1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年三月十三日(月曜日)午前十一時二十四分開議
出席委員左の如し
委員長 眞鍋勝君
理事 成島勇君 理事 小串清一君
理事 泉國三郎君
高木粂太郎君 本田彌市郎君
田子一民君 濱地文平君
太田理一君 永山忠則君
井上良次君 道家齊一郎君
同月十一日委員田川大吉郎君辭任に付其の補闕として道家齊一郎君を議長に於て選定せり
三月十一日船員保險法案(政府提出)の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
厚生大臣 廣瀬久忠君
出席政府委員左の如し
厚生政務次官 津崎尚武君
厚生省衞生局長 林信夫君
保險院長官 進藤誠一君
保險院總務局長 佐藤基君
保險院書記官 川村秀文君
本日の會議に上りたる議案左の如し
職員健康保險法案(政府提出)
船員保險法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=0
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001・眞鍋勝
○眞鍋委員長 ソレデハ是ヨリ會議ヲ開キ
そう、質疑ハ前會ニ於テ終了致シマシタ、
是ヨリ直チニ討論ニ入リマス-成島勇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=1
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002・成島勇
○成島委員 私ハ立憲民政黨ヲ代表致シマ
シテ、本案ニ贊成スル者デアリマスルガ、
少シク所見ヲ申述ベタイト思ヒマス
長期建設戰段階ニ入リマシテ、愈〓生產擴
充ト銃後國民生活ノ健全トハ、國家國民ノ
爲ニ缺クベカラザル二大要素デアリマス、
今日政府ハ有ユル困難ト障碍トヲ排除シテ
モ、國民生活安定ノ爲ニ國家施設、社會施
設ヲ實行セネバナラヌ責任ガアルト思ヒマ
ス、物價ノ安定、物資ノ融通、惡性「イン
フレ」ノ防遏等モ、今日我ガ國民生活安定
ノ爲ニ、缺クベカラザル政治的手段デアリ
マス、併シナガラ國民ノ健康ヲ維持シ、體位
向上ヲ圖リ、體力ノ充實ヲ圖ルコトハ
日モ忽セニスルコトノ許サレナイ當面ノ國
家的大問題デアリマス、此ノ國家的大問題
ヲ解決スルコトノ爲ニハ、所謂厚生運動デ
アルガ、同時ニ社會立法ニ依ツテ社會的施
設ヲ盛ンナラシメテ、銃後國民生活ノ健全
ヲ圖ルコトハ、自明ノ理デアリマス、而モ
其ノ社會立法ハ形式的ノモノデハナク、實
際的ニ大イニ力ノアルモノヲ、日本ノ現狀
ハ要望シツツアルコトハ、國民モ政府モ等
シク認識シツツアル時ニ、今議會唯一ノ社
會立法デアリマスル職業健康保險法案ハ、
社會政策ノ實現トシテ、殊ニ非常時ノ今日
當然必要ナコトデアルガ、提出サレタモノ
ハ豫算ノ都合デ縮少サレタト、厚生省當局
ハ答ヘマスルガ、其ノ重要性ニ鑑ミ甚ダ遺
憾デアリマス、健康保險、國民健康保險、
本保險、社會保險ト何本モ併立サレテ居リ
マスルガ、ソレ等ヲ一貫シテ考ヘマスルト
キニ、保險ノ中心ヲ成スモノハ醫療デアリ
マス、其ノ中心ヲ成ス醫療ニ對シ、政府ハ
從來ノ經驗カラ保險醫療ヲ、如何樣ニ考ヘ
テ居ルノデアリマセウカ、從來ノ健康保險
ニ於テ、被保險者モ事業主モ、一向滿足シ
テ居ナイト云フコトハ、今日ノ常識ニナツ
テ居リマス、ソレニ對スル、是正改良ノ途
ヲ積極的ニ圖ルコトナクシテ、保險事業ノ
擴張ノミニ腐心シテ居ルコトハ、少シク判
斷ニ苦シムノデアリマス、吾々ハ今日マデ
之ヲ審議スレバ審議スル程ニ、職員健康保
險法案ハ、總テニ於テ後退的デ、全ク申譯
的ノ形式ヲ留メタルニ過ギナイコトヲ、政
府當局ノ答辯ニ依ツテ能ク知ツタノデアリ
マス、政府ガ此ノ後退的ノモノデ滿足セネ
バナラヌコトハ、一ニ厚生當局ノ對大藏省
トノ弱腰ガ齎シタル豫算ノ僅少ト、厚生當
局ノ所謂漸進主義ナル誤リタル見透シガ、
斯ノ如クオ座ナリ的ノ形式的ノモノニシタ
ト、斷言セザルヲ得ナイノデアリマス、凡ソ
社會立法ハ、國民平等一律ニ其ノ救濟手段
ヲ講ズルコトガ、最モ重大點デアリマス、
又假令財政上ノ都合デ、漸進主義ヲ以テ進
ムノ已ムナシトセバ、先ヅ緊急已ムヲ得ザ
ル國民階級ヨリ進メテ、成ベク速ニ其ノ他
ノ階級ニ進行スルコトヲ必要トシマス、今
