1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十五日(土曜日)午前十時十五分開議
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議事日程 第三十號
昭和十四年三月二十五日
午前十時開議
第一 請願委員長報告
第二 昭和十二年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第三 昭和十二年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第四 昭和十二年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第五 昭和十三年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第六 昭和十三年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第七 昭和十三年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第八 輕金屬製造事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 帝國鑛業開發株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 映畫法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 著作權に關する仲介業務に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 船舶建造融資補給及損失補償法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 海運組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 造船事業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 米穀配給統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 工業組合法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 臨時陸軍材料資金特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 大日本航空株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 支那事變特別税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 臨時利得税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 臨時租税措置法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 關税定率法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 昭和七年法律第四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 昭和十四年法律第二號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 刑事訴訟法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十六 豫定線札幌、増毛間鐵道速成の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔近藤書記官朗讀〕
一昨二十三日議決ニ係ル議員正三位勳三等
子爵豐岡圭資君ニ對スル弔辭ハ昨二十四日
之ヲ贈レリ
昨二十四日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
昭和十四年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)
昭和十四年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第三號)
臨時陸軍材料資金豫算案
職員健康保險法案
司法保護事業法案
船員保險法案
災害被害者ニ對スル租稅ノ減免、徵收猶
豫等ニ關スル法律案
登錄稅法中改正法律案
有價證劵移轉稅法中改正法律案
中支那振興株式會社法中改正法律案
健康保險法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
船舶建造融資補給及損失補償法案可決報
告書
海運組合法案可決報告書
造船事業法案可決報告書
米穀配給統制法案可決報〓書
大日本航空株式會社法案可決報告書
支那事變特別稅法中改正法律案可決報〓
書
臨時利得稅法中改正法律案可決報告書
臨時租稅措置法中改正法律案可決報告書
昭和十四年法律第二號中改正法律案可決
報告書
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
刑事訴訟法中改正法律案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
郵便年金法中改正法律案
北海道土功組合法中改正法律案
花柳病豫防法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、請願委員長報告、
委員長伯爵酒井忠克君
〔伯爵酒井忠克君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=2
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003・酒井忠克
○伯爵酒井忠克君 請願委員會ノ御報告ヲ
簡單ニ申上ゲマス、第二囘ノ御報告ヲ致シ
マシタ其ノ以後、受領致シマシタ請願書ノ
數ハ三百二十件、之ガ連署人數ハ一萬百四
十九名デアリマス、第二囘報〓ノ際文書表
ニ揭載セラレナカッタモノハ三十一件ゴザ
イマシタカラ、前述ノ三百二十件ト合シマ
シテ、合計三百五十一件ト相成リマス、此
ノ中文書表揭載ノモノ三百十一件、文書表
未揭載ノモノガ九件ゴザイマス、請願文書
表報〓ハ三囘、請願委員會特別報〓ガ二囘、
委員會ハ二囘、分科會ガ八囘開會致シテ居
リマス、委員會ニ於キマシテ前述ノ三百十
一件ト、第二囘報告ノ際ニ審査終了ニ至ラ
ナカッタモノニ付テ愼重審査ノ結果、議院ノ
會議ニ付スベシトスルモノ百二件、議院ノ
會議ニ付スルヲ要セズトスルモノ四件、文
書表第十一號、第十三號、第二十四號、第
百七十六號トナッテ居リマス、次ニ總報告ヲ
申上ゲマス、文書表報告ハ九囘、委員會特
別報告ガ七囘、請願書受領總件數ガ四百九
十三件、連署人數ガ五萬千百九十六名デゴ
ザイマス、文書表揭載件數ガ四百八十四件、
未揭載ノモノ九件、委員會ノ開會八囘、分
科會ハ二十一囘、右委員會ニ於キマシテ審
査ノ結果、議院ノ會議ニ付スベシトスルモ
ノ百五十九件、議院ノ會議ニ付スルヲ要セ
ズトスルモノ十一件デアリマス、以上ノ中
採擇百五十八件ハ、既ニ本議場ニ御報告致
シマシタモノデアリマス、以上ハ昨二十四
日迄ノ御報告デゴザイマス、次ニ今日ノ日
程ニ上程セラレマシタ第二百十二號ト、委
員會ニ於キマシテ採擇セズト決定致シマシ
タモノノ中、主ナルモノ四件、百號、百一
號百十八號、百七十六號等ニ付テ、簡單
ニ委員會ニ於キマスル其ノ經過竝結果ニ付
テ御報告ヲ申上ゲマス、第二百十二號ハ豫
定線札幌·增毛間鐵道速成ノ件デゴザイマ
ス、此ノ札幌·增毛間ハ敷設法ノ別表ニ揭ゲ
テゴザイマス豫定線デアリマシテ、其ノ中
ノ石狩太美ノ間ハ約二十一「キロ」、是ハ旣ニ
旣成線ニナッテ居ルノデゴザイマス、殘リ區
間ハ約百五「キロ」アリマスガ、此ノ沿線ニ
ハ水產、林產等ノ物資ガ相當ゴザイマスル
カラ、將來地方ノ發展竝ニ運輸ノ狀況ニ鑑
ミテ、敷設スル見込デアルト云フ政府ノ御
意見デゴザイマシタ、委員會ニ於キマシテ
ハ石狩港及濱益港ノ完成ト相俟ッテ、此ノ
鐵道ノ敷設ハ請願ノ趣旨ノ如ク、沿線ノ豐
富ナル海陸資源ノ開發上、貢獻スル所大ナ
ルノミナラズ、運輸交通上重要ナル線デア
ルニ依ッテ、之ヲ採擇スルコトニ決定致シ
マシタ、次ハ第百號、北海道網走刑務所名
改正ノ件デゴザイマス、北海道網走町ハ
水陸物資豐富ナル產業都市ナルニ拘ラズ、
ゝ偶〓町內ニ網走刑務所ノ存在スル爲ニ、網
走ノ名物ハ刑務所デアルガ如クニ世人カラ
誤認サレテ居ル、成ル程明治時代ニハ極惡
重罪囚ヲ收容シテ居ッタノデアルガ、今日ハ
〓ネ農牧ニ經驗ヲ有スル短期輕罪囚デアル
ニ拘ラズ、今尙世人ニ惡印象ガ殘ッテ居ルガ
故ニ、町ノ發展ヲ阻害スル所大デアル、故
ニ刑務所名ヲ改正シテ貰ヒタイト云フノデ
アリマス、網走刑務所ノ名ハ世間ニ有名デ
アルガ、此ノ刑務所ガ今日土地ノ發展ヲ阻
害シテ居ルト云フコトハナイヤウニ思ハレ
ル、寧ロ網走町ノ發展ハ此ノ刑務所ノ存在
スル所ガ多イヤウデアル、又網走刑務所ハ
以前ハ重罪囚ヲ收容シテ居ッタノデハアル
ガ、今日ハ左樣ナコトハナク、我ガ國唯一
ノ模範的大農園刑務所デアッテ、釋放者ノ心
境ニハ好影響ヲ與ヘルヤウデアル、尙刑務
所ノ名稱ハ總テ其ノ所在地名ヲ以テ刑務所
名トシ、全國皆畫一ニナッテ居ルカラ、網走
ノミヲ改稱スルコトハ出來ナイト云フコト
デ、委員會ニ於キマシテハ是ハ採擇セズ
ト云フコトニ決定致シマシタ、第百一號ハ
國費ヲ以テ小都市ニ於ケル水道敷設ノ件デ
ゴザイマス、良質ノ飮料水ハ國民ノ生活ニ
最モ必要ナモノデアル、從ッテ水道ノ敷設ハ
國民ノ保健衞生上缺クベカラザルモノデア
ルカラ、小都市ニ於テハ資力薄弱デ到底其
ノ敷設ガ困難デアル、偶〓敷設計畫ヲ樹立シ
テモ、地方費ヨリ補助小額デアルコトハ甚
ダ遺憾デアル、仍テ人口五萬未滿ノ小都市
ニ對シテハ、國費ヲ以テ水道敷設ノ途ヲ講
ゼラレタイト云フノデアリマス、國費ヲ以
テ小都市ノ給水事業ヲ實施スルコトニ付テ
ハ、國民保健上必要ナコトトハ思フガ、直
チニ全額國費ヲ以テ實施スルコトハ、財政
上相當考究ヲ要スルコトト思フ、現在ニ於
テモ人口一萬以上ノ市町村ニ對シテ、其ノ
負擔力ガ平均以下デアッタモノニ付テハ、其
ノ事情ニ依リ四分ノ一乃至六分ノ一ノ範圍
內ニ於テ補助金ヲ交付シテ居ルノデアル、
全額國費ヲ以テ設置スルコトハ、十分考究
ヲ要スルコトデアルト云フ政府ノ答辯デア
リマシタ、一委員ヨリ補助金ヲヤルト云フ
コトハ御約束ニナルガ、實際ノ支給額ハ非
常ニ少イ、而モソレガ遲レテ餘程年數ガ經ッ
タ後ニ僅カヅツ出テ來ルト云フヤウナ事情
デアル、是ハ長イ間ノ仕來リデ、內務省時
代ヨリ斯クナッテ居ルノデアルガ、今日ハド
ウ云フ風ニナッテ居ルカ、折角四分ノ一乃至
六分ノ一ノ補助ヲスルト云フガ、適當ノ年
度內ニ支給シナケレバ何ニモナラナイト思
フガ、當局ノ考ハドウデアルカト云フヤウ
ナ御質問ガゴザイマシタ、厚生省ニ於テモ
同樣ノ感ジヲ持ッテ居ル、十年乃至十五年ノ
期間ニ補助ヲ與ヘテ居ルガ、當初ハ大體豫
算ノ都合上千圓ヲ限度トシ、後年度ニ於テ
澤山支給スルコトニナッテ居ル、市町村等ニ
於テハ、事業ヲ始メルニ付テ、國庫補助モ
アルカラト云フノデ大イニ乘氣ニナルガ、
財政的援助ト云フ建前カラ云フト、實ハ金
ガ死ンデ居ルヤウナ形ニナッテ居ル、故ニ假
令補助ガ今少シ減ッテモ、當初カラ補助ヲ與
ヘナケレバ有效デハナイト思フト云フ答辯
デアリマス、尙相當水道補助全體ノ方針ニ
付テハ、財務當局ト更ニ協議ヲ致ス考デア
ル、委員會ニ於キマシテハ五萬未滿ノ小都
市ト言ヘバ現在我ガ國ニ於テ一萬一一千有
餘ノ市町村ノ中、一萬一千餘ヲ占メテ居ル
大多數デアッテ、ソレヲ全額國費ヲ以テ水道
ヲ敷設スルト云フコトハ、到底現下ノ財政
上ハ許サレナイ、政府ハ今日迄一萬以上ノ
小都市ニ付テハ、四分ノ一若シクハ六分ノ
一ノ補助ヲシテ居ルガ、ソレスラ十分ナコト
ガ出來テ居ラナイ、現在ニ於テハ法規デ定
メラレタ補助スラ十分ニ出來ナイ爲ニ、町
村等ニ於テハ非常ニ困ッテ居ル現狀デアル、
此ノヤウナコトガ此ノ請願ガ提出セラレタ
原因デアラウト思ハレル、此ノ點ニ付テハ
政府モ十分之ヲ諒トシ、補助金モ出來ルダ
ケ有效ニ支出スルコトニ努力スルト云フコ
トデアルカラ、今ノ所ハ此ノ程度デ致シ方
ハアルマイ、併シ國民保健上ヨリスレバ
小都市ニ全部水道ヲ敷設スルコトハ理想デ
アルガ、實行上ニ於テ、人口五萬未滿ノ小
都市ニ國費ヲ以テ此ノ際水道ノ敷設ヲスル
ガ如キハ、到底出來得ナイ相談デアルガ故
ニ、遺憾ナガラ此ノ請願ハ採擇スベキデナ
イト云フコトデアリマシテ、採擇セズト決定
致シマシタ、次ハ第百十八號、「ローマ」字〓
授ヲ小學校正科目ニ加フル件、日本語ノ「ロー
マ」字綴リ法ヲ義務〓育ニ於テ習得セシムル
ハ最モ必要ナルニ依リ「ローマ」字〓授ヲ小學
校授業正科目ニ加ヘ、其ノ綴方ハ昭和十
二年九月公布、內閣訓令第三號ㄱローマ」字
綴方ニ據ラシメタイト云フノデアリマス、
其ノ理由ト致シマシテ、內閣訓令ニ依ル綴
方ハ、文部省臨時「ローマ」字調査會デ七箇
年ニ亙リ愼重審査ノ結果デアル、國內ノ「ロー
マ」字綴方ハ、今日ハ著々實行ニ移リ、各
官廳ハ勿論、民間各方面モ右訓令ノ精神ニ
依ッテ漸次此ノ方式ニ改メラレツヽアル、
「ローマ」字ハ世界各國共通ノ文字デアッテ、
今國際間ノ交通益〓繁ク、今後實生活上ニ
「ローマ」字ヲ無視スルコトハ出來ナイ、勿論
此ノ情勢ニ處スル義務〓育ニ於テ、日本語ノ
「ローマ」字綴法ヲ知ラシムルコトハ最モ必
要デアルト云フノデアリマス、此ノ請願ノ
審査ニ當リマシテ、委員外ノ一議員ヨリ、
此ノ提出理由ヲ縷々ト述ベラレマシタノデ
アリマスガ、今其ノ〓要ヲ簡單ニ申上ゲマ
スト、我ガ國ノ外國郵便、滿洲支那ヲ除イ
タノデゴザイマス、ノ數ヲ調ベルト、「ロー
マ」字デ表書キシテ居ル郵便ノ數ハ、一日ニ
日本ヨリ發セラレルモノト、彼方ヨリ受取
ルモノトヲ合セテ十二萬通ニ達スルト云フ
ノデアリマス、是ハ官廳ノモノガ主ニナッテ
居リマスガ、民間ノモノモ相當澤山アッテ、
電報ノ數ハ、昭和十一年ニハ日々出入スル
モノガ五千通位アル、斯樣ナ時勢デアルカ
ラ、小學兒童ニ一通リ學バセル必要ガアル、
實ハ或人ガ京都、大阪、福岡、靑森、札幌
等デ夏休ヲ利用シテ、一週間小學兒童ニ講
習ヲ致シタ處、大變ニ好イ成績ヲ得タノデ
アルカラ、兒童ニ一應〓ヘルコトヲシタイ
ト云フノデアリマシタ、委員會ニ於キマシ
テハ、此ノ「ローマ」字綴方ヲ小學校ノ正科
目トスルコトハ、小學校ノ〓科目ノ數、或
ハ每週ノ〓授時間數トノ關係モアリ、今日
兒童ノ〓授ノ負擔過重ニナルコトモ考ヘナ
ケレバナラナイ、是ハ餘程愼重ニ考究ヲ要
スルコトデアル、委員外議員ノ述ベラレタ
ヤウニ、夏休ヲ利用シテ、講習ニ依リ一通
リノ讀ミ書キガ出來ルナラバ、望ミニ應ジ
テ行ッテ行ケバ宜イデハナイカ、今日直チニ
正科目トシテ行フコトハ非常ニ困難ヲ伴フ
コトデアラウ、又其ノ必要モナカラウト云
フノデ、是ハ採擇セズト決定致シマシタ、
次ハ第百七十六號、是ハ簡單ナモノデゴザ
イマシテ、總武本線兩國·錦絲町兩驛間ノ綠
町ニ停車場ヲ設ケテ吳レト云フノデゴザイ
マス、是ハ一方ヘハ僅カ零「キロ」五分、一方
ヘハ一「キロ」位ノ地點デアリマシテ、之ヲ
設置スルト致シマシテモ比較的多額ノ費用
ヲ要スルモノデアリマスルカラ、距離モ近
イシ經費ノ點カラ考へマシテ必要ナシト認
メマシテ、是ハ採擇セズト決定致シマシタ、
次ニ一ツ、是ハ當然請願ノ趣旨カラ申シマス
レバ採擇セラルベキモノデアリマスケレド
干、唯一點採擇出來ナイ點ガゴザイマシタ
ノデ、是ハ遺憾ナガラ未了トナッタモノガ一
ツゴザイマス、第百三十六號、地方〓品卸
賣市場法制定ノ件デゴザイマス、食品卸賣
市場ハ、國民生活必需品タル精選食品ノ合
理的配給機關トシテ、公正ナル價格ニ於テ
圓滑ナル需給ヲ遂行スル等、國民生活上重
大使命ヲ有スルニ拘ラズ、全國ニ雜然ト散
亂スル地方食品卸賣市場ヲ、無統制ノ儘放
任シテ置クコトハ、其ノ堅實ナル發達ヲ阻
害シ、生產竝ニ消費上不利不便ガ少クナイ
カラ、地方〓品卸賣市場法ヲ此ノ議會ニ提
出シテ貰ヒタイト云フノデアリマス、政府
ニ於キマシテモ、地方食品卸賣市場ハ國民
生活ノ安定、物價ノ調整或ハ國民ノ衞生上
カラ考ヘテモ非常ニ大切ナコトデアルカラ、
地方廳ヲシテ取締規則ヲ厲行シテ、其ノ改
善ヲ圖ッテ居ルガ、食品配給ノ圓滿或ハ價格
ノ公正ヲ期スル上カラ、食品卸賣市場法ノ
制定ニ付テハ、十分其ノ必要ヲ認メテ居ル
ノデアル、併シ中央卸賣市場トノ關係、其
ノ他種々〓究ヲ要スル點ガアッタノデ、今議
會ニ提案スルコトガ出來ナカッタ次第デア
ルト云フ答辯デアリマス、委員會ニ於キマ
シテモ、此ノ法律ヲ制定スルコトノ必要ヲ
認メ、此ノ請願ハ採擇スベキデアリマシタ
ガ、何分此ノ議會ニ提出セヨト云フコトデ
アリマスルノデ、遺憾ナガラ是ハ未了ニナッ
タ次第デゴザイマス、以上ヲ以チマシテ、
私ノ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、昭和
十二年度第一豫備金支出ノ件、日程第三、
昭和十二年度特別會計第一豫備金支出ノ
件、日程第四、昭和十二年度特別會計豫備
費支出ノ件、日程第五、昭和十三年度第二
豫備金支出ノ件、日程第六、昭和十三年度
特別會計第二豫備金支出ノ件、日程第七、
昭和十三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算
超過支出ノ件、承諾ヲ求ムル件、衆議院送
付會議、委員長報告、是等ノ六件ヲ一括
シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長白川子爵
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
昭和十二年度第一豫備金支出ノ件、昭
和十二年度特別會計第一豫備金支出ノ
件、昭和十二年度特別會計豫備費支出
ノ件、昭和十三年度第二豫備金支出ノ
件、昭和十三年度特別會計第二豫備金
支出ノ件、昭和十三年度特別會計豫備
金外ニ於テ豫算超過支出ノ件
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵白川資長君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=5
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006・白川資長
○子爵白川資長君 昭和十二年度第一豫備
金支出外五件、事後承諾ヲ求ムル件ニ付テ
御報〓ヲ致シマス、是ハ去ル二十三日委員
會ヲ開キマシテ、政府委員ノ御說明ヲ承リ
マシタノデゴザイマスガ、大體本會議ニ於
テ政府委員カラノ御說明ガゴザイマシタ通
リデゴザイマスルガ、唯簡單ニ重ネテ申上
ゲマスレバ、昭和十二年度ニ於テハ一般會
計第一豫備金ヨリ七百五十餘萬圓、特別會
計第一豫備金ヨリ千二百餘萬圓、同豫備費
ヨリ二千三百五十三萬餘圓、合計四千三百
十三萬餘圓ヲ支出ニナッタノデゴザイマス、
次ニ昭和十三年度ニ於テ一般會計第二豫備
金ヨリ五千六十餘萬圓、特別會計第二豫備
金ヨリ五百七十八萬餘圓、合計五千六百四
十三萬餘圓ノ支出デアリマス、右ハ何レモ
豫備金或ハ豫備費ノ豫算ノ範圍內ノ支出デ
アルノデアリマス、尙昭和十三年度特別會
計豫備金外ニ於テ其ノ餘剩金等ヲ以テ豫算
外ノ支出ヲ致シタモノハ三百十四萬餘圓
ゴザイマス、之ニ付キマシテ各委員ヨリ
色々御質問ガゴザイマシタ、詳細ノコトハ
速記錄ヲ御覽ヲ願ヒマス、討論ニ入リマシ
テ一委員ヨリ、每度ノコトデハアリマスル
ガ、斯クノ如キ支出ハ將來共尙十分ニ愼重
ニ注意ヲシテ戴キタイト云フ希望ガゴザイ
マシテ、全會一致承諾ヲ與ヘルト云フコト
ニ決議ヲ致シマシタ、右御報〓致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=6
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007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、是等ノ六件ヲ一括シテ採決ヲ致シ
そう、是等ノ六件ニ對シ、委員長ノ報告通
リ承諾ヲ與フルコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=7
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008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=8
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009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、輕金
屬製造事業法案、日程第九、帝國鑛業開發
株式會社法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報告、是等ノ二案ヲ一括
シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=9
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010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長橋本伯爵
輕金屬製造事業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
帝國鑛業開發株式會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵橋本實斐君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=10
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011・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今上程セラレマシタ
輕金屬製造事業法案外一件ノ特別委員會ニ
於ケル經過竝ニ結果ヲ申上ゲマス、委員會
ハ六囘ニ亙リ終始熱心ニ審議ラ繼續致シマ
シタ、昨二十四日午前討議ニ入リ、次イデ
採決ヲ致シマシテ、二案何レモ可決致シマ
シタ、審議ノ途中屢〓速記ヲ止メ、或ハ祕密
會ヲ開キ、又商工大臣ノ出席ヲモ得タノデ
アリマス、而シテ二案ノ中帝國鑛業株式會
社法案ハ衆議院ノ修正通リ、又輕金屬製造
事業法案ニハ希望決議ガ附イテ居リマス、
是ハ後刻申上ゲル通リデアリマス、是ヨリ
順次審議ノ模樣ヲ申上ゲマス、先ヅ都合ニ
依リマシテ帝國鑛業開發株式會社法案ヨリ
申上ゲマスレバ、其ノ立法ノ要旨ハ、銅、鉛、
亞鉛、錫等ノ重要鑛物ノ生產擴充ハ、現下時
局ニ鑑ミ國防上、產業上喫緊事デアリマスル
カラ、其ノ增產ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營
ムコトヲ目的トスル開發會社ヲ設立セシメ
マシテ、以テ旣存ノ各種ノ施設ト相俟チマシテ、
鑛物ノ增產ニ努メサセムトスルノデアリマ
ス、委員會ニ於ケル質疑ノ主ナルモノヲ申
上ゲマスレバ、先ヅ役員選任ニ關シマシテ
衆議院ノ加へタル修正、卽チ「鑛業ヲ······鑛
業ハ鑛山業デアリマス、「鑛業ヲ監督スル官廳
ノ官吏タリシ者ハ其ノ退職後五年間ハ原則
トシテ本會社ノ役員タリ得ザルコト」ト云フ
コトニ對シテ、政府ハ同意セラレルカト云
フ問題デアリマスルガ、政府ハ原案ヲ以テ
至當ト信ズルケレドモ、兩院ニ於テ修正ガ
可決セラレルニ於テハ適當考慮スル旨ノ答
辯ガアリマシタ、次ハ本會社ノ事業地域ハ
朝鮮臺灣等ノ外地ニモ及ブカト云フ點デア
リマスルガ、政府ハ法文ノ解釋上ハ外地ヲ
除外シテハ居リマセヌケレドモ、運用上
ノ實際方針トシテハ、差當リ事業地域ヲ內
地ニ限リ、追テ外地ノ問題ニ付考慮致サム
トスルト云フコトデアリマス、次ハ重要鑛
物ノ增產ヲ促ス方策トシテ、鑛物ノ建値ノ
引上ゲヲ考慮スルカト云フ點デアリマスル
ガ、之ニ對シマシテ政府ハ、建値ノ引上ガ
增產ニ或程度有效デアルコトハ之ヲ認ムル
ケレドモ、實行ニ當リマシテハ物價政策ノ
立場ヨリ、將又建値ノ引上ト增產トヲ直接
相牽聯セシムルコトニ對シテハ萬全ノ用
意ヲ要スル點カラ致シマシテ、幾多考慮ス
ベキモノガアルト云フ答デアリマシタ、次
ニ重要鑛產物ノ爲ニ、本法案ノ如キ別個ノ
會社ヲ新タニ設置スルト云フコトハ、其ノ
必要ガ何レニ在リヤ、昨年設立セラレタ日
本產金振興株式會社ヲ改組充實スルコトニ
依ッテ、十分其ノ目的ヲ達セラレルモノト思
フガドウデアルカ、之ニ對シマシテ政府ハ、
日本產金會社ヲ改組擴充シテ、金以外ノ各
種重要鑛物ノ增產ニ當ラシムルコトハ、產
金會社ニ過重ノ負擔ヲ課シテ、却テ重要鑛
產上良好ノ結果ヲ望ミ難イ、又產金會社本
來ノ產金事業ノ支障トモナル虞ガアル尙
二會社竝ビ存スルト致シマシテモ、各〓其
ノ事業ノ目的及經營方針ヲ異ニスルカラシ
テ、相剋摩擦ヲ生ズルガ如キコトハナイ、
斯ウ云フ御答辯デアリマシタ、終リニ、今
日我ガ國ニ於ケル技術者不足ノ現狀ヨリシ
テ、本會社事業經營上必要ナル人員ヲ能ク
充足スルコトガ出來ルカ、斯ウ云フ質問ニ
對シマシテ政府ハ、之ニ對シテハ極力善處
シテ、人員ノ充足ニ努ムル積リデアル、尙
又工業技術ノ進步促成ノ爲ニ、一大綜合機
關ヲ設置スルノ意思ハナイカ、斯ウ云フ問
ニ對シマシテ、政府ト致シマシテ愼重〓究
スベキモノガアルト、斯ウ云フ答辯デアリ
マシタ、次ニ輕金屬製造事業法案ニ付テ申
上ゲマスレバ、此ノ立案ノ趣旨ハ「アルミ
ニウム」、「マグネシウム」等ハ航空機等ノ
機材ト致シマシテ、缺クベカラザル金屬ナ
ルニ拘ラズ、之ガ製造事業ハ我ガ國ニ於テ
ハ著シク立遲レテ居リマシタノデ、其ノ擴
充ト確立トガ刻下ノ急務デアル、之ガ爲ニ
ハ輕金屬製造事業ヲ從來ノ如ク自由企業ト
シテ放任セズ、之ヲ許可事業ト致シ、政府
ニ於テ保護助成ヲ加へ、指導監督ヲ行ヒ、
需給ヲ圓滿ニシ、價格ノ適正ヲ圖ルト云フ
コトガ本法案ノ立法ノ趣旨デアリマス、特
別委員會ニ於ケル問答ノ對象トナリマシタ
モノヲ綜合シテ申上ゲマスレバ、日本輕金
屬會社設立認可ニ至ル迄ノ事情ニ關シテハ
世上一部ニ彼此ノ噂ガアル、ソレハ兎モ角
トシテ今囘此ノ法案ガ成立シタル曉ニハ、右
ノ日本輕金屬會社ハ厚キ保護ノ下ニ、旣存ノ
國產原料ヲ使用スル企業ヲ壓迫スルノ結果ト
ナルノデハナイカ、更ハニ國際貸借ノ關係ニ於
テハ、今日ノ時局ハ最早生產費ナドヲ云々ス
ル時期ハ旣ニ過ギテ居ル、巨額ノ國帑ヲ費
シテサヘ國內產金ニ努ムル時代デハナイカ、
一粒ノ金ノ外國流出サヘモ惜マルベキ今日
ニ於テ、「アルミニウム」生產擴充ノ爲トハ
言ヘ、當局ガ今囘主トシテ外國原料ヲ使用
スル會社ノ充實計畫ヲ圖ラルヽノハ矛盾デ
ハナイカ、況ヤ我ガ國內ニハ「アルミニウ
〓原料ハ相當ニ存在スルノデハナイカ、
又輕金屬工業ノ技術モ我ガ國ニ於テ相當見
ルベキモノガアル、今一ト息助長指導ヲ與
