1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年二月二十日(月曜日)午後一時三十六分開議
出席委員左の如し
委員長 東武君
理事 佐藤謙之輔君 理事 中野寅吉君
理事 大石倫治君 理事 河野一郎君
森田重次郎君 鈴木憲太郎君
遠山房吉君 坪山徳彌君
泉國三郎君 小笠原八十美君
池田七郎兵衞君 服部岩吉君
永田良吉君 陣軍吉君
山崎常吉君 三木武夫君
小野謙一君
出席國務大臣左の如し
陸軍大臣 板垣征四郎君
農林大臣 櫻内幸雄君
出席政府委員左の如し
對滿事務局次長 原邦道君
農林政務次官 松村謙三君
農林參與官 林讓治君
農林省畜産局長 岸良一君
馬政局長官 荷見安君
馬政局事務官 伊藤莊之助君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
陸軍騎兵大佐 栗林忠道君
文部書記官 谷原義一君
馬政局事務官 佐々木登君
本日の會議に上りたる議案左の如し
軍馬資源保護法案(政府提出)
種馬統制法案(政府提出)
競馬法の臨時特例に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=0
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001・佐藤謙之輔
○佐藤委員長代理 是ヨリ軍馬資源保護法
案外二件ノ委員會ヲ開會致シマス-小笠
原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=1
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002・小笠原八十美
○小笠原委員 軍馬資源保護法案竝ニ種馬
統制法案ノ兩案ニ對シマシテ、他ノ同僚委
員諸君カラ細部ニ亙ツテ是マデ御質問ガア
ツタノデアリマス、私ハ重複ヲ避ケル意味
ニ於テ簡單ニ申上ゲタイノデアリマスガ、
唯私等東北關係ノ生產地ニ此ノ法案ガ重大
ナ關係ヲ有シテ居ルコトト、モウ一ツニハ
今度此ノ法案ニ依ツテ一番打擊ヲ受ケル所
ノ輕種、其ノ方面ニ吾々モ關係ガアルノデ
アリマスルカラ、兎ニ角一通リ此ノ方面ノ
生產關係ノ事情ヲ申上ゲテ、ソレカラ段々
ニ箇條的ノ質疑ニ入リタイト、斯ウ思フノ
デアリマス、此ノ兩法案ハ第一馬政計畫ノ
延長ノ第二馬政計畫、是ノ改變デアリマシ
テ、其ノ主ナルモノハ輕種ヲ軍馬トシテ適
當ナラズト云フ所ガ、非常ニ大キナ大改變
ニナツタノデアリマス、其ノ他ノコトハ從
來トハ左程違ハナイト私ハ考ヘテ居リマス、
尙ホ軍馬資源保護法案ニ至ツテハ、吾々ノ
要望シタル所ノ最高軍馬制度ノ確立ト見テ
然ルベキダト、私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、唯問題ハ輕種問題ノ大改變ニ對シマシ
テ、相當ナ苦心ヲ伴ハナケレバ、此ノ國策
ノ目的ヲ達シ得ルコトハ容易デナイト私ハ
考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ他ノ事モ運
用宜シキヲ得ナケレバ、軍ノ要望スル有能
馬生產擴充ノ目的ノ達成ヲ期シ難イモノデ
アルト思フノデアリマス、仍テ私ハ農村ノ
實情ヲ述ベテ、國民ノ聽カントスル所ヲ細
部ニ亙ツテ、實際問題ト照シ合セテ、サウシ
テ政府ノ所信ヲ伺ヒタイト考ヘテ居ルノデ
アリマス、先ヅ他ノ委員カラモ申サレテ居
ル通リ、此ノ二法案ノ目的ヲ達成セシムル
三、農村ノ經濟ニ重點ヲ置キ、而シテ此
ノ法ノ運用ニ當ラナケレバ好結果ヲ得ルコ
トハ出來ナイト云フコトハ、極メテ明瞭デ
アリマス、元來農村ニ於ケル愛馬心トカ、
動物愛トカト云フモノハ、非常ニ强イモノ
ガアリマシテ、是ハ農村ノ美風デモアリマ
ズ、先ヅソレ等ノ例ヲ申上ゲルト云フト、農
家ハ住宅ヲ建築スル場合、同一家屋ニ廐ヲ
日當リノ最モ好イ位置ヲ選定スルト云フ慣
習デアリマス、サウシテ馬ト同居スル農民
ハ食事ヲスル場合ニモ臺所ニ首ヲ出サシ
メ、馬ノ首ヲ眺メナガラ一家樂シク〓事ヲ
共ニスルト云フ實情デアリマシテ、一面農
家ノ信用程度モ、馬ノ有無ニ依ツテ其ノ程
度ガ違フノデアリマス、又馬ノ出產ニハ形
バカリノ御祝ノ御酒ハ附キ物デアリマス、
是ハ孫ヤ子ガ生レタ時ト同樣、若クハヨリ
以上ニ御祝ヲスルノデアリマス、總テノ環
境カラシテ、先祖傳來ノ馬產事業ハ、手放
スコトハ出來ナイ狀態ト、一面ニ愛馬心ノ
興ル原因ハ、一切ノ生活モ行事モ馬トノ夤
緣關係ガ深ク、娛樂ニ付テ見テモ、踊ト云
ヘバ駒踊リ、歌ト云ヘバ馬子唄ト云フ譯デ、
古來馬產地ノ農家ニハ附キ物デアリマス、
近頃ハ產馬音頭トカ、愛馬小唄トカ色々出
來テ、產馬地ノ生徒等マデモ之ヲ謠ツテ居
リマス、其ノ他馬ノ市日ニハ年中行事トシ
テ、卒業間際ノ女學校生徒ガ、見學ヲシテ
居リマス、小學校生徒ハ、ピン〓〓跳ネル
馬ノ中ヲ潜リ拔ケテ、市場ニ入込ンデ、危
險ノ爲メ、是ノ整理ニ當ル警官ガ態々派遣
サレテ、取締ニ當ラナケレバナラヌト云フ
狀態デアリマス、尙ホ酒ヤ菓子ノヤウナモ
ノニモ馬ノ名前ナドヲ付ケテ居リ、又各部
落ニハ馬ノ神樣タル御蒼前樣ヲ祀ツテ居ル
ト云フ狀態デアリマス、私共ノ靑森縣ノ氣
比神社-是ハ御蒼前樣ノ元締デアリマス
ガ、是ノ大祭ハ舊曆五月一日ト十五日ニ
行ハレマス、此ノ日ニハ近縣ノ參拜者
ノ爲メ臨時列車竝ニ增結列車ヲ運轉シ、尙
ホ附近町村ノ自動車ハ全部動員サレ、其ノ
他乘馬、ソレデモ多數ニ依ツテ尙ホ運ビ切
レナイト云フ狀態デアリマス、馬產地方ノ產
馬組合ノ市場ヲ御覽ニナツタコトノアル方
ハ、能ク御分リノコトト思ヒマスガ、軍馬購
買官ヨリ軍馬ニ御買上ゲノ聲ヲ聞ク時ニ
ハ民衆ハ拍手ヲ以テ歡喜スル程、一般的
ニ軍馬ヲ生產シタコトハ、恰モ出征軍人ヲ
送ツタカノ感ガスルノデアリマス、組合デ
ハ國防旗ヲ作ツテ、組合管內町村ノ中デ軍
馬生產ノ多數ヲ占メルコトニ依ツテ、獲得
スルコトニナツテ居リマス、之ガ競爭ニナ
リマシテ、非常ニ熱心ニ軍馬生產ニ努力ヲ
シテ居ルノデアリマス、尙又馬產地出征兵
ガ、如何ニ馬ノ組合ノ狀況ヲ知リタイノミ
ナラズ、自分ガ手ヲ掛ケタ種牝馬カラ、ド
ンナ馬ガ生レタカト云フコトヲ承知スルコ
トヲ何ヨリモ樂ミトシテ居ルノデ、馬產家
ハ馬ヲ賣ツタ金ノ中カラ僅カヅツ集メテ、
產馬ノ狀況ヲ繪葉書ニ作ツテ、之ヲ戰地ニ
送ツテ居ルヤウナ狀態デアリマス、更ニ此ノ
農家ノ馬產ニ携ハル者ノ狀態ニ付テ其ノ
例ヲ申上ゲマスト、立派ナ軍馬候補馬ニ育
成シテ市場ニ出ス二日前ノ出來事デアリマ
スガ、或ル工事場ノ自動車運轉手ガ、馬產
地ニ慣レナイモノデアルカラ、其ノ馬ニ自
動車ヲ衝突シ、大腿部ヲ骨折セシメタノデ
アリマス、此ノ場合ニ警察カラモ、產馬組
合側カラモ、其ノ狀況ヲ調査ニ行ツタノデ
アリマスガ、骨折甚シク遂ニ屠殺シナケレ
バナラナクナリ、村ノ若イ者ガ十人バカリ
掛ツテ棒デ助ケナガラ山ヘ運ンダノデアリ
さく、其ノ場合ニ家族ハ皆泣キ叫ブノデア
リマス、ソコデ警察側モ組合側モ、其ノ餘
リニ悲慘ナ狀況ニ對シマシテ氣ノ毒ニ思ヒ
マシテ、見舞ノ言葉ヲ述ベタノデアリマ
ス、所ガ其一家ノオツ母ア-ソレハ五十
バカリノオツ母アデアリマスガ、金ハ兎モ
角此ノ戰爭最中ニ軍馬ニナル馬ヲ怪我サセ
テ、何トモ御國ニ申譯ガナイト、逆ニ詫ビ
ラレタノデ、警察官モ組合長モ淚ナクシテ
此ノ言葉ヲ受取ル事ガ出來ナカツタト云フ
ノデアリマス、然ルニ昨今ハ御承知ノ通リノ
非常ナル諸物價ノ騰貴ヲ見ルニ至リ、之ガ爲
ニ馬ノ價格モ多少ハ吊上ゲラレタノデアリ
マスガ、農林省ノ種馬購買價格及ビ競馬協
會ノ購買價格ハ、舊來通リ其ノ儘デ、軍馬
ハホンノ少シ許リ高價ニナツタト云フ程度
デアリマス、併シナガラ當初ハ此ノ時局柄
デモアリ、農民ハ進ンデ五圓十圓ノ高價デ
牛馬商ニ糶リ取ラレルヨリモ、安クトモ軍
馬ニ賣ルコトヲ喜ブ傾向ガアツタノデアリ
やく、所ガ一昨年ノ狀態デハ、軍馬購買官
モ前年度ノ豫算デアル關係上、到底豫定ノ
頭數ノ購買ハ覺束ナイト云フ各市場ノ實情
デアリマス、ソコデ購買官モ牛馬商ト組合
側トノ協力ヲ求メテ、軍馬ノ聲ヲ掛ケタ馬
ニ對シテハ、之ヲ糶リ上ゲズシテ、其處デ
豫定ノ頭數ヲ充足セシメタノデアリマスガ、
結果ニ於テハ生產者ハ多大ナ犧牲ヲ拂ツタ
譯デアリマス、是ハ軍需資材ノ供給ノ何レ
ノ方面カラ見テモ、農村固有ノ美德ノ現ハ
レト感ズルモノデアリマス、然ルニ昨年ニ
至ツテ、軍馬ガ一旦檢定ノ上ニ札ヲ付ケタ
モノモ、牛馬商ノ希望ニ依リ、又ハ其ノ
他ノ購買者ノ希望ニ依ツテ、、糶リ方ヲ讓
リ、他ニ糶リ取ラセタル場合ハ、一頭ノ糶
リ取リ價格ハ軍馬購買價格ヨリモ百圓乃
至二百圓以上モ、高價ニ賣レル狀況ニナツ
タノデアリマス、一面農家經濟ヲ見ルニ、
多クノ出征兵ガ出テ居リ、馬ハ澤山徵發
セラレ、漁村デハ多クノ船ヲ徴發サレテ居
ルト云フ狀態デアルニモ拘ラズ、銃後國
民ノ〓糧ノ鍵ヲ握ツテ居ル農村漁村民
トシテハ、一段ト努力シテ、平時ヨリ以上
ノ收穫ヲ得ンガ爲ニ、未明ヨリ夜遲クマデ
奮鬪努力ヲ續ケテ居ルノデアリマス、更に
此ノ馬產ヲ副業トスル經濟狀態ヲ見ル時ニ
ハ、出征軍人其ノ他軍需工場等ニ出稼ギシタ
關係モアリ、馬ヲ飼フ牧夫ハ、一箇年食ヲ
與ヘテ百圓カ百二十圓ガ通例デアツタノガ、
今日デハ、二百五十圓デアリマス、又干草
ハ倍額トナリ、藁ハ藁工ロ異ノ他ノ關係デ、
是亦價格ハ倍額トナツタバカリデナク、品
不足ヲ來シ、殊ニ飼料トシテノ麥、燕麥、
稗、大豆等ハ倍額近クニナリ、其ノ他削蹄、
藥品、馬ノ手入道具一切暴騰シ、一面馬ニ
對スル法律命令ハ三百六十以上モアリ、是
等ニ應ズル爲ニ種馬配合檢査、仔付檢査、
惣馬實査、傳染性貧血症ノ檢査、保險ノ檢
査、品評會ダ何ダ彼ダト云ツテ年ニ十五、
六囘モ組合其ノ他指定ノ場所ニ曳張リ出サ
レルト云フ有樣デアリマス、隨テ昨今ノ經
濟狀態ハ愛馬心トカ出征軍馬トカ、古イ歷
史ヲ有ツタ馬產地ノ美德モ、經濟的打撃ノ
爲ニ今ヤ全ク破壞サレントシテ居ル實情ハ、
此ノ兩法案ノ實施ニ當ツテ見遁スコトノ出
來ナイ重大事デアルト云フコトヲ、先ヅ申
上ゲテ置キタイノデアリマス、政府デハ農
民生活上ノ購買力ノ變動ヲ顧ミズ、生產物
ノ馬ノ購買ニ對スル半バ强制的ナ統制行爲
ハ、是ハ餘程愼重ニ御〓究アラネバナラヌ
事デアルト思ヒマス、苟モ馬產ニ關シテハ、
吾々ガ常ニ主張シテ居ル如ク、政府ハ民間
ノ實際ニ當ツテ居ル者ノ聲ヲ、聞キ誤ラザ
ル馬政方針ノ確立ヲ望ンデ已マナイ次第デ
アリマス、是マデ平時ニ於ケル軍馬購買ノ
多クハ、乘馬ヲ主トシタノデアリマシテ、
價格ノ點モ乘馬ハ高價ニ購買サレテ居ツタ
ノデアリマス、此ノ乘馬ノ購買ノ多クハ輕
種產地ニ於テ購買サレタノデアリマス、然
ルニ此ノ新馬政計畫ニ依ツテ輕種ハ軍馬ト
シテ不適當ト斷定サレタノデアリマス、畢
竟スルニ輕種兵器ハ不用トナリ中間種兵器
ト變更ニナツタノデ、政府ニ於テ地域的ノ
役種別ヲ指定シテ輕種兵器ヲ第一期馬政計
畫以來三十箇年、此ノ方面ノ生產擴充ヲ圖
ツテ第一期三十箇年ヲ終リ、第二期馬政計
畫ニ移リ、一二年經タズシテ此ノ改廢ヲ斷
行セラレタノハ輕種地ニ取ツテハ何トモ
言葉ニ言ヒ現ハスコトノ出來ナイ大衝撃ヲ
與ヘタノデアリマス、併シナガラ之ニ對シ
テハ、御國ノ爲トアルナラバ、理窟ヲ拔キ
ニシテ淚ヲ呑ンデ輕種馬產地ハ國策ニ殉ズ
ルコトニナルノデアリマスルガ、之ニハ種
牡馬、種牝馬ノ改廢、竝ニ是マデ申上ゲタ
農村ノ美德デアル慣習等モアルノデ、自家
デ生產シタ馬ヲ手放サシメ、國策ニ副フ馬
ヲ手ニ入レサセルタメニハ、其ノ指導等ニ
於テモ相當ナ苦心ト經濟的打擊ヲ蒙ル譯デ
アリマス、一面少シデモ油斷スルナラバ、
古來ヨリ傳統的ニ訓練付ケラレタ生產技術
ヲ無ニスル虞ガ多分ニアルノデアリマス、
之ニ對シテモ政府ノ方デハ相當同情アル準
備ガアラネバナラヌ筈ダト思フノデアリマ
ス、其ノ點ノ內容ヲ詳シク御說明ヲ願ヒタ
イノデアリマス、政府ノ方デ農村馬產地ノ
聲ヲ聞クコトナク、机上論ノミニ依ツテ計
畫サレルト、色々ト實際ニ卽セザルモノガ
出來上ルヤウニ思ハレルノデアリマス、先
ヅ從來ノ例ヲ見ルニ、農林省デ購買サレテ
居ル種馬ニ對スル購買價格ヲ〓究シテ見ル
ト種牡馬購買ニ當ツテ二十年前米一升十
五錢ノ時代ヲ今日ト比較シテ、今日ノ種馬
購買ハ、馬ハ相當ニ發達シタニモ拘ラズ、ヨ
リ安ク買ハレテ居ルト云フ狀態デアル、二
十年前アタリハ農村モ相當ニ豐カデアリ、
農村部落ニ於テモ種牡馬ヲ購買シ、自由ニ種
付ノ配合ヲヤツタノデアリマス、隨テ種牡馬購
買ニ對シテモ農村馬團體或ハ縣トカ郡トカ
ガ國ト爭フ程ノ狀況デアツタガ、逐年農村ガ
疲弊シ來リ、昨今デハ農村ニ於テ農林省或
ハ組合ヨリ助成ヲ仰イデ、種牡馬ヲ購買シテ
居ル狀態デアリマス、隨テ農林省購買ニハ
競爭者ガ無ク、獨リ舞臺トナツタ譯デアリ
そく、ソレヲ好イ事ニシテ、種馬購買ニハ
運送馬ニ毛ガ生ヘタヤウナ買方ヲスルノ
デ、現ニ今年ノ種牝馬購買ヲ見テモ九百圓
ダ、一千圓ダ、一千五百圓ダト云フ馬ヲザ
ラニ買ツテ居ル、而モ是ハ四、五歲ノ馬ダ、
荷馬車馬デモ八百圓カラ一千圓モスル場合
ニ、以上ノ如キ買方デアルカラ、優秀ナ種
牡馬ガ出來ル譯ハナイ、種牡馬ニ優等ナモ
ノヲ得ナケレバ此ノ二法案ノ目的ヲ達スル
コトノ出來ナイノハ、火ヲ睹ルヨリモ明カ
デアル、尙ホ今後ハ種牡馬購買ハ農林省一
本ニナツテ、何人ト雖モ種牡馬ヲ購買スル
コトハ出來ナイ法律ノ下ニ置カレルノデア
ルカラ、此ノ機會ニ購買ニモ從來ノ弊ヲ改
メテ、篤ト農村經濟ヲ考慮ノ上、馬產有力
者ニ於テ進ンデ種牡馬生產ノ改良發達ニ邁
進スルヤウ致サレタイノデアリマス、現在
馬ノ政策ノ大改革ヲ行ツテ國策ヲ樹立シテ
モ、種牡馬ガ不足デ今年カラ實行出來ヌト
云フ有樣デアリマス、已ムヲ得ズ軍デ望マ
ザル、國策ニ反スル種牡馬ノ配合ヲシナケ
レバナラヌト云フ狀態デアル、假ニ中間種
ノ種ヲ配合シヨウトシテモ、內地馬政計畫
ノ方針ニ基ク種牡馬ハ何頭ヲ要スルカ、而
シテ現在何頭ヲ所有スルカヲ考フル時ニ、
心窃ニ憂フベキモノガアルデハナイカト
思フノデアリマス、種馬統制法デハ種牡馬·
種牝馬ト云フケレドモ、是ハ仔ヲ產ムモノ
ヲ種牝馬トシタノデ、種ヲ產ム爲ノ種牝馬
デハナイト思ハレル、唯多クノ中カラ出產
シタモノノ中、優秀ナモノヲ種トシヨウト
云フ心構ヘトヨリ見ラレナイ、森林ノ種苗
デサヘモ三十年以上ノ樹ヲ種木トシテ、其
ノ質ノ良イモノカラ撰定シ、氣候風土ヲ能
ク調査ノ上ニ配置スルコトニ依ツテ、植林
ノ目的ヲ達スルト云フノデアリマス、況ヤ
馬ハ種馬ヲ選定スル上ニ於テハ、國家デ牧
場ヲ持ツテ嚴選主義ヲ執ツテモ、尙ホ優等
ナル種牡馬ハ揃ハズ、相當ニ不足ヲシテ居
ルノデアル、此ノ場合ニハ民間ヨリノ種馬
購買ニ對シテハ、先ヅ種牝馬ヲ選定シ、是
ガ飼養管理ヲ監督シ、配合ノ宜シキヲ得テ、
一面ニ相當額ノ助成ヲ與ヘテヤツテモ、種
牝馬一代ニ對シ候補牝馬ノ二三頭ヨリ生
產シナイト云フ狀態デアリマスカラ、是等
ノ經濟狀態ヲ篤ト調査ノ上、奬勵ノ意味ヲ
含メテ、相當ナ購買價額ヲ增額シテ、先ヅ
良イ種ヲ揃ヘルト云フコトニナラナケレ
バ、此ノ二法案ノ完成ハ覺束ナイト考ヘテ
居リマス、殊ニ我國特有ノ產馬方針ヲ確立
シタル內地馬政計畫、竝ニ滿洲國ニ移殖ノ
計畫ガアリ、尙ホ外國輸入ハ諸外國ノ事情
ニ依ツテ、不可能ナル現狀デアルニ於テハ、
特ニ優秀ナル種馬ノ生產ニ、一段ノ努力ヲ
拂ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、
然ラザレバ此ノ法案ハ實行不可能デアリマ
ス、何トナレバ此ノ國策ニ協力シヨウトシ
テモ、規格ニ當嵌ツタ種馬ノ配給ガ出來ナ
イカラデアリマス、此ノ種牡馬政策ガ相當
犧牲ヲ拂ツタニシテモ、七千五百頭ノ優秀
ナ種牡馬ヲ一日モ早ク完備スルコトニ依ツ
テ、之ニ比例シテ良馬ノ生產ヲ得ルコトハ、
是亦當然ナコトデアリマス、此ノ優良馬生
產ニ依ツテ負擔力、輓曳力、持久力ノ增加
ヲ見ルノデ、隨テ農畜關係竝ニ馬利用ノ方
面デ、經濟的調和ヲ得ルコトヲ得、二四、
ハ國防上軍所要ノ馬ヲ全ク粒揃ヒニ整備ノ
目的ヲ達シ得ラルルノデアリマス、我ガ日
本國內ニ於テ地域カラ見テモ、牧野關係カ
ラ見テモ、又經濟關係ヲ考ヘテモ、徒ニ數
ヲ增加スルト云フコトハ不可能デ、ヤハ
リ粒ヲ以テ揃ヘルト云フコトハ、今囘ノ
馬政國策上見逃シテハナラナイト考ヘル者
デアリマス、更ニ馬ニ對スル指導ノ方面カラ
考ヘル時ニハ、乘馬、輓馬、小格輓馬等ノ
定ノ規格ハ、如何ナル文字ヲ使ツテモ現ハ
シ得ナイノデ、實物ニ當ツテ指導スルノガ
一番有效適切デアルコトハ、從來ノ長イ經
驗ニ徵シテ極メテ明瞭デアリマス、隨テ種
牡馬ノ選定ハ此ノ方面カラ見テモ、此ノ兩法
案ノ目的達成ニ重要チ役割ヲ持ツテ居ルト
云フコトヲ、忘レテハナラヌノデアリマス、
之ニ對シテ政府ノ所信ヲ伺ヒタイノデアリ
マス、次ハ軍馬購買ニ付テ、斯ノ如キ物價
ノ騰貴ニ依リ馬ノ生產經濟モ周圍ノ事情ニ
伴ハレテ〓騰シ、如何ニ馬產地方ノ美德ナ
ル愛馬心デモ、ドウニカ經濟ノ保タレテノ
事デアリマス、馬ノ方バカリ經濟的ナ方法
ヲ考ヘテモ、農民周圍ノ諸物價ノ統制ガ圓
滿ニ行カナケレバ、馬ノ生產力擴充モ、國
防上ノ軍所用ノ優能馬充實モ、覺束ナイノ
デアリマス、從來ハドウヤラ總テノ點ニ於
テ經濟ガ保タレタカラ、多大ナ犠牲ヲ拂ツ
テマデ、御國ノ爲ニ軍馬生產ニ努力シタノ
デアリマスガ、昨今ノ急激ナル諸物價ノ暴
騰ニ對シ、殆ド行詰リヲ生ジテ居ルノデア
リマス、ソレデモ朴訥ナル農民ハ此ノ場合
デアルカラ苦痛ヲ訴ヘルコトナク、政府ヲ
信賴シテ御方針ニ從フノデアルガ、併シナ
ガラ二、三年前ノヤウニ、經濟的遣繰ノ付
クコトヲ豫想シテ、今後モ從來通リノ政府
