1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
人事調停法案
非訟事件手續法中改正法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 二荒芳徳君
副委員長 男爵 渡邊修二君
侯爵 徳川頼貞君
侯爵 中山輔親君
子爵 曾我祐邦君
子爵 加藤泰通君
子爵 米田國臣君
建部遯吾君
男爵 前田勇君
男爵 山根健男君
山岡萬之助君
藤沼庄平君
岩田宙造君
田中徳兵衞君
大沢徳太郎君
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昭和十四年二月二十一日(火曜日)午前十時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=0
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001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今ヨリ本委
員會ヲ開キマス、先ヅ大臣ヨリ人事調停法
案竝ニ非訟事件手續法中改正法律案、此ノ二
件ニ付キマシテ提案ノ理由ヲ御說明煩ハシ
タク存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=1
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002・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 先ヅ人事調停法
案ノ提案ノ理由ヲ御說明致シタイト存ジ
マス、本案制定ノ趣旨ニ付キマツテハ、本
會議ノ際ニ其ノ〓要ヲ申述ベタノデアリマ
スガ、更ニ之ヲ敷衍シテ申上ゲマスト、調
停ノ本旨トスル所ハ、御承知ノヤウニ當事
者ノ和衷妥協ニ依ッテ紛議ヲ圓滿ニ解決ス
ルニ在ルノデアリマシテ、從來借地借家調
停、小作調停、商事調停及金錢債務臨時調
停ノ四種ノ調停制度ガ實施セラレ、ソレ〓〓
十分ノ成果ヲ擧ゲテ居リマスルガ、我ガ國
古來ノ淳風美俗ト特有ノ家族制度トニ鑑ミ
マシテ、親族間ノ紛爭其ノ他家庭ニ關スル
事件ガ、性質上最モ調停ニ適スルモノデア
ルコトハ申ス迄モナイコトト存ジマス、從ツ
テ人事調停制度ノ確立ニ付キマシテハ、夙
ニ各方面カラ要望セラレテ居タノデアリマ
シテ、大正十四年以來衆議院ニ三囘、貴族
院ニ二囘、其ノ趣旨ノ請願ガアリマシタ、
又議員提出案トシテ同趣旨ノ法案ノ提出ヲ
見タルコトモ四囘ニ及ンデ居ルノデアリマ
ス、司法省ニ於キマシテモ、內閣ニ於ケル
臨時法制審議會ノ決定致シマシタ基本要綱
ニ基キ、民法親族編相續編ノ全般的改正ト
共ニ、之ニ附帶スル家事審判制度ノ制定ニ
付調査〓究ヲ重ネテ居リマシテ、家事審
判制度ヲ立案スル際ニハ、調停制度ヲ之ニ採
リ入レル積リデアッタノデアリマスガ、是ハ未
ダ提案ノ運ビニ至ラナカッタノデアリマス、然
ルニ現下時局ニ於キマシテハ、一層家庭ノ親
和ヲ圖ルコトガ肝要デアリマシテ、是亦重要
ナル銃後支援ノ一ツデアリマス、玆ニ於テ人
事調停制度ノ確立ハ最早遷延ヲ許サヌ緊急
ノ要務ト存ジ、家事審判制度ト切リ離シマシ
テ本案ヲ立案シ、今日玆ニ御審議ヲ願フコ
トニ至ッタ次第デアリマス、本案ノ內容ハ大
體ニ於テ借地借家調停法其ノ他旣存ノ司法
省所管ノ調停法ト同樣デアリマシテ、調停
委員會ヲ開クコトヲ原則トシ、調停成立ノ
場合ニハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ持ツ
コトヲ本則ト致シマスルガ、旣存ノ調停制
度ニ於キマシテハ、形式上ハ辯護士ガ代理
人トナルニハ裁判所ノ許可ヲ要スルコトト
ナッテ居リマスルノヲ改メマシテ、左樣ナ許
可ナクシテ當然ニ辯護士ガ代理人ニナリ得
ルコトト致シ、又調停不成立ノ場合ニ調停
ニ代ル裁判ヲスル、所謂强制調停ハ之ヲ採
用シナカッタノデアリマス、尙詳細ノ點ニ付
キマシテハ、必要ニ應ジマシテ政府委員ヨ
リ十分ニ說明ヲ致サセル積リデアリマス、
何卒十分ニ御審議ヲ御願ヒ致ス次第デアリ
そっく次ニ非訟事件手續法中改正法律案ニ
付テ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、本改正
ノ趣旨ニ付キマシテハ、本會議ノ際ニ簡單
ニ其ノ〓要ヲ申述ベタノデアリマスルガ、
去ル第七十三囘帝國議會ニ於キマシテ御協
贊ヲ經マシタ商法中改正法律、商法中改正
法律施行法及ビ有限會社法ノ三法律ハ、旣
ニ昨年四月中ソレ〓〓公布セラレマシテ、
當局ニ於キマシテハ目下著々ト其ノ施行ノ
準備ヲ進メテ居ル次第デアリマス、御承知
ノ如ク今囘ノ商法改正ハ商法總則編及會社
編ニ付テデアリマスルガ、會社殊ニ株式會
社ノ制度ニ對シマシテハ、根本的ノ改正ガ
加ヘラレマシテ、之ヲ現行法ト比較致シマス
ルト殆ド其ノ面目ヲ一新致シタノデアリマ
ス、而シテ此ノ改正商法ノ一ツノ特色ハ、裁
判所ノ關與スベキ事項ガ著シク增加シタ點
デアリマシテ、其ノ大部分ハ非訟事件トシ
テ處理セラルヽノデアリマスルガ、殊
株式會社ノ整理及特別〓算ノ如キハ全然
新設ノ制度デアリマシテ、是等ノ手續ハ總
テ裁判所ノ監督ノ下ニ行ハレルコトト相成ツ
テ居ルノデアリマス、又有限會社法ハ、商
法ニ規定スル四種類ノ會社ノ外ニ有限會社
ナル新シイ會社形態ヲ認メタモノデアリマ
シテ、之ニ關スル種々ノ手續規定及其ノ登
記ニ關スル規定ヲ新設スル必要ガアルノデ
アリマス、本案ハ右ノ趣旨ヲ以テ、商法ノ
改正及有限會社法ノ制定ニ伴ヒマシテ、非
訟事件手續法中ニ必要缺クベカラザル規定
ヲ新設シ、之ニ關聯シテ舊規定ヲ改メマス
ルト共ニ、過料ノ裁判等ニ付、二三ノ改正
ヲ附加シタモノデアリマシテ、其ノ改正ノ
主ナル點ヲ擧ゲマスルト、一、株式會社ノ
整理ニ關スル手續規定四十餘箇條ヲ新設致
シマシタコト、二、會社ノ〓算ニ關スル手
續規定ヲ整備シ新規ノ條文十數箇條ヲ加ヘ
マシタコト、三、社債及社債權者集會ニ關
スル手續規定約十箇條ヲ新設致シマシタコ
ト、四、其ノ他改正商法ニ於テ新タニ認メ
ラレマシタ非訟事件ニ付其ノ必要ナル手續
ヲ定メマシタコト、五、商業登記ニ付キマシ
テハ有限會社ノ登記ニ關スル規定十箇條ヲ
新設致シマシタ外、會社繼續ノ登記、職務代
行者ノ登記、株式又ハ社債ノ轉換ニ因ル登
記等ニ關スル新シイ規定ヲ加ヘマシタコト、
六、過料事件ノ管轄ニ關スル規定ヲ改メ、
廣ク一般ノ過料事件ニモ當然適用サレルヤ
ウニ致シマシタコト、七、過料ノ裁判ニ付
略式ノ手續ヲ認メマシタコト等デアリマス、
尙詳細ノコトハ御質問ニ應ジマシテ政府委
員カラ御說明申上ゲサセマスルガ、何卒十
分ニ御審査下サレ此ノ法案ノ通過ニ御盡力
アラムコトヲ切望致シマスル次第デアリマス、
