1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十四日(金曜日)午前十時十八分開議
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議事日程 第二十九號
昭和十四年三月二十四日
午前十時開議
第一 昭和十四年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第二 昭和十四年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第二號) 會議(委員長報告)
第三 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件(追第三號) 會議(委員長報告)
第四 臨時陸軍材料資金豫算案 會議(委員長報告)
第五 職員健康保險法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 司法保護事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 船員保險法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 災害被害者に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 登録税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 有價證券移轉税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 中支那振興株式會社法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 健康保險法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
昨二十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
軍馬資源保護法案
種馬統制法案
競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案
臺灣米穀移出管理特別會計法案
地方學事通則中改正法律案
靑年學校令ニ依リ就學セシメラルベキ者
ノ就業時間ニ關スル法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
廣告物取締ニ關スル法令改正ノ請願外二十
九件ノ請願ハ各〓意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府
ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和十四年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)、昭和十四年度各特別會計歲入歲出
豫算追加案(特第二號)、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件追
第三號)、臨時陸軍材料資金豫算案可決報
告書
職員健康保險法案可決報告書
司法保護事業法案可決報告書
船員保險法案可決報告書
映畫法案可決報告書
著作權ニ關スル仲介業務ニ關スル法律案
可決報告書
災害被害者ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶
豫等ニ關スル法律案可決報告書
登錄稅法中改正法律案可決報告書
有價證劵移轉稅法中改正法律案可決報〓
書
臨時陸軍材料資金特別會計法案可決報告
書
中支那振興株式會社法中改正法律案可決
報〓書
健康保險法中改正法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
宗〓團體法案
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ
處分ニ關スル法律案
明治三十五年法律第四十九號中改正法律
案
非訟事件手續法中改正法律案
裁判所構成法中改正法律案
商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關スル法律
案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、昭和十四年度歲
入歲出總豫算追加案、第二號、日程第二、
昭和十四年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案〓、特第二號、日程第三、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第
三號、日程第四、臨時陸軍材料資金豫算案、
會議、委員長報告、是等ノ四案ヲ一括シテ
議題ト爲スコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長渡邊子爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
一昭和十四年度歲入歲出總豫算追加案
(第二號)
一昭和十四年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第三號)
一臨時陸軍材料資金豫算案
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長子爵渡邊千冬
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=3
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004・渡邊千冬
○子爵渡邊千冬君 只今議題ニ供セラレマ
シタ、昭和十四年度歲入歲出總豫算追加第
二號外三件ニ關スル委員會ニ於ケル審査ノ
經過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス、昭和十
四年度歲入歲出總豫算追加第二號ハ歲入
歲出共ニ一億九千九百三十餘萬圓デアリマ
ス、歲入ノ中、普通歲入ハ金資金特別會計
ヨリ繰入ノ增加、其ノ他合計八百八十餘萬
圓デアリマシテ、主タル歲入ハ公債金デア
マリス、其ノ金額ハ一億九千四十餘萬圓デ
アリマス、次ニ歲出ノ中、主要ナルモノハ
地方財政補給金ノ增加千八百萬圓、町村吏
員及警防機構ノ充實、助成等ニ要スル經費、
三百六十餘萬圓、內務省及農林省所管、災害
費ノ增加二千二百三十餘萬圓、神戶地方水
害復興費三百三十餘萬圓、興亞院關係諸費
四千四百六十餘萬圓、臨時陸軍材料資金特
別會計資金繰入千萬圓、科學振興ニ關スル
經費三百十餘萬圓、高等工業學校創設及擴
張ニ要スル經費四百七十餘萬圓、農林水產
物增產確保施設ニ關スル經費千五百五十餘
萬圓、北樺太石油及石炭利權確保補助金七
百三十餘萬圓、帝國鑛業開發株式會社設立
ニ關スル經費三百七十餘萬圓、支那事變ニ
伴フ年金及恩給ノ增加千四百二十餘萬圓、
航路補助ノ增加五百餘萬圓、航空ニ關スル經
費ノ增加千百十餘萬圓等デアリマス、以上
ノ追加豫算第二號ヲ、旣ニ成立致シマシタ
昭和十四年度本豫算竝ニ追加豫算第一號ニ
加ヘマスルト、昭和十四年度豫算ハ歲入歲
出共ニ四十八億四百五十餘萬圓トナルノデ
アリマス、次ニ昭和十四年度各特別會計歲
入歲出豫算追加特第二號ハ、對支文化事業、
國債整理基金、公債金、國有財產整理資金、
金資金、關東局、帝國大學、學校及圖書館、
米穀需給調節、朝鮮總督府、臺灣總督府、
樺太廳及南洋廳ノ各特別會計ニ屬スルモノ
デアリマス、又豫算外國庫ノ負擔トナルベ
キ契約ニ關スル件追第三號ノ主ナルモノハ
地方災害土木費補助、日本產金振興株式會
社損失補償、中小商工業轉換資金融通損失
補償、航空輸送補助、船舶建造資金貸付補
給及日本發送電株式會社社債元利保證等ニ
關スルモノデアリマス、尙又臨時陸軍材料資金
豫算ハ、今囘設置セラルヽコトトナリマシタ
臨時陸軍材料資金特別會計ニ屬スルモノデア
リマス、同會計ハ陸軍ガ事變地ニ在ル軍需品
ヲ材料及原料ヲ取得スル爲ノ資金ニ關スル歲
入歲出ヲ、他ノ會計ト區分シ特別ニ經理スル
爲ニ設ケラレタルモノデアリマシテ、歲入
歲出共ニ一億二千萬圓デアリマス、豫算案
ノ內容ハ大體以上ノ通リデアリマス、豫算
委員會ハ二十二、二十三ノ兩日之ヲ開會致
シ、會期切迫ノ折柄分科ニ付託スルコトヲ
省略致シマシテ、總會ニ於テ十分審議ヲ盡
シマシタノデアリマス、今ヨリ委員會ニ於
ケル質疑應答ノ中、主ナル事項ニ付テ申述
ベタイト存ジマス、其ノ一ツハ支那ニ關ス
ル質問デアリマス、支那ニ於ケル軍、外務
省興亞院等ノ事務ノ分界ニ關シテ、具體
的ノ諸問題ニ付キマシテ種々質問ガ行ハレ
マシテ、政府ヨリソレ〓〓答辯ガアッタノ
デアリマス、ソレニ依リマスレバ宣撫工作
ニ付キマシテハ、第一線ノ宣撫工作ハ軍ニ
於テ之ヲ行ヒ、其ノ他ハ興亞院ガ之ヲ行フ
トノコトデアリマス、又文化工作ハ治安上、
用兵ノ必要ナキ地域ニ於テハ興亞院ガ之ニ
當リ、支那ニ於ケル事業ノ認可ニ付テハ
現地ニテハ興亞院連絡部、內地ニ於テハ興
亞院ガ主トナッテ之ヲ處理スルトノコトデ
アリマシタ、尙支那ニ於ケル在留邦人ノ保
護取締ニ付キマシテハ之ヲ外務省ガ擔當
セラレルトノ答辯デアリマシタ、支那ニ於
ケル在留邦人ノ保護取締ニ付テハ、現在ノ
在支外務機關デハ不十分デハナイカ、在支
領事館ヲ增設シ、其ノ人員ヲ充實シ、警察
官ノ素質ヲ向上セシメ、今後益〓≧增加スベキ
在留邦人ノ〓育、衞生、思想的指導、又其
ノ生業保護等ニ努力スベキデハナイカトノ
質問ニ對シマシテハ、是等ノ諸點ニ付テハ
必要ニ應ジ善處スル旨ノ答辯ガアリマシ
タ、又御趣旨ノ通リ阿片、「モルヒネ」等ノ不
正業者ハ、十分取締ル積リデアル旨ヲ外相、
陸相ヨリ陳述セラレマシタ、尙又上海ノ「テ
ロ」事件ニ鑑ミ、租界返還ノ考ハナイカト
ノ質問ニ付テハ、支那ニ於ケル租界ノ返還
ハ考慮スル積リデアルガ、我ガ國ガ租界ヲ
返還スル時ハ、諸外國モ租界ヲ返還セラレ
ル時期ト考ヘル旨ノ言明ガアッタノデアリ
やく、次ハ外交ニ關スル問題デアリマス、
對支問題以外ニ於テ、外交ニ關シテ問題ト
ナリマシタコトノ一ツハ、北樺太ノ利權ノ
確保ニ關スルモノデアリマス、此ノ利權確
保ニ要スル經費七百餘萬圓ガ豫算ニ計上サ
レテ居ルガ、是ハ「ソ」聯側ニ於ケル條約不
履行ニ基因シテ、損害ヲ蒙ツタ所ノ我ガ業者
ヲ補助スルモノデアルガ故ニ、「ソ」聯ニ對シ
テ賠償ヲ要求シテ然ルベキデハナイカトノ
質問デアリマス、政府ノ之ニ對スル答辯ハ
條約上ノ義務不履行ニ基ク損害ニ對シテ
ハ、一般的ニ言ヘバ賠償ノ請求ガ出來得ルノ
デアルガ、個々ノ問題ニ付テハ種々考慮ヲ
要スルトノコトデアリマシタ、又漁區競賣
問題ニ付テモ政府ヨリ經過ノ說明ガアッタ
ノデアリマスガ、是等ノ問題ニ付外務當局
ノ一層ノ努力ガ切望セラレタノデアリマス、
尙自主的外交ノ確立ニ付テ政府ノ意向ヲ質
ス所ガアッタノデアリマスガ、之ニ對シマシ
テ平沼首相ヨリ其ノ信念ヲ切實ニ披瀝セラ
ルヽ所ガアッタノデアリマス、次ハ資源開發
ニ關スル質問應答デアリマス、「アルミニ
ウム」ノ生産擴充ニ付テハ、國內資源開發ニ
依ッテ其ノ目的ガ達セラレルノデハナイカ、
外國原料ニ依存スル方法ハ、外貨獲得ノ政
策ト相反スルモノデハナイカトノ質問ニ對
シマシテ、政府ハ緊急ノ需要ニ對シテハ、
或程度迄外國原料依存ノ方法ヲ執ルコトモ
亦已ムヲ得ナイ旨ノ答辯ガアリマシタ、尙
其ノ外砂鐵ノ問題、燃料問題等ニ付テモ質
疑應答ガ行ハレタノデアリマス、又資源開
發等ニ關聯シマシテ、科學振興ノ急務タル
コトハ今囘ノ委員會ニ於テモ亦屢〓繰返シテ
主張セラレ、此ノ點ニ關シテ政府ノ所信ヲ
問ウタノニ對シ、政府ハ現在ノ施設ヲ以テ
十分ナリトハ考ヘテ居ナイガ、本問題ノ重
要性ニ鑑ミ、尙必要ニ順應スル爲ニハ十
分力ヲ致ス考デアルトノ答辯ガアッタノデ
アリマス、以上ノ外尙種々ノ問題ガ論議セ
ラレタノデアリマス、例ヘバ町村ト地方ノ
經濟團體トノ關係ニ付キマシテ、其ノ相
互ノ關係ヲ紛清セシムルコトハ宜シクナ
イデハナイカトノ質問ニ付テハ各〓別個
ノ團體トシテ協調ヲ圖ル方針デアルトノ
答辯ガアリマシタ、又通信事業ヲ民營ト
スル意思ハナイカト云フ問ニ對シマシテ
ハ政府ハ〓究ヲ致シタコトガアルガ、
種々ノ困難ガアルノデ現在其ノ意思ハナ
イト云フコトデアリマシタ、又電力國家
管理ニ依ッテ、果シテ豐富且低廉ナル電力
ガ得ラレルヤ否ヤニ付テ政府ノ所信ヲ尋
ネマシタ處、政府ハ發送電五箇年計畫ニ依ツ
テ、電力ノ豐富ノ點ニ付テハ確信ガアル、
又低廉ノ點ニ付テモ、石炭値上リ及ビ課稅
ニ依ル經費ノ增加等ノ事情ハアルケレドモ、
現在ヨリ低廉ナラシメ得ルコトヲ確信スル
旨ノ答辯ヲ得タノデアリマス、尙又滿洲國
ノ經濟發展ニ伴ヒ、日滿兩國間ニ於テ經濟
上相剋ヲ生ズル虞ガアルガ、政府ハ此ノ點
ニ關スル方針ハ如何デアルカトノ問ニ對シ
マシテ、政府ハ日滿一體、不可分關係ニ基
キ、適地適應主義ヲ以テ、兩國間ニ無用ノ
摩擦ヲ生ゼザルヤウ致シタキ旨ヲ述ベラレ
タノデアリマス、又貿易ニ關シテハ種々質
問ガアッタノデアリマスガ、貿易獨占會社ヲ
設立スルトノ風評ニ付キマシテハ政府ハ
之ヲ否定シテ居ラレタノデアリマス、又輸
出用罐詰ニ用ヒル「ブリキ」ノ供給ニ付テノ
質問ニ對シマシテハ、政府ハ之ヲ優先的ニ
考ヘルトノコトデアッタノデアリマス、尙右
ノ外最近ニ於ケル物價昂騰ノ狀況ニ鑑
ミ、官吏ノ品位ヲ維持セシムル爲、減俸復活
ノ意思ハナイカ、又大臣ノ俸給ガ各國ニ比
シ極メテ少額デアルガ、之ヲ增額スベキデ
ハナイカトノ質問ニ對シマシテ、平沼首相
ヨリ減俸ハ其ノ當時下級官吏ニ對シテハ之
ヲ行ハナカッタノデアルカラ、減俸復活ヲス
ルトスレバ、ソレト同時ニ下級官吏ノ待遇
ヲ如何ニスルカト云フ問題ヲ伴フノミナラ
ズ、一般ノ俸給生活者トノ關係モアルノデ、
尙愼重ニ考慮ヲ要スル、又大臣ノ增俸ニ付
テハ其ノ意思ハナイトノ答辯デアリマシタ、
尙南洋廳ノ制度ノ擴大强化ノ要ハナイカト
ノ質問ニ對シマシテハ政府ハ南洋ノ重要
性ニ鑑ミマシテ、一層努力致シタイトノ答
辯ガアッタノデアリマス、右ノ外幾多重要ナ
ル質問應答ガアッタノデアリマスガ、限ラレ
タ時間ノ今日デアリマスカラ、總テ之ヲ速
記錄ニ讓リタイト存ジマス、以上ヲ以テ質
問ヲ終リ次イデ討論ニ入リマシタ處、原案
贊成意見ノ陳述ガアリ、採決ノ結果、全會
一致ヲ以テ可決致シマシタ、以上ヲ以テ報
〓ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマスカラ··
〔男爵菊池武夫君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) ドウ云フコトデ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=6
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007・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 只今ノ委員長報告ニ付
キマシテ、私ノ質問ノ要旨ガ徹底シテ居ナ
イヤウニ存ジマス、意味ガ少シ違ヒハシナ
イカト思ヒマスカラ、斯ウ云フ意味ノコト
デアルト云フコトヲ申シテ置キタイノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=7
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008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 委員長ノ報告ヲ
補足シタイト云フ意味デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=8
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009・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 ハイ補足シタイト云フ
意味デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス
〔男爵菊池武夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=10
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011・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 只今委員長ノ報告ニ砂
鐵ニ關スル質問ガアッタト云フヤウニ報〓
サレマシタガ、其ノ質問ハ私ガ致シタ質問
デゴザイマシテ、砂鐵ヨリ採取、取ル所ノ
工業試驗所ノ試驗ヲヤラレル豫算ニ關シマ
シテ、其ノコトハ旣ニ實業化シテ居ル問題
デアルカラ、無用ナ是ハ事デハナイカト云
フ意味ノ質問デアッタノデアリマス、大要今
ノヤウナ通リデ發展シテ居ルノデゴザイマ
スカラ、左樣御承知ヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=11
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012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマス、小林嘉平治君
〔小林嘉平治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=12
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013・小林嘉平治
○小林嘉平治君 會期切迫ノ折柄、再ビ豫
算本會議ニ於テ壇上ニ登ルコトハ御遠慮ヲ
致サウカト餘程考ヘタノデアリマスガド
ウシテモ此ノ機會ニ此ノ議會ヲ通シテ、是
非陸軍大臣、拓務大臣ニ御尋ヲセンナラヌ
コトガアリマスノデ、此ノ演壇ニ立ッタヤ
ウナ次第デアリマス、暫クノ間御〓聽ヲ煩
ハシマス、私ノ御質シ申上ゲヨウト思ヒマ
スコトハ、滿洲移民ノ土地所有權ノ問題デ
アリマス、所謂滿洲ノ土地制度ニ一大變革
ヲ持チ來ス此ノ大キナ問題デアルノデアリ
マツ、此ノ御尋ヲスル前提トシテ、暫ク御
聽キヲ願ヒタイコトガアルノデアリマス
ソレハ外デモアリマセヌガ、丁度張鼓峰事
件ノアノ直後デゴザイマシテ、陸軍大臣ノ
御取計ヒデ、我々貴衆兩院二十六名ノ一行
ハ、親シク滿「ソ」國境ヲ視察ニ參ッタコトデ
アリマス、滿「ソ」國境ノ視察ハ誠ニ大切ナ
コトデアリマシテ私共陸軍大臣ガ我々貴
衆兩院議員ヲ通シテ、國民ノ多數ニ其ノ認
識ヲサセヨウト云フ御思召ノ存スル其ノ
心持ヲ、私共ハ非常ニ意味ノ深イモノガ
アルト考ヘテ、私ハ曾テサウ云フ所へ旅行
シタコトハナイガ、進ンデ御供ヲ致シタヤ
ウナコトデアリマス、併シ私ノ御供ヲ致シ
タノハ、マダ他ニ一一ツ大キナ目的ヲ持ッテ
居ッタノデアリマス、一ツハアノ國境ニ於
テ、有ラユル困苦ヲ嘗メテ、一身ヲ捧ゲテ、
アノ大任ニ當ッテ戴ク將兵ニ厚ク御慰問ヲ
申上ゲタイコト、二ツニハアノ滿洲移民
ガ果シテ成功スルモノデアラウカドウカ、
風土カラ申シマシテモ、三十度四十度以下
ノアノ寒イ所、アノ懸ケ離レタ邊境ニ、又
治安ノ狀態ハドウカト云フト、御承知ノ通
リデアリマシテ、是ハ私共ノミナラズ、皆
樣必ズ懷イテ居ラレタ所ノ疑問デアラウト
思ヒマス、此ノ疑問ガ解キタイ、此ノ二ツ
ノ目的デ私共ハ御供ヲ致シタコトデアリマ
ス、國境方面ニ參リマシテ駐屯ノ各部隊ヲ
親シク御慰問ヲ申上ゲマシタ、現ニ近頃議
席ニ列シテイラッシヤル前田侯爵モ、某地點
ニ於テ部隊長トシテ御慰問申上ゲタコトデ
アッタノデアリマス、其ノ部隊ヲ御訪ネシタ
時ニ、殆ド申シ合セタヤウニ各部隊長ハ斯
ウ云フ御挨拶デアリマス、國境方面ニ「ソㄴ
聯ハ我々ニ幾倍セル所ノ軍隊ヲ駐屯サシテ
居ル、又機械化部隊ニ於テモ相當整備致シ
テ居ル、ガ併シナガラ御安心下サイ、イザ
ト云フ時ニ我々ハ一步モ引ケヲ取ルモノデ
ナイ、ドウカ國ニ歸ラレタラ能ク地方ノ方
方ニ其ノ旨ヲ御傳ヘ下サイト、斯ウ云フ御
挨拶ヲ受ケマシテ、私共此ノ一死報國ノ念
ニ燃エテ居ル自信ニ充チ滿チタ、誠ニ賴モ
シイ所ノ御挨拶ヲ受ケマシテ、非常ニ心嬉
シク感ジマシタ、單ニ其ノ御挨拶ヲ受ケタ
バカリデナク現ニ、張鼓峰ノアノ生々シイ
戰蹟ヲ訪ネテ、事實ニ於テソレヲ御示シ下
サッタノデアリマシテ、深ク感激ヲ致シマシ
タ、厚ク感謝ノ意ヲ表シテ御慰問致シタコ
トデアリマシタ、次ニ滿洲移民ノ問題デア
リマス、所謂百聞ハ一見ニ如カズデ、私共
直チニ此ノ疑問ヲ解クコトガ出來タ、詳シ
イコトハ申上ゲマセヌ、「五族協和、五穀豐
ケキ曠野行ク」、是ガ私ノ得タ實感デアツタ
デアリマス、私共ハ移民ノ將來ニ非常ナル
望ヲ屬シテ歸ッタコトデアリマシタ、御案内
ノ如ク政府ハ二十年ニ百萬戶、人口ニ致シ
マスト五百萬人ノ移民ヲ送ッテ二十年後ニ
ハ滿洲國ノ人口ハ五千萬人ニナルヽ其ノ十
分ノ一ニ依ッテ滿洲國ヲ指導シテ參ラウト
云フ御計晝ヲ御立テニナッテ居ル、私共ノ觀
ル所ニ依ルト、二十年デハナイ、モウ十年
ニシテ必ズ成功スルト云フ見込ヲ付ケテ來
タノデアリマス、現ニ私共國ニ歸ッテ見ル
ト、千五百戶、初メハ五百戶ノ豫定デアリ
マシタガ千五百戶ノ移民ガ彼方ニ分村致シ
マシテ、是ハ分〓デアリマシテ、神路〓ト
云フモノヲ建設スルコトニ取掛ッテ居リマ
ス、モウ各府縣ニ於ケル情勢モ斯クノ如ク
デアリマス、斯クノ如クニシテ移民ガ我々
