1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十三年三月二十二日(火曜日)
午後一時十六分開議
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議事日程 第三十一號
昭和十三年三月二十二日
午後一時開議
質問
一 青年學校義務制度實施に關する質問(庄司一郎君外一名提出)
二 小串鑛山慘事に關する再質問(須永好君外一名提出)
三 新潟縣下雪害豫防竝救濟に關する質問(今成留之助君外四名提出)
四 東北地方振興に關する質問(田子一民君提出)
五 東京市小河内貯水池に關する質問(大野伴睦君提出)
六 宗教に關する質問(曾和義弌君提出)
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第一 昭和十三年法律第六號中改正法律案(昭和十三年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會
第二 商法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 商法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 有限會社法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(輸出入品等に關する臨時措置に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 商業組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 有價證券業取締法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 市街地建築物法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 決議案(石油資源開發に關する件)(菊池良一君外二十二名提出)
第十 航空擴充に關する決議案(多田滿長君外十九名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報〓ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
庄司一郞君外一名提出靑年學校義務制度
實施ニ關スル質問ニ對スル答辯書
須永好君外一名提出小串鑛山慘事ニ關ス
ル再質問ニ對スル答辯書
今成留之助君外四名提出新潟縣下雪害豫
防竝救濟ニ關スル質問ニ對スル答辯書
田子一民君提出東北地方振興ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
大野伴睦君提出東京市小河內貯水池ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
曾和義弌君提出宗〓ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
(以上三月二十二日受領)
靑年學校義務制度實施ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月五日
提出者庄司一郞
外一名
靑年學校義務制度實施ニ關スル質問
主意書
政府ハ昭和十三年一月十一日ノ閣議ニ於
テ全國公私立一萬七千二百二十餘ノ靑年
學校ニ昭和十四年度ヨリ斷然義務制度ヲ
實施スルコトニ決定セリト謂フ而シテ其ノ
義務制施行ニ關スル趣旨ノ一端ハ本年一月
二十六日內閣情報部發行ノ週報第六十七
號誌上ニ於ケル文部省公表ニ依テ其ノ〓
要ハ了解セル所ナルモ政府ハ單ニ昭和十
三年度ヲ準備期間ニ充テ善處スト謂フノ
ミニシテ此ノ劃期的大變革ニ直面シ何等
具體的ノ抱負、經綸、方途等ヲ示ササル
爲又靑年學校〓育費、國庫補助增額問題
等ニ關シテハ些カモ發表ナキニ依リ今ヤ
道、府縣、市町村等ノ同校管理者、〓育
關係者等ニ於テハ幾多ノ疑問、不安裡ニ
彷徨シツツアリ其ノ義務制實施計畫上ニ
モ見透シ不明ニシテ對策ヲ講ズルニモ二
ノ足ヲ踏ムト謂フ狀態ニ在リ是レ左ノ重
要關聯事項ニ關シテ政府ノ所信ヲ質サム
トスル所以ナリ
一靑年體位ノ向上ヲ達成セムカ爲ニ體
育ヲ一層奬勵シ就中各實務勤勞ニ携ル
生徒ノ疾患、體格發育上ノ不均整等ノ
矯正上靑年學校令ニ依リ校醫ヲ絕對ニ
設置セシメタキモノナルカ政府ノ所信
如何現時ノ如キ全國一萬七千二百餘校
ニ對シテ僅々四千五百餘名ノ校醫ノ設
置狀態下ニ在リテハ實ニ靑年體位ノ爲
憂慮ニ堪ヘサル所ナリ政府カ同校義務
制施行ニ直面シテ其ノ對策如何
二靑年學校ノ〓育ヲ擴充强化シ內容ノ
改善ヲ效果的タラシムル一方策トシテ
ハ同校専任〓員ヲ優遇スルコトモ急務
ナリト信ス然ルニ現在專任〓員數公立
二萬餘人中僅ニ五十名程度ノ奏任待遇
者ヲ有スルニ過キス今少シク〓員優遇
ノ道ヲ講シ以テ公民、修身、職業各科
へ優秀〓育者ヲ招聘シ得ルヤウ改善ノ
方途ナキヤ
三靑年學校ハ一面ニ於テ國民皆兵主義
ノ建前ヨリ國家ノ干城訓練所ナリト謂
フヘシ然ルニ同校軍事〓練指導員ハ一
箇年二百三十時間ヲ〓練指導シテ全國
平均ノ一人一箇年ノ手當ハ僅々三十圓
内外ナルヲ以テ一定制服、軍靴、「ゲー
トル」、靴下等ノ實費支拂ニモ困難ナル
狀態ニ在リ仍テ手當ノ適當增額ハ勿論
被服一切ノ現物給付ヲ妥當ト思料スル
カ政府ノ意圖如何特ニ陸軍省ニ於テ補
助的意味ニ於テ支給ノ意思ナキヤ
四靑年學校ノ義務制實施ニハ必然的ニ
同校〓育費ノ相當增額ヲ免ル能ハス恐
ラクハ推定〓算ニ於テ現在ノ三千二百
九十一萬圓ノ倍加ヲ要スルヤモ知レス
果シテ然ラハ靑年學校ヲ直接經營スル
市町村ノ財政上一大困難ヲ招來スルヤ
明白ナリ政府ハ現在ノ四百萬圓程度(總
經費ノ一割二分)ノ國庫補助額ヲ幾何程
度ニ增額スルノ計畫ナリヤ
五政府ハ靑年學校ノ義務制ト謂フ重大
ナル學制改革ニ直面シテ何等〓育審議
會ニ諮問スルノ擧ニ出テサルハ所謂官
僚獨善ノ甚シキモノニアラスヤ如上第
一項乃至第四項マテノ內容ノ如キハ特
ニ審議會ニ諮問シテ國民ノ要望ヲ聽ク
ノ必要アルニアラスヤ
本員ハ靑年學校ノ擴充强化、〓育內容ノ
刷新改善、義務制ノ實施等ニ關シテ深キ
關心ヲ以テ有ユル機會ニ政府ニ進言獻策
ヲ怠ラス協力以テ靑年〓育ノ實績ヲ顯著
ナラシメムトスル信念ヨリ本質問ヲ爲ス
次第ナリ
右及質問候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員庄司一郞君外一名提出靑年學
校義務制度實施ニ關スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員庄司一郞君外一名提出靑年
學校義務制度實施ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
一、靑年學校ニハ學校衞生ニ關スル職務
ニ從事セシムル爲學校醫ヲ設置セシム
ルヲ原則トナスモ特別ノ事情アル場合
ニ於テハ當分ノ內之ヲ設置セザルヲ得
ル規定ナリ從テ文部省ニ於テハ靑年學
校制度ノ實施ト共ニ之ガ設置ヲ奬勵シ
ツヽアリ然レドモ未ダ之ガ普及徹底ヲ
見ザルヲ以テ靑年學校〓育義務制實施
ニ伴ヒ一層其ノ設置ニ付努力スル意圖
ナリ
二、靑年學校專任〓員ノ待遇ノ向上ヲ圖
ルハ極メテ緊要事ナリ政府ハ財政其他
ノ事情ノ許ス限リ之等專任〓員ノ待遇
ノ向上ニ力メントス
三、靑年學校〓練科擔當ノ〓員ガ極メテ
菲薄ナル待遇ニ甘ンジテ其ノ本務ニ盡
瘁セラルルノ勞ハ洵ニ多トスル所ナル
モ多數ノ之等〓員ニ對シ被服一切ヲ現
物給付ヲ爲スコトハ今遽ニ實現困難ナ
リト思料セラル尙其ノ待遇改善ニ關シ
テハ將來一層考究セントス
四、靑年學校〓育義務制實施ノ具體的方
法ハ昭和十四年度豫算編成ニ際シテ決
定ノ筈ナルヲ以テ之ニ伴フ諸經費ガ現
在ヨリ如何程ノ增額ヲ來スヤハ今日直
ニ確言致シ難キモ義務制實施ニ伴フ國
家竝ニ地方財政ノ負擔ノ均衡ニ就テハ
十分考慮スル方針ナリ
五、男子靑年ニ對スル靑年學校義務制ノ
實施ハ現下我ガ國諸般ノ情勢ト兵役法
ノ改正ニ關聯シテ一日モ速カニ確立ス
ルノ必要ニ迫ラレグル爲取敢ヘズ閣議
ヲ以テ之ガ實施ノ方針ヲ決定シタルモ
ノニシテ其ノ制度內容等ニ關シテハ〓
育審議會ニ於テ審議セラルルモノナリ
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
大藏大臣賀屋興宜
陸軍大臣杉山元
文部大臣侯爵木戶幸
小串鑛山慘事ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月五日
提出者須永好
外一名
小串鑛山慘事ニ關スル再質問主意書
昭和十二年十二月二十七日本員等ノ提出
セル首題ノ質問主意書ニ對シ去ル二月十
五日懇篤ナル答辯書ヲ受領シ感謝ニ堪ヘ
ス併シナカラ右答辯書ハ尙ホ本員等ヲ納
得セシメサル點アリ玆ニ重ネテ下記事項
ニ付答辯ヲ求ム
小串鑛山慘事ノ原因ニ付テハ詳細ナ
ル答辯書ヲ得タルモ政府ノ調査ノ結果
得タルカ如キ右慘事原因ハ今日ノ科學
ヲ以テシテハ豫知シ得ルモノト思料セ
ラルルカ政府ノ所見如何
二鑛業用建設物及工作物設置ニ付テハ
鑛業法規ニ依レハ設置場所、建物ノ設
計〓要及附近ノ地形、地目等ヲ明カニ
シ且ツ之ヲ圖示スヘキ旨規定ス政府ハ
「小串鑛山ノ製鍊所及鑛夫住宅ニ就テ
モ夫々正規ノ手續ニ依ル」旨答辯セラ
レタルモ本員等ノ質問書ニ於テハ「地
形」ノミナラス「地質」ヲ考察セラレタ
ルヤ否ヤニ迄言及シタル次第ニシテ同
地ノ「地質」ニ付テ豫メ政府當局カ考察
セラレタルヤ否ヤ右答辯書ニ於テ曖昧
トセラレ居ルハ遺憾ノ極ミナリ將來災
害防止ノ爲鑛業用建設物設立ニ當リ
テハ「地質」ヲ考慮セラルルヤ否ヤ
三小串鑛山慘事ノ犠牲者數ハ二百四十
四名ノ多數ニ上リ其ノ中旣ニ遺骸發掘
ヲ終リタルモノ二百二十三ニシテ今日
尙ホ二十一體ノ遺骸ヲ地下ニ埋メ居ル
狀態ナリ而シテ本員等カ奇怪ナルコト
ト思ハサルヲ得サルハ左ノ二點ナルヲ
以テ明確ナル答辯ヲ求ム
1一月二十日鑛山監督局長島技師、
小串鑛山副主任大島鶴吉、同中村末
吉三氏ノ遺骸ヲ發掘シ終ルヤ同月二
十三日鑛山局ノ命令トシテ爾後ノ發
掘ヲ打切リタルカ果シテ鑛山局ハ發
掘打切ノ指令ヲ發シタリヤ否ヤ若シ
發シタリトセハ殘レル遺骸ニ對シ如
何ナル措置ヲ今後執ラシメムトスルヤ
2未發掘ノ遺骸カ今日尙一一十一體ヲ
算フルコトハ前記ノ通ナルカ警察當局
ハ前記發掘打切後既ニ發掘セラレタ
ル氏名不詳ノ遺骸六十體ヲ殘餘ノ未
發掘ノ二十一體ニマテ分骨シ且ツ未
發掘ノ二十一名分ノ壓死檢死調書ヲ
作成シタリ此ノ經緯ヲ以テ推察スル
ニ當局ハ殘餘ノ遺骸發掘ヲ永久ニ打
切リタルモノト思ハルルカ如何又未
發掘犧牲者ニ檢死調書ヲ作成スル行
爲ハ果シテ適法ノモノナリヤ否ヤ
右及質問候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員須永好君外一名提出小串鑛山
慘事ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員須永好君外一名ノ提出ニ係
ル小串鑛山慘事ニ關スル再質問主意書
ニ對スル答辯書
一ニ關シテ
本災害ハ全然不可抗力ニ起因スルモノ
ニシテ今日ノ所科學ノ力ヲ以テスルモ
到底豫知シ得ザリシモノナリ
二ニ關シテ
現行鑛業法及鑛業警察規則ニ於テハ鑛
業用建設物及工作物ノ設置ニ際シ其ノ
敷地ノ地質ニ付テ特ニ調査ヲ爲スベキ
旨ノ規定存セザルモ問題ノ小串鑛山ノ
製鍊場及鑛夫住宅ニ就テハ其ノ鑛山地
帶ノ地形ニ鑑ミ特ニ頻發スルコトアル
ベキ雪崩等ノ災害防止ニ付充分ノ考慮
ヲ拂ヒタル上別段支障ナキモノト認メ
其ノ使用ヲ許可シタルモノナリ災害防
止ノ見地ヨリ見ルトキハ此種建設物及
工作物ノ敷地ノ地質ニ就テモ調査ヲ爲
スコトノ必要ナルハ明ナルヲ以テ技術
上種々困難ナル點アルモ今後此ノ點ニ
付テモ能フ限リ考慮スル方針ナリ
三ニ關シテ
1本災害ノ發生直後當局ニ於テハ崩
壞現場ヲ詳細ニ實査シタル結果流出
土砂ノ堆積セル區域全部ニ涉リ發掘
ヲ爲スニ於テハ再崩壞ヲ見ルノ虞ア
ルヲ以テ一定ノ危險區域ヲ指定シ該
區域ハ絕對ニ之ヲ發掘セシメザルコ
トトシ〓爾ノ安全ナル區域ニ付至急
發掘スベキ旨ヲ指示シタリ爾來會社
側ニ於テハ銳意發掘作業ニ從事シ
豫定區域ノ發掘ヲ完了シタルガ今後
更ニ作業ヲ繼續スルコトトセバ曩ニ
指定シ置キタル危險區域ヲ發掘スル
ノ外ナク直ニ再崩壞ヲ惹起スルノ危
險ヲ敢テ冒スコトトナルヲ以テ之ヲ
打切ラシムルモ亦已ムヲ得ザルモノ
ト思料シタルモノナリ
2右ノ如キ事情ノ下ニ發掘作業ヲ打
切ルノ已ムナキニ至リタルガ未ダ屍
體ノ發掘セラレザルモノ尙殘存スル
モノト推定セラル而シテ之等ノ者ノ
遺族ハ弔慰金ノ受取等ノ爲會社側ニ
對シ發掘屍體ヲ分骨シ速ニ本件ヲ收
拾スベキ旨ヲ要望シタルヲ以テ會社
側ニ於テモ種々協議ノ結果發掘セラ
レタル身元不詳ノ遺骨ヲ分骨シ一應
本件ヲ收拾スルコトトシタル次第ナ
リ
右ノ如キ狀況ニシテ遺族等ハ何レモ
警察署ニ請書ヲ提出シ分骨ニ依ル檢
視ヲ願出タルヲ以テ所轄警察署ニ於、
テモ事情已ムヲ得ザルモノト認メ右
請書ヲ受理シ檢視ヲ了シタルモノナ
リ
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
商工大臣吉野信次
內務大臣末次信正
新潟縣下雪害豫防竝救濟ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月七日
提出者今成留之助
外四名
新潟縣下雪害豫防竝救濟ニ關スル質
問主意書
新潟縣ハ日本海ニ面シ雨量多ク他縣トノ
境界ニアル東南方ノ山嶽ニ圍マレ冬期ニ
入リテハ銀世界ト化シ海岸ニ面シタル僅
カノ部分ヲ除ケハ其ノ降雪量ハ五十尺乃
至八十尺ニ及フ豪雪ニシテ我カ國第一ノ
降雪量タルコトハ統計上明白ナル事實ナ
リ此ノ多量ノ降雪ノ爲年々二百萬縣民ノ
受クル被害ハ實ニ甚大ナリシモ長年月ニ
亙リ困苦缺乏ニ堪ヘ忍ヒ來リタルカ昭和
九年及昭和十一年ノ豪雪ニ因ル慘害ハ一
層甚シク之カ對策ニ焦慮一方ナラサリシ
ニ更ニ本年ノ豪雪ト爲リ深雪地方民ハ茫
然トシテ雪地獄ニ呻吟シ居ル窮狀ニシテ
此ノ地方ノ實情ヲ知ラサル人ニハ想像モ
及ハサル慘狀ナリトス是等豪雪ノ被害ハ
年々人畜ノ死傷ヲ招キ生活ノ不安ハ素ヨ
リ保健衞生上ニモ及ホス影響少カラサル
ノミナラス〓育上、交通上ノ支障ハ文化
ノ進展ヲ阻害シ產業上ノ被害モ甚大ニシ
テ一々枚擧ニ暇アラスト雖モ重ナル降雪
ノ害トシテハ耕地農道竝灌漑排水路ノ決
壞林木ノ雪折及雪倒、炭竈ノ潰滅、養
魚ノ死滅等ノ被害頗ル多ク融雪期ニ至リ
テハ山野ノ積雪カ一時ニ流出シ降雨モ加
ハリテ洪水ヲ起シ堤防、人道、鐵路ノ決
壞トナリテ家屋、耕地ヲ破壞シ交通ヲ杜
絕スルノミナラス冷水ノ流出ハ越後平野
一帶ノ米作其ノ他農作物ノ成育ヲ妨ケ養
蠶其ノ他ノ副業ヲ遲延セシムル等是等雪
害、水害、冷害ノ頻發ニ因リ農民ノ憂慮
ハ洵ニ同情ニ堪ヘス更ニ商工業者其ノ他
ノ庶民ニ於テハ商品原料ノ減退、契約取引
ノ不能、運搬配給費ノ過重等直接間接ニ
莫大ナル損失ヲ招キ連日連夜除雪ニ忙殺
セラルル狀態ハ縣民ヲシテ生活苦ニ陷ラ
シメ疲勞困憊ノ極自暴自棄ニ陷ラムトス
ルノ傾向ナキニアラス洵ニ痛心ニ堪ヘサ
ル所ナリ
今次支那事變ニ際シ積雪地方ノ縣民ハ
婦人子供ニ至ル迄此ノ豪雪ヲ冒シテ出征
將士ノ送迎ニ、戰病死將士ノ葬祭ニ、傷
病兵ノ慰問ニ、遺家族ノ救護ニ有ユル困
苦ト戰ヒ銃後ノ務ヲ怠ラサルヤウ専念ス
ル有樣ハ淚ナクシテハ到底語ル能ハス斯
ル地方ノ慘狀ニ對シテハ政治上各般ノ施
設ニ付認識ヲ深メラレ之カ豫防救濟ニ最
善ノ努力ヲ施サレツツアリヤ否ヤ更ニ今
後如何ナル方法ニ依リ豫防救濟ノ途ヲ講
セラルル意圖ナリヤ否ヤ主ナル質問ノ要
點ヲ左記ニ揭出シテ內務大臣、大藏大臣、
遞信大臣、鐵道大臣、商工大臣、農林大臣、
文部大臣及厚生大臣各位ノ明快ニシテ同
情アル御答辯ヲ求メムトス
一醫療救護施設ノ途ヲ講セラルルヤ
積雪地方ニ於テハ流行性ノ感冒、眼病
等蔓延シ住民ノ殆ト全部カ冬期間二三
囘必ス罹病シ輕微ナルモノニテ一週
間、稍〓重重ナルモノハ二三箇月間之ニ
冒サルル狀態ニシテ小學校ノ如キハ全
兒童感染シ爲ニ一二週間体校ノ止ムナ
キニ至ルモノ多ク之カ被害モ亦甚大ニ
シテ其ノ對策施設ヲ講スルハ忽セニス
ヘカラス政府ハ各町村ニ醫療施設ヲ完
備セラルルト共ニ各學校ニ救護施設ヲ
完備セラルルノ意思ナキヤ
二義務〓育費國庫下渡金增配ノ方途ナ
キヤ
雪害ニ因ル收入減少ト經費增加トハ民
力ヲ枯渴シ諸稅負擔ニ堪ヘサル者續出シ
町村財政ハ益〓窮迫ノ度ヲ重ネツツアリ
然ルニ町村經費ノ大部分ヲ占ムル義務
〓育費中〓員俸給ハ法令ノ命スル所不
拂ヲ許サス仍テ義務〓育費國庫負擔法
施行令中雪害ニ依ル特別交付金ヲ增額
シ〓員俸給ニ接近スル迄ノ額ヲ支出セ
ラルルノ意思ナキヤ
三積雪ノ爲特ニ要スル〓育施設費ニ對
シ國庫補助ノ途ヲ講セラルルヤ
降雪二〇米ノ當地方ニテハ兒童ノ學校
往復ニ對シ特ニ道踏ヲ要スルハ勿論低
學年兒童歸宅ノ際ハ父兄及〓員ノ附添
ヲ要シ其ノ他莫大ノ費用ヲ要スルヲ以
テ是等ニ對シ雪國地方トシテ特別補助
ノ途ヲ講セラレ尙ホ雪國地方トシテ特
ニ學校衞生方面卽チ流行性感冒及眼病
等ニ對シ或ハ連目ノ大吹雪ニ於ケル兒
童ノ苦ミヲ考慮セラレ冬期休暇其ノ他
衞生施設ノ完備ヲ期セラルルト共ニ施
設ニ對シ相當助成ノ途ヲ講セラルル意
思ナキヤ
四小學校校舍除雪費ニ對シ補助金ヲ交
付セラルル意思ナキヤ
當地方ハ積雪多キ爲兒童ノ通學困難ヲ
感スルヲ以テ各町村共ニ校舍數多ク自
然校舍除雪費多額ニ上リ豪雪ニ當リテ
ハ冬季八囘乃至十囘(平年ハ五六囘)ノ
除雪ヲ要シ其ノ經費既ニ一村平均一千
五百圓ニ達シ町村財政ニ甚大ナル影響
ヲ及ホスヲ以テ之ニ對シ特別補助ノ途
ヲ講セラルルヤウセラレタキコト
五交通被害防止策ヲ講セラルルヤ否ヤ
國縣道ハ豪雪ノ爲往來ノ絕ユルコト屢〓
ニシテ交通及物資ノ運搬ニ支障ヲ來ス
コト大ナルヲ以テ雪道開通費ニ對シ相
當助成セラレ且ツ積雪ノ爲數十日ニ亙
ル間交通杜絕スル箇所多ク加之人命ニ
及ホスコト往々アルヲ以テ之カ恆久施
設トシテ「スノーセツト」ノ如キ適切ナ
ル施設ヲ講セラルルノ方途ナキヤ
六道路橋梁其ノ他ノ工作物破損ニ對シ
對策ヲ講セラルルヤ否ヤ
本冬ノ降雪量ハ頗ル多ク爲ニ水路河川
ノ出水甚シク道路堤塘ノ破壞、橋梁ノ
流失等極メテ多カルヘシ然ルニ當地方
民ハ雪害ニ因リ收入激減セルノミナラ
ス除雪ニ費シタル出費甚大ナルヲ以テ
稅負擔力著シク減退シ是等復舊工事ハ
到底至難ニ付從來ノ例ニ傚ヒ復舊費ノ
四分ノ三ヲ補助金ニ殘金四分ノ一ハ低
利資金ニ依リ救濟セラルル意ナキヤ
七農會活動資金補助ノ途ヲ講セラルル
ヤ
雪害ニ因リ農家收入激減シ加フルニ防
除費等ノ莫大ナル支出ヲ要シ爲ニ農會
費ノ如キハ滯納續出シ今後ノ對策ニ最
モ活動セサルヘカラサル農會カ其ノ活
動ニ支障ヲ來スコト明カナルヲ以テ昭
和九年凶作對策トシテ各町村農會ニ活
動助成金ヲ交付セラレタル例ニ傚ヒ縣
農會ヲ通シテ同シク相當ノ金額ヲ補助
セラルル意ナキヤ
八水稻育苗施設ニ對シ助成スルノ意思
ナキヤ
當地方ニ於ケル普通苗代作業開始ハ四
月中旬ナルモ本年ノ如キハ積雪多量ノ
爲融雪期五月末ヲ豫想セラルルヲ以テ
苗代用地ノ除雪ニ依ラサレハ適期播種
不可能トナリ甚シキ地方ニ於テハ除雪
ニ依ルモ尙ホ育苗困難ナル所相當多ク
委託苗代ニ俟タサレハ育苗シ能ハサル
ヲ以テ其ノ除雪竝委託苗代設置ニ對シ
助成ノ途ヲ講セラレタキコト
九人工消雪助成ノ途ヲ講究セラルル意
思ナキヤ
豪雪ヲ自然ノ儘ニ放任セムカ前項同樣
融雪遲レ水稻(本田)、普通畑作、桑園等
ノ作業著シク遲延シ延テハ是等作物ノ
收量ニ及ホス影響大ニシテ、人工消雪
(土撒キ、溝立、穴掘リ)ニ依リ融雪促
進ヲ圖ルノ外途ナキヲ以テ之カ所要經
費ニ對シ助成ノ途ヲ講セラレタキコト
一〇耕地農道及用水路復舊ニ付助成ノ
途ヲ講セラルルヤ
豪雪ノ爲耕地ノ決壞、農道用水路ノ破
損スルコト多ク耕作上重大ナル支障ヲ
來スヲ以テ之カ復舊助成ノ途ヲ講セラ
レタキコト
一一雪害ニ對スル養蠶機構改革ニ對シ
助成ノ途ヲ講セラルルヤ
年々雪害ニ惱マサレツツアル當地方ニ
於テハ從來ノ個人的經營ニテハ生產ノ
合理化ヲ圖リ得ス之ヲ稚蠶共同飼育所
ノ設置、稚蠶共同桑園ノ設置竝指導員
ノ設置ニ依ル共同飼育ノ實行ヲ圖リ一
面桑ノ雪害ヲ免ルル手段トシテ春蠶三
分、夏秋蠶七分ノ經營ニ之ヲ改革セム
トス然シテ之カ改革ニ當リ春蠶專用桑
園ヲ改植シ春秋兼用、夏秋兼用桑園ニ
改メムトスルヲ以テ稚蠶共同飼育所建
設助成、稚蠶共同桑園設置助成、技術
員設置助成及桑園改植助成等ノ途ヲ講
セラレタキコト
一二桑園ノ整理改植ニ對シ相等助成セ
ラルルノ意思ナキヤ
前例ニ依レハ本冬ノ雪害ニ因リ桑樹ノ折
傷捻挫ハ勿論野鼠及胴枯病ノ被害甚シ
ク七千町歩ノ內春蠶桑園三千五百町步
殆ト全滅ノ慘狀ヲ呈シ本春ノ養蠶ハ半
減若ハ全廢ノ已ムナキニ至ルヘク實ニ
養蠶業者ニ對シ經濟的一大致命傷ヲ與
フルモノト謂フヘシ而モ整理改植ニ要
スル資力ヲ有スル者極メテ少ナク窮狀
見ルニ忍ヒサルモノアリ仍テ被害甚大
ナル桑園ニ對シテハ改植ニ要スル段當
經費六十圓ヲ、其ノ他被害桑園ニ對シ
テハ整理費等段當二十圓ヲ補助スルノ
途ヲ講セラレタキコト
一三病害防除ニ對シ助成ノ途ヲ講セラ
ルル意思ナキヤ
本冬ノ積雪ハ其ノ量多ク而モ其ノ質頗
ル緊密ニシテ融雪ノ時期遲延シ〓灌水
源タル山地ニ於テ最モ遲キヲ以テ漑灌
水ノ溫度低キノミナラス氣溫亦タ低下
スヘシ從テ苗ノ腐敗病、稻熱病ノ發
生猛烈ナルハ火ヲ諸ルヨリ明カナリ其
ノ儘放置スルトキハ昭和九年ノ轍ヲ踏
ムコトトナリ洵ニ寒心ニ堪ヘサルモノ
アリ故ニ之カ對策トシテ苗代ニゴ·ト
ドー液」ノ撒布種籾及苗ノ消毒ヲ勵行
シ萬遺憾ナキヤウ善處スル必要アルモ
是等病害防除ニ要スル經費ハ段當リ六
圓五十錢ヲ要シ窮乏農家トシテハ到底
負擔シ得サル所ナルヲ以テ相當助成ノ
途ヲ講セラレタキコト
一四冬作物全滅ニ依リ相當助成ノ途ヲ
講セラルル意思ナキヤ
雪害ニ依リ菌核病其ノ他ノ病害甚シク
大小麥、紫雲英、蕓苔等ノ冬作物ハ全
滅ノ外ナキヲ以テ之カ代作物及跡作ト
シテ陸稻、甘藷、馬鈴薯、粟、黍等ノ栽
培ヲ極力奬勵スルノ必要アレトモ今春
ニ於ケル播種ニ要スル種サ田被害地ノ後
作トシテ栽培スヘキ種苗等目前必須ノ
購入資金全ク缺乏ノ狀態ナルヲ以テ右
ニ對シ特ニ全額支給ノ途ヲ講セラレタ
キコト
一五果樹被害復舊ニ對シ助成ノ途ヲ講
セラルル意思ナキヤ
降積雪激甚ノ爲柿、栗、葡萄ハ殆ト全
部雪折ト爲リ收穫皆無ニシテ而モ之カ
復舊ニハ尙ホ數年間ヲ要スルヲ以テ果
樹園復活ニ要スル經費ニ對シ補助ノ途
ヲ講セラレタキコト
一六植林地ノ被害ニ對シ復舊費及整理
費ヲ補助セラルル意ナキヤ
雪倒及崩雪ニ因ル林木ノ被害激甚ヲ極
メ之カ復舊ニ要スル人夫賃、繩代等ハ
實ニ莫大ナル金額ニ達スルモノト豫想
セラレ且又雪折林木ノ損失少カラサル
モノアレハ是等復舊費及整理費ニ對シ
テハ特別補助ノ方途ヲ講セラルルヤウ
セラレタキコト
一七炭窯壞滅ニ對シ助成セラルルノ意
ナキヤ
豪雪ノ爲木炭窯破損壞滅シ中產以下ノ
製炭業者ハ之カ修理築造ニ困難ヲ來シ
從テ生計ニ差支ヲ生スルヲ以テ之カ助
成ノ途ヲ講セラレタキコト
八家畜斃死、罹病等ニ關シ救濟ノ途
ヲ講セラルル意ナキヤ
多量ノ積雪ニ因リ甚シク家畜ノ偏食、
運動不足、畜舍不潔、採光不能ヲ來シ
斃死、罹病、流產等極メテ多ク其ノ損
害莫大ナルモノアルヲ以テ畜舍ノ改造
ニ對シテハ其ノ半額ヲ補助シ半額ニ對シ
テハ低利資金融通ノ途ヲ樹テ罹病家畜
ニ對シテハ無料診療ノ施設ヲ講セラレ
タキコト
一九鯉魚斃死ニ對シ對策ヲ講セラルル
意思ナキヤ
當地方ノ農家唯一ノ副業タル養鯉カ長
期間ニ亙ル積雪ノ爲水路ノ不完全ニ因
リ高價ナル觀賞用竝種鯉其ノ他全滅ノ
狀態ニアルヲ以テ用水路改良ニ必要ナ
ル助成、生簀ノ改良ニ必要ナル資金ノ
融通竝助成等ノ方策ヲ講セラレタキコ
ト
二〇政府事業中家庭工業的作業ハ之ヲ
地方ニ行ハシムル途ヲ講セラルル意思
ナキヤ
農村女子ノ副業トシテ現ニ官營ヲ以テ
行ハレツツアル手工業ヲ地方ニ於テ行
ハシメ且ツ小規模組織ニテ出來得ル特
殊事業ハ之ヲ地方ニ分チ製作セシメラ
ルル途ヲ講セラレタキコト
三工場建物除雪費ニ對シ補助金ヲ交
付セラルル意思ナキヤ
當地方ハ降雪多キ爲豪雪ニ當リテハ冬
期間八囘乃至十囘ノ除雪ヲ要シ其ノ除
雪費巨額ニ上リ工場經營頗ル困難ノ狀
態ナリ而シテ多額ノ所要經費ヲ惧レ除
雪ヲ怠ラムカ工場ノ壞滅ハ勿論延テハ
人命ニ及ホス等幾多ノ由々シキ事態ヲ
惹起スルニ至ルコトアルヲ以テ豪雪地
方ノ各種工場ノ發展ヲ期スル爲除雪費
ニ對シ相當補助ノ途ヲ講セラレタキコ
ト
二二臨時地方財政調整交付金增配ノ意
ナキヤ
雪害ニ因リ町村財政ハ益〓收支ノ均衡
ヲ失シ加速度的ニ破綻ノ危機ヲ早メツ
ツアル現狀ナレハ臨時地方財政調整交
付金ニ付テハ豪雪地帶ノ事情ヲ御考慮
ノ上特別增配ノ方途ヲ講セラルルヤウ
セラレタキコト
二三地租取扱方改訂セラルルノ意思ナ
キヤ
地租ハ土地收益ヲ基準ニ取扱方ヲ改訂
シ尙ホ豪雪地帶ニ對シテハ特別取扱ヲ
セラレタキコト
二四所得稅、營業收益稅ノ課稅標準低
下ノ途ヲ講セラルル意思ナキヤ
雪國地方ニ於ケル所得竝營業收益ハ經
營生活ニ苛重ノ經費ヲ要スルヲ以テ
其ノ課稅ニ當リ他地方ト之ヲ區別シ標
準ヲ低下セラレ其ノ負擔ノ均衡ヲ得シ
メラルル途ヲ講セラレタキコト
二五家屋稅特別減免ノ途ヲ講セラルル
意思ナキヤ
豪雪地方ノ家屋ハ耐雪ヲ主眼トシ用材
多ク且ツ頭强宏大ナルモノ多キハ止ム
ヲ得サル所ニシテ而モ冬期除雪ニ勞役
及經費ヲ要スルコト甚大ナルニ鑑ミ特
ニ家屋稅ヲ全免又ハ輕減スル途ヲ講セ
ラレタキコト
二六市街地除雪ヲ國費ヲ以テ助成セラ
ルル意思ナキヤ
降雪二〇米ノ當地方ニ於テハ家屋、道
路ノ除雪費莫大ニシテ殊ニ市街地ニ於
ケル遠方マテ運搬シ或ハ道路ニ築キ上
クル除雪作業ニ付テハ住民ハ之カ爲如
何ニ苦心スルカ商業不振ニ加ヘテ多額
ノ除雪費支拂ニ窮スル狀態ハ洵ニ心痛
ニ堪ヘサル所ニシテ相當助成セラレタ
キコト
二七雪國地方ニ於ケル火災保險料減額
ニ付助力セラルル意思ナキヤ
積雪地方ニ於ケル災火ハ他地方ニ比シ
其ノ類燒殆トナキ爲火災保險料ヲ同一
ニ取扱ハルルハ徒ニ加入者ノ負擔ノミ
苛重スルモノニシテ積雪地方殊ニ豪雪
地方火災保險料ヲ減額セシメラルルヤ
ウ各會社ニ交涉セラルルノ意ナキヤ
二八農業保險制度ノ立案ニ當リ雪害ノ
被害ニ付テモ農業保險ノ途ヲ開カルル
意思ナキヤ
二九積雪地方ノ通信機關ノ擴充ヲ圖リ
通信ノ遲延ヲ防止スル途ヲ講セラルル
意思ナキヤ
三〇降雪ニ因ル鐵道ノ事故防止ニ付今
後如何ナル方途ヲ講セラルル意思ナリ
ヤ
三雪害防止ニ關スル指導竝調査機關
ヲ設置セラルル意思ナキヤ
雪害ニ對スル調査〓究竝指導機關トシ
テ新潟縣農事試驗場堀之內試驗場ヲ國
立試驗場ニ昇格ノ上之ガ擴張ヲ期セラ
ルル意ナキヤ
三二雪害調査員ヲ卽時派遣セラルル意
思ナキヤ
政府ニ於テハ右要望事項ニ付卽時施設
ヲ講セラルルト共ニ豪雪地方ノ實情ヲ
認識セラルル爲各省要路ノ人ヲ急遽派
遣セラレタキコト
