1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十三日(木曜日)午前十時十四分開議
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議事日程 第二十八號
昭和十四年三月二十三日
午前十時開議
第一 昭和十二年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第二 昭和十二年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第三 昭和十二年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第四 昭和十三年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第五 昭和十三年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第六 昭和十三年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第七 軍馬資源保護法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 種馬統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 競馬法の臨時特例に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 臺灣米穀移出管理特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 地方學事通則中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 青年學校令に依り就學せしめらるべき者の就業時間に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 廣告物取締に關する法令改正の請願 會議
第十四 學校養護婦令制定の請願 會議
第十五 宮城縣女川港修築に關する請願 會議
第十六 釜石港に防浪建築建設の請願 會議
第十七 渡良瀬川改修に關する請願 會議
第十八 北海道浦河漁港修築に關する請願 會議
第十九 國道四號線中盛岡市、沼宮内町間道路改良の請願 會議
第二十 海外同胞物故者慰靈堂建立助成金下付の請願 會議
第二十一 北海道函館市に官立高等工業學校設置の請願 會議
第二十二 國道十五號線中和歌山市、高野口町間道路鋪裝の請願 會議
第二十三 公共圖書館費國庫補助法制定の請願 會議
第二十四 大楠公史蹟顯彰に關する請願 會議
第二十五 林道網計畫樹立實施に關する請願 會議
第二十六 造林國策樹立實施に關する請願 會議
第二十七 町村特別税段別割に關する法律改正の請願 會議
第二十八 國立自然博物館設立の請願 會議
第二十九 岩手縣紫波郡志和村に盛岡區裁判所出張所設置の請願 會議
第三十 國民負擔不均衡是正に關する請願 會議
第三十一 販賣斡旋間伐材運搬に要する貨車増配の請願 會議
第三十二 農村部落團體活動助成金交付に關する請願 會議
第三十三 能生漁港修築促進の請願 會議
第三十四 山陽本線周防高森、山口線徳佐の兩驛間を鐵道豫定線に編入の請願 會議
第三十五 國道四號線改良に關する請願 會議
第三十六 西紀勢線鐵道速成の請願 會議
第三十七 豫定線新宮、阪本間鐵道速成に關する請願 會議
第三十八 私立大學國庫補助法制定の請願 會議
第三十九 豫定線松山附近、佐川間鐵道速成の請願 會議
第四十 總武本線千葉、銚子の兩驛間電化促進の請願 會議
第四十一 交通事業法補償令改正の請願 會議
第四十二 徳島縣小松島港より高知縣香美郡山田町に至る鐵道敷設の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=0
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001・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報告ヲ致サ
セマス
〔丸龜書記官朗讀〕
昨二十二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
昭和十三年法律第八十七號中改正法律
案
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
災害被害者ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶
豫等ニ關スル法律案特別委員會
委員長子爵白川資長君
副委員長男爵岩村一木君
中支那振興株式會社法中改正法律案特別
委員會
委員長侯爵中山輔親君
副委員長子爵立花種忠君
支那事變特別稅法中改正法律案特別委員
會
委員長
副委員長
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
軍馬資源保護法案可決報告書
種馬統制法案可決報〓書
競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案可決報
告書
臺灣米穀移出管理特別會計法案可決報〓
書
地方學事通則中改正法律案可決報〓書
靑年學校令ニ依リ就學セシメラルベキ者
ノ就業時間ニ關ズル法律案可決報〓書
請願文書表(第九囘報〓)
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和十二年度第一豫備
金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十二年度特別會計
豫備費支出ノ件
昭和十三年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十三年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十三年度特別會計
豫備金外ニ於テ豫算超
過支出ノ件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=1
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002・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) ノ會議ヲ開キマス、
度第一豫備金支出ノ件、日程第二、
二年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
第三、昭和十二年度特別會計豫備費支出ノ
伯爵林博太郞君
男爵大井成元君
(承諾ヲ求ムル件)
是ヨリ本日
日程第一、昭和十二年
昭和十
日程
件、日程第四、昭和十三年度第二豫備金支
出ノ件、日程第五、昭和十三年特別會計第
二豫備金支出ノ件、日程第六、昭和十三年
度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ
件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、
是等ノ六件ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=2
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003・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
モノト認メマス、石渡大藏大臣
〔左ノ送付文ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
昭和十二年度第一豫備金支出ノ件
昭和十二年度特別會計第一豫備金支出
ノ件
昭和十二年度特別會計豫備費支出ノ
件
昭和十三年度第二豫備金支出ノ件
昭和十三年度特別會計第二豫備金支出
ノ件
昭和十三年度特別會計豫備金外ニ於テ
豫算超過支出ノ件
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ
因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月二十二日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔本案ハ浩澣ニ付揭載ヲ略ス〕
〔國務大臣石渡莊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=3
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004・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 只今議題ニ供
セラレマシタ昭和十二年度第一豫備金支出
外五件ニ關スル事後承諾ヲ求ムル件ニ付テ、
其ノ大體ノ御說明ヲ致シマス、昭和十二年
度一般會計第一豫備金ノ豫算額ハ八百萬圓
デアリマスルガ、昭和十二年勅令第四百九
十六號ニ依リマシテ、第一豫備金ヨリ補充
致シマシタル主ナル事項ハ軍事扶助費、
矯正院及刑務所收容費等デアリマシテ、
其ノ總額ハ七百五十一萬餘圓デゴザイマ
ス、各特別會計ニ於キマシテモ其ノ第一
豫備金又ハ豫備費ヨリ豫算超過ノ支出ヲ致
シタモノガゴザイマス、次ニ昭和十三年度
一般會計第二豫備金ノ豫算額ハ六千萬圓デ
アリマシテ、其ノ支出ノ主ナル事項ヲ擧ゲ
マスレバ、在支領事館警察充實費、兵庫外
三十三縣水害土木費補助、東北地方其ノ他
各地雪害及凍害應急施設費、關東地方其ノ
他各地農作物水害應急施設費、茨城外二縣
下水害地耕地事業施設費、關東地方其ノ他
各地風水害復舊施設費、臨時輸出資金前貸
損失補償金、臨時轉業對策費、臨時失業對
策諸費等デアリマシテ、其ノ總額ハ五千六十
四餘萬圓デゴザイマス、各特別會計ニ於キ
マシテモ、其ノ第二豫備金ヲ以テ豫算外ノ
支出ヲシタモノト、豫備金外ニ於テ其ノ國
庫剩餘金等ヲ以テ豫算超過ノ支出ヲ致シタ
モノガアルノデゴザイマス、何卒御審議ノ
上承諾ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=4
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005・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御質疑
ガナケレバ是等ノ六件ヲ災害被害者ニ對ス
ル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關スル法律案
外二件ノ特別委員ニ併託致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=5
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006・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第七、
軍馬資源保護法案、日程第八、種馬統制法
案、日程第九、競馬法ノ臨時特例ニ關スル
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
ノ續、委員長報告、是等ノ三案ヲ一括シテ
議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=6
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007・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長溝口伯爵
〔伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=7
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008・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 私ハ是ヨリ只今議題ト
ナリマシタル軍馬資源保護法案外二案ノ特
別委員會ノ經過竝ニ結果ニ付テ御報〓
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ茲ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
軍馬資源保護法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
種馬統制法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
申上ゲマス、本委員會ハ三月八日第一囘ノ
會議ヲ開キマシテ、爾後會議ヲ續クルコト
十一囘、三月二十二日質疑ヲ終リマシテ討
論ニ移リ、續イテ三案共原案ヲ可決致シマ
シタ、只今ヨリ本委員會ニ於ケル經過竝ニ
結果ヲ御報告申上ゲマス、開會當初ニ於キ
マシテ農林大臣ヨリ三案ノ御說明ガゴザイ
マシタ、其ノ大體ハ本議場ニ於ケル御說明
ト大差ゴザイマセヌカラ、之ヲ申上ゲルコ
トハ省略致シマス、其ノ他質疑應答等モ十
一囘ニ亙リ各般ノ事項ニ付キマシテ、可ナ
リ微ニ入リ細ニ入ッテ質問應答ガ行ハレマ
シタ、從ッテ之ヲ詳細ニ只今申上ゲルコトハ
却テ繁多ニシテソレ程ノ效果ガナイト存ジ
マスカラシテ、極メテ大要ノミヲ申上ゲマ
シテ詳細ノコトハ總テ速記錄ニ就テ御承知
ヲ願ヒタイト存ジマス、先ヅ軍馬資源保護法
案竝ニ種馬統制法案ノ法案ノ內容ニ付テ一通
リ申上ゲタイト存ジマス、是ハ今次ノ支那事變
ニ於キマシテ貴重ナル實戰ノ經驗ト、軍備各般
ノ施設ニ一大變革ガ生ジマシタ爲ニ、之ニ應ジ
マシテ從來ノ馬政計畫ヲ變更致シマシテ、
新タニ馬政計畫ヲ樹立致サレマシタノト、
モウ一ツハ今次事變ニ於ケル徴發馬ノ素質
其ノ他其ノ馴致ノ方法等ニ付キマシテ是デ
滿足スルコトハ出來ナイト云フコトガ明カ
ニナリマシテ、從ッテ是等ノ素質ノ向上ヲ圖
リ、軍馬資源ノ充實ヲ期セナケレバナラナ
イト云フヤウニ立至リマシタノデ、之ニ關
シマシテ陸軍當局ヨリシテ馬政局ニ對シマ
シテ、陸軍ノ要望事項ト云フモノヲ示サレ
マシタ、ソレガ此ノ馬政計畫ノ根本デアリ
マス、其ノ要旨ヲ申上ゲマスト、ソレハ總
テニ於テ六ツゴザイマス、第一ハ、輓型
馬ノ生產ヲ第一義トシ、乘型馬ハ之ヲ制限
スルコト、ソレカラ種類ハ「アングロノル
タンマ及ビ是ガ半血種ヲ適當トスル、第二
ハ、種牡馬ハ原則トシテ國有トシ、其ノ種
類及素質ヲ整理改善スルコト、第三、種牝
馬ハ適當ノ保護奬勵ヲ加ヘテ、其ノ充實ヲ
圖リ、軍馬ノ生產資源ヲ確保スルコト、四
ハ軍用候補馬ノ民間ノ繫養ヲ容易ナラシム
ルト共ニ、其ノ能力ヲ向上シ、戰時遺憾ニ
ナカラシムルコト、第五ハ、競馬ハ種馬又
ハ軍馬タルベキ資格ヲ有スル馬ニ限リ之ヲ
出走セシムルコト、第六、外地及滿洲等ニ
モ此ノ國策ニ卽應シ、速カニ有效適切ナル
手段ヲ講ズルコト、以上ノ如キ六ツノ要望
ガゴザイマシタ、之ニ基キマシテ、農林當
局ニ於テ內地馬政計畫、同ジク實施要領、
馬改良方針、產馬方針ト云フヤウナモノヲ
立案サレマシテ、必要ニ應ジ馬政調査會ノ
議ニ付シ、之ヲ確定サレマシタ、此ノ確定
ヲ見マシタノガ根本トナリマシテ、軍馬資
源保護法案竝ニ種馬給制法案、此ノ二ツガ
此ノ度立案サレ提出サレタ譯デゴザイマ
ス、ソコデ先ヅ軍馬資源保護法案カラシテ
申上ゲマスト、是ハ政府ガ每年馬ノ檢査ヲ
行ッテ、之ニ合格シタモノヲ軍用保護馬ト指
定ヲ致シマシテ、之ヲ飼養スル者ニハ補助
金ヲ交付スルト共ニ鍛鍊ヲ受クルト云フ義
務ヲ負ハセマシテ、其ノ鍛鍊ト申シマスノ
ハ、普通鍛鍊ト、鍛鍊競技トニ分チマシ
テ、普通鍛鍊ハ地方長官ガ之ヲ主管シテ、
平均一箇月二囘ノ割デ軍馬ニ必要ナル能力
及馴致ノ向上維持ヲ圖ルコトヲ目的トシマ
ス、鍛鍊競技ト云フノハ普通鍛鍊ヲ受ケタ
ル軍用保護馬ノ能力及馴致ヲ審査シ、併セ
テ之ニ關スル知識普及ヲ圖ルヲ目的トシテ
行ハレマスモノデ、又是ハ二ツニ分レマ
ス、第一ハ優等馬ノ投票ヲ伴ハザルモノ、
第二ハ優等馬ノ投票ヲ伴フモノ、此ノ二ツ
デゴザイマス、此ノ初メノ方ノモノハ主ト
シテ輓型馬ノ爲ニ行フモノデアリマス、ソ
レカラ第二ノ優等馬ノ投票ヲ伴フモノハ、
主トシテ乘型馬ノ爲ニ行フモノデアリマス、
是ハ北海道三箇所、一府縣一箇所以內デ年
二囘以内、其ノ期間ハ每囘四日以內ト云フ
コトニ定メラレテ居リマス、尙之ニ出場シ
得ルモノハ、地方長官ノ指定シタル軍用候
補馬ニ限ルコトトシ、此ノ競技ニハ入場者
ヨリ入場料ヲ取リ、又入場者ニ對シテハ額
面金額三圓以下ノ優等馬票ヲ發行シ得ルコ
トトナッテ居リマス、此ノ馬票ト申シマスノ
ハ恰モ競馬法ニ依ル競馬ニ於ケル馬劵ト同
樣ノモノデゴザイマシテ、其ノ發賣數、拂
戾額其ノ他總テノ取締ニ關シテハ、殆ド競
馬法ト同樣デゴザイマス、尙此ノ競馬ノ施
行者ハ馬票ノ發行ニ依リ得タル金額ノ百分
ノ二十五以內ノ金額ヲ取得スルコトガ出
來、其ノ中ヨリ勅令ノ定ムル所ニ依リマシ
テ、納付金ヲ軍用候補馬鍛鍊中央會ニ納付
スルコトニナッテ居リマス、是等ニ依リマシ
テ同會デハ鍛鍊競技ノ健全ナル發達ヲ圖
リ、馬用候補馬ノ能力及馴致ノ向上ニ資
シ、軍馬ニ關スル知識ノ普及ヲ期スル爲、
