第74回帝国議会　衆議院　支那事変特別税法中改正法律案外二件委員会　第12号　昭和14年3月11日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十四年三月十一日（土曜日）午前十一時九分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　川崎克君
  　　理事　小山倉之助君　理事　最上政三君
  　　理事　横川重次君　理事　森田福市君
  　　理事　鶴惣市君　理事　藤本捨助君
  　　理事　河野密君
  　　　　中島彌團次君　　　一松定吉君
  　　　　松永東君　　　川崎末五郎君
  　　　　田村秀吉君　　　愛野時一郎君
  　　　　池本甚四郎君　　　渡邊玉三郎君
  　　　　津倉亀作君　　　瀧澤七郎君
  　　　　高橋熊次郎君　　　武田徳三郎君
  　　　　服部岩吉君　　　江羅直三郎君
  　　　　坂田道男君　　　大口喜六君
  　　　　松浦伊平君　　　岸田正記君
  　　　　森肇君　　　道家齊一郎君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　内務大臣　侯爵　木戸幸一君
  　　　商工大臣兼拓務大臣　八田嘉明君
  　　　　　　　　大藏大臣　石渡莊太郎君
  　　　　　　　　農林大臣　櫻内幸雄君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　内務省地方局長　坂千秋君
  　　　　　　　内務書記官　三好重夫君
  　　　　　　大藏政務次官　松村光三君
  　　　　　　　大藏參與官　矢野庄太郎君
  　　　　　大藏省主税局長　大矢半次郎君
  　　　　　大藏省銀行局長　入間野武雄君
  　　　　　　　大藏書記官　松隈秀雄君
  　　　　　　　大藏書記官　田中豐君
  　　　農林省經濟更生部長　石黒武重君
  　　　　商工省商務局長兼商工省統制局長　新倉利廣君
  　　　　　厚生省勞働局長　成田一郎君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　支那事變特別税法中改正法律案（政府提出）
  　臨時利得税法中改正法律案（政府提出）
  　臨時租税措置法中改正法律案（政府提出）

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• 001・川崎克

  ○川崎委員長　開會致シマス-愛野君

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• 002・愛野時一郎

  ○愛野委員　私ハ此ノ增稅ノ質問ハ、大體
  私ガ質問セントスル所ハ盡シマシタシ、又
  私自身モ餘リ早ク調ベテ居ツタノデ、全然
  私ノ材料及ビ法律案ナドヲ忘レタヤウナ形
  ニナリマシタカラ、私ノ言フコトガ或ハ出
  鱈目ニナルカモ知レマセヌケレドモ、豫メ
  御諒承ヲ願ヒマス、先ヅ第一ニ、今度ノ稅
  ノ立テ方ガ大藏省デハ要スルニ「インフレー
  ション」ヲ防止スルト云フ意味ノ方ガ强イ
  ノデアルカ、或ハ公債ノ利息ヲ支拂フト云
  ツタ程度ノ意味ノモノガ强ク此ノ稅ニ影響
  シテ居ルカドウカ、其ノ點ヲ御伺致シタイ
  ト思ヒマス

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• 003・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　結果ニ於テハ多少(三)
  フレ」防止ノ役ニモ立チ、又國債ノ利子ノ
  支拂增加ニ對シテソレヲ相殺スル作用ヲ持
  ツトハ思ヒマスケレドモ、ソレヲ目標ニシ
  テ增稅案ヲ作ツタト云フ譯デハゴザイマセ
  ヌデ、度々申上ゲマシタ通リ、此ノ際トシ
  テ所得ノ增加シ得ベキ方面ニ對シテ相當負
  擔ヲ增ス、ソレカラ奢侈的ト認メラレル物
  品或ハ消費行爲、尙ホ奢侈的トマデ行カナ
  クトモ、生活ノ第二義的ト認メラレ、多少ト
  モマダ負擔餘力ガ殘サレテ居ルト認メラル
  ル物品ニ對シテ課稅シヨウト云フノヲ根本
  ノ趣旨ト致シテ立案シタ次第デゴザイマス

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• 004・愛野時一郎

  ○愛野委員　ソコデ私ハ御伺致シテ見タイ
  ト思ヒマスガ、是ハモウ既ニ此ノ前ノ議會
  デモ質問ナリ御返事ナリアツタコトト思ヒ
  マスケレドモ、日產會社ガ滿洲デ會社ヲ移
  シテ滿業ト云ツタヤウナ會社ニナツタ、其
  ノ結果日本ニ於ケル大體ノ日產「コンツェ
  ルン」ノ稅ノ總額ガドノ位免レ、ドノ位少
  クナツタカト云フヤウナコトガ大體デ宜シ
  ウゴザイマスガ御分リデゴザイマセウカ

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• 005・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ別ニ正確ノ調査ハ致
  シテ居リマセヌ、併シ日產關係ノモノガ滿
  洲ニ轉出致シタ結果ト致シマシテ、第一種
  所得稅、ソレカラ法人營業收益稅等ニ於テ
  相當ノ減收ヲ見タト云フコトハ事實デアリ
  やっ、ガ一方ニ於キマシテ所得稅法ニ於キ
  マシテハ、本法施行地ニ住所ガナイ者デモ、
  本法施行地ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有ス
  ル法人ヨリ受クル利益若クハ利息ノ配當ト
  云フモノニ對シマシテハ、第二種所得稅ヲ
  課稅スル、斯ウ云フコトニナツテ居リマシ
  テ、結局滿業ト云フノデスカ、アレハ「ホー
  ルディング·カンパニー」ニナツテ居リマ
  シテ、內地ニ本店ヲ有スル會社カラ相當配
  當ヲ受ケテ居ル、之ニ對シマシテハ內地デ
  高率ノ第二種所得稅ノ課稅ヲ受ケル、一方
  ニ於テハ滿業ノ株主デ內地ニ住所ヲ持ツテ
  居ル者ガ滿業カラ配當ヲ受ケルモノニ對シ
  テハ、內地ニ於テ第三種所得稅ノ課稅ヲ受
  ケル、斯ウ云フ結果ニナツテ居リマスノ
  デ、總體ト致シマシテハ國庫ノ收入ニ大ナ
  ル變化ガ來テ居ナイノヂヤナカラウカト見
  テ居リマス

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• 006・愛野時一郎

  ○愛野委員　今日私ハ質問ノ書類等ヲ家ニ
  忘レテ參リマシタノデ、材料ヲ持合セマセ
  ヌガ、私ノ大體調査シタ所デハ年ニ日產關
  係ノ所謂「ホールディング·カンパニー」全
  體デ八百万圓程度ノ稅ヲ免カレタト云フ風
  ニ記憶致シテ居ルノデアリマス、私ハ日本
  ノ情勢、ソレカラ財政的ノ見透シ、是等ノ
  根本ノ建前トシテハ、ドウシテモ滿洲ノ經濟
  力ノ發展或ハ擔稅力ノ增加ト云フヤウナモ
  ノガ極メテ重大デアル、此ノ點ハ全ク眞劍
  ニ大藏當局ノ御方ニ考ヘテ戴カネバナラヌ
  點デアルト思フノデアリマスルガ、而モ此ノ
  日產會社ハ殆ド向フニ行キマシテハ天然資
  源ト云フモノハ獨占的ニ之ヲ取得ルノ權利
  ガ與ヘラレテ居ルヤウデアリマス、其ノ點ニ
  付テ今度ハ商工大臣ニ御伺致シタイト思フ
  ノデアリマス、商工大臣ハ現在ニ於テ日本
  ノ生產擴充ノ方面ヲ掌ツテオ居デニナルノ
  デアリマスガ、滿洲ノサウ云フ意味ニ於ケ
  ル重大性ハ、鐵鑛ガ先ヅ滿洲ニ內地ヨリモ
  餘計ニアルト云フコトダケデモ極メテ重大
  ナコトデアル、私ハ汽車ノ中デ或人ニ聞イ
  タコトデアリマスガ、今日內地ニ於テモ自
  動車工業ノ確立ガ中々出來兼ネル、特ニ自
  動車ヲヤツテ見テモ曲ガルヤウナ鐵シカナ
  イ、隨テ外國產ノ優秀ナ自動車ニ比ベルト、
  日本內地ノ自動車ト云フモノハ見劣リガス
  ル、唯鞍山ノ製鐵所デ良イ鐵ガ精鍊サレル、
  併シナガラ滿洲ニ於テハ日產會社、所謂滿
  業ニ權利ヲ取ラレルヤウナ形ニナツテ居ル
  爲ニ、之ヲ大キクヤルコトガ出來ナイデ居
  ル、斯ウ云フ話ヲ聞イタノデアリマスガ、
  滿洲國ノサウ云フコトニ對シテ內地カラ之
  ヲ統制的ニ指導スルト云ツタヤウナコトガ
  出來ルカドウカ、又出來ナイトスレバ、將
  來ヲ御考ニナツテ居リマスルカドウカ、其
  ノ點ヲ少シ橫ニ外レタヤウデスケレドモ御
  伺致シマス

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• 007・八田嘉明

  ○八田國務大臣　滿洲ニ於ケル產業殊ニ重
  工業、サウ云フモノト日本內地ニ於ケル所
  ノ同種ノ工業ノ點ニ付キマシテハ、直接指
  導ト云フヤウナコトハ、例ヘバ商工省ノ例ヲ
  申上ゲマシテモ、ソレハ出來ナイト思ツテ
  居リマス、併シナガラ滿洲ニ於ケル所ノ總
  テノ監督指導ハ、我國トシテハ御承知ノ通
  リ對滿事務局ナルモノヲ通ジマシテ、我國
  ノ同種ノ監督官廳ニ於テ十分密接ナル連絡
  ガ取レテ居ルコトハ間違ヒガナイト思フノ
  デアリマス

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• 008・愛野時一郎

  ○愛野委員　只今私ガ申上ゲマシタ鐵ノ問
  題デアリマス、只今申上ゲマシタヤウニ實
  際ニ鞍山デ自動車工業ニ適スルヤウナ鐵ガ
  出來テ居ルヤウナコトハアナタノ方デ御分
  リニナツテ居リマセウカドウデセウカ、ソ
  レカラ又其ノ結果只今申上ゲマシタヤウナ、
  感情的ナモノガ行ハレテ居ルカドウカ、其
  ノ點ヲ一ツ御伺致シマス

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• 009・八田嘉明

  ○八田國務大臣　只今鞍山ニ於ケル鐵ノ問
  題、ソシテソレガ我國ノ自動車ノ器材ト申シ
  マスカ、サウ云フモノトノ關係ニ於テ彼此相
  融通セラルベキモノガアルニ拘ラズ、何等カ
  其處ニ之ヲ障碍スルモノガアルト云フヤウ
  ナ意味ノ御質問ノヤウニ思フノデアリマス
  ガ、鞍山ニ於テ近年色々ナ〓究ガサレテ居
  ルコトハ能ク私モ承知シテ居ルノデアリマ
  スガ、又我國ニ於ケル自動車工業ニ於テ特
  ニ苦心シテ居ル點ハ鐡竝ニ器材ニアルト思
  フノデアリマス、隨ヒマシテ各自動車關係
  ノ業者ニ於テハ此ノ點ニ特別ナル注意ト關
  心トヲ持ツテ居ルコトハ御話ノ通リト思フ
  ノデアリマス、唯鞍山ノ製鐵ノ方法其ノ他
  ニ付キマシテ、他ノ會社トノ間ニドウ云フ
  關係ガアルカト云フコトハ、私ハ資料ヲ持
  ツテ居リマセヌ

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• 010・愛野時一郎

  ○愛野委員　此ノ問題ハ此ノ程度デ打切リ
  タイト思ヒマスガ、要スルニ私ハ今日ノ日
  本ノ內地ノ財政計畫ノ基礎トデモ言フベキ
  コトハ、一番直接ニヤラナケレバナラヌコ
  トハ、モツト滿洲國ト日本內地トノ總テノ
  經濟方面ガ統制サレ、一致サレテ行クト云
  フコトデアラウト思ヒマス、私ハ杞憂カモ
  知レマセヌガ、此ノ前ノ杉山陸軍大臣ハ
  「ホールディング·カンパニー」デアルカラ、
  一般的ノ國民ガ利益ヲ享受シ得ル建前ニナ
  ツテ居ル會社デアルカラト云ツタヤウナコ
  トデ滿業ガ滿洲ニ進出シタト記憶シテ居リ
  マスガ、是ナドモ私ノ考カラ申シマスト、
  極メテ亞米利加流ノ資本家ノ惡イ組織ガア
  ノ「ホールディング·カンパニー」ノ組織デ
  アルト私ハ考ヘルノデアリマス、三分ノ一位ノ
  株ヲ持ツテ居レバ、株式市場デドレダケデモ
  自由自在ニナル組織ガ、アノ「ホールディング·
  カンパニー」ノ特徴デアリマシテ、是ガ滿洲ニ
  進出シテ居ル、一面日本ト滿洲トノ稅制ノ
  建前ハ違フ、其ノ間隙ヲ利用シテトマデハ
  言ハレマスマイケレドモ、或ル程度ノ增稅
  ニハナツテ居ル、而モ滿洲ニ於ケル權利ト
  云フモノハ、殆ドアノ會社ガ一手デヤツテ
  居ル、日本ハ今後大藏大臣ノ御答辯ノ通リ
  幾年現在程度ノ增稅ガ續ケテ行カレルカド
  ウカ分ラナイ、一刻モ早ク滿洲國ノ財政力
  ガ、內地程度ニ行カズトモ、少クトモ或ル
  程度ノ擔稅力ト云フモノガ急速ニ昇上シテ
  來テ、內地ノ生產擴充ノ點カラ言ツテモ、
  或ハ色々ナ負擔ノ點カラ言ヒマシテモ伸ビ
  テ來ルコトヲ吾々ハ特ニ希望致スノデアリ
  マスシ、今後ノ稅ノ取リ方モ此ノ點ヲ逃シ
  テハ到底本格的ナモノニハナツテ來ナイダ
  ラウト私ハ考ヘルノデアリマスガ、此ノ點
  大藏當局ハドウ云フ風ニ御考ニナラレマス
  カ

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• 011・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　日本內地ト滿洲トノ稅制
  ノ關係デゴザイマスガ、實ハ日本帝國ノ版
  圖內ニ於キマシテモ內地ト外地、卽チ朝鮮、
  臺灣、樺太等ノ間ニ於キマシテ、出來ルダ
  ケ內地ト同樣ノ稅制ヲ布キタイト思ツテ努
  力シテハ居リマスケレドモ、マダ幾分差異
  ノアル所ガゴザイマス、關東州ニ至リマシ
  テハ其ノ程度ガ更ニ强クナツテ相當開キガ
  アル、斯ウ云フ風ナ關係ニナツテ居リマス
  カラ、滿洲國ノ稅制ハ當分ノ間日本ノ內地
  ノ稅制トハ或ル距リヲ持ツテ居ルノモ已ム
  ヲ得ナイコトカト存ジマス、併シナガラ御
  說ノ通リ滿洲國ノ產業ガ漸次發達シテ參リ
  マスト、色々日本內地トノ稅制ノ「ギヤツプ」
  モ漸次是正サレテ來ルデハナカラウカト存
  ジマス、滿洲國建國以來未ダ年數ハソレ程
  經ツテ居リマセヌケレドモ、從來ナカツタ
  直接稅方面ノ稅制モ或ル程度出來テ來タヤ
  ウデゴザイマシテ、將來滿洲國ノ產業ノ發
  展ニ連レマシテ、漸次內地ノ方ニ近付イテ
  參ルコトカト存ジマス

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• 012・川崎克

  ○川崎委員長　愛野君ニ一寸御諮リ致シマ
  スガ、商工大臣ハ今日ハ午前中ダケダサウ
  デアリマシテ、他ニマダ商工大臣ニ對スル
  質問ノ通〓者モアリマスカラ、商工大臣ニ
  對スル方ヲ先ニ願ツテ、大藏省ノ分ハ後ニ
  廻シテ戴キタイト思ヒマス

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• 013・愛野時一郎

  ○愛野委員　商工大臣ニハ二三點アルノデ
  アリマス、此ノ點ハ昨日モ稅ノコトデ御尋
  ニナツタヤウニモ承ツテ居リマスガ、今日
  本ノ農民ニ大キナ問題ヲ投掛ケテ居ル生絲
  ノ問題デアリマスガ、今日起ツテ居ル生絲
  ノ問題ニ付テ商工大臣ハドウ云フ御考カラ
  アア云フ風ナ價格ヲ決メラレタノデアリマ
  スルカ、其ノ點ヲ一ツ御伺シテ見タイト思
  フノデアリマス

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• 014・八田嘉明

  ○八田國務大臣　御承知ノヤウニ昨年ノ六
  七月以前ニ於テ、此ノ事變以後俄ニ諸物價
  ガ〓騰シタト云フコトハ明カデアリマスガ、
  ソレニ對應シテ當時〓究ノ結果、非常ニ異
  常ナル騰貴ヲシテ行クモノニ對シテハ、應
  急對策トシテ一應其ノ物價ヲ抑ヘルト云フ
  コトノ方針ガ政府ニ於テ決定サレマシテ、
  以前カラアリマスル法律卽チ暴利取締令ナ
  ルモノ、及ビ臨時措置トシテ物品販賣價格
  取締規則ト云フモノヲ制定セラマシテ、其
  ノ二ツノ法規ヲ適用致シマシテ、取敢ズ或
  ル物品ガ特別ナル〓騰ヲスル時ニハ、先ヅ
  止レト云フ命令ヲ出スヤウニナツテ居ル、
  ソレガ商工省ノ〓示デ以テ出ルノデアリマ
  ス、ソレハ全ク事務的ニ取計ラハレル、サ
  ウシテ一旦止メテ置キ、ソレヲ中央物價委
  員會ノ專門委員會ニ掛ケル譯デアリマス、
  中央物價委員會ニ於テハソレヲ專門的ニ其
  ノ事業者モ入ツテ適正ナ見地カラ標準ノ最
  高價格ヲ決定サレル譯デアリマスカラ、其
  ノ際ニ各關係ノ向キト、官廳ハ勿論民間ノ
  業者ヲモ一緒ニ入レマシテ、決定サレル譯
  デアリマスガ、其ノ決定サレマシタモノニ
  依ツテ、商工大臣或ハ地方ニ於テハ府縣知
  事ガ、本當ニ何々ノ物價ハ幾ラデアル、斯
  ウ云フコトヲ指定スル譯デアリマス、ソコ
  デ此ノ間ノ絹織物ヲ告示致シマシタノハ、
  其ノ前ノ私ノ申シタ應急對策ノ詰リ出發點
  ヲ告示シタノデアリマス、アレハ決定的ノ
  モノデハナイノデアリマス

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• 015・愛野時一郎

  ○愛野委員　其ノ物價ノ決メ方等ノ事務的
  ナコトハ勿論私モ分ツテ居リマスガ、其ノ
  所謂抑ヘ方ト云フカ、告示デスネ、アレガ
  今日ニ於テハ農林省カラ買受ケタ生絲ノ價
  格ヨリモ安イト云フコトデ、貿易其ノ他ニ
  モ非常ニ關係シテ居ル、斯ウ云フコトデ極
  メテ重大ナ影響ヲ全國ノ養蠶業者等ニマデ
  及ボス結果ニナツテ來ル、隨テ今日全國ノ
  農民層ノ懷ロ工合ニモ極メテ惡イ影響ヲ及
  ボスヤウナ豫感ヲ與ヘテ居ル、私ハ斯ウ思
  フノデアリマスルガ、斯ウ云フ風ナ點ハ政
  府ノ部內ニ於テ能ク檢討サレルコトヲ特ニ
  私ハ希望致スノデアリマスガ、今後ヤハリ
  私ノ言フヤウナ希望ノ下ニヤラレル御考デ
  ゴザイマセウカ、ドウデゴザイマセウカ、
  其ノ點ヲ一ツハツキリト御答ヲ願ヒタイノ
  デアリマス

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• 016・八田嘉明

  ○八田國務大臣　今日マデ絹織物ニ限ラズ
  總テノ物資ガ異常ニ〓騰スル時ニハ、今申
  シタ通リ取敢ズ抑ヘテ居ルノデス、ソレハ
  昨年ノ七月以後皆サウナンデゴザイマス、
  サウシテ後カラ公定ノ價格ヲ作ルト云フコ
  トハ今申上ゲマシタ、ソレナラバ初メカラ
  公定價格ヲ作ツテ發表シタラドウカト云フ
  コトニナルノデアリマスガ、官僚獨善デヤ
  レバサウ云フコトガ出來ルノデアリマス、
  併シ實際ノ事業ニ携ツテ居ル、例ヘバ組合
  ノ人デアリマストカ、色々ノ人ヲ集メルト、
  此ノモノガドウナルンダト云フコトガ豫メ
  分ルモノデアリマスカラ、ソコデ極ク祕密
  裡ニ府縣廳ノ經濟部ノ方ヲ集メ、サウシテ
  商工省ガ中心ニナツテ其ノ意見ヲ求メテ、
  兎ニ角內々デ以テポツト其ノ物資ヲ告示ス
  ル譯デアリマス、ソコデ一寸問題ガ起リ易
  イノデアリマスガ、ソレヂヤソレヲ止メテ、
  初メカラ價格ヲ決メテヤツタラト云フコト
  ニナルト、ソレハ又ソコニ色々ナ混亂狀態
  ガ起ルノデアツテ、是ハ非常ニ難カシイ點
  デアリマス、併シナガラ絹織物ノ如キハ今
  御話ノヤウニ、其ノ原料デアル絹絲ト云フ
  モノニ關係致スガ故ニ、商工當局アタリデ聽
  イテ見マスルト、餘程前カラ是ハ何トカシ
  ナケレバナラヌト云フコトハ分ツテ居ツ
  タ、併シナガラ生絲ニ響クト云フト、今御
  話ノ如ク一方ニ於テハ是ハ農家ノ生產物デ
  アルガ故ニ重大ナル關係ガアリマス、一方
  ニ於テハ輸出品デアルガ故ニ是モ關係ガア
  リマス、ソコデ非常ニ躊躇シテ、モツト前
  ニ告示ヲスベキモノガ延ビ〓〓ニナツテ居
  ツタラシイ、而シテ大體是位ノ所デ止メレ
  バ絹絲ノ値段ニハ農家ノ點カラ見テモ、
  輸出ノ價格カヲ見テモ大丈ダト云フ肚ガ、
  各府縣ト調ベタ結果付イタカラ、三月四日
  ニ突然ト告示ヲ出シタ譯デアリマス、隨テ
  今日ドウカト云フト、一月十日ノ絹絲ノ相
  場ハ八百三十圓デアツタノガ、今日ハ千圓
  前後デアリマス、ソレハ今農林省アタリデ
  幾ラガ標準デアルト言ハレテ居ルカト云フ
  コトハ私カラ申上ゲラレマセヌガ、決シテ
  千圓ト云フモノハ、何ト言ヒマスカ、著シ
  ク之ヲ叩イタモノデアルト云フコトニハ考
  ヘテ居ナイノデアリマス、併シ絹絲ト云フ
  コトヲ目標ニシテ之ヲ抑ヘタノデハナイノ
  デアリマシテ、ソレニ響カヌヤウニ絹製品
  ノ方ヲ抑ヘル、而シテ只今モウ數日ノ內ニ
  今ノ止メタ絹織物ノ公定價格ガ物價委員會
  カラ出ル譯デアリマス、其ノ時ニハ商工大
  臣ガ之ヲ告示致シマス、ソレデ明ニナルト
  思フノデアリマスガ、決シテ絹絲ニハ惡イ
  影響ヲ與ヘテ居ラヌト云フコトハ事實デア
  リマス、唯止メタ爲ニ問屋デアルトカ色々
  ナ所ニポツト進ンデ行ツタモノガ止レト云
  フコトニナツテ居リマスカラ、ソコニ何ト
  言ヒマスカ、摩擦ガアルト思ヒマス、是ハ
  如何ナル場合デモ起ルノデアリマスガ、唯
  ソレヲ成ベク少クスルト云フコトガ行政廳
  トシテハ考ヘナケレバナラヌ點デアルト考
  ヘルノデアリマシテ、只今ノ御話ノ點ハ私
  ニモ能ク了解ガ出來ルノデアリマスカラ、
  十分努メル積リデアリマス

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• 017・川崎克

  ○川崎委員長　愛野君、此ノ問題ハ前ニ隨
  分ヤツテ、凡ツ決ツテ居リマスガ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=17

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• 018・愛野時一郎

  ○愛野委員　ソレデハ商工大臣ニ對シテハ
  是デ宜シウゴザイマス

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• 019・川崎克

  ○川崎委員長　此ノ機會ニ商工大臣ヘノ質
  問ヲ許シタイト思ヒマス、服部君ドウゾー
  服部君ニ御注意申上ゲマスガ、江羅君モ質
  問シタイヤウデアリマスカラ成タケ簡單ニ
  御願致シマス

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• 020・服部岩吉

  ○服部委員　私ノ商工大臣ニ御尋ヲ申上ゲ
  タイ點ハ今囘ノ物品稅增徵ト物價ノ問題
  デアリマス、旣ニ昨日此ノ委員會ニ於キマ
  シテ、河野委員カラ大藏大臣ニ質疑ヲセラ
  レマシテ、大藏大臣ハ之ニ對シテ明確ナル
  御答辯ヲ致サレテ居ルノデアリマス、卽チ
  今囘ノ物品稅其ノモノハ當然消費者ガ負擔
  スベキモノデアル、隨テ物價ニ對シマシテハ
  四月一日以後ニ於キマシテ、此ノ物品稅ガ
  當該ノ物品ノ價格ニ加算サレルコトニナル
  ト云フコトデアリマス、之ニ對シマシテハ
  商工大臣モ同樣ノ御意見ト存ジマスルガ、
  先ヅ第一番ニ其ノ點ニ對シマスル商工大臣
  ノ御意見ヲ承リタイト思フ

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• 021・八田嘉明

  ○八田政府委員　今日マデ公定シマシタ物
  品ノ價格竝ニ本月一杯マデニ決定セラルベ
  キ所ノ公定價格、斯ウ云フモノハ四月一日
  以降ニ於キマシテ、增稅ノ問題ガ決定、施
  行サレマスル場合ニ於テ、之ニ如何ナル取
  扱ヲスルカト云フコトハ、一ニ中央物價委
  員會ニ於テノ審議ノ結果ニ商工省トシテハ
  俟チタイト思ヒマス、ソレニ俟ツノデアリ
  マスルガ、大藏省ニ於テ增徵サレマスル其
  ノ趣旨、目標ト云フ點ニ基キマシテ、當然
  物價委員會ニ於テハ生產者、消費者何レニ
  ドウスカト云フコトニ付テ考慮サレテ決定
  サレルモノト信ジマス、隨ヒマシテ大藏大
  臣ノ御答ニナツタノト違ヒナイト私モ考ヘ
  テ居リマス

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• 022・服部岩吉

  ○服部委員　ソコデ大藏大臣ハ今囘ノ物品
  稅增徵ニ付キマシテハ、當初ヨリ共ノ理由
  ヲ消費節約ト云フコトニ置カレテ居リマス
  ルノデ、消費節約ヲ徹底セシメルト云フコ
  トニ付キマシテハ、直接今囘ノ物品稅ノ增
  徵ハ其ノ品物自體ノ價格ニ加ヘナケレバ消
  費節約ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト斯
  樣ニ考ヘルノデアリマス、隨テ只今中央物
  價委員會ニ總テノ物價ノ公定其ノ他ヲ御委
  セニナツテ、其ノ中央委員會ノ決定ニ基ク
  トノ御答辯デアリマスケレドモ、苟モ政府
  ノ大方針ヲ體シテ物價委員會ハ總テノ物價
  ニ對スル適正ナル價格ヲ決定サレルベキモ
  ノダト斯樣ニ考ヘルノデアリマス、中央政
  府ト離レマシテ、別ニ物價委員會ト云フモ
  ノガ獨立シテノ權限ハナイト斯樣ニ考ヘル
  ノデアリマス、卽チ中央物價委員會ト云フ
  モノニ政府ハ物價ノ決定權ヲ全部委サレテ
  居ルモノトハ解シテ居ナイノデアリマスル
  ガ、此ノ邊ノ御所見ヲ承リタイト思フノデ
  アリマス

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• 023・八田嘉明

  ○八田國務大臣　御話ノ通リデアリマス

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• 024・服部岩吉

  ○服部委員　ソコデ其ノ點ハ判明致シマシ
  タガ、今囘三月一日付デアリマシタカ、商
  工省ノ告示ヲ以テ發表サレタ指定物品ノ中
  ニ〓酒ガ加ヘラレテ居リマス、此ノ〓酒ハ
  所謂〓酒デアツテ、酒類ト云フモノノ全般
  ヲ含ンダモノデナイト思フノデアリマス、
  獨リ〓酒ヲ此ノ指定物品ノ中ニ加ヘラレマ
  シタ理由、同時ニ殆ド〓酒ト同ジ立場ニア
  ル味淋燒酎、或ハ酒精含有飮料等ヲ包含サ
  レナカツタ理由ヲ承リタイト思ヒマス

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• 025・新倉利廣

  ○新倉政府委員　〓酒ヲ物品トシテ指定致
  シマシタノハ各種ノ情勢カラ見マシテ、〓
  酒ノ騰貴ノ虞ガ相當ゴザイマシタノデ、是
  ハ先程大臣カラ申上ゲマシタヤウニ、取敢
  ズ指定致シマシテ、此ノ騰貴ノ抑制ヲ圖ル、
  斯ウ云フ趣旨デゴザイマス、要スルニ實情
  ガサウ云フ事態ニナツタト斯ウ御諒承ヲ願
  ヒマス

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• 026・服部岩吉

  ○服部委員　味淋燒酎及ビ酒精含有飮料ノ
  如キハ殆ド〓酒ト同ジ立場デアリマシテ、
  其ノ騰貴ニ付キマシテハ同ジ趨勢ヲ持ツテ
  居リマスノデ、是等ノモノガ國民ノ日常必
  需品トシテノ御考ナラバ、當然同時ニ是等
  ヲ指定サルベキモノデアルト思フ、然ルニ
  唯〓酒ガ暴騰ノ趨勢ニアルト云フ點ヲ以テ
  抑ヘラレタト云フコトハ、物價對策上カラ
  見テ當ヲ得タモノデナイヤウニ考ヘラレル
  ノデアリマスガ、其ノ點ヲ更ニ御伺致シタ
  イト思ヒマス

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• 027・新倉利廣

  ○新倉政府委員　御話ノヤウニ非常ニ精細
  ナ調査ヲ致シマシタ場合ニハ、サウ云フ點
  モ考ヘラレルノデゴザイマスケレドモ、ア
  ノ際ニ致シマシタノハ一番騰貴ノ趨勢ノ著
  シイモノヲ應急的ニ指定スルト云フ方針ヲ
  執リマシタノデ、結局或ル程度ノ違ヒト云
  フコトニ重點ヲ置キマシテ指定シタト御承
  知ヲ願ヒマス

