1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年三月三日(金曜日)午後二時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 東武君
理事 佐藤謙之輔君 理事 河野一郎君
理事 土田莊助君 理事 中野寅吉君
理事 大石倫治君
森田重次郎君 坂下仙一郎君
服部英明君 遠山房吉君
坪山徳彌君 小笠原八十美君
池田七郎兵衞君 服部岩吉君
陣軍吉君 山崎常吉君
野溝勝君 三木武夫君
小野謙一君
出席政府委員左の如し
陸軍少將 中村明人君
農林參與官 林讓治君
馬政局長官 荷見安君
馬政局事務官 伊藤莊之助君
本日の會議に上りたる議案左の如し
軍馬資源保護法案(政府提出)
種馬統制法案(政府提出)
競馬法の臨時特例に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=0
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001・東武
○東委員長 是ヨリ開會致シマス、軍馬資
源保護法案、種馬統制法案、競馬法ノ臨時
特例ニ關スル法律案、此ノ三案ヲ一括致シ
マシテ討論ニ付シマス-佐藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=1
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002・佐藤謙之輔
○佐藤委員 私ハ民政黨ヲ代表シテ本委員
會ニ付託セラレマシタ軍馬資源保護法案、
種馬統制法案、竝ニ競馬法ノ臨時特例ニ關
スル法律案ノ三案ニ付キマシテ、我々同志
ノ意見ヲ開陳致シタイト思ヒマス、是等ノ
法案ハ殆ド本邦馬政ノ根本的立直シトモ稱
スベキ、本期議會ニ提案セラレマシタル法
法中ノ最モ重要ナルモノデアリマシテ、隨
テ委員會ヲ開會スルコト十二囘ノ多キニ及
ビマシタ、其ノ間委員各位モ、政府當局モ、
熱心眞率ニ質疑應答ヲ重ネラレマシテ、
是等法案ノ企圖スル所、民間ノ希望スル所
等ガ略〓く闡明セラレマシタコトハ、洵ニ欣幸
トスル所デアリマス、委員各位ヨリノ政府
ニ對スル希望等ニ付キマシテ、或ハ豫算等
ノ關係モアツタデアリマセウガ、尙ホ十分
滿足ヲ得ナカツタ點モ尠クナカツタヤウデ
アリマス、是等ハ漸次改善セラレテ民間當
業者ノ苦痛ヲ除去シ、以テ本邦馬政ノ鞏固
ナル基礎ヲ樹立セラレンコトヲ希望シテ已
マナイ次第デアリマス
偖テ是等三案ノ中、種馬統制法案竝ニ競
馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案ノ二案ニ
付キマシテハ、種馬統制法ハ年來民間ノ希
望致シテ居リマシタル種馬ヲ國有ニ統一シ、
產馬ノ根本計畫ヲ樹立セントスルモノデア
リ、競馬法ノ此ノ改正モ時局柄已ムヲ得ザ
ルコトト存ジマシテ全然政府ノ提案ニ同意
ヲ致ス次第デアリマス
唯軍馬資源保護法ニ於キマシテハ、委員
會ニ於キマシテモ最モ議論ノ焦點ト相成リ
マシタルモノデ、本法ノ運用如何ニ依リマ
シテハ馬政ノ根本ニモ影響ヲ及ボスノモノ
デアリマシテ、熱心ニ質疑應答ガ重ネラレ
タノデアリマス、細目ニ亙リ詳細ニ檢討セ
ラレタノデアリマスガ、大部分ノ點ニ於キ
マシテハ幸ニ意見ノ一致ヲ見ルコトガ出來
マシタコトハ、洵ニ幸ト存ズル次第デアリ
マン、然ルニ唯一ツ鍛鍊馬競走ニ於テ優等
