第73回帝国議会　衆議院　本会議　第31号　昭和13年3月19日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十三年三月十九日（土曜日）
  　　　午後二時九分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第三十號
  　　昭和十三年三月十九日
  　　　午後一時開議
  　第一　北支那開發株式會社法案（政府提出）　第一讀會
  　第二　中支那振興株式會社法案（政府提出）　第一讀會
  　第三　兌換銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　支那事變特別税法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五　相續税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第六　臨時租税増徴法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第七　所得税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　登録税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　酒造税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　麥酒税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十二　大正九年法律第十二號中改正法律案（所得税法の施行に關する件）（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　臨時利得税法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十四　臨時租税措置法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十五　日滿國税徴收事務共助法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十六　本邦内に於て募集したる外國債の待遇に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十七　決議案（石油資源開發に關する件）（菊池良一君外二十二名提出）
  　第十八　航空擴充に關する決議案（多田滿長君外十九名提出）
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
  一政府より提出せられたる議案左の如し
  　北支那開發株式會社法案
  　中支那振興株式會社法案
  　兌換銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する法律案
  　　　　　　　　（以上三月十七日提出）
  一去十七日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
  　　昭和十二年法律第八十四號中改正法律案（支那事變に關する臨時軍事費支辨の爲公債發行に關する件）
  　　關東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳の各特別會計に於ける租税收入の一部に相當する金額等を臨時軍事費特別會計に繰入るることに關する法律案
  　　昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案
  一議員より提出せられたる議案左の如し
  　航空擴充に關する決議案
  　　提出者
  　　　　多田滿長君　武知勇記君
  　　　　眞鍋儀十君　末松偕一郎君
  　　　　松尾四郎君　菊池良一君
  　　　　松田竹千代君　手代木隆吉君
  　　　　平野光雄君　川島正次郎君
  　　　　松村光三君　東武君
  　　　　熊谷直太君　武田徳三郎君
  　　　　牧野良三君　芦田均君
  　　　　西村茂生君　紅露昭君
  　　　　井上知治君　原口初太郎君
  　　　　　　　　（以上三月十八日提出）
  一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
  　滿洲移民の金融施設に關する質問主意書
  　　提出者　　　　　　　　羽田武嗣郎君
  　小工業者の窮境打解に關する質問主意書
  　　提出者
  　　　　松永義雄君　須永好君
  　　　　　　　　（以上三月十八日提出）
  一昨十八日近衞内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
  　　　　　　　　大藏書記官　山際正道
  　第七十三囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付
  一去十七日常任委員補闕選擧の結果左の如し
  　第九部選出
  　　豫算委員　名川侃市君（砂田重政君補闕）
  　第二部選出
  　　懲罰委員　大石倫治君（江原三郎君補闕）
  　第二部選出
  　　懲罰委員　石坂繁君（飯村五郎君補闕）
  　第四部選出
  　　懲罰委員　小山田義孝君（松川昌藏君補闕）
  　第六部選出
  　　懲罰委員　河野密君（田原春次君補闕）
  　第七部選出
  　　懲罰委員　小山亮君（中原謹司君補闕）
  　第八部選出
  　　懲罰委員　名川侃市君（國光五郎君補闕）
  　第九部選出
  　　懲罰委員　葉梨新五郎君（坂田道男君補闕）
  　第九部選出
  　　懲罰委員　紅露昭君（小野廉君補闕）
  一去十七日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
  　懲罰委員
  　　理事　紅露昭君（理事小野廉君去十六日委員辭任に付其の補闕）
  　　理事　石坂繁君（理事飯村五郎君去十六日委員辭任に付其の補闕）
  一去十七日委員長及理事互選の結果左の如し
  　入營者職業保障法中改正法律案（政府提出）委員
  　　委員長　田中亮一君
  　　　理事
  　　　　　　片岡恒一君　森下國雄君
  　　　　　　服部岩吉君　野口喜一君
  一去十七日に於ける特別委員の異動左の如し
  　昭和十二年法律第九十二號中改正法律案（輸出入品等に關する臨時措置に關する件）（政府提出、貴族院送付）委員
  　　辭任　津原武君　補闕　片岡恒一君
  　飼料配給統制法案（政府提出）委員
  　　辭任　森肇君　補闕　野中徹也君
  一昨十八日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
  　第一部選出豫算委員　　　稻田直道君
  　第八部選出豫算委員　　　石井徳久次君
  一昨十八日委員長及理事互選の結果左の如し
  　刑法中改正法律案（一松定吉君外六名提出）外四件委員
  　　委員長　野田文一郎君
  　　　理事
  　　　　　　西田郁平君　中村梅吉君
  　　　　　　泉國三郎君　金澤正雄君
  一昨十八日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
  　臨時租税増徴法中改正法律案（政府提出）外七件委員
  　　　理事　小串清一君（委員東條貞君昨十八日理事辭任に付其の補
  闕）
  一昨十八日に於ける特別委員の異動左の如し
  　飼料配給統制法案（政府提出）委員
  　　辭任　平野力三君　補闕　森肇君
  　入營者職業保障法中改正法律案（政府提出）委員
  　　辭任　小山亮君　補闕　木村武雄君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=0

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• 001・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　是ヨリ會議ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=1

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• 002・服部崎市

  ○服部崎市君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際日程第四乃至第十
  六ノ十三案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其審議ヲ
  進メラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=2

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• 003・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　服部君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=3

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• 004・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシター
  日程第四、支那事變特別稅法案、日程
  第五、相續稅法中改正法律案、日程第六、
  臨時租稅增徵法中改正法律案、日程第七、
  所得稅法中改正法律案、日程第八、登錄稅
  法中改正法律案、日程第九、酒造稅法中改
  正法律案、日程第十、酒精及酒精含有飮料
  稅法中改正法律案、日程第十一、麥酒稅法
  中改正法律案、日程第十二、大正九年法律
  第十二號中改正法律案、日程第十三、臨時
  利得稅法中改正法律案、日程第十四、臨時
  租稅措置法案、日程第十五、日滿國稅徵收
  事務共助法案、日程第十六、本邦內ニ於テ
  募集シタル外國債ノ待遇ニ關スル法律案、
  右十三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマ
  ス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-高橋熊次
  郞君
  第四支那事變特別稅法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  第五相續稅法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會ノ續(委員長報告)
  第六臨時租稅增徵法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  第七所得稅法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會ノ續(委員長報告)
  第八登錄稅法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會ノ續(委員長報告)
  第九酒造稅法中改正法律案(政府提
  也第一讀會ノ續(委員長報告)
  第十酒精及酒精含有飮料稅法中改正
  法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  第十一麥酒稅法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  第十二大正九年法律第十二號中改正
  法律案(所得稅法ノ施行ニ關スル件
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  第十三臨時利得稅法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報牛日)
  第十四臨時租稅措置法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報〓)
  第十五日滿國稅徵收事務共助法案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  第十六本邦內ニ於テ墓集シタル外國
  債ノ待遇ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一支那事變特別稅法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  〔別紙〕
  (小字及-ハ委員會修正)
  支那事變特別稅法案中左ノ通修正ス
  第二條所得稅中法人ノ普通所得及〓算
  所得ニ對スル所得稅ニ付テハ臨時租稅
  增徵法第二條ノ規定ニ拘ラズ所得稅法
  第二十一條ニ規定スル稅率百分ノ五ヲ
  百分ノ十二·二五
  百分ノ十二·五、百分ノ十ヲ百分ノ二十
  二·五トシタル場合ノ差增額ニ相當ス
  ル稅額ヲ增徵ス
  所得稅中法人ノ超過所得ニ對スル所得
  稅ニ付テハ同法第二十一條ニ規定スル
  稅率ヲ以テ算出シタル稅額ノ百分ノ十
  ニ相當スル稅額ヲ增徵ス
  前二項ノ規定ニ依ル普通所得及超過所
  得ニ對スル所得稅ノ增徵稅額ハ普通所
  得ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヨリ普
  通所得及超過所得ニ對スル所得稅額(所
  得稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ普
  通所得ニ對スル所得稅ニ加算スル稅額
  ヲ含マズ)ト臨時利得稅額トノ合計金
  額ヲ控除シタル殘額ヲ超ユルコトヲ得
  ズ
  第三條所得稅中同族會社ノ普通所得ニ
  對スル所得稅ニ加算スル稅額ニ付テハ臨時
  租稅增徵法第四條ノ規定ニ拘ラズ所得
  稅法第二十一條ノ二ノ規定ニ依リ算出シ
  百分ノ八十三·七五
  タル稅額ノ百分ノ八十七·五ニ相當ス
  ル稅額ヲ增徵ス
  同族會社ノ普通所得ニ對スル所得稅ニ
  加算スル稅額ハ普通所得ノ百分ノ六十
  ニ相當スル金額ヨリ普通所得及超過所得
  ニ對スル所得稅額(所得稅法第二十一條
  ノ二ノ規定ニ依リ普通所得ニ對スル所
  得稅ニ加算スル稅額ヲ含マズ)、臨時利
  得稅額及前條ノ規定ニ依ル增徵稅額ノ
  合計金額ヲ控除シタル殘額ヲ超ユルコ
  トヲ得ズ殘額ヲ超エザル場合ニ於テ前
  項ノ規定ニ依ル增徵ニ因リ之ヲ超ユル
  ニ至ルトキハ其ノ增徵稅額ニ付亦同ジ
  第五條所得稅中第三種ノ所得ニ對スル所
  百分ノ二十二·五
  得稅ニ付テハ所得稅額ノ百分ノ二十五ニ
  相當スル稅額ヲ增徵ス
  前項ノ規定ニ依ル增徵稅額ハ第三種所
  得ノ百分ノ五十五ニ相當スル金額ヨリ
  第三種ノ所得ニ對スル所得稅額ヲ控除
  シタル殘額ヲ超ユルコトヲ得ズ
  第九條砂糖消費稅ハ砂糖消費稅法第三
  條及臨時租稅增徵法第十七條ノ規定ニ
  拘ラズ左ノ稅率ニ依ル
  -砂糖
  第一種砂糖色相和蘭標本第十一號
  未滿ノ砂糖
  甲樽入黑糖及樽入白下糖但シ分
  蜜シタルモノ、黑糖及白下糖以
  外ノ砂糖ニ加工シテ製造シタル
  モノ竝ニ全部又ハ一部ノ新式機
  械ニ依リ製造シタルモノヲ除ク
  一圓二十錢
  百斤ニ付圓三十錢
  乙其ノ他ノモノ
  三圓三十錢
  百斤ニ付三圓四十錢
  第二種砂糖色相和蘭標本第二十二
  號未滿ノ砂糖
  七圓十錢
  百斤ニ付七圓二十錢
  第三種砂糖色相和蘭標本第二十二
  號以上ノ砂糖
  八圓六十錢
  百斤ニ付八圓七十錢
  第四種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其
  ノ他類似ノモノ
  百斤ニ付十一圓
  二糖蜜
  第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生
  ズル糖蜜
  甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
  重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超エ
  ザルモノ
  三圓九十錢
  百斤ニ付四圓
  乙其ノ他ノモノ
  糖分ヲ蔗
  (昭和三年)日月日日月日
  indican
  ル重量百八圓六十錢
  斤ニ付八圓七十錢
  第二種其ノ他ノ糖蜜
  甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
  重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超エ
  ザルモノ
  圓二十錢
  百斤ニ付一圓三十錢
  乙其ノ他ノモノ
  三圓三十錢
  百斤ニ付三圓四十錢
  七圓十錢
  三糖水百斤ニ付七圓二十錢
  第二十八條第一種ノ場所ノ入場料ガ一
  二十三錢
  人一囘十九錢ニ滿タザル場合ニハ入場
  稅ヲ課セズ
  前項ノ規定ハ囘數、定期又ハ貸切ニテ
  入場ノ契約ヲ爲シタル場合ニハ之ヲ適
  用セズ
  第三十五條特別入場料ガ一人一囘
  二十三錢
  十九錢ニ滿タザル場合ニハ特別入場稅
  ヲ課セズ
  第二十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合
  ニ付之ヲ準用ス
  第三十九條物品稅ノ稅率左ノ如シ
  第一種
  甲類物品ノ價格百分ノ十五
  乙類物品ノ價格百分ノ十
  第二種
  甲類物品ノ價格百分ノ十五
  乙類物品ノ價格百分ノ十
  第三種
  -燐寸千本ニ付五錢
  二酒類
  イ〓酒、白酒、味淋、燒酎及麥
  酒
  一石ニ付五圓
  ロ葡萄酒(酒精及酒精含有飮料
  稅法第三條ノ二ニ規定スルモノ
  以下同ジ)
  十圓
  一石ニ付十五圓
  ハ其ノ他ノ酒類ニシテ酒精及酒
  精含有飮料稅法ノ適用ヲ受クル
  モノ
  一石ニ付七圓
  第六十九條本法施行ノ際製造場又ハ保
  稅地域以外ノ場所ニ於テ同一人ガ二萬
  ヲ超ユル數量
  斤以上ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ヲ所持ス
  ル場合ニ於テハ其ノ者ニ於テ本法施行
  ノ日ニ之ヲ製造場ヨリ引取リタルモノ
  ト看做シ砂糖消費稅ヲ課ス此ノ場合ニ
  〓二萬斤ヲ超ユル數量ニ付
  於テハ〓第九條ニ規定スル稅率ニ依リ
  算出シタル稅額ト臨時租稅增徵法第十
  七條ニ規定スル稅率ニ依リ算出シタル
  稅額トノ差額ヲ以テ其ノ稅額トシ命令
  ノ定ムル所ニ依リ之ヲ徵收ス
  前項ノ砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ所持者ハ
  其ノ所持スル砂糖、糖蜜又ハ糖水ノ種
  別數量及貯藏ノ場斯ヲ本法施行後一
  月內ニ政府ニ申告スベシ
  第七十一條第三十八條ニ揭グル第二種
  ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ガ本法施行
  ノ際製造場又ハ保稅地域以外ノ場所ニ
  於テ同條各號ニ掲グル品名每ニ價格三
  ヲ超ユル
  千圓以上ノ第二種ノ物品(第一號乃至
  第五號ニ揭グル物品ヲ除ク)ヲ所持ス
  ル場合ニ於テハ其ノ場所ヲ以テ製造場、
  其ノ所持者ヲ以テ製造者ト看做シ之ニ
  物品稅ヲ課ス此ノ場合ニ於テハ本法施
  行ノ日ニ於テ其ノ物品ヲ製造場ヨリ移
  〓其ノ價格中三千
  出シタルモノト看做シ。命令ノ定ムル
  圓ヲ超ユル部分ニ付
  所ニ依リ其ノ物品稅ヲ徵收ス
  前項ノ規定ハ同第三種ノ物品ノ製造者
  又ハ販賣者ガ本法施行ノ際製造場又ハ
  ヲ超
  保稅地域以外ノ場所ニ於テ千萬本以上
  ユル數量
  ヲ超ユル數量
  ノ燐寸又ハ三十石以上ノ酒類ヲ所持ス
  ル場合ニ付之ヲ準用ス
  前二項ノ製造者又ハ販賣者ハ第二種ノ
  物品ニ付テハ其ノ品名每ニ數量、價格
  及貯藏ノ場所、第三種ノ物品ニ付テハ
  其ノ品名每ニ數量及貯藏ノ場所ヲ本法
  施行後一月內ニ政府ニ申〓スベシ
  附帶決議
  一時局重大國民ノ負擔益、多キヲ加フル
  ノ際其ノ均衡ヲ圖ルハ現下ノ急務ナリ
  政府ハ中央地方ヲ通スル稅制ノ根本的
  整理案ヲ作成シ速ニ議會ニ提出スヘシ
  二政府ハ本案ノ施行ニ伴ヒ不當ナル物
  價騰貴ヲ來ササルヤウ適當ナル對策ヲ
  講スヘシ
  三生產力ノ擴充、貿易ノ振興ハ現時國
  策ノ根幹ナリ政府ハ本案施行ノ爲ニ之
  カ遂行ヲ妨ケサルヤウ留意スヘシ
  報〓書
  一相續稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  〔別紙〕
  (小字及-ハ委員會修正)
  相續稅法中改正法律案中左ノ通修正ス
  第三條ノ三被相續人ノ死亡ニ因リ相續
  人ノ受取ル生命保險ノ保險金ニシテ被
  相續人カ保險契約者タル保險契約ニ基
  クモノハ之ヲ相續財產ト看做ス但シ相
  中五千圓
  續人ノ受取ル保險金ノ合計額カ五千圓
  迄ノ金額ニ付テハ
  ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
  保險契約者カ被相續人以外ノ者ナル場
  合ト雖被相續人カ現實ニ保險料ノ支拂
  ヲ爲スモノナルトキハ被相續人ヲ保險
  契約者ト看做シ前項ノ規定ヲ適用スル
  コトヲ得
  第三條ノ四退職手當、功勞金及此等ノ
  性質ヲ有スル給與ニシテ被相續人ニ支
  給セラルヘキモノカ被相續人死亡シタ
  ル爲其ノ相續人其ノ他ノ者ニ支給セラ
  ルルトキハ之ヲ相續財產ト看做ス但シ
  中五千圓迄ノ金額ニ付テ
  給與ノ合計額カ五千圓ニ滿タサルトキ
  ハ
  ハ此此限在在
  前項ノ給與カ相續人以外ノ者ニ支給セ
  ラルルトキハ遺贈アリタルモノト看做
  ス
  第二十三條ノ三生命保險契約ニシテ保
  險金受取人カ保險契約者以外ノ者ナル
  トキハ保險事故ノ生シタル時ニ於テ保
  險契約者カ保險金額ニ相當スル金額ヲ
  保險金受取人ニ贈與シタルモノト看做
  ス但シ保險契約者ノ同一ナル保險契約
  ニ基キ同一事故ニ因リ同一人ノ受取ル
  ヲ超ユル場合
  保險金ノ合計額カ五千圓以上ノ場合ニ
  ニ於ケル其ノ超過額ニ相當スル金額
  限ル
  前項ノ規定ハ第三條ノ三ノ規定ニ依リ
  保險金ヲ相續財產ト看做ス場合ニ付テ
  ハ之ヲ適用セス
  保險契約者以外ノ者カ現實ニ保險料ノ
  支拂ヲ爲スモノナルトキハ其ノ者ヲ保
  險契約者ト看做シ第一項ノ規定ヲ適用
  スルコトヲ得
  前條第四項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之
  ヲ準用ス
  第二十三條ノ四郵便年金契約ニシテ年
  金受取人カ年金契約者以外ノ者ナルト
  キハ年金支拂ノ事由發生シタル時ニ於
  テ年金契約者カ當該郵便年金ノ價額ニ
  相當スル金額ヲ年金受取人ニ贈與シタ
  ルモノト看做ス但シ年金契約者ノ同一
  ナル年金契約ニ基キ同一事由ニ因リ同
  一人ノ受取ル年金ノ價額ノ合計額カ五
  ヲ超ユル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ相
  千圓以上ノ場合ニ限ル
  當スル金額
  第二十三條ノ二第四項及前條第三項ノ
  規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
  報告書
  一臨時租稅增徵法中改正法律案(政府提
  出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報〓書
  一所得稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報〓書
  一登錄稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報〓書
  一酒造稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報告書
  一酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
  (政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報告書
  一麥酒稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報告書
  一大正九年法律第十二號中改正法律案
  (所得稅法ノ施行ニ關スル件)(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報〓書
  一臨時利得稅法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報〓書
  一臨時租稅措置法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報告書
  一日滿國稅徵收事務共助法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  報告書
  一本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
  ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十八日
  委員長高橋熊次郞
  衆議院議長小山松壽殿
  〔高橋熊次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=4

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• 005・高橋熊次郎

  ○高橋熊次郞君　只今上程サレマシタ臨時
  租稅增徵法中改正法律案外七件、竝ニ支那
  事變特別稅法案外四件ノ委員會ニ於ケル審
  査ノ經過竝ニ結果ニ付キ御報〓ヲ申上ゲマ
  ス、臨時租稅增徵法中改正法律案外七件ハ、
  去ル二月一日委員會付託ト相成ッタモノデ
  アリマシテ、何レモ所謂稅法ノ部分的改正
  ニ關スルモノデアリマス、政府ニ於テハ支
  那事變ノ勃發ニ依リ、中央及ビ地方ヲ通ズ
  ル稅制ノ全般的改正ハ見合ハサレタノデア
  リマスガ、一方現行租稅制度ノ上ニ於テ、
  出來得ル限リ負擔ノ適正ヲ圖ルト云フ趣旨
  ノ下ニ、各稅ノ部分的事項ニ付テ改正ヲ行
  ハウト云フノデアリマス、卽チ其内容ヲ一
  瞥致シマスト、先ヅ臨時租稅增徵法ニ付テ
  ハ、第三種所得稅及ビ相續稅ノ稅率ヲ改正
  シ、所得稅ニ付テハ退職ニ依ル五千圓ヲ超
  エル給與ニ課稅スルト共ニ、所得金額ノ追
  加決定ヲ爲シ得ベキ期間ヲ延長シ、相續稅
  ニ付テハ相續財產ノ所在ヲ問ハズ、總テ之
  ヲ綜合シテ課稅スルコトヲ原則ト致スコト
  ニ改メルト共ニ、被相續人ノ死亡ニ因リ相
  續人ノ受クル五千圓以上ノ生命保險金ニ課
  稅スルコトニ致シ、登錄稅ニ付キマシテハ
  不動產ニ對スル登錄稅ノ一部ヲ輕減致シ、
  酒稅ニ付テハ酒類ノ販賣業ニ付キ免許制度
  ヲ採用スルコトト致シマシタ等ノ諸點ガ、
  此主要ナル內容ヲナシテ居ルノデアリマス、
  而シテ是等ノ諸改正ニ依リマシテ、初年度
  約九万六千圓ノ減收ヲ來スト云フ政府ノ說
  明デアリマス
  又支那事變特別稅法案外三件ハ、去ル二
  月二十二日本委員會ニ付託セラレタモノデ
  アリマスガ、其中支那事變特別稅法案及ビ
  臨時利得稅法中改正法律案ハ、既ニ本議會
  ノ協贊ヲ經マシタ支那事變ニ關スル臨時軍
  事費追加豫算ノ財源ノ一部ニ充テル爲メノ
  增稅ニ關スルモノデアリマス、此臨時軍事
  費ニ要スル財源ノ大部分ハ、公債ニ俟ツコ
  トトナッテ居ルノデアリマスガ、政府ノ說明
  ニ依リマスレバ、其財源ノ一部ハ銃後ノ國
  民ガ、其分ニ應ジテ租稅ヲ以テ負擔スルヲ
  適當ト認ルト云フ趣旨ニ依リマシテ、此增
  稅法案ガ作成提案セラレタト云フ趣デアリ
  やっ、而シテ政府ノ說明ニ依リマスルト、
  增稅法案ノ作成ニ當リマシテハ、政府ハ國
  民ノ負擔力ニ應ズルコトニ意ヲ注ギ、所得
  稅ヲ中心トシテ增收ヲ圖リ、又時局ノ影響
  等ニ因リ利益ヲ著シク增加スル者ニ對シマ
  シテハ、臨時利得稅ヲ改正シテ、其增加利
  益ニ課稅スルコトト致シ、更ニ比較的擔稅
  力アル方面ノ消費スル物品又ハ行爲ニ課稅
  スル趣旨ニ基キマシテ、物品特別稅ノ範圍
  ヲ擴張スルト共ニ、新ニ通行稅、入場稅ヲ
  創設シヨウト云フノデアリマス、而シテ
  是等ノ增稅計畫ノ實施ニ依リマシテ、平年
  度ノ收入ハ、所得稅ニ於テ一億二千六百餘
  万圓、臨時利得稅ニ於テ三千九百餘万圓、
  利益配當稅ニ於テ三千九百餘万圓、公債及
  ビ社債利子稅ニ於テ二百餘万圓、法人資本
  稅ニ於テ三百餘万圓、通行稅ニ於テ八百餘
  万圓、入場稅及ビ特別入場稅ニ於テ千百餘
  万圓、物品稅ニ於テ六千四百餘万圓、合計
  ニ於テ約三億千八百万圓ノ增收ト相成リマ
  シテ、初年度ニ於キマシテハ、合計三億六
  百万圓ノ增收ト相成ルノデアリマス、尙ホ
  北支事件特別稅ハ、支那事變特別稅ノ施行
  ト共ニ廢止サレルコトトナッテ居ルノデア
  リマス
  次ニ臨時租稅措置法案ハ、今囘ノ支那事
  變ノ影響等ニ因リマシテ、收益ノ減少スル
  自作農者又ハ中小商工業者ニ對シ、地租又
  ハ營業收益稅ヲ輕減致シ、又此際必要トスル
  鑛物ノ產出ヲ助長スル爲ニ、特定ノ資格アル
  者ニ對シ鑛產稅又ハ特別鑛產稅ヲ免除致シ、
  其他棉花ノ節約ニ資スル爲ニ、「ステープル·
  ファイバー」又ハ麻等ヲ混紡シタル綿絲ニ依
  ル織物ノ一部ヲ課稅外ニ置クナド、主トシテ
  時局ニ關聯シテ租稅上執ルベキ措置ニ關ス
  ルモノデアルノデアリマシテ、是等ニ依リ
  平年度ニ於キマシテハ、國稅ニ於テハ合計
  約四百万圓、地方稅ニ於テハ合計約六百万
  圓國及ビ地方ヲ通ジマスレバ、約一千万
  圓ノ減收トナルト云フノデアリマス
  尙右ノ外、日滿國稅徵收事務共助法案、
  竝ニ三月五日本委員會ニ付託セラレマシ
  タ、本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
  ニ關スル法律案ノ二件ガアリマス、隨ヒマ
  シテ過般報〓ヲ了シ、旣ニ本會議ノ協贊ヲ
  經マシタ昭和十二年法律第八十四號中改正
  法律案、卽チ支那事變ニ關スル臨時軍事費
  支辨ノ爲公債發行ニ關スル件デアリマス、關
  東局、朝鮮總督府、臺灣總督府及樺太廳ノ
  各特別會計ニ於ケル租稅收入ノ一部ニ相當
  スル金額等ヲ臨時軍事費特別會計ニ繰入ル
  ルコトニ關スル法律案、昭和十三年度一般
  會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行ニ
  關スル法律案ヲ加ヘマスルト、總計十六件
  ノ法律案ガ本委員會ニ付託セラレタ譯デア
  リマス、是等ノ法律案ハ何レモ國家ノ財政
  竝ニ國民ノ負擔ニ關スル重大問題デアリマ
  シテ、本委員會ハ囘ヲ重ネルコト二十二
  囘、日曜日以外ハ殆ド連日長時間ニ亙ッテ愼
  重審議ヲ行ヒ、其間各委員ト國務大臣及ビ
  政府委員トノ間ニ、重要ニシテ極メテ適
  切而モ有益ナル質疑應答ガ重ネラレタノ
  デアリアス、其詳細ハ速記錄ニ就テ御覽ヲ
  願フコトニ致シ、此處ニハ其主要ナルモノ
  ニ付キ御報告申上ゲタイト存ジマス
  先ヅ各委員ヨリ增稅ノ根本趣旨、程度ニ
  付キマシテ、政府ノ眞ニ意圖スル所如何ト云
  フ點ニ付キマシテ、種々突込ンダ質問ガア
  リマシタノニ對シマシテ、大藏大臣カラ懇切
  ナル答辯ガアリマシタ、卽チ今囘ノ增稅ハ、
  精神的ニハ我ガ忠勇ナル將兵ガ身命ヲ賭シ
  テ、支那ノ山野ニ戰ヒツヽアル際ニ於テ、
  銃後ノ國民ガ其分ニ應ジマシテ、財物ヲ以
  テ國家ニ御奉公致スト云フ趣旨ニ出デタモ
  ノデアリ、又財政上カラ申シマスレバ、事
  變費ハ成ルベク多ク租稅ニ依リ支辨スルヲ
  適當トスルト云フ趣旨ニ出デタモノデア
  ル、單ニ公債ノ利子額ヲ支辨スルコトヲ目
  標トシテ、增稅ノ額ヲ決定シタモノデハナ
  イ、財政上カラ見レバ、增稅ノ額ガ多イニ
  越シタコトハナイノデアルガ、併シ一面國
  民經濟ノ運行ヲ阻碍セズ、且ツ國民生活ヲ
  不當ニ壓迫スルガ如キコトノナイヤウ、十
  分ニ留意シナガラ、現行租稅及ビ新稅ニ付
  キ、此際適當ト認メラレル程度ノ增徵又ハ
  新設ヲ行フコトノ立前カラ、今囘ノ增稅案
  ヲ得タ次第ナル旨ノ答辯ガアリマシタ
  次ニ增稅ノ趣旨ニ關聯シマシテ、政府ハ
  今囘ノ增稅ニ依ッテ消費抑制「インフレ」ノ
  防止ヲ目標トシタノデアルカ、今、日本ノ物
  價騰貴ノ趨勢ヲ見マスト、兌換劵ノ發行ガ
  增加致シタ率ヨリモ、生產力ノ增シタ率ノ方
  ガ急騰致シテ居ル、更ニ生產力ノ增加率ヨリ
  モ、物價騰貴ノ方ガ一段ト急騰シテ居ルノデ
  アル、斯樣ナ今日マデノ傾向カラ考ヘルト、今日
  ノ物價騰貴ト云フモノハ、通貨ノ數量ガ殖エタ
  ト云フコト自體ヨリモ、寧ロ生產力ガ不足デ
  アッテ、物資ノ需給ガ旨ク行ッテ居ラヌ、所
  謂輸入ノ制限ヲ强化サレ、軍需資材ノミニ
  集中サレタ、斯ウ云フ理由カラ物資ノ需給
  ガ調節ヲ得テ居ナイコトガ、物價騰貴ノ最
  大原因ヲ成シテ居ルト思フ、隨テ此儘デ行
  キマスレバ、必然的ニ相當惡性ノ「インフ
  レーション」ガ起ルコトハ豫期シナケレバ
  ナラナイ、政府ハ今囘ノ增稅ニ依ッテ消費
  抑制ト「インフレ」ノ防止ヲ目標トシタノデ
  アルカト云フ質問ニ對シマシテ、今囘ノ增
  稅モ左樣ノ效果ガアリ、其一方策デアルコ
  トヲ考ヘテ居ルガ、併シ「インフレ」防止ノ
  爲ニハ、一ツヤ二ツノ方策デ、其目的ヲ達
  シヨウト云フノハ、弊害ガ多イノデアッテ、
  基本トシテハ爲替相場維持、物資需給ノ調
  整消費ノ節約、貯蓄ノ奬勵等ノ觀點カラ、
  色々ノ方策ヲ講ズベキモノデアルト考ヘル
  ト答ヘラレマシタ
  次ニ多數ノ委員諸君カラ、此際ニ於テモ政
  府ハ尙ホ中央、地方ヲ通ズル稅制整理ヲ行
  フノ意思ナキヤ、殊ニ增稅ヲ行フニ付テハ、
  先ヅ稅制整理ヲ行ヒ、國民負擔ノ均衡ヲ圖
  ルベキデハナイカト云フ質問ニ對シマシ
  テ、中央、地方ヲ通ズル稅制ノ全般的改正
  ハ、支那事變ニ因リ稅制ノ基礎トナルベキ
  諸經濟事情、及ビ國民ノ負擔力ニ付キ、種々
  ノ變化ヲ來シツヽアルカラ、此際行フノハ
  適當デナイト認メル、殊ニ增稅ヲ爲ス場合
  ニ於テ、從來唱ヘラレタ如キ、一方ニ減稅
  シ、他方ニ增稅シテ、負擔ノ均衡ヲ圖ルト
  云フコトハ、甚シイ負擔ノ激變ヲ來ス虞ガ
  アルカラ適當デナイ、併シ稅制ノ全般的改
  正ヲ行フ要アルコトハ十分認メテ居リマス
  ノデ、將來事態ガ一應安定シタル際ニ於テ、
  之ヲ行フ見込デアルガ、然ラバ何時行フカ
  ト云フコトニ付テハ、今ノ所明言スルコト
  ガ出來ナイトノ答辯ガアリマシタ、尙ホ之
  ニ關聯シテ各委員カラ、今日マデ度々ノ增
  稅等ニ依リ稅制ハ著シク複雜トナッテ、是ガ
  理解ニハ甚ダ苦シムノデアルガ、之ヲ適當
  ニ調整シテ簡易化スル意思ハナイカトノ質
  問ガアッタノニ對シ、是ハ政府トシテモ洵ニ
  遺憾ニ堪ヘナイ、差當リ適當ナ方法ヲ以テ、
  一般ノ理解ニ便ゼシメル考デアルガ、其根
  本的ナ調整ハ、將來稅制整理ノ際ニ於テ、
  十分考慮シタイト答へラレマシタ
  次ニ企業關係ノ租稅負擔ガ、度々ノ增稅
  ニ依ッテ著シク重クナリ、殊ニ法人ノ場合ニ
  於テハ、今囘ノ所得稅、臨時利得稅ノ增徵
  ガ實施セラレルコトニナリマスト、益〓負擔
  ノ過重ヲ來スモノガ多ク、其結果トシテ國
  民ノ企業心ハ萎靡シ、生產資金ハ奪ハレ、
  延イテハ生產力ノ擴充ニ重大ナ支障ヲ來ス
  虞アリト信ズルガ如何トノ質問ガ、多數委
  員カラ發セラレタノデアリマス、之ニ對シ
  テ大藏大臣及ビ商工大臣カラ、ソレ等ノ點
  ニ付テハ十分留意致シマシタノデ、最近ニ於
  ケル事業ノ成績カラ見マシテモ、此程度ノ
  負擔ノ增加ニ依リ、左樣ナ結果ヲ招來スル
  虞ナイモノト認メル、殊ニ負擔ノ過重ヲ來
  ス虞アル法人及ビ個人ニ付テハ、ソレ〓〓
  適當ナル課稅制限ヲ設ケルコトニシタノ
  デアルトノ答辯ガアリマシタ、又之ニ關聯
  シテ第二種所得稅ノ增徵率ハ輕微デアッテ、
  資本利子ハ株式配當ニ比シテ優遇セラレテ
  居ルガ、其結果資金ハ公債、社債ノ投資方
  面ニノミ流ルヽノ傾向ヲ生ジ、產業資本ハ
  著シク壓迫ヲ受ケ、延イテハ產業ノ發達ヲ
  阻碍シ、生產力ノ擴充ニ支障ヲ來スガ如キコ
  トハナイカトノ質問ガアリマシタガ、之ニ對
  シテ大藏大臣ハ、昨年中ニ於ケル社債ト株式
  トノ拂込情勢ニ照シテ見マシテモ、左樣ニハ
  思ハナイ、低率ノ公債、社債、銀行預金等ノ利
  子ニ對スル、第二種所得稅ノ增徵ヲ輕微ナ
  ラシメタノハ、公債ノ消化ヲ圖ル上カラ、
  又社債ノ發行ニ便ジテ、產業資金ノ疎通ヲ
  圖リ、以テ生產力ノ擴充ニ資セントスルノ
  意圖ニ出タモノデアッテ、此際ノ措置ト
  シテハ、緊要ニシテ已ムヲ得ザル策デアル
  ト思フト答ヘラレタノデアリマス
  次ニ增稅ト物價トノ關係ニ付キマシテモ、
  種々質疑應答ガ重ネラレ、委員側ヨリ、物
  價昂騰ノ趨勢ヲ辿リツヽアル今日、今囘ノ
  增稅、特ニ物品稅等ニ依リ、彌ガ上ニモ物
  價騰貴ヲ招來シ、國民生活上及ビ國際貿易
  上ニ面白カラヌ影響ヲ及ボス虞アリト信ズ
  ルガ如何トノ質問ガアッタノニ對シマシテ、
  今度ノ增稅ハ直接稅ヲ主トシテ、成ベク斯
  ル影響ノ少イヤウニ留意シタ、又物品稅等消
  費稅ノ增徵擴大ニ依リ、課稅物品ノ價格ガ
  或ル程度騰貴スルノハ已ムヲ得ナイト認メ
  ルガ、增稅ニ藉口シテ稅金以上ニ課稅物品
  ノ價格ヲ引上ゲ、又ハ課稅外ノ物品ノ價格
  ヲモ引上ゲントスルガ如キハ、嚴ニ取締ル
  方針デアルトノ答辯ガアリマシタ、而シテ
  又今囘ノ課稅物品ハ、比較的擔稅力アリト
  認メラレル方面ノ消費スルモノヲ選擇シタ
  ノデ、是等ノ價格ガ幾分騰貴シテモ、般
  國民ノ生活上ニ及ボス影響ハ、左程ノモノ
  トハ考ラレナイト答ヘラレタノデアリマス
  次ニ各稅ニ付テ各論的ニ政府當局トノ間
  ニ交換サレマシタ質疑應答ノ主ナルモノニ
  付キ申上ゲマス、先ヅ所得稅ニ付キマシテ
  ハ、法人、個人共ニ所得稅ノ外ニ、其他ノ
  諸稅ト合シテ計算致シマスト、著シイ負擔
  ノ過重ヲ來スモノガアリハシナイカトノ質
  問ニ對シマシテ、左樣ナ事態ヲ生ズル場合
  ヲ考慮シマシテ、適當ナ制限ヲ設ケルコト
  ト致シタノデアルトノ答辯ガアリマシタ、
  又稅金ガ重クナッタ結果、法人ト個人トノ
  均衡ガ一層取レナクナッタ、此場合從來實
  際問題トシテ、未解決ノ儘ニ在ッタ個人ノ
  所得ノ計算上、減價銷却ヲ認メナイト云フ
  ノハ不當デハナイカ、政府ハ之ヲ認メル意
  思ナキヤトノ質問ガアリ、之ニ對シテ政府
  當局ハ、計算ノ明カナル場合ニ限リ、之ヲ認
  メル積リデアルトノ答辯ガアリマシタ、尙
  ホ免稅點ヲ引下ゲテ一千圓トシタノハ不當
  デハナイカトノ質問ニ對シテハ、事變費ノ一
  部ヲ、此程度ノ所得者ガ分擔スルコトハ、此際
  トシテ已ムヲ得ザルモノト認メルトノ答辯
  ガアリマシタ、又相續税ニ付テハ、生命保險
  金ノ課稅ニ付キ五千圓以上ノ場合、其金額
  ニ課稅スルノハ不當デハナイカ、五千圓ヲ
  控除スルコトニシテハ如何トノ質問ガアッ
  タノニ對シ、現行相續稅ノ立前竝ニ相續稅
  ノ稅率ニ鑑ミ、五千圓以上ノ場合ハ、其全
  額ニ課稅スルヲ適當ト認メルトノ答辯ガア
  リマシタ、次ニ臨時利得稅ニ付テハ、個人
  ノ場合ニ於テ資本ヲ見ナイノハ、著シク不
  公平ナ場合ヲ生ズルガ如何トノ質問ニ對
  シ、政府當局ハ、個人ニ付キ資本金ノ計算
  ヲスルコトハ至難ナノデ已ムヲ得ナイ、ソ
  レ等ノ點ヲ考ヘテ、稅率等モ個人ハ法人ニ
  比シテ低キモノト致シテ居ル次第デアルト
  ノ答辯ニ接シマシタ
  次ニ入場稅ニ關シ、活動寫眞等大衆ノ娛
  樂ニ課稅スルノハ不當デナイカトノ質問ガ
  アリマシタノニ對シ、此際是等ノ娛樂慰安
  等ノ爲メ、一定額ノ金錢ヲ支出スル場合ニ
  於テ、一割程度ノ負擔ヲ爲シ、以テ事變費
  ノ一部ニ貢獻スルコトハ、此際トシテ巳ム
  ヲ得ナイ、又入場料十九錢未滿ニハ免稅
  スルコトニシタノデ、入場者ノ約四割ハ
  免稅トナルカラ、大衆ノ慰安娯樂ヲ奪フモ
  ノト見ルノハ當ラナイトノ答辯ガアリマシ
  タ
  次ニ物品稅ニ關シ、課稅物品選擇ノ標準
  如何、殊ニ今囘ノ課稅物品ノ外ニモ、尙ホ
  相當課稅シテ然ルベキ物品ガアルト認メラ
  レルガ如何、ソレ等ヲ課稅標準カラ除外セ
  ルハ不公平デハナイカトノ質問ニ對シ、政
  府ハ、比較的奢侈的ト認メラレル物品、又
  ハ生活上必要ノ程度比較的低イ物品ニシテ、
  其消費ガ相當擔稅力アルコトヲ示スト認メ
  ラレルモノニ課稅スルコトヲ趣旨トシ、尙
  ホ課稅技術、消費量ノ諸點等ヲモ十分考慮
  シテ決定シク次第デアルカラ、大體ニ於テ
  適正ヲ期シ得ルト信ズルガ、假ニ多少左樣
  ノ缺點ガアッタトシテモ、本稅ノ性質上已ム
  ヲ得ナイト考ヘルト答ヘラレマシタ
  次ニ物品稅ノ稅率ヲ二割カラ一割五分ニ
  引下ゲタノハ、如何ナル理由ニ依ルカトノ
  質問ニ對シ、物品特別稅ハ一年限リノモノ
  デアッタ爲メ、相當ノ稅率ヲ以テ課稅シタノ
  デアルガ、今後尙ホ當分引續キ課稅スルモ
  ノトスレバ、此種ノ租稅ノ稅率トシテハ、
  稍〓高キ感ガアッタカラ、幾分引下ゲルコト
  ニシタノデアルトノ答ガアリマシタ
  次ニ物品稅ハ輸出ニハ免稅ニナルガ、仕
  向地ノ如何ニ依ッテハ、尙ホ輸出ヲ阻碍スル
  ガ如キ結果ヲ來ス場合ハナイカトノ質問ニ
  對シ、大藏當局ノ外、商工、外務當局ヨリ、
  特ニ本稅ヲ賦課スルコトニ依ッテ、左樣ナ結
  果ヲ招來スル虞ハナイモノト考ヘルトノ答
  辯ガアリマシタ、又第二種物品ニ關シ、
  箇月ノ徵收猶豫ハ短キニ失シナイカトノ質
  問ニ對シ、一箇月ノ猶豫ヲ認メルコトトシ
  ク結果、移出ノ時カラ六十日乃至九十日程
  度ノ納期限トナルカラ、大體此程度デ十分
  ト認メルトノ答ガアリマシタ、次ニ製造場
  外ノ物品、卽チ「ストック」ニ課稅スル場合ニ
  於テ、三千圓ヲ超ユルトキハ、其全額ニ課稅
  スルト云フ立前デハ、課稅限界以下ノモノ
  トノ間ニ、著シク不公平ナ事態ヲ生ジ、商
  取引上大混亂ヲ生ジハシナイカトノ質問アッ
  タノニ對シ、三千圓以下ノ場合ニ免稅スル
  コトトシタノハ、一般小賣業者等ノ手許ニ
  アル物品マデ課稅セントスル繁雜ニ堪ヘヌ
  爲メ、强ヒテ其處マデハ課稅シナイト云フ
  趣旨ニ出タモノデアルカラ、大營業者、卸
  賣業者等ガ相當纏ッタ物品ヲ手持チスル場
  合ニ於テ、其全部ニ課稅ヲ受ケテモ巳ムヲ
  得ナイト認メル、限界以下ノモノトノ不均
  衡ハ、稅制ノ立前上已ムヲ得ナイトノ答辯
  ガアリマシタ、物品稅ニ付テハ其外課稅物
  件ノ細目ニ付キ、又各品目別ノ免稅點ノ低
  過ギル點ナドニ付キ、種々當局トノ間ニ、
  有益ニシテ熱心ナル質疑應答ガ繰返ヘサ
  レマシタガ、其詳細ハ速記錄ニ讓リマス、
  最後ニ此諸法案ノ實施竝ニ土地賃貸價格
  改訂ニ伴ヒ、地方團體ノ財源ニ相當ノ缺陷
  ヲ生ズルト共ニ、一面事變ニ伴ヒ、地方歲
  出ノ增加ノ避ケ難イ事情ニアルカラ、政
  府ニ於テハ、臨時地方財政補給金ヲ相當
  程度增額スベキデハナイカト云フコトハ、
  委員諸君ノ一致シタ見解デアリマシタ、
  仍テ委員長ヨリ政府ニ對シテ十分ノ考慮ヲ
  希望致シマシタ所、政府ニ於テモ考慮スル
  コトトセラレ、昭和十三年度ニ於テ三千万
  圓程增額致スベキ旨ヲ、大藏大臣ヨリ言明
  ガアッタノデアリマス
  斯クシテ最後ニ重要ナル補充的質疑ガ行
  ハレ、討論ニ入リマシタガ、民政黨ヲ代表
  シテ理事西村金三郞君ヨリ、政民兩黨共同
  修正案、竝ニ各派共同附帶決議案ヲ提出セ
  ラレ、其趣旨辯明トシテ、政府提出增稅諸
  案ニ付テ見ルニ、產業ニ重ク金融ニ輕キハ
  定說デアル、戰時中ノ公債消化政策ノ重要
  ナルハ論ナキ所ナレドモ、ソレニ支障ナキ
  程度ニ、產業政策上對策ヲ講ズルコトハ必
  要デアル、此趣旨ヨリ支那事變特別稅法案
  及ビ相續稅法中改正法律案ヲ修正シ、他ハ
  原案ニ贊成スルノデアル、右ノ修正案ハ御
  手許ニ委員長報告トシテ配付シテアリマス
  ノヲ御一覽願ッテ置キマス、但シ後程印刷ノ
  誤謬ニ付キ訂正ヲ致シマスル箇所ガゴザイ
  マスルカラ、御含ミ置キヲ願ヒタイト思ヒ
  マス、右ノ修正ノ點ハ、支那事變特別稅法案
  中ニ於キマシテハ、所得稅ノ增徵率ノ改正
  ハ、金融資本ト產業資本ノ負擔ノ公正ヲ期
  シ、均衡ヲ得セシムル爲ニ修正ヲ致シタノ
  デアル、第二條、第三條、第五條ノ修正デ
  アリマス、第九條ノ修正ハ、大衆ノ消費ヲ
  目的トシタル砂糖ヲ中心トシテ致シタ修正
  デアル、此修正ハ印刷ガ落チテ居リマス、委
  員長報〓書ノ支那事變特別稅法案ヲ御開キ
  願ヒ、第四頁ヨリ第五頁ヲ睨ンデ戴イテ、
  二ノ糖蜜ノ場合、乙其ノ他ノモノハ八圓七
  十錢トナッテ居リマスルノガ八圓六十錢、其
  オ隣リニアル第二種、其ノ他ノ糖蜜、甲乙
  トアリマスルガ、百斤ニ付一圓三十錢ト云
  フノガ一圓二十錢、三圓四十錢トアルノハ
  三圓三十錢、七圓二十錢トアルノハ七圓十
  錢卽チ各稅率ヲ各一種、二種、三種ヲ通
  ジテ十錢ヅヽ引下ゲルコトニ修正致シタノ
  デアリマス、第二十八條、第三十五條ヲ含
  ム入場稅ノ修正ハ、其性質及ビ實情ニ鑑ミ
  マシテ、十九錢程度ノ免稅點デハ重過ギル
  カラト云フノデ、二十三錢ニ引下ゲルト云
  フ修正デアルノデアリマス、第三十九條ハ
  萄葡酒ノ稅金デアリマシテ、新ニ創設サレ
  タル萄葡酒ノ課稅、是ハ主ニ農家ノ副業ノ
  性質ヲ帶ビテ居ルモノデアリマスカラ、此
  際十五圓ヲ十圓ニ引下ゲル修正デアル、第
  六十九條、第七十一條ハ、「ストック」ノ三
  千圓以上、或ハ砂糖ノ二万斤、又ハ酒ノ三
  十石、燐寸ノ一千万本ヲ超ユル場合ニ、其
  額以下ノモノヲ控除スル、控除主義ニ依ッテ
  課稅シ、其額以下ハ課稅シナイ、以テ限界
  以下ノ不權衡ヲ緩和スルト共ニ、負擔ノ餘
  リニ過重ニナルト云フコトヲ、防グ爲ニ致
  シタ修正デアルトノ趣旨ノ說明デアリマシ
  ク、其他附帶決議ヲ提出致サレマシタ、此
  附帶決議ハ各派共同ノ提案ニナッテ居リマ
  ス
  附帶決議
  一時局重大國民ノ負擔益〓多キヲ加フ
  ルノ際其ノ均衡ヲ圖ルハ現下ノ急務ナ
  リ政府ハ中央地方ヲ通スル稅制ノ根本
  的整理案ヲ作成シ速ニ議會ニ提出スヘ
  シ
  二政府ハ本案ノ施行ニ伴ヒ不當ナル物
  價騰貴ヲ來ササルヤウ適當ナル對策ヲ
  講スヘシ
  三生產力ノ擴充、貿易ノ振興ハ現時國
  策ノ根幹ナリ政府ハ本案施行ノ爲ニ之
  カ遂行ヲ妨ケサルヤウ留意スヘシ
  以上デアリマス、之ニ對シテ政友會
  ヲ代表シテ、理事岩瀨亮君ヨリ共同修正
  案贊成ノ理由ヲ補足セラレ、修正ノ結
  果減稅ノ金額ハ左程大ナラザルモ、議會
  ハ增稅ニ依ッテ產業界ヲ不當ニ壓迫シ、
  生產擴充ヲ妨ゲテ、銃後ニ於ケル國民生
  活ノ不安ヲ釀スガ如キ事態ノ發生セザルヤ
  ウ、嚴ニ警戒シツヽアル趣旨ヲ明確ニシ、
  且ツ時局柄增稅ニ對スル國民ノ不安、竝ニ
  產業界ノ恐怖心ヲ緩和セシメンコトヲ期シ
  タル旨ヲ强調セラレタノデアリマス、次イデ
  第一議員倶樂部所屬理事玉野知義君ヨリ、
  政民共同修正案竝ニ其餘ノ原案ニ贊成スル
  旨ヲ述ベラレ、社會大衆黨ノ水谷長三郞君
  ヨリ、政民共同修正案竝ニ附帶決議ニ贊成、
  且ツ他ニ修正案ヲ提出サレマシタ、卽チ支
  那事變特別稅法中第二條ノ三項、第三條ノ
  二項、第五條ノ二項ノ削除、第六條ノ削除、
  提案ノ理由ハ現下ノ實情ニ鑑ミ、負擔ノ公
  「平ヲ期スルニアル旨ヲ述ベラレマシタ、追
  テ此修正案ハ本會議ニ提出サレテ居ルト云
  フ趣デアリマスカラ、其場合ノ辯明ニ讓リ
  マシテ、簡單ニ是ダケヲ御報〓ヲ致シテ置
  キマス
  採決ニ入リマシテ、先ヅ社會大衆黨提出
  ノ修正案ヲ諮リマシテ、少數ニテ否決ニナ
  リマシタ、次イデ政民兩黨ノ共同修正案、
  卽チ相續稅法中改正法律案竝ニ支那事變特
  別稅法ノ修正案デアリマスガ、其修正案及
  ビ修正部分ヲ除キタル原案、竝ニ其餘ノ十
  一法案ニ對シテハ、全部原案ノ通リ附帶決
  議ト共ニ滿場一致ヲ以テ決議セラレタノデ
  アリマス
  最後ニ岡本理事ノ要求ニ依リマシテ、委
  員長ハ修正案ニ對スル政府ノ意向ヲ質シマ
  シタ所、賀屋大藏大臣ハ、兩院ニ於テ此修
  正案ガ可決サレタ場合ハ、政府ハ之ヲ實施
  シタイ考デアルトノ旨ヲ述ベラレマシタ、
  以上ヲ以テ報〓ヲ終リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=5