ノ豫期以上ニ彼方へ參ルト云フコトハ何ガ
爲デアルカ、勿論國策ニ順應スルト云フ堅
イ決意ノ下ニ參ラレルコトハ言フ迄モアリ
マセヌガ、彼方ヘ行ッタナラバ十町ノ土地ヲ
持ツコトガ出來ル、又其ノ外ニ十町ノ共有
地ヲ持ツコトガ出來ル、玆ニ樂シミヲ持ッテ
參ルノデアリマス、十町ノ所有權ヲ得ラレ
ルト云フコトニ樂シミヲ持ッテ參ルノデア
リマス、內地ニ居ッテ十町ノ土地ヲ得ルト云
フコトハナカ〓〓容易ナコトデナイ、然ル
ニ裸一貫デ健全ナル軀ヲ持ッテ行ケバ十町ノ
土地ガ所有シ得ル、然ニ此ノ頃噂ニ依リマス
ト、滿洲國ニ於テハ此ノ移民ノ土地所有權ヲ
認メナイ、土地ハ悉ク國有ニスル、サウシテ耕
作者ハ永小作ニスルノデアル、是ハ私ハ噂ト思ツ
テ居ッタ、段々過日來對滿事務局ナリ、拓務
省ナリ、要路デ取調ヲ致シマスト云フト斯
クノ如クデアリマス、此ノ一月七日八日ニ
新京ニ於キマシテ、移民國策會議ナルモノ
ガ開カレタノデアリマス、其ノ場合ニ提案
サレタ書類ヲ見マスト云フト、明カニ其ノ
事ガ示サレテアル、決シテ噂デナイ、事實
デアリマス、內地カラモ要路ノ方ガ參ラレ
タヤウデアルガ、之ヲ打消スコトヲ能ウ爲
サズシテ、サウシテ國ヘ持ッテ歸ッタ、此ノ
四五月頃ニハ更ニ會議ヲ開イテ之ヲ決定シ
ヨウト云フ此ノ場合デアルノデアリマス、
是ガ私ガ今總理大臣初メ當路ノ方々ノ決意
ノ聽キタイ所以ナノデアリマス、今ガ質問
スルノニ最モ好イ其ノ時機デアルノデアリ
マス、或人ハ斯ウ云フコトヲ申シマス、滿
洲ハ「ソ」聯ニ近イ、幾ラカ彼方ノ氣持ガ染ツ
テ來タノデハアリマスマイカ、所謂「ソ」聯
ノ「コルホーズ」ヤ、サウ云フモノト同ジデ
アルト云フコトハ申シマセヌ、併シ根本思
想ニ於テハ矢張リ私有權ヲ否認スル所ノ赤
イ思想ガ潛ンデ居ルノデハアリマスマイカ、
斯クノ如クニシテ何ノ防共協定ゾト言フテ
心配ヲ爲サル方ガアルノデアリマス、私共
ハソンナニハ考ヘテ居マセヌ、立派ナ方
方ガ行ッテイラッシヤルノデアル、相當年ヲ
占メテイラッシヤル方モ彼方デ統率ノ任ニ
當ッテイラッシヤルノデアル、若イ方ナレバ
兎ニ角、殊ニ滿洲ノ移民ト云フコトハ所謂
自作農本位デアリマシテ、內地ニ於キマシ
テモ自作農ノ問題ニ付テハ、私共多年苦勞
ヲ致シテ居リマス、缺點ガドウ云フ所ニア
ルカ、長所ハドウ云フ所ニアルカ能ク知ッテ
居リマス、其ノ氣持デ見ルト云フト、此ノ
所有權ノ問題ニ觸レテ問題ノ起キテ來クト
云フコトモ、其ノ主張ガ何處ラニアルヂヤ
ラウト云フコトヲ、御聽カセ蒙ライデモ分ッ
テ居ル、私共ハ輕々ニ此ノ問題ヲ「ソ」聯ノ根
本觀念ガ、根本思想ガ染ッテ來タ、ソンナコ
トニ考ヘマセヌ、デアルガ要スルニ此ノ考
ハ若イ生硬半熟デアリマス、コンナモノニ
箸ヲ著ケテ食ベタラ直チニ下痢ヲ起ス、尤
モ下等動物デアッタラ下痢ヲ起サヌカモ知
レヌ、文化ノ進ンダ我々ガ食ベルト云フト
下痢ヲ起シマス、此處迄話ヲ進メテ參リマ
スト、モウ少シ根本的ニ、一體人間ト云フ
モノハドンナモノカト云フコトヲ考ヘテ見
ナケレバイカヌ、此ノ所有慾ト云フモノハ
人間ノ本能デアリマス、文化ガ進ンデ來タ
ノハ所有慾ノ其ノ累積デアルト云フテモ宜
イ、所有慾ノ無イ所ニハ文化ハ進ミマセ
又、今デモ世界ニ其ノ例ハ餘計アル、併シ
ナガラ隨分宗〓家等デハ此ノ欲望ヲ捨テネ
バナラヌト云フコトデ、相當ノ苦勞ヲ致シ
タモノガアルノデアリマス、近頃大乘的ニ
物ヲ考ヘルトカ、大乘的々々々ト云フ言葉
ガ流行リマスガ、大乘ノ裏ニハ小乘ガア
ル、其ノ小乘的ノ考へ方ハドウデアルカト
云フト、所謂此ノ慾ヲ捨テテ、悟ヲ開カウ
ト云フノデアリマス、我々ノ此ノ慾其ノ儘
ガ所謂悟ヲ開クコトニナル、煩惱卽菩提ト
カ、娑婆卽寂光土ト云フノガ卽チ是デアル、
是ガ所謂大乘的ノ考へ方デアルノデアリマ
ス、コンナ御說〓メイタコトヲ言フト、皆
サンニ甚ダ失禮デアルガ、併シ物ハ其處迄
徹底シテ考ヘネバナラヌ、ソレデナケレバ
此ノ大キナ問題ヲ取扱フ資格ハナイ、デ此
ノ本能ニ基礎ヲ置イテ築キ上ゲタ家ナレバ
決シテ倒レマセヌ、此ノ本能ヲ無視シテ築
キ上ゲタモノハ直ニ倒レル、遠ク昔ノ
「ヨーロッパ」ヤ支那ノ例ヲ引ク迄モナク、
日本モ今ノ若イ人ノ考へタヤウナ制度ヲ
實現シタコトガアル、所謂班田ノ制トカ、
口分田ノ制度トカ、大化ノ新政ノ行ハレタ
ノハソレデアリマス、決シテ長續キハシナ
1、併シ今ノ世ノ中ニモ行ハレテ居ル現
ニ「ロシア」ノ實例ガアルヂヤナイカ、是ハ
劍ト軍隊ノ力ニ依ッテアノ制度ガ行ハレテ
居ルノデ、何時迄是ガ續クカト云フコトハ
今誰ノ頭ニモ問題ニナッテ居ルノデアリマ
ス、ドウシテモ人間ノ本能ニ基イタ經濟機
構ノ制度、政治機構ニ致シマシテモ、此處
ニ根據ヲ置イテ築キ上ゲタモノナレバ搖ギ
ガアリマセヌ、此ノ間衆議院デ海軍大臣ガ
「エヴォリューション」ト云フコトハ結構デ
アルガ、「レヴォリユーション」ト云フコト
ハイケテイ、斯ウ云フ御言葉ガアリマシタ、
ソコデ或衆議院議員ノ一人ガ、陸軍大臣ハ
如何ニ考ヘテ居ルカ、海軍ト陸軍ノ考へ方
ガ違フヂヤナイカト云フヤウナ質問ヲ爲サ
レタ方ガアルガ、私ハ陸軍ト海軍ニ考へ方
ガ違フトハ見テ居ラヌ、皆サン御氣付ニナッ
テ居ルカドウカ知ラヌガ、或ハ陸軍大臣ハ
近頃能ク流行ル所ノアノ革新ト云フ文字、
是ハ我々學生時代ニハ餘程忌ミ嫌ウタ文字
デアルガ、ソレガ今到ル所ニ革新ト云フ文
字ヲ使ウテ居ル、然ルニ陸軍大臣ハ此ノ頃
新聞ニ、今ノヤウナ氣持ヲ表ハス爲ニ、改
新ト改メ、改新ト云フ文字ヲ御使ニナッテ
居ル、又色々考ヲ持ッテ居ルガ、ソンナニ
途方モナイコトガ出來ルモンヂヤナイト云
フヤウナコトヲモ洩サレテ居ル、私ハ陸海
軍大臣、又陸海軍ノ間ニ、サウ云フ點ニ付
テ考ノ變ル理窟ガナイ、斯ク私共ハ見テ居
ルノデアリマス、又此ノ間衆議院ニ於テ總
理大臣ニ向ウテ、體全體主義ヲ如何ニ
考ヘテ居ルカ、個人主義ヲドウ云フ風ニ考
ヘテ居ルカ、アナタハ如何ナル御考ヲ御持
デアルカト云フ質問ニ對シ、全體主義デモ
ナイ、個人自由ノ主義デモナイ、私ハ皇道
主義ヲ心カラ······今サウ云フコトヲ彼此言
フノヂヤナイ、モウ疾クニサウ云フ考ヘ方
ヲ私共ハ鼓吹シテ居ルノデアルト云フ御言
葉デアリマシタ、所謂萬民其ノ處ヲ得テ、
サウシテ結局天皇ニ歸一シ奉ル、是ガ所謂
天皇陛下ノ仰セラレタ、正ヲ履ミ中ヲ執ル
ト仰セラレタアノ勅語ノ意味ハソレナンデ
アル、所謂中道ヲ步メトノ仰セデアル、皇
道ナルモノハ全體主義ノ長所ヲ執ルト同時
ニ、又個人主義、自由主義ノ長所ヲモ採入
レテ步ンデ行カウト云フ、是ガ所謂日本精
神デアルノデアリマス、コンナ風ニ考ヘテ見
マスト云フト、斯ウ云フ考ヲ基調トシテ考
ヘタ時ニ、結論ハドウナリマスカ、私ガ申
上ゲル迄モナク、滿洲ニ於テ此ノ土地ノ所
有權ヲ否認スルナンテ以テノ外デアッテ、殊
ニ如何ニシテ滿洲ニ於テ所有權ヲ確立シタ
カト云フコトヲ私ハ調ベテ見マスト云フト、
昭和十一年ノアノ日滿間ニ取結バレタ條約
ニ依ッテ、康德三年ノ七月一日カラ「日本臣
民ハ土地ノ所有權、地上權、永佃權、地役
權典權、土地賃借權等土地ニ關スル一切
ノ權利ヲ取得ス」、此ノ條文デハッキリト取
極ガ出來タノデアリマス、此ノ取極ヲ爲ス
迄ニ、我々ノ先人ガ如何ナル犠牲ヲ拂ハレ
タカ、我ガ日本ハ如何ナル犠牲ヲ拂フテ今
日ニ至ッタカト云フコトヲ、今ノ若イ人ハ能
ク考慮シテ貰ハヌト困ル、又一擧ニシテ斯
ウ云フ大事ナ所有權ヲ取去ルコトニ依ッテ、
將來ニ如何ナル影響ガ及ブカト云フコトヲ、
能ク考慮シテ貰ハナイトイケマセヌ、唯小
サイ範圍ノ、近イ所バカリ見テ、輕々ニ斯
ウ云フ大問題ニ觸レテ堂々ト新京ノ眞ン
中デ論議ヲスルナント云フコトハ怪シカラ
又、又內地カラ掛ケラレタ要路ノ方々ガ默
默トシテ、決議ハシテ來ヌダトカ何トカ云
フ······何ニシタ所ガ、ソレヲ內地迄持ッテ歸
ルト云フコトハ、私ハ驚カザルヲ得ヌノデ
アリマス、其處ニ何カ恐ルベキモノガアル
ノデアリマスカ
〔副議長候爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク〕
私ハ一介ノ老書生ヲ以テ任ジテ居ル者デア
ルガ、堂々此ノ演壇ヲ通シテ斯ク絕叫致シ
テ居ルノデアリマス、ソコデ御尋ネ致スコ
トハ、對滿事務局ノ總裁デアラレル陸軍大
臣ハ、此ノ問題ニ對シテ如何ニ御考ニナッテ
居ラレルカ、如何ニ又之ヲ處理セムトナサッ
テイラッシヤルカ、又內地カラ移民ヲ送ラル
ル大キナ責任ヲ持ッテイラッシヤル拓務大臣
ハ如何ニ御考ニナッテ居ルカ、率直ニ御示ヲ
願ヒタイノデアリマス、必ズ普段ニ於テ是
ダケノ質問ニ對シテ答ヘルダケノ御準備ハ
出來テ居ルコトト思ヒマス、尙最後ニ今二
三分時間ヲ頂戴致シタイノデアリマス、モ
ウ是デ百億ニ近イ大豫算ハ、一人ノ反對者
モナク貴衆兩院ヲ通ジテ全會一致、本日ハ
可決サレルコトニナルノデアリマス、全ク
絕對ニ現內閣ヲ信賴シタ結果デアルノデア
リマス、又九十何件ノ澤山ノ法律案モ、枝
葉末節ニ於テ少々ハ修正サレタヤウナモノ
ノ、大體ニ於テ全部無修正デ通ッタト申シ
テ宜シイ、全ク現内閣ヲ信賴スルカラノコ
トデアリマス、茲ニ私御禮ヲ申上ゲテ置カ
ンナラヌノハ、此ノ間演壇ニ立ッテ農村ノ使
命ニ顧ミテ是非部落團體ノ助成ノ爲ニ、
相當奮發シテ貰ヒタイト云フコトヲ、彼ノ
衆議院ノ決議ヲ尊重シテ實現スルヤウニト
云フコトヲ御願ヒ申シテ置キマシタ、衆議
院ニ於テハ此ノ追加豫算ニ現レテ來タモ
ノハ、自分等ノ期待ト大分隔ッテ居ルモノ
デアルト云フコトデアッタガ、全豫算ヲ通シ
マシテ凡ソ千八百餘萬圓、此ノ追加豫算ダ
ケデモ千三百餘萬圓バカリ此處ニ提案サレ
テ居リマス、總理大臣初メ農林、大藏兩大
臣其ノ他閣僚諸公ハ、此ノ輿論ヲ尊重シテ、
直チニ是ダケノ提案ヲサルタト云フコトハ、
衆議院デハ額ガ少イトカ何トカ言フ人モア
リマシタガ、私共モ實ハモット多額ナルコト
ヲ豫期シテ居リマシタケレドモ此ノ財源
ガ時節柄如何ニシテ捻出サレタカト云フコ
トヲ考ヘマスト、決シテツンナコトヲ言フ
場合ヂヤナイ、此ノ血ノ滲ムヤウナ財源ニ
依ッテ得タ所ノ、此ノ二千萬圓近クノ金、私
共農村指導ノ任ニ當ル者ハ、如何ニシテ有
效ニ之ヲ使フベキカト云フコトヲ只今カラ
深ク苦慮致シテ居ルヤウナ始末デアリマス、
今百億ノ大豫算ヲ絕對信賴ノ下ニ、殊ニ軍
事豫算ノ如キハソレコソ黑蓋ノ儘デ御任セ
ヲ致シタ、私之ヲ如何ニ有效適切ニ使フベ
キカト云フコトニ付テハ、總理大臣ノ責任
ハ最モ重イト思フ、又此ノ豫算ノ大半ヲ御
使ヒ下サル所ノ陸海軍大臣ノ御苦勞ハ實
ニ御察シ申上ゲマス、ドウカ貴衆兩院議員
デハナイ、此ノ一億ノ日本國民ノ信賴ニ如
何ニシテ應ヘベキカト云フコトヲ十分御考
ヘ下サイマシテ、ドウカ御自重アラムコト
ヲ切ニ御願ヒ申上ゲマス
〔國務大臣板垣征四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=13
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014・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 只今ノ御質問
ニ御答ヲ致シマス、滿洲國ニ於キマシテハ、
全面的ニ土地ヲ國有ニスルト云フヤウナコ
トハ未ダ聞イテ居リマセヌ、但シ此ノ廣イ
滿洲ニ於キマシテハ未利生地ガ澤山ゴザイ
やって、其ノ未利用地ノ開發ニ關シテハ是ハ
國家ガ管理ヲスル、國家ガ開發ヲスルト云
フヤウナコトガ、大量ノ移民ヲ收容スル爲
二、其ノ方ガ宜シイデハナイカト云フヤ
ウナ見地カラ考ヘラレテ居ルト云フコトノ
ヤウデアリマス、御意見ノ如ク此ノ土地ノ
問題ハ移民竝ニ此ノ移民ノ政策ニ重大ナル
關係ヲ持ツモノデゴザイマス、關係當局ト
モ十分連絡ヲ致シ、又滿洲國ト十分連絡協
調ヲ保チマシテ、將來移民政策ニ惡影響ヲ
及サナイヤウニ、愼重ニ十分善處致シタイ
ト考ヘル次第デアリマス
〔國務大臣八田嘉明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=14
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015・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 小林サンノ滿洲
ニ於ケル土地ノ問題ニ付キマシテノ御尋ニ
付キマシテハ只今對滿事務局總裁ヨリ御
答ノアリマシタル通リデアリマスガ、移住
事業ノ監督指導ニ當ッテ居リマスル拓務省
ト致シマシテ、一言御答ヲ申上ゲタイト
思フノデアリマス、御話ノ如ク移住地ニ於
ケル所ノ土地ノ問題ハ我ガ日滿間ノ重要
ナル國策デアリマスル滿洲移住國策ノ遂行
ノ上ニ於キマシテ、極メテ大切ナル事柄デ
アリマシテ、拓務省ニ於キマシテモ最モ愼
重ナル關心ヲ持ッテ居ルノデアリマス、從來
御承知ノ通リ滿洲ニ於ケル所ノ移住地ノ土
地ハ、其ノ買收ナリ、或ハ又割振リナリハ
滿洲拓殖公司ニ於テソレ〓〓取扱ッテ參ッテ
居ル譯デアリマス、此ノ點ニ於キマシテモ
總テ徒ニ、土地ガ不當ナル移讓ヲサレ、將來
ニ向ッテ滿洲移住地ノ安定、又維持確保ト云
フコトノ動搖シナイヤウナ方法ヲ執ッテ居
ルコトハ、御承知ノ通リデアルノデアリマ
ス、先頃一月ニ滿洲ニ於テ一般ノ此ノ移住
國策ニ對スル問題ガ協議セラレタノデアリ
マスルガ、此ノ問題ハ總テ色々ノ事項ニ亙ツ
テ居リマスルガ、近ク拓務省主催ニ於キマ
シテ、我ガ國ニ於キマシテ此ノ既ニ試練ヲ
經マシタル所ノ移住國策ニ對シマシテ、更
ニ最近ノ情勢ノ下ニ十分ナル檢討ヲ加ヘ
將來ニ向ッテ遺憾ナク此ノ大國策ガ遂行セ
ラレマシテ、日滿兩國ノ永遠ナル發展、不
可分關係ノ强化ニ付キマシテ、最善ノ方法
ヲ講ジタイト考ヘテ居リマスノデ、近ク我
ガ國ノ官民各方面ノ關係者、又滿洲國ニ於
ケル所ノ關係當局ト十分懇談ヲ致シマシテ、
種々ノ問題ヲ解決致シタイト考ヘテ居ルノ
デアリマス、新ラシキ未開地ノ開拓ニ付キ
マシテ、色々ト考ヘラレテ居ルト思フノデ
アリマスガ、其ノ點ハ只今對滿事務局總裁
ヨリ御答ノアッタ通リデアリマスガ、拓務省
ト致シマシテハ、要スルニ只今御說ノアリ
マシタル通リ、我ガ移住者ガ、農業者ガ日
滿不可分ノ此ノ原則ノ下ニ、滿洲ニ於ケル
所ノ建國ノ精神ニ合致致シマシテ、東洋ノ
永遠ノ所謂平和ニ貢獻セムガ爲ニ、努力セ
ラレテ居ル其ノ志ニ對シマシテ
(議長伯爵松平賴壽君議長席ニ復ス〕
又其ノ國策ニ對シテ障碍ノナイヤウナ、最
善ナル方途ヲ講ズル積リデ居リマスルノデ、
御了承ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、此
ノ段御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=15
-
016・小林嘉平治
○小林嘉平治君 簡單デアリマスカラ此ノ
席カラ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=16
-
017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=17
-
018・小林嘉平治
○小林嘉平治君 私ハ只今ノ兩大臣ノ御答
辯ヲ以テ滿足致ス者デアリマスルガ、此處
ニ少シク附加ヘテ置キタイコトハ私共ガ
先刻ノヤウナ主張ヲスルカラト云ウテ、私
ハ決シテ所有權ガ絕對的ノモノデアルト云
フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、現ニ日
本ノ今日ノ統制サレタ此ノ時代ニ於テハ
餘程縮小サレテ居リマス、其ノ收益權ニ於
テ其ノ使用權ニ於テ、從ッテ滿洲ニ於テ
ハ適當ニ又之ヲ制限スルト云フヤウナコト
モ必要デアラウト思フ、又アノ會議ニモ現
ニ家產制度ヲ試ミタラドウカト云フヤウナ
コトモアッタヤウデアリマス、斯ウ云フ問題
ハ私共モ考ヘテ見タ問題デアルガ、「フランス」
ニ於テハ旣ニ失敗シタ例モアリマス、アリマ
スガ斯ウ云フ點ニ付テモ餘程御考へ下サル必
要ハ勿論アルト思フテ居ルノデアリマス
唯野暮ニ所有權ノ絕對性ヲ私共ハ主張スル
ノデナイト云フコトヲ玆ニ附加ヘテ置キマ
ス、モウ一ツ附加ヘテ置キタイコトハ、斯ウ
云フ新ラシイ問題ニ觸レテ改革ヲシヨウト
云フ若イ御方ハ、日本ガ明治以來僅カ十年代
ノ間ニ、今日ノ此ノ勢力ト位置ヲ如何ニシテ
贏チ得タカト云フコトヲ御考ヘ下サイ、
般ノ人ノ非難スル所ノ資本主義經濟ト言ヒ
マスカ、自由主義ト言ヒマスカ、私共ハサウ
云フ名ヲ付ケルコトハ適當デアルカドウカ
知リマセヌ、ガ兎ニ角今日迄ノ制度ガ今日
ノ日本ヲ產ミ來シタノデアル、斯ウ云フコ
トヲ能ク頭ノ中へ入レラレテ、惡イ事ハ改
メネバイケマセヌ、決シテ世ノ中ハ完全ナ
モノデハアリマセヌ、所謂「エヴォリューショ
ン」ハ必要デアリマス、「エヴォリューショ
ン」ガナケレバ死ンダ無機物ト同ジデア
リマス、デアリマスガ、思ヒヲ茲ニ致シテ、
サウシテ愼重ニ斯ウ云フ大キナ問題ハ取扱ッ
テ戴クヤウニ御願ヒ致ス次第デアリマス、
今此ノ所有權ノ問題ニ付テモ篤ト愼重審議
ヲ重ネラレムコトヲ切ニ御願ヒ申上ゲテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 靑木才次郞君
〔靑木才次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=19
-
020・青木才次郎
○靑木才次郞君 私ハ市町村關係ニ付キマ
シテ二三御尋ネ致シタイノデアリマス、御
提案ニナリマシタル豫算案ヲ拜見致シマス
ルト、町村吏員充實助成費二百萬圓ガ御計
上ニナッテ居ルノデアリマス、傳ヘ聞ク所ニ
依リマスト、內務當局ハ二百四十萬圓御要
求ニナッタノデアルガ、財務當局ガ之ヲ認メ
ズ、計上不能ト傳ヘラレテ居ッタノデアリマ
ス、本院事務局調査課ノ御調モ亦然リデア
リマシタ、大藏省ノ主計局ニハ僕ハ陳情
ハ嫌ヒダ、何デモ知ッテ居ルカラ默ッテ歸レ
ト云フヤウナ事務官ガ居ルト傳ヘラレテ居
ルノデアリマス、私ハソンナ譯デアリマス
ルカラ、此ノ費目ハ蓋シ御計上ニナレナイ
ノデアラウト遺憾ナガラ諦メザルヲ得ナカツ
タノデアリマス、然ルニ假令減額サレタリト
申シマシテモ、玆ニ二百萬圓ノ計上ヲ見マ
シタコトハ、私ハ內務當局ガ熱心ニ御支持
爲スッテ下サッタ賜モノデアルト信ジマス、
此ノ點ニ對シ內務當局ニ對シ深甚ナル謝意
ヲ表スル次第デアリマス、然リト雖モ率直
ニ申上ゲテ見マスルナラバ、私ハ之ニ滿足
スル者デハナイノデアリマス、否寧ロ其ノ
金高ノ餘リ少キニ驚イテ居ルノデアリマス、
承リマスレバ政府ハ貧弱町村救濟ノ思召ダ
ト云フ風ニ聞イテ居ルノデアリマスガ、貧
弱ナラザル町村何レニアリヤト問ヒタイ、
勿論全國一萬一千有餘ノ町村中ニ、富メル
町村ナシトハ私モ申上ゲマセヌ、併シナガ
ラ貧弱ナラザル町村ガ果シテ幾ツアリヤト
問ヒタイノデアリマス、現在町村ノ狀態ヲ
見マスルト、時局ノ關係ニ依リマシテ、全
國的ニ吏員增員ノ急ニ迫ッテ居ルノデアリ
やく、少クトモ一町村平均二名ノ吏員增員
ガ必要デアルノデアリマス、豫算ニ致シマ
シテ一町村平均千圓、全國的ニ一千百萬圓
ノ豫算ヲ必要トシテ居ルノデアリマス、窮
乏ノドン底ニアリマス町村財政ニ於テ、此
ノ金額ハ捻出不能、國家ノ助成ニ俟ツヨリ他
ニ途ガナイト思ヒマス、之ニ對シマシテ只
今申上ゲマシタル僅々二百萬圓ノ補助ヲ以
チマシテ、衆議院ニ於ケル御說明ヲ伺ヒマ
スルト、一部ノ町村ニ補助スルノダト、一部
ノ町村ニノミ助成致シマシテ、以テ事足レリト
シテ他ヲ顧ミズ、是デハ全國ノ町村ハ到底負
擔ニ堪ヘ切レヌト信ズルノデアリマス、殊ニ今
後更ニ增加サレムト致シテ居リマスル國家
總動員法ニ對スル色々ナ事務、其ノ他幾多
重要ナル事務ノ處理ニ、多大ノ支障ヲ來ス
虞アリト私ハ深ク之ヲ憂ヘテ居ルノデアリ
V.S.政府ハ此ノ際ニ如何ナル方法ニ依リ
マストモ財源ヲ捻出致シマシテ、以テ町村
吏員ノ充實ヲ圖リ、銃後國防ノ完璧ヲ期スル
必要アリト斯ク信ズルノデアリマス、此ノ
點ニ對シテ御所見ヲ伺ヒタイ、現下町村事
務ハ財政的ニ行詰ッテ居リ、又多年官僚的事
務ニ禍サレマシテ、積極的ナルベキ機能ハ
遺憾ナガラ、萎靡銷沈、遂ニ其ノ本領ヲ沒却
致シマシテ、所屬事務ノ一方面デアリマス
ル國、府縣、斯カル方面ノ委任事務ニノミ
全能力ヲ費シテ居ルノデアリマス、町村民ノ實
生活ト懸ケ離レタコトニバカリ其ノ能力ヲ
費シテ居ルノデアリマス、此ノ非常時局ニ直面
致シマシテ、銃後國民指導ノ大責任ヲ有スル
此ノ自治體ヲ斯クノ如キ狀態ニ置キマスコ
トハ、甚ダ遺憾ニ存ズルノデアリマス、此ノ際
市町村自治ノ本質的意義ヲ明確ニシ、其ノ機
能ノ擴大强化ヲ基調トスル、根本的刷新ヲ
斷行致シマスルコトハ頗ル緊要ナリ、斯ク
信ズルノデアリマス、市町村自治機能ノ擴
大强化ヲ圖リマスニハ、先ヅ第一ニ小町村
ノ合併整理ニアリ、斯ウ云フ風ニ思ヒマス、
試ミニ昭和五年ニ行ハレマシタル國勢調査
ノ統計ニ基キマシテ、人口別、町村數ヲ見
マスルト、人口二千以內ノ町村、戶數ニシ
テ約四百戶以内ノ町村ガ全國ヲ通ジマシ
テ、マダ二千三百町村アルコトニナッテ居
リマス、爾來合併其ノ他ニ依リマシテ、
年間ニ於ケル町村ノ移動狀況ヲ見マスル
ト或ハ三十箇町村、或ハ五十箇町村ノ、
僅カナ町村ガ移動シテ居ルニ過ギマセヌ、
誠ニ遲々タル狀態ニアルノデアリマス、私
ハ此ノ際爾餘ノ小サナル町村ノ町村合併ニ
對シマシテハ、特ニ政府若シクハ府縣ニ於
キマシテ適當ナル奬勵ヲ爲シ、之ニ依ッテ財
政的基礎ヲ鞏固ナラシムルト共ニ、自治活
動ノ範圍ヲ擴大致シマシテ、其ノ自治機能
發揚上、必要ナル各種要件ヲ具備セシムル
必要アリ、斯クノ如キ觀念ヲ持ッテ居ルノデ
アリマス、此ノ點ニ對スル政府ノ御所見ヲ
伺ヒタイ、其ノ次ハ政府ハ此ノ町村制中改
正法律案、簡單ニ申上ゲマスト、農會長ト
カ信用組合長トカ云フノハ、選擧ヲ用ヒズ
シテ町村會議員ニナレルト云フヤウナ案デ
アリマス、御承知ノ案デアリマス、提案ス
ルト云フ大分評判デアリマシタガ、ドウ云フ