若シ其ノ順序ヲ誤ル時ハ、無用ノ摩擦ヲ起
ス虞ガアリマス、本保險モ官廳ノ雇傭員方
面ヲ閑却シタルガ如キハ、社會政策上甚ダ
憂フベキモノガアルト信ジマス、本法案ヲ
見ルニ、强制被保險者トナツテ治療費ノ輕
減セラルル者ハ、民間經營ノ商工業者中、
商店、會社、事務所、工場等ニ勤務スル年
收千二百圓以下ノ、所謂下級「サラリーマ
ン」及ビ其ノ家族ニ限ツテ居ル、併シナガ
ラ其ノ携ハル業務ハ物品販賣、金融、保險
貯金、集金等其ノ他媒介、賃貸及ビ別ニ勅
令デ定メタル一定業務トナツテ居リマスル
ガ、是ト類似ノ官公吏、雇傭員、一般ニハ
無關係デアリマス、然ルニ今日郵便局ノ窓
口、其ノ他外務ニ從事スル十万餘ノ人々ハ
皆是等ノ業務ヲ行ウテ居ルノデアリマス、
而モ物價ハ〓騰シ、應召者ハ多ク、而モ其
ノ補充ハ行ハズ、給料、手當等ハ戰時前ト
同樣デ、且ツ應召者ノ仕事マデモ餘分ニ働
キ、百億ノ國債賣出シト、八十億ノ國債賣出シ
ト、血ミドロニナツテ働イテ居リマス、隨分
不平モアリマセウガ、僅ニ國民精神總動員
運動ノ一ツノ力ダケデ、之ヲ抑ヘテ居ルニ
過ギナイノデアリマス、仄聞スル所ニ依レ
バ、是ハ誤ツタ考カモ知レマセヌケレドモ、
各省ハ曩ニ本法案ノ内容ガ極メテ杜撰デ、
社會各階級間ニ頗ル紛議ヲ惹起スル危險ガ
多分ニアルコトヲ察シマシテ、厚生當局ニ
向ツテ、大藏省ノ財政ノ許ス時機ニ於テ、
卽チ完璧ヲ期シ得ル時機ニ於テ、提出スベ
シト再三再四注意シタト聞イテ居リマスト
共ニ、又一面大藏省主計局ニ向ヒマシテモ、
極力官民平等ナラザルベカラザルヲ說キマ
シテ、施行ノ延期又ハ官民包含シテ、同時
施行ヲ目標トシマシテ運動シ、其ノ代表者
ハ保險院ニ、更ニ又大藏省ニ十數囘集合運
動シタニ拘ラズ、厚生當局ハ徒ニ言ヲ左右
ニシ、或ハ官公吏方面ハ所管外ナリト言ヒ、
又ハ一應不完全ナルモノデモ作リ置ケバ、
之ヲ土臺ニシテ他日完璧ノ時機ヲ狙フト云
フガ如キ、偏ニ自省ノ功名心ヲ滿足スルコ
トニ捕ヘラレテ、遂ニ不公平ナル社會立法
ヲ提出シタト云フコトデアル、勿論眞僞ノ
程ハ圖リ兼ネルガ、併シ斯ル風評アルダケ
デモ、厚生省ノ本法案ニ對スル關心ノ程度
ハ、社會ノ期待ニ背イテ居ルコトハ明カデ
アリマス
以上ノヤウナ次第デ、本法案ハ實ニ不徹
底デ遺憾千萬デアリマス、サリナガラ無イ
ヨリハマシダト思ヒマスカラ、厚生當局ハ
面目ナドハ今後カナグリ捨テテ、早急ニ完
璧ヲ期スルヤウ努力センコトヲ附加ヘマシ
テ、本案ニ贊意ヲ表シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=2
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003・眞鍋勝
○眞鍋委員長 小串〓一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=3
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004・小串清一
○小串委員 私ハ立憲政友會ヲ代表致シマ
シテ、政府提出ノ本案ニ贊成ノ意ヲ表スル
者デアリマス、併シナガラ只今成島委員ヨ
リモ色々御話ノゴザイマシタヤウニ、本案
ニ對シマシテハ非常ニ遺憾ノ點ガアルノデ
アリマス、本案ハ我ガ社會立法トシテ重要
ナル、而モ各方面カラ要望サレル所ノ革新
政策ノ一ツデアリマシテ、爲シ得ルナラバ
私共ハ成ルベク完全ナモノヲ欲シイト思フ
ノデアリマスケレドモ、遺憾ナガラ此ノ案
ハ今ノ御話ノ通リ、申譯的ノ案ト認ムルヨ
リ外ナイヤウナ有樣デアル、併シナガラ本
案ヲドウシテモ認メナケレバナラヌト云フ
ノハ現在ノ時代ガ要求スルコトガ甚シイ
ノデアリ、サウシテ又政府ハ之ヲ漸進主義
ヲ以テヤルト云フノデアリマスカラ十分政
府ニ於テ此ノ點ニ考慮ヲ願ヒタイ、卽チ本
案ニ付テノ不備ノ點ヲ擧グレバ、非常ニ多
イノデアリマスガ、會期ノ切迫シタ今日ニ
之ヲ論議シテ居ツタナラバ、或ハ審議未了
ノ虞ナシトシナイノデアル、而モ政府ハ旣
ニ此ノ案ト姉妹ノ案デアル海員保險法ヲ提
出シテ居ルシ、又更ニ健康保險改正案ヲモ
出サレルト云フコトデアリマスカラ、翹望
シテ居ル多數ノ人々ニ、全部失望サセナイ
意味ニ於テ、此ノ案ノ成立ヲ希望ヲ致ス譯
デアリマス、カルガ故ニ政府ハ捲土重來十
分御〓究ニナリ、又此ノ委員會ニ於テ、各
委員ヨリノ要望ニ依ツテ、所謂社會一般ノ
