1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十三日(月曜日)午後二時二十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=0
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001・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) ソレデハ是ヨ
リ會議ヲ開キマス、曾我子爵ハ外ニ委員會
ガアリマスノデ、直グ質問シタイト云フコ
トデゴザイマスカラ、曾我君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=1
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002・曾我祐邦
○子爵會我祐邦君 私ハ此ノ法案ヲ審議致
シマスニ當リマシテ、素人デゴザイマスガ
爲ニ一般保險ト云フモノノ知識ヲ或點迄ヲ
明カニ知リタイト思フノデゴザイマシテ、
現在ノ保險ノ狀態ガドウ云フ風ニナッテ居
んど、之ヲ御伺ヒ致シタイノデアリマス、
私ノ質問ハ多數ゴザイマスケレドモ、之ヲ
一ツ〓〓御返答ヲ願フヨリモ、纒メテ御返
答ヲ願ッタ方ガ時間ノ上ヨリ便宜カト思ヒ
マスカラ、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、第一ニ承リタイコトハ、震災ノ後ニ起
リマシタ出來事デゴザイマス、卽チアノ節
ハ保險會社ハ、所謂保險證劵ノ、之ニ書イ
テアリマス所ノ條項ニ依リマシテ、不可抗
力デアルガ爲ニ拂フコトガ出來ナイト云フ
立場ヲ固執致シマシタ、然ルニ一般民衆ノ
聲、其ノ他罹災者ニ同情致シマシテ、政府
ノ命令ニ依リマシテ確カ一割デアッタカヲ
拂ッタノデゴザイマス、是ハ法理論カラ申シ
マスレバ色々ノ理窟モゴザイマシタラウケ
レドモ、實際問題ト致シマシテ餘儀ナク之
ヲ保險會社ハ承諾シタノデゴザイマス、而
シテ其ノ後ニ於キマス所ノ保險會社ハ何ニ
苦ンデ居ルカト申シマスト、アノ時ニ政府
カラ借入ヲ致シマシタ利拂ト云フモノニ苦
ンデ居ルコトハ事實デアルヤニ私ハ聞イテ
居ルノデアリマス、卽チ有數ナル所ノ大キ
ナ會社ノ二三ノモノハ之ヲ拂ヒ得テ居リマ
スルケレドモ、現在ニ於キマシテモ此ノ時
ノ言換ヘマスナラバ無理ナ支出ヲ强要セ
ラレタ結果ガ、會社ノ營業ニ非常ナル影響
ヲシテ苦ミツヽアルト私ハ思フノデアリマ
ス、政府ハソレヲ何ト御覽ニナルカト云フ
コトガ其ノ一點デゴザイマス、モウ一ツハ
保險ト云フコトニ付キマシテ、定義デハゴ
ザイマセヌガ、何處カニ書イテゴザイマセ
ウ、私共能ク拜見致ス時間ガゴザイマセヌ
ガ、所謂損害保險及生命保險、或ハ動產保
險ナドヲ含ンデ居ルモノト思フノデアリマ
スガ、今日ノ日本ニ於キマス所ノ保險會社
ノ狀態ハドウ云フ風ニ相成ッテ居リマスカ、
言換ヘマスレバ、モウ新シイ會社ハ許可シ
ナイト云フ御方針デアリマスルカ、現在ノ
モノヲ統一又ハ之ヲ鞏固ニスルヤウニナサ
ル御方針デアリマスカ、是ガ質問ノ第二デ
ゴザイマス、又火災保險ノ方デ申シマスト、
協定ト云フモノガ屢〓行ハレルノデゴザイ
いつ、曾テ銀行ノ方デモ預金ニ對シマスル
協定ガ破レルト云フコトデ、所謂親會社ト
申シマセウカ、大キナ會社ノ間ニ協定ガ出
來マシテ、是ハ比較的今日デモ能ク守ラレ
テ居ルコトヲ聞キマスルガ、火災保險ニ於
キマシテハ、或ハ生命モ然リカモ知レマセ
又、幾度カ協定ヲ實行スベキ所謂管理會社
ト云フモノガ出來マシテ、之ヲ破ルモノハ、
大キナ聲デ言ヘヌカモ知レマセヌガ、却テ
管理會社ト云フモノガ破ッテ居ルト云フ事實
ヲ私共ハ知ッテ居ルノデアリマス、デ現在ハ
政府ガ斯クノ如ク立派ナ法案ヲ御作リニナ
リマシテ、一ハ以テ商法ノ改正ニ伴フ結果
ニ於テ不備ナ點ヲ完備セラレ、二ニハ保險
會社ノ成績ガ日本ノ生活ニ直面シテ離ルベ
カラザルモノナル程ノ重大ナモノニナッテ來
ルカラ、其ノ發達ヲ益〓助長スル爲ニ此ノ法
案ヲ御提出ニナッタト云フコトヲ、御說明ノ
間ニ聽イタノデアリマスガ、果シテ保險會
社ガ斯クノ如キ、所謂政府ノ斯ウ迄御心盡
シヲナサルモノニ對シテ期待ニ背カナイヤ
ウニ行クデアリマセウカ、現在ノ協定ハ守
レズニ居ルノデハナカラウカ、然ルニ守レ
ズニ居ルヤウナ狀態デアレバ、政府ニ對ス
ル對策ハ、法規ノ上デハ罰則ハ色々アリマ
スガ、實情ヲザックバランノコトヲ言フト、
ドウデアリマセウカト云フ疑ヲ持ッテ居ル
ノデアリマスガ、其ノ點ハ將來ドウ云フ風
ニ御考ニナッテ居リマスカ、モウ一ツハ保險
會社ノ基礎ト云フモノハ何ニ置カレルカト
云フト、數學ノ上ニ置カレテ居ルノデアリマ
ス、生命保險ノ方ハ數學ノ基礎ガハッキリシタ
モノガ出得ルノデアリマス、是ハ申ス迄モナク
皆サン御承知ノ通リデ、日本人ノ生命ハ何歲
カラ何歳迄ノドウ云フ死亡率デアルト云フ
コトガ分ッテ居リマス、今私ノ言フ火災保
險ニ對シマシテハ、此ノ計數ノ基礎ト云フ
モノガ何等ノ根據ガナイコトニナリ得ル、
言換ヘマスレバ火事ノナイ年ハマルデナイ、
一度風向ノ惡イ乾燥シタ時期ニハ、曾テア
リマシタ函館ノ大火ノ如キ、サウ云フ風ニ
一町村悉ク烏有ニ歸シテシマフト云フコト
ガアリマスノデ、ソコニ計算ノ基礎ト云フ
モノガ數學的ニ證明サレルコトガ出來ナイ、
是ハ何人モ知ッテ居ル譯デアリマシテ、其ノ
結果ハ何ニ依ッテ補フコトガ出來ルカ、保險
會社ノ資力ヲ以テハソレヲ「カヴアー」スル
コトガ出來マセヌカラ、玆ニ於テ再保險ト
云フモノガ行ハレテ居ルト私ハ思ッテ居ル、
而シテ此ノ再保險ガドウ云フ風ニ行ハレテ
居ルカ、現在ハ能ク存ジマセヌガ、隨分外
國會社ノ日本ニ入ッテ來テ居リマスモノモ
多々ゴザイマシテ、再保險會社ト云フモノ
ガゴザイマス、又外ニモゴザイマス一ツカ
二ツ、ソレ等ニ危險率ヲ分擔セシメル上ニ
於テ、所謂再保險會社ト云フモノガアリマ
スノデスガ、過去ニ於キマスル實際ヲ照シ
テ見マスト云フト、再保險會社ノ事業ノ强
ク發達シ得ナイ理由ガ明カニアルノデゴザ
イマス、元受會社ガ物件ヲ取ッテ、其ノ同ジ
物件ヲ總テ再保險會社ニヤレバ、數學ノ上
カラハ其ノ根本收入ニ於テ、率ニ於テ、矢
張リ再保險會社モ儲ケテ行カナケレバナラ
ナイ理窟デアル、然ルニ過去ニ於キマスル
業績ヲ聞キマシタ所ニ依リマスト、ソレガ
斯クナツテ行カナイ、ソレノ根本ハ何處ニ
アルカ、所謂元受會社ノ營業主任ノ手腕ニ
ト申シマスカ、技倆ニ依ッテハ、危險率ノ多
イモノヲ再保險會社ニ渡シテシマフ、確カ
ト思フヤウナモノヲ自分ノ手持ニスル、ソ
コニ於テ一度火事ガ起ルト、所謂計算ノ基
礎ヲ離レタ非常ナ火事ガ突發致シマスト、
再保險會社ノ拂フ分擔ノ責任ハ非常ニ大キ
ナモノガ出テ來ル、元受會社其ノモノハ同
ジ損害デモ割合ガ少イト云フコトヲ聞イテ
居ルノデアリマスガ、サウ云フコトハ矢張
リサウ云フ意味ニ於テ、私ガ申上ゲマシタ
ヤウナ意味ニ於テ、政府ハ御覽ニナッテ居
リマスカドウデアリマスカ、更ニ此ノ再保
險會社ガ外國ノ再保險會社ニ致シマスト、
非常ニ大キナ火事ガアリマシタ際ニ、日本
ノ會社其ノモノノ力デハ之ヲ拂フコトガ出
來マセヌカラ、外國ノ再保險會社ニ出ス、
處デ外國ノ再保險會社ニ出シマス物件ハ、
是ハ非常ニ元受會社ノ大事ナヤリ方ダト私
ハ思フ、言ヒ換レバ危險率ノ少イモノヲヤ
ルト、モウ一ツ言ヒ換ヘマスレバ外國會社
ヲシテ平素ハ儲ケサシテ居ル、其ノ代リ何
カ非常ナ事ガアッタ場合ニハ、外國會社カラ
固マッタ大キナ金ヲ貰フ、平素ハ儲ケサシテ
置クト云フヤウナコトハ、自ラ是ハ營業上
ノ手腕ト申シマセウカ、ソコニ駈引ガアル
ヤウニ聞イテ居ルノデアリマスガ、如何デ
ゴザイマスカ、再保險會社ノ外國會社ニ致
シマスル火災保險ニ於キマシテハ、斯ウ云
フヤウナ狀態ガアリシト云フコトダケハ、
私ハ信ジテ疑ハナイノデゴザイマス、又海
上ニ於キマシテハ、日本ノ大キナ海上會社
ハ無論ゴザイマス、併シナガラ海上ノ物件
ハ一度船ガ沈ミマスレバ、今日ク如ク豪華
ナル大キナ船ハ、非常ナ金額ヲ其處ニ持ッテ
居ルノデアリマス、海上ダケハ日本ノ元受
會社ダケデハドウシテモ算盤ガ採レナクナッ
テ來ル、一艘沈メバ會社全體ガ全部沈沒シ
テシマフト云フヤウナ狀態ニ、數字ノ上カ
ラ感ジラレルノデゴザイマス、玆ニ於テ外
國ノ所謂海上保險ノ聯合ノ者ニ、之ヲ再保
險ヲ出シテ居ルヤウニ聞イテ居リマスガ、
今日ノ日本ノ經濟的ノ力、及ビ現今ノ時局
ニ直面シテ居リマス所ノ爲替管理其ノ他ニ
於キマシテ、外國ニ遣リ勘定ニナルト云フ
ヤウナコトヲ、御防ギニナッテ居ルト云フコト
ハ、矢張リ目下ノ方針デアラウト思フ、ソ
レデ火災ニシロ、海上ニシロ、比ノ再保險
ト云フコトニ對スル外國トノ遣リ取リ勘定
ハ、現在ハ此處ニ數字ガゴザイマスヤウデ
スガ、マタ十分ニ拜見致シテ居リマセヌガ、
ドウ云フ風ナ傾向ヲ辿ッテ居リマスルカ、若
シ外國ニ出ス所ノ遣リ勘定ト云フモノヲ制
限サレテ行クト云フ、日本ノ經濟力ノ現狀
ヲ以テ、此ノ總テノ危險ノ起リ得ベキ所ノ、
數學上カラ起ル所ノ基礎ニ當嵌メルコトハ、
出來ルダケノ力ヲ持ッテ居ルト、政府ハ御思
ヒニナリマスカ、從ッテ斯ク御思ヒニナルナ
ラバ、將來ノ日本ニ起キマス所ノ海上保險
タルト火災保險タルトヲ問ハズ、一切外國
ノドノ會社モ之ニ割込ンデ來ルコトヲ、御
妨ゲニナル御積リデアリマスルカ、如何ト
云フコトモ一ツ伺ヒタイノデゴザイマス、
ソレデ私ハ此ノ法案ハ先頃モ申上ゲマシタ
如クニ、誠ニ時宜ヲ得タモノデアリマシテ、
適當ナルモノダト思ヒマスルガ、ソレ等ノ
