1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年二月十六日(木曜日)午前十時十一分開議
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議事日程 第十三號
昭和十四年二月十六日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件(第二日)
第二 郵便年金法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 花柳病豫防法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔佐藤書記官朗讀〕
一昨十四日海南島攻略ニ關スル本院ノ議決
ニ基キ關係方面陸海軍司令官ニ對シ左ノ感
謝祝電、發送方陸軍次官及海軍次官ニ依賴
セリ
帝國陸海軍ハ周到ナル作戰ト緊密ナル協
同トニ依リ奇襲能ク海南島ノ攻略ニ成功
昭和十四年二月十七日
ス其ノ戰局ニ及ホス效果寔ニ甚大ナルモ
ノアリト謂フヘシ貴族院ハ玆ニ院議ヲ以
テ其ノ戰捷ヲ祝シ併セテ將兵諸士ノ勞苦
ニ對シ深甚ナル感謝ノ意ヲ表ス
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
借地借家臨時處理法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
澱川低水工事促進ノ請願外十件ノ請願ハ各〓
意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
昨十五日第九部ニ於テ豫算委員加藤政之助
君ノ補關選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果河井彌八
君當選セリ
同日明治三十五年法律第四十九號中改正法
律案特別委員會ニ於テ常選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵橋本實斐君
副委員長大島健一君
同日委員長ヨリ豫算委員河井彌八君ヲ第一
分科擔當委員ニ、又豫算委員第二分科擔當
委員出淵勝次君ヲ第三分科兼務委員ニ選定
シタル旨ノ報〓書ヲ提出セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第四囘報〓)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、議事日程變更ニ付キ御諮リ
ヲ致シマス、日程第一ヲ後ニ〓シ、日程第
二、第三ヲ順次議題トナスコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、郵便
年金法中改正法律案、政府提出、第一讀會、
廣瀨厚生大臣
〔左ノ提出文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ倣フ)
郵便年金法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十四年二月十三日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
厚生大臣廣瀨久忠
郵便年金法中改正法律案
郵便年金法中左ノ通改正ス
第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ年金契約ニ於テハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ年金支拂ノ事由發生ノ日ヨリ
一定ノ期間內ニ年金受取人死亡スルモ
仍其ノ殘存期間年金受取人ノ遺族ニ繼
續シテ年金ヲ支拂フヘキコトヲ約スル
コトヲ得
第六條年金受取人又ハ第二條第二項ノ
規定ニ依リ繼續シテ年金ノ支拂ヲ受ク
ヘキ者(以下單ニ年金繼續受取人ト稱
ス)カ第三者ナルトキハ其ノ第三者ハ
當然年金契約ノ利益ヲ享受ス
第七條年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ讓
渡スコトヲ得ス
第八條年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ差
押フルコトヲ得ス但シ年額二百五十圓
