1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年二月二十日(月曜日)午前十時四十分開議
出席委員左の如し
委員長 野村嘉六君
理事 武知勇記君 理事 長野高一君
理事 曾和義弌君 理事 一ノ瀬俊民君
多田滿長君 手代木隆吉君
佐藤與一君 長野長廣君
庄司一郎君 田子一民君
河上哲太君 坂本宗太郎君
河合義一君 椎尾辨匡君
出席國務大臣左の如し
文部大臣 男爵 荒木貞夫君
出席政府委員左の如し
文部政務次官 小柳牧衞君
文部省專門學務局長 男爵 山川建君
文部省普通學務局長 藤野惠君
文部省社會教育局長 田中重之君
本日の會議に上りたる議案左の如し
青年學校教育費國庫補助法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=0
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001・野村嘉六
○野村委員長 是ヨリ開會致シマス-長
野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=1
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002・長野長廣
○長野(長)委員 荒木文部大臣ハ萬民輔
翼〓、東亞新秩序ノ建設ナル歷史的旗印ヲ揭
ゲテ起チマシタ平沼內閣ノ中ニ、文〓ノ府
ノ長官トシテ稀ニ見ル將軍大臣トシテ迎ヘ
入レラレタノデアリマス、國民ハ此ノ大臣
ニ期待スル所ガ絕大デアリマス、此ノ機會
ニ於キマシテ、政府ハ靑年義務〓育ノ實施
ヲ斷行セラレ、又非常時局ニ卽應シタル〓
育ノ革新ヲ計畫セラレテ居ルヤウデアリマ
スガ、現在及ビ將來ノ靑年〓育、其ノ他〓
育一般ニ對シテ、如河ナル抱負ヲ御持チデ
アリマセウカ、率直ニ御發表ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=2
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003・荒木貞夫
○荒木國務大臣 靑年層ノ義務〓育ハ、我
國ガ列國ニ率先シテ試ミタ極メテ重要ナ
ツノ施設デアリマス、由來一ツノ學歷ヲ以
テ國家ノ中樞人物ノ養成ノ一ツノ理念トシ
テ居ツタコトニ對シテ、國家ノ中堅層悉ク
ヲ擧ゲテ一ツノ國家有用ノ材トシテ〓養シ
テ行クト云フ所ニ、靑年學校ノ義務制ガ極
メテ重要性ヲ持ツモノト考ヘルノデアリマ
ス、隨ヒマシテ此ノ靑年層ノ義務〓育ハ、單
ニ自己ノ環境カラ來ル高等ノ〓育ヲ受ケラ
レナイ者ヲ〓育スルト云フ、〓育ノ機會均等
ト云フ意味バカリデナク、寧ロ實際的ノ訓
練ノ中カラ、又〓育ノ中カヲ將來有爲ノ材
ヲ、此處ニ求メテ行クト云フ一ツノ考モ此
處ニ持タセテアリマス、更ニ大キナ意味ニ
於テハ、國民悉クガ擧ゲテ此ノ義務〓育ノ
下ニ、極メテ堅實ナル步ミヲ將來ニ持ツテ
行ク、國家總體ノカガ、其ノ靑年層ノ一貫
シタル思想及ビ能力ニ依ツテ興隆スル途ヲ
圖ル、斯ウ云フ所ニ靑年學校ノ義務制ノ重
要性ヲ持ツテ居ルト考ヘマスノデ、之ニ對
シテハ殆ド歐米ニ據ルベキ、又深キ經驗ヲ
積ンダ手本ガ無イノデアリマス、隨テ非常
ナ覺悟ヲ以テ將來此ノ完全ヲ期セネバナラ
ヌト、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=3
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004・長野長廣
○長野(長)委員 只今ノ御說明ヲ承ツテ見
マスト、國民全體一ツニナツテ此ノ〓育ニ
盡サナケレバナラヌ、卽チ廣イ意味ニ於ケ
ル〓育ノ一元化ヲ徹底スル、洵ニ結構ト思
ヒマス、然ラバ果シテドウ云フ方法デ此ノ
大局ニ著眼ヲシタ〓育ノ一元化ヲ爲スベキ
カ、是ガ〓育ノ行政ヲ掌ラレル上ニ於テ、
最モ大事ナ問題デアルト思ヒマス、此ノ〓
育ノ一元化、ソレカラ今一ツハ〓育ノ運營
ハ〓師其ノ人ニアリマス、而シテ此ノ歷史
的劃期的重大時期ニ於キマシテ、〓師其
ノ人ガ十分ニ其ノ力ヲ發揮シテ、〓育ノ全
キヲ收メルト云フコトニ付キマシテハ、〓
師ノ〓權ヲ尊重スル、卽チ〓育者トシテノ
權威ヲ尊重シナクテハナラヌト思フノデア
リマス、ソコデ本日私ガ御質問ヲ申上ゲタ
イト思ヒマスコトハ、第一ハ〓育一元化ノ
徹底、第二ニハ〓權ノ尊重確立、此ノ二ツ
ノ大問題ニ付キマシテ、御質問ヲ申上ゲテ
見タイト思ヒマス
只今大臣ノ御說明ヲ伺ヒマスルト、國民
ガ全體一致トナツテ〓育ノ爲ニ盡ス、一元
化ヲ顯現スルト仰シヤルノデアリマス、然
ルニ此ノ靑年學校ノ規定ハ固ヨリ、一般〓
育ニ對スル法令制度ト云フモノハ、孰レモ
天降リデアリマス、官吏ガ机ノ上デ計畫ヲ
シタモノデアルト謂ハナケレバナリマセヌ、
卽チ勅令ヲ以テ官吏ノ想念ヲ表現シタモノ
デアリマス、眞ニ國民ノ總意ヲ此ノ〓育ニ表現
セントスルニハ、靑年〓育制度ヲバ法律ヲ以
テ定メル、詰リ立憲的ニ之ヲ定メル、此ノ議
會ニ於キマシテ全智全能ヲ集中スルヲ要ス
ル、而モ大臣ガ仰シヤル實際〓育、實際生活
ト云フコトニ徹スル上ニ於キマシテハ、國民
ノ實際生活カラノ要求要望ト云フモノヲ、
十分ニ此ノ制度ノ中ニ採入レマシテ、サウシ
テ國民總力ノ集中ヲ爲サシムルト云フコト
ガ、必要デハナイカト思フノデアリマス、
此ノ意味ニ於テ大臣ハ、眞ニ國民ノ總力ヲ
集中セシムル意味カラ、立憲的ニ此ノ靑年
〓育ニ關スル規定ヲ法律ヲ以テ定メル、靑
年〓育法ノ制定ヲ急ガレル必要ガアリハシ
ナイカ、又今日靑年トハ、小學校ヲ卒業シ
テカラ少クトモ二十五歲位マデノ靑年團員、
及ビ同一期間ニ於ケル靑年學校、該當年齡
者、斯ウナツテ居リマス、斯ク現在ノ靑年
〓育ハ、靑年團ト靑年學校ト云フ二ツニ分
レマシテ、同ジモノガ二ツノ制度ノ下ニ於
テ〓育サレ、訓練ヲサレテ居ルノデアリマ
ス、私ノ提唱セントスルノハ此ノ二ツヲ共
ニ靑年〓育法ナル法律ノ下ニ包含ヲ致シマ
シテ、而シテ後一ハ靑年團ニ關スル法令、他
ハ靑年學校ト云フ法令ヲ法律ヲ以テ定メマ
シテ、サウシテ靑年〓育ヲ一元化スベシト
