1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十三日(月曜日)午後一時四十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=0
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001・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) ソレデハ是カ
ラ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=1
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002・大森佳一
○男爵大森佳一君 大臣ハ見エマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=2
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003・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 大臣ハ向フノ
本會議ノ御都合デ合間ニ、或ハ濟ンダ所デ
コチラニオ出ニナッテ戴クコトニ致シマシ
タカラ、御質問戴イテ居ッテ、若シ大臣ガ見
エマシタラ其ノ時ニ繰替ヘルコトニシタイ
ト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=3
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004・大森佳一
○男爵大森佳一君 ソレデハ私先ニ失禮致
シマスガ、前會ノ時ニ義務制度ヲ布クト云
フ問題ニ付キマシテ政府委員カラ御說明ヲ
戴キマシタ、ソレニ付キマシテ簡單ニ伺ッテ
置キタイノデアリマス、總テ〓育制度ニ關
スル法規ハ、多クハ勅令ヲ以テ定メラレテ
居ルノガ大多數デアリマス、普通ノ學校ト
致シマシテハ·····、獨リ唯地方學事通則ガ
法律デ規定サレテ居ルト云フダケデアリマ
シテ、小學校ト云ヒ、中學校ト云ヒ、各種
ノ學校ト云ヒ、實業學校ト云ヒ、總テ勅令
デ規定サレテ居リマス、而シテ國民ニ義務
ヲ强制致シテ居ル性質ノモノ、是ハ小學校
ノ就學義務ニ付キマシテハ勅令ノ小學校令、
今囘發布セラレヨウトスル靑年〓育制度ニ
付キマシテモ、勅令デシヨウカト云フ御所
見ヲ承ッテ居リマス、私ハ元々法律論ヲ致シ
タクナイノデアリマスガ、唯簡單ニ法律論
トシテ承ッテ置キタイノハ、義務ヲ國民ニ强
制スルニ付テ、〓育ノ法規ハ從來沿革上總
テ勅令ヲ以テシテ、立法協贊ノ手續ヲ執ラ
ズニヤッテ居ル慣習、沿革ガアル、此ノ沿革
ヲ今囘モ蹈ンデ行キタイ、此ノ沿革カラ外
レルコトヲ欲シナイト云フ御說明デアリマ
ス、私ハ此ノ慣習上ノ沿革ハ、法律上カラ
言フテ正シクナイモノト實ハ考ヘテ居リマ
ス、兎ニ角慣習ハアリマス、沿革ハアリマ
スガ、法律上カラ言ヘバ是ハ私ハ確カニ日
本ノ法律制度ノ變例デアル、稀ナル變例デ
アルト見ルヨリ外ニ仕方ナイト思ヒマスル
ガ、此ノ變例ガ正シイカ正シカラザルカト
云フコトニナリマスルト、遽ニ論ゼラレナ
イノデアリマス、政府ニ於カレマシテハ此
ノ變例ヲ正當ナリトスル理由ニ付テ、如何
ナル御考ヲ御持チニナリマスルカ、此ノ變
例ヲ更ニ蹈ンデ行クコトガ正シイト云フ風
ニ御考ニナリマスル理由ガアリマスルカ、
其ノ點ヲ承リタイ、是ハ若シ政府ガ此ノ制
度ヲ立ツル上ニ於テ、立法ノ手續ヲ執ルコ
トガ非常ニ煩雜デアル、幸ニ此ノ沿革ガア
ルカラ此ノ沿革ニ乘ッテ行クト云フ、此ノ沿
革ニ藉ロシテ此ノ立法手續ヲ執ルノ煩ヲ避
クルト云フ意味デ、此ノ沿革ニ乘ッテ行クト
云フ御考デアリマスルナラバ、私ハ何ヲカ
言ハンデアリマス、是カラモ此ノ變例ヲ續
ケテ行クト云フコトヲ、正當化スル理論ガ
アリマスルカドウカヲ承ッテ置キタイト思
ヒマス、政治論ニ關スルコトハ私ハ一切政
府委員ニ伺ヒマセヌ、法理論ニ付テ、是ガ
正シク考ヘラレルト云フ理論ヲ參考ノ爲ニ
承ッテ置クノデアリマス、私ハ後ニ大臣ニ政
治方面ノ事柄ニ付キマシテ御意見ヲ承リマ
スルガ、政府委員ニ對シマシテハ、此ノ法
律論ニ付テ簡單ニ御答辯ヲ願ヘレバ仕合セ
ダト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=4
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005・田中重之
○政府委員(田中重之君) 今囘ノ靑年學校
ノ義務〓育ノ制度ヲ、大體勅令ヲ以テ之ヲ
規定致シタイ所見デアルト云フコトヲ前會
申上ゲタノデアリマスガ、之ニ關シマ
シテ單リ靑年學校ノミナラズ、從來ノ學
校制度ハ大體勅令デ其ノ根幹ガ定ッテ居リ
マスルコトニ付テ、其ノ法理論的ノ基礎ハ
何處ニアルカト云フ御尋ノヤウニ伺ヒマス、
私カラ御答へ申上ゲマスルコトハ甚ダ僭越
ナコトデゴザイマシテ、如何カト思ハルヽ
點モアルノデゴザイマスルガ、政府委員ト
致シマシテ一應申上ゲテ見タイト存ズルノ
デアリマス、御承知ノ通リ我ガ國ニ於キマ
シテハ〓育制度ノコトニ關シマスル事項
ハ、樞密院ノ御諮詢ヲ得マシテ勅令ヲ以テ
定メル、斯樣ナ沿革ト相成ッテ居リマス、此
ノ沿革ガ定リマシタニ付キマシテハ、深キ
考慮ノ下ニ斯クノ如キコトニ相成ッタト考
ヘルノデアリマスガ、此ノ勅令ヲ以テスル
ト云フコトハ、法理的ニ考ヘテ違法ノ點
ガアルノデハナカラウカ、斯ウ云フ御疑
問ヲ間々承ルノデアリマス、是ハ大變法
律論ヲ申上ゲマシテ恐縮ナノデゴザイマ
スガ、日本ノ憲法ノ建前カラ申シマシテ、
御承知ノ通リ憲法ニ於キマシテハ、是非
法律ヲ以テスルヲ必要トスル事項、所
謂立法事項ト云フモノハ限定致サレテ居ル
ノデゴザイマシテ、其ノ立法事項以外ノモ
ノハ必ズシモ法律ヲ要シナイト云フノガ、
我ガ國ノ憲法ノ建前デアルト考ヘルノデゴ
ザイマス、廣ク臣民ニ義務ヲ賦課スルモノ
ハ、是ハ總テ法律ヲ以テ規定スルコトヲ必
要トスル、斯樣ナ制度ハ我ガ國ニ於テハ採
ラナイモノト考ヘテ居ルノデアリマシテ、
從ヒマシテ此ノ點ノ法理論ト致シマシテハ、
〓育ニ關シマスル事項ハ、憲法ニ列記セラ
レマシタ所ノ所謂立法事項ニ該當致シマセ
ヌノデ、ソコデ之ヲ法律ニ依ラズ勅令ヲ以テ
定メマシテモ適法ナモノデアル、斯樣ニ法
理的ニ考ヘルノデアリマス、尙此ノ點ニ關
シマシテハ、實ハ先般衆議院ニ於キマシテ
モ色々御論議ガアリマシテ、一委員カラ此
ノ點ノ御質問ガアリマシテ、平沼内閣總理
大臣カラモ答辯ガゴザイマシタガ、其ノ時
ニモ、其ノ速記錄ガアリマスルガ、平沼內閣
總理大臣カラモ、從來カラ我ガ國ニ於キマ
シテハ〓育制度ノコトハ勅令ヲ以テ定ムル、
卽チ勅令事項ニナッテ居ルノデアッテ、將來
モ大體之ニ依ッテヤッテ行キタイ、斯樣ナコ
トヲ總理大臣カラ御答ガアッタヤウナ次第
デアリマス、其ノ法理的ノ點ハ只今申上ゲ
マシタヤウナ點ニアルノデゴザイマシテ、
法律ヲ以テシナケレバナラナイト云フ事項
ニハ屬シナイモノト考ヘマス、大變法理論
デアリマシテ、申上ゲルト恐縮ニ存ズルノ
デアリマスルガ、左樣ニ考ヘテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=5
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006・大森佳一
○男爵大森佳一君 多分サウ云フ御說明デ
アラウト想像ヲシテ居ッタノデアリマスガ、
之ニ付キマシテハ申上ゲレバ議論ニナリマ
スカラ、此ノ問題ニ付キマシテハ、法理論
ト致シマシテハ質問應答ヲ止メタイト思ヒ
さく、私ハ政治論ト致シマシテ、大臣ニ後
デ承リタイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=6
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007・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 大森サンガ法律ニスルカ
勅令ニスルカト云フ御話ヲ大臣ト御問答ニ
ナルサウデスカラ、其ノ間ニ此ノ問題モ、
私モ大臣ニ結局ハ御聽キシタイノデスケレ
ドモ、大體ノ問題ニ付テ政府委員ニ聽キタ
イ、ソレハ先ヅ出席率ノコトヲ一ツ伺ッテ見
タイ、此ノ義務制ニシマシテヤリマシテモ、
出席率ガ惡イト云フコトニナレバ、折角義
務制ニシテモ何ニモナラナイ、處ガ只今迄
ノヤリ方デゴザイマスト、私ハ極メテ出席
率ガ惡イト思ヒマス、其ノ事ニ付テハ政府
ニ確タル計數ヲ示スコトガ出來ナイト云フ
御話デスガ、殘念デアリマスケレドモ、是
ハドウモ實際分リマスマイト思ヒマスケレ
ドモ、併シ出席率ガ良イト云フコトハ、政
府當局ニモ之ヲ肯定スルコトハ出來ナイダ
ラウ、大都市ニナレバナル程出席率ガ惡イ
ヤウニ私ハ見テ居リマス、ソンナラ農村山
村漁村デハ出席率ガ良イカト申シマスト、
矢張リ出席率ガ餘リ良クナイト思フ、唯政
府當局デ御覽ニナルト、農村山村漁村邊ハ
出席率ガ良イト云フノヲ認メラレタ場合ガ
多少アリマスルノデ、ソレデ出席率ガ良イ
ト仰シヤルカモ知レマセヌケレドモ、是ハ
殊更ニ社會〓育局カラ官吏ヲ派遣セラレタ
ヤウナ場合ニハ、其ノ時ダケハソレハ出席
率ヲ良クシヨウトスレバ良クセラレナイコ
トハナイ、ソレモ大都會デハドウモソレガ
ウマク行カナイ、僻地ニ行キマスト割合ニ
サウ云フヤウニ、其ノ時ダケ場面ヲツクラ
フト云フコトガ出來マスカラ、報〓書デハ
或ハ僻地ハ割合ニ出席率ガ良イト、斯ウ御
認ニナルカ知レマセヌガ、私ノ實地視察シ
タ所ニ依リマスルト、出席率ハ極メテ惡イ、
ソレデドウモ私ハ矢張リ義務制ニナサツテ
モ、是ハ出席率ガ著シク變ッテ來ルト云フコ
トハドウモ期スルコトガ出來ナイ、併シ
ナガラ斯ウ云フヤウナ方法ヲ用ヒテ、サウ
シテ出席率ヲ良クスル、斯ウ云フ何カ政府
ノ方ニ出席率ヲ是非良クスルト云フ方策ヲ
何レ御持チニナツテ居ルニ違ヒナイ、ソレデ
義務制ニナリマシタラドウ云フヤウナ方法
ヲ以テ出席率ヲ良ク爲サルカト云フ、其ノ
御計畫ヲ一ツ承リタイ、ソレヲ先ヅ伺ツテカ
ラ次ノコトヲ伺ヒタイト思ヒマス、ソレカ
ラ序ニ伺ヒマスガ、若シ其ノ靑年學校ニ出
席ヲシマセヌト、ドウシテモソレヲ促シテ
モ出席ヲシマセヌト云フヤウナ場合ニハ、
何等カノ制裁デモシテ、サウシテ之ヲ强要
爲サルト云フヤウナ御考ナノカ、其ノ邊ノ
所モ併セテ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=7
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008・田中重之
○政府委員(田中重之君) 靑年學校ニ於キ
マスル所ノ出席率ノ向上ノコトニ付キマシ
テハ、靑年學校ノ事ニ當ッテ居リマスル者
ト致シマシテ、內々多大ノ苦心ヲ拂ッテ居ル
ノデゴザイマスルガ、尙義務制ニ相成リマ
シタ場合ニ於キマシテハ、此ノ點ニ於キマ
シテ一層ノ努力ヲ拂ハナケレバナラヌコト
ト思ヒマス、只今紀委員カラ御話ガゴザイ
マシタヤウニ、從來都市ニ於キマスル所ノ
出席率ハ相當惡イト云フヤウナ狀況ガ考ヘ
ラレルノデアリマスガ、農村ニ於キマシテ
ハ、私共ノ考ヘテ居リマスル所ニ依リマシ
テハ、相當良イ成績ヲ擧ゲテ居ル所ガ少ク
ナイノデアリマスルガ、尙又農村方面ニ於
キマシテモ、出席率ガ必ズシモ良イト申サ
レナイ地方モ相當アリマスルコトハ事實デ
アリマス、何レニ致シマシテモ義務制ノ實
施ニ伴ヒマシテ出席率ノ向上ヲ圖ルト云フ
コトハ、就學ノ向上ヲ圖リマスルコトニ必
然的ニ關聯致シマシテ、最モ重要ニ考ヘル
所デゴザイマス、此ノ點ニ關シテ當局ハド
ウ云フ具體的ノ方法ヲ考ヘテ居ルカト云フ
御尋デアリマスルガ、現在出席率ガ惡イ原
因ガ何處ニアルカト云フコトト聯關致スノ
デアリマスルガ、先ヅ第一ニ法制的ノ見地
カラ申シマスルト、現在ニ於キマシテハ靑
年學校ノ就學ガ任意的ニ相成ッテ居リマス
ルノデ、之ヲ今囘制度ヲ改メマシテ義務制
ト致シマシタ場合ニ於キマシテハ、此ノ點
ニ於キマシテ實際的ニモ又生徒竝ニ其ノ父
兄、雇傭者等ノ關係ニ於キマシテ、心理的
ニモ非常ニ大キナ差異ガアルコトト思フノ
デアリマス、義務制ニ致シマシタ結果ト致
シマシテ、其ノ事自體ガ出席率ノ向上ニ資
スルコトガ蓋シ多イモノト考フルノデアリ
やっ、尙出席率ノ點ニ考ヘマシテ、從來都
市ノ方面ガ特ニ此ノ出席率ノ向上ニ困難ヲ
感ジテ居ッタ實情デアルコトハ、先程申上ゲ
タ通リデアリマスルガ、此ノ點ハ都市ニ於
キマスル所ノ靑年學校就學該當ノ靑年ガデ
