1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
保險業法改正法律案
—————————————————————
委員氏名
委員長 伯爵 樺山愛輔君
副委員長 男爵 矢吹省三君
公爵 山縣有道君
侯爵 淺野長之君
子爵 梅小路定行君
子爵 曾我祐邦君
子爵 上原七之助君
仁井田益太郎君
男爵 伊藤文吉君
男爵 中村謙一君
山岡萬之助君
下出民義君
藤原銀次郎君
大藪守治君
大和田健三郎君
—————————————————————
昭和十四年三月十一日(土曜日)午前十時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=0
-
001・樺山愛輔
○員員長(伯爵樺山愛輔君) ソレデハ是カ
ラ會議ヲ始メマス大臣ニ此ノ提案ノ理由
ノ大體ヲ一ツ御說明戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=1
-
002・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今議題ニナツ
テ居リマスル保險業法改正法律案ニ付キマシ
テハ、本會議ニ於テ簡略ナガラ提案ノ趣旨
竝ニ其ノ經過ニ付キマシテ申上ゲタノデア
リマスルケレドモ、更ニ本委員會ニ於キマ
シテ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲタイト思フ
ノデアリマス、提案ノ理由ト致シマシテハ
之ヲ大別致シマシテ二ツニナルノデアリマ
ス、卽チ第一ニハ商法ノ改正ニ伴ヒマシテ、
商法ノ準用規定其ノ他ニ付テ自然改正ノ必
要ヲ生ジマシタルコトデアリマス、第二ニ
ハ保險事業自體ノ發達ニ對應致シマシテ、
監督指導ノ方策ヲ整備スルノ必要ヲ生ジマ
シタ、此ノ二點デアルノデアリマス、先ヅ
第一ノ點ニ付テ申上ゲマスルガ、保險業法
ハ相互會社ニ關スル規定其ノ他ニ依リマシ
テ、商法ノ總則竝ニ會社編中ノ多數ノ規定
ヲ準用シ、或ハ之ニ對スル特則ト見ラレル
モノヲ設ケテ居ルノデアリマス、其ノ條數
ハ凡ソ二百條ニモ及ブノデアリマス、然ル
ニ御承知ノ通リ商法中、此ノ保險業法ト極
メテ密切ナル關聯ヲ持チマスル總則及會社
編ノ部分ニ付キマシテハ、前議會ニ於キマ
シテ相當改正ヲ行ハレマシタノデアリマ
ス、而シテ此ノ改正法律ハ、大體來年ノ
月一日カラ之ヲ施行スル豫定ヲ以テ、目下
諸般ノ準備ヲ進メラレテ居ルコトハ御承知
ノ通リデアルノデアリマス、從ヒマシテ保
險業法ト商法トノ調和ヲ保チ、之ヲ支障ナ
ク施行シテ參リマスル爲ニハ、是非共之ニ
關スル改正ニ付キマシテ、本議會ニ於テ御
審議ヲ願ハナクテハナラナイノデアリマス、
次ニ第二ノ點ニ付テ申上ゲマスルガ、先日
本會議ニ於テモ申上ゲマシタル如グ、現行
保險業法ハ明治三十三年ノ制定ニ係リ、制
定以來實ニ四十年ヲ經過致シテ居ルノデア
リマスルガ、其ノ間明治四十五年、昭和二
年及昭和八年ニソレ〓〓部分的ノ補正ヲ加
ヘタニ止ッタノデアリマシテ、現在ノ如ク發
展シテ參リマシタ保險事業ニ對シマシテ、
十分ナル監督指導ヲ加へテ行キマスル上ニ
不備ノ點ガ少クナイノデアリマス、ソコデ
政府ニ於キマシテハ、此ノ改正ノ重要性ニ
鑑ミマシテ、特ニ之ガ改正調査ノ爲ニ朝野
ノ權威者ヲ煩ハシマシテ、保險業法改正調
査委員會ヲ設ケテ、之ニ對シマシテ保險業
法中改正ヲ必要ト致シマスル事項如何ニ付
キ諮問致シマシタル處、委員會ハ十數囘ニ
亙ッテ會合ヲ開カレ愼重審議セラレマシタ
ル結果、昭和十三年十一月十日滿場一致ヲ
以テ之ニ對スル答申ト致シマシテ「保險業法
改正ノ要綱」ナルモノヲ議決セラレタノデア
リマス、政府ニ於キマシテハ此ノ答申事項
ヲ悉ク適切ナルモノト認メマシテ、之ヲ採
用致シマシタ次第デアリマス、是ガ今囘改
正案ノ主タル內容ヲ成スモノデアリマス、
今其ノ主ナルモノヲ列擧致シテ見マスルト
第一ニハ、事業ノ經營ヲシテ一層適正ナラ
シムルヤウニ監督命令ニ關スル規定ヲ整備
シ、又基礎書類ノ變更命令ニ關スル規定ヲ
設ケマシタルコト、第二ニハ、不當ノ競爭
ヲ防止シ、事業ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲、
事業ノ統制協定ニ關スル規定ヲ設ケマシ
タルコト、第三ニハ、役員ニ關スル規