云フノデアリマス、而シテ其ノ法律ニ依リ
定メタル制度タルヤ帝國議會ヲ通シテ國民
ノ全智全能ヲ集中セラレタモノデアル之
ニ依ツテ〓育サレタル靑年ノ實生活ハ竈ノ
隅カラ田畑ノ底土ニ至ルマデ其ノ全心全靈
ガ表現セラレテ居ルト云フコトニナラナケ
レバナラナイカト思フノデアリマス、彼ノ
獨逸トカ、或ハ伊太利トカ云ガ如キ專制的
〓育制度ハ、〓育ニハ禁物デアリマス、宜
シク之ヲ立憲的ニ、平沼首相ガ幾多ノ機會
ニ叫バレタ所謂立憲政治ト云フモノヲ尊重
セラレ、サウシテ此ノ立憲政治ニ基調シ、
帝國議會ヲ通シテ確立セラレタル劃期的ノ
靑年〓育法ノ制定ヲセラレルト云フコトデ
ナケレバ、到底先程述ベラレタ大臣ノ御抱
負ヲ實現スルコトハ困難デハナイカト思
フ、大臣ハ法律ヲ以テシナクシテ目的ヲ達
シ得ルト御考ヘデアリマセウカ、又私ノ意
見ガ適當デゴザイマセウカ、之ニ對シテ御
高見ヲ承リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=4
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005・荒木貞夫
○荒木國務大臣 〓育ノ一元化徹底ノ爲
ニ、國民ノ總意ヲ酌ンデ之ヲ立憲的ニ行フ
コトガ最モ效果的デハアルマイカ、而シテ
伊太利、獨逸ノ如ク唯强壓デハ十分ニ效果
ヲ擧ゲ難イデアラウ、斯ウ云フ御尋ノヤウ
ニ承ツタノデアリマス、靑年學校ノ義務制
ノ目標ガ、先程申上ゲマシタヤウニ極メテ重
要ナモノデアルトハ考ヘマスガ、御話ノ如
ク獨逸、伊太利ニ於テ未ダソコマデ徹底シ
タ義務制ニハナツテ居ラナイノデアリマス、
伊太利、獨逸ノ國情ガ、今日起チ上ル爲ニハ
アヽ云フ獨裁的ノ事デ行カネバナラナカツ
タ事情ト我國ノ事情トノ間ニハ、ソコニ又
大キナ開キガアリマスルノデ、獨逸、伊太
利ノ行ウテ居ル所ノモノ、又其ノ方針其ノ
モノヲ直チニ採ルト云フコトハ、決シテ適當
ナ方法トハ私ハ考ヘマセヌ、殊ニ我ガ國體
カラ考ヘマシテ、立憲的ニ行フト云フ意味
ハ總理大臣モ言ハレマス通リ、萬民輔翼
ニ其ノ根源ガアルノデアリマス、所謂奉仕
的ニ國民ガ皇獻ヲ翼贊シ奉ルト云フ所ニ、
立憲政治ノ所謂立憲ノ大方針、御聖旨ノア
ルコトト存ジマス、斯樣ナ意味ニ於テ無論
官吏ガ自分ダケデ、此ノ頃ヨク流行リマス
ル獨善的ニ考ヘルヤウナコトガアツテハ、到
底其ノ效果ハ擧ゲ得ナイト思フノデアリマ
ス、サリナガラ官吏ノ問題ニ付キマシテ
ハ、餘談ニ亙リマスルケレドモ、此際一應、
申上ゲテ置キタイト思フノデアリマスルガ、
今日ノ官吏ガ動モスレバ世間批判ノ的ニナ
リマスルコトハ官吏其ノモノノ我國ノ制度ガ
惡イニアラズシテ、吏道其ノモノノ確立ガ
ナイト云フ所ニ原因ガアラウト思ヒマス、
我ガ國體カラ官吏ハ自ラ任ジテ總テノ儀表
トナツテ行クト云フ所ニ、所謂奉仕シテ行
クト云フ所ニ官吏ノ分限令モアリ、此ノ道
ガシツカリ吏道トシテ出來上リマスルナラ
バ、官吏ガ考ヘマスルコト、起案スルコト
ハ必ズ聖旨ニ副ヒ奉リ、又國民ノ要望スル
所、希望スル所ニ能ク卽スルコトニナルモ
ノト考ヘマスルノデ、机上デヤリマシタカ
ラト云ツテ、其ノ點ガハツキリスルナラバ、
玆ニ誤ハナイノダラウト思ヒマス、是ハ一言
官吏ノコトニ付テノ點トシテ觸レマシタノ
デ申上ゲテ置キマスガ、斯樣ニ考ヘマス、御
趣旨ハ靑年〓育法ヲ一ツノ法律ニシテ、所
謂立憲的ニヤツタラドウカ、是モ一應御尤
ノコトデアリマス、靑年學校ト靑年團トノ
二ツガアルコトハイカヌ、併シ靑年學校ハ
御承知ノヤウニ、職業的ニモ非常ナ關係ガ
アリマスルシ、更ニ進ンデ先程申述ベタヤ
ウニ、單ナル義務制デ是等ノ〓育ニ當ルト
云フコトニ止マラズシテ、此ノ中ヨリ必ズ
中堅層ノ人ヲ作リ出シ、見出シタイト思フ
關係カラ、之ヲ將來十分ニ練ツテ、或ハサ
ウ云フヤウナ法制トシテ規定ヲサルル場合
モアラウト思ヒマスルガ、何レニシテモ非
常ニ各層ニ關係ガ多イノデアリマス、之ヲ
十分ニ見合セ、又經驗ヲ積ンダ後ニ於テ、
是等ノ點ニ到達スル場合ガアルノデハアル
マイカ、而シテ靑年團ノ問題ハ、是ハ一貫
シタ〓育ノ一ツノ趣旨ニナリマスルガ、今
マデハ校內ノ〓育ノミニ重キヲ置イテ、校
外トノ連鎖ガ甚ダ乏シカツタガ爲ニ、校內
〓育以外ニ、所謂校外ノ一ツノ〓育機關
トシテ、或ハ訓練機關トシテ靑年團、或
少年團其ノ他ガ出來タノデアリマスルガ、
今後ノ〓育ハ校內ト校外トヲ合セル、知的
修得ト行的鍛鍊トヲ合セル、玆ニ德性モ養
ツテ、知行德一體トナツテ行クト云フコト
ガ、〓育ノ方針デナケレバナラヌト思ヒマ
スノデ、隨テ校內ノ〓育ト校外ノ訓練ト云
フモノガ、兩者一ツノ手デ相俟ツテ一元化
サレテ行カナケレバナラヌ、靑年學校ノ意
味モ非常ニ重要性ヲ持チマシテ、靑年學校
ニ於テハ此ノ事柄ガ大キク實現ガ出來ル
ノデアラウト思ヒマス、隨テ其ノ時ニハ靑
年學校、靑年團、是ガ校內ト校外トガ一ツ
ノモノトシテ動ク、是ガ單ニ靑年學校ノミ
ナラズ、他ノ方面ニモ及ンデ行クノデハナ
イカ、今囘ノ國民學校ノ制定モサレルト云
フコトニナレバ、サウ云フ點ニ非常ニ大キ
ナ意味ガアル、左樣ナ時機ニ至リマスレバ
今御話ニナリマシタヤウニ、或ハ是ガ一本
ニナツテ、一ツノ法律トシテ靑年〓育法ト
云フヤウナコトモ考ヘラレルノデハナイ
カ、斯ウ考ヘテ居リマスガ、今日ノ所ハマ
ダ直チニ之ヲ施行スル程度ニ至ツテ居ラヌ
斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=5
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006・長野長廣
○長野(長)委員 只今ノ御說明ニ依リマス
ルト、靑年學校ガ校內及ビ校外ノ〓育訓練
ニ適當シテ居ルト云フコトデアリマス、然
ルニ靑年團ノ訓練ニ於キマシテモ、ヤハリ
是ハ校外ノ訓練ニ適當シタモノデアルト思
ヒマス、隨ヒマシテ此ノ兩者ガ複雜トナツ
テ居ル、之ヲ法制ノ上ニ於テ統制スル、詰
リ兩者ガ適當ニ摩擦ナク、又重複ナク圓滿
ナ〓育機關トシテ一元的ニ運行サレテ行ク
ヤウニ致シマスルニハ、ヤハリ兩者ソレゾ
レノ制度モ法令モ勿論必要デアリマスルカ
