申述ヲ爲シ
又ハ口頭辯論ヲ爲シタル後ニ在リテハ
相手方ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ效
力ヲ生セス
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
第三項但書ノ場合ニ於テ相手方カ期日
ニ出頭セサルトキハ口頭辯論又ハ準備
手續ノ調書ノ謄本ヲ之ニ送達スルコト
ヲ変大
訴ノ取下ノ書面ノ送達アリタル日ヨリ
三月內ニ相手方カ異議ヲ述ヘサルトキ
ハ訴ノ取下ニ同意シタルモノト看做ス
第三項但書ノ場合ニ於テ相手方カ期日
ニ出頭シタル場合ニ於テハ訴ノ取下ア
リタル日ヨリ、相手方カ期日ニ出頭セ
サル場合ニ於テハ前項ノ謄本ノ送達ア
リタル日ヨリ三月內ニ相手方カ異議ヲ
述ヘサルトキ亦同シ
第三百六十三條第二項中「第二百三十六
條第二項第三項」ヲ「第二百三十六條第三
項乃至第五項」ニ改ム
第六百四十三條第一項第五號中「其期限
竝ニ借賃」ノ下ニ「及ヒ借賃ノ前拂又ハ敷
金ノ差入アルトキハ其額」ヲ加フ
第六百五十八條第三號中「其期限竝ニ借
賃」ノ下ニ「及ヒ借賃ノ前拂又ハ敷金ノ差
入アルトキハ其額」ヲ加フ
第六百六十四條第一項中「利害關係人カ
或ル競買人ヨリ保證ヲ立テシメンコトヲ
申立ツルトキハ其」及第二項ヲ削ル
第六百六十六條第二項中「預ケタル保證
アルトキハ卽時ニ其」ヲ「卽時ニ保證ノ」
ご依人
第六百六十七條第一項第七號中「申立ニ
因リ」及「申立アルモ」ヲ削ル
第七百五條中「第六百六十四條ノ規定ニ
從ヒ保證ヲ立ツ可キ求ヲ受クルモ之ヲ」
ヲ「第六百六十四條ノ規定ニ依ル保證ヲ」
三國人
第七百五十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ執行ニ付テハ假差押ノ命令ヲ發
シタル裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所ト
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ開始シタル强制執行ニ付テ
ハ仍從前ノ例ニ依ル
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改正
法律案
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中左ノ通
改正ス
第一條ノ二ニ左ノ一項ヲ加フ
條約又ハ之ニ準スヘキモノニ前項ノ規定
ト異ル規定アルトキハ其ノ規定ニ從フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=51
-
052・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今上程セラレ
マシタ日滿司法事務共助法案ニ付テ提案ノ
理由ヲ御說明申上ゲマス、御承知ノ如ク、我
國ハ昨年十二月一日ヨリ滿洲國ニ於ケル領
事裁判權ヲ撤廢致シタノデアリマス、隨テ
其後ハ日滿兩國間ノ司法事務ノ共助ハ、我
國ニ於テハ明治三十八年法律第六十三號、
外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法ノ規定ニ依
ル外ナイノデアリマスガ、此法律ニ依ル共
助ノ範圍ハ訴訟書類ノ送達ト證據調ニ限ラ
レテ居リマスノデ、我國ト極メテ密接ナ特
殊關係ニアル滿洲國トノ間ノ司法事務ノ共
助ハ、是ダケデハ到底不十分タルヲ免レマ
セヌ、仍テ日滿兩國ノ特殊ナ關係ヲ考慮致
シ、實際上ノ必要ニ應ズル爲メ、兩國間ニ
於テハ司法事務共助ノ範圍ヲ擴張スル必要
ガアリマスノデ、本法案ヲ提出致シタノデ
アリマス、尙ホ本案第六條ニ對シマシテハ、
貴族院ニ於テ修正ヲ加ヘラレタノデゴザイ
マスガ、原案ノ趣旨亦固ヨリ是ト異ルモノデ
ハナイノデアリマスカラ、政府ハ其修正ニ同
意ヲ致シタノデアリマス、何卒御審議ノ上御
協贊アランコトヲ希望致ス次第デアリマス
次ハ民法中改正法律案外一一件ノ法律案ノ
提出ノ理由ヲ一括シテ御說明申上ゲマ
ス、是等ノ法律案ハ何レモ第七十議會ニ於