スネ、他人ニ雇傭致サレテ居リマシテ、其
ノ雇傭關係ト就學出席關係トノ調節ガ甚ダ
困難ナ事情ニアリマシタコトガ、其ノ最モ
重大ナ事情ノ一ツデアラウト考ヘルノデア
リマス、此ノ點ニ關シマシテ政府ニ於キマ
シテハ、今囘靑年學校ニ就學セシメラルベ
キ者ノ勞働時間ニ關シマシテ、特別ノ法律
ヲ制定致シタイト考へマシテ、帝國議會ノ
御審議ヲ只今煩ハシテ居ル次第デゴザイマ
ス、此ノ法律ニ依リマスルト、靑年學校ニ
就學致シマシテ、此ノ義務トスル課程ヲ修
メマスル時間ハ之ヲ勞働時間ノ中ニ、勞働
時間ノ定メアル勞働者ニ付キマシテハ勞働
時間ト看做ス、斯ウ云フ規定ヲ持ッテ居リマ
スルノデ、此ノ點ニ於キマシテ非常ニ多ク
ノ點ニ於キマシテ困難ナ事情ガ、法律的ニ
除去致サレルノデハナカラウカト思フノデ
アリマス、要スルニ法律的ニ考ヘマシタ場
合ニ於キマシテハ······制度的ニ考ヘマシ
タ場合ニ於キマシテハ、靑年學校ニ就學シ
出席スルコトヲ義務ト致シマスルコト、又
出席致シマスル所ノ時間ヲ勞働時間ト看做
スト、斯ウ云フヤウニ法制ヲ整備致シマス
ルコトニ依リマシテ、非常ニ此ノ出席率ノ
向上ニ資スルコトニ相成ラウト思フノデア
リマス、併シナガラ靑年學校ニ於キマスル
所ノ出席率ヲ向上致サシメマスルノハ、固
ヨリ斯ウ云フ法規ニ依リマシテ、謂ハヾ强
制スルコトダケニ依ッテ其ノ目的ヲ達スルコ
トハ困難デアリ、又策ノ得タルモノデハナ
イト考フルノデアリマス、制度ヲ離レタ實質
的意義ニ於テ此ノ出席率ヲ向上致サシムル
爲ニ、當局ト致シマシテハ一層ノ努力ヲ致サ
ナケレバナラナイト考ヘルノデアリマス、此ノ
點ニ關シマシテハ一ハ靑年學校ノ〓育內容ヲ改
善致シマシテ、眞ニ靑年學校ニ就學致シマスコト
ガ有益デアルコト、又今一ツハ〓授方法ニ
於テ相當ノ工夫ヲ凝シマシテ、勤勞靑年ガ
勤勞ノ傍ラ勉學致スノデアリマスカラ、其
ノ點ニ十分ニ興味ヲ感ゼシムルヤウニ工夫
ヲ凝スコトガ必要デアルト考ヘルノデアリ
マンク。斯ウ云フ點ニ關シマシテハ主トシテ
其ノ間ノ問題ハ、〓師ニ其ノ人ヲ得ルコト、
〓師ノ努力ニ俟ツ所ガ多イノデゴザイマス
カラ、今後靑年學校ニ於キマスル處ノ〓員
ノ充實竝ニ其ノ〓育ノ〓授訓練方法ノ改善
ト云フ點ニ向ヒマシテ、要スルニ〓員ノ養
成方法、指導方法ト云フ點ニ向ッテ、當局ト
シテハ一段ノ努力ヲ加へタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス、尙今一ツハ、靑年學校ニ
於ケル所ノ出席ヲ困難ナラシメル今一ツノ
實質的理由ハ、主ニ經濟問題ニアルコトト
考ヘルノデアリマス、從ッテ是ハ前會御答申
上ゲタ就學奬勵ノ施設ヲ相當講ズルコトニ
依リマシテ、此ノ點ノ困難モ或ル程度迄緩
和致シタイト考ヘルノデアリマス、卽チ政
府ニ於キマシテ或程度ノ能フ限リ就學奬勵
ノ經費モ支出シ、其ノ施設ヲ講ジタイト考
ヘルノデアリマスガ、財政其ノ他各般ノ事
情ヨリ致シマシテ、必ズシモ是ガ理想通リ
ニハ參ラヌノデアリマスガ、當局ト致シマ
シテハ此ノ點ニ出來ルダケノ努力ヲ致シタ
イト考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ又一
般〓黨ニ於キマシテ就學奬勵ノ施設ヲ講ジ
マシテ、〓黨各層ノ人ガ協力シテ自分ノ〓
黨ノ靑年ヲ如何ニ育テ上ゲルカ、サウ云フ
雰圍氣ノ下ニ就學ヲ奬勵スルコトニ依リマ
シテ、此ノ政府ノ施設ト相俟ッテ生徒ノ就
學、延イテ其ノ出席ノ改善ヲ圖ラシメルコ
トガ必要ナノデハナカラウカ、是等相俟チ
マシテ、卽チ法制ノ整備竝ニ之ト關聯致シ
マスル所ノ〓育内容或ハ就學奬勵施設、是
等ニ整備擴充等ヲ加へマシテ、彼此相俟チ
マシテ就學率出席率ノ向上ニ努力ヲ加ヘタ
イト考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、第
二ニ出席シナカッタ場合ニ何等カ制裁ヲ加
フル方法ヲ考ヘテ居ラナイカ、斯樣ナ御質
問デゴザイマシタガ、此ノ點ニ付テハ大體
小學校ノ例ヲ逐ヒマシテ、出席致シマセヌ
デシタ場合ニ於テハ其ノ督促スル手續ヲ執
リ、其ノ義務〓育ノ本旨ト云フモノヲ十分
說キ勸メマシテ、其ノ保護者ナリ雇傭主ナ
リ又本人ナリニ出席出來ルヤウニ努力致シ
タイト考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ
向ヒマシテ、出席シナカッタ場合ニ於テ何等
カ刑罰ヲ以テ臨ム必要ガナイカト云フヤウ
ナ議論ガ、世上ニ屢〓行ハレルノデゴザイマ
シテ、此ノ議論ト云フモノモ一ツノ議論ト
致シマシテ、十分〓究スベキモノデアルト
考ヘテ居ルノデアリマス、當局ニ於キマシ
テモ此ノ點ニ付キマシテハ十分ニ考慮致シ
タノデアリマスガ、此ノ就學竝ニ出席ノ義
務ヲ怠リマシタ場合ニ於キマシテ、之ニ臨
ムニ刑罰ヲ以テスルト云フヤウナコトハ、
〓育ノ本旨カラ考ヘマシテモ、又保護者ト
子弟トノ關係、其ノ間ノ我ガ國ニ於ケル所
ノ家族制度ノ關係等カラ考ヘテ見マシテモ、
ドウモ策ヲ得タモノデナイノデハナイカ、
矢張リ其ノ點ハ神聖ナ問題ト致シマシテ、
刑罰法令ニ據ラナイ方法ニ依リマシテ其ノ
就學ヲ督勵シ、其ノ成績ヲ擧ゲルノガ至當
デハナイカ、斯樣ナ結論ヲ今日得テ居リマ
スヤウナ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=8
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009・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 或年齢ニ達シマスル迄ハ、
詰リ十六歲デスカ、十六歲迄靑年學校ニ勉
學シテ居ル時間ハ勞働時間ト看做ス、斯ウ
云フ御話デ、之ニ依ッテ餘程出席率ヲ增スコ
トガ出來ル、斯ウ云フヤウナ御話デアリマ
シタガ、是ハナンデゴザイマセウカ、多少
此ノ勞働ヲセズニ就學シテ居ルノヲ勞働時
間ト看做スト、斯ウ云フコトニナリマスト、
其ノ雇主カラ靑年ニ對シテ渡ス給料ハ別ニ
變リハナイノダラウト思ヒマスガ、矢張リ
同ジ給料ヲヤリマスノデスカ、多少ソレダ
ケノモノハ減ジマスノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=9
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010・田中重之
○政府委員(田中重之君) 此ノ點ハ、目下
衆議院デ御審議願ッテ居リマスル法律案ガ
不日貴族院ニ囘付致サレマシテ、當委員會
ニ於テ御審議戴キマスル節ニ、御質問ガアッ
タ時ニハ詳細厚生省ノ當局ヨリ御答辯ア
ルコトト存ズルノデアリマスルガ、勞働時
間ト看做スト云フ規定ノ趣旨カラ申シマシ
テ、當局ト致シマシテハ、勞働賃銀ノ低下
ヲ來サシメマセヌヤウニ十分ニ努力致シタ
イト、斯樣ニ考ヘテ居ルヤウナ次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=10
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011・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 ソレカラ學科ニ成ルベク
興味ヲ持タサウト云フヤウナ今御話デス
ガ、ソレハドウ云フヤウニ興味ヲ御持タセ
ニナルノデスカ、大體デ宜シイデスガ、斯
ウ云フ興味ヲ持タシテ〓育シテ行クノダト
云フコトヲ、具體的ニ分ルヤウニ大體仰シ
ヤッテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=11
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012・田中重之
○政府委員(田中重之君) 興味ヲ持タセル
ト申シマスルコトハ、靑年學校ノ〓育ガ其
ノ本旨カラ申シマシテモ、生活ニ卽シマシ
テ、生徒ノ現ニ行ッテ居リマスル所ノ共同生
活、或ハ職業生活ト云フヤウナモノニ、具
體的ニ觸レマシタ所ノ〓育ヲ施シマスルコ
トニ依リマシテ、其ノ效果ヲ擧ゲ得ルト考
ヘテ居ルノデアリマス、而シテサウ云フヤ
ウニ生活ニ卽シマシテ〓育ヲスルコトニ依
リマシテ、初メテ能ク理解モ屆クノデアリ
マンク、靑年學校ニ於キマシテハ短時間ノ〓
育デゴザイマスルシ、且又勤勞ノ傍ラ致ス
ノデゴザイマスルカラ、サウ云フ生活カラ
離レマシタ所ノ、抽象的ナト申シマスルト
少シ言葉ガ惡イカモ知レマセヌガ、理論ニ
流レ過ギマシタヤウナ〓育ヲ施シマスル時
ニハ、ナカ〓〓理解モ困難デアリマスルシ、
又先程申上ゲマシタヤウナ意味ニ於キマ
シテ、興味ヲ持チマスルコトガ困難ト考ヘ
ルノデアリマス、生徒ガ本當ニ自分ノ身ニ
附クヤウニ、本當ニ身ニツマサレタ〓育ト
ナルヤウニ致シマスルコトガ、結局生徒ガ
一番興味ヲ持ツ所以ナノデゴザイマシテ、
斯ウ云フ點ニ向ヒマシテ、〓育者ハ抽象的
ナ〓育デハナク、其ノ〓土ニ卽シタ〓育ヲ
スルヤウナ工夫ヲシテ貰ヒタイト思フノデ
アリマス、中央デ作リマシタ所ノ書物デア
リマスルトカ、或ハ講習會デ聽イテ來マシ
タ事ヲ其ノ儘傳ヘルト云フコトハ、〓師ト
致シマシテハ比較的ヤサシイノデアリマス
ルビー其ノ〓土ニ具體的ニ適合シマシタ所
ノ〓材ヲ選ビ又說明致シマスルト云フコト
ハ、ナカ〓〓困難ナコトナノデアリマス、
併シナガラ此ノ困難ナコトヲ十分ニ工夫ヲ
凝ラシ、努力ヲ致シマスルコトガ、靑年學
校ノ最大ノ魅力ニ相成ルト思フノデアリマ
シテ、之ガ爲ニハ何ト申シマシテモ靑年學
校ニ於キマシテ、靑年〓育ニ熱意ヲ持ッテ居
リマス所ノ專任ノ〓員ト云フモノヲ充實シ
テ行クト云フコトガ、非常ニ重大ナ點デア
ラウト思フノデアリマス、尙是ハ細カイ點デ
ゴザイマスルガ、從來ノ經驗カラ申シマシ
テモ、勤勞ト其ノ學修トノ間ノ連鎖或ハ關
聯ト云フコトヲ餘程考ヘルコトガ必要ナン
デアリマシテ、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ
例ヘバ〓育ノ〓授ノ中ニ、體操デアリマス
トカ、體育デアリマストカ、或ハ音樂デア
ルトカ云フヤウナモノヲ相當ニ交ゼマスルコ
トガ、是ハ興味モ增シマスルシ、心氣ヲ轉
換スル上ニ於キマシテモ、又人格ヲ高メテ
行キマスル上ニ付キマシテモ、餘程效果ガ
アルヤウニ考ヘルノデアリマス、サウ云フ
點ニ向ヒマシテモ今後靑年學校ノ〓育ニ於
キマシテハ、相當ニ工夫ヲ凝ラス餘地ガア
ルノデハナカラウトカ、斯樣ニ考ヘテ居ル
ヤウナ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=12
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013・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 興味ト云フコトカラ申シ
マスト、映畫〓育ナンゾヲ盛ニヤルト云フ
ヤウナコト、サウ云フ靑年學校ノ科目デ〓
ヘルノニハ、映畫〓育ヲ用ヒルト云フヤウ
ナ御考ガアルノデセウカ、ドウデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=13
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014・田中重之
○政府委員(田中重之君) 大變申シ殘シマ
シテ失禮致シタノデアリマスルガ、映畫〓
育ガ今日學校ニ於キマシテ〓育上重視致サ
レテ居リマスルコトハ、申ス迄モナイノデ
アリマスルガ、特ニ靑年學校ノ如キ〓育ヲ
施シマスル場合ニ於キマシテ、映畫ノ利用
ト云フコトガ非常ニ適切デアリ又效果的
ナモノヂヤナイカト云フコトハ、殆ド各方
面ニ於キマシテ言ハレテ居ルコトデゴザイ
やく、私共モ其ノ點同感ニ考ヘルノデアリ
マシテ、是ハ地方ノ財政ノ狀況モゴザイマ
シテ、非常ニ徹底的ニ行クト云フコトハ困
難ナコトト考ヘルノデアリマスルガ、尙小
學校ノ〓育等トモ聯關シ、又他ノ諸設備ト
モ相俟チマシテ、靑年學校ニ於キマスル所
ノ映畫ノ利用ト云フコトニ付キマシテハ、當
局ト致シマシテ更ニ考慮ヲ拂ハナケレバナ
ラナイ重大ナ點デアルト考ヘテ居ル次第デ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=14
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015・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 大體政府ノ當局ノ出席率
