1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十四年三月十四日(火曜日)午前十時二十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=0
-
001・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 是カラ開會致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=1
-
002・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 私内務大臣ニ成ルベクナ
ラ御出ヲ戴イテ、此ノ點御聽キシタイト思
ヒマシタケレドモ、御待チシテ居ルト、此
ノ委員會モ大分長引キマスカラ、地方局長
ガ幸ヒ御見エニナリマシタカラ、ソレデ御
伺ヒ致シマス、今度ノ法案ニ依リマスト、
靑年學校ノ〓育費ハ市町村ニ持タシテヤル
ト云フコトヲ建前ニシマシテ、サウシテソ
レヲ幾分カ國庫デ之ヲ補助スル、斯ウ云フ
案ニナッテ居ルノデアリマス、或ハ是ハ小學
校ノ義務〓育ノ矢張リ國庫補助ノ方法ニ做ッ
タノデアルマイカト思フ、昨日大分長時間
ニ亙ッテ政府委員ト應答シテ見タノデスケレ
ドモ、矢張リ政府ノ方デモ國庫補助ニセズ
ニ、成ルベクナラ全額國庫支辨ニシタイ、
併シ今ノ國ノ財政狀態デアルノダカラ、ド
ウモ全部支給スルト云フコトハ出來ナイカ
ラ、已ムヲ得ズ斯ウ云フ法律ニシタト云フ
ヤウニ私伺ッタノデスガ、併シアノ小學校ヲ
國庫補助ニシマシタ當時ノ、一番最初ノ當
時ノ地方ノ財政ト、今日ノ地方財政ノ狀況
トヲ較ベテ見ルト、雲泥ノ違ガアルダラウ
ト思フ、今日デアッタナラバ或ハ之ヲ國庫全
額支辨ト云フヤウニ、或ハサレタノデハナ
イカト迄思ヒマスノデスガ、此ノ點ニ付テ
私ハ大分疑ガアルノデス、今地方ノ財政ト
云フヤウナモノハ非常ニ窮迫シテ居ル、窮
迫シテ居レバコソ、地方財政交付金ト云フ
ヤウナモノガ出來ナケレバナラヌト云フコ
トダケデモソレハ分ッテ居ル、又此ノ程豫算
ノ第三分科會ノ內務省所管ノ時ニモ、私質
問ヲ申上ゲマシタヤウニ、町村ノ役場ノ吏
員ガ今人ガ少クテ困ッテ居ル、ソレハ一ツハ
俸給ノ點カラデモアルシ、又俸給ヲ支出ス
ルノモ何ントカ國庫ガ支辨シテ吳レナイカ
ト云フコトガ、度々町村長會議ナドデモ出
テ居ルヤウニ地方財政ハ非常ニ窮迫シテ居
ル、窮迫シテ居レバコソ其ノ財政上色々ノ
問題ガアル、國庫カラ支辨シテヤラナケレ
バ地方ノ財政ガ成立タヌ、斯ウ云フヤウナコ
トニナッテ居リマスカラ、是ハ內務省デハド
ウ御考ニナッテ居ルカ、是ダケノ費用ヲ町村
ニ負ハシテモ、町村ガソレダケ出シテ行ク
ダケノ力ガアルモノダラウカ、國カラ財政
交付金トシテ貰ッテ居ル、今度又遊興稅ト云
フモノヲ引上ゲラレルト、サウスルト其ノ
遊興稅ニ對シテ又ソレダケノ收入ガ減ッタカ
ラ、又國ノ方デソレダケノ金ヲ又國庫カラ町
村ノ方へ支給シテヤラナケレバナラヌ、斯
ウ云フヤウナ財政狀態ノ時ニ、靑年學校ガ
必要ダト云フノデ國デ御決メニナッテ、サウ
シテ國家ノ爲ニ立派ナ靑年ヲ養成スルト云
フノデ御拵ヘニナッテ、サウシテ其ノ費用ハ
國ノ方デ多少ハ持ツガ、オ前ノ方デ大部分
ハ持テト斯ウ云フヤウナコトニナッテ居ル
ノ六、是ハ內務省カラ見テ果シテソレダケ
ノモノヲヤッテ行ケルモノカドウカト云フ
點ニ付テ、ドウ御考ニナッテ居ルノデアル
カ、ドウシテモ私考ヘマスト云フト、此ノ
ヤリ方デヤリマシタナレバ、益〓〓員ニ人ヲ
得ラレナイヤウニナリハセヌカ、又出席率
モ私ハドウモ惡クナリハセヌカ、斯ウ云フコ
トヲ心配スル、ト云フノハ町村デ金ヲ出シ
テ、サウシテ靑年學校ヲヤルト云フコトニ
ナリマシタラ、ドウシテモ町村ノ方デハ比
較的低級ナ先生ヲ之ニ充テル、斯ウ云フヤ
ウナコトニ是ハドウシテモ事實ハナッテ
來ルト思ヒマス、ソレカラ成ルベク生
徒ノ出席率ノ少イヤウニスレバ、マア狹イ
所デモ濟ムシ、總テノ施設ニ費用ヲ減ラス
コトモ出來ルカト斯ウ思フ、ソレカラ此ノ
點ガ私非常ニ心配スルノデスガ、小學
校ノ〓員ノ俸給ガ國庫補助トナッテ居ル
モノデスカラ、ソレデ國庫ノ方カラ金ヲ補
助シテヤル、處ガ金ニ印シガアリマセヌカ
ラ、ソレガ小學校ノ〓員ノ俸給ノ幾部分ヲ
補助スルト云フコトニナッテ市町村ヘ金ガ
行クノデスケレドモ、金ニ印シガナイノ
デスカラ、受取ッタ人間ハソレヲ〓員ノ俸
給ニ廻サズシテ、或ハ土木費ニ使フトカ或
ハ勸業費ニ使フト云フコトハ、是ハ間々ア
ルコトデス、嘗テ〓員ノ俸給不拂ト云フヤ
ウナ問題ノ喧シカッタ時ニハ、殆ドドノ町村
デモ、到ル處ト言ッテ宜イ位ニ外ノ費用ニ廻
シテ、皆デハアリマセヌケレドモ、幾分ハ
〓シテ、先生ニ渡スベキ俸給ガ先生ノ手ニ
渡ラズシテ、ソレガ土木費ニナルトカ勸業
費ニナルト云フヤウナ工合ニ使ッタ、ソレハ
地方ノ財政ガ困ッテ居ルカラサウナル、今度
モ又ソレニナリハセヌカト私ハソレヲ心配
スル、靑年學校ヲ造リマス、今造リマス今
造リマスト言ッテ造ラズシテ、サウシテ外ニ
廻スノデハナイカ、ソレデ小學校ノ義務〓
育費國庫補助法ノ時ニ、私ハ是デハイカヌ
ト云フノデ、色々文部大臣トモ話ヲシタ末
二、ドウシテモ是ハ特別會計ニナラナケレ
バナラヌ、小學校ノ〓員ノ俸給ハ特別會計
ニシテ、サウシテ外ノ途へ使フコトノ出來
ナイ方法ニシテ置イタラ、土木費ニ使ッタ
リ勸業費ニ使ッタリスルコトガ出來マセヌ
ト云フノデ、段々御話ヲシタ末、鳩山サン
ガ文部大臣ノ時ダト思ヒマスガ、特別會計ヲ
設クルコトヲ得ト云フコトニナッタ、私ハ「設
クルコトヲ得」デハイケナイ、「設クベシ」ト
云フコトデナケレバイケナイト云フコトヲ
申上ゲタケレドモ法制局トノ間ガナカ〓〓
ムツカシカツタノガ、ヤット是デ納ッタノダ
カラト云フコトデ、貴族院ハ特別會計ニ爲
スコトヲ得ト云フコトニシタ、「得」ト云フコ
トニシタカラ殆ド效力ガナカッタ、ソコデ何
ト言ヒマスカ府縣ニ對シテ、相當完全ナ所
デアッタラ、爲スコトヲ得トナッテ居ルモノ
デスカラ、ソレハ致シマシタケレドモ、府
縣ノ割合ニ弱イ所デアッテ、一番シテ貰ヒタ
イト云フヤウナムヅカシイ所ハ、爲スコト
ヲ得トナッテ居ルモノダカラ、ソレヲ爲サナ
カッタ、デスカラ今度ノ靑年學校ノ方ナドモ、
殆ド私法見タイナモノデスケレドモ、マア
ソンナモノデモ出來タラ幾分カ助カルト思
ヒマスケレドモ、サウ云フモノモ無クシテ
居リマスノデスガ、此ノ點私非常ニ心配ニ
堪ヘナイ、內務省デモ率直ニ仰シヤレバ恐
ラク御同感ヂヤナカラウカト私ハ思フ、併
シ斯ウ云フヤウニ出マシタラ、ドウシテモ
內務省モ支持ナサラナケレバナラヌカラ、
率直ニ御答辯ハムヅカシイダラウト思フケ
レドモ、率直ニ御答辯ニナレバ、是ダケノ
モノヲ負ハスト云フコトハ、地方財政交付
金ノ建前ダケデモ、是ハ餘程ノ困難ダト云
フコトヲ皆思フニ至ルノデアリマス、ソレ
ニ對シマシテ地方局長ハドウ御考デゴザイ
マセウカ、モウ詳シイコトハ申サズトモ分
リマス、地方局長ノ一應ノ御意見ヲ承リタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=2
-
003・坂千秋
○政府委員(坂千秋君) 此ノ靑年學校ノ義
務制ヲ實施致シマス場合ニ、是ガ地方ノ財
政ニドウ云フ響キヲ持ツカト云フコトハ、
仰セニナリマシタヤウニ非常ニ重大ナ問題
デアリマス、是ハ此ノ案ガ決リマス當初カ
ラ隨分文部當局ノ方々トモ御相談ヲ致シタ
ノデアリマスガ、結局大體ノ結論デ申シマ
スト、是ハ非常ニ結構ナコトデアル、ソレ
ニ間違ヒナイケレドモ、併シ是ガ爲ニ現在
地方デ靑年學校方面ニ經費ガ出テ居ル、其
ノ經費ヲ非常ニ增スト云フコトハ、多ク增
スト云フコトハ、財政上ノ見地カラナカ〓〓
望ミ難イコトデアル、義務制ヲ實施スルコ
トハ非常ニ結構ナコトデアルガ、地方費ノ
負擔ヲ是ガ爲ニ增加スルト云フコトハ、實
際問題トシテナカ〓〓ムヅカシイト云フコ
トヲ御話ヲ致シマシテ、此ノ點ハ文部省ノ
當局モ十二分ニ御了承ニナッテ居ルト思ヒ
マシ、閣議デ色々サウ云フ御話ガ出タヤウ
ニ伺ッテ居ルノデアリマスガ、結局是ガ爲ニ
地方費ノ負擔ヲ將來非常ニ增スコトノナイ