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• 006・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　支那事變特別稅法案
  ニ對シテハ、河野密君外二名ヨリ成規ニ依
  リ修正案ガ提出サレテ居リマス、十三案ニ
  對スル討論ハ、便宜上第二讀會ニ於テ之ヲ
  爲スコトト致シマス、十三案ノ第二讀會ヲ
  開クニ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=6

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• 007・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ十三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=7

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• 008・服部崎市

  ○服部崎市君　直チニ十三案ノ第二讀會ヲ
  開カレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=8

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• 009・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　服部君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=9

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• 010・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ直チニ十三案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  支那事變特別稅法案第二讀會
  相續稅法中改正法律案第二讀會
  臨時租稅增徵法中改正法律案第二讀會
  所得稅法中改正法律案第二讀會
  登錄稅法中改正法律案第二讀會
  酒造稅法中改正法律案第二讀會
  酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
  第二讀會
  麥酒稅法中改正法律案第二讀會
  大正九年法律第十二號中改正法律案
  (所得稅法ノ施行ニ關スル件)第二讀會
  臨時利得稅法中改正法律案第二讀會
  臨時租稅措置法案第二讀會
  日滿國稅徵收事務共助法案第二讀會
  本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
  ニ關スル法律案第二讀會
  支那事變特別稅法案(政府提出)二〇、
  ル修正案(河野密君外二名提出)
  支那事變特別稅法案中左ノ通修正ス
  第二條第三項ヲ削ル
  第三條第二項ヲ削ル
  第五條第二項ヲ削ル
  第六條ヲ削ル
  他ハ委員會修正通トス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=10

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• 011・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　支那事變特別稅法案
  ニ對スル修正案ノ趣旨辯明ハ、提出者ヨリ
  省略ノ申出ガアリマシタ、討論ニ入リマス、
  通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-岡本實
  太郞君
  〔岡本實太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=11

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• 012・岡本實太郎

  ○岡本實太郞君　私ハ民政黨ヲ代表致シマ
  シテ、只今議題トナリマシタ增稅法案其他
  各案ニ對シ、委員長ノ報告ニ贊成致ス者デ
  アリマス、此度提案サレマシタ增稅法案ニ
  依リマスルト、其增稅額ハ約三億圓デアリマ
  ス、尤モ此中ニハ昨年決定セラレマシタ北
  支事件特別稅法ニ依リマス一億圓ガ含マレ
  テ居リマスルカラ、此度ノ法案ダケニ依リ
  マス增稅ハ、正味二億萬圓ト云フコトニナリ
  マスガ、此增稅額ハ全部擧ゲテ之ヲ支那事
  變ノ臨時軍事費四十八億五千万圓ニ組入レ
  ラレテ、戰費ノ一部ヲ成スモノデアリマス、
  租稅收入ノ總額ハ、十三年度ノ豫算ニ於キ
  マシテ、十四億二千三百四十万圓ト云フノ
  デアリマスガ、之ニ對シテ更ニ此三億万圓ガ
  此度ノ增稅デアリマシテ、相當多額ニ上リ、
  增加率モ相當デアリマス、隨ヒマシテ、是
  ガ平常ノ時デアリマシタナラバ、國民ハ之
  ニ忍ビ得ザルヤノ感モアリマスルケレドモ、
  御承知ノ通リ時局ハ極メテ重大デアリマス、
  今ヤ百万ノ大軍ハ或ハ海ニ、或ハ陸ニ、或
  ハ空ニ、全支那ニ亙ッテ轉戰シ、洵ニ一國ノ
  運命ヲ賭セントシテ居ル此折柄デアリマス、
  此戰費ノ一部トシテ使ハルヽモノデアルト
  スルナラバ、國民ハ甘ンジテ之ヲ受ケナケ
  レバナラヌノミナラズ、寧ロ進ンデ此負擔
  ヲシナケレバナラヌト云フ立場ニアルノデ
  アリマス(拍手)硝煙彈雨ノ間、死生ノ巷ニ
  轉戰シ、血ヲ以テ大イナル犠牲ヲ拂ハレテ
  居ル、此忠勇義烈ト其勞苦ニ對シテ、銃後
  ノ國民トシテ、其分ニ應ジテ、此位ノ租稅
  ヲ負擔スルコトハ當然ト致サナケレバナリ
  マセヌ、是ガ吾々ノ本案ニ贊成セントスル
  骨子デアリマス
  斯ノ如クニシテ此度增稅案ガ上程サルヽ
  ニ至リマシタコトハ、洵ニ已ムヲ得ナイ所デ
  アリマスルガ、凡ソ租稅ハ普ク國民ノ負擔
  ニ歸スル以上、極メテ公平デアッテ、且ツ均
  衡ヲ得タモノデナケレバナリマセヌ、ト同
  時ニ產業ノ振興ヲ阻碍シ、或ハ貿易ノ伸暢
  ヲ抑壓スルガ如キ事柄ガアッテハナリマセ
  又、又國民生活ニ對シテ脅威ヲ與フルガ如
  キコトガアッテモナリマセヌ、茲ニ提案サレ
  マシタ政府ノ原案ハ、是等ノ諸點ニ對シテ、
  果シテ缺クル所ガナキカ否カ、之ヲ檢討セ
  ントスル者デアリマスルガ、先ヅ第一ニ此
  時局重大ナ際ニ當リ、戰費支辨ノ爲ニ公債
  ノ消化ヲ滑ラカナラシムルト共ニ、多額ニ
  發行サレタ公債ノ利子、少クモ此經常費ダ
  ケハ經常收入ノ租稅ニ依ッテ支ヘナケレバ
  ナラナイト云フ次第モアリマス、而モ產業
  ノ振興ニ妨ゲナイ關係ニ於テ、玆ニ問題ト
  ナルノハ、金融資本ト產業資本トニ對スル
  課稅ヲ如何ニ取扱フベキカデアリマス、言
  フ迄モアリマセヌガ、生產ノ擴充ト云フコ
  トト、貿易ノ仲張ハ、洵ニ重要ナル國策
  ノ根幹デアリマス、而モ一面戰費支辨ト云
  フコトモ、重要ナ事項トシテ滑ラカナラシ
  メナケレバナリマセヌ、此點ニ對シテ政府
  ノ原案ガ金融資本ニ對シテ寧ロ輕クアッテ、
  產業資來ニ對スル課稅ガ重クハナイカ、卽
  チ一國ノ產業政策、貿易政策ノ根本ヲ、聊カ
  阻碍シハスマイカト云フ論ガアルノデアリ
  マス、卽チ此度ノ增稅案デ見マスルト、金融
  資本デアリマスル第二種所得稅ニ於キマシ
  テハ、現行稅率ヲ其儘トシ、何等之ニ引上增
  加ガ行ハレテ居ナイノデアリマス、然ルニ
  產業資本ノ第一種所得稅及ビ第三種所得稅
  ニアリテハ二割五分ノ增徵ト云フコトニ
  ナッテ居ルノデアリマス、此釣合ハ果シテ現
  下ノ事情ニ鑑ミテ適當ナリヤ否ヤ、形ニ於
  テ或ハ不釣合ナ如キデアリマスガ、只今モ
  縷說スルガ如ク、戰費支辨ハ最モ大切ナコ
  トデアリマス、此多額ノ公債ヲ能ク消化セ
  シメテ、金利水準ヲ能ク保チ、預金其他ノ關
  係トノ釣合モ取ラナケレバナラズ、又前年
  來企業ノ方面ニ對スル資金ハ比較的好況デ
  アリ、株式ノ應募等ハ順調ニナッテ居ル、然
  ルニ公債ノ應募、或ハ產業資金ノ中ノ社債
  ノ應募ニ至リマシテ、萬全ナリトハ言ヘナ
  イ事情ヲ實際ニ見ルノデアリマス、是等ノ
  點カラ鑑ミマスルナラバ、第二種ノ金融資
  本ニ對スル課稅ハ、現行ノ儘トシテ据置ク
  コトガ、寧ロ當然ナコトデアリ、又必要ナ
  コトデアルト言ハナケレバナリマセヌ、而
  モ他面ニ於キマシテ、企業心ハ壓迫スルコ
  トナク、株價モ相當ニ維持セシメテ、產業
  ヲ旺盛ナラシメントスルニハ、政府原案ノ
  二割五分其儘デ宜シイカドウカ、聊カ疑ヲ
  持チマスルガ故ニ、只今委員長ノ御報告ニ
  ナリマシタヤウニ、玆ニ二分五厘ヲ減少ス
  ベク修正ヲ加ヘテ、二割二分五厘ノ增額ニ
  止ムルコトニシテ、幾分タリトモ緩和ノ策
  ヲ施シタノデアリマス、是亦至當ナコトト
  申サナケレバナリマセヌ、金額ニハ餘リ多
  額デハナク、物質的關係ニ於テハ大イナ
  ル效果ガナイカモ存ジマセヌ、併シ是ガ無
  形的ノ利益、殊ニ財界ニ及ボス感情ヲ柔ゲ
  ル點ニ於キマシテハ、效果相當大ナルモノ
  アリト言ハナケレバナリマセヌ、斯樣ニシ
  テ此產業資本ト金融資本トニ對スル課稅ガ、
  釣合モ宜イ適當ナル修正ナリトシテ、吾々
  ハ之ニ贊成スル者デアリマス
  更ニ事變以來豫算ハ漸次膨脹致シマシテ、
  公債ハ增發サレ、自然ニ通貨ノ膨脹ヲ來シ
  テ、昨秋以來我ガ日本ニ於キマシテハ、漸次物
  價騰貴ノ傾向ヲ持ッテ居リマス、然ルニ飜ッテ
  歐米各國ヲ見レバ、寧ロ反對ニ物價下落ノ傾
  向ガアルト承知致シテ居リマス、我國ノ時局
  ノ關係上、物價ノ騰貴スルノハ已ムヲ得ヌ
  コトトハ致シマスルガ、此度ノ增稅ニ依ッテ、
  更ニ物價騰貴ニ拍車ヲ加フルガ如キコトガ
  アッテハナリマセヌ、斯クシテ物價騰貴ニ因
  リ國民生活ニ脅威ヲ與フルガ如キコトガアッ
  テハナリマセヌ、勿論此度ノ增稅ハ、其內
  容ヲ具サニ見マスル時ニ、擔稅力ノアル方
  面ニ向ッテ主トシテ增額セラレ、又一般大衆
  生活ノ必需品ト云フガ如キ、或ハ勗メテ之
  ヲ避ケラレテアル形跡ハ認メルノデアリマ
  スルガ、動モスルト市井ノ狡猾ナル輩ハ、
  名ヲ增稅ニ藉口致シマシテ、增稅額以上ノ
  不當ナル物價ノ引上ヲ爲シ、或ハ增稅ナキ
  モノマデモ、物價ヲ吊上ゲントスルガ如キ
  者ノナイト云フコトノ保證ハ出來ナイノデ
  アリマス、而モ近時爲替相場ヲ堅持セラルヽ
  關係上、貿易ヲ調整サルヽコトガ、物資ノ
  缺乏ヲ來シマスル關係モアリマス、是等ノ
  間ニ處シテ、增稅ガ若モ物價騰貴ニ拍車
  ヲ掛ケルガ如キコトガアッテハ、吾人ノ生活
  ヲ脅威スルコトトナリ、稅法ノ根本ノ趣旨
  ニモ悖リマスルカラ、政府ハ宜シク細心ノ
  注意ヲ以テ、之ヲ善處セラレルノ覺悟ガナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス
  又事變以來財界ノ一般ニ如何ナル影響ヲ
  及ボシタカヲ察シマスルノニ、甚ダ跛行的
  ノ事實ヲ現ハシテ居ルノデアリマス、卽チ
  軍需工業ノ如ク一部ニ於テ頗ル好況ナルモ
  ノガアル半面ニハ、貿易調整ノ爲ニ甚シク
  打擊ヲ受ケテ居ルモノモアリマス、或ハ自
  作農者、中小商工業者等ニアッテハ、事變ノ
  影響デ相當收益ノ減少シテ居ルモノガアリ
  やく、是等ニ對シテ、此度臨時和稅措置法
  ガ提案サレ制定サルヽト雖モ、是ハ唯一時
  ノ糊塗策デアリマス、其減稅額モ漸ク一千
  万圓程度デアリマス、眞ニ彌縫的デアリマ
  スルカラ、之ヲ以テ足レリト言フ譯ニ行カ
  ナイ、加之今ノ稅法トシマスレバ、基本租
  稅法ノ外ニ臨時租稅增徵法ガアリマス、更
  ニ支那事變特別稅法ガアリマス、斯クシテ
  屋上屋ノ上ニ更ニ屋ヲ重ヌルガ如キ、租稅
  ノ關係法規ガ形ヲ現ハシテ居リ、甚ダ錯雜
  混亂シテ居リマシテ、此間ニ果シテ公平デ
  アリ、均衡ヲ得テ居ルカト云フコトニ付テ
  ハ、何人モ之ヲ疑フノデアリマス、是等ヲ
  綜合勘案サレタ結果ガ、委員會ニ於テ相當
  論議ヲ重ネラレマシテ、政府ニ於キマシテ
  モ、彼ノ地方財政補給金ヲ三千万圓增額決
  定サレマシテ、今追加豫算デ提案ヲサレテ
  居ルヤウデアリマス、之ニ依ッテ相當緩和ハ
  サレマシタガ、マダ吾々ハ之ヲ十分ト認メ
  マセヌノミナラズ、跛行ノ狀態ハ、今尙ホ
  依然トシテ跛行ノ狀態ニアルノデアリマス、彼
  此均衡ヲ失ッテ居ルモノガアルノハ事實デア
  リマス、是等ニ鑑ミラレマシテ、政府ハ成ベク
  早ク中央地方ヲ通ズル根本的ノ稅制整理ヲ
  斷行セラレルノ必要、切實ナルモノガアル
  ト思フノデアリマス、旣ニ此事ハ昨年本院ニ
  於キマシテ、院議トマデナッテ決定サレテ
  居ルコトデアリマス、其趣旨ヲ酌マレテ、
  成ベク早ク其根本整理案ヲ作成サレ、議會
  ニ提案サレンコトヲ吾々ハ希望スルノデア
  リマス、或ハ此事變下ニ於キマシテ、動搖
  常ナラザル中ニ、此根本的整理ヲ行フコト
  ハ、甚ダ困難デアルト云フ御見解モアリマ
  スルガ、一タビ根本的ノ整理サヘ行ハレタ
  ナラバ、其動搖ハ爾後ニ於キマシテハ臨時
  措置法デ調節出來ルコトト思フノデアリマ
  ス、此ノ趣旨ニ依リマシテ、各派一致ノ下
  ニ希望決議ノ第一トシテ揭ゲラレタ趣旨カ
  ト思フノデアリマス、又修正案ニ砂糖稅ノ
  增加率ヲ幾分減シテ緩和シ、或ハ入場稅ノ
  免稅點、原案十九錢デアッタノヲ二十三錢ニ
  引上ゲタト云フガ如キハ、大衆課稅ヲ幾分
  タリトモ緩和致シタモノトシテ、吾々ハ之
  ヲ是認スルノデアリマス、更ニ又物品稅或
  ハ相續稅ノ中、控除主義ヲ此度採用シタノ
  デアリマス、卽チ物品稅ノ「ストック」品三千
  圓以上ニ課スルト云フノヲ、三千圓ヲ超ユ
  ル部分ニ課スルト致シタノデアリマス、酒稅
  ニ於キマシテモ三十石ヲ超ユル分ト致シタ
  ノデアリマス、燐寸ニ於キマシテモ一千万
  本ヲ超ユル額ト致シテ、玆ニ控除主義ノ端
  〓ヲ開キ、稅法ノ上ニハ一進步ヲ現ハシタ
  ト思フノデアリマス、言フ迄モアリマセヌ
  ガ、免稅點主義ハ或モノニ於テハ結構デア
  リマスガ、或モノニ於テハ免稅點ノ分界點
  ニ於テ、甚ダ不公平ガ出來ルノデアリマス、
  彼此レ均衡ヲ得ルコトニ、此點ハ一段進步
  ヲ進メタト思ヒマスカラ、吾々トシテハ將
  來各種ノ稅目ニ於キマシテモ、此主義ハ漸
  次行ッテ、一貫シテ實施サルベキ時ノ來ル
  コトヲ希望致スノデアリマス
  終リニ一言附加ヘマス、河野密君外二名
  ノ御方ガ提案サレマシタ修正案ノ趣旨ハ、
  所得稅法中現行法ノ千二百圓ノ免稅點ニ止
  メ、今一ツハ支那事件臨時租稅法ニ依リマ
  シテ、所得及ビ利得ニ對シテ最高ノ制限ガ
  加ヘテアルガ、此制限ヲ撤廢スベシト云フ
  大體御趣旨ノヤウニ承知致シマス、免稅點
  ヲ現行ニ止メ、一千圓マデヲ下ラセナイト
  云フ、大衆課稅ヲ緩和スルト云フ論旨ニ於
  キマシテハ、吾々固ヨリ宜シト致シマスル
  ガ、平時デアルナラバ兎ニ角、振古未曾有
  ノ大事變ニ際シマシテ、國民ガ齊シク戰費
  ノ一部ヲ支辨シヨウト云フ時ニ當リ、銃後
  ノ國民トシテハ、此位ノコトハ當然辛抱ヲ
  シテ貰ハナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、戰地ニ於キマシテ、一命ヲ賭シテ硝煙
  彈雨ノ間ニ盡サレテ居ル同胞ノ勞苦ヲ偲ン
  ダナラバ、吾々モ是ハ忍ブベク、又忍バナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス、而モ
  此多額ノ所得稅額ノ如キ、一部ノ者デ多ク
  負擔スルヨリモ、寧ロ成ベク多クノ者ニ於
  テ、廣キ範圍ニ於テ之ヲ負擔スルコトガ當
  然カト思フノデアリマス、地方ノ實情ニ察
  シマシテモ、農民ノ所得稅負擔者ト一部ノ
  俸給者、卽チ相當ナ權力ヲ持チ、立派ナ人
  トシテ地方デ待遇ヲ受ケテ居リナガラ、尙
  且ツ所得稅ヲ負擔シテ居ラナイ階級ガアルノ
  デアリマス、此事變關係ニ於キマシテ、斯
  ル所得稅ヲ負擔スル者ト負擔セザル者トノ
  間ニハ、表ニ現ハサズトモ、心密ニ不平ヲ
  懷ク者モアラザルヤト吾々ハ思フノデアリ
  マン、而モ今ハ國民精神總動員ヲ叫バレテ
  居リマス、長期抗戰ガ唱ヘラレテ居ルノデ
  アリマス、此際ニ當ッテ堅忍持久、克ク此重
  大ナ難局ヲ突破シ、克服スルノニハ、此位
  ノ覺悟ハ當然ナカルベカラザルモノト思フ
  ノデアリマス(拍手)故ニ此點ニ於キマシテ
  ハ、遺憾ナガラ吾々贊成ヲ表シ兼ネルノデ
  アリマス、又支那事變特別稅法案第二條ノ
  三項、及ビ第五條ノ二項ニ依リマス最高限
  度ノ制限ヲ撤廢スベシトノ修正案デアリマ
  スルガ、是モ形カラ見レバ、
  カ或ハ五十五ノ如キデアリマスルガ、之ニ附
  加稅ヲ加ヘマス時ニハ、七割七八分カラ多キ
  ハ八割ニ及ビマシテ、所得利得ノ大部分ヲ
  擧ゲテ、納稅ニ充テナケレバナラヌモノモ
  アルノデアリマス、七割七八分カラ八割マデモ
  旣ニ納稅ニ充テテ居ルモノナラバ、是レ以
  上ノ加重ヲ加ヘルト云フコトハ如何ナモノデ
  アリマセウ、徒ニ企業心ヲ阻碍シ、或ハ人
  心ヲ萎靡セシメテ、寧ロ安逸ヲ貪ルノガ得
  策ナリトスルヤウナ觀念ガ若シモ出マシタ
  ナラバ、洵ニ面白カラヌ現象デアリマス、卽
  チ積極的ノ活動ヲ鈍ラシメナイガ爲ニハ、
  是レ以上加重スルト云フコトハ一考ヲ要ス
  ルノデアリマス、旁〓吾々ハ此點ニ對シテモ
  遺憾ナガラ贊成ヲ表シ兼ネルノミナラズ、
  急激ナル增稅ヲ俄ニ致シテ、其負擔者ニ大
  イナル迷惑ヲ掛ケルト云フコトハ、是非避
  ケナケレバナラヌコトト思フノデアリマス、
  此點ニ於キマシテ、吾々ハ遺憾ナガラ同
  意贊成致シ兼ネルノデアリマス、私ガ增
  稅各法案ニ對シ贊成セントスルノハ、以上
  申述ベタ如クデアリ、其他ノ各法案ニ付キ
  マシテハ、委員長ノ報告ヲ其儘贊成致ス者
  デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=12

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• 013・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　岡田忠彥君
  〔岡田忠彥君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=13