ヘレバ、立派ニ外國ノ此ノ種工業ニ匹敵シ
得ルニ至ルコトト考ヘラレルガト云フヤウ
ナ議論ガ、本委員會ヲ通ジテ幾多ノ委員ヨ
リ繰返シテ發セラレタ疑問デアリマシタ、
是等ノ問題ニ對シマシテ政府當局ハ、現下
事變ニ際シテ「アルミニウム」製造額ノ不足
ハ誠ニ痛感セラルヽ、卽チ何ヲ措イテモ短
時日ニ所要ノ數量ノ獲得ヲ圖ラネバナラヌ、
時恰モ日本輕金屬會社ノ企業目論見ガ出來
上ッタノデアル、之ヲ助成育成スルノ外ニ、臨
機ニ多量ノ輕金屬ヲ得ルノ途ガナイノデア
ル、世上ノ噂ノ如キ六何等カノ誤解デアル、
旣設會社ニ於テモ今日デハ、漸次新設會社
ノ事情ヲ次第ニ諒解シテ來タヤウデアル、
日本輕金ノ設立ニ依リ、旣設會社ガ壓迫ヲ
蒙ルガ如キコトハナイト信ズル、又新設會
社ガ主トシテ外國原料ヲ使用スルコトハ極
メテ短時日ニ多量ノ生產高ヲ目論ム、誠
已ムヲ得ザル臨機ノ處置ト致シテ仕方ガナ
イノデアル、之ニ依ッテ當初ヨリノ國產原料
使用ノ企業ノ保護助成ノ根本方針ハ少シモ
變更ハ致サナイ、現ニ昭和十四年度ノ豫算
ニ於テモ、國產輕金屬工業ノ保護助成費ト
シテ三十五萬圓ヲ計上シ、昭和十八年度迄
ニハ百八十萬圓ニ上ル豫算デアル、更ニ言
ヘバ國產原料使用企業モ、輸入原料工業ニ
比シ待遇上差等ヲ設ケヌ積リデアルトノ答
辯ガゴザイマシタ、尙又或委員ヨリ、商工
省ニ於ケル技術陣ノ涸渴ガ、抑ミ今囘ノ如
キ認識不足ナル新會社ノ設立ヲ生ミ、將又
旣設企業ノ事業擴張、資材供給、認可ノ遲
延ヲ結果スルノデアル、蓋シ商工省ハ從來
監督行政ヲ主トシテ行ヒ來ッタノニ、近頃ハ
時局ノ影響ニ依リ、新タニ實際的ノ仕事ヲ
扱ハザルヲ得ザルニ至リ、是等ヲ判斷スベ
キ能力アル技術陣ノ缺乏ニ惱ム次第デアル、
當局ハ此ノ點ニ關シ如何ニ感ゼラルヽカト
云フ質問ニ對シマシテ、當局ハ、最近技術
者ノ不足ハ之ヲ認メルケレドモ、漸次其ノ
充實ニ努力シテ、又其ノ成果ヲ見ツヽアル、
仰セニ付キテハ篤ト注意ヲ致スト云フ答辯
デゴザイマシタ、又本法制定後ト雖モ、國
產原料使用工業保護ノ方針ハ維持セラレタ
イ、兎モ角立法ノ精神ハ、法制定當時ハ明
瞭デアルケレドモ、之ガ運用ノ時ヲ經レバ
漸次其ノ立法當時ノ精神ガ緩和變更セラルヽ
ヲ從來ノ常トス、此ノ弊ハ特ニ下級技術
者ニ於テ甚ダシイ、當局ハ如何ニ考ヘラレ
ルヤ、之ニ對シマシテ政府トシテハ、仰セ
ノ點ハ御尤デアル、國產原料使用工業ノ保
護助長ノ方針ハ不變デアル、國產原料企業
ガ確實ナル計畫ニ依リ出願スル以上ハ、將
來ト雖モ之ヲ許可スル方針デアル、尙技術
官ノ問題ニ對シマシテハ、能ク其ノ心得ニ
付テ、御希望ニ副フヤウニ努力スル、斯ウ
云フコトデアリマシタ、斯クテ質疑ヲ打切
リ委員會ノ討議ニ付シマシタル處、一委員
ヨリ二案贊成ノ意見ノ開陳ガゴザイマシタ、
他ノ委員ヨリ輕金屬製造事業法案ニ對シマ
シテハ、希望決議ヲ附シタキ旨ノ動議ガ出
マシテ、多クノ委員ヨリ贊成ヲ表明セラレ、又
之ニ反對ノ意見モアッタノデアリマス、反對ノ
御意見ハ少數ノ御意見デアリマスカラ御紹介
致シマスルガ、決議案ノ趣旨ニハ反對デハナ
イケレドモ、國產原料ヲ將來モ使用スルト
云フコトニ付テハ、政府ハ再三言明シテ
居ルカラ、寧ロ決議案ノ如キハ附ケナイ方
ガ宜シイト云フ少數者ノ意見デアリマシ
ク、採決致シマシタル處、輕金屬製造事業
法案ハ政府原案通リ、又帝國鑛業開發株式
會社法案ハ衆議院修正通リ、全會一致ヲ以
テ可決セラレマシタ、次ハ輕金屬製造事業
法案ニ對スル希望決議案ノ採決ヲ致シマシ
タル處、多數ノ贊成ヲ得テ可決セラレタ次
第デアリマス、只今之ヲ朗讀致シマス
輕金屬製造事業法案希望決議
生產擴充ノ資源ハ總テ之ヲ國內ニ需ムル
ヲ以テ本旨トス然ルニアルミニウム製產
擴充計畫ニ於テハ國內ニ其ノ資源ノ存在
スルニ拘ハラズ主トシテ之ヲ海外ニ依存
セントスルハ國策ニ順應セザルモノト認
ムルヲ以テ本案ノ實行ニ當リ政府ハ特ニ
此點ニ留意スベシ
以上ニ依リマシテ委員會ハ終了致シタノデ
アリマス、此ノ段報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 討論ノ通告ガゴ
ザイマス、長岡隆一郞君
〔長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=12
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013・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 本員ハ只今議題ト相成ッテ
居リマスル二個ノ法律案ニ對シ贊成ノ意ヲ
表スル者デアリマスルガ、二案ノ中輕金屬
事業法案ニ付キマシテハ、其ノ實施後ノ行
政ノ執行振リニ對シ多少杞憂スベキ點ガア
ルコトヲ感ズル者デゴザイマス、最初ニ御
斷リ致シテ置キマスルガ、本員ハ既設、新
設ノ事業會社ニ何等ノ關係ヲ持ッテ居リマ
セヌ、又本員ハ赤貧洗フガ如クニシテ關係
會社ノ株ヲ一株モ持ッテ居リマセヌ、又何人
ノ依賴ヲ受ケテ居リマセヌ、唯本員ハ平素
輕金屬工業ニ付テ異常ナル關心ヲ有スルガ
故ニ、之ニ對シテ〓究ヲ怠ラザル者デアリ
マス、本法律案ノ實施ニ依リ差當リ保護ヲ
受クルモノハ日本輕金屬株式會社デアリマ
ス、本會社ハ世間周知ノ如ク東京電燈、古
河「コンツェルン」、富士川電力トノ三者ノ
合作デアリマシテ、其ノ大規模生產ナルコ
ト、其ノ所要電力ノ大部分ヲ自家發電ニ依ツ
テ賄ヒ得ルコト等ニ付キマシテ優越性ヲ
持ッテ居ルモノデアリマスルガ、其ノ發表セ
ラレタル企業目論見書及企業豫算等ヲ見マ
スルト、多クノ疑問ヲ生ズル者デゴザイマ
ス、是ハ旣ニ新聞紙、雜誌等ニ於テ發表セ
ラレ、世間周知ノ事實デアリマスルカラ、
私カラ申上ゲテ一向差支ナイト思ヒマスル
ガ、本會社ニ於テ發表シタル企業目論見書
ニ依リマスルト、其ノ原料ハ「リオ」群島、
「ビンタン」島產「ボーキサイト」鑛ニ依ルモ
ノデアリマス、此ノ採掘權者「ニベム」會社ト
ノ東洋販賣權ニ關シ、又其ノ契約ニ付テ本
會社ト某會社トノ間ニ生ジタル爭ガアリマ
ス、又「ビンタン」等ニ於ケル「ボーキサイト」
ノ埋藏量及其ノ品質、御承知ノ通リ「ボーキ
サイト」ハ天然埋藏物デアリマスルガ故
二、同一鑛區ニ於キマシテモ常ニ品質ノ變
化ガアリマス、又波木井發電所ヲ除ク富士
川ノ未開發水利使用工事竣工期日ニ關シ、或
ハ「アルミニウム」電解設備、氷晶石及「カー
ボン」ノ自給工場ノ設備費ニ關シ、或ハ發
送電設備ノ「キロ」當單價ニ對シ、或ハ電力
ヲ除ク「トン」當ノ建設勘定ニ關シ、。其ノ他
本員ハ幾多ノ疑問ヲ持ッテ居リマスルガ故
ニ、主トシテ各般ノ技術上ノ問題ニ亙リ、
詳シク數字ヲ擧ゲテ特別委員會ニ於テ質疑
致シタノデザイマス、不幸ニ致シマシテ政
府委員ヨリハ本員ノ滿足スベキ答辯ヲ得ル
コトガ出來マセヌデシタ、本員ハ日本輕
金屬株式會社ニ對シ何等ノ反感ヲ持ッテ居
ル者デハゴザイマセヌ、寧ロ輕金屬ノ需要
極メテ多キ今日ニ於テ、日本輕金屬株式會
社ガ商工當局ノ期待セラルヽガ如ク圓滿ニ
事業ヲ遂行セラレ、國策會社トシテ所期ノ
成績ヲ擧ゲラレルヤウ、衷心ヨリ希望ヲ致シ
テ居ル者デゴザイマス、政府ガ本會社ヲ保
護セラルヽコトニ付テハ、本員ハ何ノ異存
ヲ持ッテ居ル者デハゴザイマセヌ、併シナガ
ラ日本輕金屬ヲ保護スルニ急ナルノ餘リ旣
設五會社、卽チ日本電工、日本「アルミニ
ウム」、日滿「アルミニウム」、日本曹達、住
友「アルミニウム」ヲ顧ミザルト云フコトガ
萬一アリトセバ、是ハ斷ジテ許シ難キコト
デアリマス、國家ノ保護助成ナカリシ時代
ニ於テ、旣設五會社ノ拂ッタ犠牲ハ實ハ夥シ
イモノデアリマス、其ノ或モノハ數年間ニ
亙ル無配當ノ逆境ニ甘ンジテ、技術ノ向上
ニ精進ヲ致シテ居リマシタ、本員ハ昨年臺
灣南部ニ在リマスル某工場ヲ視察ニ參リ、
工場長ノ慘澹タル苦心談ヲ承リマシテ、實
ハ感服致シタコトガアル、富山縣ニ於ケル
某會社ノ某工場ニ於テ、今日世界ニ誇ル優
秀ナル「カーボン」ヲ造リ得ルヤウニ至ル迄
ニ、實ニ淚グマシイ程ノ苦心ガ潜メラレ
テ居ルノデアリマス、常識カラ申スナラバ
「アルミナ」若シクハ「アルミニウム」ノ增產
ヲ奬勵セラルヽナラバ、旣設會社ノ增產計
畫ヲ奬勵セラルヽコトガ當然ト考ヘマス、
過去ノ貴重ナル經驗ト技術トヲ利用セラル
ルコトハ、是ハ當然過ギル程當然ト思ヒマ
ス、商工當局ハ旣設會社ニ對シ增產ヲ慫慂
シタリト申シテ居ラレマスルケレドモ、現
ニ日本電工、日滿「アルミニウム」ノ增產計
畫ガ出願以來約半年當局ノ御手許ニ於テ握
リ潰サレタ事實ガゴザイマス、又日本輕金
屬ノ創立ニ當リマシテ、當局ハ既設五會社
ニ對シ日本輕金屬ニ出資シ、日本輕金屬ノ
株ヲ持ツヤウニ熱心ニ勸誘セラレタル歷然
タル事實ガゴザイマス、旣設會社ト致シマ
シテハ、海ノモノトモ山ノモノトモ分ラナイ
日本輕金屬株式會社······「アルミニウム」製
造ニ付テハ殆ド經驗ヲ有セズ、僅カニ日本
「アルミニウム」會社ヨリ讓受ケタル「ドイ
ツ」人技師ヲ賴リトスル日本輕金屬株式會
社ニ出資スル經濟上ノ餘力アリト致シマス
ルナラバ、寧ロ既設會社ニ於テ過去ノ經驗
ト技術トヲ利用シ、增產計畫ヲナサシムベ
キガ當然デアル、此ノ點ニ於テモ政府ノ御
考慮ヲ促スベキ幾多ノ理由ガアルト存ジマ
ス、本案ニ於テ租稅ノ免除、土地收用法ノ
適用等ニ付キマシテ、幾多ノ恩惠ヲ與ヘラ
レルコトニ付キマシテハ、當業者ハ感謝
致シテ居リマセウ、併シナガラ本法案實施
ノ爲ニ許可、認可事項ハ著シク增加シテ參
リ、當局ガ斯業ニ干渉セラルヽ權限ハ益〓ゝ
强大ト相成ッテ參ルノデアリマス、本員ハ
旣設五會社ノミナラズ、新設ノ東洋a
ミニウム」、東洋金屬、朝鮮窒素、朝鮮理〓
金屬等ノ諸會社ニ對シ、又日滿「ブロックL
ニ屬スル滿洲輕金屬ニ對シテモ、又目下國
產原料ヲ以テ「アルミナ」若シクハ「アルミ
ニウム」ヲ製造セムトシ又ハ製造シツツア
ル日東化學工業、國產輕銀工業、淺田化學
工業、大阪窯業「セメント」等ノ諸會社ニ對
シテモ、一視同仁ノ態度ヲ以テ臨マレムコ
トヲ希望致シマス、國產原料ニ依ルティ
ミナ」若シクハ「アルミニウム」ヲ製造スル
事業ニ對シテハ、國家非常ノ場合ニ於ケル
關係ヲ考慮致シマシテ、「ギリシヤ」デアル
トカ、「ヂョホール」デアルトカ、或ハ蘭領
「インド」デアルトカ、國外原料ニ依存スル
製造工業ニ對スルヨリハ、寧ロ一層之ヲ保
護助成スル必要アリト信ズルニ拘ラズ、當
局ノ方針ハ全ク是ト逆行スルヤウニ思ハレ
マス、當局ノ配付サレマシタ日本っぽん
ミニウム」工業組合定款、是ハ商工大臣ノ
御認可ヲ經テ出來タ工業組合デアリマス、
其ノ定款ヲ見マスルト、第三條ニ於テ「本組
合ノ地區ハ東京府、大阪府、神奈川縣、長
野縣、富山縣及愛媛縣トス」トアリマシテ、
巧ミニ地域的ニ國產原料ヲ以テ「アルミナ」
若シクハ「アルミニウム」ヲ製造スル者ヲ殆
ド全部除外シテ居ラレル、同第五條ニ於テ
「本組合ハ地區內ニ於テ本社又ハ工場ヲ有シ
「アルミナ」ヲ原料トシテ「アルミニウム」ノ
製鍊ヲ業トスル者及「ボーキサイト」ヲ原料
トシテ「アルミニウム」製鍊用「アルミナ」ノ
製造ヲ業トスル者ヲ以テ之ヲ組織ス」ト、斯ウ
規定シテアリマシテ、原料的ニモ巧妙ニ國
產原料ヲ以テ「アルミナ」ヲ製造スル業者ヲ
除外シテ居ラレルノデアリマス、其ノ結果
同三十六條ノ規定卽チ「本組合員ハ組合員ノ
使用スル「フィルター·クロース」ヲ委託ニ
依リ購入シ之ヲ供給ス」トアリマスルガ故
ニ、國產原料ニ依リ「アルミナ」ヲ製造スル
當業者ハ、製造工程ニ於テ絕對必要ナル「フィ
ルター·クロース」ヲ得ルコトニ非常ナ
ル困難ヲ感ジテ居ルノデアリマス、私ハ何
ガ故ニ國產原料ヲ使用スル當業者ヲオイヂ
メニナルカ、ドウシテモ了解出來マセヌ、本
員ノ知ル範圍內ニ於テモ、國產原料ヲ使用
スル業者トシテ、岩手縣黑澤尻ニ於テ岩手
粘土ヲ原料トシテ「アルミニウム」ヲ製造ス
ル會社アリ、沖繩縣大東島ニ於テ燐酸礬土
鑛ヲ使用シテ「アルミニウム」ヲ製造スル會
社アリ、兵庫縣ニ於テ朝鮮玉埋山ノ硫酸礬
土ヲ原料トシテ「アルミナ」ヲ現ニ製造シツ
ツアル會社アリ、大阪府ニ於テハ北支ノ長
城粘土ヲ原料トシテ「アルミナ」ヲ製造セム
トスルモノガアリマス、又滿洲ニ於テハ礬
土頁岩ヲ材料トシテ、「アミニウム」ヲ製造
セムトスルモノガアリマス、是等ニ對シテ
ハ國防上ノ見地ヨリ、又國產獎勵ノ意味合
ニ於テ、當局ニ於テハ指導奬勵ヲ爲サルベ
キ筋合ト信ジマスガ、事實ハ全ク然ラズ、
某々會社ニ於テ製造工程上當然必要ナル資
料ノ供給ヲ、當局ニ於テ阻止シテ居ラレル
事實ガアリマス、一例ヲ擧グレバ某會社ノ
製造工程ニ於テ缺クベカラザル「ブリュー·
アスペスト」ノ供給ヲ遮ッテ居ル歷然タル事
實ガアル、苟モ電解トハ何デアルカ、苛性
曹達トハ如何ニシテ造ラレルカ、硫酸曹達
ハドウシテ出來ルカ、卽チ輕金屬工業ノイ
ロハヲ知ッテ居ル者ナラバ「ブリュー·アス
ペスト」ガ或工程ニ於テ如何ニ缺クベカラ
ザルモノデアルカハ常識的ニ了解出來ルノ
デアリマス、今日ノ現況ニ於キマシテハ「ホ
ワイト·アスペスト」デハ到底駄目デス、
當局者ハ恰モ鷄ニ餌ヲ與ヘズシテ卵ヲ產メ
ト命令シテ居ラレルヤウナモノデアリマス、
當局者、ロヲ開ケバ國產原料ニ依ルづかし
ミニウム」ハ技術上足ラザル所ガアルト言
ハレマス、然レドモ今日國產原料ニ依ル「ア
ルミナ」ヲ以テ「ジェラルミン」用ノ무,
ミニウム」ヲ造リ得ルノミナラズ、歐米製
品ニ比シ、其ノ性能ノ優秀ナルコトハ、過
日·······本部ニ於テ開催セラレタル技
術者會議ニ於テ認定セラレタル事實デアリ
マス、又當局者ハ國產原料ニ依ル製品ハ
「ボーキサイト」ニ依ル製品ニ比シ、採算上
不利益デアルト辯明致サレテ居リマスルガ、
當業者ガ採算ノ引合ハナイ事業ヲ企ルト云
フコトハ常識上是ハ想像致サレマセヌ
本員ハ當局ガ、何ガ故ニ國產原料ニ依ル製
造業者ヲ御壓迫ニナルノカ、如何致シマシ
テモ理解ガ出來マセヌ、本員ハ本法ガ公平
ニ施行セラレルコトヲ希望シ、又二三ノ財
閥ノ便宜ヲ圖ルモノナリト云フ世上ノ誤解
ヲ一掃シ、旣設新設ノ各會社ニ對シ、當局
ニ於テ一視同仁ノ態度ヲ執ラレ、特ニ國產
原料ヲ使用スル者ニ對シテハ、商工當局ニ
於テ白眼視的ノ態度ヲ執ラレルコトナク、
寧ロ保護助成ノ態度ニ出デラレルヤウ本員
ノ希望ヲ開陳致シマシテ、本案ニ贊成スル
者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 子爵井上匡四郞
君
〔子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=14
-
015・井上匡四郎
○子爵井上匡四郞君 私モ只今議題トナッテ
居リマスル輕金屬製造事業法案ニ付テ贊成
ヲ致ス者デアリマス、只今長岡君カラ詳細
ニ御述ニナリマシテ、私ハ之ニ蛇足ヲ加ヘ
ル必要ガナイヤウデアリマスガ、唯私ハ今
迄ノ私ノ經歷ニ於キマシテ、偶然ニ此ノ「ア
ルミニウム」事業ト云フモノト接觸ヲスル
機會ガアッタト云フコトト、又私ガ多少トモ斯
ウ云フ事業ヲ理解シ得ル知識ヲ持ッテ居ル
ト云フ二ツノ點カラ、結論ニ於テハ只今長
岡君ノ述ベラレマシタ所ト全ク同一デアリ
マス、贊成ハ致シマスルガ、私ハ已ムヲ得
ズ贊成致ス者デアルノデアリマシテ、其ノ
見地カラ長岡君ト違ッタ角度カラ此ノ問題
ニ付テノ意見ヲ具陳シテ見タイト考ヘマス、
現在ノ政府ノ施設ノ中デ最モ重要ナル點ハ、
生產擴充及國際收支ノ改善デアルト云フコ
トハ申ス迄モナイノデアリマス、而シテ此
ノ兩者ハ互ニ密接ニ相關聯シテ居ルト考ヘ
ルノデアリマス、卽チ生產擴充ニ於キマシ
テ、其ノ器具、機械、施設、殊ニ原料ガ之
ヲ國外ニ求ムル場合ニ於キマシテハ、直チ
ニ國際收支ノ上ニ影響ヲ來スノデアリマス、
サウデアリマスカラ生產擴充ト云フモノハ、
萬已ムヲ得ザル場合ノ外總テ之ヲ國內ノ資
源ニ求メルト云フコトハ、是ハ申ス迄モナ
イコトデアリマス
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
乞
本年ノ政府ノ提案セラレマシタ種々ノ施設
ノ中ニモ、此ノ趣旨ニ依リマシテ非常ナ不
利益ヲ忍ンデモ、國內ノ資源ニ依ッテ生產擴
充ヲシテ行カウト云フ案ガ數多提出サレテ
居ルノデアリマス、デ是等ハ申ス迄モナク
自由經濟主義ノ見地カラ之ヲ見マスト云フ
ト到底容レルコトノ出來ナイ案デアリマ
スルガ、現在ノ非常時ニ於キマシテハ、是
ハ最モ時機ニ順應シタ案ト考ヘマシテ我々
ハ協賛ヲ與ヘテ來テ居ルノデアリマス、然
ルニ玆ニ問題トナッテ居リマス所ノ此ノ輕金
屬製造事業法案ヲ見マスルト云フト、前ニ
述ベマシタ所ノ趣旨ト甚ダ逆行シタ觀念ノ
上ニ立案セラレテ居ルト云フコトヲ、
私ハ甚ダ遺憾ニ考ヘルノデアリマス、
デ之ニ付テハ少シ日本ノ「アルミニウ
ム」製造業ト云フモノノ現狀ニ付テハ
最モ短簡ニ玆ニ御話致ス必要ガアルト考ヘ
マス、我ガ國デ「アルミニウム」ヲ製造シナ
ケレバナラヌト云フ考ハ古イ考デアリマシ
テ、幾多ノ學者ガ幾多ノ考案ヲ凝シマシテ
特許ヲ得、又幾多ノ資本家ガ其ノ特許ニ依ッ
テ相當ノ金ヲ今迄ニ費サレテ居ルノデアリ
さく、併シナガラ其ノ多クノ計畫ハ皆成功
致サナカッタノデアリマス、然ルニ數年前、
理化學〓究所ノ理學博士ノ鈴木庸生氏ガ礬
土頁岩ヲ以チマシテ乾式ニ依ッテ「アルミナ」
ヲ製造スルト云フ特許ヲ得マシタ、私ハ鈴
木博士ガ友人デアリ、又色々ノ關係カラシ
マシテ、如何ニ鈴木博士ガ非常ナ缺乏ノ中ニ、
此ノ困難ナル新シイ方法ヲ育テ上ゲルト云
フコトニ付テ、如何ナル苦心ヲセラレダカ
ト云フコトハ、私ハ之ヲ目擊シテ能ク承知
シテ居ルノデアリマス、其ノ當時ニ於キマ
シテハマダ「アルミニウム」ガ自由ニ輸入スル
コトノ出來ル時代デアッタノデアリマス、サ
ウデアリマスカラ現在トハ其ノ事情ガ非常
ニ違ヒマシテ、是ガ相當經濟的ニ成立シナ
ケレバナラヌト云フ、ソコニ工業上ノ最モ困
難ナル問題ヲ前ニシテ、此ノ〓究ヲ續ケラ
レタノデアリマス、而シテ大體「アルミニ
ウム」一「トン」千圓以下デ製造シ得ルト云
フ、鈴木博士ハ確信ヲ述べラレマシテ、其
ノ後此ノ方法ヲ實際ニ採用致シマシタモノ
ガ、現在ノ日滿「アルミニウム」株式會社ト
云フモノデアリマス、此ノ鈴木法ト云フモ
ノハ、勿論日滿「アルミニウム」會社ガ此ノ
方法ヲ採用致シマシタ後ニ、會社ニ於テ幾
多ノ改良、改善ガ加ヘラレタデアリマセウ、
而シテ此ノ事變前ニ其ノ會社ハ立派ニ成立
致シテ、相當ノ利益ヲ得テ居ッタ、會社トシ
テ成功致シタノデアリマス、一方又玆ニ、
然ラバ外國ノ「アルミニウム」製造ト云フコ
トハ、ドウ云フ方法ニシテ行ハレテ居ルカ
ト申シマスト、是ハ皆歐米何レノ國モ「ボー
キサイト」ト云フ鑛石ヲ原料ト致シマシ
テ、而シテ皆同一ノ方法ニ依ッテ「アルミニ
ウム」ヲ製造シテ居ルノデアリマス、勿論
「アルミニウム」ニ趣味ヲ持チマス者ハ、國
內ハ勿論、國外ニ於テ、日本ノ近クニ於テ
「ボーキサイト」ガナイカト云フコトハ、長
ク之ヲ求メタノデアリマス、而シテ唯一ツ
玆ニ東洋ニ於テ存在ヲ認メラレマシタモノ
ハ、只今長岡君カラ述ベラレマシタ蘭領印
度ノ「ビンタン」島ノ「ボーキサイト」デアリ
ママ、此ノ「ボーキサイト」ノ存在ハ相當古
クカラ我々ハ知ッテ居ッタノデアリマス、サ
ウデアリマスカラ色々ノ會社ガ人ヲ派遣シ
マシテ、何トカ此ノ「ボーキサイト」ト關係
ヲ付ケタイト云フコトハ、屢〓試ミラレタノ
デアリマスガ、何レモ成功サレナカッタノ
デアリマス、私ガ千九百三十年ニ國際聯盟
ノ日本代表トシテ「ジュネーヴ」ニ行キマス
途次、「ベルリン」デ萬國動力會議ト云フモ
ノガアリマシテ、ソレニ出席致シマシタガ、
是ハ詳細ニ御話スルト面白イ挿話デアリマ
スガ、御遠慮致シテ、最モ短簡ニ御話致シ
マスガ、ソコニ蘭領印度ノ殖產局長ト云フ
ヤウナ人ガ出席シテ居リマシテ、偶然ニモ
向フカラシテ私ニ、アノ「ビンタン」ノゴ
キサイト」ハ、「オランダ」政府ガアノ原
料ヲ以テ「アルミニウム」工業ヲ起サウカド
ウカト云フコトガ長ク間題ニナッテ居リマ
シタカラ、日本カラ色々ノ人ガ見エタガ、
自分ハ之ニ許可スルコトハ出來ナカッタノ
デアル、自分ハ今職ヲヤメテ歸國ノ途中ニ
アルガ、自分ガ蘭領ヲ出發スル前ニ、旣
本國ニ於テハアノ原料ヲ以テ「アルミニウ
24工業ヲ起サナイト云フコトガ決定シタ
ノデアルカラ、早ク日本デアノ原料ヲ取ッタ
ラ宜カラウト云フ話ヲ私ニ向フカラシタノ
デアリマス、ソレハ「ベルリン」ノ話デアッ
タノデアリマスガ、其ノ後數箇月シマシテ、
私ハ聯盟ヲ終ッテ「パリー」ニ行キマシテ、
偶然ニ其ノ當時ノ三菱商事ノ支店長ニ其ノ
事ヲ話シマシタ、私ガ歸國致スヨリ早ク日
本ニ其ノ報ガ傳ハッテ居リマシテ、私ガ日本
ニ歸リマスヤ否ヤ古河、三菱系、卽チ今ノ
日本「アルミニウム」系デアリマスカガ、其
ノ方ガ是モ私ノ知人デアリマスガ、早速私
ノ所ニ見エマシテ、自分ノ會社ヲアチラニ
紹介シテ吳レ、人ヲ遣ルカラ紹介シテ吳レ
ト云フヤウナ色々ノ依賴ヲ受ケタノデアリ
マン、話ヲ簡單ニ申上ゲマシタカラ續キガ
惡イカトモ思ヒマスガ、其ノ間ニ其ノど
ンタン」ノ鑛山ト云フモノハ「オランダ」ノ
政府カラ或「オランダ」ノ會社ガ引受ケマシ
テ、其ノ會社カラ私ノ所ニ亦色々ナ通信ヲ
シテ來テ居ッタノデアリマス、私ハソレキリ
此ノ問題ニハ携ハラナカッタノデアリマス、
ソレデ其ノ後ニ澤山ノ日本ノ「アルミニウ
ム」會社ガ、此ノ「ビンタン」鑛石ヲ以テ成
功スル會社ガ出來テ參リマシテ、日本구
ルミニウム」會社初メ「ビンタン」ノ鑛石ヲ
使ッテ居ラレルノデアリマス、私ハ此ノ日
本「アルミニウム」會社ト云フモノガ、〓
ンタン」ノ鑛石ノ販賣權ヲ今デモ持ッテ居ラ
レルモノノ如ク漠然ト考ヘテ居ッタノデア
リマスガ、此ノ特別委員會ニ於テ、又只今
長岡君カラ御話ニナリマシタ如ク、此ノ
「ビンタン」ノ鑛石ノ販賣權ト云フモノニ付
テモ、國內ニ於テマダ色々經緯ガアル
ト云フヤウナコトヲ聞キマシテ、之ニハ
色々相當ノ理由ガアルコトトハ存ズルノデ
アリマスルガ、此ノ非常時ニ於テ、斯ウ
云フ兎ニ角重要ナ原料ニ付テ、國內ニ於テ
ノ經緯ガアルト云フヤウナコトハ私ハ第三
者ト致シマシテ如何ニモ是モ亦遺憾ニ思フ
一ツノ點デアルノデアリマス、ソコデ現在
日本ニアリマス所ノ「アルミニウム」會社
ノ、實際ニ「アルミニウム」ヲ造ッテ居ル會
社ハ、原料トシテハ鈴木博士ノ法ヲ用ヒテ
居リマス所ノ日滿「アルミニウム」會社、是
ハ日滿ト申シマスト、如何ニモ滿洲ニ關係
アルヤウデアリマスガ、初メハ滿洲ノ礬土
頁岩ヲ使フト云フ考カラ、是モ鈴木博士ガ
滿洲ニ居ラレテ、滿洲ノコトヲ知ッテ居ラレ
タト云フコトカラ滿洲ノ礬土頁岩ヲ考ヘタ
ノデアッテ、決シテ滿洲デナケレバ礬土頁岩
ガナイト云フ意味ハ少シモナイノデアリマ
ス、此ノ日滿「アルミニウム」會社ト云フモ
ノ卽チ是ハ國產ノ原料ヲ使フ會社、ソレト
住友系ノ「アルミニウム」會社ガ國產ノ原料
ヲ使ッテ居ルノデアリマス、併シ先程長岡君
ノ述ベラレマシタ三ツノ大キナ「アルミニ
ウム」會社ト云フモノハ、此ノ外國產ノ、
蘭領產ノ「ビンタン·ボーキサイト」ヲ使ッテ
居ルノデアリマス、玆ニ大キナ問題ガ起ル
ノデアリマシテ、日本產ノ鑛石ヲ使ッテ作リ
マシタ所ノ「アルミニウム」ト云フモノト、
蘭領ノ、外國產ノ原料ヲ日本ニ持ッテ來テ
造リマシタ「アルミニウム」ト云フモノト、
其ノ出來マシタ「アルミニウム」ノ純粹度··
化學性分ハ全ク同一ノモノデアッテモ、其ノ
間ニ優劣ガアルカドウカト云フ問題デアル
ノデアリマス、此ノ問題ハ特別委員會デ到頭
決定セズニ終ッタ問題デアリマス、政府ハ日
本原料ヲ使ッタモノモ、外國原料ヲ使ッタモノ
モ、同ジ純度ノモノガ出來マス、ソコ迄ハ
能ク承認サレテ居ルノデアリマス、併シナ
ガラドウモ日本ノ原料ヲ使ッテ出來マシタ
「アルミニウム」ハ、外國ノ原料ニ使ッテ出
來タ「アルミニウム」ト同ジ純度デアッテモ、
之ヲ加工スルノニドウモ工合ガ惡イヤウデ
アルト云フ、漠然タル答辯デアルノデアリ
マス、私ノ手許ニアリマスル所ノ材料ハ是
ハ公表ヲ許シマセヌガ、他ノ意味ニ於キマ
シテ、外國デ出來マシタ所ノ「アルミニウ
ム」ト、日本デ以テ原料如何ニ拘ラズ出來タ
日本產ノ「アルミニウム」トノ間ニ優劣アリ
ヤト云フ、詳細ナル試驗ヲシタモノヲ前ニ
有シテ居ルノデアリマス、ソレカラ間接ニ、
日本デ出來マシタ「アルミニウム」ノ間ニ
ハ、優劣ガ私ハ見出シ得ナイノデアリマス、
私カラ考ヘマスト云フト、兎ニ角日本ノ原
料ヲ使ッテ製造スル所ノ「アルミニウム」事
業ト云フモノハ、少クトモ其ノ程度ニ迄ハ、
化學的ニハ同ジデアルト云フコトヲ政府ガ
認メル程度ニ迄ハ發達シテ居ルノデアリマ
スカラ、多少トモ加工上ニ都合ノ惡イ點
ガアルト致シマシテモ、此ノ非常時ノ場合
ニ於テ、其ノ位ナ不便ハドウカシテ是ハ克
服シナケレバナラヌトシテ、事業家ヲ奬勵
シ激勵シテ、サウシテ生產擴充ニハ日本ノ
材料ヲ使ッテヤルベシト云フコトヲ、擴充者
ニ强要シテコソ、初メテ國策ニ順應スル政
策デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、況ヤ
此ノ出來ル所ノ、日本ノ原料ヲ以テ造ル所
ノ「アルミニウム」ハ、私等ノ見ル所ニ於テ
ハ、何ニモ外國ノ原料ヲ持ッテ來テ出來タ
所ノ「アルミニウム」ト優劣ガナイ、或場合
ニ於テハ、是ハ專門的ニナリマスルガ、特
殊ノ目的ニハ却テ日本ノ原料ヲ使ッタモノ
ノ方ガ良イト云フ場合サヘアルノデアリマ
ス、政府ニ之ヲ質シマスルト云フト、生產
擴充ヲ急速ニシナケレバナラナイ、ソレデ
外國ノ鑛石ニ依存スルノ已ムヲ得ナカッタ
ノデアルト云フ御答辯モアルノデアリマス、
併シナガラ此ノ生產擴充ノ可能ナリヤ不能
ナリヤト云フコトハ、是ハ現在ニ於キマシ
テハ、長岡君モ既ニ「アルミナ」ノ材料ニ付テ
ハ縷々述ベラレマシタカラ、私ハ玆ニ之ヲ重
複シテ申上ゲルコトヲ避ケマスガ、礬土頁岩
ト云ヒ、其ノ他岩手縣、靑森縣邊リニ最近發
見サレタ所ノ材料ト云フモノハ、私モ責任ヲ
以テ之ヲ申上ゲ兼ネマスガ、併シナガラ政府
モ同ジヤウニ申サレテ居リマス、一億萬「ト
ン」ニ達スルモノガアルヤウデアルト云フ
ヤウナコトモ申サレテ居ルノデアリマスガ、
兎ニ角相當ノ材料ハ求メレバアリ得ルト考
ヘルノデアリマス、擴充ノ可、不能ト云フ
モノハ、是ハ材料ニアラズシテ電力デアルノデ
アリマス、サウデアリマスカラ今度出來マ
ス會社ハ日本輕金株式會社ト申シマスカ、
サウ云フ莫大ナル二億萬圓モ將來使ハナケ
レバナラヌト云フヤウナ、大キナ「アルミニ
ウム」製造會社ガ出來ルノデアリマシテ、其
ノ會社ハサウ云フ電力、······電源ヲ持ッテ居
ルノデアリマスカラ、サウ云フ會社ノ出願
ガアリマシタナラバ、オ前ハ此ノ電力ヲ以
テ日本內地ニアル原料ヲ以テ、內地ニ其ノ
方法······是ハ色々ノ方法ガアリマス······ニ
依ッテ「アルミニウム」ヲ製造スベキデアル
ト云フコトヲ慫慂スベキデアルト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、急速ニ充實ヲ圖ルカラ、
外國ノ資源ニ依ラナケレバナラヌト云フコ
トノ政府ノ御說明モ、私ハ之ヲ承認スルコ
トハ出來ナイノデアリマス、「アルミニウム」
ヲ造ルノニ絕對ニ「ボーキサイト」デナケレ
バナラヌト云フ觀念ハ、是ハ私ハ少シ政府
ハ達觀シテ戴キタイト考ヘルノデアリマス、
數年前當時ノ鞍山製鐵所ガ殆ド失敗ニ終リ
マシタ場合ニ、私ハ其ノ時ニ、貧鑛ノ選鑛
ノ必要ヲ唱ヘテ、當時議員諸君ニモ小サナ
書キモノヲ御配リシタト記憶シテ居リマス
ガ、其ノ當時ニ於テハ貧鑛ヲ選鑛スルナド
ト云フコトハ、殆ド世ノ中ハ、或ハ嘲弄ヲ
