1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十六日（木曜日）午前十時九分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/0
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001・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ是ヨ
リ開會致シマス、昨日御請求ノアリマシタ
農林、拓務兩大臣御出席ニナッテ居リマス、
農林大臣ハ衆議院ノ方ニ米穀法案、豫算等
デオ忙シイノデ、長クハオイデ出來ナイヤ
ウデアリマスカラ、農林大臣ニ對スル御質
問カラ先ニ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/1
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002・松村義一
○松村義一君 農林大臣、拓務大臣、オ忙
シクアラセラレル處、特ニ御出席ヲ願ヒマ
シテ恐縮ニ堪ヘマセヌ、私ガ御尋ネ致シタ
イコトハ、農林大臣、拓務大臣御二方カラ
一ツ私ノ諒得ノ行クヤウニ御親切ナル御答
ヲ御願ヒ申上ゲタイト思フノデアリマス、
ソレハ大體結論ヲ先ヅ申上ゲテ見ルト、此
ノ臺灣米穀移出管理案ト、先達テモ會期切
迫ニナッテカラ御提出ニナッテ今衆議院デ審
議サレテ居リマスル米穀需給調節案、此ノ兩
案ナルモノハ矛盾撞著ヲシテ居ル、斯ウ思フ
ノデアリマス、相異ル前提ノ下ニ兩案ガ提
出サレテ居ッテ、從ッテ兩案共全ク矛盾撞著
デアル、其ノ矛盾ノ法案ヲ同一ノ內閣ガ同
一ノ議會ニ御提出ヲナスッテ、私共ニ兩方共
協贊ヲセイト斯ウ云フコトヲ仰シヤルト云
フコトハ、如何ニモ無理ナ話デアル、斯樣
ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、從ッテ是ガ
矛盾撞著デナイノデアルト云フコトヲ兩大
臣カラ詳細ニ御〓ヲ御願ヒシタイ、斯ウ云
フコトガ趣旨デアルノデゴザイマス、其ノ
私ノ質問ノ由ッテ來ル所ニ付キマシテ、聊カ
申上ゲテ見タイト思フノデゴザイマス、此ノ
臺灣米穀移出管理案〓要ヲ見テミマスル
ト、其ノ一節ニ斯ウ云フコトガ書イテアル、
私先ヅ讀上ゲテ見マス、「然ルニ其ノ後帝國
全體ノ米穀需給ノ狀態ハ、內外地ニ於ケル
增產施設著シク其ノ效果ヲ顯ハシ、全般的
ニ產米ノ增加ヲ來シタ結果、昭和六米穀年
度ヲ劃期トシテ一變スルニ至ッタ、卽チ從來
ハ內外地ヲ通ジテノ米穀生產高ハ其ノ消費
ヲ賄フニ足ラズ、相當ノ數量ヲ海外ニ需メ
ナケレバナラナカッタガ、昭和六米穀年度以
降內外地ヲ通ジテノ米穀需給關係ハ、著シ
キ凶作デナイ限リ大勢的ニ供給過剩ノ狀態
ニ陷ルニ至ッタノデアル、卽チ昭和二年度マ
デハ年々米穀ノ不足ヲ生ジ、大正十四年度
ノ如キハ約五百萬石ノ外米ノ輸入ヲ見タノ
デアッタガ漸次之ヲ減少シ、昭和六年度ニ於
テハ逆ニ供給過剩ノ狀態ヲ來スニ至リ、爾
來年ノ豐凶ニ依リ數量的ニ可ナリノ變化ガ
アルガ、大體八九百萬石ノ持越米ヲ生ジ、
昭和九年度ノ如キハ實ニ千六百萬石ノ持越
ヲ爲シタル狀態デアル、偶〓昭和五、六年ハ
經濟不況深刻ニシテ諸物價ノ慘落ヲ見タ
ガ、米價ハ之ニ加ヘテ昭和六年度ノ米穀供
給ノ大過剩ノ爲ニ一層ノ暴落ヲ來シタノデ
アル、斯クテ農村窮乏ノ匡救ハ切實ナル政
治經濟問題トナリ、昭和八年十一月ニハ米
穀統制法ノ施行ヲ見、更ニ昭和十一年九月
ニハ內外地ヲ一貫シタル米穀自治管理法ガ
施行セラルルニ至ッタ、臺灣ニ於テモ爾來內
地米穀政策ノ變更ニ對應シテ、總督府ハ米
穀ノ急增ヲ抑制スル爲ニ、水利施設ノ新設
又ハ改修ヲ悉ク之ヲ禁止シ、又土地改良等
ノ米ノ增產ヲ圖ル爲、從來ヨリ實施シ
來ッタ各般ノ施設モ之ヲ中止スルト共ニ、
出廻調節ノ爲ノ籾貯藏ノ奬勵、代作物ノ
栽培奬勵ヲ行ヒ、一面米穀統制法ノ一部
施行ヲ爲シ、更ニ自治管理施行ニ伴フ統
制組合ノ設立、統制倉庫ノ建設等ヲ實施
シ幾多ノ努力ヲ拂ヒツヽアル現狀デアル」
斯ウ云フコトヲ說明ニ書イテアルノデア
リマス、其ノ以後是レ以外ニ色々項目ヲ擧
ゲテ米穀ノ移出管理ヲシナケレバナラヌト
云フ理由ガ述ベラレテアルノデゴザイマス
ガ、要スルニ前提ハ、今讀上ゲタコトガ大
前提デアルノデアル、卽チ內外地ヲ通ジテ
我ガ國ノ米ハ從來足ラナカッタケレドモ、今
日ハ非常ニ殖エテ居ル、昭和六年以後ハ非
常ニ米ノ產額ガ澤山ニナッタ、ソレガ爲ニ內
地モ困ッタ、臺灣モ亦困ル、斯ウ云フ現狀デ
アル、斯ウ云フ現狀ト云フコトガ前提デア
ル、從ッテ其ノ現狀ヲ何トカシテ宜クシテ
行カナクテハナラヌ、ソレガ爲ニハドウシ
テモ今囘米作偏重ニ流レテ居ル弊ヲ矯メル、
サウシテ更ニ色々重要作物モ奬勵ヲシ、サ
ウシテ農家ノ經濟ヲ多角化セシムル、サウ
スレバ米ガ澤山ニナッテソレガ爲ニ臺灣ニ
於テモ困ル譯ハナイ、內地ノ方ニ對シテモ
之ニ對シテ利益ヲ與ヘルノデアル、斯ウ云
フコトガ大體ノ理由ニナッテ居ルヤウニ思
フノデアリマス、處ガ今日ハサウデアルカ
ト云フコトヲ考ヘテ見ルト、私ハ今日ハサ
ウデナイノダ、其ノ現狀ナルモノハ米ガ非
常ニ澤山デ困ル、內外地ヲ通ジテ困ル、臺
灣モ亦困ルト云フ現狀ニ今日ハ變ッテ居ル、
先程申上ゲマシタヤウニ、米ガ非常ニ供給
過剩デアルト云フ爲ニ因ルト云フ事情ハ日
支事變ノ始マル前、始マッタ當時モサウデ
アッタ、其ノ通リデアッタ、從ッテ一昨年頃ノ
此ノ臺灣米穀移出管理案ト云フモノヲヤラ
ウト云フコトヲ、愈〓實際ニ於テ計畫致サレ
タノデアリマス、其ノ當時ハソレモ一ツノ
方策デアッタカモ知レヌ、其ノ方策ナルモノ
ハ私ハ全然、良イカ惡イカト云フコトハマ
ダ疑問ヲ持ツ者デハアリマスケレドモ、少
クトモ其ノ所謂臺灣總督府デ考ヘラレタ、
米穀事情ノ現狀ト云フモノニ卽シテ考ヘタ
ナラバ、或ハ考ヘ得ル案デアッタカモ知レ
ヌ、併シナガラ其ノ後日支事變ガ始マッテ、
日支事變ナルモノハ其ノ初メニ於テハ局
地解決ト云フ方針ヲ執ッテ居ッタ、更ニ進ン
デ今度ハ蔣介石政權ヲ對手ニスルト云フ、
斯ウ云フコトニナリ、更ニ進ンデハ飽ク迄
長期抗戰ヲ企ツル蔣介石政權ハ對手ニシナ
イト、斯ウ云フコトニ進ンデ來タ、今日ハ
向フノ長期抗戰ニ對シテ我カ國ハ長期建設
ヲシナケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナ事態
ニ變ッテ參ッタノデアリマス、戰爭ハ何時迄
續クカ分ラナイ、サウ云フヤウナ狀態ニナッ
タト云フコトハ、是ハ米穀事情ノミナラズ、
總テノ社會事情ニ我ガ國ハ非常ナ變化ヲ來
シタ、日支事變ハ非常ナ變化ヲ來シタ、サ
ウシテ國民ハ總テノ犠牲ヲ拂ッテ、擧ツテ此
ノ聖戰ノ目的ヲ達シナケレバナラヌト云フ
コトニ相成ッタモノト私ハ思フノデアル、從ッ
テ米ニ對シテモ今日ハ非常ニ需要ガ殖エ
テ參ッテ、是デハ今日ノ現狀デハ困ル、米ヲ
殖ヤサナケレバナラヌ、今迄非常ニ澤山デ
アルトシテ困ッテ居ッタノガ、今度ハ非常ニ
需要ガ多クナッテ來テ、長イ間戰爭ヲ續ケル
爲ニハ、何トシテモ食糧問題ガ一番大切デ
ナケレバナラヌ、其ノ食糧問題ニ不足ヲ感
ジテハ由々敷キ大事デアル、今日我々國民
ハ衣食住ノ中デ著ル物テニ付テモ、住フ家
ニ付テモ非常ナ不自由ヲシナケレバナラヌ、
不自由ヲ忍ンデ居ル、併シナガラ更ニ此ノ
上ニ〓糧問題ニ付テ若モ不足ヲ來シタナラ
バ重大問題デアル、而モ米ナルモノハ非常
ニ需要ガ殖ヱテ來テ居ル、從ッテ此ノ米ニ
對シテハ非常對策ヲ講ジナケレバナラヌト
云フ譯デ、農林省ニ於キマシテハ會期ノ迫ッ
タ時ニ當ッテスラモ、此ノ米穀需給調節案
ト云フヤウナモノヲ御出シニナッタト云フ
ヤウナコトニナッタ、同時ニ內外地ヲ通ジテ
非常ニ米ノ增產ヲ圖ッテ、サウシテ長期建設
ニ當ッテノ食糧問題ニ付テ飽迄覺悟スル、斯
ウ云フ對策ニ出デラレタノデアルト思フ、
一從ッテ米ガモウ過剩デアルト云フ現狀ナル
モノハ玆ニ打破サレタノデアル、打破サレ
テ、米ガ或ハ足ラヌカモ知レヌト云フコト
ヲ憂ヘテ、一所懸命ニナッテ晝策サレテ居ル、
斯ウ云フ事情ニ相成ッタノヂヤナイカト思フ
ノデゴザイマス、衆議院ノ本會議ニ於ケル、
六日ノ會議デスカ米穀配給統制法案ノ農林
大臣ノ御說明ヲ見ルト、其ノ一節ヲ讀ミ上
ゲテ見タイト思ヒマス、「幸ヒ事變勃發以來
一年有半ヲ經タル今日、國民ハ食糧ニ聊カ
ノ不安モナク、一途長期建設ニ邁進スルコ
トヲ得マスルノハ、一ニ國土ノ恩惠デアリ
マスト共ニ、我ガ農山漁村ノ大ナル努力ニ
依ルモノデアリマシテ、誠ニ感謝ニ堪ヘヌ
所デアリマス、併シナガラ若シ萬一天候其
ノ他ノ關係ヨリ、現在ノ米穀事情ニ急激ナル
變動ヲ來スガ如キ事情ノ起リマシタ場合ヲ
想像致シマスナラバ、今日ニ於テ豫メ之ニ
對應スル爲適切ナル方策ヲ講ジテ置キマス
コトハ、極メテ肝要ノコトト確信スルノデ
アリ·マス、從ヒマシテ政府ニ於テハ、此ノ
問題ノ重要性ニ鑑ミマシテ、本年以降ニ於
ケル米穀ノ生產ニ關シテ、一面ニ於テ必要ナ
ル增產計畫ヲ考慮致シテ居ルノデアリマス
ガ、殊ニ配給ノ問題ニ關シマシテハ、米穀
需給ノ圓滑、價格ノ適正ヲ圖ル上ニ於テ、
米穀配給統制ノ必要アリト認ムルノデアリ
マス」、斯樣ニ述ベラレテ居ルノデアル、從ッ
テ此ノ兩法案ハ其ノ前提ガ違ッテ居ル、一ツ
ハ米ガ足ラヌカモ知レヌト云フコトヲ心配
ヲシテ米ノ增產計畫ヲ圖ッテ、ソレデモ心配
デアルカラ更ニ配給ノ圓滑ヲ圖リ、價格ノ
適正ヲ圖ルト云フ爲ニ心配ヲサレテ、米穀
需給調節法案ヲ出シテ居ラレル、一方ニ於
テハ內外地ヲ通ジテ米ガ餘ル、殊ニ臺灣ニ
於テハ餘ル、內地ニ於テモ餘リ臺灣ニ於テ
モ餘リ、內地ニ移出ガ出來ヌ、ソレガ爲ニ
農家ガ非常ニ不安ニナル、斯ウ云フコトヲ
考ヘテ居ラレル、其ノ前提ガ違ッテ居ル、從ッ
テ其ノ兩法案ハドウシテモ矛盾撞著ヲ免レ
ヌト云フコトハ、火ヲ睹ルヨリモ明カデハ
ナイカト私ハ思フ、從ッテ我々ガ此ノ法案ヲ
審議スル場合ニ於キマシテハ、兩法案トモ
一緒ニナッテ、能ク審議シテ見ナケレバ分ラ
又、サウシテ私ノ只今ノ考ヘデハ、臺灣ノ
方ノ移出管理案ヲ認ムルナラバ、米穀需給
統制案ハ認メラレナイモノデアル、兩者ヲ
認ムルト云フコトハドウシテモ出來ナイコ
トデアル、斯ウ云フコトヲ考ヘザルヲ得ナ
イ狀況デアルノデゴザイマス、左樣ニ考ヘ
テ居リマスノデ兩大臣カラ、是ハ矛盾ハナ
イ、ドッチヲドウシテモ宜イノダト云フコト
ヲ、本當ニ誠實ニ、眞劔ニ、詳シク御說明
ヲ願ハナケレバ分ラヌ、然ラザレバ一ヲ認
メテ一ヲ認メラレナイ、斯ウ云フ結果ニナ
ラザルヲ得ナイカト思フノデアリマス、ド
ウカ此ノ點ニ付テ私共ノ疑惑ヲ說クベク、
十分ナル御說明ヲ兩大臣カラ御願ヲ致シタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/2
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003・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 今松村サンノ御
尋ニナリマシタ、需給調節ト仰セラレタノ
ハ、米穀ノ配給統制法ノコトダト思ヒマス、
其ノ意味ニ於テ御答辯致シタイト思ヒマス、
米穀配給統制案ニ付キマシテハ、幸ニ衆議
院ガ通過致シマスレバ、貴族院ニ於キマシ
テ御審議ヲ願フコトト相成リマスノデ、其
ノ節ニ十分御說明申上ゲタイト思ヒマスケ
レドモ、大要ダケヲ申上ゲタイト思ヒマス、
其ノ大要ハ今松村サンガ御讀ミ上ゲニナッタ
通リデアリマシテ、少シモ變リハナイト思
ヒマス、卽チ日本ノ米穀政策ノ建前カラ申
シマシテ、農林當局ト致シテハ內外地ヲ一
貫シテ考慮致シマシテ、日本ノ消費ト供給
トノ間ニ毫末モ不便ナカラシメタイト、斯
樣ニ考ヘマシテ案ヲ立テタ譯デアリマス、
ソレデ是ハ私數字的ニ申上ゲタノガ一番分
リ易ク相成ルト考へマス、現在日本ニ於キ
マシテハ內外地ヲ通ジマシテ約一億萬石ヲ
消費致シテ居リマス、少シク何十萬石ノ違
ヒハアリマスケレドモ、大凡ソノ數字ガ一
億萬石デアリマス、ソレニ對シテ供給モ亦
約一億萬石致シテ居ルノデアリマス、卽チ
昨年度カラ見マスト云フト、九百何十萬石
ノ端境期ニ持越ガアリマシテ、本年ノ持越
モ亦九百二十二萬石位ノ豫想ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、大體ニ於キマシテ今日日本
ト致シマシテハ、米穀需給ニ付キマシテハ不
足ヲ感ジナイト云フ程度ニアルノデアリマ
ス、併シナガラ米穀政策ト致シマシテハ御
承知ノ通リ、單ニ明治時代デハナク昔カラ
此ノ米穀ノ問題ニ付キマシテハ非常ニ困ッ
ク、取扱ガ困ッタ問題デアリマシテ、或ハ昔
ハ豐作ノ時ニハ常平倉ト云フモノヲ拵ヘ
タ、又饑饉ノ時ニハ殆ド何トモ言ヘヌ狀態
ニナッタト云フヤウナ、苦イ經驗ヲ昔カラ
持ッテ居ルノデアリマシテ、明治ニナリマシ
テモ此ノ問題ニ付キマシテハ有ラユル學者
ノ方々ガ苦心サシテ、何トカシテ此ノ需給
調節ヲ致シタイト云フノデ、苦心ニ苦心ヲ
拂ハレタノデアリマス、確カ大正十年デア
リマシタカ、山本達雄男爵カ農商務大臣ノ
時ニ、量ノ調節ト云フコトヲ企圖サレテ、
米穀法ト云フモノヲ設ケラレタノデアリマ
ス併シナガラ量ダケノ調節ダケデハ尙不
十分ダト云フノデ、今日ノ米穀統制法ガ出
來マシテ、更ニ今御話ノ米穀ノ豐作ノ結果、
農民ノ窮狀ヲ救フ爲ニ米穀自給管理法案ト
云フモノガ出來テ、現ニ今日行ハレテ居ル
ノデアリマス、米穀統制法ハ常ニ發動致シ
テ居リマスガ、應用サレテ居リマスガ、マ
ダ米穀自治管理法ヲ實行スルヤウナ機會ニ
ハナッテ居リマセヌ、卽チ米ガ非常ニ足ラヌ
場合ト非常ニ多イ場合トハドウシテモ天
候ノ關係デ起リ易イノデアリマス、今御讀
上ゲニナリマシタ如ク、昭和八年七年頃ハ
非常ナ豐作デアリマシテ、遂ニ持越米ガ千
六百萬石ノ巨額ニ達シタト云フヤウナ時代
モアリマス、內地ニ於ケル米ノ値段ガ二十
圓ヲ割ッタト云フヤウナ時代モアリマス、從
ヒマシテ米穀政策ヲ立テマスルノニハ、現
在ト將來トヲ能ク見合ッテ考ヘナケレバナ
ラナイノデアリマス、而シテ現狀ハ今申上
ゲマシタ通リ、生產ト消費トガ丁度相對シ
テ居ルノデアリマシテ、少シモ心配ガナイ
ト言フテ差支ヘナイノデアリマシテ、御讀
上ゲニナッタ通リ、今日ノ聖戰ニ於テ出征將
士ガ後顧ノ憂ヒナク、卽チ家族ガ食フニ困
ルト云フコトガナイト云フコトデ、安ンジ
テ業ニ就イテ居レルコトモ、卽チ日本ノ食
糧品ガ確保サレテ居ルト云フ意味ニ外ナラ
ナイ、是ガ一大原因ヲナシテ居ルト思フノ
デアリマス、ソレデ私ノ取リマシタ今ノ、
提案致シマシタ配給統制ト云フ事柄ハ、今
御讀上ゲニナリマシタ如ク、萬一天候ガ不
良デアッテ、サウシテ收穫ガ取レヌト云フ場
合ガナイトモ限リマセヌノデ、其ノ場合ヲ
豫想シタコトガ配給統制法案ヲ出シタ一ツ
ノ原因ニナッテ居リマス、ソレハ端境期ニ於
キマシテ僅カニ持越、日本ノ國內ニアル米
ハ九百萬石臺、九百二十萬石ト豫想サレテ
居リマスガ九百萬石臺デアリマス、是ガ若
シ一朝ニシテ本年天候ガ惡クシテ、明年ハ
米ガ非常ニ少イト云フヤウナコトヲ見タ時
ニ、米ガ偏在スルノデアリマス、卽チ今五
百五十萬戶ノ農家ガ自分ノ食糧以外ハ全部
賣リマシテモ、大地主デアルトカ或ハ米ノ
商人デアルトカ、斯ウ云フ人々ガ高クナル
ト思フト賣ラズニ、思惑ニ持ツノデアリマ
ス、サウシマスト云フト、此ノ消費地デア
ル所ノ東京、大阪等ニハ米ガ出テ參リマセ
又、米ガ出マセヌト、ソコニ於テ値段ノ如
何ニ拘ラズ、米ガ手ニ入ラヌト云フコトニ
ナリマス、玆ニ於テ非常ナ困難ナ事情ニ立
