1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月十日(金曜日)午前十時十三分開議
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議事日程 第二十一號
昭和十四年三月十日
午前十時開議
第一 保險業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 青年學校教育費國庫補助法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 臺灣米穀移出管理特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
昨九日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出
案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院
ニ通知セリ
朝鮮事業公債法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東間鐵
道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
昭和十二年法律第五十七號中改正法律
案
大正十四年法律第五十一號中改正法律
案
昭和十四年三月十一日
貴族院議事速記錄第二十一號
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
裁判所構成法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
街路照明統制ニ關スル請願外十一件ノ請願
ハ各〓意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セ
リ
同日名古屋帝國大學創設ニ伴フ帝國大學特
別會計及官立大學特別會計ノ關涉ニ關スル
法律案特別委員會ニ於テ副委員長ノ後任選
擧ヲ行ヒシニ男爵沖貞男君當選セリ
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
名古屋帝國大學創設ニ伴フ帝國大學特別
會計及官立大學特別會計ノ關涉ニ關スル
法律案可決報告書
短期現役小學校〓員俸給費國庫負擔法中
改正法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
臨時軍事費豫算追加案(臨時第一號)
保險業法改正法律案
靑年學校〓育費國庫補助法案
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣米穀移出管理特別會計法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、昨九日古島一雄君病氣ニ付、
鑛業法中改正法律案特別委員ヲ辭任シタキ
旨申出ガゴザイマシタ、之ヲ許可スルコト
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議トナシ」呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ補關トシテ大西虎之
助君ヲ指名致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、保險
業法改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、八田商工大臣
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
保險業法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月九日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
保險業法改正法律案
保險業法
第一章總則
第一條保險事業ハ主務大臣ノ免許ヲ受
クルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
前項ノ免許ヲ受ケントスル者ハ申請書。
ニ左ノ書類ヲ添附スルコトヲ要ス
-定款
二事業方法書
三普通保險約款
四保險料及責任準備金算出方法書
五財產利用方法書
第二條主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ前條ノ免許ヲ申請シタル者ヲシテ相
當ノ金額ヲ供託セシムルコトヲ得
前項ノ供託金ハ主務大臣ノ認許シタル
有價證劵ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第三條保險事業ハ資本又ハ基金ノ總額
十萬圓以上ノ株式會社又ハ相互會社ニ
非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第四條保險會社ハ其ノ商號又ハ名稱中
ニ其ノ營ム主タル保險事業ノ種類ヲ示
スコトヲ要ス
保險會社ニ非ザルモノハ其ノ商號又ハ
名稱中ニ保險事業者タルコトヲ示スベ
キ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五條保險會社ハ他ノ事業ヲ營ムコト
ヲ得ズ
第六條保險會社ノ常務ニ從事スル取締
役若ハ監査役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ
常務ニ從事セントスルトキハ主務大臣
ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第七條保險會社ハ生命保險事業ト損害
保險事業トヲ併セ營ムコトヲ得ズ但シ
生命保險事業ヲ營ム會社ハ生命保險ノ
再保險事業ヲ營ムコトヲ得
第八條主務大臣ハ何時ニテモ保險會社。
ヲシテ其ノ事業ニ關スル報〓ヲ爲サシ
メ又ハ當該官吏ヲシテ保險會社ノ營業
所、事務所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務
若ハ財產ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ
物件ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セ
シムルコトヲ要ス
第九條主務大臣保險會社ノ業務又ハ財
產ノ狀況ニ依リ必要アリト認ムルトキ
ハ業務執行ノ方法ノ變更又ハ財產ノ供
託ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得
第十條保險會社ガ第一條第二項ニ揭グ
ル書類ニ定メタル事項ノ變更ヲ爲スニ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
主務大臣保險會社ノ業務若ハ財產ノ狀
況ニ依リ又ハ事情ノ變更ニ依リ必要ア
リト認ムルトキハ前項ノ事項ノ變更ヲ
命ズルコトヲ得
主務大臣保險契約者、被保險者又ハ保
險金額ヲ受取ルベキ者ノ利益ヲ保護ス
ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ第一
項ノ變更認可ノ際現ニ存スル保險契約
ニ付テモ亦將來ニ向テ其ノ變更ノ效力
ノ及ブモノト爲スコトヲ得
前項ノ處分アリタルトキハ保險會社ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨及變更ノ
要旨ヲ公〓スルコトヲ要ス
第十一條保險會社命令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ事業ニ關シ統制協定ヲ爲シタル
トキハ之ヲ主務大臣ニ屆出ヅルコトヲ
要ス之ヲ變更又ハ廢止シタルトキ亦同
主務大臣前項ノ統制協定ガ公益ニ反シ
又ハ保險事業ノ健全ナル發達ヲ害スト
認ムルトキハ其ノ變更又ハ取消ヲ命ズ
ルコトヲ得
主務大臣保險事業ノ健全ナル發達ヲ圖
ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ保險
會社ニ對シ第一項ノ統制協定ヲ爲スベ
キコトヲ命ジ又ハ同項ノ統制協定ノ加
盟會社若ハ非加盟會社ニ對シ其ノ統制
協定ノ全部若ハ一部ニ依ルベキコトヲ
命ズルコトヲ得
第十二條保險會社ガ法令、主務大臣ノ
命令若ハ第一條第二項ニ揭グル書類ニ
定メタル特ニ重要ナル事項ニ違反シ又
ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキ
ハ主務大臣ハ取締役若ハ監査役ノ解任
若ハ事業ノ停止ヲ命ジ又ハ事業ノ免許
ヲ取消スコトヲ得
第二章株式會社
第十三條保險事業ヲ營ム株式會社ノ定
款ニハ商法第百六十六條第一項ニ揭グ
ル事項ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ
要ス
ー保險ノ種類及營業ノ範圍
二設立費用ノ償却ノ方法
第十四條株式申込證ニハ前條及商法第
百七十五條第二項ニ揭グル事項ヲ記載
スルコトヲ要ス
第十五條會社ハ第十三條及商法第百八
十八條第二項ニ揭グル事項ヲ登記スル
コトヲ要ス
第十六條會社ハ設立費用及營業費ノ全
額ヲ償却シタル後ニ非ザレバ利益ノ配
當ヲ爲スコトヲ得ズ
商法第二百九十條第二項ノ規定ハ前項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七條會社ガ資本減少ノ決議ヲ爲シ
タルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週間內
ニ決議ノ要旨及貸借對照表ヲ公〓スル
コトヲ要ス
第二十八條、第百十二條第二項第三項、
第百二十條及第百二十八條第三項ノ規
定ハ資本減少ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八條會社ガ資本減少又ハ合併ノ決
議ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第百條第
一項但書ノ期間ハ一月迄之ヲ下スコト
ヲ得資本減少又ハ合併ニ依ル株式併合
ノ場合ニ於テ商法第三百七十七條第一
項但書ノ期間ニ付亦同ジ
第十九條保險事業ヲ營ム株式會社ハ其
ノ組織ヲ變更シテ之ヲ相互會社ト爲ス
コトヲ得
前項ノ相互會社ノ基金ハ第三條ノ規定
ニ拘ラズ其ノ總額十萬圓ヲ下リ又ハ之
ヲ設ケザルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テハ損失ノ塡補ニ備
フル爲主務大臣ノ必要ト認ムル額ノ準
備金ヲ設クルコトヲ要ス
第二十條組織變更ハ株主總會ノ決議ヲ
經ルコトヲ要ス
前項ノ決議ハ商法第三百四十三條ノ規
定ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得
ズ
第二十一條會社ガ組織變更ノ決議ヲ爲
シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週間
內ニ決議ノ要旨及貸借對照表ヲ公〓シ
且株主名簿ニ記載アル質權者ニハ各別
ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス
第百十二條第二項及第三項竝ニ商法第
九十九條及第百條ノ規定ハ前項ノ場合
ニ之ヲ準用ス但シ商法第百條第一項但
書中二月トアルハ之ヲ一月トス
第二十二條會社ガ前條第一項ノ公〓ヲ
爲シタル日以後保險契約ヲ爲サントス
ルトキハ保險契約者タラントスル者ニ
組織變更ノ手續中ノ旨ヲ通知シ其ノ承
諾ヲ受クルコトヲ要ス
前項ノ承諾ヲ爲シタル保險契約者ハ組
織變更ノ手續ノ關係ニ於テハ之ヲ保險
契約者ニ非ザル者ト看做ス
第二十三條第二十一條第一項ノ公告ニ
對シ第百十二條第二項ノ期間內ニ異議
ヲ述ベタル保險契約者ノ數及其ノ保險
金額ガ同條第三項ニ定ムル割合ヲ超エ
ザルトキハ取締役ハ商法第百條ノ手續
ノ終了後遲滯ナク保險契約者總會ヲ招
集スルコトヲ要ス
商法第二百二十四條第一項及第二項ノ
規定ハ前項ノ場合ニ於テ會社ノ保險契
約者ニ對スル通知ニ之ヲ準用ス
第二十四條會社ハ組織變更ノ決議ニ於
テ保險契約者總會ニ代ルベキ機關ニ關
スル定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ機關ニハ保險契約者總會ニ關ス
ル規定ヲ準用ス
第一項ノ定ヲ爲シタルトキハ其ノ機關
ノ構成ノ要領ヲ第二十一條第一項ノ公
告ニ記載スルコトヲ要ス
第二十五條保險契約者總會ニ於テハ保
險契約者ノ半數以上出席シ其ノ議決權
ノ四分ノ三以上ヲ以テ一切ノ決議ヲ爲
ス
第三十九條第三項及商法第二百三十八
條ノ規定ハ保險契約者總會ニ之ヲ準用
ス
第二十六條取締役ハ組織變更ニ關スル
事項ヲ保險契約者總會ニ報告スルコト
ヲルチノ
第二十七條保險契約者總會ニ於テハ定
款ノ變更其ノ他相互會社ノ組織ニ必要
ナル事項ヲ決議スルコトヲ要ス
第二十條第一項ノ決議ハ前項ノ決議ヲ
以テ之ヲ變更スルコトヲ得但シ會社ノ
債權者ノ利益ヲ害スルコトヲ得ズ
前項ノ變更ガ株主ニ損害ヲ及ボスベキ
トキハ株主總會ノ同意アルコトヲ要ス
此ノ場合ニ於テハ第二十條第二項ノ規
定ヲ準用ス
商法第百八十七條第二項ノ規定ハ第一
項ノ決議ニ之ヲ準用ス
第二十八條組織變更ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十九條株式會社ガ其ノ組織ヲ變更
シタルトキハ本店及主タル事務所ノ所
在地ニ於テハ二週間、支店及從タル事
務所ノ所在地ニ於テハ三週間內ニ株式
會社ニ付テハ解散ノ登記、相互會社ニ
付テハ第四十條第二項ニ定ムル登記ヲ
爲スコトヲ要ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ第二十條第
項ノ決議、第二十一條第一項ノ公〓、
第二十七條ノ決議及同意、前條ノ認可、
第百十二條第三項ノ異議竝ニ商法第百
條ノ手續ノ終了ヲ證スル書類ヲ添附ス
ルコトヲ要ス
第三十條株式會社ノ保險契約者ハ組織
變更ニ因リ其ノ相互會社ニ入社ス
第三十一條第百十六條竝ニ商法第一一百
八條第一項、第二百九條第一項第二項、
第三百七十六條第一項及第三百八十條
ノ規定ハ組織變更ノ場合ニ之ヲ準用ス
但シ商法第三百八十條第三項中第百三
十七條トアルハ之ヲ第百八條トス
第三十二條生命保險ニ在リテハ保險契
約者又ハ保險金額ヲ受取ルベキ者ハ被
保險者ノ爲ニ積立テタル金額ニ付會社
ノ總財產ノ上ニ先取特權ヲ有ス
前項ノ先取特權ノ順位ハ民法第三百六
條第一號ニ揭グル先取特權ニ次グ
第三十三條前條第一項ニ揭グル者ハ被
保險者ノ爲ニ積立テタル金額ニ付會社
ガ本法ニ依ル主務大臣ノ命令ニ依リ供
託シタル財產ノ上ニ他ノ債權者ニ先チ
テ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第三章相互會社
第一節設立
第三十四條相互會社ノ發起人ハ定款ヲ
作リ之ニ左ノ事項ヲ記載シテ署名スル
コトヲ要ス
-保險ノ種類及事業ノ範圍
二名稱
三事務所ノ所在地
四基金ノ總額
五基金ノ醵出者ガ有スベキ權利
六基金及設立費用ノ償却ノ方法
七剩餘金分配ノ方法
八會社ガ公告ヲ爲ス方法
九會社ノ成立後ニ讓受クルコトヲ約
シタル財產アルトキハ其ノ財產、價
格及讓渡人ノ氏名
十存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタ
ルトキハ其ノ時期又ハ事由
第三十五條相互會社ハ其ノ名稱中ニ相
互會社ナル文字ヲ用フルコトヲ要ス
第三十六條基金ノ拂込ハ金錢以外ノ財
產ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得ズ
商法第百七十一條第二項、第百七十七
條第一項及第百八十九條ノ規定ハ基金
ノ拂込ニ之ヲ準用ス
第三十七條相互會社ノ設立ニハ百人以
上ノ社員アルコトヲ要ス
第三十八條發起人ニ非ザル者ガ社員タ
ラントスルトキハ入社申込證二通ニ保
險ノ目的及保險金額ヲ記載シ之ニ署名
スルコトヲ要ス但シ會社ノ成立後社員
タラントスル者ハ此ノ限ニ在ラズ
入社申込證ハ發起人之ヲ作リ之ニ左ノ
事項ヲ記載スルコトヲ要ス
-定款ノ認證ノ年月日及其ノ認證ヲ
爲シタル公證人ノ氏名
二第三十四條ニ揭グル事項
三基金ノ醵出者ノ氏名及住所竝ニ其
ノ各自ガ醵出スル金額
四發起人ノ氏名及住所
五發起人ガ報酬ヲ受クベキトキハ其
ノ報酬ノ額
六設立ノ際募集セントスル社員ノ數
七一定ノ時期迄ニ創立總會ガ終結セ
ザルトキハ入社ノ申込ヲ取消スコト
ヲ得ベキコト
民法第九十三條但書ノ規定ハ會社ノ成
立前ニ於ケル入社ノ申込ニハ之ヲ適用
セズ
第三十九條基金ノ第一囘ノ拂込ガ終了
シ且社員ガ豫定ノ數ニ滿チタルトキハ
發起人ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スル
コトヲ要ス
創立總會ニ於テハ社員ノ半數以上出席
シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ以テ一
切ノ決議ヲ爲ス
第五十二條竝ニ商法第二百三十二條第
一項第二項、第二百三十三條、第二百
三十九條第三項第四項、第二百四十條、
第二百四十三條、第二百四十四條及第
二百四十七條乃至第二百五十三條ノ規
定ハ相互會社ノ創立總會ニ之ヲ準用ス
但シ商法第二百四十七條第一項中第三
百四十三條トアルハ之ヲ保險業法第三
十九條第二項トス
第四十條相互會社ノ設立ノ登記ハ創立
總會終結ノ日ヨリ二週間內ニ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記
スルコトヲ要ス
一第三十四條第一號、第二號及第四
號乃至第十號ニ揭グル事項
二事務所
三取締役及監査役ノ氏名及住所
四取締役ニシテ會社ヲ代表セザル者
アルトキハ會社ヲ代表スベキ者ノ氏
名
五數人ノ取締役ガ共、同シ又ハ取締役
ガ支配人ト共同シテ會社ヲ代表スベ
キコトヲ定メタルトキハ其ノ規定
第四十一條社員總會ニ於テ發起人ニ對
シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルト
キ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分
ノ一以上ノ社員ガ訴ノ提起ヲ取締役ニ
請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求
ノ日ヨリ一月內ニ之ヲ提起スルコトヲ
要ス
第五十七條第二項、第五十八條第二項
乃至第五項、第五十九條及商法第二百
七十七條第一項但書ノ規定ハ前項ノ場
合ニ之ヲ準用ス
第四十二條商法第九條、第十一條乃至
第十五條、第十九條乃至第二十一條、
第三十條乃至第四十三條、第四十五條
乃至第四十八條、第五十條、第五十一
條、第五十四條、第五十五條、第五十
七條乃至第六十一條、第六十四條第二
項、第六十五條乃至第六十七條、第百
六十五條、第百六十六條第二項、第百
六十七條、第百八十一條乃至第百八十
七條、第百九十三條乃至第百九十六條
及第百九十八條ノ規定ハ相互會社ニ之
ヲ準用ス但シ商法第百九十六條中第三
百四十三條トアルハ之ヲ保險業法第三
十九條第二項トス
第二節社員ノ權利義務
第四十三條社員ハ會社ノ債權者ニ對シ
直接ニ義務ヲ負フコトナシ
第四十四條會社ノ債務ニ關スル社員ノ
責任ハ保險料ヲ限度トス
第四十五條社員ハ保險料ノ拂込ニ付相
殺ヲ以テ會社ニ對抗スルコトヲ得ズ
第四十六條會社ハ定款ヲ以テ保險金額
ノ削減ニ關スル事項ヲ定ムルコトヲ要
ス
第四十七條損害保險ヲ目的トスル相五
會社ノ社員ガ保險ノ目的ヲ讓渡シタル
トキハ讓受人ハ會社ノ承諾ヲ得テ讓渡
人ノ權利義務ヲ承繼スルコトヲ得
第四十八條生命保險ヲ目的トスル相互
會社ノ社員ハ會社ノ承諾ヲ得テ他人ヲ
シテ其ノ權利義務ヲ承繼セシムルコト
ヲ得
第四十九條社員名簿ニハ左ノ事項ヲ記
載スルコトヲ要ス
-社員ノ氏名及住所
二各社員ノ保險契約ノ種類、保險金
額及保險料
第五十條商法第二百二十四條第一項及
第二項ノ規定ハ會社ノ入社申込人又ハ
社員ニ對スル通知又ハ催告ニ之ヲ準用
ス但シ保險關係ニ屬スル事項ノ通知又
ハ催〓ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三節會社ノ機關
第五十一條會社ハ定款ヲ以テ社員總會
ニ代ルベキ機關ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ機關ニハ社員總會ニ關スル規定
ヲ準用ス
第五十二條社員ハ總會ニ於テ各一個ノ
議決權ヲ有ス但シ定款ニ別段ノ定アル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第五十三條十分ノ一以上ノ社員ハ會議
ノ目的タル事項及其ノ招集ノ理由ヲ記
載シタル書面ヲ取締役ニ提出シテ總會
ノ招集ヲ請求スルコトヲ得但シ此ノ權
利ノ行使ニ付定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定
ムルコトヲ得
商法第二百三十七條第一一項及第三項ノ
