1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十五日（水曜日）午前十時十四分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/0
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001・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 開會致シマ
ス、昨日御請求ニナリマシタ陸軍當局ノ方
ガ御出デニナリマシタカラ、宮田君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/1
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002・宮田光雄
○宮田光雄君 本案ノ審議ノ關係上陸軍御
當局ノ御意見ヲ實ハ承ッテ置キタイト思ッテ
御出席ヲ願ッタノデアリマスガ、過日衆議院
ニ本案ガ提出サレタ際ニモ、本議場デアリ
マシタカ、議員カラ本案ニ付テノ陸軍トシ
テノ必要性ニ付テ質問サレタノデ、大臣カ
ラ御答ニナッテ居ルヤウデアリマスガ、貴族
院トシテ更ニ改メテ御伺ヲ致シタイト思ヒ
マスノハ、此ノ法案ニ付テ臺灣ニ於ケル此
ノ特用植物ト申シマスカ、作物ト申シマス
カ、重要作物ト云フヤウナコトノ關係ニ付
テ、其ノ作物ニハ軍事上特ニ必要ナモノガ
多數含マレテ居ル、其ノ關係上カラ是非此
ノ本案ノ成立ヲ御希望ナサルト云フコトモ
アッタヤウデアリマス、又他面ニ於キマシテ
ハ過日本議場ニ於テ我々ノ同僚ノ丸山君
カラ我々ト臺灣ガ斯ウ云フヤウナ產業上ノ
方針ヲ定メルノニ付テハ、已ニ日本ハ大陸
ニ進出シテ、所謂日滿支一體ノ經濟機構ナ
リ、「ブロック」トシテノ働キヲシナケレバ
ナラヌコトニ付テ俄ニ今急イデ之ヲ斯ウ云
フヤウナ計畫ヲ實行スルニ及バヌヂヤナイ
カ、及バヌトハ言ハナイガ、或ハ其ノ時機
迄待ッテ居レバドウカト云フヤウナ御意見
モアッタノデアリマス、是ハマア質問的ノ御
意見デアリマシテ、ソレニ付テ彼此ト我々
ハ批判ハ致シマセヌノデスガ、併シ大陸ニ
於ケル經濟政策トカ產業政策ヲ決メルト云
フコトハ、今日明日ノ問題トシテ取扱ヒ得
ルモノガ一ツノ計畫トシテハ或ハ考ヘラレ
マスケレドモ、之ヲ實行スル上ニ於テハ非
常ニ前途遼遠ノ感モアルノデアリマス、併
シナガラ當局トシテハ巳ニ皇軍ハ海南島モ
占領シ、又廣東ハ巳ニ其ノ以前ニ於テ占領
シテ、著々トシテ軍事上ノミナラズ、色々
ノ方策ヲ定メテ居ラレルヤウデアリマスカ
ラ、ソレト此ノ臺灣ト云フモノトノ關係ハ
軍當局ノ立場カラ御考ニナッテ、ドウ云フ風
ナ方法ト申シマスカ、方策ヲ、或ハサウ云
フコトハ機密ニ屬スルカモ知レマセヌガ、
若シ我々ガ承ッテ參考ニ爲シ得ルヤウナコ
トガアレバ、其ノ方面ノコトモ一ツ聽カシ
テ戴キタイト思フノデアリマスガ、詰リ所
謂物動計畫ノ上カラ云ッテ、臺灣及ビ南支、
海南島トノ關係ト云フヤウナコトニ付テモ
若シ多少デモ承ルコトガ出來タラ、仕合セ
ト思ヒマス、兎ニ角ソレ等ノ點ニ付テ御差
支ナイ程度ニ御說明ヲ願ヒタイ、斯ウ思ッテ
御願ヒスル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/2
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003・石川半三郎
○政府委員(石川半三郞君) 御答へ申上ゲ
やっ、臺灣移出米ノ管理案ニ對スル陸軍ノ
意見ト致シマシテハ、戰時〓糧問題及ビ軍
需物資ノ生產擴充ト云フ二點ヨリ致シマシ
テ、重大ナ關心ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス
ルガ、案ノ內容ヲ拜見ヲ致シマスルト、本
案ハ土地生產力ノ擴充耕地造成ヲ基本ト致
シマシテ、其ノ上ニ米ヲ初メ甘蔗藷、大麻、
苧麻、棉蓖麻等ノ增產ヲ期セムトスルモ
ノデアリマス、米ノ生產ヲ確保スルコトハ
時局柄殊ニ重要デアリ、又甘蔗、諸、大麻、
苧麻、棉蓖麻等ノ增植ヲ奬勵シマシテ、
甘蔗、藷カラ無水「アルコール」、大麻、苧
麻カラ纖維資源、蓖麻カラ航空機ニ必要ナ
ル蓖麻子油等、軍事物資ノ資源ヲ開發スル
コトハ、是亦今日最モ其ノ必要ニ迫ラレテ
居ル所ノモノデアリマシテ、是ハ帝國ト致
シマシテ臺灣ノ熱帶的特質ニ期待スルモノ
ガ多イノデゴザイマス、サウシテ米ヲ初メ
是等各種ノ生產、增殖ヲ併セ行ヒマシテ、
今日動モスレバ停頓狀態ニアル所ノ臺灣ノ
土地生產力擴充、耕地造成等ノ施設ヲ行ヒ、
是等ノ耕地ニ於キマシテ統制アル生產ヲ行
フコトハ極メテ適切ナモノト認メテ居ルノ
デゴザイマス、左樣ナ次第デゴザイマシ
テ、陸軍ト致シマシテハ本案ニ對スル臺灣
軍ノ意見モ十分ニ斟酌ヲ致シマシタ結果、
本案ノ速カニ實現セムコトヲ期待シテ居ル
ヤウナ次第デゴザイマス、要シマスルノニ
米ノ生產ガ確保サレテ、サウシテ且臺灣ニ
斯クノ如キ熱帶的植物資源ガ得ラレルト云
フコトガ誠ニ結構ナコトト思ッテ居ルノデア
リマス、事變勃發以來此ノ方面ニ對スル所ノ
軍需ノ必要ト云フモノガ急激ニ增大致シマシタ
ノデ、且一面輸入ト云フ方ガ抑壓サレルノデ、
陸軍當局ト致シマシテ是等ノモノヲ取得スル
ノニ非常ニ困難ヲ感ジテ居ルノデアリマス、
臺灣ニ對シマシテモ總督府ノ方ニ直接ノ要
求ハ致シマセヌガ、出先ノ臺灣軍ニ對シマ
シテ軍需資源ノ獲得ニ付キマシテ昨年ハ盡
力ヲ致サシタノデアリマスルガ、所望量ノ
六割シカ臺灣デ得ラレナカッタ現況デアリ
さい、又十四年度ニ對シマシテモ、陸軍省
ハ臺灣軍ニ對シテ軍需品ノ調辨命令ヲ發シ
テ居ルノデアリマスルガ、之ニ付キマシテ
臺灣軍ニ對シテ十分總督府ノ御協力ヲ願ッ
テ、所望ノモノヲ取ルヤウニト云フコトヲ
督勵ヲシテ居ルヤウナ次第デゴザイマシテ、
成ルベク不足資源ヲ輸入ニ仰グコトガ出來
ナイ今ノ事態ニ於キマシテハ、臺灣ノ生產
力ニ期待スル所ガ大變多イノデアリマス、
又只今ノ御話ノ通リニ事變地カラモ物ガ出
テ來ルコトハ期待致シマスルガ、治安工作
ノ進捗ノ關係モゴザイマシテ、ナカ〓〓統
計ニ示サレテ居ルヤウナ數字ノモノニ對シ
マシテハ極メテ少イ分量シカ取得出來ナイ
ヤウナ現況デアリマス、又海南島占據モ出
來マシタノデ、ソレ等ノ資源モ考慮ニ入レ
ナケレバナラヌト思フノデアリマシテ、物資
ノ關係カラ申シマシテ、日滿支三國ノ適地
適物ノ問題モゴザイマセウガ、ソレハ時日
ヲ要シマスルノト、モウ一ツハ成ルベクソ
レヨリモ手近カナ内地ノ領土內ニ於テ出來
ルト云フコトハ資源確保ノ上ニ付キマシテ
最モ宜シイコトト存ジマシテ、出來ル狀
況ニ置ケバ、先ヅ內地、臺灣、朝鮮、ソコ
等ノ方デ求メ得ラレルモノヲ取リ、然ラザ
ルモノハ外ニ向フト、斯ウ云フコトニ考ヘ
テ居ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/3
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004・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 只今宮田委員ノ御質問ニ對
シテ陸軍當局ノ御答辯ガアリマシタ、ソレ
ニ關聯ヲ致シマシテ陸軍當局ノ御意見ヲ一
應承ッテ見タイト思フノデアリマス、勿論臺
灣ハ亞熱帶ノ地デアリマシテ、特用產物ガ
出テ居リマス、ソレデアリマスカラ、今ノ
ヤウナ戰時ノ財政狀態デアリマスカラ、成
ルベク外國カラ物ヲ取ラナイデ自給自足ヲ
致スト云フヤウナコトハ、是ハ臺灣ダケノ
問題デナシニ日本全體ニ對スル問題デア
ルト思フノデアリマス、此ノ管理案ノ御計
畫ヲ拜見ヲ致シマスト、只今御述ニナリマ
シタ黃麻、苧麻、蓖麻デモ增產ヲ致シマス
ト云フ目標ハ十年間デアリマシテ、而モ苧麻、
蓖麻、黃麻等ヲ合セマシテモ、耕地面積ノ擴
大ト云フノハ僅カニ二萬七千七百七十四甲
步位ナコトデアリマシテ、目算ノ通リニ增
產ガ出來ルト致シマシテモ、サウ莫大ナ額
デハナイノデアリマス、到底此ノ事變ニ要
求サレテ居ルヤウナ額ガ臺灣ダケカラ產出
スルトハ、ドウシテモ私共ハ思ハレヌノデ
アリマス、デ、此ノ管理案ヲ實施シナケレ
バ、ソレ等ノモノヲ增產スルコトノ出來ナ
イト云フコトデハナイノデアリマシテ、旣
ニ必要ナルモノハ御奬勵ニ依ッテ順次增產
ヲ致シテ居ル、先日來屢、此ノ委員會ノ席デ
モ申上ゲマシタガ、今特ニ指摘ヲサレマシ
タ蓖麻ノ如キ、飛行機ノ滑油トシテ要リマ
ス材料デアリマスカラ、御奬勵ノ結果一躍
一二年ノ間ニ約十倍ニ近イ進展ヲ致シテ居
リマス、僅カニ昭和八年ニ二百六十甲步バ