至リマスノデ、サウ云フ場合ニ於テ米ノ配
給ヲ統制スル政府ガ持ッテ居ッテ、之ヲ十分
圓滑ニ配給シテ行クト云フ事柄ヲ致サナケ
レバ、安ンジテ國民ガ生活シテ行ケナイ、
卽チ米ハ現在日本ノ國民ガ食フダケデアル、
アッテモ偏ッテシマッテ、貯藏サレル場合ニ於
テハ一面ニ於テハナイ人ガ出來ル、是ハ非
常ニ澤山アリマスト、三百萬石ヤ五百萬石
アッチコッチデシマヒ込ンデ見テモ、決シテ
困リマセヌケレドモ、現狀ニ於キマシテ九
百萬石內外ノ米デアリマスト云フト、少シ
ク多數ノ人ガ思惑ヲ致シマスト、直グ米ガ
足リナクナルノデアリマスカラシテ、サウ
云フコトノナイヤウニ致シタイト云フコト
ノナイヤウニ致シタイト云フコトガ一ツノ
アノ法案ヲ出シタ重大ナ理由ニナッテ居リ
そう、今一ツハ其ノ提案ノ際ニ申上ゲマス
ケレドモ、現在ノ米穀ノ價格ガ米穀統制法
ノ第二條ノ、最高最低ノ中ニ於テ大體動イ
テ居リマスケレドモ、其ノ動キ方ト云フモ
ノハ多ク投機取引ヲ基準トシテ起ッテ居リマ
シテ、實需ヲ基本ト致シテ居リマセヌノデ、
米穀ノ如キ食糧品ニ對シマシテハ、ドウシ
テモ實際ノ實需ト正米トノ關係ニ依ッテ、價
格ヲ公正ニ指定致シタイ、斯ウ云フ意味ニ
於テ此ノ米穀ノ取扱方法ヲ改メタノデアリ
マス、サウシテ今迄ニ制限ノナカッタノヲ最高
最低ト云フモノノ中ニ於テノミ市場デハ商
賣ヲサセル、斯ウ云フ風ニ改メタノガアノ
法案デアリマシテ、日本ノ米穀政策ヲ睨ミ
合セマシテ、サウシテ之ヲ政府ガ指導シテ
行キ得ルヤウニ提案ヲ致シタモノデアリマ
ス、而シテ此ノ日本ノ米穀政策ヲ立テマス
ル前ニ、臺灣ヲドウ見タカト云フコトニ付
キマスト、臺灣モ既ニ御覽ニナリマシタ通
リ、年々增加率ニ依ッテ增加ヲシテ產出ヲシ
テ貰ヒタイト云フコトヲ拓務省ニ交涉致シ
マシテ、サウシテ此ノ案ニ依ッテモ十箇年間
ニハ二百萬石ダケノ增產ヲスルコトニナッテ
居ルノデアリマス、朝鮮ニ於テモ亦大體ニ
於テ一年五十萬石ナリ百萬石ナリハ增產シ
テ日本ヘ送リ出シテ貰フ、內地ニ於テモ亦
增產計畫ヲ立テテ行クト、斯ウ云フ譯デ總
テガ三位一體トナッテ、皆順次增產ヲ致ス計
畫ヲ立テテ案ヲ立テタノデアリマス、其ノ
後私ガ就任致シマシタ後ニ於テ、尙更ニ今
少シク餘裕ヲ持ッテ置クコトガ必要デアル
ト云フコトヲ考ヘマシタノデ、從來ハ內地
三百萬石ノ增產計畫デアリマシタノヲ四百
萬石ノ增產計畫ニ直シ、臺灣ニ於テモ共ニ
五十萬石ノ增產ヲシテ戴クヤウニ致シ、朝
鮮ニ於テモ更ニ五十萬石ノ增產ヲシテ戴ク
ト云フヤウナ風ノ案ヲ立テマシタ、是ハ內
地ニ於テ米ガ非常ニ足ラヌカラサウ云フ計
畫ヲ立テタノカト斯ウ仰セラレルカモ知レ
マセヌガ、左樣デハナイノデアリマス、內
地ノ米ノ計畫ヲ立テマスル際ニハ、御承知
デモアリマセウケレドモ、年々一定ノ增加
率ト云フモノガアリマス、卽チ人間ノ殖エ
タ······人口增加ノ數ト、ソレカラ米穀ノ使
用率ノ增加ト、之ヲ見合ッテ一定ノ趨勢ト申
シマスカ、使用ノ率ト云フモノガ決ッテ居リ
マシテ、ソレニ依ッテ米穀ノ生產ヲ指導シテ
參ッテ居ルノデアリマス、唯、今御話ノ如ク
事變ガ起リマシタ結果、米ノ需要ガ增加致
シテ居リマス、是ハ何ガ爲ニ增加致シタカ
ト云フコトハ、今私之ヲ申上ゲ兼ネマスケ
レドモ、其ノ率ノ以外ニ急激ナ增加ガ一時
起リマシタ、尤モ其ノ數字ヲ申上ゲテ宜イ
カ惡イカ分リマセヌガ······增加致シタ、其
ノ增加モ見積ッテ、サウシテ需給ノ案ヲ立テ
タ譯デアリマス、其ノ以外ノ數量ニ付キマ
シテモ多少ノ餘地ヲ見テ計畫ヲ立テテ居リ
マス、從ヒマシテ此ノ生產ノ豫定ガ遂行サ
レマスル場合ニ於テハ、少シモ私ハ心配ス
ベキコトガナイト考ヘマス、唯茲ニ我々ト
シテ考ヘナケレバナラヌコトハ、是ハ此ノ
米ノ方ニ御關係ノ方ハ能ク御承知ト考ヘマ
スケレドモ、米ガ多ク取レタ場合ト少ク取
レタ場合トハ食ヒ方ガ違フノデアリマス、
是ハ恐ラク朝鮮人其ノ他ノ人ガ、米ノ多ク
取レタ場合ニハ米ガ安イカラ米ヲ多ク食べ
テ、粟ナンカヲ食ベナイ、ソレガ安イ時ニ
ハ米ニ代ルト云フ關係モアリマセウシ、
種々ナ關係ガアリマシテ、增產ヲシタ場合ニ
於テハ必ズ多ク食ベル風ガアリマス、ソレ
モ一定ノ率ガ昔カラアルヤウデアリマシテ
旣往十一箇年ニ遡ッテ常ニ其ノ問題ヲモ考
慮ニ入レテ增產計畫ヲ立テテ居ルノデアリ
そく、此ノ度ノ內地ニ於ケル增產計畫ハ、
臺灣デ斯ウ云フ風ナ案ヲ立テルナラバ、必
要ナイヂヤナイカト云フ御意見モ私ハ起リ
易イト思ヒマスガ、ソレハ少シク事情ガ違
フノデアリマス、內地ニ於ケル增產計畫ト
云フモノハ、是ハドウカシテ內地ノ反當リ
ノ增殖ヲ圖ッテ、サウシテ此ノ生產ヲ維持シ
テ行キタイト、若シ之ヲ臺灣朝鮮ノ方デド
ンドバ之ヲ生產ヲシテ戴イテデス、サウシ
テ內地ノ增產ヲ致サナカッタト假定致シマ
スト、若シ只今御讀上ゲニナッタヤウナ風ニ
昭和七八年ノヤウナ時代ガ起ック時ニハ、內
地ノ農民ト云フモノハ非常ナ苦境ニ立ツノ
デアリマス、出來得ル限リハ內地ノ生產ヲ
減ラサイヤウニシテ、維持シテ行クト云フ
事柄ハドウシテモ努メテ行キタイ、サウシ
テ內地ノ生產ガドウシテモ、ドウモ天候ノ
工合デ惡イト云フヤウナ場合ニ於テハ、是
ハ二毛作デアリマスカラ、臺灣ノ二毛作ニ
於テ特別ナ盡力ヲ煩シタイト斯樣ニ思フノ
デアリマシテ、平生ニ於テハ內地ト外地ト
一丸トシテ其ノ需給ガ立テレバ宜シイト云
フ建前デ、今日計畫ヲ立テテ居リマスノデ·
アリマシテ、內地ガドウシテモ不況ダ
ト斯ウ申ス場合ニ於テハ、是ハドウシ
テモ臺灣ニモ朝鮮ニモ更ニ增產ノ計畫
ヲ立テテ戴カナケレバナラヌノデアリ
そう、御承知ノ通リ此ノ大正九年ノ朝
鮮ニ於テハ產米增殖計畫ト云フモノヲ中止
シテシマッタノデス、ソレカラ臺灣ニ於テハ
水利改良事業ヲ止メテ戴イタノデアリマス、
ソレハ米ガ非常ニ出來テ、內地ノ農民ハ殆
ド其ノ爲ニ米ハ出來テモ金ハ入ラヌト云フ
譯デ、非常ナ內地ノ農民ノ苦境ニ陷リマシ
タガ爲ニ、臺灣朝鮮共ニ其ノ增產ヲ止メテ
貰ッテ居ル譯デアリマシテ、今日尙ソレハ止
メタ儘ニナッテ居リマス、ソレデ現在ノ日本
ノ農村ハ勞力ニ於テ、多數ノ將士ガ出テ居
リマスカラシテ勞力ガ足リマセヌ、又馬モ
徵發サレテ足リナイ、肥料モ國際收支ノ關
係上不手廻リデアル、故ニ內地ノ生產ヲ維
持スルト云フ事柄ハ、是ハ相當ナ增產計畫
ヲ立テナケレバ、容易ニ維持ノ出來ヌコト
ハ是ハ勿論デアリマス、從ヒマシテ增產計
畫ヲ一面ニ於テ立テテ居リマスガ、ソレナ
ラバ其ノ增產計畫ヲ止メテ、臺灣ヲドンド
ン開墾シテヤレバ宜イヂヤナイカト云フ風
ナ御議論モ立ツカ知レマセスガ、ソレハ將
來ノコトヲ考ヘマシタ時ニ、今昭和九年ノ、
ツイ四箇年前ノ苦シミヲ更ニ再ビ嘗メルト
云フコトニナルノデアリマスガ故ニ、サウ
云フ事柄ハ矢張リ今日ハ能ク考ヘテ計畫ヲ
シナケレバナラヌト思ヒマシテ、朝鮮モ或
一定ノ率デ增加シテ生產ヲシテ貰フ、臺灣
モ或一定ノ率ニ依ッテ增加ヲシテ生產ヲシ
テ貰フ、內地モ亦或一定ノ增加率ニ依ッテ
增產ヲシテ行ク、斯樣ナ建前デ何レモガ或
率ニ依ッテ增產ヲシテ行ッテ增加ニ對應スル
ダケノ米穀政策ヲ立テテ居ルノデアリマ
ス、將來ハ日滿支ノ關係ガ起リマシテ、滿
洲北支ノ關係モ起リマスガ、滿洲ハ御承
知ノ通リマダ米ノ生產ハ僅カニ其ノ端緒ニ
付イタダケデアリマシテ、此ノ滿洲ノ米ノ
生產ノ方法ハ計畫ノ如何ニ依リマシテハ非
常ニ出テ來ルコトト相成ルノデアリマス、
併シ是モ亦許可制度ニ致シマシテ、其ノ滿
洲ノ米ノ增產ト云フコトハ止メテアルノデ
アリマス、從ヒマシテ米ノ將來ニ付テ日本
ノ國民ガドン〓〓殖エテ行ク、殖エテ行ク
ニ從ッテ是ノ〓糧品ト云フモノヲ年々增加
シテ行ク途ニ付キマシテハ、可ナリ餘地ガ
アルト思フノデアリマス、唯日本內地トシ
テ注意致シテ置キマスノハ、繰返シテ申シマス
ガ、今勞力其ノ他ノ不足ノ關係カラ、是 R
ドウシテモ增產計畫ヲ立テテ、內地ダケノ
生產量ト云フモノヲ維持シテ行キタイ、其
ノ事柄ハ延イテハ出征兵士ガ歸ッテ來タ後
ニ、又農業ニ勞働致スノデアリマスカラ、
此ノ農業ニ勞働致ス場合ニ於テ、是等ノ人々
ニ昭和八九年頃ノ苦シイ思ヒヲサセルト
云フコトハ困ル、斯ウ云フ譯デ計畫ヲ立テ
タノデアリマシテ、臺灣ガ今減產ヲスル、
臺灣ヲシテ臺灣ノ生產ヲ減ラスト云フ意味
ハ、拓務當局ト農林當局トノ間ニ少シモ話
合ハナイノデアリマス、唯私共ガ此ノ計畫
ニ對シマシテ同意致シマシタ所以ノモノハ、
國際收支ノ關係上カラ、更ニ臺灣ノ土地ヲ
開發スル關係カラ、此ノ機會ニ於テ水利改
良事業ニ一般ノ手ヲ施シテ、サウシテ他ノ所
謂軍事上必要デアル所ノ「ガソリン」ノ用用
トナルベキ所ノ「アルコール」ノ資材デア
ルトカ、若シクハ麻デアルトカ、サウ云フ
品物ヲ開發シテ作リタイト云フ風ナ意味ニ
於テ、此ノ計畫ヲ立テラレタヤウデアリマ
シテ、私共ハ誠ニ適切ナコトト考ヘマシテ、
假ニ外國カラ買ハナケレバナラヌ品物ガ、此
ノ計畫ニ於テ一千萬圓出タ、斯ウ云フコト
ニ假ニ、數字ハ分リマセヌガ假定致シマス
ト、卽チ萬々ガ一ノ時ニ「サイゴン」米ニ
シロ、何ニシロ、直グ其ノ金ニ依ツテ米ヲ
買ヒ取ルノデアリマシテ、丁度米ノ增產計
畫ガ一面ニ於テヤラレテ居ルノト同ジ
コトニナルノデアリマシテ、卽チ私共ハ臺
灣ト云フモノハ伸縮性ガアリマスカラ、之
ヲ豫備ト見テ常ニ計畫ヲ立ッテ居ルヤウナ
譯デアリマス、私ノ考ヘデハドノ點カラ見
テモ矛盾シテ居ルヤウニハ少シモ考ヘテ居
ラヌ譯デアリマス、ドウカ能ク御審議ヲ煩
ハシタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/3
-
004・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) チヨット速記
ヲ止メテ··
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/4
-
005・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 速記ヲ始メ
テ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/5
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006・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 松村サンノ御質
問ニ對シマシテ私カラモ御答へ申上ゲタイト
思ヒマス、我ガ國ニ於キマスル食糧問題ト
致シマシテ、米ノ問題ガ極メテ重要性ヲ持ッテ
居ルト云フコトハ只今御話ノ通リデ、私
モ左樣ニ痛切ニ感ジテ居ル者デアリマス、
只今御指摘ニナリマシタ米穀配給統制法案
ト、此ノ臺灣ニ於ケル所ノ移出米管理案ト
ハ、根本ニ於テ矛盾シテ居ルヂヤナイカト
云フ點ニ付テ、私ニモ御尋ガアリマシタガ、
其ノ點ニ付キマシテハ只今農林大臣ヨリ詳
細ニ亙ッテ御答ガアリマシタル通リデアリ
マシテ、之ニ何等私ハ附ケ加ヘテ申上ゲル
要ヲ認メナイノデアリマスガ、唯一言申上
ゲマスレバ、米穀配給統制法案ハ、是ハ米
穀ノ所謂配給ノ統制デアル、サウシテ同時
ニ價格ノ調整ニアルト考ヘマス、臺灣ノ移
出米管理案モ全ク是ト同ジデアリマシテ、
卽チ價格ノ調整ニアルト云フコトハ度々申
シタ通リデアリマス、而モ過去ニ比シマシ
テ移出米ニ關スル限リハ、所謂計畫的ニ內
地ノ需要供給ト呼應シマシテ統制アル配給
ガ出來ルノデアリマス、而モ前者、卽チ米
穀配給統制法案ノ骨子ヲナシテ居リマスル
所ノ日本米穀會社ノ機能ノ可ナリノ仕事ト
致シマシテ、此ノ臺灣ノ移出米、臺灣總督
府ノ手ニ依ッテ農林省ヲ通ジテ新シク出來
ムトシマスル所ノ米穀會社ノ手ニ依リマシ
テ、之ガ配給サレルノデアリマスルカラ、
矛盾ハナイノミナラズ、極メテ密接ナル聯
繋ヲ有シテ居ルコトハ極メテ明瞭デアルト
存ズルノデアリマス、又其ノ精神ニ於テモ
內外相呼應シテ物ヲ計畫的ニ配給シ、價格
ヲ調整シテ行クト云フ點ニ付キマシテモ、
無論一脈通ジテ居ルモノガアルコトハ繰返
シテ申上ゲル迄モナイノデアリマス、ソコ
デ拓務省トシテ特ニ御答ヲ申上ゲナケレバ
ナラヌ點ハ、松村サンガ只今御讀上ゲニナ
リマシタル此ノ說明書ノ點デアリマスガ、
松村サンノ御讀ミニナリマシタノハ、是
歷史ヲ說イテ居ル點デアリマス、只今モ農
林大臣カラ御述ニナリマシタ通リニ、過去
ニ於テ斯クノ如クデアル、斯ウ云フコトデ
アリマシテ、之ヲ御讀上ゲニナッタ通リデア
ルノデアリマスガ、其ノ次ニ「然シ乍ラ」ト云
フ字ヲ使ッテ第二ノ點ニ斯樣ナコトガ明記
シテアルノデアリマス、卽チ左樣ナ「水利
又ハ土地改良ノ施設計畫ハ其ノ實行ヲ一切
禁止シテ、辛ウジテ現狀ヲ維持シツヽアル
ガ、斯ノ如キ狀態ヲコノ儘繼續スルニ於テ
ハ、臺灣農業ノ行詰リヲ來シ、戰時體制下
ノ今日米ヲ含ム物資動員計畫運營上、由々
シキ矛盾ヲ孕ンデヰルモノト言ハネバナラ
ヌ」、此ノ點ガ卽チ是デハイケナイ、斯ウ云
フコトデアルノデアリマス、從ヒマシテ過
日來臺灣當局ヨリモ屢~說明ガアリマシタル
通リニ、此ノ本案ノ實行ト共ニ今日抑制サ
レテ居リマスル所ノ水利或ハ土地ノ改良計
畫ト云フモノノ禁止ヲ解クノデアリマス、
抑制ヲ解イテ自然ナル狀態ニ戾スト云フコ
トヲ申上ゲナケレバナラヌト思フノデアリ
や っ、左樣ナルコトヲ此ノ資料ニハ說明致
シテ居リマスルノデ、其ノ點ヲ御諒承願ッ
テ置キタイト思フノデアリマス、尙問題ハ
此ノ管理案ガ米ノ······結局ハ御尋ノ中デ兩
案ガ矛盾シテ居ラヌト云フコトハ明カデア
ルト思フノデアリマスルガ、其ノ點ハ何處
ニアルカ、モウ一ツドウ云フ點ニ心配ガア
ルカト申シマスルト、若シ此ノ臺灣米穀移
出管理案ガ、臺灣ニ於テモ米ノ抑制ニナルト
云フノデアリマスレバ、サウ云フ點ガアルカ
ト思フノデアリマスガ、抑制デハナイノデ
アリマス、卽チ是モ十分ニ御說明中上ゲ、
又只今モ農林大臣カラ御說明ノアリマシタ
ル通リ、內地ノ需給計畫ニ全ク順應シテ、臺
灣ニ於ケル所ノ其ノ使命ヲ達成シヨウト決
シテ居ルノデアリマス、勿論天候ノ狀況ニ
依リ、年ニ依リマシテ內地ニ於ケル所ノ米
作ノ豐凶ガアル譯デアリマスカラ、其ノ場
合ニ依リマシテ、或ハ臺灣ニ於テ是ノ調節
ヲシナケレバナラヌノデアルト云フコトノ
爲ニ、或ハ或場合ニ於テハ餘計作リ、或場
合ニ於テハソレ程餘計作ラヌデモ濟ムト云
フコトガ私アルト思ヒマスケレドモ、決シ
テ米ノ增產ヲ抑制シヨウ、減產スルト云フ
ヤウナ考ハモウ絕對ニナイノデアリマス、
此ノ點モ一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、
私ハソレダケノコトヲ申上ゲレバ、只今農
林大臣ノ詳シク御說明ニナリマシタル點
ニ、拓務省ノ見ル所ヲ加へマシテ、御答ニ
ナルカト存ジテ、簡單ナガラ此ノ點ヲ申上
ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/6
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007・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) チヨット農林
大臣ハ、衆議院ノ方ニ御急ギデスカラ、マ
ダ大分御質疑ガアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/7
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008・松村義一
○松村義一君 矢張リ農林大臣ニモ質問ヲ
繼續シテ申上ゲタイト思ヒマス、是ハ私ダ
