1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十五日(水曜日)午前十一時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=0
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001・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) 是カラ開會致
シマス、質問ヲ終リマシテ今日カラ討論ニ
入リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=1
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002・大森佳一
○男爵大森佳一君 私ハ本案ニ對シマシテ
ハ異議ハゴザイマセヌ、贊成ヲ致スノデアリ
マス、唯贊成ニ付キマシテハ希望的ノ意見
ヲ開陳致シタイト思ヒマス、二ツゴザイマ
ス、第一ハ、今囘靑年學校義務〓育制ヲ立
ツルニ付キマシテハ、其ノ堅實ナル成立、
發達ノ爲ニ立法協賛ノ手續ヲ以テスルコト
ガ宜クハナイカト云フコトニ關シマシテノ
私ノ質問ニ對シマシテ、政府ハ先例ニ從ヒ
勅令ヲ以テスル意嚮デアル、從前ノ慣例ヲ
改ムルコトヲ躇躊セラレテ居ルヤウナ御樣
子デアリマス、之ニ付テ再三ノ答辯ヲ私ハ
承リマシタガ、私ハ、其ノ何故デアルカヲ
明確ニハ了解シ難イノデアリマス、折角此
ノ立派ナ有用ナル制度ノ將來ノ爲ニ甚ダ惜
ムベキコトデアルト感ズルノデアリマス、
國民ニ義務强制ノ形ヲ以テ臨ミ、市町村ト
云フ自治公共團體ニ費用ノ負擔ヲ命ズル關
係ニ付キマシテハ勿論ノコト、元々此ノ制
度ハ國民生活ニ直接シ、我ガ國靑年ノ士氣
ノ振否ニ關スル所ノ重要ナル組織機構デア
ら
リマスカラ、須ラク我ガ國ニ獨得デアル所
ノ萬民輔翼ノ精神ニ基キ、立憲ノ常道ニ
則リマシテ、堂々ト國民協贊ノ手續ヲ履マ
V、全國民ノ理解、認識、自覺ヲ一層深カ
ラシメテ、以テ此ノ制度ノ健全ナル發達ニ
資スルヤウニ致シタイコトデアリマス、此
ノ點ニ付キマシテハ、更ニ政府ノ愼重ナル
考慮ヲ煩ハシタク希望ニ堪ヘナイノデアリ
マス、是ガ意見ノ第一點デアリマス、第二ト
致シマシテ、靑年學校〓育制度ハ方今ノ時
局ニ對シマシテハ勿論、國家百年ノ大計デ
アリマシテ、固ヨリ喫緊ノ事デアリマス、
今後之ガ爲ニ要スル所ノ國庫竝ニ地方ノ負
擔ハ、自然是カラ相當ニ之ガ爲ニ增嵩スベ
キコトハ當然ノ次第デアルト考ヘルノデア
リマス、然ルニ一面國費ノ多端ヲ加ヘ、地
方ノ窮乏ハ愈〓甚ダシキヲ加フルト云フ際デ
アリマスルカラ、私ハ、此ノ財政困難ノ爲
ニ、萬一此ノ大切ナル事業ノ進展ヲ阻マレ
ルト云フガ如キコトガアリマシテハ、甚ダ
遺憾デアルト思フノデアリマス、此ノ時局
財政ノ困難ナル際、極力節約ヲ圖ルト云フ
コトハ勿論デアリマスルガ、事ハ元々國民
〓育上喫緊ノ事デアリマシテ、要務中ノ要
務デアルト考ヘマス、其ノ振否ハ直チニ國
力ニ影響スル、卽チ申サバ廣義國防ノ中ニ
モ屬スト言ヒ得ル事業トモ考ヘラレルノデ
アリマス、故ニ同ジク節約ヲスルト云ウテ
モ、他ノ方面ニ節約ヲ加フルトハ其ノ趣ヲ
異ニスベキモノデアルト考ヘマス、若シ萬
一〓育ノ事ガ其ノ實績、實果ヲ目前ニ收メ
ルコトガ出來ナイト云フ故ヲ以テ、今後此
ノ事業ノ過當ノ節減ヲ試ミラレルト云フヤ
ウナコトガアリマシテハ、甚ダ恐ルベキコ
トデアルト考ヘマス、財政困難ノ中ニモ與
フ限リ此ノ事業ノ爲ニ用費ヲ充タシテ、實
益ノアル經費ヲ支出シテ、事業ノ充實ニ最
善ノ效果ヲ擧ゲルヤウニ致シタイモノデア
リマス、特ニ此ノ邊ノコトニ付キマシテハ
關係當局者間ノ連絡ト協力ニ萬遺漏ナカラ
ムコトヲ希望シテ已マナイノデアリマス、
是ガ私意見ノ第二デアリマス、此ノ二點ヲ
開陳致シマシテ、此ノ案ニ贊成スル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=2
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003・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 私モ大森男爵同樣ニ此ノ
案ニハ異議ハゴザイマセヌ、唯一二私希望
ヲ申上ゲタイノデアリマスガ、ソレハ折角
靑年學校ヲ義務〓育ト致シマシテモ、出席
率ガ惡イト云フコトニ相成リマシテハ其ノ