ノ方針デアツテハ非常ナル政治ノ缺陷ヲ生
ズル慮ガアルノデアリマス、同ジ軍馬ト申
シマシテモ乘馬、輓馬、小格輓馬、輜重
駄馬ガアリ、是等ノ中デ利用方面ノ多イ小
格輓馬式ノモノハ兎モ角トシテ、乘馬ニ地
域的役種別ノ指定ヲサレタ場所ニ於テハ、
眞ニ軍用ノミニ適當デアツテ、軍馬ノ購買
ヨリ振落サレタルモノハ、砲銃兵器ノ檢査
ハグレト同樣、慘メナ値段デ處分シナケレ
バナラヌノデアリマス、而モ乘馬ハ飼養管
理費モ相當多額ヲ要シ、尙ホ從來ノ例ヲ見
ルニモ、軍馬ノ生產目的ニ、假リニ四千頭
ヲ種付ケヲシ、其ノ仔ガ市場ニ現レル時ニ、
最モ成績ノ好イ所デ種付數ノ半分ヨリ市
場ニ現レズ、ソレヨリ軍馬ハ多クテ二百頭
ヨリ選定シナイト云フコトニナリマス、隨
テ軍馬購買ヲ目標トシテ種付シタル四千頭
ノ馬ハ、一頭ヅツ軍馬生產ニ廻ハリ當テル
三、二十箇年ニ一囘軍馬購買ノ目的ヲ達
シ得ラレル譯デアリマス、隨テ軍馬購買ノ
價格ハ普通馬ヨリ相當增額デナケレバ、軍
ノ要望スル馬ハ農家經濟ヨリ見テ、生產不
可能デアルト思フノデアリマス、農民ハ經
濟的ニヘタバルマデオ上ノ命ニ從フモノデ
アルガ、併シ一旦ヘタバツタラ、オ上ノ力
デモ容易ニ起スコトノ出來ナイト云フコト
ヲ、御承知ヲ願ヒタイノデアリマス、軍用
馬トシテ輓馬、小格輓馬デアツテモ、普通
農村デ使役ニ簡易ナ馬格ヨリハ、相當ニ軍
用ニ傾イタ馬政ノ方針デアルカラ、國防上ノ見
地カラ、馬政計畫ノ此ノ二法案ノ總ベテノ方
面ニ、相當ナ保護ヲ加ヘルベキデアルト思
フノデアリマス、隨テ今囘ノ取引改善ノ調
査モ、民間ノ現情ト照シ合セテ、愼重ヲ期
スベキデアルト思フノデアリマス、現ニ段
段馬カラ牛ニ轉向スル者ガ出來ルト共ニ、
兵務局長ノ御講演ニアル通リ、軍馬ノ購買
ニ對シテモ、餘リニ値段ガ違ヒ過ギル爲メ
カ、之ニ應ズルヲ喜バザルノ傾向ヲ迪リツ
ツアルコトハ、餘程御〓究ヲ要スル問題デ
アリマス、併シナガラ吾々民間側トシテハ、
馬匹ノ暴騰スルコトヲ徒ラニ好ムモノデハ
ナイ、殊ニ馬產ノ源泉タル生產者方面ニ
於テハ尙ホ然リデアリマス、何故ナレ
バ政府ノ購買頭數ハ、生產馬頭數ノ一割乃
至一割五分デアリマシテ、アトノ大部分ハ使
役地タル農家方面其ノ他ニ販賣サレルノデ
アツテ、是等ノ得意先ニ農畜關係其ノ他馬ノ
利用ニ使役スルノデアツテ、卽チ生產馬ハ
此ノ得意先ニ依ツテ消化セシメルノデアルカ
ラ、此ノ消化ニ對シテハ經濟的ニ永續ヲ希望
シ、併セテ國防上ノ充實ヲ期スルノデアリ
さく、依ツテ使役地ノ生產物ノ價格ヤ、運
送馬力ニ依ル昨今ノ收益ノ度ヲ能ク調査シ
テ、之ニ對應スル價格ノ馬値段ヲ定メルベ
キモノト信ズルノデアリマス、是等ノコト
ハ生產者側ハ百モ二百モ承知ノコトナレド
モ、斯ノ如ク物價騰貴ノ狀態デハ持切レナ
クナツタコトハ、篤ト此ノ二法案ノ出發ニ於
テ、御〓究アラネバナラヌデアルト思フノ
デアリマス、何故斯樣ナコトヲ申スカト云
ヘバ、第二馬政計畫デ、殊ニ馬政調査會ニ
掛ケテ馬政ノ憲法トシテ、國民ニ馬政ノ嚮
フ所ヲ示シ、一、二年經タズシテ掌ヲ返ス
ガ如キ大改變編ヲ、多クノ同一ナ役人ニシテ
之ヲ行フト云フコトニナレバ、前途ニ轉タ
不安ヲ懷カザルヲ得ナイノデアリマス、此
ノ法案ノ實施ニ當リマシテ前途ヲ明確ニシ
タイ爲ニ、御尋スルノデアリマス、尙ホ農
村ハ國家全體ノ動員ニ依ツテ、必要ナル場
合ガ到來シタ曉ニハ、何時デモ馬ヲ只デデ
モ御國ノ爲ニ差上ゲル用意ノアルコトヲ、
申上ゲテ置キタイ、ト同時ニ如何ナル美名
ノ下ニアラウトモ、唯馬ノ價格ノミヲ事變
ノ犧牲ニスルト云フ農村ノ行爲ガアツテハ
ナラヌノデアリマス、以上申述ベマシタ諸
點ニ關シテ、詳シク御說明ヲ御伺致シマシ
六、更ニ細部ニ亙ツテ質疑ヲ試ミタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=2
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003・荷見安
○荷見政府委員 第一ノ輕種ヲ軍馬ニ使用
セザルコトニ馬政計畫ヲ立テマシタノハ、是
ハ陸軍ノ要望ノ結果ニ依ルノデアリマスカ
ラ、私ノ方カラ其ノ點ダケ申上ゲテ置キマ
ス、馬ノ改良方針ノ改變ニ伴ヒマシテ、影
響ヲ受クベキ輕種產地ニ對スル對策如何ト
云フ第二點ノ御話デアリマスガ、是ハ前段
モ申上ゲマシタ通リ、戰列部隊所用馬生產
用ノ種牡馬ノ整備ハ、昭和十八年度マデト
ナツテ居リマス、輕種產地ニ對シテハ、特
ニ之ヲ早メル方針ヲ執ルコト、輕種ノ種牝
馬ヲ中間種ノモノニ置キ換ヘル場合ノ設置
奬勵ニ付テハ、輕種產地ヲ優先的ニ認メル
方針ヲ執ルコト、輕種產地ノ軍馬購買ニ付
テハ軍部トノ申合ニ依リ、明ケ二歲ノモノ
ハ昭和二十年度マデ、壯馬ハ同ジク二十五
年マデ、特ニ之ヲ認メル方針ヲ執ルコト、
ト云フヤウナコトニ致シマシテ、成タケ輕
種產地ノ混亂ヲ來サナイヤウニ處置致シテ
參リタイ、斯樣ニ御承知ヲ願ヒマス、第三ニ
種牡馬ノ購入價格ニ付テ、御質問デアリマ
スガ、是ハ馬糧ノ騰貴等ノ關係モ考慮致シ
マシテ、昭和十三年度ニ於キマシテハ明ケ二
歲馬ノ價格ハ、昭和十二年度ヨリモ平均凡
ソ百圓程度增額致シタノデアリマス、又日
本競馬會ノ行ヒマス「アラブ」抽籤馬ノ購買
ノ價格ニ付キマシテモ、昭和十三年ノ秋カ
ラ一囘引上ヲシ、尙ホ昭和十四年ノ初ニ於
テモ、再ビ其ノ引上ヲ致シテ居ルノデアリ
そく、ソレカラ種牡馬ノ選定ニ付キマシテ
ハ、優良ナル種牡馬ノ生產ニ付テハ、種牡
馬ヲ生產スルニ適當ト認メマス優良種牝馬
ヲ選ビ、之ニ種牡馬ヲ作ルニ適當ト認メル
種牡馬ヲ交配シテ、生產致シタイト考ヘテ
居ルノデアリマシテ、種馬統制法ニ依リマ
シテ優良ナル種馬ノ檢定ヲ行ヒマシテ戰列
部隊所用ノ軍馬生產ニ適當ナルモノヲ選定
致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ
馬ノ價格ニ付キマシテ、是マデ政府ノ方面
ニ於キマスル購買頭數ハ、非常ニ割合ガ少
クテ、後ハ一般民間ノ需要ニ應ズルノダ、
ソレハ其ノ通リト存ジマスガ、今囘ノ馬政計
畫ニ依リマシテ滿洲ニ移殖致シマスル馬數ハ、
平年度ニ於キマシテハ相當只今御話ノモノヨ
リハ多額ニ、ソレノミデモ上ル見込デゴザイ
マスカラ、價格ノ安定ト云フコトニ付テハ、
御話ノ點ヨリモ餘程都合ガ好ク行クヤウニ
ナルノデハナイカト考ヘテ居リマス、大體
私ノ方カラハ此ノ點ダケ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=3
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004・栗林忠道
○栗林說明員 軍馬ノ購買價格ニ付キマシ
テハ、軍ニ於キマシテモ馬ノ資格ヲ判定
致シ、尙ホソレニ馬ノ生產費トカ市價ト云
ブモノヲ適當ニ考慮ノ上、適正ナル値段ヲ
決メルノデアリマス、一貫シタ方針ト致シ
マシテハ、馬產ヲ何處マデモ保護助長シテ
行クト云フ精神ノ下ニヤツテ居リマス、併
シ最近ニ於キマシテハ事變ノ影響ヲ蒙ツテ、
非常ニ馬ノ値段ガ上リマシタ、之ガ爲ニ殆
ド軍馬ノ購買ト云フコトハ不可能ニナルノ
デハナイカトスラ危ブマレタノデアリマス
ガ、出來ルダケ此ノ値段ヲ適正ニスルト云
フコトニ善處致シテ參ツタノデアリマス、
尙ホ適正ナル値段ヲ定メルト云フコトニ付
キマシテハ、關係當局トモ篤ト御相談ヲ致
シマシテ、善處致シタイト思ツテ居リマス
次ニ馬ノ種類ノ問題デアリマスガ、先ヅ
最初ニ御答シナケレバナラナイコトハ、今
囘ノ事變ニ因ツテ突如トシテ馬政ノ根本方
針ヲ變ヘタノデハナイカトカ、或ハ屢〓馬政
ノ根本方針ヲ變ヘタノデハナイカト云フヤ
ウナ、御叱リデアリマスケレドモ、是ハ何
等カノ誤解デハナイカト考ヘマス、ソレヲ
只今一寸申上ゲマス、御承知ノ如ク第二次
馬政計畫ヲ立テマシタ際ニハ、其ノ根本方
針ハ第一次馬政計畫ノ精神ヲ、何處マデモ
踏襲ヲシテ參ツタノデアリマス、ト申シマ
スノハ軍ト致シマシテハ、第二次馬政計畫
ヲ立テマス際ニ、何等ソコニ的確ナル資料
ヲ得ナカツタノデアリマス、ソレハ滿洲事
變ニ於テ、輕乘輓馬ヲ以テスルノ僅カノ經
驗デアリマシテ、ソコニ輕種ヲ排斥シナケ
レバナラヌトカ、軍馬ハ全部中間種デナケ
レバナラヌトカ云フ的確ナル資料ヲ把握ス
ルコトガ、出來ナカツタノデアリマス、隨
テ第二次馬政計畫ヲ立テマス際ニハ、當時
軍ガ保管ヲシテ居リマシタ馬ノ現在ノ種類
別ヲ標準ト致シマシテ、乘馬ニ於テモ大體
輕種四、中間種五位ノ割合デアリマシタノ
デ、ココ當分ノ間ハ其ノ割合デヤツテ行カ
ウデハナイカ、而モ十年ト云フ期間ヲ限リ、
先ヅ其ノ期間ダケハ此ノ割合ヲ以テ進ンデ
行カウトシタノデアリマシテ、決シテ第一
次馬政計畫カラ第二次馬政計畫ニ移リ變リ
マシタ際ニ、軍ノ方針ヲ一變シタノデハア
リマセヌ、全然第一次馬政計畫ノ趣旨方針
ヲ踏襲致シタノデアリマス、所デ今囘ノ新
馬政計畫ヲ立テマス際ニハ、全般的ニ何モ
違ツテ居リマセス、唯只今小笠原委員ノ御
質問ノアリマシタ通リ、輕種ノ問題ニ付キ
マシテハ多少考ヘガ違ツタノデアリマス、
ソレハ滿洲事變ニ於キマシテハ、輕乘輓馬
ヲ以テシテノ僅カノ部隊ノ僅カノ實驗、殊
ニ軍隊ノ活躍ノ致シマシタ所ハ、大體ニ於
テ南滿洲ノ地區デアリマシテ、北滿洲ノ方
面ニ行ツテ働イタト云フ部隊ハ、餘リナイ
ノデアリマス、隨ヒマシテ僅カノ地區デ、
而モ輕乘輓馬ダケデ、僅カ期間ノ實驗ニ過
ギナイノデアリマス、然ルニ今囘ノ事變ニ
於キマシテハ、御承知ノ如ク戰場ハ北支カ
ラ中支、南支ト非常ニ廣大ナ地區ニ亙リマ
シテ、而モソレニ參加致シマシタ軍馬ノ數
ハ、日本ノ馬デ凡ソ戰時ノ役ニ立ツト思ハ
レルモノハ悉ク徵發致シマシテ、活動サセ
ルト云フヤウナ未曾有ノ經驗ヲ致シタノデ
アリマス、而モソレガ各種ノ戰況、各種ノ
地形、各種ノ條件ノ下ニ實驗ヲ重ネタ次第
デアリマス、然ル所輕種系ノ馬、殊ニ輕種
ノ血量ノ多イ馬ハ、ドウモ戰地ニ於ケル粗
笨ノ管理ニハ堪ヘナイ、隨ヒマシテ直グ過
勞、廢斃ニ陷リ、又悍性ガ餘リニ高過ギテ
所謂、虛悍、强悍デアリマシテ、在〓ノ兵、
殊ニ未〓育ノ兵等ニ於テハ之ヲ扱ヒニクイ
ト云フ關係カラ致シマシテ、是ハ軍馬ニハ
ドウモ向カナイ、軍ノ輕乘輓馬ハ御承知ノ
如ク粒選リノ馬デアリマシテ、而モソレハ十
分ニ訓練ヲ施シテアリマスノデ、輕種ノ血量如
何ニ拘ラズ、大體ニ於テ役ニ立ツタノデアリ
マスケレドモ、徵發ノ馬ハ殆ド未訓練ノ儘
民間ニ放置サレテ居ルノデアリマシテ、是
ガ一旦徵發ヲサレテ戰地ニ出ル場合ニ、サウ
云フ條件ノ下ニ於テハ到底軍馬トシテノ能
率ハ發揮出來ナイト云フコトガ、各部隊一
致ノ意見デアリマシテ、ドウシテモ輕種血
量ノ多イモノハ軍馬トシテハ避ケナケレバ
ナラヌト云フコトニ、大體軍ノ意嚮ガ纏ツ
タノデアリマス、隨ヒマシテ輕種血量ノ多
イモノハ軍馬トシテハ適當デナイ、要スル
ニ中間種ヨリ血量ノ多イモノハ、軍馬トシ
テハ適當デナイカラト云フコトヲ、馬政當
局ノ方ニ申シマシテ、第二次馬政計畫カラ
新馬政計畫ニ移リ變ツタノデアリマス、尤
モ第二次馬政計畫前ニ於キマシテモ輕種ハ
認メテ居リマシタモノノ、乘馬ノ大部分ガ
輕種デアルト云フヤウニ思ハレタナラバ、
是モ間違ヒデアリマス、是モ數字的ニ申シ
マスナラバ、昭和十二年度マデニ軍馬補充
部ガ購買致シマシタ七千一一百餘頭ノ馬ニ付キ
マシテモ、僅ニ四二%ガ輕種デアリマシテ、
他ハ中間種其ノ他デアリマス、又昭和八年
現在ノ軍馬數ヲ調ベマスルト-六千餘頭
ニ就テ調ベタノデアリマスガ、是モ輕種ニ
屬スルモノハ三割六分デアリマシテ、他ハ
中間種其ノ他デアリマス、隨ヒマシテ乘馬
ト言ヘバ總テ輕種ト云フ御考ハ間違ヒデア
リマシテ、ヤハリ軍馬ノ主體ヲ成シテ居ル
モノハ中間種デアルノデアリマス、隨ヒマ
シテ今囘第二次馬政計畫カラ新馬政計畫ニ
變リマシテモ、輕種ノミノ生產ヲ致シテ居
リマスル所ニ於テ、多少ノ動搖變動致シマ
シタコトハ、勿論私共ノ方デモ認メテ居リ
マスケレドモ、大部分ノ所ニ於キマシテハ
寧ロ今囘ノ計畫ヲ以テ適當ノモノデアルト
シテ、歡迎ヲシテ居ルノデハナイカト考ヘ
テ居ル次第デアリマス、而モ輕種ノミヲ持
ツテ居ル地方ニ對シマシテハ、決シテ御無
理ナ變改ヲ與ヘズニ、其ノ方面ニ於ケル種
牝馬ノ十分ナル備付、竝ニ配合ノ統制ト云
フモノガ立派ニ行ハレテ行クノニ相呼應シ
テ、軍馬ノ購買ヲモヤツテ行クト云フノデ
アリマスカラ、決シテ御心配ハナイト考へ
テ居ル次第デアリマス、尙ホ私ノ說明ガ不
滿足ノ場合ニハ、何レ大臣モ三時頃ニハ見
エル筈デアリマスノデ、其ノ時ニ御聽キ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=4
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005・佐藤謙之輔
○佐藤委員長代理 小笠原君ニ一寸御相談
シマスガ、先日遠山君カラ文部省ノ實業學
務局長ノ出席ヲ要求致シテ置カレマシタ
ガ、其ノ代リトシテ谷原義一農業〓育課長
ガ見エラレマシタノデ、其ノ方ノ質問ハ極
ク短イサウデスカラ、ソレヲ許シマシテ、
其ノ方ヲ片附ケタイト思ヒマスカラ御諒承
願ヒマス-遠山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=5
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006・遠山房吉
○遠山委員 私ハ只今委員長ヨリ申サレマ
シタ如ク、文部省側ニ對シマシテ一應御
尋ヲ致シテ置キタイト存ズルノデアリマ
ス、御承知ノ如ク現在ノ戰時狀態及ビ今
後如何ナル狀態ニ陷ルカト云フコトハ、
國民トシテ頗ル心配ヲ致シテ居ル所デゴ
ザイマスガ、ソコニ於キマシテ、馬政計
畫ニ對シマスル獸醫師ノ養成竝ニ其ノ生
徒ノ收容等ノ關係ニ付キマシテ、文部省カ
ラ詳細ノ御說明ヲ得タイト存ズル者デアリ
マスガ、質問ハ至ツテ簡單デゴザイマスガ、
何卒詳細ノ御說明アランコトヲ希望致シマ
ス
〔佐藤委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=6
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007・谷原義一
○谷原說明員 只今遠山サンカラ獸醫師養
成ニ關シテ、文部省ノ採ツテ居ル〓育上ノ
コトニ付キマシテ、詳細ニ說明ヲセヨト云
フコトデゴザイマシタノデ、出來ルダケ詳細
ニ御說明申上ゲタイト存ジマス、文部省ト
致シマシテ獸醫師養成ニ付テハ、大體現在
ニ於キマシテハ大學、高等農林學校ニ於ケ
ル獸醫科、詰リ獸醫師ノ專門學校、ソレカ
ラ中等學校ニ於テモ獸醫師ヲ養成シテ居リ
やく、大學ニ於キマシテハ旣ニ御承知ノ
コトト思ヒマスガ、東京帝國大學農學
部ノ獸醫學科、北海道帝國大學農學部
ノ畜產學科ニ於テ第二部ヲ設ケテ、大學
程度ノ獸醫師ヲ養成シテ居リマス、是
ハ目下ノ所帝大ノ農學部ノ中ニ獸醫學科ガ
ゴザイマスガ、獸醫學部ト云フモノハ未ダ
獨立シテ居ラヌノデアリマス、ソレカラ專
門學校ト致シマシテハ盛岡高等農林學校ノ
獸醫學科、宮崎高等農林學校ノ畜產學科ニ
於ケル所ノ獸醫學科、東京高等農林學校ノ
獸醫學科デ獸醫師ヲ養成致シテ居リマス、
尙ホ申上ゲルマデモナク色々ノ關係、特上
時局ノ關係デ獸醫師ノ多數ヲ要スルコトガ
判然致シテ居リマスルノデ、目下此ノ第七
十四帝國議會ニ對シマシテ、豫算ヲ要求シ
テ居ルモノガゴザイマス、ソレハ新ニ鹿兒
島高等農林學校ニ獸醫學科、鳥取高等農林
學校ニ同ジク獸醫學科ヲ新設致スノデアリ
やく、ソレカラ文部省直轄デハアリマセヌ
ガ、地方ノ府縣立ノ獸醫學校、是ハ專門程
度デハアリマセヌガ、農學校ニ於ケル所ノ
獸醫學科ニ於テ獸醫師ヲ養成シテ居リマス、
是等ハ御承知ノヤウニ大正十五年ノ獸醫師
法ノ改正ニ基キマシテ、獸醫タル資格ヲ消
失スルコトニナリマスノデ、本年三月末日
限ヲ以テ此ノ中等學校獸醫學ノ科ハ閉鎖シ
ナケレバナラナイコトニ相成ツテ居リマス、
其ノ他官公立ノ外ニ同ジク私立ノ高等獸醫
學校ノアルコトハ既ニ御承知ノヤウデアリ
マスガ、是等ニ對シマシテモ、文部省ト致
シマシテハ、其ノ設立者學校當局ト十分密
接ナ連絡ヲ執リマシテ、私立學校ニ於ケル
獸醫師ノ養成ニ付キマシテ力ヲ注イデ居ル
譯デアリマス、以上ハ大體數字的ナ事柄ヲ
申上ゲテ現狀ヲ明ニシタノデアリマスガ、
其ノ內容ト致シマシテハ、詳シク申上ゲル
マデモナク、獸醫師ノ養成ハ從前ハ割合ニ
程度ノ低イモノデアツテモ宜イト云フヤウ
ナ、一般的觀念モゴザイマシタガ、大正十
五年ノ法律改正ニ伴ヒマシテ色々ト高等ナ
獸醫師ヲ養成シナケレバナラナイト云フコ
トニナリマシタノデ、先程申上ゲマシタ通
リニ、中等學校ニ於ケル獸醫師ノ無試驗檢
定ニ依ル所ノ免許狀下附ノ資格ガナクナリ
マシタノデ、出來ルダケ立派ナ獸醫師ヲ養
成致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、
所ガ段々ト御話モゴザイマスルヤウニ、昨
今ノ時局ニ伴ヒマシテ中等程度ノ獸醫師モ
養成シテ行カナケレバナラナイト云フヤウ
ナ關係ガ發生シテ居リマス、ソレデ農林省
ニ於カセラレマシテモ昨年ノ四月二十日ノ
官報ヲ以テ、獸醫師ノ受驗資格トシテハ中
等學校ニ於テ第二部卽チ中等學校ヲ卒業シ
テ、其ノ中等學校デ二箇年獸醫學科ノ〓
授ヲ受ケタナラバ、獸醫師ノ受驗資格ガ獲
得出來ル、斯ウ云フコトニナリマシタノデ、
中等學校第二部ニ於ケル所ノ獸醫師ノ養成
ニ付キマシテモ力ヲ注イデ居ル譯デアリマ
ス、只今私ノ方ニ參ツテ居ル府縣廳ノ報〓
ニ依ルト、北海道ニ於テ二校、靑森縣ニ於