ラ、サウナケレバナラヌト思ヒマスルガ、
同時ニ之ヲ統一シタ靑年〓育法ト云フ法律
ノ生レ出ルコトガ必要デアラウト思ヒマ
ス、少シクハツキリ私ニ聽取レナカツタノ
デアリマスルガ、靑年〓育法ト云フモノハ、
必要ナモノデアルカナイカト云フコトガ一
ツ、若シ必要ナモノデアルトスルナラバ、
將來ソレニ向ツテ〓究ヲ續ケ、一日モ早ク
其ノ實現ニ到達スルヤウニ努メル御意思ガ
アルカ、ソレヲモウ一囘簡單ニ御伺シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=6
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007・荒木貞夫
○荒木國務大臣 只今御答ヲシマシタ中ニ
申述ベタ積リスデアリススガ、將來ニ於テ
大イニ〓究ヲ要スル問題デアツテ、諸般ノ
各省關係及ビ各方面ノ關係ガアリマスノデ、
直グニ之ニ著手スルト云フヤウナコトハ困
難デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=7
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008・長野長廣
○長野(長)委員 各省關係ヲ考慮セラレテ
困難ガアルト云フ御答デアリマス、然ルニ靑
年〓育ノ場合ハ、此ノ時局ニ鑑ミマシテ特
ニ急ガナケレバナラヌト私ハ思フ、何トナ
レバ今ヤ懸軍幾千里、海ニ陸ニ我等ノ靑年
ハ身命ヲ賭シテ活動致シテ居リマス、又現
在ノ靑少年ハ、此ノ幾年續クカ分ラナイ所
ノ非常時局ニ於テ軈テ身命ヲ賭シテ働カナ
ケレバナラナイ者デアリマス、殊ニ此ノ問
題ニ付テハ、先日陸軍大臣ノ表明セラレマ
シタ多兵主義、精兵主義、此ノ二ツノ重要
問題ニ聯關シテ思ヲ致ス時ニ於キマシテ、
何ヲ差措イテモ私ハ全國幾百万ノ靑年ヲ、
男子ト言ハズ女子ト言ハズ、此ノ皇軍ノ威
力ヲ强メル意味ニ於ケル要望ニ對シテ、
或ハ軍事〓育ニシロ、或ハ公民職業〓育ニ
シロ、直グニ是ハ徹底セシメナケレバナラ
ナイコトデハナイカ、又銃後ノ國民、運動ニ
於キマシテ、此ノ國民軍ノ進軍ノ中ニ第一
線ニ働イテ居ル者ハ、現在靑年學校又ハ靑
年團ニ修養シテ居リマス所ノ生徒デアリマ
ス、吾々ハ此ノ淚グマシキ全國幾百万ノ靑
年層ノ活動ヲ考ヘマス時ニ、斯ノ如キ貧弱
ナル〓育狀態ニ置イテ放任スルコトハ忍ビ
得ザルモノデアルト思ヒマス、故ニ今日ト
致シマシテハ種々制度ノ聯關ノミ拘泥致シ
マシテ、此ノ非常時局ニ於ケル急務中ノ急
務ナル靑年〓育ノ制度ノ問題ニ付テ荏苒日
ヲ過スベキデハナイ、文部大臣トシテノ荒
木將軍ニ國民ノ期待ヲシテ居ルモノノ中ニ
於テ此ノ一點ノ解決ガ特ニ重大デアルト私
ハ考ヘルノデアリマス、此ノ意味カラ私ノ
御尋申上ゲタイコトハ、今日農林省ハ農民
道場ナドヲ造リマシテ、一種ノ靑年〓育ヲ
ヤツテ居リマス、又商工省ハ技術員ノ養成、
或ハ工場ニ於ケル靑年職工ノ訓練ト云フ
意味ニ於キマシテ、幾多ノ施設ヲ致シテ居
リマス、其ノ他各省ニ於テ、種々形ハ變ツ
テ居リマスケレドモ、一種ノ靑年〓育ヲヤ
ツテ居リマス、文部大臣ノ仰シヤラレル各
省關係モ、是等ガ非常ナ問題ノ一ツデハナ
イカト存ズルノデアリマス、ソコデ此ノ間
題ニ付テハ、文部當局トセラレテハ、各省
區々ニ靑年〓育ガ無統制ノ間ニ行ハレル大
缺陷ヲ考ヘラレテ、殊ニ各省割據ノ靑年〓
育ヲ行ツテ居ル爲ニ、文相ノ特ニ共鳴セラ
レテ居ル立憲的ニ之ヲ變更スル、改善ヲス
ルト云フコトサヘ阻マレヨウトスルナラ
バ、此ノ問題ニ付キマシテハ、或ハ各省ヨ
リ靑年〓育委員ヲ出シテ一ツノ委員會ヲ拵
ヘ、此ノ委員制度ノ下ニ於テ我國ノ特ニ重
要ナ工業、農業、水產其ノ他ノ各方面ニ働
ク靑年層ニ對スル〓育ヲ一元化スルト云フコ
トニ力ヲ盡サレルコトガ急務デハナイカ、
サウシテ一面此ノ委員會、其ノ他色々ノ斯
カル統制施設ヲ本ニ致シマシテ、一日モ速
ニ大臣ノ共鳴セラレタ法律ニ依リ規定スル
立憲的靑年〓育制度ノ確立ヲ圖ルト云フコ
トガ急務デハナイカト思ハレルノデアリマ
ス、之ニ對シテ如何ナル御見解ヲ持タレテ
居ラレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=8
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009・荒木貞夫
○荒木國務大臣 今御述ニナリマシタ複雜
ナル、例ヘバ農民道場、技術員ノ養成、其
ノ他靑年團モ其ノ一ツデアルト思ヒマス
ガ、仰セノ通リニ是等ハ當然此ノ靑年學校
ノ實施ト共ニ整理セラレ、能ク連繫ヲセラ
レテ、農村ニ於テノ靑年學校ノ義務制ノ實
施或ハ工場地帶ニ於ケル靑年學校ノ義務
制ノ實施、是等ハ職業ト相合セマスルノデ、
當然一元化セラレテ靑年ガ此ノ區々ニナツ
テ居ル爲ニ却ツテ身心ノ疲勞ヲ來シテ、效
果ヲ減殺スルト云フヤウナコトガナイヤウ
ニ、或ハ委員會ノヤウナモノヲ設ケル必要
モアラウト思ヒマス、更ニ必要ガアレバ今
仰セニナリマシタ靑年〓育法ニモ、更ニ進
ムコトガ必要デアルト思ヒマス、仰セノ通
リソレハ實施ト共ニ速ニ爲スベキ必要ガア
ラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=9
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010・長野長廣
○長野(長)委員 私ハ文部大臣ガ軍部ノ畑
カラ文部省ニ入ラレマシテ、此ノ非常時局
ノ文政ニ當ラレタ御決心ヲ壯トシ、又時
時ニ述ベラレタ御抱負ヲ承リマシテ、大イ
ニ期待致シテ居ル者デゴザイマス、恐ラク
國民全體ガ其ノ心境ニアルコトト想像致ス
ノデアリマス、然ルニ一面文相ガ文〓ノ府
ニ居ラレテ仕事ヲセラレル上ニ於テ、非常ナ
御困難ヲ感ジテ居ルト云フコトニ付テ御同
情致シテ居リマス、文部省ハ中々ヤリニクイ
コトト思フノデゴザイマス、併シナガラ文相
ハ靜ニ其ノヤリニクイ所ノ事情ノ根本ヲ洞
察ヲセラレテ、サウシテ此ノ神聖ナル文〓、
大臣、日本帝國ノ中樞原力ヲ培養スル所ノ
文〓大臣トシテノ御職責ヲ、一刀兩斷ノ下