目的ヲ逹シナイト存ジマシテ、過日來數囘
政府委員ト出席率ノ問題ニ付キマシテ質問
應答ヲ重ネマシタ、政府ニ於テ出席率ヲ良
クスル名案アリヤ否ヤト云フコトニ付テ、
御尋ヲ致シマシタノデアリマスケレドモ、
私ハソレニ贊成致シ難イノデアリマス、果
シテ政府ガ考ヘテ居ル通リノ方法ヲ以テ出
席率ヲ良クスルヤ否ヤト云フコトニハ、多
大ノ私疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、或ハ
興味アル〓育ニ依ッテ出席率ヲ多クスル、然
ラバ興味アル〓育トハ何ゾヤ、伺ッテ見ル
ト、其ノ職業ニ最モ密接ナル〓育ヲスルコ
トガ〓育ヲ完備スルモノデアルト云フヤウ
ナ御答辯モアリマスシ、又義務〓育ニスル
斯ウ云フ響ダケデモ精神上多大ノ「シヨック」
ヲ與ヘテ、サウシテ之ニ依ッテ大イニ出席率
ヲ良クスル、或ハ地方有志ガ大イニ之ニ理
解ヲ持ッテ益〓向學心ヲ唆ルヤウニスルトカ、
或ハ勞働時間中ニ出席時間ヲ加ヘルト云フ
方法ニ依ッテ、又出席率ヲ良クスルト云フヤ
ウナ御話ヲ承リマシタガ、私トシテハ是ダ
ケデ果シテ出席率ガ良クナルモノカ、今迄
ノ靑年學校ノ中デハ、今日地方ノ事情ニ照
シテ目的ヲ達スルヤ否ヤト云フコトニ付
テ、餘程疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併
シ其ノ節私ガ申上ゲマシテ御贊成ヲ得マシ
タ映畫〓育ヲ、大イニ之ヲ利用シテ、主ト
シテ映畫〓育ニ依ルト迄申シマセヌケレド
モ、今日ノ靑年ノ現在ノ嗜好ト、言葉ヲ改
メレバ、靑年ノ風潮ト申シマスカ、サウ云
フヤウナモノニ照シテモ、映畫〓育ヲ大イ
ニ善イ方ニ活用致シマシテ、之ヲ利用スル
コトニナレバ僅カナ時間デ多大ノ效果ヲ擧
ゲルコトモ出來マスシ、此ノ迫力ノアル效
果ノアル映畫〓育ニ依リマスト云フト、是
ヨリ本當ニ興味ヲ以テ〓育ヲシテ行ク、出
席率ヲ良クシテ行クコトカトモ思ヒマシテ
申上ゲマシク、處ガ政府モサウ云フ考ヲ持ツ
テ居ルト云フコトヲ伺ヒマシテ、私ハ大イ
ニ喜ンデ居ルノデアリマス、併シ是ノミニ
依ッテ出席率ヲ良クスルトト云フコトハ餘程
ムヅカシイコトデアルト思ヒマスノデ、ド
ウカ折角靑年學校ヲ義務制ト爲サルト云フ
コトヲ實行爲サルニ付テハ、モット深ク、出
席率ヲ良クスル方法ヲ、色々實地ニ卽シテ
御考ニナリマシテ、地方ノ實際ノ狀況、又
靑年ノ實際ノ有樣ヲ、都會ノミナラズ地方
農村、山村漁村等ニ於テ、ドウカ十分ニ
ツ御調べ戴イテ、サウシテ適切ナ方法ヲ考
ヘテ出席率ヲ良クシテ戴キタイト思ヒマ
ス、若シ義務〓育ニナッタガ就學率ガ惡イト
斯ウ云フコトニナリマスト、國民精神ノ上
ニモ多大ノ影響ヲ持ツコトトナラウカト思
ヒマスカラ、特ニ此ノ點ヲ御考ヲ願ヒタイ、
尙私ハ、折角是ガ義務〓育ニナリマシテ、
サウシテ日本ノ靑年ノ〓育ノ向上ヲ圖リ、
普及ヲ圖ラウト云フ御考モ、或ハヤリ方ニ
依ッテハ〓育ノ低下ニ却テナリハシナイカ、
此ノ點ガ餘程ムヅカシイ所デアリマスノ
デ、此ノ點ニ付テ十分一ツ御考慮ヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス、ドウモ今日小學校
ノ〓員ガ段々ト他ノ職ニ轉ジルト云フ傾ガ
アリマスルシ、又從ッテ師範學校ノ應募數ガ
時トスルト、其ノ應募人員ガ滿タナイト云
フヤウナ傾サヘモ出來テ居ルヤウデアリマ
ス、過日モ女〓員ノ主ダッタ人ガ會合致シ
マシテ、私モ其ノ席上ヘ參リマシタガ、其
ノ女〓員ナドハ、段々ト是カラ男〓員ガ
減ッテ來ル、自分ノ學校ニモ是ダケ減ッタ、
隣ノ學校ニモ是ダケ減ッタ、ソレダカラド
ウシテモ段々ト男〓員ト云フモノハ減ッテ
來ルデアラウ、ソレヲ充タスニハ女〓員ヲ
以テ充タサナケレバナラヌト云フヤウナ
傾向ニナッテ居ル、現今ノ〓育狀況ニ照
シテ、ドレダケ女〓員ガ奮發シ、ドレダ
ケ考ヘテ行カナケレバナラヌカト云フヤウ
ナコトカラ座談會ヲ催サレマシテ、色々
ノ話ヲ聞イテ見マシタガ、是ハ東京ニモ
サウ云フ傾ガアリマス、地方ヲ旅行ヲ致シ
マスレバ直グニ分ル、此ノ男〓員ガ減ッテ
居ルト云フコトハ是ハモウ明カナ事實ナン
デアリマス、ソレデ殊ニ此ノ靑年學校ニ相
成リマスト、兼任者ガ非常ニ多ウゴザイマ
ス、專任〓員ヲ御殖シニナル御考デアリマ
セウケレドモ、併シ是ハドウシテモ地方ノ
出費等ノ關係カラ、自然是ハ矢張リ兼任者
ガ多クナルダラウト思フ、事實ニ於キマシ
テ其ノ專任者ト雖モ、ドウモ色々ノ事情デ
兎角政府ハ立案ヲ爲サル時ニハ善イ方バカ
リヲ御覽ニナッテ、サウシテ御說明ナドニモ、
斯ウ云フ傾向ダカラ心配スルナ、斯ウ云フ