以テ之ヲ迎ヘタノデアリマス、併シナガラ
現在ニ於テハ資源ヲ誇ル「アメリカ」ニ於テ
モ、貧鑛ノ利用ト云フコトガ盛ニ現在ニ於
テハ〓究サレテ居ルノデアリマス、ソレガ
唯二十年間ノ歷史デアリマス、世界モ此ノ
「ボーキサイト」ノ缺乏ト云フコトハ、近キ
將來ニ起ル問題デアルト云フコトハ私ハ玆
ニ確言スルコトガ出來ルノデアリマス、而
シテ「アルミニウム」ノ資源ト云フモノハ、
將來ハ必ズ此ノ硅酸鹽ニ······「ボーキサイ
トレト云フモノハ水酸化物デアリマスガ、
硅酸鹽ニ其ノ資源ヲ求メナケレバナラヌ時
ガ必ズ近キ將來ニ於テ來ルト云フコトハ、
當然ナコトデアルノデアリマシテ、此ノ鈴
木君ノ方法ト云フモノハ、卽チ硅酸鹽ノ形
ニアル「アルミニウム」ヲ利用シヨウト云フ
考デアルノデアッテ、從ッテ其ノ利用範圍ト
云フモノハ社ハ非常ニ廣イト考ヘルノデア
リマス、少シ議論ニ亙リマスガ、我々人類
ハ將來ハ「アルミニウム」ニ依存シナケレバ
ナラヌ强イ天然性ヲ私ハ持ッテ居ルト考ヘ
ルノデアリマス、地球ノ地殼ヲ構成シテ居
リマス所ノ元素ヲ考ヘマスト云フト酸素
ト硅素トヲ除キマシテハ、是ハ酸素ト硅
素ガ著シイ部分デアリマスガ、其ノ二ツノ元
素ヲ除キマシタ後ニ於キマシテハ、鐵ヨリ
モ遙カ「アルミニウム」ノ量ノ方ガ多イノデ
アリマス、是ハ學者ニ依ッテ其ノ數字ハ違ヒ
マスガ、大體ニ申シマスレバ、地殻ヲ構成
シテ居ル所ノ鐵ノ量ト云フモノハ四·五〇
「パーセント」カラ五·〇三「パーセント」ノ
間ニ學者ノ說ガ動イテ居リマス、之ニ對シ
テ「アルミニウム」ハ七·八五カラ八·〇五ト
云フ位ノ間ニ、學者ニ依ッテ數ハ違ヒマス
ガ、大體倍ニ近イ「アルミニウム」ヲ我々ノ
地球ノ地殼ト云フモノハ持ッテ居ルノデア
リマス、此ノ大部分ト云フモノハ硅酸鹽ノ
形ニ於テ存在シテ居ルノデアッテ、吾人ノ將
來ハ必ズ、イツノ日カ非常ニ「アルミニウ
ム」ト云フ金屬ニ依存シタ生活ヲシナケレ
バナラヌト云フ時代ガ、將來ニ來ルト云フ
コトハ自然ノ然ラシムル所デアルト私ハ考
ヘルノデアリマス、サウデアリマスカラ私
ハ政府ハ少シ大勢ヲ達觀スル所ノ明ヲ有セ
ラレテ、所謂事業界ヲ指導スルダケノ卓見
ヲ有シ、事業者流ノ宣傳ニ惑ハサルヽコト
ナク、超然タルダケノ識見ヲ有セラレタイ
ト私ハ考ヘルノデアリマス、是ガ私ガ常ニ
恆ニ政府部內ノ機構ノ改正ノ必要ヲ叫ブ所
以デアルノデアリマシテ、此ノ今囘ノ案ノ
如キハ、其ノ局ニ當ラレル者ガ所謂技術ノ
眞髓ニ觸レズシテ、唯安全ヲ糊塗セムトシ
タ、生產擴充ノ本旨ニ副ハザル所ノ、而シ
テ徒ニ累ヲ··將來永年ニ亙ッテ國際收支
ノ上ニ累ヲ及サムトスル案デアルト考ヘマ
シテ、私ハ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマ
ス、併シナガラ幸ヒ此ノ案ガ總テ實行セラ
レマスル迄ニハ尙二三年ノ歲月ヲ要スルコ
トト考ヘルノデアリマシテ、ドウカ政府ハ此
ノ間ノ事情ヲ能ク御洞察下サイマシテ、ド
ウカ國產資源ヲ利用シテ日本ノ「アルミニ
ウム」充實計畫ヲ遂行セラレルヤウニ、再
考猛省アラムコトヲ希望致シマシテ、私、
此ノ案ニ贅成致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=15
-
016・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ニテ討論
ハ終リマシタ、是ヨリ兩案ノ採決ヲ致シマス、
兩案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=16
-
017・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=17
-
018・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=18
-
019・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=19
-
020・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=20
-
021・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=21
-
022・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=22
-
023・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=23
-
024・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=24
-
025・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=25
-
026・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=26
-
027・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=27
-
028・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第三
讀會ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ハゴサイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=28
-
029・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=29
-
030・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 去ル七日ノ
會議ニ於テ、小林嘉平治君ノ爲サレタ質疑
ニ對スル文部大臣ノ答辯ガ留保セラレテ居
リマシタガ、此ノ際答辯ノ發言ヲ求メラレ
マシタカラ、之ヲ許可致シマス、小柳文部
政務次官
〔政府委員小柳牧衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=30
-
031・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞)君) 去ル七日、小林
サンカラ文部大臣ニ對スル御質問ニ對シ、
此ノ際私ヨリ御答ヘ致シタイト存ジマス、
御質問ノ要旨ハ高等小學、殊ニ農山村ノ高
等小學ニ於テ、勤勞第一主義及鍛鍊主義ニ
依ッテ〓育ノ方針ヲ改善スルノ必要アルデハ
ナイカト云フヤウニ拜承致シマシタ、凡ソ
國民〓育ノ本旨ニ基キマシテ、時代ノ要求
ニ從ヒ、高等小學ノ〓育ヲ生活ニ卽シ、地
方ノ狀況ニ依リマシテ、勤勞主義及鍛鍊主
義ニ依リマスルコトハ、當局ト致シマシテ
モ其ノ必要ヲ認メテ居ルノデアリマス、〓
育審議會ニ於キマシテ國民學校ヲ立案サル
ル際ニ、此ノ趣旨ニ基カレテ居ルノデアリ
マシテ、當局ト致シマシテハ是等ノ御趣旨
ヲ顧ミマシテ、善處致シタイト存ズルノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=31
-
032・小林嘉平治
○小林嘉平治君 只今ノ答辯ニ對シテ、少
シ希望ヲ添ヘテ置キタイコトガアルノデス
ガ、此ノ席カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=32
-
033・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 質疑ナラバ
宜シウゴザイマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=33
-
034・小林嘉平治
○小林嘉平治君 質疑デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=34
-
035・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス、小林君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=35
-
036・小林嘉平治
○小林嘉平治君 此ノ席カラ御許シヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=36
-
037・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 宜シウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=37
-
038・小林嘉平治
○小林嘉平治君 去ル七日ノ私ノ質問ハ、
時間ノ關係上、其ノ要ヲ盡シテ居ラヌ點ガ
アッタノデアリマスガ、ニモ拘リマセズ、文
部政務次官ニ於カレマシテハ、大臣ニ代ッテ
只今ノ御答辯ヲ下サレタコトハ、私ノ深ク
喜ビト致ス所デアリマス、然ルニ只今ノヤ
ウナ御趣旨ニ基ク高等小學ノ制度ノ改善ト
云フコトハ、今暫クノ時期ヲ俟タネバナラ
ヌト心得ルノデアリマス、先般私ガ希望シ
テ置イタヤウニ、時局ニ卽應シテ、銃後ノ
護リヲ爲スベキ小學校ノ高等科ノ制度ヲ、
勤勞主義ニ依ル身心鍛鍊ト云フ大イナル意
味ニ於テ、今日相當ノ生產確保ノ爲ニ働キヲ
爲シテ居ルノデ、私共感謝ヲ致シテ居ルノデ
アルガ、此ノ際一層徹底シテ、小學校ノ校長
ニ於テ、小學校ノ校長ノ自由裁量ノ下ニ、其
ノ自村ノ村長ナリ、農會長ト連繫シテ、銃後
ノ護リ、產業確保ニ萬遺憾ナキ所ノ連絡協
調ヲ保ツヤウニ、政府ニ於テハ、文部省ニ
於テハ、地方當局ニ指示ヲシテ、私ノ申上
ゲタ希望ニ副フヤウニ、此ノ際適當ナル處
置ヲ講ゼラルヽ意思アリヤ如何、斯ウ云フ
コトヲ御伺ヒ致シマス
〔政府委員小柳牧衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=38
-
039・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 御答ヲ致シマス、
時局ノ必要ニ顧ミマシテ、高等小學ヲ、勤
勞主義、鍛鍊主義ニ改善スルノ必要ニ付キ
マシテハ、先程御答ヘ致シタ通リデアリマ
シテ、國民學校ノ問題ガ成ルベク早ク實現
致シタイト存ジテ居ルノデアリマスルケレ
ドモ、此ノ問題ト別ニ、現在ノ高等小學ニ
付キマシテモ此ノ主義ヲ採リ入レマシテ、
萬全ノ策ヲ講ジタイト存ズルノデアリマス、
左樣御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=39
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040・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 休憩ヲ致シ
やっ、午後一時三十分ヨリ開會致シマス
午前十一時五十七分休憩
午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=40
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041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 午前ニ引續キ會
議ヲ開キマス、日程第十、映畫法案、日程第
十一、著作權ニ關スル仲介業務ニ關スル法
律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ
續委員長報告、是等ノ兩案ヲ一括シテ議
題トナスコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=41
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042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長岩倉公爵
映畫法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長公爵岩倉具榮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
著作權ニ關スル仲介業務ニ關スル法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長公爵岩倉具榮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔公爵岩倉具榮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=42
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043・岩倉具榮
○公爵岩倉具榮君 只今議題トナリマシタ
映畫法案及著作權ニ關スル仲介業務ニ關ス
ル法律案ノ特別委員會ニ於ケル審議ノ經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、先ヅ二法案
ノ要旨ヲ簡單ニ說明致シマス、第一ノ映畫
法案ハ、輓近映畫ガ國民娛樂トシテ最モ主
要ナル地位ヲ占ムルト共ニ、〓化、宣傳、
報道等ノ方面ニ於テモ顯著ナル機能ヲ發揮
シ、更ニ國民藝術トシテ新タナル分野ヲ開
拓シ、其ノ國家的任務ハ愈、重要性ヲ加ヘテ
來マシタノニ顧ミマシテ、映畫ノ質的向上
ヲ促シ、映畫事業ノ健全ナル發達ヲ圖リ、
以テ國民文化ノ進展ニ資スルガ爲ニ、先ヅ
映畫製作業及映畫配給業ハ之ヲ許可事業ト
シ、映畫製作從事者ノ登錄制度ヲ實施スル
外、映畫ノ製作、配給、上映ノ各部門ニ亙ッ
テ、必要ナル制限或ハ命令ヲ爲シ得ルコト
トシ、又本法施行ニ當ッテ重要事項ニ關ス
ル、諮問機關トシテ、映畫委員會ヲ設置スル
等ノ規定ヲ設ケムトスルノデアリマス、第
二ノ著作權ニ關スル仲介業務ニ關スル法律
案ハ、文化ノ發達竝ニ普及ヲ期スル爲ニハ、
著作者ノ權利ヲ尊重スルト共ニ、又著作物
ノ利用ヲ圓滑ナラシメナケレバナラヌノデ
アリマスガ、從來我ガ國ニ於テハ、著作者
ノ權利ヲ尊重スルノ觀念ハ未ダ尙十分ナラ
ズ、又海外ノ著作物ヲ利用スル上ニモ、地
理的關係等ニ依リマシテ常ニ不便ヲ感ジテ
居ル實情ニ鑑ミマシテ、著作物利用ニ關
スル堅實ナル仲介機關ノ發達ヲ促シ、以テ
著作者ノ利益ヲ擁護スルト共ニ、著作物利
用ノ簡易化ヲ圖ル爲、先ヅ著作權ニ關スル
仲介業務ニ許可制ヲ設ケ、其ノ業務ノ執行
ニ對シ適正ナル監督ヲ加ヘヨウトスルノデ
アリマス、以上ノ法律案ニ對シマシテ、本
委員會ハ三月二十日、二十二日、二十三日
ノ三日間、午前午後ニ亙ッテ會議ヲ開キマ
シテ、委員各位ヨリ各方面ニ亙ッテ仔細ニ、
政府當局ト質疑應答ヲ重ネマシタ、更ニ此
ノ間、法案ノ趣旨ヲ十分檢討スル爲ニ懇談
ヲ致シマシテ、委員各位ト政府トノ間ニ熱
心ナル意見ノ交換ガ行ハレマシタ、本審議
ノ中ニ於テ一部ハ速記ヲ中止シタ所モゴザ
イマスガ、審議ノ詳細ニ付テハ速記錄ニ讓ル
コトト致シマシテ、主要ナル點ニ付キ簡單
ニ申上ゲマス、先ヅ映〓法案ニ於キマシテ
ハ、第一ニ映畫ニ關スル行政機構ニ關シテ、
現在ノ映畫ニ關スル行政ハ極メテ消極的デ
アリ、小規模デアッテ、各方面ニ於テ分散的
ニ行ハレテ居リ、且ソレ等ノ間ニ密接ナル
連絡ガ取レテ居ナイノハ誠ニ遺憾デアル、
映畫ニ關スル行政機構ヲ充實强化スル爲、
各省ヨリ獨立セル映〓局ヲ新設シ、內閣ニ
直屬セシムル考ハナイカト云フ質問ニ對シ
マシテ、總理大臣ヨリ、映畫ニ關シ綜合的
ニ〓究シ、保護監督スルコトノ必要ハ十分
認メテ居ル、各方面ニ於テ連絡ヲ取ツテ成
ルベク不都合ノナイヤウニシタイ、唯今日
之ヲ綜合シテ一ツノ機關ヲ設ケルカドウカ
ハ、尙〓究ヲ要スルカラ確答ハ出來ナイ
ガ、御意見ノ點ハ十分檢討シタイトノ答辯
ガアリマシタ、第二ニ本法案ニハ取締トカ
制裁トカノ消極的方面ダケシカ規定サレテ
居ナイガ、奬勵トカ助長トカノ積極的方面
ハ如何ニシテ行フ考カト云フ質問ニ對シマ
シテ、政府當局ヨリ、本法ニ於テハ取敢ズ法
律ヲ以テ規定セネバナラヌ事項ヲ定メタノ
デアッテ、是ノミニ依ッテ直チニ映畫ノ質的
向上ヲ見ルコトガ出來ルトハ考ヘテ居ナ
イ、本法ノ目的ヲ達成スル爲ニハ積極的ノ
保護、助成施設ヲ各方面ニ亙ッテ講ズル必
要ノアルコトハ勿論デアルカラ、各關係方
面ト連絡ヲ取リ、本法制定ノ趣旨ニ合致ス
ルヤウニ努メル考デアルトノ答辯ガアリマ
シタ、第三ハ從業者ノ素質及〓養ノ問題
デアリマスガ、映畫俳優ノ映畫ヲ通ジテ社
會ニ及ス影響ハ極メテ大キク、其ノ言葉、
動作ガ若イ靑年子女ニ直チニ反映スルノデ
アルカラ、彼等ノ〓養施設ニ付テハ特ニ十
分ナル考究ヲ要スルト考ヘルガ、政府ノ方
針如何ト云フ質疑三部)マシテ、當局ヨ
リ、映畫ノ發達ハ何分ニモ最近ノコトデア
リ、マダ經濟的餘力ガ十分デナイ、又〓師
ニ該當スル者ヲ得難イコト等ガ原因ニナッ
テ、從來比較的〓養ノ程度ガ十分デナカッタ
ノデアル、此ノ養成施設ニ付テハ十分〓究
シ、又經費等ノ關係モアルカラ、之ガ緩急
ヲ圖リ順次善處シテ行キタイ、尙登錄制度
ノ運用ニ當ッテモ此ノ點ヲ十分ニ考慮スル
トノ答辯デアリマシタ、第四ハ、年少者ニ
對スル問題デアリマス、映畫ガ學校〓育及
社會〓育ニ利用セラレル機會ガ年ト共ニ增
加シテ來ルノハ、映畫ノ機能ト人ノ本性ト
ノ關係カラ考ヘテ自然ノ趨勢デアッテ、映畫
ヲ〓養ニ利用スルコトハ極メテ效果ガ多イ
ノデアッテ映畫ハ今日ニ於テハ單ナル嗜
好品デナク、寧ロ國民ニ對シテ生活必需品
トモナッテ居ルノデアル、然ルニ映畫法ノ
制定ノ結果、兒童ガ殆ド映畫館へ行クコト
ガ出來ナクナルノデ、兒童カラ映畫ヲ見ル
機會ヲ奪フコトニナリ、之ニ對シテハ何カ
補ヒヲセネバナラヌト思フガ、小學校等ニ
於テ講堂映畫、〓育映畫ヲ盛ニスル等、之
ニ關シテ當局ノ考ヘテ居ル所ハ如何、又兒
童向ノ〓育映畫ガ極メテ乏シイノデアル
ガ、之ニ對シテ如何ニ考ヘルカ、更ニ一般
ニ〓育ノ方面ニ於テハ、十六「ミリ」不
燃性「フイルム」ノ映畫ガ用ヒラレテ居ル
ガ、此ノ十六「ミリ」不燃性「フイルム」
ハ殆ド國產品ガ無イノデアルガ、最近事
變ノ爲、爲替管理ノ關係カラ殆ド輸入出來
ナクナッタノデ、兒童向〓育用映畫ガ益〓少
クナッテ來ルガ、其ノ點ニ關スル當局ノ所
見如何等ノ質問ニ對シマシテ、文部大臣ヨ
リ、映畫ハ〓育上效果ノ大キイモノデアル
ガ、一面方法ヲ誤ルト弊害モ亦少クナイノ
デアル、殊ニ思想判斷ノ十分デナイ兒童ニ
對シテハ一段ノ注意ガ必要デアル、兒童ヨ
リ此ノ方面ノ知識ヲ奪フコトニ付テハ十分
考究シテ善處スル考デアル、講堂映畫、〓
育映畫ヲ利用スルコトハ、〓育上極メテ
重要デアルト考ヘルノデ、巡囘映畫ヲ十分
〓育ノ方面ニ利用スル考デアルトノ答辯ガ
アリマシタ、尙政府委員ヨリ年少者ニ對ス
ル制限ハ所謂劇映畫ノミニ行フ筈デアッテ、
其ノ他ノ「ニュース」映畫、文化映畫ニ對シ
テハ一般ニ制限ヲ行ハナイ、本法施行後ハ、
制限ノ結果年少者ヲ遮斷スルコトハ本法ノ
本旨トスル所デナイカラ、規定ノ運用上善
處シタイ、又〓育映畫ニ關シテハ映畫製作
者興行者等ト十分懇談シテ、年少者向ノ
健全ナル映畫ノ出現ヲ奬勵シ、尙興行場ノ
零圍氣ノ向上刷新ニ付テハ一般業者ノ自覺
自肅ヲ促スヤウ努力シタイ、更ニ十六「ミ
リ」生「フイルム」ノ輸入量ノ減少ハ遺憾デ
アルガ、爲替管理ノ關係上資金ノ許ス限リ
特ニ考慮シタイトノ答辯ガアリマシタ、第
五ニ、外國映畫ノ輸入及檢閱ニ關スル質問
ニ對シマシテ、政府當局ヨリ、事變發生以
來初メノ間ハ主トシテ金ノ流出ノ關係カラ、
外國映畫ノ輸入ヲ絕對ニ禁止スル方針デアッ
タガ、對外關係其ノ他ノ事情ニ依ッテ、最近
デハ條件附デ僅カデハアルガ輸入ヲ認メテ
居ル、外國映畫ガ社會ニ及ス影響ハ少クナ
イノデ、一面輸入前ニ於テ業者ト豫メ協議
懇談ヲ遂ゲ、一面檢閱ヲ特ニ峻嚴ニ行フ方
針デアルトノ答辯ガアリマシタ、第六ニ、
輸入映畫ガ我ガ國ノ風俗及公安ニ及ス影響
ニ關スル質問ニ對シマシテ、政府當局ヨリ
風俗ノ點ニ付テハ、從來十分檢閱ヲ峻嚴ニ
行ッテ居ル積リデアルガ、今後トモ萬全ヲ期
シタイ、又公安ノ點ニ付テハ政府ニ於テ外
國映畫ノ製作者ノ種類及其ノ映畫製作ノ意
圖ニ關シテモ十分〓究シテ居ルガ、映畫ノ
公安ニ及ス所ハ極メテ重大デアルカラ、此
ノ點今後トモ一層注意スルトノ答辯ガアリ
マシタ、更ニ映畫ニ依ル我ガ國ノ藝術ノ紹
介及國情ノ宣傳等ニ關スル質問ニ對シマシ
テ、政府當局ヨリ、此ノ點ハ將來トモ十分
留意スル考デアル、尙最近日獨伊文化協定
ニ依ル映畫ノ交換ノ途ガ講ゼラレルヤウニ
ナッタガ、其ノ他ノ方面ニ對シテモ、我ガ國
情ヲ紹介スルコトニ關シ、十分努力シタイ
トノ答辯ガアリマシタ、次ニ著作權ニ關ス
ル仲介業務ニ關スル法律案ニ付テ主ナル質
疑應答ヲ申上ゲマス、第一ニ、仲介業務ノ
許可ノ方針ニ關スル質問ニ對シマシテ、政
府當局ヨリ、仲介業務ハ公益ニ關スル事柄
デアルカラ、團體ニ限リ許可スルコトトシ、
大體音樂、文藝ノ二大部門別ニ一團體ヲ新
設スルコトトシ、出來レバ公益法人トシタ
イ、業務ノ實際ノ方法ハ外國ノ例ニ傚ヒ、
信託ノ方法ヲ取ルコトガ多イダラウト考へ
ルガ、專ラ著作物ノ保護、利用ノ圓滑ヲ目
的トシ、料金ハ我ガ國ノ國情ニ卽シタモノ
ニ定メ、漸進主義ヲ取ッテ行キタイトノ答辯
ガアリマシタ、第二ニ、第一條ニ基ク勅令
ニ依ッテ定メヨウトスル著作物ノ範圍如何ト
云フ質問ニ對シマシテ、當局ヨリ是ハ大體
文藝ニ關スル著作物、日本音樂ニ關スル著
作物デ、更ニ具體的ニ言ヘバ小說、脚本、
樂曲ヲ有スル歌詞、寫調セラレタル演奏歌
唱ヲ含ム考デアルトノ答辯ガアリマシタ、
第三ニ、本法ノ施行ノ結果却テ著作者ニ不
利益ニナラナイカトノ質疑ニ對シマシテ、
我ガ國ノ實情ニ應ジタ料金ニ定メルコトニ
ナルカラ、却テ利益デアラウト考ヘルトノ
答辯ガアリマシタ、尙我ガ國ガ「ベルヌ」條約
ニ加盟シテ居ル爲ニ、外國ノ著作物ヲ我ガ
國ニ紹介スルニ當リ、多大ノ費用ヲ支拂ハ
ネバナラヌコト、其ノ他種々ノ不便ガアル
カラ、寧ロ「ベルヌ」條約ヲ脫退シタ方ガ宜
イト云フ意見モアリ、又明治三十九年ノ勅
令デ、我ガ國ト「アメリカ」トノ間ニ結バレタ
ヤウナ條約ヲ、各國トノ間ニ結ブ考ハナイ
カト云フ質疑ニ對シマシテ、當局ヨリ、專
門委員會ニ於テ日米間ノ條約ト「ベルヌ」條
約トノ關係等ニ付キ、單一ノ條約ニシヨウ
トシテ〓究サレテ居ルトノ答辯ガアリマシ
タ、以上ハ質疑應答ノ主ナルモノデアリマ
スガ、詳細ノ點ハ速記錄ニ讓リマス、質疑
應答ヲ終リマシテ直チニ討論ニ移リマシタ
ガ、一委員ヨリ劃期的ノ文化立法タル映畫
法案ガ、取締ト制裁ニ偏スルノハ遺憾デア
ルカラ、映畫委員會ヲ十分ニ活用シテ、映
畫ノ向上ト發達ヲ期スルヤウ圖ラレタイ
トノ希望ヲ述べラレ、又一委員ヨリ映畫國
策確立ノ爲、政府ハ映畫局ノ如キモノヲ設
ヶ、特ニ〓育方面ニ留意シテ日本國民全體
ト共ニ映畫〓育ニ邁進スベキデアルトノ意
見ヲ開陳セラレ、更ニ一委員ヨリモ輸出映
畫ニ付テハ十分〓究シ、日本ノ眞ノ姿ヲ映
畫藝術ニ依ッテ諸外國ニ知ラシメヨトノ希
望ヲ述ベテ、贊成ノ意ヲ表セラレタノデア
リマス、終ッテ兩案ノ採決ニ入リマシテ、全
會一致、原案通リ可決致シマシタ、以上御
報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=43
-
044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=44
-
045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=45
-
046・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=46
-
047・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=47
-
048・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
之.又発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=49
-
050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=50
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051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=51
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052・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=52
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053・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=53
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054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=54
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055・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=55
-
056・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=56
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057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=57
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058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十二、船
舶建造融資補給及損失補償法案、日程第十
三、海運組合法案、日程第十四、造船事業
法案、政府提出、貴族院送付、第一讀會ノ
續、委員長報告、是等ノ三案ヲ一括シテ議題
ト爲スコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=58
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059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス委員長後藤伯爵
船舶建造融資補給及損失補償法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵後藤藏
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