點ヲ能ク認識スルニアラズンバ、此ノ法案
ヲ審議スル上ニ於キマシテ、知識ノ足ラナ
イモノガアルコトヲ惧レテ、只今三ツノ點
ヲ列記致シマシテ、御答辯ヲ煩ハシタイト
存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=2
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003・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 先ヅ第一點ヲ、大
正十二年ノ震災後ニ於ケル助成金ノ御尋デ
ゴザイマスガ、御承知ノ通リ大正十二年九
月ノ震災ニ於キマシテハ損害ガ大キク、サ
ウシテ其ノ火災保險ノ契約ニ依リマシテ、
火災保險金其ノモノハ支拂ハナイコトニナッ
タノデゴザイマスガ、政府ヨリ交付致シマ
シタ助成金ヲ以チマシテ、被保險者ニ見舞
金ヲ出シタノデゴザイマス、其ノ政府ヨリ
交付致シマシタル助成金ノ總額ハ、約六千
三百五十萬圓デゴザイマス、助成金ヲ受ケ
タ會社ノ數ハ三十三社デゴザイマス、是等
ノ受ケタ助成金ヲ各會社ノ業績ニ應ジマシ
テ、年々擧ゲマスル收益ニ對比致シマシテ、
サウシテ政府ニ納付、返付スルト云フコト
ニナッテ居ルノデゴザイマス、現狀ヲ申シマ
スト納付スベキ總額ハ約一億四千萬圓ニナッ
テ居リマスルガ、本年ノ三月一日現在ニ於
キマシテ旣ニ納付致シマシタル額ハ、四千
二百五十萬圓ニナッテ居リマス、從來滯納サ
レテ居ル金額ハ九十八萬圓餘デゴザイマス、
滯納致シテ居リマスル會社ノ數ハ五社、從ッ
テ納付シテ居リマスル二十九社ノ年額ハ三
百三十七萬圓デゴザイマシテ、納付金ヲ完
納シテ居リマス會社ハ一一十五社ニ相成ッテ
居リマス、現狀カラ申シマスルト助成金ノ
納付ノ成績ハ非常ニ宜シイノデゴザイマス、
一二業績ガ擧ラナイ會社ニ於キマシテ滯納
シテ居リマス、本年ニ於キマシテハ僅カニ
一社ダケガ滯納致シテ居ルヤウナ狀態デア
リマス、御承知ノ通リ是ニハ色々ノ議論モ
ゴザイマシテ、業績ガ擧ラナイヤウナ會社
ニ取リマシテハ苦痛ガゴザイマシタノデゴ
ザイマスガ、御承知ノ通リ火災保險事業ノ
最近ノ發達ハ非常ニ著シイモノデゴザイマ
シテ、堅實ナル經營ヲシテ居ルモノニ於キ
マシテハ、此ノ納付金ノ成績ハ非常ニ宜シ
イノデゴザイマス、殊ニ成績ガ非常ニ宜シ
イモノニ於キマシテハ、年々納付スルト云
フコトヲ止メテ、一度ニ返シタイト云フヤ
ウナ希望ノ申出モゴザイマス、併シナガラ
一二成績ノ惡イモノガゴザイマス、大體カ
ラ申シマスト火災保險事業ハ御承知ノ通リ
非常ニ最近ニ於ケル成績モ宜シイシ、ソレ
カラ此ノ助成金ヲ交付致シマシタ時ノ經
緯、其ノ他之ヲ目當ニ業績ノ向上ヲシテ參リ
マシタ會社等ノ關係ニ於キマシテ、今後一
層業績ヲ擧ゲシムルコトニ努メルト共ニ、
此ノ返納ヲサセタイト考ヘテ居リマス、實
ハ此ノ業績ノ擧ラナイ會社ニ對シマスル納
付金ノ問題ニ付キマシテハ、色々〓究ヲ致
シマシテ、或ハ非常ニ困難ナモノニ對ス
ル利息ノ減免等ニ付キマシテモ〓究致シマ
シテ、一昨昨年大藏省ト談合ヲ付ケマシテ、
是等ノモノノ減免ヲ話合ッテ居ッタノデゴザ
イマス、處ガ偶〓此ノ非常時局ニ際會致シ
マシテ、國家ノ收入ノ減少ヲ來スヤウナモ
ノデアルト云フ意味ニ於キマシテ、大藏省
ハ其ノ話ヲ暫ク待ッテ戴キタイト云フヤウ
ナ話合ニナッテ居リマス、併シナガラ一方此
ノ納付ノ成績ノ宜シイコトト、ソレカラ又一
二ノ會社ニ於テ業績ノ擧ラナイト云フ事實
トヲ考ヘマシテ、此ノ時局ノ經過ト併セ考ヘ
マシテ、適當ニ考慮シタイトハ考ヘテ居ル
次第デアリマス、ソレカラ第二ノ御尋ハ保
險會社ハ相當多數アッテ、色々ナ業種ニ亙ツ
テ保險ヲ營ンデ居ルガ、今後ハ新會社ハ許
サナイカドウカト云フ御尋デゴザイマス、
會社ノ新設ニ付キマシテハ、御承知ノ通リ
生命保險ニ於キマシテハ相當多數ノ會社ガ
ゴザイマシテ、保險利益ヲ普及セシムルト
云フ點カラ申シマシテモ、相當會社數モゴザ
イマスシ、業績モ擧ッテ居ルヤウナ狀態デ
アリマス、其ノ上ニ同種類ノ保險ニ付キマ
シテ許可ヲスルト云フコトハ競爭者ヲ殖ス
ト云フ意味ニ於キマシテ、相當考慮スベキ
問題デアルト考ヘテ居リマス、併シナガラ
全然新シイ方面ニ於ケル保險ト云フモノニ
付テハ、將來物ニ依ッテ考慮シテ行キタイト
考ヘテ居ル次第デゴザイマス、損害保險ニ
於キマシテハ稍〓、きキキ異ニスル點ガゴザイ
マン、殊ニ國民生活ニ相當ノ影響ヲ齎ラス
ヤウナ新種ノ保險モ考ヘラレマスカラ、ソ
レ等ノ方面ニ付キマシテハ或分今後會社ヲ
許スヤウナコトモ考ヘラレルダラト思ヒマ
ス、普通ノ種類ニ於キマシテハ矢張リ助成
金ト云フモノガゴザイマシテ、助成金ガ
種ノ經營上ノ考慮スベキ點デアル、現在ノ
會社ニ取リマシテハ一種ノ負擔デゴザイマ
スカラ、此ノ負擔ノナイ會社ヲ新ニ作ルト
云フヤウナコトハ相當考慮シナクテハナラ
ヌカノヤウニ考ヘテ居リマス、ソレカラ協
定ニ付キマシテノ御尋デゴザイマスガ、御
承知ノ通リ火災ニ於キマシテハ色々ナ協定
ヲヤッテ居ル譯デゴザイマス、生命保險ニ於
キマシテハ從來トモ色々ナ協定ガ行ハレテ
來テ居リマシタガ、或ハ其ノ協定ノ守ラレ
ナイモノガゴザイマス、又一面此ノ協定ガ
アルガ爲ニ業界ノ向上ニ資シテ居ルモノモ
ゴザイマスガ、御話ノ通リニウマク行カナ
イモノガアルノデゴザイマス、ソレデハ今
後此ノ法律改正ニ依ッテ協定ヲシテ行ク、
ソレニ或程度ノ法律上ノ效果ヲ附與シテ行
クト云フヤリ方ガ、果シテウマク行クカド
ウデアルカト云フ御尋デアリマス、此ノ點
ハ曾我子爵モ御話ノ通リニ罰則等モゴザイ
マスガ、ソレノミデヤルト云フ譯ニハ行カ
ナイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、御承知
ノ通リ今囘提出致シマシタ改正案ガ幸ニシ
テ御協賛ニ相成リマスレバ、色々監督權ガ
强化サレテ居リマス、殊ニ基礎書類、事業
方法書等ニ付テモ相當指導的ナ監督ガ出來
ルコトニナッテ居リマスカラ、現行法ヲ前提
ト致シマシテ考ヘラレテ居ル協定トハ、相
當異ッタ效果ガ出ルヤウニ考ヘテ居ル次第
デゴザイマス、保險會社ノ經營ニ關シマシ
テ重大ナ御尋デゴザイマス、生命保險ハ數
理ヲ基礎トシテヤッテ行クカラ、相當ノ根據
ヲ持チ、數理ニ根據ヲ置クカラ、其ノ經營
モ堅實ニヤレバウマク行クモノデアルガ、
火災ニ於キマシテハ突發的ニ事件ガ發生ス
ル場合ガアル、サウ云フ場合ニ至リマスト
火災保險會社トシテハ、相當ナル經營上ノ
痛手ヲ被ルコトガアル、之ニ付テハドウ當
局ハ考ヘルカト云フ御話デゴザイマス、火
災保險ニ付テ申上ゲマスト、御承知ノ通リ
火災保險ノ料率ト云フモノニ付キマシテ、
各地方ニ色々ナ不服ナリ、希望ガゴザイマ
ス、是ハ御承知ノ通リ各社ガ競爭致シマシ
テ、サウシテ協定ノ料率ハアルガ、ソレヲ
割引イテ居ル、其ノ割引イテ居ル狀態ガ公
平デアルカドウカ、或ハ不公平デハナイカ
ト云フ意味カラ致シマシテ、不服ヲ相當耳
ニスル所デゴザイマス、子爵ノ御尋ハ御尤
モナノデゴザイマシテ、當局ニ於キマシテ
ハ此ノ火災保險料率ノ合理的ナル基礎ヲ見
出スコトガ、火災保險事業ノ今後ノ發達ニ
付キマシテ最モ重要ナル點デアル、是ガナク
テハ決シテ火災保險業ノ今後ト云フモノハ、
ウマク行クモノデナイト云フヤウニ痛感シ
テ居ルノデアリマシテ、高イトカ、安イトカ申
シマシテ、一定ノ基準ガナクシテ言フコトデ
ハ是ハ果シテドウデアルカ、ト申シマスノハ火
災保險ヲ契約スルモノカラ取リマスレバ、保
險料率ガ安イコトガ宜イノデアリマスガ、徒
ニ安イコトニナリマスレバ結局保險會社ノ
基礎ヲ危クスル、基礎ヲ危クシテ安クスル
ト云フコトハ非常ニ不合理ナ話デゴザイマ
スカラ、結局ハ合理的ナ料率、合理的ナ値
段ト云フモノヲ產ミ出スコトニシナクテハ
ナラナイト云フコトデゴザイマシテ、是ガ
最モ大切ナ點デアルト考ヘマシテ、甚ダ遲
蒔ノヤウデゴザイマスルガ、相當經費ト人
員等ヲ要スル爲ニ、速カニ實行スルコトガ
出來ナカッタノデアリマスガ、今年一月カラ
非常ニ大キナ組織ヲ以チマシテ、火災保險
ノ保險分類統計ヲナスコトニ致シテ居リマ
ス、是ガ出來上リマスレバ、所謂合理的ナ
保險料率ト云フモノガ定リマシテ、會社モ
之ニ依ッテ經營ガ合理的ニナルト云フコト
ニナラウカト考ヘテ居リマス、從ッテ契約者
ニ對スル收益ト云フモノモ、相當增加セシ
ムルコトガ出來ルカノヤウニ考ヘテ居ル次第
デゴザイマス、再保險ニ對スル御尋デゴザ
イマスガ、仰セノ通リニ再保ニ付スルモ
ノハ、割合ニ引合ハナイヤウナ危險ノ多イ
モノヲヤルト云フヤウナ傾向ハナイカト云
フ點デゴザイマスガ、御尋ノ通リニ其ノヤ
ウナ傾向ガゴザイマス、併シナガラサウ云
フコトハ、結局此ノ危險分散ノ爲ニスル再
保ト云フ制度ニ付キマシテ、今後ノ發展ニ
ハ支障ガアリト認メテ居リマスカラ、是一
再保ヲヤリ取リスル會社間デ、或ハ協定等
ニ依リマシテ、是等ノ弊ノナイヤウニシタ
イト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、ソレカ
ラ外國會社ニハ良イモノヲ再保ニ出スデハ
ナイカト云フ御尋デゴザイマスガ、是ハ幾
分我ガ國ノ海上保險其ノ他火災保險ニ於キ
マシテ、外國、所謂英國等ノ謂ハヾ先進國
ト申シマスカニ比較致シマシテ、力ガ弱イ
關係モゴザイマシテ、サウ云フ傾向ガアッタ
ノデゴザイマスガ、併シナガラ最近ニ於ケ
ル我ガ國ノ海上、火災等ノ保險會社ノ發展
ハ著イノデゴザイマシテ、是等ノ點ハ今囘
ノ事變ニ當リマシテ、相當協力一致シタ結
果モゴザイマシテ、改善スルコトガ出來ル