テ一校、長野縣ニ於テ一校、大阪府ニ於テ
一々、合計五校中等學校第二部ニ於テ獸醫
師ヲ養成スルコトガ、判然ト致シテ居リ
さく、尙ホ其ノ他ニ於キマシテモ此ノ第
二部ヲ設ケマシテ、出來ルダケ速ニ獸醫師
ヲ養成致シタイト云フ傾向ガ少シ見エテ居
ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ點ニ付キ
マシテモ、文部省ト致シマシテハ出來ルダ
ケ力ヲ注イデ行キタイト考ヘテ居ル次第デ
アリマス、少シ冗長ニナリマシタガ、以上
ヲ以テ御答ト致シ、尙ホ御質問ニ依リマシ
テ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=7
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008・遠山房吉
○遠山委員 次ハ陸軍側ニ御尋ヲ致シタイ
ト思ヒマスガ、ヤハリ獸醫師問題デゴザイ
マン、陸軍ト致シマシテハ、獸醫師ノ養成
ニ付テ如何ナル御方針デゴザイマセウカ、
又獸醫師ノ配屬等ニ付キマシテモ御差支ノ
ナイ限リ御說明ヲ御願致シタイ、斯樣ニ存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=8
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009・栗林忠道
○栗林說明員 今囘ノ事變ニ於キマシテ軍
馬ニ非常ナ損耗ガ出來マシタ原因ノ一ツト
致シマシテ獸醫師ノ技能ガ非常ニ十分デ
ナカツタト云フコトガ第一ニ算ヘラレテ居
ル次第デアリマス、就中地方カラ召集致サ
レマシタ所ノ獸醫ハ、軍隊ニ平素居リマス
所ノ現役ノ獸醫ト違ヒマシテ、殆ド馬ニ接
スルヤウナ機會モナク、或ハ牛ノ方面ノコ
トヲ專門ニシテ居ルトカ、甚シキニ至ツテ
ハ罐詰ノコトヲヤツテ居ルトカ云フヤウナ
コトデ、殆ド名前ハ醫獸ト付クヤウナモノ
ノ獸醫ノ技術ニ關シテハ頗ル疑ハシイ者ガ
アツタノデアリマス、是ガ今囘ノ事變ニ當
リマシテ多數召集セラレテ軍隊ニ配屬セラ
レマシタ爲ニ、其ノ結果トシテ、戰爭當初
ニ於キマシテハ隨分各部隊ニ於テ非難ガア
リマシテ、出來ルダケ獸醫、殊ニ在〓獸醫
ノ軍事的ノ〓育ヲ十分ニ致サナケレバ、到
底馬ノ衞生ノ進步改善ハ出來ナイト云フヤ
ウナ意見ガ出マシタノデ、私ノ方デハソレ
ゾレ手續ヲ致シマシテ、軍隊ニ關係致シマ
シタ所ノ獸醫ニ對シテ速成ノ〓育ヲ行フコ
トヲ致シテ居ルノデアリマス、尙ホソレニ
隨ヒマシテ一般獸醫ノ〓育ニ關シマシテハ
重大ナル關心ヲ持ツテ居ルノデアリマシ
テ、多數獸醫ノ中デ戰爭ノ場合ニ從軍スル
役〓リニアル者ニ對シテハ、軍隊ニ於テ十
分自分ノ任務ガ勤マルヤウナ技術ヲ持ツテ居
テ欲シイト云フコトヲ、熱望シテ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=9
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010・遠山房吉
○遠山委員 今一點今度ハ農林省ノ方ニ對
シテ御伺致シマス、御承知ノ如ク馬政ノ計
畫ガ立テラレマシタ以上ハ、一般ノ人々ガ
此ノ物ヲ言ハザル動物ニ對シテ、其ノ衞生
上ノコトヲ能ク承知シテ居ラナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、只今伺ヒマシタノ
デ獸醫師ノ關係ハ承知致シマシタガ、農林
省ト致シマシテハ一般畜主側ニ對スル衞生
思想ノ普及ニ付キマシテ、如何ナル御考ヲ
持ツテ居ルノデアリマスカ、御伺致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=10
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011・伊藤莊之助
○伊藤政府委員 一般畜主ニ對シマスル衞
生思想ノ普及ニ付キマシテハ、主トシテ
畜產局デヤツテ居ルノデアリマスガ、
馬政局ト致シテヤツテ居リマスノハ、骨軟
症ノ防止ノ方法ヲ畜主ニ〓ヘマストカ、或
ハ傳染性貧血ノ病氣ニ罹リマシタ馬ニ對ス
ル處置、又ハ其ノ豫防方法ヲ畜主ニ〓ヘマ
ストカ、或ハ又傳染性流產ニ罹リマシタ馬
ノ處置及ビ其ノ豫防等、サウ云フ方面ノ各
專門ノ技術員ヲ縣廳ナリ畜產組合ナリニ於
キマシテ、之ヲ講習講話ノ方法ニ依リ、又
ハ經費等ヲ支出致シマシテ指導シテ居ル次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=11
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012・遠山房吉
○遠山委員 大體諒承致シマシタ、尙ホ私
ヨリ一言希望ヲ申上ゲテ置キタイノデゴザ
イマスルガ、此ノ物ヲ言ハザル動物ヲ飼養
管理ヲ致シテ行クノデアリマスカラ、畜主
側ト致シマシテハ此ノ最モ大切ナ馬ハ、國
家的ニ關聯ヲ持ツテ行カナケレバナラヌノ
デアリマス、ドウゾ今後ニ於カレマシテモ、
削蹄デアリマストカ、其ノ他廐舍ノ狀態ガ
ドウナレバドウ云フ風ニナルト云フヤウナ
事柄ニ付キマシテ、ソレ〓〓ノ機關ヲ設ケ、
細ヤカニ講習等ヲ御設ケニナリマシテ、ソ
レヲ御奬勵アランコトヲ希望致シマス、ソ
レカラ今一ツ農林省側ニ御伺致シマスガ、
是マデ日本ノ國民ト致シマシテハ、魚菜類
ヲ主ニ副食ト致シテ居ツタノデアリマス、
近頃ニ至リマシテハ肉食ガ盛ンニナリマシ
タケレドモ、獨リ馬肉ト申シマセウカ、體
裁ヨク云ヘバサクラ肉、又ハ蹴飛バシト申
シマセウカ、其ノ奬勵ガ至ツテ進ンデ居ナ
イ形デアリマス、ドウモサクラ肉、所謂馬
肉ヲ食ベタト言ヘバ、人樣ニ話ガ出來ナイ、
コソ〓〓ト〓ベテ來テハロヲ拭イテ居ルト
云フヤウナ有樣デアリマス、此ノ馬ノ奬勵
ヲスルニ付キマシテハ、一步進ンデ此ノ方
面ニ奬勵ヲシテ戴イタラドウカ、是ハ時節
柄トシテ私共ハ非常ニ之ニ對スル考ヲ持ツ
テ居ルノデアリマス、牛ノ罐詰ハアリマス
ケレドモ、馬ノ罐詰ト云フモノハ見タコト
ガナイ、衞生上馬肉ガ不適當デアルナラバ
致方アリマセヌガ、左樣デアリマセヌナラ
バ、此ノ際肉ノ奬勵ヲ併行シテ戴イタ方ガ
宜シイコトデハナイカト考ヘルノデアリマ
スガ、何カ農林省ニ於キマシテハ、ソレ等
ニ對スル御考ハゴザイマスマイデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=12
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013・荷見安
○荷見政府委員 馬ノ價格ノ維持ニ付キマ
シテハ、他ノ各種ノ方策ヲ講ズルコトハ必
要ト思ツテ居リマスガ、現在ハ馬ノ資源モ
段々減ツテ居リマス次第デアリマスシ、馬
ヲ食用ニ供スルコトヲ奬勵スルコトハ致シ
テ居リマセヌシ、致サヌ方ガ適當カト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=13
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014・大石倫治
○大石委員 只今文部省ノ政府委員ノ御說
明ガアリマシタガ、ソレニ對シテ又陸軍側
ノ御說明ヲ伺ツテ見マスト、色々獸醫ノ供
給養成ノコトニ付キマシテ、民間ノ要望
ト大分違ツテ居ル點ガアルノデアリマス、
先般來獸醫師養成供給ノコトニ付キマシテ
ハ、澤山ノ委員カラ質問モアリマシタガ、
其ノ要點ノ中、最モ重大ナノガ一般馬產地
或ハ育成地方ニ於ケル直接指導ノ任ニ當
ル-一寸語弊ガアルカモ知レマセヌガ、下
級大衆指導ノ任ニ當ル獸醫師ノ缺乏ニ付テ
何レモ憂ヲ持ツテ、其ノ點ノ質問ガ行ハレ
テ居ツタノデアリマス、農林省管轄內ニア
リマスル中等程度ノ農學校卒業生ハ、從來
獸醫師ノ免許ヲ與ヘラレテ居ル者ガ、獸醫
師法ノ改正ニ依ツテ其ノ資格ヲ失フコ
トニナリ、各地ニ於ケル農學校中等程度
ノモノガ本年三月限ヲ以テ廢止セラレ、
其ノ資格ガ專門學校以上ニ昇ルト云フ
コトニナリマスガ、是ハ洵ニ獸醫師ノ技
術知識ノ向上ノ上ニ於テ結構ナコトデア
リマスケレドモ、之ト同時ニ馬產地竝ニ育
成利用地方ニ於ケル直接指導ノ任ニ當ル、
所謂下級大衆ノ指導ノ任ニ當ル獸醫師ガ、
段々缺乏シテ來ル虞ガアル、ソレヲ農林省
ノ管轄內ニ於テハ殆ド文部省ニ移シタヤウ
ナ形ニナルノデアリマスカラ、地方ニ於テ
ハ第二部ト云フモノヲ置キマシテ、更ニ地
方的ノモノヲ養ハントシテ居ルノデアリマ
スケレドモ、其ノ規模モ小サク、其ノ人員
モ少イ、仍テ文部省ニ於キマシテハ東京帝
國大學ノ農學部獸醫科卒業、或ハ北海道其ノ
外官立ノ專門學校、東京、盛岡、三重、鳥取、
鹿兒島等ノ學校ニ於ケル〓育ノ方針ハ、畜產
全般的ノ〓育ヲナサルコトト思フノデアリマ
ス、之ヲ同ジ獸醫科デアリマシテモ、畜產科デ
アリマシテモ、馬ノ專門、或ハ牛、緬羊、犬猫
ト云フヤウナ部門ヲ分ケマシテ、御〓育ニナ
ル御考ハアリマセヌカ、一般醫師ハ各々內
科、外科ヲ初メ、耳鼻咽喉科デアルトカ、眼科
デアルトカ、ソレ〓〓分レテ居ルノニ依ツ
テ造詣モ深クナリマス、折角全般的〓育ヲ
施シマシテモ、ヤハリ馬ニ對スル〓育ガ、
專門學校ヲ卒業シテ參ツテモ、實際ニ技術
ヲ見、其ノ程度ヲ見マスルト、地方ノ中等
學校ヲ卒業シテ數年間實地ニ就イテ居ツタ
者ヨリカ、遙ニ劣ツテ居ル點ガアリハシナ
イカト思ツテ居ル、其ノ點ニ付テ現在ノ制
度ハ姑ク此ノ儘ト致シマシテモ、或ハ近キ
將來ニ於テ馬等ノ專門的ナ〓育ヲナサルヤ
ウニシテ、畜產地方、所謂馬ノ生產地方等
ニ、直接大衆指導ノ出來ルヤウナモノヲ設
ケル御考ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=14
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015・谷原義一
○谷原說明員 御答申上ゲマス、只今ノ御
質問、御希望ハ極メテ專門的ナ事柄デアリ
マシテ、非常ニ私ト致シマシテ結構ナ御意
見ト拜聽スルノデアリマス、現狀ト致シマ
シテハ、今御話下サイマシタヤウナコトヲ
制度ト致シマシテ、法規上明確ニ採ツテハ
居ラナイノデアリマスガ、實際ノ〓授、運
用ニ於キマシテハ、御希望ノヤウニナツテ
居ル所モアルノデゴザイマス、例ヘテ申シ
マスルト、盛岡高等農林學校ニ於ケル獸醫
學科ニ於キマシテハ、土地ノ性質上、馬ノ
方面ヲ重大視致シマシテ、特ニ馬ノ獸醫ト
云フコトニ付テハ非常ニ熱心ニヤツテ居ル
ノデアリマス、又今度新設致シマスル鹿兒
島ノ高等農林學校獸醫學科ニ於キマシテモ
主トシテ馬ノ方ヲヤルヤウニナルダラウト
考ヘテ居リマス、又鳥取高等農林學校ニ於
キマスル獸醫學科ニ付キマシテハ、アノ地方
ノ性質上牛ノ方面ヲ主トシテヤツテ行クヤ
ウニナルト思ツテ居リマス、勿論ソレ〓〓
地方々々ノ特色ニ應ジマシテ、其ノ特色ヲ
發揮シマシテ、今申サレマシタヤウナ牛馬
ノ特性ヲ伸バシテ行キタイノデアリマス、
勿論獸醫師タル資格ヲ獲得スル基礎的ナモ
ノハ共通的ニヤツテ行カネバナリマセ
ヌ、今後段々ト獸醫師〓育ハ、增設擴張シ
テ行カナケレバナラナイト思ヒマスガ、サ
ウ云フ際ニ於キマシテハ、十分今御話下サ
イマシタヤウナ點ヲ考慮致シマシテ、御期
待ニ副フヤウニヤツテ行キタイト存ジテ居
ル次第デアリマス、簡單デゴザイマスガ御
答辯申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=15
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016・森田重次郎
○森田委員 一寸御伺シタイト思ヒマス
ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=16
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017・東武
○東委員長 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=17
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018・森田重次郎
○森田委員 先程地方農學校ニ二部制ヲ御
設ケナサル、サウシテソレヲ卒業スルト獸醫師
ノ資格ヲ與ヘルト云フコトデスガ、ソレハ專
門學校ヲ卒業シタ者ト同ジ資格ヲ得ル爲ニ、
受驗サセル資格ヲ得ルト云フダケデスカ、
其ノ點ヲ御伺致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=18
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019・谷原義一
○谷原說明員 其ノ通リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=19
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020・森田重次郎
○森田委員 スルト其ノ試驗ノ程度ト云フ
ノハ、農林學校卒業者ト同ジコトニナルノ
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=20
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021・谷原義一
○谷原說明員 ソレハ農林省ノ所管デゴザ
イマスガ、大體地方ノ農學校ノ第一一部デ二
箇年獸醫學ヲ修業シタ者ニ對シマシテ、獸
醫師タル資格ヲ得ル試驗ヲ受ケルコトガ出
來ルコトニナツテ居リマス、隨テ其ノ程度
デ受驗ヲ致サレマス、試驗問題ハ其ノ程度
デ出サレマスカラ、高等農林學校ノ獸醫學
科ヲ卒業シタ者ヨリハ少シ下ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=21
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022・森田重次郎
○森田委員 サウスルトソレヲ卒業シタ者
ハ、特例ヲ聞イタ別個ノ得業士トカ何トカ
云フ名稱ヲ特ニ附スルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=22
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023・谷原義一
○谷原說明員 高等農林學校ノ獸醫學科ヲ
卒業致シマシタ者ハ、獸醫得業士ト稱スル
コトヲ得、斯ウ云フコトニナツテ居リマシ
テ、獸醫得業士ト言フコトガ出來マス、今
申上ゲテ居リマスル第二部ノ方ハ、獸醫得
業士ト稱スルコトハ出來ナイノデゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=23
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024・森田重次郎
○森田委員 スルト其ノ受驗ノ方法或ハ科
目、試驗程度ト云フモノハ、全部モウ法規
デ決メラレテ居ルノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=24
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025・谷原義一
○谷原說明員 大體科目等ハ法規デ決メラ
レテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=25
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026・森田重次郎
○森田委員 モウ一ツ、是ハ資料デゴザイ
マスガ、之ヲ一ツ御願致シタイノデゴザイ
マス、今直グ御答辯ガ或ハムヅカシイカモ
知レナイト思ヒマスカラ、後デモ宜シウゴ
ザイマスガ、御調査ノ上御願致シタイコト
ハ、大學校若クハ農林學校、各校別昭和十
一年度、昭和十二年度獸醫科ノ生徒現在總
數其ノ實驗ノ對象タル動物ノ種類、頭數、
其ノ種類別金額ノ總額、之ヲ一ツ御願致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=26
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027・谷原義一
○谷原說明員 大體分ツテ居ル點モアリマ
スシ、少シ分リ兼ネル點モアリマスカラ、
調ベマシテ後デ差上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=27
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028・小笠原八十美
○小笠原委員 先刻私ガ御尋申上ゲタ中ノ
最モ重要ナ關係ノ、今囘ノ改變ニ依ツテ輕
種ト云フモノハ軍馬トシテ適當ナラズト
斯ウ云フコトニナツク結果ニ對シマシテ、
如何ニ政府ノ方デ之ニ同情アル御處置ヲ執
ラレテ居ルカト云フコトヲ、御尋シタノデ
アリマスガ、ソレニ對シテ、何カ補助關係
等ニ對シテハ優先權ヲ持タセルト云フ御話
ノヤウニ、私ハ承ツタノデアリマス、モウ
一ツ此ノ問題ヲ明確ニ申上ゲテ見マスル
ト、先ヅ政府ノ方デハ多クノ兵器竝ニ國防、
產業ノ目的達成ノ爲ニハ、政府ハ多額ノ補
助又ハ損失ヲ補償シテ居ルノデアリマス