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• 014・岡田忠彦

  ○岡田忠彥君　諸君、私ハ立憲政友會ヲ代
  表致シマシテ、先程ノ委員長ノ御報告ニ付
  キ贊意ヲ表シ、此際其趣旨ヲ辯明致ス者デ
  アリマス、政府ガ時局不擴大ノ方針ヲ提唱
  サレテ居ル間ニ、支那ノ事件ハ遠慮ナク擴
  大致シマシク、獨リ支那四百餘州ノコトニ
  關スルノミナラズ、今日ノ現狀ハ、第三國
  ノ向背ニ向ッテモ、深キ注意ヲ拂フベキ秋ト
  百分ノ五十ト一ナッタノデアリマス、不擴大主義ガ、當時ノ
  情勢ニ見テ、一睡ノ夢ニ過ギザルコトハ、
  吾々ノ夙ニ唱道シ、夙ニ政府ニ警告ヲ與ヘ
  タ所デアリマス、固ヨリ吾々ハ時局ノ擴大
  ヲ恐レル者デハナイ、寧ロ大和民族ガ千古
  未曾有ノ大飛躍、大發展ヲ爲スノ階段ヲ作
  ルモノト致シマシテ、之ニ對シテ大ナル期
  待ヲ繫グ者デアリマス、世界ノ强國、東洋
  ノ盟主、我ガ大日本帝國ハ、此場合ニ雄大
  牢固タル國策ノ一線ヲ劃シテ邁往スベキデ
  アル(拍手)斯ノ如クニシテ天下萬邦ヲシテ
  仰ギ瞻セシムルノ態度ニ出ナケレバナラヌ
  ト存ズル次第デアリマス(拍手)是卽チ國民
  精神ノ總動員デアリマス、是卽チ國威ノ宣
  揚デアル、現內閣ハ信念ニ於テ缺クル所ア
  ルカ、其用意ニ於テ足ラザル所ガアルカ、
  將又氣魄之ニ伴ハザルモノガアルカ、兎角
  事變ノアトニ追從ヲ致シテ、絕エテ確乎不
  動ノ見透シノ下ニ働イテ居ルト云フコトノ
  形ガ見エナイコトハ、洵ニ寒心ニ堪ヘマセ
  ヌ(拍手)此現レハ事變關係ノ政府財政計畫
  ノ上ニ最モ明瞭デアリマス(拍手)卽チ當初
  ノ軍事豫算ニ於テ、政府ハ輕々シクモ一億
  足ラズノ臨時費ヲ要求致シテ居ル、斯ノ如
  クニシテ敵ニ內兜ヲ見サシタ、未ダ旬日ヲ
  出デズシテ、忽チ五億ノ臨時軍事費ヲ要求
  致シ、既ニシテ又更ニ二十億ノ要求ヲ重ネ、
  今囘又四十八億ト云フ巨大ナル臨時費ヲ計
  上致シテ居ル、其間又增稅ニ對スル方針ニ
  於テモ一貫セザルモノガアル、卽チ五億ノ
  豫算ノ要求ニ當ッテハ、一億餘ノ增稅ヲ伴ッ
  テ居リマス、其惡影響、其不人氣ニ驚キシ
  政府ハ、次ノ二十億ノ要求ノ場合ニ於テハ
  增稅ヲ差控ヘタ、今囘ノ增稅ニ當ッテ、又再
  ビ二億ノ增稅ト云フモノガ頭ヲ持上ゲテ來
  タノデアリマス、其形ニ於テ既ニ其日暮シ
  デアルト云フコトノ有樣ハ明瞭デアルト存
  ズルノデアリマス(拍手)而シテ今囘增稅ノ
  根柢ニ付テ質疑應答ヲ重ネテ見ルト、政府
  ノ說明是亦甚ダ不徹底ニシテ、甚ダ薄弱デ
  アリマス、セメテ增稅ヲ以テ國債ノ利子ダ
  ケデモ應ジテ行ッタラドウカト云フ一委員
  ノ質問ニ、藏相ハ答ヘテ言フノニ、其意見
  ニハ多分ニ同感ノ點ガアル、斯樣ニ述ベテ
  居ル、然ラバ試ミニ公債ト其利子トノ關係
  ヲ點檢シテ見ルト云フト、十二年度ノ公債
  發行豫定額ハ、諸君御承知ノ如ク三十四億
  デアル、十三年度ノソレハ五十二億デア
  ル、合セテ八十六億デアリマシテ、之ヲ今
  日ノ三分六厘ノ平均利子ト致シテ、計算ヲ
  致スト三億一千万圓デアル、之ニ十一年
  度ノ百五億ノ公債ノ利子ヲ加算致スト云
  フト、優ニ其利子ハ七億ヲ超エルノデ
  アリマス、假ニ十二三年度ノ三億一千万
  圓ト云フモノガ、今囘ノ增稅ヲ以テ賄ヒ得
  ルト致シテモ、斯ル姑息ナル方法、手段ヲ
  以テ進ムト云フコトハ、後年度增稅ノ累加
  セラレル場合ニ於テ、非常ナル不安ヲ國民
  ノ心裡ニ與ヘルモノデアルト言ハナケレバ
  ナリマセヌ(拍手)畢竟政府ノ增稅ノ理由ヲ
  煎ジ詰メテ見ルト云フト、寧ロ財政ノ見地
  ヲ離レテ、一ツノ道德的ノ見地ニ出デテ居
  ル如ク見エルノデアル、卽チ戰地ノ將士ハ
  勞苦ヲ效シテ國家ニ殉ジテ居ル、然ラバ國
  ニ居ル所ノ者モ、其持ッテ居ル物ヲソレゾ
  レ國家ニ提供致ス、金ノアル者ハ金ヲ出セ、
  徵レルダケハ金ヲ徵ッテ見ヨウ、斯ウ云フヤ
  ウナ考ニ歸スルヤウニ思ハレマス、併ナガ
  ラ租稅ヲ徵ッテ國民ヲ覺醒セシムルト云フ
  風ナ考ハ、是ハ人ノ口癖ニ謂フ官僚ノ考方
  ナノダ、左樣ナルコトト云フモノハ、實際
  ニ國民ノ精神ヲ作興スル所以デハナイト私
  ハ確信スル、國民ハ子弟ヲ國家ニ捧ゲテ、
  戰場ニ送ッテ居ルノデアリ、其又父兄兄弟ハ
  國ニ留ッテ、ソレ〓〓分ニ應ジテ國家ニ對シ
  テ精勤ヲ效シテ居ルノデアル、卽チ我ガ國民
  ハ此時局ニ際シ翕然トシテ一團トナッテ、戰
  地モ銃後モアリハセヌ、是ハ一團ノ塊トナッ
  テ居ルト云フコトヲ、政府ハ悟ラナケレバ
  ナラヌノデアリマス(拍手)之ヲ戰地ト銃後
  ト別箇ノ對立ノ如ク考ヘルト云フコトハ、
  其思想其モノガ私ハ擧國一致ノ精神ニ叛逆
  ヲ爲スモノデアルト思フノデアル(拍手)斯
  ク見ルトキニ、此增稅ト云フモノハ財政上
  ノ計畫ニ立ッタモノデナク、道德的ノ見地ニ
  於テモ亦其理論ハ徹底シテ居リマセヌ、
  併ナガラ政府ハ既ニ之ヲ議會ニ提案ヲ致シ、
  天下ニ發表致シテ居ル、目下ノ內外ノ情勢
  ヲ顧ミレバ、之ヲ悉ク否決シ去ルト云フコ
  トハ、中外ニ對スル影響亦甚ダ考フベキモ
  ノガアル、仍テ我黨ハ暫ク政府ノ爲ス所ニ
  委セ、其最モ忍ブベカラザル點ニ付テハ、
  斷乎トシテ修正ヲ加ヘタ次第デアリマス
  戰ハ飽マデ速戰卽決、成ベク早イ機會ニ
  於テ敵ヲ殲滅スルコトガ常道デアル、併ナ
  ガラ財政當局ノ務ハ、如何ニ長クナッテモ我
  國ハ之ニ對スル備ガアルノデアル、財政ノ
  計畫ガアルノデアル、所謂長期持久ノ對
  策ヲ立テルト云フコトガ、今日ノ財務當
  局ノ唯一無二ノ責任デアルト思フ、然ラバ
  此長期持久ニ堪ヘル政策ト云フモノハ何
  デアルカト申スナラバ、私ハ二點ニ歸ス
  ルト思フ、卽チ第一點ハ產業ノ維持擴充
  ヲ圖リ、一ハ以テ軍需當面ノ用ニ應ジ、-
  ハ以テ循環的ニ公債ニ應募セシムルノ、餘
  力ヲ涵養スルコトガ肝腎デアルト思フノデ
  アル(拍手)第二ハ何デアルカ、卽チ物價騰
  貴ノ動キヲ抑制シテ、努メテ大衆生活ノ脅
  威ヲ減ゼシメルコトガ、第二ノ重大ナル目
  的ト思フノデアル、此見地ニ立ッテ今囘ノ增
  稅案ヲ眺メテ見ルト云フト、甚ダ遺憾ノ點
  ガアル、卽チ先程ノ修正點ニ述ベラレタ通
  リニ、第一種、第三種所得稅ニ於キマシテ、
  二割五分ノ增徵ヲ致サレテ居リ、第二種ニ
  於テハ現狀ノ儘ニ止メテ居ラレルヤウデア
  ル、斯ノ如キハ獨リ所得負擔ノ不均衡ヲ來
  スノミデハナイ、產業資本ノ壓迫トナリ、
  時局以來株式ノ低落、賣買ノ減少等、業之
  巳ニ現レテ居ル事實ニ徵スルトキニ於テハ、
  甚ダ寒心ニ堪ヘザルモノガアルノデアリマ
  ス、此度ノ政府提案ト云フモノヲ通シタナ
  ラバ、益〓此產業資本壓迫ノ勢ヲ助長致シ
  テ、之ニ依ッテ產業資本充實ニ障碍ヲ與ヘ
  ルコトハ察知スルニ難カラザル所デアリ
  マス、故ニ此修正ト云フモノハ、獨リ負擔ノ
  輕減ヲ主眼トシタモノデハアリマセヌ、產
  業資本ト、金融資本トノ均衡ノ上ニ立ッテ、國
  策ノ上ニ立ッテ、株式資本ノ利廻ヲ緩和致シマ
  シテ、產業資本ヲ充實シテ、以テ生產ヲ擴充
  スルト云フ、我黨ノ主張ヲ此間ニ闡明ニ現ハ
  シタモノデアルト御承知ヲ願ヒマス(拍手)
  次ニ生活費ノ問題、物價騰貴ノ問題デア
  リマスガ、物品稅ニ於テ必需品ト云フモノ
  ヲ成ベク除外サレテ居ルト云フ、此政府ノ
  用意ノアル所ハ之ヲ諒ト致シマス、併ナガラ
  申ス迄モナク世ノ物價ト云フモノハ、總テ
  聯關性ヲ持ッテ居ルモノデアル、今囘ノ增稅
  ニ依ル其稅額ガ一般ノ需要者ノミニ轉嫁サ
  レル、斯ノ如クニシテ其物價ガ上ルト云フ
  ナラバ、增稅ヲサレテ居ナイ物モ從ウテ共々
  ニ上ルト云フコトハ、是ハ天下ノ通理デ
  アルト思フノデアリマス(拍手)況ヤ其增稅
  額ニ止マッテ居レバ宜イガ、先程ノ岡本君ノ
  御演說ニモアル通リニ、動モスレバ其增稅
  額以上ノ飛躍ヲ爲スノデアル、現ニ今日燐寸
  ノ價格ガ旣ニ倍ニナッテ居ルト云フ、此一事ヲ
  以テ見テモ是ハ明瞭デアリマス(「ヒヤ〓〓〓
  拍手)故ニ政府ガ必需品ヲ除外シタ、或ハ
  免稅點ヲ設ケタナドト云ッテ、安心ヲ致シ
  テ居ルト云フコトハ、是ハ學者ノ議論ト
  云フカ、机上ノ議論ト云フカ、我國ノ財政
  ヲ預ル所ノ實際家ノ考デハナイト私ハ思フ
  ノデアル(拍手)先程ノ岡本君ノ御說明ノ通
  リニ、我國ノ物價ハ昨年ニ比ベテ、業ニ巳
  ニ二割五分ノ勝貴ヲ來シテ居ルノデアル、
  之ニ反シテ外國ノ物價ガ下リ坂ニナッテ居
  ルコトヲ見ルト云フト、此物品稅ノ增稅ト
  云フモノハ、非常ナ廣範圍ノ影響ガアルモ
  ノト言ハナケレバナラヌ、是ハ又後ニ私ハ
  論ズル考デアリマスカラ、此點ハ暫ク別ニ
  致シマシテ、斯樣ナ見地ヨリ、品目ノ中國
  民ノ必需品ニ屬スル所ノ砂糖、而モ其中デ
  モ赤砂糖、黑砂糖等、大衆ノ最モ利用スル
  物ヲ中樞ト致シテ、玆ニ政府ノ案ニ對シテ
  削減ヲ加ヘタ次第デアリマス、其他免稅點
  ニ於テ控除主義ヲ採ル、物品ノ「ストック」、
  卽チ燐寸ノ「ストック」、酒ノ「ストック」、砂
  糖ノ「ストック」、或ハ相續稅中保險金竝ニ
  退職給與金等ニ於テ、免稅ノ控除主義ヲ採
  ルト云フコトハ、ヤハリ此趣旨ニ出タモノ
  デアリマス、其他先程ノ委員長ノ御報〓ノ
  如ク、入場料等ノ削減ヲ加へルト云フト、
  今囘ノ修正減ハ、總額ニ於テ初年度千二百
  六十六万圓トナルノデアリマス
  今大局ノ上ニ立ッテ政府今囘ノ提案ヲ批
  判致スト云フト、物品稅ヲ課スルト云フテ
  モ、諸外國ニ行ハレテ居ル物品ノ賣上稅ノ
  如ク、總テノ物ニ對シテ課ケテ來ルト云フ、
  太イ線ヲ採ルコトヲ致サズシテ、僅ニ少シ
  ヅヽノ品目ヲ漁ッテ來テ居ル、其一例ハ學生
  ノ遊技ノ特別觀覽料ノ如キ、僅カ全國デ十
  二万圓ノモノ迄モ之ニ入レテ居ル、甚ダ御
  無禮ナ話デアルケレドモ、バク屋ガ籠ヲ下
  ゲテ各戶ヲ〓ッテ、其掃溜ヲ搜シテ居ルト云
  フヤウナ形ヲ成シテ居ルノデアリマシテ、
  洵ニ其藝ハ細カイケレドモ、其線ハ甚ダ細
  イノデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)而モ其結果ニ
  於テハ同一デアリマシテ、私ハ信ズル、必
  需品モ上ル所ノ傾向ヲ生ズルニ違ヒナイ、
  洵ニ是ハ拙策デアルト斷ゼザルヲ得マセヌ、
  今ヤ政府ノ政策ノ結果、已ムヲ得ザル點モ
  アルケレドモ、物ト云フ物ガ少クナッテ居
  ル、隨テ物價ハ上ッテ居ル、此上ッテ居ル趨
  勢ニ拍車ヲ加ウルモノガ、今囘ノ政府ノ提
  案デアリマス、斯ノ如クニシテ勞銀ハ上ラ
  ザルヲ得ナイ、勞銀ノ上ル所ノ結果ハ、生
  產費ヲ增サナケレバナルマイ、又國民大衆
  ノ生活費ニモ固ヨリ及ビ、勞銀ノ騰貴、物
  價ノ騰貴ハ、我國唯一ノ-唯一トハ言ハ
  ヌガ、主ナル財源デアル所ノ輸出貿易ノ上
  ニ、又々重大ナル影響ヲ與フルコトハ、
  否ムコトガ出來ナイノデアル、又更ニ假ニ
  物ガ二割上ルト致スナラバ、政府ノ數十億
  ノ豫算ハ如何ニ料理スルノデアルカ、是ハ大
  變ナ影響ガアルト云フコトヲ考ヘナケレバナ
  ラヌ、少シノ稅ヲ取ランガ爲ニ、大キナル影響
  アルト云フコトヲ、政府ハ覺悟シナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス(拍手)政府ハ物價騰貴ニ臨
  ムニ、暴利取締令ノ如キモノヲ以テスルト云フ
  コトヲ言ウテ居ルヤウデアル、尤モ商工大
  臣ハ、是ハ却テ逆作用ヲ生ズルカモ知レヌ
  カラ、少シ是ガ運用ヲ躊躇スルト云フノデ
  アル、併ナガラ結局此暴利取締令ノ如キモ
  ノヲ、眼中ニ置イテ居ルヤウデアルガ、經濟
  上ノ原則ガ一片ノ暴利取締令ニ依ッテ取締
  リ得ヌト云フコトハ、旣ニ過去ノ歷史ガ證
  明致シテ居ルデハナイカ、言フ迄モナク、
  過グル仲小路農相ノ時ニ、米ガ上ッタノヲ
  下ゲヨウト云ッテ、所謂傳家ノ寶刀ヲ振廻シ
  ク、所ガドウデアッタカ、益〓米ハ上ッタノデ
  アル、大隈侯爵ハ米ヲ上ゲヨウト云ウテ、
  ドン〓〓買ヒ進ンデ居ル中ニ、却テ市場ノ
  反動スル所トナッテ米ガ下ッタデハナイカ、
  此過去ノ歷史ヲ考ヘズシテ、唯政府ノ手ヲ
  以テ物價ノ取締ヲスルト云フヤウナコトハ、
  是ハ洵ニ迂愚ノ一言デアルト言ハナケレ
  バナラヌ(拍手)而モ又物品稅ノ如キ品目ヲ
  選ビ、或ハ免稅點ヲ設ケ、斯ノ如キ煩瑣極
  マリナキ所ノ法令ハ、其煩瑣其モノガ經濟
  界ニ對シテ影響ヲ與ヘルモノト言ハナケレ
  バナラヌ、配給ノ圓滿ヲ圖リ、國民生活ノ
  脅威ヲ無クスル所ノ對策ヲ、政府ハ今後ニ
  於テ樹立シナケレバナラヌト思フノデアリ
  マス、獨リ物價問題ノミナラズ、政府ハ今
  日ヨリモ更ニ進ンデ將來ノ財政ノ根本ノ政
  策ヲ立テテ貰ヒタイ
  英吉利ニ於テハ「イーデン」外相ノ辭職、
  之ニ次グ所ノ獨逸ノ動向等ニ依リマシテ、
  外交上ニ於テ一轉機ヲ劃セント致シテ居ル
  ヤウデアル、亞米利加ニ於テハ、時ヲ經テ
  我國ニ對スル空氣モ、稍〓緩和ノ傾向ニアル
  ト云フコトデアリマス、而シテ一面ニ於テ
  ハ、我國ハ北支ヲ經營シ、中支ヲ經營セン
  ガ爲ニ、或ハ海關ノ接收デアルトカ、或ハ
  資源ノ確保デアルトカ、樣々ノ工夫ヲ致シ、
  又シナケレバナラヌ際ニ、此外交上ノ外國
  ノ動向ト云フモノヲ如何ニ觀テ居ルカ、此
  場合ニ政府ガ其間ニ一石ヲ投ジテ、我國ノ
  ㄱクレヂット」ノ增進ヲ圖ルト云フ機會ガ、今日
  ニアルト思フノデアル、然ルニ政府ニ於テ
  ハ其氣魄モナシ、其用意モナイ、私ハ甚ダ
  之ヲ惜ムノデアル、又占領地ニ於テハ、所
  謂敵ノ糧ニ依ルト云フ古來ノ戰法ヲ用ヒテ
  貰ヒタイ、是ハ度々政府ニ進言シテ居ルガ、
  少シモ其現レガ見エナイト云フコトハ、是
  亦甚ダ遺憾ヲ極メルノデアリマス、又爲替
  ノ一件ニ於テモ、大藏大臣ハ頻リニ爲替ノ
  堅持ヲ言フヤウデアルガ、然ラバ聞カン、
  日本ノ國ニアル所ノ正貨、金ヲ、政府ノ言
  葉ニ依ルトドシ〓〓ト出シタ、ドシ〓〓ト
  金ヲ出シテ、一時辻褄ヲ合ハシテ置イテ、
  八億ニナックラ一厘一毛モ出セヌト云フコ
  トハ、何處ニ理論上ノ根據ガアルノデアル
  カ、私ハ其根據ト云フモノハ、殆ド之ヲ知
  ルニ苦シムノデアル、然ラバトテ私ハ八億
  出セト言フノデハナイ、ケレドモ政府ノ計
  畫ノ理論ガ立タナイト云フコトヲ申スノデ
  アリマス、而モ亦政府ハ一年間ニドレダケ
  ノ金ガ出シ得ルカト云フコトヲ見テ置イテ、
  爲替管理ヲ爲シテ居ルヤウデアルガ、今玆
  ニ多少ノ金ガ出テモ、或ハ多少ノ輸入ヲ致
  シテモ、ソレガ半年後、一年後ニ於テ、
  五十億ノモノガ三百億トカ五百億トナッテ、
  國家ノ爲ノ增收ヲ圖リ得ルコトニナルナラ
  バシテモ宜イノダ、何故カ政府ハ唯幾
  ラ幾ラノ爲替相場ト云フ風ナコトバカリ、明
  ケテモ暮レテモオ題目ヲ唱ヘテ居ッテ、少シ
  モソレニ對シテ融通性ヲ見ヌト云フコト
  ハ、私ハ大ナル國ヲ治メル所ノ方針デハナ
  イ、手段デハナイト信ズルノデアリマス
  (拍手)斯ノ如クニシテ我國ノ貿易ハ、此趨
  勢ヲ以テスレバ、年々月々ニ萎縮致シテ來
  ル、斯ノ如クニシテ中小工業ノモノハ滅ビ
  テ來ル、我國ノ中小工業、卽チ貿易ニ於テ
  言ヘバ、最モ雜貨ノ輸出ヲ圖ル所ノ中小工
  業又精神的ニ言ウテモ、我國ノ中堅階級
  ノ精神ヲ代表スル中小工業、之ヲ萎靡セシ
  メ、之ヲ倒潰ニ瀕セシメテ、何ノソレガ政
  デアラウカ、政府ハ宜シク此場合ニ於テ十
  分ニ考ヲ練ラレタイ、今カラデモ-遲イ
  カモ知レマセヌケレドモ、マア遲クナイト
  シテ置キマス(拍手)
  更ニ又中央地方ノ稅制整理ノ問題ニ付テ
  ハ先程委員長ヨリモ御報告ガアッタノデ
  アリマス、申ス迄モナク、此時局以來國民
  ハ增稅ニ增稅ヲ重ネラレテ、從來ノ基準デ
  アッタ所ノ稅額十一億九千万圓ニ對シテ、臨
  時租稅增徵法竝ニ今囘ノ增稅法ヲ加ヘル
  ト、負擔ノ增額ハ實ニ六億ヲ超シテ居ルノ
  デアル、卽チ基準ノ十一億九千万圓ニ對シ
  テハ、五割以上ノ增額トナッテ居ル、而モ增
  額ノミナラズ、其間ニ負擔ノ不均衡ハ益〓增〓
  大シ、特ニ跛行的ノ景氣ノ下ニ於テ、戰時
  景氣ノ利潤ニ與ッテ居ラヌ地方ハ、益〓疲弊
  困憊ヲ極メルノデアリマス、其上ニ又政府
  ハ入場稅ニ於テ、或ハ地租附加稅ノ輕減ナ
  ドニ於テ、地方自治體ノ收入ニ一ツノ斧鉞
  ヲ加ヘテ居ルノデアル、仍テ今囘政府ガ三
  千万圓ヲ交付金ニ於テ增スト云ッテモ、ソレ
  ハ政府ノ致シタ所ノ穴ヲ埋メルニシカ過ギ
  ナイノデハナイカ(拍手)洵ニ遺憾ノ至リデ
  アリマス、卽チ中央、地方ノ財政ノ根本的
  整理ト云フモノハ、正ニ急ニ迫ッテ居ルノデ
  アリマス、之ヲ要スルニ長期持久ノ對策樹
  立ト云フ此立前ニ顧ミテ、政府ハ財政、稅
  制ノ根幹ニ向ッテ改正ヲ加ヘテ欲シイノデ
  アリマス、獨リ公債政策ノミニ汲々致サズ
  ニ、物價ノ對策、生產ノ對策、是ト竝ビ立ッ
  テ租稅ノ根本對策ヲ究メナケレバナラヌ、
  遺憾ナガラ政府ノ財政ノ取扱ト云フモノ
  ガ、其眼界甚ダ狭イ、甚ダ小サイ、之ヲ改
  ムルハ今日ニアリマス、之ヲ改メズンバ我
  國ノ爲ニ災ガ來ルト云フコトヲ、斷言シテ
  憚ラヌノデアリマス(拍手)一年トハ言ハ
  又、半年ノ後ニ於テ、改メテ政府ト相見エ
  テ見マセウ、私ノ言フコトガ本當デアルカ、
  本當デナカッタカ、本當デナイヤウニ、政府
  ハ稅ノ變更立直シヲ玆ニ囑望致スノデアリ
  マス、卽チ是ガ私ノ意見デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=14

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• 015・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　玉野知義君
  〔玉野知義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=15

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• 016・玉野知義

  ○玉野知義君　私ハ第一議員倶樂部一同ニ
  代リマシテ、只今議題トナッテ居リマスル臨
  時租稅增徵法中改正法律案、外增稅ニ關係
  アル十二件ニ付キマシテ、頗ル簡單ニ贊意
  ヲ表シタイト考ヘマス、今ヤ重大ナル國家
  ノ非常時ニ際シマシテ、我ガ忠勇ナル將兵
  諸士ガ、只管一身一家ヲ忘レ、君國ノ爲ニ
  辛酸ヲ嘗メ、而モ戰死傷者ノ犠牲ニ對シマ
  シテモ、銃後ニ居ル所ノ國民ガ、或ル程度
  ノ增稅負擔ハ甘受セネバナラヌト私ハ考ヘ
  マス(拍手)此增稅ニ關スル委員會ニ於キマ
  シテモ、往々ニシテ私ハ怪訝ニ堪ヘナイ感
  ジヲ持ッタノデアリマスケレドモ、曩ニ申上
  ゲマスルガ如キ、重大ナル此時局下ニ於ケ
  ル議員トシテ、徒ニ自己ノ意見ヲ主張シ、
  論議スルガ爲ニ、旣ニ會期モ切迫シテ居ル
  今日此際ニ於テ、餘リ思ヒ〓〓ノ主張ヲ爲
  シ、實ニ走馬燈ノ如キ質問モアリマシタノ
  デアリマスルガ、私ハ此會期ノ切迫シテ居
  ル今日、アトニ澤山ナル重要案件モ山積シ
  テ居リマスルガ爲ニ、第一議員倶樂部ニ於
  キマシテモ、此增稅案ニ付キマシテハ、
  相當ナル意見ヲ持ッテ居リマシタケレ
  ドモ、寸時モ早ク之ヲ可決シタイ、片
  付ケタイ、斯樣テ信念カラ何事ノ主張
  モ控ヘマシテ、先刻委員長ノ報告サレ
  マシタ修正案ニ付キマシテモ、意見ヲ
  持ッテ居ルノデアリマスガ、併ナガラ
  其意見ヲ主張スレバスル程、時日ヲ遷延セ
  シムル、斯樣ナ考カラ其主張ヲ止メマシテ、
  委員長ノ報告サレマシタ修正案ニ對シテ
  モ、不滿足ナガラ玆ニ贊意ヲ表シマシテ、
  各派共同ノ附帶決議案ヲ附シマシテ、政府
  原案ニ贊成スル者デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=16