規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五十四條商法第二百三十一條、第二
百三十二條第一項第二項、第二百三十
三條、第二百三十四條第一項、第二百
三十五條、第二百三十六條、第二百三十
八條、第二百三十九條第一項第三項第
四項、第二百四十條、第二百四十三條、
第二百四十四條、第二百四十五條第
一項第四號第二項及第二百四十六條乃
至第二百五十三條ノ規定ハ相互會社ノ
社員總會ニ之ヲ準用ス但シ商法第二百
四十五條第一項及第二百四十七條第一
項中第三百四十三條トアルハ之ヲ保險
業法第三十九條第二項トシ商法第二百
四十五條第二項中第二百六十八條又ハ
第二百七十九條トアルハ之ヲ保險業法
第五十八條又ハ第六十一條トス
第五十五條取締役ハ社員總會ノ認許ア
ルニ非ザレバ同種ノ保險ヲ目的トスル
他ノ會社ノ取締役又ハ監査役ト爲ルコ
トヲ得ズ
第五十六條取締役ハ定款及總會ノ議事
錄ヲ各事務所ニ、社員名簿ヲ主タル事
務所ニ備置クコトヲ要ス
社員及會社ノ債權者ハ事業時間內何時
ニテモ前項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求ム
ルコトヲ得
第五十七條社員總會ニ於テ取締役ニ對
シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルト
キハ會社ハ決議ノ日ヨリ一月內ニ之ヲ
提起スルコトヲ要ス
前項ノ訴ニ付テハ社員總會ノ決議ニ依
ルニ非ザレバ取下、和解又ハ請求ノ抛
棄ヲ爲スコトヲ得ズ
第五十八條社員總會ニ於テ取締役ニ對
シテ訴ヲ提起スルコトヲ否決シタル場
合ニ於テ十分ノ一以上ノ社員ガ訴ノ提
起ヲ監査役ニ請求シタルトキハ會社ハ
請求ノ日ヨリ一月內ニ之ヲ提起スルコ
トヲ要ス但シ訴提起ノ請求ヲ爲ス者ニ
付定款ヲ以テ他ノ標準ヲ定ムルコトヲ
得
前項ノ請求ハ總會終結ノ日ヨリ三月內
ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
第一項ノ訴ニ付テハ訴提起ノ請求ヲ爲シ
タル社員ノ議決權ノ過半數ノ同意アル
ニ非ザレバ取下、和解又ハ請求ノ抛棄
ヲ爲スコトヲ得ズ
第一項ノ請求ヲ爲シタル社員ハ監査役
ノ請求ニ依リ相當ノ擔保ヲ供スルコト
ヨル大
會社ガ敗訴シタルトキハ請求ヲ爲シタ
ル社員ハ會社ニ對シテノミ損害賠償ノ
責ニ任ズ
第五十九條前條ノ請求ヲ爲シタル社員
ハ特ニ會社ノ代表者ヲ指定スルコトヲ得
第六十條商法第二百五十四條乃至第二
百五十八條、第二百六十條乃至第一一百
六十二條、第二百六十五條、第二百六
十六條及第二百六十九條乃至第二百七
十二條ノ規定ハ相互會社ノ取締役ニ之
ヲ準用ス但シ商法第二百七十二條第一
項中第二百三十七條トアルハ之ヲ保險
業法第五十三條トス
第六十一條社員總會ニ於テ監査役ニ對
シテ訴ヲ提起スルコトヲ決議シタルト
キ又ハ之ヲ否決シタル場合ニ於テ十分
ノ一以上ノ社員ガ訴ノ提起ヲ取締役ニ
請求シタルトキハ會社ハ決議又ハ請求
ノ日ヨリ一月內ニ之ヲ提起スルコトヲ
要ス此ノ場合ニ於テハ第五十七條第二
項、第五十八條第一項但書第二項第三
項第五項、第五十九條及商法第二百七
十七條第一項但書ノ規定ヲ準用ス
前項ノ請求ヲ爲シタル社員ハ取締役ノ
請求ニ依リ相當ノ擔保ヲ供スルコトヲ
要ス
第六十二條商法第二百五十四條、第二
百五十六條但書、第二百五十七條、第
二百五十八條、第二百六十六條、第二
百六十九條、第二百七十條、第二百七
十二條乃至第二百七十六條、第二百七
十七條第一項及第二百七十八條ノ規定
ハ相互會社ノ監査役ニ之ヲ準用ス但シ
商法第二百七十二條第一項中第二百三
十七條トアルハ之ヲ保險業法第五十三
條トス
第四節會社ノ計算
第六十三條會社ハ損失ノ塡補ニ備フル
s
爲每事業年度ノ剩餘金中ヨリ準備金ヲ
積立ツルコトヲ要ス
前項ノ準備金ノ總額及每年積立ツベキ
其ノ最低額ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第六十四條會社ハ損失ヲ塡補シタル後
ニ非ザレバ基金利息ノ支拂ヲ爲スコト
可能。
基金ノ償却又ハ剩餘金ノ分配ハ設立費
用及事業費ノ全額ヲ償却シ且前條ノ準
備金ヲ控除シタル後ニ非ザレバ之ヲ爲
スコトヲ得ズ
前二項ノ規定ニ違反シテ基金利息ノ支
拂基金ノ償却又ハ剩餘金ノ分配ヲ爲
シタルトキハ會社ノ債權者ハ之ヲ返還
セシムルコトヲ得
第六十五條基金ヲ償却スルトキハ其ノ
償却スル金額ト同一ノ金額ヲ積立ツル
コトヲ要ス
第六十六條剩餘金ハ定款ニ別段ノ定ナ
キトキハ各事業年度ノ終ニ於ケル社員
ニ之ヲ分配ス
第六十七條商法第二百八十一條乃至第
二百八十五條及第二百九十五條ノ規定
ハ相互會社ノ計算ニ之ヲ準用ス
第五節定款ノ變更
第六十八條定款ノ變更ヲ爲スニハ社員
總會ノ決議アルコトヲ要ス
第三十九條第二項及商法第三百四十二
條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準
用ス
第六節社員ノ退社
第六十九條社員ハ左ノ事由ニ因リテ退
社ス
-定款ニ定メタル事由ノ發生
二保險關係ノ消滅
商法第百六十一條ノ規定ハ相互會社ノ
社員ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十條退社員ハ定款又ハ保險約款ノ
定ムル所ニ從ヒ其ノ權利ニ屬スル金額
ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
退社員ガ會社ニ對シテ負擔シタル債務
アルトキハ會社ハ前項ノ金額ノ中ヨリ
之ヲ控除スルコトヲ得
第七十一條退社員ノ權利ニ屬スル金額
ノ拂戾ハ退社アリタル日ノ屬スル事業
年度ノ終ヨリ三月內ニ之ヲ爲スコトヲ
要ス
退社員ノ拂戾請求權ハ前項ノ期間經過
ノ後二年間之ヲ行ハザルトキハ時效ニ
因リテ消滅ス
第七節解散
第七十二條會社ガ解散ノ決議ヲ爲シタ
ルトキハ其ノ決議ノ認可ノ日ヨリ二週
間內ニ決議ノ要旨及貸借對照表ヲ公〓
スルコトヲ要ス
第百十二條第二項乃至第四項、第百十
六條及第百二十條ノ規定ハ前項ノ場合
ニ之ヲ準用ス
第七十三條商法第五十六條第三項、第
九十六條、第九十八條第二項、第九十
九條、第百條、第百二條、第百三條、第
百四條第一項第三項、第百五條乃至第
百十一條、第四百八條第一項第二項、
第四百十二條第一項、第四百十三條第
一項第二項、第四百十四條第一項及第
四百十五條ノ規定ハ相互會社ニ之ヲ準
用ス但シ商法第百條第一項但書中二月
トアルハ之ヲ一月トシ第四百十四條第
一項中第百八十八條トアルハ之ヲ保險
業法第四十條トス
第三十九條第二項ノ規定ハ商法第五十
六條第三項ノ規定ニ依ル選任ニ之ヲ準
用ス
第八節〓算
第七十四條會社ガ解散シタルトキハ合
併及破產ノ場合ヲ除クノ外本節ノ規定
ニ從ヒテ〓算ヲ爲スコトヲ要ス
第七十五條〓算人ハ左ノ順序ニ從ヒテ
會社財產ヲ處分スルコトヲ要ス
-一般ノ債務ノ辨濟
二社員ノ保險金額及第百三十四條第
二項ノ規定ニ依リテ社員ニ拂戾スベ
キ金額ノ支拂
三基金ノ償却
第七十六條殘餘財產ハ定款ニ別段ノ定
ナキトキハ剩餘金ノ分配ト同一ノ割合
ヲ以テ之ヲ社員ニ分配スルコトヲ要ス
第七十七條第五十三條、第五十六條乃
至第五十九條及第六十一條竝ニ商法第
百十六條、第百二十三條乃至第百一一十
五條、第百二十八條、第百二十九條第
二項、第百三十一條但書、第百三十四
候、第二百三十一條、第二百三十六條、
第二百三十八條、第二百四十四條第二
項、第二百四十五條第一項第四號第二
項、第二百四十七條、第二百四十九條、=
第二百五十四條第二項、第二百五十八
修、第二百六十一條、第二百六十五條、
第二百六十六條、第二百六十九條乃至
第二百七十二條、第二百七十四條乃至
第二百七十六條、第二百七十七條第一
項、第二百七十八條、第二百八十二條
乃至第二百八十四條、第四百十七條乃
至第四百二十四條、第四百二十六條第
一項及第四百二十七條乃至第四百二十
九條ノ規定ハ相互會社ノ〓算ノ場合ニ
之ヲ準用ス但シ商法第二百四十五條第
一項及第二百四十七條第一項中第三百
四十三條トアルハ之ヲ保險業法第三十
九條第二項トシ商法第二百四十五條第
二項中第二百六十八條又ハ第二百七十
九條トアルハ之ヲ保險業法第五十八條
又ハ第六十一條トシ商法第二百七十二
條第一項中第二百三十七條トアルハ之
ヲ保險業法第五十三條トス
第九節補則
第七十八條商法第二編第四章第七節及
第九節第二款ノ規定ハ其ノ性質ノ許サ
ザルモノヲ除クノ外相互會社ニ之ヲ準
用ス但シ同法第三百八十一條第一項及
第四百五十二條第一項中三月前ヨリ引
續キ資本ノ十分ノ一以上ニ當ル株式ヲ
有スル株主トアルハ之ヲ十分ノ一以上
ノ社員トス
第七十九條非訟事件手續法中株式會社
ニ關スル規定ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
相互會社ニ之ヲ準用ス
第八十條相互會社ガ登記ヲ爲ス場合ニ
於テハ營利ヲ目的トセザル社團法人ト
同一ノ登錄稅ヲ納ムルコトヲ要ス
第八十一條相互會社ニハ營業收益稅ヲ
課セズ
第四章計算
第八十二條保險會社ハ每年一囘一定ノ
時期ニ於テ其ノ帳簿ヲ閉鎖シ總會終結
ノ後遲滯ナク財產目錄、貸借對照表、
事業報告書及損益計算書竝ニ基金ノ償
却、基金利息ノ支拂、準備金及利益又
ハ剩餘金ノ配當ニ關スル決議書ヲ主務
大臣ニ提出スルコトヲ要ス
前項ノ書類ノ樣式ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第八十三條保險契約者、被保險者又ハ
保險金額ヲ受取ルベキ者ハ會社ノ定時
總會終結ノ後其ノ事業時間內何時ニテ
モ前條ニ揭グル書類ノ閲覽ヲ求メ又ハ
定款若ハ保險約款ニ定メタル費用ヲ支
拂ヒテ其ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ求ム
ルコトヲ得
第八十四條保險會社ノ財產目錄ニ記載
スル有價證劵中命令ヲ以テ定ムル國債
又ハ利拂及償還確實ナリト認メラルル
債券ニ付テハ商法第三十四條第一項及
第二百八十五條ノ規定ニ拘ラズ命令ノ
定ムル所ニ依リ均等利廻評價ノ方法ニ
依ル價額ヲ附スルコトヲ得
第八十五條保險會社ノ設立費用及初ノ
五年度ノ事業費ハ會社成立ノ後十年ヲ
超エザル期間內ニ定款ノ定ムル所ニ從
ヒ每年其ノ一部ヲ償却スルコトヲ得
商法第二百八十六條ノ規定ハ保險事業
ヲ營ム株式會社ニハ之ヲ適用セズ
第八十六條保險會社ハ財產ノ評價換又
ハ賣却ニ因リ計上シタル利益ガ之ニ因
リ計上シタル損失ヲ超ユルトキハ其ノ
差額ヲ準備金トシテ積立ツルコトヲ要
ス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ全部
又ハ一部ヲ積立テザルコトヲ得
第八十七條前條ノ準備金ハ缺損ノ塡補
又ハ財產ノ評價換若ハ賣却ニ因リ計上
シタル損失ガ之ニ因リ計上シタル利益
ヲ超ユルトキ其ノ差額ノ塡補ニ充ツル
場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第八十八條保險會社ハ每決算期ニ保險
契約ノ種類ニ從ヒ責任準備金ヲ計算シ
且之ヲ特ニ設ケタル帳簿ニ記載スルコ
トヲ要ス
商法第三十三條第四項ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第八十九條生命保險會社ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ保險計理人ヲ選任シ保險數
理ニ關スル事項ヲ擔當セシムルコトヲ
要ス
主務大臣保險計理人ガ其ノ職務ヲ怠リ
又ハ其ノ職務ヲ行フニ不適當ナル行爲
ヲ爲シタリト認ムルトキハ其ノ解任ヲ
命ズルコトヲ得
第九十條保險計理人ハ會社ガ本法ニ依
リ主務大臣ニ提出スル書類ヲ揭グル事
項中責任準備金其ノ他ノ保險契約ニ關
スル準備金、未收保險料及保險約款ノ
規定ニ依ル貸付金ノ計算ノ正當ナルコ
トヲ確認スルコトヲ要ス
保險計理人前條第一項ノ事項ニ付主務
大臣ノ諮問ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク
答申ヲ爲スコトヲ要ス
第九十一條保險會社ノ監査役ハ會社ノ
業務及財產ノ狀況ニ關スル調査ノ結果
ヲ記載シタル監査書ヲ每事業年度二囘
作成シ之ヲ本店又ハ主タル事務所ニ備
置クコトヲ要ス
第五章會社ノ管理
第九十二條保險會社ハ契約ヲ以テ他ノ
保險會社ニ其ノ業務及財產ノ管理ヲ委
託スルコトヲ得
前項ノ契約ハ各會社ニ於テ株主總會又
ハ社員總會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ決議ハ商法第三百四十三條又ハ
本法第三十九條第二項ノ規定ニ依ルニ
非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第九十三條前條第一項ノ契約ハ主務大
臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力
ヲ生ゼズ
第九十四條前條ノ認可アリタルトキハ
各會社ハ遲滯ナク其ノ旨及契約ノ要旨
ヲ公〓シ且管理ヲ委託シタル會社ニ在
リテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨竝
ニ受託會社ノ商號又ハ名稱及其ノ本店
又ハ主タル事務所ヲ登記スルコトヲ要
ス
前項ノ登記ハ委託會社ノ本店及支店又
ハ各事務所ノ所在地ニ於テ之ヲ爲スコ
トヲ要ス
第九十五條本法ニ別段ノ定アル場合ヲ
除クノ外委託會社ト受託會社トノ間
ノ關係ハ委任ニ關スル規定ニ從フ
第九十六條受託會社ガ委託會社ノ爲ニ
保險契約其ノ他ノ取引ヲ爲スニハ委託
會社ノ爲ニスルコトヲ表示スルコトヲ
要ス
前項ノ表示ヲ爲サズシテ爲シタル保險
契約其ノ他ノ取引ハ之ヲ自己ノ爲ニ爲
シタルモノト看做ス
商法第三十八條第一項及第三項ノ規定
ハ受託會社ニ之ヲ準用ス
民法第四十四條第一項ノ規定ハ管理ノ
委託アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第九十七條管理契約ノ解除ハ株主總會
又ハ社員總會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ決議ハ商法第三百四十三條又ハ
本法第三十九條第二項ノ規定ニ依ルニ
非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第九十三條ノ規定ハ第一項ノ解除ニ之
ヲ準用ス
第九十八條管理契約ノ解除又ハ終了ア
リタルトキハ各會社ハ遲滯ナク其ノ旨
ヲ公〓スルコトヲ要ス
第九十九條主務大臣保險會社ノ業務又
ハ財產ノ狀況ニ依リ會社ヲシテ合併、
業務及財產ノ管理ノ委託又ハ契約ノ移
轉ヲ爲サシムルコトヲ適當ト認ムルト
キハ會社ニ對シ之ヲ勸〓スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ主務大臣必要ト認ム
ルトキハ相手會社ヲ指定シ且其ノ會社
ニ對シテモ前項ノ事項ヲ勸〓スルコト
ヲ得
第百條主務大臣保險會社ノ業務又ハ財
產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
ト認ムルトキ又ハ業務ノ狀況著シク不
良ニシテ公益上其ノ事業ノ繼續ヲ不適
當ト認ムルトキハ事業ノ停止、業務及
財產ノ管理又ハ契約ノ移轉ノ命令ヲ爲
スコトヲ得
第百一條前條又ハ第百三十七條第一項
ノ管理ハ主務大臣ノ選任シタル保險管
理人之ヲ爲ス
保險會社ハ正當ノ事由ナクシテ保險管
理人タルコトヲ拒否スルコトヲ得ズ
保險管理人ハ管理ヲ受クル會社ニ代リ
保險契約其ノ他ノ取引竝ニ財產ノ管理
及處理ヲ爲ス權限ヲ有ス
主務大臣ハ保險管理人又ハ管理ヲ受ク
ル會社ニ對シ管理ニ關シ必要ナル命令
ヲ爲スコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ保險
管理人ヲ解任スルコトヲ得
第九十六條第一項第二項及第四項竝ニ
商法第三十八條第一項及破產法第百六
十三條乃至第百六十六條ノ規定ハ保險
管理人ニ之ヲ準用ス但シ破產法中裁判
所トアルハ之ヲ主務大臣トス
第百二條主務大臣管理ノ命令ヲ爲シタ
ルトキハ直ニ會社ノ本店又ハ主タル事
務所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ
其ノ旨ヲ通知シ且會社ノ本店及支店又
ハ各事務所ノ所在地ノ登記所ニ其ノ登
記ヲ囑託スルコトヲ要ス
登記所ガ前項ノ囑託ヲ受ケタルトキハ
遲滯ナク其ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
第百三條管理ノ命令アリタルトキハ管
理ヲ受クル會社ノ事業ハ之ヲ停止ス但
シ主務大臣必要アリト認ムルトキハ其
ノ全部又ハ一部ヲ停止セザルモノト爲
スコトヲ得
第百四條主務大臣必要アリト認ムルト
キハ管理ヲ受クル會社ノ保險契約ニ付
計算ノ基礎ノ變更、保險金額ノ削減及
將來ノ保險料ノ減額又ハ契約條項ノ變
更ヲ爲スコトヲ得
管理ヲ受クル會社ガ株式會社ナル場合
ニ於テ主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ株主ノ名義書換ノ禁止ヲ爲スコトヲ
得
第一項ノ規定ニ依リ保險金額ノ削減及
將來ノ保險料ノ減額又ハ契約條項ノ變
更ノ處分アリタルトキハ會社ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ其ノ旨及變更ノ要旨ヲ
公〓スルコトヲ要ス前項ノ規定ニ依リ
株主ノ名義書換ノ禁止ノ處分アリタル
トキ亦同ジ
第百五條保險會社保險管理人タルトキ
ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ管理ヲ受クル
會社ニ對シ合併又ハ保險契約ノ移轉ニ
關シ協議ヲ爲スコトヲ得
第百六條管理ノ必要ナキニ至リタルト
キハ主務大臣管理ノ終了ヲ命ズ
第百二條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準
用ス
第百七條商法第三百八十一條第一項第
三項、第三百八十六條第一項第一號乃
至第五號第十號第十一號、同條第二項
中此等ニ關係アル部分、第三百八十七
條第一項、第三百八十八條乃至第三百
九十一條、第三百九十七條及第三百九
十八條ノ規定ハ管理ヲ受クル保險會社
ニハ之ヲ適用セズ
第六章解散
第百八條保險會社ハ左ノ事由ニ因リテ
解散ス
一存立時期ノ滿了其ノ他定款ニ定メ
タル事由ノ發生
二株主總會又ハ社員總會ノ決議
三會社ノ合併
四保險契約全部ノ移轉
五會社ノ破產
六免許ノ取消
七解散ヲ命ズル裁判
會社ガ前項第六號ノ事由ニ因リテ解散
シタルトキハ主務大臣ハ直ニ會社ノ本
店及支店又ハ各事務所ノ所在地ノ登記
所ニ其ノ登記ヲ囑託スルコトヲ要ス
登記所ガ前項ノ囑託ヲ受ケタルトキハ
遲滯ナク其ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
第百九條解散、合併及保險契約ノ移轉
ニ關スル決議ハ商法第三百四十三條又
ハ本法第三十九條第二項ノ規定ニ依ル
ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第百十條解散ノ決議、合併及保險契約
ノ移轉ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非
ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第百十一條保險會社ハ契約ヲ以テ責任
準備金算出ノ基礎ヲ同ジクスル保險契
約ノ全部ヲ包括シテ他ノ保險會社ニ移
轉スルコトヲ得
會社ハ前項ノ契約ヲ以テ會社財產ヲ移
轉スベキコトヲ定ムルコトヲ得但シ主
務大臣ガ其ノ會社ノ債權者ノ利益ヲ保
護スルニ必要ト認ムル財產ヲ留保スル
コトヲ要ス
第百十二條保險契約ヲ移轉セントスル
會社ハ第百九條ノ決議ノ日ヨリ二週間
內ニ移轉契約ノ要旨及各會社ノ貸借對
照表ヲ公〓スルコトヲ要ス
前項ノ公〓ニハ移轉セラルベキ保險契
約者ニシテ異議アラバ一定ノ期間內ニ
之ヲ述ブベキ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
但シ其ノ期間ハ一月ヲ下ルコトヲ得ズ
前項ノ期間內ニ異議ヲ述ベタル保險契
約者ガ移轉セラルベキ保險契約者總數
ノ十分ノ一ヲ超エ又ハ其ノ保險金額ガ
移轉セラルベキ保險金總額ノ十分ノ一
ヲ超ユルトキハ保險契約ノ移轉ヲ爲ス
コトヲ得ズ第百十四條ノ規定ニ依リ契
約條項ノ變更ヲ定ムル場合ニ於テ異議
ヲ述ベタル保險契約者ニシテ其ノ變更
ヲ受クベキ者ガ變更ヲ受クベキ保險契
約者總數ノ十分ノ一ヲ超エ又ハ其ノ保
險金額ガ變更ヲ受クベキ保險契約者ノ
保險金總額ノ十分ノ一ヲ超ユルトキ亦
同ジ
前二項ノ規定ハ相互會社ガ第五十一條
第一項ノ機關ニ依ラズシテ保險契約移
轉ノ決議ヲ爲シタル場合ニハ之ヲ適用
セズ
第百十三條保險契約ヲ移轉セントスル
會社ハ株主總會又ハ社員總會ノ決議ア
リタル時ヨリ保險契約ノ移轉ヲ爲シ又
ハ爲サザルニ至ル時迄其ノ移轉セント
スル保險契約ト同種ノ保險契約ヲ爲ス
コトヲ得ズ
第百十四條保險契約全部ノ移轉ヲ爲ス
場合ニ於テハ會社ハ移轉スベキ保險契
約ニ付移轉契約ヲ以テ計算ノ基礎ノ變
