1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十二日（水曜日）午前十時四十二分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/0
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001・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 開會致シマス、
今日ハ豫テ申上ゲタ通リ豪灣米穀移出管理
特別會計法案ノ討論ニ入リタイト思ヒマス
ガ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/1
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002・稻田昌植
○男爵稻田昌植君 討論ニ入リマスノハ一
向異議ハナイノデアリマスガ、今迄ノ委員
會ノ經過ヲ考ヘマシテ、出來マスナラバ此
ノ委員會ヲ滿場一致デ行キタイヤウニ思ヒ
マスノデゴザイマスガ、討議ニ對スル關係
ナドモ考慮致シマシテ出來マスナラバ滿場
一致デ行キタイト思ヒマスノデアリマス
ガ、或ハ此ノ法案ニ對シマシテ多少ノ異議
ヲ持ッテ居ラレル方モアラレルヤニ推測致
シマスノデスガ、皆サンニ御異議ガナケレ
バ僅カノ時間懇談デモ御開キ下サルヤウ御
取計ラヒガ出來マスレバ大變結構ダト思ヒ
マスノデスガ、皆サン其ノ必要ナイト云フ
コトナラバ私ノ動議ハ取消シテモ宜シウゴ
ザイマス、如何デアリマスカ
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/2
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003・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 御贊成者アリ
動議ガ成立シタト思ヒマスガ、然ラバ暫時
懇談ヲ開クコトニ致シマス
午前十時四十三分懇談會ニ移ル
午前十一時一分懇談會ヲ終ル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/3
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004・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) デハ速記ヲ始
メテ下サイ、ソレデハ討論ニ移リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/4
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005・八條隆正
○子爵八條隆正君 私ハ委員皆樣ノ御承知
ノ通リ、昨年設ケラレマシタ臺灣重要產業
調整委員會ノ委員ノ一人デアッタノデアリ
さっ、此處ニモマダ他ニ二三當時委員デオ
イデニナッタ方ガアリマスガ、是等ノ諸君モ
御同樣ト存ジマスガ、前ニ調整委員會ニ於
ギマシテ、私共ハ此ノ臺灣ノ米穀管理案ニ
對シマシテ答申ヲ致シ、贊成ヲ致シテ參ッタ
ノデアリマス、併シナガラ其ノ後數箇月ヲ
閲シテ居リマスルシ、又經濟界ノ事情、時
局ノ關係モ稍〓變化ヲ生ジテ居ルノデアリ
マスルカラ、今囘愈〓特特會計法案ガ提出
セラレマシテ、茲ニ再ビ本案ニ付テノ特別
委員トシテ審議スベキ關係ニ相成リマシタ
ニ付キマシテハ、更ニ本案ニ付テ篤ト檢討
ヲ致ス機會ヲ得タノデアリマス、今日ニ至
リマスル迄八九囘ニ亙リ連日ノ皆樣ノ御熱
心ナル御審議ヲ拜聽致シテ居リマシタノデ
アリマスルガ、其ノ結果矢張リ今日ニ於キ
マシテモ昨年統制委員會ニ於テ答申致シマ
シタル場合ト同樣ニ、此ノ臺灣米ノ移出管
理ニ對シマシテ贊成ヲ致シ、從ッテ此ノ特別
會計法案ニ付テモ贊成ヲ致スモノデアリマ
ス、我々ハ當時特別委員トシテ參加シタノ
デアリマスルガ、今囘ハ又議員トシテ公正
ナル立場ニ於テ再ビ檢討シタ譯デアリマス、
元來此ノ臺灣ハ申ス迄モナク帝國ノ寶庫ト
言ハレテ居リ、高砂島デアルトカ、蓬萊島
デアルトカ前々カラ申シテ居ルノデアリマ
シテ、其ノ天然ノ資源ハ非常ニ多イト云フ
コトハ是ハモウ誰モ異存ノナイ所デアリマ
ス、而シテ今後地下埋藏物、鑛物、石油ノ
如キ、或ハサウ云フモノノ開發、或ハ又工
業ノ開發ノ如キモ今後益、餘餘ガアリ、發
展ノ出來ル見込ガ十分アルト思フノデアリ
さつ、近時總督府ニ於テモ色々鑛物ノ調査
モヤッテ居ラレマス、又工業誘致ニ付テモ相
當努力ヲシテ居ラレルノデアリマス、併シ是
等ノ工業又鑛物關係等ニ付キマシテハ是ハ
又發展ノ極ク〓ニアルノデアリマシテ、今
後ノコトハ分ラヌノデアリマスルガ、從來
何人モ疑ハヌ所ハ此ノ天惠ノ、惠マレタ土
地ニ於キマシテ、農產物等ニ於ケル所ノ資
源デアリマス、此ノ資源ハ帝國ガ臺灣ヲ領
有以來常ニ政府當局ノ努力シテ開發ニ努メ
テ參ラレタ所デアリマシテ、四十有餘年ノ以
前ト今日ト顧ミレバ非常ナル發展デアルト
云フコトハ申ス迄モナイノデアリマス、而シテ
此ノ開發ト云フモノハ、今後引續イテヤラレヌ
ケレバナラズ、又其ノ開發サルベキ餘地ハ非
常ニ多イノデアリマス、是ガ卽チ帝國ノ寶庫
ト皆ガ言フ所デアルノデアリマス、然ルニ臺
灣ニ於テ最モ適シタルモノニ付テ甘蔗、米
作、藷等ノ如キモノガ先ヅ以テ大ニ發達致
シマシテ、非常ナル增產ヲ見ルニ至ッタノデア
リマスガ、今日ニ於テハ此ノ發展シ參ッタ