ヤウニナッテ居ル次第デゴザイマス、之ニ關
聯致シマシテ、國際收支ニ關スル御尋ガゴ
ザイマシタカラ申上ゲテ見タイト思ヒマス、
損害保險ニ付テ申シマスルト、我ガ國ノ保
險會社ノ外國ニ於ケル元受ハ多少增加シテ
居ル傾向ニゴザイマス、外國保險會社ガ本
邦ニ於テ引受ケル元受ハ、多少減ッテ行ク傾
向デゴザイマス、我ガ國ノ保險會社ト外國
保險會社トノ再保險ノ取引ハ、賣リ再保ト
買ヒ再保、何レモ增加シテ行ク傾向デゴザ
イマス、是等ヲ通ジタ受拂ヲ申シマスト、
年ニ於キマシテ受取超過ノコトガ例外トシ
テゴザイマシテ、〓ネハ支拂超過ニナッテ
居ルノデアリマス、此ノ國際收支ガ惡イ點
ヲ改善スルコトニ付テ、如何ナル方策ヲ執ッ
テ居ルカト云フ御尋デゴザイマス、之ニ對
シマシテ執ッテ居リマスル方策ハ、最モ必要
アル外國ヘノ賣リ再保、而モ最モ分量ノ多
イ火災、海上保險ニ付テ、或種ノ方策ヲ執ツ
テ居ルノデアリマシテ、唯此ノ保險モ矢張
リ海外ノ關係ガ可ナリ「デリケート」ナ所ガ
ゴザイマシテ、政府ガ表向キニ立ッテ是等
ノ方策ヲ執ルコトガ、少シ機徴ナ點ガゴザ
イマシテ、表向キニ立ツコトハ避ケテ居リ
マスガ、保險業者ニ自發的ニ處置ヲ執ラシ
テ居ル次第デゴザイマス、ソレカラ船舶保
險ニ付キマシテハ、昨年ノ八月ニ船舶保險
協同會ニ屬シテ居リマスル十一社程ノ大キ
ナ會社ガ船舶特別保險組合ヲ作リマシテ、
相互ニ再保險ヲ交換シテ國內ノ總保有ヲ增
加スルコトニシテ、其ノ翌月カラ實施シテ
居ル次第デゴザイマス、船舶保險ニ付キマ
シテハ、子爵カラモ御話ガゴザイマシタ通
リニ、一船舶ニ付テ相當金額ノ多イモノ
ニ付キマシテハ、例外ヲ設ケザルヲ得ナイ
已ムヲ得ザル事情ガアリマス、併シナガラ
或金額以下ノモノハ、今モ申上ゲタヤウナ
方策ヲ執ッテ居ル次第デゴザイマス、火災
保險ニ付キマシテハ、昨年ノ九月ニ大日本
火災保險協會加盟會社ガ、外國會社ヘ
ノ賣リ再保險減少ノ申合セヲシタノデア
リマス、出來ルダケ國內ニ保有スルコトニ
努メヨウト云フ申合セガゴザイマシテ、其
ノ翌月カラ實行シテ居リマス、積荷保險ニ
付キマシテハ、積荷ノ種類每ニ「プール」ヲ作
リマシテ、再保險ノ國內消化ヲ增スコトニ
努力シテ居ル次第デアリマス、尙積荷ノ戰
爭保險ニ付キマシテハ、海上保險一木會ニ
屬シテ居リマスル約二十ノ會社ガ、昨年九月
貨物戰爭保險「プール」ヲ作リマシテ、國內
保險保有ヲ圖ルコトニシテ居ルヤウナ次第
デゴザイマス、斯ウ云フ方策ヲ執ッテ居リマ
スルガ、今後此ノ方策ノ效果ヲ擧ゲルコト
ニ一層努力ヲシタイト考ヘテ居リマス、唯
國際關係ニ於キマシテ、矢張リ保險ニ於キ
マシテモ、ヤリ取リノ關係ニ於テ少シ機微
ナ點ガゴザイマス、ソレ等ノ點ハ御諒承ノ
コトト思ヒマスカラ、此處デハ詳シク申上
ゲルコトヲ差控ヘタイト思ヒマス、出來ル
ダケ國際收支ノ改善ニ努メタイト考ヘテ居
リマス、一應御答へ申上ゲマシタガ、御答
へ洩レガゴザイマシタラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=3
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004・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 細カナ御親切ナ御說明
ヲ戴キマシテ、私共ノ疑ヲ持ッテ居リマシタ
點ガ誠ニハッキリ致シマシテ有難ウゴザイ
マリ、唯一二ノ點ヲマダ伺ヒタイノデゴザ
イマスガ、現在ノ火災保險デ申シマスレバ、
會社ノ數ガ多過ギハシナイカ、之ヲ言ヒ換
ヘマスレバ、非常ナ强イ會社ト弱イ會社ガ
存在シテ居ル、其ノ結果ニ於キマスル競爭、
率ヲ下ゲルトカ、或ハ戾シヲスルトカ言ツ
テ、保險協定ノ守レナイ點モ是カラ起ルコ
トモ一ツ原因ダト思フノデスガ、政府ハ
之ヲ統制シテ、モウ少シ數ヲ少イモノニシ
テ、サウシテ强目ニナサルコトガ被保險者
ノ利益デモアレバ、又總テノ方カラ便利デ
ハナイカト思フノデゴザイマスガ、是ハ如
何ナモノデゴザイマスカ、之ヲ又一步進メ
しや、此ノ火災保險會社及生命保險ノ如キ
各〓性性ノ違ッタモノデハアリマスルケレド
モ、其ノ保險業ト云フモノ全體ヲ政府ガ國
營トナスト云フヤウナ御考ハナイデアリマ
セウカ、是ハ細カイ點ハ御答辯ニ及ビマセ
ヌガ、唯將來ノ御考ヲ承リタイト思フノデ
ゴザイマス、ソレカラ此ノ火災保險ノ發達
ガ、今日內地バカリデナク朝鮮ニモ及ンデ
居ルカモ知レナイガ、尙滿洲ト支那ト云フ
モノハ將來ドウナル御積リデアリマスカ、
內地ノ保險會社ガ其處迄手ヲ延バスコトヲ
御奬勵ニナルノデアリマスカ、ドウ云フヤ
ウナ思召デアリマスルカ、其ノ點ヲチヨット
御伺ヒシタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=4
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005・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 火災保險ハ現在內
地會社ガ四十八社程アリマス、之ニ外國會
社ガ二十數社アルノデゴザイマス、是等ノ
保險會社ガ色々經營、規模ハ大小ゴザイマ
シテ、競爭ヲ激シクヤッテ居ル譯デゴザイマ
ス、此ノ數ヲ整理シテ、サウシテ火災保險
ノ全體トシテノ發達ヲ圖ルヤウナ考ハナイ
カト云フ御尋デアリマス、御尤ナ御尋デゴ
ザイマガ、御承知ノ通リ、或程度會社ノ數
ガ存在致シマシテ勉强スル、謂ハバ經營上
ノ勉强ヲ致シマシテ、サウシテ保險利益ノ
及ブヤウニスルコトハ必要デアルノデアリ
マシテ、是等ノ會社ガ全國津々浦々、田舍
ニ迄モ參リマシテ、火災保險ノ利益ヲ受ケ
シメルト云フヤウナコトニナッテ居ルコト
ハ、一面私共ハ喜ブ點ダラウト考ヘルノデア
リマス、唯子爵ノ仰セラレタ通リニ、此ノ
火災ニシロ、海上ニシロ、國際的ノ關係ヲ
考慮致シマスルト、日本ノ保險業其ノモノ
ヲ强クシナクテハナラヌト云フヤウナ必要
ガアリマス、ソレニハ矢張リ個々ノ單位ガ
弱クテハ是ハ達セラレナイ、或程度ノ經營
單位ニ達スルモノガ集ッテ居ラナクテハ、外
國トノ競爭ニ於テ引ケヲ取ルト云フヤウナ
事情ガアリマス、斯ウ云フ意味ニ於キマシ
テ、出來ルダケ現在ノ會社ノ經營基礎ノ强
化ヲ圖リタイト云フ希望ヲ持ッテ居ル譯デ
アリマス、是等ノ數ヲドウスルカト云フヤ
ウナコトヲ直接考ヘルヨリモ、經營單位ノ
向上ヲ圖リタイト云フコトヲ考ヘテ居ル次
第デアリマス、生命保險ニ於テモサウ云フ
コトヲ考ヘテ居リマスルガ、是等ノ點ハ矢
張リ現在ノ經營者ト云フコトヲ頭ニ置イテ
考ヘマスルト、數ヲ整理スルトカ、色々整
理合同ヲスルト云フコトハ經營者本位ニ考
ヘマスルト、直チニサウ云フコトヲ申上ゲ
ル譯ニハ行カナイカト考ヘラレルノデアリ
やく、併シガナラ一面國際關係ヲ考慮致
シマスルト、經營單位ヲ如何ニシテモ强
クシタイト云フ當局ノ强イ希望ガゴザイマ
シテ、今囘ノ法律ガ御認ヲ戴キマスレ
バ、是等ノ點ニ努メタイト考ヘテ居ル次第
デゴザイマス、次ニ國營ニ對スル御尋デ
ゴザイマス、最近、殊ニ生命保險ニ付キマ
シテ國營ノ議論ガ相當ゴザイマス、學者ハ
色々ノ說ヲ擧ゲテ國營ノ良イコトヲ說イテ
居ル者モアリ、又之ニ對スル反對論モゴザ
イマスコトハ御承知ノ通リデゴザイマス
今囘此ノ法律案ヲ衆議院ニ提出致シマシテ、
色々衆議院デ御尋ニ預リマシタ際ニモ、國營
ノ話ガ相當出マシタ譯デアリマス、私共ハ
此ノ國營ニ對シテ考ヘテ居ル所ヲ全部申上
ゲル譯ニハ行キマセヌガ、如何ナル理由デ
國營ガ良イト云フノカ、其ノ點ヲ十分御聽
キシタイト思ッテ居ッタノデゴザイマスガ、
主トシテ衆議院ニ於キマスル國營論ノ根據
ハ、現在ノ民營保險ノ弊害ガ多イト云フ點
ニアルヤウデゴザイマス、ソレモ具體的ニ
御話ハナカッタノデアリマスルガ、主トシテ
外務員等ノ第一線ノ者ガ、所謂契約者ニ及
ス弊害、是等ノ弊害ニ對シテ重要ナ考慮ヲ
シナケレバナラヌ點ハ當局モ十分考ヘテ居
リマスガ、相當ノ弊害ガアル、ソレ等ノ弊
害ハ經營形態ヲ變ヘルニ非ラザレバ除去ス
ルコトハ出來ナイト云フヤウナ意味ノ、國
營論ガ多カッタヤウニ承知致シテ居リマス、
國營ニ對スル當局ノ考ヲ搔摘ンデ申上ゲマ
スルト、觀念論的ナ國營論ハ是ハ申上ゲル
迄モアリマセヌガ、一方贊成論ガアルト同
樣ニ强イ反對論ガゴザイマシテ、是ハ議論
ガ盡キナイ所デゴザイマス、今申上ゲマス
ヤウニ、現在ノ民營保險ノ弊害ヲ除去スル
方法トシテ、經營形態ヲ變ヘナケレバナラ
ヌト云フヤウナ議論ニ對シマシテハ、今囘
ノ此ノ法律改正ニ依リマシテ出來得ル限リ
此ノ弊害除去ニ努メルコトニ致シマスレ
バ、ソレ等ノ弊害ハ除去シ得ルモノデアル
ト云フコトヲ考ヘテ居リマス、最モ其ノ弊
害ノ著シイモノトシテ擧ゲラレル事業費ノ
濫費ト云フヤウナ點ニ付キマシテ、實ハ當
局ニ於キマシテ是ハドウシテモ改メナケ
レバナラナイト云フコトヲ痛感シテ居ッタ
ノデアリマスガ、ドウシテモ法律上ノ手段
ヲ缺クガ爲ニ行キ屆カナイノデアリマス、
併シナガラ今囘ノ此ノ法律改正ニ依リマシ
テ、ソレ等ノ點ガ除去シ得ルコトヲ確信シ
テ居ル次第デゴザイマス、其ノ他多クノ民
營保險ニ對スル非難、弊害ト云フヤウナモ
ノハ一々仔細ニ私共ノ方デ〓究ヲ致シマス
んた、皆除去シ得ルモノノヤウニ考ヘラレ
ル次第デゴザイマス、從ッテ多年ノ貢獻ヲナ
シテ參リマシタル所ノ、我ガ國ノ生命保險
事業ト云フモノノ一大變革タル、國營ニス
ルト云フ考ハ目下ノ所デハ持ッテ居リマセ
又、サウ云フコトヲ申上ゲテ御答ト致シマ
ス、ソレカラ滿洲、支那ニ對スル保險ノ點
ニ對シテ、ドウ云フ考ヲ持ッテ居ルカト云フ