更、保險金額ノ削減及將來ノ保險料ノ
減額又ハ契約條項ノ變更ヲ定ムルコト
ヲ得
第百十五條前條ノ規定ニ依リ保險金額
ノ削減ヲ定ムル場合ニ於テハ保險契約
ヲ移轉セントスル會社ハ株主總會又ハ
社員總會ノ決議アリタル時ヨリ保險契
約ノ移轉ヲ爲シ又ハ爲サザルニ至ル時
迄其ノ財產ノ處分ヲ爲シ又ハ債務ヲ負
擔スベキ行爲ヲ爲スコトヲ得ズ但シ會
社ノ維持ニ必要ナル費用ヲ支出スル場
合又ハ財產ノ保全其ノ他特別ノ必要ニ
依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ財產ヲ處分
スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
保險契約ノ移轉アリタルトキハ保險契
約ニ因リテ生ジタル債權ニシテ前項ノ
規定ニ依リ支拂ヲ停止セラレタルモノ
ニ付テハ移轉契約ニ定メタル保險金額
削減ノ割合ニ依リ其ノ金額ヲ削減シテ
支拂ヲ爲スコトヲ要ス
前條ノ規定ニ依リ契約條項ノ變更ヲ定
ムル場合ニ於テ其ノ變更ヲ爲サントス
ル會社亦第一項ニ同ジ但シ保險契約ニ
因リテ生ジタル債務ヲ辨濟シ又ハ主務
大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ變更ニ關セザル
行爲ヲ爲ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第百十六條會社ガ保險契約ノ移轉ヲ爲
シタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ公〓ス
ルコトヲ要ス移轉ヲ爲サザルニ至リタ
ルトキ亦同ジ
第百十七條保險契約ノ移轉ヲ爲シタル
會社ガ其ノ保險契約ニ付有スル權利義
務ハ移轉ヲ受ケタル會社之ヲ承繼ス移
轉契約ヲ以テ移轉スベキコトヲ定メタ
ル財產ニ付亦同ジ
保險契約移轉ノ決議ノ後ニ於テ移轉ス
ベキ保險契約ニ付爲シタル收支其ノ他
移轉スベキ保險契約又ハ財產ニ付生ジ
タル變更ハ移轉ヲ受ケタル會社ニ歸ス
第百十八條保險契約ノ移轉アリタル場
合ニ於テ移轉ヲ受ケタル會社ガ相互會
社ナルトキハ其ノ保險契約者ハ其ノ會
社ニ入社ス
第百十九條會社ハ解散ノ後ト雖モ三月
內ニ限リ保險契約移轉ノ決議ヲ爲スコ
トヲ得
第百三十四條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之
ヲ適用セズ但シ保險契約ノ移轉ヲ爲サ
ザルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第百二十條保險契約ノ移轉ニ因ル解散
ノ登記ノ申請書ニハ移轉契約書、各會
社ノ株主總會又ハ社員總會ノ決議錄竝
ニ第百十二條ノ公〓及異議竝ニ保險契
約移轉ノ認可ヲ證スル書類ヲ添附スル
コトヲ要ス
第百二十一條保險會社第百條又ハ第百
三十七條第一項ノ規定ニ依ル契約ノ移
轉ノ命令ヲ受ケタル場合ニ於テ相手會
社ノ指定アルトキハ其ノ會社、指定ナ
キトキハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ他ノ保
險會社ニ對シ契約ノ移轉ニ關シ協議ヲ
爲スコトヲ要ス
主務大臣前項ノ指定又ハ認可ヲ爲シタル
トキハ其ノ相手會社ニ對シ之ヲ通知ス
第一項ノ協議ハ各會社ニ於テ株主總會
又ハ社員總會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス
第一項ノ協議調ヒタルトキハ各會社ハ
遲滯ナク主務大臣ニ其ノ認可ヲ申請ス
ルコトヲ要ス
第百九條ノ規定ハ第三項ノ決議ニ之ヲ
準用ス
第百二十二條主務大臣ノ命令ニ依リ契
約ノ移轉ヲ爲ス場合ニ於テハ會社ハ前
條第一項ノ協議ヲ以テ移轉スベキ保險
契約ニ關スル準備金ノ金額ニ相當スル
財產ヲ移轉スベキコトヲ定ムルコトヲ
要ス
第百十一條第二項但書ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第百十四條及第百十五條ノ規定ハ前條
第一項ノ協議ニ之ヲ準用ス
第百二十三條主務大臣契約ノ移轉ノ命
令ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認
ムルトキハ移轉スベキ保險契約ニ關ス
ル計理ニ付特別ノ計算ヲ爲スベキコト
ヲ命ジ其ノ他移轉ヲ受クル會社ノ保險
契約者、被保險者又ハ保險金額ヲ受取
ルベキ者ノ利益ヲ保護スルニ必要ナル
命令ヲ爲スコトヲ得
第百二十四條契約ノ移轉ニ關スル協議
ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハズ又ハ協議
調ハザルトキハ主務大臣ハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ契約ノ移轉ニ付必要ナル決
定ヲ爲スコトヲ得
主務大臣前項ノ決定ヲ爲サントスルト
キハ豫メ各會社ノ意見ヲ徵スルコトヲ
要ス
第百二十五條主務大臣ノ命令ニ依ル契
約ノ移轉ハ主務大臣ノ認可又ハ決定ニ
依リ其ノ效力ヲ生ズ
前項ノ認可又ハ決定アリタルトキハ會
社ハ遲滯ナク其ノ旨及契約ノ移轉ニ關
スル協議又ハ決定ノ要旨ヲ公〓スルコ
トヲ要ス
第百二十六條第百三條、第百四條、第
百十七條、第百十八條及第百二十條ノ
規定ハ主務大臣ノ命令ニ依ル契約ノ移
轉ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十七條保險會社ハ其ノ營業ノ讓
渡ヲ爲スコトヲ得ズ
第百二十八條保險會社ガ合併ノ決議ヲ
爲シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週
間內ニ合併契約ノ要旨及各會社ノ貸借
對照表ヲ公𠮷スルコトヲ要ス
第百十二條第二項乃至第四項、第百十
六條及第百二十條ノ規定ハ合併ノ場合
ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リテ爲シタル合併ハ
異議ヲ述ベタル保險契約者其ノ他保險
契約ニ因リテ生ジタル權利ヲ有スル者
ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第百二十九條會社ガ合併ヲ爲ス場合ニ
於テハ合併契約ヲ以テ其ノ保險契約ニ
關スル計算ノ基礎又ハ契約條項ノ變更
ヲ定ムルコトヲ得
第百十三條及第百十五條第三項ノ規定
ハ前項ノ規定ニ依リ契約條項ノ變更ヲ
定ムル場合ニ於テ其ノ變更ヲ爲サント
スル會社ニ之ヲ準用ス
第百三十條相互會社ハ他ノ保險會社ト
合併ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ合併後存續スル會
社又ハ合併ニ因リテ設立スル會社ハ相
互會社ナルコトヲ要ス但シ合併ヲ爲ス
會社ノ一方ガ株式會社ナルトキハ合併
後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立
スル會社ハ株式會社ナルコトヲ得
相互會社ト株式會社トノ合併ノ場合ニ
於テハ各本法又ハ商法ノ合併ニ關スル
規定ニ從フコトヲ要ス
合併契約書ニ記載スベキ事項其ノ他合
併ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之
ヲ定ム
第百三十一條前條ノ合併アリタル場合
リ於テ合併後存續スル會社又ハ合併ニ
因リテ設立スル會社ガ相互會社ナルト
キハ合併ニ因リテ解散スル會社ノ保險
契約者ハ其ノ會社ニ入社シ株式會社ナ
ルトキハ相互會社ノ社員ハ其ノ地位ヲ
失フ但シ保險關係ニ屬スル權利義務ハ
合併契約ノ定ムル所ニ從ヒ合併後存續
スル株式會社又ハ合併ニ因リテ設立シ
タル株式會社之ヲ承繼ス
前項ノ規定ニ依リ合併後存續スル會社
ニ入社スベキ者ハ商法第四百十二條第
一項ノ規定ニ依ル社員總會ニ於テ社員
ト同一ノ權利ヲ有ス但シ合併契約ニ別
段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十四條及第三十九條第二項第三項
竝ニ商法第百八十二條、第百八十三條
及第百八十七條第二項ノ規定ハ合併ニ
因リテ設立スル相互會社ノ創立總會ニ
之ヲ準用ス
第七章〓算
第百三十二條保險會社ガ免許ノ取消ニ
因リテ解散シタルトキハ主務大臣ハ〓
算人ヲ選任ス
商法第百二十二條、第百三十八條及第
四百十七條第二項ニ定ムル〓算人ノ選
任ハ主務大臣之ヲ爲ス此ノ場合ニ於テ
ハ利害關係人ノ請求ナクシテ之ヲ爲ス
コトヲ得
商法第百二十九條第三項ノ規定ハ前二
項ノ場合ニ之ヲ準用ス
主務大臣ハ監査役又ハ三月前ヨリ引續
キ資本ノ十分ノ一以上ニ當ル株式ヲ有
スル株主若ハ十分ノ一以上ノ社員ノ請
求ニ依リ〓算人ヲ解任スルコトヲ得但
シ此ノ請求ヲ爲ス社員ニ付定款ヲ以テ
他ノ標準ヲ定ムルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ主務大臣ハ前
項ノ請求ナクシテ〓算人ヲ解任スルコ
トヲ得
商法第四百二十六條第二項ノ規定ハ保
險事業ヲ營ム株式會社ノ〓算人ニハ之
ヲ適用セズ
第百三十三條前條ノ規定ニ依リ〓算人
ヲ選任シタル場合ニ於テハ會社ヲシテ
之ニ報酬ヲ與ヘシムルコトヲ得其ノ額
ハ主務大臣之ヲ定ム
第百三十四條保險會社ガ第百八條第一
項第二號、第六號又ハ第七號ニ揭グル
事由ニ因リテ解散シタルトキハ保險金
額ヲ支拂フベキ事由ガ解散ノ日ヨリ三
月內ニ生ジタルトキニ限リ保險金額ヲ
支拂フコトヲ要ス
前項ノ期間經過ノ後ハ生命保險ヲ目的
トスル會社ニ在リテハ被保險者ノ爲ニ
積立テタル金額、損害保險ヲ目的トス
ル會社ニ在リテハ未ダ經過セザル期間
ニ對スル保險料ヲ拂戾スコトヲ要ス
第百三十五條商法第四百二十三條第二
項中裁判所トアルハ保險會社ニ付テハ
之ヲ主務大臣トス
第百三十六條主務大臣ハ保險會社ノ〓
算事務及財產ノ狀況ヲ檢査シ、財產ノ
供託ヲ命ジ其ノ他〓算ノ監督上必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第百三十七條主務大臣ハ解散シタル保
險會社ノ業務又ハ財產ノ狀況ニ依リ必
要アリト認ムルトキハ業務及財產ノ管
理又ハ契約ノ移轉ノ命令ヲ爲スコトヲ
得
第百十九條第二項ノ規定ハ前項ノ命令
アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第八章罰則
第百三十八條第一條第一項ノ規定ニ違
反シ免許ヲ受ケズシテ保險事業ヲ營ミ
タル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百三十九條保險管理人、保險計理人
又ハ相互會社ノ發起人、第七十三條第
一項ニ於テ準用スル商法第五十六條第
三項ノ設立委員、取締役、監査役、第
六十條若ハ第六十二條ニ於テ準用スル
商法第二百五十八條第二項、第二百七
十條第一項若ハ第二百七十二條第一項
ノ職務代行者若ハ支配人其ノ他事業ニ
關スル或種類若ハ特定ノ事項ノ委任ヲ
受ケタル使用人自己若ハ第三者ヲ利シ
又ハ會社ヲ害センコトヲ圖リテ其ノ任
務ニ背キ會社ニ財產上ノ損害ヲ加ヘタ
ルトキハ七年以下ノ懲役又ハ一萬圓以
下ノ罰金ニ處ス
相互會社ノ〓算人、第七十七條ニ於テ
準用スル商法第二百五十八條第二項、
第二百七十條第一項若ハ第二百七十二
條第一項ノ職務代行者又ハ第七十八條
ノ整理委員、監督〓若ハ管理人前項ニ
揭グル行爲ヲ爲シタルトキ亦前項ニ同
第百四十條第二十四條第一項又ハ第五
十一條第一項ノ機關ヲ構成スル者自己
若ハ第三者ヲ利シ又ハ保險契約者若ハ
社員ヲ害センコトヲ圖リテ其ノ任務ニ
背キ保險契約者若ハ社員ニ財產上ノ損
害ヲ加ヘタルトキハ五年以下ノ懲役又
ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第百四十一條前二條ノ未遂罪ハ之ヲ罰
ス
第百四十二條第百三十九條第一項ニ
揭グル者又ハ相互會社ノ檢査役ハ左ノ
場合ニ於テハ五年以下ノ懲役又ハ五千
圓以下ノ罰金ニ處ス
-會社ノ設立ノ場合ニ於テ社員ノ數、
基金總額ノ引受若ハ基金ノ拂込ニ付
又ハ第三十四條第四號乃至第六號第
九號若ハ第三十八條第一一項第三號第
五號ニ揭グル事項ニ付裁判所又ハ總
會ニ對シ不實ノ申述ヲ爲シ又ハ事實
ヲ隱蔽シタルトキ
二何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ會
社ノ計算ニ於テ不正ニ其ノ株式ヲ取
得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受ケ
タルトキ
三法令又ハ定款ノ規定ニ違反シテ基
金ノ償却、基金利息ノ支拂又ハ利益
若ハ剩餘金ノ配當ヲ爲シタルトキ
四會社ノ事業ノ範圍外ニ於テ投機取
引ノ爲ニ會社財產ヲ處分シタルトキ
第百四十三條前四條ノ罪ヲ犯シタル者
ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スル
コトヲ得
第百四十四條第百三十九條若ハ第百四
十條ニ揭グル者又ハ相互會社ノ檢査役
若ハ第七十八條ノ監査委員其ノ職務ニ
關シ不正ノ請託ヲ受ケ財產上ノ利益ヲ
收受シ、要求シ又ハ約束シタルトキハ
三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金
三條八人
前項ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ
約束ヲ爲シタル者亦前項ニ同ジ
第百四十五條左ニ揭グル事項ニ關シ不
正ノ請託ヲ受ケ財產上ノ利益ヲ收受シ、
要求シ又ハ約束シタル者ハ一年以下ノ
懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-保險契約者總會、相互會社ノ創立
總會又ハ社員總會ニ於ケル發言又ハ
議決權ノ行使
二第二章、第三章及第七章ニ定ムル
訴ノ提起又ハ資本ノ十分ノ一以上ニ
當ル株主若ハ十分ノ一以上ノ社員ノ
權利ノ行使
前項ノ利益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ
約束ヲ爲シタル者亦前項ニ同ジ
第百四十六條第百四十四條第一項又ハ
前條第一項ノ場合ニ於テ犯人ノ收受シ
タル利益ハ之ヲ沒收ス其ノ全部又ハ一
部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ
價額ヲ追徵ス
第百四十七條第百四十四條第二項又ハ
第百四十五條第二項ノ罪ヲ犯シタル者
自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免
除スルコトヲ得
第百四十八條保險計理人第九十條第一
項ノ規定ニ違反シ正當ノ事由ナクシテ
確認ヲ爲サズ又ハ不正ノ確認ヲ爲シタ
ルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下
ノ罰金ニ處ス
第百四十九條法人又ハ人ノ代理人、戶
主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業
者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第百
三十八條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ
其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザ
ルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ
得ズ
第百五十條第百三十八條ノ罰則ハ其ノ
者ガ法人ナルトキハ取締役其ノ他ノ法
人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラズ
第百五十一條第百三十九條、第百四十
修、第百四十二條又ハ第百四十四條第
一項ニ揭グル者ガ法人ナルトキハ本章
ノ罰則ハ其ノ行爲ヲ爲シタル取締役其
ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員又ハ
支配人ニ之ヲ適用ス
第百五十二條保險會社ノ發起人、設立
委員、取締役、監査役、檢査役、〓算
人第九十二條第一項ノ管理ノ受託會
社保險管理人、整理委員、監督員、
商法第三百九十八條第一項(第七十八
條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ管理
人監査委員、商法第二百五十八條第
二項、第二百七十條第一項若ハ第二百
七十二條第一項(第六十條、第六十二
條又ハ第七十七條ニ於テ準用スル場合
ヲ含ム)ノ職務代行者又ハ支配人ハ左
ノ場合ニ於テハ五千圓以下ノ過料ニ處
ス但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ科スベキトキ
ハ此ノ限ニ在ラズ
一第五條ノ規定ニ違反シテ他ノ事業
ヲ營ミタルトキ
二第六條ノ規定ニ違反シテ他ノ會社
ノ常務ニ從事シタルトキ
三本法ニ基キテ爲ス主務大臣ノ命令
ニ違反シタルトキ
四本法ニ定ムル檢査又ハ調査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタルトキ
五官廳、總會又ハ第二十四條第一項
若ハ第五十一條第一項ノ機關ニ對シ
不實ノ申述ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シ
タルトキ
六第十條第一項ノ規定ニ違反シテ第
一條第二項ニ揭グル書類ニ定メタル
事項ノ變更ヲ爲シタルトキ
七本法ニ定ムル登記ヲ爲スコトヲ怠
リタルトキ
八本法ニ定ムル公〓、通知若ハ屆出
ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公〓、
通知若ハ屆出ヲ爲シタルトキ
九本法ノ規定ニ違反シ正當ノ事由ナ
クシテ書類ノ閱覽又ハ其ノ謄本若ハ
抄本ノ交付ヲ拒ミタルトキ
十第十四條又ハ第三十八條第二項ノ
規定ニ違反シテ入社申込證ヲ作ラズ
又ハ株式申込證若ハ入社申込證ニ記
載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不實ノ
記載ヲ爲シタルトキ
十一第十七條又ハ第十八條ノ規定ニ
違反シテ資本減少ノ手續ヲ爲シタル
トキ
十二第二十條乃至第二十七條ノ規定
ニ違反シテ組織變更ノ手續ヲ爲シタ
九十年
十三定款、社員名簿、議事錄、財產
目錄、貸借對照表、事業報告書、監
査書、事務報告書、決算報告書、第
四十二條ニ於テ準用スル商法第三十
二條第一項ノ帳簿、第七十八條ノ調
査書、損益計算書又ハ基金ノ償却、
基金利息ノ支拂若ハ準備金及剩餘金
ノ配當ニ關スル議案ニ記載スベキ事
項ヲ記載セズ又ハ不實ノ記載ヲ爲シ
タルトキ
十四第五十六條第一項(第七十七條
ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第九十
一條又ハ第六十七條及第七十七條ニ
於テ準用スル商法第二百八十二條第
一項ノ規定ニ違反シテ帳簿又ハ書類
ヲ備置カザルトキ
十五第五十四條ニ於テ準用スル商法
第二百三十三條又ハ第一一百三十四條
第一項ノ規定ニ違反シテ社員總會若
ハ第五十一條第一項ノ機關ヲ招集シ
若ハ招集セズ又ハ定款ニ定メタル地
以外ノ地ニ於テ之ヲ招集シタルトキ
十六本法又ハ定款ニ定メタル取締役、
監査役又ハ保險計理人ノ員數ヲ缺ク
ニ至リタル場合ニ於テ其ノ選任手續
ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
十七第十九條第三項、第六十三條、
第六十五條、第八十六條又ハ第八十
七條ノ規定ニ違反シテ準備金ヲ積立
テズ又ハ之ヲ使用シタルトキ
十八第八十八條第一項ノ規定ニ違反
シテ責任準備金ノ計算ヲ爲サズ又ハ
之ヲ帳簿ニ記載セザルトキ
十九第七十二條ノ規定ニ違反シテ解
散ノ手續ヲ爲シタルトキ
二十第七十五條又ハ第七十六條若ハ
定款ノ規定ニ違反シテ會社財產ヲ處
分シ又ハ殘餘財產ヲ分配シタルトキ
二十一第七十七條ニ於テ準用スル商
法第百二十四條第三項ノ規定ニ違反
シテ破產宣告ノ請求ヲ爲スコトヲ怠
リ又ハ第七十八條ニ於テ準用スル商
法第四百三十一條第二項ノ規定ニ違
反シテ特別〓算開始ノ申立ヲ爲スコ
トヲ怠リタルトキ
二十二〓算ノ結了ヲ遲延セシムル目
的ヲ以テ第七十七條ニ於テ準用スル
商法第四百二十一條第一項ノ期間ヲ
不當ニ定メタルトキ
二十三第七十七條又ハ第七十八條ニ
於テ準用スル商法第四百二十三條又
ハ第四百三十八條ノ規定ニ違反シテ
債務ノ辨濟ヲ爲シタルトキ
二十四第七十八條ニ於テ準用スル商
法第四百四十五條第一項又ハ第二項
ノ規定ニ違反シタルトキ
二十五第七十八條ニ於テ準用スル商
法第三百八十六條、第四百三十二條、
第四百三十七條又ハ第四百五十四條
第一項ノ規定ニ依ル裁判所ノ財產保
全ノ處分ニ違反シタルトキ
二十六第百一條第二項ノ規定ニ違反
シ正當ノ事由ナクシテ保險管理人タ
ルコトヲ拒否シタルトキ
二十七主務大臣ノ選任シタル保險管
理人若ハ〓算人又ハ裁判所ノ選任シ
タル管理人若ハ〓算人ニ事務ノ引渡
ヲ爲サザルトキ
二十八第百三條(第百二十六條ニ於
テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違