要望ハ御分リニナツタ筈デアリマスカラ、十
分御留意ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、
試ミニ此ノ案ニ付テノ不備ヲ指摘シテ見ル
ナラバ、此處ニ於テ屢〓論ゼラレマシタヤ
ウニ、保險給付ノ額、卽チ生產其ノ他ノ手
當ニ付テ、報酬日額百分ノ五十ト云フコト
ハ、健康保險法ヨリモ一步退イテ-假ニ
之ヲ百分ノ六十トシタ所ガ、經費ニ於テハ
僅ニ十三万圓內外デアルト思フノニ、而モ
逆行シテ健康保險法ヨリモ一步後退シテ居
ルト云フコトハ、階級思想ノ惡化セシムル
ヤウナ危險ガアルノデハナイカ、殊ニ官吏
トノ權衡ヲ執ツタト云フ御答辯デアリマシ
タガ、是ハ政府ノ御考ガ非常ニ間違ツテ居
ルノデハナイカト思フ、官吏ハ恩給年金デ
アルトカ、死亡賜金デアルトカ、退職手當
デアルトカ、身分デ保障アルトカ、有ユル
特權ヲ持ツテ居ルノニ、此ノ法案ニ依リ保
護セラレル職員ハ、何等斯樣ナ關係ハ無イ、
然ルニ此ノ事ニノミ官吏ト同ジヤウニ均霑
セシムルト云フコトガ、甚ダ無理ナコトデ
ハナイカト思フ、第二ニ、支給期間ヲ殆ド
六箇月ニ限定シテ居ル、六箇月以上ノ長期
ノ疾病若クハ災厄ニ對スル想像ハ、御答辯
ニ依ルト僅ニ肺結核ノヤウナモノニ限ラレ
タヤウデアル、固ヨリ政府ハ之ヲ勅令ヲ以テ
ヤルノデアルカラ、本院ノ希望ヲ尊重セラレ
ルモノト信ジマスケレドモ、兎ニ角如何
ニモ縮小的ノ方法デアル、又事業ノ規模
ヲ十人以上トシテ居ルノハ、調査會案
ガ五人以上デアツタノニ對シテ、甚ダ消
極的デアルト私ハ思フノデアリマス、
モウ一ツノ第四ノ點ハ、被保險者ノ事業ノ
種類ヲ最小限度ニ限定シテ、サウシテ多ク
ノモノヲ任意加入ニシテ居ルコトモ、重大
ナル缺陷ノ一ツデアルト思フ、ソレカラ又
家族ニ對スル給付モ任意トシテ居ル點、是
ガ調査會案ハ家族ニモ强制給付ヲ要望シテ
居ルニモ拘ラズ、之ヲ取ツテ居ル、一體斯樣
ナ職員健康保險ハ、モウ少シ大規模ニ寧ロ
官公吏、雇員、傭員ト云フヤウナ者マデ含
マシタモノニシナケレバ完璧デハナイト思
フ、ソレガ取レテ居ルト云フコトモ遺憾
ナ點デアリマス、ソレカラ國庫ノ負擔スル
職員健康保險事業ニ要スル費用ニ付テ、其
ノ額若クハ率ヲ法律ヲ以テ決メテ居ラヌ、
是ハ何レ勅令デ出ルト云フノデアリマスガ、
此ノ點モ甚ダ賴リナク考ヘラレルコトデアツ
テ、私共ハ政府ノ誠意ヲ疑フノデアリマス、
斯樣ニ指摘ヲ致シマスト澤山ノ缺陷ガアル
ノデアリマスガ、唯之ヲ綜合シテ結論致シ
テ見ルノニ、規模ガ如何ニモ小サク、社會保
險ノ特質ヲ發起スルニハ、甚ダ不十分デアル
ト云フニ歸スルノデアリマスガ、併シ法律ハ
死物デアツテ、是ガ成果ヲ擧ゲルノハ、寧ロ
運用ノ如何、活用ノ如何ニアルノデアリマ
スカラ、ドウカ政府ニ於テ此ノ法案成立ノ
上ハ十分ニ此ノ點ニ御留意ニナリ、殊
澤山ノ勅令ニ委任サレタ事項ニ付テハ、十
分ニ此ノ一般ノ要望ヲ御考ニナツテ、適當
ニ生カシテ使ツテ戴キタイ、斯樣ニ考ヘル
ノデアリマス、彼ノ七十三條ニ於ケル、卽
チ十分ノ一云々ノ問題モ、是ハ活用如何ニ依
レバ、卽チ政府ガ廣義ニ解釋シテ奮發スレ
バ、相當ニ動カシテ行クコトガ出來ルノヂ
ヤナイカ、又先刻申シマシタ長期六箇月以
上ノ問題ニ付テモ、主務大臣ノ指定ガ十分
ニ廣範圍ニ亙ルナレバ、是モ亦十分救濟ノ
途ヲ講ズルコトガ出來ルノデハナイカト斯
樣ニ考ヘルノデアリマス
以上申シマスヤウナ缺陷ニ付キマシテ、
政府トシテハ十分ニ此ノ委員會ノ希望ヲ御
採入ニナツテ、成立ノ上ハ適當ナル勅令ニ
依ツテ瞹眛ニナツテル點ヲハツキリシテ、
サウシテ此ノ運營ノ全キヲ期シテ戴クヤウ
ニ御願致シマシテ、此ノ案ニ贊成スル者デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=4
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005・眞鍋勝
○眞鍋委員長 永山忠則君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=5
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006・永山忠則
○永山委員 現內閣ガ總親和ノ本義ヲ摩擦
相剋囘避ニ置イテ、庶政革新ヲ後退シ、職員
健康保險モ提出ヲ見合スニアラズヤト、國民