ヲ良クスル御計畫ガ分リマシタノデスガ、
是ハ意見ノ相違カモ知レマセヌケレドモ、
映畫〓育ヲ御用ヒニナルト云フコトガ、私
ハ幾分出席率ヲ良クスルト云フ助ケニナル
ダラウト思ヒマスガ、其ノ他ノ御計畫ノ具
體案ニ付テハ、是ダケデ果シテ出席率ガ良
ク出來ルカドウカト私ハ思ヒマスノデス、
私共モ多少此ノ靑年學校ヲヤッタ經驗モア
リマスルガ、ドウモ只今仰シヤッタヤウニ今
度ハ義務制ニナッタ、今迄ハ隨意デアッタ、
今度ハ義務制ニナッタト云フノデ、餘程心持
ガ變リマスルノデ、是ハ義務制ダカラ出席
率ヲ良クシナケレバナラヌト斯ウ思ヘルノ
デスガ、思ッテモソレガ出來ルモノデアラウ
カト云フコトヲ私ハ考ヘル、ト云フノハ普
通ノ學校〓育ト違ヒマシテ、皆働イテ居ル
人間ナンデス、一生懸命ニナッテ働イテ居ッ
テ、旣ニモウ疲レ切ッテ居ル、其ノ身體デ今
度ハ又更ニ學校ヘ行ッテ勉强ヲシナケレバ
ナラヌ、斯ウ云フコトニナルノデ、寧ロ嫌
ダカラ之ニ就學シナイノデハナク、モウ體
力ガ許サナイ、身力ガ許サナイカラ、ソレ
デ入學ハ出來テモ缺席スルヨリ致シ方ガナ
イト、斯ウ云フコトニナッテ居ルノガ多イノ
デス、モウ出席シテモ居睡リバカリシテ居
ルト云フヤウナ者モアリ、又ソレヲ〓ヘル
先生モ大方兼任デスシ、サウシテ殊ニ小學
校ノ先生ト云フモノハモウ疲レ切ッテ居ル
ノデス、色々ノ仕事ヲ與ヘラレテ······〓へ
ル者モ〓ヘラレル者モ兩方トモ疲レ切ッテ居
ルデスカラ出席シテ十分ニ勉强シヨウト
思ヘバ翌日ノ仕事ニ差支ヘル、又翌日十分
ニ働カウト思ヘバ、其ノ學校ニ入學シテ勉
强スルコトガ出來ナイト、斯ウ云フヤウナ
コトニ是迄ハナッテ居ルノデアリマス、併シ
今度ハ二時間ナラ二時間、三時間ナラ三時
間ト云フモノハ勞働時間ト見テ、ソレダケ
勞働シナイノダカラ宜イヂヤナイカ、斯ウ
云フヤウニ御思ヒニナルノデセウケレドモ、
併シ是ハ事實ハ私ハサウ御考ニナッタ通リ
ニウマク行クカドウカ、ト云フノハ兎ニ角
同ジ給料デ其ノ人間ヲ働カシテ居ナガラ、
其ノ時間、其ノ學校ニ居ル間ノ時間ダケハ
兎ニ角其ノ店ノ仕事ヲスルコトガ出來ナイ
ノデスカラ、ソレダケノ補ヒハ何處カデサ
ス途ガナイト、八時間ナラ八時間勞働ヲシ
テ居ル者ガ、二時間學校へ出テ、而モ六時
間ダケデ、後ノ二時間ハ休ンデ居ルヂヤナ
イカト云フコトヲ言ハレマスガ、六時間デ
八時間ノ仕事ヲヤラスヤウニナルト思ヒマ
ス、ソレダケノ給料ヲヤルノデスカラ···
サウスルト同ジコトニナルト思フ、ソレデ
此ノ點大分政府ノ御考ニナッテ居ルノト私ハ
違フト思ヒマス、働イテ居ル傍ラニヤルン
デスカラ、ソレデマア興味ヲ持タスト云フ
ヤウナ御話デモ、其ノ人間ノヤッテ居ル職業、
大工ナラ大工ト云フヤウナ職業ヲヤッテ居
ルト、サウスルト夜ハ何カ大工ニ關係シタ
ヤウナ話ヲシタラ、自分ノヤッテ居ルコトデ
アルカラ、面白イカラ來ルダラウト、斯ウ
政府ノ方デハ御考ニナルノダラウケレドモ、
是ハ私ハ反對ダト思フ、晝ウント働イテ來
テ、其ノ仕事ヲシテ來タ者ガ、其ノ夜又其
ノ仕事ニ付テ〓ヘラレタリ、話ヲサレテモ
興味ヲ持ツモノデハナイ、是ハドウシテモ
轉換サセナケレバイケナイ、晝ノ仕事ト夜
ノ仕事ト轉換サセナケレバイケナイト思フ、
ソコデ映畫〓育ナゾニ付テ良イノヲ見セル
ト云フコトニナルト、ソレハ興味ヲ持チマ
セウケレドモ、先生ガ書物ニ依ッテ〓ヘルト
カ、話ニ依ッテ〓ヘルトカ云フヤウナコトデ
アッタラ、興味ヲ持タシテ居ルノダカラ面白
カラウ、斯ウ〓ヘル人ハ仰シヤルカモ知レ
ナイガ、受取ル人間ハチットモ面白イコトハ
ナイ、詰ラナクテ仕方ガナイト私ハ思フ、
ソレデ甚ダ横道ニ入リマシテ如何デスケレ
ドモ、實例ヲ一ツ申上ゲマス、私自治ニ關
係シタ時分ニ靑年學校ヲヤッテ居リマシテ、
サウシテ其ノ時分ニハ是非靑年學校デ一ツ
勉强サセマセウト思ッテ、相當督促モシ、又
相當靑年學校ノ必要ヲ說イテ、サウシテ大
分在學生ヲ得マシタ、處ガ其ノ後大分アッチ
コッチノ雇主カラ苦情ガ出タ、ソレハ斯ウ云
フ苦情ナンデス、ドウモ靑年學校へ入レナ
イ前ニハ、家ノ弟子ハ酒モ飮マナカッタシ、
煙草モ吸ハナカッタシ、惡イ夜遊ナゾモ仕
事ノ間ニハシナカッタ、處ガドウモ靑年學
校へ入ッテカラハ、打ッテ變ッタヤウナ人間
ニナルノガ多イ、斯ウ云フヤウナ聲ガ
各處カラ起ッテ來タ、是ハ私ハ其ノ雇主
ガ靑年學校ヲ惡ク言シテ、サウシテ靑
年學校ニ入レタクナイ、ソレダケ仕事ヲ邪
魔サレルカラ入レタクナイト云フ爲ニ、殊
更サウ言ッテ居ルノダト田心ツテ居タ、處ガ段々
サウ云フ人ガ多クナッテ來テ、ソコデ吏員ヲ
シテ調ベサシタ、サウシタ處ガサウ云フ者
ガ學校へ出ルト言ヒナガラ、學校へ出ズニ、
マア何ト言ヒマスカ、盛リ場ナンゾヘ行ッテ
映畫館ニ入ル、ソレカラ歸リニ酒ヲ飮ンダ
リ、煙草ヲ吸ッタリスルコトヲ友達ニ〓ヘ
ラレタリシテ、サウシテ丁度靑年學校ノ引
ケ時分ニ家ヘ歸ル、出ル時ニハ靑年學校へ
行クヤウナ顏ヲシテ、サウ云フ所ヘ行ッテ、
又サウ云フ所デ遊ンデ、歸リニハ又時間ニ
合ハシテ家へ歸ッテ來ル、何ンノコトハナ
イ、惡イ事バカリ〓ヘラレルト言ッテ居ル
ガ、靑年學校デ惡イ事ヲ〓へラレタノデハ
ナイ、今迄二人三人ノ徒弟ト一〓ニ色々ノ
仕事ヲヤッテ居ッタ奴ガ、今度ハ大勢ノ人間
ニナッテ、惡イ友逹ニ色々ナ事ヲ〓ヘラレタ
リスル、大〓ソレガ映畫館ガ始リノヤウデ
アルガ、ソコデ如何ニ靑年ナリ少年ガ映畫
ヲ樂シムモノデアルカ、如何ニ映畫ナント
云フモノニ興味ヲ持ツモノデアルカ、映畫
ダケナラマダ宜イ、處ガ映畫館ノ雰圍氣ガ
惡イ、サウ云フヤウナ例ガ多クアッタノデア
リマス、ソレデ私ハ是ハドウシテモ靑年
達ハ映畫ト云フモノヲ餘程好クラシイ、
ソンナラ一ツ此ノ映畫デ以テ靑年學校デ
一ツヤッテ〓育ヲシタラ、是ハ大分足留ニ
ナルト思ヒマシタノデ、相當私映畫〓育
ヲヤッテ見タ、サウシタラ餘程ヤッテ來ル人
間ガ多カッタ、ト云フフハ矢張リ學校ナドデ
ヤル映畫ナント云フモノハ、興行館ノ映畫ト
較ベテ、ソレハ或點ニ於テハ興味ハ少イノデ
スケレドモ、ソレデモ兎ニ角每日靑年學校
へ勉强ニ行ッテ居ル、サウシテ其處デ映畫ヲ
見セテ吳レテ居ルト云フノデスカラ、何ト
言ヒマスカ、大ビラニ學校へ來ルト云フヤ
ウナコトデ、餘程私ハ興味ヲ持ツヤウニ思
フ、デ此ノ頃アッチコッチニ映畫〓育ノ講習
會等アリマシテモ、ソンナ時ニ高等師範ノ先
生デアルトカ、ヤア何博士デアルトカ云フヤ
ウナ人ノ映畫ニ關スル話ナドヲ聽イテ見マ
シテモ、ドウシテモ靑年學校ト云フモノノ
出席率ヲ良クスルノニハ、映畫〓育ヲ主ニシ
ナケレバイケナイ、斯ウ云フヤウナ話ヲ大
分アッチコッチデ此ノ頃學者ノ說デモ聽キマ
スノデ、私モ實際ヤッテ來マシタノデスガ、
實際ノ經驗カラ見ルト是ハ餘程功能ガアル、
サウシテ見レバ今後此ノ靑年學校ノ先生ヲ
養成爲サルノニハ、ドウシテモ是ハ映畫〓
育ト云フモノヲ、主ニシナイデモ宜イケレ
ドモ、餘程映畫〓育ニ關係シタ學科ヲ〓ヘ
テ、サウシテソレノ學習、又技術ノ操縱方
法、サウ云フヤウナコトヲ是デヤッタナラ
バ、アノ迫力ノアル、アノ興味ノアルモノ
デ晝ト夜トノ氣持ガ轉換セラレテ、サウシ
テヤッテ行ケルノヂヤナカラウカト云フコト
ヲ私痛感シタノデアリマス、ソレデ今伺ッタ
時ニ、興味ヲ大イニ持タスト云フノデアル
カラ、殆ド映畫〓育デヤルト云フヤウナ御
話ダッタト思フノデスガ、餘程尊重ハ爲サル
ト云フコトデ、大變ニ私ハ意ヲ得テ居リマ
ス、殊ニ社會〓育局長サンノ今ノ御答辯デ、
社會〓育局デ映畫〓育ニ御努メニナッテ居ル
ノダカラ、然ルベキコトダト思フノデスケ
レドモ、其ノ點ニ力ヲ御入レニナルト
云フコトハ大變ニ結構ナコトダト思フ、唯
ソレニ關シテ大エナラ大工、左官ナラ左
官ソレニ夜ハ又講義シタラ興味ヲ持ツダ
ラウト云フノダケレドモ、ソレハ晝ソレダ
ケヤッテ、又夜ト云フコトハドンナモノデア
ラウカ、ソレハ何カ休ノ日トカ云フナラ格
別デスケレドモ、疲勞シ切ッテ居ルノダカ
ラ、其ノ點私餘リ感心シマセヌノデスガ、
是ハモウ尋常小學ノ五年六年ニナリマシテ
モ、ナカ〓〓其ノ校長ナリ〓員ナリガ出席
ヲ奬勵スルノニハ、隨分骨ヲ折ッテ居リ
マス、眼ニハ見エテ居リマセヌ、數字ノ上
ニハソレハ現レテ居リマセヌ、現レテハ居
リマセヌケレドモ、其ノ數字ノ上ニ於テ相
當出席率ヲ良クスルト云フ、其ノ裏ニハ餘
程ノ苦心ガアルト思ヒマス、ナカナカモウ
五年位ニナリマシタラ、家ノ仕事ノ手傳ヲ
サシタイトカ、或ハ又子守ニヤルトカ、小
僧ニヤルトカ云フヤウナコトニヤラシタイ
モノデスカラ、家ノ生活ガソレヲ許シマセ
又、ソレヲバ隨分骨ヲ折ッテヤッテ居ルノダ
ガ、今度又靑年學校ト云フモノガ出來テ、
更ニ又滿十九歲迄ヤラサナケレバナラヌト
云フコトニナッタラ、是ハ出席率ガ非常ニ私
ハ惡クナルコトト思フ、政府ノ方デハ義務
制ニシタノダカラ屹度ヤッテ來ルダラウ、又
土地ノ有志モ大イニサウ云フコトデ骨ヲ
折ッテ吳レルダラウ、又夜ハサウ云フヤウナ
仕事ニ關シテノ何カ理解ノアルヤウナ話ヲ
シテヤッタラ、喜ンデ來ルダラウ、或ハ通學
時間ヲ勞働時間ト看做シテヤレバ、ソレダケ
休メルノヂヤナイカト云フヤウナコトハ、
是ハ私ハ失禮ナガラ中央カラノ机ノ上カラ
御覽ニナッテ居ル御意見デ、是ダケデ私ハ出
席率ハ良ク出來ナイト思フ、ドウモ文部大
臣ナドモ、モウ命令爲サッタラ必ズ國民ト云
フモノハソレデ服從シテ行クモノダ、斯ウ
云フヤウナ、軍隊デ將兵ニ對シテノ御命令
ト同ジヤウニ、ソレデ國民ガ、文部大臣ガ
命令ニナレバ直チニ靑年學校へ行カナケレ
バナラヌト云フ氣持ニナルト云フヤウニ思
ハレテ居ルコトハ、非常ニ遺憾ダト思フ、ダ
カラモウ少シ實情ニ卽シテ、何トカ出席率
ヲ良クスルト云フコトニ一ツ考ヘテ戴キタ
イト思フ、先刻カラノ御話ダケデハ出席率
ハドウカト思フ、併シ是ハ意見ノ相意デゴ
ザイマスカラ、是以上ハ私ハ申上ゲマセ
ヌ、尙又大臣ガイラッシヤイマシタラ、此ノ事
ニ付テ伺ヒタイト思フ、ソレカラ次ニ伺ヒタ
イノハ、愈〓是ガ本科ト云フモノガ出來マシ
テ、サウシテ本科ノ生徒ガ出來マシタ場合
ニ、高等小學校デハ確カ千二百時間デゴザ
イマシタカ、一年ト二年トガ高等小學ガ確
カ一千二百時間デアッタカト思フ、ソレカラ
靑年學校ノ方ハ、普通科ガ一年ト二年トガ
一年間デ二百十時間デシタカト思フノデス
ガっ殆ド五分ノ一位ナ時間ニナル、何ト言
ウテモ高等小學校ノ卒業生ト普通科ノ生徒
デハ、學力ハ餘程ノ相違ガアル、ソレガ今
度ハ本科ト云フモノニ入ッタラ、同ジヤウニ
習ッテ行カナケレバナラヌ、是ハドウ云フ工
合ニ〓ヘテ行カレルノカ、餘程ヤリ方ガム
ツカシイノデナカラウカト思ハレル、マア
東京デモサウ云フヤウニ言ハレテ居ルサウ
デスガ、ドウモ地方ナドデハ、高等小學ノ
在學生ト云フモノハ學生ノ中デモ屑ダト云
フヤウニ言ハレテ居ル、アレハモウ中等學
校ヘモ進ムコトノ出來ナイ、家庭ノ都合カ
ラ、又學力ノ劣ッテ居ル點カラ、體力ノ劣ッテ
居ル點カラ、アレハモウ中等學校へ進ンデ
行クコトガ出來ナイノデ、モウアレハ高等
小學デ終ルヨリ仕方ガナイ子供達ダト云フ
ヤウニ、屑ダ〓〓ト言ハレテ居ル位デアル、
ソレガ今度ハソレヨリモ劣ッタ、漸ク普通科
デ二百十時間デスカ勉强シテ、サウシテソ
レガ上ッテ來テ、高等小學ヲ經タモノト同ジ
ナンデスカラ、サウ云フヤウナコトニナル
ノデスカラ、地方ニ依ッテハ非常ニ僻ンデ居
ル、アレハモウ屑ナ人間ダトカ何トカ言ハ
レマス、ドウモ田所サンノ居ラッシヤル前
デ、斯ンナ〓育ノ講釋ヲシテハ甚ダ恐入ル
ノデスケレドモ、ドウモ兒童ナドト云フモ
ノハ煽テヽ···煽テルト言フト語弊ガアリ
マセウケレドモ、褒メテ、オ前ハ感心ナモ
ンダ、何ガ能ク出來ルト言ッテ、能ク出來ル
モノヲ殊更言ッテ、ソレヲ引立テテ行ッテコ
ソ、其ノ學問ナリ何ナリガ進ンデ來マスケ
レドモ、アレハ屑ノ人間ダ、詰ラヌ人間ダ、
子供ノ中デモ一番劣等ダト云フコトヲ言ハ
レタラ、ドウモ智能ナリ體力ナリ劣ラザル
ヲ得ナイヤウニナル、兎ニ角千二百時間ノ
人間ト二百十時間ノ人間ト同ジヤウニ竝ン
デ行クト云フコトハ、餘程ムツカシイト思
フノデスガ、何カ之ニ對シテモ御名案ヲ持ツ
テ居ラッシヤルノデスカ、ソレヲ一ツ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=15
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016・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 只今ノ御質問ニ
御答スル前ニ、先刻出席率ヲ良クシロト云
フコトニ付テ、直接ノ御體驗ニ基イテノ色
色貴キ御意見ヲ伺ヒマシテ、誠ニ有難ク存
ズルノデアリマスルガ、私共ノ短イ體驗ニ
依リマシテモ、只今御示ノ點ガ非常ニ思ヒ
當ルコトガ多イノデアリマシテ、ドウシテ