反シテ事業ヲ營ミタルトキ
二十九第百十二條ノ規定ニ違反シテ
保險契約移轉ノ手續ヲ爲シタルトキ
三十第百二十七條ノ規定ニ違反シテ
營業ノ讓渡ヲ爲シタルトキ
三十一第百二十八條第一項第二項、
第百三十條第三項又ハ第七十三條ニ
於テ準用スル商法第九十九條若ハ第
百條ノ規定ニ違反シテ合併ノ手續ヲ
爲シタルトキ
三十二第百十三條又ハ第百十五條
(第百二十九條第二項ニ於テ準用ス
ル場合ヲ含ム)ノ規定ニ違反シテ保
險契約、財產ノ處分又ハ債務ヲ負擔
スベキ行爲ヲ爲シタルトキ
第百五十三條保險計理人第九十條第二
項ノ規定ニ違反シテ答申ヲ爲サズ又ハ
虛僞ノ答申ヲ爲シタルトキハ五千圓以
下ノ過料ニ處ス但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ
科スベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
第百五十四條第四條第二項ノ規定ニ違
反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第百五十五條不正ノ競爭ノ目的ヲ以テ
相互會社ノ登記シタル名稱ト同一若ハ
類似ノ商號若ハ名稱ヲ使用シ又ハ不正
ノ目的ヲ以テ他ノ相互會社ノ事業ナリ
ト誤認セシムベキ商號若ハ名稱ヲ使用
シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第百五十六條非訟事件手續法第二百六
條乃至第二百八條ノ規定ハ第百五十二
條乃至前條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
第百五十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第百五十八條本法ハ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外本法施行前ニ生ジタル事
項ニモ亦之ヲ適用ス但シ從前ノ規定ニ
依リテ生ジタル效力ヲ妨ゲズ
第百五十九條明治三十三年七月一日前
設立シタル保險會社ニシテ本法施行ノ
際現ニ存スルモノハ本法ニ依リテ事業
ノ免許ヲ受ケタル保險會社ト看做ス
第百六十條從前ノ規定ニ依リテ爲シタ
ル認可、處分其ノ他ノ行爲ハ本法中之
ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法
ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第百六十一條商法中改正法律施行法
(以下新商法施行法ト稱ス)第四條、第五
條、第九條、第十一條、第十二條第一項、
第十七條、第十八條、第十九條第一項
第三項、第二十二條第一項第二項、第
二十三條第一項、第二十四條、第二十
五條第一項、第二十九條第一項、第三
十條、第三十二條乃至第三十四條、第
四十一條乃至第四十五條、第四十八條
第一項第二項、第五十條、第五十一條
及第五十四條ノ規定ハ相互會社ニ之ヲ
準用ス但シ同法第三十三條第一項中新
法第百九十七條トアルハ之ヲ保險業法
第四十一條トシ第四十三條中新法第二
百六十七條トアルハ之ヲ保險業法第五
十七條トシ第四十四條中新法第二百六
十八條トアルハ之ヲ保險業法第五十八
條トス
前項ニ於テ準用スル新商法施行法第十
二條第一項、第二十三條第一項又ハ第
二十九條第一項ノ規定ニ違反シタルト
キハ其ノ相互會社ノ取締役ヲ五百圓以
下ノ過料ニ處ス
第一項ニ於テ準用スル新商法施行法第
四十八條第一項ノ規定ニ違反シタルト
キハ其ノ相互會社ノ取締役及其ノ職
務ヲ行フ監査役ヲ五百圓以下ノ過料ニ
處ス同條第二項ノ規定ニ違反シタルト
キ其ノ相互會社ノ〓算人及其ノ職務ヲ
行フ監査役ニ付亦同ジ
第百六十二條本法施行前ニ會社ガ資本
減少ノ決議ヲ爲シ又ハ各會社ガ保險契
約移轉若ハ合併ノ決議ヲ爲シタル場合
ニ於テハ其ノ資本減少、保險契約移轉
又ハ合併ニ付テハ從前ノ規定ヲ適用ス
但シ資本減少又ハ合併ニ付新商法施行
法第十八條、第十九條第一項第三項、
第六十四條及第六十五條ノ規定ノ適用
ヲ妨ゲズ
第百六十三條本法施行ノ際現ニ保險會
社ノ常務ニ從事スル取締役若ハ監査役
又ハ支配人ニシテ他ノ會社ノ常務ニ從
事スル者ハ本法施行後一年ヲ限リ第六
條ノ規定ニ拘ラズ主務大臣ノ認可ヲ受
ケズシテ引續キ其ノ會社ノ常務ニ從事
スルコトヲ得
第百六十四條本法施行ノ際現ニ生命保
險會社ニ於テ保險數理ニ關スル事項ヲ
擔當スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本
法施行後三年ヲ限リ之ヲ本法ニ依ル保
險計理人ト看做ス
第百六十五條第百五十五條ノ規定ハ本
法施行前ニ商號又ハ名稱ヲ使用シタル
場合ニハ之ヲ適用セズ
第百六十六條本法施行前ニ從前ノ第五
章ノ規定ヲ適用スベキ行爲アリタルト
キハ本法施行後ト雖モ其ノ規定ヲ適用
ス
本法施行後從前ノ規定ニ依ルベキ場合
ニ於テ從前ノ第五章ノ規定ヲ適用スベ
キ行爲アリタルトキハ第八章ノ規定ヲ
適用ス
第百六十七條非訟事件手續法第二百六
條乃至第二百八條ノ規定ハ第百六十一
條第二項及第三項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第百六十八條本法ニ依リ署名スベキ場
合ニ於テハ記名捺印ヲ以テ署名ニ代フ
ルコトヲ得
第百六十九條外國人又ハ外國法人ガ本
法施行地内ニ支店、從タル事務所又ハ
代理店ヲ設ケテ保險事業ヲ營ム場合ニ
關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百七十條本法施行ノ際必要ナル規定
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣八田嘉明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=4
-
005・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今議題トナリ
マシタ保險業法改正法律案ニ付キマシテ提
案理由ヲ御說明申上ゲマス、提案理由ノ第
一點ハ、商法ガ改正セラレマシタルコトデ
アリマス、現行保險業法ハ相互會社ニ關ス
ル規定其ノ他ニ於キマシテ商法ノ規定ヲ準
用シ、或ハ之ニ對スル特則ヲ設ケテ居ル點
ガ甚ダ多イノデアリマス、然ルニ御承知ノ
通リ、此ノ商法ハ前議會ニ於キマシテ改正
ニ相成リマシタ、此ノ關係ヨリ致シマシテ
現行ノ保險業法ハ調和ヲ保ツ爲ニ、是非共之
ヲ改正スル必要ヲ認メタノデアリマス、提
案理由ノ第二點ハ、監督指導ノ方策ヲ整備
スル必要ノ生ジタコトデアリマス、我ガ國
ノ民營保險事業ハ、國力發展ト保險思想ノ
普及トニ依リマシテ、逐年目覺シイ發達ヲ
遂ゲ來ッテ居ルノデアリマス、國民生活ノ安
定竝ニ其ノ資金ノ運用ヲ通ジマシテ、國家
產業經濟ノ發展上極メテ重要ナル地位ヲ占
ムルニ至ッテ居リマスルコトハ、誠ニ御同慶
ニ存ズル所デアリマス、政府ニ於キマシテ
ハ從前カラ保險事業ノ公益性ニ鑑ミマシテ、
其ノ一層ノ普及發達ヲ圖リマスルト共ニ、
其ノ經營ヲシテ益〓公益的ナラシムルヤウ、
之ニ對スル指導監督ノ衝ニ當ッテ參ッタノデ
アリマス、然ルニ現行保險業法ハ明治三十
三年ノ制定ニ係リ、其ノ後二三ノ補正ヲ加
ヘタニ止マルノデアリマシテ、制定以來四
十年ヲ玆ニ經マシタ現在ニ於キマシテハ
不十分ノ點ガ少クナイト認メラルヽm.H3)
タノデアリマス、就キマシテハ政府ニ於キ
マシテハ此ノ改正ノ重要性ニ鑑ミマシテ、
特ニ之ガ改正調査ニ關スル委員會ヲ設ケ、
此ノ委員會ニ於キマシテ滿場一致ヲ以テ決
議セラレマシタル答申ニ基キマシテ、事業
發展ノ現狀ニ卽應スル趣旨ノ諸規定ヲ設ケ
タノデアリマス、今其ノ內容ノ主ナルモノ
ヲ申述ベマスト、第一ニハ事業ノ經營ヲシ
テ一層適正ナラシムルガ爲、事業ノ監督ニ
關スル規定ヲ整備シ、又不當ノ競爭ヲ防止
スルガ爲ニ、事業ノ統制協定ニ關スル規定
ヲ設ケマシタルコト、第二ニハ業績不良ニ
陷リマシタ會社ニ對シ、有效適切ナル救濟
又ハ改善ノ手段ヲ講ジ、保險契約者ノ利益
ヲ確保スルガ爲、事業ノ管理及契約ノ移轉
命令ニ關スル規定ヲ設ケマシタルコト、其
ノ他業界內外ノ希望ニ卽シ、株式會社ノ相
互化、株式會社ト相互會社トノ合併、保險
計理人等ノ制度ヲ設ケ、又財產ノ評價ニ關
スル規定ヲ整備致シマシタルコト等デアリ
マス、今囘ノ改正ニ依リマシテ我ガ國ノ保
險事業ノ一層ノ向上ヲ促シ、其ノ健全ナル
發展ニ資スル所ガ少クナイデアラウト信ズ
ル次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛
アラムコトヲ希望致シマス
言吉星(仁和三年)う房1251
とこ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=5
-
006・子爵戸澤正己君
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
保險業法改正法律案ハ、重要ナル法案デアリ
マスルガ故ニ、特別委員ノ數ヲ十五名トシ、
其ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議ヲ提出致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=6
-
007・子爵植村家治君
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=7
-
008・議長(伯爵松平賴壽君)
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=8
-
009・議長(伯爵松平賴壽君)
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔石橋書記官朗讀〕
保險業法改正法律案特別委員
公爵山縣有道君侯爵淺野長之君
伯爵樺山愛輔君子爵梅小路定行君
子爵曾我祐邦君子爵上原七之助君
仁井田益太郞君男爵伊藤文吉君
男爵中村謙一君男爵矢吹省三君
山岡萬之助君下出民義君
藤原銀次郞君大藪守治君
大和田健三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=9
-
010・議長(伯爵松平賴壽君)
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、靑年
學校〓育費國庫補助法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、荒木文部大臣
靑年學校〓育費國庫補助法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月九日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
靑年學校〓育費國庫補助法案
靑年學校〓育費國庫補助法
第一條市町村立靑年學校〓育費ヲ補助
スル爲國庫ハ每年豫算ヲ以テ定ムル金
額ヲ支出ス
第二條前條ノ補助金ハ靑年學校〓員ノ
俸給及手當ニ充テシムル爲之ヲ市町村
ニ交付ス
第三條補助金ノ交付ニ關シ必要ナル規
程ハ主務大臣之ヲ定ム
第四條本法ノ適用ニ付テハ市町村組合
ハ之ヲ市ト看做シ町村組合及町村制ヲ
施行セザル地域ニ於ケル町村又ハ組合
ニ準ズベキモノハ之ヲ町村ト看做ス
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
實業〓育費國庫補助法第四條但書中及
實業補習學校ニ對シ交付スル補助金」及
同法第七條中「及前條」ヲ削リ同法第六條
ノ二ヲ削ル
〔國務大臣男爵荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=10
-
011・國務大臣(男爵荒木貞夫君)
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今議題ト
ナリマシタ靑年學校〓育費國庫補助法案提
出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、靑年學校ハ男
女勤勞靑年ニ對シ普ク〓育ノ機會ヲ與ヘ、以
テ其ノ心身ヲ鍛鍊シ、國防、產業等各般ニ
亙ッテ國力ノ增强ニ資セムコトヲ期スル重要
ナル〓育機關デアリマシテ、政府ハ昭和十
四年度ヨリ取リ敢ズ男子靑年ニ對シ之ヲ義
務〓育ノ爲サムト致シテ居ルノデアリマス、
仍テ政府ハ靑年學校〓育ノ發達ヲ助成スル
ト共ニ、一面地方財政ノ負擔ヲ緩和スル爲、
玆ニ本法案ヲ提出致シタ次第デアリマス、
尙實業〓育費國庫補助法中實業補習學校ニ
關係スル部分ハ、本法案ノ成立ニ依リ其ノ
必要ナキニ至リマスノデ、本法案ノ附則ヲ
以テ之ヲ削除セムトスル次第デアリマス、
何卒愼重御審議ノ上、御協賛アラムコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=11
-
012・議長(伯爵松平賴壽君)
○議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケレ
バ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
靑年學校〓育費國庫補助法案特別委員
侯爵德川義親君子爵〓岡長言君
男爵紀俊秀君下村宏君
男爵大森佳一君田所美治君
小坂順造君細田安兵衞君
岩崎〓行君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=12
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013・議長(伯爵松平賴壽君)
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三、臺灣
事業公債法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、松村政務次官
臺灣事業公債法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月九日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣事業公債法中左ノ通改正ス
第一條中「一億五千四百六十萬圓」ヲ二
億七千二百九十萬圓」二次六
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=13
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014・政府委員(松村光三君)
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ臺灣事業公債法中改正法律案提出ノ
理由ヲ說明致シマス、臺灣總督府特別會計
ニ於ケル既定繼續費港灣費ニ追加シ計上致
シマシタル中部港築港工事ニ要スル經費千
五百萬圓、竝ニ昭和十四年度豫算ニ計上シ
タル鐵道改良ニ要スル經費三百四十萬圓
ハ其ノ經費ノ性質及同特別會計歲計ノ現
狀ニ顧ミマシテ、之ガ財源ヲ公債ニ依ルコ
トト致シマシタルニ依リ、現行臺灣事業公
債法ノ公債發行限度ヲ增加スルノ必要ガア
リマスノデ、本法律案ヲ提出致シマシタ次
第デアリマス、何卒御審議ノ上速カニ協賛
ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=14
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015・子爵戸澤正己君
○子爵戸澤正己君 只今日程ニ上リマシタ
臺灣事業公債法中改正法律案ハ、關聯致シ
マスル所ガアリマス故ニ、朝鮮事業公債法
中改正法律案外三件ノ特別委員ニ併託セラ
レムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=15
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016・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第四、臺灣
米穀移出管理特別會計法案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會、松村政務次官
臺灣米穀移出管理特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月九日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臺灣米穀移出管理特別會計法案
臺灣米穀移出管理特別會計法
第一條臺灣總督府ニ於テ米穀ノ移出ヲ
管理スル爲特別會計ヲ設置シ其ノ歲入
ヲ以テ其ノ歲出ニ充ツ
第二條本會計ニ据置運轉資本ヲ置キ其
ノ金額ハ五百萬圓トシ漸次臺灣總督府
特別會計ヨリ繰入ルルモノトス
第三條本會計ニ屬スル經費ヲ支辨スル
爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ負擔
ニ於テ借入ヲ爲スコトヲ得但シ其ノ金
額ハ二千五百萬圓ヲ超ユルコトヲ得
ズ
第四條本會計ニ於テハ米穀ノ賣渡代
金積立金ヨリ生ズル收入、借入金及
附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ米穀ノ
買入代金、米穀ノ買入賣渡加工貯藏及
運搬ニ關スル諸費、借入金ノ償還金
及利子、一時借入金ノ利子其ノ他諸費
ヲ以テ其ノ歲出トス
第五條米穀ノ買入數量ノ增加其ノ他避
クベカラザル事由ニ因リ生ジタル豫算
ノ不足ヲ補フ爲歲出豫算ニ豫備費ヲ設
クルコトヲ得
第六條本會計ノ歲出額ハ其ノ實際ノ歲
入及据置運轉資本ノ合計額ヲ超過スル
コトヲ得ズ
第七條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕
アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預入ル
ベシ
第八條本會計ニ於テ支拂上現金ニ不足
アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ一時借
入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル一時借入金ハ當該年
度內ニ之ヲ返還スベシ
第九條本會計ニ於テ決算上過剩ヲ生ジ
タルトキハ之ヲ積立ツベシ
本會計ニ於テ決算上不足ヲ生ジタルト
キハ前項ノ規定ニ依ル積立金ヨリ之ヲ
補足スベシ
第十條本會計ノ積立金ハ之ヲ臺灣ニ於
ケル農業ノ調整、開發及助長ノ爲必要
ナル費途ニ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ本會計ノ積立金ヲ使
用セントスルトキハ其ノ金額ヲ臺灣總
督府特別會計ノ歲入ニ繰入レ臺灣總督
府特別會計ノ歲出トシテ拂出スベシ
第十一條本會計ノ積立金ハ國債ヲ以テ
保有シ又ハ大藏省預金部ニ預入レ之ヲ
運用スルコトヲ得
第十二條本會計ノ每年度歲出豫算ニ於
ケル支出殘額ハ之ヲ翌年度ニ繰越シ使
用スルコトヲ得
第十三條政府ハ每年本會計ノ歲入歳出
豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共ニ
帝國議會ニ之ヲ提出スベシ
第十四條本會計ノ收入支出ニ關スル規
程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ昭和十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=19
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020・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ臺灣米穀移出管理特別會計法案提出
ノ理由ヲ說明致シマス、臺灣總督府ニ於テ、
米穀ノ移出管理ノ爲ニ行フ米穀買入、賣
渡、加工又ハ貯藏ニ關スル一切ノ歲入歲出
ハ、之ヲ他ノ會計ト區分シテ經理スルヲ適
當ト認メマスル所、之ガ爲特別會計ヲ設置
スルノ必要ガアリマスノデ、本法律案ヲ提出
シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、速
カニ協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=20
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021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 丸山君ニ伺ヒマ
スガ、御要求ノ大臣ハ、總理大臣、農林大
臣未ダ御出席ガアリマセヌデアリマスガ、
出席ゴザイマセヌデモ御質疑ヲナサレマス
カ、如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=21