ニ解決ヲセラレテ行クコトヲ期待シテ居ル
者デゴザイマス、其ノ意味ニ於テ茲ニ御尋申
上ゲタイコトハ、近時猶太思想ノ我ガ國民層
ニ浸潤スルモノハ恐ルベキモノガアリマス、
或ハ映畫、或ハ文學、或ハ體育、娛樂、是
等ノモノヲ介シマシテ國民ノ思想ヲ蝕ミツ
ツアル、殊ニ哲學〓論ト云ヒ、經濟原論ト
云ヒ、或ハ又憲法論ト云ヒ、法學通論ト云
ヒ、此ノ思想ニ染マリマシテ、此ノ思想ノ毒
ガ盛ラレマシテ、サウシテ過去ヨリ現在、
又將來ニ國民ノ腦裡ニ浸潤ヲ爲シ、又爲サ
ント致シテ居ルノデアリマス、大臣ハ此ノ
思想根源ノ一掃ノ爲ニ大學ノ革新ヲ企圖シ
之ヲ斷行セラレテ居リマス、又其ノ他ノ思
想的病弊ノ一掃ニ努力セラレテ居ルコトハ
多トスル者デゴザイマス、ケレドモ大臣ガ
其ノ部下ニ居ル中央地方ノ官吏ヲ統制致シ
テ御仕事ヲナサル上ニ於キマシテハ、現在
ノ官吏ニ若シ其ノ思想ガアルトスルナラ
バ、其ノ思想ヲ根本カラ官吏ノ頭カラ拔イ
テシマハナケレバナラヌ、又此ノ〓育ヲ受
ケテソレガ腦裡ニ浸潤シテ居ル者ガ、官吏
タルト實業界其ノ他社會ノ各方面ニ活動シ
テ居ル者タルトヲ問ハズ、相當アルコトト
思ヒマス、詰リ其ノ〓ヲ受ケタ者ガ多イカ
ラ、自然ソレガ相當ニ多イト云フコトモ申
スマデモナイコトデアリマス、是等ノ者ニ
對シテ如何ニ日本學ノ徹底ヲ爲サントスル
ノデアルカ、殊ニ官吏、〓育者等ニ對シテ
日本學的ナル〓養ヲ與ヘ、拔本塞源ノ思想
對策ヲ立テラレナケレバナラヌト思フ、昨
年文部省ハ固ヨリ各方面ニ於テ思想的病者
トシテ警察權ノ發動トナリタル者、亦文部
省系統ニ少クナイト考ヘテ居リマス、玆
其ノ大臣ノ持タレル抱負ニ對シテ、其ノ網
羅スル所ノ行政官ニ大臣ト一擧手一投足ヲ
同ジクシ得ラレナイ者ガアル爲ニ、荏苒日
ヲ過シ、文〓大臣トシテノ大任ヲ果スコト
ガ十分出來ナカツタナラバ是ハ大變ダト思
フ、具體的ニハ申上ゲマセヌ、大臣ニハ十
分御分リノコトデアリマス、此ノ思想病者、
此ノ行政上ノ大困難、之ヲ解決スル爲ニ日
本學ヲ、學者ト云ハズ〓員ト言ハズ、又官
吏ト言ハズ、社會各方面ノ人々ニ十分ニ打
込ンデ、猶太思想ノ浸潤ト云フ恐ルベキ思
想的國防上ノ大缺陷ノ萠芽ニ對シテ、根本
ヨリ芟除スルト云フ具體的對策ヲ持タレテ
居ルノデアリマセウカ、若シ無イナラバ私
ノ意見ヲ申上ゲマスガ、速ニ之ヲ御立テニ
ナラナケレバナラヌト思ヒマス、先ヅ大臣
ノ御抱負ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=10
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011・荒木貞夫
○荒木國務大臣 〓育竝ニ行政ヲ通ジテノ
一般的ノ問題デアリマシテ、非常ニ事廣汎
ニ亙リ、根本問題ニ入ルノデアリマスガ、
今日ノ狀態ニ對シテ各方面ニ不滿足ノ聲ガ
多イノデアリマスルガ、洵ニ遺憾ニ思ウテ
居リマス、殊ニ〓育ニ關係シテ幾多ノ批判
ヲセラレルノデアリマス、決シテ其ノ事ガ
ナイトハ申シマセヌ、一方ニ於テ〓育ガ多
大ノ貢獻ヲ擧ゲテ居ルト同時ニ、他方ニ於
テ只今御指摘ニナツタヤウナコトノ昨今殊
ニ弊害ヲ現出致シテ居ルコトハ事實デアリ
マス、顧ミマスト-少シク根本ニ入リマ
スルケレドモ、明治維新ノ〓育制度ノ確立
セラレタ時ニハ、所謂王政復古デアリマシ
テ、五箇條ノ御誓文ヲ賜リマシテ、五箇條
ノ御誓文ニ依ル我國ノ〓育ノ確立ガ期セラ
レタコトハ御承知ノ通リデアリマス、卽チ
萬機公論ニ決スル、盛ニ經綸ヲ行フ、官武
一途悉ク志ヲ遂ゲシムル、舊來ノ陋習ヲ打
破シテ天地ノ公道ニ從フ、世界ニ知識ヲ求
メテ大ニ皇基ヲ振起スル、此ノ五箇條ノ御
誓文ガ明治維新ノ總テノ基礎デアリマシテ、
〓權モ茲ニ確立セラレタノデアリマス、明
治初年以來或ハ制度トシ、或ハ〓育ノ方針
トシテ示サレテアル所モ盡ク之ニ則ツテア
ルノデアリマシテ、洵ニ能ク我國ノ國體ニ
副ヒ、將來ノ日本ノ嚮フベキ所ヲ御示シニ
ナツタト存ズルノデアリマス、之ヲ國是ト
シテ御定メニナツタノデアリマス、然ルニ悲
シイカナ、實力ガ之ニ伴ハナカツタコトヲ
自覺セラレマシタ先輩ハ、歐米ヲ視察セラ
レテ、到底此ノ理想ノ實現ハ此ノ儘デハ出
來ナイト考ヘラレマシタ、當時ノ元勳ヲ初
メ活動ヲセラマシタ中心ノ方々ハ、玆ニ急
イデ歐米ノ文物ヲ入レルト云フコト、其ノ
後ノ國內ノ思想ナリ手段ナリノ違ヒカラ起
ツテ參リマシタ諸般ノコトガ錯雜ヲシテ、玆
ニ歐米ノ文物ヲ入レントシタ、明治十年以
後、殊ニ十一二年頃カラ盛ニ是ガ唱道セラ
レ、中ニハ民的說ヲ唱ヘ、民權論ヲ唱ヘ、當
時立憲政治ノ確立御施行等ヲ願出ルト云フ
ヤウナコトモ茲ニ始ツテ居ルノデアリマス、
之ニ依ツテ〓育ノ方面ニ於テモ、殆ド總テ
ノ制度ヲ歐米ニ採ツテ居リマシテ、當時入
ツテ來タモノヲ眺メテ見マスト、米國ニ於
テハ御承知ノヤウナ國柄デ實利主義ガ非常
ニ流行ツテ居ル、是ハ今日ニ於テモ爭ハレ
ナイ所デアル、各方面極メテ實利主義デア
ル、歐羅巴ニ於テハ佛蘭西革命以後ノ思想
ニ依ツテ自由主義ノ非常ニ旺盛ナ時代デア
リマシテ、此ノ實利主義ト自由主義トノ總
テノ諸制度、總テノ風潮ガ我國ニ流レ込ン
デ參リマシタ、恐ラク明治二十三年憲法御
發布當時マデ是ガ流入シテ來テ、之ニ依ツ
テ大部分ノ基礎ガ作ラレテ居ルヤウニ考ヘ
マス、政治方面ニ於テハ立憲政治ノ基礎ガ、
尊キ聖旨ヲ仰ギ、欽定憲法トシテ御發布ニ
ナリマスト同時ニ、〓育方面ニ於テモ〓育
ニ關スル勅語ヲ賜リマシテ、嚮フ所ガ初メ
テハツキリ致シタノデアリマス、是ヨリ出
發致シテ、我國ノ其ノ後ノ問題ハ、明治初
年ノ御精神ヲ實現スル爲メ歐羅巴ヲ參照ト
シテ建設サレテ參リマシタ、ソレガ日〓日
露ノ役ヲ經テ初メテ我ニ歸ツテ來タモノト
私ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ日露戰爭
以後多少ナリトモ我ガ國力ヲ信ジ、我ガ國
柄ニ對シテ、所謂國體ニ對シテ反省ヲ致ス
ト同時ニ、一方ニ非常ナ油斷ガ參リマシタ
コトガ玆ニ一ツノ端ヲ成シテ、世界大戰ニ
依ツテ更ニ思想的ノ世界的混亂ノ後ヲ承ケ
テ、只今御指摘ニナリマシタヤウチ或ハ猶
太思想ト云フヤウナ、一〓ニ申シマスト一