總テノ施設ヲ行フコトニナッテ居リマス、尙
之ニ關シマシテ、衆議院ハ本法案第十一
條ニ修正ヲ加ヘ、次ノ一條ヲ挿入致シマシ
ク、卽チ鍛鍊馬場ノ開設又ハ維持、競走ノ
觀覽、優等馬票ノ發行又ハ購買、拂戾金
又ハ賞金ノ交付又ハ受領其ノ他鍛鍊馬
競走ノ施行又ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課
スルコトヲ得ズ」、斯ウ云フ修正ヲ加ヘマシ
ク、次ニ種馬統制法案ニ付キマシテ申上ゲ
マス、本法案ハ種馬ヲ整備シ其ノ配合ヲ統
制シ、馬ノ改良增殖ヲ圖ルコトヲ目的トシ
マシテ、總テ馬ノ種付事業ハ政府之ヲ管掌
シ、種牡馬ハ國ニ於テ所有スルコトヲ原則
トシ、種牡馬ニ非レバ絕對ニ種付ニ供用ス
ルコトガ出來ナイコトトナッテ居リマス、尙
種牝馬ノ方ニ關シマシテハ、民有ノ牝馬ヲ
檢査シ、優良種牝馬ヲ指定シ、政府ハ必要
ニ應ジ馬ノ配合ノ統制上、必要ナル命令ヲ
發シ、又ハ處分ヲ爲シ得ルコトトナッテ居
リマス、種馬ノ輸出及移出ヲ制限スル外、
每年民間種馬ノ檢査ヲ行ヒ、其ノ指定ヲ取
消スコトガ出來ルコトトナッテ居リマス、尙
之ガ實施ニ關スル諸般ノ手續、罰則等ガ規
定サレテ居リマス、最後ニ競馬法ノ臨時特
例ニ關スル法律案ニ付テ申上ゲマス、本法
案ハ支那事變ノ間、日本競馬會ガ政府ニ納
付スベキ金額ヲ百分ノ一一·五以內、競馬會
ガ取得スル金額ヲ百分ノ十八以內ニ增加セ
ムトスルモノデアリマス、是ヨリ委員會ニ
於キマシテ行ハレマシタ質疑應答ノ大要ヲ
申上ゲマス、總テ詳細ハ先程申上ゲマシタ
通リ速記錄ニ付テ御承知ヲ願ヒマス、殆ド
十日、十囘ニ亙リマシテ質疑應答ガ可ナリ
詳シク行ハレ、且其ノ中ニハ筆記ヲ中止致
シマシタコトモ屢〓、ゴザイマシタ、是ハ申上
ゲルコトノ出來マセヌノヲ遺憾ト致シマス
ガ、大體ニ於テ最モ集中致シマシタ要點ハ、
次ノ馬劵及馬票ノ問題デゴザイマス、是八、
一々ノ問答等ヲ省キマシテ、各委員ヨリ御
質問ニナリ、ソレニ應ジテ政府ノ御答辯ニ
ナリマシタコトヲ綜合シテ申上ゲマスト、
馬劵ト云フモノハ如何ニモ醇風美俗ニ反ス
ル、何トカシテ馬劵ヲ廢メテ馬政計畫ヲ立
テルコトガ出來マイカト云フ御質問ニ對シ
マシテ、政府ヨリ馬劵ノ制度ガ思ハシクナ
イト云フコトハ御同感デアルガ、ソレガ爲
ニ此ノ弊害ハ出來ルダケ減少シ、避ケルコ
トニ努力シ、其ノ取締及總テフコトニ付テ
深甚ナル注意ヲ拂ッテ實施スルコトト致シ
マスガ、目下ノ狀況ニ於テハ馬劵ヲ全廢ス
ルト云フコトハ可ナリ困難デアル、直チニ
實施スルコトハ不可能デアルケレドモ、將
來之ニ關シテ何等カ良イ方法ガ見付カッテ、
馬劵ト云フモノヲ廢シテモ、馬政ガ十分ニ
立ツト云フヤウニナリマスレバ、ソレニ向ッ
テ進ムノニ吝カデナイト云フ結局ノ御答辯
デゴザイマス、之ニ矢張リ關聯致シマシテ、
先程申上ゲマシタ鍛鍊馬競走ニ馬票ヲ附ス
ルト云フコトニ付テモ、可ナリ反對ナル御
質問ガゴザイマシタ、元來地方競馬ト申シ
マスノハ法律ガ一ツモ認メマセヌ所ノ、內
務及農林省ノ省令ニ依ッテ行ハレテ居ルモ
ノデゴザイマス、然ルニ此ノ度此ノ軍馬資
源保護法案ニ依リマシテ、新タニ四十數箇
所ト云フモノヲ馬票ヲ發行スル競馬ト云フ
モノヲ認メマスレバ、結局法律ニ於テハ新
シク馬票ノ附イタ所ノ競馬ヲ認メルコトニ
ナッテ、是ハ社會風〓上甚ダ面白クナイ、之
ニ付テ政府ハドウ云フ風ニ考ヘラルヽカト
云フ御質問ニ對シマシテ、政府當局ヨリハ、
地方競馬ト云フモノガ只今迄弊害ガ非常ニ
多イト云フコトハ、政府ニ於テモ是ハ認メ
ル、併シ諸種ノ事情ヨリシテナカ〓〓之ガ
整理絕滅ト云フコトハ出來ナカッタ、然ルニ
今囘此ノ軍馬資源保護法案ニ依リマシテ、新
タニ全ク今迄ト違ッタ所ノ鍛鍊馬競走ト云
フモフガ出來マシテ、此ノ機會ニ於テ今迄
ノ地方競馬ト云フモノハ全廢シテ、詰リ數
ニ於テモ半數以下ニ減リ、實際ニ於テハ此
ノ取締其ノ他ヲ强化シテ、弊害ヲ減少スル
ト云フコトハ政府デ企圖スル所デアルカラ
シテ、理想ヨリ言ヘバ固ヨリ是等ヲ全廢ス
ルフガ或ハ宜イカモ知レナイケレドモ、現
狀ニ於テ之ル全廢スルコトハ相當諸種ノ關
係上困難デアルカラシテ、先ヅ此ノ程度ニ
於テ我慢ヲシテ貰ヒタイ、將來ニ於テハ方
法サヘ見付カレバ、之ヲ逐次廢メテ行クト
云フコトニ付テハ、政府ハ固ヨリ反對スル
モノデハナイト云フ御話デアリマス、ソレ
カラ尙一委員ヨリ馬政ノ計畫ヲ立テラレテ、
輓型馬卽チ「アングロノルマン」種ニ日本ノ
馬ヲ改良シ、出來レバ種ノ固定ヲ圖ラウト
云フノハ能ク分リマシタケレドモ、實際今
日本競馬會デ行フ所ノ、競馬ニ出走スル馬
ハ「サラブレット」ガ主體デアッテ、ソレニ幾
分「アングロアラブ」ノ系統ノ馬ガ入ッテ居
ルヽサウシテ行クト是ハ軍馬ニモナラナイ
ガ、ドウ云フ意味デ此ノ競馬ヲ許サレ、且
色々ナル問題ニチッテ居ル所ノ馬劵迄許サ
レテ、競馬ヲ盛ニ行ハレテ居ルカト云フ御
質問ニ對シマシテ、政府ハ競馬····是ヨリ
競馬ト申シマスフハ日本競馬會ニ於テ行フ
競馬デ、其ノ競馬ニ出走スル馬ガ「サラブ
レット」及「アングロアラブ」ノ系統デアルト
云フコトハモウ周知ノ事實デアル、是ハ何
ニ役立ツカト云フト、輕イ所ノ種馬ヲ其ノ
中カラ選定スル、元來中間種、卽チテ,
グロノルマン」ヲ主體ト致シマシ、テモ、馬ヲ
改良スル上ニ於テハドウシテモ「サラブレッ
ト」及「アラブ」ノ血ヲ入レテ行カナケレバ
立派ナル馬ハ出來マセヌ、少數ノ血ヲ入レ
テ之ヲ改良スル爲ニハ極メテ優秀ナル、
十分此ノ馬ノ改良ニ役立ツ馬デナケレバ國
ノ馬ト云フモノハ良クナラナイ、此ノ能力
其ノ他ニ於テ新規優秀チルモノヲ得ル爲ニ
ハ、ドウシテモ競馬ヲ行ッテ公衆ノ面前ニ於
テ眞劍ナル競走ヲ行ッテ、其ノ中カラシテ選
ブノガ一番良イ方法デアルカラシテ、詰リ
競馬ニ於ケル「サラブレット」及「アングロア
ラブ」ト云フモノハ、國ノ馬政計畫ニ基イ
テ產馬方針ニ依リ、之ニ要スル改良ノ根據
トナルベキ種馬ヲ得ル爲ニ行フモノデアッ
テ、是ハ只今申上ゲマス所ノ、鍛鍊馬競走
トハ全然性質ヲ異ニスルモノデアル、ソレ
ニ引續キマシテ鍛鍊馬競走ニ付テ話サレマ
シタコトハ、鍛鍊馬競走ハ只今迄ノ地方競
馬トハ全然意味ガ異ッタモノデアル、是ハ軍
用保護馬デナケレバ出ルコトガ出來ズ、尙
他府縣ノモノヲ、方々ノ競馬場ニ引廻シテ
出スト云フコトハ全然出來ナクナリマシタ、
且牡馬ニ於テハ殆ド去勢シタル馬デ、是ハ
種馬ノ意味ハ一ツモ含ンデ居リマセヌ、
尙主トシテ馬ノ種類及其ノ改良竝ニ飼育其
ノ他ノ件ニ付キマシテ、一委員ト政府委員、
殊ニ多クハ專門ノ說明員トノ間ニ詳細且多
岐ナル質問應答ガゴザイマシタ、是等ハ總
テ大體ニ於テ專門ニ互ルコトガ多クゴザイ
マシテ、玆ニ申上ゲルコトハ略シマシテ、
總テ是ハ速記錄ニ讓リタイト存ジマス、最
後ニ一ツ出マシタノハ、衆議院ノ此ノ修正
ニ關スル件デゴザイマス、之ニ關シマシテ
一委員カラシテ、農林大臣竝ニ內務大臣ニ
對シマシテ、只今迄農林當局ガ屢〓言明サ
レタ所ニ依リマスト、鍛鍊馬競走ニ依ッテ開
催者ガ所得スル所ノ金ハ百分ノ二十以內デ
宜イヤウニ言ハレテ居タ、然ルニ本法ニ於
テハ百分ノ二十五以內ト云フコトニナッ
テ居ル、其ノ丁度開キガ百分ノ五バカリア
リマスカラシテ、サウシテ見レバ此ノ百分
ノ五ヲ必要ニ應ジテ、農林省ニ於テ此ノ趣
旨ニ依リマシテ、地方稅ヲ今迄取ッテ居ッタ
所、若シクハ寄附金ヲ取ッテ居クトカト云フ
府縣ニ於テ、必要ナル所ニハ之ヲ增スヤウ
ニ、何トカ處置ヲサレタナラバ、內務大臣
ノ考ヘテ居ラレル趣旨モ實際ニ於テハ其ノ
儘立ツコトニナル、尙衆議院ノ修正ヲ其ノ
儘置イテモ別ニ害ハナク、實行ニハ何等差
支ナイト思フガ、農林大臣ハ之ニ對シテド
ウ御考ニナッテ居ルカト云フ質問ニ對シマ
シテ、農林大臣ヨリ鍛鍊馬競走ニ關シ地方稅
ヲ課セザルコトトナリタル場合ニ於キマシ
テハ必要ニ依リ鍛鍊馬競走ノ施行者ヨリ
ノ寄附金ニ依ルコトトシ、其ノ場合ニ於テ
ハ軍馬資源保護法案第十一條ノ規定ニ依ル
收得金ノ率ヲ百分ノ二十以上、百分ノ二十
五以內ニ於テ定メルコトト致シテ、此ノ問
題ニ善處致シタイト考へルト云フ御答辯ガ
アリマシタ、之ニ對シマシテハ衆議院ノ修
正ハ實質上ニ於テ何等本法案及內務大臣ノ
考ヘテ居ラレル事ニ牴觸シナイ、實施ニハ
チットモ差支ナイト云フコトガ明カニナリ
マシタ、以上大要申上ゲマシタコトヲ以チ
マシテ、三月二十二日ニ質問ヲ終リマシテ、
次ニ討論ニ移リマシテ、一委員ヨリシテ次ノ
如キ反對ノ御意見ガ出マシタ、軍馬資源保
護法案ノ目的トスル所ノ、之ニ依ッテ軍用候
補馬ノ資質ヲ向上シ、其ノ鍛鍊ヲスルト云
フコトハ誠ニ必要ナコトデアッテ、本法案ノ
成立ヲ望ムコト亦決シテ他ノ者ニハ劣ラナ
イ熱意ヲ持ッテ居ル、併シナガラ此ノ鍛鍊馬
競走ニ馬票ヲ附スルコトハ如何ニモ不合理
デアッテ、自分ハ反對デアル、卽チ馬劵、馬
票ト云フモノハ醇風美俗ニ反シ、斯クフ如
キモノニ依ラズンバ改良ガ出來ナイト云フ
コトハ誠ニ遺憾ナコトデアッテ、他ノ方法ニ
依ッテ十分其ノ手段方法ヲ盡セバ目的ヲ達
スルコトガ出來ルデアラウ、故ニ自分トシ
テハ此ノ鍛鍊馬競走ニ馬票ヲ除ク所ノ修正
案ヲ出シタイト思フガ、遺憾ナガラ時日ハ
ナシ、尙之ニ關スル總テノコトヲスルコト
ハ困難デアルカラ、本法案ニ對シテ反對、
卽チ否決セラルベシト云フ意見ヲ持ッテ居
ル、勿論此ノ趣旨ニ於テハ非常ニ自分モ異
存ハナイ、一日モ早ク是ノ成立スルコトヲ
望ムノデアルガ、如何ニモ馬票ハ同意致シ
兼ネル、之ニ對シテ他ノ一委員ヨリ贊成ノ
意見ヲ述ベラレマシタ、其ノ大要ハ、馬劵、
馬票ノ面白クナイト云フコトハ只今反對
論者ノ言ハレタコトト自分ノ考モ一ツモ變ッ
テ居ラナイ、誠ニ是ハ遺憾ナコトデアルト
云フコトハ申ス迄モナイコトデアルガ、併
シナガラ今日ノ場合支那事變ハマダ途中ニ
アル、而モ國際情勢ノ變化ト云フモノハ
將來如何ナル事態ガ起ルカト云フコトハ豫
測出來ナイ、此ノ際ニ於テ軍ノ兵器ト同樣
極メテ大切ナル所ノ馬ノ充實向上ヲ圖ルト
云フコトハ、一日モ忽セニスルコトガ出來
ナイ、尙質疑應答ノ間答中ニ於テ政府ハ屢〓、
何等カノ方法ガアレバ、此ノ馬劵馬票等ニ
付テハ出來ルダケ之ヲ整理スルコトニ努力
スルト云フコトデ言明セラレテ居ルカラ、
自分ハ此ノ際ハ遺憾ナガラ此ノ馬票ニハ、
一時ノ權宜トシテ認容シ、將來ノ整理ト云
フコトヲ期待シテ本案ニ贊成スルモノデア
ルト云フ御意見デアリマシタ、ソレ等ノ贊
成反對ノ御意見ガ出マシタ後デ討論ヲ終結
致シマシテ、先ヅ軍馬資源保護法案ニ付テ
採決致シマシタ所ガ、多數ヲ以テ原案ヲ
可決スベキモノト決定致シマシタ、次ニ種
馬統制法案竝ニ競馬法ノ臨時特例ニ關スル
法律案此ノ二案ニ付テ採決ヲ致シマシタ所
ガ、滿場一致異議ナク原案ヲ可決致シマシ
タ、次ニ一委員ヨリシテ次ノ如キ希望決議
ヲ提出サレマシタ、之ヲ只今朗讀致シマス、
「政府ハ、國民精神ノ作興ヲ最モ緊要トスル
現下ノ國情ニ於テ、馬劵ノ制度ガ醇風美俗
ヲ害スルノ虞アルニ鑑ミ、之カ施行ニ付テ
ハ出來得ル限リ其ノ弊ヲ少カラシムルト共
ニ、速カニ他ニ之ニ適當ナル方策ヲ得ルニ
努メテ漸次之ヲ整理スルコトトシ、以テ馬
政ノ健實テル發達ヲ期スヘシ」此ノ附帶決
議ニ付キマシテハ委員會全會一致、之ヲ附
スルコトニ贊成致シマシテ、之ヲ決議致シ
マシタ、之ニ對シマシテ農林大臣ヨリ次ノ
如キ發言ガゴザイマシタ、只今ノ御決議ノ
趣旨ニ付キマシテハ、十分之ヲ尊重致シマ
シテ、愼重〓究ノ上善處致シタイト存ジマ
ス、斯クノ如キ農林大臣ノ發言ガアリマシ
テ、之ヲ以テ本委員會ヲ終了致シマシタ、
右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=8
-
009・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 討論ノ通〓
ガゴザイマス、土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=9
-
010・土方寧
○土方寧君 三案ノ中ノ一番終ヒノ案ニ付
キマシテ反對ノ意見ヲ述ベタイト思ヒマス、
此ノ根本トナッテ居ル現行ノ馬劵附ノ競馬
法其ノモノガ私ハドウ考ヘテモ人心ヲ惡化
セシムルモノデアル、ノミナラズ前ニ引用
シマシタ勅諭、勅語等ノ聖旨ニ全ク相反シテ居
ルカラ、是ハ全廢スベキモノデアルト云フ意見
ヲ以チマシテ、總理大臣ト文部太臣ニ前ニ質
問ヲ致シマシタ、無論勅語、勅諭等ヲ引用シ
テ質問致シマシタカラ、是等ノモノヲ御覽ニ
ナッタ上デナケレバ御答辯ノ出來ヨウガアリ
マセヌカラ、卽答ハナサラナクテモ宜シウ
ゴザイマスケレドモ、如何ニモ御忙シカッタ
ノデアリマセウガ、一週間經ッテヤット御答
辯ヲ得マシタ、其ノ日ニハ議長カラ總理大
臣ヲ御呼ビニナリマシタガ、總理大臣ハ何
カ議長ニ耳語セラレテ、文部大臣ガ御答辯
ニナッタ、總理大臣ハ文部大臣ノ言フ通リデ
宜シイ·····自分ノ意見ヲ何モ仰シヤラナカッ
タ、文部大臣ノ初メノ御答辯ハ如何ニモ抽
象的デアリマシタカラ、ドウモドウ云フ意
味ニナルノカ、ハッキリシマセヌカラ、具體
的ノ場合ヲ想定シテ御尋ネシマシタ、競馬
狂ガ妻子カラ諫メラレテ、公許セラレテ居
ルノダカラ、ナゼ馬劵ヲ買ッテ惡イカト、サ
ウ云フ競馬狂ノ熊度ヲ是認セラレマスヤ否
ヤト云フコトヲ文部大臣ニ伺ッタ、處ガ驚
イタ、御答辯ノ積リデセウ、ソレハ惡用ス
ルノグト、馬劵ヲ發賣ヲ許シテ居ル、買フ
ノハ惡用、善用ト云フコトガ何處ニアリマ
セウ、答ニナッテ居ナイ、全ク誤魔化シナ
ンダ、斯ウ云フ方ニ向ッテ重ネテ質問ヲシタ
所ガ何ニモナリマセヌカラ、御答ヘ出來ヌ
モノト斷定シマシテ止メマシタ、總理大臣
ハ何モ仰シヤイマセヌ、多分御答ガ出來ナ
イカラダラウト思ヒマス、今日ハ先刻溝口
委員長カラ委員會ニ於ケル詳細ナ御報告ヲ
得マシタ、各委員ガ色々ト案ニ付テ、此ノ
馬劵ノコトニ付キマシテモ、熱心ニ政府委
員トモ質問應答ガアッタヤウデアリマス、大
體ニ於テハ無論是ハ醇風美俗ニ反スルカラ、
成ルベク今後ハ弊害ヲ少クスルヤウニ努メ
ル、他ニ方法ガアッタラ他日ハ廢メタイト
思フト云フヤウナ生溫ルイ御返事ノヤウデ
アリマス、醇風美俗ニ反スルト云フコトダ
ケヂヤナイ、サウ云フ意味デ幾多ノ勅語、
勅諭ガ之ヲ不可ナリトスル聖旨ヲ我々ハ
拜シテ居ルノデス、ソレヲ無視シテ居ルヤ
ウナ形デアル、徐々ニ廢スルナドト云フヤ
ウナ生溫イコトハイケマセヌ、私ハ斷然廢
スベキモノト思ヒマスケレドモ、是ハ今日
ノ議題デハナイカラ、今日ノ議題ガ決セラ
レマスニ付キマシテ、私ハ簡單ニ反對ノ意
見ヲ述ベルト云フコトガ、私ノ一議員トシ
テ良心ニ照シテ義務デアルト思ヒマス、競
馬會ト云フノハ、確カ公益法人ニナッテ居
ル所デアリマス、驚イタ公益法人デアル、
人心ヲ惡化セシムルト云フヤウナ結果ノア
ル公益法人デアル、能クマア主務官廳ハ之
ヲ許シテ居ル、而モ公益法人ハ會社トハ違
ヒマスケレドモ、無論競馬會ノ收入ト云フ
モノヲ以テ馬匹改良ニモ使ヒマスガ、關係
者ガ其ノ利益ヲ分配シテ居ルヤウデアリマ
ス、半バ營利的ニ經營セラレテ居ル、其ノ
收入ハ能ク知リマセヌガ、約二億以上ニ上ッ
テ居ル、是ハ私達考ヘタ所デハ、謂ハバ賭
場ノ寺錢ニ當ルト思ヒマス、同ジモノト言
ヒマスカ、類スルモノデアル、其ノ幾分ハ
政府ニ納入セシムルコトニナッテ居ル、本案
ハ其ノ納入ノ率ヲ上ゲル、餘計取ラウト云
フ、競馬會ノ收入ハ寺錢ニ類スルモノナラ
バ、其ノ幾分ヲ政府ニ納入セシムルト云フ
ノハ寺錢ノ上前ヲハネルコトデアル、實
ニ情ナイ話デアル、御承知デアリマセウガ、
チッポケナ「モナコ」ハ「イタリア」ト「フラン
ス」ノ間ノ地中海ニ向イテ居ル、官營ノ宮
殿見タイナ賭場ガアリマス、其ノ收入ヲ以
テ財政ヲ立ッテ居ル、慥カ納稅ハナイト云フ
コトデアリマス、「ヨーロッパ」ノ博奕場デア
ル、明治四十二年ニ見タコトガアリマスガ、
大小ソレハ比較ニナラヌ程違ヒマスケレド
モ、根本ノ主義ハ同ジコトデアリマス、寺
錢ノ上前ヲ歲入ニシヨウト云フ、實ニ情ナ
イ話デアリマス、皇國ニ對シテ、皇國ノ面
目ニモ關スルコトデアリマスカラ、私ハ絕
對ニ反對致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=10
-
011・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 他ニ御發言
モナケレバ三案ノ採決ヲ致シマス、一番搾り
第二讀會ヲ開クコトニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=11
-
012・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 過半數ト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=12
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013・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=13
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014・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=14
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015・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=15