ル所ノ米穀ノ供給過剩ノ虞ト云フコトカラ
致シマシテ、昭和九年以來內地ノ米穀政策ト
共鳴致シマシテ、其ノ土地ノ開發ト云フモ
ノガ抑ヘラレテ來テ居ルト云フコトデアル
ノデアリマスルガ、此ノ米作ヲ抑制ノ爲ニ
土地ノ生產力ヲ抑ヘテ居ルト云フコトハ單
ニ米作ヲ抑ヘルノミナラズシテ、一般ノ農
作物ノ增產ヲ抑ヘテ參ッタト云フヤウナ結
果ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ米作ヲ
抑制シナケレバナラヌト云フヤウナ時期前
後カラ致シマシテ、ソレニ伴フ代作ノ〓究
モ始ッタ、又奬勵モセラレマシタ、其ノ結果
從來砂糖デアリ、米デアリ、或ハ藷デアッタ、
ソレヲ主トシタモノガ尙〓究スレバ今日ノ
時局ニ於テ最モ必要デアル所ノ國防上或ハ
軍需上カラシテ必要デアル、或ハ國際收支
ノ上カラ良キ影響ヲ齎ラスベキ所ノ物產、
農作物ト云フモノガ段々臺灣ニ於テ出來得
ル餘地ヲ發見セラレタノデアリマス、是等
ノモノヲ今後大イニ開發シテ行カウ、增產
シテ行カウ、增產シテ行カウト云フ爲ニ
面此ノ本案ガ考ヘラレタノデアリマシテ、
而シテ其ノ米作トテモ之ヲ抑制シテ參ル、
將來減產シヨウト云フノデハナイ、此ノ米
ノ問題ハ誠ニ日本ノ食糧問題トシテ重要ナ
ル問題デアリマス、多クテモ少クテモ困ル
ト云フ關係デアルノデアリマシテ、是ハ內
地農林省ト能ク連絡ヲ執リ、協議シテ、サ
ウシテ帝國ノ食糧ニ過不及ナカラシムルヤ
ウニ調整シテ參ラウ、サウシテ餘力ヲ以テ
從來ヨリ必要ナル甘蔗デアリ、藷デアリ、
或ハ新タニ適產物トシテ考ヘラレタル所ノ
有用作物ノ增產ニモ努メヨウ、斯ウ云フ譯
デアルノデアリマシテ、誠ニ時宜ヲ得タル
モノデアル、寧ロ今少シク早ク是等ノ〓究
ガ進ンデ居ッタナラバ今日ノ場合ニ於テ軍
需關係ニ於テ、又國際收支ノ關係ニ於テモツ
トモット我ガ國ト致シマシテハ、都合ノ好カッ
タコトデアルト思フノデアリマスルガ、是
ハ遲レタコトハ致方ガナイ、併シ將來之ニ
對シテ大イニ努力セラレナケレバト云フコ
トデアルノデアリマスルカラシテ、本案ノ計
畫ガ惡カラウ筈ハナイト思フノデアリマス、
之ニ付キマシテ或ハ其ノ餘ノ有用植物ヲ奬
勵スルナラバ何モ農民ニ打擊ヲ與ヘ、二圓
內外ノ頭ヲ刎ネテ、サウシテ本案ヲ實行シ
ナクテモ總督府ノ會計ニ於テ農事ノ奬勵ヲ
ヤッタラ宜イヂヤナイカ、ソレニ依ッテ場合
ニ依ッテハ地租デゴザレ、所得稅デアレ、增稅
シテモ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ御說ガア
ルノデアリマス、併シナガラ考ヘテ見レバ、
ソレハ或ハ相當ノ左樣ナ方法ニ依ッテ奬勵
モ出來ルデアリマセウガ、此ノ稅ニ依ッテ
ノ增稅ト云フコトハ必ズシモ最モ良イ案デ
アルトハ考ヘナイノデアリマス、稅ニ依ッテ
之ヲヤレバ結局ハ矢張リ歸スル所ハ島民ノ
負擔ニナルノデアリマス、島民ノ負擔ナク
シテ財源ヲ發見スルト云フコトハ出來ナイ
ノデアリマス、而モ其ノ租稅ニ依ッテノ負
擔ト云フモノハ轉嫁其ノ他ノ色々ノ關係ニ
於テ果シテ何人ノ負擔ニナルヤラ分ラヌ、
何人ノ負擔ノ下ニ此ノ奬勵ヲヤルト云フコ
トモ分ラナイヤウナ關係ニアルノデアリマ
ス、ノミナラズ此ノ租稅ニ依ル方法ハ其ノ
時其ノ時ノ經濟事情ニ卽シテヤッテ行クト
云フ屈伸力ガナイノデアリマス、一定ノ稅率
ヲ以テ課稅スルト云フコトニナリマスレバ、
經濟事情ノ如何ニ拘ラズ其ノ稅率ニ依ッテ、
其ノ律令ヲ改正セヌ以上ハ其ノ稅率ニ依ツ
テ課稅セヌケレバナラヌト云フ屈伸力ガナ
イト云フコトモ考ヘラレルノデアリマス、又
一面此ノ管理案ハ農家ノ米作ノ上ニ於キマ
シテ生產費ハ如何ナル場合ニ於テモ是ハ保
證シテヤルト云フ保證附ノモノデアリマス
ルガ、租稅ニ於テハ生產費ヲ保證スルト云
フヤウナコトハ加減シ得ナイノデアリマス、
又一面此ノ米價ノ調整ニ依ッテヤッテ行カウ
ト云フコトハ米價ヲ適當ナル位置迄引下ゲ
テ米價ノ適正ヲ圖ッテ行クト云フコトガア
ルノデアリマスガ、租稅ニ於テハ左樣ナコ
トガ出來ナイ、米價ヲ適正ノ位置ニ置イテ
サウシテ他ノ產業ニ對シテ行クト云フコト
ハ、詰リ生產費ヲ或程度引下ゲルト云フヤ
ウナコトニナルノデモアリマス、是ハ生產
費ノ高イト云フコトハ一般產業ノ上ニ於テ
必ズシモ好影響ヲ與フルモノデハナイノデ
アリマス、斯樣ナ關係デアリマスシ、又本
案ニ依レバ、十年間之ヲ實行シテ約八千五
百萬圓ノ保護、奬勵、助成ガ出來ルト云フ
譯ニナッテ居リマスガ、八千五百萬圓ノ收
入ト云フコトニナリマスト、租稅ニ於テモ
相當ノ增稅ニ相成ラヌケレバナラヌノデア
リマス、又此ノ租稅ニ依ル奬勵ダケデハナシ
ニ、米價ノ適正ト云フコトカラ行キマスルト、
兩面カラシテ他ノ有用作物ノ奬勵モ出來ル
ト云フヤウナ關係ニアリマスガ、增稅ト租
稅ト云フヤウナ一般財政方面カラ較ベマス
ト、本案ノ運用ト云フモノノ宜シキヲ得マ
スレバ、誠ニ屈伸力ノアリ、效果ノ多イ案
デアルト思フノデアリマスルノデ、先ヅ增
稅ヨリモ此ノ方法ニ依ッテヤッテ行クノガ宜
カラウト思フノデアリマス、過日ノ豫算委
員會竝ニ本會議ニ於ケル次田君ナリ丸山委
員ノ御說ヲ伺ヒマスト、結局本案ニ對ス
ル論難ノ點ハ二點ニ主トシテ歸スルノデハ
ナイカト思フノデアリマスガ、一ツハ戰時
ノ食糧問題デアリマス、此ノ戰時ノ食糧問
題ノ最モ注意スベキ時期ニ於キマシテ減產
ヲ來スガ如キ方法ヲ實行スルト云フコトハ
時宜ヲ得タルモノデハナイヂヤナイカト云
フ御意見、殊ニ又最近ニ於キマシテハ、農
林當局ト致シマシテハ、內地ニ於キマシテ
モ、朝鮮、臺灣ニ於キマシテモ、增產ヲヤ
ラナケレバナラヌト云フ註文ガ出テ居ル時