定ヲ整備シ、又保險計理人ニ關スル規定ヲ
設ケマシタルコト、第四ニハ、會社ノ資產
內容ノ堅實ヲ期スルガ爲、財產ノ評價ニ關
スル規定ヲ整備致シマシタルコト、第五.ニ
ハ、業績不良ニ陷リマシタル會社ニ對シ有
效適切ナル救濟又ハ改善ノ手段ヲ講ジ、保
險契約者ノ利益ヲ保護致シマスルガ爲、
會社間ノ契約ニ依ル事業ノ管理ニ關スル規
定及合併、事業ノ管理、契約移轉ノ勸告ニ
關スル規定ヲ設ケマシタルコト、更ニ是等
ノ方法ヲ以テドウシテモ目的ヲ達スルコト
ガ出來ヌ場合、保險契約者保護ノ爲最後的
手段ト致シマシテ、事業ノ管理及契約ノ移
轉命令ニ關スル規定ヲ設ケマシタルコト、
第六ニハ、會社ノ合併及契約ノ移轉ノ手續
ヲ簡易ニシ、又株式會社ノ相互化、株式會
社ト相互會社トノ合併ニ關スル規定ヲ設ケ
マシタコト、第七ニハ、保險契約者ノ優先
權ニ關スル規定ヲ整備致シマシタルコト等
デアリマス、以上ハ何レモ委員會ノ答申ノ
趣旨ニ基イテ設ケタ規定デゴザイマスルガ、
之ニ二三ノ附隨的改正ヲ加ヘ、又從來章、
節ノ分チ方ニ多少ノ不明確ナルモノガアリ
マシタノデ、是等ノ點ニ付キマシテモ考慮
ヲ加ヘマシテ、本改正案ヲ作成致シタ次第
デアリマス、其ノ他詳細ノ點ニ付キマシテ
ハ政府委員ヨリ十分ニ御說明ヲ申上ゲマス
凡七、要スルニ今囘ノ改正ハ只今申述べマ
シタルヤウナ必要ニ基クモノデアリマシテ、
之ニ依ッテ我ガ國ノ保險事業ノ一層ノ向上
ヲ促シ、其ノ健全ナル發展ニ資スル所ガ少
クナイデアラウト考ヘマス、何卒十分御審
議ノ上本案ノ通過ニ付キ御協力アランコト
ヲ切望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=2
-
003・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 之ニ引續キマシ
テ、政府委員ヨリ一層此ノ內容ニ付テ御說
明ヲ願ヒタイト考ヘテ居リマスルカラ、何
カ特ニ大臣ニ御質問デモナケレバ、豫算總
會ヲ引受ケテ居ラレマスカラ、是デ大臣ハ
退カレマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=3
-
004・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 保險業法改正法律
案ノ〓要ニ付キマシテ御說明申上ゲタイト
存ジマス、此ノ點ニ付キマシテハ只今商工
大臣ヨリ申上ゲタノデゴザイマスガ、稍
詳細ニ亙ッテ其ノ補足ヲ試ミタイト考ヘマ
ス、就キマシテハ今囘ノ改正ノ要點ヲ列擧
シマシタ保險業法改正法律案要旨ト云フノ
ヲ御手許ニ差上ゲテゴザイマス、保險業法
改正法律案要旨ト法律案トヲ御覽ヲ願ヒマ
シテ、之ニ基キマシテ順次御說明ヲ申上ゲ
タイト存ジマス、第一ハ、監督命令ニ關ス
ル規定ヲ整備シ會社ノ業務又ハ財產ノ狀況
ニ依リ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
ルモノトスルコトデアリマス、現行法ニ於
キマシテハ會社ノ事業ノ繼續困難ナル場合
ノ外ハ、主務大臣ハ單ニ會社ニ對シテ事業
方法書、其ノ他ノ所謂基礎書類ニ從ハシム
ル爲ノ命令ヲ爲スコトガ出來ルニ止マルノ
デアリマス、矢張リ銀行法トカ、其ノ他一
般ノ監督法規ト同樣ニ、玆ニ揭ゲマシタ趣
旨ノ一般的監督命令ノ規定ヲ置ク必要ガア
ラウト云フ趣旨デゴザイマス、是ハ法案ニ
於キマシテハ第九條ニ規定ヲ致シテ居リマ
ス、其ノ中業務執行ノ方法ト申シマスノハ、
基礎書類ノ範圍內ニ於キマシテ、具體的ノ
業務ノ方法ヲ指シテ居ルノデゴザイマス、
財產ノ供託ト申シマスノハ、財產ノ散逸ス
ルヤウナ虞ノアル場合ニ執ルベキ手段デゴ
ザイマス、其ノ他監督上必要ナル命令ガ何
デアルカハ箇々ノ場合ニ定マルト云フ外ハ
アリマセヌガ、是モ一般ノ監督法規ト同樣ニ
上ニ例示致シタモノ、其ノ他監督上必要ナル
命令ト云フ譯デアリマシテ、自カラ或程度ノ
制約ヲ受クルノデアリマス、無制限ニ何デ
モヤレルト云フ意味デハゴザイマセヌ、第
二ハ、基礎書類ノ變更命令ニ關スル規定ヲ
設ケタルコトト、基礎書類ノ變更アリタル
場合ニ特ニ必要アリト認ムル時ハ、其ノ效
力ヲ既契約ニ及サシムルコトヲ得ルモノト
シタコトデアリマス、保險會社ハ基礎書類
ニ從ッテ事業ヲ經營セネバナラヌコトニナッテ
居リマス、而シテ會社ノ事業方法書、普通