善イ事ガアルノダカラ、ソレハ心配ニハナ
ラナイト御考ニナリマスケレドモ、是ハ矢
張リ善イ所モ惡イ所モ實際ニ見テ、サウシ
テ惡イ所ヲ特ニ心配シテ、サウシテ問題ヲ
解決シナイト云フト、實ニ憂フベキ問題ガ
多々出來テ來ルノヂヤナイカト思ヒマスガ、
ドウモ是迄ノ靑年學校ノ〓員ハ兼任者ガ多
カッタ、專任〓員モアリマシタケレドモ、
其ノ專任〓員ハ先ヅ普通ノ小學校ノ〓員デ
アッテ、相當年モ取ッテ來タ、恩給モ付イタ、
サウ云フヤウナ人ニハ、ドウモ地方ノ財政
ノ關係カラ、段々ト高級者ニナッタラ財政ノ
都合デ、斯ウ云フ人ヲ罷メテ貰ハナケレバナ
ラヌ、併シ靑年學校へ入ッテヤッテ居ルト、
恩給ト靑年學校ノ俸給トデ、ドウカ斯ウカ
前ノ俸給位ニ行ケルカラト云フヤウナ人モ
隨分流レ込ンデ居ル傾ガアルノデアリマス、
又靑年學校ノ方ハ小學校ト違ヒマシテ、小
學校ノ方ハ一年中祭日、日曜日ヲ除クノ外
學校へ出テ居ルノデスケレドモ、靑年學校
ノ方ハソレダケノ時間ガ無イノデスカラ、
謂ハヾ二百十時間〓ヘテ居レバ宜イノデ、
小學校ノ〓員ニ較ベルト比較的閑ダト云フ
コトニナリマシテ、何ダカ小學校ノ〓員ト
竝ベルト靑年學校ノ〓員ガ劣ッテ居ルカノ
如ク見エルノデス、サウ云フ爲ニ自分モ嫌
ヒマスシ、世間モ幾ラカソレヲ輕ロシメル
ト云フヤウナ傾ガアリマシテ、ソレガ自然
ト生徒ニモ反響シマスノデ、ドウモソンナ
點カラ致シマシテ、〓員ニ其ノ人ヲ得ルト
云フコトガムヅカシイノデアリマスカラ、
ドウシテモ〓育ガ之ニ依ッテ低下セザルヲ
得ナイノデアリマス、ソレカラ質問ノ中ニ
モ申上ゲマシタケレドモ、高等小學ニ於テ
ハ千二百時間勉學致シマス者ガ、靑年學校
ニ相成リマスト百二十時間シカ一年ニ〓ヘ
ラレナイ、ソレ故ニ靑年學校ノ普通科ヲ卒
業シタ者ハ、高等小學ヲ卒業シタ者ヨリ學
力ノ點ニ於テ餘程劣ッテ居ル、其ノ優劣ガ
アル者ヲ、今度ハ靑年學校ノ本科デ同ジヤ
ウニ〓育シテ行カナケレバナラヌノデスカ
ラ、是ハ〓育家トシテハ餘程骨ガ折レル仕
事ダト思フ、ソレヲサウ云フ前ニ申上ゲタ
ヤウナ先生ガ一手ニ引受ケテ〓ヘテ行クノ
デスカラ、謂ハヾ優等兒ト劣等兒トヲ一緒
ニ〓ヘテ行カナケレバナラヌノデ、是ハ非
常ニムヅカシイ事ニナル、小學校ニ於テモ
優等兒ト劣等兒ト別ニシテ〓ヘルト非常ニ
能率ガ上ッテ來ルト云フヤウナ事實ガアリ
マスノニ、玆デハ優等兒ト劣等兒トヲ一〓
ニ〓ヘテ行カナケレバナラヌト云フコトニ
ナリマスノデ、是ガ又〓育ノ低下ヲ來ス所
以ニナリハシナイカ、ソレカラ近時靑年學
校ヲ造レバ町村デハ國庫補助金ヲ貰ヘル、
高等小學校ハ今ノ所義務制デアリマセヌカ
ラ、サウ云フ恩典ニ浴サナイト云フヤウナ
コトカラ、大分此ノ頃アチラコチラノ町村
長ニ會ヒマスルト、ソレ等ノ人々ハ、地方
費ガ斯ウ窮迫シテ居ル折柄デアッテドウニ
モヤリ切レナイガ、幸ヒ靑年學校ガ出來テ、
又其ノ子弟モ仕事ヲヤッテ居ル傍ラ勉强ガ出
來ルシ、又市町村モ國カラ補助ヲ貰ヘルト云
フノデ、高等小學校ヲ止メテシマッテ靑年學
校ニシヨウト云フ傾向ガ此ノ頃大分アル、或
表面ヲ見ル居ル〓育家ナドハ、ソンナ事ハ無
イ、高等小學ヘ入ル生徒ト靑年學校へ入ル生
徒トハ素質ガ違フ、家庭ノ事情ガ違フノダト
言ヒマスケレドモ、高等小學ニ在學シテ居
ル者ト、靑年學校ニ在學シテ居ル者トノ家
庭トカ素質トカ云フモノハ能ク似テ居ルノ
デアリマス、是ハ詳シク申サナイデモ御分
リデアラウト思ヒマスガ、サウ云フヤウナ
コトノ爲ニ高等小學ノ生徒ガ本科ヘ流レ込
ムト云フコトニナルト、是ハ又〓育ノ低下
ヲ來スト云フコトニナリマス、ソレカラ就
學時間ヲ勞働時間ノ中ニ入レルト云フコト
ハ誠ニ結構デスケレドモ、是ハ或一部分ノ
雇傭主ガ、ドウモ營利ノ上カラ申シマシテ、
八時間勞働サセタ者ヲ一一時間減シテ六時間
ニサレルト云フコトニナルト、何處カニ埋
合セヲ付ケヨウトスルノハ是ハ人情デアル、
サウナルト酷使ト云フコトガ又一ツノ心配
スベキ問題デアリマスシ、又榮養ノ點ニ於
テ相當心配シナケレバナラヌト云フヤウナ
問題ガ相當起ッテ來ルト思フ、或ハ文部省デ
ハ、ソレハサウ云フ事ハ無イ、向學心ニ燃
エテ居ルシ、雇傭主モナカ〓〓理解ガアッ
テ、日本ノ人間ダカラサウ云フコトハシナ
イト御考ニナルカモ知レマセヌガ、實情ハ
サウデナイ、サウ云フヤウナコトモ心配シ
テ行カナケレバナラヌ、サウスルト是ガ
ツノ又體位ノ低下ト云フコトニナラウト
思ヒマス、詳シイ事ハ申上ゲマセヌガ、サ
ウ云フヤウナコトガ澤山アリマスカラ、此
ノ〓育ヲ向上サセヨウト云フコトガ却テ反