右及質問候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員今成留之助君外四名提出新潟
縣下雪害豫防竝救濟ニ關スル質問ニ對シ
別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員今成留之助君外四名提出新
潟縣下雪害豫防竝救濟ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
無醫村ニ對スル醫療機關ノ普及ニ就
テハ昭和十二年度ニ於テ新潟縣ニ對シ
六箇所ノ診療所ヲ配當シタルガ同十三
年度ニ於テモ引續キ若干ノ診療所ヲ配
當シ醫療機關ノ普及整備ニ努ムル考へ
ナリ尙各小學校ニハ現ニ學校醫ノ設置
アリ、又近年學校看護婦ノ設置漸ク普
及セントスル傾向ニアリ學校衞生トシ
テハソレ等ノ機關ヲ督勵シ平素ニ於ケ
ル衞生養護上ノ注意ヲ一層嚴ニシ健康
ノ保持ニ努メシムルトトモニ進ンデ體
位ノ向上ニ關シ〓究竝指導上ニ遺憾ナ
キヲ期セントス
二、雪害ニ依ル被害夥シキ場合ハ當該市
町村長ヨリノ申請ニ基キ義務〓育費國
庫負擔法施行勅令第七條ノ規定ニ依リ
災害直後增加交付金ヲ交付シ又必要ニ
應ジテハ係官ヲ特ニ災害地ニ急派シ其
ノ實狀ヲ調査セシメ義務〓育費國庫負
擔法第四條又ハ第五條ノ規定ニ依ル國
庫交付金ヲ出來得ル限リ增加シ〓員俸
給ノ支拂ニ支障ナキヤウ萬全ヲ盡シツ
ツアルモ尙今後ハ一層留意スルコトニ
致度
三、四、特別補助ノ途ヲ講ズルコトハ將
來篤ト考究スベキモノト認メラルルモ
現在ニ於テモ斯ノ種ノ施設ニ多額ノ經
費ヲ要スル場合ハ義務〓育費國庫負擔
法第四條又ハ第五條ノ規定ニ依リ國庫
交付金ヲ增加シ以テ〓育經費ニ對スル
市村町負擔ノ輕減緩和ニ努メツツアル
モ尙一層此ノ點ニ付テハ考慮致度又暖
房ノ設備、辨當ノ保溫、學校給食防寒
用衣服等ノ配給、〓潔ノ保持、眼ノ衞
生等冬季ニ於ケル學校ノ衞生養護ニ關
シテハ將來一層ノ注意ヲ拂ハシメン
トス
五、國道及府縣道ノ雪害開通費ニ對スル
助成竝「スノーセット」ノ如キ雪害防止
施設ニ付テハ將來篤ト考究スルコトト
致シタシ
六、災害土木費國庫補助ニ依リ復舊費ニ
對シ國庫補助スル見込ナリ
七、雪害ニ對シ農會ニ助成金ヲ交付シタ
ルコトナキモ目下調査員ヲ派シ調査中
ニ付其ノ結果ニ依リ考慮セントス
八、九、三月十四日ヲ期シ係官ヲ派遣シ
雪害狀況ヲ調査セシムルコトト致シタ
ルヲ以テ其ノ調査ノ結果ヲ俟チ之ガ具
體案ニ關シ充分考慮セントス
一〇、雪害等不測ノ天災ニ因リ耕地竝ニ
農道及用水路等耕地ニ關スル施設ノ被
害ハ近年ニ於テ特ニ甚大ナルモノアリ
之等ノ內當該地方ノミノ力ニヨリテハ
復舊困難ト認メラルルモノニ對シテハ
其ノ都度國ヨリ相當ノ助成金ヲ交付シ
テ之ガ復舊ヲ促進シ來レルトコロナル
ガ將來ニ於テモ同一方針ニ基キ遺憾ナ
キヲ期セントス
二、雪害ニ對スル養蠶機構ノ改革トハ
桑園ノ改植ヲ奬勵シテ春蠶三割、夏秋
〓七割ノ經營ニ之ヲ改メシムルト共ニ
稚蠶共同飼育所ノ設置、稚蠶共同桑園
ノ設置及技術員ノ設置等ヲ奬勵シテ從
來ノ個人經營ヲ共同飼育ニ合理化セシ
メ以テ雪害ノ防除輕減ニ資セシメント
スルモノノ如キモ右ノ諸施設ニ對シテ
ハ旣ニ夫々助成シ來レル所ナルヲ以テ
之ガ運營ニ依リ相當效果ヲ收メ得ラル
ルモノト認ム
一二、桑園ノ整理、改植及混作事業ハ昭
和九年度以來養蠶地方施設トシテ計畫
的ニ之ガ助成ヲ成シ來レル所ニシテ明
年度ニ於テモ引續キ助成ヲ爲ス計畫ナ
リ而シテ本冬ニ於ケル桑園ノ雪害ニ關
シテハ今後被害狀況ヲ調査ノ上必要ニ
應ジ之ガ對策考究スベシ
一二、1四、一五、三月十四日ヲ期シ係
官ヲ派遣シ雪害狀況ヲ調査セシムルコ
トト致シタルヲ以テ其ノ調査ノ結果ヲ
俟チ之ガ具體策ニ關シ充分考慮セント
ス
一々、植林地ノ降雪被害ニ付テハ目下調
査中ニ付之ガ完了ヲ俟ッテ適當ニ善處
セントス
一七、炭窯ノ被害ニ付テモ調査ノ上考慮
スペン
一八目下之ガ狀況ヲ調査中ナルヲ以テ
其ノ結果ヲ俟ッテ對策ヲ講ゼントス
一八、縣ニ於テ鯉魚斃死ニ對シ對策ヲ講
ズルニ於テハ副業奬勵費ノ交付等ニ依
リ之ヲ助成セントス
二〇、政府事業中家庭工業的作業ヲ地方
ニ行ハシムルコトニ付テハ篤ト考究セ
ントス
二一、相當多額ノ經費ヲ必要トスルヲ以
テ之ガ實施ニ關シテハ尙愼重攻究ノ要
アルモノト認ム
二二、臨時地方財政補給金ハ雪害地方ノ
如キ特定ノ地域ニ對シ特ニ增率配分ヲ
爲スハ配分方法トシテ適當ナラザルモ
ノト認ム唯實際問題トシテハ眞ニ負擔
ノ過重ナル地方ニ對シテハ配分額ガ多
額トナルベキ配分方法ヲ採用スベキニ
付其ノ結果自然多額ノ配分ヲ受クル見
込ナリ
二三、地租ヲ土地ノ收益ヲ基準トシテ課
稅スルコトハ多大ノ手數ト經費トヲ要
スルヲ以テ實行困難ナリ尙地租ノ課稅
標準タル賃貸價格ハ田畑等ニ付テハ既
往五ヶ年ノ實收小作年ノ平均ニ依リ定
メタルモノナレバ豪雪地帶ニ於ケル災
害等ノ特殊事情ハ十分表顯セラレ居ル
モノト認ム從テ之ニ對シ特別ノ取扱ヲ
爲ス意志ナシ
二四、雪國地方ハ他ノ地方ニ比シ經營上
不利ナル立場ニ在ルニ鑑ミ所得稅及營
業收益稅等ノ調査ニ當リテハ從來ト雖
モ各地ノ實情ニ卽應セシムルコトヲ期
シ來レル所ナルモ所得又ハ純益ノ種類
ニ依リテハ他ノ地方ニ比シ多額ノ必要
經費ヲ要スルモノアルベキヲ顧慮シ十
分調査ヲ遂ゲ之ヲ控除スル方針ヲ採ラ
シメツツアリ又雪害ニ因リ所得又ハ純
益ノ著シク減損シタルトキハ減損更訂
ヲ爲シ得ベク大體現行法ニ於テ負擔ノ
均衡ヲ達シ得ルモノト認メラル
二五、豪雪地方ノ家屋稅特別減免ニ付テ
ハ他ノ稅トノ負擔關係竝ニ地方財政ノ
現狀ニ鑑ミ之ガ實施ハ困難ナルベシ
二六、市街地除雪費ニ對スル國庫助成ニ
關シテハ國庫財政ノ現狀ニ鑑ミ之ガ實
現ハ困難ナリ
二七、我國火災保險料率ハ主務官廳ノ認
可ノ範圍內ニ於テ大日本火災保險協會
所定ノ料率ヲ標準トシテ決定セラレ居
ル處雪國地方ニ於ケル火災保險料率ニ
付テハ調査ノ上若シ他地方ニ比シ特ニ
高率ナルノ事實アルニ於テハ適當ナル
措置ヲ講ズルコトト致シ度シ
二八、農業保險ニ在リテハ直接收穫上ノ
減收ニ基ク損失ヲ塡補輕減セントスル
ヲ主眼トシタルモノニシテ其ノ農作物
及保險事故モ可成一般的ノモノヲ選定
セル外特ニ雪害ニ付テハ保險料率ノ算
定ノ困難ナル等ノ爲一應之ヲ保險事故
中ヨリ除外セルモノナリ、依ッテ雪害ヲ
保險事項中ニ含マシムルコトニ就テハ
尙調査〓究ノ要アルモノト認ム
)
二九、(一郵便關係
郵便局所ノ設置ニ付テハ地況交
通關係ニ鑑ミ局所設置標準ヲ相
當低下シ之ガ普及ニ努メツツア
リ又降雪期ニ於ケル郵便ノ遲延
防止ニ就テハ集配遞送手ノ增員
ヲ行フハ勿論遞送集配用スキー
ヲ設備シ相當之ガ救濟ヲ圖リツ
ツアルモノナルガ尙今後郵便局
所ノ增置郵便物ノ遲延防止ニ對
シテハ出來得ル限リノ努力ヲ爲
久×>
)
(電信電話關係
1電信電話機關ノ擴張
積雪地方ニ於ケル電信電話機關
ノ特ニ必要ナルコトハ充分認識
シ居ル處ナルヲ以テ之ガ施設ニ
ハ他地方ニ比シ比較的多額ノ經
費ヲ要スルニモ拘ラズ著々普及
ニ努メツヽアルモノトス而シテ
新潟縣下ニ於ケル現在電信電話
未開始郵便局(加入區域外約五
○局)ニ對シテハ將來四箇年間
ニ全部取扱ヲ開始スルト共ニ國
有鐵道停車場ニモ全部公衆電信
ノ取扱ヲ開設スル方針トス
2通信ノ遲延又ハ杜絕ヲ防止ス
ル方法
雪害ヲ豫防シ通信ヲ確保スルコ
トハ積雪地方ニ於ケル救濟タル
ニ止マラズ事業經營上ニ於テモ
緊要トスル所ニシテ電信電話設
備ノ完璧ヲ期シ通信疏通ノ萬全
ヲ期スル爲現ニ採リツツアル方
針ハ次ノ通トス
(1)主要幹線ノ裸線路ニ對シテハ
漸次ケーブル線路ニ變更シ居
ルコト
(2)線路ノ選定ニ當リテハ雪崩其
ノ他雪害ノ虞アル個所ヲ避ク
ルコト
(3)經過地ヲ異ニスル線路ヲ二個
以上選定建設スルコト
)
(4降雪多キ地方ハ柱間距離ノ短
縮支柱、支線ノ支持等ニヨ
リ特ニ線路ノ堅牢ヲ期シ居ル
コト
(5)一般ノ地方ニ比シ線路沿道ノ
樹木ノ伐採碍子ノ掃除、腕木
ノ修理等障碍ノ原因除却ニ就
キ格段ノ注意ヲナシ線路ノ保
守上ニ對シ遺憾ナキヲ期シ居
ルコト尙雪害ニ因リ常用回線
罹障ノ場合ハ次ノ如キ通信連
絡上ノ措置ヲ講ジ居レリ
イ、他線迂〓ニ依リ臨機通信
ノ途ヲ講ズルコト
口、高速度能率ノ機械ヲ裝置
シテ極力通信ノ疏通ニ努ム
ルコト
ハ、目下新潟ニ建設工事中ノ
航空無線電信局及海岸局ニ
ハ有線電信杜絕等ノ際新潟
郵便局ヨリ直接之ヲ運用シ
主要都市トノ連絡ヲ圖リ得
ル樣設計シアリ
三〇、安全ニ列車ヲ運轉スル爲雪害地方
ノ線路防雪ニ對シテハ防雪林、雪覆、
頽雪止擁壁等設備ノ充實ヲ計ルト共ニ
除雪ニ付テハ人力ハ勿論機械力ノ增備
ニ依リ列車運轉ノ確保ニ努メツヽアリ
從來線路ノ防雪設備ニハ年々相當多額
ノ經費ヲ支出シ居リ現在モ施設ノ普及
ト機械ノ增備ニ就テハ充分考慮シ居レ
リ
一方本問題ノ重要性ニ鑑ミ昭和八年十
月「鐵道省雪害對策委員會」ヲ設ケ
內務省雪害對策調査會ト連絡ヲ保チ鐵
道關係事項ニ付調査ヲ進メ來レリ、而
シテ昭和十年十二月第六囘內務省雪害
對策調査會ニ於テ決議セラレタル防雪
設備ノ充實ヲ圖ルコト、雪搔車ヲ增備
スルコト、通信施設ノ改善充實ヲ圖ル
コト等現在充實普及ニ意ヲ注ギ居ル次
第ナリ
三一、新潟縣立農事試驗場、堀之內試驗
地ハ專ラ農作物ノ雪害防除ニ關スル試驗
〓究ヲ行フ目的ヲ以テ昭和十二年度國
庫ヨリ奬勵金二万二百圓ヲ交付シ設置
セシメタルモノニシテ昭和十三年度以
降ニ於テモ同試驗地ノ費用ニ對シ其ノ
金額ヲ國庫ヨリ奬勵金トシテ交付スル
見込ニシテ今後財政事情ノ許ス限リ之
ガ施設ノ擴充ヲ圖ラントス尙本試驗地
ヲ國立試驗場ニ昇格セシムルコトニ付
テハ目下ノ處考慮シ居ラズ
三二、本年ハ各地方共積雪多ク特ニ新潟
縣ハ其ノ被害夥シキ模樣ナルヲ以テ此
ノ際應急ノ措置ヲ講ズルノ必要アルモ
ノニ付テハ夫々適當ナル方策ヲ考究中
ナルモ各省トシテハ係官ヲ派遣シ雪害
ノ狀況ヲ視察調査セシメツツアリ
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
遞信大臣永井柳太郞
大藏大臣賀屋興宣
農林大臣伯爵有馬賴寧
商工大臣吉野信次
鐵道大臣中島知久平
文部大臣侯爵木戶幸
厚生大臣侯爵木戶幸
內務大臣末次信正
東北地方振興ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月九日
提出者田子一民
東北地方振興ニ關スル質問主意書
東北地方ハ文化、經濟、產業、交通等他地
方ト全然其ノ趣ヲ異ニスルモノアリ其ノ生
活ハ專ラ原始產業ニ依存スルニ拘ラス天
惠薄クシテ生產ハ其ノ生產費ヲ償ハス交
通不便ニシテ生產物ヲ他地方ニ移出シ難
キモノアリ縣稅、市町村稅ハ擔稅力ニ對
シテ極メテ過重ニシテ庶民其ノ重壓ニ苦
シミ災害ハ海陸ニ臻ルコト頻リニシテ之
カ回復ノ能力ヲ失ハムトス庶民其ノ堵ニ
安ンセサルハ實ニ國家ノ憂患ナリ政府ハ
此ニ鑑ミル所アリ曩ニ東北振興調査會ヲ
設ケ東北地方窮乏ノ原因ヲ探求シ且ツ之
カ排除ニ關シ諸政策ノ樹立ヲ圖レリ東北
振興調査會ハ銳意之カ調査ヲ進メ東北地
方振興綜合計畫ヲ答申スル所アリト雖モ
屢〓內閣ノ交迭ニ遭遇シ其ノ實行スル所東
北庶民ノ期待ニ副ハサルモノ多シ寔ニ遺
憾ニ堪ヘサルナリ近衞內閣總理大臣ハ東
北振興調査會長ニ就任セラルルヤ急遽調
査會ヲ開會シ「東北振興諸政策ノ實行ヲ
以テ國策實行ノ一ナリ」ト述ヘラレ昭和
十三年度豫算モ之カ爲增額ヲ考慮スル旨
ヲ明カニセラレタリト雖モ偶〓支那事變
突發シ財政計畫ニ變化ヲ來シ東北振興事
業モ繰延ヲ見ルニ至レリ元來東北振興調
査會ノ設置セラレタル所以ノモノハ東北
地方ノ特異性ニ因ルモノニシテ今次事變ノ
爲事業ノ繰延ヲ爲スカ如キ他地方ト同一
視スルハ東北地方ノ實情ヲ無視スルモノ
ト謂フヘシ惟フニ東北振興調査會設置以來
僅カ數年ノ間ニ內閣ヲ交迭スルコト三囘
委員及幹事殆ト代リ各省次官、局長、課
長ノ如キモ悉ク交迭スルニ至リ東北振興
ノ何物タルヤ忘却セラレタルノ感アルハ
眞ニ遺憾ニ堪ヘサルナリ現時局下ニ於テ
東北振興ノ事業ハ銃後ノ計トシテ一日モ
之ヲ緩セニスヘカラス政府ハ斷乎トシテ
東北振興綜合計畫實現ニ邁進スヘキモノ
ナリト信ス仍テ左ノ諸點ニ關シ政府ノ所
見ヲ問ハムト欲ス
-政府ノ東北振興綜合計畫實施ニ關ス
ル所見如何惟フニ東北振興綜合計畫
ハ統一セル計畫タルノミナラス年度ヲ劃
シ一進一退ノ弊ヲ排シ連絡統制ヲ保チ
テ之カ實現ヲ期スヘキモノナルニ豫算
ノ編成及實行ニ當リテモ他地方ト何等
ノ特異性ヲ認メサルハ東北振興調査會
ノ答申ノ趣旨ヲ無視スルモノニアラス
ヤ
二東北廳ノ設置ニ關スル所見如何
三東北地方ニ於ケル縣稅及市町村稅ハ
負擔力ニ比シ著シク過重ナルハ爭ヒ難
キ事實ナリ玆ニ其ノ一一一ノ事例ヲ示セ
ハ左ノ如シ
直接國稅一圓ニ對スル縣稅、市町村稅
ノ割合(昭和十年度豫算額)
縣名縣稅市町村稅
圓圓
靑森一、九〇六二、八七五
岩手、五三六二、四四五
城一、三九〇一、九八七
秋宮
田一一三三一、九一七
山形一、一五四一、五六七
福島一、五一〇二、一七三
平均一、三八二二、〇五九
全國平均〇、五六五〇、八八九
直接國稅ハ擔稅力ヲ窺フ一資料ナリ而シ
テ直接國稅一圓ニ對スル縣稅ノ割合ハ全
國平均五十六錢五厘ナルニ東北六縣平
均一圓三十八錢二厘、卽チ倍額以上ニシ
テ靑森縣ハ三倍ヲ超エ岩手縣ハ三倍ニ近
カラムトスルノ狀態ナリ之ヲ市町村稅ニ
就イテ見レハ國稅一圓ニ對スル割合ハ全
國平均八十八錢九厘ナルニ東北六縣ハ二
圓〇五錢九厘ノ高率ヲ示ス狀態ナリ東北
地方ハ縣財政、市町村財政經理ニ如何ニ
重稅ヲ負擔シツツアルカヲ窺フニ足ルヘ
シ又昭和十年ニ於ケル生產額一人當リ東
北六縣平均ハ九十八圓三十九錢ナルニ對
シ他府縣ハ二百十一圓十九錢ニシテ東
北地方ノ倍額以上ナリ縣債ヲ見ルニ東
北六縣平均二千五百萬圓、他府縣ハ平
均二千萬圓、之ヲ歲出ノ比率ニ求ムルニ
前者ハ一割九分後者ハ一割一分ナリ斯
ノ如ク一二ノ事例ニ徵スルモ東北地方
ハ資力薄弱ナルニ拘ラス縣、市町村行政
ノ爲公租ノ重壓ヲ受ケツツアルヲ知リ
得ヘシ仍テ國庫ノ補助助成等ニ依リテ
行フ縣、市町村ノ事業ニ就テハ特ニ他
地方ト異リタル高率ナル補助助成ヲ爲
ササレハ獨リ事業ノ促進ヲ期シ難キノ
ミナラス地方債ノ過重ヲ來ス虞アリ故
ニ右補助助成ヲ他地方ヨリ高率タラシ
ムヘキコトハ東北振興調査會ノ答申セ
ル所ナリ然ルニ之カ實行ハ極メテ小範
圍ニ止マリ諸種ノ法律、豫算ニ何等ノ
考慮ヲ加ヘサルハ如何ナル理由ナルカ
政府ノ所見ヲ問フ
四災害土木費縣債利子全額國庫補助ニ
關シテモ東北振興調査會ノ答申セル所
ナリ之ヲ徹底的ニ實施スルノ意思ナキ
ヤ政府ノ所見如何
五交通網ノ完成ハ東北振興上最モ急務
トセル所ナリ仍テ鐵道建設及道路、港
灣修築ノ諸計畫ハ豫算ニ計上セラレタ
ルニ拘ラス之カ繰延ヲ行フカ如キハ東
北振興ニ關スル政府ノ所信ヲ疑ハサル
ヲ得ス支那事變下ニ於ケル財政上已ム
ナキ事情アリトスルモ全國ヲ一率一體
按分的ニ繰延ヲ行フ如キハ東北振興ニ
關スル所信ヲ二三ニスルモノタリ政府
ハ昭和十三年度以降ニ關シテハ再檢討
ヲ加へ交通網急速完成ノ要アリト認メ
サルカ所見如何
六耕地ノ擴張ハ東北振興ノ重要事項ナ
リ然ルニ政府ノ爲ス所耕地事業ヲ無視
シ殆ト之ヲ顧ミサルモノノ如シ政府ハ
宜シク東北地方ニ於ケル農民ニ耕地ヲ
得シムルヤウ徹底的政策ヲ斷行スヘシ
此ノ點ニ關スル政府ノ所見如何
七馬產ハ東北地方ノ一特異性ナリト雖
モ軍馬ノ購買價格ハ其ノ生產費ヲ償ハ
ス是レ馬產地方窺乏ノ一原因ヲ爲スハ
爭ヒ難キ事實ナリ政府ハ宜シク軍馬育
成ノ生產費ヲ調査シ育成者ヲシテ奮テ
馬產ニ精進セシムルヤウ適正ナル價格
ヲ以テ買上クルノ方途ヲ講スヘキモノ
ト認ム此ノ點ニ關スル政府ノ所見如何
八東北地方ノ太平洋岸ニ於ケル漁業ハ
遠洋、遠海漁業ニ進展セシムルニアラ
サレハ漁民其ノ生ニ安ンシ難キ實情ニ
在リ之カ保護奬勵ニ關シ政府ハ具體的
ナル計畫ヲ樹立スルノ必要アリト認ム
政府ノ所見如何
九臨時地方財政調整交付金支出額昭和
十三年度一億圓ニ對シ更ニ五千万圓ヲ
下サル程度ニ於テ增額スヘシトノ衆議
院ノ要望ニ對シ政府ハ目下考慮中ナリ
而シテ交付金創定ノ根據ハ農山漁村ニ
於ケル財政窮乏ヲ緩和スルノ趣旨ニ出
テタルコトハ之ヲ知ル所ナリト雖モ之
カ交付ヲ受クルモノハ府縣町村トシ市
ニ在リテハ人口五萬以下ノモノニ限リ
タルハ妥當ニアラス町村ト雖モ人口五
萬ヲ超ユルモノアルヘク市ト雖モ財政
ノ窮乏町村ヨリ甚シキモノアラム苟モ
市ニモ交付金ヲ交付スル以上人口五萬
ヲ交付ノ一標準ト爲スカ如キハ餘リニ
形式ニ堕スルモノナリ政府ハ宜シク財
政窮乏ノ實情ニ卽シ人口標準ヲ撤廢シ
市町村ヲ通シテ交付スヘシ此ノ點ニ關
シ政府ハ再檢討ヲ爲スノ意思ナキヤ
三月五日衆議院議場ニ於ケル政府提出ノ
農業保險法案ニ關スル衆議院議員泉國三
郞君ノ質疑中東北振興ニ關シ政府カ何等
ノ答辯ヲ爲ササリシハ東北振興ヲ以テ國
策ナリトスル政府ノ誠意ヲ疑ハシメ本員
ノ最モ遺憾トスル所ナリ本員ハ東北振興
諸政策ノ實行ハ單ニ國策ノ遂行ナルノミ
ナラス銃後施設ノ最モ重要事項ナリト確
信スルモノニシテ以上ノ本員ノ質問ノ如
キハ東北振興ニ關スル最少限度絕對的ノ
モノナリ政府ハ宜シク誠意ヲ盡シテ明確
ナル答辯ヲ爲サレムコトヲ望ム
尙ホ此ノ機會ニ更ニ政府ノ所見ヲ問ハム
トスルモノアリ卽チ近時東北興業株式會
社ト民間會社ト協力シテ「パルプ」工場ヲ
東北地方ニ創立セムトスルノ議アリト聞
ク「パルプ」增產ハ國策ノ一タルノミナラ
ス之カ工場設置地方ニ在リテハ勞力、物資
ノ供給、生產物資ノ運送等ノ振興ニ資スル
コト多ク本員ノ最モ喜フ所ナリト雖モ他
面ヲ考察スレハㄱパルプ」原料タル木材
ノ伐採ニ依リ或ハ治山、治水ニ大影響ヲ
及ホシ沿岸ニ在リテハ漁業ニモ關係ヲ及
ホスヘキヲ惧ル若シ夫レ「パルプ」製造會
社ハ營利會社タルノ立場ヨリ山林所有者
ノ窮乏ヲ利用シ山林ノ濫伐ノ弊ニ陷ラム
カ其ノ害タルヤ想察スルニ餘リアリ加之
國有林ノ濫伐之ニ伴ハムカ治水、治山、
漁業ニ甚大ナル惡影響ヲ及スモノアラム
「パルプ」工場設置地方ハ其ノ利スル所ニ
顧ミ或ハ忍フ所アルヘシト雖モ然ラサル
地方ニ在リテハ怨嗟ノ聲囂然タルモノア
ヲム一利ヲ興スハ一害ノ之ニ伴フコトア
ルヘキハ已ムナシトスルモ政府ハ右會社
ノ設立ヲ許可シ之カ事業ヲ遂行スル點ニ
關シ東北地方ノ治山、治水、漁業保護等
ニ周到ナル調査ヲ遂ケ萬遺策ナキヲ期シ
ツツアリヤ會社ノ事業計畫、工場設置地
方、「パルプ」原料伐採量郡別(國有、民有
別)ヲ明瞭ニシ治水トノ關係ヲモ明確ニ
セラレムコトヲ望ム
右及質問候也
右質問ニ對シテハ書面ヲ以テ答辯アラ
ムコトヲ望ム
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員田子一民君提出東北地方振興
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田子一民君提出東北地方振
興ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一政府ノ東北振興綜合計畫實施ニ關ス
ル件
政府ニ於テハ東北振興調査會ヨリ答申セ
ラレタル東北振興第一期綜合計畫ノ趣旨
ヲ尊重シ速ニ之ヲ實行ニ移スベク努力シ
ツツアルモ未ダ十分ノ成果ヲ擧ゲ得ザル
ハ遺憾トスルトコロナリ、東北振興ヲ重
要國策ノ一トシテ採リ上ゲ之ガ達成ニ努
力スルハ政府ノ變ラザル方針ナリ
二東北廳ノ設置ニ關スル件
東北地方振興方策ノ圓滑ニシテ徹底セル
實施ヲ期スル爲ニ東北廳ヲ設置スルコト
ニ付キテハ嚮ニ東北振興調査會ノ答申モ
有之企畫院ニ於テ篤ト〓究ヲ遂ゲタル上
關係各廳ト協議ヲ爲ス豫定ナリ
三東北地方ニ於ケル縣市町村事業ニ對
スル國庫ノ補助助成ニ關スル件
國庫ノ補助助成等ニヨリテ行フ縣市町村
ノ事業ニ對シ特ニ他地方ト異ナリタル高
率ナル補助助成ヲ爲スベキコトハ其ノ必
要ヲ認メラルルモ諸種ノ法律、勅令等ニ
規定サルルモノニ付テハ相當考究ヲ要ス
ル點尠カラズ、政府ハ將來出來得ルダケ
其ノ趣旨ヲ尊重シテ東北振興ノ目的ヲ達
成セントス
四災害土木費縣債利子全額國庫補助ニ
關スル件
災害土木費縣債利子全額國庫補助ニ關シ
テハ國庫財政ノ現狀ニ鑑ミ今直ニ之ガ實
施ハ困難ナリ
五昭和十三年度以降ニ於ケル東北地方
ノ交通網完成ニ關スル件
東北地方ニ於ケル交通網ノ完成ハ同地方
振興上最モ緊要ト認ムルヲ以テ昭和十三
年度以降ニ於テハ出來得ルダケ實現ヲ期
スル方針ナリ
六東北地方ニ於ケル耕地政策ニ關スル
件
東北振興ノ重要事項中ノ一トシテ耕地ノ
擴張ニ關シテハ曩ニ東北地方集團耕地開
發助成金ヲ十三年度ニ一四一、六〇〇圓
ヲ計上シ、又東北地方開墾國營事業ヲ本
年度ヨリ施行シ之ニ伴フ地方事業トシテ
十三年度ニ三〇、〇〇〇圓ノ移住助成金
ヲ計上シ、十四年度以降三ケ年ニ亙ル豫
算外契約トシテ二六四、五七〇圓ノ開墾
助成金ヲ計上スル等東北振興ノ爲ニ相當
農耕地擴張ヲ爲ス計畫ナリ
右ノ外自作農耕地開發事業竝ニ農產資源
開發ノ爲ニスル開墾助成ニ關スル經費等
ニシテ東北地方ニ分配セラルルモノモ尠
ラズ、政府ハ東北地方ノ農民ニ耕地ヲ得
セシムルガ爲相當考慮シ居レリ
七軍馬購買價格ニ關スル件
軍馬ノ購買價格ハ馬匹ノ資格ニ基キ更ニ
生產育成費竝ニ市況ヲ斟酌ノ上決定ヲナ
スモノニシテ之カ引上ニ關シテハ可能ノ
範圍ニ於テ十分考慮シツツアリ
八東北地方太平洋岸ニ於ケル漁業ノ保
護奬勵ニ關スル件
東北地方太平洋沿岸ニ於ケル漁業ハ寒暖
兩海流ノ消長ニ依リ漁業ノ種類ニ依リテ
ハ時ニ甚シキ凶漁ヲ現出スルコトアリ、
依テ該地方ノ漁業ニ付テハ海況ノ變化ニ
留意シ漁況ニ順應スル多角的漁營ヲ爲サ
シムルト共ニ一面遠洋漁業ノ進展ヲ圖ル
コト最モ肝要ナリ、之ガ爲政府ニ於テハ
從來ヨリ海洋調査ヲ行ヒ海況ノ變異ニ伴
フ漁況ノ變化ノ豫知ニ努ムルト共ニ遠洋
漁業奬勵費ノ運用等ニ依リ銳意漁業ノ發
展策ヲ講ジツヽアルガ、今後猶一層同地
方ノ漁業殊ニ遠洋漁業ニ關スル指導奬勵
ニ力ヲ用ヒ以テ漁業者ノ生活ノ安定ヲ圖
ラントス
九臨時地方財政補給金ノ交付ニ關スル
件
明年度ニ於ケル臨時地方財政補給金ノ交
付ニ付テハ目下愼重考究中ナリ
十東北地方ノ「パルプ」事業ニ關スル件
東北振興「パルプ」會社ニ對シテハ國有林
ヨリ昭和十四年度以降每年約四十万石メ
濶葉樹材ヲ供給スル計畫ナルモ國有林ノ
經營ハ確固タル施業案ニ準據シテ行ハル
ルモノナルヲ以テ固ヨリ濫伐等ノ虞無シ、
而シテ國有林資材ヲ以テ不足スル分ハ民
有林ノ資源ニ之ヲ需メザルベカラザルモ
政府ハ民有林ノ現況ニ鑑ミ過伐ニ陷ラザ
ル樣其ノ施業ヲ充分監督指導シ治山治水
其ノ他產業保護上遺憾ナキヲ期セントス、
尙東北振興「パルプ」會社ノ工場設置地方
ハ宮城縣、秋田縣ニシテ郡別原木伐採量
ハ未定ナリ
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
內務大臣末次信正
農林大臣伯爵有馬賴寧
鐵道大臣中島知久平
東京市小河內貯水池ニ關スル質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月十日
提出者大野伴睦
東京市小河內貯水池ニ關スル質問主
意書
一東京市小河內貯水池帶住民ノ問題ハ
單ニ東京府下ニ於ケル一寒村ノ死活ニ
關スルモノトシテ社會ハ之ヲ輕視シ國
家ハ何等救濟ヲ爲サスシテ然ルヘキヤ
政府ノ所見如何
本問題ハ單ナル地方的一小事件トシテ
輕視スヘキモノニアラス凡ソ文化施設
ノ擴充ヲ來スニ至レハ東京市ノ如キ大
都市ノミナラス小都市トシテモ都市的
形態ヲ形造スル都會ノ要式ハ必スヤ水
道施設ノ完備ヲ要求スルヤ當然ナリ隨
テ大小ノ差ハアレ必ス貯水池ノ築設ヲ
圖ルモ亦必至ノ努力ト謂ハサルヘカラ
ス此ノ必至ノ努力ハ或ハ何等人畜ニ被
害ヲ蒙ラシメス或ハ一村立退キノ如キ
犠牲ヲ拂ハシメストモ「プール」ノ完備
ヲ以テ之ヲ成シ得ヘシ併シナカラ此ノ
問題ニ關聯シテ多クハ山村奥〓ノ一村
ハ大部分又ハ少クトモ其ノ一小部分ヲ
水底ニ沒スルノ機會ヲ生セシムルニ至
ルヘシ故ニ貯水池問題ハ大小ノ相違ア
ルモ將來全國ノ各所ニ問題ノ發生ヲ可
能ナラシメ紛爭發生ヲ助長スルコトト
爲リ國內相剋ヲ激化セシムルノ憂十分
ニアリ當局ハ斯ル企業ヲ樹ツルノ計畫
ニ付市町村ニ對シ何等不安ナキ方針用
意アリヤ
二昨年東京市參事會ハ小河內村住民ノ
財產其ノ他ノ買收豫算案ヲ可決シ其ノ
第三期買收豫算案モ昭和十二年夏全部
可決スルト同時ニ買收ニ付左ノ希望條
件ヲ附シタリ
希望條件
本件ニ就テハ第一次買收案ノ際附
セラレタル意見ヲ相當ト認メ尙ホ
左ノ意見ヲ加フ
本件ハ努メテ急速ニ進捗セシムル
コトヲ目標トスルト同時ニ公企業
ニ鑑ミ公私生活ニ損害ヲ加ヘサル
樣其ノ施行ニ際シテハ理事者ニ於
テ溫情ヲ以テ充分配慮セラレンコ
トヲ望ム(昭和十二年六月二十二
日市參事會)
トアリ然ルニ市當局ハ荏苒日ヲ閱シ買收
行爲頗ル緩慢ナルト同時ニ徒ニ一少部
分ニ對シテ交涉シ村全體ニ對スル交涉
ヲ爲ササルハ如何或者ニハ交涉シ或者
ニハ交涉ヲ避クルカ如キハ公明ナル交
涉方式ナリヤ少クトモ一村全滅ノ場合
ニハ村政ノ主腦或ハ其ノ代表者ヲ相手
方トシテ交涉スルカ當然ナリ斯ル交涉
形態ナルヲ以テ村民ノ前途ノ計畫全ク
頓挫シ生活上ノ壓迫ノミヲ受クルノ現
狀ナリ政府ハ此ノ不親切不合理ナル市
當局ノ行動ニ對シ監督權ヲ發動スルノ
意ナキカ
三公法人カ公法人ヲ買收スル點ニ於テ
法律上ノ疑義ナキヤ政府ノ所見如何
土地收用法ニ基キ國家權力ノ發動シテ
收用地帶ヲ收用スルコトハ疑義ナシト
雖モ公法人タル東京市カ公法人タル小
河內村ヲ買收スルコトハ果シテ法律上
一點ノ疑義サヘ容ルルノ餘地ナキヤ一
村ノ滅亡ハ比類ナキ現象ニシテ斯ル現
象カ輕々ニ取圖ラルルコトハ重大ナル社
會問題ナリ此ノ問題ハ行政上ノ大問題
ニシテ波及スル所又甚大ナリ政府ノ明
快ナル答辯ヲ要求ス
四公共事業ノ爲合理的罪惡ヲ當局ハ容
認スルモノナリヤ明確ナル答辯ヲ要求
ス
東京市民ノ利益ハ主要ニシテ一寒村ノ
死活ハ放任シテ可ナリヤ當局ノ所見如
何
(一)東京市ノ貯水池築設問題發生シ
タルハ昭和六年夏ニシテ小河內村ニ
對シテ一村ヲ犠牲ト爲シ東京市ノ買
收ニ應スルヤ否ヤノ東京府ノ第一囘
諮問アリタルハ昭和七年十月末、其
ノ二十八日ニ小河內村ハ一村犠牲ヲ
決議シ此ノ旨府ニ答申シタリ此ノ時
小河內村長小澤市平等ハ當時ノ東京
市ノ原水道局長小野擴張課長等ヨリ
「移轉補償費ハ一箇年經テバ拂渡ス
カラ學校道路ノ修築、開設、畑山
林ノ開發等萬般ノ問題ニ對シ小河內
村更生ニ要スル諸方式ハ援助スベキ
ヲ以テ移轉地ヲ物色決定シ將來安心
シテ行クコトノ出來ルヤウ行ハレタ
イ一箇年經テバ必ズ補償費ハ渡シテ
ヤル云々」ト言明シタルニ其ノ實行
行爲モ無ク而モ當時ノ堰堤位置ハ岩
質危險ナルヲ以テ其ノ位置ヲ水根澤
(現地位)ニ變更セシメタリ此ノ時モ
村民ニ將來ノ安心ヲ與ヘテ水根澤變
更ニ異議ナキヤノ諮問ニ對スル答申
ヲ爲サシメタリ此ノ東京市水道當局
ノ言明ハ村長竝村主腦ニ於テ深ク承
知之ヲ確信シタルモノナリ苟モ大東
京市ノ幹部ニアル人士カ夢僞リアル
ヘカラスト信スルハ當然ナリ而モ大
君ノ都ノ使用水ト爲ルコトノ光榮ニ
感激シテ一村ノ犠牲ヲ覺悟シタル小
河內村民大衆ニハ公人ノ欺瞞ハ豫想
サレサルナリ然レトモ移轉補償費