理由カ之ヲ引込マセチヤッタ、此ノ市町村會
議員ノ素質ノ低下ハ申上ゲル迄モナク多年
ノ聲デ、其ノ必要ハ論ズル必要モナイト思
ヒマス、私ハ政府ハ衆議院ニ於テ反對セラ
ルヽヤウナル特選ノ案ニ依ラズ、寧ロ大正
十五年法律第七十五號ヲ以テ削除シマシタ
町村制第十三條、アノ町村會議員等級選擧
制度ヲ復活シタラ宜イノヂヤナイカ、斯ク
思フノデアリマス、此ノ點ニ對スル政府ノ
御所見ヲ伺ヒタイ、市町村本來ノ職務ハ產
業經濟、保健等デアリマスルガ、國家デ
委任セラレテ居リマスル事務ハ納稅、學事、
戶籍、兵事等、複雜繁多ヲ極メテ居ルノデ
アリマス、府縣廳ハ色々ニ課ヲ分チマシ
テ、各課每ニ年々歲々役人ヲ增シ、色々ノ
計畫ヲ御立テニナリマス、然レドモ是ハ皆
市町村役場ヲ通ジテ、調査或ハ實施ヲ命ジ
テ來ルノデアリマシテ、役場吏員ト致シマ
シテハ、依然トシテ增員セラレテ居リマセ
又、而モ薄給デ手不足ナノデアリマス、從ツ
テ事務ノ處理ニハ多忙ヲ極メ、上級ノ官衙
カラ命ゼラレマシタル調査モ、施設モ、何
レモ徹底ヲ缺イテ、全ク形式的ニ終ッテ居ル
ノガ實情デアルノデアリマス、近來色々ノ
團體、組合等ガ數多ク設立セラレテ居リマ
スルガ、其ノ間ニ於ケル連絡、指導等ニ當
ル事務ハ、皆市町村役場デヤッテ居ルノデ
アリマス、而モ普通ノ農村ニ於テハ僅カニ
五六人ノ吏員ニシテ其ノ衝ニ當ッテ居ルノ
デアリマス、殊ニ支那事變發生後ニ於キマ
スル兵事關係事務、此ノ事務ハ殊ニ激增致
シテ居ルノデアリマス、之ヲ列擧致シテ見
マスルナラバ、第一ニ動員事務ノ處理デア
リマス、充員ノ召集、馬匹ノ徵發、臨時召
集ヲ受ケマスル等、常ニ細心ノ注意ヲ以チ
マシテ、迅速ナル處置ヲ執リ、宿直員ヲシ
テ臨機ニ備ヘシメ、其ノ都度當該家庭ヲ訪
問視察致シマシテ、士氣ヲ鼓舞シ、又常ニ
不在者ノ所在ヲ明確ニ致シマシテ、出稼者
或ハ旅行者ニ對スル等ノ連絡ヲ保チテ非常
ニ備ヘテ居リマス、應召軍人ノ家族ニ對ス
ル扶助ノ公正妥當ヲ期スルガ爲ニ、常ニ綿
密ナル公平ナル調査ヲ行ヒ、又扶助ノ時機
ヲ失シナイヤウニ、諸般ノ手續ハ敏捷ニ處
理致シ、其ノ他疾病或ハ出產、軍事援護事
務ニ關係致シマスル一切ノ事務ハ、政府ノ
モノデモ府縣關係ノモノデモ、或ハ愛國婦
人會、國防婦人會、或ハ孤兒、何レノ方面
ニ關スルモノデモ皆市町村ガ扱ッテ居ルノ
デアリマス、其ノ他軍需品ノ調達輸送、整
備應召出征軍人ノ入退營、或ハ歸還將兵
ノ歡送迎、出征將兵ノ慰問竝ニ慰問品ノ發
送、戰病死者又ハ傷痍者ヲ生ジタル場合ノ
措置、英靈ノ送迎、町村葬ノ執行、出征
軍人竝ニ傷痍軍人歸還後ノ補導、遺家族ノ
慰問、人事相談、仲裁指導、或ハ遺家族
ノ負債整理、遺家族ニ對スル勤勞奉仕、
遺家族ニ對スル感謝生活ノ鼓吹、遺家族慰
安會、祈願祭、慰靈祭ノ執行、銃後市町村
民ノ精神〓化ノ指導、物資調整事務ノ處理、
勤勞倍加、生產增加ノ指導、消費節約、
生活改善ノ指導、貯蓄ノ奬勵、獻金、獻納、
軍事扶助資金ノ募集、失業者ノ轉業指導、
時局ニ關スル各般ノ統計事務其ノ他ノ處理、
戶籍事務ノ激增、防空知識ノ涵養、町村民
ニ對スル時局ノ認識指導等、數へ來レバ數
限リモナイノデアリマス、町村吏員ヲ倍加
致シマシテモ、尙且間ニ合ハザル程事務ハ
繁劇デアルノデアリマス、私ハ一昨年、事
變チヨット前ニ村長ニナリマシテ、自分ガ其
ノ事ニ關係致シテ居リマスルノデ能ク分ッテ
居ルノデアリマス、「ニュース」ノ傳フル所ニ
依リマスト、昭和十二年度以降官吏ノ增員
ガ四萬二千七百人、是ハ雇ヤ、傭員ハ數ニ
入レナイト云フ風ニ聞イテ居リマス、熱
雇傭員迄合計シクラ或ハ五萬人ヲ突破シテ
居ルンヂヤナイカト思フ、然ルニ町村吏員
ハ只今申上ゲマシタ如キ劇務ニ追ハレテ居
リナガラ、全國的ニ殆ド增員シテ居ラヌノ
デアリマス、市町村吏員ノ其ノ實情ヲ見マ
スル時、誠ニ同情ノ感ニ堪ヘナイノデアリ
やっく、政府ハ昭和七年五月、勅令第七十六
號ヲ以チマシテ、〓育家ニ對スル待遇ヲ向
上セシメマシタ、卽チ第一一條ニ「市町村立小
學校長及訓導ハ判任官ノ待遇トス但シ小學
校長ニシテ功績アル者ハ特ニ奏任官ノ待遇
ト爲スコトヲ得」ト規定サレ、第三條ニハ
「前條ノ規定ニ依リ、奏任官ノ待遇ヲ受クル
小學校長ノ待遇相當官等ハ高等官五等以下
トス」ト改正ヲサレタノデアリマス、承ル
所ニ依リマスレバ、是ハ小學〓員ガ他ノ官
吏等ニ比較致シマシテ、職責ガ重イニモ拘
ラズ、地位ガ低カッタガ爲ニ、斯ク改正サレ
タト傳ヘラレテ居リマス、誠ニ結構ナコト
デアルト思フ、又內務省デハ本年一月、書
記官中ノ働キノアル人十九人ヲ勅任待遇ニ
ナサレタノデアリマス、近頃ノ「ニュースL
ヲ拜見致シマスルト、文部省デハ六大學ノ
總長ヲ親任官ノ待遇ニシタ方ガ宜インヂヤ
ナイカト云フノデ、御〓究中ダト云フコト
ガ出テ居リマス、又最近デハ、遞信省ハ全
國八萬有餘ノ郵便配達或ハ電信配達、電信
電話ノ工事ニ從事シテ居リマスル工手、技
エ、斯ウ云フ人々ヲ一齊ニ雇員ニ昇格ヲサ
セタ、更ニ十年以上勤續致シマシテ成績ノ
良イ者ハ一躍判任官ノ待遇ニナレル途ヲ御
聞キニナッタノデアリマス、國家ノ爲ニ貢獻
致シテ居リマスル人々ニ對シ、優遇ノ御方
針ヲ執リマスルコトハ、誠ニ結構ナコトデ
愉快ニ感ズル次第デアリマス、然ルニ同ジ
ク國家ノ爲ニ貢獻シ、常ニ衆人ノ師表トシ
テ働イテ居リマスル市町村吏員ハ政府ノ
使用人ニアラザルガ爲ニ、何等顧ミラレザ
ルコトハ何ノ爲デアルカ、私ニ了解出來ナ
イ所以デアリマス、市町村ノ吏員ハ申上ゲ
ル迄モナク、人格的ニ市町村民ヲ指導シナ
ケレバナリマセヌ、社會〓育ハ〓育家ニノ
ミ任セテ置クベキモノヂヤナイト思ヒマス、
私ハ市町村吏員ノ待遇ヲ改善シテ、適當ナ
人物ヲ當テガッテ、社會〓育方面ニ十分ニ努
力ヲサセルノガ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ
風ニ思フノデアリマス、現在ノ市町村
吏員、殊ニ町村吏員ハ只今申上ゲマシタル
如ク、勞ハ極メテ多イニモ拘ラズ、給
料ハ實ニ僅カナモノヤット糊口ヲ凌イデ
居ルニ過ギナイノデアリマス、ソンナ
譯デアリマスルカラ、人格手腕ノアル者ハ
此ノ市町村吏員ニナラナイ、厭ヒマス
從ッテ吏員ノ素質ハ年々低下致シテ來テ居
ルノデアリマス、市町村吏員ノ職務ハ、只
今申上ゲマシタ如ク重大デアリマスニ拘ラ
ズ、而モ仕事ハ二人前、三人前ノ仕事ヲシ
テ居リマシテモ一般他ノ社會ノ人々カラ
見マスルト、誠ニ僅少デ而モ勞働者ヨリモ
遙カニ劣ッテ居ルヤウナ現狀ナノデアリマ
ス、ソレモ此ノ社會的地位或ハ判任官ノ待
遇ヲサレルカトカ或ハ高等官ノ待遇デモ
サレルトカ、又官吏ノ如クニ盡シタ者ナラ
バ、叙位叙勳ノ御恩典ニデモ浴シ得ルコト
ガ出來ルトスレバ聊カ慰メ得ラレルト思ヒ
マスガ、町村長ノ待遇ハ、ハッキリトハ分リ
マセヌガ、私ハ判任官ヂヤナイカト思フ、
助役以下ノ吏員ハ雇ニモ及ビマセヌ、恩典
ニ浴シ得ルヤウナコトハ、殆ド期待出來ナ
イト思フノデアリマス、此ノ小學校ノ先生
ヤ或ハ地方三等郵便局ノ局長連ハ、何年カ勤
メルト從來何位勳何等ニナレルノデアリマ
ス、地方へ宮樣ガ御成ノ如キコトガアリマ
スル際ハ町村民ハ當然御出迎へ或ハ御見
送ヲシナケレバナリマセヌ、サウ云フ場合
ニ其ノ土地ノ町村長ハ、其ノ町村ヲ代表シ
テ居リナガラ何等無位無勳デアリマスルガ
故ニ、此ノ三等郵便局長ヤ或ハ自己ガ平素
監督シテ居リマスル小學校ノ先生ヨリ後ノ
方デ御出迎ヲセナケレバナラヌノデアリマ
ス、(拍手)誠ニ工合ガ惡イ、斯ウ云フ場面
ヲ町村民ガ見マスト、何ダ俺ン所ノ村長ハ
小學校ノ先生ヨリ下カ、郵便局ノ誰君ヨリ
下カ、斯ウ云フ觀念ガ町村民ノ頭ニ染ミ込
ミマシテ、自然ニ此ノ町村長ヲ、町村民ガ
崇拜スルト云フ觀念ガ薄ラグノデアリマス、
此ノ普通選擧ガ施行セラレマシテカラ、御
承知ノ如ク無產ノ町村會議員ガ大分選出セ
ラレテ居リマス、從ッテ無產ノ町村長モ各府
縣ニ見受ケラレテ居ルノデアリマス、無位
無勳、加フルニ無產、生活不安、サウ云フ
者ハ何處へ行ッタッテ町村民ガ尊敬スル筈ハ
アリマセヌ、町村民ガ尊敬セザル町村長ニ、
此ノ時局重大ノ今日、只今申上ゲタル如キ
重大責任ヲ背負ハシテ置イテ、ソレデ自治
ノ刷新、農村ノ振興ガ出來マスカ、銃後ノ
國防是デ完璧ナリヤト伺フノデアリマス
地方ノ町村民ハ其ノ町村長ヲ馬鹿ニシマシ
テ其ノ指導ヲ受ケル者ハ無クナルト思ヒ
さゝ、假ニ指導ヲ受ケマシテモ、御尤ダト
言ッテ之ヲ守ル人果シテ幾人アリヤト私ハ
思フ、憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス、自治
ノ刷新ヲ圖ルト云フ御意思デアリマスナラ
バ先以テ其ノ市町村吏員ニ人ヲ得ルコト
デアリマス、適當ナル人物ヲ見付ケ、生活
ニ安ンジテ、而モ眞劍ニ其ノ職務ニ精勵サ
セル、之ニアリト思ヒマス、綱紀ヲ肅正致
シマシテ自治體ニ頻發致シマスル總テノ禍
根ヲ芟除シ、市町村吏員ニ對スル國民ノ信
賴ヲ厚ウサセ、之ガ優遇ノ途ヲ講ジマスル
コトハ現下ノ情勢ニ對シマシテ喫緊ノ要
諦ナリト信ズルノデアリマス、支那事變ガ
發生致シマシテカラ、此ノ官公吏ノ應召ガ
大分アルノデアリマス、其ノ關係カラ下級
ノ官公吏、殊ニ雇傭員ハ日夜激務ニ追ハレ、
加フルニ物價ハ御承知ノ如キ騰貴デアリマ
ス、生計困難、窮狀實ニ同情ニ堪ヘザルモ
ノガアリマス、近頃減俸復活或ハ下級官吏
ノ增俸、斯ウ云フ議論ガ擡頭致シテ居リマ
スルガ、私ハ當然過ギル程當然デアルト思
フ、官吏ニシテ斯クノ如シデアリマス、更
ニ薄給ナル公吏ニ於テヲヤ、增俸ノ必要ア
ルハ論ズル迄モナイト思ヒマス、由來國家ガ
此ノ地方自治ヲ認メマシタル所以ハ、此ノ國
家ノ行政ヲシテ其ノ地方々々ノ實情ニ適合セ
シメムガ爲デアルト云フ風ニ思フノデアリマス、
從ッテ之ガ自治體ノ吏員デアリマセウトモ、
其ノ實質上ノ職責ニ至リマシテハ、官吏ト
何等擇ブ所ガナイト思フノデアリマス、官
吏ト公吏ト其ノ實質ニ於キマシテ何等變リ
ナキニモ拘ラズ、官吏ニ對シマシテハ御承知
ノ如ク恩給法ノ設定モアリマス、其ノ他色々
優遇ノ途ガ講ゼラレテアルノデアリマス
ガ、同ジク公務ニ盡瘁シテ居リマス此ノ公
吏ニ對シマシテハ全然顧ミマセヌ此ノ現
狀ハ、本員不敏、了解シ難イ、政府ハ速カ
ニ市町村吏員ニ對スル待遇ヲ高メ、自治行
政ニ全力ヲ傾倒スルノ責任ヲ持タセ、安ン
ジテ公務ニ專念、精勵シ得ル手當支給ノ方
策ヲ確立シ、更ニ敍位敍勳內規ヲ改正シ、
又ハ褒章條例ヲ設定シ、精神的優遇ノ必要
アリト信ズルノデアリマス、私ハ此ノ市町
村ノ書記ニモ、小學校ノ訓導位ノ待遇ヲ與
ヘテモ宜イト思フ、又多年勤續ノ町村長、或
ハ戶數一千戶以上モアル所ノ町村ノ町村長、
或ハ手腕力量ガ卓越致シテ居リマスル町村
長ナドニハ高等官ノ待遇ヲ與ヘテモ過ギ
ハシナイト思ヒマス、全國ノ各市長ハ全部
高等官待遇ニシテモ宜イト思フ、殊ニ東京
トカ大阪トカ云フ、斯ウ云フ大都市ノ市長
ハ親任官ノ待遇ヲシテモ過ギハセヌト思
フ、六大學ノ總長ヲ文部省ガ親任待遇ヲ爲
スベク御〓究中ダト云フナラバ、內務當局
ハ東京、大阪ノ市長、此ノ二大都市ノ市長
ノ如キハ親任待遇ノ御〓究ヲ爲サッテ然ル
ベシト思フノデアリマス、只今甲上ゲマシ
タル如ク、市町村長ハ銃後國防軍ノ部隊長
デアリマス、而シテ吏員ハ所屬ノ勇士デア
リマス、政府ハ銃後國防軍ヲ優遇スベシ、
殊ニ其ノ指導者ヲ優待スベシ、是ガ銃後國
防ノ完璧デアリ、國策遂行ニ忠ナル所以デ
アルト信ズルノデアリマス、政府ノ御所見
ヲ承リタイ、只今申上ゲケマシタル私ノ質
疑ハ內務省所管デアリマスルガ、軍關係ノ
コトガ······殆ド仕事ハ軍關係ノコトデアリ
マス、殊ニ板垣國務大臣ノ御意見モ、內務
大臣ト共ニ拜聽致シタイノデアリマス會
期切迫ノ折柄、長時間御邪魔致シマシテ、
恐縮ニ堪ヘマセヌ(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=20
-
021・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 靑木サンニ
御答ヲ致シマス、町村ノ今日此ノ非常時ニ當
リマシテ、事務ガ非常ニ激增致シテ居リマシ
テ、ソレニモ拘ラズ是等ノ事務ニ當リマス
ル吏員ガ充實ガ伴ッテ居リマセヌ爲ニ、事務
ノ激增、非常ニ各方面ニ於テ困難ヲシテ居
ルト云フコトハ政府ニ於テモ認メテ居ルノ
デアリマス、サウ云フ次第デアリマスルノ
デ、今囘此ノ吏員ノ充實ノ費用ヲ計上致シ
タヤウナ次第デアリマシテ、此ノ問題ハ今
日アレダケノ充實助成費デ以テ十分足レリ
トハ考ヘテ居リマセヌ、更ニ實情ニ卽シマ
シテ、十分ノ對策ヲ將來ニ於テ講ジタイト
考ヘテ居ル次第デゴザイマス、ソレカラ第
二ノ御尋デアリマシタ小サイ町村ノ合併ノ
問題デアリマス、小サイ町村ノ合併ニ付キマ
シテハ、從來モ是ハ奬勵ヲシテ居ルノデア
リマス、唯町村ノ沿革、歷史、又各般ノ事
情等ガゴザイマスノデ、之ヲ畫一的ニ整理
ヲ致シマスコトハ、餘程愼重ヲ要スルト存
ジマスルガ、今日交通機關其ノ他ノ發達カ
ラ致シマシテ、昔ノヤウヲ意味ニ於テノ町
村ガ各分立シテ居リマスコトモ、必ズシモ
宜イトハ考ヘマセヌノデ、是等ニ付キマシ
テハ十分將來、實情ニ卽シタ處置ヲ執ッテ
行キタイト考ヘテ居リマス、次ニ御尋デゴ
ザイマシタ、此ノ町村會議員ノ選擧ニ付キ
マシテ、等級選擧制ヲ復活サセル考ハナイ
カト云フ御尋デゴザイマシタ、普通選擧ニ
伴ヒマスル弊害ヲ除去致シマスル爲ノ一ツ
ノ手段トシテ、此ノ論ノアリマスコトハ屢〓〓
ク所デアリマス、此ノ問題ハ併シナガラ選擧制
度乃至自治制度ノ根本ニ觸レマスル大問題
デアリマス、果シテ能ク之ニ依リマシテ所期ノ
目的、改善ヲ達成シ得ルヤ否ヤ、又或場合ニ
ハ却テ弊害ヲ助成スルコトガアリハシナイカ、
更ニ適切ナル、之ニ代ル具體案ヲ確立シ得
ルヤ否ヤ、今日ノ普通選擧ニ代ル適切ナ具
體案ガ出來ルヤ否ヤト云フコトニ付キマシ
テモ、一遍普通選擧ヲ行ヒマシタ後ニ於キ
マシテ、往年ノ等級選擧制ニ直チニ還リマ
スレバ、ソレデ其ノ弊害ヲ除去シ得ルト云
フコトニ付キマシテハ、餘程愼重ニ考慮ヲ
要スルコトト存ジマス、此ノ點ニ付キマシ
テハ十分ナル檢討ヲ盡シタイト考ヘテ居リ
やっ、ソレカラ最後ニ町村吏員ノ優遇ニ付
テ御尋ガゴザイマシタ、町村ノ吏員ガ其ノ
任務ガ極メテ重要デアリマスルコトニ付キ
マシテ、只今縷々ト御述ニナリマシタコト
ニ付テハ政府モ全ク御同感デアリマス、精
神的優遇ト致シマシテ、敍勳ニ付キマシテ
ハ昨年四月自治制五十周年ノ記念式典ニ際
シマシテ、其ノ選敍ヲ進メラルヽ有難イ御
沙汰ヲ拜シタノデアリマス、國家ノ待遇問
題ニ付キマシテ只今色々御述ニナリマシタ
ガ、各方面ノ他ノ吏員其ノ他トノ關係モ、
餘程御話ノヤウナ點ニ於テ間々面白クナイ
差等ノ出來マスコトモ、我々ハ聞イテ居ル
ノデアリマス、唯此ノ問題ハ自治體ト官吏
ト、自治體ノ公吏ト官吏トノ問題ニ付テモ
餘程考慮ヲ要スル點モゴザイマス、併シナ
ガラ御述ニナリマシタ點ニ付テハ全然御同
感デアリマシテ、是等ノ優遇ニ付キマシテ
ハ將來トモ十分盡力致シタイト考ヘテ居リ
さく、又物質的ノ問題ニ付キマシテ今日非
常ニ町村吏員ガ薄給デアルト云フ點モ御話
ノ通リデアリマス、私ハ此ノ問題ニ付キマ
シテハ必ズシモ國庫ヨリ手當ヲ支給シ助成
スルト云フ途ガ、果シテ最モ良イ方法デア
ルヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、餘程
愼重ニ考慮ヲ要スル點ガアルカト思ヒマス、
要スルニ町村財政力ノ充實乃至確立ト云フ
コトガ、最モ必要ニナッテ居ルコトト考ヘテ
居リマス、之ガ爲ニハ中央地方ヲ通ジテノ
稅制ノ根本的解決ヲ圖ルト云フコトガ最モ
必要デアリマス、政府ハ今囘此ノ稅制改革
ニ付キマシテモ、來年度ニ於テ十分ノ檢討
ヲ加ヘマシテ、成果ヲ得タイト考ヘテ居ル
ヤウナ次第デアリマスガ、自治制ノ改正ト
相俟チマシテ、將來ニ於テハ此ノ點ニ付テ
ハ基礎ノアル立派ナ自治制ノ確立ト云フ
コトニ付テ、十分考慮シタイト考へテ居リ
さく、要スルニ御尋ノ點ニ付キマシテ自
治制ノ刷新上極メテ有益ナル御意見デアリ
マシテ、政府ト致シマシテハ十分御話ノ點
ヲ尊重シマシテ、對策ニ當リタイト考ヘテ
居リマス
(國務大臣板垣征四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=21
-
022・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 事變以來特ニ
各地ノ市町村役場ノ業務ガ繁劇ヲ加ヘマシ
タコトハ御意見ノ通リデアリマス、動員、
召集ヲ初メトシ、時局各般ノ業務ニ亙ッテ、
少數ナル人員ヲ以テ日夜精勵セラレテ居ル
ト云フコトニ付キマシテハ、軍部ト致シマ
シテモ衷心其ノ功績ニ對シテ感謝ヲシテ居
ル次第デアリマス、吏員ノ增加竝ニ待遇ノ
問題ニ付キマシテハ、只今內務大臣カラ答
辯ノアッタ通リデアリマス、軍部ト致シマシ
テモ御趣旨ニハ全然御同感デアリマシテ、
十分將來トモ考慮致ス考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=22
-
023・青木才次郎
○靑木才次郞君 極メテ簡單デアリマスカ
テ此ノ席デ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=23
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024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=24
-
025・青木才次郎
○靑木才次郞君 兩大臣ヨリ御懇切ナル御
答辯ヲ得マシテ滿足ニ存ジマス、只今ノ御
明答ニ基キマシテ是非政府ノ意ノ在ル所ヲ、
一日モ早ク實現ヲ下サリマスヤウ、特ニ兩
大臣ニ御願ヲ致シマシテ私ノ質疑ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=25
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026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ休憩ヲ致
シマス、午後ハ一時半ヨリ開會致シマス
午後零時十二分休憩
午後一時四十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=26
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027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔丸龜書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
輕金屬製造事業法案可決報告書
帝國鑛業開發株式會社法案可決報告書
工業組合法中改正法律案可決報告書
昭和十二年度第一豫備金支出ノ件、昭和
十二年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
昭和十二年度特別會計豫備費支出ノ件、
昭和十三年度第二豫備金支出ノ件、昭和
十三年度特別會計第二豫備金支出ノ件、
昭和十三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫
算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)可決報
〓書
關稅定率法中改正法律案可決報〓書
昭和七年法律第四號中改正法律案可決報
〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=27
-
028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 休憩前ニ引續キ
マシテ午後ノ會議ヲ開キマス、菊池男爵ヨ
リ午前ノ會議ニ於ケル自己ノ發言ニ關シ、
一身上ノ辯明ヲ爲シタキ旨ノ要求ガゴザイ
マシタ、之ヲ許可致シテ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=28
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029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、菊池男爵
〔男爵菊池武夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=29
-
030・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 午前發言ヲ求メマス際
ニ、委員長ノ報〓ガ、意味ガ少シク違ヒハ
シナイカト中シテ居リマスルガ、意味ノ違
ヒト云フコトハ毫モゴザイマセヌノデ、過
リデゴザイマシタカラ取消シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=30
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031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 長野忠次君
〔長野忠次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=31
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032・長野忠次
○長野忠次君 會期切迫ノ折柄、殊ニ前席
ニ熱烈ナル質問ニ依ッテ時間ヲ長ク取リマ
シタ關係上、玆ニ重ネテ貴重ノ時間ヲ戴キ
マスコトハ誠ニ恐縮ニ存ジマスルケレドモ、