ガ焦慮致シテ居リマシタガ、後レ馳セナガ
ラモ本案ノ提出ヲ見マシテ、玆ニ本委員
會ノ無事通過ヲ見マスコトハ、我々ノ最モ
欣快ト致シテ居ル所デゴザイマス、36.9
本案ヲ解剖シテ見マスト、ヤハリ革新後退
ノ姿ガ、隨所ニ織込マレテ居ルコトハ、洵
ニ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、卽チ本案
ハ事變處理上ノ必然性ヨリ來ル施設ノ完備
ヲ圖ルト云フヨリハ、自由主義的經濟政策
ニ立籠ツタ財政的理由ヲ樞軸トシテ、歪曲
サレテ居ルノデアリマス、本法案ノ如キハ、
事變ニ依リテ、戰時景氣ヨリ取殘サレテ、物
價騰貴ノ生活苦ニ惱ム、「サラリーマン」勤
勞大衆ヲシテ、醫療ノ重壓ヨリ少シデモ免
カレシメテ、而モ年次低下セル國民體位ノ
確保向上ニ向ハシムル所ノ、戰時下最モ緊
要ナル社會立法デアルニモ拘ラズ、前內閣
時代、昨年十一月頃張切ツテ登場シタ此ノ案
ガ、有ラユル點デ實效ヲ削減サレテ居ルノデ
アリマス、之ヲ例證シマスレバ、被保險者ニ
依リテ生活ヲ立テル同一世帶員ノ疾病、負傷
ニ對スル給付ハ、空文ニ終ツテ居リ、强制被
保險者業種ノ縮少、常時使用人員ノ單位ノ
引上ゲ等ニ依リマシテ、範圍ヲ狹メテ最初
三百万人ヲ豫定セラレタルモノガ、其ノ十
分ノ一ノ三十八万人ニナツテ居ルノデアリ
マス、傷病手當金ノ率ヲ百分ノ六十ヨリ五
十ニ落シ、醫療費ノ支出期限ヲ一箇年ヨリ
六箇月ニ縮少シ、豫算ハ十四年度國庫支出
六十万圓ヲ豫定サレタモノヲ二十万圓ニ、
十五年度百五十万圓ヨリ三十五万圓ニ縮少
シテ居ルノデアリマス、元來此ノ長期戰ニ
對處スル國內問題トシテノ重點ハ、犧牲
ノ均衡デアリ、萬人其ノ處ヲ得テ、其ノ分
ニ應ジ、其ノ職ヲ通ジテ滅私奉公ノ赤誠ヲ
「フル」ニ盡スコトデアリマス、卽チ平沼首相
ノ總親和、總努力ニアルト思フノデアリマ
ス、然ルニ現在ノ自由主義ヲ基調トスル諸
機構デハ、犧牲ノ均衡ハ愈〓破レマシテ、
跛行性ハ增强致シテ、滅私奉公ハコトニ强
ク、國民ハ其ノ處ヲ得ナクナリ、總親和ヲ
害スルコトトナルノハ必然デアリマス、故
ニ長期戰ニ對應スル爲ニハ國體ノ本義ニ則
リ、公益優先、滅私奉公ヲ原則トスル庶政
ノ革新ヲ斷行スルコトガ、絕對的必須條件
デアリマス、而シテ此ノ革新ヲ斷行セント
スレバ、諸種ノ社會施設ノ徹底化ニ俟タナ
クテハナリマセヌ、其ノ革新ヘノ編成替ニ
依ル犧牲、及ビ摩擦部面ノ救濟緩和ハ、社
會施設ニ依ツテ初メテ出來ルノデアリマス、
社會政策ノ重要性ヲ無視スル革新ハ、大規
模ノ摩擦ノ爆發トナリマシテ、總親和、總努
力ハ望マレナイノデアリマス、殊ニ我國ノ
資本主義ハ、世界資本主義ヨリ遲レテ立上
ツテ居リマシテ、社會政策ノ如キハ度外視
シテ、資本主義ガ不當ニ伸張シテ居ルノデ
アリマス、經濟力ノ弱イ我國ガ社會施設ヲ
伴ハズシテ、資本主義ノミガ發展シタ所ニ
日本國力ノ跪弱性ヲ見ルノデアリマス、殊
ニ支那事變ノ發生ニ依リマシテ、愈〓國民
大衆ハ時局ノ重壓下ニ惱ンデ居ルノデアリ
やく、故ニ私ハ本案通過ニ際シマシテ、左
記ノ點ヲ强ク政府ニ要望致シテ贊成ヲスル
者デアリマス
社會政策ノ徹底、社會施設ノ完備ニ
萬全ヲ期セラレンコト
二、職員健康保險實施ニ當リテハ
(1)醫師會トノ緊密ヲ圖リ、世界最高
ノ日本醫術ヲシテ國民大衆ノ層ニマ
デ浸透セシメ、醫業ヲ國策ノ線ニ全
的動員ヲスルコト
(2)速ニ被保險者ニ依リテ生計ヲ立テ
テ居ル同一世帶員ノ疾病負傷ニ對ス
ル給付ヲ爲スコト
(3)被保險者業種ノ增加、常時使用人
單位低下ニ依ル被保險者ノ强制加入
ノ範圍ヲ擴大スルコト
(4)傷病手當ノ範圍ヲ增大スルコト
5)醫療費ノ支出期限ヲ延長スルコト
(
右要望ヲ述ベマシテ、本案ニ贊成スル者デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=6
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007・眞鍋勝
○眞鍋委員長 井上良次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=7
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008・井上良次
○井上委員 社會大衆黨ヲ代表致シマシテ、
本案ニ贊成ノ意見ヲ申上ゲタイト思ヒマス