モ雇主ガ理解ヲシテ、喜ンデ自分ノ雇傭シ
テ居ル者ヲ靑年學校ニ送リ出スト云フ氣分
ニナラセナケレバ、非常ニ是ハ困難ダト思
フノデアリマス、又一面ニハ、此ノ生徒ノ
好奇心ト云フモノガ興味ヲ起スコトニナリ
マスノデ、平素ヤッテ居ル事ヨリ變ッタ事ヲ
ヤルト云フコトガ、却テ興味ヲ惹キ起スコ
トガ多イノデアリマス、〓練ノ如キハ必ズ
シモサウ云フ風ニ例示スルノハ穩當デナイ
カト思ヒマスガ、非常ニ肉體的ニハ疲レ切ツ
テ居ルニ拘ラズ、〓練ニ喜ンデ來ルト云フ
コトハ、肉體的ノ疲勞ト云フコトヨリモ、
變ッタ事ヲ非常ニ樂シムト云フコトニナルノ
デハナイカト思フノデアリマス、又一面靑
年ニハ有リ勝ナ優越感デアリマシテ、學科
ヲ習フ際ニ、外ノ者ヨリモ自分ハ其ノ事ニ
精シイト云フコトニナリマスト、興味ヲ惹
クコトガアルノデアリマス、其ノ點ハ平素
ヤッテ居ル仕事ヲ〓ヘルト云フコトモ、亦是
レ興味ヲ惹ク點ニモナルノデハナイカト云
フコトヲ自分ハ考ヘタコトガアリマス、例
ヘバ銀行等ニ通ッテ居ル者ニ手形ノ話ヲス
ルト、外ノ生徒ニハ分ラヌノニ自分ニハ分
ル、非常ニ得意ニナッテソレヲ聽クト云フ
ヤウナコトガアリマス、只今御示ノ點等モ
考慮シテ十分ニ其成績ヲ擧ゲタイト、斯ウ
云フヤウニ思ッテ居リマス、殊ニ映畫ノ如キ
ハ私共痛切ニ其ノコトヲ感ジテ居ルノデアリマ
シテ、映畫〓育ハ益〓能ク之ヲ利用致シマシテ、
一面ニハ映畫ノ惡影響ヲ受ケナイヤウニ指
導スルト同時ニ、一面ニハ學問修得ノ便ニソ
レヲ供スル方ガ一擧兩得デアルト、斯ウ考ヘテ
居リマスノデ、其ノ點ニ付テハ十分ニ考へ
テ實施シタイ、斯ウ云フヤウニ思ッテ居ル次
第デアリマス、ソレカラ只今高等小學トソ
レカラ靑年學校本科ノ關係ヲ御示ニナリマ
シタ、此ノ點ハ當局トシテモ非常ニ苦心シ
テ居ル點デアリマシテ、勿論一方ニ於テハ
餘暇ノヤウニヤッテ居ルモノデアリ、一方
ニ於テハ專念シテ居ル生徒デアリマスカラ、
知識ノ點ニ於テハ、時間ノ點カラ考ヘマシ
テモ差ガアルノヂヤナイカト云フコトヲ考
ヘルノデアリマス、併シ靑年學校ハ事新シ
ク申ス迄モナク、實生活ニ卽シテ、實生活
ヲ基準トシテ學問ヲ修得スルノデアリマス
カラ、單ニ知識ニ偏スルト云フコトハ極力
避ケナケレバナラヌト思ヒマス、從ツテ本
科ニ進ンデ、高等小學及ビ普通科ト兩方カ
ラ來ル生徒ヲ比較シマスト、知識ノ點ダケ
考ヘテ見マスト、或ハ高等小學ノ方ガ宜シ
イカ知レマセヌガ、實生活ニ卽シテ、實
業的ノ知識ヲ修得スルト云フ靑年學校ノ趣
旨カラ申シマスト云フト、必ズシモ非常ニ普
通科出身ノ者ガ惡イト云フヤウニハ見ルコト
ハ出來ナイダラウト思ヒマスルガ、併シ〓
授ヲスル際ニハ知識ノ差ガアリマスカラ、
非常ニ是ハ困難ダト思ヒマス、從ッテ今〓授
細目ヲ考ヘテ居リマスルガ、ソレ等ノ點ハ
十分ニ考慮シテ、格段ノ注意ヲ以テ〓授ニ
當ルベキモノト、斯ウ考ヘテ居リマシテ、
一層此ノ點ハ注意ヲ致シタイト存ズル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=16
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017・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 今ノ御話ハ一應御尤ダト
思ヒマス、唯其ノ人間ガ銀行ナラ銀行ニ晝
間働イテ居ル、夜間ノ靑年學校デアリマシ
タラ、サウシテ夜ニナッテカラ又銀行ノ話ナ
ンドヲ色々〓ヘテヤル、サウスルトソレニ
對シテ興味ヲ持ツジヤナイカ、斯ウ云フヤ
ウナ御話デシタガ、是ハサウ云フ場合モア
ルダラウト思フ、處ガ是ハドウ致シマスカ、
餘リ澤山〓授時間ハ······今次官ガ仰シヤッ
タ通リナイノデス、サウスルト其ノ者ハ銀
行ニ從事シテ居ル、色々ナ職業ガアリマス
カラ、色々ナ職業ヲ各別ニ〓ヘルト云フコ
トハ到底出來ルモノデナイ、丁度幸ヒニ農
業ノ盛ンナ所デ、殆ド九十「パーセント」迄
農業ニ從事シテ居ル者デシタラ、是ハ農業
ノ話ナドヲシタラ大變宜イノデスガ、色々
千差萬別、生徒ガ色々ノ職業ニ從事シテ居
ルノデアリマス、ソレガ皆ガ知ッテ居ルコト
デアレバ宜シイガ、自分一人ダケ分ッテ大
變面白イノデアリマスト、後ノ者ガ皆詰ラ
ナイト云フコトニナル、餘程斯ウ云フ點ハ
實地問題ニナッタラムヅカシイコトヂヤナ
イカ、ソレカラシテ高等小學ナルモノハ
成ル程智力ノ點ニ於テハ豫科ヲ修得シタル
者ヨリハ優ッテ居ルカモ知レナイ、併シナ
ガラ實生活ニ觸レテ居ルノダカラ、其ノ點ニ
付テハ差引勘定デ同ジヤウナコトニナル
ノヂヤナイカト、マア早ク申セバサウ
云フヤウナ御話デシタケレドモ、高等
小學デモ大抵私ハ實生活ニ觸レテ居ルト
思フノデス、今ハモウ御承知デモゴザイ
マセウケレドモ、高等小學ノ一年二年
ノ時ニハ春休デアルトカ、夏休デアルトカ
云フヤウナ時ニハ、アッチノ商店ニ見習ニ行
キマシタリ雇ハレマシタリ色々シテ、サウ
シテモウ高等小學ニ在學シテ居ル時カラ色
色ノ職業ニ就キ、素地ヲ作ラス爲ニモウ實
地ニ殆ドヤッテ居ルト同ジヤウナコトヲヤッ
テ居ルノデスカラ、何ント言ッテモ總テノ點
カラ私ハ高等小學ノ方ガ優ッテ居ルノヂヤ
ナカラウカ、殊ニ家庭ノ關係等カラ考ヘマ
シテモ、生活ノ程度カラ言ヒマシテモ、高
等小學ニ在學シテ居ル者ト、ソレカラ今度
靑年學校ノ豫科ニ在學シナケレバナラヌヤ
ウナ境遇ノ者トハ、境遇ガ餘程違ッテ居リマ
スカラ、何ント言ッテモ是ハモウ兩方ノ者ガ
程度ガ違フト云フコトハ是ハ免レナイ、又
ソレヲ〓ヘル先生ガ非常ニ骨ガ折レル、ソ
レカラ後デ申シマスガ、是ハ先生ニ人ヲ得
ルト云フコトガ餘程ムヅカシイノヂヤナイ
カ、先刻頂戴シタ此ノ書類ノ中ニアルカモ
知レマセヌガ、餘リサウ高イ俸給ヲ頂戴シ
テ居ル先生ガドレ程アルダラウカ、殊ニ兼
務ナドニナリマシタラ、先刻申シタヤウナ
相當疲レ切ッタヤウナ者ガ今度〓ヘニ行ク
トカ、或ハ小遣取ニ出掛ケルトカ、外ノ職
業ガアリナガラ出掛ケルト云フヤウナ人ガ
〓ヘテ行クノデスカラ、サウ云フ〓ヘルノ
ニ骨ノ折レル生徒ヲ、マア何ント言フカ、
割合ニ月給ガ安イカラ、安イカラ惡イトハ
申シマセヌケレドモ、地方ナドデハ靑年學
校ノ先生ト云フノハ殆ド先生ノ中デモ一番
薄給デアッテ、マア一番低級デアルカノ如ク
ニ言ハレテ居ルノデスカラ、サウ云フヤウ
ナ人ニ依ッテ一番ムヅカシイ仕事ヲシテ行
カナケレバナラヌト云フノデアリマスカラ、
此ノ靑年學校ノ效果ヲ擧ゲルト云フコトニ
ハ餘程骨ガ折レハシナイカ、是ハ少シ意見
ノ相違ニナルカモ知レマセヌガ、私ハ思フ
ノデスガ、マア映畫〓育ニハ大變御贊成下
スッタノデスガ、映畫〓育ハ、是ハモウ靑年
學校ハ殆ド映畫〓育デヤラナケレバナラヌ
ノヂヤナイカト迄思フノデス、此ノ學科目
ナドヲ拜見スルト、修身科ト云フモノガア
リマスデスガ、是ハ修身科ト云フヤウナモ
ノヲ靑年學校ニ特ニ御置キニナル必要ガ、
實ハアルデアラウカドウカト云フコトヲ思
フノデス、公民〓育ガ一ツノ修身〓育デス、
又外ノ職業〓育モ卽チ一ツノ修身〓育デ
ス、總テノ學科ヲ通シテ修身〓育ヲスルヤ
ウニシナイト、先生ガ〓壇カラ單ニ修身ノ
講義ヲシタ所デ、眠イ眼ヲ擦ッテソレガ耳ニ
這入ルモノデアラウカ、旣ニ國民〓育デ基
礎〓育ハ修身デヤッテ居ルノダカラ、修身ト
云フモノハ基礎〓育デ澤山ダ、ソレヲ更ニ
スルノニハ映畫デ見セルトカ、或ハ他ノ學
科ニ織込ンデヤルトカシテヤラナケレバ私
ハ噓ダト思フ、此ノ修身科ト云フヤウナコ
トヲ御書キニナッタダケデハ、是ハドウモ失
禮ナガラオ役人ト云フ者ハ斯ウ云フモノカ
ナト云フコトヲ實ハ思ッタノデス、修身ハ修
身デヤレルモノヂヤナイノデゴザイマス、
實際ソレハ小學校デモ修身デ修身ヲヤルト
云フコトガ相當問題ニナッテ居ル、ソレヲバ
又靑年學校ニ來テカラ、修身ノ學科ヲバ演
壇カラヤレト言ッタッテ、ソレハモウ修得シ
得ラレルモノヂヤナイノデス、併シソレガ
映畫〓育デ修身科ヲヤルノダト仰シヤルカ
モ知レマセヌガ、是ガナカ〓〓ムヅカシイ
コトデ、是ガ修身映畫ダゾ、是ガ〓育映畫
ダゾト言ッテ生徒ニ御臨ミニナッタラ、其ノ
映畫ト云フモノハ殆ド値打ノナイモノニナッ
テシマフノデ、是ハマア映畫法ガ出マシテ
カラ緩ックリ議論ヲ致シマスケレドモ、私ハ
サウ云フ工合ニ思ッテ居ルノデス、ダカラ是
ハ餘程ムヅカシイ、靑年學校ト云フモノヲ
ヤルノハ餘程ムヅカシイ、先生ニ人ヲ得ル
ト云フコトガムヅカシイ、出席率ト云フモ
ノガナカ〓〓ムヅカシイ、生徒ノ種類ガ幾
通リニモアルノニ、ソレヲ一纒メニスル、
嘗テ申シタコトニ後戾リ致シマスガ、是八
國民〓育ノ義務制ヲ八年ニシテ、ソレカラ
後ニ靑年學校ニヤッタラ、私共ノ心配スルコ
トガ除カレル、併シ靑年學校ヲ先ニシテ後
カラ高等小學ヲヤル、是ハ文部大臣ハ十五
年度カラヤルト言ッテ居ラレルガ、私ガ斯ン
ナコトヲ申シタラ御ヤリニナラヌカモ知レ
マセヌガ、恐ラク文部大臣ハ十五年度カラヤ
レナイト思フ、財政ヤ其ノ他色々ノ關係ガアル
カラヤレナイト思フ、餘程大膽ナコトヲ仰
シヤッタガ、ドウニカシテ來年度迄ハ先ヅ
文部大臣ニ御留任願ハナケレバナラヌ、何
ントカ此ノ問題ダケニ付テモ文部大臣ニ御
留任願ヒタイト思ッテ居ル位デスガ、私ハ十
五年度ニハ此ノ國民〓育ノナニガ、義務〓
育延長ト云フコトハ如何ニモムヅカシイコ
トヂヤナイカト思ヒマス、是カラ先ハ色々
意見ニナリマスカラ、此ノ程度ニシテ置キ
マシで、次ニ私バカリデ甚ダ失禮デスケレド
モ、序デスカラモウ少シ伺ハシテ戴キマス、
此ノ間社會〓育局長サンカラ、田所サンカ
ラノ御質問ニ對シテ大體ノ要項ヲ御說明戴
イタ時ニ御話ヲ承ッタノデスケレドモ、チヨッ
ト御伺ヒ漏シマシタノデ、モウ一遍恐縮デ
スケレドモ伺ヒタイノデス、國庫デ此ノ靑
年學校ノ〓育費ヲ補助ナサレマスル割合ハ、
十四年度ハドウ云フ割合ニナッテ居ルモノ
デセウカ、ソレカラ其ノ翌年カラハドウ
云フ割合デ進マレルノデスカ、チヨット其ノ
市町村デ持チマス費用、〓費育ト、ソレカ
ラ國庫デ補助サレマスル割合ト、ソレヲ失
禮デスケレドモモウ一遍伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=17
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018・田中重之
○政府委員(田中重之君) 靑年學校ノ義務
制ヲ布クニ付キマシテ、國庫カラ相當ノ支
出ヲ致スベキガ至當デゴザイマス、ソレデ
昭和十四年度ニ於キマシテハ、先般申シマ
スルヤウニ四百三十萬圓ノ補助金ヲ計上
致シマシテ、過日帝國議會ノ御協賛ヲ得タ
ヤウナ次第デアリマス、此ノ四百三十萬圓
ノ金額ハ、昭和十四年度ニ於キマスル所ノ
專任〓員ノ俸給ニ對シマスルト三割弱ニ相
成ルノデアリマス、ソレカラ昭和十五年度
ニ於キマスル國庫補助ヲ計上致シマシタ基
礎ハ、先般申上ゲタ通リニ從來ノ補助金ヲ
基ト致シマシテ、昭和十四年-度ニ於テ義務
制實施ノ結果增加スベキ生徒數ヲ基本ト致
シマシテ、之ニ要スベキ所ノ〓員ノ俸給ト
云フモノヲ推定致シマシテ、此ノ半額ヲ國
庫ガ持ツト云フ、斯樣ナ計算デ致シタノデ
アリマス、今後義務制ノ進捗ニ伴ヒマシテ、
〓員モ增加シ又地方ノ負擔ヲ增大致スノデ
アリマスルガ、之ニ伴ヒマシテ國庫カラノ
補助金ガ逐次增額致サルベキ筈デゴザイマ
ス、唯其ノ將來ノ補助計畫ニ付キマシテハ、
義務制ノ實施ニ伴ヒマスル所ノ生徒ノ增加
數ト云フヤウナモノガ、文部省ト致シマシ
テハ推定致シマシタ數字ヲ有シテ居ルノデ
アリマスガ、大藏省ト致シマシテハ、是等
ノ實績ヲ少クシタイト云フ希望ガアリマス、
又地方財政ノ改革ナルモノモ行ハレルト云
フヤウナ情勢モアリマシテ、計畫的ナ總括
的ナル所ノ數字ヲ此ノ際政府ノ數字ト致シ
マシテ、昭和十五年度以降大體斯ウナルト
云フコトヲ申上ゲマスルコトハ、政府全體
ト致シマシテ稍〓困難ナ狀況ニアルノデア
リマス、唯先程申上ゲマシタ昭和十四年度
ニ於キマシテ補助費ヲ計上致シマシタヤウ
ナ方法ト云フヤウナモノヲ基準ト致シマシ
テ、文部省ガ計算致シマスレバ、先般申上
ゲマシタヤウニ將來ニ於ケル國庫補助金ハ
千數百萬圓ニ達スルノデアリマシテ、斯ウ
云フ風ニナリマシタ場合ニ於キマシテハ
少クトモ專任〓員ノ俸給ニ對シマシテハ五
割程度ニハ達スルコトト考ヘルノデアリマ
ス、昭和十四年度ニ於キマシテ直チニ五割
程度ノ補助費ヲ計上スルノガ至當デハナイ
カ、是ハ御質問ニゴザイマセヌコトデ、大變
餘計ナコトヲ申上ゲルヤウデアリマスガ、
至當デハナイカト斯ウ云フ御議論モ十分ア
リ得ルノデアリマス、現ニ小學校ノ義務〓
育費ニ付キマシテハ、大體年々增額シテ參ッ
タノデアリマスガ、兎モ角今日ニ於キマシ
テハ〓員俸給ノ略〓半額ト云フモノヲ、大體