テ御協贊ヲ得マシタ司法法規整備、卽チ現
行法規中ノ不備ヲ個別的ニ補充シ、實際ニ
適セザルモノヲ部分的ニ改正スル事業ノ
部ヲ成スモノデアリマス
先ヅ民法中改正法律案デアリマスル
ガ、其改正ノ要點ハ三ツゴザイマス、
其一ツハ、民法法人ニ關スル登記期間ヲ延
長シタ點、其二ハ所在不明ノ相手方ニ對シ
テ爲サルベキ意思表示ノ方法ヲ新ニ設ケタ
點其三ハ所謂短期消滅時效ノ定メアル權
利ノ中、判決、裁判上ノ和解等ニ依ッテ確
定致シマシクモノニ付テ、確定後ノ消滅時
效ノ期間ヲ十年ト云フコトニ改メタ點デア
リマス
次ニ民事訴訟法中改正法律案デアリマス
ルガ、改正ノ第一點ハ、裁判所ノ職權ヲ以
テ公示送達ヲ爲シ得ベキ場合ヲ認メタコト
デ、第二點ハ取下ノ手續ヲ簡便ニシタコト
デアリマス、改正ノ第三點ト致シマシテハ、
第三者ニ賃貸サレテ居ル不動產ノ競賣ニ付
キ、賃料ノ前拂、敷金ノ差入ノ有無等ヲ取
調べ、且ツ之ヲ公〓スベキ事項ノ中ニ加
ヘ、第四點ト致シマシテ、不動產競買ノ申
出ヲ爲サントスル者ニハ、必ズ競買代金ノ
一部ニ相當スル保證ヲ立テサセルコトニ致
シマシタ、改正ノ第五點ハ、不動產假差押
ニ付キ、管轄執行裁判所ヲ規定シ、解釋上
ノ疑義ヲ一掃致シタノデアリマス
次ニ外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法中改
正法律案デアリマスガ、現行法ニ於キマシ
テハ、外國ノ裁判所ヨリ司法事務ノ共助ヲ
求メラレマシタ場合ニ、我國ノ裁判所ガ之
ニ應ジマスルニハ、其國ガ囑託シタ事項ノ
施行ノ爲ニ要スル費用ノ辨償ヲ保證シタル
場合デアルコトヲ條件トスルノデアリマス
ガ、其後現行ノ條約中ニハ囑託ヲ受ケタ國
ニ於テ自ラ費用ヲ負擔シテ受託事項ヲ施行
スルヤウニ定メタモノガ出來テ參リマシタ
ノデ、此法律ヲ改正スル必要ヲ認メタノデ
アリマス、以上ノ理由ヲ以チマシテ、是等
ノ三ツノ法律案ヲ提出致シタ次第デアリマ
スルガ、此中共助ニ關スル法律案ハ、第七
十議會ニ提出致シマシタモノト同一デアリ
マシテ、先囘ハ衆議院ノ解散ノ爲ニ審議未
了トナッタモノデゴザイマス、何卒十分御審
議ノ上御協贊アランコトヲ御願致ス次第デ
ゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=52
-
053・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、之ヲ許シマス-三田村武夫君
〔三田村武夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=53
-
054・三田村武夫
○三田村武夫君 私ハ只今議題トナッテ居
リマス日滿司法事務共助法案ニ付テ簡單ニ
御尋致シマス、日滿關係ノ緊密化ト國際情
勢ノ緊迫ニ伴ヒマシテ、犯罪ハ益〓國際性ヲ
帶ビテ參ッテ居ルノデアリマス、隨テ此犯罪
ノ防遏檢擧ニ當リマシテハ、相當ノ困難ヲ
感ジテ來テ居ルノデアリマス、私ハ其意味
カラ致シマシテ、日滿關係ノ司法事務ヲ圓
滑ナラシムル爲ニ、本法案ノ提出サレマシ
タコトニ贊意ヲ表スル者デアリマスガ、更
ニ私ハ此司法事務共助ノ規定ニ依リマシテ
行ハレマス手續乃至處分ト云フモノハ、御
承知ノ通リ事件發生後ノ處理デアリマシテ、
所謂消極的ナ意味シカ持タナイモノデアリ
マス、私ハ今囘ノ事變發生ニ依リマシテ、
日本ガ此東亞ニ於ケル責任ト立場、本議會
ニ於キマシテモ、所ハ本會議ニ於テ、或
委員會ニ於テ屢、政府當局ノ言明シテ居リマ
ス通リ、其東亞ニ於ケル政策ノ根幹ハ今日
防共政策ニアルノデアリマス、更ニ日獨防
共協定成立以後、日本ノ對外國策、所謂外
交政策ノ根幹モ防共政策ニアルノデアリマ
ス、其政策ガ私ハ常ニ消極的ナ意味ニ於テ
シカ具體化サレナイコトヲ甚ダ遺憾ニ存ズ
ルノデアリマス、ト申シマスノハ、日獨防
共協定ノ成文ニ依リマシテモ、アノ防共政
策ヲ徹底セシメル爲ニハ、國際的ナ機關ヲ
設ケルコトニナッテ居ルノデアリマスガ、ア
ノ日獨防共協定成立以來旣ニ一年有餘ヲ經
テ居リマス今日ニ於テモ、何等ソコニ具體
的ナ機關ノ設置ヲ見テ居ナイノデアリマス、