ヤウニ、サウ云フ方針デ、併シナガラ義務
制ノ實施ト云フモノハスル、從ッテ言葉ヲ換
ヘテ申シマスト、經費ハ段々多ク要スルデ
アリマセウガ、ソレハ增加スル分ハ國ガ持
チマシテ、國庫ノ負擔ガ增加致シマシテ、
結局地方ノ負擔ト云フモノハ現在以上ニ餘
リ多クノモノヲ增加シナイデヤッテ行ク、又
ヤッテ行ケル、斯ウ云フ御話合ガ付キマシ
テ此ノ案ガ進ンデ居ルヤウニ私ハ了解致シテ
居リマス、從ヒマシテ只今仰セニナリマシ
タヤウニ、義務制實施ト云フコトハ非常ニ
結構ナコトデアリマスガ、是ガ爲ニ現在
地方デ出シテ居リマスヨリモ、餘リ多ク
ノ金ヲ地方費ノ負擔ニ期待スルコトハ困
難デハナイカト、斯ウ考ヘテ居ルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=3
-
004・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 私ノ考ヘテ居ッタノト同
ジ結果ニ或ハナリハシナイカト思ッテ居リ
マシタガ、今ノ御答辯ヲ聽キマシテ益〓私
ノ心配ヲ深クシタ、今ノ地方費ヲ增加シナ
イ程度ニ於テ義務制ヲ施行スルト、斯ウ云
フコトニナリマスト、結局ハ今アルダケノ
靑年學校ノ規模デ、サウシテ今ノ靑年學校
ノ數ヨリ增スコトガ殆ド出來ナイ形ニナリ
ハシナイカト思フ、昨日社會〓育局長ノ御
答辯ニ依ルト、國ノ財政モナカ〓〓澤山出
サナケレバナラナイ時デアルノデ、斯ウ云
フ財政ノ狀況ノ次第デアルカラ、ソレデド
ウシテモ國デ持チタイケレドモ國デ持ツコ
トハ出來ナイ、斯ウ昨日ハ仰シヤッタ、サウ
スルト國デハ全部持ッテヤリタイケレドモ、
極旨マイ
持ツコトヲ得ナイヤウナ國ノ財政ノ狀態デ
アルカラ、已ムヲ得ズ之ヲ地方費ニ俟タナ
(330)五割そぼうに
ケレバナラヌ、又今ノ内務省ノ御答辯ニ依
ルト、內務省ノ方ハ地方費ノ增加セザル限
リトシテ此ノ問題ノ解決ガ出來ルト斯ウ仰
シヤルト、詰リ現在アル靑年學校ノ、謂ハヾ
數モ增サナケレバ定員モ增サナイト云フコ
トニ結局歸著スルノヂヤナカラウカト思ヒ
マス、サウスレバ折角義務制ト云フモノヲ
施行シマシテモ、其ノ本當ノ義務制ノ施行
ト云フコトガ實施セラレナイ、義務制ト云
フ名前ニハナッテ居リマスケレドモ、實際ニ
於テハソレハ是迄ト同ジデアッテ、義務制
デナイ當時ト同ジコトダ、斯ウ云フコトニ
ナリハシマスマイカ、サウスルト今申上ゲ
タヤウニ、〓員ノ俸給モ成ルタケ少イ者ヲ〓
員ニスルトカ、或ハ定員モ成ルタケ少イ定
員ニスルトカ云フコトデ、先ヅ其ノ場其ノ
場ヲツクロッテ行クト云フヤリ方ヨリ仕方
ガナイ、地方局長ノ御答辯ハ斯ウ云フ御答
辯ダラウト私ハ思フ、地方デ段々靑年學校
ノ義務制ヲ本當ニ實施シテ行クト費用ハ掛
ル、費用ハ掛ルケレドモ、其ノ費用ハ全部
國デ持ッテヤルノダ、サウシテ成ルベク今迄
ノ限度ニ於テ、增サナイ限度ニ於テダケハ
地方ニ持タスケレドモ、殖エテ來タ時ニハ
決シテ地方費デ增スノデハナクテ、國デヤル
ノダト云フ御話ダト思フ、ソレデ御話ガ纏ッ
テ來タト思フ、併シ昨日ノ社會〓育局長ノ
御話ハサウヂヤナイト思フ、段々增スノダ
ト仰シヤッテ居ルケレドモ、其ノ段々增スノ
ダト云フ裏ニハ、國費ガ段々嵩ンデ居ルカ
ラ、殖スコトモ、全部持ッテヤルコトモ出來
ナイノダ、斯ウ仰シヤル言葉ト照シ合セル
ト、矢張リ事實オ終ヒニハ町村ニ負擔サセ
ルト云フコトニドウシテモナル、此ノ點ハ
私ハ非常ニ心配デスケレドモ、是以上內務
省ノ方ニ伺ッテモ、私ヲ滿足サシテ戴クコト
ハ出來マスマイト思ヒマスカラ、此ノ問題
ダケハ暫ク保留シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=4
-
005・田中重之
○政府委員(田中重之君) 昨日私ガ申上ゲ
マシタコトガ、多少言葉ガ足リナイ所ガアッ
タヤウニ存ゼラレマスノデ、其ノ爲ニ只今
紀男爵ノ御話ノヤウナコトニ相成ッタノヂ
ヤナイカト思フノデアリマス、私ガ昨日申
上ゲマシタノハ、靑年學校ノ〓育ヲ義務ニ致
シマシタ場合ニ於テ、國庫ガドノ程度ノ金
ヲ持ツカ、又地方ガ靑年學校ノ經費ニ於テ
ドノ程度ノ金ヲ持ツカト云フヤウナ點ニ付
キマシテ、或ハ小學校ノ義務〓育ナドノ例
モゴザイマスノデ、色々考ヘラレルノデア
リマスガ、假ニ現ニ小學校ニヤッテ居リマス
ヤウニ、〓員俸給ノ半額ヲ負擔スルト云フ
ヤウナコトヲ今日直チニ實行致シマスト、
却テ地方ノ負擔ガ今日ヨリモ全體トシテハ
減ル、一時ニ國庫カラ出シマス金額ガ前年
カラ見マスト增シマスノデ、却テ地方ノ負
擔ガ全體トシテ減ズルト云フヤウナ結果モ
發生スル、旁〓昭和十四年度ニ於キマシテ
ハサウ云フヤウナ方法ヲ執ラナイデ、義務
制ノ進捗ニ連レテ、地方ノ負擔スル靑年學
校ノ經費ガ增加シテ行クニ連レマシテ、國
庫ノ出ス金モ漸次增シテ行クト云フヤウナ
方法ヲ執リタイ、ソレデ全體ト致シマシテ、
義務制ノ實施ニ依リマシテ地方財政ニ無理
ナ負擔ガ掛ラナイヤウニシタイト云フ考ヲ
以チマシテ、御答ヲ申上ゲタノデアリマス、
今後ト雖モ市町村ニ何デモ彼デモ被セテシ
マフノダ、國庫カラハ金モナイノダカラ出サ
ナイノダト云フ風ニ申上ゲタ趣旨デハナカッ
タヤウニ思ヒマスガ、私ノ言葉ガ足リナ
カッタ爲ニ、只今御話ニナリマシタヤウニ御
印象ニナリマシタトスレバ、甚ダ恐縮デゴ
ザイマスノデ、一言足リナカッタ點ヲ申上
ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=5
-
006・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 今保留致シマシタガ、社
會〓育局長ノ御辯明ガアリマシタカラ、地
方局長ニ更ニ伺ッテ見タイト思ヒマス、此ノ
第一條ニ「市町村立靑年學校〓育費ヲ補助ス
ル爲國庫ハ每年豫算ヲ以テ定ムル金額ヲ支
出ス」トアリマスガ、此ノ條文ノ意味ハ、少
クトモ十四年度ニ支出シマシタ額ヨリハ少
カラザル費用ヲ國庫カラ支出スルバカリデ
ナク、段々ト是ハ增加シテ行クモノデアル
ト云フ意味ニ御解釋ニナリマスカ、ドウデ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=6
-
007・坂千秋
○政府委員(坂千秋君) 法文ニハ「每年豫算
ヲ以テ定ムル金額ヲ支出ス」ト書イテアルダ
ケデアリマスカラ、此ノ法文其ノモノカラ
每年度豫算デ定メラレル金額ガ增加スルト
云フコトハ直チニ出テ參ラナイト思ヒマス
ガ、私共ガ文部當局其ノ他ト十分打合セ致
シマシテ諒解致シテ居リマスコトハ、先程
申上ゲマシタヤウニ每年度經費ハ漸次豫算
ヲ以テ增加セラレテ行ク、國庫ノ支出ハ殖
エテ行クト云フ其ノ含ミガ此ノ法文ノ中ニ
アルトハ考ヘテ居リマス、併シ法文自體カ
ラハサウ云フ意味ハ出テ參ラナイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=7
-
008・紀俊秀
○男爵紀秀俊君 私ハ法律ノコトハ一向不
得手デアリマスカラ、尙伺ッテ見タイノデア
リマス、サウ致シマスト法文其ノモノカラ
申シマスト、減額スルコトモ此ノ法律ニ依ッ
テハ出來ル、斯ウ云フ意味ニナリマセウカ
ソレヲ一ツ御〓ヘヲ仰ギタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=8
-
009・坂千秋
○政府委員(坂千秋君) 法文其ノモノノ解
釋カラハドウ云フ風ニナルカト云フコトデ
アリマスガ、實際問題ト致シマシテ補助ガ
減額スルト云フコトハ、私ハ毛頭考ヘテ居
リマセヌ、無論漸次增加シテ行クト云フコ
トヲ固ク信ジテ居ルノデアリマスガ、法律
ノ冷タイ解釋カラ言ヒマスレバ、減額ト云
フコトモ入ルカモ知レマセヌ、併シ是ハ唯
形式的ニサウナリ得ルト云フダケデアリマ
シテ、實際ハ必ズシモサウナラナイコトト
確信シテ居リマス、又サウ諒解シテ居リマ
スコトヲハッキリ申上ゲテ置イテ宜シイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=9
-
010・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 私ハ冷タク此ノ法律ノ意