旣ニ各黨派ノ代表者ガ指摘サレマシタヤウ
ニ、本案ハ時局下ノ社會立法ト致シマシテ
ハ非常ナ缺陷ヲ持チ、吾々ト致シマシテモ
滿足スル案デハナイノデアリマス、併シナ
ガラナキニ勝ルト云フ言葉ガアリマス、此
ノ立場カラ吾々ハ先ヅ斯ノ如キ制度ヲ設ケ
ルコトガ、今日ノ時局カラ極メテ重要デア
ルト考ヘマシテ、贊成ヲ申上ゲルフデアリ
マスガ、玆ニ私共社會大衆黨ハ特ニ本案ニ
對シテ希望條件ヲ附シテ、贊成ヲ致シタイ
ト考ヘルノデアリマス
一、政府ハ近キ將來本法ノ適用範圍ヲ擴
大シ、特ニ下級官公吏、市町村吏員、
〓職員中共濟組合制度ノ適用ナキ者ニ
本法ヲ適用スルト共ニ療養費ノ給付期
限ノ延長、傷病手當、出產休養手當額
ヲ增額スベシ
政府ハ現行各種健康保險ヲ統合シ、
全國民ヲ對象トスル保險制度ヲ樹立ス
ベシ
一、政府ハ國民體位低下ノ現狀ニ鑑ミ會
社工場、商店等ノ勤勞者ノ勤勞條件
ト待遇ヲ改善シ特ニ幼年工、婦人勞働
者ノ保護對策ヲ樹立シ、進ンデ住宅ノ
改善、榮養食ノ普及ト指導ヲ圖リ娛樂
休養ノ國家的機關ヲ急設スベシ
政府ハ時局ノ深刻化ニ伴ヒ人的資源
ヲ確保スル見地カラ醫藥制度ヲ檢討シ
可及的速ニ醫藥制度ノ根本的改革ヲ爲
スペシ
政府ハ結核、花柳病、「トラホーム」
等ノ豫防撲滅ニ關スル積極的計畫ヲ樹
立シ、其ノ實行ヲ期スベシ
以上ノ希望條件ニ付テ其ノ理由ヲ大體申
上ゲテ置キタイト考ヘマス、今日本ガ當面
シテ居ル一番重大ナ問題ハ、支那ニ於ケル
長期建設ヲ、如何ニシテ遂行スルカト云フコ
トデアルト思ヒマスガ、是ハ如何ナル困難
ト鬪ヒ、如何ナル犧牲ヲ拂ツテモ我國トシ
テハ爲シ遂ゲナケレバナラヌ大問題デアリ
マス、之ニ關シテ最モ重要ナ資源ハ、有能ニ
シテ健全ナル人的資源ヲ持ツト云フコトデ
アリマス、所ガ今日此ノ有能ニシテ健全ナ
ル人的資源ヲ持タウト致シマシテモ、今日
ノ社會制度、經濟制度、更ニ今日ノ生產方
法ヲ檢討シテ見マスト、其ノ土臺ハ營利主
義ヲ基礎ニシテ居ル關係上、人間ノ勞働力
モ此ノ營利ノ用具ニ供セラレルノデアリマ
ス、ソコデ從來政府ガ執リ來ツテ居リマス
對策ハ、結果論ニ對スル對策シカ立テラレ
テ居ナイノデアリマス、隨テ私共ハ現實ノ
生產方法ガ營利ヲ基礎ニシテ居ル、其ノ營
利用具トシテ勤勞ガ供セラレテ居ルト云フ
此ノ生キタ現實ヲ、能ク政府ガ認メマシテ、
其ノ根本的ナ方面ニ「メス」ヲ入レテ行カナケ
レバナラヌ、營利ヲ目的トスル生產ニ勞働
ヲ犠牲ニ供サナイデ、出來ルダケソレヲ抑
制シテ行クト云フ所ニ、根柢ヲ持ツテ貰ハ
ナケレバナラヌ、然ルニ色々ナ疾病、負傷
ノ激增ニ伴フ結果論的對策ダケヲ、後カラ
後カラト立テテ行キマシタノデハ、實際上
國民ノ體位ハ、護ラレナイノデアリマス、
サウ云フ見地カラ特ニ勞働時間制ノ問題、
勞働賃銀ノ問題、或ハ住宅ノ改善ノ問題、
或ハ榮養食普及指導ノ問題、餘暇利用ノ間
題斯ウ云フ問題ニ政府ガ積極的ナ對策ヲ
立テテ戴キタイト云フコトヲ考ヘマス、特
ニ最近幼年工、婦人ノ工場進出ガ、非常ニ
激增致シマシタ爲ニ、是ガ又將來我國ニ取
ツテハ大キナ問題ニナルコトハ、火ヲ睹ル
ヨリモ明カデアリマス、政府ハ幼年工ノ工
場、會社、商店ニ於ケル勞働、勤勞條件ニ
對シテ、相當監督ヲ致シマシテ、將來是等
幼年ノ體位ガ十分確保出來ル方策ヲ、今カ
ラ樹立シテ置ク必要ガアルト思フシ、尙ホ
婦人勞働者ニ對シテモ、婦人ガ我國ノ人口
資源ヲ培養スル重大ナ要素デアリマスノデ、
此ノ婦人ノ工場進出ニ關シマシテモ、相當
ナル注意ヲ拂フベキ必要ガアルト云フコト
ヲ申上ゲテ置キタイト思フノデアリマス
其ノ次ニ是ハ本會議デモ申上ゲタノデア
リマスガ、今一ツ政府トシマシテハ、色々
ナ保險制度ヲ設ケマスケレドモ、勿論其ノ
對象物ニナツテ居ル方面デハ、保險制度ノ
出來ルコトヲ喜ンデ居リマスガ、併シ數多
クノ國民ガ、マダ是等ノ保險カラ漏レテ居
ルノデアリマス、サウ云フ點ヲ考ヘマス
下、徒ニ各種ノ保險ヲ別々ニ作ルト云フヨ
リモ、國民打ツテ一丸トシタ保險制度ヲ考
ヘテ置ク必要ガアルノデアリマシテ、サウ
云フ點ニ對シマシテモ、積極的ナ調査〓究
ヲ遂ゲラレマシテ、一日モ速ニ全國民ヲ對象
トスル保險制度ノ實現ヲ、私共ハ要求スル
譯デゴザイマス、尙ホ全國民ヲ對象ニス
ル保險制度ヲ樹立スルニハ、ドウシテモ
今日ノ醫藥制度ニ檢討ヲ加ヘナケレバナリ
マセヌ、政府ハ從來、醫藥制度ノ改革ニ對
シマシテハ、醫藥制度調査會ヲ通シテ、