ツノ實利主義、自由主義ノ旺盛ナル時代、
更ニ共產主義、反對ニ全體主義、此ノ混線
ノ時代ガ今日茲ニ參ツテ居ルノデアリマス、
我國ノ各方面ニ活躍ヲセラレル總テノ中堅
層ノ人ハ、殊ニ指導階級ニ在ル人ハ、此ノ
〓ニ依ツテ非常ニ混亂時代ヲ現出シテ居ル
モノト私ハ考ヘマス、斯樣ニ長ク申上ゲル
コトモ、是ダケノ點ヲ考ヘマセヌト事容易
デナイノデアリマシテ、今日直チニ右カラ
左ニ之ヲ動カスト言ヒマシテモ、此ノ經
過ヲ經テ參リマシタ我國ノ總テノ制度、此
ノ制度ノ中ニ湧イテ來ル所ノ各般ノ思想ト
云フモノガ、今日整理スベキ時期ニ到達シ
テ居ルヤウニ考ヘラレマス、玆ニ私共申上
ゲネバナラヌト思フノハ、再ビ立返ツテ明
治維新ノ皇謨、卽チ五箇條ノ御誓文ヲ拜シ、
此ノ御理想ノ實現、皇謨ノ顯現ニ向ツテ進
マネバナラヌ、玆ニ混亂セル世界大戰後ノ
大正末期ノ非常ナ困難ナ時代ヲ經マシテ、
昭和ノ御代ヲ迎ヘテ-私ハ先般モ豫算總
會デ慥カ中途カラ伺ツタノデアリマスケレ
ドモ、紫宸殿ノ御儀ノ勅語、御踐祚ノ御儀
ノ勅語等ヲ御示ニナツテ居リマスルガ、此
ノ勅語ハ昭和ノ御代ニ於テ吾々ガ行クベキ
一ツノ大方針ヲ御示シニナラレタコトデア
ツテ、此ノ昭和ノ御代コソ明治維新ノ皇謨
ヲ實現ヲシ、我國ノ眞ノ姿ヲ顯現スベキ具
體的ノコトヲ御示シニナツタモノト拜スル
ノデアリマス、今日官吏ノ問題ガ出マシタ
ガ、吏道ノ刷新ニ當ツテモ此ノ勅語ヲ拜シ、
明治ノ維新ヲ顧ミテ、此ノ七十年間ノ實力
養成ヲ一ツノ力トシテ、玆ニ初メテ理想ニ
向フベキデハナイカ、斯樣ニ考ヘテ〓育ニ
對シテモ〓育勅語ヲ拜シマスト同時ニ、昭和
ノ御代ニ於テ踐ムベキ道ヲ明治初年ノ王政復
古ノ御精神ト相見合ツテ、茲ニ經濟學等ノ上
ニ付テモ、法律ノ上ニ付テモ、社會一般ノ事
ニ付テモ、將タ軍事ノ上ニ付テモ、私ハ此
ノ必要ガアルト痛感ヲ致シテ居ルノデアリ
マス、一括シテ屢〓、申上ゲタノデアリマス
ルガ、單ニ〓育ノミナラズ、一括シテ此ノ
點ニ對シテ大反省ヲ促シ、更ニ大キナ〓究
ヲ新ニ遂ゲテ、初メテ玆ニ東亞新秩序ノ建設、
或ハ現時代ニ於ケル所ノ理想ノ發現ガ出來
ルノデハアルマイカ、斯ク致シマスルナラ
バ、敢テ他ノ思想ヲ排擊致シマセヌデモ、自
己ノ理想ノ下ニ向ツテ行ツテ、他ノ長所ヲ
取入レテ行クコトニ依ツテ出來ルノデハア
ルマイカ、故ニ或ハ全體主義ニ偏セズ、或
ハ實利、個人、自由思想ニ墮セズシテ、行ク
ベキ道ヲ茲ニ明ニ持ツテ居ルノデアル、之ヲ
更ニ〓究サセル必要ガアルノデハナイカ、
大變ニ長クナリマシタケレドモ、斯ノ如キ
非常ニ困難ナ問題ト私考ヘテ居リマスノ
デ、文部省バカリデナク、今日一ツノ時代ノ
推進力ト言ハレテ居ル所ノ軍部方面ニ於テ
モ大キナ考ヲ玆ニ致サレテ、總テノ方面ガ
此ノ一ツニ向ツテ進マナケレバ、到底文部
省ダケデ〓育方面ニ如何ニ焦ツテ見マシテ
モ私ハ實現ハ困難デハアルマイカ、斯ウ考
ヘテ各方面ニ向ツテ此ノ點ヲ實ハ述ベテ居
ル譯デアリマス、又而シテ協力シテ玆ニ打
開ヲシテ行キタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
ル譯デアリマス、御尋ニ對シテ、大變根本
ノ問題デアリマシタノデ、少シク私ノ頭ニ
浮ンデ居ル所ヲ申上ゲテ御答ト致シタイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=11
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012・長野長廣
○長野(長)委員 非常ニ御抱負ヲ拜聽致シ
マシタケレドモ、大反省、大〓究ヲサセル
ト云フ極メテ抽象的ナコトデ、私ハ遺憾ナ
ガラ滿足ヲスルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、先ヅ私ノ考ヲ申上ゲテ見マスルト、今
ヤ文〓ニ關スル國民ノ改革期待ト云フモノ
ハ、大臣ノ言ハレマシタヤウナ〓念的ナモ
ノデハ滿足サレナイノデアリマス、今ヤ日
本ノ文〓ニハ火ガツイテ居リマス、爛頭焦
眉ノ急務トシテ國民皆憂ヘテ居ルノデアリ
さく、ソコデ先ヅ第一ニ私ハ思想ノ混亂、
思想ノ危險ト云フモノハ、國民ノ經濟生活、
政治生活上ニ愬ヘル所ノ此ノ困窮ガ、一番
思想ノ火ヲ呼ブ力デハナイカト思フノデア
リマス、先ヅ之ヲ文部省及ビ文部省系統ノ
官吏ニ付テ考ヘテ見マスルト、是ホド人事
ノ沈滯ヲシタ官廳ト云フモノハ他ニ見ナイ
ノデアリマス、私ハ嘗テ文部省ニ職ヲ奉ジ
タコトガアリマス、然ルニ此ノ頃度々文部省
ニ參リマシテ、廊下デ摺レ違フ靑年官吏ガ
昔日同樣依然トシテ雇員デアリ囑託デアル、
依然トシテ本官ナラザル狀態ニ置カレテ居
ル、而モ何レモ相當有能ノ材デアル、淚ナ
キヲ得ナイノデアリマス、此ノ沈滯ガ、此
ノ境遇ガ、自ラ思想ノ恐ロシキ弊害ノ火ヲ
呼ブ力トナツテ行ク虞レガアルノデアリマ
ス、最近段々現ハレテ來マスル所ノ彼ノ官
吏ノ思想惡化、文部系統ノ〓育官吏及ビ行政
官吏ノ思想惡化ト云フモノハ、其處ニ私ハ
胚胎シテ居ル所ガ大デハナイカト思フ、宜
シク逸材ハ其ノ所ヲ得セシメ、更ニ相當年限
勤續シタ者ハ直轄學校ナリ、地方官廳ノ行
政官ナリニ出シマシテ、サウシテ能ク地方
ノ實情ヲ眺メ、地方民意ノアル所、〓育ノ
流弊ヲ捉ヘサセテ、再ビ之ヲ本省ニ入ラシ
メテ其ノ手腕ヲ發揮セシメル、而シテ又地方
ノ學校、官廳等ニ働カシムルト云フガ如ク
致シマシテ、新陳代謝、體驗、修養ヲ積マ
セル所ニ、自ラ〓新ノ氣分ガ漲ツテ希望ニ
燃エ、サウシテ思想的脫線トカ、或ハ其ノ
他不平不滿ノ爲ニ能率ノ減退ヲ來スガ如キ
コトハ一掃サレルデハナイカ、又思想ノ是
正ト云フコトニ付キマシテモ、文部省ニハ
各種ノ〓育機關ガアリマス、又精神思想ニ
關スル〓究所モアリマス、是等ノモノハ果
シテドレダケノ國民ノ期待ニ副ウタル〓究
活動ヲ致シテ居ルモノデアルカ、次カラ次
ヘト古家ニ繼足シヲスルヤウナ〓育制度ノ
擴張ト、官吏ノ增員トヲ致シテ居ルヤウナ
現在ノ官界ノ流弊ニ文部省ガ堕シ、其ノ狀
態カラ脫スルコトガ出來ナイヤウナコトデ
アリマシタナラバ、到底文相ノ云ハレルヤ
ウニ明治維新ノ歷史ヲ顧ミマシテモ、私ハ只