ケデハナシニ他ノ委員諸君ニモサウ云フコ
トガアルト思ヒマス、ソレカラ拓務大臣ニ
對シテモマダ質問ヲ申上ゲタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/8
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009・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 拓務大臣ハ宜
シウゴザイマスガ、農林大臣ハ時間ヲ改メ
テ又來タイサウデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/9
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010・松村義一
○松村義一君 ソレデハ農林大臣ニハ、皆
樣ノ他ノ委員諸君ノ御都合モナンデゴザイ
マスレバ、私モ改メテ御出マシノ機會ニ御
尋スルコトニ致シマシテ、拓務大臣ニ御尋
ネ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/10
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011・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ農林大臣ニ質問ヲ致
スコトヲ御願ヒシタイト思ヒマスガ、御急
ギデナク、重大ナ問題デアリマスカラ、時
間ノ御都合ヲ御付ケ願ッテ、一時間モ二時間
モ此處ニオイデヲ願ヒタイ、併シ此ノ委員
會モ進行シテ居ルノデスカラ、成ルタケ早
ク都合ヲシテ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/11
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012・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 承知致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/12
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013・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常者) ソレデハサウ
云フコトニ願ヒマシテ拓務大臣ニ對シテ御
質疑ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/13
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014・松村義一
○松村義一君 農林大臣ノ御答ニ對シテモ
尙御尋ヲ致シタイ所ガアルノデゴザイマス
ガ、ソレハ他日農林大臣御出席ノ際ニ讓ル
コトト致シマシテ、拓務大臣ノ御答ダケニ
對シテ更ニ御尋ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
先ヅ第一ニ申上ゲナケレバナラヌコトハ、
今拓務大臣ノ御答ニ依レバ、私ガ先刻讀上
ゲマシタ臺灣米穀移出管理案〓要ノ一節ニ
付テハ、讀上ゲタ所ハ所謂從來ノ歷史ヲ述
ベタニ過ギヌノデアル、是ハ別ニサウ云フ
御言葉ハ御使ヒニナラナカッタヤウデアリ
マスガ、ソレハ現狀デハナイノデアル、唯
歷史ヲ述ベタコトニ過ギヌコトデアル、後
ノ方ニ現狀ハ書イテアル、其處ハ何故讀上
ゲナイノデアルカト云フヤウナ御心持ノヤ
ウニモ聞エタノデアリマスガ、併シナガラ
私ノ讀上ゲタ所ガ現狀デアル、現狀ト書イ
テアル、從來ハ米ハ少カッタノデアルガ、昭
和六年以降米ハ殖エテ來タ、サウシテ現在
ニ於テハ內地ニ於テモ米ハ非常ニ澤山出來
ク、臺灣ニ於テモ殖エテ居ル、內外地ヲ通
ジテ米ハ殖エテ居ルト云フコトガ現狀デア
ル、サウシテ此處ニ書イテアル、其ノ外ノ
事情モゴザイマセウ、サウ云フ現狀デアル
カラ臺灣ニ於テハ水利施設ノ新設デアルト
カ、改修デアルトカ云フコトヲ禁止シテ居
ル、土地ノ改良等、米ノ增產ヲ圖ル爲ニ從
來ヨリ實施シ來ッタ各般ノ施設モ、之ヲ禁止
シテ居ル是ガ現狀デアル、歷史デハナイ、
現狀デアル、其ノ現狀ヲ變ヘヨウト仰シヤ
ルノデアルガ、ソレガ現狀デアル、私ノ申
上ゲル所ハ過去ノ歷史デアル、斯ウ仰シヤ
ル、私ハソレハ明カニ間違デアル、斯ウ云
フ米ガ澤山出來テ居ル、其ノ現狀ノ下ニ此
ノ案ガ起案サレタモノデアルト云フコト
ハ、此ノ全般ヲ讀ンデ見テサウ書イテア
ル、大體ニ於テ是ハ間違ガナイノデ、是ハ
唯過去ノ歷史ヲ書イタモノデアルト仰シ
ヤルナラバ、是ハ甚ダ失禮デアルガ曲辯ト
申シテモ宜イデハナイカ、全部讀ンデサ
ウ申上ゲラレル、ソレガ今拓務大臣ノ御話
ノヤウニ、從來ハ水利施設其ノ他農業
開發ノ施設等ヲ中止ヲシテ居ル、併シナガ
ラ今度ハ之ヲ解クノデアル、斯フ云フコト
ヲ明カニ言ウテ居ラレル、併シナガラソレ
ハ私ハ申上ゲナカッタガ、ソレハ承知シテ居
ルノデス、承知シテ居ルケレドモガソレ
ハ先程私ガ矛盾撞著デアルト云フ點ニ、關
係ノナイコトデアルカラ申上ゲナカッタニ
過ギナイノデ、ソレハ重ネ承知シテ居ル、
併シナガラ現狀ハ兎ニ角、米ガ澤山デアル
ト云フ現狀デアルト云フコトノ前提トシテ申
サレタノデアルト云フコトハ、私ハ間違ナ
イト思フ、今日事變ガ起ッテ米ハ澤山要ル、
食糧問題ニ對シテ非常ニ心配シテ行カナケ
レバナラヌト云フコトノ現狀ヲ前提トシテ、
案ヲ拵ヘタモノデハ斷ジテナイト云フコト
ハ申上ゲラレルト思フ、尙其ノ點ニ付テ御
說明ガアレバ承リタイ、ソレカラ先程拓務
大臣ハ、本案ハ米穀ノ減產デハナイ、減產
ヲ以テ進ムモノデハナイ、抑制デハナイノ
デアル、斯フ云フ御話デゴザイマスガ、大
體ノ本案ノ目的ナルモノハ、臺灣ニ於ケル
米ノ偏作ヲ是正ヲスルト云フコトデアル、
偏作ヲ是正ヲスルト云フコトハ卽チ減產ヲ
意味スルコトデアル、其ノ點ニ於テハ······少
クトモ更ニ言ヒ換へレバ、增產ヲスル勢ヲ
抑制スルト云フコトデアル、矢張リ抑制デ
ハナイカト思フ、一面ニ於テ總テノ農產物
ニ對シテ益〓生產ノ增加ヲ御圖リニナルト云
フ點カラ言ッテ、米モ亦此ノ政策ヲ御實行ニ
ナッテモ、增產ニナルト云フコトハ言ハレ
テ居ルヤウデアリマスケレドモ、、兎ニ角
米ノ値段ヲ下ゲルト云フコトハ、其ノ米ノ
增產ヲ抑制スルモノデアルト云フコトハ、
其ノ點ニ於テハ間違ナイト思フ、而モソレ
ガ米ノ偏作ヲ訂正スルノデアル、目的ガサ
ウデアル、從ジテ抑制デハナイ、斯ウ仰シヤ
ルト云フコトハ、私ハドウモ甚ダ分ラヌト
思フ、其ノ二點ニ付テ、更ニ御說明ヲ御願
ヒ申シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/14
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015・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今松村サンガ
私ノ述ベマシタ點ニ付キマシテ、歷史ト私
ガ申上ゲタガ、其ノ歷史ト申上ゲタノハ、
御讀上ゲニナリマシタル部分ガ、昭和二年、
昭和五六年ノモノヲ御讀上ゲニナリマシテ
現在迄ノコトヲ御述ニナリマシタカラ、私
ハ歷史ト申上ゲマシタガ、御述ニナリマシ
タコト全體ガ歷史ヲ述ベテ居ル、現狀迄
行ッテ居ッタト云フコトヲ決シテ申上ゲタノ
デナイ、ソレハ現狀デアルト書イテアル、
其ノ以後ノコトヲ私ハ申上ゲタノデ、全部
御述ニナッタコトガ、現在ダケヲ述ベテ居
ラレルノデハナイト私ハ考ヘマシテ、サウ
申上ゲタノデ、其ノ點ハドウゾ、歷史ト云
フ字ヲ使ッタコトガ適當デナケレバ、ドウ
ゾ其ノ點御諒承願ヒタイト思フノデアリマ
ス、ソレカラ抑制ト云フノハ、減產デハナ
イカ、少クトモ積極的ニ進ムベキモノヲ抑
制スルノヂヤナイカ、言ヒ換ヘレバ積極的
ノ抑制トデモ申シマスカ、消極的ノ抑制ト
言フカ、何カサウ云フ御心持デ今御尋ガア
ツタカト思フノデアリマスガ、先程農林大
臣ヨリ御述ニナリマシタ通リニ、此ノ計畫
ハ最初農林省トモ打合セマシテ、十年間ニ二
百何十萬石ト云フモノヲ增產スルヤウニ蓬
萊米ニ關スル限リ···詰リソレダケノ移
出米ヲ持ッテ來レバ宜イト云フ考デ、計畫ヲ
立ッテ居ルト思ヒマス、デスカラ決シテ減
產デハナイト云フコトハ、是ハ數字的ニ明
ラカデアルノデアリマス、併シ現在ニ於テ、
時々刻々ニ於テ、其ノ年每ニ於テ、矢張リ
何ト申シマスカ、內地ト外地トノ種々ノ需
給關係カラ致シマシテ、其ノ平均ニハ參ラ
ヌト思フノデアリマス、ソコデ只今ノ處、
先程モ農林大臣カラ述ベラレタヤウナコト
ニ順應スルコトニナッテ居リマス、何レノ點
カラ見テモ、減產ヲ考ヘテ居ル意味デハナ
イ、言換ヘレバ過去ノモノヲ抑制シヨウト
云フコトハ絕對ニナイノデアリマス、其ノ
點ハヨク御諒承ヲ願ヒタイ、要スルニ米
ノ合理的ナ增產ヲ圖ッテ行クト共ニ、過去
ニ於ケルガ如ク、或ハ現在迄ニ至ルガ如
〃、徒ニ水利ダノ何ダノノ改良モ抑へ、增
產ヲ妨ゲルト云フ考ニハシタクナイト云フ
ノデアリマスカラ、其ノ點カラ見テモ、是
ハ決シテ抑制デハナイト私ハ申上ゲタ次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/15
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016・松村義一
○松村義一君 少シ執拗イヤウデアリマス
ルガ、今ノ御話ノ、從來水利施設ノ新設改
修ト云フモノヲ禁止ヲシテ居ッタ、其他
土地改良等ノ、米ノ增產ヲ圖ル爲メ、
從來實行シテ居ッタ施設ヲ中止シテ居ツ
ク、而シテ今囘此ノ法案ヲ實行セラルル
場合ニ於テ、サウ云フ禁止ヲ解クト云
フ御話ハ一面カラ見テ米ノ增產ニ資
セラレル所以ニナルト思フ、ソレハ拓務大
臣ノ御話ノ通リデゴザイマス、併シナガラ
一面ニ於テ今囘ノ此ノ法案ナルモノハ、法
案ノ目的トスル所ハ米ノ偏作ヲ是正スルノ
デアルト云フ目的ヲ以テ、米ノ値段ヲ下ゲ
ラルヽ、其ノ點ダケニ付テ見ルト、ソレハ
矢張リ抑制ニナル、サウ考ヘテ又宜イノデ
ハナイカト思フ、從ッテ一層米ノ增產ヲ爲サ
ウトスルナラバ、斯ウ云フ法案ハ實行サレ
ズシテ、唯水利施設ノ從來禁止サレテ居ル
モノダケヲ解クト云フコトナラバ是ハ積
極的ニ增產スルコトニナル、サウ云フ結果
ニ相成ルノデハナイカ、斯樣ニ私ハ考ヘル
ノデス、ソレカラ是ハ農林大臣ガオイデニ
ナル方ガ宜イノデゴザイマスガ、先程農林
大臣モ其ノ點ノ御說明ガナカッタ、拓務大臣
モ亦御說明ガナカッタノデゴザイマスガ、先
程申上ゲルヤウナ譯デゴザイマスノデ、米
穀配給統制案ナルモノハ兎ニ角米ノ問題ガ
非常ニ心配ニナル、米ガ足ラナクナルコト
ヲ憂フルト云フコトデ出來タ案、之ニ依ッテ
本當ニ銃後ノ安定ヲ圖リ、出征ノ忠勇ナル
將士ヲシテ後顧ノ憂ヘナカラシメルト云フ
コトデアルト云フコトハ、先程農林大臣ノ
御說明ノ通リデアル、從ッテ米穀事情カラ申
スナラバ、米ガ或ハ足ラナクナルコトヲ憂
ヘテヤッテ居ルト云フ前提デアリマス、ソレ
ガ大前提デアルト先程申上ゲタヤウニ、ソ
レカラ臺灣ノ移出管理案ナルモノハ、ソレ
ガ前提デハナイ、米ガ內地ニ於テモ外地ニ
於テモ非常ニ供給ガ殖エテ居ルト云フ、其
ノ殖エルト云フ所謂現况ニ對シテガ······現
况ガ前提デアルト云フコトニハ間違ヒナイ
ト思フ、此ノ點ハ御答ガナカッタガ、左樣ニ
承知ヲ致シテ宜イト思フノデスガ、拓務大
臣ノ其ノ點ノ御意見ガ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/16
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017・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今ノ第一點ノ
米ノ買上値段ヲ抑ヘルカラシテ、ソレハ抑
制デアル、併シソレハ減產、米ノ增產ヲ抑
制スルコトトハ全ク違フコトニ思ヒマスノ
デ、只今ノ御話モサウ云フ意味デ、兎モ角
米ノ買上値段ノ方デ抑制スルノヂヤナイカ
ト云フヤウナ點ニ付キマシテハ御尋デハア
リマセヌガ、全然增產ヲ抑制スルモノトハ
考ガ違ッタ筋ダト私ハ考ヘテ居ルノデアリ
そう、ソレカラ先程農林大臣ノ御述ニナリ
マシタ臺灣デ幾ラ來年ハ米ヲ增產シテ吳レ
ト云フコトモ、是ダケノ米ヲ內地ニ持ッテ來
テ吳レト云フ、斯ウ云フコトニ付キ、又朝
鮮ニ於テハ幾ラ米ヲ內地ハ持ッテ來ルト云
フヤウナコトデ、所謂內外ヲ通ジマシタ所
ノ我ガ國ノ米穀ノ需給對策デアルト考ヘル
ノデ、是ニハ臺灣ハ何處迄モ臺灣ノ持チマ
ス其ノ力ニ於テ、之ニ呼應シテ行カウト云
フ考デアリマス、又內地ノ側カラ申シマシ
テモ、ソレデ宜シイト云フコトニ相成ッテ今
日進ンデ居ルノデアリマス、ソレハ過去ニ
於テモ同樣デアリマス、將來ニ於テモ全ク
同樣デ、何等此ノ管理案ノ何ニ依ッテ變更
ハ來サヌモノト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/17
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018・松村義一
○松村義一君 ドウモ甚ダ恐縮デゴザイマ
スガ、其ノ御說明ハ私ニハヨク分ラナカッタ、
餘リ問答ヲ繰返スト云フコトモ、オ忙シイ
所デ恐縮ニ堪ヘヌノデゴザイマスガ、兎の
角米ヲ安ク買上ゲル、安クスルト云フコト
ハ、ソレハ矢張リ米作ト云フコトヲ抑制ス
ル所以デアル、ソレダケカラ考ヘタラソレ
ダケハ抑制ヂヤナイカ、ソレガ米ノ增產ノ
抑制デナイト仰ッシヤルナラバ、ソレハ私ハ
少シ仰シヤルコトガ分ラヌト考ヘル、ト同
時ニ繰返シテ申スヤウデアリマスガ、先程
私ガ申上ゲマシタヤウニ、土地其ノ他ヲ買
入レテ禁ジテ居ルコトヲ解クト云フコトハ、
米ノ增產ヲ圖ルコトニナル、ソレハ私モ認
メル、併シナガラ米ノ値段ヲ態々下ゲル、
而モ內地デ、實際本當ニ普通ニ賣出スナラ
バ幾ラ〓〓デアル、其ノ値段ヨリ下ゲテ行
〃、斯ウ云フコトデアル、ドウシテモ米作
ヲ抑制スルコトニ無論ナルト思フ、ソレハ
問題ハナイ、ソレカラ尙前提問題デスガ、
此ノ法案ノ前提ナルモノハ、明カニ書イテ
アルヤウニ、サウ云フコトヲ仰シヤルコト
ヲ、オイヤガラレルヤウニモ聞エルノデアリ
マスガ、是ハ別ニオイヤガリニナルナラヌ
ト云フ問題デナクシテ、明カニ書イテアル、
現狀ハ米ガ澤山出來テ困ル、內地デモサウ
デアル、外地モサウデアルト書イテアル、
是ハ御認メニナルノガ當然ノコトヂヤナイ
カト思フ、ソレニ對シテ色々他ノコトヲ御
答ニナルト云フコトハ、却テドウモ審議ヲ
遲ラス所以ダケニナッテ、何ノ必要モナイ
コトデアル、斯樣ニ思フ、私ハ之ニ對シテ
御答ガアレバソレデ宜シイガ、ナケレバソ
レデモ宜シウゴザイマス、私ハ左樣ニ思フ
ト云フコトヲ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/18
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019・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今御述ニナリ
マシタコトハ、是レ以上申上ゲルト云フト
何ト言ヒマスカ、討論見タイニナリマスカ
ラ私ハ差控ヘタイト思ヒマス、唯サウ私ノ申