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022・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 拓務大臣ガ御列席ノヤウデ
アリマスカラ、私ノ質問ハ相當長時間ニ亙
ルト思ヒマスカラ、成ルベク速カニ總理大
臣及農林大臣ノ御出席ヲ御願ヒ致シマシテ、
質疑ヲ始メタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=22
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023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス、成ルベク早ク大臣ノ出席ヲ要求致シマ
ス、質疑ノ通〓ガゴザイマスカラ、丸山鶴
吉君ニ御許ヲ致シマス、丸山鶴吉君
〔丸山鶴吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=23
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024・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 只今議題トナリマシタ臺灣
移出米管理特別會計法案ハ臺灣ノ移出米
ノ管理ヲ致シマスコトニ伴ッテ、提出サレマ
シタ法律案デアリマスカラ、自然其ノ根本
デアリマス臺灣ノ移出米管理ニ關スルコト
ヲ檢討致サナケレバナラヌト思フノデアリ
マン、此ノ臺灣ノ移出米管理ト云フ問題
ハ、可ナリ重大ナル影響ヲ持ッテ居ル重要
ナル事案デアリマシテ、今日當局ヨリ此ノ
席ニ於テ此ノ案ノ內容ノ御說明ヲ承ルコト
ハ出來ナイノデアリマスガ、大體臺灣ノ移
出米ノ管理ノ制度ハドウ云フモノデアルカ
ト云フコトヲ檢討シテ見マスルト、段々內
地デ米穀ノ締制ガ行ハレ、米價高ニナリマ
ス影響ヲ受ケテ、臺灣ノ米モ値段ガ段々高
クナッテ來ル、總督府デハ此ノ事ヲ不自然ナ
ル高價ヲ維持シ、不當ナル高價ヲ維持シテ
居ルト說明ヲサレテ居リマスガ、私共必ズ
シモ臺灣ノ米ガ一般ニ想像サレテ居ル程不
自然ナル高價デアリ、非常ナ不當ナ高値ヲ
維持シテ居ルトハ思ッテ居ラナイノデアリ
ひと、勿論熱ト光ニ惠マレタル臺灣デアリ
マスカラ、多少內地ノ米作ヨリ有利ナ狀況
ハアリマシテモ、運賃諸掛等ノ關係ヲ考慮
致シマスト、サシテ不自然デアリ、不當デ
アリ、高價デアルトハ考ヘテ居リマセヌケ
レドモ、幾ラカ臺灣ノ米ガ有利ナ條件ニア
ルコトハ疑ハアリマセヌ、其ノ結果臺灣ニ
於キマシテハ米作偏重ノ弊ヲ生ジテ來ル、
農民ガ米作ノ利益ガ多イト云フノデ、外ノ
作物ニハ向ハナイデ、米作偏重ノ傾向ヲ生
ズルカラ、之ヲ抑ヘル爲ニ米價ノ移出ヲ總
督府ニ於テ管理ヲ致シマシテ、石當リ二圓
乃至四圓ノ差益ヲ收メテ、サウシテ臺灣ニ
於ケル米ノ値段ヲ下ゲル、其ノコトニ依ッテ
外ノ甘蔗、或ハ黄麻、苧麻、蓖麻、或ハ棉
等ノ有要作物ノ植付ヲ奬勵シテ行キタイ、
斯ウ云フ大體ノ仕組デアルノデアリマス、
一定ノ買上値段ヲ定メテ、サウシテ總督府
デ移出米ノ全部ヲ買上ニナッテ、ソレヲ內地
ニ持ッテ來テ時價デ賣リマス、デ其ノ間ノ
差額二圓ナリ四圓ナリヲ總督府デ收メラレ
ルト云フコトニナル案デアリマス、大體總
督府ノ御說明ヲ承リマスト、一應御尤ノ案
ノヤウニ思ハレル節モアルノデアリマス、
或ハ此ノ案ヲ檢討致シマシテ頗ル時勢ニ適
合シタル計畫的產業ノ先驅ヲ爲スモノトシ
テ、之ヲ謳歌シテ居ルモノモアル、如何ニ
モ巧妙ニ出來タ臺灣全體ノ計畫的農業ノ振
興ノ新シイ政策デアルトシテ、之ニ共鳴ヲ
シテ御イデニナル方モ少クナイノデアリマ
ス、併シナガラ此ノ案自體ヲ考ヘマスト、
其ノ及ス影響ハ可ナリ深甚ナルモノガアリ
マシテ、輕率ニ私共之ニ同意ヲ表スルコト
ガ出來ナイコトヲ甚ダ遺憾ト致スノデアリ
やく、サッキ申上ゲマシタヤウニ、臺灣ノ
米ガ幾ラカ內地ノ米ヨリハ有利ニ高クナ
ル、是モ總督府ノ御示ニナリマシタ材料等
デ檢討致シマスト、サウ不自然デアリ、不
當デアルト云フ程ノ收益デハナイト思フノ
デアリマス、ソレデアリマスカラ段々衆議
院ニ於テ審議ガ進行致シテ居リマシタ跡ヲ
顧ミテ見マスト、臺灣總督府ノ政府委員ニ
於カレマシテモ、不當或ハ不自然ト云フ言
葉ヲ使ッタコトハツイ行過ギノコトデアッ
ク、斯ウ云フコトヲ表明サレテ居リマシテ、
ソンナニ不當、不自然ナル高値デハナイト
思フノデアリマスガ、此ノ政策ヲ實行サレ
マス結果、結局他ノ有用作物デアル砂糖黍
デアリ、黃麻デアリ、苧麻デアリ、蓖麻デ
アリ、棉デアリ、藷デアリ、サウ云フモノ
ガ段々ニ發達ヲシテ來テ、サウシテ臺灣ノ
農業ハ段々多角形的ノ經營ニナリ、從ッテ臺
灣ノ農家ノ生活ハ安定スルノデアルト說明
サレテ居ルノデアリマス、併シナガラ此ノ
有用作物ト稱セラルヽ砂糖黍ニシテモ、其
ノ他ノ麻類ニ致シマシテモ、今日迄總督府
ノ御奬勵ノ結果ニ依リマシテ年々著シキ勢
ヲ以テ增產ヲ致シテ居リマスコトハ事實デ
アルノデアリマス、必ズシモ米價ノ頭ヲ刎
ネテ米價ヲ引下ゲナケレバ、是等ノ有用作
物ヲ奬勵スルコトノ出來ナイト云フコトハ、
是ハ事實上ナイコトデアル、又此ノ有用作
物ト云フ言葉ヲ使用サレ、頻ニ宣傳ヲサレ
テ居ル中ニハ、如何ニモ時局柄是ナケレバ
ナラヌノデアル、デアルカラ此ノ事變ニ對
スル時局對策トシテモ此ノ奬勵ヲヤラナケ
レバナラヌノデアルガ如クニ誤解ヲ生ンデ
居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ必
ズシモ是ナケレバ此ノ時局ヲ押通スコトガ
出來ナイ作物デアル譯デハナイノデアリマ
ス、例ヘバ蓖麻ノ如キ、飛行機ノ滑油ノ材
料ニナリマスモノガ、今ノヤウナ輸入統制
ノ狀態デアリマスカラ、直接軍需ノ必要ガ
アルト申シマスレバ蓖麻ノ如キモノハ直
接今ノ事變ニ影響ノアル作物デアルト思フ
ノデアリマス、是ノ如キハ現ニ總督府ノ御
奬勵ガアリマシテ、昭和八年ニハ僅ニ二百
六十甲步デアッタノデアリマス、昭和十一年
ニ躍進ヲ致シマシテ千九十一甲步迄進ンデ
居ルノデアリマス、事變勃發以來、愛國蓖
麻ト稱シテ臺灣農民ニ頻ニ御奬勵ニナリマ
シタ、時局ニ順應スルコトハ臺灣農民ニ於
キマシテモ頗ル共鳴スル所デアリマスカラ、
相次イデ此ノ蓖麻ノ栽培ニ掛リマシテ、昭
和十二年ニハ八千甲歩ニ及ビマシテ、其ノ
產額モ十一年ノ四十萬六千斤ニ對シマシテ
三百十四萬三千斤ヲ出シマシテ、一躍ニ八
倍以上ノ產額ヲ示シテ居ルノデアリマス
デ時局ニ必要デアルカラト云フコトデアリ
マスナラバ臺灣ノ農民諸君モ奮ッテ斯クノ
如キ立派ナル成績ヲ現シテ居ルノデアリマ
ス、其ノ他黃麻、苧麻、棉ト云フモノハ勿
論今ノ輸入統制ノ時代デアリマスカラ、
時局ニ關係ガナイトハ申シマセヌケレドモ、
此ノ時局ガアル爲ニ大イニ此ノ植付ヲ奬勵
セナケレバナラヌト云フ特別ノ理由デハナ
イノデアリマス、如何ニモ有用作物ノ奬勵
ト云フコトヲ宣傳ヲ致シマスト、今ノ時局ニ
必ズナケレバナラヌ品物デアルカラト云フ
風ニ宣傳ヲサレテ、是モ一般世論ノ誤解ヲ
招ク因ニナッテ居ルノデアリマスガ、事實ハ
サウ云フ次第デアリマス、ソレデアリマス
カラ、是等ニ對シマシテモ若シ御奬勵ニナ
ラウト云フ趣旨デアルナラバ、臺灣總督府
ノ十年計畫ノ增產計畫ガ發表ニナッテ居リ
マスガ、其ノ位ノ程度ノ增產ヲ御圖リニナ
ラウト云フコトデアルナラバ、兎ニ角御奬
勵ニ依ッテ十分目的ハ私ハ達シ得ルノデ、何
モ米ノ値段ヲ引下ゲテ農民ニ一ツノ重大ナ
ル負擔ヲ掛ケテ迄ヤラナケレバ、ドウシテ
モ出來ナイ性質ノモノデハナイト思フノデ
アリマス、デ此ノ管理案ノ提出ノ理由トシ
テ、頻ニ有用作物論ガ唱ヘラレテ居リマス
ケレドモ、是ハ仔細ニ檢討ヲ致シマスト、
必ズシモ此ノ管理案ノ方法ニ依ラナクテ
モ、十分總督府ノ期待サレテ居ル所ノ目的
ハ達セラレルノデアル、元來農產物ノ增產
奬勵等ヲ爲サルノニ、或品物ガ少シ條件ガ
好イカラト云フノデ、ソレヲ頭ヲ叩イテ、
サウシテ外ノ物ヲ奬勵シテ行カウト云フヤ
ウナ主義ハ、今日迄我ガ國ニ於テモ御執リ
ニナッテハ居ラヌノデアリマス、或不利ナ
ル條件ニアル物ヲヨリ好ク增產サセヨウト
云フコトニナリマスレバ、特ニ政府ガ之ニ
奬勵金ヲ與ヘ、補助金ヲ與ヘテ、サウシテ
之ヲ助長發達セシムルト云フコトガ是ガ主
眼デナケレバナラヌ、例ヘバ煙草ガ專賣ニ
ナリマシテ、煙草ノ栽培ヲ御奬勵ニナルト
言ヘバ、是ガ米ヲ作ルヨリモ有利デアリ、麥
ヲ作ルヨリモ有利デアルト云フ條件ニ保護
助長ヲサレマス結果、段々ニ所要ノ煙草ヲ
得ルコトガ出來ル、斯ウ云フ風ナ狀況ニア
ルノデアリマスカラ、必ズシモ今ノヤウニ
少シ進ンダモノヲ頭ヲ叩カナケレバ、外ノ
モノヲ奬勵スルコトガ出來ナイト云フコト
ハ、私共ドウシテモ承服スルコトハ出來ナ
イノデアリマス、ソレデ結局石當リ二圓乃
至四圓ヲ總督府デ此ノ利差ヲ御取リニナル
結果ハ、直接直グ現レルモノハ何デアルカ
ト申シマスレバ、農民ノ收入ノ減デアル、
臺灣ノ米ハ此ノ頃約千萬石、九百何十萬石
ノ收穫ニナッテ居リマスガ、其ノ中デ內地ニ
移入ヲ致シマス蓬萊米ハ、其ノ半額ノ四百
九十萬石、マア五百萬石ノ米デアリマス、
デ最少限度デアリマス石當リ二圓、之ヲ引
下ゲルト云フコトニナリマスルト、其ノ五
百萬石デ一千萬圓ダケ農民ノ收入ノ減ル譯
デアリマス、併シ是ハ內地へ移入シマス五
百萬石ヲ目的デアリマスケレドモ、內地へ
移入シナイ臺灣ニ於ケル消費米モ、是ハ
物一價ノ原則ニ依リマシテ、移入ノ米ガソ
レダケ下ルト云フコトニナリマスレバ、
臺灣デ消費スル米モ其ノ程度下ッテ來ルト云
フコトニナルノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ、ソレヲ見込ミマスト一千萬石デ石
二圓宛減ルコトニナリマスレバ、農民全體
ノ收入減ハ約二千萬圓ニナル譯デアリマス、
臺灣ノ農民ノ戶數ガ四十三萬戶バカリデア
リマスカラ、ザットアラマシナ計算デアリマ
スケレドモ、一戶當リ五十圓ノ收入減ニナ
ル、米ノ關係ダケデソレダケニナルノデア
リマス、併シナガラ御承知ノヤウニ、誠ニ
米作ハ臺灣ニ於ケル農產物ノ大宗デアリマ
シテ、米ノ値段ガ總テノ標準ニナリマシテ、
其ノ他ノ農作物ノ價格モ大抵之ニ基準ヲ置
イテ動イテ居ルノデアリマスカラ、米ノ値
段ガ石二圓下ルト云フコトニナリマスレバ、
之ニ順應シテ其ノ程度デアルカ、或ハ程度
ハ輕イカ知ラナイケレドモ、其ノ他ノ農產
物モ悉ク米價ニ依ッテ影響ヲ受ケルト云フコ
トニナルノデアリマス、米ダケデ約二千萬
圓ノ收入減ニナル外、其ノ他ノ或ハ砂糖黍
ニ致シマシテモ、砂糖黍ノ問題ハ後程申上
ゲマスケレドモ、其ノ他諸ニシマシテモ、
總テノモノガ大體安クナッテ來ルノデアリマ
スカラ、臺灣農民諸君ノ被ル經濟的ノ打擊
ト云フモノハ誠ニ尠クナイノデアリマス、
是ハ實ニ臺灣農民ノ生命トシテ居リマス所
ノ、此ノ米作ノ上ニ加ヘラレル一大鐵槌デ
アリマシテ、此ノ事ハ臺灣農民ノ非常ナ苦
痛トスルコトハ勿論デアリマス、ドウシテ
斯ウ云フ制度ヲ臺灣デ御布キニナルカ、其
ノ點ガ私共本當ニ了解ニ苦シムノデアリマ
ス、米ハ勿論天然ニ依存シテ居ル所ガ多イ
ノデアリマスカラ、天惠ニ惠マレタル臺灣
ガ幾ラカ有利ニナルト云フコトモ尤モデア
リマス、サウ致シマスレバ、朝鮮ニ於キマ
シテモ、勞力其ノ他色々ナ關係デ、內地ノ
米ヨリハ幾ラカ有利デアリマス、同ジ內地
ニ致シマシテモ、北海道東北ノ方ノ米
作ト、九州、四國方面ノ米作ヲ較ベテ
見マスレバ、誠ニ非常ナ相違ガアルノデ
アリマシテ、臺灣、四國等ノ米作ハ有利ナ
條件ニ置カレテ居ルノデアリマス、ソレデ
アリマスカラ、若シ有利ナル條件ニアルカ
ラ其ノ石當リ强制的ニ最少二圓モ引下ゲ
ルノデアルト云フコトニナリマスレバ、同
ジ內地ニ於テモ九州ト四國ト、北海道、東
北トハ事情ガ違フノデアルト云フノデ、之
ニ特殊ノ考ヲ行ハレル、朝鮮モ斯クノ如キ
狀態デアルカラ、特殊ニ何カノ制度ヲ立テ、
强制的ニ米ノ値段ヲ下ゲルカト云フコトノ
問題ニナッテ參リマスト、サウハイカナイ
ソコニ非常ニ米價政策ノ複雜性ガアル、然
ルニ臺灣ダケニ於テ此ノ制度ヲ御布キニナ
リマシテ、臺灣ノ農民ハ斯クノ如クニシテ
一時的ニ非常ナル經濟的ノ打擊ヲ被ルト云
フコトニナル、是ガ私ハ臺灣統治ノ上ニ及
ス影響ガ誠ニ重大デアルト考ヘザルヲ得ナ
イノデアリマス、私共多少外地統治ノ經驗
ヲ持ッテ居ル者カラ見マスルト、非常ニ是ハ
愼重ニ考ヘナケレバナラヌ問題デアル、昭
和八九年ノ頃、日本デ非常ニ豐作ガ續キマ
シテ、日本ノ米ニ餘裕ガアルカラ、臺灣、
朝鮮カラ米ヲ移入シテハ困ルト云フノデ、
農林當局ニ於テ米ノ移入制限ノコトヲ御考
ニナッタコトガアリマス、其ノ時ニドウ言ッテ
臺灣ノ人達、朝鮮ノ人達ガ叫ンダカ、今迄
內地デ米ガ足ラヌカラ米ヲ作レ、米ヲ作レ
ト產米增殖ノコトヲ奬勵ヲシテ、漸ク朝鮮
ニ於テモ、臺灣ニ於テモ、米ガ穫レ出シテ
來タ、內地ガ少シ豐作ダト云フノデ、朝鮮
ノ米ハ入レナイ、臺灣米ハ入レナイ、斯ウ
云フ不都合ナコトハナイヂヤナイカ、是デ
內鮮一體カ、是デ內臺一如カ、斯クノ如キ
差別待遇ヲスルコトハ不屆千萬デアルト云
フノデ囂然タル聲ガ起ッタ、其ノ時ハ朝鮮總
督府モ勿論、臺灣總督府自身モ農林當局ニ
愬ヘラレテ、斯クノ如キ差別待遇ヲスルコ
トハ外地統治ノ爲ニ障碍ガアルト言ッテ、隨
分力說ヲサレタコトヲ承知致シテ居リマス、
其ノ結果結局米穀自治管理法案トナッテ、朝
鮮ニ於テモ、臺灣ニ於テモ、過剩米ハ自治
的ニ之ヲ管理スルト云フコトニナッテ漸ク
落著イタト云フコトハ、是ハ記憶ニ新タナ
ルコトデ御アリニナラウト思フノデアリマ
ス、斯クノ如ク特別ノ差別ノ待遇ヲスルト
云フコトガ、是ガ外地統治ニ對シテ及ス影
響ノ重大ナルコトヲ考慮シテ、其ノ時ニモ
サウ云フ風ニ轉換ヲサレタノデ、今度臺灣
ノ米ガ少シ有利ナ條件ニアルト云フコトノ
爲ニ、臺灣ダケニ特ニ斯クノ如キ制度ヲ布
イテ、直接農民ガ非常ナル財政上ノ打擊ト
損害ヲ被ルコトヲ無視シテ、之ヲ强行サレ
ヨウト云フコトハ、私共ドウシテモ承服ス
ルコトノ出來ナイ問題デアルト思フノデア
リマス、是モ若シ農林省ガ我ガ國ノ全體ヲ
見テノ米穀統制計畫ノ上カラ、臺灣ニハド
ウシテモ斯クノ如キ制度ヲ布イテ臺灣米ヲ
スッカリ抑ヘ付ケテシマハナケレバイカヌ
ト云フ、此ノ國全體ヲ見透シテノ一ツノ米
穀計畫ノ上カラ、臺灣ニ此ノコトヲ要求シ、
臺灣ガ之ニ應ゼラレタト云フノナラバマダ
シモノコトデアル、是ハ全體ノ日本帝國ノ
米穀政策ノ爲ニ臺灣ガ犧牲ニナルノダ、臺
灣ノ農民ガ犧牲ニナルノダ、是モマア考ヘ
方ニ依ッテハ、農林當局ノ巳ムヲ得ザル國家
統一的ナ米穀政策ノ結果トシテ、此ノ事ガ
行ハレルト云フノナラバマダシモデアリマ
スケレドモ、サウデハナクテ是ハズット古
クカラ臺灣デ御考ニナリ、昭和十二年カラ
農林當局ト交涉ヲ開始サレテ居ルノデアリ
マス、併シ農林當局ニ於キマシテハ、初メ
總督府デ作ラレタ管理案ニ對シテハドウシ
テモ承服ガ出來ナイ、交渉稍〓、一箇年ニモ及
ンデ居ルノデアリマス、サウシテ遂ニ此ノ
程度ナラバ農林省モマア承諾ヲシテモ宜イ
ト云フ結果ニナッテ、今度ノ案ガ出テ來タノ
デアリマス、ソレデ結局內地ニ持ッテ來ル、
移入スル米ハ全部農林省ニ託シ、農林省ハ
今提出サレテ居ル米穀統制會社ニ之ヲ委託
シテ、サウシテ賣ルノデアル、持ッテ來ルニモ月
別ノ表ヲ作ッテ、一時ニドット來ナイヤウニ色
色ノ制限ヲ加ヘテ、其ノ妥協ノ結果、僅カニ
此ノ法案ガ農林省ノ承認ヲ經テ臺灣ガ實施
スルコトニ同意ヲ表サレタ位デアリマス、
寧ロ是ガ臺灣總督府ノ宣傳ニ依リマスト、
日本ノ米穀政策ニ對シテ寄與スル所ガアル
ト言ハレテ居ルノデアリマスケレドモ、農
林省ガ之ヲ要求シテヤラレタ譯ヂヤナイノ
デ、ヤットコサット、此ノ一年間モ交涉ヲ續
ケラレテ、臺灣總督府ガ元來ノ主張ヲ曲ゲ
ラレタ結果、僅カニ此ノ法案ノ承認ヲ得タ
ト云フ經過ヲ御覽ニナリマシテモ、アノ差
別待遇ヲスルコトハ此ノ外地統治ノ爲ニ惡
イ影響ガアルト云フコトヲ主張サレタ總督
府ニ於テ、何ヲ苦シンデ特ニ自ラ斯クノ如
キ差別待遇的ナ制度ヲ御立テニナラレヨウ
ト云フノカ、是ガ私ハ了解ニ苦シムノデア
リマス、殊ニ臺灣ニ於キマシテハ歷代總督
ノ御骨折ニ依リマシテ、漸次皇化ニ霑ヒ、
段々島民諸君ガ皇民化シテ參ッテ居リマス
コトハ、御互ニ同慶ノ至リデアリマス、併
シ何ト申シマシテモ、統治僅カニ四十幾年
デアリマス、全ク新附ノ同胞デアリマス、
ソレデアリマスカラ兎モスレバ僻ミ根性ヲ
持チ易イ、邪推ヲシ易イ、之ヲ統治スル人
ノ心持ハ其ノ心理ヲ握リ、其ノ心ヲ獲ルコ
トニ最善ノ努力ヲ盡シマセヌト、兎モスレ
バ反感ヲ懷キ色々ノ問題ヲ惹キ起ス所ノ因
ニナルノデアリマス、苟モ斯クノ如キ刺戟
ヲ與ヘル問題ヲ考ヘナイデ、若シ總督府ノ
言ハレルヤウニ、農民ニ負擔ノ餘力ガアル
ノダ、臺灣ノ農民ハ富ンデ居ルノダト云フ
コトデアルナラバ、又土地ガ非常ニ生產力
ヲ持ッテ居ルト云フコトデアルナラバ、或ハ
地租トシテ之ニ課稅シ、或ハ農民ノ所得ガ
大キイト云フコトデアルナラバ、農民ノ所
得ニ所得稅トシテ之ヲ課シテ、サウシテ臺
灣總督府ノ費用ヲ以テ、或ハ農業ヲ振作ヲ
シ、奬勵ヲスルト云フ制度ヲ御採リニナッテ
モ差支ナイ、ソレヲ特ニ斯クノ如キ目立ツガ
如キ制度ヲ御採リニナルコトガ、私ハ臺灣
ノ島民諸君ヲ本當ニ我ガ帝國ニ信賴ヲサ
セ、靡カシメル所以デハナイト思フノデア
リマス、誠ニ拙劣ナル策デアルト私ハ思フ、
然ルニ是ガ非常ナル名案ノ如ク、非常ナ社
會的ニ卽應シタ新規ノ計畫デアルガ如ク宣
傳サレルコトハ、誠ニ私ハ眼ノ無イ行キ方
デアルト思フノデアリマス、モウ一ツ私ガ
非常ニ遺憾ニ堪ヘナイト思ヒマスコトハ
臺灣ニ於キマシテ農產ノ一番大キナ問題ハ
米デアリマスガ、其ノ次ニハ砂糖黍デアリ
マス、先覺ノ士、總督ノ奬勵ニ與ッテ、臺灣
ニ於テ糖業ガ非常ナ發展ヲ致シマシタ、今
デハ砂糖ニ付テハ御承知ノ通リ自給自足ガ
出來、其ノ餘リヲ以テ支那方面ニ輸出モ出
來ル位ノ程度ニ迄發達ヲ致シマシタ、勿論
其ノ發達ヲ見ル迄ニハ糖業者ノ苦心經營ノ
コトモアッタト思ヒマス、ソレガ爲ニ多數臺
灣ノ農民諸君ガ利益ヲ受ケテ居ルコトモ甚
大デアッテ、此ノ點ハ島民諸君モ感謝ヲシテ
然ルベシト思ヒマス、糖業經營ノ今日迄ノ
苦心ニ對シテハ敬意ヲ表スルモノデアリマ
スガ、此ノ砂糖ト米ガ臺灣ニ於キマシテハ
常ニ相對立シテ居ル、ソレデアリマスカラ、
米ノ値段ガ上レバ砂糖黍ノ値段モ上ル、米
ノ値段ガ下レバ砂糖黍ノ買上ノ値段モ下ゲ
ルト云フコトニナッテ、是ガ相對立致シテ居
ル、デアリマスカラ臺灣デハ米糖相剋ト言ッ
テ居ル、米ト砂糖ト云フモノガ互ニ相爭ッテ
居ルト言ッテ居ル位デアリマス、ソレデア
リマスカラ、米ガ一石二圓方ヲ下ゲルト云
フコトニナリマスレバ、其ノ結果ハ砂糖黍
ノ値段ガ下ッテ來ルト云フコトハ是ハ當然
ナノデアリマス、併シ此ノ砂糖黍ヲ作ルト
云フコトニ付キマシテモ、臺灣ノ農民ガ今
迄不平ヲ持ッテ居ルコトハ皆樣モ御承知ノ
コトト思フノデアリマス、色々奬勵助長ヲ
シテ下サッタコトハ有難イノデアリマスケレ
ドモ、所謂收納區域制度ト云フヤウナモノ
ガ出來マシテ、總督府令ガ出テ居リマシ
テ、或一定ノ地域ニ作ッタ砂糖黍ハ、必ズ
何々製糖會社ニ持ッテ行ッテ納メナケレバナ
ラナイ、他ニ持ッテ行ッテ之ヲ賣リ、他也
持ッテ行ッテ之ヲ捌クコトガ出來ナイヤウナ
制度ニナッテ居ルノデアリマス、私ハ今更此ノ
砂糖黍ノ收納區域制度ト云フモノヲ根本的
ニ攻擊致スモノデハアリマセヌケレドモ、
臺灣ノ砂糖黍ヲ作ル農民カラ申シマスレ
バ、作ッタ砂糖黍ハ自分ノ物ナノデアリマス、
自分ノ粒々辛苦デ出來タ砂糖黍デアルガ、
實ハ所有權ハ制限サレテ居ル、或一定ノ會
社ニ持ッテ行カナケレバ納メルコトガ出來ナ
イコトニナッテ居ル、是ハ糖業發達ノ過程ニ
於キマシテハ、此ノ收納區域制度ト云フヤ
ウナコトモ、原料ヲ確保スル爲ニハ必要ナ
制度デアルト思フノデアリマスケレドモ、
兎ニ角農民カラ致シマスレバ、一年モ八箇
月モ前ニ、砂糖會社カラ砂糖黍ハ一斤幾ラデ
買フ、千斤幾ラデ買フゾト云フ買値ヲ發表
シテ、作ッタラ其ノ間ノ狀況ハ如何ナルコト
ガアッテモ、其ノ會社ノ發表シタ値段デ其ノ
會社ニ持ッテ行ッテ納メナケレバ、砂糖黍ヲ
納メルコトガ出來ナイ、デアリマスカラ今
迄デモ少シ目覺メタ農民ハ、收納區域制度
ト云フモノヲ撤廢シテ吳レト云フ運動、其
ノ叫ビ聲ト云フモノハ今迄デモ屢〓アッテ居
ル、デ今度ハ米ガ斯ウナル、臺灣ノ農民ノ
唯一ノ逃ゲ途ハドウデアルカト言ヘバ、若
シ製糖會社ガ非常ナ不當ナ低イ砂糖黍ノ値
段、買上ゲ値段ト云フモノヲ定メマスレバ、
砂糖ヲ作ラズニ米ヲ作ッテ逃ゲテ行ク、斯ウ
云フコトガ出來ルノデアリマスカラ、ソレ
デ砂糖會社モ無暗ニ砂糖黍ノ値段ヲ値下シ
テ、買上ゲ値段ヲ發表スルコトガ出來ナイ、
常ニ米ノ値段ヲ見合セナケレバ此ノ値段ヲ
發表スルコトガ出來ナイ、僅カニ農民ハ是
デ助カッタ思ヲ致シテ居ッタノデアリマス、
ソレデ今度ハ强制的ニ米ノ段値ガ石當リ二
圓引キ下ゲラレテシマウ、全ク考へ方ニ依
レバ臺灣ノ農民ハ其ノ重要農產物ニ對シテ、
全ク自己ノ自由ト云フモノヲ本當ニ束縛サ
レタヤウナ感ジガアル、ソレデアリマスカ
ラ何ト致シマシテモ、米ノ値段ヲ下ゲル結
果、砂糖黍ノ値段ニ影響シテ來テ、下ゲテ
來ルコトハ決ッテ居ル、サウ致シマスト砂糖