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• 028・服部岩吉

  ○服部委員　只今ノ御答辯ノ言葉尻ヲ摑ム
  譯デハアリマセヌガ、應急的ニ之ヲ拾ヒ上
  ゲタノデアル、斯ウ云フ御答辯デアリマス
  ガ、私ハ應急的ニ拾ヒ上ゲタト云フ理由ノ
  發見ニ苦シムノデアリマスガ、ドウ云フ意
  味デアリマスカ、更ニ伺ヒタイト思ヒマス

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• 029・新倉利廣

  ○新倉政府委員　先程大臣モ御話ニナリマ
  シタヤウニ、本來ナラバ色々生產費ガドウ
  デアルカトカ、或ハ配給費ガドウデアルカト
  云フヤウナ點ヲ調ベマシテ、サウシテ是ノ
  價格ヲ公定スルト云フコトガ一番良イトハ
  吾々モ考ヘテ居リマス、併シナガラ其ノ時
  ノ情勢ノ如何ニ依リマシテハ、サウ云フコ
  トヲシテ居リマスコトハ間ニ合ハナイト云
  フヤウナコトモゴザイマスシ、又他ノ色々
  ノ事情デサウ云フコトガ適サナイト云フ事
  情モゴザイマスノデ、サウ云フ場合ニハ多
  少不備ナ點ガアリマシテモ、騰貴ノ趨勞ガ
  ドウモ甚ダシイト思ヒマス時ニハ、是非一
  ツソレヲ抑ヘル、斯ウ云フ意味デ應急的ニ
  指定ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス

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• 030・服部岩吉

  ○服部委員　此ノ指定サレマシタ增稅ニ伴
  フ物價ノ公定ニ付キマシテハ、少クトモ至
  急此ノ公定ヲサレナケレバ、四月一日カラ
  間ニ合ハナイト考ヘマス、此ノ〓酒ト云フ
  モノハ一體適正ナル價格ヲ見出シ得ルモノ
  デアルカ、私ハ〓酒ニ關スル限リ公定價格
  ト云フモノハ極メテ至難ナモノデアツテ、
  本當ノ公定價格ト云フモノハ出シ得ナイモ
  ノデハナカラウカ、斯樣ニ考ヘルノデアリ
  さい、ナゼナラバ〓酒ハ規格ガゴザイマセ
  ヌ、原料ナドハ大部玄米ヲ使用致シテ居リ
  マスガ、其ノ玄米ノ如キハ或ル一定ノ原料
  價格ト云フモノガ割出サレテ來マセウ、其
  ノ他ノ資材ニ付キマシテモ相當是ハ價格ガ
  割出サレテ參リマスルガ、〓酒ニ付キマシ
  テハ其ノ釀造技術上、今日〓酒ノ品位ヲ決
  メテ居リマスモノハ、大體精白ノ程度、竝
  ニ其ノ技術ノ如何ニ依ツテ定メラレテ居ル
  ノデアリマス、例ヘバ一割ノ精白程度、二
  割ノ精白程度、或ハ三割乃至四割、五割ト
  云フ精白程度ト云フモノガ割出サレテ居ル
  今日デアリマス、而シテ此ノ精白ノ程度ニ
  依ツテ釀造サレタ〓酒其ノモノヲ、是ハ
  割ノ精白ノモノデアル、是ハ三割ノモノデ
  アル、是ハ三割五分ノモノデアルト云フコ
  トヲ鑑別シ得ル化學的ノ方法ハ、絕對ニナ
  イト云ツテモ宜イカト考ヘラレルノデアリ
  やっく、而モ釀造サレタ〓酒ハ、嗜好者ノ如
  何ニ依リマシテ値段モ變ツテ參ルノデアリ
  そう、斯ウ云フ規格ノ無イモノニ付テ公定
  價格ヲ決メヤウトスルコトハ、非常ニ私ハ
  ソコニ無理ガ出來テ來ルノデハナカラウカ、
  斯樣ナ心配ヲ持ツノデアリマスガ、若シ公
  定價格ヲ決メ得ルトスルナラバ、今如何ナ
  ル御考ヲ持ツテ居ラレマスカ、此ノ點ヲ御
  伺シテ置キタイト思ヒマス

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• 031・新倉利廣

  ○新倉政府委員　非常ニ精細ナ或ハ又極メ
  テ嚴格ナ公定價格ト云フコトニナリマスト、
  全ク御說ノ通リダト吾々モ考ヘテ居リマス、
  ト申シマスノハ從來或ハ綿製品ニ付キ、或
  ハ手製品ニ付キ、諸種ノ製品ニ付キマシテ
  公定價格ヲ制定スル際ニ、今御話ニナリマ
  シタヤウナ非常ナ困難ヲ實ハ感ジテ居リマ
  ス、隨ヒマシテ、「ス·フ」製品ナドノ公定
  價格ヲ作リマス場合ニハ、先ヅ品物ノ種類
  ヲ限定致シマシテ、ソシテ其ノ限定サレタ
  品物ニ付テ價格ヲ決メル、斯ウ云フ方法ヲ
  執リマス、唯新シク造ラレタ品物ニ付キマ
  シテハサウ云フ方法モゴザイマスケレドモ、
  極メテ多種多樣ニアリマス場合ニハ、全部
  ノモノニ付テサウ云フ風ニシテ行クト云フ
  コトハ、實際上非常ナ困難ガアルノデゴザ
  イマス、併シナガラ從來ノ經驗カラ見マス
  ト、品物ニハヤハリ標準的ナ品物ガゴザイ
  マシテ、サウ云フ標準的ナ品物ノ公定價格
  ヲ作リマスト、先ヅ大體ニ於テ他ノ品物ニ
  付キマシテハ、ソレトノ格差ト云ヒマスカ、
  サウ云フモノデ値段ガ定メラレテ行ク、斯
  ウ云フ實情ニゴザイマスノデ、大體サウ云
  フ考ヲ以テ從來ヤツテ來テ居リマス、只今
  御話ノヤウニ〓酒ノ御話ニナリマスト、其
  ノ程度ガ甚シイデハナイカト云フ點ハ、吾
  吾モサウ云フ風ニ考ヘマスノデ、具體的ニ
  ドウ云フ風ニスルカト云フコトニ付キマシ
  テハ、勿論今〓究ヲ進メテ居ルノデアリマ
  ス

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• 032・服部岩吉

  ○服部委員　〓酒ニ對スル所ノ無規格ナモ
  ノニ對シテ、適當ナル價格ヲ見出スト云フ
  コトハ非常ニ難カシイ、當局ノ方ニ於カセ
  ラレテモ、ソレハ極メテ至難デアルト云フ
  コトヲ御認ニナツテ居ラレルト思フノデア
  リマス、故ニ私ハ今代表的ナモノヲ標準ト
  スル、卽チ假ニ〓酒デ申シマスナラバ、六
  大都市デ使ハレテ居ル代表的ナ〓酒、例
  バ菊正宗デアルトカ或ハ大關デアルトカ或
  ハ白菊デアルトカ、斯ウ云フヤウナ代表的
  ナモノヲ基準トシテ、大體ノ所ヲ決メテ行
  カウトサレルヤウニ考ヘラレルノデアリマ
  スガ、此ノ物價ヲ御決メニナル場合ニ於キ
  マシテハ、當業者或ハ當業者ニ依ツテ結成
  サレテ居ル同業團體、例ヘバ酒造組合デア
  ルトカ或ハ酒類ノ釀造組合デアルトカ、色々
  ナ是等ノ機關ガ備ツテ居リマスガ、唯單
  ニ利益サヘ取レバ宜イト云フヤウナ考ヲ持
  タズ、一方ニハ商權ヲ擁護シ、一方ニハ適
  正ナル價格ヲ以テ取引シ、健全ナル配給機
  關トシテ立ツテ行カウト云フヤウナ目的ヲ
  以テ立ツテ居リマス、是等ノ利權ヲ十二分
  ニ尊重サレテ、是等ノ價格ヲ御決メニナラ
  レルコトガ適當ダト考ヘルノデアリマス、
  此ノ點ハ特ニサウ云フ風ニサレンコトヲ切
  望シテ已マナイノデアリマス
  ソレカラ醤油ノ問題デアリマスガ、醬油
  ノ價格ト云フモノハ戰前カラコチラ殆ド値
  上ハサレテ居ラナイノデアリマス、ソレデ
  業者ノ方ニ於キマシテハ、本年ノ一月末、
  醤油ハ國民全體ノ日常ノ必需品デアルカラ、
  之ヲ値上スルト云フコトハ非常ニ消費者ノ
  側カラ見レバ困ル、所ガ已ムニ已マレズ醬
  油ノ價格ヲ上ゲテ貰ハナケレバナラヌ、若
  シ上ゲテ貰ヘナケレバ、少クトモ醬油ノ原
  料資材ノ値段ヲ、戰前卽チ十二年ノ六月當
  時ノ價格ニマデ引下ゲテ貰ハナケレバ困ル、
  然ルニ十二年六月カラ十四年一月當時ニ於
  キマス醬油ノ原料資材ノ値上リト云フモノ
  ハ、非常ナ暴騰ヲ致シテ居リマス、例ヘバ
  大豆ニ於キマシテハ五分ト云フ値上リヲ致
  シテ居ル、小麥ニ付キマシテハ四割三分、
  食鹽ハ二割一分、樽材ニ付キマシテハ五割
  三分八厘、石炭ガ五割八分、ソレカラ容器
  ノ罎ガ二立入ニ於テ四割五分、ソレカラ外
  裝用ノ木箱デアルトカ、サウ云フモノガ四
  割程度暴騰致シテ居ル、是等ガ暴騰致シテ
  居リマスルニモ拘ラズ、業者ハ非常ニ「ストッ
  ク」ガアツタカラ多少我慢ハシテ來ラレタガ、
  最早此ノ上ハ此ノ材料ヲ戰前當時ニ引下ゲ
  テ戴ケルカ、サモナケレバ少クトモ當局ニ
  相當ノ價格ノ値上リヲ承認シテ貰ハナケレ
  バ行ケナイ、斯ウ云フ陳情ヲ商工省ニ致シ
  タ、其ノ時ノ交涉シタ商工省ノ態度ト云フ
  モノハ業者ヲ馬鹿ニシタヤウナ態度デアツ
  タト非常ニ是ハ業者ガ憤慨ヲ致シテ居ルノ
  デアリマス、ドウシテモ是ハ値段ヲ上ゲテ
  貰ハナケレバ行ケナイ、行ケナクナレバ品
  質ヲ低下サセルヨリ仕方ガナイ、品質ヲ低
  下サセルト云フコトニナレバ、是ハ衞生上
  ニ於テモ非常ニ有害トナラザルヲ得ナイ結
  果ニナル、斯ウ云フコトヲ言フト、ソンナ
  コトハ厚生省ニ行ツテ話シテ來イト云フヤ
  ウナコトデ取合ハナイ、或ハ農村物價ノ方
  ノ問題ニナルト、農林省ニ行ツテ話シテ來
  イ、商工省ハソンナコトハ知ラナイ、稅ノ
  話ヲスレバ左樣ナコトハ大藏省ニ持ツ行テ
  話シテ來イ、コチラハ所謂價格一本デ行
  クノダ、斯ウ云フヤウナ態度デ殆ド取上
  ゲナイ、其ノ時ノ商工省ノ事務官ノ名モ分
  ツテ居ルノデアリマスガ、サウ云フコトハ
  申上ゲマセヌ、取敢ヘズ所謂中小商工業者
  或ハ商權ヲ或ル程度マデ擁護シテ、サウシ
  テ共ニ戰時體制下ニ立ツテ行カナケレバナ
  ラナイ商工省ガ、業者ニ對スル斯ノ如キ態
  度ト云フモノハ官僚獨善ノ極ト言ハナケレバ
  ナラナイ、斯樣ナ態度ニ於キマシテハ商工省ト
  云フモノガ國民カラ信賴ヲ受ケテ行キ得ルモ
  ノデナイト私ハ思フ、此ノ點ハ本會議ニ於テ、
  或ハ各方面ノ委員會ニ於キマシテ各委員カラ
  痛烈ニ其ノ改善ヲ希望サレテ居リマス、
  此ノ事ハ餘談デアリマスルガ、左樣ナ態度
  デハイケナイ、能ク陳情ノ趣旨ヲ聽キ、サ
  ウシテ當然物價ヲ上ゲナケレバナラナイモ
  ノハ上ゲテヤルベキガ至當デアルト思フ、
  斯ノ如ク平均三割乃至四割原料ノ騰貴ヲ來
  シテ居ルモノヲ、戰前ノ當時ノ價格ニ抑へ
  テ行クト云フ所ニ非常ニ無理ガアルノデハ
  ナイカ、少クトモ三十億程度ノ國家ノ財政
  ト、百億ヲ突破セントスル財政ノ今日デハ、
  自ラ或ル程度ノ物價ガ騰貴スルコトハ如何
  ナル手段方法ヲ以テサレヤウトモ已ムヲ得
  ナイ、此ノ自然ノ所謂騰貴ヲ無理ニ抑ヘヨ
  ウトスル所ニ非常ニ無理ガ出來テ來テ、業
  者ヲ混亂ノ立場ニ陷レルヤウナ結果ニナル
  ノデアリマス、現ニ業者ニ於キマシテハ、
  是等ノ原料資材ノ暴騰カラ考ヘテ見マスル
  ト、當時ノ所謂「龜甲萬」デアルトカ云フ代
  表的ナ物ノ價格ガ一樽四圓九十錢デ、ソレ
  ガ現在ニ於テモ四圓九十錢デアル、是等ノ
  原料資材ノ騰貴カラ算出スルト、ドウシテ
  モ一樽デ八十八錢値上ヲシテ當然デアル、
  併シ今日サウ無理モ出來ナイカラ、之ヲ五
  十錢乃至五十五錢程度上ゲテ貰ヒタイト云
  フ陳情ヲ致シテ居ルニモ拘ラズ、商工省ノ
  態度ガ斯カルコトデ、業者ハ非常ニ窮地ニ
  陷ツテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ
  私ハ此ノ統制ヲ受ケテ居ナイ是等ノ物價ヲ
  抑ヘルコトガ出來ルカ、卽チ戾ツテ昭和十
  二年ノ六月當時ノ物價ニ引下ゲルコトガ果
  シテ出來得ルカドウカ、若シ出來ナイトス
  レバ、是等事業者ノ立場ヲ考慮シテ、彼等
  ノ陳情ヲ採用スベキモノデアルト思フノデ
  アリマスガ、此ノ點ニ付キマシテ、私ハ特
  ニ商工大臣ノ御意見ヲ承ツテ置キタイト思
  フノデアリマス

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• 033・八田嘉明

  ○八田國務大巨　醤油ノ點ニ付キマシテ、
  其ノ内容ヲ成ス所ノ小麥ノ如キ原料ガ確ニ
  非常ナ騰貴ヲシテ居ル、隨テ醬油其ノモノ
  ノ價格ヲ徒ニ抑ヘルト云フコトハ無理デア
  ルト云フコトヲ御述ニナリマシタノハ、御
  說ノヤウナコトガ慥ニアルト私モ考ヘマ
  ス、隨ヒマシテ先程モ申上ゲマシタガ、只
  今ノ應急對策ト云フモノニハ相當無理ノア
  ルト云フコトハ考へラレマス、ソコデ其ノ
  內容ヲ成ス所ノ原材料等モ今度ハ一ツ檢討
  致シマシテ、其ノ方モ抑ヘテ行クト云フ風
  ニシナケレバナラヌト考ヘテ、只今物價委
  員會等ニ於テモ考究ヲ願ツテ居ルヤウナ次
  第デアリマス、併シナガラサウ致シマシテ
  モ其ノ原材料ノ基ヲナスモノガ又アルト云
  フコトニナツテ、此ノ點ハ理想的ニ行クコ
  トハ非常ニムツカシイト思ヒマス、隨ヒマ
  シテ私ノ者ト致シマシテハ、非常ニ無理ノ
  アルモノハ、是ハ何モ一遍抑ヘタカラト言ツ
  テソレキリノモノヂヤナイト思フノデアリ
  やく、適當ニ考慮スベキモノデアルト考ヘ
  テ居ルノデアリマス、唯是ハ醬油ノ例デア
  リマシタガ、外ニモ澤山サウ云フモノガ出
  テ來ルト思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ
  ハ十分物價委員會トシテハ〓究致スコトハ
  勿論デアリマスガ、商工省トシテモ十分考
  ヘタイト思ツテ居ルノデアリマス、ソレカ
  ラ商工省ノ官吏ガサウ云フ方ニ接觸スル場
  合ニ於テ、非常ニ-何ト申シマスカ、親
  切デナイト云フヤウナ意味ノ御發言ガ今ア
  ツタノデアリマスガ、何レニ致シマシテモ、
  十分斯ウ云フ點ハ今後ニ於テサウ云フコト
  ノナイヤウニ致サナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、其ノ時ノ事情ハ實ハ私ハドウ云フコト
  デアツタカ今知リマセヌガ、併シナガラ何
  レニシテモサウ云フ非難ノナイヤウニ努メ
  ナケレバナラヌコトハ確ニ必要ダト思ヒ
  やく、唯又今ノ例ヲ引ク譯デハアリマセヌ
  ガ、私共ノ聞イテ居ル所デハ又別ノコトモ
  アル、ソレハ商工省デ今日ヤツテ居ルコト
  ハ一ツモ人ニ喜バレルコトハナイノデアリ
  マシテ、皆物價ヲ抑ヘルトカ、物資ヲ
  要求サレテモ、ソレハ物資ガ足ラナイノ
  デアリマスカラ、十要求スレバ三ツ位シ
  カ行カナイノデアリマシテ、ドウシテモ非常
  ニ苦情ガアルノデアリマス、隨ヒマシテ
  其ノコト自體ガ常ニ商工省ヲ訪問スル方
  ニハモウソレダケデ不滿ガ生ジテ居ルト
  云フコトガアリ得ルト思ヒマス、ソレニ
  又一方ニ於テ只今御指摘ニナツタヤウ
  ナコトハナイトハ言ヘマセヌ、兩々相俟
  ツテ互ニ國家ノ爲ニト云フコトデ、私
  所謂官民一致ノ氣持デ行カナケレバナラ
  ヌト考ヘルノデアリマス、商工省ノ官吏
  ノ方ノ立場ニ於キマシテハ、私ハ十分氣ヲ
  付ケルヤウニ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=33

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• 034・服部岩吉

  ○服部委員　物價ノ問題ニ付キマシテハ、
  單ニ一例ヲ擧ゲテ申上ゲタノデアリマスガ、
  酒其ノモノニ付キマシテモ、醬油同樣ニ今
  日ハ原料資材ガ非常ニ不足シテ居ル、斯ウ
  云フ點及ビ其ノ他ノ物品ニ付キマシテモ、總
  テノ相關的ナ關係上物價ガ上ツテ居リマス、
  ソレヲ原料トシテ居リマス物品其ノモノガ
  高價ニ付イテ來ルト云フ事情ニアリマスコ
  トハ大臣御承知ノ通リダト思ヒマス、併シ
  之ヲ合理的ニ抑ヘヨウトスルコトハ極メテ
  至難ナ問題デアラウト思ヒマスノデ、直接
  業者等ニ損失ノ行カナイヤウニ、而モ品物
  ガ低下シナイヤウニスルコトガ一番必要デ
  アル、例ヘバモウ一遍申上ゲマスト、醬油
  ノ如キハ極メテ競爭ガ甚シイモノデアリマ
  シテ、而モ最近ハ民間デ釀造致シテ居リマ
  ス醬油モ相當殖エテ居リマス、今日全國デ
  造ツテ居リマス酷ト云フモノハ約四百万石
  デアル、之ヲ眞ノ醬油ニ精製致シマス場合
  ニ於キマシテ二百四五十万石、之ヲ更ニ後
  ノ搾ツタ粕ヲ再製シテヤリマスレバ、或ハ
  ソレカラ相當ノ製品ヲ得マスガ、是等ハ殆
  ドモウ醬油トシテ一本立ノ出來ナイモノデ、
  謂ハバ割水ニ使フ程度ノモノデアリマス、
  隨テ此ノ四百万石ノ酷カラ得タ所ノ醬油二
  百四五十五万石ノ中本當ニ其ノ儘デ國民ニ
  使ハレテ居ルモノガ百万石、後ノ百四五十万
  石程度ノ醬油ハ色々割水ヲサレ、加工サレ
  テ是ガ全國民ニ消費サレテ居ル、而モ最近
  ハ御承知ノ通リ「アミノ」酸ト云フモノヲ盛
  ンニ利用致シマシテ、廉價ノ醬油ヲ原價ヲ
  超エテ賣ルト云フヤウナ競爭場裡ニ立ツテ
  居ル、此ノ「アミノ」酸ガ衞生上有害デアル
  ト云フコトハ、是ハ一般ノ通論デアリマス、
  餘リニ無理ニ價格ヲ抑ヘマスト、自然ニ品
  質ガ、サウ云フ「アミノ」酸ヲ入レルトカ、或
  ハ割水ノ程度ガ强クナルトカ、或ハ割水ヲ
  多クスレバ品質ガ稀薄ニナルカラソコニ他
  ノ「エキス」分ヲ加ヘルト云フコトニナリマ
  シテ、結局是ガ品質ノ低下トナリ、ソレガ衞
  生ノ上ニ非常ナ影響ヲ及ボシテ來ルト云フ
  虞モ多分ニアルノデアリマスカラ、ドウカ
  物價ヲ公定サレル場合ニ於キマシテハ、有
  ユル品物ニ付テ十二分ノ注意ヲサレテ、出
  來ルダケ無理ヲ除クト云フ態度ニ出ラレン
  コトヲ私ハ特ニ御願ヲ致シテ置ク次第デア
  リマス、大體物價ニ對スル質問ハ是ダケデ
  ゴザイマス、其ノ他色々ノ資料モゴザイマ
  スガ、是等ハ何レ商工省方面ニモ當業者ノ
  組合或ハ其ノ他ノ關係ノ組合カラ資料ヲ出
  サレルモノト思ヒマスシ、商工省モ是等ノ
  資料ヲ蒐集サレルト思ヒマスカラ、相對照
  サレマシテ、特ニ此ノ物價ノ問題ニ付キマ
  シテハ十分深甚ノ御注意ヲ願ヒタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=34

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• 035・川崎克

  ○川崎委員長　ソレデハ是デ休憩致シマシ
  テ午後ハ一時半カラ開會致シマス
  午後零時十六分休憩
  午後一時四十六分開議

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• 036・川崎克

  ○川崎委員長　開會致シマス

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• 037・愛野時一郎

  ○愛野委員　私ノ質問ハ極ク簡單デアリマ
  スカラ、御答辯ノ方モ簡單ニ御願致シマス、
  私ハ斯ウ云フコトヲ考へテ居リマス、地租
  ヲ累進課稅スレバ、今日農村デ問題ニナツ
  テ居リマス自作農設定、其ノ他或ハ極メテ
  不生產的ナ不在地主ニ對スル政策ト云ツタ
  モノガ確立サレルト思フノデアリマスガ、大
  藏當局ト致シマシテハ、地租ニ對スル累進
  課稅ノ如キモノハドウ云フ風ニ考ヘラレテ
  居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=37

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• 038・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　現行法ノ下ニ於キマシテ
  干、自作農ニ付キマシテハ、或ル範圍內ノ
  モノハ國稅ヲ免稅致シテ居リマス、ソレカ
  ラ大地主ニ對シテ累進課稅ヲ致スト云フコ
  トハ一ツノ御考ヘデハゴザイマスケレド
  モ、實ハ地租ノ帳簿ハ各町村役場每ニ之ヲ
  備へ付ケテ居ルト云フヤウナ狀況デアリマ
  シテ、一人別ニ其ノ收入反別ヲ全部集積
  シテ見ルト云フコトハ餘程困難カト存ジマ
  ス、課稅技術上ノ困難ガ一ツアルノト、ソ
  レカラ累進課稅ハ所得稅デ相當高度ノ累進
  課稅ニナツテ居リマスカラ、更ニ地租ニ於
  テ累進課稅ヲスルノハ多少行過ギノ嫌ヒガ
  アルノデハナカラウカト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=38

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• 039・愛野時一郎

  ○愛野委員　行過ギト云フ點ハ考ヘラレル
  カモ知レマセヌケレドモ、現在ノ如ク極メ
  テ自作農ヲ急速ニ設定スル必要アル場合等
  ニ於テハ、特ニ此ノ點ハ考ヘテ然ルベキ點
  ダト私ハ思ツテ居ルノデアリマス、此ノ點
  ハ尙ホ是以上ハ議論ニ亙リマスカラ御質問
  申上ゲマセヌ、更ニ私ハ死藏セル財產ト申
  シマスカ、蓄積ト申シマスカ、例ヘバ書畫
  骨董ノ如キモノヲ唯何モシナクテ溜メテ喜
  ンデ居ルヤウナ者ニ對スル課稅方法等ヲ〓
  究サレタコトガアリマスガ、ドウカ伺ヒタ
  イ

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• 040・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　此ノ點ニ付キマシテモ相
  當考究致シテハ居リマスケレドモ、實際ノ課
  稅ニ當リマシテ評價ガ中々困難デハナカラ
  ウカト存ジマス、隨ヒマシテ今直チニ之ヲ
  實施スルト云フマデノ決心ガ付キ兼ネルノ
  デゴザイマス

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• 041・愛野時一郎

  ○愛野委員　鐵道省デ省營「バス」ヲヤツ
  テ、其ノ爲ニ營業者ニ補償金ヲ出シテ居ル、
  ソレニハ所謂營業ヲ廢メルノデアルカラ補
  償金ト云フモノニ對シテハ稅金ヲ課ケルコ
  トハ私ハ不適當ダト思フノデアリマスガ、
  此ノ間一寸或ル委員會デ當局ノ說明ニ依リ
  マスト、路線ガ一部分殘ツタ場合ハ仕方ガ
  ナイト言ツタヤウナ御話デゴザイマシタ
  ガ、是ハ路線ガ殘ルト云フノガ路線ノ性質
  上至當デアラウト思フ、此ノ點ニ付テハド
  ウ云フ風ニ御考デゴザイマスカ

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• 042・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　個人ニ付キマシテハ財產
  ノ賣却ト云フモノハ一時ノ所得トシテ、斯
  ウ云フモノニ對シテハ營業收益稅ノ如キハ
  課稅致サナイノデゴザイマスガ、法人ニ付
  キマシテハ總テ其ノ法人ノ收入ニ歸スルモ
  ノハ益金ト見ル、法人カラ支出スルモノハ
  損ト見ル、斯ウ云フ建前ニナツテ居リマス
  關係上、財產ノ處分ニ依ル收入ト云フヤウ
  ナモノモ收入ノ中ニ計算セラレルノデアリ
  マス、ソレデ省營「バス」ノ關係上鐵道省カ
  ラ補償セラルル補償金モ、法人ニ於テハ益
  金ト見ザルヲ得ナイノデゴザイマシテ、是
  ハ個人經營ノ路線ガ後ニ殘ル場合モ殘ラヌ
  場合モ同ジ結果ニナルモノデアリマス

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• 043・愛野時一郎

  ○愛野委員　此ノ問題ハ是デ質問ヲ打切リ
  マシテ、地方ト都市トノ稅ノ負擔ノ均衡ト
  云フ意味カラ、又今度ノ稅制ヲ見マシテ
  モ、遊興稅ノ如キ相當ナ稅金額ガ地方デハ
  財源ガナクサレテ居ル關係デ、是ハ極メテ
  重要ナ問題ト思ヒマス、モウ既ニ追加豫算
  案モ提出サレシトスルヤウナ時期デアリマ
  スガ、財政交付金ト云フ如キモノモ、大體
  大藏省デモ御決マリノコトト思ヒマスガ、
  ソレニ付テ御發表出來レバ御願シタイト思
  ツテ居リマス

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• 044・矢野庄太郎

  ○矢野政府委員　一億三千万圓ハ御承知ノ
  通リ既ニ豫算ニ計上シテ協賛ヲ經ダノデア
  リマス、今御尋ノ分ニ付テハマダ少シ金額
  ニ決ラヌ所ガアリマスノデ、今日發表スル
  コトヲ一寸控ヘタイト思ヒマス-但シ遊
  興稅關係ノモノナラバ金額ヲ決メテ居リマ
  ス、是ハ千八百万圓デゴザイマス

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• 045・森肇

  ○森委員　一寸關聯デス、問題ハ今御答ニ
  ナツタ千八百万圓デハナク、モウ一ツ考ヘ
  ラレテ居ツタト思フノデスガ、其ノ方ハ今
  御交涉中ナンデスカ

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• 046・矢野庄太郎

  ○矢野政府委員　御尋ノ點ハ今申上ゲル通
  リ、此處デ今申上ゲルコトヲ差控ヘタイト
  思ヒマス

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• 047・愛野時一郎

  ○愛野委員　今申サレナイト仰シヤル分
  ハ、交付金デオヤリニナルノデゴザイマス
  ネ、其ノ點ヲ承リタイ

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• 048・矢野庄太郎

  ○矢野政府委員　其ノ點モマダハツキリ致
  シテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=48

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• 049・愛野時一郎

  ○愛野委員　私ハ是デ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=49

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• 050・服部岩吉

  ○服部委員　議事進行ニ付テ·······大藏大臣
  ハドウシテモオ見エニナラヌノデスカ

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• 051・川崎克

  ○川崎委員長　大藏大臣ハドウシテモ都合
  ガ付カヌノデス、ソレデ愛野君ニモ御辛抱
  願ツテ、今御聽キノヤウナ工合デ議事ヲ進
  メテ戴イタ譯デス-交付金ノ問題デ、
  寸速記ヲ止メテ伺ヒマス
  〔速記中止〕

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• 052・川崎克

  ○川崎委員長　速記ヲ始メテ

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• 053・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　私ハ極ク手短カニ二三ノ點ダ
  ケ御伺シタイト思ヒマス、先程モ御話ガア
  ツタサウデアリマスルケレドモ、今マデ砂
  糖ト同ジク飴ノ稅金ヲ考ヘラレテ居リマシ
  タコトガ幾度モアツタヤウデアリマスケレ
  ドモ、、今マデハ御取立ニナリマセヌ、今
  度飴ノ稅金ガ課カツテ居リマスケレドモ、
  只今飴ノコトニ付テ考ヘマスト、製飴業者
  ト云フモノハ其ノ原料ヲ無水「アルコール」
  ノ方ニ取ラレマスシ、又碎米ハ外國カラ輪
  入ガ出來ナイト云フヤウナコトト共ニ非常
  ニ經營困難ニナツテ、而シテ一面ニ於テ値
  上スルコトガ困難デ、此ノ營業モ非常ニ苦
  シイ立場ニナツテ居ルト思ヒマス、ソレカ
  ラ又砂糖トノ値段ノ差ハ相當アルト云フ御
  話デアリマスケレドモ、此ノ稅金ニ依ツテ
  段々砂糖ノ値段ニ近寄ツテ參リマスト、之
  ヲ使ヒマス製品、子供ノ最モ好ミ、殆ド必需
  品ノヤウニナツテ居ル「キヤラメル」ノヤウ
  ナモノノ原料ヲ失フコトニナリマス、諄ク
  ハ申上ゲマセヌケレドモ、晒飴又並飴ニ付
  テモ、砂糖ノ稅金ニ色々アルヤウナ等差ヲ
  設ケラレルト云フ御考ハアリマセヌカ、之
  ヲ御伺致シマス