上ゲルコトト、松村サンノ御述ニナッテ居
ルコトト違ッテ居ラヌト思ヒマスガ、現在ノ
所ガイケナイカラ今後斯ウヤルノダト云フ
ノガ、此ノ案ノ出發點ニナルノデアリマス
ガ、其ノイケナイト言ッタ前ガ、直グニ是ノ
法案ノ根柢ヲ成シテ居ルノヂヤナイカト云
フコトヲ申上ゲテ居ルノデ、僅カノ違ヒト
思ヒマスガ、其ノ點ハ繰返シテ申上ゲテモ
甚ダ何ト申シマスカ執拗イヤウニ思ヒマス
ノデ、私ハ唯少シ其ノ點ガ、別ノ言ヒ現シ
方デアッテ、同ジコトヲ兩方カラ言フテ居ル
ト私ハ思ヒマシテ、敢テ此ノ點ニ付キマシ
テハ御答辯申上ゲナイ積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/19
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020・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ拓務大臣ニモウ少シ
根柢的ノ質問ヲ致シタイ、ソレヲ致シマス
前ニ申上ゲテ置キタイコトハ、拓務大臣ニ
御質問致シマスノハ、臺灣ノ統治上ニ及ス
影響ニ付テノ御意見ヲ承リタイ、ソレデ是
ハ本會議ニ於テ丸山サンカラ斯ウ云フコト
ヲ言ッテ居ラレル「是ガ私ハ臺灣統治ノ上ニ
及ス影響ガ誠ニ重大デアルト考ヘザルヲ得
ナイノデアリマス、私共多少外地統治ノ經
驗ヲ持ッテ居ル者カラ見マスルト非常ニ是
ハ愼重ニ考ヘナケレバナラヌ問題デアル」
ト云フコトヲ言ッテ居ラレル、ソコデ「私共多
少外地統治ノ經驗ヲ持ッテ居ル者カラ」ト云
フコトヲ仰シヤイマスカカ、私ハ外地統治
ノ經驗ハナイノデス、經驗者カラ斯ウ云フ
御質問ヲサレルニ對シテ、私ガ御質問致シ
マスノハ甚ダ僭越ダト私ハ思ヒマスガ、併
シ米ノ方ハ此ノ意味ニ於テ逆ニ私ハ經驗ヲ
持ッテ居ルノデアリマスカラ、ソレハ農林大
臣ニ其ノ意味カラ私ハ質問シタイト思ヒマ
ス、分リマセヌカラ私ハ此ノ法案ヲ質問ス
ルダケデス、サウシテ丸山サンハ是ハ朝鮮
總督府ノ警務局長デオイデニナリ、內地ノ
警視總監デオイデニナッタノデアリマスカ
ラ、サウ云フ人心ニ及ス影響、朝鮮ニ於ケ
ル色々統治ノ關係ニ付テハ最モ體驗ヲ持ッ
テオイデニナリ、非常ニ御意見ニ付テハ傾
聽シナケレバナラヌト私ハ思ヒマス、ソレ
カラ貴族院ノ豫算委員會ノ總會ノ速記錄ヲ
見マスト云フト、次田サンガ斯ウ云フコト
ヲ言ッテ居ラレル、「是ハ朝鮮デ出來ルコト
デアラウカト云フコトヲ相談シテ見マシタ、
其ノ二三ノ朝鮮通ハ言下ニ異口同音ニ、ソ
レハ君、臺灣ノ移出管理ノ問題ヲ指シテ言
フノデアラウ、斯クノ如キ暴案ガ」暴案ガ
デスヨ「朝鮮ニ於テ民衆ニ受入レラレルト
云フコトハ何トシテモ考ヘルコトガ出來ナイ
ノデアルト答ヘノタデアリマス、私モサウ
デアルニ相違ナイト信ズルノデアリマス」、
是ハ朝鮮ノコトデス、私ハ其ノ朝鮮ノ問題
ガ此處ニ議論ニナッテ居ルノヂヤナイ、臺
灣ノコトガ議論ニナッテ居ルノデアリマス
カラ、直グ朝鮮ノ經驗デ以テ臺灣ノコトヲ
御議論ニナルコトガ果シテ適當ナリヤ否ヤ
ト云フコトハ私ハ存ジマセヌガ、併シ私ハ
體驗ガナイノデス、併シソレヂヤ餘リ體驗
モ無イ者ガ甚ダ僭越ヂヤナイカト言ハレマ
スレバ、私ハ自分トシテ言ハザルヲ得ナイ、
ソレハ朝鮮ニ於テ大正十年ニ朝鮮總督府デ
產業調査會ト云フモノガアッタ、是ハ問題ハ
朝鮮ニ限ッテ居リマス、產業調査會ト云フモ
ノガアリマシテ、是ハ內地カラモ色々ナ人
ガ出テ行キマシテ、私モ其ノ委員ノ一人デ
ス、大正十年九月朝鮮ノ產業調査會ニ於テ
私ノ言ッタコトガ速記錄ニモ澤山載ッテ居リ
マスカラ、朝鮮ノ統治ナリ產業ナリニ付テ
ドノ位······私モ直接體驗ハアリマセヌガ、
〓究シタト云フコトハ此處ニ御覽ニナルナ
ラバ速記錄ガアルカラ御分リニナルト思ヒ
マス、ソレハ朝鮮ノ問題デス、ソコデ體驗
ナシヤト云フコトヲ、甚ダ僣越ニナリマス
カラ、自分ノコトヲ言ッテハオカシイガ、斯
ウ云フ御議論ニ對シテ傾聽スルカラ申スノ
デアリマスガ、體驗ガアルカナイカト云フ
コトヲ、私ハ法制局ノ部長ヲシテ居ッタカラ
臺灣ノ律令ニモ當リ、朝鮮ノ制令ノ審議ニ
モ當ッテ居ル、ソコデ現ニ貴族院議員デアラ
レル所ノ下村宏サンガ民政長官デ、總務長
官デアッテ、時ノ總督田健治郞サンガ臺灣ノ
律令ヲ持ッテ來ラレタ時、私ハ直接其ノ問題
ニ接觸シテ居リマスガ、臺灣ニ付テ斯ウ云
フコトガアッタ、臺灣ニ於テ是ハ統治ニ非常
ニ關係スル、臺灣ニ縣ヲ置カウト云フ問題
ガアッタ、臺灣ニ縣ヲ置カウト云フコトヲ······
今日ハ臺北州、臺中州、高雄州ト云フ州ニ
ナッテ居リマス、其ノ縣ヲ置カウト云フコト
デ、田健治郞サント下村サントガ上京サレ
テ、法制局長官ノ所デ非常ニ懇切ヲ盡シ、
綿密ニ豪灣統治ニ付テ御說明ニナッタ、下村
サンハ其處ニ列席シテ居ラレマスガ、現
居ラレル方デスカラ、御聽キニナレバ分ル
ト思ヒマス、私ハ法制局ノ部長トシテ田總
督ノ御述ニナッタコトニ、直グニ立ッテ私ハ
反對デアリマス、斯ウ〓〓云フ譯デ反對デ
アルト云フコトヲ申シタ、詳細ハ申シマセ
ヌガ、ソコデ縣ハイケナイカラ、州ニナサ
イト云フコトヲ私ハ申シタ、ソコデ今日ハ
州ニナッテ居ル、臺灣ハ州ニナッテ居ル、先
程申シタヤウニ、此ノ州ト云フノハ、私ノ
意見ガ採用サレタ、ソレデスカヲ、臺灣ノ
統治ニ對シテ一家言ヲ持ッテ居ッテ、其ノ意
見ガ採用サレテ居ルト云フ事實ガアリマス
カラ、統治問題ニ付テハ甚ダ僭越デアリマ
スガ、拓務大臣ノ御意見ヲ伺フコトハ私ト
シテハ御許シヲ願ヒタイ、斯ウ云フ前提ヲ
以テ申上ゲル、扨此ノ問題ハ統治上ノ問題
デアリマスカラ、勿論今減ズルトカ、增ス
トカ、損トカ、得トカ云フ問題ガアリマス
ガ、ソレハ私言葉ガ少シハッキリシテ居ナイ
カラ、サウ云フコトニナルノダラウト思フ、
此處ニ申上ゲマスト云フト、私ハ前カラ申
シテ居ル、臺灣ノ米ハドウナッテ居ルカト
云フコトハ統計ガ示スノデアリマスカラ、
統計ヲ見ルト云フト、減ト云フコトハ一ツ
モナイ、增バカリ、ソレデ增サムトスルモ
ノヲ手加減スルト云フコトハ減ダト云フ、
ソレハ減ヂヤナイ、增スモノヲ手加減スル
ト云フコトハ決シテ減ヂヤナイ、世間デ害
蟲ガズット瀰漫シマスト、今年ハ米ガ減收ダ
ナト斯ウ言ヒマスガ、減ト云フコトハ何
モ穫レモシナイコトカラ、言フコトデ、色
色ソレハ考ヘテ居ル者ヨリモ減ルト云フ話
ナノデアル、結果ハ或數字ガ出テ居ルガ、
減トカ增トカ云フコトノ結果デアル、平均
作ヨリハ多イトカ少イトカ、途中ノコトヲ
言ッテ居ルノデ、思ッタヨリト云フコトハ減
デナイ、見込外レデ、減ト云フ問題ニハナ
ラナイ、例ヘバ玆ニ會社ガアッテ、五割ノ配
當ヲシテ居ルモノガアル、五割ノ利益ヲ得
テ居ッタト、斯ウ云フノデス、サウスルト、
其ノ翌年ニ三割ニナッタ、サウスルト、二割
損シタト云フコトヲ言ヒマスガ、二割損シ
タ、減ッタト云フガ、決シテサウデハナイ、
三割シカ貰ハナイト云フノデ、減ト云フコ
トハナイ、ソレハ貸借對照表ト云フモノニ
ハ出テ來ナイ、臺灣ノ問題モ皆サウデス、
減ト云フモノハ出テ來ナイ、臺灣人ハ前カ
ラ申シテ居ル如ク、內地ノ米價高ノ爲ニ、
米ガ、例ヘバ臺灣ノ生產費カラ言ヘバ、
二十圓デ宜イト假定致シマス、ソレガ臺灣
デ二十五圓ニ賣レテ居ルトスル、今度ソレ
ヲ臺灣總督府ガ中間ニ於テ二圓安ク買入レ
ラレルトセバ、二圓ノ損ダト云フコトガ言
ヘマスカ、私ハ損ヂヤナイト思フ、二十圓
ガ二十五圓ニ賣レテ五圓ノ利益デアッタ、ソ
レガ二十三圓デ總督府ガ買入レルカラ、利
益ガ三圓デアルト云フダケノコトデアル、
外ノ分リ易イ數字デ言ヘバ、十圓ノモノガ
十五圓ニ賣レタ時ニ、五圓ノ利益ガアッタト
云フ、十三圓ニ賣レタナラバ、三圓ノ利益
ガアッタ、ソレハ二圓ノ損失ガアッタト云フ
コトハ、サウ云フコトハ何處ニアリマスカ、
誰ガ言フノデスカ、サウ云フコトハ通俗ニ
ハ言フノデス、二圓損シタ、併シソレハ
貸借對照表ノ何處ニ出テ來ルカ、損ト云フ
コトハチットモ出テ來ヤシナイ、原價十圓、
利益三圓、出テ來ナイ、是ハ稅務署へ御間
ニナッテモ分ルガ、我々ガ算盤ヲ彈ケバ直グ
分ル、簿記ノ計算カラハ增ニ出テ來ル、サ
ウ云フコトデスカラ、減ト云フコトハナイ、
損ト云フ問題モナイ、ソレハ見込ヲ言フ話
デアッテ、絕對ニ是ハ減トカ增トカ云フコト
ノ問題ヲ今日聽イテ居ル、ソレハ御自由デ
アリマスケレドモ、ドウモ減ト云フコトハ、
何ヲ以テ減ト言ッテ居ラレルカ、言葉ノ定義
カラ御定メニナラヌトヲカシイ、私ノ意見
トシテハ減ナルモノナシ、損ナルモノナシ
ト、斯ウ云フコトニ斷言シテ置キマス、ソ
コデ問題ハ拓務大臣ニ御尋ネスルノデス、
「臺灣米穀移出管理案〓要」ト云フモノガア
リマスガ、之ニ第八頁カラ第九頁ニ亙リマ
シテ、私ハ大臣ノ御出デニナラヌ時ニ言フタ
ノデスガ、色々書イテアリマス、私繰返シ
マセヌ、速記錄ニアリマスカラ、大臣ハ之
ヲ御覽ニナレバ分リマス、一カラ二、三、
四、五、六ト書イテアル、之ヲ見マスト云
フト、現在ノ儘デ米穀管理ト云フコトヲシ
ナイデハ大變ダト云フコトニナリマス、サ
ウスルト、本會議ニ於テノ質問ハドウ云フ
風ニ質問サレテ居ルカト申シマスト、是ハ
統治ニ影響ナキヤト云フコトデス、惡イ影
響ガナイカト云フコトノ消極的ノ質問ガシ
テアル、サウスルト、總理大臣答ヘテ曰ク、
惡イ影響ハナイト、斯ウ云フノデス、併シ
總理大臣ノ答辯ノ後ノ所ヲ見マスト、惡イ
影響ガナイノミナラズ、米穀管理ノ移出ヲ
ヤルコトガ統治上利益ナリト積極的ニ解釋
サレテ居リマス、併シナガラサウ云フ惡イ
影響ナキヤト云フ場合、ナシト云フダケデ
ハ、ソレハ水掛論ヲシテ居ルダケノ話デ、
凡ソ政府ガ進ンデ提案ヲ玆ニスル場合ニハ、
現在ノ弊害ヲ除却スルカ、或ハ將來積極的
ニ利益ヲ增進スルカデナケレバ、提案ヲス
ルベキ筈デハナイ、何ノ爲ニ米穀移出管理
法案ヲ提案サレタノデアリマスカ、提案ス
ルニハ現在ノ弊害ヲ除却スルカ、將來ノ積
極的利益ヲ圖ルカ二者一途ヲ出デナイト思
フ、影響ナキヤ、影響ナシト云フ、有ル無
シト云フコトデハ物ハ進マナイノデスカラ、
提案ト云フ問題ハ起ッテ來ナイ、之ヲヤッテ
弊害ハアリマスカ、アリマセヌト云フコト
デ、之ヲヤッテドウスルノデス、ソレダケデ
ハ米穀管理法案ト云フ法律ノ提案ノ理由ガ
ナイ、凡ソ案ヲ出スノニハ、斯クノ如キ弊
害ガアルカラ除却シ、斯クノ如キ利益ガア
ルカラ增進スルト云フコトデ、提案サレル
ノガ當然デアルト思ヒマス、ソレガ當リ前
デ、是ハ私ガ言ハナクテモ明瞭ナ話デス、
サウ云フ關係カラ之ノ理由ヲ見マスルト、
現在ノ狀態ニ置クコトハ統治上害ガアルト
云フコトニナルノデス、ダカラ、案ヲ提出
シテ米穀移出管理法案ヲ提出スルコトハ統
治上必要ナリト云フ積極的ノコトニナル譯
ナンデス、ソレヲ私ハ伺フノデス、唯消極的
ノ答辯ヂヤイカナイ、ソレハ答辯ハナクテ
モ分ッテ居リマス、ソレデナケレバ案ヲ提出
スル理由ハナイノデス、積極的ノ理由ナクシ
テ案ヲ出スト云フコトハ凡ソ法律上サウ云フ
コトハアリマセヌ、何カ必要ガアッテ案ヲ出ス、
弊害ガナイカラ案ヲ出ス、ソンナコトハナ
1、弊害ガナイカラ案ヲ出ス、ソンナコト
ハナイ、弊害ガナカッタラ案ノ出シヤウガナ
イ、弊害ヲ除去セムトスルカラ案ヲ出ス、
利益ヲ增進セムガ爲ニ案ヲ出ス弊害ナキヤ、
弊害ナシ、ソレデハ案ニナラナイ、ソレデ
アルカラ拓務大臣ハ、此處ニ六ッ列擧シテア
ル所ヲ見マスト云フト、此ノ儘ニ差措クコ
トハ統治上困ル、詰リイケナイ、ダカラ積
極的ニ出スコトガ統治上宜イ影響ガアルノ
ダ、ヤラナケレバイカヌ、斯ウ云フコトノ
外私ハ解釋ガ出來ナイ、ソレハ問ハナクテ
モサウヂヤナイカト思フ、ソレナラバ、ハッ
キリ仰シヤッタラ宜イヂヤナイカ、モウ一ツ
ハ斯ウ云フ問題ニナッテ來ル、是ハ一體統
治上ニハ影響ハアリマセヌカラト輕ク物ヲ
考ヘル、サウスルト、ソレニ對シテソンナ
統治ナドニ影響スル問題ヂヤアリマセヌゾ
ト云フコトニナルト、事ハ小ナル問題ト云
フコトニナル、ソレナラバ別ニエラク力ヲ
入レテ出シテ居ル案ヂヤナイ、極ク生溫イ
提案ダト斯ウ云フコトニナル、サウ云フヤ
ウナ說明ヲシテ居ラナイ、總理大臣ハ非常
ニ積極的ニ議會デ申サレテ居リマス、總理
大臣ハ積極的デス、サウ云フナマクラナ答
辯ヲシテ居ラレルガ故ニ、此ノ案ガ進行シ
ナイト云フコトヲ私ハ申上ゲル、總理大臣
ハドウ云フコトヲ言フカト云フト、總理大
臣ハハッキリ言ウテ居ラレル、臺灣統治上ニ
惡シキ影響ヲ及スコトニ付キマシテハ全ク
懸念ハナイト信ズルノデアリマス、是ハ惡
影響ヲ及スコトニ付キマシテハ全ク懸念ナ
シト云フコトデ、其ノ惡影響ノ方ハ否認シ
テ居ラレル、ソレカラ進ンデ、之ニ依リマ
シテ內地ト臺灣トノ關聯性ヲ一段ト緊密ニ
致シマスル利益モアルノデアリマスカラ、
特ニ是ハ積極的ノ理由デス、內外地一視同仁
ノ御趣旨ヲ徹底セシムル上ニ於テ何等ノ支
障ヲ見ザルモノト確信致シテ居リマスト云
フノハ、是ハ質問ガ支障ナキヤト云フ質問
デアルガ故ニ、ナシト確信シテ居ル答辯デ
アル、質問ハ支障アリヤト云フ質問デアル、
積極的ニ統治ニ利益アリヤト云フ質問デナ
カッタカラ、答辯ハ斯ウナッテ居ル、總理大
臣ノ答辯ノ中ニハ書イテアル、又關聯性ヲ
一段ト緊密ニ致シマス利益ガアルト云フノ
デスカラ、積極的ノ利益、其ノ點ヲ明瞭ニ
答辯ニナッタナラバ、此ノ案ト云フモノノ意
味ガ分ル、元來臺灣總督ガ產業調査會ト云
フモノヲ開カレテ、總督自身ガ上京シテ來
ラレテ、自分デ議長ニナッテ、此ノ會ヲ開カ
レテ居ル、其ノ委員ノ顏觸ヲ御覽ニナレバ、
ドウ云フ人ガナッテ居ラレルカト云フコトハ
直グ御分リニナル、ソレハ私ガ申ス必要ハ
アリマセヌ、歴代ノ總督ノ方々ガ多數ソコ
ニ御入リニナッテ居ラレル、又各省ノ次官、
政務次官モ皆御入リニナッテ居ル、法制局長
官モ入ッテ居ル、過去ノ總督デアラレタ川村
サン、中川サン、川村サンハ又司法大臣ヲ
ヤラレ、永田サンハ拓務大臣デアッタガ、此
ノ委員デモアラレル、卽チ總督デオアリニ
ナッタ方ガ二人、大臣デオアリニナッタ方ガ
二人、川村サンハ兩方ニ關係シテ居リマス、
サウ云フ譯デ大掛リノ委員會デアルト云フ
コトヲ私ハ言ハザルヲ得ナイ、サウ云フ委
員會ヲ作ラレテ、多數ノ方々ヲ集メテ、斯
ウ云フコトヲヤルト云フコトハ、臺灣總督
自身モ、是ハ唯統治上ニ害ガナイカラ、サウ
云フコトヲヤルト云フヤウナモノデハナイ
ト思ヒマス、之ヲヤルコトガ統治上必要デ
アルト云フコトハ當然ト思ヒマスカラ、其
處ヲ力强ク仰シヤル必要ガアルト思フ、其
ノ點ヲ明瞭ニ拓務大臣カラ御答辯願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/20
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021・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今御述ニナリ
マシタコトニ付キマシテハ、拓務大臣ト致
シマシテモ全ク御同樣ニ考ヘテ居リマス、
卽チ提案ノ理由ニ付キマシテハ、旣ニ本會
議ニ於キマシテモ、又本委員會ニ於キマシテ
モ其ノ積極的理由ヲ述べテアルノデアリマ
ス、ソレニ對シマシテ御質問ハ、統治上影響
アリヤナシヤト云フ御質問デアリマスデ、
ソレニ對シテ統治上影響ナシト云フコトヲ
述ベテ居ルノデアリマス、而モ總理大臣ヨリ
此ノ點ニ付キマシテハ、十分明瞭ニ本會議
ノ席上ニ於テ、政府ノ見ル所ヲ積極的ニ述
ベテ、御答ヲ致シテ居ルコトハ御承知ノ通
リデアルノデアリマス、私ハ此ノ點ニ付キ
マシテ御答ヲ申上ゲマスガ、要スルニ臺灣
總督府ノ考ヘテ居リマス所ハ、臺灣ノ持ッテ