對ノ結果ニナリハシマセヌカ、ソレカラ後
デ申上ゲマシテ特ニ內務大臣ノ御考ヲ承リ
タイト存ジマシテ、御忙シイ所ヲ御出デ戴
イタノデアリマスガ、後デ申上ゲルコトニ
モ關聯致シテ居ルノデスガ、義務〓育ニシ
テ大部分地方費デ賄ッテ行クト云フコトニナ
リマスト、ソレダケ地方費ガ嵩ンデ參リマ
スノデ、〓員其ノ人ハ少々知識ノ低イ人デ
アッテモ、月給ガ廉ケレバソレヲ〓員ニスル
ト云フ傾ガ、ドウシテモ出テ來ルト思フ、
其ノ點ヲ餘程御考ヘ下サイマセヌト、靑年
學校ノ〓師ニ其ノ人ヲ得ナイト云フコトニ
相成ラウカト思ヒマス、是ハモウ一ツ問題
ガアリマスガ、ソレヲ申上ゲタ方ガ却テ便
利ダト思ヒマスカラ、其ノ問題ノ中ニ申上
ゲマスガ、此ノ法律案ニ依リマスト、第
條ニ、靑年學校ノ〓育費ハ國庫カラ補助ス
ルノダ、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデス
ガ、地方ハ相當ノ負擔ヲスル、ソレガ建前
ニナッテ、ソレヘ持ッテ行ッテ補助ヲシテヤ
ル、斯ウ云フコトニナッテ居ルガ、私ハ、是
ハ國庫ガ全額ヲ支辨シ、國庫ガ全額ヲ負擔
サレルノガ當然ナコトヂヤナイカト思フ、
成ル程小學校ノ方ノ義務〓育費ハ國庫デ補
助ナサルコトニナッテ居リマスガ、アノ勅令
ガ初メテ出マシタ時分ノ地方ノ財政ノ狀況
ト、今ノ地方ノ財政ノ狀況トハ著シク違ッテ
居ル、此ノ程政府委員ノ御說明ニ依リマス
ト、全額支給シタイノダケレドモ、今國庫
モ相當財政ニ付テハ考へナケレバナラヌ時
デアルカラ、已ムヲ得ズ斯ウシタノダト仰
セラレマスケレドモ、其ノ苦シイ國庫カラ
地方財政補給金ト云フモノヲ編ミ出シテ、
地方ヘソレダケノ金ヲ補給サレテ居ルノダ
カラ、申ス迄モナク地方ハ、國庫ヨリ以上
ニ財政ガ窮迫シテ居ルト考ヘナケレバナラ
ヌ、遊興稅ヲ國ノ稅トシテ引上ゲヨウトスル
時ニハ、ソレニ代ルベキ財政補給金ヲ增額
ショウト云フヤウナコトモ、政府デハ御考
ニナッテ居ルヤウニ密カニ承ル位ニ、地方ノ
財政ガ苦シイノデス、サウスルト之ヲ逆ニ
考ヘマシテ、地方ノ財政ガソレ程苦シクア
リマスカラ、國費ヲ以テ折角是ハ靑年學校
ノ〓師ノ俸給ダゾト渡シマシテモ、受取ル
者ハ背ニ腹ハ代ヘラレマセヌカラ、苦シマ
ギレニソレヲ他ノ事業ニ使フ、使ハウトス
レバ使ヒ得ラレルノデアリマス、是ガ國庫
補助ノ缺點デアルト私ハ思フ、是ハ〓員ニ
渡セト言ッテ御渡シニナル俸給ハ、金ニ印シ
ガ付イテハ居リマセヌカラ、ソレヲ他ノ方
面ニ苦シイノデ使フト云フコトガ往々ア
ル、先生ノ受取ルベキ俸給ヲ土木費ニ使ッタ
リ勸業費ニ使ッタリスルコトハ、小學校ノ
〓育費デモサウ云フコトガアルノニ、殊ニ
財政ノ苦シイ時ニサウ云フ金ガ渡ッテ來ル
トスルト、ソレヲ他ノ方面ニ使フト云フコ
トハ是ハ有リ得ル、サウスルト先生ノ俸給
ヲ、ドウシテモ廉クシナケレバナラヌ
ト云フヤウナコトカラ、良イ先生ヲ得ルコ
トガ出來ナイ、斯ウ云フコトニナッテ參リ
マン、此ノ點特ニ一ツ、內務大臣ニ御考ヘ
戴キマシテ、サウ云フコトノナイヤウニシ
テ戴キタイト思ヒマス、屢〓申上ゲルコトデ
アリマスガ、曾テ小學校ノ〓員ノ俸給不拂、
寄附强要ト云フヤウナ問題ガ起リマシタ時
ニ、文部省ノ方デハ寄附强要ヲサシテハイ
ケナイゾ、俸給不拂ニシテハ、イカナイゾ
ト通牒ハ度々發シテイラッシヤイマスケレ
ドモ、其ノ俸給ヲ拂フ所ノ殆ド任免ノ權ヲ
得テ居ル所ノ町村長ハ、勝手氣儘ニ他ノ仕
事ニソレヲ流用シテ居ッテ、サウシテ何モ文
部省カラサウ云フ命令ガアッテモ聽カナイ
デモ宜イト云フヤウナ態度ヲ示シ、サウス
ルト町村長カラソレヲ縣廳ノ方へ御話ヲス
ルト云フト、學務部長モ知事モ其ノ町村長
ノ方ノ意見ニ贊同ヲシテ、サウシテ其ノ俸
給ノ不拂或ハ寄附强要等ガアッテモ、ソレヲ
默認シテ居ル、サウシテ政府カラ、寄附强
要アリヤ、俸給不拂アリヤト云フヤウナ通
知ガ文部省カラ行クト云フト、町村長ハ形
式ノ上ニ於テ、文書ノ上ニ於テ、私ノ村ニ於
テハサウ云フモノガアリマセヌト云フ通知
ガ行クカラ、アノ時モ總理大臣代理ガ幣原
サンカト思ヒマスガ、其ノ幣原サンガ、本
會議デ寄附强要ヲシタリ、俸給不拂ヲシタ
者ハ一人カ二人ハアルト思フガ殆ドナイト
云フ御答辯ヲシマシタカラ、私ハサウデア
リマセヌ、實情ニ對シテ調ベマシタガ、是
ダケアリマスト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマス、サウ云フヤウナコトヲ又御認メニ
ナルカラ、其ノ後ノ議會ニ於テ、遂ニ〓
育費ニ限ッテ特別會計ト爲スヲ得ト云フヤ