ノ支拂ハ簡單ニ爲シ得ラレサル
モノニシテ少クトモ東京市ノ實情
ヲ知ル者ニ於テハ絕對ニ斯ル輕卒
ノ言辭ヲ公言スヘキニアラサルナリ
市當局ハ始ヨリ故意ニ村民ヲ欺キ而
モ尙ホ諄朴ノ村民ヲ欺瞞シテ恬トシ
テ恥サルナリ公人ノ言動トシテ斷シ
テ許スヘカラス人アリ「市吏員ノ或
者ハ馬賊ニ等シ」ト東京市ノ歷史カ
悉ク疑獄ニ穢レテ公正、澄明ノ士ハ
是ヲ入レスト爲ス又故アル哉ト謂フ
ヘキナリ餘言ハ別トシテ村民ヲ欺ケ
ル第一ノモノハ前述ノ問題ニシテ斯
クシテ小河内村民ハ東京市ヲ信賴シ
テ前後八年間甚大ナル損害ヲ蒙リ來
タリ卽チ
イ昭和七年十月答申後翌八年末ニ
ハ補償費ヲ支拂フヘシトノ約束ハ
不履行トナリ八年以來九、十ノ三
箇年ノ如キハ村民施スノ策ナク塗
炭ノ苦ヲ嘗メタリ耕作損害、交通
損害、金融上ノ損害、植林上ノ損
害等ハ適當ニ計上支拂ハルヘキナ
リ東京市ハ此ノ損害ヲ村民自身ノ
招來シタル損害ニシテ何等考慮ニ
容ルル餘地ナシト空嘯キツツアリ
「オ前ノ所ハコチラノ方デ都合ガ
アルカラ其ノ土地家屋ハ棄テテ他
國ニ旅ヲシロ併シ多少ノ金ハ今後
一年內ニ遣ルト謂フ話ニ對シ立退
クコトハ御上ノ仕事ト我慢シテ出
ルコトニシタガ凡ソ住ミ慣レタ土
地ヲ棄テ先祖墳墓ノ土地ヲ見捨テ
テ他國ニ走ルト謂フコトハ日本國
民トシテ實ニ重大ナル問題デアル
輕々ニ考ヘテハナラナイコトデア
ル又簡單ニ出來ルコトデナイ夫レ
モ之レモ社會公共ノ爲ダト考ヘテ
ヤッテ其ノ準備ヲシタガ多年ノ土
地故〓ヲ棄テルノデアル容易ニ立
退ケルモノデナイ其ノ準備ヤ前後
ノ始末ハ貧乏ナ村民ダカラナンデ
モ無イト高ヲ括ルコトハ實ニ奇怪
ナ話デアル此ノ村民ハ工事ガ進マ
ヌカラ仕事モ手ニツカズ移轉地モ
物色シタガ一年經ッテモ何ノ話モ
無イ實ニ千代萩ノ言葉デハナイガ
幾年待ッテモ誠意アル方法ヲトッテ
吳レナイ」ト空腹ニ耐ヘ苦勞ニ呻
吟セル村民ヲ「ソレハ運命ノ一ツ
ダ」ト市當局ハ謂フ斯ノ如キ不當
ナル話カ何處ニアルカ之ヲ國家ハ
見殺シニスヘキヤ
神奈川縣二ケ領用水組合ニ對シテ
ハ東京市ハ「强イ者ニハ卷カレロ」
ト謂ヒ小河內貯水池ノ建設可能ナ
リヤ不可能ナリヤ豫測ノツカサル
以前ヨリ二百三十萬圓ト謂フ大金
ト每年夏山口、村山貯水池ノ三分
ノ二ノ水ヲ給スルコトヲ約束シタ
リ一方「御前達ハ國家ノ爲洵ニ奇
特ノ至リダ」トシテ空世辭ハ亂發
シタカ散々損害ヲ蒙ラシメ滅茶滅
茶ニ五百戶三千村民ノ生活ヲ窮迫
ノドン底ニ陷シ込ミ一錢ノ損害モ
拂ハス剩ヘ罪人ヲ追放スルカ如キ
仕打ナリ無情ト謂フカ冷酷ト謂フ
カ謂ヒヤウナキ仕打ト謂フヘシ監
督官廳カ斯ル行動ニ對シ何等カノ
方法ヲ講スルコトカ自治政ヘノ壓
迫トナルヤ
ロ其ノ後村民ノ窮狀カ社會的ニ問
題ト爲リ棄テ置ケサル輿論ノ聲ト
ナリシ爲市當局ハ損害ノソノ字モ
口ニ漏ラササリシカ次第ニ此ノ言
葉ヲ吐キ昨昭和十二年十月二十七
日ニ西多摩郡氷川村ニ於ケル廣橋
地方課長、鈴木屬、小野小河內貯
水池建設事務所長等ト小河内村民
等トノ懇談會ニ於テ村側ノ損害ノ
要求ニ對シテ「何トカ考ヘル」ト始
メテ言明シ移住地ノ物色ニ付協力
ヲ叫ヘリ而シテ村民ノ移住地物色
ヲ慫慂シ「候補地決定ニ對シテモ
適當ナル處置ヲトル」ト言ヲ明カ
ニセルモ村民カ埼玉縣大里郡本畠
村、小原村兩村五百町步ヲ其ノ目
的地トシテ發見シ此ノ買收方ヲ交
涉シタルニ小野所長ハ「一方村民
ニハ買收費ヲ拂フノデアルカラ移
住地ヲ買ッテ與ヘルト謂フ譯ニハ
ユカヌ」ト村ノ交渉ヲ拒絕シ村ハ
「ソレデハ話ガ違フ」ト再交涉スレ
ハ「村ノ集團移住ノ場合ニハ水道
敷設、道路開設等ノ問題ヲ考ヘル
デアラウ」ト捕捉シ得ヘカラサル
無責任ノ言ヲ擅ニシ村民ノ追及激
シキニ當リテ結局「兎モ角埼玉縣
ノ目的地ノ圖面ヲ提出セラレタイ」
ト小野所長ハ言ヲ發スルニ至レリ
之ニ勢ヲ得テ村民ハ圖面ヲ小野所
長ニ提出スルト同時ニ越エテ十二
月十五日建設事務所ニ於テ同所長
ニ再交涉ヲ爲ス此ノ時所長ハ「建
設事務所ハ埼玉縣廳、農林省ニ種々
打合交渉中デアル而シテ其ノ案ノ
作成中デアルカラ案ノ出來ニ從
ヒ之ヲ村民諸君ニ內示シテ本月末
ノ市會ニ提案スルデアラウ」ト明
瞭ナル解答ヲ與ヘ村民ハ小野所長
ノ此ノ解答ニ雀躍リシテ「村民ノ將
來此處ニ開ケリ」ト喜ヒタルモ是レ
所謂糠喜ニ過キサリキ卽チ建設事
務所ニ於テハ何等移住地ニ關スル
交涉モセス隨テ何等之ニ關スル誠
意アル市ノ報告ナク噓僞リ「口カ
ラ出任セ」ノ答辯ヲ爲シテ村民ヲ
飜弄シタルモノナリ此ノ不當ニ村
民ハ極度ニ激昂シ本年一月十二日
村長、岡部村議等ハ小野所長ニ市
ノ怠慢ヲ難詰シ嚴重交涉シタリ
「確ニ埼玉縣廳、農林省ニモ移住地
問題ノ進行ヲ依賴セリト謂フガ然
ラバ貴事務所員果シテ農林當局、
埼玉縣ニ交涉シ何人ガ何日ニ出向
ケルヤ村民代表ノ我等トシテハ不
明瞭ナル報〓ヲ爲シ難シ」ト詰寄リ
「農林當局ハ何人ガ對談ノ相手トナ
リタルヤ此ノ點モ明確ニスベシ」ト
交渉ヲ爲シタルニ所長ハ「イヤ實ハコ
レカラ書面ヲ出スノデアル」ト答ヘタリ
レ實ニ一點ノ誠意ナク徹頭徹尾村ヲ
瞞著シ通シタルモノト謂フヘシ村代
表ハ此ノ言ニ憤激ヲ極メタルモ建
設事務所ニ於テ書面ヲ埼玉縣ニ本
日發送スルトセハ「我等モ出カケテ
交涉スベシ」ト小野所長ニ告ケ引擧
ケタリ其ノ後一月二十一日村ニ於
テハ澤本泰造、岡部爲三、酒井義春
ノ三村議埼玉縣廳ニ重政耕地課長
ト面接前述ノ小野所長トノ問答ヲ
基準トシテ質問應答ヲ重ネタリ
耕地課長曰ク「東京市小河內貯水
池建設事務所ヨリハ慥カニ移住地
問題ノ書面ガ來タガアンナコトデ
ハドウニモ出來ナイ」村議「ソレナ
ラ如何ニ圖ヘバ宜イカ」
耕地課長「費用モ要ルコトダカラ費
用支出ノ道ガ定マラヌト駄目ダ」
村議「然ラバ費用ノ點ハ改メテ相
談スルコトニスル」ト埼玉縣廳ヲ
引擧ク斯ル狀態ニテ市當局ノ言明
ハ悉ク眞實ヲ缺キ村民ヲ愚弄シテ
而モ恥トセサルモノナリ
小河内貯水池問題發生シテ村民ニ
將來ノ安住ヲ與フヘク誓約シタル
市當局ハ既ニ八年間トナル今日未タ
詐欺、權謀ヲ擅ニシテ村民ノ方途
ヲ混迷ナラシメ既ニ土地賣却ノ村
民二百戶ニ及フモ移轉先ニ困難ヲ
來シ難澁シ居ル狀態是レ果シテ公
共事業ヲ企畫スル者ノ道德ナリヤ
(二)東京市ノ行動ハ合理的ニ反社會
的行爲ヲ爲シツツアリ卽チ天人共ニ
許スヘカラサル公共人ノ特權ニ於テ
スル罪惡ヲ爲シツツアリ
一寒村ナリト雖モ陛下ノ赤子ハ國運
隆昌ノ爲ニ翼贊スルノ光榮ヲ有シ
此ノ光榮ノ下ニ一千數百年ノ歷史ノ
地ヲ棄テテ犠牲ノ精神ヲ發揮シ新ニ
强ク生キムト覺悟シタルモノナリ此
ノ誠心誠意、犠牲奉公ノ村民ノ大精
神ヲ逆ニ利用シテ市當局カ自家ノ利
益ニ援用シ財的、心的ノ勝利ヲ擧ケ
ムトスルモノナリ實ニ憎ムヘキ行動
ナリ村民カ山村ヲ住家トシテ都會ノ
暴逆ヲ知ラス心一筋帝都ノ犧牲ノミ
ヲ考ヘタルニ之ヲ利用シテ利益ヲ得
ムトスルハ人非人ノ行動ニ非スシテ
何ソヤ嘗テ神奈川縣二ケ領組合問題
ノ惡化シテ小河內貯水池問題ノ停頓
巳ムナキニ至レルヤ小野所長ハ或ハ
其ノ代案トシテ富士山麓狩野川ノ水
流或ハ埼玉縣見沼ノ用水利用策ヲ講
シ八方奔走シタリ此ノ間小河內村民
ニハ何等一片ノ同情アル挨拶サヘナ
ク山村人ノ不運ニ對シ「勝手ニサラセ」
ノ態度ヲ以テ君臨シ來レリ暴慢ノ極
之カ市當局幹部ノ行動ナリトス恐シ
キ迄ニ無禮ナル此ノ種市吏員ノ行動
タルヤ言語ニ絕ス死線上ニ村民一同
ヲ彷徨セシメテ事進マスト爲ルヤ我
不關焉ノ態度トナル此ノ無情冷酷斷
乎トシテ村民ナラストモ憤ルモノナ
ルヤ論無キナリ國家ノ非常時國民精
神總動員提唱ノ最中斯ル極惡非道カ
公廳ノ主腦ニ於テ平然ト口ニセラル
ルヲ社會ハ至當ナリトスルカ帝都ハ
國家ノ首都ニシテ自治ノ本體タルヲ
以テ事ハ全國市町村ノ爲ニ考慮スヘ
キナリ然ルニ政府ハ之ニ援助ヲ爲サ
ムトスルカ國家ノ現狀ニ鑑ミテ由々
シキ大問題、一片ノ驅引辭トシテ容
認シ得ラレサル國民道德ニ關スル大
問題ナリトス政府ノ所見如何
五一村カ亡滅スルニ際シ之ニ對スル同
情ヲ爲スコトハ不當ナル處置ナリヤ
小河內村民ニ對シテ果シテ正當ナル補
償處置ハトラレツツアリヤ政府ハ嚴重
ナル監督調査ヲ爲ス意思ナキカ
小河內村民ハ一千數百年ノ傳統ヲ矜持
スル山村民ナリ山岳中ニ住家ヲ開キ拓
キテ山ノ生活ヲ營ミ來タリ此ノ山村ノ
生活ニハ一坪ノ畑ニモ、一坪ノ庭ニモ、
一坪ノ崖ニモ都會人、平地住人ノ計
リ知ラレサル苦澁難儀ヲ爲シ生活ヲ開
始スルニ至レルモノナリ此ノ村ノ生成
ニハ內面的苦悶ノ蓄積ヲ見ル此ノ蓄積
ハ小河內村ニ特別ナル財產ヲ形成シ賣
買讓渡ニハ格別ノ評價ヲ見ルヲ普通ト
ス此ノ格別ニ評價スヘキ小河内ノ土地、
家屋或ハ田、畑、宅地、寺社、墓地ニ對シ
テ何等此ノ內容的調査ヲ爲サス平凡ナ
ル一率ノ評價ヲ以テシタリ而モ公言ニ
曰ク「頗ル同情アル高額ノ評價ナリ」ト
右ノ不當評價ヲ政府ハ如何ニ見ルヤ亂
暴極マル評價ノ一例ヲ左ニ示サム
小河內山林ノ立木ニ對スル評價ハ何等
ノ標準ナクシテ唯廉價評價ノミヲ以テ
可ナリトセリ村民ハ亂暴ナル立木評價
ニ憤慨シ一村民殆ト市ニ賣却ヲ爲サス
シテ材木商ニ賣捌キタリ村民中神田
忠次郞所有ノ立木一圓二十錢ノ
モノヲ市吏員ハ三十六錢ニ評價
シタルハ其ノ一例ナリ調査ノ不微底亂
暴ナルモノト謂フベシ村民杉田庄吉ノ
山林立木數ヲ市吏員ハ八千本ト調査シ
タリ然ルニ杉田本人ノ調査ニ依レハ一
萬四千六百本ヲ數フ市ト比較シテ其ノ
倍數ナリ市ハ此ノ不當調査ノ抗議ニ狼
狽シテ直ニ市ハ自ラノ不當ヲ陳謝シ杉
田本人ニ對シ一萬四千六百本ヲ承認其
ノ對價賠償ヲ爲シタリ其ノ他各方面ニ
亙ル調査、補償ハ杜撰ヲ極メタリ政府
ハ斯ル東京市ノ行動ヲ適當ナリト是認
シ得ラルルカ
六小河內貯水池設置ニ關スル東京市ノ
願望ヲ容レテ村民ハ其ノ犧牲トナリ吏
員ノ不始末ヨリ村民ニ多大ノ損害ヲ蒙
ラシメタリ公企畫事業ニ原因シテ生ス
ル損害ハ公事業ナリト雖モ相當ナル損
害ヲ支拂フハ社會秩序ヲ維持スル所以
ナリ工事問題ヲ放置シテ二ヶ領用水組
合ノ抗議ニハ多額ノ補償契約ヲ決定シ
東京市ノ不法行爲ニ原因シテ現實ニ發
生被害ヲ受ケタル村民ノ損害ハ放任シ
テ然ルヘキカ東京市カ工事進行ヲ爲サ
ス而モ其ノ間何等村民ニ業務上、生活
上ノ對策ヲ講セサリシ責任ハ囘避シ得
ヘカラサルモノニシテ東京市カ之ヲ負
擔スヘキ責任ナリ是ヲ損害ト爲ササル
カ其ノ價値ナシトスルカ政府ノ所見如
何
七市當局ノ不誠意ハ前述ノ如クニシテ
此ノ背信行爲ヲ曝露スルニ至ラハ同胞
擧ケテ憤激スヘキヲ信セラル一村ノ死
活ハ世ニ類ナシ一村ノ更生ハ之ヲ犧牲
トスルモノニ於テ特別ノ好意ノ下ニ保
護援助ヲ爲スヘキナリ東京市カ自家
ニ必要ナル供給水ヲ引用スル場合ニ此
ノ事業ノ犠牲トナル一村ノ更生ヲ考慮
シ歷史アル神社、佛閣ヲ保存シ敬神崇
祖ノ國民的信仰觀念ニ微動タモ無キヲ
期スルハ公共企畫事業ニ附帶スル重要
ナル問題ナリ敢テ本問題ニ對スル政府
ノ所見ヲ問フ
要スルニ小河內問題カ今日マテ進行セス
放任セラレタルハ實ニ一ケ領用水組合ノ
抗議カ最大ノ原因ヲ爲スモ一ハ東京市當
局ノ誠意ヲ缺キ感激ヲ缺キ五百戶三千人
ヲ塵芥ノ如ク輕視スルカ故ナリ山村人ハ
帝都近クニ住スルヲ光榮トシ其ノ使用水
ノ犠牲トナルニ感激シテ唯單ニ平和裡、
談笑裡ニ一切ノ解決ヲ爲シ喜ヒ勇ミ第二
ノ村ヲ造ラムト質朴純眞ノ信念ニ燃エツ
ツアルニ却テ村民ヲ翻弄シテ思想ヲ惡化
セシメツツアリ村民一同ノ激憤ハ容易ナ
ラサルモノアリ或時ハ一村擧ケテ大擧上
京シ世ニ、市當局ニ無情ヲ訴ヘムトシ或
時ハ決死悲壯ノ精神ノ下ニ行脚シテ村民
ノ衷情ヲ披瀝セムトシ動モスレハ激情ノ
餘リ暴動的行動ニ出テムトシタルコトハ
旣ニ一再ニアラス唯冷靜ナル指導者カ道
ヲ說イテ激越ナル村民ノ感情ヲ融和シ來
レルナリ而モ市當局ハ笑ツテ村民ノ苦惱
ヲ冷視ス氣裡ニ內訌スレハ暴動起ル此ノ
徵コソ爲政者ノ最モ關心スヘキ重大問題
ニシテ別言スレハ小河内問題ノ解決ハ一
ニ帝都六百萬市民ノ康寧ヲ圖ルノ道ニシ
テ又他面全國ニ君臨スル自治政謳歌ノ炳
乎タル目標タルヘシ
有ユル點ニ於テ最モ傑出國家ノ典型タル
ヘキ帝都人ノ行動、施設カ一村ヲ見殺シ
テ顧ミサルトセハ國家風〓ニ影響スルコ
ト甚大ナリ非常時下特ニ政府ノ情理兼備ノ
解決ヲ國家ノ爲本員ハ切望スル所以ナリ
更ニ附加スヘキハ東京市當局ハ故意ニ村
民ヲ傷ケムカ爲ニ卑劣ナル奸策ヲ擅ニシ
成ヘク不可能ニ近キ相談ノミヲ提示シ或
ハ村民ノ團結ヲ切崩シテ自己ノ有利ニ局
面ヲ展開セムトシ村民ノ代表カ利權魔ト
結託シテ貪利ノ惡策ヲ爲スト惡宣傳シ公
明ノ處置ナクシテ村民ヲ看過スル狀態
ナリ是レ市主腦部ノ意思ニアラストスル
モ帝都下ニ於テ日晝斯ル權謀カ横行シ得
ルハ由々シキ大問題ナリ人權ノ蹂躙トモ
ナルモノニシテ棄テ置クヘキニアラス且
ツ小河內出身支那事變ノ勇士モ望郷ノ夢
ニ故山ノ姿何處ニアリヤト寒夜窃ニ淚ク
ムトモ聞ク銃後ノ護リニ於テ間然スヘカ
ラサル今日市吏員ノ行動ハ憎ミテモ餘リ
アリ政府ハ嚴重ニシテ公明ノ處置ヲトラ
ルルヤウ重ネテ冀望スルモノナリ
右及質問候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員大野伴睦君提出東京市小河内
貯水池ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員大野伴睦君提出東京市小河
內貯水池ニ關スル質問ニ對スル答辯書
第一ニ關シテ
水道電氣其ノ他ノ公企業ノ經營ニ伴ヒ
其ノ反面ニ於テ巳ムヲ得ズ生ズル犠牲
ニ付テ適當ナル補償慰藉等ヲ爲スベキ
コトハ企業團體ノ當然ノ責任ナリト思
料ス此ノ點今後一段ノ省察ト督勵ヲ加
ヘントス
第二ニ關シテ
小河內村各住民ノ財產其ノ他ノ買收ニ
付各個人ニ付其ノ買收ヲ交涉スルハ必
ズシモ不當ニ非ズト思料セラルルモ尙
今後ノ買收措置ニ付遺憾ナキヲ期セシ
メントス
第三ニ關シテ
本件貯水池構築ニ必要ナル財產其ノ他
ヲ買收スルモノニシテ公法人タル村ヲ
買收スルモノニ非ズ
第四ニ關シテ
イ、事實ニ基キ當然支拂フベキモノア
ルトキハ適當ナル措置ヲ講ゼシメン
トス
口、村民ノ移住地問題ニ付テハ目下府
市當局ニ於テ篤ト考慮中ナルモ此ノ
點一層ノ留意ヲ促シ遺憾ナキヲ期セ
シメントス
第五ニ關シテ
用地買收及地上物權移轉補償料等ニ關
シテハ關係者ニ於テ種々〓究シ其ノ適
正ヲ期シツツアルベシト思料セラルル
モ尙實狀調査ノ上適當措置セントス
第六ニ關シテ
本事業ノ實施ニ付テハ固ヨリ地元住民
ノ理解ト協力ヲ期シ其ノ圓滿ナル進捗
ヲ期シ得ベキトコロナルニ從來動モス
レバ其ノ間圓滑ヲ缺キタルヤノ嫌アリ
テ其ノ間ニ於テ市村兩當局ノ努力十分
ナラザルモノアルヤニ思料セラル尙今
後遺憾ナカラシメントス
第七ニ關シテ
小河內村ノ移住民殘存民ニ對シ財產上
所定ノ補償ヲ爲サシムルハ勿論ノコト
ナルモ其ノ他民情ニ卽シ可及的ニ尙慰
藉ノ方途ヲ講ジ又生活ノ安定ヲ得シム
ル爲出來得ル丈ケ適當ノ方法ヲ講ズル
コトハ固ヨリ必要ト思料セラル
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
厚生大臣侯爵木戶幸
內務大臣末次信正
宗〓ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十三年三月十一日
提出者曾和義弌
宗〓ニ關スル質問主意書
宗〓ハ〓學ノ大宗ナリ根元ナリ然ルニ
我ガ國ニ於テハ各種各樣ノ宗〓ト稱ス
ルモノ流布セラルルノミナラズ何レモ次
第ニ言說ノ末ニノミ墮落シ遂ニ其ノ本旨
ヲ失ヒ混亂迷妄底止スル所ヲ知ラズ世ノ
宗〓家タル者亦俗流ニ媚ビ時弊ニ阿ネリ
眞ニ一世ヲ救濟指導スルニ足ルモノナシ
剩ヘ此ノ情勢ニ乘ジ淫祠邪〓猥リニ橫行
シテ害毒ヲ流スコト最モ甚シク健全ナル
民風ヲ破壞スルニ至ラムヲ惧ル是レ一ニ
宗〓國策ノ確立セザルニ因ラズムバアラ
ズ今ヤ我ガ國ハ列國無比ノ進展ヲ遂ゲ世
界最高ノ文化ヲ釀成シ以テ萬國ノ盟主タ
ラムトス須ラク政府ハ宗〓ノ本義ヲ明カ
ニシ其ノ國策ヲ樹立シテ〓學ノ大宗ヲ示
シ國民ヲシテ其ノ嚮フ所ヲ誤ラシメザラ
ムコトニ務ムベシ玆ニ左記數項ニ亙リ政
府ノ所信ヲ問フ所以ナリ
一憲法第二十八條ニ示サレタル信〓ノ
本義如何
二宗〓ノ本質如何
三宗〓ノ本質上現行宗〓ニ甲乙ナキヤ
四今後尙ホ新タナル宗〓ハ起リ得ルヤ
五國〓ヲ選定スル意思ナキヤ
六國〓ノ選定ハ憲法第二十八條ニ抵觸
スト思惟セラルルヤ
七各宗各派ノ大德、碩學ヲ網羅シ宗〓
ノ本質ニ關シ審議會ヲ設クルノ意思ナ
キヤ
八政府ハ親政輔弼ノ大任上右諸問題ニ
付且ツ之ニ關聯スル事項ニ付特ニ考慮
スルノ責務ヲ感ゼザルヤ
九淫祠邪〓取締ニ關スル根本方針如何
右及質問候也
昭和十三年三月二十二日
內閣總理大臣公爵近衞文麿
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員曾和義式君提出宗〓ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員曾和義弌君提出宗〓ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
憲法第二十八條ニ示サレタル信〓ト
ハ安寧秩序ヲ妨ゲズ臣民タルノ義務ニ
反セザル個人ノ信仰ヲ謂フモノト存ゼ
ラル
二、宗〓ハ其ノ醇厚中正ナル〓義ヲ以テ
人ニ安心立命ヲ得シムルト同時ニ國運
ノ伸張ニ寄與スルモノタルヲ本旨トス
ト思料ス
三、現行宗〓ニ甲乙ナシト認ム
四、新宗〓ハ今後起リ得ルモノト思料ス
五國〓ヲ選定スル意思ナシ
六
七、宗〓ニ關スル審議會設置ニ於テハ目
下ノ處其ノ意思ナシ
八、本件ニ付テハ政府ニ於テ宗〓團體法
制定ト關聯シ愼重ニ考慮シツヽアリ
九、淫祠邪〓ニ對シテハ內務、文部兩省
ニ於テ緊密ナル聯繫ヲ保チ嚴重之ガ取
締ヲナサントス
右及答辯候也
昭和十三年三月二十二日
內務大臣末次信正
文部大臣侯爵木戶幸一
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
茲ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第三號)昭和十三年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第二號)昭和十三年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
(追第三號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
昭和十三年法律第六號中改正法律案(昭
和十三年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル件)
(以上三月十九日提出)
一去十九日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ
通牒ヲ受領セリ
恩給金庫法案
恩給法中改正法律案
庶民金庫法案
無盡業法中改正法律案
社會事業法案
商店法案
簡易生命保險法中改正法律案
臨時通貨法案
關稅定率法中改正法律案
一去二十日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ
通牒ヲ受領セリ
石油資源開發法案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
支那事變特別稅法案ニ對スル修正案
提出者
河野密君片山哲君
水谷長三郞君
(以上三月十八日提出)
土木建築業組合法案
提出者
牧野良三君行吉角治君
森田福市君森榮藏君
松浦伊平君
武道振興ニ關スル建議案
提出者
堤康次郞君大麻唯男君
藤生安太郞君原口初太郞君
安藤正純君
(以上三月十九日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
東京市小河內貯水池築設ニ關スル質問主
意書
提出者瀧澤七郞君
全購聯賣藥ニ關スル質問主意書
提出者〓水留三郞君
(以上三月十九日提出)
一去十九日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如
シ
第一部選出
豫算委員中井一夫君(稲田直道君
補闕)
第八部選出
豫算委員大本貞太郞君(石井德久次
君補闕)
一去十九日委員長互選ノ結果左ノ如シ
決算小委員
委員長福田關次郞君
一去十九日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第七部選出豫算委員佐保畢雄君
第八部選出豫算委員北昤吉君
一去十九日特別委員長補關選擧ノ結果左ノ
如シ
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案
(輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關スル
件)(政府提出、貴族院送付)委員
委員長寺島權藏君(委員長津原武
君去十七日委員辭任ニ付其
ノ補關)
一去十九日特別委員理事補關選擧ノ結果左
ノ如シ
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案
(輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關スル
件)(政府提出、貴族院送付)委員
理事本田彌市郞君(理事寺島權藏君
去十九日理事辭任ニ付其ノ
補闕)
一去十九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
北支那開發株式會社法案(政府提出)外一
件委員
山道襄一君粟山博君
西田郁平君高田耘平君
堤康次郞君前田房之助君
〓水德太郞君宮澤胤勇君
村松久義君喜多壯一郞君
岡野龍一君田村秀吉君
小林三郞君小林房之助君
小高長三郞君小谷節夫君
葉梨新五郞君田代正治君
松岡俊三君庄司一郞君
植原悅二郞君小笠原三九郞君
田中好君田中源三郞君
高橋圓三郞君原物兵衞君
東〓實君伊豆富人君
赤松克麿君長谷長次君
窪井義道君河野密君
田原春次君前川正一君
道家齊一郞君木村武雄君
兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ
關スル法律案(政府提出)委員
篠原陸朗君中野邦一君
紫安新九郞君一柳仲次郞君
勝正憲君中島彌團次君
矢野庄太郞君池本甚四郞君
中川重春君川副隆君
岡田忠彥君本田義成君
小笠原三九郞君川島正次郞君
松川昌藏君武田德三郞君
松山常次郞君庄晋太郞君
永田良吉君盛島明長君
高岡大輔君豐田收君
藤本捨助君水谷長三郞君
河合義一君三木武夫君
靑木作雄君
一去十九日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
北支那開發株式會社法案(政府提出)外一
件委員
委員長山道襄一君
理事
粟山博君西田郁平君
小高長三郞君小谷節夫君
伊豆富人君
一去十九日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
飼料配給統制法案(政府提出)委員
辭任野中徹也君補關平野力三君
入營者職業保障法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任北昤吉君補關中村梅吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=1
-
002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、本日ノ日程ニ揭ゲマシタ質問一乃至六
ハ、何レモ政府ヨリ答辯書ヲ受領致シマシ
ク、仍テ日程ヨリ之ヲ省キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=2
-
003・服部崎市
○服部崎市君 日程第一ハ後廻シトセラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=3
-
004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=4
-
005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一ハ後〓シト致シマス-
政府ハ之ニ同意致シマシク、日程第二乃至
第四ハ同一委員ニ付託シタル議案デアリマ
スカラ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=5
-
006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第二、商法中改正法律案、日
程第三、商法中改正法律施行法案、日程第
四、有限會社法案、右三案ヲ一括シテ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メ
マス-委員長野村嘉六君
第二商法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三商法中改正法律施行法案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四有限會社法案(政府提出、貴族院
送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一商法中改正法律案(政府提出、貴族院送
付
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長野村嘉六
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一商法中改正法律施行法案(政府提出、貴
族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年三月十九日
委員長野村嘉六
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一有限會社法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長野村嘉六
衆議院議長小山松壽殿
〔野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=6
-
007・野村嘉六
○野村嘉六君 只今上程サレマシタ商法中
改正法律案外二件ノ委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告致シマス、委員會ハ二月ノ二十
八日カラ十三囘開キマシタ、何分商法中
改正法律案外二件デ、改正サレマシタ條
文ハ二百數箇條、新ニ設ケラレマシタ條
文ガ二百十箇條、合セテ四百二十箇條程
ニナル大改正デアルノデアリマス、斯ル
大改正ヲセネバナラヌト云フ政府ノ意見
ハ、現行商法ハ明治三十二年ノ公布竝ニ
實施ニ係ルモノデ、當時立法ヲ急イダノデ
不十分デアッタ爲メ、明治四十四年ニ多少
ノ修正ヲ爲シ、彌縫シ來リマシタ所、其後
世界大戰ヲ經テ、國內ハ勿論、國際的ニ商
事取引ガ非常ニ發達致シマシテ、現行商法
ニテハ、商業上ノ企業組織ニ變化ヲ來シタ