味ダケヲ伺ッテ見タイト思ッタノデアリマ
ス、冷タク考ヘレバ減額スルコトモ出來ル
ト云フ御說明ヲ內務省カラ得タ、事實ニ於
テモサウ云フコトハ能クアルコトナノデア
リマス、御答辯ハ增額スル積リダト仰シヤッ
テモ、冷カニ又減額サレタ例ハ隨分アルモ
ノデスカラ、ソレデ私ハ心配シテ申上ゲタ
ノデスガ、併シモウ此ノ上御尋ハ止メマス、
私ガ内務省ニ對シテ伺フコトハ此ノ位ニシ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=10
-
011・田所美治
○田所美治君 チヨット內務省ノ政府委員
モ御出ニナリマスカラ、其ノ御答ヲ煩ハス
意味デモアリマセヌガ、或ハ文部省カラ御
答ヲ願ッテモ宜イト思ヒマスガ、私モズット
承ッテ居リマシテ、是ハ三割補助ト云フコト
ニナル、國庫ノ負擔ヲ四百何萬圓殖ス、サ
ウスルト地方ノ負擔ハドノ程度減ルト云フ
コトヲ伺ッタノデアリマスガ、今ノ御問答
デ大體ハ了承致シマシタ、サウスルト的確
ニ伺ッテ見タイト思フノハ、義務〓育ノ年限
延長ト云フコトヲ來年度カラヤル、文部大
臣ノ御聲明モアッタノデアリマスガ、私モソ
レヲ希望スルノデアリマス、サウスルト詰リ
義務〓育ニナリマスカラ、高等小學ヲ卒業シ
テ靑年學校ノ本科ヘ入ッテ來ル者ガ今迄ヨ
リハ殖エル、仍テソコ等邊カラ紀男爵モ、
段々是ハ殖エテ行カナクチヤナラヌト云フ
ヤウニ、私モ考ヘ皆サンモ御考ニナッテ居
ルダラウト思ヒマスガ、實ハ數デ伺ッテ見
ルト、ソレハ大シタモノヂヤナイ、四百何
萬圓ト云フノヲ本年ハ補助スルガ、將來ニ
於キマシテモ、是ハ千何百萬圓ニナルト云フ
御答モアリマシタガ、色々ノ點デサウ殖エテ行
クカモ知レヌ、或ハ俸給モ增シテヤル、待遇
モ良クシテヤル、斯ウ云フ意味ノ御計算モ入ッ
テ居ルカモ知レマセヌガ、數カラ言フト詰
リ每年殖ェテ來ルノハ、表ニハ十三萬トカ
十一萬トカ、昭和二十年ニナルト十一萬五
千ト云フモノガ普通科第一年ニ收容スルト、
斯ウナッテ居ル、一面義務〓育ノ關係ハ、私
始終申ス通リ尋常小學ヲ卒業シテ高等小學
へ入ラヌ者ガ〓略二十萬バカリアル、之ヲ
收容スレバ義務〓育ノ延長ト云フモノハ直
グ出來ル、一擧手一投足ダ、或ハ言ウテ見
レバ、地方經濟ノ負擔ナド一文モ增サナク
テモ、之ヲ一學級ニ配當シテ、十人トカ五
人トカ云フモノヲ容レヽバ、一萬數千ヤ二
萬人ナント云フモノヲ小學校ニ配當スルノ
ハ何デモナイ、斯ウ云フ計算デヤレルモノ
デナイカ、斯ウ何時モ申上ゲテ居ル譯ナン
デスガ、義務ヲ延長シテ八年ニナッタ場合ガ
モウ直キ來ルノデアリマスカラ、此ノ經濟
計畫トシテハ、ソレヲ目安ニ御立テニナラ
ナケレバナラヌ、ソレハ〓略二十萬デアル、
二十萬ト云フモノガ殖エテ來ル、其ノ中ニ
若干ノ者、四五萬ハナカ〓〓參リマスマイ
ケレドモ、マア十數萬ノ者ガ殖エテ來ル、
斯ウ了承シテ宜シウゴザイマスカ、伺ッテ置
キタイ、今地方局長ハ地方經濟ノ負擔ノ增加
ト云フモノハ、是ヨリ一文モ增セヌ、ソレ
ハサウ見エマス、ケレドモ時局ノ進展ニ
伴ッテ地方ノ負擔モ增加シナケレバナラヌ、
國步ガ止ラナケレバ、兎ニ角地方ノ負擔ト
云フモノハ自然增加ハ必ズナクチヤナラヌ、
斯ウ云フ大キナ國策ヲ樹テル上ニ於テモ國
費モ增サナクチヤナラヌ、地方費モ負擔ノ出
來ル限リハ負擔シテ行カナクチヤナラヌ、
斯ウ云フ風ニ推移シテ行クダラウト思フノ
デアリマス、幾ラ增サヌト云フ方針ヲ御樹
テニナッタ所デ······、極ク經濟的ニ切詰メテ
申シマスルト、私ガ今申シテ居ルヤウニ義
務年限延長ノ爲ニハ、一文モ要ラナイデ六
年ヲ八年ニ出來ル方法ガアリハシナイカ、
斯ウ云フコトヲ私ハ數年來始終當局ニ迫ッ
テ居ッタノデアリマスガ、今度マア出來ルト
云フコトニナリマシタガ、ソレモデス、經
費ノ關係ヲ能ク切詰メテヤレバ、或ハ數百
萬圓出來ルト斯ウ云フコトニ今日ハナッテ
居ルノデアリマス、經常費ハ數百萬デ宜シ
イ、色々ナ方策ヲ講ジマシテヤレバ、或、
數百萬要ラヌカモ知レナイ、ソコデ地方費
ノ增加ト云フモノヲヤラヌト云フコトヲ一
方ニ御立テニナリマシテモ、國費ハ年々增
加スルヤラ、補助ガ減ルヤラ、ソコヲ紀男
爵ハ心配サレテ居リマスケレドモ、是ハ地
方局長ノ御答辯ガアッタ通リ、實際問題トシ
テハ年々多少ノ增加ハ免レナイ、斯ウ云フ
コトニナルト思ヒマスガ、結局經濟的ニヤ
レバ、本年ハ四百何萬ニナサイマシタガ、
之ヲ凡ソ數百萬ヲ增スナレバ、千六百萬ト
カ千何百萬トカ云フコトニシナイデモ、極ク
切詰メテ言ヘバ、今年御增シニナッタ四五百
萬、五六百萬ト云フモノデ將來ズット行ケル
ノデハアリマスマイカ、斯ウ伺ッテ見ヨウト
思フノデアリマス、ト云フノハ義務年限延
長ノ爲ニ普通科ト云フモノハ無クナッテシ
マン、普通科ノ一年二年ノ費用ト云フモノ
ハ其ノ方ヘ參ル、其ノ方へ參ルト二十萬ニ
「プラス」十萬デ三十萬位ガ殖エマセウカ、義
務〓育延長ノ爲ニ高等小學ノ收容數ト云フ
モノハ······、斯ウナッテ來マシテ其ノ方ハ段
段殖エマセウ、是ハ今申ス通リ數百萬ト云フ
コトニナッテ居リマスカラ、ソコデ將來、昨日
ノ御話デハ七箇年後ニハ千六百萬ト云フコ
トニ御話ニナッタガ、千數百萬增加ノ見込
デアルト云フコトハ、此ノ補助費ヲ議スル
ニ當ッテ我々モ考ヘテ置カナケレバナラヌ
譯デアリマスカラ、今日デハ四百何萬、昭
和二十年頃ニナッタナラバ、今カラ七年先
ニナッタナラバ凡ソ二千萬近イモノニナ
ル、一面又義務〓育費ノ費用デ、來年度ノ
計算ニナルノデアリマセウガ、是モ考ヘ
ナケレバナラヌ、斯ウ云フ譯デアリマ
スカラ今ノヤウニ伺ッテ置キマスト、紀
男爵ノ御心配ニナッテ居ル、又此ノ私共計畫
上伺ヒタイト云フコトハ、切リ詰メテヤレ
バ普通科ノ豫算ト云フモノハ取レテシマ
フ、ソレハ靑年〓育ノ方カラ二年間ノ經費
ト云フモノガ一方ニ移リマスカラ、サウス
ルト過不及相俟チマシテ數百萬ノ增額デ、
今年ハ四百萬圓デアリマスケレドモ、是ガ
五六百萬トカ、マア千萬以内ノモノデ、今
日ノ俸給ヲ目安ニシマシタナラバ行ケル、
斯ウ云フヤウニ考ヘラレハシマスマイカ、
甚ダマア是ハ漠然タルナニデアリマスケレ
ドモ、伺ッテ見タイト思ッテ一應申上ゲル譯
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=11
-
012・田中重之
○政府委員(田中重之君) 御答へ申上ゲマ
ス、私ガ前囘申上ゲマシタノハ、靑年學校
ノ義務制ガ完成致シマシタ場合ニ於キマス
所ノ國庫補助額ト云フモノハ、義務制ノ實
施ノ實績ニ依ッテ相當動クモノデアリマスノ
デ、的確ニ政府トシテ申上ゲルコトハ困難
ナノデアリマスガ、文部當局ガ推算致シテ
居リマスル所デハ、計畫通リニ此ノ義務制
ガ進捗致シマスレバ、千數百萬圓程度ノ補
助金ニナルノデハナイカト、斯ウ云フコト
ヲ申上ゲタノデアリマス、ソコデ只今田所
委員ノ御話デ、サウ迄掛ラヌデモ出來ルノ
デヤナカラウカト云フ御話デゴザイマシタ、
是ハ靑年學校ノ普通科ハ、是ハ詰リ今日高
等小學校ニ在學シテ居ラナイ者ヲ對象トシ
テ居ルノデゴザイマシテ、其ノ數ハ比較的
少イノデゴザイマス、從ヒマシテ靑年學校
ノ普通科ノミヲ義務ト致シマスル場合ニ於キ
マシテハ、只今御話ガゴザイマシタ通リニ、
從前ノ經費ニ左迄增額シナイデモ之ガ支辨
出來ルト考ヘルノデアリマス、併シナガラ靑
年學校ノ本體ハ大體本科デゴザイマシテ、
本科ニナッテ參リマスト、今日高等小學校ニ
在學シテ居ル者、又普通科ニ在學スベキ者、
總テヲ本科ニ收容致サレマスノデ、本科ノ
方ニナリマスルト生徒數ガ相當著シク增加
シテ參ルヤウナ次第デゴザイマス、從ヒマ
シテ此ノ本科ノ部分ヲ加算致シマスルト、
是ハ普通科ダケヲ標準ト致シマシタ時ト相
當違ッタ計算ノ基礎ニ立ツコトニナルノデ
アリマシテ、ソコデ前囘私ガ申上ゲマシタ
ヤウナ結果ニ相成ルカト存ズルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=12
-
013・田所美治
○田所治美君 頂戴シテ居ル表デ伺ッテ見
マスノニ、此ノ男子生徒數調、ソレデ本科
第一年ニ收容スベキ男子生徒數ガ、昭和十
年ハ十八萬、普通科二年ヲ修了シテ來タ者