海運組合法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵後藤藏
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
造船事業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵後藤藏
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵後藤一藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=59
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060・後藤一藏
○伯爵後藤一藏君 只今議題トナリマシタ
船舶建造融資補給及損失補償法案、海運組
合法案及造船事業法案ノ三案ニ關スル特別
委員會ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲマス、委員會ハ去ル三月二十日ヨリ引續
キ昨日ニ至リマス迄、四囘ニ亙ッテ會議ヲ開
イタノデゴザイマス、是等三法案ノ趣旨ニ
付キマシテハ、曩ニ本議場ニ於キマシテ政
府當局ヨリ提案ノ理由ヲ述ベラレタル際ニ
說明ガアリマシタノデアリマスカラ、之ヲ
省略致シマスガ、主ナル點ニ付テ申上ゲタ
イト存ジマス、第一、船舶建造融資補給及
損失補償法案、是ハ船舶建造ニ對スル資金
ヲ低利ニ潤澤ニ供給スル目的ヲ以テ、之ガ
融資ヲナス金融機關ニ對シ、豫算ノ範圍內
ニ於テ利子ノ補給ヲナシ、又萬一損失ヲ生
ジタ場合ニハ、其ノ七割ヲ國ニ於テ補償セ
ムトスルモノデゴザイマス、第二、海運組
合法案、是ハ海運業ノ健全ナル發達ヲ圖ル
爲組合ヲ設立セシメ、必要ノ際ハ同業者ニ
對シ强制加入ヲナサシメ、又ハ組合ノ統制
ニ從ハシメムトスルモノデアリマス、第三、
造船事業法案、是ハ造船業ノ健全ナル發達
ヲ圖ル爲、造船業ヲ許可制トシ、或種ノ新
シキ試ミニ對シテ豫算ノ範圍內ニ於テ奬勵
金ヲ交付シ、或ハ又或場合ノ造船ニ對シテ
ハ、豫算ノ範圍內ニ於テ造船會社又ハ船舶
ノ註文主ニ對シ、助成金ヲ支給シ得ルコト
トシ、尙又造船組合ヲ設立シマシテ、必要
ニ應ジテ同業者ヲシテ組合ノ統制ニ從ハシ
メ、或ハ强制加入ヲナサシムルモノデアリ
そう、是等ノ三法案ハ相關聯シテ居リマシ
テ、我ガ國ノ最モ重要ナル產業デアル海運
事業ノ發達ヲ企圖スル劃期的ノ法律デアリ
マス、併シ三法案ガ成立致シマシテモ、其
ノ實行ニ付テハ現下ノ情勢ニ於テハ懸念サ
レル所ガ非常ニ多イノデ、遞信大臣ノ外、
商工、陸軍、拓務各大臣、對滿事務局總裁、
企畫院總裁及文部、厚生兩省當局ニモ委員
會ニ出席ヲ求メマシテ、熱心ナル質疑應答
ガ交サレタノデゴザイマス、此ノ三案ハ互
ニ關聯致シテ居ルモノガ多イノデゴザイマ
スカラ、玆ニ一括綜合シテ質問中ノ主ナル
モノヲ申上ゲマス、一、海運擴充ニ關スル
一般方針如何トノ間ニ對シマシテ、政府ハ、
生產擴充計畫ニ伴フ船腹ノ需要、海外航權
ノ擴張竝ニ國防上ノ見地等ヨリ計算シテ、
昭和十七年度末迄ニハ千「トン」以上ノ船舶
ヲ七百五十萬「トン」ヲ保有スルコトガ必要
ト考ヘル、卽チ十四年度以降三年間ニ二
百五十萬「トン」ヲ新造スルコトヲ目標トシ
テ居ル、右ニ付十六年末迄ノ所要資金總
額ハ九億二千萬圓ヲ豫定シ、之ニ要スル資
材ヲ準備シ、造船能力モ之ニ對應スルヤ
ウ施設ヲ擴張スル計畫デアル、又船舶ニ
乘組ムベキ船員ノ養成維持モ急務デアルノ
デ、遺憾ナキヲ期スル考デアル、尙將來ハ
海事行政機關ノ擴大强化ヲモ考ヘルトノ答
辯デゴザイマシタ、次ニ三箇年ノ間ニ二百
五十萬「トン」ヲ增加スルト云フモ、今日ノ造
船臺ノ數ヨリ見テ到底不可能ノヤウニ思ハ
レル、、又資材資金等モ今日ノ現狀ヨリ推算
シテ至難デハナイカト云フ問ニ對シマシテ、
政府ハ、決シテ容易ナコトトハ思ハナイケ
レドモ、生產力擴充計畫ハ內閣ニ於テ、各
方面ノ角度カラ考察檢討ヲシテ、是ダケハ
是非必要デアルト極メタモノデアリマシテ、
此ノ造船計畫モ其ノ計畫ノ一部ニ包含サレ
テ居ルノデアル、從ッテ之ヲ造ル資材モ調達ノ
出來ルヤウニ計畫セラレテ、物資動員計畫
ノ中ニ織込ンデアルトノ答デゴザイマシタ、
次ニ今日新造セラレル船舶ハ材料、特ニ鋼
鐵ノ異常ナル高價ノ爲ニ、外國船ニ比シテ
非常ニ高價デアル、斯樣チ高價ナル船ヲ多
ク造ッテモ、外國トノ競爭ニ堪ヘヌト思フガ、
船價引下ゲノ具體案ガ別ニアルノデアルカ
トノ問ニ對シテ、政府ハ、從來ノ經驗ニ依
レバ海運好況ノ時ハ造船ノ註文ガ殺到シ、
不況ノ時ハ至ッテ閑散ニナルノデ、造船所ノ
經營モ困難ニナル、ソレガ爲ニ自然ニ値段モ
高クナル、故ニ之ヲ平均ニ造船スルヤウニ致
シタイ、卽チ計畫造船トスレバ造船所モ割安
ニ引受ケ得ル譯デアル、併シ之ヲ實行スルニ
ハ二ツノ難點ガアル、其ノ一ツハ資金難デ
アル、卽チ不況ノ際ハ船主ニモ資金ガナク、
金融業者モ警戒シテ貸出ヲセヌノデアル、
ソレデ今囘造船ノ金融制度ヲ確立シテ、不
況ノ時ニモ造船資金ヲ得ルコトガ出來ルヤ
ウニシタ次第デアル、今一ツノ難點ハ海運
事業ハ好況ノ時ト不況ノ時トノ差ガ多大デ
アル、ソレ故ニ不況ノ時ニハ如何ニ廉價デ
出來テモ新タニ造船ヲスルコトハ損失ヲ增
加スルコトトナルノデ、新造ノ希望者ハナ
イ、ソレ故ニ今囘組合法ヲ設ケタノデアツ
テ、組合ノ力ニ依ッテ運賃ノ維持又ハ古船ノ
共同繫船ノ如キ方法ニ依ッテ、新造ノ途ヲ開
クコトガ出來ルコトニスル積リデアル、尙
命令航路使用船ノ新造ノ如キモ、時期ヲ考
ヘテ平準作用ニ都合ノ好イヤウニシテ、問
題ノ鋼材價格モ一定量ノ需要ガ確立スレバ
引下ゲラレル、又造船事業法中ニ規定シテ
アル所ノ規格ヲ定ムルコトニ依ッテ、標準船
型ヲ定メ、機械器具ノ規格統一ヲナス等ノ
方法ニ依ッテ大量生產ヲナシ、引下ゲニ便
ニスル等種々ノ方策ヲ講ズル積リデアル、
次ニ鋼材價格ハ更ニ具體的數字ヲ示セバ、
米國鋼材ハ日本著値段ガ一「トン」百八十圓
內外デアルノニ、我ガ造船用鋼材ハ二百五
十圓デアル、而シテ又一面ニ於テ海軍竝ニ
鐵道用材ハ百六十圓ナリト聞イテ居ルガ、
是等ノ差ハ如何ナモノデアルカ、百六十圓
ガ正當デアルナラバ二百五十圓ハ暴利ト言
ハナケレバナラナイ、船舶ガ增加スルト云
フコトガ國家ニ必要ナリトスレバ、其ノ所
要鋼材ノ價格モ十分引下ゲルノガ然ルベキ
コトト思フトノ問ニ對シマシテ、政府ハ、
外國產ノ品物ト國內產ノ品物トノ價格ノ差
ハ今日ノ現狀ニ於テ已ムヲ得ナイコトデア
ルコトハ御了承ノコトト思フ、國內產ニ大
キナ差ノアルノハ、海軍及鐵道用材デアッ
テ、是ハ長イ間ノ關係デアルカラ古イ契約
ノ延長トモ考ヘラレル、又需要平準ニモ依
ル點ガアルト考ヘラレルガ、船舶用材ニ付
テハ篤ト考慮スル積リデアルトノ答辯ガゴ
イマシタ、次ニ金融機關竝ニ貸出利息及補
給利子ニ付テノ質問ニ對シマシテ、政府ハ、
融資額ガ擴大スルニ付テ、銀行以外ニ信託
會社、保險會社ヨリモ貸出ヲスルコトニ考
慮シテ居ル、貸出利率ハ三分七厘ノ豫定デ、
補給ハ手數料トシテ一分ヲ支給シ、尙ソレ
ゾレノ金融機關ニ於ケル資金「コスト」ト三
分七厘トノ差ヲ加算スルノデアルトノ答デ
アリマシタ、次ニ船員思想ノ涵養ハ最モ重
要ナルコトデアッテ、船內ニ於テハ秩序ト云
フコトハ特ニ嚴守ヲ要スルコトデ、下剋上
ノ思想ヤ赤化思想ノ如キハ大ニ警戒ヲ要ス
ルコトト思フ、然ルニ船員ハ外國ノ港ニ於
テ不用意ノ間ニ赤化思想ニ引込マルヽ虞ガ
多分ニアル故、之ガ〓養ニ不斷ノ注意ヲ必
要トスル、近時產業報國聯盟ノ運動ガ開始
セラレ、其ノ唱ヘラレル所ノ要綱ハ、誠ニ
結構デアルガ、其ノ一部ニハ階級打破ノ思
想ガ浸潤シテ、資本ハ認メルガ資本家ハ認
メナイ等ノ考ヲ持ッテ居ル者モアルヤウニ
考ヘラレル、萬一左樣ナ考ヲ有スル者ガアッ
テ、船員ガ之ニ化セラレルヤウナコトガアッ
テハ誠ニ憂慮ニ堪ヘナイヤウニ考ヘルガ、
政府ノ考ハ如何トノ問ニ對シマシテ、政府
ハ、船員ガ外國ニ於テ惡思想ノ感化ヲ受ケ
ルコトニ付テハ十分注意シテ居リ、漸次改
善シツヽアルコトト考ヘル、產業報國聯盟
ハ皇國產業人タル主義ヲ以テ設立セラレ、
役員ニ於テモ達識具眼ノ士或ハ政府要路ノ
人々ガ參加シテ居ル、ソレ故ニ御示ノヤウ
ナ危險性ハナイト思フ、之ニ參加シテ居ル
海運會社ニ於テモ親和ヲ圖リ、待遇ノ如キ
ハ問題トセズ、上下意思疏通ノ機關ト認識
シテ居ル次第デアリ、海上ニ勤務シテ居ル
人々ハ皆皇國精神ヲ體シテ居リ、階級打破
ノ如キ考ハナイト信ジテ居ルガ、思想涵養
ニ付テハ一層留意スルトノ答ガゴザイマシ
ク、次ニ內外地海事行政ノ統一、延イテハ
滿洲、支那ノ海運トモ協調スル必要ガアル
ト思フガ如何トノ問ニ對シ、政府ヨリ、內
外地海軍行政統一ノ問題ハ多年ノ懸案デア
リ、極メテ重要ノコトデアルガ、法制上ノ一
元化ニハ相當ノ難關ガアルノデ、先ヅ法規
ニ付テ之ヲ同一ノモノトシ、運用上一元化
同樣ノ結果ヲ收メタイト考ヘテ居ル、朝鮮
ニ於テモ海運組合ヲ作ル考デアル、滿洲、
支那ノ海運トノ協調ニ付テハ十分ニ考慮ス
ルトノ答辯ガゴザイマシタ、次ニ船舶ノ增
加ト共ニ船員ノ需要ハ愈〓急デアルガ、旣
ニ今日ニ於テモ船員ヲ得ルノニ困難ヲ感ジ
テ居ル、船員補給ノ點ニ付テ文部省ト遞信
省トノ連絡ニ不十分ノ點ハナイカ、高級船
員無線技師ノ不足ニ對スル對策ハドウデ
アルカトノ問ニ對シマシテ、政府ハ、商船
學校ノ生徒ヲ增員スルコトニ付テハ目下ノ
急ノ間ニ合ハナイ、ソレ故ニ神戶高等商船
ニ別科ヲ設ケ、大阪ニ於ケル府立高等海員
學校ニ補助ヲ與ヘテ、高級船員ノ下級ノ者
百五十名ヲ本年度內ニ卒業セシメ、十五年
度ニ於テハ兩省連絡ヲ十分ニシテ、更ニ應
急對策ヲ講ズルコトトスル、現ニ乘船勤務
中ノ者デ、其ノ海技免狀ヨリ下級ノ任務ヲ
執ッテ居ル者ガ相當ナ數ニ上ッテ居ルカラ、
其ノ下級適任者ヲ增セバ大分都合ガ好クナ
ル見込デアル、無線技士養成增員ニ付テモ、
現在ノ電信學校生徒增員ノ外ニ、岡山商船
學校ガ普通船員ノ養成所トナル故、之ニ無
線〓習所ヲ併置シテ行キタイ考デアルトノ
答辯ガゴザイマシタ、以上ノ外委員會ニ於
キマシテ熱心ナル質疑應答ガアッタノデゴ
ザイマスルガ、詳細ハ速記錄ニ依リマシテ
御覽ヲ願ヒタイト思ヒマス、討論ニ入リ一
委員ヨリ、三法案ハ何レモ誠ニ結構ナルモ
ノデ贊成ヲ致ス者デアルガ、更ニ希望決議
ヲ附シテ、委員會ノ意ノアル所ヲ一層明確
ニ致シタイトノ發言ガゴザイマシタ、斯ク
テ採決ニ入リ、委員會ハ三法案トモ右希望
決議ヲ附シ可決セラルベキモノト決定致シ
マシタ、只今右希望決議案ヲ朗讀致シマス
希望決議
今囘ノ政府提出海事關係諸法案ハ內外ノ
情勢ニ鑑ミ帝國海運ノ健全ナル發達ヲ圖
ルガ爲メ喫緊ノ要務ナリト認ムルモ之レ
ガ實施ニ當リテ政府ハ左ノ諸項ニ關シ特
別ノ考慮ヲ拂フト共ニ、日、滿支間ニ
於ケル海運ノ調整ニ努メラレムコトヲ望
ム
內外地海事行政ノ統一ハ多年ノ懸案
ニシテ、之レガ解決ヲ爲スニ非ザレバ
本法案實施ニ際シテモ其效果ノ完璧ヲ
期シ難シ政府ハ海事行政ノ特性ニ鑑ミ
速ニ之レガ統一ヲ圖ラレタシ
二、政府ハ優秀船舶ノ廉價ナル供給ト建
造船ノ圓滿ナル運航ヲ可能ナラシムル爲
メ資材ノ配給造船設備ノ充實竝ニ船員
ノ補充ニ付キ最善ノ努力ヲ拂ヒ新船建
造計畫ノ遂行ニ萬遺憾ナキヲ期セラレ
タシ
三、船員ノ健全ナル思想ヲ涵養スルハ海
運事業ノ運營ニ付キ最モ緊要ト認ム、
政府ハ之レガ對策ニ關シ深甚ナル注意
ヲ怠ラザラムコトヲ望ム
以上ヲ以テ委員會ノ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=60
-
061・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ三案ノ採決ヲ致シマス、三案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=61
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062・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=62
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063・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=63
-
064・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=64
-
065・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=65
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066・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 異議ナイト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=66
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067・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=67
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068・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=68
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069・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=69
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070・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=70
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071・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=71
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072・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=72
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073・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀會
ヲ開キマス、三案全部、二讀會ノ決議通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=73
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074・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=74
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075・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十五、米
穀配給統制法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告、委員長伯爵酒
井忠正君
米穀配給統制法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵酒井忠正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵酒井忠正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=75
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076・酒井忠正
○伯爵酒井忠正君 只今上程ニナリマシタ
米穀配給統制法案ノ特別委員會ノ審議ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、法案ノ內
容ニ付キマシテハ旣ニ本會議ニ於キマシテ、
政府ヨリ說明ノアッタコトデアリマスカラシ
テ、之ヲ省略致シマス、特別委員會ハ三月
十九日ヨリ五日間ニ亙ッテ愼重審議ヲ重ネタ
ノデアリマスルガ、其ノ間委員諸君ヨリ熱心
ナル質疑ヲ試ミラレタノデアリマス、其ノ質
疑應答ニ付テ大要ヲ御紹介致シマス、第一ハ、
政府ハ時局下ニ於ケル食糧問題ニ對シテ、
其ノ重要性ニ鑑ミテ、米穀ノ增產ヲ企圖シ
テ居ル、之ガ爲ニハ米價ヲ成ルベク高クシ、
又一方ニ於テハ農村ニ於ケル肥料其ノ他生
產資材ノ價格ヲ成ルベク引下ゲル、サウ云
フヤウナコトニ依ッテ適當ナ價格政策ヲ實
施スル必要ガアルト思フガ、ドウデアルカ、
又米價ニ付キマシテ、現在ノ最高價格ニ付
再檢討ヲスル必要ガアルト思フケレドモ、
之ニ付テドウ考ヘルカ、之ニ對シマシテ政
府ハ、時局下ニ於テハ物價ノ昂騰ハ極力之
ヲ抑制シテ居ルノデアッテ、現今低物價政策
ヲ執ッテ居ルノデアル、米價ニ付テモ之ヲ引
上ゲルト云フコトハ相當困難ナ事情ニ在ル
ガ、米穀增產ニ支障ノ無イヤウニ、肥料其
ノ他ノ生產資材ノ價格ノ引下ト云フコトニ
付テハ、極力處置ヲ講ジテ居ル次第デアル、
又現在ノ最高價格ニ付テハ、物價其ノ他米
穀ノ需給狀況ニ著シイ變動ガアッタ場合ニ
ハ、之ヲ改定スルコトガ出來ルケレドモ、
今日ノ事情ニ於テハ之ヲ再檢討ヲスル立場
ニハナッテ居ラナイ、唯最高價格ノ定メ方
ニ付テハ、今後ニ於テ愼重ニ定メテ、農村
ニ對シテモ亦消費者側ニ對シテモ、適當
ナ所ニ定マルヤウニ致シタイト云フ答辯
デアリマシタ、次ニハ產業組合ト米穀商ト
ノ關係デアリマス、本案ノ實施ニ依ッテ販賣
組合ガ市場員トナルコトニ依ッテ、生產者團
體ト米穀商トノ間ニ相剋ガ激シクナル虞ガ
アリハシナイカ、又產業組合ト中小商工業
者トノ關係ハ極メテ重大ナ問題デアルガ、
政府ハ之ニ對シテドウ云フ風ニ考ヘテ居ル
カ、之ニ對シテ政府ハ、本法案ハ米穀生產
者及米穀商、是等ヲ各〓、其ノ職分ニ應ジテ米
穀政策ニ協力セシメムトスルモノデアッテ、
法案ノ實施ニ依ッテ業者ノ關係ニ殆ド影響
ヲ及スコトガナイト考ヘル、現在デモ販賣
組合ハ市場員ヲ通ジテ、市場員又米穀商ニ
モ賣ッテ居ルノデ、今日デハ賣ラウトスレバ
自由ニ出來ルノデアル、此ノ裏ノモノヲ表
ニ出シテ、賣リ方一方ノ市場員トシテ、是
ニハ相當ノ監督取締ヲスルノデアルカラ、
米穀商ニ惡影響ヲ與ヘルモノデハナイ、尙
又兩者ノ間ニ摩擦ガ起ラヌヤウニ十分監督
シテ對處スルト云フ答デアリマシタ、又產
業組合ト中小商工業者トノ關係ハ、是ハ極
メテ重大ナ問題デ十分考究シナケレバナラ
ナイコトデ、根本的ニ解決シナケレバ將來
ニ於テ大ナル困難ガ起ルコトデアルカラシ
テ、雙方ノ共存共榮ノ途ヲ圖ル爲ニ、內閣
ニ於テモ官民ヲ網羅スル所ノ一大調査機關
ヲ作ッテ、十分ナル考究ヲ遂ゲ對策ヲ講ジタ
イト云フコトデアリマス、次ニ、本法案ト
朝鮮米ノ統制トノ關係ハドウ云フ風ニナッ
テ居ルカト云フ質問ガアリマシタ、之ニ對
シテ政府ハ、朝鮮ニ於テモ日本米穀會社ニ
類似スル所ノ會社ヲ設立シテ、本法案ニ順
應シテ米穀ノ市場取引ヲ規整スルト云フコ
トニナッテ居ル、又朝鮮米ノ內地移入ノ過程
ニ關シテハ、本法案ノ趣旨ニ順應スルヤウ
適當ナル統制方策ヲ速カニ樹立スル見込ニ
ナッテ居ル、併シ具體的ノ方策ニ付テハ目
下外地當局ト協議中デアルト云フ答辯ガア
リマシタ、次ニ、〓算取引、延取引ノ問題
デアリマスガ、〓算取引ハ廣ク需給ヲ統合
シテ、價格ノ構成ヲ圓滑ナラシメル上ニ非
常ニ長所ガアルカラシテ、之ヲ存置スルコ
トガ適當デアルト思フ、又之ヲ廢止シテ延
取引ニ依ルトシテモ、延取引ハ成ルベク廣
イ範圍ニ於テ之ヲ認メル必要ガアルト思フ、
之ニ對シマシテ政府ハ、〓算取引ハ必ズシ
モ實需ニ基カズシテ投機ヲ主トスル傾向ガ
アリ、米穀事情等ノ變動ニ際シテハ、思惑
ニ依ル假需要等ヲ誘發シテ、米穀ノ配給ノ
圓滑ヲ阻害スル虞ガアルカラシテ、之ヲ廢
止スルコトヲ適當ト考ヘル、又延取引ハ、
例ヘバ東京デアルトカ、或ハ大阪デアルト
カト云フヤウテ大集散地ニ之ヲ認メルコト
トシテ、其ノ他二三ノ地方ニ限ッテ、專門委
員會ノ審議ヲ經テ之ヲ考慮スルコトト致シ
タイト云フ答デアッタノデアリマス、次ニ取
引所ハ本法案ヲ以テ廢止スルモノデアルカ
ラシテ、其ノ營業權ハ之ヲ補償スベキデハ
ナイカ、又取引所ノ使用人、取引員ノ善後
處置ニ付テドウ云フ風ニスルカ、又取引員
ノ使用人ニ對シテ、是ガ相當ニ失業スル者
ガ出來ルト思フガ、其ノ救濟ハドウ云フ風
ニスルカト云フヤウナ質問ガアリマシタ、
之ニ對シマシテ、此ノ度ノ法案デハ、廢止
ト云フヨリモ寧口會社ノ合併ト云フ形ヲ取ッ
タノデ、從來ノ取引所ノ權益ハ十分尊重シ
テ、取引所ノ株主ニ對シテハ新ラシイ日本
米穀會社ノ株式ヲ優先的ニ割當テルト共ニ、
其ノ土地、建物等ノ設備ハ適當ナ價格ヲ以
テ買取ルシ、其ノ使用人ハ新會社ノ使用人
トシテ之ヲ收容スル、取引員ハ米穀市場ノ
市場員トスル外ニ、開業又ハ轉業資金ノ融
通ヲスルト云フヤウナ適當ナ措置ヲ講ズル
ノデ、取引所關係者ノ利益ヲ著シク害スル
ト云フヤウナコトハナイト考ヘル、唯取引
員ノ使用人ニ付テハ何トカ救ヒタイケレド
モ、今日ノ犠牲產業ノ從業員トノ振合等モ考
ヘナケレバナリマセヌシ、是等迄モ政府ノ
手デ救濟スルコトハ困難デアルケレドモ、出
來ルダケ取引員ノ處理ニ依ッテ使用人モ其ノ
方ニ向ケル考デアル、其ノ上ニ失業者ガ出來
レバソレハ厚生省ノ失業對策ニ依リタイ
考デアルト云フ答辯デアリマシタ、次ニ會
社ノ出資ノ問題デアリマスルガ、米穀需給
調節特別會計カラ米穀會社ニ出資スルト云
フノデアリマスルガ、此ノ特別會計ノ借入
金額ヲ增大スル結果ニナルノデ、ソレヨリ
モ一般會計ヨリ出資スルコトガ適當デハナ
イカト云フ質問ガアッタノデアリマス、之ニ
對シマシテハ特ニ大藏大臣ヨリ答辯ガアリ
マシテ、政府ハ日本米穀株式會社ニ對スル
政府出資ニ付テハ、將來適當ナル機會ニ於キ
マシテ一般會計ヨリ出資スルコトニ付善處
スル考デゴザイマスト云フ答辯ガアッタノ
デアリマス、次ニ衆議院ノ修正ノ點デアリ
マスルガ、衆議院デハ米以外ノ雜穀、肥料
ノ取引ヲ削除シタノデアリマス、之ニ對シ
テ政府ノ意見ハドウデアルカト云フコトデ
アッタノデアリマスルガ、政府ハ、現在正米
市場デ雜穀、肥料ノ取引ヲヤッテ居ル所ガ
アッタノデアリマス、小樽トカ神戸トカト云
フ所デ事實ヤッテ居ル所ガアッタノデ、消極
的ニ之ヲ採入レタノデアリマス、政府トシ
テハ、若シ兩院デ修正ニナル場合ニハ之ニ
甘ンズルガ、直チニハ贊成シナイト云フ答
辯デアリマシタ、以上ハ質疑應答ノ〓要デ
アリマシテ、質疑ノ間ニハ、農林大臣初メ
商工、拓務、大藏、各大臣ノ出席ヲ求メマ
シテ、熱心ナル質疑應答ガアッタノデアリマ
スルガ、詳細ハ速記錄ニ讓リタイト考ヘマ
ス、昨日午後質疑ヲ終リマシテ討論ニ入ッタ
ノデアリマスルガ、其ノ際、一委員カラ、本
法案ノ實施ニ當ッテハ、米穀ノ圓滑ナル配給
ヲ圖ル爲ニ、現在ノ取引所ノ存在スル地方
ニ市場ヲ設置スル場合ニハ、其ノ市場ニ於
テ延取引ヲ認メラレムコトヲ望ムト云フ希
望意見ガアッタノデアリマス、又更ニ一委員
ヨリハ、新會社設立ト共ニ、傳統的存在タ
ル〓算市場ガ終ルノデアルカラシテ、此ノ
際從來ノ取引所ノ利用價値ヲ認メラレテ、
又關係人ノ轉業資金ノ融通等ノ廢止ニ伴フ
善後措置ニハ實情ニ卽シテ萬遺憾ナキコト
ヲ期セラレタイト云フ趣旨ノ希望ガアッタ
ノデアリマス、討論ヲ終リマシテ、衆議院
ニ於テ修正セラレタ法案ヲ原案トシテ採決
致シマシタ處、全員一致之ヲ可決致シタ次
第デアリマス、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=76
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077・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴喜君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=77
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078・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=78
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079・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=79
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080・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=80
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081・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=81
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082・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=82
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083・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=83
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084・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=84
-
085・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=85
-
086・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=86
-
087・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=87
-
088・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=88
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089・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ヲシト」呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=89