ル時代ニ副ハナイト云フノデ、昭和四年ニ
內閣ニ法制審議會ヲ設ケ、商法全般ノ改正
ヲ行フコトト致シタノデアリマス、ソレデ
先ヅ第一編總則、第二編會社、ソレニ新ニ
有限會社法竝ニ商法中改正施行法ヲ設ケタ
結果、總體デ今申上ゲマス通リニ四百數十
箇條ノ大改正ヲ爲スコトニナッタノデアリマ
ス、以上ノ如キデアリマスカラ、愼重ヲ期
スル爲メ、各條ニ亙ル政府ノ理由說明ヲ求
メ、審議ヲ進メタノデアリマス、ソコデ改正
サレタ要綱ニ付テ其〓略ダケヲ逐次申上ゲ
マス
會社編ニ付キマシテハ、一、會社ハ本店
ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スニ依リ成
立スルモノトシタ點、一、株式會社ノ成立
ニ關シ會社ノ基礎ヲ鞏固タラシムル爲ニ諸
種ノ必要ナル規定ヲ設ケタルコト、一、記
名株式ニ付キ所得者ノ權利確保ノ爲メ裏書
讓渡ノ制度ヲ認メタルコト、一、優先株、
後配株等種類ヲ異ニスル株式ノ發行ヲ認メ、
且ツ各種株式ノ相互ノ轉換ヲ認ムルト共
ニ、株式ニ轉換シ得ル社債ノ發行ヲモ認メ
テ、投資ノ自由ヲ擴大シタル點、社債
權者集會ノ制度ヲ設ケタル點、一、各種ノ
會社ニ合併無效ノ訴竝ニ株式會社ニ付キ資
本ノ增加又ハ減少ノ無效ノ訴ニ關スル規定
ヲ設ケタルコト、一、會社ノ整理ノ制度及
ビ特別〓算ノ制度ヲ新ニ設ケテ、裁判所監
督ノ下ニ是等ノ手續ガ的確公正ニ行ハルヽ
コトヲ期シタル點、會社ノ堅實ヲ圖ル
爲ニ罰則ニ全般的改正ヲ加ヘタル點等デア
リマス
改正案運用ニ付キ二三ノ質問竝ニ答辯ニ
付キ御紹介致シマス、此改正案ヲ施行スル
三ハ裁判所ノ關與スル事項ガ大層殖エタ
ノデアリマス、隨テ其運用ニ當ッテ遺漏ナキ
準備ガアルカドウカトノ質問ニ對シマシテ、
政府ハ最善ノ努力ヲ以テ關係職員ノ充實ヲ
圖リ、本法所期ノ目的ノ達成ヲスルト共ニ、
施行準備ノ期間內ニ改正法施行ニ必要ナル
手續法規ヲ完備シ、且ツ關係職員ヲシテ改正
案ニ十分習熟セシメ、一般周知ノ方策ヲ講
ズル方針デアルトノ答辯デアリマシタ
尙ホ之ニ關聯シテ、或ル事業ニ對スル監
督官廳ノ退職官吏ガ被監督會社ノ重役ニナ
ルコトハ弊害ガ多イト思フガ、政府ハ如何
ニ考ヘルカトノ質問ニ對シテ、政府ハ右ニ
關スル弊害ノ防止ニ付テハ、十分ニ〓究ノ
上然ルベキ措置ヲ講ズベキデアルガ、一般
基準法タル商法ニ規定スベキ事項デナイト
思フトノ答辯デアリマシタ、又罰則ノ運用
ニハ十分ノ注意ヲ加ヘ、目的ヲ逸脫スルヤ
ウナコトハ、嚴ニ戒メルト云フ言明ヲ致シ
マシタ
次ニ商法中改正法律施行法案ハ、商法ノ
改正ニ伴ヒマシテ、新舊法ノ調和ヲ圖ル
爲メ經過規定、竝ニ新法ヲ施行スル上ニ必
要ナル補充規定ヲ包含シテ改正シタトノ主
張デアリマシタ
次ニ有限會社法案ニ付キマシテハ、本法
案ハ商法上ノ四種類ノ會社ノ外ニ、別箇ノ
新シイ會社ノ制度ヲ創設セントスルモノデ
アリマシテ、政府ノ說明ニ依リマスト、有
限會社ノ特色ハ、社員ノ有限責任ヲ基礎ト
スル物的會社ノ一種デアルト云フ點ハ、株
式會社ト同樣デアリマスケレドモ、互ニ相
信賴スル比較的少數ノ社員ニ依ッテ組織セ
ラルヽ點ニ於キマシテハ、合名會社ノ色彩
ヲ帶ブルモノデアリマスガ故ニ、斯樣ナ特
殊ノ會社制度ガ營業上ノ企業組織トシテハ
誠ニ手頃デアリ、又便利デアルト云フ言分
デアルノデアリマス、故ニ以前カラ多數ノ
外國ニ於キマシテモ非常ニ行ハレ、其功績
ガ顯著デアリ、又我國ニ於キマシテモ、以
前カラ實業界方面デハ熱心ニ本案ノ成立ヲ
希望シテ居タカラ、立案シタト云フコトデ
アルノデアリマス
本案ノ要點ヲ擧ゲマスト、社員ノ責任ハ
其出資ノ金額ヲ限度トシテ居ルコト、社員
ノ數ノ最大限度ヲ、原則トシテ五十人ト制
限シテ居ルコト、資本ノ最低限度ヲ一万圓
ト定メテ居ルコト、出資一口ノ金額ヲ百圓
以上トシテ居ルコト、社員ノ異動ヲ防グ爲
ニ持分ノ讓渡ニハ嚴重ナル制限ヲ付シタル
コト、設立ノ際ニ必ズ出資金額ノ拂込ヲ爲
スモノトシ、拂込未濟ノ分ハ現物出資又ハ
財產引受ニ付キ、其財產ノ評價ガ不當ナル
場合ニ於テハ、社員等ガ其塡補ニ付キ連帶
ノ責ヲ負フモノトシ、又資本增加ノ場合ニ
於テモ、右ト同樣ノ規定ヲ設ケ、以テ會社
ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルコト、社員總會ニ
付キ書面ニ依ル決議ヲ認メ、其他多クノ事
項ヲ會社ノ自治ニ任シテ居ルコト、有限會
社ト他ノ有限會社又ハ株式會社トノ合併ヲ
認メタコト、有限會社ト株式會社トノ間ニ
於テ、相互ニ組織變更ヲ爲シ得ル途ヲ開イ
タコト、貸借對照表ノ公〓ハ之ヲ强制シナ
イコト等デアリマス
尙ホ株式會社及ビ有限會社雙方ニ通ジマ
シテ、取締役ハ株主又ハ社員以外ノ者ヲ以
テ、之ニ充テルコトガ出來ルト云フ途ヲ開
イテ居ルノデアリマス、此點ニ關スル政府
ノ說明ハ、此規定ガアッタトテ定款ヲ以テ
株主又ハ社員ヲ以テ取締役トスル定メヲ妨
グルモノデハナイト云フノデアリマス、要
スルニ會社ノ自治ヲ尊重スル趣旨ヨリ出デ
タモノデアリマス、今日實際ニ於テ株ヲ借
リテ株主ノ假裝ヲ爲シ、取締役ニナリ、後日
其株ノ返還等ニ付テ、紛爭ヲ起スコトガ屢、
アルノデ、寧ロ株主ニ非ザル者デモ取締役
トナリ得ル方ガ、眞實ノ事實ニ適合シ、紛
爭ヲ避クル爲ニモ良イ、斯ウ信ジタ結果本
規定ヲ設ケタト云フコトデアリマス、又以
上ノ法律ハ出來得ベクンバ公布後一年位ノ
準備期間ヲ置イテ、實施スル方針デアルト
ノ言明デアリマシタ、質問ガ終了致シマシ
テ討論ニ入リ、採決ノ結果三案共全員一致
原案ニ贊成デアリマシタ、此段御報〓ヲ致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=9
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010・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
商法中改正法律案第二讀會(確定議)
商法中改正法律施行法案
第二讀會(確定議)
有限會社法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第五乃至第七ハ同一委員ニ付託シタル議案
デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第五、昭和十二年法律第九十
二號中改正法律案、日程第六、商業組合法
中改正法律案、日程第七、有價證劵取締法
案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キ
マス、委員長ノ報〓ヲ求メマス委員長
寺島權藏君
第五昭和十二年法律第九十二號中改
正法律案(輸出入品等ニ關スル臨時
措置ニ關スル件)(政府提出、貴族院
送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第六商業組合法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第七有價證劵業取締法案(政府提出、
貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案(輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關
スル件)(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年三月十九日
委員長寺島權藏
衆議院議長小山松壽殿
附帶決議
政府ハ速ニ「パルプ」資材供給ニ關ス
ル根本對策ヲ確立スルト共ニ「パルプ」
ノ節約及廢物利用ノ具體策ヲ樹テ萬遺
憾ナキヲ期スヘシ
報〓書
一商業組合法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長寺島權藏
衆議院議長小山松壽殿
附帶決議
一現今ノ組合制度ノ全般ニ亙リ再檢討
ヲ爲シ之ヲ統合調整スル爲關係法律ノ
改正ヲ行ヒ組合制度ノ完璧ヲ期シ其ノ
組織機能ヲ十分活躍セシムヘシ
政府ハ本法案第二十七條ノ二ニ依リ
新ニ商業組合ノ設立ヲ命スル場合ニ於テ
ハ其ノ地區內ニ在ル他組合ノ實狀及關
係ヲ考慮シ特ニ愼重ヲ期スヘシ
報告書
一有價證劵業取締法案(政府提出、貴族院
送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長寺島權藏
衆議院議長小山松壽殿
〔寺島權藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=14
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015・寺島權藏
○寺島權藏君 只今議題トナリマシタ三案
ノ委員會ニ於ケル經過及ビ結果ヲ御報〓申
上ゲマス、此三案ハ相當重要ナル法案デア
リマスノデ、委員會ハ八囘ニ互リマシテ愼
重審議ヲ重ネマシタ次第デゴザイマス、其
審議ノ順序ニ從ヒマシテ御報告申上ゲタイ
ト思ヒマス
昭和十二年法律第九十二號中改正法律案
ヨリ御報告申上ゲマス、今囘ノ改正ノ要點
ヲ簡單ニ申上ゲマスト、產業團體、卽チ輸
出入、生產、配給、使用等ノ各部門ニ組織
サレテ居リマスル各種ノ產業團體ヲ、打ッテ
一丸トスル需給調整協議會ト云フ團體ヲ組
織セシメ、此團體ヲシテ自治的ニ需給調整
ノ方策ヲ決定セシムルコト、尙ホ政府ガ需
給調整上必要アリト認メマス場合ニハ、關
係產業團體ニ對シ需給調整協議會ノ組織ヲ
命ジ、又協議會ニ對シテ需給調整ニ關シ必
要ナル決定ヲ爲サシメ、或ハ又協議會ノ會
員ニ對シ協議會ノ決定ニ從フベキコトヲ命
ジ得ルコト等デアリマス、本法ノ運用如何
ハ從來ノ產業經濟ノ實體ニ、相當變化ヲ與
ヘルモノデアリマスノデ、改正案ニ付テノミ
ナラズ、本法全般ニ亙リ其施行ノ狀況、政
府ノ方針等ニ付キ、熱心ニ質疑應答ガアッタ
ノデアリマス、今其主ナル論點ニ付キマシ
テ簡單ニ御說明申上ゲマス、第一ニハ、需
給調整協議會ト貿易及ビ關係產業ノ調整ニ
關スル法律ノ規定スル統制協議會トノ關係
如何ト云フ點デアリマス、第二ニハ第二條
ノ二ニ「前條ノ物品ノ需給ニ關係アル產業」
トアルハ、如何ナル意味ヲ有スルモノデア
ルカ、卽チ其範圍如何ト云フ點デアリマス、
第三ニハ、需給調整協議會ヲシテ價格統制
ヲ行ハシムル意圖アリヤト云フ點デアリマ
ス、第四ニハ、本法ニ依ル原料品ノ輸入制限
ノ結果輸出減少ノ虞アルガ、之ニ對スル
政府ノ輸出振興策如何ト云フ點デアリマス、
第五ニハ、輸出制限ニ付キ大藏、商工兩當
局ノ連絡ヲ圖リ、輸入許可ニ關スル事務ノ
迅速且ツ圓滑ナル進行ヲ圖ルニ非ザレバ、
商機ヲ逸シ、貿易上著シク不利ナル結果ヲ招
來スルガ、之ニ對スル政府ノ所見如何ト云
フ點デアリマス、第六ニハ、物資ノ需給均
衡ヲ失シタル結果、物價ハ益〓騰貴ノ傾向ニミ
アルモ、政府ハ物價騰貴ノ抑制ニ付キ如何
ナル措置ヲ講ズル意圖アリヤト云フ點デア
リマス、是等ノ質問ニ對シマシテ政府當局
ハ、第一ノ需給調整協議會ト統制協議會ト
ノ關係ニ對シマシテハ、之ヲ構成スル者ノ
範圍ニ廣狹ガアリ、統制協議會ハ輸出入業
者及ビ官吏ヲ以テ組織セラルヽノデアリマ
スガ、需給調整協議會ハ獨リ輸出入業者ニ止
ラズ、廣ク關係業者又ハ其團體ヲ以テ之ヲ
組織セシムルノデアリ、又前者ノ組織セラ
レマスノハ、輸出入品ニ限ラレマスノニ對
シ、後者ニ於テハ斯ル制限ナク、需給關係
ノ調整ヲ必要トスル如何ナル物品ニ付テモ
組織セラレルノデアリマス、第二ノ「需給ニ
關係アル產業」ノ意味ハ、極メテ廣汎デア
リマシテ、當該物品ニ關聯ヲ有スル總テノ
事業ヲ含ムノデアリマスガ、需給調整協議
會ノ組織ニ際シマシテハ、適當ナル範圍ヲ
定メルコトトナルノデアリ第三點ニ對シ
マシテハ、需給調整協議會ヲシテ爲サシム
ベキ決定中ニハ、價格統制ニ關スル事項ヲ
モ含ムモノデアリマス、第四點ニ對シマシ
テハ、世界ヲ擧ゲテ白給自足主義經濟ニ向ジ
テ居ル今日ト致シマシテハ、從來ノ自由主
義經濟下ニ於ケルガ如ク、良品廉價主義ノ
輸出振興策ヲ採ルコトノミデハ適當デハア
リマセヌノデ、相手國トノ協調ニ依リ、我
國ノ輸出減退ヲ防グトカ、又ハ求償貿易主
義ニ依リ、特定國ニ對スル輸出ヲ維持スル
政策モ亦已ムヲ得ナイノデアル、政府ハ輸
出補償法ノ運用及ビ輸出組合ニ依ル統制等
ノ方法ニ依ッテ、極力輸出ノ振興ヲ圖ル考デ
アル、尙ホ輸出品用原料ノ輸入ニ付キマシテ
モ、輸出振興上十分考慮スル積リデアル、
第五點ニ對シマシテハ、目下經費ニ付キ大
藏當局ト折衝中ノ物資需給調整ニ關スル新
機關ニ大藏當局ノ參加ヲ求メマシテ、輸入
許可及ビ爲替許可ニ關スル事務ノ圓滑迅速
ナル進行ヲ圖ル豫定デアル、第六ノ物價騰貴
抑制ノ問題デアリマスガ、之ニ對シマシテハ
暴利取締、消費節約宣傳及ビ代用品利用奬
勵等ニ依リ、極力物價騰貴ヲ抑制致シテ居
リマスガ、尙ホ是等ノ措置ヲ以テ足ラザル
場合ニ於テハ、徹底的措置ヲ講ズル積リデ
アルトノ答辯ガアリマシタ
次ニ商業組合法中改正法律案ノ提案ノ理
由ニ關シマシテ、政府ヨリ大體次ノ如キ說
明ガアッタノデアリマス、卽チ現下ノ中小商
業者ノ疲弊困態セル所以ハ、百貨店或ハ產
業組合ノ進出等複雜ナル原因ニ依ルガ、何
ト申シマシテモ中小商業者ノ經營自體ニ大
ナル缺陷ガアリ、不合理無統制ナ點ニ原因
スル所ガ多イノデアリマス、ソコデ今囘之
ガ改善ヲ圖ル爲ニ商業組合法ヲ改正シテ、
金融事業ノ擴充、商品劵、倉荷證劵ノ發行
等、其事業ノ範圍ヲ擴張スルト共ニ、統制
確保ノ見地ヨリ、給制命令ニ關スル規定ヲ
整備シ、絲制ノミヲ目的トスル商業組合ノ
設立ヲ認メマシタ、之ニ伴ヒ組合ノ全國的
指導連絡機關トシテノ商業組合中央會ノ制
度ヲ法制化セントスルモノデアリマス
本案ニ關シマシテハ次ノ樣ナ質疑ガアリ
マシタ、卽チ產業組合ニ對シテ商業組合法
ノ適用アリヤトノ質疑ニ對シマシテ、現在
ノ所、產業組合ニ對シテハ適用ナシトノ答
辯ガアリ、次ニ本案中ノ統制商業組合ニ關
スル規定ハ、從來ノ同業組合ノ機能ヲ侵ス
虞ハナイカトノ質疑ニ對シマシテハ、本案
中ノ經濟事業ヲ行ハザル商業組合ノ統制
ハ、主トシテハ全國的ナ配給統制ヲ行フ特
殊ノ場合デアッテ、同業組合トハ趣旨ヲ異
ニスルモノデアルトノ答辯ガアリ、次ニ同
業組合法ヲ改正シテ、之ニ積極的統制ヲ行
ハシムル意向ハナイカトノ問ニ對シマシテ
ハ、政府ハ同業組合ノ過去ニ於ケル功績ト
機能ニ付キ、十分ノ認識ヲ有スルモノデア
ルタ、唯今日ノ產業統制ヲ合理的ニ遂行ス
ルニハ、積極的共同施設ヲ行ヒ得ル商業組
合組織ヲ適當トシ、同業組合法ノ改正ニ付
テハ、經濟事情ノ變化ニ適應スルヤウ、篤
ト考究致シタキ旨ノ意見ノ開陳ガアリ、次
ニ商業組合ト各種組合、殊ニ產業組合トノ
摩擦ヲ防止スベキ具體的方策如何トノ質疑
ニ對シ、反產問題ニ付テハ農林省ト緊密ナ
ル連絡ノ上、地方ノ實情ニ應ジ商業組合ト
產業組合トノ協調ニ努メツヽアリトノ答辯
ガアリマシタ
次ニ有價證劵業取締法案ノ提案理由ハ、我
國產業ノ健全ナル發達ニハ、有價證劵ノ流通
ノ圓滑ト其取引ノ安全トヲ圖ルコトガ極メ
テ肝要デアリマシテ、政府ハ從來取引所政
策ニ於テハ、常ニ意ヲ玆ニ用ヒ來ッタノデ
アリマスガ、取引所外ニ於ケル有價證劵ノ
賣買等ニ付キマシテハ、何人モ其營業ヲ自
由ニ爲シ得ルコトトナッテ居リマス爲メ、近
時不正犯罪行爲ヲ行フ者モ尠カラザル狀態
デアリマスノデ、其弊害ヲ除去シ、取引ノ
安全ヲ圖ランガ爲メ、本案ヲ提出シタコト
デアリマス
質疑ニ入リ、先ヅ免許ノ方針ニ付テハ、
本法制定ノ趣旨ヨリスルモ、嚴選主義ニ依
ルヲ至當トスベク、營業保證金ノ如キモ、
相當高額ニセザレバ目的ヲ達シ得ズト認メ
レラルヽガ、政府ノ所見如何トノ質問ガアリ
マシタガ、之ニ對シ政府ハ、免許ニ付テハ
業者ノ資力信用等ヲ嚴密ニ調査ノ上許否ヲ
決定スル意向ニシテ、又營業保證金ノ額ニ
付テモ尙ホ攻究スベシトノ答辯デアリマシ
ク、又有價證劵業ハ取引所取引ト密接ナル
關係ヲ有スルニ付キ、取引所所在地ニ於
テハ、之ヲ取引所內ニ包含セシメテ、雜株
ノ取引ヲ活潑ニ行ハシムルコトトシテハ如
何トノ質問ガアリマシクガ、之ニ對シ政府
ハ、現在ノ問題トシテハ其點ニ付テ目下考
慮シテ居ラズトノ答辯ガアリマシタ、又本法
案第十四條ノ制裁規定ニ於テ「差金ノ授受ヲ
目的トスル行爲ヲ爲シクルトキ」トアルモ、
之ヲ目的トシタルコトノ認定困難ニシテ、
業者ニ言逃レノ機會ヲ與フル虞アルヲ以テ、
取締上實效ナキニアラズヤトノ質問ガアリ、
之ニ對シ政府ハ差金授受ヲ行ヒタル事
實ガ重ナル場合ハ、當初ヨリ之ヲ目的トシ
タリトシテ、第十四條ノ制裁ヲ科スル意向
ナリトノ答辯ガアリマシタ、更ニ本法制
定ニ依リ業者ハ公認セラルヽコトナルニ付
テ、看板ヲ惡用シテ不正行爲ヲ爲ストキハ、
却テ弊害アリト認メラルヽガ、取締ノ完璧
ヲ期シ得ルヤトノ質問ガアリ、之ニ對シ政
府ハ、本法ノ施行ニ際シテハ、地方廳ニ專門
職員ヲ配置シテ嚴重ニ取締ル意向ナリトノ
答辯ガアリマシタ
質疑ヲ終了致シマシテ、討論ニ入リマシ
テ、民政黨ヲ代表致シマシテ高橋義次君、
政友會ヲ代表致シマシテ川崎巳之太郞君、
第一議員倶樂部ヲ代表致シマシテ林路一君、
社大黨ヲ代表致シマシテ岡崎憲君カラ、ソ
レゾレ意見ノ開陳ガアッタノデアリマスル
ガ、結局各派共同致シマシテ、第一ノ昭和
十二年法律第九十二號中改正法律案ニ對シ
マシテハ、斯ウ云フ附帶決議ヲ附シタノデ
アリマス
附帶決議
-政府ハ速ニ「パルプ」資材供給ニ關ス
ル根本對策ヲ確立スルト共ニ「パルプ」
ノ節約及廢物利用ノ具體策ヲ樹テ萬遺
憾ナキヲ期スヘシ
ソレカラ商業組合法中改正法律案ニ對シマ
シテハ、左ノ附帶決議ヲ附ケタノデアリマ
ス
附帶決議
一現今ノ組合制度ノ全般ニ亙リ再檢討
ヲ爲シ之ヲ統合調整スル爲關係法律ノ
改正ヲ行ヒ組合制度ノ完璧ヲ期シ其ノ
組織機能ヲ十分活躍セシムヘシ
-政府ハ本法案第二十七條ノ二ニ依リ
新ニ商業組合ノ設立ヲ命スル場合ニ於
テハ其ノ地區內ニ在ル他組合ノ實狀及
關係ヲ考慮シ特ニ愼重ヲ期スヘシ
更ニ希望意見ト致シマシテ、社大黨ノ岡崎
君カラ、貿易、產業及ビ財政ヲ一貫スル綜
合的行政ヲ確立スル爲メ、大藏省ノ部局ヲ
商工省ニ合併シテ、經濟省ヲ新設シテハド
ウカ、又健實且ツ特色アル小工業ノ保護ニ
善處シテ貰ヒタイ、其他二三ノ希望意見ガ
開陳サレマシタガ、ソレハ速記錄ニ依ッテ
御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス
斯クシテ昭和十二年法律第十二號中改正
法案律及ビ商業組合法中改正法律案ハ原案
通リ、有價證劵業取締法案ハ貴族院修正通
リ、滿場一致可決致シマシテ、委員會ヲ終ッ
タ次第デアリマス、此段御報告申上ゲマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=16
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017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=17
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018・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=18
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019・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案(輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關
スル件)(政府提出、貴族院送付)
第二讀會(確定議)
商業組合法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第二讀會(確定議)
有價證劵業取締法案(政府提出、貴族
院送付)第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=20
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021・小山松壽
○議長(小山松嘉君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通り可決確定致シマシタ(拍手)日程
第八、市街地建築物法中改正法律案、第
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長深澤豐太郞君
第八市街地建築物法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一市街地建築物法中改正法律案(政府提
出貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月十九日
委員長深澤豐太郞
衆議院議長小山松壽殿
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=21
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022・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 本改正案ハ市街地建築物
ニ對シ新ニ住居專用地區及ビ工場專用地區
ヲ指定シ、建築物ノ高サニモ最高最低ノ制
限ヲ加フル地區ヲ定メ、且ツ從來保安、衞
生、保健ノ立場ヨリ立法セラレタルモノデ
アリマスルガ、時局ニ鑑ミ防空ノ精神ヲ織
込ンデ、空地ノ割合ヲ强制シ得ルヤウ、又
道路ハ九尺ヲ四米ト改正セラレタルモノデ
アリマス、委員會ハ三囘ニ亙リ質疑ヲ繼續
致シマシタ、主ナルモノハ、都市計畫ノ指
定ハ財政ニ伴フベシ、都市計畫ノ指定ハ餘
リニ先走ル勿レ、指定ノ變更又ハ指定セラ
レタル儘ニ放任セラレ居ルコトノ市民ニ對
スル損害、迷惑ヲ惹起スルコト甚キモノガ
アルトノ、市民生活ニ卽シタル剴切ナル質
問ガ飯田、田中、江羅、長野、福田、松永
其他ノ諸君ヨリ熱心ニ質問ナサレタノデア
リマス、討論ノ結果ハ適切ナル改正デアル
トシテ滿場一致可決致シマシタ、何卒委員
會ノ決定ノ通リ御贊成アランコトヲ希望致
シマス、以上ヲ以テ報告ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=22
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023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=23
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024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=24
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025・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=25
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026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=26
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027・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
市街地建築物法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=27
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028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ
通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=28
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029・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、入營者
職業保障法中改正法律案ヲ議題ト爲シ、委
員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=30
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031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-入營
者職業保障法中改正法律案、第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長田中亮一君
入營者職業保障法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一入營者職業保障法中改正法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十三年三月二十二日
委員長田中亮
衆議院議長小山松壽殿
希望條項
一、退營者ノ再雇傭就職條件ハ努メテ其
ノ地位及給與額ニ於テ前職時代ヨリハ
向上增額セシムル樣雇傭者ノ道義心ニ
訴ヘテ善處萬全ヲ期セラレ度シ
退營者ニシテ始メテ職場ヲ求ムル者
ニハ性能、經歷、趣味等ヲ考査シ適職
主義ニヨリ善處サレ度シ
關東州、北支、蒙疆、中南支等ノ帝
國權益地帶ニ於ケル職業紹介所竝ニ軍
部補導部ノ充實ヲ企圖シ退營者現地就
職者ノタメ遺憾ナキヲ期セラレ度シ
傷痍軍人ノ再雇傭或ハ新求職ニ對シ
テ豫メ勞働ノ强化職業疾患等ノ事態發
生セザル勞働環境ヲ選擇スルニ留意セ
ラレ度シ
〔田中亮一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=31
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032・田中亮一
○田中亮一君 只今上程ニナリマシタ入營
者職業保障法中改正法律案ニ關スル委員會
ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、
本案ニ付キマシテハ各委員諸君ヨリ熱心ナ
ル御質疑、又適切ナル御意見ガ交サレタノ
デアリマス、之ニ對シマシテ政府亦懇切丁
寧ナル所ノ御答辯ガアッタノデアリマス、此
經過ニ付キマシテハ速記錄ニ依ッテ御承知
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、質問ヲ打