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016・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐太行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=16
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017・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報〓
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=17
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018・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=18
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019・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=19
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020・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=20
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021・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=21
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022・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=22
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023・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三案ノ第三
讀會ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=23
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024・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=24
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025・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第十、
臺灣米穀移出管理特別會計法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、
委員長大隈侯爵
臺灣米穀移出管理特別會計法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長侯爵大隈信常
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔侯爵大隈信常君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=25
-
026・大隈信常
○侯爵大隈信常君 只今上程セラレマシタ
臺灣米穀移出管理特別會計法案ノ委員會
ハ、三月十一日ヨリ昨二十二日ニ至ル間、
實ニ十囘ニ亙リマシテ熱心ニ質疑應答ヲ重
ネマシタ、愼重審議致シマシタ上ニ原案通
リニ可決スベキモノト議決シタ次第デゴザ
イマス、而シテ本案提出ノ理由竝ニ臺灣米
穀移出管理案ノ趣旨及內容ニ付キマシテ當
局ノ說明ヲ聽キマシタノデアリマスガ、其
ノ大要ヲ玆ニ申上ゲマスレバ、臺灣ノ米價
ハ內地ニ於ケル米穀政策ノ影響ヲ受ケマシ
テ非常ニ有利トナッテ、米作ニ走ルノ傾向ヲ
馴致致シマシタガ故ニ、此ノ傾向ヲ抑制ス
ル爲ニ水利施設、土地改良等ノ施設ハ一切
之ヲ禁止シツヽアルノ現狀デアリマス、併
シナガラ此ノ事ハ臺灣農業全體ノ行詰リヲ
招來致シマシテ、生產力擴充ノ緊要ナル現
在トシテハ甚ダシキ矛盾デアリマス、又此
ノ傾向ヲ放任スルニ於キマシテハ、農業ノ
調和的發達ハ困難デアル
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
且農業經營ヲ不健全ナラシメ、將來農業經
濟ヲ不安定ナラシムル虞モアルノデアリマ
スカラ、此ノ際米價ヲ臺灣ノ經濟事情ニ卽ス
ルヤウニ適當ニ調節シ、生產力擴充施設ハ之
ヲ積極的ニ實行ニ移スト共ニ、經營ノ多角
化、集約化ヲ圖ッテ、農家經濟ノ安定向上ニ資
スルト共ニ、農業資源ノ利用開發ヲ徹底セ
シメテ、以テ臺灣ノ保有スル產業的使命ヲ
達成セシムル爲ニ、本管理事業ノ實施ガ必
要デアルト云フコトデアリマシタ、而シテ
各委員ヨリ本案竝ニ米穀移出管理案ノ內容
ニ關シマシテ、各般ニ亙リ種々多樣ノ質疑
ガアリマシタノデアリマス、併シナガラ其
ノ詳細ノコトハ玆ニ御報告スルコトヲ止メ
マシテ、委細速記錄ニ讓ルコトニ致シマス、
其ノ主ナルモノヲ玆ニ揭ゲテ御報告シタイ
ト思フノデアリマス、先ヅ次ノ如キモノガ
其ノ主ナルモノト考へラレルモノデアリマ
ス、卽チ第一、本管理案ハ臺灣ノ統治上支
障ヲ來サザルモノナリヤト云フ問題、第二ハ
本管理案ハ我ガ國全體ノ食糧政策、殊ニ時
局下ノ食糧政策及米穀配給統制法ト矛盾シ、
或ハ支障ヲ來スモノニ非ズヤト云フ問題デ
アル、第三ハ本管理案ハ糖業ヲ保護スルモノ
ニ非ズヤ、斯ウ云フ以上三點ガ質疑ノ主要
ナル事項デアッタヤウデアリマス、之ニ對シ
マシテハ特ニ總理大臣ノ出席モ煩ハシ、農林
大臣、拓務大臣、其ノ他關係政府委員カラ御
答辯ガアリマシタノデアリマスガ、其ノ大體
ノ趣旨ヲ申上ゲマスレバ、第一ノ統治上ノ
問題ニ關シマシテハ、本管理案ノ實施ニ依
ル米ノ價、米價ノ調節ハ一石當リ二圓程度
デアリマシテ、現在ノ米ノ價、其ノ他ノ事
情カラ考ヘマシテ、農家經濟ニ及ス影響ハ
左シタルモノデハナイノミナラズ、其ノ管
理收益ハ擧ゲテ農事ノ徹底的開發ノ爲ニ還
元セラレマシテ、且萬一米價ガ暴落ヲ致シ
マスルヤウナ場合ニ於キマシテハ、生產費
ハ必ズ補償セラルヽコトニナッテ居リ、集約
化多角化ノ促進ガ伴ッテ、農家經濟ハ將來
一段ト向上シ、且安全トナルノデアリマス、
卽チ本案ヲ實施スルコトニ依ッテ、初メテ臺
灣農業ノ行詰リノ狀態ニアル現狀ガ打開サ
レマシテ、將來ノ躍進的發達ト、農家經濟
ノ恆久的福利增進ト云フモノハ、之ヲ期待
スルコトガ出來得ルト云フ次第デアルカラ、
本案ノ趣旨ヲ十分ニ島民ニ諒解セシムルニ
於キマシテハ、何等懸念ノ要ハナイノミナ
ラズ、內地ト臺灣トノ關聯性ハ一層緊密化
シマシテ、內臺協力ノ實ヲ擧グルコトトモ
ナリマシテ、統治上適切ニシテ且必要ナル
政策デアルコトヲ信ズルモノデアルト云フ
御答辯デアリマシタ、第二、本管理案ハ我
ガ國全體ノ食糧政策、特ニ時局下ノ食糧政
策及米穀配給統制法トノ關係ニ付キマシテ
ハ、一、本管理案ヲ實施シマスト共ニ、現
在禁止シテ居リマス所ノ水利施設竝ニ土地
改良施設等ヲ解除シマシテ、更ニ積極的ニ
耕地ノ造成、水田ノ改良擴張ヲ圖ルト云フ
コトニナッテ居リマスシ、一方ニ於キマシテ
ハ、耕地、防風林ノ造成、施肥ノ合理化、
品種ノ改良、耕種圃ノ改善指導等ヲ徹底的
ニ實施スルコトニナッテ居リマスカラ、平面
的ニモ、立體的ニモ生產ヲ增スト云フコト
ニナリマシテ、而モ此ノ增產ハ我ガ國全體
ノ米ノ需要推算ニ基イテ、農林省トノ協議
ニ基ク生產目標ニ依ッテ、從ッテ計畫的ニ增
產ヲ圖ルト云フコトデアリマスノデ、計畫
其ノモノガ增產計畫デアリマシテ、又計畫
ニ於テ減產トナル虞ハナイト云フコトデア
リマス、一、次ニ現下ノ食糧問題ニ對處スル
ノ方法ト致シマシテハ、昭和十五米穀年度
ニ於キマシテ、既定計畫ノ增產ノ外ニ、更
ニ安全性ヲ見込ミマシテ、內外地ヲ通ジテ
相當數量ノ增產ヲ爲スコトニナッテ居リマ
シテ、臺灣ニ於キマシテハ、更ニ五十萬石
程度ノ增產ヲ擧ゲルヤウニ目下準備中デア
リマス、而モ此ノ增產計晝ハ臺灣ノ實情ヨ
リ考ヘアシテ、十分達成シ得ル見込デアル
ト云フコトデアリマシタ、三、又時局下ノ
〓糧對策ノ一ツトシテ、別ニ米穀配給統制法
案ガ議會ニ提出サレテアリマスガ、同案ノ
趣旨ハ米穀ノ配給及價格ヲ調整スルノガ眼
目デアリマス、之ガ方法トシテハ、日本米
穀會社ト云フモノヲ設ケマシテ、實米本位
ノ市場業務ヲ行ハシムルト云フコトデアル
ノデアリマスノデ、臺灣米穀移出管理ニ於
キマシテハ、總督府ガ買入レマシタ米穀ノ
內地ニ於ケル販賣ヲ委託スルト云フコトニ
ナッテ居リマス、又月々ノ內地販賣數量ニ付キ
マシテハ、豫メ農林大臣トノ協議ニ基イテ
決定スルト云フコトニナッテ居リマスカラ、
臺灣米穀移出管理ト米穀配給統制法トハ密
接不可分ノ關係ニアルト云フコトデアリマ
ス、上ニ述ベマシタヤウナ次第デアリマス
カラ、此ノ臺灣米穀移出管理ノ事業ハ、
我ガ國全體ノ〓糧政策ニ貢獻致シマシテ、
而モ其ノ補强策トナルモノデアリマシテ、
決シテ支障トナルヤウナ如キモノデハナイ
ト云フ答辯デゴザイマシタ、第三ニ糖業ヲ
保護スルモノデナイカト云フ質問ニ對シマ
シテハ、水田ニ於ケル甘蔗ノ買收價格ハ從
來大體米價ヲ標準トシテ決定サレテ居ッタ
ノデアリマスガ、將來ハ砂糖ノ國內消費ノ
增加竝ニ滿洲支那等ニ對スル供給增加ニ應
ズル爲ニハ、今後益〓、蔗蔗ノ面積ヲ增加セシ
メネバナラヌノデアリマス、又又水酒精ノ
原料獲得ノ爲ニモ相當ナル試作面積ヲ新タ
ニ增加セナケレバナラヌト云フノデ、將來
ハ米價ガ下リマシテモ是等ノ甘蔗作ノ面積
擴張ノ爲ニハ、之ニ伴ッテ甘蔗ノ買收價格ヲ
下ゲルト云フコトガ困難トナル事情デアリ
マスバカリデナク、同時ニ農家經濟ニ及ス
影響モ考ヘテ置カナケレバナラヌノデアリ
マスカラシテ、尙本案實施ト同時ニ新タニ
糖業令ヲ施行致シマシテ、以テ甘蔗ノ作付
面積ト買收價格トヲ許可制トスル外、尙糖
業ニ對スル監督ヲ强化擴大シテ、以テ米糖
產業ノ調制ヲ爲シマスト共ニ、甘蔗買收價
額ノ公正ヲ期スルコトト致シ、且又糖業者
ヲシテハ無水酒精及「パルプ」ノ增產等、今後
公益的事業ノ經營ニ誘導致シマシテ、國家
的使命ノ達成ノ爲ニ十分協力セシメル方針
デアリマス、カルガ故ニ決シテ糖業ヲ保護
スルト云フモノデハアリマセヌト云フ旨ノ
答辯ガアッタノデアリマス、尙本管理案ヲ
計畫スルニ當リマシテ、言論ヲ抑壓シテ居
ル事實ナキヤト云フヤウナ質問モアッタノ
デアリマスガ、之ニ對シテ當局ハ最初此ノ
案ガ未ダ成案ヲ得ル前ニ於キマシテハ、色
色ソコニ眞相ト違フ或ハ半知半解ノ考カラ
シテ、往々ニシテ面白カラザル誤解ヲ生ズ
ル虞ガアリマシタカラ、總督府ニ於キマシ
テハ適當ナル方法ヲ執ッテ居ッタノデアリマ
スガ、昨年臺灣重要產業調査委員會ニ於キ
マシテ、此ノ案ガ大體成案ヲ得マシテカラ
ハ、左樣ナコトハ一切ナカックト云フコトノ
御答辯デアリマシタ、又最後ニ陸軍當局ヨ
リモ本案ニ對スル所見ヲ述ベラレマシタ、
卽チ陸軍トシテハ米ノ供給確保ト云フコト
ト同時ニ、重要ナル他ノ食糧資源ヲ得ルト
云フ兩方ノ目的ヲ達成セシムルコトヲ確信
シテ、本案ノ通過ヲ希望スルモノデアルト
云フコトデアリマシタ、以上述べマシタ所
ハ質疑應答ノ大體デゴザイマスガ、詳細ノ
コトハ先ニ申上ゲタ通リ速記錄ニ於テ御了
承ヲ願ヒタイト思ヒマス、續キマシテ討論
ニ入ッテ、先ヅ八條委員ハ米穀移出管理案ハ
臺灣產業ノ健全ナル發達ヲ圖リ、島民ノ恆
久的福利ヲ增進シ、臺灣特有ノ農業資源ノ
擴充、徹底ヲ期スルト共ニ、併セテ內地ノ米
穀政策ニ寄與セムトスルモノデアッテ、臺灣ノ
產業ノ現狀竝ニ其ノ使命ニ鑑ミ、平時戰時ヲ
通ジテ誠ニ時宜ヲ得タル緊切ナル法案デア
ルト云フ御見解ヲ以テ、全面的ニ贊意ヲ表セ
ラレマシタ、而シテ松村義一委員ハ戰時食
糧政策竝ニ臺灣統治上ノ關係等ヨリ遺憾ナ
ガラ本案ニ贊成シ難キ旨ヲ述ベラレマシ
テ、又長岡委員ハ個人トシテ二三ノ希望
ヲ述ベラレマシテ贊成ノ意ヲ表セラレマシ
ク、次ニ又丸山委員ハ松村委員ト同樣ナル
御趣旨ヲ以テ反對ノ意日元ヲ述ベラレマシ
タ、最後ニ小林委員ハ本案ハ誠ニ一視同
仁ノ親心カラ出タ所ノ適切ナル政策デアル
ト云フ旨ヲ述ベラレテ、贊成ノ意ヲ表セラ
レタノデアリマス、而シテ採決ニ入リマシ
テ各員ニ御諮リシマシタ處、大多數ヲ以テ本
案ヲ原案通リ可決確定致シマスコトニナッタ
次第デアリマス、以上報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=26
-
027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑者ノ通〓ガ
ゴザイマス、下村宏君
〔下村宏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=27
-
028・下村宏
○下村宏君 私ハ此ノ日程ニ上リマシタ本
案ニ付テ二三ノ質疑ヲ試ミタイノデアリマ
ス、御承知ノ通リ本案ハ衆議院、貴族院ヲ
通ジテ可ナリ論難ヲ續ケラレテ居ッタノデ
アリマス、私ハ嘗テ臺灣ニ在職ヲ致シマシ
タ故ヲ以テ、平素外地ニ付テハ相當關心ヲ
深クシテ居リマスルガ、此ノ論難ノ經過ヲ
聽キマシテ、或ハ之ガ統治ノ上ニ氣遣ハシキ
影響モアリハセヌカ、又一面ニハ斯クノ如
キ重要ナル案件ガ固ヨリ素通リサレル筈デ
ハナイノデアリマシテ、何處迄モ十分ニ檢
討サレ、審議サルベキ筈デアル、從ッテ曩ニ
長ク朝鮮ニ在職セラレ、、外地ニ關心ノ深イ
丸山君ノ質問演說ニ付テモ私傾聽致シタノ
デアリマス、又此ノ特別委員會ニモ時々暇
ヲ見テハ參ッテ、各委員諸君ノ御論議ヲ拜聽
シタノデアリマス、私ガ昨今本島人ノ一部
ニ會ヒマスルト、其ノ人達ハ自分達ハ此ノ
問題ニ對シテ其ノ手段ナリ方法ニ反對ヲシ
テ居ルノデ、斯カル時局ニ對シテ唯負擔ヲ避
ケヨウトカ、之ヲ厭フト云フ氣持デナイ、
サリナガラ反對スル所以ヲ以テ或ハ非國民
ト言ハレ、色々壓迫ヲ受ケルコトガ甚ダ心
外デアル、更ニサウ云フコトデ臺灣ノ島民
ガ誤解ヲ受ケルヤウナコトガアッテハ、誠ニ
苦痛デアルト云フヤウナコトモ聞イタノデ
アリマス、固ヨリ今囘ノ時局ニ際シテモ、
朝鮮ト云ハズ、臺灣ト云ハズ、此ノ時局ニ
對シテ如何ニ奉公ノ誠ヲ效シツヽアルカト
云フコトハ、是ハ朝鮮、臺灣當局カラモ屢〓、
公表サレテ居ル事實デアリマシテ、私共サ
ウ云フ點ニ對シテ何等ノ誤解ハ持ッテ居ラ
ナイノデアリマス、併シ是ハ內地デモアル
コトデアリマスルガ、直接民衆ニ接スル一
部デハ、時ニ依リテ藥ガ利キ過ギテ壓迫感
ヲ與ヘ、或ハ反感ヲ助長スルト云フコトハ
アリ得ルノデアリマス、此ノ點ニ付テ私ハ
ドウカ現地ニ於テモ左樣ナ噂ノ起ラナイヤ
ウニ、是ハ將來一層ノ戒心ヲ要スルモノト
思ヒマス、又此ノ米ト砂糖ノ問題ニ付テ
モ、只今大隈委員長カラモ御報告ガアリマ
シタガ、當局ハ砂糖ハマダ擴張シテ行クカ
ラ、米ノ値ガ今度下ッテモ矢張リ甘蔗ノ買上
價格ハサウ下ラナイト云フガ如キヤウニ聽
イタノデアリマスルガ、私ハ左樣ニハ思ハ
ナイノデアリマス、是ハ矢張リ米ノ買上價
格ガ下レバ之ニ應ジテ甘蔗ノ買上價格モ下
ルベキダ、又下ラナケレバナラナイ、若シ
同ジヤウニ高ク買上ゲテ居ルト、皆米ヲ作
ルコトヲ厭ガッテ甘蔗ニ逃ゲタガガノデア
リマス、是ハマア成績ヲ見ナケレバ分リマ
セヌガ、恐ラクハ私ハ矢張リ米ノ買上價格
ガ下レバ甘蔗ノ買上價格モ下ル、私ハ又下
ルノガ宜イト思フノデアリマス、日本ノ砂
糖ノ値段ガ海外ニ比シテ決シテ安クハナイ
ノデアリマス、若シサウ云フコトデ買上價
格ガ下リ、延イテ一般ノ消費者ニ賣ル値段
モ下ルコトニナレバ是程仕合セナコトハナ
イノデアリマス、更ニ是カラ滿支ト云ハズ
各方面ニ對シテモ、日本ノ糖業ハ唯關稅ノ
下デ內地デ消費サレルダケデナク、之ガ貿
易ノ上ニ於テモ外ヘ發展シテ行ク、殊ニ「ジ
ヤバ」糖ト私ハ競爭セヨトハ言ハナイ、是
等トモ提携シテ東洋ニ於テ日本ノ糖業ハ現
狀ヨリモ更ニ大イニ伸ビナケレバナラヌ、
斯樣ニ感ジテ居リマスルガ、若シ私ノ言フ
ガ如ク、米ノ値ヲ下ゲタカラ砂糖ノ値モ下
ル、下レバソレダケ糖業者ガ儲カル、儲カ
ルノヂヤナイ、其ノ儲カル分ガアレバソレ
ダケハ砂糖ノ値ガ一般ニ下ッテ消費者ガ利益
ヲ得ベキ筈ト思ヒマスルガ、若シサウ云フ場
合ニ私ノ言フガ如キコトニナリマセウカドウ
カ、是モ當局ニ御伺ヲシタイノデアリマス、ソ
レカラ此ノ臺灣ノ統治デアリマスルガ、私共此
ノ問題ニ觸レテ色々意見ヲ聞イテ居リマス
ル、私共自分ノ體驗シタ所ト、或ハ英國ナリ
「フランス」ナリ、其ノ他各國ガ所謂植民地
ニ對シテ今迄施設シテ居ル所ト對照シテ、
日本ノ臺灣ナリ朝鮮ニ於ケル今日迄ノ結果
ハ其ノ歲月ニ比シテ效果ハ十分ニ段違ヒ
ニ擧ッテ居ルト確信シテ居リマス、如何ニ衞
生ガ發達シ、交通ガ普及シ、〓育モ向上サ
V、產業モ開發サレ、ドレダケ所在ノ文化
ガ進ンデ來テ居ルカ、固ヨリ是ハ共存共榮
デアリマスルガ、例ヘバ此ノ米ノ問題デモ、
要スルニ內地デ米ノ需要スルカラ臺灣ニ
於テ品質ノ改善ト、更ニ蓬萊米ノ今日迄ノ
非常ナ增產ヲ來シタノデアリマス、是ハ內
地デ需要スルカラデアリマス、又其ノ値段
モ臺灣ニ於ケル生產費ガ本デナクテ、內地
ニ於ケル米ニ對スル生產費ト云フモノガ目
度ニナッテ、此ノ價格ガ極ッテ居ルノデアリ
マス、此ノ米ガ臺灣ナリ、朝鮮カラ入ッテ我々
國民ガ自給自足シ得ルト云フコトハ仕合セ
ナコトデアリ、又サウ云フ新タニ產額ノ增
スコトニ依ッテ、朝鮮ナリ臺灣ガ富ンデ行ク