保險約款、其ノ他ノ諸書類ハ事業經營ノ基
デ礎ヲ成スモノデアリマス、免許申請ノ際添
附書類ト致シマシテ認可ヲ受ケタモノデア
リマスガ、一旦認可シタ、基礎書類ト雖モ、
會社內外ノ事情ノ變更ニ依リマシテ保險契
約者ノ利益ヲ保護スル爲メ等、必要ナル場
合ニ於キマシテハ其ノ變更ヲ命ジ得ルモノ
トスル趣旨デアリマス、是ガ第一項ノ意義
デゴザイマシテ、法案デハ第十條ノ第二項
ニナッテ居リマス、其ノ中、保險會社ノ業務
若シクハ財產ノ狀況ニ依リト云フノハ、例
ヘバ或會社ニ於キマシテ、死亡ノ成績ガ著
シク惡イ、サウ云フ場合ニ、被保險者ノ選
擇ノ方法ヲ特ニ嚴重ニ致サセマスナド、主
トシテ原因ガ箇々ノ會社內ニ存スル場合ヲ
指シテ居リマス、之ニ對シマシテ事情ノ變
更ニ依リト云フ方ハ、主トシテ一般的原因、
例ヘバ死亡率ノ變遷ニ依リマシテ、死亡表
ノ變更等ヲ爲ス場合ヲ指スノデアリマス、
次ニ第二ノ第二項ハ、基礎書類ノ變更ノ效
力ヲ旣契約ニ及スト云フ規定デアリマシテ、
卽チ變更ノアッタ場合ニ、既契約ハ其ノ影
響ヲ受ケナイモノトスル、サウ云フコトガ
保險契約者全體ノ公平ヲ旨トスル保險ノ性
質上適當デナイト云フヤウナ場合ヲ指スノ
デアリマス、法案ニ於キマシテハ第十條第
三項ガ是デアリマス、是ハ會社ノ自發的申
請ニ依ル場合ト、第二項ノ命令ニ依ッテ變更
ノ申請ヲ爲シタ場合トノ兩方ノ場合ヲ含ン
デ居リマス、例ヘバ解約ノ場合ニ於ケル拂
戾金ノ額ヲ增加シタ時、サウ云フ場合ニ既
契約ニモ其ノ效力ヲ及ス必要ノアル場合ガ
アルノデゴザイマス、第三ハ、事業經營ニ
關スル統制協定ニ付テ規定ヲ設ケタコトデ
アリマス、保險ニ於キマシテモ適當テル限
度ニ於ケル自由競爭ハ事業ノ改善向上ヲ助
ケマシテ、其ノ健全ナル發展ヲ促スモノ
デアリマスガ、併シナガラ是ガ餘リニ激シ
クナリマスト、事業費ヲ濫費シ合フトカ、
或ハ保險數理ヲ無視シテ保險料ノ割引ヲ行
フヤウナ結果ヲ生ジマシテ、又他ノ會社ノ
契約ヲ解約セシメテ、自己ノ會社ニ乘リ替
ヘシメル、所謂契約ノ掠奪ト云フヤウナ弊
害ヲ生ジマシテ、保險契約者ノ利益ヲ害シ、
事業ノ健全ナル發達ヲ阻碍スルニ至リマス
ルコトハ御承知ノ通リデアリマス、本條ハ
斯樣ナ不當ノ競爭ヲ防止シ、事業ノ健全ナ
ル發達ニ資セシムル爲、場合ニ依リマシテ
當業者ノ統制協定ニ、一定ノ公法的結果ヲ
與ヘルコトニ依リマシテ、之ヲシテ權威ア
ラシメ、又特別ノ必要ノアル場合ニハ、進
ンデ當業者ヲシテ協定ヲ結バシメヨウト云
フ趣旨ニ出ヅルノデアリマス、第一項ノ中、
命令ノ定ムル所ニ依リト云フノハ其ノ屆出
ヅベキ協定ノ種類、竝ニ其ノ屆出ノ期限等
ヲ命令デ定メルト云フダケノ意味デゴザイ
マス、第四ハ、役員ノ解任命令ニ關スル規
定ヲ整備シ、常務役員ノ兼業ノ認可ニ關ス
ル規定ヲ設ケタコトデアリマス、前段ハ法
案デハ第十二條デゴザイマス、現行法ニ於
キマシテハ役員ノ解任ヲ命ジ得ル場合ガ銀
行法ニ比較致シマシテ多少狹クナッテ居リ
マス、從ッテ是ト同程度ニ擴ゲヨウト云フ趣
旨デアリマス、次ニ後段ハ法案ノ第六條デゴザ
イマシテ、常務重役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ
常務ニ從事スル場合ニ、認可ヲ受ケシメヨ
ウトスル趣旨デゴザイマス、如何ナル場合ニ
認可ヲシナイカト云フコトハ、結局箇々ノ場合
ニ於テ決定スル譯デゴザイマスガ、例ヘバ株
式取引員タル會社ノ常務ニ從事スル場合等
ハ問題ニナル場合ガアルノデハナイカト
考ヘラレマス、第五ハ、生命保險會社ハ保險
計理人「アクチユアリー」ヲ置クコトヲ要ス
ルモノトシマシテ、且其ノ資格及職責ニ關
スル規定ヲ設ケタルコトデアリマス、法案
デハ第八十九條ト九十條ガソレニナッテ居
リマス、生命保險ニ於ケル責任準備金其ノ
他ノ計算ニ付キマシテハ、特殊ノ高等數學
及保險學ノ知識ヲ必要ト致シマス、又其ノ
計算ニ誤ノ無イコトガ會社ノ業務上極メテ
重要デアリマスコトハ御承知ノ通リデアリ
やっく、而シテ此ノ專門的知識ノ必要及責任
ノ重要性ハ事業ノ發達ニ伴ヒマシテ益〓多キ
ヲ加ヘテ參リマシタノデ、今囘ノ改正ニ於
キマシテハ事業發展ノ現狀ニ鑑ミマシテ、
業界內外ノ要望ニ卽應致シマシテ、保險計
理人ニ關スル規定ヲ設ケマシタ次第デゴザ
イマス、次ニ第八十九條第一項ノ規定ニ依
ル命令ニ於キマシテハ、保險計理人タルベ