カリノモノガ今日デハ八千甲步ヲ作リ出シ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、デ、之ヲ愛國
蓖麻ト云フヤウナコトデ、軍需ニ直接必要
ダト云フコトニナリマスレバ、ドン〓〓兎
ニ角臺灣ノ人達ハ御奬勵ニ基イテ作ッテ居
ル、蓖麻ノ如キモ十年ノ目論見デドウナッテ
居ルカト云フト、僅カニ一萬二千町步ヲ作
ルト云フダケデ、モウ後九年ニ四千町步ヲ
御增シニナルダケノ計畫ナンデアリマス、
寧ロ是モ軍事上必要ダト云フコトニナレバ
特別ニ御奬勵ニナレバ或ハ來年四千町歩··
四千甲步直グ植附ケルト云フコトニナリ
ハシナイカト思ヒマス、ソレカ軍事上必
要ナル品ト云フ問題ハ此ノ管理案ト切離シ
テ別個ニ考ヘ得ルモノデアッテ、此ノ管理
案ヲ作ラナケレバ、ドウシテモ戰時必要ナ
ル資源ヲ得ラレナイト云フ結論ニハ到達致
シマセヌ、ソレヨリモ今陸軍當局ガ御指摘
ニナリマシタ一番大事ナモノハ、戰時
ノ食糧ノ問題デアルト仰セラレタノデ
アリマス、私共モ最モ同感デ、非常ニ私
共ノ心配致シテ居リマスコトハ、戰時ノ
際ニ若シ食糧ガ不足ダト云フ現象ガ起ッテ
來マスコトハ、ソレ自體デ以テ國內ノ人心
ニ及ス影響ガ非常ニ重大デアルト云フコト
ヲ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ、斯ウ云フ戰時〓糧政策ノ非常ニ緊
切ノ際ニ米ハ幾ラアッテモ宜イ、斯ウ云フ際ニ
此ノ案ヲ實施ヲセラレル、此ノ案ノ根本原
因ト云フモノハ何處ニアルカト云フト臺
灣ニ於テハ米ガ偏重ニナル、米ガ多クナリ
過ギルト云フコトデ、ソレヲ制限シヨウト
云フコトガ主眼ニナッテ、此ノ法案ガ立案ヲ
サレタノデアリマス、要スルニ米ノ增大ト
云フコトヲ抑止スルト云フコトガ一ツノ目
的デアル、決シテ減產スルトハ申シマセヌ
ケレドモ、增產スル勢ヒヲ抑ヘテ行カウト
云フコトガ此ノ法案ノ目的デアル、ソレデ
アリマスカラ、少クトモ非常戰時時代デ米
ガ非常ナ大切ナモノデアルト云フ時ニ、此
ノ案ヲ實施スルコトハ却テ戰時〓糧對策ニ
取リマシテハ非常ニ矛盾ノ結果ヲ來スヤウ
ナコトニナルヂヤナイカ、サウ云フ點カラ
私共非常ニ此ノ案ガ今日實施サレルコトニ
付テ心配ヲ致シテ居リマスガ、其ノ點ニ付
テハ陸軍當局ハドウ云フ御考デゴザイマセ
ウカ、ソレヲ承リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/4
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005・石川半三郎
○政府委員(石川半三郞君) 陸軍ト致シマ
シテハ、米ノ供給確保ト云フコトト同時ニ
是等重要ナル資源ヲ得ルト云フ兩方ノ目的
ガ達セラレルモノト確信致シマシテ、此ノ
法案ノ通過ヲ希望シテ居ル次第デアリマス、
若シ假ニ米ガ足リナクナッテ、サウシテソレ
デモ此ノ資源ノ確保ヲ希望スルノカト云フ
コトニナリマスレバ、ソレハ俄ニ贊成ハ出
來ヌト思フ、併シナガラ米ノ方ニハ心配ハ
ナイト云フ案デゴザイマシテ、當局者ノ御
說明竝ニ農林大臣拓務大臣ノ方モ左樣ナ確
信ヲ御持チニナッテ居ル、ソレデ米ニ不足ガ
ナクテ、サウシテ斯ノ如ク重要ナル新タナ
ル資源ヲ求メルコトガ出來ルト云フコトハ
極メテ願ハシイコトダト思ッテ居リマス、米
ノコトニ付キマシテハ私ノ方ハ需要者側デア
リマスガ、生產者トシテノ御專門ノ方ガ十
分御〓究下スッテ、差支ナイト云フコトノ前
提ノ下ニ私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、
米ノ本年度ニ於キマス需要ハ、陸軍ト致シ
マシテハ、昨年ト比ベマシテ、內地米ノ需
要ハ減ッテ來ルノデアリマス、ソレハ現地デ
得ル所ノ糧食資源ヲ十分ニ利用致シタイ、
斯ウ考ヘテ居リマス、尤モ土地ニ依リマシ
テ、卽チ北支方面ニ於キマシテハ、其處ノ
住民ガ米ヲ食ベテ居ラヌ關係上、北支ノ方
デハ現在ノ所ゴザイマセヌガ、中支、南支
ニ於キマシテハ米ガ需要サレテ居リマス、
ソレデ內地ノ生產ハ無論助長シナケレバナ
リマセヌガ、內地ノ產業ニ壓迫ヲ加ヘナイ
限度ニ於キマシテ、現地ニ於ケル所ノ食糧
品ヲ使ヒタイト云フ主義ニ向ヒマシテ、米
ニ於キマシテモ相當量ノ現地調辨米ヲ使ツ
テ軍用食糧ニ供シタイ、陸軍ノ方ハ斯ウ思ッ
テ居リマスカラ、昨年內地カラ追送致シマ
シタ米ノ分量ニ比ベマシテハ、本年ハ大分
減ズルノヂヤナイカ、其ノ點ニ於キマシテ
ハ若シ內地ノ方ノ米ノ供給量ガ多少不足
致シマシテモ、其ノ緩和ノ途ニ副フヂヤナ
イカ、斯ウ云フ風ナ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/5
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006・丸山鶴吉
○九山鶴吉君 陸軍當局トシテハ御尤ナ御
答辯デアリマシテ、農林省アタリデ米穀政
策上支障ガナイト云フコトデアリマスレ
バ、直接軍事ニ必要ナルモノガ併セテ出來
ルコトニナリマスレバ、ソレヲ歡迎サレマ
スト云フコトハ、是ハ能ク諒承致スノデア
リマス、唯私共ハ旣ニ內地ニ於テ三百萬石
ノ增產計畫ヲ立テラレ、朝鮮ニ於テ三箇年
ニ二百萬石ノ計畫ヲ立テラレテ、サウシテ
ソレノ豫算ヲ要求セラレ、既ニ決定ヲ致シ
テ居ルノデアリマスガ、今日ニナリマシ
テ又情勢ノ變化ニ基イテ、是デハ危險
ノ虞ガアルト云フノデ、俄ニ內地デハ百
萬石ノ增產ヲ企テラレ、又ソレ以外ニ
朝鮮ト臺灣ニ於テ百萬石ノ增產ヲ御計畫ニ
ナリ、勿論農林當局ガ主管當局トシテ
戰時ノ食糧政策ニ御苦心ヲサレルト云フコ
トハ尤ダト思ヒマスガ、サウ云フ矢先デア
リマスカラ、私共ハ今戰時食糧確保ト云フ
問題ニ付キマシテ心配致シテ居ル關係上、
色々質問應答ヲ重ネテ居リマシタノデスガ、
陸軍當局トシテハ、主務省デアリマス農林
省ガ戰時食糧ノ確保ニ差支ガナイト云フコ
トニナリマスレバ、此ノ案ニ依ッテ更ニ軍事
ニ必要ナル臺灣ノ特有作物ヲ奬勵サレルト
云フコトデアリマスカラ、ソレヲ御認ニナ
ルト云フコトハ、是ハ當然ナコトダト思ヒ
そう、ソレダケノ御意見ヲ承リマシテ、私
ノ陸軍當局ニ對スル質問ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/6
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007・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 此ノ場合陸軍
ニ對スル御質問ガアリマスナラバ······別ニ
ゴザイマセヌカ······昨日御要求ニナリマシ
タ農林大臣、拓務大臣ハ衆議院又ハ豫算總會
等ニ於テ差支ガアッテ、今日ハ出席出來ヌヤ
ウデアリマシテ、明日ハ揃ッテ出席スルト云
フコトデアリマスカラ、ドウゾ其ノ方ハ明
日御質問願ヒタウゴザイマス、其ノ他ニ關
シテ御質問ガアリマスレバ、ドウゾ······如
何デスカ、別ニ今御質問ガナイヤウデゴザ
イマスガ、豫算ノ重要ナルモノモアルヤウ
デアリマスカラ、豫算會議ヲヤッテ居リマス
カラ、我々モ委員ノ一人デアリマスカラ、
アチラノ方ニ參リタイノデ、一時休憩致シ
マシテ午後一時半カラ開會致シタイト思ヒ
ほとう、ソレデハ休憩致シマス
午前十時三十六分休憩
午後一時四十一分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/7
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008・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 開會致シマス、
今朝申上ゲマシタ通リ農林大臣、拓務大臣
ハ明朝御出席ニナリマス、總務長官ハチヨッ
ト外ニ御出デニナッテ、直キニ御出デニナリ
マス、外ノ政府委員ガ御出席ニナッテ居リマ
スカラ、政府委員ニ對スル御質問ヲ此ノ場
合願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/8
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009・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私度々質問致シテ居リマ
スノデ、成ルベク一渡リ外ノ委員ノ方々カ
ラ御質問願ヒマシテカラ、私致シタイト思
ヒマス、餘リ出シヤバルヤウデゴザイマス
カラ、御質問ガ皆サンニゴザイマセヌヤウ