御許ヲ得テ大陸資源ノ開發竝ニ國內生產ノ
擴充ニ關シ、率直ニ所感ヲ吐露シテ政府當
路ニ御伺ヒシタイト思フノデアリマス、今
次聖戰ノ目的ハ、國家國民ノ總力ヲ結束シ
テ、三千年來鬱積シタル肇國ノ理想ヲ支那
大陸ニ向ッテ發揮セムトスルモノデアリマ
ス、所謂八紘一宇ノ大理想ハ東亞同文同
種ノ民族ヲ我ガ皇道ノ傘下ニ收容シテ、日
滿支ノ共存共榮ニ依ッテ東亞ノ平和、延イテ
ハ世界ノ平和ヲ確保セムトスルモノデアリ
マス、皇軍ノ向フ所、朝ニ鐵城ヲ屠リ、タニ
堅壘ヲ拔キ、敵軍ノ重要根據地ヲ奪取シテ、
國民政府ヲ一地方政權ニ墜落セシムルニ
至ッタノデアル、飜ッテ二十七八年及三十七
八年ノ日〓、日露ノ兩戰役ト比較シテ見マ
スル時ニ於キマシテ、其ノ規模ノ大、軍容
ノ整頓、科學的戰術ノ進步、全ク隔世ノ感
ガアリマス、蓋シ過去ノ兩戰役ハ何レモ我
ガ國運ヲ賭シテ明治維新ノ宏謨ヲ恢弘スル
ト共ニ、東洋ノ平和ヲ定メテ爾來三十餘年、
國運ノ發展隆々トシテ產業貿易ノ興隆トナ
リ、國家財力ノ擴充トナリ、其ノ發達進步
ノ跡ハ誠ニ著大ナルモノガアルノデアリマ
ス、試ニ國民ノ所得額及國富增加ノ狀態ヲ
一瞥シテ見マスル時ニ於キマシテ、此ノ表
ニ亙リマスト動モスレバ時間ガ長クナリマ
スカラ簡單ニ述ベタイト思ヒマス、明治二十
年ノ國民所得ハ二億三千三百萬、日〓戰爭
ガ起リマシタ二十七年ハ二億八千九百萬、
三十八年ノ日露戰爭ノ終リニハ十二億三千
三百萬トナッテ居リマシテ、昭和五年ノ國民
所得ハ百六億三千五百萬圓ニ達シテ居リマ
ス、更ニ國富······國ノ富デアリマス、本
邦ノ國富ハ明治三十八年ノ二百二十五億萬
圓カラ、大正八年ハ八百六十億萬圓トナリ、
大正十三年ニ一千二十三億萬圓、昭和五年
一千百一億萬圓トナッテ居リマス、昭和五年
ハ濱口內閣ニ於ケル金解禁前後ノ世界的產
業沈衰ノ時期デアリマシタカラ、其ノ
以後ニ於ケル國富ノ增進ハ又著シキモ
ノガアリマシテ、今次事變勃發前ニ於
ケル國民所得竝ニ國富ノ總額ハ著シク增
進シタモノト見ナケレバナリマセヌ、其ノ
一面ニ於キマシテ今囘ノ事變ニ於キマシ
テハ軍事費ノ支辨、陸海軍ノ裝備、生
產貿易ノ擴充、內外資源ノ開發等ニ要スル
豫算ハ本事變ヲ劃期トシテ一大躍進ヲナシ
タノデマリマス、所謂天ノ將ニ大任ヲ我ガ
皇國ニ降サムガ爲ニ其ノ心志ヲ苦シメ、其
ノ國力ヲ結成シテ以テ國家百年ノ大計ヲ定
メ、「アジア」民族ノ一大結成ニ依ッテ世界ノ平
和ヲ確保セムトスルモノデアリマスル、此
ノ意味ニ於キマシテ我ガ一億萬ノ同胞ガ戰
役ニ將タ銃後ニ各〓其ノ分ヲ竭シテ國家ノ財
力ヲ此ノ一戰ニ傾ケタルコトハ亦已ムヲ得
ナイコトデアルト存ズルノデアリマス、此
ノ一大聖戰ニ依ッテ東亞ノ天地ニ漲ッテ居リ
マスル所ノ歐米依存ノ事大思想ヲ破毀シ
テ、「アジア」民族結成ノ爲ニ興亞ノ聖業ヲ
完成スルコトニ付キマシテハ今後幾十百
年ニ亙ル連續的ノ奮鬪ト、一大建設ニ猛進
セネバナラナイノデアリマス、是ハ現代ノ
大和民族ガ後代國民ノ爲ニ課セラレタル所
ノ一大使命デアルト共ニ、後代民族モ亦今
次聖戰ノ偉大ナル戰績竝ニ建設ノ跡ニ付テ
深ク思ヲ致シ、前代祖先ノ志業ヲ承繼シテ
其ノ偉蹟ヲ恢弘スルノ大責任ヲ持ッテ居ル
コトハ固ヨリ當然ノコトデアルト存ジマ
ス、古ヨリ懸軍長驅、戰役ノ效果ヲ完クセ
ムトスルニハ孫吳ノ兵法ニ所謂糧ヲ敵ニ
取ルノ必要ガアルノデアリマス、徒ニ內國
ノ財力ヲ傾ケ盡シテ大陸領土占有ノ慾望ヲ
充足スルコトハ、蓋シ聖戰ノ目的デハアリ
マセヌ、又徒ニ大陸ノ國土ヲ植民地化シ
テ、大陸國民ノ血肉ヲ搾取シ、自家ノ身腹
ヲ肥ヤサムトスル西歐國民ノ顰ニ傚フベキ
デハナイノデアリマシテ、多年西歐各國ガ
鴟梟ノ慾ヲ逞シウセムガ爲ニ、我ガ東亞大
陸ノ蒼生ヲ苦シメタル其ノ後ニ於キマシテ、
支那大陸ノ資源ヲ十分ニ利用開發シテ、日
滿支民族ノ共存共榮ヲ圖リ、「アジア」ノ爲
ノ「アジア」ヲ建設シテ、後代國民ノ爲ニ大
和民族ノ根幹ヲ培養强化スルコトハ長期建
設ニ伴フ所ノ嚟緊要務デアルト存ジマス、
此ノ見地カラ致シマシテ政府ハ北支及中南
支ニ新政權ヲ擁立致シマシテ、支那民族ノ
更生ヲ圖ルト共ニ、北中南支各方面ニ國策
的ノ大社團ヲ組織シ、銳意大陸資源ノ開發
ト大陸文化竝ニ政治ノ仲張ヲ企圖セラルル
コトハ、我等國民ノ臺閣諸公ニ向ッテ感謝ス
ルト共ニ、國民トシテ最モ意ヲ强ウスル所
デアリマス、之ガ爲ニ巨額ノ豫算ヲ要スル
コトハ固ヨリ當然デアリマスルガ、今後日
支ノ提携ニ依ッテ、大陸ノ經營ハ專ラ大陸ノ
資源ニ依ッテ之ヲ充足スルノ用意ハ極メテ必
要デアルト思フノデアリマス、時間モゴザイ
マセヌカラ、其ノ具體的ノ條項ニ互ッテ御尋
ネスルコトヲ止メマシテ、此ノ原則的考へ方ニ
付キマシテ、政府當局ニ於カレマシテハ、此ノ
大陸ノ資源ニ依ッテ大陸ノ經營ヲ充足スルノ
用意ト確信アリヤ如何ト云フコトニ付テ御
尋ネシタイノデアリマス、進ンデ防共協定ノ
趣旨ヲ敷衍シテ、大陸經營ノ鳳翼ヲ伸張シマ
シテ、支那大陸ヨリ中央「アジア」ヲ貫通シテ歐
亞ノ交通ヲ促進シ、或ハ航空路ノ擴充ニ依ッ
テ、歐亞連絡ノ大業ヲ實行スルニ付テ如何ナ
ル考ヲ持ッテイラッシヤイマセウカ、之ガ爲ニ
ハ三億ニ跨ル囘〓民族トノ修交竝ニ其ノ信
賴ヲ獲得スルノ必要アリト云フコトハ無論ノ
コトデアリマス、此ノ點ニ付キマシテ此ノ
中央「アジア」ヲ突破スルコト、更ニ歐亞連絡
ノ航空路ト云フコトニ付テ、今直チニト云フ
コトハ分リマセヌガ、之ニ付テノ御所見ヲ聽
キタイト思フノデアリマス、次ニ支那大陸
ニ於ケル第三國ノ權益ハ、支那新興政權ノ
擁立ニ關スル國策ニ矛盾セザル程度ニ於テ
之ヲ認メ、尙我ニ友好關係ヲ保持スル第三國
ノ資本ヲモ誘致シテ、逐次東亞大陸ノ建設
ニ邁進スルノ意思アリヤ否ヤ、東亞大陸ノ樂
土建設······樂土ノ字ヲ落シマシタ、東亞大陸
ノ樂土建設ニ邁進スルノ意思アリヤ如何ト
云フコトニ付テ御尋ネシタイノデアリマス、
次ニ內國資源ノ開發竝ニ貿易ノ强化ニ付テ
御尋ネシタイノデアリマス、今次長期建設
ノ目的ヲ達成セムガ爲ニハ、國內ニ埋藏セ
ル內地資源ノ開發、各種生產ノ擴充竝ニ輸
出貿易ニ依ル外資ノ獲得ヲ擧ゲネバナリマ
セヌ、現時科學的ノ戰備又ハ國內工業竝ニ
一般民需ノ資料トシテ、鐵、「ガソリン」、石
油羊毛、棉花、其ノ他必要ノ資料ヲ輸入
ニ仰グモノガ頗ル多量デアリマス、之ガ爲
ニ輸出入貿易ノ決濟資金トシテ、近ク數箇
年間ニ於テ金ノ現送ヲナセル量ハ·····茲ニ
數字ヲ擧グルコトヲ差控ヘマスルガ、相當
多額ニ上ッテ居ルモノト存ジマス、今事變ノ
當初ニ於テハ既往物資ノ「ストック」ニ依リマ
シテ、陸海軍ノ裝備、之ガ運營竝ニ民間需
要ニ役立テタノデアリマスルガ、從來ノ狀
態ヲ其ノ儘持續スル場合ニ於キマシテハ、
直チニ國內資料ノ枯渴トナリ、輸入材料ノ
梗塞トナリ、又ハ金現送ノ行詰リヲ生ズル
コトハ、蓋シ火ヲ睹ルヨリモ明カナルモノ
ガアルカト存ジマス、政府ハ產金ノ奬勵若
シクハ退藏金ノ蒐集ニ付テ萬遺憾ナキヲ期
セラレテ居リマスルノデアリマスルガ、退
藏金ノ如キハ一度蒐集スレバ、其ノ量ニ限
リアリ、產金ノ額ニ於テハ假令相當ノ增產
ヲ所期スルモ、貿易ノ決濟資金ヲ專ラ之ニ
依存スルト云フコトハ蓋シ甚ダ困難デア
ルト存ジマスル、今國內資源ノ開發、例
バ國內ニ理藏セル石油油源ヲ開發シ、或ハ
石炭ノ液化ニ依リ、人造石油ノ豐富ナル供
給ニ依ッテ巨額ノ······態ト數字ヲ擧ゲマセ
ヌ、巨額ノ外國輸入資金ヲ輕減スルガ如キ、
或ハ羊毛、棉花其ノ他國內必需品ハ、國內
ノ生產又ハ代用品ニ依ッテ之ヲ充足シマシ
テ、更ニ國內ノ生產ヲ擴充シテ輸入ヲ輕減
スルノミナラズ、國內ノ需要ヲ充足スル上
ニ更ニ輸出貿易ノ振興ニ依ル外貨ノ獲得ヲ
爲スコトガ出來マスナラバ、事變下ニ於ケ
ル物資卽チ金ナリトノ原則ニ依リマシテ、
獨リ產金ノ奬勵又ハ退藏金ノ蒐集ニ沒頭ス
ルノ必要ハナイカト存ズルノデアリマス、
附加ヘテ申シマス、產金ノ奬勵若シクハ退
藏金ノ蒐集ヲ以テ無用ノ業ナリト言フノデ
ハアリマセヌ、之ニ偏傾スルノ必要ハナイ、
寧ロソレ以上ノ必要ヲ私共ハ認メテ居ルノ
デアリマス、斯クノ如キ見地ヨリ私ハ一步
進ンデ、我ガ國蠶絲業ニ向ッテ私ノ所論ヲ
申上ゲタイト思フデアリマス、旣往數十年
間輸出貿易ノ大宗トシテ、農家副產業ノ王
座ヲ占メタル蠶絲生產ノ擴充ニ付テ、特ニ
此ノ際重大ナル關必ヲ要請スルノ必要ガア
ルノデアリマス、所謂蠶絲業ハ本邦輸出貿
易ノ花形トシテ、大正十一年ノ對外貿易總
輸出價格ニ對スル四割八分ノ比率ヲ最高ト
致シマシテ、大正十四年ノ總輸出價格二十
三億五百萬圓ニ對シマシテハ、蠶絲類ノ輸出
金額ハ四十四ㄱパーセント」此ノ金額實ニ十
億二千九百萬圓ニ達シテ居リマス、爾來世
界的不景氣ノ襲來ト、人造絹絲ノ擡頭ニ
依ッテ絹織物ノ領域ヲ侵蝕セラレマシテ、漸
次其ノ比率ト數量ヲ減少シタノデアリマ
ス、チヨット之ニ付テハ簡單ニ申上ゲタイ
ト思ヒマス、昭和九年輸出總額二十一億七
千百萬圓、蠶絲類、絹織物ノ輸出額三億
七千萬圓、昭和十一年輸出總額二十六億
一千二百萬圓、蠶絲類、絹織物輸出額四億
七千萬圓、十二年輸出總額ハ三十一億七
千五百萬圓ニ上ッテ居リマスルガ、同時
ニ蠶絲類ノ輸出總額ハ四億九千四百萬圓
ニナッテ居リマス、十三年ハ事變下、其ノ
輸出總額ニ付キマシテモ蠶絲類ノ輸出額ニ
於キマシテモ何レモ減少シタノデアリマス
ルガ、總額二十六億八千九百萬圓ニ對シテ
四億二千萬圓ヲ維持シテ居リマス、率ハ最
高率四十八「パーセント」ヨリ昭和十三年
ハ十五「。パーセント」六ニ下ッテ居リマス、
今蠶絲ノ輸出金額ノ激減ノ原因、之ヲ詳細
ニ述ベルコトハ徒ニ時間ヲ費スコトヲ惧レ
マス、唯其ノ梗〓ヲ申述ベマスレバ、御承
知ノ通リ本邦蠶絲ノ需要ハ北米合衆國ヲ最
大顧客トシテ居リマス、從來同地ニ於ケル
生絲ノ消費ハ、過日農林大臣ノ言明セラレ
タル通リ、廣幅織物七八割、靴下二三割デ
アッタノガ、人造絹絲ニ依ッテ漸次廣幅織物
ノ領域ヲ侵蝕セラレタルガ爲ニ、尙一面靴
下需要ガ非常ニ減少シテ來タガ爲ニ、漸次
靴下ガ七八割、廣幅織物ガ二三割ニナッテ居
リマス、是ガ生絲需要減少ノ最大原因デア
リマスルガ、幸ニ靴下方面ニ於テハ專ラ本
邦ノ優良生絲ヲ愛用シテ居ルカラ、現時若
干ノ輕減ハ誠ニ致シ方ナイノデアリマスル
ケレドモ尙上述ノ如ク輸出ノ價格ヲ維持
シテ居ルノデアリマス、旣往ノ盛時ニ比ス
ル時ハ相當ノ激減ハ免レナイノデアリマス
ケレドモ、事變前、昭和十二年ニハ四億九
千萬圓、事變後、昭和十三年ハ四億二千萬
圓ト云フコトハ申述べタ通リデアリマス、
純然タル國產品トシテ依然農村副業ノ首座
ヲ占メテ、之ガ一進一退ハ直チニ事變下國
策ノ運用ニ甚大ノ影響ヲ生ズルト云フコト
ハ皆樣御承知ノ通リデアルト存ジマス、試
ニ近時長足ノ進步ヲ爲シタル所ノ人造絹絲
ノ如キ、之ヲ比較ノ爲ニ申上ゲテ見マスレ
バ昭和七年六千五十三萬圓ノ輸出額ヨリ
累進シテ、昭和十二年一億五千四百八十六
萬圓ニ增加シ、十三年ハ事變ノ影響ヲ受ケ
テ一億一千五百萬圓ニ減少シテ居リマス、
其ノ生產數量ハ世界第一ノ北米合衆國ト雁
行セムトスルト云フ程度迄增進シテ居ルニ
拘ラズ、其ノ輸出額ハ尙遙カニ天然ノ絹絲
ノ下位ニ居リマス、加フルニ人造絹絲、或
ハ綿絲布、毛織物等ハ其ノ原料ノ大部分ヲ
海外ノ輸入ニ依存スルニ比較シマシテ、天
然絹絲ガ純然タル國產品トシテ每年々々同
ジ國土ヨリ無盡ノ富源ヲ供給シテ、一四、
土塊ハ直チニ一塊ノ黃金トナリ、優ニ外貨
獲得ノ役目ヲ達成シテ居ルノデアリマス、
平時國際貿易ニ於ケル重要產業ト言フニ止
ラズ、今次事變下ニ於ケル偉大ナル貢獻ニ
關シテハ我々ハ蠶絲業ニ對シテ再認識ヲナ
スノ必要ガアルモノト信ジマス、更ニ飜リ
マシテ事變勃發後ニ於ケル國內各種纖維ノ
需給關係ヲ〓觀シテ見マス時ニ於キマシテ、
輸入原料ノ統制强化ニ依ッテ綿絲布、毛織物
ノ供給ガ激減シ、竝ニ「パルプ」輸入ノ制限
等ニ依ッテ、各種纖維ハ從來ニ比シ、對外輸
出及國內供給等モ何レモ甚大ナル不足ヲ生
ジテ居リマス、之ガ補給ハ自然純粹國產品
タル生絲ニ向ッテ巨大ナル需要ガ喚起セラ
レタノデゴザイマス、恰モ昭和十三年ニ於
ケル產繭ノ減收ト相俟ッテ、橫濱、神戶ノ兩
市場ニ於ケル生絲〓算價格ノ急激ナル騰貴
ヲ見ルニ至リマシタ、絲價安定施設法ニ依ル
生絲ノ買入豫定額、之ヲ最高價格ト云フコ
トハ語弊ガアリマス、安イ時ニ買ッテ、高イ
時ニハ賣出シテ、此ノ亂騰亂下ヲ調節スル
爲ニ絲價安定施設法ガ設ケラレテ居ルノデ
アリマスガ、其ノ賣出價格、或ハ買入ト申
シマシタカ知レマセヌ、ソレハ間違ヒデゴ
ザイマス、賣出豫定價格九百五十圓ヲ上廻
ルニ至リマシテ、政府ハ手持生絲ノ賣出ヲ
發表シテ、橫濱市場ハ立會ヲ停止シテ、自
肅申合セヲシテ、一時ノ亂騰ヲ抑制スルニ
至リマシタ、其ノ後生絲價格ハ大體一千圓
ヲ中心トシテ落著キ、「ニューヨーク」〓算
市場モ略〓同步調ヲ辿ッテ居ルノデアリマス、國
際商品タル生絲ガ海外市場ニ於テ高價ヲ維
持スレバ、貿易決濟上ニ依ル外貨ノ獲得ニ
依ッテ、事變下ノ國費支辨ニ大ナル役目ヲ
働キ得ルノデアリマスルガ、萬一內地相場
ノ騰貴ニ依ッテ外需ノ消費ヲ著シク減ジ、總
體ニ於テ輸出總價額ガ減少ヲ招來スルコト
ニナリマスレバ、是ハ誠ニ憂フベキノ現象
デアリマスガ、目下純國產品タル所ノ生絲
ハ獨リ重要輸出品タルニ止ラズ、事變下ニ
於ケル他ノ纖維ガ悉ク統制ヲ加ヘラレテ居
ル際ニ於キマシテ、輸入各種纖維ノ不足ヲ
充足シテ、輸入物資ノ缺陷ヲ補足シテ居ル
ノデアリマスルカラ、生絲ガ相當ノ程度ニ
於テ內地ノ需要ニ振リ向ケラレルト云フコ
トハ是亦目下必然ノ傾向デアリマス、假
令生絲價格ノ騰貴ニ依ッテ「ニューヨーク」
市場ニ於ケル廣幅織物ノ原料ガ人造絹絲ニ
轉換スルト云フコトガアリマシタ場合ヲ想
像シテ見マスル時ニ於キマシテ、米國ノ需
要ノ二割ハ人絹ニ肩替リセラレマシテモ、
其ノ殘リノ八割ガ高價ニ賣レ行ク時ニ於キ
マシテハ、差引キ外貨獲得ノ金額ニ大差ナ
キコトトナルノデアリマス、此ノ以前ニ
於キマシテ、大體生絲ノ價格ハ八百圓程度
ヲ維持シテ居ッタノデアリマスルガ、今旣ニ
千圓ヲ維持シテ居ルトスレバ、其ノ二割ガ
人造絹絲ニ肩替リセラレマシテモ、殘リノ
八割ノ生絲ヲ以テ優ニ事變前ニ於ケル所ノ
外貨ヲ獲得スルコトガ出來ルノデアリマス、
デアリマスガ、其ノ調節ハ極メテ微妙ナ關
係ヲ維持シテ居リマスカラ、萬一內地價格
騰貴ノ爲ニ、靴下方面ノ需要ヲ減殺スルト
云フコトニナレバ、一度奪取セラレタ所ノ
領域ヲ再ビ恢復スルコトノ容易デナイト云
フコトノ點ニ考ヘ及ビマシテ、此ノ點ハ十
分ニ警戒ヲセナケレバナリマセヌ、私ノ話ハ
段々終リニ近ヅキマシタカラ、今暫ク結論
ニ到達サセテ戴キタイト考ヘマス、斯クノ
如ク生絲ハ內外兩方面ニ於デ平時ニ倍シ
テ、其ノ機能ハ國際收支ノ調節ニ對シ、最
モ緊切ノ關係ヲ持ッテ居リマスルカラ、時局
柄蠶絲產額ノ增進ヲ計畫シテ、內外ノ需要
ヲ充足スルコトハ目下焦眉ノ要務デアル
ト考ヘマス、政府ハ今同提出ノ十四年度追
加豫算案ニ於キマシテ、相當多額ノ經費ヲ
計上セラレテ居ルヤウニ存ジテ居リマス
一、增收奬勵金、違作防止施設、病蟲害驅除
劑購入資金、速成桑園奬勵費、府縣及系統
團體奬勵費、其ノ他事務費合セテ四百八十
五萬圓ニ達シテ居ルカト存ジテ居リマス
此ノ重大使命ヲ有スル蠶絲ノ增產計畫ニ對
シテ、政府當局ガ御苦心ノ跡ハ誠ニ明瞭ナ
リト言ハネバナリマセヌ、但シ假令五百萬
ガ一千萬圓トナリ、又二千萬圓トナリマ
シテモ、時局下ニ於ケル蠶絲業ノ重大使命
ニ考ヘ及ビマスル時ニ於キマシテハ一面
輸入防遏ト同時ニ輸出ノ兩方面ニ於ケル重
大使命ニ對シテ、蓋シ當然ノコトデアルト
存ジマス、目下農業靑年ノ應召、軍需工業
ニ依ル勞力ノ不足、其ノ他高度農業ニ依ル
勞働ノ割讓ニ依リマシテ、動モスレバ國際
收支決濟ニ最モ緊切ノ關係ヲ有シテ居ル、
我ガ蠶絲業ノ生產額減退ノ傾向ノ蔽フベカ
ラザルモノヲ昨年來認メタノデアリマス、
幸ニ生絲價格ガ騰貴致シマシテ、今日ノ高
位置ヲ維持シ得レバ、ソレダケ蠶絲業ニ對
スル農村ノ關心ヲ刺戟ツ、政府ノ增產計畫
ト相俟ッテ、其ノ目的達成ヲ容易ナラシムル
モノガアルト思フノデアリマス、政府今囘
ノ追加豫算ノ實地運用ニ當ッテ、全國養蠶精
神ノ作興ト桑園肥培ノ基本タル肥料ノ配給
ニ、十全ノ御配慮ヲ希望シマスルノデアリ
やく、肥料ノ配給ハ獨リ蠶絲業ニ止マラ
ズ、主要農業タル米穀其ノ他副農業ノ增產
ニ最モ必要デアリマスルト共ニ、桑園ノ肥
培ニ對シマシテハ、窒素若シクハ燐酸ノ如
キハ成ルベク金肥ヲ節減シテ、自給肥料又
ハ國內生產ニ依ッテ補給シ得ルコトガ出
來ルト思フノデアリマスケシドモ、養蠶
違作ノ防止ニ最モ效果アリト信ズル所ノ加
里肥料ハ、現下二千萬圓近クノ輸入ヲ必
要トシテ居リマス、是ハ前ニ述べマスル通
リ獨リ養蠶業ニ止ラズ、主要農產ニ併セテ
缺クベカラザルノ品デアリマスルカラ、
萬一統制ノ手ガ斯クノ如キ重要資料ニ對シ
テ、肥培ノ缺乏ヲ感ゼシムルニ至ル時ハ
由々シキ惡結果ヲ生ズルノデアリマスカラ、
是等ノ點ニ對シマシテモ商工當局ノ深甚ナ
ル御留意ヲ要請セムトスル者デゴザイマ
ス、尙國內ノ生絲ニ對スル所ノ需要ガ、或
ハ米國市場ノ實需ヲ減退スルノ虞アッテ、或
ハ一部國民ノ贅澤、華美ノ慾望ニ誤ッテ用ヒ
ラレルト云フヤウナコトガアリマスレバ、之
ガ價格ノ統制ニ對シマシテハ、尙內外需給
ノ調節ニ深ク考慮セラレマシテ、深甚ノ御
考慮ヲ御願ヒ致シタイト存ジマス、固ヨリ
角ヲ矯メテ牛ヲ殺スノ譬モアリマスルカラ、
過度ノ人爲策ハ却テ經濟界ノ健全ナル動向
ヲ停頓セシムルノ惡結果ヲ招來スルノ虞ガ
アリマスル、此ノ點政府當局ノ苦心ヲ諒ト
致シマスルケレドモ、千載稀有ノ大時局ニ
對シマシテ、最善ノ御工夫ヲ冀フ者デアリ
やっ、政府當局ノ御所見ヲ御尋ネシタイト
思フノデアリマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ終
リマス
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君演壇ニ登
ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=32
-
033・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 只今ノ御
尋ハ多方面ニ亙ッテ居リマスルガ、其ノ中ノ
我ガ大陸政策ニ關スル事項ニ付テノ御尋ガ
ゴザリマシタ、我ガ國ト致シマシテ現今急
務トスル所ハ、所謂新東亞ノ建設デゴザリ
マシテ、是ハ滿洲支那ノ區域ニ互ルベキコ
トデゴザリマス、其ノ以外ニ亙リマスルコ
トニ關シマシテハ、只今玆デ御答ヘスル限
リデゴザイマセヌ、其ノ他御質問ノ各事項
ハ主管大臣ヨリ御答ヲ致シマス
〔國務大臣櫻內幸雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=33
-
034・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 只今御尋ノ中
デ、私ノ所管ニ關スルコトニ付テ御答辯申
上ゲマス產金ハ固ヨリ必要デアルガ、是
ト相關聯シテ資源ノ開發ヲシテ輸出ノ貿
易ノ增加ヲ圖ラナケレバナラヌ、而シテ輸
出ノ大宗デアル所ノ生絲ニ付テハ特ニ力ヲ
致サナケレバナラヌコトデアッテ、之ニ對ス
ル所ノ對策如何ト云フ風ナ御質問ノ御趣旨
デアッタト思ヒマス、此ノ生絲ニ對スル所ノ
問題ハ、只今詳細御述ニナッタ如ク、全ク我
ガ國ノ輸出上ニ於ケル重要ナル產物デアリ
マシテ、此ノ問題ニ付キマシテハ我々ト致
シマシテ深ク注意ヲ拂ッテ居ル所デアリマ
ス、昨年繭ハ減產ヲ致シマシテ、約一割三
分程減少致シテ七千五百萬貫程ニ減リマシ
タ、又國內ノ消費ガ非常ニ增加致シマシテ、
其ノ結果ト致シマシテ、輸出ヲスル所ノ生
絲ガ比較的減少スルヤウナ傾向ガゴザイマ
シタノデ、此ノ點ニ付キマシテハ私共ハ深
ク之ニ對シマシテ注意ヲ拂ッテ對策ヲ講ジ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、之ガ對策ニ付
キマシテハ、只今具體的ニ申上ゲルコトハ
實ハ差控ヘタイト思ヒマス、卽テ色々ナル
關係ガゴザイマスノデ、此ノ機會ニ於テハ
差控ヘサシテ戴キタイト思ヒマス、唯今後
ニ於ケル對策ト致シマシテハ、何トシテモ
繭ノ增產ヲ致シテ生絲ノ增產ヲ致ス
コトガ最モ急務デアルト考ヘマシテ、本年
度ニ於キマシテハ御承知ノ通リ此ノ生產增
加ニ對スル所ノ費用ヲ御審議願ッタヤウナ
譯デアリマス、卽チ速成桑園ヲ設ケマシテ
桑ノ速成ヲ致シ、又桑園ノ害蟲ヲ驅除致シ
マシテ桑葉ノ增植ヲ圖リ、蠶病ノ豫防ヲ致
シ、或ハ共同豫備蠶兒飼育法ヲ設ケマシテ、萬
一掃立前ニ蠶兒ノ死亡致シマシタモノニ對
シテノ補充ヲ致スヤウニスルトカ、或ハ又
全般的ニ奬勵金ヲ出シマシテ增產ヲ奬勵致
ストカ、種々ナル方法ニ依リマシテ、本年
ハ約九千八百萬貫ヲ目標ト致シテ進ミタイ
ト斯樣ニ考ヘテ居リマス、是非共其ノ目的
ニ近イ所迄ハ持ッテ行キタイト思ヒマシテ、
全力ヲ擧ゲテ力ヲ注イデ居ルヤウナ譯デア
リマス、輸出生絲ニ對シマシテハ、國內消費
ヲ節約致シテ、而シテ出來得ル限リ「アメ
リカ」其ノ他ノ外國ノ要求ニ應ジタイト考
ヘテ努力致シテ居ル次第デアリマス、右御
返事申上ゲマス
〔國務大臣八田嘉明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=34
-
035・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 長野サンノ御質
間ニ對シテ商工省關係ノコトヲ御答ヘ申上
ゲマス、今次事變ガ勃發致シマシテ以來、
自然物資ノ調整ヲ必要ト致シマスルノデ、
此ノ關係上、國內ノ產業ニ對シマシテ必要
ナル所ノ物資ノ配給ガ必ズシモ圓滑デナイ
コトハ申上ゲル迄モナイノデアリマス、併
シナガラ一方ニ於キマシテ、此ノ時局下ニ
於キマシテモ國內產業ノ維持、殊ニ輸出產
業ノ維持增進ト云フコトハ、誠ニ大切ナコ