以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=2
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003・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 司法大臣ハ衆
議院ノ方デ御說明ヲ致サレルコトニナッテ居
リマスノデ、御退場サレル譯デアリマス、
他ノコトハ政府委員カラ更ニ御說明ヲ願ヒ
マス筈ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=3
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004・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御許ヲ得マシテ、
人事調停法案ノ敷衍的ノ說明ヲ申述ベタイ
ト存ズルノデアリマス、非訟事件手續法中
改正法律案ニ付テモ御審議ヲ御願ヒスルノ
デアリマスルガ、此ノ點ハ甚ダ申譯ガナイ
ノデアリマスルガ、大分準用ノ條文ガアリ
マシテ、此ノ準用ノ條文ノ表ヲ只今印刷中
デアリマシテ、一兩日中ニハ御手許ニ差上
ゲルコトガ出來ルデアラウト存ジテ居リマ
ス、其ノ上デ申述ベタ方ガ或ハ便宜デハナ
イカト存ズルノデアリマス、從ヒマシテ今
日ハ人事調停法案ニ付テ申述ベタイト、斯
樣ニ考ヘル次第デアリマス、只今大臣ヨリ
申述ベマシタ通リ、在來司法省ノ管轄ノ下
デ四種類ノ調停事務ヲ取扱ッテ居ルノデア
リマス、卽チ借地借家ノ調停ハ大正十一年
カラ、小作ノ調停ハ大正十三年カラ、商事
ノ債務ニ付テノ調停ハ大正十五年カラ、金
錢債務ノ臨時調停ハ昭和七年カラ、何レモ
實施ヲ致シテ居ルノデアリマス、サウシテ
此ノ調停ニ最モ適スルノガ、如何ナル種類
ノ事件デアリマスカト申シマスルト、足ノ、
人事事件卽チ家庭ニ關スル事件デアルト云
フコトハ云フ迄モナイコトト存ズルノデア
リマス、デアリマスルカラ、謂ハバ在來行ツ
テ居リマシタ四種ノ調停ハ、來ルベキ人事
ノ調停ノ爲ノ準備デアッタト申シマシテモ大
過ガナイカモ知レナイノデアリマス、左樣
ナ次第デ、人事調停ニ付テ早ク此ノ制度ヲ確
立スベシト云フ要望ハ、諸方面カラ多年起ッ
テ居ッタノデアリマス、議會ニ對シマシテ同
趣旨ノ法案ノ提出ノアッタコトモアリマス、
又議會ニ於テ、同趣旨ノ請願ヲ採擇ニ相成
リマシタ例モ屢〓アルノデアリマス、併シ是等ノ
要望ニ對シマシテ、司法省トシテハ暫ク御
待チヲ願ヒタイト云フコトヲ願ヒ續ケテ來
テ居ッタノデアリマス、ト申シマスルノハ、
司法省內デ民法ノ親族相續、二編ニ付キマ
シテ、根本的ノ改正ヲショウト思ヒマシテ、
之ニ現ニ從事中デアリマス、今日御列席ノ
岩田博士ニモ專ラ其ノ御願ヲシテ居ル
ノデアリマスルガ、此ノ事業ハ比較的
ニ捗リマセヌデシタ、何シロ重大ナ問
題ニ付テノ厖大ナル法典デアリマスルカ
ラ、相當長イ日子ヲ要シタノデアリマス、
併シ一應其ノ成案ヲ得タノデアリマスルケ
レドモ、更ニ再檢討ノ上デ、今少シ改正ノ
點ヲ整理シタ方ガ宜クハナイカト斯樣ニ考
ヘマシテ、今議會ニ提案スル運ビニハ至ラ
ナカッタノデアリマス、此ノ民法ノ親族、相
續二編ノ大改正ハ、御承知ノ通リニ甞テ内閣
ニ設ケラレマシタ臨時法制審議會ノ答申ニ
基クモノデアリマスルガ、此ノ答申ノ中ニ、
道義ニ基キ溫情ヲ以テ家庭ニ關スル事件ノ
解決ヲ圖ル爲ニ家事審判所ヲ設立スベシ、
ト云フコトガアッタノデアリマス、デアリマ
スルカラ、民法ノ親族、相續二編ノ根本的
大改正ト併セテ、是ト共ニ家事審判所ヲ設
立スルト云フ必要ニ迫ラレテ居ッタノデア
リマス、其ノ際ニ家事審判所ニ、矢張リ其
ノ仕事ノ一ツトシテ人事調停ヲ含マセナケ
レバナリマセヌカラ、右申シマシタ民法ノ
親族、相續二編ノ根本的改正、及ビ是ト併
セテ設立スベキ家事審判所、之ニ於テ人事
調停ノ問題ヲ解決シヨウト考ヘテ居ッタノ
デアリマス、卽チソレ迄御待チヲ願ヒタイ
ト云フコトヲ申續ケテ來タノデアリマス、
然ルニ只今モ申述ベマスル通リニ、民法ノ
親族、相續二編ノ根本的改正ハ、多少遲レ
ザルヲ得ナイ關係ニアリマシテ、從ッテ當初
ノ計畫カラ申シマスルト、此ノ人事調停ノ
問題モ自然今一二年遷延セザルヲ得ナイヤ
ウナ狀態ニ立到ッタノデアリマス、然ルニ
申上ゲル迄モナク、玆ニ今囘ノ事變ニ於キ
マシテ、ドウシテモ銃後支援ノ一ツト致シ
マシテ、家庭ノ問題ニ融和ヲ圖ルコトノ必
要ヲ痛感シテ參ッタノデアリマス、デアリマ
スルカラ、此ノ際ニ於テ寧ロ人事調停ダケ
ヲ切リ離シテ、是カラ先ヅ實施スル必要ガ
大イニアルモノト考ヘタノデアリマス、此
ノ程度ニ於キマシテ、委員長ノ御許ヲ得マ
シテ、速記ヲ暫ク省略ヲ致シタイト思ヒマ
スルガ、如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=4
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005・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今政府委員
カラノ御希望ニ依リマシテ、速記ヲ止メタ
イト思ヒマス、速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=5
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006・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=6
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007・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 左樣ナ次第デア
リマシテ、此ノ機會ニ多年ノ懸案デアリマ
スル人事調定ノ制度ヲ確立シタイ、斯樣ニ
考ヘタノデアリマス、御承知ノ通リニ調停
ニ付キマシテハ、在來四種類ノ調停ノ實績
ニ對シマシテ有力ナル非難ガアルノデアリ
マン、是等ノ非難ヲ私共ハ常ニ耳ニ致シテ
居ルノデアリマシテ、是等ノ非難ニ顧ミツ
ツ健全ニ且堅實ニ取扱ツテ行キタイト常ニ
念願ヲ致シテ居ル次第デアリマス、私共ハ
在野法曹ノ方々カラ主ニ此ノ非難ヲ聞クノ
デアリマスルガ、在野法曹ト申シ又在朝法
曹ト申シ、在朝在野ノ相違ハアリマスルケ
レドモ、同ジ司法ヲ維持シ且之ヲ興隆セシ
メテ行カウト云フ同僚デアリマスルカラ、
同僚ノ貴重ナル意見トシテ之ヲ尊重シテ居
ルノデアリマス、此ノ非難ニ顧ミ卽チ之ヲ
他山ノ石ト致シマシテ、十分ニ堅實且健全
ニ取扱ッテ行キタイト思ッテ居リマス、而モ
尙更此ノ人事ノ調停ノ如キ、事極メテ重大
ナ問題デアリマスルカラ、更ニ一層ノ努力