ガ、十一年ガ十二萬、十二年ガ十九萬、十
三年ガ十八萬、是ハ實數ダラウト思フ、是ハ
昭和二十年迄實數ガ出テ居ルト思ヒマスガ、
段々減ッテ行キマシテ、ソレデ十一萬四千ト
斯ウナッテ居リマスガ、是ハ義務制實施
ノ方ノ、小學校義務年限延長ヲ計算ニ
ナラナイデ推算シテ居ルト思ヒマスガ、
併シ十九萬トカ十八萬トカ二十萬內外ノ
者ガ本科ニハ殖エテ來ル、斯ウ考ヘテモ
宜カラウト思ヒマスガ、ソレデ宜シウゴ
ザイマスカ、サウスルト非常ニ是ハ實ハ
數ガ殖エルヤウニ思ヒマスケレドモ、現在
此ノ任意制ノ今日ニ於テモ、私ハ驚キマシ
タガ四十何萬入ッテ居ル、本科一年ニ昭和十
三年ニハ四十六萬モ入ッテ居ル、斯ウ云フ譯
デアリマスカラ、之ニ加ヘルニ十七萬八千、
昭和十三年ヲ取リマスレバ是ダケガ殖エル、
ソレガ五年間殖エテ行キマスカラ五倍ニナ
ルデアリマセウ、サウ云フ計算デ殖エルト
承知シテ宜イノデアリマスネ、任意制ノ今
日デモ徵兵ノ特權ガアリ、其ノ他向學心ノ
關係カラ、殆ド是ハ義務ニ垂ントスル位ノ
好成績ヲ擧ゲテ居ル、當局ノ御奬勵宜シキ
ヲ得タノデセウ、今日迄モ二百萬內外ノ補
助モシテオイデニナル、斯ウ云フ譯デ今度
義務制ニ變遷シテモ、大シテ驚クベキコト
ハナイ、地方經濟ハ無論ノコト、國費ニ付
テモケチニヤリサヘスレバ、大體サウ增額
ヲシナクテモ是ハ實施ガ出來ル計算デ、サ
ウ變化ガナイト言ヘル、是ハ言ヒ方考ヘ方
デアリマスケレドモ、今私ガ申上ゲタ基礎
ノヤウナ考デ、凡ソ十七萬何千ト云フ者ガ
五倍殖エルト云フヤウナ考デ、或ハモット少
イカモ知レマセヌガ、ソンナンデ宜イ譯デ
セウネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=13
-
014・田中重之
○政府委員(田中重之君) 義務制實施ニ依
リマシテ收容スベキ男子生徒數ヲ調ベテ見
ル資料ガソレデアリマスガ、義務制實施ニ
依ッテ殖エマス所ノ生徒ノ數ヲ申シマスト、
實ハ此ノ最後ノ二十一頁ノ表ニ一番簡單ニ
要約シテ出テ居ルノデアリマス、「義務制實
施後ノ强制スベキ男子生徒數調」ト云フモノ
ガ、其ノ第二十一頁ニ記載シテアリマスガ、
之ガ卽チ大體當局ガ推算致シテ居リマス義
務制實施ノ結果新タニ殖エル男子ノ生徒數
ノ調デゴザイマス、之ヲ出シマシタノハ、「靑
年學校就學ヲ强制セザル場合ノ男子生徒數」
ト云フノガ十八頁ニ書イテゴザイマス、十
八頁ニ至リマス迄ノ計算ノ基礎ヲズット前ニ
揭ゲテアルノデアリマシテ、之ヲ引移シマ
シテ第十八頁ニ、靑年學校ニ就學ヲ强制シ
ナカッタ場合ニハ生徒ノ數ハドウ云フ風ニ
ナルデアラウカト云フコトノ計數ヲ、各年
度別ニ從來ノ比例カラ致シマシテ推算致シ
マシタモノデゴザイマス、義務制實施後ノ
男子生徒數、義務制實施ノ結果該當年齡ノ
者ガ出テ靑年學校ニ充當致シマス、高等小
學校ニ在學シテ居ラナイ者ハ全部靑年學校
ニ收容致シマス、其ノ生從數デアリマス、
ソコデ是モ二十頁ニ記載シテアリマスモノ
カラ十八頁ニ記載シテアリマスモノヲ引去
リマシタ殘リガ、義務制實施ノ結果新タニ
就學ヲ强制セラルベキ男子ノ生徒數デアリ
やく、大體申上ゲマスルト、普通科ノ場合
ニ於キマシテ大體一年ニ十萬人位宛殖エル、
ソレカラ本科ニ參リマスト、只今田所委員
カラ御話ガゴザイマシタヤウニ、今日デモ
相當ニ郡部等ニ於キマシテハ就學率ガ每年
殖エテ參リマスガ、三十萬乃至四十萬程度
位宛殖エテ參ル、斯樣ナ計畫ニ相成ッテ居ル
ノデアリマス、ソレデ靑年學校ノ性質ト致
シマシテ、固ヨリ內容ノ充實ト云フコトハ
必要ナコトデゴザイマスケレドモ、又一面
ニ於キマシテ與フダケ節約シテ困苦缺乏
ニ耐エマシテモ、此ノ義務制ヲ實施シテ行
キタイト云フ當局ノ考デゴザイマスノデ、
相當經費ヲ節約致シマシテ、而シテ所期ノ
效果ヲ擧ゲタイ、斯樣ナコトヲ考ヘマシテ、
今囘ノ計畫ヲ大體進メテ參ッテ居リマス次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=14
-
015・田所美治
○田所美治君 是ハ能ク御調ベニナッテ斯カ
ル表ガ出來テ居リマスルガ、是ハマア社會
〓育局長ノ御承知ノ通リ此ノ表カラ直グニ
氣附キマスノハ、義務年限ノ延長ガ出來マ
スレバ普通科ハ廢マッテシマヒマスルカラ、
普通科ノ二年······一年二年ヲ計算シマスト
三十萬位ノ者ガ減ッテ來ル、斯ウナリマス
ネ、三百萬ノ中三十萬減サネバナラヌ、ソ
レカラマダ實業學校、中等學校ノ生徒ノ增
加ト云フモノガ期待ガ出來マスカラ、三十
萬ト云ハズ五十萬位減ッテ來ヤウト思ヒマス
ガ、私ノ想像デハ三百萬ト御計算ニナッテ居
ルノハ、此ノ中二百五十萬デ宜クハナイカ、
コンナニ思フノデアリマスガ、其ノ計算ニ
此ノ中ニ入ッテ居リマスマイネ、今申スヤウ
ニ義務年限延長ノ計算ガ入ッテ居ラヌコトハ
分ッテ居ルガ、普通科二年オヤリニナッテ居ル
シ、ソレカラ今ノ中等〓育ノ數モ增シテ參
リマスカラ、是ハ靑年學校ニ收容スル數ノ
上ニ付テハ、マア〓〓百萬位殖エル、斯ウ
ナル譯デハアリマスマイカ、想像ノ話デア
リマスガ、三百萬ハ少シ過大ノヤウニ思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=15
-
016・田中重之
○政府委員(田中重之君) 此ノ計算ハ勿論
小學校ノ義務〓育ノ年限延長ト云フモノヲ
意識致シマシテ、此ノ數字ガ出來テ居リマ
セヌノデ、是等ノ義務年限ガ延長致サレマ
シタ場合ニハ、或ハ該當ノ數字ガ落チルト
思フノデアリマス、又中等學校等ニ入學致
シマス所ノ生徒數ハ、過去ノ最近十箇年ノ
間ノ平均率ヲ作ッタモノデゴザイマス、從ヒ
マシテ今後我ガ國ノ情勢ノ變化等ニ依リマ
シテ此ノ率ガ向上致シマスレバ、只今御話
ノヤウニ此ノ生徒數ハ落チルト考ヘマスガ、
其ノ邊デ將來ヲ豫測致シマスコトガ相當困
難デゴザイマスノデ、過去ノ實績カラ推測
致シマシテ此ノ數字ヲ作リマシタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=16
-
017・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 先刻來私質問シマシタノ
ハ文部大臣ナリ內務大臣ガ今ニ御見エニ
ナリマスガ、其ノ御見エニナル迄ノ時間ノ
繫ギニ、丁度內務省ノ政府委員ガ御出ニナ
リマシタノデ、御質問申シタ譯デスガ、文
部大臣ハ餘程色々ノ關係デ御急ギノヤウデ
スガ、特ニ文部大臣ニ伺イタイ質問ガ大分
皆樣ニアルノデスガ、成ルベク文部大臣ニ
對スル質問ヲ今致シマシテハ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=17
-
018・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) ドウゾ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=18
-
019・大森佳一
○男爵大森佳一君 私ハ地方財政ニ關シマ
シテ、此ノ問題ニ觸レテノ地方財政ノ問題
ニ關シマシテ非常ニ心配ヲ持ッテ居ル、此ノ
點ニ付キマシテハ紀男爵ガ御話ニナリマシ
テ地方局長ニ御尋ニナリマシタガ、私更ニ
此ノ點ニ付キマシテ地方局長ニ伺ヒタイノ
デアリマス、詰リ此ノ問題ハ國策上非常ニ
重要ナル問題デアリマスシ、ドウシテモ血
ガ出ル思ヒヲシテ國民ハ金ヲ出シテ行ク、
國庫カラモ市町村費カラモ、血ガ出ル思ヒ
ヲシテモヤラナケレバナラヌ程ノ重要性ヲ
持ッタモノト私ハ思ッテ居リマス、併シナガラ
一面地方財政ハ非常ニ緊迫シテ居リマスル
カラ、餘程其ノ間ニ文部當局ナリ地方財政
ノ監督當局ナリハ、餘稅工夫ヲ凝サナケレ
バナラヌト思ヒマス、此ノ點ニ付キマシテ
多少詳シク伺ヒタイ點ガアリマスルガ、折
角文部大臣ガ御忙シイ中ヲ割イテ御出ニナッ
テ居リマスルカラ、文部大臣ニ對スル御質
問ヲ致シタイト思ヒマス、唯此ノ文部大臣
ニ對スル質問ニ關聯致シマスルカラ、其ノ
前提トスル意味ニ於キマシテ、地方局長ニ
一問ダケ伺ッテ置キタイト思ヒマス、ソレハ
此ノ制度ヲ實施シマスルニ必要ナル經費ノ
負擔ヲ地方公共團體ノ負擔トシテ、之ヲ强