色々〓究サレテ居リマスケレドモ、マダ
今日其ノ具體案サヘ、議會ニ示スコトガ
出來ナイ實情ニアルノデアリマス、厚生省
ハ今日ノ重大ナ時局ヲ突破スル爲メ重要部
面デアル國民ノ體位ノ問題ヲ受持ツテ居ル
省デアリマスカラ、眞劍ニ醫藥問題ノ解決
ニ向ツテ、積極的ナ努力ヲ要望シテ置キタ
イノデアリマス
更ニ本法ノ內容ヲ檢討致シマシテモ、數
多クノ委員カラ指摘サレマシタヤウニ、洵
ニ物足ラヌ點ガ多イノデアリマス、此ノ物
足ラヌ點ハ何ト言ツテモ厚生省ノ弱腰ニ原
因ガアツタ、或ハ努力ガ足ラナカツタト云
フコトニ、政府ハ責任ヲ持ツテ貰ハナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、何卒政府ハ
近キ將來ニ、此ノ案ガ立派ナ保險法トシテ、
健康保險法ト同ジヤウナ完備シタ法律案ト
シテノ改正案ガ、議會ニ提出サレルコトヲ、
吾々ハ待望シテ居ル譯デアリマス
最後ニ一言申上ゲテ置キタイノデスガ、
先ニ誰カモ指摘サレテ居リマシタヤウニ、
ドウモ政府ノ政策ヲズツト見テ居リマスト、
國民ノ生活ノ問題、體位ノ問題、斯ウ云フ
問題ガドツチカト云フト、何時デモ第二次
的ニ取扱ハレルノデアリマス、私ハ是ニ全
反對デアリマシテ、國民ノ生活ト其ノ體
然
位ヲ守ラズシテ國家ノ發展モ、民族ノ發展
モアリマセヌ、ドウシテモ生活ヲ確保シテ、
體力ヲ涵養致ス所ニ、國家ト民族ノ發展ガ
アルノデアリマシテ、此ノ點カラ致シマス
レバ、今日ノ時局ハ厚生省ノ役割ト使命ヲ
果スノニハ、最モ好イ時機ニ當面シテ居リ
マス、此ノ機會ヲ厚生省ハ積極的ニ活用シ
關係各省ニ大イニ厚生省ノ使命ノ諒解ト理
解ヲ深メシメテ、此ノ重大時局ヲ乘切ル決
意ヲ持ツテ貰ヒタイト思フノデアリマス、
本當ニ魂ヲ打込ンデ、働キマスナラバ、必
ズ厚生省ハ全國民カラ稱讚ヲ受ケル省トナ
ルコトガ出來ルノデアリマス、今ノ狀態デ
アリマスナラバ、後カラ後カラト不平ヲ聞
クダケノ省ニナリマシテ、實際積極的ナ建
設的ナ方針ヲ國民ニ示シテヤルコトガ出來
ナイト、私共ハ考ヘマスノデ、今後一層當
局ハ奮鬭努力サレマシテ、眞ニ厚生省ガ新
設サレタ意義ヲ認識シテ、廣ク國民ノ間ニ
喜ビノ聲ヲ聞クコトノ出來マスヤウニ、努
力サレンコトヲ只管切望致シマシテ、本案
ニ贊成ノ意思ヲ表シテ置キタイト思フノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=8
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009・眞鍋勝
○眞鍋委員長 道家齊一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=9
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010・道家齊一郎
○道家委員 私ハ第二控室ヲ代表シテ、本
案ニ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス、但シ
此ノ際政府ニ一言希望ヲ申上ゲテ置キタイ
ト思ヒマス、本法案ガ政府ノ提出セラレタ
社會立法ノ唯一ノモノデアルト云フコト
ハ、甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、政
府ハ果シテ今日ノ社會情勢ヲ、眞ニ理解シ
テ居ラレルヤ否ヤヲ疑フ者デアリマス、獨
リ社會立法ノミナラズ、政府ハ徒ニ總親和
ト云フ「モットー」ヲ揭ゲルノミデアツテ、
總テノ改革ト云フモノヲ放棄セラレテ、財
政經濟ニ於テモ何等見ル所ガナイ、勞働方
面ニ於テモ何等爲ス所ガナイ、唯現狀維持
以外ニハ何モノモナイ、、寧ロ改造其ノモノ
ヲ放棄シツツアル、サウシテ戰爭ノ解決ニ
全力ヲ注グ、斯樣ナコトハ言ハナクテモ分
ツテ居ル、戰爭ノ解決ニ全力ヲ注ガナイ者
ガ何處ニアル、敢テ平沼內閣ヲ要シナイノ
デアル、私ハ政府ニヨリ一層總テノ方面ニ
於テ、積極的ニ活動セラレンコトヲ希望ス
ル者デアリマス、本保險法案ノ如キハ、前
ニモ各派ノ代表者ガ述ベラレマシタヤウ
ニ、其ノ內容ニ於テ甚ダ遺憾ノ點ガアリマ
ス、寧ロ退步ト云ツテモ差支ヘナイ、範圍
ニ於テモ、給付ニ於テモ退步ト云フベキデ
アラウト思フ、既ニ十年バカリ前ニ出タ勞
働保險法ト比較シテ、何等改善ノ跡ガナイ、