トデアリマスルノデ、商工省ト致シマシテ
モ事情ノ許ス限リ、此ノ方面ニ對シマシテ
ハ物資又原料ノ配給等ニ付キマシテ最
善ヲ盡シテ居ルヤウナ次第デアリマス、申
ス迄モナク我ガ國ノ輸出產業ノ主ナルモノ
ハ、只今御話ノアリマシタル蠶絲ヲ原料ト致
シマスル所ノモノ、若シクハ其ノ他ノ纖維
工業ヲ中心ト致シマシタル所謂輕工業ニ屬
スルモノデアリマスルガ、此ノ點ニ付キマ
シテ、國內ニ資源ヲ求ムルモノ若シクハ
原料ヲ國內ニ仰グ所ノモノ何レニ付キマ
シテモ出來ルダケ戰時ノ物資ノ配給、生產
力ノ擴充ニ必要ノアリマスル資材ニ次イデ
ハ第一ニ輸出振興ニ必要ナル資材ノ配給
ノ圓滑ヲ期シテ居ル次第デアリマス、今日
ニ於キマシテモ是等ノ輕工業ハ、一般ニ其
ノ工業能力ニ於キマシテハ相當ノ餘裕ガア
ルノデアリマス、唯遺憾ナガラ、國內ニ於
ケル所ノ消費ヲ制限致シテ居リマスル關係
上、從來國內ノ消費ト同時ニ輸出ノ產業ヲ併
セ行ッテ居リマスル所ノ工業ニ於キマシ
テハ兎角其ノ「コスト」ガ高クナルコトヲ
遺憾トスルノデアリマスルガ、此ノ點ニ付
キマシテモ當局ト致シマシテハ出來ルダケ
ノ王夫ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
次ニ蠶絲業ノコトニ付キマシテハ只今農
林大臣ヨリ御答ノアリマシタル通リデアリ
マスルガ、商工省ト致シマシテモ、之ガ工
業化竝ニ輸出ノ增進ニ付キマシテハ一方
ニ於キマシテ、其ノ價格ノ適正ヲ圖リ、一
方ニ於キマシテハ、國內ノ農業經濟、又他
方ニ於キマシテハ輸出力ノ增進ト云フコト
ニ鑑ミマシテ、最善ヲ盡ス積リデ居リマス、
此ノ段御答ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=35
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036・長野忠次
○長野忠次君 自席カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴサイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=37
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038・長野忠次
○長野忠次君 只今御答辯ヲ戴キマシタカ
ラ、是デ私ノ質問ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=38
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039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ハ是
デ終リマシタ、是ヨリ討論ニ移リマス、松
井茂君、御登壇ヲ願ヒマス
〔松井茂君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=39
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040・松井茂
○松井茂君 治安國策樹立問題ニ付キマシ
テ、此ノ會期切迫シテ居リマスル今日ニ、茲
ニ文治豫算案ニ贊成ヲ致シマスルニ當リマ
シテ、平沼內閣ニ對シマシテ、殊ニ此ノ問題
ニ付キマシテ希望ヲ述べマス所以ハ、何分
ニモ此ノ問題ハ之ヲ外ニ致シマシテハ東亞
ノ新秩序ノ問題トシテ、又之ヲ內ニ致シマ
シテハ國內問題トシテ、其ノ成績ノ擧ガル
ヤ否ヤト云フコトハ、一ニ繫ッテ國民生活ノ
上ニ多大ノ關係ヲ有スルカラデアリマス
又私ガ殊ニ玆ニ此ノ言ヲ爲ス所以ハ平沼
首相ハ多年司法官トシテ、殊ニ檢察官トシ
テ、司法警察ノコトニ付テハ高見ガ深クア
ラセラルルノデアリマス、現ニ目下我ガ國
ノ警察社會ヤ、又司法界ニ盛ニ行ハレテ居
リマスル所ノ、「ロッシエル」式ノ指紋法ハ、
曾テ首相ノ「ヨーロッパ」土產ノ賜モノデア
リマス、斯クノ如クニ首相ハ歷代ノ內閣ト
異リマシテ、警察ノコトニ付テハ殊ニ御造
詣ノ深イコトト思ヒマスノデ、此ノ機ヲ逸
シマスルト誠ニ千載ノ憾ト存ジマスノデ、
此ノ貴重ノ時間ヲ拜借致シマシテ、暫ク御
〓聽ヲ煩ハス所以デアリマス、況ヤ豫算ト
治安問題トノ關係ハ、非常ニ重大ナル關係
ニアリマスルノデ、先般來多額ノ國費ニ付
キマシテノ協議ヲ遂ゲラレタノデアリマス
ルガ、就中其ノ經費ノ中ニハ治安問題ガ頗
ル多量ヲ占メテ居ルノデアリマス、殊ニ上
海ノ租界問題ヲ初メ、外事警察ノ問題ハ言
フ迄モナク、又防共問題ノ如キハ獨リ國內
警察ノ上ノミナラズ、東洋警察ト致シマシ
テモ、更ニ又國際警察ト致シマシテ迄モ、
最モ重大ナル意義ヲ有シテ居ルノデアリマ
ス更ニ思想問題ノ如キモ時局ノ推移ニ伴
ヒマシテ、斷ジテ樂觀ヲ許サナイ狀況ニア
ルノデアリマス、我ガ國ハ國體上左傾
ヲ容レルコトノ出來ナイコトハ申ス迄モ
ゴザイマセヌガ、又斷ジテ右傾ノ國デモナ
イノデアリマス、全ク我ガ國ハ所謂皇道精
神ニ基キマシテ、臨機應變ニ事アレバ最モ
强イ警察權ヲ振ハナケレバナラヌノハ、今
更言フ迄モナイノデアリマス、併シナガラ
斷ジテ徒ニ忠君愛國ヲロ實ト致シマシテ、羊
頭ヲ揭ゲテ狗肉ヲ賣ルガ如キ所ノ行動ガ
アッテハ相成リマセヌ、此ノ點ニ付テハ特ニ
文武ノ官吏ハ、最モ嚴正ナル態度ノ下ニ、
我ガ皇國精神ヲ永遠ニ保持セネバナリマセ
又、私ハ此ノ意味ニ於テ平沼首相ノ全體主
義ニ對スル解釋ノ如キハ、最モ時ノ宜シキ
ヲ得タルモノト存ジ、又其ノ解釋ノ最モ我
ガ皇道精神ニ適合シテ居ルコトヲ痛感シテ
居ル者ノ一人デアリマス、其ノ他風俗警察
ノ問題ノ如キモ、軍需工場ノ好景氣ニ伴ヒ
マシテ、奢侈ニ耽ルガ如キ所ノ現象ハ一面
精神〓化ノ問題ト共ニ、警察官憲ニ於キマ
シテモ、大イニ善處スル所ガナクテハナリ
マセヌ、併シナガラ是ハ實際問題ト致シマ
シテハ矢張リ內閣ニ於テ非常ナル御決心
ガナケレバ、警察官憲ト云フモノハナカ/
容易ニ出來ルモノヂヤゴザイマセヌカラ、
上下一致シテ官憲ガ方針ヲ確立スルニアラ
ザレバ、到底空論ニ終ルノデアリマス、況
ヤ此ノ事ハ大イニ出征軍人ノ反感ヲ買フノ
ミナラズ、淳朴ナル農民ニ對スル惡影響ト
云フモノハ、實ニ想像以上ノモノガアルノ
デアリマス、更ニ又火災問題ノ如キモ、近
時軍需工業ノ隆盛ニ伴ヒマシテ、設備ノ不
完全ヤ過度ノ勞役從事ノ爲ニ、之ガ原因ト
相成リマシテ、其ノ他種々不完全ナル原因
ガアリマシテ、之ガ爲ニ計ラズモ火災ガ殊
ニ大工場ニ於テ、頻々起リツヽアルノデア
リマス、枚方ノ火藥庫爆發事件ノ如キ、實
ニ重大問題デアリマス、徒ニ口ニ盛ニ生產
增進ト云フコトヲ唱ヘラレマシテモ、朝
ニシテ火災ニ見舞ハレルヤウナコトガゴザ
イマシタラバ、其ノ結果ハ帝國議會ノ豫算
ノ遂行上ニ對シマシテモ、誠ニ申譯ノナイ
次第デアリマス、ノミナラズ若シ又機械、
器具ナドガ消失致シマシタ時ニハ國防上
ニ多大ノ影響ヲ及スノデアリマス、此ノ點
カラ申シマシテ火災豫防及消防ノコトニ付
キマシテハモットモット當局ハ深キ思ヲ致
サレネバナラヌト存ジマス、以上ハホンノ
事變下ニ於ケル一三ノ實例ヲ申上ゲタニ外
ナリマセヌ、併シソレモ見方ニ依リマシテ
ハ一ツノ問題ダケデモ最モ重要性ヲ有シテ
居ルモノデゴザリマスルカラ、決シテ輕率
ニ看過スベキ限リデハナイノデアリマス
併シ私ノ御伺ヒ致シタイト云フ趣旨ハ、以
上ノ如キ生キタル問題ヲ前提ト致シマシ
テ、モット高イ所カラ治安上ノ國策問題ニ付
テ、內閣諸公ノ特ニ思ヲ致サレムコトヲ希
望シテ已マザル次第デアリマス、先ヅ其ノ
第一ノ希望ノ點ハ警察組織ノ再檢討ノ問題
ナンデアリマス、經濟組織ノ統制化ガ時代
ノ要求デアリマスル以上、警察組織モ亦今
日ノ時代トシテハ、當然再檢討サレネバナ
ラヌノデアリマス、萬一此ノ事變ニ當リマ
シテ特高警察上、緊要事變ガ發生致シタト
假定致シマシタ時ニ、政府ハ果シテ具體的
ナル所ノ方策ガ確立サレテ居ルノデアリマ
セウガ、先般「ドイツ」ト「オーストリー」ガ
合併ニ相成リマシタ時ニ、玆ニ新タニ大「ド
イツ」國ト相成リマシタ時ニ、警察權ハHS
トラー」總統ニ歸一シタノデアリマス、私ハ
其ノ時ニ「ドイツ」ノ雜誌ヲ見マシテ、直チ
ニ直感的ニ我ガ國ヲ思ヒ出シタノデアリマ
ス、ドウ云フコトヲ思ヒ出シタカト云フト、我
ガ國ハ御承知ノ通リニ國內ニ於テハ內務大
臣ガ警察權ヲ有シテ居ラレルノデアリマス、臺
灣ハ臺灣總督府、朝鮮ハ朝鮮總督府、三元論
ニナッテ居ルノデアリマス、ソコデ一旦緩急
ノアル時ニ於テ、特高警察ノ中ニ於テ、或
種類ノ非常事變ノ場合ニハ斯ウ云フ時勢
デアリマスカラ、統制上首相タル者ハ自ラ
命令權ヲ以テ命令一下、內務大臣カラ臺灣
總督、朝鮮總督ノ一絲紊レナイ所ノ行動ヲ
行フコトハ時代ノ要求デハアリマスマイ
カ、又之ヲ行フ組織ト致シマシテハ、首相
若シクハ首相代理トシテ此ノ「三元ヲ打ッテ
一丸トスルコトガ、其ノ事變ノ性質ニ於テC
考ヘ置クベキコトデハゴザイマスマイカ、
更ニ又國內非常事變ニ對シマシテモ、今カ
ラ大イニ思ヲ致シテ置カネバナラヌト存ジ
マス、日比谷ノ騒擾事件、電車ノ燒打事件、
米騷動、五·一五事件、二·二六事件、斯ク
ノ如キコトハ歐洲ニ於テモ、形ヲ變ヘマシ
テ種々ノ騷擾事件ト云フモノガ御承知ノ通
リ是レ迄アルノデアリマス、殊ニ歐洲戰爭
後ハ共產黨ガ各國ニ盛ニ相成リマシタノデ、
警察ノ警備ノ方法モ昔日ト大イニ趣ヲ異ニ
シテ來タノハ御承知ノ通リデアリマシテ、
各國共ニ非常警備ノ組織ト云フコトニ付テ
ハ、頗ル注意ニ注意ヲ拂ッテ居ル所ノ現狀デ
アリマス、例ヘバ警察官廳內ニ於ケル所ノ
室內ノ警報機ト云フヤウナモノモ、完全ニ
備ヘ付ケナケレバナラヌノデアリマス又
自動車ノ集中制度、警察官ノ集合制度等、
大イニ考慮スル點ガ多々アルノハ申ス迄モ
ナイノデアリマス、然ルニ目下ノ我ガ國ノ
國情ハ如何カト云フノニ、東京以外ノ地方
ニ於ケル所ノ非當警備組織ト云フモノハ頗
ル不完全デアルノデアリマス、政府ハ宜シ
ク百年ノ大計上、豫メ之ガ書策ヲ講ジ置ク
ベキコトハ、時節柄最モ必要ト存ズル次第
デアリマス、右ノ事ニ付キマシテハ時節
柄重大問題ト存ジマスノデ、先般豫算委員
會ノ席上ニ於キマシテモ、親シク內務大臣
ニ對シ、國內特別警備機關ノ完成ニ付テ忌
憚ナキ意見ヲ申上ゲタ次第デアリマスガ、
何卒首相、大藏大臣等ニ於カレマシテモ
此ノ上ナガラ特ニ此ノ點ニ付テ實行上萬達
算ナキコトヲ、時節柄大イニ御注意ニナッテ、
悔ヲ千載ニ貽サナイヤウニ吳々モ御留意ヲ
願ヒタイノデアリマス、第二ノ問題ハ國民
警察振興ノ問題デアリマス、御承知ノ通リ
ニ防空法ノ結果、新タニ新警防團令ノ勅令ガ
發布セラレマシテ、愈〓來ル四月一日カラ從
來ノ消防組ト防護團ト打ッテ一丸トナリマ
シテ、玆ニ新タニ警防團ノ成立ヲ見ルニ至
リツヽアルト云フ今日デアリマス從來ノ
消防組ハ、御承知ノ如クニ全國ニ二百萬人
アッテ、貴族院議員ノ御方、衆議院議員ノ御
方ナドモ消防ノ組頭ナンゾニナッテイラッ
シヤッテ、近來ハ非常ナ好成績ヲ得テ居ル
ノデアリマス、然ルニ警防團ガ新タニ出來
マスルノデ、先ヅ二百萬人デアッタ從來ノ消
防組員ハ三百萬人以上ニナル見込ナンデア
リマス、ソコデ新警防團ノ任務ハ御承知
ノ通リニ從來ノ消防組ハ水火災ニ從事シテ
居ッタノデアリマスルガ、警防團ハ更ニ防空
ノ問題ト又一面ハ警察官ノ任務ヲ援助スル
ト云フ所ノ、二項目ガ加ッタノデアリマス、
ソコデ新警防團ハ、益〓國家的警察機關タル〓
色彩ガ濃厚ニナリ來ックノデアリマス、但シ
純然タル官僚的ノ國家機關トハ異リマシテ、
半官半民的ノ一種ノ義勇團トモ稱スベキモ
ノデアリマス、ソレハ地方長官ガ市町村長
ノ申請ト云フコトヲ原則ト致シテ設置セラ
レルト云フ點カラ見マシテモ、明カナノデア
リマス、要スルニ一種ノ國民警察團體ト申シ
テモ宜イノデアリマス、國民皆兵ト同ジヤウニ、
外交ノコトモ今ヤ國民外交ノ時代トナリ來ッタ
ノデアリマス、警察ノ如キ內務行政ノ範圍ニ
屬スル性質ノモノニ付キマシテハ、國民皆警
察デアラネバナラヌコトハ、餘リニ當然過ギ
ル程ノ問題デアリマス、私ハ此ノ新警防團
ノ設立ニ際シマシテ、政府ガ此ノ國民警察
ノ意義ヲ能ク了解セラレマシテ、警察國策
ノ上ニ、大イニ此ノ時機ヲ失ハナイヤウニ
御考慮ヲ拂ハレルコトヲ、切ニ希望シテ巳
マヌノデアリマス、併シナガラ私ハ一面ニ
於テ、斷ジテ國家ノ警察機關ヲ弱クシヨウ
ナドト云フヤウナ考ハ毛頭持タヌノデアリ
さく、我ガ國ノ警察ハ、御承知ノ通リニ廉
恥心ノ上ニ於キマシテモ、規律訓練ノ上ニ
於キマシテモ、世界ニ冠タルモノガアルノ
デアリマス、唯國民ニ對シテ深切心ト云フ
コトガ、遺憾ナガラ頗ル缺ケテ居ル點ガ少
クナイノデアリマス私ハ常ニ日本警察官
ハ陛下ノ警察官デアルト同時ニ、全國民
ノ生命財產ノ保護者デアル、モット言葉ヲ換
人 々)國民ニ對シテ深切丁寧ニ警察行政
ヲ行フト云フコトガ、卽チ陛下ニ忠ナル
所以デアル、忠君ト愛國ト云フモノハ二ニ
シテ一、而シテ斯クノ如キ國體ヲ有シテ居
ル警察官ハ外ニ何處ニモナイノデアル此
ノ意味ニ於テ、モット〓〓日本警察官ト云フ
モノハ國民ニ對シテ深切丁寧デナクテハ
ナラヌト云フコトヲ力說シテ居ル者ノ一人
デアリマス、斯クノ如キ見地カラ益〓警察官
其ノモノヲ强化スルト同時ニ、一面ニ於テ
國民警察ヲ盛ニ致シマシタ時ニ於テ、我ガ
國ノ警察ハ初メテ立派ナモノニナリ得ルト
確信シテ居ルノデゴザイマス、願クバ平沼
內閣ハ此ノ點ニ於キマシテ大イニ御盡力ノ
程ヲ切望シテ已マヌノデアリマス、第三ハ
警察費ノ國庫支辨ノ問題デアリマス、文化
追加豫算ハ、從來ノ市町村警備費ト云フモ
ノハ、消防組ノ時代ニ皆市町村ダケガ此ノ
經費ヲ拂ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ先
刻申上ゲル通リニ新警防團ハ、其ノ性質ガ
益〓國家的ノ色彩ヲ帶ビ來リマシタ結果、政
府ハ玆ニ見ル所アッテ、此ノ市町村費ニ對シ
テ國費百五十萬圓ヲ補助スルコトニ相成ッタ
ノデアリマス、其ノ金額ハ必ズシモ全國的
ノ警防團ニ對シテハ多額トハ申サレマセヌ、
併シナガラ兎ニ角政府ガ之ヲ國庫補助トシ
テ豫算ニ計上セラレマシタコトハ、誠ニ能
ク新警防團ノ國家的ノ設備ト云フ所ニ御了
解ガアッタコトト致シマシテ、斯界ノ爲ニ大
イニ喜ンデ居ル者ノ一人デアリマス、併シ
ナガラ此ノ事ハ獨リ警防團ダケノ問題デゴ
ザイマセヌ、之ヲ動機トシテ、更ニ進ンデ
從來ノ警察ト云フモノハ、長ク府縣費本位
ノ上ニ成立ッタモノデアリマシテ、ソレニ國
庫ノ補助ト云フモノヲ行ッテ居ルコトハ御
承知ノ通リデアリマスソコデ私ハ百尺竿
頭更ニ一步ヲ進メマシテ、將來全然警察ノ
如キモノノ費用ハ、國庫支辨トスルノ一日
モ速カニ來ラムコトヲ希望シテ已マナイ者
デアリマス、此ノ意味ニ於テ、私ハ今囘警
防團ニ對シテ、國費ノ補助ト云フコトヲ御
實行ニナルト云フコトガ、大イナル所ノ意
義ノアルコトト信ズルノデアリマス、平沼
首相ハ夙ニ監獄費ノ國庫支辨ノ經過ニ付テ
ハ能ク御了知ノコトト存ジマス、何卒吳々
モ此ノ警防團ヘノ國庫補助ノ時期ヲ動機ト
シテ、將來警察費ハ全然國費支辨ニ移スヤ
ウ、或ハ統制ノ御改革モ必要デアリマセウ、
其ノ他種々ノ御計畫ガ必要デアリマセウガ、
斯ウ云フヤウナコトハ百年ノ大計デゴザイ
マスルカラ、ドウカ平沼內閣ニ於テ宜シク
御考慮ノ程ヲ切望シテ已マヌノデアリマス、
最後ニ第四ノ希望トシテ申上ゲタイコトハ、
警察官ノ待遇及ビ〓養問題デアリマス、今ヤ
我ガ國ノ警察社會ハ出征者モナカ〓〓多イノ
デアリマシテ、僅少ニ人員ヲ以テ只今大イニ警
察官ハ奮鬪シテ居ルト云フ實況デアリマス、一度
其ノ實況ヲ御覽ニナッタナラバ、思ヒ半バ
ニ過ギル所ガアルノデアリマシテ、誠ニ我々
國民ノ想像以上ノ實況ナンデアリマス、私
ハ此ノ點ハ我々ハ國民ノ一人トシテモ、大
イニ此ノ治安維持ノ第一線ニ對スル所ノ警
察官ノ實情ニ付テハ、深ク〓〓思ヒヲ致サ
ネバナラヌト存ズルノデアリマス、本院ニ
於キマシテハ夙ニ柳原伯爵ハ、警察官待
遇問題ニ付テ委員長トシテ御盡力ニナッタ
經過モアルノデアリマスルガ、其ノ後政府
ノ警察官ノ待遇ノ問題ニ對スル所ノ點ハ
遺憾ナガラ頗ル不完全ノ點ガアルノデアリ
やっ、我ガ國ノ今日ノ實情ハ今更申上ゲル
迄モゴザイマセヌガ、警察ノ事項ハ益〓〓增殖
致シマシテ、殊ニ郡役所ノ廢止アル今日、
保育行政ノ仕事モ澤山ヤリツヽアルト云フ
實況デアリマス、ソレニ又御承知ノ如クニ
經濟警察ノ如キ最モ警察官ニ不慣レノコ
ト、是モ實ニ僅カノ人數デ以テ行ヒツヽア
ルノデアッテ、誠ニムツカシイ知識ヲ注入ス
ルダケデモ容易ノコトデハナイノデアリマ
ス、此ノ頃モ或都市ノ實況ヲ見聞シタノデ
アリマスルガ、巡査ハ只今申ズヤウニ人數
ガ少クテ、サウシテ出征軍人ニ代ッテ今一
所懸命ニヤッテ居ルノデアリマス、ソレニ軍
需工業ガ盛ナノデ志願者ガナイノデアリマ
ス、非常ニ素質ガ惡ク今ナリツヽアルト云
フ實況ナンデアリマス、サウ云フ所ヘ今ヤ
リツヽアル、某警察署長ガ私ト懇意ナ爲ニ
事情ヲ漏シテ申シマスルニ、實ハアナタダ
カラ申上ゲマスルガ、何分ニモ巡査ノ數ガ
足リマセヌノデ、此ノ都市ハ御承知ノ通リ
ニ巡査派出所ガアリマシテ、町村ニハ巡査
駐在所ガアルノデアリマス、其ノ派出所ニ
夜泊ルヤウニシテ人數ノ少イコトヲ償フ、
之ガ爲ニ夜泊ッテ休ムコトノ出來ルヤウニ
派出所ノ建築ヲ改造シタイト言フノデス、
サウ云フコトヲ耳ニ致シタノデアリマス、
又某警察署長ガ私ニ訴へテ申スノニ、我々
ハ紀律訓練ヲ以テヤリ、又上官ハ非常ナ熱
心ヲ以テ、今警察精神ハ緊張シテ居ルノデ
アル、今私ハヤリマス、ヤリマスガ、アナ
タダカラ申上ゲルノダガ、此ノ儘ニ抛ッテ置
キナサルト、將來如何ニ待遇ハ······或ハ武
士道的ダ、武士道的ダト仰シヤッテモ、トン
デモナイコトニナッタラ大變デアリマス
ゾト斯ウ云フコトヲ私ハ耳ニ致シマシテ、
イヤ、ソレハ決シテ君ニ迷惑ヲ掛ケナイ、
何レ内務大臣ニモ能ク申上ゲルト云フコト
デアッタノデアリマス、以上ハ唯一端デアリ
やく、サウ云フヤウナ實情デゴザイマスル
ノデ、又加フルニ只今申上ゲル通リニ經濟
警察ヲ始メ、非常ニ色々ノ警察知識ヲ要ス
ル問題ト云フモノガ驚キ入ッタ分量アル
ノデアリマス、玆ニ私ハ警察〓育ノ問題
ハ、外務大臣ニモ熱心ニ御希望申上ゲタイ
ノデアリマシタガ、支那派遣ノ日本警察官
ニ對シテモ餘程能ク養成ナサラナイト上
海租界ノ問題ナンゾモ解決ハ出來マセヌ
是ハ餘程〓育問題ガ大事ナンデアリマス、
外ハ勿論、又內ヲ治メルニモ、國內トシテ
警察官ノ養成モ今更申上ゲル迄モナイノデ
アリマス、此ノ點ニ付テ平沼內閣ハ何卒警
察官ノ待遇及ビ〓養問題ニ付テハ大イニ
治安國策トシテ御留意ノ程ヲ切ニ希望致シ
マス、以上私ハ治安國策樹立問題ト題シマ
シテ、玆ニ第一ニ警察機構ノ再檢討、第二
ニ國民警察ノ振興問題ト同時ニ警察官ノ態
度ノ革新、第三ニ警察ノ國費問題、第四ニ警
察官ノ待遇問題ト〓養問題、是等ノ問題ノ
コトヲ申上ゲマシテ是非トモ庶政一新ノ
今日、之ガ實行ニ著手セラルヽコトニ對シ
テ多大ノ希望ヲ申述ベマシテ、此ノ豫算案
ニ對シテ滿腔ノ贊成ノ意ヲ表スル者ノ一人
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ是ヨリ採決ヲ致シマス、御異議ガナ
ケレバ四案全部ヲ問題ニ供シマス、四案全
部豫算委員長ノ報告通リデ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=41
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042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=42
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043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第五、職員
健康保險法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報〓、委員長大森男爵
職員健康保險法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長男爵大森住一
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵大森佳一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=43
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044・大森佳一
○男爵大森佳一君 御付託ニナリマシタ職
員健康保險法案委員會ノ審議ヲ了シマシテ、
玆ニ此ノ法案ノ可決ヲ見ルニ至リマシタコ
トヲ申上ゲ、其ノ始末ニ關シテ玆ニ御報〓
ヲ申上ゲタイト存ジマス、此ノ法案ハ新ラ
シキ社會保險制度ヲ創設セムトスルモノデ
アリマシテ、社會立法トシテ重要ナル法案
デアルコトハ申ス迄モアリマセヌ、サレバ
委員會デモ格別熱心ニ愼重ニ審議ヲ盡シタ
ノデゴザイマス、本案ノ趣旨ニ付キマシテ
ハ、旣ニ厚生大臣ヨリ此處デ說明ガアリマ
シタカラ詳シイコトハ申上ゲマセヌ、要八
保險ノ機能ニ依リマシテ國民ノ體力ノ確保
ト、國民生活ノ安定トニ資シテ、人的資源
ヲ涵養セムトスル所ニ其ノ重要性ガアルノ
デアリマス、御承知ノ通リ工場鑛山等ノ勞
働者、ソレ等ノ人ノ爲ニハ、十數年前カラ
所謂健康保險法ト云フモノガ行ハレテ居リ
マスルシ、農山漁村ノ居住者乃至中小商工
業者等ノ爲ニハ、昨年カラ國民健康保險法
ガ實施サレテ居ルノデアリマス、然ルニ都
市的地方ノ商業使用人乃至ハ給料生活者ノ
方面ニハマダ此ノ種ノ保護制度ガ行ハレ
テ居ラナイノデアリマス、是等ノ人々ノ生
活ニ付キマシテハ、〓シテ經濟的ニ惠マレ