ヲ超ユル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九條年金契約者ハ第三者ヲシテ年金
契約者トシテノ權利義務ヲ承繼セシム
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テ年金契約者
カ年金受取人ニ非サルトキハ年金受取
人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ承繼ハ政府ニ通知スルニ非サレ
ハ之ヲ以テ政府ニ對抗スルコトヲ得ス
第十條年金契約者ハ年金支拂ノ事由發
生スル迄ハ年金契約ノ解除ヲ爲スコト
ヲ得但シ年金契約者カ別段ノ意思ヲ表
示シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ效力
ヲ生ス
第十一條年金契約者ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ年金契約ノ變更ヲ請求スルコト
ヲ得
第十二條年金契約者掛金ヲ拂込マスシ
テ命令ノ定ムル猶豫期間ヲ經過シタル
トキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ年金契約ヲ既ニ拂込ミタル掛金ニ依
ル掛金拂濟年金契約ニ變更スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テ掛金拂濟年金契約ニ
變更セラレサル年金契約ハ解除セラレ
タルモノト看做ス
第十條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之
ヲ準用ス
第十三條隨時ニ掛金ノ拂込ヲ爲スヘキ
年金契約ニ於テ年金支拂ノ事由發生ス
ル迄ニ年金契約者ノ拂込ミタル掛金ニ
依ル年金ノ額カ命令ノ定ムル額ニ達セ
サルトキハ其ノ年金契約ハ解除セラレ
タルモノト看做ス
第十條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之
ヲ準用ス
第十四條年金受取人ノ死亡又ハ年金契
約ノ解除若ハ變更ノ場合ニ於テハ年金契
約者又ハ年金契約申込ノ際年金契約者
ノ指定シタル第三者ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ拂込掛金ニ基キ算定シタル返還
金(以下單ニ返還金ト稱ス)ノ支拂ヲ請
求スルコトヲ得
年金契約者カ年金受取人以外ノ第三者
ヲ返還金受取人ニ指定スルニハ年金受
取人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第十五條年金受取人以外ノ者ヲ以テ返
還金受取人ト爲シタルトキハ年金契約
者ハ返還金支拂ノ事由發生スル迄ハ年
金受取人ヲ以テ返還金受取人ト爲スコ
トヲ得
年金受取人ヲ以テ返還金受取人ト爲シ
タルトキハ年金契約者ハ之ヲ變更スル
コトヲ得ス
第一項ノ返還金受取人ノ變更ハ政府ニ
通知スルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第十六條年金受取人以外ノ第三者タル
返還金受取人カ返還金支拂ノ事由發生
前ニ死亡シタルトキハ年金受取人ヲ以
テ返還受取人トス
第十七條年金受取人カ戰爭又ハ戰爭ニ
準スヘキ事變ニ際シ戰闘又ハ戰鬪ニ準
スヘキ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲勅令ノ
定ムル期間內ニ死亡シタルトキハ第十
四條ノ規定ニ依リ返還金ノ支拂ヲ爲ス
ト否トニ拘ラス政府ハ年金受取人ノ遺
族ニ勅令ノ定ムル特別返還金ヲ支拂フ
前項ノ戰爭ニ準スヘキ事變、戰鬪ニ準
スヘキ公務竝ニ遺族ノ範圍及順位ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條第六條ノ規定ハ第十四條ノ返
還金受取人及前條ノ特別返還金受取人
ニ、第七條ノ規定ハ返還金又ハ特別返
還金ヲ受取ルヘキ權利ニ之ヲ準用ス
第十九條第十四條ノ規定ニ依リ返還金
ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得ル年金契約
及第二條第二項ノ年金契約ニ於テハ年
金契約者、年金受取人又ハ年金繼續受
取人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ金額