キ者ノ資格ヲ定メ得ルノデアリマス、之二
付キマシテハ一定ノ學歷若シクハ一定ノ實
務經歷、或ハ主務大臣ガ是ト同等ノ實力ア
リト認定シタモノヲ目指スト同時ニ、實狀
ニ卽應致シマシテ標準ヲ設ケル考デゴザイ
マス、尙附則ノ第百六十四條ヲ以テ經過規
定ヲ設ケテ居ル譯デゴザイマス、第六ハ、
公社債ノ評價ニ關シ、均等利廻評價法
「アモーチゼーシヨン」法ヲ採用シタル
コトデアリマス、是ハ公社債ニ付キマシ
テ、之ヲ取得致シマシテカラ其ノ償還ヲ受
クルニ至ル時迄、常ニ一定ノ利廻ヲ保タシ
メツヽ且償還ニ際シテ、損失ヲ生ジナイヤ
ウニ評價スル方法デアリマス、保險會社ノ
ヤウニ財產利用ノ方法トシテ長期間ニ亙ツ
テ、公社債ヲ所有スルモノニ於キマシテ
ハ、此ノ評價方法ガ理論上及實際上適當デ
アルト認メラレマスノデ、今囘之ヲ採用致
シマシタ次第デアリマス、法案ノ第八十四
條ガ是デゴザイマス、如何ナル公社債ニ付
テ之ヲ認メルカハ命令ヲ以テ定メルコトニ
ナッテ居リマスガ、別段ノ支障ノ無イ限リハ
出來得ル限リ廣ク之ヲ認メル考デゴザイマ
ス、又評價ノ具體的ノ方法ニ付キマシテ命
令ヲ以テ之ヲ定メルコトニ相成ッテ居リマス、
第七、財產ノ評價益及賣却益ノ積立制度ニ
關スル規定ヲ設ケタルコトデアリマス、財
產ノ評價益、賣却益ノヤウナモノハ、財
產ノ價格ノ變動ニ依ッテ生ジタ利益デゴザ
イマシテ、臨時的性質ヲ有スルモノデアリ
マスシ、又反對ニ財產ノ低落ニ依リマシテ、
評價損、賣却損ヲ生ズルコトヲ免レナイコ
トハ過去ノ實驗ノ示ス所デゴザイマス、從
ヒマシテ精密ナル統計的基礎ニ基キマシテ、
長期ニ亙ッテ事業ヲ營ンデ行ク保險事業ニ
於キマシテハ、斯カル利益ハ積極的ニ利益
ノ財源トシテ考ヘズ、社內ニ留保スルコト
ニ依リマシテ、資產內容ノ充實ヲ圖リ、將
來ノ反動ニ備ヘシメルコトヲ原則トスルト
云フノガ本條ノ立法趣旨デアリマス、現セ
多クノ會社ニ於キマシテハ、此ノ方法ニ依
リマシテ決算ヲ行ッテ居ラレルノデゴザイ
マス、併シナガラ會社ノ決算上ノ餘裕等ニ
依リマシテハ、常ニ必ズシモ之ヲ强制スル
コトノ出來ナイヤウナ場合モ考ヘラレマス
ノデ、事情ニ依ッテハ認可ヲ受ケテ之ヲ緩和
スル途モ開カレテ居ルノデゴザイマス、是
ハ法案デハ第八十六條、第八十七條デゴザ
イマス、第八ハ、會社間ノ契約ヲ以テ會社
ノ業務及財產ノ管理ノ委託ヲ爲スコトヲ得
ル旨ノ規定ヲ設ケタルコトデゴザイマス、
保險會社ノ事業ノ成績ガ思ハシクナイヤウ
ナ場合、經營者ガ自ラ其ノ信用ノ不足、經
營技術ノ缺陷等ヲ自覺致シマシテ、一應其
ノ會社ノ經營ヲ他ノ信用アル會社ニ委任致
シマシテ、暫ク自ハ退イテ事業ノ推移ヲ靜
觀致シマシタ上ニ、會社ノ將來ニ付テ善處
シヨウトスルヤウナ場合モ豫想シ得ラレル
譯デアリマス、又將來外國會社ガ日本內地
ニ於キマシテ新契約ヲ取ルコトヲ止メタヤ
ウナ場合ニ、其ノ保有契約ノ管理方法トシ
テ或ハ內國會社ニ於キマシテモ合併、契約
ノ移轉等ノ過渡的手段ト致シマシテ、實際
上之ニ類似ノ制度ノ行ハレテ居ル實例モア
リマスノデ、今囘之ヲ法文ノ上ニ明カニス
ルト同時ニ、第三者ノ保護其ノ他ノ爲ニ必
要ト認メラルヽ規定ヲ置イタ次第デゴザイ
マス、法文ニ於テハ第九十二條乃至第九十
八條ガ之ニナッテ居リマス、第九ハ、會社ヲシ
テ合併、業務及財產ノ管理ノ委託又ハ契約
ノ移轉ヲ行ハシムルヲ適當ト認ムル時ハ、
會社ニ對シテ之ヲ勸告スルコトヲ得ル
旨ノ規定ヲ設ケタコトデアリマス、保險會
社ノ事業成績及之ニ對スル信用ハ、多クノ
場合ニ於キマシテ上昇或ハ下降等、一ノシー
傾向ヲ示スモノデアリマシテ、業績ノ不良
或ハ破綻ニ陷ル會社ハ、多クノ場合數年モ
前カラ其ノ徵候ヲ現スモノデアリマス、固
ヨリ經營者ハ斯カルコトノナイヤウニ努力
セラレルノデアリマスガ、不幸ニ致シマシ
テ漸次悲運ニ陷ル傾向ヲ示シテ參リマシタ
ヤウナ場合ニハ、前途ノ大勢ヲ見透カシマ
シテ、相成ベクハ任意ノ方法ニ依ッテ早期ニ
合併、移轉等ヲ行ヒマシテ、禍ヲ未然ニ防
止致シマスルコトガ保險契約者、會社經營
者雙方ニ取ッテノ利益デアルコトハ云フ迄
モナク、保險事業全體ノ爲ニモ寧ロ策ノ得
タルモノデアラウト考ヘル次第デアリマス、
從來カラモ事實上當局者カラ斯カル事ヲ勸
メタリ、或ハ任意ノ合併、契約ノ移轉等ヲ
指導シタ事例ハ少クナイノデアリマスガ、
今囘之ヲ法文化スルコトニ依リマシテ一層
其ノ手續ヲ愼重ニシ、當局トシテノ責任ア