ヲ致シマシテ懸命ノ注意ヲ拂ヒタイト存ジ
テ居リマス、ソコデ此ノ法案ハ僅カニ十數
條ノ先ヅ小ジンマリトシタ小法典デアリマ
ス、他ノ法文ヲ準用致シテ居リマスル等ノ
關係モアリマスルカラ、極メテ簡單デアリ
マスケレドモ、假ニ逐條的ニ一應申述ベテ
見タイト存ズルノデアリマス、第一條ニハ
此ノ人事調停ト云フモノヲ開クコトヲ明カ
ニ致シマシテ、家庭ニ關スル事件ニ付テハ
調停ノ申立ヲ爲スコトガ出來ルト云フ趣旨
ヲ明カニ致シマシタ、此處デ家庭ニ關スル
事件ト云フヤウナ、謂ハバ非法律的ノ文字
ヲ殊更ニ用ヒマシタ、何ガ家庭ニ關スル事
件デアルカト云フコトニ付テハ、之ヲ定義
トシテ說明致シマスコトハ甚ダ困難デアリ
マセウ、併シ之ガ家庭ニ關スル事件デアル
カナイカト云フコトニ付テハ、具體的ノ事
件ニ付テ考ヘテ見マスレバ常識的ニ自ラ分
ルコトデアリマシテ、運用上少シモ支障ガ
ナイコトト存ズルノデアリマス、而シテ此
ノ法案自身ガ旣ニ穩カナ素直ナコトヲ規定
スルモノデアリマスルカラ、成ルベク緩ヤカナ文
字ヲ使ッタ方ガ宜イト考へマシテ、旁〓以チマ
シテ家庭ニ關スル事件ト云フ言葉ヲ用ヒタ
次第デアリマス、其ノ例ト致シマシテ「家族親
族間ノ紛爭」ト云フコトヲ揭ゲテ置キマシタ
ガ、是ハ申上ゲル迄モナク家族親族間ノ
切ノ紛爭ヲ含ムト云フ意味デハナイノデア
リマシテ、家族親族間ノ家庭ニ關スル紛爭
ト云フ趣旨デアリマス、其ノ下ニ「一般ニ
家庭ニ關スル事件」ト締メ括ッテアリマスカ
ラ、其ノ事ハ自ラ明カデアラウト思フノデ
アリマス、尙此ノ家庭ニ關スル事件ニ付キ
マシテ、權利義務ニ關シマスル爭ナラバ卽
チ人事關係デアリマシテ、ソレガ權利義務
ニ關スル爭デアリマスルナラバ、卽チ今日
人事訴訟事件手續法ニ包含セラルルヤウナ
事件デアリマスルナラバ、勿論此ノ中ニ包
含セラレルノデアリマスルケレドモ、此ノ
法案ト致シマシテハ、其ノ外ニ權利義務ニ
關係ノナイ問題デアリマシテモ、家庭ニ關
スル紛爭ナラバ取上ゲテ、之ヲ此ノ調停デ
取扱ト云フ積リデアリマス、固ヨリ權利義
務ニ關スル爭ト權利義務ニ關セザル爭トヲ
較ベマスレバ、權利義務ニ關セザル爭ノ方
ガ其ノ數ハ極メテ少イデアリマセウ、併シ
兎ニ角左樣ナ爭ガアリマスルナラバ、是亦
此ノ調停ノ途ニ於テ圓滿ナル解決ヲ遂ゲシ
メタイト考ヘテ居ルノデアリマス、例ヘテ
申シマスルト、內緣ノ夫婦ガアリマシテ、
マダ籍ガ入ッテ居リマセヌ、此ノ場合ニ事實
上細君ノ方カラ自分ノ籍ヲ入レテ貰ヒタ
イ、斯ウ云フ請求ヲ致シマスルコトハ、今
日權利トシテハ認メラレナイノダラウト思
フノデアリマス、是ガ婚姻豫約不履行ノ
爲損害賠償ノ請求ヲスルト云フコトニナリ
マスト、權利義務ト目スベキデアリマセウ、
併シ唯籍ヲ入レテ貰ヒタイト云フ請求ハ
權利ト謂フコトガ出來ナイデアリマセウケ
レドモ、併シ左樣ナ紛議ハ矢張リ此ノ調停
デ取上ゲテ然ルベキモノダト思フノデアリ
マン、又例ヘテ申シマスルト、御承知ノ婚
姻ナリ養子緣組ナリ又ハ分家等ニ付キマシ
テハ、或ハ父母ナリ、或ハ戶主ナリノ同意
ヲ必要トスル場合ガアリマスルガ、是等ノ
同意ヲ請求スル權利ヲ認メラレテハ居ナイ
ノダラウト思ヒマスルガ、矢張リ斯樣ナ同
意ヲ圓滿ノ間ニ求ムルコトガ此ノ調停ニ依ツ
テ出來ルヤウニ思フノデアリマス、又例へ
テ申シマスルト、形見分ケノ問題デアルト
カ、或ハ死亡者ノ葬式ヲドノ家デ擧ゲルカ
ト云フコトガ紛爭ノ種ニナリマシテ、遺骨
ガ宙宇ニ迷ッテ居ルト云フヤウナ例モアリ
マス、併シ何處ノ家デ葬式ヲ擧ゲルカト云
フコトハ、必ズシモ權利義務ノ問題デハナ
カラウカト思フノデアリマス、又或ハ墓地
ヲ何處ニ決メルカト云フヤウナ問題モアリ
マセウ、或ハ又他家カラ參リマシタ養子ガ、
今ハ戶主ニナリマシテ、サウシテ家附ノ娘
若シクハ家附ノ母親ト仲ガ惡クナッタ、斯ウ
云フ場合、今ハ養子ノ方ガ戶主デアリマス
カラ、自然若シ事實上別レルトナレバ、家
附ノ者ノ方ガ出テ行カナケレバナラナイガ、
其ノ場合位牌ヲドウスルカ、先祖ノ祀ヲド
ウスルカト云フ問題モ起リマス、是モ單純
ナル權利義務ノ爭デナカラウト思フノデア
リマス、デアリマスカラ、比較的其ノ例ハ
乏シイデアリマセウガ、權利義務ニ關ハラザ
ル家庭事件モ矢張リコヽデ調停ヲ致シタイ
ト存ズルノデアリマス、勿論一論ト致シマ
シテ、左樣ナコトハ裁判所內ノ調停デ取扱
フベキモノデナイト云フ御議論モ生ジ得マ
セウケレドモ、私共ハ矢張リ斯樣ナ爭ラモ
公ニ正シク取扱フノガ本旨デアリ、此ノ調
停ノ道既ニ開カレマス以上、斯樣ナモノヲ
コヽニ持ッテ來ルコトハ蓋シ當然デナイカト
存ジタ次第デアリマス、第二條ハ此ノ調停
ノ根本觀念ト申シマスルカ趣旨ト申シマス
ルカ、ソレヲ明カニ致シタノデアリマシテ、
「道義ニ本ヅキ溫情ヲ以テ事件ヲ解決スルコ
トヲ以テ其ノ本旨トス」ト云フコトヲ明カニ
致シマシタ、固ヨリ法律ヲ中心ニシテ、法
律ニ依ッテ解決スベキコトハ當リ前デアリ
マスルケレドモ、併シ道義溫情、之ヲ十分
ニ參酌スベキデアルト云フコトヲ玆ニ明カ
ニシタノデアリマス、斯樣ニ書キマスルト、
他ノ事件ハ道義ニ本ヅカズ溫情ニ依ラザル
モノデアルカト云フ嫌ヒモアリマスケレド
干、他ノ事件ニ比シマシテ、家庭事件ニ付
キマシテハ道義溫情ヲ專ラ、卽チ最モ多ク
參酌加味シナケレバナラヌト云フ其ノ特色ヲ
現ス積リデアリマス、第三條ハ管轄ニ關ス
ル規定デアリマシテ、相手方ノ住所地ヲ管
轄スル區裁判所デアリマスルカ、當事者ノ合
意ニ依ッテ定マル區裁判所デアリマスルカ、
其ノ孰レカニ依ッテ管轄ガ決ルコトニ致シ
マシタ、併シ第四條ニ於キマシテ、此ノ管
轄ニ餘程ノ伸縮性ヲ加ヘマシテ、事柄ガ事
柄デアリマスルカラ、餘リ管轄ト云フヤウ
ナコトニ窮屈ナ四角張ッタ規定ヲ以テ臨ムコ
トハ甚ダ妥當デナイト考ヘマシテ、餘程裕
リヲ茲ニ附ケタノデアリマス、卽チ裁判所
ガ自分ノ管轄ニ屬シナイ事件ニ付テ申立ヲ
受ケマシタナラバ、本來ナラバ、之ヲ其ノ
管轄裁判所ニ移送シナケシバナラナイノデ
アリマスケレドモ、其ノ外ニ事件ノ處理上適
當ト認メマシタナラバ、之ヲ他ノ、管轄區
裁判所デナイ區裁判所へ移送シタリ、又自
ラ採ッテソレヲ取扱ッテモ宜イト云フコトニ
致シマシタ、又管轄區裁判所自身ガ、自己
ノ管轄ニ屬スル事件ヲ受理致シマシテモ、
之ヲ自分ノ方デ取扱ハナイデ、他ノ所デ取
扱ッタ方ガ宜イト思フナラバ、其ノ適當ト思
フ裁判所ニ事件ヲ廻シテ宜イト云フコトニ
致シマシタ、家庭事件デアリマスカラ、實
際ノ管轄ハ東京デアッテ、東京デ取扱フベキ
事件デアルケレドモ、其ノ家族ノ一番根本
的ナ人間ガ橫濱ニ居ッテ、其處ヘ持ッテ行カ
ナケレバ事件ノ處理ガ出來ナイト云フヤウ
ナコトモアルノデアリマス、デアリマスカ
ラ、訴訟法的ニ管轄ニ拘泥スルコトハ宜ク
ナイト考ヘマシテ、餘程自由ナ規定ヲ以テ
臨ンダ次第デアリマス、第五條ハ裁判所ガ
申立ヲ却下スベキ場合デアリマスガ、其ノ
要件ト致シマシテ「淳風ニ副ハズ又ハ權利