ニ於テ、此ノ方法ヲ實行スルト云フコトハ
果シテ農林省ノ期待スル增產ガ出來得ルカ
ドウカト云フ點ガ一ツノ點デアッタト思フ
ノデアリマス、ケレドモ本案ハ決シテ減產
ヲ目標トスルモノデハナイト云フコトハ是
非各位ノ連日ニ亙ル御〓究ニ依リマシテ十
分御了解ニナッタコトト思フノデアリマス、
普通ノ平時的方針ニ依ッテモ十年間ニ於テ
ハ二百餘萬石ノ增產ヲ圖ルト云フコトニナツ
テモ居ル、併シナガラ是ハ大體ノ生產目標
デアリマシテ、時ト場合ニ依ッテハ臨機ノ處
置ヲシナケレバナラヌ、非常時ニ對シテハ、
非常時ノ對策ヲ講ジナケレバナラヌト云フ
コトハ、是ハ固ヨリ當然ノコトデアリマシ
テ、本案ニ付テモ當初ヨリソレハ豫期シテ
居ルコトデアルノデアリマス、卽チ本案ノ
運用ニ當リマシテモ、常ニ農林省ト協議ヲ
致シテ、時々生產需給關係ニ見テ、生產ノ
目標ヲ樹テツヽアルノデアリマス、米ノ增
產ノアル時ニ於キマシテハ、臺灣ニ於テハ
米作ヲ控ヘ、內地ニ於テ米ノ非常ニ不況ナ
場合ニ、凶作ニ際シタ場合ニ於テハ、臺灣
ニ於テ、或ハ朝鮮ニ於テモ、朝鮮ハ問題外
デアリマスガ、臺灣ニ於テハ之ニ卽應シテ
增產ヲ圖ル伸縮自在ノ方法ニ依ッテヤッテ行
カウト云フノガ本案デアルノデアリマス、
唯今日ノ場合戰時ト致シマシテハ此ノ非
常時ニ處スベキ米ノ增產ヲ圖ルベキ場合ガ
先ヅ出テ來タ、斯ウ云フ關係ニアルデア
リマスガ、併シ過日來當局ノ說明ヲ承リマ
スト、其ノ點ニ付テハ相當方法ガアルノデ
アル、先ヅ第一ニ、二十七萬石ト云フモノ
ハ、所謂生產目標ニ依ッテモ、作付段別ノ增
加甲當收穫量ノ增加ノ計畫ニ依ッテ出來
ルト云フコトニナッテ居ル、甲當收穫量ナル
モノハ敢テ無理カラヌ所ノ基礎カラ出テ居
ルノデアリマス、又此ノ五十萬石ノ增產問
題ニ付テハ、是ハ昭和十三年度ノ甲當收穫
量ニ付テ見テモ亦昭和十三年米穀年度ノ收
穫量ニ付テ見テモ、此ノ五十萬石ヲ作ルト
云フコトハ必ズシモ絕對ニ出來ナイコトデ
ハナイ、八十萬石位ノ增產ト云フ數字モ出
ルノデアリマス、固ヨリ米作ノコトデアリ
マスルカラシテ、其ノ時ノ色々ノ災害等ニ
付テモアリマスルカラシテ、確實ニ保證ハ
出來ヌデアリマセウガ、併シ無理ナ空想デ
アルト云フコトニハナッテ居ナイノデアリ
きく、我々ハ此ノ說明ヲ承リマシテ、今日
ニ於ケル增產ナルモノハ必ズシモ無理デナ
イト云フコトヲ信ズルノデアリマス、故
御論ノ中ノ第一點ノ增產問題ニ付テハ、是
ハ先ヅ私トシテハ解消シタコトデアリ、恐
ラク多數ノ方々モ御了解ニ相成ッタコトト
思フノデアリマス、第二ノ點ハ、此ノ問題
ハ臺灣統治ノ上ニ於テ影響ヲ及シヤセヌカ
ト云フ御心配デアルノデアリマスガ、足、
元來過日來委員會ニ於テ御話ノアリマシタ
通リ農民ニ損害ヲ與ヘルト云フモノデハ
ナイ、唯內地ト米穀政策ノ爲ニ非常ニ有利
ナ條件ニ臺灣ノ農家ハ相成ッテ居ル、內地ノ
農民ノ收入カラ見レバ、ヨリ以上ニ大キナ
收入ヲ得ツヽアルノデアル、ソレヲ一部ヲ
割イテ此ノ有用作物ノ增產ニ充テヨウ、獎
勵ニ充テヨウト云フ趣旨ナノデアリマシ
テ、決シテ臺灣農民ヲ苦メルト云フ譯デハ
ナイノデアリマス、無論其ノ考ヘ方ニ依リ
マシテハ、米價ト云フモノハ時ニ依ッテ非
常ニ高低ガアルモノデアル、デアリマスル
カラシテ、二圓程度ノ米價引下ト云フモ
ノハ、或一二年ノ間米價低落ノ場合ニ遭遇
シタモノデアルト考ヘレバ何デモナイ話デ
アル、現ニ統計表ヲ見マシテモ一年前ト
一年後トデハ非常ニ米價ニ差ガアルノデ
アリマス、考ヘ方ニ依ッテハ大シタ苦痛デハ
ナイ、今年ハ米ガ廉カッタナアト思ヘバ、ソ
レダケノコトデアルト言ヒ得ルノデアリマ
ス、唯無論今年ハ幾ラスルノニ是ダケシカ
入ラナカッタト云フ風ニ考ヘマスレバ、ソレ
ハ收入ノ減少ニナルデアリマセウ、ソレト
テモ只今申スヤウニ損害ヲ與ヘラレタト云
フ意味デハナイノデアリマス、況ヤ共ノ米
價ノ廉カッタ差額ハ何カト言ヘバ自分達ノ
農業ノ奬勵開發ノ爲ニ用ヒラレルノデアル
ト云フコトニナリマスレバ、本來ハ、農民
ニシテ自覺致シテ居リマシタナラバ、自ラ
ソレ位ノモノハ收入ノ中カラ貯蓄ヲ致シテ
農事ノ改良ニ力ヲ致スベキモノデハナイデ
アリマセウカ、併シナガラ農民ハ過渡期ニ
アッテハ個人々々ノ利害カラ左樣ナコトモ
出來ナイ場合モアル、故ニ總督府ニ於テ之
ヲ統一シテ全島ニ對シテ改良施設ヲヤラウ、
斯ウ云フコトナノデアリマスカラシテ、結
局ハ農民ノ利益ニ相成ルト云フコトハ言フ
迄モナイノデアリマス、而シテ本案實施ノ
結果ハドウデアルカト斯ウ考ヘマスト、尙
二圓程度ノ引下ガアリマシタ所デ、內地ノ
農民カラ見レバ收入ハ大キイ、少クトモ少
クハナイト云フヤウナコトデアルノデアリ
マスシ、又從來ハ米價ノ、ドウ云フモノカ
臺灣ニ於テハ特ニ騰落ガ激シイノデアリマ
スルガ、ソレガ騰落ト云フ危險ガナクナル、
常ニ米ノ作付前ニ於テオ前ノ作ル米ハ幾ラ
デ買ッテヤルノダト云フコトヲ發表サレル
ノデアリマスカラシテ、安心シテ農家ハ米
作ニ從事スルコトガ出來ルノデアリマス、
而シテ最モ惡イ條件ノ時ニ於テ生產費ヲ割
ルト云フ時ニハ、生產費ヲ割ラナイヤウニ
シテ貰ヘルノデアル、又今後ハ奬勵助長ノ
方法ニ依リマシテ、農業ノ多角化、集約化
ニ依ッテ收入ハ增加シ得ルト云フ樂シミガ
アルノデアリマス、斯クノ如ク本案ト云フ
モノハ農業ノ經濟ノ安定ニモナリ、向上ト
云フヤウナ結果ヲ齎ス、ノデアリマシテ、經
濟觀念ノ强イ臺灣島民ハ能ク此ノ點ハ理解
シ得ラレルコトデアラウト存ズルノデアリ
マス、一視同仁ト云フコトヲ申シマスレバ、
誠ニ其ノ點ハ耳ニ入リ易イノデアリマスガ、
併シ考ヘテ見レバ內地ノ農家ノ收入ト云フ
モノハ臺灣ノ農家ノ收入ヨリモ少イ、又臺