ウナ法律ヲ御拵ヘニナッタト云フコトガアッ
ク、既ニアノ時ニハ俸給不拂ヲシタト云フ
コトヲ裏書セラレテ居ルト云フコトト私ハ
思ヒマス、サウ云フヤウナコトモアッタノデ
アリマス、處ガ今度ハ是ダケ窮迫シテ居ッテ
モ、町村ニ使ッテ居ル吏員モ增スコトモ出
來ナイ、一人ニ澤山ノ仕事ヲ負ハシ、此ノ
戰時中戰地ニ於テモ亦銃後ノ仕事ニ於テモ
町村ノ役場ハ彌ガ上ニ輻輳シテ居ルノニ、
三人、四人使ハナケレバナラヌ所ニ殆ド
人ヤ二人ノ吏員デ賄ッテ行ッテ、ソレモ極メ
テ薄給デアル、疲勞シ切ッテ居ルヤウナ時デ
アリマスノデ、其ノ時ニ地方費デ義務〓育
ヲ仰付カッタ、國カラ渡ルノハ是ダケダ、サ
ウスルト自分達ノ出シテ居ル費用ハ何トカ
シテ穴埋メヲシナケレバナラヌガ、少シナ
リトモ靑年學校ノ國庫補助金ガ國カラ渡ッテ
來ルカラト云フノデ、其ノ外ノ仕事ニ廻シ
テシマッテ、極メテ低イ、能率ノ擧ラナイ先
生ヲ極メテ廉イ俸給デ雇フト云フヤウナコ
トハ、是ハアリ勝チナコトナノデアリマス、
此ノ點ヲ餘程能ク御考ヲ私ハ戴キタイト思
フ、ソレデ實ハ私ハ修正シ得ラレルコトナ
ラバ、此ノ第一條ヲ修正致シタイト思フノ
デアリマス、國庫補助法デナクシテ國庫支
辨ト、斯ウ云フコトニシテヤラナケレバ本
當ノ〓育ノ效果ハ擧ラナイト思ヒマスケレ
ドモ、併シ今日ノ現狀ニ照シテ、又今後ノ
御努力ニ對シテ、是ハ折角衆議院ヲ通過致
シテ居リマスシ致シマスカラ、此ノ儘デ無
疵デ此ノ法案ヲ通シタイト思ヒマスガ、本
當ノ〓育ノ目的ヲ達シヨウトスルナラバ、
國庫支辨ト迄行カナクテハ出來ナイノデハ
ナイカト私ハ、實ハ心配致シテ居ルノデア
リマス、今ノ小學校ノ〓員デモサウデス、關
西方面ナドニ參リマスト、モウ四十ニナツ
タナラバ小學校ノ〓員ハ罷メナケレバナラ
ヌト云フヤウニ皆考ヘテ居リマス、ト云フ
ノハ、相當ノ高給者ニナルト云フト、モウ
市町村ノ方デ其ノ俸給ヲヤルコトガ出來ナ
イト云フコトニナリマスカラ、百六十圓ノ
校長サンヲ一人置イテ置クヨリカ、八十圓
ノ先生ヲ二人入レナケレバナラヌ、又入レ
タ方ガ地方ノ財政ニ大變ニ都合ガ好イト云
フ傾ガアリマスカラ、今ノ小學校ノ〓員
ハ續々轉職スルト云フコトノ原因ハ一ツ
ハ之ニ因ルノダト思フ、一ツハ好イ仕事ガ
澤山餘所ニアルカラソレヘ走ッテ行クト云
フコトモアリマス、其ノ仕事ヲ一生ノ天職
トシタイケレドモ、四十前後ニナッタラ
罷メラレテシマウノダカラ、ソレデハ詰
ラヌカラ今ノ中ニ身ヲ交ハシテ置イタ方ガ
宜カラウト云フコトガ、一ツ問題ニナッテ
居ルノガ靑年學校デハ益〓サウナル、靑年
學校ノ〓員ヲ自分ノ天職ト考ヘテ、其ノ仕
事コソ自分ノ最モ與ヘラレタ所ノ有難イ
仕事デアルノダカラ、之ヲ終身ノ仕事トシ
テヤリタイ、斯ウ考ヘテ居ッテモ、イツノ時
ニカ罷メラレテハ仕方ガナイ、斯ウ云フコ
トガ餘程累ヲナシテ居リマスノデ、町村長
ガ小學校〓員、靑年學校ノ先生ノ殆ド進退
ニ關係シテ居リマスケレドモ、是ハ町村長ヤ
或ハ市長、サウ云フ人ガソレヲ左右スルダケ
ナラマダ宜シイデスガ、ソレニ又市町村會議
員ガ、小學校ノ〓員ノ進退ヲ自由ニスルト云
フコトハ色々ノ弊ガアル、デスカラ此ノ間
或意味ニ於キマシテハ小學校ダノ、或ハ靑
年學校ダノト云フヤウナ市町村立デヤッテ
居リマスル學校ハ、殆ド市町村ニ委託シテ
居ル、サウシテ其ノ一番上ニ立ッテ、ソレノ
締括リヲシテ居ルノハ學務部長デアル、斯
ウ云フコトニナル、學務部長ハ知事ノ下ニ
居ッテ仕事ヲシテ居ル、其ノ知事ハ內務省ノ
管轄ノ下ニアル、斯ウ云フコトニナッテ居マ
スモノデスカラ、寧ロ地方ノ〓育ノ振フト
振ハザルハ、現在ノ所ハ文部大臣ヨリハ內
務大臣ノ威力ノ方ガ多イノヂヤナカラウカ
ト思フ、之ヲ一ツ愼重ニ御考ヲ願ヒマシテ、
文部大臣ト內務大臣ト力ヲ御合セニナッテ、
サウシテ折角靑年學校ヲ義務制ニ爲サイマ
シタ御趣旨ニ一段ノ一ツ御奮發ヲ願ヒタイ
ト存ジマス、ソレカラ尙モウ一ツ御願ヒ致
シタイノハ、是ハ本會議以來度々申上ゲテ
居ルコトデスケレドモ、大臣モ御考ニナッテ
居ルヤウデスガ、ドウカ女子靑年學校促進
ト云フコトニ付テ一ツ考ヘテ戴キタイト思
フ、過日文部大臣ハ、女子ノ靑年學校ハ考
ヘテ居ル、併シナカ〓〓是ハ關係ガムヅカ
シイノデアルガ、考ヘテ居ルノデアル、併
シ女子ニモ男子ニ優ル良イ者ガナカ〓〓ア
ル、サウ云フ者ヲ〓育シテ行キタイ、又惡
イ者ハ矯メ直シテ良クシテ行キタイト云フ
御考ヲ持ッテイラッシヤルヤウニ過日來拜聽
致シマシタ、私共ハ良イ方面ハ見マスケレ
ドモ、今日ノ女子〓育ガ餘程惡イ方面ニ向ツ
テ居ルコトモ亦事實ダト思フ、是ハドウシ