寧ロ後退ノ跡コソアル、其ノ改善セラレナ
イコトハ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイ、殊ニ保險法
ノ從來カラ問題ニナツテ居リマスノハ診療
當事者ト保險當事者トノ間ノ相剋デアリマ
ス、ソレハ診療ノ內容ノ改善ヲ保險者ハ要
求スル、之ニ對シテ醫師ノ方面カラハ、診療
費ノ增額ヲ要求シテ相讓ラナイ、相讓ラナ
イ爲ニ迷惑ヲスル者ハ被保險者デアル、此ノ
保險ハ軈テハ家族ニモ及ンデ來ルコトデア
リマシテ、保險其ノモノノ價値ニモ關スル、
十年間ノ長イ間遂ニ解決セラレナイノハ遺
憾トスル所デアリマス、政府ハ此ノ點ニ十
分留意セラレンコトヲ要望スル者デアリマ
ス
次ニ先程申シタ內容ノ改善デアリマスガ、
是ハ寧ロ後退デアツテ、ヨリ前進ヲ希望致
シマス、是ハ急速ニ來ル議會ニ於テ、修正
セラレンコトヲ切望致シマス、以上ノ如キ
希望ヲ附シテ本案ニ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=10
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011・眞鍋勝
○眞鍋委員長 是デ討論ハ終結致シマシタ、
何レモ御意見ナリ御希望ヲ附シテノ贊成デ
アリマス、總テ本案ニ對シテ反對ハナイヤ
ウデアリマスガ、此ノ際採決ヲ致シマス、
本案ニ贊成ノ方ノ御起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=11
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012・眞鍋勝
○眞鍋委員長 起立總員、本案ハ可決相成
リマシタ-此ノ際私ヨリ一言申上ゲタイ
ノデアリマス、本法案ガ此ノ委員會ニ付議
サレマシテ以來、諸君ノ極メテ御熱心ニシ
テ愼重ナル御質問ガアリ、本日茲ニ圓滿ニ
終了致シマシタ、私ト致シマシテハ深ク感
謝致ス次第デアリマス、委員會中ハ兎角御
不滿ノ點ガ多カリシコトト存ジマスガ、ソ
レニモ拘ラズ終始御寛大ナル態度ニ對シテ、
深ク敬意ヲ表スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=12
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013・眞鍋勝
○眞鍋委員長 尙ホ本委員會ニハ船員保險
法案ガ併託サレマシタノデ、又引續イテ御
審議ヲ願ハナケレバナリマセヌガ、本日ハ
政府ノ說明ヲ聽イテ、參考資料ノ要求ヲシ
テ散會シタイト存ジマスカラ、洵ニ御迷惑
デアリマスガ旣ニ十二時ニナリマシタケレ
ドモ、暫クノ御辛抱ヲ願ヒマス、ソレデハ
本案ノ說明ヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=13
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014・廣瀬久忠
○廣瀨國務大臣 只今議題トナリマシタ船
員保險法案ニ付テ說明致シマス、海運業ガ
四面環海ノ我ガ國情ヨリ見テ貿易ノ發展、
國際收支ノ改善、及ビ生產力ノ擴充等ノ諸
點ニ於テ、國運ノ伸張上重要ナル關係ガア
ルノミナラズ、一朝有事ノ際ニ軍事上、國
防上重大ナル關係アルコトハ申スマデモア
リマセヌ、海上產業ノ發展ヲ期スル爲ニハ、
其ノ方策ハ多々アリマスガ、畢竟スルニ物
的方面トシテ、優秀ナル船舶ヲ保持スルコト
ト人的方面トシテ優秀ナル船員ヲ得ルコ
トガ、肝要デアルト考ヘルノデアリマスガ、
從來我國ニ於テハ此ノ人的方面ニ關スル國家
的施設ハ、物的方面ノ諸施設ニ比較シテ遜
色ガアルノデアリマス、卽チ我國ニ於ケル
船員ノ保護ニ關シマシテハ、船員法中ニ若
干ノ扶助規定ガアリマスル外、總テ船主ノ
施設ニ俟ツガ如キ狀態デアリマシテ、之ヲ
陸上勤勞者ニ對スル保護施設ニ比較致シマ
シテ、均衡ヲ得ザルモノト言ハナケレバナ
ラヌノデアリマス、船員保險制度ハ、海陸
ニ於ケル斯ノ如キ不均衡ナル狀態ヲ是正シ、
延イテハ海運業ノ隆昌ヲ圖ル上ニ、最モ有
效適切ナル制度トシテ、是ガ創設ノ要望ハ
大正十一年第四十五囘帝國議會以來問題ト
ナリ、又前議會ニ於キマシテハ、衆議院ニ
於テ船員保險法案ノ發議ガアツタ次第デア
リマス、斯ノ如ク船員保險制度ハ、多年ノ