ノ濫用其ノ他不當ノ目的ニ出ヅルモノト認
ムルトキ」ト云フコトニ致シマシタ、御承
知ノ通リニ斯樣ナ場合ニハ法律ノ規定ト致
シマシテハ、多ク權利ノ濫用其ノ他不當ノ
目的デアルトカ、義務ノ囘避、其ノ他ノ不
當ノ目的デアルトカ、左樣ナ文字ヲ使ッテ居
ルノデアリマスルガ、此ノ法案ニ於キマシ
テハ、事柄ノ性質上、其ノ外ニ淳風ニ副ハ
ズト云フ一ツノ要件ヲ加ヘタノデアリマス、
多クノ場合ニ於キマシテ權利ノ濫用其ノ他
ノ不當ノ目的ノ場合ハ淳風ニ副ハザルモノデ
アリマセウ、併シ權利濫用其ノ他不當ノ目
的ト申シマスルト、直グ何カ金錢上ノ利害
關係ト云フコトヲ中心トスル問題ノヤウニ
見エマスルカラ、其ノ外ニ德義上ノ觀念ヲ
モ茲ニ附ケ加ヘマシテ、淳風ニ副ハザル場
合ト云フノヲ一ツ揭ゲタ方ガ、斯樣ナ種類
ノ法案ニハ適當デアラウト存ジタノデアリ
さく、第六條ハ當事者、利害關係人ハ自身
出頭スルト云フ本則ヲ明カニシテ、而モ一
方ニ於キマシテ代理人ヲシテ出頭セシメル
コトヲ認メタノデアリマスルガ、御承知ノ
在來四種類ノ調停ニ於キマシテハ、辯護士
ガ代理人トナリマスル場合デモ、裁判所ノ
許可ヲ得ナケレバナラナイト云フコトニ法
律上ノ形式上ニハナッテ居リマシテ、實際ハ
左樣ナ手續ヲ致サナイデ、辯護士ガ代理人デ
アリマスル場合ニハ、委任狀ダケヲ出セバソ
レデ代理人トシテ出頭ガ出來タノデアリマ
スルケレドモ、ソレハ單純ナル取扱上ノ問題
デアリマシテ、法文トシテハ裁判所ノ許可
ヲ得ナケレバナラナイコトニナッテ居リマス、
併シ先程モ申上ゲマシタ通リ我々ガ一緒ニ
司法ヲ維持シテ行カウト云フ同僚デアル所
ノ辯護士ニ對シテ、調停ニ出頭スルノニ裁
判所ノ許可ヲ得ナケレバナラナイト云フヤ
ウナコトハ甚ダ水臭イコトデアリマシテ、
而モ實際ニ適合シナイノデアリマスルカラ
左樣ナコトハ廢メマシテ、辯護士ノ場合ニ
ハ許可ヲ必要トシナイコトニ法文ヲ改メマ
シタ、ソレカラ第七條デアリマスルガ、御
承知ノ調停ノ調停タル特色ハ裁判上ノ和解
ト同一ノ效力ヲ持ツ點ニ存スルノデアリマ
シテ、ソレニ確定力、執行力ト同樣ノ效力
ヲ持タシムルコトガ調停トシテ其ノ特徵ニ
ナッテ居リマス、併シ人事ノ調停ニ於キマシテ
ハ事柄ノ性質上左樣ナ效力ヲ付與スルコ
トノ出來ナイモノガアリマス、例ヘテ申シ
マスルト、判決デナケレバ效力ヲ生ジ
ナイト云フモノモアリマス、御承知ノ
離婚ノ如キハ如何ニ相談デ以テ別レ話ガ出
來マシテモ、雙方カラ屆出ヲシナイ限
リハ離婚ニナラナイノデアリマシテ、
結局一方ガ屆出ヲシナイ場合ニハ裁判上ノ
離婚、判決ニ依ッテ離婚ヲスルノ外ハナイ
ノデアリマス、デアリマスルカラ此ノ調停
ニ依ッテ直チニ離婚ノ效力ヲ生ゼシメルト
云フ譯ニハ參リマセヌ、又其ノ外ニ事件ノ
性質上更ニ斯樣ナ效力ヲ與ヘルコトノ出來
ナイモノモ固ヨリアルノデアリマス、左樣
ナモノデモ調停ハ出來マス、デスカラ話合
ヒハ出來タノデアリマスルガ、之ヲ强制ス
ルコトガ出來ナイノデアリマス、例ヘバ最
初申シマシタ內緣ノ妻ガ自分ノ籍ヲ入レテ
吳レト云フ事件デ話合ヒガ出來マシテ、調
停ガ出來マシテモ、左樣ナ調停ハ直チニ執
行力ヲ持タシメルコトハ出來ナイノデアリ
やく、唯話合ヒガ出來タト云フニ過ギナイ
ノデアリマス、然ラバ何等ノ效力ガナイカ
ト申シマスト、實際ノ效力ハ左樣デナイト
思フノデアリマス、裁判所內ニ開カレマシ
タ此ノ法律上ノ手續タル調停ニ依ッテ、左樣
ナ話合ヒガ出來タト云フナラバ、ソコニ相
當ノ事實上ノ力ハアルダラウト思ヒマス、
唯左樣ナモノハ事件ノ性質上、裁判上ノ和
解ト同一ノ效力ヲ持タシメルコトガ出來ナ
イト云フニ止マルダラウト思フノデアリマ
ス、詰リ人事調停ニ付キマシテハ、是迄ノ
他ノ調停ト其ノ選ヲ異ニ致シマシテ、性質
上裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ持タシメル
コトノ出來ナイモノモアリマスルカラ、第
七條ニ於テ斯樣ナ規定ヲ致シタ次第デアリ
き っ、第八條ハ借地借家調停法ノ條文ヲ大
分準用致シテ居ルノデアリマス、其ノ準用ニ
係リマス條文ヲ簡單ニ申シマスルト、借地
借家調停法ノ第二條ハ調停ノ申立ハ爭議ノ
實情ヲ明カニシナケレバナラナイト云フ趣
旨ノ規定デアリマス、第四條ノ二ハ爭議ニ
付テ訴訟ガ繫屬シテ居リマスルナラバ、受
訴裁判所ハ職權ヲ以テ事件ヲ調停ニ付スル
コトガ出來ルト云フ規定デアリマス、第五
條ハ調停ノ申立ヲ受理シマシタ事件ニ付テ、
訴訟ガ繫屬シテ居リマス時、又ハ事件ヲ調
停ニ付シマシタ時ニハ、調停ノ終了ニ至ル迄
ハ訴訟手續ハ中止サレルト云フ規定デアリ
き っく、御承知ノ在來四種ノ調停ノ中デ金錢
債務ノ臨事調停ニアリマシテハ、此ノ場合
ニハ裁判所ハ事件ヲ中止スルコトガ出來ル
ト云フ趣旨ニナッテ居リマス、他ノ三種ノ調
停ハ當然ノ中止ニナッテ居リマス、此ノ人事
ノ調停ニ付キマシテハ矢張リ當然ノ中止ニ
シタ方ガ妥當デアルト考ヘタノデアリマス、
卽チ一方ニ訴訟ガ進行シツツアルニモ拘ラ
ズ、此ノ調停ヲ試ミルト云フコトハ、到底
調停ノ成立ヲ期待シ得ル所以デアリマセヌ
シ、兩方デ左樣ナ爭ラ續ケテ居ルト云フコ
トガ甚ダ無意味デアルト考ヘタカラデアリ
きく、第六條ハ裁判所ハ期日ヲ定メ、調停
ノ申立人ヤ相手方ヲ呼出サナケレバナラナ
イ、又利害關係人ヲ呼出シテモ宜シイト云
フ規定デアリマス、第七條ハ準用ハ致シマ
セヌデシタ、是ハ先程申シマシタ辯護士代
理ノ關係ニ付キマシテ、此ノ法案デハ在來
ノ調停法規ト異ニスル規定ヲ以テ臨ミマシ
タカラデアリマス、第八條ハ調停手續ハ非
公開デアルト云フコトヲ明カニシタ規定デ
アリマス、第九條ハ費用ヲ要スル行爲ニ付
テノ豫納ニ關スル規定デアリマス、第十條
ハ申立其ノ他ノ申述ニ付テノ手續的規定デ
アリマス、第十一條ハ調停ニ付テハ裁判所
書記ガ調書ヲ作ラナケレバナラナイト云フ
規定デアリマス、第十二條ハ準用カラ省キ
マシタ、是ハ調停ノ效力ノ規定デアリマシ
テ、本案ノ第七條ニ別ニ規定ヲ致シタカラ
デアリマス、第十三條ハ調停前必要ト認ム
ル處分、卽チ所謂假ノ措置ニ關スル規定デ
アリマス、第十四條ハ調停委員會ニ關スル
規定デアリマシテ、裁判所ハ調停委員會ヲ
開イテモ宜シイト云フ規定デアリマス、卽
チ事件ノ大小難易ニ依リマシテ、裁判所自
身ガ直チニ調停ヲ致シマスルコトモアリマ
スルシ、調停委員會ヲ開クコトモアリマス
ルシ、ソレハ裁判所ノ自由ニナッテ居リマ
ス、併シ當事者雙方ノ申立ガアリマスルナ
ラバ、裁判所ハドウシテモ調停委員會ヲ開
カナケレバナラナイノデアリマス、第十五
條ハ調停委員會ハ調停主任一人、調停委員
二人以上ヲ以テ組織スルト云フ規定デアリ
マス、第十六條ハ其ノ中ノ第一項ダケヲ準用
シテ置キマシタ、ソレハ調停主任ハ判事ノ
中カラ每年豫メ地方裁判所長ガ指定スルト
云フ規定デアリマス、此ノ第二項ハ調停委員
ノ資格等ニ關スル規定デアリマシテ、本案ハ