居ル所ノ地理的ノ天與ノ特異性ヲ十分ニ發
揮シテ、米作ヲ含ム所ノ臺灣ニ於ケル重要
產業ノ調和的發展ヲ圖ッテ、平時、戰時ヲ通
ジマシテ、時代ニ卽應シタ臺灣ノ產業的使
命ヲ完成スルト云フコトガ目標デアリマス、
同時ニ之ニ依リマシテ、臺灣ノ農家經濟カ
ラ見マシテモ、其ノ恆久的福利ノ增進ヲ圖
ルコトガ出來ルモノデアルト信ズルノデア
リマス、從ヒマシテ、此ノ臺灣ニ於テ計畫
シテ居リマス所ノ移出米管理案ハ、臺灣統
治上カラ見マシテ、極メテ積極的ニ必要デ
アリ、而モ其ノ案ハ極メテ適當デアルト確
信シテ居ルノデアリマス、又臺灣總督府モ
責任ヲ以テ之ヲ主張シテ居ルノデアリマス、
ソコデ只今御話ノ中ニアリマシタ通リ、臺
灣總督府ニ於キマシテハ、此ノ目的ヲ達成
セムガ爲ニ、如何ナル方法ヲ採ッタラ宜シイ
カト云フコトニ付キマシテ、所謂移出米ノ
管理ヲ遂行スルコトガ、實行スルコトガ、
只今申上ゲマシタ所ノ目的ヲ達成スルノニ
宜イト云フコトヲ色々愼重ニ〓究致シマシ
タ結果、御手許ニ差上ゲテアリマス所ノ移
出米管理案ナルモノガ最上ノ方策ダト云フ
コトノ結論ニ到達シタノデアリマス、サウ
シテ之ガ實施ヲ決意致シタノデアリマス、
ソレニ付キマシテハ、昨年臺灣ノ重要產業
調査會ニ各方面ノ權威アル方ニ御協力ヲ
願ヒマシテ、此ノ點ヲ十分ニ〓究シテ、其
ノ成案ヲ得タノデアリマス、之ニ依リマシ
テ、繰返シテ申上ゲマスガ、本案ノ施行ニ
依リマシテ、臺灣ノ米價ノ適正、安定ヲ期
待致シマス、又本管理案ニ伴フ所ノ純益金
ハ之ヲ積立テテ、特別會計デ積立テマシテ、
擧ゲテ之ヲ同島內ノ全般的ノ農業ノ開發助
長ニ積極的ニ投下致シマシテ、以テ臺灣ノ
持ッテ居リマス所ノ其ノ土地ノ生產力ノ積
極的擴充ヲ圖ラムトスルコトデアリマス、
而シテ先程モ述ベマシタ通リ、其ノ場合ニ
於キマシテモ、卽チ本案ノ實施ニ當リマシ
テモ、內地ノ米穀需給政策ト全ク緊密離レ
ズシテ、我ガ國ノ米穀對策ニモ順應シテ行
クト云フ考デアリマスノデ、有ラユル點カ
ラ見マシテ、此ノ法案ハ內地ト臺灣ト、米
穀需給ノ點カラ見マシテモ、極メテ密接ナ
ル關聯性ヲ招來スルノミナラズ、總テノ點
カラ見マシテ、臺灣ノ統治上ニモ何等ノ惡
影響ノナイノミナラズ、寧ロ好結果ヲ齎ス
モノト考ヘテ居リマス、而モ統治ノ責任ニ
さ
付キマシテハ、臺灣總督ニ於テ十分愼重ナ
ル〓究ヲ遂ゲタ結果デアルト云フコトヲ私
ハ確信スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/21
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022・松村眞一郎
○松村眞一郞君 懇切御答辯下サイマシタ
コトハ感謝致シマスガ、サウ云フ長イ御答
や要ラナイ、私ノ聽イテ居リマスノハ、積
極的ニ必要アリトスル理由ト、消極的ニ弊
害アルガ故ニ之ヲ除却スルト云フコトト、兩
方アルノダラウト云フコトヲ聽イテ居ル、
ツレデアルカト云フコトヲ御答辯ニナレバ、
ソレデ宜シイ、如何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/22
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023・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 左樣デゴザイマ
ス、只今申述ベマシタノモ其ノ心持デ御答
ヲ申上ゲタノデ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/23
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024・松村眞一郎
○松村眞一郞君 次ノ問題ハ、臺灣ニ於キ
マシテ、此ノ問題ガ論議サレルト云フコト
ガ起ッテ以來、色々言論ノ壓抑ガ世間デ問題
ニナッテ居ル、其ノ事ハ豫算總會ニ於テ次田
サンガサウ云フコトヲ仰シヤッテ居ル、ソレ
ハ先ヅ本論ニ入ル前ニ斯ウ云フコトヲ言ッテ
居ラレル、此ノ本デス、「田沼ト云フ人ガ長
期建設ト農業政策ト云フ書物ヲ書イテ居
ル、其ノ中ニ相當詳シク調ベテアルモノガ
載ッテ居ル」云々、「オ前ノ所ニモ行ッテ居ル
筈ダ、ソレヲ能ク讀ンダラ宜カラウト云フ
注意ヲ受ケタノデアリマス」、是ハ豫算總會
議事速記錄第九號ノ二頁ニアリマス、「ソレデ
私家ヘ歸ッテ調ベテ見マスト、成ル程來テ居
ルノデス、併シ表題ガ長期建設ト農業政策ト
云フノデアリマシタノデ、是ガ臺灣ノ移出米
穀管理ノ問題ヲ取扱ッテ居ルト云フコトハ、
實ハ全ク豫期シナカッタ、直チニ高閣ニ東ネ
テ、マア議會デモ濟ンダラ緩ックリ讀マウト
思ッテ居ッタノデアリマス」、是ガ前提デス、
暫クシテ其ノ次ノ方ニ、「私ノ友人ノ所ニ
偶〓」······此ノ本ハ抹殺シテアッタ、一部ガ抹
殺シテアリマス、此處ニアリマスガ、「處ガ段
段話ヲ聞キマスト、サウデナイラシイ」、全
部之ヲ讀ンダラ大變デアリマスカラ拔讀ヲ
シマス、〓「偶〓抹殺モシテナイ、削除モシテナ
イノガ一册來テ來ル、ソレヲ見マスルト、此
ノ削ッテ居ル所ハ、農林次官ノ小平君ガ、此
ノ書物ハ大變良イ書物ダカラ讀ムガ宜カラ
ウト云フ、其ノ推奬序文ガ書イテアル」ト云
フ譯デス、ソレカラ其ノ次ヘ行キマスト「是
ハ外ニ正シカラザル力ガ働イテ、著者ヲ强
要シテ此ノ削除及抹殺ヲヤラセタノデアラ
ウト云フ噂ガアルノデアリマス」云々ト云フ
コトガ書イテアリマス、サウシテ此ノ田沼
征ト云フ人ノ本ガ豫算總會ノ議ニ上ツタ譯
デアリマス、豫算總會ハ此ノ委員會ヨリモ非
常ニ大キナ委員會デアルカラ、コンナ少數ノ
委員會ヂヤナイ、サウ云フ所デ大問題ニナッ
テ居ル、ソレダケナラマダ宜シイガ、是ガ
又本會議ニ丸山サンニ依ッテ紹介サレタ、ソ
レハ速記錄ニアリマス「著者ハ「長期建設ト
農業政策」ト云フノデ、田沼某ノ著書デアリ
マス」云々デス、「斯ウ云フ本ガ參ッテ、封ヲ
切ッテ見マシタラ長期建設ト農業政策ト云
フコトデアリマス、議會デモ終ッタラ悠ック
リ讀マウト思ッテ取ッテ置イタノデアリマス、
人ノ注意ヲ受ケテサウシテ拜見シマスト、
此ノ本ニ百九頁カラ二百二十二頁迄百三頁
ニ亙ッテ、臺灣ノ移出米管理ニ關スル評論ガ
シテアルノデアリマス、實ニ極メテ冷靜ニ
正確ナル材料ニ基イテ〓究的態度デ、有ラ
ユル角度カラ、此ノ臺灣米移出管理ニ關ス
ルコトガ評論シテアルノデアリマス」斯ウ
云フ譯デアリマス、ソコデ斯ウ云フコトガ
問題ニナッテ居ル譯デアリマスガ、尙其ノ次
ニ斯ウ云フコトガアリマス、同僚ノ次田君
ガ、豫算委員會デ內務大臣ニ如何ナル理由
デ序文ノ削除ヲ命ジタカ、如何ナル理由デ
其ノ手紙ヲ押收シタカ、其ノコトノ質問ガ
アリマシタノデアリマスガ、御答ヲ得テ御
イデニナルカドウカ、私ハマダ存ジマセヌ」
云々ト云フコトデス、ソコデ是ガ臺灣ノ統
治ニ對シテ、又其ノ次ニ「此ノ鬱積シタ心持
ガ一體何處ヘドウ云フ形デ現レテ來ルコト
ガアルカモ知レヌト云フコトハ、本當ニ我
我ハ憂慮ヲシナケレバナラヌノデアリマス」
斯ウ云フコトヲ仰シヤッテ居ルノデアリマ
ス、サウ云フヤウナコトデアリマスカラ、
此ノ田沼征ト云フ方ノ此ノ本ガ豫算總會ノ
問題ニナッタノミナラズ、本會議ノ議ニ上ッ
テ、官報トシテ是ガ天下ニ出テシマッテ居ル
ノデアリマス、又是ハ各新聞ニモ揭載サレ
テシマッタ、田沼征ト云フ人ハ大變偉イ人ニ
ナッタ譯デアリマスガ、私ドウ云フ方デアル
カ存ジマセヌ、偉イ方ナンデアリマセウ、
サウシテ私ノ所ニ來テ居ルノハ斯ウ云フ手
紙ガ附イテ居ル、ソレヲ私ハ貼ッテ置イタノ
デス、削ッテアル方ガ多イノデアリマスカ
ラ、之ヲ讀ンダ方ガ宜イト思ヒマス、斯ウ
云フコトガ書イテアリマス、「陳者過日御手
許ニ御送付相成候田沼征氏著「長期建設ト
農業政策」ノ中ニ「臺灣移出米管理案ノ解
剖」ノ論文有之御多忙中甚ダ恐縮ニ存候へ
ドモ該論文ヲ是非御閱讀ノ程懇願仕候右論
文ガ臺灣移出米管理問題御〓究ノ御參考ノ
資料トモナリ得バ仕合ノ至ニ存候」、是ハ二
月四日ノ日附デス、此ノ手紙ガ次田サンノ方
ニモ丸山サンノ方ニモナカツタカラ、臺灣移
出米問題ガ出テモ直チニ御覽ニナラナカツ
タノカモ存ジマセヌガ、之ヲ出シタ人ハ是
ハ劉明電ト云フ人デス、玆ニアリマス、之
ヲ貼ッテ私ノ所へ來タノデアリマス、私ハ兎
モ角斯ウ云フコトガ書イテアッタカラ、直チ
ニ讀ンダノカ、書イテナクテモ直グ讀ンダ
カ、私ソレハ分リマセヌ、兎モ角本ヲ讀ムコ
トハ好キデスカラ、兎モ角直グ讀ンデシマッタ、
私ハ直グ讀ンデシマッタ、高閣ニ束ネテ置カ
ナカッタノデスガ、ソコデ之ヲ誰ガ出シタカ
ト云フコトハ非常ニ明瞭ナンデス、私ハ其ノ狀
袋ヲ取ッテアル、是ハ破ッテ居ッタノデスケレド
モ、問題ニナリマスカラ、私ハ取ッテ置イタ、
斯ウ云フノデス、「東京牛込區新小川町三ノ
一六、ト書イテアリマス、楊肇嘉ト劉明電
ト二ツアリマス、此ノ劉明電ト云フ人ハ本
ニ貼ッテ置イタ人デアリマスケレドモ、此ノ
人カラ出テ居ル、是ト同ジ人デス、是ハ神
田局ノ市內郵便デ出テ居リマス、松村眞一
郞先生ト云ッテ非常ニ尊敬サレタ、處ガ是ガ
何故ニサウナッテ來ルカト云フト、私ハ臺灣
ノ御方ガ御出デニナッテモ御話ヲ聽ク、御話
ヲ聽キマスカラ、此ノ人ハ私ハモウ前ニ御
目ニ掛ッタ人デス、ソレハ名刺ガアリマスカ
ラ、御覽ニ入レマス、是ハ今ノ劉明電ト云フ
方ト、ソレカラ楊肇嘉ト云フ方ト吳三連ト
云フ方、此ノ三人ガ私ノ所ニ十一月ノ十二
日ノ午後ニ御出デニナッタ、三時頃ニ御出デ
ニナッタ、私此ノ方ト三時間以上モ話シテシ
マッタ、臺灣移出米管理ト云フモノハ斯ウ云
フモノデ、內地ノ米穀統制ト云フモノハ斯
ウ云フモノダ、懇々ト話シタ、アナタガ仰
シヤルノニ自分ハ反對意見ヲ持ッテ居ルト
云ッテ、斯ウ云フモノヲ私ニ渡シタ、「臺灣米
移出米管理ト戰時食糧問題ニ關スル陳情書」、
ソレハ昭和十三年十一月十二日デアリマス、
私ハスッカリ讀ンダ、是ガ押ヘラレタ本ダト
斯ウ言フノデス、臺灣總督府デドウ云フ譯
デ押へラレタカ知ラヌケレドモ、私ノ所ニ
入ッテ居ル、私ガ知ラナイモノダト思ッテ居ッ
タラ、大間違ヒデ能ク知ッテ居ル、私ハ反對
者ノ話ハ皆聽イテ居ル、玆ニ名刺モ皆アリ
やっ、尙積極的ニ特長ヲ申セバ劉明電ト
云フ人ハ瘦セタ人ト私ハ書イテ置イタ、楊
肇嘉ト云フ人ハ肥エタル人、此ノ吳三連ト
云フ方モ肥エタル人、此ノ明瞭ナ茲ニ證據
ガアリマスカラ、モウ疑問ガナイノデス、
ソコデ問題ガ、若シ何カ玆ニ煎ジ詰メナケ
レバナラヌト云フコトニナルト、小平君ヲ
呼ベバ私ハ宜イト思フ、小平君ハ農林次官、
小平君ガ何故斯ウ云フ序文ヲ書イタカト云
フコトヲ聽ケバ判カル、恐ラクハ小平君ノ
序文ニ依ッテ洛陽ノ市價ヲ騰ゲルコトニナ
ルノデアリマス、序文ガナケレバ賣レナイ
ト私ハ申シマセヌ、サウ云フ洛陽ノ紙價ヲ
貴メル意味ノ本ナラバ、洛陽ノ紙價ハ小平
君ノ序文ヨリモ、本會議ノ演說及ビ新聞ノ
記事ニ依ッテモ大變ナ無料ノ廣〓ヲシテ居
ル譯デスカラ、恐ラクハ是ハ天下ノ人ハ能
ク注意シテ見ルデセウ、此ノ中ガドノ位ノ
價値ガアルト云フコトハ、是ハ批判スル人
ニ依ッテ違ヒマセウガ、私ハ此ノ本モ讀ンデ
居リマスガ、更ニモット適切ナモノヲ御〓究
ニナル必要ガアル、ソレハ斯ウ云フモノヨ
リモモット權威ノアルモノヲ御覽ニナル方
ガ宜イト思フ、「米穀專賣制ノ〓究」ト云フモ
ノガアリマス、是ハ日本學術振興會ト云フ
モノカラ出シテ居リマス、是ハ文部省ノ補
助ヲ得テ居ル立派ナ團體デス、ソレハドウ
云フ人ノ顏觸デアルカト云フコトヲ私ハ此
ノ後デ、此ノ中ノ或モノヲ以テ農林大臣ニ
質問スル積リナンデアリマスカラ、豫メ茲
ニ申上ゲマス、ソレハ委員長ガ大阪商科大
學ノ河田嗣郞氏、委員ガ農學博士ノ安藤廣
太郞君、法學博士ノ上田貞次郞君、法學博士
ノ內池廉吉君、京都帝大ノ大槻正男君、東京
帝大ノ那須皓君、京都帝大ノ農學博士橋本傳
左衞門君、慶應大學ノ法學博士氣賀勘重君、
東京帝大ノ農學博士佐藤寛次君、早稻田大
學ノ法學博士鹽澤昌貞君、京都帝大ノ文學博
士高田保馬君、東京帝大ノ東畑〓一君、東京
帝大ノ經濟學博士土方成美君、サウ云フ方
ガ委員デ出來テ居ル會デアリマス、ソレデ是
ハ權威アル著書デスカラ、是ハ岩波ト云フ
本屋デ發行シテ居ル四宮恭二ト云フ人ノ著
書デスカラ、決シテ只デハ御配付ニナラナ
イデセウガ、兎ニ角斯ウ云フヤウナ本ヲ讀
ンデ見テモ、サウシテ如何ニ米ノ問題ニ付
テ世間デ眞劍ニ〓究シテ居ルカト云フコト
ガ御分リニナルダラウト思ヒマス、是ハ貴
族院ノ圖書室ノ本デスカラ、圖書室ニアリ
やっ、サウ云フ譯デアリマシテ、私ハ若シ
斯ウ云フ著書ガソレ程重大視セラレルノデ
アルナラバ、小平君ハ今農林次官デスガ、
私ガ農務局長ヲシテ居ル時ニ、小平君ハ米
穀課長デアッタカラ、米ノコトニ付テハ一〓
ニ仕事ヲシタノデスガ、米ノ賣買ヲ一〓ニ
ヤッタノデスガ、御聽キニナレバ、小平君ハ
ドウ云フ所以デ之ニ對シテ序文ヲ書イタカ
ト云フヤウナコトモ分リマセウ、併シナガ
ラ要點ハソンナコト迄シテ言論ヲ抑壓スル
ノ必要ガアルノカドウカト云フ點ニ要點ガ
アル、今日モ矢張リサウ云フコトヲヤッテ居
ルノデアルカ、ドウデスカト云フコトヲ拓
務大臣ニ御尋ヲスル、ソレト同時ニサウ云
フ案其ノモノニ疑惑ヲ挿マセルヤウナ態度
ハ、案其ノモノノ値打ヲ下ゲル、若シ良イ
モノデアルトスレバ、堂々ト天下ノ批判ヲ
請ハレテ宜イト思フ、今日ニ於テモ尙言論
ノ抑壓ヲシテ居ルカドウカ、前ノコトハ存
ジマセヌガ、恐ラク斯ウ云フコトガアルデ
アラウ、未ダ分ラナイノニ色々批評ヲスル
ト、外ノ場所ナラ宜イケレドモ、臺灣ナド
ニ於テハサウ云フコトニナルト、騷グコト
ガアルダラウト云フヤウヲ御心積リモアッ
タラウト思ヒマス、色々ノ關係モアラウト
思ヒマスガ、兎モ角此ノ問題ソレ自身ヲ暗
クスルト云フコトハ甚ダ不愉快デアリマス
カラ、言論抑壓ナゾト云フコトハ、是ハ丸
山サンハ警視總監ヲシテ居ラレタ、宮田サ
ンモ警視總監ヲシテ居ラレタ、サウ云フ警
察ノ權威者ガ、ソンナ事ノ御取扱ニ付テハ
餘程愼重ニ政府ニ御注意ニナッタガ宜イダ
ラウト思フ、案ノ進行ニ付テ我々ガ甚ダ不
愉快ニ感ズル問題ヲ、眞面目ニサウ云フヤ
ウナコトデナク〓究シヨウト云フ際ニ、言
論抑壓ヲシテ宜イカ惡イカ、兎ニ角非常ナ
自分勝手ナ議論ガ澤山アル、ソレヲ言ッテ聽
カスナラバ、直グ分ルコトモアリマスガ、
成ル程サウ云フコトモアルカト得心サセラ
レルコトモアル、私ハ三時間以上モ話シタ
カラ、三人ノ諸君ト膝ヲ交ヘテ話シ、兩方
共談笑ノ間ニ話ヲシテ、サウ云フ程度デア
リマスカラ、私ハ一向臺灣ノ諸君ノ言論ヲ
抑壓ヲスルコトモナケレバ、サウ云フ態度
デ堂々トヤッタラ宜カラウト思フガ、非常ニ
案其ノモノニ暗影ヲ投ズル虞ガアル、拓務
大臣ハ此ノ案ヲドウ考へテオイデニナルカ、
ドウ云フヤウニシヨウト云フコトデアリマ
スカ、私ハモウ少シハッキリシテ戴キタイト
云フノガ希望デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/24
-
025・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 言論ノ問題ハ拓
務省トシテ直接關係シテ居ラヌコトデアリ
マスケレドモ、拓務省デ見テ居リマスル所
ヲ申上ゲマスレバ、最初此ノ案ガ臺灣ニ於
テ考ヘラレタ當時、卽チマダ成案ヲ得ル前
ニ於キマシテハ、色々其處ニ眞相ト違フ、
或ハ半知半解ノ考カラシテ、往々ニシテ面
白カラザル誤解ト云フモノガ生ズル虞ガア
リマスノデ、其ノ點ニ付キマシテハ相當總
督府ニ於テモ適當ノ方法ヲ執ラレタト考ヘ