制スル義務ヲ負ハセル、强制シテ義務ヲ負ハ
セルト云フコトヲ此ノ案ニ於キマシテハ勅
令ヲ以テスルト云フコトニナッテ居リマス、
地方團體ノ支出ヲ强制スルノニ勅令ヲ以テ
スル前例ガ······實例ガ、此ノ〓育關係ノ
外ニ澤山ゴザイマスノデセウカ、ナイノデ
セウカ、其ノ點ヲ承リタイ、地方局長ニ申
上ゲタイノデスガ、若シ今御卽答ガ出來ナ
ケレバ後デモ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=19
-
020・坂千秋
○政府委員(坂千秋君) 唯單純ナル法律論
カラ申シマスト、地方公共團體ハ法律勅令ニ
依ッテ定ムル所ノ經費ノ負擔ヲ命ゼラレル
ト、ソレハ支出シナケレバナラヌ義務ヲ市
制町村制ニ於テ規定シテ居ルノデゴザイマ
ス、唯法律論ハ簡單デアリマスガ、實際
問題トシテ然ラバ勅令デポン〓〓出シテ行ッ
テモ、實際行ハレ難イコトデゴザイマスカ
ラ、實際勅令ヲ出シマスニハ事情ヲ見マシテ、
能ク勅令ガ實施シ得ラレルモノト云フ見透
シヲ付ケマセヌコトニハ、勅令ヲ出ス譯ニ
ハ參ラナイト思ヒマス、私ハ實ハ此ノ靑年
學校關係デドノ程度ノ勅令ガ出サレル豫定
ニナッテ居ルカ、或ハドウ云フ御說明ガ從來
アッタカ能ク存ジマセヌノデ、或具體的ノ
事實ヲ頭ニ置イテノ勅令ハ差支ガナイカト
云フ御尋ニナリマスト、モウ少シ調ベタ上
デアリマセヌト申上ゲ兼ネルノデゴザイマ
スガ、唯形式的ニ申シマスレバ、ソレハ勅
令ヲ出セバ必ズ負擔ヲナサザルヲ得ナイト
云フ形ニハナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=20
-
021・大森佳一
○男爵大森佳一君 文部大臣ニ伺ヒマスガ、
靑年學校ノ〓育ヲ受ケル就學ノ義務ヲ國民
ニ强制致シマスル、若シクハ市町村ニ人的
物的ノ施設ヲ爲スノ費用ノ負擔ヲ命ジマス
ルコトヲ、法律ニ依ラナイデ勅令等ニ依ッテ
制定スル、斯ウ云フ御說明デアリマシタ、
此ノ點ニ關シマシテハ衆議院ニ於キマシテ
モ或議員ヨリ質問ガ出テ居リマス、ソレニ
對シマシテ總理大臣ニハ、是ハ沿革上多ク
ハ勅令ヲ以テスルコトガ從來ノ慣例デアル、
今後モ其ノ例デヤル積リダ、今後モ勅令デ
ヤル積リダト云フ單ナル御返答ガアリマシ
タニ過ギナイヤウニ見受ケテ居リマス、詰
リ其ノ勅令デ御ヤリニナルト云フコトハ、
沿革ガサウダカラト云フコトノミノ理由デ
御答辯ニナッテ居ル、之ヲ法理上カラ申シマ
シテ、若シクハ其ノ事態ノ間題ニナッテ、事
態ノ內容ノ必要性カラ考ヘマシテドウデア
凡カ、或ハ政治上ドウデアルカト云フヤウ
ナ方面カラ色々理由モアラウカト思ヒマス
ルガ、ソレ等ノ理由ニ付テハ總理大臣ニハ
何等ノ御說明ガナクシテ、唯沿革先例ガ斯
ウデアルカラト云フコトデ、其ノ質問應答
ハ終ッテ居リマス、質問者モ不滿足デ、ソレ
デ終ッテ居ルノデアリマス、此ノ質問應答ヲ
矢張リ同ジヤウニ先日政府委員ト私トノ間
ニ取交ハシマシテ、實ハ私モ不滿足ニ思ッテ
居リマシタ、仍テ私ハ大臣ニ御尋ヲシテ見タ
イト云フ考ガ起ッテ居ルノデアリマス、昨日
デアリマシタカ、政府委員ノ私ノ質問ニ對
スル御答辯ハ、法律上ノ理由トシテハ、政府
ハ憲法上立法事項トシテ列擧セラレタルモ
ノ以外ノコトハ法律ニ依ラザルコトヲ得ル
ト云フ理窟デ、此ノ問題ヲ處理シテ居ルト
云フ說明デアリマシタ、私ハ法律論、少シ
ヤカマシク言ヒマスト、法律書生論ニナル
ヤウナコトヲ申シタクナイノデアリマス、
此ノ政府委員ノ見解ニ付キマシテハ又有力
ナル反對論ガゴザイマス、苟モ臣民ノ權利
義務ニ觸レル事項ニ付テハ、立法ノ手續ニ
依ラナケレバナラヌ、或ハ依ルコトヲ可トス
ル、依ルベシ、若シクハ依ルコトヲ可トスル
ト云フコトガ憲法ノ根本精神デアル、ト
云ッタヤウナ反對論モ有力ニアリマス、是
ハ法律論ト致シマシテ旣ニ公定解釋ガナイ
ノデアリマスカラ、此處デ彼此此ノ議論ヲ
致シマシテモ仕方ガナイ、私ハ大臣ニ對シ
テ法理論ヲ以テ彼此申上ゲルノデハゴザイ
マセヌ、併シナガラ政府委員ノ說明ニ依リ
マシテモ、假ニ政府委員ノ說明ノ議論ヲ可
ト致シマシテモ、詰リ列擧事項以外ノモノ
ハ法律ヲ以テスルコトヲ要セズト云フガ、
法律ヲ以テシテハイケナイト云フ意味デナ
イト云フコトハ明カデアル、列擧シタ以外
ノ事項ニ付キマシテ法律ヲ以テシテ宜シ
イ、宜イ理由ガアルナラバ、法律ヲ以テシ
テモ可デアルト云フコトハ爭ハレナイコ
トデアルト思ヒマス、御異存ハアルマイ
ト思ヒマス、果シテ然ルナラバ此ノ問題
ガ政治上若シクハ事態ノ內容カラ申シマ
シテ、法律ヲ以テシタ方ガ宜シイト云フ
理由ガアリマスルナラバ、進ンデ立法協
贊ノ手續ヲ經ラレルコトガ必要デアルト
私ハ信ジマス、此ノ點ニ付キマシテハ少
シク私ノ所存ヲ申上ゲテ御意見ヲ承リ
タイト思フノデアリマス、此ノ重要ナル〓
育制度、之ヲ振興致シマスル爲ニハ、大イ
ニ伸展サセマスル爲ニハ、其ノ根本ニ於テ
國民ノ協賛ト云フコトガ根本的ニ必要ナコ
トデハナイカ、國民ノ立法協賛ニ依ッテコソ
此ノ制度ガ伸展ヲ遂ゲルベキ原動力ヲ得ル
ノデハナイカト私ハ考ヘル、過日來カラノ
御話ヲ承ッテ居リマシテモ分リマスガ、此ノ
制度ノ發達伸展ト云フモノノ重點ハ何處ニ
アルカト云フニ、ドウシテモ就學ノ成績、出
席ノ良否ト云フコトガ重點ニナッテ居ルヤ
ウニ考ヘマス、生徒ガ快ク就學シ、サウシ
テ保護者モ喜ンデ就學サセル、又本人モ喜
ビ勇ンデ出席スル、又親ヤ雇傭主モ喜ンデ
靑年學校ニ出席サセル、自他大イニ滿足シ
テ勇ンデ靑年學校ニ赴クト云フコトデアッテ
コノ、其ノ制度ガ全國ニ成績ヲ擧ゲルコト
ガ出來ル、國力ノ進展充實ニ寄與スルコト
ガ出來ル、卽チ重點ハ此ノ就學、出席ノ成
績ノ良否如何ニ拘ルト云フコトニ考ヘザ
ルヲ得ナイト私ハ考ヘマス、然ルニ或ハ
此ノ理解、此ノ認識ガナクシテ、一般國民
ガ或ハ學校ヲ建テル爲ニ、租稅ガ殖エタ上
ニ持ッテ來テ、子供ノ稼キ賃迄棒ニ振ラナケ
レバナラヌト云フタヤウナ根性、或ハ折角親
達ハ苦ンデ生計費ヲ割イテモ小學校ノ卒業ヲ
サセタ、ホットシタ所へ持ッテ來テ、更ニ又靑
年學校ニ入學サセナケレバナラヌ、子供ニ親不
孝ヲサセルヤウナコトニナッタンダト云フタヤウ
ナ根性ガ出テ來タリ、隣ノ子供ハ貧乏ダト云フ
コトデ御免ヲ蒙ッタ、自分ノ家ノ子供モ御免ヲ
蒙ラウヂヤナイカト言ッタヤウナ根性ガ出
テ來タリスルヤウデハ、到底學校ノ〓育ノ
成績ト云フモノハ擧ルモノヂヤナイ、欣ビ
勇ンデ就學シ出席スルト云フ、又就學サセ、
出席サセルト云フヤウナ傾向、風潮ト云フ
モノガ全國ニ漲ッテ來ナケレバ、到底イカヌ
ト云フコトハ申ス迄モナイト思ヒマス、結
局此ノ制度ノ根本ハ、國民ガ此ノ制度ノ精
神ヲ能ク理解シ、若イ者ヲ國ニ御奉公サセ
ルニハ、此ノ〓育ヲ受ケサセナケレバト云
フ覺悟、必要ヲ認識シテ、寧ロ之ヲ義務ト
ハ思ハズシテ誇トスルヤウナ自覺ヲ深ク與
ヘルト云フコトガ大切ダト思ヒマス、斯ウ
云フ理解ナリ、認識ナリガナカッタナラバ、
百ノ奬勵方法モ千ノ補助方法モ駄目ダト思
ヒマス、サレバコソ紀男爵モ此ノ問題ヲ非
常ニ懸念サレ、又其ノ他ノ委員カラモ之ニ
付テノ御質問ガ出テ居リマス、政府ハ此ノ
出席奬勵ノ方法ハドウ云フモノガアルカト
云フ質問ニ對シテ、昨日モ色々ノコトヲ列
擧サレテ御話ニナッテ居リマス、或ハ義務制
度ト云フ制度下ノ國民ノ心理狀態、或ハ出
席時間ヲ就學者ノ勞働時間中ニ入レルト云
フヤウナ方法ヤ、興味ヲ與ヘルヤウニ〓育
ヲスルト云フ方法ヤ、ソレガ爲ニ〓員ノ養成
ニモ注意シヨウトカ、或ハ就學、出席其ノ
他ノ奬勵方法ヲ講ジヨウトカ、或ハ〓黨相
率ヒテ督勵ニ出掛ケルトカ云フヤウナ方法
ガアルカラ、サウシテ出席ノ奬勵ヲシテ行
タンダ、斯ウ云フ御說明モアリマシタ、成
ル程一ツノ手段デアリマシテ、此ノ數箇ノ
手段モ相當ノ手段デアリマスルガ、私ハ根
本的ノ問題トシテハ、是等ノ事項ハ第二義
的ノ事項デハナイカ、根本ハ國民ノ協贊ガ
アリマシテ、其ノ協贊ニ依ッテ國民ガ此ノ
制度ハ我々ノ制度デアル、我々ガ護立テテ
行クベキ制度デアルト云フ心持ガアッテコ
ソ、初メテ此ノ制度ニ對スル理解、認識ナ
リ、御奉公ヲシヨウト云フ自覺ナリガ湧イ
テ來ルモノデアル、是ガ卽チ就學ニモ、出
席ニモ其ノ成績ヲ良好ナラシムル根本的ノ