ニナリマシテカラ、私許シテ戴キタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/9
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010・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 如何デスカ、
ドナタカラデモ御質問ノアル御方カラ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/10
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011・風間八左衞門
○風間八左衞門君 此ノ際材料ヲ一ツ提供
願ヒタイノデスガ、此ノ臺灣重要產業調査
委員會ノ何ト申シマスカ、速記錄ノヤウナ
モノガオアリニナルヤウナコトヲ聞クノデ
アリマスガ、之ヲ我々ニ御配付ヲ願ヘバ、
過日カラ色々各委員ノ方々ノ御質問應答モ
承ッテ居リマスガ、尙ソレヲ拜見スレバ、質
問致シマスヤウナ場合デモ、或ハソレニ依ッ
テ能ク了解サレル點モアラウト思ヒマスノ
デ、審議上非常ニ便利カト存ジマスシ、我
我モソレヲ能ク拜見シタイ、斯ウ思ヒマス
ノデ、成ルベク早ク我々ニ御配付ヲ願ヘバ
結構デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/11
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012・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 早速御配付ス
コトニ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/12
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013・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 餘リ外ニハ御
質問ガナイヤウデアリマスガ、松村君如何
デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/13
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014・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私玆ニ要求ヲ先ニ致シマ
シタ資料トシテ皆サンニ之ヲ御配付ヲ願ッ
タノデスガ、其ノ資料ハ水田ニ全部水稻ヲ
植栽セシムル場合ニハ米ノ生產高ハ幾ラニ
ナルカト云フノト、ソレカラ現在水田中ニ
已ニ栽培セル水稻以外ノ作物ハ將來トモ其
ノ儘持續セシムル場合ノ生產高如何、ソレ
カラ將來有要作物栽培ヲ水田ニ奬勵スル場
合ノ米ノ生產高如何ト云フヤウナコトノ比
較表ヲ玆ニ作ッテ戴イタノデアリマス、ソレ
デ私ハ前囘ニモ申シマシタ如ク、米ノ管理
ト云フモノガ同時ニ農林省ト臺灣總督府ト
御相談ノ際ニ於テ急速ニ米ノ增產ヲシテ貰
ヒタイト云フ場合モアルダラウト思ヒマス、
ソレカラ臺灣ハ一期作、二期作ト兩方アル
ト云フ便利ガアリマスカラ、一期作ト二期
作ト見タ場合ニ、二期作ノ方ガ丁度內地ノ米
ト同ジヤウニ出テ來ル譯デアリマスガ、其ノ
總額ヲ見テ、ドウモ來年ノ端境期迄ニハモウ
少シ米ガアッタ方ガ便利デアルト云フコトヲ
眺メタ場合ニ、臺灣ニ註文シテ一期作ヲ大變
作ッテ戴ケバ、內地ノ端境期ノ心配ガナクナル
ト云フ意味ニ於テ非常ニ伸縮力ヲ持ッテ居
ル便利ナ關係ガ臺灣ニアルト思フノデアリ
マス、其ノ關係カラ私ハ資料ヲ要求シテ、サ
ウシテ出シテ貰ッタノガ、全部水稻ニ置キ換
ヘテ貰ッタラドウカ、是ハ斯ウ云フコトハナ
イノデス、何モカモ水稻ニスルト云フコト
ハ水田ニ付テ行ハレナイノデアリマスケレ
ドモ、非常時對策トシテ〓糧ニ一ツ集中シ
テ見ヨウト云フ場合ニドノ位ノ能力ヲ發揮
シ得ルカト云フ表ヲ玆ニ貰ッタノデアリマ
ス、ソレハ千四百二十五萬石ト云フモノガ
出來ル、斯ウ云フ風ニ、斯ウ云ワモノヲ御
出シニナッタノデアリマスガ、是ハ甲當リ幾
ラト云フ標準デアリマスガ、私ガ要求シテ
居リマスノハ、是ハ其ノ「マキシマム」ヲ見タ
イノデスカラ、條件ノ無茶苦茶ニ好イコト
ヲ私ハ要求シマセヌケレドモ、昭和十三年
度ハ相當ニ實績ガアルノデスカラ、好イヤ
ウナ「ファクター」ヲ入レテ、餘リ何デモカ
ンデモ好イモノト云フコトハ、ソレハイケ
マセヌカラ、十三年-度ノ、先達テチョット其
ノ點質問シテ置イタノデスガ、御答辯ヲマ
ダ承リマセヌガ、何ガ故ニ十三年度ハ斯ク
ノ如ク米ノ方ノ第一期作ガ豐作デアッタカ、
蓬萊米ニ付テ······其ノ豐作ノ中水稻ノ方ハ
非常ニ豐作デアルケレドモ、陸稻ノ方ハ甚
ダ不作デアルト云フコトノ理由ヲ玆ニ一應
說明シテ戴キタイノデス、其ノ說明ヲ承ル
ト同時ニ、私ノ今申シタ如ク段々耕種方法ナ
リ、品種ノ改良ナンカ進ンデ來テ居ルコトヲ
頭ニ入レタ意味ノ增產ノ「マキシマム」ガド
ノ位ニナッテ居ルカ、サウシテ水田ニ對シテ
是カラ色々ナ水田施設ヲナサル譯デアリマ
スカラ、ソンナコトヲ考ヘタ場合ノ「マキシ
マム」ハドノ位デアルカト云フコトヲ承知
シタイノデアリマス、私ノ戴キマシタ表ハ、
ドウ云フコトヲ「ファクター」ニシテノ千四百
二十五萬石ニナルノデアリマスカ、ソレヲ
明瞭ニ說明シテ戴キタイ、是ハ皆サンニ御
配付ニナッテ居ル書類デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/14
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015・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 今後殖エマス
ル土地ニ他ノ作物ヲ導入シナイデ、水稻ノ
ミデヤルト致シマシタ場合ノ昭和二十四米
穀年度ニ於ケル總生產高ガ今松村委員ノ御
話ニナリマシタヤウニ千四百二十五萬二千
二百十九石ト云フコトニナルノデアリマス、
ソレハ單位當リヲドウ見テ居ルカト云フ御
尋デアッタヤウニ考ヘルノデアリマスガ、ソ
レハ米穀管理ニ依リマスル米初メ各有用作
物ノ增產計畫ヲ立テテ居リマスノデ、其ノ
單·位當リノ收量ヲ加算シテ居ルノデアリマ
シテ、昭和十四年ノ二期作デハ十二石九斗
デアリマス、ソレカラ昭和十五年ノ第一期
作ハ十五石六斗デアリマス、ソレカラ十年
ヲ經過致シマシテ、昭和二十四米穀年度ノ
中デ昭和二十三年ノ二期作ガ十五石一斗デ
アリマス、ソレカラ昭和二十四年ノ一期作
ガ十七石八斗ト云フ單位收量ニナッテ居リ
マシテ、是ハ過去ノ五年ニ亙リマシテ調ベ
タ豐凶考照試驗ト云フノヲヤッテ居ル譯デ
アリマス、其ノ結果ト、ソレカラ最近ノ其
ノ五年ノ中ノ最低最高ヲ除キマシタ三年平
均ノ豐凶考照試驗、ソレカラ過去三年ニ於
ケル實績トヲ比較シマシテ、今後十年間デ
其ノ半分ニ迄持ッテ行カウト云フコトデ、各
年度一年々々其ノ半分ノ十分ノ一ヲ增スコ
トニナッテ居リマシテ、ソレガ二十四米穀年
度ニ於キマシテ、丁度今申シマシタヤウニ
二十三年ノ二期ガ十五石一斗ニナリマス
シ、二十四年ノ一期ガ十七石八斗ト云フコ
トニナッテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/15
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016・松村眞一郎
○松村眞一郞君 其ノ說明ハ分リマシタ、
私ノハ「マキシマム」ヲ見テ水稻ノ將來ニ對
シテ我々ガドノ程度ニ安心シ得ルカト云フ
資料トシテ玆ニ眺メタイノデアリマスカラ、
成ルベクソレヲ最近ノ實際ト學術ノ最新ノ
所ヲ加ヘタモノヲ眺メルト云フコトガ、此
ノ委員會トシテ非常ニ必要ダト思フ、日本
ノ米穀ノ將來ガ不安ナリヤ安定ナリヤト云
フコトガ、我々ノ頭ニ非常ニ重大ナ問題
デアリマス、農林大臣ガ、ドウ云フ所ヲ見テ
臺灣ニ御賴ミシタカ、臺灣ガ引受ケタト云
フコトヲ農林大臣ハ、ドウ云フ風ニ考ヘテ
居ラレルカ、是ハ農林大臣ニ質問シマスケ
レドモ、ドウ云フヤウナ資料ニ依ッテ臺灣總
督府ト農林省トノ間ニ交涉ガ出來テ居ルノ
カ、唯臺灣總督府デ言フタカラソレデ宜イ
ト云フヤウナ意味デハナイト思フ、ソレヲ
私ハ承知シタイ、前途ノ見透シヲドノ位シ
テ居ラレルカ、內地ノ見透シハ農林省デ聞
イテ居ル、臺灣トシテハドノ位ノ覺悟ヲシ
テ居ルカ、農林大臣ガ註文サレルト云フコ
トニ關係ナク、凡ソ臺灣デオ仕事ヲ引受ケ