御話デゴザイマスルガ、滿洲ニ於キマシテ
ハ、生命保險ニ付キマシテハ旣ニ滿洲國ト
ノ協定ガ出來マシテ、日本內地ノ生命保險
會社ノ協力ニ依リマシテ、滿洲生命保險會
社ガ出來マシテ、此ノ滿洲生命保險會社ト
ノ協定ヲ保ッテ居ル現狀デアリマス、損害保
險ニ付キマシテハ滿洲國側ニ於キマシテ、
滿洲ニ於ケル產業發達ノ見地カラ、滿洲ノ
損害保險事業ノ發達ヲ圖リタイト云フ希望
ノ切ナルモノガゴザイマシテ、色々交渉シ
タ譯デアリマスルガ、是ハ內地ノ保險會社
ノ旣得權益ト打ツカル所ガゴザイマス、從ッ
テ此ノ內地保險會社ノ既得權益ト、向フデ
發達サセタイト云フ損害保險トノ關係ヲ調
和スルノ必要ガアルト認メマシテ、關係當
局等ヲ混ゼマシテ、一應ノ協定ハ出來テ居
ル譯デアリマスガ、最近代理店等ノ仕組ニ
付キマシテ、滿洲國側ノ執ッタ處置ガ幾分內
地ノ保險會社ノ旣得權益ニ觸レルヤウナ點
ガゴザイマスノデ、今急イデ是等ノ點ノ打
開ニ努メテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、
從ッテ是等ノ點ハ內地保險會社ノ發達ノ爲
ニ逐次考ヘテ居ルノデゴザイマスルガ、滿
洲國ノ方トノ從來ノ交涉及取極ガゴザイマ
スノデ、其ノ取極ノ範圍內ニ於テ發展ヲ圖
ルノ外ハナイト考ヘテ居ル次第デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=5
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006・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 モウ一ツ質問致シタイ
ト思ヒマス、只今ノ御說明デ滿洲ノ狀態ハ
分リマシタガ、滿洲國ノコトヲ我々ガ云々
スル譯デハアリマセヌガ、滿洲ニハ外國ノ
保險會社ノ進出ト云フコトハナイノデアリ
マセウカ、今ノヤウナ日本ノ保險會社ガ遠
慮シテ居ルト云フヤウナ狀態ニ於キマシテ、
外國ノ保險會社ガ別ロカラドン〓〓入ッテ
行クト云フヤウナコトハナイノデアリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=6
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007・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 現在滿洲國デ外國
保險會社ガ經營シテ居ルモノハ若干アルノ
デアリマスガ、滿洲ト內地會社ノ協定及共
同ノ力ニ依リマシテ是等ト競爭シテ居ル關
係上、外國保險會社ノ勢力ハ幾分減少シテ
行クヤウナ傾向ニアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=7
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008・山岡萬之助
○山岡萬之助君 私一般問題ニ付テ少シ伺
ヒタイノデゴザイマスガ、只今大體質問應
答デ了解致シマシタ外ノ點ニ付テ伺ヒタ
イ、保險事業ガ出來マシタ最初ハ、商法ヲ
以テ支配シテ居ッタヤウデアリマス、ソレガ
三十三年頃ニ保險業法ノ特別法ガ出來テ今
日ニ段々發達シテ來タ、其ノ最初ハ保險業
ト云フモノモ、一般ノ會社ト大體同ジヤウ
ナ考へ方ヲシテ居ッタト考ヘラレルノデアリ
やっと、私共今日カラ見マスルト云フト、保
險業ノ經濟上ト云フヨリモ、寧ロ社會上非
常ナ重大性ヲ持ッテ居ル、資本金ノ關係、株
式會社デ株式ナドト云フ事柄ニ付テハ、勿
論財產的經濟ノ關係ニ過ギナイノデアリマ
スガ、被保險者ノ保險金ヲ支拂フト云フ關係
ニ立ッテ、保險料ヲ受領スル、而シテ火災保
險ナドハ短イ期間デアリマスケレドモ、生
命保險トナルト何十年ト云フ長イ歲月ヲ持
ツノデアリマス、從ッテ保險料ノ蓄積サレル
額モ非常ニ多イコトニナル、サウ云フ關係
デアリマスルガ、今迄ハ保險會社ニ對スル
監督ガ行キ屆カナカッタト私ハ申シテ差支
ナイト思フ、餘程行キ屆カナカッタ、ソコデ
此ノ度ノ改正ニ付テハ色々ソレ等ニ關スル
監督規定以下制定セラレテ居ルノデアリマ
スルガ、此ノ法案ガ法律トナッテ實施サレル
時ニハ、ソレ等ノ關係モ確カニ相當改善サ
レルコトトハ思フノデアリマス、私ハ併シ
其ノ點ニ付テ更ニ一步ヲ進メテ考ヘテ見タ
イコトハ、サウ云フ風ニ何十年モ被保險者
ガ掛ケテ居リマシテ、保險金ノ受領ト云フ
コトニ付テハ、確實性ヲ期待シテ居ルコト
ト思フノデアル、然ルニ今日迄ノ狀態ニ依
レバ拘束命令ヲ受テ居ル會社モアレバ、或
ハ事業ヲ全然停止シテ居ル會社モアル、其
ノ被保險者ノ掛ケタ保險料ハ全ク無意味ニ
終ッテ居ル、斯ウ云フコトハ國家トシテハ、
私ハアッテハナラヌコトダト深ク考ヘル、ソ
コデ監督命令若シクハ保險計理人ト云フモ
ノガ、平時任命シテアル譯デスガ、其ノ程
度ハマダ足ラヌノヂヤナイカ、私ハ特殊會
社ニ監理官ト云フモノガ派遣サレテ居ルト
云フコトハ、此處ニ申ス迄モナイコトデア
リマスガ、斯ウ云フ公益ノ重イモノニ付テ
ハ、政府ハ監理官ヲ其ノ中ヘ派遣シテ、勿
論細カイコト迄直接監理スル必要ハアリマ
セヌケレドモ、大體ニ於ケル動キト云フモ
ノハ、絕エズサウ云フ人ガ中ニ居ッテ、之ヲ
監察シテ居ル、サウシタラバ今日ノ如キ破
綻スル所ノ保險會社ハ出來ナイダラウト、
今日迄サウ云フコトニ付テ、既ニ長イ間害
ノアルコトガ明カデアルニ拘ラズ、商法ノ
改正ガ動機トナル迄サウシテ置カレタコト
ヲ、今伺ッテモドウカモ知レマセヌガ、將來
ノ問題ト結ビ著イテ、今度ノ法案デ、サウ
云フコトガ救濟出來ルヤ否ヤ、其ノ點ヲ一
ツ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=8
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009・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 御答へ申上ゲマス、
生命保險事業ガ年々發達致シテ參リマシテ、
サウシテ最近デハ世界ノ三位ニ達シテ居ル
ノデアリマス、今後モ非常ニ發展シテ行ク
ノデゴザイマセウガ、今仰セノ通リニ每年
蓄積シテ行ク資金モ莫大デアリマスシ、又
今後發展シテ行クニ連レマシテ、被保險者
ノ數ヲ增シ、色々關係スル方面モ大キク
ナッテ參リマス、例ヘバ產業界ニ對スル投
資方面ノ關係ニ於キマシテ、產業界ニ影響
モ與ヘル譯デゴザイマス、非常ニ今後ノ生
命保險事業ノ監督ト云フモノハ重大サヲ加
ヘタト考ヘル次第デゴザイマス、之ニ對シ
マシテ今御指摘ノ通リニ、監督官ガ不行屆
デナカッタラウカト云フ御話デゴザイマス
ガ、私共モ其ノ點ヲ遺憾ニ考ヘテ居ッタ次
第デゴザイマス、今囘此ノ法律ヲ改正致シ
マシテ、ソレ等ノ點ニ付キマシテ、十分當
局モ熱意ヲ以テヤラナクテハナラヌト云フ
コトヲ考ヘル次第デゴザイマスガ、此ノ規
定ノミデソレ等ノ重責ニ任ズルコトガ出來
ルカト云フ御尋デゴザイマスガ、大體現在
ノ法律ヲ考ヘマスルト非常ニ不備デゴザイ
マシテ、例ヘバ監督上ノ處置ニ付キマシテ
モ現行法デハ御承知ノ通リニ、保險會社
ノ經營ノ基準トナルベキ基礎書類、基礎
書類ニ從ヘト云フ命令ハ出來ルノデゴザイ
マスガ、御承知ノ通リニ基礎書類ト申シマ
スノハ、其ノ會社ノ經營ノ基準ヲ書イテ居
リマス、從ッテ基準的事項ヲ書イテ居ルガ、
相當ノ幅ヲ持ッテ居リマス、其ノ幅ノ範圍內
デヤルコトガ却テ業績ノ惡化ニナル、業績
ヲ惡化セシメテ居ルト云フヤウナコトガ、
監督上ノ經驗カラ痛感セラレテ居ッタノデ
ゴザイマス、ソレデ今囘ノ法律ニ於キマシ
テハ、少クトモ銀行法若シクハ貯蓄銀行法
等ノ、同樣ナ意味ノ監督法規ノ程度ニ、監
督規定ヲ强化スルコトガ必要デハナカラウ
カ、今ノ御話カラ申上ゲマスレバ、基礎書
類ノ範圍內ニ於ケル會社ノ行爲デモ、其ノ
業績ヲ惡化セシメルヤウナモノニ付キマシ
テハ、飽ク迄モ指導的ナ考ヲ失ッテハナラナ
イガ、指導的ナ監督ガ出來ルヤウニシナク
テハナラナイノデハナイカト云フコトニナッ
タノデゴザイマス、其ノ他監督法規ニ付キ
マシテ、御話ノ通リニ解釋シテ居ルノデゴ
ザイマスガ、是等ノ點ハ從來痛感セラレテ
居リマシタ點カラ見マシテ、是等ノ點ノ改
正ヲ御認メ願ヘレバ、相當監督ノ實績ヲ擧
ゲルコトガ出來ヨウカト考ヘルノデゴザイ
マス、尙具體的ナ監督ノ方法ト致シマシテ、
監理官ノ制度ヲ置クコトガ必要デハナイカ
ト云フ御話デゴザイマシテ、是ハ私共モ同
感ニ考ヘテ居リマス、併シナガラモウ少シ
〓究ヲシタイ點モゴザイマシテ、今直チニ
各會社ニ監理官ヲ派遣スルト云フヤウナコ
トハ、今ノ所デハ實行ニ困難デハナカラウ
カト考ヘテ居リマスルガ、御趣旨ハ能ク分ッ
テ居ル譯デゴザイマスカラ、〓究シテ見タ
イト思ッテ居リマス、唯之ニ代ヘル譯デハゴ
ザイマセヌガ、保險計理人ト云フモノノ制
度ヲ今囘採リマシタ、保險計理人ノ持ツベ
キ重責ヲ法律ニ規定致シマシテ、或程度此
ノ保險計理人ガ職務ヲ執行スルノニ、力ヲ
持チ得ルヤウニナルト共ニ、之ニ依リマシ
テ實質的ナ改善ヲ計ルト云フコトニ努ムル
ナラバ、一方監督規定ノ强化ト、ソレカラ會
社内部ニ於ケル最モ根本的ナ、整理ヲ扱フ人
ニ對シテノ職責ヲ規定致シマシテ、是等ノ
數理ノ正確ヲ期スルト云フコトニスレバ、
兩兩相俟ッテ、御話ノヤウナ點ガ實現サレ得
ルノデハナカラウカト考ヘテ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=9