テ居ルノデアリマス、併シナガラ昨年重要
產業ノ調査委員會ニ於テ此ノ案ガ大體成案
ヲ得マシテ、內容ガ明瞭ニナッタ場合ニ於キ
マシテハ、其ノ以後ニ於テ左樣ナ言論抑壓
ト云フヤウナコトハナイト承知致シテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/25
-
026・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 休憩致シマ
ス、午後ハ一時半カラ開會致シマス
午後零時六分休憩
午後一時四十五分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/26
-
027・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 會議ヲ開キマ
ス、拓務大臣ハマダ衆議院ノ方ニ豫算ガア
リマスデスカラ、アチラニオイデニナル必
要モアルヤウデスカラ、拓務大臣ニ對スル
御質問ハドウゾ其ノ御積リデ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/27
-
028・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 午前中ノ御質問ニモ關聯ヲ
致スヤウデアリマスカラ拓務大臣ニ一二ノ
點ヲ御伺ヒ申上ゲマス、總督府カラ戴キマ
シタ「內地米及蓬萊米ノ內地市場價格ト生產
費、運賃諸掛費トノ比較」ト云フ表ヲ拜見致
シマスト、昭和十一年十二年十三年ノ表
ガ出來テ居ルノデアリマスガ、結局生產
費運賃ヲ入レマシタモノカラ、市場價格ノ
差ヲ出シテ比較ヲシテアルノデアリマス
ガ、細カクナリマスカラ其ノ數字ハ申上ゲ
マセヌガ、結局內地米ト蓬萊米ヲ比較シテ
三箇年ノ平均ヲ取ッテ見マスト、內地米ノ市
場價格ノ差ト蓬萊米ノ市場價格トノ差ハ僅
カニ一圓二十六錢ノ平均ニナルノデアリマ
ス、ソレデ豫テ臺灣米ハ非常ニ有利デアル、
一時ハ不自然或ハ不當ナル價格ヲ維持シテ
居ルト御說明デアリマシタガ、ソレハ御取
消ニナッタノデアリマスケレドモ、結局戴イ
テ居リマスル此ノ表ヲ見マシテモ、三箇年
平均ニ致シマスト、內地米ニ比較シテ一圓
二十六錢ダケ蓬萊米ノ方ガマア利益ガ餘計
アルト云フヤウナ形ニナッテ居ルノデアリ
やっ、此ノ表ニ付キマシテハ、唯生產費ト
運賃ダケデ比較ヲシテアルノデアリマスカ
ラ、尙此ノ間ニアリマス中間機關ノ取リマ
ス利潤ト云フモノヲ計算致シマスト、元來
私共ガ承知致シテ居リマス所ニ依リマスル
ト、臺灣米ニ關スル中間機關ト云フモノハ、
相當利潤ヲ得テ居ルヤウデス、ソレヲ此ノ
中ニ加ヘテ計算シマスト、マダ蓬萊米ノ有
利ダト云フ點ガ減殺サレルコトデアラウト
思フノデアリマスガ、ソレハナカ〓〓調査
困難ノコトデアリマセウカラ此ノ表ニ基キ
マシテ、一圓二十六錢ダケ石當リ臺灣米ノ
方ガ內地米ニ比ベテ宜イト云フコトニナッ
テ居リマス、ソレヲ兎ニ角モ今ノ御計畫ニ
依リマスレバ、石當リ二圓減ラスト云フコ
トニナリマスト大體內地米ヨリモ尙蓬萊
米ヲ作ッテ居ル臺灣農民ニハ割合ガ惡クナ
ルト云フ關係ニナルノデアリマス、此ノ事
ハ御提出ニナリマシタ表デ明瞭デアルト思
フノデアリマス、ソレデ米ノ値段ハサウ云
フ風ニ引下ゲラレテ、豫テ總督府ノ方デ御
說明ニナッテ居リマスヤウニ、儲ケタ金ハ農
家ニ還元スルノダカラ、何モ取上ゲ切リヂ
ヤナイノデアル、ソレダカラ何モ農民ガ不
平不滿ニ思フコトハナイト仰シヤルノデス
ケレドモ、利益ノ全部ガ還元ヲサレルモノ
デナイト云フコトハ、損害ノ場合ノ補償金
等モ御引キニナルシ、役人ノ俸給ナリ事務
費ナリモ御引キニナルノデアリマシテ、旣
ニ利益ノ取上ゲタダケノモノガ全部還元サ
レルモノデナイト云フコトハ勿論デアリマ
ス、又此ノ還元ト云フコトハ、農業全體ノ
方カラ申シマスレバ還元ヲ致スト云フコト
モ言ヒ得ルカモ知レマセヌケレドモ、取ラ
レタ農民ニ必ラズ還ッテ行ク性質ノモノヂ
ヤナイト云フコトモ、是ハ極メテ明瞭ナコ
トデアルト思フノデアリマス、ソレデアリ
マスルカラ米作ヲシテ居ル農民カラ見マス
レバ、ドウモ自分等ノ利益ヲ取上ゲラレテ、
サウシテ直接自分等ノ收入減ヲ來スト云フ
コトニナルノデアリマスカラ、是デ非常ニ
滿足スル筈ハナイ、必ラズ不平不滿ヲ有ツ
コトデアラウト思フノデアリマス、其ノ
米ノ方カラ考ヘマスレバサウ云フコトガア
ルノデアリマスガ、更ニ進ンデ先日來ノ質
問應答ニ依リマスト、米ハ二圓減ラサレマ
シタガ、甘蔗ノ方ニ於キマシテハ、買上値
段ヲ減ラサナイト云フノデアリマスカラ甘
蔗ガ非常ナ有利ニナッテ參ル、ダカラ農民ト
シテハ有利ナ甘蔗ヲ作リタイ、斯ウ云フコ
トニナッテ、滔々トシテ甘蔗作ノ方ニ向ッテ
行カウ云フ希望ヲ懷イテ來ルコトニナッテ來
ルト思フノデアリマス、サウ云フ場合ニナ
レバ米ハ著シク減ルト云フコトニナリヤセ
ヌカト、斯ウ云フ私ノ質問ニ對シテ、愈〓サ
ウ云フ風ナ傾向ニナッテ來ルナラバ、糖業
令ニ依リマシテ、甘蔗ノ植付段別ヲ認可制
ニスル、甘蔗ヲ餘リ植エサセナイヤウニ、
兎ニ角糖業令ノ發動ニ依ッテ之ヲ抑ヘルノ
ダ、斯ウ云フ御答辯デアリマス、後ニ森岡
長官カラ其ノ糖業令ヲサウ云フ意味デ發動
スルコトハ非常ノ場合デアルト御說明ハア
リマシタケレドモ、米ノ增產モシナキヤナ
ラヌト云フコトハモウ度々御言明ニナリ、
又時局ニ連レテ急激ナル增產ヲシヨウト云
フコトデアリマスカラ、恐ラク糖業令ハ御
發布ニナリマスレバ、差當リ發動ヲ致シマ
スノハ、成ルベク甘蔗ヲ作ラセナイ方面ニ
發動ヲセナキヤナラヌト云フコトニナル、
之ヲ考ヘテ見マスト、折角米ガ有利ダカラ
ト云フノデ米ヲ作リタイト思ッテ居ルト、米
ノ値段ヲ二圓下ゲラレル、甘蔗ノ方ヲ作レ
バ、其ノ方ヲ作ラウトスレバ糖業令ト云フ
モノガアル、サウシテオ前等甘蔗ヲ作ッチ
ヤイカヌト斯ウ云フコトデ兎ニ角制限ヲ
サレル、是デ一體臺灣ノ農民ガ滿足スル筈
ハナイ、ドウシタラ宜イカ、米ヲ作ラウト
思ヘバ米ノ値段ヲ下ゲル、甘蔗ガ有利ダカ
ラ甘蔗ヲ作ラウトスレバ、甘蔗ハ今ノ糖業
令ニ依ッテ制限ヲサレル、殆ド農民ハ其ノ
行ク所ヲ知ラナイ狀態ニ陷ッテ居ル、斯ウ
云フコトガ例ヘバ、縱ンバ此ノ管理案ト云
フモノガ一ツ前提トシテ許サレルトシテ
モ、兎ニ角農民ノ心理ニ及ス影響ト云フモ
ノハ非常ナ重大ナモノデ、ドウシタラ一體
臺灣ノ農民ハ立ツノダト云フ氣持ニナルコ
トハ私ハ當然ダト思フ、農民ガ不滿ヲ懷
キ、不平ヲ懷キ、サウシテ農民ノ心理ガ斯
クノ如キ沈滯ヲシテ來ルト云フコトハ、是
ハ統治ニ私ハ影響ハナシトハ言ハナイ、何
等統治ニ影響ハナイト云フコトヲ屢〓言明サ
レテ居ルノデアリマスガ、是デモ拓務大臣
ハ何等此ノ案ヲ執行スルコトニ於テ統治上
影響ナシト、斯ウ云フ御言明ヲ爲サルノデ
アリマセウカ、其ノ點一應御答辯ヲ願ヒタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/28
-
029・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今丸山サンノ
御尋ノ、內地米及蓬萊米ノ內地市場ニ於ケ
ル價格ト生產竝ニ運賃諸掛トノ比較ノ點ニ
付テハ、御話ノ如クデアルト思ヒマス、大
體第一表ニ於テ十三年度ノ如キハ約二圓近
イ一圓九十二錢ト云フヤウナ差デアリマス
ルシ、ソレカラ十一、十二邊リデハソレ程
ノ差ガナイヤウニ······一圓六七十錢ノ差ト
云フヤウナコトニナッテ居ルヤウデアリマ
スルガ、大體臺灣總督府ニ於テ計算上考ヘ
テ居ルノハ、約二圓、凡ソ二圓ト云フコトニ
ナッテ居ルノデアリマスカラ、其ノ點ハ必ズ
シモキッパリ二圓ト云フコトデハナイト思
ヒマスガ、第二表ノ方ヲ御覽下サイマス
ト、此處ニ稍〓詳シク其ノ點ヲ比較シテアル
ヤウニ思ヒマス、卽チ一番最後ノ欄デ大體
二圓以上、十二年度ハ一圓八十六錢デアリマ
スガ、十三年度ニハ三圓近クナッテ居リマ
ス、十一年ハ二圓四十四錢位ニナッテ居ル、
平均ガ二圓四十二錢ニナッテ居ルト思ヒマ
スノデ、サウ云フ見地カラ凡ソ二圓ト云フ
モノヲ數字的ニ計算ニ取ッテ居ルト云フコ
トヲ御諒承願ヒタイト思ヒマス、何レニ致
シマシテモ御尋ノ米ノ方ノ値段ヲ或程度、
之ヲ買上値段ヲ今申上ゲマシタヤウナ風ニ
下ゲルトスレバ、結局農家ノ收入ハ減ルノ
デハナイカ、其ノ點ニ付キマシテハ他ノ農
產物ト併作ニナル譯デアリマスカラ、結局
先程モ申上ゲマシタケレドモ、此ノ管理案
ニ依ッテ得タ所ノ益金ハ之ヲ積極的ナ增產
計畫、又申セバ反當、甲當ノ增產ヲモ考ヘ
ルノデアリマスルノデ、實際ノ收入トシマ
シテハ農民ニ對スル打擊ニハナラヌト考ヘ
ルノデアリマス、併シ其ノ細カイ數字的ナ
コトハ、今私此處デ簡單ニ申上ゲマシテハ
御了解ニナラナイト思ヒマスノデ別ニ申上
ゲマスガ、左樣ニ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、而シテ米ノ値段ヲ抑ヘルト申シマスカ、
結局統制スルト云フコトニナルノデアリマ
ス、米ノ値段ハ內地ニ於キマシテモ御承知
ノ通リ、旣ニ今日迄統制シテ來テ居ル、之
ヲ放置スレバモット高イモノニナッテ來ルダ
ラウト思ヒマス、或ハ安クナル場合モアリ
マセウ、安イ場合ニ於テハ生產費ヲ切ッテ
居ルコトニナル、內地ニ於キマシテハ又高
イ場合ニハ相當之ヲ統制シナケレバナラヌ
ト云フヤウナ見地カラ、私共申上ゲル迄モ
ナク、今日迄或幅ノ間ニ統制ヲ加ヘテ居ル
ト云フノガ事實デアリマス、從ッテ其ノ程度
ト臺灣ニ於ケル管理、移出米管理案ニ依ッテ
統制セラレマスレバ、米ノ値段ハ行キ過
ギタモノデハ決シテナイ、而モ米ノコトデ
アリマスカラ或年ハ豐作、或年ハ凶作、內
地ニ於テサウ云フコトガ起ルトスレバ、ソ
レニ連レテ或程度ノ上リ下リガアリマスケ
レドモ、其ノ管理案ノ施設ニ依リマシテ、
如何ナル場合ニ於テモ生產費ヲ切ルコトハ
ナイノデアリマス、詰リ良イ年ハ內地ノ反
映ヲ受ケマス、惡イ年ニ於テモ、內地米ノ
相場ノ惡イ年デモ臺灣米ニ於テハ生產費ヲ
切ラヌヤウニシテ、ソコニ積立金ヲ特別會
計ニ於テ作ッテ參ッテ居ルヤウナ譯デアリマ
ス、其ノ積立金ガ又ソレヲ「カバー」スルノ
デアリマスガ、更ニ餘剩ノ生ジマシタモノ
ハ、先程中上ゲマシタ通リ是ガ全體ノ改善
ニ資サレルノデアリマスカラ、終局スル處
決シテ農民ノ福利ヲ阻害スルモノデハ絕對
ニナイト云フコトダケハ、明カデアルト思
フノデアリマス、唯此ノ案ノ建前ニ於テ只
今申上ゲマシタヤウニ約二圓ヲ下ゲマシテ
モ、ソレハ敢テ不當ナコトデハナイト考ヘ
テ居ル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/29
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030・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 私ガ御質問申上ゲマシタノ
ハ二圓下ゲルコトガ不當デアルト云フコ
トヲ主トシテ御尋ネ申上ゲタノデハナイノ
デ、兎モ角モ御提出ニナッタ表ニ依ッテ見マ
シテモ一圓二十六錢、內地米ト比較致シマ
シテ、是ハ懷ニ入ル金ハ一圓二一十六錢デア
ル、有利性ノ方ガ第二表デ計算シテアリマ
シテ、內地ノ利益率ヲ以テ臺灣ニ當嵌メテ
見レバ是ダケダト云フノデ、實際懷ニ入ル
金ハ第一表ノ方デ一圓二十六錢シカ內地米
ト違ハナイ、差當リ二圓ト云フモノデアリ
マスカラ、內地米ヨリモ尙不利ノ狀態ニナ
ルコトダケハモウ間違ヒナイノデアリマス、
私ハ主トシテ御尋ヲ申上ゲテ居ルノハ、細
カイ數字ノ點ハ又臺灣ノ當局ノ方ニ色々伺
ヒマスルケレドモ、サウ云フコトガアル、
サウシテ一方デハ甘蔗ガ有利ニナッタカラ
甘蔗ヲ作ラウトスレバ、甘蔗ハ作ラセヌ、
殊ニ多角形農業ヲ御奬勵ニナルト言ヒマス
ガ、昨日松村委員ガ御述ニナリマシタ表ノ
中ニモアリマスヤウニ、外ノ麻類トカ諸ダ
トカ云フモノヲ作ルノハ、今デハ一甲當リ
デハ寧ロ損ニナッテ居ル、生產費ヲ償ハズト
云フ表ヲ此處ニ戴イテ居ル、ソレデアリマ
スカラ、餘程何カノ考ヲ持ッテ御奬勵ニナ
ラヌト、サウ云フコトハナカ〓〓此ノ多角
形農業ヲ致スト云フコトモ容易ヂヤナイ、
ダカラ步合ノ惡イモノハ作レ〓〓ト、マア
是ハ特別ニ何カ法條ノ權力ヲ以テ御作ラセ
ニナルノデハナイ、御奬勵デアリマスガ···
サウシテ少シ有利ナモノヲ作ラウトスレ
バ、糖業令ト云フヤウナモノデ兎ニ角作
付段別ヲ制限シテ作ラセヌ、斯ウナレバ農
民ハ其ノ行ク所ヲ知ラナイヤウナ感ジニナ
ル、少シ儲カッテ來ルトソンナニヒドク、
內地ノ農民ト違ハナイ收入シカ得テ居ラヌ
モノヲ、其ノ方ハ臺灣ハ特ニ米ガ高イカラ
米ノ値段ヲ引下ゲルト云フノデアルガ、
圓二十六錢シカ内地ノ農民ヨリモ懷ニ入ツ
テ居ラヌモノヲ差當リ二圓、斯ウ云フコト
ニ減ラス、サウシテ外ニ有利ナ條件ガアル
カラ、有利ナ條件ノ方ニ向ハウトスレバ
ソレハ糖業令ニ依ッテ甘蔗ハ餘計作ラセヌ、
斯ウ云フコトガ私ハ農民ニ及ス影響ガ重大
ダ、必ズ農民ガ非常テ不平不滿ヲ持ツ、臺
灣ノ農民ハ一體ドウシタラ宜イカ、自分等
ガ生活安定ノ爲ニ儲ケヨウトスレバ、悉ク
總督府ノ力デ抑へラレルノダ、斯ウ云フコ
トニナルコトガ非常ナ不安トサウシテ不平
ヲ持タス、其ノ不平ヲ持タスコトガ臺灣ノ
統治ニ影響ナシトハ言ヘマイト思フ、其ノ
點ニ付テ私ハ言明ヲ求メタノデアリマシテ、
今二圓ガ多イトカ少イトカ云フ問題ヲ論ジ
テ居ルノヂヤナイノデアリマス、大臣トシ
テハ其ノ點ニ對シテ矢張影響ナシト御信ジ
ニナレバ、其ノ御答ヲ願ヘバ宜イノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/30
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031・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 私ト致シマシテ
ハ午前中モ述ベマシタケレドモ、各方面カラ
見マシテ、此ノ案ハ結局臺灣ノ產業ノ發達ニ
資スルモノデアル、サウシテ其ノ住民デアル
所ノ而モ其ノ目標デアリマスル所ノ農業ニ
從事シテ居ル所ノ人々ノ恆久的福利ノ增進
ニナリ、而シテソレガ將來ノ安定ニナルト、
斯ウ云フ風ニ感ズルノデアリマス、從ヒマシ
テ是ハ臺灣總督府ノ見ル如ク統治ニ惡影響
ハナイノミナラズ、更ニ進ンデ日本、所謂
內地ト臺灣ト一致協力シテ、此ノ平時戰時
ニ對シマスル所ノ產業、我ガ國ノ產業ニ向ツ
テ協力シテ行クト云フ所ノ精神ヲ强調スル
上ニ於テ、臺灣農民ガ之ニ參加スルト云フ
コトハ、寧ロ喜ブベキコトデアッテ、又統治
ノ上ニ於テモソレハ效果ノ多イモノデア
ル、斯ウ考ヘルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/31
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032・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 其ノ點ニ付キマシテハモウ
議論ニナルコトデアリマス、意見ノ相違ノ
問題デアリマスカラ、ソレデ打切リマシテ、
モウ一點拓務大臣ニ伺ッテ置キタイト思フ
ノデアリマスガ、先日來臺灣總督府ノ當局
ノ方カラハ色々承ッテマダ殘ッテ居ル點モ澤
山アルノデアリマスケレドモ、大體論トシ
テ拓務大臣ノ御意見ヲ承ッテ置キタイト思
ヒマス、此ノ案デ一番重點デアル所ハ何處
デアルカト申シマスト、勿論臺灣ノ產業ト