別ニ規定ヲ致シマシタカラ特ニ準用ヲ避ケ
タノデアリマス、第十七條モ準用ヲ致シマセ
ヌデシタ、是ハ調停ノ補助ニ關スル規定デ
アリマシテ、人事調停ニ調停ノ補助ト云フ
コトヲ認メルノモ如何カト存ジマシタシ、
又在來ノ調停ニ於キマシテモ、此ノ補助ト
云フモノハ餘リ活躍ヲ致シテ居リマセヌ、
我々ノ運用上ノ經驗カラ致シマシテ、餘リ
實益ガナイモノト認メマシテ之ヲ省イタノ
デアリマス、第十八條ハ調停委員ニ對スル
旅費、日當、止宿料ノ問題デアリマス、第
十九條ハ調停委員會ニ於ケル調停手續ハ、
調停主任ガ指揮スルト云フ規定デアリマス、
第二十條ハ調停委員會ノ決議ノ方法ニ關ス
ル規定デアリマス、第二十一條ハ調停委員
會ノ評議ハ祕密デアルト云フ規定デアリマ
ス、第二十二條ハ調停委員會ヲ開キマシタ
場合ニ、或種ノ裁判所ノ權限ハ調停委員會
ニモ屬スルト云フ規定デアリマシテ、呼出
其ノ他ノ手續ニ關スル問題デアリマス、第
二十三條ハ調停委員會ハ當事者及利害關係
人ノ陳述ヲ聽キ必要ト認メル場合ニハ證據
調モ出來ルト云フ規定デアリマシテ、其ノ
他證據調ニ關スル手續ノ規定デアリマス、
第二十四條ハ特ニ準用ヲ差控ヘマシタ、御
承知ノ此ノ第二十四條ハ調停ガ出來マセヌ
場合ニ、調停委員會ガ自己ノ適當ト認ムル案
ヲ定メ、サウシテ之ヲ當事者ニ示シテ其ノ
採否ヲ決セシメルト云フ規定デアリマスル
ガ、是ハ人事調停ニハ適セザルモノト認メ
マシテ之ヲ省イタノデアリマス、尙御承知
ノ金錢債務臨時調停法ノ第七條ニ依リマス
ルト、調停成ラザル場合ニハ裁判所ガ調停
ニ代ル裁判ガ出來ルヤウナ規定ニナッテ居
リマス、又昨年御協賛ヲ經マシタ農地調整
法ノ第百十二條デ、小作ニ付テモ左樣ナ規定
ガ出來タノデアリマス、之ヲ俗ニ强制調停
ト申シテ居リマスルガ、强制調停ハ實際ニ
於テ其ノ取扱數ガ極メテ少イノデアリマス
ルシ、而モ人事調停ニハ甚ダ適當デナイト
認メ、是ハ採用シナイコトニシタノデアリ
マン、ソレカラ第二十五條モ殊更ニ準用致
シマセヌデシタガ、是ハ同ジ趣旨ノコトヲ
本案ニ規定ヲ致シタカラデアリマス、第二
十六條デアリマスルガ、調停ガ成立致シマ
シタ時ニハ、裁判所ハ調停ノ認否ニ付テ決
定ヲスル、調停認否ノ決定手續ニ關スル規
定デアリマス、第二十七條ハ裁判所ハ調停
ガ著シク公正ナラズト認ムル場合ノ外ハ、
調停ノ認可ヲシナケレバナラヌト云フ規定
デアリマス、第二十八條ハ調停委員會ヲ開
キマシタ場合、其ノ調停ガ認可決定ヲ得マ
シタナラバ、其ノ時ハ裁判上ノ和解ト同一
ノ效力ヲ有ツト云フ規定デアリマス、之ヲ
準用致シマシタガ、本案ニハ第七條ノ但書
ノ規定ガアリマスルカラ、矢張リ性質上許
サレザルモノニ付テハ其ノ效力ハ與ヘラレ
ナイコトニナルノハ固ヨリノ次第デアリマ
ス、第二十九條ハ調停ノ申立ニハ手數料ヲ
納付シナケレバナラヌト云フ規定デアリマ
ス、人事調停ニ付テモ矢張リ手數料ヲ徵收
スル積リデアリマス、第三十條ハ記錄ノ閱
覽、謄寫等ニ關スル手續規定デアリマス、第
三十一條ハ旅費、日當、止宿費、ソレカラ
先程申シマシタ手數料、是等ノ額ハ勅令ヲ
以テ定ム、斯ウ云フ趣旨ノ規定デアリマス、
此ノ勅令案ハマダ出來テ居リマセヌシ、關
係官廳ト十分ノ協議ヲマダ致シテ居リマセ
ヌガ、私共ノ今日ノ假ノ腹案ヲ申シマスル
ト、調停委員ノ旅費日當等ハ、在來ノ調停
ト同ジ程度ニ致シタイト存ズルノデアリマ
ス、卽チ特ニ此ノ人事調停ニ付テ之ヲ上ゲ
タリ下ゲタリスル意思ハ今日ノ所、持ッテ居
ナイノデアリマス、又手數料ハ一件幾ラト
云フコトニ致シマシテ、事件ノ大小難易ニ
因ッテ其ノ額ヲ異ニスルト云フ積リハナイ
ノデアリマス、一件五十錢カ一件一圓、サ
ウ云フ見當デ一定ヲ致シタイト存ジテ居リ
マス、第三十二條ハ呼出ヲ受ケタ當事者ガ、
正當ノ事由ナク不出頭ニナリマシタ場合ハ
過料ニ處スルコトガ出來ルト云フ規定デア
リマス、是デ借地借家調停法ノ殆ド全部ヲ
準用シタ關係ニ相成ルノデアリマス、次ニ
第九條デアリマス、調停委員ハ德望アル者
其ノ他適當ト認メラルヽ者ニ就キ每年豫メ
地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者
ノ合意ニ依リ選定セラレタ者カラ、各事件
ニ付テ調停主任ガ之ヲ指定スルト云フコト
ニ致シタノデアリマス、此ノ調停委員ノ資
格ニ付キマシテハ餘程考ヘナケレバナラ
ヌノデアリマス、單純ニ適當ト認メル者
トサウ書イテシマヘバソレデ盡ルノデア
リマスケレドモ、斯樣ナ性質ノ問題デアリ
マスルカラ、特ニ德望アル者ト云フコトヲ
例示的ニ揭ゲタノデアリマス、サウシテ此
ノ調停委員ニ付キマシテハ、在來四種ノ調
停ノ實績ニ對シマシテ種々ノ非難ガアリマ
ス、其ノ重大ナル一ツガ、此ノ調停委員ノ
實際上ノ資格ニ關係シテ居ルノデアリマシ
テ、調停委員中ニハ不適當ナ者ガアルト云
フ聲ヲ屢〓聞クノデアリマス、在來四種類ノ
調停委員ノ數ガ、延ベニシテ計算ヲ致シマ
スルト四萬一千人位ニナルノデアリマス、
私共ハ實際ニ於テ多過ギタト存ジテ居リマ
ス、デアリマスルカラ是ハ今日更ニ嚴選ヲ
シテ行カネバナラヌト考ヘテ居リマスガ、
人事調停ニ關スル限リニ於キマシテハ更ニ
十分ニ嚴選ヲシマシテ、最モ適任ノ者ヲ之ニ
迎ヘルト云フ趣旨デ進ンデ行キタイト存ジ
テ居リマス、卽チ辯護士ノ方々、軍部ノ長
考、〓育界ノ德望者、サウ云フ方ニ御願ヲ
致シタイト存ジテ居リマス、第十條ハ調停
委員會ヲ開キマシタ場合ノ調停委員會ノ權
限デアリマシテ、卽チ代理ノ許可ニ關スル
問題デアリマス、第十一條ハ淳風ニ副ハズ
又ハ權利ノ濫用其ノ他不當ノ目的ニ出デタ
モノト調停委員會デ認メマスルナラバ、調
停ヲシテハイケナイト云フ規定デアリマス、
卽チ最初ニ其ノ事由ガ分リマスレバ、裁判所
ハ第五條ニ依ッテ申立ノ却下ヲ致シマスガ、
最初ハ分ラナイ、サウシテ調停委員會デ能
ク調ベテ見テ、矢張リサウ云フ事由ガアッタ
場合ニ、最早却下ハ出來マセヌカラ、ソコ
デ調停ヲ止メルト云フ斯ウ云フ手續デアリ
マシテ、是ハ矢張リ借地借家ノ調停モ同ジ
ヤウナ趣旨ニナッテ居ルノデアリマス、第十
二條ハ罰則ノ規定デアリマスガ、此ノ第一
項ハ調停委員又ハ調停委員タリシ者ガ故ナ
ク評議ノ〓末又ハ調停主任、調停委員ノ意
見及ビ其ノ意見ノ多少ノ數ヲ漏シマシタ場
合ノ罰則ノ規定デアリマス、此ノ種ノ罰則
ハ外ノ調停ニモ附イテ居ルモノモアルノデ
アリマス、デアリマスカラ、此ノ第一項ハ
別ニ新シイ罰則デハナイノデアリマス、然
ルニ第二項ハ調停ニ於キマシテハ全ク新シ
イ規定デアリマス、卽チ調停委員又ハ調停
委員タリシ者故ナク其ノ職務上取扱ヒタル
コトニ付テ知リ得タル人ノ祕密ヲ漏シマシ
タ場合ノ罰則デアリマス、申上ゲル迄モナ
ク家庭事件ニ付テノ調停デアリマスカラ、
勿論事件ノ核心ニ立入ッテ詳細懇切ニ調ベ
ナケレバイケナイノデアリマス、其ノ際ニ、
家ニ依リマシテハソレ/〓祕密ヲ持ッテ居
ル場合ガアルノデアリマス、ソレヲ漏ラサ