テモ或意味ニ於テハ矯メ直サナケレバナラ
ヌヤウニモ考ヘラレルコトガ澤山アル、時
間ガアリマセヌカラ、其ノ例證ヲ擧ゲルコ
トハ省キマスケレドモ、斯ウ云フヤウナ點
カラ申シマシテモ、ドウカ一ツ女子靑年學
校ヲ男子靑年學校ト共ニ成ルベク早ク促進
シテ戴キタイ、是ダケノ私希望ヲ申上ゲマ
シテ、此ノ案ニ贊成ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=3
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004・下村宏
○下村宏君 簡單ニ希望ヲ添ヘテ贊成ノ意
見ヲ申シマスガ、義務〓育ノ八年制ト云フ
コトニナリ、靑年學校ノ義務制ト云フコト
ハ非常ニ結構ナコトデアッテ、平時ハ無論デ
スガ、非常時ノ時ハ尙其ノ效果ガ多イト思
フデスカラ、此ノ案ハ贊成ヲ致シマスガ、
唯此ノ非常時局ニ際シタ爲ニ、只今紀男爵
カラモ色々御話ガアリマシテ、〓員ノ待遇
デアルトカ、學校ノ設備デアルトカ、各方
面ニ學校ノ校數ヲ殖スニシテモ非常ニ金ガ
掛ルデスガ、是モ此ノ際ナカ〓〓註文シテ
モ非常ニムヅカシイ問題ト思ヒマス、同時
ニ此ノ時局ニ際シテ、矢張リ此ノ靑年學校
ノ擴充ヲ一方デ必要トシナガラモ困難ト思
フコトパ、靑年ガ近頃非常ニ忙シクナッテ來
ル、地方ハ多數ノ壯丁ガ出征ヲシテ居リ、
馬ガ徵發サレテ居ル、サウ云フ點デ地方ノ
靑年モ今迄ヨリモ農事其ノ他ニ忙シクナッ
テ居ル、ソレカラ都會地ハ都會地デ又重工
業其ノ他ガ所在ニ起ッタ爲ニ、都會ノ靑年モ
亦、離村シテ來タ靑年モ隨分此ノ仕事ノ方
ニ忙シクナッテ來タ、ソコデ又斯ウ云フ時局
ニ際シテ居ルガ爲ニ、靑年團トカ、其ノ他
色々ノ靑年團ノ行事ト言ヒマスカ、仕事モ
殖エテ來テ居ル、丁度內務大臣モ此處ニ御
臨席デアリマスガ、私此ノ前宇部市ニ行ッタ時
ニ矢張リ靑年學校ノコトヲ尋ネルト、此ノ工
場所在地ノ仕事ガ殖エテ來ルカラ、矢張リ近
邊カラ自轉車等デ通ッテ來ル者ガ殖エテ來テ、
工場へ自轉車デ駈ケテ來テ、又學校ヘ行カウ
ト云フヤウナコトデ、ドウモ一番向學心ニ燃エ
テ居ル良イ連中ガ、段々病氣デ缺勤シ出シテ
來ル、ソレハ何モ靑年學校ガアル爲ニ病氣ニナ
ルノデハナイ、サウ云フ工場デ隨分不斷ヨ
リモ長イ時間働クカラ過勞ニナルノダラウ
ト思ヒススガ、其ノ點私ハ宇部デ其ノコト
ヲ初メテ聞イテカラ後、各地デ尋ネマスル
ト、到ル處其ノ話ニ同感ダト云フ聲ヲ聞ク
ノデアリマス、是ガ果シテ全體ノ中ノドレ
ダケノ比率ノ者カソレハ分ラナイノデアリ
マスケレドモ、兎ニ角此ノ時局デ都會地モ
農村モ平時ヨリ忙シクナッテ來タコトハ事
實デアリマスカラ、只今紀男爵モ出席者ノ
コトニ付テ御心配ニナッテ居ルコトニ私モ
同感デハアルガ、同時ニ要スルニ地域ト季
節ニ依ッテ餘程此ノ時間ニ相當ノ斟酌デモ
加ヘナイト、一律ニハ私ハイカヌモノヂヤ
ナイカト思フ、無論相當斟酌サレルコトト
モ思フノデアリマスガ、一方デ昨日文部大臣
ノ御答辯モアリマシタガ、靑年團等ノ事業
ト仕事ト、靑年學校ノ仕事ナドニ、無論重
複シナイト云フコトハ無論考ヘラレルコト
デアリ、ソレカラ又先程紀男爵ノ御話ニナッ
タヤウニ、映畫デアルトカ漫畫等或ハ見學ニ
行クトカ「スポーツ」ヲヤルトカ、色々ナモ
ノヲ殖シテ、同ジコトデモ興味ナリ趣味
ヲ以テ愉快ニヤル、マア丁度「ドイツ」ノ「ケ
ー·デー·エフ」ノ官給旅行團ノヤウナ例モ
アリマスガ、其ノ內容ノヤリ方モ精神的ニ
裕リガアルト云フカ、潤ヒガアルト云フカ
愉快ニ學業ニ就イテ居ラレルト云フコトガ、
精神的ニモ肉體的ニモ餘程前申シタヤウナ
懸念ヲ緩和スルノデハナカラウカ、ソレデ
斯ウ云フ時局ガ進メバ、財政ノ上カラ云ッテ
モ又其ノ他ニ於テモ相當途ハ付クデセウガ、
兎ニ角今一方ニハ財政ノ上デモ手ガ〓リ兼
ネルデアリマセウシ、更ニ今云フヤウナ事
情デ、地方モ都會モ不斷ヨリモ非常ニ忙シ
クナッテ居ルカラ、又之ニ依ッテ折角靑年學
校ハ拵ヘタガ其ノ靑年ノ體位ガ下ッテ來ル
ト云フヤウナコトデハ、逆效果ニナリマス
ルカラ、前申シタヤウナ點ニ付テ當局デ十
分考慮ヲ拂ッテ戴キタイト、斯樣ナ希望ヲ
添ヘマシテ贊成ノ意ヲ表シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=4
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005・田所美治
○田所美治君 大森男爵初メ皆樣ガ御意見
ヲ付シテノ御贊成デアリマシタ、何モ私ハ