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010・山岡萬之助
○山岡萬之助君 此ノ監理官ニ付キマシテ
ハ、只今御話ノ通リ、銀行ニ對スル關係ト
同樣ニマア大體監督規定ガサレテ居リマス
ルガ、銀行ノ方ノハ長期ノ拂出ヲ許サヌト
云フニハ、マア勿論定期モアリマスケレド
モ、保險會社トハ餘程趣ヲ異ニ致シテ居リ
マスルカラ、私ハ銀行ヨリモ監督ヲ强化ス
ル必要ガアル、サウ云フ點カラ考ヘテ居ル
ノデアリマス、其ノ點ハ御考慮ヲ願ッテ置キ
そう、更ニ御伺ヲ致シタイ點ハ、今日ノ會
社數ハ此ノ參考書ニモ御示ニナッテ居リマ
スガ、其ノ中不振會社ガドノ位アッテ、拘束
命令ノ出タモノトカ、業務停止トカ、其ノ
數ヲ一應承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=10
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011・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 會社ノ數ハ御手許
ニ差上ゲテゴザイマスガ、業績不良ノ會社、
或ハ拘束命令ラ受ケテ居ル會社:発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=11
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012・山岡萬之助
○山岡萬之助君 チヨット速記ヲ止メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=12
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013・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 速記ヲ止メ
テ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=13
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014・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 速記ヲ始メ
テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=14
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015・山岡萬之助
○山岡萬之助君 本案ニ依リマスルト、株
式會社、相互會社ノ資本ノ總額ハ十萬圓以
上ト云フコトニナッテ居リマスガ、是ハ實際
ニ於テ餘リニ低過ギルモノデハナイカト私
ハ思フノデアリマス、固ヨリ右ニ述ベマシ
タルヤウニ、資本關係ニ重點ヲ置クベキモ
ノデナク、保險金關係ニ重點ヲ置クベキモ
ノデアルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、
併シ創立致シマスル際ニ十萬圓ト云フコト
ハ、餘リニ今日ノ經濟事情ニ照スト適當デ
ナイノデハナイカト斯ウ思フノデアリマス、
折角改正サレテ尙斯ウ云フ今日ノ經濟事情
ニ合ハヌト考ヘラレル規定ヲサレタノハド
ウデアリマスカ、又是デ合フト云フ風ニ御
考ニナッテ居リマスカ、ソレカラソレニ牽連
致シマシテ、先刻曾我子爵ヨリ御尋ノアッタ許
可ニ付テノコトデアリマスガ、勿論斯ウ云フ風
ナ重大ナル事業デアリマスルカラ、容易ニ許可
スベキデナイト云フコトハ勿論デアリマス、
件シ今日業績ノ甚ダ擧ラナイ會社ガ尙營業
ヲ持續シテ居ル、ソレハ詰リ募集關係範圍
ガ適當デナイトカ色々會社ノ事情ニアルノ
デアリマシテ、今日迄相當ノ期間業績ノ擧
ラナイモノハ到底擧ル筈ハナイノデアリマ
ス、今カラサウ云フ會社ハ宜シク此ノ度、
合併トカ或ハ契約移轉トカ簡易ニセラレテ
居ルノデアリマスルカラ、是ハ宜シク管理
ヲ他ノ會社ニ託サレテ整理ヲナスベキモノ
デアルト思フノデアリマス、ソレニ付テハ
御答辯ヲ煩ハス必要ハ無イノデアリマスガ、
私ハ是非サウ云フモノハ整理サレナケレバ
ナラヌト思ヒマスガ、ソコデ新シキ會社ト
シテ相當ナル條件ガ備ハッテ新設サレタモ
ノデ急ニ發達シタ會社ハ實例ニアルノデア
リマスガ、サウ云フコトモ尙一齊ニ許サナ
イト云フ行キ方ハ、ドウモ誠ニ實際ノ事情
ニ合ハナイヤウニ考ヘマスルガ、先刻ノ御
答辯ハ何カ新シイ事項ガ別ニ保險ノ關係ニ
於テアルナラバ、サウ云フコトハ考慮スル
ト云フ御話デアリマスガ、在來ノ形ニ於テ
モ、私ハ許シテ然ルベキモノヂヤナイカ、ソ
レハ實際發達ノ見込ガアルカ否カニ關係ス
ルノデ、資本金ハ十萬圓以上······資本金ニ關
係ノ無イコトデ、詰リ業績ガ擧ルカ擧ラナ
イカト云フ關係ニアルト思ヒマス、業績ガ
擧ルト云フナラバ、斯ウ云フコトヲ許スニ
サウ躊躇セヌデモ宜クハナイカ、斯樣ニ考
ヘルガ、ソレニ付テ御意見ヲ承リタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=15
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016・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 御答辯前ニ、關聯シテ
居リマスカラ私モ附加ヘテ述ベタイノデス
ガ、實ハ各條ノ質問ニ入ッテカラ御尋ネシ
タイト思ッテ居ッタノデスガ、只今山岡委員
カラ御質問ニ相成ッタヤウニ資本又ハ基金
ノ總額十萬圓以上ト云フコトニナッテ居ル
ノデスガ、是ハ實際ノ運用カラ云フト四分
ノ一拂込デ差支ナイノデスカラ、二萬五千
圓デアッテモヤレル、斯ウ云フコトガ此ノ第
三條カラ出テ來ル、尤モ斯カル會社ニ對シ
テハ主務大臣ハ無論免許ヲ與ヘナイデアリ
マセウカラ、實際問題トシテハ餘リ顧慮ス
ル必要ハ無イト思ヒマスケレドモ、此ノ法
律案ハ、保險會社ト云フモノノ基礎ヲ鞏固
ニシテ、業務ノ成績ヲ擧ゲヨウト云フコト
ヲ標榜シテ出來テ居ルノニ、三條ヲ見ル
ト、現行法ト同樣詰リ十萬圓ダケノ資本
又ハ基金ガアレバ、保險會社ト云フモノハ
造ルコトガ出來ルノダ、保險事業ヲ營ムコ
トガ出來ルノダ、實際ノ拂込金額カラ云フ
ト、二萬五千圓デモ出來ルノダト云フコト
ヲ云フコトガ、ドウモ如何ニモ保險事業ヲ
重ク見テ居リナガラ玆デ輕視シテ居ルヤウ
ニ見エルノハ、如何デアリマセウカ、現行
法ヲ改正スル際デアリマスカラ斷然、此ノ
金額ヲ引上ゲテ然ルベキデアラウト思フノ
デアリマス、又實際問題トシテモ、斯ンナ
金デ保險會社ヲ造ッテ保險事業ヲ經營シヨ
ウト云フ者ハ絕無ト思フノデアリマスケレ
ドモ、サウ云フ狀況ノ下ニ、此ノ三條ハ時
代後レヂヤナイカ、商工省デハ非常ニヤカ
マシク言ッテ居リナガラ、何ダ第三條ヲ見ル
ト二萬五千圓拂込デモ差支ナイ、ソレデ保
險會社ノ設立ヲ認メ、保險事業ノ經營ヲ認
メルト云フコトハ鼎ノ輕重ヲ問ハレル虞ハ
ナイカ、何ガ故ニ此ノ金額デ滿足セラレタ
ノカ、何カ特別ニ理由ガアッテ、現行法ノ通
リニシテ置カレタノデハナイカト私ハ考ヘ
ル、實ハ保險事業ニ付テ甚ダ經驗モ無イノ
デスケレドモ、何カソコニ必要ガアッテ現行
法ノ通リニシテ置カレタ何カ理由ガアルノ
デアラウカ、損害保險ナラバ或ハ小規模ノ
モノデアッテ、小サイ範圍デ經營スルト云ツ
タヤウナ必要ノアル場合ハアルカモ知ラヌ
ト實ハ思ッテ居ルケレドモ、ソレ以外ニハド
ウモ餘リナササウデアルノデスガ、何カソ
コニ必要ガアルノカ、是迄ニ下ゲル必要ガ
アルカ、詰リ現行法ヲ改正セズニ置クト云
フ何カ特別ノ事情ガアルカ、ソレヲ伺ッテ置
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=16
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017・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 保險會社ノ資本ニ
付キマシテハ、先程モチヨット御尋ガゴザイ
マシタ通リニ、相當保險團體ガ大キクナリ
マスルト、相互會社ノ資金等モ殆ド無クナツ
テ居ルヤウナモノモゴザイマスルシ、普
通ノ生產會社程ノ資本ヲ要シナイト云フ考
ヘ方ヲ致シテ居リマス、今囘ノ改正デ十萬
圓以上ト云フコトニシタノハ、現在此ノ程
度ノモノガゴザイマス關係カラ致シマシテ、
現行法其ノ儘ヲ取ッタ主タル理由ハソチラ
ノ方ニゴザイマス、實例ヲ申上ゲマスト、
三十萬圓ノ資本デ七萬五千圓ノ拂込ノ會
社デ、契約高七億位ヲ持ッテ居ルノモゴザ
イマス、サウ云フ實情デゴザイマス、ソ
レカラ新會社ニ付テノ御尋デ、業績ノ擧
ラナイ會社ニ對スル方針ニ付テ御尋ガゴ
ザイマシタガ、業績ノ擧ラザルモノニ付
キマシテ整理、合併等ヲシタラ宜クハナイ
カト云フ御尋デゴザイマスガ、是ハ衆議院
デ度々御尋ガゴザイマシテ、一口ニシテ申
シマスレバ、政府ガ、業績ガ擧ラナイカラ
ト云ッテ之ヲ謂ハヾ潰ストカ、合併整理スル
ト云フコトニスルコトハ、却テ弊害ガアラ
ウト云フヤウニ考ヘマシテ、ソレヲ申上ゲ
タ次第デアリマス、ト申シマスノハ、此ノ
業績ノ擧ラナイモノヲ整理スルコトニシタ
場合ニ、必ズ契約者ガ不安ヲ起シマシテ、
解約ガ非常ニ續發スルモノデアリマス、謂
ハヾ保險契約者ノ保護ヲ建前トシ、保險契
約者ヲ擁護スルト云フコトヲ根本精神トシ
ナクテハナラナイ監督行政ニ於キマシテ、