ル意見ト致シマシテ之ヲ行ハウトスル趣旨
デアリマス、又從來ハ例ヘバ會社ノ實際ノ
經營ヲ擔當シテ居ル役員ナゾハ、大勢ノ不
可ナルヲ察シマシタ場合ニモ、大株主等ニ
對シテ十分ノ諒解ガ得ラレナカッタ場合モ
考ヘラレタノデアリマスガ、斯樣ナ點モ勸
告ヲ法文化スルコトニ依リマシテ、餘程圓
滑ニナルモノト考ヘマス、又勸告セラル
コトニ依ッテ、會社ノ信用ヲ脅サレルコト
ハナイカト云フ懸念ノ懷カレル向モアルヤ
ウデアリマスガ、從來ト雖モ此ノ種祕密ハ
嚴重ニ守ラレタノデアリマシテ、今後モ此
ノ點ハ從來同樣嚴格ニ祕密ヲ守リ、外部ニ
漏レルコトノナイヤウニ留意ヲ致ス考デア
リマス、又猶勸告ヲ聽カナイ場合トハ別ニ制
裁ハゴザイマセヌ、法案デハ第九十九條ガ
ソレニナッテ居リマス、第十ハ、會社ノ事業
ノ繼續困難ノ場合、又ハ事業ノ繼續不適當
ノ場合ノ處置デアリマス、前段ハ會社ガ採
算上既ニ自立シ得ザル場合デアリマス、後
段ハ旣ニ信用ヲ失ヒマシテ、事業ノ成績ガ
著シク惡イ場合デゴザイマス、一言ニシテ
申上ゲマスレバ、保險契約者ノ利益ヲ害シ
テ居ル場合デアリ、且解約又ハ失效ニ依リ
マシテ人々ニ非常ナ迷惑ヲ掛ケテ居ル場合
デアリマス、斯カル場合ニ於キマシテモ、
必ズシモ直チニ事業ノ繼續困難ニ迄ハ陷ラ
ヌ場合モアルノデアリマス、是等ノ場合ニ
於テ有效適切ナル救濟手段ヲ講ジマシテ、
保險契約者ノ保護ヲ圖ラウトスルノガ第十
ノ趣旨デアリマシテ、法案デハ第百條ニナッ
テ居リマス、第十一ハ、主務大臣ノ命令ニ
依ル業務及財產ノ管理ヲ圓滑ニ遂行シテ行
クニ付テ、必要ナル事項ヲ規定シタノデゴ
ザイマス、卽チ其ノ一ハ、保險管理人ハ主
務大臣之ヲ任免シ、又保險會社ガ正當ノ事
由ナクシテ保險管理人タルコトヲ拒ムコト
ヲ得ナイノデアリマス、正當ノ事由ト申シ
マスノハ、例ヘバ管理ヲ遂行シテ行クニ必
要ナ能力ヲ缺イテ居ルヤウナ場合等デアリ
マス、其ノ二パ、必要ニ依リ管理ヲ受クル
會社ノ保險契約ノ內容ニ變更ヲ加ヘマシテ
モ、極力管理ヲ遂行シテ行カウト云フ趣旨
デアリマス、其ノ三ハ、保險會社保險管理
人タル時ハ管理ヲ受ケル會社ヲ合併シ、或
ハ其ノ契約ヲ引受ケル途ヲ開イタノデゴザ
イマス、以上法案ニ於キマシテハ第百一條
乃至第百六條ニ規定スル所デゴザイマス、
第十二ハ、主務大臣ノ命令ニ依ル契約ノ移
轉ノ手續デアリマス、其ノ一ハ、契約ノ移
轉ニ關スル協議ニ付テノ規定デゴザイマシ
テ、此ノ協議ガ、任意ノ移轉ノ場合ニ於ケル移
轉契約ニ相當スルモノト考ヘテ居ルノデア
リマス、協議ノ相手方ハ、之ヲ任意ニ選擇セ
シムルコトニ依ッテ、種々ノ弊害ヲ生ズル
ヤウナ場合ヲ考ヘラレマスノデ、斯カル場
合ニハ主務大臣ガ豫メ之ヲ指定スルモノト
致シマシタ、其ノ他ノ場合ニハ協議スベ
キ相手方ニ付テ認可ヲ受ケシムルコトト
シタノデゴザイマス、其ノ二乃至其ノ四ハ
契約ノ移轉ヲ圓滑ニ進行セシメ、且移轉ヲ
受ケル會社ノ保險契約者ノ利益ヲ保護スル
趣旨ノ規定デアリマス、其ノ五ハ、協議不
調ノ場合等ニ於キマシテ、主務大臣ノ決定
ニ依リマシテ移轉命令ノ貫徹ヲ圖ラウト云
フ趣旨デアリマス、以上ハ法案ニ於キマシ
テハ第百二十一條乃至第百二十六條デ規定
シテ居リマス、尙其ノ中主務大臣ノ決定ニ
付キマシテハ、第百二十四條ニ於テ豫メ各
會社ノ意見ヲ徵スルコトトシマシテ、其ノ
他勅令ニ依リマシテ、決定ノ手續方法等ヲ
規定スルコトトシテ居リマス、第十三ハ、
會社ノ合併及契約ノ移轉ノ手續ヲ簡易ニシ
タルコトデアリマシテ、保險契約者竝ニ
般債權者ニ對スル公〓及ビ異議ノ催告期間
ヲ短縮致シマシタコト、契約ノ移轉ニ付テ
ハ移轉決議ノ認可ニ關スル規定ヲ削除致
シマシタコトナドデゴザイマス、法案デハ
第十八條、第百十二條及第百二十八條デア
リマス、第十四ハ、株式會社ハ其ノ組織ヲ
變更シマシテ、之ヲ相互會社ト爲スコトヲ
得ル旨ノ規定ヲ設ケタコトデアリマシテ、
法案ノ第十九條乃至第三十一條ニ其ノ手續
ヲ規定シテ居リマス、保險會社、特ニ生命
保險會社ニ於キマシテハ、特ニ會社ノ基礎
ガ確立致シマシタ後ニ於テ株主及保險契約
者ノ總意ニ依リマシテ之ヲ相互化スル途ヲ
開イタノデアリマス、而シテ此ノ組織變更
ハ、之ヲ株主及會社債權者ノ側カラ見マス
ルト、謂ハバ資本減少ノ最モ極端ナ場合ニ
類似致シマスシ、又之ヲ保險契約者ノ側カ
ラ見マスルト、寧ロ相互會社ノ設立ニ近イモ
ノト考ヘルコトガ出來マスカラ、大體此ノ