ト云フコトハ共ニ喜ブベキコトデアッテ、其
ノ惠ミニ浴シテ居ル以上ハ、今囘ノ如キ問
題ニ對シテモ一部ノ反對ハ私理由ハ乏シイ
カノヤウニ思フノデアリマス、日本ハ臺灣
モ朝鮮モ等シク憲法治下ノ民ヲ擁シテ居ッ
テ、祖先ノ一部モ同ジデアリ、人種モ同ジ
デアリ、地域モ相隣シテ居ルノデ、是ハ他
國ノ例ヲ以テ律スベキデナイノデアリマス、
從ッテ一視同仁ノ御聖旨ニ依ッテ、此ノ統治
ノ方針ヲ續ケテ行クト云フコトハ從來ト
モ、將來ニ通ジテ變ラヌ筈デアリマシテ、
確カ特別委員會デモ總理大臣ハ其ノ點ヲ言
明セラレタヤウニ聞イテ居リマス、私ハ更
ニ御聽キヲシタイノハ、寧ロ此ノ案ノ內容
ニ付テハ又後カラ討論サレル方モアルヤウ
デアリマスルガ、此ノ案ノ出タ形デアリマ
ス、言葉ヲ換ヘルト、臺灣ナリ朝鮮ナリ、
內地ハ米ノ問題ニ付テソレ〓〓〓竝竝ガガ
ハズニ獨リ步キヲシテ居ルト云フコトデア
リマス、申ス迄モナク米ハ日本ノ國民ノ常
用ノ〓糧デアリ、又國民ノ半バヲ占メル農
民ノ休戚ニ關スル大キナ問題デアリマスル
ガ、是ハ御承知ノヤウニ小麥ト違ッテ國際
的ノ品物トシテハ融通力ガ弱イノデアリマ
ス、世界ノ人類ノ約三分ノ一ノ常用食デア
リマスルガ、殆ド何レノ國ニ於テモ其ノ國
デ生產サレタモノヲ其ノ國デ消費シテ居ル
ノデアリマス、從ッテ何レノ國モ其ノ米ノ銘
柄ガ違ヒ、國民ノ好キ〓〓ガアリ、有リ餘ッ
テ出來タカラト言ッテ必ズシモ右カラ左ヘ
ト捌ケナイノデアリマス、從ッテ各國各〓自
足自給ト云フコトヲ十分ニ確保シナケレバ
ナラナイ、又近頃日本デハ此ノ米ノ自足自
給シ得テ居ルコトガ非常ニ喜バシイコトデ
アリ、又現時ノヤウナ時局ニ直面シテ、歐
洲大戰ノ際ノ「ヨーロッパ」各國ヲ想ヘバ、
是ハ非常ナ强味デアリマス、併シ此ノ强味
ガ此ノ儘續イテ行クモノカドウカト言ヘ
バ、多クノ檢討ヲ要スルト思ヒマス、デ此
ノ細長イ島國デ御承知ノ通リ、豪兩ガア
リ、颱風ガアリ、年ノ豐凶ニ依ッテ米ノ產
額ニハ相當ノ開キガ起ルノデアリマス、
從ッテ嘗テハ大正ノ四年頃ニハ一石ノ
米ノ値ハ十圓六十錢デアリマシタ、大正
九年ニハ五十五圓七十錢迄上ッテ居ルノデ
アル、大正ノ七年、八年、九年ノ交ハ一年
ノ間ニ米ノ値段ガ約二十圓ノ開キヲ生ジテ
居ルノデアリマス、爲ニ當時燒打騒動マデ
起シタコトハマダ記憶ニ殘ッテ居ル筈デア
リマス、デ大正九年デアリマシタカ米穀法
ガ出來テ、玆ニ統制ノ一步ヲ踏出シテ、爾
來幾多ノ變遷モアリマシタガ、兎ニ角隨分
國庫モ、數億ノ金ヲ使ヒマシテ、餘リ出來
ハ良イ方デハナカッタノデアリマスガ、兎
ニ角現行法ノ下デ、此ノ時局ニ際シテモ、
非常ニ米ノ需要ガ激增シタニ拘ラズ、我々
ハ米ノ値段カラ脅威サレルコトガナイ、
若シ是ガ在來ノ儘デアレバ、今迄ニ堂島
ナリ蠣殼町ノ取引所デ數囘立會ノ停止位ハ
アッタト思フノデアリマス、併シソレナラバ
此ノ儘デ宜イカト言ヘバ、ソレデ宜クナイト
云フコトガ現ニ今米穀ノ配給統制法案ガ掛
ケラレテ居ルノデアリマス、デ一方デハ數
年前カラ臺灣ノ移出米ノ管理案ガ問題ニナ
リ、又時ヲ違ヘテ米穀ノ配給統制法案ガ提
案サレ、私ハ是等ハ最モ密接ナル關係ガア
ルカラ、是程同一ノ委員ニ附託スベキモノ
ハナイト思フ位デアリマスガ、是モバラ〓〓
ニナッテ居ル、今度ハ朝鮮ハドウシテ居ルカ
ト云ヘバ、去ル九日ノ衆議院ノ委員會デア
リマシタカ、朝鮮モ其ノ點ニ付テ近ク統制
ニ關スル制令ヲ出ス、何レ追ッテ追加豫算モ
出スト云フノデ、兎ニ角此ノ步調ハ揃ッテハ
居ラナイノデアリマス、此ノ揃ハヌト云フ
コトガ、何デモナイヤウデアリマスルガ、
是ハ內地ト外地、又外地相互間ノ連繫ガ十
分デナイト云フコトデアッテ、私トシテハ深
キ憂ヲ懷イテ居ルモノデアリマス、內地ト
ノ連絡ノ不十分デアルト云フコトハ、委員
會デ政府委員モ言明シテ居リマスルカラ、
私ハソレヲ重ネテ申シマセヌガ、兎ニ角在
來ノ體驗ヲ以テシマシテモ、私共ハ臺灣ニ
居ル時ハ、米ノ燒打騷動カラ、次ノ內地ニ
米ガ足ラナイ、寄越セ〓〓ト云フノデ、櫛
ノ齒ヲ挽クガ如ク督促ヲ受ケタノデアリマ
ス、其ノ後臺灣ト云ハズ、殊ニ朝鮮デハ下
岡君ガ政務總監トナッテ、例ノ產米計畫ヲ出
シタノデアリマス、臺灣モ朝鮮モ非常ニ馬
力ヲ掛ケテ米ノ生產ニ掛カル、其ノ中今度
ハ內地ニ米ガ出來過ギテ來タ、米ノ値ガ下ッ
テ來タ、一體米ヲサウ寄越シテハイカヌ、
怪シカラヌト云フノデ、今度ハ寄越スナ〓〓
ト云フ催促ヲ受ケルコトニナッタノデア
リマス、無論米ニ豐凶ノ別ガアリ、其ノ產
額ニ差ガ生ズル以上ハ、或時ハ米ガ欲シイ、
或時ハ要ラナイト云フノハ是ハ極メテ自然
ナ話デアッテ、之ヲ私ハ兎ヤ角言フノデハア
リマセヌガ、唯サウシタ場合ニソレニ依ッテ
受ケル利害得失ト云フモノハ、內地モ外地
モ是ハ一樣ニ受ケタイト云フノガ私ノ希望
デアリマス、ソレデ非常ニ技術ヲ要シ面倒
ナ問題デアリ、内地ト臺灣ト朝鮮、ソレ〓〓
事情ヲ異ニシマスカラ、一律ニハ律シ難イ
ノミナラズ、又代用食糧品ノ問題モアレバ、
或ハ其ノ生產費ナリ、或ハ產額ナリ、或
又生計費等ニモ相當ノ開キガアリマスルカ
ラ、是等ヲ檢討シテ願クハ內地ナリ外地ノ
米穀ト云フモノヲ一ツニシテ檢討シ、又同
ジ內地米ナラ内地米ニシマシテモ、今提案
サレテ居ルヤウニ、商品化サレタ米バカリ
デナク、消費ニ屬スル米モ恐ラクハ四割以
上ニモ上リマセウカ、是等モ總テ纏メテ玆
ニ一貫シタ何等カノ國策ガ樹テラレタイノ
デアリマス、無論是ハ唯米ダケノ問題デナ
ク、延イテ農民ノ問題、詰リ農村問題ニ入
リマス、言フ迄モナク日本ハ島國デ、猫ノ
額ノヤウナ所へ人口ハドン〓〓增シテ、而
モ此ノ人間ガ外へ出タガラナイノデアリマ
スルカラ、次第々々ニ農業ハ集約的トナリ、
一人當ノ田畑ハ益〓少クナリ、農家ハ年ヲ逐
フテ疲弊スルバカリデアリマス、デ私ハ北
海道ノ高岡農學博土ノ言ニ、今日ノ日本ノ
農產物ハ、現在ノ從事シテ居ル人ノ半數デ
出來ルト云フコトヲ聞イテ居リマス、內地
ニ於ケル農會其ノ他ノ調べニ依リマシテ
モ、六割アレバ宜イトカ、或ハ五割五分ア
レバ宜イト云フヤウナ說モ聞イテ居ルノデ
アリマス、デ現ニ今囘ノ時局ニ直面シテ多
數ノ壯年ノ人々ハ戰地ニ出征シテ居リマ
ス、馬ハ夥シク徵發サレテ居リマス、更に
地方カラ村ヲ離レテ都會ノ重工業地ニ來
テ居ル者ハ尠クナイノデアリマス、而モ
昨年ノ米ノ收穫ハ餘リ例年ト變ラナイト
云フコトハ、ソレダケ少クナツタカラト
テ、同ジダケノ收穫ヲ擧ゲテ居ルノデ、所
謂ソレダゲ能率ガ擧ッテ居ル、是程喜バシ
イコトハナイノデアリマス、更ニ今議
會デハ當局デハ內地デ四百萬石ノ增產ヲ
圖ルト言ッテ居リマス、斯クノ如キハ要スル
ニ國民ガ奉公ノ念ニ燃エテ居ル、隣保相助
ケル、共同ノ作業モヤル、或ハ共同ノ機械
ノ利用デアルトカ、マア色々ノ綜合シタ結
果デアリマセウガ、要スルニソレダケ一人
當、又一戶當ノ能率ガ大キクナッタノデアリ
マス、從ッテ此ノ時局ニ直面シ、又此ノ時局
ノ將來ヲ通ジテ、前申シタヤウナ點ヲ考へ
レベ、ドウシテモ米ノ問題ニ付テモウ一ツ
深ク檢討シタ對策ガ立タレナケレバナラ
ヌ、是ガ私ガ當局ニ御伺ヒシタイ點デアリ
マシテ、是カラ壯丁ガ、愈〓時局ガ或時ニ終
リヲ〓ゲテ、內地へ引揚ゲタトスルト、其
ノ引揚ゲタ數ダケ今度ハ又能率ガ逆戾リヲ
スルノカ、或ハ又所在ニ失業問題ガ起ルノ
カ、私ハドウカ折角伸ビテ來タ能率ハ下ゲ
タクナイ、同時ニ是カラ滿洲ト云ハズ支那
ト云ハズ、各方面ニドン〓〓人ハ出テ行カ
ナケレバナラヌ、殊ニ滿洲ノ移民ノ如キハ
是ハ絕對ノ日本ノ國策デアッテ、之ニ依ッテ
明治維新以後少カラズ拂ッタ各幾多ノ犠牲
ガソコニ或意義ヲ生ジルノデアリマス、此
ノ多數ノ移民ガ行ッテ、是ガソコニ落著イテ、
其ノ所在ノ人ト手ヲ握ッテヤリ得ルト云フ
時ガ、謂所新東亞ノ建設ガ出來、或ハ五族
協和ノ實ノ擧ガル時デアルト思フノデアリ
マス、從ッテ玆ニ私共ガ臺灣米ノ增產デアル
トカ、減產デアルト云フ、ソレ等ニ付テ論
議サレルノヲ聽キナガラ、更ニ我々ノ將來
ヲ考ヘレバ、玆ニ一千萬町步以上ノ未墾地
ヲ抱擁シテ居ル滿洲ノ天地ヲ考ヘザルヲ得
ナイノデアリマス、デ農林大臣ハ就任マダ
日モ淺イノデアリマスルガ、旣ニ衆議院ニ
於テ是等ノ點ニ付テ意見ヲ御述ニナッテ居
ルヤウニ承知シテ居リマス、ドウシテモ內
地外地、更ニ滿洲、尙一步ヲ進ムレバ支那、
是等ノ方面迄通ジテ此ノ時局中、又時局ノ
濟ンダ後ヲ考ヘテ、更ニ進ンダ米穀ノ國策
ガ樹テラレナケレバナラナイト思ヒマスル
ガ、此ノ點モ御意見ヲ承リタイノデアリマ
ス、大體滿洲ノ移民モ、或ハ此ノ都會地ニ
出ル靑年モ、今日迄ハ此ノ不規則ニ、統制
ナシニ出テ居リマスルガ、ソレガ爲ニハ或
農村デハ若イ連中ガ纏ッテ引拔カレテシマ
ウ、後ガ困ルノデアリマス、是ハ込ミニシ
テ、此ノ農民ノ進出、殊ニ滿洲ニ參ル移民
ハ、御承知ノ長野縣デ其ノ端ヲ啓イテ居ル
分村移民、其ノ村ヲ縱ニ割ッテ分村スルト云
フガ如キハ、殊ニ考フベキ仕方デアラウト
思ヒマス、斯クノ如クシテ一人當、一戶當
ノ農業ニ對スル能率ガ擧ル、同時ニ此ノ狭
イ限リアル土地ニ、限リナク殖エル人口ノ
調節モ考ヘラレレバ、更ニ一戶當ノ田畑ガ
比較的在來ヨリモ擴ゲラレルコトニ依ッテ、
玆ニ農家ノ生活ガ安定ヲスル、所謂一石三
鳥ノ策デアラウト思フノデアリマス、言フ
迄モナク內地ト臺灣、朝鮮ハ、申サバ親子
ノ間デアリ、臺灣ト朝鮮ハ兄弟ノ間デアリ
マス、デ是等ノ間ニ絕エズ十分ノ連繫ヲ取ツ
テ行クト云フコトニ、所謂拓務省ト云フモ
ノガ設ケラレテアルノデアリマス、是ハ在
來內閣ニ直屬シテ拓殖局ト云フ制度ニ依ッ
タ時モアリマスルガ、主管大臣ガ內閣總理
大臣デアルト、自分ノ直屬ノ部局ニ目ガ屆
カナイノデアリマス、是ハ各省ノ仕事ヲ目ヲ
通シテ裁カナケレバナリマセヌカラ、各省大
臣ガ各〓其ノ省ノ部局ヲ見ルガ如キ熱意ヲ、
總理大臣ノ其ノ直屬ノ部局ニ望ムコトハ無
理デアリマス、言フ迄モナク旣ニ三千萬ニ
近イ民衆ヲ代表スル一ツノ省ガナケレバナ
ラズ、又日本ノ國民ヲシテ、高所ニ立ッテ廣
ク海外ヲ常ニ念トスルト云フ思想ヲ普及ス
ル上カラ言ッテモ、玆ニ拓殖省ノ必要ハアリ
マス、サウシテ此ノ拓務省ノ大臣ガ閣議ニ列
シ、有ラユル問題ガ耳ニ觸レ、目ニ觸レル每
ニ、是ハ外地ニハドウ響クカト云フコトニ
考慮ヲ續ケル、此ノ點ガ若シ十分ニ其ノ機
能ヲ發揮サレタナラバ、例ヘバ今囘ノ如キ
事態モ私ハ起ラヌ筈ダト思フノデアリマス、
是ハ無論私ガ一拓務省ニ付テノミ申スノデ
ハナクテ、各省ニ於テモ兎角割據ノ弊ガア
リ、殊ニ外地ニ對シテハ動トモスレバ之ヲ
看過シ易イノデアリマス、一例ヲ以テ申セ
バ、此ノ各省ニ色々ノ委員會ガアリマスル
ガ、或ハ〓育制度ノ委員會ガアル、或ハ體
力管理ノ委員會ガアル、或ハ貯蓄奬勵ノ委
員會ガアル、或ハ中央物價ノ委員會ガアル、
サウシタ委員會ノアル時每ニ、ソレ等ノ問題
ガドウシテモ外地ノ人モ其處ニ列シテ協力
モスベキデアル、或ハ討議モスベキ筈デア
リマス、處ガ動トモスレバソレガ缺ケテ、
拓務省ノ代表者スラ拔ケルコトガアリ、又
今度ハ朝鮮ナリ臺灣ニ禾資會ガアッテ、内地
カラハ多數ノ委員ガソレニ參加シテ居ッテ
モ、兄弟同志ノ代表ガ拔ケテ居ルト云フコ
トハ珍ラシクナイノデアリマス、私ハドウ
カ拓務省ガモット强化サレタイ、ソレカラ各
省ハ常ニ矢張リ外地ヲ考ヘテ欲シイ、ソレ
スラモ忽セニシテ何ノ新東亞ノ建設ゾヤト
言ヒタイノデアリマス、外地ノ大官ハ權限
モ大キイノデアリマスカラ、拓務省ノ立場
モ他ノ省ノ如クハ參リマセヌガ、外地ノ大
官モ時ヲキメテ同ジヤウニ上京ヲシテ、ソ
レゾレ會合モシ、打合セモスル、サウシテ
或國策ヲ行フトシテモ喰違ヒノ起ラナイヤ
ウニ、例ヘバ朝鮮ハ朝鮮デ直グ志願兵ガ出
來テ行ク、臺灣ハ臺灣デ移出米管理ヲヤル、
其ノ時ハ互ニ相當民心ヲ衝動スルダケノ刺
戟ガアルノデアリマス、ドウカ私ハ此ノ法
案ノ出マシタノヲ機トシテ、問題ハ實ハ臺
灣米ノ如クニシテ、ソレハ臺灣カラ朝鮮、
內地、滿支ヲ通ジタ米ノ問題デアル、同時
ニ是ハ米ダケノ問題デハアリマセヌ、今日
ハ時局ニ際會シテ居リマスカラ、時局ノ解
決ト云フコトニドウシテモ專ラニナルノガ
當然デアリマセウガ、併シ又斯ウ云フ時デ
アルカラ、可ナリ思ヒ切ッタ案モ皆斷行シ得
ルノデ、平時ニ戾ッタナレバ、多クハ議論倒レ
ニ終リ易イノデアリマス、此ノ內閣ハマダ
組閣日ガ淺イノデアリマシテ、而モ內外益〓
多事多端デ、其ノ間御心勞ノ程ハ察スルニ
餘リガアルノデアリマスルガ、ドウカ前申
シタヤウチ國策ニ付テ是非一ツ檢討サレ、
又案ヲ樹立シテ戴キタイ、是等ノ點ニ付テド
ウ御考ニナッテ居ルカ、此處ニ質問ヲシタ
所以デアリマス、會期切迫ノ時ニ長ク御清
聽ヲ煩ハシテ深ク感謝致シマス(拍手)
〔國務大臣八田嘉明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=28
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029・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今下村サンカ
ラノ御尋ニ對シマシテ、拓務省ノ關係ニ付
キマシテ一應御答ヲ申上ゲタイト存ジマス、
第一ニハ今囘ノ臺灣ニ於ケル移出米ノ管理
案ニ付キマシテ、精業トノ關係ニ付テノ御
尋デアリマス、是ハ御說ノ如ク米ノ買上値
段ガ下レバ、自然甘蔗ノ値段モ下ッテ來ル、
是ガ自然デアル、此ノ點ニ付テ如何ニ考へ
ルノカト云フコトデアリマスルガ、御說ノ
通リデアルト私モ考ヘルノデアリマス、唯
委員會等ニ於キマシテ屢、、應答申上ゲマシタ
ル通リ、此ノ場合一方ニ於テ米ノ買上値段
ガ下ルト同時ニ、甘蔗モ下ルト云フコトニ
相成リマスルト云フト、急激ナル農民ノ經
れ上ニ影響ガアリマシテハ困リマスルノデ、
此ノ點ヲ緩和セムガ爲ニ、特ニ糖業令ヲ此
ノ管理案ト同時ニ臺灣總督府ニ於テハ施行
致シマシテ、其ノ甘蔗ノ作付面積及甘蔗ノ
買上値段ナルモノヲ許可制ニ致シマシテ、
此ノ間ノ調節ヲ取リマシテ、農民ノ全般的
ノ經濟ノ上ニ急激テル變化ノナイヤウニ致
シマシテ、其ノ間米作ノ將來及其ノ他ノ作
物ノ奬勵竝ニ甘蔗等總テノ農作物ノ改善進
步ヲ圖リマシテ、島民ノ恆久的福利ヲ增進
スルト云フコトヲ考ヘツヽ、此ノ點ヲ最モ效
果的ニ調節致シテ行キタイト云フ關係デ、糖
業令ヲ發布シテ、只今御說ノ如キ自然ニ放ツ
テ置キマスレバ、左樣相成ルコトヲ調整致
シテ參リタイト云フ趣旨デアルノデアリマス、
第二點ノ內外地トノ米穀ノ需給調整ノ問題
ニ付テノ御尋デアリマスルガ、全ク御說ノ
通リデアリマシテ、過去ニ於キマシテハ動ト
モスレバ外地ニ於ケル所ノ米穀ノ關係ニ於
キマシテハ、內地カラハ消極的ナ取扱ヲ受
ケテ居ッタト考ヘルノデアリマス、今囘此ノ
米穀移出管理案ニ伴ヒマシテ、是等ノ點ハ
全然改善致シマシテ、今後ニ於キマシテハ
臺灣ハ勿論朝鮮ニ於キマシテモ、內地ニ於
ケル所ノ米穀需給政策ト全ク緊密ナル連絡
ヲ取リマシテ、新時代ニ相應シタ所ノ米穀
需給對策ヲ遺憾ナカラシメムトスルモノデ
アリマス、之ニ付キマシテ拓務省ト致シマ
シテハ、御說ノ如ク從來決シテ內地、外地
ノ此ノ問題ニ對シテ連絡、協調ヲ圖ラナカツ
タト云フコトデハナイノデアリマスルガ、
只今御述ニナリマシタ中ニモアリマシタ通
リ、又私ガ只今申上ゲマシタルヤウナ過去
ニ於ケル所ノ此ノ米穀需給ノ關係カラ致シ
マシテ、十分其ノ效果ヲ擧ゲ得ナカッタコ
トハ御說ノ通リデアリマス、今後ニ於キマ
シテハ新東亞ノ態勢ニ基キマシテ、一層緊
密ナル連絡ヲ執ッテ、遺憾ナカラシメムト存
ジテ居リマス、唯茲ニ御諒解ヲ願ッテ置キタ
イコトハ、內地ト外地トハソレ〓〓密接ナ
ル連繫ヲ執ラナケレバナラヌノデアリマス
ルガ、同時ニ亦外地ト外地トニ於キマシテ
ハ其ノ間民度、或ハ經濟等ノ異ナル點モ
アリマスルノデ、必ズシモ全ク同一ナ取扱
ヲ外地ト外地ノ間ニ於テハ出來ナイ場合モ
想像サレルノデアリマスルケレドモ、苟モ
內外兩地ニ於キマシテハ、不可分ノ關係ニ
於キマシテ十分ナル緊密ナル取扱ヲ致シマ
スルコトハ申上ゲル迄モナイ次第デアリマ
ス、滿洲ノコトニ付キマシテハ拓務省ト致
シマシテ、移民地ノ農作關係ニ付キマシテ
ハ十分ナル關心ヲ持ッテ居ル次第デアリマ
スルガ、此ノ點ニ付キマシテ、米穀ニ關ス
ルコトニ付キマシテハ農林大臣ヨリ御答ガ
アリマスト存ジマスルノデ、私ハ其ノ點ヲ
差控ヘタイト存ズルノデアリマス、今囘臺
灣ノ米穀管理案ニ伴ヒマシテ、一ツハ內
地ノ米穀需給策ニ對應致シマシテ、朝鮮ニ
於キマシテモ御承知ノ通リ米ノ市場ノ會社
ヲ新設スルコトニ決定致シ、又移出米ニ對
シマシテハ移出組合ヲ設ケマシテ萬遺憾ナ
キヲ期シテ居ルヤウナ次第デアリマス、尙
此ノ機會ニ一言申シ添へタイコトハ、只今
御論ノアリマシタル點ニ付キマシテハ全ク
同感ニ考ヘル次第デアリマスルノデ、本管理
案ノ實行ニ伴ヒマシテハ、臺灣ニ於ケル所
ノ精神的竝ニ經濟的ニ於テ、將來ニ亙リマ
シテ十分ナル考慮ヲ拂フコトニ付キマシテ
ハ、拓務省ト致シマシテモ總督府ト十分密
接ナル連繫ヲ保チツヽ善處致シタイト存ズ
ルノデアリマス、一言此ノ點ヲ申シ添ヘマ
シテ、御答ト致ス次第デアリマス
〔國務大臣櫻內幸雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=29
-
030・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 下村サンノ私ニ
對スル御質疑ニ對シテ御答ヲ致シマス、日
本ノ米穀政策ニ付キマシテハ、只今下村議
員ノ御話ノ如ク、從來米ノ不足シタル場合、
米ノ剩餘ヲ見タ場合ニ於キマシテ、各〓〓
ナッタ政策ヲ執ッテ居リマス、之ニ鑑ミマシ
テ所謂米穀法ガ生レ、米穀統制法ガ生レ、
近ク米穀自治管理法案ガ生レタノデアリマ
スケレドモ、尙是ニテハ配給統制ガ十分デ