馬票等ニ地方稅ヲ課』スルヤ否ヤト云フ點
ニ付テ、之ニ地方稅ヲ賦課スベキモノニア
ラズト爲ス殆ド委員全體ノ意向ニ對シテ、
政府ノ同意ヲ得ルコトガ出來ナカツタコト
ハ洵ニ遺憾トスル所デアリマス、是ニ於テ
吾々ハ已ムヲ得ズ競馬法ニ於テ是等ノ規定
ヲ成文トシテ其ノ趣旨ヲ明ニシテ居リマス
モノニ做ヒ、軍馬資源保護法第十一條第四
項トシテ左ノ一項ヲ加ヘマシテ、之ヲ修正
可決セント致ス次第デアリマス、卽チ
鍛鍊馬場ノ開設又ハ維持、競走ノ觀覽、優
等馬票ノ發行又ハ購買、拂戾金又ハ賞金ノ
交付又ハ受領、其ノ他鍛錬馬競走ノ施行又
ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ス
〔拍手〕
簡單ニ其ノ修正ノ理由ヲ申上ゲマス、元
來鍛鍊馬競走ニ於キマシテ地方稅ヲ課シテ
ハイケナイト私共ハ考ヘテ居リマス、申上
ゲルマデモナク是ハ國防上ノ必要カラ從來
ノ勅令ニ依リマス所ノ地方競馬ハ廢止ヲセ
ラレマシテ、玆ニ新タナル鍛鍊馬競走ト云
フモノガ施行セラレルコトニナリマシタノ
デ、其ノ目的ハ專ラ軍用馬ノ鍛鍊ヲ目的ト
スルモノデアリマシテ、性質ニ於キマシテ
モ現在ノ地方競馬トハ其ノ根本ニ於テ違ツ
テ居ル譯デアリマス、又公認競馬ハ其ノ賣
得金ガ合計二億圓ニモ近クナツテ居リマス
ノニ、鍛鍊馬競走ニ於キマシテハ吾々ノ計
算スル所ニ依リマスト、一千万圓乃至千五
百万圓ニハ達シナイダラウト思フノデアリ
やく、其ノ公認競馬デアリマシテサヘモ地
方稅ハ現在ニ於テハ賦課セラレテ居リマセ
ヌノニ、軍馬資源ノ目的デアリマス鍛鍊馬
競走ニ地方稅ヲ賦課スルト云フコトハ不當
デアルバカリデナク、之ニ依リマシテ鍛錬
馬競走ノ施行ヲ不可能ナラシメマシテ、强ヒ
テ之ヲ施行セシメヨウト致シマスレバ、
主催團體ノ經濟ヲモ破壞スル虞ガ種々
アルコトト存ズルノデアリマス、又公認
競馬ハ政府ニ一定額ノ納付金ヲシテ居ル
ノデアルカラ、地方稅ハ取ツテモ宜イデハ
ナイカト云フガ如キ說モ聞クノデアリマス
ケレドモ、是ハ私共ハ全ク違ツテ居ルト思
フノデアリマス、此ノ法ノ目的トシマス所
ハ鍛鍊馬競走カラ中央會ニ一定ノ金額ヲ納
付セシメマシテ、之ニ依リマシテ政府ノ所
期スル所ノ目的ニ之ヲ使用セシメヨウト云
フコトニナツテ居ルノデアリマス、此ノ中
央會ニ納メマス納付金ト云フモノハ、恰モ
公認競馬ニ於キマスル所ノ政府納付金ト、
其ノ性質ニ於キマシテハ殆ド違ヒノナイモ
ノデアルト私共ハ存ジテ居ルノデアリマス、
ソレニ地方稅ガ尙ホ賦課セラレルト云フコ
トニナルト、所謂是ハ二重負擔ト云フコト
ニナリマシテ、競馬ノ開催ヲモ危カラシム
ルト云フコトニ相成ルト存ズルノデアリマ
ス、斯樣ニ致シマシテ此ノ法案ノ議論中ニ
モ種々出タノデアリマスガ、馬ニ關スル費
用ハ決シテ十分デハナイノデアリマス、隨
テ民間ニ於キマシテハ馬ニ關スル費用ノ
錢一厘デモ多カランコトヲ希望シテ居リマ
ス際ニ、斯ノ如キ方面ニ資金ヲ流出セシ
メ、サウシテ所謂地方稅ヲ課スルト云フコ
トハ、馬事振興ノ上ニ取ツテ重大ナルコト
ト考ヘマス、彼此相考ヘマシテ、地方稅ヲ賦
課スルコトハ不當ト存ズルノデアリマシテ、
此ノ修正ヲ致サントスル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=2
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003・東武