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090・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=90
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091・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十六、工
業組合法中改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員長
橋本伯爵
工業組合法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵橋本實斐君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=91
-
092・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今上程ニナリマシタ
工業組合法中改正法律案ハ、輕金屬製造事
業法案委員會ニ併託セラレマシタノデアリ
マスガ、此ノ審議ノ經過及結果ヲ申上ゲマ
ス、法案ノ要旨ト致シマシテハ、第一ニ弱
小工業者ノ爲小組合制度ヲ創設致シマシテ、
營業ノ維持振興ヲ圖ルコト、第二點ハ、統
制確保ノ爲法第八條ノ規定ニ於ケル統制命
令ノアッタ場合ニ、必要アラバ組合地區ノ工
場ノ新設擴張ニ對シマシテ許可制度ヲ採ル
ト云フコトデアリマス、第三點ハ、物資配
給等ノ事業ヲ行フ工業組合ノ監督指導規定
ノ整備ヲ行ハムトスル點デアリマス、委員
會ニ於キマシテハ先ヅ工業組合ト本改正ニ
依リ創設セラルヽ工業小組合トノ差異如何
ト云フ問題デアリマシテ、當局ヨリハ形式
的ニ之ヲ申セバ、工業組合ニ於テハ組合員
數ノ制限ハナク、組合地區ハ一定ノ地域ニ
限ルニ反シ、工業小組合制度ニ於テハ組合
員數ハ原則トシテ十人以內トシ、組合地區
ニハ制限ヲ置カナイト云フコトデアリマス、
又工業小組合ト然ラザル工業組合トノ區別
ノ標準ハ何處ニアルカト云フ問ニ對シマシ
テ、大體工場ノ機械設備ニ二萬圓ヲ投ジタ
リヤ否ヤト云フコトヲ以テ〓略ノ標準トス
ルト云フ答辯デアリマシタ、更ニ工業組合
ガ時局統制下ニ入ッテ以來、其ノ業務トシテ
物資配給ノ如キ公的業務ヲ行フニ至ッタ次一
第デアルガ、是ハ果シテ圓滑ニ行ッテ居ル
カドウカト云フ問デアリマス、政府ハ之ニ
對シテ工業組合ガ物資配給業務ヲ始メマシ
タノハ、昨年ノコトニ屬シテ、初メノ中ハ
圓滑ヲ缺ク憾モアリマシタケレドモ、今日
ニ於テハ漸次良好ナル成績ヲ擧ゲツヽアル
ト云フ說明デアリマシタ、其ノ他種々詳細
ナル質疑應答ガ重ネラレ、他ニ一委員ヨリ
致シマシテハ、工業組合法制度ノ全般ニ亙ツ
テ殘ス所ナク質疑ヲ致サレタ向モゴザイマ
シタガ、是ハ省略致シマス、討論ニ際シマ
シテハ贊成ノ意見ガアリマシタノミデ、採
決致シマシタル處、全會一致ヲ以テ可決致
シマシタ、右御報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=92
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093・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=93
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094・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=94
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095・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=95
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096・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=96
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097・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=97
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098・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=98
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099・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=99
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100・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=100
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101・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=101
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102・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=102
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103・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=103
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104・松平頼壽
○議長(松平賴壽君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=104
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105・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=105
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106・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=106
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107・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十七、臨
時陸軍材料資金特別會計法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、
委員長高橋子爵
臨時陸軍材料資金特別會計法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長子爵高橋是賢
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵高橋是賢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=107
-
108・高橋是賢
○子爵高橋是賢君 只今上程セラレマシタ
ル臨時陸軍材料資金特別會計法案ニ付テ、
委員會ノ審議ノ經過及結果ニ付テ御報告申
上ゲマス、本案ハ去ル三月二十二日ニ昭和
十四年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル法律案ノ特別委員ニ併託サ
レタノデアリマス、委員會ニ於キマシテハ
政府當局ノ說明ヲ聽取致シマシテ、直チニ
質疑ニ入リマシタ、陸軍及大藏省ノ政府委
員ノ方ト、各委員ノ間ニ重要ナル質問應答
ガ行ハレマシタ、本法案ハ既ニ總豫算ニ於
テ一億二千萬圓ノ資金ヲ以テ事變地ニ於ケ
ル軍ノ必要トスル物資ヲ取得スルコトガ認
メラレテ居リマス、デ之ヲ本法案ニ依ッテ
一般會計ト區分致シマシテ經理スルコトヲ
適當ト認メテ、特別會計ヲ設置シタイト云
フ法案デアリマス、此ノ特別會計ノ基金ハ
一千萬圓デアリマシテ、尙五十萬圓ヲ限ッテ
借入金ヲナシ又ハ之ニ加フルニ國庫餘裕金
ヲ繰替ヘテ使用シ得ルコトトナッテ居ルノデ
アリマス、而シテ本特別會計ハ事件ノ終局
迄ヲ一會計年度トシ、其ノ收入支出ニ關シ
テハ之ヲ勅令ニ讓ッテアルノデアリマス、玆
ニ質問應答ノ主ナルモノノ中、二三ヲ御紹
介申上ゲタイト思ヒマス、一委員ヨリ物資
トハ如何ナルモノヲ指スノカト云フ質問ニ
對シ、政府ハ事變地ニ於テハ物資ノ發見、
獲得、保管、輸送等ノ事柄、軍ニ依ラザレ
バ其ノ目的達成ノ困難デアル又不可能デア
ル地域ノ物資ヲ、卽チ棉花デアルトカ、羊
毛デアルトカ、麻乃至ハ皮革ト云フヤウナ
モノヲ取得スルコトヲ考ヘテ居ルト云フ答
辯デアリマシタ、又一委員ヨリ法文ニハ事
變地ニアル軍需品ノ材料及原料ヲ購入トシ
ナイデ、特ニ所得ト記載シテアルノハドウ
云フ意味デアルカト云フ質問ガゴザイマシ
タ、之ニ對シテ政府ハ大體ハ購買ノ方法ニ依
ル次第デアルガ、物々交換ニ依ル地區モア
ル、卽チマグ治安ノ定マラヌ地區ニ於キマ
シテハ、聯合準備銀行劵ヲ持ッテ行ッテモ、
或ハ軍票ヲ持ッテ行ッテモ、品物ヲ出サヌト
云フヤウナ所モアルノデ、サウ云フ地區ニ
於テハ品物ヲ以テ品物ト換ヘルト云フコト
ガ必要デアルノデ、購買トセズニ取得トシ
タト云フ御答辯デアリマシタ、又一委員ヨ
リ中支及北支ニ於テハ、如何ナル貨幣ヲ以
テ購入スルノカト云フ質問ガアリマシタ、
政府ハ中支ニ於テハ軍票ヲ用ヒ、北支ニ於
テハ聯合準備銀行券ヲ用ヒルノデアリマス、
唯地區ニ依ッテハ、例ヘバ漢口或ハ武昌方面
ノ如キハ、軍ノ手持ノ法幣ガアルノデ、其
ノ法幣ヲ以テ購入スル場合モアル、併シナ
ガラ建前トシテハ軍票ノ價値ヲ下落セシメ
ヌヤウニ、十分注意シツヽ軍票ヲ使用スル
コトトシテ居ルト云フ御答デアリマシタ、
又一委員ヨリ事變地ノ材料原料ヲ內地ニ輸
送シテ之ニ加工セシメ、軍需品トシテ使用
スルノハ是ハ結構ノコトト思ヒマスガ、物
物交換ハ何時頃カラ始ッタノデアルカ、サウ
シテ其ノ爲ニ內地ヨリ事變地ニ送ル品物ハ
如何ナルモノヲ以テスルヤト云フ質問ガア
リマシタ、之ニ對シテ政府ハ是ハ昨年ノ十
二月頃ヨリ始ッタコトデアッテ、内地ヨリ送ル
所ノ物々交換用ノ物資ノ主ナルモノハ海產
物、鹽乾魚、燐寸、蠟燭、醫療用藥品類等デ、
今日迄ニ約五百萬圓位ヲ中支ニ送ッタト思
フト云フ御答辯デアリマシタ、其ノ他幾多
重要ナル質疑應答ガアリマシタガ、詳細ハ
速記ニ依ッテ御了承ヲ願ヒタイト存ジマス、
デ質問ヲ打切リマシテ、討論ニ入リマシタ
ル處、一委員ヨリ此ノ法律案ハ全ク特異ノ
法案デアル、詰リ異例ニ屬スル法案ト思ハ
レル、其ノ內容ニ付テハ篤ト檢討ヲ要スベ
キ點ガ多々アルト思フガ、斯クノ如ク異例
ニシテ且重要ナル法案ヲ議會會期ノ切迫シ
タル今日ニ於テ、提出サレタト云フコトハ
誠ニ遺憾ニ思フ次第デアルガ、併シ現下時
局ノ大勢カラ見デ事實緊急ニシテ已ムヲ得
ザルモノト認メ、原案ニ贊成ヲスルト云フ
意味ノ意見ノ御開陳ガアリマシタ、又一委
員ヨリ國家ノ收支、財產、物品ノ會計經理
ハ次ノ三大原則ガアル、卽チ一、金錢會計
ノ收支ハ會計法、二、不動產其ノ他之ニ準
ズベキ財產、例ヘバ船舶ノ如キニ付テハ國
有財產法、第三ニハ動產物品ニ付テハ物品
會計規則ト云フモノガアルガ、今本會計ノ建
前ヲ見ルト、金錢會計トシテ收支ヲ經理ス
ル部分ト、又動產物品トシテ受拂ヲスル部
分トノ二ツガアリマス、前者ニ於テハ會計
法ノ適用ヲ受クベク、後者ニ付テハ物
品會計規則ノ適用ヲ受クベキモノデアル
ガ、此ノ點ニ付テ政府ノ答辯トシテハ尙考
究中ノモノアルヤニ思ハルヽ、誠ニ未熟ノ
感ガアルノデアル、而シテ本案ニ金錢會
計トシテノ豫算ハ提出シテアルガ、此ノ豫
算ノ外ニ何程ノ價格ノ物品數量ヲ受拂ヒス
ルカ、豫メ明カデナイ、而モ本會計ノ會計
年度ハ、事變終了迄ヲ一會計年度トシテ繼
續スルノデアルカラ、物品會計ノ檢査、物
品會計官吏ノ責任解除等ニ付テ如何ナル手
續ニ依ルヤ、臨時軍事費ノ例等モアルガ、
稍、明瞭ヲ缺クノデアル、又本會計所屬ノ物
品ハ大體陸軍兵備品會計規則ノ普通兵備品
トシテ適用ヲ受クベキモノナルヤ、或ハ他
ニ特例ヲ設クル意向ナルヤ、此ノ點モ考究
中デアルヤウデアッテ不明デアル、要スルニ
本會計運營ニ付テハ、尙未熟ニシテ考究ヲ
要スル點尠シトセズ、然レドモ政府ニ於テ
ハ此ノ種極メテ、異例ノ立法ヲ必要ニ迫ラ
レテ提案サレタルモノト思ヒ、且時局ノ事
熊ヲ認識シテ本案ニ贊成スル者デアル、抑〓
今日ノ事態ニ於テ會計法規ノ原則如キニ拘
泥シテハ、何モ出來ナイノデアルト云フコ
トデアレバ、又何ヲカ言ハンヤデアル、併
シ憲法政治ノ運行ニ於テハ、法制ノ系體ハ
之ヲ尊重シナケレバナラヌ、今時局ノ必要
ヲ認メテ本案ノ成立ニ同意ハスルガ、此ノ
運用ニ當ッテハ深甚ノ注意ヲ拂ヒ、其ノ體系
ノ異例ナルガ爲ニ、濫用或ハ弊害等ヲ生ズ
ルコトノナイヤウニ、實際運行ニ際シテ吳
吳モ周到ノ用意ト、深甚ノ注意ヲ以テ臨マ
レムコトヲ希望スルト云フヤウナ、警告的
ノ贊成御意見ガ開陳サレマシテ、採決ノ結
果滿場異議ナク本法律案ハ可決セラレマシ
タ、右大略御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=108
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109・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通告ガゴ
ザイマス、御許ヲ致シマス、子爵大河內輝
耕君
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=109
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110・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私ハ大藏大臣ニ質問
ヲ致シマス、併シ事陸軍ニ關係ガゴザイマ
スノデ、陸軍大臣ノ御出席下サッタコトハ特
ニ感謝ヲ致シテ居リマス、只今斯カル財政
問題ニ付キマシテハ、最モ造詣ノ深イ高橋
委員長カラ詳細ニ御述ニナリマシタカラ、
私ハ更ニ蛇足的ノ質問ヲ加ヘル必要モナイ
カト存ジマスルガ、事極メテ重大ナモノデ
ゴザイマシテ、此ノ結果動モスレバ軍ノ體
面ニ關シ、延イテハ支那人ニ對スル日本ノ
體面ニ迄モ及サウトスルヤウナ虞ノアル法
案ニ付キマシテハ、能ク其ノ內容ヲ明カニ
シテ、政府ノ考ヲ明白ナラシメ、我々國政
ニ參與スル者ガ將來此ノ法ノ運用ニ付キマ
シテ、十分ノ注意ヲ拂フベキ要點ヲ此處ニ
明カニシテ置キマスルコトハ必要ノコトト
存ジマスカラ、此ノ會期切迫ノ時、誠ニ恐
縮ニ存ジマスルガ、一應質問ヲ致サセテ戴
キタイ、甚ダ妙ナコトヲ申シマスルガ、嘗
テ團匪事件ノ際ニ馬蹄銀事件ト云フヤウナ
モノガ起ッタ、ドウ云フコトダカ存ジマセヌ
ガ、アヽ云フコトガ軍ノ體面、日本ノ體面
ヲ害シタコトモ非常ナモノデアル、ソレト
同ジク此ノ法モ、若シモ運用ヲ誤レバ必ズ其
ノ狀態ニ立到ル、先ヅ只今ノ御說明デ大體
ハ分ッテハ居リマスルガ、併シ質問應答ノ狀
況又政府ノ說明ナドヲ伺ヒマスルト、私ノ
解シマスル所デハ此ノ法ハドウ云フ法カト
云フコト、政府ガ商賣ヲスル、陸軍ガ商賣
ヲスルト云フ法案デゴザイマス、陸軍ガ支
那貿易ノ一部ヲ擔任スルト云フノガ此ノ法
律デアリマス、ドウ云フ譯デサウ云フコト
ニナルカ、是ハ一言政府ニ對シテ私ハ御注
意ヲ申上ゲタイ、私ガ豫算委員會デ質問ヲ
致シマシタ時ハ、此ノ法案ハ軍需品ヲ買フ
ノデアル、陸軍ニ其ノ品ハ賣ルノデアル、又
民間ニ賣ル場合モアルガ、結局軍需品トナッ
テ陸軍へ入ッテ來ルノダ、斯ウ云フ說明デ
アッタ、處ガ今委員長ノ御說明ヲ伺ッテ見ル
ト、決シテソンナモノヂヤナイ、何デモ構
ハズ買ッテ來ルノダ、斯ウ矛盾シタ答辯ダト
カ、不深切ナ答辯ヲ政府ガサレルト云フコ
トハ私甚ダ遺憾ニ存ズル、ソレデドウ云フ
譯カト云フト、此處ニ速記錄ガアリマス、
ソレデドンナ品物ヲ買ッテ來ルノカト言ヒ
マスト、是ダケノ資金ヲ拵ヘマシテ、サ
ウシテ此ノ金ヲ持ッテ、軍隊ノ誰カ知ラ
ヌガ當局官憲ガ支那ニ參リマシテ、サウシ
テ奧地ノ所ニ入リマスルト云フト、一々商
人ノ手デ買ッテナド居ラレナイ、買ッテ居ラレ
ナイモノダカラ、官憲ダカ軍隊ダカソレハ分
ラヌガ、サウ云フ人ガ直接何デモ買ッテヤル、
軍需品バカリデハナイ、何デモ買ッテヤル、宣
撫班ガヤルカ誰ガヤルカ分ラヌガ、誰カガ
買ッテヤル、何デモ構ハズ買ッテヤルノデス、
是ガ買フ方ナンデス、ソレデハドウ云フ物
ヲ買ッテヤルカト云フト、軍需品ニ限ラナイ、
速記錄ニハ斯ウナッテ居ル、「取ッテ參リマシ
タ支那棉ガ、其ノ儘軍需品ニナリマスコト
モアリマスシ、又他ノモノト混綿ヲサレマ
シテ、大部分ハ軍需品トナリ、一部ハ一般
ニ渡ル、斯ウ云フコトモ豫想シテ居ルノデ
ゴザイマス、」ソレカラ「軍用ニノミ適スル牛
皮、或ハ棉花ト云フモノヲ持ッテ來イト言ヒ
マシテモ、向フノ民衆ハ嫌ヒマシテ、兎
角棉花ナラバドレデモ宜シイ、牛皮ナラバ
軍用ニ適シナイ物デモ軍デ買上ゲルト云フ
コトニナリマスルト、治安工作上喜バシイ
ト云フヨリハ、治安工作上必要ナ點ニナル
譯デアリマシテ、從ヒマシテ取得致シマシ
タ牛皮ノ中ニハ、最初カラ軍需品トシテハ
如何カト思ハレル物モ一部入ッテ。參リマス、」
スッカリ豫算委員會デ、私ハ嘘ヲ吐カレテ居
ル、軍需品バカリ入ッテ居ルノヂヤナイ、軍
需品デナイ物ダッテ買フコトニナッテ居ル、
怪シカラヌコトデアル、ソレカラ買フ方ハ
ソレデ宜イトシテ、ソレデハ今度買フダケ
カト斯ウ言ッテ聞イテ見タ所ガ、豫算委員會
デハ何モ言ヒハシナイガ、賣ル方モ入ッテ居
リマス、是ハ今ノ委員長ノ御說明デ分ッタラ
ウガ、支那人ガ今色々ノ物資ノ缺乏デ因ッ
テ居ル、ソレニ供給シテヤラナケレバナラ
又、日本人ガソレヲ、宣撫班ガヤルノカ誰
ガヤルノカ知ラヌガ、買ッテ持ッテ行ッテ向
フヘ賣ッテヤルノデス、其ノ品物ヲ買フ方ノ
モノハ何カト云フト棉花、羊毛、綿皮革
其ノ他デアリマス、ソレカラ賣ル方ノ品物
ハ何カト云フト、海產物、昆布、鹽鮭、鹽鱒、
燐寸、蠟燭、靴下、人絹布、仁丹、其ノ他
ノ藥、斯ウ云フ物ヲ例ニ擧ゲテ居ルノデア
リマス、卽チ此ノ會計ニ依リマシテ、日本
デ買フカ支那デ買フカ、何處デ買フカ分リ
マセヌガ、物ヲ買ッテ、軍需品デモ何デモ、
ソンナ風ナ支那人ノ要ル物ヲ買ッテヤッテ、
ソレヲ持ッテ奧地ニ行ッテ賣ル、斯ウ云フ商
賣ヲスル、斯ウ云フ外國貿易ヲヤルト云フ
ノガ此ノ資金會計ノ目的デアル、ソレハ此
ノ資金會計ハ幾ラト言ッテ資金ノ限度ガア
リマス、其ノ資金ノ限度デ買ッタ物ハ其ノ資
金ノ歲出デ、賣ッタ物ハ其ノ資金ノ歲入デ
入ル、斯ウ云フコトナラバマダ宜イカモ知
レナイガ、其ノ外ニ物々交換モ許サレテ居
ル、詰リ向フデ鹽ヲ買取ッテ、奧地ニ持ッテ
行ッテ鹽ヲヤッテ、羊毛ヲ取ッテ來ルト云フ
コトモ出來ル、ソレデスカラ假ニ資金會計
ガ一千萬圓ナラバ一千萬圓、一億ナラバ一
億、今歲出ガアッテモ、ソレ以外ニドンナ商賣
デモ出來ル、物々交換デモ何デモ出來ル非常
ニ廣イ會計デ殆ド範圍モ分ラヌ、物々交換ハ
歲入歲出ニハ拘ハリマセヌ、斯ウ云フ問答ガ
アル、次ニ棉花ト鹽ヲ交換ノ場合、此ノ場合
ハ我々ノ考ヘテ居リマス所デハ、資金所屬
ノ交換用物品ガ軍ガ目的トシテ居ル所ノ現
在量ニ變ッテ居ルノデアル、卽チソコデ物ノ
受拂ノ關係ガ起リマスガ、其ノ受拂ノ關係ハ
金錢的ニハ此ノ會計ノ歲入歲出ニハ影響ヲ
生ジナイコトニ整理ヲ致ス考デアリマス、
斯ウ云フコトデ歲入歲出ヲ通ラナイ物々交
換ガアルト云フコトハ、之ニ依ッテ分ツテ居
ル、誠ニ是ハ今迄ニナイ飛ンデモナイ法律、
會計法デアル、ソレデモウ一ツ明カニシテ
置キタイノハ、是ハ委員長モ御說明ニナリ
マシタガ、出師準備品ガ此ノ中ニ入ルヤ否ヤ、
是ハ入ラヌト云フ御說明デアルノデアル、入
ラヌト云フコトヲ建前ニシテ居ルノデアリマ
ス、サウ致シマスルト此ノ會計ハ資金會計ヂ
ヤゴザイマセヌ、資金モ必要デアリマスガ、同
時ニ物品會計デアリマス、委員長モチヨット
其ノ點詳シク御說明モゴザイマシタガ、詰
リ一般會計法ガ行ハレルト同時ニ、物品會
計規則又ハ兵備品會計規則ガ此ノ行爲ヲ支
配スルト云フコトニナリマス、而モ之ヲ
前提ト致シマシテ私ハ次ノ質問ニ移リタ
イ······是カラ質問ニ移リタイ、只今ハ其ノ建
前ヲ明カニシテ置カナケレバ質問ガ分リマ
セヌ、斯ウ云フ譯ノ分ラナイ會計ナンダ、
又第一政府ガ商賣ヲスルト云フコトガ譯ガ
分ラナイ、歲入歲出ヲ限ラナイ物品ノ交換
ヲスルト云フコトガ譯ガ分ラナイ、軍需ト
言ッテ置キナガラ、ドンナ物デモアレバヤル
ト云フ、是モ譯ガ分ラナイ、一ツモ要領ヲ
得ナイ會計デアル、モウ少シ分ルヤウニ說
明サレルカ、分ルヤウニ書カレルコトガ出
來ナイモノカト思フ、斯樣ナヤリ方ヲサレ
テ誤魔化スト云フコトハ立憲政治ノ運用ノ
上カラ面白クナイ、ヽウウシテ私ノ第一ニ伺
ヒタイ所ハ、此ノ資金ニ依ル賣買ハ誰ガヤ
ルノカト云フコトヲ伺ヒタイ、軍デ御ヤリ
ニナルノカ、或ハ商人ニ御許シニナルノカ、
商人ニ御許シニナルコトハアリマスマイ、
多分軍デ御ヤリニナル······軍デ御ヤリニナ
ルノカ、ソレトモ興亞院ガヤルノカ、向フ
デヤルノハ軍ノ經理部デ御ヤリニナルノ
カ、或ハ下ニハ色々ノ人ハ使ヒマセウガ、
興亞院ノ人ガ行ッテ御ヤリニナルノカ、其ノ
官廳ハ何處デアルノカ伺ヒタイ、第二ニ伺
ヒタイノハ官廳ノドノ、軍ニセヨ、興亞院
ニセヨソンナ商賣ヲスル權限アリヤ否ヤ
ト云フコト、政府ガ商賣スルト云フコトハ
始メテデス、是ハ專賣カ何カナラ官制ニモ
アリ、國家ノ目的ヲ以テ、歲入ヲ得ルト云
フ目的ヲ以テ專賣ヲスルト云フコトハゴザ
イマス、ケレドモコンナ純然タル外國貿易
ヲヤルト云フ其ノ權限ガアルカドウカ私ハ
解釋ニ苦シム、若シアリトスレバ何處ニ在
ルカ、其ノ根據ヲ御示シ願ヒタイ、尙第三
トシテ、ソンナ商賣ガ出來ル權限ガ無イト
スレバ、官制ニ於テ相當ノ改正ヲ行ハナケ
レバナリマスマイ、此ノ點如何御考デスカ、
斯ウ云フ事ヲヤルコトニ付テハ樞密院アタ
リヘ御諮詢ニナルダケノ手續ハ執ラレルベ
キモノデハナイカト思フ、ソレニソンナ事
モシナイデ突然斯ウ云フ事ヲ政府ガヤルト
云フコトニナリマスノハ、其ノ點如何御考
ニナリマスカ、官制體系ト此ノ方面トノ關
係ヲ伺ヒタイ、詰リ樞密院ヘ御諮詢ニナル
必要アルカナイカト云フコトヲ伺ヒタイ、
其ノ次ニ政府ハサウ云フ權限ガ假ニ有リト
スルモ、是ハドナタニモ御分リダガ、コン
ナ商賣ガヤレルカドウカ、俗ニ士族ノ商賣
ト申シマス、コンナ事ガウマク圓滿ニ御役
人樣ノ手デ御ヤリニナレルカ、興亞院ガヤ
ルノカ軍ガヤルノカ誰ガヤルノカ知リマセ
ヌガ、コンナ事ガヤレルカドウカ、果シテ
之ヲ適當ニ遂行サレル自信ガアリヤ否ヤ、
之ガ私ノ質問デアリマス、次ニ質問ヲ致シ
タイノハ、之ノ運用ノ仕方ニ依リマシテハ
支那貿易ヲ撲滅スルモノデアリマス、是レ
ダケノ資金ヲ持ッテ勝手放題ナ値ヲ以テ、稅
モ掛カラナイ商賣人ガ暴レ〓ッッララ、支那ニ
對スル外國貿易ハ成リ立チマセヌ、之ニ對
シテドウシテ、相剋摩擦ヲ避ケラレル積リ
カ、支那ニ對スル外國貿易ハ是カラ益〓發展
サセナケレバナラヌ、發展サセルニハ商人
ノ力ニ依ラナケレバナラヌ、然ルニ却テ商
人ヲ壓迫スルガ如キ斯ウ云フ法案ヲ出サレ
ルコトハ如何デアルカ、尤モ運用ニ依リマ
シテハ壓迫ヲシナイコトニハナリマセウケレ
ドモ、ソレハ餘程ノ注意ヲ要セナケレバナ
ラヌガ、ドウ云フ風ナ注意ヲ拂ハレマスカ、
唯普通ノ場合デハ私ハ是ハ承服スルコトガ
出來ナイ、ソレカラ次ニ伺ヒタイノハ、其
ノ賣買交換ノ相手方ハ誰カト云フコト、是
ハ支那ノ消費者ニヤル、結局ハ支那ノ消費
者ニヤル、併シ何カノ手ヲ經ナケレバナ
ラヌ、若シ茲ニ何カ或者ノ手ヲ經ルトス
ルト其ノ品物ガ果シテ其ノ値デ以テ支那
人ノ手ニ渡ルヤ否ヤ、相當ノ手數料ハ、已
ムヲ得ナイトシテモ、多クハ官吏デセウ、
商人ハ御使ヒニナラナイノデセウカラ、
例ヘバ其處ニ或一ツノ機關ガアル、其ノ
機關ニ屹度賣ッタコトニナルダラウ、サウス
ルト其ノ値デ直接ニ支那人ニ賣ラレタカド
ウカ、其ノ間ニ何カ間違デモアリヤシナイ
カト云フコトハドウシテ監督サレル、私
此ノ相手方ガ誰カト云フコトヲ伺ヒタイ、
買フ方ニシテモ同ジヤウナ問題ガ生ジマス
ケレドモ、殊ニヤル方ハ、交換スル方ハ、
間接ニヤルモノトスレバ、ソコハムヅカシ
イ、役人ヲ經テヤルト云フコトニシテダ、マ
サカ其ノ役人ガ一々支那人カラ受取モ取レ
マスマイ、サウ云フコトニナレバ、其ノ役人
ガ十圓デ買ッタ物ヲ二十圓デ賣リ付ケテモ
分ラナイ話ダ、監督モ何モ付カヌ、此ノ點
ハドウ御考ニナリマスカ、ソレヲ伺ヒタイ、
次ニ伺ヒタイノハ、物品會計官吏ノ責任デ
アリマス、今御話ニナッタ通リ、何時迄經ッ
テモ終局ガ付カナイ會計デアリマス、サウ
シテ物品會計規則ト兵備品會計規則ト此ノ
二ツニ依ッテ支拂ハレル此ノ物品會計官吏
ノ責任ハ、ドウシテ之ヲ明カニサレマスカ、
又是ガ支那ノ遠クヘ行ッテヤル仕事ダ、到底
之ヲ明確ニ明カニスルコトハムツカシカラ
ウト思フ、之ニ對シマシテハ、或ハ物品會
計規則、其ノ他ニ相當ナ修正ガ行ハレナケ
レバナリマスマイガ、其ノ點ハドウ云フ御
考デアリマセウカ、是ダケノ大キナモノヲ
御出シニナルノニ、マサカソレハ決ッテ居ナ
イトハ仰シヤレマイト思フ、次ニ會計檢査
院ノ檢査法デアリマス、會計檢査院法ノ改
正デアリマス、物品會計ノヤウナモノヲ放
リ出シテ置イテ、時局ガ濟ム迄放ッテ置イタ
ノヂヤ責任モ何モ譯ガ分ラナクナル、之ニ
付テハ、特別會計ノ檢査ノ規定ガナケレバ
ナラヌ、只今ノ會計檢査院法デハ到底及バ
ナイト思フ、此ノ點モ如何デゴザイマセウ
カ伺ヒタイト存ジマス、尙是等ノ點ニ、唯
モウ一ツ最後ニ伺ヒタイノハ、是等ノ點ニ
付キマシテハ非常ニ運用ガムツカシイ、ソ
レハ委員長モ只今述ベラレタ通リ、又政府
モ其ノコトヲ認メテ居ラルヽト思フ、之二
付キマシテ、此ノ運用······會計檢査院法ノ
改正ナリ、或ハ物品會計官吏ノ責任ナリ、
ソレドコロヂヤナイ、モット大キナ此ノ商賣
ヲドウシテ圓滑ニヤッテ行クカ、又日本ノ體
面ニ關シナイヤウニヤッテ行クト云フヤウ
ナコトヲ總テ調査スルニ付キマシテハ、有
力ナ委員會デモ作ッテ御〓究ニナル御見込デ
アリマセウカ、之ヲ政府ノ手デ、極メテ不
明ナ手デ闇カラ闇ヘ葬ルト云フト、ソコニ
色々ナ流言蜚語ガ生ジテ、日支ノ關係上甚
ダ面白カラザル結果ヲ生ズルコトハ當然ノ
コトト存ジマスルカラ、最後ノ質問トシテ
此ノコトヲ伺ヒマス、以上數點ニ付キマシ
テ大藏大臣ノ御答辯ヲ御願ヒ致シマス