切リマシテ討論ニ入リマシタ、討論ノ結果
民政黨ノ片岡恒一君ヨリ左ノ希望條項ヲ附
シテノ原案ニ贊成ノ御意見ガアッタノデア
リマス、又政友會ヲ代表シテ服部岩吉君ヨ
リ、片岡君ノ御趣旨ト同樣ノ御意見ニ依ッテ
本案ニ對スル贊成ノ意見ヲ述ベラレタノデ
アリマス、又第一議員倶樂部ノ江藤源九郞
君ヨリモ、同趣旨ノ意味ニ於キマシテ本案
ニ贊成ノ意ヲ表サレタノデアリマス、又社
會大衆黨ノ淺沼稻次郞君ヨリモ、同趣旨ノ
下ニ贊成ノ意ヲ表セラレタノデアリマス、
討論終結致シマシテ採決ニ入リマシテ、左
ノ希望條項ヲ附シテ原案ニ贊成スルコトニ
決定致シタノデアリマス、茲ニ希望條項ヲ
朗讀致シマス
希望條項
退營者ノ再雇傭就職條件ハ努メテ其
ノ地位及給與額ニ於テ前職時代ヨリハ
向上增額セシムル樣雇傭者ノ道義心ニ
訴ヘテ善處萬全ヲ期セラレ度シ
一、退營者ニシテ始メテ職場ヲ求ムル者
ニハ性能、經歷、趣味等ヲ考査シ適職
主義ニヨリ善處サレ度シ
關東州、北支、蒙疆、中南支等ノ帝
國權益地帶ニ於ケル職業紹介所竝ニ軍
部補導部ノ充實ヲ企圖シ退營者現地就
職者ノタメ遺憾ナキヲ期セラレ度シ
傷痍軍人ノ再雇傭或ハ新求職者ニ對
シテ豫メ勞働ノ强化職業疾患等ノ事態
發生セザル勞働環境ヲ選擇スルニ留意
セラレ度シ
右御報告ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=32
-
033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=33
-
034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=34
-
035・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=35
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036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=36
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037・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
入營者職業保障法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=37
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038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=38
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039・服部崎市
○服部崎市君 此際暫時休憩セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=39
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040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=40
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041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、暫時休憩致シマス
午後一時五十八分休憩
午後三時三十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=41
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042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=42
-
043・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第十ヲ繰上ゲ
上程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=43
-
044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=44
-
045・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第十、航空擴充ニ關スル決議案ヲ議題
ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス
-提出者多田滿長君
第十航空擴充ニ關スル決議案(多田
滿長君外十九名提出)
航空擴充ニ關スル決議案
航空擴充ニ關スル決議
政府ハ支那事變ト國際情勢ノ急迫トニ鑑
ミ軍用航空竝民間航空ノ振興擴充ニ銳意
努力シ併セテ國際航空路ノ開拓ニ邁進セ
ラレムコトヲ望ム
右決議ス
〔多田滿長君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=45
-
046・多田滿長
○多田滿長君 只今上程サレマシタ航空擴
充ニ關スル決議案ノ提案理由ヲ極メテ簡單
ニ申上ゲマス、「政府ハ支那事變ト國際情勢
ノ急迫トニ鑑ミ軍用航空竝民間航空ノ振興
擴充ニ銳意努力シ併セテ國際航空路ノ開拓
ニ邁進セラレムコトヲ望ム」、是ガ本決議案
ノ全文デアリマス、今日緊迫セル國際情勢
ニ鑑ミ、之ニ卽應スベキ我ガ日本國民トシ
テハ、擧國航空ノ完成へ、之ヲ「モットー」ト
シテ進ム必要ガアリマス、是ト同時ニ我ガ
日本トシテハ、航空ハ何物ニモ先行スト云
フ一ツノ基準ヲ立テル必要ガアルト存ジマ
ス、此決議案ノ內容ヲ一言ニシテ申セバ、
此二ツノ標語ニ盡キルノデアリマス、今次
ノ支那事變ニ於ケル皇軍ノ奮鬪力戰ニ對シ
テハ、國民ノ齊シク感謝措ク能ハザル所デ
アルガ、事變勃發以來僅ニ半歲ヲ出デズシ
テ、流石堅壘ヲ以テ誇レル上海ヲ拔キ、更
ニ長驅敵ノ首都南京ヲ攻略セルコトハ、世
界戰史上未ダ曾テ見ザル所デアッテ、圓五.
驚嘆ニ値スルモノガアリマス(拍手)此急速
ニシテ光輝アル戰果ノ獲得ハ、畏クモ上
陛下ノ御稜威ニ依ルコトデハアリマスガ、
又一方ニ於テハ俊敏果敢ナル我ガ陸海空軍
ガ、此戰ノ初期ニ於テ先ヅ制空權ヲ把握シ、
一擧敵ノ死命ヲ制シタルニ依ルモノデアッ
テ、其ノ動功實ニ偉大ナリト申サナケレバ
ナリマセヌ(拍手)暴支膺懲ノ師ハ未ダ其半
バニモ達シマセヌ、彼蔣介石ヲ屈服セシメ、
眞ニ東洋永遠ノ平和ヲ確立センガ爲ニハ、
尙ホ相當ノ長期戰ヲ覺悟スベキハ當然デア
リマス、而モ國際政局ノ動キハ極メテ〓妙
デアル、不安ハ其度ヲ加ヘツヽアリマス、
列强ノ軍備擴張熱ハ愈〓、熾烈トナリ、競ウテ
國防ノ充實ニ專念シ、就中航空ノ擴張ニ付
テハ全力ヲ傾倒シテ、何物ヲモ犠牲ニスル
モ惜マザル情勢デアリマス、此間ニ處スル
我軍航空ハ果シテ現狀ヲ以テ滿足シ得ベキ
ヤ否ヤ、昨年ノ春米國ノ商務局ノ發表セル
數字ニ依ッテ見マスト、主要國ノ空軍勢力ハ
英國四千機、佛蘭西三千六百機、「ソ」聯三
千四百機、伊太利三千二百機、獨逸三千機、
米國二千二百機、而シテ我ガ日本ハ二千機
ト云フコトデアリマス、此數字ガ正確カ否
カハ明瞭デハナイ、又其後ニ於テ變化モアッ
タデアラウガ、大體間違ガナイトスレバ、
日本空軍ハ其機數ニ於テ主要國ノ最下位ニ
アリマス、如何ニモ心細イノデアル、空軍
ハ何物ニモ先行シテ其擴充ヲ圖ル必要ガア
ル、假令軍艦ノ一隻ヤ二隻其建造ヲ延期シ
テモ、亦一箇師團ヤ二箇師團場合ニ依ッテハ
縮小ヲ致シテモ、航空擴充ノ爲ニハ已ムヲ
得ナイト確信スル者デアリマス(拍手)
民間航空機ガ今囘ノ事變ニ際シ、軍指揮
ノ下ニ活躍ヲシ、軍事上ニ大ナル貢獻ヲ爲
シタル事實ニ對シテ、國民亦非常ナル感謝
ヲ惜マザルモノデアリマス、恐ラクハ軍ノ
裝備ガ近代化サレ、機械化部隊ガ軍ノ主要
ナル勢力トナルニ從ッテ、民間航空機ノ效
用ハ益〓增加スルニ違ヒアリマセヌ、隨テ一
國空軍勢力ノ算定ニハ、其物的、人的勢力
ヲ度外視スル譯ニハ參ラヌノデアリマス、
然ルニ我ガ民間航空ハ列强ニ比シテ頗ル劣
勢ニアル、今空軍トノ關係ヲ比較シテ見マ
スト、全世界平均カラ見マスト、民間機數
ハ軍用機ノ半分デアルノニ比シテ、日本ト
伊太利トハ著シク少イ、殆ド一割內外ニ過
ギヌノデアリマス、之ニ反シ米國ノ如キハ、
民間機ノ方ガ軍用機ノ三倍半ニモ及ブト云
フノデアルカラ、此點ダケヲ見テモ、我國
民間航空事業ノ現勢ガ、列國ニ比シテ非常
ニ劣ッテ居ルト云フコトハ明瞭デアッテ、是
ガ空軍ノ實力ニモ影響スルデアラウコトハ
想像ニ難クナイノデアリマス、故ニ吾々ハ
旣ニ前議會ニ於テ政府ニ對シ、是ガ擴充ヲ
求ムル爲メ建議案ヲ提出致シタノデアル
ガ、其後ニ於ケル內外ノ情勢ハ、更ニ民間
航空ノ振興ヲ痛感セシメテ居ルノデアル、
今議會ニ提案セラレマシタ航空關係ノ豫
算ヲ見マスト、軍關係ニ於テハ當局ノ大イ
ニ力ヲ盡シツヽアルコトハ吾等ノ多トスル
所デアルガ、空軍以テ世界ニ覇ヲ唱ヘ、名
實共ニ東亞ノ盟主タル地位ヲ確保セントス
ル吾等ノ希望カラ申セバ、其間大イナル距
離ガアリマス(拍手)併シ是ハ巳ムヲ得ナイ
トスルモ、セメテ世界航空ノ水準ダケニハ
之ヲ達セシメテ、國防ノ安全ヲ保持シタイ
ト云フノガ私共ノ念願デアル、民間航空ニ
於テハ、乘員ノ養成、中央〓究機關ノ設立
等、從來ニ比シテ目新シイモノガアル、是
亦政府ニ於テ相當ノ努力ヲ拂ハレテ居ルコ
トハ窺ヒ知ルコトガ出來マスガ、少シク其
內容ヲ檢討スルニ、貧弱ニシテ全ク御話ニ
ナリマセヌ、此程度ヲ以テシテ、果シテ政
府ノ申サルヽガ如キ實績ヲ擧ゲ得ルヤ否ヤ
頗ル疑問デアル、否不可能ト存ジマス、
彼ノ中央〓究機關ノ如キハ五十万圓、洵ニ
雀ノ淚程ト申シテモ宜シイ、其位ノ準備費
ヲ計上サレテ居ルコトハ甚ダ遺憾ニ存ジマ
ス、政府ハ一日モ早ク是ガ實行ニ著手シ、
世界ニ冠タル〓究機關ノ完備ヲ圖リ、不振
ナル我ガ航空工業ノ飛躍向上ニ資センコト
ヲ希望スル次第デアリマス、航空機乘員ノ
養成ニ付テモ、未ダ吾々ヲシテ滿足セシム
ルコトハ出來マセヌ、政府ハ航空工業ノ確
立ト相俟チ、操縱士ガ我ガ航空界發展ノ一
大要素ヲ成ス點ニ深ク思ヲ致シ、優秀ナル
操縱士ノ大量養成ニ向ッテ、更ニ一段ノ力ヲ
盡スベキデアリマス
更ニ歐洲列强諸國ニ於テハ、旣ニ自國內
ノ航空線路ヲ充實致シテ、遠ク大陸ヲ越エ、
大洋ヲ橫斷シテ、國際航空線路ヲ開設シ、
自國ノ權益進出ニ邁進シテ居リマス、今日
ニ於テハ一衣帶水ノ彼方ニアル支那ガ、列
國航空線路獲得ノ焦點トナッテ居ルト云フ
現狀デアル、然ルニ我國民間航空事業ハ僅
ニ國內線トシテ、札幌、臺灣間、福岡、大
連間ノ兩幹線ヲ、舊式機ヲ利用シテ辛ウジ
テ運航ヲ繼續致シテ居ルニ過ギマセヌ、國
際路線トシテハ滿洲國ニ通ズル東京、新京
線ノ一本ダケト云フ、洵ニ憐ムベキ現狀ニ
アルコトハ甚ダ殘念ニ堪ヘマセヌ、政府ハ
速ニ今事變ニ於ケル軍事占領地域ニ向ッテ、
定期航空線路ヲ開設スルコトハ勿論、進ン
デ米大陸或ハ歐洲、竝ニ南洋方面へノ國際
線路ヲモ開拓シテ、經濟、文化、交通、有
ユル方面ニ向ッテ、我ガ帝國ノ東洋ニ於ケル
地步ヲ確保スル必要ガアリマス、私共ハ航
空ノ擴張ニ付テ屢〓政府ノ所信ヲ質スト、
何時モキマリ文句デ、其必要ハ痛感シテ居
ルガ、財源ガナイト言フ、若シ夫レ大藏省
ガ此方面ニ金ヲ出シ澁ルト云フコトデアリ
マスナラバ、或ハ夫レ國ヲ誤ルノ譏リヲ免
レマスマイ、臨時軍事費ヲ通算シテ八十五
億ニ近イ我ガ來年度ノ豫算、此厖大ナル豫
算ヲモ我ガ國民ハ有ユル苦難ヲ忍ビナガラ
モ、喜ンデ負擔セントスル所以ノモノハ、
今日ハ方ニ國家危急存亡ノ岐路ニ立ッテ居
ルト云フコトヲ、十分理解致シテ居ルカラ
デアリマス(拍手)我ガ國民ハ國際關係ニ鑑
ミ、今囘ノ事變ニ因リ、更ニ認識ヲ新ニシ
テ、航空擴充ノ必要ヲ痛感シテ居ル、是ガ
爲ニハ如何ナル苦痛ヲ忍ブモ敢テ辭セナイ
ノデアル、此場合寧ロ認識ヲ新ニスベキハ
政府當局デハアリマスマイカ、政府當局ニ
對シ、吾々ハ航空擴充ノ爲メ、唯斷ノ一字ヲ
要求セントスルモノデアル(拍手)此決議案ハ
政民共同提案デアッテ、贊成者實ニ三百數十
名ヲ算ヘテ居リマス、恐ラクハ全院ノ聲ト
見テ宜シイ、全院ノ聲ハ卽チ國民ノ聲デアリ、
總意デアル、關係閣僚ハ勿論、總理大臣以
下全閣僚ハ、此決議ノ重要性ヲ深ク心ノ中
ニ牢記セラレテ、深甚ノ考慮ヲ拂ヒ、今後
ニ於ケル軍民一貫セル航空ノ擴大强化ヲ圖
リ、速ニ根本對策ヲ樹立セラレテ、著々之ヲ
實行ニ移スベキデアリマス、之ヲ以テ本案提
案ノ理由ト致シマス、何卒御贊同ノ上可決セ
ラレンコトヲ切望致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=46
-
047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-依
光好秋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=47
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048・依光好秋
○依光好秋君 極メテ簡單デゴザイマスル
カラ、此席ヨリ發言ノ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=48
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049・小山松壽
○議長(小山松壽君) 簡單ナラバ宜シウゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=49
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050・依光好秋
○依光好秋君 只今上程サレマシタル航空
擴充ニ關スル決議案ハ、多田君ノ御說明ニ
私共全ク同感デゴザイマス、時代ノ趨勢ニ
鑑ミ、殊ニ戰時事變下ニ在ル所ノ我國ニ取ッ
テハ、最モ適切ニシテ緊要ナル施設ノ一ツ
ト考ヘルノデゴザイマス、政府當局ニ於カ
レマジテモ、勿論本案ニ對シテ御異議ハア
ルマイト存ジマス、一日モ速ニ政府當局ハ
本施設ノ實現ニ向ッテ最大ナル努力ヲ拂ハ
レンコトヲ切望スル者デアリマス、私ハ玆
ニ政友會ヲ代表致シマシテ、本案ニ對シテ
贊成ノ意ヲ表スル者デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=50
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051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 安藤孝三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=51
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052・安藤孝三
○安藤孝三君 簡單デゴザイマスルカラ自
席カラ發言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=52
-
053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=53
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054・安藤孝三
○安藤孝三君 航空擴充ニ關スル決議案
ハ、只今提案者カラ詳シク說明ガゴザイマ
シタ通リデゴザイマスルガ、御承知ノ如ク
私ハ一飛行士トシテ、斯クモ議員先輩各位
カラ航空ト云フモノガ必要ナリト云フコト
ヲ認メラレマシタコトヲ、衷心カラ喜ブ者
デアリマス、ドウカ今後共議員各位カラ政
府ヲ指導鞭撻下サイマシテ、益〓日本ノ民間
航空竝ニ軍事航空共ニ發展スルヤウ御努力
アランコトヲ御願スル次第デアリマス、簡
單ニ贊成ノ意ヲ表シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=54
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055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 塚本重藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=55
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056・塚本重藏
○塚本重藏君 簡單デゴザイマスカラ此席
カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=56
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057・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=57
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058・塚本重藏
○塚本重藏君 只今上程セラレマシタル航
空擴充ニ關スル決議ノ趣旨ハ、提案者ヨリ
詳細ナル說明ガ述ベラレマシタ、更ニ同僚
數氏カラモ戰時體制下、其必要ナル所以ヲ
力說セラレタノデアリマス、其所論ニ對シ
マシテハ全ク同感デアリマス、航空事業ノ
振興擴充ガ、支那事變ノ長期作戰ニ對應シ
テ、緊要ナルコトハ論ヲ俟タザル所デアリ
マス、又世界各國ノ航空事業ノ發達ニ對應
シテモ、日本帝國ハ國際航空路ノ開拓ニ邁
進スルノ必要ヲ痛感スル次第デアリマス、
更ニ航空事業ノ振興擴充ハ、現下ノ戰局ト
歐米諸國トノ國際關係上必要ナルノミナラ
ズ、今後ノ日滿支相互ノ連絡ヲ一層緊密ニ
シ、經濟提携、產業開發、文化向上等ニ資
スル上ニ於テモ極メテ重要デアリマス、今
日我國現下ノ航空事業ノ現狀ヲ顧ミマスル
ナラバ、內地航空路ノ發達スラモ、極メテ
幼稚ノ域ヲ脫シテ居リマセヌ、然ルニ政府
ノ之ニ對スル方策ハ、極メテ物足ラザル次
第デアリマス、政府ハ本決議ノ趣旨ヲ體シ
テ、積極的ナル努力ヲ拂ハレンコトヲ切望
ニ堪ヘマセヌ、以上簡單ニ所懷ノ一端ヲ
述ベテ、社會大衆黨ヲ代表シ、本決議案ニ
滿腔ノ賛意ヲ表スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=58
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059・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致シ
マシタ、此際政府ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマ
ス、之ヲ許シマス-遞信大臣永井柳太郞君
〔國務大臣永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=59
-
060・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今上程セラ
レマシク航空擴充ニ關スル決議案ニ付キマ
シテ、多田君ノ御說明ヲ謹聽致シマシタガ、
現下內外ノ情勢ニ鑑ミマス時、我國民間航
空事業ノ飛躍的發展ヲ圖リマスコトノ急務
ナルコトハ、政府モ亦同感ニ存ジマス、航
空事業ノ興隆ハ、現內閣ノ夙ニ努力ヲ加へ
ツヽアル所デアリマシテ、旣ニ本年二月ヨ
リ航空局ヲ遞信省ノ外局トシテ、行政機構
ノ擴充强化ヲ圖リ、事業ノ躍進ニ對應スル
所ノ方途ヲ講ジタノデアリマスガ、本議會
ニ提案致シマシタ航空機乘員養成施設費、
國立飛行場開設費、中央航空〓究所設立準
備費等ハ、差向キ十三年度豫算ニ於キマシ
テハ、實行可能ノ範圍內ニ止メマシタ次第
デアリマシテ、其計畫ノ內容ハ、後年度ニ
於キマスル相當大掛リナモノヲ豫定致シテ
居ルノデアリマス、現ニ中央國立〓究所ノ
如キモ、從來ハ單ニ飛行機ノ實驗ノ如キ
モ、模型ヲ風洞ノ內デ飛バスヤウナ仕掛
ニナッテ居ッタノデアリマスガ、此〓究所ガ
設立セラレマスレバ、實際ニ飛行機ヲ十分
三原ノセテ實驗シ得ル、大仕掛ノ風洞ヲ
モ計畫シテ居ルノデアリマシテ、遞信省
ノ豫定計畫ニ依レバ約五箇年ニ亙ッテ一
億三千六百万圓ヲ計畫シテ居リマス、本〓
究機關ガ實現致シマスレバ、世界ノ如何ナ
ルモノニ比ベテモ、斷ジテ劣ル所ハナイト確
信シテ居ルノデゴザイマス(拍手)
又乘員養成施設、飛行場新設等ノ如キ
モ、計畫通リ實現致シマスナラバ、我國民
間航空ハ其面目ヲ一新スルデアラウコトヲ
確信致シテ居ルノデゴザイマス、政府ハ航
空機製造事業ニ付キマシテモ、是ガ助長統
制ノ必要アリト認メマシテ、本議會ニ航空
機製造事業法案ヲ提出致シマシテ、該事業
ノ急速ナル振興ヲ企圖致シ、旣ニ衆議院ノ
御協贊ヲ經マシタコトハ、私ノ衷心ヨリ感
謝致シテ居ル所デゴザイマス
尙ホ又多田君ガ御述ニナリマシタ如ク、國
際航空路ノ開拓ノ重要ナルコトハ、政府モ全
ク同感ニ存ジマス、政府ト致シマシテハ從
來ノ日滿、日支、兩國間ニ於ケル航空路ノ外、
新ニ對支航空路ノ開設ニ付キマシテハ、福
岡、上海、南京線、及ビ東京、福岡、靑島、
北京線ノ實現ニ要スル經費ヲ、追加豫算ト
シテ要求シテ御審議ヲ願ッテ居ル次第デゴ
ザイマス、尙ホ廣ク世界各方面ニ向ッテ我ガ
航空路ノ進出ヲ企テルト云フコトモ、全然
同感デアリマシテ、我國ノ海上ニ於ケル航
路ガ全世界ニ通ズル如ク、空中ニ於ケル航
路モ、亦同ジク全世界ニ通ゼンコトヲ期ス
ルモノデゴザイマス(拍手)其實現ニ付キマ
シテハ、折角努力中デアリマスガ、唯事外
交ノ機微ニ關スル所ガ少クアリマセヌノデ、
具體的ニ只今御報告申上ゲ兼ネマスコトヲ
遺憾ニ存ジマス
要スルニ航空事業ノ振興ヲ圖リマスガ爲
二、何分ニモ多田君御述ニナリマシタ通
リ、多大ノ經費ヲ伴ヒマスル關係上、吾々
ト致シマシテハ出來得ル限リノ努力ヲ致シ
マスケレドモ、各位ノ御協力ニ俟ツ所大ナ
ルモノガアルノデゴザイマス、願クハ將來
一層ノ御後援ヲ賜リマシテ、航空擴充ノ大
業ノ成就ニ付キマシテ、吾々ト共ニ御協力
アランコトヲ衷心ヨリ希望致シマシテ、政
府ノ所見ヲ終ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=60
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061・小山松壽
○議長(小山松壽君) 採決致シマス、本案
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=61
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062・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員、仍テ本案
ハ全會一致可決致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=62
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063・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際堤康次郞君外四名
提出、武道振興ニ關スル決議案ヲ議題ト爲
シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=63
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064・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=64
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065・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス-政府ハ此議事日程變更ニ同意セラレ
マシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、武
道振興ニ關スル決議案ヲ議題ト致シマス、
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提出者藤
生安太郞君
武道振興ニ關スル決議案(堤康次郞君
外四名提出)
武道振興ニ關スル決議案
武道振興ニ關スル決議
方今時局ノ極メテ重大ナルニ鑑ミ深ク肇
國ノ精神ヲ顧ミ益〓忠勇義烈ノ國民道德
ヲ涵養セシメムカ爲ニ政府ハ宜シク諸般
ノ施設ヲ通シテ武道ヲ振興スヘシ
右決議ス
〔藤生安太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=65
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066・藤生安太郎
○藤生安太郞君 只今議題ト相成リマシタ
武道振興ニ關スル決議案ノ提案理由ヲ御說
明致シマス、從來武道ニ關シマシテハ、本
會議ニ於キマシテハ勿論、委員會ニ於キマ
シテモ、未ダ殆ド論議ノ題目ニ供セラレタ
コトハナカッタノデアリマス、幸ヒ本日茲ニ
各派共同ノ決議案トシテ取扱ハレルニ至リ
マシタコトハ、現下國防上ニ於テハ勿論、
國家內外ノ諸問題ヲ解決スル根本策ト致シ
マシテ、又國家百年ノ大計ノ上カラ見マシ
テモ、私ノ至極欣快トスル所デアリマス、
武道若クハ武道〓育ナルモノノ內容ト面目
ハ、明治維新ニ依ッテ一新紀元ガ劃セラレタ
ノデアリマス、之ヲ要約シテ申シマスレバ、
封建時代ノ藩公主君ヲ對象トスル、所謂封
建小義ノ武士道カラ、維新以後ニ於キマシ
テハ、御皇室ヲ對象トシ奉ル所ノ、所謂
維新大義ノ武士道ニ歸ッテ、武道本來ノ嚴肅
ナル面目ヲ發揮スルニ至ッタノデアリマス、
卽チ我ガ武士道ハ、明治十五年軍人ニ賜リ
マシタ御勅諭ニ、忠節、武勇、信義、禮義、
質素ト云フ五ツノ德目ヲ御明示ニ相成ッタ
コトニ依リマシテ、玆ニ初メテ根本的ニ體
系化サレ、普遍的妥當性ヲ與ヘラレルニ至ッ
タノデアリマス、故ニ此御勅諭コソハ我ガ
國民性ヲ基礎トシテ、我ガ民族ノ傳統的ノ
理想ヲ實現スル爲ノ大道トシテ、又武士道
訓練ノ規範トシテ、更ニ大義的武士道ノ顯
彰ノ爲ニ御下賜相成ッタモノト拜察スルノ
デアリマス(拍手)隨テ我ガ國民ノ武士道理
念、武士道訓練ハ、此御勅諭ノ大精神ヲ大本
トシ、之ヲ眼目トシテ實踐セラレナケレバ
ナラナイノデアリマス、我ガ國民ハ明治時