ガ、今囘ハ國防上ノ見地カラ輕種兵器ヲ中
間種兵器ト之ヲ改變ヲシタノデアリマス、
隨テ此ノ改變ニ因ル損失補償ト云フモノ
ハ、當然取ルベキダト私ハ考ヘテ居ルノデ
アリマスガ、其ノ點ハヤツテ居ラヌノデア
リマセウカ、ソレヲ先ヅ伺ツテ置キタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=28
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029・荷見安
○荷見政府委員 只今御話ノ輕種ノ產地ニ
對スル對策ニ付キマシテハ先程申シマシ
タヤウニ、大體ニ於テ資格ノ優良ナルモノ
ハ、軍ニ於テモ明ケ二歲ノモノハ昭和二十
年度マデ、壯馬ハ二十五年度マデ特ニ之ヲ
買上ゲルコトニナツテ居リマス、行政手段
トシテハ、種牡馬ノ整理ト云フヤウナコトヲ
特ニ早メテ、輕種產地ニ對シテハ之ヲ行フ
ト云フコトニナツテ居リマスノデ、ソレ以
外ノ損害ヲ賠償スルト云フコトハ致サナイ
コトニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=29
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030・小笠原八十美
○小笠原委員 サウシマスト、政府ノ方デ
ハ之ヲ大改變ヲ行ツテ、兎ニ角ソレニ對シ
テハ種牡馬ノ配置トカ、昭和二十年マデハ
軍馬デ購買スルノダ、斯ウ云フコトデスガ、
ソレハ政府ノ方デ國防上ノ必要ガアツテ種
牡馬ノ如キハ材料ヲ提供スルト云フニ止ツ
テ居ル、決シテソレハ損失ノ補償デモナケ
レイ、補助デモナイヤウニ思ハレルノデア
リマス、サウ云フコトニナリマスト、軍馬
ノ方デ-先刻モ栗林サンカラ昭和二十年
マデ購買シテ居ルカラ、ソレハ餘リ迷惑ヲ
掛ケナイ筈ダト云フ御話ガアツタガ、ソレ
ハ買フト云フヨリモ、寧ロ馬ガナイカラ仕
方ナク買フノデ、吾々ガ假リニ輕種產地ト
シタナラバ、國策ガ斯ウ決ツタ以上ハソレ
ニ協力シテヤルト云フコトガ、經濟上カラ
言ツテモ國防上カラ見テモ一番宜イコトダ、
今生產地デハ色々騒イデ居ル、併シ配給ス
ル種牡馬ガナイカラ已ムヲ得ナイデ現狀ノ
儘ニ居ルト云フ狀態デアリマス、隨テ購買
スル方デモ已ムヲ得ズ購買シナケレバナラ
ヌト云フ程度デアリマス、私ハソレヲ聽イ
テ居ルノデアリマセヌ、實際ニ今マデ政府
ノ方デ三十年以來大イニ奬勵シテ、輕種ニ對
シテ役種別ニ定メ、其ノ他ノモノヲ入レテ
ハナラヌト云フ命令ノ下ニ、今マデヤラセ
テ來タノデアリマス、之ヲ急激ニ輕種ハ軍
馬トシテ適當ナラズト云フコトニナツタ以
上ハ、ソレハソレトシテ輕種產地トシテモ、
ソレニ協力ハシマセウ、所ガソレヲヤル
ハニ先ヅ以テ一ヅツ例ヲ申上ゲルト、今マ
デノ輕種ノ種牡馬ト云フモノハ配合出來
ナイカラドン〓〓拂下ゲナケレバナラヌ、
二千圓ノモノヲ四百圓デ賣ラナケレバナラ
ヌ、輕半血種ニ至ツテハ配合スル馬ガナイノ
デ、直グニモ拂下ゲナケレバナラヌ、之ヲ改變
スルニハ總テノ設備全般ニ亙ツテ改廢シナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フコトニナツテ、總
テノ點ニ付テ一切ヲ更改シナケレバナラヌ
事情ニアルノデアリマス、ソレ等ノ方面ノ
損害トカ何トカ云フコトハ、少シモ考慮ニ
御入レニナラナイノカドウカ、而モ今度ノ
馬政計畫ニ於テ生產地ノ中デモ輕種ノヤウ
ニ、長イ間ニ於テ最モ發達シタ所ノ生產技
術ヲ活カシテ、國策ニ順應セシメル方法ヲ
採ルト云フコトガ、アナタ方ノ御方針デハ
ナイノカ、ソレヲ一ツ明確ニ御答辯ヲ願ヒ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=30
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031・伊藤莊之助
○伊藤政府委員 今ノ御尋ハ、先程長官カ
ラ御答辯申上ゲタコトヲ繰返スニ過ギナイ
ノデアリマスガ、輕種產地ニ對シマシテハ
種牡馬ハ成ベク急速ニ補充シテヤリ、轉向
ヲ成ベク早クスルヤウニ努メル積リデアリ
やっ、從來デモ陸軍デ購買セラレナカツタ
輕種ノ仔馬ハ、民間デ買ツテ居ルノデアリ
マシテ、今囘モ陸軍ガ昭和二十年マデハ買フ
譯デアリマスカラ、從來ヨリモ特ニ負擔ヲ
增シタト云フヤウナコトニハナラヌト思フ
ノデアリマシテ、大體特ニ御迷惑ヲ掛ケル
ヤウナコトハナイカト思ウテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=31
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032・小笠原八十美
○小笠原委員 ドウモアナタ方ハ馬ニ付テ
ハ素人デ駄目ダ、能ク聽イテ御覽ナサイ、
軍馬ニ買フナラ分ツテ居リマス、二百頭其
ノ儘買フナラバ分ツテ居リマスガ、今マデ
ハ輕種ハ軍馬トシテ適當ナラズト云フコト
ガナカツタ爲ニ、軍馬トシテノ檢査外レノ
モノモ、出走ノ馬ニスル爲ニ、博勞ガ買ツ
タカラ値段ガ違ハナカツタ、今度ハ軍馬ハ
生產馬ノ一割シカ買ハナイ、アト殘ツタモ
ノハ二束三文デ投ゲナケレバナラヌ、是ガ
損害デナクテ何ダ、アナタ方ハ實際ヲ見ナイ
デ、机上論バカリデイカヌ、是等ガ損害デ
ナクテドウスル、ソレデハ別ノ方面カラ伺
フガ、是ハ長官カラ御答ヲ願ヒタイ、競馬
ト生產地ノ何レニ重キヲ置イテ居ルカ、之
ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=32
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033・荷見安
○荷見政府委員 御尋ノ趣旨ガハツキリ致
シマセヌガ、競馬ハ競馬デ尊重スベキモノ
デアリ、生產地ハ生產地デ尊重スベキモノ
デアルト思ヒマス、兩方比較スルト云ツテ
モドウ云フ所ヲ比較スルノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=33
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034・小笠原八十美
○小笠原委員 如何ニモ御說ハ御尤デアリ
さく、私ノ比較スル所ハ斯ウデアリマス、
私ハ競馬ハ勿論必要デアリ、輕種モ勿論之
ニ重點ヲ置カナケレバ、是カラ法案實施ニ
當ツテドウシテモ完全ナル結果ヲ得ラレナ
イコトハ明確ダト思ヒマス、然ルニ今度ハ
地方競馬ヲ廢シタ所ニ依ツテハ、鍛鍊馬競
走中央會ト云フモノヲ作ツテ、之ニ依ツテ
整理ヲシテ救濟スル法文ガアル、所ガ輕種
ノ方ニハ唯御迷惑ヲ掛ケナイト言ハレルバ
カリデ、救濟ノ法文モナイデ知ラヌ振リヲ
シテ居ルノハ酷イデハナイカト云フノデス、
私ガ聽キタイノハココナノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=34
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035・荷見安
○荷見政府委員 此ノ輕種ト云フモノニ付
キマシテハ、今後モ競馬ノ方ノ關係デハ、
馬ノ改良ニ缺クベカラザルモノデアリマス
シ、其ノ競走ニ出タモノカラ種馬ヲ取ルノ
デアリマスカラ、其方ノ需要モ相當アル譯
デアリマスシ、又其ノ生產ノ頭數等ニ付キ
マシテモ「サラブレット」系ノモノハ現在ノ
程度デアリマスガ、「アラブ」系ノモノハ速步
競走ヲ漸次ニ中止スルト云フコトニナツテ
居リマスノデ、之ヲ增加致シマシテ、現在
ノ抽籤馬ノ購買頭數モ相當增加シテ行クモ
ノト考ヘテ居ルノデアリマシテ、公認競馬
ノ關係デアリマスレバ、輕種ト云フモノハ
酷イ打擊ハ受ケナイコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=35
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036・小笠原八十美
○小笠原委員 是ハ或ハ意見ノ相違デアル
ト仰シヤルカモ知レマセヌガ、意見ノ相違
ドコロデハナイ、輕種ハ打擊ヲ受ケナイト
云フヤウナコトヲ仰シヤツタツテ、大體今
マデ設備シテ居ル種牡馬、種牝馬、輕半血
種是種ヲドウアナタハ處理スレバ宜イト
思ハレルカ、是ガ一番大打撃ガアルノデア
リマス、而モ長官ノ仰シヤル種牡馬級ノモ
ノヤ軍馬級ノモノハ、昭和二十年マデハ助
カルデセウ、併シナガラ先刻申上ゲタ通リ
軍馬ヲ一番多ク交配サセテ居ルノハ、私ノ
組合デアリマス、四千頭ニ種付ヲシテ居ル
ノデアリマスガ、仔ガ生レテ市場ニ出ス數ハ、
不姙、流產其ノ他、病氣等ガアルノデ、二千
頭出レバ宜イ方デアル、其ノ數字ハアナタ
方ノ方ガ私共ヨリ能ク御承知ノ筈デアル、
其ノ中デ軍馬ハ一番多ク買ツテ二百頭、出
來タ馬ノ一割シカ賣レナイ、其ノ二百頭ヲ
目標トシテ四千頭ノ馬ニ種付ラシナケレバ
ナラヌノデアリマスガ、其ノ殘リノ千八百
頭ハ今度ハ輕種ガ不要ニナルノデアルガ、
是ハ農耕馬ニモ不向デアルシ、將來軍馬ト
シテ買フト云フナラ種牝馬ニシテ軍馬ヲ出
サウト云フ目的ニ向ケルカ、或ハ牡馬ナラバ
五歲マデ飼養管理ヲシテ出走馬トスルカ、
ソコニ色々ノ目的ガアルデアリマスガ、是
ガ軍デ要ラヌト云フコトニナリマスト、ア
トノ振落サレタモノハ、非常ナ犠牲ニナツ
テシマフノデアリマス、隨テ部落的ニ組合
的ニ總テノモノガ損害ヲ蒙ルト云フコトハ
明デアル、競馬ノ方モ損害ヲ蒙ルデセウ
ケレドモ、從來競馬ハ相當ニ儲ケタ所モア
ル、然ルニ生產地ハ儲ケテ居ナイ、犧牲一
方デヤツテ來タノデアリマスカラ、此ノ方
ノ損失ヲ見テ居ラレナイト云フコトナラ、
吾々ハ此ノ法案ニハ餘程缺陷ガアルト思フ
ノデアリマスガ、ソレヲ今言ツタ所デドウ
ニモナラヌノデ、私等ノ言フコトモ能ク御
〓究ヲ願ツテ、無理ガナイト思ハレタナラ
バ更ニ一ツ輕種ノ產地ニ對シテ、打撃ヲ與
ヘナイヤウナ方策ヲ採ツテ戴キタイ、ソレ
カラ次ニ先刻種牡馬ト競馬馬ノコトニ對シ
テ二十年前ト少シモ變リガナイ、安クナツ
タヂヤナイカト云フ私ノ御尋ニ對シテ、競
馬馬ノ方ハ百圓上ゲタ、種牡馬ノ方ハ百圓
上ゲタト斯ウ仰シヤルケレドモ、ソレハ金ノ
數字ヲ見ルカラアナタ方ハ上ツタト云フ、
ソレハアナタ方ハ机上論デ駄目ダ、實際ノ
馬ヲ御覽ナサイ、今マデ競馬馬ニ出タモノ
ハ二千五百圓、三千圓ノ馬ヲ買ツタノデア
リマスガ、昨今ハ其ノ反對ニナツテ來テ居
ルノデアリマス、今マデハ良イ馬ヲ認メテ
居ツタ、今度ハ地方競馬ト云フモノガ統一サ
レタカラ、變動ノアル馬ヲ買ツテ來ルト抽
籤デ困ルト云フノデ、良イ馬ニ金ガ出セナ
クナツタ、隨テ下ノ方ノ六百圓七百圓ト云フ
所ニ良イ馬ガ揃ツタ、ソレハ詰リ叩イテ居
ルノデアリマス、馬ノ進步シタコトハ見ナ
イデ、金ガ上ツタトアナタ方ガ言ハレルノ
デハ、馬ヲ生產スル者ハ泣カナクテハナリ
マセヌ、サウ云フ見方デハイケマセヌ、私
共ノ言フノハ本當ノ馬ノ價値ヲ申上ゲテ居
ル、種牡馬ノ方ハ或ハ五十圓百圓上ツタカ
モ知レヌケレドモ、今度ノ馬政計畫ヲ定ム
ルニ當ツテ、此ノ種牡馬ノ生產ニ眞劍ニ當
ルヤウニ、經濟關係ヲ調査シテヤツテ戴カ
ナケレバナラヌト私ハ申上ゲタ、何故ナラ
バ種牡馬一頭出スニ國デヤツテ居ル馬ハ、
ドンナコトヲヤツテ居ルカト云フナラバ、
國ノ種牡馬ニシテ宜イト云フ馬ニハ每日一
匹ノ馬ニ一人牧夫ガ付イテ、アノ通リ大キ
ナ牧場デ金ハ掛ケ放題デヤツテ、初メテ國
デ決メタ或ル規格ニ嵌ツタ馬ガ出ル、ソレ
程國デヤツテモ面倒ナモノヲ民間デヤツテ、
サウシテ民間デ出來タモノカラ抽籤デ買フ
ヤウニナルト、馬車馬式ノモノガ規格ニ當
嵌ツタト云ヤウフナコトニナツテ、之ガ爲
ニ生產者ガ迷ヒヲ生ジテ、種牡馬ヲ高ク買
ツタカラ俺モヤラウト云フコトニナツテ、
非常ニ經濟的ニ打擊ヲ受ケル者ガアル、サ
ウ云フ馬ニ限ツテ碌ナモノハナイ、隨テ種
牡馬ハ配合カラ飼養管理マデ政府ガシツカ
リ監督シテ、經濟ガ引合フ方法ヲ執ツテヤ
ツテ貰ハナケレバナラス、生產スル者モ粒
揃ヒノ馬ヲ生產スルヤウニ、生產力擴充ヲ
圖ルト云フノデナケレバ到底是ハ旨ク行カ
ヌト云フコトヲ、私ハ申上ゲタノデアリマ
ス、私ハ其ノ方法ヲ執ラレタ方ガ宜イト思
ヒマスガ、之ニ對シテハ如何デアリマセウ、
私ニ同意ナサイマスカ、或ハ別ノ方法ガア
リマスカ、之ヲ一ツ私ハ伺ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=36
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037・荷見安
○荷見政府委員 只今小笠原委員ノ言ハル
ルヤウナ方針ハ、趣旨トシテ結構ナコトダ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=37
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038・小笠原八十美
○小笠原委員 私ハ此ノ軍用馬保護ノコト
ヲ伺ヒタイノデアリマスガ、此ノ軍用馬ニ
對シテハ飼養費ヲ一箇年ニ三十七圓、ソレ
カラ旅費ヲ三十五錢與へテ居ル、斯ウ云フ
コトニナルノデアリマスガ、是ハ國民ノ方
ハ國策ニ協力シテヤルト云フ見地カラ、此
ノ費用デヤリマスケレドモ、普通デハヤレ
ナイノデアリマス、隨テ馬主ハ相當ニ犧牲
ヲ拂ツテ國策ニ協力シテ居ルト云フコトヲ
御認メニナリマスカ、ソレヲ一ツ伺ツテ置
キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=38
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039・荷見安
○荷見政府委員 私共ノ考デハ今囘軍馬ニ
徵發シテ居ルモノノ成績ガ非常ニ惡イカラ、
何カ方策ヲ講ジナケレバナラヌ、ソレニ對
シテハ平常飼養費ト云フモノノ幾分デモ補
助シタナラバ、今ヨリモ馬ノ素質ガ改善サ
レル所ガアルダラウト云フヤウナ考デ、補
助ヲ致スコトニ決定致シタノデアリマシテ、
是ガアリマスレバ是ナキニ比シテ相當效果
ガ擧ルコトト思ヒマス、但シ金額ノ關係ニ
付キマシテハ、是ハ前囘モ申上ゲマシタヤ
ウニ私共トシテモ十分ナリトハ考ヘテ居リ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=39
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040・小笠原八十美
○小笠原委員 是ハ一時的ニヤラレルコト
ト違ツテ、今度ハ永久的ナ問題ニナルノデ
アリマス、之ニ對シテ金額ガ不足デアルナ
ラバ經濟的ニ相當ナ犠牲ヲ拂ツテ居ル者
ガアルコトハ、御分リデアリマセウ、此ノ
事ハ大藏省ト折衝スル際ニ一體能ク御說
明ガ行屆イテ居ルノデアリマセウカ、
體大藏省ハ豫算ニ此ノ種馬ノ飼養費ヲ現
ハシテ、是ハ東北振興費ダト言ツテ出シテ
居リマスガ、相當ノ犠牲ヲ拂ツテ居ルモノ
ヲ、是ハ東北振興費ダト云フ風ニ現ハサレ
タノデハ、東北ノ甚シク疲弊困憊シテ居ル
者ハ裸ニサレテシマフ、ソレハ結局馬政局ノ
說明ガ足リナイカラ、サウ云フコトヲ大藏
省ガヤルノデアル、大藏省ハアア云フ技術
ヲ持ツテ居ルカラ、何デモ彼デモ豫算デ出
シタモノハ振興費ト心得ル習慣ニナツテ居
ルガ、私ハ之ニ對シテ非常ニ迷ヒヲ生ジテ
居ル、是ハアナタニ質問スルノデハナイガ、
斯ウ云フコトハシツカリト說明シテ戴カナ
イト、色々ノ方面ニ犠牲ニナツテ打擊ヲ受ケ
ル者ガアルノデアリマス、ソレカラ今度ハ
鍛鍊馬競走ノコトニ付テ伺ヒマス、是ハド
ナタカノ御質問ニ對シテ資源課長サンノ方
カラ、今マデノ地方競馬ノヤウナヤリ方デオ
ヤリニナルト云フコトヲ、申サレタノデア
リマス、ソレハサウ云フコトデオヤリニナ
ルノデアリマセウ、然ルニ駈足競走ヲヤツ
テドンナ馬ガ速イカト云ヘバ、「サラブレッ
ト」ヲ直接配合シタ所ノ中半血ガ、一番速
イニ決ツテ居ル、サウスルトサウ云フ馬ノ
競走ニナルト、今マデト餘リ大差ノナイ結
果ニナルノデアリマス、而モ鍛鍊馬ト申シマ
シテモ乘馬關係ノ鍛鍊馬モアリマセウ、輓
馬モアリマセウ、小格輓馬モアリマセウ、
是等ヲゴツチヤニシテ駈足ヲスルコトハ出
來ナイノデアリマス、ダカラ今マデ通リオ
ヤリニナルト言ツテモ、今マデハ輓馬トカ
小格輓馬ハ出シテ居ナイノデアリマスガ、
今度ノ鍛鍊馬競走ハ駈足ヲヤル意味ニ於テ、
最モ速イヤウナ乘馬ノミヲ鍛鍊馬競走ニ使
用スルコトニナルノデアリマスカ、サウデ
ナク輓馬モヤルシ、小格輓馬モヤル、乘馬
モヤル、隨テ種類ニ依ツテ區別ヲシテ競走
スルノダ、斯ウ云フ意味ニ伺ヘバ宜イノデ
アリマスカ、其ノ內容ヲドウカ御漏ラシ願
ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=40
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041・佐々木登
○佐々木說明員 只今御尋ノゴザイマシタ
鍛鍊馬競走ノ實施ノ要領デゴザイマスガ、
御說ノ通リ唯普通ニ走ラセテ居リマシタノ
デハ、從來ノ通リ輕種血量ノ比較的多イモ
ノガ優勝ヲ占メル、又輕種血量ノ多イモノ
ヲ生產スルコトニナリマスノデ、其ノヤリ
方ニ付キマシテハ篤ト考慮シナケレバナラ
ヌト思ヒマス、只今考ヘテ居リマス方法ハ
成ベク乘馬、輓馬小格輓馬等ノ色々ナ種類
ノモノガ、出走シ得ル機會ノアル方法デアリ
マシテ、而モ生產ニ對シテモ或ルモノダケ
ニ非常ナ刺㦸ヲ與ヘナイ方法ト云フコトヲ