會社ハドウ云フコトニナルカト言ヘバ、總
督府ノ今度御採リニナル所ノ政策ニ依ッテ、
何等勞スル所ナク其ノ儘砂糖黍ノ値段ガ安
クナッテ、非常ナ多大ナル利益ヲ得ルト云フ
コトニナル、是ハ三尺ノ童兒ト雖モ、是ハ
臺灣ニ一度デモ足ヲ踏ンダ人ナラバ必ズ分
リ得ルコトナンダ、砂糖會社ノ現況ハドウ
デアルカト言ヘバ、今迄ノ粒々苦心ノ結果
デハアリマスケレドモ、年々歲々利益ヲ擧
ゲテ、兎ニ角最近總督府デ發表サレタ最近
五箇年ノ利益ノ高ヲ見マシテモ、昭和十三年
度ノ如キハ七千何百萬圓ト云フ純益デアリ
マス、投資資本ニ割當テ見マスト、少イ會
社デモ三割、大キイ會社ハ四割幾分ト云フ
利益率ニナッテ居ルノデアリマス、砂糖會社
ノ總テノ利益率ハ三割三分ノ平均ニ出テ居
ル、ソレヲ今度ノ政策ニ依ッテ米ノ値段ヲ
石當リ二圓下ゲルト云フコトニナレバ、從ッ
テ砂糖黍ノ値段ト云フモノモ下ッテ來ル、ソ
レダケハモウ勞セズシテ砂糖製造業者ト云
フ者ハ利益ヲ得ルト云フコトハ極メテ明瞭
ナコトデアル、然ルニ判益ヲ得ルコトガ惡
イトハ申シマセヌケレドモ、此ノ粒々辛苦
シテ居ル二百五十萬人ニ近イ農民諸君カラ
ハ、一戶當リ少クトモ米ダケデモ五十圓ノ
收入減ニナルコトヲ此ノ府令ニ依ッテ御ヤ
リニナラウトシテ居ル、砂糖會社ニ何ニモ
セズニ置イテ今迄スラモ旣ニ三割三分ト云
フ平均ノ利益ヲ得テ居ル會社ガ、此ノ制
度ノ結果ニ依ッテ非常ニ利益ヲ得ルト云
フノニ、製糖會社ニ對シテハ······比ノ儲
ケル所ノ砂糖會社ニ對シテハ何等御考ニ
ナッテ居ラヌ、是ハ今デモ總督府ハ糖業令
ト云フモノヲ出シテ、糖業モ統制スルノ
デアルト說明ヲサレテ居リマスケレドモ、
抑〓重要物產調整委員會ト云フモノガ特ニ
設ケラレテ、朝野ノ名士ヲ集メテ、此ノ米
穀移出米管理ノ要綱ト云フモノヲ御懸ケニ
ナッテ協議ニナッタ、其ノ時ニ此ノ重要物產
ノ調整委員會ト云フモノニ對シテハ、米穀
統制ノ移出米ノ管理ノ問題ハ御提出ニナッタ
ケレドモ、勿論糖業ニ對シテハ、何等ノコ
トモ御提出ニナッテ居ラヌノデアリマス、遂
ニ此ノ委員會ノ諸君ガ態々臺灣迄出掛ケテ
行カレテ、諸方ヲ實地ニ檢分サレタ結果、
如何ニモ是ハ片手落チダ、ダカラ此ノ米穀
移出米ノ管理ヲ致スナラバ、ドウシテモ糖
業ノ統制ヲ致サナケレバイカヌ、ダカラ附
帶決議トシテ、委員會ノ決議錄ヲ見マスル
ト、總督府ハ進ンデ糖業ノ統制ヲ一段ト强
化スル方策ヲ講ジロト、斯ウ云フコトヲ書
イテ居ル、ソレデアリマスカラ此ノ決議ニ
基イテ初メテ總督府ガオット氣ガ付イタ如
ク、糖業ニ對シテ糖業令ト云フモノヲ出ス
ノダト言ッテ居ラレマス
〔副議長候爵佐佐木行忠君議長席ニ著
乞
衆議院デ此ノ法案ノ審査ニ至ル經過ヲ見マ
シテモ、今ニマダ其ノ糖業合ノ原案スラ御
提出ニナラヌノデアリマス、委員ハ頻ニ要
求致シテ居リマスガ、マダ協議中デ案ガ出
來ナイトカ言ッテ、今ニ至ル迄糖業令ニ對ス
ル何等要綱スラ御示シニナッテ居ラヌ、是ハ
如何ニモ片手落デハナカラウカト私ハ考ヘ
テ、私ハ如何ニモ刺戟的ナコトヲ申スノデ
ハアリマセヌケレドモ、兎ニ角此ノ法案ヲ
實施スルコトニ依ッテ、農民ニハ今申上ゲル
ヤウナ直グ直接ニ、斯クノ如キ經濟上ノ打
撃ヲ加へ、一方ソレダケノ利益ヲ得ル糖業
者一方ハ多數ノ農民デアル、一方ハ少數
ノ資本家デアリ、而モ多クハ內地ノ有力資
本家ガ投資ヲシテ居ル糖業デアル、是ニハ
一指モ觸レナイデ置イテ、何ニモ考ヘズニ
置イテ農民ノ頭ダケ刎ネルト云フ、此ノ案
ヲ總督府ガ作ッタ其ノ心理ニ對シテ、其ノ總
督府ヲ臺灣農民ガ本當ニ眞劔ニ考ヘタラド
ウ考ヘル、如何ニモ片手落デヒドイヂヤナ
イカ、僅カニ重要物產調整委員會ガ氣ガ付
カレテ、サウシテ糖業ニモ統制ヲ强化シナ
ケレバイカヌト云フ附帶決議ニ基イテ、初
メテ總督府ガ之ニ氣ガ付イテ、糖業令ヲ出
スト今デハ言ッテ居ラレル、ケレドモ如何ナ
ル內容ノ糖業令ヲ御作リニナルノカ、今迄
一ツモ御示ニナッテ居ラヌ、斯ウ云フ行キ方
ガ一體外地ノ新附ノ同胞ヲ統治ヲシテ行カ
ウト云フ根本ニ私ハ反シテ居ルノダ、斯ウ
云フ考ヘ方、斯ウ云フモノノ取扱方ガ、是
ガ本當ニ外地ノ統治ノ上ニ於キマシテハ一
番要訣デアッテ、斯クノ如キ事ヲスルコトニ
依ッテ、其ノ外地民ノ心ヲ獲ヨウト云フ政治
三ハ私ハドウシテモナリ切ラヌト思フノ
デアリマス、ソレハ私ハ遲クテモ、氣ガ付
カレタコトハ宜イノデアリマスガ、併シ糖
業令ト云フモノハ臺灣總督府ノ律令デ御出
シニナル、法律ニ代ル律令デ御出シニナル、
我々ハ親シク其ノ糖業令ヲ議會デ審議スル
權能ハナイノデアリマス、何ヲ御作リニナッ
テモ後デ小言ハ言ヘマスケレドモ、我々ハ
ソレニ參畫スルコトハ出來ナイ、サウ云フ
モノヲ隱シテ御イデニナッテ、サウシテ農民
ノ頭ニ直グ掛カル問題ダケハ、直グ何カ御
決定ニナラウト斯ウ云フコトニナルノデア
リマスカラ、私ハ此ノ案ガ外地ノ統治ニ及
ス影響ト云フモノハ、非常ニ重大デアルト
思フ、斯ウ云フ行キ方デハイケナイト云フ
コトヲ私ハ本當ニ信ジテ居ルノデアリマス、
(拍手)餘リ長クナリマスカラ、先ヅ此ノ點
ニ付キマシテ總理大臣ノ御意見ヲ承リマシ
タ上デ、案ノ內容ニ付キマシテ更ニ主管大
臣ニ御質問ヲ申上ゲタイト思フノデアリマ
ス、先ヅ總理大臣ハ此ノ案ニ付テ、今私ガ
述ベマシタ點ニ付テ、如何ナル御高見ヲ御
持ニナッテ居ルカト云フコトノ御答辯ヲ得
タイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=24
-
025・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 丸山君ノ
御質問ニ御答ヲ致シマス、今囘提出ニナッテ
居リマスル臺灣米穀移出管理事業、是ハ臺
灣ノ重要產業ノ調和的發達ヲ圖ルト云フコト
ガ目的デアリマス、又一面ニ於テハ之ニ依ッ
テ農家經濟ノ安定、向上ヲ圖リマスルト云
フコトガ目的デゴザイマス、デ、丸山君ノ
御質問ノ趣旨ハ本案ガ臺灣統治上支障ナ
キヤ否ヤ、支障ガアルヤウニ考ヘルガドウ
思フカト云フコトガ御質問ノ骨子ノヤウニ
考ヘマス、固ヨリ本案實施ニ依リマシテ一
時的ニハ農家經濟ニ多少ノ影響ノアルト云
フコトハ覺悟シナケレバナリマセヌガ、併
シ大體ニ於キマシテ本案ノ目的ガ將來ニ於
ケル農家經濟ノ安定向上ヲ期スルト云フコ
トニアルノデアリマシテ、是ハ現在ノ實情
ヨリ考ヘマシテ、確實ニ此ノ遂行ハ出來ル
ト自分ハ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ
アリマスルカラ能ク此ノ本案ノ趣旨ヲ徹底
的ニ諒解セシメマス以上、臺灣島民ノ心理
ノ上ニ於テ、惡イ影響ハナイモノト考ヘル
ノデアリマス、從ッテ之ニ依ッテ臺灣統治上
ニ惡シキ影響ヲ及スト云フコトニ付キマシ
テハ、全ク懸念ハナイモノト信ズルノデア
リマス、又之ニ依リマシテ內地ト臺灣トノ
關聯性ヲ一段ト緊密ニ致シマスル利益モア
ルノデアリマスルカラシテ、內地外地一視
同仁ノ御趣旨ヲ徹底セシムル上ニ於テハ何
等ノ支障ヲ見ザルモノト確信致シテ居リマ
ス、尙細カイ點ニ付キマシテハ主管大臣若
シクハ政府委員ヨリ御答ヲ致シマス
〔丸山鶴吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=25
-
026・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 只今外地統治ノ根本問題ニ
付キマシテ總理ノ御意見ヲ承リマシタノデ
アリマス、不幸ニシテ私ハ意見ヲ異ニ致シ
マスノデアリマス、是レ以上論議ヲ致シ
マスコトハ意見ニ亙ルコトデアリマスカラ
差控ヘルコトニ致シマス、此ノ法案ニ付テ
私ノ懷イテ居ル第二ノ點ニ付テ、拓務大臣
竝ニ農林大臣ニ御伺ヲシテ見タイト思フノ
デアリマス、縱ンバ今度ノ臺灣米自治管理
ト云フコトガ、常時ノ對策トシテ是認スル
コトガ出來ルト致シマシテモ、差當リ食糧
問題ノ非常ナ緊切ナル非常時下ニ於ケル日
本ニ取リマシテハ、餘程考慮ヲ要スル案デ
アルト考ヘラレルノデアリマス、戰時事變ノ
際ニ米ノ消費ガ著シク增加致シマスコトハ、
日〓戰爭ノ當時ニ於テモ、日露戰爭ノ當時
。ニ於テモ、歐羅巴大戰ノ當時ニ於キマシテ
モ、計數ノ示シテ居ル所デアリマシテ、著
シキ增加ヲ致スコトデアリマス、ソレデア
リマスカラ農林當局ニ於キマシテハ、此ノ
食糧ノ問題ニ付テ戰時態勢ノ食糧政策ト云
フコトニ付キマシテハ、非常ナ御苦心ヲ爲
サッテ居ルコトヲ能ク存ジテ居ルノデアリ
そく、苟モ主食デアル米ガ不足ヲスルト云
フ虞ガアリマス位、非常時下ニ於テ重大ナ
ル問題ハナイノデアリマス、食糧問題ヲ眞
劍ニ考ヘテ萬遺算ナキヲ期セラレルコトガ
當然デアルト思フノデアリマス、ダカラ普
通ノ平常時ニ於ケル計畫トシテ、此ノ臺灣
米ノ移出米ノ管理ト云フモノガ是認サレル
ト致シマシテモ、今此ノ事ヲ實施ヲ致スト
云フコトハ、誠ニ私ハ此ノ戰時食糧對策ノ
上カラ、時宜ヲ得タモノデナイト斯ウ云フ
コトヲ考ヘラレルノデアリマス、現ニ此ノ
十四年米穀年度ニ於キマシテハ、益〓米ノ
消費ガ增加スルダラウト云フコトヲ農林省
當局デモ御心配ニナリマシテ、現ニ十四年
度ノ豫算デ豫算ヲ要求サレマシテ、內地デ
ハ三百萬石增產ノ計畫ヲ御立テニナッテ居
ル、朝鮮ニ於キマシテハ三箇年二百萬石增
產ノ計畫ヲ立テテ、ソレ〓〓豫算ガ成立ヲ
致シテ居ル譯デアル、ウント米ヲ作ラナケ
レバナラヌ、萬一此ノ事變ノ際ニ米ノ不足
ヲ來スヤウナ虞ガアッテハイカヌト云フ御用
意デアッタト思ヒマス、然ルニ觀念トシテ
モ、臺灣ハ米作偏重ニナル虞ガアルカラ
米ノ頭ヲ叩イテ米ヲ少クスルノデアル、臺
灣總督府デハ言葉ヲ盡シテ減產ニハナラ
ヌ、決シテ減リハシナイ、矢張リ計畫的ニ
增產ヲスルノダト說明ヲサレテ居ルノデア
リマスケレドモ、此ノ制度自體ノ根本ガ何
ニアルカト言ヘバ、臺灣ノ農產物ノ中ニ米
作偏重ニナルカラ、ソレヲ抑ヘル爲ニ米
ノ値段ヲ下ゲルノダト云フコトガ根本ノ主
義ニナッテ居ル、若シ米ノ値段ヲ下ゲラレ
テ米ガ引合ハナイト云フコトニナレバ
誰ガ喜ンデ作ル人ガアリマセウ、滔々トシ
テ外ノ作物、主トシテ砂糖黍ヲ作ルコトニ
ドン〓〓轉換シテ行クニ違ヒナイト思フ、
ソレデアリマスカラ總督府デハ減產ニナラ
ヌト云フ、其ノ言葉ヲ信ジテ減產ニナラヌ
ト致シマシテモ、減產ニナラヌト云フ程度
デ今滿足スル時デハナイノデアリマス、朝
鮮デモ內地デモ、是ダケノ增產計晝ヲ立テ
テ居ル時ナンデアリマス、殊ニ熱ト光ニ惠
マレテ居ル臺灣デアルカラ、作レバウント
出來ルノデアリマスカラ、此ノ際ウント作ッ
テ、サウシテ之ヲ貯藏シテ行クト云フ覺悟
ガアルベギコトガ、戰時食糧對策ノ手段デ
アルト私ハ思フ、ソレヲ今無理矢理ニ之ヲ
施行スル減產ノ虞アルモノヲ······、總督府ハ
減產スルコトハナイト說明サレテ居リマス
ケレドモ、ソレハ納得ガ出來ナイ、米ノ値
段ヲ引下ゲテ置イテ、サウシテ米ヲ奬勵ス
ルト言ッテ見タリ、ドウシテモ減產ニナラヌ
ト云フ說明ハ衆議院ノ委員會デ縷々繰返
シ繰返シ言ッテ居ラレマス、水利灌漑ヲヤル
ノダ、今迄水利灌漑ヲ止メテ居ッタガ、ソイ
ツヲヤラスヤウニスル、或ハ防風林ト云フ
モノヲ造ッテ、サウシテ風害ヲ豫防シテ、サ
ウシテ兎ニ角增產ヲスルノダ、段當リノ收
量ヲ增スノダト言ッテ御イデニナルリマス
ケレドモ、水利灌漑ト云フモノヲ全體ニ通
ジテ之ヲヤラウト云フコトハ、二年三年デ
出來ルモノヂヤアリマセヌ、防風林ヲ造ッテ
風ヲ防グノダト仰セラレマスケレドモ、臺
灣ノヤウニ樹木ノ成育ノ早イ所デモ、三年
ヤ四年デ直グソレガ防風林ノ用ヲ爲ストモ
思ハレヌノデアリマス、色々肥料ヲ澤山入
レタリシテヤレバ、段當リノ一町步當リ
ノ收穫量ガ殖エテ行クト云フヤウナコトハ
アリ得ルト思ヒマスケレドモ、兎ニ角私共
ハサウ總督府ガ簡單ニ證明セラレルヤウナ
コトデ、增產ニナルノダト云フコトハ、私
ドウシテモ承服スルコトガ出來ナイノデア
リマス、縱ンバ減產ニナラヌ、幾ラカ殖エ
ル、十年計畫ヲ見マスト來年度ハ二十萬石
位殖エルヤウナ計畫ニナッテ居リマス、十年
後ノ增產計畫デハ臺灣總督府ノ發表サレテ
居リマスル所ニ依リマスレバ、二百萬石バ
カリ殖エル計畫ニナッテ、其ノ方針デ臺灣ノ
米ヲ殖ヤシテ行クト云フ計畫ガ出テ居ル
二百萬石ト云フト大キイヤウデアリマスガ、
其ノ中デ蓬萊米ヲ日本ニ持ッテ來ル所ノ增
產ハ僅カニ六十六萬石、十年經ッタ後ニ六
十六萬石ヲ增產スル計畫ナンデアリマス、
デアルカラ一年平均ニ致シマスレバ、日本
ニ持ッテ來ル米ノ高ト云フモノハ六萬六千
石ヅツ殖ヤシテ行クト云フマア大體計算ニ
ナッテ行クノデアリマス、平均ヲ致シテ見マ
スレバサウナルノデアリマス、處ガソンナ
コトデハ今ノ食糧問題ニハ間ニモ何ニモ合
ハヌノデアリマス、現ニ內地ガ三百萬石增
產ヲシ、朝鮮ガ三箇年ニ二百萬石ノ增產ノ
經費ヲ御取リニナッテ銳意努力シテ、是カラ
御殖ヤシニナラウトシテ居ル、ナカ〓〓內
地デ三百萬石ト云フモノハ、天候ト餘程好
イ條件デナケレバナカ〓〓殖エテ參リマセ
ヌ、俄ニ開墾ヲシテ水田ヲ殖ヤスト云フ譯ニ
ハ行カナイ、段當リノ此ノ收量ヲ增シテ行
クコトニ努力シナケレバナラヌ、ソレニハ
今ハ多數ノ壯丁ガ出テ居リマスシ、軍馬其
ノ他ガ徵集サレマシテ、其ノ勞力ハ不足ヲ
致シテ居リマス、軍需工業ニ段々人ガ引張
ラレテ、農園デ働ク人ハ少クナッテ來テ居
ル、トモスレバ日本デモ之ヲ減產スル虞ガ
アル、農林當局ノ苦心ト云フモノハ私ハ竝
ミ大抵デハナイト思フ、ソレヲ三百萬石殖
サウト云フコトニナッテ居ル、處ガ其ノ後ノ
事變ノ情勢カラ考ヘテ、農林省ノ今ノ推算
デハ、是デハ足リナイ、ドウシテモ五百五十萬
石位十四年度米穀年度デ增產ヲシナケレバ、
ヒヨットシタナラバ食糧問題ニ不足ヲ來ス
虞ガアルト云フノデ、俄ニ方針ヲ變ヘラレ
テ、內地デ四百萬石、朝鮮、臺灣デ百五六
十萬石、今迄ノ計畫以外ニ百五六十萬石ノ
澤山ノ增產ヲ圖ラウト云フコトヲ專ラ協議
ヲサレテ居ルト云フコトハ先日新聞ノ傳
フル所デアリマス、衆議院ニ於テ此ノ事ガ
問題ニナリマシテ、委員會デノ種々問答ヲ、
只今速記錄ヲ讀ンデ見マスルト、ドウシテ
モ明カニ朝鮮デ幾ラ、臺灣デ幾ラト仰シヤ
イマセヌ政府委員ハ、農林大臣モ出テ、
或ハ五十萬石ト云フヤウナコトヲ言ハレタ
リ、或ハ七十萬石ト云フヤウナコトヲ言ハ
レタリシテ居ル、ダカラ臺灣ガ受持タナケ
レバナラライ臨時ノ增產デモ、或ハ五十萬
石乃至七十萬石ト云フ大キナ米ヲ受持タナ
ケレバナラヌコトニナル斯ウ云フ情勢デ
アリマス、ソレデアリマスルカラ、今迄十
四年度デ豫算ヲ御組ミニナル迄見當ヲ付ケ
ラレテ居ッタ內地デ三百萬石、朝鮮デ三年間
二百萬石ノ增產計畫デハ是ハ足リヌト云
フコトデ、斯ウ云フコトデ內地デ更ニ百萬
石ヲ引受ケ、更ニ其ノアトノ百五六十萬石
ヲ朝鮮ト臺灣トデ分擔シテ作ラウト云フコ
トデ、今銳意協議サレテ居ルト云フコトデ
アリマス、ドウ落付クカ知リマセヌケレド
千、結局兎ニ角臺灣ガ此ノ增產ノ五十萬石
カ、七十萬石ヲ十四年度米穀年度ニ引受ケ
テ、增產ヲ御圖リニナラナケレバナラヌ、
斯ウ云フコトニナッテ居ル時ニ、米ノ値段ハ
石當リ二圓減ラスノダ、サウシテ五十萬石
モ七十萬石モ餘計作レト云フコトヲ奬勵シ
ヨウト云フコトハ是ハドウシタッテ矛盾
ノコトデアルト申サナケレバナラヌ、サウ
云フ時ニハ、米ノ値段デモ上ゲテ、有利ニ
シテヤルト云フ方法デモ御執リニナルコト
ガ寧ロ其ノ政策デアル、ダカラ平時ノ計畫
經濟トシテ、此ノ移出米管理ト云フコトヲ
認メルコトガ出來ルトシテモ、兎ニ角差當
リ日本ノ此ノ實ニ緊密ナ非常時下ニ於ケル
食糧政策ノ上カラ判斷シテ見マスルト、コ
ンナ矛盾撞著ノ一體政策ハナイ、頭ヲ刎ネ
テ置イテ、通常デモ增產ノムツカシイ所ヲ、
一躍臺灣ガ今迄計畫シテ居ル二十萬石ノ增
產ヨリモ更ニ五十萬石、成ハ七十萬石ノ增
產ヲ圖ラウト云フ其ノ間際ニ、臺灣ノ農民
ノ所得ニ當然ナルベキモノノ頭ヲ石二圓ナ
リヲ刎ネテ、而モ之ヲ奬勵ヲヤラウト斯ウ
云フノデアルノデアリマス、實ニ私ハ此ノ
戰時食糧政策ノ上カラ言ッタラ、矛盾撞著ノ
一ツノ法案デアルト斷定セナケレバナラヌ
ノデアリマス、ソレデモ出來ルノダ、ソレ
デモヤルノダト言ハレルナラバ、ソレコソ
又統治ノ上ニ無理ガ行ク]コトニナッテ來マ
ス、ドウシテモ利益ガ少クナッテ、此ノ米ヲ
作ラヌト云フヤツヲ、作レト云フ規則モ
法律モ、强制力モ今迄ナイノデアリマスカ
ラ、矢張リ警察ノ力ナリ官廳ノ力デ捩ヂ伏
セテモ、農民ニ米ヲ作ラスヤウナ方法ヲ執
ラナケレバ、是ダケノ增產ハ出來ナイト思
フ、サウスルト又統治ノ上ニ、此ノ法案ヲ
布イタ爲ニ、ヨリ一層酷イ無理ガ行ハレテ
來ルンダ、ソレハ恐ラク泣ク〓〓臺灣ノ農
民モ應ズルカモ知レマセヌ、ケレドモ其ノ
心理ニ及ス影響ノ重大ナルコトハ是ハ實
ニ偉大ナモノダト思フ、之ヲ考ヘマスト、
私共ハ此ノ法案ガ縦ンバ平時ノ計晝經濟ノ
組織トシテ是認スルコトガ出來ルトシテモ、
少クトモ戰時事變ノ際、斯ウ云フ食糧問題
ノ緊急ノ際ハ、兎ニ角之ヲ控ヘテ置クベキ
モノダ、又來年ハドウ云フ風ニ增額ノ要求
ヲシ、内外地一體ノ米穀政策、食糧政策カ
ラ考ヘテ見レバ、來年度ニ又ドノ位殖エル
カモ知レナイ、サウ云フ矢先ニ、石二圓ヅ
ツ頭ヲ刎ネテ行クンダト、斯ウ云フ政策ヲ
今御實行ニナラウト云フコトハ、如何ニモ
時代ノ認識ガナイモノト私ハ申上ゲナケレ
バナラヌノデアリマス、マサカ臺灣總督府
デ御宣傳ニナル譯ヂヤアルマイト思ヒマス
ケレドモ、此ノ移出米ノ管理法ト云フモノ
ハ誠ニ劃期的ノ時代ニ卽應シタ一ツノ名
策デアル、又時局ヲ匡救スル爲ニ是レ位必要
ナモノハナインダ、之ニ反對ヲシ之ニ異議ヲ
唱ヘル者ハ、時局ノ認識ガナイ非國民ダ、ト
斯ウ云フヤウナコトヲ頻ニ宣傳シテ步イテ
居ル、宣傳ヲスル人ガアルノデアリマス、決シ
テ私ハ總督府ニ關係ガアルトハ申シマセヌ
ケレドモ、併シ私共カヲ言ヘバ、是ダケ明
瞭ナル事實ナンデス、日本ガ今時局ノ際ニ
最モ大切ナル戰時〓糧政策ト云フ根本カラ
言ヘバ、斯クノ如キ無理ナ無茶ナ法案ト云
フモノヲ今ヤルベキモノヂヤナイ、是コソ
本當ニ、之ヲ無理押シヲシヨウト云フコト
ハ、本當ニ戰時時局ノ認識ガ足リナイ結果
デアルト、却テ逆ニ申上ゲナケレバナラヌ
ト私ハ思フノデアリマス、デアリマスカラ
私共カラ考ヘマスレバ、ドウシテモ此ノ案
ニ依ッテ、若シソレデモ增產ヲヤルノダト
仰シヤルナラバ、必ズ統治ノ上ニ又非常ナ
無理ガ出來テ來ルト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラヌノデアリマス、恐ルベキ事態デア
ルト思フノデアリマス、ソレデアリマスカ
ラ拓務大臣ハ、一體其ノ點ニ付テドウ御考
ニナッテ居ルカ、必ズソレ等ノ協定ニモ增シ
テ增產ガ、此ノ法案ヲ布イテモ出來ルト御
考ニナッテ居ルカ、又ソレヲ無理ヲシテヤレ
バ、統治上非常ナ障碍ヲ起シテ來ルコトヲ
私ハ豫想致シテ居リマスガ、其ノ點ニ對シ
テ如何ナル御意見ヲ御持チニナッテ居ルカ、
拓務大臣及農林大臣カラ一ツ御答辯ヲ得タ
イト思フノデアリマス、第三點ハ會計法上
ノ問題デアリマスガ、是ハ特別經濟ノ法案
ガ今上程ニナッテ居ル譯デアリマスガ、會計
法ノ第三十九條ニ依リマスト、「特別ノ須
要ニ因リ本法ニ準據シ難キモノアルトキハ
特別會計ヲ設置スルコトヲ得、特別會計ヲ
設置スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ」、斯ウ
云フ規定ニ基キマシテ今此ノ法律案ガ上程
ヲサレテ居ル譯ト思フノデアリマス、ダカ
ラ普通經理ノ原則カラ申シマスルト、一般
會計ニ依ルベキモノデアリマスガ、特別ノ
須要ガアッテ此ノ本法ノ會計法ニ依リ難イ、
準據シ難イモノガアッタナラバ、特別會計ヲ
設置スルコトガ出來ルノデアル、斯ウ云フ
規定デアリマスカラ、特別會計ノ設置ニ付
キマシテハ、餘程愼重ニ考慮ヲ要スルコト
ト思フノデアリマス、マア今迄通例アリマ
ス例ヲ申上ゲマスレバ、各外地ノ特別會計
デアルトカ、或營造物ノ特別會計デアルト
カ、或ハ或事業ヲ遂行致シマス爲ノ事業特
別會計デアルトカ、或ハ何々資金ト稱スル
資金ノ特別會計ト云フモノデアルノデアリ
そく、是モ勿論臺灣ノ移出米ヲ管理スル爲
ニ特別會計ヲ作ルト云フノデアリマスカラ、
特殊ノモノダトハ言ヒ得ルノデアリマスケ
レドモ、總督府ノ御說明ニ依リマスト、是
カラ得タ純益ト云フモノ、純利益ト云フモ
ノハ擧ゲテ農民ニ還元スルノダ、農民ニ還
元スルト云フ意味ハドウデアルカト言ヘ
バ農作物ノ改良トカ、或ハ治水、灌漑ト
カ、防風林ノ增置トカ、サウ云フ事ノ費用
ニ充テルノダト御說明ニナッテ居リマス、ソ
レデアリマスカラ此ノ臺灣總督府デ移出米
ヲ管理サレテ、サウシテ買上値段ト賣値ト
ノ間ノ開キデ、其ノ中デ色々ナ費用ヲ御使
ヒニナッテ、其ノ殘ッタ純益ト云フモノハサ
ウ云フ事業ニ御使ヒニナルノダト、斯ウ云
フコトノ說明デアリマス、此處ニ私共疑問
ヲ持ツノデアリマス、水利、土木、或ハ灌
漑ヲ致ス、或ハ防風林ヲ造ルト云フヤウナ
コトハ是ハ農村奬勵ノ普通一般ノ行政事
務ナノデアル、一般ノ行政事務ナノデアル
一般豫算ニ之ヲ揭ゲテ奬勵ヲサレテチヨツ
トモ差支ナイモノデアル、寧ロソレガ當然
デアル、現ニ此ノ特別會計ヲ御出シニナリ
ナガラ、臺灣總督府ニ於キマシテハ本年
度ノ豫算ニ於キマシテモ農事改良ニ關スル
費用ヲ計上ナサッテ居ル、サウナリマスト此
ノ特別經濟ト一般經濟トノ混淆ヲ來シテ、
一體此ノ豫算審議ニ當リマシテモ、此ノ諸