今申シタ猶太思想又共產主義思想ノ擊滅、日
本學ノ建設ト云フコトハ出來ヌ、ソコデ私
ハ先程申上ゲテアル、文部大臣ハ隨分ヤリ
ニクイコトデアラウケレドモ、若シアナタ
ガ此ノ神聖ナル文〓ノ府ヲ預カラレテ、今
日ノ如ク、アナタノ今マデ言ハレタヤウナ
サウ云フ理由ノ下ニ荏苒日ヲ過シタナラバ、
アナタハ國民ニ對シテ濟ミマセヌ、東亞新
秩序ノ建設ト云フ大問題ニ對シテモ、アナ
タノ貢獻スベキ重要ナル任務ハ脫却サレテ
シマフデアリマセウ、私共ハ微力ナリト雖
モ、アナタニシテ本當ニ決行セラルル御意
思ガアリ、其ノ熱意ト誠意ト實力トヲ發揮
セラレルナラバ、國民ニ呼掛ケテアナタヲ
支援致シマス、今マデノ御答ハ極メテ〓念
的デアリ、御遠慮ナサレテ居ル、玆ニ具體
的方策ガナケレバ、只今私ノ申上ゲタコト
ガ果シテ全體ニ當ツテ居ラヌニシテモ、聽
クベキ所アリトスルナラバ、之ヲ基調ニシ
テ一ツ具體的方策ヲ速ニ御出シニナツテ、
斷々乎トシテ決行シテ戴キタイ、大臣ハ私
ノ申上ゲタコトガ誤ツテ居ルナラバ御指摘
ヲ願ヒタイ、贊成ナラバ贊成ト御答ヲ願ヒ
タイ、同時ニ此ノ問題ニ付テ具體的ニ入ツ
テ〓究ヲナサレ、進ンデ行カレルカト云フ
コトヲ、私モマダ御尋シタイコトガ大分ア
リマスノデ、極メテ簡單ニ直言セラレンコ
トヲ御願申上ゲル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=12
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013・荒木貞夫
○荒木國務大臣 具體的問題ト仰セラレル
コトガ、第一點ガ此ノ點ニアルコトヲ諒承
致シマシタ、御話ノ如クニ左樣テ御批判ヲ
受ケルベキ點モアラウト存ジマスガ、私ヲ
輔佐シテ居ル、文部省ノ各官吏ガ專心努力
シテ、今申上ゲタヤウナ方向ニ向フ所ノ非
常ナ熱意ヲ持ツテ居ルコトハ、私大臣トシ
テ實ハ最近之ヲ十分ニ認メテ居ルノデアリ
そう、併シナガラ今ノ沈滯シテ居ル所ノ人
事、之ヲ刷新スルコトニ付キマシテハ當然
爲スベキ問題デアリマスルシ、更ニ學歷又
ハ其ノ人ノ出身ノ爲ニ自分ノ位地ヲ得ラレ
ナイト云フヤウナコトハ、是ハ今日以後ニ
於テ、恰度靑年學校ノ問題ト同ジヤウニ、
有能ノ材ハ閱歷ノ如何ヲ問ハズ、其ノ長所
長所ニ向ツテ所ヲ得セシムルコトガ必要デ
アラウト存ジマス、此ノ點ハ十分ニ左樣ナ
ル風ニ致シタイト考へテ居リマス、殊ニ本
省ノ改善ヨリ出發スベシト云フ風ニ承ツタ
ノデアリマスガ、著任以來此ノ點ハ督勵致
シマシテ、本省ガ極メテ〓新ナル氣分ニ滿
チテ今ノ方針ニ向ツテ行クコトニ付テ督勵
ヲシテ居リマスノト、又之ニ副フベキ內部
ノ組織施設ノ改善ニ向ツテハ、及バズナガ
ラ機會ヲ得ル每ニ、又特ニ斯樣ナ方法ヲ以
テ著々今日爲シツツアルコトデアリマシテ、
將來ニ於テモ此ノ點ハ一段ト實現ヲ期シタ
イト斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=13
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014・長野長廣
○長野(長)委員 洵ニ御誠意アル御答辯ニ滿
足致シマシタ、ドウゾ御言葉ノ如ク速ニ御
實行サレンコトヲ希望致シマス、更ニ〓育一
元化ノ問題ニ付キマシテ先程大臣ノ御答ノ
中ニ、國民ノ各層ヲ各部面ニ居ル者ヲシテ、
總力ヲ發揮シテ之ニ自覺アル援助ヲセシメ
ルト云フ御答ガアリマシタガ、之ニ付テ私
ハ從來ノ閱歷トカ、學歷トカ云フガ如キコ
トハ先ヅ第二義、第三義トセラレルト云フ
御意思ニ基カレマシテ、例ヘバ靑年學校、
實業學校等ニ於キマシテハ、農業ナラバ米
ヲ作ル達人、山林ヲ造ル達人、水產加工等
ニ極メテ堪能ナル者、其ノ他工業ナラバ精
工-精巧ナ技術ヲ持ツタ職工、又商業ナ
ラバ紳商、此ノヤウナ者ヲ初メトシテ、官
吏、宗〓家、其ノ從事シテ居ル業務ノ如何
ヲ問ハズ之ヲ靑年學校、實業學校、各種ノ
學校ニ關係ヲサセマシテ、サウシテ今日ノ
如キ空疎ナル〓育、役ニ立タザル〓念的ナ
〓育ノ流弊ヲ根本的ニ一掃スル、所謂私ノ
申上ゲル〓育ノ一元化ノ大方針ニ付テ、速
ニ御取掛リニナル御意思ガアルカナイカ、
是モアルカナイカヲ簡單ニ御答ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=14
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015・荒木貞夫
○荒木國務大臣 適切ナ御意見デアリマシ
テ、私共モ同一ニ考ヘテ居ツテ、殊ニ靑年
學校及ビ實業學校方面ニ於テハ、此ノ事ノ
最モ重要性ヲ考ヘテ居リマス、サウ云フ風
ナ方向ニ進ミタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=15
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016・長野長廣
○長野(長)委員 次ニ私ハ〓權ノ尊重確立
ノ問題ニ付テ御尋ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
私ハ〓育ノ振興ニハ先ヅ有爲ナル〓員ガ輩
出ヲシテ、其ノ〓員ガ其ノ地位ニ安ンジ、
其ノ生活ニ安ンジテ、サウシテ擔當スル學
問ノ〓究、子弟ノ〓養ニ向ツテ專心全力ヲ
傾倒スルト云フ環境ヲ作ル、而シテ其ノ〓
育者ノ全人格ガ校風ノ內ニ充滿ヲ致シマシ
テ、玆ニ初メテ子弟ノ〓育ノ全キヲ得ルト
考ヘルノデアリマス、故ニ〓權ノ尊重確立
ト云フコトハ、文部大臣ガ何物ヲ措イテモ
確保シテ掛ラナケレバナラヌ問題デアルト
考ヘルノデアリマス、然ルニ今日我國ノ〓
育界、下ハ幼稚園ヨリ上ハ大學ニ至ルマデ、
大臣ノ先程申サレタ幾十万人ノ〓育者ガ輩
出ヲシマシテ、玆ニ學閥ノ爭-私ハ三十
年間〓育界ニ直接間接關係シテ居リマシタ
ガ、或ハ統帥權ニ下ニ一貫統制ヲセラレテ
居ル軍人生活ヲセラレタ文部大臣ハ御承知
ナイカモ知レヌケレドモ、學閥ニ依ツテ不
正ナル朋黨ヲ作リ、又個人主義ニ立脚シ他
人ヲ陷レ、他人ヲ排斥シ以テ自己ノ地位ノ獲
得、ヲナス等飽クナキ我慾ヲ跳梁セシメテ