ナイト考ヘマシテ、本議會ニ米穀配給統制
法案ヲ出シタ次第デアリマス、要シマスル
ノニ米價ノ安定ヲ圖ルト云フ事柄ガ、是ハ當
然必要ナコトデアリマシテ、此ノ點ニ主眼ヲ
置キマスト同時ニ、米ノ配給ヲ圓滑ニシテ、
其ノ偏在ヲ防ギタイ、斯樣ナル趣旨ニ於テ
今日進ンデ居ルノデアリマスガ、全般的ニ
申上ゲマスト、大體ノ方針ト致シマシテ
ハ、日本ノ內地、外地ヲ通ジテ生產シタル
米ニ依ッテ其ノ需要ヲ充シタイ、而シテ多
少餘剩ノアルモノニ致シテ置キタイ、斯樣
ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、從ヒマシテ常
ニ朝鮮、臺灣、卽チ外地ト內地トノ間ニ密
接ナル關係ヲ執リマシテ、年々凡ソ此ノ位
ナ數量ヲ朝鮮ニ於テハ生產シテ戴キタイ、
臺灣ニ於テハ生產シテ戴キタイ、斯樣ナル
數量ヲ定メテ御協力ヲ願ッテ、其ノ方針ニ
進ミツツアルノデアリマス、從ヒマシテ今
後ニ於キマス所ノ年々國民ノ增加ニ伴フ
米ノ消費ノ增加ニ對シマシテモ、十分考慮
ヲ拂ッテ案ヲ立テテ居ル譯デアリマス、唯御
話ノ如ク農村ノ勞力ヲ節約シテ、而シテ之
ヲ他ノ方面ニ於テ活動セシムル、卽チ今下
村サンノ御話ノ如ク、現在ノ農村ノ人口全
部ヲ使ハズトモ、今日ノ生產ハ出來ルデハ
ナイカト云フ風ナ議論モアルノデアリマス、
併シナガラ實際問題ト致シマシテハ左樣ニ
簡單ニ參ラナイノデアリマシテ、今日ニ於
テハ實ニ農村ノ人々ガ如何ニ苦勞サレテ居
ルカト云フコトニ付キマシテハ、私共見テ
居ッテ感激ニ堪ヘナイヤウナ次第デアリマ
ス、卽チ今日農村ガ勞力ガ餘ッテ居ルト云フ
コトハ、私ハ左樣ニハ考ヘナイノデアリマ
ス、併シナガラ將來事變ガ濟ミマシテ、出
征將士ガ歸國サレル、又重工業ニ從事サレ
テ居ル人々ガ農村ニ歸ル場合ガアリト假定
致シマスルナラバ、固ヨリ農村ニ於テハ多
少ノ力ガ餘ルダラウト思ヒマス、從ヒマシ
テ所謂分村移住計畫ト云フモノヲ立テマシ
テ、滿洲ニ向ッテ移住ノ案ヲ立テテ居ルノデ
アリマスガ、所謂各村ニ於ケル所ノ、所有
シテ居ル所ノ田畑ト人口トヲ睨ミ合ッテ、サ
ウシテ其ノ餘剩ノアル村々ニ付テ滿洲移民
ヲ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ其ノ計畫ヲ進メ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、固ヨリ將來ニ
於キマシテハ單ニ內地、外地バカリデハナ
ク、滿洲トハ離ルベカラザル關係ガアルノ
デアリマスカラシテ、此ノ點ニ付キマシテ
ハ之ヲ綜合的ニ見合ッテ、滿洲國トモ協議ヲ
致シ、更ニ進ンデハ北支ナドトモ話合ヲ致
シマシテ、今後ニ於ケル米穀ノ方針ヲ立テナ
ケレバナラヌコトハ申ス迄モナイノデアリ
マス、滿洲ハ尙開墾ノ餘地ノアルコトハ只
今御話ノ通リデアリマシテ、私共モ非常ニ
心强ク感ズルノデアリマスルガ、只今ノ所
デハマダ米ノ生產ハ極メテ幼稚デアリマシ
テ、私ノ管轄デアリマセヌカラ正確ノ數字
ハ存ジマセヌガ、大體ニ於テ昭和十二年ニ
計畫ガ立テラレテ、籾デ九百萬石穫ルコト
ト相成ッテ居ルノデアリマシテ、昨年ハ確カ
籾デ八百萬石カ生產ガアッタト考ヘマス、而
シテ此ノ田地ノ開墾及耕作ニ付キマシテハ、
許可制度ニナッテ居ルノデアリマシテ、日本
ノ移民ト見合ッテ、向フノ米食者ノ需要トモ
見合ヒマシテ計畫ガ立テラレテ居ルヤウデ
アリマス、卽チ五箇年計畫ト云フモノガ立ツ
テ居ルヤウデアリマス、而シテ之ヲ取扱ヒ
マスノハ滿洲糧穀株式會社ト云フ會社ガ出
來マシテ、之ニ於テ一手ニソレヲ買集メテ、
サウシテ之ヲ一般ニ配給致シテ居リマス、
外ヘ出スノモ、外カラ米ヲ輸入スルノモ、
總テ許可制度トナッテ統制ヲ致サレテ居リ
マス、從ヒマシテ將來ニ於ケル所ノ滿洲ノ
生產增加ト云フコトニ付キマシテハ、滿洲
國ト農林省其ノ他拓務省等ト十分ニ相談ヲ
致シマシテ、此ノ農產ノ增加ノ計畫ヲ立テ
ナケレバナラヌコトハ固ヨリデアリマシテ、
昨年カラ此ノ問題ニ對シテ協議ヲ致シテ居
ルヤウナ譯デアリマス、內地ト外地ニ付キ
マシテハ、只今申上ゲマシタ通リ農林省ニ
於テ計畫ヲ立テ、朝鮮竝ニ臺灣等ニ御願ヲ
シテ、相當ノ石數ヲ生產シテ戴イテ居ルノ
デアリマスガ、唯所謂生產費、卽チ米ヲ生
產スル原價ト云フモノガ相當大キナ開キガ
アルノデアリマシテ、臺灣ト內地デ申シマ
スレバ約八九圓、內地ト朝鮮デ申シマスレ
バ四圓內外ノ生產費ノ開キガアリマス、從
ヒマシテ此ノ米ノ生產增加ニ付キマシテハ、
固ヨリ常ニ內地ノ農村ト見合ッテ、而シテ總
テノ生活ノ安定ト云フコトヲ基準ト致シマ
シテ方針ヲ立テテ居ルヤウナ譯デアリマシ
テ、今後ニ於キマシテモ此ノ點ニ付キマシ
テハ各省竝ニ各方面トモ十分ノ連絡ヲ取ツ
テ、一面ニ於テ需要ノ供給ニ缺陷ノナイヤ
ウニ、又生產ノ上ニ於テ生產ヲ萎靡サセナ
イヤウニ、十分ナル注意ヲ致シタイト斯樣
ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=30
-
031・下村宏
○下村宏君 簡單デアリマスカラ此ノ席カ
ラ御許シ願ヒタイト思ヒマス····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵朴平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=32
-
033・下村宏
○下村宏君 只今ソレ〓〓御答辯ヲ戴キマ
シテ滿足ノ意ヲ表シマス、尙更ニ申添ヘタ
イ點モ少クナク、又多少御意見ヲ伺ヒタイ
節モアルノデアリマスガ、此ノ際私ハ是デ
質問ヲ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ一時休憩
ヲ致シマス、午後ハ二時ヨリ開會致シマス
午後零時十三分休憩
午後二時十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴義君) 休憩前ニ引續キ
マシテ開會致シマス、昨二十二日、正三位
勳三等子爵豐岡圭資君薨去セラレマシタ、
誠ニ哀悼ノ至リニ堪ヘマセヌ、就キマシテ
ハ弔詞ヲ御贈リ致シタイト存ジマス、御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=35
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036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴義君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十、臺灣
米穀移出管理特別會計法案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會ノ續、此ノ議事ヲ繼續
致シマス、討論ノ通知ガゴザイマシタ、御
許ヲシマス、永田秀次郞君
〔永田秀次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=37
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038・永田秀次郎
○永田秀次郞君 私ハ只今日程ニ上リマシ
タ豪灣米穀移出管理法案ニ對シテ贊成ヲ表
スル者デアリマス、本案ガ提出サレマシテ、
本會議竝ニ委員會ニ於キマシテ種々ノ論議
ガ行ハレ、或ハ本案ヲ以テ臺灣ノ統治上重
大ナル惡影響ヲ及スモノデナイカト迄論議
サルヽ方モアリマシタノデアリマス、自分
ハ二年程前ニ拓務ノ當局ニ居リマシタ責任
上、此ノ際本案ニ對スル玆ニ贊意ノ理由ヲ
申述ベルコトヲ、自己ノ責務ト感ズルノデ
アリマス、本案ニ贊成致シマスル理由ノ第
一點ハ、私ハ本案ヲ以テ臺灣米穀移出管理
ヲスルコトガ、極メテ公正妥當ナル方策デ
アルト信ズルカラデアリマス、本案ノ骨子
ヲ成ス所ハ、臺灣ノ米穀ヲ移出スルヤウナ
移出米ニ對シテ、總督府ニ於テ移出米ヲ管
理シ、サウシテ一定ノ價格、卽チ生產費竝
ニ物價及經濟事情ヲ斟酌シタ其ノ一定ノ價
格ニ於テ移出米ヲ買上ゲ、サウシテソレヲ
更ニ二圓高ク賣ルト云フコトニナッテ居ルノ
ガ其ノ內容デゴザリマス、之ニ對シテ或ハ
此ノ二圓高ク賣ルト云フコトハ、要スルニ
臺灣ノ農民カラ二圓ノ利益ヲ奪フ所ノ無理
ナ法案デハナイカト云フコトガ、能ク考ヘ
ラレルノデアリマス、一見左樣ニ考ヘルノ
モ無理ハナイヤウニ思ヒマスルガ、併シ之
ニ對シテハ米穀特有ノ種々ノ事情ガアリマ
スルカラ、非常ニ達觀シタル常識ガ必要デ
アルト思ヒマス、其ノ大局的ノ達觀シタ常
識ノ上ニ立ッテ、之ヲ判斷スベキモノデアル
ト考ヘマス、申ス迄モナク日本ノ米ト云
フモノハ、日本人ニ絕對ニ必要ナモノデアッ
テ、外ノモノヲ以テ代用スルコトガ出來ナ
イト云フ性質ヲ持ッテ居リマス、又餘ッタ時
分ニ、之ヲ小麥ノ如クニ外國ニ賣ルト云フ
コトノ出來ナイ性質ヲ持ッテ居リマス、更ニ
又不足シタ時分ニハ、凶作デモアルト云フ
ト、ソレニ買占メ、賣リ惜ミガ伴ッテ、忽チ
米騒動ガ起ルト云ッタヤウナ結果ヲ起シ、サ
ウシテ豐作デアルト云フト、忽チニシテ暴
落ヲスルト云フヤウナ極メテ微妙ナ性質ヲ
持ッテ居ル、更ニ今一ツ是ハ貯藏ガ甚ダ困難
デアル、斯ウ云ッタヤウナ特殊事情ノ下ニア
ルノガ日本ノ米デゴザリマス、更ニ又日本
ノ農民ハ米作以外ニ、米作ガ不利益ダカラ
ト云ウテ、適當ニ轉業スルト云フヤウナコ
トハ容易デアリマセヌ、從ッテ若シ米作ヲシ
テ居ル者ガ、餘リニ米ガ安過ギマスト云フ
ト、其ノ生活ガ困難ニナリマス、斯ウ云フ
ヤウナ特殊ノ事情ノアルモノデアリマ
スカラシテ、之ニ對シテ生產費以上ノ價格
ニ更ニ或程度ノ生活シ得ル利潤ヲ加ヘ
タ一定ノ價格ヲ持タシメナケレバナラヌト
云フ、一種特別ノ商品デアルノデアリマス、
其ノ爲ニ從來種々ノ困難ニ遭遇シマシテ、
現在デモ御承知ノ通リニ米穀法ヲ行ヒ、度々
農林省デ米ヲ買上ナド致シマシテ、或
定ノ價格ヲ保ツコトニ苦心努力ヲシテ居リ
さく、其ノ結果內地ノミノ犠牲損害ニ於テ
多額ノ損害ヲ負擔シテ、此ノ米價ノ高イ値
打ヲ維持シテ居ルト云フノガ今日ノ狀態デ
ゴザイマス、而シテ一面內地ト臺灣トノ
米作ニ付テ考究ヲシテ見マスルト、臺灣ハ
米作ニ付テ極メテ幸福ナル條件ニ惠マレテ
居リマス、卽チ臺灣ノ生產費ト內地ノ生產費
トヲ比較シテ見マスルト、內地デハ米一石
ニ付テ二十八圓六十錢ノ生產費ガ掛ル、又
臺灣デハ之ニ對シテ二十圓五十一錢デアリ
マシテ、其ノ差ガ八圓九錢ト云フコトニナッ
テ居リマス、生產費ト云フモノノ計算ハ誠
ニ困難デアリマシテ、私ハ是ガ極メテ正確
ナモノデアルト申上ゲルダケノ自信ハ持ッテ
居リマセヌガ、常識上考ヘテ、先ヅ常識ニ
於テ承認シ得ルヤウナ數字デアルト思ッテ
居ルノデアリマス、又臺灣ニ於キマシテハ、
農家ノ租稅ノ負擔ハ米一石ニ付テ九十六錢
ト云フ割合ニナッテ居リマスルガ、內地ニ於
テハ二圓二十二錢ト云フヤウナコトニナッテ
居ッテ、臺灣ノ方ガ內地ヨリモ一石ニ付テ半
分ニ足ラヌト云フヤウナ有利ナ條件ニ居リ
やく、加フルニ臺灣デハ二毛作デアル、內
地ノ如ク一毛作デナイ、斯クノ如キ事情ハ
非常ニ臺灣ノ米ヲ作ル者ニ有利デアリマシ
テ、內地ノ者トハ比較ニナラヌ有利ナ狀態
ニ居ルノデアリマス、デ米ノコトニ付テ考
ヘテ見マスルト、斯ウ云フ軍國ノ際デモ我
我ハ〓糧ニ心配シテ居ラヌ、ソレハ一面困ッ
タ時分ニハ臺灣デ作ッテ貰ッタラ宜カラウ
ト云ッタヤウナ氣持ガアルノデアリマシテ、
我々ハ臺灣デ米ガ出來ルト云フコトノ爲ニ
大イニ安心ガ出來ルノデアリマス、從ッテ我
我ハ內心ニ於テ深ク臺灣ノ爲ニ感謝シテ居
ルノデアリマス、併シナガラ是ト同時ニ臺
灣ノ人カラ見ルト云フト、臺灣デ米ヲ有利
ニ作レルト云フ理由ハ何處ニ在ルカ、卽チ
主トシテ内地ガアル爲ニ臺灣ガ有利ナノデ
アリマス、內地ガナケレバ蓬萊米ヲ作ッテモ
賣レマセヌ、蓬萊米ガ高ク賣レルト云フノ
ハ內地ガアル爲ニ高ク賣レルノデアリマ
シテ、此ノ點ハ先ヅ臺灣ノ人モ內地ニ對シ
テ感謝スベキ狀態ニ居ルノデアリマス、サ
ウシテ又更ニ先ニ述ベマシタルガ如ク、特
殊ノ事情ノ爲ニ內地ニ於テハ內地ノミノ犠
牲ニ依リ、内地ノミノ計算ニ依ッテ、高價ナル
米價ヲ維持シテ居ルノデアリマス、其ノ爲
ニ其ノ結果ハ臺灣ニ意外ナル、幸福ナル狀
態ヲ持チ來シマシテ、臺灣ノ米ガ矢張リ高
ク賣レル、斯ウ云フコトニナツテ居ルノデア
リマス、斯クノ如キ狀態ヲ公正ニ考ヘテ見
マスルト、今日意外ニ幸福ニ居ルト云フ米
價高イ値段、之ヲ其ノ中カラ二圓ダケ總
督府ニ於テ取ルト云フコトニ致シマシテモ、
恐ラク臺灣ニ於ケル農家ハ內地ニ比シテ尙
幸福ナル狀態ニアルト云フコトハ疑フベカ
ラザル事實デアルト考ヘラレマス、デ臺灣
ハ宜シク內地ニ感謝スベク、內地ハ宜シク
臺灣ニ感謝スベキ所ノ米穀ノ狀態デアリマ
シテ、サウシテ臺灣デハ意外ナル幸福ナル
狀態ニ居ルノデアリマスカラ、、此ノ
機會ニ共ニ倶ニ國家ノ進運ニ貢獻シ、相扶
ヶ、相步ム所ノ精神ヲ發揮シテ、困難ハ共
ニ之ニ當リ、苦病ハ共ニ之ヲ分ット云フヤ
ウナ精神ニ於テ、臺灣カラ二圓ノ米價ヲ臺
灣總督府ニ於テ徵收スルト云フヤウナコ
トハ、道義ノ觀念カラ見マシテモ、私ハ
決シテ無理ナ行キ方デナイト思ッテ居リマ
ス、又懷ロ勘定カラ考ヘマシテモ、決シテ
臺灣農民ガ堪へ得ラレナイヤウナ狀態デア
ルトハ思ハレマセヌ、卽チ本案ハ道義上竝
ニ懷勘定カラ見マシテ、常識上決シテ無理
ナ法案ニ非ズ、公正妥當ナル方法ナリト信
ズル所以デアリマス、更ニ私ガ本案ニ對シ
テ贊意ヲ表スル第二ノ理由ハ、今日時局ノ
際ニ於テ、〓糧問題ニ我々ハ心配シテ居ラ
ヌガ、此ノ食糧問題ニ付テ增產ヲ必要ト致
シテ居リマス、然ルニ此ノ增產ノ必要ノア
ル場合ニ本法ヲ施行シマシテ、臺灣カラモ
米ヲ作ラスガ、內地ニ於テモ米ヲ餘計ニ增
產セシメル、朝鮮ニ於テモ增產セシメル、何
レノ外地モ、內外共ニ相俟ッテ增產セシメル
ト云フ方策ヲ執ルト云フコトガ、是ハ極メ
テ思慮分別ニ富ンダ方法デアルト信ズルガ
故デアリマス、本案ハ極メテ思慮分別ニ富
ンダ法案デアルト私ハ信ジマスルコトガ、
卽チ本案贊成ノ第二ノ理由デアリマス、之
ニ付キマシテモ亦斯ウ云フ考へ方モアリマ
ス、今時局ノ際ニ、米穀、食糧ガ多量ニア
ルコトガ必要ナノデアルカラ、出來易イ所
デウント拵ヘサシタラバ宜イヂヤナイカト
云フヤウナ考ヘ方ガゴザイマス、是モ一應
尤モナコトノヤウニモ思ハレマス、併シナ
ガラナカ〓〓米ト云フモノヲ判斷スルノニ
ハサウ簡單ナ狀態ニ參ラヌト云フコトガ事
實問題デゴザイマシテ、議論ヲシテ、是ガ
方針ニ矛盾ヲシテ居ルトカ、矛盾ヲシテ居
ラヌトカ云フモノデナクシテ、事實ニ立脚
シテ是ガ正當ナル實際的ノモノデ有ルカ無
イカト云フコトヲ判斷スル必要ガアルト思
ヒマス、極ク生々シイ實例デアリマスルガ、
私ガ拓務省ニ居リマシタノハ僅ニ二年前ノ
コトデアリマス、然ルニ其ノ時ハ、米ノ相
場ガ安クテ困ル、ソレデ內地デハ減反ヲシ
ロ、米ヲ作ル所ノ反別ヲ減ラセト云フヤウ
ナ議論ガ行ハレマシタ又朝鮮ニ於キマシ
テハ產米增收計畫ト云フモノガアッタノヲ、
ソレヲ中止シテ、水利ヲ利用スルト云フヤ
ウナ施設ヲ一切廢メテシマッタノデアリマ
ス、又臺灣ニ於キマシテモ有ラユル米穀增
產ノ施設ヲ····水利竝ニ各增產ノ施設
ヲ、是ハ進ンデ禁止シテ居ルノデアリマス、
サウ云フヤウナ狀感ヲ經テ、ドウニカ斯ウ
ニカ、米價ヲ餘リニ安クナラヌヤウニト云
フコトニ苦心慘澹シタノデアリマシテ、當
時自分ガ當局者トシテ屢〓兩院ニ於テ、何故
ニ臺灣ニ米ヲ作ラスカ、コンナニ澤山米ヲ
作ラスカト云フコトニ付テ、色々ノ論難ヲ
蒙ッタノデアリマス、是ガ僅カ二年前ノ事柄
デゴザイマス、然ルニ今日ハ之ニ反シテ何
故ニ臺灣ニ自由ニ米ヲ作ラサナイカト云フ
方面カラ、反對ノ方面カラノ論議ヲ聽クニ
至リマシテハ、誠ニ今昔ノ感ニ堪ヘマセ
又、デ是ガ又更ニ今二年ヲ經過シタ時分ニ
ハドンナ風ガ吹キマスカ、我々ハ之ヲドウ
モ斷言スルコトガ出來ナイノデゴザイマ
ス、デ若シ之ヲ自由ニ放任シテ統制ノ策ヲ
採ラズシテ、出來ル所デ米ヲ作ラスト云フ
ヤウナ方策ヲ採リマシタナラバ、恐ラクハ
臺灣ニ於テハ滔々トシテ決河ノ如キ勢ヲ以
テ米ガ激增スルニ相違ナイト考ヘラレマ
ス、今年ハソレデ宜イカモ知レマセヌ、併
シナガラ是ガ又二年位經ッタ先ニ於テ、餘リ
ニ臺灣ニ澤山ノ米ガ出來タ、サウシテ內地
ニ於テハ重工業ノ人ガ餘ッテ來タトカ、或ハ
戰地カラ戾ッテ來タ、勞力ガ十分ニナッテ來
タト云フヤウナ場合ニ、又復二年前ノ、相當
ニ、今日以上ノ困難ニ蓬著スルコトノナキヤ
ト云フコトヲ私ハ憂ヘザルヲ得ナイノデア
リマス、故ニ二年前ノ餘リニ苦シキ經驗、苦
キ經驗ヲ嘗メテ居リマスルト、今日其ノ事
ヲケロリト忘レテシマフノハ餘リニ健忘症
ト云ッテモ、忘レ方ガ鮮カ過ギルト思フノデ
アリマス、デ私ハサウ云フコトヲ考ヘテ見
マスルト、增產計畫ヲ立テルニ於キマシテ
モ、內地ニモ矢張リ增產計畫ヲ立テサス、
臺灣ニモ、朝鮮ニモ增產計畫ヲ立テサスト
云フコトハ、誠ニ何ダカ迂遠ナヤウニ考ヘ
ラレ、或ハ臺灣ニモット〓〓作ラサナイコ
トガ、矛盾ノヤウニモ考ヘラレルノデアリ
マスケレドモ、ソコガ卽チ米穀ノ特殊性デ
ゴザリマシテ、サウシテ此ノ際ニ出來ル所
カラ拵ヘサスト云フ方策ヲ採ラズシテ、矢
張リ內地、臺灣、朝鮮、共倶ニ方々ニ均霑
シテ、統制シタ上ニ增產計畫ヲ立テサスト
云フコトガ、最モ思慮分別ニ富ンダ方法ト
信ズルノデアリマス、從テ斯ウ云フ理由ヨ
リシテ此ノ法案ハ決シテ矛盾シタ思想ヲ持
ツモノデナクシテ、極メテ穩當ナル實際ニ
適合シタ所ノ法案ナリト信ズルコトガ本案
ニ贊成スル第二ノ理由デアリマス、ソレカ
ラ第三ハ、本案ノ施行ニ依リマシテ、當局
者モ常ニ言明シテ居リマスル通リニ、臺灣