代ヨリ此御勅諭ヲ御精神ヲ拳々服膺シテ、
武士的精神ヲ大イニ鍛鍊シ、武士的訓練ヲ
受ケマシタル結果、彼ノ日〓、日露ノ兩戰役
ニ於テモ大勝シ、今又東亞ノ聖戰ニ於キマ
シテモ、連戰連勝以テ世界第一ノ武威ヲ輝
カシ、皇軍ノ威武ハ太陽ノ如ク炳々乎トシ
テ輝キ、天皇ノ御稜威ト日本ノ國威ハ、
赫々トシテ全世界ニ輝キ亙ルニ至ッタノデア
リマス、今ヤ日支事變ハ第二ノ段階ニ進ン
デ、而モ國際關係ハ愈〓複雜微妙ヲ極メツ
アルノ現狀デアリマス、吾々國民ハ更ニ堅忍
持久ノ節ヲ持シ、臥薪嘗膽ノ決意ヲ固メテ、
如何ナル障碍モ、如何ナル難關モ、之ヲ突破ッ
テ、曠古ノ一大聖業ノ遂行ニ邁進シナケレバ
ナラヌ時デアリマス(拍手)是ガ爲ニハ勿論產
業ニ、經濟ニ、外交ニ、〓育ニ、總テノ部門
ニ亙ッテ所謂物的資源、人的資源ノ總動員
ヲシナケレバナラヌコトハ勿論デアリマス
ガ、併シ如何ニ人ト物トノ動員ガ完全ニ出
來タト致シマシテモ、是ガ活動ノ原動力
デアル心的資源、卽チ精神的ニ於テ缺クル
所ガアッタナラバ、到底最後ノ目的ヲ達成
スルコトハ不可能ダト考ヘルノデアリマス
(拍手)而シテ此精神力ヲ動員シ、此精神力
ニ不斷ノ活力ヲ注入シテ、之ヲ强化スル爲
三、ドウシテモ此日本武士道ノ復活顯揚
ニ俟タナケレバナラヌト信ズルノデゴザイ
マス(拍手)
抑〓日本精神ト日本武道トハ、元々一體不
可分ノ關係ヲ有シテ居ルノデアリマシテ、
日本精神ヲ離レテ日本武道ノ理解ハ不可能
デアリ、日本武道ヲ外ニシテ日本精神ノ體
得ハ出來難イノデアリマス、卽チ道義ノ麾
ク所欣然トシテ死地ニ入リ、毫モ利害得失
ヲ顧ミズ、勇猛敢爲恐ルヽ所ナク、唯一途
ニ一命ヲ致サントスル義烈敢爲ノ氣象ヲ喚
ビ起スコトナクシテハ、日本精神ヲ說イテ
千言萬語ヲ費スモ、畢竟無用ノ〓論タルニ
過ギナイノデアリマス(拍手)日本精神ノ復
活顯揚ヲ叫ブ聲ハ中々盛デアリマス、然ル
ニモ拘ラズ是ト一體不可分ノ關係ニアル所
ノ日本武道ノ復活ニ付テ、之ヲ唱ヘル人ノ
少イノハ、私ノ洵ニ意外トシ且又頗ル遺憾
トスル所デアリマス、御承知ノ如ク畏多ク
モ明治大帝ハ明治五年ニ徴兵令ヲ御發布
ニナリ、武士ト農工商トノ階級的差別ヲ撤
廢セラレマシテ、國民皆兵ノ古ノ制度ニ復歸
セシメラレマシテ、全國民ヲ兵トセラレマ
シタ結果、全國民ハ悉ク武士ト相成ッテ居
ルノデアリマス、平常農工商ソレ〓〓生業
ニ從ッテ居リマスケレドモ、一朝事アルベキ
場合ニハ、銃劍ヲ執ッテ敢然ト起ツ、然ルニ
モ拘ラズ動トモスルト一般ニ武士ト云フモ
ノハ、明治初年ノ斷髪廢刀ニ依ッテ廢止セラ
レタノデアル、隨テ武士道ノ如キモ、之ヲ封
建時代ノ遺風デアリ遺物デアルモノノ如ク
考ヘテ、淺ハカニモ之ヲ棄去ラントスル者
サヘアルヤウデアリマスルガ、是ハ大イナ
ル誤デアリマス(拍手)武士ト云フモノハ決
シテ斷髮廢刀ニ依ッテ、若クハ士農工商ノ階
級的差別ノ撤廢ニ依ッテ廢止セラレタノデ
ハアリマセヌ、寧ロ徵兵令ノ御發布ニ依ッ
テ、其範圍ヲ全國民ニ擴大セラレタノデア
リマス(拍手)卽チ國民皆兵、國民皆武士デ
アリマシテ、是ニ於テ武士道ハ全國民ノ道
德ト相成ッタノデアリマス、賴山陽ハ「國ノ
國タル所以ハ其ノ士アルヲ以テナリ、士ノ
士タル所以ハ其ノ氣アルヲ以テナリ、士ハ
氣アリテ而シテ後以テ自立スルモノナリ、
擧國ノ士以テ自立スルアレバ則チ國立ツ、
擧國ノ士以テ自立スルナクバ則チ國仆ル」
ト斯樣ニ喝破致シテ居リマスガ、此賴山陽
ノ「擧國ノ士以テ自立スルアレバ則チ國立
ツ、擧國ノ士以テ自立スルナクバ則チ國仆
ル」ト云フコトハ、取モ直サズ擧國ノ士武士
タルノ自覺ガアレバ則チ國立チ、擧國ノ士
武士タルノ自覺ガナケレバ國仆ルトノ意ニ
外ナラヌト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
然ラバ武士タルノ自覺トハ何ゾヤト申シ
マスレバ、武士道倫理ノ大家デアル山鹿素行
ハ「義利ヲ辨ズル」ト〓へテ居リマス、卽チ
「進退一ニ義ニ就クベシ」ト〓ヘテ居ルノデ
アリマス、更ニ之ヲ換言シテ見マシタナラバ、
其面目ト責任ヲ自覺シ、之ヲ尊重スルノ意ニ
私ハ解スルノデアリマス、昔ノ武士ガ如何
ニ其面目ト責任ヲ重ンジタカ、彼等ハ一命
ニ懸ケテ此面目ト責任ヲ重ンジタト云フコ
トハ諸君ノ御承知ノ通リデアリマス、私
ハ今日國民各自ガ、皆吾ハ日本ノ武士ナリ
ト云フ强キ自覺ニ立ッテ、其立場其職分ニ應
ジテ、己ノ責任ハ命ニ懸ケテ之ヲ果スト云
フ、責任尊重ノ精神ガ旺盛デアリマシタナ
ラバ、國家ノ政治モ、國民ノ生活モ、モット
活潑ニ、モット明朗ニ、其健全性ヲ發揮シ
得ルモノト考ヘルノデアリマス(拍手)殊ニ
國家ノ政治、國民ノ生活ノ、其指導的責任
ノ地位ニアラレル所ノ內閣諸公ガ、此責任
尊重ノ精神、犧牲心ヲ以テ事ニ當ルノ眞劍
味ヲ、愈〓益、ミ御示シニナレバナル程、卽チ
武士道精神ガ旺盛デアレバアル程、日本ノ
政治モ國民ノ生活モ、モット强ク明ルク、
其健全性、其進步性ヲ發揮スルモノト考へ
ルノデアリマス(拍手)卽チ責任ノ明ニサレ
ル所ニハ必ズ信賴ガアル、必ズ理解ガアル、
必ズ又同情ノ念ガ油然トシテ湧キ立ツノデ
アリマス、此信賴ト理解ト同情ノ念トニ依ッ
テ、國民全體ガ一體トナル時、玆ニ本當ニ
眞ニ强イ擧國一致ガ生レルノデアリマス
(拍手)實ニ尊ブベキハ責任尊重ノ精神デア
リマシテ、而モ之ヲ命懸ケデ實行實踐セン
トスル所ノ者ハ武士デアリマス、私ガ武士
道精神ノ復活顯揚ヲ力說シ、政府ニ要望セ
ントスル所以モ玆ニアルノデアリマス(拍
手)
然ルニ此武士タルノ自覺ヲ喚起シ、日本
人道德ノ根幹デアリ核心デアル所ノ武道〓
育ハ、今日如何ナル待遇、如何ナル地位、
如何ナル取扱ヲ受ケツヽアルカト云フコト
ヲ思ヒマシタナラバ、實ニ私ノ慨嘆ニ堪ヘ
ザルモノガアリマス、政府ハ今囘七十五万
圓ヲ計上シテ、「オリムビック」大會ノ經費
ニ充テラレテ居リマスガ、是ダケノ關心、
是ダケノ熱意ヲ武道ニ對シテ、何時何處ニ
御示シニナッタカ(拍手)寡聞ニシテ私ノ未
ダ聞カザル所デアリマス、武道ハ學校ニ於
キマシテモ、亦民間ニ於キマシテモ、興味
ヲ中心トスル興味本位ノ競技、若クハ一般
體育ト同格若クハソレ以下ニ取扱ハレツヽ
アル現狀デアリマス、武道修業ノ第一義ハ
飽マデモ御勅諭ノ御精神ヲ〓磨薰陶シ、義
烈敢爲ノ犠牲的精神ヲ以テ事ニ當ラントス
ル實踐的ノ訓育ニ在ルノハ勿論デアリマス
ルガ、其修業過程ニ於テハ立派ニ體育デア
リマス、而モ此體育ハ日本人ノ性情ト日本
人ノ體格ニ最モ適當シタル體育デアリマス
カラ、今日日本人ノ體位向上ヲ期スル爲
三、是ガ奬勵ト是ガ指導ハ洵ニ緊要事ト
言ハナケレバナリマセヌ、日本ノ武道ハ
唯單ニ體育トシテ論ズル場合ニ於キマ
シテモ、私ハ西洋流ノ體育ト同列ニ
之ヲ論ズベキモノデハナイ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス、況ヤソレヲ武術トシテ論ズル場
合ニ於キマシテハ、更ニ異ルモノガアルノ
デアリマス、西洋ノ武術ガ經濟的理法ニ出
ヅルニ反シテ、我ガ日本ノ武術ハ超經濟ノ
精神ニ立ッテ居ルノデアリマス、西洋ノ彼
ノ「フェンシング」ハ、其姿勢ヲ半身ニ開イ
テ、片手ニ劍ヲ持チ、片手ヲ後ニ退イテ、
サウシテ自分ノ身ヲ最モ多ク護リナガラ、
而モ敵ヲ最モ多ク傷ケヨウトスル、此「フェ
ンシング」ノ態度、此精神ハ全ク經濟的理
法ニ出デテ居ルモノト言ハナケレバナリ
マセヌ(拍手)併ナガラ日本ノ武道ハ之ニ反
シテ居ル、卽チ兩手ニ一劍ヲシカト握ッテ、
此一劍ニ全生命ヲブチ込ンデ、全身、全力、
全精神ヲ火ノ塊ノヤウニシテ、サウシテ而モ
正面カラ堂々ト敵ノ懷ニ捨身ニナッテ飛込
シ六、死中ニ活殺ノ自在ヲ得ントスル所
ニ、日本ノ武道ノ面目ガアルノデアリマス
(拍手)劍聖宮本武藏ガ「切結ブ太刀ノ下コ
ソ地獄ナレ踏込ミ見レバ後ハ極樂」ト申シ
テ居リマスガ、斯ノ如キハ西洋流ノ經濟的
理法ニ依ッテハ斷ジテ說クコトノ出來ナイ
超經濟ノ精神デアリマシテ(拍手)我ガ日本
ノ武道ガ世界ニ比類ナキ威力ヲ示ス所以デ
アリマス(拍手)
今次事變ニ於キマシテモ、我ガ皇軍ガ到
ル處ニ於テ連戰連勝、而モ其勝利ヲ快速ニ
神速ニ決シテ、所謂神速部隊、快速部隊ノ
名ヲ擅ニシテ、全世界ヲ驚倒セシメタ所以
ノモノハ、是ハ畢竟スルニ我ガ皇軍將士ガ獨
特無比ノ肉彈戰ヲ決行シタカラデアリマス、
之ニ反シテ西班牙ノ戰爭ヲ御覽ナサイ、彼
等ハ二箇年ヲ經過シタル今日、尙ホ依然ト
シテ數百米ヲ隔テテ鐵砲ノ擊チ合ヲ續ケテ、
相對峙シタ儘最後ノ勝敗ヲ決シ兼ネテ居ル
有樣デアリマス、是ハ卽チ日本ノ肉彈戰ヲ
決行シ得ザル爲メデアリマス、實ニ此壯快
無比ニシテ、サウシテ忠勇義烈ナル肉彈戰
コソハ、我ガ日本武道ノ超經濟的精神ニ依ッ
テノミ養ヒ得ラレル所ノ戰鬪精神デアリマ
ス、而モ此精神ハ三千年來輝カシキ傳統ト
歷史ト共ニ榮エ來ッタ所ノ精神デアリマシ
テ、吾々ノ先人祖師ガ生死ノ巷ニ出入シテ、
〓磨薰陶シテ仕上ゲタ所ノ精神デアリマス、
ソレヲ吾々ハ繼承シテ居ル、デアルカラ吾
吾モ此精神ニモット〓〓磨キヲ掛ケテ、之ヲ
子々孫々ニ繼承セシメルコトガ、當然吾々
ノ貴キ責任デアリ、義務デアルト申サナケ
レバナリマセヌ(拍手)然ルニ武道界ノ現狀
ハト申シマスレバ······併ナガラ私ハ此席ニ
於テハ、武道家若クハ武道團體ノ猛省ト自
肅ヲ期待スル意味ニ於キマシテ、詳シク申
上ゲルコトハ差控ヘマス、併ナガラ武道界
ノ現狀ヲシテ、斯ノ如キ現狀ニ立到ラシメ
タ所以ノモノハ、獨リ武道家、武道團體ノ
ミノ責任デハアリマセヌ、其監督、其指導、
其奬勵ノ地位ニアラレル政府ガ大イニ其責
任ヲ持チ、又大イニ反省ヲシナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス
玆ニ二三ノ例ヲ擧ゲテ見マスルナラバ、
文部省ニ於キマシテモ、厚生省ニ於キマシテ
モ、體育課或ハ體力局ト云フモノガアッテ、
一般ノ競技運動ニ對スル關心ト熱意ハ相當
ニ示サレテ居リマスケレドモ、武道ニ對シ
マシテハ局モナケレバ、唯一ツノ課モナイ、
僅ニ體育課ノ中ノ一部分トシテ存在シテ居
ルニ過ギナイヤウナ狀態デアリマス、武道
〓師ノ待遇ニ至ッテハ、實ニ驚クヤウナ冷
遇、虐待デアリマス、如何ニ恒產ナクシテ恒
心アル者ハ士ノミ之ヲ能クスルト云ッテモ、
今日ノヤウナ冷遇、虐待デハ、斷ジテ武道
ノ振興ヲ圖ルコトハ出來ナイノデアリマス
(拍手)又武道〓師ハ今日非常ニ不足ヲ來シ
テ居ル、而モ量ニ於テ、質ニ於テ、非常ナ
不足ヲ來シテ居ルノデアリマスガ、政府ニ
依ッテ建テラレテアル所ノ養成機關ハ、高等
師範ノ體育科ノ極ク一部分トシテ存在シテ
居ルニ過ギナイヤウナ狀態デアリマス、明
治神宮體育大會ニ於キマシテ、「スポーツ」
ノ爲ニハ實ニ到レリ盡セリノ豪華ナ設備ガ
完全致シテ居リマスケレドモ、此日本古來
ノ武道ノ爲ニハ、何一ツトシテ設備ガナイ
ヤウナ狀態デアリマス、斯ノ如ク擧ゲ來リ
マスルナラバ枚擧ニ遑ガナイノデアリマス
私ハ各派ノ同志ノ御協力ヲ得テ、武道ノ
振興策トシテ建議スルコト十幾種デアリマ
スガ、之ヲ以テ考ヘテ見マシテモ、從來如
何ニ武道ガ閑却サレテ居タカト云フコトガ
明瞭デアルト思フノデアリマス、政府ハ此
實情ニ鑑ミテ、斯界ノ衆智ヲ集メテ官民合
同ノ武道審議會ヲ設置セラレテ、是等ノ諸
問題ヲ解決シテ、武道ノ振興ヲ期スル必要
アリト痛感スル者デアリマス、華ヤカナル
行進ヲ續ケツヽアル一般大衆ノ興味ト人氣
ヲ唆ル競技運動ノ時流ニ投ズルコトハ極メ
テ容易デアリマスガ、此時流ニ逆行シテ、
所謂華ヲ去リ實ニ就クコトハ極メテ困難デ
アリマス、併ナガラ之ヲ敢テ爲スト爲サザ
ルハ、一國文〓ノ健全不健全ノ岐レル所デ
アリ、延イテハ國運ノ消長ニモ關係スル所
大ナルモノガアリマス(拍手)文武ハ偏廢ス
ベカラズ、文ニ偏スレバ浮華、武ニ偏スレ
バ粗暴、文武相俟ッテ道眞ニ興ル、又論語
ニハ「文質彬彬然後君子也」ト云フコトヲ申
シテ居リマスガ、〓育ノ理想ハ實ニ玆ニア
ラネバナリマセヌ、然ルニ近時國民〓育ハ
徒ニ智育ニ偏シ、武〓ヲ忘レ、其弊容易ニ
忍ビ得ザルモノガアリマス(拍手)又一面殺
傷威嚇ヲ以テ勇ナリトスルガ如キ弊風ナキ
ニシモアラズト云フ如キモ、畢竟スルニ眞
ニ武〓ノ行ハレザル結果ノ武ノ弊ナリト申
サネバナリマセヌ(拍手)畏クモ聖上屢〓
宮廷ニ於テ武道試合ヲ天覽遊バサレマシタ
ガ、叡慮深遠、國民ノ齊シク景仰シ奉ル所
デアリマス
政府ハ方今時局ノ極メテ重大ナルニ鑑ミ、
深ク肇國ノ精神ヲ顧ミ、益忠勇義烈ノ國
民道德ヲ發揮センガ爲ニ、諸般ノ施設ヲ通
ジテ武道ヲ振興スルノ必要アルヲ確信致シ
マシテ、本案ヲ提出致シマシタ次第デアリ
やく、何卒滿場一致御贊成アランコトヲ切
望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=66
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067・小山松壽
○議長(小山松喜君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-高橋
壽太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=67
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068・高橋壽太郎
○高橋毒太郞君 簡單デゴザイマスカラ、
此席ヨリ發言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=68
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069・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=69
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070・高橋壽太郎
○高橋壽太郞君 私ハ民政黨ヲ代表致シマ
シテ本決議案ニ贊成致シマス、終リ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=70
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071・小山松壽
○議長(小山松壽君) 山崎常吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=71
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072・山崎常吉
○山崎常吉君 簡單デゴザイマスカラ、自
席カラ発言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=72
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073・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=73
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074・山崎常吉
○山崎常吉君 只今提案者ガ細ヲ穿ッテノ
說明ガゴザイマシタノデ、簡單ニ贊成ノ意
ヲ表サセテ戴キマス、武道ガ動モスレバ我
國古來ノ傳統精神ヨリ離レ、單ニ體育ノ手
段ノミニ看做サレル現狀ヨリ脫却致シマシ
テ、精神ト體位ノ向上ヲ奬勵スル趣旨ニ基
キマシテ、本案ガ提案セラレタト思ヒマス、
又一ツハ武道ヲ尊重スル精神ヲ各方面ニ具
體化シ、以テ武道ノ振興ニ努メントスル本
決議案ノ趣旨ニ對シマシテ、第一議員倶樂
部ハ玆ニ贊同ノ意ヲ表シマシテ、本案ニ贊
成ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=74
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075・小山松壽
○議長(小山松壽君) 田原春次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=75
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076・田原春次
○田原春次君 簡單デアリマスカラ、此席
ヨリ發言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=76
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077・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=77
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078・田原春次
○田原春次君 私ハ本案ニ對シマシテ、社
會大衆黨ヲ代表致シマシテ、贊成ノ意ヲ表
スル者デアリマス、政府ハ今期議會ニ於キ
マシテ、國民精神總動員ノ費用ヲ百万圓近
クモ取ッテ居ルヤウデアリマスガ、是ハ徒ニ
官僚本位ノ宣傳動作ニ終ルノ心配ガアルノ
デアリマス(拍手)之ニ比ベマシタナラバ、
全國各地ニ町道場ヲ開キ、各〓相當ノ數ノ子
弟ヲ收容シテ、武道〓育ノ維持發達ニ資シ
テ居ル人材ガ、全國各地方ニアルノデアリ
マス、是等民間ノ武道家ヲ通ジ、又其他適
切ナル方法ヲ以チマシテ、國民精神總動員
運動ノ實ヲ擧ゲナケレバナラヌト考ヘルノ
デゴザイマス、然ルニソレ等ノ施設ニ對ス
ル所ノ費用ト云フモノハ、全然計上シテ居
ラレナイノデアリマスガ、幸ニシテ同僚議
員藤生君ノ御提案ニ依リマシテ、此武道振
興ノ決議案ガ本議會ニ提出セラレタコトハ、
洵ニ喜バシイ次第デアリマス、希クハ政府
ハ外來運動競技ノ如キ、單ナル肉體上ノ體
育奬勵運動ニノミ費用ヲ與ヘルコトナク、
此日本精神ヲ昂揚スル所ノ、我國古來ノ武
道ヲイマ一層振興サレル爲ニ、新ニ政府ニ
於キマシテ一局乃至一部ヲ設ケマシテ、國
策トシテ武道ノ振興ニ當ラレンコトヲ希望
致シマシテ、本案ニ贊成ノ意ヲ表スル次第
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=78
-
079・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、此際政府ヨリ發言ヲ求メラレテ
居リマス、之ヲ許シマス-厚生政務次官
工藤鐵男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=79
-
080・工藤鐵男
○工藤鐵男君 政府ハ別ニ發言ヲ求メマセ
ヌガ、御希望ガアレバ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=80
-
081・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御申出ガアレバ許シ
マス-發言ガアリマセヌカラ、直チニ採
決ニ入リマス-採決致シマス、本案ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=81
-
082・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員(拍手)仍テ
本案ハ全會一致可決致シマシタ-日程第
九、決議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣
旨辯明ヲ許シマス-提出者松田竹千代君
第九決議案(石油資源開發ニ關スル
件)(菊池良一君外二十一一名提出)
決議案
決議
政府ハ燃料國策解決ノ爲昭和十三年度ヨ
リ向フ五箇年間ニ於テ劃期的ニ國費ノ增
額ヲ爲シ內地油田ノ試掘ヲ卽時斷行スヘ
シ
右決議ス
〔松田竹千代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=82
-
083・松田竹千代
○松田竹千代君 私ハ各派多數諸君ノ御贊
成ノ下ニ提出セラレ、今玆ニ上程サレマシ
タ國內石油資源開發ニ關スル決議案ノ說明
ヲ致シマス、石油ハ國防上、產業上、將又
交通運輸上必須缺クベカラザル所ノ資料デ
アリマスルコトハ、今更呶々ヲ要シナイト
存ジマス、然ルニ我國ニ於ケル石油ノ需給
關係ヲ見マスルト、國內產出量ハ僅ニ需要
量ノ一割、爾餘ノ九割ト云フモノハ之ヲ外
國ニ仰イデ居リマス、而モ其金額ハ戰前旣
ニ二億圓ニ達シ、而モ年々五六千万圓ヅヽ
增加シツヽアルノ趨勢デアリマス、此分デ
行キマスルナラバ、五箇年ノ先ニハ我國ノ
石油需要量ハ、陸海軍ノ需要ヲ除キマシテ
モ尙ホ約六百五十万瓲ニ達シマス、之ニ對
シテ國內ノ產油量ト人造石油量ヲ合算致シ
マシテモ、僅ニ二百七十万瓲ニ過ギナイノ
デアリマシテ、結局三百八十万瓲ノ大不足
ヲ生ズルコトニナルノデアリマス、卽チ此
不足ヲ如何ニシテ充タスカ、此方策ヲ講ズ
ルコトガ問題デアリマシテ、是コソ眞ニ現
下我國ニ於ケル焦眉ノ急務デアルト信ズル
ノデゴザイマス、飜ッテ我國內地ノ油田ノ狀
況ハ如何ト云ヒマスルト、北ハ樺太カラ南
ハ臺灣ノ果マデ、無慮五十億坪ノ含油地帶
ヲ有シテ居ルノデアリマシテ、而モ其開發
サレタモノハ僅ニ一割ニ過ギナイ、九割ハ
天然ノ儘抛棄サレ、死藏サレテ居ルト云フ
ヤウナ狀態デゴザイマス、海外ニ於ケル所
ノ有望ナル油田ヲ獲得スルコトハ、最早今
日ハ望ミガ殆ドナイ、人造石油デハ容易ニ
間ニ合ハナイ、然ラバ殘サレタ所デハ、此
惠マレタ所ノ國內油田ノ開發ニ力ヲ入レル
ト云フ外ニ途ハナイノデアリマス、而シテ
油田開發ノ先決問題ハ先ヅ試掘デアリマス、
試掘ニハ金ガ掛ル、併シ掘ラナケレバ油ガ
出テ來ナイノデアリマス、政府ハ十三年度
ニ於テ國內石油資源開發費百七十万圓ヲ計
上致シテ居リマス、此資金デハ一本十万圓
ノ井戶ヲ十七本試掘スルダケデアリマス、
然ルニ過去ノ實例ニ見ルト、政府ノ補助金
二百二十万圓、民間ノ資金八百八十万圓、
計一千百万圓デ六十本ヲ試掘致シタノデア
リマシテ、ソレニ依ッテ彼ノ院內、雄物川ノ
油田ノ二本ノ井戶カラ產油ヲ見ルニ至ッタ
ノデゴザイマス、三十本ニ一本ノ割合デア
リマス、ソレ故ニ政府ノ計畫デハ甚シク物
足ラナイコトハ極メテ明瞭デゴザイマス、
ソコデ試掘費三億圓ヲ五箇年間ニ支出スル
ト致シマシタナラバ、最小限度百六十五万
瓲ノ產油ヲ得ラレルト云フ譯デゴザイマシ
テ、此計算ハ固ヨリ專門家ノ周到ナル調査
ニ基クモノデゴザイマス、此計畫ハ一見過
大ニ見エルカモ知レマセヌケレドモ、決シ
テ過大ノモノデハゴザイマセヌ、否、寧ロ最
小限度ノモノトシテ見ル方ガ、我國ノ現下
ノ石油需給ノ實際ニ照シテ見テ、ヨリ正シ
イ見方デアルト思フノデゴサイマス、若シ
外國ガ石油ヲ賣ラナイト云フコトニデモナッ
タナラバドウスルカ、是ガ非デモ掘ラナケ
レバナラヌノデアルガ、併シソレデハ急ノ
間ニ合ハナイ、今カラ眞ニ此計畫ヲ實行ニ
移ス必要ヲ痛感スル次第デゴザイマス
今議會ノ豫算委員會又ハ國內石油資源開
發委員會ニ於キマシテ、商工大臣ハ、政府
ハ石油資源ノ開發上從來ノ方針ヲ改メテ、
試掘補助率ヲ從來半分デアッタモノヲ之ヲ
三分ノ二ニ增加シ、場合ニ依ッテハ全額ヲ
政府ハ負擔シ、現在ノ民營ニテ尙ホ國營ト
同樣ノ成果ヲ得ルヤウニ考ヘテ居ルト答へ
ク、國內石油資源ノ開發ニ對シテハ精々努
力スル旨ヲ述ベタノデゴザイマスガ、其實
際ニ現レテ來タモノヲ見ルト、僅ニ百五十
万圓ニ過ギナイノデアリマシテ、全然吾々
ノ期待ヲ裏切ルモノデアリマスルコトハ、
遺憾ニ堪ナイノデゴザイマス、今ヤ內外ノ
情勢ニ鑑ミ、政府ハ宜シク大局的見地カラ、
徹底セル石油政策ヲ確立シ、卽時斷行セラ
レンコトヲ切望スル次第デアリマシテ、玆
ニ左ノ決議案ヲ提出スル次第デアリマス
決議
政府ハ燃料國策解決ノ爲昭和十三年度ヨ
リ向フ五箇年間ニ於テ劃期的ニ國費ノ增
額ヲ爲シ內地油田ノ試掘ヲ卽時斷行スヘ
シ
何卒滿場一致ノ御贊成ヲ得ンコトヲ切ニ御
願ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=83
-
084・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-中井
一夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=84
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085・中井一夫
○中井一夫君 簡單デアリマスカラ、此席
カラ申述ベルコトヲ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=85
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086・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=86
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087・中井一夫
○中井一夫君 石油ノ一滴ガ血潮ノ一滴ニ
等シイト云フ言葉ハ、現ニ今我等ハ日支事
變ニ依ッテ之ヲ痛感シテ居ルコトデアリマ
ス、然ルニ此石油ノ重要性ニ對シマシテ、
嘗テ適正ナル認識ヲ缺イテ、且ツ是ガ資源
ノ開發、獲得ニ付テ最モ熱意ノナカリシ者
ハ、政府當局デアッタノデアリマス、唯軍事
上已ムヲ得ナイ必要ニ刺戟セラレマシテ、
昭和九年第六十五議會ニ至ッテ、初メテ漸ク
石油業法案ナルモノヲ議會ニ提案ヲサレマシ
テ、漸ク石油國策ノ一端ヲ現出セシメラレ
タノデアリマス、而シテ最近急遽トシテ、
或ハ石炭ノ液化、或ハ石油代用事業等ニ付
テ、諸種ノ施設ヲ始メラレタノデアリマス
ケレドモ、國內資源ノ開發ト云フコトニ付
キマシテハ、其方策モ變ラズ常ニ消極不徹
底デアリマシタコトハ、吾々ノ洵ニ遺憾ト
スル所デゴザイマス、只今松田君御說明ノ
通リ、私ハ我國國內ノ石油資源ヲ開發致シ
マスト云フコトハ、刻下ノ急務デアルト共
ニ、必ズヤ此開發ハ有望デアルト云フコト
ヲ信ジテ居ル者デゴザイマス、仍テ政府ニ
於カレマシテハ、本議會ニ提出セラレマシ
ク石油資源開發法案ノ成立ヲ以テ滿足セラ
レルコトナクシテ、更ニ進ンデ此重大ナル
我國石油問題解決ノ爲ニ、徹底シタル資源
開發ノ助成ノ方策ヲ速ニ立テラレンコトヲ
切望ニ堪ヘナイノデアリマス、簡單デハゴ
ザイマスケレドモ、政友會ヲ代表シテ贊成
ノ意ヲ表シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=87
-
088・小山松壽
○議長(小山松壽君) 野中徹也君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=88
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089・野中徹也