般ノ寮理ニ當リマシテモ非常ナ不都合ヲ來
ス、私ハツク〓〓考ヘマシタケレドモ、是ガ
會計法違反デアルトハドウモ申上ゲルダケ
ノ勇氣ハアリマセヌ、外ノ特別會計ヲ以チ
マシテモ、幾ラカソンナ傾向ノアル特別會
計ノナイコトハナイノデアリマスケレドモ、
此ノ特別會計ノ如ク、得タ收益ヲ農村振興
ノ爲ニ農民ニ還元シテ、サウシテ防風林ノ
增設ヲヤッタリ、治水、灌漑ヲヤッタリ、
色々ノ農事改良ヲヤル仕事ニ使フノダト云ッ
タヤウナ廣汎ナ範圍デ、普通一般行政事務
ヲヤル特別會計ト云フモノハ外ニハナイト
私ハ思フノデアル、ソレナラ、コンナコト
ヲ言ヘバ、學事ヲ奬勵スルカラ、學事ノ問
題ダケハ特別會計、何ヤラヲ奬勵スルカ
ラ、ソレダケハ特別會計ト言ウテ、特別會
計ヲ濫設シテ止ルコトヲ知ラナイコトニナ
ルノデアリマス、斯ウ私ハ思ハザルヲ得ナ
イノデアリマシテ、此ノ點ニ對シテ私ハ疑
義ヲ持ツ、少クトモ會計法違反デアルト迄
私ハ斷言出來マセヌケレドモ、不穩當、不
條理ナル特別會計ノ設置デアルト斯ウ考ヘ
ザルヲ得ナイ、此ノ點ハ大藏省主管ダト思
ヒマスガ、大藏省ノ方カラ私ノ納得ノ行ク
ヤウニ、此ノ特別會計ニ付テ御說明ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス、序ニ私ハ此ノ特
別會計デ申上ゲルノデアリマスケレドモ
臺灣總督府ガ此ノ管理案ヲ宣傳サレテ、農
民カラ金ハ取ルケレドモ、皆其ノ農民ニ還
元スルノダ、取ッタ金ハ農民ニ還元シテ、農
民ノ福利施設ノ爲ニ段々使ッテ行クノダ、今
總理モ御答ニナッタヤウニ、將來農民ハ段々
好クナラウ、一時ハ困ルケレドモ好クナル
ダラウ、ソレヲ言ッテ居ラレル、ソレヲ頻ニ
宣傳ヲシテ、兎ニ角農民ニ還スンダカラ宜
イヂヤナイカト斯ウ言ッテ居ラレマスケレ
ドモ、處ガ本年度ノ此ノ特別會計ノ經理ノ
豫算ヲ御覽ニナリマシテモ、官吏ノ俸給ダ
トカ、事務費ダトカ、或ハ調査費ダトカ云ツ
テ、莫大ナル金ヲ此ノ特別會計カラ支出ニ
ナッテ居ル、ダカラ賣上價格ノ差額ガ、今度
ノ豫算デ一千百何十萬圓ニナル、勿論五百
萬圓バカリノ運賃其ノ他ノ諸經費ヲ差引キ
マスケレドモ、純益ト云フモノハ僅カニ百
九十何萬圓シカ殘ッテ居ラス、若シ農民ニ還
元スルノダカラ宜イヂヤナイカト言ッテ居
ラレル間ニ、此ノ特別會計カラ米穀局ト云
フモノヲ新シク置イテ、サウシテ上ハ勅任
カラ澤山ノ役人ヲ置キ、此ノ所カラドンド
ン俸給ヲ御出シニナッテ、事務費ヲ出シ、調
査費ト云フモノヲ出シテハサウシテ數百萬
圓ト云フモノヲ此ノ會計ノ中カラ取外シテ、
其ノアトノ純益ヲ還シテヤルノダト、斯ウ
云フヤウナ建前ニ此ノ會計ハ出來テ居ルノ
デアル、若シ總督府ガ言ハレルヤウニ、此
ノ出來タ差額ハ決シテ私スルノヂヤナイ、
農民ニ還元シテヤルノダ、斯ウ云フナラバ、
俸給トカ事務費トカ云フモノハ一般會計カ
ラ出シテ、此ノ特別會計カラ支出シナイコ
トニスベキコトガ當然ヂヤナカラウカト思
フノデアリマス、併シ提出サレテ居ル豫算
ヲ見マスルト、此ノ中カラ官吏ノ俸給ガ、
半箇年分デアリマスケレドモ、三十何萬圓、
或ハ調査費ガ四十何萬圓ト云フコトデ、莫
大ナル金ガ此ノ中カラ支出サレテ居ルノデ
アリマス、之ヲ半面カラ考ヘテ見マスト、
農民ノ側カラ考ヘテ、惡イトハ申シマセヌ
ケレドモ、本當ニ之ヲチヨット見タ時ニ、何
ダ、自分等ノ收入ノ頭ヲ刎ネテ、ソレデ總
督府ハ澤山ノ官吏ヲ置イテ、澤山ノ俸給ヲ
ヤッテ居ルデハナイカト、斯ウ農民ガ此ノ特
別會計ヲ見テ言フテモ、是ハドウモ返ス言
葉ガナイ、辯明ノ言葉ガナイ、ダカラ農民
ニ還元スルノダト云フコトヲアレダケ公々
然ト御言ヒニナルナラバ、兎ニ角此ノ特別
會計カラ官吏ノ俸給トカ、事務費トカ調
査費ハ御取リニナラヌヤウニ出來ナイカ、
若シ此ノ特別會計ヲ是認スルト致シテモ、
モウ少シ組立ノ方法ガアルノデハナイカ、
私ハ此處等ニモ本當ニ周到ナル注意ガ足リ
ナイ、外地ノ新附ノ同胞ヲ治メテ其ノ心ヲ
獲ヨウトスル政治ヲスルニハ、注意ガ足ラ
ヌト私ハ思フ、誰デモ考ヘル、俺等ノ頭ヲ
ハズッテ置イテ、ソレデ官吏ガ食ッテ居ルヂ
ヤナイカト云フコトヲ示ス、是ハ特別會計
ニナルノデアル、斯ウ云フ點モ本當ニ私ハ
考ヘテ戴キタイ、此ノ點ニ對シテ拓務大臣
ハドウ御考ニナッテ居ルノカ、此ノ點モ御答
辯ヲ得タイト思フノデアリマス、段々長ク
ナッテ恐縮デアリマスケレドモ、モウ一ツ私
ガ承リタイト思フノハ、如何ニモ此ノ法案
ガ臺灣ニ於ケル計畫經濟デアッテ、新機軸ヲ
出シタ新政策デアルト云フヤウニ宣傳サレ
テ居リマスケレドモ、今ヤ我ガ國ハ我ガ國
自體ニ跼蹐シテ居ル國デハナイノデアリマ
ス、日滿支ヲ一體ニシタ兎ニ角大抱負、大
經綸ヲ以テ進マナケレバナラヌ時ナンダ、
臺灣ニ餘リ適セザル棉ヲ奬勵スル、ソレハ
棉モ此ノ時局ノ輸入制限ノ關係デ奬勵サレ、
相當出來ルヤウニナッテ居リマスケレドモ、
餘リ適シナイ棉モ奬勵スル、マア砂糖ノ如
キハ旣ニ自給自足ノ程度ニ達シテ居ルケレ
ドモ、臺灣總督府ノ其ノ御說明ニ依レバ
南支、北支等ニ段々是カラ連繫スルノダカ
ラ之ヲ送リ出ス爲ニ尙多クノ增產ヲ圖ラ
ンケレバナラヌト說明サレテ居リマス、
併シナガラ考ヘテ御覽ニナリマスレバ、北
支ノ方ニハ旣ニ興亞院ノ御管轄デハアリマ
スケレドモ、各種ノ此ノ開發會社ガ出來テ、
北支ニハ最モ適スル所ノ棉花ヲ栽培ヲシ、
之ヲ改良スル、サウ云フ風ナ計畫モ御進ミ
ニナツテ居ルコトト思フノデアリマス、滿
洲ノ問題ニ致シマシテモ、ドウシテモ多數
ノ······大量ノ日本ノ移民ヲ滿洲ニ移植スル
コトガ必要デアルト云フノデ、拓務省デハ
銳意努力サレテ、國策トシテ此ノ事ヲ進メ
ラレテ居ルノデアリマス、滿洲ニ移住シテ
行ク此ノ內地ノ者達ハ、水利ノ便ガアレバ
必ズ水田ヲ作リ、米作ヲ致スニ違ヒナイ、斯
ウ云フ問題デモ滿洲ヲ除外シテ將來ヲ考ヘ
ルコトハ出來ナイト思フ、又砂糖ノ問題デモ
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ復ス〕
今度占領ヲ致シテ居リマス所ノ海南島ノ如
キ、決シテ我ガ國ノ領土ニナルトハ申シマ
セヌケレドモ、矢張リ日滿支一體ノ經濟圈
內ニ入ル、今迄私共ノ承知致ス所ニ依レバ
非常ニ砂糖黍ニ適シテ居ル、臺灣ヨリズット
好イ、棉作ニ適シテ居ル、非常ニ好イ所デ
アルト云フヤウナコトデアルノデアリマス、
ソレデアリマスカラ若シ日滿支一體ノ經濟「ブ
ロック」ヲ考ヘテ、サウシテ新東亞ノ此ノ建設
ヲヤラウト云フコトニナリマスレバ、必ズ
是ハ企畫院ニ於テモ一ツノ大キナ經濟計畫
ト云フモノガ樹立サレナケレバナラヌモノ
デアルト私ハ思フ、既ニ其ノ御準備ガアリ
其ノ御調査ヲ進メラレテ居ルモノト思フ、
然ルニ臺灣ノ小サイ所ニ閉ヂ籠ッテ、此處デ
有用作物トシテ、或ハ棉ヲ奬勵シ、黃麻、
大麻、苧麻ヲ奬勵スルノダト云フコトノ理
由デ、斯クノ如キ矛盾撞著ノ多イ管理案ヲ
今出サレルト云フコトハ誠ニ遺憾ニ堪ヘ
ナイ、モウ少シ緩ックリ此ノ時局ノ見透シヲ
付ケテ、大キナ日滿支大經濟政策ノ下ニ、其
ノ計畫經濟ノ下ニ是ハ立案ヲサレテ決シテ
遲イ問題ヂヤナイト思フ、況ヤ前申シマス
ヤウナ工合ニ、此ノ戰時食糧問題トシテ
ハ、最モ不適當ナ、最モ矛盾撞著シテ居ル
案デアリマスカラ、此ノ案ハモウ少シ後ニ
シテ、日滿支、之ヲ一體ニセル一ツノ產業
大計畫ノ中ニ入レテ、臺灣ノ持ツベキ分ハ
是デアル、內地デ最モ力ヲ入レベキモノハ
是デアル、滿洲ガ持ツベキ分ハ是デアル
北支、南支デ持ツベキ分擔ハ是デアルト云
フ大宗ヲ定メタ大計畫ノ下ニアッテ、初メテ
計畫ヲ御立テニナッテ此トモ差支ナイモノ
デアリマス、サウ急ニ急イデ此ノ案ヲ御出
シニナル必要ハ全クナイコトデアルト思ヒ
さく、ソレデアリマスカラ寧ロ時局ガ相當
終局スル迄、コンナ小細工、實ニ小手調べ
見タヤウナ此ノ小細工ノ政策ト云フモノ
ハソレガ非常ニ民心ニ及ス影響デモ好イ
トカ、或ハ外地統治ノ爲ニ非常ニ好イ影響
ヲ與ヘルトカ云フヤウナ直接ノ問題ガアレ
バ別デアリマスケレドモ私ハ不幸ニシテ
總理大臣ト意見ヲ異ニシマスガ、非常ナ障
碍ヲ與ヘル此ノ案ヲ、何モ此ノ急イデ御出
シニナル必要ハナイ、其ノ點ニ付テ一體企
畫院ニ於キマシテモ、是等ノ大計畫ハ進行
シテ居ルコトダラウ、寧ロ私ハ此ノ計畫經
濟ノ中ニ、初メテ愼重ニ考慮シテ、斯クノ
如キ案ハ立案スベキモノデアルト思フノデ
アリマスガ、企畫院ニ於テドウ考ヘラレマ
スカ、又興亞院等ニ於キマシテモ、直接支
那ノ政治、經濟ニ對スル御責任ヲ負フカ
ラ開發ノ爲ニ御努力ヲ爲サルノデアリマ
スカラ、相當ノ御計畫ガアルト思フ、殊ニ
私ハ興亞院ノ御當局ノ爲ニ承リタイト思ヒ
マスケレドモ、斯クノ如キ狀態デ民心ニ及
ス影響ト云フモノハ深甚デアリマス、殊大
一衣帶水デアリマス、サウシテ臺灣ト支那
トノ間ニハ民俗的ノ關係モ深イノデアリマ
ス、之ニコンナ亂暴ナ案ヲ特ニ押付ケテヤ
ルンダト云フヤウナコトデ、臺灣ノ島民ノ
鬱結セル不平ト云フモノガ、色々發散スル
コトガ出テ來ルト私ハ心配ヲ致シテ居ル、
是ハ本當ニ東亞ノ新建設ヲヤリ、サウシテ
此ノ日本ト新支那トノ一體ヲ爲サウト云フ
ニ付キマシテハ矢張り人心ヲ得ルノ政治
ヨリ外ニ途ハナイノデアリマス色々ノ小
細工ヲヤッタリ小手ヲヤッタリ、恫喝威喝バ
カリデ行キ得ルトハ思ハナイ、興亞院ガ
是カラ政治、經濟ヲ指導サレル上ニ付キマ
シテモ、必ズ人心把握ノ方面ニ對シテモ、
私ハ深甚ナル考慮ヲ御拂ヒニナッテ、サウシ
テ色々ノ御計晝ヲ御進メニナッテ居ルコト
ダト思フ、ソレナノニ兎ニ角領臺四十年、
日本ノ統治ニアル人達ニ、此ノ時局ノ大事
ナ時ニ、殊更ニコンナ法案ヲ出シテ氣持ヲ
惡クシ、不平不滿ヲ懷カシタリサレル現實
ト云フモノガ、豪灣ノ、此ノ北支南支ニ響
カナイ譯ガナイ、相當ナ影響ヲ是ハ私ハ與
ヘ得ルコトヲ私ハ非常ニ心配ヲ致ス、斯ウ
云フ點ニ付テ興亞院當局ニ於カセラレマシ
テハ、ドウ云フ風ニ御考ニナッテ居ルカ、此
ノ點ヲ承ッテ見タイト思フノデアリマス、御
答辯ヲ得マシタ上デ、更ニ御質問ヲ申上ゲ
タイト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣八田嘉明君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=26
-
027・八田嘉明
○國務大臣(人田嘉明君) 丸山サンノ只今
ノ御質問ニ對シマシテ、拓務省ト致シマシ
テノ見解ヲ申述ベタイト存ジマス、第一點
ノ臺灣ニ於ケル所ノ米穀移出管理案ガ臺灣
ノ律令ニ依ッテ發布サレル場合ニ於テ、之ガ
統治ニ影響スル所ノモノガ相當アルデアラ
ウ、之ニ付テハドウ云フ風ニ考ヘルカト云
フ點デ縷々御質問ガアッタノデアリマス、仰
セノ如ク外地ニ於ケル所ノ統治ノ重要性ハ
極メテ重要デアリマスルコトハ申ス迄モナ
イコトデアリマス、歷代ノ總督ガ臺灣ニ於
カレマシテ十分ナル御盡力ヲ致サレタコト
ハ我々ガ感謝ヲシナケレバナラヌコトデ
アルト存ズルノデアリマス、今囘臺灣總督
府ニ於キマシテ、本管理案ヲ立案セラレルニ
當リマシテモ、勿論統治ノ上ニ於ケル所ノ
其ノ影響ニ付キマシテハ、深甚ナル考慮ヲ
拂ハレタモノデアルト固ク信ズルノデアリ
マイク併シナガラ内地デアリマシテモ、外
地デアリマシテモ苟モ新シキ法案ヲ玆ニ
設定致シマシテ、過去ノ事情ト其ノ後ノ法
案ニ依リ變リマスル所ノ其ノ點ニ付キマシ
テハ勿論內地ト雖モ、外地ト雖モ、之ガ
及ス所ノ影響、而シテソコニ惡影響ガアル
ナラバソレニ對シマシテ十分ナル考慮ヲ事
前ニ於テ行ヒ、更ニ又實際ノ運用ニ於テモ
最善ノ力ヲ致シマシテ、苟モ人心ヲ安定ス
ルニ害ノアルヤウナコトハ避ケナケレバナ
ラヌト存ズルノデアリマス、此ノ點ニ於キ
マシテ只今御述ニナリマシタコトニ付テハ、
全ク御同感デアルノデアリマス、本案ハ十
分只今申上ゲマシタル見地カラ見マシテ、內
地外地一體ニ、精神的融和ト云フコトニ付キ
マシテ、何等反シタルコトガナイト存ズル
ノデアリマス、御指摘ニナリマシタ其ノ統
治上ニ及ス影響ノ理由トシテ、第一點ハ農
家ノ收入減ト云フコトデアルヤウニ思フノ
デアリマス、第二點ハ是ハ特ニ御述ニハナ
リマセヌガ、其ノ御心持ノ中ニハ、是ガ農
民ニ、此ノ法案ガ如何ナル效果ヲ齎シ、如
何ナル影響ガアルカト云フコトヲ、此ノ法
案ノ決定セラレル以前ニ於キマシテハ往
往ニシテ其ノ眞相ヲ摑ムコトガ出來ナイ場
合ガ多々アルト思フノデアリマス、サウ云
フ場合ニ於ケル所ノ注意ヲ無論シナケレバ
ナラヌト考ヘルノデアリマス、何レニ致シ
マシテモ此ノ統治上ニ影響ガアリハセヌカ
ト云フ其ノ主ナル點ハ農家ノ收入減ト云
フコトヲ中心トシテ御指摘ニナッタト存ズル
ノデアリマス、デ此ノ點ニ付キマシテハ御話
ノ如ク、最初此ノ管理案ニ依リマシテ、例ヘバ
一石二圓以内ノ收入ノ減ト云フヤウナコト
ガ計算上アリ得ルノデアリマス、併シ是モ
度々豫算總會等ニ於キマシテ、御答ヘ申上ゲ
タコトガアッタノデアリマスガ、ソレハ最初
ノ極ク短イ時間デアリマシテ、此ノ管理案
ニ依リマシテ、農作物ノ收益ガ上ッテ參リマ
スノデ、農家ノ收入ハ絕對ニ下ガルノデハ
テイノデアリマス、只今一戶五十圓位ノ減
收ト云フヤウナ御話ガアリマシタガ、只今
管理セムトスル所ノ米ハ、內地移出ニ適ス
ル所ノ蓬萊米デアリマスルノデ、其ノ他ノ
モノニ及ブノデハナイノデアリマス、假
二圓減ノコトガアリマシテモ、此ノ特別會
計法ニ依リマシテ得マシタ所ノ其ノ收入ハ、
純益ハ之ヲ擧ゲテ農作ノ改善ニ充テルノデ
アリマス、而シテ其ノ經費ハ只今御述ニナ
リマシタルノハ、此ノ十四年度ノ豫算デア
リマス、十四年度ハ此ノ本案ガ執行サレマ
スニ當リマシテモ、第二期米作カラ始マリ
マスノデ、極メテ最初ノ年ハ操業費ガ割合
ニ掛カリマスルノニ、收入ガ少イノデアリ
マスルカラ、只今御述ニナッタヤウナ點ガ
アルカト思フノデアリマスルケレドモ、平
年ニ於キマシテハ、恐ラク七百萬或ハソレ
以上ニナリマスカ、兎ニ角其ノ年ニ依ッテ
違ヒマセウガ、其ノ位ナ利益ハアルノデア
リマス、從ヒマシテ其ノ外ニ臺灣ノ特別會
計デアリマスガ、其ノ臺灣總督府ノ全特別
會計、其ノ中カラ一般的農業ノ振興費、產
業ノ助長費ト云フモノガ相當計上サレテ居
リマスルガ、ソレニ加フルノニ此ノ管理案
ニ依ッテ得タル所ノ特別ノ益金ハ、之ヲ擧ゲ
テ全部ソレニ加ヘマシテ、臺灣總督府ノ全
特別會計ニ一旦計上致シマシテ、サウシテ
ソレガ支出サレルコトニナッテ居ルノデアリ
さい、此ノ特別會計カラ直グ出ルノデハナ
イノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、
其ノ利益金ガ若シ農家カラ、假令ソレガ僅
カデアリマシテモ、其ノ收入ヲ臺灣ノ他ノ
項目ノ經費ニ持ッテ行クトカ、或ハ內地ニ
持ッテ行クトカ云フコトデアリマスレバ、是
ガ御話ノ如ク農家ノ收入ヲ頭ヲ叩イタト云
フヤウナ今御言葉デアリマシタガ、サウ云
フコトニモナルト思ヒマス、併シナガラ是
ハ全然違フノデアリマシテ、何處ニモ其ノ
收入ガ行クノデハナイノデアリマス、從ヒ
マシテソコニ特別會計ヲ設定セラレタ理由
ガ唯法規的ノ特別會計ト云フコトニシタ
ト云フ以外ニ、大事ナ點ガアルト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、
其ノ收益ハ擧ゲテ農家ノ現在及將來ニ亙リ
マシテ投下セラレルノデアリマスルカラ、
サウシテ米作ニ付キマシテモ御承知ノ如ク
決シテ其ノ農地ガ減ル譯デモアリマセヌ、
又今日迄ハ內地ト外地トノ米ノ問題ニ付テ
御話ガアリマシタガ、過去ニ於キマシテハ
兎角外地ノ米ト云フモノヲ、米作ト云フモ
ノヲ抑ヘ氣味デアッタノデアリマス、臺灣ニ
於キマシテモ今日迄ハ水利ノ改善、改良、
或ハ土地ノ新シキ開拓ト云フモノハ是ガ禁
止サレテ居ルノデアリマス、內地トノ關係
ニ於テ禁止サレテ居ッタノデアリマスルガ、
此ノ法案ノ施行ト共ニソレヲ解除致シマシ
テ、サウシテ其ノ利益金ヲ擧ゲテ農地ノ改
善、是ノ新シキ開拓、竝ニ只今御話ノアリ
マシタ臺灣デハ、屢〓、ツツテ參リマスル所ノ此
ノ風害ノ爲ニ、可ナリ大キナ損害ガ米作ノ
上ニアルノデアリマス、ソレ等ノ如キニ付
キマシテモ、十分恆久的對策ヲ講ジテ行カ
ウト云フノデアリマスルカラ、之ヲ終局的
ニ見マシテ、決シテ農民ニ對シマシテ收入
減トナルト云フコトデハナイコトヲ御承知
願ヒタイト思フノデアリマス、此ノ買上値
段ガ生產費ニ或經費ヲ加ヘマシテ、買上ゲ
ルト云フコトニナッテ居リマスルカラ、如何
ナル場合ニ於テモ農民ノ生產費ニ加フルニ
或率ガ加ッテ居ルノデアリマス、御承知ノ如
ク內地ニ於ケル所ノ米ノ値段ト云フモノハ
數年以前カラ或ハ米穀法或ハ米穀統制法等
ニ依リマシテ、相當ノ間ニ統制セラレテ居
ルノデアリマス、此ノ內地ニ於ケル所ノ米
ノ統制ト云フモノガ、臺灣ニ影響致シマシ
テ、其ノ移出米ニ關スル限リハ內地ノ米價
ト同ジモノデ賣ラレテ居ルノデアリマス
從ヒマシテ年ニ二囘ノ作ガアリ、天然ノ熱
ト光トヲ非常ニ持ッテ居リマスル所ノ臺灣ノ
米作ニ於ケル所ノ生產費ト、內地ニ於ケル
生產費ト、ソレガ同ジ米價デ賣ラレルト云
フコトニナリマスレバ、ドウ考ヘマシテモ
其ノ間ニ相當ノ利潤ノ差ガアルト云フコト
ハ是ハ疑ナイ事實デアルノデアリマス、多
少ソコニ買上値段ヲ下ゲマシテモ決シテソレ
ハ生產費ヲ割ルモノデハ絕對ニナイノデアリ
マシテ、又內地ノ農業者ニ比較致シマシテ、
決シテ臺灣ノ農民ガ收入減ヲ生ジ、特別ナ
ル不便ヲ來スト云フヤウナコトハ絕對ニナ
イト云フコトハ數字的ニ明カデアルノデア
リマス、要スルニ此ノ法案ニ依ッテ決シテ農家
ノ收入ヲ減少スルモノデハナイ、而モ國家
ニ必要デアリマス所ノ他ノ重要農產物ヲ是
ト併用致シマシテ農家ガ作ッテ參リマスノ
デ、此ノ方ノ收入ト相俟チマシテ、綜合
的ニ而モ將來ニ向ッテ段々ト農民ノ福利
ハ增進シテ、農業ノ開發ハ其ノ地ノ利ニ從
ヒマシテ、最モ有效適切ニ開發サレル、モノ
ト信ズルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリ
マシテ、此ノ點カラハ農民ノ壓迫トカ、積
極的收入減ニハナラヌノデアリマスノデ、
御指摘ニナリマシタル統治上ニ影響スルト
云フコトハナイト考ヘルノデアリマス、
唯御心配ニナリマスル所ノ點ハ御尤ノ點ガ
アリマスルト思ヒマスノハ、昨年此ノ米穀管
理案ガ臺灣重要產業ノ調査委員會ニ於テ決
定スル以前ニ於キマシテハ、如何ナル法案
ガ出ルカト云フコトハ未定デアリマスルノ
デ、其ノ以前ニ於テ島ノ內外ニ於テ色々ノ
臆測等モアッタト考ヘルノデアリマス、或ハ
此ノ法案ノ運用ニ依リマシテ注意ヲ致サン
ケレバナラヌコトモ勿論デアリマス是
等ノ點ニ付キマシテモ今後ニ於キマシテ十
分此ノ案ノ內容ヲ周知セシメルト共ニ、サ
ウシテ一方ニ於テハ是ガ愈、實施ノ曉ニ於キ
マシテハ、臺灣總督府ニ於テ十分ナ注意ヲ運
用上ニ拂フコトガ最モ大切ナコトデアルコ
トハ、只今御述ニナリマシタル御趣旨ノ通
リデアルト存ズルモノデアリマス要スル
ニ此ノ管理案ハ御述ニナリマシタル通リ、
臺灣ニ於ケル移出米ノ米價ノ適正ヲ圖リ、
他ノ時局產業ニ必要ナル農產物ノ調和發展
ヲ圖リ、又農家經濟ノ恆久的安定ヲ圖ルト
云フコトニアリマスルノデ、此ノ點ハ決シ
テ結治上ニ害ガアルコトハナイト云フコト
ヲ重ネテ申上ゲマシテ、第一點ノ御答ト致
シタイト思ヒマス、第二點ノ食糧問題トノ
關係デアリマスガ、農林省ニ於テ勿論內外
地ノ米穀ノ需給關係ニ付テハ御調査ニナ
リ御計畫ヲ立テテ居ラレルノデアリマス
ガ、外地ニ於キマシテハ此ノ農林省ニ於ケ
ル所ノ計畫ニ順應致シマシテ、外地ニ於ケ
ル所ノ持分ヲ實行致スヤウニ努メテ居ル次
第デアルノデアリマス、今囘豫算ニ關係ノ
アリマスル所ノ十四年度ノ所謂十五米穀
年度ニ於キマシテハ臺灣ニ於キマシテ二
十七萬石バカリノ增產ヲ計上致シテ居ルノ
デアリマスガ、是ハ昨年ノ計畫デアリマス
ノカ、豫算編成當時ノ計畫デアリマス、今
囘農林省カラ、只今御述ニナリマシタル內
地ニ於テモ更ニ增產ヲ計畫シ、外地ニ於テ
モ是ト呼應シテ或增產ヲスルコトニ依リマ
シテ、約五十萬石ノ增產ヲ臺灣總督府ニ事
務的交涉ガアリマシテ只今ソレガ計畫ニ
付テ打合ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアルノ
デアリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、本
案ニ依リマシテ決シテ減產ニナルコトハナ
イノデアリマス、而モ土地柄ト致シマシテ
或彈性力ヲ持ッテ居ルト云フコトモ申上ゲ
ル迄モナイノデアリマス、唯異常ナルコト
ガ起リマシタ時ニ、臺灣ダケデ是ハドウニ
モスルコトガ出來ナイコトハ申上ゲル迄モ
ナイト思フノデアリマス、本案ニ依リマシ
テモ、十箇年間ニ二百數十萬石ノ增產ト云
フ計畫ニ、數字上ハナッテ居ルノデアリマ
ス、併シナガラ本年度ノ如キハ只今申上ゲ
マシタ通リ、臨機ノ增產ヲ之ニ加ヘルコト
ニ相成ッテ居リマス、又年ニ依ッテハ內地ガ
相當增產ガアリ、臺灣ガ抑ヘラレル場合モ
アルト思フノデアリマス、何レニ致シマシ
テモ、農林省ノ内外米穀需給對策ト緊密ナ
ル連絡ヲ執リマシテ、遺憾ナカラシメルヤ
ウニ考ヘテ居リマスノデ米穀ノ點カラ我
ガ國ノ〓糧問題ニ、本案ガ決シテ障碍ヲ來
スコトハナイト思フノデアリマス、卽チ此
ノ法案アルコトニ依ッテ、内外地ノ米穀需給
對策ノ上ニ、臺灣ガ不都合ヲ生ズルト云フ
コトハナイノデアルト云フコトヲ、御了承