ノ農作物ヲ多角化スル、之ヲ色々ナモノヲ
作ラシテ、米ニ偏重セシメナイヤウニシテ
多角化スルト云フコトハ、此ノ際ニ於ケル
國家ノ最良ノ國策デアルト信ズルカラデア
リマス、若シモ米ニ偏重スルト云フコトデ
アリマスルト、徒ニ內地ヲ苦シメルヤウナ
コトニナルノデアリマシテ、殊ニ軍國ノ際
ニ於テ······軍國ノ極メテ必要ナルモノデ內
地ニ出來ナイモノガ多々アルノデアリマス、
卽チアノ麻ノ類、黃麻トカ、苧麻トカ、蓖
麻トカ云フヤウナ麻ノ類ハ飛行機其ノ他
軍需品ニ極メテ必要デアルノデアリマス、
又甘蔗ノ如キモ是ハ臺灣デナクテハ出來ナ
イ、卽チ臺灣デナクテハ出來ナイモノヲ臺
灣デ作ラシメ、內地デ出來ルモノハ內地デ
作ラシメルト云フコトガ、帝國全體カラ見
テ極メテ穩當ナル思慮ノアル方策デアル、
卽チ國策上此ノ法案ハ極メテ必要ナルモノ
デアルト云フコトヲ信ジマス、ソレカラ此
ノ多角化スルト云フコトハ、又本島民ノ爲
ニモ極メテ利益デアルノデアリマシテ、米
作ニ偏重致シマスルト云フコトハ、農民ハ
其ノ米作ノ高イ低イ、暴騰暴落ニ依ッテ非
常ナル不安ニ陷ルノデアリマス、今日迄ノ
實際ヲ見マスルト內地デモ、屢〓各人ガ指摘
サレマシタヤウニ、隨分米ハ暴騰シ暴落シ
マイク私ハ自分自身トシテハ前ニ寺內內閣
ノ時ニ警保局長トシテ米ノ騒動ニ出ツ喰ハ
シ、高イ時ニモ出ツ喰ハシテ困リマシタ、又
拓務省デハ安イ時ニ出ッ喰ハシテ困リマシ
タ、サウ云ッタヤウナ兩面ノ經驗ヲ持ッテ居
リマスルガ、ソレ故ニ······サウシテ臺灣デ
ハ又米ノ暴騰暴落ガ非常ニ烈シイノハ是ハ
內地ヨリモ一層ヒドイノデアリマシテ、昭
和六年ニハ臺灣ノ米ガ下落シテ九圓十六錢
ト云フ風ニナッテ居リマス、デ今日ハ蓬萊米
ガ二十七圓八十三錢ト云フコトニナッテ居
リマシテ、其ノ違ヒハ二分ノ一又ハ三分ノ
一、其ノ位ニ暴騰シタリ暴落シタリスルノ
デアリマス、農家デハ何ガ困ルカト云ヘバ、
斯ウ云フ風ニ暴騰、暴落スルコトガ一番困
ルノデアリマス、殊ニ臺灣ハ內地ヨリモ一層
甚ダシイ、斯ウ云フ際ニ今度ノ管理案ガ出
來マスルト云フト、現在ノ臺灣ノ生產費ガ
二十圓五十一錢、サウ云フ時ニハ二十圓五
十一錢以下ニハドウシタッテナリッコハナイ
ノデアリマス、是ハ打遣ッテ置ケバ時トシテ九
圓ニモ下ル、是ハ甚ダシク臺灣ノ農家ニ不安
ノ感ヲ懷カシメルモノデアリマスルガ、此ノ
案ヲ實行スルコトニ依ッテ臺灣ノ農家ハ、不
安ノ感ジカラ救ハルヽト云フ結果ヲ見ルニ
相違ナイト考ヘマス、是ガ卽チ多角化シ、本
案ヲ實行スルコトニ依リテ必ズ臺灣ノ農家
ニ幸福ナル狀態ヲ來スモノデアルト信ズル所
以デアリマス、又總督府ノ言明ニ依リマス
レバ、此ノ二圓ノ差額ト云フモノハ、之ヲ
他ノ方面ニ使ハナイデ、臺灣ノ農產物ノ奬
勵ニ使フト云フノデアリマス、從ッテ奬勵ニ
使フ結果トシテ、今後十年ノ後ニハ約五割
ノ增產ガアル、其ノ價格ハ一億數千萬圓ニ
增收ガ上ルト云フヤウニ當局者ハ說明シテ
居ルノデアリマス、斯ウ云フ點カラ考ヘマ
シテモ、此ノ案ノ實行ハ農家ニ利益デアル
コトヲ疑ヒマセヌ、又今日ノ臺灣ノ農家ハ
所謂籾摺業者ト云フ者ガ生產者ノ次ニアリ
マシテ、是ガ色々ト金融ノコトヲヤッテ見タ
リ、色々ナコトニ關與シマシテ、必要ナ機
關デハゴザイマセウガ、其ノ間ニ相當ノ弊
害ガアルノデアリマス、此ノ籾摺業者ガ動
モスレバ中間搾取ヲスルヤウナコトガ、此
ノ法案ノ實行ニ依ッテ、或地方ニ於テハ非常
ニ多額ノ利益ヲ、實際上ニ於テ農家ニ與へ
ルト云フコトハ明カデアリマス、是ハ當局
者モ强ヒテ其ノ事情ヲ明カニスルコトガ出
來ナイカラ、必ズドノ位利益ヲ與ヘルト云
フコトハ分ラヌト申シテ居リマスルガ、或
地方ニ於キマシテハ或ハ是等ノ中間搾取カ
ラ免ルヽコトニ依ッテ、一圓乃至二圓ガ再ビ
淫キ上ッテ來ルノデナイカト云フ、十分ノ期
待ヲ持チ得ル地方モ尠カラズアルノデアリ
マス、斯ウ云ッタヤウナコトヲ考ヘ來リマス
ルト云フト、臺灣ノ農作ヲ多角化スルト云
フコトハ、國策上必要ナルノミナラズ、本
當ニ臺灣島民ノ永遠ノ利益ヲ考ヘルナラ
バ此ノ多角化スルト云フコトガ極メテ穩
當ナル、聰明ナル處置デアルト云フコトヲ
信ズルノデゴザリマス、以上ノ三ツノ理由
ヲ以テ私ハ本案ニ贊成ヲ致シマス、尙此ノ
問題ニ關聯致シマシテ、屢〓臺灣統治ニ關
スル問題ガ論議サレテ居リマスルカラ、私
ハ終リニ臨ミマシテ唯一言、臺灣ノ統治問
題ニ關シテ言及シタイト思ヒマス、異民族
ノ統治ト云フコトハ互ニナカ〓〓諒解ノ行
キニクイモノデアリマス、是ハ治メラル、
方カラモ非常ニ不備ナコトガゴザリマセウ、
又治ムル方ニ於テモナカ〓〓ノ苦心ヲスル
ノデアリマス、嘗テ私ガ見タ本ノ中ニ、印
度ノ總督ノ「ロードルカルゾン」ガ斯ウ云フコ
トヲ言ッタコトガアル、如何ナル善政ト雖モ
到底異民族ニ滿足ヲ與フルコト能ハズト云ッ
タヤウナ文句ガゴザイマシタ、初メテ私ハ
斯ウ云フ文句ニ接シタ時分ニ、ソレハ「イ
ギリス」ノ印度ニ於ケル虐政ノ結果デアラ
ウ、唯單純ニサウ片付ケテ居リマシタガ、
其ノ後我々ハ親シク朝鮮ノ學生或ハ臺灣ノ
學生ニ接觸シテ、能ク彼等ノ訴フル所ヲ屢〓、
聽イタコトガゴザリマス、サウシテ朝鮮
ノ獨立論ヲ聽キ、臺灣ノ自治論ナンカヲ聽
キマシテ、彼等ノ境遇ニ於テ我々ノ想像ノ
出來ナイ色々ノ苦悶ヲ持ッテ居ルト云フ實
情ヲ或程度マデ了解スルコトガ出來タノデ
アリマス、又一面ニ內地ノ者デ、臺灣ヤ朝
鮮ニ於テ〓育ニ從事シテ居ル者カラ色々ト
其ノ苦心經驗談ヲ聽キマシタ、サウシテ是
等ノ人ノ訴ヘル所ニ依リマスルト、臺灣ノ
本島人又朝鮮ノ半島人ノ子弟ニ、忠君愛國
ノ思想ヲ溺養セシメルト云フコトガ、ソレ
ハソレハ殆ド口ニ述ブルコトノ出來ナイヤ
ウナ困難ナ事情ニ遭遇スルト云フ、詳シキ
實例ヲ數限リナク私ハ聽カサレタノデアリ
マス、斯ウ云ッタヤウチ狀態ニ考ヘテ見テ、
再ビアノ「カルゾン」ガ、異民族ノ統治ニハ
如何ナル善政ト雖ニ異民族ヲ滿足セシムル
コト能ハズト云フ言葉ヲ味ハッテ見ルト、或
ハ「カルゾン」ハ矢張リ本當ニサウ思ッテ居ツ
タノデ、誇張デナク、本當ニサウ思ッタノデ
アラウト云フ心持ガ分リマシタ、併シナガ
ラ我々ハ玆ニ考ヘタイノデアリマス、印度
ト「イギリス」トノ關係ト、我ガ國ト臺灣ト
ノ關係ハ、マルデ違フ、我々ハアノ印度ト
「イギリス」ノヤウニ、文化ノ程度ガ違ヒ人
種ガ違フ場合ニ、殆ド永久ニ是ガ同心一體
トナルコトハ不可能デアラウト云フ風ニ考
ヘマスルガ、併シ臺灣ト我ガ內地トノ關係
デアリマスルト、御承知ノ通リ我ガ日本ノ
歷史ニ於キマシテ、漢民族ヤ半島ノ朝鮮民族
ガ澤山日本ニ渡來シテ、サウシテ我々ノ血液
ノ中ニハ或部分朝鮮ノ血ガ混リ、漢民族ノ
血ガ混ッテ居ルノデアリマス、ソレデスカラ今
日文化ノ程度モ接近シテ居ルシ、又人種モ
同ジク蒙古人種デアリマスルカラ、若
シ我々ガ互ニ努力ヲスルナラバ、決シテ今
後同心一體ノ結果ヲ來スコトガ出來ナイト
云フヤウナコトハナイノデアリマス、ソレ
デ私ハ特ニ當局者ニ希望ヲ致シタイコトハ、
第一ニ異民族ノ統治ニ當ツテ、我々ハ根本ニ
於テ臺灣ト內地トハ、必ズ同心一體ニナリ
得ルモノデアルト云フ所ノ、確乎タル信念
ノ下ニ於テ働イテ貰ヒタイト思フノデアリ
Vマーサウシテ更ニ一面ニ於テ異民族ノ統
治ガ如何ニ困難ナルモノデアルカト云フコ
トニ付テ、深刻ナル認識ヲ持ッテ貰ヒタイノ
デアリマス、サウシテ異民族ノ境遇ニ對シ
テ、十分ナル理解認識ヲ持ッテ、サウシテ彼
ノ民族ノ如キ、或ハ流言蜚語ニ迷ハサシ易
スト云ッタヤウナ性質ヲ持ッテ居ルト云フヤ
ウナノニ對シテハ、治安ヲ維持スルノ必
要ノアル場合ニハ儼然トシテ之ニ對スル
威信ヲ示ス所ノ確乎タル態度ガナクテハナ
ラヌト思ヒマス、同時ニ又不必要ナル、殊
ニ消極、小サイ部分的ノ狹イ眼孔ヲ以テ、
不必要ナルコトニ彼等ノ感情ヲ刺戟スルヤ
ウナコトヲシテ貰ヒタクナイ、卽チ必要ノ
程度ヲ超エタ言論ノ取締ヲスルト云フヤウ
ナコトニ付テハ、最モ深甚ナル考慮ヲ拂ツテ
貰ヒタイノデアリマス、斯ウ云フヤウニシ
テ互ニ相諒解スルコトニ依ッテ、初メテ同心
一體ト云フコトガ期待シ得ルコトヽ存ズル
ノデゴザイマス、之ヲ要スルニ本案ハ斷ジ
テ一視同仁ノ聖旨ニ悖ルガ如キ內容ヲ持ッテ
居ルモノデナイト信ジマス、サウシテ米ニ
闘スル限リハ、我々內地人ガ安ンジテ、此
ノ時局ニ食糧問題ノ心配ヲシナイデ濟ムト
云フコトハ、マサカノ時分ニ臺灣ニ今一層
作ッテ貰ヒ得ルト云フコトヲ考へ得ラルヽ
コトガ非當ナル幸福ノ狀態デアルノデアリ
マスカラ、內地ノ者ハ宜シク臺灣ノ此ノ情
勢ニ對シテ、臺灣ニ感謝スル氣持ヲ持ツベ
キモノデアル、又臺灣ノ米價ガ高イト云フ
コトガ、主トシテ內地ノ需要ガアルガ爲ニ
臺灣ノ米價ガ高イノデアル、又內地ノ特殊
ノ事情ニ依ッテ内地ノ米價ヲ高ク維持シテ
居ル爲ニ、臺灣ガ意外ノ幸福ヲ得テ居ルモ
ノデアル、此ノ事情ニ對シテ臺灣島民諸君
ハ十分ニ內地ノ者ニ對シテ感謝シテ貰ヒタ
イ、デ互ニ相感謝スベキ性質ノ者ガ、五二
相爭フガ如キ外觀ヲ見ルニ至リマシテハ、
私ハ是ハ雙方共ニ甚ダ心得違ヒデアルト思
ヒマス、宜シク是等ノコトニ付テ雙方共能
ク反省スルト云フ態度ガアッテ欲シイノデ
ゴザイマス、而シテ此ノ本案ハ實ニ內地ト
臺灣ト協同シテ帝國ノ國策ニ順應スルト云
フ極メテ妥當ナル案デアリマス、又同時ニ
之ニ依ッテ島民ガ眞正ナル幸福ニ到達スベ
キ極メテ公正ナル案ニ外ナラヌト存ジマス、
斯クノ如ク信ジテ我々ハ此ノ本案ニ贊成ス
ルコトガ、道義上何等ノ不安ヲ持ツモノニ
非ズ、安ンジテ本案ニ贊成ヲスルコトノ出
來ル良案ナリト信ジテ、玆ニ贊成ノ意ヲ表
白スル所以デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒ
マス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=39
-
040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=40
-
041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=41
-
042・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=42
-
043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=43
-
044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=44
-
045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長報告通リデ
御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=45
-
046・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=46
-
047・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=47
-
048・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=49
-
050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=50
-
051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ガゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=51
-
052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=52
-
053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十一、地
方學事通則中改正法律案、日程第十二、靑
年學校令ニ依リ就學セシヌラルベキ者ノ就
業時間ニ關スル法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、是等ノ
二案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=53
-
054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、副委員長〓岡子爵
地方學事通則中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長侯爵德川義親
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
靑年學校令ニ依リ就學セシメラルベキ
者ノ就業時間ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十二日
委員長侯爵德川義親
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵〓岡長言君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=54
-
055・清岡長言
○子爵〓同長言君 德川委員長ガ御都合デ
本日ハ御見エニナリマセヌカラ、私カラ只
今議題トナリマシタ兩法案ノ特別委員會ノ
經過竝結果ヲ御報告申上ゲマス、此ノ兩法
案ノ特別委員會ハ昨二十二日開會致シマシ
テ、厚生大臣及文部當局カラソレ〓〓法案
提出ノ理由ヲバ承リマシタ、曩ニ本院ニ於
テ可決致サレマシタ靑年學校〓育費國庫補
助法案ト密接ナル關係ヲ持ッテ居リマスル
法案デ、自然其ノ際質問ガ含マレマシテ、
盡サレテ居リマシテ、此ノ兩案ニ對シマシ
テハ大ナル質問ハナカッタノデアリマス、而
シテ全會一致ヲ以チマシテ可決致シタ次第
デゴザイマス、今兩案ノ內容ヲバ極ク簡單
ニ御說明申上ゲヨウト存ジマス、地方學事
通則中改正法律案、此ノ法律ハ昭和十四年
度カラ一定ノ範圍ノ男子靑年ニ對シマシテ、
靑年學校ニ於ケル〓育ヲ受クル義務制ノ實
施ニ當リマシテ、靑年學校生徒ノ〓育事務
ヲ、市町村ノ狀況ニ依リマシテ之ヲ他ノ市
町村等ニ委託スルコトヲ得ルト云フ途ヲ開
ク爲ニ、地方學事通則第五條中ノ「兒童〓
育事務」トアリマシタノヲ「兒童生徒〓育事
務」、卽チ生徒ノ二字ヲ加ヘルコトニ改メタ
ノデアリマス、而シテ之ヲバ靑年學校ニ適
用スルト云フコトニシタイト、斯ウ云フ改
正案デアリマス、尙此ノ機會ニ於キマシテ
字句ノ整理ヲ行フ爲ニ同法第九條中ノ「郡」
ト第十條中ノ「郡制」ノ二字ヲ削ル、斯樣ナ
極ク簡單ナ改正案デゴザイマス、次ニ靑年
學校令ニ依リ就學セシメラルベキ者ノ就業
時間ノ制限ニ關スル法律案、此ノ法律案ノ
內容ヲ申上ゲマス、靑年學校ノ義務制ハ只
今申シマシタ通リ昭和十四年度ヨリ實施セ
ラルルコトノ豫定デアリマス、從ッテ工場ヤ
鑛山、商店等ニ働イテ居リマス者モ、靑年
學校ニ就學セヌゲレバナラヌコトニ相成ッ
タノデアリマス、現在工場、鑛山、又ハ商
店等デ働イテ居ル十六歲未滿ノ者ニハ、旣
ニ工場法ヤ鑛業法、叉ハ商店法ニ依ッテ就業
時間ヲバ十一時間ト云フ制限ヲ設ケテアル
ノデアリマス、デ年少者ニ對シ特別ノ保護
ヲ圖ッテ居ルノデアリマス、此ノ度國家ガ靑
年學校ノ就學ラバ、義務トシテ是等ノ者ニ
命ズル場合ニ於キマシテ、其ノ者ノ就業時
間ニ對シ新タニ制限ヲ設ケナイト、勢ヒ是
等ノ年少者ハ勞働時間ニ、更ニ今囘ノ義務
制ニ依ル〓育ヲ受クルコトトナルノデアリ
そく、サウ致シマスルト其ノ結果ハ年少者
ニ心身ノ負擔ヲバ、一層重ク負ハシメンケ
レバナラヌト云フコトニ相成ルノデアリマ
ス、一體靑年學校ヲバ義務制ニシタ理由ト
云フモノハ、社會ノ實務ニ從事スル靑年ノ
〓育ヲ、一段ト徵底セシムルコトガ今日我
ガ國情ニ鑑ミマシテ、極メテ緊要ノコトト
考ヘルノデアリマス、就學セシメラルヽ者
ニ對シマシテハ、適當ナル保護ヲ與ヘヌケ
レバ折角〓育ヲ施シマシテモ、身體ヲバ疲
勞セシメ又壞シテシマフト云フコトニ相成ッ
テハ何ノ效果モナイノデアリマス、此ノ見
地カラ見マシテ靑年學校令ニ依リ就學セシ
メラルヽ者ノ就學時間ニ、新タニ制限ヲ加ヘ
ル必要ヲ認メ、十六歲未滿ノ者ニハ〓授及〓
練時間ハ、之ヲ就業時間ト同一ニ取扱フコ
トニスルト云フ法律案デアリマス、之ヲ要
スルニ靑年學校デ受ケル所ノ十六歲未滿ノ
者ノ授業時間ヲバ、就業時間ノ中ニ含メル
ト云フ法律案デゴザイマス、之ニ對シマシ
テ一委員ヨリ十六歲以下トセズニ、十七歲
以上ニモ之ヲ適用スル必要ガアルト思フガ
政府ハドウ思フカト云フ質問デアリマシタ、
之ニ對シマシテ厚生大臣ハ、十六歲以下ハ
保護職エデ、是レ以上ニ保護ヲ廣クスルト
云フコトハ、產業上ノ影響、〓育上ノ關係
等ニモ大イニ考慮ヲ要センケレバナラヌ、
是ハ他日ノ問題トシテ大イニ考究シタイ、
斯ウ云フ答辯デアリマシタ、斯クシテ兩案
ハ前刻申シマシタ通リ、全會一致ヲ以テ可
決致シタノデゴザリマス、以上ヲ以チマシ
テ特別委員會ノ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=55
-
056・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=56
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057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=57
-
058・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=58