〔國務大臣石渡莊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=110
-
111・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 大河內子爵ノ
御尋ニ付キマシテ御答ヘ致シマス、此ノ會
計ハ、御尋ノ通リ支那ノ貿易ヲ致スト、斯
ウ云フ性質ノモノデハゴザイマセヌ、此ノ
會計ハ支那ニ於テ生產致サレル物、棉花、
羊毛、麻等ニ付テ、軍ガ進ミマシテ治安ノ
マダ囘復シナイ方面ニ於テノ物ヲ買フト、
斯ウ云フコトガ主ニナッテ居ルノデゴザイ
マシテ、決シテコチラカラ賣ルト云フコト
ガ、ソレニ對應シテ主ニナッテ居ルモノデハゴ
ザイマセヌ、結局其ノ方面カラ軍需品ノ原材
料ヲ買フト、斯ウ云フコトヲ主タル目的ト
致シテ居ルノデゴザイマス、ソレデ其ノ中、
結局兵馬ノ間ニ品物ヲ買フノデアリマスル
カラ、中ニハ軍需品ノ原材料トシテ不適當
ナ物モアルカモ分リマセヌ、斯ウ云フモノ
ハ別途賣拂フコトハアルト存ジマスガ、大
體此ノ會計ノ目的ト致シマスル所ハ、軍需
品ノ原材料ヲ之ニ依ッテ取得スルト、斯
ウ云フコトデゴザイマス、決シテ是ガ貿易
ヲ致ス、又支那ノ外國貿易ヲ獨占スルト、
サウ云フヤウナ性質ノモノデハ全然ゴザイ
マセヌ、治安ノ囘復致シマシタ方面ニ於キ
マシテハ、斯ウ云フコトヲ致サズニ、其ノ
方面ハ普通ノ商賣ニ勿論委ネル豫定デゴザ
イマス、ソレカラソレデモ物ヲ賣ル場合ガ
アルデハアルマイカト、斯ウ云フ御尋デゴ
ザイマスルガ、是ハ物々交換デアリマスト
カ、又ハ物ト軍票トノ交換ヲスルト、斯ウ
云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、是ハ極ク
例外的ニ行ハレルコトデアリマシテ、其ノ
物ヲ取得スル關係上、是非トモ必要デアル
ト云フ場合ニサウ云フコトガ行ハレルモノ
ト、斯ウ御考ヲ願ヒタイト思フノデゴザイ
マシテ、此ノ法案ノ趣旨ト致シマスル所ハ、
何處迄モ軍需ニ必要トスル品物ノ取得デゴ
ザイマス、ソレガ此ノ會計ノ目的デゴザイ
ママ、ソレカラ何處デ之ヲ行フカト、斯ウ
云フ御話デゴザイマスルガ、是ハ興亞院ニ
於テハ行ヒマセヌ、陸軍ニ於テ行フ豫定デ
ゴザイマス、會計檢査院ノ檢査ヲ受ケルカ
ト、斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、會計
檢査院ノ檢査ハ受ケマス、ソレカラ物品會
計規則ノ改正ヲ行ッテ、物品會計官吏ノ責任
ヲ明カニスルカドウカ、斯ウ云フ御尋デゴ
ザイマスルガ、ソレハ物品會計規則ノ改正
ノ要否ニ付テハ、目下考慮ヲ致シテ居ル次
第デゴザイマス
〔子爵大河內輝耕、君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=111
-
112・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 向フカラ物ヲ買ッテ、
コッチカラ物ヲ賣ルノガ貿易デナイト仰シ
ヤルナラバ、言葉ノ爭デスカラ止メマス、
サウ云フコトハ初メテ、併シ私ハ伺ヒマシ
ク、ソレデ尙漏レガゴザイマスルカラ、其
ノ漏レノコトヲ伺ヒタイ、第一ハ軍デヤル
ノダト云フヤウナ御話デアリマスカラ、ソ
レハ分リマシタ、物品會計規則ハ今考究中
デアルト云フコトデ、是モ分リマシタ、商
人ヲ壓迫スルヤウナコトニシナイト云フコ
トモ、御方針ハ分リマシタ、唯分リマセヌ
所ハ、此ノ賣買交換ノ相手方ヲドウスルカ
ト云フコト、受取ハ誰カラ取ルカト云フコ
トデス、軍ガ直接ニ其ノ支那人カラ買ッタ
リ、賣ッタリスル時ナラバ、受取モヤレマセ
ウシ、何デモヤレマセウガ、斯ウ云フ場合
ニハドウスルカ、詰ラナイ手續ヲ伺フヤウ
デスガ、詰ラナイ手續ヂヤナイ、中間機關
ト云フモノハ、斯ウ云フ場合ハ誤魔化シガ
出來ル、グカラ會計法ノ建前トシテ必ズ歲
入歲出ヲ通レト云フコトニナッテ居ル、其處
ニ中間ノモノハ許サレナイ、處ガ此處ニ中
間ノモノガ許サレルト云フコトニナリマス
ト、其ノ中間ノ人ガドンナ誤魔化シデモヤ
レルト云フコトニナル、此ノ點ガ不明デゴ
ザイマス、ソレカラ尙一點ハ、物品會計規
則モ改正サレルト云フコトデアルシ、斯ウ
云フ大事ナ問題ニ付キマシテハ委員會位
御置キニナッテ、十分ノ監督ヲサレルコトガ
必要ダト思フ、現ニ今委員長カラ御話ガア
リマシタ通リ、實ハ此ノ問題ニ付キマシテ
ハ、財政ノ權威者方ガ非常ニ心配ヲシテ居
ラレル、斯ウ云フコトガドウシテ圓滿ニヤ
レルダラウカ、日本ノ體面ヲ害スルコトガ
ナイヤウニヤレルダラウカト云フコトニ付
テ非常ニ憂慮ヲサレマシテ、委員會ニ於キ
マシテモ權威者ガ、不斷ハ餘リ仰シヤラナ
イ御方ガ御二人迄アレダケノコトヲ仰シヤッ
ク、誠ニ此ノ會期切迫ノ際ニ斯ウ云フモノ
ヲ出スト云フノハ實ニ遺憾デアル、不明ナ
點モ多々アルガ、時局ニ鑑ミテ協賛ヲシテ
カウ、後ノ運用ハ十分愼ンデ貰ヒタイ、
方ノ方ハ何ヲ言ハレタカト云フト、是ハ會
計法上ノ責任ガ極メテ不明デアル、動モス
レバ弊害ヲ生ゼムトスルヤウナ虞モアル、實
ハ私ハ、其ノ速記錄ハスッカリ拜讀致シマシ
テ、寫シテアスコニ持ッテ居リマスガ、此處
デ讀ミ上ゲルコトハ致シマセヌ、ソレ迄ニ
一般ノ心配サレテ居ル問題デアルカラ、斯
ウ云フコトヲ實際ノ運用ヲサレルニ付キマ
シテハ、有力ナ委員會デモ組織サレテ、能
ク此ノ趣旨ヲ明カニシテ少シモ之ヲ實行ス
ルコトニ付テ何等疚シイコトハナイト云フ
ダケノコトハ、明カニシテ御置キニナルコ
トガ必要デアルト思フ、會計檢査院ノ檢査
モ無論必要デアリマスケレドモ、何分ニモ
一年デ濟ム會計ヂヤナイ、戰爭ガ濟ム迄ハ
續ク會計デアルカラ、此ノ點ニ付テモウ少
シ御考ニナル必要ガアルマイカ、重ネテ御
尋ヲ致シマス
〔國務大臣石渡莊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=112
-
113・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 取引ノ相手方
ハ現地ノ生產デゴザイマス、ソレカラ委員
會ヲ設置シタラドウカト斯ウ云フ御尋デゴ
ザイマス、趣旨ヲ明カニ致スコトハ勿論必
要ナコトデゴザイマシテ、此ノ點ハ大藏省
トシマシテモ、陸軍省ト致シマシテモ、勿
論詳細ニサウ云フコトヲ致ス考デ居ルノデ
アリマスガ、委員會ヲ設置シタラ如何デア
ルカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ、只今ノ
所、委員會ヲ設置スル考ハ別ニゴザイマセ
ヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=113
-
114・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 簡單デゴザイマスカ
ラ2自席カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=114
-
115・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=115
-
116・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 初ノ御話ハ少シモ聽
エマセヌデシタカラ、ウモ一應御願ヒ致シ
マス、相手方ハ誰ダト云フコトヲ能ク聽取
レマセヌデシタカラ··
〔國務大臣石渡莊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=116
-
117・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 現地ノ生產者
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=117
-
118・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 買フ場合ニハ現地ノ
生產者デセウガ、賣ル場合バドウ云フ風ニ
ナリマスデセウカ
〔國務大臣石渡莊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=118
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119・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 此ノ會計ハ、
私ハ繰返シテ申上ゲテ居ルノデゴザイマス
ガ、買フノヲ本則ト致シテ居ルノデアリマ
シテ、別ニ貿易ヲ致ス會計デハゴザイマセ
ヌ、ソレデ例ヘバコチラカラ持ッテ行ッタ物
ノ中、先方ノ物ヲ買ッテ、サウシテ軍票ガ其
ノ爲ニ下ルト斯ウ云フヤウナ場合ノアリマ
シタ時分ニ、其ノ軍票ノ價値ヲ維持スル爲
ニ、コチラカラ持ッテ行ッタ品物ト其ノ軍票
ト交換シテヤルト云フヤウナコトハアルト
存ジマス、ガ是ハ極ク限ラレタ場合デアリ
マシテ、此ノ會計ノ目的ハ、決シテ賣ルノ
ガ目的デハゴザイマセズ、必要ナ軍需材料
ヲ買フノデアリマスカラ、主トシテ買フコ
トヲ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=119
-
120・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 ドウモ分リマセヌガ、
本議場デ餘リ質問應答モ如何カト思ヒマス
ノデ、是ハ此ノ邊ニ致シテ置キマス、唯先
程モ申上ゲマシタ通リニ、此ノ問題ニ付キ
マシテハ一般ニ非常ニ憂慮サレテ居ル問題
デアリマスカラ、ドウカ其ノ事ヲ吳々モ念
頭ニ置イテ運用セラレムコトヲ希望致シマ
ス、私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=120
-
121・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=121
-
122・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=122
-
123・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=123
-
124・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=124
-
125・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=125
-
126・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=126
-
127・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナゲレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=127
-
128・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=128
-
129・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=129
-
130・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=130
-
131・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=131
-
132・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=132
-
133・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=133
-
134・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=134
-
135・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十八、大
日本航空株式會社法案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長
兒玉伯爵
大日本航空株式會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵兒玉秀雄
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク〕
〔伯爵兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=135
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136・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 大日本航空株式會社法
ニ關シマスル委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報
告申上ゲマス、本案ハ我ガ國內ニ基點ヲ有
シマスル國際航空運輸事業及ビ國內ニ於ケ
ル航空事業ノ獨占的經營ヲ圖リマシテ、
方ニ於キマシテハ航空輸送事業ニ對シマス
ル投資及ビ助成ヲ主タル目的トシテ設立セ
ムトスルモノデアリマス、而シテ世界ノ情勢ト
極東ノ新事態ニ對應致シマシテ、國內航空路
ヲ伸張シ、日滿支三國ノ互助連環ヲ確立セム
トスルモノデアリマス、此ノ意味ニ於キマシ
テ、曩ニ本院ヲ通過致シマシタル國際電氣
通信株式會社ト、其ノ設立ノ趣旨ニ於キマ
シテモ亦會社ノ機構ニ於キマシテモ、頗ル
類似ノ點ヲ見出スノデアリマス、卽チ前者
ガ「ケーブル」ニ依リマシテ、東亞ニ於キマ
スル電氣通信ノ自主ヲ獲得スルコトヲ目的
トシマスルト致シマスルナラバ、後者ハ航
空輸送ニ依リマシテ、極東ニ於ケル空ノ自
主權ノ確立ヲ企畫スルモノト申シテモ誤ナ
イト信ズルノデアリマス、又其ノ機構ニ付
キマシテモ、本會社ニ對シマシテ資本一億
圓ノ約半額ヲ政府ガ出資致シ、且社債發行
ノ元利償還ノ保證竝ニ課稅ノ免除等、會社
ニ對シマスル政府ノ特典ニ至ル迄略、同樣デ
アルノデアリマス、唯玆ニ注意ヲシナケレ
バナラヌコトハ、航空事業ノ本來ノ性質上、
至ッテ收益性ニ乏シクアリ、而モ國家的重大
使命ヲ有スル關係上ヨリ致シマシテ、理論
上ヨリ見マスレバ、株式會社ノ形態ト致シ
マシテハ、果シテ適當デアルカト云フコト
ヲ疑ハレル程政府ハ巨額ノ補助金ヲ與ヘテ
居リマス、更ニ本會社ニ對シテ府政ハ六分
ノ配當ヲ保證ヲ爲スガ如キ、如何ニモ政府
ノ本會社ニ對シマスル保護助成ノ厚キヲ窺
ハシムルモノガアリマス、而シテ今囘設立
セラレマスル會社ハ、其ノ第一期計畫ト致
シマシテ、新線七萬「キロ」ヲ開設致シ、航
空路ノ延長ヲ圖ルト共ニ、更ニ支那ニ於キ
マスル中華航空株式會社ノ增資ヲ援助致シ
マシテ、日滿支間ノ聯繫ヲ緊密ナラシメム
トスルモノデアリマス、委員會ニ於キマシ
テハ、先ヅ現下ニ於キマスル航空輸送ノ現
狀及ビ最近ニ於キマスル航空事故ニ關スル
原因竝ニ救援ニ關スル詳細ナル說明ヲ求
メ、次イデ民間航空事業發達ノ爲ニ、啻ニ
航空輸送ノ擴大ノミニ止マラズシテ、廣ク
民間航空ニ關スル大衆化ヲ圖リ、之ヲ一般
國民ニ普及スルノ必要ヲ感ズルノデアリマ
スルガ、之ガ爲ニハ乘員ノ養成、飛行場ノ
擴張竝ニ航空ニ關スル學校〓育ノ普及ニ重
キヲ置クノ要緊切ナル旨ヲ述ベラレマシタ
ニ對シマシテ、政府ハ全然同感ノ意ヲ表シ、
殊ニ其ノ目的ヲ達成スルノニハ、先ヅ定期
航空ノ發達ノ必要ナルコトヲ痛說サレテ居
リマス、次ニ民間航空機ト軍用機トノ關係
ニ付キマシテ、最近ノ經驗ニ基キマシテ、
民間航空機ハ直接軍用ニ使用スルヨリハ寧
ロ後方連絡ニ重大ナル役目ヲ演ゼシムルヲ
適當ナリト申サレテ居リマス、又五年間ニ
亙リ五千萬圓ノ經費ヲ以テ、新タニ設立セ
ラルベキ中央航空〓究機關ハ、飛行機ニ關
シマスル學理的〓究ヲ爲スニアラズシテ、
專ラ直接實用ヲ目的トスル〓究機關ナル旨
ヲ述ベラレテ居リマス、飛行機用ノ揮發油
ノ精製、液體燃料ノ擴充、地上設備ノ整備
擴張、會社ノ附帶事業、乘員ノ兼職制限ニ
關スル件、旅客運賃ノ低減、乘員事故ニ關
スル慰藉、政府補助金支給ノ方法、政府補
助金額ヲ十年ト定メタル理由、政府ノ會社
ニ對スル現物出資等、各條ニ關スル質問應
答ガ重ネラレマシタノデアリマス、尙航空
省新設ノ機運ニ付キマシテハ、政府ハ各省
ト協議ヲ重ヌルノ必要アル重大ナ事項デア
リマスカラ、直チニ之ニ對シテ明答ヲ與ヘ
難イノデアリマスルガ、今日ノ時局ハ漸次
其ノ方向ニ向ヒツヽアル旨ヲ明言サレテ居
リマス、其ノ他民間飛行團體竝大阪飛行場
ノ擴張ニ關スル件等ノ質疑ヲ終ヘマシテ、
更ニ一委員ヨリ、元來本會社ハ日滿支三國
ノ航空關係ノ有機的聯繫ヲ確保スルヲ主タ
ル目的トスルノデアルナラバ、日滿支ノ航
空事業ヲ一體ト成スノ要ガアルガ、如何ト
云フ質問ニ對シマシテ、而モ中華航空會社
ハ、本會社トノ親子關係ニナラムトスルノ
傾向ノアルニ拘ラズ、滿洲航空會社ニ對シ
テハ、全然別個ノ存在ヲ認ムルノハ、航空
行政上竝ニ國策遂行上缺陷少クナイト考ヘ
ルノデアル、仍テ將來ニ於テハ三位一體ノ
理想ヲ實現スルノ必要ヲ感ズルノデアリマ
ス、故ニ滿洲航空會社ニ對シマシテハ此ノ
際一步ヲ進メテ其ノ實行ヲ考慮スルノ必
要アルニアラズヤト云フ質問ニ對シマシテ、
政府ハ現下ノ實情ニ於キマシテハ、內地ノ
定期航空モ未ダ十分デナイ、支那ニ於キマ
スル政情モ安定スルニ至ラズ、滿洲航空會
社ハ又特殊ノ關係ニ立ッテ居ルノデアリマ
スルカラ、今直チニ之ヲ統合スルハ無理ト
考ヘル次第デアリマスルガ、若シモ今日ニ
於キマシテモ滿洲航空會社ニ於テ、本會社
ノ出資ヲ要スル場合ノ如キニ於キマシテハ、
之ニ投資シテ其ノ關係ノ一層緊密ヲ圖リタ
イト考ヘテ居ル、又日滿支ノ三會社ガ各別
ニ行動シ、爲ニ第三國ニ對スル對抗力ノ減
退ヲ防グ爲ニハ、政府相互間ニ連絡ヲ保ツ
ト共ニ、各會社間ニ於テモ密接ナル協調ヲ
保持スルニ努メ、其ノ關係ニ於キマシテハ、
本會社ハ重大ナル役目ヲ負フモノデアルト
言ッテ居リマス、要スルニ政府ガ、日滿支一體
トナリ、東亞ニ於ケル航空發達ヲ圖ルニ十
分ナル確信ヲ有スル旨ヲ明言サレテ居ルノ
デアリマス、最後ニ重役ノ選任ニ關シマス
ル衆議院ノ修正事項ニ付キマシテハ、政府
ハ航空事業ハ近時漸ク發達ノ〓ニ著カムト
スル際デアリマスルカラ、官民孰レノ方面
ヨリモ適當ナ人材ヲ得テ、之ヲ經營セシム
ルノ必要ヲ感ズルノデアリマスルガ、若シ
モ兩院ニ於テ此ノ修正ニ御同意ニナルナラ
バ、政府ニ於テモ、敢テ異議ヲ唱フルモノ
デハナイト述ベラレテ居リマス、斯クシテ
質疑ヲ了リマシテ討論ニ入リ、一委員ヨリ
贊成ノ意見トシテ述ベラレタ所ハ、本案ハ
我ガ航空政策上、劃期的飛躍ヲ爲サムトス
ル我ガ國ノ現狀ヨリ當然ノ施設デアリ、方
策デアルト考ヘルノデアリマス、而シテ近
時簇出スル此ノ種ノ國策會社ノ通弊トシテ、
政府ノ保護ニ甘ンジ、其ノ仕事振ガ兎角放
漫ニ流レ、其ノ堅實性ヲ缺キ、業務擧ラザ
ルノ傾アルハ頗ル遺憾ニ堪ヘザル所デアリ
マン、殊ニ本會社ニ對スル政府ノ補助特典
ハ他ノ國策會社ニ比シ、一層多大ナルモノ
ガアルノデアリマスルカラ、自然業務上ノ
緊張性、眞劍味ヲ缺グノ虞ガ多々アルト思
フノデアリマス、依ッテ政府ハ嚴重ナル監督
ト周到ナル指導ノ下ニ、國民ノ期待ニ背カ
ザルヤウ善處セラレムコトヲ希望スル次第
デアリマス、又國策上ヨリ觀マスレバ、在
支及ビ在滿ノ航空會社ハ航空行政上、之ヲ
單一化スルノ必要アリト考ヘルノデアリマ
ス、政府ニ對シテ此ノ點ニ付キテ考慮ヲ希
望スルノデアリマス、此ノ希望ト意見トヲ
以テ本案ニ贊成スル旨ヲ述ベラレタノデア
リマス、更ニ又本案ハ交通上ハ勿論、政治
經濟上、文化上非常ノ效果ヲ齎スコトデア
ルシ、殊ニ戰時ニ於テハ我ガ空軍ノ補助機
關トシテ、其ノ效果ノ更ニ著シキモノヲ信
ズルノデアリマス、併シナガラ是等ノ效果
ハ偏ニ優秀且潤澤ナル揮發油ノ準備ニ俟ツ
所以デアリマスルカラ、政府ニ於キマシテ
ハ、十分此ノ點ニ留意セラレタイ、此ノ意
味ニ於テ贊成スルモノデアルト述べラレタ
ノデアリマス、斯クシテ討論ヲ了リ採決ニ
入リ、衆議院ノ送付ニ係リマスル大日本航
空株式會社法案ハ全會一致可決セラレタノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=136
-
137・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐住木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=137
-
138・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=138
-
139・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=139
-
140・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=140
-
141・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=141
-
142・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=142
-
143・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、本案全部委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=143
-
144・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=144
-
145・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=145
-
146・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=146
-
147・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=147
-
148・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=148
-
149・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第三
讀會ヲ開キマス、本案全部第二讀會ノ決議
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=149
-
150・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=150
-
151・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第十
九、支那事變特別稅法中改正法律案、日程
第二十、臨時利得稅法中改正法律案、日程第
二十一、臨時租稅措置法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長
報〓、是等ノ三案ヲ一括シテ議題トナスコ
トニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=151
-
152・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長林伯爵
支那事變特別稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時利得稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時租稅措置法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=152
-
153・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今上程サレマシタ支
那事變特別稅法中改正法律案外二件、此ノ
特別委員會ニ於ケル經過ヲ御報告致シマス、
此ノ初ノ二案ハ所謂增稅案デアリマス、其
ノ額約二億ニ當リマス、第三ニ上程サレテ
居リマス所ノ此ノ臨時租稅措置法案ト云フ
モノハ、是ハ減稅及ビ免稅ノ產業保護ノ方
面ニ當ッテ居リマス、要スルニ過般通過致シ
マシタ追加豫算ガ四十六億アルノデアリマ
ス、此ノ大豫算ニ對シマシテ增稅ガ二億ト
云フノハ如何ニモ少イヤウニ思ヒマスガ、
此ノ二十二日ヨリ三日間審議致シマシタ結
果、之ヲ詳細ニ〓究シテ見マスト云フト、
非常ニ細カナ點迄〓究ガ屆イテ居ルノデア
リマシテ、之ニ依ッテ見マシテモ「インフレL
ノ方ハ如何ニヤサシイモノデアルカ、增稅ノ
方ハ如何ニ困難ナモノデアルカト云フコト
ヲ自覺セシメラレタノデアリマス、卽チ此
ノ四十六億五百萬圓ト云フ臨時軍事費追加
豫算ニ對シマシテ、此ノ故ニ無論大部分ハ
公債ニ依ラナケレバナラナイ、而シテ其ノ
一部ヲ增稅デ支辨スルト云フノガ此ノ增稅
案ノ趣旨デアリマス、臨時利得稅ハ非常時
局ノ好景氣ノ利得ニ課稅スルモノデアル、
之ニ甲種利得ト乙種利得ノ區別ガアリマス
ガ、御承知ノ通リ昭和四年、五年、六年ノ
間ノ利益ヲ平均シテ其ノ率ヲ出シ、之ヲ合
算シタモノヲ基礎トシテ甲種利得ノ課稅ヲ
決メタモノガ甲種デアリマス、此ノ支那事
變ノ始ッテカラ前三年、卽チ昭和八、九、十、
此ノ間ニ於キマシテハ相當ニ好景氣ニナツ
タノデアリマス、其ノ後ハ重工業ガ更ニ盛
ニナッテ今日ニナッテ居ル、此ノ大ナル產業
發展ノ兆ヲ成シタ所ノ三年間ノ利益ヲ基礎
ト致シマシテ乙種利得ノ課稅ト云フモノガ
出來テ居リマス、玆ニ於テ、甲種、乙種ト
區別ガアリマスガ、此ノ增稅案ハ、大ナル
利益ヲ獲得シテ居リマス所ノ乙種利得、其
ノ方面ノ增稅ヲ主眼トシテ居ルト云フコト
ヲ御記憶ヲ願ヒタイ、新シイ乙種利得ノ稅
率ハ、法人デハ三割三分引上ゲマシテ百分
ノ四十トナッタノデス、個人デハ、二割五分
引上ゲマシテ百分ノ二十五トナリマシタ、
前ノ古イ方ノ、卽チ甲種利得ニハ、是ハ極
メテ輕微ナル增徵ヲシタノデアリマス、法人
ニハ百分ノ二十、個人ニハ百分ノ十二デアリ
マス、ソレカラ個人ノ船舶、鑛業權等ノ讓渡
ニ依ル利益ニハ從來ハ課稅シテ居リマセヌ、
法人デナク個人ノハ課稅シテナカッタノデ
アリマスガ、此ノ稅率ハ、是ハ相當ノ利益
ヲ收メテ居リマスカラ、百分ノ二十五ヲ課稅
スルコトニナリマシタ、次ハ配當ノ稅デア
リマス、利益配當稅、一昨年八月北支事變
特別稅トシテ、是ハ出來タノデアリマスル
ガ、ソレニ依ルト年七分ヲ超エル部分ニ百
分ノ十、卽チ一割ヲ課スルト云フコトデアッ
タノデアリマス、今囘配當年一割ヲ超ユル
部分ニ對スル稅率ニ向ヒマシテハ百分ノ十
五ト云フコトニ改メタノデアル、又低イ方ノ
モノハ〓デアリマスルガ、年四分ヲ超エル
國債ノ利子及ビ年四分五厘ヲ超エル公社債
利子ニ對シマシテハ、是ハ率ガ上デアルカ