結果的ニ見レバ保險契約者ニ多大ノ不利益
ヲ與ヘルヤウナ整理ト云フモノヲ、積極的
ニスルト云フコトハ如何カト考ヘマシテ、
今後此ノ法律改正ニ依リマシテ、業績ヲ向
上セシメルヤウナ監督方針ヲ採ッテ、ソレニ
努メルト云フコトニ致シタイト云フノデ、
御答へ申上ゲタ譯デゴザイマス、新會社ヲ
許シテ、サウシテ從來アルヤウナ生命保險
ニ付テモ、最モ良イ會社ヲ造ラセルヨウニ
シタラドウカト云フ御尋デゴザイマス、御
尤ノ點ハゴザイマスガ、出來タ會社ガ業績
ヲ擧ゲルカドウカト云フ點ハ、他ノ生產
會社等ト異リマシテ、保險會社ニ於キマ
シテハ、或一定ノ程度以上ノ規模ヲ持ツコ
トニ依ッテ業績ガ學ルヤウナモノデゴザイ
マスカラ、初メカラ此ノ競爭ノ激シイ保險
業界ニ新シイ保險會社ヲ造リマシテ、同
保險ノ種類ヲ許シテ、競業セシムルト云フ
コトハ相當困難デアリマス、一定ノ大キナ
保險會社ヲ造ルコトニ依リマシテ危險ノ分
散ガ行ハレル、危險ノ分散ガ行ハレルコト
ニ依ッテ事業ノ經營ガ健全化スルト云フヤ
ウナ關係ヲ考慮致シマスルト、競業ノ多イ
同種類ノ保險ヲ許スコトニ依ッテ今後其ノ會
社ヲ大キクシ、模範的ナモノニ成ラシムル
ト云フコトハ相當困難デハナカラウカト考
ヘテ居ル譯デアリマス、併シナガラ稍〓警
異ニシタヤウナモノニ付キマシテハ、是等
ノ點ハ相當考慮致シマシテ、是ガ若シ保險
業全般ノ向上發展ニ資スルヤウナモノデア
リト致シマスレバ、是ハ許サナクテハナラ
ナイト考ヘテ居リマス、結局本案ノ保險業
ノ發展ト云フコトノ見地カラ致シマシテ、
適當デアル所ノモノデアレバコダハル所ナ
ク許シテ行クノガ宜カラウヂヤナイカト考
ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=17
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018・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 私共ノ考ヘタ點ハ、現
ニ資本又ハ基金ノ總額十萬圓程度ノ株式會
社又ハ相互會社デアッタナラバ、保險事業ヲ
營ムコトノ出來ナイヤウニスルト云フ趣意
デハ無論ナイノデ、今後設立スル場合ヲ見
テノ考デアルノデ、此ノ儘デアレバ將來保
險會社ヲ設立スルノニ當ッテ、十萬圓程度ノ
資本又ハ基金デモ宜イト云フコトニナルカ
ラ、ソコガイカヌト云フコトヲ申スノデア
リマス、只今政府委員ノ說明スル如ク現
ニ斯カル程度ノ會社ガアリトスレバ、又現
ニ確カ第一生命保險相互會社ト云フモノハ、
五萬圓ノ基金デ出來タト記憶シテ居ルノデ
アリマスガ、サウ云フ現在立派ニ發達シテ
居ル會社ヲモ是デ括ラウト云フ趣意デハナ
イノデスカラ、私ハ立法技術トシテハ、此處
デハ思フ存分是デナケレバナラヌト云フ數
額ヲ擧ゲテ、附則ニ於テ現ニ存立スル保險
會社ニハ、第三條ノ規定ヲ適用セズトス
レバ宜カッタノヂヤナイカト思フノデス
ガ、ソレガ爲ニ何モ本條ヲ修正シテドウト
云フコトデハナイシ、又私ガ只今述ベタノ
ハ質問ノ範圍ヲ越エテ居ルトハ思ヒマス
ケレドモ、サウ云フ風ニスルコトガ宜カツ
タノヂヤナイカト云フコトヲ考ヘル次第ナ
ノデス、現ニアルモノニ付テモ此ノ程度ノ
モノヂヤイカヌト云フ趣意デハ決シテナイ
ノデ、ソレダケヲチヨット一言附加ヘテ申シ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=18
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019・山岡萬之助
○山岡萬之助君 此ノ資本關係ニ付テヾア
リマスガ、保險會社ハ、資本關係ヨリモ保
險金額關係ヲ重ク見ルモノデアリマスルカ
ラ、ソコデ合併、組織變更ナゾノ場合ニ於
テ外國、殊ニ「アメリカ」ニ於テハ、此ノ頃相
互カラ株式ニ移リ行クコトハ認メナイト云
フヤウデアリマス、此ノ案ハ、株式ト相互
ト移リ行クコトヲドウ認メテアリマスガ、
政府トシテノ御考ハ、ドウ云フ風ニ今後ノ
運營ニ付テハ重キヲ置イテ居ルノデアリマ
スカ、此ノ案ニ依リマスレバ監督統制ヲ强
化サレテ居リマスカラ、政府ノ考ヘ方ニ依ツ
テ、規定ハ兎モ角トシテ實際ノ運用ニナリマ
スレバ相當變化シ得ルデアリマセウ、ドウ
云フコトデアルカ承ッテ置クコトガ相當ダト
思ヒマス、又會社ノ管理ノ規定デアリマス
ガ、普通管理ヲ規定シ、尙强制管理迄行ッテ
居ルヤウデアリマスガ、會社自體ノ關係ト、
責任準備金若シクハ之ニ伴フタモノトノ關
係ト、全ク是ハ一〓ニナッテ居ルヤウデアリ.
マスガ、會社自體ト云フヨリモ、段々申ス通
リ、業務ノ保險金額關係ノ方ガ、殊ニ責任
準備金關係、ソレ等ガ重要デナケレバナラ
ヌト思フ、別ニソレ等ハ玆ニ明カニナッテ居
リマセヌガ、ソレ等ノ關係ハドウ云フ御積
リデアリマスカ、今後ノ運營上ニ付テノ御
考ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=19
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020・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 此ノ改正法ニ於キ
マシテハ、組織ノ變更ノ點ト、ソレカラ合
併等ノ規定ガゴザイマス、組織ノ變更ニ付
キマシテハ、株式カラ相互ニ移ル場合ノミ
ヲ規定シテ居リマス、組織變更ト致シマシ
テハ相互カラ株式ニ更ルコトヲ認メテ居リ
マス、從ッテ先日御說明申上ゲマシタ要項ニ
依リマシテ誤解ヲシテ居ル者ガゴザイマシ
テ、政府ハ、今後相互會社ニ依ッテ保險會社
ヲ經營セシムル方針デアルカノヤウニ傳ヘ
ル者ガゴザイマスガ、サウ云フ考ハ持ッテ居
リマセヌ、殊ニ此ノ法律ハ損害保險會社ニ
モ適用ガゴザイマスノデ、サウ云フ考ハ得
ラレナイノデハナイカト思ヒマス、何故ソ
レナラバ相互カラ株式ニスル場合ノ規定ガ
無イカト云フコトニナリマスルト、相互會
社ガ其ノ經營ガ行ケナクナッテ、株式ニシナ
クテハナラナイト云フ場合ガアリト致シマ
スルト、結局資本ノ力ニ依ッテ相互會社ノ救
濟ヲ圖ラナクテハナラナイ場合デアラウカ
ト考ヘマス、所謂擔保資金タル株式ヲ集メ
マシテ、サウシテ相互會社ヲ變更シテ株式
ニスル場合デアラウカト考ヘマスガ、相互
會社ガ經營ガ困難ニナッタ場合ニ、株式ノ形
式ニ依リマシテ、資金ヲ集メルコトガ困難
デアルコトハ想像セラレルノミナラズ、寧
ロ左樣ナ會社ヲ生ジタ場合ニハ、先程山岡
サンノ言ハレタヤウニ、契約者ニ迷惑ヲ掛
ケナイヤウニ契約ヲ移轉セシメルナリ、管
理セシメルナリ、此ノ法律ノ改正ニ依リマ
シテ、他ニ適當ナ方法ガ考ヘラレテ居リマ
スカラ、サウ云フ風ニサシタガ宜シイト云
フ考ハ持ッテ居ル譯デアリマス、尙合併ノ場
合ニハ株式及ビ相互ヲ併セマシテ、株式ニ
モナルコトガ出來ルシ、相互ニモナルコト
ガ出來ルヤウニナッテ居リマス、强制管理ノ
規定ニ付キマシテ、御尋ノ點ヲ聽漏ラシマ
シテ甚ダ何デゴザイマスガ、責任準備金ニ
付キマシテ、何等カ强制管理ノ場合ニ規定
ガアルカト云フヤウナ御尋デゴザイマシタ
デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=20
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021・山岡萬之助
○山岡萬之助君 チヨット速記ヲ止メテ戴
キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=21
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022・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=22
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023・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=23
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024・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 會社ノ業務ト財產
トヲ共ニ管理セシムルコトニ依ッテ此ノ制
度ハウマク行クカト云フ御尋デゴザイマス
ガ、此ノ會社ノ業務ガウマク行カナクナル
ト云フ最大ノ原因ハ、保險業ニ於キマシテ
ハ、主トシテ信用ガ影響シテ居ル點ガ多イ
ド考ヘルノデアリマス、此ノ規定ニ於キマ
シテ、或ハ强制的ニ管理セシムルト云フヤ
ウナ場合ハ、主トシテ經營業績ノ良イモノ、
又經營ノ擔當者ガ非凡ノ腕前ヲ持ッテ居ル者
等ヲ選ビマシテ、其ノ信用ト手腕トヲ併セ
借受ケマシテ、其ノ業績不良ニ陷ッタ會社ヲ、
ソレ等ノ擔當者ニ代ッテ經營セシムルト云
フ趣旨デゴザイマスカラ、保險業ノ業態ニ
ハ適シタ制度デハナイカト考ヘテ居ル譯デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=24
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025・山岡萬之助
○山岡萬之助君 本案ニ依リマスト、統制
協定ヲナサシメ、且監督ヲナスト云フ風ニ、
政府カラ保險會社ニ對シテ相當ニ力ヲ以テ
監督スルト云フ點ニ付テハ規定セラレテ居