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• 054・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　飴ノ課稅ニ付テノ御尋デ
  ゴザイマスガ、是ハ大分前カラ問題ニナツ
  テ居タノデゴザイマス、最近ノ情勢カラ見
  マシテモ年々其ノ生產額モ增加シテ參リマ
  シテ、又價格ノ點ニ於キマシテモ相當値段
  ガ高クナツテ來テ居ルヤウデゴザイマス、
  勿論今御話ノアリマシタ通リ原料モ騰ツテ
  居リマスケレドモ、製品ノ價格モ亦ソレニ
  付イテ相當高クナツテ來テ居ルト云フヤウ
  ナ狀況デゴザイマス、ソレデ此ノ大部分ハ
  菓子ニ使ハレルノデアリマスガ、用途カラ
  云ヒマスト現在ノ砂糖ノ第二種糖ト似タヤ
  ウナモノデアリマシテ、二種糖ニ對シマシ
  テハ相當高率ノ稅ニナツテ居リマスノデ、
  此ノ際ト致シマシテ二圓程度ノ課稅ヲスル
  ノハ、寧ロ幾ラカ低イ位デハナカラウカト
  云フ感ジガ致シマスルガ、從來無稅デアツ
  タモノニ對シテ此ノ度新シク課稅スル關係
  上、先ヅ此ノ程度ニ止メタイ、斯ウ存ジタ
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=54

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• 055・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　此ノ飴ノ生產額ガ殖エテ參リ
  マシタノハ、儲カツテ飴ノ生產額ガ殖エテ
  行クト云フコトデナイト私ハ信ジテ居リマ
  ス、ソレハ在來ノ方法ヲ以テ致シマスレバ
  經營困難デアリマスカラ、非常ニ工場ノ整
  備ヲ致シマシテ、整備ヲ致シマスト共ニ、
  其ノ能率ヲ上ゲナケレバ相當ノ利潤ヲ得ラ
  レマセヌ結果、此ノ生產額ガ增シテ居ルノ
  デアルト云フコトヲ信ズルト共ニ、又只今
  御話ノアツタ通リニ、是ハ本當ニ、殊ニ大都
  市ナドニ於キマシテノ「キヤラメル」ナドノ
  需要ト云フ點、又海外發展ノ上カラ見マシテ
  モ、又原料騰貴ノ上カラ見マシテモ、ドウ
  カ私ハ此ノ飴ノ稅金ニ付テハ是非色著ト、
  晒トニ依ツテ等差ヲ設ケラレルコトヲ切望
  スルト共ニ、又飴ノ稅金二圓ト云フノハ最
  低ノ御考ヲ以テナサレタトハ信ジテ居リマ
  スケレドモ、元來無稅ノモノデアリマシテ、小
  國民ヲ相手ニ致スノガ多イノデアリマスル
  カラ、是等ハ私ハ少クトモ現在御決メニナ
  ツタ半分ノ一圓位ガ至當デハナカラウカト
  考ヘテ居リマスケレドモ、是ハ押問答ニナ
  リマスカラ、討論其ノ他ノ場合ニ讓リマシ
  テ、私ノ意ノ在ル所ヲ申述ベテ御考慮ヲ戴ク
  コトヲ申上ゲテ此ノ點ハ打切ツテ置キマス

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• 056・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　麥芽飴澱粉飴等ニ差等ヲ
  設ケタラドウカト云フ御尋デアリマス、
  應御尤ナ點モアリマスケレドモ、實ハ同一
  ノ工場デ相當大規模ニ致シマシテ、兩者ヲ
  兼營シ居ルノモアルノデゴザイマシテ、是
  等ノ工場ニ付テ見マスルト、兩者ヲ區分ス
  ル理由ハ至ツテ乏シイノデゴザイマス、極
  ク小規模ノ工場デ麥芽飴ヲ在來ノ方式ニ依
  ツテ造ツテ居ルモノニ付キマシテハ、御話
  ノヤウナ所モ確ニアルノデゴザイマスケレ
  ドモ、昨今十六七圓、乃至十七八圓ノ値段
  ハシテ居ルノデゴザイマスカラシテ、第二
  種ノ砂糖トノ課稅カラ見マシテモ、課稅ノ
  程度ガ低イカラシテ、此ノ程度ノ課稅ナラ
  バ麥芽飴ト澱粉飴トニ差等ヲ設ケナクテモ
  宜イデハナカラウカト、斯ウ存ジテ居ル次
  第デゴザイマス

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• 057・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　只今ノ御話ハ是レ以上申上ゲ
  マスルト唯考方ノ違ヒニナリマスガ、私共
  モウ少シ安クシテ戴キタイト云フコトヲ申
  上ゲテ置キマシテ、次ニ斯ウ云フコトヲ御
  伺シテ見タイノデアリマス、只今賣藥ニハ
  稅金ガ課ツテ居ラヌ、ソコデ今囘齒磨竝ニ
  石鹼ノ洗濯用ヲ除イテ稅金ヲ御課ケニナル
  コトニナツテ居リマスルケレドモ、私ハ此
  石鹸ト云ヒ、齒磨ト云ヒ、私ハ齒磨ハ口腔
  ノ〓潔劑消毒劑ト云フ考ヲ衞生的カラ持ツ
  テ居リマス、又普通一個十五錢ヤ二十錢ノ
  石鹼ハ恐ラク昇汞デ手ヲ消毒致シマスルヨ
  リモ先ヅ第一ニ石鹸デ洗ツテ消毒ノ前提ヲ
  致シテ使用致ス、又日常吾々ノ工場ノ如キ
  デ使ヒマス場合ニモ、本當ニ體ヲ〓潔ニスル
  爲ニハ十分ニ石鹼ヲ使ハナケレバナラナイ
  ノデアリマシテ、賣藥ニナレバ是ガ稅金ヲ
  免除サレテ、サウシテ賣藥デナイ爲ニ消毒
  藥ノ一助トナルベキ、口腔消毒、〓潔ノ
  助トナルベキ齒磨ニ稅金ヲ課ケラレ、石鹼
  ニ稅金ヲ課ケラレルコトハ、少シ當ヲ得ナ
  イヤウナ感ジヲ持ツテ居リマスガ、是等ノ
  モノニ向ツテハ免稅サレルヤウナ御意思ガ
  ナイデアリマセウカト云フコトヲ御伺致シ
  マス

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• 058・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　化粧用石鹸ニ付キマシテ
  モ、消毒ノ效果ガアルト云フコトハ私共モ
  認メテ居ル次第デゴザイマスガ、先ヅ主ト
  シテ身體ノ〓淨用ニ供スルモノデハナカラ
  ウカト存ジテ居リマス、前囘ニモ申上ゲマ
  シタ如ク、賣藥ノ中ニモ實ハ此ノ度物品稅
  ニ取入レル品目ト比較シテ相當課稅シテ宜
  イノデハナカラウカト思ハレルモノモアリ
  マスケレドモ、賣藥ハ御承知ノ通リ、其ノ
  種類モ多クアリマシテ、此ノ中課稅品ト非
  課稅品トニ分ケルト云フ點ニ付キマテシハ、
  尙ホ十分練ツテ見ナケレバナラヌ、今直チ
  ニ施行スルト云フマデニ準備ガ出來テ居リ
  マセヌノデ、此ノ度ハ賣藥ニ對スル物品稅
  ノ課稅ト云フモノハ見合セタ次第デアリマ
  ス

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• 059・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　是モ是カラ重複シテ申上ゲル
  ト議論ニナリマスガ、私ハ此ノ賣藥ト同ジ
  ヤウニ石鹸ノ安イモノ、齒磨ニ於キマシテ
  ハ消毒藥ト同一ノ御取扱ニ御考ニナル方ガ
  國民保健衞生ノ上ニ付テ私ハ非常ニ重要ナ
  コトダト思ツテ居リマス、厚生省ノ方デハ
  保健ノコトニ關シテハ多大ナル金ヲ使ツテ
  國民保健衞生ノ上ニ考慮ヲシテ居ル場合デ
  アリマスカラ、斯ウ云フ場合ニ於キマシテ
  ハ、保健衞生ノ助ケトナルモノニ付テハ特
  ニ考慮セラレルコトガ至當デハアリマセヌカ
  ト云フコトヲ私ハ申上ゲテ御考慮ヲ煩ハシ
  マイ、ソレカラ只今賣藥ノ中デモ稅金ヲ取
  ルモノト取ラナイモノトヲ考ヘル、ソレガ
  爲ニ今囘ハ賣藥ノ中カラハ稅金ヲ取ラナイ
  ヤウニシタト云フ御話ガアリマシタカラ、
  私ハ續イテ申上ゲマスガ、賣藥稅ハ長イ間
  取ツテ居リマシテ、私ハツキリ存ジマセヌ
  ガ、賣藥稅ヲ廢止シタ時ハ約二千万圓位ノ
  收入ガアツタト承知シテ居リマス、今日賣
  藥ト同ジ、消毒藥ト同ジ齒磨若クハ石鹼カ
  ラ稅金ヲ御取リニナルト云フ御考ナラバ、玆
  ニ賣藥稅ヲ復活シテ御取リニナルト云フコ
  トガ、寧ロ零細ナル齒磨ナドカラ取ラレル
  ヨリモ、稅ノ性質トシテ、一タビ取ツテ居
  タモノデアルカラ私ハ非常ニ宜イ財源デモ
  アルシ、又一般他ノ物品ト比較致シマシテ、
  極メテ適切ナルモノダト思フノデアリマス、
  恐ラクハ今日賣藥稅ヲ御取リニナリマシタ
  ラ私ノ推測ニ依リマスレバ三千万圓ノ收入
  ハアルト私ハ承知シテ居リマス、然ルニ賣
  藥ト同ジヤウナ性質ノモノノ僅カナモノヲ
  御取リニナツテ、之ヲ見逃サレルト云フヤ
  ウナコトハドウ云フ御考デアリマセウカ、
  御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=59

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• 060・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　齒磨ニ對シマシテモ、
  般大衆ノ使用スルト認メラレル粉齒磨ハ課
  稅ノ範圍外ニ置キマシタ、隨テ大體齒磨ト
  シテ消費セラルルモノノ價額ニ於テ約半分
  程ハ課稅外ニ置カレルト存ジマス、石
  鹼ニ付キマシテモ、ノ洗濯石鹼、工業用
  石鹼ノ如キハ課稅外ニ置キマシテ、香料
  ノ入ツテ居ルノヲ普通トスル化粧用石鹼ノ
  ミニ致シマシタ關係上、是亦大體石鹸
  ノ半額程度ハ課稅外ニ置カレルモノト存
  ジマス、ソレデ全クノ實用品トカ、一般大衆
  ノ使用スル物ハ出來ルダケ課稅外ニ置キタ
  イ、斯ウ存ジテ居リマス、賣藥ニ付キマシ
  テハ御話ノ通リ以前賣藥印紙稅ガアリマシ
  テ、販賣定價ノ一割ニ對シテ課稅シテ居タ
  ノデアリマスルガ、十數年前是ハ廢止セラ
  レマシタ、此ノ度此ノ事變下ノ增稅ノ對象
  トシテ賣藥稅ヲ復活シ、元ノ如ク定價ニ對
  シテ一割ノ課稅ラシタナラバ、今御話ノヤ
  ウニ或ハ二、三千万圓程度入ルカトモ存ジマ
  スケレドモ、併シ賣藥ニ對シテ印紙デ以テ
  課稅スルト云フノハ、富山縣奈良縣ノ地方
  ノ如キ配置賣藥ヲ主トシテ居ル者ニ對シテ
  ハ、非常ニ苦痛ヲ與ヘル、殆ド此ノ賣藥ニ
  携ツテ居ル製造業者ヲシテ破產ニ瀕セシム
  ル虞ガアルト云フコトデゴザイマシタ、是
  ハ實情調査ヲ致シマシテ、全クサウ云フ點
  モアリマスノデ、元ノヤウナ印紙稅ノ課稅
  ハ此ノ際トシテハ致スベキデハナイト存ジ
  マス、隨テ普通ノ所謂物品稅ノ如キ課稅方
  法ニ依リマスト、從價一割ト致シマシテモ、
  一千万圓程度ノ收入ニ止マルノデハナカラ
  ウカト存ジテ居リマス、尙ホ賣藥ノ中ニハ、
  先程申上ゲタ富山地方ノ配置賣藥ノ如キ、
  或ハ熊ノ膽ト云フ風ナ藥、腹下リノ藥、或
  ハ風ノ際ノ藥ト云フヤウナモノハ、極ク僻
  陬ノ農村等ニ於テ使用セラルルノデゴザイ
  マシテ、斯ウ云フ物ニ對シテ此ノ際課稅ス
  ルノハ如何デアラウカ、斯ウ云フ點ヲ考慮
  致シマシテ、實ハ今囘ハ賣藥稅ハ見合ハシ
  タ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=60

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• 061・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　富山地方ノ製藥業者ガ破產ヲ
  スルカ知レナイト云フ御想像ノ下ニ賣藥稅
  ヲ考慮ノ外ニ置カレタ、サウ致サレマスト、
  總テ此ノ稅金ノ影響ヲ受ケル者ハ只今ノ飴
  ノ業者ノ如キモヤハリ同一ノ打撃ヲ受ケマ
  ス、其ノコトハ同ジコトデス、然ルニ片方
  ノ方ハサウ云フコトノ御考慮ガナク、片方
  ノ製造業者ニ向ツテノミ此ノ稅ガアルト云
  フコトハ、甚ダシク考へ方ガ片手落チニナ
  ルヤウナ考ヲ私ハ致スノデアリマス、殊ト
  賣藥稅ト同ジ時代ニ廢止ニナリマシタ所ノ
  交通稅ト云フモノハ復活サレマシタ、斯ウ
  云フ場合ニ於キマシテハ、尙ホ御徵リニナ
  ルコトガ私ハ適當ダラウト思フ、ソレカラ
  尙ホ私共ガ進ンデ大乘的考カラ行キマスレ
  バ、私ハ此ノ印紙稅ヲ徵ルト云フコトガ、
  非常ニ賣藥業者ノ爲ニ宜イト思フ、ナゼ賣
  藥業者ノ爲ニ宜イカト言フト、今日ノ富山
  地方ノ賣藥ハ、日本內地バカリデハアリマ
  セヌデ、支那ヤ滿洲ニ出ル藥ト云フモノハ、
  私ドノ位アルカ存ジマセヌガ、頗ル莫大ナ
  金額ニ上ツテ居ル筈デアリマス、是ハ御調
  査ガアリマセウガ、海外殊ニ支那ニ出ル時
  分ニ、賣藥ニ日本政府ノ印紙ガ貼ツテアル
  ト、此ノ賣藥ハ非常ナ權威ノアルモノニナ
  ツテ、日本政府ノ保證シテ居ル藥ダカラト
  云フノデ、買手ガ非常ニ安心ヲシテ之ヲ服
  用致シマシテ、其ノ販路ハ益〓擴大サレル
  ト私ハ斯樣ニ信ジテ居ツテ、之ガ爲ニ富山
  ノ業者ガ潰レルト云フヤウナコトハ絕對ニ
  ナイト私ハ信ズル、輸出ハドノ位アルカ
  私ハ存ジマセヌ、御調下サレバ分ルト思ヒ
  さい、ソレカラ又賣藥業者ガ一體前ニ印紙
  稅ヲ廢メタトキニハ需要家ニ何ト言ウテ賣
  藥稅ニ對スル保證ヲ致シマシタ、政府ニ
  申ス所ハ、藥ノ目方ヲ餘分ニ入レテ置イタ
  ト、言ツテ十錢ノ藥ハ九錢ニシマセヌデシ
  〃、一圓ノ藥ハ九十錢ニシマセヌデシタ、
  其ノ賣藥稅ト云フモノハ、全部藥屋ノ手ニ
  入リマシタ、サウシテ其ノ言フ所ハ藥ノ量
  ヲソレダケ殖シマスカラ、ソレデ滿足シテ
  貰ヒタイト云フコトヲ言ヒマシタ、其ノ後
  富山ノ藥ヲ私共買ツテ居リマスケレドモ、
  一服ノ風藥ハヤハリ一服デス、サウシテ效
  果ハヤハリ同ジコトデス、其ノ中ニ量ガ多
  ク入ツテ居ラナイ、サウスルト唯當業者ハ稅
  金ヲ儲ケタト云フ形ニ一面ニ於テハナツテ
  居ル、此ノ藥ノ量ノ監督ハ爲サレテ居リマスカ、
  絕對爲サレテ居ラナイト云フコトヲ私ハ申上
  ゲマス、斯樣ナ風ニナツテ來テ居ルシ、小サク
  言ヘバ、斯樣ニシテ稅金ダケハ當業者ガ全部
  取ツテ居ルヤウナコトニナツテ居ル、交通
  稅ノ廢止サレタトキニハ、交通稅ハ全部オ
  客ノ懷ロニ入ツテシマツテ政府ヘハ入リマ
  セヌ、賣藥稅ハ廢止セラレマシテモ、其ノ
  賣藥稅ハ全部當業者ノ手ニ入ツテ居リマス、
  何處ヘモ行ツテ居リマセヌ、交通稅ト尙ホ
  違ヒマス、然ルニ一方ニ於テハ交通稅ハ徵
  ラレルガ、賣藥稅ハ御徵リニナラナイ、私
  ハ甚ダ其ノ點ハ意ニ滿タナイコトデアル
  シ、實際アナタ方ガ大乘的ノ見地カラ御考
  ニナツテ、滿洲支那ニ此ノ藥ヲ輸出スルト
  キニ於テハ、日本政府印紙ト云フノガ貼ツ
  テアルトキニ於テ、非常ニ土民ノ信用ヲ得
  ルノデス、私共ハ嘗テ日露戰爭ノ時ニ行ツテ
  居リマシタガ、吾々兵隊ガ藥ヲ持ツテ行ツ
  テヤツテモ信用シマセヌガ、赤十字ノ徽章
  ヲ假ニ著ケテ持ツテ行ツタ藥ヲ飮マセルト、
  非常ニ喜ンデ、病氣ガ癒ツタト言ツテ來ル
  ヤウナモノデ、藥ナドト云フヤウナモノハ
  一ツノ信念信用デアリマスカラ、日本政府
  ノ印紙ガ貼ツテアツタナラバ、賣藥ハ今ノ
  倍ハ輸出出來ルト私ハ確信シテ居リマス、
  其ノ點カラモ私ハドウシテモ此ノ賣藥稅ノ
  設定ト云フコトガ必要ト思フ、吾々顧客ニ
  對シテモ賣藥業者ハ全クソレダケノ數量ヲ
  入レテ居ラヌ、ダカラ只取リシテ居ルカ
  ラ、今ノ賣藥業者ハ儲ツテ居ルト信ジマス、
  是カラ御徵リニナラナケレバ駄目デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=61

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• 062・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　私先程賣藥稅ヲ復活シテ
  印紙ヲ貼用セシムルコトニスルト、富山地
  方ノ配置賣藥ニ關係シテ居ル業者デ、殆ド
  破產ニ瀕スルヤウナ者モ相當出テ來ルト云
  フコトヲ申上ゲタノデアリマスルガ、御承
  知ノ通リ配置賣藥ト云フノハ、行商ニ行ツ
  テ地方ノ農村ニ入リ、各戶ニ賣藥ヲ配置シ
  テ、翌年、滿一年位經ツテカラ行ツテ、實
  際使用ノ狀況ヲ見テ、代金ヲ囘收シテ來ル、
  斯ウ云フ風ナ狀況ニナツテ居リマス、然ル
  ニ印紙ヲ貼用セシムルト、製造場ヲ出ル場合
  旣ニ印紙ヲ貼用シナケレバナラヌ、現金ガ
  入ツテ來ルノハ一年以上先ニナル、斯ウ云
  フ風ナ結果ニナリマスノデ、今直チニ印紙
  ヲ貼用スルト云フコトハ、非常ニ苦痛ニナ
  ル、殊ニ富山地方ノ賣藥ノ如キハ、原料製
  造費ヨリモ、寧ロ行商ノ費用ト云フモノガ
  多分ニ含マレテ居ルノデアリマス、隨ヒマ
  シテ販賣定價ノ一割ノ稅ヲ、製造場カラ引
  取ル場合ニ直チニ印紙デ以テ收メサセルト
  云フノハ、全タ苦痛ダト思フノデアリマス、
  此ノ點ハ瀧澤サンノ御言葉デハゴザイマス
  ガ、私ハ賣藥稅ヲ若シモ復活スルト致シマ
  シテモ、印紙貼用ノ方法ニ依ルト云フノハ、
  富山地方、或ハ奈良、滋賀地方ノ賣藥業
  ニ携ツテ居ル者ニ對シテハ、相當考慮ヲ要
  スルモノデハナカラウカト存ジテ居リマス、
  ソレカラ輸出ニ付テノコトデゴザイマスガ、
  御承知ノ通リ織物消費稅ニ於キマシテモ、
  酒造稅ニ於キマシテモ、各種ノ消費稅ノ課
  稅物件ヲ輸出スル場合ニハ、免稅シテ、海
  外販路擴張ニ資スルヤウニシテ居リマス、
  隨ヒマシテ賣藥ニ付キマシテモ、內地デ課
  稅ヲスルカラ輸出ノモノモ課稅シナケレバ
  ナラヌト云フ風ニ考ヘルノモドウカト存ズ
  ルノデゴザイマシテ、輸出ニ對シテマデモ
  課稅スルト、ソレダケ「コスト」高ニナリ、
  販路擴張ニ支障ヲ來スノデハナカラウカト
  存ジマス、ソレカラ印紙ヲ貼用スレバ政府
  ノ信用ガ裏付ケラレル、隨テ海外デ信用ヲ
  博ス、是ハ一應考ヘラレマスケレドモ、若
  シモ粗惡品ヲ輸出シテ、ソレガ海外ニ於テ
  聲價ヲ失墜スル原因ニナルナラ、現在絹織
  物其ノ他ニ於キマシテ、ソレ〓〓適切ナル
  檢査方法ヲ施シテ、合格品ノミ出スト云フ
  方法ニ依ツテ居リマスカラ、サウ云フヤウ
  ナ方法ニ依リ、其ノ合格品ニ對シテ或ル一
  定ノ印ヲ付ケテ出スト云フノモ、一ツノ方
  法カト存ジマス、ソレデ大日本帝國ガ之ヲ
  認メタト云フコトガ是非必要ナラバ、ソレ
  デモ宜カ』ラウト思ヒマス、必ズ印紙ヲ
  貼用シナケレバナラヌト云フ風ニハ、
  實ハ考ヘタクナイト存ジマス、通行稅ニ付
  テノ御話ガゴザイマシタ、通行稅ハ事變下
  ニ於テ復活ハ致シマシタケレドモ、以前ト
  違ヒマシテ、極ク短距離ノ三等旅客ニ對シ
  テハ課稅致シマセヌ、元ノ通行稅ノ場合ハ
  近距離ノ三等旅客、或ハ日通ヒノ電車ノ往
  復ノ乘客ニ對スル課稅ガ、大體全收入ノ六
  七割ヲ占メテ居ツタノデアリマスガ、此ノ
  度ハ是ハ總テ課稅外ニ置クト云フコトニ致
  シマシタ、隨テ通行稅ト申シマシテモ、內
  容ガ變化シテ來テ居リマス、尙ホ以前ニア
  ツタ稅種ダカラ復活シテモ宜イヂヤナイ
  カ、是ハヤハリ文化ノ程度、經濟界ノ發展
  ノ狀況等ヲ見テ、考フベキデハナカラウト
  存ジマス、日露戰爭當時ニ於キマシテハ、
  地租ガ一番重ク增徵セラレマシタガ、今囘
  ノ事變下ニ於テハ土地ニ對シテハ增徵ヲ致
  シテ居リマセヌ、ソレカラ以前ハ醬油ニ對
  シテモ課稅シテ居タノデアリマスガ、今日
  ハ是ハ生活ノ必需品デアルカラ、課稅スベ
  キデハナイト云フ意味ヲ以チマシテ、事變
  下ニ於テモ復活ハ致シテ居ナイノデゴザイ
  マス、左樣デゴザイマシテ、以前ノ事變下
  ニ於テ增徵シテ居タ、或ハ長イ間施行シタ
  稅デアルカラシテ、今日ノ非常時下ニ於テ
  モヤハリ之ヲ復活スベキデハナカラウカト
  云フノモ、一應ノ御意見デハゴザイマスル
  ガ、私共ハ稅ノ內容、國民負擔ノ狀況等ヲ
  2
  能ク調査シテ、現下ノ實情ニ卽シタ課稅方
  法ヲ、採ツテ行カナケレバナラヌモノト考
  ヘテ居ル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=62

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• 063・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　只今御親切ナ御答辯ヲ戴キマ
  シタガ、ソコデ私ガ考ヘマスノニ、只今御
  話ノアツタ通リ、印紙稅トシテ取ルノハド
  ウカ、斯ウ云フ御話デアリマスケレドモ、
  私共ハ印紙稅ガ無クナツタ時以來、吾々此
  ノ藥ヲ飮ム者ハ、其ノ印紙稅ガ無クナツタ
  ダケ、安クナツテ居ラヌト云フコトハ事實
  デアリマス、サウスルトソレ等ガ特ニ業者
  ノ手ニ入ツテ居ルト私ハ思フノデアリマス、
  ソレカラ海外へ輸出スル場合ニハ稅ヲ免除
  シテ、サウシテ海外へ發展セシムルカラ、
  ソレカラ印紙稅ヲ取ルト云フコトハドウカ
  ト云フ御話ガアリマシタ、勿論是ハ其ノ時
  ニ印紙ヲ貼ツタモノガ免除サレレバソレデ宜
  イ、其ノ手續ヲ履ミサヘスレバ宜イ筈デア
  リマス、サウシテ只今業者ノ爲ニ非常ニ御
  同情ノアル御扱方ヲ伺ヒマシテ、稅ヲ取立
  テル方ト致シマシテハ、總テ國民全體ノ上ニ
  斯樣ナ御考ヲ持ツテ戴キタイト思フコトヲ
  私ハ申上ゲル、只今一部ノ人ニ對スル其ノ
  御心持ヲ、全體ノ徵稅ノ上ニ及ボシテ貰ヒ
  タイト云フコトヲ此處デ强ク申上ゲテ置キ
  マス、私ハ是非今日賣藥稅ヲ取ラネバナラ
  ヌトハ申上ゲマセヌ、併シナガラ賣藥稅ハ
  取ル根據ガ相當アルト信ズル、賣藥ハ一般
  國民ノ中流以下、下流ノ、先程御話ニアリ
  マシタ地方山村、漁村、農村ヲ對照ニシテ
  居ラレマスシ、東京市內ニ於キマシテモ中
  央ヲ除ク外ハ、今デモ賣藥者ガ稼業ヲヤツ
  テ居リマス、先程御話ノ通リノ販賣方法ヲ
  執ツテ居リマスシ、長イ間ソレニ依ツテ儲
  ツテ居ル、決シテ損ヲシテ居ラナイ、損ヲ
  シテ居ルナラ潰レテシマツテ來ツコナイ、
  何百年來同ジヤウニシテ、アアシテ昔モ今
  モ變ラズ來テ居リマスカラ、相當ノ利潤ヲ
  擧ゲテ居ルト云フコトハ、之ヲ窺ヒ知ルコ
  トガ出來ルノデアリマス、斯ウ云フ次第デ
  アリマスシ、殊ニ只今ハ中位ナ人、賣藥ノ
  對照トナツタ大衆ノ方ニハ、隨分惠マレタ
  診療方法ガ行ハレテ居ル、賣藥稅ノ廢止ニ
  ナツタ時分ノ議論カラ見マシテモ、地方大
  衆ヲ相手トシテ居ル此ノ賣藥、此ノ病氣ヲ
  直スト云フ藥カラ取ルコトハ、最モ惡稅デ
  アルト云フヤウナコトガ論點ニナツテ、是
  ガ免稅ニナツタモノト承知シテ居リマス、
  勿論當業者ノ苦痛モアツタデアリマセウ、
  先程御話ノアツタ通リニ、一遍ニ稅金ガ取
  ラレテ、其ノ金ヲ得ルノハ一年ノ後デアル、
  ダカラソレカラ稅ヲ取ルコトハ困難ナコト
  デナイカ、是ハ賣藥稅バカリデナク、造石稅
  ナドハサウ云フ風ニナツテ居リマセウ、是等
  ハ事實ノ上ニ付テドウ云フ風ニデモナルト
  思ヒマスガ、兎ニ角其ノ重イト云フコトヨ
  リモ、只今當業者ガ苦シムカラ、ソレニ依
  ツテ此ノ稅金ハ取ラナイノダト云フ、其ノ
  御言葉ダケハ、確ト他ノ業者ニモ及ボシテ戴
  キタイト云フコトヲ、先ヅ以テ私ハ御願シ
  テ置キマス、其ノ御同情ハ私共ト致シマシ
  モ滿足ノ意ヲ表シマス、尙ホ地方大衆ニ對
  シテハ、其ノ當時ト異リマシテ、或ハ健康
  保險ヲヤツテ工場ノ職工ハ救ハレテ來ル、
  或ハ社會事業ノ施設ニ依ツテ、今マデ細民
  階級デ病院ニ入レナイ人ガ、何千人、何万
  人モ病院ニ入ルコトガ出來ルヤウニナツテ
  來ル、ソレカラ今マデノ賣藥稅ヲ廢止シタ
  當時ノ對象トナツタ下層ノ人達ハ、今日ハ
  非常ニ醫療ニ於テハ惠マレテ居ルヤウニナ
  ツテ居リマスカラ、アノ賣藥稅ヲ廢止シタ
  議論ノ中ノ大部分ト云フモノハ今日消エテ
  居ルノデアリマス、併シ私ハ强ヒテ賣藥稅
  ヲ制定ヲセラレタイト云フコトヲ要望スル
  者ニアラズシテ、只今ノ局長ノ御答辯ノ納
  稅者ニ同情ヲセラレルト云フ點ヲ伺ツタダ
  ケガ私ノ非常ニ幸トスル所デアリマスガ、
  尙ホ御意見ヲ伺ツテ次ニ移リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=63