ラ、特別ニ課稅ヲスルコトニナッタノデアリ
マス、公債及ビ社債利子稅ニ付テハ一割ヲ
一割五分トスルノデアリマス、〓涼飮料稅、
是ハ下級ナル「ラムネ」ハ輕微デアリマスル
ガ、「サイダー」、「シトロン」ニハ高率ノ引
上ヲシテアリマス、砂糖消費稅、稅額ニ付
テ平均一割增徵スルコトニナッテ居リマス、
印紙稅、物品切手ノ稅率ヲ多少引上ゲテア
リマス、物品稅、是ガ相當範圍ガ廣イノデ
アリマス、デ之ニハ負擔力モアリ且不急ノ
消費ニ對シテハ課稅ヲスル目的デ、課稅品
目ノ範圍擴張ト稅率ノ引上ガ行ハレテ居リ
マス、茶是ハ下級品ヲ省キマス、齒磨ニ
ハ粉齒磨ヲ省ク、其ノ外ニハ課稅最低限ヲ
設ケマシテ大衆ノ負擔增加ヲ避ケテアルヤ
ウデアリマス、次ハ酒デアリマス、〓酒、
白酒、味淋、燒酎、麥酒、一石五圓ヲ十圓
ニ、葡萄酒一石十圓ヲ十五圓ニ、酒精含有
飮料ニ付キマシテハ一石七圓ヲ十四圓ニ、
相當上ッテ居リマス、果實酒ニ對シマシテハ
新タニ葡萄酒ト同率ノ課稅ヲ致スコトニナッ
テ居リマス、飴葡萄糖、麥芽糖、是ハ百
斤二圓ノ率デアリマス、是ハ後ニ衆議院デ
修正ニナリマシタ、建築稅、是ハ御承知ノ
如ク、材木ト云フモノニ對スル貯蓄ヲシナ
ケレバナラナイシ、色々ノ節約モシナケレ
バナラナイカラ、成ルベク不急ナモノハ抑
ヘナケレバナラナイ、仍テ一萬圓以上ノ住
宅、料理店、貸席、劇場、活動寫眞館等ニ
ハ建築價額ノ一割ヲ課稅スルト云フコトニ
ナッテ居リマス、遊興飮食稅、地方稅タル從
來ノ遊興稅ヨリモ高率ノモノデ之ヲ課稅ス
ルコトニナリマシタ、之ニ伴フ地方ノ減收
ハ國庫ヨリ年二千萬圓宛交付スルコトニナ
リマシテ、是ハ極ク大要デアリマス、之ヲ
全部通算致シテ見マスト、臨時利得稅ニ於
テ約八千八十萬圓、利益配當稅八百五十萬
圓公債、社債利子稅七十萬圓、〓涼飮料
稅二百二十萬圓、砂糖消費稅千百五十萬圓、
印紙稅百萬圓、物品稅五千五百八十萬圓、
建築稅二百萬圓、遊興飮食稅三千七百六
十萬圓、全部込メテ約二億圓ニナル譯デア
リマス、是ハ總テ臨時軍事費ノ財源ニ入ル
ト云フ說明デアリマス、次ニ第三ニ載セテ
アリマスル所ノ、臨時租稅措置法中改正法
律案、是ハ先程申シマシタ通リ、減免稅ノ
部分ニ屬スルノデアリマス、長期建設ヲ爲
シテ生產力ノ振興ヲ圖ルト云フコトハ目下
ノ急務デアリマス、故ニ增稅ト共ニ一方產
業ノ發展ヲ促進スル爲ニ、減免稅ヲ行ハ
ナケレバナラナイ爲ニ此ノ法律ガ出來タ
ト云フノデアリマス、法人ニハ利益ノ
留保ヲ多額ニサセル主義デアル、利益ノ
中カラ出來ルダケ多ク會社ニ留保ヲサ
セル、サウシテ生產ノ擴充ヲ促進スル、
從ッテ之ニハ所得稅ノ輕減ヲ行ッテ居リマス、
重要物品製造業者ハ初メノ四年間所得稅、
營業稅、收益稅ヲ免除シテ居ルノデアルガ、
其ノ一定程度以上ニ設備ヲ增設シタ時ニモ
免除ヲスル、國庫補助金中時局ニ緊要ナル
生產ニ關スルモノニハ課稅上益金ニ數ヘナ
イ、緊要ナル事業ニハ成ルベク固定資本ノ
減價償却ヲ多クシマシテ、其ノ減價償却ヲ
多クスル程、基礎ノ鞏固ニナルト云フコト
ハ明カデアリマス、又從ッテ生產ノ擴充ヲサ
セルコトモ出來ルノデアル、卽チ租稅上ニ於
キマシテノ適當ナル措置デアルト考ヘルト
云フコトデアリマス、之ニ付キマシテ以上
ノ三案ニ付テ大體ノ說明ヲ致シタノデアリ
マスガ、此ノ第三ニ付キマシテノ減收ノ稅
額ト云フモノハ千四百九十萬圓位シカナイ
ノデ、其ノ初年度ハ千百三十萬圓ニナルノ
デアリマス、之ニ對シマシテ衆議院デ若干
ノ修正ガアリマシタ、一、臨時利得稅ニ付
キマシテ、讓渡利得ノ課稅ト云フモノガ、
少シ遡ッタノデアリマスガ、政府原案デハ昭
和十三年一月一日ニ迄及ンデ居ッタモノヲ、昭
和十四年一月一日迄ニ及スコトニ修正致シ
マシタ、同時ニ讓渡利得ノ課稅方法ヲ政府
原案デハ前年中ニ於ケル卽チ昭和十三年中
ニ於ケル一月一日カラ十一一月末ニ至ル讓渡
利得ノ實績ニ對シ課稅スルコトトナッテ居リ
マシタノヲ、之ヲ修正シテ讓渡ノ都度課稅
スルト云フコトニ修正シタノデアリマス、
二、新規ニ探鑛シタル鑛業權等ノ讓渡ニ對
スル臨時利得稅ノ免稅條項ガ、政府原案デ
ハ昭和十四年四月一日以後原始取得シタル
モノヨリト云フコトニナッテ居リマスモノ
ヲ、昭和十四年一月一日以後原始取得シタ
ルモノ迄遡ッテ免稅スルコトニ修正シタノ
デアリマス、ソレカラ物品稅ニ付キマシテ
ハ政府原案ニ依ッテ其ノ課稅範圍ヲ擴張スル
モノノ中デ、化粧用石鹼、齒磨、綠茶ヲ削
除スルコトニ修正致シマシタ、飴ニ對シマ
スル課稅ガ政府原案デハ百斤二圓デアリマ
シタモノヲ、麥芽飴ト麥芽飴以外トノ兩者
ニ區別シマシテ、麥芽飴ニ對スル稅率、是
ハ百斤ニ付キ一圓五十錢ニ修正シタノデア
リマス、第四ハ遊興飮食稅ニ付キマシテハ、
政府原案デハ「藝妓ノ招聘料」ト云フ字句ヲ
用ヒテ居リマシタモノヲ、「藝妓ノ花代」ト
云フ字句ニ修正シタモノデアリマス、是ガ修
正ノ要領デアリマス、是ヨリ質問ニ付キマ
シテ極ク〓略ヲ申上ゲテ見タイト思ヒマス、
今囘ノ增稅ノ目的如何、增稅ヲシテモ、「イ
ンフレ」ヲシテモ、何ダカ底ノ無イ井戶ニ水
ヲ汲入レルヤウナモノデアッテハドウモ困ル
ノダガ、此ノ目的ハ何處ニアル、之ニ對シ
テ政府ハ今囘數十億ノ金ガ兎ニ角撒カレル、
金ガ撒カレヽバ、大衆ノ購買力ガ殖エルコ
トハ當然デアリマス、故ニ臨時利得ト高價
ナル物品ニ課稅ヲシマシテ、以テ購買力ヲ
抑ヘ、サウシテ節約サセルト云フコトニ於
テ此ノ增稅ノ目的ハ一貫シテ居ルノダト云
フ御答デアリマシタ、公債又公債、增稅又增
稅ト云フヤウナ傾向デアルガ、一體公債ノ
發行額ハ際限ガナイモノデアラウカト云フ
コトデアリマス、之ニ對シマシテ大藏大臣ハ申
サレルノニハ、世ノ中ニハ一人デ以テ五千萬
圓借金シテ居ル者モアル、國ハ幾ラデモ借金
ガ出來ヤシナイカト云フコトニナルト、サウ
ハ行カナイ、無制限ニ出來ルモノデハナイ、
必要ト經濟狀態ノ現狀ニ卽シテ行ハナケレ
バナラナイ、「インフレ」ヲスルニシテモ、
公債ヲ出スニシテモ、一方ニ物ガナケレバ
少シモ働クモノデハナイ、又國際收支ノ關係
モ考ヘテ見ナケレバ、公債ノ發行ハ出來ナ
イノダカラ、公債ソレ自體ハ幾ラデモ政府
ガヤレルヤウデアルケレドモ、能ク現狀ニ
卽スルト云フコトカラ考ヘルナラバ、自ラ
環境ノ制裁ガアルガ、其ノ環境ノ制裁ニ依ツ
テ制限ヲ受ケルノデ、決シテ際限ガナイト
云フヤウナコトデハナイ、併シ公債ハ今日
以後ニ於テモ、モット出セルト思フ、何トナ
レバ日銀ノ持込ノコトヲ調ベテ見ルト、ド
ンドン是ガ減ジテ居ル、公債ノ賣行ハ今日
頗ル好クテ、消化シテ居ルノデアルカラ、
マダ〓〓公債ヲ出シテモ差支ナカラウト云
フ今日ノ狀況デアル、ソレカラ斯ウ云フ
皮肉ノ質問モアルノデス、五十九億ノ三分五
厘ト云フコトヲ考ヘテ見ルト、丁度二億圓
位ニナルノダ、ダカラ、此ノ二億圓ノ增稅
ト云フモノハ、公債ノ利拂ノ爲ダト云ッタ方
ガ常識デハナイカ、之ニ對シテ大藏大臣ハ
公債ノ利子ヲ支拂フト云フコトハ、是ハ經
常費デヤラナケレバナラナイ、經常收入デ
賄フベキモノデアルカラ、公債ノ利子ヲ拂
フノニ公債ヲ以テスルナント云フコトハ、
是ハ出來ルモノデハナイ、公債トシテ國民
ニ借金ヲシテ、而シテ國民ニ拂フ利子モ國
民カラ借金ヲシテ公債デヤルト云フヤウナ
コトハ、結局國家ガ是ハ無利子ノ金ヲ借リ
ルト云フヤウニナル、サウ云フ不合理ナコ
トハ出來ルモノヂヤナイ、デ、此ノ五十九
億ノ利子ト符合スル、相當スルデハナイ
カト云フ、丁度ソレニ偶然符合シタノデハ
ナイカト言ハレヽバ、ソレハソレニ相當ス
ル金額ニナッタト云フコトハ申上ゲラレル
ケレドモ、決シテ其ノ目的ノ爲ニ此ノ增稅
ヲシタノデハナイ、公債ガドウモ多過ル、
增稅ノ方ヲモット澤山スルト云フコトガ必要
ヂヤナカラウカ、成ル程公債ヲ澤山出スト
云フコトハ、是ハ惡性「インフレ」ヲ起スコト
ダ、是ハ經濟界ニ一般ニ非常ニ危險ガアル、
購買力ノ增進ヲ制スルト云フコトガ增稅デ
アル、而モ今日自然增收ノ狀況ヲ見ルト、
二億五千萬圓モ自然增收ガアル、ダカラ、
此處デ增稅ヲシテ二億出來ル、兩方合セル
ト五億ニ近クナル、何モ無理ニ增稅ニ依ッテ
利子ヲ拵ヘナクタッテモ、自然增收ノ方カラ
ソレハ自然拂ヘルト言ッテモ差支ナイ、ソレ
ダカラ決シテ增稅ト云フモノハ公債ノ利子
ヲ拂フ爲ニヤッタンヂヤナイ、次ニ昭和十五
年度ニ行ハレル稅制整理ト云フコトニ關シ
マシテノ質問ガアリマシタ、是ハ今日準備
シテ置ク必要ガアル、是ハドウスルノデア
ルカ、之ニ對シテハ負擔ノ公平ト產業政策
ニ順應シタイ、全體ノ租稅ニハ彈力性ヲ持
セタイ、今日迄有效デアッテ、今日迄ノ稅種
ヲ色々調ベテ見ルト、其ノ中心トナッテ居ル
モノハ所得稅デアッタ、此ノ所得稅ガ總テノ
稅ノ二分ノ一ヲ占メテ居ルト云フコトカラ
考ヘルト、ドウモ所得稅中心論ト云フコトニ
ハ理由アリト考ヘル、又增收ト云フコトモ
考ヘル、併シ此ノ意味ノ中ニハ增稅卽チ稅
率ヲ高クスルモノモ起ル、同時ニ產業發展
上ノ自然增收ト云フコトモ考ヘナケレバナ
ラナイ、日〓戰爭ノ時ニハ八千萬圓、日露
戰爭ノ時ニハ二億、今次ハ二十一億、併シ
ナガラ稅率ハ必ズシモ十倍ニハナッテ居ラ
ナイ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、之ニハ減率モ
增率モアル、稅率ノミヲ上ゲテ抑壓スルト
云フコトハ出來ナイ、デアルカラ、稅制整
理ヲ爲スニ當リ全體ニ稅率ヲ上ゲルナント
云フコトハ考ヘテ居ラナイ、何レニ負擔ノ
餘地アリヤハ按配上ノ問題デアル、日本ノ
社會政策ト云フモノハ、所得稅ナドニ譬ヘ
テ見レバ、ズット上ノ方ト免稅點以下トニ頗
ル輕クナッテ居ル傾向ガアル、是ハ矢張リ考
ヘテ置カナケレバナラナイ、要スルニ產業
ノ發展ヲ妨ゲナイヤウニ行ハナケレバナラ
ナイ、又地方稅ニ付キマシテモ、地方ノ獨
立稅、附加稅、政府ヨリノ交付金、此ノ三者
ヲ能ク考慮シテ、稅制整理ヲ行ヒタイモノ
デアルト云フコトデアリマス、又累進稅ト
比例稅ニ付テノ色々ノ問答ガアリマシタ、
日本ハ元來累進稅ヲ以テ進ンデ來テ居ッテ、
又是ト同時ニ是ト竝行シテ經濟界ガ發達ヲ
シテ來タノデアルカラ、此處ニ英國式ノ比
例稅ヲ持ッテ來ルト云フコトハナカ〓〓ム
ヅカシイ、或委員ヨリ日本ハ古來累進稅ナ
ント云フモノハ無カッタノデアル、比例的ニ
稅ハ行ハレテ居ッタノニ、斯ウ云フ變ッタモノ
ヲ入レルト云フコトハドウデアルカ、斯ウ
言ッタ處ガ、政府ハソンナコトヲ言ヘバ、軍
艦ハ昔ハ無カッタノダ、艦隊モ昔ハ無カッタ
ノダ、軍艦ト云フモノガ今日ドウシテモ避
クベカラザル必要ナモノデアルカラ、新シ
イケレドモ、累進稅ト云フモノハ產業ノ發
達ト竝行シテ居ルコトカラ考ヘテ、是ハ必
要ダ、ソレカラ相續稅ノコトニ付キマシテ
隨分議論ガアリマシタ、而シテ皆サンモ是
ハ能ク仰シヤルコトデアリマスガ、相續稅
ハ地方ニ於キマシテハ土地ヲ非常ニ多ク持ツ
テ居ッテ、動產ヲ持ッテ居ラナイ場合ニ、之
ヲ納メル方法ガナイ、ソレダカラ土地デ納
メル物納ト云フモノハドウデアルカト云フ
コトデアリマシタ、是ハ色々マア考慮シテ
見タイト云フコトデアリマス、又家屋稅ヲ
國稅ニシタラドウカト云フコトニナリマス
ト云フト、家屋稅トカ戶數割ト云フモノヲ
國稅ニスルコトハ、是ハ考慮ハスルガ、ナ
カナカムツカシイ、財產稅モムツカシイ、
之ニ關聯シマシテ、稅務官ト云フモノヲ非
常ニ熟練シタルモノニシナクテハナラナイ、
之ヲ養成シ、之ヲ仕上ゲル所ノコトハ考へ
テ居ルカ、是ハ十分ニ考ヘテ居ル、特ニ其
ノ必要ヲ感ジテ居ル、處ガ例ヲ擧ゲテ言ヘ
バ、此ノ頃半官半民ノ會社ニハ天降リト云
フコトガ流行シテ居ルト云フコトヲ非常ニ
非難シテ居ル人ガアル、卽チ官吏ノ方デモ
要ラナイ人、會社デモ來テ貰ヒタクナイ人
ガ重役、社長ニナルノヲ天降リト稱スルノ
デアル、然ルニ是ト全ク反對ニ稅務官ハ今
日非常ニ之ヲ能ク養成シタ爲ニ有能ナ者ガ
多イ、大藏省デモ是非居ッテ貰ヒタイ、諸會
社デハ是非來テ貰ヒタイ、而シテ官吏ノ俸
給ヨリモ四倍、五倍ノ金ヲ拂フカラ、來テ
下サイト言ハレルト云フト、ドウモ若干出
テ行ク傾向ガアル、是バカリハドウモナカ
ナカ止メルコトガ出來ナイノニ苦心シテ居
ルト云フ話ガアリマス、併シナガラ無論是
ハ養成シテ居ル、又甲種利得稅ハ昭和四
年、五年、六年ト云フ是ハ古イ稅デアッテ、
大シタコトハナイガ、止メタラドウカ、此
ノ事ニ付テハ〓究シタイ、併シ昭和七年カ
ラ八、九、十ト段々景氣ガ好轉シテ居ル、
此ノ時代ノ大利得ヲ得タ者ニ對シテ、甲種
ヲ止メルト云フコトニナルト、大會社ハ大
減稅トナルヤウナコトガ起ルカラ、是モ考
ヘナケレバナラナイ、支那事變特別稅法、
此ノ第二條第三項ノ改正ニ、增徵稅額ノコ
トヲ言ッテ居リマス、「普通所得ノ百分ノ五十
五ニ相當スル金額ヨリ普通所得中留保シタ
ル金額ノ百分ノ十五ニ相當スル金額ヲ控除
シタル殘額」ト書イテアリマス、之ニ付キマシ
テ從來ノ五十「パーセント」カラ五十五「パー
セント」ニ今度改メタノハドウモ高過ギル、
是ハドウデアルカ、之ニ對シマシテ、政府ハ詰
リ五十ガ五十五ニナッダノデアリマスカラ、五
〓パーセント」ダケ上ゲタノデアリマス、
是ハ會社ガ少シモ留保セザル場合ニ、少シ
モ留保金ガ無クテ、全部配當スルトカ云フ
ヤウナ時ニ五十五ニ當ルコトニナルノデアル
ガ、少シデモ留保シテ政府ノ言フコトヲ聽ケ
バ、五十五カラ下ッテ行ク、普通會社デハ今日
四割留保スルト云フノガ例ニナッテ居ルノ
デアル、四割ガ普通デアル、其ノ四割ノ所
デ計算スルト云フト、四十九「パーセント」
ニナルノデアル、ダカラ五十ニ近イ今迄通
リニナッテ居ルノデアル、是ガ大部分ヲ占ム
ベキデアリマス、而シテ會社ノ普通所得カ
ラ利益ノ全部ヲ留保シタ場合ニハ、其ノ四
十ㄱパーセント」ノ稅ヲ拂ハナケレバナラナ
イダケデアッテ、一番低イ四十「パーセントㄴ
ヘ行クノデアル、四十「パーセント」カラ五
十五「パーセント」ノ間ニハ丁度「スライデ
イング·スケール」ニナッテ居リマシテ、是ハ
丁度能ク行ッテ居ッテ、五十ト云フ所ガ中心
ニナッテ居ルノデアルカラ、決シテ是ハ多過
ギルト云フコトノ憂ハナイノデアル、
船舶、鑛業權ノ讓渡、是ガ百分ノ二十五
トナッタノデアリマス、衆議院ノ修正ニ對シ
テ同意デアルカ、是ハ先程モチヨット申上ゲ
マシタガ、昨年卽チ昭和十三年ノ一月一日
カラ十二月末迄ノ間ニ讓渡ヲシタ場合ノ額
ヲ計算シマシテ、ソレヲ基礎トシテ今年課
スルト、斯ウ云フ風ニナッテ居ッタノデアリ
マスノヲ、衆議院ハ此ノ法律ガ出テカラ稅
ヲ取ルナラ當リ前ダガ、此ノ法律ガ出ル前
ニ遡ッテ、去年ノ一月一日カラ十二月迄ノ間
ノ利益ニ稅ヲ課スルト云フコトハ、是ハ如
何ニモ殘酷ナモノデアルカラ、今年ノ一月
一日ニ直シタイト、斯ウ云フノデ、修正ガ
出來タノデアリマス、而シテ今年ノ一月一
日カラ其ノ讓渡ノ行ハレタ度每ニ課稅ヲス
ルト云フコトニナッタノデアリマスカラ、ド
ウセ今年課シテモ、今年ノ金ガ入ル、今年
ノ一月カラ課シテモ今年金ガ入ルノダカラ、
金ノ入リ方ニハ大シテ差ガナイト云フコト
デアリマシタ、ソレカラ玩具ナドハ、是ハ子
供ノ必要品デアルガ、是ハドウデアルカ、
是ハ免稅點ガ高イ、免稅點ガアルカラ、大
シタコトハナイ、運動具ニ於キマシテモ、
軟球ニハ課稅シテナイノデ、免稅點以下ノ
モノガ多イノデアル、小學生ノ體育ト云フ
ヤウナモノニハ一向關係ガナイガ、金屬製
デアルトカ、革デ作ッタモノニハ是ハ課スル
ノデアル、是ハ今日必要ナコトデアル、又
物品切手ノコトニ付キマシテモ色々御議論
ガアリマシタ、入場税ニ付キマシテモ御議
論ガアリマシタガ、是ハ省キマス、ソレカ
ラ產業組合ノコトハ少シ重大デアルカラ、
申上ゲテ置キタイ、今日產業組合ガ非常ニ
發達ヲ致シマシテ、產業組合ガ組合員ニ對
シマシテ色々利益ヲ圖ッテ居ル、產業組合ガ
商賣ヲ殆ドシテ居ル今日ハ······サウシテ中
小商人ノ方面ニドン〓〓喰ヒ込ンデ居ルノ
ガ現狀デアルノダ、產業組合ハ無稅デアル、
商人ハ稅ヲ拂ッテ居ル、是ハ迚モ相撲ニナラ
ナイノデアルカラ、一方ニ於テ產業組合ガ
無稅デアルナラバ、一般ノ中小商工業者ニ
對シテモ何カ國家ガ補助シタラドウダラウ
カ、ソレデナケレバ權衡ガ取レナイヂヤナ
イカト云フコトニ付テノ問答ガアリマシタ、
是ハ非常ニムツカシイコトデアル、何トナ
レバ產業組合ハ利益ヲ得テ居ラナイモノガ
多イ、而モ安ク買ッテ高ク賣ルナラバ商賣ダ
ケレドモ、是ハ公益ノ團體デアッテ、時ニハ
高ク買ッテ安ク供給スル場合モアルノダカ
ラ、之ニ課稅ヲスルト云フコトニナルト困
難ナモノデアルシ、又餘リ取レナイ、ソレ
カラ購買組合ノ課稅、是モムツカシイ、公
設市場ハドウデアルカト云フト、公設市場
ノ小賣ト云フモノハ商人ガ入ッテヤッテ居ル
ノデアルカラ、是ハ稅ヲ取ラレテ居ルカラ
差支ナカラウ、次ニ問題ニナリマシタノ
ハ、遊興飮食稅デアリマス、家庭的ニ品
行ガ良ク、食事ヲシテ歸ル時ニ、此ノ家
庭的ニ〓事ニ行ッタ場合ヲ課稅ヲスルノ
ニ對シテ、遊興稅、遊興飮食稅ナント云
フモノハ、ソレハ甚ダ以テ不穩當ヂヤ
ナイカ、先ヅ以テ此ノ名前ガイケナイ、今
年ハ仕方ナイニシテモ、稅制整理ノ時ニハ
考ヘテ貰ヒタイト云フコトデアリマス、是
ハ大正八年金澤カラ遊興稅ト云フモノガ
始ッテ、今日迄ズットモウ仕來リニナッテ居ッ
テ、モウ遊興稅ト云フコトハ耳ニ大衆ガ慣
レテ居ルノダカラ、サウ差支ハナカラウカ
ト云フヤウナ答辯モアリマシタ、又遊興稅
ト云フモノハ、景氣ノ好イ時モ惡イ時モ、
ドウモ地方稅トシテハ餘リ變化ガナカッタ、
言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、彈力性ガナカッタノデ
アル、是ガ若シモ國稅トナリマシタ場合ニ
ハ、今度ハ彈力性ノアルモノニナルト思フ、
從來ハ負擔ガ不公平デアッタ、東京トカ大阪
トカ云フヤウナ所ハ宴會モ澤山アルシ、隨
分飮食店ヘモ人ガ行ク、處ガ斯ウ云フ大都
市ニ於キマシテハ稅ヲ取ル種目モ澤山アル
ノダカラ、遊興稅ハ却テ薄ク取ラレテ居ル、
處ガ餘リ產業ガ發達シナイ所デ、比較的大
キナ町ナドニ付キマシテハ、無理ニ遊興稅
ヲ多ク取ルト云フヤウナコトガアリマシ
六、其ノ間權衡ガ公平デナイノデアル、國
家ガ之ヲ手ニ收メルト云フト、國稅トシテ
ハ租稅ヲ一律ニ公平ニ取扱フコトガ出來
ル、斯ウ云フノデアリマス、而シテ彈力性
ガアルヤウニナルニ違ヒナイト思フ、斯ウ
云フ答辯デアリマス、建築稅、是ガ相當ノ
問題ニナッタノデアリマスガ、一萬圓ヲ限度
トシテ建築ヲ致シマシテ、出來上ッタ時ニ、
一萬圓掛ッタモノ以上ニ對シテ一割ノ稅ヲ
取ル、斯ウ云フノデアリマス、是ハ又質問
ガ澤山アリマシタガ、要スルニ其ノ界ハド
ウダ、一萬圓ト云フ家ニ對シテ、一割ハ千
圓九千九百圓ノ家ハ無稅デアル、是ヂヤ
ドウモ非常ニ調子ガ合ハナイノヂヤナイカ
ト云フト、五千圓ハ控除スルト云フノデス、
ダカラ、一萬圓ノ家ヲ建テル場合ニハ、五
千圓ヲ控除スルノダカラ、五千圓ノ一割ダ
カラ五百圓ニナル、一萬五千圓ノ家ヲ建テ
タ場合ニ於キマシテハ、五千圓控除シマス
カラシテ、マア千圓ニナルト云フヤウナ譯
デ、是モ下ノ方ト、一萬圓以上トハサウ大
シタ違ヒハナク出來テ居ルノダカラ、サウ
大シタ害ハナカラウト思フ、ソレカラ家ヲ
建テタ時ニ、一萬圓ノ一割ヲ取ラレテ、
萬圓以上ノモノニ對シテ一割ヲ取ラレテ、
其ノ他地方稅ナドニ於テハ不動產取得稅ヲ
加ヘラレテ、是ハ二重ヂヤナイカト云フト、
是ハ建築稅ハ建築ヲ對象トスル、不動產取
得稅ハ建築カラ入ッテ來ル利益ヲ對象トス
ルノダカラ、是ハマルデ課稅ノ標準ガ違フ
ノデアル、次ニハ減價償却、時局ノ緊要ナ
ル產業ニ對シマシテ、利得ノ大キイモノニ
ハ出來ルダケ多クノ償却ヲサセマシテ、其
ノ產業發達ノ基礎ヲ鞏固ニスルト云フコト
ガ極メテ必要ナコトデアル、之ニ付キマシ
テハ、平和ニナッタ場合ニハ一時ニ高イ所デ
以テ會社ガ殘サレテ衰へルコトニナルカモ
知レナイカラ、今ノ中ニ基礎ヲ鞏固ニスル
ト云フコトカラ見ルト、非常ニ必要ナモノ
デアルト云フヤウナ說モ出タノデアリマス、
耕地交換ニ付テノ免稅デアリマスガ、幾ラ
モ田舍ニハ村落ノ耕地ガ自分ノ住居カラ非
常ニ遠イ所ニアル、之ヲ自分ノ住居ニ近イ
所ノ持主ト話ヲシテ、耕地ヲ交換スレバ、
御互ニ便利デアル、其ノ場合ニ登錄稅ヲ兩
方デ拂フヤウナコトニナルト云フト困ルカ
ラ、斯ウ云フノハ農耕ノ發展上之ヲ免除シ
テ、寧ロ斯クノ如キ交換ハ奬勵スルノガ宜
イト云フコトニ付キマシテ問答ガアリマシ
タガ、結局サウ云フコトニナリマシタ、サ
ウシテ此ノ經濟更生委員會ト云フモノガ出
來マシテ、中間ニ立ッテ之ヲ斡旋ヲスルト云
フコトデ、圓滿ニ解決スルダラウト云フコ
トデアリマス、斯クノ如クシマシテ、二十
三、二十四日ニ亙リマシテ、微ニ入リ細ヲ
穿ッタ質問應答ガアッタノデアリマスガ、只
今申上ゲマシタ點ニ之ヲ止メマス、三月二
十四日夕刻討論ニ入リマシタ處、二人ノ委
員カラ贊成意見ノ發表ガアリマシタ、之ヲ
搔摘ンデ申上ゲマスト、一委員ハ次ノ如ク
言ヒマシタ、今日最モ大切ナルコトハ惡性
「インフレ」ノ防止デアル、歐洲大戰當時ニ
ハ惡性「インフレ」ノ多カッタ國程戰爭後財
政上ニ多大ナル困難ヲ感ジタノデアル、故
ニ前車ノ覆ヘルノヲ見テ我ガ國モ其ノ轍ヲ
踏ンデハイケナイ、之ヲ防止スルニハ貯蓄
奬勵ヲシテ公債消化ヲ良クスルト云フヤウ
ナ方法モアルケレドモ、稅制上ノ見地カラ
增稅シテ購買力ヲ抑ヘルト云フコトモ考ヘ
ナケレバナラナイ、外國ニ比シテマダノ
租稅負擔力ガアルト卽斷ハ出來ナイ、又實
情ニ卽シ國民ノ負擔力ト公債ノ不消化ノ度
合トヲ睨ミ合シテ增稅ヲ行フコトヲ必要デ、
特ニ今日ノ如ク物自體ガ少クナリツヽアル
場合ニハ一層公債ノ消化ヲ圓滑ニシ、迅速ニ
吸收スベキデアリマス、此ノ故ニ今日以上增
稅スルコトモ場合ニ依ッテハ已ムヲ得ナイ、
斯カル場合ガアッタナラバ、或程度迄國民生
活ヲ壓迫シテモ、國策上斷乎トシテ增稅ヲ
行ヒ、國民モ亦其ノ國策ニ準據シテ、其ノ
苦痛ヲ忍バナケレバナラナイト思ヒマス、
今囘ノ奢侈的消費へノ課稅ハ最モ適切デア
ル、增稅ハ收入增加、購買力ノ抑制ノ如キ、
單ニ物質的見地ノミヨリシテ考ヘテハイケ
ナイ、我ガ百萬ノ同胞ガ大陸ニ於テ辛酸ヲ
嘗メテ戰ヒツヽアル今日、宜シク銃後ニ在
ル我々ハ奢侈ニ流レズ、生活ヲ愼シミ、全
力ヲ以テ國家ニ貢獻セザルベカラズ、此ノ
故ニ奢侈的消費ノ課稅ハ逐次增稅シ、累進
的ニ行ッテ、國民ヲ戒メルニ效果アラシメタ
イモノデアル、船舶、鑛業權等ノ修正モ理
論ハ兎ニ角、實際上ハ妥當デアル、飴ノ稅
率ニ差等ヲ設ケ、洋服ノ免稅點引上ノ如キ
ハ贊成デアル、次ニ希望ヲ述ベラレマシタ、
大藏大臣ハ所得稅中心、所得稅ヲ以テ國民
稅タラシムル意向ガアルト聞イテ居ルガ、
是ハ贊成ダ、國民ハ之ヲ國稅トシテ勇ンデ
貢獻スルノ光榮ト責務ヲ有スベキデアル、
他ノ一委員ヨリモ贊成意見ガアリマシタ、
時局ノ影響ヲ以テ利得ノ增大シタルモノニ
全部ヲ負擔サセルコトハ、碁デ言ヘバ是ハ
定石デアル、租税ハ間接稅ヲ重視スベキデ
アルト思フ、其ノ見地カラ物品稅ハ贊成デ
アル、特ニ臨時租稅措置法デ償却ノ方法ニ
努メタコトハ政府近來ノ傑作デアル、之川
依ッテ稅源ノ涵養ト國民ノ實力ヲ養フコトガ
出來ルト思フ、本法ニハ贊成デアル、併シ
一點述ブベキ點ガアル、卽チ船舶、鑛山權
讓渡ノコトデアルガ、十三年一月一日カラ
十二月迄ノ利益ヲ計算シテ本年度ニ課稅ス
ルト云フコトヲ、衆議院ニ於テハ本年一月
一日ヨリト改メタ、昨年中ノ利益モ相當多
イニ違ヒナイノデアッテ、誠ニ宜キ稅源ヲ逸
シテシマッタト言ッテ宜シイ、若シ合理的ニ
修正ガ必要デアルトスルナラバ、何故本年
ノ一月一日デナク、四月一日ヨリ改メナイ
ノデアルカ、是ガ頗ル不合理デアル、之二
ハ何等カノ事情ナキヤノ疑ナキヲ得ナイ、
是ハ本來ナラバ、貴族院ニ於テ修正ヲシナ
ケレバナラナイト思フガ、モウ會期切迫ノ
際時間ガナイ、甚ダ遺憾デアルト云フコト
ヲ言明シテ、全體ノ案ニハ贊成ヲ表スル、
明年ノ稅制整理ニハ直接稅、間接稅ノ關係
ヲ考ヘテ貰ヒタイ、今日ニハ直接稅ヲ殖ス
必要ガアラウケレドモ、又或ル時期ニハ間
接稅ヲ重ク視ルベキ時ガ來ル、之ヲ達觀シ
テ年々稅率ト云フモノハ改メナケレバナラ
ナイ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ實情ニ卽シテ
稅制整理ト云フコトヲ考ヘテ貰ヒタイト云
フコトヲ述ベラレマシタ、是ヨリ採決ニ入
リマシテ、支那事變特別稅法中改正法律案、
臨時利得稅法中改正法律案ニ付キマシテハ、
衆議院ノ修正案ヲ、臨時租稅措置法中改正
法律案ニ付テハ政府原案ヲ議題トシテ採決
ヲ致シマシタル所、全會一致可決ニ相成ッタ
次第デアリマス、之ヲ以テ報〓ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=153
-
154・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ三案ノ採決ヲ致シマス、三案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=154
-
155・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=155
-
156・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=156
-
157・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=157
-
158・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=158
-
159・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=159
-
160・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=160
-
161・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=161
-
162・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=162
-
163・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=163
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164・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=164
-
165・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=165
-
166・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 三案ノ第三
讀會ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=166
-
167・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=167
-
168・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第二十
二、關稅定率法中改正法律案、日程第二十
三、昭和七年法律第四號中改正法律案、政
府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員