考ヘテ居ルノデアリマス、隨テ從來ノ地方
競馬ト大體同ジ恰好デヤルト先日申上ゲマシ
タノハ、競走ヲスルヤリ方ニ於キマシテハ、
從來ノ通リデアリマスケレドモ、出走馬ノ組
合セトカ、或ハ競走以外ノ調〓審査、馬體審
査ト云フヤウナモノヲ組合セマシテ、馬主ニ與
ヘマス賞金額ノ決定ニ付キマシテハ、單一
競走ノ成績ダケニ依ツテ與ヘマスカ、或
馬體審査、調〓審査ト云フヤウナモノノ成
績ヲ加味シタモノヲ、馬ノ所有者ニ對スル
賞金トシマスカ、斯樣ナ點ニ付キマシテ今
後〓究致シタイト思ツテ居リマス、但シ優
等馬票ヲ買ヒマシタ者ノ拂戾ノ方法ハ、
是ハ競走ノ成績ニ依ツテヤリマスコトハ
勿論ノコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=41
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042・小笠原八十美
○小笠原委員 只今ノ御答辯デ能ク分リマ
シタ、併シ其ノ御話ノ中ニタツタ一ツ、今
度ノ賞金ヲ授與スルノニ、馬體ノ檢査ナド
ヲ賞與ノ中ニ加味スルト云フヤウナ御話
ガ、今アツタノデアリマスガ、ソレデハ馬
劵ヲ買フ者ハ無クナツテシマフ、馬劵ノ方
ハソレニ關係ガナイト仰シヤルケレドモ、
兎ニ角競走ト云フ以上ハ勝ツタ者ニ賞金ヲ
ヤラナゲレバ、唯見物ニ行ク者ハアリハシ
ナイ、ソコハ是カラ御〓究トアレバ別段御
答辯モ要リマセヌガ、兎ニ角ソレハ考ヘル
餘地モ何モナイモノダト思ヒマス、餘リ馬
ノ方ヲ大事ニシテ、地方馬、鍛鍊馬競走ノ
方ニ對シテ餘リ制限ヲ加ヘルト、何處ノ縣
デモ殆ド經費ガ償ハナクナツテ、延イテ中
央競馬會ト云フモノガ成立タナクナルト考
ヘクソレハ實際經營ニ當ラレル方々ガ、
篤ト御〓究ナサツタ方ガ宜イト思ヒマス、
畜產局長ガ御見エニナツテ居リマスカラ、
家畜保險ニ付テ伺ヒタイト思ヒマス、今度
ノ新馬政計畫ニ依ツテ、低身、廣軀、四肢
强健、粗飼粗管ニ堪ヘル馬ヲ拵ヘヨウト云
フ面倒ナ注文ニナツタノデアリマス、斯ウ
云フ馬ヲ拵ヘルニハ放牧ヲ條件トシナケレ
バ、ドウシテモ出來ナイ、隨テ牧野ノ問題
ガ喧シクナツテ居リマス、其ノ期間モ、ヤ
ハリ春早クカラ秋遲クマデ、或ハ冬モ放牧
シナクテハナラヌヤウニナルノデアリマス、
隨テ今マデノ保險ノ例ヲ見マスト、舍飼地
方ト放牧地方トノ死亡率ニ非常ニ隔リガ多
イコトハ、御承知ノ通リデアリマシテ、ド
ウシテモ新馬政計畫ノ方針ノ徹底ヲ期スル
ノニハ、保險ニ對シテ、今度ハ保險組合ノ
損失ヲ補償スルト云フコトデナケレバ危險
ヲ賭シテ放牧スルコトハ出來ナイカラ、結
局國策ニ反スルコトニナルノデアリマスガ、
其ノ點ノ準備ハドウ云フコトニナツテ居ル
ノデアリマスカ、ソレヲ先ヅ伺ヒタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=42
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043・岸良一
○岸政府委員 馬ニ對スル家畜保險ニ關シ
マシテハ、過般ノ御質問ニ對シマシテ大要
御答申上ゲテ置イタ通リデアリマス、只今
小笠原サンカラ御話ノアリマシタヤウニ、
今度ノ新馬產計畫ニ伴ヒマシテ、優秀ナル
軍馬ヲ作ルニハ、十分放牧シナケレバナラ
ヌ、隨ヒマシテ放牧中ノ危險、是ガ從來ノ
經驗カラ見マスト、放牧馬ノ方ガ實際危險
率ト云フモノガ高ク、隨テ保險率ガ高クナ
ツテ居ル地方ガアル、斯ウ云フ御話デアリ
マシタガ、是ハ洵ニ其ノ通リデアリマシテ、
是等ニ對シマシテハ私共モ何トカ特別ナ方
法ヲ講ズル必要ガアルト考ヘテ〓究ヲ致シ
テ居リマス、固ヨリ保險全體トシテハ、府
縣全體、或ハ國全體デ互ニ補ヒ合ツテ成立
ツテ行クモノデアリマスノデ、出來得ル限
リ全國的ノ計算ノ下ニヤツテ行クコトガ必
要ダト思フノデアリマスガ、特殊ノ地方ニ
對シマシテハ特殊ノ事ヲ考ヘナケレバナラ
ヌダラウト思ツテ居ルノデアリマス、ソレ
ニ對シマシテ從來ノ助成施設ダケデハ無論
十分デナイト思ヒマスノデ、是等ノコトヲ
豫想シマシテ、此ノ助成ヲ增額スルヤウニ
努力シタノデアリマスガ、之ヲ實現スルニ
至ラナカツタ譯デアリマス、併シ其ノ點ニ
付キマシテハ、何等カ出來得ル形ヲ見出シ
タナラバ、ソレニ依ツテ幾分ナリトモ補ヒノ付
クヤウニシテ、サウシテサウ云フ危險ノ多イ地
方ニ於ケル保險組合ガ、十分安定ヲ得ルヤウ
ニシテ、以テ產馬經濟ノ安定ヲ期スルヤウ
ニシテ行キタイト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=43
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044・小笠原八十美
○小笠原委員 只今ノ御答辯ニ依ルト、保
險ノ方ハマダ確立シテ居ナイヤウデアリ
マスガ、何分此ノ新馬政計畫ノ方針ノ一
日モ早ク實行ノ出來ルヤウナ方法ニ努力
シテ戴キタイノデアリマス、更ニ牧野ノ
コトニ付テ馬政當局ニ一言伺ツテ置キタイ
ノデアリマス、廣汎ナル牧野ヲ要スルコト
ハ是ハ勿論デアリマスケレドモ、唯廣イ
バカリノ牧野デハ成績ハ擧ラナイノデアリ
マシテ、ヤハリ牧野ニ對シテ牧草ノ栽培ト
カ、整備トカ云フモノノ徹底ヲ期サナケレ
バナラヌノデアリマス、隨テ間斷的ニ放牧
スルト云フヤウナコトニ指導シテ行ク、ソ
レカラ牛ト馬ト一〓ニ放牧スルト草ヲ全部
絕ヤシテシマフ、御承知ノ通リ牛ハ草ノ根
マデ〓ツテシマフカラ、草ガ生エナクナツ
テ馬ハ非常ニ困ツテ居ル、ダカラ此ノ放牧
關係ヲシツカリ區別シテ、牧野ト云フモノ
ヲ定メナイト成績ガ擧ラヌ、斯ウ私ハ考ヘ
テ居リマス、只今畜產局長モ御見エニナツ
テ居リマスカラ、其ノ牛馬ノ放牧地ノ確立
ト云フコトニ對シテ、何カ御〓究ガアルカ
ドウカ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=44
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045・荷見安
○荷見政府委員 御話ノヤウニ、牧野ノ整
備ニ付キマシテハ、私共モ小笠原委員ト同
ジヤウナ見解ヲ持ツテ居ルノデアリマシ
テ、徒ニ面積ヲ擴大スルコトノミガ適當ナ
モノデナク、面積ガアリマシテモソレガ非
常ニ不良ナル牧野デアリマスレバ、何等ノ
效果モナイノデアリマスカラ、必要ニ應ジ
テ面積ヲ擴大シナケレバナラヌコトハ當然
デアリマスケレドモ、ソレト同時ニ內容ノ
改善、整備ヲ圖ルコトモ極メテ必要デアル
ト考ヘテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ私
共ノ方針トシテハ、其ノ兩方面ニ向ツテ出
來得ル限リ牧野ノ整備ニ努メタイト考ヘテ
居リマス、尙ホ是ガ使用方法等ニ付キマシ
テモ、或ハ只今御話ノ牛馬ノ放牧ヲ如何樣
ニ取扱フベキカト云フヤウナコトニ付テ
モ、馬政局ト致シマシテモ一層〓究ヲ致シ
タイト思ヒマス、幸ヒ牧野ノ改善ニ關スル
審議會モ設ケテ、畜產當局其ノ他各部局ノ
方面ノ方々ト協議ヲ進メツツアルノデアリ
マスカラ、其ノ決案ヲ成ベク早ク得ルヤウ
ニ努メタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=45
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046・東武
○東委員長 小笠原君、續イテ陸軍大臣ニ
御質問ナサイマスカ-陸軍大臣ニ對スル
御質問デ前カラ保留サレテ居ル方ガ何人ア
リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=46
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047・永田良吉
○永田委員 私モ保留シテアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=47
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048・小野謙一
○小野委員 私ハ先日議事進行ノ形式デ陸
軍大臣ノ出席ヲ求メテ置キマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=48
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049・東武
○東委員長 大臣ハ大變御忙シイヤウデア
リマスカラ、質問ハ成ベク簡單明瞭ニ御願
致シマス-小笠原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=49
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050・小笠原八十美
○小笠原委員 今囘ノ種馬統制法案竝ニ軍
馬資源保護法案ニ付キマシテ、此ノ大改編
ノ眼目ハ輕種ハ軍馬トシテ適當ナラズ、是
ガ一番ノ問題デアリマス、ソコデ此ノ原因
ヲ他ノ委員カラモ此ノ前御尋致シマシタル
所、又他ノ機會ニ於テモ農林當局其ノ他陸
軍當局カラ承ツテ居ル所ニ依リマスルト、
日支事變ノ實績ニ鑑ミテ實施サレタト云フ
コトヲ屢〓聞クノデアリマス、併シ未ダニ此
ノ改編ニ當リマシテ相當前途ニ疑ヲ有シテ
居ルノデアリマス、言フマデモナク馬ノ改
良ハ多大ナ苦心ト長年月ヲ經ルニアラザレ
バ其ノ目的ヲ達成シ得ザルコトハ、第一馬
政計畫ニ三十年ヲ有シテ居リマス、而シテ更
ニ第二馬政計畫ニ入ツタノデアリマスガ、此
ノ經過ニ於キマシテモ極メテ明瞭ニ政府ノ
方カラ承ツテ居ルノデアリマス、隨テ國防
上且ツ兵器トシテ軍ノ作戰上遠イ前途ヲ見
越シ、如何ナル敵國ヲ相手ニシテモ間違ヒ
ノナイ馬產計畫ヲ立テテ置カナケレバナラ
ナイト私ハ思フノデアリマス、然ルニ今囘
ノ日支事變ハ國民齊シク豫期シタヤウナ事
變デアリマシテ、軍ニ於テモ之ニ對スル缺
陷ガアツテハナラヌ筈デアリマス、所ガ今
囘ノ事變ニ對スル實績ニ鑑ミテ、初メテ馬
ノ大改編ヲ斷行スルト云フコトハ、前ニモ
申上ゲマシタ通リ馬ノ改良ハ長年月ヲ要ス
ルコトデアリマシテ、斯樣ナコトヲ百モ承
知デアル政府トシテハ、餘リニモ前途ニ暗
カツタト思ハレルノデアリマスガ、此ノ點
ハ國民モ迷ヒヲ生ズル所デアリマス、何ト
カ國民ニ納得ノ行クヤウナ御說明ヲ願ヒタ
イノデアリマス、御答辯ガ明確デナイトス
レバ-從來輕種方面ニ軍馬トシテ奬勵ヲ
シ、竝ニ指導ノ爲ニ、直接之ニ當ラレタ所ノ
軍馬補充ノアル所ハ、軍馬補充部ノ役人ノ方
方、軍隊ノアツタ所ハ軍隊ノ御役人ノ方々、
其ノ他農林省ノ種馬所ノ役人ノ方々カラ縣
廳、產馬組合共ニ農民ニ直接當ツテ今マデ
輕種ト云フモノハ軍馬トシテ最モ乘馬ニ適
當ダトシテ指導ヲシテ參ツタノデアリマス、
是ガ現在何故大變動ヲ來シタカト云フコト
ガ明確デナイ爲ニ、此ノ第一線ニ立ツテ居
ル方々ガ答辯ニ苦シンデ居ル、無理ニ訊ク
ト勝手放題ナ法螺ヲ吹イテ、農民ニ押付ケ
テ居ルヤウナ感ガアルノデアリマス、農民
ノ方デハ唯政府ノ方デ權力ヲ以テ分ツテモ
分ラヌデモ後ヘ付イテ來イト云フヤウニ聽
モ·ト眞カラ此ノ國策ニ協力スルト云フヤ
ウナ、サウ云フ分ルヤウナ說明ヲシタ者ハ
一人モナイ、ソレデ非常ニ迷ツテ居ルノデ
アリマスカラ、何トカ大臣カラ斯ウ云フ必
要ニ依ツテ斷行シタト云フコトノ、明確ナ
御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、モウ一ツ
續イテ申上ゲマスガ、一番輕種產地竝ニ其
ノ他ノ國民ニ疑念ヲ生ゼシメテ居ル所ハ、
全國ノ總馬數ノ中デ輕種ト云フモノハタツ
タ二割シカナイ、二割シカナイカラ軍ニ徵
發サレテモ購買サレテモ、其ノ第一線ニ働
イテ居ル馬ト云フモノハ二割シカナイ、ソ
レガ成績ガ惡イトシテモ二割以上ノ成績ノ
惡イ筈ハナイノニ、今度ハ輕種ガイカヌト
ナツタノハ甚ダ不思議ニ思ツテ居ル、第
線ニ於テ輕種デアルトカ、重半血種デアル
トカ紙一枚ノヤウナ血種ノモノヲ、仕譯ノ
付クヤウナ制度ニナツテ居ルノカドウカ、
是モ一ツノ疑念ヲ持ツテ居ルノデアリマ
ス、ソレカラ近頃ハ中間種デアツテモ纖細
菲薄ナル馬モ相當アルデセウ、又輕種デア
ツテモ低身廣軀資質剛健ナ馬モ相當アルノ
デアリマスガ、ソレトテモ第一線ノ方デ何
デモ彼デモ弱ツタ馬ハ、輕種ト決メテシマ
ツタノデハナイカト云フ疑ヲ持ツテ居ルノ
デアリマス、ソレカラモウ一ツハ應召サレ
タ兵隊サン方ハ馬ニ慣レナイ爲ニ、御承知
ノ通リ大臣モ馬產地ノ方デアルカラ能ク御
分リデセウカ、馬ト云フモノハ本能トシテ
逃ゲヨウトスルト、嚙付ク眞似ヲスルモノ
デアリマス、手懷ケテ能ク懷クト初メテ側
ニ寄ルト云フヤウニナツテ來マスカラ、ソ
レデ馬ニ接觸シタコトガナク、怖々當ツテ嚙
付カレル、又恐クナツタト云フコトデ取扱
ニ缺陷ガアツタノデハナイカ、輕種ハ癎ガ
强イ爲ニヤハリ本能ヲ發揮シ易イ、隨テ輕
種ノ方ニハ多ク手當ガ行屆カナカツタ爲ニ
輕種ハ斃レル、ソレデ輕種ハイカヌト云フコ
トニナツタノデハナイカト云フコトヲ疑ツテ
居ルノデアリマス、ソレカラ近ク「ソビエ
ト」アタリト戰爭スルコトニナツタトシテ
モ「ソビエト」方面ハ全部多クハ輕種ヲ持ツ
テ居ル、中デモ騎兵隊ト云フモノハ殆ド輕
種ヲ以テ組織シテ居ルト云フコトヲ聞イテ
居ルノデアリマス、若シサウ云フ場合ニナ
ツテモ日本ハアノ輕種ニ對シテ中間種ヲ以
テ對抗シテ、向フハ賢明デアツテ此方ハ愚
デアルト云フヤウナ點ハ、御調査ガ行屆イ
テ居ルカドウカ、祕密ノ點デ御答辯ガ出來
ナイカモ知レマセヌケレドモ、サウ云フ點
マデ吾々ハ疑ツテ居ルノデアリマス、而シ
テ輕種ハ勘モアリ、能ク命令ニ服從シ、中
間種ハ鈍重デアツテ中々操縱ガ出來ナイ、
隨テ人間ノ訓鍊ガ相當能ク出來テ居ルナラ
バ、多クハ輕種ノ方ヲ望ム、サウシテ鈍重
ナ中間種ハ望マヌ、斯ウ云フコトヲ能ク聞
イテ居リマスガ、軍ノ方デ特ニ輕種ノ方ハ
軍馬トシテ適當ナラズトシタコトハ、何處
ニ原因ガアルノダラウト云フ迷ヒヲ生ジテ
居ルノデアリマス、尙ホモウ一ツ、第一馬
政計畫ト云フモノト此ノ延長ノ第二馬政計
畫ノ計畫樹立ノ場合ニハ、農林省ト陸軍省
ハ能ク折衝シテ國策ヲ定メテ、之ニ依ツテ
國民ニ馬政方針ノ向フ所ヲ示シ、成育、役
種別ト云フモノノ規格ヲ定メ之ヲヤレト云
フコトデ今日マデヤラセテ來タノデハナイ
デセウカ、斯ウ云フコトヲ伺ヒタイ、而シ
テ又近キ將來ニハ折角此ノ新馬政計畫ガ充
實サレ、稍〓之ニ向ツテ生產スル頃合ニナツ
テ、更ニ變動ヲ來スノデハナイカト云フ虞
ヲ持ツテ居ルノデアリマス、サウ云フコト
ハ絕對ナイノデアルカドウカ、先刻軍ノ方々
ノ他ノ委員ノ質問ニ對シテハドウモ第一
馬政計畫、第二馬政計畫ト云フモノハ、マダ
軍ノ方デシツカリ分ツタノデハナイトカ-
ソコハ明ニ分リマセヌガ、此ノ第二馬政
計畫ト云フモノハ、軍ノ方トシツカリ協力
ノ上デ出タモノカ、ドウカト云フコトガ一
番問題デアリマスガ、ソコヲ一ツ明確ニ御
答辯願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=50
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051・板垣征四郎
○板垣國務大臣 色々御質問ガアリマシタ
ガ、現在ノ計畫ハ農林省當局ト十分密接ナ
ル連絡ヲ執ツテ出タ計畫デアリマス、近ク
之ヲ變ヘルコトガ豫期サレナイカドウカ、
斯ウ云フ問題デアリマシタガ、前囘ノ馬政
計畫ニ於キマシテハ何ト申シマシテモ實際
現地ニ於ケル體驗經驗ト云フモノハ、滿洲
事變程度ノモノシカナカツタノデアリマシ
テ、滿洲事變ニ於テハ民間カラ廣ク徵發馬
ヲ徵集シタト云フ譯デハナイ、軍隊ニ於ケ
ル保管馬其ノ儘ヲ使ツタ、詰リ今囘ノ日支
事變ノ經過狀態ト比較シマスナラバ、實に
其ノ規模ニ於テモ、亦サウ云フ風ニ軍隊ノ
保管馬ヲ使ツタト云フダケノ經驗ニ過ギナ
イ、斯ウ云フヤウナコトモアリマス、爾來
〓究ヲ重ネ、又今囘ノ日支事變ハ御承知ノ
通リニ其ノ規模ニ於テモ、實ニ日露戰爭以
上ニ場所モ廣イト云フヤウナコトデアリマ
スシ、旣ニ一年餘ヲ經マシテ、實際ヲ得タ
所ノ體驗ト云フモノハ、實ニ貴重ナモノト
吾々ハ考ヘテ居ルノデアリマス、又將來戰
ニ相手國ヲ何處ニ考へルカ、戰場ヲ何處ニ
考ヘルカ、斯ウ云フヤウナ御話ガアリマシ
タガ、之ヲハツキリ某國ト申ス譯ニモ參ラ
ヌト思ヒマスガ、吾々陸軍ノ活動スベキ地
域ハ自ラ明瞭デアルト思ヒマスシ、將來ノ
戰場ハ恐ラクハ支那滿洲等ノ、現在日支事變
ニ於テ經驗ヲシマシタ地方ト、大體土地柄
カラ申シマシテ同樣ナ所デアルト考ヘテ居
ル次第デアリマス、サウ云フヤウナ關係モ
アリマスルシ、今囘ノ此ノ貴重ナル經驗ヲ
本トシタル所ヲ、愼重ニ〓究ヲシマシテ得
タル所ノ現在ノ馬政計畫ナルモノハ、近キ
將來ニ於テ直グ又之ヲ變更シナケレバナ
ラヌト云フコトハ、全然豫期シテ居ラヌ
ノデアリマス、輕種ノ問題デアリマス
ガ、是ハ血液ノ分量等色々問題ニナツテ
居ルト思ヒマス、私ハ專門ノコトハ能
ク知リマセヌガ、要スルニ此ノ輕種ト云
フモノハ、戰場ニ於ケル粗笨ノ間ニハ
堪ヘナイ、又榮養不良トナリ易イ、隨テ
過勞廢斃ニ陷ルト云フ缺陷モアリマスルシ
又强悍ノモノガ多イ爲ニ、兵ノ使役取扱ニモ
不便ガ尠クナイ、先程モ使役兵ノコトニ付
テ御質問ガアツタノデアリマスガ、理想カ
ラ申シマスナラバ馬ヲ取扱フ者ニハ全部民
間ニ於テ豫メ馬ニ對スル〓育ヲ施スト云フ
コトガ理想デアリマセウ、併シ實際カラ言
ヒマシテモ、ソレハ言フベクシテ行ハレナ