ノ範圍內ニ於テ貸付ヲ請求スルコトヲ
得
-第二條第二項ノ年金契約以外ノ年
金契約ニ在リテハ第十四條ノ規定ニ
依ル返還金額
二第二條第二項ノ年金契約ニシテ年
金支拂ノ事由發生前ノモノニ在リテ
ハ第十四條ノ規定ニ依ル返還金額
三第二條第二項ノ年金契約ニシテ年
金支拂フ事由發生後ノモノニ在リテ
ハ第二條第二項ノ一定ノ期間ノ內未
タ經過セサル部分ニ對シ支拂ハルヘ
キ年金ノ總額
前項ノ貸付ラ受ケタル者貸付金ノ辨濟
ヲ爲サスシテ命令ノ定ムル期間ヲ經過
シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ貸付金ノ辨濟ニ代ヘ年金及返還金
ノ減額ヲ爲スコトヲ得
第二十條ヲ第二十五條トシ以下第二十二
條迄順次五條宛繰下グ
第二十條年金契約ノ全部又ハ一部力無
效ナル場合ニ於テ年金契約者カ善意ニ
シテ且重大ナル過失ナキトキハ年金契
約者ハ拂込掛金ノ全部又ハ一部ノ返還
ヲ請求スルコトヲ得
第二十一條年金又ハ返還金ヲ支拂フヘ
キ場合ニ於テ其ノ年金契約又ハ之ニ基
キテ爲シタル貸付ニ付政府カ辨濟ヲ受
クヘキ金額アルトキハ支拂金額ヨリ之
ヲ控除ス
第二十二條當該官署カ年金、返還金、
特別返還金又ハ年金契約者ニ返還スヘ
キ掛金ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ支拂ヒ
タルトキハ其ノ支拂ハ之ヲ有效トス
第二十三條年金、返還金及特別返還金
支拂ノ義務竝ニ掛金返還ノ義務ハ二年、
掛金拂込ノ義務ハ一年ヲ經過シタルト
キハ時效ニ因リテ消滅ス
第二十四條年金契約者、年金受取人、
年金繼續受取人、返還金受取人又ハ特
別返還金受取人カ郵便年金ニ關スル事
項ニ付政府ニ對シテ民事訴訟ヲ提起ス
ルニハ簡易生命保險審査會ノ審査ヲ經
ルコトヲ要ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
特別返還金ニ關スル規定ハ年金受取人ガ
昭和十二年七月七日以後ニ死亡シタル場
合ニ之ヲ適用ス
〔國務大臣廣瀨久忠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=4
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005・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 只今上程セラレ
マシク郵便年金法中改正法律案提出ノ理由
ヲ說明致シマス、本案ハ現下緊要ナル國民
生活ノ安定竝國民貯蓄奬勵ノ見地ヨリ郵便
年金制度ヲ擴張致シマシテ、年金受取人ノ
生存中年金ヲ支拂フニ止マラズ、一定條件
ノ下ニ本人ノ遺族ニモ年金ノ支拂ヲ繼續ス
ルガ如キ年金種類ヲ創設致シマスト共ニ、
戰爭又ハ事變ニ依リ死亡セル年金受取人ノ
遺族ニ特別ノ支拂ヲ爲ス等、制度ノ效用ヲ
大ナラシムルノ外、一般民衆ノ利用ヲ容易
ナラシムル爲ニ、掛金拂込上便宜ナル方途
ヲ講ジ、併セテ現行法中不備ノ條項ヲ補整
致シマシテ、制度ヲ改善スル目的ノ下ニ郵
便年金法ヲ改正セムトスルモノデアリマス、
郵便年金ハ國民ノ老後ニ於ケル生活ヲ安定
ナラシムル目的ヲ以チマシテ、大正十五年
創始セラレマシタ官營生命保險制度デアリ
マスガ、創始以來順調ナル發達ヲ遂ゲマシ
テ、現在ハ契約件數ハ四十二萬件、年金ノ
年額ハ三千四百萬圓ヲ算シマシテ、又其ノ
積立金ハ一億三千萬圓ニ達スル成績ヲ收メ
テ居リマシテ、之ニ依ッテ國民生活ノ安定ニ
貢獻ヲ致スト同時ニ、集積セラレマシタ資
金ハ國民經濟上ニ寄與スル所尠カラザルモ
ノガアルノデアリマス、幸ヒ今囘ノ改正ガ
實現致シマスレバ、加入者ノ福社ヲ增進致
シマスト共ニ、今後本制度ノ普及發達ヲ促
進致スコトト相成リマシテ、現下ノ時局ニ鑑
ミマシテモ其ノ意義ハ深イモノガアルト存
ズルノデアリマス、何卒御審議ノ上速カニ
御協賛アラムコトヲ切望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔丸龜書記官朗讀〕
郵便年金法中改正法律案特別委員
侯爵淺野長之君子爵米津政賢君
犬塚勝太郞君河原田稼吉君
男爵長基連君男爵佐藤達次郞君
稻畑勝太郞君油井德藏君
風間八左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=6