灣ノ方デハ內地ノ米穀政策ノ爲ニ困ッテ、利
益ヲ得テ居ルノデアルト云フヤウナコトニ
ナレバ、一面ニ內地ノ農民カラ言ヘバ矢張
リ不滿ガアリ得ルノデアリマス、是等ヲ寧
ロ或意味ニ於テ臺灣ト內地ニ於キマシテノ
農民ノ收入ガ近似シタル所ニ置クト云フコ
トガ公平ナ考デアルノヂヤナイカト云フヤ
ウナ考モナシ得ルノデアリマス、デアリマ
スカラシテ、差別待遇ヲ彼此云爲スルト云
フコトハ餘リ必要ノナイ、寧ロ本案實施ニ
依ッテ一視同仁ノ趣意ガ內外地ヲ通ジテ徹
底スルノデハナイカ、斯樣ニ考ヘラレルノ
デアリマス、惟フニ臺灣ガ希國ノ領土ニナ
リマシタ以來、帝國ハ常ニ臺灣ノ開發ヲ圖
リ、臺灣農民ノ福利增進ト云フコトハ最モ
念トシテ來タ所デアリ、島民ヲ愛撫シテ來
テ居ルノデアリマス、是ハ四十餘年ノ歷史
ニ徵シテ明カナル所デアルノデアリマス、
之ガ爲ニ臺灣ノ產業ノ發展ハ今日ノ隆昌ヲ
致シタノデアリマシテ、島民ノ蒙リタル皇
恩ト云フモノハ誠ニ深イノデアリマス、現
ニ各種ノ產業ニ付テ見マシテモ、其ノ生產額
ハ統計表ニ依レバ明治三十五年ニ、七千百
萬圓デアッタ、ソレガ昭和十二年ニ於テハ八
億五千二百萬圓ト云フ十二割ノ增加ニ相成ツ
テ居ル、農業ダケニ付キマシテモ、明治三
十五年ニ五千六百萬圓ニ留ッタモノガ、昭和
十二年ニハ四億二百萬圓デアリマシテ、詰
リ七割ノ增加ヲ來シテ居ル、是皆帝國ノ方
針トシテ臺灣ノ開發ニ努メタ結果デアリマ
ス、是ハ何人ガ其ノ利益ヲ得タカト申シマ
スレバ、歸スル所臺灣ノ島民ガ此ノ利益
ニ與ッテ居ルモノデアルト思ハヌケレ
バナラヌ、斯クノ如キ方針デ進ミ參ッタ
帝國ハ何ガ故ニ今日ニ於テ其ノ方針ヲ一變
シテ、差別待遇ヲシ、一視同仁主義ヲ棄テ
テ島民ヲ苦シメルガ如キ政策ヲ執ルデアリ
マセウカ、左樣ナコトハ考ヘルコトガ出來
ナイノデアリマス、況ヤ過日モ松村義一サ
ンノ仰セラレタ通リ、目下支那事變ノ途中
デアリマス、支那ニ於ケル人心收攬ヲ考ヘ
ヌケレバナラヌ時ニ於テ、本案ヲ實行スル
ト云フコトハ面白クナイデハナイカ、斯ウ
云フヤウナ一種ノ御意見デアッタノデアリ
やく、此ノ場合ニモ拘ラズ、敢テ本案ヲ實
行サレムトスルモノハ、卽チ是ガ臺灣島民
ノ永遠ノ利益、福利增進ニナルト云フコト
カラ考ヘラレマシテ、之ヲ實行セムトセラ
ルヽモノデアルト思フノデアリマス、臺灣
島民モ決シテ愚者デハアリマセヌ、殊ニ經
濟觀念ハ强イ人々デアルノデアリマスカラ
シテ、此ノ法案ノ實施ノ結果ニ付テハ、十
分理解スルモノダラウト思フノデアリマス、
而シテ總督府當局ニ於テモ之ニ付テハ相當
理解セシメルヤウニ努力スルト申シテ居ラ
レルノデアリマス、又理解サセナケレバ其
ノ責任ヲ如何セム、若シヤ理解セナイ者ガ
一人デモアッタ場合ニ於テハ總督府ノ責任
ニナルノデアリマスカラシテ、飽ク迄モ恐ラ
ク言ハナイデモ理解ニ努メラルヽト云フコ
トハ察スルニ難クナイノデアリマス、又此
ノ本案ガ假ニ良イトシテモ今日ノ時期ニ於
テ之ヲ實行スルノハ面白クナイデハナイカ、
延期シテモ宜イデハナイカト云フヤウナ御
意見モ出テ居ルノデアリマス、其ノ意味ニ
ハ先程ノ支那ノ人心ヲ收攬スルト云フコトニ
付テノ御意見モアリマセウシ、又目下〓
究······將來更ニ實行セムトスル所ノ日滿支
ノ經濟連環、長期建設ト云フヤウナコトニ連
關シテ御意見モアルデアリマセウ、日滿支
ニ於テ愈〓〓今後ノ長期建設ニ掛ル場合ニハ、
今日臺灣ニ於テドウ云フ風ナ產業ヲ發展セ
シメタラ宜イカ、今日ノ計畫ガ他日變更ヲ
來サヌケレバナラヌト云フヤウナ場合モア
ルカモ知レヌデハナイカト云フヤウナコト
ヲ考へ得ルノデアリマスガ、併シ兎ニ角臺
灣ノ土地ノ生產力ヲ增加シ改良ヲ圖ッテ行
クト云フコトハ、如何ナル場合ニ於テモ是ハ
必要ナコトデアリマス、米ハ滿洲ニ於テ澤山
作レルカラ滿洲ニ於テ作ッタラ宜イデハナ
イカ、砂糖ハ海南島ニ於テ作リ得ラレル、
ヨリ以上ニ適地デアルカラシテ、海南島ニ
於テヤッタラ宜イデハナイカ、又棉ハ中南
支ニ於テヤッタラ宜イデハナイカ、臺灣ニ
於テ左樣ナ心配ヲスル必要ガナイト云フコ
トニナリマスレバ、其ノ結果ハドウデアリ
マセウカ、米ニシテモ滿洲ニ於テ作レバ內
地デ米ハ作ラヌデモ宜イト云フヤウナコト
ニモナリマセウ、ソレト同ジ理窟デアリマ
シテ、出來得ルナラバ、臺灣ニ於テ棉ヲ作
ルモ宜シ、砂糖ハ依然トシテ增產ヲ圖ルモ
宜シ、兎ニ角日滿支ノ問題ガ愈〓ヤリ得ル時
期ガ來タナラバ、更ニ能ク再檢討ヲ致シマ
シテ適地適作ヲヤリ、ソレ〓〓ノ分擔ヲ決
メレバソレデ宜シイノデアラウト思フ、
日モ早ク臺灣ハ臺灣トシテ、有用作物ノ調
整開發、發展ヲ助長ヲ致スト云フコトガ
急務デアラウト思フノデアリマス、況ヤ支
那事變ノ解決ハ何時ニナルカ分ラヌノデア
リマスカラシテソレヲポカント待ッテ居ル
ト云フ譯ニモ行カヌデアラウト存ジマス、
デアリマスカラシテヤリ得ル時ニハ早速速
カニ方針ヲ立テテ實行ニ移ルト云フコトハ
宜カラウト思フノデアリマス、斯樣ナ意味
ニ於キマシテ、私ハ臺灣米ノ移出管理ト云
フコトニ付キマシテ、共鳴ヲ致シ贊成ヲ致ス
者デアリマス、更ニ過日來此ノ特別會計法案
ニ付キマシテノ御議論ガアリマシタ、斯樣ナ
モノガ宜イニシテモ此ノ特別會計法ハ要ラ
ナイノヂヤナイカ、或ハ是ハ會計法ニ違反
シテ居ルト云フ風ニハ思ハヌ、ソコ迄ハ斷言
セナイガ必要ハナイデハナイカト云フヤウ
ナ御意見ガアッタノデアリマスルガ、私ハ矢
張リ特別會計法ヲ設ケタ方ガ宜イト考ヘル
ノデアリマス、兎ニ角移出管理ニ依ッテ米
ノ買上、賣渡ト云フヤウナ仕事ヲヤルノニ、
總督府ノ會計ノ中ニ繰込ンデ】ヤッテ混同セ
シムルト云フコトハ面白クナイト思フノデ