申スコトハコザンセヌガ、私モ本案ニ付テ
ハ何モ異議ハゴザンセヌ、唯此ノ間中、問
答ヲ致シテ居リマス間ニ、御承知ノ通リニ
本法補助費ハ誠ニマダ薄弱ナモノデアリマ
シテ、將來ハ當局ニ於テモ國庫ノ負擔法ニ
之ヲ變ヘタイ、又內容ニ付テモ補助ヲウン
ト增シタイ斯ウ云フ希望モアラレルヤウデ
アリマス、又私ガ御尋ネシタ中ニモ此ノ俸
給手當ヲ補助スル外ニ、子弟ノ貧窮ナ家族
ニ對シテモ、又就學ノ費用等ニ付テモ負擔
ヲシテヤラナケレバナラヌ、斯ンナ狀況モ
御同感ノヤウデアリマス、要スルニ此ノ國
庫補助法ハ、今アリマス實業〓育費國庫補
助法ノ、其ノ中ノ實業補習學校ニ關スル部
分ヲ取ッテ來テ、卽チ此ノ附則ニアリマス通
リ、第四條但書ダケトカ、第七條ノ「前條
ヲ削リ」ト云フヤウナコトガアリマス通リニ、
其ノ中ノ一部分ヲ取ッテ來テ、サウシテ形式
ハ此處ヘ特別ノ三十四箇條ノモノヲ拵ヘタ
ニ過ギヌ、又實際ニ付キマシテモ每年豫算
ヲ以テ定メタ金額ヲ支出スルノデアリマス
カラ、皆サン御心配ノ通リ豫算デ終始增減
ヲセラレル、殊ニ依ルト又來年增減サレル
カモ知レナイ、國家財政ノ都合デ甚ダ不安
ノモノデアルノデアリマス、今迄モ義務制
デナイ任意制ノ實業補習學校デアリマスナ
ラバ、ソレハ靑年學校デアリマスガ、靑年
學校デアリマスナラバ、ソレハ過不及ガア
リマシテモ宜シウデゴザイマスケレドモ、
義務制ニナッタ場合ニ於テハモウ少シ國庫
補助法ヲ有力ナ力ノアルモノニセナケレバ
ナラヌ、志ガアッテモ金ガ足ラナイ爲ニ行ハ
レナイ、消長ヲ來ス、斯ウ云フコトヲ免レ
ナイノデアリマス、實ハ何故ニ小學校ノ義
務〓育費ト同ジニ國庫負擔法トシテ出サレ
ナカッタノカ、ソレハ今日財政ノ都合デ半
分以下ニシテモ宜シイ、三分ノ一デモ宜シ
ウゴザイマセウ、サウシテ金額ノ三分ノ
ニ相當スル金額ヲ支出スル、負擔スル、斯
ウヤラレテ行ケバ其ノ憂ハ全ク無クナル
ノデアリマス、國庫負擔法トシテ此ノ定額
ヲ國庫ガ負擔スル、卽チ今ノ小學校デ云ヘ
バ半額ヲ負擔スルト云フコトガ初メカラ其
ノ精神ニナッテ居リマス、サウシテ只今デハ
八千五百萬圓ト云フモノヲ第一條ニ規定シ
マシテ、金額ノ八千五百萬圓ヲ國庫ガ負擔
スル、斯ウ云フ規定ヲ嚴格ニ定メテ居ルノ
デアリマス、如何ナル年ニ於テモ旣定ノ歲
出ニナッテ、外ノ豫算ト違ッテ最初ノ既定ノ
歲出デ是ハヤラスト云フコトニナッテ居リ
マスガ、此ノ原案ハ無論貧弱デアリマシテ、
每年豫算デ增減ヲ認メルコトニナルノデア
リマスカラ、一日モ速カニ小學校ノ國庫負
擔法ノ如キモノニ御改メニナルコトヲ私ハ
希望スルノデアリマス、サウシテ是ハ既定
歲出ニシテ、定額ノ既定ノ歲出ニシテ置ク、
ソレハ少クモ二分ノ一、義務〓育ノ通リ···
國民〓育ノ通リニ、二分ノ一ヲ標準トスル
モノノ定額ヲ既定歲出ニ御定メニナリ、サ
ウシテ國庫補助法デモ宜シウゴザイマス、
名前ハドチラデモ宜シイ、第一條ニ動カヌ
モノヲ御定メニナリ、サウシテ段々將來增
額ニ伴ッテ此方モ增額シテ行ク、增額シテ差
支ナイモノデアル、斯ウ云フ建前ニシタイ
ト云フ御意見ノヤウニ、此ノ間中ノ問答ノ
中ニモ伺ッテ居リマス、唯財政當局ノ考カラ
此ノ時局ニ於テ已ムヲ得ズ斯ンナ薄弱ナモ
ノガ出來テ居ルモノト考ヘテ居リマス、
方義務制ヲ立テル場合、國庫補助法ニハ相
當シナイモノダラウ、弱イモノダラウト存
ジテ居リマス、是ガ私ノ希望デアリマス、
尙ソレカラ大森男爵或ハ紀男爵カラモ御述
ニナリマシタガ、此ノ金ヲ外ニ使ハレルノ
デアリマス、小學校ノ八千五百萬圓モ縷々
例ヲ擧ゲテ紀男爵ハ度々本會議ニ、又此處
デモ述ベラレテ居ル、今モ承リマシタ通リ、
特別會計ニシテ置カヌト云フ外ヘ使ハレ
ル、文部省ハ······實ハ地方經濟ノ救濟ノ爲
ニ始終一部分ト云ヒマスカ、全部デハアリ
マスイケレドモ、大部分ハ働クト、斯ウ云
フコトガ從來ノ弊害デアッタノデアリマス、
ソレ故此ノ特別會計ニ是非シテ貰フト云フ
コトノ希望ヲ述べマシテ、サウシテ負擔法
ノ增額ノ時分ニ決議シタコトガモウ十年モ
前デアリマセウ、其ノ時ニ我々ノ希望ノ全
●
部ハ容レラレマセズシテ、特別會計ニ爲ス
コトヲ得ト云フコトニナッテ參ッタノデアリ
さい、是ハ十分ノ希望ヲ達成致シテ居リマ
セヌ、ダカラ特別會計ニシテ居ル所モアル
シ、無イ所モアル、特別會計ニシテ置キマ
シタラ外ヘ使ハレナイ、已ムヲ得ザル場合
ニ於テハソレガ監督官廳ノ認可ヲ受ケマシ
テデモ流用ガ出來ル、ソレハサウ云フ餘地
ヲ作ッテモ宜イカモ存ズマセヌガ、特別會計
ニ是ハドウシテモシナケレバイクマイト思
ハレルノデアリマス、旣ニ小學校ノ場合ニ