○東委員長 坪山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=3
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004・坪山徳彌
○坪山委員 私ハ只今議題トナツテ居リマ
ス此ノ軍馬資源保護法案、種馬統制法案、競
馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案ノ三案ニ對
シマシテ、立憲政友會ヲ代表シマシテ意見
ヲ開陳致シタイト思ヒマス、卽チ軍馬資源
保護法案ノ中第十一條ノ第四項トシテ左ノ
一項ヲ加ヘタイト思フノデアリマス、只今
民政黨ノ佐藤君ノ意見ノ御開陳ガアリマシ
タガ、ソレト同樣デアリマスガ
鍛鍊馬場ノ開設又ハ維持、競走ノ觀覽、
優等馬票ノ發行又ハ購買、拂戾金又ハ賞
金ノ交付又ハ受領、其ノ他鍛鍊馬競走ノ
施行又ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課スル
コトヲ得ス
ト云フ、之ヲ加ヘテ修正ヲ致シタイト思フ
ノデアリマス、其ノ他ノ部分ニ對シマシテ
ハ原案ニ贊成デアリマス、此ノ際玆ニ其ノ
修正ノ理由ヲ開陳スルト共ニ、二三ノ希望
意見ヲ申述ベマシテ、其ノ贊成ノ意ヲ明ニ
致シタイト思フノデアリマス
第二次馬政計畫ガ實施セラレテ幾許モア
ラザルニ、假令今次事變ノ實蹟トハ申シナガ
ラ、其ノ計畫變更ヲ餘儀ナクセラレタコトニ
對シテハ洵ニ遺憾トスル所デアリマス、屢〓其ノ
計畫ヲ變革シ、之ニ依ツテ生ズル犠牲ヲ關係
地方民ニノミ强フルガ如キ事ガアツテハ斷
ジテ相成リマセヌ、常ニ有ユル角度ヨリ〓究
調査ヲ遂ゲ、一度方針確定、實施ノ曉ニハ
萬難ヲ排シテ之ヲ斷行シ、濫ニ變革ヲ行フ
ガ如キハ嚴ニ戒ムベキコトデアルト思ヒマ
ス、本法案實施ニ當リマシテハ、常ニ國民ノ
協力特ニ馬事團體、馬ノ生產竝ニ育成地方
ノ理解アル協力ヲ得ルニアラザレバ、到底
所期ノ目的ヲ達成シ得ザルコトヲ覺悟シナ
ケレバナリマセヌ
時局愈〓、重大ナルノ秋、一切ノ行掛リヲ
捨テ、官民一體、本法案ノ眞ノ目的達成ニ
邁進致サナケレバナラナイト確信ヲ致シテ
居リマス、馬ガ我國國防上、產業上極メテ
重要ナル役割ヲ持ツテ居リマスコトハ、今
更多言ヲ要シナイノデアリマシテ、言葉ヲ
換ヘテ申シタナラバ、軍馬ナクシテ國防ノ
完璧ヲ期シ難ク、馬ナクシテ我國產業、殊
ニ農業ハ成立ツモノデアリマセヌ、常ニ其
ノ生產ヲ確保シ、內地保有馬ノ維持ニハ一
段ノ努力ガ必要デアリマシテ、ソレガ爲ニ
ハ優良種馬ノ選定ヲ誤ラズ、特ニ種牡馬ニ
付テハ相當ノ犠牲ヲ忍ンデモ、優良種馬ノ
獲得ニ意ヲ用ヒ、目的達成ニ邁進セラレタ
イノデアリマス、換言スルナラバ種馬政策
ノ確立ヲ希ウテ止マナイノデアリマス、又
政府ノ貸付シタル種牡馬若クハ候補種牡馬
ヲ飼養スル者、或ハ優良種牝馬若クハ候補
優良種牝馬ヲ飼養スル者ニ對シ補助金ヲ相
當ニ增額シ、經濟的打擊ヲ與ヘザルヤウ努
ムベキデアルト思ヒマス、從來種付セザル
牝馬ニ對シテモ、更ニ進ンデ其ノ種付ヲ指
導シ、積極的助成ノ途ヲ講ジ、大イニ生產
擴充ヲ圖ルト共ニ、本法案施行く結果當然大
ナル影響ヲ蒙ムル輕種生產地方ニ對シテハ
特ニ經濟的損失ヲ蒙ラザルヤウ特別ナル考
慮ヲ拂フ必要アリト考ヘラレマス
外地竝ニ日滿ニ亙ル馬政國策遂行ノ結果、
將來苟モ內地馬政ニ大ナル影響壓迫ガアツ
テハナリマセヌ、馬政ノ衝ニ當ル者深ク留