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• 017・小山松壽

  ○議長(小山松壽君)　片山哲君
  〔片山哲君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=17

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• 018・片山哲

  ○片山哲君　私共社會大衆黨ハ只今ノ增稅
  各案ニ對シマシテ、大體委員長ノ報告ニ贊
  成スルモノデアリマスルガ、唯一點、第三
  種所得稅ノ免稅點引下ニ反對スルモノデア
  リマス(拍手)反對シ放シデハナクシテ、所
  得稅ノ最高額打切ニモ反對ヲ致シマスル趣
  旨ニ於テ、玆ニ其點ニ關スル修正案ヲ提出
  スル者デアリマス(拍手)此修正案ハ免稅點
  引下四十万人ノ人ガ、新シク四百万圓ノ課
  稅ヲセラルヽコトニナルノデアリマスル
  ガ、吾々ハ之ニ反對ヲ致シマスル結果、其
  金額ハ減ルノデアリマスルケレドモ、先程
  申シマスル所得稅ノ最高額打切ニ對シテ反
  對ヲ致シマスル結果、同樣ノ四百万圓ガ浮
  クコトニナリマスルカラ、此吾々ノ修正案
  ハ、所得稅ニ對スル金額ニハ、何等ノ出入
  リガナイ結果トナッテ來ルノデアリマス(拍
  手)私ハ此修正案ヲ、モウ一ツノ點カラ是
  非共諸君ノ御贊同ヲ得ナケレバナラヌト考
  ヘルノデアリマス、ソレハ先程委員長ガ報
  告セラレマシタ附帶決議デアリマス、吾々
  ハ增稅ニ相竝ンデ、戰時ニ於テ或ル一ツノ
  戰時社會政策ヲ行ハナクテハナラナイト云
  フコトヲ考ヘルノデアリマス、其戰時社會政
  策ノ一項ト致シマシテ、免稅點引下反對ヲ
  主張スル者デアリマシテ、之ヲ活カスコト
  ニ依リマシテ、附帶決議ノ第二項及ビ第三
  項ガ初メテ生キテ來ルモノデアルト云フコ
  トヲ信ズル者デアリマス(拍手)私ハ增稅案
  ノ戰時財政ニ於ケル重要性ヲ考ヘル者デア
  リマス
  〔議長退席、副議長著席〕
  ソレハ三億圓ト云フ金額ガ大キイカラト云
  フ點デハナクシテ、戰時財政ヲ構成致シテ
  居リマスル他ノ重要政策トノ關聯ニ於テ、
  重要性ヲ感ズル者デアリマス、其一ツハ、
  申ス迄モナク公債增發トノ關係デアリマス、
  諸君ガ旣ニ指摘サレ、諸君ガ旣ニ多ク論ゼ
  ラレテ居リマス點デアリマスル、公債增發
  ト增稅トノ關係デアリマス、第二ハ、物價
  騰貴ト增稅トノ關係デアリマス、第三ハ、
  增稅ト增稅ガ及ボス社會的、財政的及ビ國
  民生活ニ與ヘル影響ノ點デアリマス、第四
  ハ、此戰時增稅ガ戰後ニ如何ナル影響ヲ及
  ボスカ、戰時增稅ハ一般稅制ノ上ニ於テ如
  何ナル影響ヲ後ニ及ボスカ、卽チ戰時增稅
  恆久化ニ關スル問題デアリマス、以上ノヤ
  ウナ諸點ヲ吾々ガ考ヘテ行キタイノデアリ
  マスガ、公債增發ト增稅トノ關係ニ付キマ
  シテハ、多クノ諸君ガ旣ニ論ゼラレテ居リ
  マスルカラ、私ハ主トシテ增稅ト物價問題
  及ビ其對策ニ付キマシテ、吾々ノ修正案ヲ
  提ゲテ居リマスル根據ヲ申上ゲマシテ、政
  府ニ對シテ警告ヲ發シタイト存ズル次第デ
  アリマス
  先ヅ最初ニ私共ノ態度ヲ明ニ致シテ置キ
  タイト思ヒマス、吾々ハ戰時財政ノ基礎ヲ
  確實ニシタイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、
  此大キナ豫算、此大キナ公債、是等ニ對シ
  マシテ增稅ノ已ムヲ得ナイト云フコトハ認
  メル者デアリマス、相當ノ增稅ハ不可避デ
  アルト云フコトヲ考ヘル者デアリマス、而
  シテ是ハ戰時財政ノ基礎ヲ確實ニシナケレ
  バナラナイモノデアルト云フヤウナ點ヨ
  リ、增稅ノ不可避ヲ考ヘ、且又ソレヲ通
  ジテ戰時財政ノ確立ヲ圖リタイト云フコ
  トヲ考ヘル者デアリマスルガ、併ナガラ
  此增稅ノ及ボス財政及ビ國民生活ニ與ヘ
  ル副作用、他ノ作用ヲ考ヘテ行カナケレ
  バナラナイト思フノデアリマス、卽チ公債
  增發ニ依リマスル所ノ通貨膨脹ノ來ス物
  價騰貴ヲ抑同調整スル爲ニ、增稅ヲ爲シ
  テ財政ノ基礎ヲ確實ニセントスルモノデア
  リマスケレドモ、戰時增稅ノ持ツ自ラノ作
  用、自ラ持チマスル特別ノ作用ニ依ッテ、又
  物價騰貴ヲ來スモノデアルト云フコトヲ、
  明ニシナケレバナラナイノデアリマス(拍
  手)隨テ其增稅ガ自ラ起ス別作用ニ對スル
  對策ガ、當然伴ハナケレバナラナイモノデ
  アルト云フコトヲ感ズル者デアリマス、而
  モ其增稅ガ大衆增稅デアル場合ニ於テ、物
  價騰貴抑制政策、或ハ國民生活安定政策ト
  シテノ社會政策ヲ伴フニアラズシテ、獨リ
  切離シタ增稅ハ斷ジテ吾々ノ承服スル所デ
  ハナイ(拍手)又切離シタ增稅ダケヲ、ポッツ
  リト戰時財政ニ出シテ居リマスル政府ノ財
  政政策ニ對シテハ、吾々ハ大イニ糺彈シナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手)
  話ハ元ヘ戾ルノデアリマスガ、物價騰貴
  ハ何故起ルカ、是等ヲ玆ニ詳論スル必要ハ
  勿論アリマセヌ、極メテ簡單ニ私ノ所見ヲ
  申上ゲマスルナラバ、今日ノ物價騰貴ニハ
  色々ノ原因ガアリマセウケレドモ、其最大
  ノ原因ハ何デアルカト云フナラバ、飛躍的
  ニ膨脹致シマシタ今日ノ財政ガ、其原因ヲ
  成シテ居ルト云フコトヲ指摘スルコトガ出
  來ルト思フノデアリマス、一昨年秋頃カラ
  唱ヘラレテ居リマシタ物價騰貴ハ、或ハ世
  界的影響デアル國際的關係カラ來ッテ居ル
  モノデアルト云フコトヲ、言ハレタノデア
  リマスルケレドモ、今日數字ニ於テ之ヲ吾々
  ニ示サレテ居ル通リ、又先程岡田氏ヤ或ハ
  岡本氏カラ指摘ヒラレマシタ通リ、外國ノ
  物價ハ下ッテ居ルニモ拘ラズ、我國ノ物價ハ
  特別ナル動キヲ爲シテ、上ボッテ居ルト云フ
  事實デアリマス、此飛躍的ニ上ボリマシタ
  ル財政、豫算ノ數額、公債ノ增發、是等ハ
  當然多量ノ物資ヲ要求スルモノデアルコト
  ハ言フ迄モアリマセヌ、又公債ノ增發ハ通
  貨ヲ膨脹セシメルト云フコトモ、亦言フヲ
  俟タナイ點デアリマス、此物資多量ノ要求
  ト通貨膨脹ニ依リマスル物價騰貴ニ對シマ
  シテ、色々此處デ詳論スル必要ガナイノデ
  アリマスルガ、政府ハ既ニ生產力擴充ヲ唱
  ヘ、或ハ物資需給ノ調整ヲ說イテ居ルノデ
  アリマス、殊ニ藏相ハ機會アル每ニ、尨大
  ナル公債ヲ增發シテモ、物ト金トノ調整ヲ
  行ッテ、且ツ爲替相場サヘ堅持シテ行クナラ
  バ、惡性「インフレ」ヲ防止スルコトモ出來
  ルシ、物價騰貴ヲ抑制スルコトモ出來テ、
  何等ノ懸念ハナイト云フコトヲ常ニ言ハレ
  テ居ルノデアリマス、物資ノ需給調節サヘ
  シテ行クナラバ、物價騰貴ハ起ラナイ、吾々
  ハ現在ノ戰時財政ヲ充實セシメマシテ、
  戰果ヲ十分ニ擧ゲシメル爲ニハ、今日ノ政
  府ノ財政政策ヲ、更ニ堅實ナラシメルコト
  ニ於テ、決シテ吾々ハ反對スル者デハナイ
  ノデアリマス、吾々ハ何處マデモ惡性「イ
  ンフレ」ヲ防止シ、全力ヲ傾倒シテ我國ノ
  財政ノ確立ヲ圖ッテ行カナケレバナラヌコト
  ト考ヘルノデアリマス、其意味ニ於テ、藏
  相ノ只今マデ執ッテ來ラレタ、又堅持セラレ
  テ居リマスル、爲替相場ノ維持ニ對シテハ
  贊成スル者デアリマス、反對スル者デナイ
  ノデアリマス、併ナガラ事實ヲ見マスルナ
  ラバ、輸入、輸出ノ數額ハ、共ニ不振ヲ示
  シテ居ルノデアリマス、輸出不振ノ今日、
  從來ノ儘ノヤリ方デ、果シテ此難關ヲ切拔
  ケルコトガ出來ルデアリマセウカ、輸出輸
  入不振ノ狀態ヲ此儘ニ致シマシテ、爲替相
  場ノ水準ヲ今日ノ儘デ維持スルコトガ出來
  ルデアリマセウカ、是ハ本會議ニ於キマシ
  テモ、或ハ豫算總會ニ於キマシテモ、多ク
  ノ諸君ヨリ指摘セラレタ所デアリマス、藏
  相ハ是等ノ問題ヲ處理センガ爲ニ、所謂物
  ノ經濟、金カラ物ヘト云フ理論ヲ立テラ
  レテ居リマス、此財政ノ立テ方ニ付キマシ
  テ、一ツノ新シキ立テ方ヲサレテ居ルト云
  フコトニ付テハ、私共贊成ヲスル者デアリ
  マス、併ナガラ物ノ經濟ト云フ見方ニ對シ
  マシテ、尙ホ足ラザル所ガアリマス、ッ
  ノ體制ガ整ヘラレテ居ナイト云フコトヲ、私
  ハ遺憾ナガラ感ゼザルヲ得ナイノデアリマス、
  汐見博士ハ日本經濟政策ニ於キマシテ、物
  ノ豫算ヲ編成スルコトニ依ッテ、物資需給關
  係ヲ明ニシテ、不自然ナル物價騰貴ニ抑制
  ヲ加ヘル必要ガアル、斯クシテ物ノ財政ガ準
  戰時財政ノ一特色トナッテ來タノデアルト
  云フコトヲ書カレテ居ルノデアリマス、又
  是ト同ジヤウナ趣旨ヲ、藏相ハ當初ヨリ物
  ノ經濟ニ關スル議論トシテ述ベラレテ居ル
  ノデアリマス、此意味ヲ察シマスルト、物
  ノ經濟トハ物ガ潤澤ニ生產供給サレルコト
  デハナクシテ、不足セルモノヲ他ノ方法ヲ
  以テ調節セントスル所ニ、物ノ經濟ニ關ス
  ス理論ガアルト考ヘルノデアリマス、卽チ
  物ノ經濟ヲ主張致シマスル以上ハ、之ニ對
  スル需給配給ニ關スル調節方法ヲ具體的ニ
  示サナイ限リニ於テハ、物ノ經濟ニ關スル
  理論ハ、決シテ整ッテ居ルモノデハナイト云
  フコトヲ私ハ考ヘル者デアリマス、政府ハ
  此調節ト致シマシテ、爲替管理法ヲ制定シ
  タリ、或ハ臨時資金調整法ヲ制定シタリ、
  輸出入臨時措置法ヲ制定シタリ、或ハ消費
  節約ヲ宣傳、主張致シテ居ルノデアリマス、ソ
  レ故此宣傳致シ、或ハ主張致シテ居リマス
  ルコトヲ、更ニ效果ヲ擧ゲ、其實績ヲ收メ
  ヨウト致シマスルナラバ、物ノ不足セルモ
  ノヲ補充スルノ設備ガ、絕對的ニ必要ニナッ
  テ參ルノデアリマス、卽チ之ヲ更ニ進ンデ
  段階ヲ分ケテ申シマスルナラバ、第一ハ不
  足セル物ノ生產力ヲ擴充スル必要ガアルノ
  デアリマス、是ハ軍需品デアルト民需品デ
  アルトヲ問ハナイノデアリマス、第二ハ不
  足セル物ノ需給配給ヲ調節スル必要ガアル
  ノデアリマス、全國ニ於ケル在庫品ヲ調ベ、
  不足セル物ト「ストック」ニナッテ居ル物トノ
  調節ヲ圖ル、國家的機關ガ必要ニナッテ參
  ルノデアリマス、第三ハ不足セル物ノ價格
  統制ヲヤラナクテハナラナイト思フノデア
  リマス、軍需品デアリマシテモ、民需品デ
  アリマシテモ、ソレハ問ハナイ、特ニ生活
  必需品、國民ガ最モ要求致シテ居リマスル
  生活必需品ノ不足ニ因ル物價騰貴ニ對スル
  苦痛ヲ考ヘテ見マスル時ニ、此不足セル物
  ヨリ來リマスル物價統制ヲ爲シ、其價格ヲ
  公定スルト云フコトハ、物ノ經濟理論ヲ透
  徹セシムル意味ニ於テ、絕對的ニ必要デア
  ルト云フコトヲ痛感スル者デアリマス(拍手)
  所ガ今マデ唱ヘラレテ居リマス所ノ、物
  ノ經濟カラ來ル物資ノ需要調整ノ方法ト
  シテハ、軍需生產力擴充ハ擧ゲラレテ居リ
  マス、併ナガラ其反對ニ於テ民需產業ノ不
  振ト、其輸入制限ガ又現レテ居ルノデアリ
  マス、最モ要求サレテ居リマスル所ノ民需
  品、而モ國民生活必需品ノ供給、配給ニ關
  スル施設ガ忘レラレテ居ルト云フ所ニ、今
  日ノ國民必需品ノ物價騰貴ガアルト云フコ
  トヲ考ヘナケレバナラナイノデアリマス
  (拍手)而モ民需產業ノ物資不足ハ、之ヲ取
  扱ッテ居リマス所ノ中小商工業者ノ不振ヲ
  來シ、其營業ニ破綻ヲ來スト云フコトモ、
  亦大イニ指摘セラレナケレバナラナイ重要
  點デアルト考ヘルノデアリマス(拍手)
  最近商工省ハ是等ノ物價問題ニ付キマシ
  テ、積極的ニ出ラレテ居ルト云フコトハ
  豫算總會或ハ本案ノ委員會ニ於テ明ニセラ
  レマシタ、臨時物資調整局ヲ外局トシテ置
  クトカ、或ハ生活必需品ノ價格監督機關ヲ
  設置スルトカ、斯ウ云フヤウナコトヲ言ハ
  レテ居リマス、併ナガラ全體ト致シマシテ、
  民需品ノ配給ガ圓滑デナクシテ、一部ニ停
  滯偏在致シテ居リマスル今日ノ事實ヲ、早
  ク調整スル必要ガアルト云フコトハ言フ迄
  モナイノデアリマス、生產ハ增大致シマシ
  テモ、配給ガ圓滑デナクシテ、一部ニ偏在
  致シマスルナラバ、必ズ物價騰貴ガ來ルト
  云フコトヲ考ヘナケレバナラナイノデゴザ
  イマス
  次ニ增稅ハ此物價ニ及ボス影響ヲ考ヘ
  ナケレバナリマセヌ、私ノ申上ゲタイ論
  點ヲ要約致シテ見マスルナラバ、物價ニ
  多大ノ影響ヲ持ッテ居リマスル增稅、而モ
  大衆課稅、消費稅ニ對スル課稅、物品課稅
  等ガ行ハレマスル場合ニ於テ、特ニ其副作
  用ノ多キコトヲ感ズルノデアリマス、其副
  作用ヲ防止シ、之ヲ排除スルノ方法
  ヲ、增稅計畫ト共ニ竝行シテ、本案ニ竝ン
  デ提出サレナケレバナラナイト云フコトヲ
  感ズルノデアリマス(拍手)此點ヲ私簡單ニ
  申上ゲテ見タイノデアリマス
  第一ハ直接稅ノ轉嫁問題デアリマス、直
  接稅ガ轉嫁サレルカドウカト云フコトハ、
  社會大衆黨ガ旣ニ明ニ指摘シテ居リマスル
  通リ、或ハ價格ノ上ニ、勞賃ノ上ニ轉嫁セ
  ラレルモノデアリマス、第一種所得稅或ハ
  利得稅等ガ、事業主ノ負擔ニ依ッテ增徵セラ
  レルノデアリマスルガ、其租稅ハ事業ノ經
  費トシテ取扱ハレマスル結果ガ一ツト、今
  一ツハ此直接稅ノ增稅ガ、從業員及ビ從業
  勞働者ガ、此事業ニ對シテ何等ノ發言權ヲ
  持ッテ居ナイト云フ、二ツノ理由ニ依ッテ、
  直接稅ガ又勞働階級ニ轉嫁セラレルモノデ
  アリマス(拍手)第一ハ何デアルカト申シマ
  スルナラバ、其價格ニ轉嫁セラレル、之ニ
  對シマシテハ、旣ニ重要產業統制法デアリ
  マスルトカ、或ハ暴利取締令デアリマスル
  トカニ依ッテ統制シ、又今日ノ獨占事業ノ物
  價ガ高イト云フ問題ニ對シテモ、之ヲ調節
  セント致シテ居リマス、併ナガラ勞働階級、
  從業勞働者ニ轉嫁スル分ハ、價格ノ吊上ゲ
  デハナクシテ、勞賃ノ引下ゲデアル、之ニ
  對シテ、重要產業統制法、或ハ暴利取締令
  ト同ジヤウナ對策、同ジヤウナ政策ガ今日
  勞働大衆、從業員ニ與ヘラレテ居リマセウ
  カ、何等與ヘラレテ居ナイノデアリマス、
  居ナイ結果勞賃ノ引下ゲニ直チニ轉嫁サレ
  ルト云フコトハ、水ノ流レテ來ルヤウナ狀
  態ト今日デハナッテ居ルノデアリマス、ソ
  レ故ニ之ヲ放任スルト云フコトハ、國民經
  濟力ノ充實ノ上カラ申シマシテ、斷ジテ
  吾々ノ承服シ難イ所デアリマス(拍手)ソレ
  故ニ勞働階級ニ直接稅轉嫁ヲ防止シ、之ヲ
  支ヘル力ヲ與ヘルト云フコトガ、今日最モ
  必要ニナッテ來ルト私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、卽チ從業員ガ自己ノ生活ヲ築キ上ゲル力
  デアリマス、自分ノ力ヲ以テ今日ノ自己ノ
  生活ヲ築キ上ゲル力サヘ與ヘテ置キマスル
  ナラバ容易ニ轉嫁サレナイ、而モソレハ價
  格暴騰ヲ抑ヘテ居リマスル重要產業統制法、
  暴利取締令ト同ジ作用ヲ爲スモノデアルト
  云フコトガ玆ニ指摘サレナケレバナラヌト
  思フノデアリマス(拍手)是ト相竝ンデ極メ
  テ簡單ニ私ノ勞働問題ニ對スル所見ヲ二三
  分申上ゲテ見タイト思ヒマス、勞働問題ガ
  今マデ分配問題ニ重點ヲ置イテ居ッタ觀ガ
  アリマスルケレドモ、今日ニ於テハサウデ
  ハナクシテ、勞働問題コソハ、勞働者ガ其
  事業ニ參畫シテ生產力擴充ヲ圖ッテ、一國ノ
  產業ノ發展ヲ畫スルト云フ所ニ、今日ノ產
  業問題トシテノ價値ガアルコトヲ考ヘルノ
  デアリマス(拍手)私ハ其意味ニ於テ農村問
  題モ考ヘタイ、併シ是ハ今日問題外デアリ
  マスルカラ、述ベマセヌケレドモ、農村問
  題デアリマシテモ、勞働問題デアリマシテ
  モ、將タ又小商人ノ問題デアリマシテモ、
  生產力擴充、產業ノ隆盛發展、國經濟力ノ
  充實ト云フ所ニ論點ヲ置イテ今日考ヘテ居
  ルノデアリマス(拍手)所ガ今日政府ガ唱ヘ
  テ居リマスル生產力擴充ハ何デアルカト申
  シマスルト、ソレハ資金ノ擴充ダケデアリ
  マス、產業資本、或ハ金融資本ノ協力、協
  セタ力ニ依リマスル所ノ擴充政策デアリマ
  ス、隨テ先程私ガ指摘致シマシタ勞働階級
  ノ自己生活ヲ築キ上ゲル力ヲ容認致シテ居
  リマセヌカラ、今日デハ勞働强化ト云フコ
  トガ伴ッテ參ルノデアリマス、卽チ今マデ唱
  ヘラレテ居リマスル生產力擴充ハ、必ズ勞働
  强化ヲ伴フモノデアリマス(拍手)隨テソレ
  ハ數字ニ現ハレテ參リマス、工場災害ガ今
  日最モ多クナッテ居リマス、或ハ工場法違
  反モ多イノデアリマス、或ハ保護職工取扱
  ニ關スル違反モ多イノデアリマス、此點ハ
  同僚水谷君ガ本委員會ニ於テ詳細指摘シテ
  居ル點デアリマスルカラ、速記錄ニ就テ御
  覽願ヒマスルナラバ、此間ノ事情ガ能ク諒
  承サレルト思フノデアリマス、又最近唱ヘ
  ラレテ居リマスル工場法ノ改正、保護職工
  ノ取扱ニ關スル問題デアリマスルガ、女鑛
  夫ヲ坑內デ働カストカ、或ハ夜間再ビ働カ
  ストカ、或ハ幼年工ニ關スル禁止事項ヲ緩
  和シテ、子供ニ働カストカ云フヤウナ工場
  法改正ガ今日唱ヘラレテ居ルノデアリマス、
  吾々ハ勿論之ニ對シテ反對ヲ致シマス、眞
  ノ生產力擴充ハ、勞働階級ニ自己ノ生活ヲ
  築キ上ゲル力ヲ與ヘルコトニ依ッテ初メテ
  充實セラレルモノデアルト云フコトヲ、玆
  ニ明ニ中上ゲテ置キタイノデアリマス(拍
  手)
  次ハ消費稅ノ問題デアリマス、消費稅ガ
  又物價ニ轉嫁セラレ、或ハ又一般生活費昂
  騰ニナッテ參リマスコトハ是亦申上ゲルマ
  デモナイ極メテ明カナ點デアリマス、是等
  二ツニ依リマシテ國民大衆ノ生活ガ段々壓
  迫ヲ加ヘラレテ來ル今日、之ニ對シマシテ
  政府ハ如何ナル對策ヲ執ッテ居リマセウカ、
  大藏大臣ハ豫算總會ニ於テ公債消化ニ付テ
  ハ色々ノ對策ガアルケレドモ、要ハ多額ノ
  撒布サレタル戰費ガ色々ノ形デ國民ノ貯蓄
  ニ殘ルト云フコトガ必要デアルト云フコト
  ヲ言ハレテ居リマス、勿論國民ノ貯蓄ニ殘
  ルコトガ必要デアリマスルガ、斯樣ナ增稅、
  物價騰貴ニ依ッテ勤勞大衆ノ懷ロニ今日所
  得ノ貯蓄ガ殘ルヤウナ狀態ガ馴致サレマセ
  ウカ、今囘百万圓ノ費用ヲ以テ貯蓄奬勵部
  ヲ新設セラレテ追加豫算ニ是ガ計上セラレ
  テ居ルノデアリマス、併ナガラソレハ宣傳
  事務費デアリマス、ソレ以外ノ貯蓄ガ本當
  ニ國民大衆ノ懷ロニ殘ル施設ガ今日必要ニ
  ナッテ來ルコトヲ私ハ考ヘルノデアリマス、
  更ニ吾々ハ一般租稅ノ使命ノ外ニ今日ノ增
  稅ハ戰時增稅デアルト云フコトハ認メマス、
  戰時增稅デアリマスルカラ、戰費ヲ充實ス
  ルト云フコトガ必要デアリマス、戰費ノ確
  保デアリマス、此戰費ヲ構成シテ居リマス
  ルモノハ何デアリマセウカ、是ハ私ガ此處
  デ指摘スルマデモナク、國家總動員法ニ於
  テ指摘セラレテ居リマス、國家總動員法ニ
  依リマスナラバ、戰費ノ財源トナルモノハ
  物資、事業及ビ勞力デアルト云フコトガ明
  ニサレテ居ルノデアリマス、此物資及ビ事
  業ニ付キマシテハ其財源トシテノ保護ガ旣
  ニ行ハレテ居リマス、色々足ラザル所アリ
  ト雖モ、多少デモ其保護ガ行ハレテ居リマ
  ス、併ナガラ戰費ト扱ハレテ居リマスル人
  間ノ勞働力ニ對シマシテハ、何等ノ保護施
  設ガナイト云フコトヲ私ハ言ハザルヲ得ナ
  イノデアリマス(拍手)此財源ノ培養、增稅
  ニ依ッテコタヘテ居リマス所ノ勞力ヲ財源
  トシテ培養スルコトガ最モ必要デアッテ、增
  稅ニ竝ンデ行ハナケレバナラナイト云フ私
  ノ戰時財政政策、戰時社會政策トハ卽チ之
  ヲ指スモノデアルト云フコトヲ謂ハナケレ
  バナラナイノデアリマス(拍手)吾々ノ主張シ
  テ居リマスル所ノ修正案、免稅點引下ゲ反
  對千二百圓ノ免稅點ヲ千圓ニ引下ゲテ四
  十万人ノ人カラ新シク四百万圓ノ稅金ヲ取
  ルト云フコトヲ修正シナケレバナラナイト
  云フコトガ、卽チ一ツノ戰時社會政策デアッ
  テ、是ガ又增稅ト竝ンデ行フ一ツノ裏カラ
  見タ所ノ見方デアリマスケレドモ、必要缺
  クベカラザル社會政策デアルト云フコトヲ
  者ヘルノデアリマス(拍手)其意味ニ於キマ
  シテ免稅點引下ゲ反對、少クトモ現行法維
  持、最高額打切リ反對、斯ウ云フヤウナ意
  味ヲ以チマシテ吾々ノ修正案ヲ提出シタ次
  第デアリマス
  次ニ最後ノ戰時財政ノ恆久化ニ關スル問
  題ニ關スル所見ヲ申上ゲテ見タイト思ヒマ
  ス、政府ハ事變突發ヲ理由ト致シマシテ稅
  制ノ根本改革ヲシテ居ナイノデアリマス、
  是等ノ點ニ付テハ既ニ兩君カラ所論ガアリ
  マシタカラ、私之ヲ繰返シマセヌ、私ノ特
  ニ申上ゲタイ點ハ、一度增稅ヲ致シマスル
  ナラバ、中々其增稅ヲ引込メルコトハ困難
  ナ狀態ニナッテ居リマス、既ニ日〓戰爭、日
  露戰爭ノ通行稅、或ハ木綿織物消費稅ガ其
  後中々容易ニ削除サレナカッタコトヲ見マ
  シテモ、戰時財政ノ恆久化ハ十分指摘セラ
  レルモノデアルト私ハ思フノデアリマス(拍
  手)デアリマスルカラ、來年度ハ是非共稅
  制ノ根本改革ヲ斷行シテ、負擔均衡ヲ圖ラ
  レンコトヲ私共ハ强ク政府ニ要望致ス者デ
  アリマス、戰時ダカラ-戰時財政ノ確立
  デアリマスルカラ、尙更之ヲ要求スルノデ
  アリマス、斯ル增稅ニ對シマシテ、以上ノ如
  ク私共主張スルノデアリマスルガ、是ハ決
  シテ時難ヲ免レ、自ラ獨リ安キヲ求メント
  スルヤウナ考ヲ以テヤルノデハナクシテ、
  斯クシテ民衆ノ生活力ヲ、自ラ築キ上ゲル
  力ヲ、戰時社會政策ヲ以テ培養スルコトガ、
  民力涵養、國經濟力ノ發展デアリ、而シテ
  之ヲ通ジテ產業ノ隆盛、財政ノ鞏固ヲ來ス
  所以デアルト云フコトヲ私共ハ强調スル者
  デアリマス(拍手)此戰時財政ハ-否戰時
  財政デナクトモ、稅制ノ根本ヲ確立シテ、如
  何ナル稅制ヲ立テルカト云フコトハ、度々
  使ハレテ居リマスル所謂近衞首相ノ持テル
  者ト、持タザル者トノ生活ノ相剋ヲ調節ス
  ルト云フ作用ヲ爲スモノデアリマス、第二
  ハ軍需製造業者ガ得テ居リマスル利益ト、
  民需製造業者ガ今日得テ居リマスル僅カナ
  ル產業ノ利得、其富ノ分配ヲ公平ナラシム
  ルモノハ、卽チ稅制ノ作用デアルト云フコ
  トヲ私ハ考ヘル者デアリマス(拍手)之ヲ合
  理化セシムルコトガ一國ノ財政ヲ鞏固ナラ
  シムルト共ニ、國民生活ヲ安定ナラシムル
  所以デアルト思フノデアリマス、稅制ハ單
  ニ一國ノ財源、一國ノ歲入ヲ多クスルト云
  フ一元單調ナモノデハナクシテ、稅制ノ持
  ツ社會的重要性、產業的重要ナル使命ヲ考
  ヘナケレバナラナイト私ハ考ヘル者デアリ
  マス、斯ル意味ニ於テ、今日戰時社會政策
  ヲ伴ッテ卽時行ハウトスルナラバ、吾々ノ提
  案セル所ノ修正案ガ其作用ヲ發揚スルモノ
  デアリマス、又其外ニ戰時社會政策ヲ伴フ
  計畫ヲ政府ハ直チニ立テラレマシテ、次ノ
  根本的改革ト相竝ンデ、國民生活ヲ培養ス
  ル社會政策ノ實行ニ邁進セラレンコトヲ玆
  ニ警告致シマシテ、吾々ノ修正案ヲ支持
  シ、其他ハ全部委員長報〓ノ修正案ニ贊成
  スル意思ヲ明ニ致シタイト思フ次第デアリ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=18

  ---

• 019・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　馬場元治君
  〔馬場元治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=19

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• 020・馬場元治

  ○馬場元治君　討論ノ時間ガ僅ニ十分間ニ
  制限ヲ蒙ッテ居リマスルカラ、私ハ我ガ東方
  會ヲ代表致シマシテ、極メテ簡單ニ修正案
  ノ一部ニ對シテ反對ノ意思ヲ表明シタイト
  存ジマス、修正案第一點ノ主タル點ハ、第
  一種竝ニ第三種所得稅、其增稅率二割五分
  トアリマスモノヲ、二割二分五厘ニ引下ゲ
  ヨウト云フ點ニアルノデアリマス、其狙ヒ
  所ハ生產力ノ擴充ヲ圖ラウ、ソレカラ金融
  資本ト生產資本トノ間ニ橫ハッテ居リマス
  ル不公平ヲ出來ルダケ是正シヨウ、此二ツ
  ノ點ガ狙ヒ所デアルヤウニ考ヘマス、其狙
  ヒ所ハ確ニ正シイノデアッテ、吾々ト雖モ之
  ニ反對スル者デハ勿論アリマセヌケレドモ、
  此修正案ニ示サレタ方法デ、果シテ其目的
  ヲ達成スルコトガ出來ルデアラウカ、吾々
  ハ斷ジテ出來ナイト考へマス、僅ニ二分五厘
  位ノ稅率ノ引下デ、生產力ノ擴充ガ躍進スル
  トハ考ヘラレナイ、若シ又生產資本ト金融
  資本トノ間ニ横ハッテ居リマスル不公平ヲ是
  正シヨウト云フノデアルナラバ、此第一種、第
  三種ノ稅率ヲ引下ゲルコトヲシナイデ、寧ロ
  第二種ノ方ヲ引上ゲルコトニ依ッテ、此衡平
  ヲ期スルコトガ妥當デハアルマイカ、此際
  吾々ハ第三種所得稅ノ免稅點ヲ引下ゲルコ
  トニ反對ヲ致スノデアリマス、政府ノ原案
  ニ於キマシテモ、將又修正案ニ依リマシテ
  千、免稅點引下ゲト云フコトニ相成ッテ居
  ル、是ハ只今片山君カラモ縷〓述べラレマシ
  タ通リ、此程度ノ增稅-若シ將來大增稅
  ヲ行フト云フヤウナ場合デアリマスナラバ
  率ザ知ラズ、僅ニ三億圓ノ增稅ヲ圖リマス
  ル今日ノ場合ニ、年收千一一百圓ヲ切下ゲテ、
  僅ニ千圓ノ年收ヲ有スル連中カラ所得稅ヲ
  取ルト云フコトハ、果シテ妥當デアラウカ、
  此程度ノ增稅ヲ爲シマスル場合ニ於テハ、
  願クハ此階級ニ免稅ヲスルコトニ依ッテ、中
  堅ニ居リマスル是等ノ階級ノ人々ノ財政的
  持久力ヲ持タシメルコトガ、何ヨリモ必要
  デアラウト考ヘルノデアリマス
  ソコデ私共ノ主張ノ結論ハ、所得稅ニ關
  シテハ原案竝ニ修正案共ニ反對、第二ニ修
  正第二點ハ修正案ニ贊成、斯樣ナコトニ相
  成ルノデアリマス、卽チ大衆課稅、例ヘバ
  物品稅デアルトカ、或ハ砂糖消費稅、入場
  稅サウ云ッタ大衆課稅ヲ幾ラカデモ減額
  ヲショウト云フ方面ノ修正ニ對シマシテ
  ハ、其修正ガ如何ニモ申譯的デアリ、且ツ
  不徹底デアリマスルケレドモ、ナキニ優
  ルト云フ意味ニ於テ贊成ヲ致シタイト存ジ
  マス
  此際政府ニ一言ヲ致シタイノデアリマス、
  時局ハ極メテ重大デアリ、殊ニ諸外國ハ日
  本ハ軈テ財政的ニ參ルデアラウト云フ見透
  シヲ致シテ居ルヤウデアリマス、蔣介石政
  權ハ勿論、其背後ニ在リマスル英吉利モ、
  露西亞モ、日本ハ今ニ財政的ニ破綻スルデ
  アラウコトヲ心密ニ期待致シテ居ルノデア
  リマス、ソコデ財政當局ノ責任ハ洵ニ重大
  デアルト思フ、ドウカ政府ハ或ハ爲替水準
  ノ堅持、生產力ノ擴充、公債消化ニ對スル
  善處、物價問題ニ對スル奮鬪、苟モ現下ノ
  時局ヲ擔當スルニ足ルダケノ戰時對策ヲ行
  フニ、遺憾ナク御奮闘賜ランコトヲ切ニ要
  求致ス者デアリマス、以上簡單ニ吾々ノ意
  思ヲ表明致シタイト存ジマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=20

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• 021・服部崎市

  ○服部崎市君　是ニテ討論ハ終局セラレン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=21

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• 022・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君提出ノ動議
  ヲ採決致シマス、服部君提出ノ動議ニ贊成
  ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=22

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• 023・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　起立多數、仍テ討
  論ハ終局スルニ決シマシタ、是ヨリ第二讀
  會ノ採決ニ入リマスガ、其順序ハ先ヅ委員
  長報告修正ノ支那事變特別稅法法案及ビ相
  續稅法中改正法律案ヲ順次採決シ、最後ニ
  委員長報告可決ノ臨時租稅增徵法中改正法
  律案外十案ヲ一括シテ採決スルコトト致シ
  マス-採決致シマス、先ヅ支那事變特別
  稅法案ニ付キ採決致シマスガ、委員長報告
  ニ係ル修正ト、河野君外二名提出ノ修正案
  中ニハ、共通ノ部分ガアリマス、仍テ先ヅ
  共通デナイ部分ヲ採決シ、次ニ共通ノ部分、
  卽チ委員長報告ニ付キ採決シ、次ニ其他ノ
  原案ニ付キ採決スルコトト致シマス、河野
  君外二名提出ノ修正案中、委員長報告ト共
  通デナイ部分ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
  ス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=23

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• 024・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　起立少數、仍テ共
  通部分ヲ除キタル河野君外二名提出ノ修正
  案ハ否決サレマシタ-次ニ委員長報告ト
  河野君外二名提出ノ修正案ト共通セル部分
  ハ、委員長報告ノ通リ決スルニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=24

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• 025・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ共通ノ部分ハ可決致シマシ
  タ-次ニ其他ノ部分ハ原案ノ通リ決スル
  ニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=25

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• 026・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ其他ノ部分ハ原案ノ通リ可決致
  シマシタ-次ニ相續稅法中改正法律案ニ
  付キ採決致シマス、本案ノ委員長報告ハ修
  正デアリマス、委員長報告ノ通リ決スルニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=26

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• 027・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ本案ハ委員長報告ノ通リ決シマ
  シタ-次ニ委員長報告可決ノ臨時租稅增
  徵法中改正法律案外十案ハ、原案ノ通リ決
  スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=27

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• 028・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ臨時租稅增徵法中改正法律案外
  十案ハ原案ノ通リ可決致シマシタ(拍手)是
  ニテ十三案ノ第二讀會ハ終了致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=28

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• 029・服部崎市

  ○服部崎市君　直チニ十三案ノ第三讀會ヲ
  開カレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=29

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• 030・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=30

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• 031・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ直チニ十三案ノ第三讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  支那事變特別稅法案第三讀會
  相續稅法中改正法律案第三讀會
  臨時租稅增徵法中改正法律案第三讀會
  所得稅法中改正法律案第三讀會
  登錄稅法中改正法律案第三讀會
  酒造稅法中改正法律案第三讀會
  酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
  第三讀會
  麥酒稅法中改正法律案第三讀會
  大正九年法律第十二號中改正法律案
  (所得稅法ノ施行ニ關スル件)第三讀會
  臨時利得稅法中改正法律案第三讀會
  臨時租稅措置法案第三讀會
  日滿國稅徴收事務共助法案第三讀會
  本邦內ニ於テ募集シタル外國債ノ待遇
  ニ關スル法律案第三讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=31

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• 032・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、十三案トモ第二讀會議決ノ通リ確
  定致シマシタ(拍手)-日程第一及ビ第二
  ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異議アリマセ
  ヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=32

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• 033・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程第一、北支那開發株式會社
  法案、日程第二、中支那振興株式會社法案、
  右兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマスー
  國務大臣吉野信次君
  第北支那開發株式會社法案(政府
  提出)第一讀會
  第二中支那振興株式會社法案(政府
  提出)第一讀會
  北支那開發株式會社法案
  北支那開發株式會社法
  第一章總則
  第一條北支那開發株式會社ハ北支那ニ
  於ケル經濟開發ヲ促進シ其ノ統合調整
  ヲ圖ルヲ目的トスル株式會社トシ其ノ
  本店ヲ東京ニ置ク
  第二條北支那開發株式會社ノ資本ハ三
  億五千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ
  之ヲ增加スルコトヲ得
  第三條政府ハ一億七千五百萬圓ヲ限リ
  北支那開發株式會社ニ出資スベシ
  政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目
  的ト爲スコトヲ得
  政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
  株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
  第四條北支那開發株式會社ノ株金ノ第
  一囘ノ拂込金額ハ株金ノ六分ノ一迄下
  ルコトヲ得
  政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ其ノ所有
  スル株式ノ第二囘以後ノ株金拂込ニ充
  ツルコトヲ得
  第五條北支那開發株式會社ハ株金全額
  拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコト
  ヲ得
  第六條北支那開發株式會社ノ株式ハ記
  名式トス
  第七條北支那開發株式會社ニ非ザルモ
  ノハ北支那開發株式會社又ハ之ニ類似
  ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得
  ズ
  第八條北支那開發株式會社ノ定款ノ變
  更ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ
  其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
  第二章役員
  第九條北支那開發株式會社ニ總裁一
  人副總裁二人、理事五人以上及監事
  二人以上ヲ置ク
  第十條總裁ハ北支那開發株式會社ヲ代
  表シ其ノ業務ヲ總理ス
  總裁事故アルトキハ副總裁ノ一人其ノ
  職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職
  務ヲ行フ
  副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定
  ムル所ニ從ヒ北支那開發株式會社ノ業
  務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
  監事ハ北支那開發株式會社ノ業務ヲ監
  査ス
  第十一條總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政
  府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
  理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府
  ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四
  年トス
  監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
  任期ヲ三年トス
  第十二條總裁、副總裁及業務ヲ分掌ス
  ル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スル
  コトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタル
  トキハ此ノ限ニ在ラズ
  第十三條北支那開發株式會社ニ顧問若
  干人ヲ置クコトヲ得
  顧問ハ總裁ノ諮問ニ應ジテ意見ヲ開陳
  ス
  顧問ハ北支那開發株式會社政府ノ認可
  ヲ受ケ之ヲ委囑ス
  第三章業務
  第十四條北支那開發株式會社ハ左ノ事
  業ノ主要ナルモノニ對シ投資又ハ融資
  ヲ爲シ其ノ經營ヲ統合調整スルモノト
  ス
  一交通、運輸及港灣ニ關スル事業
  二通信ニ關スル事業
  三發送電ニ關スル事業
  四鑛產ニ關スル事業
  五鹽ノ製造、販賣及利用ニ關スル事
  業
  六前各號ノ外北支那ニ於ケル經濟開
  發ヲ促進スル爲特ニ統合調整ヲ必要ト
  スル事業
  第四章北支開發債劵
  第十五條北支那開發株式會社ハ拂込株
  金額ノ五倍ヲ限リ北支開發債劵ヲ發行
  スルコトヲ得
  北支那開發株式會社ハ北支開發債劵借
  換ノ爲一時前項ノ制限ニ依ラズ北支開
  發債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ
  於テハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金
  額ニ相當スル舊北支開發債劵ヲ償還ス
  ベシ
  北支開發債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
  商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
  トヲ要セズ
  第十六條北支開發債劵ヲ發行セントス
  ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
  第十七條政府ハ北支開發債劵ノ元本ノ
  償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ
  得
  第十八條北支開發債劵ノ所有者ハ北支
  那開發株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者
  ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權
  利ヲ有ス
  第五章準備金
  第十九條北支那開發株式會社ハ每營業
  年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ
  爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且
  利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額
  ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
  第六章政府ノ監督及助成
  第二十條政府ハ北支那開發株式會社ノ
  業務ヲ監督ス
  第二十一條北支那開發株式會社借入金
  ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受
  之心
  第二十二條定款ノ變更、合併及解散ノ
  決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ
  其ノ效力ヲ生ゼズ
  第二十三條北支那開發株式會社ハ政府
  ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ處
  分ヲ爲スコトヲ得ズ
  第二十四條北支那開發株式會社ハ每營
  業年度ノ投資及融資ノ計畫ヲ定メ事業
  開始一月前迄ニ之ヲ政府ニ提出シ認可
  ヲ受クベシ之ニ重大ナル變更ヲ加ヘン
  トスルトキ亦同ジ
  第二十五條政府ハ北支那開發株式會社
  ノ業務ニ關シ監督上、國防上又ハ北支
  那ニ於ケル經濟開發ヲ促進シ其ノ統合
  調整ヲ圖ル爲必要ナル命令ヲ爲スコト
  ヲ得
  前項ノ規定ニ依リ國防上必要ナル命令
  ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル
  所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償
  ス
  前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
  要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
  贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
  テ之ヲ爲スコトヲ要ス
  第二十六條政府ハ北支那開發株式會社
  監理官ヲ置キ北支那開發株式會社ノ業
  務ヲ監視セシム
  北支那開發株式會社監理官ハ何時ニテ
  モ北支那開發株式會社ノ金庫帳簿及諸
  般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
  北支那開發株式會社監理官ハ必要ト認
  ムルトキハ何時ニテモ北支那開發株式
  會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算
  及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
  北支那開發株式會社監理官ハ株主總會
  其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳
  述スルコトヲ得
  第二十七條政府ハ北支那開發株式會社
  ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
  基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
  公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
  取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
  第二十八條北支那開發株式會社ハ每營
  業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
  ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
  金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル
  迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配
  當ヲ爲スコトヲ要セズ
  第二十九條北支那開發株式會社ノ每營
  業年度ニ於ケル投資及融資ニ因ル收入
  ノ投資及融資ノ總額ニ對スル割合(以
  下收入割合ト稱ス)ガ年百分ノ六ニ達
  セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後
  五年間左ノ各號ノ金額ノ合計額ヲ限度
  トシ配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外
  ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ
  年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄其ノ不足
  額ニ相當スル金額ヲ補給ス
  投資及融資ノ總額中政府以外ノ者
  ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル
  部分ニ百分ノ七ヨリ收入割合ヲ減ジ
  タル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
  二投資及融資ノ總額中社債收入金
  (社債前借金ヲ含ム以下同ジ)ニ依リ
  タル部分ニ百分ノ五ヨリ收入割合ヲ
  減ジタル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
  每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
  金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
  拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超
  過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前
  項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
  第一項ノ投資及融資ニ因ル收入、投資
  及融資ノ總額竝ニ其ノ中政府以外ノ者
  ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル部
  分及社債收入金ニ依リタル部分ノ計算
  方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十條北支那開發株式會社ノ每營業
  年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ
  政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金
  額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル
  場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株
  式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益
  配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過ス
  ル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂
  込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達
  スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
  拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込
  金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ
  配當スベシ
  第三十一條北支那開發株式會社ニハ命
  令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌
  年ヨリ十年間所得稅及營業收益稅ヲ免
  除ス
  第三十二條北海道、府縣、市町村其ノ
  他之ニ準ズベキモノハ前條ノ期間北支
  那開發株式會社ノ事業ニ對シ地方稅ヲ
  課スルコトヲ得ズ
  第三十三條北支那開發株式會社ガ設
  文資本ノ增加、合併又ハ第二回以後
  ノ株金拂込ノ登記ヲ受クル場合ニ於テ
  ハ其ノ登錄稅ノ額ハ拂込株金額、增資
  拂込株金額又ハ每囘拂込株金額ノ千分
  ノ一トス
  第七章罰則
  第三十四條北支那開發株式會社ガ本法
  若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ
  基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總
  裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル
  副總裁ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ
  處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ル
  トキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スル
  コト亦同ジ
  非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
  八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
  附則
  第三十五條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施
  行ス
  第三十六條政府ハ設立委員ヲ命ジ北支
  那開發株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ
  事務ヲ處理セシム
  第三十七條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
  府ノ認可ヲ受クベシ
  政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サント
  スルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金錢
  以外ノ財產ノ價格及之ニ對シテ與フル
  株式ノ數ニ付政府出資財產評價委員會
  ノ議ヲ經ベシ
  政府出資財產評價委員會ニ關スル規程
  ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十八條前條ノ認可アリタルトキハ
  設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
  ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
  株主ヲ募集スベシ
  第三十九條株式申込證ニハ定款認可ノ
  年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
  二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
  ヲ記載スベシ
  第四十條設立委員ハ株主ノ募集終リタ
  ルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其
  ノ檢査ヲ受クベシ
  第四十一條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
  ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
  込ヲ爲サシムベシ
  前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
  遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
  第四十二條創立總會ニ於テハ第十一條
  ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フ
  ベシ
  第四十三條創立總會終結シタルトキハ
  設立委員ハ其ノ事務ヲ北支那開發株式
  會社總裁ニ引渡スベシ
  第四十四條政府第四條第二項ノ規定ニ
  依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ其ノ所有ス
  ル株式ノ株金拂込ニ充ツル場合ニ於テ
  ハ其ノ財產ノ價格ニ付政府出資財產評
  價委員會ノ議ヲ經ベシ
  第四十五條政府ハ北支那開發株式會社
  ニ對スル出資ノ目的ニ充ツル爲帝國鐵
  道特別會計ヨリ其ノ所屬物件ヲ無償ニ
  テ一般會計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
  第四十六條登錄稅法第六條第一項第十
  一號中「東洋拓殖債劵」ノ下ニ「、北支開
  發債劵」ヲ加フ
  中支那振興株式會社法案
  中支那振興株式會社法
  第一章總則
  第一條中支那振興株式會社ハ中支那ニ
  於ケル經濟ノ復興及開發ヲ助成スルヲ
  目的トスル株式會社トシ其ノ本店ヲ上
  海ニ置ク
  第二條中支那振興株式會社ノ資本ハ
  億圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增
  加スルコトヲ得
  第三條政府ハ五千萬圓ヲ限リ中支那振
  興株式會社ニ出資スベシ
  政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目
  的ト爲スコトヲ得
  政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
  株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
  得
  第四條中支那振興株式會社ハ株金全額
  拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコト
  ヲ得
  第五條中支那振興株式會社ノ株式ハ記
  名式トス
  第六條中支那振興株式會社ニ非ザルモ
  ノハ中支那振興株式會社又ハ之ニ類似
  ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得
  ズ
  第七條中支那振興株式會社ノ定款ノ變
  更ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ
  其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
  第二章役員
  第八條中支那振興株式會社ニ總裁副總
  裁各一人、理事三人以上及監事二人以
  上ヲ置ク
  第九條總裁ハ中支那振興株式會社ヲ代
  表シ其ノ業務ヲ總理ス
  副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務
  ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
  行フ
  副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定
  ムル所ニ從ヒ中支那振興株式會社ノ業
  務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
  監事ハ中支那振興株式會社ノ業務ヲ監
  査ス
  第十條總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政府
  之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
  理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府
  ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四
  年トス
  監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
  任期ヲ三年トス
  第十一條總裁、副總裁及業務ヲ分掌ス
  ル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スル
  コトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタル
  トキハ此ノ限ニ在ラズ
  第三章業務
  第十二條中支那振興株式會社ハ左ノ事
  業ニ對シ投資又ハ融資ヲ爲スモノトス
  一交通及運輸ニ關スル事業
  二通信ニ關スル事業
  三電氣、瓦斯及水道ニ關スル事業
  四鑛產ニ關スル事業
  五水產ニ關スル事業
  六前各號ノ外中支那ニ於ケル公共ノ
  利益又ハ產業ノ振興ノ爲必要ナル事
  業
  特殊ノ事情アル場合ニ於テハ中支那振
  興株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項各
  號ニ揭グル事業ヲ自ラ經營スルコトヲ
  得
  第四章中支振興債劵
  第十三條中支那振興株式會社ハ拂込株
  金額ノ五倍ヲ限リ中支振興債劵ヲ發行
  スルコトヲ得
  中支那振興株式會社ハ中支振興債劵借
  換ノ爲一時前項ノ制限ニ依ラズ中支振
  興債劵ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ
  於テハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金
  額ニ相當スル舊中支振興債劵ヲ償還ス
  ベシ
  中支振興債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
  商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
  トヲ要セズ
  第十四條中支振興債劵ヲ發行セントス
  ル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
  第十五條政府ハ中支振興債劵ノ元本ノ
  償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ
  得
  第十六條中支振興債劵ノ所有者ハ中支
  那振興株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者
  ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權
  利ヲ有ス
  第五章準備金
  第十七條中支那振興株式會社ハ每營業
  年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ
  爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且
  利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額
  ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
  第六章政府ノ監督及助成
  第十八條政府ハ中支那振興株式會社ノ
  業務ヲ監督ス
  第十九條中支那振興株式會社借入金ヲ
  爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受ク
  ベシ
  第二十條定款ノ變更、合併及解散ノ決
  議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其
  ノ效力ヲ生ゼズ
  第二十一條中支那振興株式會社ハ政府
  ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ處
  分ヲ爲スコトヲ得ズ
  第二十二條中支那振興株式會社ハ每營
  業年度ノ投資及融資竝ニ自營事業ノ計
  畫ヲ定メ事業開始一月前迄ニ之ヲ政府
  ニ提出シ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル
  變更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
  第二十三條政府ハ中支那振興株式會社
  ノ業務ニ關シ監督上、國防上又ハ中支
  那ニ於ケル公共ノ利益若ハ產業ノ振興
  ノ爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ國防上必要ナル命令
  ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル
  所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償
  ス
  前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
  要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
  贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
  テ之ヲ爲スコトヲ要ス
  第二十四條政府ハ中支那振興株式會社
  監理官ヲ置キ中支那振興株式會社ノ業
  務ヲ監視セシム
  中支那振興株式會社監理官ハ何時ニテ
  モ中支那振興株式會社ノ金庫帳簿及諸
  般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
  中支那振興株式會社監理官ハ必要ト認
  ムルトキハ何時ニテモ中支那振興株式
  會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算
  及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
  中支那振興株式會社監理官ハ株主總會
  其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳
  述スルコトヲ得
  第二十五條政府ハ中支那振興株式會社
  ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ
  基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ
  公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ
  取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
  第二十六條中支那振興株式會社ハ每營
  業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
  ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
  金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル
  迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配
  當ヲ爲スコトヲ要セズ
  第二十七條中支那振興株式會社ノ每營
  業年度ニ於ケル投資、融資及自營事業
  ニ因ル收入ノ投資、融資及自營事業資
  金ノ總額ニ對スル割合(以下收入割合
  ト稱ス)ガ年百分ノ六ニ達セザルトキ
  ハ政府ハ初營業年度及爾後五年間左ノ
  各號ノ金額ノ合計額ヲ限度トシ配當シ
  得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有
  スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六
  ノ割合ニ達スル迄其ノ不足額ニ相當ス
  ル金額ヲ補給ス
  投資、融資及自營事業資金ノ總額
  中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
  込金ニ依リタル部分ニ百分ノ七ヨリ
  收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ得べ
  キ金額
  二投資、融資及自營事業資金ノ總額
  中社債收入金(社債前借金ヲ含ム以
  下同ジ)ニ依リタル部分ニ百分ノ五
  ヨリ收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ
  得ベキ金額
  每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
  金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
  拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超
  過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前
  項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
  第一項ノ投資融資及自營事業ニ因ル收
  入投資融資及自營事業資金ノ總額竝
  ニ其ノ中政府以外ノ者ノ所有スル株式
  ノ拂込金ニ依リタル部分及社債收入金
  ニ依リタル部分ノ計算方法ハ命令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第二十八條中支那振興株式會社ノ每營
  業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額
  ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込
  金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過ス
  ル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル
  株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利
  益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過
  スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付
  拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ
  達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式
  ノ拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂
  込金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之
  ヲ配當スベシ
  第七章罰則
  第二十九條中支那振興株式會社ガ本法
  若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ
  基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總
  裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル
  副總裁ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ
  處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ル
  トキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スル
  コト亦同ジ
  非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
  八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
  附則
  第三十條本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行
  ス
  第三十一條政府ハ設立委員ヲ命ジ中支
  那振興株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ
  事務ヲ處理セシム
  第三十二條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
  府ノ認可ヲ受クベシ
  政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サント
  スルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金錢
  以外ノ財產ノ價格及之ニ對シテ與フル
  株式ノ數ニ付政府出資財產評價委員會
  ノ議ヲ經ベシ
  政府出資財產評價委員會ニ關スル規程
  ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十三條前條ノ認可アリタルトキハ
  設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
  ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
  株主ヲ募集スベシ
  第三十四條株式申込證ニハ定款認可ノ
  年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第
  二號、第四號及第五號ニ規定スル事項
  ヲ記載スベシ
  第三十五條設立委員ハ株主ノ募集終リ
  タルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ
  其ノ檢査ヲ受クベシ
  第三十六條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
  ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
  込ヲ爲サシムベシ
  前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
  遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
  第三十七條創立總會ニ於テハ第十條ノ
  規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベ
  シ
  第三十八條創立總會終結シタルトキハ
  設立委員ハ其ノ事務ヲ中支那振興株式
  會社總裁ニ引渡スベシ
  第三十九條政府ハ中支那振興株式會社
  ニ對スル出資ノ目的ニ充ツル爲帝國鐵
  道特別會計ヨリ其ノ所屬物件ヲ無償ニ
  テ一般會計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=33