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007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三、花柳
病豫防法中改正法律案、政府提出、第一讀
會、廣瀨厚生大臣
花柳病豫防法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十四年二月十三日
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞
厚生大臣廣瀨久忠
花柳病豫防法中改正法律案
花柳病豫防法中左ノ通改正ス
第二條第二項中「前項ノ規定ニ依リ設置
スル診療所ニ於ケル」ヲ「前二項ノ規定ニ
依ル」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項
コッタン
前項ノ規定ニ依リ設置スル診療所ニ於
テハ前項ニ規定スル者ノ外傳染ノ虞ア
ル花柳病ニ罹レル者ヲ診療スルコトヲ
得
第四條中「第二條第二項及」ノ下ニ「第三
項竝ニ」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣廣瀨久忠君演壇ニ上ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=7
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008・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 只今上程ニ相成
リマシタ花柳病豫防法中改正法律案ニ付テ
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、本法ハ昭
和二年ニ制定セラレタルモノデアリマシテ、
時勢ノ變化ニ應ジテ花柳病豫防ノ目的ヲ達
成スル上ニ、今日ニ於テハ遺憾ノ點ガアリ
マスノデ、差當リ最モ必要ト致シマス部分
ニ付キマシテ今囘改正案ヲ提出致シマシタ
次第デアリマス、現行法ニ依ル診療所ハ、
專ラ所謂業熊者ニ對スル診療ニ限ラレテ居
ルノデアリマスガ、花柳病蔓延ノ實情ニ鑑
ミマシテ、診療所ニ於テ業熊者以外ノ者ニ
付テモ診療シ得ルヤウニ改正ヲ致シ、豫防
ノ效果ヲ增サムトスル次第デアリマス、以
上改正理由ノ〓要ヲ御說明申上ゲマシタ、
御審議ノ上御協賛アラムコトヲ御願ヒスル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=8
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009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質問ガナ
ケレバ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔丸龜書記官朗讀〕
花柳病豫防法中改正法律案特別委員
侯爵四條隆德君子爵實吉純郞君
建部遯吾君男爵松尾義夫君
男爵高崎弓彥君岡田文次君
林平四郞君金杉英五郞君
西本健次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一ニ戾リ
マス、國務大臣ノ演說ニ關スル件、大藏男爵
〔男爵大藏公望君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=10
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011・大藏公望
○男爵大藏公望君 私ハ國內ノ一致協力ト
云フ問題ニ關シマシテ、總理大臣ノ御所見
ヲ伺ハウト存ズルノデアリマス、平沼首相
ハ曩ニ御就任ノ當初ニ於キマシテ國民ノ總
親和ヲ說カレマシタ、誠ニ一應御尤ニ存ズ
ルノデアリマスルガ、併シナガラ偖テ飜ッテ
考ヘテ見マスルト、今日國家一大事ノ場合
ニ於キマシテ、國民ハ別段誰カラ言ハレル
トナク、眞ニ協力一致ノ考ヲ以テ其ノ誠ヲ
竭シテ居ルノデアリマス、是ハ何ト申シマ
シテモ周知ノ事實デアリマシテ、今更何ノ
必要ガアッテ總理大臣ガ國民ニ伺ッテ總親和
ヲ說カレタノカ、何ヲ目指シテ斯ウ云フ風
ナコトヲ言ハレタノカ、私共ニハ少々解シ
兼ネルノデアリマス、率直ニ申上ゲマスレ
バ私共ノ耳ニハ國民ノ間ト申シマスルヨリ