-
059・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=59
-
060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=60
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061・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=61
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062・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、兩案全部、委員長報告通リデ
御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=62
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063・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=63
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064・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=64
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065・植村家治
○子爵植村家治君 ·賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=65
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066・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=66
-
067・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=67
-
068・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=68
-
069・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=69
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070・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
關稅定率法中改正法律案
昭和七年法律第四號中改正法律案
昭和十四年法律第二號中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=70
-
071・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 衆議院ヨリ送付
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第十七號ノ二ヲ左ノ如ク改ム
一七ノ二栗、黍及稗
一粟
二其ノ他
第二十一號第四項中「每百斤」ヲ削リ「〇·六五」ヲ「無稅」ニ改ム
第二十三號中「每百斤」ヲ削リ「〇·五〇」ヲ「無稅」ニ改ム
第二十四號中「每百斤」ヲ削リ「〇·五〇」ヲ「無稅」ニ改ム
第二十七號ノ二中「從價」ヲ削リ「一割」ヲ「無稅」ニ改ム
ヲ「無稅」ニ改ム
第百三號中「每百斤」ヲ削リ「二·二五」ヲ「無稅」ニ改ム
附則
施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
ヲ受ケマシタ政府提出ニ係ル關稅定率法中
改正法律案及昭和七年法律第四號中改正法
律案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シ、一七)
テ第一讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=71
-
072・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、松村大藏政務次官
關稅定率法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年·三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
每百斤〇·五〇
無稅
第九十七號中「蓖麻子油」ヲ「ヒマシ油」ニ改メ同號第一項中「每百斤」ヲ削リ「二·二〇」
昭和七年法律第四號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和七年法律第四號中改正法律案
昭和七年法律第四號中左ノ通改正ス
別表輸入稅表番號第十九號ノ項ノ次ニ左
ノ一項ヲ加フ
三豆類
三蠶豆
同第九十五號ノ項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
一〇二棉子油
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和七年法律第四號ハ輸入稅ノ從量稅
率ニ關スル法律ナリ
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=72
-
073・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ關稅定率法中改正法律案及昭和七年
法律第四號中改正法律案ニ付キマシテ御說
明致シマス、關稅定率法中改正法律案ハ、
桐油外六品目ノ關稅ヲ撤廢セムトスルモノ
デアリマシテ、是等ノ物品ハ何レモ主トシ
テ、滿洲國及支那カラ輸入セラルヽモノデ
アリマス、我ガ國現下ノ情勢ニ顧ミマシテ、
是等物品ノ關稅ヲ無稅ト致シマスコトハ、
日滿支三國間ノ物資ノ交流ヲ圓滑ナラシム
ル爲ニ必要ナルコトト考ヘマシテ、本改正
法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
次ニ昭和七年法律第四號、卽チ輸入稅ノ從
量稅率ニ關スル件ノ改正法律案ニ付キマシ
テ御說明致シマス、現在蠶豆及棉子油ハ本
法ニ依ッテ、關稅定率法ニ定ムル稅率ノ三割
五分ノ增課ヲ受ケテ居リマスガ、前ニ申シ
マシタト同樣ノ趣旨ニ依ッテ、日滿支三國間
ノ物資ノ調整ニ資スル爲、是等ヲ本法ノ別
表ニ追加シ、以テ三割五分ノ增課ノ範圍カ
ラ除外スルヲ適當ト認メマシタ次第デアリ
マス、何卒御審議ノ上速カニ御協贊ヲ與ヘ
ラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=73
-
074・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑モナ
ケレバ、兩案ハ之ヲ災害被害者ニ對スル租
稅ノ減免徵收猶豫等ニ關スル法律案外八件
ノ特別委員ニ併託致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=74
-
075・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 衆議院ヨリ送付
ヲ受ケマシタ政府提出ニ係ル昭和十四年法
律第二號中改正法律案ヲ、此ノ際議事日程
ニ追加シテ一讀會ヲ開クコトニ御異議ガゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=75
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076・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス、松村大藏政務次官
昭和十四年法律第二號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十四年三月二十三日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十四年法律第二號中改正法律案
昭和十四年法律第二號中左ノ通改正ス
第一條中「七億九千五百八十萬圓」ヲ「九
億八千四百九十萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和十四年法律第二號ハ昭和十四年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發
行ニ關スル法律ナリ
〔政府委員松村光三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=76
-
077・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ昭和十四年法律第二號中改正法律
案、提案理由ヲ御說明致シマス、昭和十四
年度一般會計總豫算及同追加豫算第一號ニ
計上致シマシタル歲出ノ財源ニ充ツル爲必
要ナル公債ノ發行ニ付キマシテハ、今朝議
會ニ於テ既ニ二囘ニ亙リ之ニ關スル法律案
ヲ提出致シタノデアリマスルガ、今囘別途
提出ノ第二號追加豫算案ニ計上シテアリマ
スル經費ノ所要財源總額中、千二十餘萬圓
ニ付キマシテハ、普通歲入及道路公債法ニ
依ル公債金ヲ以テ充當シ、一億八千九百餘
萬圓ニ付キマシテハ、今日ノ場合之ヲ歲入
補塡公債ノ財源ニ依ルノ外アリマセヌノ
デ、旣ニ公布セラレマシタル昭和十四年法
律第二號ノ公債發行限度法定額ヲ、九億八
千四百九十萬圓ニ增額スル爲、本法律案ト
致シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ
上、速カニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=77
-
078・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
昭和十四年法律第二號中改正法律案ハ、關
聯致シマスル所ガアリマス爲ニ、昭和十四
年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發
行ニ關スル法律案外一件ノ特別委員ニ併託
セラレムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=78
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079・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=79
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080・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=80
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081・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイモノ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=81
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082・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十三ヨリ
日程第四十二迄ノ諸請願、會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ
參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
乙
意見書案
廣告物取締ニ關スル法令改正ノ件
東京市小石川區原町百一一十六番地男
爵阪谷芳郞呈出
右ノ請願ハ輓近都市ニ於ケル廣告看板等
ハ產業ノ發達ニ伴ヒ其ノ種類表現方法多
樣トナリタルニ拘ラス廣告物取締法ハ制
定後既ニ久シク現今ノ審貝情ニ副ハサルノ
ミナラス其ノ運用ニ關スル地方廳令區區
ナルハ遺憾ナルニ依リ之等法令ノ改正ヲ
行ヒ取締ノ基準ヲ確立シ以テ風致及都市
美ノ顯現竝廣〓文化ノ向上ヲ圖ラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
學校養護婦令制定ノ件
東京市芝區芝公園二十三號地東京市
〓育局體育課內平民杉田武義外一名
呈出
右ノ請願ハ小學校ニ於ケル虚弱兒童ノ激
增結核病ノ蔓延、一般學童ノ體位低下
等ノ現狀ニ鑑ミ之カ對策ヲ講スルハ緊要
事ナルニ拘ラス學校養護婦ニ對スル職制
未制定セラレサルハ甚遺憾ナルニ依リ學校
衞生ノ關鍵ヲ等シク把握セル學校醫竝學
校〓員ノ職務規定ノ如ク速ニ學校養護婦
令ヲ制定セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
宮城縣女川港修築ニ關スル件
宮城縣牡鹿郡女川町長松川豁呈出
右ノ請願ハ橫濱、函館兩港ノ中間ニ位ス
ル宮城郡牡鹿郡女川港ハ北日本太平洋岸
ニ於ケル天然ノ良港ニシテ灣外一帶ニ豐
富ナル海田ヲ擁スルノミナラス女川沿線
鐵道ノ完通ト相俟テ將來ノ發展期スヘキ
モノアルニ拘ラス同港ノ設備十分ナラサ
ルハ產業經濟竝軍事上甚遺憾ナルヲ以テ
速ニ國庫補助ニ依リ之カ修築ヲ圖ラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
釜石港ニ防浪建築建設ノ件
岩手縣釜石市大字釜石第三地割八十
番地平民公吏小野寺有一外百七十五
名呈出
右ノ請願ハ釜石港ハ東北地方太平洋岸ニ
於ケル產業經濟ノ中樞地點ナルニ拘ラス
古來週期的ニ襲來スル津浪ノ爲人命財產
ノ損傷多大ニシテ居常住民ノ不安著シキ
モノアルハ地方發展上甚遺憾ナルニ依リ
同港ノ海岸要部一帶ニ防浪建築物ヲ建設
スルニ補助助成セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
渡良瀨川改修ニ關スル件
群馬縣桐生市長關口義慶二外八名呈
出
栃木縣足利市長赤土正强外九名呈出
右ノ請願ハ栃木縣足尾連山ニ源ヲ發スル
渡良瀨川ハ曩ニ下流部ノ改修工事ヲ見タ
ルモ上流地方ニ於テハ足尾鑛山ノ煙害ニ
因リ水源地全山ノ草木枯死セル爲降雨每
ニ土砂崩壞シテ河床ヲ高メ幅員ヲ擴大シ
水害ノ慘禍相踵キ沿岸住民ノ困窮一方ナ
ラサルニ依リ速ニ栃木縣足利郡毛野村、
群馬縣山田郡大間々町間ノ改修工事ヲ實
施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
北海道浦河漁港修築ニ關スル件
北海道浦河郡浦河町長荻丹榮呈出
右ノ請願ハ北海道浦河郡浦河漁港ハ昭和
五年竣功以來漁業根據地竝避難港トシテ
出入船舶激增セルニ拘ラス港內ノ水深淺
ク岩礁點在セルノミナラス南北防波堤全
體ニ低ク加之船入潤狭小ナル爲一朝風浪
ニ際會セムカ碇泊船舶ノ衝突、破壞、沈
沒等被害少カラサルニ依リ速ニ同港ノ擴
張改良工事ヲ施行セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
國道四號線中盛岡市、沼宮內町間道路
改良ノ件
岩手縣盛岡市長大矢馬太郞外七名呈
出
右ノ請願ハ國道四號線中岩手縣盛岡市、
沼宮內町間ノ道路ハ同縣北部ニ於ケル唯
一ノ重要幹線ニシテ沿線地方ニハ農、畜、
林、鑛產ノ富源ヲ擁シ逐年交通繁劇トナ
レルニ拘ラス路面著シク頽廢シテ交通機
關屢杜絕シ剩ヘ東北本線鐵道トノ交叉多
クシテ危險少カラサルニ依リ該道路ノ鋪
裝竝改良工事ヲ施行セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
海外同胞物故者慰靈堂建立助成金下付
ノ件
東京市日本橋區蠣殻町一一丁目九番地
平民上地天逸外二名呈出
右ノ請願ハ我日本人ニシテ異〓ノ土ト化
シ而モ遺族故舊等無キ爲其ノ靈ヲ祭ラレ
サル者尠カラサルハ啻ニ故人ノ不幸ナル
ノミナラス延テハ邦人ノ海外發展及在外
同胞ノ活動ヲ阻害スルコト多大ナルニ依
リ普ク其ノ精靈ヲ供養スル爲慰靈堂建立
ヲ計畫中ナル大日本海外同胞物故者慰靈
堂建立會ニ對シ政府ヨリ相當ノ助成金ヲ
下付セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
北海道函館市ニ官立高等工業學校設置
ノ件
北海道函館市長齋藤與一郞外一名呈
出
右ノ請願ハ北海道函館市ハ北門ノ鎖鑰、
東北ノ重要都市ニシテ水產竝工業ノ進展
著シク且東北、北海道、樺太一圓ニ亙リ
豐富ナル工業資源等ヲ擁シ工業專門〓育
機關ノ所要切ナルモノアルニ依リ最適地
ナル函館市ニ速ニ官立高等工業學校ヲ設
置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
國道十五號線中和歌山市、高野口町間
道路鋪裝ノ件
和歌山縣伊都郡山田村長堀內彌平治
外六名呈出
右ノ請願ハ國道十五號線中和歌山市、高
野口町間道路ハ曩ニ改良工事ノ施行ヲ見
タルモ路面ハ今尙泥土或ハ岩片、小礫
亂雜ヲ極メ爲ニ自動車ノ損傷、揮發油ノ
消費量多大ナルノミナラス道路維持費
モ亦倍加スルノ實情ニ在ルハ遺憾ナルニ