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• 064・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　實ハ以前ニ賣藥印紙稅廢
  止ノ時ニ於キマシテモ、議會ニ於テ色々御
  議論ガアツタヤウデゴザイマス、賣藥ノ中
  ニモ隨分一般大衆ガ本當ニ病氣ノ場合ニ使
  用スルモノモアルケレドモ、中ニハ中々贅
  澤ナモノガアル、料理屋、待合ニ出入スル
  重役ノ「ポケット」ヲ見ロ、ソコニハ仁丹其
  ノ他ノ〓涼劑ヲ入レテ居ル、是ナンカハ最
  モ奢侈的ナモノデ、斯ノ如キモノニ對スル
  課稅マデモ廢止スルノハドウカト言ツテ、
  其ノ當時ノ政黨ノ有力者ノ方ガ御意見ヲ發
  表シテ居ラレタ、私共モソレヲ見テ如何ニ
  モサウ云フ點モアル、殊ニ今日ニ於キマシ
  テハ榮食劑ノ中デ、例ヘバ「ホルモン」劑ト云
  フヤウナモノニハ寧ロ從價十割位モ課稅シ
  テ然ルベキヂヤナイカト云フヤウナモノガ
  アルノデゴザイマス、ソレデ此ノ度モ隨分
  〓究モ致シマシタ、併シ度々申シマシタ通
  リ賣藥ノ方劑ハ幾万或ハ幾十万近クニナツ
  テ居ルノデゴザイマシテ、其ノ中ニハ今申
  上ゲタヤウナ非常ニ奢侈的ノモノモアリマ
  スケレドモ、中ニハ風邪ニ罹ツタ場合、或
  ハオ腹ヲ壞シタ場合ニ、而モ醫藥ニ親ミ難
  イ者ガ使用スルト云フモノモ相當アル、其
  ノ間ラドウ區分シ、課稅ヲ決定スルカ、出
  來ルナラバ銘柄デモ指定シテ贅澤ト思ハレ
  ルモノダケデモ課稅シテ見ヨウカト思ツテ
  〓究シテ見マシタケレドモ、中々實行困難
  デアリマス、結局モウ少シ〓究致シマシテ
  將來財政ノ需要ガ多タナツテ、モツト强度
  ニ增徵シナケレバナラヌト云フヤウナ場合
  ガ起ツタトキハ兎ニ角、今年ノ如ク臨時利
  得稅、物品稅ヲ中心トシテ課稅スルト云フ
  場合ニハ先ヅ控ヘヨウカト斯ウ存ジタノデ
  アリマス、サウ云フヤウナ次第デアリマシ
  テ、賣藥ニ對シテ現在物品稅ヲ課稅シテ居
  ルヤウナ形式ニ依ツテ課稅スルノハ、實際
  ノ所瀧澤サンノ御意見ノヤウニ、富山地方
  ノ賣藥業者ニ對シテモヒドク當ラヌ、製造
  費、原料ノ價格ト云フモノハ、先程モ申上
  ゲマシタ通リ行商ノ費用ヲ差引クト幾ラデ
  モナイカラ、之ニ對シテ一割ノ負擔ヲスル
  ト云フコトハサウ重イコトデナイト思ヒマ
  スガ、印紙稅デ課稅スルト云フコトハ大變
  ナコトニナルノデアリマシテ、印紙稅ノ課
  稅ハ篤ト考究ヲ要スル、印紙稅ニ依ラズシ
  テ、物品稅ノ課稅ナラバ、場合ニ依レバ課
  稅シテモ宜イノデハナイカト、餘程〓究ヲ
  進メタノデアリマスガ、最後ノ段階ニ至リ
  マシテ、マア今年ハ見合セヨウト云フコト
  ニナツタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=64

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• 065・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　私モ今年賣藥稅ヲ取ツテ戴キ
  タイト云フ話デハナイノデアリマス、先刻
  御話ノヤウニ一本注射スレバ十圓モ十五
  圓モ取ラレルモノヲ、一日隔キニ注射シテ
  居ルヤウナ人カラハ取ツテモ宜イト云フ、
  サウ云フ御〓究ガアツタト云フコトデアリ
  マスカラ申上ゲタノデアリマスガ、印紙
  稅デ取ルトカ、何デ取ルトカ云フ技術的ノ
  コトハ存ジマセヌケレドモ、唯アア云フ
  稅金モ長イ間取ツテ居ツタノヲ廢メラレ
  タノダカラ、之ニ對シテ御〓究ガアツタ
  カドウカト云フコトヲ伺ツテ置ケバ宜イ、
  隨テ唯一點只今業者ノ爲ニ同情アル御言葉
  ガアツタ、ソレヲ移シテ戴キタイト思フコ
  トガ、卽チ此ノ頃皆サンカラ色々御話ニナ
  ツテ居ル所ノ遊興稅ニ關スルコトデアリマ
  ス、遊興稅ニ關スルコトハ色々御話ニナツ
  テ居リマスカラ、其ノ點ハ申上ゲマセヌガ、
  其ノ徵稅ノ方法デアリマス、其ノ徵稅ノ方
  法ガ先般モ申上ゲマシタガ、私東京市ガ歡
  興稅ヲ十二年ニ創設致シタ時カラ關係シテ
  居リマシテ、能ク其ノ取立ノ狀況ヲ知ツテ
  居リマス、中々取立ガ困難デアリマス、昨
  日モ森田委員ヨリ御話ガアリマシタ通リノヤ
  ウナコトデ、吾々ガ大阪ノ方ニ旅行スルト
  隨分金ガ掛ツタヤウニ思ツテ歸ツテ聽クト
  隨分安イノデ驚クヤウナコトモアル、隨テ
  其ノ徵收サレル時ニ當業者ノ間ニ摩擦ガ起
  ル、東京ナドデモ是ガ爲ニ非常ニ困リマシ
  ク、ソレカラ待合ヤ料理屋ニ出入リ致シマ
  スカラ、其ノ使ヒ込デ監獄ニ行カナケレバ
  ナラヌヤウナ者モ出來テ來ル、使ヒ込ヲシ
  タケレドモ表面ニ現ハレナイデ、係長ヤ課
  長ガ借金ヲシテ埋合セヲシテ、其ノ使ヒ込
  ヲ表向ニシナイトカ、非常ナル階段ヲ經テ、
  今日ノヤウニ東京市ニ於テハ三業組合ナリ、
  其ノ他ノ組合ノ役員ヲ東京市ノ囑託ト致シ
  テ、囑託ノ辭令ヲ出シテ圓滿ナル徵稅ヲシ
  テ居ル、表面ハ請負デハアリマセヌケレド
  モ、實際ニ於テハ請負制度ノヤウナモノデ
  アリマス、ソレデアリマスカラ大阪ハアノ
  大都市デアリマシテモ、東京市ノ半分モ取ツ
  テ居ラナイデセウ、アレヲ御覽ニナツテモ
  昨日森田委員ノ御話ニナツタアノ消費ト云
  フモノガ大阪ト東京デ非常ニ違ツテ居ルト
  云フコトガ稅金ノ上デモ分ツテ參ル、私共
  漫然ト考ヘルト、東京ト大阪デハ消費金額
  ガ違ハヌト思ヒマス、然ルニ稅金ハ非常ニ
  差ヲ持ツテ居リマス、デスカラアナタガ御
  徵收ニナルノニ非常ニ困難デアリマス、ソ
  レカラ又一ツハ只今御同情ガアツタ序ニ同
  情シテ戴キタイト思フノハ、私共ハ正當ナ
  ル工業ニ從事シテ代金ヲ受取リマスケレド
  モ、其ノ代金ヲ受取ルニ付テモ、私共軍需
  關係ノ仕事ヲ致シテ居リマシテモ、二十日
  ニ納品ヲシテ、二十五日ニ締切ツテ翌月十
  日ニ六十日拂ノ手形デ受取ルト云フノガ隨
  分アリマス、而モ亦完全ニ其ノ數ヲ納メル
  ノデアリマスカラ、其ノ製品ヲ拵ヘルマデ
  ニハ二箇月モ掛ルノデス、代金ヲ受取ルマ
  デニハ四箇月モ五箇月モ掛ルヤウナ狀態デ
  アル、正當ナル品物ヲ賣ツテ取ル場合ニサ
  ウ云フ譯デスカラ、待合、料理屋デ三十日
  ニ締切ツテ翌月十日ニ之ヲ調査シテ其ノ月
  ノ三十日マデニ納付セシメルト云フコトハ
  非常ナ困難ナコトデ、手數ヲ煩ハスコト多
  大ナルモノデアリマス、是ハ納期ハモウ一
  箇月、次ノ十日、十五日頃マデ御延ベニナ
  ルト云フコトガ私ハ徵稅ノ上ニ大變宜イコ
  トダト思ヒマス、ソレト又稅金ヲ見込ンデ、
  今ノヤウニ取レナイ金ガアルカラ、八割ナ
  ラ八割デ之ヲ打切ツテ、其ノ金額ダケハ必ズ
  納付セシムル、東京市ノ稅金ノ今日非常ニ
  他ノ都市ト比ベテ多ク取レ、尙ホ將來モ多
  ク取レヨウトシテ居ツタノハサウ云フ次第
  デアリマスカラ、一面其ノ納期ヲ次ノ月ノ
  十日位或ハ二週間位御延ベニナルコトト、
  稅金ヲ八割位ニ打切リマシテ全部納付セシ
  ムルヤウニナサルコトガ稅金ガ非常ニ能ク
  取立テ得ラレルコトデ、斯ウ云フコトハ、
  打切ルト言フト語弊ガアルヤウニ一面思ハ
  レマスケレドモ、今私共ノ個人所得ヲ出シ
  テ所得調査委員ガ出テ調査スルニ致シマシ
  テモ、個人所得ニ付テハ凡ソ腰ダメデ行ク
  方ガ宜イ、オ前ノ家ハ凡ソ幾ラ位ノ賣上ダカ
  ラ此ノ賣上ニ對シテ何分ノ利益ダカラ此ノ位
  ダ、イヤサウハアリマセヌカラ此ノ位ニ負ケ
  テ下サイト云フノデ、或ル場合ハ七割ニナリ
  マセウシ、或ハ八割ニナリマセウシ、個人所得
  ノ小サナ所デハ話合デ全部ヤラレテ居ルノガ
  實情デアリマス、其ノ實情ハ御承知ノ通リ
  デアリマスカラ、是等ニ對シテモ摩擦ヲ起
  サナイデ快ク納稅義務者ニナツテ、取立テ
  得ラレルヤウニナサルコトガ完全ニ豫定ノ
  收入ヲ得ラレル所以デアリマスルシ、此ノ
  點十分ノ御考慮ヲ煩ハシマセヌト、却テ豫
  算、〓算ニ於テハ多ク取立テラレル數字ガ
  出マシテモ、決算調定ニ於テ減ツテ參ルヤ
  ウニ私ハ信ジテ居リマスカラ、此ノ點ノ御
  考慮ヲ願ヒ其ノ御考ヲ承リタイ

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• 066・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　東京市ニ於ケル遊興稅ノ
  徵收ニ付テ色々御苦心ヲナサツタ御話ヲ拜
  聽致シマシタ、全ク其ノ通リダト存ジマ
  ス、其ノ他ノ地方ニ於キマシテモ本稅ハ其
  ノ性質カラ致シマシテ是ガ徵收ニ相當困難
  ガアルト云フコトハ私モ十分認メマス、唯
  先程東京市ノ遊興稅ハ非常ニ多ク大阪市ノ
  方ハ低イノデハナイカト云フ御話デゴザイ
  マスケレドモ、現在東京市ニ於テハ府トシ
  テハ課稅致シテ居リマセヌ、市ダケデ課稅
  シテ居ル、ソレカラ稅率モ隨テ大阪ノ方ヨ
  リ幾分安クナツテ居ルト云フ關係モアリマ
  スカラ、其ノ點モ考慮シナケレバナリマセ
  ヌガ、大體府市ヲ通ジテ見マスルト、大阪
  ノ方ガ尙ホ餘程十二年度ノ調定濟額ヲ見マ
  シテモ多クナツテ居リマス、其ノコトヲ
  言申上ゲテ置キマス
  ソレカラ八掛位デ課稅シテ吳レタラドウ
  カト云フ御話デアリマスルガ、是ハ現在地
  方ニ於キマシテモ必ズシモサウ云フ風ニナ
  ツテ居ナイ、或ル場所ニ於キマシテハ所謂請
  負制度ヲ致シマシテ今年ハ一年間ニ幾ラ程
  市ニ納メレバ宜イト云フ風ニヤツテ居ル所
  ナドニ於キマシテハ、一體八割課稅ダカド
  ノ位ノ課稅ダカ分リマセヌガ、全國ヲ通ジ
  テ必ズシモサウ云フ風ニナツテ居ル譯デハ
  ナカラウカト存ジマス、ソレカラ一方少シ
  是ハ法律的ニ喧シイコトヲ申上ゲルヤウデ
  ハアリマスケレドモ、遊興致シマシタ客ノ
  方カラハ遊興稅ニ相當スル部分ヲ徴收シテ
  置イテ、八割ダケノ稅ヲ國ニ出シテ濟ンデ
  居ルト云フコトヲ國自體ガ公認スルト云フ
  コトハ如何デゴザイマスセウ、不當ニ消費
  者ニ稅ヲ負擔サセテ中間ニ於テ之ヲ國ニ納
  メナイデ取ツテシマフ者ガアルト云フヤウ
  ナコトニナルノデハナラウカト思ヒマス、
  是ハ地方稅ニ於キマシテハ徵收猶豫ノ制度
  モナイ、又貸倒レニ付テノ考慮モ拂ハレナ
  イカラ、其ノ點ハ常識的ニ見マスルト八掛
  課稅位デ大體措置サレル、ソレガ非常ニ便
  宜ダト云フ御考モ一應ノ御考ダト存ジマス
  ケレドモ、是モ前ニ度々申上ゲマシタ通リ
  貸倒レノ狀況等ハ地方々々ニ依ツテ相當差
  異ガアリ、同ジ組合ニ於キマシテモ店ニ依
  ツテ違フノデアリマスカラ、隨テソレ等ヲ
  考慮ノ中ニ加ヘテ見ルト云フト一律ニ八掛
  ダケヲ納付スレバ宜イト云フヤウナコトニ
  致シマスルト、例ヘバ脫稅トカ云フヤウナ
  コトガ起ツタ場合ニ頗ル厄介ナ問題ガ私ハ
  起ツテ來ルノデハナカラウカト存ジマス、
  國稅ト致シマシテサウ云フコトハ避ケタイ
  ト存ジマス、其ノ代リニ延ベニナツタリ貸
  倒レニナツタ場合ニ對スル緩和規定ハ設ケ
  三ツノ斯ウ云フ趣旨デ立案致シタ次第デゴ
  ザイマス

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• 067・川崎克

  ○川崎委員長　一寸此ノ機會ニ御諮リヲ致
  シマスガ、本日午前ノ質問ニ愛野君ノ質問
  ガアリマシテ、愛野君ノ質問ノ中ニ、過日
  來カラ懸案ニナツテ居リマシタ遊興稅ノ地
  方ニ交付セラルル金額幾許カ、是ガ追加豫
  算ニモウ出テ來ナケレバナラヌ時期デアル
  ガ、內務省ト大藏省トノ間ニ折衝ガア
  ツタ筈ダカラ其ノ數字ヲ明確ニシテ貰
  ヒタイト云フ御質問ガゴザイマシタ、ソ
  レニ對シマシテ大藏省ヨリ昭和十四年度分
  ニ付テハ千八百万圓ト云フ數字ヲ述ベラ
  レタノデアリマス、是ハ大藏大臣及ビ
  内務大臣御列席ノ上デ承リタイノデアリマ
  シタガ、御承知ノ通リ大藏大臣ハ差支デ御
  見エニナリマセヌシ、內務大臣モ其ノ時ハ
  オ出デニナラナカツタノデ、是ハ非常ニ重
  大ナルコトデアリマスカラ、隣リノ委員會
  ニ內務大臣ガ出テ居ラレタノデアリマスガ
  特ニ此ノ問題ノミニ付テコチラニオ出ヲ願
  ヒマシテ、內務大臣カラ發表ヲ求メタ譯デ
  アリマス、隨ヒマシテ此ノ問題ニ付テハ極
  ク簡單ナ御質問ガ或ハアラウカトモ思ヒマ
  スガ、若シ要點ノ御尋ガゴザイマシタラ
  發表後ニ於テ極メテ簡單ノ質疑ヲ御許シシ
  タイト思ヒマス、取敢ズ內務大臣カラ御願
  致シマス

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• 068・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　遊興稅等ニ代リマスル補
  給金ノ總額ニ付テハ內務、大藏兩省ニ於テ
  〓究ヲ致シテ居リマシタノデアリマスガ、
  之ヲ決メマスニ當リマシテハ昭和十四年度
  ニ於テ生ズベキ遊興稅等ノ地方財源喪失額
  ノ全額ヲ完全ニ補塡スルコトヲ以テ目的ト
  シタノデアリマス、而シテ昭和十四年度ニ
  於キマスル地方財源喪失額ハ將來ノ見込數
  字ニ屬スルモノデアリマシテ、之ヲ過去ノ
  一定年度ヲ基準トシテ推算スルノ外ハナイ
  ノデアリマス、仍テ最近ノ確定數字デアリ
  マスル昭和十二年度ノ調定濟額ヲ基礎ト致
  シマシテ、之ニ二箇年度分ノ自然增收見込
  額ヲ加算シタル額カラ昭和十四年度ニ入リ
  マシテ尙ホ收入セラルベキ遊興稅等ノ額、
  卽チ昭和十四年三月分一箇月分ヲ控除致シ
  マシタル數字ヲ取ル時ハ、其ノ額ガ千七百
  三十餘万圓トナルノデアリマシテ、之ヲ以
  テ最近ニ於ケル自然增收狀況ヲモ斟酌致シ
  マシテ、結局昭和十四年度ノ補給金ノ所要
  額ハ之ヲ千八百万圓ト決定スルノヲ適當ト
  認メタ次第デゴザイマス、而シテ平年度デ
  アリマスル昭和十五年度以降分ニ於キマシ
  テハ右ノ昭和十四年度分ノ數字ヲ基礎トス
  ル以上ハ昭和十四年度ニ屬スル一箇月分ノ
  收入額ニ相當スル額ヲ當然增額スルノ外自
  然增收等ヲモ併セ考慮致シマシテ補給金所
  要額ヲ二千万圓ト決定致シタ次第デゴザイ
  マス

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• 069・小山倉之助

  ○小山委員　昭和十五年ニ稅制改革ガ行ハ
  レルト大體政府ハ聲明シテ居リマスガ、私
  ハ必ズシモ是ガ全般的ニ實行ガ出來ルカド
  ウカト云フコトニ疑ヲ持ツテ居リマス、隨
  テ若シ斯樣ナ場合ガアツタナラバ、昭和十
  五年度ニ於テハ二千万圓ヲ下ラザル程度ニ
  於テ地方ニ對スル交付金ヲナサルノデアリ
  マスカ、ドウデアリマスカ、此ノ點ヲ承ツ
  テ置キタイト思ヒマス

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• 070・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　只今御質問ノ點ハ、若シ
  稅制改革ガ全般的ニ出來ナイ場合ニハ、昭
  和十五年度ニ於テハ二千万圓ヲ下ラザル金
  ヲ交付金トシテ支出スルヤト云フ御尋デア
  リマス、左樣ニ考ヘテ居リマシテ、二千万
  圓ト見テ居ルヤウナ次第デアリマス

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• 071・川崎克

  ○川崎委員長　宜シウゴザイマスカ、此ノ
  問題ニ付テ御質問ゴザイマセヌカ-ソレ
  デハ私一言ダケ念ヲ押シテ置キタイノデ
  スガ、本年度ノ分ハ今御話ノ通リデアリマ
  スガ、十一箇月分デアリマシテ、此ノ三月
  ノ分ハ今徵稅中デアリマスカラ、其ノ分ハ
  過年度收入トシテ地方財政ノ方ニ一箇月分
  繰入レラレル勘定ニナルコトト諒解シテ宜
  イ譯デアリマセウカ

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• 072・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　左樣デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=72

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• 073・川崎克

  ○川崎委員長　サウ致シマスト、言葉ヲ重
  ネテ申シマスト、其ノ千八百万圓ハ、大體
  本年度ハ地方ヘノ收入ハ一一千万圓近クノ數
  字ニナルト、斯樣ニ諒承シテ宜イ譯デアル
  ト思ヒマス、左樣デゴザイマスカ

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• 074・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　左樣デゴザイマス

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• 075・川崎克

  ○川崎委員長　ソレデハ瀧澤君

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• 076・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　只今大阪府トノ關係ノ御話ガ
  アリマシタガ、成程大阪府トシテハ多イデ
  セウ、東京デハ、東京府デハ取リマセヌデ、
  東京市ダケガ一割取ツテ居ルノデアリマス、
  殊ニ郡部ハ僅カデアリマスカラ、府ト致セ
  バ大阪ノ方ガ多イカモ知レマセヌ、ソレカラ
  國デ國稅トシテ取ル場合ニ於テハ、其ノ考慮
  ノ點ハ十分スルケレドモ、其ノ事前ニ於テノ何
  割カニスルト云フコトハソレハ困ルコトデアル
  ト云フ御話デアリマスルケレドモ、現在
  吾々ノ營業稅ニ致シマシテモ、所得稅ニ致シ
  マシテモ、實際國ガ全部御取リニナルノデ
  アリマセヌ、月給ヲ取ツテ居ラルル方ガ、
  其ノ月給ノ額ニ從ツテ稅金ヲ出サレルヤウ
  ナ譯ニ、吾々實業家ノ方デハ行ツテ居ラナ
  イコトハ公知ノ事實デアリマシテ、何割ト
  云フコトハアリマセヌケレドモ、相當內輪
  ニ見テ營業稅ナリ所得稅ナリ徵收サレテ居
  ラルルカラ、國民トノ間ニ摩擦相剋ガナイ
  ノデアリマスルガ、若シ是ガ御規則通リニ
  月給ヲ取ツテ居ル者カラ所得稅ヲ取ルガ如
  クニ、全體ノ營業稅、所得稅ニ對シテナサ
  ツタナラバ、ソレハ大變ナ騷ギヲ起スノデ
  アリマス、是ハ時ノ其ノ署長ノ裁量ニ依ツ
  テ苛酷ナル扱ヒヲサルル場合ニ於テハ、隨
  分問題ヲ起シテ居ルヤウナコトデ、隨テ實
  際問題ト致シマシテハ十分ニ納稅者ト打解
  ケテ納稅スルヤウニナスツテ居ラルルノガ
  今日ノ御方針デアルト信ジテ居リマスシ、
  サウ云フ場合カラ見マシテモ、殊ニ是カラ
  色々ノ稅金ガ課ツテ參リマス、色々ナ稅金
  ガ又創設サレルコトト信ジマス、デアリマ
  スルカラ今先程私ガ御聽キ致シマシタル通
  リ、或ル事業-勿論賣藥ト料理屋業者ナ
  ドトハ趣キガ違ツテ、賣藥ハナクテハナラ
  ナイガ、料理屋ハナクテモ宜イト云フヤウ
  ナ上カラ、若シ一部ニ言ハルルヤウニ、斯
  ウ云フモノハ廢シテシマヘト云フヤウナ考
  ヘ方デアル方ハ別ト致シマシテ、兎ニ角國
  稅トシテ納稅ヲスルノダ、デアルカラソレ
  等ニ對シテ極メテ柔カニ今ノ御心持ヲ以テ
  此ノ業者ニモ對シテ戴ケバ、摩擦ガ起キナ
  イデ豫定ノ收入ヲ得ラレ、只今內務大臣ヨ
  リ言明サレマシタル所ノ交付金額ガ、吾々
  ト致シマシテモ滿足ニ交付セラルルコトガ
  出來ルコトガ幸ヒデアリマスカラ、此ノ點
  ニ關シテ篤ト尙ホ御考慮ヲ御願シタイト思
  フノデアリマス

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• 077・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　本稅ノ執行ニハ相當ノ困
  難ガ伴フコトハ度々申上ゲタ通リデゴザイ
  マス、隨ヒマシテ其ノ月分ヲ其ノ月ニ徵收
  シナカツタト云フモノニ付テハ、或ハ又結
  局貸倒レニ終ツタト云フモノノ調査ノ如キ
  モ、必ズシモ其ノ一々ノ得意先ニ付テ調査、
  スルト云フコトハ致シマセヌ、是ハ大臣モ
  御答致シテ居リマシタ通リ、サウ云フコト
  ハ致サナイデ、出來ルダケ業者ノ方ノ意見
  モ聽キ、又業者ノ組合ノ方ノ意見モ十分ニ
  聽イテ、大體第三者ガ見テ、アノ家ハ是レ
  位ノ所ガ宜カラウ、是レ位ノ貸倒レガアル
  ダラウト認メラレル程度ノモノニ對シテハ、
  稅ノ執行ニ於テモ深ク爬羅剔抉スルコトナ
  ク、出來ルダケ業者關係組合ト協調ヲ保ツ
  テ行キタイト存ジマス、此ノ本稅ニ於キマ
  シテ申告制度ヲ採リ、サウシテ納稅〓知ヲ
  出シテ徵收スルト云フ制度ニ致シマシタノ
  モ、サウ云フ點ヲ考慮致シマシテ、豫メ納
  稅〓知ヲ出ス前ニハ十分ニ關係組合ノ方ト
  連絡協調ヲ執ツテ、遺憾ナキヲ期シタイ、
  斯ウ云フ考カラ發足シテ居ル次第デゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=77

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• 078・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　是ヨリ申上ゲルト尙ホ諄クナ
  リマスカラ、此ノ程度ニシテ、後ハ又別ノ點
  ニ於テ考ヘテ見ルノデアリマス、モウ一ツ
  是ハ簡單ニ御聽キシタイノデスガ、ソレハ
  建築稅デスケレドモ、災害ニ依ツテ復舊ス
  ル場合ニ、例ヘバ地震デアツタトカ、水害
  デアツタトカ云フ場合ニ、復舊フ致シマス
  ル場合ニハ、建築稅ハ御取立テニナリマス
  カ、免稅サレマスカ、御伺シタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=78

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• 079・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　免稅致シマス、但シ從前
  ノ坪數ヲ超エテ建築シタ場合ニ於テハ、其
  ノ超エタ部分ニ付テハ新シク計算致シテ、
  一万圓以上ニナレバ其ノ時ニハ課稅致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=79

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• 080・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　明瞭致シマシタ、次ニ是ハ一
  寸簡單ニ御伺シテ置キマスルケレドモ、色
  々ナ稅金ヲ增徵セラレルヤウニナツテ居ル
  ノデアリマスルガ、昨年ハ特ニ興行稅ト云
  フヤウナモノヲ御取上ゲニナツタノデスガ、
  其ノ當時ノ稅金率ニ付テモ色々御議論ガア
  ツタヤウデスガ、アノ稅率ハ當分アノ儘ニ
  シテ置カルルノデアリマスカ、或ハ又增率
  ト云フヤウナコトヲ御考ニナツテ居ラレマ
  スカ、御伺致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=80

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• 081・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　入場稅ニ付キマシテ或ル
  一定金額以上ノ入場料ノ件ニ對シテハ課率
  ヲモツト引上ゲテ然ルベキデハナイカト云
  フ意見ノ方モ相當アルヤウデゴザイマシテ、
  此ノタビモ此ノ點ニ付キマシテハ十分檢討
  ヲ加ヘマシタガ、是ハ昨年創設シタバカリ
  ノコトデハアリ、本年直チニ引上ゲルノモ
  如何カト存ジマシテ、今年ハ見合セマシタ、
  將來ノコトニ付キマシテハ尙ホ能ク考究致
  シテ、善處スル積リデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=81

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• 082・瀧澤七郎

  ○瀧澤委員　只今ノ御答辯デ當局ノ意ノア
  ル所ヲ私ハ御聽キシタノデアリスス、尙ホ
  私ハ他ノ委員會ヘ陳情ニ行カナケレバナリ
  マセヌカラ、此ノ程度デ私ノ質問ハ打切リ
  マスガ、唯昨日森田委員ヨリ意見ヲ申述ベラ
  レタコトデアリマスルガ、遊興稅ノ中ノ女中
  ノ祝儀トカ席料トカ云フモノニ付テハ、尙
  ホ十分御考慮ヲ煩ハシテ置キタイト云フコ
  トダケヲ申上ゲマシテ私ノ質問ハ打切リマ
  ス

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• 083・田村秀吉

  ○田村委員　私大藏大臣ト厚生大臣ニ御尋
  致シタイノデアリマスガ、マダオ出デニナ
  リマセヌカラ、二三政府委員ニ承リタイト
  思ヒマス、只今ノ瀧澤君カラ飴ノコトニ付
  テ御尋ガアリマシタノデ、大要ハ分リマシ
  タガ、昨日モ渡邊君カラ御尋ガアリマシテ、
  尙ホ念ノ爲ニ伺ツヲ置キタイノハ、此ノ案ニ
  依ツテ飴カラ上ツテ來ル稅額ハドノ位ノ御
  見込デゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=83

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• 084・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　取調ベマシテ後程申上ゲ
  マス

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• 085・田村秀吉

  ○田村委員　ソレデハ後〓シニ致シマシテ、
  ヤハリ飴ノコトデスガ、私ノ調ベタ所ニ依
  リマスト、飴ノ中ニ晒飴ト並飴トガアツテ、
  其ノ晒飴ト並飴トノ間ニハ、現在晒飴ハ二
  十圓、並飴ハ十七圓六十錢デ、二圓四十錢
  ノ差ガアリマス、從來一番接近シタ時デモ
  晒飴ト並飴トハ一圓三十錢ノ開キガアツタ
  ノデアリマス、昨日ノ政府委員ノ答辯デハ
  從來ハ全然同ジダト云フ御答辯デアツタヤ
  ウニ承ツテ居リマスガ、其ノ點ハ少シ違ツ
  テ居ル、事實ハ一番接近シタ時デモ一圓三
  十錢ノ違ヒガアル、此ノ點ハ重ネテ御尋致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=85

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• 086・田中豐

  ○田中政府委員　私カラ御答辯申上ゲマス、
  昨日申上ゲマシタノハ大體從來ハ五六十錢
  程度ノ開キガアツタト云フコトヲ申上ゲマ
  シタ、吾々ノ調査致シマシタ所デハ、大體
  サウ云フ風ニナツテ居リマス、ソレカラ二
  月ニ入リマシテ一圓五十錢位ノ開キニナリ、
  最近三月ニ入ツテ多少開キガ多クナツテ居
  ルカト思ヒマスガ、其ノ點ハマダ調査ガ行
  屆イテ居リマセヌ、左樣ニ申上ゲタ次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=86