更ニ東亞ニ於ケル防共、是ハ今日最モ重大
ナ問題ニナッテ居ルノデアリマシテ、是ハ斷
ジテ消極的ナ意味ニ取扱フベキ性質デハナ
イノデアリマス、寧ロ積極的ニ此對策ヲ考
ヘナケレバナラナイト思フノデアリマス、
固ヨリ事件發生後ニ於ケル適切妥當ナ處置
モ必要デアリマスガ、私ハ更ニ一步進ンデ
日本ト滿洲、更ニ今囘ノ事變デ占據致シマ
シタ北支、中南支、其地域ニ亙ッテモ、之ヲ
一丸トシタ大キナ防共陣營ノ强化ガ必要ダ
ト思フノデアリマス、ソレハドウ云フコト
ヲ意味スルカト申シマスト、今日日本ガ最
モ大キナ任務ト致シテ居リマス防共、其防共
政策ノ根幹ニナルモノハ、私ハ發生シタ事
件ヲ處理スル點ニアルノデハナイト思フノ
デアリマス、防共ハ卽チ赤化ノ防止デアリ
マス、赤化ノ防止ハ事件發生ヲ防止シナケ
レバナラナイノデアリマシテ、發生シタ事
件ヲ處理スルコトガ適切デアル譯デハナイ
ノデアリマス、隨テ私ハ玆ニ政府ニ對シテ
御伺シタイコトハ、日本卽テ內地、朝鮮、
臺灣、南洋、樺太、ソレニ滿洲、北支、中
支モ加ヘマシテ、防共政策徹底ノ爲ニ一大
機關ヲ設置サレル意思ガナイカト云フ點デ
アリマス(「關係ガナイヂヤナイカ」ト呼フ
者アリ)是ハ關係ガナクナイノデアリマス、
犯罪ノ事件發生ノ後ニ於ケル處理固ヨリ必
要デアリマスガ、此事件發生ヲ防止スル機
關ガ、尙ホヨリ私ハ必要ダト思フノデアリ
マス、更ニ御承知ノヤウニ滿洲ハ滿洲事變
以來、就中今囘ノ日支事變勃發後ニ於キマ
シテハ、所謂國際諜者、卽チ「スパイ」暗躍
ノ根源地ニナッテ居ルノデアリマス、斯ウ云
フモノヲ防遏スル見地カラ言ヒマシテモ、
私ハ統一アル機關ノ設置ト云フコトガ必要
ダト考ヘルノデアリマス、私ハ其意味ヲ强
調致シマシテ、外務省竝ニ內務當局、百人
檢察捜査ノ任ニアラレマス司法當局ニ對シ
テ、サウ云フ機關ノ設置、竝ニ更ニ有機的
ナ搜査連絡機關ノ設置ラサレル御意思ガア
ルカナイカト云フ點ヲ御伺シタイノデアリ
そく、私ノ此案ニ對シテ御伺スル點ハ唯其
一點デアリマス(拍手)
〔政府委員木村正義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=54
-
055・木村正義
○政府委員(木村正義君) 只今三田村君カ
ラ我國ノ外交政策竝ニ東亞政策ノ根幹ノ一
ツハ防共政策デアル、斯ウ云フコトヲ根柢
トシテ御質問ニナリマシタガ、大體御質問
ノ趣旨ニ對シマシテハ政府モ同感ニ感ズル
次第デアリマス、先程ノ御質問ノ中ニ、日、
獨、伊ノ防共協定ガ既ニ成ッテ居ルガ、何等
見ルベキ機關ガナイ、斯ウ云フ御意見ガア
リマシタガ、御承知ノヤウニ日獨ノ間ニハ
防共委員會ト云フノガ伯林ニ設置サレマシ
テ、サウシテ我國カラモ委員ガ入ッテ、情報
ノ交換、防共政策ノ協議等ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、相當ノ效果ヲ收メテ居ル次第
デアリマス、只今我國ノ內地、外地、竝二
滿洲、中南支、北支等ニ亙ッテ、所謂日滿支
ヲ一體トシテ、防共、防諜ニ關スル一大機
關ヲ設置スル必要ガナイカト云フ御意見デ
アリマスガ、私ガ申ス迄モナク東洋治安ノ
維持、東洋平和ノ確立ト云フコトハ、我國
ノ重大使命デアリマス、隨テ此防諜、防共
ノ爲ニ萬全ノ策ヲ講ズルト云フコトハ、國
家トシテ當然爲サナクチヤナラヌ點デアリ
マス、今日マデモ內地、外地、又滿洲、支
那ニ亙リマシテ、相當此方面ニ力ヲ致シテ
居リマスルガ、今後此點ニ向ッテ全力ヲ傾注
致サナクチヤナラヌト思ヒマス、其實施ノ
方法等ニ付キマシテハ、十分今後〓究ノ必
要ガアルト考ヘテ居リマス(拍手)
〔政府委員久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=55
-
056・久山知之
○政府委員(久山知之君) 只今三田村君カ
ラ防共ニ關スル御質問ガアッタノデアリマ
スルガ、司法省トシテハ決シテ消極的ニ取
締ッテ居ル譯デハナイノデアリマシテ、現ニ
哈爾賓、上海ニハ思想檢事ヲ派遣致シマシ
テ、此共產主義ノ策動ニ對シテ、未然ニ之
ヲ彈壓スベク準備ヲ整ヘテ居リマス、尙ホ