テ居ル以上ハ、日本ガ非常時ニ際シタ場合
ニ、食料トシテドノ位全力ヲ擧ゲタナラバ
引受ケルト云フコトハ、アナタノ方ニ覺悟
ガアルト思フ、農林大臣ノ註文ガアッテ、サ
ウ云フコトヲ調査シタト云フナラバ迂濶ダ
ト思フ、平生考ヘテ居ルト思フガ、平生ノ
資料ガ無イノカドウカ知リマセヌガ、無ケ
レバ早速拵ヘナケレバイケナイシ、是カラ
拵ヘルヤウナコトデハ、米ニ付テ緊張シタ
〓究ヲシテ居ナイヂヤナイカト云フコトヲ
言ハザルヲ得ナイガ、ドウ云フヤウニ考ヘテ
居ラレルカ、前途ノ見透シト云フモノハ··
日本全土ノ食料問題ト云フ立場カラ臺
灣ハ、臺灣トシテノ使命ヲ果ス爲ニ色々有
用作物ヲ加味シテヤルト云フコトハ、或意
味ノ當面ノ問題デアリマス、將來ニ亙ル問
題デアルケレドモ、非常時ノ非常時ト云フ
コトヲ考ヘナケレバナラヌ、ソレガ安心ス
ル所ノ最後ノ肚ノ決メ所デアルノデアリマ
ス、サウ云フ意味ニ於テ私ハ斯ウ云フ資料
ヲ要求シタノデアリマス、サウ云フ本當ニ
安心ノ出來ル······是ハ內輪ニ見積ッテ居ル
ノデアルトカ、ナントカ云フ御答辯ヲ承ル
ト云フト、或意味ニ於テハ大事ヲ取ッテ居ル
ト云フコトガ言ヘマス、或ル意味ニ於テハ甚
ダ確信ガ無イヂヤナイトカト云フコトニモ
取レルノデアリマス、サウ云フコトノ不必
要ナル「マーヂン」ヲ取ル必要ガ無イト思
フ、責任ノ衝ニ當ッテ居ル者ハ間違ト云フコ
トガナイヤウニ大事ヲ取ルコトハ必要デセ
ウ、ソレハ自己ノ責任ノ議論ヲシテ居ルノ
デアッテ我々ハサウ云フ答辯ハ要求シナ
イアナタハサウ云フ大事ヲ取ルカモ知レ
マセヌガ、大事ヲ取ラナイ人モアルカモ知
レマセヌ、ソコハ不必要ノ「マーヂン」ヲ取ッ
タナラバ非常ニ數量ガ少クナル、非常ニ樂
觀ヲシテ總テ害蟲モ無イ、天候モ好イノダ
ト云フコトデ極端ナ樂觀ヲスル人モアル、
人ノ中ニハソンナモノヲ示サレテモ困ル、
個人的ノ職責ヲ全フスベキヤ否ヤト云フコ
トノ意味ニ於テ、大イニ努力ヲ拂ッテ居ルト
カ、ナントカ云フヤウナ答辯ヲ聽イテ居リ
マスガ、先刻來聽イテ居ルト尤モノヤウデア
ルケレドモ、今云ッタヤウナ感ジヲ私ニ與ヘ
ル、モウ少シ確信ノアル、是ダケハ引受ケ
ルノダ、努力ヲシナケレバ出來ナイト云フ
ヤウナコトハ當リ前ノ話デアリマス、自己
ノ全能力ヲ擧ゲテ努力スルコトハ當然デ、
色々努力シナケレバ出來ナイト云フコトハ、
平生努力シテナイカノ如キ感ジヲ與ヘル譯
デアリマス、全力ヲ擧ゲテ努力シテ行ッテ出
來ルカ出來ナイカト云フ問題デアッテ、困
難デアルカ容易デアルカト云フコトヲ質問
シテ居ルノデアリマセヌ、出來ルカ出來ナイ
カト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス、困
難ト云フ形容詞ハ要ラナイ、出來ルカ出來
ナイカト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマ
ス、是ガ容易ナコトデアルカ、困難デアルカ
ト云フヤウナ生溫イコトヲ私ハ質問シナイ、
アナタハ困難デアルカモ知レマセヌガ、他
ノ人ハ容易デアルカモ知レマセヌ、法律ヲ
學ンダ人ニ米ガ直グ出來ルカト言フト困難
ダト言フデセウ、農學ニ通ジタ人ハ俺ハ出來
ル、何デモアリマセヌト言フデセウ、ソン
ナコトヲ聞イテ居ルノヂヤナイノデス、私
ノ伺ッテ居ルノハ······ドウモ質問應答ガソ
ンナ所ニ觸レテ居ル虞ガアル、アナタガ不
安デアルナラバ、技術者ト相談スルガ宜イ、
確信ヲ持ッタ遠慮ノ無イハッキリシタ見透シ
ヲ示シテ戴キタイ、是ハ農林大臣ニ質問ス
ル資料トシテ非常ニ必要ナ資料デアル、農
林省ハドウ云フコトヲ考ヘテ居ルカ、農林
省自身モ何カ干與シテ居ルト云フコトガ、
丸山委員ノ御質問デ分ッタガ、臺灣デハ一體
ドウ云フコトヲ考ヘテ居ルカ、出先デハ、
アナタ達ハ農林省ト相談シテ居ルガ、臺灣
本島ニ於テハドンナ調査ヲシテ居ルカ、米
ニ付テドウ云フコトヲシテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/16
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017・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 今松村サンノ
御話ニ依リマシテ、早速所謂非常時ノ對策
ト致シマシテ、ドノ位迄臺灣ガ將來確實ニ
增產シ得ルト云フ數字ヲ出シマシテ、後刻
提出致スコトニ致シタイト思ヒマス、ソレ
カラ增產計畫ニ付キマシテハコチラダケ
デハ判リマセヌ、ソレ〓〓向ウニ言ウテヤ
リマシテ、今地方廳及ビ農會等デ十分〓究
ヲ進メテ居ル譯デアリマス、其ノ事項ニ付
キマシテハ先般申上ゲマシタヤウニ、所謂
今迄中止シテ居ッタ增產計畫ノ施設ヲ、更
ニ力ヲ入レテヤルト云フコトニ進ミタイト
思ッテ居ル次第デアリマス、ソレカラ十三年
ノ一期、二期及ビ陸稻ニ付テノ作柄デアリ
マスガ、十三年ノ第一期作ハ苗代時代カラ
ズット天候ガ順調ニ參リマシテ、成育狀態モ
非常ニ良ク順調ナ經過ヲ辿ッタ譯デアリマ
ス、殊ニ一期ニ最モ影響ノ多イノガ稻熱病
デアリマスガ、稻熱病ノ被害ガ幸ヒ少カッタ
ノト、天候ノ順調ニ惠レマシテ相當豐作デ
アッタ譯デアリマス、ソレニ反シマシテ陸稻
ノ方ハ、非常ニ高溫過照ト云フ關係デ旱魃
ヲ被ッタノガ非常ニ多イノデアリマス、旱魃
ノ被害ノ爲ニハ、殆ド水田ト反對ニ收穫ガ
著シク減ッタト云フコトニ相成ッテ居リマス、
ソレカラ稻作モ植エ附ケテ間モナク一時曇
天ガ續イタリ、或ハ低溫寡照ト云フヤウナ
コトデ成育ヲ非常ニ阻害シタノデアリマス、
九月頃カラ段々持直シマシテ氣溫モ上リマ
スルシ、日照モ順調ニ參リマシテ、其ノ後
順調ニ進ンダ譯デアリマス、而モ二期作ニ
最モ影響ノ多イ螟蟲ノ發生モ極ク地方的ニ
輕微デアリマシタ、ソレカラ一番收穫ニ影
響ノ多イノガ季節風デアリマス、是モ比較
的平年ヨリ季節風ノ始リガ遲クナリマシテ、
左樣ナ關係カラ增收トナッタ譯デアリマス、
要スルニ害蟲ガ比較的輕微デアッタノト、天
候ノ關係ガ非常ニ良カッタ、ソレカラ季節風
モ例年ヨリモ遲ク始ッタト云フヤウナ關係
カラ一時憂ヘル傾向モアリマシタガ、幸ヒ
大體ニ順調ニ參リマシテ、相當ノ成績ヲ擧
ゲタコトニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/17
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018・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ、此ノ米穀管理案ヲ
契機トシテ臺灣ニ計畫的增產計畫ヲ樹立ス
ルノデアル、或意味ニ於テ生產ノ調節ト云フ
所ノ使命ヲモ達成スルコトノ是ガ、一ツノ端
〓デアリ得ルデアラウト云フヤウナ考ヘ方
ヲシナガラ質問シテ居ル譯デアルガ、斯ウ
云フ計畫的ニ米ト云フ主要產物ニ付テ著手
スル以上ハ、全體ノ生產計畫ト云フモノガ、
同時ニ私ハ始終調査サルベキ必要ガアルト
思ヒマス、先程申シタノハ、全部ノ耕地ニ
米ヲ植エタ場合ニハドウカト云フコトハ、
是ハ將來ノ見透シノ問題ヲ言ッテ居ルノデ、
或意味ニ於テ云ヘバ合理的豫言ト言ヒマス
カ、ソンナヤウナコトニナル、是ハマア將
來ノ見込ノ問題デアリマスガ、私ハ年々サ
ウ云フコトヲスル必要ガアルト思フ、今年
ドウ云フ作附ガアッタト云フコトヲ、第一期
米ナリ第二期米ナリガ濟ンダラ直グニ各農
會ト云フヤウナモノヲ動員スル、地方廳ヲ
動員スル、サウシテ作附面積ハ、ドウセサ
ウ云フコトハ平生カラヤルノデスカラ、其
ノ作附面積ノ中ドレハ······例ヘバ私サッキ
申シタヤウナ工合ニ、一期作ニ於テ直グニ、
非常對策ト云フ程ノエライ緊切シタ場面デ
ナイ時ト雖モ、置キ換へ得ルカト云フヤウ
ナ調査ハ直グヤッテ置カナケレバナラナイ、
國家產業總動員ト云フヤウナ思想ガ、サウ
云フモノガナケレバ動イテ來ナイト思フ、
ソレハドウ云フ意味カト云フト、先程申シ
タ如ク、第一期作ニ今度米ヲヤルカ、ヤ
リ得ルカト云フコトニ付テ考ヘレバ、例へ
バ甘蔗ニ付テ考ヘレバ、ソレガ新植デア
ルカ、所謂糊仔デアルカ、其ノ次ノ株出デ
アルカト云フコトヲ先ヅ見レバ、已ニソ
レガ株出ノ狀況ニ入ッテ居ルナラバ、其ノ
次ノ時期ハ當然水稻ニナルノデスカラ、言
フ迄モナク水稻ノ面積トシテ計算シテ宜イ、
處ガ新植ダケヤッテ、今度株出ニナル時期ニ
入ッテ居ルモノハ場合ニ依ッテハ止メサシテ
モ宜イ、ソレハ直グ新植ノ利ク米作ノ面積
ニ入ル譯デアル、色々ナコトヲ棉ニ付考
ヘ、亞麻ニ付考ヘ、黄麻ニ付テ考ヘルト云
フヤウナコトヲシテ、其ノ第一期作ノ作附
ヲ終ッタ場合ニ於ケル次ノ增產計畫ノ可能