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• 087・田村秀吉

  ○田村委員　其ノ點ハ政府ノ御調査ト吾々
  業者ノ調査トハ食違ヒガアリマスガ、兎山
  角差額ノアルコトハ是デ明瞭ナノデアリマ
  ス、ソレカラ晒飴ハ現在機械工業トシテ、
  私ノ國ニモ大キナ製造工場ガアリマスガ、
  日本ニ四軒アリマス、並飴ハ家內工業トシ
  テ多イ所デ三四十人、小サイノハ五六人位
  デヤツテ居ル、是ガ約百三四十箇所ト云フ
  狀態ニナツテ居ル、片方ハ機械工業デアル
  シ、片方ハ家內工業デアル、モウ一ツハ晒
  飴ハ上等ノ菓子、主トシテ贅澤品ニ使ハレ
  ル、隨テ稅ガ上ツテ百斤ニ付テ二圓上ル、
  二圓位ノモノヲ消費稅ト同ジヤウニ之ヲ消
  費者ニ轉嫁シテモ、一向其ノ需要關係ニ影響
  ガナイ、然ルニ並飴ノ方ハ大部分ハ一般大
  衆ノ子供ガ〓ツテ居ル安イ駄菓子トカ、或
  ハ長ク保存スル爲ノ佃煮、味噌等ノ材料ニ
  主トシテ使フ、隨テ晒飴ハ贅澤品ノ中ニ認
  メラレルガ、並飴ハ大衆ノ必要品デアルト、
  云フ風ニ吾々ハ認メルノデアリマスガ、此
  ノ點ニ付テ政府ハ如何ニ考ヘテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=87

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• 088・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　先ヅ先程留保シテ置キマ
  シタ飴ノ課稅カラ入ツテ來ル收入額デゴザ
  イマスガ、ソレハ四百十万圓ゴザイマス、
  ソレカラ澱粉飴ト麥芽飴トノ關係デゴザイ
  マスガ、麥芽飴、從來ノ飴ヲ製造シテ居ル
  モノニ於キマシテハ、小規模ノモノガ多イ
  コトハ事實デゴザイマス、併シ相當大規模
  ニ營業シテ居ルモノモアリマス、同一工場
  デ半々位ニ製造シテ居ルモノモアルノデゴ
  ザイマシテ、斯ウ云フモノニ於キマシテハ
  品質ノ差ハソレ程ナイノデゴザイマス、ソ
  レデ一體此ノ飴ノ製造業ハ、千マデバアリ
  マセヌガ、千近ク大體アルノデアリマシテ、
  其ノ中ノ八九割ハ大製造業者ノ製造ニ係ツ
  テ居リマシテ、殘餘ノ一二割ガ極ク小サイ
  業者ノ製造ニ係ルモノト申上ゲテ宜イノデ
  ゴザイマス、隨テ此ノ小サイモノニ對シテ、
  大製造業者ト同ジヤウナ課稅ヲスルノハド
  ウカト云フコトモ一應考ヘラレルノデハゴ
  ザイマスケレドモ、併シ先程カラ申シマス
  通リ第二種糖ニ較ベマスト、或ハ此ノ稅ヲ倍
  額ニシテモ宜イノデハナカラウカト思ハレ
  ルノヲ、新稅デモアリマスシ、又小規模ノ
  營業者ニ與ヘル影響等モ考ヘマシテ、百斤
  ニ付キ二圓ニ致シマシテ、此ノ程度ナラバ
  小規模ノ營業者ニ對シテモ左程苛酷デハナ
  カラウト存ジタ次第デアリマス

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• 089・田村秀吉

  ○田村委員　其ノ點ハ少シ吾々ノ調査ト違
  ツテ居ルヤウニ思ヒマス、晒飴ノ方ハ-
  是ハ極メテ大要デスガ、千五百万斤、並飴
  ハ約二千万斤、此ノ並飴ニ從事シテ居ル所
  ハ百三十箇所デアツテ、約四千人、大キイ
  モノハ四五十人居リマス、晒飴ハ先程申上
  ゲタヤウニ四軒デアツテ、機械工業デス、
  是ガ四五軒デ約一千五百万斤ヲ使ツテ居
  ル、片方ハ百三十箇所デ二千万斤使ツテ居
  ル、其ノ業者ハ四千人デアリマスカラ、假
  リニ之ヲ五人ヅツノ家族トスルト、二万人
  ガ之ニ依ツテ衣〓シテ居ル、ソレハ主トシ
  テ家內工業デアル、而モ並飴ハ先程カラ申
  スヤウニ、晒飴ノヤウニ上等ナ菓子ニ使フ
  ノトハ違ツテ、駄菓子、佃煮等ニ使ツテ居
  ル、若シ之ヲ消費者ニ轉嫁シテ行クト、駄
  菓子屋ハ高イモノヨリモ砂糖ノ方ニ變ル、
  砂糖ニ依ツテ駄菓子ヲ作ル、サウスルト飴
  デ作ツタ菓子ヨリハ砂糖デ作ツタ菓子ノ方
  ガ直グロノ中デ溶ケマスカラ、子供ハ自然
  ニ餘計食ベル、甘イ物ヲ餘計食ベテ齲齒ガ
  起リ、蟲ヲ起ス、是ハ子供ノ重大ナ滋養衞
  生ノ問題ニナツテ來ルト思フノデス、サウ
  云フコトモ政府ハ御考慮ニナツタカドウ
  カ、只今並飴ノ方ヲ寧ロ高クシタラ宜イノ
  ヂヤナイカト云フヤウニ、私ノ聞キ間違カ
  モ知レヌガ伺ヒマシタガ、一寸私共ノ耳ニ
  ハヲカシク感ジルノデスガ、今申上ゲタ點
  ニ付テ政府ハドウ御考ニナルカ、伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=89

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• 090・田中豐

  ○田中政府委員　只今ノ御話ノヤウニ所謂
  芽麥飴ハ約八百人バカリガ製造致シテ居リ
  マス、澱粉飴ハ大キナ工場組織ニ依ツテヤ
  リマスル者ハ七八軒ノモノダト思ヒマス、
  生產額ハ兩者約半々位ナコトニナツテ居リ
  マス、隨ヒマシテ小サイ人ガ多イト云フコ
  トハ御說ノ通リダト思ヒマスガ、大體ニ於
  テ價格ニ於キマシテモソレ程開キガナク、
  用途モ說ノヤウニサウ違ツテ居ナイ、兩
  者トモ大部分ガ菓子ノ原料ニナルノデアリ
  マシテ、此ノ程度ノモノヲ一緒ニ課稅致シ
  マスコトハ、ソレ程不公平デナイト考ヘテ
  居リマス、又麥芽飴ノ方ガ小サイ駄菓子ナ
  ドニ使ハレル關係上轉嫁ガ困難デハナイカ
  或ハ砂糖トノ競爭上ソチラニ喰ハレルノヂ
  ヤナイカト云フヤウナ御說モアリマシタガ
  飴ガ菓子ニ使ハレマスノハ特ニ砂糖ノ代用
  品タル部面モアリマスガ、又飴トシテノ特
  殊ノ關係モアツテ使ハレテ居ルモノト考ヘ
  マスノデ、左樣チコトハ相成ラヌト考ヘテ
  居ル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=90

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• 091・田村秀吉

  ○田村委員　是レ以上ハ議論ニナリマスル
  ガ、私ハドウモ今マデモ竝飴ト晒飴ニハ差
  別ガアルト思フ、只今政府委員ノ御話ノ兩
  方菓子ニ使ハレル、併シ菓子ニモ色々アル、
  晒飴ハ上等ノ菓子ニ、竝飴ハ駄菓子ニ使
  ハレル、サウスルト其ノ用途ガ違ツテ來
  ルノデアリマス、大體此ノ支那事變特
  別稅ハ或ル意味ニ於テ贅澤品課稅ト云フ
  コト、無論稅額ヲ上ゲルコトヲ目的ニシ
  テ居ルト思ヒマスガ、サウ云フ政策ガ加
  味サレテ居ル、サウスレバ晒飴ハ四割、
  竝飴ハ六割ト私共ハ考ヘルガ、政府ハ晒飴
  ガ五割竝飴ガ五割ト見テ居ル、晒飴ハウン
  ト高ク取ツテモ私共ノ觀測デハ影響ガナ
  イ、竝飴ノ方ハ影響ガアル、使フ方ガ片一
  方ハ金ノアル人間デアリ、片一方ハ金ノナ
  イ一般大衆デアル、而モ主トシテ子供ガ使
  フモノデアル、サウシテ其ノ値段ガ兩方違
  フト云フノニ、高イ方ニ多ク掛ケテ、安イ
  一般大衆ニ掛カルモノヲ安クスルノガ、而
  モ量ニ於テモ半々位デアルト云フノデアル
  カラ、此ノ稅ノ建前カラ申シマシテモ至當
  デハナイカト思フ、晒飴ニ寧ロ三圓掛ケテ
  竝飴ニハ一圓五十錢、晒飴ニ二圓掛ケルナ
  ラ竝飴ハ一圓ニスルトカ云フコトガ、此ノ
  稅ノ掛ケ方ノ政策的意味カラ言ツテモ私ハ
  至當デハナイカト思フ、況ヤ駄菓子ニ使
  フ、佃煮ニ使フ國民ノ滋養衞生ニ多大ノ關
  係ヲ持ツテ居ル點カラ考ヘマシテ、片一方
  ヲ安クスルコトガ當然デハナイカ、若シ假
  ニ片一方ヲ二圓ニシテ片一方ヲ一圓ニスル
  ト云フコトガ出來ナイトスレバ、物品稅ノ
  本質カラ見テ、必シモ砂糖ノ眞似ヲセズニ
  價格ノ「パーセンテージ」ニ依ツテ掛ケル、
  一割掛ケルト云フヤウナコトニスルノガ妥
  當デハナイカト思フノデスガ、斯ウ云フ點
  ニ付テ此ノ案ヲ出サレルマデニ御考ヘニナ
  リ御〓究ヲセラレタコトヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=91

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• 092・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ前ニ昭和十二年ノ所
  謂馬場稅制ニ於キマシテハ、砂糖ノ一部分
  ノ如クニシテ課稅シヨウトシテ居タノデア
  リマスガ、其ノ時ニハ百斤ニ付テ二圓五十
  錢ト云フ稅率デゴザイマシタガ、大體將來
  モ砂糖ト同ジヤウニ扱ツテ行ツテ然ルベキ
  デハナカラウカト云フ見地ニ立チマシテ、
  從量稅ニ致シタ次第デアリマス、從價稅ニ
  シタラドウカト云フノモ一ツノ御意見デハ
  アリマスルケレドモ、私共考ヘマシタノハ、
  サウ云フ點ヲ考慮致シマシテモ從量稅ニス
  ル、ソレカラ價格ノ點ニ於キマシテモ、ソ
  レ程ノ差ハナイト云フコトハ先程他ノ政府
  委員カラ述ベタ通リデゴザイマス、稅率ハ
  將來又引上ゲテモ宜イデハナカラウカト思
  ツテ居リマスガ、將來相當稅率ガ高クナツ
  テ行ツタ場合ニハ、確ニ御說ノヤウナ點ハ
  考慮スベキモノト存ジマスガ、先ヅ今日此
  ノ程度ノ稅率デ課稅スルナラバ、兩者ヲ區
  分シナクテモ宜イデハナカラウカ、斯ウ存
  ジテ居ル次第デアリマス

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• 093・田村秀吉

  ○田村委員　昨年此ノ支那事變特別稅ガ出
  テ物品稅ガ出タ時ニモ政府ハ飴ニ稅ヲ掛ケ
  ラレタ、併シ大衆稅デ、子供ノ滋養衞生ニ影
  響ガアルト云フノデ引込メラレタト私ハ承
  知シテ居ル、今日出スコトハ已ムヲ得ナイ、
  已ムヲ得ナイノガ、掛ケ方ニ付テハドウモ
  少シ不合理デ、良イ物ト惡イ物トヲ同ジ稅
  額ニスル、只今政府委員ノ御說明ニ依リマ
  スト、將來稅率ヲ上ゲル時ニハ區別ヲスル
  必要ヲ生ズルカモ知レナイガト言ハレルガ、
  現在兩方同ジヤウニ稅率ヲ上ゲルヤウニシ
  タラ、ヤハリ同ジヤウニ附イテ行ク基礎ニ
  ナリマスカラ、ヤハリ是ハ「パーセンテー
  ジデ所謂從價稅ニシテ價格ニ依ツテ決定
  スルカ、サウデナケレバ其ノ效用ニ依ツテ
  政策的ノ意味カラ相當區別シテ、高イ晒飴
  ニ對シテハ相當取ツテ、一般ノ大衆ガ使ツ
  テ居ル竝飴ニハ安クスルト云フ建前ニスル
  コトガ至當デアリ、合理的デアルト私ハ思
  フノデアリマス、私ハサウナクチヤナラヌ
  ト思フ、ドウモ少シ不合理ナ感ジガスル、
  色々御答辯ト御說明ヲ承リマシタガ、ピン
  ト來ナイコトヲ附言致シテ置キマス、何カ
  之ニ付テ御答辯ヲ願ヘレバ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=93

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• 094・川崎克

  ○川崎委員長　答辯ハナイサウデアリマス

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• 095・田村秀吉

  ○田村委員　ソレヂヤ私ハ其ノ希望ニシテ
  置キマス、ソレカラ次ニ臨時利得稅法ノ法案
  ノ中ニアリマス讓渡利得ノ點ニ關シテ質問
  致シマス、是ハ旣ニ委員多數ノ方々カラ御
  尋ガアツタト思ヒマスカラ、私ハ簡單ニ御
  尋シテ要領ヲ得タイト思フノデアリマス、
  第十一條ノ二デスガ「總收入金額ヨリ取得
  價額、設備費、改良費及讓渡ニ關スル必要
  ノ經費ヲ控除シタル金額ニ依ル」トナツテ
  居リマスガ、配付セラレタ命令要綱ニ依リ
  マスト見積價格ハ之ヲ時價ニ依ツテ決定ス
  ルコトニナツテ居リマスガ、時價ヲ評定ス
  ルノニ時價ガハツキリ分ラヌモノガアル、
  之ヲ稅務署ダケデ勝手ニ評定サレルカドウ
  カ

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• 096・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ昭和十一年十二月三
  十一日以前ニ鑛業權ヲ賣却シタル場合ニ起
  ル問題デゴザイマス
  〔委員長退席小山委員長代理著席〕
  時價ノ評定ハ鑛業權ニ付テハ相當難カシイ
  點ガアルト思ヒマス、隨テ戰時利得稅施行
  ノ際ニ於キマシテモ、全國ニ亙リマシテ成
  ベク資料ヲ澤山蒐集致シマシテ、相互比較
  〓究シテ評價ノ適切ヲ期シタノデゴザイマ
  ス、此ノ度モ全國ニ亙リマシテ出來ルダケ
  多クノ資料ヲ蒐集致シマシテ、各地ニ於テ
  不權衡ノナイヤウニ致シタイト存ジマス、
  尙ホ讓渡利得ノ決定ニ當リマシテハ、所得
  稅法ノ所得調査委員會ノ議ニ付シテ決定致
  スノデアリマシテ、隨テ所得調査委員會ニ
  於キマシテ利得算出ノ根基ニナツテ居ルモ
  ノノ評價ト云フ點モ十分ニ審議セラレル譯
  デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=96

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• 097・田村秀吉

  ○田村委員　現在ハ金鑛ヲ首メ色々ナ鑛山
  ヲ開發シナケレバナラヌ、全國的ニ試掘ヲ
  ヤツテ見タリ、色々ヤツテ居ルガ、私ハ大
  キナ會社ナドノ出來タ場合ニハサウ云フ
  心配ハナイト思フノデスガ、日本ノ到ル處
  ニアル小サナ鑛山ヲ皆ガ探シテ、偶、〓試掘ヲ
  シテ見テ良ササウダカラ之ヲ鑛山ニスルト
  云フ場合ニ、十万圓或ハ二十万圓トカ云
  フ會社ヲ作ツテ、之ニ現物出資トシテ出ス
  際ニハ讓渡利得ト云フモノガ出テ來ルノデ
  ス、設備費ト云フヤウナモノハ僅カナモ
  ノデス、二十万圓ノ會社トシテ、十万圓ノ
  現物出資ト看做シテ之ヲ差引ケバ-無論
  市場價格ハ別ニアリマセヌ、之ヲ所得調査
  委員ガ假ニ關係致シマシテモ、中々巧ク時
  は
  價ガ評定出來ナイト云フコトニナル、サウ
  スルトサウ云フコトヲ始メルコトハ非常ニ
  困難ニナルカラ、小サナ鑛山ノ開發モ到ル
  處ニ今日ノ時局上必要トサレテ居ルノデゴ
  ザイマスガ、之ヲ壓迫シテ來ルコトニナル
  虞ガ非常ニアルト思ヒマス、此ノ點ニ對シ
  テドウ云フヤウナ御考デアルカヲ伺ヒタイ
  ト思ヒマス

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• 098・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ昭和十四年ノ四月一
  日以降原始的ニ取得シタ鑛業權ニ對シマシ
  テハ讓渡利得ノ課稅ハ致サナイ積リデゴザ
  イマスカラ、今後ノ探鑛ニ依ツテ得ラレタ
  鑛業權其ノモノニ付テハ御心配ノ點ガ除カ
  レルト存ジマス、尤モ今後ノ創設ニ掛ルモ
  ノデモ其ノ權利ヲ他人ヨリ讓受ケテ、更ニ
  之ヲ他ニ轉賣スルト云フ場合ニハ課稅ノ問
  題ガ起ツテ來ルト思ヒマス、自分デ探鑛シ
  テ權利ヲ創設シタト云フ者ガ、其ノ權利ヲ
  他ニ賣ル場合ニハ今後ノ新シイモノニ付テ
  ハ課稅ハ致サナイ、隨テ其ノ點ニ於テ今後
  ノ鑛業開發ニ支障ヲ來スト云フコトハ考ヘ
  得ラレナイト思フノデアリマス、鑛業權ヲ
  得テ會社ニ現物出資スル場合ニ價格ガ能ク
  分ラナイカラ、一應相當高目ニ評價シテ出
  スト云フ場合ニ問題ガ起ルデハナカラウカ
  ト云フ御話デゴザイマス、サウ云フ事例モ
  アルカト存ジマス、從來ハ此ノ課稅ハナカ
  ツタモノデスカラ、比較的サウ云フ方面ニ
  モ餘リ留意セラレナイデ居タカモ知レマセ
  ヌケレドモ、將來斯ウ云フ課稅ノ問題ガア
  ルト云フコトヲ承知ニナレバ、會社ヲ起ス
  ト云フ場合ニ於キマシテモ比較的評價ノ適
  切、堅實ヲ期シ得ル、ソレガ寧ロ却テ此ノ
  鑛業開發ノ爲ニ資スルノデハナカラウカト
  考ヘルノデゴザイマスガ、如何デゴザイマ
  セウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=98

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• 099・田村秀吉

  ○田村委員　私ハ或ル意味ニ於テ會社ヲ拵
  ヘル時ニ「ルーズ」ニシテ居ルコトガ、流動
  資金ノ上ニ、隨テ產業開發ノ上ニ好イト見
  ルノデアリマスガ、是ハ議論ノ分レル所デ
  アリマスカラソレ以上ハ申上ゲマセヌ、ソ
  レカラ臨時租稅措置法中ノ第一條ノニデス
  ガ、留保金額ノ四割以上ヲ命令ヲ以テ定ム
  ル方法ニ依ツテ運用スル云々ト云フ輕減ノ
  問題デスガ、此ノ規定ハ總動員法第十一條
  ノ發動スル場合ノコトヲ考慮ニ入レテ規定
  セラレタノデアルカドウカ、ト云フ意味ハ、
  會社ノ都合デ配當ヲ適當ニヤツテ、自由ニ
  留保シタモノヲ政府ノ希望スル時局ニ適應
  スル方面ニ運用シタ場合ハ百分ノ二·四五ヲ
  乘ジテ云々、斯ウ云フ風ニ輕減額ヲ決メテ
  居リマスガ、配當制限ヲヤリ、留保ヲ强制
  セラレル、總動員法第十一條ガ發動シタ場
  合更ニ其ノ留保金ヲ政府ノ希望スル方面ニ
  運用スル、二度政府ノ言フ通リニヤラナケ
  レバイカヌ、是ハ自由ニ留保シテ居ルモノ
  ヲ政府ノ氣ニ入ル方法ニ使ツタ場合ノ輕減
  ノ規定デスカト云フ點ガ私ノ疑問デスガ、
  ソレヲ考慮ニ入レラレテ一括シテ規定セラ
  レタカドウカ

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• 100・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　總動員法十一條ノ發動ハ
  マダ致シテ居リマセヌカラ、隨テ此ノ臨時
  租稅措置法ノ第一條ノ二ハ是ト聯關關係ガ
  アツテ、ソレヲ前提トシテ立案シタモノダ
  トハ申上ゲ兼ネルノデアリマス、併シナガ
  ラ總動員法十一條ニ於キマシテ、所謂配當
  制限ヲ爲シ得ルヤウニナツテ居ルモノハ、
  相當利益ノアル場合デモ直チニ之ヲ社外支
  出ニセズ、出來ルダケ社內ニ留保シテ將來
  其ノ會社ノ事業ノ發展ニ資スルト云フ趣旨
  ナノデゴザイマシテ、サウ云フ見地ニ立チ
  マスルト、大體臨時租稅措置法ノ第一條ノ
  一一モ同ジ方向ヲ指シテ居ル、斯ウ云フコト
  ガ言ヘルノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=100

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• 101・田村秀吉

  ○田村委員長　今方向ヲ指シテ居ルト言ハ
  レルガ、總動員法第十一條ヲ發動シタ場合
  ニ、是レ以上ニ留保金ノ運用ニ對シテハ
  輕減ノ必要ガアルノデハナイカト思フノデ
  スガ、如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=101

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• 102・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　私別ニ左樣ニハ考ヘテ居
  リマセヌ、總動員法第十一條ノ發動ニ依ツ
  テ、配當制限ガ如何ナル形ヲ取ツテ勅令ニ
  規定セラレルカト云フコトハ、マダ申上ゲ
  兼ネルノデアリマスガ、假ニ從來相當高率
  ノ配當ヲヤツテ居ル會社ガアツタト致シマシ
  テ、旣往ノ配當ノ程度マデハ配當シ得ルト
  云フ風ニ總動員法ノ勅令デ規定セラレテ居
  リマスレバ、其ノ會社ハ場合ニ依ツテ其ノ
  期ノ所得ノ二割トカ三割程度ノ留保デ濟ム
  場合モアルデハナイカト存ジマス、又新設
  會社等ニ於キマシテ、若シモ最高年六分マデ
  ノ配當ガ出來ルト云フ風ニ總動員法ノ勅令
  デ規定セラレテ居ルト致シマスレバ、其ノ
  期ノ利益ガ比較的少イ場合ニハ、殆ド其ノ
  利益ノ大部分ヲ配當ニ充テルト云フコトモ
  出來ルカモ知レマセヌケレドモ、此ノ臨時
  租稅措置法ノ第一條ノ二ニ於キマシテハ其
  ノ期ノ所得ノ四割以上ヲ留保シタ場合デナ
  ケレバ適用ヲ受ケナイ、斯ウ云フコトニナ
  ツテ居リマスノデ、兩者ノ間ニ相當食違ヒ
  ガアルノデゴザイマス、隨ヒマシテ總動員
  法ノ發動ガ愈〓行ハレタ場合ニハ、尙ホ此ノ
  臨時租稅措置法ノ第一條ノ二ノ條項ヲモウ
  少シ變ヘテ、負擔輕減ノ程度ヲ大キクシナ
  ケレバナラヌデハナイカト云フコトニ對シ
  マシテハ、左樣ナ必要ハ別ニナイノデハナ
  カラウカト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=102

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• 103・田村秀吉

  ○田村委員　ソレカラ第一條ノ三デスガ、
  三ノ規定中ニ「設備ノ增設」ト「製造開始」ト
  云フ言葉ガアリマスガ、製造開始トハ如何
  ナル時ヲ謂ハレルノカ、又「設備ノ增設」ト
  ハ如何ナル時ヲ其ノ時ト認メラレルノデア
  リマスカ、命令案要綱ニハ申請ニ基イテ適
  當ニ認定スルト云フ風ニナツテ居リマ 人
  ガ、其ノ年及ビ其ノ翌年ヨリ三年間其ノ製
  造方法ニ依ルト云フノデスカラ、非常ニ關
  係スル所ガ大キイト思フノデスガ、先ヅ其
  ノ點ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=103

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• 104・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　現在ニ於キマシテモ此ノ
  開業ノ年及ビ翌年カラ三年間免稅スル、斯
  ウ云フコトニナツテ居リマスノデ、此ノ度
  ノ規定ハ既設ノ設備ニ增設シタ場合ノ規定
  ガ含ンデ居リマシテ、增設シタ場合ニ於テ
  ハ增設シタ設備ニ依ツテ事業ヲ始メタ時カ
  ラ其ノ年及ビ翌年カラ三年間其ノ增設分ニ
  付テ免稅スル、斯ウ云フ趣旨デゴザイマス、
  ソレカラ製造方法ト云フノハ新シイ製造方
  法ニ依ツテ仕事ヲ始メタ時カラ其ノ年及ビ
  翌年カラ三年間免稅スル、斯ウ云フ趣旨デ
  ゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=104

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• 105・田村秀吉

  ○田村委員　此ノ中デ「製造開始」ト云フノ
  ハ製造ヲ始メタ、製造ニ著手シタ時ヲ開始ト
  言フノカ、或ハ又第一囘ノ製品ヲ完了シタ
  時ヲ「製造開始」ト看做スカ、是ハ爭ノ起ル
  問題デゴザイマス、行政訴訟ナドデヨクア
  ルコトデアリマス、ソレカラ「設備ノ增設」ニ
  致シマシテモ設備ガ完了シタ時カドウカ、
  作業ヲ開始シタ時ヲ設備ノ增設アリタルモ
  ノト看做スカ、二樣ニ解釋出來ルト思フノ
  デスガ、何處ヲ押ヘテ居ラレマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=105

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• 106・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　增設ノ方ハ其ノ增設ノ設
  備ガ完了シタ時デアリマス、ソレカラ製造
  方法ハ其ノ新ナル製造方法ニ依ツテ製造ヲ
  開始シタ時カラデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=106

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• 107・田村秀吉

  ○田村委員　ソレカラ之ヲ認定スルノハ稅
  務當局デアルノカ、或ハ又他ノ監督官廳等
  ニ認定ヲ任スノカ、斯ウ云フ問題ガ起ルト
  思ヒマス、例ヘバ內地ニ會社ガアル、サウ
  シテ臺灣トカ朝鮮トカニ工場ガアル、其ノ
  臺灣朝鮮等ニアル所ノ工場ノ增設ハ何時ア
  ツタカ、又製造開始ガ何時アツタカト云フ
  認定ハ稅務當局直接ニヤルカ、或ハ監督官
  廳ニ之ヲ委任スルカ、是等ハドウ云フ風ニ
  ナツテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=107

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• 108・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　監督官廳ト申シマシテモ、
  ソレハ的確ニアル場合トナイ場合トアル譯
  デアリマス、一般ノ會社ニ付テハ監督官廳
  ト云フノハ何處ヲ指スカ、商工省ヲ指スカ
  ドウカト云フ問題ガアルノデゴザイマス、
  或ハ御尋ノ點ハ製鐵事業トカ、工作機械製
  造事業トカ、造船業トカ、サウ云フ方面ニ
  付キマシテハ特定ノ監督官廳ガアル、サウ
  云フ御趣旨カトモ存ジマスガ、要スルニ臺
  灣トカ朝鮮ニ於ケル工場ニ於テ該當ノ事實
  アリヤ否ヤ、或ル場合ニハ其ノ監督官廳ニ
  對シテ照會スル場合モアリマスシ、又ハ其
  ノ所轄ノ稅務行政ヲ掌ツテ居ル官廳ニ照會
  シテ、ソレニ依ツテ認定スル場合モアリマ
  セウ、個々ノ場合ニ適當ナル資料ニ依ツテ
  認定シテ行クベキモノト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=108

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• 109・田村秀吉

  ○田村委員　サウスルト總テ稅務署ニ依ツ
  テ認定セラレル譯デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=109

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• 110・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　當該會社ノ申請ニ依リマ
  シテ、終局的ニハ稅務署ニ於テ認定致ス次
  第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=110

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• 111・田村秀吉

  ○円村委員　厚生省ノ政府委員ハ御見エニ
  ナツテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=111

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• 112・小山倉之助

  ○小山委員長代理　マダ見エテ居リマセ
  ヌ、決算ノ方デ今答辯中ダサウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=112

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• 113・田村秀吉

  ○田村委員　ソレデハ私ハ大藏大臣、厚生
  大臣ニ對スル質問ハ保留致シマシテ、尙ホ
  此ノ際一寸政府委員ニ御伺シテ置キタイコ
  トガアリマス、臨時利得稅法ノ第四條ノ一一
  ノ三デスガ、此ノ臨時利得稅增徵ノ問題ヲ
  參考ノ爲ニ伺ツテ置キタイノデス、政府カ
  ラ戴イタ資料ノ中ニ、甲旣往事業年度ノ平
  均利益ノ一番大キイモノト云フカ、割合好
  イノガ三割四分二厘、乙既往事業年度ニ三
  割七分二厘ガ百四十五アル、甲ニシテモ十
  六アル、此ノ超過利得ニ對シテ利得稅ヲ課
  ケラレル、サウシマスト、其ノ當時平均利
  益ガ七分以下デアツタモノハ七分ト看做ス、
  其ノ後ノ七年カラノモノハ七分以上ヲ臨時
  利得トシテ、臨時利得稅ガ課ケラレル譯デ
  ス、ソコデ此ノ大キナヤツニ普通所得稅ト
  超過所得稅ガ課ツテ來テ、其ノ上ニ更ニ臨
  時利得稅ガ無論課カル、所ガ其ノ當時利益
  ノナカツタ會社、詰リ其ノ後ニ出來タ會社
  ニ對シテハ、甲既往事業年度ニハ七分以上
  ノ場合ニ普通所得稅、臨時利得稅、超過ノ
  利得ガアツタ場合ニハ超過所得稅ガ課カル
  ノデス、所ガ昭和四五六年ノヤウナ不景氣ノ
  眞ツ最中ニサヘモ三割四分二厘ノ利益ヲ上
  ゲテ居ルヤウナ、基礎ノ確實ナ會社ニ普通
  所得ト超過所得ト、是レ以上ニナツタ場合
  ノ臨時利得稅ガ課ツタ爲ニ、其ノ當時利益
  ガナクシテ七分以下ヲ七分ト看做サレタモ
  ノニ普通所得ト臨時利得稅トガ課ルト、私
  ノ考デハ斯ウ云フ不景氣ナ時、及ビ乙既往
  事業年度ニ三割モ利益ヲ上ゲテ居ルモノノ
  方ガ擔稅力ハアルガ、重複シテ居ルモノヲ
  全部加算シテモ此ノ方ガ輕イノデハナイカ
  ト思フノデアリマスガ、如何デスカ