國庫カラ負擔致シテ居ルノデアリマスカラ、
此ノ先例カラ申シマシテモ靑年學校ノ義務
〓育ヲ布キマスル場合ニ於キマシテ、直チ
ニ〓員俸給ノ半額ヲ國庫ガ負擔スルト云フ
コトヲ實現スルノガ至當デハナイカト云フ
議論ガ十分ニ立チ得、又サウ云フコトヲ要
求スル合理的ナ事情モ私ハ十分アリ得ルコ
トト考ヘルノデアリマス、唯併シナガラ現在
昭和十三年度ノ實情カラ申シマスルト、固ヨ
リ〓員俸給ノ半額ヲ國庫ガ負擔致シテ居リ
マセヌノデ、今日一擧ニ〓員俸給ノ半額ヲ國
庫ガ負擔スルト云フコトヲ實行致シマスル
ト結果ニ於キマシテハ全般ト致シテ地方
財政ガ、義務制實施ノ結果負擔ガ輕クナル
ト云フ結果ヲ生ズルノデアリマス、輕クナ
ルト云フコトハ固ヨリ不合理ノコトデハナ
イノデアリマシテ、靑年學校ノ義務制ハ兎
角遲レ勝チナノデアリマシテ、斯クシテ生
ジマシタ餘裕ヲ以チマシテ靑年學校〓員ノ
充實ヲ圖ルト云フコトハ、靑年學校充實ノ
見地カラ申シマスレバ誠ニ望マシイコトデ
アリ、又十分理由アルコトト考ヘルノデア
リマスガ、國庫ノ現在ノ情勢カラ申シマシ
テ、斯クノ如キ餘裕ヲ生ゼシメルヤウナ方
法ニ依リマシテ、靑年學校ノ補助費ヲ計上
致シマスルコトニ今日相當困難ナル事情ガ
アリマスルコトヲ、文部當局トシテモ十分
推察致サナケレバナラヌノデアリマス、斯
クノ如キ次第デアリマシテ昭和十四年度ニ
於キマシテハ、先程申上ゲマシタ程度ノ補
助率ニ相成ルノデアリマス、併シナガラ義
務制ノ實施ニ伴ヒマシテ生徒數モ增加シ、
地方財政ノ負擔モ漸次增加シテ參リマス、
之ニ伴ヒマシテ國庫ノ支出金モ漸次增額シ
テ參リマスノデ、其ノ點ニ於キマシテ逐次
此ノ地方財政ト國庫財政ノ調整ト云フモノ
ハ、合理的方向ニ近付イテ行クヤウニ努力
致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=18
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019・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 後ノ御說明デ伏線ヲ張ラ
レマシタノデ、私質問スルコトガ大分少ク
ナッテ來タノデアリマスガ、今成ルベク多ク
ノ補助ヲ政府ガ國費デシタイノダケレド
モ、ドウモ現狀ヲ見レバ、ソレダケノ澤山
ナモノヲ補助スルコトハ出來ナイノダ、斯
ウ云フ御話デアリマスガ、併シソレハ地方
費ノ方カラ云ッタラ、モット尙ソレ以上ニツ
ライモノデハゴザイマスマイカ、デ小學
校ノ方ノ義務〓育費ノ國庫補助ト云フヤウ
ナ問題ノ起リマシタ時分ハ、相當マダ地方
ノ財政モ豐ナ時分デアリマシタカラ、、、
云フヤウナ法律ガ出來タノダト思ヒマスケ
レドモ、今日デハ地方ノ財政ガ非常ニ窮迫
シテシマッテ、サウシテ迚モ地方ノ財政ハ地
方ノ收入ダケデ賄ッテ行クコトガ出來ナイ
ト云フノデ、政府カラシテ地方財政交付金
ト云フモノヲ每年交付サレルコトニナッタ、
ソレデ今衆議院ナドデモ論議サレテ居リマ
スガ、遊興稅ヲ國稅ニ取上ゲル、斯ウ云フ
コトニナルト、其ノ代リニ又地方財政補給
金ヲ增シテヤル、斯ウ云フヤウナコトモ內
務省デハ御答辯ニナッテ居リマス、恐ラクサ
ウ云フコトヲ爲サラナケレバナリマスマ
イ、又是ハ內務省ノ中デモ相當議論ガアリ、
議員ノ中ニモ相當議論ガアリマスガ、今日
市町村ノ役場ノ吏員ト云フモノガ非常ニ少
クナッテ居ル、サウシテ非常ニ財政ガ窮迫シ
テ居ルノデ、仕事ハ殖エテモ人ヲ殖ヤスコ
トガ出來ナイ、サウシテ給料ガ比較的安
イ、ソコデモウ仕事ハ非常ニ停滯シ、又サ
ウ云フヤウナコトニ從事スル人間ガ、段々
ト素質ガ低下シテ行ク、ダカラ何トカシテ
政府カラソレダケノ國費ノ補助ヲ願ヘナイ
モノダラウカト云フノデ、町村長會ナドデ
陳情ニ來テモ居リマスシ、此ノ間三分科ノ
內務省ノ所管デ私モ質問シテ、何トカ是ハ
シナケレバナラヌト云フヤウニ、內務省デ
モ考ヘテ居ル時ナンデスカラ、地方ノ財政
ノ窮迫シテ居ルコトハ實ニ甚ダシイモノガ
アル、ソコヘ持ッテ來テ靑年學校ト云フモノ
ヲ政府ガ思ヒ立チ、國デドウシテモ立派ナ
靑年ヲ造ラナケレバナラヌト云フ、此ノ思
召ハ宜イノダガ、ソレヲスルト云フコトニ
ナッタラ、假令補助ニナッテモ、補助ヲセラ
レナイ額ダケハ地方ガ負擔ヲシテ行カナケ
レバナラヌ、ダカラ是ハ何トカシテ全額支
辨サレルト云フ方法ヲ、御執リニナレヌモ
ノデアラウカ、是ハ地方財政ノ豐ナ時ニ出
來タ小學校ノ義務〓育費ト、大分私ハ趣ガ
違フト思ヒマスガ、是ハ或ハ大臣ニ伺フベ
キデアルカ知レマセヌガ、併シ政務次官
モイラッシヤルカラ、何トカ考ヘルコトハ
出來ナイモノデアラウカ、是ハ衆議院デ
モ大分意見ガ出タヤウニ思ヒマスガ、是
ハ私ガ申シタ所デ行ハレルモノデモナイケ
レドモ、併シナガラソレハ考ヘルノガ當然
ナコトデナイカト思フノデス、ソレカラ
段々ト補助率ヲ殖シテ行クト、斯ウ云フヤ
ウナ御話ニ今伺ッタノデスケレドモ、今此ノ
補助率ハ殖シテ行ク考ダト仰シヤッテモ、斯
ウ云フヤウナ法律デアリマシタラ、是ハ減
ラスコトモ出來ルノデ、土木費ナドデモ能
クアルコトデ、必ズソレダケヤル、翌年度
カラ增ス積リダト云フコトデ、大臣ガ豫算
委員會ナドデ御言明ナサッテモ、次ノ議會ノ
時ニ豫算ヲ見ルト、繰延ベラレタリ減額サ
レタリスルコトガ往々アル、減ルト云フコ
トガアル、スルト是ハ大變私ハ不確カナ法律
デナイカト思フ、政府ガ增スト言ッテモ、又
增スト云フ御考デ、今ハ間違ナイ、變更ハ
シナイ、屹度增スト云フ御考デ仰シヤッテ居
ルケレドモ、其ノ時ノ狀況、其ノ時ノ大臣
ナドガ色々迭リマスト、每年是ダケノ金額
ハ豫算デ支出スルト云フコトニナッテ居リ
マスガ、減ラスト云フコトモ出來ル、是ハ何
處カヘ、今年ノ額ヨリハ減額セズト云フヤ
ウナ意味ノコトヲ入レルコトハ出來ナイモ
ノデセウカ、ソレデ一ツ「スタンプ」ヲ捺シテ
置カヌト危イモノダラウト思フ、併シナガラ
ソレハ增スヤウニナッテ居ルノダガ、オ前ノ
方ノ法文ノ讀ミ方ガ惡イノダト言ハレヽバサ
ウデスガ、ソレハ文部省デ御考ニナッテモ、大
藏省ヘ行ッテカラ減ラサレルカモ知レヌ、ダ
カラ是ハ半額以上ハ必ズ補助スル、ソレ以
下ニハ決シテ減ラサヌト云フコトヲ、今度
初メテ法律ガ出ル時ニ、何處カニ書クコト
ハ出來ナイモノカ、私ハ全額ヲ支給スベキ
モノト思フ、國ノ財政ガツライト言フガ、
地方ハモットツライダラウ、自分ノコトハ言
フケレドモ、餘所ノコトハ御心配下サラヌ
ト云フコトニナルノデ、是ハ地方財政ハ確
カニ窮迫シテ居リマス、官吏ハ匹當ノ數ヲ
增シテ居ルケレドモ、公吏ハ增スコトガ出
來ナイ、其ノ位窮迫シテ居リマス、ドウシ
テモ之ヲ全額、ト言ッテモ出來ル筈ハナイノ
デスケレドモ、セメテコヽ數年ノ內ハ、此ノ
法律デハ每年豫算ニ組メルノダカラト言ツ
テモ、豫算ヲ減ラサルト云フ憂ガアルノデ
スガ、何トカサウ云フコトノ出來ナイコト
ヲ、何カ法文ノ中ニ御加へニナレバ、今仰
シヤッタ御意思ガソレデ達セラシル、今ノ政
府ハ減ラサウト云フ御考ハ決シテ持ッテ居
ラッシヤラナイノデスカ、之ニ對シテドンナ
モノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=19
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020・田中重之
○政府委員(田中重之君) 私カラ一應申上
ゲマス、此ノ法律ニ於キマシテ非常ニ不確
カデハナイカ、デアルカラ豫算ノ中ニ少ク
トモ現在ノ程度ニ書クノガ宜イデハナイ
カ、斯ウ云フ御話デアルノデゴザイマス
ガ、先程御話申上ゲマシタ通リ昭和十四年
度ノ豫算ト申シマスノハ、昭和十四年度ニ
於キマシテ新タニ義務制ノ結果、義務ヲ强
制セラレルモノト推定セラレル者約十萬六
千人程ノモノヲ標準ト致シマシテ此ノ金額
ガ計上サレテ居ルノデゴザイマス、靑年學
校ノ義務制ハ申ス迄モナク本體ハ本科ニア
ルノデゴザイマシテ、普通科ハ謂ハバ其ノ
前提程度ニ過ギナイモノデゴザイマス、從ッ
テ文部省當局ト致シマシテハ、四百三十萬
圓程度ノ昭和十四年度ノ豫算ト云フモノガ、
此ノ靑年學校義務〓育ヲ遂行シテ行ク上ニ
於キマスル所ノ補助ノ基準ニナルモノトハ
實ハ初メカラ考ヘテ居ラナイノデゴザイマ
シテ、從ッテサウ云フモノヲ豫算ノ上ニ揭ゲ
テ置クト云フコトハ、實ハ凡ソ考ヘテ居ラ
ナカッタノデゴザイマス、併シソレサヘモ減
ラサレル虞ガアルノデハナイカ、ダカラソ
レヲ書イテハドウカト云フ御話デゴザイマ
シテ、ソレハサウ云フコトモ考ヘラレルコ
トト思フノデアリマスガ、當局ト致シマシテ
ハ四百三十萬圓程度ノ此ノ金額ト云フモノ
ガ、靑年學校〓育補助ノ一ツノ基準ニナル
モノトハ實ハ思ッテ居ラナイノデアリマス、
然ラバ將來ドウ云フ風ノ見透シデ居ルカ、
ソレヲ一ツ理想ヲ揭ゲテ置イタラ宜イデハ
ナイカト云フ御考ノヤウニ拜察致シタノデ
アリマスガ、私共モ實ハサウ云フコトヲ考
ヘルノデゴザイマス、併シナガラ先程申上
ゲタヤウナ次第デゴザイマシテ、將來ノ具
月号店尙相當實況ヲ
體的ノ數字ニ付キマシテハ、
見ナケレバナラナイト云フ點ガゴザイマス
ノデ、大變法文ト致シマシテハ整ハザル、
不十分ナル點ガアルノデゴザイマスケレド
モ、斯ウ云フ原案ヲ以チマシテ御審議ヲ御
願ヒ申上ゲマシタヤウナ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=20
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021・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 此ノ問題ハ又他日ニ讓リ
マシテ、厚生省ノ方ガ居ラッシヤルト大變
宜イノデスガ、或ハ話ノ模樣ニ依リマシテ
厚生省ノ御方トモ御話シテ見タイト思フノ
デアリマス、常識カラ考ヘマシテ、ドンナ
ニ興味ノアル〓育ト致シマシテモ、何デゴ
ザイマシテモ、働イタ後デ又勉强ヲサス、
或意味ニ於テハ働カセモスル、斯ウ云フコ
トニナルノデスガ、ドウモ是ハ常識カラ考
くり、ドウシテモ體位ノ向上デナクシテ、
體位ノ低下ニナリハシナイカト云フ虞ヲド
ウモ私ハ持ツノデアリマス、一昨日政府委
員ノ御說明ノ中ニ、靑年學校ヲ卒業シテ兵
士トナッタ者ハ、他ノ者ニ較ベルト餘程優秀
ナモノガ多イト云フ御說明デアリマシタ、
是ガ靑年學校ヲ義務制ニシタ一ツノ理由ノ
ヤウニモ承ッタノデアリマス、是ハ昨年ノ議
會ニ前陸軍大臣ノ杉山サンガ、私ノ質問ニ
對シテモ共ノ御答ヲナサッタコトガアル、併
シソレハ餘程私ハ考ヘテ戴キタイト當時モ
申シタ、晝働イテ夜又勉强シヨウト言ッテ、
サウシテ義務制デモ何デモナイノニ出席シ
テ、一生懸命勉强シテ、オ終ヒ迄卒業シ得
ラレルヤウナ靑年デアルノダカラ、體格ニ
於テモ餘程優秀ナモノデアル、智力ニ於テ
モ、ソレダケニ伸ビ得ラレルダケノ智力ヲ
持ッテ居ラレル方デアルカラ、モウ旣ニ其ノ
素質ガ良イカラ、ソレデ兵ニナッテモ良イノ
デ、靑年學校ニ入ッタカラ良イト云フヨリ
ハ寧ロモウ靑年學校ニ入ル前カラ良イ體
格ニナッテ、智力モ進ンデ居ッテ、サウシテ
靑年學校デハ或ハ或意味カラ言ッタラ多少
惡クサレテモ、ソレデモ普通ノ人ヨリ優ッテ居
ル位デ、素質ガ良イノデ、是ハ靑年學校ニ
入ッタカラト云フコトノミヲ考ヘルコトハ
出來ヌト私ハ杉山サンニ反駁シタ、ソレニ
付テハ杉山サンモ御答ガナカッタ、私ハサ
ウ今デモ思ッテ居リマス、素質ガ良イ、初
メカラ素質ガ良イノデ、靑年學校ハ別ニ問
題ヂヤナイト私ハ思フ、是ハモウ働イタ上
ニ又働クノデスカラ、是ハドウシテモ常識
カラ考ヘテ私ハ體位ノ向上ニナラヌモノト
思ヒマス、靑年學校ハ大概今迄デモサウデ
スガ、今後ト雖モ大〓小學校ニ併設サレル
デハナイカト思フ、小學校ニ併設サレル
コトニナリマスト、小學校ハ御承知ノ通リ
十四歲······十四歲ト申シマシテモ十四歲以
下ノ兒童デモ、其ノ體格ニ適スルヤウニ机
カラ椅子カラ總テ出來テ居ル、ドウモ働イ
タ揚句ニ勉强ニ來テ、子供ノ机、子供ノ椅
子ニ掛ケテ窮屈ニ又夜勉强ヲスル、モウ働
イタ揚句ニハ少シ手足ヲ伸バシテ緩ックリ
トシタイヤウナ所ヲ、今度ハ子供ノ椅子、
子供ノ机デ縮カマッテ勉强ヲスルト云フヤ
ウナノハ、隨分是ハ骨ノ折レルコトデハナ
イカ、サウ云フヤウナ點カラ働イタ揚句ニ
働ク、サウシテサウ云フ工合ニ、何ト言フ
カ小サクナッテ勉强スルト云フヤウナコト
ダケ考ヘテモ、是ハドウモ體位ガ低下スル
デアラウ、目的ハ靑年學校デ勉强サセレバ、
十九歲迄ニハ實ニ立派ナ心身共ニ發達シタ
者ガ出來ル、斯ウ仰シヤルコトハ仰シヤル
ケレドモ、ソシハ又ソレデ理想ニナッテ居
リマスケレドモ、事實ハソレニ反スルノヂ