ナイデ居リマスノミナラズ、兎角都會生活
カラ、其ノ健康、體力ヲ侵サレルヤウナ結
果ガアリマシテ、隨分悲慘ナ境遇ニ陷ルコ
トガ少クナイノデアリマス、之ガ爲延イテ
ハ國民生活上ニモ、產業能力ノ上ニモ、大
ナル影響ヲ釀スノデアリマス、茲ニ於テ適
當ナル社會保險制度ヲ此ノ方面ニ設クルコ
トガ、誠ニ必要デアルト云フコトガ考ヘラ
ルヽノデアリマス、此ノ考ノ下ニ此ノ法案
ガ生ズルニ至ッタト云フコトハ、我々ノ當ニ
了解セラルベキコトデアルト考ヘルノデア
リマス、ソコデ先ヅ此ノ法案ノ組立ノ骨子
ヲ大略申上ゲネバナラヌト思ヒマス
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク
此ノ保險ノ被保險者トシマシテハ、之ヲ平
タク申シマスレバ、都市ニ、動メテ居ル下級
ノ給料生活者、商業使用人ト云ウタモノガ
被保險者デゴザイマシテ、併シナガラソレ
ハ範圍ガ限局セラレテ居ルノデアリマス、
其ノ業態ノ上カラ申セバ、法案ニハ限定シ
テアリマスガ、物ノ販賣、金融、保險業、
物ノ保管、賃貸業、媒介周旋、集金、案內
業廣告業ト云ウタヤウナ仕事ニ傭ハレテ
居ル者ト云フ一ツノ制限ガアリマスヽ又其
ノ業務ノ程度カラ申シマシテ、常ニ十人以
上ヲ使用シテ居ル仕事ノ當傭ノ使用人デア
ルコトソレカラ收入ノ點カラ申シテ、一
箇月百圓以下ノ月給ヲ取ル者、收入ガ一箇
月百圓以下ノ者、斯ウ云フヤウナ制限ニ依
ル範圍內ノ給料生活者又ハ使用人ハ被保險
者トナル、其ノ數ハ凡ソ三十八萬人ト云フ
見込ト申サレテ居ルノデアリマス、保險者
ハ政府ト組合トデアリマシテ、組合ト申ス
ノハ雇主ト其ノ使用人トデ組織スル所謂職
員健康保險組合ト云フ組合デアリマス、保
險ノ給付ハ療養費、是ハ被保險者本人ト其ノ
家族ノ傷病ヲ治療スル費用ノ八割ニ當ル金デ
アリマシテ、之ヲ療養費トシテ給付スルノデ
アリマス、八割ノ外二割ハ自己負擔ニナルノ
デアリマス、療養費ノ外、傷病手當金、仕事ヲ
休ンダ場合ニ給付スル金、其ノ外埋葬料、分
娩費、出產手當等ノ給付ノ種類ガゴザイマ
ス、保險料ハ、是ハ被保險者ト雇主ト折半シ
テ負擔致シマシテ、報酬月額ノ百分ノ二·五、
二分五厘ノ保險料ヲ出スノデアリマス、此ノ
專業ニ對シマシテ、國庫ハ此ノ事業ノ事務
費ノ一部ヲ負擔スルト云フコトニナッテ居
リマシテ、凡ソ平年度ニ於テ五十萬圓餘ト
云フ見込デアリマス、此ノ法案ノ實施期ハ
十五年度カラト云フコトニナッテ居リマス、
以上ハ大體ノ此ノ法案ノ骨子デゴザイマス、
是カラ委員會ニ於ケル此ノ法案ニ對スル論
議ノ模樣ヲ申上ゲマス、第一ニハ國民ノ健
康體力等ノ施設ニ關スル問題デゴザイマ
ス、根本問題デゴザイマス、委員ノ多數ノ
論議トシマシテ、曰ク、厚生大臣ハ諸種ノ機
會ニ於テ國民生活ノ安定ヲ基本トシテ、其
ノ上ニ國民體位ノ向上ヲ圖リタイ、卽チ人
的資源ノ涵養ニ努メタイト云フコトヲ力說
セラレテ居ル、固ヨリ立派ナル御抱負デア
ルガ、併シ抽象的ノ說明ニ止ッテシマッテハ
イケナイ、之ヲ必ズ諸施設ノ上ニ具體化セ
ネバイケナイ、此ノ點ニ於テ我々ハ未ダ滿
〓足シナイ偶〓我々ノ前ニ示サレタル諸施設
ヲ見ルノニ、規模ガ甚ダ小サイ、唯僅カニ
其ノ端〓ノミヲ見セタニ過ギナイヤウナモ
ノガ多イ、而シテ何時モ財政ノ都合デ已ム
ヲ得ナイト申サレテ居ルノデアル、事ハ實
ニ將來國民ノ勃興ヲ促スベキ所ノ重大ナル
問題デアル、厚生省ガモット熱烈ナ意氣ニ燃
エテ勇往邁進シタナラバ、ソンナコトハナ
イ筈デアル、須ク財政當局トモ意氣ヲ相投
合セシメテ、有力ニシテ徹底シタ計畫施設
ヲ實現スルヤウニサレタイモノデアルト云
フ意味ノ意見ガ、屢〓唱ヘラレタノデアリマ
ス、又或ハ厚生省ガ新設サレテカラ、其ノ
施設計晝ニ骨ヲ折ッテ居ルコトハ分ルガ、動
モスルト國民ノ日常生活ニ於ケル環境ニ關
シテ、防疫、保健ノコトガ案外閑却サレテ
居ル憾ガアル、殊ニ又衞生法規ヲ行政手段
ニ移シテ、之ヲ勵行徹底セシムルヤウナ努
力ガ足ラナイ憾ガ少クナイ、是ガ國民體力
ヲ知ラズ識ラズノ間ニ蝕バンデ居ル實情ガ
見エルノデアル、此ノ邊ノコトニモ宜シク
留意スベキコトデアルト云フ意味ノ意見若
シクハ質問ガ述ベラレテアルノデアリマス、
右樣ノ多數委員ノ批判若シクハ質問ニ對シ
テ、厚生大臣ハソレ〓〓其ノ方針施設ニ關
スル意圖ヲ披瀝セラレルト共ニ、國民體力
向上ノ根本施設ニ付テ、左ノ如キ答辯ヲ試
ミラレテ居ルノデアリマス、國民體力向上
ノ爲ニハ諸種ノ施設ヲ働カシ、其ノ徹底ヲ
期スルコトガ肝要デアルガ、、總國民ノ體力
ヲ個別的ニ審サニ知リ、個々ニ適切ナル指
導ト處置トヲ與ヘルコトガ根本的ニ必要ダ
ト思フ之ガ爲自分ハ所謂國民體力管理制
度ヲ完成スルコトガ根本策デアルト確信ス
ル、卽チ個人的ニ又地方的ニ、而シテ國家
的ニ三者相策應セシメテ、體力管理ノ實效
ヲ擧グベキデアル、既ニ其ノ準備調査ニハ
著手シテ居ルガ、近ク之ヲ制度化シタイト
云フコトニ折角骨ヲ折ッテ居ルト云フ大體
ノ答辯ガゴザイマシタ、次ニ、社會保險制度
其ノモノニ關スル問題デアリマスガ今ヤ
各種ノ社會保險ガ聯立スルコトニナルノデ
アル、之ヲ一立法ニ統合セシムルノ目論見
ハナイカト云フ質問ガアリマシタ、厚生大
臣ハ健康保險法ハ實施既ニ十餘年ノ星霜ヲ
經テ相當ノ進步ヲ見テ居ル是ト新シキ國
民保險法及ビ今日創設セラレムトスル職員
竝ニ船員等ノ法制ト、統合合流セシメヨウ
トシテモ、結局跛行ノ狀態ニナッテ無理ダト
思フ、而モ被保險者ノ業態ハ各〓異異リ、罹
病率ヲ異ニスル、其ノ他ノ實情ハソレ/
揃ハナイノデ、今遽ニ之ヲ同一ノ法ニ纏メ
ルト云フコトハ困難デアル、强ヒテ纏メル
モ各〓別編ニシナケレバナラナイノデアル、
今日之ヲ統合スル時期デハナイト思フト云
フ御答デアリマシタ、又此ノ種社會保險ノ
發達ト共ニ、民營ノ生命保險事業ヲ壓迫ス
ルヤウナコトハナイカ、或ハ又生命保險ヲ
國營トスルヤウナ考ハナイカト云フ質問ニ
對シテ厚生大臣ハ兩者ハ勿論目的ヲ異
ニシテ居ルカラ牴觸シナイモノト考ヘル、
殊ニ收入百圓程度以下ノ階級ヲ職員保險ハ
狙ッテ居ルノデアルカラ、撞著スルコト
ハナイト思フ、サウシテ生命保險ノ國營
問題ハ、今日ハ何等考ヘテ居ラナイト云フ
答辯デアリマシタ、次ニ、醫師ト社會保險
ニ關スル問題デアリマス、社會保險ト醫師
ノ制度トニハ密接ナ關係ガアルガ、今日ノ
開業醫制度ニ對シテハ政府ハ如何ナル考ヲ
持ツカ、將又醫療ヲ國營トスルヤウナ考ガ
アルカ等ノ質問ニ對シマシテ、厚生大臣ハ、
現在ノ醫師制度ハ矢張リ存置スベキモノト
思フガ、此ノ儘デ宜シイトハ思ハナイ、改
善ノ餘地ト必要ガ多分ニアラウ、殊ニ醫療
ニ關シテハ公ノ性質ヲ之ニモット含マセ
テ、之ヲ强化スル必要ガアルト存ジマス、
尤モソコニ急激ナ變化ヲ與フルコトハ勿論
避ケナケレバナラナイト思フ、是等ノ方法
ニ付テハ、醫藥制度調査會ノ〓究ニ俟ッテ、
熟慮ヲ遂ゲタイト思フト云フ答辯デアリマ
シタ、更ニ保險ノ醫療給付ニ付テ、診療ノ
方法ト藥品等ガ漸次進步シテモ來ルシ、益、3
價ハ高クナルト云フコトニ連レテ、治療費
ガ高マリ、經濟上相當醫者ノ困難ヲ加ヘテ
來ルガ、保險ノ給付費用ノ方ニハ制限ガア
ル、之ニ處スルニハ面倒ナ手續ガ要ル、之
ガ爲メ醫者ノ診療ノ粗雜ヲ招キ、診療方法
ノ不統一ヲモ來シ易イ、是等ハ社會保險ノ
大ナル弊因······弊害ノ原因ダト思フガ如何
ニ考ヘルカト云フ質問ニ對シマシテ、厚生
大臣ハ、大體醫師ノ醫療上ノ經營ニハ今日
甚ダ不合理ノ點ガアッテ、之ニ關シテ國家ト
シテハ相當考ヘネバナラナイコトガアルト
思フ、此ノ點ニ付テハ醫藥制度調査會デモ
考究ヲシテ居ル、又診療ノ粗雜ヲ招カナイ
ヤウニ、給付ノ增加ハ今後モ考ヘタイト思ッ
テ居ル、而シテ醫療ノ不統一ヲ來サナイヤ
ウニ、診療計畫ヲ定メ、診療方針ヲ示シテ
統一ヲ圖ッテ居ル次第デアルト云フ答辯デア
リマシタ、次ニ、此ノ法案ノ規模ニ關スル
問題ニ付テデアリマス、此ノ職員健康保險
法案ハ其ノ看板ハ頗ル立派デアルガ、差
當リ實施セムトスル所ノ規模ニ至ッテハ案外
小規模ニ失シテ居ル·適用者ノ範圍ニシテ
モ、金額ノ程度ニシテモ、餘リニ貧弱デハ
ナイカ、當初厚生省デ調査會ノ審議ニ掛ケ
テ出來上ッタ計畫案ヲ去ルコト甚ダ遠ク、月
ト鼈ノ感ガアルト思フ、卽チ例ヘバ適用事
業二十八種ト云フコトデアッタガ、此ノ案ニ
於テハ僅カニ五種、五ツノ種類トセラレテ
居ル、從ッテ被保險者七十六萬人ノ見込デ
アッタノガ此ノ案デハ僅カニ三十八萬人ト
云フコトニナッテ居ル、適用事業ノ使用人ノ
數五十人以上トシテ居ッタノヲ、十人以上ト
シテ居ル、醫療費ノ支給期間ガ一年デアッタ
ノヲ半年ト縮メテ居ル、傷病手當、出產手
當ノ額ハ百分ノ六十デアッタノヲ百分ノ五
十ニ減ラシテ居ル、國庫ノ負擔一年百九十
萬圓ノ計畫ヲ、五十萬圓ニ減額シタヤウナ
始末デアル掲ゲタ看板ハ立派ダガ、內容
ハ斯クノ如ク心細イコトデ、甚ダ遺憾デア
ル此ノ事ハ恐ラク各委員ガ通ジテノ觀察
デアルト察セラレマス、故ニ是等ノ事項ニ
關スル質疑ハ、多數ノ委員カラ多數ノ發言
ガアッタノデアリマス、而シテ或委員ノ如キ
ハ遂ニ、折角ヤル位ナラバ計畫ノ出發點ニ
於テハ、モウ少シ效果的ノ規模デアリタイ
モノデアル、財政上許サナイト云フナラバ、
一年ヤ二年ヲ延バシテモ宜イデハナイカト
云フヤウナ、批評ノ御話モ出ク位デアリマス、
政府ハ是等ノ意向ニ對シマシテ、曰ク、適用
範圍トシテモ給料生活者ノ重要ナル部分ヲ
摑へテ居ル、而モ漸次勅令ニ依ッテ收容範圍
ヲ擴メルコトガ出來ルヤウニナッテ居ル、將
來財政ノ許ス限リ、其ノ擴大化ノ可能性ヲ
附ケテアル、當初ノ規模ガ小サクテモ末擴
ガリノ形ヲ取ッテアルカラ、勿論現狀ヲ滿足
トハ思ハナイガ、財政事情ヲ顧ルト共ニ
社會立法トシテ漸進主義ヲ以テ急激ノ轉
囘ヲ避ケテ、其ノ間一般國民ノ慣熟ヲモ
促シテ、將來ノ大器晩成ヲ期スル積リデア
ルト云フ釋明ヲスルコトニ努メテ居ルノデ
アリマス、尙下級官公吏、學校〓員等ヲ本
案ニ除外シテ居ルノハ甚ダ遺憾デアル、殊
ニ小學校〓員、私立學校〓員等ニ對シテモ
早ク其ノ保護施設ヲ講ズルノ必要ガアルト
思フガ、將來ノ方針ハドウデアルカト云フ
質問ニ對シマシテ、政府ハ是等ノモノニ及シ
タイ考デハアルガ、其ノ建前ヲ共濟制度トス
ルカ保險制度トスルカ、將來ノ懸案トシ
テ更ニ考慮ヲシテ行ク積リデアルト云フ答
辯デアリマシタ、以上ハ質問應答ニ依ル論
議ノ狀況ヲ略述シタノデアリマスルガ、討
議ニ於キマシテ左ノ如キ意見ノ開陳ガアッ
タノデアリマス、卽チ政府ガ此ノ立案計畫
ニ於テ、特ニ漸進的ナル意思ヲ含マセタコ
トハ自分ハ之ヲ諒トスルガ、實施運用ニ當ッ
テハ十分ノ努力ヲ要望スル、而モ國民體力
ノ問題ハ、健康ヲ害セラレタル後ニ其ノ處
置ヲ講ズルハ實ハ第二義デアッテ、其ノ禍ヲ
未然ニ防イデ、體位向上ノ一路ニ邁進スル
コトガ第一義デアルトセネバナラナイ、是
ニハ原因ノ探究ヲ緻密ニスルコトガ根本ノ
對策デアルト思フ、政府ノ善處ヲ望ムト共
ニ、原案ニ對シテ贊成ヲ表スル、更ニ他ノ
委員カラハ自分ハ此ノ法案ヲ檢討シタ結果、
多クノ不滿足ヲ持ッテ居ル、試ミニ主ナルモ
ノヲ擧ゲテ見レバ、被保險者ノ範圍ニ關シ、
原案ハ十人以上トシテ居ルガ、實ハ三人ト
カ五人トカ云フヤウナ小サナ店、小サナ所
ニ於テコソ、却テ保護ノ必要ガ多イト思フ
ト、又官公吏雇傭員、學校〓員ガ此ノ保護
カラ外サレテ居ルケレドモ、政府モ之ヲ必
要ト認メテ居ルノデアルカラ、速カニ其ノ
施設ノ實現ヲ望ム次第デアル、又療養給付
ノ期間ヲ、結核性病患ニ對シテハ一年トシ
テ居ルガ、此ノ種ノ病患ニ對シテハ一年デ
モ無理デアラウト思フ、宜シク今後之ニ付
テハ考慮スベキデアル、以上ハ政府ニ對シ
テ是非善處ヲ要望スルノデアルガ、自分ハ
原案ニ對シテハ贊意ヲ表スル、蓋シ此ノ法
案ノ不成立トナラムコトヲ惧レルガ故デア
ル、斯ウ云フ意見デアリマシタ、採決ノ結
果全員異議ナク、原案ヲ可決スルコトニ決
定ヲ致シタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=44
-
045・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=45
-
046・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=46
-
047・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=47
-
048・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=48
-
049・佐佐木行忠
○副議長(侯爵仕佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=49
-
050・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=50
-
051・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報〓
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=51
-
052・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=52
-
053・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=53
-
054・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=54
-
055・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=55
-
056・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=56
-
057・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第三
讀會ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=57
-
058・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=58
-
059・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第六、
司法保護事業法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告二荒伯爵
司法保護事業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長伯爵二荒芳德
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=59
-
060・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 司法保護事業法案ノ特
別委員會ノ經過竝結果ヲ御報告致シマス、
本法律案ハ十三箇條ニ分ケラレマシタ法律
案デアリマシテ最近事變下ニ於テ殊ニ再
犯ノ增加ガ見ラレマスノデ、之ニ對シマシ
テ民間ノ司法保護事業經營者ニ對シテハ
指導監督竝ニ助成ヲ致シマスト同時ニ、別
ニ司法保護委員ノ制度ヲ設ケマシテ再犯
ヲ防遏シヨウト云フノガ此ノ精神デゴザイ
やっ、本委員會ハ二十日ト二十三日ノ兩日
ニ亙リマシテ政府ノ提案ノ理由、質疑應
答ヲ致シマシタ、政府ノ說明ニ依リマスレ
バ、此ノ再犯ノ危險ヲ防止スル爲ニ、一四
十全ノ策ヲ講ズルト同時ニ、益〓民心ノ本
分ノ恪守ヲ致サシメ、品性陶冶ノ適當ナ補
導ヲシヨウト云フ說明デゴザイマシタ、尙
現在ノ制度ト致シマシテハ、國家ノ監督ス
ル所ノ保護觀察所、是ハ思想犯ニ對シテ保
護指導致シマスモノデ全國ニ設置サレテ居
リマス、是ハ相當ノ成績ヲ收メテ居ル、又
少年犯罪ニ付キマシテハ、少年審判所竝ニ
少年院等ガゴザイマスガ、是ハ誠ニ其ノ設
備モ未ダ全國的ニナッテ居リマセヌノデ、十
分ノ成績ヲ擧ゲテ居ラナイト云フ御話デア
リマシタ、又一般ノ犯罪者ニ對スル保護ニ
至リマシテハ、一年間ニ約數十萬人ノ犯罪
者ガゴザイマスノデ、之ニ對スル再犯豫防
ト云フコトハ、實ニ現下ノ急務デアル、其
ノ意味ニ於キマシテ本保護事業法ナルモノ
ハ、先ヅ差當リノ方法トシテハ、此ノ程度
ヲ以テ或效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルト云フ
說明デゴザイマシタ、質問ニ入リマシテ問
題ニナリマシタノハ、本法案ノ第六條ニ、
此ノ事業ノ經營者ハ內務大臣又ハ地方長官
ノ許可ヲ受ケマシテ、經營ノ資金ヲ寄附金
ニ求ムルコトガ出來ルコトニナッテ居ルノ
デアリマス、此ノ問題ハ一人ナラザル委員、
卽チ二三ノ委員カラ特ニ次ノヤウナ質問ガ
ゴザイマシタ、ソレハ斯ウ云フ國家的ノ事
業ハ寄附金ヲ以テ爲スヨリハ、國家自身ガ
十分力ヲ入レテヤルベキモノデハナイカ、
又寄附金トハ云フモノノ强制ノ結果ヲ生ズ
ルデハナイカ、實ニ是ハ怖ロシイコトデアッ
テ、殊ニ最近ニ於テハ此ノ寄附金ハ益、般
ニ要求サレテ居ル時代デアル、殊ニ寄附金
ノ使途ニ至ッテハ最モ愼重ヲ要スル、先日モ
本會議ニ於テ議員ノ質問ニ依ッテモ、或團體
ノ寄附金ガ其ノ使途明瞭ヲ缺クト云フ質問
サヘアッタノデアルガ、若シモ此ノ寄附金ノ
收支決算ニシテ明カニナッテ居ナイヤウナ
コトガアリ又寄附金ヲ濫費スルヤウナコ
トガアッタナラバ、此ノ重大ナル法案ニ暗影
ヲ投ズルモノデアル、斯ウ云フ質問ガゴザ
イマシタ、政府當局ハ之ニ對シマシテ、本
來國家事業デアルベキモノデアルガ、今ソ
コ迄ニ進ムコトガ出來ナイコトヲ遺憾トス
ル、又寄附金ノ强制ヲ求メルト云フヤウナ
コトニ對シテハ十分、謙虚ノ誠實サヲ以テ之
ニ臨マナケレバナラナイト思フノデ、十分
注意ヲスルト云フ御話ガゴザイマシタ、收
支決算ニ付テモ亦其ノ〓五督ヲ嚴ニシテ、寧
ロ此ノ法律案ハサウ云フ點ニ於テ、條項ノ
上ニモ之ヲ示シテ居ルト云フ說明デアリマ
シタ、又他ノ委員カラ、現在ノ此ノ事業團
體ハ一千二百三十程アッテ、千二百萬圓以上
ノ經費ヲ使ッテ居ルノデアルガ、今後是等ノ
團體ガ此ノ法律ニ依ッテ澤山殖エテ來ルコ
トハナイカト云フ質問ガゴザイマシタノ
ニ當局ト致シマシテハ現在存立シテ居
ルモノヲ先ヅ目安トシテ考ヘテ居ルト云フ
說明デゴザイマシタ、又認可權ノ標準ハド
ウデアルカ、卽チ人的ノ方面、資產的ノ方
面、共ニ留意シテ、斯ウ云フ事業ハ許可ヲ
シナケレバナラヌト思ハレルガ、如何デア
ルカト云フコトニ付マシテ、政府當局ハ、
是等ノ許可ニ關シマシテハ、從來無資產者
ヲ許シタ例ハナイガ、今後ニ於テモサウ云
フモノハ許ス考ガナイト云フコトデゴザイ
マシタ、又或委員カラノ、旣存團體ノ中ニモ
其ノ成績ノ好クナイモノガアレバ、整理ヲ爲
ス必要ハナイノデアルカト云フ質問ニ對シ
マシテモ、政府ハ、尤モデアルカラ能ク〓究
ヲスルト云フコトデゴザイマシタ、又此ノ
法律ノ中ニ司法保護委員ナルモノガ出來テ
居リマスガ其ノ保護委員ニドウ云フ人ガ
ナルカ、學校〓員、又ハ婦人モ必要デアル
カ、又在〓軍人等モ必要デハナイカト云フ
質問ガゴザイマシタニ對シマシテ、政府ハ、
ソシ等ノ人々モ亦適任者デアル限リハ十分
ニ起用ヲシタイト云フ說明デゴザイマシタ、
更ニ又他ノ委員カラハ思想犯ノ改善ノ狀
態ハドウデアルカト云フ質問ガゴザイマシ
タノニ對シマシテ、政府ハ此ノ方面ニ於
キマシテハ此ノ事變下ニ於テ、從來ノ共產
主義系ノ思想犯人ト云フモノハ、大多數ガ
祖國ノ愛ニ目覺メテ轉向ヲシタト云フ說明
デアリマシタ、殊ニ我々襟ヲ正シテ聽キマ
シタコトハ、皇太子殿下ノ御誕生遊バ
サレマシタ時ニ、或地方ノ刑務所ノ思想
犯人ハ、皆淚ヲ流シテ御誕生ヲ慶ビ合ッタ
ト云フ說明ヲ聽キマシタ譯デアリマス、
斯クノ如キ色々ノ質問ノ後ニ討論ニ入
リマシテ、或委員カラハ本員ニ贊成
スルガ、此ノ二三ノコトニ付テ注意ヲ
シテ貰ヒタイト云フ御話ノ下ニ、少年ノ犯
人ハ、是ハ善導スルコト尙容易デアル思
想犯人モ其ノ考ノ見當ガ違ッテ居ルノダカ
ラ尙之ヲ導キ易イガ、一般犯人ニ至ッテハ
實ニ難事業中ノ難事業デアル重大ナ犯人
ニ對シテハ、一面ニ責任感ヲ明カニスル
卽チ何ガ故ニ斯クノ如キ犯罪ヲ犯シ、サウ
シテ社會ニ對スル責任感ハドウ云フモノデ
アルカト云フコトヲ明カニ知ラシメル爲ニ
ハ峻嚴ナルコト恰モ嚴父ノ如キ態度ヲ以
テ臨ムベキデアル、又其ノ犯罪者ト云フモ
ノヲ保護スル意味ニ於テハ慈愛溢レル慈
母ノヤウナ態度ヲ以テ臨マナケレバナラナ
イ、卽チ一面ニ責任ヲ明カニスルト云フコ
トト、他面ニ保護ト云フコトトハ相反ス
ルヤニ見ラレルガ、此ノ點ノ十分調和ヲ
願ヒタイ、殊ニ司法保護委員ノ待遇ヲ好ク
シテ、此ノ難事業ヲ完成スルヤウニ努力セ
シメラレタイト云フ意味デゴザイマシタ、
他ノ委員ハ又贊成ノ意ヲ述ベラレマシテ、
玆ニ二ツノ遺憾ナ點ガアル一面ハ資金ノ
不足デアル、之ヲ寄附金ニ俟ツト云フコト
ガ、今日ノ時勢最モ世間ハ惱マサレルノデ
アル誠ニ畏イコトデアルガ時ニハ皇室
ノ御事業、或ハ皇室ノ御聖德等ヲ利用シテ、
或ハ看板ニシテ、サウシテ寄附金ヲ求ムル
者ガ今日尙少クナイコトハ實ニ畏イコトデ
アル、又軍部ノ關係アルガ如ク致シテ、寄
附金ヲ求メル者モ亦今日決シテ少クナイ、
更ニ玆ニ司法ト云フ背景ヲ以テ此ノ寄附金
ヲ求メル時ニ、司法トカ軍部トカ云フコト
ノ背景ガ、當然ニ寄附者ニ一ツノ迫力ヲ加
ヘルモノデハナイケレドモ、多クノ者ハ知
識ノ深クナイ爲ニ、何トナク一ツノ脅威ヲ
感ジナガラ寄附金ニ應ズルト云フヤウナコ
トガアルナラバ實ニ是ハ怖ロシイコトデ
アル、然ルガ故ニ十分財產ヲ有スル者ヲ以
テ此ノ事業ヲ行ハシメテ、寄附金要請ヨリ
生ズル所ノ不愉快ナル、喜バシクナイ結果
ヲ生ゼシメナイヤウニシテ戴キタイト云フ