性如何ト云フヤウナコトガ直グ出來ルダラ
ウト思フ、ソレハ一期作ガ濟メバ直グニヤ
ル、二期作ガ濟メバヤルト云フヤウナコト
ハ米ノ見地カラ見テノ非常ニ必要ダト思
ス、ソンナ計畫ヲヤラナケレバナラヌト思
ヒマスガ、サウ云フ用意ヲシテ居ツタカ存
ジマセヌガ、シテ居ラナケレバ、サウ云フ
コトヲヤラナケレバ意味ヲナサヌト思ヒマ
スガ、サウ云フヤウナ見地ニ於テ考ヘテ見
マスト云フト、米ノ管理ニ乘出スト云フコ
トハ、非常ナ決心ヲ以テ意義アル計畫經濟
ニ進ムベキ統制的ノ施設デナケレバナラヌ
ト思フ、ドウ云フヤウニ考ヘテ居レマスカ、
此ノ將來ノ對策トシテハ長官ドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/18
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019・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 專門的ニ亙リ
マスルノデ、私カラ御答ヘサシテ戴キタイ
ト思ヒマスガ、大體此ノ計畫ニ依リマシ
テ、米、砂精ヲ中心ニ致シマシテ各農作物
ヲ調整シテ、圓滿ナル產業ノ發展ヲ致シタ
イト云フコトデ進ンデ居リマスルノデ、勿
論今ノ御話ノヤウナコトヲ常ニ考ヘ、又實
際ヲ調査致シマシテ、大體計晝ノ通リニ行
クカト云フコトヲ、無理ノ行カヌヤウニ、
而モ計畫ニ合フヤウニ、進メタイト思ッテ
居ルノデゴザイマス、元來之ヲ最モ正確ニ
ヤルト云フコトニナリマスレバ、或ハ耕地
ノ割當制トカ、或ハ强制栽培ト云フヤウナ
コト迄行ク必要ガアルカモ知レマセヌ、サ
ウ致シマスルコトハ此ノ個々ノ農家ニ對シ
マシテ非常ニ强ク當リマスルノデ、矢張リ
一方ニ於テ米穀ノ管理ヲシ、一方ニ於テ糖
業令ニ依リマシテ、而モ臺灣ハマダ農業ノ
發達ト申シマシテモ、內地邊リニ較ベマシ
テ、殊ニ畑地ノ利用ト云フヤウナモノニ付
キマシテハ甚ダ幼稚デアリマシテ、米ヲ
多角的ニ伸ス必要モアリマスシ、尙立體的
ニ伸ス餘地ガ澤山アリマス、言ヒ換ヘマス
レバ、指導如何ニ依リマシテ幾ラデモ伸ビ
得ル力ガアル、斯ウ云フコトガ言ヒ得ル譯
デアリマス、更ニ言ヒ換ヘテ見マスレバ、
マダ指導力ガ足リナイ、或ハ〓究所等ノ機
關モ充實シテ、一層耕種法其ノ他ニ付テモ
徹底的ニ〓究スル、或ハ地方職員ナリ農會
アタリノ職員モ漸次殖シマシテ、能ク徹底
スルヤウニシテ置クト云フヤウナコトニナ
リマスレバ、一層生產力ヲ擴充シ、又從ッテ
反當リノ收量モ上ゲ得ルノデアリマス、サ
ウ云フ點ハマダ力ヲ入レル餘地ガ澤山アリ
マスノデ、サウ云フヤウナ指導ト相俟ッテ漸
次計畫ニ導イテ行ク、又一面各地方ニハ最近
部落ヲ單位ニ農事實行組合ヲ各州ニ亙リマ
シテ極力普及シテ居ル譯デアリマス、是ガ
所謂農村ノ細胞トナリ、活動ノ單位トナリ、
源泉力トナルト云フヤウニナッテ居リマシ
テ、之ヲ益〓、單位ノ活動ヲ促進致シマシテ、
コチラノ方針ト指導力ノ充實ト、是等ノ單
位デヤル、農村ノ單位デヤル實行組合トノ
努力ト相俟ッテ、大體豫定通リ遂行シ得ルト
思フ譯デアリマス、尙サウ云フコトデ進ミ
タイト思ッテ居ルノデアリマス、尙十四年度
ノ豫算ニ水田ノ地圖ヲ作成致シタイト思ッ
テ居ルノデアリマシテ、ソレニ六萬四千圓
ヲ計上シテ居ル譯デアリマスガ、畑ニ付キ
マシテハ尙立體的ニ集約的ニ指導スルト共
ニ、今後增設シテ增シマスル水田ニ付キマ
シテハ、米ノ外ニ他ノ作物ヲ入レマスル關
係カラ、其ノ田ガドウ云フヤウニ利用サレ
テ居ルカト云フコトモ、能ク實況ガ分ルヤ
ウニ調査ヲ進メタイト思ヒマスノデ、色々
斯ウ云フ事項ニ依リマシテ大體計畫性ヲ確
實ニスルト云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリ
やく、併シ是等ニ付テモ尙十分〓究致シマ
シテ、萬遺憾ナキヲ期シタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/19
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020・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ只今御話ニナッタ中
ノ强制割當トカ、耕地ノ强制割當デアルト
カ、强制栽培ト云フヤウナ如キ、手ヲ取ッテ
直チニ物ニ突附ケルト云フヤウナヤリ方ハ
私ハ要求シテ居ルノデハナイ、內地ノ米ガ
出來過ギテ困ル場合ニ作附反別ヲ減反スル、
滅ズル、所謂滅反問題ト云フモノガ內地ニ
起ッタコトガアル、ソンナヤウナ態度ハ私ハ
宜クナイト思フ、サウ云フヤウナ考ヘ方ヲス
ルト云フコトハ、農業ニ對シテ甚ダ自治的
ノ指導方針デハナイノデアッテ、壓迫的ノト
言ヒマスカ、其ノ思想、指導方針ニナリマ
スカラ、私サウ云フヤリ方ハイカヌト思ヒ
さく、ソレヨリモ作ラムトスル方ノ、詰リ
米ガ足リ過ギル場合ニハ米ヲ止メロト云フ
議論デナクテ、甘蔗ヲ作レト云フ方カラ積
極的ニ指導スベキモノデアッテ、減產、減ト
云フ思想ガイカヌト思フ、此ノ管理問題ニ
付テモ私申シテ居ル、積極的ニ眺メテ、米
ガ要ラナイナラバ要ラナイモノハ止セト云
フ思想デハナイ、其ノ耕地ニ砂糖ヲ作レト
云フコトハ米ヲ止メロト云フコトト同ジデ
アリマスガ、併シ考ヘ方ガ違フ、米ヲ止シ
タイト云フノデ作ルノデハナクシテ、甘蔗
ノ方ガ今ハ順位ガ先ニナッテ居ルカラ、作ル
ト云フ思想デナケレバ、本當ノ農業指導ハ
出來ヌト思フ、ソレニ付テ一番適當ナコト
ハ水利ト云フコトガ一番適當デアル、米ノ
出來サウニモナイヤウナ工合ニ、甘蔗ガ出
來ルヤウニ水利ヲヤレバ、ソレハドウシテ
モ自然ニサウナル、サウ云フヤウナ意味ニ
於テ、新シク水利ヲアナタノ方デ計畫スル
場合ニ水利統制ヲ頭ニ置カナイデ、今度色
色ノ水利開發ヲシテモ私ハ宜クナイト思ヒ
マー、是ハ豫テノ私ノ持論デス、水利統制
カラ行カンコトニハ、臺灣デハ決シテ臺灣
デハ減產シナイノデアルガ、耕地ヲ開拓シ
テ、是カラ水利事業ヲヤルノデアルト云フ
コトニ對スル民間ノ反對說トシテハ、臺灣
ハソンナニ水ガ澤山アル所デハナイノダ、
第一嘉南大圳ニ於テ十五萬甲步ト云フモノ
ヲヤラウト云フ場合ニ、全體ノ水利ガ出來
ナイヂヤナイカ、已ムヲ得ズ三分ノ一ノ五
萬甲シカ出來ナイヂヤナイカ、水ガ足リナ
イヂヤナイカト云フ思想ガアル、是ハ水ノ
ヤリ方ニ依ッテドウデモナルダラウト思フ、
有用ニ水ヲ使フト云フ方法、貯水池ヲ造ル
トカ、水利計畫トシテハ色々アル、內地ヨ
リモ臺灣ノ方ガ熱帶地デアルガ故ニ、直グ
蒸發シテシマフ、折角雨ニ惠マレタ水ハ直
グナクナッテシマッテ、所謂看天田ト云フモ
ノガ出來テ、固イ所ヘ米ヲ作ラナケレバ、
ナラヌト云フコトデ非常ナ問題ガ起ッテ、砂
糖會社ガ「ヒース、プラウ」ト云フモノヲ使ッ
テ耕地ノ開拓ヲシテ居ルト云フコトデ、施
設ヲ臺灣總督府ソレ自身ガヤラナクテハナ
具
ラヌト思フ、農林省ハ農稱ノ試驗〓究ハシ
テ居ル、併シナガラ內地ハ耕地ガ非常ニ集
約的デアッテ、狹イノデアルカラ、機械的ノ
作業ガ出來ナイガ、前囘ノ御說明ニ依ルト、
臺灣ハ一人當リノ耕地面積ガ廣イト云フコ
トデ、其ノ意味ニ於テ機械的ノ作業モ出來
ル譯デアリ、色々便宜ナコトモアラウト思
ヒマス、唯臺灣ハ熱ト光ニ惠マレテ居ルト
云フ簡單ナコトデナク、農業經營ニ於テ私
ハ或意味ニ於テ惠マレテ居ルト云フコトガ
言ヘルト思ヒマス、臺灣ノ農民ノ生活狀態
ガドノ位ノ程度ノモノデアルカト云フコト
ハ、臺灣ノ諸君ガ內地ノ東北トカ云フ方面
ヲ少シ御覽ニナルト宜イト思ヒマス、ドノ
位臺灣ノ農民ト內地ノ農民トノ間ノ生活狀
態ガ違フカ、サウ云フコトヲ色々實感サレ
タナラバ、臺灣ニ於テ新シク所謂產業總動
員政策ト云フモノヲヨリ强イ覺悟ヲ以テヤ
ルト云フコトガ玆ニ使命ト認メラレテ來ル
ノデハナイカト私ハ思フ、サウ云フ關係ニ
於テ水利ノ問題ヲ閑却シテ居ルト云フヤウ
ナコトデハ、到底私ハ本當ノ生產ノ確立等ハ
出來ルモノデナイト思フ、處ガ此ノ水利ノ
問題ハ殖產局長カラ說明ヲ聽イテモ是ハ仕
方ガナイノデアッテ、是ハ臺灣ニ於テハ殖產
局ノ所管デナイ、內務局ノ所管デアルガ、
斯ウ云フ官廳ノ間ニハ繩張リガアッテ、權限
ヲ爭フト云フ意味デナク、責任ヲ脊負フト
云フコトカラ、サウ云フコトガアル、ソレ
ハ總督アタリガ水利ノ必要ナルコトヲ思ハ
レタナラバ、相當考慮セラレルベキデナ
イカト思フ、ソレハ日本デモ「ジヤバ」ノ灌
漑事業ニ付テハ非常ニ進ンデ居ルノデアル
ガ、砂糖ニ付テノ色々ナ材料ト云フモノハ、
「ジヤバ」ノ試驗場ノモノヲ臺灣デモ今使ッテ
居ラレル譯デ、臺灣ノ甘蔗ト「ジヤバ」ノ試