イコトデアリマス、隨テ特務兵等ニ於テ全ク馬
ノ取扱ニ慣レテ居ラナイ者ヲモ、召集セザル
ヲ得ナイト云フノガ今ノ實況デアリマス、是
ハ逐次馬事思想ノ普及トカ、サウ云フモノニ
依ツテ幾分良クハナルト思ヒマスガ、近キ
將來ニ於テ此ノ普及ト云フモノハ、相當困
難デアルト思ヒマス、サウスレバ或ル一部
ニ於テハ必ズサウ云フ者ガ入ツテ來ル、サ
ウスルト其ノ取扱上ニ於テヤハリ癎ガ强過
ギテ中々取扱ヒニクイ、而モソレガ爲ニ取
扱ヲ誤ルト直グ榮費ガ不良ニナリ、過勞癈
斃ニ陷リ易イカラ、サウ云フヤウナモノヲ
避ケルト云フコトハ、是ハ軍馬ノ取扱上當
然ナコトト思フノデアリマス、實際私共戰
地ニ於テ部隊長トシテ、多數ノ軍馬ヲ取扱
ヒマシテ苦イ經驗ヲ嘗メタノデアリマス、
是ハ苟モ軍馬ヲ取扱フ所ノ各部隊長トシテ
ハ異口同音ニ申ス所デアリマス、隨テ此ノ
大規模ナル、又將來ノ戰場ト同ジヤウナ地
形ノ所ニ於ケル、現在ノヤウナ馬ヲ以テス
ル所ノ經驗ト云フモノハ、是ハ實ニ貴重ナ
モノデアリマス、此ノ經驗ヲ基礎トシマシ
タ所ノ此ノ計畫-將來ハドウシテモ此ノ
計畫ノヤウナコトデ進マナケレバナラヌ、
斯ウ確信シテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=51
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052・小笠原八十美
○小笠原委員 先刻私ガ申上ゲタ馬政方針
ト云フコトニ付テ、今囘ノ馬政方針ハ農林
省ト緊密ナ連絡ヲ取ラレタノダ、斯ウ云フ
御答辯デアリマス、ソレハ私モ能ク承知シ
テ居リマス、私ノ御尋シタノハ、前ノ第一
次馬政計畫ト第二馬政計畫、ソレヲ今改變
シタノデアリマスガ、改變前ノモノハヤハ
リ農林省ト能ク緊密連絡ニ依ツテ、國策ヲ
樹立シタノデアルカ、ドウカト云フコトヲ
伺ツタノデアリマス、ソレヲ一ツ御答願ヒ
タイ、モウ一ツハ只今如何ニモ輕種ハ癎ガ
强過ギル、過悍デアツテ、普通ニ召集シタ
特務兵ノ取扱ニ對シテハ、不適當ダト云フ
御話デアリマス、ソレハ勿論其ノ通リデア
リマス、然ラバ常ニ訓練ヲ要スル騎兵ニ對
シテハドウデアリマスカ、之ヲ私ハ伺ヒタ
イノデアリマス、殊ニ從來軍馬ノ方デハ一
體ニ輕種ニ仕向ケテ購買サレテ居ツタ、今
囘ハ馬ガ不足ヲ來シタカラ、特務兵ノ使フ
方マデ輕種ノ購買漏レノ馬ヲ徵發ニ依ツテ
當ラシタ、卽チ丁度良イ小格輓馬ガ無カツ
タ、不足ノ結果ガ其處ニ到ツタヤウニ思フ
ノデアリマスガ、常ニ訓練ヲ要シタ騎兵ノ
方ハドウデアルカト云フコトヲ一ツ伺ヒタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=52
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053・板垣征四郎
○板垣國務大臣 前回ノ馬政計畫モ農林當
局ト十分御打合ヲシテ決メタノデアルコト
ハ勿論デアリマス、今ノ輕種ノ問題デ御質
問デアリマスガ、先程モ申上ゲマシタヤウ
ニ、何シロ戰地デ活動スル-支那、滿洲
ノヤウナ所デ活動スルノデアルシ、馬糧モ
軍隊デ平素給與シテ居ルモノヲ十分ニ給與
ガ出來ナイ、ソコデ現地ニアル馬糧デモ十
分ニ活動出來ルヤウナ軍馬デナケレバナラヌ、
斯ウ云フ所謂戰地ニ於ケル所ノ、粗笨ノ間
ニ慣レルト云フヤウナ點ハ、是ハ乘馬デアラ
ウガ、輓馬デアラウガ同樣デアリマス、乘
馬隊、詰リ騎兵隊等ニ於テモ、其ノ點カラ
申シマシテ今囘ノ狙ヒドコロニ於テハ、ヤ
ハリ同樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=53
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054・小笠原八十美
○小笠原委員 大體ニ於テ御答辯ニ依ツテ
能ク分リマシタ、唯只今ノ第一馬政計畫、
第二馬政計畫ニ於テモ、農林省ノ方ト緊密
ナ連絡ノ下ニ樹立シタ馬政國策デアルト云
フコトノ御答辯ガアリマシタ、私ハ何故ニ
サウ云フコトヲ伺フカト申シマスレバ、全
國ノ馬事團體ノ會合ノ席上デ、兵務局長サ
ンハ御講演ナサレテ、輕種ト云フモノハ從
來一應ハ認メタケレドモト言ハレタノデア
リマス、サウスレバ一應認メタモノダ、本
當ハ認メナイ、僕等ハ唯胡麻化シニヤラサレ
タト云フヤウナ氣持ガシテ、非常ニ遺憾ニ感
ジタノデアリマス、只今ノ大臣ノ答辯ノヤ
ウニ、元ノ通リ緊密テ連絡ヲ取ツタ、ソレ
ハ政策ニ依ツテヤラレタノダ、斯ウ云フ御
話ナレバ結構ダ、ソンナラ吾々ハ迷ヒヲ生
ジナカツタ、所ガ全國カラ集マツタ馬事團
體ノ代表者ガ、大分迷ヒヲ生ジテ居ルノデ
アリマス、斯ウ云フノハ今度ノ輕種ノ大改
變ニ當ツテ、大分大キイ關係デアリマスカ
ラ、ソレデ大臣カラ伺フ方ガ一番宜イト思
ツテ御答辯ヲ願ツタ譯デアリマス、是デ能
ク分リマシタ、私ノ大臣ニ對スル質問ハ是
デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=54
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055・東武
○東委員長 小野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=55
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056・小野謙一
○小野委員 只今ノ陸軍大臣ノ御答辯デ第
二次馬政計畫ノ變更ノ理由ハ、是レマデ御
說明ニナツタソレヨリモ若干詳細ニ亙リマ
シテ能ク分ツタノデアリマス、併シナガラ
私ノ質問ノ趣旨ハ小笠原君ト稍〓同一デアリ
マスガ、見方ノ角度ガ若干違ヒマスノデ、
重ネテ御尋ヲ申上ゲタイト思ヒマス、只今
陸軍大臣カラ事變關係デ今度ノ體驗ニ鑑ミ
マシテ、第二次馬政計畫變更ノ必要ヲ認メ
ク、斯樣ニ御答ニナツタノデアリマスガ、
私共ガ見マス所ニ依リマスト、今次ノ經驗
カラ申シマシテモ、出動馬ノ不成績ト云フ
モノハ先刻來政府當局ノ御答辯ニ依リマシ
テモ、徵發馬ニ多カツタヤウナ思フノデア
リマス、殊ニ其ノ期間ハ僅々一年カラ一年
半ノ極ク短イ所ノ經驗ニ依ツテ、斯樣ナル
馬政計畫ノ國策ノ一大變革ヲ見ナケレバナ
ラヌト云フヤウナコトハ、少シク早計ニ失
シハシナイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、
殊ニ輕種ハ二割カ三割ヨリナイト云フ御答
モアリ、又更ニ北支、中支ニ於キマシテハ、
比較的徵發馬ノ成績、出動馬ノ成績ハ惡カ
ツタノデアリマスガ、南支作戰ニ於キマシ
テハ、南支作戰ニ於ケル所ノ馬ノ能力ハ「ア
ラブ」ノ血量ノ多カツタ鹿兒島、宮崎方面ノ
馬ガ、非常ニ能ク働イタト云フ報告ヲ伺ツ
テ居ルノデアリマス、サウシテ見マスト北
支中支ニ於テ不成績デアツタガ、南支
作戰ニ於テハ成績ガ好カツタ、斯ウ云フコ
トヲ照シ合セテ見マスト、今少シク戰局全
體ヲ見マシテ、今度ノ事變ニ於ケル馬ノ成
績ノ調査ヲ完了シテ、又生產地ノ實情ト將
來ノ見透シヲハツキリト付ケマシテ、徐ロ
ニ第二次計畫ノ變更ヲシテモ遲クハナイデ
ハナイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、卽
チ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、中支北支ノ
作戰ニ於テ失敗ヲシタガ、南支作戰ニ於テ
ハ成功シタノデアルカラ、將來ノ馬政計畫
ニ於テハ南支作戰ノ方ヲ考慮ニ入レナカツ
タ改革ノヤウニモ見ラレルノデアリマスガ、
此ノ點ヲ如何ニ御考ニナツテ居リマスカ、
先ヅ第一ニ御伺ヲシテ見タイト思フノデア
リマス第二ハ從來ノ馬政計畫ハ、主トシテ
騎兵科出身ノ將校ガ立案計畫ノ衝ニ當ラレ
マシタ爲ニ、輕種系ヲ主トシタノデアリマ
スガ、今囘ノ新計畫ノ樹立ニ當リマシテハ
其ノ要衝ニ居ラレタ方ハ砲兵科ノ出身デ
アル、隨テ此ノ計畫ノ決定シマスマデハ部
內ニモ相當ナ意見ノ對立ガ行ハレマシテ、
此ノ計畫ハ近キ將來ニ再ビ變ヘナケレバナ
ラヌト云フヤウナ懸念ガ、今デモ一部ニ行
ハレテ居ルヤウナ噂ヲ聞クノデアリマス、
此ノ點ニ對スル陸軍大臣ノ御答ヲ得タイ
ト思ヒマス、第三點ハ、今度ノ新計畫ニ依
リマシテ輕種生產ノ縮小ハ、之ヲ急激ニ强
行スル御考デアリマセウカ、或ハ又徐々ニ
移行セシメヨウト云フ御考デゴザイマセウ
カ、又輕種產地ハ從來ノ儘ニ之ヲ存續セシ
メマシテ、中間種ノ產地ヲ新ニ樺太トカ朝
鮮トカ關東州トカ、其ノ他滿洲北支等ニ之
ヲ求ムル所ノ馬政計晝ラ妥當ナリト考ヘル
ノデアリマスガ、此ノ點ニ對スル御考ハ
如何デアリマセウカ、何故斯ウ云フコトヲ
申スカト申シマスレバ、從來輕種系ガ非常
ニ多イヤウニ考ヘテ居ツタノガ、是ハ間違
デアリマシテ、寧ロ輕種ガ多カツタガ爲デ
ハナクシテ、中間種ガ少カツタ爲ダト考
ヘルノデアリマスカラ、輕種產地ヲ其ノ
儘ニシテ置イテ、新方針ニ於テハ中間種ノ
增產ニ一層力ヲ盡スコトガ妥當デハナイ
カ、斯樣ニ考ヘラレルノデアリマス、第四
點ハ、先刻小笠原君カラモ御尋ガアリマシ
タ假想敵國ノ問題デアリマスガ、是ハ或ハ
此ノ席デ公然ト御話ガ出來ナイカトモ考ヘ
マスノデ、唯抽象的ニ伺ツテ置クノデアリ
マスガ、將來日本ハ大陸ニ於テ戰爭シマス
ル場合ニ、此ノ新計畫ニ依リマシテ馬政計
畫ガ進行シマスルト、如何ナル敵國ト戰ヒ
マシテモ馬ノ素質、馬ノ機能ガ假想敵國ノ
持ツテ居ル所ノソレト比較シマシテ、少シ
モ遜色ノナイト云フヤウナ御調査ガ出來テ
居ルノデアリマセウカ、若シ公開ノ席デ御
答出來マセヌデシタナラバ、祕密會デデモ
假想敵國ノ馬ノ內容ヲ伺ヒタイト思フノデ
アリマス、尙ホ御伺ヒシタイコトハ澤山ア
リマスガ、他ノ諸君ノ御尋ノ點モアルト思
ヒマスカラ、私ハ是ダケニシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=56
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057・板垣征四郎
○板垣國務大臣 第一ノ御質問ハ南支那方
面ニ於テ輕種ノ成績ハ好カツタト云フコト
デアル、隨テ北中ダケガ惡クテ、南ハ好イ、
サウ云フ關係モアルノニ一率ニ惡イト言フ
コトハドウカ、斯ウ云フ御話モアリマシタ
ガ、是ハ全般的ニ輕種ハ適當田デナイ、斯ウ
云フ結論ニナツテ居ルノデアリマス、或八
一部ニハサウ云フ意見ヲ持ツテ居ル者モア
ルカモ知レマセヌガ、全般トシテノ問題デ
アリマス、是ハ餘談デアリマスルケレドモ
此ノ軍馬ヲ如何ニスベキカト云フコトハ、
歐洲戰爭當時ニ於テモ既ニ色々經驗ヲシタ
コトデアリマシテ、其ノ當時カラ輕種ガ軍
馬トシテ適當デナイト云フコトハ、段々唱
道サレマシテ、滿洲事變後ノ計畫ニ於テモ、
サウ云フ點モアツタ次第デアリマスガ、何
サマ日本ノ將來戰ニ於ケル經驗ガナカツタ
爲ニ、其ノ當時ハ問題ニナラナカツタノデ
アリマス、今俄ニ此ノ問題ガ起ツタノデハ
ナイノデアリマス、ソレカラ次ノ問題ハ前
囘ノ馬政計畫ヲ計畫スル際ニ於テハ、騎兵
科出身ノ者ガ主トシテヤツタ、今囘ハ砲兵、
斯ウ云フ關係カラ輕種ヲ嫌ヒ中間種ニ傾ク
ト、斯ウ風ニナルノデハナイカト云フ御尋
デゴザイマスガ、今囘ノ主任モ騎兵デゴザ
イマス、ソレカラ外地ニ對スル計畫、內地
ノ馬產計畫ヲ確立シマシタ以上、是ト連繫
ヲシテ、ソレニ相應スルヤウナ計畫ヲ、外
地ニ於テモ立テナケレバナラヌト考ヘテ居
リマス、隨テ當局者ト致シマシテハ外地ト
連繫ヲ致シマシテ、實情ヲ調査シテ、將來
戰ニ卽應スルヤウナ計畫ヲ期待シテ居ルノ
デアリマス、ソレカラ其ノ計畫ヲ急行スル
積リカ、漸進的ニスル積リカト云フ御質問
デアリマシタガ、是ハ漸進的ニ徐々ニ實行
致シマシテ、生產者ニハ御迷惑ヲ掛ケナイ
ヤウニ致スノデアリマス、最後ノ御質問デ
アリマスガ、本計畫ハ將來ノコトヲ十分見
透シヲツケテアル關係ハ、先程申上ゲタ通
リデアリマス、隨テ何レノ國、何レノ敵ニ
對シテモ此ノ計畫ヲ進メテ行クト致シマス
レバ、是ガ遂行ニハ支障ハナイト、斯ウ云
フ確信ヲ持ツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=57
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058・永田良吉
○永田委員 私ハ此ノ際農林大臣ト陸軍大
臣ニ御尋シテ置キタイト思ヒマス、此ノ間
他ノ質問ニ對シマシテハ政府委員ノ方カラ、
御親切ナル御答辯ヲ戴キマシテ滿足デアリ
マシタガ、尙ホ一二ノ不可解ナ點ニ付テ御
伺ヲシタイト思フノデアリマス、其ノ第一
ノ御尋ハ、此ノ間農林大臣ハ此ノ案ハ國防
ト產業、是ガ兩全ノ政策トシテ此ノ法案ヲ
出シタノデアルト云フ御話デアリマシタガ、
私ハ之ニ付テ疑問ヲ持ツテ居ルノデアリマ
ス、吾々ハ是ハヤハリ兩全、五分々々トス
ルヨリモ、重點ハ國防上ニ置クノガ至當デ
ハナイカト云フ見解ヲ持ツテ居ルノデアリ
さく、ヤハリ斯ウ云フモノハドチラカ主體
ヲ決メテ置カナケレバ、共同ノ仕事ト云フ
コトハ、中々田舍ニ於テハ旨ク行カナイ
政府ガ仕事ヲヤラレルニハ何處カ主管ガア
ツテ、他ノ者ガソレニ從ツテヤルト云フ建
前ノ方ガ、吾々民間デ仕事ヲスル際ニモ旨
ク行クヤウデアリマス、此ノ見解カラ私ハ
此ノ案ハ、國防上ノ見地ヲ主トシテ、將來遂
行シテ行カナケレバナラヌト云フ意味合カ
ラ言フノデアリマシテ、現ニ目ノアタリサウ云フ
一ツノ例ガ出テ居ル、私ハ噓ハ申上ゲマセヌ
ガ、我國ノ國防上ノ見地ニ於テ、燃料ガ不足デ
アル點カラ、無水「アルコール」ヲ採ラナケレ
バナラヌト云フノデ、無水「アルコール」ノ
工場ガ諸方ニ出來タノデアリマス、是ハ大
藏省ガ之ヲ主管シテヤツテ吳レル、其ノ主
タル原因ハ國防上ニアツタ譯デアリマス、
所ガ是ガ大藏省ガ工場ヲ置イテ、サウシテ
農林省ト手ヲ握ツテ、農林省ハ甘藷ト馬鈴
薯ノ奬勵ヲナサツテ居ル、所ガ最近兩者ニ
於テ-他ノ地方ハドウカ知リマセヌガ、
私ノ方ニ於テハ價格ノ點ニ於テ生產者側ニ
同情シテ戴ク所ノ農林省ト、大藏省ノ專賣
局ノ工場方面トノ間ニ、シツクリイカヌ點
ガアル、此ノ馬產計畫ニ付テモ、ヤハリ農
林大臣ト陸軍大臣ト手ヲ握ツテヤツテ戴ク、
所謂總親和ノ下ニヤツテ戴クコトハ結構デ
アリマスガ、ヤハリ私ハ國防ガ主デアレバ、
陸軍ノ方ガモツト元氣良ク出テ戴キタイト
思フ、農林省ノ仕事モ多イデセウケレドモ、
寧ロ陸軍ノ方デモツト積極的ニ出テ戴キタ
イト思フ、之ヲ具體的ニ申上ゲマスナラバ、
此ノ案ヲ出シナサル前ニ、陸軍ハ從來ノ軍
馬補充部、之ニ向ツテナゼモツト前ニ其ノ
擴張或ハ內容ノ改善、サウ云フ方面ノ御〓
究ヲナサラナカツタノデアリマスカ、私共
ノ要求、御願トシテハ、今度ノ馬政計畫ノ
外ニ、陸軍自體ガモツト產馬計畫ニ重點ヲ
置イテ戴キタイト思フ、私共ノ質問ニ對シ
テ政府委員ノ御說明ニ依リマスト、軍馬
補充部ハ八ツアツタ、其ノ中鳥取ト鹿兒
島-鹿兒島ハ薩摩半島ニアツタガ之ヲ廢止
シタ、鳥取ノ方ハ北ノ方ニ移シテ朝鮮ガ其ノ
代リニ出來タ、所ガモウ一ツ殘ツテ居ルノ
ハ種馬所デアル、是ハ實際ニ卽シタ意見ダ
カラ申上ゲマスガ、宮崎縣ニハ高鍋ニ軍馬
補充部ガアリ、小林町ニ種馬所ガアリマス、
南九州デ一番馬ヲ出シテ居ル所ハ鹿兒島デ
アリマス、今度ハ鹿兒島高等農林ニ獸醫科
ヲ作ツテ戴イタ、鳥取ノ方ニモ獸醫科ヲ作
ツテ戴イタガ、是ハ牛ノ方デ馬ノ方ハナイ、
斯ウ云フ〓育方面ニ重點ヲ置イテ戴イタコ
トハ洵ニ感謝致シマス、而シテ此ノ馬政計
畫ハ〓育ト產業ト、國防ト此ノ三ツデアル
ノデアリマシテ、農林省トシテ何トカ御計
畫ヲ爲シテ戴クノデセウガ、ヤハリ重點ハ
陸軍ノ方デ、モツト御奮發ヲ願ヒタイト斯
ウ思フノデス、此ノ意味カラ軍馬補充部ノ
廢止セラレテ居ルモノヲ復活セラルルトカ、
將來モツト內容ヲ整備セラレル必要ハナイ
カ、吾々ガ直接視察シタ所カラ見マシテモ、從
來ノ軍馬補充部ハ足踏ヲシテ、埒外ニ出ナイ
ヤウニシテ居ル、成程秣ガ上ルトカ、人夫賃ガ
上ルトカ云フヤウナコトデ、軍馬補充部ハ御
困リダラウト思フ、併シ此ノ難關ヲ突破サレ
ナケレバ、立派ナ馬ノ向上ハ出來ヌ譯デアリ
マス、私共ノ方トシテモ軍馬補充部ニ重點ヲ置
イテ戴キタイト云フ點ヲ、陸軍大臣ニ向ツテ
御願ヲシタイト思ツテ、質問シタ譯デアリ
マス、所ガ之ニ付キマシテー-コンナコト
ヲ申上ゲマスト御叱リヲ受ケルカモ知レマ
セヌガ、從來國防上ノ計畫ニ於テモ、或ハ
自動車學校ヲ作ルトカ、鐵道學校ヲ作ルト
カ、戰車隊トカ、或ハ山砲、騎砲兵、重砲
トカ色々ナモノガ澤山アリマス、斯ウ云フ
見地カラ考ヘテ見マシテ、若シ軍馬補充部
ノ內容ヲ御改善ガ出來ナイナラバ、新シク
軍馬學校トカ云フヤウナモノヲ新設シテ貰
フ、ソレニハ騎兵ニ關スルモノトカ、或
輜重トカ、野砲ノ輓馬トカ、サウ云ヤウナ
兵隊ト馬ト直グ親シマセル方法ヲ作ル-
軍馬補充部デヤルト人夫賃トカ秣トカ云フ
ヤウナ費用ガ掛ルガ、軍馬學校トカ-軍馬
聯隊トデモ言ツテ宜イカモ知レマセヌガ、
軍馬學校デヤルト、軍馬兵トシテ徵集シテ
シマヘバ宜イ、ソコデ直接馬ニ訓練ヲヤツタ
方ガ、サア戰爭ト云フ場合ニハ、徵發ノ馬ヲ
直グ使フヨリモ大變調子ガ好クハナカラウ
カト云フコトヲ考へテ居リマス、是ハ吾々
田舍ノ分ラヌ者ガ大變失禮デゴザイマスガ、
斯ウ云フ點カラ何カ軍馬補充部ノ數ヲモツ
ト增シテ戴クカ、或ハソレガ不適當ナラバ
其ノ補充部ノ跡ヘ、飛行隊デモ何デモ持ツ
テ行ツテ戴クトカ、サウ云フ風ニシテ新シ
ク軍馬學校ヲ造ツテ戴クヤウナ御計畫ハ如
何ナモノデアリマセウカ、無論斯ウ云フコ