○野中徹也君 簡單デアリマスカラ、自席
カラ發言スルコトヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=89
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090・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=90
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091・野中徹也
○野中徹也君 此決議案ニ對スル說明ニ付
キマシテハ、既ニ松田君、中井君カラ御話
ガアリマシタ、其通リデアリマス、如何ニ
刻下ノ日本ニ於キマシテ石油ガ必要デアル
カ、又之ヲ補給スルヤウナエ合ニシナケレ
バナラナイカ、其必要性ト云フモノハ、今
更喋々スル迄モアリマセヌ、政府ハ宜シク
吾々ノ意思ヲ體得セラレマシテ、此石油開
發ノ爲ニ全力ヲ擧ゲテ策ヲ講ゼラレンコト
ヲ希望シマス、唯本決議案ニ於キマシテハ、
單ニ內國的ノ問題ダケデアリマス、併シ石
油ノ資源ヲ開發スルノハ、勿論內國的ノ問
題デモアリマスガ、又一面ニハ外國ノ問題
モ考ヘナケレバナリマセヌ、兩々相俟ッテ
石油資源ノ充實ヲ期スルヤウニシナケレバ
ナリマセヌ、政府ハ宜シク內國、外國兩々
相俟ッテ、本當ノ石油資源ヲ充實スルヤウナ
工合ニヤッテ貰ヒタイト思ヒマス、私ハ第一
議員倶樂部ヲ代表致シマシテ、本案ニ贊成
ノ意ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=91
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092・小山松壽
○議長(小山松壽君) 川俣〓音君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=92
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093・川俣清音
○川俣〓音君 簡單デアリマスカラ、此席
カラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=93
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094・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=94
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095・川俣清音
○川俣〓音君 只今上程セラレマシタ石油
資源開發ニ關スル決議案ニ對シテ、私ハ贊
成ノ意ヲ表シタイト思ヒマス、時局ニ鑑ミ
原油ノ保持ト、其開發ハ緊急ヲ要スルモノ
アルコトハ、今更言フ必要ノナイコトデア
リマス、而シテ我國石油天然資源ハ決シテ
貧弱デナイノデアリマシテ、北ハ樺太カラ
南ハ臺灣ニ至リマス間ニ、無慮五十億万坪
ノ含有鑛區ヲ有シテ居ルノデアリマシテ、
是ガ開發ニ著手セラレテ居リマスルノハ、
御承知ノヤウニ僅ニ一割ニ過ギナイノデア
リマス、九割ハ依然トシテ放任サレテ居ル
次第デアリマス、之ニ對シテ細密ナル調査
ヲ爲シ、最大ノ努力ヲ盡スナラバ、產出量
ヲ現在ノ五倍ニ致スコトハ、決シテ困難ナ
コトデハナイノデアリマス、唯是ガ開發ハ
他ノ鑛山ト異リマシテ、其採油ニ非常ナル
危險ヲ伴フノデアリマスカラ、一般ニ是ガ
採油ニ付キマシテハ躊躇ヲサレテ居ル所
デアリマス、殊ニ現在ノヤウニ益〓深掘ニ
依ッテノ探油ガ必要ナル今日、其投資ノ危險
ガ更ニ增加シツヽアルノデアリマス、隨テ
政府ハ是ガ對策ヲ樹立サレテ、劃期的方途
ニ出デルト共ニ、其技術員ノ養成、熟練勞
働者ノ養成保護ト相俟ッテ、目的達成ヲ爲ス
ベキモノデアルト考ヘルノデアリマス、此
意見ヲ附加ヘマシテ、本決議案ニ贊成ノ意
ヲ表スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=95
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096・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ-此際政府ヨリ發言ヲ求メラレ
テ居リマス、之ヲ許シマス-商工政務次
官木暮武太夫君
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=96
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097・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 只今上程ニ相
成リマシタ決議案ノ御趣旨ニ對シマシテ
ハ、政府ニ於キマシテモ全ク同感デゴザイ
マス、內地油田ノ開發ニ付キマシテハ、曩
ニ本院ノ御同意ヲ得マシタ石油資源開發法
案ノ十分ナル運用ニ依リマシテ、且又助成
金ニ付キマシテハ十二分ニ考慮ヲ加ヘマシ
テ、御趣旨ニ副フヤウニ努メタイト考ヘテ
居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=97
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098・小山松壽
○議長(小山松壽君) 採決致シマス、本案
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=98
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099・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=99
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100・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ本案ハ全會一致
可決致シマシタ、日程第一、昭和十三年法
律第六號中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-太田大藏政務次官
第昭和十三年法律第六號中改正法律
案(昭和十三年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲公債發行ニ關スル件)(政府
提出)第一讀會
昭和十三年法律第六號中改正法律案
昭和十三年法律第六號中左ノ通改正ス
第一條中「五億五千七百八十萬圓」ヲ「七
億九千七百四十萬圓」三人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=100
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101・太田正孝
○政府委員(太田正孝君) 只今議題トナリ
マシタ、昭和十三年法律第六號中改正法律案
提出ノ理由ヲ說明致シマス、昭和十三年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ必要ナル
公債ノ發行ニ付キマシテハ、今期議會ニ於
テ旣ニ二囘ニ亙リ之ニ關スル法律案ヲ提出
致シマシテ、何レモ御協贊ヲ經テアルノデ
アリマスルガ、先日提出ノ第二號追加豫算
案、及ビ今囘提出ノ第三號追加豫算案ニ計
上致シテアリマスル經費ノ所要財源總額二
億六千二十餘万圓ノ中、二億三千九百六十
餘万圓ハ之ヲ歲入補塡公債ニ依ルノ必要ガ
アリマスルノデ、旣ニ御協贊ヲ經マシテ本
月十六日公布セラレマシタル昭和十三年法
律第六號ニ規定スル公債發行限度ノ法定額
ヲ七億九千七百四十万圓ニ增加スル爲メ、
本法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
何卒御審議ノ上速ニ協賛ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=101
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102・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=102
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103・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、兌換銀行
劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律
案委員ニ併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=103
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104・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=104
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105・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=105
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106・服部崎市
○服部崎市君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、農業保
險法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求
メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=106
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107・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=107
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108・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ、農業保
險法案第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報〓ヲ求メマス-委員長村上國吉君
農業保險法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一農業保險法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十三年三月二十二日
委員長村上國吉
衆議院議長小山松壽殿
〔村上國吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=108
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109・村上國吉
○村上國吉君 只今上程サレマシタル農業
保險法案ニ付キマシテ、委員會ノ審議ノ經
過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス、農業保險
制度ノ立法ハ、我國農政史上眞ニ一新紀元
ヲ劃スル大事業デアリマシテ、農村多年ノ
要望ヲ滿ス所以デアリ、年々少カラザル災
害ノ爲ニ禍サレテ居ル農業者ノ收入ヲ確保
シ、其生活安定ニ資スルコト頗ル大ナルベ
キ重要ナル法案デアリマスルカヲ、委員會
ニ於キマシテハ去ル九日以來最モ愼重ニ審
議ヲ重ネ、委員諸君亦極メテ熱心精勵、反
復其質疑ヲ盡サレマシテ、本日茲ニ其結果
ヲ御報告申上ゲ得マスコトハ、私ノ欣快
トスル所デアリマス私ハ先ヅ此法案ノ〓要
ヲ一通リ申上ゲタイト存ジマス、蓋シ此法
案ハ我國ニ於テ初メテノ立法デアルカラ、
其內容ノ要旨ヲ明ニシテ置ク必要ガアルト
思フカラデアリマス、卽チ此法案ニ定ムル
所ノ農業保險ハ、農作物ニ關スル災害保險
ヲ本旨トスルノデアリマシテ、郡ノ區域ニ
依ル農業保險組合ニ、其元受保險事業ヲ行
ハシメル、サウシテ其組合ノ組織員ハ個々
ノ農家デハナク、其區域內ノ市農會及ビ町
村農會、又地方ノ狀況ニ依リマシテハ、共
濟事業ヲ行フ所ノ養蠶實行組合ヲモ其組織
員トスル、團體加入組織ノ仕組デアリマス
ルコトハ、此保險組織ノ特色デアルト思フ
ノデアリマス、又其再保險事業ハ右ノ保險組
合ヲ以テ組織スル道府縣區域ノ聯合會ヲシ
テ之ヲ行ハシメ、更ニ其聯台會ヲ行フ再保險
ニ對シテ政府ガ再々保險ヲ行フ組立デアリ
マス、同時ニ又郡ノ區域ニ依ル農業保險組
合ハ、其組合員タル市町村農會又ハ養蠶實
行組合ガ一定農作物ノ災害ニ付キ、其組織
員タル農家ニ對シテ行フ所ノ共濟事業、若
クハ施設ニ依ッテ負擔スル共濟責任ニ付テ
保險ヲ行フノミデナク、地方的ニ救濟ヲ必
要トスル農業災害、例ヘバ水稻ノ冷害等ニ
付テ、共濟事業ヲモ之ヲシテ行ハシメル制
度ト致シテ居ルノデアリマス、又此保險制
度ニ於キマシテハ、其事業ガ社會保險ノ性
質ヲ有スル本質ニ鑑ミマシテ、其保險料ノ
一部ハ國庫ガ之ヲ負擔シ、且ツ組合員ノ加
入、脫退、其他種々ノ點ニ於テ强制的制度ヲ
認メテ居リマス、更ニ保險ノ對象ト致シテ
居ルモノハ、差當リノ所、農作物デハ水稻
及ビ麥類、桑葉竝ニ水稻ノ小作料デ、又其
保險事故ハ風水害、早害、凍電害等及ビ一
定ノ植物病デアリマシテ、冷害、雪害等ハ
今ノ場合之ヲ除外シテ居リマスルガ、將來
漸ヲ遂ウテ其對象ヲ擴張スルコトハ勿論デ
アリマス
次ニ保險組合ノ其組合員タル市町村農會
又ハ養蠶實行組合ト契約スル保險金額ハ、
耕作者ニアリテハ其生產ニ要スル現金支出
ノ反當額ヲ、又地主ニ付テハ其土地負擔額
ヲ標準トセル定額デアリマス、斯樣ニ保險
金額ヲ收穫價額ニ依ラズ、定額保險トセル
理由ハ、保險料ニ關スル農家ノ負擔能力ヲ考
慮セルト、及ビ保險事業經營上ノ便宜ニ基
クモノデアルト說明サレテ居リマス、又支
拂保險金ハ三割以上ノ減收ノアッタ場合ニ、其
減收ノ程度ニ從ヒ、一定ノ金額ヲ支拂フノ
デアリマシテ、是等ハ命令ニ依ッテ定メラ
レルコトニナッテ居リマス、更ニ保險料ハ各
地ニ於ケル農業氣象、用水關係、地勢等ヲ
考慮シ、過去ノ災害統計ヲ基礎トシテ町村
別ニ、又事情ニ依ッテハ部落別ニモ一四)
算式ニ依ッテ之ヲ定メルコトトナルノデア
ルガ、初メノ內ハ相當面倒ナコトデアルダ
ラウト云フ感ジヲ持チマシタ
次ニ保險組合聯合會ノ行フ再保險ハ所謂
步合再保險デ、卽チ其保險金額ハ元受保險
金額ノ七割ト云フコトニ致シテ居リマス、又
此聯合會ニ對シテ行フ政府ノ再々保險ハ、
各道府縣ニ於ケル異常災害ノ分散ヲ目的ト
スル超過再保險ト申スベキモノデ、各道府
縣ノ災害ガ通常ト見ルベキ程度ヲ超過シタ
場合ニ、其聯合會ニ對シテ再保險金ヲ支拂
フノデアリマス
尙ホ特ニ一言スベキコトハ、此法案ニ於
テハ水稻小作料ノ取得ニ關スル保險ヲ認メ
テ居リマスガ、是ハ災害ノアッタ場合ニ、現
實ニ行ハルヽ所ノ小作料ノ減免問題トハ相
關關係ヲ持タセナイ趣旨ノモノデ、卽チ一
定ノ災害ガアッタ場合ニ、地主ハ小作料取得
上ノ損失アルモノト看做シテ、直チニ之ニ
保險金ノ支拂ヲ爲シ、此支拂保險金ニ相當
スル小作料ノ部分ハ、之ヲ小作人ニ請求ス
ルコトガ出來ナイモノト致シテ居ルノデア
リマス、以上ガ此法案ノ〓要デアリマス
ソコデ私ハ此委員會デ審議セラレタル數
多クノ質疑應答ノ中、最モ重要ナリト認メ
ラレタルモノ數點ニ付テ、次ニ之ヲ御紹介
致シテ置キマス、卽チ其第一點ハ、本法ニ
於テ其保險事故ノ中ニ何故ニ冷害及ビ雪害
ヲ取入レナカッタカト云フ點デアッテ、此問
題ハ全質疑ノ殆ド大半ヲ占メテ居リマス、
卽チ北海道、東北及ビ北陸地方ハ、冷害及
ビ雪害ヲ被ルコト甚シク、殊ニ冷害ノ爲ニ
ハ農家ハ時ニ或ハ飢餓ニ瀕セントスルコト
サヘアリ、地方ノ農民ハ絕エズ其生活ノ不
安ニ脅カサレテ居ル、故ニ苟モ農業保險ノ
立法ヲ考フル時ニ、何人ト雖モ此冷害及ビ
雪害ハ第一ニ其保險事故ノ中ニ取入レラル
ベキデアルニ拘ラズ、之ヲ除外セル如キハ
失當ノ甚シキモノデアル、是等ノ地方民ガ多
年農業保險制度ノ制定ヲ渴望シ來レル所以
ハ、其實施ニ依ッテ斯ノ如キ深刻ナル被害ヨ
リ救ハレ得ルモノデアルト信ジタガ故デア
ル、然ルニ今之ヲ除外セル本法案ノ如キハ、
殆ド農業保險ノ意義ヲ爲サナイ、是等ノ地
方民多年ノ渴望ヲ全然裏切ルモノナリトシ
テ、其論難追究極メテ急ナルモノデアッタ
ノデアリマス、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、
冷害及ビ雪害ハ政府ニ於テモ極メテ之ヲ重
要視シ、從來ト雖モ其救濟施設ヲ行ッテ來
タノデアルガ、之ヲ保險事故ノ中ニ取入レ
ルニ付テハ、相當信憑シ得ル災害統計ヲ必
要トスルニ拘ラズ、現在ノ所未ダ十分ナル
統計資料ヲ整フルニ至ッテ居ナイノデ、隨テ
被保險者ガ何程ノ保險料ヲ負擔スレバ足ル
カ、又政府ニ於テ何程ノ支出ヲ要スルカノ
見透シモ付カナイ現狀デアルカラ、一〇、
之ヲ保險ヨリ除外シテ、農業保險組合ノ共
濟事業ニ依ラシムルコトト爲シ、政府ヨリ
モ援助シテ共濟ノ實ヲ擧ゲシムルコトニ努
力スルト共ニ、一方可及的ニ其調査攻究ヲ
遂ゲ、出來得ル限リ速ニ之ヲ保險事故中ニ
取入レルヤウニスル考デアルトノコトデア
リマシタガ、委員ハ此答辯デ滿足ガ出來
ズ、益〓急迫ガアリマシタノデ、最後ニ此點
ニ關シ農林大臣ヨリ言明ヲ得タノデアリマ
ス、此言明ハ極メテ重大デアリマスルカラ、
農林大臣ハ當議場ニ於テ重ネテ其言明ヲ爲
サレンコトヲ私ハ玆ニ要求シテ、私ノ報〓
ヨリ省クコトニ致シマス
重要ナル質疑ノ第二點ハ、此法案ニ依ル
保險計畫ノ內容ガ餘リニ貧困デアルト云フ
問題デアリマシテ、保險金額ノ如キハ實收
穫價額ノ三分ノ一又ハ四分ノ一、若クハ五
分ノ一位ニ過ギナイ、又其支拂保險金額モ、
普通ニ見ル所ノ災害ノ場合ニハ極メテ少額
デ、而モ減收三割マデノ被害ニハ其支拂ヲ
シナイ、三割乃至五割ノ損害ノ場合ニ、僅
ニ保險金額ノ一割ニ當ル程度ノ支拂ニ止
メ、九割以上減收ノ被害アリタル時初メ
テ全額、卽チ十割ノ支拂ヲ爲スト云フガ如
キハ、子供騙シニ類スルモノデアルトノ非
難ガアリ、又我國農家ノ實情ヨリスレ
バ相互主義ノ保險制度トスルコトニ無理ガ
アルノデアルカラ、政府ニ於テ思切ッテ助成
ヲ爲シ、以テ保險料ノ低下ト保險金ノ支拂
額ヲ增額スベキデハナイカト云フヤウナ質
疑ガ繰返サレタノデアリマス、右ノ質疑ニ
對スル政府ノ答辯ハ、本制度ハ我國ニ於テ
ハ初メテノ施設デ、官民共ニ未ダ經驗ヲ持
タナイ上ニ、多數ノ零細農ヲモ包含セシメ
ントスル社會保險的制度デアル爲ニ、保險
料ノ負擔ガ重クナッテハナラズ、從來ノ共
濟施設ノ實情ヤ農家負擔力ノ程度ヲ考慮シ
テ定メタノデ、其計畫ガ甚ダ不十分デアル
コトハ已ムヲ得ナイト考ヘルガ、政府ハ勿
論之ヲ以テ災害救濟ハ足レリトスルモノデ
ハナク、保險事業ノ發達ト逐次ニ得ル所ノ
經驗ニ依ッテ、漸次之ヲ擴充スル意向デアル
コトヲ表明致シマシタ、又三割以下ノ災害
ニ保險金ヲ支拂ハナイコトニナッテ居ル理
由ハ、從來ノ保險ヲ目的トスル災害統計ガ、
三割以上ニ減收ノ場合ノミノ調査ニナッテ
居ルノデ、致方ガナイノダトノ答辯デアリ
マシタガ、保險金額ニ對スル支拂保險金額
ノ割合ガ甚シク不同デアルトノ非難ニ對シ
マシテハ政府モ之ヲ認メ、施行令ノ制定
ニ際シテ、計算上許サレル限リ之ヲ改メン
トスル意思ヲ示シタノデアリマス、又國庫
支出ノ點ニ關シマシテハ、政府ハ每年ノ保
險料ノ一部ヲ永久ニ負擔シ、且ツ保險組合
ニ對シテ其共濟施設ヲ助成スル等、相當額
ノ負擔ヲ要スルノミナラズ、異常災害ニ際
シテハ一擧ニ極メテ巨額ノ支出ヲ約束スル
コトデモアリ、更ニ保險事業ガ普及スレバ
普及スル程、年々多額ノ負擔ヲ爲スベキ立
前デアルノデ、保險料ノ低下、保險金支拂
額ノ增額ノ爲ニ、國庫支出ヲ增額スルコト
ハ頗ル困難ナル樣ノ答辯デアリマシタガ、
委員會ニ於キマシテハ到底斯ノ如キ答辯デ
諒解ノ行ク譯デモナク、段々農林大臣ニ其
決意ヲ迫ッタノデアリマスルガ、農林大臣カ
ラハ、本案實施ニ當リマシテハ出來得ル限リ
御趣意ニ副フヤウニ努力ヲ致シタイト思ヒ
マス、斯ウシタ言明ガアッタノデアリマス
次ニ重要ナル質疑ノ第三點ハ、此法案ニ
於ケル養蠶實行組合ノ取扱ニ關スル問題デ
アリマシテ、卽チ本法第一條ニ於テ、市町
村農會ハ行政官廳ノ認可ニ依リ農業保險組
合ヲ設立スルコトヲ得ルモノト規定セルニ
拘ラズ、養蠶實行組合ガ農業保險組合ノ設
立者又ハ其組合員タラントスルニハ、主務大
臣ノ認可ヲ受クルヲ要スルモノト第二條ニ
規定セルコトハ、全ク差別的ナ扱ヒ方デ、
蠶絲業組合法ニ依ル養蠶團體ノ重要性ヲ輕
視シ、活動セル全國四万有餘ノ養蠶實行組
合ノ現狀ニ對スル認識不足ノ不當ナル扱ヒ
方デアルカラ、此第二條ヲ削除シ、第一條
ニ於テ市町村農會ト竝ンデ養蠶實行組合ヲ
認ムベシトノ趣旨ノ質問ガアッタノデアリ
マス、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、養蠶團體
ノ重要性ニ關スル認識ニ付テハ、政府ハ
決シテ人後ニ落チル者デハナイガ、養蠶實
行組合ノ行ヒ得ル保險關係ハ桑葉デ、是ハ
桑園ノ耕作者ガ悉ク市町村ノ農會員タル關
係上、農會ニ於テモ爲シ得ル保險事業デア
ル、又養蠶實行組合ハ强制〓體デナク、經
費ノ强制徴收モ認メラレテ居ナイ、サウシ
タ團體ガ保險組合ノ組合員トナッテ、桑葉ニ
付テノ保險契約ヲ爲スコトヲ認メルニ付キ
マシテハ、其實行組合ノ內容ノ實體、又農會
トノ關係等ニ關スル見方ガ、地方的ニ區々
ニナッタノデハ宜シクナイト云フ考カラシ
テ、之ヲ地方ノ行政官廳ニ委任スルコトヲ
避ケタノダト云フ答辯デアリマシタ、サ
ウシテ此問題ニ關聯致シマシテ、其點ニ對
スル政府ノ認識ヲ確メルト同時ニ、更ニ委
員會ニ於キマシテ、其認可取扱ニ關シテハ、
行政官廳ト主務省トノ間ニ十分ニ注意ヲ拂ッ
テ、雙方ノ相剋摩擦ヲ來サナイヤウニ留意
セナケレバナラヌデハナイカト云フ質疑ニ
對シテ、農林大臣ハ、養蠶實行組合ニ付テ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケテ組合員トナルコ
トト致シタガ、此認可ニ當ッテハ具體的實
情ヲ十分考慮シ、眞ニ實情ニ適應シ、地方
的ニ偏頗ナク公正妥當ナル取扱ヲ致スヤウ
ニ努ムベキコトハ勿論デアリマスト云フ言
明ガアッタノデアリマス
ソレカラ水稻ノ稻熱病ヲ保險事故ノ中ニ
入レルベキデハナイカトノ熱心ナル質問ガ
アリマシタガ、政府ハ保險事故ノ中ニ認メ
ントスル一定ノ植物病ト云フノハ、例ヘバ
風害ニ起因スル水稻ノ白葉枯病ノ如ク、不
可抗力ニ依ッテ發生スル損害ニ對シテ、之ヲ
保險セントスルノデアッテ、稻熱病ノヤウニ
豫防スレバ豫防シ得ル見込ノモノニ對シテ
ハ、蟲害ト同ジク保險事故ト致サナイコト
ニシタノデアルト答辯ヲ致シマシタガ、質
疑者トハ此豫防ノ出來ル出來ナイト云フ點
ニ付テ、尙ホ意見ノ相違ガアルヤウニ見受
ケマシタガ、結局ニ於テ政府ハ尙ホ能ク調
査〓究ヲ遂ゲルコトニスルトノ言明ヲ與ヘ
タノデアリマス
保險ノ對象タル作物ノ中ニ燕麥ヲ除外セ
ルコトガ指摘サレマシテ問題トナリマシタ
ガ、政府ハ燕麥ニ付テハ、麥類トシテハ差
當リ廣イ地域ニ作ラレルモノト致シタ關係
上、大麥、小麥、裸麥トシ、燕麥ハ除外シ
タノデアルケレドモ、實施ニ當リマシテハ
御趣旨ニ副フヤウニ努力致シマスト、農林
大臣カラ言明ガアックノデアリマス、以上ノ
外尙ホ色々多クノ質疑ガアリ、希望モアリ
マシタガ、是等ハ速記錄ニ依ッテ御承知ヲ
願フコトニシテ、此處ニハ省略ヲ致シマス
以上デ質疑ガ終了シ討論ニ入ッタノデアリ
マスガ、民政黨ニ於テハ村松久義君、政友
會ニ於テハ加藤知正君、第一議員倶樂部ニ
於テハ北勝太郞君、社會大衆黨ニ於テハ菊
地養之輔君、第二控室ニ於テハ中原謹司君、
東方會ニ於テハ小野謙一君ガ、各〓代表的ニ
意見ヲ述べラレマシタ、其意見ヲ要約致シ
マスルト、何レモ案ノ內容ガ餘リニ貧弱デ、
期待ニ背クコト甚シキ不滿ハアルガ、法案
ノ重要性ニ鑑ミ、施行ノ後ニ逐次其內容ヲ
充實擴張スベシトノ政府ノ答辯、殊ニ農林
大臣ガ責任ヲ以テ言明セラレタル其言明ニ
信賴シ、多大ノ期待ト希望トヲ實施ノ後ニ
繫ギ、此條件ノ下ニ原案ニ贊成スルトノ旨
デアリマシタ、斯クテ採決ニ入リマシテ、
全會一致原案ヲ可決致シタ次第デアリマ
ス、何卒委員會ノ決議ノ通リニ可決セラレ
ンコトヲ希望致シマシテ私ノ報〓ヲ終リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=109
-
110・小山松壽
○議長(小山松壽君) 此際政府ヨリ發言ヲ
求メラレテ居リマスカラ、之ヲ許シマス、
農林大臣有馬賴寧君
〔國務大臣伯爵有馬賴寧君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=110
-
111・有馬頼寧
○國務大臣(伯爵有馬賴寧君) 只今村上委
員長ヨリ農業保險委員會ノ御報〓ノゴザイ
マシタ中ニ、冷害竝ニ雪害ニ關シマシタ事
項ニ付キマシテ、委員會ニ於テ私ガ聲明致
シマシタコトヲ、本議場ニ於テ更ニ申述ベ
ルヤウニト云フコトデアリマスノデ、此處
デ再ビ之ヲ聲明致シマス
本案ニハ冷害及ビ雪害ハ一應之ヲ保險事
故ト致シテ居ラナイノデアリマスガ、政府
モ固ヨリ是ガ救濟制度確立ノ必要ヲ認メテ
居ルノデアリマスルカラ、委員會ニ於ケル
委員諸君ノ御要望ノ趣旨ニモ鑑ミマシテ、
明年度ヨリ現ニ農林省ニ設置致シテアリマ
スル農林災害保險及ビ共濟制度委員會ニ諮
リマシテ、具體案ノ作成ニ努メル積リデア
リマス、尙ホ右救濟制度ノ確立マデニ於キ
マシテモ、冷害及ビ雪害ニ對スル救濟及ビ
共濟ニ關シマシテハ、之ヲ重要視致シマシ
テ、適切ナル對策ヲ講ズルコト勿論デアリ
やく、以上玆ニ聲明ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=111
-
112・小山松壽
○議長(小山松壽君) 討論ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-松浦周太郞君
〔松浦周太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=112
-
113・松浦周太郎
○松浦周太郞君 私ハ只今上程ニナリマシ
タ農業保險法案ニ對シマシテ、立憲民政黨
ヲ代表致シマシテ贊成ノ意ヲ表スル者デア
リマス、本保險法案ガ提案セラレマスト同
時ニ、政府ハ其說明ノ內容ニ於キマシテ、