驗場ノ甘蔗ヲ對照シテ、始終ヤッテ居ル程「ジ
ヤバ」ト臺灣トハ水利關係ニ於テモ餘程參
酌スベキ事項ガ相當アルト思フ、「ジヤバㄴ
ノ水利ト云フモノニ付テハ、隨分臺灣ニ於
テモ御存ジデアラウシ、內地ニ於キマシテ
モ色々〓究ガ出來テ居ッテ、例ヘバ九州大學
ノ田町正譽〓授ガ「ジヤバ」ニ於ケル灌漑事
業ト云フコトニ付テ、昭和十三年農業土木
〓究第十卷ノ第一號乃至四號ニ亙ッテ、記述
セラレテ居リマス、サウ云フモノヲ見テモ、
如何ニ水ノ調節ニ依ッテ農業經營ト云フモ
ノガ巧ニ行クカト云フコトガ證明セラレテ
居ルトスレバ、十五萬甲步ト云フヤウナモ
ノヲ纏メテ水利ガ出來ルト云フヤウナ、サ
ウ云フ便利ナ地位ニアル臺灣ハ非常ニ仕合
セデアル、今後ハソンナニ澤山纏ッタ所ハ
ナイカ知レマセヌガ、併シ小サイカラト云ッ
テ統制ガ出來ヌコトハナイノデ、水利統制
ニ付テ何等カ其處ハ考ヘル必要ガアルト思
ス、ソンナコトニ付テドウ云フコトヲ考ヘ
テ居ラレルノデスカ、ツレハ私ハ長官ノ說
明ヲ求メテ居ルノデスガ、局長カラ答辯サ
レマスカ、長官ドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/20
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021・森岡二朗
○政府委員(森岡二朗君) 水利ノ統制及ビ
擴充强化ト云フコトハ、只今仰セノ通リ最
モ大切ナコトデアリマシテ、殊ニ臺灣ノ如
キ所ニ於キマシテハ、水利ノ統制ガ不十分
デアリマスル點ニ於キマシテモ特ニ必要ヲ
感ジテ居ルノデアリマス、殊ニ米穀管理ガ
實施セラレル後ニ於キマシテハ、特ニ水利
施設ノ上ニ於キマシテ、統制ガ其ノ根幹ヲ成
スモノダト云フコトヲ深ク感ジテ居ル次第
デアリマシテ、其ノ爲ニ、十四年度豫算ニ
於キマシテハ水利統制ヲ目標ト致シマシテ
或ハ埤圳ノ調査或ハ流量調査ト云フヤウナ
コトニ付キマシテ約七百七萬圓餘ヲ計上致
シ、決議ヲ經マシタヤウナ次第デアリマシ
テ、之ニ依リマシテ水利ノ統制ヲ圖リ、
面從來ニ於ケル統制ノ足リナイ點ヲ十分ニ
統制致シマルト共ニ、特ニ米管實施後ニ於
キマシテ其ノ根幹ヲ成スヤウニ致シタイ、
斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/21
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022・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 折角有益ナル質疑應答ガア
ルノデゴザイマスガ、席ニ御著キニナッテ居
ル委員ノ數ハ半數モナイ位デ、只今丁度豫
算總會ノ方デハ祕密會デ、海軍大臣ノ重要
ナ御意見ノ發表ガアルヤウデ、速記錄ニ殘
ルモノデゴザイマスレバ、後カラ讀マレル
ノデアリマスガ、祕密會デアリマスカラ、
此ノ程度デ或ハ休憩ヲシテ戴イテ、後デ續
行ヲシテ戴キマスカ、サウ云フ取計ラヒヲ
シテ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/22
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023・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ休憩
致シマセウ、豫算總會ノ祕密會ノ濟ミ次第
ニ始メルト云フコトニ致シテ宜シウゴザイ
マスカ、如何デスカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/23
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024・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) デハサウ云フ
コトニ致シマス、一時休憩致シマス
午後二時十七分休憩
午後三時十八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/24
-
025・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレヂヤ開會
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/25
-
026・松村眞一郎
○松村眞一郞君 先程水利ノ問題ニ付テ御
尋ネシタノデアリマスガ、其ノ答辯ハ大體
終了シタ譯デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/26
-
027・森岡二朗
○政府委員(森岡二朗君) 先程御答ヘ致シ
マシタ通リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/27
-
028・松村眞一郎
○松村眞一郞君 次ニ臺灣ニ於テノ先ヅ食
糧問題ヲ觀點ト致シ、食糧問題ニ立脚シテ
考へ、尙特用作物ヲ奬勵サレルト云フコト
ニ付テ考ヘマシテノ一ツノ要項トシテ、私
ハ官有財產ノ決算委員會ノ時ニモ官有財
產ノ關係デ蕃地ノ問題ヲ承ッタノデアリマ
スガ、ドウモ蕃地ヲ開發スルト云フコトニ
付テノ努力ガマダ足リナイヂヤナイカト云
フ感想ヲ私ハ懷ク、此處ニ色々ナ耕作物ヲ奬
勵スル際ニ當リテ遊ンデ居ル土地ガ若シア
リトスレバ、ソレハ許スベカラザルコトデナイ
カト思ヒマス、例ヘバ「イギリス」ガ千九百十
七年ニ「コーン·プロダクシヨン·アクト」ト
云フモノヲ出シテ、土地ヲ遊バシテ置カヌト
云フコトニ付テ小麥栽培ノ奬勵ヲヤッテ居ル、
事例ハ澤山アリマス、ソレ程緊切ナコトハ
今日本ニハナイト思ヒマスガ、遊ンデ居ル土
地ガ相當澤山ニ於テアルト云フコトニ付テハ
餘程考ヘナケレバナラヌ問題ヂヤナイカト
思フノデアリマスガ、大抵ノ蕃地ハモウ旣
ニ歸順ヲシテ居ル譯デアリマス、其ノ蕃人
ガ昔ノ切替畑ノヤウナヤリ方ヲシテ居ル狀
態ニ對シテ、耕作ヲ〓ヘルト云フヤウナ方
法ニ付テノ努力ハドウ云フ風ニシテヤッテ
居ラレルノデアリマスカ、例ヘバ物々交換
ヲヤッテ居ル蕃界ノ物々交換所ト云フヤウ
ナモノガアリマスガ、蕃地ト普通ノ行政區
域トノ境界ノ所ニ設ケテアリマス、ソンナ
ヤウナ場合ニ於テ何ヲ臺灣ニ於テハ蕃人ガ
要望シテ居ルカト云フコトヲ見タナラバ
物々交換ヲスル目的物ヲ眺メナガラ、是ハ
蕃界ニ於テ自給自足ガ出來ルヂヤナイカト
云フ指導方針ヲ執ルベキ筈ヂヤナイカト私
ハ思フ、同ジ臺灣ニ居リナガラ、交換ヲシ
ナケレバナラヌト云フヤウナ狀態ヲ、唯臺
灣ノ人ハ不思議ガラナイカモ知レマセヌケ
レドモ、我々眺メルト云フト、非常ニ不思
議ニ感ズル、足リナイモノハ廣々トシナ居
ル蕃地ニ於テ耕作シタラ宜イヂヤナイカト
云フコトヲ考ヘル、何ヲ要求シテ居ルカト
云フコトハ私ハ能ク細密ニハ〓究シテ居リ
マセヌ、併シ或モノハ蕃地ニ於テ用ヲ辨ズ
ルモノガ私ハアルンヂヤナイカト思フ、自
給自足ヲサセテ······、殊ニ特用作物ノヤウ
ナモノハ或モノハ蕃地ニ於テ作ッテ一向差
支ナイト思フ、ソレハ急激ニヤルコトハ出
來マセヌ、蕃人ノ理解ノアル者ヲサウ云フ
方ニ段々指導シテ行クト云フコトハ非常ニ
私ハ必要ナコトヂヤナイカト思ヒマス、例
萬隆
へバ農場ト云ヒマスカ、サウ云フモノ
ヲ臺灣製糖ガ開拓シテ居ル際ニ、其ノ水利
ノ源ハ蕃界ニ於ケル地下水ヲ其處ニ取ッテ
居ル、水ノ方ノ關係ニ於テ······ソレカラ
大キナ農場ヲ開拓スルニ付テハ蕃人ヲ使ッ
テ居ル、サウ云フヤウナ開拓ヲスルコトノ
勞力ニ使ッタナラバ、直チニ蕃界ノ開拓ニ彼
金日
等ガ慣レテ居ル其ノ機械ヲ直グ利用シテ、
サウ云フヤウナコトニ直グニ自分ノ方デヤ
ルヤウナ工合ナ指導ヲヤルト云フコトガ私
ハ當然ヂヤナイカト思フ、今日耕地ガ遊ン
デ居ルト云フコトハ許スベカラザルコトデ
アリ、日本全體ニ付テ耕地ヲ出來ルダケ集
約ニ使フト云フコトニナッテ居ル際ニ、ドウ
モ私ハ隨分緩漫ナ現象ヂヤナイカト思フ、
國有財產ノ中ニモ蠻地ハ入ッテナイ、ドウ云
フ工合ニシテ入レルノカト云ヘバ、測量モ
能ク整ッテ居ナイノダカラ、出來タ都度集メ
テ入レルノダト云フヤウナ、サウ云フ緩漫
ナ狀態ハ私ハ臺灣總督府ノヤリ方トシテハ
甚ダ手緩イコトヲヤッテ居ルノデハナイカ、
玆ニ緊切ニ耕地ガ足ラナイノダカラト云フ
ヤウナコトデ開發シテ居ル狀態ニ於テ、耕
地ノ開發ト云フコトハ相當蠻地ニ於テ私ハ
出來ルト思フ、力ヲ入レテ少シ積極的ニヤツ
タナラバ、相當私ハ玆ニ耕地面積ハ開發ガ出
來ルト思フノデアリマス、蠻界ニ於ケル開
發可能面積ト云フヤウナコトニ付テ、全體
ニ付テ調査ヲシナイトシテ見テモ、各地方