コトガ一ツデアル、更ニ今一ツ殘念ニ思フ
ノハ、從來ノ事業家ノ中ニモ整理ヲスル者
モアルカラ、一定ノ期間ヲ定メテ、サウシ
テ事業ノ再認可ヲ申請スルヤウニ規定シテ
アッタナラバ、自然ニ斯クノ如キ事業家ノ整
理モ出來タノデアラウト思ハレル、併シ其
ノ規定モナイノデアルカラ、此ノ今許サレ
テ居ル事業家ニ對シテハ十分短期間中ニ於
テ整理ヲシ、惡シキモノハ淘汰ヲシテ、萬
全ヲ期セラレムコトヲ望ムト云フ意味ノ意
見ノ發表ガアリマシタ、之ヲ以チマシテ討
論ヲ終結致シ採決ニ入リマシテ、全會一致
ヲ以チマシテ此ノ法案ハ可決致スモノト確
定致シタノデアリマス、報〓ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=60
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061・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=61
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062・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=62
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063・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=63
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064・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=64
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065・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=65
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066・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=66
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067・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報〓
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=67
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068・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=68
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069・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=69
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070・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=70
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071・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=71
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072・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=72
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073・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第三
讀會ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=73
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074・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=74
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075・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第七、
船員保險法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報告、委員長大森男爵
船員保險法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長男爵大森住一
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵大森住一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=75
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076・大森佳一
○男爵大森佳一君 船員保險法案、此ノ法
案ハ先程可決確定ニ相成リマシタ職員健康
保險法ト共ニ、新ラシイ方面ニ社會保險制
度ヲ創設セムトスル所ノ重要法案デアリマ
スルコトハ申ス迄モゴザイマセヌ、工業勞
務者ノ爲ニハ健康保險法ガアリマス、農村
地方ニ對シマシテハ國民健康保險法ガアリ
マスガ都市的地方ノ商業使用人方面ニハ
先程御決議ノ職員健康保險法ガ行ハレルコ
トニナルノデアリマスルガ、海上、海ノ上
ノ勞務者タル船員方面ニ對シマシテハ此
ノ種ノ保護制度ガ存シテ居ラナイノデアリ
やく、船員ノ海上ニ於キマスル勞務ノ生活
ニ付テ見マスルニ、其ノ精神上ノ苦痛、經
濟上ノ不利益ハ申スニ及バズ、其ノ退職後
ノ生活ニ關スル懸念等、陸上勤務者ニハ見
ラレナイ所ノ特殊ニシテ深刻ナル不安不利
ガアルノデアリマスル、爲ニ動モスルト陸
上ニ職業ヲ移サムトスル所ノ傾キヲ生ズル
等、之ガ爲延イテハ今後我ガ國ニ益〓重要
ヲ加ヘムトスル彼ノ海運業ノ發展ヲ阻害ス
ル素因ヲ作リマシテ、國運、國力ノ上ニ、
將又國防、軍事ノ上ニモ、遺憾ナル結果ヲ
招クコトハ少クナイ次第デアリマス、玆
於キマシテ此ノ種船員方面ニ對シ適當ナル
社會保險制度ヲ創設スルコトハ、誠ニ必要
デアルト云フ考ノ下ニ、此ノ法案ガ玆ニ現
ルヽニ至ッタノデアリマス、少シク法案ノ組
立ノ內容ヲ略述致シタイト思ヒマス、此ノ
法ノ被保險者トナル者ハ、平タク申セバ日
本船舶ノ日本人タル船員デアリマス、是之一
ハ制限ガアリマシテ、卽チ官吏ヤ漁船員等
ハ之ニ入リマセヌ、被保險者ノ頭數ハ先ヅ
差當リ十萬餘人ト見テ居リマス、此ノ保險
ノ給付ト致シマシテハ、第一ニ療養ノ給付
竝ニ傷病手當金、是等ハ給料千八百圓以下
ノ船員ニ限ラレテ居ルノデアリマス、第二
ニ養老年金、是ハ此ノ法ノ被保險者タルコ
ト十五年以上ノ經歷ト五十歲ヲ超エタル
コトヲ要件トシマシテ養老年金ガ與ヘラレ
ルノデアリマス、其ノ他癈疾年金又ハ癈疾
手當金、脫退手當金、死亡手當金等ノ種類
ノ給付ガゴザイマス、ソレカラ保險料ハ船
員ノ報酬月給額ニ保險料率百分ノ八ヲ乘ジ
タルモノデアリマシテ、是ハ船主ト船員ト
兩方デ折半致シマスノデアリマス、卽チ百
分ノ四、四分ヅヽ保險料トシテ負擔スルノ
デアリマス、國庫ハ年金手當金ノ給付總額
ノ五分ノ一ト事務費トヲ負擔スルコトニ相
成ッテ居リマス、法案ノ實施期ハ昭和十五年
度カラト云フコトニナッテ居リマス、以上ガ
本案ノ組立ノ大略デアリマス、委員會ニ於
キマスル樣子ヲ申上ゲマスルト、質問其ノ
他ノ論議中ニハ、屢〓海上勤務ノ苦痛其ノ他
船員生活ノ特殊性ニ對スル世人ノ認識同情
ガ甚ダ薄イ傾キニアッタコトハ察セラルヽノ
デアルガ、漸ク今日此ノ法案ノ如キ保護施
設ノ發案セラレタルコトハ、誠ニ喜ブベキ
コトデアルト共ニ、寧ロ其ノ甚ダ遲カッタコ
トノ憾ガアルト云フ感想ヲ述ベテ、サウシ
テ優秀ナル船員ヲ長ク安心シテ勤續セシム
ルハ、我ガ海運業ノ發展ヲ期スル所以ノ
途デアル之ガ爲ニ本案ガ年金制ニ重點
ヲ置イタコトハ一ツノ著眼デアル、一進步
デアルト云フ批評モ出マシテ、或ハ又國
庫ノ負擔五分ノ一トサレテ居ルガ、此ノ制
度ノ重要性ニ鑑ミテ、將來ハ寧ロ之ヲ三分
ノ一ニ增シ、船員、船主ノ負擔ヲモット輕
減シテハ如何デアルカト云フ質問モ出タノ
デアリマス、或ハ又此ノ法案ニ於テハ船員
ノ家族ヲ除外シテ居ルガ、船員ハ常ニ遠ク
海ニ出テ長ク家族ニ別レテ居ル之ガ爲ニ
受クル彼等ノ精神的打擊ニモ誠ニ同情スベ
キモノガアル、職員保險等ニ於テハ家族
ヲ除外シテ居ラナイノニモ拘ラズ、船員ニ
之ヲ認メテ居ラヌト云フガ如キコトハ如何
ナル譯デアルカト云フ質問モアリマシタ、
要スルニ殆ド全部ノ委員ガ斯クノ如ク船
員生活ノ特殊性ト船員保護ノ重要性トヲ强
調セラレマシタコトハ、注目スベキコトト
存ジマス、大臣ハ之ニ對シテ答辯サレテ居
リマス、全ク御尤ナ御觀察デアル年金制
ニ重キヲ置イタ所以モ、實ニ船員生活ノ同
情スベキ特殊性ニ鑑ミタ次第デアル國庫
ノ負擔ニ付テハ當初調査會ノ案トシテハ
三分ノ一デアッタガ、財政ノ關係モアリ、且
又船主ノ負擔ハ之ヲ許スベシト云フコトヲ
考ヘテ、之ヲ五分ノ一トシタ次第デアル、
將來ニ付テハ尙考ヘル積リデアル家族ノ
療養費等ヲモ含マシムルコトハ勿論希望ス
ル所デハアルガ、之ガ爲ニ被保險者ノ本人
ノ負擔ヲ增嵩スル虞ガアルカラ見合セタノ
デアル、船員等ノ負擔ヲ增サナイデ家族ノ
保護ノ途ヲ講ズルコトハ、今後工夫シタイ
トハ思ッテ居ルト云フ答デアリマシタ、九一
同ジク海上ノ勤勞者デアル所ノ漁船員、漁
撈乘組員等ニ付テハ、其ノ乘船ノ期間竝ニ其
ノ經濟事情等カラ考ヘテ、本法ノ適用ヲ外
シテ居ルコトハ已ムヲ得ナイトシテモ、他
ニ是等ニ對シテ適當ナ保護施設ヲ加フルコ
トハ極メテ必要ナコトダト思フガ、ドウデ
アルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ
是ハ今後關係ノ當局向ト十分ナ協議ヲ遂ゲ
テ、別途ニ適切ナル、卽チ漁船員、漁撈乘組
員等ニ對スル適切ナル所ノ保護施設ヲ成
ルベク早イ時期ニ實現シタイト考ヘテ居ル
ト云フ言明ヲ致サレテ居ルノデアリマス、
更ニ問題トナリマシタノハ養老年金ノ支
給ニ關シマシテ、勤續十五年以上ト云フ年
限ト支給開始年齡ヲ五十歲ト定メラレタ
問題デゴザイマス十五年以上、五十歲ト
シタ理由ハ如何デアルカ、之ヲ引上ゲ、或ハ
反對ニ引下ゲテハドウデアルカト云フ、程度
問題ノ得失問題ニ關スル論議デアリマス
之ニ付キマシテハ船員生活ノ特殊性、現
在船主、船員間ニ協定セラレテアリマスル
船員ノ停年制、特殊性ト停年制、竝ニ保險經
濟ニ及ス影響等ニ、深甚テル考慮ヲ加ヘタ
結果、十五年、五十歲制度ガ、今日ハ最モ
適度デアルト云フコトニ決定シタト云フ說
明ヲ聽取ッタノデアリマス、更ニ又船舶ノ運
航ハ、本法施行地域外、卽チ外地、海外ニ
亙ルコトガ多イ關係カラ、船員ガ海外外
地ニ於テ保險給付ヲ受クル便宜ヲ缺クヤウ
ナコトガ屢〓起リハシナイカト云フ質問ニ
對シテハ、政府ハ、外地ニハ勿論支那大陸ノ
主要地ニモ此ノ本法施行竝ニ給付ノ機關施
設ヲ設ケテ、遺憾ナキヲ期スル積リデアル
ト云フコトヲ說明シテ居リマス、以上ハ質
問應答ノ〓要デアリマスル、討論ニ入リマ
シテ次ノ意見ガゴザイマシタ、船員ガ貿
易ニ、資源ノ開發ニ、將又國防ニ努力サレ
テ居ルコトハ察スルニ餘リガアル、殊ニ此
ノ事變ニ際シテ船員ガ軍ノ輸送ニ、敵前上
陸ニ、其ノ他少カラヌ犧牲ヲモ出シテ働イ
タト云フ、或ハ漁船員ガ中南支ノ作戰ニ協
力シテ淚グマシイ活躍ヲシテ居ル等ノコト
モ、全國民ノ感謝ノ的デアルノデアル又
此ノ法制ノ立案ニ政府當局ガ努力シタコト
ニ對シテハ、之ヲ多トスル次第デアル固
ヨリ最初カラ完璧ヲ求ムルコトモ無理デハ
アラウガ、我々審議ヲ盡シタ者トシテハ又
相應ノ要望ガアル
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
其ノ一ハ漁船員、漁撈員ニ對シテハ、其
ノ特殊性ヲ慮リ別途ニ適切ナル保護施設ヲ
設クベキデアル、是ハ能ク〓究シタ上デ次
ノ議會ニ提案サレタイモノデアル、第二ニ
養老年金開始ノ年齡ヲ五十歲トシタノハ
若過ギヤシナイカ、年金ヲ貰ヘバ直グニ罷
メテ、走ッテ行クヤウナコトニナリヤシナイ
カト云フコトハ杞憂デハナカラウカノミ
ナラズ早老ノ弊ニ導クコトニナラヌノデハ
ナカラウカ、此ノ邊ハ政府ガ今後ノ狀況ヲ
見テ、必要アリトスレバ其ノ年齡ノ是正ヲ
速カニ怠ラナイヤウニサレタイモノデアル、
第三ニ、船員生活ノ特殊性ハ深ク察スベキ
デアル、其ノ保護ハ完全ニシナケレバナラナイ、然
ルニ原案ノ內容ハ餘リニ貧弱ダト思フ、此ノ
點當局ノ熱意ガ足リナイ憾ガアル、成ル程國費
多端デハアル、併シ事ハ國防ト海運ノ重大事デ
ハナイカ、殊ニ長期給付ニ對スル國庫負擔五
分ノ一ノ如キハ餘リニ少額デハナイカ、而モ
其ノ現實ノ負擔ハ相當先キノ將來ノコトデ
アル問題ノ重要性ヲ考ヘテ將來三分ノ
一以上ニ增額シテ以テ給付ノ內容ヲ充實ス
ルノ擧ニ出デテコソ然ルベキコトダト思フ、
政府ハ篤ト此ノ點ニ付テ善處サレムコトヲ
望ムノデアル、要スルニ政府自身ガ本案ヲ
萬全ナリトハ思ハヌト言フノト同ジヤウニ、
自分ハソレ以上ニ決シテ滿足シテ居ラヌノ
デアル、併シ今是ガ不成立ノ結果ヲ招クコ
トハ自分ノ本意デナイ、原案ニ對シテハ玆
ニ贊成ノ意ヲ表スル、更ニ他ノ委員ヨリハ、
自分ハ此ノ法案ノ出現ノ寧ロ遲カリシコト
ヲ憾トスル位デアル、政府ノ遺漏ナキ運用
ニ依ッテ、我ガ海運業上ニ一層ノ貢獻ヲ爲ス
ベキヤウ努力セラレムコトヲ望ンデ、本案
ニ贊意ヲ表スル次第デアルト云フ意見ヲ表
セラレマシタ、全員異議者ナク可決スベキ
モノト決定致サレタノデアリマス、御報告
終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=76
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077・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言ガナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=77
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078・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=78
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079・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=79
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080・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=80
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081・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=81
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082・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=82
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083・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題ニ
供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リデ
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=83
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084・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=84
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085・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=85
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086・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=86
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087・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=87
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088・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=88
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089・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=89
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090・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=90
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091・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、災害
被害者ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ
關スル法律案、日程第九、登錄稅法中改正
法律案、日程第十、有價證劵移轉稅法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會ノ續、委員長報〓、是等ノ三案ヲ一括シテ
議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=91
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092・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長白川子爵
災害被害者ニ對スル租稅ノ減免、徵收
猶豫等ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
登錄稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
有價證劵移轉稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵白川資長君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=92
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093・白川資長
○子爵白川資長君 災害被害者ニ對スル租
稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關スル法律案外二
件ノ委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報告致シマ
ス、本委員會ハ一昨日開キマシテ、委員長
及ビ副委員長ヲ互選致シマシテ、ソレカラ
議事ニ入リマシタノデゴザイマス、ゾレカ
ラソレニ付テ政府委員ノ說明ヲ承ッタノデ
ゴザイマスルガ、此ノ三法案ハ各〓性質ヲ
異ニシテ居リマス關係上、簡單ニ別々ニ申
上ゲタイト思ヒマス、先ヅ第一ノ災害被害
者ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關ス
ル法律案カラ申上ゲマスガ是ハ大體政府
委員ヨリ旣ニ本會議デ以テ御說明ノアッタ
通リデゴザイマシテ、災害被害者ニ對スル
租稅ノ減免、徵收猶豫等ニ關スル法律案デ
ゴザイマシテ、從來ノ如ク相當廣範圍ナル
地域ニ亙ッテ震災其ノ他ノ被害甚大デゴザ
イマシタ時ニハ其ノ都度々々法律又ハ緊
急勅令ヲ制定シテ租稅ノ減免、徵收猶豫等
ヲ行ッテ居ッタノデアリマス、例ヘバ大正十
二年九月十二日ノ緊急勅令第四百十號ヲ始