意スベキ事柄デアルト信ジマス、本法案目
的達成ノ爲ニハ馬產試驗局ノ設置ハ急務
中ノ急務デアルト確信ヲ致シテ居リマス
馬ガ一ノ活兵器デアリマスコトハ今更論
ヲ俟タヌノデアリマス、然ルニ他ノ兵器製
造工業ニ比ベテ經濟上甚ダ惠マレザル狀態
ニ置カレテアリマスコトハ、洵ニ其ノ當ヲ
得ザルモノト言ハザルヲ得マセヌ、物價指
數ヨリ之ヲ見マシテモ、他ノ諸物價ニ比較
シテ餘リニモ適正ヲ缺クヤノ疑ヲ持ツテ居
ルノデアリマシテ、馬ノ生產竝ニ育成地方
ノ實情ニ照シ、特ニ軍馬ノ購買等ニ當ツテ
ハ、價格ノ引上ニ向ツテ考慮ヲ煩ハス必要
アリト考ヘラレマス、常ニ適正妥當ナル馬
ノ價格ノ維持、取引上ノ改善、牛馬商ノ指
導、監督等ハ我國產業ノ振興、軍馬資源ノ
確保、生產竝ニ育成者ニ取ツテ極メテ重大
ナル問題デアルコトハ多言ヲ要サナイノデ、
速ニ適正ナル對策ヲ講ズル必要アリト認ム
ル次第デアリマス
又生產費ノ低減、卽チ經濟界ノ變動ハ
諸物價ノ急激ナル暴騰ヲ招來シ、爲ニ
馬ノ生產育成上甚ダシキ困難ニ直面致シ
ツツアルノデアリマシテ、馬ノ飼料ノ如
キハ極端ナル品不足ノ爲、當業者ノ窮況
察スルニ餘リアルモノガアリマス、是ガ
圓滿ナル配給、價格ノ引下ヲ斷行スルト
共ニ、他面ニ於テハ採草地ノ整備改善、放
牧地ノ擴大、充實、思ヒ切ツタル國有地ノ開
放等ハ特ニ喫緊事デアルト考ヘラレマス
保有馬維持ノ爲ニハ馬ノ保健衞生施設ニ
大イニ意ヲ用フベキデ、殊ニ事變勃發以來、
獸醫師ノ激減ハ保健衞生上洵ニ憂慮スベキ
現狀デアリマス、是等ノ補充對策ニ對シテ
モ速ニ適當ナル方策ヲ執ラレ、馬政ノ上ニ
萬違算ナキヲ期スベキデアルト思ヒマス
今次事變ノ結果ハ馬ノ飼養管理ノ上ニ於
テモ大ナル改善ヲ要スル點決シテ少クハナ
イト確信ヲ致シテ居リマス、特ニ國民馬事
知識ノ向上普及ニ關シテハ、今囘ノ得難キ
尊キ經驗ニ鑑ミ、一大決心ノ下ニ是ガ徹底
ヲ期スベキデ、其ノ取扱ニ付テハ、學校其
ノ他靑少年〓育機關、農事關係團體等ニ馬
事〓育ヲ施スコトハ勿論、進ンデ軍事〓練、
靑年訓練等ノ必須課程ト爲スニアラザレバ、
其ノ實績ヲ擧ゲ得ナイト確信致シテ居リマ
ス
軍用保護馬ニ對スル一箇年三十七圓ノ助
成金、一日三十五錢ノ日當ノ如キハ、現在
ノ實情ニ卽セザルモ甚シト言ハザルヲ得マ
セヌ、是ガ增額ヲ要望シテ止マナイ次第デ
アリマス鍛鍊ノ時期、其ノ日數ノ如キモ
特ニ地方ノ實情ヲ參酌シテ、農閑期ヲ利用
シ、出來得ル限リ農民ノ負擔ヲ輕減スルコ
トヲ忘レテハナリマセヌ、サナキダニ、今
ヤ軍事工業發展ノ結果ハ、勞働力ノ都會集
中ヲ見マシテ、地方農村ハ動トモスレバ是
ガ爲ニ極端ナル勞力不足ヲ〓ゲントスル現
況デアリマス、是ガ實施ニ當リテハ十分ナ
ル注意ガ肝要デアリマス、多年我國馬事ノ
上ニ貢獻シ來マシク地方競馬廢止ノ結果ハ
直チニ地方馬事團體、竝ニ馬事施設費ノ上
ニ影響スルコト甚大ナルモノガアリマス、
宜シク是ガ助成ノ途ヲ立テ、違算ナキヲ期
スベキデアリマス
從來ノ地方競馬出走馬ノ取扱ニ對シテハ
出來得ル限リ之ヲ軍用保護馬ニ指定シ、狀
況ニ依リ當分少クトモ其ノ三分ノ一ノ程度
ノ他管區出走ヲ認メ、飼育者ノ蒙ムル損害
ヲ最小限度ニ止ムベキデ、又競馬場廢止ノ
結果ハ、當然巨額ナル負債ノ整理、補償ヲ
必要トスルノデアリマシテ、是ガ整理、補
償ニ當ツテハ急速ニ之ヲ實行シ、地方馬事
團體ヲシテ喜ンデ本法案遂行ニ一致協力シ
得ル機會ヲ與ヘラレンコトヲ切望シテ止マ
ナイ者デアリマス、開催日數ノ四日、又優