アリマス、殊ニ又況ヤ積立金ヲ作ル、或
損失準備ノ爲ニ積立ヲスルトカ云フガ如キ
コトガアルノデアリマスルノデ、之ヲ總督
府ノ會計ト混同シテヤッテシマフト云フコ
トハ會計法ヲ紊亂スルモノデアルト思フノ
デアリマス、卽チ本會計法案ヲ設置セムト
スルモノハ、會計法ノ所謂特別ノ須要ノア
ルモノト思フノデアリマス、寧ロ特別會計
法ヲ設置スルノガ當然デアルト思フノデア
リマス、更ニ又此ノ特別會計ノ豫算ヲ見レ
バ、其ノ中ニ人件費ガアリ俸給ヲ澤山喰ッテ
居ル、農民カラシテ米價ヲ引下ゲテ頭ヲ刎
ネテ置イテ官吏ノ俸給ニナルト云フヤウナ
コトデハ感情上宜クナイ、斯樣ナ御意見モー
アリマシタガ、苟モ或事業ヲヤルト云フ上
ニ於キマシテハ人件費ハ自然伴ッテ參ルノ
デアル、米ノ管理ヲヤルト云フコトニナレ
バ、管理ニ伴フテ、各種ノ施設調査事務ト
云フヤウナモノガアレバ、自ラ之ニ付テハ
人件費ヲ伴フト云フコトハ已ムヲ得ヌノ
デアリマス、家ヲ建テルノニ材料ダケ持ツ
テ來テ是デ家ヲ建テルト云フ譯ニ行カ
又、設計者モ要レバ職人モ要ル、報酬モヤ
ラヌケレバナラヌシ、賃銀モ要ル、人件費
ノ附キ纏フコトハ是ハ當然ノコトデアル、
是ハ總督府ニ於テ臺灣米ノ移出管理ヲヤラ
ナクッテ現在ノ狀態ニ於テ農民ガ米ヲ作ル、
而シテソレヲ市場ニ持出ス迄ノ間ニ於キマ
シテハ、幾多ノ中間ノ機關ヲ經ナケレバナ
ラヌ、其ノ機構ニ於テハ色々ナ費用ガ取ラ
レル、ソレニ付テハ人件費ニ相當スルモノ
モアルダラウト思フノデアリマス、故ニ之
ヲ以テ本會計法カラ支出スルト云フコトハ
イケイト云フ御論ハ少シク御無理デハナイ
カト思フノデアリマス、斯樣ナ理由ニ依リ
マシテ、私ハ元來ノ根本タル所ノ臺灣米ノ
移出管理其ノモノニ贊成致スノミナラズ此
ノ特別會計法案ニ對シマシテモ、贊成ヲ致ス
モノデアリマス、私ハ左樣ナ意味ニ於キマ
シテ無條件ニ本案ヲ贊成ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/5
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006・松村義一
○松村義一君 私ハ本臺灣米穀移出管理特
別會計法案ニ遺憾ナガラ反對ノ意ヲ表スル
モノデゴザイマス、ソレハ臺灣ノ米穀ヲ移
出管理ヲスルト云フ其ノ根本問題ガ政策上
極メテ不可デアル、イケナイ、斯樣ニ考ヘ
マスルカラデゴザイマス、先ヅ第一ニ申上
ゲナケレバナラヌノハ、過日來本委員會ニ
於キマシテ色々質問應答ガ行ハレマシタ、
而シテ政府當局ノ答辯ヲ見マスルト、同ジ
問題ニ對シマシテ其ノ答ガ時ニ依リ折々觸
レテ變ッテ居ルノデゴザイマス、矛盾撞著ガ
アルノデアリマス、私共ガ舞踊會ニ參リマ
シテ、暗ガリノ舞臺デ踊ヲ踊リマス踊リ子
ノ著物ガ、時ニハ赤クナリ時ニハ靑クナル
ト云フヤウニ、同ジモノガ赤クナリ靑ク
ナッテ變ッテ參リマスヤウニ、總督府政府當
局ノ御答ハ、時ニハ赤色ヲ示シ、時ニハ靑
色ヲ示シテ來ルノデゴザイマス、其ノ舞踊
ヲ見ルヤウナ感ヲ致シマシタ、唯舞踊會ノ
著物ノ色ノ變化ハ立派デアル、ソシテ私共
ニ快感ヲ與ヘマスルガ、政府當局ノ本案ニ
對スル御答ハ極メテ醜ク見苦シイト云フ感
ジヲ與ヘマシテ、私共ニ不快ナ感ヲ與ヘル
ト云フ差ガアルダケデゴザイマス、何ガ故ニ
當局ノ答辯ガ同ジ問題ニ對シテ相異ナリ、
矛盾撞著ヲ來スカ、此ノ事實ハ皆樣先日來
目前ニ御經驗ヲ遊バシタ通リデゴザイマス、
何ガ故ニ斯クノ如キ結果ヲ來スカト申シマ
スルト、當局ハ案ヲ出シタ以上ハ是非之ヲ通
シタイ、其ノ一生懸命ノ御努力ノ結果デゴ
ザイマス、併シナガラ肝腎ノ案ガソコニ弱
イ點ガアル、肝腎ノ案ガ惡イノデアル、跪
弱ナル惡イ案ヲ通サウト思ッテ努力ヲナサ
イマスカラ、ソコニサウ云フ矛盾撞著ガ生
ズルノデアル、是ハ明カナル事實ト思フノ
デゴザイマス、尙政府、臺灣總督府當局ハ、
先日モ質問ノ際ニ申上ゲマシタヤウニ、本
案ヲ審議スルニ當リマシテ、臺灣ニ於キマ
シテ非常ニ言論壓迫ヲシテ居ラレル、又反
對的一切ノ行動ニ付テ嚴重ニ取締ヲシ、壓
迫ヲシテ居ルノデアリマス、臺灣本島ノミ
ナラズ、內地ニ於キマシテモ言論ノ壓迫ヲ
シテ居リマス、サウシテ反對運動ヲ抑壓ヲ
シテオイデニナル、是ハ事實デアルノデゴ
ザイマスガ、斯ウ云フコトヲセラレマシタ
ト云フコトガ、矢張リ本案ノ脆弱性ヲ示ス
モノデナク何デゴザイマセウカ、質問應答
ノ際ニ於ケル矛盾撞著、案ノ審議ノ際ニ於
ケル言論ノ壓迫、其ノ他反對行動ノ抑壓ト
云フコトハ、卽チ案ノ跪弱性ヲ示スモノニ
外ナラヌノデゴザイマス、內容ニ付テ申上
ゲマスレバ、今日事變ニ際シマシテ、政府
ハ〓糧ノ確保ニ對シテ銳意努力ヲシテ居ラ
レルノデゴザイマス、今日我々ハ著ル物ニ
付テモ不自由ヲシナケレバナラヌ、住フ家
ニ對シテモ不自由ヲシナケレバナラヌ、唯
食糧ニ對シテハ比較的安固デアルノデアリ
マスガ、此ノ食糧ヲ一層確保スルト云フコ
トハ、長期建設ヲ目スル我ガ國、長期建設
ヲ目指シテ行ク我ガ國トシテ、最モ留意シ
ナケレバナラヌ點デアルコトハ申ス迄モゴ
ザイマセヌ、而シテ米穀ノ需要ハ幾分デモ
增シテ居ルヤウデゴザイマスルカラ、一層
之ニ對シテ供給ヲ確保スルト云フ政策ニ出
ヅルコトハ當然デナケレバナラヌト思フノ
デゴザイマス、カルガ故ニ農林當局ニ於キ
マシテハ、內地外地ヲ通ジテ約六百萬石ノ
增收ヲ計畫シテ居ル、今日肥料ハ足リマセ
又、勞力モ足リマセヌ、畜力モ足リマセヌ、
此ノ際ニ於キマシテ出來ルダケ增產計畫ヲ
スル、ト云フ政策ハ極メテ適切デナケレバ
ナラヌノデゴザイマス、其ノ增產計畫ヲシ
テモ尙不安デアルト云フ譯デ、萬一更ニ米ガ
非常ニ減收ヲスルト云フコトヲ憂慮シテ、