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• 114・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　ソレハ課稅ノ率ハ輕クナ
  ツテ居ルノハ仰セノ通リデアリマス、併シ
  臨時利得稅法ノ建前ト致シマシテ、增加シ
  テ行ク所得ガアルモノハソコニ特別ノ擔稅
  力ガアルト見テソレニ課稅シテ行クノデゴ
  ザイマス、隨テ臨時利得稅法ノ建前ト致シ
  マスト、以前カラ收益率ノ多イモノニハ此
  ノ臨時利得稅ヲ課ケル必要ハナイ、斯ウ云
  フ結論ニナツテ來ルノデゴザイマス、本法
  ノ根本趣旨ガ寧ロソコニアルト見ナケレバ
  ナラヌト存ジマス

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• 115・田村秀吉

  ○田村委員　サウシマスト、一語ニシテ言ヘ
  バ是ハ成金稅ダト看做サレル譯デス、所ガ
  昭和七年ニ事業ヲ起シテ、是ハ非常ニ堅實
  ナ人間デ、而モ經營能力ガ非常ニアル爲ニ
  利益ヲ擧ゲテ來タ、ソレニ昔カラ三井三菱
  トカ云フヤウナ基礎ノ鞏固ナ、而シテ擔稅力
  ガ非常ニアル者ヨリモ、サウ云フ新時代ノ
  產業人トシテ生レテ來タ者ニ高クナルト云
  フコトハ、擔稅力ノ上カラ見マシタノト、
  モウ一ツハ產業開發ノ上カラ見ルノト、此
  ノ二點カラ見マシテ、殊ニ臨時的ナモノデ
  スガ、ドウモ少シヲカシイ、私ハ臨時利得
  稅法ノ出來タ當時ノ事情カラ考ヘテ、其ノ
  時ハ斯ウシナケレバナラナカツタダラウト
  思フ、財界ノ色々ナ事情ヤ、色々ナ力ニ鑑
  ミテサウデアツタガ、併シ現在カラ言ヘバ、
  斯ウ云フコトハ一切止メテ、其ノ當時三割
  四分二厘モノ平均利益率ガアツタ、片一方
  ハ新シイモノニ七分乃至一割、斯ウ見テ居
  ルカラ、イツソ之ヲ此ノ際ハ支那事變ト云フ
  大キナ問題ヲ控ヘテ居ルカラ、平均シテシマ
  ツタラドウカ、一割以上ナラ一割以上、或
  ハ二割ナラ二割ト、新產業ヲ保護スル、擔稅
  力アル者ニハヤハリ之ヲ相當ニ課ケル、何
  モ產業界ニ於テ强イ基礎ヲ持ツテ居ル者ヲ、
  他ノ新興產業ヨリモ特ニ輕クスルト云フコ
  トハ宜クナイ、今日ノ情勢カラ言ツテ、王侯
  將相豈種有ランヤノ意味ニ於テモ、ヲカシ
  イヤウニ考ヘルノデスガ、之ヲサウシナキヤ
  ナラヌノハドウ云フ譯カト云フコトヲ伺フ
  ノハ、大臣ニ伺フノガ本當カモ知レマセヌ
  ガ、此ノ點ハドウ云フ風ニ御考ヘデスカ

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• 116・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　結局臨時利得稅ノ甲種ノ
  利得ノ基準年度ガ古キニ過ギルノデハナイ
  カト云フノガ、一ツノ問題デアルト思ヒマ
  ス、確ニ十年以前ノ事績ヲ基準ト致シマシ
  テ、今後モ甲種利得ヲ計算シテ行クト云フ
  ノハ如何デアラウカト云フコトバ、痛感シ
  テ居ル次第デゴザイマシテ、是ハ昭和十五
  年度ヲ期シテ實行シヨウトスル一般稅制整
  理ニ於ケル一ツノ大キナ〓究問題ダト存ジ
  マス

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• 117・田村秀吉

  ○田村委員　其ノ點ハ諒承致シマシタ、私
  モサウ考ヘテ居リマス、新產業ガ勃興スル
  時代ニ、產業政策上カラ、稅政制度ト云フモ
  ノヲ考ヘナクチヤナラヌ、今政府委員ハ十
  五年度ノ稅制根本改革ノ上ニ相當考慮シナ
  ケレバナラヌト言ハレタノデ、私モ滿足シ
  マシタガ、ドウモ此ノ點ハ、私ハ此ノ法文
  ヲスラツト讀ンデ居ル内ニ、一寸ヲカシク
  感ジタノデアリマスカラ、特ニ今ノ御言葉
  ニ基イテ是正シテ戴キタイト思フ、斯ウ云
  フ擔稅力ノアルモノハ輕ク、新シク勃興ス
  ル者ニ重クスル、從來カラ强イカヲ持ツテ
  居ル者ヲ保護スルト云フコトハ近代思想ノ
  上カラ言ツテモ、產業ノ助長政策カラ言ツ
  テモ不適切デアルト思ヒマスカラ、二四、
  我慢致シマセウガ、是正セラレンコトヲ望
  ミマス、是ハ大臣ニ要求シタイト思ヒマス

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• 118・小山倉之助

  ○小山委員長代理　服部君

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• 119・服部岩吉

  ○服部委員　先ヅ第一ニ御尋申上ゲテ置キ
  タイノハ、臨時利得稅ニ於キマシテ、御承
  知ノ通リ事變ニ關係シタ所得デナクシテ、
  例ヘバ漁獲ノ所得デアリマス、御承知ノ通
  リ漁業ノ成績ト云フモノハ、一ツノ周期的
  ナ關係ガアリマシテ、年々同ジ力ヲ以テ漁
  獲ノ事業ヲヤリマシテモ、魚群ノ周期的ナ
  關係ニ依ツテ非常ニ所得ガ違ツテ參リマス
  ト云フコトハ御承知ノコトト思フノデアリ
  さっ、隨テ大體今日マデノ實績カラ申シマ
  スト云フト、先ヅ三年四年ト云フモノガズ
  ツト一ツノ「レベル」ヲ以テ所得ガ決ツテ居
  ル、所ガ其ノ三年目乃至四年目ニハ潮ノ關係、
  或ハ暖流ノ關係トカ、色々ナ關係デ魚漁ガ
  ヤツテ來ル、此ノ時ニハ非常ナ收獲ガ上ツ
  テ來マス、此ノ收獲ハ戰時利得稅ノ關係カ
  ラ申シテ、事變ニ依ツテ取得シタ利益デナ
  クシテ、サウシタ周期的ナ關係ニ依ツテ意
  外ナ所得ヲ得タ、斯ウ云フ場合ニ今度ノ利
  得稅ノ增徵ノ方法デ徵收スルト云フコトハ、
  此ノ臨時利得稅ノ趣旨カラ言ツテモ、合
  ハナイヤウニ考ヘラレルノデアリマス、斯
  ウ云フ場合ノ所得ニ付キマシテハ相當考慮
  ヲスベキ必要ガナカラウカ、斯樣ニ考ヘラ
  レルノデアリマスガ、此ノ點ニ付キマシテ
  當局ノ御所見ヲ承ツテ置キマス

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• 120・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　只今ノ點ニ付キマシテハ
  先般森田委員ノ御質疑ニ對シテ、大藏大臣
  カラ詳細御答シテ置イタ筈デアリマスカラ
  シテ、私ハ此ノ際簡單ニ御答致シテ置キマ
  ス、今ノ御話ノ點ハ臨時利得稅法創設ノ場
  合ニ、隨分議論ニナツタ點デゴザイマシテ、
  結局此ノ事變ニ依ル利得、或ハ臨時ノ利得
  ナリヤ否ヤヲ見ルニ業態每ニ區分シテヤル
  ノハ理論トシテハ適當デアルケレドモ、實
  行ハ到底出來ナイ、斯ウ云フコトデゴザイ
  マシテ、業態ニ依ツテ區分スルコトハ致
  サナイ、斯ウ云フコトニナツテ當時カラ
  議會ノ諒承ヲ得テ居タ問題ダト存ジテ
  居リマス、尙ホ個人ノ原始產業ト認メラ
  ルル程展ノ漁業ニ付キマシテハ、臨時利得
  稅ノ課稅ト云フコトハゴザイマセヌ、法人
  ダケデゴザイマシテ、法人ニ於キマシテモ
  甲既往事業年度ニ於テハ七分ヲ超過スル、
  乙既往事業年度ニ於キマシテハ一割ヲ超過
  シタ場合ニ、其ノ超過部分ニ對シテ課稅ス
  ルト云フノデゴザイマスカランテ、先ヅ其
  ノ程度デ辛抱シテ戴クヨリ外ナカラウ、是
  ハ課稅ノ實際ノ問題ト致シマシテ、斯ク致
  スヨリ仕方ガナイ、斯ウ云フコトニナツテ
  居ル次第デゴザイマス

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• 121・服部岩吉

  ○服部委員　課稅ノ技術上カラ考へマスレ
  バ今ノ御主張ノヤウナ考ヘ方ヲシナケレ
  バ至難ノヤウニモ考ヘラレル、併シ立法ノ
  精神カラ申シマスルト、サウシタ意外ナ所
  得ノアツタ場合、ソレガ七分乃至一割以上
  ニ〓ツタ場合ニハ、事變ノ關係ニ依ツテ受
  ケタ所得デナイニ限ラズ、ソレヲ取ルト云
  フコトニナリマスト、立法ノ精神ニモ合ハ
  ナイヤウナコトガ痛切ニ感ゼラレルノデス、
  斯ウ云フ點ニ於キマシテハ、特ニ考慮セラ
  ルベキ必要ガアラウト考ヘラレマスルカ
  ラ、唯立法技術上ノ點ト云フ立場ヨリモ、
  立法ノ本旨カラ特別ノ考慮ヲサレルヤウ
  ニ特ニ希望ヲ致シテ置ク次第デアリマス
  次ニモウ一點御伺シテ置キタイト思ヒマス
  點ハ、是ハマダ今審議中デアリマスガ、產金
  奬勵ノ爲ノ所謂政府補償ノ問題デアリマ
  ス、政府ガ命令ヲ以テ產金ニ要スル資金等
  ヲ銀行其ノ他カラ融通サセタ場合ニ於キマ
  シテ、其ノ事業ガ非常ニ產金額ガ少カツタ
  トカ或ハ其ノ他ノ關係ニ依ツテ損失ヲ招イ
  タ、隨テ其ノ債務ノ履行ガ出來ナカツタ場
  合ニ於テハ、政府ハ其ノ負債ニ對シテ補償
  スル、斯ウ云フ立法ガ出テ居ル、所ガ今度
  ノ所謂特別稅ノ臨時利得稅カラ申シマスト、
  斯ウシタ產金會社ガ相當大キナ利益ノアツ
  タ場合ニ、其ノ臨時利得稅ニ依ツテ稅ヲ徵
  收スルト云フコトニナルト、非常ナ納稅額ニ
  ナツテ參リマシテ、一方產金奬勵ノ趣旨、
  或ハ又サウシタ奬勵ノ爲ニ政府ガ補償マデ
  モシヨウト云フヤウナ趣旨トハ大分距タリガ
  アルヤウニ考ヘラレルノデアリマス、斯ウ
  云フ產金事業ハ、相當ノ利益ノアヅタ場合
  ニ於キマシテモ、產金獎勵ノ見地カラ臨時
  利得稅ノ徵收ニ付テモ考慮ヲ拂フベキガ至
  當デナイカ、何トカ特別ノ方法ヲ講ズルコ
  トガ適當デナイカ、斯樣ニ考ヘル者デアリ
  マスガ、當局ノ御所見ヲ承ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=121

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• 122・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　產金事業ニ付テ政府ガ特
  別ノ保護助長策ヲ執ツテ居ルト云フコトハ
  御說ノ通リデゴザイマス、今ノ補償ノ如キ
  モ、其ノ產金事業會社ガ結局利益ガ上ラナ
  イ場合ニ起ツテ來ルノデゴザイマスルガ、
  利益ガ上ラナイ場合ニ補償スルコトト利益ガ
  相當多イ場合ニ課稅スルノトハ自ラ別個
  ニ考ヘテ然ルベキデハナカラウカト存ジテ
  居リマス、獨リ產金事業ノミニ限ラズ、例
  ヘバ製鐵事業法ニ於キマシテモ、或ル一定
  年間一定ノ範圍內ニ於テ所得稅、營業收益
  稅ト云フヤウナモノヲ免稅シテ居ルノデゴ
  ザイマスケレドモ、其ノ製鐵事業會社ガ多
  額ノ利益ヲ上ゲル場合ニ於キマシテハ、臨
  時利得稅ハ課稅致シテ居リマス、其ノ他各
  種ノ重要物產製造業等ニ於キマシテモ、開
  業ノ年及ビ翌年カラ三年間所得稅、營業收
  益稅ヲ免除スルト云フ規定ガアリマスケレ
  ドモ、ソレガ又多額ナ利益ヲ上ゲタ場合ニ
  ハ臨時利得稅ハ賦課スル、斯ウ云フコトニ
  ナツテ居リマスルノデ、所得稅、營業收益
  稅ハ相當免除シテ居リマシテモ、利益ガ相
  當度多イ場合ニハ或ル程度負擔サセテ然ルベ
  キデハナカラウカ、殊ニ段々增稅ニ依ツテ
  稅ノ負擔ガ多イ場合ニ所得稅、營業收益稅
  ヲ免稅スルカラ臨時利得稅モ免稅スルト云
  フノハ餘リニ行過ギデハナカラウカ、斯ウ
  存ズル次第デアリマス
  〔小山委員長代理退席、委員長著席〕
  尤モ產金事業ノ大事ナコトハ十分承知シテ
  居リマスノデ、減價償却等ニ付キマシテハ
  出來得ル限リ寛大ニ取扱フ方針ニ致シテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=122

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• 123・川崎克

  ○川崎委員長　一寸服部サン內務大臣ヘノ
  御質問ガアルノデスカ、内務大臣ガ御見エ
  ニナツテ居リマスカラ其ノ方カラ御質問ヲ
  願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=123

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• 124・服部岩吉

  ○服部委員　今一寸質問シタ其ノ補足ヲ致
  シマス、所謂命令ヲ以テ政府ガ產金ヲシタ
  場合、今審議中ニ屬シテ居リマスガ、是一
  無論成立スルニ相違ナイト思ヒマス、政府
  ガ增產ヲ命令シテ居ルヤウナ事業ニ對シマ
  シテ、多少利益ノアツタ場合ニ臨時利得稅
  ヲ取ツテ參リマスト、却テ其ノ稅金ヲ取ラ
  レル爲ニ增產事業ガ出來得ナイヤウナ矛盾
  ヲ來シテ來ルヤウニ考へラレルノデアリマ
  ス、此ノ點ニ付キマシテハ、特ニ適當ナル
  考慮ヲシテ戴キタイ、斯ウ云フコトヲ御願
  シタ次第デアリマス
  ソレデ此ノ點ハ別ト致シマシテ、內務大
  臣ガオ出デニナリマシタカラ内務大臣ニ伺
  ヒタイト思ヒマス、過日來本委員會ニ於キ
  マシテ大藏大臣ハ各委員ノ質問中、十五年
  度ニ於キマシテ根本的ナ稅制改革ヲ國家ニ
  大ナル變動ノナキ限リヤル決心ヲ持ツテ居
  ル、斯樣ニ言明ヲセラレテ居ルノデアリマ
  ス、ソコデ此ノ根本的ナ稅制改革ヲ斷行サ
  レル場合ニ於キマシテモ、私ハ地方農村ト
  都市ニ於ケル所ノ所謂財源ト云フモノハ、
  常ニ非常ナ差異ガアル、是ハ何時マデ經ツ
  テモ都市ト農村トノ富ノ偏在、隨テ地方財
  政ノ稅源ト云フモノハ極メテ地方農村ニハ
  惠マレズ、一方都市ニハ惠マレテ參ツテ居
  ル、現在サウシタハツキリシタ事實ガ現ハ
  レテ居ルシ、將來相當長イ期間ニ亙リマシ
  テモ、此ノ實際ノ狀態ハ續イテ行クモノト
  考ヘラレルノデアリマス、隨テ此ノ都市ト
  農村トノ所謂財源ノ均衡ヲ是正スル爲ニハ、
  現在ノ臨時地方財政補給金、此ノ制度ガ何
  處マデモ必要デアル、斯樣ニ考ヘラレマス
  シ、無論當局ニ於テモ御同感ト確信ヲ致シ
  テ居ルノデアリマス、ソコデ今日ハ是ガ臨
  時立法ノ如キ所謂臨時ト云フ關係ニアリマ
  スルガ、是ハ根本的ニ恆久的ナ制度トシテ
  確立シテ行ク必要ガアル、斯樣ニ考ヘルノ
  デアリマス、此ノ點ニ付キマシテ內務大臣
  ハ地方及ビ都市ノ財源ノ調整ノ爲ニ此ノ稅
  制ノ改革ト同時ニ此ノ制度ヲ恆久的ナ制度
  ニ確立ヲシテ行クト云フ御方針デアラレマ
  スカ、此ノ點ヲ承ツテ置キタイト存ズルノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=124

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• 125・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　來年度ニ於キマシテ國稅、
  詰リ中央、地方ヲ通ジテノ稅制ノ根本的ノ
  改正ヲヤルト云フコトハ大藏大臣モ述ベテ
  居ラレマス、私共モ其ノ點ハ是非實現致シ
  タイト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソコデ
  地方稅制ヲ如何ニスルカト云フコトニナリ
  マスルト、國稅ガ如何ニ體系付ケラレルカ
  ト云フコトニ依ツテ色々ト影響ガアル
  コトハ勿論デアリマス、ソコデ只今ノ所地
  方稅ヲドウ云フ風ニ按配スルカ、ドウ云フ
  建前ヲ以テ行クカト云フコトニ付テハ未ダ
  內務省ト致シマシテモ確然タル建前ハ持ツ
  テ居リマセヌ、唯如何ニ之ヲ致シマ
  シテモ、要スルニ獨立ノ稅、國稅ニ對スル
  附加稅ト或ル程度ノ交付金ノヤウナモノハ
  必要デハナイカト思フノデアリマス、唯其
  ノ內容ヲドウ云フ風ニ致シマスカ、ソレ等
  ニ付テハ十分一ツ更ニ〓究ヲシテ行キタイ
  ト思フノデアリマシテ、唯根本的ノ稅制體
  系ガ出來マシテ、尙且ツソレニ或ル程度ノ
  交付金ナルモノガ必要デアルト云フ結論ニ
  ナリマスレバ、ソレハヤハリ一ツノ恆久的
  ナモノニナラザルヲ得ナクナルノデアラウ
  ト思フノデアリマス、唯其ノ點ニ付キマシ
  テハ尙ホ篤ト〓究シタイト云フコトヲ申上
  ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=125

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• 126・服部岩吉

  ○服部委員　只今ノ大臣ノ御答辯ニ依リマ
  スト、國稅ト地方稅トノ關係ガマダハツキ
  リト見込ガ立ツテ居ナイノデ、其ノ方針ガ
  立タナケレバ地方財政調整交付金ノ制度モ
  之ヲ確立スルカ否カト云フコトハ決心ガ付
  カナイ、斯ウ云フ御答辯ノヤウニ拜聽致シ
  マシタ、無論地方稅竝ニ國稅トノ關係ガ或
  ル程度確立サレナケレバ此ノ補給金制度ノ
  問題ニ付テモ意見ガ確立サレナイヤウニモ
  考ヘラレマスガ、併シ私ハ今日ノ我國ノ經
  濟情勢或ハ地方ノ關係カラ見マシテモ、ド
  ウシテモ所得稅ト云フモノガ國稅ノ大幹ト
  シテ、ソレニ派生的ナ所謂家屋稅ダトカ或
  ハ營業收益稅其ノ他ノモノヲ補完稅トシテ
  組立テラレマシテモ、必ズヤ地方ノ財政ト
  云フモノハ何ト言ツテモ其ノ財源トナルベ
  キモノガドウシテモ都市ニ偏重致シテシマ
  フノデアルカラ、地方稅ガ確立致シマシテ
  モ、都市ト農村トノ財源ニハ相當開キガ生
  ジテ來ル、之ヲ是正シナケレバ我國ノ地方
  自治ノ成績モ大體ノ「レベル」ヲ以テ進ムト
  云フコトモ出來ナケレバ、又地方民トシテ
  其ノ負擔ガ都市ニハ極メテ地方稅トシテハ
  薄ク、農村地方方面デハ非常ニ重イ負擔ヲ
  シナケレバナラヌコトハ、是ハ何時ノ時代
  ニナツテモハツキリシタ問題ダト考ヘルノ
  デアリマス、國稅竝ニ地方稅ガ如何ナル形
  ニナツテ現ハレテ來ルトシテモ、私ハ此ノ
  地方財政ノ爲ニ一ツノ鞏固ナル制度ヲ立テ
  テ、サウシテ都市ト農村トノ財政ノ調整ヲ
  圖ツテ行クト云フコトガ必要ダト斯ウ考へ
  ルノデアリマス、此ス點ニ付キマシテ尙ホ
  諄イヤウデアリマスルガ、サウ云フ考ハナ
  イノデアルカ、唯今日國稅ト地方稅トヲ來
  年稅制ノ改革ヲヤル場合ニソレガ確定シテ
  行カナケレバ、此ノ地方ト都市トノ財政ノ
  調整方法ハ考ヘラレナイ、又國稅ト地方稅
  トガ確立スレバ、都市ト農村トノ所謂負擔
  ト云フモノガ公平ニナルノカドウカ、私、
  國稅竝ニ地方稅ト云フモノガ改革サレマシ
  テモ、都市ト農村トニ於ケル所ノ負擔ノ不均
  衡ト云フモノハ免カレ得ナイ、ソレヲ調整
  スルニハ今日ノ臨時地方財政補給金ヲ擴充
  スル必要ガアルト云フ考ヲ持ツテ居ルノデ
  アリマスガ、尙ホ此ノ點大臣ノ御所見ヲ承
  ツテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=126

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• 127・木戸幸一

  ○木戸國務大臣　重ネテノ服部サンノ御尋
  デアリマスガ、仰セノ通リニ假リニ稅制ノ根
  本的改正ヲヤリマシテ、體系ヲ整ヘマシテ
  モ、其ノ稅源ト申シマスカ、富ノ不均衡、
  都市ト農村ノ不均衡ト云フコトハ、是ハ中
  中是正スル所ノ制度ト云フモノハ難カシイ
  ト思ヒマス、隨テ都市ト農村トノ間ノ富ノ
  不均衡ヲ是正スル爲ニハ、或ル程度ノ財政
  調整ノ爲ニスル交付金ノ制度ガ必要ダト思
  ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=127

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• 128・服部岩吉

  ○服部委員　私ガ內務大臣ニ御伺致シマス
  點ハソレダケデゴザイマス、次ハ農林大臣
  ニ御尋シタイト思ヒマスガ、農林大臣ニ御
  伺致シマス點ハ產業組合ノ指導精神、及ビ
  產業組合ノ監督、此ノ二ツノ問題デアリマス
  ガ、最近產業組合ガヤツテ居ル仕事ガ行過
  ギタト云フ一般ノ輿論ニナツテ居リマスコ
  トハ、大臣モサウ云フ風ニソレヲ御聞及ビ
  ニナツテ居ルコトト考ヘマス、產業組合ガ
  行過ギテ居ルト云フ非難ハ、中小ノ商工業者
  ノ方面バカリデナイ、產業組合員自體モ亦、
  サウ云フヤウナ感ジヲ持ツテ居ル、私ハ產
  業組合ノ組合員ノ一人デアリマスガ、其ノ
  一人デアル私共ガ今日ノ產業組合ノヤリ方
  ト云フモノハ、少シク行キ過ギテ居ルト思
  フ、何故サウ云フコトヲ申上ゲルカト云フ
  ト、頭バカリガ非常ニ大キク伸ビテ行ツテ、
  今日ノ產業組合ハ少シモ尻尾ガ發達シテ居
  ナイ、所謂全販聯、全購聯等ガ組合員ノ希
  望スルヤウナ仕事ヲシナイデ、恰モ今日ノ
  全販聯、全購聯ハ產業組合ノ精神ニ隱レテ、
  一ツノ資本主義的ナ行キ方ニ堕シテ居ルヤ
  ウニ考ヘラレルノデアリマス、是等ノ今日
  ノ產業組合ハ私ガ申上ゲズトモ、其ノ組合
  ノ根本ニ非常ニ誤ガアル、今日ノ產業組合
  ガ其ノ組合員トシテ出資スル所謂株ノ口數
  デアリマスガ、是ハ一口ヨリ三十口マデ持
  ツコトニナツテ居リマス、其ノ組合ガ出來
  タ當時ニ於キマシテハ、ドウシテモ多少ノ
  資金ノアル者カラ資金ヲ集メ、資金ノナイ
  者ニハ一株ゾツデモ持タセテ、サウシテ組
  合ノ成立ヲサセヨウトシタ趣旨デアルコト
  ハ、申上ゲルマデモナイノデアリマス、此
  ノ一口カラ三十口マデノ株ヲ持タセルト云
  フコトニ依ツテ、何レモ農村ノ產業組合ハ、
  ヤハリ出資ニ對スル利廻-極メテ小サイ
  問題デアリマスガ、農村ニ於キマシテハ此
  ノ小サナ所謂資金ニ對スル利廻ト云フコト
  ヲ目標ニシテ、此ノ產業組合ハ事業ヲ經營
  シテ行ク、斯ウシタ行キ方ガ殆ド全國ノ產
  業組合ノ全部ヲ占メテ居ルト言ツテモ宜イ
  ト思フノデアリマス、隨テ事業ノ成績ハ要
  スルニ資本ニ對スル配當、組合カラ申シマ
  スレバ、剩餘金、是ノ高ニ依ツテ組合ノ實
  績ヲトスルト云ツタヤウナ、十年以前ノ產
  業組合ノ見方ヲシテ居ツタヤウニ私ハ考ヘ
  ルノデアリマス、隨テ監督ノ立場ニアル方々
  モ、其ノ組合ノ成績ハ先ヅ剩餘金ノ如何
  ヲ目安トシテ考ヘテ居ラレタヤウニ考ヘ
  ル、斯ウ云フ考デ剩餘金ガ多ケレバ、其ノ
  組合ハ非常ニ成績ガ好イト云フヤウニ指導
  シテ行ツタモノデアリマス、サウシテモウ
  一ツハ一口カラ三十口マデ持タセルト云フ
  此ノ出資ニ對スル利廻リト云フコトヲ考ヘ
  マス爲ニ、其ノ組合ノ理事ハヤハリ利益ノ
  アル仕事ヲシヨウト云フヤウナ傾向ニナツ
  テ參リマシテ、少々組合ノ精神、組合法ヲ
  合法的ニ脫法シテマデ、其ノ仕事ヲシテ參
  ツタノデアリマス、サウ云フヤウナ指導ヲ
  致シテ參リマシタ爲ニ、地方ニ於ケル所ノ
  全販聯、全購聯ヲ首メ、都市或ハ府縣ノ聯
  合會、更ニ町村ノ產業組合モ、今日ハ收益
  本位ト云フヤウナ考ヲ以テ、組合ノ仕事ヲ
  シテ居ルヤウニ感ゼラレルノデアリマス、是
  ガ要スルニ今日ノ產業組合ガ行キ過ギト云
  フ非難ヲ被ムラザルヲ得ナイコトニナツテ
  來タ理由デアルト考ヘルノデアリマス、私共
  ハ農村ノ產業組合ト致シマシテハ、其ノ組
  合ノ組合員ノ爲ニ或ハ農產物ヲ販賣スル、
  或ハ組合員ノ日常ノ消費方面ノ物ヲ買ツテ
  ヤル、斯ウ云フ場合ニアツテモ、買ツテヤ
  ル賣ツテヤルト云フ此ノ二ツノ精神デ進ン
  デ行カナクチヤナラヌト思フ、ソレニ付キ
  マシテハ、利潤ト云フヤウナモノハ捨テテシ
  マツテ、サウシテ組合員全體ニ向ツテ、少
  シデモ安イ手數デ買ツテヤルト云フコトガ
  組合ノ行キ方デアル、然ルニ其ノ買ツテヤ
  ル物ニモ相當ナ手數ヲ取リ、或ハ又賣ツテ
  ヤル物ニモ相當ナ手數ヲ取ツテ、サウシテ
  一方ニハ剩餘金ト云フヤウナコトヲ考ヘテ
  居ル、是ガ私ハ非常ニイケナイト思フノデ
  アル、斯ウ云フコトヲサセナイヤウニ、常
  ニ指導監督シテ行クコトガ必要デハナイ
  カ、サウスレバ自然ニ一般カラ產業組合ガ
  行過ギテ居ルト云フヤウナ非難モ起ラナイ
  ト思フノデアリマス、系統的ニ考ヘテ見マ
  スト、今日ノ產業組合ニ於テハ、寧ロ頭ノ
  方ガ非常ニ大キク進ンデシマツテ、實際ニ
  於テ農民ガサウ要求シテ居ナイ所ノ賣藥デ
  アルトカ、或ハ菓子デアルトカ、色々ナモ
  ノヲ此ノ全購聯デ作ツテ、サウシテ府縣聯
  合會ヲ通ジテ、町村ノ產業組合ニ所謂割當的
  ナ方法デ以テ物ヲ賣ラセテ居ル、斯ウ云フ
  コトガ私ハ一般カラ產業組合ガ行過ギテ居
  ルト言ハレル原因ダト思フ、斯樣ナ所謂營
  利ト云フコトヲ目標ニ產業組合自體ガ進ン
  デ行クトスルナラバ、軈テ社會政策的ナ目
  的デ生レテ來タ所ノ產業組合ト云フモノガ、
  自ラ崩壞スルノ時期ガ來ハシナイカ、斯樣
  ニ考ヘルノデアリマス、故ニ此ノ邊ニ付キ
  マシテハ、特ニ其ノ指導ト監督トヲ誤ラナ
  イヤウニシテ戴キタイ、現ニ購買組合デモ
  今日ハ購買ト云フ域ヲ脫シテシマツテ、サ
  ウシテ唯金ヲ儲ケテ行カウトスルヤウナ傾
  向ガアリマス、曩ニ產業組合ノ所謂購買組
  合ニ品物ノ販賣免許制度ヲ與ヘルト云フ組
  合法ガ提出サレタ場合ニモ、私ハ產業組合
  ト云フモノハ組合員ノ必需品ヲ買ウテ渡シ
  テヤルノデアツテ、販賣スルモノデハナ
  1、其ノ買ウテ渡シテヤルト云フコトナラ
  が、別段之ニ對シテ免許制度ヲ與ヘルノ必
  要ハナイノヂヤナイカ、日本ノ法律ガ產業
  組合ノ精神ニ反シテ、サウシテ產業組合ノ
  購買組合ト云フモノニ所謂酒ヲ賣ル免許制
  度ヲ與ヘルト云フコトハ、甚ダ不自然不合
  理デアル、サウ云フコトヲスルト自然ニ
  購買組合ト云フモノハ當然物ガ賣レルカノ
  ヤウニ考ヘテ參ルト云フヤウナ思想ヲ助長
  シテ來ルノヂヤナイカト云フコトモ考ヘラ
  レタノデアリマス、例ヘバ一升一圓ノ酒ヲ
  買ツテ、之ニ二錢ナラバ二錢ト云フ手數料
  ヲ取ツテ組合員ニ配給スルナラバ宜イト思
  ヒマスケレドモ、一升一圓ノ酒ヲ買ツテ來
  テ、サウシテ之ニ一割ナラバ一割ノ割水ヲ
  シテ、更ニ之ニ對シテ二錢トカ三錢トカノ手
  數料ヲ取ルト云フコトニナリマスト、是ハ
  ツノ營利デアツテ、手數料デハナイ、斯ウ
  云フヤウナ狀態マデ進ンデ居リマスシ、又
  販賣方面ニ付キマシテモ、是ハ米穀自治管
  理法ガ此ノ議會ニ出マシタ時ニモ非常ニ問
  題ニナツタノハ、所謂產業組合ノ白米ノ販
  賣デアツタノデアリマス、今日デモ產業組
  合ガ白米ヲ賣ツテ居リマスガ、其ノ實際ヲ
  見マスト、組合員ノ生產シタ物ノミヲ持ツ
  テ來テ、之ヲ精白シテ賣ツテ居ルナラバ宜
  イガ、臺灣、朝鮮ノ米マデ買ツテ來テ之ヲ
  組合員ノ生產シタモノト混合シテ賣ツテ居
  ル、是ハ事實デアリマス、此ノ販賣組合ト
  云フモノハ、其ノ組合員ノ生產シタ物以外
  ニ何物モ賣ルコトガ出來ナイ、成程臺灣、
  朝鮮ノ米ヲ調味料ナリト稱シテ不合理ナル
  脫法ノ行爲ヲシテ居リマスガ、米ニ米ヲ加
  ヘテ調味料ト云フヤウナコトハアリ得ナイ
  問題デアリマス、斯ウ云フヤウナ脫法行爲
  ヲモ所謂監督官廳ガ大目ニ見テ居ルト云フ
  所カラ、產業組合ガ自然ニ行過ギタ行爲ヲ
  ヤツテ來ルノデアル、是ガ軈テ產業組合ノ
  爲ニナラズ、組合員ノ爲ニナラズ、自ラ組
  合ヲ滅シ、組合自體ガ苦ンデ來ル結果ニナ
  ルト思フノデアリマス、而モ今日ハ農村ノ
  組合ハ左樣デナイト思ヒマスガ、府縣聯合
  會カラ中央全販聯、全購聯等ニ參リマス
  ト、其ノ役員ハ殆ド農林省或ハ其ノ他ニ
  關係シテ居ラレタ退官者ガソレニ入ラ
  レー、サウシテ一方府縣ノ聯合會ニハ、
  或ハ縣廳ノ書記ノ古手デアルトカ、或
  ハ恩給ヲ取ツテ遊ンデ居ツタ者トカ、斯ウ
  云フ者ヲ全部入レテ、サウシテソレガ辭メ
  ル場合ニ於キマシテハ、意外ナ賞與ヲ出シ
  テ居ル、是等ニ從事致シテ居リマスル所謂
  役員、理事職員、是ノ數ハ全國系統的ニ此
  ノ數ヲ考ヘマスト、非常ニ澤山ノ人達ニナ
  ツテ居リマス、而モ其ノ人達ハ此ノ前ニモ
  御話ガアリマシタガ、中央金庫ノ理事ヲシ
  テ居ラレタ、或ル方ノ如キハ僅カ三年カソ
  コラデ六万トカ云フヤウナ賞與モ取ツテ居
  ラレル、現在ニ於キマシテハ、全購聯、全
  販聯ノ方々モ相當巨額ナ報酬ヲ取リ、又其
  ノ人達ガ辭メル場合ニ於テハ、迚モ農村ノ
  產業組合ノ想像ダモシ得ラレナイヤウナ賞
  與モ出シテ居ル、是ガ結局全購聯アタリノ
  品物ヲ實際ノ組合員ニ配給ニナル場合ニ於
  キマシテハ相當ノ手數ガ掛リマシテ、般
  ノ商人ガ配給シテ居ル品物ヨリモ品物ガ惡
  ウテ、而モ値段ガ相當高イト云フヤウナ非
  難モ多々アル、產業組合ノ方面カラ、中小
  商工業者ノ所謂配給機關ヲ農民ノ搾取機關
  トナルト一時ハヤカマシク非難ヲ致シテ居
  リマシタガ、今日ハ產業組合其ノモノガ組
  合員ヲ搾取シテ居ルト云フヤウナ非難モ可
  ナリ强ク叫バレテ來テ居ルノデアリマス、
  斯ウ云フ點ニ對シマシテ相當農林大臣ハ是
  正ヲサシ、或ハ指導監督ヲ嚴重ニシテ、些カモ
  產業組合ノ領域ヨリ外ヘ逸出セザルヤウニ
  嚴重ナル監督ヲスル必要ガ私ハアリ得ルト
  考ヘルノデアリマス、私ハ產業組合ガ現在
  ノヤウナヤリ方デアルナラバ、其ノ將來ニ
  非常ニ深憂ヲ持チマス、デアリマスカラ、
  此ノ深憂ヲ持チツツ農林大臣ノ猛省ヲシテ
  戴イテ、サウシテ十二分ナ指導ト監督ヲシ
  テ戴キタイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマスガ、
  此ノ場合ニ農林大臣ノ御所見ヲ承ルコトガ
  出來マスレバ、洵ニ仕合セト思フ次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=128