トハ國防上ニ關係ガアツテ、御答辯シニク
イコトガアルカト存ジマスガ、サウ云フ場
合ニハ甚ダ失禮デアリマスケレドモ、後デ
委員長ノ方デ御取計ラヒ下サツテ五分間デ
モ祕密會ニデモシテ御答辯シテ戴ケレバ結
構ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=58
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059・東武
○東委員長 永田サン、後ニ色々ノ人ガ殘
ツテ居リマスガ、時間ガナクナルト後ノ人
ガヤレマセヌカラ、ドウカ簡潔ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=59
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060・永田良吉
○永田委員 他ノ方ニ御迷惑ト思ヒマスカ
ラ、ソレデハ簡單ニ要點ダケ申上ゲマス、
農林大臣ガ居ラツシヤルカラ、モウ一ツ此
ノ機會ニ御願ヒ申シタイコトハ、國有地ノ
開放ニ付テハ他ノ方ガ申サレマシタガ、私
ハ此ノ機會ニ特ニ著シク損害ヲ被ツタ地方
ガアルノデアリマスカラ-地方ノコトヲ
申スト御叱リヲ受ケルカモ知レマセヌガ、
是ハ事實ダカラ如何トモスルコトガ出來ナ
イ-實際ニ大隅半島デ大風水害ガアツ
タ、其ノ時、調ベテ見マスト、人モ四百六
十人カラ死ンダ、損害モ二千八百万圓カラ
三千万圓近クノ損害ヲ被ツタノデアリマ
ス、其ノ際ニ馬ヤ牛ガ死ンダノモ、縣カラ
來タ統計ヲ見マスレバ二千三十三頭トカ云
フ數ガ出テ居ルノデアリマス、現ニ高イ馬
ヲ一戶デ四頭モ殺シタヤウナ人ガアル、卽
チ戰地ニ行ツタ人ハ自分ノ子供ヲ失ヒ、大
事ナ馬ヤ牛ヲ失ツタ者モアルノデアリマス、
斯ウ云フ地方ニ對シテハ農林省ハ大變心配
ヲシテ戴イテ居ルノデアリマシテ、大變感
謝ヲ致スノデアリマス、又アノ復舊ニ對シ
テハ陸軍カラ軍隊マデモ派遣シテ戴イテ、
吾々地方民トシテハ有難カツタ譯デアリマ
スガ、今度愈〓斯ウ云フ國有地ノ開放ヲナサ
ル場合ハ、アノ大隅地方ニハ三万町步ノ廣
イ原野ヤ山林地ガアルノデアリマスカラ、
斯ウ云フ方面ニ何トカ軍馬ノ補充部トカ種
馬所、何カソンナ施設デモ陸軍省ト農林省
トデヤツテ戴イテ、アノ憐レナ罹災民ヲ救
濟シテ戴クヤウナコトヲ、此ノ機會ニ御願
ヒシテ置キタイト思フノデアリマス、他ノ
人ニモ大變迷惑ヲ掛ケルト思ヒマスカラハ
此ノ機會ニ餘計ナコトハ申上ゲマセヌ、是
ダケ御願ヒシテ置キマス、何カ之ニ對シテ
御答辯ヲ賜レバ結構デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=60
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061・板垣征四郎
○板垣國務大臣 只今ノ御質問ノ中デ、軍
馬育成所ニ關スル問題デアリマスガ、軍馬
育成所ハ御承知ノ通リ幼駒ヲ彼處ニ飼養致
シテ居ルノデアリマスガ、ヤハリ此ノ規
模卽チドレダケノ幼駒ヲ收容セネバナラ
ヌカト云フヤウナコトハ、將來ノ軍備充實
計畫ニ關係ヲ持ツコトデアリマスカラ、ソ
レ等ハ考慮シテ〓究シテ行クベキモノト考
ヘテ居リマス、軍馬ノ學校、是モ御意見ト
シテハ結構ニ思ヒマスガ、色々事情モア
リマスノデ、只今直チニ設ケルト云フコト
ハ考ヘテ居リマセヌ、其ノ他ノコトハ參
考トシテ伺ツテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=61
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062・大石倫治
○大石委員 先般本案上程ノ際ニ、陸軍大
臣ニ兵器トシテノ軍馬資源保護、鍛鍊ヲ行
フノデアルガ、此ノ鍛鍊ハ陸軍直接オヤリ
ニナツテハ如何カト云フ御尋ヲ致シマシタ
際ニ、ソレハ國ノ事デアルカラ、何處デヤ
ツテモ構ハヌ、ソシテ是ハ農林省ニヤラセ
ルコトガ適當デアル、併シ陸軍ハ此ノ經費
ヲ軍事費ト同樣ニ見テ居ルト云フ御話デア
リマシタガ、鍛鍊法ノ實行ニ當リマシテ、
一番問題トナルノハ所謂曳付料及ビ助成
額是ガ此ノ案ニ於テ一番直接關係ノアル
問題デアリマス、其ノ金額ヲ承リマシタル
所、囘數ハ一箇月二同以上、一年二十四
囘、一囘ノ曳付手當ハタツタ三十五錢、鍛
鍊馬ノ指定ヲ受ケマシタル馬ニ對シテハ
年三十七圓ノ補助ヲスル、斯ウ云フ建前ニ
ナツテ居ルト云フコトデアリマスガ、是ハ
餘リニ少額ニ失スルデハナイカ、斯樣ナ考
デ以テ色々說明ヲ伺ツタノデアリマスガ、
併シ從來ハサウ云フ手當モナカツタ所ヘ左
樣ナ手當トカ補助ヲ出スノデアルカラ、寧
ロ喜ンデ居ルト云フ馬政當局ノ御答辯ガア
リマシタ、併シ馬ヲ兵器トシテ、其ノ保有
ヲ民間依存トシ、又鍛鍊ヲ其ノ民間ノ馬ニ
施サウトセラレマスルナラバ、ヤハリ軍ハ
軍ノ兵器ト看做シテ、モウ少シ此ノ助成金
及曳付手當等ヲ增加セラレタラ如何デアラ
ウカト思フノデアリマスガ、豫算ノ都合上
中々サウハ行カナイ、併シマダ滿足ハシテ
居ラヌカラ將來之ヲ改メルコトガアルカモ
知レヌト云フコトデアリマシタ、私ハ此ノ
意味カラ致シマシテ、甞テ陸軍ノ兵器トシ
テノ馬ニ對スル閑却振リヲ吾々ハ痛感
サセラレテ居ツタノデアリマス、數年
前林陸軍大臣ニ對シテ、一般ノ軍事費、
其ノ臨時費ガ非常ニ膨脹シタニ拘ラズ、
馬ニ對スル豫算ト云フモノハ少シモ
增額サレテ居ラヌ、是ハ馬ノ兵器トシテノ
機能及ビ重要性ヲ閑却シテ居ルデハナイカ、
機械力ニ依存シテ、馬ノ重要性ヲ減殺シテ
居ルノデハナイカ、斯ウ云フ考ヲ以チマシ
テ、嘗テ御尋ヲシタコトガアリマシタガ、
他ノ兵器ノ「レベル」ガ餘リ低イカラ、ソレ
等ノ「レベル」ヲ上ゲル間暫ク辛抱ヲシテ貰
ヒタイ、斯ウ云フ御意見デアリマシタ、併
シ馬ハ他ノ機械器材ト違ヒマシテ、材料ヲ
與ヘレバ直グ必要ニ應ジテ製作シテ行ケル
ト云フヤウナ工合ニハ參ラヌ、軍馬ヲ供給
シマスルニハ、馬ハ今年種付ケヲシテ來年
生レルノデアリマスガ、ソレガ五歲ニ達シ
ナケレバ軍用ニ供サレナイ、先ヅ六年ヲ費
サナケレバ軍馬ニナラヌノデアリマスカラ、
今カラ之ニ重要性ガアルナラバ、モウ少シ
力ヲ入レテ戴カナケレバナラヌ、斯ウ云フ
コトヲ申上ゲマシタガ、遺憾ナガラ支那事
變勃發マデニハ其ノ機運ガ釀成セラレナカ
ツタ、此ノ事變ガ突發致シマシテ、尊キ經
驗ニ基イテ玆ニ新馬政計畫ガ定メラレタ、
サウシテ軍馬ノ重要性、隨テ軍馬資源ノ保
護涵養ヲセラレネバナラナイト云フ見地ニ
立ツテ提案ヲ見タノデアリマス、然ルニ此
ノ法律ニ伴フ所ノ今ノ豫算ノ運用振リヲ見
マスト、一箇年三十七圓、一囘ノ手當ガ三
十五錢デアリマス、如何ニ農村ノ子弟デア
リマシテモ、一日若クハ半日費シテ、馬ト
人ト共ニ鍛鍊ニ出テ參リマス、其ノ手當
ガ、三十五錢トハ餘リニモ慘メデハナカラ
ウカト思フ、又三十七圓ノ助成ヲスル、其
ノ助成ヲ致シマスノモ一日僅ニ十錢ニシカ
當ラヌノデアリマス、如何ニ民間ノ馬デア
リマシテモ一日ノ飼料ハ二十錢、三十錢デ
ハ追付カヌノデアリマス、此ノ委員會ニ於
テ御尋ヲ致シマシタ所、軍馬ノ一日ノ飼料
ハ八十錢ト云フ御答辯デアリマス、所謂軍
用候補馬トシテノ鍛鍊ヲ要スル馬ヲ扱フノ
デアリマスカラ、軍馬其ノ儘ノ飼料デハ出
來ナイカモ知レマセヌガ、セメテ其ノ半分
位ノ飼料ハ要ルモノト御覽ヲ願ハナケレバ
ナラヌガ、僅カ其ノ四分ノ一ニモ當ラヌヤ
ウナ助成デハ、本當ニ兵器トシテノ馬ヲ扱
フ上ニ於テ遺憾ダト思フノデアリマス、併
シ林陸相時代ニ於ケル豫算ハ、現陸相ニ於
カレマシテ非常ナ懸違ツタ多額ノ豫算ヲ明
年度ニ於テ御要求ニナリ、議會ニ提案セラ
レテ居リマスコトヲ吾々ハ認メナイ譯デハ
アリマセヌガ、ソレニ致シマシテモ兵器ト
シテノ馬ニ對スル豫算ニ於テハ尙ホ不足ヲ
認メルノデアリマス、其ノ點ヲ一ツ伺ツテ
置キタイ
ソレカラモウ一ツハ新馬政計畫ニ付キマ
シテ軍ノ要望セラレマス所ハ、此處ニモ書
イテアリマスガ、其ノ中デモ最モ重點ヲ置
キマスルノハ過悍ナル馬ヲ排除スル、乘御
使役ニ便ニシテ、最モ管理飼育ノ容易ナル
モノト云フ所ニ重點ガ置カレテ居ル、ソシ
デ飼育管理ハ從來ノ輕種ハ宜シクナイ、「ア
ングロノルマン」系デアレバ宜シイ、斯ウ
云フ御見解デアリマスガ、此ノ新馬政計畫
ニ付テハ將來不動ノモノデアツテ、變更ス
ルコトハナイト云フコトハ只今ノ當局ノ御
說明ニモアルノデアリマスガ、私共ハ之ニ
非常ニ疑問ヲ持ツテ先般來御尋致シテ居リ
マス、若シ粗飼料ヲ以テ飼育管理ニ最モ有
利ナ馬ヲ選バウトシマスルナラバ、日本ニ
於テハ改良種ノ必要ガナカツタ、併シ體型
其ノ他ノ關係モアツテ、改良モセラレタノ
デアリマスガ、「アングロノルマン」ト「ア
ラブ」系ノ馬トノ飼育管理ノ上ニ於テドレ
ダケノ等差ガアルカト云フ點デアリマス、
是ハ生產地方ニ於キマシテモ、育成家ニ於
キマシテモ重大ナル關係ヲ持ツテ居ル、「ア
ラブ」系ノ馬ハ本國ニ於キマシテハ最モ粗
飼料ニ堪へ、飼育管理ガ最モ容易デアリマ
ス、サウシテ耐久力ニ富ム、殊ニソレニ少
シ改良ヲ加ヘマスト、中等體尺者ノ乘御使
役ニ頗ル便利ナ體型ノ馬ガ生ルル理想
ヲ以テ改良種トシテ日本ニ輸入ヲセラ
レ、軍馬、殊ニ乘馬ノ中心トシテ「アラブ」
系ヲ以テ今日マデ三十幾年改良ヲ施シ
タ、然ルニソレガ過悍デアツテ、飼育管
理ガ容易デナクシテ、乘御使役亦宜シキヲ
得ナイト云フヤウナ御議論ハ、モウ私ハソ
レスラモ不思議ニ思フノデアリマス、然ル
ニ「アングロノルマン」種類ヲ中心トシテ改
良致シテ、此ノ陸軍ノ要望スル所ノモノニ
ピツタリ合ツテ行カウト云フコトハ是ハ容
易デナイト思フノデアリマス、「アングロノ
ルマン」ハ成程「サラブレット」トカ「アン
グロアラブ」トカヨリハ粗飼料ニ堪ヘ、飼
養管理ガ容易デアルカモ知レマセヌケレド
モ、日本ノ實情ニ於キマシテハ相當ニ改良
シテ、ヤハリ相當生產ニモ、育成管理ニモ
ソレ〓〓ノ手數ヲ要スルヤウニナツテ參ツ
タ、「アラブ」ノ本國ニ於ケルガ如キモノデ
ハアリマセヌ、日本ヘ參リマシテ飼育管理
ガ非常ニ變化シテ面倒ニナツタ、「アング
ロアラブ」ヲ中心トシテ將來乘馬モ輓馬モ
是デ行カウトスルト必ラズ此ノ馬ノ飼育管
理ガ「アラブ」改良ト同樣ナ結果ニ陷ルコト
ハ明瞭デアルサウ云フ場合ニ於テモ尙ホ
此ノ馬政計畫ヲ再ビ變更スル必要ガナカラ
ウカ、此ノ點ニ付キマシテモ一應御意見ヲ
承ツテ置キマセヌト、生產者ハ安心シテ生
產ニ從事スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、ソレカラモウ一ツ陸軍ノ飼育管理ニ容
易ナル馬ヲ造ル、殊ニ低身廣軀、四肢强健
ニシテ負擔力輓曳力竝ニ持久力ニ富ム、斯
樣ナ馬ヲ造ルニハ單純ナ「アングロノルマ
ン」系ヲ選ンダト云フダケデハ滿足ニ行カ
ヌト思フノデアリマス、「アラブ」系ニ致シ
マシテモ、「サラブレット」系ニ致シマシテ
モ、左樣ナ馬ガ全然出ナイトハ限ラナイノ
デアリマスガ、ソレ等ヲ總テ捨テテ此ノ「ア
ングロノルマン」ノミニ求メラレマスコト
ハ、「アングロノルマン」種ノ本國ニ於テハ
サウ云フ風ニ働キマセウケレドモ、日本ノ
生產者ニ於テ生產シ、日本ノ育成者ニ於テ育
成セラレテハ到底其處ニ至ラヌノデアリマ
ス、仍テ先般來斯樣ナ馬ヲ育テマスニハ放
牧地、牧野ノ開放ガナケレバナラヌト農林
大臣及ビ當局ニ屢、申上ゲテ居ルノデアリマ
ス、先般農林大臣ヨリ牧野ノ必要ヲ認メラ
レテ、早晩審議會ニ於テ開放ノ手續ヲ爲ス
ト云フ稍〓、突込ンダ御答辯ヲ得タノデアリマ
ス、陸軍ニ於カレマシテハ豫算ニ對シテハ
相當御盡力ヲ下サレマスケレドモ、此ノ牧
野ノコトニ付キマシテハドウ御考ニナツテ
居ルノデアリマスカ、馬ヲ造ルニハドウシ
テモ牧野ガ之ニ伴ハナケレバナラヌノデア
リマスガ、之ニ對スル陸軍ノ態度ヲ御伺致
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=62
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063・板垣征四郎
○板垣國務大臣 第一ノ御質問ハ此ノ補助
金ヲ增額スル考ハナイカト云フコトデゴザ
イマシタガ、勿論之ヲ以テ滿足シテ居ル譯
デハアリマセヌ、將來財政其ノ他ガ許スニ
至リマスナラバ增額ヲスルト云フコトハ希
望スベキコトト考ヘテ居リマス、只今ノ所
デハ農林省トモ十分ニ協議ヲ致シテ斯樣ナ
コトニ定メタ次第デアリマス
次ニ輕種ノ問題デアリマスガ、先程カラ
申上ゲテ居リマス通リニ從來ノ經驗、殊ニ
日支事變ノ貴重ナル體驗ニ鑑ミテ「アラブ」
系輕種ハ軍馬トシテ適當デナイト云フ結論
ニ到達シテ居ルコトハ每々申上ゲテ居ル通
リデアリマス、此ノ中間種ハ負擔力、輓曳
カ、持久力、特ニ飼養管理ガ容易デアル、
尙又牧野ノ問題デアリマスガ、强健ニシテ
持久力ニ富ム所ノ軍馬ヲ生產スルノニ牧野
ヲ必要トスルコトハ御意見ノ通リデアリマ
ス、此ノ牧野ノ整備ノ爲ニハ只今農林當局
トモ協議中デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=63
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064・東武
○東委員長 河野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=64
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065・河野一郎
○河野委員 極ク簡單ニ御尋致シマスガ、
御急ギノヤウデアリマスカラ簡潔ニ御答辯
願ヒマス、私ノ御尋シマスノハ此ノ馬政計
畫御實施ノ曉ニ於キマシテハ、果シテ所期ノ
目的ヲ達スルコトガ出來ルカドウカト云フ
コトニ非常ニ疑義ヲ持ツテ居ルト云フ觀點
カラ御尋ヲ致スノデアリマス、其ノ第一ト
致シマシテハ農林、陸軍兩當局トモ、農村
ト馬トガ經濟的ニ結付キヲ致シタ場合ニ吾
吾ノ認識ト違フ點ガアルト云フコトカラ、
私ハ遺憾ナガラ政府ニ於テモウ少シ御考
直シヲ願ハナケレバ所期ノ目的ヲ達スルコ
トガ困難ダラウト云フ推論ニ到達スルノデ
アリマス、其ノ意味カラ御尋スルノデアリ
マス、先ヅ第一ニ陸軍ニ於テハ國防資源
トシテ馬ノ絕對的ニ必要デアルコトハ申
上ゲルマデモアリマセヌ、所ガ農林大臣
ニ御尋スルノデアリマスガ、今日我國ノ
農村ノ事情カラ考ヘマシテ、若シモ馬ガ
農村ニ居ナカツタナラバ、日本ノ農業經營
ハ不可能カドウカ、非常ニソレニ依ツテ不
利益ヲ蒙ルカドウカ、具體的ニ申シマスル
ナラバ我國ノ農村ハ馬ニ代ルニ牛其ノ他ノ家
畜ニ依ツテ之ヲ補フコトガ出來ルト御考ニ
ナルカドウカ、吾々ノ認識ハ寧ロ他ノ動物
ニ之ヲ代ヘルコトノ方ガ農家ノ經濟上ハ有
利デアル、生產ノコトヲ私ハ申スノデハア
リマセヌカラ誤解ノナイヤウニ願ヒタイ、
生產地ニ於テ馬ガ或ル程度農家經濟ニ云々
ト云フコトヲ申シテ居ルノデハアリマセヌ、
利用ニ付テ申上ゲテ居ルノデアリマスガ、
馬ノ利用ノ立場カラ申シマシテ、我國ノ農
村ト馬ト云フモノノ結付キニ付テノ御信念
ヲ一ツ伺ツテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=65
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066・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 御承知ノ如ク農業地ニ於
テ馬ガ必要デアルコトハモウ申ス迄モアリ
マセヌ、唯河野君ノ御質疑ニナツテ居ル點
ハ馬ト牛ト其ノ利用價値ノ點ニ付テドウデ
アルカ、斯ウ云フ風ナ御質疑デアルト思ヒ
マスガ、牛ノ方ガ能率ヲ擧ゲル點モ多分ニ
アリマス、又馬ノ方ガ能率ヲ擧ゲル點モ相
當アルヤウニ考ヘマス、隨ヒマシテ是ハ農
林當局トシマシテハ雙方トモ其ノ增殖ヲ圖
ルト云フ方針ヲ立テナケレバ相成ラヌト、
斯樣ニ心得テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=66
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067・河野一郎
○河野委員 遺憾ナガラ私ト非常ニ懸隔ノ
アルコトヲ甚ダ殘念ニ思フノデアリマスガ、
而モ御答辯ガ少シ違フ點ガアリマスノデ、
モウ一度申上ゲマス、農家ニ於テ馬ヲ飼フ
コトガ採算上引合フカト尋ネタ、今日ハ明
ニモウ何レノ農家ニ參リマシテモ馬ハナケ
レバナラヌ、ナケレバナラヌガ、ソレノ仕
事ハ牛デ間ニ合フモノガ一體ドレダケアル
カ、馬デナケレバ絕對ニ出來ヌ、牛デハ間
ニ合ハヌト云フ農家ノ經營上ノ分野ガ一體
何處ニアルカ、極ク一部分アルデセウ、而
モソレトテモ絕對ニ不可能デハアリマセヌ、
又他ノ點カラ申シテ馬デヤル場合ト、牛デ
ヤル場合トドツチガ農家經營上有利デアル
カ、私ハ遺憾ナガラ馬ニ依ツテ農家ヲ經營
スルコトニ依ツテ採算ヲ致シタ場合ニ、特
ニ農村ニ經濟上有利ナ點ヲ發見スルノニ苦
シムノデアリマス、言葉ハ過ギルカモ知レ
マセヌガ、極ク精農デ馬ト人間ト、人馬一
體ニナツテ居リマス農民ヲ一村ニ數名求メ
ルナラバ、是ハ求メラレヌコトハ私ハナイ
ト思ヒマス、併シ大部分ノ場合ハ馬ニ依ツ
テ經營シテ居ル農家デ非常ニソレガ有利ニ
旨ク行ツテ居ル場合ヲ發見スルニ苦シムノ
デアリマス、大部分ハ馬ニ非常ナ趣味ヲ持
チ、馬其ノモノニ對シテ愛好心ヲ持ツトカ
云フ農家ガ馬ニ依ツテ經營シテ居ル、其ノ
他ハ他ノ觀念カラ、國防上ノ觀念カラ、又