サウ云フ場合ハ來リハセヌカト云フコトヲ
憂慮シテ、米穀配給統制案迄出シテオイデ
ニナルノデアリマス、此ノ際ニ於キマシテ
熱ト光ニ惠マレテ居ル臺灣ニ於キマシテ米
穀ノ增收ヲ抑制ヲスル、或ハ減收ニナルカ
モ知ラヌト云フ此ノ案ヲ御立テニナリマス
ルト云フコトハ、明カニ矛盾デナケレバナ
ラナイノデアリマス、本案ハ減收ヲ策スル
モノデナイ、米穀ノ生產ヲ抑制スルモノデ
ナイト云フコトハ、是ハロデ言ハレルダケ
ノ話デアッテ、本案ノ目的ガ米作偏重ヲ矯メ
ルト云フコトデアリマスカラ、是ハ無論抑
制デナケレバナラヌノデゴザイマス、政府
ニ於キマシテ增產計畫ヲ立テマシタ際、寧
ロ慌テテ本移出管理案ヲ策スルト同時ニ、別
ニ五十萬石ノ增產ヲ臺灣デ策セラレタト云
フコトモ其ノ結果デアッテ、其ノ五十萬石ノ
增產ヲ策スルト云フコトハ臺灣自身カラ考
ヘマスト云フト、本案トハ矢張リ矛盾撞著
デアル、一方ニ於テ米穀ノ生產ヲ抑制スル、
米作偏重ヲ矯メルト言ヒナガラ、又五十萬
石ノ增產ヲ策スルト云フコトハ臺灣總督府
自身ダッテ予盾撞著ガアルト言ハナケレバ
ナラヌ、其ノ外細カク色々論ジマスレバ、
論ズル點ハ澤山アルト思フノデアリマス、
私ハ大體ノコトダケヲ申上ゲルニ止メルノ
デゴザイマスガ、本案ガ臺灣島民ノ心理ニ
及ス影響デゴザイマス、從ッテ臺灣統治ニ及
ス影響デゴザイマス、現實ニ米一石ニ付テ
二圓ヲ減額スル、斯ウ云フコトヲシナガラ、
將來斯ウ云フ策ヲシテ農家ノ安定ヲ圖ルト
云フヤウナコトヲ申シマシテモ、現實ニ二
圓ヲ減ジナガラ、ドウシテ島民ヲ滿足セシ
ムルコトガ出來ルデゴザイマセウ、私ハ斷
ジテ出來ヌト思フノデゴザイマス、本案自
體ガ農民全體カラ申シマスレバ、先達テ質
問ノ際申上ゲマシタヤウニ、千五六百萬圓
ノ損失ヲ來スモノデアル、現實ニサウデア
ル、ソレガサウシナガラ島民ヲ滿足セシ
メル、島民ヲ理解セシメルト云フコト
ハ、迚モ出來ルコトデハナイト思フノデ
ゴザイマス、先程八條子爵ノ御話デ、二
圓位ノコトハ、其ノ位米ガ下ッタト思ヘバ
諦メガ付クヂヤナイカ、斯ウ云フ御話デ
ゴザイマシタケレドモ、實際取引關係ニ
於キマシテ二圓下ッタラ、自然下ッタラソレ
ハ仕方ガナイ、併シナガラ特ニ總督府當局ノ
作意ニ依ッテ二圓ヲ下ゲマシタト云フコト
ニ依ッテ、ドウシテ左樣ニ簡單ニ諦メガ付ク
デアリマセウカ、私ハ斷ジテ付カヌト思フ、
殊ニ先達テ丸山君ガ質問ヲセラレタノデア
リマスガ、丁度調査資料ガ此處ニアル、其
ノ資料ヲ見マスト、內地米ノ生產費ニ對ス
ル利益率ト臺灣米ノ利益ノ狀況トヲ比較シ
テ見マスト云フト、現實ノ問題ハ昭和十一
年、十二年、十三年ニ亙リマシテ、一番少
イ時ハ其ノ差ガ六十何錢シカナイ、三年ヲ
平均致シマシテ、內地ヨリハ臺灣ノ方ガ利
益ノ額ガ一圓二十幾錢ニシカナラナイ、是
ハ現實ニ調ベタノデアリマス、現實ニ一圓
二十幾錢ニシカナラナイ、ソレヲ二圓下ゲ
ルト云フコトハ、決シテ島民ニ理解ヲサセ
ルコトハ出來ナイト思フノデアリマス、總
督府當局ハ別ニ有利性トカ云フヤウナコト
ヲ書イテ、ソレニ依ルト云フト二圓以上ノ
差ガアルノダ、斯ウ云フコトヲ說明シテ居
ラレマスガ、是ハ机ノ上ノ計算デアル、二圓
幾ラト云フノハ机ノ上ノ計算デアル、一圓二
十何錢ト云フノハ現實ニ懐ニ入ルカ入ラヌ
カト云フ問題デアルノデアリマス、斯クノ
如キ問題デアリマスカラ農民ニ理解ガ行ク
筈ハナイト私ハ思フ、先達テモ總理大臣ニ
質問ヲ申上ゲマシタガ、島民ガ本當ニ理解
ヲスルト云フコトデアリマスナラバ、私共
モサウ强ク本案ニ反對シナクテモ宜イ、併
シナガラ理解ノ出來ナイ問題デアル、殊ニ
總理大臣ニ質問ヲ申上ゲマス際ニ私ハ數點
ヲ擧ゲマシテ、總理大臣ハ理解サヘスレバ
ソレデ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フヤウナ御
話デゴザイマシタガ、斯ウ云フ點ハ理解ノ
出來ヌ點ヂヤゴザイマセヌガト云フコトヲ
質問シタノデアリマスガ、其ノ際ニ總理大
臣ノ御答ハ、松村ノ言フ所ハ、ソレハ成ル
程理解ヲ困難ナラシムル狀況ニ違ヒハナイ、
併シナガラ臺灣ノ當局ガ一生懸命努力ヲ
スレバ理解ガ出來ルデアラウ、斯ウ云フ御
答デアッタノデゴザイマス、併シナガラ幾ラ
努力ヲシテモ理解ノ出來ナイヤウナ性質ノ問
題デアリ、理解ノ出來ナイヤウナ事情ハ澤
山重ッテ居リマスナラバ理解ハ出來ヌト言ハ
ナケレバナリマセヌ、「ナポレオン」ハ不可
能ト云フ言葉ハ馬鹿ナ者ノ辭書ニアルト言
ハレタ、不可能ト云フコトハ苟モ賢明ナル
者ハ考フベキコトデナイ、斯ウ云フコトヲ
申シテ居リマス、是ハ一ツノ意氣トシテハ立
派ナ意氣デアル、併シナガラ出來ナイヤウ
ナ仕組ヲシテ置イテ、サウシテ出來ルヤウ
ニスルコトハソレハ無理ナコトデアル、機關
車ヲ造ルニ當ッテハ、後ノ方ヘダケ行クヤウ
ナ仕組ガシテアルヤウニ之ヲ造ッテ、サウシ
テ之ヲ前ニ進マセヨウト思ッテ幾ラ努力ヲ
致シマシタ所デソレハ出來ルモノデナイ、
本當ニ理解ヲセシメヨウト思ヒマスナラバ、
理解ヲセシムルヤウナ案ヲ作ラナケレバイ
ケナイ、理解ヲセシムルヤウニ總テノ事情
ヲサウ向ケテ行カナケレバナラヌ、然ルニ
モ拘ラズ、本案ハ理解ノ出來ナイヤウナ案
デアルト同時ニ、是ハ理解ノ出來ナイヤウ
ナ事情ヲ澤山御作リニナッテ居ル、斯クノ如
ク考ヘマスル時ニ私ハ國家ノ爲ニ出來ルダ
ケ總督府當局ガ臺灣島民ヲ理解セシメルヤ
ウニ御努メナサルコトヲ希望致シマスケレ
ドモ、併シ出來ヌコトデアル、無理ナコトデ
アル、サウスルト其處ニ壓迫ガ始ル、壓迫
ガ始ルト云フト一層島民ノ信賴ヲ失フコト
ニ相成ル、斯樣ニ考ヘザルヲ得ヌノデアリ