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• 129・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　只今服部君カラ產業組合
  ガ行キ過ギノ非難ヲ受ケテ居ツテ、今日ノ
  現情ヨリ致セバ却テ產業組合ノ發達ヲ阻害
  スルコトニナリハシナイカ、之ニ對スル所
  ノ政府ノ監督ハドウ云フ方針デ行キッツア
  ルカ、斯ウ云フ御意見デアツタト思ヒマ
  ス、今御話ノ產業組合ガ剩餘金ヲ得ルコト
  ニ汲々トシテ居ツテ、產業組合本來ノ方針
  ニ背イテ居ルト云フ風ナ御說ガアリマシタ
  ガ、私マダ就任〓々デアリマシテ、有ユル
  各方面ノ產業組合ヲ調査ヲ致シテ居リマセ
  ヌケレドモ、斯ノ如キ方針ヲ採ツテ居ル組
  合ガアリト致シマスナラバ、ソレハ仰セノ
  通リ明ニ本來ノ趣旨ニ背イテ居ルモノデア
  リマス、又販賣組合ガ臺灣米ノ如キ米ヲ買
  ツテ日本米ト合セテ販賣シテ居ル、左樣ナ
  ルコトハ絕對ニ認ムベキコトデハナイノデ
  アリマス、私ハ產業組合ガ組合法ヲ制定以
  來茲ニ四十年、其ノ間中小農業者ニ對シテ
  貢獻シタコトノ少カラザル點ヲ認メテ居リ
  きく、又今後モ本來ノ趣旨ニ對シテ穩健ニ
  進ンデ行クコトニ對シマシテハ衷心カラ希
  望致シテ居ルノデアリマス、併シナガラ今
  日世間往々ニシテ行キ過ギノ論ガアツテ、
  產業組合非難ノ聲ノアリマスコトニ付キマ
  シテハ私共取締ノ地位ニアルモノハ固ヨリ
  デアリマスガ、產業組合自身ガ深ク此ノ點
  ニ反省ヲ致スニアラザレバ私ハ產業組合ノ
  發達ハ出來ナイト思フ、故ニ此ノ點ニ付キ
  マシテ將來只今ノ御話ノ如キ行キ過ギノコ
  トガアリ、間違ツタコトヲ行ツテ居ルモノガ
  アリ、又本來ノ趣旨ニ反シタ行動ノアル組合
  アリト致シマスナラバ、私ハ之ニ對シテ嚴重
  ナル取締ヲ致スト云フコトダケハ毫モ假借致
  サヌ考デアリマス、唯卽チ組合本來ノ精神ニ則
  ツテ、サウシテ農業者ノ爲ニ其ノ委託セラレタ
  ルモノヲ誠實ニ賣却シ、而シテ端境期ニ至
  ツテ農業者ガ其ノ主要食物ノナイ場合ニ於
  テ之ヲ購入シテ配給スル、斯ウ云フ事柄ハ
  本來ノ性質デアリマスガ故ニ、其ノ本來ノ
  性質ニ則ツタコトニ付キマシテハ私ハ助成
  ヲ致シテ參ル考デアリマスガ、御話ノ如ク
  趣旨ニ反シタコトニ付キマシテハ私ガ今申
  上ゲタ通リ十分ニ取締ル考デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=129

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• 130・服部岩吉

  ○服部委員　只今大臣ノ御答辯中ニ日本米
  ニ臺灣米ヲ混ジテ賣ルコトハイケナイ、是
  ハドウシテモ許スコトハ出來ナイ、斯ウ
  仰シヤル、併シソレダケハ御訂正ヲ願ツテ
  置キタイト思フ、販賣組合ハ其ノ組合員ノ
  生產シタモノ以外ニハ何モノヲモ賣ルコト
  ガ出來ナイコトニナツテ居リマス、但シ政
  府ガ命令ヲシテヤラセル場合ニ於キマシテ
  ハ此ノ限リニアラズデアリマスガ、農村ノ
  販賣組合ハ其ノ組合員ノ生產シタ以外ノ何
  モノヲモ之ヲ販賣スルコトガ出來ナイノデ
  アリマス、デアリマスカラ日本米ト云フコ
  トニナリマスト少シク異樣ニ感ジマシタノ
  デ、恐ラク大臣ノ御答辯モ私ノ申上ゲルコ
  トノヤウニ考ヘマスルガ、日本米ニ朝鮮米
  ヲ混ゼルコト或ハ臺灣米ヲ混ゼテ賣ルト云
  フコトハ絕對ニ許サレナイ、斯ウ云フヤウ
  ニ承ツタノデアリマスガ、此ノ點ヲ一寸··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=130

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• 131・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　ドウ云フ言葉ヲ使ヒマシ
  タカナンデアリマスガ、要シマスルニ販賣
  組合ハ農村ノ生產シタモノヲ委託ヲ受ケテ
  賣ル以外ニハ賣レナイノデアリマス、卽チ
  生產業者ノ生產致シマシ夕品物ヲ農民ニ代
  ツテ販賣ヲ致スノデアリマシテ、詰リ組合
  員ノ生產シタルモノヲ委託ヲ受ケテ賣ル、
  斯ウ云フ譯デアリマス、御說ノ通リダト思
  ツテ居リマス、間違ツテ居リマシタラ訂正
  致シマス

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• 132・服部岩吉

  ○服部委員　私ノ農林大臣ニ對スル質問ハ
  是レダケデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=132

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• 133・川崎克

  ○川崎委員長　一松君ガ農林大臣ニ對スル
  質問ガアルサウデアリマスカラ之ヲ許シマ
  ス-一松君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=133

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• 134・一松定吉

  ○一松委員　服部君ノ御質問ニ關聯致シマ
  シテ此前留保シテ置キマシタ農林大臣ニ對
  シマスル質問ヲ簡單ニ致シタイト思ヒマス、
  產業組合ニ對シマシテハ、產業組合法ノ第
  六條ニ、所得稅、營業收益稅竝ニ營業稅ヲ
  課サナイ、又第六條ノ第二項ニ於キマシテ、
  地方稅ヲ課シナイト云フ立法ノ趣旨ハ、卽
  チ產業ノ發達、助成ノ爲ニ之ヲ課サナイト
  云フ精神デアリマスコトハ論ズルマデモナ
  イノデアリマスガ、只今服部委員カラ質問
  ノアリマシタヤウニ、近來ハ段々產業組合
  ガ發達致シマシテ、今デハ利益ヲ擧ゲルコ
  トニ汲々トシテ居ル狀況ニマデ進ンデ居リ
  マス、特ニ今囘ノ支那事變ノ如キ場合ニ於
  テハ、第六條ノ如キ所得稅ダトカ、營業收
  益稅ダトカ、若クハ營業稅ダトカ云フヤウ
  ナ特別ノ稅ヲ課セナイコトハ別デアリマス
  ガ、一般ニ支那事變ノ特別稅ヲ課スル場合
  ニハヤハリ課スルコトガ宜イト云フ考ヲ私
  ハ持ツテ居リマシテ、先日此ノ點ニ對シテ
  大藏大臣ノ所見ヲ質シテ見タノデアリマス、
  大藏大臣モ是等ノ點ハ將來大イニ考慮スル
  考デアルト云フ御答ヲナサツテ居ツタノデ
  アリマスルガ、農林大臣ノ御考モ大藏大臣
  ト同樣ナ御考デアラウト察スルノデアリマ
  スガ、一應農林大臣ノ御意見ヲ承ツテ置キ
  タイノデアリマス

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• 135・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　現在產業組合ニ對シテ課
  稅ヲ致シテ居リマセヌノハ、只今一松君ノ
  御話ノ通リデアリマス、元來是ハ中小農業
  者ガ卽チ不當ナル損害ヲ蒙ラヌヤウニ、共
  同ニ自分ノ生產ヲ販賣シ、又購入スルモノ
  モ共同ニ購入シテ、相當ノ値段ヲ以テ買ヒ
  得ルヤウニシタイト云フノデアリマシテ、產
  業組合法ノ性質カラ申シマスト、今日ノ免
  稅ト云フコトガ私ハ至當ダト思フノデアリ
  やく、卽チ商業組合ニ於テモ左樣デアリマ
  ス、同業組合トハ多少性質ガ違ヒマスケレ
  ドモ、商業組合ナドハ殆ド同ジ程度ニ於テ
  免稅サレテ居リマス、唯將來ニ於テ稅制ノ
  改革ヲサレタ場合ドウ考ヘルカト云フコト
  ニ付キマシテハ、是ハ私ト致シマシテハ、
  此ノ場合意見ヲ申上ゲルコトハ出來ナイノ
  デアリマシテ、是ハ大藏省ニ於テモソレゾ
  レ〓究サレテ居ルコトト考ヘルノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=135

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• 136・一松定吉

  ○一松委員　將來稅制整理ノ際ニ當リマシ
  テ御考究シテ戴クト云フ程度デ私ハ滿足ス
  ルノデアリマシテ、唯產業組合法制定ノ當
  時ニ於テ課シナカツタカラト云フコトダケ
  デ、免稅ヲ何處マデモ維持シナケレバナラ
  ヌト云フ理由ハナイト思フノデアリマスシ、
  殊ニ外國デモ產業組合ニ色々稅金ヲ課シテ
  居ル實例モアルノデアリマスカラ、其ノ點
  ハ十分御檢討ヲ賜ランコトヲ御願シテ置キ
  マス
  次ニ私ハ服部委員カラ御尋ノアリマシタ
  ヤウニ、近來產業組合ハ甚ダ行キ過ギタヤリ
  方ガ多イノデアリマス、是ハ是非一ツ是正
  シテ戴キタイノデアリマスガ、ソレト同時
  ニ私ガ甚ダ面白ク感ジテ居リマセヌコトハ、
  先ノ有馬農林大臣ノ時ニ農村强化ヲ勿論理
  由ニシテ居ツタヤウニ思フノデアリマスガ)
  產業組合ノ靑年聯盟ヲ中堅ト致シマシテ、
  全國農村革新協議會ト云フモノヲ拵ヘテ、
  此ノ產業組合ノ政治行動化ヲ圖ツテ居ツタ
  ト云フヤウナコトヲ私共ハ感ジタノデアリ
  マス、斯ウ云フコトハ產業組合ノ此ノ立法
  ノ趣旨ニモ反シマスシ、產業組合ガ政治行
  動ヲ執ルガ如キコトハ、甚ダ面白クナイト
  思ツテ居ルノデアリマスガ、有馬前農林大
  臣ハ旣ニ御辭メニナツタノデアリマシテ、
  其ノ後ヲ御引繼ギニナリマシタ櫻内農林大
  臣ハ、有馬前農林大臣ガオヤリニナツタヤ
  ウナ全國農村革新聯盟ト云フヤウナモノヲ
  以テ政治行動ヲスルコトニ對シテノ御所見
  ヲ承ツテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=136

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• 137・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　產業組合ニ對スル課稅ノ
  問題ニ付キマシテハ、今御意見ガアリマシ
  タケレドモ、今ノ建前ト致シマシテハ、是
  ハ免稅ヲスルコトガ至當ト考ヘテ居ルノデ
  アリマシテ、稅制ノ根本的改革ニ於テ大藏
  當局カラ提案ヲサレマシタ時ニ、ソレニ對
  シマシテハ十分〓究ヲシタイト思ツテ居リ
  やっく、只今ノ御話ノ產業組合ノ中ニ所謂靑
  年聯盟協議會ト云フヤウナモノガアツテ、
  ソレガ政治的行動ヲ慫慂スルヤウナ傾キガ
  アツタヤウニ聞クガ、現當局ハ何ト、考ヘル
  カト云フ御質疑デアリマスガ、產業組合ガ
  政治上ニ關與スルコトハ絕對ニ禁止シナケ
  レバナラヌト考ヘテ居リマス、隨ヒマシテ
  產業組合ニ關係シテ居ル靑年ノ人々ニ對シ
  マシテハ、特ニ反省ヲ求メタイト思ツテ居
  リマス、勿論現在ノ產業組合ニ關係シテ居
  ル人々モ政黨ニハ關係ヲ致シテ居リマスケ
  レドモ、是ハ唯個人ノ關係デアリマシテ、
  其ノ中ニ於テ所謂產業靑年聯盟協議會ナド
  ト云フ風ナ名前ヲ付ケタ團體ガ出來テ、其
  ノ團體ガ政治上ノ行動ヲ致スガ如キコトガ
  アリマシテハ、是ハ以テノ外デアリマシテ、
  若シ政治運動ヲ起スト云フノナラバ產業組
  合ヲ離レテ起スベキデアリマシテ、產業組
  合ヲ利用シテサウ云フコトヲ致スト云フガ
  如キコトニ付キマシテハ、是ハ深ク取締ラ
  ナケレバナラヌコトト思ツテ居リマス、實
  ハ曩ニモ稍、一松君ノ御話ノヤウナコトニ似
  寄ツタ風聞ヲ聞イタコトモアリマスノデ、直
  チニ其ノ問題ニ對シマシテハ、全國ニ對シテ
  注意ヲ促シタヤウナ譯デアリマシテ、今後
  ト雖モ產業組合ヲ基礎トシテ政治運動ヲ致
  ス、卽チ產業組合ヲ政治化スルガ如キ事柄
  ニ付キマシテハ、直チニ之ヲ取締リタイト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=137

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• 138・一松定吉

  ○一松委員　產業組合員同ジク我ガ帝國ノ
  臣民デアリマスカラ、政治ニ對シテ意見ヲ
  述べ、之ヲ〓究スルコトハ當然ノ權利デア
  リマスカラ、吾々ハ何モ申シマセヌガ、只
  今私ガ御質問申上ゲマシタヤウニ、產業組
  合其ノモノヲ基礎トシテ、產業組合員ト云
  フ資格ニ於テ、一大勢力ヲ作ツテ政治ヲ左
  右シヨウト云フコトハ、甚ダ不都合デアル、
  斯樣ニ私ハ考ヘテ居ツテ、此ノ點ヲ農林大
  臣ニ御尋申上ゲタノデアリマスガ、農林大
  臣ノ御意見モ私ト全ク同一デアルコトヲ拜
  聽致シマシテ、實ニ滿足ニ堪ヘマセヌ、ド
  ウカサウ云フ意味ニ於キマシテ一層左樣ナ
  弊害ヲ除去スルコトニ御盡瘁アランコトヲ
  御願致シマシテ、私ノ牽聯質問ハ終リマス

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• 139・田村秀吉

  ○田村委員　先程政府委員ノ方ニ御尋シテ
  置キマシタガ、極ク根本的ナ問題ヲ大藏大
  臣ニ御伺申上ゲタイト思フノデアリマス、
  第一ハ稅制ト、今日時局上最モ必要デアル
  生產擴充トノ關係ヲ如何ニシテ行クカト云
  フ點ニ付テ御尋ヲシタイ、其ノ中ノ一ツニ付
  テ先程政府委員ノ御答辯ヲ願ツテ居ツタノ
  デアリマスガ、讓渡利得、例ヘバ鑛山ヲ今全
  國探鑛ヲシテ居リマス、好ササウナモノハ
  見込ガアレバ試掘ヲスル、十万圓トカ二十万
  圓ト云フ小サナ會社ヲ拵へ、ソレヘ現物出
  資シタ場合ハ、適當ニ讓渡利得ヲ認メラレ
  テ、課稅セラレル、此ノ評價ガ巧ク行カナ
  イト、モウ鑛山ノ開發ニ挺身シテヤツテ行
  ク者ハ無クナルト云フ虞ヲ私ハ懷ク、其ノ
  評價ガ嚴重ナレバ、會社ハ基礎ガ確實ニナ
  ルカラ、却テ宜イト云フ政府委員ノ御答デ
  アリマシタ、私ハ此ノ點ハ餘リ嚴重ニ過ギ
  ナイデ、却テ流動資金ヤ何カノ上ニ於テハ
  裕トリノアル方ガ宜イト考ヘマス、ソコデ
  讓渡利得ノ評價ヲ誰ガヤルカト御尋シタ
  所、所得稅調査委員ガ所得稅法ニ依ツテヤ
  ル、斯ウ言ハレタノデスガ、私ハ是ハイカヌ
  ト思フ、所得稅調査委員ニ鑛山ノ價格ノ評
  價ヲサセテ、ソレニ依ツテ讓渡利得稅ヲ課
  ケルト云フヤウナコトハ、實際ニ適切デナ
  イ、ダカラ別ノモノニシナケレバナラヌト
  思フノデス、現物出資シテ株式ヲ貰フ、ソ
  レガ市價ガアル大キナ會社ナラバ無論問題
  ハアリマセヌ、時價ニ換算シテ適當ニ算出
  スルコトガ出來マスガ、サウデナイ場合ニ
  ハ評價ノ方法ガナイ、之ヲ所得稅調査委員
  ニ任スト、恐ラク稅務署ノ言フガ儘ニナル、
  ドウシテモ鑛山關係ノ者ニ認定サセルヤ
  ウニシナケレバナラヌト思フノデス、是ハ
  是カラノ鑛山ノ開發ノ上ニ大キナ問題デア
  ル、一ツヤ二ツノ大キナ會社ガ出來ルヨリ
  ハ、日本全國ニ小サナモノヲ國民ガ全國的
  ニ探シテ、我國ニ鑛山熱ガ起キテ來ルト云
  フコトニナル方ガ、金鑛ニシテモ、其ノ他
  ノ軍需資源ノ開發ニシテモ、非常ニ役立ツ
  ト思ヒマス、其ノ根本ニ重大ナ關係ヲ持ツ
  テ居ルト思フノデアリマスカラ、私ハ寧ロ
  鑛山關係ノ鑛山監督局ニ、評價委員會ト云
  フヤウナモノヲ新設スルカ、或ハサウデナ
  ケレバ鑛山監督局ニ、特殊ノ認可權ヲ與ヘ
  ルト云フ方法ヲ執ラナケレバナラヌト思フ
  ノデス、所得稅調査委員ノヤウナモノデハ、
  到底此ノ評價ヲ全ウスル現實ニ適シタヤリ
  方ハ出來ナイト思ヒマスガ、此ノ點ニ對ス
  ル大臣ノ御考ヲ先ヅ承リタイ

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• 140・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　所得調査委員ト申シマス
  モノハ、是ハ租稅ニ付キマシテハ中々玄人
  デアリマシテ、色々ナコトヲ知ツテ居リマ
  ス、併シナガラ今鑛山監督局トノ間ニ、緊
  密ナ連絡ヲ取ルト云フヤウナ御話ガゴザイ
  マシタガ、勿論其ノ方ト緊密ナ連絡ハ取リ
  マスガ、役所ノ建前トシテハヤハリ是ハ所
  得調査委員會ニ付議致シタ方ガ宜シイト存
  ジテ居リマス

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• 141・田村秀吉

  ○田村委員　私ハドウモ所得調査委員デハ
  不適當ト思ヒマス、密接ナ連絡ヲ御取リニ
  ナルト云フ御言葉デアリマスガ、此ノ密接
  ナル連絡ヲ更ニ進メテ、別ノ評價委員會ヲ
  鑛山監督局ヲ中心トシテ、鑛山關係者ト云
  フヤウナ者ヲ委員ニシテ組織セラレンコト
  ヲ、特ニ御考慮ヲ煩シテ置キタイト思ヒマ
  ス
  ソレカラ其ノ次ニ臨時利得稅法ノ第四條
  第三項デスカ、是デ增徴スルノデアリマスガ、
  新興產業卽チ新シイ產業ノ普通所得ノ超過
  所得竝ニ臨時利得稅、之ヲ加算シテ見マスル
  ト、ドウモ乙種ニシテモ甲種ニシマシテモ、
  古イ基礎ヲ持ツテ居ルモノハ、政府カラ戴イ
  タ資料ヲ調ベマスト、甲種ニ於テモ三割何ボ
  ト云フ平均利益率ヲ持ツテ居ルモノガ十六
  七アリマス、併シ是ハホンノ一部デセウ、
  又乙ノ方ヲ見テミマスルト、平均利益率ハ
  三割五分以上ノモノガ百何十アル、是ハ超
  過所得ハ無論課カルガ、臨時利得稅ハ課カ
  ラヌ、ソコデ古イ、或ル意味ニ於テハ擔稅
  能力アルモノニ輕クシテ、新興產業ニ向ハン
  トスルモノ、是ハ芽生ヘノモフデスカラ擔
  稅能力ガナイト云フ譯デ、ソレハ七分カ或
  ハ乙種ニシテ一割ト云フ所ヲ押ヘテ、ソレ
  以上ハ臨時利得稅ヲ課ケル、結局比較シテ
  見マスト、新興產業ノ方ガ重ク課ケラレル、
  サウスルト現在ハ生產擴充ト云フコトニ全
  力ヲ擧ゲナケレバナラヌ、其ノ生產擴充ハ
  有ユル企業ガ全國ニ芽生ヘテ來ナケレバナ
  ラナイ、日滿支ヲ通ジテ芽生ヘテ來ナケレ
  バナラヌ、其ノ芽生ヘルモノヲ抑ヘテ、
  ヅ二ツノ大キナモノヲ保護スルト云フコト
  デハ、現在新興產業ヲ興シテ生產擴充ヲシ
  ナケレバナラヌト云フ此ノ時局ノ重大性ニ
  適當シナイ、斯ウ思フノデス、ソコデ其ノ
  點ニ付テ政府委員ノ方カラ、其ノ點ハ不合
  理ト思フカラ、昭和十五年度ノ稅制ノ根本
  改革ノ時ニ、之ヲ改革シタイト思フ、斯ウ云
  フ御言葉ガアリマシタ、私ハ最初利得稅法
  ガ出來タ時ハ、或ハ財界ノ色々ナ困難ナル
  事情モアツテ、已ムヲ得ズ事業年度ト云フ
  モノヲ拵ヘテ、甲種乙種ト云フモノニ分ケ
  タノダラウト思ヒマス、併シ今日之ヲ更ニ
  增徵スル場合ニ、大臣ハナゼ一步進ンデ、
  昭和十五年ヲ待タズニ、根本的ニ新興產業
  生產力擴充、之ニ重クナツテ居ルヤウナヤ
  リ方ヲ止メテ、或ハ一割ナラ一割、或ハ
  割五分ナラ一割五分、平均シテ其ノ間ノモ
  ノニハ、無論超過所得ハ課ケルニシテモ、臨
  時利得稅ノ上ニ於テハ新興產業ヲ寧ロ保護
  シナケレバナリマセヌモノデスカラ、之一
  重クナツテ居ルヤウナモノニ一本「メス」ヲ
  入レテ、ナゼ根本的改革ヲセラレナカツタ
  カト云フコトヲ、非常ニ遺憾ニ思フ、其ノ
  點ニ對シテ十五年度カラ改革シナケレバナ
  ラヌト云フコトハ、旣ニ政府委員ノ方カラ
  モ御言葉ガアリマシタガ、此ノ點重ネテ大
  臣カラ御決意ヲ伺ヒマス

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• 142・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　臨時利得稅ニ於テ新設會
  社ガ舊來ノ會社ニ比較シテ不利益ヲ受ケル
  ノデハアルマイカト云フコトハ、臨時利得
  稅創設ノ當時カラ色々議論ノアツタ點デア
  リマス、卽チ普通ノ場合ニ於テ三割儲ツテ
  居ル會社ハ、普通ハ其ノ三割ノ控除ヲ受ケ、
  新設會社ハ七分ノ控除シカ受ケナイ、斯ウ
  云フコトノ議論、是ハ臨時利得稅ニハ附キ
  纏フ一ツノ議論デアリマス、併シ兎ニ角ソ
  コニハ何等カノ標準ヲ置カザルヲ得ナイノ
  デアリマス、一定ノ標準ヲ置イテ、其ノ標
  準ヲ超シテ利得ヲ見付ケ出サザルヲ得ナイ
  ノデアリマスカラ、臨時利得稅ノ形式ヲ取
  リマスル以上ハ、御說ノヤウナ點ハ免レ
  難イト思ツテ居ル一ツノ點デアリマス、サ
  ウ云フ缺點ガアルカラト言ツテ、臨時利得
  稅ヲ起サナイト云フ譯ニハイカナイノデア
  リマシテ、斯ウ云フ際ニ儲ケガ餘計ニ相成
  ツテ來ル者ニ負擔ヲ課スル、ソレガ臨時利
  得稅ノ特徵デアルト思ヒマス、アナタノ今
  御指摘ニナツタヤウナ點ハ、ソレハ考ヘラ
  レルコトデアリマスガ、併シナガラ是ハ斯
  ウ云フ稅ニハ已ムヲ得ザル缺點デアルト存
  ズルノデアリマシテ、明年度ニ於キマシテ
  モ如何ナル改正ヲ行ヒマスカ、若シ臨時利
  得稅ヲ主體トシテ考ヘルノデアルナラバ、
  今アナタノ御指摘ニナツタヤウナ缺點ハ、
  是ハ除ク譯ニハイキマセヌ、若シ超過所得
  稅ヲ本體ニシマシテ、之ニ臨時利得稅ヲ合
  セルヤウナコトヲ考へテ行クノデアルナラ
  バ、ソレハサウ云フ缺點ハ除カレルカモ知
  レマセヌ、併シ臨時利得稅ノ性質トシテハ
  御指摘ノヤウナ點ヲ持ツテ居リマス、ソレ
  ガ一ツノ缺點デアリ、又ソレガ一ツノ大キ
  ナ特徵デモアルト思フノデアリマス