レマシテハ、漏ラサレマシタ家ノ人々ノ迷
惑ハ固ヨリデアリマスシ、サウ云フコトガ
アリマスナラバ、延イテ以テ調停ノ眞價信
用ニモ影響スルモノデアリマスカラ、ソレ
ヲ未然ニ防ギマスルガ爲ニ罰則ヲ設ケテア
ルノデアリマシテ、先程申上ゲマスル通リ
ニ、調停ニ付テハ全ク新シイ罰則デアリマ
ス、サウシテ此ノ罰則ハ親〓罪ト云フコト
ニ致シマシタ、是デ〓要ノ說明ヲ申述ベタ
ノデアリマスルガ、附則ノ施行期日デアリ
やく、是ハ豫算ノ關係モアリマシテ、若シ
幸ニ御協贊ヲ得マシテ公布ニ相成リマスル
ナラバ、今年ノ七月ノ初メアタリカラ實施
ヲシタイト存ジテ居リマス、甚ダ蕪雜ナ御
話デアリマシテ誠ニ恐縮ニ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=7
-
008・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今政府委員
カラノ御說明ニ對シマシテ、御質疑ガゴザ
イマスレバ御許シヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=8
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009・岩田宙造
○岩田宙造君 一ツ御尋ネシタイノデアリ
マスガ、第一條ノ此ノ調停ニ係ル事柄ヲ決
メテアル事項デアリマスガ、只今ノ御說明ニ
依リマスルト、家族親族間ノ紛爭デアッテ
千、紛爭ノ種類ニ依ッテハ調停ニ係ラナイ
モノガアルノデアッテ、其ノ家族親族間ノ紛
爭モ、家庭ニ關スル紛爭ト、家庭ニ關セザ
ル紛爭トニ分ケテ、家庭ニ關スル紛爭ダケ
ガ調停ニ係リ得ルノダト斯ウ云フ御說明デ
アッタヤウデアリマス、是ハ立法的ニサウ云
フ風ニ區別スルノガ宜イカドウカハ姑ク別
ニシテ、第一ニサウ云フ趣旨デアリマスト
斯ウ云フ規定デ宜イノデアリマセウカ、チ
ヨット疑問ガ起リハシナイカ、普通ハ私共多
クノ場合ニ、之ニ類似シタ規定ノ解釋トシ
テハ、斯ウ云フ形ニ書イテアリマスルト云
フト、最初ニ擧ゲテアル家族親族間ノ紛爭
ト云フモノハ、モウ當然家庭ニ關スル事件
ノ一ツノ例トシテ擧ゲテアルノデアツテ、
モウ是ハ當然家庭ニ關スル事件ト云フヤウ
ナ中ニ入ルノデアル、斯ウ云フヤウナ風ニ
多クノ場合解釋シテ居ルヤウニ思フノデア
リマス、只今御說明ノヤウニ、斯ウ云フ風
ニ書イテ置イテモ、尙家族親族間ノ紛爭ガ、
當然家庭ニ關スル事件ト云フ中ニ入ラナイ
ノデアッテ、此ノ中カラ又家庭ニ關スル事件
ダケヲ拾ヒ上ゲル意味ダ、斯ウ云フ風ニ解
釋サレル他ノ立法例ガアリマセウカ、ソレ
ヲチヨット伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=9
-
010・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 第一條ニ付キマ
シテハ、只今御示ノ通リニ我々モ思ッテ居
ルノデアリマシテ、卽チ家族親族間ノ紛爭
デアリマシテモ、家庭事件ニ關セザルモノ
ハ之ニ入ラナイ積リデアリマス、デアリマ
スルカラ、假令親子兄弟ノ爭デアリマシテ
モ、單純ナル賣リ買ヒ、貸シ借リ等ノ問題
ハ之ニ入ラナイ積リデアリマス、然ラバサ
ウ見エルカドウカト云フ御尋デアリマスル
ガ、私共ノ不斷考ヘテ居リマスル所ニ依リ
マスレバ、一般ニ家庭ニ關スル事件ト云フ
コトデ締メ括リガシテアリマスルカラ、要
スルニ問題ハ家庭ニ關スル事件デアリマシ
テ、其ノ家庭ニ關スル事件ノ例示トシテ家
族親族間ノ紛爭ト云フモノヲ擧ゲタニ過ギ
ナイノデアリマスルカラ、家庭ニ關スル事
件ト云フコトガ骨子ニナリマシテ、其ノ以
外ニハ出ナイモノト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、斯ウ云フ書キ方モアルカト云フ御尋デ
アリマスルガ、次會迄ニ例ヲ持ッテ參リマス
ルガ、私ハ寧ロ斯ウ云フ書キ方ノ方ガ多イ
ノデハナイカト存ジテ居リマス、ノミナラ
ズ書キ方ノ前例ノ問題ハ姑ク措キマシテモ、
人事調停法全體ノ趣旨カラ申シマシテモ、
家庭ニ關セザル事件ハ勿論入ラナイ、斯ウ
云フ解釋ハ當然デアリマセウ、運用ニ付キ
マシテハ左程支障ガナイモノト考ヘテ居ル
ノデアリマス、卽チ家庭ニ關スル事件ト云〓
フコトダケデ實ハ宜イノデアリマシテ、第
一條家庭ニ關スル事件ニ付テハ云々ト規定
シテモ宜カッタノデアリマスルケレドモ、ソ
レデハ法文トシ餘リ淋シイモノデアリマス
カラ、マア申上ゲマスレバ言葉ノ綾ヲ付ケ
ルガ爲ニ家族親族間ノ紛爭ト云フコトヲ加
ヘタニ過ギナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=10
-
011・岩田宙造
○岩田宙造君 只今ノ御趣旨ハ能ク分リマ
シタガ、念ノ爲ニ御面倒デアリマスガ、外
ノ例ヲ一ツ調ベテ戴キタイト思フノデス
ガ、私共ノ從來ノ考ハ、斯ウ云フ風ニ書イ
テアリマスルト、家族親族間ノ紛爭ハ卽チ
家庭ニ關スル事件デアルガ、其ノ外ニモ尙
家庭ニ關スル事件ガアレバ此處ニ持ッテ來
ラレルノダ、最初ニ擧ゲテアルモノハ卽チ
家庭ニ關スル事件ノ例トシテデアリマスカ
ラ、斯ウ云フ風ニ擧ゲマス場合ニハ、モウ
誰ガ見テモソレハ上ニ書イテアルコトダケ
ハ家庭ニ關スル事件トシテ疑ナイ場合ト、
ソレカラ多少疑ガアッテ、擧ゲテ置カヌト云
フトソレガ家庭ニ關スル事件ノ中ニ入ルカ
入ラヌカ分ラヌヤウナ時ニ、入レテ貰ハナ
ケレバ困ルト云フヤウナ時ニ數ヘ擧ゲテ置
〃、トサウシテ置ケバ疑ナク家庭ニ關スル
事件トシテ、モウ解釋ノ餘地ガナクナッテ議
論ガナクナリマスカラ、議論ヲナクスル爲
ニ上ニ書キ上ゲテ置ク、サウ云フ趣旨ダト
私共不斷カラ考ヘテ居ルノデアリマス、デ
アリマスカラ若シ先キデ又是ガ實施サレタ
後ニ、議論ガ起ッテモ困ルト思ヒマスカラ、
念ノ爲ニ御調ベ願ヒタイト思ヒマス、ソシ
カラ其ノ次ニ今民事局長ガ御說明ニナリマ
シタ通リニ、假ニ解釋ハ問題ハナイト致シ
マシテモ、其ノ方ガ善イカ惡イカト云フコ
トハ矢張リ考ヘル餘地ガアルノデハナイカ
ト云フノハ、家族親族間ノ紛爭デゴザイマ
スルト、紛爭ノ種類如何ニ拘ラズ、親子デ
アリマセウガ、兄弟デアリマセウガ、家ノ
中デモウ既ニ紛議ヲ起シタ、其ノ紛議ハ先
刻例示サレマシタヤウナ、所謂人事訴訟事
件ニ關係ノアルヤウナ事柄デナクテモ、金
錢上ノ事柄デアリマシテモ、モウ親子ガ金
錢上ノコトデ爭フ、親族ガ爭フト云フコト
デアリマスルト、其ノ紛爭ノ種類如何ニ拘
ラズ、家庭平和ニソレハ當然及ブノデアリ
マスカラ、種類如何ニ拘ラズ、此ノ人事調
停ト云フモノハ家庭竝ニ親族間ノ和親ヲ目
的トスルノデアリマスカラ、例ヘバ爭ハ金
錢ノ爭デアラウガ何デアラウガ、苟モ親子、
兄弟ノ間デ爭ヲ生ジタ時ニ、裁判所ニ持ッテ
行カズニ此ノ調停デヤッテ行カウ、斯ウ云フ