居リマス所ノ醜惡ナル狀態ハ、實ニ驚ク
ベキモノガアルノデアリマス、大臣ハ大學
ノ改革ニ手ヲ染メラレマシタガ、是モ一面
カラ見レバ、成程思想問題ガ根本デアルト
申サレマセウ、惡思想ノ〓授ガ居ルト云フ
コトガ原因カモ知レマセヌ、思想的大罪人
ガ〓授ノ中ニ存在シテ居ルカモ知レナイ、
ケレドモ之ヲ又他ノ一面ヨリ眺メテ見ルト、
實ニ勢力ト勢力ノ對立デアリマス、サウシ
テ巷間ノ不良ノ徒ニモ見ルコトノ出來ナイ
泥仕合、此ノ泥仕合ガ發端トナツテ此ノ醜
惡ナル場面ヲ展開シタト云フコトモ閑却シ
テハナラナイノデアリマス、殊ニ地方ニ於
テ其ノ社會的經濟的生活地位ノ極メテ不安
ナル狀態ニ置カレテ居ル〓育者、此ノ〓育
者ハ有力ナル學閥ノ下ニ統制ヲセラレタ學
校長、〓員、ソレカラ官吏、詰リ視學官、
學務課長、斯ノ如キ者ノ間ニ構成ヲセラレ
タ絕大ナル-誤リタル意味ニ於ケル絕大
ナル威力ニ依ツテ、神聖ナル〓權ヲ蹂躪セ
ラレタ事實ハ少クナイノデアリマス、甚シ
キハ現ニ-私ハ文部省ニ於テ〓育指導監
督ノ任ニアル際ニ、常ニ之ヲ時ノ文部大臣
ニ直接進言致シテアル、甚シキハ職員錄ヲ
〓室ノ內ニ持込ミ、生徒ノ面前デ、自ラノ
現在ニ於ケル待遇ハ如何デアル、同級者ノ
狀態ハドウデアル、アスコニ缺員ガアルカ
ラ視學官ト連絡シテ自分ノ地位獲得ニ努メ
ルト云フガ如キ、實ニ驚クベキ狀態ガ恐ラ
ク全國ニ行ハレテ居ルノデアリマス、事實
私ガ見テ居ル、今日デモ無イトハ言ヘナイ
ト思フノデアリマス、斯樣ナ狀態デアル上
ニ、內務大臣ガ地方行政官ノ人權ヲ握ツテ
居ル、文部大臣ハ之ヲ握ツテ居ラヌ、此ノ
爲ニ文部大臣ノ行政的威力ガ行ハレナイ、
時ニハ、文部大臣ガ馬鹿野郞デアルト縣廳内
デ叫ビ、而モソレガ現在某縣ニ於テ〓育界
ノ話題ニナツテ、私ハ此處ニ手紙ヲ貰ツテ居
ル、而モ其ノ不都合ナル行政官ノ下ニ於テ、
最近馘首ニナツタ實ニ〓純潔直、氣骨稜々
タル所ノ優良學校長〓員ガ犠牲ニナツテ
居ル者ガ少クナイ、而モ彼學務課長ハ、內
務省ナラ別デアルケレドモ、文部省ガ何ダ、
斯ウ申シテ居ルノデアリマス、私ハ玆ニ是
等ノ實情ヲ眺メマシテ實ニ深憂ニ堪ヘナイ、
是ハ何百万人ノ其ノ縣ノ縣民ノ不幸ノミデ
ハナイ、是ガ全國的ニ轉々トシテ職ヲ〓育
行政官ニ奉ジ左樣ナ文部大臣無視ノ行動ヲ
ナシ、〓育行政上ニ惡影響ヲ及ボス時ニハ
其ノ弊害ト云フモノハ實ニ絕大デアル、斯
樣ナ事實ヲズツト眺メテ見マスト、玆ニ私
ガ申上ゲル一例ハ決シテ一例ニアラズ、決
シテ一地方ノ問題ニアラズ、卽チ洵ニ文部
大臣ガ地方行政官ノ人事ト行政トヲ一元的
ニ行フ〓育行政ノ一元化、此ノ一元化コソ
急務中ノ急務ナルモノデアルト思ヒマスケ
レドモ、私ハ之ヲ獨斷致シタクナイ、熱
內務大臣、陸軍大臣、場合ニ依ツタナラバ
總理大臣ノ出席ヲ求メテ、本問題ニ對スル
所ノ御意見ヲ求メタイト思ツテ居ル、實
之ハ國民代表トシテ默シテ默スル能ハザル
重大ナル事例デアリマス、多少ノ時間ガ掛リ
マスガ、此ノ一例ハ全國ニ遍滿セントシテ
居ル所ノ惡イ空氣ノ最モ有力ナル一ツノ實
例デアルト云フ意味カラ、之ニ對シテ極メ
テ簡單ニ卒直ニ御答ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、サテ學校長ハ御眞影ヲ戴キ、畏クモ〓育
勅語ノ聖旨ニ基イテ部下〓員ヲ統率シ、國
民〓育ニ從事シテ居ルノデゴザイマス、故
ニ之ニ對スル行政ハ此ノ神聖サヲ能ク體
得致シマシテ、其ノ壇上ニ立ツ公人〓育
者ニ對シテ絕對ノ敬意ヲ拂ヒツツ愼重ナル
行政ヲ執ラナケレバナラヌト思ヒマス、殊
ニ學校長ノ學校經營ニ對スル所ノ權限、
責任、ソレカラ部下〓員ノ統率ト云フコト
ニ付テノ校長ノ立場ト云フモノハ、行政官ハ
十分尊重シテ掛ラナケレバナラヌガ、若シ
之ニ對シテ行政官ガ不正力ヲ加ヘマシテ、
校長ノ意思ヲ妨ゲ、校長ノ部下統率ノ權力
ヲ侵スト云フコトガアツタナラバ許スベカ
ラザルコトデアルト考ヘルノデゴザイマス
ガ、文部大臣ハ之ヲ如何ニ御覽ニナリマス
ルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=16
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017・荒木貞夫
○荒木國務大臣 地方ニ於テ屢〓今御話ニ
ナルヤウナ事項ヲ耳ニスルコトハ甚ダ遺憾
ニモ思ヒ、又〓育ノ任ニアル者トシテ洵ニ
恐縮ヲ致シテ居ルノデアリマス、是等ハ速
ニ改善スルノ必要アリト夙ニ認メテ居リマ
ス、是ガ爲ニ〓權ノ確立ヲ致サネバナラヌ、
行政ガ〓權ノ中ニ深ク立入ルト云フコトハ、
其ノ監督ノ範圍ニ於テハ已ムヲ得ナイト存
ジマスルケレドモ、今日ノ狀態ハ屢〓耳ニ
致シマスル所デモアリ、又只今御話ノ點モ
アルコトデアリ、動モ致シマスルト一ツ
ノ感情ナリ、一ツノ體面ナリ、一ツノ權力
ナリノ爲ニ、〓育ノ任ニ當ル者ガ落著イテ
其ノ天職ヲ全ウスルコトノ出來ナイト認メ
得ラレル節ノアリマスコトハ、速ニ之ヲ除
去スル必要ガアラウト考ヘテ居リマス、故
ニ地方長官ヲ通ジテ學務部長ニ、本省ノ〓
育ニ關スル總テノ方針等ヲ指示、訓令致シ
マシテ今後他ノモノニ比シテ最モ重要性ガ
アルト云フコトヲ自覺セシメテ、而シテ組
織ノ上ニ付テモ更ニ是ガ實現ヲスルヤウニ
シタイト只今考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=17
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018・長野長廣
○長野(長)委員 能ク分リマシタガ、ココニ
實例ト申シマスルノハ、先般文部督學官ガ
九州某縣ノ〓育ヲ視察シマシテ、而シテ其
ノ訓練〓育ノ成績ハ其ノ縣ハ固ヨリ、全國
ニモ稀ナモノデアルト高揚ヲ致シマシタ、
而シテ其ノ訓練ノ責任ノ中心ニ當ツテ最モ
功績ヲ擧ゲ、是亦優秀ナル〓員トシテ、特
ニ修身訓化ノ責任ヲ持チ、高等官ノ地位ニ
進メラレテ、其ノ學校ノ柱石トシテ、慈父
ノ如ク學生ヨリ慕ハレテ居ル理想的〓員、
過去ニ於キマシテ十幾代ノ校長ニ仕ヘ、皆
理想的〓員トシテ優遇セラレテ今日ニ至ツ
タ〓員、此ノ〓員ニ對シテ、學校長ガ一日