ハ寧ロ官吏同志ノ間ニ或ハ總親和ノ必要
ガアルノデハナイカ、今日ノ如キ此ノ場合
ニ於テスラ尙政府部內ニ於キマシテハ、今
ダニ各省間ノ繩張爭ヒ、或ハ權限ヲ主張、
偖テハ豫算ノ爭奪ガ行ハレテ居リ、ドウモ
本當ニシックリ行ッテ居ナイト云フ風ナ聲ヲ
屢〓耳ニスルノデアリマス、斯カルコトガ勿
論有リ得ナイトハ存ジマスルガ、斯ウ云フ
風ナ聲ガ起リマスダケデモ私共ハ眞ニ遺憾
千萬ニ存ズルノデアリマス、私ノ見ル所デ
ハ今日最モ多ク總親和ヲ必要トシマスルノ
ハ、寧ロ政府ト民間人トノ間デハアルマイ
カ、斯ウ云フ風ニ考ヘラレルノデアリマス、
元來總親和ト云フコトハ萬事打明ケマシテ、
サウシテ十分ニ相談シテ初メテ其ノ目的ヲ
達成シ得ルト云フコトハ明カデアリマスル
ガ、ドウモ一方ニ總親和ヲ言ヒナガラ、他
面デハ總テガ强制的ニ行ハレルト云フノデ
ハ、ナカ〓〓總親和ノ實ハ擧リ得ナイノデ
アリマス、然ルニ現在政府デハ頻リニ民間
ニ對シマシテ協力ヲ求メルト斯ウ言ハレマス
ルガ、其ノ協力ノ實際ハ大部分ガ或ハ命令
的デアリ、或ハ御義理ニ相談スルト云フ範
圍ヲ出デマセヌノデ、本當ニ協力ヲ政府ガ
民間ニ求メルト云フ風ナ御氣分ハ極メテ乏
シイノデアリマス、殊ニ經濟關係、卽チ民間
ニ接觸スル機會ノ最モ多イ、又餘リ年輩ノ
上デナイ方々ノ間ニハ、隨分ト色々ノ經濟
統制ノ實行サルヽ時分ニ、全ク親切味ヲ缺イ
テ居テ、其ノ態度ガ傲慢ダ、不遜ダト云フ風
ナ聲ハ私共ノ耳ニハモウ常ニ入ッテ居リマス
ノデ、實ニ其ノ聲、不滿ノ聲ト云フモノハ謂
ハバ野ニ滿チテ居ルト私ガ申上ゲテモ差支
ナイノデハナイカト斯ウ存ズルノデアリマス、
誠ニ遺憾千萬デアリマス、若シサウ云フコ
トガアルトシマスルナラバ、是ハ寧ロ總理
ガ國民ニ向ッテ御求メニナルノデハナイ、官
吏自身ニ向ッテ總親和ノ必要ヲ御說キニナッ
テ然ルベキデハナイカ
〔「同感々々」ト呼フ者アリ〕
斯ウ考ヘルノデアリマス、勿論現在ノ狀態
ニ於キマシテ、官吏諸君ハ非常ナ御熱心、
御熱誠ヲ以テ事務ヲ執ッテ居ラレル、夜モ遲
ク迄働イテ居ラッシヤル、其ノ御氣分ハ十分
私共モ承知スルノデアリマスルガ、併シナ
ガラ如何ニ官吏諸君ガ机ノ上デ御熱心ニナ
リマシテモ、本當ニ國民ノ總親和ヲ御求メニ
ナリマセヌケレバ、到底政府ノ本當ノ御精
神ト云フモノハ通リ得ナイノデアリマス、
從ッテ本當ニ政府ガ民間ノ協力ヲ求メヨウ、
又國民ノ總親和ヲ希望サレル、斯ウ言ハレ
マスルナラバ、ドウカ自ラ省ミテ官吏諸君、
殊ニ國民ニ最モ接觸サルヽ機會ノ多イ方々
ニ於キマシテ、進ンデ其ノ態度ヲ改メナケ
レバ、今日ノ時代ト云フモノハ乘リ切レヌ
デハナイカト云フコトヲ心配セラレルノデ
アリマス、今日政府ハ事態ノ重要性ニ鑑ミ
マシテ、色々ト經濟上ノ强力ナル統制ヲ
行ッテ居ラッシヤル、是ハ誠ニ御尤デアリマ
ス、私共大贊成、斯カル場合ニ於テハ絕對
ニ巳ムヲ得ナイトハ存ジマスル、併シナガ
ラモット〓〓今日以上、本當ニ民間ノ知識
經驗ト云フモノヲ取入レヌト、單ニ官吏獨
善ノ形ニ於テ之ヲ御實行ナサルコトハ、多
クノ害ヲ國家ニ與ヘルト云フコトヲ私ハ確
信スルノデアリマス、隨分政府モ民間ノ知
識ヲ取入レル爲ニ、幾十ノ委員會ヲ設ケテ
居ラッヤイマスルガ、ソレハ勿論例外ハアリ
マスルガ大部分ト云フモノハ誠ニ御義理式
單ニ形ヲ整フルト云フノニ過ギナイノデ、
斯クノ如キハ寧ロ無用ノ長物デアリマス、
私共ハ是等ノ委員會ニ於キマシテモ、又有
ラユル場合ニ於テドウカ、政府ガ民間ニ對
シ、本當ニ協力ヲ御求メニナル氣分ニナッテ
戴キタイト存ズルノデアリマス、平沼首相
ハ是等ノ點ニ付キマシテ果シテ如何ニ御考
ニナリマスルカ、之ヲ先ヅ第一ニ御伺ヒシ
イタノデアリマス、次ニモウ一ツ總親和ト
云フ問題ニ關聯シマシテ御尋ネシタイノハ
國內庶政革新ノ問題デアリマス、此ノ問題
ニ付キマシテハ世上ニ色々ノ議論ガアリマ
シテ、或ハ今日ノヤウナ國家危急ノ場合ニ
於テ、徒ニ國內ニ摩擦ヲ起スコトハイケナ
イノダト云フ風ナ、御議論モアリマスコト
ハ承知シテ居リマスルガ、私ハ決シテサウ
考ヘテ居ラナイノデアリマス、今日我ガ國
ノ情勢ハドウデアリマセウカ、一般國民ト
云フモノハ事變ノ徹底的解決ヲ希望シテ居
リマスル一方、此ノ國內ニ於キマシテモ此
ノ新時代ニ適應スルヤウナ新シイ政治態勢
ガ、一日モ早ク出來ルト云フコトヲ望ンデ
居ルコトハ明カデアリマス、此ノ一般大衆
ノ希望ト云フモノハ、謂ハバ一部ノ現狀維