源泉デアルト私ハ考へマス、天降リト申シ
テハ言葉ガ過ギマスカモ知レマセヌガ、國
民ハ兎角天降リト見タガル、天降リ式ニ宛
行ハレタ制度デ、サウシテ所謂宛行ハレ
テ是ガオ前達ノ行ク學校ダゾト云フヤリ
方デハ、ナカ〓〓大衆ノ國民ト云フモノニ
理解ヲサセルト云フコトハ困難ダト思ヒマ
ス、從來國民ノ義務的〓育制度ガアリマス、
何レモ立法ノ手續ニ依ラナイデ、政府ノ、官
府ノ命令計畫ヲ其ノ儘全國ニ布イテ、國民
協贊ノ道ト云フモノハ之ニハ入レナカッタ、
國民カラ之ヲ見ル時ニハ、天降リノ御仕著
ノ感ガナイデモナイノデアリマス、斯ウ云
フ風ニシテ出來マシタ學校制度、地方ニ於
キマシテハ唯地方ノ繁榮策カラノミ見テ、是
ハ俺達ノ學校ダ、立派ナ學校ダ、輪奐ノ美
モアル、地方ノ繁榮策カラ是ハ非常ニ歡迎
致シマス、併シナガラ眞ニ我々ノ子孫、子弟
ヲ〓養スル制度、又我々國民ガ護立テテ行
カナケレバナラヌ〓育制度ダト云フタ純眞
ナ心持ト云フモノハ與へラレナカッタンデ
ハナイカト私ハ密カニ考ヘマス、ソレデ兎
角從來學校ノ〓育ガ非實際的ダ、或ハ畫
一主義ニ堕シテ居ル、國民生活カラハ離
レ小島ニナッテ居ル感ガアルト云ッタヤ
ウナ批評ガアリマスルガ、コンナ批評
モコンナ所カラ出テ居ルノデハナイカ、
詰リ御仕著ノ學校〓育制度ト云フヤウナ所
カラ、或ハ非實際、或ハ畫一ノ傾向、或ハ
國民生活カラ遊離シタ制度ト云フタヤウナ
批評ガコンナ所カラ湧出テ居ルンヂヤナイ
カトモ私ハ思ヒマス、私ハ國民協賛ノ道ニ
據ッテコソ、國民生活ニ卽シタ所ニ此ノ制度
ノ發達ガ現レテ來ルモノデアルト云フコト
ヲ信ズルノデアリマス、要スルニ國民生活
ニ直接シ、國民素質ノ進步ニ關スル重大ナ
此ノ制度問題デアリマス、是ガ萬民輔翼、
國民協賛ト云フ大地カラ生レ出テ來ナイ
デ、君民一如ノ大道ヲ進ムト云フコトニナ
リマシテコソ、其處ニ國民ノ理解ナリ、認
識ナリ、自覺ト云フモノガ油然ト生レ出デ、
此ノ制度ノ振興ニ寄與スベキモノガアラウ
ト思フノデアリマス、此ノ制度ノ振興ハ全
ク國民ノ協賛ノ道ニ依ッテコソ遂ゲラルベ
キモノデハナイカト考ヘルノデアリマス、
其ノ次ニ然ラバ此ノ制度ニ付キマシテ國民
協賛ノ道ヲ執ルノニ非常ナ御困難ガアルノ
デアラウカ、又國民協賛ノ道ニ據ッテハ國策
上得タルモノヲ得ラレザルコトニナラウト云
フ御心配デモアルノデアラウカ、政府ハ或ハ
立法協賛ノ道ヲ履ムニハ現在國民ガ餘リニ
無理解デアル、斯ウ云フ〓育制度ニ對シテ
ハ餘リニ無理解デアル、到底政府ガ庶幾シ
テ居ル所ノ立法ハ出來ナイ、立法協贊ノ道
ニ掛ケテハ到底庶幾スル立法ハ出來ナイト
考ヘラレル、而モ靑年〓育ニ要求スル所、
國情、國家ノ現狀ハ非常ニ窮迫シテ居ル、
此ノ理解ヲ國氏ニ得ル迄ニハ餘程ノ煩勞ト
時間トガ掛ル、迚モ待テナイ、ダカラ立法
協賛ノ道ハ拔キニシテ行クンダ、或ハ又更
ニ邪推ヲ致シマスレバ、議會ヲ構成スル處
ノ人ガ能力ニ於テ缺クル所ガアル、是ハ相
談スルニ足リル處ノ資格、能力ノナイ者ダ、
寧ロ相談シナイ方ガ國家ノ爲デアルト云ウ
タヤウナ御考デモアルノカ、是ハ私ハ邪推
ト考ヘテ居リマス、サウシタコトノ御考ハ
アルベキモノデナイト考ヘテ居リマスル
ガ、私ハ此ノ協賛ノ道ニ依ッテ此ノ制度ヲ生
ミ出スト云フコトニ付テハ左程至難ナコト
デハアルマイト考ヘマスルガ、旣ニ此ノ〓
育制度ハ實體ニ於キマシテハ國氏ノ大部分
ニ行ハレテ居ル、唯形式上義務ノ制度ヲ以テ
スルト云フコト、又不完全ナガラ現在ニ於
キマシテハ實質上此ノ制度ガ內容ヲ整ヘテ
居ル、唯此ノ内容ヲ充實完成スルト云フ所
ニ新制度ノ特色ガアルノデアリマス、デス
カラ國民ノ心ノ中ニハチヤント此ノ制度ト
云フモノハ旣ニ移ッテ居ル、之ヲ立法ノ手續
ニ依ッテ形ノ上ニ現實ニスルト云フコトニ
付テハ左程私ハ困難ナコトデハアルマイ、
左程現在ノ我ガ國民ガ無理解ナコトデハア
ルマイト思フ、既ニ此ノ制度ニ付キマシテ
ハ地方ニ於テ非常ニ歡迎シテ居ル地方モア
ル、有識者ハ既ニ大イニ此ノ制度ニ對シマ
シテ相當ノ興味ト熱誠ヲ以テ支持シテ居ル
ヤウナ狀況デアリマス、此ノ萬民輔翼ト云
フ所カラ生レ來ル處ノ意義、サウシテ其ノ
效果ト云フコトニ至リマシテハ私ハ非常ナ
重要性ガアルト思ヒマス、斯ウシテ國民協
贊ノ道カラ生レ出テ來ルト云フ所ニ此ノ制
度ノ意義ト效果ト、然ラザル場合トヲ考ヘ
マシテ非常ナ大差ガアル、是カラ發達サセ
ル上ニ於キマシテモ國民ノ理解ノ下ニ、國民
協賛ノ下ニ發達セシメテ行クト云フ所ニ非
常ナ値打ガアリ、重要性ガアルト思ヒマス、
私ハ此ノ制度ガ樞密院ノ議ニ附セラレルト
云フコトニ付キマシテハ非常ニ結構ナコ
ト、是ハ是非共サウシナケレバナラヌコ
トデアルト考ヘマスルシ、或ハ審議會、
或ハ委員會等ノ內意ヲ經ラレルト云フ
コトモ、是モ非常ニ結構ナコトト存ジマ
スルガ、唯一ツ國民協贊ノ唯一ノ重要
ナル手續ト云フトモノガ缺如シタンデハ、
此ノ大切ナ〓育制度云フトモノニ非常ナ
遺憾ナ點ガアルコトデハナイカト考ヘルノ
デゴザイマス、飜ッテ考ヘマスルニ、此ノ上
程サレテ居リマスル法規ハ單ニ國庫ノ補助
法デアリマス、此ノ國庫ノ補助法、之ヲ立
法手續ニ依ラルヽ位デアルナラバ、其ノ根
本法ハ當然立法協賛ノ道ヲ經ナケレバナラ
ヌト云フコトハ考ヘラルヽコトデアリマス、
而モ此ノ補助法ノ如キハ豫算ノ範圍內ニ於
テト云フ規定ニナッテ居リマス、豫算審議ノ
關係ニ於キマシテ當然此ノ問題ガ帝國議會
ニ係ルノデアリマスル、豫算ノ範圍內ニ於
ケル補助法規ノ如キハ、或ハ省令ノ如キニ
依リマシテモ足リルト考ヘマスルガ、此ノ
事業ノ根本ニナリマスル根本法、靑年〓育
法ト申シマスルカ、此ノ制度ノ立脚ニ付キ
マシテノコトヲ立法ノ手續ニ依ラナイト云
フコトガ、矛盾ガソコニアリハシナイカト
云フ風ニモ考ヘラレルノデアリマス、萬民
輔翼ノ道ニ依ッテ生レ出テコソ、我ガ國ノ中
堅國民ノ〓育制度トシテ全キ意義ト云フモ
ノヲソコニ生ズルノデハアルマイカト考ヘ
マスルガ、此ノ問題ハ實ニ靑年〓育ノ內容
ヲ改善强化シ、國民ノ義務制度ヲ確定シ、
日本ノ中堅國民ノ素質實力ヲ向上セシムル
重大ナル法制デアリマス、而モ其ノ成否發
達ハ一ニ總國民ノ精神的ノ奮起ト經濟的ノ
奮發トニ係ッテ居リマス、實ニ總國民ノ理
解認識乃至ハ熱意等ノ如何ニ依ルコトガ
至大デアリマスカラ、斯ノ如キモノコソ之
ヲ國民ノ輔翼協賛ノ道カラ生レ出デシムル
ヤウニスルコトガ政治上適正ナル立派ナ方
法デハナイカト考ヘマス、國體精神カラ言
ヒマシテモ、君民一如ノ精神ヲ斯ウ云フ所
ニ實現シテコソ、日本臣民ヲ指導スル所以
ノ道トモナラウカト思ヒマス、日本ノ靑年
〓育ノ制度ガ萬民輔翼ノ道ニ依ッテ生レ出
デタト云フコトヲ示シテコソ、此ノ制度ヲ
將來ニ活カス所以ノ道ニ適フモノト思フノ
デアリマス、我ガ國體ト此ノ時世トヲ省察
スルナラバ、當ニ從來ノ先例沿革カラ潔ク
脫却シテ、拔ケ出テ、宜シク明朗ナル國民
協賛ノ手續ヲ執ルノ擧ニ出ラレルコトガ正
シイコトデハアルマイカト私ハ考ヘマス、
此ノ考······甚ダ恐入リマスルガ、正シイ考
デハアリマセヌデセウカ、私ニ蒙ヲ啓イテ
戴キタイ、〓ヲ請フ意味ニ於キマシテ御質
問ヲ致シマシタ次第デアリマス、長ク申上ゲ
マシテ甚ダ恐入リマスルガ御答辯ヲ戴キタ
イト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=21
-
022・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今ノ御質
問ハ、義務制ニ關スル問題、國民ノ權利義
務ニ屬スルカラ、立法手續ヲ執ッテ萬民輔翼
ノ實ヲ擧ゲル形ヲ採ルベキガ最モ其ノ實ガ
擧ガルノデハアルマイカ、斯ウ云フ御尋ノ
ヤウデアリマスガ、總テノ權利義務ニ屬ス
ルコトヲ立法手續ニ依ルト云フコトニ······
議會協賛ニ依ルト云フヤウナ御議論ハ、全
般的ニ見レバサウ云フコトガ正シイ一ツノ
見方デゴザイマセウ、併シナガラ旣ニ其ノ
問題、其ノ手續、其ノ性質內容等ニ應ジマ
シテ、悉クヲ立法ノ手續ニ依ルモノデナイ
コトハ、只今既ニ御述べ、ニナッタヤウナコト
デアリマスルノデ、此ノ〓育ノ問題ヲ如何
ニ見ルカト云フ問題ニナリマスルト、今迄
ノ慣例ト申シマスカ手續ニ依リマシテ、旣ニ
小學校ノ義務制モ左樣ニシテ施行セラレテ