リマスガ、保護、助長ト云フ方面ニハ餘リ規
定ガ見エテ居リマセヌ、サウ云フ點ニ付テ
伺ッテ置キタイノハ、可ナリ實際ニ於テ競爭
ガ激シク行ハレテ居ルノデアリマス、從ッテ
大會社ガ小會社ノ契約ヲ奪フト云フ事例ハ
相當アルヤウデアリマス、斯ウ云フコトガ、
ドウモ今日迄ノ自然ニ發達シテ來タ成績ノ
擧ラナイ會社ニ取ッテハ非常ニ困ルコトデ、
又其ノ會社ニ限ッテ遠キ將來ニ被保險者ノ
利益ト云フモノヲ危殆ニ陷レル、斯ウ云フ
コトデアリマスノデ、之ニ對シテ統制ト云
フコトヲ以テ今ノ不當競爭ハ防止サレルコ
トデモアラウト思ヒマスガ、今日迄モ政府
ハソレ等ノ點ニ付テハ相當監督サレ、各會社
ノ協定ニ依ッテ業務ヲ遂行シテ居ルコトト思
フ、ソレニモ拘ラズ、サウ云フ風ナ次第デ、
小會社ハ非常ニ業務ガ振ハナイ、之ヲ此ノ
度ハ此ノ程度デ十分ニ行ケル御考デアリマ
スカ、ソレカラモウ一ツハ、簡易保險トノ
關係デアリマス、簡易保險ガ出來マシテ、
最初極ク少額ノ時代ニハ一般ノ生命保險ニ
ハ大シタ影響ハ無カッタ、然ルニ段々額ガ
上ッテ來テ、是ガ所謂保險會社トノ關係ニ於
テハムヅカシイ問題ニナッテ來タノデアリ
マス、私共ノ今日考ヘテ居ルノハ、千圓ト
云フ額迄ヲ民間保險會社ガ持ッテ居ルコトガ
出來レバ大體宜イノヂヤナイカ、今日ノ
經濟界ノ關係ニ於テハ左樣ニ思ハレルノデ
アリマス、若シ簡易保險ノ方ガ段々上ッテ來
テ、サウ云フヤウナ所ヲ越シテ進ムヤウニ
ナリマスレバ、殊ニ小會社ナドノ營業ハ必
ズ不振ニ陷ルト思フノデアリマス、私ハ何
モ小會社ヲ擁護シヨウト云フ考ハ別ニ無イ、
イケナイモノハ外ニ合併スルガ宜カラウト
思フ、唯被保險者ガ長イ間何モ知ラズニ保
險料ヲ拂ッテ、サウシテ終ヒニナッテ會社ガ
破產狀態ニナルト云フコトニナルノヲ、私
ハ大イニ懸念致シテ居ルノデアリマス、ソ
レガ爲ニサウ云フ點ニ於テ伺フノデアリマ
ス、是ハ簡易保險ハ所管ヲ異ニシテ居リマ
スガ、勿論商工省保險當局トシテモ相談ニ
應ジラレルト思ヒマス、今日迄モサウ云フ
相談ヲ御受ケニナッタコトト思フガ、サウ云
フ點ニ對スル今後ニ於ケル商工省ノ態度ニ
付テ承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=25
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026・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 御答へ申上ゲマス、
殊ニ生命保險業ニ於キマシテハ、仰セノ通
リニ競爭ガ非常ニ激甚デゴザイマス、從ッテ
第一線ノ外務員ガ勸誘ヲ致シマスルニ當リ
マシテハ非常ナ競爭ヲ致シマシテ、サウシ
テ甚ダ言葉ハ惡イヤウデゴザイマスガ、掠
奪募集ト言ッテ居リマスガ、他ノ會社ノ旣ニ
出來上ッテ居ル契約ヲ取ッテ參リマシテ、自
分ノ會社ニ乘換ヘサセル、サウ云フ所ニ勸
誘サレタ人ハ、一度契約シタモノヲ解約ス
ルコトニ依ッテノ不利益ヲ受ケルノミナラ
ズ、新シク契約スル場合ニ於キマシテハ、
年ヲ取ンテ參ッテ居リマスルカラ、ソレニ依ッ
テ又二重ニ不利益ヲ受ケルト云フヤウナ譯
デアリマシテ、此ノ第一線ノ競爭カラ
起ル弊害ト云フモノハ、非常ニ大キイ
ノデアリマス、殊ニ御示シノ通リニ大
會社ガ小サイ會社ヲ壓迫致シマシテ······壓
迫スルト云フ程デハナイカモ知レマセ
ヌガ、事實矢張リ背後ニ於キマスル大キイ
會社ノ力ト云フモノハ、相當ソレ等ノ場合
ニモ現レルヤウナ傾向ガアラウト考ヘマス、
ガ此ノ業績ガ振ハナイ會社ヲ生ジタル原因
ニ付キマシテ振返ッテ考へテ見マスルト、會
社自體ノヤリ方ノイケナイコトニ基ク業績
不振ト、今申上ゲマシタヤウナ意味ニ於ケル
相互關係カラ生ズル業績不振トガゴザイマ
セウカト思ヒマス、此ノ自社ノ經營ノヤリ
方ガ惡イコトニ基ク業績不振ハ、今度御認
メヲ願ヒタイト思ヒマスル此ノ法律ガ改正ヲ
致サレマシタ時ニハ、飽ク迄モ之ヲ指導スル
ヤウナ意味ニ於キマシテ、監督ニ努メタイ
ト考ヘテ居リマス、會社ノ經營ノ經驗ガ無
イ當局ニソレガ出來ルカト思ハレルノデア
リマスガ、是ハ幸ニ多數ノ會社ヲ監督致シ
テ居リマシテ、色々比較考量スルコトノ出
來マスル資料ヲ持ッテ居リマス、ノミナラズ
非常ニ過去ニ於キマシテ、好イ成績ヲ擧ゲ
タ會社等ノ例モ持ッテ居リマスルカラ、却テ
一社ノ經營ニ任ズル者ヨリモ適當ナ指導的
ナ監督ヲスルコトガ出來ヨウカト確信シテ
居ル次第デアリマス、一方相互關係カラ來
ル業績不振ニ對シテハ、今御話ノ通リニ協
定等ニ依リマシテ、不當ナル競爭ヲ除去ス
ル······不當ナル競爭ヲ除去スルト云フコト
ハ結局現在ノヤリ方ニ於ケル契約者ニ及
シテ居ル弊害ヲ除去スル上ニ於テ最モ必要
デアルカラト云フ意味ニ於キマシテ、之丘
力ヲ注グコトガ、今後ノ監督行政上最モ必
要デアルト云フコトヲ考ヘテ居リマス關係
ニ於キマシテ、相當ノ力ヲ以テ之ニ處シテ
行キタイト考ヘテ居リマス、尙是デハ此ノ
規定ヲ動カスノミデハ不十分デハナイカト
云フ仰セデゴザイマシタ、是ハ御尤デゴザ
イマスガ、先程モ申上ゲタカト思ヒマスル
ガ、此ノ法律ガ幸ニ御認メヲ願ヘレバ、各種
ノ力ヲ政府ニ與ヘテ戴クコトニナリマスル
カラ、ソレ等ノ力ヲ以テ出來ルダケ監督ノ
任ニ當リタイト考ヘテ居ルモノデアリマス、
簡易保險ト民營保險トノ關係ニ付キマシテ
ノ御尋デゴザイマシテ、簡易保險制度ノ趣
旨等ハ御了承ノ通リデゴザイマシテ、是等
ノ制度ガ業程度擴充セラレルコトノ社會ニ
及ス好影響ト云フモノハ是ハ如何ニシテモ
認メナクテハナラヌト考ヘテ居リマス、昨
年ノ簡易保險ノ保險金額ヲ引上ゲマシタ時
ノ交涉ニ於キマシテハ、議會ニ御認ヲ願ッタ
以上ノ希望モゴザイマシタノデゴザイマス
ガ、先程民營保險トノ關係等ヲ考慮致シマ
シテ、昨年ハ七百圓ニ止メテ貰ッタ譯デゴザ
イマスガ、其ノ考ヘ方ハ所謂簡易保險制度
ノ效用ト申シマスカ、簡易保險制度其ノモ
ノノ效用ト云フモノハ、實ニ立派ナモノデ
アリマシテ、今後或程度擴充スルコトニ依ッ
テ最モ適當ナ社會施設トシテ行キタイト商
工省ト雖モ考ヘテ居ル次第デアリマスガ、
社會制度ヲ擴充スルコトニ依リマシテ、
面其ノ擴充ニ依リ受クル影響、惡影響ト申
シマセウカ、或程度ノ影響ガ與ヘラルヽト
考ヘルノデアリマスガ、其ノ影響ト其ノ社
會制度ヲ擴充スルコトニ依ッテ受ケル利益
トヲ比較考慮致シマスト、一擧ニシテ多額
ノ金額ニ上ゲルコトハ重大問題デアルト考
ヘルノデアリマス、今後民營保險ノ發達、
其ノ他是ノ簡易保險ノ金額ヲ引上ゲルコト
ニ依ッテ及ボス影響等ヲ愼重ニ考慮致シマ
シテ、商工省必ズシモ卑怯ナ考デ應ジ得ナ
イ譯デハゴザイマセヌガ、サウ云フ點モ十
分考慮シナクテハ一擧ニ上ゲルコトハ出來
ナイ、併シナガラ此ノ制度ノ宜シイコトハ
十分認メマシテ、出來ルダケ謂ハバ分ッタ話
ヲシタイト云フヤウニ考ヘテ居ル次第デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=26
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027・山岡萬之助
○山岡萬之助君 モウ一點伺ヒタイノデス
ガ、財產ノ管理ノ關係デゴザイマスガ、參
考ニ御出シニナッテ居リマスル均等利廻表ニ
依リマスレバ、大體四分ト云フ所ヲ押ヘテ
居ルヤウデアリマス、此ノ程度ニ於テ今日
カラ見タ、ドウモ長キ將來ノコトデスカラ、
殊ニ生命保險ハエライ將來迄見通スコトハ
出來ヌデセウ、今日ノ考ハ先ヅ集積サ
レタル資金ヲ四分ニ利廻シテ行ケバ宜
イト云フ考ガアラレルノデスカ、或ハ是
ハ唯單純ナ參考ニ過ギナイノデアリマスカ、
是ハ參考ニ過ギナイトスレバ、實際ニ於テ
ドノ位ニ集積サレタル資金ヲ利殖シタラ、
保險金ノ支拂ト云フモノハ可能デアルカ、
其ノコトヲ承リタイ、今一點附加ヘマシテ、
大體是ハ有價證劵其ノ他之ニ類似スルモノ
ニ保險會社ハ投資サレテ、利廻ヲ得テ居ル
ヤウデアリマスガ、併シ保險會社ト云フモ
ノハ生命保險ト云フモノハ、可ナリ長イ
存在ヲ必要トスル譯デアリマスカラ、從ッテ
保險會社ハ大キイ「ビルディング」ヲ建設シ
テヤッテ居ルヤウナコトモ、サウ云フコトカ
ラ來ルト思フノデス、併シ不動產卽チ固定
資本ノ面ニ投資スルト云フヤウナコトニ付
テハ、餘程考ヘナケレバナラヌト思ヒマス
ガ、實際日本ノ建物ノ如キハ、土地ハ別ト
致シマシテ、建物ハサウ長ク持タヌモノデ
アル、然ルニ在來サウ云フ風ナ不動產ニ投
資シテ、ソレガ爲ニ會社ガ大分損害シタヤ
ウナ事例モ常ニアルノデアリマス、サウ云
フ不動產面ニ對シテハ、政府ハサウ云フコ
トハ大體適當デハナイト云フ風ナ御考ヘ方
デアルカ、或ハ土地トカ若シクハ永久性ヲ
持ッタ所ノ建物ニ付テハ、投資ヲシテ然ルベ
キデアルト云フ御考デアルカ、或ハ土地ノ
如キハ自然是以上伸ビルモノデアルカラ、
長キ將來ニ亙ッテハ價格ガ騰貴スルコトハ
勿論デアル、斯ウ云フコト迄制限シテ、土
地ニ對シテハ買受ケルト云フコトハ別デア
リマスルガ、土地ヲ擔保トシテ貸付ケテ置
クト云フヤウナコトヲ敢テ制限スル必要ハ
ナイト思フ、又百年モ持ツヤウナ建物ニ對
シテ投資ヲシテ、相當ナ利ヲ得ルト云フコ
トハ、一向之ヲ拒ムベキ理由ガナイト思ヒ
マスルガ、サウ云フコトニ關シマスル卽チ
財產ノ利殖ト云フ關係ニ付テ、政府ノ御考
ヲ承ッテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=27
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028・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 均等利廻償還法デ