地方ニ於テ調査ヲシテ居ルモノガアルダラ
ウト思フ、アレバ、ソレヲ出シテ戴キタイ、
ドノ位ノ開墾ノ見込面積ガアルカ、ソレハ
特用作物ノ或モノハ其處ニ轉換シテ行ッテ
モ宜カラウト思フ、サウ云フ調査ガナシト
スレバ、速カニ私ハヤラナケレバナラヌト
思フ、國有財產ニ繰入ト云フコトノ前ニ、
土地ソレ自身ノ狀態ヲ知ッテ居ル筈ダト私
ハ思フ、此ノ耕作問題ハ法律ノ關係ニ於テ
色々面倒ナモノガアルデセウ、或モノハ國
有地ニシテ宜イノヂヤナイカト思フ、サウ
スルト、其處ニ模範的ノ經營ト云フコトハ
出來ルデアラウシ、耕作問題ガヤカマシイ
ヤウナ場合ニ、ドンナヤウナ經營方法ヲヤ
レバ、蕃人モ其處ニ王化ニ霑ヒ、且文化モ
向上スルト云フヤウナコトガアリ得ルノヂ
ヤナイカト思フノデスガ、蕃界ニ對スル農
業政策ト云フモノハドンナコトヲ考ヘテ居
ラレルノデスカ、從來執リ來ッタ所ノ政策、
將來執ラムトス所ノ政策、ソレヲ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/28
-
029・森岡二朗
○政府委員(森岡二朗君) 只今理蕃政策ト
蕃地ノ利用開發ニ付テノ御尋デゴザイマシ
タガ、所謂蕃人ト稱ヘラレテ居リマシタ高
砂族ノ理蕃政策ノ結果ト致シマシテ、漸次
精神的及ビ經濟的生活ヲスルヤウニナッテ
參リマシタ次第デアリマスガ、以前ノ御承
知ノ如キマダ開發サレテ居ラナイ時代ニ於
ケル蕃人ノ居住致シテ居リマシタ關係ト致
シマシテ、山地ノ方ニ付キマシテハ、只今
モ御話ノ土地ノ利用又地上ノ各種生產物ノ
利用、或ハ地下埋藏物等ノ調査利用ト云フ
ヤウナコトモ行屆カナカッタヤウナ實情ニ
アルノデアリマス、併シナガラ最近先程申
上ゲマシタ如ク蕃人ノ生活狀態モ漸次改善
サレテ參リマシタノデアリシテ、大體ニ於
テ今日理蕃政策ト致シマシテハ蕃人ガ蕃地
ニ住居致シテ居リマスル者ヲ漸次山脚地帶
ニ移住セシメルヤウニシマシテ、或特定ノ
範圍ニ於ケル耕作ニ從事セシメルト云フコ
トニ致シマシテ、是ハ漸次著々ト進ンデ居
ル次第デアリマス、而シテ移住シマシタア
トノ土地等ノ利用ニ付キマシテモ色々考ヘ
テ居ル次第デアリマスルガ、昭和十一年カ
ラ四箇年繼續ヲ以チマシテ山地開發調査ト
云フコトヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、
而シテ此ノ山地開發ノ調査ヲ致シマシタ
結果、ソレ〓〓山地ノ適地適作ヲ考ヘマ
シテ、或ハ「キナ」、或ハ「カカオ」トカ、
色々其ノ土地ニ適應致シタモノヲ作ルコ
トニ致シマシタ、大體調査ガ濟ミマシタ
モノヨリ、ソレニ對シテ適地適作ヲ致ス
ヤウニシテ、漸次進ンデ參ッテ居ルノデア
リマシテ、昭和十四年度ヲ以テ完成スル積
リデアリマスルガ、チョット面積ハ今正確ニ
申上ゲ兼ネマスルガ、相當ノ······二十萬甲
步カ、相當ノ面積ヲ十四年迄ニ調ベルコト
ニ致シテ居リマシテ、此ノ山地開發ト云フ
コトニ付キマシテハ非常ニ力ヲ致シテ居ル
次第デアリマス、デ先申上ゲマシタ如ク、
蕃人ノ生活モ漸次精神的ニモナリ、經濟的
ニモナッテ參リマシタ關係上、或ハ蕃地ニ
於テ仕事ヲスル場合ニ於テ蕃人ノ勞力ヲ利
用スルト云フヤウナコトモ致シテ居ル次第
デアリマス、此ノ山地開發ニ依リマシテ、
漸次只今御話ノヤウナ風ノ今日迄殘サレテ
居リマスル山地ノ利用ト云フコトガ十分目
的ヲ達成シ得ルコトニ相成ルカト思ッテ居
ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/29
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030・松村眞一郎
○松村眞一郞君 重要農作物增產目標ト云
フモノニ書イテアルノニハ蕃地關係ハ之ニ
ナイモノダト考ヘマスガ、急速ニ蕃地關係
ノ問題ヲ玆ヘ加ヘラレテ、之ヲ追加スルナ
ラバ、相當ノ增產ガ出來ルノヂヤナイカト
私ハ思フ、ソレハ縱令大マカナ計畫デアッテ
モ、何等カ農作物伸縮力ガ其處ニ來ル譯ダ
ト私ハ思フ、サウ云フコトヲ今迄ヤッテ居ナ
イノデスカ、ドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/30
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031・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 此ノ增產計畫
ニハ·····十箇年ノ增產計畫ニハ全然蕃地ヲ
含ンデ居リマセヌ、今長官カラ申上ゲマシ
タノハ別ノ調デアリマス、勿論生產擴充ノ
必要ナ時代デアリマスルノデ、是等モ最モ
有效ニ著々利用致シタイト考ヘテ居ル次第
デアリマス、計畫外デアリマスルガ、ソシ
ヲ無視シテ居ル譯デハナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/31
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032・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ只今ノ御答辯ヲ承ッテ、
極メテ臺灣總督府ハ緩慢デアルト云フコト
ヲ痛感スル、蕃地ト云フモノヲ眼ノ前ニ眺
メテ居リナガラ、其ノ面積ト云フモノハ臺
灣ノ面積ノ半分ニ近イ位アル、ソンナモノ
ニ付テ農作計畫ト云フヤウナモノヲ何等考
ヘナイ、漠然トシタモノデモ其處ニ描キ出
ス必要ガアルト思フ、殊ニ山地ノ方ハ今森林
ノヤカマシイ「パルプ」問題ヲ我々ハ非常ニ
考慮サレテ居ル時代ニ於テ、ドノ邊ハ造林
ヲスルトカ、大體ノ目標ト云フモノハ私ハ
アルダラウト思フ、耕地ハドノ位開ケルモ
ノデアルカト云フコトノ目標ヲ考ヘルコト
ハ直グ目前ニブラ下ッテ居ル私ハ重要問題
デハナイカト思フ、何等カソコニ蕃地ニ付
テハコンナヤウナコトノ考慮ハ出來ルト云
フヤウナ目標程度ノモノハ何カナイデセウ
カ、ソレハマア理蕃ノ事業ガ終了シテ餘リ
時ガ經タヌト云フコトモアリマセウ、併シ
全部ガ終了スルノヲ待ッテ、ノソ〓〓調査ヲ
シテ居ルト云フヤウナヤリ方デハ極メテ緩
慢デアッテ、歷代ノ總督府ト雖モ相當力ヲ
入レテ居ラレタノヂヤナイカト思フ、私ハ
佐久間總督時代ニ、昔ノ時代ニ行ッタコト
ガアルガ、蕃界ガ隘勇線ト云フモノヲ以テ
ズン〓〓進行シテ行ッテ或程度ソコニ確定
スレバ、直グ蕃界ニ付テノ調査ヲ進メナケ
レバイカヌヂヤナイカト私ハ思フ、或人
色々ナ特用作物トシテ畑地ニ付テノ問題カ
ラ、例ヘテ申セバ「バナナ」ト云フヤウナモ
ノガ非常ナ勢ヲ以テ平地ニ今植栽サレツヽ
アル、或場合ニ於テ、例ヘバ臺南ノ方面、
高雄ノ方面ナドヲ見レバ、實際「バナナ」ノ
如キモノヲ澤山耕地ニ作ッテ居ル、或モノハ
山地ニ持ッテ行ッテモ宜イノヂヤナイカト思
フ、ソンナヤウナコトヲ考ヘレバ、特用作
物ニ利用スベキ地面ト云フモノハ、モウ直
グ生レテ來ルノヂヤナイカト思フ、ソンナ
ヤウナヤリ方ガ、如何ニモ私ガ考ヘルト緩
慢至極デアルト云フコトヲ痛感スルノデア
リマスガ、ドノ程度ノ作物ハ蕃界ニ移シ植
ヱ得ルカト云フ位ノ目途ヲ立テナイト云フ
コトハ、私ハ甚ダ調査ニ付テノ資料ガ不備
デアルト云フコトニ考ヘマスガ、何カ現在
アル資料ノ中カラデモ何カ玆ニ描キ出スコ
トガ出來ルノヂヤナイカ、サウ云フヤウナ
モノガ出來タラ、至急ニ提出願ヒタイデス
何カアリマセヌカ、具體的ニ考ヘテ居ラレ
ルヤウナコトガ、コンナヤウナコトハ考ヘ
テ居ッタト云フ位ノ何カ思附位ハアリサウ
ナモノダト私ハ思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/32
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033・田端幸三郎
○政府委員(田端幸三郞君) 仰セノ如ク、
臺灣ノ蕃地利用ニ付キマシテハ、マダ平地
ノ如ク集約的ニ參ッテ居ナイノデアリマス、
是ハ申上ゲル迄モナシニ蕃人ノ平穩ニナッ
テカラ間モナイコトデアリマスルノデ、又
急激ニ彼等ノ生活狀態ニ影響スルヤウナ開
發ヲ爲スト云フコトモ非常ニ愼重ヲ要シマ
スルノデ、今ノ最モ生產力ヲ擴充セヌケレ
バナラヌ急迫ナ狀態カラ申上ゲマスレバ、
非常ニマヌルイ迂濶ト云フヤウナ狀態ニナッ
テ居ル譯デアリマス、ソレデ大體御承知ノ
通リ非常ニ一萬尺以上ノ山ガ中央山脈ニ竝
ンデ居ル、數十箇モ竝ンデ居ルト云ッタヤウ
ナ狀態デ、而モ東西ニ非常ナ急ナ傾斜ヲ以
テ流レテ居ルト云フヤウナ關係カラ、蕃地
ヲ開發スルト云フコトモ餘程考慮致サヌケ
レバ、國土保安上、又治水上考ヘルベキコト