ヤナイカ、此ノ點ニ對シテハ文部當局ハド
ウ云フ工合ニ御考ニナッテ居ルデセウカ、是
ハ厚生省ノ方ニモ一ツ伺ッテ見タイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=21
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022・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 靑年學校ニ義務
トシテ就學スル爲ニ無理ガアッテ、却ッテ體
位ノ低下ニナル虞ハナイカト云フ御質問デ
ゴザイマス、是ハ一應御尤ニハ存ジマスガ、
併シ靑年學校ニ於テ體育ニ對シテドウ云フ
ヤウニシ、且ドンナ注意ヲシテ居ルカト云フ
コトニ依ッテ、自然此ノ問題モ解決ガ出來ル
ノヂヤナイカト思フノデアリマス、靑年學
校ニ於キマシテハ、他ノ職業ニ從事シテ居
ル者ヲ收容シテ體育ヲ施スヤウナ場合ニハ
此ノ職業ト身體ト云フヤウナコトモ考慮シ
テヤル必要ガ特ニアルダラウト思フノデア
リマス、從ッテ所謂職業病ト謂ハレテ居ル
ヤウナモノニ於テ、ソレヲ矯正スルヤウナ
體育ヲ施スト云フコトニナレバ、必ズヤ其
ノ職業ニ因リ來ル所ノ弊害ヲ防イデ、體位
ノ向上ニナルノデハナイカ、能ク壯丁檢査
ニ於テ實驗スル所デアリマスガ、大體ニ於テ
例ヘバ理髪業ニ從事シテ居ル者ノ體位ハ惡
イヤウデゴザイマス、デ靑年學校ニ於キマ
シテモ此ノ點ガ能ク問題ニナルノデアリマ
シテ、理髪業者ヲ適當ノ時間ニ集メテ、サウ
シテ靑年學校ノ〓育ヲ施シマスルト、非常
ニ體育上好結果ヲ現シテ居ル實例モ我々
ハ耳ニスルノデアリマス、斯樣ニ致シマ
シテ、靑年學校ニ於ケル體育ヲ施ス場合ノ
ヤリ方ニ依ッテ、十分ニ今ノ目的ヲ達シ得ル
ノデハナイカト斯ウ考ヘテ居リマス、併シ
勿論一面ニ於テハ過勞ニ屬スルト云フヤウ
ナ點モ考ヘナケレバナリマセヌ、又今御示
ノヤウニ從來ノ義務制デナイ靑年學校ニ於
テハ、其ノ疲勞ニ堪ヘテ通學スルダケノ壯
健ナ者ノミ來タト云フ見方モ、私ハ御尤ト
存ジマスガ、將來義務制ニナリマスレバ、
體育ヲ施ス際ニ、日常ヤッテ居ル所ノ職業等
ヲ十分ニ考慮ニ入レテ、サウシテ適切ナル
體育ヲ施シマシテ、體位ノ向上ニ資シタイ
ト存ズル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=22
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023・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 大分伺ヒタイコトガアリ
マスケレドモ、文部大臣ガ御出席ニナリ
マシタラ、或ハモウ一度申サナケレバナラ
ヌカト思ヒマスカラ、私ハ大體此ノ程度デ
措キマシテ、サウシテ更ニ又大臣ノ御出席
ニナリマシタ時ニ、或ハ場合ニ依ッテ厚生省
カラモドナタカ御出ヲ願ッテ、或ハ大藏省カ
ラモ御出ヲ戴クト云フコトニシマシテ、兎
ニ角只今ハ此ノ程度ニシテ置キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=23
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024・田所美治
○田所美治君 一二御伺ヒ致シタイノデア
リマスガ、紀男爵ガ色々御自身ニモ御關係
ニナッタリ、又此ノ靑年學校ダケヂヤナシニ、
地方ニ平常御住ヒニナッテ、市町村ニ於ケル
〓育關係ニハ御自身御體驗ノコトハ始終知ッ
テ居リマシタガ、靑年學校ニモ御關係ガア
ルト云フノデ、私共ノ御尋ネハ······先程私
ノ名前モ御引キニナリマシタガ、私共ハ机
上デ唯考ヘテ居ルダケナンデアリマスガ、
大變ニ適切ナ御〓ヲ受ケタ譯デアリマス、
修身科ノコトト云ヒ、映畫〓育ト云ヒ、其
ノ他ノ御話、誠ニ御尤ニ存ジマス、必ズ當
局ニ於キマシテモ矢張リ同樣ナ、サウ云フ
方面ニ付テハ考ヘテ施設準備ヲシテ居ラレ
ルコトト私ハ確信致シマス、ソレデ今度ノ
靑年〓育ヲ義務ニスルト云フコトヲ紙上デ、
法律ノ上デ讀ンデモ、マサカ明治ノ初年ニ
義務〓育ヲ布キマシタ時分ノヤウナコトハ
アリマスマイガ、旣ニ百數十萬ノ生徒ヲ有
シテ居ル靑年學校デアリマスカラ、サウ云
フコトモアリマスマイケレドモ、此ノ間
モ伺ッタ通リ是ハ唯義務〓育トハ稱スルケレ
ドモ、其ノ寳行ハナカ〓〓十數年ノ後デナ
ケレバ、完全ニハ行ハレヌト云フコトデハ
イカヌト思フ、就學督、勵ニ付テハ非常ナ配
慮ガ要ルト云フ意味デ、此ノ間計畫ヲ伺ッタ
ノデアリマスガ、私モ其ノ點ニ付テハ紀男
爵ト同樣ニ非常ニ憂ヘテ居リマス、唯依賴
スル所ハ、日本人ガ子弟ノ〓育關係ニ付テ
ハ非常ニ深甚ナ配慮ヲ以チマシテ、貧乏者
モ機會均等ト云フコトデ、金持ノ子供ニ劣
ラヌト云フコトデ學校ニ入レルコトハ、汲
汲トシテ努メルノデアリマスカラ、ソレガ
唯一ノ制裁ナクシテ、義務〓育ノ制度モ靑
年學校ニ付テハ矢張リ相當行ハレルモノト
思フ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルヤウナ譯デ
ゴザイマスガ、餘程面倒デアリマセウガ、
其ノ點ニ付テ當局ノ御調ガアレバ願ヒタイ
ノハ、〓育審議會アタリノ答申ノ條項ニモ
關聯シマスガ、今日御尋ニナッタ色々ノ點
ハ審議會デモ皆論及シタ點デモアルヤウ
ニ思ハレマスガ、就學獎勵ニ付テハ特ニ二
三項ヲ決議シテ居ルコトハ當局モ御承知ノ
通リデアリマス、先以テ伺ヒタイノハ、雇
傭者ガ就學義務ヲ奬勵シ、ソレニ便宜ヲ與
ヘ、其ノ實行ヲ督促スル、斯ウ云フ地位ニ、
父兄ニ代ッテ、父兄、保護者ニ代ッテ立ツ譯ナ
ンデアリマスカラ、雇傭ノ場合ニ於キマシテ
ハ、其ノ義務ハドウ云フヤウニ積極的ニ義務
ヲ負ハセマスカ、消極的ノ方デ言ヘバ邪魔セ
ヌ、行ケ、行ケバ其ノ時間ハ、今ノ厚生省ノ社
會法律ニ依ッテ就業時間ノ中ニ加ヘテヤル、
或ハ給料モ相當ニ無論ヤラウ、斯ウ云フコト
ニナルダラウト思ヒマスガ、サウ云フコトデ
消極的ノ方ハ宜シウゴザイマスケレドモ、父
兄ニ代ッテ督促ヲスルト云フコトニ付テハ、
積極ノ義務ヲ負ハセナクチヤイクマイト思
フノデアリマス、ソレニ付テ何カ御工夫ニ
ナッタ條項ガアレバ、矢張リ此ノ會デモ
伺ッテ見タイヤウニ思ヒマス、是ハ當局ニ對
シテ審議會カラ其ノ邊ニ付テ能ク考究シテ
適切ナ方法ヲ講ジロ、斯ウ云フコトヲ希望
致スヤウデアリマスカラ、雇傭者ノ就學奬
勵ニ對シマシテ、積極ニナスベキ義務ヲド
ウ云フ風ニ御負ハセニナリマスカ、元々是
ハ私ハ承知致シテ居リマスガ、雇傭者ノ場
合ニモ制裁ヲ加ヘテ迄强行シヨウト云フコ
トデアリマシタモノラ、日本ノ向學心ノ厚
イ國民ニ對シテハ、旣ニ小學〓育ニ付テモ
數十年間サウ云フ制裁ナシニ、法律上ノ裁
制ナシニ、罰則ノ制裁ナシニヤッテ居ルコト
デアルカラ、是ハ成ルベク此ノ美風ヲ、矢
張リ靑年學校ノ義務ニ付テモト云フコトデ、
維持シテ行カウト云フコトニ付キマシテ、
ソレハ削ラレテ居ルヤウニ記憶シテ居ルノ
デアリマスガ、サウスレバ、今ノ唯社會立
法ノ上ニ付テノ一二ノ就業時間ニ付テ加ヘ
テヤルトカ、俸給ヲ加ヘテヤルトカ云フ位
デハ、ドウモ無論物足ラヌト考ヘルノデアリ
マスガ、何カ雇傭者ニ對シテ積極ニ義務厲
行ノコトニ付テ、御考ニナッテ居ル點ガアレ
バ其ノ條項モ伺ヒタイ、ソレカラ學務委員
ノ此ノ間御話ガアリマシテ、學務委員等相
當機關ヲ設ケテ就學奬勵ヲヤル、小學〓
育ニ多年ヤッタヤウナコトヲヤッテ行ク、斯
ウ云フコトデアリマシダガ、ソレ等ニ付テ
モ唯學務委員ヲ置クト云フコトダケデハナ
カナカ全キヲ得ナイダラウト思ヒマスガ、
何カ學務委員ノスベキ職務、靑年學校ニ付
テハ小學校ヨリムツカシイノデアリマス、
紀男爵ノ御話ニナッタヤウナ點ガ多々アル
ノデアリマスカラ、何カ學務委員ノ職務規
定ト云フヤウナモノニ付テ、特ニ靑年〓育
ニ適切ナ條項ヲ御調ニナッタコトガアレバ
是モ一ツ伺ッテ見タイト思ヒマス、ソレカラ
兒童ソレ自身ニ付テハ是ハ普通科ノ方ハ
マダ單純デ宜ウゴザイマス、高等小學ニ入
ラヌ兒童ガ行ク譯デアリマスカラ、十萬、
十一萬ト云フ御計算デアルヤウデアリマス
ガ、高等小學ヲ卒業シテカラ、是ハ明後年
カラ實施サレマスガ、今日ト雖モ奬勵ハ無
論シナクチヤナラヌ、義務ニナリマセヌ、
奬勵ハ國家トシテシナクチヤナラヌ、此ノ
點ガナカ〓〓困難ダラウト思フノデアリマ
ス、サッキ紀男爵ノ質問ノ中ニモアリマシタ
通リ、却テ工場ハ休ムケレドモ、學校へ行
カナイデ映畫館へ行ッテ遊ンデ居ルトカ、酒
ヲ飮ンデ居ルト云フヤウナ譯ノ話モナイヂ
ヤナイ、出席率ガ惡イ、斯ウ云フコトモア
ルデスカラ、其ノ出席ヲ奬勵シ、就學ヲ奬
勵スルコトニ付テハ、兒童ニ付テモ御配慮
ガアルダラウト思フノデアリマス、本科ダ
ケデナイ、普通科ニ付テモ無論アルコトデ
アルト思フノデアリマスガ、何カ其ノ點ニ
付テ御工夫ハアリマセヌカ、卽チ社會ニ或
ハ工場へ歸ッタ場合ニ、チヤント學校へ行ッ
テ居ルト云フ「バッヂ」ノヤウナ、章票ノヤウ
ナモノデモ御與ヘニナルトカ、ソレニ依ッテ
工場ハ又待遇等ニ付テモ考ヘルト云フヤウ
ニ、工場トノ連絡ト云フヤウナ點迄モ、細
カク一ツ御考ニナラヌト云フトイカヌ問題
ダラウト思ヒマスガ、何カ今日迄ニ御考ニ
ナッタコトガアレバ、兒童自身就學ニ向フ奬
勵ノ方法等ニ付テ御考ニナッタコトガアリマ
スカ、マダアリマセウガ、之ヲ要スルニ私
ノ云フ就學ヲ實行シテ、其ノ效果ヲ擧ゲル
ト云フコトニ付テ御工夫ニナッテ居ル點、今
日迄御調ニナッテ居ル點ガアレバ、ドウ云フ
機關ヲドウ云フ風ニヤラレルカ、又兒童ニ
付テハ斯ウ云フ奬勵方法ヲ執ルト云フコト
ガ伺ヘマスレバ伺ッテ置キタイ、是迄ハ兵役
關係ガ、是ハ皆樣モ御承知ノ通リ六箇月ノ
特典ガアリマシタ、靑年學校ヲ卒業シタ者
ハ二年ノ兵役ヲ一年半デ宜シイ、斯ウ法律
ガ特典ヲ與ヘテ居リマシタ爲ニ、之ガ爲ニ
翕然トシテ農村ヲ初メ商工都市ニ於キマシ
テモ、靑年ハ靑年學校ニ入學シテ居ル者ガ、
非常ニ影響ヲ受ケテ居ッタノデアラウト思
ヒマスガ、今度ハ兵役法ノ改正ニ依リマシ
テ、其ノ特典ハ全ク無クナル、斯ウ云フコ
トニナリマスカラ、餘程其ノ間ニ工夫ガ要
ルダラウト斯ウ考ヘルノデアリマス、固ヨ
リ自分ノ學力モ殖エルシ、人物モ向上スル
シ、文化ノ上カラ國家全體ノ上カラ言ヘバ
此ノ上ナイ仕合セデアリマスガ、個人個
人ノ場合ニ付テハ、ナカ〓〓督勵ガ困
難デアラウト思ヒマスシ、其ノ邊ニ付テ
モ今ノヤウナ點ハ深甚ニ私ハ心配致シ
マスカラ伺ッテ置キタイ、ツレカラ是
モ矢張リ關聯スルコトデアリマスガ、夜間
ノ學校デハ晝疲レテ居ルカラ云々ト云フコ
トヲ紀男爵ガ度々御話デアリマスガ、夜間
ノ學校モナカ〓〓アルヤウデアリマス、此
ノ表ヲ見テ見マスト、是ハ今度ノ審議會等
ニ於キマシテハ、疲勞ヲ標準ニスル其ノ考
ノ基ク所ハ、矢張リ夜ハ疲レテ居ッテ十分ノ
コトハイカヌカラ、此ノ趣旨カラ晝間ヲ以
テ本則トスル、已ムヲ得ザル場合、特別ノ
事情アル場合ハ夜間ヲ許スト斯ウナッテ居
リマスガ、今夜間ノアリマス學校ハ晝ノ疲
レノ影響、殊ニ工業方面ニ行ッテ居ル靑年等
ニ付キマシテハ、當局ハドウナサル御積リ
デアリマスカ、晝間ニ變更ヲセシムルト云
フ位ノ御考デアリマスガ、是モ補助ヲ與ヘ
テ實效ヲ擧ゲルト云フコトニ付テハ、其ノ
邊迄モ御進ミニナッテ宜カラウカト思フノ
デアリマスガ、可ナリ夜間ノ學校モアルヤ
ウデアリマスカラ、二千カ三千位アルヤウ
デアリマスカラ、半分位ソレヲ本則ニ御引
直シニナルト云フヤウナコトノ御考ガアル
カ、サウスレバ紀男爵ノ𣏌憂ノ一半ハ取レ
ヤウト思フ、晝ニ十時間働ク所ヲ二時間學
校ニ行クト斯ウナレバ、疲勞ノ點ニ付キマ
シテモ少クテ宜イ、少クトモ工業地方等ニ
於キマシテハ、マア農業ノ方ハソレ程銳ク
アリマセヌカラ疲勞ノ緩急モ圖レマセウケ
レドモ、工業ヲ十時間ヤッテ置イテ其ノ擧句
ヤルト云フコトハ到底ムツカシイ、少クモ
工業學校、工業專門學校ニ於キマシテハ、
晝ニ全部シテシマフト云フヤウナ御計畫ガ
アリマセウカ、其ノ邊モ伺ッテ置キマス、ソレ
カラソレニ牽連シマシテ、尙同ジ趣意カラ
デアリマスガ、靑年學校ノ千五百時間以上ノ
表ヲ戴イテ居ル所モアルヤウデアリマスガ、
千五百時ト云フコトニナルト是ハ殆ド年中、
高等小學ノ半分位ニナリマセウカ、高等小
學ニ類スル位トマデハ行カヌガ·····ソコ
ヲ心配シマシテ審議會ノ決定ノ條項ノ一ツ
三ハ最高時間ヲ定メルト云フコトニセナ
ケレバ、此ノ義務制度ノ實行ト云フモノヲ
完ウスル上ニ於テ、又靑年學校ト高等小學
其ノ他ノ實業學校トノ關係ニ於テ、本質ヲ
紊ル意味ニナルカラ、最高時數ヲ定メナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトヲ決議シテ居ル