今日ニ至ッテ居ルノデアリマシテ、〓育關係
ノ者ガ悉クサウ云フ手續ヲ執ッテ居ル過去
モアルノデアリマス、之ニハ相當ノ理モアッ
タラウト存ジマス、而シテ〓育其ノモノノ
過去ノ手續ガ斯クアッタモノト存ジマシテ、
而シテ此ノ小學校ノ義務制ガ之ニ依ッテ行
ハレマシテ、其ノ爲ニ國民ガ必ズシモ之ニ
對シテ無理解デアリ、ソレニ對シテ不滿ガ
アルトハ今日迄ノ實績ニ鑑ミテ見得ナイノ
デアリマス、斯樣ナコトヲ考ヘ來リマス
ル時ニ、今直チニ之ヲ改メテ新タナル立
法手續ニ依ルト云フコトハ輕々シク行
ヒ得ナイコトデハアルマイカ、過般平
沼内閣總理大臣ガ御答ニナリマシタノ
モ、之ヲ以テ十分ノ運營ガ出來ルノデアル、
今改メテ之ヲ斯ウ云フ風ニシナケレバ、
國民思想ガ惡クナルト御認メニナラナカッ
タ點デ御答ニナッタコトト信ズルノデアリ
そう、私モ又斯ク考ヘル一人デアリマス、
故ニ今日直チニ之ヲ如何ニ取扱フカト云フ
コトニ對シテハ只今御答ヘ申上ゲマシタヤ
ウニ、直チニ之ヲ立法手續ニ依ッテスルト云
フ意思ハ持ッテ居リマセヌ、次ノコトハ或ハ
議論ニナルコトデアラウト存ジマスルケレ
ドモ、今段々御述ニナリマシタノデ、此ノ
根本ノ問題ニ付テ多少所見ヲ申上ゲテ御理
解ヲ戴ケルコトノ一端ニモナラウト存ジマ
スルカラ多少ノ議論ニナルコトト存ジマス
ルケレドモ、一應申上ゲテ置キタイト思ヒ
マス、過去ニ斯樣ナ勅令ニ依ッタト云フコト
ニモソレ〓〓理由ガアッタラウト存ジマスヽ
〓育ガ今日獨立ヲスルト云フヤウナ聲スラア
ル如ク、此ノ〓育ノ問題ハ根本ニ於テ可ナ
リ複雜ナ他ノ掣肘ヲ受ケテ、〓育ノ一貫シ
タ徹底ガ期シ得ナイ點ハ御承知ノヤウナ狀
態デアルノデアリマス、而シテ〓育ト云フ
モノヲ根本カラ、殊ニ小學校及靑年學校ノ
義務制ト云フヤウナコトカラ考ヘマスト、
此ノ程度ニ於ケル〓育ハ假令如何ナルコト
ガアラウトモ父兄ト致シマシテハ自分ノ身
ヲ割イテモ爲スベキ義務ト申シマスヨリモ、
其ノ欲求モアレバ、ソレニ對スル父兄トシ
テノ强イ要望ガアルノデアリマス、寧ロ國
家ガ之ニ對シテ義務制モ布カズ何モセズト
云フコトニ依ッテ〓育ノ機會均等ガ行ハレ
ヌトカ、或ハソコニ不幸ガアルト云フコト
カラ、少シデモ事ガアレバ、自ラ進ンデ爲
スベキ一ツノ自然ノ父兄ノ情〓ノ働キモア
リ、欲求モアルノデアリマス、從ッテ此ノ問
題ヲ指導スル上ニ付テハ其ノ點ヲ捉ヘテ能
ク世話ヲシ、能ク國家ガ之ニ對シテ十分ナ
理解ヲ持チ茲ニ施設ヲ施シマスルナラバ、
喜ンデ來ルベキモノデアリマシテ、唯義務
制デアルガ故ニ、强制デアルガ故ニ厭々來
ルト云フヤウナコトハ他ノモノト違ッテ居
ル趣ガ大イニアルノデハナカラウカト思ヒ
やっ、左樣ニ〓育ノコトヲ考ヘテ參リマス
ル時ニ假令何等ノ法令ガチクトモ、又如何
ナル施設ガナクトモ、父兄トシテハ進ンデ
如何ニカシテ自分ノ子弟ダケハ完全ナ〓育
ヲ受ケサシタイ、斯ウ云フヤウナ考ヲ持ッテ
居ル時ニ、社會ノ狀態ガ、或ハ財政ノ關係、
殊ニマア四圍ノ關係カラ、或ハ職業ノ關係
モゴザイマセウカラ、十分ニ自分ノ子弟ヲ
〓育シナイト云フコトガ、靑年學校ノ義務
制ヲモ茲ニ施行シナケレバナラヌト云フ
ツノコトニナッテ來テ居ルノダト斯ウ考ヘ
ルノデアリマス、故ニ天降リ式ニ上カラ來
タカラト云ウテ、他ノ事トハ違ッテ、寧ロ自
分ノ方カラ欲求シテ居ルコトニ向ッテ、此方
カラソレニ對シテ便宜ヲ與ヘ、而シテ大キ
ナ國家的見地カラシテ少ナクトモ壯丁ノ丁
年ニ達スル迄ニ〓育ヲスル必要ガアルト云
フコトデ此ノ義務制ヲ行ハレルト云フコト
デアリマスルナラバ、只今迄ノコトデ十分
此ノ事ガ行ヒ得ルノデハアルマイカ、併シ
ナガラ個人ノ家庭モアリマスルシ、地方ノ
財政モアリマスルシ、ソレ等ニ對シテ萬全
ヲ期スル上ニ付テハ、施設ノ上ニ付テ能ク考
ヘテ行カナケレバナラヌコトト考ヘマスカ
ラ、今日ノ狀態ヲ以テ必ズシモ滿足ナ結果
ヲ生ムトハ私ハ思ヒマセヌノデ、之ニハ餘
程ノ努力ヲ當事者トシテモ行ヒ、又國民モ
玆ニ十分ナ理解ヲ持チ、共ニ相俟ッテ、世界
ニ未ダ其ノ範ヲ見ナイ獨創ナモノヲ完成シ、
有終ノ美ヲ濟スト云フヤウナ熱意ヲ起サシ、
共ニ協同シテ行クト云フ爲ニハ十分ナ力モ
玆ニ致サナケレバナラヌト斯ウ考ヘテ居リ
マスガ、只今申述ベマシタヤウナコトデ、
唯上カラ獨斷ニ勝手ニヤルト云フコトノミ
デナク、玆ニ十分ナル理解ガ國民ニ持チ得
ルノデハアルマイカ、又萬民輔翼ノ道モ、
各〓ソコ等ノ點ヲ能ク理解ヲ致シマシテ、
自分ノ爲スベキ道ヲ爲シテ行クト云フコト
ニ依ッテモ萬民輔翼ノ道ガ立ツノデアリマシ
テ、立法ニ依ル協賛ヲ得ナケレバ萬民輔翼
ノ道ガ立タナイトモ私ハ考ヘナイノデアリ
マシテ、以上ノヤウナコトニ依ッテ今日新ニ
之ヲ論議セラレル問題デアリマシテモ、私ハ
ソコニ相當ノ議論ガアルコトダラウト存ジマスル
シ、只今迄ハ斯樣ニシテ來ッテ居リマスルノデ、
之ヲ其ノ儘實行致シテ參リマシテモ何等差
支ガナイコトデアラウト、マア斯樣ナ考ヲ
只今持ッテ居ル次第デアリマス、〓育其ノモ
ノノ本質ガ他ノ權利義務ノ問題ト多少變ッ
テ居ルト云フ特殊ナ所ヲ少シク考ヘマスル
下、此ノ點ノ手續ノ問題ニ付テ無理ガ必ズ
シモアルトハ考ヘマセヌ、殊ニ愼重ニ樞密
院ノ議モ經ネバナラズ、樞密院ノ議ヲ經テ
愼重審議モ致スコトデアリマスルシ、ソレ
ニ先立ッテハソレ〓〓審議會等ニ於テ愼重
ナ手續ヲ執リマスルナラバ、今日迄ノ狀態
デ只今ノ所宜イノデハアルマイカ、斯樣ニ
考ヘル次第デアリマスガ、多少御述べニナ
リマシタ點ヲ聽漏シタ點モアッタカト存ジ
マスルガ、以上〓要御答ヲ申上ゲテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=22
-
023・大森佳一
○男爵大森佳一君 御答辯有難ウゴザイマ
シタ、御心持ノ點ハ能ク分リマシタ、又其
ノ御心持ハ私全ク同感デアリマス、唯其ノ
御心持其ノモノガ考へ方ニ依リマシテ、私
ハ國民ガ寄ッテ盛立ッテ行クヤウナ道ニ進マ
セタイ、普通ノ權利義務ノ、所謂義務ト此ノ
制度ガ軌ヲ同ジウシテ居ラヌノデアリマシ
テ、寧ロ國民ガ進ンデ斯ウ云フ〓育ヲ受ケ
タイト云フ心持ガアルト云フ其ノコトカラ
申シマシテモ、御互ニ盛立ッテ全國民ガ協力
シテ行カウト云フ形ヲ憲法政治ノ上ニ執ッテ
ヤラセタイ、萬民輔翼ノ途ト云フモノハ、
唯立法ノ手續ヲ執ルノミガ、サウデハナイ
ト云フコトハ是ハ明カデアリマスルガ、併
シ今日ノ立憲政體ト致シマシテハ、是ガ重
要ナル一ツノ萬民輔翼ノ途デアルト云フコ
トハ爭ハレナイコトデアリマスカラ、其ノ
重要ナ途ニ掛ケテ、此ノ麗シイ義務ト云フ
モノヲ國民ニ遂行サセルト云フコトノ段取ニ
ナッテコソ、私ハ然ルベキモノヂヤナイカト
云フ考カラ申シタノデアリマス根底ニアル
心持ニ付キマシテハ全ク同感デゴザイマス
ガ、其結論ニナリマスル處ガ、ドウモ私ニ
ハマダ腑ニ落チヌ處ガアリマスガ、是以上
併シ理論ヲ彼此ト交シマスルコトハ、議論
ニナリマスルカラ、私ハ此ノ邊デ止メテ置
カウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=23
-
024・紀俊秀
○男爵紀後秀君 私ハ國庫補助、卽チ此ノ
靑年學校〓育費國庫補助法ノ第一條ニ付キ
マシテ疑問ガアリマス、ソレカラ現在迄ノ
靑年學校ノ出席率ハ良イカ惡イカト申シマ
スレバ、是ハ確カニ惡カッタト私ハ斷言ガ出
來ルノデアリマス、ソレ故ニ假令義務制ニ
ナリマシテモ將來出席率ヲ良クシ得ラレル
ヤ否ヤト云フ點ニ付テハ、私ハ相當ノ心配
ヲ有ッテ居ルノデアリマス、ソレデ當局ニ對
シマシテ、出席率ヲ良クスル御計畫ガアリ
ヤ否ヤ、其ノ方法如何ト云フコトヲ相當長
時間ニ亙ッテ昨日質問應答ヲ重ネマシタノ
デスガ、政府ノ意ノアル處ハ分リマシタケレ
ドモ、私ノマダ意ニ充タナイ處ガ相當アル
ノデス、ソレカラ〓員其ノ人ヲ得ルヤ否ヤ、
是ガ餘程ムツカシイコトデアッテ、其ノ點ニ
付テモ相當應答ヲ致シマシタ、ソレカラ女
子ノ靑年學校ヲ何デ是ダケ遲ラシテ居ルカ
ト云フコトハ、是ハ本會議以來御尋ヲ致シ
マシタガ、餘程困難ナル事情ガアルカラト
云フ御答辯デゴザイマシタガ、是モ私マダ
十分ニ諒解致シテ居リマセヌ、ソレカラ此
ノ〓へ方ノ、〓育方法ガ非常ニムツカシイ
ヂヤナイカ、此ノ國民學校ガ義務〓育ノ延