付テ貴族院ハ其ノ希望ヲ表示シテ居リマス
カラ、此ノ國庫補助法ニ付キマシテモ、同
一精神デ義務制ニナル以上ハ矢張リ特別會
計ヲ御立テニナラナケレバイクマイ、文部
大臣ノ特ニ私ハ御盡力ヲ願フノデアリマス、
今木戶內務大臣ハ丁度傍ヘオイデニナリマ
シタカラ、能ク御聽キヲ願ハウト思ッタノデ
アリマスガ、恐ラク內務省ガ始終是ハ反對
スルノダラウト思フノデアリマス、內務省
ハ地方財政ノ窮乏ト云フコトカラ、國庫ノ
金ヲ矢張リ餘裕ガアレバ外ヘ使ヒタイ、餘
裕ガアレバ宜イノデアリマスガ、本目的ヲ
脫却シテ、ソレヲヤラナイデ地方救濟ノ方
ニ充テル、斯ウ云フコトガドウモアリ勝チ
デアラウト思フノデアリマス、今ハ地方財
政救濟交付金デアリマスカ、アノ方モ數千
萬出テ居リマス、數千萬以上ニナッテ居リマ
セウガ、段々地方救濟ノ目的デ出テ居ル金
額ノ國庫ノ負擔支出モアルノデアリマスカ
ラ、モウ今度ノ此ノ靑年學校ニ付キマシテ
ハ、此ノ法律ノ一條デ特別會計ニスベシト
云フコトニ御拵ヘニナッタラ宜カッタラウカ
ト、斯ウ私ハ思フノデアリマスガ、是モ
書イテアリマセヌ、色々ノ點ニ付キマシ
テ金額ヲ定メルトカ、或ハ步合ヲ定メ
テ、國庫ノ規定歲出的ノモノニシテ、ソレ
ヲ他ヘ流用サレヌコト、斯ウ云フコト位ヲ
書クノハ國庫補助法若シクハ國庫負擔法
ナルモノニ於テ、近キ將來ニ於テ其ノ主義
ニ御改メラ願ハナイト云フト、文部大臣ノ
所期ノ御目的ガ十分ニ達成シ得ラレナイ、
コンナニ思フノデアリマス、段々是ハ年々
歲々向フ七箇年ノ間殖エテ行ク金デアリマ
スカラ、町村ハソレヲ狙ッテ居ルダラウト思
フノデアリマス、サウシテ內容ノ改善トカ、
〓員ノ俸給ヲ殖シテサウシテ質ヲ善クシテ
ヤル、〓育ノ實績ヲ擧ゲルト云フコトノ目
的ハ外ヘ流用サレルガ爲ニ阻害サレル、斯
ウ云フコトノ虞ハ今モ見エテ居ルノデアリ
マス、紀男爵ノ御述ノ通リデアルノデアリ
マスカラ、其ノ邊ニ付テハ近キ將來ニ於テ
ドウゾ御工夫、御〓究ヲ願ヒタイ、殊ニ今
ノ內務大臣ハ、靑年學校ノ義務制度ヲ文部
大臣トシテ諮詢セラレマシタ、劈頭ニ於テ
審議會ヘ諮詢セラレマシタ方デアルノデ、
實ハ文部大臣ガ厚生大臣、內務大臣ト斯ウ
轉々セラレマシタガ、半バカラ後ニ現荒木大
臣ガ實績ヲ襲蹈セラレタ、法律ハ荒木サン
ノ手ニ依ッテ出來マシタノデアリマスガ、元
ノ起リハ兩大臣ガ一體···是ハ一貫ノ御
盡力ノ結果ナンデアリマスカラ、只今ノ時
ノヤウナ丁度兩大臣、關係大臣ガ御揃ノ時
ニ特別會計位ハ、是ハ法律デナクトモ宜イ
ノデアリマスカラ、勅令デ御立テニナッテ御
進メヲ願フ、斯ウ云フコトニ文部大臣ノ御
相談ヲ願ッテ御盡力ヲ願ヒタウ存ジマス、內
容ノ改善ニ付キマシテハ〓育審議會ガ十數
項······私モ亦昨今見テミマシタガ、ナカ
ナカ詳シイ決議ヲ致シテ居ルヤウデアリマ
シテ、大體ニ於テハ是ハ當局ハ皆御同意ノ
點デアルノデアリマスカラ、深甚ナ周到ナ
御配慮ヲ以チマシテ、遺憾ナキ此ノ制度ノ
實績ヲ御擧ゲニナルヤウニ願ヒマス、色々
問答ノ際ニ申上ゲテ置キマシタ點ヲ御參考
ニ御願ヲスレバ仕合セデゴザイマス、本案
ニ對シテ何等異議ゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=5
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006・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) サウ致シマス
ト、本案ニ對シマシテ皆樣御異議ノナイモ
ノト認メマシテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=6
-
007・徳川義親
○委員長(侯爵德川義親君) ソレデハ本案
ヲ是デ可決致シマス、是デ散會致シマス
午後零時六分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵德川義親君
副委員長子爵〓岡長言君
委員
男爵紀俊秀君
下村宏君
男爵大森佳一君
田所美治君
細田安兵衞君
岩崎〓行君
國務大臣
文部大臣男爵荒木貞夫君
內務大臣侯爵木戶幸一君
政府委員
文部省社會〓育局長田中重之君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007402003X00419390315&spkNum=7
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