等馬票ノ金額三圓ハ地方ノ實情ニ依リ其ノ
日數ヲ六日マデ、金額ハ一圓乃至五圓ト爲
スベキガ當ヲ得タモノト思ハレマス
鍛練馬競走施行者ガ發行スル優等馬票ニ
對シ地方稅ヲ課セントスルガ如キハ、其ノ
矛盾モ甚シト言ハザルヲ得マセヌ、公認競
馬ニ於ケル馬劵ト何等異ナル點ナキ優等馬
票ニ對シ、强ヒテ課稅ヲ爲シ、經濟上、軍
用鍛練馬競走ヲ根本的ニ施行不能ニ陷レン
トスルガ如キニ至ツテハ、本法施行ノ大目
的國防ノ完璧ヲ期スル上ニ於テ洵ニ遺憾
トスルモノデアリマス、殊ニ一方ニ於テハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ中央會ニ納付金ヲ納
付セシメ、公認競馬ニ地方稅課稅ノ途ナキ
ニ拘ラズ、國軍ガ特ニ要求シツツアル軍用
鍛練馬競走ニノミ課稅セントスルガ如キハ
其ノ眞意那邊ニアルヤヲ疑ハザルヲ得ンノ
デアリマス、其ノ名義ノ何タルヲ問ハズ、
施行者ニ更ニ負擔ヲ加重セシムルガ如キコ
トアツテハ、全國大半ノ鍛練馬競走ハ決シ
テ成立ツモノデハアリマセヌ、現在ニ於テ
スラ巨額ノ負債ニ惱ミ、如何ニシテ是ガ整
理ヲ行ハンヤト日夜呻吟致シツツアル實情
デアル點ニ鑑ミ、國防產業上ヨリ寧ロ進ン
デ保護助成ヲ加ヘ、本法施行ノ目的ヲ一日
モ速ニ達成セシムルコトコソ、現下ノ國際
情勢ニ照シ執ルベキ最善ノ途デアルト深ク
信ジマス、是レ修正ヲ加ヘタル根本ノ理由
デアリマス、新ニ成立セントスル軍用保護
馬中央會ト帝國馬匹協會トノ提携協調ニ關
シテハ將來一段ノ注意ヲ喚起シテ止マナイ
モノガアリマス、本法施行ノ結果ハ市町村
ノ蒙ル負擔モ決シテ尠クハナイト確信ヲ致
シテ居リマス、今ヤ事變發生以來市町村事
務ハ急激ナル增加ヲ辿リ、加フルニ負擔ニ
於テモ驚クベキ增額ヲ餘儀ナクセラレツツ
アルノ現況デアリマシテ、是ガ助成ニ付テ
ハ特ニ深甚ナル考慮ヲ煩ハシタイト思ヒマ
ス、之ヲ要スルニ本法案ハ我國、國防上、產
業上、極メテ重大ナル案件デアリマス、是
ガ施行ニ際シテハ官民一致協力、其ノ目的
達成ノ爲最善ノ努力ヲ致スベキデアルト信
ジマス
終リニ私ハ今次ノ聖戰ニ從軍シ、忠勇ナ
ル將兵ノ下ニ默々トシテ日夜劇務ニ服シ、
皇軍ノ光輝アル戰果ヲ扶助シツツアル軍馬
ノ勞苦ヲ思ヒ、併セテ戰病歿軍馬ニ對シ感
謝ノ意ヲ表スルト共ニ、銃後ノ產業ニ從事
シツツアル馬ニ對シ同情ノ誠ヲ捧ゲタイト
思ヒマス、以上ヲ以チマシテ軍馬資源保護
法案ニ對シテ一部修正ヲ加ヘルト共ニ、其
ノ他ノ部分ニ對シテ贊成ノ理由ヲ明ニ致シ
タ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=4
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005・中野寅吉
○中野委員 私ハ軍馬資源保護法案、種馬
統制法案、競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律
案、此ノ政府ガ提出サレタ法案ニ對シテハ、
今佐藤謙之輔君、坪山德彌君ヨリ意見ヲ述
ベラレマシタノデ、大體ノ理窟ハ盡キテ居
ルト思ヒマス、又只今軍馬資源保護法案第
十一條第四項トシテ佐藤、坪山兩君ノ述ベ
ラレマシタ修正ノ意見ニ對シテハ、第一議
員倶樂部ヲ代表シテ贊成スル者デアリマス、
此ノ修正ハ洵ニ穩當ナ修正デアリマス、而
シテ此ノ三法案ノ目的ヲ達成スル爲ニハ、
官民協力シテ當ラナケレバナラナイノデア