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• 034・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　只今議題トナリ
  マシタ二ツノ法律案ニ付キマシテ、提案ノ
  理由ヲ一括シテ御說明申上ゲタイト思ヒマ
  ス、今次事變ノ終局ノ目的ニ顧ミマシテ、
  北支及ビ中支ノ經濟ノ復興及ビ開發ヲ圖リ
  以テ日滿支三國ノ提携共榮實現ノ基礎ヲ確
  立致シマスコトハ、帝國政府ガ夙ニ其方針
  トセル所デアリマス、政府ハ右ノ方針ニ基
  キマシテ、支那現地ノ資本竝ニ我方ノ資本
  ト技術ヲ緊密ニ結合セシメ、經濟各部門ヲ
  開發整備シテ、秩序ノ回復及ビ維持、竝ニ
  民衆生活ノ向上ヲ圖リ、以テ東亞ノ安定ニ
  資スル爲メ、北支及ビ中支ニ國策會社トシ
  テ、ソレ〓〓北支那開發株式會社及ビ中支
  那振興株式會社ヲ設立スルコトト致シタノ
  デアリマス
  先ヅ北支那開發株式會社法案ニ付テ申上
  ゲマス、本會社ハ北支ノ經濟開發ヲ促進シ、
  其統合調整ヲ圖ル爲メ、同地方ニ於キマス
  ル交通、運輸及ビ港灣事業、通信事業、發
  送電事業、鑛產事業、鹽ノ製造販賣及ビ利
  用事業等ノ主要ナルモノニ、投資又ハ融資
  ヲ致スコトヲ業務トスルモノデアリマス、
  本會社ノ資本金ハ三億五千万圓デアリマシ
  テ、政府及ビ民間ニ於キマシテ半額ヅヽ出
  資シ、拂込資本金ノ五倍マデ社債ヲ發行シ
  得ルコトトナッテ居リマス
  次ニ中支那振興株式會社法案ニ付テ申上
  ゲマス、本會社ハ中支ニ於ケル經濟ノ復興
  及ビ建設ヲ助成致シマスル爲ニ、同地方ニ
  於テ交通、運輸及ビ通信事業、電氣、瓦斯、
  水道事業、鑛產事業、水產事業等ニ投資、
  又ハ融資ヲ爲スコトヲ主タル業務トスルモ
  ノデアリマス、本會社ノ資本金ハ一億圓デ
  アリマシテ、政府及ビ民間ノ折半出資ト致
  シマシテ、拂込資本金ノ五倍マデ社債ヲ發
  行シ得ルコトトナッテ居リマス
  次ニ此兩會社ノ使命及ビ性質ニ鑑ミマシ
  テ、政府ハ會社ニ對シ、民間出資ニ對シテ
  ハ、優先配當權ヲ認メ、又會社ニ對スル一
  定期間ノ利益補給ニ依ッテ配當ノ確實ヲ期
  スル等、適當ナル優遇方法ヲ講ズルコトト
  致シタノデアリマス、政府ハ此二ツノ國策
  會社ノ設立ニ依リマシテ、支那ニ於ケル第
  三國ノ旣存權益ヲ何等阻碍スルガ如キ意圖
  ナキコトハ、申ス迄モナイノデアリマシテ、
  更ニ進ンデハ第三國ノ資本及ビ技術トノ提
  携ヲ希望致スモノデアリマス、以上申述ベ
  マシタル趣旨ニ依リマシテ、玆ニ兩法案ヲ
  提出致シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ
  上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ御願致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=34

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• 035・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　質疑ノ通〓ガアリ
  マス、之ヲ許シマス-松村謙三君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=35

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• 036・松村謙三

  ○松村謙三君　總理大臣ハ御出席アリマセ
  ヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=36

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• 037・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　總理大臣及ビ外務
  大臣ハ、伊太利使節來訪ノ爲メ出席致シ兼
  ネルトノコトデアリマス
  〔「陸海軍大臣ハ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=37

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• 038・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　通ジテ置キマス
  〔松村謙三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=38

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• 039・松村謙三

  ○松村謙三君　私ノ質問ハ總理大臣ニ對ス
  ル質問デゴザイマスガ、今日ハ御出席ガア
  リマセヌナラバ致シ方ガゴザイマセヌ、併
  ナガラ私ノ質問ハ大體總理大臣ニ御聽ヲ致
  シタイト存ズルノデゴザイマスカラ、適當
  ノ機會ニ總理大臣カラ御答辯ノアリマスル
  ヤウ御取計ヒヲ願ヒタイト存ジマス
  私ハ此兩案ノ根本ニ對シテ、唯一點ダケ
  ノコトヲ總理大臣ニ御尋致シタイト思フ者
  デゴザイマス、ソレハ對支ノ經濟竝ニ文化
  ニ對スル開發ノ我國ノ政治的機關、政治的
  組織ヲドウ云フ風ニナサルカト云フコトデ
  ゴザイマス、是ハ今囘ノ戰爭ノ戰果ヲ十分
  ニ收メ、又之ニ依ッテ今度ノ戰爭ノ目的
  デアリマスル日支ノ提携、文化ノ開發、經
  濟ノ開發、延イテハ東洋和平ノ大業ヲ成就
  スル根本ノ問題ニ關スルカラデアルノデゴ
  ザイマス、支那ノ開發ニ對スル問題ハ、旣
  ニ是等ノコトガ根本的ニ確立シテ、サウシ
  テ今日デハ著々トシテ其經營ノ步ヲ進メネ
  バナラヌ時代ニナッテ居リマスニ拘リマセ
  ズ、會期ガ切迫シテ剩ス所僅カシカナイ今
  日ニ、而モ審議ガ到底十分出來マセヌ今日
  ニ、倉皇トシテ此二法案ヲ出サルヽト云フ
  此一事ヲ見マシテモ、私ハ非常ニ此根本ノ
  問題ニ付テ不安ノ念ヲ持ツ者デゴザイマス
  (「ヒヤ〓〓」拍手)新聞ノ傳フル所ニ依リマ
  スト此際對支開發ノ機關ヲ根本的ニ定メル
  筈デアリマシタガ、ソレガ政府部內ノ意見
  ガ纏リマセヌデ、今度出來マスノハ唯單ニ
  此兩會社ヲ監督スルダケノ事務局ガ內閣ニ
  直屬シテ設ケラルヽコトニ相成ッタヤウデ
  ゴザイマス、斯ウ云フ退嬰的ノ機關ガ今日
  僅ニ出來マシテ、サウシテ對支全體ノ機關
  ガ何時出來ルカ分ラナイト云フコトハ、今
  日ノ支那ニ對スル日本ノ立場トシテ、果シ
  テ本當ニ其責任ヲ盡シ得ルノデアリマスカ、
  是ハ非常ニ今日重大ナル問題デアリマシテ、
  洵ニ國家ノ爲ニ深憂ニ堪ヘナイノデアリマ
  ス(拍手)
  殊ニ私ハ此會社ヲ監督スル事務局ノ組織
  ヲ見マシテモ甚ダ其意ヲ解スルコトノ出來
  ヌコトガ多々アルノデゴザイマス、今日會
  社ノ監督指導ノ爲ニ、內閣ニ事務局ヲ設ケ
  テ之ニ當ルト申シナガラ、同時ニ現地ニハ
  今日御承知ノ通リ特務機關ガアリマシテ、
  其特務機關ニ於テ、是等ノ經濟、文化開發
  ノ指導監督ニ當ッテ居リマス、現ニ最近其顧
  問トシテ平生前文部大臣其他色々ノ人ガア
  チラヘ參ッテ此事ニ當ッテ居リマス、是ト兩
  會社ヲ監督スル事務局トノ關係ハドウナル
  ノデゴザイマスカ、此會社ハ何處ノ監督指
  導ヲ受ケ、其使命ヲ全ウスルノデアリマス
  カ、官制ニ依リマシテハ恐ラクハ事務局ノ
  監督ヲ受ケルコトデゴザイマセウケレドモ、
  實際ニ於テハ果シテサウ云フ風ニ參リマス
  カ、現地ノ特務機關ノ强大ナ力ヲ以テスル
  ノト、東京ニ於ケル唯一ノ事務局トノ對抗
  デハ、果シテ中央ノ威嚴ガ徹底シテ、日本
  ノ國策ヲ遂行スルコトガ出來マスカ(拍手)
  私ハ此點ニ付テ甚ダ疑ナキヲ得ナイノデゴ
  ザイマス
  殊ニソレノミナラズ此事務局ノ上ニハ、
  承ル所ニ依リマスレバー-ソレハ新聞ノ傳
  フル所デアリマスカラ假ニ間違デアルカモ
  知レマセヌガ、此上ニ對支經濟審議會ト云
  フモノヲ設ケマシテ、此事務局ニ對支政策
  ノ根本ヲ授ケルト云フコトニ相成ッテ居ル
  ヤウデゴザイマス、審議會ヤ委員會ト云フ
  モノノ成績ハ大抵分リ切ッテ居ル筈デゴザ
  イマス如何ニ衆智ヲ集メマシテモ、何等
  ソコニ統一シタル責任ノ所在ガアリマセヌ
  デ、唯內閣ノ諮問機關ノヤウナ形デアリマ
  シタナラバ、果シテ其事務局ヲ指導シテ國
  策ヲ實行スルコトガ出來マスカ、私共ハ斯
  ウ云フ審議會、ソレニ如何ナル人ガ入ルカ
  知リマセヌケレドモ、斯ノ如キ審議會ノ力
  ヲ以テ、此重大ナル對支開發問題ヲ處理シ
  ヨウト致シマスコトハ、是ハ無理ナ期待デ
  アルト思ヒマス(拍手)況ヤ東京ニ於テハ事
  務局ノ上ニ審議會ガアリ、現地ニ於キマシ
  テハ特務機關トノ間ニ經濟會議ガアリマス、
  更ニ北支政權ト日本ノ出先ノ間ニ於キマシ
  テハ、經濟協議會ガゴザイマス、是等ノ複
  雜シタル組織、屋上屋ヲ重ネテ居リマス現
  在ノ此組織ニ於キマシテ、果シテ對支開發
  ノ本當ノ目的ガ達シ得ルノデアルカ、私共
  ハ政府ガ此點ニ付テ三度思ヒヲ致サナケレ
  バナラヌモノガアルト考ヘルノデゴザイマ
  ス(拍手)
  ソレノミナラズ、今度ノ開發會社ノ事業
  ハ、是ハ對支開發ノ總テデハゴザイマセヌ、
  支那ニ對スル日本ノ使命ノ極ク僅カノ一部
  ヲ掌ルニ過ギナイノデゴザイマス、此外ニ
  モ金融經濟ニ關スル大キナ部門ガ殘サレテ
  居リマス、殊ニ更ニ最モ大ナルハ、日本ノ
  支那ニ對スル責務ハ、使命ハ、唯單リ經濟ノ
  開發ノミデハゴザイマセヌ、卽チ文化ノ開發
  デゴザイマス、卽チ支那ノ國民ト日本ノ國民
  トガ提携シテ、サウシテ支那ノ經濟ヲ高メ、
  文化ヲ高メ、心的ニモ、物的ニモ、本當ニ渾然
  トシテ茲ニ東洋獨特ノ一大文化ヲ作リ上ゲル
  ト云フコトガ我國ノ使命デアリ、今度ノ戰
  爭ノ目的デアリマス、サウ云フ廣イ範圍ガ
  殘サレテ居ルニ拘リマセズ、唯兩會社ノ其
  監督ノ事務局ヲ作ッテ、是デ足レリト御考ニ
  ナリマス今ノ內閣ノ御考ヲ、吾々ハ了解ス
  ルコトガ出來ナイノデアリマス(拍手)私共
  ハドウシテモ此支那ノ經濟文化ノ開發ニ當
  リマスノニハ、最モ責任ノアル强大ナル機
  關ガ出來ナケレバ相成ラヌト思ヒマス、其
  責任ノ所在ノナイ施設ニ於キマシテハ、本
  當ニ目的ヲ達スルコトガ出來マセヌ、今日
  ハ軍ニ於テ、特務機關ニ於テ支那ノ經濟、
  文化ノ仕事ヲサレテ居リマス、是ハ私ハ決
  シテ惡イト申スノデハアリマセヌ、戰爭
  匁々ノ際デゴザイマスカラ、軍ガ是等ノ臨時
  ノ經濟、文化ノ政治ノ仕事ヲナサルト云フ
  コトハ、是ハ巳ムヲ得ザルコトデゴザイマ
  ス、併ナガラ昔カラ馬上天下ヲ治メルコト
  ノ出來ナイコトハ歷史上ノ確カナル鐵則デ
  ゴザイマス、隨テ今日ノ組織ト云フモノハ
  全ク臨時ノ、一時的ノ施設ニ過ギマセヌノ
  デ、軈テハ本格的ノ對支經營ノ機關ガ出來
  上リマシテ、ソシテ之ニ依ッテ總テノ運營ヲ
  致サナケレバ相成ラヌト思ヒマス、然ルニ
  今日政府ガワザト此大眼目ヲ避ケマシテ、
  ソシテ複雜多岐ナル現狀ノ儘ノ上ニ兩會社
  ヲ監督スルダケノ事務局ヲ置イテ、此成績
  ヲ擧ゲントスル姑息ノ熊度ニ出デラレタル
  コトハ、是ハ本當ニ政府ガ此重大ナル時局
  ニ對スル其氣魄ト經綸トヲ缺クモノデアル
  ト私ハ之ヲ惜マザルヲ得ナイノデアリマス
  (拍手)隨テ中央ニ統一强化セル一大機關、
  卽チ是ハ或ハ省ニモ匹敵スベキ、必ズシモ
  省ト申スノデハゴザイマセヌガ、責任ノ所
  在ノ明カナル、ソシテ軍部モ外務モ總テノ
  方面ヲソレニ依ッテ綜合シタル一大責任ノ
  機關ヲ作リマシテ、之ニ依ッテ總テノ力ヲ合
  セテ對支經營ニ邁進シナケレバ相成ラヌノ
  デゴサイマス、元々此案ノ如キハ大體責任
  ノアル大機關ガ出來マシテ、其大機關ニ於
  テ〓究セラレタル結果、其後ニ此案ガ出來
  上ッテ、議會ニ提案セラレルノガ順序デアル
  ト思ヒマス、其機關ガ出來ナイ先ニ先ヅ其
  監督ヲ受ケル兩會社ガ出來ルト云フコト
  ハ、抑〓本末ヲ誤ッテ居ルモノト思ヒマス
  (拍手)
  私ガ斯ノ如キコトヲ申上ゲマスコトハ決
  シテ今ノ內閣ヲ徒ニ非議スル所以デハアリ
  マセヌ、今日國民ハ國ヲ擧ゲテ戰爭ニ從事
  ヲ致シテ居リマス、國民ノ子弟ハ今日戰地
  ノ第一線ニ立ッテ身命ヲ抛ッテ戰ッテ居リマ
  ス、ソレニ對シマシテモ此戰爭ノ大目的デ
  アリマスル日支ノ提携、東洋ノ和平ノ爲ニ
  今日政府ト致シマシテモ、吾々ト致シマシ
  テモ、今日ニ於テ根本的ノ機關ヲ作ッテ、其
  機關ニ依ッテ吾々ハ勇往邁進シナクテハナ
  リマセヌ、此大切ナコトヲ差措キマシテ、
  サウシテ斯ウ云フ姑息ノ態度ニ出デテ、サ
  ウシテ一時ヲ糊塗セントスルガ如キコトガ
  アリマシタナラバ、國家ノ憂是ヨリ大ナル
  ハナイト思ヒマス、私ハ近衞公ガ此事件ノ
  最初カラ責任ヲ取ラレテ、サウシテ今日ノ
  時局ヲ擔當セラレテ居ル以上ハ、是非トモ
  總理大臣ヲ致サレテ居ル間ニ、對支政治機
  構ノ根本的ノヤリ方ヲ樹立セラレルコト
  ガ、近衞公ノ責任デアリ、ソレガ君國ニ對
  スル御奉公ノ一ツデアルト思フノデアリマ
  ス、私ハ此意味ニ於キマシテ、政府、殊
  總理大臣ハ此樣ナ姑息ナ考ヲ御捨テナサッ
  テ、サウシテ此場合ニ於テ一大對支經營ノ
  大機關ヲ作ラレテ、之ニ依ッテ總テヲ統一シ
  テ、强イ力ヲ以テ對支政策ニ邁進セラレル
  御意思ガアルカナイカ、其一點ヲ承リタイ
  ト存ズルノデゴザイマス、此事ハ私ハ他ノ
  閣僚ヨリモ總理大臣カラノ御答ヲ得タイト
  存ジマスガ、他ノ閣僚ニ於テモ御考ガゴザ
  イマスナラバ私ハ玆ニソレヲ承リタイト存
  ジマス(拍手)
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=39

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• 040・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　只今松村君カラ內
  地ノ對支機構ニ付キマシテ御尋ガアリマシ
  タガ、此點ニ付キマシテハ總理大臣ヨリ御
  答ガアル筈デアリマス、私ハ現地ニ於ケル
  此問題ニ關係ヲ致シテ居リマスル事柄ヲ御
  答致シタイト存ジマス、現地ニ於キマシテ
  ハ、軍ハ目下作戰、治安ノ維持ニ從事ヲ致
  シテ居リマスル關係上、是ト北支ニ於ケル
  經濟開發トハ不可分ノ關係ニアルノデアリ
  マシテ、此際軍トシテハ差當リノ處置トシ
  テ是等ノ指導ニ任ジテ居ルノデアリマス、
  併ナガラ是ハ此現下ノ情勢ニ應ズル應急的
  ノ處置デアリマシテ、將來作戰及ビ治安維
  持ガ出來上リマシタナラバ、軍ハ之ヲ正當
  ナ機關ニ於テ實施セラルヽコトヲ寧ロ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、而シテ差當リノ考ト
  致シマシテハ、今後ニ於キマシテ此指導ニ
  適切ヲ缺カザル爲ニ、無論軍ガ全般的ニ指
  導ヲ致シテ居ルノデアリマスルケレドモ、
  尙ホ現地ニ於キマシテ、外務、大藏、農林、
  商工等ノ關係ノ諸種ノ者ヲ以テ成リマスル
  機關ヲ編成致シマシテ、經濟上ノ處置ニ遺
  憾ナイコトヲ期シタイト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=40

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• 041・松村謙三

  ○松村謙三君　只今陸軍大臣ノ御答辯ニハ
  私ハ非常ニ滿足ヲ致ス者デアリマス、私モ
  決シテ今日ノ戰時〓々ノ際ニ、軍ガ政治經濟
  ノ事ノ任ニ當ラルヽコトハ、之ヲ非難スル者
  デハゴザイマセヌ、是ハ當然ノコトデアリ
  マシテ、軍ノ是等ニ對スル其御心勞ニ對シ
  テハ、吾々ハ感謝スル者デアリマス、唯併
  ナガラ是ハ恆久的ノ施設デアッテハナリマ
  セヌノデ、此爲ニ速ニ中央ニ一大責任ノ機
  關ヲ設ケテ、サウシテソレニ軍ガ今日軍事
  ノ忙シイ裡ニヤッテ居リマス其仕事ヲ、中央
  ニ移サレタイト、斯ウ思フノデアリマスガ、
  之ニ付キマシテ陸軍大臣カラ同樣ノ趣ノ御
  答辯ガアリマシタコトヲ私ハ甚ダ喜ブ者デ
  アリマス、是デ私ノ質問ハ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=41

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• 042・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　高橋圓三郞君
  〔高橋圓三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=42