ハ馬ト牛トノ間ニ於テ、馬デモ結構行ケル、
又ハ補助奬勵ガアルト云フコトデヤル場合
ガ多イノデアツテ、馬ニ依ツテ農家經營ヲ
スルコトガ相當經濟上旨ク行クト云フヤウナ
算盤ト云フモノハ、恐ラク出テ來ナカラウ
ト思フ、恐ラクハ農林大臣ノ只今ノ御答辯
モ、先日農林當局ガ私ニ御答辯ニナリマシ
タヤウニ、馬ヲ一年飼フノニ百圓デ飼ヘル、
一箇月ノ餌代ガ八圓ダト云フヤウナ馬鹿馬
鹿シイ算盤ヲ基準ニシテ御考ニナレバ、サ
ウ云フ觀念ガ出テ來ルカモ知レマセヌ、併
シ今日農村ノ何レノ部面ヲ搜シマシテモ、
非常ニ東北方面ノ草ノ多イ所、牧野ノアル
所ト云フ所デアリマシタナラバ、吾々ハ其
ノ方面ノ智識ガアリマセヌカラ申上ゲルコ
トハ出來マセヌケレドモ、吾々ノ知ル範圍
ニ於キマシテ馬ノ利用地方面ニ於キマシテ
ハ、馬一頭ノ食費ヲ一箇月十圓ヤ八圓デ足
ルト云フヤウナ所ハ斷ジテナイ筈デアリマ
ス、又ソンナ貧弱ナ食物デ痩セタ馬ヲ飼ツ
テ置クノデアツテハ、國防上ニモ何等ノ益
スル所モナケレバ、農家經營ノ上ニ於キマ
シテモ、ソンナ貧弱ナ馬ヲ飼ツテ農家ノ經
濟ガ立ツ筈ハナイ、是等ハ全ク農林當局ノ
調査ノ杜漏ト認識ノ不足カラ來テ居ルモノ
デアルト思フ、吾々ノ茲ニ申上ゲタイノハ、
同時ニ御認識ヲ願ヒタイノハ、今日我國ノ
大部分ノ農村ニ於テハ、馬以外ノ有利適
切ナル代家畜ニ依ツテ農家ノ有畜農業ノ
經營ヲスル方ガ農村經濟ノ方カラ言ツテ
有利適切デアルト云フ、是ハ萬人異論ノ
ナイ定見デアルト思フ、併シナガラ此ノ
意見ニ付テ若シ色々參考ニナリ、吾々ト
違ツタ御認識ノ上ニ立ツテ御指導願ヘル
點ガアレバ承レレバ結構デアリマスガ、遺
憾ナガラ吾々ガ何時承ツテモ吾々ノ承服ス
ルヤウナ點ヲ見出スニ苦シムノデス、例
テ申シマスレバ、此處ニオ居デニナラヌ方
ノ名前ヲ出スノハ失禮デアリマスガ、陸軍
省ノ中山中將サンノ如キハ、私ノ同席シタ
或ル場所デ申サレタ、牛ハ日本ノ國民性ニ
合ハヌ、アア云フノロ〓〓シタモノヲ飼ツ
テモ仕方ガナイ、馬ノヤウナモツト國民性
ニ合ツタモノヲ農家ハ飼ツテ云々ト云フヤ
ウナ講演ヲサレテ居ル、今日農村ヲ指導サ
レルノニ斯ウ云フ見地、斯ウ云フ認識デ指
導サレルコトハ私ハ不適當ダト思フ、モウ
少シ本當ニ農家經濟ノ實體ニ喰入ツタ御意
見デ農村ヲ御指導ニナリ、馬ノ必要ナル所
以ヲ說キ、我ガ農民トシテ此ノ馬政計畫ニ
協力スル所以ヲ說イテ戴カナケレバナラヌ
ト私ハ思フ、ソコデ陸軍大臣、農林大臣、
兩當局ニ特ニ御考ヲ願ハナケレバナリマセ
ヌコトハ、農家ノ點カラ申シマシテ、只今
私ガ申シマシタヤウニ、農林大臣ノ御答辯
モアリマスケレドモ、馬ヲ飼フヨリモ其ノ
他ノ代家畜デ經營スル方ガ得ダ、有利ダ、
農家ノ經濟振興上、農村振興上、其ノ方ガ宜
イノダ、是ハ私ハ定論デアルト思フ、併シ
ナガラ一方ニ國防資源トシテ絕對ニ馬ガ必
要ナンダ、是モ亦動カスベカラザル既定ノ
事實デアル、サレバ玆ニ三十圓何ガシノ補
助金ヲ以テ此ノ馬ノ增產計畫、第三次馬政
計畫、百五十万頭計畫ト云フモノノ實現ヲ
期シテオ居デニナルコトト私ハ思フノデア
リマス、所ガ此ノ三十七圓ノ金額ノ善シ惡
シハ只今大石君カラモ申サレタヤウニ、私
モ一昨日此處デ申上ゲタノデアリマスケレ
ドモ、是ハ元々三十七圓ト云フ數字ハ、百
圓デ一年馬ガ飼ヘルカラ三十七圓ト云フヤ
ウナコトニナルト思フ、是ハ一體幾ラデ本
當ニ飼ヘルノカ、陸軍ハ月ニ二十七圓掛ル、
一箇年間デ約三百万圓カ幾ラ掛ル、民間ハ
百圓デ馬ヲ食ハシテ置クノダト云フ算盤ノ
違ヒカラ、三十七圓ト云フヤウナ數字ガ出
テ來ルト思フ、而モ其ノ三十七圓モ今陸軍
大臣ニ此處デハツキリ申上ゲタイノハ、補
助金ト云フ觀念ガ宜クナイト思フ、民間ニ
補助スルノヂヤナイ、國民ガ負擔シテ居ル
其ノ負擔ノ一部分ヲ政府ガ辨償スルノダト
云フ觀念ニ變ヘテ戴キタイ、是ハ農林大臣
ニ特ニ御考慮ヲ願ヒタイ、今ノ農林大臣ノ御
話ノヤウナコトデハ補助ヲスルト云フコト
ニナツテ來ルガ、サウヂヤナイ、サウ云フ
觀念デハ中々馬ト云フモノハ旨ク行カヌト
思フ、サウデナシニ、馬ヲ飼フコトニ依ツ
テ生ズル所ノ農家ノ經濟ノ計算ヲピシツト
御出シニナルガ宜イ、他ノ代家畜ニナレバ
ドウ云フ算盤ニナツテ來ル、馬ニナレバド
ウ云フ算盤ニナツテ來ル、是ハ計算シ得
ル、例ヘバ米ノ生產費ヲ計算スルヤウナ詳
細ナル計算ヲシテ出シテ、ソレヲシツカリ
肚ニ入レテ農民ニ示スト同時ニ、政府當局
ガ確固タル認識ヲ決メテ、サウシテ政府ガ
幾ラノ負擔ヲスレバ宜シイト云フコトヲ決
メルガ當リ前ト思フ、サウスルノデナケレ
バハツキリシタ我國ノ馬政計畫ハ立ツモ
ノデハナイ、唯百姓ヨ馬ヲ飼ヘ、國家ノ爲
ニ必要ダカラ飼ヘト云フダケデハ中々行キ
ニクイト云フコトニ依ツテ起ツタノガ今囘
ノ色々ノ政策、此ノ政策ノ根本ニ誤リガア
リ認識ニ誤リガアルト致シマスナラバ、
是ハ中々行キニクイト思フ、之ヲ申上ゲル
ト同時ニ、時間ガアリマセヌカラ、續ケテ
申上ゲマスガ、第二ニ申上ゲナケレバナリ
マセヌ點ハ、例ヘバ地方競馬等ニ對スル認
識デアリマス、馬ハ農家ノ必要ノ爲ニ飼フ
ノデハナイ、國防ノ必要上ノ見地カラ農家
ニ飼ツテ貰フノデアルト云フコトヲ第一觀
念ニ置イテ戴キタイ、又農民モ喜ンデ國家
ノ御用ヲ務メタイト云フ觀念デ、喜ンデ協
力スル、決シテ農民ハ算盤ヅクデ合ハナイ
カラ、飼フノ飼ハヌノト申スノデハナイ、
是ハ其ノ通リ、農民ノ方カラ申セバ算盤ヅ
クデ飼フトカ飼ハヌトカ申サナイガ、飼ハ
セル政府竝ニ指導者ノ方面ニ於テハ、又逆
ニ農民ニ賴ンデヤラセルノデアルト云フ觀
念ニナツテ戴キタイト思フ、玆ニ兩々相俟
ツテ一體トナツテ本當ノ馬政計畫ハ生レ
ルト思フ、所ガ此ノ認識ト全ク無關係デア
ル所ノ司法當局デアルトカ內務當局、
司法省ノ刑事局長トカ內務省ノ警保局
長トカガ、ヤレ競馬ニ行ツタ爲ニ犯罪
人ガ出來タ、ヤレ競馬ヲヤル爲ニ思想上
ドウナツタトカ云フ細カナ面倒臭イコトヲ
言ツテ、此ノ馬政計畫ニ對シテ干與スルコ
トハ私ハ斷ジテ排擊シナケレバナラヌト思
フノデアリマス、勿論國法ノ侵スベカラザ
ルコト、又國民精神ノ發揚ノ上ニ於テ支障
ノアルコトノ遺憾ナコトハ、吾々トシテモ
認メル者デアリマス、併シナガラ物ニハ凡
ソ輕重ガアリマス、ドノ程度マデハ認メテ
宜シイ、ドノ程度以上ハヤツテハイカヌト
云フ限界ガアル筈デアル、其ノ限界ヲ持タ
ナケレバナラヌ、唯司法當局ノ見解デアル
トカ、内務省ノ警保局長ノ見解デアルト云
フヤウナコトカラ、馬ニ對スル何等ノ認識
モナケレバ、何等ノ〓究モナケレバ、對策
モナケレバ、準備モナイ所ノ一屬僚ガ、是
等ノ問題ニ干與シテ、ヤレ地方競馬ノ取締
ガドウダ、犯罪人ガ何人出タカラドウダト
云フヤウナ、細カナ點カラ論ジテ國防資源
確保ノ問題ガ決定出來ル筈ハ私ハ斷ジテナ
イト思フ、私ハ先日モ此處ニ御見エノ政府
委員ノ方ニ申上ゲタ、今日馬ノ問題ハ中々
重大ナ問題デアル、ケレドモ馬ハ陸軍ガ必
要デアルノデアルカラ、モツト陸軍ガドン
ドン押スダラウト云フノデ、實ハ民間ノ團
體等モ、此處ニ東委員長初メ民間團體ノ有
力ナ方ガ御列席デアリマスケレドモ、寧ロ
陸軍ノ推進力ノ後ニ踵イテ行ケバ馬ノ問題
ハ或ル程度進ムデアラウ、陸軍ガ要ルノダ
カラト云フ考ガ全然ナイトハ申セヌト思フ、
モツト〓〓シツカリヤツテ貰ヘルカト思ツ
テ居ル、所ガ左ニアラズシテ、陸軍カラ馬
政ノ上ニ於テアノ點、此ノ點ト色々註文サ
レマス其ノ點ガ地方民間デ考ヘテ居ル點ト
食違フ場合ガ多イ、國防一本槍ト云フ所カ
ラ出テ來ル場合ガ多イト思フ、勿論國防ノ
爲ノ馬デアリマスカラ、國防一本槍デ出テ
來ルコトハ結構デアリマスケレドモ、何ト
申シマシテモ百五十萬頭計畫ヲ確立シテ、
之ヲ維持擴充シナケレバナラヌ點カラ申シ
マスレバ、民間ノ意見モ大イニ參考トシテ
聽クベキ點ハ聽ク、其處ニ陸軍ト、農村ト、
農林省トガ一體ニナツテ、之ニ障碍ヲ與ヘ
ル他ノ行政部門ニ對シテハ完全ナル認識ヲ
與ヘルト云フコトニ努力シナケレバナラヌ
ト思フ、其ノ點ニ對シテハ私ハ缺ケテ居ル
點ガアルト思フ、先ヅ第一ニ陸軍大臣ガ申
サレタヤウニ、三十七圓ハ甚ダ遺憾デアル
ガ、財政上ノコトモ考ヘナケレバナラヌト
仰シヤイマスケレドモ、遺憾ト申スノニモ
限度ガアリマス、此ノ位ナラバ我慢シテ宜
シイ、此ノ位ナラバ我慢ガ出來ナイト云フ
ヤウニ限度ガアル筈デアル、所ガ今申上ゲ
ルヤウニ三十七圓デ、一日ノ曳付料ガ三十
五錢ト云フヤウナ數字ハ何處カラ算盤ヲ彈
イテモ出テ來ル數字ヂヤアリマセヌ、陸軍
ノドノ豫算ニ比ベマシテモ是程私ハ抑ヘ付
ケラレタ豫算ハナカラウト思フ、此ノ點ヲ
ハツキリト御認識願ハナケレバナラヌト思
フ、其ノ他ノ行政各般ノ方面カラ壓迫ヲ受
ケル馬政ノ點ニ於テモ十分ナル推進力ヲ以
テ、例ヘバ地方競馬ノ取締ガドウデアラウ
ガ、斯ウデアラウガ、ソレヲ一警察部長ガ
之ニ徹底的ナ彈壓ヲ加ヘテ、サウシテ地方
競馬ヲ潰シテシマフ、ソレニ依ツテ地方民
ノ馬ニ對スル愛好心ヲ全ク捨テシメルト云
フヤウナコトハ、嚴ニ監視スル必要ガアラ
ウト思フ、唯法律ハ法律トシテ作ツテモ、
其ノ法律ノ運用ノ妙ヲ得ル所ニ國家存立ノ
意義ガアル、ソレヲ法律ガアルカラト云ツ
テ、無茶苦茶ニ地方競馬ヲ取締ツテ見タ
リ、無茶苦茶ニ彈壓シテ見タリ、地方ニ於ケ
ル馬政ヲ滅茶々々ニスルト云フコトハ、斷
ジテ默過スルコトハ出來ナイ、實例ガ全國ニ
多々アル、如何ニ當局ト吾々ガ「ペーパー
プラン」ヲ立テテ見タ所ガ、地方ノ馬政ノ
第一線ニ立ツテ働イテ居ル者ト、行政官ト
ノ間ニ摩擦ガアリ、徒ラナル干涉壓迫ガア
ツタラ斷ジテ馬政計畫ノ實現ハ出來ヌト思
フノデアリマス、是等ニ付テ今後十分ナル
御監督ト申シマスルカ、御〓究ト申シマス
八七、御用意ヲシテ戴クニアラザレバ、今
私ガ申上ゲマシタノモ多少獨善的ナ考ヘ方
モアルト思ヒマスガ、併シ一面ノ眞理ト云
フ點ガアルト云フコトヲ御諒解戴キマシ
テ、又農民ノ要求モ此ノ點ニアルト云フコ
トヲ十分御諒解戴キマシテ、此ノ馬政計畫
ノ萬全ヲ期スル上ニ於テハ、モウ一段ノ御努
力ト御認識ヲ高メテ戴カナケレバ中々困難
デアル、法ノ內容其ノモノニ付テ私ハ議論
スルノヂヤアリマセヌ、兎ニ角一般ニ出テ
參リマシタ所ノ補助金等ニ付テハ此ノ邊
デヤラウト云フ所ニ無茶ガアル、幾ラ河
川ノ改修ノ工事ヲヤリマシテモ、僅カノ金
デ何度堤防ヲ造ツテモ同ジコトデス、三十
圓ヤ四十圓ノ金デ、三十錢、四十錢ノ曳付
料ヲヤツテ見タ所ガ、陸軍方ガ來テコンナ
瘦セコケタ馬ヲ何故曳付ケルカト言ツテ見
タ所ガ、サウ云フ小言ヲ言ヘバ言フ程馬ヲ
飼フコトヲ止メテ、皆牛ニ代ツテシマフト
思フ、斯ウ云フコトヲ根本カラ軍部ト農林
省ノ役人ノ、吾々トノ間ニ完全ナ結付キガ
アツテ、笑ツテ馬ヲ飼フト云フ所ニ持ツテ
行クノデナケレバ斷ジテ馬政計畫ハ實現ス
ルモノニアラズト云フコトヲ、私ハ少シ言
葉ヲ强ク申上ゲマシテ、兩當局ノ所見ヲ此
ノ際伺ツテ置ク必要ガアルト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=67
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068・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 今河野君ノ御話ノ如ク、
總親和卽チ農業當事者ト陸軍當局、農林當
局、竝ニ實際局ニ當ツテ居ル者ガ相互ニ抱
キ合ツテ、サウシテ此ノ事ヲ遂行スルニア
ラザレバ目的ヲ達スルコトハ出來ヌ、是尺
洵ニ御尤デアリマス、御趣旨ノ通リダト吾
吾モ深ク之ヲ考ヘマス、又現在ノ計畫ニ於
テ農家ガ利益デアルト云フコトハ少シモ考
ヘテ居リマセヌ、全ク陸軍大臣ガ言ハレタ
如ク、之ニ於テ十分ナリト云フヤウナコト
ノ考ハ少シモ持ツテ居ラナイノデアリマス
ケレドモ、財政ノ關係上今日ハ此ノ程度
デ我慢ヲシテ戴イテ國民ノ協力ヲ求メタイ、
斯樣ニ思フノデアリマス、農家ノ經濟トシ
テ馬ヲ牛ニ代ヘテ働カシタ方ガ利益デハナ
イカ、此ノ點ニ付キマシテハ、多分ニサウ
云フ點ガ思ハレルノデアリマスケレドモ、
今御話ノ如ク國民ノ愛馬心竝ニ國民ガ國防
ニ協力スルト云フ、其ノ觀念ノ下カラ此ノ
案ガ遂行サレ得ルト、斯樣ニ吾々考ヘテ居
ルノデアリマス、唯如何ニモ物價ノ騰貴ニ
連レマシテ飼料其ノ他ガ騰貴シツツアルコ
トニ付キマシテハ、深ク吾々ハ考ヘナケレ
バナラヌ點デアルト、斯樣ニ考ヘテ居リマ
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069・河野一郎
○河野委員 簡單ニモウ一點伺ヒタイ、諄
イヤウデアリマスケレドモ、今大臣カラモ
結構ナ御答辯デ私モ滿足スル者デアリマス、
併シ何トシテモモウ少シ御調査ヲシテ戴カ
ナケレバナラヌ點ガ多々アルト思フ、例へ
バ此ノ間モ承ツタ百圓ノ調査ノ如キモ、昭
和十二年度ノ調査ヲ以テ豫算ヲ此ノ際決メ
ラレタト云フヤウナコトハ、私ハ適當デナ
イト思フ、何處ノ豫算ニシテモ現在ノ物價
ヲ基準ニシテ決メルモノダ、農家ノ馬ヲ飼
フ經費等モ現在幾ラ掛ルカト云フコトヲ、
全國ヲ調ベナクテモ、大體常識デ考ヘテ、
適當ナル點ガ出テ來ルト思フ、又同時ニ今
日軍ト連絡ヲシテ馬政計畫遂行ノ上ニ、今
日軍ノ適格馬ガ何ヲ食ツテ居ルカ位ノコト
ハ分リ切ツタ話デアル、ソンナ麥糠位食ハ
シテ馬ノ曳付ケヲヤルヤウナ百姓ハ一軒モ
ナイ、寧ロ一朝有事ノ際ニ大事ナ馬ヲオ役
ニ立ツヤウニスルト云フ爲ニハ、モツト立
派ナ物ヲ食ハシテ肥ラシテ置イテ曳付ケル、
サウシテ暇ガアレバ馬ヲ乘リ〓シテ、鍛鍊馬
ノ會ヘデモ行ツタ時ニ、昔ノヤウニビン〓〓
暴レルヤウナコトノナイヤウニシヨウト
云フノデ、努力ヲ拂ツテ居ル、之ニ要スル
手間ダケデモ大抵ノモノデハナイ、ソレヲ
親切ニ考ヘテヤツテ欲シイ、自分ノ方ノ內
輪ノ豫算ダケハ細カクオ取リニナルガ補助
金ノ豫算ニハ大マカナ點ガアル、斯ウ云フ點
モ細カク計算シテ、基礎ハ是ダケ掛ルガ、
國ニ金ガナイカラ財政上是デ我慢シテ貰フ
ト云フコトニナリマセヌト、言葉ハ過ギル
カモ知レマセヌガ、私ノ言ハントスル本音
ヲ吐ケバ斯ウ云フコトデス、軍需工業、軍
需產業ノ方ハ非常ニ今日殷賑ヲ極メテ居ル、
此ノ方面ニ從事スル者ハ非常ニ所得ガ多
イ、所ガ同ジ軍ノ御用ヲ達ス馬ニ於テハ、
如何ニモ少イデハナイカト云フ所ニ、農村
ノ疑惑ガアルノデアリマス、此ノ點ヲ一ツ
シツカリ陸軍大臣ハ御考ヲ願ヒタイ、馬ノ
方ニハ金ガナケレバナイデ宜シイ、ソレナ
ラ飛行機モ安ク買ツタラ宜イヂヤナイカ、他
ノ軍需資材モ安ク買ツタラ宜イヂヤナイカ、
斯ウ云フ風ニ農村モ、軍需工業モ平等ノ見
地デ國民ガ共ニ行ケバ、ソレハ農村モ我慢
スル、所ガ他ハドウカ知レマセヌガ、我ガ
神奈川縣下等ニ於テハ、一方ニ京濱間ニ
於ケル軍需工業地帶ヲ眺メ、一方ニ農村ヲ
眺メタ場合、農村ニ於ケル馬ニ對スル施設
ト、是等軍需產業ニ對スル軍ノ御考トノ間
ニ、大變開キガアルヤウニ私ニハ見エテナ
ラナイ、其處ニ農民ノ疑惑ガアリ、此ノ時
局ニ對スル色々ノ聲ノアルコトヲ吾々聞キ
逃ガスコトハ出來ナイ、此ノ點ハ今當局ノ
御答辯デ財政ノ上カラドウモ出來ナイト云
フコトデ、吾々一應ハ滿足致シマスケレド
モ、次ノ機會マデニハ必ズ是等ニ對シテ十
分ナル御認識ト、御調査トヲ以テ臨マレンコ
トヲ切望シテ止マナイノデアリマス、此ノ
點ニ關聯シテ尙ホ一言申上ゲマスナラバ、
今日馬ノ飼料トシテ缺クベカラザル麩ノ配
給ニ付テ、非常ニ遺憾ノ點ガ多イ、是ハ農
林大臣特ニ御考願ヒタイ、軍ニ於テモ御考
願ヒタイ、而モ麩ノ相場ガ今日非常ニ高過
ギル、是ハ馬ノ飼養管理ノ上ニ於テモ支障
ヲ來シテ居ルト云フコトヲ、十分御調査願
ヒタイ、之ニ付テハ何レ他ノ機會ニ於テ御
尋スルコトニ致シマスガ、今日麥糠ヲ食ツ
テ居ルカラ麩ヲ食フコトハナカラウト云フ
ヤウナ考デ居ラレルコトハ、洵ニ遺憾ノコ
トデアル、麩ノ方ニ付テモ十分ナル關心ヲ
持ツテ戴キタイト云フコトヲ切望シテ、私
ノ質問ハ之ヲ以テ止メマス、特ニ兩大臣ノ
御配慮ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=69
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070・小笠原八十美
○小笠原委員 私ハ先刻兩大臣ニ對スル質
問ヲ打切ツタノデアリマスガ、大臣ハ御忙
シイコトト思ヒマスノデ私ハモウ申上ゲマ
セヌガ、唯私先刻來軍馬購買ノ實情ニ付キ
マシテ詳シク申上ゲテ置キマシタカラ、ド
ウカ御參考ニ速記錄ニ眼ヲ通シテ戴キタイ
ト云フコトヲ御願シテ置キマス、ソレカラ農
林大臣ニ申上ゲタイノハ、農村ニ特ニ影響
ノ大キイ輕種地帶ノコトニ付テ、詳シク申
上ゲテ置キマシタカラ、ドウカ御覽ヲ戴キ
マシテ御參考ニ願ヒタイト思ヒマス、ソレ
ダケ申上ゲテ、大臣ニ對スル質問ヲ終リマ
ス、アトハ細部ニ付テノ質問デアリマスカ
ラ.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=70
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071・東武
○東委員長 ソレデハ本日ハ是ニテ散會致
シマス、明日午前十時ヨリ開會致シマス
午後四時四十五分散會
衆議院軍馬資源保護法案外一件
委員會議錄第六囘中正誤
頁段行誤正
二〇四二六栗林政府委員栗林說明員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X00719390220&spkNum=71
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