長ニナリマシタラ餘程ソレハ救ハレマセウ
ケレドモ、其ノ延長ニナラナイ間ハ、高等
小學校ヲ卒業シテ、本科ニ入ル者ト、靑年
學校ノ普通科ヲ卒業シテ、本科ニ入ル者ト、
其ノ學力ノ點ニ於テ、餘程ノ差異ガアリマ
ス、之ニ付テモ昨日相當政府委員ト應答ハ
致シマシタ、ソレカラモウ一ツ此ノ體位ノ
向上デナクッテ、或ハ體位ノ低下ニナリハシ
ナイカト云フヤウナ心配モ有ッテ居ルノデ
アリマス、併シ相當私ハ政府委員ニ質疑モ
.又御答モ得テ居リマスノデ、今日改メ
テ大臣ノ御意嚮ヲ伺ヒタイト存ジマシタケ
レドモ、恐ラク是ハ同ジ應答ヲ繰返スノデ
ハナカラウカト思ヒマスカラ、モウ是レ以
上ハ或ハ意見ノ相違ヂヤナイカトモ思ハレ
マスルノデ、折角大臣ノ御忙シイ處ヲ御繰
合セ下サイマシテ御出席戴キマシタケレド
モ、私ハ質問ハ最早是デ止メマス、サウシ
テ更ニ討論ノ際ニ私ノ希望ヲ申上ゲタイト
思ヒマス、私ダケハ質問ハ此ノ際差控ヘル
コトニ致シマス、是ダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=24
-
025・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 御質問ハ是デ
終ッタト存ジテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=25
-
026・下村宏
○下村宏君 チヨット簡單ナコトデスガ、丁
度大臣モ御出デスガ、靑年團ト靑年學校ノ
聯繫ノ採リ方、ソレカラ靑年團法ト云フヤ
ウナモノモ自然御造リニナル御考デアルノ
カ、ソレカラ總テガ是ハ無理デアルガ、欲
望ト云フノデスカ、女子ノ方ノ義務ト云フ
コトデスガ、是モ或ハ大凡ドノ位ノ年限ノ
間ニオヤリニナラウト云フヤウナ御見込デ
モアリマセウカ、特ニ此ノ靑年團ト靑年學
校ノ關係ト、何カ靑年團ニ付テ統制的ノ法
規デモ造ッテ一層强調スルト言ヒマスカ、サ
ウ云フヤウナ御考デモアリマセウカ、此ノ
點ダケ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=26
-
027・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 靑年團ノ今
後ノ問題、靑年學校ト靑年團トノ連繫、此
ノ問題ハ今日當然起ル問題ダト私モ豫期シ
テ居リマス、又色々御議論モアルノデアリ
マシテ、少年團ト靑年團、是ハ何レモ併セ
テ一ツ根柢カラ考ヘル必要ガアルト私考ヘ
テ居リマス、少年團ノ發達、靑年團ノ發達
ハマダ我ガ國ノ〓育ニ於テ社會〓育ガ發達
進步セズ、校內〓育ヲ以テ總テ滿足シテ居ツ
タ過去ノ時代ニ不十分ト申シマスルカ、或
ハ鍛鍊ヲセニヤナラヌト云フコトカラ起リ
マシタ靑少年團デアリマス、然ルニ今日小
學校ガ總テ義務制ニナリ、國民學校ノ義務
制ガ實施セラレルノハ當然デアリマシテ、
靑年學校ノ義務制ニナリマスト殆ド總テノ
モノガ義務制〓育ノ中ニ包含サレテシマウ
ノデアリマス、而シテ靑年學校ノ方ハ、殊ニ
職業ニ各〓從事シテ居ル者ガ多イノデアリマ
スルカラ、殆ド餘暇ヲ有タナイ、勞働時間
ヲ旣ニ〓育時間ノ中ニ入レテ居ルヤウナコ
トガアリマスルカラ、從ッテ對象トスル處ノ
靑年ハ一人デアッテ、ソレガ色々ナモノニ引ッ
張ラレテ、恐ラクハ時間モ餘裕モナイノデ
ハアルマイカ、其ノ間統制ガナカッタノデ
ハ甚ダ靑年······今體位ノ低下ヲシヤシナイ
カト仰セラレタコトモサウ云フコトノ御意
味デアタラウト思フノデスガ、ソコデ今日
ノ國民學校ノ一方ニ於テ鍛鍊ヲシテ行カニ
ヤナラヌ、校內〓育ト共ニ校外〓育ヲ十分
ニシテ鍛鍊ヲシ、實務〓育ノ方面ニモヤッテ
行カニヤナラヌト斯ウ考ヘテ居リマス、靑
年學校ニ於テハ尙更サウデアル、ソコデ校
內運動ト校外運動ト、卽チ鍛鍊〓育ト智育
〓育トノ間ニ一ツノ連鎖ト云フカ、二ツニ
分ケテ行カナケレバナラヌ、是モ義務〓育ノ
方ニ入レテ行カナケレバナラヌ、是モ校內
〓育ト校外鍛鍊ト云フモノニ分ケテ參リマ
スル爲ニ、靑年團ハ校外鍛鍊ノ一ツノ機關
ニナルノデハアルマイカ、サウ云フ際ニ今
日ノ靑年團ヲ靑年學校ト如何ニ結ビ付ケル
カ、又一體ノモノトスルカ、或ハ靑年團ト
云フモノヲ別ニ歷史ガアルカラ存ジテ、其
ノ間ニ緊密ナ聯繫ヲ採ルト云フコトモ考ヘ
テ、〓究ヲ致シタ後ニ、何レナリトモ義務
制ノ中ニ入ッタ一ツフモノトシテ將來靑少
年共ニ處置シテ行キタイ、其ノ爲ニ或ハ靑
年團令ト云フモノヲ設ケルコトニナリマス
ルトシテモ、矢張是ハ義務制ノ靑年團令ト
云フヤウナモノニシタ方ガ宜イノデハナイ
カ、壯丁ヲ終ッテカラ後ノ靑年團ノ二十五
歲迄ノ者ガ只今ノ靑年ヲ其ノ儘ニ致シテ行
クト云フヤウナコトニナル、斯ウ考ヘテ此
ノ靑年團ノ問題、少年團ノ問題モ考ヘテ行
キタイト目下考案ヲ運ラシテ居ル次第デア
リマスノデ、義務制ガ行ハレマス際ニハ何トカ
考慮ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
ソレカラ女子〓育ノ方モ之モ當然今日ノ狀
態ニ於テハ行ハレネバナラヌコトト思ヒマ
ス、カナリ女子ノ方モマダ程度ガソコマ
デ至ッテ居ラヌトハ申シナガラ向學心ニ燃
エテ居ルノデアリマスルカラ、ナカナカ女
子ノ中ニモ立派ナモノガアッテ、却ッテ女子
靑年學校ノ方ニ眞面目ナモノガアルヤウナ
風ニモ私共ノ眼ニハ映ズルノデアリマス、
尤モ此ノ男子ノ方面ノ背後トナッテ之ヲ激
勵シテ行クニモ、靑年女子ノ覺悟如何ガ非
常ニ關係スル所ガ多イト思ヒマスガ故ニ、
出來マスナラバ成ルベク早イ時期ニ或ハ制
限的ノ事ガ行ハレナクナルカモ知レマセヌ
ガ實施ヲシテ見タイ、只今女子靑年ノ方面
ノ實情ヲ十分ニ調査致サセマシテ、其ノ結
果ニ依ッテ立案ヲシテ見タイ斯ウ云フ考ヲ
持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=27
-
028・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 御質問ハソレ
デ是デ終ッタト見テ宜シウゴザイマスカ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=28
-
029・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 討論ニ移リマシタ時ニ、
私少シ希望ヲ申述ベタイト思ヒマスノデス
ガ、ソレハ文部大臣ニ是非御聽キヲ戴キタ
イノト、ソレト同時ニ內務大臣ニモ御出席
ヲ戴キマシテ、サウシテ御聽キヲ戴キタイ
ト思フ、併シ今會期ガ切迫ヲ致シテ居リマ
スノデ、兩大臣御一〓ニ御聽キヲ戴クコト
ガ或ハ出來ナイカモ知レヌト思ヒマスルノ
デ、餘程時日ガ延ビマスヤウデゴザイマシ
タラ、文部大臣ダケデ宜シイノデアリマス
ケレドモ、ドウカ內務大臣モ成ベク御出席
ヲ御取計ラヒヲ戴クヤウニ、委員長ニ御願
ヲ致シタイト思ヒマス、是レダケ御註文ヲ
申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=29
-
030・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 御希望ノ點承
知致シマシタ、成ベクサウ云フ風ニ取計ラ
ヒマス、ソレデハ今日ハ是レ迄ニ致シマシテ、
次囘ハ討論ニ移リタイト思ッテ居リマス、今
日ハ是デ散會致シマス
午後零時三分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵德川義親君
副委員長子爵〓岡長言君
委員
男爵紀俊秀君
下村宏君
男爵大森佳一君
田所美治君
細田安兵衞君
岩崎〓行君
國務大臣
文部大臣男爵荒木貞夫君
政府委員
內務省地方局長坂千秋君
文部參與官野中徹也君
文部省社會〓育局長田中重之君
文部省圖書局長近藤壽治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00319390314&spkNum=30
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。