やく、臺灣島民ニ對シテ本案ガ惡イ影響ヲ
與ヘ、臺灣島民ノ信賴ヲ失フコトニナルト「チマシテ、
云フコトニナリマスルト、先達テ私總理大
臣ニ對シテモ御質問申上ゲマシタヤウニ、
必ズヤ同ジ人種デアル支那人ニ對シテ其ノ
反響ガ必ズナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、是ハ自然ノ理デアリマス、抑壓セム
トシテ抑壓ノ出來ナイコトデアルト考ヘナ
ケレバナラヌノデゴザイマス、斯クノ如ク
ニナリマスルト、先達テモ申上ゲマシタ通
リ、我ガ國民ハ有ラユル犠牲ヲ拂ッテ日支聖
戰ニ從事シテ居ルノデアリマスガ、此ノ聖
戰ノ目的ハ心カラノ日支親善ヲ得ルト云フ
コトニアル、然ルニ此ノ日支親善ヲ得ルト
云フ此ノ日支聖戰ノ目的ニ乖離スルコト
ニ相成ル、私ハ是ハ如何ニモ殘念千萬ダ
ト思ハナケレバナラヌノデゴザイマス、
政府當局ノ御說明ニ依リマスレバ、此ノ案
ハ時局ニ際シテ色々有用ナ作物ヲ作ルノ
デアル、從ッテ時局上必要ナ案デアル、斯ウ
仰シヤイマスガ、私ハ反對ナノデアリマス、
時局ニ際シテ極メテ惡イ影響ヲ及ス案デア
ルト思フノデゴザイマス、固ヨリ有用作物
ヲ澤山作ルト云フコトハ必要デゴザイマス、
併シナガラ此ノ案ニ依ラナクテモ有用作物
ハ出來ルト私ハ思フ、奬勵金ヲ出シテ行ケ
バ樂ニ出來ルコトデアル、以上ノ理由ヲ以
私ハ此ノ現時ニ際シマシテ、本
案ハ非常ニ國家ノ爲ニ憂慮ニ堪ヘヌ案デア
ルト云フコトヲ、斷言セザルヲ得ヌ、殊
永久ノ案ト致シマシテモ、固ヨリ不可デゴ
ザリマスルガ、此ノ時局ニ對シテハ最モ惡
イ影響ヲ及ス案タルコトヲ心カラ憂ヘザル
ヲ得ヌノデゴザイマス、以上ノ理由ニ依リ
マシテ、國家ノ爲ニ、遺憾ナガラ本案ニ對
シテ反對セザルヲ得ヌノデゴザイマス、以
上ガ私ノ反對ノ本旨デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/6
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007・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 本員ハ本法案ニ贊成ヲ致
ス者デアリマス、贊成ノ理由ニ付キマシテ
ハ、最早質疑應答及ビ討論ノ際ニ盡クサレ
テ居リマスルカラ、申述ベマセヌ、唯本員
一個ノ希望ヲ開陳致シマス、一、本法ノ實
施ニ當リテハ、極力其ノ趣旨ノ徹底ヲ期シ、
農民ノ不安ヲ一掃スルヤウ努ムルコト、速
カニ糖業ノ合理的統制ヲ圖リ、糖業偏重ノ
疑ナカラシムルコト、一、管理米買上價格
ノ決定ヲ愼重ニシ、臺灣島民永久ノ福利ヲ
圖ルコト、其ノ理由ニ付キマシテハ、自ラ
明カデアリマスル通リ、當然ノコトヲ當然
ニ申上ゲタコトト思ヒマスルカラ、說明ハ
省キマス、是ハ繰返シテ申シマスルガ、本
員一個ノ希望トシテ、委員長ノ御考慮ニ止
メテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/7
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008・丸山鶴吉
○九山鶴吉君 私モ本案ニハ、遺憾ナガラ同
意致シ難イノデアリマス、反對ノ理由ニ付
キマシテハ、只今松村委員ヨリ縷々精神ヲ
籠メテ御述ニナリマシタコトト全ク同樣デ
アリマシテ、是以上私ハ繰返シテ申上ゲル
コトハ避ケタイト思フノデアリマス、時局
柄、此ノ案ガ實施サレマスコトハ、誠ニ國
家ノ爲ニ憂慮ニ堪ヘナイト思フノデアリマ
ス、殊ニ此ノ案ノ全貌ヲ縱ンバ是認スルト
致シマシテモ、先日來質問ノ際ニ屢〓申上ゲ
タコトデハアリマスガ、臺灣ニ於ケル一部ノ
農民、米作農民ノ負據ニ依ッテ、米作農民ノミ
ノ負擔ニ依ッテ、此ノコトヲ實行ナサラウト
云フ、其處ノ根本ニ、ドウシテモ不正デアリ
不當デアル事實ガアルト思ハレルノデアリ
やっく、何故モウ少シ突キ進ンデ、臺灣全體
ノ產業發展ノ爲デアルト云フコトナラバ、
一部ノ米作農民ダケノ犠牲ヲ强ヒル此ノ案
ヲ御作リニナルカ、ドウシテモ私共ハ了解ニ
苦シムノデアリマス、只今松村委員ヨリ御
述ニナリマシタヤウニ、農民ノ理解ヲ得ル
コトノ困難デアル所ハ、其ノ根本ガ其處ニ
由來スルヤウニ考ヘ得ラレルノデアリマス、
遺憾ナガラ此ノ法案ニ贊成ヲスルコトハ出
來マセヌ、反對ノ意思ヲ表明スル次第デア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/8
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009・小林嘉平治
○小林嘉平治君 私ハ時間モ切迫致シテ
居リマスノデ、發言ヲ見合セタイト思ウテ
居ッタノデアリマスルガ、殊ニ先刻來ノ反對
ノ御議論ニ對シテハ、八條委員カラ前以テ
微ニ入リ細ニ入ッテ詳シク御示ニナッテ居リ
マスルノデ、其ノ筆記ヲ御覽下スッタナラ
バ、其處ニ反對ノ理由ノ成立セヌコトヲ御認
メ下サルコトト感ジテ居ルノデアリマス、
併シ唯此處ニ色々ノ形容詞ヲ御使ヒニナッ
テ居ルヤウデアリマスガ、サウ云フコトニ
付テハ私ハ彼此申上ゲマセヌガ、具體的ニ
申上ゲテ置カヌナラヌコトハ、只今ノ丸山
委員ノ發言ニ對シテデアリマス、最後ニ結
論トシテ御話ニナッタ、大體ニ此ノ案ガ良イ
トシテモ、一部ノ農民ノ負擔ニ依ッテ、此ノ
農事ノ改良ノ事業ニ御金ヲ支出サセルト云
フコトガ間違ウテ居ルト云フ御話ニ付テデ
アリマス、御說御尤モデアリマシテ、是ハ誤
解ヲヨクスル人ガアルノデアリマス、ソレデ
アリマスカラシテ、私ハ此ノ間主張シテ置イタ