次第デアリマス、最高時數ニ付テ御工夫ガ
御付キニナリマシタカ、マアコンナ事ヲ伺ッ
テ置キマセウ、ソレカラ每年豫算ヲ以テ定
メル金額、ソレヲ矢張リ紀男爵ガ御心配ニ
ナッテ四百八十餘萬圓ヨリ減ッテ來ヤセヌ
カ、是デハサウナルノデアリマス、仍テ補
助費ノ減額ナゾニ付キマシテハ金額ヲ定メ
タノモアリマスシ、或ハモウ增スモノヲ、
半額補助スルトカ、三分ノ一補助スルトカ
云フコトヲ規定シテ居ルモノモアリマスガ、
其ノ邊ハ此ノ時局ノ關係デ見込ガ立タヌト
云フ御考カラノ御說明ガアリマシタヤウデ
アリマスケレドモ、是ハ義務制度ヲ行フ以
上ドウシテモ相當ノ增額ノ覺悟デナケレ
バナラヌ、豫算ニ千數百萬圓トアリマスガ、
此ノ位デ間ニ合ヒマスレバ、全額デナイ半
額位ナラバ······此ノ計畫デアルト千數百萬
圓ト云フコトニナリマスガ、其ノ位デ濟ム
コトニナレバ大シタコトハナイ、數年後ニ
實行ガ出來ルト思フノデアリマス、今度オ
ヤリニナル、今年ノ四百萬圓程ニ付テ、國
費ノ補助ハ殖エテ居リマスガ、市町村費ヲ
ソレニ對シテドノ位增加致シマスカ、是モ
一應伺ッテ置キマス、モウ一ツハ俸給、手當
ニ充テシメル爲市町村ニ交付シテ居リマス
ガ、私立ノモノニドウナルノデアリマスカ、
私立ノモノガ澤山アリマス、靑年學校ニ、
其ノ他ニモ是ハ補助ガ行ク譯デアリマス、
其ノ邊ニ付テ、以上伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=24
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025・田中重之
○政府委員(田中重之君) 最初ノ御尋ノ雇
主ニ對シテ、何カ就學ニ關シテ積極的ナ義
務ヲ課スル制度ヲ考へテナイカ、サウ云フ
條項ハナイカ、斯ウ云フ御尋ノヤウデアリ
やっ、此ノ點ニ關シマシテハ當局ト致シマ
シテ實ハ種々考究致シマシテ、雇主ニモ何
等カ積極的ナ、法制的ナ義務ヲ課シテヤルト云
フコトヲ以チマシテ〓究ヲ致シタンデアリマ
ス、併シナガラ色々當局ノ〓究又關係方面ト
ノ折衝ノ結果、積極的ナモノヲ附課致シマス
ルコトハ非常ニ困難ナ點ガゴザイマシテ、結局
只今當局ガ考ヘテ居リマスルコトハ、先程
御質問ノ中ニゴザイマシタ雇傭主ハ靑年學
校ノ生徒ノ就學ヲ妨ゲテハイケナイ、而シテ
靑年學校ノ生徒ガ就學スル場合ニ於テハ、
其ノ就學ニ要スル時間ハ勞働時間ト見ル、
斯ウ云フヤウナ規定ヲ大體作リタイ、斯ウ
云フヤウナコトニ相成ッタノデゴザイマス、
制度ト致シマシテハサウ云フコトニ相成ツ
テ今考ヘテ居ルノデアリマスルガ、此ノ靑
年學校ノ就學ヲ十分ナラシメル爲ニハ、何
ト申シマシテモ雇傭主ニ積極的ナル理解ト
云フコトヲ必要ト致シマスルノデ、此ノ點
ニ向ヒマシテハ我ガ國ノ產業精神ニ愬ヘマ
シテ、又靑年學校ノ有ツ國家的ノ意義ト云
フモノヲ十分理解シテ貰ヒマシテ、當局ト
致シマシテハ雇傭主ニ積極的ニ此ノ點ニ理
解ヲ持チ、協力致シマスルヤウニ十分ニ努
力致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス次第デ
アリマス、次ニ就學ノ奬勵ト云フコトガ極
メテ必要デアッテ、之ニ十分ナ方法ヲ講ゼラ
レタイト云フ御意見デアリマス、是ハ其ノ
通リデゴザイマシテ、當局ト致シマシテモ
先般申上ゲマシタヤウナ豫算ヲ計上致シテ
居ルノデアリマスガ、尙就學奬勵ノ實ヲ擧
ゲマスル爲ニ、〓土ハ打ッテ一團トナッテ、
〓里ノ靑年ヲ盛立テテヤルト云フ、サウ云
フ雰圍氣ヲ作リマスコトハ必要デアリマス、
ソコデ制度ト致シマシテ靑年學校ニ付キマ
シテモ、學務委員制度トシテ設ケタイト考
ヘテ居ルノデアリマス、此ノ學務委員ノ職
制等ニ付キマシテハ、文部大臣ガ之ヲ定メ
ルコトニ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマ
スガ、其ノ職制ノ最モ重大ナル點ヲ此ノ就
學ノ奬勵ト云フ點ニ置キタイト斯樣ニ考ヘ
テ居ルノデアリマス、尙市町村等ニ於キマ
シテ靑年學校ノ振興會ト云フヤウナ組織ヲ、
與フル限リ組織致サシメマシテ、先程申上
ゲマシタヤウニ各層ノ協力ニ依リマシテ此
ノ〓土ノ靑年ノ〓養ヲ完カラシメタイト、
斯樣ニ考ヘテ居リマスヤウナ次第デゴザイ
やっく、次ニ靑年學校ノ就學ヲ十分ナラシメ
ル爲ニハ、結局生徒本人ヲシテ何カ十分靑
年學校ニ行カセルヤウナコトヲ考ヘナケレ
バイケナイノヂヤナイカ、斯ウ云フ御話デ
ゴザリマシタ、此ノ點亦全ク御同感デアリ
マン、デ之ニ付キマシテハ、靑年學校ノ生
徒ニ對シマシテハ靑年學校手帳ト云フヤウ
ナモノヲ持タシメマシテ、之ニ靑年學校ニ
關シマスル所ノ生徒ノ授業ノ狀況ヲ十分ニ
記載致サシメ、之ヲ以テ保護者或ハ保護者
ニ代ルベキ所ノ雇傭主トノ間ノ連絡機關ト
致スコトニ致シマシテ、此ノ間ノ間隙ヲ能
フル限リ少ク致シマシテ、先程御話ガゴザ
イマシタヤウニ靑年ガ學校ニ行クト言ッテ
餘所ヘ行ッテシマッタト云フヤウナコトガナ
イヤウニ、十分ニ監督指導ガ出來ルヤウニ
致シタイト考ヘテ居ルナヤウ次第デゴザイ
マス、次ニ靑年學校ノ制度ヲ晝問制ヲ本則
トスルト云フヤウナコトガ、〓育審議會ノ
御答申ニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、當局
ト致シマシテモ、斯ウ云フ方面ニ靑年學校
ノ經營ヲ持ッテ行キタイト、斯樣ニ考ヘテ居
ルノデアリマシテ、厚生省ト協同シテ立案
致シマシタヤウナ勞働立法ト云フヤウナモ
ノガ出來マスルト、斯ウ云フ點ニ於キマシテ
モ從來困難ト致サレテ居リマシタ所ノ、都
市ノ學校ヲ晝間化スルト云フ上ニ於キマシ
テ、相當寄與スル所ガ多カラウト考ヘルノ
デアリマス、唯併シナガラ今日一擧ニ一切ノ
靑年學校ヲ晝間制ト致シマスルコトハ、之ガ
地方ノ產業上ニ及ス影響カラ申シマシテモ、亦
專用〓室ヲ少クトモ必要トスルト云フ事態
ニ於キマシテ、是ハ地方財政一般ノ點カラ
申シマシテ、又殊ニ資材ニ關シマスル供給ガ
基ダ不足シテ居リマスル今日ノ現況ニ於キ
マシテ、又一面ニ是等ヲ助成スベキ國庫ノ
財政關係等ヨリ致シマシテ、今日直チニ總
テノ都市ニ於ケル所ノ靑年學校ノ〓育ヲ晝
間制トスルト云フ點ニ決定致シマスルコト
ハ尙困難ナル實情ニゴザイマスルノデ、
此ノ點ハ此ノ理想ニ向ヒマシテ進ミ得マス
ルヤウニ逐次努力致シタイト考ヘテ居ル次
第デゴザイマス、最近靑年學校ノ經營上最
モ困難ト致シマスル大都市方面ニ於キマシ
テモ、靑年學校ニ對シマスル所ノ理解ガ非
常ニ進ンデ參リマシテ、東京市、大阪市等
ノ如キニ於キマシテモ、靑年學校ノ施設ニ
近時格段ノ努力ヲ致スヤウニ相成ッテ參ッテ
居ルヤウナ次第デゴザイマシテ、是等ノ機
運ヲ一層助長致シマシテ、都市殊ニ大都市
方面ニ於キマスル所ノ此ノ〓育ガ、有效ニ
且適切ニ行ハレマスルヤウニ、當局ト致シ
マシテモ一層努力致シタイト考ヘテ居ルヤ
ウナ次第デゴザイマス、次ニ靑年學校ノ中
ニ非常ニ時數ノ多イ學校ガアルデハナイ
カ、表ニ依リマスルト千五百時間ト申シマ
スルヤウナモノハ、是ハ私カラ申上ゲル迄
モナク、是ハ實習時間等ヲ加算致シマシタ
爲ニ斯樣ナ多クノ時數ト相成ッテ居ルヤウ
ナ次第デゴザマイス、此ノ〓育審議會ノ御
答申ニゴザイマシタ中ニ、矢張リ義務トシ
テ課スベキ所ノ最高時數ヲ限定スルヤウニ
ト云フ御答申ガアッタノデアリマス、此ノ點
ニ付キマシテ、當局ト致シマシテハ種々考
究モシ、又關係方面トモ色々折衝致シマシ
タ結果、義務トシテ課スベキモノハ二百十
時間ト云フコトニ限定致スコトニ致シマシ
テ、諸般ノ準備ヲ進メテ居リマスルヤウナ
次第デゴザイマス、次ニ補助法ノ問題デゴ
ザイマスガ、此ノ金額デアルトカ或ハ補助
率ト云フヤウナモノヲ明示スルノガ適當デ
ハナイカト云フ御話デゴザイマシテ、此ノ
點ハ當局ト致シマシテモ全ク御同感ナノデ
ゴザイマスルガ、今日是ガ出來マセヌデシ
タ事情ト云フモノハ、先程御答へ申上ゲタ
ヤウナ次第デゴザイマス、併シナガラ一昨
日モ御答ヘ申上ゲマシタヤウニ、文部當局
トシテ考ヘテ居リマスルコトハ、靑年學校
ノ義務制ノ實續ガ大體判明シ、從ヒマシテ
地方ノ負擔、又之ニ對シテ取ルベキ所ノ國
庫ノ負擔ト云フモノガ先ヅ確定致シマシタ
場合ニ於キマシテハ、此ノ現在ゴザイマス
ル所ノ不完全ナル國庫補助法ヲ、國庫負擔
法ニ改メタイト云フ實ハ希望ヲ有シテ居ル
ノデゴザイマス、斯ウ云フ場合ニ於キマシ
テハ、此ノ靑年學校〓育ニ對シテ國庫ガ幾
ラ位ノ負擔ヲナスベキカト云フヤウナコト
ニ關シマシテ、何等カ合理的ナル規定ヲ此
ノ負擔法ノ中ニ明定致シタイト云フ希望ヲ
有シテ居ルノデゴザイマシテ、其ノ點ヲ申
上ゲタイト存ジマス、尙此ノ補助金ハ市町
村ニ對シテ交付致スコトニ相成ッテ居ルノ
デゴザイマシテ、私立學校ニ對シマシテハ
此ノ補助金ヲ交付セザルコトニ致シテ居リ
マス、ソレハ申ス迄モナク私立靑年學校ハ
任意ニ設置致スモノデゴザイマスルシ、且又
實情カラ申シマシテモ、私立靑年學校ヲ經
營致シマスルモノハ、〓ネ會社工場等ナノ
デゴザイマスルノデ、是等ニ對シマシテハ
差當リ市町村ト同樣ノ國庫補助ヲ致ス計畫
ヲ有シテ居ラナイノデゴザイマス、唯併シ
ナガラ同業組合等ニ於キマシテ私立靑年學
校ヲ設置致シマス場合ニ於キマシテハ、相
當ノ困難ノアル場合ガアルデハナイカト考
ヘマスルノデ、是等ノ設置ヲ勸奬致シマス
ル爲ニ、極メテ些少デハゴザイマスルケレ
ドモ、私立靑年學校ノ設置奬勵費ト致シマ
シテ、昭和十四年度ノ豫算ニ五萬圓ノ補助
費ヲ計上致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマ
ス、次ニ本制度實施ニ伴ッテ國庫負擔ハ斯
ウナッテ居ルガ、ソレガ地方財政ニ負擔ノ增
スベキ數字ガ幾何デアルカト云フ御尋デゴ
ザイマスルガ、是ハ計算シタモノガゴザイ
マスガ、今チヨット見付ケテ居リマスノデ、
チヨット御待チヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=25
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026・田所美治
○田所美治君 意見ヲ申上ゲルノデハアリ
マセヌガ、保護者ガ義務ヲ負フコトニナリ
マシテ、私、外國ノ法制ニアルヤウニ思ヒマ
スガ、此ノ雇傭者ノ方ハ何等ノ法律上ノ義
務ハ負ハヌト云フ、今ノ法制上カラ出マス
簡單ナ授業時數、〓育時數ヲ計算スル云々
ト云フ位ナコトデヤルト云フコトデ御放任
ニナルト云フコトハ非常ニ私ドウカト思
ハレルノデアリマス、第一マア保護者ハ遠
隔ノ地ニ居ッテ、北海道アタリニ居リマス、
子供ハ大阪ヘ行ッテ働イテ居ル、東京へ來テ
居ル、保護者ハ就學セシムル義務ヲ負ウテ
居リマスケレドモ、工場主ハ學校ヘ行クナ
ラ行ケト云フダケデ、映畫館ヘ居ッテ居ルノ
モ知ラヌ、或ハ又學校へ、兎ニ角工場カラ
出レバ宜イノデアリマスカラ、是ハ邪魔ヲ
セナイ、ケレドモ積極的ニ奬勵スル義務ハ
保護者ガ負ウテ居ルト云フコトデハ、ドウ
カト思ヒマスガ、其ノ點ニ付テハ尙實施迄ニ
今御調ガナケレバ御工夫ヲ願ッテ、保護者ト
雇傭者ト云フモノノ關係ヲ御規定ニナラナ
クテハナラヌ、斯ウ云フコトハ直グニ頭ニ
浮ンデ來ルコトト思ヒマス、ソコラノ點ヲ
十分ニ、是ハ工場ニ居リマス者モ可ナリ居
ルノデアリマスカラ、殊ニ工場ニ付テハ其
ノ問題ガアルト思フ、雇傭者ト保護者ノ關
係ト云フコトモ規定スル、サウ云フモノガ
ドウシテモ要ルダラウ、斯ウ思フノデアリ
マン、厚生省ニ委シテ置イテ工場ノ經營如
何ト云フコトダケデ雇傭主トハ連絡ヲ取ラ
ヌト云フコトデハイクマイト思ヒマスガ、
何カ其ノ邊ニ付テ御考ガアレバ伺ッテ置キ
タイト思ヒマス、ソレカラ最低時間ハ二百
十時間ト云フコトニナッテ居リマス、其ノ外
ニ最高時數ヲ制限セヌトイカヌ、サウデナ
イト高等小學校ニ類似スルモノニナッテ來
ル、或ハ實業學校ニ類似スルモノニナッテ
來ル、靑年學校ハ所謂業務ニ從事シテ居
ル、農工商ニ從事シテ居ル者ガ二十歲ニナ
ル迄ニ忘レナイヤウニ、サウシテ補習スル
ヤウニ補習的ニ修養シテ行クト云フコト、
サウシテ極力文化ヲ注入スルト云フコトニ
ナッテ居ルノデスカラ、最高時數千五百時其
ノ儘デ宜イト云フモノデハナイト思ヒマス
ガ、其ノ最低時ノ義務數ハ一一百十時デアリ
マスカラシテ、其ノ外ニ何百時ヲ超過スル
コトヲ得ズ、斯ウ云フコトヲ望ンデ居ッタヤ
ウデアリマスガ、其ノ邊ニ付テ伺ッテ置キマ
スヘソレカラ文部當局ニ伺ッテ置キマスガ、
是ハ先ニ申シマシタ兵役法ノ改正ガ通過シ
タ今日ニナリマスケレドモ、是ハ大分影響
ヲ蒙リマスマイカ、ソレニ付テ御意見ラ伺ッテ
置キタイ、六箇月ノ短縮デ段々其ノ方ニ自