リマス、農林省モ、陸軍省モ、內務省モ、
大藏省モ、皆之ニ快ヨク御同意アルコトト
堅ク信ジマス、若シソレニ不平ヲ唱ヘルヤ
ウナ者ガアツタトスルナラバ、是ハ現内閣
ノ一枚看板デアル總親和ヲ破リ、又國民總
意ノ要求ヲ蹂躪スルヤウナ結果ニナラヌト
モ限リマセヌ(拍手)其ノ意味デ私ハ今ノ坪
山君佐藤君ノ意見ト同樣ナ意見デ贊成ヲス
ル者デアリマス、是ダケ申上ゲテ置キマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=5
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006・野溝勝
○野溝委員 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シマ
シテ贊成意見ヲ申上ゲタイト思ヒマス、今
度政府カラ提案サレマシタ軍馬資源保護法
案種馬統制法案、競馬法ノ臨時特例ニ關
スル法律案、以上ノ三法律案ニ對シマシテ
大體贊成ヲスル者デアリマスガ、唯一點、
軍馬資源保護法案中ノ第十一條ニ第四項ヲ
追加スルト云フ佐藤サンノ修正動議ニ對シ
マシテハ、私モ亦同感デアリマシテ、之ニ
贊成ヲスル者デアリマス、只今ノ修正動議
ヲ政府ガ採用サレルナラバ、以上三法律案
ニ對シマシテハ、滿腔ノ敬意ヲ以テ贊意ヲ
表スル者デアリマス、最後ニ社會大衆黨ヨ
リノ希望意見ヲ申上ゲタイト思ヒマス、卽
チ希望條項ト致シマシテ左ノ五點ヲ擧ゲテ
置キマス
希望條項
畜產經濟確立ノ爲ニ飼料ノ廉價配給制
ヲ速ニ樹立セラレタシ
二二馬政計畫ノ圓滑ナル發達ヲ期スル爲ニ
速ニ國有林及ビ林牧混淆地ヲ開放セラレ
タシ
三、有畜農業ヲ擴充强化スル爲メ馬小作制
度ノ改廢ニ資スベク馬購入資金簡易融通
ノ途ヲ講ゼラレタシ
四、馬飼育者直接指導機關タル畜產組合ノ
刷新ト擴充ノ途ヲ速カニ講ゼラレタシ
五、馬事育成竝ニ衞生ニ對スル指導者タル
獸醫師ノ養成竝ニ地位ノ向上ニ格段ノ注
意ヲ拂ハレタシ
以上五點ノ希望ヲ申上ゲマシテ、社會大
衆黨ヲ代表シテ、政府提出ノ法律案ニ對ス
ル修正動議ニ付キマシテ贊意ヲ表スル者デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=6
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007・三木武夫
○三木委員 私ハ第二控室ヲ代表致シマシ
テ、佐藤氏ノ修正動議ノ、軍馬資源保護法
案中第十一條第四項ノ地方稅賦課ニ關スル
附加修正ニ贊意ヲ表スル以外ハ、三案トモ
原案ニ對シテ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマ
ス、、唯今囘ノ三法案ヲ通觀シテ、國防上已
ムヲ得ザルモノデアルト云フコトニ對シ
テハ、十分ナル認識ヲ持ツノデアリマス
ガ、此ノ新馬政計畫ガ單ナル臨時立法デナ
イコト、永久的ナ馬政計畫デアルト云フ
コトヲ御發表ニナツテ居ル以上ハ、產業政
策的ニモ馬政計畫ノ遂行ヲ御考ニナラナケ
レバー一旦必要ノ場合ニ於キマシテハ國防
的ナ使命ヲ果スノデアルケレドモ、其ノ常
ニ培養スル母體ハ地方產業的母體ノ上ニ、
此ノ馬政計畫ノ成否ガ決セラレルノデアル
ト云フコトヲ考ヘタ時ニ、將來此ノ馬政計
畫ヲ遂行シテ行ク上ニハ、或ハ地方ノ農家
ニ對スル資金融通ノ途ヲ考ヘル、又家畜保
險ヲ單ナル損害保險ト云フ見地デナクシ