メ殆ド每年ト言ッテモ宜イ程ゴザイマシタ
ノデゴザイマス、而シテ昨年ハ又神戶及ビ
土浦等ニモ水害ガアッテ、莫大ナル水害ガゴ
ザイマシタカラ、此ノ災害ノ發生致シマシ
タ時日ノ關係等デ、十分敏速適切ナル措置
ヲ講ジ難イ憾モゴザイマシタモノデスカ
ラ、イッソ災害發生ノ場合ニ處スル所ノ根本
法ヲ制定致シテ置イテ被害甚大ナル災害
ノ發生シタル場合等ニ、命令ノ定ムル所ニ
依ッテ直チニ租稅上ノ適當ナル救濟方法ヲ
講ジ得ルヤウニ致シ置キタイト云フ所ノ爲
ニ、此ノ法律案ガ出タノデゴザイマス、之ニ
付キマシテハ色々委員間デハ御質問モゴザ
イマシタガ、是ハ速記錄ニ讓リマス、次ニ登
錄稅法中改正法律案、是ハ極メテ簡單ナモ
ノデゴザイマシテ、商法ノ改正ニ伴ヒマシ
テ有限會社ガ出來タノデゴザイマスガ、有
限會社法ノ制定ニ從ヒマシテ、有限會社ハ
普通ノ株式會社、合資會社等ト同ジク登錄
稅ヲ取ルノデ、資本竝ニ增資其ノ他總テノ
登錄稅ヲ、株式會社其ノ他ト同樣ノ率ニ於
テ課稅スルト云フ法律デゴザイマス足代
別段御質問等モ大シタコトハゴザイマセ
又、次ニ有價證劵移轉稅法中改正法律案デ
ゴザイマスガ、是ハ、本案ハ最近小額國債
ヲ發行シテ居ルノデゴザイマス、卽チ郵便
局ノ窓ロデ發賣シテ居ル所ノ二十圓以下ノ
國債ニ付テ、有價證劵ノ移轉稅ヲ免除スル
ト云フ法律案デゴザイマスガ、是ニハ色々
ト質問モゴザイマシタケレドモ是モ速記錄
ニ讓リマシテ、討論ノ結果、全會一致ヲ以
テ三案共可決ト云フコトニ相成リマシタ、
右御報〓ヲ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=93
-
094・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ三案ノ採決ヲ致シマス、三案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=94
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095・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=95
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096・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=96
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097・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=97
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098・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=98
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099・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=99
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100・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=100
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101・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=101
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102・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=102
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103・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=103
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104・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=104
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105・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=105
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106・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀會
ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=106
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107・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=107
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108・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十一、中
支那振興株式會社法中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報
〓、委員長中山侯爵
中支那振興株式會社法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長侯爵中山輔親
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔侯爵中山輔親君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=108
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109・中山輔親
○侯爵中山輔親君 只今議題トナリマシタ
中支那振興株式會社法中改正法律案ニ付テ、
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、
本案ノ要旨ニ付キマシテハ旣ニ本議場ニ
於テ政府カラ說明ガアリマシタコトデスカ
ラ、之ヲ省略サセテ戴キマス、次ニ委員會
ニ於ケル質疑應答ノ內容ニ付テ、主ナルモ
ノ二三ヲ申上ゲタイト存ジマス、第一ニ中
支那振興株式會社ニ對シテ、政府ハ現在ドノ
位ノ現物出資ヲシテ居ルノデアルカ、又將
來ドンナ見透シヲ持ッテ居ルノカト云フ御
質問ニ對シテ、政府ノ御答辯ニナリマシタ
所ハ此ノ會社ガ出來タ當時ニ於テハ現物
出資ハ五百萬圓デアッタケレドモ昨年ノ
五月ニ於テハ七百六十餘萬圓ニナリ又今
年ノ三月一日ヲ基準トシテ見ルト、極ク〓
算デハアルケレドモ一千一百萬圓ニナッテ
居ルト云フコトデアリマス、又將來ノ見透シ
ト云フコトニ付キマシテハ、作戰及ビ經濟
上ノ必要カラシテ、其ノ額ハ增加スルモノ
デアラウト思ハレルト云フ話デアリマス、
第二ニ、此ノ中支那振興株式會社ハ現在ニ於
テ如何ナル地理的範圍ニ、又如何ナル經濟
的範圍ニ於テ活動シテ居ルノカト云フ御質
問ニ對シテ、政府ノ御答辯ニナリマシタ所
ニ依リマスト、地理的ニ之ヲ見マスト、安
徽省、浙江省、江蘇省ノ三省ニ限ラレテ居
ルノデアリマシテ、ドナタモ當然入ルデア
ラウト御考ニナッテ居ル所ノ漢口ノ如キハ、
目下作戰行動中デアルガ故ニ、此ノ會社ノ
活動ノ範圍內ニ入ッテ居ナイト云フコトデ
アリマス、廣東ニ付テモ亦同樣デ、此ノ會
社ノ活動ノ範圍內ニ入ッテ居ナイノデアリ
マス、次ニ經濟的活動ニ付テ申シマスト
北支ニ於テハ天然資源ヲ開發スルコトヲ主
眼トシテ居リマスケレドモ、此ノ中支ニ於
テハ是ト異ナリマシテ、戰爭ノ結果破壞サ
レタ所ガ誠ニ甚ダシイノデアリマス、ソレ
ガ爲ニ先ヅ第一ニ復興シナケレバナラナイ
ノデアリマス、ソレデ此ノ會社モ復興ヲ第
一主義ト致シマシテ、當局ノ說明ニ依リマ
スト、三年ヲ以テ事變前ニ復興シ得ルト云
フコトデアリマス、ソレデ從來支那人ガ經
營シテ居リマシタ所ノ鑛山、水道、電氣、瓦
斯通運、電信、電話、ㄱバス」及ビ都市計畫
ニ基ク所ノ土地會社ト云フヤウナモノニ、
日本ノ技術ト資本トヲ投ジマシテ、現在約
九ツノ子會社ヲ設ケテ、銳意復興ニ努力中
デアルト云フコトデアリマス、第三ニ、從
來日支合辦專業ト云フモノハ多ク失敗ニ歸
シタノデアル、然ルニ是等ノ子會社ハ日支
合辦事業デアルヽ政府ノ所見ハドウデアル
カ、斯ウ云フ御質問ニ對シテ政府ノ御答辯
ニナリマシタ所ハ、從來蔣政權ハ、日支合
辦事業ニ對シテ日本側ガ過半數ノ權利ヲ掌
握スルト云フコトヲ法律ヲ以テ禁ジテ居リ
マシタ、然ルニ現在出來テ居リマス所ノ維
新政府ハ、日本側ガ過半數ノ權利ヲ持ッテモ
宜シイト云フコトニシテ居リマスノデ、是
等ノ子會社モ亦過半數ノ權利ヲ持ッテ居ル
モノガアルノデアリマス、併シ斯カル場合
ニ於テモ、日支共存共榮ノ大方針ニ基キマ
シテ、苟モ獨斷檀行ト云フヤウナ弊害ニ陷
ルコトノナイヤウニシテ、有力ナ支那人ヲ
シテ、日本ノ技術ト資本ニ安心シテ、是等
ノ復興事業ニ携ッテ吳レルヤウニ、銳意努力
シテ居ルノデアルト云フ御答辯デアリマシ
タ、此ノ他委員ノ中ニハ親シク現地ニ御
出デニナテッテ御經驗ニナリマシタ見地カ
ラ、色々ト適切ナ御意見モアリマシタシ、
又通貨問題或ハ外資流入問題及ビ出資財產
ノ評價等ニ付テ熱心ナ御質問ガアリマシ
タ、之ニ對シテ政府モ亦精細ヲ極メタ御答
辯ガアリマシタガ、是等ニ付キマシテハ速
記錄ニ讓リマシテ、討論ニ移リマシタ、討
論ニ入リマスト、一委員カラシテ租界問題
ヤ其ノ他外交問題ガウルサイ上海其ノ他ヲ
復興スルノデアルカラシテ、其ノ復興事業
ニ付テハ非常ナ障碍ガ多イト思フ、併シナ
ガラ一日モ早ク復興ヲ完成シテ、以テ日支
發展ノ基礎ヲ固メラレムコトヲ希望スルト
云フ希望意見ヲ述べラレマシテ原案ニ贊
成ノ意見ヲ開陳セラレタノデアリマス、討
論ヲ終リマシテ採決ノ結果、全會一致ヲ以
テ政府ノ原案通リ可決致シマシタ、右御報
告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=109
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110・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=110
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111・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御議異ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=111
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112・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=112
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113・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=113
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114・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=114
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115・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=115
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116・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス)本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=116
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117・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=117
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118・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=118
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119・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=119
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120・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=120
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121・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 異御議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=121
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122・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=122
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123・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=123
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124・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴喜君) 日程第十二、健
康保險法中改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員長
大森男爵
健康保險法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長男爵大森住一
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔男爵大森佳一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=124
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125・大森佳一
○男爵大森佳一君 此ノ改正案ハ健康保險
法十數年ノ執行ノ成績ニ徵シ、改善ヲ施シ、
且先程議決ニナリマシタ職員竝ニ船員ノ健
康保險法ノ創設ニ牽聯ヲ致シマシテ、改正
ヲ必要トスル所ノ法案デアリマス、要點ヲ
擧ゲマスレバ、一現行法ノ保險給付ハ
被保險者本人ノ傷病ニ關シテデアリマスガ、
之ヲ其ノ家族ノソレニモ及シ、或程度ノ療
養費ヲ補給シ得ル途ヲ開クコトデアリマス、
其ノ二ツニハ、傷病ニ關スル保險給付ノ支
給期間ガ、從來六箇月ニ止メラレテ居リマ
シタガ、特ニ結核病ニ付テハ之ヲ一箇年ト
爲シ得ルコトニシタコト、其ノ三、其ノ他
創設ノ二法案ニ付テ被保險者ノ移動等ニ關
聯シマシテ、被保險者ノ資格竝ニ保險給付
ノ支給等ニ付テ關係ノ規定ヲ改正スルコト、
此ノ三點デゴザイマス、何レモ當然ノ改正
デアリマシテ、別ニ多クノ論議ナクシテ、
一委員ヨリ贊成意見ヲ表示セラレテ後、全
員異議ナク可決スベキモノト確定ヲ致シタ
次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=125
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126・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=126
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127・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=127
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128・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=128
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129・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=129
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130・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=130
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131・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=131
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132・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=132
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133・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=133
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134・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=134
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135・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=135
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136・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=136
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137・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=137
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138・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部第二讀會ノ決議通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=138
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139・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=139
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140・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 明日ハ午前十時
ヨリ開會致シマス議事日程ハ決定次第彙
報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ
散會致シマス
午後四時二十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X02919390324&spkNum=140
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