然靑年學校ノ發達シテ來ルノヲ促スト思ヒ
マスガ、ソレガ今度廢止ニナリマスカラ餘
程困難ガ增シテ來ルト思ヒマスガ、其ノ邊
ニ付テハ御考ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=26
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027・田中重之
○政府委員(田中重之君) 先程申上ゲマシ
タノガ言葉ガ足リマセヌデ恐縮デゴザイマ
スガ、第一ノ雇傭主ノ關係デゴザイマスル
ガ、靑年學校經營ヲ圓滿ナラシメマスル爲
ニハ、何ト申シマシテモ雇傭主ノ理解ガ必要
ナノデゴザイマス、唯併シナガラ之ニ積極的
ナ義務ヲ賦課スルト云フ點ニ關シマシテハ、
法律的ニ規定致シマスル上ニ於キマシテハ
種々〓究シテ見タノデゴザイマスガ、非常ニ
難點ヲ伴フコトガ多イノデゴザイマシテ、適切
ナル立法ヲ實ハ爲スコトガ出來ナカッタノ
デゴザイマス、此ノ方面ノコトハ之ヲ厚生
省ニ一任シテ置クト云フ意味デハ勿論ナイ
ノデアリマシテ、其ノ立法手續ニ付キマシ
テ隨分〓究シタノデゴザイマス、立法手段
ト致シマシテハ、先程申上ゲマシタヤウナ
手段ヲ差當リ考ヘル外ナカッタト云フコト
ヲ實ハ申上ゲタカッタノデアリマス、ソレ
デ立法ハ其ノ程度デ止ンダノデアリマス
ガ、他ノ方面ニ於キマシテ能ク雇傭主ニ對
シマシテハ、義務制ノ意義、又日本ノ產業
人トシテノ積極的ナル自覺ト云フコトニ依
リマシテ、是非法制ガナクテモ積極的ニ就
學ヲ奬勵致シマスヤウニ指導奬勵ヲ致シタ
イト斯樣ニ考ヘテ居リマスヤウナ次第デゴ
ザイマス、ソレカラ靑年學校ノ時間數ノ問
題デゴザイマスルガ、是ハ靑年學校ハ實ハ
〓土ノ實情ニ卽シマシテ行ッテ「居ルノデゴ
ザイマス、〓土ニ於キマシテ、〓土ノ中ノ
若干ノ靑年ニ對シマシテ、將來其ノ中堅ト
ナルベキ者ニ相當ノ〓育ヲ施シタイ、〓土
ニ止マッテ居ル人間トシテ厚イ〓育ヲ施シ
テ行キタイト云フ考ヨリ致シマシテ、普通
科デハゴザイマセヌデ、本科等ノ區分ニ於キ
マシテ相當厚イ長時間ノ〓養ヲ施シテ居リ
マスヤウナ次第デアリマス、例ヘバ御承知
ノ通リ鹿兒島縣等ニ相當アルヤウナ次第デ
ゴザイマス、斯ウ云フヤウナノハ矢張リ今
後ト雖モ濫ニ流レザル限リニ於テハ或所迄
ハアッテモ宜イノヂヤナイカ、斯樣ニ考ヘテ
居ルヤウナ次第デゴザイマス、唯併シナガ
ラ普通科ノ部面ニ付キマシテハ、斯ウ云フ
コトハ相當高等小學校トノ紛淆ヲ來ス虞ガ
アリマスノデ十分監督ヲ嚴重ニ致スベキモ
ノト考ヘテ居リマシテ、斯ウ云フコトハ國
民學校制度、所謂義務年限ノ延長問題ト云
フコトガ解決致シマスレバ、根本的ニ解決
致サルヽノデアリマスガ、其ノ過渡ノ時代
ニ於キマシテハ高等小學校ヲ廢止シテ靑
年學校ヲ普通科ニ變ヘルト云フコトハナキ
ヤウ、是ハ地方長官會議、學務部長會議ノ機
會ニ於キマシテ、是ハ文部省內部ノコトデ
ハゴザイマスルガ、普通學務局ノ當局ヨリ
モ、社會〓育局ノ當局ヨリモ、常ニ指示致シ
テ居ルヤウナ次第デゴザイマス、ソレカラ
兵役ノ關係デゴザイマスルガ、兵役法ノ改
正ノ結果ガ靑年學校ノ就學率ノ上ニ影響ヲ
及スコトガナイカト云フ御話デゴザイマス
ルガ、此ノ點ニ關シマシテ前年兵役法ノ改
正ガゴザイマシタ節ニモ色々御議論ガゴザ
イマシタシ、又當局ノ考モ申述ベタノデゴ
ザイマス、當局ト致シマシテハ、此ノ兵役
法ノ趣旨、又兵役法改正ノ趣旨、又靑年學
校ノ本旨、現下ノ時局ニ於ケル所ノ靑年學
校ノ意義ト云フヤウナモノヲ十分ニ徹底致
サシメマシテ、此ノ點ニ付テ不都合ガ起ラ
ナイヤウニ善處致シタイト考ヘテ居ルヤウ
ナ次第ナノデゴザイマス、實際ノ結果カラ
申シマシテ此ノ點ハ相當事實問題ト致シマ
シテ、當局ト致シマシテハ相當ノ心配ヲ持
チマシテ靑年學校ノ就學率ノコトヲ考慮致
シタノデゴザイマスガ、幸ニ致シマシテ昭
和十三年度ニ於キマス所ノ實績ハ、是ハ昭
和十三年度ニ入リマス頃ニハ兵役法ノ問題
ガ旣ニ公布サレタ後ナノデゴザイマスガ、
義務制ヲ實施スルト云フコトヲ之ニ伴ヒマ
一
シテ兵役法ノ改正ノ趣旨、又義務制實施ノ
趣旨ト云フヤウナコトヲ十分各方面ニ於テ
モ努力致シマシタ結果モアッタコトト存ズ
ルノデアリマスルガ、幸ニ致シマシテ昭和
十三年度任意制度ノ最後ノ段階デアッタノ
デアリマスルガ、却テ就學率ガ向上シテ
居ッタト云フヤウナ實狀ヲ示シマシテ、實ハ
當局ト致シマシテ多少安堵モシ、又喜ビモ
感ジタヤウナ次第デゴザイマス、併シナガ
ラ何ト申シマシテモ此ノ問題ハ現實ノ問題
ト致シマシテ、當局ト致シマシテハ兵役法
改正ノ結果ガ靑年學校ノ就學率ノ向上ニ惡
影響ヲ及サシメナイト云フ點ニ向ヒマシテ
ハ、事實問題ト致シマシテ相當ノ努力ヲ致
サネバナラナイト考ヘテ居リマスヤウナ次
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028・田所美治
○田所美治君 チヨット簡單デゴザイマスカ
ラ······最高時數ヲ御決メニナラヌト云フト、
ソレハ特殊ノ鹿兒島アタリノ御話ガアルカ
ラト云フ御話デアリマスガ、直グニ考ヘラ
レルコトハ千五百時ハ是ハ最高ノモノノ例
ガ出テ居リマスルガ、二百時ヂヤナクテ五、
六百時ノモノガ澤山方々デ拜見スル、農村
地方ノ者ガ多イノデゴザイマスガ、此ノ工
場主ガ、晝疲レルト云フコトノ先程來御質
問モアッタ、其ノ場合ニ六百時ノ學校へヤラ
ナクチヤナラヌ、工場主ノ義務ハ二百十時
間デ宜シイ、ソレ以上ハ學校ガ五六百時間
ヤッテ居ッテモ、後ノ三四百時ハ學校へ行カ
ヌデモ宜シイト、斯ウ云フヤウナコトガ直
グ想像サレルノデスガ、其ノ邊ハドウ云フ
ヤウニ御考ニナッテ居リマスカ、ソレラヲ基
ニシテ最高時數ヲ矢張リ決メナクテハナラ
又、學校ノ方ハ六百時ニシテ置ク、工藝品
ラ二百十時間シカ與ヘヌト云フコトニナル
ト、直グソコニ衝突ガ來ル、三百時ヲ制限
ニスルトカ、二百五十時ヲ制限ニスルトカ、
斯ウ云フコトハ〓育ノ方面カラ言ヘバ遺憾
千萬デアリマスケレドモ、ソレガ靑年學校
ノ性質デアル、ソレダカラ滿十九迄七年ノ
間モ此ノ義務ヲ負ハス、卽チ輕イ義務デア
ル、ケレドモガ國民ノ修養上ニハ非常ニ役
ニ立ツ、斯ウ云フコトデ釣合ヲ取ッテノ是ハ
制度デアラウト思ヒマスカラ、他ニ千五百
時ガアルカラ多々益々辨ズルト云フコトデ
ハ是ハ趣旨ガ違ッテ來ル、斯ンナニ私ハ考ヘ
ルノデアリマス、ソレ故ニ此ノ間本質ヲ伺
ヒタイト申シタノデスガ、チヨット今ノ御說
明ガ足ラヌ所ガアルト思ヒマスカラ、ソレ
ダケ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=28
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029・田中重之
○政府委員(田中重之君) 私ノ言葉ガ大變
足リマセヌデゴザイマシタガ、靑年學校ノ
就學ヲ義務トシテ課シマスル時間ハ矢張リ
是非トモ就學ヲ强制致シタイト考ヘマスノ
デ、靑年ト致シマシテハ是非トモ是ダケハ
有ラユル意味デ出ルヤウニシタイ、斯樣ニ
考ヘルノデアリマス、就キマシテハ其ノ時
間ヲ保證致シマス爲ニハ矢張リ雇傭關係
トノ調節ヲ十分圖ル必要ガゴザイマスノデ、
ソコデ義務トシテ課シマス時間ハ、矢張リ
二百十時間ト云フコトニ限定致シタイト考
ヘテ居ルノデゴザイマス、ソレデ實際ノ〓
育ノ場合ニ於キマシテハ、義務トシテ課シ
マス所ノ課程ト云フモノヲ編マシメマシテ、
ゾレシカ出ラレナイ者ニ付テハ、ソレガ完
結致シマスヤウニ〓育ガ受ケラレマスヤウ
ニ工夫ヲ凝ラシタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=29
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030・田所美治
○田所美治君 兵役ノ關係ハ、此ノ時局デ
スカラ無論兵役ヲ嫌フ者ハ無イデアリマセ
ウガ、今度普通科ノ一年ガ義務ニナリ、本
科ノ方ハ義務デナイ、向ウ五箇年ト云フモ
ノハマダ任意制デアリマスカラ、ソレガ又
影響ヲ蒙ッテ來ヤシナイカ、時局デモ幸ニ近
イ將來ニ平定シマシタ曉ニハ、折角向上シ
掛ケテ居ル靑年〓育ガ此ノ特典ヲ失フノデ
アリマスカラ、平時ニ復スルト云フト、工
場ニ行ッテ儲ケル方ガ宜イ、斯ウ云フコトニ
ナッテ來ル[虞ガアリハシナイカ、一齊ニ靑
年〓育ガ、ドン〓〓其ノ本科ニ付テモ義
務トナル、斯ウナル譯デハナイノデアリマ
スカラ、其ノ方ニ大影響ヲ及シテ來ヤシナ
イカ、餘リ樂觀ガ出來ヌヂヤナイカ、殊
時局中デモ、義務デナイカラ工場ニ戾ッテ、
今非常ニ好イ俸給ヲ取ッテ居ル、高等小學
ノ卒業生ガ何十圓、何十圓ドコロデハナイ、
百圓内外ノ收入ヲ取ッテ居ルト云フコ
トモ聞クノデアリマス、ソンナ場合ニ
ナカ〓〓靑年學校ニ殘ル者ハ無イト思フ、
ソコニ困難ハナイカ、ソコデ尙御考慮ガゴ
ザイマセヌナラバ、將來ニ付テ深甚ナル御
考慮ヲ願ハナケレバナラヌノデハナイカト
思フ、ソレカラ立法上ノ規定ハ何モ設ケヌ
ト云フ御話モアリマシタガ、省令ヤ勅令等ニ
於キマシテ相當ノ仕事ヲ御命ジニナルト云
フコトガ色々アリハシナイカ、今之ヲ例へ
テ申シマスト、工場ハ軍需工業デ忙シイ、
ソンナ事ハ出來ルモノカ、唯二三時間ヲ〓
育ノ爲ニ割愛スルコトハ宜シイ、工場ノ方
ハ此ノ位ノ勢ダラウト思ヒマス、ダカラ此
ノ義務ヲ全ウシ普及シヨウト云フコトハ、
チョット放擲セラレルヤウナ感ガ致シマス
カラ、其ノ點ニ付テハ尙〓究ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=30
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031・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 只今ノ御質問ノ
中、兵役法ニ付テノ御質問ニ對シテ御答ヘ
致シタイト思ヒマス、只今ノ御質問ハ兵
役法ノ改正ノ結果、靑年學校卒業者ノ在營
期間ノ短縮ノ問題ガ無クナッタ爲ニ就學率
等ニ影響シ、或ハ勉學ニ熱心ヲ缺ク虞ハナ
イカト云フ御質問デ誠ニ御尤ト存ジマス、
當局ニ於キマシテモ其ノ點ハ、非常ニ苦心
シテ居ル點デアリマス、唯此ノ制度ノ改正
ノ情勢カラ考ヘテ見マスルト、實ハ以前ニ
ハ在營年限ノ期間ノ短イト云フコトニ依ッテ
靑年學校或ハ靑年訓練所ニ希望シタ者モ大
分アッタラウト存ジマスガ、最近ノ實際ノ狀
況ヲ見マスト、或ハ雇傭主トカ父兄ノ方カ
ラ云フト、在營期間ノ短縮ヲ希望シテ居ル
方ガ强イヤウデアリマスガ、生徒ノ方カラ
申シマスト、無論サウ云フ人モアリマセウ
ガ、寧ロ多數ハ、靑年學校ヲ卒業シタ人ニ
對シテ或特典ヲ置イテ貰ヒタイ、卽チ階級
ガ上ニナルト云フコトヲ非常ニ希望シテ居ツ
タヤウニ私ハ承知シテ居リマスノデ、或場合
ニハ靑年學校ヲ卒業シタ人ニ特殊ノ徽章ヲ制
定シテ、著ケサセテ吳レトカ云フコトヲ言ッ
テ居ル地方モアッタヤウニ聞イテ居リマス、
卽チ生徒ノ方カラ言フト、年限ノ短縮ト云
フコトヨリモ、階級、卽チ星一ツ餘計ニナ
リタイト云フ希望ガ多イヤウニ感ゼラレタ
ノデアリマス、斯ウ云フヤウナ者ハ靑年學
校ノ習得ニ依リマシテ、多クハ良イ地位ニ
進ンデ居リマスカラ、其ノ點ニ於テ靑年學
校ヲ非常ニ希望シテ居ッタ者モアッタヤウデ
アリマス、此ノ點ハ今度義務制ニナリマス
ト、全部同ジデアリマスカラ甲乙ナイヤウ
ニモ考ヘラレマスガ、併シ義務制デナイ現
在ノモノニ對シテハ、此ノ點モ相當働クノ
デハナイカト考ヘルノデアリマス、併シ
是ハ實際問題トシテハ十分ニ考慮シナケレ
バナラヌコトト存ジマスノデ、此ノ靑年學
校ノ使命等ヲ、生徒ヲ初メ父兄等ニモ能ク
徹底セシメマシテ、サウシテ所期ノ目的ヲ
達スルヤウ一層ノ努力ヲ致シタイト存ズル
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032・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) ソレデハ今日
ハ是デ散會致シマス
午後三時三十九分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵德川義親君
副委員長子爵〓岡長言君
委員
男爵紀俊秀君
下村宏君
男爵大森佳一君
田所美治君
岩崎〓行君
政府委員
文部政務次官小柳牧衞君
文部省社會〓育局長田中重之君
文部省圖書局長近藤壽治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00219390313&spkNum=32
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