ヤウナ考ヘ方ヲ基礎ト致シマシテ、外國ノ立
法例等ヲモ參酌致シマシテ其ノ手續ヲ規定
致シタノデアリマス、尙株式會社ノ相互化
ノ制度ノミヲ置イタコトハ、特ニ相互組織
ト株式組織トノ間ニ優劣ノ差ヲ認メタノデ
ハナイノデアリマシテ、適正ニ經營セラレ
マスルニ於キマシテハ、孰レノ組織ヲ採リマ
シテモ別段支障ハ無イト考ヘテ居ル譯デ
アリマス、第十五ハ、株式會社、相互會社
間ノ合併ニ關スル規定ヲ設ケタルコトデア
リマス、株式會社ト相互會社トノ間ニハ、
從來保險契約ノ移轉ノ途ハ開カレテ居ッタ
ノデアリマスガ、尙合併ヲ認メルコトニ依
リマシテ煩瑣ナル〓算手續ヲ免レルコトガ
出來ル等ノ實益ガアリマス、之ニ關シタ規
定ヲ設ケタ譯デアリマス、法案ニ於キマシ
テハ第百三十條ト第百三十一條ニナッテ居
リマス、第十六ハ、保險契約者ノ優先權ヲ
シテ其ノ實ヲ擧ゲシムルニ十分ナラシムル
ヤウ之ニ關スル規定ヲ整備シタルコトデア
リマス、從來此ノ優先權ノ效力ガ不明確デ
アリマシテ、又實效ヲ擧ゲ得ナイ憾ガアリ
マシタノデ、之ヲ整備シタノデアリマス、
法案デハ第三十二條ト第三十三條ガ是デア
リマス、第十七ハ、保險會社ハ其ノ營業讓
渡ヲ爲スコトヲ得ザルモノトシタコトデゴ
ザイマス、保險會社ニ於キマシテハ、其ノ
保有契約ヲ離レテ營業讓渡ヲ考ヘルコトハ
出來マセヌ、而シテ營業讓渡ノ規定ニ依リ
マシテ保險契約上ノ權利、義務ヲ移轉スル
ガ爲ニハ、箇々ノ契約者ニ對シテ更改等ノ
手續ヲナサネバナラナイノデアリマス、而
モ保險業法ニ依ル契約ノ移轉ノ手續ヲ取リ
マスレバ、極メテ簡易ニ大體同樣ノ目的ヲ
達スルコトガ出來ル譯デアリマス、從ヒマ
シテ保險會社ノ營業讓渡ト云フコトハ、保
險契約移轉ノ規定ガ出來マシテカラハ一度
モ行ハレタコトガアリマセヌ、又解釋上ハ
殆ド實行不可能ナリト言ハレテ居ルノデア
リマスガ、形式上任意ニ之ヲ行ヒ得ルヤウ
ニナッテ居リマシタノデ、今囘今述ベマシタ
趣旨ヲ明カニシタニ止マルノデアリマシテ、
實質的ニ變更ヲ加ヘタ譯デハアリマセヌ、
法案デハ百二十七條ニナツテ居リマス、第十
八ハ、無限責任及保證責任相互會社ニ關スル
規定ヲ削除シタコトデアリマス、現行法ハ有
限責任、無限責任及保證責任ノ三種類ノ相
互會社ヲ認メテ居ルノデアリマスガ、其ノ
中無限責任及保證責任ノ相互會社ハ未ダ嘗
テ其ノ實例ガナイバカリデアリマセズ、有
限責任ノ相互會社ニシテ十分ニ其ノ目的ノ
達シ得テ居リマスル以上ハ、社員ノ責任ノ
如キハ寧ロ輕イコトヲヨシトスルモノト考
ヘラレマスノデ、ソレ以外ノ二種類ノ相互
會社ニ關スル規定ハ之ヲ削除シタノデアリ
マス、尙會社債權者ノ側カラ見マシテモ相
互會社ハ、其ノ全財產ヲ以テ會社債權者ニ
對スル擔保トスルモノデアリマスルカラ、
一般取引ノ安全ノ點カラ見マシテモ、之二
依ッテ別段支障ハ無イモノト考ヘマス、第
十九ハ、監査書ノ制度ヲ設ケタコトデアリ
マス、是ハ銀行法ノ例ニ傚ヒマシテ、保險
會社ノ監査役ヲシテ一層此ノ職責ヲ果スニ
便ナラシメヨウト云フ趣旨ニ出ヅルモノデ
アリマシテ、法案ニ於キマシテハ第九十一條
ガソレニナッテ居リマス、第二十ハ、商法改
正ニ關シマシテ商法準用條文及商法ニ準ジ
タル規定ノ改正ヲ爲シタコトデアリマス、
是ハ本法ノ各條章ニ亙ツテ關聯ヲ持ツノデ
アリマスガ、玆ニ一言念ノ爲ニ申添ヘテ置
キタイト存ズルノデアリマス、ソレハ申ス
迄モナイコトデアリマスガ、株式會社ニ關ス
ル商法フ規定ハ、本法案ニ別段ノ定メアル場
合ヲ除キマシテ全面的ニ保險業ヲ營ム株式
會社ニ適用セラレルコトデアリマス、此ノ
事ハ本法案中第二章株式會社、第六章解散、
第七章精算及第八章罰則等ノ規定ヲ見マシ
テモ、又相互會社ニ付キマシテハ、極メテ
詳細ニ商法中株式會社ニ關スル規定ノ準用
アルコトニ鑑ミマシテモ容易ニ看取シ得ル
ノデアリマス、隨ヒマシテ商法ノ株式會社
ニ關スル規定ノ中、昨年ノ商法改正ニ依ッテ
新タニ設ケラレマシタ主ナル規定ニ付テ申
上ゲマスト、例ヘバ會社ノ整理ノ制度ニ付
キマシテハ、本法案第百七條ニ揭グル特例
ヲ除キマシテ全部、又特別〓算ノ制度ニ付
キマシテハ、何等特例ナク、卽チ全部、孰
レモ明文ヲ揭グル迄モナク、保險業ヲ營ム
株式會社ニハ當然適用ヲ見ルノデアリマシ
テ、相互會社ニ付キマシテハ、株式會社ノ
均衡上、特ニ第七十八條ノ規定ヲ設ケ、會
社ノ整理、特別〓算ニ關スル商法ノ規定ヲ、