云フモノヲ統制ヲシテ行ク、一ツノ計畫的
ナ範疇ノ中ニ入レテ、調整アル發展ヲ來ス
ト云フコトニ在ルノデアリマスガ、何ト申
シマシテ臺灣ノ重要農產物ト云フモノハ米
ト甘蔗デアルト云フコトダケハ、是ハ否ム
コトノ出來ナイ問題デアル、ソレデ今迄デ
モ米ノ値段ト甘蔗ノ値段ト云フモノハ、互
ニ睨ミ合セノ上デ決定ニナッテ居ルト云フ
コトデアル、ソレデ此ノ案ノ私共人心ニ及
ス影響ノ非常ニ重大ナモノハ、矢張リ甘蔗
ノ關係ダト思フノデアリマス、此ノ案ヲ御
作リニナリマシテ、小林總督ガ東京ニ出テ
參ラレマシテ、帝國「ホテル」デ都下ノ新聞記
者ヲ集メテ色々御說明ガアッタ時ニモ、小林
總督自身ガ仰シヤッタ、此ノ案ヲ以テ砂糖業
ヲ保護スル案ノ如ク誤解シテ居ル者ガアル
ガ、決シテサウ云フ譯デハナイノダト云フ
御說明ヲナサッテ居ル、ダカラ總督自身モ此
ノ案ガ糖業保護ノ爲ニ出タ案ダト世間ガ誤
解ヲシテ居ルト云フコトハ、是ハ臺灣總督
自身モ御認メニナッテ居ル、ソレデ私ガ繰リ
返シ糖業ノコトヲ本會議デモ申上ゲ、此ノ
委員會デモ申上ゲルノハ全クソコニアル、
確カニ世間ハ糖業ヲ保護スル案ダ、斯ウ云
フ風ニ誤解スル、誤解スルノハ私ハ無理ハ
ナイト思ヒマスコトハ、前申上ゲマシタヤ
ウナ工合ニ臺灣ノ重要產業ノ調整委員會ト
云フモノヲ特ニ御作リニナルノナラバ、兎
ニ角砂糖ハ重要產物ノ重大ナモノダカラ、
米ヲ斯ウシテ統制サレルト云フコトデアル
ナラバ、砂糖ニ對シテハ斯ウスルノダト云
フコトノ案ヲ御決メニナッテ、同時ニアレダ
ケ立派ナ、松村委員モ御述ニナリマシタヤ
ウニ、實ニ大機關ヲ設ケテ臺灣ノ產業ヲ振
起サセヨウト云フナラバ、同時ニ之ニ掛ケ
テ米ニ付テハ斯ウスルノデアルガ、砂糖ニ
付テハ斯ウスルノダ、斯ウ云フコトヲ併セ
テ審議ヲサレテ、サウシテ之ニ併行シテ進
ンデ來ルモノナラバ、マダ世間ハ疑ヲ懷カ
ナイ、砂糖ニ付テハ何等ノ問題ヲ······御考
ニナッテ居ッタト云フコトデアリマスケレド
モ、兎ニ角表面ニハ何モ出テ居ラヌノデア
ル、ソレデ色々調整委員會ノ論議ノ結果、
是ハ片手落デハナイカ、米ノ方ヲ斯ウスル
ナラバ、砂糖ノ方モモウ少シ統制ラシナケ
レバイカヌヂヤナイカト云フコトカラ、委
員會ニ於テ砂糖ニ對シテハ一層統制ヲ强化
シテ行クコトヲ考ヘロト云フ附帶決議ガ附
イタ、大體此ノ行キ方カラ世間ニ對シテ疑
惑ヲ懷カシメル一ツノ行キ方ナンデアル、
是ハモウ過去ノコトデ、今更追窮シテモ致
方ナイ譯デアリマスケレドモ、大體ヤリ方
ガマヅイ、殊ニ私ハ始終申上ゲテ居ルヤウ
ニ、米ヲ作ッテ居ルノハ臺灣ノ多數ノ農民
デアル、臺灣人ニモ資本ノナイコトハア
リマセヌケレドモ、砂糖ヲヤッテ居ルノハ
多ク內地ノ有力ナ資本家デアル、豫テ今迄
ノ評判デハ糖業者ト云フモノハ非常ニ力
ガ强クッテ勢力ヲ持ッテ居ルノデ、歷代ノ
總督ト雖モ齒ガ立タナイノダト云フ風評
ヲ立テラレテ居ル位デアル、ダカラ斯ウ
云フ案ヲ御作リニナルニハ、最モ愼重ニ
ソコラヲ御考慮ニナルダケノ愼重サガ、私
ハアッテモ宜イモノデアルト思フ、ソレハ
旣ニ缺ケテ居ルコトデアリマシテ、過去ノ
コトデ巳ムヲ得ナイノデアリマス、總督自
身ガ認メラレテ居ルヤウニ、是ガ糖業ノ保
護案デアルト、斯ウ言ハレルコトハ是ハ無
理モナイノデアル、大體總督府ノヤリ方ガ
初メカラサウ云フヤリ方デオヤリニナッテ
居ル、今日此ノ案ヲ審議スルニ際シテモ、
マダ糖業令ノ原案ト云フモノヲ御出シニナ
ラヌ、此處デ色々說明サレテ居リマスガ、
ソレガ後ノ都合ニ依ッテドウ云フ風ナ糖業
令ニナッテ現レルカ、私共之ニ參加スルコト
ハ出來ナイ、容議スルコトハ出來ナイ、ダ
カラ之ニ付テ是ガ糖業保護案デアルト、世
ノ中ノ人ガ非常ナ疑惑ヲ懷クト云フコトハ
私ハ尤モ至極ノ事デアルト思フ、頻ニ衆議
院デモ要求サレ、私モ此ノ委員會ノ一番初
メニ申上ゲタ、出來レバ兎ニ角成案トシテ
糖業令ハ斯ウ云フモノダト云フコトヲ出
シテ戴イタナラバ、幾ラカデモ私ハ疑惑ヲ
解クコトガ出來ルヤウニナルト思フ、ソレ
デ砂糖ノ問題ニ付キマシテモ、今迄臺灣農
民ガ可ナリ不平不滿ヲ持ッテ居ルコトハ、是
ハモウ拓務大臣トシテハ疾ニ御承知ノコト
ト思ヒマスカラ、私ハ此處デハ申上ゲヌ、
併シナガラ兎ニ角歷代ノ總督府竝ニ日本ノ
糖業者ガ今日迄苦心努力シテ、アレ迄臺灣
ノ糖業ヲ發達サセタコトハ、是ハ臺灣ノ島
民モソレニ依ッテ恩惠ヲ受ケテ居ルカラ、
私ハ何處迄モ感謝スベキモノデアルト云フ
コトハ本會議デモ屢〓述ベタ、併シナガラ糖
業ノ發展ヲ今日來ス迄デモ、臺灣ノ農民ガ
可ナリ不平不滿ヲ持ッテ居ルコトハ、詳細ニ
私ハ述ベルコトヲ避ケマスケレドモ、能ク
御存ジノ通リダト思ヒマス、ソレデマア前
ノ御言明ニ依ッテ、甘蔗ノ買上値段ダケハ
米ノ値段ガ下ッテモ兎モ角今ノ所デハ下ゲ
サセヌト云フコトデアルガ、ソレダカラ糖
業者ニ特別ノ利益ガアル譯デハナイヤウニ
最近ニナッテサウ云フ風ニ御說明ニナッテ來
タノデアリマス、是ハ私ハ有難イ、農民ノ
側カラ見レバ、米モ下ゲ、砂糖モ下ゲルト
云フコトハ大變デアリマシテ、サウシテ下
サラナイコトヲ希望スルノデアリマスガ、
併シナガラ大體甘蔗ノ買上値段ト云フモノ
モ、マダ私ヨリ詳シイ方ガ澤山オイデニナ
ルト思ヒマスガ、唯一本デ幾ラト云フヤウ
ニ、買上値殖ガ出テ居ルノデハアリマセヌ
御覽ニナレバ分リマスガ、原料代、サウシ
テ割增金、賞與、罰金ト云フヤウナ發表ガ
シテアリマス、ソレデ從來ノ例ニ依リマシ
テ、一年八箇月前ニ砂糖會社ガ定メテ發表
スル時ニ、原料代、割增金、賞與金、罰金
ト云フヤウナモノガアッテ、是ハ原料代ハ定
メテアリマスカラ、先ヅ是デヤレルノデア
リマスケレドモ、アトノ手加減ト云フモノ
ハ割增金トカ、賞與金、罰金ト云フヤウナ
モノデドウニデモナッテ居ル、臺灣ノ農民ガ
原料代ダケハ變ヘラレマセヌガ、其ノ外ノ
奬勵金トカ云フヤウナモノハ、砂糖會社ノ
意向デドウニデモナッテ居ル、罰セラレル者
ハ罰金迄取ラレテ、サウシテ原料代モ喰込
ムト云フヤウナ事實ガアルノデアリマスガ、
是ハ臺灣ノ農民ガ採取區域設定ト云フコト
ニ對シテ、ソレハ困ルト云フコトヲ愬ヘル
コトハ、是ハ今更申上ゲル迄モナイノデア
リマス、一定ノ所デ作ッタモノヲ一定ノ會社
ニ持ッテ行カナケレバ收納シテ戴クコトガ
出來ナイト云フコトニナッテ居リマス、是ハ
〓
私ハ本會議デ申述ベタヤウニ絕對ニ反對致
シテ居リマセヌガ、糖業ノ發達ノ爲ニ、過
程ノ上ニ於テハ斯ウ云フコトモ必要デアル
ト思ヒマスガ、現ニ砂糖ノ問題ニ付テモ農
民ハ多少·······多少ヂヤナイ、非常ナ不平不
滿ヲ持チナガラ、兎モ角モ糖業ガ進展シテ
來レバ農民モ安定ニナルト云フコトデ、マ
ア不平ヲ言ヒナガラ其ノ業ヲ續ケテ居ルト
云フコトハアルノデアリマス、サウ云フ譯
デアリマスカラ、今ノ甘蔗ノ買上價格ト云
フモノヲ當分御下ゲニナラヌト致シマシテ
モ、製糖會社ノ立場ニ致シマスレバ、必ズ米
ノ値段ガ二圓下ッタト云フコトハ、ソレダケ
會社ノ爲ニ有利デアリマス、直接甘蔗ノ値段
ガ下ラナイト致シマシテモ、下ゲサセヌト御
言明ニナリマシテモ、米ノ値段ガ二圓下ッタト
云フコトハ、是ハ糖業ノ爲ニ有利デアル、
將來何時迄モ下ゲサセナイト云フコトハ、
是ハ不當ナコトデアルト思ヒマス、是ハ松
村委員モ指摘セラレタノデアルガ、米ノ値
段ガ下ッタラ矢張リ甘蔗ノ値ヲ下ゲテモ宜
1、併シサウナルト急激ノ變化ヲ與ヘルカ
ラ、今ハ下ゲサセヌト云フコトデアリマス
ガ、將來米ノ値段ノ上リ下リニ依ッテ、甘蔗
ノ買上値段ヲ御下ゲニナルコトモ可ナリア
ルト思フ、又睨ミ合セテ之ヲ下ゲテ行クト
言ッテ來タ時ニ、之ヲ認可シナイ理由ハチ
ヨット立タヌト私ハ思フ、ソレデアリマスカ
ラ、此ノ法案ヲ實施スルコトニ依ッテ、糖業
者ハ非常ナ利益ヲ得ル、又甘蔗モ簡單ニ收
納スルコトガ出來ルコトニナル、此ノ甘蔗
ノ收納ガ多イカ少イカニ依ッテ、會社ノ利益
ニ隨分關係致シマスカラ、米ヲ引下ゲレバ
甘蔗ノ方ハ易々作ルヤウニナリマスカラ、
ソレダカラ何トシテモ此ノ法案ニ依ッテ、砂
糖會社ト云フモノガ寧ロ非常ナ利益ヲ得ル
コトニナル、サウシテ砂糖會社ノ現在ノ經
營ノ狀態ヲ見テ見マスレバ、、兎モ角モ利益
ハ會社々々ニ依ッテ違ヒマスケレドモ、平均
致シテ見マシテモ三割三分一厘モ兎モ角儲
カッテ居ル、ダカラ私ハ何カ此ノ製糖會社ノ
方ガ同ジク臺灣ノ產業開發ノ爲ニ負擔ヲス
ルノダ、農民モ石當リ二圓ノ負擔ヲシテ臺
灣全體ノ產業發展ノ爲ニ、農產物ノ發展ノ
爲ニヤルンダ、犠牲ニナルンダト云フナラ
バ兎ニ角、砂糖會社ノ方モ兎ニ角却テ此ノ
案ニ依ッテ非常ナ有利ナ狀態ニ置カレル、直
グ何百萬圓ト云フモノガ儲カルカト云フコト
ハ私ハ申シマセヌガ、兎ニ角有利ナ狀態ニ
置カレル、必ズ今ヨリ以上ニ利益ヲ占メル
者ガ出テ來ルニ違ヒナイ、ダカラ私ハ何ト
カ砂糖會社モ、同ジク臺灣ノ產業發展ノ爲
ニ犧牲ニナルンダト云フコトガ、兩々相俟ッ
テ茲ニ行ハレマスレバ、私ハマダ是ハ農民
ニ納得ガ行クト思フ、成ル程砂糖業者ノ方
モ是ダケノ犧牲ヲ拂フノダ、我々モ臺灣ノ
產業ノ發展ノ爲ニ是ダケノ犧牲ヲ負フノダ
ト申スナラバ納得ガ出來ルト思フ、ソレダ
カラ私ハ繰返シ繰返シ砂糖業者ノ方ニ何ト
カヤリ方ハナイカ、儲ケタ金ヲ直グ取上ゲ
ルト云フ譯ニモ行カヌカ知ラヌガ、稅金ヲ
高クシテ、其ノ稅金ヲ以テ臺灣ノ一般ノ施
政ヲヤルコトハ出來マセヌトカ何トカ言フ
ケレドモ、其ノ點ニ對シテハマダ何等ノ考
慮ヲ御拂ヒニナッテ居ラヌ、マア殖產局ノ方
デ大勢デ考ヘテ居ルケレドモ非常ニムツカ
シイ、サウ云フヤウナ御答辯ダケデ、臺灣
ノ製糖會社デ利益ヲ得ル、殊ニ此ノ案ニ依ツ
テ、居ナガラニシテ何等製糖會社ノ努力ニ
依ラズシテ、利益ヲ得ルト云フコトノ現實
ノ事實ガアル、此ノ事實ニ對シテ何トカ總
督府ガヤラレルト云フコトナラ、又農民モ
本當ニ成ル程サウダ、我々モ一時ハ犠牲ト
ナッテ······犠牲ヲ拂フノダト云フコトガ出來
ルノデアリマス、ソレヲドウシテオヤリニ
ナラウト云フ御言明ガナイカ、ダカラ色々
ノ理窟ハ述ベルケレドモ、結局砂糖會社ノ
製糖上ノ保護ノ法案ダト世間ガ誤解スルコ
トハ尤モダト私ハ思フ、特ニソレハ辯解ガ
出來ナイ、辯解ノ仕樣ガナイノダ、ダカラ
マア話ヲ聽キマシテモ、ソレニ付テハ色々
ノ風評ヲ受ケルヤウニナッテ來ル、ソレデ
折角御考ニナッタ此ノ立派ナ案ト云フモノニ
暗影ヲ生ジテ來タト云フ關係ガ起ッテ來ル、
ソレデアリマスカラ、私ハ何モ事ヲ好ンデ、
奇ヲ好ンデ言ッテ居ルノデハアリマセヌ、斯
ウ云フ片手落チノコトヲ、殊ニ片方ハ臺灣ノ
大衆ノ農民ニ關係スルコトデアリ、片方ハ內
地人ノ資本家ニ關係スルコトデアルト云フ、
此ノ對立シタ關係ニアリナガラ、此ノ方ハ
何等御考ガナイト云フコトガ、是ガ臺灣ノ
人ノ思想上ニ及ス影響ト云フモノハ、非常
ニ重大デアルト斯ウ思フ、其ノ點ニ付テハ
大臣ハドウ云フ風ニ御考ニナッテ居ルカ、其
ノ點ヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/32
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033・稻田昌植
○男爵稻田昌植君 チヨット私ハソレニ關
聯シテ申上ゲタイノデスガ宜シウゴザイマ
スカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/33
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034・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/34
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035・稻田昌植
○男爵稻田昌植君 只今ノ丸山サンノ御意
見ト、アトノ方ハ私モ實ハ御贊成申上ゲタ
イト思フノデスガ、米ノ値段ガ下リマシテ
甘蔗ノ値ガ下ラナイト云フ時ニ、ドレダケ
糖業者ノ方ニ有利ナ狀態ニナルカト云フコ
トハ、是ハ具體的ニ私モ言ヒ得ナイト思ヒ
マスガ、例ヘバ將來甘蔗ノ値ガ下ルト云フ
場合ニハ、丸山サンノ今ノアトノ方ノ御意
見ハ全面的ニ是ハ發動シテ來ルモノト思ヒ
マス、從ッテ少クトモ其ノ場合ニ於テハ、糖
業者ノ方ガ何等カノ大國策ニ對スル協力ノ
一ツノ部門ヲ負擔サセルコトハ、是ハ私ハ
結構ダト思フ、ソレデ例ヘバ稅金ヲ取立テ
ルコトガ面倒デアルナラバ、或ハ無水구
ルコール」、或ハ棉ノ栽培、其ノ他ノ方法デ
糖業者ニモ此ノ大國策ニ副フヤウニ協力ヲ
求メルコトハ、是ハ大變結構ナコトト思フ
ノデアリマスガ、丸山サンノ後半ノ方ノ御
意見ト同ジヤウニ思フノデ、私ハ蛇足ヲ添
ヘルヤウデアリマスガ、チヨット丸山サンノ
御意見デ感ジマシタノデ私モ申添ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/35
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036・八田嘉明
○國務大臣(人田嘉明君) 丸山サンノ御尋
ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマスガ、御說ノ
如ク、米ト甘蔗ハ臺灣ニ於ケル所ノ二大作
物デアリマスルノデ、此ノ何レニ付キマシ
テモ、臺灣ノ施政上有ラユル點カラ十分ナ
考慮ヲ拂ッテ行カナケレバナラヌコトハ御
說ノ通リダト存ズルノデアリマス、唯此ノ
臺灣ノ移出米ヲ管理スルト云フコトガ決シ
テ其ノ結果ガ糖業ヲ保護スルモノデナイト
云フコトダケハ、明カニ申上ゲナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、併シナガラ既ニ
再三臺灣當局カラモ亦他ノ政府委員ヨリモ
申上ゲマシタル通リ、本管理案ノ會計法ノ
通過ノ曉ハ、米穀移出管理案ヲ臺灣ニ於テ
制定スルト共ニ糖業令モ施行致シマシテ、
サウシテ糖業ニ對シマシテモ統制ヲ加ヘル
ト云フコトハ其ノ通リ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、其ノ當時昨年ノ重要產業統制委員會ニ、
糖業ノ統制ニ付テ之ヲ會議ニ付サナカッタ
ノデハナイカト云フコトデアリマスガ、其ノ
時ノ當事者ノ考ガドウデアッタカ私ハ今玆
ニ存ジマセヌガ、私ノ承知致シテ居リマス
ル所デハ、此ノ糖業令ヲ制定スル積リデ考ヘ
テ居ッテ、此ノ問題ハ殆ド此ノ管理案ト、何
カ糖業ヲ保護スルト云フ觀念カラ言ヒマス
トヽ非常ニ關係ガアルノデアリマスガ、サ
ウデナイ時ニハ全ク別ノ考ヲ以テ進メテ行
クコトガ出來ルト思フノデアリマス、何レ
ニシマシテモ、二大作物ニ統制ヲ加ヘテ行
ク考ハ持ッテ居ッタト私ハ承知致シテ居ルノ
デアリマス、併シナガラ御說ノ如ク、動モ
スレバ世ノ中ニハ糖業ノ方ヲ保護スルノデ
ハナイカト云フ誤解ガアルト云フ御話デア
リマスガ、此ノ點ニ付キマシテハ十分ナル
注意ヲ今後ニ於テモ加へテ行カナケレバナ
ラヌト云フコトハ、是ハ私ハ御說ノ通リデア
ルト考ヘルノデアリマス、唯此ノ糖業ヲ保
護スルモノデナイト云フコトダケハ明カニ
申上ゲルコトガ出來ルノト、ソレカラ過去
ニ於テモ御話ノ中ニアリマシタガ、臺灣ニ
於ケル所ノ糖業ガ我ガ國ノ產業ノ爲ニ如何
ニ貢獻ヲシタカト云フコト、又臺灣ニ於ケ
ル所ノ糖業ノ位置ナルモノカ、其ノ海外ニ
於ケル所ノ同種ノ產業ニ對シマシテ如何ニ
重要デアリ、又其ノ將來ノ我ガ國ノ彼ノ臺
灣ニ於ケル所ノ糖業ト云フモノガ如何ニ重
要ナル問題デアルカト云フコトモ、是ハ私
カラ申上ゲル迄モナイノデアリマス、從ッテ
是ガ發達ヲ十分ニ圖ラナケレバナラヌコト