四分ト書イテゴザイマスノハ、單ニ一例ヲ
書イタニ過ギナイノデゴザイマシテ、御承
知デモゴザイマセウガ、保險會社ノ持ッテ居
ル資金ハ、保險契約者トノ關係ニ於キマシ
テ或一定ノ利廻ヲ約束シテ居ルヤウナ關係
ガゴザイマス、豫定利率ト申シテ居リマス
ガ、豫定利率ガ大〓四分ニナッテ居リマスル
關係上、四分ノ利廻デハ少シ經營ニ困難デ
ゴザイマス、現在ノ狀態ヲ申上ゲマスト、
各會社ノ資產ノ運用利廻ハ五分三厘强ニナッ
テ居リマス、是等ノ利廻ニ依ッテ生ジマシ
タル剩餘金ハ、八割ノ餘ヲ契約者ニ返シテ
居ル譯デゴザイマスルガ、是等ガ御承知ノ
契約者配當ト云フコトニナッテ居ル譯デゴ
ザイマス、均等利廻ニ書イテ居リマスノハ、
一例ニ過ギナイコトト御承知ヲ願ヒタイノ
デゴザイマス、ソレカラ殊ニ生命保險事業
ニ於キマシテハ、事業ノ性質上契約等モ長
期ニ亙ルモノデゴザイマシテ、其ノ資產運
用ニ付キマシテハ、其ノ長期契約ト云フコ
トヲ頭ニ置イテヤルベキデハナイカ、從ツ
テ直グ一度ニ多額ノ金額ノ支拂等ガナイノ
デアルカラ、相當長イ間ノ契約等ヲナシテ、
或ハ固定資本、不動產等ニ對スル貸出モ宜
イデハナイカト云フ御趣旨デアリマシテ、
御尤ト考ヘマス、唯保險會社ノ資產ハ相當
年々非常ニ大キク殖エテ參リマスカラ、其
ノ或部分ハ制限ヲ加ヘナイト、無制限ニソ
レガ宜シイト云フコトニナリマスルト、多
額ノ資本ヲ持ッテ居リマスル會社ニ於キマ
シテハ、現在五億以上ノ資金ヲ持ッテ居ル所
ガゴザイマス、ソレ等ノモノカラ考へマシ
テモ、矢張リ資金ヲ色々ナ方面ニ危險分散
ノ意味デ運用セシムルト云フコトガ、其ノ
保險會社ノ財政ノ健全ヲ圖ルト云フ意味カ
ラモ最モ適當デアラウト考ヘマシテ、施行
規則等ニ於キマシテ、其ノ運用資金ノ運用
方面ニ於ケル種類ニ對シテ、或種ノ制限ヲ
規定シテ居リマシテ、サウシテ會社ノヤリ
方等ヲ見マシテ、尙基礎書類ニ於キマシテ、
財產利用方法上ノ制限ヲ附スルト云フコト
ヲヤッテ居リマスルガ、今仰セノ點ハ尤ト考
ヘテ居リマス、唯資金ノ非常ニ多クナッタモ
ノニ對シマシテハ無制限ニヤルコトモ亦一
面弊害ガアラウカト考ヘマシテ、今申上ゲ
タヤウナ方針ヲ採ッテ行キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=28
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029・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 昨日述ベタコトニ關聯
シテ一應伺ッテ置キタイノデスガ、是ハ第十
一條ニ關スルコトデアリマスガ、ドウ云フ
統制協定ノ命令ヲ主務大臣ガスルノデアル
カト云フコトヲ伺ヒマシテ、何カ書附デモ
頂戴スレバ結構ダト申上ゲマシタ處ガ、今日
「保險業法改正法律案ニ基ク命令案要綱」ト
云フモノヲ御示シ下スッテ、能ク分ッタノデ
アリマスガ、之ニ依ルト、從來ノ協定ノ例
ヲ玆ニ揭ゲテアルノデアリマスガ、此ノ外
ニモマダ相當統制協定ヲ命ズベキ事項ガア
ルモノト思フノデアリマスガ、其ノ邊ノ御
考ハ如何デアリマセウカ、之ヲ頂戴シテ置
イタダケデハ速記錄ニ殘リマセヌカラ、
應其ノ點ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=29
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030・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 御答へ致シマス、
此ノ十一條ノ協定ハ先程申上ゲマシタ通リ
ニ、保險會社ノ不當競爭カラ生ズル弊害ヲ
除去スルコトニ資セシメヨウト云フ趣旨デ
ゴザイマシテ、協定ノ例ト致シマシテハ、
生命保險ニ於キマシテハ保險外務員給與ニ
關スル協定、保險外務員ノ雇傭條件ニ關ス
ル協定、代理店手數料ニ關スル協定、ソレ
カラ契約募集ノ方法ニ關スル協定、其ノ他
考ヘラレテ居ルモノモアリマス、ソレカラ
損害保險ニ於キマシテハ、保險料率ニ關スル
協定、紹介手數料ニ關スル協定、代理店手
數料ニ關スル協定、再保險手數料ニ關スル
協定、其ノ他二三ノモノガ現在考ヘラレテ
居リマス、結局不當競爭ヲ防止スルコトニ
資スルヤウナ協定ヲ命令ニ依リマシテ明示
シタイト云フ考デゴザイマス、尙其ノ命令
ニハ屆出方法、例ヘバ期日等ノコトヲ規定
致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=30
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031・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 昨日伺ヒマシタノハモ
ウ一點アルノデ、此ノ第百二十四條ノコト
デアリマスガ、第百二十四條ニハ「契約ノ移
轉ニ關スル協議ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハ
ズ又ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ契約ノ移轉ニ付必要ナル
決定ヲ爲スコトヲ得」、斯ウ書イテアルノ
デ、此處デ言フ「勅令ノ定ムル所ニ依リ」ト
云フノハ一體ドウ云フコトヲ定メル御趣意
デアルカト云フコトヲ伺ッタノデアリマス、
處ガ只今頂戴シタ此ノ要綱ノ中ノ第百二十
四條關係ノ勅令ノ趣旨トシテ、「商工大臣決
定ヲ爲サントスルトキハ期間ヲ指定シテ各
會社ニ意見書提出ノ機會ヲ與フルモノトス
ルコト」「決定ニハ理由ヲ附スルモノトスルコ
ト」斯ウアルノデスガ、新シイコトハ唯期間
ヲ指定スルト云フコトト、決定ニハ理由ヲ
附スルト云フコトガアルダケデアリマス、
果シテ此ノ程度ノモノデアルカドウカ分リ
マセヌガ、是ダケノコトヲドウモ勅令デ規
定スル程ノコトモナササウニ思フノデスガ、
此ノ統制協定ノ如キモノハ主務大臣ノ命令
デヤル、只今ノ決定ヲ爲スニ付テノ準則モ
矢張リ主務大臣ノ命令位デ差支ナイヂヤナ
イカ、勅令デ是ダケノコトヲヤル必要モナ
ササウデスガ、ドウ云フ譯デ特ニ勅令トセ
ラレタノデアルカ、勅令デ命令ニ讓ルコト
モ出來マスカラ、恐ラク勅令ガ出ル時ニハ
百二十四條ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
規定スト、一條ノ勅令デ濟ムノヂヤナイカ
ト思フノデアリマスガ、ドウモ少シ勅令ハ
重過ギルト思ヒマスガ、何カ特別ノ理由ガ
アルノカ、ソレヲ序ニ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=31
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032・牧楢雄
○政府委員(牧楢雄君) 決定ヲ爲ス場合ニ
勅令ノ定ムル所ニ依ルト云フコトハ規定シ
テゴザイマシテ、其ノ勅令ノ內容ハ今御話
ノ通リニナッテ居ルノデゴザイマスガ、是ハ
御手許ニ差上ゲタト思ヒマスガ、重要鑛物
增產法ノ場合ト同ジデゴザイマスルカラ、
同ジヤウナ建前ヲ取ッタノデアリマス、モウ
一ツハ此ノ決定ニ依リマシテ財產關係等ニ
於キマシテ、終局的ナ決定ヲ爲スヤウナ重
要ナモノデアルト考ヘマシテ、此ノ點ヲ勅
令ニ定メタ譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=32
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033・仁井田益太郎
○仁井田益太郞君 議論ノヤウニナリマス
ガ、實ハ定メルコトガ寧ロ技術的ノコトデ
スガ、司法關係ノ影響ノアルモノナラバ、勅
令ノ方ガ誠ニ結構ト思ヒマスガ、決定ヲス
ル迄ハ期間ヲ指定スルト云フコトガ新シク
此ノ勅令ニ規定サレ、決定ニハ理由ヲ附ス
ルト云フ理由デ、多少司法關係ニ付テ斯ウ
スルノガ宜イト云フヤウナコトガ分ルコト
ニナリマセウケレドモ、ドウモチヨット勅令
ニ定ムルト云フノハ大體他ノ法令デハ全
體ガ勅令デ出テ居ルガ、何カ特別ノ事情ガ
アルト思ヒマスガ、强ヒテ御尋ネスル必要
モアリマセヌカラ、是ダケデ止メテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=33
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034・樺山愛輔
○委員長(伯爵樺山愛輔君) 四時迄ト申上
ゲテ置キマシタガ、モウ今日ハ此ノ程度デ
止メマシテ、明朝十時カラ御願ヒシタイト
思ヒマス、是デ散會致シマス
午後四時十八分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵樺山愛輔君
副委員長男爵矢吹省三君
委員
公爵山縣有道君
侯爵淺野長之君
子爵曾我祐邦君
仁井田益太郞君
男爵伊藤文吉君
男爵中村謙一君
山岡萬之助君
藤原銀次郞君
大藪守治君
大和田健三郞君
政府委員
商工省保險局長牧楢雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403146X00219390313&spkNum=34
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