北支、中支ノ方面ニ對シマシテモ、將來十
分考慮〓究ヲ致シマシテ、適當ナル處置ヲ
講ジタイト考ヘテ居リマス、甚ダ簡單デア
リマスガ、之ヲ以テ御答ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=56
-
057・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=57
-
058・服部崎市
○服部崎市君 日程第二乃至第五ノ四案ヲ
一括シテ、議長指名十八名ノ委員ニ付託サ
レンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=58
-
059・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=59
-
060・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マツ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=60
-
061・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第八乃至第十
ノ三案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=61
-
062・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=62
-
063・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第八、昭和十二年法律第八十四號中改
正法律案、日程第九、關東局、朝鮮總督府、
臺灣總督府及樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル
租稅收入ノ一部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍
事費特別會計ニ繰入ルヽコトニ關スル法律
案日程第十、昭和十三年度一般會計歲出
ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行ニ關スル法
律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマ
ス-大藏大臣賀屋興宣君
第八昭和十二年法律第八十四號中改
正法律案(支那事變ニ關スル臨時軍
事費支辨ノ爲公債發行ニ關スル件)
(政府提出)第一讀會
第九關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府
及樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅
收入ノ一部ニ相當スル金額等ヲ臨時
軍事費特別會計ニ繰入ルルコトニ關
スル法律案(政府提出)第一讀會
第十昭和十三年度一般會計歲出ノ財
源ニ充ツル爲公債追加發行ニ關スル
法律案(政府提出)第一讀會
昭和十二年法律第八十四號中改正法律
案
昭和十二年法律第八十四號中左ノ通改正
ス
「二十億二千二百七十萬圓」ヲ「六十四億
七千六百二十萬圓」三枚人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十二年法律第八十五號臨事軍事費特
別會計法ニ左ノ一條ヲ加フ
第三條政府ハ臨時軍事費出納上必要
アル場合ニ於テハ一時借入金ヲ爲シ
又ハ融通證劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル一時借入金及融通
證劵ハ臨事軍事費特別會計ノ歲入ヲ
以テ之ヲ償還スベシ
第一項ノ規定ニ依ル融通證劵ハ國債
整理基金特別會計法第一一條第二項ノ
規定ノ適用ニ付テハ之ヲ國債ト看做
サズ
關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺
太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ
一部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特
別會計ニ繰入ルルコトニ關スル法律案
第一條關東局、朝鮮總督府、臺灣總督
府及樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル所得
稅法人資本稅、砂糖消費稅、取引所
稅出港稅又ハ臨時利得稅ノ今囘ノ增
徵ニ因ル昭和十三年度以降ノ增收額ト
利益配當稅、公債及社債利子稅、通行
說入場稅、特別入場稅及物品税ノ創
設ニ因ル昭和十三年度以降ノ收入額ト
ノ合計額ヨリ徵稅費ヲ控除シタル殘額
ニ相當スル金額ハ其ノ八割ヲ限リ每年
度豫算ノ定ムル所ニ依リ之ヲ當該特別
會計ヨリ臨時軍事費特別會計ニ繰入ル
ベシ
第二條朝鮮總督府及臺灣總督府ノ各特
別會計ニ於ケル今囘ノ煙草定價改正ニ
因ル昭和十三年度以降ノ專賣收入增加
額ニ相當スル金額ハ其ノ八割ヲ限リ每
年度豫算ノ定ムル所ニ依リ之ヲ當該特
別會計ヨリ臨時軍事費特別會計ニ繰入
ルベシ
第三條關東局、朝鮮總督府、臺灣總督
府及樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル北支
事件特別稅收入額ヨリ徵稅費ヲ控除シ
タル殘額ニ相當スル金額ハ豫算ノ定ム
ル所ニ依リ之ヲ當該特別會計ヨリ臨時
軍事費特別會計ニ繰入ルベシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
昭和十二年法律第五十一號ハ之ヲ廢止ス
昭和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
政府ハ昭和十三年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金
額ノ外七千三百十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行
シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=63
-
064・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ昭和十二年法律第八十四號中改正法
律案外二件ノ法律案ニ付キ提出ノ理由ヲ說
明致シマス
先ヅ昭和十二年法律第八十四號中改正法
律案ニ付キ說明申上ゲマス、支那事變ニ關
スル經費ニ付キマシテハ、第七十一囘及ビ
第七十二囘ノ各帝國議會ノ協贊ヲ經マシテ、
其財源ニ充ツル爲ノ公債發行ヲ爲シ得ル法
律ノ制定ヲ見タノデアリマスガ、事態ノ推
移ニ伴ヒマシテ、更ニ臨時軍事費ヲ追加ス
ルヲ必要トスルニ至ッタノデアリマス、然ル
所其所要財源中四億三千三百十万餘圓ニ付
キマシテハ、一般會計及ビ各特別會計ヨリ
ノ繰入金、北支事件特別稅收入等ヲ以テ充
當シ、四十四億五千三百四十餘万圓ニ付キ
マシテハ、今日ノ場合之ヲ公債財源ニ依ル
コトト致シマスル爲メ、昭和十二年法律第
八十四號中ノ公債發行限度ヲ增額スル必要
ガアルノデアリマス、尙ホ本法律案ノ附則ニ
於テ、支那事變ニ關スル臨時軍事費特別會
計法ニ一箇條ヲ加ヘルコトト致シマシタノ
ハ、臨時軍事費出納上ノ必要ニ應ジマシ
テ、機宜ノ措置ヲ講ジ得ルノ途ヲ開キ置ク
ヲ適當ト認メタルニ依ルモノデアリマス
次ニ關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及
樺太廳ノ各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ
一部ニ相當スル金額等ヲ臨時軍事費特別
會計ニ繰入ルルコトニ關スル法律案ニ付キ
說明ヲ申上ゲマス、今囘一般會計ニ於キマ
シテ、支那事變費ノ一部ニ充ツル爲メ、所
得稅、法人資本稅、砂糖消費稅、取引所稅
及ビ臨時利得稅ヲ增徵シ、利益配當稅、公
債及ビ社債利子稅、通行稅、入場稅、特別
入場稅及ビ物品稅ヲ創設スルコトト致シマ
スルト共ニ、煙草ノ値上ヲ致シマシタノデ