持ヲ希望シテ居ル人々ノ考ヘルコトトハ全
ク背馳シテ居ル、斯ウ私ハ見テ居ルノデア
リマス、從ッテ首相ガ國民ノ總親和ヲ御求メ
ニナリマシテモ、今後首相ノ施政ノ現レニ
ニ對シマシテ、全部ノ國民ガ滿足スルト云
フコトハ到底出來ナイ、一部ノ者ガ喜ベバ
他ノ者ハ非常ニ不滿ヲ感ジルト云フコトハ
是ハ已ムヲ得ナイノデアリマシテ、私ハ外
敵ニ對シマシテハ、勿論國民全體ガ總親和
ノ心持ヲ以テ參リマスルコトニ對シマシテ
ハ何等ノ疑ヲ有チマセヌガ、國內ノ問
題ニ關シマシテハ、如何ニ總親和ノ境地
ヲ求メラレマシテモ、ソレハ到底得ラレ
ナイ、之ヲ本當ニ總親和ノ狀態ニ持ッテ
行カレル爲ニハ、一度ハ國內ノ極ク一部
分ニ多少ノ摩擦ガアルト云フコトヲ覺
悟ノ上デ、斷然ソレヲ無視シテデモ、國
家ノ當然向フベキ所ニ御進ミニナル、サウ
シマセヌト此ノ不平ト云フモノハ何時迄モ
絕エナイノデアリマス、遂ニハトンダ事件
迄惹起スト云フヤウナコトモアリ得マスノ
デ、私ハ此ノ際平沼首相ガ斷乎タル一ツ御
決心ヲ、又御斷行ヲ希望スルノデアリマス、
玆ニ私ガ國內革新ノ斷行ト云フモノヲ必要
トシマスル所以ハ、我ガ國內外ノ情勢カラ
見マシテ、此ノ儘デハ濟マナイ、ドウシテ
モ必至ノ狀態ニアル、斯ウ云フコトヲ考ヘ
ルカラデアリマス、東亞ノ新秩序建設モ誠
ニ大事デアリマスルガ、是ト相竝行シマシ
テ、國內ノ新シイ政治ノ革新建設ト云フコ
トヲ斷行スルコトガ極メテ必要デアリマス、
併シナガラ之ニ依ッテ生ズル摩擦若シクバ
幾多ノ不平ト云フモノヲ全ク顧慮シナイ、
ドウデモ宜イノダト云フコトヲ私ハ決シテ
申上ゲルノデハナイノデアリマス、苟モ政
府ガ確信ヲ以テ御斷行ニナリマス各方面ニ
亙ル政策ニ對シマシテ、國民ノ總テガ謂ハ
バ十分ニ之ヲ理解シ、之ニ協力シテ以テ出
來ルダケ不平、摩擦ト云フモノヲ少クシテ
實行スルコトハ極メテ望マシイノデアリマ
シテ、首相ノ言ハレル國民總親和ノ精神ニ
基イテ、政府カラ進ンデ國民ニ理解ヲ求メ
ラレ、殊ニ先程申シマシタヤウナ官吏ノ態度
ナドト云フコトヲ改メマシテ、先ヅ國民ニ
現內閣竝官吏、誠ニ信賴スベシト云フ念ヲ
起サセルヤウ御注意ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、何ト申シマシテモ、現狀ニ對シテ相當
ノ革新ヲ行ヒマス以上、如何ニ萬全ヲ期シ
マシテモ國民各自ノ考ヘ方ヤ、希望ヤ、又
利害關係ガアリマスルノデ、完全ニ一致ス
ルコトガ出來ナイト云フコトハ今申上ゲタ
通リデアリマス、併シソレガ當然デアルカ
ラト云ッテ、其ノ爲ニ政府ガ徒ニ延引、糊塗、
ソレヲ念トシテ、國家ノ現狀カラ見テ必要
トスル程度ノ革新ヲ行フノニ躊躇セラレル
ヤウデハ、或ハ悔ヲ後日ニ貽スノデハナイ
カト云フヤウニ私ハ考へテ居ルノデアリマ
ス、平沼總理大臣ハ御就任以來、殊ニ今囘
ノ議會ニ提出サレマシタ諸法案、竝ニ一昨
日御提出ニナリマシタアノ豫算案ヲ拜見シ
マシテモ、ドウモ近衞內閣ニ於テ御考ニナッテ
居リマシタヤウナ革新的ノ問題、例ヘバ
內閣制度、官吏制度、又ハ議會制度ノ改革
ニ關スルコトナドハ、是等ノ諸法案若シク
ハ豫算ニハ全ク影ヲ潜メテ居ルノデアリマ
シテ、何トナク私共ニハ首相ノ總親和ト言
ハレマスルノハ、線テ現狀維持、謂ハバ革
新的ノコトハ何モ爲サラズ、專ラ事勿レ
主義デ政治ヲヤッテ行カウ、斯ウ云フ風ナ或
ハ御考デハナイカト窺ハレルノデアリマ
ス、果シテサウデアリマセウカドウカト云
フコトヲ御伺ヒシタイノデアリマス、詳シ
ク私ガ申上ゲルコトハ此ノ際差控ヘマスル
ガ、若シ私ガ今申シタヤウナ御考デ、今後
政治ヲ御執リニナリマス御考ナラバ、私ハ
ソレハ非常ナ誤リデアルト斯ウ考ヘルノデ
アリマス、先日新聞ニ首相ガ御話ニナリマ
シタ、革新ハヤルンダ、斯ウ云フ風ナ記事
ヲ拜見シマシテ、私モ多少安心シタノデア
リマスルガ、アノ記事デハ簡單デ私共ハ到
底十分ニ納得ガ參ラナイノデアリマス、重
ネテ申上ゲマスルガ、我ガ國ニ洛々トシテ
漲リツヽアル所ノ此ノ國內政治革新ノ要望
ト云フモノハ、謂ハバ日ニ月ニ抑ヘ切レナ
イヤウナ狀態ニ進ミツヽアルコトハ、我ガ
國家ノ前途ヲ憂ヘ、又國內情勢ノ推移ヲ十
分ニ注意スル人々ガ、總テ承知シテ居ル所
デアリマス、只今申シマシタヤウナ內閣制
度デアルトカ、議會制度デアルトカ、官吏
制度デアルトカ、是ハ勿論例ヘバ中央部ニ
於キマスル諸官廳ノ廢合制度、地方ニ於ケ
ル府縣ノ廢合ダトカト云フコトニ至ル迄、