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• 043・高橋圓三郎

  ○高橋圓三郞君　私ハ只今議題トナリマシ
  タ北支那經濟開發株式會社、中支那振興株
  式會社ノ兩法案ニ付キマシテ、少シク政府ノ
  御所見ヲ質シテ置キタイト考ヘルノデアリ
  マス、只今松村君カラモ御質疑ガアリマシ
  タヤウニ、私ハ先ヅ本問題ノ性質、重要性
  ニ對スル政府ノ認識、信念ニ付テ御尋ヲ致
  シタイト考ヘルノデアリマス、御承知ノ如
  ク我國ハ今ヤ有史以來未曾有ノ大軍ヲ起シ、
  未曾有ノ大捷ヲ博シ、百万ノ皇軍將士ノ善
  戰ニ依ッテ、我國ノ歷史始ッテ以來ノ一大戰
  捷ヲ博シテ居ルノデアリマス、而シテ之ニ
  依ッテ吾々日本民族ハ實ニ開闢以來ノ一大
  民族的飛躍ヲ今爲サントシツヽアルノデア
  リマス、併シ此日本民族ノ大イナル飛躍ノ
  前途ニハ非常ナ困難ガ橫ハッテ居ル、蔣介石
  政權ノ長期抗戰論ニ對シテ、長期對戰ガ唱
  ヘラレテ居リマスルケレドモ、吾々ハ單ニ長
  期對戰ノミナラズ、實ニ現在ノ國際情勢ノ
  實際カラ見マスレバ、縱令現在ノ事變ガ一
  タビ終局ヲ見マシテモ、或ハ近キ將來ニ第
  二、第三ノ事變、戰ヲ覺悟シナケレバナラ
  ナイト思フノデアリマス、詰リ今我國ハ大
  キナ「チャンス」ニ面シテ居ルト同時ニ、大
  キナ「ピンチ」ノ上ニ立ッテ居ルノデアリマ
  ス、近代ノ戰爭ハ御承知ノ如ク我國國軍ノ
  久シイ間ノ方針デアル所謂速戰卽決主義ノ
  ミデハイカナクナッタ、速戰卽決主義ヲ以テ、
  精銳無比ナ陸海軍ヲ以テ、一擧ニ敵ノ主力
  ヲ殲滅スル此方針ハ、精銳無比ナ我ガ國軍
  ニ取ッテハ實ニ絕妙ノ作戰デアル、又我國ノ
  ヤウナ精銳ナ軍隊ヲ持ッテコソ初メテ執リ
  得ル方針デモアリマス、ケレドモ近代ノ戰
  爭ハ國民ト國民、民衆ト民衆ノ戰デアリマ
  ス、速戰卽決主義ノ爲ニ、或ハ一時的ニ重
  大ナル打擊ヲ加ヘルコトヲ得マシテモ、其
  相手國ガ一時ノ打擊ノ爲ニ直チニ和ヲ講ズ
  ルト云フヤウナコトハ、多クノ場合現在ノ
  國家ニ於テハ有リ得ナイ、舊式ノ獨裁國ナ
  ラバ兎モ角デアリマスルガ、現代デハ獨裁
  者ト雖モ尙且ツ其國ノ民衆ノ支持ノ外ニ立
  ツ獨裁者ハ有リ得ナイノデアリマス、隨テ
  民衆ノ感情ヲ外ニシテ、一時ノ敗戰ノ爲ニ
  將來ノ利害ヲ圖ッテ、直チニ和ヲ講ズルト云
  フヤウナコトハ、實際ニ於テハ獨裁者ト雖
  モ爲シ得ナイ、卽チ技術的、或ハ兵器ノ進
  步等ノ理由ニ依ル外ニ、近代ノ戰爭ガ必ズ
  長期戰トナリ、國力戰トナラザルヲ得ナイ
  所ノ是ガ一ツノ大イナル理由デアル、詰リ
  一タビ戰ガ起レバ、何レノ國家カ革命カ、
  內亂デモ起ラザル限リハ、其國力ノ續ク限
  リ戰爭ノ意思ヲ喪失シナイ限リハ、戰爭ハ
  容易ニ終局ヲ見ルコトハ出來ナイ、然ラバ
  斯ノ如キ一タビ起レバ必ズ其國力ヲ消耗シ
  ナケレバ已マナイヤウナ近代的ノ戰爭ヲ我
  國ノ現在ノ周圍ノ國際情勢カラ考ヘマスル
  時ニ、短イ期間ニ再ビ三度繼續シ得ルヤウ
  ナ國家ハ一體世界ノ何處ニ在リマセウカ、
  私ハ左樣ナ國家ハ今日ノ世界ノ何處ニモ無
  イ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、卽チ先程
  申シマスルヤウニ、若シ我國ガ近キ將來ニ
  第二、第三ノ戰ヲ或ハ覺悟シナケレバナラ
  ナイトシマスレバ、ドウシテ此戰ニ對スル
  備ヲスルカ、卽チ戰爭ヲシナガラ、其戰爭
  ニ要スル資材ノ供給ヲ繼續シ得ル、或ハ一
  切ノ戰爭其モノヲ賄ヒ得ル、更ニ戰爭ヲ續
  ケナガラ其次ノ戰爭ニ備へ得ル、斯樣ナコ
  トハ實ニ容易ナラザルコトデアリマス、卽
  チ歐洲大戰等ノ實際ヲ見マシテモ、一度戰ッ
  タ國家ハ二十年ヤ三十年ハ本當ノ戰爭ハ出
  來ナイ、是ガ今日ノ戰爭ノ現實デアル、私
  共率直ニ申シマスレバ、我國ニ於テモ十數
  年ノ間蓄積サレタ多クノ作戰資材ノ相當ノ
  部分ガ、少クトモ此度ノ戰ニ於テ消耗サレ
  テ居ルデアラウト云フコトヲ推測スルニ難
  クナイノデアリマス、隨テ尙且ツ我國周圍
  ノ狀況ガ斯樣ナ險惡ナ狀態ニアリトスレバ、
  結局我國ノヤウナ未曾有ノ大捷ヲ博シタ國
  ガ、其戰果ヲ利用スルコトニ依ッテ、第二第
  三ノ戰ニ備ヘルノ外ハナイト考ヘルノデア
  リマス、然ラバ今囘ノ大事變ニ際シテ、我
  國ガ此歷史的大捷ノ結果得タル戰果ハ何デ
  アルカ、政府ハ屢〓領土的野心ナキコトヲ聲
  明シ、又第二ノ滿洲國ヲ支那ニ於テ作ラン
  トスルモノデナイト云フヤウナコトヲ屢〓海
  外ニ放送シテ居ラレル、果シテ然ラバ結局
  抗日政權ヲ絕滅シタ後ノ支那ノ民衆トノ間
  ニ、完全ナル日支ノ國民的提携ヲ完成シテ、
  支那ノ經濟產業ノ開發ヲ圖リ、之ニ依ッテ我
  國ノ國力ノ補充、消耗サレタル戰力ノ補充
  ヲ爲スノ外ニ途ハナイト考ヘルノデアリマ
  ス、卽チ我國ガ百万ノ大軍ヲ動カシテ得タ
  唯一ノ戰果ハ、實ニ今日此處ニ問題ニナッテ
  居リマスル支那ノ經濟聞發ノ問題ヲ措イ
  テハ、外ニナイト謂ハナケレバナラナイ
  ノデアリマス、御承知ノヤウニ、我國ハ現
  在大キナ軍事豫算ノ負擔ヲ負ッテ居ル、軍事
  豫算ノ行使ニ當ッテ生ズル大キナ貿易ノ入
  超尻ヲ決濟スル爲ニモ、支那ヲ我國ノ產業
  ノ市場トシテ大イニ開發シナケレバナラヌ、
  ト同時ニ又現ニ亞米利加其他ノ諸外國カラ
  求メツヽアル軍用ノ資材ヲ、支那カラ獲得
  スルコトノ方途モ講ジナケレバナラヌ、私
  共ハ此問題ノ重要性ニ鑑ミマシテ、政府
  ガ嘗テ滿洲國ノ開發當時ニ於テ爲シタヤウ
  ナ誤リヲ繰返スコトナク、小兒病的ナ未熟
  ナ「イデオロギー」ヲ當篏メテ、「イデオロ
  ギー」ノ試驗ナドヲ今日ヤッテ居ル場合デハ
  ナイ、斯樣ニ私共ハ考ヘルノデアリマス、
  確乎不動ノ方針ヲ立テテ、國民ノ經濟力卽チ
  資力、技術、其他有ユル經濟力ヲ動員シテ、
  所謂國家總動員的ノ方途ヲ以テ此開發事業
  ニ當ラナケレバナラナイト考ヘルノデアリ
  マス、先刻松村君カラモ御話ガアリマシタ
  ガ、此重大ナル法案ヲ一體會期既ニ一週間
  ヲ剩サヾル今日ニ於テ、卒然ト政府ガ提出
  サレルト云フコト其事ガ、私ハ政府ノ本問
  題ニ對スル認識、信念、熱意ノ缺如ヲ物語
  ルモノデハナイカト思フノデアリマス担
  手)政府ハ本問題自體ニ對シテ、如何ナル
  信念ト決意ヲ持ッテ居ラレルノデアルカ、此
  點ヲ總理大臣ニ第一ニ御伺致シタイ
  第二ニハ私ハ滿洲ニ於テ從來滿鐵ニヤラ
  シメテ居ック各種ノ重工業等ヲ、最近卒然ト
  シテ日產一手ニ之ヲヤラシメルヤウニナッ
  ク、其事ノ當否ハ別ト致シマシテ、政府ガ
  本問題ニ對シテ十分ノ信念ト定見ヲ有セズ
  シテ、將來開發事業ノ進行ノ途中ニ於テ、
  其方針ガ二三ニナルヤウナコトガアリマシ
  タナラバ、多額ノ資本ヲ固定セシメル所ノ
  此開發事業ノ上ニ、重大ナル蹉跌ヲ來スコ
  トガアルト考ヘルノデアリマス、是等ノ點
  ニ付キマシテ政府ハ一貫不動ノ方針ヲ御持
  チニナッテ居ルノカドウカ、滿洲ニ於ケル前
  轍ノ愚ヲ重ネナイヤウナ、十分ノ政府ハ自
  信ガアルノカドウカ、其點ヲモ御伺致シタ
  イノデアリマス
  其次ニ私ハ統制事業ノ性質ニ關シマシテ
  一言御尋ヲ致シタイ、卽チ支那ニ於ケル交
  通通信、動力、燃料、鑛業ト云フヤウナ
  廣汎ナ事業ガ、獨占的ノ統制ニ委ネラレル
  結果ト致シマシテ、若シソレ等ノ事業ガ從
  來滿鐵ニ於ケルガ如ク、是マデノ我國ノ有
  ユル特殊會社ヲ一貫シテ居リマス所ノ官僚
  主義的經營ニ堕シテ、不活潑、不經濟ナル
  經營ガ行ハレマスナラバ、恐ラクハ支那ニ
  於ケル大キナ事業モ勿論デアリマスガ、中
  小企業ハ非常ナ打擊ヲ蒙ル、動力ヲ得ル爲
  三、或ハ交通、燃料、運賃等ニ付キマシ
  テモ、有ユル點ニ非常ナ不經濟ト不便トヲ
  蒙ラナケレバナラナイト考ヘルノデアリマ
  ス、同時ニ此事ハ直チニ北支ニ於ケル開發
  事業ノ進展ヲ妨ゲルコト甚ダ大ナルモノガ
  アルト考ヘルノデアリマス、現ニ滿洲ニ於
  キマシテハ滿鐵ニ關係ノナイ事業ハ、絕對
  ニ滿洲デハ成功シナイト云フコトガ從來屢〓
  言ハレテ居リマス、詰リ有ユル種類ノ事業
  ガ滿鐵ノ獨占ニナッテ居ル、サウシテソレ等
  ノモノハ價格ノ上ニ非常ナ不經濟デアルノ
  ミナラズ、ソレヲ供給ヲ受ケルコトニ於テ、
  旣ニ大キナ困難ト不便ト、不能率ガアルノ
  デアリマス、政府ハ一體本法ノ開發會社ノ
  下ニ出來ル無競爭獨占ノ統制會社ヲシテ、
  斯樣ナ官僚主義的經營ニ堕スルコトナク、
  本當ニ能率的ナ經濟的ナ經營ヲ爲サシムル
  自信ガアルノカドウカ、此點ニ付キマシテ、
  事業經營ノ自信ニ付テ政府ノ所信ヲ御伺致
  シタイノデアリマス
  ソレカラ時間ノ關係上省略ヲ致シマスル
  ガ、私ノ御尋致シタイ點ハ、差當リ支那ノ
  此開發會社ノ目的トナル地域ノ間ニハ、政
  府ノ關係カラ申シマシテ蒙疆自治政府ノ領
  土ガアル、ソレカラ臨時政權ノ領土ガアリ
  マス、是等ノ關係ハ一體ドウ云フ風ニ御考ニ
  ナッテ居ルノカ、詰リ察哈爾、綏遠、山西ノ
  北部ヲ含ム所ノ蒙疆自治政權ノ版圖、北支
  那政權ノ版圖ノ中ニハ法律的、政治的ニ色々
  ノ事情ノ相違ガアリマス、現ニ察哈爾省ノ龍
  煙鐵鑛ノ鑛石モ、山西省ノ大同ノ石炭モ、
  之ヲ北京、天津方面ニ搬出致シマスルニハ、
  出港稅ト云フ稅金ヲ拂ッテ持ッテ來テ居ル、
  斯樣ナ關係ハ一體ドウナルノデアリマスルカヽ
  是ハ此出港稅ノ問題ダケデハアリマセヌ、
  二ツノ領內ヲ貫ヌク所ノ鐵道等ニ付テモ、
  政治的ノ支配ヲ受ケル、政府ガ違ッテ居リマ
  スル爲ニ、種々ナ不便ト不統一ガアルト
  考ヘルノデアリマス、又我軍ノ政治指導ノ
  點カラ申シマシテモ、蒙疆政府ノ範圍內ハ
  内蒙派遣軍ノ特務部ニ於テ政治指導ヲヤッ
  テ居ラレル、北支ニ於キマシテハ北支派遣
  軍ノ特務部ニ於テ政治指導ヲヤッテ居ラレ
  ル、此間ニモ自ラ其立場上意見ヤ方針ノ差ガ
  生ジテ來ルト思フ、是等ノ現地ニ於ケル監
  督機關ノ統一ヲ御考ニナルヤウナ意思ハナ
  イカドウカ、將來是ガ統一ヲ圖ルヤウナコ
  トヲ御考ニナッテ居ルカドウカ
  更ニ先刻松村君カラ御尋ガアリマシタガ、
  私モソレト同樣ノ點ニ於テ、政府ノ所信
  ヲ伺ッテ置キタイト考ヘマス、詰リ最モ根本
  的ナ問題、現在北支、蒙疆、中支ヲ通ジマシ
  テ、日本ノ占領地域內ニ於テハ、軍政ヲ布イテ
  居ルノデハナイト政府ハ仰セラレルノデアリ
  マセウケレドモ、事實上一種ノ占領地行政ヲ
  行ッテ居ル、隨テ軍事行動ガ繼續サレテ居ル
  限リニ於キマシテハ、此新シク出來ル會社、
  又此開發會社ノ下ニ出來ル子會社ハ當然ソ
  レゾレノ土地ノ軍ノ指揮、監督ヲ受ケルノ
  外ハナイト思フ、軍事上ノ要求モアリマス
  ルカラシテ、當然サウナルノ外ハナイ、而
  シテ是ト新ニ設ケラルヽ內閣直屬ノ監督機
  關トノ關係ハ一體ドウナルノデアリマセウ
  カ、軍ノ占領地行政ハ大本營ノ統督ノ下ニ
  行ハレテ居ル筈デアリマス、詰リ內閣ト大
  本營、現地ノ司令官ト內地ノ監督機關、サ
  ウ云フモノトノ關係ハ一體ドウナルノカ、
  此點ヲ明瞭ニ御答ヲ願ヒタイノデアリマス、
  卽チ法令ノ上カラノ議論ハ別ト致シマシテ、
  今日ノ實際カラ見マスルナラバ、支那ノ現
  情ヲ見マスルナラバ、ナント致シマシテモ
  軍政上ノ必要等カラ致シテ、軍司令官ノ、
  或ハ特務部ノ指導ヲ受クルノ外ハナイ、サ
  ウシテ內閣總理大臣ノ直接ノ監督ト云フコ
  トハ、事實ニ於テハ有名無實トナルノ外ハ
  ナイト私ハ考ヘルノデアリマス、此點ハド
  ノヤウニ政府ハ御考ニナッテ居ルカ
  又本法案ノ第二十五條ニ於テ、政府ハ國防
  上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得ト云フヤウニ
  アリマスガ、其命令ヲ爲シタ場合ニ補償ヲス
  ルコトノ規定ヲ設ケラレテ居リマスルガ、此
  補償ハ豫メ帝國議會ノ協贊ヲ經タル範圍內
  ニ於テ云々ト云フコトデアリマス、是ハ將
  來ノ補償ノ爲ニ、今議會ニ豫算デモ御要求
  ニナル御積リデアリマスカドウカ、是モ承ツ
  テ置キタイト考ヘマス、日本法人トシテ設
  立サルヽ開發會社ガ、支那法人トシテ將
  來設立サルヽ支那ニ於ケル子會社ヲ一體ド
  ウシテ監督ヲスルノデアリマスカ、直接支
  那ノ法人デアル所ノ會社ヲ、日本ノ親會社
  ガ監督シ得ル何等ノ方法ガナイ、殊ニ本法
  ニモ何等ノ規定ガナイ、此點ハ一體ドウ云
  フ風ニ御考ニナッテ居ルノデアリマスルカ、
  或ハ私共不敏ニシテ知ラナイノデアリマス
  ナラバ、ドウカ十分ナ御說明ヲ願ヒタイ
  今一ツハ本法ノ親會社ノ子會社ニ對スル
  權利關係ハ一體ドウナルノデアリマセウカ、
  支那ノ今度出來ル子會社ハ、支那ノドウ云
  フ法律ニ依ッテ設立サレルノデアリマスカ、
  舊來ノ公司法ハ現在施行サレテ居ラナイト
  思ヒマス、又之ヲ活カスニシテモ、現在ノ
  新政權ノ憲法サヘモ出來テ居ナイ現狀デ、
  一體ドウ云フ根據ノ下ニ新シイ子會社ヲ御
  作リニナル御考デアルカ、斯樣ナ點モ承ッ
  テ置キタイト考へマス
  更ニ本法第三條ニ依ッテ、政府ノ爲サ
  ルヽ現物出資ハ此事變中ニ軍ニ於テ施設
  セラレマシタ諸施設ヲ除キマシテハ、大體
  ニ於テ事變ニ依ッテ沒收セラレタ所ノ所
  謂逆產ヲ以テ之ニ充テラレルモノト思フ
  ノデアリマスルガ、此逆產全部ヲ政府ノ
  出資ニサレルノデアルカ、或ハ其中ノ財
  產ノ一部ヲ支那側ノ財產トシテ認メル、新
  設サレル子會社ヘノ支那側ノ出資トシテ
  御認メニナルノカドウカ、若シサウ云フコ
  トデアリマスナラバ、ドウ云フ風ナ配分ニ
  爲サルノカ、一ツ〓〓ノ鐵道、鑛山等ノ財
  產ニ付テ、個々ノ沿革ナリ事情ナリニ付テ、
  其配分ヲ御決メニナルノデアルカ、或ハ
  率ニ日本側何割、支那側何割ト云フ風ニ御
  決メニナルノデアルカドウカ、サウ云フ點
  モ承ッテ置キタイト考へマス、又沒收セラレ
  マシタ鐵道、鑛山等ニハ外國ノ投資ガ可ナ
  リ入ッテ居ル筈デアリマス、鐵道ダケデモ二
  億數千万圓位入ッテ居ル、鑛山等ニモアリマ
  ス、一部分ハ內地ノ法人等ニ依ッテ肩替サ
  レタモノモアルト考ヘマスケレドモ、是等
  ノ外國ノ債權ト、本法ニ依ッテ出來ル、親會
  社ノ下ニ出來ル所ノ子會社トノ關係ハ將來
  ドウナルノデアリマセウカ、此點モ承ッテ置
  キタイト考ヘマス
  ソレカラ本問題ニ關スル責任機關ノコト
  ニ付キマシテハ、松村君カラ詳細ナル意見
  ヲ述ベテノ御質問ガアリマシタ、大體私ハ
  松村君ト同樣ナ意味ニ於キマシテ、此會社
  ノ周圍ニ現在作ラレヨウトシテ居ル對支經
  濟審議會、ソレカラ内閣ノ事務機關、又支
  那ニ於キマスル中日經濟審議會、ソレカラ
  先方ノ軍ノ特務機關、斯ウ云フ風ナ非常ニ
  雜多ナ機關ガ、此開發會社ノ周圍ニ雜然ト
  シテ出來、又ハ出來ントシテ居ルノデアリ
  マスルガ、一體斯ウ云フコトデ、此會社ハ
  ドノ機關ノ指揮監督ヲ受ケタラ宜イト云フ
  コトニナルノデアリマスカ、詳シイコトハ
  松村君カラ御話ガアリマシタカラ申上ゲマ
  セヌガ、政府ハ將來適當ノ機會ニ於キマシテ、
  是等ノ雜多ノ機關ヲ單純化シ、統一化シテ、
  サウシテ一元的ナ責任ノアル中央機關ヲ設
  置セラレ、對支省トデモト云フヤウナ一省
  位ノ機關ヲ設ケマシテ、サウシテ對支經濟
  政策ノ遂行ニ當ラシムルト云フヤウナ、御
  考ガアルノデアルカドウカ、此點ヲ伺ッテ置
  キタイト考ヘルノデアリマス
  ソレカラ會社ヲ北支ト中支ニ分ケテ二ツ
  ニシテオイデニナリマスルガ、此二ツノ會
  社ノ事業ノ中デ、鐵道トカ通信等ニ關シマ
  スルモノハ、南北ヲ統一シテヤラルヽコト
  ガ正當デハナイカ、斯樣ニ私共ハ考ヘルノ
  デアリマス、此點ニ關スル政府ノ御所見ヲ
  伺ヒタイ、今一ツハ外國資本ヲ直チニ今日
  ノ北支ニ迎ヘルト云フコトハ、困難デアラ
  ウト思ヒマスケレドモ、支那ノ土著資本ヲ
  動員サレルヤウナ計畫ガオアリニナルノデ
  アリマスカドウカ、北支ニハ大シタ土著資
  本ハアリマセヌケレドモ、中支ニ於キマシ
  テハ相當土著資本ノ有力ナモノガアルノデ
  アリマス、開發證劵ノ發行ト申シマシテモ、
  非常ナ多額ノ戰費公債ノ發行ヲ控ヘテ居ル
  我國ノ財界ノ狀況ニ於キマシテハ、二ツノ會
  社ヲ合セテ二十億圓カラニナル此債劵ノ發
  行ハ、到底覺束ナイト思ヒマス、デアリマス
  ルカラ、此開發債劵ヲ將來支那ニ於テ發行
  セラレルヤウナコトヲ御考ニナッテ居ラナ
  イカドウカ、是等ノ點ヲ併セテ御伺致シタ
  イノデアリマス、以上ノ諸點ヲ伺ヒマシ
  テ、尙ホ詳細ナ點ハ委員會ニ讓リタイト考
  ヘマス(拍手)
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

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• 044・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　御答致シマス、
  第一ノ責任感云々ノ御尋ニ付キマシテハ、
  先程松村サンノ御尋ニ對シタト同樣ニ、適
  當ノ機會ニ總理大臣カラ御答申上ゲタ方ガ
  宜シイト存ジマスルガ、唯此際簡單ニ、御
  所見ノ通リニ此仕事ヲヤリマスコトハ、我
  國ノ國防經濟ニ資スルノデモアリ、又我國
  ト彼ノ方トノ資本、我國ノ技術、或ハ官民
  總テ總動員的ニ之ヲ經營シタイト云フコト
  ハ、御所見ノ通リト御諒解願ヒタイノデア
  リマス、ソレカラ第二ノ御尋ハ、此會社ガ
  色々ナ仕事ヲ獨占シテシマフ結果、官僚的
  ノ經營ニナリハシナイカト云フ御心配ノヤ
  ウデアリマシタガ、殊ニ此北支ノ開發會社
  等ニ付キマシテハ、單純ニ此投資、融資ヲ
  致シマスノデゴザイマシテ、大體北支那等
  ニ於キマスル經濟開發ノ根本原則ト致シマシ
  テハ、自由ナル事業ノ活潑ナル活動ニ委セ
  タイト云フノガ原則デアリマス、唯國防上
  或ハ產業ノ基本的ノ關係カラ、日滿支ヲ通
  ジテ統一的ノ計畫ヲ立テナケレバナラヌモ
  ノダケニ付キマシテ、統合調整シタイ、ソ
  レダケノモノヲ寧ロ例外的ニ、此會社ノ事
  業ノ範圍トシテ居ルノデアリマシテ、而モ
  此會社ガ自ラ其事ヲヤルノデハナイノデア
  リマス、唯投資或ハ融資ヲ致スノデアリマ
  シテ、實際問題ト致シマシテハ子會社ハ物
  ニ依リマシテハ一ツノ業ヲ、一ツノ子會社
  デヤル場合モゴザイマセウシ、或ハ同ジ業
  デ二ツ以上ノ子會社ガ出來ル場合モゴザイ
  マセウシ、總テノ經營ハ官僚的デナシニ、
  ヤハリソレ〓〓ノ民間ノ緣ノアル人ガ、自
  由ニ手腕ヲ揮ヒ得ルヤウナ風ニシテ、此會
  社ヲ運用シテ參リタイ、斯樣ニ考ヘルノデ
  アリマス、第三ニ蒙疆ノ地域ノ御尋ガゴザ
  イマシタガ、是ハ北支ノ地域ニ入ルノデア
  リマス、唯御示ニアリマシタ通リニ、現地
  ノ色々ナ事情ガ違ヒマスカラ、之ニ對シマ
  シテハ適當ナ調整ノ方法ヲ考ヘナケレバナ
  ラヌト存ジテ居リマス、ソレカラ國防上ノ
  命令云々ニ付キマシテハ、差當ッテハ軍ノ司
  令官等ガ作戰上ノ必要ニ依ッテ、サウ云フ命
  令ヲスルコトガアルト豫想シテ居ルノデア
  リマス、其場合ニハ軍事費ト云フ豫算ノ範
  圍內ニ於キマシテ、損失ヲ補償スルコトニ
  ナラウト存ジマス、ソレカラ子會社ノ監督
  ニ付キマシテハ、是ハ子會社ハ支那法人デ
  アリマスカラ、日本ノ法律ハ及バヌノデア
  リマスケレドモ、投資融資ヲ致スノデアリ
  マスカラ、資本的ニ必要ニ應ジマシテ、或
  ハ過半數ヲ持ット云フコトニモナリマセウ
  シ、或ハ人的ニ、コチラノ方カラ有力ナ者
  ヲ子會社ニ入レルト云フコトモゴザイマセ
  ウシ、サウ云フ方法ニ依ッテ適當ニ子會社
  ノ監督ハ出來ルト考ヘテ居リマス、但シ準
  據法ハ、是ハ向フノ法律デゴザイマス、而
  シテ現在ノ事態ニ於キマシテハ、御承知ノ
  通リマダ其方面ニ付キマシテノ制度モ、十
  分出來テ居リマセヌケレドモ、是ハ將來ノ
  問題トシテ、ソレ〓〓北支ナリ、或ハ中支
  ナリニ於キマシテ、此會社法ノ準據法ト云
  フモノガ出來ルモノト、斯樣ニ承知致シテ
  居リマス、ソレカラ外國ノ關係ニ付キマシ
  テハ、無論外國會社ノ權益ハ尊重致シマス、
  而シテ若シ此會社デ統合調整スル必要上、
  子會社ノ方ノ事業ニ一〓ニシナケレバナラ
  ヌト云フ場合ニハ、ソレハ其方ト圓滿ナ話
  合ヒヲ付ケテヤル積リデアリマス、ソレカ
  ラ現物出資ノ御話ガゴザイマシタガ、アレ
  ハ法律ノ現物出資ハ、日本政府ダケノ出資
  デゴザイマシテ、現在考ヘテ居リマスルノ
  ハ、軍ガ作戰ノ必要上施設致シマシタモノ
  ヲ、主トシテ考ヘテ居ルノデアリマス
  ソレカラ支那側ノ資本ヲ利用シタイト云
  フコトハ、是ハ御話ノ通リ大イニ利用シタ
  イト存ジテ居リマス、ソレカラ此二ツノ會
  社ヲ中支ト北支ニ別々ニスルヨリモ、一〓
  ニシタ方ガ宜クハナイカト云フ御話ガゴザ
  イマシタガ、是ハ地理上ノ關係モゴザイマ
  スシ、其他色々事情モ違ヒマスノデ、別々
  ニシタ方ガ宜イ、斯ウ考ヘテ居リマス、
  何レ詳細ナ點ニ付キマシテハ委員會ニ於テ
  御答致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=44

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• 045・高橋圓三郎

  ○高橋圓三郞君　只今ノ御答ノ中ニハ私ガ
  御尋シク趣旨ヲ履違へテ居ル點モアリマス、
  又答辯ノ不滿ナ點モアリマスガ、ソレ等ハ
  委員會ニ讓ルコトニ致シマシテ、私ノ質問
  ハ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=45

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• 046・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　田村秀吉君
  〔田村秀吉君登壇〕

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• 047・田村秀吉

  ○田村秀吉君　私ハ只今上程セラレテ居リ
  マスル兩法案ニ關シマシテ、總理大臣、外
  務大臣、陸軍大臣、大藏大臣竝ニ商工大臣
  ノ方々ニ對シテ、聊カ御尋申上ゲタイト思
  フノデアリマス、私ノ質問ノ第一ハ經濟開
  發ト外交工作ニ付テデアリマス、第二ハ對
  支經濟開發ノ根本方針ニ付テ、第三ハ幣制
  ト爲替管理ニ付テ、第四ハ治安維持ニ付テ、
  第五ハ日支親善策トシテノ文化政策ニ付テ、
  第六ハ對支中央機關ノ設置ニ付テデアリマ
  スガ、以下極メテ簡單ニ其要旨ヲ申述ベタ
  イト思フノデアリマス
  第一、經濟開發ト外交工作ニ付キマシテ、
  北支竝ニ中支ニ於テ我國ガ經濟開發ノ指導
  勢力トシテ、專ラ之ニ當ルハ勿論デアリマ
  スルガ、我國指導勢力ノ下ニ、廣ク門戶ヲ
  世界ニ開キマシテ、外資ヲ誘致スルト共ニ、
  又支那ノ資本ヲ十分ニ活用スル必要アリト
  思フノデアリマス、隨テ經濟開發ニ當リマ
  シテハ、日支事變ニ依ッテ生ジタ國際關係ヲ
  好轉セシムルト云フ外交工作ハ、極メテ重。
  要ナリト言ハナケレバナラヌノデアリマス、
  長期應戰ハ固ヨリ吾々國民ノ深ク覺悟スル
  所デアリマスルガ、吾々ハ唯漫然ト長期應
  戰ノ狀態ニ滿足スルモノデハナイノデアリ
  マス、抑〓長期應戰ノ目標ハ、窮極ニ於テ東
  亞ノ明朗ナル平和狀態ヲ出現スルコトニア
  ラネバナラヌノデアリマス、其爲ニ國民ハ
  深ク政府ニ期待シ、特ニ政府ノ外交工作ニ
  重大ナル關心ヲ有シテ居ルノデアリマス、
  我國ガ蔣政權ヲ相手トセズト云フ方針ヲ定
  メマシテ、之ヲ中外ニ聲明シテ以來、旣ニ
  約三箇月ニ垂ントシテ居リマスルガ、未ダ
  其間政府ノ外交工作上特ニ認ムベキモノア
  ルコトヲ聞カナイノデアリマス、一體政府
  ハ蔣政權ヲ如何ニ打倒セントスルカ、又國
  際關係ヲ如何ニ好轉セントスルカニ付テ、
  如何ナル方法ト努力ヲ拂ッテ居ラレルノデ
  アルカ、私ハ蔣政權ハ之ヲ飽マデ打倒シナ
  ケレバナラヌト思フ、若シ一擧ニ之ヲ擊滅
  スルノ手段ヲ執ラナイト致シマスレバ、或
  ハ財政的ニ之ヲ自滅セシムルノ途モアリマ
  セウ、或ハ又第三國トノ關係ヲ絕タシメテ、
  孤立ニ陷ルヽノ途モアルト思フノデアリマ
  ス、例ヘバ現在將政權ノ背後勢力ヲ成シテ
  居ル所ノ浙江財閥、之ニ手ヲ入レルコトニ
  依つ、蔣政權ノ經濟力ノ背景ヲ絕ッテ、蔣
  政權ノ自滅ヲ圖ラシムルト云フコトモ、-
  ツノ途デアリマセウ、或ハ又現在第三國中、
  英國ハ香港ヨリ、佛蘭西ハ「ハノイ」ヲ中心
  トシテ印度支那方面ヨリ、「ソ」聯ハ新疆ヨ
  リ、日本ト交戰狀態ニアル所ノ支那ニ對シ
  テ、ソレ〓〓武器ヲ盛ニ供給致シテ居リマ
  ス、我國ト交戰狀態ニアル支那蔣政權ニ對
  シテ、武器ヲ供給スル是等ノ第三國ニ對シ
  テ、我國ハ適當ナル報復手段ヲ執ルノ方法
  ガアラウト思フノデアリマス、或ハ其他ノ
  方法ニ依ッテ武器供給ノ途ヲ塞ギ、以テ蔣政
  權ヲ孤立ニ陷ラシメルト云フコトガ、ーシン
  手段デハナイカト思フノデアリマス、最近
  英國ハ蔣政權ヲ見離サントシテ居ルヤウナ
  熊度ガ、仄ニ見エントモ致シテ居リマス、
  我國ガ蔣政權ヲ對手トセズト云フ態度方針
  ヲ決メマシテ以來、對英關係、對米關係、
  其他第三國、或ハ蔣政權ヲ打倒スルト云フ
  方法ニ向ッテ、政府ハ如何ナル工作ヲシテ居
  ラレルカヲ、外務大臣ニ御答辯ヲ願ヒタイ
  ト思フノデアリマス
  第二ハ對支經濟開發ノ根本方針ノ問題デ
  アリマスガ、政府ハ今囘對支國策會社ヲ設
  立致シマシテ、鐵道、港灣、通信、電氣等
  ノ大事業ニ投資、經營セントスルコトノ方
  針ヲ定メタノデアリマスルガ、是等ノ固定
  的ナ、而モ大資本ヲ要シ、公共性ヲ有シテ
  居リマスル大事業ニ對シテハ、之ヲ國策的
  ニ經濟統制スルト云フコトハ當然デアリ
  マセウケレドモ、其他ノ一般經濟ノ開發
  ニ當リマシテハ、締制經濟ヨリモ自由經濟
  ヲ根本トセネバナラヌト思フノデアリマス、
  卽チ農業、商業、或ハ輕工業、纖維工業等
  ノ流通經濟的產業ニ對シマシテハ、特ニ民
  間資本ノ進出ト、民間企業ノ自由活潑ナル
  活動ヲ根本トシナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス、凡ソ統制經濟ニハ自ラ限度ガア
  リマシテ、民間ノ企業心ヲ萎縮セシムルヤ
  ウナコトガアッテハナラナイノデアリマス、
  況ヤ支那ノ經濟ハ是カラ開發シナケレバナ
  ラヌ、未ダ開發ノ域ニ到達シテ居ナイ支那
  ニ對シテ、國策的ニ唯統制經濟ノミ持ッテ行
  クト云フコトデハ、十分經濟開發ノ目的ヲ
  達成スルコトガ、到底困難デアルト思フノ
  デアリマス、ソコデ一般民間企業心ヲ旺盛
  ナラシメルヤウナ自由經濟ノ方法ヲ執ラナ
  ケレバナラヌト思フ、近時特ニ我國ニ於キ
  マシテ滿洲事變以來、或ハ一部ノ若イ軍人
  トカ官僚ノ中ニハ、動モスレバ時代思潮ニ
  カブレテ、人類活動ノ根本實情ト云フコト
  ヲ無視シテ、或ハ國家社會主義的ノ「イデ
  オロギー」ニ囚ハレタリ、滿洲經濟開發ヲ
  爲スニ當ッテハ、資本家ガ來テハイケナイ、
  財閥ガ入ッテ來テハイケナイ、或ハ金儲ケハ
  イケナイ、斯ウ云フ風ナ囚ハレタ「イデオ
  ロギー」ニ依ッテ、經濟ヲ開發シヨウトス
  ル、サウ云フ風ナコトヲヤリマスト、斯ウ
  云フ思想ニ對シテ、世間民間デハ右翼共產
  主義ダト云フノデ、之ニ恐レヲ抱イテ民間
  資本ノ進出モ出來ナケレバ、又民間企業ノ
  十分ナル發動モ出來ナイ、滿洲ガ獨立致シ
  マシテ以來既ニ七年ニナル、然ルニ我國
  ヨリノ民間資本ハ僅ニ二億乃至三億ヲ出デ
  ナイヤウナ狀態デアリマスルガ爲ニ、滿洲
  ノ經濟開發モ極メテ遲々トシテ其目的ヲ達
  成シテ居ナイ、是ハ斯ノ如キ誤レル所ノ一
  ツノ思想ニ囚ハレタヤリ方ノ結果ニ外ナラ
  ヌト思フノデアリマス、今ヤ支那經濟ノ開
  發ニ當リマシテ、皇軍百万、苦心慘澹シテ
  切リ開イタ所ノ支那ノ方面ニ、我國ガ是カ
  ラ經濟開發ヲ爲スト云フ場合ニ當ッテハ、過
  去ニ於テ滿洲ニ起ッタヤウナ弊害ヲ再ビ繰
  返シテハナラナイノデアリマス、經濟開發
  ヲ爲スニ當リマシテ、私共ハ飽マデモ民間
  資本ノ自由進出ト云フコトヲ、根幹ニシナケ
  レバナラヌ、サウシテ民間企業ノ旺盛ナル
  活動ヲ俟タナケレバナラヌノデアリマス、
  而シテ此民間資本、民間企業ノ旺盛ナル活
  動ト云フコトハ、一方ニ於テ外資ヲ誘致スル
  所ノ重大ナル「ポイント」ヲ成スモノデアル
  トモ思フノデアリマス、此點ハ今後支那ノ經
  濟開發ニ當ッテ極メテ重要ナル根本問題
  デアルト思ヒマスルガ故ニ、今國策會社ヲ
  作ッテ支那ノ經濟開發ニ乘出サントスル場
  合ニ當ッテ、帝國政府ハ如何ナル根本方針ヲ
  提ゲテ臨マントスルカ、此點ニ付テノ根
  本方針ヲ、特ニ總理大臣カラ承リタイノデ
  アリマスルガ、總理大臣ハ出席シテ居ラレ
  マセヌ、適當ノ機會ニ本議場ニ於テ此根本
  方針ニ付テ、總理大臣ヨリ適當ナル御答辯
  ヲ願ヒタイト思フノデアリマスルガ、今ノ
  問題ニ關聯シテ此對支經濟開發ノ根本方針
  ニ對スル陸軍大臣竝ニ商工大臣ノ御所見ヲ
  承リタイト思フノデアリマス
  第三ハ幣制ノ爲替管理ノ問題デアリマス、
  現在北支ニハ漸ク中國聯合準備銀行ナルモ
  ノガ店開キヲ致シマシテ、三億ノ通貨ヲ發
  行シヨウトシテ居ル、我國ガ此度北支、中
  支ニ經濟開發ヲヤラウトシテ國策會社ヲ立
  テルト云フ際ニ、北支ニハ漸ク店開キヲシ
  タ金融機關ハアルガ、中支ニハ未ダ金融機
  關ノ設置ヲ見ルニ至ッテ居ナイ、一體中支ノ
  金融機關ヲ如何ニセントスルノデアルカ、
  中國聯合準備銀行ガ北支ニ設ケラレタト同
  ジヤウニ、中支ニ獨立ノ金融機關ヲ設置セ
  ントスルノデアリマスルカ、若シ中支ニ金
  融機關ヲ新ニ設ケテ、發劵銀行ヲ拵ヘルト
  致シマスレバ、其發劵銀行ノ通貨ト日本ノ
  圓トノ關係ハドウスルカ、若シ新ナル發劵
  銀行ヲ設ケント致シマスレバ、國策會社ガ
  活動スルニ當ッテ、日本ガ經濟開發ヲ爲スニ
  當ッテ、現在流通シテ居ル所ノ舊法幣トノ關
  係ヲ如何ニスルカ、此點ヲ先ヅ伺ヒタイノ
  デアリマス
  更ニ爲替管理ノ問題ニ付テ承リタイノデ
  アリマスルガ、現在滿洲ニハ嚴重ナル爲替
  管理ガ行ハレテ、我國ノ爲替管理ト一體ヲ
  成シテ居ル、ソコデ滿洲ニ於ケル經濟活動
  ハ、我國ノ內地ノ延長トシテ開發シ得ルコ
  トニナッテ居ルノデアリマスルガ、北支ニ於
  ケル中國聯合準備銀行、是ハ日本ノ圓ト「リ
  ンク」スルト云フコトニナッテ居リマス、ソ
  コデ支那經濟開發ヲ十分ニ爲スニ當リマシ
  テハ、ドウシテモ日滿支ヲ通ズル所ノ、圓
  「ブロック」ヲ形成スル必要ガアルト思フ、日
  滿支ノ經濟「ブロック」、圓「ブロック」ヲ形成ス
  ルニ當リマシテハ、北支ノ爲替管理ヲ嚴重
  ニ行ハナケレバ、日本ノ圓トノ關係ニ於テ
  旨ク行カナイト思フ、ソコデ果シテ爲替管
  理ガ北支ニ於テ出來ルヤ否ヤ、滿洲ノ爲替
  管理ハ、御承知ノ如ク滿洲ノ長城線ニ依ッ
  テ、爲替管理ガ旨ク行ッテ居リマス、併ナガ
  ラ北支ニ於キマシテハ相當滿洲トハ異ル
  所ノ國際關係ガアル、況ヤ中支ニ於キマシ
  テハ國際關係ガ極メテ複雜デアリマスルガ
  故ニ之ニ對シテ若シ新發劵銀行ヲ拵ヘル
  場合ニ、サウシテソレヲ圓ト「リンク」セシ
  メル場合ニ、爲替管理ヲ行ヒ得ル見込アリ
  ヤ否ヤ、支那ノ經濟開發ヲヤルニ當リマシ
  テ、日滿支ノ經濟「ブロック」ヲ形成シ、圓ノ
  「ブロック」ヲ形成シテ、十分ニ經濟ノ開發ヲ
  爲スコトガ出來マスナラバ、經濟上ノ三原
  則デアル所ノ所謂日滿支「ブロック」內ニ於
  テ、物資ノ適當ナル需給計畫ヲ立テ、生產
  力ヲ擴充シテ、進ンデ國際貸借ノ改善ヲ圖
  ルヤウニ迄到達シマスナラバ、支那ノ經濟
  開發ハ其目的ヲ十分ニ達シタト言フコトガ
  出來ルノデアリマス、此處マデ行カナケレ
  バナラヌ、是ニハドウシテモ圓「ブロック」
  ノ形成ト云フコト、而シテ其前提トシテ、支
  那ニ於ケル鞏固ナル爲替管理ヲ實行スルト
  云フコトガ、必要デアルト思フノデアリマス
  ガ、此點ニ對スル政府ノ方針ト、之ニ對ス
  ル御所信ヲ承リタイノデアリマス、此點ハ
  特ニ大藏大臣カラ御答ヲ願ヒタイノデアリ
  マス
  第四ハ治安維時ノ問題デアリマスガ、經
  濟開發ト經濟活動ノ前提條件トシテ、治安
  維持ノ必要ナルコトハ申ス迄モナイ、匪賊
  ガ跋扈跳梁スルヤウナ所デハ、到底經濟開
  發ハ之ヲ期待スル譯ニハ行カヌ、現在蒙古
  ニハ蒙疆ノ政權ガアリ、北支ニハ中華民國
  臨時政府ガアリマスガ、之ニ果シテ治安維
  持ニ付テ、ドノ程度ノ能力ガアルカ、無論
  大シタ能力ハナイト思フ、能力ナシトスル
  ナラバ、此治安維持ノ責任ハ、我國ガ之ヲ負ッ
  テ行カナケレバナラヌ、果シテ我國ハ支那
  ニ於ケル所ノ治安維持ニ對シテ、如何ナル
  方針ト、如何ナル計畫ヲ持ッテ居ラレルカ
  ヲ、特ニ陸軍大臣カラ御答辯ヲ願ヒタイト
  思フノデアリマス
  第五ハ日支親善策トシテノ文化政策ニ付
  テデアリマスガ、今日我國ノ方針ハ、支那
  ニ對シマシテハ、親日防共ト云フコトヲ以
  テ日支關係ノ根幹ト爲シテ居リマス、經濟
  開發ニ依ッテ利害ヲ共通ニスルト云フコト
  ハ、日支親善ノ一ツノ大キナ方法デアリマ
  ス、併ナガラ親善ニハ經濟上ノ利害ノミデ
  ハイケナイ、其奧ニ寧ロ其前提トシテ、相
  互國民ノ精神的理解ト云フコトガ大切デア
  ル、更ニ又感情的融和ト云フコトヲ圖ラナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマス、過去ニ
  於テ明治以來、日支親善ノ聲ガ數十年高ク
  唱ヘラレテ居リマスガ、一タビ蔣政權ガ排
  日〓育ヲ施シ、或ハ抗日思想ノ培養ヲ行ッタ
  結果ハ、遂ニ今日ノ如キ日支事變ヲ捲起ス
  ニ至ッタノデアリマス、ソコデドウシテモ日
  支親善ノ根本ハ、精神的理解ト感情的融和
  ト云フコトヲ先決條件トシケレバナラヌ、
  之ヲ根本トシテ經濟開發ニ向ッテ、日支親善
  ヲ强化シテ行クト云フコトニナレバ、經濟
  開發亦自ラ其目的ヲ達成シ得ルト思フノデ
  アリマス、古人ノ言葉ニ「儒ヲ以テ國ヲ治メ
  佛ヲ以テ心ヲ治ムト」云フコトヲ申シテ居リ
  マスルガ、治國治世ノ根本ハ人心ヲ收攬ス
  ル、人心ヲ得ルト云フコトカラ、始メナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、此意味ニ
  於テ今次事變ヲ契機ト致シマシテ、私ハ支
  那ニ劃期的大仕掛ノ文化政策ヲ實行スルノ
  必要アリト認ムルノデアリマス(拍手)或ハ
  支那ニ對シテ日本語ヲ理解セシメル爲ニ、
  支那ノ各地ニ日本語學校ヲ設立シテ、言語
  ヲ先ヅ通ゼシメルト云フコトハ、日支間ノ
  精神的理解ニ資スル一大政策デアル、是モ
  一ツデアリマセウ、或ハ又日本ノ病院ヲ支
  那ノ到ル處ニ建設シテ、支那ノ窮民ヲ救濟
  シ、治療衞生ノ途ヲ講ジテ、支那滿洲ヲシ
  テ心カラ日本ニ賴ラシムルト云フコトモ、
  一ツノ方法デアラウト思フ、或ハ又映畫政
  策ニ依ッテ日本ト支那トノ國民ノ間ニ、相互
  ノ民情ヲ理解セシメルト云フコトモ、ッ
  ノ方法デアラウト思フノデアリマス、是等
  ノコトヲ擧ゲテ行ケバ涯シガアリマセヌガ、
  兎モ角モ此支那事變ヲ契機トシテ、我國ノ
  對支文化事業、文化政策ハ劃期的ノ一大規
  模ノ下ニ、之ヲ行ハナケレバナラヌト思ヒ
  マスルガ、果シテ政府ニ其用意アルカ、果
  シテ其計畫アリヤヲ外務大臣カラ、特ニ御
  答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
  最後ニ對支中央機關ノ設置ニ付テデアリ
  マスガ、對支經濟事務局ガ最近新設セラレ
  ルト云フコトニナッテ居ル、滿洲ニハ曩ニ對
  滿事務局ト云フモノガ設置セラレテ居リマ
  ス、此中央機關ノ設置ノ問題ニ付キマシテ
  ハ、先刻同僚松村君カラモ御尋ガアリマシ
  タ、私ハ極メテ要點ダケヲ申述ベテ、此中
  央機關ヲ、大キナモノヲ作ラナケレバナラ
  ヌト云フコトヲ申述べマシテ、政府ノ御所
  信ヲ承リタイト思フ、對支經濟事務局、對
  滿事務局、サウ云フ風ナ姑息ナ末梢的ナ制
  度ノ新設ニ依ッテ、サウ云フ制度ノ力ニ依ッ
  テ、果シテ我國ノ大陸經營ノ大目的ガ達成
  シ得ルヤ否ヤヲ、吾々ハ國民ト共ニ疑ハザ
  ルヲ得ナイノデアリマス、抑〓支那事變ハ啻
  ニ我國ニ取ッテ未曾有ノ事變タルノミナラ
  ズ、之ヲ世界史的ニ觀察致シマシテモ、我國
  ガ德川鎖國政策デ居眠ヲシテ居ル際ニ、十八
  世紀以來東漸シテ來タ所ノ西洋諸國ノ勢力
  ニ、東洋民族ガ壓倒セラレタ、此壓倒セラ
  レテ居ッタ東洋民族ニ、遲レ馳セナガラ、立
  遲レナガラ、東洋ノ盟主デアル我國ガ漸ク
  其指導勢力トシテ勃興シ、擡頭シテ來タ、
  玆ニ勃興シ擡頭シテ來タ所ノ我國ガ、東洋
  民族ヲ率ヰテ今ヤ東洋ニ新ナル天地、新ナ
  ル文明、新ナル經濟ノ建設ヲ爲サントシテ
  動イテ居ル、其一ツノ動キガ今囘ノ支那事
  變ニ現レテ居ルト私ハ思フノデアリマス、
  ソコデ此支那事變ハ東洋新文明建設ノ黎明
  期ヲ迎フル絕好ノ機會ナリト信ズルノデアリ
  マス、斯ノ如キ重大ナル機運ニ際會シタ我
  國ハ、東洋民族ノ盟主トシテ、將又其指導
  勢力トシテ、東亞ノ安定ト繁榮、竝ニ其平
  和トヲ開拓シナケレバナラヌト思フノデア
  リマス、玆ニ我國大陸經營ノ一大使命ト、
  東亞經綸ノ一大目標ガアルノデアリマス、
  斯ル國家ノ一大使命ト大業ヲ完成スルニハ、
  單ニ經濟開發ナドト云フ一部局的ノ事務ニ
  囚ハレルベキデハナイノデアリマス、須ク
  政治經濟文化ノ全般ヲ綜合開發シ得ルヤウ
  ナ、强力ナ一大中央機關ノ設置ヲ必要ナリ
  ト認ムルノデアリマス(拍手)凡ソ一ツノ制
  度ヲ設ケテ、之ヲ活用セントスルニハ、制
  度ニ對スル國民的理解ニ基ク、國民的推進
  力ヲ背景ニシナケレバナラヌ、制度ノ存在
  ト運用ト云フコトガ、直チニ國民的動向ヲ
  決定スルモノデナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス、況ヤ東亞經綸ノ大業ヲ擔任セン
  トスル制度ノ建設ニ當ッテ、斯ノ如キ觀念ハ
  政府トシテ先ヅ第一ニ考ヘナケレバナラヌ
  コトデアリマス、然ルニ對滿事務局、對支
  經濟事務局、ソンナコト位デハ、國民ハ何
  ヲシテ居ルカ分ラナイ、國民ハ此事務局ノ
  設置ニ依ッテ、ドウ動イテ宜イカ分ラナイ、
  仍テ國民ガ十分ニ理解スルガ如キ、大キナ
  國民的背景、國民的輿論、國民的動向ヲ決
  定スルヤウナ制度ヲ設ケナケレバナラヌ、
  今日片々タル事務的制度ヲ設クルガ如キハ、
  政府ノ不定見驚入ッタルモノデアルト申サ
  ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)滿蒙支
  ヲ統合經營スル爲ニハ、須ク中央ニ一大機
  關トシテ、此際一省、例ヘバ東亞省デモ宜
  シイ、サウ云フ一省ヲ設ケテ、以テ國民的
  支持ノ下ニ、東亞經綸ノ大目的達成ニ向ハ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、此點
  ニ付キマシテハ、私ハ特ニ總理大臣ガ此點
  ニ深ク鑑ミラレテ、從來ノ情實等ニ囚ハレ
  ズ、一大勇猛心ヲ發揮シテ、滿蒙支經營ノ
  中央機關トシテ、速ニ獨立ノ省、或ハ東亞
  省デモ宜シイガ、サウ云フ一大中央機關ノ
  設置ニ邁進セラレンコトヲ希望致シタイノ
  デアリマス、希望ト同時ニ之ニ對スル政府
  ノ御方針ト、御所信トヲ承リタイノデアリ
  マス
  以上六項目ニ分チマシテ、私ノ質問ノ大
  要ヲ申述ベタノデアリマスガ、何卒ソレ〓〓
  關係各大臣カラ、簡明適切ナル御答辯アラ
  ンコトヲ切望シテ已マナイ次第デアリマス
  (拍手)
  〔國務大臣廣田弘毅君登壇〕