ハ勿論デアリマスト共ニ、一方ニ於テハ適
正ナル監督ヲ加ヘルト云フコトモ嚴ニ必要
デアルト考ヘマシテ、此ノ點ニ付キマシテ
ハ、全ク御說ノ通リデアルト考ヘルノデア
リマス、從ヒマシテ是等ノ點ニ付テ御注意
ノ點ハ私ニ於キマシテモ十分將來ニ於テ心
ニ留メテ置キタイト考へルノデアリマス、
其ノ糖業令ニ於キマシテハ既ニ申上ゲタコ
トデアリマスケレドモ、要スルニ其ノ主眼
點ハ買收ノ、買上ノ價格ニ付キマシテ、又
買上ノ方法ニ付テ十分ナル統制ヲ加ヘテ行
ク積リデアリマス、願クハ漸次其ノ買收價
格ノ單一化モ圖リタイト云フ考ヲ臺灣總督
ニ於テハ持ッテ居ルト云フコトヲ承知致シテ
居ルノデアリマス、卽チ買收甘蔗ノ買上價
格其ノ他ノ買收條件一切ヲ其ノ糖業令ノ目
標ト致シテ進ンデ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、尙稻田男爵カラノ御尋ニ對シマシテ附
加ヘマスガ、糖業ノ保護國策ニ一ツ協力ス
ルト云フコトニ對シテドウ云フ考ヲ持ッテ
居ルカト云フコトデアリマスルガ、此ノ點
ニ付キマシテモ、糖業ハ只今申上ゲタ通リ
我ガ國ノ重要產業デアリ、特ニ臺灣ノ特異
的ノ重要產業デアリマスノデ、之ガ發達助長
ヲ圖リマスト共ニ、一方ニ於テハ色々ノ觀點
カラ此ノ國策ニ協力スルヤウニ致シタイト
思フノデアリマス、例ヘバ關稅ノ保護ト云
フヤウナモノヲ今持ッテ居リマスガ、生產費
ガ段々合理化サレ、低下スルト云フコトニ
ナリマスレバ、漸次關稅ノ點ニ付キマシテ
モ十分考ヘマシテ、市價ヲ引下ゲルト云フ
ヤウナコトモ考ヘナケレバナラヌト考ヘテ
居ルノデアリマス、其ノ他「アルコール」ノ
製造デアリマストカ、或ハ「パルプ」ノ製造
デアリマストカ云フコトニ付キマシテモ、
十分國策ノ線ニ沿ウテ、最モ有效且適正ナ
ル方策ヲ以テ監督指導ヲ圖リタイト考ヘテ
居ルノデアリマス、其ノ結果ハ必ズヤ米穀
管理案ト相俟チマシテ同島ニ於ケル所ノ糖
業其ノモノガ我ガ國策ニ貢獻スル所ガ誠ニ
偉大ナルモノガアルト私ハ信ズルノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/36
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037・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 只今拓務大臣ノ御答辯ヲ得
マシタガ、言葉尻ヲ捉ヘルヤウデ、甚ダ恐
縮デアリマスケレドモ、此ノ米穀管理案ヲ
出シタ結果ガ糖業ノ保護ニハナラヌノダト
云フヤウナ趣旨ノ御話デアリマスガ、結果
ハ必ズ糖業ニ有利ニテルノデアリマス、是
ハドウ拓務大臣ガ仰シヤッテモ、此ノ管理案
ガ出レバ糖業ニハ有利ニナル、寧ロ拓務大
臣ノ御話ハ決シテサウ云フ目的デ之ヲ出シ
タノデハナイ、斯ウ云フ御趣旨ダラウト思
フ、目的デ御出シニナッタノデハナイガ、結
果ハ糖業ニ有利ニナル、是ダケハマア間違
ヒナイ、其處ニ矢張リ世間ガ色々ノ誤解ヲ
持ツコトニナル、私ハ此ノ案ヲ初メ靜カニ
檢討致シテ居リマシタ際ハ、寧ロコンナ苧
麻トカ、蓖麻トカ、黄麻トカ云フヤウナモ
ノヲ間ニ入レテ說明ヲサレルカラ、イカヌ
ノダ、寧ロ總督ニ於カレテモ兎ニ角砂糖ト
云フモノハ日本ノ領土內デハ要スルニ沖縄
ニ一部出來マスケレドモ、臺灣ニシカ出來
ヌノダ、ダカラ、日本ノ計畫經濟ノ上カラ
云ヘバ、臺灣ニ於テ砂糖ヲウント奬勵スル
コトハ必要デアリマス、旣ニ自給自足ニナ
リ、一部ハ輸出モシテ居ルケレドモ、是力
ラ南支、北支ヲ控ヘテ砂糖ノ需要ハウント
增スノダ、一番有利ナ條件ニアル我ガ國ノ
領土内ノ臺灣ニ於テ砂糖ヲウント作ラセル、
ソレガ爲ニハ氣ノ毒ダケレドモ、米ヲ抑ヘ
テ行クノダ、是ハ日本ノ全體ノ計畫經濟ノ
上カラドウシテモ必要ナンダ、斯フ云フ說
明デアルナラバ、私共ハスット分ル、ソレヲ
軍事上必要ナル苧麻トカ、蓖麻トカ、色々ナ
モノヲ之ニ加ヘラレテ、如何ニモ時局ニ便乘
シテ此ノ案ヲ通サウト云ッタヤウナ氣持ニ
見エル、是ハ決シテサウダ、サウ云フ意味
デ御加ヘニナッタトハ言ハナイノデアリマ
スケレドモ、本當ニザックバランニ言フト、
糖業保護ノ政策ハ國策上已ムヲ得ナイ、米ガ
高クナルト、砂糖製造ニ都合ガ惡イ、「ジヤバ」
糖ナドトノ競爭ニ堪ヘラレナイ、ダカラ、國
策上米ヲ抑ヘテ、砂糖ヲウント臺灣ニ作ラセ
ルノダ、斯フ云フ說明ダト明瞭ニ分ル、處
ガ間ニ色々有用作物ト云フヤウナモノガ出
テ、ソレガ非常事變ノ際ニ非常ニ必要ナン
ダト云フコトヲ力說サレマスガ、其ノ分量
ハ極ク僅カナモノデアリマス、ソコデ私共
ハ寧ロ男ラシクト言ッテハ惡イケレドモ、ザッ
クバランニサウ言ッタ方ガ此ノ案ハ非常ニ
分リ易イモノダトスラ私ハ思ッテ居ル、ソレ
デアリマスカラ、結果ガ糖業者ニ好クナル、
糖業ノ保護ノ結果ニナルト云フコトダケ
ハ、如何ナル專門家ガ此ノ案ヲ御考ニナリ
マシテモ、其ノコトハ事實ダト思フ、ソコ
デ今稻田男爵カラモ御話ニナリマシタヤウ
デアリマス、ドウシテモ糖業者ヲシテ農民
ハ斯クノ如キ負擔ヲシタノデアルカラ、糖
業者モ兎ニ角儲カッデ儲カッテ仕方ガナイ程儲
カッテ居ル、ソレデ之ニ依ッテ保護サレ、利
益ヲ得タレバ、何カヤルノダ、何等カノ形
デサセルノダ、今稻田男爵カラ無水구,
コール」ヲ製造サセルトカ何トカト云フコト
ヲ言ハレマシタガ、又臺灣總督府ノ說明デ
ハ無水「アルコール」ノ增產計畫ガアルノ
ダ、「パルプ」モヤラスノダ、斯ウ言ハレマ
スケレドモ、無水「アルコール」ハ今日ニ
始ッタコトデハナイノデアリマシテ、今迄デ
モ無水「アルコール」ヲ製糖業者ハ造ッテ居
ル、唯國策ノ線ニ沿ッテソレヲ增產シロ、ソ
レナラバ無水「アルコール」デ損ヲシテ居ル
カト云ヘバ、損ハシテ居ラヌ、然ラバソレ
ヲ砂糖トシテ賣ルヨリ無水「アルコール」ヲ
造ル方ガ利益ガ少イト云フコトニナル、ダ
カラ、無水「アルコール」ヲ今造レト言ッテ
モ、砂糖會社ハソレヲ砂糖ニスレバ餘計儲
カルノガ、無水「アルコール」ノ爲儲ガ少ク
ナルト云フ問題デ、是ハ何モ犧牲ヲ拂ッテソ
レヲヤッテ居ルト云フ譯ヂヤナイ、ソレデア
リマスカラ、砂糖ノ如キハ一般ノ消費ノ對
象ニナル重要ナル物產デアリマスカラ、成
ルベク消費價格ヲ下ゲテ、一般ノ人間ガ安
ク之ヲ使フヤウニスル爲ニハ如何ナル方法
デモ考ヘ得ルト思フ、ソレヲ御考ニナラナ
イデ、サウシテ農民ノ方ダケハ二圓方安ク
スルト云フコトニナルト、ドウシテモ片手
落ガ生ジテ來ル、ダカラ、私ハモウ一步進
メテ糖業令ハ今立案中デアルト云フノダカ
ラ、此ノ砂糖ノ方面ニ對シテ何カ具體的ノ
犧牲ヲ拂ハセルノダト云フ說明ナラバ、私
ハ說明ガ非常ニ能ク付クト思フ、糖業者ガ
サウダカラ農民モ是ダケ犧牲ヲ拂ヘト云フ
ノナラバ、說明ガ付ク、殖產局長モ段々草
鞋掛デ出テ、農民ヲ說クト仰シヤッテ居ルノ
デアリマスガ、確カニ農民ニ成ル程サウダ
ト納得サスニハ、糖業者ニ對シ何等カノ犠
牲ヲ拂ハスト云フコトガ、一番手ッ取早ク、
一番有效ナ方法デアル、殊ニ臺灣ニ於テ對
立致シマシタ二ツノ重要ナル產業デアルノ
デアルカラ、サウデアル、其處ヲ拓務大臣
ガ一步進ンデ御考ニナッテ、勿論臺灣總督府
デ立案スルコトハ勿論デアリマスケレドモ、
監督上ノ責任アル拓務大臣ガ其ノ點ヲモウ
一步積極的ニ一ツ考ヘテ貰ヒタイ、ソレニ
付テ何カ特別ノ御考ガアレバ承リタイ、今
承リマシタケレドモ、是ハ今迄當局ガ御答
ニナッタコトト何ニモ違ヒガナイ、私ハ衷情
ヲ披瀝シテ此ノコトヲ申上ゲル、サウ云フ
コトガナカ〓〓外地ノ統治ノ上ニハ、非常
ナル大キナ影響ヲ及スノデアリマス、何モ
私カラ外地統治ノ僅カノ經驗デ、統治ノ心
理ノ通人ダトハ申シマセヌケレドモ、兎ニ
角私ノ體驗ニ依リマシテモ、サウ云フコト
ガ非常ナ大キナ影響ヲ與ヘル、サウシテソ
レガ欝積シマシタ結果ハ、ドウ云フコトニ
ナルカト云フ虞ハアルノデアリマス、臺灣
デモ、朝鮮デモ、兎ニ角十年ノ間平穩ニ行ッ
テ居ルト云フ時ニ、アヽ云フ風ナ獨立萬歲
騒動ト云フモノガ勃發シタ、アヽ云フ不祥事
件ガ起ッタ、積リ積ッテ來ルト、サウ云フ所
ニ來ル虞ガアル、必ラズ外地ノ統治ニハ深
甚ニ考ヘナケレバナラヌ、ソコデ何モ私ハ
事ヲ好ンデ辯ジテ居ルノデハナイ、其處ヲ
眞劍ニ一ツ考ヘテ戴キタイ、斯ウ思フノデ
アリマス、何カ御意見ガアリマシタナラバ、
重ネテ承リマスガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/37
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038・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今ノ糖業ニ對
シマスル將來ノ統制、而シテ之ヲシテ出來
ルダケ國策ノ線ニ協力シテ、今日迄ヨリモ
更ニ一層協力サセルト云フコトハ我々モ考
ヘテ居ルノデアリマス、其ノ具體的方策ニ
付キマシテハ、只今私カラ是ト是ト是ダト
云フコトヲ更ニ申上ゲルコトハ致シマセヌ
ガ、只今御述ニナリマシタコトニ、氣持ニ於
キマシテハ私モ左樣同感デ、今後最善ノ力ヲ
致シタイト考ヘルノデアリマス、併シナガ
ラ私カラ申上ゲル迄モナク、臺灣ノ統治ハ
臺灣總督ガ全權ヲ以テ責ニ任ジテ居リマシ
テ、其ノ臺灣ノ糖ニ關スル限リ、十分ナル
責任ヲ以テ是等ノ問題ニ付テ考ヘテ行カナ
ケレバナラヌコトハ申ス迄モナイノデ
アリマスカラ、私ハ唯私ガ申上ゲタダケ
デソレデ御安心下サルコトハナイト思ヒ
マスケレドモ、苟モ其ノ統治ノ任ニ、責任
ノ地位ニ在ル人ハ必ズヤ其ノ人ガドナタデ
アラウトモ、十分ナル考慮ヲ拂ハレルモノ
ト私ハ確信シテ居ル次第デアリマス、併シ
御注意ノ點ハ私ニ於キマシテモ十分考慮ヲ
致ス考デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/38
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039・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 一應私ノ拓務大臣ニ對スル
御質問ハ是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/39
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040・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 拓務大臣ハ衆
議院ノ方へ御用ガアリマシテ、行カレマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/40
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041・松平康春
○子爵松平康春君 只今丸山委員カラ御述
ニナリマシタ通リ、本案ガ提出サレマシテ、
臺灣ノ統治上農民ノ人心ニ及ス心理上ニ影
響ガ大キイト云フコトハ最モ重大ナル點デ
アラウト思ハレルノデゴザイマス、政府ニ
於キマシテハ總理首メ本案ガ惡影響ナシト
御言明ニナッテ居リマスガ、甚ダ簡單デゴザ
イマス、我々トシテハ其ノ實情ニ付キマシ
テモットザックバランナ御話ヲ承リマスレバ、
甚ダ諒解シ易イト存ジマスカラ、政府ノ御
都合ニ依リマシテ、若シモ祕密會ノ方ガ御
都合ガ好ケレバ、祕密會デモ御開キ戴キマ
シテ、打明ケタ御話ヲ承ッテ見タイト存ジ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/41
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042・森岡二朗
○政府委員(森岡二朗君) 島內ニ於ケル本
問題ニ付キマシテノ一般ノ意嚮ト云フコト
デアリマスガ、非常ニ不安ガアルト云フコ
トヲ唱ヘル方モアリ、反對運動モ激シイ、
盛ニヤッテ居ルト云フコトヲ言ハレル方モア
ル譯デアリマス、併シ私共ノ見テ居ル所ニ
於キマシテハ、實際島內ニ於テ此ノ問題ニ
對スル反響ト申シマスカ、反對ニ付キマシ
テハ、實際ヲ見レバ、決シテ今ノ內地デ唱
ヘラレテ居リマスルヤウナコトハナイノデ
ゴザイマシテ、唯私共遺憾ニ存ジマスルコ
トハ、今島內デ是々ハ反對ヲシテ居ルト云
フコトノ方ニ付キマシテハ、實例ヲ假ニア
リトスレバ、此ノ方面ガ反對デアルト云フ
コトヲ具體的ニ擧ゲテ話ヲシ得ル譯デアリ
マスガ、併シ反對ガナイ、不安デナインダ
ト云フコトニ付キマシテハ、具體的ニ斯ウ
云フ風ナ證據ガアルカラ、不安デナイト云
フコトハ容易ニ申上ゲニクイ譯デアリマス、
今日私共ノ色々耳ニ致シテ居リマスル反對
運動者ノ、反對シテ居リマスル者ハ極ク少
數デゴザイマシテ、而モ其ノ少數ノ者ガ大
體ニ於テ內地ニ居住致シテ居ル者ノミガ反
對運動ヲ致シテ居ル譯デアリマシテ、島內
ニ於ケル實情ニ付キマシテハ、實際何ト申
シマシテ宜イカ、私共或ハ之ニ付テ非常ナ
ル反對ガアリハセナイカ、或ハ相當反對シ
ハセチイカ、若シクハ不安ガ來ナイカト云
フコトヲ懸念致シマシタガ、豫想ニ反シタ
ヤウナ狀態デアルノデアリマス、隨ッテ島內
ニ於ケル狀況ニ付キマシテハ、決シテ懸念
スベキ實情ガナイノデアリマス、然ラバ此
ノ反對運動ヲシテ居リマスル者ハドウ云フ
方面ノ者カト云フコトニ付キマシテハ、ソ
レノ反對致シテ居リマス其ノ人達ノ立場、
狀況等ニ付キマシテハ或ハ祕密會ニシテ戴
イタ方ガ結構カト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/42
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043・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) ソレデハ祕密
ニ致シマス
午後二時三十九分祕密會ニ移ル
午後四時五十八分祕密會ヲ終ル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/43
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044・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 祕密會ヲ閉ヂ
そう、今日ハ此ノ程度デ散會致シマシテ、
明日ハ午前十時半カラ開會致シマス
午後三時五十九分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵大隈信常君
副委員長伯爵黑木三次君
委員
侯爵細川護立君
子爵八條隆正君
子爵松平康春君
子爵綾小路護君
松村眞一郞君
永田秀次郞君
男爵稻田昌植君
男爵松田正之君
宮田光雄君
松村義一君
丸山鶴吉君
長岡隆一郞君
松本眞平君
林平四郞君
小林嘉平治君
風間八左衞門君
國務大臣
商工大臣兼拓務大臣八田嘉明君
農林大臣櫻內幸雄君
政府委員
拓務參與官江藤源九郞君
拓務省管理局長副島勝君
拓務省殖產局長植場鐵三君
拓務書記官森重干夫君
臺灣總督府總務長官森岡二朗君
臺灣總督府財務局長嶺田丘造君
臺灣總督府殖產局長田端幸三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X00519390316/44
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