コトデナイトドウモ目的ガ徹底シナイノヂ
ヤナイカ、是ハ金錢上ノ爭ダカラ、親子ノ爭
デアルケレドモ調停デハイカヌ、必ズ訴訟
ヲシナケレバナラヌト言ヒマシテモ、實ハ
親子ノ間ノ爭デアレバ、金錢デアッテモ直グ
家庭ノ平和ニ影響スルノデアリマスカラ、
其ノ意味デ矢張リ家族親族ノ爭ナラバ、
何デモ此處へ持ッテ來ル、ソレカラ家族親族
間デナイノナラバ、ソレハ爭ノ種類ニ依ッテ
家庭ノ平和ニ影響スルモノト、シナイモノ
トアリマスカラ、ソレハ家庭ノ平和ニ影響
ノアルモノニ限ッテ此處ニ持ッテ來ル、併シ
家族親族ノ關係ナラバ、何デモ家庭ノ平和
ニ關係アルノダカラ持ッテ來ルガ、外ノモノ
ハ、爭ノ種類ニ依ッテ家庭ニ影響ヲ及スモノ
ダケヲ此處へ持ッテ來ル、斯ウ云フ建前ノ方
ガドウモ此ノ趣旨ガ徹底スルノデハナイ
カ、又此ノ解釋モ私ハ此ノ儘デ解釋出來ル
ヤウニ思フノデアリマスガ、其ノ今ノ範圍
ヲ廣クスルカドウカト云フ點ニ於テハ如何
ニ御考ニナリマスカ、念ノ爲ニ一應伺ッテ置
キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=11
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012・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今御話ノ先ヅ
形式上ノ點デアリマスルガ、他ノ例ハ後ニ調
ベテ固ヨリ差上ゲル積リデアリマス、現行商
法ノ第八條デアリマスガ、實ハ御承知ノ通
リ此ノ第八條自身ノ解釋ニモ種々アリマス
ガ、「戶戶ニ就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ賣買スル
者其ノ他小商人云々」ト云フ規定デアリマ
ス、是ハ先ヅ大體ノ解釋ニ依リマスルト、
卽チ私共定說ト解シテ居リマスル解釋ニ依
リマスルト、此ノ第八條ハ、要スルニ小商
人ハ云々ト云フ規定ガアリマシテ、戶戶ニ
就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ賣買スル者ト云フ
ノハ、例示ニ過ギナイノデアリマシテ、然ラ
バ戶戶ニ就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ賣買スル
者ニハ、總テ商業登記等ノ規定ヲ適用シナ
イノデアルカト云フト、サウデナシニ、〓
戶ニ就キ又ハ道路ニ於テ物ヲ賣買スル者デ
モ、小商人タル者ニ限ル、卽チ戶戶ニ就キ
又ハ道路ニ於テ物ヲ賣買シマシテモ、大規
模ノモノ、卽チ勅令ニ定ムル資本金五百圓
以上ノモノデアリマスナラバ、此ノ第八條
ノ適用ヲ受ケナイノデアリマス、要スルニ
小商人ト云フコトデ締メ括ッテ居リマスカ
ラ、小商人ノ上ニ書イテアリマス例示的ノ
モノハ、要スルニ小商人ノ範圍外ノモノヲ
包含セシメナイコトニ解釋ヲシテ居リマス、
若シ此ノ解釋ガ正シイナラバ、第一條ノ形
式ニ付キマシテ私共ノ執リマシタ考ハ當然
デアラウト思フノデアリマス、次ニ第一條
ノ實質ニ付テノ御意見デアリマスルガ、誠
ニ御尤ニ存ズルノデアリマス、實ハ私共立
案ノ際ニモ考ヘタノデアリマシテ、單純ナ
金錢ノ問題デアリマシテモ、骨肉ノ間ナラ
バ、此ノ調停デ圓滿ニ解決ヲセシムル方ガ
宜クハナイカ、斯ウ云フ說モ確カニアッタノ
デアリマス、又衆議院ノ委員會ニ於キマシ
テモ、修正ノ意見ハアリマセヌデシタガ質
問應答ノ中ニ、擴ゲタ方ガ宜クハナイカト
云フヤウナ意見ヲ發表セラレタ方モアッタ
ノデアリマス、誠ニ御尤ナル御意見ト思フノ
デアリマスルケレドモ、先ヅ此ノ人事調停法
ニ付キマシテハ、人事關係ト云フコトヲ骨
子ニシテ、先ヅ暫クハソレヲ擴ゲナイデ、
家庭事件中心ト云フ特質ヲ守リツツ實施ヲ
シテ行キタイ、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、
サウシテ實施ノ上デ、擴ゲル方ガ宜イト云
フ見極メガツキマシクナラバ、後ニ更ニ改
正シテモ宜イノデアリマスケレドモ、新シ
イ此ノ制度ヲ樹立致シマス際デアルカラ、
本常ニ家庭事件中心ト云フモノヲ守ッテ進
ンデ行キタイト、斯樣ニ考ヘタ次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=12
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013・岩田宙造
○岩田宙造君 今一ツ念ノ爲ニ伺ッテ置キ
タイノデアリマスガ、若シ金錢貸借ト云フ
ヤウナ事件ハ、家族ノ間デモ、此ノ調停ニ
掛ラナイノダト致シマスルト、同ジ金錢貸
借デアリマシテモ、例へバ子供ノ學資ヲ戶
主ナリ親ナリガ出シテヤッタト、偶ニ新聞ニ
モ出ルヤウナ事件モアルヤウデアリマス
ガ、其ノ學資金ニ付テ爭ヲ生ジタト云フヤ
ウナ場合ニ、單純ナ金ヲ出シテヤッタノデア
レバ、此ノ方ニハ入ラナイケレドモ、親ト
シテ子供ヲ〓育シテヤル、家族的ノ義務ノ關
係カラ出シテヤッタ學資デアルト云フヤウ
ナコトニナリマスト云フト、金ノ問題デアッ
テモ此ノ調停ニ掛リ得ルト云フコトニナル
ノデアリマセウカ、若シサウダト云フト、
餘程實際問題デヤヤコシイヤウナ事ガ起リ
ハシナイカト思ヒマスカラチヨット伺ッテ置
キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=13
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014・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今御示ノ例ハ
確カニ此ノ第一條ニ包含セラレルモノト解
釋ヲ致シテ居リマス、然ラバ同ジ樣ナ事件
デ、此ノ第一條ニ入ルモノト入ラナイモノト
ノ區別ガ甚ダ瞹昧デナイカト云フ御意見デ
アリマシテ、確カニ左樣ナモノモ生ズルダ
ラウト思フノデアリマス、併シ其ノ事件ニ
付テ、家庭的色彩ガ中心ニナッテ居ルカ否
ヤト云フコトハ、マア大抵事件ヲ見極メマ
スルト分リマセウカラ、如何ナルモノガ之
ニ入リ、如何ナルモノガ入ラナイカト云フ
コトヲ、豫メ分ケルト云フコトハ困難デア
リマセウケレドモ、事件ヲ受ケマシタ場合
ニ入ルカ入ラナイカト云フ區別ハ、左程ム
ヅカシクナク出來ハシナ.イカト只今デハ考
ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=14
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015・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ今、宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=15