テ、一ツノ社會保險ト云フ見地ニ於テ御考
慮ニ相成リ、或ハ又飼料トカ牧野ノ點ニ付
キマシテ、是ガ低廉ニ且又理想的ニ利用ノ
出來ル途ヲ講ゼラレテ、農家ニ他ノ家畜ヲ
飼養スルヨリモ、或ハ又スルト同樣ニ、何
等ノ經濟的ナ負擔或ハ損害ヲ與ヘズシテ、
喜ンデ此ノ新馬政計畫ニ協力出來ルヤウナ
方法ヲ御執リニナラナケレバ、馬政計畫ノ
成功ハ私ハ出來ナイト思ヒマス、國防的必
要カラ急速ニ此ノ案ヲ御立テニナツタ結果、
產業的ニ新馬政計畫ヲ御覽ニナツテ、或ハ
又ソレニ關スル施設、或ハ政府ノ考慮ノ方
法ガ、私ハ足リナイト思フ、冀クハ此ノ點
ニ付テ十分ナル御〓究ト、萬遺憾ナキヲ希
望シテ、修正ノ動議ニ對シテ贊成スルト同
時ニ、三案ニ對シテ政府原案ニ贊成ノ意ヲ
表シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=7
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008・小野謙一
○小野委員 私ハ東方會ヲ代表シマシテ、
只今議題ト相成ツテ居リマス軍馬資源保護
法案ニ對シマシテハ、佐藤、坪內兩君ノ修正
意見ニ贊成ノ意ヲ表スルノデアリマス、更
ニ種馬統制法案外一件ニ對シマシテモ、事
變下ニ於ケル必要ナル立法トシテ是亦贊成
ノ意ヲ表スルノデアリマスガ、此ノ際極メ
テ短簡ニ私ノ意見ヲ申述ベテ置キタイト思
ヒマス
日露戰爭ノ貴重ナル體驗ニ依リマシテ確
立サレマシタ第一次馬政計畫、卽チ明治三
十九年カラ昭和十一年マデ三十箇年間實施
ヲシタ其ノ馬政計畫ハ、國家馬政ニ、產業
國防ノ上ニ、相當ナル貢獻ヲシ、成績ヲ擧
ゲ得タコトハ、政府ト雖モ勿論之ヲ否定シ
得ナイデアラウト考ヘテ居ツタノデアリマス、
然ルニ今囘突如トシテ第二次馬政計畫ノ實
施半バニシテ、之ヲ變更セラレマシタコト
ハ、少クトモ政府ガ第一次馬政計畫ノ國防ニ
關スル限リ失敗ナルコトヲ自ラ御承認ニナ
ラレタコトヲ、私ハ非常ニ遺憾トスル者デ
アリマス、今次事變ノ體驗ニ依ル計畫ノ變
更ト申シマシテモ、私ハ先般ノ質疑ノ際ニ
申上ゲマシタヤウニ、僅ニ一年カ一年半ノ
短イ經驗デアル、且又徵發馬ノ成績ガ不良
デアツタト申シマシテモ、ソレハ其ノ動因
タルヤ單ナル馬ノ素質機能バカリニ非難ノ
焦點ヲ集中スベキデハナイト思ヒマス、殊
ニ御承知ノ通リ、馬ニハ强イ馴化性ノアル
モノデアリマシテ、相當ノ方法ニ依リ、相當
ノ期間ヲ經過シマスレバ、大抵ノ處ニハ馴
レ得ルノデアリマス、隨テ私ハ先般モ申上
ゲマシタヤウニ、モウ少シ長イ經驗ニ依ツ
テ、戰局ガ北支カラ中支、更ニ南支方面ニ
擴大シテ居ル現狀デアリマスカラ、戰爭ノ
大局ノ上カラ是等ノ戰績ヲ綜合大觀シテ、
馬ノ調査成績ガ完了シタ上デ、徐ニ第二次
馬政計畫ヲ變更シテモ遲クハナイノデハナ
イカ、今度ノ新計畫ノ發表ハ餘リニ早計デ
ハナイカト云フコトヲ申上ゲタノデアリマ
スガ、今日尙ホ其ノ感ヲ深ウスルノデアリ
マス、併シナガラ先般陸軍大臣ガ自ラ部隊
長トシテ、大變馬ニ對シテハ苦イ御經驗ヲ
嘗メラレタト云フ御言明モアリ、且又今度
ノ計畫ハ恆久性ヲ持ツ、不動ノモノデアル
ト云フ御言明モアリマシタノデ、大臣ノ言
明ニ敬意ヲ表シ、之ニ信賴ヲ致シマシテ、
私ハ修正ノ點ヲ認メマシテ、軍馬資源保護
法案ニ贊成ヲスル次第デアリマス、他ノ二
案ニ對シマシテハ先刻申述ベマシタヤウニ、
事變下必要ナル立法トシテ、無條件デ贊意