依リ速ニ之カ鋪裝工事ヲ施行セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
公共圖書館費國庫補助法制定ノ件
東京市大森區雪ケ谷町七十番地官吏
松本喜一外二萬千百二十九名呈出
右ノ請願ハ學校ト共ニ國民〓育ヲ完成ス
ヘキ重要機關ナル公共圖書館ハ社會〓育
ノ中心機關トシテ國運發展上等閑視スヘ
カラサルモノナルニ未國庫補助ノ途ナク
其ノ施設十分ナラサルハ學校〓育費等ノ
補助アルニ比シ均衡ヲ失スルノミナラス
亦國民文化ノ發達上甚遺憾ナルニ依リ速
ニ公共圖書館費國庫補助法ヲ制定セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
大楠公史蹟顯彰ニ關スル件
大阪府南河内郡川西村長內田愛藏外
四十三名呈出
右ノ請願ハ現下ノ時局ニ鑑ミ大楠公精神
ノ皷吹ヲ圖ルハ最緊要事ナリ而シテ公ノ
遺蹟中天野山金剛寺境內、觀心寺境內、
千早城阯、楠木城阯、赤坂城阯、櫻井驛
阯ハ單ニ史蹟トシテ指定セラルルニ止リ
未之カ顯彰ノ方法ヲ講セサルハ甚遺憾ナ
ルニ依リ速ニ國費ヲ以テ之カ維持ノ方法
ヲ計リ忠臣大楠公ノ事蹟ヲ追慕スルト共
ニ日本精神作興ニ資セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
林道網計畫樹立實施ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭男爵東久世秀雄呈出
右ノ請願ハ林道ノ開設普及ハ森林資源ノ
開發、林利ノ增進就中林產物生產費ノ大
部分ヲ占ムル運搬費ノ輕減等林業及山村
振興ノ基本的施設ナルニ拘ラス未其ノ施
設十分ナラサルハ甚遺憾ナルニ依リ政府
ハ昭和十五年度ニ於テ全國ニ亙ル綜合的
林道網計畫ヲ樹立實施シ以テ今期議會ニ
提出セラレタル森林法中改正法律案ノ目
的トセル施業合理化ト共ニ林業國策ノ貫
徹ヲ期セラレタシトノ」日趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
造林國策樹立實施ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭男爵東久世秀雄呈出
右ノ請願ハ我國ニ於ケル木材ハ近年產業
ノ進展就中纖維工業ノ發展ニ伴ビ需要著
シク增加セルニ拘ラス山村ノ疲弊困憊ト
林道開設ノ不備、森林金融ノ不振ニ伴ヒ
甚シク植伐ノ均衡ヲ失シツツアルハ木材
需給ノ調節上遺憾ナルニ依リ速ニ內外地
及滿洲國ヲ通シ綜合一貫セル造林國策ヲ
樹立實施シ以テ木材資源ノ保續增殖ヲ期
シ產業ノ進展ニ資セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
町村特別稅段別割ニ關スル法律改正ノ
件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭男爵東久世秀雄呈出
右ノ請願ハ山林ニ對スル特別稅段別割ハ
賃貸價格及收益ニ於テ格別ノ等差アル宅
地田畑ト區別セスシテ課稅セラルル爲
其ノ負擔苛重ニシテ山林所有者ノ被ル打
擊甚大ナルモノアリ仍テ明治四十一年法
律第三十七號地方稅制限ニ關スル法律ハ
之ヲ廢止スルカ若ハ各種地目ヲ區分シ其
ノ地租附加稅ニ準據セル賦課額ヲ規定制
限スルヤウ改正セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
國立自然博物館設立ノ件
東京市四谷區東信濃町十番地士族谷
津直秀外六名呈出
右ノ請願ハ各種ノ天然資源ヲ綜合的且有
機的ニ蒐集調査整理スル自然博物館ノ設
立ヲ圖ルハ現下ノ情勢ニ鑑ミ喫緊ノ要務
ナルニ依リ速ニ國立自然博物館ヲ實現シ
以テ科學〓育ノ徹底、資源ノ開發等文化
ノ向上ニ寄與シ延テ利用厚生ヲ促シ且美
術博物館ト共ニ觀光上ノ利便ニモ資セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
岩手縣紫波郡志和村ニ盛岡區裁判所出
張所設置ノ件
岩手縣紫波郡志和村長北條詔美呈出
右ノ請願ハ岩手縣紫波郡志和、水分及不
動ノ三村ハ近時世運ノ發達ト時局ノ趨勢
ニ伴ヒ登記件數激增セルニ拘ラス今尙盛
岡區裁判所日詰出張所ノ管轄ニ屬シ住民
ノ不便少カラサルニ依リ之等三箇村ヲ管
轄區域トスル盛岡區裁判所出張所ヲ志和
村大字上平澤宇川原田ニ設置セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
國民負擔不均衡是正ニ關スル件
埼玉縣兒玉郡本庄町埼玉縣兒玉郡農
會長須賀丈太郞呈出
兵庫縣有馬郡三田町兵庫縣有馬郡農
會長山脇延吉外十三名呈出
茨城縣水戶市茨城縣農會長中村哲藏
呈出
埼玉縣川越市埼玉縣川越市農會長栗
原登喜藏外一名呈出
石川縣羽咋郡羽咋町石川縣羽咋郡農
會長釜谷七太郞呈出
埼玉縣南埼玉郡岩槻町埼玉縣南埼玉
郡農會長渡邊多傳司呈出、
宮城縣仙臺市宮城縣名取郡農會長山
田甚助外二名呈出
福井縣今立郡鯖江町福井縣今立郡農
會長森廣之呈出
石川縣鳳至郡穴水町石川縣鳳至郡農
會長布施丑造外一名呈出
兵庫縣宍粟郡山崎町兵庫縣宍粟郡農
會長小林善太郞外十三名呈出
秋田縣平鹿郡横手町秋田縣平鹿郡農
會長片野重脩外五名呈出
島根縣安濃郡太田町島根縣安濃郡農
會長恒松於菟二外四名呈出
福島縣耶麻郡喜多方町福島縣耶麻郡
農會長岡野隆馬外一名ロ王出
千葉市千葉縣千葉市農會長井上洞看
外二名呈出
福井縣遠敷郡小濱町福井縣遠敷郡農
會長濱野千代太郞外三名呈出
三重縣一志郡久居町三重縣一志郡農
會長小林嘉平治呈出
茨城縣行方郡延方村茨城縣行方郡農
會長小松崎利三治呈出
和歌山縣西牟婁郡田邊町和歌山縣西
牟婁郡農會長楠本拾吉呈出
宮城縣柴田郡大河原町宮城縣柴田郡
農會長升敏之助外四名呈出
福岡縣山門郡柳河町福岡縣山門郡農
會長堀喜內呈出
岩手縣東磐井郡大原町岩手縣東磐井
郡農會長千葉小平太外五名呈出
廣島縣福山市廣島縣福山市農會長中
野有光外十三名呈出
德島縣那賀郡富岡町德島縣郡賀郡農
會長谷六三郞外八名呈出
千葉縣匝瑳郡八日市場町千葉縣匝瑳
都農會長福島辰三郞呈出
和歌山縣那賀郡粉河町和歌山縣那賀
郡農會長林良太郞呈出
北海道札幌市北海道農會長男爵佐藤
昌介呈出
鳥取縣米子市鳥取縣西伯郡農會長水
野新太郞外六名呈出
三重縣四日市市三重縣三重郡農會長
宇佐美祐次外十一名呈出
奈良市奈良縣農會長都司太右衛門外
十一名呈出
島根縣松江市島根縣八東郡農會長野
津運一呈出
右ノ請願ハ銃後ニ於ケル農村生活ノ安定
ヲ圖ル爲臨時地方財政調整交付金制度ヲ
確立スルト共ニ國民負擔不均衡ノ是正ヲ
眼目トセル稅制(特ニ戶數割制度ノ除去)
ノ改革ヲ斷行セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
販賣斡旋間伐材運搬ニ要スル貨車增配
ノ件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭男爵東久世秀雄呈出
右ノ請願ハ木材ノ需要激增ノ趨勢ナルニ
鑑ミ政府ハ昭和十三年度ヨリ民有林ノ間
伐ヲ汎行セシメ保續的ニ木材ノ增產ヲ圖
ルト共ニ之カ間伐材ノ販賣斡旋ヲ各府縣
山林會及全國山林會聯合會ニ當ラシム而
シテ山林會ノ之カ事業ノ成果ハ畢竟鐵道
運輸ノ圓滿ナル遂行ニ俟ツモノ多キニ拘
ラス配車不足ノ爲木材輸送ノ澁滯ヲ見ル
ハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ政府ハ貨車ノ增
配ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
農村部落團體活動助成金交付ニ關スル
件
兵庫縣有馬郡三田町兵庫縣有馬郡農
會長山脇延吉外十三名呈出
茨城縣水戶市茨城縣農會長中村哲藏
呈出
石川縣羽咋郡羽咋町石川縣羽咋郡農
會長釜谷七太郞呈出
埼玉縣川越市埼玉縣川越市農會長栗
原登喜藏外二名呈出
宮城縣仙臺市宮城縣名取郡農會長山
田甚助外二名呈出
福井縣今立郡鯖江町福井縣今立郡農
會長森廣之呈出
石川縣鳳至郡穴水町石川縣鳳至郡農
會長布施丑造外一名呈出
兵庫縣佐用郡佐用町兵庫縣佐用郡農
會長小笹耕作外十二名呈出
秋田縣平鹿郡横手町秋田縣平鹿郡農
會長片野重脩外五名呈出
島根縣安濃郡太田町島根縣安濃郡農
會長恒松於菟二外四名呈出
福島市福島縣信夫郡農會長加藤〓作
二名呈出
千葉縣香取郡小見川町千葉縣香取郡
農會長小堀晃三外三名呈出
福井縣遠敷郡小濱町福井縣遠敷郡農
會長濱野千代太郞外三々石出出
三重縣一志郡久居町三重縣一志郡農
會長小林嘉平治呈出
茨城縣行方郡延方村茨城縣行方郡農
會長小松崎利三治呈出
和歌山縣西牟婁郡田邊町和歌山縣西
牟婁郡農會長楠本捨吉呈出
宮城縣柴田郡大河原町宮城縣柴田郡
農會長升敏之助外四名呈出
福岡縣山門郡柳河町福岡縣山門郡農
會長堀喜內呈出
岩手縣和賀郡黑澤尻町岩手縣和賀郡
農會長伊藤治郞外四名呈出
廣島縣尾道市廣島縣尾道市農會長齊
藤勸治外十三名呈出
德島縣麻植郡川島町德島縣麻植郡農
會長川眞田萬太郞外八名呈出
千葉縣匝瑳郡八日市場町千葉縣匝瑳
郡農會長福島辰三郞呈出
和歌山縣那賀郡粉河町和歌山縣那賀
郡農會長林良太郞呈出
北海道札幌市北海道農會長男爵佐藤
昌介呈出
鳥取縣米子市鳥取縣米子市農會長坂
口平兵衞外六名呈出
三重縣鈴鹿郡龜山町三重縣鈴鹿郡農
會長佐藤邦則外十二名呈出
奈良市奈良縣奈良市農會長松田吉太
郞外十一名呈出
島根縣松江市島根縣八束郡農會長野
津運一呈出
右ノ請願ハ農村部落團體ハ勞働力ノ不足、
資材ノ缺乏等總ユル困難ヲ排シ銃後ニ於
ケル農業生產ノ確保ニ邁進シツツアリ而
シテ今次ノ農業計畫生產ノ實施ニ當リ之
カ活動ノ强化ヲ圖ルハ最急務ナルニ依リ
全國三十萬部落團體ノ所要經費ニ對シ國
庫ヨリ相當額ヲ補助セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ顳意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
能生漁港修築促進ノ件
新潟縣西頸城郡能生町長高鳥順作外
十三名呈出
右ノ請願ハ新潟縣西頸城郡能生漁港ハ曩
ニ漁船避難港トシテ修築セラレタルモ其
ノ施設今尙十分ナラサルハ甚遺憾ナルニ
依リ速ニ請願人等所案ノ如ク國庫補助、
縣費支辨ニテ同港ノ完備ヲ圖リ以テ裏日
本漁業ノ發展ニ資セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ顧意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
山陽本線周防高森、山口線德佐ノ兩驛
間ヲ鐵道豫定線ニ編入ノ件
山口縣都濃郡須々万村長有馬雅輔外
十六名呈出
右ノ請願ハ山陽線周防高森、山口線德佐
ノ兩驛間ニ鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方ニ
於ケル豐富ナル農林鑛產ノ資源開發上裨
益スル所大ナルノミナラス豫定線德佐、
大井間鐵道竝萩港ト相俟テ西日本ト北鮮
滿蒙トヲ連絡スル捷徑トナル等運輸交通、
觀光竝軍事上亦貢獻スル所少カラサルニ
依リ速ニ之カ區間ヲ鐵道敷設法豫定線ニ
編入セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
國道四號線改良ニ關スル件
栃木縣宇都宮市新石町一丁目四百九
十二番地平民佐久間渡外二十一名呈
出
右ノ請願ハ國道四號線ハ我國東北部ニ於
ケル重要幹線ニシテ日光、那須、鹽原ノ
景勝地ヲ控へ且東京那須間ノ沿線地方ハ
著シク發達シ產業、交通竝軍事上之カ改
良ノ急務ナルニ鑑ミ政府ハ昭和十二年度
ヨリ一部改築竝鋪裝工事ヲ爲シタリト雖
殘存セルモノ少カラサルニ依リ昭和十四
年度以降ニ於テモ之ヲ繼續實施シ又目下
縣營ニテ改良中ナル日光國立公園關係ノ
道路ハ縣財政上其ノ完成期シ難キヲ以テ
今後尙國庫補助ヲ繼續セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
西紀勢線鐵道速成ノ件
和歌山縣東牟婁郡色川村長久保嘉七
外二十六名呈出
右ノ請願ハ紀勢中線串本驛ト紀勢西線江
住驛ヲ結フ未成線西紀勢線鐵道ハ目下工
事中ナルモ之カ竣功ノ遲速ハ地方產業竝
運輸交通上至大ノ影響アルニ依リ完成年
度ヲ繰上ケ速ニ開通ヲ圖ラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
豫定線新宮、阪本間鐵道速成ニ關スル
件
和歌山縣東牟婁郡色川村長久保嘉七
外二十五名呈出
右ノ請願ハ未成線阪本線鐵道竝豫定線阪
本新宮間鐵道ノ速成ヲ圖ルハ沿線地方
ニ於ケル豐富ナル林、鑛產等各種資源ノ
開發上貢獻スル所大ナルノミナラス運輸
交通竝觀光上利便亦尠カラサルニ依リ速
ニ新宮方面ヨリモ起工シ以テ同鐵道ノ竣
成期間ヲ短縮セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
冊及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
私立大學國庫補助法制定ノ件
東京市本〓區千駄木町五十九番地日
本醫科大學長塩田廣重外二十三名呈
出
右ノ請願ハ私立大學ハ國家最高ノ〓育事
業ヲ分擔シ輓近其ノ内容大ニ整備充實シ
〓育ノ成果亦觀ルヘキモノアルニ至リタ
ルモ尙官立大學ニ一籌ヲ輸スルハ一ニ資
金ノ不足ニ職由スルモノニシテ財政的基
礎ヲ强固ニシ其ノ經營ヲ安定ナラシムル
ハ時局下ニ於テ最緊要事ナルヲ以テ大學
令ニ依リ設立シタル私立大學ニ對シ國庫
補助金ヲ交付スヘキ法律ヲ制定セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
豫定線松山附近、佐川間鐵道速成ノ件
高知縣高岡郡佐川町長三宮綠外十三
名呈出
愛媛縣松山市長〓水勇三郞外五十八
名呈出
右ノ請願ハ豫定線松山附近、佐川間鐵道
ヲ速成スルハ愛媛、高知兩縣下ニ於ケル
文化ノ向上產業ノ發達ニ貢獻スル所大ナ
ルノミナラス太平洋岸ト瀨戶內海方面トヲ
連絡シ延テハ中國地方ヲ經テ日本海岸
ニ達スル捷徑トシテ運輸交通竝國防上須
要ナルニ依リ速ニ之カ實現ヲ圖ラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
總武本線千葉、銚子ノ兩驛間電化促進
ノ件
千葉縣銚子市長川村芳次外十名呈出
右ノ請願ハ總武本線千葉、銚子兩驛間ノ
沿線地方ハ近年產業ノ發達ニ伴ヒ貨客著
シク增加シ運輸交通ノ圓滑ヲ要望スルコ
ト切ナルニ依リ速ニ之カ兩驛間ヲ電化シ
以テ同線運轉系統ノ統制强化ヲ圖ラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
交通事業法補償令改正ノ件
東京市麴町區丸ノ内二丁目二番地會
社員伊原五郞兵衞呈出
右ノ請願ハ自動車交通事業法第三十七條
第三項ノ規定ニ依ル補償ニ關スル勅令ノ
民間自動車運輸事業廢止ニ伴フ補償金ハ
會社カ單ニ當該營業路線ヲ廢止スルニ止
マリ引續キ存續スル場合ニ於テハ會社カ
事業廢止ト同時ニ解散スル場合ニ比シ其
ノ課稅率ニ於テ甚シク不公平ナル差等ヲ
生スルヲ以テ補償金ハ希望ニ依リ之ヲ分
割交付シ得ルヤウ請願人所案ノ如ク同勅
令ヲ改正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及
送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿
意見書案
德島縣小松島港ヨリ高知縣香美郡山田
町ニ至ル鐵道敷設ノ件
德島縣勝浦郡小松島町長庄野祐吉外
六名呈出
右ノ請願ハ德島縣小松島港ヨリ同縣勝
浦那賀、海部ノ各郡山分及高知縣大栃
ヲ經テ同縣香美郡山田町ニ至ル鐵道ヲ敷
設スルハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル鑛產
資源ノ開發ニ止ラス小松島港ノ機能發揮
ト相俟テ產業竝軍事上裨益スル所多大ニ
シテ且之カ工事亦容易ナルニ依リ速ニ其
ノ實現ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=82
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083・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是等ノ請願ハ、
請願委員長ノ報告通リ採擇スルコトニ御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=83
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084・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=84
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085・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次會ハ明二十四
日午前十時ヨリ開會致シマス、議事日程ハ
決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後三時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02819390323&spkNum=85
4. 会議録のPDFを表示
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