願ヒタイト思フノデアリマス
〔國務大臣櫻內幸雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=27
-
028・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 只今丸山君カラ
御質疑ガアッタノデアリマスガ、私衆議院ノ
委員會ニ依リマシテ、其ノ全部ヲ承ルコト
ガ出來ナカッタノデアリマス、唯、只今承ル所
ニ依リマスト、此ノ法案ガ日本ノ米穀政策
ノ上ニドウ云フ關係ヲ持ツカ、戰時米穀政
策ニ對シテ支障ヲ來スヤウナコトハナイ
カ、殊ニ今日增產計畫ヲ致サナケレバナラ
ヌ場合ニ、一番容易ニ增產シ得ル臺灣ニ於
テ、其ノ增產ヲ見ルコトノ出來ナイヤウナ
本案ニ對シテ、ドウ考ヘテ居ルカト云フ風
ナ御趣意デアッタヤウニ拜承スルノデアリ
マス、若シ間違ッテ居リマシタナラバ更ニ承
リマシテ御答辯ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
御承知ノ如ク今日日本ノ農村ガ非常ニ窮境
ニアリマシテ、卽チ勞力ノ點ニ於テモ、或
ハ馬匹ノ關係ニ於テモ、肥料ノ出〓リノ點
ニ於テモ困難ナ事情ニアリマスノデ、從來
ノ如キ米ノ收穫ヲ得マス爲ニハ相當ノ
努力ヲ要スルコトハ固ヨリデアリマス、從
ヒマシテ其ノ增產ノ計畫ト云フモノニ付キ
マシテハ、深ク注意ヲ拂ハナケレバナラヌ
コトハ言フ迄モゴザイマセヌ、御承知ノ如
ク日本ニ於ケル現在ノ米穀ノ需給ノ狀態ハ)
內地ト外地トヲ一貫シテ、之ニ依ッテ丁度需
要ト生產トガ相對シテ居ルノデアリマス
卽チ日本內地ニ於テ六千五六百萬石、朝鮮
ニ於テ二千三四百萬石、臺灣ニ於テ九百五十
萬石內外、斯樣ナ數字デアルノデアリマス
從ッテ將來ニ於ケル所ノ米穀政策ヲ立テマス
場合ニ於テモ、內地外地ニ於テ日本ノ消費
スル米穀ヲ確保スルト云フ事柄ダケハド
ウシテモ致サナケレバナリマセヌ、從ッテ此
ノ點ニ付キマシテハ深甚ナル注意ヲ拂ッテ
居ルノデアリマス本年度ノ計畫ニ於キマ
シテモ、大體ニ於テ昨年來農林省ニ於テ種
種計畫ヲ立テマシテ、大凡其ノ數字ノ數量
ヲ得ラレル計畫ヲ立テテ居ルノデアリマス
ケレドモ、此ノ戰時態勢ニナリマシタ結果、
米ノ消費ガ增加致シテ參リマシテ約二百
萬石內外、平生ノ增加率ヨリモ殖エテ消費
致スヤウニナッタノデアリマス、從ヒマシテ
之ヲ基準ト致シマシテ、更ニ萬一ノ不作ノ
アッタ場合ニ、不作ニ對應致サナケレバナラ
ヌ關係上、改メテ又今日增產計畫ヲ立テマ
シテ、當初ノ內地三百萬石ノ計畫ヲ四百萬
石ニ殖シ、又朝鮮ニ於テハ曩ニ七十萬石ノ
增產ヲ賴ンデ置キマシタケレドモ、更ニ五
十萬石ノ增產ヲ願ヒ、臺灣ニ對シテモ亦五
十萬石ノ增產ヲ御願ヒシタヤウナ譯デアリ
そう、卽チ萬全ヲ期スル爲ニソレダケノ準
備ヲ致シテ、之ヲ目標トシテ最善ノ注意ヲ
拂ッテ、サウシテ生產ヲ確保致シタイ斯樣
ニ今計畫ヲ致シテ居ルノデアリマス此ノ
際ニ於テ臺灣ハ容易ニ增產ガ出來ルノダカ
ラ、モット臺灣ニ增產ヲシタラドウデアラウ
カ、斯ウ云フ御議論ガ出ルト思ヒマスガ
今日ノ時代ニ於キマシテハ出來ルダケ多
クノ增產ヲ致サナケレバナラヌノデアリマ
スケレドモ、數年以前ニハ米ガ有リ餘ッテ、
其ノ爲ニ內地ニ於テスラ減反ヲシヨウト云
フ風ナ意見ガ起リマシタ、今拓務大臣モ御
話ニナリマシタガ、臺灣ノ增產モ停メテ貰
ハナケレバナラヌ、朝鮮ノ增產モ停メテ貰
ハナケレバナラヌト云フ風ナ事態モアッタ
ノデアリマス、故ニ將來ノ內地農村ノ立場
カラ申シマスト云フト、外地ニ於テ非常ナ
ル增產ガ急ニ出來タト致シマスト云フト、
ソレガドウ影響ヲ及スカト云フコトニ付キ
マシテモ、可ナリ考ヘナケレバナリマセヌ、
出征シタル將士ガ歸ッテ來テ農村ノ事業ニ
從事スル時ニ、其ノ從事シテ得タル農產物
ニドウ云フ影響ヲ及スカト云フコトモ亦考
ヘテ見ナケレバナリマセヌ故ニ内地外地
ヲ一貫シタル所ノ將來ニ亙ル米穀政策ヲ確
立致シテ、之ヲ基準トシテ此ノ米穀ノ生
產ニ當ルト云フ事柄ガ一番適當デアルト考
ヘテ居リマス、殊ニ況ヤ日滿支一體ノ經濟、
斯ウナリマシタ曉ニ於テハ滿洲及支那
ニ於ケル所ノ米ノ生產ノ問題モ考ヘテ見ナ
ケレバナリマセヌ、滿洲ニ於テハドウ云フ
生產費ニ依ッテ生產ガ出來ルカ、北支ニ於テ
ハドウデアルカ其ノ量ハドウデアルカ、
此ノ問題ハ現在企畫院ニ於キマシテモ考慮
セラレテ居ルノデアリマスガ、私共モ將來
ニ於ケル米穀ノ事柄ヲ考ヘマス時ニハ、滿
支ノ問題モ深ク考ヘナケレバナリマセヌ、
從ヒマシテ今日現在トシテハ內地ニ於テ
出來ルダケノ增產計畫ヲ立テテ、而シテ已
ムヲ得ザル部分ニ付テ朝鮮及臺灣ノ協力ヲ
得タイト考ヘテ居ルノデアリマス、殊ニ況
ヤ臺灣ハ御承知ノ通リ一一毛作デアリマシテ、
伸縮性ヲ持ッテ居リマスノデ、萬一此ノ春ノ
狀況、天候其ノ他ノ關係デ收穫高ガ少イト
云フヤウナ豫想ノ場合ニ於キマシテハ是
ハ臺灣ノ如ク速カニ米穀ノ生產ニ向ケ得ベ
キ所ノ土地ニ御依賴ヲシテ增產ヲ圖ッテ戴
カナケレバナラヌト思ッテ居リマス、故ニ此
ノ點ニ付キマシテハ常ニ內地ト外地トヲ
一貫シテ、此ノ米穀政策ト云フモノヲ立テ
テ參ッテ居ルノデアリマシテ、本案ノ施行ニ
依ッテ私ハ臺灣ニ於ケル所ノ米ノ收穫ガ減
ルモノトハ考ヘテ居リマセヌガ、臺灣總督
府ノ當局ト常ニ密接ナ關係ヲ以チマシテ、
若シ內地ニ於キマシテドウシテモ更ニ增產
ノ必要ノアル場合ニ於テハ增產ヲシテ戴ク
ト云フ諒解ヲ持ッテ居ルノデアリマシテ、現
ニ只今申上ゲマシタ通リ、五十萬石ノ增產
ヲ今計畫シテ御願ヒシテ居ルヤウナ譯デア
リマシテ、此ノ點ニ付テハ日本ノ現在ノ
米穀政策ト云フコトニ付キマシテハ、先ヅ
大體ニ於テ私ハ心配ナイ狀況デアルト云フ
コトヲ御答ヘ致シタイト思ヒマス
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=28
-
029・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今本案ニ依ル
特別會計設置ノ理由其ノ他ニ付キマシテ御
尋ガゴザイマシタガ、本案ハ先程提案ノ理
由ノ際御說明申上ゲマシク通リニ臺灣總
督府デ臺灣米ヲ內地其ノ他ニ移出スル目的
ノ爲ニ管理シ、之ヲ買ヒ入レル、加工シテ一
定ノ期間貯藏シテ、之ヲ適宜內地ニ賣リ渡
シ移出スル或期間ノ間ノ、管理ノ趣旨ヲ持ッ
テ居リマスガ、其ノ特殊ナル業務、或意味
ニ於キマスルト特殊ナル經濟行爲ヲ營ミマ
スルノデ、是ハ米穀ニ關シマスル一般行政
事務トハ自ラ性質ノ異ルモノガアルト考へ
ルノデアリマス、從ッテ之ヲ一般會計カラ區
別シテ其ノ會計經理ヲ處理スルコトガ、最
モ妥當ダト考ヘマシタコトガ第一ノ理由デ
アリマス、第二ノ理由ニ付キマシテハ、先
程拓務大臣ガ既ニ御答へ申上ゲマシタ通リ
ニ、此ノ法案ニ依ッテ多額ナル收益、多額ナ
ル純益ヲ目的ト致シテ居ルノデハアリマセ
又は、若シ相當ナル純益ヲ生ジタル場合ニ
於キマシテハ其ノ純益ハ先程拓務大臣ノ
御答へ申シマシタ通リ、臺灣內地ニ於ケル
所ノ農作其ノ他ノ特殊ナル目的ニ之ヲ使用
スルト云フ第二ノ理由モアリマスルノデ、
是等ノ理由ト相倚リ相俟チマシテ特ニ特
別會計ヲ設置シタ次第デアリマス、尙人件
費其ノ他ハ一般會計カラ支出スル方ガ妥當
デハナイカト云フ御尋デアリマシタガヽ出
來ルナラバソレモ致シタイノデアリマスル
ケレドモ、サナキダニ一般會計ガ益〓膨脹ゝ
ノ傾向ニアリマスル今日ニ於キマシテハ
出來得ル限リ一般會計ノ膨脹ヲ避ケタイト
モ考ヘマシテ、特別會計ノ趣旨ト收支ノ關
係ヲ明確ナラシメ、且徹底セシムル考カラ、
一般會計ト混同シナイヤウニ特別會計ヲ設
置シタ次第デアリマス、是等ノ點特ニ御諒
解ヲ御願ヒ申上ゲマス
〔政府委員青木一男君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=29
-
030・青木一男
○政府委員(靑木一男君) 丸山サンノ御質
問ノ中、企畫院ニ關スル分ニ付テ御答ヘ申
上ゲマス、御質問ノ趣旨ハ、今後ノ我ガ國
ノ經濟政策ハ日滿支ヲ通ズル大キナ計畫
ヲ基礎トスベキモノデアルガ、企畫院ガ現
ニサウ云フコトヲヤッテ居ルカト云フ點ト、
若シサウ云フ計畫ガアルナラバ、臺灣ノ今
囘ノ如キ計畫モ之ヲ待ッテ、其ノ一部トシテ
考ヘテ宜シクハナイカト云フ御趣旨ニ拜承
致シマシタ、仰セノ如ク我ガ國ノ今後ノ產
業、經濟ノ政策ハ總テ日滿支一體ノ見地カ
ラ綜合計畫ヲ立ツベキ時期ニアルト考ヘマ
ス、先般閣議ノ決定ヲ經マシタ生產力擴充
四箇年計畫モ、日滿支ヲ通ジテ今後我ガ國
ノ新東亞建設ト云フ大使命ヲ遂行スベキ力
ヲ養成スル爲、最モ緊急必要ト考ヘマスル
重要產業ニ付テノ計畫デアリマス、米穀其
ノ他農業方面ニ付キマシテハ、申ス迄モナ
ク今日迄内外地ヲ通ズル計畫ヲ基礎トシテ、
ソレニ滿洲國トノ間ニ或程度ノ諒解ヲ加ヘ
マシテ今日ニ至ッテ居リマス、今後ニ於キ〓
シテハ農業方面ニ付キマシテモ、之ヲ滿支
ニ擴大致シマシテ、其ノ計畫ノ完成ヲ期ス
ベキ時期ニナリツヽアルト思ヒマスノデ、
企畫院ニ於キマシテモ日下其ノ調査ヲ進メ
テ居リマス、併シナガラ今囘臺灣ニ於テ計
畫サレテ居リマスル計畫ハ、內地ノ米穀政
策ニ順應シマスルト同時ニ、臺灣產業ノ調
和的發展ヲ遂ゲ、之ニ依ッテ臺灣ノ產業ノ特
異性ヲ發揮セムトスルモノデアリマス、内
地ニ於キマシテ生產ガ容易デナイ特殊ノ產
業ノ開發ヲ進メル次第デアリマスノデ、我
ガ國ノ最モ必要ナル資源ヲ造ルト同時ニ
外國カラノ輸入ヲ抑制スル效果モアル次第
デアリマシテ、是等ノ計畫ハ今後日滿支ヲ
通ズル大計畫ガ出來マシテモ、其ノ趣旨ニ
於テ矛盾スルモノデハナイト考ヘマス、從ッ
テ其ノ大計畫ノ完成ヲ待タズ、出來ルモノ
カラ成ルベク速カニ、此ノ成果ヲ擧ゲルヤ
ウニ致スコトガ宜シイト考ヘテ居ル次第デ
アリマス
〔政府委員柳川平助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=30
-
031・柳川平助
○政府委員(柳川平助君) 興亞院關係ノ事
項ニ付テ御答へ致シマス、東亞新秩序建設
ノ上カラ、特ニ時局上生活必需品タル農產
物增產ノ必要ナルコトハ御說ノ通リデアリ
マシテ、日滿支三國互助連環ノ經濟ヲ確立
スル上ニ於キマシテ此ノ農產經濟ノ自給
自足ニナレルヤウニスルコトガ必要デアル
ト考ヘルノデアリマス、支那ハ御存ジノ通
リニ、只今ハマダ自給ノ出來ル程度ニ達シ
テ居ナイノデアリマス、其ノ原因ハ、一、
農業法ノ改良ガ十分デナイノト、一ハ交通
不便ノ爲ニ配給圓滑ヲ缺クト云フヤウナコ
トガ原因ノヤウデアリマス、仍テ將來支那
政府ニ協力ヲシテ、是等ノコトヲ改善進步
ヲ圖ルヤウニ努メタイト考ヘテ居リマス
農產中、奬勵ヲ差當リシナケレバナラヌト
思フモノハ、棉ノ栽培デアリマスガ、棉ノ
栽培ヲスル爲ニ、又民食原料ノ一ハ不足ヲ
感ズルヤウニナル結果ヲ生ジマスノデ、是
等ハ滿洲等ヨリ供給ヲ圖ルヤウニシナケレ
バナラヌト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソ
レカラ我ガ外地統治ノ支那民心ニ及ス影響
ニ關シマシテハ能ク我ガ皇國ノ眞意ヲ支
那政權政府ニ諒解セシメマシテ、之ヲ通ジ
テ民心ノ安定ヲ圖リ、皇國ノ慈シミフ洽カ
ラムコトヲ努ムル考デアリマス
〔丸山鶴吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=31
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032・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 ソレ〓〓主管大臣ヨリ御答
辯ヲ得マシタガ、不幸ニシテ十分了解ヲ致
スコトガ出來ナイノデアリマス、恐ラク是
ハ本員バカリデナク、御答辯ヲ御聽キ下サツ
タ人ノ中ニモ、御同感ノ方ガ多イコトト思フ
ノデアリマス、併シ非常ニ時間モ經過致シ
マシタカラ、更ニ此ノ問題ニ付テ追究ヲシ
テ御伺ヒスルコトハ今日之ヲ止メマシテ
其ノ他ノ機會ニ於キマシテ、本當ニ納得ノ行
クヤウニ御指示ヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス、拓務大臣ハ遂ニ糖業ノ問題ニハ一言モ
御觸レニナラナカッタ、斯ウ云フコトモ色々
ナ微妙ナ影響ガアルト私ハ考ヘルノデアリ
マス、農林大臣ハ、本年ノ一一十七萬石增產ニ、
更ニ今ノ情勢デ五十萬石ヲ臺灣ニ賴ンダ、
臺灣ハ七十七萬石ヲ增產シナケレバナラヌ
コトニナッタ、此ノ七十七萬石ト云フノハ蓬
萊米デアッテ、內地デ消費シ得ル米デアリマ
ス、臺灣ガ、今此ノ管理案デ立ッテ居ラレル
十年ノ計畫デ、十年後ニ此ノ蓬萊米ハ幾ラ
增ス計畫デアルカト云フナラバ、僅カニ六
十六萬石增ス計畫ナンデアルソレヲ來年
一年ニ七十七萬石增サナケレバナラヌ、サウ
云フ大事ナ時ニ、農民ノ米ノ上カラ、利鞘
ヲ二圓モ取ッテ行カウト云フ政策ガ、戰時ノ
食糧政策ニ適合シタル政策デアルト云フコ
トハドウシタッテ私共納得スルコトガ出
來ナイ、是ハマア其ノ他ノ機會デ、私共モ
大イニ論ジテ見ヨウト思フノデアリマス
唯私ハ今日ノ御答辯ヲ承ッテ居リマシテ、本
當ニ外地統治ノコトハモウ少シ臺閣諸公
ニ於テ、眞劍ニ考ヘテ戴キタイト思フノデ
ス、色々申上ゲタイト思ッテ材料ハ持ッテ居
リマスケレドモ、時間モゴザイマセヌシ、
皆サンニモ御迷惑ト思ヒマスカラ申上ゲマ
セヌ、唯最後ニ一ツダケ申上ゲタイト思ヒ
マスノハ、此處へ持ッテ出マシタ著書ハ「長期
建設ト農業政策」ト云フノデ、田沼某ノ著書
デアリマス一月二十八日ニ發行ニナッタ
モノデアリマス、恐ラク是ハ皆サンノ手許
ニ行ッテ居ルト思ヒマスケレドモ、御氣付キ
ニナラズニ御イデニナル方ガ多イト思フ
現ニ私モ其ノ一人デアリマス斯ウ云フ本
ガ參ッテ封ヲ切ッテ見マシタラ、長期建設ト
農業政策ト云フコトデアリマス、議會デモ
終ッタラ悠ックリ讀マウト思ッテ取ッテ置イタ
ノデアリマス、人ノ注意ヲ受ケテサウシテ
拜見シマスト、此ノ本ノ中ニ、百九頁カラ
二百二十二頁迄百三頁ニ互ッテ、臺灣ノ移出
米管理ニ關スル評論ガシテアルノデアリマ
ス、實ニ極メテ冷靜ニ、正確ナル材料ニ基
イテ〓究的熊度デ、有ラユル角度カラ
此ノ臺灣米移出管理ニ關スルコトガ評論シ
テアルノデアリマス、是ガ何故ソンナ突然
ナル形デ皆サンノ手ニ屆イテ居ルカ、私自
身モ氣ガ付カナカッタノデアリマスガ、此ノ
本ハ一月ニ出來タ本デアリマス、而モ內地デ
アリマス、是ニハ初メ農林次官小平君ノ序
文ガ載ッテ居ッタノデアリマス、其ノ序文ハ
官憲ノ力ニ依ッテ遂ニ削除サレタノデアリマ
ス、ソレデアリマスカラ、其ノ序文ノ中ニ、
序文ヲ戴イタト書イテアル所ニ、私共ノ手
ニ來タ時ニハ斯ウ云フ風ニ黑イ筋デ消シ
テアリマス、其ノ序文ハ如何ナル譯デ除カ
レタノデアルカ、其ノ序文ノ原案ヲ見マス
ト、此ノ本ハ戰時〓糧政策ニ取ッテハ極メ
テ參考トナル本デアル、立派ナ本デアルト
書イテアルダケデアリマス、其ノ農林次官
ノ小平君ノ序文ハ削除ヲ命ゼラレテ削除シ
タモノデアリマス、折角此ノ臺灣ノ管理米
ノ問題ニ付テ、貴族院或ハ衆議院ノ諸公ニ
考ヘテ戴カウト思ッテ之ヲ贈ッタ、此ノ中ニ
ハ其ノコトガ書イテアルカラ、ドウカ參考
ノ爲ニ讀ンデ吳レト云フ手紙ヲ附ケテ送ル
筈ダッタノデアリマス、其ノ手紙ハ官憲ノ手
デ押ヘラレテシマッタノデアリマス、デアリ
マスカラ封筒ニ入ッテ是ガ唯皆サンノ處ニ
行ッテ居ルノデス、今日迄皆サン御氣付ニナ
ラヌ方ガ御アリニナルト思フ、此ノ點ニ付
キマシテハ同僚ノ次田君ガ豫算委員會デ
內務大臣ニ、如何ナル理由デ序交ノ削除ヲ
命ジタカ、如何ナル理由デ其ノ手紙ヲ押收
シタカ、其ノコトノ質問ガアリマシタノデ
アリマスガ、御答ヲ得テ御イデニナルカド
ウカ、私ハマダ存ジマセヌ、抑〓ソンナ難
局ヲ經テ此ノ本ハ私共ノ手ニ入ッテ居ル、之
ヲ御讀ミ下サイマスト、臺灣米穀管理案ノ
全貌ガ能ク分ルノデアリマス、其ノ最後ニ
斯ウ言ッテ居リマス、今迄百二頁ニ亙ッテ有
ラユル角度カラ之ヲ論評シマシテ、最後ニ
「併シ如何ニ根據ガ薄弱デアッテモ、臺灣現地
ニ於テ反對論ガ表ニ現ハレズ、又反對的運
動ガ許サレナイ以上、臺灣總督府ノ押シノ
一手デ議會ヲ通過スルカモ知レナイ、併シ
ナガラ凡ソ無理ノアル政治ト云フモノハ
一時ヲ彌縫スルコトガ出來テモ、何時カハ
其ノ無理ガ表面ニ現ハレ、破綻ヲ來スモノ
デアルコトヲ銘記スベキデアル、今ヤ我國
ハ前古未曾有ノ非常時局ニ遭遇シ、國內ニ
於テハ國民ノ一致結束、對外的ニハ戰ノ目
的闡明ニ努力シツツアリ、大陸支那ニ向ッテ
長期建設、支那民族ノ解放ニ聖ナル巨步ヲ
踏ミ出シツツアル、而シテ東洋盟主トシテ
「アジヤ」數億ノ民衆ノ上ニ指導誘掖ノ地位
ニ立タサレテ居ルノデアル、其ノ氣宇大ニシ
テ、慈愛ノ心ナクンバ、到底ソレ等ノ民衆
ヲ悅服セシムルコトガ出來ナイ、新附ノ民
臺灣ノ同胞カ、其ノ生命線ト賴ム米穀ヲ管
理シヨウトシタナラバ、彼等ノ意見ヲ十分
ニ訊クガ宜シイ、米ハ彼等ガ生活ノ本據デ
アル、其ノ本據ヲ根本的ニ改革シヨウト云
フノニ、農家ノ意見ヲ封ズルガ如キコトガ
アレバ、決シテ明朗ナ政治ヲ行フ所以デハ
ナイ若シ本法案ガ眞ニ臺灣大衆ノ幸福ノ
爲忠實ニ立案サレタモノデアレバ堂々ト
其ノ意見ヲ戰ハシメ、其ノ意見ニシテ誤解
ニ屬スルモノガアレバ、當局ハ進ンデ之ガ
解明ニ努力スベキデハナカラウカ」、是ガ百
三頁ノ論文ノ結論デアリマス、實ニ偲々ト
シテ愬フルガ如キモノガアルノデアリマス、
先程モ拓務大臣ノ御話ノヤウニ、昭和十二
年カラ此ノ問題ヲ考慮シテ御イデニナリナ
ガラ臺灣ニ於テハ此ノ移出米、或ハ米專
賣等ニ關スル一切ノ新聞記事ヲ禁止サレテ
シマッテ居ルノデアリマス、委員會ガ濟ンデ
カラ新聞ニ書クコトノ解除ハサレタト云フ
コトデアリマスケレドモ、臺灣ノ新聞ノ取
締ノコトハ、今更私ハ此處デ申上ゲマセヌ
ケレドモ、事實何等ノ聲ヲ發スルコトガ出
來ナイヤウニシテアルノデス、此ノ欝積シ
タ心持ガ一體何處ヘドウ云フ形デ現レテ來
ルコトガアルカモ知レヌト云フコトハ本
當ニ我々ハ憂慮ヲシナケレバナラヌノデア
リマス、私ハ最近外地統治ノ傾向ニ付テ
モ、憂慮スベキ幾多ノモノヲ持ッテ居リマ
ス、一々斯ウ云フ風ナ公開ノ席デ私ハ申
上ゲルコトヲ控ヘルノデアリマスケレド
モ本當ニ我々ガ新東亞ノ建設ト云フ大
業ニ向ッテ居ルノダ、ケチナ小細工ヲヤッタ
リ、小手調ベヲヤルヤウナコトデハ我々
大和民族ガ本當ニ此ノ使命ヲ達成スルコト
ハ出來ナインダ、四十何年モ兎ニ角我ガ國
ノ領有トナリ、陛下ノ赤子トナッタ人間
達ニコンナ心持デ何時迄モ扱ッテ居ッテ、
一體本當ニ心ト心トノ融合ガ出來ルカドウ
カト云フコトニ付キマシテハモウ少シ私
ハ考へ直サナケレバナラヌノデアルト思フ
ノデアリマス、ダカラサウ云フ心持デ、簡
單ニ此ノ外地ノ問題ヲ、唯將來農家ノ收入
ガ殖エルノグカラ、今減ッタッテオ前等構ハ
ヌヂヤナイカト云ッタヤウナ考ヘ方デ、假ニ
外地ノ問題ヲ考ヘルコトヲ、日本ノ政治家
ハ本當ニ反省シナケレバナヌト云フコトヲ
私ハ痛感ヲ致スノデアリマス、是ダケヲ申
上ゲテ、巨細ノ質問ニ付キマシテハ他日ノ
機會ニ讓リマシテ、一應私ノ質問ヲ打切ル
コトニ致シタイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=32
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033・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
臺灣米穀移出管理特別會計法案ハ、極メテ
重要ナル法案デアリマスルガ故ニ、此ノ特
別委員ノ數ヲ十八名トシ、其ノ指名ヲ議長
ニ一任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=33
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034・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=35
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036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
臺灣米穀移出管理特別會計法案特別委員
侯爵大隈信常君侯爵細川護立君
伯爵黑木三次君子爵八條隆正君
子爵松平康春君子爵綾小路護君
松村眞一郞君永田秀次郞君
男爵稻田昌植君男爵松田正之君
宮田光雄君松村義一君
丸山鶴吉君長岡隆一郞君
松本眞平君林平四郞君
小林嘉平治君風間八左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次會ノ議事日程
ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後零時三十四分散會
貴族院議事速記錄第十九號正誤
頁段行誤正
二二〇一七內相內務省発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02119390310&spkNum=37
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