懸案デモアリ、又社會政策上ヨリ致シマシ
テモ、或ハ海運政策ヨリ致シマシテモ、特
ニ今次ノ支那事變ヲ契機トシテ、海運ノ飛躍
的發展ガ期待セラルル秋ニ當リマシテ、是ガ實
現ヲ圖ルコトハ喫緊ノ要務ト考ヘラルルノ
デアリマス、本法案ノ內容ニ付テ、其ノ〓要ヲ
申上ゲマスルト、次ノ如キモノデアリマス
第一ニ被保險者ノ範圍ハ、原則トシテ船
員保健法施行地ニ船籍港ヲ定ムル船舶ニ
乘組ム船員法第一條ニ規定スル船員ト致
シタノデアリマスガ、本制度ハ内外地ヲ通
ジテ實施スルノデナケレバ、多少其ノ效用
ヲ缺ク虞ガアリマスノデ、關係ノ向キト折
衝ヲ致シマシテ、成ルベク內外地同時ニ實施
致スヤウ準備ヲ致シテ居ル次第デアリマス
第二ハ保險給付デアリマスガ、本保險ニ
於キマシテハ疾病、負傷、老齢、癈疾、脫
退又ハ死亡ノ場合ニ於テ療養ノ給付、傷病
手當金、養老年金、癈疾年金、脫退手當金、
又ハ死亡手當金ヲ支給スルコトト致シタノ
デアリマス、特ニ年金制度ヲ認メマシタノ
ハ、御承知ノ如ク船員ハ常ニ家庭ヲ離レテ、
不自由ナ海上生活ヲ送ル爲ニ、精神上又ハ
經濟上ノ苦痛ニ伴ヒ、生活不安定デアルノ
ミナラズ、海上勤務ガ長クナルニ從ツテ、
陸上ノ生活事情ニ疎クナル爲ニ、船員ヲ罷
メタル後陸上ノ職業ヲ得ルコトハ、極メテ
困難トナルノデアリマス、卽チ船員ニハ陸
上ノ勤勞生活者ニ見ルコトノ出來ナイ、特
殊事情ガ存シマスル爲、一旦船員ニナツタ
者モ、機會サヘアレバ速ニ陸上ニ轉職セン
トスル傾向ガ、一般ニ著シイ爲、現在船員
ノ勤續期間モ短イ實情ニアルノデアリマス、
年金制度ハ、斯ノ如キ實情ニ卽シテ設ケラ
レタモノデアリマシテ、之ニ依リ多數ノ優
秀ナル船員ヲシテ後顧ノ憂ナク、安ンジテ
永ク海上勤務ニ精勵セシメ、以テ海上ニ於
ケル人的資源ノ確保ヲ期シ得ルモノト信ズ
ル次第デアリマス
第三ハ費用ノ問題デアリマスガ、此ノ制
度ニ於テハ、被保險者及ビ事業主ガ、各〓折こ
半負擔ヲ致シマス保險料ヲ收入ト致シマシ
テ、保險給付ノ費用ニ充テルノデアリマス
ガ、年金制度ヲ取入レマシタ關係上、此ノ
保險料ノミヲ以テシテハ、被保險者及ビ事
業主ノ負擔ガ非常ニ重クナルノデアリマス、
此ノ負擔ガ過重ニナリマスト、海運ノ對外
的競爭力ヲ殺ギ、却テ海運業ヲ萎縮セシム
ルコトトナリマスノデ、此ノ點ニ付テハ最
モ愼重ナル考慮ヲ拂ヒ、政府ニ於テハ財政
其ノ他各般ノ事情ヲ考慮致シマシテ、年金
等ノ長期給付ニ要スル費用ノ五分ノ一ヲ負
擔スルコトト致シタノデアリマス
以上大體本制度ノ內容ノ主ナル點ヲ申上
ゲタ次第デアリマスガ、本制度ハ船員保護
ノ見地カラモ、或ハ海運政策ノ見地カラシ
テモ、是ガ實施ヲ圖ルコトガ、現下ノ時局
ニ鑑ミマシテ、洵ニ必要ト考ヘラルル次第
デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アラン
コトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=14
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015・眞鍋勝
○眞鍋委員長 參考資料ノ御希望ガアリマ
スレバ、此ノ際御申出ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=15
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016・高木粂太郎
○高木委員 大抵ノモノハ分ツテ居リマス
ガ、二十噸以上三十噸マデノ船舶ノ最近ノ
統計ハアリマセヌカ、分ラナケレバ宜シウ
ゴザイマスガ、分ツテ居ツタラ御提出ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=16
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017・眞鍋勝
○眞鍋委員長 ソレデハ本日ハ是ニテ散會
致シマス、明日ハ午前十時カラ開會致シマ
ス
午後零時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007411783X00619390313&spkNum=17
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