農業保險制度ヲ樹立シテ、農家收入ノ源泉
ヲ確保シ、各種農業對策ト併セテ、農村生產
力ノ維持增進ヲ圖ルハ勿論、農村ノ更生ヲ
圖ルト申シテ居リマス、此聲明ニ依リマシ
テ、全國五百六十万戶ノ農村ハ、如何ニ此
法案ニ依ッテ吾々ノ救ハレルコトヲ待望シ
タモノデアリマセウカ、其案ヲ檢討致シテ
見マスルト、實ニ農家ノ待望ヲ裏切ッテ、貧
弱極マルモノデアッタノデアリマス、先ヅ保
險ノ範圍ノ內容ニ付テ考ヘテ見マスルト、
今日ノ農家經濟ヲ救フナラバ、單ニ收穫保
險ダケデナシニ、農業經營主體其モノニ保
險ヲスル必要ガアルコトヲ痛感スル者デア
リマス、言フ迄モナク農村ノ生產ノ源泉ハ
土地デアル、其土地ノ災害ニ付テノ事故ヲ、
全然保險目的カラ除外シテ居ッタ其一事ヲ
見マシテモ、私ハ此法案ガ今日ノ農村經濟
ヲ救濟スルノ源泉デアルトハ言ヒ得ナイノ
デアリマス、ノミナラズ然ラバ收穫災害保
險ト致シマセウカ、此收穫ノ災害保險ニ付
テモ、收穫物全體デハナイ、作物全體デハ
ナイ、唯一部定額保險デアル、而モ其作物
ノ種類ニ於キマシテハ、米、麥、桑ニ限ラ
レテ居ルノデアリマス、是等ノ作物ノ種類
ニ限ラレテ居リナガラ、立派ニ麥ノ中ニ含
マレテ居ル所ノ燕麥ヲ除外シテ居ル、又一
部收穫ノ定額保險デアッテ、其災害ノ種類ニ
限定ヲシテ居ル、政府ハ其質問應答ノ中ニ、
常ニ人力ヲ以テ及バザル所ノ天災ニ對シ
テ、此危險ヲ保障スルモノデアルト言ッテ
居ルガ、其災害ノ中ニ最モ大キナ天災トセ
ラルベキモノハ、言フ迄モナク東北、北海
道及ビ北陸地方ニ於ケル所ノ冷害其モノデ
アル、如何ニ政府ガ天狗ニ肖リテモ、人ノ
力デドウシテ此冷害ヲ防止スルコトガ出來
マセウカ、此冷害ニ對シテハ殆ド統計ガ足
ラナイトカ、或ハ調査ガ足ラナイトカ、色々
言ヲ左右ニ致シマシテ、此冷害ニ對スル誠
意ヲ持ッテ居ラヌコトヲ遺憾トスルモノデ
アリマス(拍手)然ルニ政府ノ言フガ如ク、
眞ニ冷害ニ對スル調査ガ行屆イテ居ッタカ
ドウカ、本農業保險ト云フモノガ議會ニ提
案セラレマシテカラノ歷史ハ、旣ニ十二箇
年ヲ經過致シテ居リマス、其間昭和三年ヨ
リ昭和五年マデハ年々二万圓ヅヽノ調査費
用ヲ要求致シマシテ、而シテ著々ト進メテ
居ル、而モ其調査期間內ニ於テ四囘ノ冷害
ガアリ、政府ニ之ヲ追究スレバ、甚シキニ
至ッテハ昭和九年ノ冷害ノ統計スラ集ッテ居
ラヌト云フニ至ッテハ、政府ガ農村ニ對ス
ル誠意ヲ疑フモノデアリマス(拍手)斯樣ナ
情勢デアリマシテ、吾々民政黨員ハ最後マ
デ政府ニ之ヲ追究シ農村ノ現狀、否東
北北海道、北陸等ノ農村ノ現狀ヲ救フモ
ノハ、此冷害對策ニアリト絕叫致シマシ
タ(拍手)之ニ對シテ政府ハ種々考慮セラレ
マシテ、先程モ農林大臣ガ此席上ニ於テ御
發表ニナッタ如ク、內容ノ殊ニ重大ナルモノ
ヲ發表セラレマシタガ故ニ、吾々ハ之ニ贊
成スルモノデアリマス
更ニ此保險料ノ問題ニ付テデアリマスガ、
先程村上委員長カラモ御報〓ガアリマシタ
ガ、碎イテ申シマスルト、七十六錢ヲ三箇
年掛ケテ二圓二十八錢、而モ三年ニ一度五
分作ニ遭遇シタ時ニ於テ二十六錢ノ損ガ行
クト云フ內容デアリマス、之ヲ小作人ニ見
マスルト、一圓十四錢ヲ拂ッテ一圓シカ貰ヘ
ナイ、政府ガ助成スルト雖モ小作地一反ニ
對シテ五錢ノ助成デアリマス、是デ小作人
ガドウシテ保險ヲ要望シマセウカ、私ハ此
內容其儘ナラバ、今日ノ小作者ハサウシタ
稅金ヲ增スガ如キモノニハ、斷ジテ入ラナ
イト思フ(拍手)斯ウ云フ內容ヲ持ッテ居リ
マスノミナラズ、本法ノ最モ缺點トスル所
ハ、日本全國ノ災害ヲ平均ニ見テ七十六錢
ト致シテ居リマスガ、南方ノ方面ノ所謂小
面積耕作、所謂多角形農業、所謂立體的農
業ノ方面ニ於キマシテハ、面積ニ對スル保
險料ナルガ故ニ、少額ナル負擔デ之ヲ濟マ
スコトガ出來マスケレドモ、若シ之ヲ北陸、
東北、北海道ノ如キ單作、所謂平面農業、
面積ノ擴大スル農地ヲ持ッテ居ル農業地帶
ト致シマシテハ、莫大ナル金ヲ支拂ハナク
テハナラヌ、茲ニ本案ノ缺陷ガアルト思フ、
所謂平面農業ハ立體農業ニ對シテ其負擔ノ
均衡ガ缺ケテ居ル、是ガ本法ノ最モ缺點ト
稱スベキ所デアラウト思ヒマス、今日ノ農
家ノ現狀ハ言フ迄モナク、農家ガ今日ノ窮
境ニ至リマシタ其原因ヲ追究致シマスナ
ラバ、所謂資本主義經濟ニ壓倒セラレタト
申シマセウカ、所謂今日ノ農家ノ經濟ハ、消
費ハ文化ノ尖端ヲ行キ、生產ハ昔變ラヌ粗
笨農業デアル、而モ其上ニ今日ノ社會情勢
ハ、稅ノ均衡ノ上ニ於テ二倍三倍ノ多クノ
稅ヲ支拂ヒ、一朝事アル場合ニハ國家ノ干
城トシテ農村靑年ノ六割七分ハ徵集サレテ
居ル、而モ其生產費ノ値上リニ於キマシテ
ハ、色々ノ他ノ商品ハ非常ナ値上リヲ致シ
テ居リマスケレドモ、今日ノ農村ノ生產費
ハドウデアリマセウカ、何レノ部面ヲ見マ
シテモ、今日ノ農村ノ生活ト云フモノハ、
今日ノ如キ狀態ニナラナケレバナラナイ情
勢ニ置カレタノミナラズ、農村其モノハ所
謂社會全體ノ搾取ノ對象ニナッテ居ッタノデ
アリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)斯ウ云フ情勢デ
ゴザイマスカラ、政府ガ玆ニ保險法案ヲ出
サレルナラバ、簡單ナル所ノ相互扶助ニ依
ル保險制度デナシニ、國家ガ之ヲ助成スル、
所謂國家保障ノ制度ニスルニアラザレバ、
此保險ノ完璧ヲ期スルコトハ斷ジテ出來ナ
イト思ヒマス(拍手)此意味ニ於キマシテ、
私ハ此法案ノ審議ニ當ッテハ、各種ノ速記錄
竝ニ此席上ニ於テ各代表者ノ述ベラレタ所
ノ其意思、ソレヲ農林大臣ハ十分ニ酌取ラ
レテ-私ハ農林大臣ニ對シテ滿腔ノ信賴
ヲ持ツモノデアル、農林大臣ハ曾テ產業組
合ノ中央金庫ノ理事長ヲシテ居ラレタ時
ニ、有ユル「イデオロギー」ヲ盛ッタ「パンフ
レット」ヲ發行セラレテ居ル、私ハ農村靑年
トシテ此農林大臣ノ農村指導、農林大臣ノ
此確信ナラバ今日ノ農村ハ救フコトガ出來
ルト待望シテ居リマシタニ拘ラズ、此法案
ノ內容ハドウデアルカ、アナタハ以前持ッテ
居ラレタ其强イ信念ヲ以テ、此農村ノ窮乏
ノ現狀ニ鑑ミ、先程アナタガ此處ニ聲明セ
ラレマシタ末尾ニアル所ノ、重要視シテ適
切ナル對策ヲ講ズルコトハ勿論デアリマス
ト云フコトヲ御忘レニナラナイデ、此農業
保險制度ヲ立派ニ確立セラレンコトヲ要望
シ、玆ニ私ハ簡單ニ贊成ノ意ヲ表スルモノ
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=113
-
114・小山松壽
○議長(小山松壽君) 坪山德彌君
〔坪山德彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=114
-
115・坪山徳彌
○坪山德彌君 只今議題トナッテ居リマス
ル農業保險法案ニ對シ、私ハ立憲政友會ヲ
代表シテ委員長ノ報告ニ對シ、贊成ヲ致ス
者デアリマス、勿論政府言明ノ事項ニ關シ
テハ、是ガ實現ノ速カナランコトヲ特ニ强
調スルモノデアリマス、申上グル迄モナク、
本法案ハ農地調整法ト共ニ我國農業ニ取ッ
テ、今期議會ニ於ケル二大重要法案デアル
コトハ論ヲ俟タナイ所デアリマス、而モ本
制度ガ劃期的革新政策デアリ、農業關係者
ガ多年要望シ、是ガ實現ノ一日モ速カナラ
ンコトヲ期シテ居ッタモノデアリマス、然ル
ニ本法案ノ內容ヲ檢討スルニ及ンデ、折角
ノ農民ノ期待ハ全ク裏切ラレタ感ヲ持タザ
ルヲ得ナイノデアリマス、本法案ノ實施ニ
依ッテ果シテ政府ノ期待シテ居ラルヽ如キ
效果ヲ擧ゲ得ルヤ否ヤ、洵ニ疑問ニ思フノ
デアリマス、併ナガラ初メテノ法案デアリ、
而モ議會ノ會期ハ非常ニ切迫ヲ致シテ居リ
マスル今日、徒ニ修正改廢等ヲ行ヒ、案ヲ
不成立ニ導クガ如キハ却テ農民ノ爲ニ忠實
ナラザルモノデアルト考ヘマシテ、姑ク政
府ノ言明ヲ信賴シ、玆ニ二三ノ希望ト警告
ヲ發シテ本法案ニ贊成ノ意ヲ明ニ致シタイ
ト思フノデアリマス
農村ノ疲弊困憊甚シク、經濟的ニ惠マレ
ザル狀態ハ今更多言ヲ要サナイノデアリマ
ス、殊ニ不慮ノ災害ニ因リテ被ル損害ハ年々
頗ル大ナルモノガアリマシテ、是ガ爲メ
農家經濟ノ受クル打擊モ、決シテ尠クハナ
イノデアリマス、是等損害ノ塡補輕減ヲ圖
リ、以テ農家負債ノ原因ヲ防除シ、農業經
營ヲ安定セシメ、農業生產力ノ維持增進ヲ
圖リ、農村經濟更生ノ爲ニ本法案ガ生レタ
ノデアリマスルガ、其內容ハ極メテ貧弱デ、
是ガ實施ノ曉ニハ農民ノ失望落膽ハ蓋シ想
像ニ餘リアルト思ヒマス、徒ニ相互扶助ノ美
名ニ隱レテ國家ノ負擔ヲ輕カラシメントス
ルガ如キ態度ニ出ラレタルコトハ、本法案實
施ニ當リ其實績ヲ擧ゲル上ニ於テ、相當困
難ナル事柄デアルト考へネバナリマセス、
殊ニ農村ノ現況ハ、農家ガ直屬ノ市町村農
會又ハ養蠶實行組合ノ僅少ナル費用スラ負
擔シ得ザル實情ニ鑑ミラレマシテ、是ガ實
施ニ當ッテハ單ニ保險料ノ一部國庫負擔ノ
限度ニ止メズ、少クモ保險料ノ半額程度ハ
之ヲ國家ニ於テ補助シ、農業災害救濟ノ實
ヲ擧ゲルコトニ一段ノ留意ヲ望ム次第デア
リマス
養蠶實行組合ヲ本法第一條ヨリ除外シ、之
ヲ特殊ナル取扱ニ委ネタルコトハ、其當ヲ
得ザルモノト言ハナケレバナリマセヌノデ
アリマシテ、是ガ爲ニ却テ農村ノ麗シキ平
和ヲ破ルノデハナカラウカト心配セラレル
ノデアリマス、是等ノ市町村農會ト養蠶實
行組合トノ取扱ニ付テハ特ニ細心ノ注意ガ
肝要デアルト考ヘラレマスルカラ、地方ノ
實情ニ付テ詳細ナル調査ヲ遂ゲ至公至平事
ニ當ルノ重大ナ覺悟ガナケレバナラナイト
思ヒマス
調査〓究不十分ノ理由ヲ以テ雪害冷害等
ノ事故ヲ保險事業カラ除キ、又豫防シ得ル
ノ理山ヲ以テ稻熱病ヲ其事故ヨリ除外シテ、
單ニ救濟事業ニ委ネントスルガ如キ態度ハ
洵ニ承服シ得ザル所デアリマス、東北、北海
道北陸、北關東地方ノ如キ年々是等ノ害
ヲ被ムル地方ニ於テハ、雪害、冷害、稻熱
病ヲ除キ何ノ保險ノ效果ガアルデアラウカ、
是等ノ事故ガ加ッテコソ初メテ農業保險ノ
農業保險タル價値ヲ發揮シ得ルノデアリマ
ス、殊ニ是等ノ特殊ナル地方ニ對シテハ、
特別ナル取扱ヲ爲シテ、疲弊困憊ノ極ニア
ル地方農民ヲ救濟スルコトニ、何ノ躊躇送
巡スル必要ガアルノデアラウカ、今ヤ八十
億ノ豫算ヲ議決シタル今日ニ於テ殊ニ然リ
デアリマス、保險技術上ノ困難ナル理由ヲ
以テ、是ガ施行ヲ遷延セントスルガ如キハ、
其ノ眞意ヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、
此問題ニ付テハ來年度速ニ是ガ調査〓究ヲ
重ネ善處スル旨ノ言明ガアリマシタノデ、
速ニ是ガ調査〓究ヲ完了セラレ、地方農民
ノ意ノ在ル所ヲ尊重セラレ、一日モ速ク是
ガ實現ヲ望ンデ已マナイ次第デアリマス
尙ホ農村ニ於ケル人的資源及ビ食糧資源
タル農耕地ノ災害ニ付テモ其被害ガ極メテ
甚大ナルニ鑑ミ、是ガ救濟制度ニ付テモ速
ニ實現セラレンコトヲ希望スル次第デアリ
マス、自然的災害ヲ被リ易キ果樹、茶或ハ
大麻、干瓢、西瓜、砂糖黍等ノ特殊農作物
ニ對シテハ十分是ガ〓究調査ヲ遂ゲ、共濟
事業ハ勿論、保險事業ニ加ヘラレルヤウ希
望スル所デアリマス
災害ノ未然防止ニ對シマシテハ決シテ之
ヲ等閑ニ付スルヤウナコトガアッテハナ
ラナイト思ヒマス、經費ノ關係上動トモ
スレバ現況ニ滿足セントスル、各府縣農事
試驗場ヲ特ニ此際動員ヲシテ、一層其活
動ヲ促シ、土壤ノ檢査、施肥標準調査、
肥培管理ノ方法、或ハ品種ノ改良、特殊
農作物等ノ〓究調査ヲ速ナラシメ、地方
ニ適當ナル品種ヲ選出シ、肥培管理ノ改
善ヲ行フト共ニ、速ニ適地適作主義ヲ奬勵
シ、以テ災害ヲ未然ニ防止セシムベキコト
ニ努ムベキダト思ヒマス、又農作物ノ自然
的災害ヲ未然ニ防止スルコトニ關シテハ、
積極的災害豫防施設ヲ忘却シテハナラナイ
ト思ヒマス、灌漑水竝ニ勞力不足ニ對シテ
ハ、耕地整理ノ奬勵、貯水池ノ設置、早害
水害ニ對シテハ、水源林ノ培養、砂防ノ强
化河川ノ改修、用排水幹線ノ整備等、一日
モ之ヲ忽セニスベキモノデハナイト信ジマ
ス、病蟲害ニ對スル豫防驅除、實地指導等ニ
對シテ決シテ注意ヲ怠ッテハナリマセヌ
勞力不足ヨリ生ズル農產物收穫減ニ對シ
テハ、特ニ此際政府ノ注意ヲ喚起シナケレ
バナリマセヌ、今次支那事變勃發スルヤ多
數ノ農村中堅勇士ハ、其愛スル農馬ト共ニ
一身一家ヲ忘レテ君國ノ爲ニ奉公ノ誠ヲ捧
ゲツヽアルノデアリマシテ、是ガ爲ニ農村ニ
於ケル勞働力ハ甚シキ不足ヲ痛感致シテ居
リマス、加フルニ近時軍事工業發展ノ結果、
農村ニ於ケル靑年子女ハ、年ト共ニ是等工業
都市ニ集中セラレ、農村ニ於ケル勞力ノ不足
ハ益〓其度ヲ加ヘツヽアル現況デアリマス、勿
論是等ノ勞力不足ニ對シテハ、隣保共助ノ精神
ニ依ッテ、或ル程度ノ補給ハ爲シ得ルト思ヒ
マスケレドモ、天候自然ニ支配セラレ易キ
五月、六月ノ作付時期、卽チ水稻ノ植付、
大小麥ノ收穫時期ニ於ケル勞力不足ニ對シ
テハ決シテ樂觀ヲ許サナイモノガアルト思
ヒマス、特ニ馬ノ徵發ニ依ル勞動力不足ニ
關シテハ、特ニ是ガ補充ニ對シ適切ナル方途
ヲ講ゼラレ、苟モ作付不能ニ陷ルガ如キコ
トノ萬ナカランコトヲ望ム者デアリマス、
是等ノ勞働力不足ヨリ生ズル收穫減ニ對ス
ル未然防止ニ付テハ特ニ周到ナル對策ヲ要
求スル次第デアリマス
由來農村問題ハ動トモスレバ社會ヨリ輕
視セラレントスルガ如キ傾向ノアリマスコ
トハ、我國農業界ノ爲メ眞ニ遺憾ニ堪ヘザ
ル所デアリマス、農業ガ他ノ職業ニ比較シ
テ其努力ニ對シ常ニ惠マレザル立場ニアリ
マスコトハ、否定シ得ザル現實デアリマシ
テ、農民ハ働ケド〓〓增スノハ借金バカリ
デアリマス、獨リ農民ノミガ終生斯ノ如キ
慘メナ生活ヲ致サナケレバナラヌト云フ理
由ハ決シテアルベキモノデハアリマセヌ、
茲ニ政治ノ行屆カザル缺陷ガアルト言ハザ
ルヲ得マセヌ(拍手)此點ニ關シ特ニ政府ノ
注意ヲ喚起シテ已マナイ次第デアリマス、
此窮乏セル農村ヲ救濟スル爲ニハ常ニ勇猛
心ニ富ミ、熱意アリ、眞ニ農業ヲ理解シテ
居ル適當ナル當事者ヲ得ルニアラザレバ、
到底望ムコトハ出來得ナイト確信致シテ居
リマス、農政官吏ノ任免異動ニ當ッテハ、
屬吏ト雖モ之ヲ輕々ニ行フガ如キコトナク、
宜シク其地方ノ事情ヲ參酌シ、適否ヲ極メ、
適材ヲ適所ニ配置シ、十分其手腕ヲ發揮セ
シムルコトヲ忘レテハナラナイト思ヒマス、
農村ニ於ケル銃後ノ護ハ重且ツ大デアリマ
ス、政府ハ宜シク念ヲ特ニ此點ニ注ガレテ
廣義國防ノ完結ノ立場カラモ、今日ノ農村
ガ一刻モ早ク經濟的ニ惠マレ得ル日ノ速ナ
ランコトヲ懇願シテ已マナイ次第デアリマ
ス
之ヲ要スルニ本法案ハ幾多ノ不平不滿ヲ
殘シテ忍ブベカラザルヲ忍ンデ、是ガ成立
ヲ急グガ爲ニ已ムナク玆ニ贊成ヲ致ス者デ
アリマスカラ、本法實施ニ當ッテハ政府言明
ノ實行ハ勿論、連日ニ亙ル委員會ニ於ケル
質疑ノ狀態ニ深ク留意セラレ、農村ノ爲メ
萬遺算ナキヤウ特ニ希望スル者デアリマス、
以上ノ諸點ヲ申述べマシテ私ノ本法案ニ對
シテ贊成ヲ致ス理由ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=115
-
116・小山松壽
○議長(小山松壽君) 平野力三君
〔平野力三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=116
-
117・平野力三
○平野力三君 私ハ第一議員倶樂部ヲ代表
致シマシテ本農業保險法案ニ關シマシテ、
委員長ノ報告ニ贊成スル者デアリマス、唯
此際特ニ政府ニ對シテ重要ナル希望意見ヲ
申述ベタイト思ヒマスルコトハ、農村疲弊
ノ根源ト云フモノガ、農業ガ災害ニ禍セラ
レマスコトハ、何人モ承知スル所デアリマ
ス、此農村疲弊ノ根幹ニ觸レタル所ノ重要
法案ヲ提案サレマスル所ノ農林當局ガ、是
ガ實施ヲサレマシタ場合ニ於テ、極メテ實
益ノ薄イ法案ト云フモノニ對シテハ吾々
ハ假ニ贊成ヲ致スト致シマシテモ、當局ニ
對シテ重要ナル希望意見ヲ述ブルコトハ當
然デアラウト思フノデアリマス(拍手)隨テ
私ハ以下三ツニ亙リマスル所ノ希望意見ヲ
申上ゲマシテ、本案ニ對スル所ノ贊成トス
ル次第デアリマス、希望意見ヲ朗讀致シマ
スト、先ヅ
第一ハ、政府ハ農業保險施行ニ當リ、眞
ニ災害救濟ノ目的ヲ達スル爲必要ナル經
費ノ負擔ヲ計上シ次期議會ニ必ズ提出ス
ベシ(拍手)
第二、政府ハ速ニ冷害、雪害ノ調査ヲ遂
ゲ之ガ根本對策ヲ樹立スベシ(拍手)
第三、政府ハ本法案施行ニ伴ヒ漸次農業
保險目的物タル所ノ農作物ノ種類ヲ擴張
スペン
以上デアリマス、此希望意見ニ關シマシテ、
簡單ニ私ノ所見ヲ申上ゲタイト思ヒマス
何ガ故ニ第一ノ希望意見ヲ附スルカト申
シマスルナラバ、本案ハ委員長ノ報告サレ
マシタ通リ、極メテ此案其モノガ施行サルヽ
場合ニ於キマシテハ、農民ノ失望ト云フ
モノハ甚シイノデアリマス、其失望ノ甚シ
イ理由ト云フ問題ハ、實益ガ乏シイト云フ
コトデアリマス、何ガ故ニ實益ガ乏シイカ
ト申シマスルト、政府ガ吾々ニ提出致シマ
シタ其保險料ト保險金額ノ內容ヲ見マスル
ナラバ、自作農ニ於テハ七十六錢、小作農
ニ於キマシテハ三十八錢、地主ニ於テハ四
十三錢ノ保險料ヲ掛ケマシタ場合ニ於テ、
而モ其收穫ガ五割減ト云フ農民ニ取リマシ
テ致命的ナ打擊ヲ受ケマシタ場合ニ、保險
金ヲ幾ラ吳レルカト申シマスルト、自作農
ニ於テハ七十六錢掛ケマシテ僅ニ二圓デア
リマス、小作農ニ於テハ三十八錢ヲ掛ケマ
シテ僅ニ一圓デアリマス、地主ニ於テハ四十
三錢ヲ掛ケマシテ僅ニ一圓デアリマス、諸君、
苟モ農村ノ實情ニ通曉致シマス者ガ、五割
減ト云フ收穫ニ遭ヒマス時ニ於キマシテハ、
是レ致命的ナル打擊デアリマスルコトハ、
私ガ喋々申ス迄モナイノデアリマス(拍手)
卽チ一反步ニ於テ二石穫レル所ノ地面ニ於
テ、一石減少致スト致シマシタナラバ、ド
ウデアリマセウカ、ソレヲ金額ニ見積ルト、
米價ヲ假ニ一石三十圓トシテモ、其損害ハ
三十圓デアル、三十圓ノ損害ヲ致シマシ
タ時ニ於テ、自作農ガ七十六錢ヲ掛ケテ二
圓ヲ貰ッタ、其差額ハ幾ラデアルカト申シ
マスルナラバ、僅ニ一圓二十四錢デアル、
三十圓ノ損害ヲ致シマシテ、一圓二十四錢
ヲ貰ッテ、是デ救濟ニナリマセウカ、小農作
ニ於テハドウデアリマセウガ、半減致シマ
シテ、小作料ヲ半分取ラレテ、殘リノ五分
デアリマスル時ニ於テハ生活ノ脅威デアル、
其根本的ナル生活脅威ニ襲ハレマスル場合
ニ於テ、小作農ハ一圓貰ッテ、保險金ヲ差引
クト僅ニ六十二錢、之ヲ與ヘテ果シテ是レ
農村ノ救濟ト言ヒマスナラバ、農林當局ノ
認識不足ト言ハザルヲ得ナイノデアリマス、
(拍手)此致命的ナル〓陷ガ、然ラバ何處カ
ラ發生スルカ、私ハ此致命的ナル缺陷ト云
フモノハ、極メテ是ハ簡單ナル原理ニ基ク
ト思フノデアリマス、卽チ政府ガ此農村ヲ
救濟スルト云フ使命ニ立チマシタ農業保險
ニ對シマシテ、其補助金ト云フモノハ、今
年計上致シマシタモノハ僅ニ二十万圓デア
ル、諸君二十万圓ト云フ金ヲ全國ノ耕地反
別六百万町步ニ割ルトドウカ、一反步ニ對
シマスル所ノ平均ト云フモノハ僅カ三厘三
毛デアリマス、農民ヲ救濟スルト言ヒマス
所ノ農業豫算ト云フモノガ、一反步ニ對シ
テ三厘三毛デ、能ク農村救濟ヲシ得ルト云
フコト、是亦私ハ農村當局ノ如何ニモ認識不
足ヂヤナイカト思フ(拍手)來年度カラハ約
百万圓デヤルト言ヒマス、百万圓ト致シマ
シテモ、之ヲ六百万町歩ニ割ルト、僅二一
錢五厘デハナイカ、政府ガ目的ト致シテ居
リマスル所ノ二百三十万町步ト云フモノヲ
救濟スルト云フ點カラ言ヒマスト、百万圓
ハ一反歩ニ付テ僅カ四錢五厘デアリマス、
諸君、今日農村ヲ救濟スルト云フ聲、徒之一
高クシテ、其提案サレマシタ法案ノ內容ヲ
吾々ガ仔細ニ點檢シテ見マス時ニ、此驚ク
ベキ貧弱ナル數字ヲ見マス時ニ、吾々ハ無
條件デ贊成スルコトハ出來ナイ(拍手)私ガ委
員會ニ於テ大藏大臣及ビ農林大臣カラ特ニ
言明ヲ得タ所ニ依リマスト大藏大臣ハ此
點ニ付テハ直チニ農業保險ニ關スル所ノ費
用ヲ出スト云フコトハ言ヘナイケレドモ、
農村ノ實情ニ鑑ミマシテ、當然アナタ方ノ
意見ニ對シテ考慮ヲシナケレバナラナイカ
ラ、其言外ノ意味ヲ諒トセヨト云フ御答辯
ガアリマシタノデ、私ハ本日ハ其大藏大臣
ノ答辯ヲ善意ニ解釋スルコトニ依ッテ贊成
セントスル所以デアリマスルカラ、此點ヲ
な
明白ニ致シテ置キタイト思ヒマス
第二ノ冷害ニ對シマスル所ノ問題ニ付テ、
當局ハ過去十七箇年間ノ統計ト云フモノヲ
基準ト致シマシテ、冷害、雪害ト云フモノニ對
シテハ未ダ〓究調査ガ出來ナイト言ハレマ
ス、併ナガラ私ハ政府ガ吾々ニ提供致シマ
シタ此被害統計ト云フモノヲ手ニ致シマシ
テ、政府ガ唯單ニ調査不十分デアルト云フ
點ハ私ニハ承服出來ナカッタノデアリマス、
政府ノ見ル所ニ依リマスト、昭和九年ニ於
キマシテ百三十万町步ト云フ被害ガ現ハレ
タコトニ對シテ、農林當局ハ膽ヲ潰シテ居
ル、併ナガラ諸君、政府ガ十七箇年間ノ統
計ヲ調ベマシテ、百万町步ヲ超エテ居リマ
スト云フノハ、僅ニ昭和九年一年デハナイ
カ、私ハ此統計ヲ自分ノ數字ニ依ッテ計算
シテ見マスナラバ、十万町步乃至二十万町
步ノ被害ト云フモノハ、此十七箇年間ニ於
テ約十二箇年間デアル、三十万町步以上ノ
年ト云フモノハ僅ニ五箇年間デアル、之ヲ
平均致シマスト一年ニ於テ僅カ三十五万町
步ノ被害デアリマスカラ、當局ガ一反步ニ
對シテ十圓ノ補助金ヲ出スト云フコトニナ
リマシテモ、一年ニ三千五百万圓サヘ計上
致シマスナラバ、農業保險ト云フモノハ立
派ニ成立ツデハナイカ(拍手)農村ハ國ノ寶
デアル、今ヤ銃後ノ救濟ヲシナケレバナラ
ヌト云フコトハ、喧々囂々トシテ居リ、政
府當局モ之ヲ豫算總會其他ノ委員會ニ於テ
是認シテ居ルトスルナラバ、農民ノ爲ニ、
而モ全國ノ農村問題ト云フモノノ解決ノ極
メテ重大部面ノ爲ニ、僅カ三千五百万圓位
ノ金ヲ出シテ農業保險ヲヤルト云フ位ノコ
トハ、少クトモ此非常時議會ニ於テハ農林
當局ハ考ヘテ宜カラウト私ハ斷言スル者デ
アリマス、私ガ此第二ノ冷害及ビ雪害ニ對
シテ根本的調査ヲ爲スベシト言フ所以ハ此
處ニ存スルノデアリマス、冷害、雪害ト雖
モ、政府ガ三千五百万圓ノ金ヲ犠牲ニスル
ト云フ觀念ガアリマスナラバ、アノ北海道、
東北方面ニ於キマスル所ノ熱烈ナル所ノ委
員諸君ノ希望ニ對シテ、農林大臣ハ言下ニ
答ヘラレタデアラウト思フ、切ニ私ハ此
私ガ希望條件トシテ附シテ居リマス所ノ第
二ノ冷害、雪害ニ對スル所ノ根本的調査ヲ
爲シテ、農民ノ希望ニ副フヤウニト云フコ
トヲ希望スル次第デアリマス
第三ノ問題ニ付テハ、私ガ申上ゲマシタ
ヤウニ、其文章ニ依ッテ明瞭デアリマスカ
ラ、之ヲ玆ニ避ケルノデアリマス
最後ニ一言私ガ申上ゲタイコトハ、斯ノ
如キ不備ナル所ノ法案デアルト雖モ、本案
ニ對スル所ノ政府ガ相當ナル犠牲ヲ拂フト
云フ政府自身ノ肚ガ決マレバ、此法案ト云フ
モノハモノニナルノデアル、要ハ農林當局、大
藏當局ガ農村問題ニ對スル所ノ熱意如何ト
云フ點ニアリマスルカラ、私ハ姑ク本日此
席上ニ於キマシテ農林大臣ガ言明サレマシ
タ其言明ヲ信賴スル點ニ於テ贊成スル者デ
アリマスルガ、若モ不幸ニシテ其言明ヲ裏
切ルコトガアリマスルナラバ、全國ノ農民
ノ洵ニ憾ミトスル所デアルト云フ一點ヲ殘
シマシテ、私ハ本案ニ對スル所ノ希望意見
ヲ述ベテ委員長報告ニ贊成スル次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=117
-
118・小山松壽
○議長(小山松壽君) 菊地養之輔君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=118
-
119・菊地養之輔
○菊地養之輔君 簡單デアリマスカラ此席
カラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=119
-
120・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=120
-
121・菊地養之輔
○菊地養之輔君 私ハ社會大衆黨ヲ代表致
シマシテ本案ニ贊意ヲ表スル者デアリマス、
旣ニ各派ノ代表ノ諸君ニ依リマシテ詳細ニ
論議シ盡サレマシタカラ、私ハ極メテ簡單
ニ贊成ノ理由ヲ述べタイト思ヒマス
政府ハ曩ニ農業保險制度ハ相互扶助ノ精
神ニ立脚シ、農業負債原因ヲ防除シ、農村
社會不安ノ原因ヲ除去シ、農家經濟ヲ安定
セシメ、農業經營ノ合理化ヲ促進セシムル
ト共ニ、農村經濟更生ヲ遂行スル上ニ於テ、
極メテ緊要ナル施設ナリト、本法案ノ其大
目的ヲ發表シタノデアリマス、我國窮乏ニ
喘グ農民大衆ハ大早ニ雲霓ヲ望ムガ如キ思
ヒヲ以チマシテ本案ヲ期待シタノデアリマ
ス、然ルニ愈、本案ニ於キマシテ其全貌ヲ現
ハスヤ、其大目的ト相距ルコト極メテ遠ク、
到底今日ノ農民ヲ救濟スルコト能ハザルコ
トヲ痛感致シマシテ、私共ハ農民大衆ト共
ニ泌々ト幻滅ノ悲哀ヲ感ジタノデアリマス、
併ナガラ政府ハ之ヲ以テ能事終レリト爲サ
ズ、本法案ハ目的達成ノ第一步デアル、將
來完璧ヲ期セントスルモノデアルトノ言明
ヲ吾々ハ信ジマシテ、是カラ述ベル希望條
件ヲ附シマシテ贊意ヲ表スル者デアリマス
希望條件
本法案ハ、生產費中ノ現金支出ト小作料
ノ保障ヲ對象トシタル農業共濟制ニシテ、
之ヲ以テシテハ窮乏下ノ農村災害ノ救濟
ノ完全ハ期シ難シ、政府ハ我國農村ノ實
情ニ鑑ミ、農家ノ收穫上ノ全損害ヲ保障
シ得ルノ完全ナル收穫保險制ヲ確立シ、
少クトモ農民生活ノ最低ヲ確保セシメ、
戰時下農業生產力ノ擴充ニ資スルノ社會
保險的性質ヲ有スル國營綜合農業保險制
ヲ速ニ樹立スベシ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=121
-
122・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=122
-
123・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=123
-
124・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=124
-
125・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=125
-
126・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
農業保險法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=126
-
127・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ
可決確定致シマシタ(拍手)是ニテ議事日程
ハ議了致シマシタ、明二十三日ハ定刻ヨリ
本會議ヲ開キマス、議事日程ハ公報ヲ以テ
通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時五十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007313242X03219380322&spkNum=127
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