長報告、是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲ス
コトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=168
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169・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長白川子爵
關稅定率法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和七年法律第四號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十四年三月二十四日
委員長子爵白川資長
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵白川資長君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=169
-
170・白川資長
○子爵白川資長君 只今議題トナリマシタ
關稅定率法中改正法律案、昭和七年法律第
四號中改正法律案ノ二法案ニ付テ委員會ノ
經過及結果ヲ御報告致シマス、是等ノ法律
案モ去ル二十三日ニ委員會ヲ開キマシテ翌
二十四日ニ更ニ委員會ヲ續開致シマシタ譯
デゴザイマス、先ヅ關稅定率法中改正法律
案カラ申上ゲマスト、蠶豆外六品目ノ關稅
ヲ撤廢セムトスルモノデアリマス、是等ノ
物品ハ何レモ主トシテ滿洲國及支那カラ輸
入サレルモノデゴザイマシテ、我ガ國現下
ノ情勢ニ顧ミマシテ、是等ノ物品ノ關稅率
ヲ無稅ト致シマスルコトハ、日滿支三國間
ノ物資ノ交流ヲ圓滑ナラシムル爲ニ必要ナ
ルコトト考ヘテ本改正法律案ヲ御提出ニナッ
タノデアリマス、次ニ、昭和七年法律第
四號、卽チ輸入稅ノ從量稅率ニ關スル
改正法律案ハ、現在綠豆、蠶豆及棉子油ハ
本法ニ依ッテ關稅定率法ニ定ムル所ノ稅率
ノ三割五分ノ增課ヲ受ケテ居リマスノデ、
是亦日滿支三國間ノ物資ノ調整ニ資スル爲
二、是等ヲ本法ノ別表ニ追加シテ三割五分
ノ增課ノ範圍內カラ除外スルノヲ以テ適當
ト認メマシテ本案ガ提出ニナッタ譯デゴザ
イマス、卽チ關稅定率法ニ於キマシテハ、
蠶豆外六品目ト申シマスルノハ綠豆、胡麻
子、荏胡麻子、桐子、蓖麻子油、棉子油、
桐油等デゴザイマシテ、是等ノ關稅ヲ撤廢
セムトスルモノデアリマス、是等ハ皆滿洲
及支那カラ輸出セラレル所ノ重要ナル輸出
品デアルノデアリマス、例ヘバ綠豆ハ主ト
シテ滿洲國カラ輸入サレマシテ支那料理ノ
モヤシトナッテ居ルノデアリマス、又胡麻子
油ハ滿洲及支那カラ多數輸入サレマシテ、
日本ノ製油ノ原料トナッテ居ルノデアリマ
ス、又荏胡麻子油ハ滿洲カラ輸入サレマシ
テ、製油ノ原料、「インキ」、塗料等ノ各般ニ
用ヒラレテ居リマス、蓖麻子油ハ多ク滿洲
ヨリ輸入サレマシテ、種々ナル重要ナル工
業ニ用ヒラレテ居ルノデアリマス、例ヘバ飛
行機ノ機械油等ニ是非無ケレバナラヌモノ
デゴザイマス、桐油ハ支那ノ特產物デ、防
水布「リノリューム」等ノ製造原料デアリマ
ス、桐油ノ輸入ハ少クナイノデアリマスガ、
是等ハ無稅トナル譯デアリマス、衆議院ニ
於キマシテハ此ノ關稅定率法中改正法律案
ニ對シマシテ、附則ニ、原案ニハ公布ノ日
ヨリ之ヲ施行ストアリマスノヲ、本法施行
ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ムト
修正ヲ致シマシタ、政府ハ貴族院ニ於テ此
ノ修正ニ同意スルコトナラバ政府モ別ニ異
議ハ言ハヌト云フコトデゴザイマシタ、是
ハ衆議院ニ於キマシテハ本邦ニ於テ蓖麻子
油ノ輸入稅ヲ撤廢スル以上ハ、滿洲ニ於テ
モ輸出稅ヲ全廢スルノガ當然デアルカラ、
先方ノ全廢ト同時ニ本邦ニ於テ輸入稅ヲ撤
廢スルノガ當然デアラウ、故ニ其ノ期日ハ
政府ニ委セマシテ勅令ヲ以テ之ヲ定ムベシ
ト修正ヲ致シタノデアリマス、又昭和七年
法律第四號中改正法律案ハ蠶豆及綿實油ノ
重量稅ヲ廢スル案デアリマシテ、例ヘバ蠶
豆ガ五十五錢ノ稅金ニ、昭和七年法律第四
號ニ依リマシテ三割五分ヲカケテ七十五錢
トナッテ居ル、其ノ三割五分ヲ廢スルノデア
リマス、又綿實油ハ四圓四十五錢ニ三割五
分ヲカケマシテ六圓トナッテ居ルノヲ、其
ノ三割五分ヲ取リマシテ四圓四十五錢トス
ル法律案デゴザイマス、委員會ニ於テハ種
種重要ナル質問應答ヲ重ネマシテ、第一ノ
關稅定率法中改正法律案ニ付キマシテハ衆
議院ノ修正ヲ可ト致シマシテ、衆議院ノ修
正通リニ滿場一致ヲ以テ可決致シマシタ、
又昭和七年法律第四號中改正法律案ニ付キ
マシテハ、政府ノ原案通リ滿場一致ヲ以テ
可決致シマシタ、此ノ段御報〓致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=170
-
171・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=171
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172・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=172
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173・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=173
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174・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=174
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175・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=175
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176・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=176
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177・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ
問題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報〓
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=177
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178・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=178
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179・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ〓伸望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=179
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180・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=180
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181・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=181
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182・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=182
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183・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第三
讀會ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=183
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184・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御議異ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=184
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185・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第二十
四、昭和十四年法律第二號中改正法律
案政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、
委員長報〓、委員長高橋子爵
昭和十四年法律第二號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十四年三月二十四日
委員長子爵高橋是賢
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵高橋是賢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=185
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186・高橋是賢
○子爵高橋是賢君 只今議題ニナリマシタ
ル昭和十四年法律第二號中改正法律案ニ付
テ申上ゲマス、本案ハ去ル三月二十三日昭
和十四年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
公債發行ニ關スル法律案ノ特別委員會ニ付
託ニ相成リマシタ
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ復ス〕
本法案ハ昭和十四年法律第二號中ニ規定シ
テアリマスル公債ノ發行限度ヲ一億八千九
百十萬圓增加致シマシテ、九億八千四百九
十萬圓トスル法案デアリマス、質疑ニ入リ
マシタガ格別ノ質問モアリマセヌデ、討論
モゴザリマセズ、採決ノ結果滿場一致可決
ニ相成リマシタ、簡單ニ御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=186
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187・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=187
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188・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=188
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189・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=189
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190・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=190
-
191・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=191
-
192・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御議異ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=192
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193・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=193
-
194・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=194
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195・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=195
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196・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=196
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197・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=197
-
198・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=198
-
199・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=199
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200・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=200
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201・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十五、
刑事訴訟法中改正法律案、衆議院提出、第
一讀會
刑事訴訟法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十四年三月二十四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百五十二條ノ二行政執行法ニ依リ
檢束中ノ者ニ對シテハ捜査ヲ爲スコトヲ得ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=201
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202・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
刑事訴訟法中改正法律案ハ、人事調停法案
外二件ニ關聯致シマスルガ故ニ、其ノ特別
委員ニ併託セラレムコトノ動議ヲ提出致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=202
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203・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=203
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204・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=204
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205・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=205
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206・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十六、
豫定線札幌、增毛間鐵道速成ノ請願、會議
(左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ
參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
意見書案
豫定線札幌、增毛間鐵道速成ノ件
北海道石狩郡石狩町大字辨天町公吏
高野金作外三百五十九名呈出
右ノ請願ハ豫定線札幌、增毛間鐵道ノ速
成ヲ圖ルハ石狩港及濱益港ノ完成ト相俟テ
豐富ナル海陸資源ノ開發上貢獻スル所大
ナルノミナラス運輸交通竝軍事上亦須要
ナルニ依リ速ニ之ヲ實現シ以テ關係地方
民ノ利便ト北海道拓殖ノ進展ニ資セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十四年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=206
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207・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 此ノ請願ハ請願
委員長ノ報告通リニ、採擇スルコトニ御議
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=207
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208・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=208
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209・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔近藤書記官朗讀〕
本日政府ヨリ左ノ答辯書ヲ受領セリ
貴族院議員公爵島津忠重君外三十一名提
出度量衡制度改正ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
〔左ノ質問主意書及答辯書ハ朗讀
ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス
以下之ニ傚フ〕
度量衡制度改正ニ關スル質問主意
書
我國ニ於テ古來慣用セラレタル尺貫法
ハ、祭祀ヲ始メトシ、國民ノ實生活ト離
ルベカラザル關係ニ在ルノミナラズ、又
歷史玆ニ文化ノ重要ナル脈絡經緯ヲナスモ
ノナリ。サレバ之ヲ尊重スルハ卽チ國風
ヲ愛護スル所以ナルヲ以テ、昨年度量衡
制度調査會ニ於テハ、尺貫法ヲメートル
法ト併用スルヲ可ト認ムル旨ノ答申ヲ議
決セリ。然シテ過般度量衡法施行令一部
ノ改正ヲ見タリト雖、右改正ハ尙ホ施行
令ノ末節ニ過ギズ、甚ダ姑息不徹底ニシ
テ、斷ジテ我國度量衡ノ混亂ヲ解消スルモ
ノニアラズ。更ニ根本的ニ法律ヲ改正シ、
併用主義ヲ確立スルニアラズンバ、未ダ
眞ニ我國情ニ卽セシムルヲ得タリト謂フ
ベカラズ。仍テ左記四項ニツキ敢テ政府
ノ所見ヲ質問セムトス。
尺貫法ハ國民精神生活ノ源泉タル祭
祀ト密接不離ノモノナリ。過般施行令
ノ改正ニヨリテ、祭祀其ノ他特殊ノ由
緒アル用途ニ於テハ、之ガ使用ヲ認定
セラレタリト雖、僅カニ除外例トシテ
取扱ハレタルハ、斷ジテ神祇祭祀ヲ眞
ニ尊重スル所以ニ非ザルナリ。
右ニ對スル政府ノ所見如何
二、今囘施行令ヲ以テ、祭祀其ノ他特殊
ノ由緒アル用途ニ於テハ永久的ニ尺貫
法ニヨリ、又其ノ他ハ無期或ハ長期ニ
亙リテメートル法强制ノ延期セラレタ
ルハ、蓋シ國家ノ實情竝ニ國民生活ノ
實際ニ卽セシメムトノ趣旨ニ外ナラザ
ルベシ。仍テ政府ハ行政各般ニ亙リ、宜
シク此ノ趣旨ニ則リテ改善措置シ、以
テ現前ノ國民實生活上ノ混亂繁瑣ヲ除
去スルノ要アリト信ズ。
右ニ對スル政府ノ所見如何
三、這般ノ改正ニヨリ、不徹底ナガラ既
ニ併用ノ制ヲ採ルニ至レル今日、小學
校ニ於テハ尺貫メートル兩種ノ度量衡
ヲ〓授スベキコト勿論ナルガ、我國ノ
歷史竝ニ社會及家庭ノ事情ニ鑑ミテ、
先ヅ尺貫法ヲ〓授スルコト實際的ニモ
將タ精神的ニモ極メテ肝要適切ニシテ、
是レ軈テ兒童生徒等ノ無益ナル負擔ヲ
輕減シ、且ツ算術〓授要旨ニモ副フ所
以ナレバ、速カニ〓育方針ヲ根本的ニ
改正スルノ要アリト信ズ。
右ニ對スル政府ノ所見如何
四、斯ノ如ク政府ハ併用主義ノ下ニ主從
ノ區別ヲ立テ、而カモ尺貫法ヲ以テ從
トナシ、之ヲ除外例的ニ取扱ハントス
ルハ、併用ノ趣旨ヲ歪曲シ、我國固有
ノ制ヲ輕視シテ漸次其ノ觀念ヲ抹殺
シ、遂ニ外國制度ニ轉換セシメムトス
ルモノニシテ、本末〓倒ノ甚シキモノ
ト謂フベシ
右ニ對スル政府ノ所見如何
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
昭和十四年三月十八日
提出者
公爵島津忠重侯爵細川護立
侯爵德川義親伯爵松木宗隆
伯爵柳原義光伯爵酒井忠正
子爵靑木信光子爵八條隆正
子爵岡部長景三上參次
松井茂男爵千秋季隆
小原直內田重成
建部遯吾男爵黑田長和
男爵井田磐楠男爵渡邊汀
山岡萬之助加藤政之助
加藤敬三郞赤池濃
小久保喜七土方久徵
各務鎌吉小倉正恒
金杉英五郞上松泰造
藤原銀次郞濱口儀兵衞
平沼亮三絲原武太郞
贊成者
公爵德川家達公爵德川圀順
公爵一條實孝公爵岩倉具榮
公爵山縣有道公爵伊藤博精
侯爵嵯峨公勝侯爵山內豐景
侯爵池田仲博侯爵前田利爲
侯爵淺野長之侯爵大隈信常
侯爵野津鎭之助侯爵中御門經恭
侯爵德川賴貞侯爵中山輔親
侯爵東〓彪侯爵池田宣政
侯爵筑波藤麿侯爵西〓吉之助
侯爵大炊門經輝侯爵小村捷治
侯爵四條隆德伯爵副島道正
伯爵山田英夫男爵坂本俊篤
男爵大井成元子爵梅小路定行
子爵松平直平子爵冷泉爲勇
子爵伊集院兼知男爵安保〓種
關屋貞三郞子爵白川資長
子爵池田政時子爵西大路吉光
子爵〓岡長言子爵野村益三
子爵今城定政子爵西四辻公堯
子爵立花種忠子爵高倉篤麿
子爵豐岡圭資子爵秋月種英
子爵片桐貞央子爵米津政賢
子爵三室戶敬光子爵松平保男
子爵新庄直知子爵加藤泰通
子爵蒔田廣城子爵秋元春朝
子爵松平忠壽子爵米田國臣
子爵松平乘統子爵保科正昭
子爵西尾忠方子爵富小路隆直
子爵裏松友光子爵秋田重季
子爵戶澤正己子爵岩城隆德
子爵毛利元恒子爵高橋是賢
子爵實吉純郞子爵植村家治
子爵梅園篤彥子爵安藤信昭
子爵松平康春子爵大岡忠綱
子爵綾小路護子爵入江爲常
佐藤三吉渡邊暢
大島健木場貞長
井上通泰水野錬太郞
犬塚勝太郞小山松吉
男爵紀俊秀男爵千田嘉平
小幡酉吉有吉忠
芳澤謙吉中川健藏
男爵菊池武夫河井彌八
男爵東久世秀雄出淵勝次
松村眞一郞後藤文夫
河原田稼吉安井英二
若林賚藏佐藤鐵太郞
三井〓一郞岡喜七郞
仁井田益太郞勝田主計
男爵今枝直規坂西利八郞
川村竹治太田政弘
男爵小畑大太郞男爵中島久萬吉
男爵福原俊丸結城豊太郞
伍堂卓雄柴田善三郞
男爵有地藤三郞男爵前田勇
男爵淺田良逸男爵岩倉道倶
男爵今園國貞今井田〓德
長世吉男爵柴山昌生
男爵伊藤文吉大橋八郞
男爵足立豐男爵高木喜寬
男爵松尾義夫男爵井上〓純
男爵高崎弓彥男爵伊江朝助
男爵周布兼道男爵大藏公望
男爵北島貴孝男爵原田熊雄
男爵沖貞男男爵奧田剛郞
男爵關義壽男爵三須精
男爵松平外與麿男爵松田正之
男爵橋元正輝男爵安場保健
男爵渡邊修二男爵杉溪由言
男爵岩村一木男爵山根健男
市來乙彥坂野鉄次郞
三浦新七宮田光雄
黑田英雄遠藤柳作
川上親晴有賀光豐
岡田文次藤沼庄平
大塚惟精吉田茂
松本學大竹貫一、
德富猪一郞古島雄
樺山資英若尾璋八
小坂順造大橋新太郞
堀啓次郞千石興太郞
澁澤金藏內藤久寛
菊池恭三今井五介
瀧川儀作中村圓一郞
森平兵衛板谷宮吉
石川三郞西野嘉右衞門
松本眞平光永星郞
林平四郞根津嘉一郞
下出民義磯貝浩
江口定條西本健次郞
名取忠愛久保市三郞
高鳥順作橋本辰二郞
武井覺太郞磯村豐太郞
三橋彌金子元三郞
山隈康野村茂久馬
久恒貞雄油井德藏
仲田傳之〓吉田羊治郞
宇野勇作細田安兵衞
鈴木幸作平尾喜三郞
長野忠次松本勝太郞
佐々木八十八田中德兵衞
辻兵吉大澤德太郞
山田仙之助山本米三
野村德七金成通
風間八左衞門靑木才次郞
小野耕大藪守治
米原章三岩崎〓行
山上岩二出光佐三
松岡潤吉大西虎之介
氏家〓吉瀨川彌右衞門
上野喜左衞門
昭和十四年三月二十五日
内閣總理大臣男爵平沼騏一郞
貴族院議長松平賴壽殿
貴族院議員公爵島津忠重君外三十一名提
出度量衡制度改正ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
貴族院議員公爵島津忠重君外三十一
名提出度量衡制度改正ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
度量衡法施行令ノ改正ニ依リテ特別
ノ由〓アル用途ニ供セラルルモノニ尺
貫法度量衡ヲ用ウルコトトセルモ神祇
祭祀ノ尊重ヲ害スルモノト思料セズ
二、度量衡法施行令改正ノ趣旨ニ鑑ミ適
當ニ措置スルコトト致度
三、小學校ニ於ケル度量衡〓育ニ付テハ
度量衡法施行令改正ノ趣旨ニ鑑ミ考慮
スルコトト致度
四、度量衡法施行令ヲ改正シテ尺貫法度
量衡ヲ用ウルコトヲ得ルコトトシタル
ガ右改正施行令ノ內容ハ度量衡制度調
査會ノ答申ヲ尊重十分檢討ヲ加ヘタル
モノニシテ適當ナルモノト思料ス
右及答辯候也
昭和十四年三月二十五日
商工大臣八田嘉明
文部大臣男爵荒木貞夫発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=209
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210・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ議事日程
ヲ全部終了致シマシタ、散會致シマス
午後四時三十九分散會
貴族院議事速記錄第二十八號正
誤
貴族院議事速記錄第二十八號四〇六頁四段軍馬
資源保護法案外二件ノ委員長報告書ハ同頁同段
五行目ニ挿入スベキノ誤ニ付訂正ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007403242X03019390325&spkNum=210
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