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• 048・廣田弘毅

  ○國務大臣(廣田弘毅君)　只今田村君ヨリ
  經濟開發ト外交政策ノ關係ニ付テ、御質疑
  ヲ受ケタノデアリマスガ、今囘ノ事變ノ結
  果ト致シマシテ、日支兩國ノ間ニ經濟的關
  係ニ於テ、重大ナル變更ヲ來スコトハ當然
  デアルト思フノデアリマス、隨テ我ガ經濟
  的地位ニ鑑ミ、其長短相補フ意味ニ於キマ
  シテ、支那ニ於テ各種ノ經濟的活動ヲ必要
  トシテ參ルノデアリマス、斯ル場合ニ今日
  ノ我ガ經濟力ノ關係等ニ鑑ミマシテ、外資
  或ハ支那土著ノ資本ヲ利用シテ參ルコトハ
  當然デアリマシテ、其關係カラ我ガ對支外
  交方針ト諸外國トノ協調ヲ保チ得ル途モ自
  ラ出テ參ルコトハ、只今田村君ノ御述ニナッ
  タ通リデアリマス、隨テソレ等ノ點ニ付キ
  マシテハ、十分ノ考慮ヲ拂ヒマシテ、日々
  ソレ等ノ問題ノ解決ニ付テノ努力ヲ致シテ
  居ルノデアリマス
  財政的ニ申シマシテハ、只今申述ベタ通リ
  デアリマスガ、之ヲ第三國トノ關係ニ付テ見
  マスト、最近ニ於キマシテハ、支那ノ實情ガ
  次第ニ歐米列國ノ間ニモ正シク解セラレル
  ヤウナ事態ニ相成ッテ居リマシテ、歐米諸國
  ノ支那ニ對スル武器ノ供給其他ニモ、相當遲
  延ヲ來シテ居ル點モ認メラレルノデアリマス、
  要スルニ我國ト致シマシテハ、一日モ速ニ
  支那全般ノ反省ヲ促シマシテ、遂ニ蔣政權
  ヲシテ孤立起ツ能ハザラシムルニ至ルコト
  ガ、最モ必要デアルト思フノデアリマス、
  其爲ノ色々ノ工作ニ付テ、此際一々申上ゲ
  ルコトハ如何カト思ヒマスガ、支那ノ法幣ノ
  問題ノ如キハ、相當支那側ノ立場ヲシテ困
  難ナラシメツヽアルト思フノデアリマス
  尙ホ經濟活動ト相俟チマシテ、文化政策
  ノ必要デアルコトハ仰セノ通リデアリマス、
  此點ニ付キマシテハ、政府トシテモ十分重
  キヲ置イテ居ルノデアリマシテ、御承知ノ
  通リ出先ニ於テハ、先ヅ軍部ニ於テ、軍事
  行動ト相俟ッテ、恩威相竝ンデ進ムト云フ政
  策ヲ執ルコトニ相成ッテ居ルノデアリマシ
  テ、軍部ニ關スル限リニ於テモ、相當程度
  ノ文化施設ガ行ハレルモノト思フノデアリ
  やく、併ナガラ是ハ軍ト致シマシテモ、單
  ニ軍ニ依ル活動ト云フダケデハナク、般
  日本人ノ協力ヲ求メテ行キタイト云フ考モ
  アルノデアリマス、尙ホ斯ル文化事業ハ、
  之ヲ政府ノ豫算ニ依ル特別ノ活動トシテ參
  リマスヨリモ、實ハ民間ノ活動トシテ、支
  那ノ民間ト相接觸スル組織ヲ以テ進ムコト
  ガ、一番穩當デアルト思フノデアリマス、
  是マデ英米等ガ支那ニ於テ有ユル文化施設
  ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、是等ハ決シ
  テ政府ノ官廳或ハ豫算ニ依ル政策デハナク
  シテ、宗〓、〓育其他各般ノ方面ノ人々ニ
  依リマシテ、文化政策ノ實行ヲ致シテ參ッテ
  居ルノデアリマス、此文化政策ニ付キマシ
  テハ、外務省ト致シマシテモ、是マデ或種
  ノ仕事ハ致シテ參ッテ居ルノデアリマスガ、
  是デハ到底滿足シ得ナイコトハ、諸君御承
  知ノ通リデアリマス、隨テ玆ニ民間ノ各方
  面ノ人ト連絡ヲ取リマシテ、一ツノ大ナル
  國民的ノ文化組織ヲ立テテ、支那民衆トノ
  接觸ノ機關ニ致シタイト云フコトヲ考ヘテ
  居ルノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=48

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• 049・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　私ニ對スル御尋
  ノ部分ニ對シマシテ御答申上ゲマス、支那
  ニ對スル經濟開發ノ根本方針ト致シマシテ
  ハ、國防上竝ニ日滿統制經濟ノ見地カラ、
  統制ヲ必要トスルヤウナ事業、例ヘバ此兩
  法案ニ列擧シテ居リマスヤウナモノハ統
  制ヲシテ行カナケレバナラヌト存ジマスケ
  レドモ、一般企業ニ對シマシテハ、全ク民
  間ノ自由活潑ナル活動ニ委セタイノデアリ
  マシテ、私モ御所見ニ全然同感デアリマス
  (拍手)
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=49

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• 050・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　經濟開發ノ方針ニ
  付キマシテハ、只今商工大臣カラ述ベラレ
  マシタ如ク、國防、產業及ビ一般產業ノ基
  礎トナルベキ重要ナルモノヲ統制致シマス
  外ハ、成ベク自由企業ノ進出ヲ希望シテ居
  ル次第デアリマス、第二問ノ治安維持ニ關
  スル點デアリマスガ、北支ノ新政權竝ニ蒙
  疆ノ新政權ニ於キマシテハ、治安維持ニ關
  スル能力ガ現在微弱デアリマスノデ、目下
  占據地域内ニ於ケル治安維持ハ軍ガ主ト
  シテ之ニ任ジナケレバナラヌト云フヤウナ
  現狀デアルノデアリマス、併ナガラ是等ノ
  政權ニ對シテハ、出來ルダケ速ニ此治安維
  持ノ力ヲ强化致シマシテ、逐次ニ其能力ヲ
  高メルヤウニ指導ヲ致シテ居ルノデアリマ
  ス、併ナガラ元來此治安維持ハ、單ニ力ダ
  ケデ維持ガ出來ルノデハアリマセヌノデ、
  只今御述ニナリマシタ如ク、文化ノ施設、
  或ハ窮民ノ救濟、宣撫工作、斯ウ云フヤウ
  ナ事業ト相竝行シテ、其目的ヲ逹シ得ルノ
  デアリマシテ、是等ト相考へ合セマシテ、
  萬全ヲ期シタイト考ヘテ居ルノデアリマス
  (拍手)
  〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=50

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• 051・賀屋興宣

  ○國務大臣(賀屋興宣君)　北支竝ニ中支ノ
  通貨問題、爲替問題ノ御質問ニ御答申上ゲマ
  ス、北支ノ通貨問題ニ付キマシテハ、御述ノ
  如ク中國聯合準備銀行ガ設立セラレマシテ、
  通貨問題ノ基礎ハ確立致シマシタ譯デアリ
  マス、此北支ノ發劵銀行ノ銀行劵ノ價値ガ、
  日滿支相通ジタ一元的ノ價値、圓ニ「リンク」
  スル方針デ參リマスルコトハ、御說ノ通リデ
  アリマス、ソレノ爲ニハ、此爲替管理ト申シ
  マスルカ、其必要ナルコトモ御說ノ通リデア
  リマス、併ナガラ中華臨時政府モ未ダ設立
  匁々デアリマシテ、我國ヨリ銀行ニ於ケル
  顧問、又ハ財務官等モ參ッテ居リマシテ、金
  融爲替上ノ資金ヲ供給シ、技術員モ協力致
  シテ居リマスガ、直チニ完全ナル爲替管理
  ガ行ヘルカドウカ、是ハ未ダ〓究準備中デ
  アルト思ヒマス、隨ヒマシテ、北支ノ通貨一北、
  ガ圓ニ「リンク」スルト申シマシテモ、大體
  ノ方針デアリマシテ、日滿ノ如ク直チニ鞏
  固ニ連繫ヲスルト云フコトハ、却テソレヲ
  望ミマセヌ、此大ナル方針ノ下ニ、徐々ニ
  貿易及ビ爲替ヲ調節シテ參ル、斯ウ云フ考
  ヘ方ガ適當デアラウト存ジマス、併シ大體
  ノ方針ハ動キマセヌ、中支ニ付キマシテハ、
  北支ニ於ケルヨリモ、未ダ狀態ハモウ一ツ
  前ノ階梯ニアルノデアリマス、中支ニ於キ
  マシテノ通貨問題ハ、北支ニ於キマスルヨ
  リモ、色々微妙ナ點ガアルノデアリマシテ、
  只今玆ニ新ニ發劵銀行ヲ作ルカ、北支ノ銀
  行ノ其通貨ノ範圍ニ入リマスルカ、未ダ臨
  時ノ政權ニ付キマシテモ、其確立ヲ見ナイ前
  デアリマスカラ、只今ノ所ハ具體的ニハ御
  答ヲ申上ゲ兼ネルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=51

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• 052・田村秀吉

  ○田村秀吉君　簡單デアリマスカラ自席カ
  ラ發言ヲ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=52

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• 053・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=53

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• 054・田村秀吉

  ○田村秀吉君　政府ノ御答辯ニ必シモ滿
  足スルモノデハアリマセスガ、詳シイコト
  ハ委員會等ニ讓リマシテ、尙ホ總理大臣ニ
  對スル私ノ質問ニ付キマシテハ、適當ノ機
  會ニ本議場ニ於テ御答辯アランコトヲ希望
  シテ、私ノ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=54

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• 055・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　伊豆富人君
  〔伊豆富人君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=55

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• 056・伊豆富人

  ○伊豆富人君　私ハ只今上程サレマシタ北
  支那開發株式會社法案竝ニ中支那振興株式
  會社法案ニ對シマシテ、二三政府ノ所見ヲ
  御尋致シタイト思フノデアリマス、昨年七
  月蘆溝橋事件ヲ導火線ト致シマシテ、支那
  事變ガ勃發致シテ以來九箇月、逐次戰果ヲ
  擴大シテ、今ヤ黃河以北察哈爾、綏遠、河
  山東、山西ノ五省、江蘇、浙江、安徽
  ノ中支三省ハ、完全ニ皇軍ノ占據スル所ト
  ナリ、著々肅〓工作ガ行ハレ、治安工作モ
  日ヲ逐ウテ其〓ニ著キツヽアルコトハ、眞
  ニ慶賀ニ堪ヘナイ所デアリマス、此間ニ於
  ケル所ノ皇軍將兵ノ忠勇、銃後國民ノ至誠
  ニ對シマシテハ、感激措ク能ハザルモノデ
  アリマス、併ナガラ要ハ此尊キ犠牲ト偉大
  ナル戰果ヲシテ意義アラシムルコトデアリ
  やく、換言スレバ戰爭目的ノ達成デアリマ
  ス、而シテ戰爭目的ガ日支共存共榮、東洋
  永遠ノ平和ヲ確保スルニアルコトハ申ス迄
  モアリマセヌ、此戰爭目的ヲ達成スルニハ、
  軍事的ニハ占據地域ノ確保、政治的ニハ親
  日政權ノ樹立、經濟的ニハ北支ニ於ケル產
  業資源ノ開發、中支ニ於ケル商權ノ伸張ニ
  アラネバナラヌト思フノデアリマス、同時
  ニ文化工作ヲ行フノ必要ノアルコトハ勿論
  デアリマス、私ハ以上ノ見地カラ、戰爭目
  的達成ノ上ニ於テ、重大ナル使命ヲ帶ビテ
  生レ出デントスル兩案ニ對シテ、聊カ御尋
  致ス所以デアリマス
  第一ハ、北支竝ニ中支開發事業ノ指導精
  神如何ト云フコトデアリマス、私ハ本事業
  ハ日支共存共榮ヲ主眼トスルト同時ニ、其
  福利ハ直接事變ニ參加シタル國民大衆ノ福
  利ヲ增進スル目的トスルモノデナカラネバ
  ナラヌト信ズルモノデアリマス、北支各省ガ
  石炭、石油、鐵、棉花、羊毛、鹽等、地表、地下
  ノ物的資源ニ豐富ナルコトハ申ス迄モアリマ
  セス、然ルニ北支住民ノ八割强ヲ占ムル農民
  ハ、今尙ホ原始的農業ニ甘ンジテ、是等資源
  ノ開發ヲ閑却シテ居ルノデアリマス、其原因ハ
  水害其他ノ天災、兵亂、匪賊ノ破壞、掠奪、
  惡政等ノ爲メ、一航的ニ支那產業ノ發展段
  階ガ幼稚ナルガ爲メデアリマス、又資本乏
  シク、技術モ亦進步セザルガ爲メデアリマ
  ス、隨テ支那農民ハ豐富ナル資源ヲ擁シナ
  ガラ、殆ド飢餓線上ニ彷徨シテ居ル狀態デ
  アルノデアリマス、我國ハ之ニ反シマシテ、
  產業ノ發展段階ハ高度ニ達シ、資本乏シカ
  ラズ、技術モ亦相當ノ發達ヲ遂ゲテ居ルノ
  デアリマス、然ルニ國防竝ニ產業上缺クベ
  カラザル所ノ、是等ノ資源ガ缺乏シテ居ル
  ノデアリマスカラ、支那ノ資源ト我國ノ資
  本、能力、技術ト有無相通ジテ、是等資源
  ヲ開發スルコトハ、極メテ自然デアルト思フ
  ノデアリマス、此關係カラ事業ノ運營ニ當
  リマシテハ、飽クマデ共存共榮ヲ主眼トセ
  ネバナラヌト信ジマス、是ハ直チニ支那民
  心ヲ收攬スルコトトモナリ、我ガ皇道ヲ宣
  布スル所以トモナルノデアリマス、事業ノ
  成功ヲ期スルニハ、何ヨリモ民心ヲ收攬ス
  ルト云フコトガ、先決問題デナケレバナラ
  ヌト信ズル者デアリマス、又熱烈ナル國民
  ノ愛國心ト、尊キ殉國ノ犠牲トニ依リマシ
  テ、贏チ得マシタル所ノ資源開發ノ福利ヲ、
  一部資本家、事業家ノ壟斷ニ委スルコト
  ナクシテ、國民大衆、殊ニ直接事變ニ參加
  シタル國民ノ福利增進ヲ目的トスルヤウ、
  運營スベキデアルト思フノデアリマス、此
  二點ニ付キ政府當局ハ、如何ナル考ヲ有セ
  ラレルヤト云フコトニ付テ御伺申上ゲタイ
  ト思ヒマス
  第二ハ對支各機關、卽チ政府デ只今御計
  畫中ノ對支經濟局、日華經濟協議會、經濟
  委員會ト、兩開發會社トノ關係如何ト云フ
  コトデアリマス、北支那派遣軍ニハ曩ニ經
  濟委員會ヲ設ケテ、平生氏ガ軍最高顧問ト
  シテ委員長ニ就任サレマシタ、更ニ日華經
  濟協議會ニハ王克敏氏ガ委員長トナリ、平
  生氏ガ副委員長トナッテ居ラレマス、又本案
  ニ依リマシテ北支那開發株式會社、中支那
  振興株式會社ガ成立致シマスレバ、對支機
  關ノ陣形ハ略〓整フ譯デアリマス、又政府ハ
  經濟局ヲ設置スル計畫中ノヤウデアリマス
  ガ、是等各機關ノ運營ガ巧妙ニ行キマスナ
  ラバ、三位一體ノ有機的關係ニナリマス
  ガ、若シ間違ヘバ、往年滿洲ニ於ケル所ノ
  三頭、四頭ノ政治ノヤウナモノニナリ、所
  謂船頭多クシテ船山ニ登ルノ失態ヲ演ズル
  コトナキヲ保シ難イノデアリマス、卽チ是
  等各機關ノ使命、特色、權限等、其間ノ連
  絡如何ヲ御伺スル所以デアリマス
  第三ニ東亞省設置ノ意思ナキヤト云フコ
  トヲ御伺申上ゲマス、對支中央機關ヲ設置
  スルノ必要アルコトハ、只今松村君カラモ、
  田村君カラモ御述ニナリマシタ、私モ趣
  旨ハ大體同樣デアリマス、政府部內ニハ政
  治文化ヲ包含シナイ經濟局ヲ設置スル御計
  畫ノヤウデアリマス、之ヲ內閣直屬ノ機關
  トスルカ、或ハ外務省ノ東亞局ヲ引離シテ
  局ヲ作ルカト云フヤウナ、御議論ガアルヤ
  ウニ傳ヘラレテ居リマスルガ、理想カラ申
  シマスルナラバ、東亞經綸ノ中樞タルベキ
  機關ハ、重要ナル機關デアリマスルカラ、
  斯ノ如キ一局デハ不可ナリト信ズル者デア
  リマス、況ヤ一省ニ屬スル局デハ尙更デア
  リマス、閣議ニ於テ發言スル所ノ、責任ヲ
  有スル所ノ大臣、一省ヲ作ルベキデアルデ
  ハナイカト思ヒマス、斯ノ如キ小ナル機關
  デハ、北支派遣軍ノ經濟委員會ヤ、日華經
  濟協議會ヤ、開發會社等ノ有力ナル所ノ機
  關ヲ指導監督シテ、其目的ヲ達成スルコト
  ハ困難デハナイカ、覺束ナイヤウニ思フノ
  デアリマス、却テ屋上屋ヲ架スルニ過ギナ
  イノデアリマスルカラ、私ハ單ニ經濟ノミ
  ナラズ、政治、文化ヲ包含スル東亞省
  名ハ何ト付ケテモ宜シイノデアリマスルガ、
  一省ヲ新設シテ、東亞經綸ノ中樞機關ト爲
  スベキデアルト思フノデアリマス、此點ニ
  對スル政府ノ御所見ヲ御伺申上ゲマス
  第四ニ交通通信事業ハ開發會社ト切離シ、
  別個ノ機關ヲ創設シテハ如何ト云フコトデ
  アリマス、第十四條ニハ「北支那開發株式會
  社ハ左ノ事業ノ主要ナルモノニ對シ投資又
  ハ融資ヲ爲シ其ノ經營ヲ統合調整スルモノ
  トス」ト規定シ「一交通、運輸及港灣ニ關スル
  事業、二、通信ニ關スル事業」ガ揭ゲラレテ
  アルノデアリマス、支那ノ資源ガ開發セラ
  レナイノハ、水害、兵亂、匪賊、惡政等ニ
  因ルコトハ、前ニモ述ベマシタ通リデアリ
  マスガ、交通機關ガ發達シテ居ラナイコト
  モ、亦最大ノ理由デアリマス、例ヘバ支那
  ノ石炭ハ、埋藏量ハ世界第三位ト稱セラレ
  テ居ルニモ拘ラズ、炭業ハ極メテ不振デア
  リマス、是ハ鐵道竝ニ水運ノ便ガ少ク、運
  賃不廉ナルガ爲メデアリマス、北支ノ資源
  ヲ開發スルニハ、鐵道ノ敷設、改良、港灣ノ
  修築、擴張ヲ始メ、道路、運輸、航空事業竝ニ
  電信電話ノ通信事業ノ發達ヲ圖ルコトガ、
  先決問題デアルノデアリマス、而シテ豫定
  線若クハ計畫線ト致シマシテハ、同成線、
  蘭州線ノ新設、大同線ノ改良、石家莊、滄
  州大沽線ノ新設、膠濟線鐵道ノ延長、張
  家口、多倫、赤峰ノ連絡、熱河、北京線ノ
  新設、包頭ヨリ五原ヲ經テ寧夏省ニ延長ス
  ル線、以上ニ伴フ秦皇島、塘沽、太沽、天
  津諸港ノ改修等ガ數ヘラレテ居ルノデアリ
  やく、要スルニ鐵道ノ敷設、改良、港灣ノ
  修築ハ、北支開發ノ大動脈ヲ成スモノデア
  リマスルノミナラズ、軍事上ニ於テモ重大
  ナル使命ヲ有スルモノデアリマス、而シテ
  此大事業ヲ遂行スルニハ、巨額ノ資金ヲ要
  スルノデアリマスルカラ、私ハ斯ル大事業
  ヲ、三億五千万圓ノ開發會社ノ統制內ニ置
  クコトハ、適當デナイト思フノデアリマス、
  元來開發會社ハ石炭、石油其他ノ鑛產物、
  棉花、羊毛、鹽等、若クハ電氣事業等、算
  盤ノ採レル一般產業ヲ統制シ、交通、通信
  機關ハ之ヲ切離シテ、別ニ有力ナル機關ヲ
  創設スル方ガ適當デアルト思ヒマスルガ、
  之ニ對スル政府ノ御所見如何デアリマス
  第五ハ開發會社ト子會社トノ關係如何デ
  アリマス、此間ノ關係竝ニ運營如何ハ、事
  業ノ成否ニ重大ナル關係ヲ有スルモノデア
  リマス、滿洲國デハ初メ極度ノ統制方針ヲ
  執リマシテ、資本主義ヲ排斥シマシタガ故
  ニ、事業ノ發達活潑ナラザルモノガアリマ
  シタコトハ、今ヤ好キ手本トナッテ居リマ
  ス、併ナガラ之ニ反シテ、資本主義ノ活動
  ニ放任スルトキハ、所謂羹ニ懲リテ膾ヲ吹
  ク如キ觀ニ陷リ易イノデアリマス、資本主
  義ノ自由ニ放任スルトキハ、幾多ノ事業ヲ
  有スル資本家、事業家ハ、唯繩張リバカリ
  ヲシテ、仕事ヲヤラヌ弊ガアルノデアリマ
  ス、現ニ英國ガ多年北支資源開發ニ指ヲ染
  メテ居リナガラ、開發ノ效果ヲ收メ得ナカッ
  タノハ、英國ノ資本主義ガ差迫ッテ北支資
  源ヲ開發スル必要ガナカッタコトト、又開發
  ノ結果ガ日本ヲ利スルコトニナッタカラデア
  リマシタ、又資本主義ニ放任致シマスルナ
  ラバ、資本ノ二重投下ヲ來スコトニモナル
  ノデアリマス、結局極端ナル統制モ當ヲ得
  タモノデナケレバ、極端ナル自由主義モ亦
  其當ヲ得タモノデナイト思ハレルノデアリ
  マス、第十四條ニハ「主要ナルモノニ對シ投
  資又ハ融資ヲ爲シ其ノ經營ヲ統合調整ス」ト
  云フコトガアリマスルガ、主要ナルモノト
  主要ナラザルモノトノ限界ハ、何ニ依ッテ決
  メラレルノデアリマスルカ、又「經營ヲ統
  合調整ス」ト書イテアリマスルケレドモ、經營
  ノ內容ニ立入リマシテ、統合調整ガ度ヲ過
  ギレバ、活潑ナル事業ノ發達ハ期シ得ラレ
  ナイノデアリマス、開發會社ハ又投資竝ニ融資
  ニ重キヲ置キ、日支合辦トシテノ子會社ヲシ
  テ自由ニ手腕ヲ揮ハシメ、其弊害ガ生ジタ
  ル時ニハ之ヲ是正スル位ガ、適當デハナイカ
  ト思ハレルノデアリマス、十四條第六號ニハ「北
  支那ニ於ケル經濟開發ヲ促進スル爲特ニ統
  合調整ヲ必要トスル業事」トアリマスルガ、
  其事業ノ中ニハ棉花事業ガ入ッテ居リマセ
  ヌガ、棉花コソ子會社トスル、或ハ子會社
  トシナクテモ統制內ニ置クベキ事業ト思フ
  ノデアリマス、又取引所ヲ新設致シマシテ、
  經濟統制ノ機能ヲ發揮セシメルト云フ御意
  思ハアリマセヌカ
  第六ハ一定ノ配當ヲ爲シ、尙ホ利益超過
  スル時ハ特別納付金ヲ納付セシムルコトト
  シテハ如何ト云フコトデアリマス、開發會
  社ハ政府以外ノ株主ニハ年六分ノ配當ヲ保
  證シテ居リマス、之ニ超過スル時ハ又補給
  金ヲ償還シテ、更ニ超過スル時ハ增配スル
  コトニナッテ居リマスルガ、元來政府ノ現物
  出資ニ係ル資本ハ、支那事變ニ依ッテ生ジタ
  ルモノデアリマスノミナラズ、本會社ニハ
  向フ十箇年ニ亙リ、所得稅、營業稅、地方
  稅ヲ免除シテ居ルノデアリマスルカラ、配
  當ヲ爲シ、更ニ補給金ノ償還ヲ控除シタル
  上ニ、更ニ超過シタルモノハ特別納付金ト
  シテ之ヲ納付セシメテ、對支工作ノ經費ニ
  充當スルコトトシテハ如何ト云フコトデア
  リマス
  最後ニ私ハ陸軍大臣ニ對シマシテ、北支
  中支ノ肅〓工作如何ト云フコトヲ御尋申上
  ゲタイト思ヒマス、是ハ只今御說明ニナリ
  マシタガ、北支、中支ニ於テノ占據區域ニ
  於ケル所ノ肅〓工作、竝ニ交通ノ狀態ヲ御
  伺致シタイト思ヒマス、交通ノ狀態ニ付キマ
  シテハ、鐵道省ト滿鐵トガ協力シテ、軍ト
  共ニ鐵道其他ノ交通機關ノ復舊ヲ急イデ居
  リマスルガ、其復舊ノ狀況竝ニ北支那ニ於
  ケル所ノ鐵道ノ豫定線、若クハ計畫線、港
  灣改修ニ關スル方針等ノ御說明ヲ承ルコト
  ヲ得レバ、洵ニ幸ト存ズルノデアリマス、
  私ハ以上大體ノコトニ付キマシテ、御尋致
  シマシテ、更ニ詳細ナルコトハ委員會ニ於
  テ御伺致シタイト思ヒマス、何卒御答辯ヲ
  御願致シマス(拍手)
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=56

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• 057・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　只今ノ御尋ニ對
  シテ御答致シマス、第一ノ指導方針ニ付キマ
  シテハ、先方ノ資源ト、コチラノ方ノ資本ト
  技術トヲ結合セシメルノガ宜イデハナイカ
  ト云フ御所見ハ同感デアリマス、ソレカラ
  此會社ノ株ヲ、何カ今度ノ戰爭ニ參加シタ
  ヤウナ特別ナ人ニ對シテ云々ト云フ意味ノ
  御尋ガゴザイマシタガ、サウ云フコトハ考
  ヘテ居リマセヌ、國策會社デゴザイマスカ
  ラ、成ベク國民ニ、廣キ方面ニ亙ッテ參加
  セシムルヤウニ、政府トシテハ考ヘテ居リ
  そく、ソレカラ此會社ト事務局ト、ソレカ
  ラ支那側ニ於ケル日華經濟協議會ト云フモ
  ノノ關係ニ付テ、三位一體トシテ互ニ連絡
  ヲ取ッテヤラナケレバナラヌト云フコトハ、
  御說ノ通リデアリマシテ、ソレ等ノ點ニ付
  キマシテモ具體的ニ、適當ノ方法ヲ考ヘタ
  イト思ッテ居リマスルガ、何レ委員會ニ於テ
  詳細ヲ御話申上ゲタイト思ヒマス、ソレカ
  ラ事業ノ點ニ付キマシテ、交通運輸ノ方ハ、
  金ガ少イカラ別ニシタラドウカト云フヤウ
  ナ御話モゴザイマシタガ、申ス迄モナク資
  本金ノ外ニ社債モゴザイマスルシ、又金ノ
  問題バカリデゴザイマセヌデ、ドウシテモ
  交通運輸ノ事業ト、產業開發ト云フ仕事ハ、
  ヤハリ不可分ノ關係デ兩方相俟ッテ、行カ
  ナケレバナラヌモノデアリマスカラ、ヤハ
  リ此會社デ統合シタ方ガ宜シイト考ヘテ居
  リマス、棉花ノ點ニ付キマシテモ、此事業
  ノ方ニハ列擧致シテアリマセヌケレドモ、
  棉花ニ付キマシテハ、御承知ノ通リ朝鮮ニ
  於テ、或ハ滿洲ニ於テ、棉花ノ栽培ノ計畫
  ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、其方ト連絡
  ヲ取ル必要ガアルコトハ、申ス迄モナイノ
  デアリマス、納付金ニ付キマシテハ、只今
  ノ所ハ納付金ヲ設ケル考ハ持ッテ居リマセヌ
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=57

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• 058・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　鐵道ニ付テノ御尋
  デアリマシタガ、目下我軍ニ於テ占據致シ
  テ居リアスル地域內ノ鐵道ハ、殆ド運行致
  シテ居リマスル、殊ニ占據後時日ノ經過致
  シテ居リマスルモノハ、相當ニ改善ヲ致シ
  ツヽアルノデアリマスルガ、全面的ニ該鐵
  道ハ、何等今日マデ支那側ニ於テ改善ノ措
  置ヲシテ居リマセヌノデ、其能力ヲ十分ニ
  發揮セシメマス爲ニハ、相當ノ經費ヲ要ス
  ルト存ジテ居リマス、新線ヲ如何ナル方面
  ニ敷設シツヽアルカト云フコトニ付キマ
  シテハ、軍事上ノ必要ニ基キマシテ、目下
  建設ヲシテ居ルノデアリマシテ、此點ニ付
  キマシテハ申上ゲルコトヲ差控ヘタイト存
  ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=58

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• 059・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　山崎釼二君
  〔山崎劔二君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=59