十分ニ御考ニナッテ然ルベキデハナイカ、
斯ウ存ズルノデアリマス、此ノ議會制度
ノ改革ニ關シマシテ一々私ノ所見ヲ申上
ゲルコトハ勿論差控へマスルガ、官吏制度
ニ關シマシテハ、私ハ昨年ノ議會ニ於キマ
シテモ此ノ壇上カラ前內閣ニ御質問ヲ申上
ゲタノデアリマス、御氣分ハアッタヤウデ
アリマスルガ、今日迄何等ソレガ前進シテ
居ラナイ、議會制度ニ關シマシテモ、旣
貴族院ニ於キマシテハ、院議ヲ以テ其ノ改
革ヲ政府ニ上申シタノデアリマスルガ、是
亦其ノ後何等進展シテ居ラヌ、內閣制度ニ
關シマシテハ、是ニハ色々ナ問題ガアルト
私ハ考ヘマス、例ヘバ總理大臣ノ權限ヲ擴
張スルカシナイカ、各大臣ノ數ヲドウスル
カ、各省大臣ノ下ニ總務長官ヲ置クコトガ
善イカ惡イカ、企畫院ヲ如何ニ擴大强化ス
ベキカ、主計局、豫算ヲ預ル所ヲ今日ノ如
ク大藏省ノ下ニ置カズシテ、內閣ニ入レル
コトガ善イカ惡イカト云フ風ナ、色々ナ問
題ガ此ノ內閣制度ノ中ニハ含マレテ居ルト
考ヘテ居リマス、是等ノ問題ニ關シマシテ
政府ハ勿論御〓究中デアリ、若シクハ既ニ
結論ヲ得テ居ラルヽト存ズルノデアリマス
ガ、唯問題ハ、總理ニ於テ之ヲ御斷行ニナ
ルカドウカト云フコトノミガ殘ッテ居ルト
私ハ信ジテ居ルノデアリマス、勿論斯カル
改革ト云フモノヲ斷行シマスルコトハ、
ナカ〓〓難事業デアリマシテ、其ノ斷行ニ
ハ色々ノ困難ガ伴ヒマセウ、併シナガラ現
在旣ニ政府デハ國民總動員法ヲ殆ド全面的
ニ發動シテ、國民ニ向ッテハ隨分色々ノ難
キヲ强ヒテ居ラレルノデアリマス、國民モ
亦之ニ對シマシテ喜ンデ政府ノ命ズル儘ニ
動イテ居ルノデアリマスガ、國民ニ向ッテハ
難キヲ求メ、サウシテ政府自體ハ易キニ居ツ
テ、成ルベク事勿レ主義デ行カウ、是デハ到
底國民ハ滿足シナイノミデアリマス、私ハ
斯カル卑怯ナ御考ハ、勿論平沼サンノ如キ
偉大ナル政治家ニハ御有リニナラヌト確信
シテ居リマスガ、併シナガラ今日迄ノ現レ
ヲ見マスルト、稍〓、失望ヲ感ジ始メツヽア
ルノデアリマス、平沼首相ハ果シテ是等ノ
難事業ヲ御斷行ニナル覺悟ヲ有シテ居ラル
ルカドウカ、此ノ際ハッキリト御返辭ヲ承リ
タイ、御明答ヲ得ラレルナラバ私ハ誠ニ幸
ニ存ズルノデアリマス、要スルニ私ノ質問
ハ三ツデアリマス、第一ハ、今後政府ハ民
間人ニ對シ如何テル方法ニ依ッテ其ノ協力
ヲ求メラレムトスルカ、第二ハ、私ガ例證
シマシタヤウナ此ノ國內庶政革新ノ斷行ニ
關シマシテ首相ノ御抱負如何、第三ハ、殊
ニ官吏制度ノ改革ヤ、官吏ノ民間人ニ對ス
ル態度ノ匡正ニ付テ首相ハ如何ニ御考ニナ
リマスルカ、此ノ三點ニ關シマシテ明確ナ
ル御答辯ヲ得ムコトヲ要望スルノデアリマ
ス(拍手)
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君演壇ニ登
ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=11
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012・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 只今大藏
男爵ヨリ三點ニ付キマシテ御質問ガゴサイ
マシタ、其ノ第一ハ、政府ハ如何ニシテ民
間ノ協力ヲ求メルノデアルカト云フコトデ
ゴザイマシタ、申ス迄モナク政府ハ決シテ
政府ダケデ一切ノコトヲ行フト、殊ニ此ノ
重大時局ニ當リマシテ、民間ノ協力ヲ求メ
ナケレバナラヌト云フコトハ能ク承知致シ
テ居リマス、併シナガラ其ノ事タルヤ、物
心兩方面ニ亙リマシテ其ノ必要ヲ感ジマス
ルコトハ、極メテ切ナルモノガアルノデア
リマス、近頃問題ニナッテ居リマスル國民
精神總動員、此ノ事ニ付キマシテハ先達
來部內ニ於キマシテモ、其ノ中央聯盟ノ、
在來此ノ事ニ關係シテ居ラレル方々トモ協
議ヲ致シマシテ、之ヲ强化スルト云フコト
ニ付キマシテ方針ヲ立テテ居リマス、今後
之ヲ實行ニ移スト云フコトニ相成ッテ居リマ
ス、ソレカラ又生產擴充、物動計畫等ニ付
キマシテモ、固ヨリ是ハ民間ノ協力ヲ問題
ニセンケレバナラヌコトハ申ス迄モナイコ
トデゴザリマスル、是等ノ方面ニ付キマシ
テモ計畫モ立テマシテ、此ノ功績ノ擧ガル
ヤウニ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、
決シテ政府ハ獨リ自ラ大ナリト致ス心底ハ