關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及ビ樺太
廳ノ各特別會計ニ於キマシテモ、一般會計
ニ於ケルト同趣旨ノ下ニ、〓ネ右ニ準ジ同
種ノ租稅ヲ增徵シ、竝ニ新稅ヲ創設スルト
共ニ、煙草ノ値上ヲ致シマシテ、其收入額
ノ一部ニ相當スル金額等ヲ、每年度豫算ノ
定ムル所ニ依リ、臨時軍事費特別會計ニ繰
入ルヽコトト致シマシタ所、是ガ會計上ノ
處理ニ關シマシテハ、法律ノ制定ヲ必要ト
致スノデアリマス
最後ニ昭和十三年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案ニ
付キ說明申上ゲマス、昭和十三年度歲入歲
出總豫算ニ伴フ一般會計歲入不足ノ補塡ニ
付キマシテハ、之ニ關スル法律案ヲ今期議
會ニ提出シテアリマスガ、今囘別途提出致
シマシタ同年度歲入歲出總豫算追加第一號
ニ計上セル經費ノ所要財源總額三億八千六
百四十餘万圓ヨリ、增稅其他ノ普通歲入ヲ
以テ充當スベキ分三億一千三百四十餘万圓
ヲ差引キマシタル殘額七千三百餘万圓ニ付
キマシテハ、今日ノ場合之ヲ公債ニ依ルノ
外アリマセヌノデ、本法律案ヲ提出致シタ
次第デアリマス、尙ホ本法律案ハ前述ノ如
ク總豫算ニ伴フ歲入補塡公債法案ガ目下御
審議中ナルニ顧ミ、別ノ法律案ト致シタ次
第デアリマス
以上三件ノ法律案ニ付キ何卒御審議ノ上
速ニ協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=64
-
065・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 各案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=65
-
066・服部崎市
○服部崎市君 日程第八乃至第十ノ三案ハ
一括シテ、政府提出、臨時租稅增徵法中改
正法律案外七件委員ニ併セ付託サレンコト
ヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=66
-
067・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=67
-
068・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
そく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=68
-
069・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=69
-
070・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君提出ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=70
-
071・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やっく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、明四日
ハ定刻ヨリ本會議ヲ開キマス、議事日程ハ
公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是ニテ散
會致シマス
午後五時二十一分散會
衆議院議事速記錄第十九號中
正誤
頁段行誤正
四二〇一一六大同土地株大東土地株
式會社式會社
衆議院議事速記錄第二十號中
正誤
頁段行誤正
四五二四三營養榮養
四川五郎一三五凌虐陵虐
四五五三六用ジテ生ジテ
四六二一二三工答工合
四六四四六尻取知取
同同七尻取知取発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X02119380303&spkNum=71
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。