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• 060・山崎釼二

  ○山崎釼二君　簡單ニ政府ニ御質問ヲ致シ
  マス、支那ノ開發竝ニ振興ニ關スル指導方
  針ニ付テ、一言總理大臣カラ前議員ノ質問
  ニ對スル御答辯ノ際ニ加へラレマシテ、適
  當ノ機會ニ本會議ニ於テ御答辯ガ願ヒタイ
  ト思フ譯デゴザイマス、私達ガ支那ニ對ス
  ル對策ノ中心ヲ、三ツノ點ニ要約シテ考ヘ
  テ居ルノデゴザイマス、卽チ支那ニ對シテ
  ハ支那人ノ面子ヲ立テル爲ニ、支那人ニ依
  ル支那ノ政治ヲ徹底セシメルト云フコトガ、
  一ツノ要點デアルト考ヘルノデアリマス、
  第二ハ正シキ武力ニ依ッテ支那ノ治安ヲ永
  遠ニ保ツト云フコトガ、第二ノ要點ダト考
  ヘラレマス、第三點ハ經濟開發ニ依ッテ相互
  ノ經濟的ナル繁榮ヲ正シク爲サシメルト云
  フコトガ、是亦支那ヲ治メル上ニ於テノ相
  當重要ナル點ダト考ヘルノデアリマス(拍
  手)隨ヒマシテ臺灣或ハ朝鮮、其他滿洲國
  ノ如ク、五族協和ノ、日本人ガ構成要素ヲ
  成ス國家ニ對スル政策ト、又自ラ異ッテ來ル
  ノデゴザイマス、而モ支那ニ對シテハ目下
  交戰中デアリマス、其打倒セントスル蔣政
  權ハ、邊境ノ地ニ追ヒヤラレテ居ルノデア
  リマスガ、マダ其命脈ヲ斷ッテ居ル譯デハア
  リマセヌ、同時ニ新ナル政權ニ對スル正シ
  キ取極ガ行ハレテ居ル譯デハアリマセヌガ、
  支那ノ經濟開發ニ對シテハ、其指導方針如
  何ニ依ッテハ、正義ノ軍ヲ起シタル日本ノ志
  ト、異ナル結果ヲ來スコトノ惧ヲ十分ニ持ッ
  テ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ私ハ英吉
  利ガ東印度、或ハ亞弗利加、「マレー」半島、
  其他ニ於テ執リツヽアル徹底的ニ相手ノ民
  衆ヲ搾取スルコトニ依ッテ、其基礎ヲ立テテ
  居ル開發方針ヤ、或ハ臺灣、朝鮮ニ於テ行
  ヒツヽアル日本ノ內治方針ヲ、日本ガ此ノ
  會社ヲシテ支那ニ於テ眞似ヲサセ、之ヲ行
  ハセヨウト云フ時ニハ、全ク逆ナ、東洋永
  遠ノ平和ニ害アッテ利ナキ結果ヲ、招來スル
  ノデハナイカト云フコトヲ惧レルノデアリ
  マス、隨テ總理大臣ガ此際オ互ノ國ノ繁榮
  ト、オ互ノ正シキ開發ニ向ハウトスル根本
  方針ヲ、國民ト言ハズ、世界ニ向ッテ明ニス
  ルコトガ必要デアルト思ヒマス、是ハ日本
  國內ノ或ル上層ノ部分ダケト、支那ノ上層
  ノ部分ダケトガ、繁榮スルト云フヤウナコ
  トデナク、支那ノ全國民ト、日本ノ全國民
  トガ正シキ繁榮ニ與ルヤウナ開發方針ヲ持
  ツコトガ、非常ニ必要デアルト考ヘルノデ
  アリマスガ、此點ニ對シテ總理大臣ハ如
  何ニ考ヘテ居ラレルカ、是ハ國內ニ於テ、
  社會正義、或ハ資本主義ノ弊害ヲ是正セン
  トスル總理大臣ノ方針ト如何ナル關係ニ於
  テ現ハレルモノデアラウカ、其點ヲ御伺致
  シタイト思フノデアリマス
  第二點ハ、日本ト支那ノ新政府トノ聯繫
  關係ニ付テ御尋致シタイト思ヒマス、此點
  ハ外務大臣カラ御答辯ヲ得タイト思ヒマス、
  ソレハ支那ニ於ケル北京ノ臨時政府ガ中心
  トナッテ今日政治ヲ行ハントシテ居ルヤウ
  デアリマスガ、新聞ニ傳ヘラレル所ニ依
  リマスレバ、中支ニモ亦新タナル政權ノ確立
  ヲ見ルヤウデゴザイマス、而モ此十七日頃
  ニハ其實現ガ報道サレテ居リマシタガ、今
  日未ダ其實現ガ見ラレナイヤウナ結果ニ
  ナッテ居リマス、此點ハ如何ナル事情ニ基ク
  カノ詮索ヲスルコトハ致シマセヌガ、少ク
  トモ此開發會社ガ北支ト中支トニ分レテ置
  カレル以上、其何レニ於テ取極ヲ爲シテ行
  ク方針デアリマスカ、若シ中支ニ於ケル政
  權ガ絕對ニ今後出來ヌト致シマスレバ、疑
  ヒハナイノデアリマスケレドモ、其點ニ對
  シテ今日吾々ハ未ダ明快ナル囘答ヲ與ヘラ
  レテ居リマセヌ、隨テ之ニ對シテ御伺致シ
  タイト思ヒマス、ソレカラ事變後ノ新シキ
  情勢ニ從ッテ、舊來ノ蔣介石ノ政權トノ關係
  ニ於キマシテ生ジテ居タル商租權ト云フモ
  ノヲ、新政府ガ如何ニ取扱ッテ居ルノカ、新
  聞ノ報ズル所ニ依リマスト、商租權ハ、新
  政府ノ王克敏其他ノ圓滿ナル處置ニ依ッテ、
  心配ナイヤウナ情勢ニナッタト言ハレテ居
  リマスケレドモ、ソレガ此法案ヲ可決シテ、
  此法案ヲ實際ニ移ス場合ニ於テ、サウ云フ
  對手國ノ圓滿ナル處置ダケニ依ッテ宜イノ
  デアリマスカ、斯樣ナ會社ガ出來マスト同
  時ニ、新シク商租權ニ付テ新政府ト何カノ
  取極ヲ爲スト云フコトニナルノデアリマセウ
  カ、其點ヲ明快ニシテ戴キタイト思ヒマス、
  ソレカラ現在日本側デ接收シテ居ルモノハ、
  之ヲ區々ノ會社其他ニ委任經營シテ居ルヤ
  ウデアリマスケレドモ、是等ニ對スル處置
  ハドウ云フ風ニナルノデアリマセウカ、又
  日本ノ支那ニ於ケル所ノ大使館ハ北京ニ置
  クノデアルト云フ常識的考ハ持ッテ居リマ
  スガ、何レニソレヲ決定スルノデアリマス
  カ、是モ此機會ニ明ニシテ戴キタイト思ヒ
  マス
  第三點ハ、新權益保護ノ方針如何ト云フ
  點デアリマス、前段ノ議員諸君ノ質問ニ對
  シテ、陸軍大臣ガ簡單ニ答ヘラレテ居リマ
  スガ、私ハモウ一步進ンデ其方針ヲ御示願
  ヒタイト思ヒマス、新政權下ノ治安、ソレ
  ヲ確保スル爲ニハ、日本軍ガ中心トナルノ
  デアルカ、新シキ支那政權ノ下ニ編制サレ
  ントシテ居ル所ノ軍隊ガ中心トナルノデア
  ルカ、或ハ滿洲ニ於ケル日滿議定書ヲ中心
  トシテ行ハレテ居ルヤウナ治安確保ノ狀態
  ガ將來出現スルノデアリマセウカ、又日本
  軍ノ相當ノ常備軍ヲ常駐セシメテ、之ニ當
  ルト云フノデアリマセウカ、其點ニ付テ是
  ハ戰爭中デアルカラト云フ未確定ノ問題デ
  ナク、少クトモ具體的ナ開發方針ガ茲ニ投
  出サレタ以上ハ、此限度ニ於テ、此程度ノ
  武力ヲ以テ治安ヲ確保スルト云フ方針ガ示
  サレナイト云フコトハナイデアリマセウ、
  依ッテ此點ヲ明ニシテ戴キタイ、サウシテ新
  支那軍ノ武力ヲドノ程度ニ日本ガ許容スル
  カト云フヤウナ點ニ付テハ、十分明ニシテ
  戴キタイ、尙ホ其權益ヲ保護スル方針ト致
  シマシテ、特定ノ都市ハ非武裝地帶ヲ設ケ、
  或ハ特定ノ都市ニ對スル所ノ都制ヲ要求シ
  テ十分ナル安心ノ行ク方法ヲ立テルノデア
  リマスルカ、其點ヲモウ少シ突込ンデ明快
  ニシテ戴キタイト思ヒマス
  第四點ハ支那開發ト日本ノ人口問題ヲ如
  何ニ調和スルカノ點デアリマス、是ハ商工
  大臣-或ハ內務大臣ガオイデナラバ適當
  ニ御答願ヒタイト思ヒマス、產業ヲ向フニ
  於テ開發スル上ニ於テ、餘程注意致シマセ
  ヌト、日本ノ產業ト相剋摩擦ヲ生ズルコト
  ハ論ズルマデモアリマセヌ、是ハ適當ナル按
  排ヲシテ戴カナケレバナリマセヌ、併ナガラ對
  手國ヲ繁榮セシメテ、逆ニ日本ノ大多數ノ民衆
  ガ失業シテ苦シミ、或ハ其產業ヲ脅カサレルト
  云フヤウナ結果ニナラヌヤウ、是ハ十分ニ考
  ヘテ貰ハナケレバナラヌト思ヒマス(拍手)殊ニ
  山東省ニ於テ、河北省ニ於テ其人口ノ密度ハ
  日本ノ一平方粁ニ於ケル百八十四人ヨリモ
  遙ニ凌駕シテ居ル、山東省ニ於テハ二百人、
  河北省ニ於テハ二百二十三人ノ人口密度ヲ
  持ッテ居リマス、而モ是等ハ一日三四十錢ノ
  安賃銀ニ依ッテ働キ得ル所ノ連中デゴザイ
  マスカラ、是等ノ對策ト云フモノガ餘程正
  シク行ハレマセヌト、非常ナル惡結果ヲ齎
  シハセヌカト云フコトヲ惧レルノデゴザイ
  マス、而モ農民ニ於テハ十畝以下ノ小面積
  ノ土地ニ依ッテ經營ヲナスモノガ殆ド河北
  省ニ於テハ二六·四%、山東省ニ於テハ三
  九·三%ノ多キニ上ッテ居ルノデアリマス、
  斯樣ナ情勢ノ豫期致シマシテ、若シ支那ニ
  於ケル農業開發ノ方針ト、日本ニ於ケル農
  村振興ノ方針トガ相剋スルヤウナ場合ハ、
  萬ナイトハ考ヘラレマスルケレドモ、此點
  ニ付テノ明カナル方針ヲ示シテ戴キタイト
  思ヒマス、是ハ農業ノ場合ノミデナク、
  工業ノ場合ニ於キマシテモ、日本ニ於ケ
  ル紡績ガ操短ヲ以テ其生產過剩ヲ防イ
  デ居ル際ニ、靑島或ハ天津ニ於テハ昨年
  度、或ハ一昨年度ニ於テ、相當量ノ增
  產計畫ガ立テラレタ、而モ日本ノ資本
  家ガ相當ナ勢ヲ以テ進出シテ居ルコトハ御
  承知ノ通リデゴザイマス、而モ十一年度ニ
  於テハ靑島ハ五十二万錘、天津ハ二十四万九
  千錘ノ現有勢力ヲ、十二年度ニ於テハ靑島
  ガ四十二万四千錘、天津ガ五十九万九千錘
  ノ增產計畫ヲ立テテ居リマス、而モ此紡績
  ノ發展ト云フモノト、日本ノ農村ノ振興ト
  ハ非常ナ關係ガアリマス、日本ノ農村ノ零
  細農ノ懷ロニハ、紡績ニ依ッテ出稼ヲスル女
  工サンノ賃銀ガ大多數還元サレルノデアリ
  マスカラ、農村振興ノ關係カラハ非常ニ輕
  視出來ナイ點デアリマス、同時ニ農村ノ過
  剩人口ヲ吸收スル日本ノ工業ト云フモノ
  ガ、支那ノ工業開發ニ依ッテ、若シ多少デモ
  惡影響ヲ蒙ルト云フコトニナルナラバ、延
  イテ工業部門ダケノ問題デナクシテ、大キ
  ナ是ハ日本ノ農村ニ於ケル問題デアルト吾々
  ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
  第五點ハ內務大臣竝ニ商工大臣カラ適當
  ニ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス、是ハ今囘
  ノ事變ニ出征シマシタ所ノ出征者其家族、
  戰死者、其遺族ト云フモノニ對シテ、一時
  新聞紙上ニ五千圓程度ノ北支開發特殊會社
  ノ株劵ヲ持タセテ、其將來ノ生活ヲ保全シ
  テヤル、其戰死者遺族ノ生活ヲ保全シテヤ
  ルト云フコトガ傳ヘラレタノデ、國民ハ此
  北支開發ニ對シテハ相當關心ヲ有ッテ居リ
  そく、併ナガラサウ云フ方策ヲ政府ガ考ヘ
  テ居ラヌト云フコトハ、屢〓色々ノ機會デ明
  ニサレタノデアリマスルカラ、ソレヲ私ハ
  此處デ繰返サウトハ思ヒマセヌガ、少クト
  モ北支、中支ニ於ケル開發ニ對シテハ、出
  征者竝ニ戰死者ノ遺家族ガ相當ノ優先權ヲ
  持ッテ就職シ得ル特權ヲ持ツコトハ、是ハ當
  然ナ問題デアルト思ヒマス(拍手)同時ニ其
  株劵ノ如キモ假ニ一般民間ニ於テ持ツベキ
  モノガ少數ノ財閥ノ手ニ渡ッテシマッテ、國
  民ハ殆ド御目ニ懸ルコトガ出來ナイト云フ
  ヤウナコトニナルト、政府ガ六分ノ配當ヲ
  保證シテ居ル特別ナル此株劵デアリマスカ
  ラ、其點ニ對シテ、或ハ戰爭ノ結果ヲ一部資
  本家ニ壟斷サレタリト云フ結果ニナルコト
  ヲ惧レルノデアリマス、隨テ是等ノ如キモ、出
  征者關係ニ優先的ニ持タセルト云フヤウナ
  方針モ亦一策デアルト吾々ハ考ヘルノデア
  リマス(拍手)隨テ此事變ニ於テ在〓軍人デ
  アルトカ、或ハ府縣、市町村ナリガ、全ク
  第一線ニ立テル國民ト同樣以上ノ努力ヲ拂ッ
  テ銃後ヲ固メテ居ルコトハ、亦申ス迄モナ
  イノデアリマスカラ、府縣市町村在〓軍人會
  其他適當ナル公共團體ニ優先的ニ割當テテ、
  之ニ特別ナル優遇ノ方法ヲ講ズルト云フ
  コトモ、國民ヲシテ十分ニ銃後ヲ固メ又新
  ナル東洋平和ニ協力セシメル所ノ一ツノ槓
  桿ニナルノデハナカラウカ、斯樣ニ吾々ハ
  素人考ナガラ思フノデゴザイマス、隨テ
  其方策ヲ求メルナラバ、特別ノ利益配當保
  證ヲ十年ト限ラズニ、其會社ノ存續スル限
  リ、サウ云フ公共團體ノ持テル株劵ニハ十
  分ナル保證ヲスルトカ、或ハ六分保證ヲ一
  割保證マデニシテヤルトカ云フコトモ考ヘ
  ラレナケレバナラヌト思ヒマス、併ナガラ
  之ヲ其邊ノ一般營利會社ト同樣ナル扱ヒヲ
  スルヤウナ處置ヲスルト云フコトニ對シマ
  シテハ、私達ハ甚ダ不滿デアルト同時ニ、
  將來是ハ國民ノ絕對支持ノ上ニ、軍ガ强ク
  ナッテ行ク上ニ於テモ考ヘナケレバナラナ
  イ問題デハナイカト思フノデアリマス(拍手)
  ドウゾ此意味ニ於キマシテ、十分ニ當該大
  臣カラ御答辯ヲ戴キタイト思フ次第デゴサ
  イマス(拍手)
  〔國務大臣吉野信次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=60

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• 061・吉野信次

  ○國務大臣(吉野信次君)　御尋ニナリマシ
  タ第一點ノ產業開發ノ方針ニ付キマシテハ、
  御話ノ通リニ日本ノ內地ノ產業トノ關係ヲ
  能ク考慮致シマセヌト、相剋ヲ生ズルト云
  フ虞ガゴザイマスカラ、其點ハ十分ニ考慮
  致シマシテ、衝突ガナイヤウニ致ス積リデ
  アリマス、ソレカラ此會社ノ株ヲ出征者或
  ハ其家族遺族ニ優先的ニ持タセタナラバト
  云フ御話ガゴザイマシタガ、其點ニ付キ
  マシテハ、先程申上ゲマシタ通リニ、サウ
  云フコトハ只今考ヘテ居リマセヌ、國策會
  社ノ性質ニ鑑ミマシテ、國民全般ニ成ベク
  廣ク持ッテ戴キタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
  尙ホ就職ノ問題ニ付キマシテハ、出來ル限
  リノコトヲ致シタイト存ジテ居リマス
  〔國務大臣廣田弘毅君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=61

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• 062・廣田弘毅

  ○國務大臣(廣田弘毅君)　只今山崎君ヨリ
  北支政權ノ外ニ中支政權ガ起リツヽアルト
  云フコトニ付テ御質疑ニ相成ッタノデアリ
  マスガ、ソレハ遠カラズ出來ルト思フノデ
  アリマス、隨テ此ノ二ツノ政權ガ出來マシテ
  モ、北支政權ガ實質ニ於テ中央政權トシテ
  發達シテ參リツヽアルノデアリマシテ、將
  來北支及ビ中支ニ會社ガ出來ルコトニナリ
  マスレバ、ソレ〓〓其地方ノ政權ト色々ノ
  交涉ヲ致シテ參ル筈ニナッテ居ルノデアリ
  マス、次ニ尙ホ商租權ト云フコトニ付テ御
  尋ニナッタヤウデアリマスガ、意味ガハッキ
  リ致シマセヌカラ、是ハ何レ委員會ニ於テ
  御答辯致シタイト思ヒマス、尙ホ將來何レノ
  地方ニ大使館ヲ置クカト云フ問題モ、今日
  ノ所何トモ申上ゲ兼ヌル次第デアリマス
  〔國務大臣杉山元君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=62

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• 063・杉山元

  ○國務大臣(杉山元君)　治安維持ニ付キマ
  シテハ、旣ニ申上ゲマシタ如ク、現在ノ狀
  況ニ於キマシテハ、主トシテ軍自ラ之ニ任
  ゼナケレバナラヌ狀態ニアルノデアリマス、
  今後狀況ガ緩和致シマシタナラバ、支那政
  權ニ於キマシテ、警察隊、或ハ保安隊等ヲ
  設ケルコトニナルデアラウト考ヘテ居リマ
  ス、又斯ク致シマシテ治安維持ノ能力ヲ强
  化致シマスルヤウニ努メテ居ルノデアリマ
  ス、併ナガラソレデハ將來是等ノ警察隊及
  ビ保安隊ニ治安維持ヲ全部委シテシマッテ
  宜シイカドウカト云フ段ニナリマスト、是
  ハ今後ノ狀況ニ依ッテ變化致スノデアリマ
  シテ、今日ヨリ豫測ハ出來ナイノデアリマ
  ス、此點ニ付キマシテハ今遽ニ確答ヲ申上
  ゲ兼ネマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=63

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• 064・山崎釼二

  ○山崎釼二君　各大臣ノ御答辯ニハ不滿デ
  ゴザイマス、仍テ委員會ニ於テ詳細ニ質問
  致スコトニ致シマシテ、此程度デ質問ヲ打
  切リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=64

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• 065・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　是ニテ質疑ハ終了
  致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
  ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=65

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• 066・服部崎市

  ○服部崎市君　日程第一及ビ第二ノ兩案ハ
  一括シテ議長指名三十六名ノ委員ニ付託ス
  ルコトトシ、直チニ委員ヲ指名セラレンコ
  トヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=66

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• 067・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=67

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• 068・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシク、直チニ
  委員ヲ指名致シマス
  北支那開發株式會社法案外一件委員
  山道襄一君粟山博君
  西田郁平君高田耘平君
  堤康次郞君前田房之助君
  〓水德太郞君宮澤胤勇君
  村松久義君喜多壯一郞君
  岡野龍一君田村秀吉君
  小林三郞君小林房之助君
  小高長三郞君小谷節夫君
  葉梨新五郞君田代正治君
  松岡俊三君庄司一郞君
  植原悅二郞君小笠原三九郞君
  田中好君田中源三郞君
  高橋圓三郞君原惣兵衞君
  東〓實君窪井義道君
  伊豆富人君赤松克麿君
  長谷長次君河野密君
  田原春次君前川正一君
  道家齊一郞君木村武雄君
  只今指名致シマシタ委員諸君ハ、是ヨリ第
  二委員室ニ參集シ、委員長及理事ノ互選ヲ
  行ヒ、引續イテ審査ニ著手セラレンコトヲ
  望ミマス-日程第三兌換銀行劵ノ保證發
  行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案ノ第一讀
  會ヲ開キマス-大藏政務次官太田正孝君
  第三兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨
  時擴張ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會
  兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
  ニ關スル法律案
  兌換銀行券條例第二條第一一項及第四項中
  十億圓トアルハ當分ノ內之ヲ十七億圓ト
  ス
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
  スルモノトス
  〔政府委員太田正孝君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=68

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• 069・太田正孝

  ○政府委員(太田正孝君)　只今議題トナリ
  マシタ兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴
  張ニ關スル法律案ニ付テ、其提案ノ理由ヲ
  御說明申上ゲマス、本法律案ハ今囘ノ事變
  ニ關聯致シマシテ、兌換銀行劵發行高ノ增
  加スル趨勢ニ對處致シマスル爲メ、今後當
  分ノ間兌換銀行劵ノ保證發行限度ヲ七億圓
  ダケ擴張シ、之ヲ十七億圓ト爲サントスル
  モノデアリマス、兌換銀行劵條例ニ依ル現
  行ノ保證發行限度十億圓ハ、昭和七年七月
  ニ一億二千万圓カラ擴張セラレタモノデア
  リマス、其後我國ノ經濟界ハ各方面共漸次
  發展ヲ續ケ、之ニ對應致シマシテ、兌換銀
  行劵ノ發行高ハ年ト共ニ增加ノ勢ニアリマ
  シタガ、殊ニ昨年支那事變ノ勃發ヲ見マス
  ルヤ、軍需ノ急增ニ伴ヒマスル一般經濟活
  動ノ急激ナル膨脹ニ依リマシテ、兌換銀行
  劵ノ發行高モ著シク增加シ、屢〓制限外發行
  ヲ出現スルニ至ッタノデアリマス、而シテ今
  後ニ於ケル兌換銀行劵發行高ノ趨勢ヲ推シ
  測ッテ見マスルニ、事變ニ關聯シテ色々ノ經
  濟活動ハ依然膨脹シ、之ニ伴ッテ兌換銀行劵
  ノ發行高モ益〓增加スルモノト考ヘラレマス、
  仍テ此際臨時ニ保證發行限度ヲ相當擴張ス
  ルヲ適當ト認メマシテ、本案ヲ提出致シタ
  次第デゴザイマス、何卒愼重御審議ノ上速
  ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ御願致シマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=69

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• 070・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　本案ノ審査ヲ付託
  スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=70

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• 071・服部崎市

  ○服部崎市君　本案ハ議長指名二十七名ノ
  委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=71

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• 072・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=72

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• 073・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  そく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=73

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• 074・服部崎市

  ○服部崎市君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽テ此際政府提出、硫酸ア
  ンモニア增產及配給統制法案ヲ議題ト爲シ、
  委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラレン
  コトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=74

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• 075・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=75

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• 076・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-硫
  酸アンモニア增產及配給統制法案ノ第一讀
  會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
  ス-委員長寺田市正君
  硫酸アンモニア增產及配給統制法案
  (政府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報〓書
  一硫酸アンモニア增產及配給統制法案
  (政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十九日
  委員長寺田市正
  衆議院議長小山松壽殿
  希望條項
  一、政府ハ速ニ化成肥料配合肥料等ニ對
  シ適當ナル統制ノ方策ヲ講ジ肥料價格
  公正化ノ徹底ヲ期スベシ
  二政府ハ重要肥料ノ價格公定ニ關スル
  公正妥當ナル客觀的基準ヲ設定シ且ツ
  公定價格ノ純粹化ニ努メ肥料價格ノ適
  正ヲ期スベシ
  三、政府ハ肥料ニ對スル行政機關統一ト
  共ニ現下肥料界ノ實情ニ卽應スル肥料
  行政ノ遂行ニ遺憾ナキ態勢ヲ整備スベ
  シ
  四、政府ハ新設日本硫安株式會社ニ對シ
  可及的速ニ硫安生產施設ヲ爲サシメ國
  內ニ對スル硫安ノ豐富低廉ナル供給ト
  海外輸出ノ促進ヲ圖ルベシ
  五、政府ハ速ニ過燐酸及加里肥料ノ供給
  確保竝ニ價格ノ公正ヲ期スベキ對策ヲ
  樹立實行スベシ
  〔寺田市正君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=76

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• 077・寺田市正

  ○寺田市正君　只今上程サレマシタ硫酸「ア
  ンモニア」增產及配給統制法案ニ付キ、委員
  會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、委員
  會ヲ開キマスルコト五囘、終始熱心且ツ愼
  重ナル審議ヲ遂ゲマシタ、御承知ノ通リ本
  案ハ硫酸「アンモニア」增產促進ニ關スル規
  定ト、其配給統制施設ニ關スル規定ヨリ成ッ
  テ居ルノデアリマス
  先ヅ增產ニ關シマシテハ、本法施行後五
  箇年間ニ、硫酸「アンモニア」製造設備ノ新
  設又ハ增設ヲ致シマス者ニ對シ、其設備ヲ
  以テ營ム硫酸「アンモニア」製造事業ニ付
  キ、事業開始ノ年ヨリ五箇年間、所得稅、
  營業收益稅及ビ地方稅ヲ免除シマシテ、又
  事業ニ必要ナル器具、機械ノ輸入稅ヲ免除
  致シマス、又右事業ハ土地收用法ニ依リ、
  土地ヲ使用又ハ收用シ得ル事業トシテ同
  法ヲ適用シ、資金調達ノ便宜ヲ得セシムル
  爲メ、右事業ヲ行フ株式會社ニハ、株金拂
  込前ノ增資ヲ認メマシテ、及ビ社債發行限
  度ヲ擴張スル等ノ保護助成ヲ與ヘマスト共
  ニ、必要ニ應ジ硫酸「アンモニア」製造業者
  又ハ日本硫安株式會社ニ對シ、製造設備ノ
  新設、增設又ハ改良ヲ命ジ得ルコトトシテ、
  右命令ニ依リ生ジタル損失ハ、政府ニ於テ
  之ヲ補償スルコトト致シテ居ルノデアリマ
  ス
  次ニ硫酸「アンモニア」ノ配給統制ニ關シ
  マシテハ、其配給統制機構ノ確立ヲ圖リマ
  スコトガ、極メテ緊要ナルモノト認メラレ
  マスノデ、現ニ臨時肥料配給統制法ニ依リ、
  硫酸「アンモニア」ノ配給統制事業ヲ行ヒ
  ツヽアル硫安配給ノ機構ヲ、恆久的制度ト
  致シマシテ、整備スルノ趣旨ニ依リマシテ、
  日本硫安株式會社ナル資本金一千万圓ノ特
  殊會社ヲ設立セシメ、硫酸「アンモニア」ノ
  配給統制事業ヲ完全ニ遂行セシムルト共ニ、
  民間ニ於ケル增產ノ進捗狀況ニ照シ、必要
  アル場合ハ、硫酸「アンモニア」ノ製造、其
  他供給確保上必要ナル事業ヲモ行ハシムル
  コトト致シ、又日本硫安株式會社ニ對シテ
  ハ、資金調達ノ便宜ヲ得セシムル爲ニ、資
  本增加竝ニ社債ノ募集ニ付キ、商法ノ特例
  ヲ設ケテ、特ニ社債ニ付テハ其元利ノ支拂
  ヲ政府ニ於テ保證スル等ノ保護特典ヲ與ヘ
  ルト共ニ、是ガ指導監督ヲ嚴ニスル爲ニ、
  事業遂行上重要ナル事項ニ付テハ政府ノ認
  可ヲ受ケシメ、又利益ノ配當ヲ制限スルコ
  トト致シテ居ルノデアリマス、更ニ硫酸「ア
  ンモニア」製造業者等ハ、其製造又ハ取扱
  ニ係ル硫酸「アンモニア」ヲ、日本硫安株式
  會社ニ對シ、賣渡スベキ旨ノ規定ヲ設ケテ
  居ルノデアリマス
  ソコデ斯ウ云フ重要ナ法案デゴサイマシ
  タガ故ニ、委員會ニ於キマシテハ、政府當
  局トノ間ニ種々質疑應答ヲ重ネタノデア
  リマスガ、其詳細ノ點ニ付テハ、速記錄ニ
  依ッテ御承知ヲ願フコトト致シマスガ、唯
  其中一二點重要ノ質疑應答ノミヲ此處ニ
  申上ゲテ置キマス、是ハ最モ肝要ナコト
  デアリマス、肥料行政ノ機構ノ問題ニ付
  キマシテハ、從來農林、商工兩省ノ共同
  主管ニナッテ居ッタノデ、種々不便、弊害
  ガアッタノデアリマスガ、之ヲ統一シ、
  更ニ肥料行政機關ノ整備擴充ヲ爲スノ考
  ハナイカト云フ質問ニ對シマシテ、特ニ吉
  野商工、有馬農林兩大臣ヨリ、肥料行政ハ
  今後之ヲ統一シテ、農林省ノ專管トスルコ
  トニ決定致シテ居ル(拍手)又其肥料行政機
  關ノ整備擴充ニ付テモ、善處スルト云フ
  御答辯ガゴザイマシタ、今一ツハ監督官
  廳ノ官吏タリシ者ガ、其監督下ニ在ル會社
  ニ入ルコトニ付テハ、種々ノ弊害ヲ伴フ場
  合ガアルカラ、此點ニハ十分留意セラレタ
  シトノ御意見ノ開陳ガアリマシタガ、之二
  對シ政府ハ其御趣旨ヲ能ク體シマシテ、善
  處スベキ旨ノ答辯ヲ致シテ居リマス、斯ク
  テ質疑ヲ終局致シマシテ、討論ニ入リ、先
  ヅ民政黨ノ岡田喜久治君、政友會ノ西川貞
  一一、第一議員倶樂部ノ陣軍吉君、社會大
  衆黨ノ杉山元治郞君等ヨリ、何レモ原案ヲ
  贊成シ、且ツ左ノ希望條項ヲ述ベラレタノ
  デアリマス、今玆ニ之ヲ朗讀致シマス
  民政黨ノ岡田君カラ提出セラレマシタ希
  望條項
  政府ハ速ニ化成肥料配合肥料等ニ對
  シ適當ナル統制ノ方策ヲ講ジ肥料價格
  公正化ノ徹底ヲ期スベシ
  ニ、政府ハ重要肥料ノ價格公定ニ關スル
  公正妥當ナル客觀的基準ヲ設定シ且ツ
  公定價格ノ純粹化ニ努メ肥料價格ノ適
  正ヲ期スベシ
  三、政府ハ肥料ニ對スル行政機關統一ト
  共ニ現下肥料界ノ實情ニ卽應スル肥料
  行政ノ遂行ニ遺憾ナキ態勢ヲ整備スベ
  シ
  四、政府ハ新設日本硫安株式會社ニ對シ
  可及的速ニ硫安生產施設ヲナサシメ國
  內ニ對スル硫安ノ豐富低廉ナル供給ト
  海外輸出ノ促進ヲ圖ルベシ
  五、政府ハ速ニ過燐酸及加里肥料ノ供給
  確保竝ニ價格ノ公正ヲ期スベキ對策ヲ
  樹立實行スベシ
  此希望條項ニ付テハ、政友會ノ西川貞一君
  モ、第一議員倶樂部ノ陣軍吉君モ、共ニ御
  贊成ニ相成リマシタ
  其次ニ又社會大衆黨ノ杉山君カラ、希望
  條項ヲ御提出ニナリマシタ、其希望條項ハ
  硫安竝ニソレ以外ノ肥料ニ對シテモ
  豐富低廉ニナル樣配給制度ヲ確立スベ
  シ
  二、硫安ヲ原料トスル化成竝ニ配合肥料
  ニ對シテモ價格許可制ヲ實施スベシ
  三、本法案第三十一條ニ依ル政府ノ許可
  價格ノ決定ニ際シテハ價格委員會ヲ設
  置スルヤウニシ其ノ委員ニ消費者タル
  農民代表ヲ參加セシムベシ
  四、本法案第十七條ニ依ル日本硫安株式
  會社ノ重役ニハ消費者代表ヲモ選任ス
  ベシ
  五、政府ガ現下ノ情勢上肥料國策確立ノ
  急務ナルニ鑑ミ肥料國營案ヲ次期議會
  ニ提出スベシ
  六、肥料檢査官ノ充實向上ヲ圖リ肥料檢
  査上遺漏ナキヤウニスベシ(拍手)
  斯ウ云フ希望條件ガゴザイマシタ、次イデ
  採決ニ入リマシテ、其結果全員一致原案ヲ
  可決致シマシタ、此段御報告申上ゲマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=77

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• 078・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　本案ノ第二讀會ヲ
  開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=78

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• 079・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=79

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• 080・服部崎市

  ○服部崎市君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=80

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• 081・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=81

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• 082・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  硫酸アンモニア增產及配給統制法案
  第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=82

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• 083・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
  通リ可決確定致シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=83

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• 084・服部崎市

  ○服部崎市君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際政府提出、臨時農
  村負債處理法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
  告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=84

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• 085・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=85

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• 086・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、臨時
  農村負債處理法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマ
  ス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長村
  上國吉君
  臨時農村負債處理法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一臨時農村負債處理法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和十三年三月十九日
  委員長村上國吉
  衆議院議長小山松壽殿
  〔村上國吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=86

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• 087・村上國吉

  ○村上國吉君　只今上程サレマシタ臨時農
  村負債處理法案ノ委員會ニ於ケル審議ノ經
  過竝ニ結果ヲ、極メテ簡單ニ御報告申上ゲ
  マス、此法案ハ事變下ニ於ケル對策トシテ
  極メテ緊急ナル法案デアリマスノデ、委員
  會ハ昨日ト今日ノ兩日ニ亙リ、委員各位ノ
  熱心ナル審議ガ行ハレタノデアリマス、本
  法ノ目的ト致シマス所ハ、支那事變等ニ因
  ル戰死傷者遺家族ノ經濟更生ヲ圖ル爲ニ、急
  速ニ其負債ノ整理ヲ爲サシムルコトヲ目的
  ト致シマシテ、從來ノ農村負債整理制度ヲ
  若干擴充致シマシテ、臨時農村負債處理制
  度ヲ立テントスルノデアリマス、卽チ此制
  度ノ要點トスル所ハ、第一ニ負債整理組合
  ノ設立ヲ見ルニ至ラナイ農山漁村ニ於キマ
  シテモ、是等ノモノニ對シマシテ負債整理
  ヲ爲サシムル途ヲ開クコトデアリマス、第
  二ハ、道府縣ニ臨時負債處理委員會ヲ設置
  致シマシテ、必要トスル負債整理ノ處理ヲ
  爲サシムルノデアリマス、第三ハ負債處
  理資金ノ特別融通ニ對シテ、國庫ヨリ損失
  補償ヲ爲スコトト致シマシテ、其割合ノ限
  度ヲ從來ノ制度ノ二倍ニ擴張スルコトニ致
  シテ居ルノデアリマス
  本法制定ノ趣旨ニ付キマシテハ、委員各
  位ニ於キマシテモ何レモ贊意ヲ表セラレタ
  ノデアリマスガ、次ノ諸點ニ付キマシテ質
  疑應答ガ交サレタノデアリマス、第一ニ
  本制度ノ適用ヲ農山漁村ニ限ル理由ハ如何、
  都市ノ戰死傷者遺家族ノ負債整理ノ方策ヲ
  講ズル必要ナキヤト云フ點デアッタノデア
  リマス、政府ヨリハ、農村ト都市ノ負債ノ
  性質ヨリシマシテ、都市商工業者ニ對スル
  モノハ、政府ニ於テ別ニ考ヘテ居ル筈デ、
  本制度ハ農村ノミニ適用スルコトトシタル
  旨ノ答辯ガアリマシタ、第二ニ、日本勸業
  銀行等ノ貸付債權ニ對スル條件ノ緩和其他
  ニ關シテ、質疑應答ガ重ネラレタノデアリ
  マスガ、政府ヨリハ十分善處スル旨ノ答辯
  ガアリマシタ、第三ニハ、本制度ヲ廣ク出
  征軍人一般ニ及ボシテハ如何トノ質問ガア
  リマシタガ、之ニ對シテ政府ヨリハ、般
  出征軍人ノ負債整理ハ現行制度ノ普及促
  進ニ依リ、其遺憾ナキヲ期スル方針デアル
  トノ答辯ガアリマシタ
  次イデ討論ニ入リマシテ、各派ヲ代表シ
  テソレ〓〓原案贊成ノ意見提出ガアリ、尙
  ホ希望意見ト致シマシテ、本法適用範圍ヲ
  擴ムルコト、特殊銀行ヲ督勳スルコト等ニ
  付テ述ベラレタノデアリマス、最後ニ採決
  ニ入リ、全會一致ヲ以テ原案ヲ可決致シマ
  シタ、何卒委員會決定ノ通リ、可決セラレ
  ンコトヲ希望致シマシテ御報告ト致シマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=87

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• 088・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　本案ノ第二讀會ヲ
  開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=88

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• 089・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=89

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• 090・服部崎市

  ○服部崎市君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=90

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• 091・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=91

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• 092・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マい、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  臨時農村負債處理法案
  第二讀會(確定議)
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=92

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• 093・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
  ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=93

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• 094・服部崎市

  ○服部崎市君　殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
  ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=94

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• 095・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　服部君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=95

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• 096・金光庸夫

  ○副議長(金光庸夫君)　御異議ナシト認メ
  マく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
  議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
  日ハ是ニテ散會致シマス
  午後七時十八分散會
  衆議院議事速記錄第二十七號中
  正誤
  頁段行誤正
  六二八二三相撲奬勵相撲道奬勵
  六二九頁三段三五行ノ次ニ左ノ三行ヲ加フ
  輸出人造絹織物ノ生產統制改善ニ關スル建議
  案
  提出者添田敬一郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03119380319&spkNum=96

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