更ニゴザリマセヌ、ソレカラ國內問題ニ付
テ之ヲ斷行スルノ決心ガアルカドウカト、
此ノ御尋デアリマス、此ノ事ハ單ニ支那事
變處理ノミデハゴザリマセヌ、之ニ伴ヒマ
シテ國內ノ革新モ必要デアリマスルシ、又
此ノ問題ヲ離レマシテモ、現今ノ內外ノ情
勢ニ鑑ミマシテ、革新ノ必要デアルト云フ
コトハ、自分ハ痛感ヲ致シテ居ルノデアリ
さ 、併シ是ハ多岐ニ亙リマス、只今大藏
男爵ノ御引例ニナリマシタ事項ノ如キモ、
大イニ考慮ヲ要センケレバナラヌ點デアラ
ウト考ヘマス、殊ニ大藏男爵ノ御觸レニナッ
テ居リマスル、官吏ノ現今ノ民間ニ對スル
態度等ニ付キマシテ、種々御考ヲ伺ヒマシ
テ、固ヨリ現今ノ官廳ニ奉職致シテ居リマ
スル者ハ、大藏男爵ノ仰セノ如ク日夜此ノ時
局ニ際シマシテ、非常ニ職務ニ勉勵ヲ致シ
テ居リマスルコトハ、私ハ疑ナイ事實デア
ルト考ヘテ、深ク感謝ヲ致シテ居ル次第デ
アリマス、併シナガラ自ラ信ズルコトガ餘
リニ高ウゴザイマスルト、或ハ他ノ議論ヲ
排斥スルトカ、或ハ又之ニ對スル當リガ惡
イトカ云フヤウナコトハ、自然ニ起リマス
ルコトデアリマス、併シ是ハ深ク戒ムベキ
コトデアリマシテ、人ヨリ取ッテ以テ善ヲナ
スト云フコトハ、古來日本ノ渝ラザル傳統
デゴザイマス、此ノ事ハ能ク官吏自體モ心
得ヌケレバナラヌコトデゴザイマス、此ノ
點ニ付キマシテハ私ハ今後十分ニ注意ヲ致
シマスル心底デ居リマス、殊ニ官吏制度ノ
改正ニ付キマシテモ御言及ニナリマシタ、
自分ハ現今ノ官吏ノ任用ノ制度ガ是デ宜シ
イト云フコトハ決シテ考ヘテ居リマセヌ、
廣ク人材ヲ登庸致シマスル爲ニハ、現今ノ
制度ニハ改正ヲ加ヘナケレバナラヌト云フ
コトモ、自分ハ深ク考ヘテ居リマスル次第
デゴザイマス、私ハ決シテ現狀維持デ進ン
デ行クト云フ考ハ持ッテ居リマセヌ、必要ナ
ル改革ハ之ヲ行ハナケレバナラヌノデアリ
さく、唯私ハ徒ニ聲ヲ大ニシテ實行ノ伴ハ
ヌト云フコトハ、深ク戒ムベキコトト考ヘ
マヽ、必ズ必要ナル事項ハ之ヲ實行スルト
云フコトニ努メタイト考ヘテ居ルノデゴザ
イマス、此ノ點ニ付キマシテ大藏男爵ノ御
注意ニナリマシタ點ハ、私モ誠ニ同感ト存
ジマス、左樣御了承ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=12
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013・大藏公望
○男爵大藏公望君 簡單デスカラ、此處カ
ラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=13
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014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=14
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015・大藏公望
○男爵大藏公望君 只今總理カラ御返事ガ
アリマシタコトハ、私共全面的ニハ總理ノ
御氣持ノアル所ヲ察シマシテ、誠ニ有難ク
拜聽シタノデアリマス、唯其ノ內容ニ於キ
マシテ、部分的ニハ色々ノ考モアリマスル
ガ、是ハ今日ハ申シマセヌ、唯最後ニ御述
ニナリマシタ、自分ハ物ヲ言ハナイノダ、
ガ併シ斷行スル決心ハ持ッテ居ルノダト、斯
ウ云フ御話ガアリマシタコトハ、私ニ取リ
マシテハ百萬ノ味方ヲ得タヤウナ氣ガスル
ノデアリマス、ドウカ速カニ御斷行ノ時期
ニ達セムコトヲ希望致シマシテ、私ノ質問
ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 國務大臣ノ演說
ニ對スル質疑ハ、全部終了致シマシタ、次
會ノ議事日程ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知
ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午前十時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X01319390216&spkNum=16
4. 会議録のPDFを表示
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