其ノ性質ノ許サヾルモノヲ除クノ外相互會
社ニ準用シマシテ、然ル後ニ第百七條ニ於
テ株式會社ト共ニ之ニ對スル特例ヲ揭ゲタ
次第デアリマス、第二十一ハ、其ノ他章、
節ノ區分ヲ改メ、法律ノ理解ヲ便ナラシメ
タコトデアリマス、保險業法ハ現行法ニ於
キマシテモ一百五十條ヲ超ユル所ノ大法典
デアリマスル上ニ、從來一部改正ヲ加ヘテ
參リマシタ關係等ニ依リマシテ、章、節ノ
區分ガ多少明確デナイ點ガアルノデアリマ
ス、例ヘバ會社ノ〓算ハ之ヲ總則中ニ規定
シ、又保險契約ノ移轉、會社ノ合併ヲ株式
會社ノ章ニ規定シ、然ル後ニ之ヲ相互會社
ニ準用スル等デアリマス、改正案ニ於キマ
シテハ更ニ諸種ノ新タナル制度ヲ設ケ、又
商法ノ改正ニ關聯シマシテ、相互會社等ニ
相當ノ規定ノ增加ヲ見マシタノデ、章、節
ノ區分ヲ改メ、又會社ノ管理、解散、〓算
等、會社ノ內容其ノモノノ變動ニ關スルヤ
ウナ規定ハ、之ヲ別箇ノ章ニ移スコトニ依
リマシテ、一般ノ場合ニ適用アル規定ト區
別スルナド、出來得ル限リ法律ノ理解ヲ容
易ナラシメントシタノデアリマス、以上甚
ダ不十分デゴザイマシテ恐縮デゴザイマス
ルガ、一應ノ御說明ニ代ヘタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=4
-
005・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 如何デゴザイ
マセウ、御異議ガナケレバ此ノ儘會議ヲ續ケ
テ行キタイト思ヒマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=5
-
006・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 昨日上程サレタバカリ
デナカ〓〓廣汎ナ法律デアルシ、此ノ參
考書類ナドモ澤山頂戴致シテ居ルノデスケ
レドモ、目ヲ通ス間モナイノデアリマスカ
ラ、暫クノ猶豫ヲ願フノハ至當デハナイカ、
却テ其ノ方ガ議事ノ進行ニモ便利デナイカ
ト思ヒマス、ソレカラ私ハ希望トシテ述べ
タイコトハ、非常ニ綿密ニ色々參考書類ヲ
御出シ下サイマシテ誠ニ結構ト存ジマスガ、
而モ此ノ本案ノ中デ命令ニ讓ッテ居ルモノ
ガアル、殊ニ此ノ統制協定ニ關スル件ニアツ
テハ命令ノ定ムル所ニ依リ統制協定ヲ爲
スベキモノデアルト云フコトニナッテ居ル
ノデスガ、此ノ命令ノ內容ガ大ナル問題デ、
ドチラカト云ヘバ本法ニ規定スルノガ相當
デアルト思ハレル程度ノモノデアラウト思
フ、本案ノ運營ニ非常ニ關係ノアル、又保
險業法トシテ最モ大切ナル部分デアルト思
フノデアリマス、命令ノ定ムル所ニ依リマ
シテ統制協定ヲ爲スベキモノデアル、又主
務大臣ハ其ノ統制協定ヲ命ズルコトガ出來
ル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデスガ、此
ノ點ハ最モ大切ナ點デアルト思フノデアリ
マス、ドチラカト云ヘバ只今中上ゲタ通リ、
ドウ云フコトニ付テ統制協定ヲスベキモノ
デアルト云フコトヲ本案ニ揭グルノガ相當
ト思フ、サウデナイトドウ、一體其ノ命令
ガ出ルノカ分ラヌト思フ、一旦此ノ命令ガ
出テモ其ノ命令ヲ更ニ强化シテ、ドウ云フ
範圍ニ於テ或ハドウ云フ方向ニ於テ命令
ヲ出スカト云フコトガ、甚ダ不安デアル
ト私考ヘルノデアリマス、デアリマスカ
ラシテ、此ノ法律デ命令ニ漠然ト委任ス
ルト云フコトハ大イニ考フベキ點デアラウ、
サウ云フ點モアリマスカラ先ヅ差當リ、ド
ウ云フコトヲ此ノ命令ニ於テ規定スルト云
フ御考デアルカ、成ルベクハ項目等ヲ擧ゲ
テ書面ヲ御出シ願フ方ガ便利ト思フノデア
リマスガ、其ノ邊ヲ御考慮下サッテ、然ルベ
キ處置ヲ取ッテ戴キタイト存ジマス、是ハマ
ア大變ナ私ハ問題ダラウト思フノデアリマ
スガ、保險國營ナント云フ問題モアリマス
ガ、或ハ保險國營ニ近イヤウナモノガ出來
ルカモ知レヌ、保險國營ノ可否ハ別論ト致
シマシテモ、兎ニ角此ノ命令ト云フ其ノ一
本デドウ云フコトデモ出來ルヤウニナッチ
ヤ大變ダラウト私ハ思フ、其ノ他ニ色々此
ノ監督規定モアリマスカラ、是ト相俟ッテド
ウ云フコトデモ出來ルト云フヤウナコトニ
ナッテハ困ルノデ、少クトモ此ノ命令ナルモ
ノガデスナ、ドウ云フモノデアルカ、何ガ
出テ來ルカ分ラヌノデハ困ル、差當リドウ
云フモノヲ此ノ命令ノ中ニ規定セラレルノ