ヤウニ、此ノ臺灣ノ今日米ガ値上リヲシテ來
タト云フコトハ、內地ノ米穀政策ノ餘慶デ
アル、若シ此ノ內地ノ米穀統制法ガナクシテ、
今玆ニ一億數千萬圓ヲ損失シテ居ル、私カ
ラ見ルト損失ト云ウテ居ラヌガ······兎ニ角
經費ヲ使ッテ居ル、サウシテ米價ヲ維持シ
來ッタ、其ノ結果ガ確カニ臺灣米ニ大ナル影
響ヲ及シテ居ル、是ハ誰シモ否定スルコト
ノ出來ナイ事實デアリマス、サウスレバ、
假リニ玆ニ今ノ移出管理ヲ爲サレル時ニ二
圓內外ノ御金ヲ御取リニナッテ、十年間ニ
至三六、相當八千萬圓カラノ御金ヲ御取リ
ニナルコトノ計畫ニハナッテ居リマスガ、其
ノ御金ハ今ノ內地ニ於ケル此ノ米穀政策ノ
爲ニ損失ヲ致シテ居ル一億數千萬圓ヲ特別
會計ニ御入レ爲サイ、ソレガ理論トシテ成
立スルノデアリマシテ、私此ノ主張ガ丸山
サンニシテ貰ヒタイノデアリマス、而カモ
ソレヲ爲サズシテ、其ノ臺灣ノ農民カラシ
テ得タ所ノ御金ヲ、其ノ儘農事改良ニ使ウ
ノデアル、是ハ非常ニ其ノ苦心ノ存スル點
デアリマシテ、臺灣總督ニ於テモ、所謂農
民ニ對シテ非常ニ考慮ヲ拂ハレテ、所謂
視同仁ノ心持ヲ其處ニ汲ミ取ラレ、親心デ
是ハ爲シタコトデアル、其ノ點ヲ誤解サレ
ルヤウデアルト、私ハ如何ニ臺灣島民ニ此
ノ管理法ヲ說キ示サウト言ッタッテ、ソレハ
イカヌト思フ、是ハ大事ナ問題デアリマスカ
ラシテ、此ノ點ヲハッキリ私ハ申上ゲテ置キ
タイノデアリマス、要スルニ私ハ此ノ間松
村サンナリ丸山サンハ、御自身ニハ此ノ案
ノ精神ナリ制度ハ、能ク腹ニ入ッテ居ル、併
シ臺灣島民ニハ誤解スルデアラウカラト云
フ意味デ御心配下サッテ居ルト思ッテ居ッタ
ノニ、焉ンゾ知ラヌ今日ニ至ッテモアヽ云
フドウモ議論ヲナスッテ居ラレルト云フコ
トハ了解ニ苦シムノデアリマシテ、ソレハ
全ク最初ニ松村サンノ御話ニナッタ、此ノ管
理法ト云フモノガイカヌノデアル、斯ウ云
フ前提ノ下ニ御話ニナリマシタ、而モ御議
論ノ中ニハ、此ノ管理法ハ何ガ故ニイカヌ
カト云フコトヲ少シモ御說明ナサラヌ、此
處ニ病ノ因ガアルノデアリマシテ、私ハ若
シ其ノイカヌト云フ理由ヲ御示ニナレバ私
ハ又誠ニ結構ナ是ハ法案デアルト云フコト
ヲ說明申上ゲマス、ケレドモサウ云フ議論
ヲシテ皆樣ヲ苦シメルコトモ如何カト思ヒ
マスノデ、是ハ私ハ差控ヘテ置キマス、問
題ガコンナ風ニナッテ來マスト云フト、
春秋ノ筆法ヲ以テスルト、臺灣島民ニ、何
ト云ヒマスカ、不安ヲ與フルモノハト、斯
ウ云フ風ナコトヲ結論ヲ言ハナケレバナラ
ヌヤウナコトニナッテ來マスノデ、ドウカ一
ツ御互ニ言論ヲ愼重ニ致シタイト思フノデ
アリマス、本會議ニ斯ウ云フ議論ガ出マシ
タナラバ、私ハ再ビ起ッテ、一ツ誤解ノナイ
ヤウニ致シタイト思ッテ居ル、マア委員會ハ
此ノ程度ニ止メテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/9
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010・宮田光雄
○宮田光雄君 ソレデハ討論ハ此ノ程度
デ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/10
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011・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) モウ御發言ガ
ナ。ケレバ採決ニ入リタイト思ヒマス、反對
ノ御議論モアリマシタヤウデスガ、此ノ案
ヲ否トスル御方ノ擧手ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス
〔擧手者少數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/11
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012・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 少數ト看做シ
そく、可トスル御方ノ擧手ヲ願ヒタウゴザ
イマス
〔擧手者多數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/12
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013・大隈信常
○委員長(侯爵大隈信常君) 多數デゴザイ
やく、多數ヲ以テ此ノ案ハ可決ヲ致シマシ
ク、數日ニ亙ッテ熱心ナル御察議ヲ賜ッタコ
トヲ感謝致シマス、之ヲ以テ散會致シマス
午後零時十三分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵大隈信常君
副委員長伯傳黑木三次君
委員
侯爵細川護立君
子爵八條隆正君
子爵松平康春君
子爵綾小路護君
松村眞一郞君
男爵稻田昌植君
男爵松田正之君
宮田光雄君
松村義一君
丸山鶴吉君
長岡隆一郞君
松本眞平君
林平四郞君
小林嘉平治君
風間八左衞門君
國務大臣
商工大臣兼拓務大臣八田嘉明君
政府委員
臺灣總督府總務長官森岡二朗君
臺灣總督府財務局長嶺田丘造君
臺灣總督府殖產局長田端幸三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007402177X01019390322/13
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