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• 143・田村秀吉

  ○田村委員　其ノ特徴ガ新興產業ヲ壓迫シ
  テ、生產擴充ヲ阻害スルト云フコトデアツテ
  ハ時局ニ非常ナ惡影響ヲ及ボスト私ハ思
  フカラ御注意ヲ申上ゲタ、斯ウ云フコトハ
  寧ロ超過所得ヲ直スナリ、或ハ臨時利得稅
  ノ基準ヲ變ヘテ行クト云フコトニ、ナゼ御
  考ニナラナカツタカト云フコトヲ申上ゲテ、
  御一考ヲ煩シタイト思フノデアリマス、是
  モ生產擴充ノ、兎ニ角新興產業ノ一ツノ邪
  魔ニナツテ居ルト思フノデスガ、此ノ際承
  リタイノハ生產擴充資金ガドウ云フ風ニ動
  イテ居ルカ、昨年ノデモ宜シウゴザイマス、
  株式、社債、銀行ノ貸付金、是等ニ依ツテ、
  マア產業ハ興ル譯デスガ、結局社債ト云ヒ
  マシテモ、銀行貸付金ト云ヒマシテモ、要
  ハ此ノ株式ガ相當ノ市價ヲ持ツテ、是ガ活
  潑ニ動クト云フコトデナケレバ、新興產業
  ト云フモノハ十分ニ興ラヌ、隨テ生產ノ擴
  充ト云フコトハ、之ヲ完ウスルコトハ、之
  ヲ完ウスル譯ニ行カナイ、此ノ株式、社債、
  銀行貸付金、是等ノ關係ニ於テ、生產擴充
  資金トシテ、所謂事變以來デスガ、特ニ昨
  年カラドウ云フ風ニ動イテ居ルカノ趨勢ヲ
  承リタイ

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• 144・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　株式ハ會社ノ設立拂込等
  ハ臨時資金調整法ニ於テ許可致シタモノ
  ガ、二十八億數千万圓デアツタノデゴザイ
  マシテ、之ニ臨時資金調整法ノ適用ヲ受ケ
  ナイ小サイモノヲ入レマスト、三十一億圓
  位ニ達シテ居ルノデハナイカト思ツテ居リ
  そう、之ニ對シマシテ社債ノ發行高ト云フ
  モノハ、昨年一箇年中ニ於テ十一億圓內外
  デアルト思ツテ居リマス、ソレデ投資ノ主
  體ガ依然トシテ株式ニアルコトハ疑ヒアリ
  マセヌ、世ノ中デハ稅金ガ株式ト社債、銀
  行預金等ニ付テ不權衡デアツテ、隨テ株式
  ノ投資ガ壓迫致サレルト云フヤウナコトヲ、
  頻リニ言ツテ居ル者ガアリマスケレドモ、
  今日ノ實績カラ申シマスレバ、依然トシテ
  株式ノ投資ハ極メテ旺盛デアリマス

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• 145・田村秀吉

  ○田村委員　現在之ニ對スル壓迫ナシトス
  レバ洵ニ結構デアリマスガ、之ヲ更ニ擴充
  シテ行クヤウニシナケレバナラヌ、ソコデ
  問題ハ臨時租稅措置法ニ關係シテ居ルコト
  デスガ、總動員法第十一條、是ガ發動サレ
  ルト云フコトト生產擴充ト云フモノトハ、
  非常ナル深イ關係ヲ持ツテ居ルト思フノデ
  ス、現在株式投資ガ非常ニ旺盛デアルガ、
  總動員法第十一條、是ハヤハリ臨時利得稅
  ノ先程私ガ申上ゲタ點ト關聯シテ來ルト思
  フノデスガ、第十一條ヲ發動スル、今マデ
  旺盛デアツタモノガ總動員法第十一條ヲ發
  動スレバ-是ハ新聞紙ナドデ私ハ見テ居
  ル、又政府カラヤツテ居ルト云フコトヲ仄
  カニ聞イテ居リマスガ、新興產業ニ付テハ
  六分ノ配當制限ヲヤル、六分ノ配當制限ヲ
  ヤツテ、而モ從來ノ產業會社等ニ對シテハ
  一割デ之ヲ置ク、六分ナドニナツテ來レバ、
  是ハ國策會社トカ何トカト云フモノハ特別
  ノモノデアル、電力會社ガ今日六分ノ保證
  ニ依ツテ非常ニ滿株-十何倍モノ應募者
  ガアル、是ハ國策會社デアル、國策會社
  ナラ六分ト云フコトハヤレル、併シ小サナ
  會社ガ到ル處ニ興ツテ來ナケレバ、生
  產擴充ト云フモノハ本當ニハ達成出來
  ナイ、ソコヘ六分ト云フ、國策會社ト同ジ
  ヤウナモノヲ抑ヘテ行キマスルト、株式投
  資ガ澁ツテ來テ、銀行預金ニナツテ行ク、
  貯蓄ノ奬勵ヲヤリ、銀行預金ヲ奬勵ス
  ルノハ宜イガ、政府ノ出シタ所ノ資金ハ
  預金ニナツテシマツテ、生產資金トシテ動
  カヌト云フコトニナツタノデハ、是ハ現在
  ノ時局ニ對スル國家ノ目的ヲ進メル譯ニハ
  行カヌト思フノデス、ソコデ總動員法ノ第十
  一條-是ハ傳ヘラレテ居ルダケデ、政府
  ノ發表デハアリマセヌガ、六分ト云フコトデ
  ハ私ハ斷ジテイカヌト思フ、六分ノヤウナ
  コトデ、國策會社以外ノモノヲ抑ヘル、サ
  ウシテ昔カラノモノハヤハリ利得稅ト同ジ
  ヤウニ、旣得權ノヤウニ之ヲ認メテ行クト
  云フヤウナコトデハ、新興產業ヲ壓迫スル
  コト必ズ大ナルモノガアル、ヤツテ見テ新
  興產業ガ伸ビナイデ困ルト云フコトデハ、
  國家ノ大局ニ任ゼラレルヤリ方デハナイ、
  未然ニ之ヲ見拔カナケレバイカヌト思フノ
  デスガ、此ノ點ニ對シテ六分デハ私ハ斷ジ
  テイカヌト思フ、如何ナル御考ト如何ナル
  御方針ヲ以テ、新興產業ノ勃興ト生產擴充
  ニ對シテ、總動員法ヲ、發動サレントスル
  カ、大臣ノ御方針ヲ承リタイ

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• 146・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　斯ウ考ヘテ居ルノデゴザ
  イマス、六分ハ最初ノ配當デアリマス、會
  社ガ出來マシテカラ最初ニ配當スル時分ニ
  六分ノ配當、斯ウノ云フコトデアリマスノ
  デ、私ハ今日ノ經濟界ノ實況カラ考ヘマシ
  テ、最初ノ配當ト云フモノガ六分デアルト
  云フコトハ、サウ低イトハ存ジマセヌ、是
  ハ其ノ當時色々議論ハゴザイマシタガ、
  六分ノ配當ト云フコトニ付キマシテハ、私
  ハ大シタ議論ヲ聞カナカツタノデアリマ
  ス、六分カラ一期ニ一分ヅツ增配シテ行ク
  コトニ付テハ政府ノ許可ヲ必要トシナイ、
  斯ウ言ツテ居ルノデゴザイマスカラ、六分
  カラ七分ニシ、七分カラ八分ニシ、八分カ
  ラ九分ニシ、九分カラ一割、一割マデハ半
  期每ニ一分ヅツ上ゲテ行クト云フコトニ付
  テハ、ソレハ別ニ政府ノ許可ヲ要シナイコ
  トニ致シテ居ルノデアリマス、唯一割ニナ
  ツタ時分ニ、一割以上ノ配當ヲスルト云フ
  時ニハ、是ハ何時デモ政府ノ許可ヲ必要ト
  スル、斯ウ云フ仕組ニシタイト思ツテ、今
  案ヲ起シテ居ル譯デアリマシテ、今後ニ出
  來ル會社ハ、總テ必ズ配當ヲ六分デ喰止メ
  テシマフ、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居ル譯デハ
  ゴザイマセヌ、隨テ此ノ總動員法ノ發動ニ
  依ツテ、生產擴充ニ妨ゲアルモノトハ考ヘ
  テ居ラヌヤウナ次第デゴザイマス

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• 147・田村秀吉

  ○田村委員　サウシマスト一割マデ行クト
  云フト、旣設產業ニ制限スル額ト同ジ所ヘ
  到達スルノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=147

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• 148・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　旣設產業ハ一割五分配當
  ヲ致シテ居リマスモノニハ、一割五分ヲ超
  エテ配當スル場合ニ、許可ヲ要スルコトニ
  致シテ置キマスガ、一割配當ヲ致シテ居リ
  マシタ會社ト新設ノ會社ト云フモノハ、同
  ジ立場ニ立ツ譯デアリマス、結局一割配當
  シテ居ツタ會社ガ、一分ヅツ增配スル場合
  三、政府ノ許可ヲ必要トスル、同時ニ新
  設會社ハ一割マデハ配當シテ宜イガ、其ノ
  一割ヲ超エテ配當スル場合ニハ政府ノ許可
  ヲ得ルヤウニシタイ、斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=148

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• 149・田村秀吉

  ○田村委員　一割五分ノ旣設會社ガアル、
  其ノ點私ハヤハリ利得稅ト同ジヤウニ、先
  程ノ理論ト同ジヤウニ、成ベク生產擴充ト
  云フコトヲ基調トシテ、其ノ點ノマダ最後
  的決定ナシトスレバ、決定ニ當ラレンコト
  ヲ希望スルノデアリマス、以前カラ既得權
  ヲ持ツテ居ルモノダケハ是デ、新興產業
  ハ一番最低デアルト云フコトハ、新興產
  業ノ上ニ宜シカラザル政策デアルト思ハ
  レマス、是ハ此ノ程度ニ致シマシテ、其
  ノ次ニ一ツ承リタイノハ此ノ頃時局產業
  ノ會社ナドノ營業費ガ、非常ニ激增シテ
  居ル事實ヲ、私共ハ時々見聞キスルノデ
  アリマス、ソレハ一方ニ配當制限ガ行
  ハレ、ソレカラ又增稅ガ行ハレテ來ル、ソ
  コニ營利心ガアルカラ、國家ニ稅ヲ取ラレ
  ルヨリハ-サウ云フコトハ國民トシテ不
  都合ナ話デアリマスガ、經濟界ニハ動モス
  レバサウ云フ考ヲ持ツテ居ル者ガアルノデ
  アリマスガ、ソレデハ一ツ社員ニ分ケテシ
  マハウ、或ハ調査費トカ、旅費トカデ十分
  ニ充ガツテ使ハセル、是ハ營業費ニ入ル、
  ソレカラ工場ノ勞賃ヲ非常ニ增サウ、「ボー
  ナス」モヒドクヤラウ、昨年末ハ甚シイノ
  ハ三十箇月分モ「ボーナス」ヲ貰ツタ實例ガ
  アチコチニアルノデアリマス、斯ウ云フヤ
  ウニ產業界ニ營業費ノ激增シテ居ル事實ハ、
  私ハ配當制限ガ行ハレントスルコトノー
  增稅ト云フコトノ是ハ半面デアルト思フ、
  而モ今日ノ此ノ厖大ナル豫算カラ出テ來ル
  政府撒布資金ト云フモノハ、主トシテ時局
  產業、軍需品關係ノ產業ニ向ツテ居ル、物
  品稅、消費稅ヲ今囘ハ增徵スル、ソシニ依ツ
  テ消費ノ增大ヲ防ガウ、「インフレ」ヲ防止
  スルノダト本委員會ニ於テモ大臣ハ說明セ
  ラレテ居ル、併シ私ハ物品稅、消費稅、コ
  ンナコトデ「インフレ」ガ果シテ防止出來ル
  カドウカ、寧ロ時局產業以外ニ一般的ニハ
  消費ノ減少ノ傾向ガアル、個人々々トシテ
  ハ消費ノ減少、併シソコニ一部分デアルガ、
  一ツノ「ポケット」ガアル、其ノ穴ニ金ガダ
  ブ付イテ行キマスト、ドン〓〓使ツテ來ル
  ノデアリマス、之ヲナゼ狙ハヌカ、公債ヨ
  リモ增稅ニ依ツテ之ヲ摑ヘルト云フコトガ、
  非常ニ必要ナノデハナイカト思フノデアリ
  さい、ソコデ是ハ課稅技術ノ上ニハ非常ニ
  難カシイ問題ト思ヒマスガ、今日ノ思想上
  ノ關係、或ハ經濟「インフレ」トノ關係カラ
  見マシテ-殊ニ儲カツテ澤山金ガ入レバ
  直グ使ツテシマフ、待合、料理屋ニ行ツテ見
  ルト、中々入レ切レナイト云フ位繁昌シテ
  居ル、ソレハ使フ者ガ出テ來ルカラデアル、
  玆ニ「インフレ」ノ「ポケット」ガアルノデハ
  ナイカト私ハ思フ、之ヲ適切ニ抑ヘルト云
  フコトガ經濟上ノ關係カラ申シマシテモ、
  國民思想ノ上カラ言ヒマシテモ非常ニ必要デ
  アル、斯ウ云フ者ニ對シテハ使ハナイ中ニ稅
  金デ之ヲ取上ゲル、斯ウ云フ風ナ「ボーナスㄴ
  俸給、工賃-賃銀制度ガ之ニ關係シテ來
  マスガ、是ハ厚生省ノ方ニ承ルトシテ、消
  費ガ增大スル、一方ニ物價ヲ抑制シヨウト
  シテモ買フ金ガ一部ニハダブ付イテ來ル、
  玆ニ非常ニ危險ガアルカラ、時局產業ナド
  ニハ、斯ウ云フ臨時利得稅デ取ルト云フヤ
  ウナ、單一的ナ事變下ノ臨時租稅增徵法デ
  ヤル位ナラバ、斯ウ云フ所ニ著眼シテ、或
  ハ俸給ヲヤル時ニ會社デ俸給ヲ抑ヘル、百
  圓ノ月給ヲ取ツテ居ツタ者ガ、百圓以上二
  百圓ニナツタ場合ニハ、其ノ百圓ニ付テハ
  特殊ノ稅金ヲ課ケル、職工ニ付テモ同ジデ
  アル、「ボーナス」ニ付テモ其ノ出サウトス
  ル所デ抑ヘル、ヤツテシマヘバ使ツテシマ
  フカラ、是ハ所得稅ニ依ツテ何スル譯ニハ
  行カヌ、所得稅ト云フコトハ二重課稅ニナ
  ルデハナイカト云フ議論ガアルトスレバ、
  其ノ取ツタダケハ、其ノ後デ所得額ニ所得
  稅ヲ課スル場合ニ考ヘルヤウニスル、サウ
  スルコトガ思想上ニモ經濟上ニモ必要ナコ
  トデハナイカト思ヒマスガ、此ノ臨時租稅
  ノ增徵ノ中デ、斯ウ云フ點ハ「インフレ」ノ
  關係カラ見マシテモ、ヤハリ考ヘナケレバ
  ナラヌコトデアルト思フノデアリマスガ、
  此ノ點ニ對スル大臣ノ御考ト從來ノ御〓究
  ノアル所ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=149

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• 150・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　會社ガ營業費トシテ、租
  稅ノ關係上又ハ總動員法發動ノ關係上、濫
  費ヲスル虞ガアリハシナイカ、斯ウ云フ御
  尋デゴザイマス、此ノ點ハ相當考ヘテ居ル
  ノデゴザイマシテ、今囘總動員法ヲ發動ス
  ルニ當リマシテ、計理命令ニ關スル條項ヲ
  入レル積リデゴザイマス、サウシテ今囘ノ
  稅法ニ於キマシテモ、昨日モ河野サンカラ
  御尋ガゴザイマシタガ、濫費ヲ防グト云フ
  コトニ付テハ、此ノ臨時措置法ニ於テ、留
  保ヲ奬勵スルト云フ點ニ於テ、多少考慮ヲ
  致シテ居ル所ガゴザイマス、同時ニ此ノ總
  動員法ノ計理命令ニ依ツテ、不當ナル支出、
  サウ云フヤウナ濫費ト云フヤウナコトニ付
  テハ、十分ニ取締ルヤウニ致シタイト存ジ
  テ居ルノデゴザイマス、此ノ取締ハ相當厄
  介デアリ、困難デモアリマスガ、併シナガ
  ラ此ノ取締ヲ致シマセヌケレバ、此ノ濫費
  ヲ防グ譯ニハ行キマセヌ、ソレダカラ此ノ
  點ハ是非共取締リタイト考ヘテ居ル次第デ
  ゴザイマス
  ソレカラ其ノ次ニ職工等殷賑產業ノ從業
  者等ニ對シテ、所得稅トシテ課稅シナイ
  デ、寧ロ源泉デ之ヲ徵收シタラ宜イデハナ
  イカト云フ御話デゴザイマスガ、實ハ源泉
  デ徵收スルト云フコトハ、是ハ貯蓄奬勵デ
  今日ヤツテ居ルノデゴザイマス、貯蓄スル
  爲ニ相當源泉デ之ヲ引ク、强制貯蓄ノヤウ
  ナコトヲ或ル程度ヤツテ居ル次第デゴザイ
  マス、俸給ニ對スル租稅ヲ源泉課稅ニシタ
  ラ宜イカ、ソレトモ今日ノヤウナ綜合課稅
  ニシタラ宜イカト云フコトニ付テハ問題ガ
  ゴザイマス、併シナガラ一箇月ニ百圓トカ、
  百五十圓トカ云フ程度ノモノガ多數デアリ
  マスノニ、所得稅ヲサウ重課スル譯ニハ行
  カヌノデアリマシテ、サウ云フ所得額ノ比
  較的少イ人々ニ對スル「インフレ」的ノ傾向
  ヲ防止スルト云フコトニ於キマシテハ、是
  ハ所得稅ヨリモ消費稅ノ方ガ適切デモア
  リ、又ソレヨリ外ニ手段ガナイト考ヘテ居
  ル次第デゴザイマス、其ノ爲ニ今回ノ此ノ
  物品稅等ニ付テモ、特ニ此ノ奢侈的ナ消費
  ト云フヤウナモノヲ主トシテ選ンダ譯デゴ
  ザイマシテ、サウ云フ人々ノ多數ノ) ye
  フレ」防止ニハ、ドウモ所得稅ノ增徵ト云
  フモノハ、效力ガ少イノデハアルマイカト
  思ツテ居リマス

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• 151・田村秀吉

  ○田村委員　總動員法ニ依ツテ適當ニヤラ
  レルト云フコトデアレバ-ソレハ中々難
  カシイト思ヒマスガ、十分考慮シテ戴ケレ
  バ宜イノデアリマス、私ハ今自分ノ考ヘ方
  トシテ十分ニ頭ノ中ニ入レテ置キタイト思
  フコトガアリマスカラ、アト一二點伺ツテ
  置キタイ、是ハ簡單ナコトデアリマス、法
  案關係デハアリマセヌ、昭和十五年度カラ
  稅制ノ根本的改革ヲヤル、斯ウ云フコトヲ
  大臣ハ本委員會ニ於テ言明セラレテ居ル、
  私ハ其ノ材料トシテ玆ニ大キナ問題ガ一ツ
  アルト思フノデス、ソレハ我國ノ人口問題
  デアリマス、人口問題カラ稅制ヲ論ズルノ
  モ勿論一ツノ途デアルト思フ、稅ハ必ズシ
  モ金ヲ集メレバ宜イト云フバカリデハナ
  イ、國家ノ產業政策モアレバ、國策ノ財政
  上ノ政策モアリ、社會政策モアリマセウ、
  何處ニ國家ヲ向ケテ行クカト云フ一ツノ大
  キナ方向トシテ、稅制ノ根本改革ト云フコ
  トガ大切デアルト思フノデアリマス、人口
  問題ガ茲ニアル、統計ヲ調ベテ見マスト、
  此ノ頃人口ノ增加率ガ減ツテ居ルノデアリ
  マス、大臣ハ此ノ點ハ御承知デアラウト思
  ヒマスガ、昭和三年ニ千人ニ對シテ三十四
  人增加シテ居ツタモノガ、昭和十二年-
  一昨年ハ三十人ニナツタ、是ハ由々シキ大
  事デアリマス、每年低下シテ居ル、三十四
  ガ三十三、三十二、三十一トナリ三十トナ
  リ、昭和十二年ハ三十人ニナツタ、四人減ツ
  テ居ル、十年間ニ增加率ガ千人ニ對シテ四
  人減ツテ居ル、千万人ニスレバ四万人ノ減
  少デアル、是ハ減少率デアリマス、總體ト
  シテハ無論殖エテ居ルガ、增加率ハ減少シ
  テ居ル、七千万人デ二十八万人減少シテ居
  ルトスレバ大變ナ問題デアリマス、今國運
  ハ興隆シテ居ル、國防ノ充實ヲ圖ラナケレ
  バナラヌ根本ハ人的資源デアル、人間ガナ
  ケレバ何ニモナラヌ、其ノ人口ノ增加率ガ
  減ルト云フコトハ重大問題デアリマス、現
  在一年ニ百万人ヅツ殖エテハ居リマスガ、
  七千万人ノ中十年間ニ一十八万人減少シタ
  トスルナラバ、百万人ガ御破產ニナツテ、
  五十年後ニハ人口ガ增加シナイコトニナ
  ル、是ハ國家トシテ最モ重大問題デアルト
  思フ、之ニ對シテ稅制ノ上カラ餘程考ヘナ
  ケレバナラヌ、現在ハ所得稅ヲ中心トシテ
  昭和十五年度カラ稅制ノ根本改革ヲヤル、
  斯ウ言明ヲサレテ居リマスガ、人口ノ減少
  スル傾向ヲ阻止セントスル人口政策ヲ稅制
  ノ上ニ執ツテ貰ハナケレバナラヌト思フ、
  成程現在家族控除ノ制度ハ微溫的ナガラア
  リマス、併シ是ハ申譯的ナモノデ、人口國策
  トシテヤツテハ居ナイ、ソコデ私ハ昔カラ
  ソレニ對スル根本的ノ考ヲ持ツテ居ルガ、
  給料取ニ一人子供ガ出來タナラバ給料ヲ五
  圓ナリ十圓ナリ增シテヤル、其ノ一面ニ於
  テ稅制ノ上カラ考ヘテ、子供ガ一人ナラバ
  免稅額ヲ幾ラ、二人ナラバ幾ラト云フヤウ
  ニ、家族ノ多寡ニ依ツテ課稅ヲ大ニ緩和ス
  ル、現ニ獨逸ノ例ヲ見マシテモ、一箇月二
  百馬克ノ給料取ハ、子供ガ三人アリマスト
  稅金ハ「ゼロ」ニナリマス、一千馬克ノ給料ヲ
  取ツテ居リマス者ハ、八人ノ子供ヲ持ツテ
  居レバ稅ガ一厘モ掛ラヌ、獨逸ノ最低納稅
  所得ヲ見マシテモ、子供四人ノ時ハ一箇月
  給料二百六十馬克、子供五人ナル時ハ三百
  五十一馬克デ、稅カラ見レバ非常ナ免稅ニ
  ナル、其ノ外成年〓育ニ對スル控除ガア
  リ、子女ニ對スル特別ノ控除、保險料ニ對
  スル特別ノ控除、相續稅ノ子女ノ多寡ニ依
  ル特別控除、子女ニ對スル、補助金制度、
  斯ウ云フ制度ヲ設ケテ獨逸ハ人口政策ヲ眞
  劍ニヤツテ居ルノデアリマス、日本ハ如何
  カト言ヘバ、人口ノ增加率ガ低マリツツア
  ル、是ハ國家トシテハ重大ナル問題デ、未
  然ニ防止セナケレバナラヌト思フ、日本ノ
  國運ハ今ヤ支那ニ滿洲ニ延ビツツアル際、
  人口ガ減ツテハ如何トモシ難イ、ソコデ之
  ヲ未然ニ防グ爲ニ、單ナル所得稅ニ對スル
  控除ノミニ止マラズ、モツト根本的ニ人口
  增加ニ向ハシムルヤウ、稅制ノ上ニ於テモ
  考ヘナケレバナラヌト思フ、獨逸ハ其ノ
  財源トシテ獨身稅ヲ取ツテ居ル、併シ獨身
  稅ハ日本ノ家族制度ニ於テハイカヌト、大
  藏大臣モ本委員會ニ於テ說明セラレテ居リ
  マスカラ、私ハ御尋シマセヌガ、少クトモ
  人口ノ增加ヲ助長シ、人口ノ減少ヲ食ヒ止
  メンガ爲ニ、是ガ稅制政策トシテ、所得稅
  ニ付テノ控除額ヲ更ニ大キクセネバナラヌ
  ト思ヒマス、此ノ點ニ對スル御所見ヲ伺ヒ
  タイ

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• 152・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　人口問題デアリマスガ、
  人口ノ增加率ガ多少減ツテ居ルト云フ御說デ
  ゴザイマス、是ハ昭和五年六年當時ノ影響
  ヲ受ケマシテ、多少人口ノ增加率ガ減ツテ
  居ルカト思フノデアリマスガ、此ノ現象ヲ
  以テ、日本ノ人口ノ增加率ハ旣ニ止ツタモ
  ノト見ルカ、又是ハ恆久的ノ現象デアルカ、
  或ハ一時的ノ現象デアルカト云フコトヲ考
  ヘテ見ル必要ガアルト思フノデアリマス、
  又是ハ人口ト土地、食糧トノ問題モアルト
  思フノデアリマスガ、滿洲方面ニ移住致シ
  テ居ル人々ノ出生增加率ト云フモノハ相當
  高度ノモノガアリマシテ、果シテ日本人ノ
  人口ノ增加率ト云フモノガ、是デ止ツ
  タモノデアルカ否カト云フコトニ付テ
  ハ相當檢討シテ見ル必要ガアルト思フノ
  デアリマス、ケレドモソレハ別ト致シ
  マシテ、稅ト人口ノ問題デアリマスガ、
  勿論我國ノ人口ノ增加致スコトハ慶ブベキ
  コトデアリマスノデ、此ノ點ニ付テ稅制ニ
  於テモ更ニ一段ノ工夫ヲ加ヘヨト云フコト
  ニ付キマシテハ、是ハ工夫ヲ致シテ見マス、
  併シナガラ現在最モ此ノ稅ト人口トノ問題
  ヲ考ヘテ居ルノハ佛蘭西デゴザイマスガ、
  幾ラ稅ト人口ノコトヲ考ヘテモ佛蘭西ノ人
  口ハ增加シマセヌ(笑聲)寧ロ減少シツツア
  ルノデアリマス、人口ガ增加スルヤウニ稅金
  ニ依ツテ調節致サウト云フコトハ、是ハ少
  シ話ガ側面的ノ話デアリマシテ、正面ノ話
  デハナイト思フノデゴザイマスガ、多少ノ
  效果ハアルカモ知レマセヌカラ、能ク〓究
  スルコトニ致シマス

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• 153・田村秀吉

  ○田村委員　時間ガ終リマシタガ、アト
  點ダケ御許ヲ願ヒマス

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• 154・川崎克

  ○川崎委員長　要領ダケニ御願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411313X01219390311&spkNum=154

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• 155・田村秀吉

  ○田村委員　ソレハ明年稅制ノ根本改革ヲ
  ヤル、ソコデ中央ト地方トノ負擔ノ均衡ヲ
  ドウスルカト云フコトガ必然的ニ起ツテ參
  リマス、今囘遊興稅ヲ國稅ニ移管シテ、先
  程ノ内務大臣ノ御話ニ依ルト二千万圓ヲ地
  方ニ交付スルト云フコトデスガ、是ハ派生
  的ノ問題デアリマス、私ハ地方稅ヲ根本的
  ニ改革シテ負擔ノ均衡ヲ圖ラナケレバナラ
  ヌト思フ、ソコデ負擔ガ一番不均衡ナノハ
  都市ト農村デアリマス、各稅務監督局ニ就
  テ調ベテ見マシテモ、都市ト農村トデハ非
  常ナ違ヒガアル、大抵五割程度農村ノ方ガ
  都市ヨリモ負擔ガ多イノデアリマス、旦足
  地方ハ附加稅ガ多イ爲デアリマス、大藏省
  ハ此ノ課稅制限ヲヤツテハ居ラレマスガ、
  色々ノ拔ケ穴ガアリマス上ニ、或ハ災害ガ
  アルトカ何トカ云フコトニナルト、町村條
  例ニ依ツテ課稅ヲ許サナケレバナラヌト云
  フヤウナコトデ、段々町村稅ガ殖エテ來ル、
  現在色々ノ地方稅ヲ國稅ニ移管スルヤウナ
  趨勢ニアリマスガ、一時的ノ補給金トカ、
  或ハ一ツノ遊興稅ヲ國稅ニ移管シタカラ交
  付金ノ一定額ヲ殖ヤスト云フコトハ、ホン
  ノ瀰縫策デアリマスカラ、根本的統制改革
  ヲヤツテ負擔ノ均衡ヲ圖ルニハ、ドウシテ
  モ財政調整交付金ト云フ制度ヲ確立シナケ
  レバ、中央ト地方トノ稅制ノ均衡ヲ圖ル譯
  ニハ行カヌト思ヒマスガ、其ノ方針ヲ以テ
  財政方針トセラルル御考ガアリマスカドウ
  カ、其ノ方針ダケヲ更ニ伺ツテ置キマス

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• 156・石渡莊太郎

  ○石渡國務大臣　中央地方ヲ通ジマスル稅
  制改革ヲ行フ際ニ、今日一億三千万圓ヲ計
  上致シテ居リマス地方交付金ニ付テ、何等
  カノ形式ニ於テ之ヲ確立スルト云フコトハ、
  過去ノ問題ハ別トシマシテモ、是ハ必要ナ
  ル問題デアラウト考ヘテ居リマス

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• 157・川崎克

  ○川崎委員長　本日ハ是ニテ散會致シマス、
  明日ハ日曜デスカラ、明後日又公報デ申上
  ゲマス
  午後六時十分散會

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