デアリマシテ、大體私共ノ考デハ矢張リ蕃
地ハサウ云フ畑地等ニ利用スルト云フコト
ヨリモ、主トシテ植林ヲシテ、水源ノ涵養
國土ノ保安ト云フヤウナコトニ主眼ヲ置ク
ベキモノデハナカラウカト考ヘテ居ルヤウ
ナ次第デアリマス、從ヒマシテ、第一期ノ
森林調査ハソレニ依リマシテ、伐採ナリ或
ハ植樹ト云フコトヲ著々計畫ヲ進メテ居リ
マスガ、ソレカラ更ニ上ノ頂上ヲ含ンダ方
面ノ第二ノ森林計畫ハ、蕃地ノ平定ト共ニ
今ソレヲ著手スルコトニナッテ居リマシテ、
是モ計畫ニ依リマシテ植樹ヲヤリタイト思ツ
テ居ルノデアリマス、ソレカラ段々下ノ方
面デアリマスルガ、針葉樹林地帶ヨリモ以
下ナ行政部落ニ接近シテ居ル方面ノ山地ノ
利用デアリマス、是ハ大體今濶葉樹林ガ占
メテ居ルノデアリマスガ、臺灣ノ濶葉樹林
ノ利用ト云フコトハ、殆ド今迄薪炭ニスル
カ或ハ僅カナ地方的ニ函ヲ作ルト云フヤウ
ナ、極ク利用ガ局限サレテ居ッタノデアリマ
ス、最近材木ノ利用ト云フコトハ、用材ノ
外ニ「パルプ」材ニ使フト云フヤウナ所カラ
非常ニ緊要ニナリマシテ、臺灣ニ於キマシ
テモ今迄利用サレテナカッタノヲ其ノ儘ニ
放任シテ置クト云フコトガ許サヌヤウナ
コトニナッテ參リマシタ、是等ニ付キマシテ
モ十四年度豫算カラ、御協贊ヲ願ッタ豫算ニ
依リマシテ、根本的ニ是等ヲ調査致シマシテ、
現在ノ濶葉樹林デ「パルプ」等ニ利用サレル
モノモ相當アルヤウデアリマス、ソレハ利
用シ得ルモノハ爲シ、又最近滿洲北支方面
ノ枕木ガ非常ニ需要ガ多イノデアリマシテ、
臺灣邊リカラモ相當供給シテ居ル譯デアリ
マス、或ハ又製法ニ依リマシテ臺灣ノ雜木
デモ用材トシテ使ヒ得ル、函材トシテモ相
當利用出來ル、或ハ最近內地邊タリデモ盛ニ
ヤッテ居リマスガ、建築用材等ニモ床張ニ
作ルトカ云フヤウナコトニモ盛ニ進ンデ居
リマス、サウ云フコトモヤリタイ、ソレデ
調査ヲ致シマシテ、是等ヲ全部皆伐致シマ
シテ、其ノ後ニ標高ガ低クッテモ臺灣デ
生育致シマス、例ヘバ福州杉デアルトカ或
ハ吉野杉デアルトカ云ッタヤウナ、今迄雜木
材デ蔽ウテ居ル方面デモ、是等ノ種類ナラ
バ、相當森林トシテ生育ガ宜シイノデアリ
マス、漸次サウ云フモノニ置キ換ヘテ行ク、
サウ致シマスレバ、殆ド今迄利用シテ居ナ
イ、又非常ニ行政部落ニ近イ方面ノ森林地
帶ガ是等ノ有用材ニ換へルト云フコトニナ
リマスノデ、十四年度カラ之ニ著手致シマ
シテ、之ニ基キマシテソレ〓〓ノ伐採計畫
ナリ、或ハ植樹計畫ナリ、或ハ之ヲ利用
スル「パルプ」製造計畫ナリ、著々進メタイト
思ッテ居リマス、ソレカラ蕃人ニ付キマシテ
ハ、大體長官カラ申上ゲマシタ通リ、集團
部落ニ致シマシテ、ソレカラ耕作ノ如キモ
成ルベク切畑耕作ト云フヤウナコトヨリモ
水田耕作ニ向ケルトカ、出來ル限リ小サイ
面積デ彼等ノ生活ガ保障出來ルヤウニ、集
約的ニ農法ヲ指導シテ行クト云フコトニナ
リマスト、今迄高砂族ガ居住シテ居リマシ
タ土地ガ相當價値ノアル地點デアリマス、
ソレ等モ自然一般ノ產業的ナ意義ノアル開
發ガ出來ルト云フコトニナッテ、是等ノ利用
ガ漸次出來ルノデアリマス、殊ニ緩傾斜ノ
地ヲ選ビマシテ、國土保安上、竝ニ植樹ヲ
要シナイ地點ニハ、農耕地ト致シマシテ利
用致シタイ、ソレ等ノ可能性ノ多イ所ヲ昭
和十一年カラ四箇年計畫デ蕃地調査ヲ進メ
マシテ、是等ハ唯調査々々ニ終ラナイデ、
調査直後ニ直チニ實行計畫ヲ立テマシテ、
著々ヤッテ居ル譯デアリマス、第一ニ著手致
シマシタ臺東廳ノ南半分、高雄州下ノ潮州
郡恒春郡ト云フヤウナ地點ニ付キマシテ
ハ「キナ」或ハ「ココア」茶、「コーヒー」チ
タール·バーク」ト云フヤウナ熱帶植物ノ臺灣
ニ初メテ生育シ得ルヤウナ是等ノ各種重要
作物ノ栽培ノ計畫ヲ立テマシテ、是等ハソ
レゾレ皆確實ナ企業ヲ爲シ得ルモノト認メ
マシタ者ニ現ニ企業ヲ許シマシテ、改良ニ
努メテ居ル譯デアリマス、其ノ他牛ノ如キ
モ、或ハ羊毛ノ如キモ、山ノ勾配ヲ利用致
シマシテ、相當將來發展シ得ルノヂヤナカ
ラウカ、是等ノ地點ニハ、ドウセ相當、農
民或ハ是等ニ關係シテ居ル從業員等モ入レ
ンケレバナラヌ譯デアリマスガ、高砂族ノ
勞力ヲ利用スルノト相俟チマシテ、是等ノ
地點ニハ可ナリ人間ガ澤山住ムヤウニナラ
ウト思ヒマスカラ、從ッテ是等ニ供給スル食
糧品其ノ他一般普通農耕モ普及スルノデハ
ナカラウカ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ル次
第デアリマス、丁度是等ニ對スル細カイ計
數的ナコトハ手許ニ持チ合セテ居リマセヌ、
調査致シマシタ面積其ノ他ハ後刻差上ゲタ
イト思ッテ居リマス、ソレカラ今現ニヤッテ
居リマスルノハ臺東廳下ノ北ノ方ト花蓮港
廳下ト、ソレカラ嘉義ノ中ニ可ナリ廣大ナ
面積ガアリマスノデ、是等ヲ調ベタイト思ッ
テ居リマス、是ガ大體ニ於キマシテ緩傾斜
ノ地點デアリマス、サウ云フコトニ致シマ
シテ、漸次臺灣ノ山地利用ト云フコトモ調
査ヲ進メルト共ニ、實行ニ依ッテ大イニ產業
上ノ開發ニ努メタイ、斯ウ云フヤウニ考ヘ
テ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/33
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034・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ノ質問ノ要點ハ重要農
產物增產目標ガ此ノ計畫ニ寄與スル所、ド
ノ位出來ルカト云フコトガ要點デス、サウ
云フコトガ出來レバ、農作物增產ニ付テノ
安心ガ出來ル譯デアリマスカラ、ソレヲ伺ッ
テ居ル譯デアリマス、ソレニ對スル若シ資
料ガ出來レバ、御差〓シヲ願ヒタイ、ソレ
カラ水源涵養ガ此ノ蠻地ニ於テ出來ルト云
フコトニナルト、先程私ガ申シタ水利關係
ト密接ナ關係ガアル、水ノ不足ノヤウナ所
ノ水源地ニ付テノ造林ヲ先ヅ第一著手ニヤ
ルトカ何トカ云フヤウナコトガ、水利計畫
ト共ニ連繫ヲ執ッテ計畫ガ立テラレタナラ
バ、增產計畫ハソレハ又非常ニ計畫ガ秩序
立ッテ行クノデハナイカト考ヘルノデアリマ
スカラ、此處ニ色々ナ智慧ヲ搾リ、色々ナ
努力ヲ集メテ增產計畫ヲシヨウト云フコト
ニナッタ場合ニ於テハ、各方面ノ資料ヲ此處
ニ集メテ、サウシテ工夫ヲ凝ラシテ、或物
ヲ確實ニスルト云フ必要ガアルト云フ意味
ニ於テ申上ゲテ居ルノデアリマスカラ、資
料ガ出來タラ一ツ御送リ願ヒタイ、加
之此ノ蕃地ハ山嶽地帶デアルガ故ニ、熱
帶ト雖モ上ニナルト溫帶ニナリ、尙上ノ方
ニナレバ寒帶ニナルト云フ關係ガアル譯デ
アリマスカラ、ソンナヤウナコトモ矢張リ
特用作物ノ場合ニ付テ、色々考慮スル餘地
ガアルノデハナイカ、唯無暗ニ、試ミニ色
色ナモノヲヤッテシマフト云フコトヲヤル
必要ハ何モ私ハナイト思フ、サウ云フコト
ハ目標デハナイ、珍シイ物ガ出來ルカラヤッ
テ見ヨウト云フヤウナ、慰ミ的ノコトヲ論
ジテ居ル譯デハナイ、今各種ノ作物ニ付テ
御話ガアリマシタガ、ソレハ御熱心ニヤラ
レルノハ結構ト思ヒマスガ、要點ハ臺灣ノ
土地ノ命ズル所、氣候風土ノ命ズル所ニ依ッ
テノ適作物ニ付テ、增產ヲシテ行クト云フ
コトニ目標ヲ私ハ置カナケレバナラヌト思
フ、サウ云フ意味ニ於テ資料ガ出來マシタ
ラ、御提出ヲ願ヒタイ、私只今ノ所質問致
シタイコトハ以上デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/34
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035・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 今日ハ此ノ程
度デ散會致シマス、明朝ハ大臣ガ見エルヤ
ウデアリマスカラ、正十時カラ開キマス
午後三時四十四分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵大隈信常君
副委員長伯爵黑木三次君
委員
侯爵細川護立君
子爵八條隆正君
子爵松平康春君
子爵綾小路護君
松村眞一郞君
永田秀次郞君
男爵稻田昌植君
男爵松田正之君
宮田光雄君
松村義一君
丸山鶴吉君
松本眞平君
林平四郞君
風間八左衞門君
政府委員
陸軍主計中將石川半三郞君
拓務政務次官寺田市正君
臺灣總督府總務長官森岡二朗君
臺灣總督府財務局長嶺田丘造君
臺灣總督府殖產局長田端幸三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00419390315/35
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