デアルカ、又將來ニ於テモデスナ、ドウ云
フ種類ノモノヲ命令ニ規定サレルノカト云
フコトヲ、一應此處デ委員會ニ於テ明カニ
シテ置クト云フコトモ必要デアルト思フ、
ドウカサウ云フ趣意カラ、此ノ命令ニ規定
スル事項等ノ御示シヲ願ヒタイト思フ、又
今日ハ私ハ會議ハ延期シテ戴キタイト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=6
-
007・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 如何デゴザイ
マセウ、仁井田君ノ說ニ御同意ナラバ今日
ハ是デ散會致シマシテ、月曜日ノ午前十時カ
ラト云フコトニ致シタイト斯ウ思ヒマスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=7
-
008・山岡萬之助
○山岡萬之助君 チョット一言······、今仁井
田君カラ御說ガアッタ法制ノ關係ノ根本ハ、
國營若シクハソレニ關スル論議ノ點デアラ
ウト思ヒマスガ、國營デナイト云フコトハ
此ノ法案ヲ出シタ以上ハ、政府ハ相當ノ間
此ノ狀態デ行ク積リデアラウ、モツト强イ
管理ヲスル積リナラ、斯ウ云フ法案ヲ今日
出サズニ行ク筈デアラウ、ガ併シソレ等ノ
根本觀念ト云フモノハ斯ウ云フ立法ヲスル
際ニハ、相當明カニシテ置ク必要ガ私ハア
ルト思フ、故ニ此ノ法案ヲ審議スルニ當ッテ
國營ヂヤナイ、國營的ノ意味デス、卽チ統
制ノ程度、國營、ソレ等ニ關スル根本觀念
ヲ十分ニ御〓究ニナッテ、次會ニ政府ヨリ其
ノ點ヲハッキリ御說明ヲ私ハ願ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=8
-
009・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 序ニモウ一ツ御願ヒシ
テ置キタイコトハ、是ハサマデ重要ナ事デ
ナイ、マア死亡關係ニ屬スルコトデアリマ
スガ、此ノ契約ノ移轉ニ關シテ協議ガ調ハ
ヌトカ、協議ヲセヌトカ云フヤウナ場合ニ
ハ、主務大臣ガ決定スルト云フコトニナッテ
居ル、是ハ勅令ノ定ムル所ニ依ルト斯ウナツ
テ居リマスガ、是ハ結局當事者雙方ノ利
害ヲ考ヘテヤルコトデアリマスカラ、只
今申述ベタ統制ニ關スル命令トハ大分違
ヒマスト思ヒマス、是モ凡ソノ所ヲ一
ツ伺ッテ置ク方ガ宜カラウト思フ、實
是ハドウ云フコトヲ規定スルノカ分リマ
セヌガ、裁定ト云フ意味ニ私ハ解シテ居
ル、裁定ナラ主務大臣ガ然ルベキ所デヤツ
テ宜シイノデスカラ、必ズシモ勅令デ定メ
ズトモ雙方ノ利害關係ヲ考ヘテ、此ノ邊ノ
所デ折合ッタラ宜カラウト云フ、詰リ所謂仲
裁ノヤウナモノデ、一種ノ裁定デアルカラ、
裁定ナラ强ヒテ何モ勅令デ、ドウ云フコト
ヲセナキヤナラヌト云フコトヲ決メル必要
モナカラウト思フ、然ルニ勅令ノ定ムル所
ニ依リ之ヲ決定ス、是ハ卽チ裁定ナノデ、
此ノ邊ノ所デ折合ヘト云フノデアルカラ、
强ヒテ勅令ニ定ムル範圍モナカラウカト思
ヒマスケレドモ、併シ勅令ノ定ムル所ニ依
リ決定ストアリマスカラ、ドウ云フコトヲ
決メルノデアルカ、是モ司法關係カラ見レ
バ相當重要視スベキモノデアリマスカラ、
此ノ點モ序ニ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=9
-
010・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) ソレヂヤ今日
ハ此ノ程度デ散會致シマス
午前十一時二分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵樺山愛輔君
副委員長男爵矢吹省三君
委員
公爵山縣有道君
侯爵淺野長之君
子爵梅小路定行君
子爵曾我祐邦君
子爵上原七之助君
仁井田益太郞君
男爵中村謙一君
山岡萬之助君
下出民義君
大藪守治君
大和田健三郞君
國務大臣
商工大臣兼拓務大臣八田嘉明君
政府委員
商工省保險局長牧楢雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00119390311&spkNum=10
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。