ヲ表スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=8
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009・東武
○東委員長 是ニテ討論ハ終リマシタ、採
決ニ入ルニ先ダツテ、其ノ順序ヲ申上ゲテ
置キマス、先ヅ軍馬資源保護法案ノ修正案
ノ採決、次ニ修正案ノ殘ノ原案ノ採決、次
ニ種馬統制法案、競馬法ノ臨時特例ニ關ス
ル法律案ヲ一括シテ採決致シマス、先ヅ修
正案ニ付テノ贊否ヲ採リマス、軍馬資源保
護法案第十一條ニ一項ヲ加フル修正案ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=9
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010・東武
○東委員長 滿場一致可決致シマシタ括 日
手)次ニ修正案ヲ除キタル原案ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=10
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011・東武
○東委員長 全會一致可決致シマシタ(f白
手)次ニ種馬統制法案竝ニ競馬法ノ臨時特
例ニ關スル法律案ヲ一括シテ採決致シマ
ス、贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=11
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012・東武
○東委員長 滿場一致可決致シマシタ拍
手)本委員會ハ委員會ヲ開クコト玆ニ十三
囘ニ及ビマシタ、委員諸君ハ熱心且ツ至誠
ヲ披瀝シテ此ノ審議ヲ遂ゲラレマシタ、又
政府委員諸君モ熱心ニ誠意ヲ披瀝シテ、質
問應答ヲ重ネラレタノデアリマスルガ、之
ニ對シテハ委員長ハ特ニ此ノ席ヨリ謝意ヲ
表シマス、終リニ臨ミマシテ、只今滿場一
致贊成可決サレマシタ修正條項ガ、無事ニ貴
族院ヲ通過ズルモノト信ジマスガ、萬一貴
族院ガ修正ニ同意ナキ時ハ、兩院協議會ヲ
經ナケレバナリマセヌ、申スマデモナク此
ノ案ハ軍事國防上ヨリ見テ極メテ重要デア
リマス、故ニ委員會ハ終始一貫協調ヲ求メ
タノデアリマス、是ハ諸君御承知ノ通リ
デアリマスルガ、政府部內ニ於テハ遂ニ今
日マデ一致ヲ見ルコトノ出來ナカツタコト
ハ、實ニ遺憾ノ至リデアルト存ジマス、今
後貴族院ニ於テ民意ヲ尊重シテ、速ニ修正
案ガ通過スルヤウニ、政府當局者ニ對シテ
一言婆心トシテ御注意申上ゲマス、若シ萬
一ノコトガアリマシテモ、委員會ハ至誠ヲ
披瀝シテ今日マデ努力致シタト云フコト
ハ政府ノ諸君モ御承知デアラウト思ヒマ
スルガ、此ノ點ニ付テハ多クノ責任ハ持タ
レマセヌ、ドウカ此ノ席デ質問ヲ致シテ御
答辯ヲ得ルト云フヤウナコトハ致シマセヌ
ガ、出來ルコトナラバ貴族院ニ行ツテ此ノ
修正案ガ無事通過スルヤウニ一段ノ努力ア
ランコトヲ切ニ希望シテ此ノ委員會ヲ終了
致シマス、是ニテ委員會ハ全部終了致シマ
シタ、散會致シマス
午後三時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007410617X01319390303&spkNum=12
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