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016・山岡萬之助
○山岡萬之助君 私ハ參考ノ爲ニ······、今
迄長イ經驗ヲ調停ニ付テ司法省ハ御持チニ
ナッテ居ル譯デアリマスガ、今後調停制度ヲ
一層整備シマシテ、所謂訴訟ノ以外ニ於テ
調停制度ト云フモノヲ確立スル必要ガアル
ト思フノデアリマス、御說明ニナリマシタ
ヤウニ、今日迄四種ノ調停ト云フモノガア
リマス、固ヨリソレ〓〓多少ノ特色ハアリ
マスルケレドモ、根本ハ同ジモノデアラウ
ト思ヒマス、又此ノ人事調停法ニ、借地借
家調停法ノ根本ト中シテ宜イカ大體ノ所ヲ
準用サレテ居ルノデアリマス、其ノ準用ト
云フコトノ善イ惡イト云フコトハ多少私ハ
問題ダト思ヒマスガ、借地借家ト云フヤウ
ナ物的關係ト人事ハ違フノデアリマス、人
事ト云フモノハドウシテモ精神的デナケレ
バナラヌト思ヒマス、ソレデ違ヒマスルケ
レドモ兎モ角モ政府ハソレヲ準用シテ御提
案ニナツタヤウデアリマスガ、調停ト云フ
モノニハズット一脈相通ズルモノガアルト
思フノデアリマス、ソコデ訴訟以外ニ、調
停ト云フ組織體ノモノヲ今後作ル必要ガア
ルト思ヒマス、長イ御經驗デアリマスルカ
ラ、ソレ等ノ基礎トナッテ居ル諸外國ノ關
係等ニ付テ御調ベノコトモアルデアラウ
ト思ヒマスカラ、別ニ一々斯ウ云フ制度デ
細カイ條文ガドウデアルト云フコトハ言ヒ
マセヌケレドモ、大體ドノ國ハドウ云フ風
ナコトヲヤッテ居ルト云フダケノ御調ヲ願ッ
テ、此ノ委員會ニ御提出ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、今日ハ人事調停法ト云フモ
ノヲ、今囘玆ニ議題ニサレテ居ルノデアリ
マスルガ、此ノ調停法ヲ審議スルニ當ッテ、
其ノ調停ノ根本義ヲ少シク究メテ置クコト
ガ私ハ適當デアラウト思ヒマスカラ、其ノ
資料トシテ御提出ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=16
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017・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 資料ノ提出ニ付
テノ御希望デアリマスルガ、確カニ諒承致
シマシタ、誠ニ貧弱ナ調査デアリマシテ申
譯ガナイノデアリマスガ、アリマスモノヲ
早速次會迄ニ提出ヲ致シタイト存ジテ居リ
マス、尙在來四種ノ調停ガアリマシテ、今
度幸ニ此ノ法案ガ御協賛ヲ得ルコトニナリ
マスレバ五種ニナルノデアリマスガ、斯樣
ニ調停ガ謂ハバ林立シテ居ルヤウナ恰好ハ
實ハ面白クナイノデアリマシテ、之ヲ統一
致シマスルコトハ極メテ必要ナコトデアリ
そく、又結構ナコトデアリマス、唯是迄必
要ニ應ジテ一ツ〓〓進ンデ來タモノデアリ
マスカラ、卽チ其ノ日〓〓ノ要求ニ追ハレ
テ出テ來タモノデアリマシテ、今日ハ斯樣
ナ恰好ニナッテ居ルノデアリマシテ、將來何
トカ之ヲ統一的ニ考ヘル必要ハ大イニアラ
ウト思フノデアリマス、唯調停ニ付キマシ
テモ御承知ノ通リニ相當ノ非難ガアリマス
カラ、必要以上ニ擴張シマスルコトハ是ハ
絕對ニ差控ヘタイト思ッテ居リマス、併シ必
要ナ限度ニ於テ統一調和ヲスル必要ハ十分
ニ認メテ居ル次第デアリマス、尙昨日本會
議ノ席上デ岩田博士カラモ言及サレマシタ
民事訴訟法ヲ改正シテ裁判上ノ和解ヲ擴張
スベシト云フ御意見デアリマシタ、極メテ
御尤ニ存ズルノデアリマシテ、是等モ十分
ニ調査〓究致シマシテ、只今山岡博士ノ御
話ノ調停制度ノ統一ト云フ問題ニ關聯シテ
モ矢張リ考ヘナケレバナラヌト存ジテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=17
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018・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 如何デゴザイ
マセウカ、別ニ御質問ハゴザイマセヌ
カ.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=18
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019・岩田宙造
○岩田宙造君 チヨット伺ッテ置キタイノデ
アリマスガ、マダ此ノ質問ハ明日モモウ少
シ御續ケニナルノデアリマセウカ、モウ餘
リナケレバ今日中ニデモ御打切リニナル御
考デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=19
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020・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 今ノ考デハ、
色々マダ法律案ニ付テ御審議モアラウト思
ヒマスカラ、尙一囘御質疑ヲ御許シ致シマ
ス、或ハ其ノ御質疑後ニ直チニ又審議ニ入
ルカモ知レマセヌ、今日限リト云フ考ハ委
員長ハ有ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=20
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021・岩田宙造
○岩田宙造君 ソレデハ私ハ今直グ御尋ヲ
シナクトモ宜シウゴザイマス、後日ニ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=21
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022・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) ソレデハ皆サ
ンニ御諸リ致シマスガ·······今日ハ此ノ程度
ニ止メマシテ散會致シマス
午前十一時二十七分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵渡邊修二君
委員
侯爵德川賴貞君
侯爵中山輔親君
子爵會我祐邦君
子爵加藤泰通君
建部遯吾君
男爵前田勇君
男爵山根健男君
山岡萬之助君
岩田宙造君
田中德兵衞君
大澤德太郞君
國務大臣
司法大臣兼遞信大臣鹽野季彥君
政府委員
司法省民事局長大森洪太君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007401860X00119390221&spkNum=22
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