縣廳ニ參ツテ、サウシテ歸ツテ來テオ前ヲ
女學校長ニ推薦シタゾヨト申シタノデアリ
きく、然ルニ驚クベシ、其ノ翌日學務課長
ヨリ急電ガ來マシテ、速ニ出頭セヨト云フ
ノデ本人ハ直チニ之ヲ校長ニ報告シテ許シ
ヲ得、必ズヤ學校長ニナルコトト思ツテ出
頭致シマスト、オ前ハ酒癖ガアル、酒亂ガ
アル、ソレデ速ニ辭表ヲ出セト言フ、常識
デハ考ヘラレマセヌ、私ハ內務省地方局長
ニ之ヲ申シマシタ所ガ、常識デ考ヘラレヌ
ト斯ウ申シタノデアリマス、考ヘラレヌコ
トガアルカラ速ニ調査セラレタイト要求シ
タノデアリマス此ノ常識デ考ヘラレナイコ
トガ事實アツタノデアリマス、サテソノ〓
師本人ハソレヲ峻拒致シマシテ學校ニ歸リ
マシタ、所ガ今ノ役人ハ、中々斯ウト言ヒ
出シタナラバ到底ソレハ退クモノヂヤナ
イ、懲戒免官ト云フヤウナコトヲ、ドウ云
フ策ヲ以テヤラレルカモ知レナイカラ、潔
ク出シタラ宜カラウト言ツタ、學校長ハ其
ノ者ニ對シテ、辭メテモオ前ヲ囑託ニシテヤ
ルト縣廳カラ電話ガ掛ツテ來タカラ、ダカラ恩
給ヲ合セレバ相當ノ收入ニナルカラ出シタ
ラ宜カラウト言ツタ、ソコデ本人ハ迚モ是
ハ一〓員トシテハ對抗出來ヌト思ヒマシタ、
傍〓計略ニ乘ツテ退職願ヲ出シタノデアリ
やく、サウスルト校長ハモウ用ガナイカラ
家へ歸リナサイト要求シタ、ソシテ出校ヲ
停止シタ、ソレダケデハ洵ニ單ナル話ノヤ
ウデアリマスケレドモ、其ノ後デ校長カラ
本人ニ公文ノ手紙モ與ヘテアル、洵ニ常識
デ考ヘテ有リ得ナイヤウナコトデゴザイマ
ス、斯ウ云フコトガアツタノデアリマス、
原因ハ何カト云フト、校長ノ面前ニ於テ、
校長ヲ擁スル學閥的情實的〓員及ビ地方ノ
紳士ガ加ハリ團結シテ、其ノ〓員ノ手足ヲ
抑ヘテ居ツテ袋叩キニシタ、而モ其ノ袋叩
キニセラレタ人間ガ斯樣ナ馘首ト云フ憂キ
目ニ遇ハントシテ居ル、毆ツタ人間ハ其ノ
儘ニ措イテアルノデアリマス、此ノ事實ニ
對シマシテ文相ニ〓權ノ確立、我國文〓ノ
大本ニ鑑ミタ御裁斷ヲ戴キタイモノデアリ
そく、果シテ此ノ學務課長ノ執リタル行動
ハ正シイモノデアリマセウカ、先ヅ是カラ
御尋致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=18
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019・荒木貞夫
○荒木國務大臣 未ダ詳細ナル報告ニ接シ
テ居リマセヌノデ、今直チニ此處デ御答ス
ルマデニ至ツテ居リマセヌ、能ク調ベテ見
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=19
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020・長野長廣
○長野(長)委員 本件ノ起リタルコトハ昨年
ノ末カラデアリマス、私ハ事實其ノ縣ノ責
任アル方面カラノ情報ニ依リマスルト、當
局ハ旣ニ相當連絡ヲ取ラレテ調査ヲ進メテ
居ルカノ如ク考ヘラレマス、又先程御質問
ヲ申上ゲタ如ク、學務當局ハ相當文部大臣
ノ威令ヲ無視スルガ如キ行動モ執ツテ居ル
ト云フコトデアリマス、ソレモ何事モ御存
ジナイノデアリマスカ、ソレヲ御問ヒ致シ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=20
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021・荒木貞夫
○荒木國務大臣 マダ十分ナ報告ニ接シテ
居リマセヌ、今ノ御話ニナリマシタ事實ヲ
能ク調査致シマシテ、之ニ關シテ十分ニ縣
廳ノ方ニ對シテモ是等ノ事情ヲ更ニ能ク確
メマシテ、之ニ對シテ適當ノ處置ヲ執リタイ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=21
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022・長野長廣
○長野(長)委員 此ノ事實アリトセバ學校
長ハ作爲的ナ行動、學務課長ハ詐欺的行動ニ
依ル辭表提出デアリ誘導行爲デアル、本人
ノ意思ニ反シ、本人ヲ威嚇シテ行動セシメ
タルコトニ對シ、法律上カラ想起致シマシ
テ、此ノ問題ニ對スル對處ノ問題、竝ニ單
ニ一方的調査ニ依ラナイ十分公平ナル調査
ヲ遂ゲル點ト、殊ニ〓權ノ確立ニ對スル大
臣ノ御方針ヲ此ノ點ニ集中セラレテヤラレ
ル御考デアルカドウカ、甚ダ重ネテノ御質
問デアリマスケレドモ、內務大臣ニ質問ス
ル關係モアリマスノデ、一應此ノ點ヲ御伺
ヲシテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=22
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023・荒木貞夫
○荒木國務大臣 十分ニ調査致シマシテ、
其ノ調査ノ結果ニ基イテ、ソコニ非違ガア
リマスルナラバ、固ヨリ〓育ノ重大ナル任
ニ在リマスル者ノ職務ヲ十分ニ思考致シマ
シテ、〓權ヲ何處マデモ尊重スルヤウニ致
シタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=23
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024・長野長廣
○長野(長)委員 ソコデ私ハ特ニ念ヲ押シ
テ御願シテ置キタイ、此ノ〓員ハ其ノ縣ニ
於テ九代ノ校長ニ仕ヘ、私モ嘗テ共ニ職ヲ
奉ジタ人物デアル、私ハ公人ト致シマシ
テ、此ノ人間ハ〓育者トシテ殆ド理想ニ近
キ人物デアルコトヲ絕對ニ保證申上ゲマス、
而シテ此ノ者ハ配屬將校ノ代理ヲ勤メテ居
ルノデアリマス、制服ヲ著ケタル時ニ於テ
自由ヲ束縛シテ足蹴ニシ、毆ラレタノデア
リマス、事極メテ重大デアリマス、ソコデ
本問題ハ一方的調査ニ依リ有耶無耶ニシテ
ハナリマセヌ、尙ホ私ノ最近ニ聞知スル所
ニ依リマスルト、本人ニ對シテハ俸給ノ支
拂ヲ或ル程度マデ停止致シマシテ、干乾シ
ニ致シマシテ、大學入學ヲ近ク控ヘテ居ル
者ヲ初メ、二三名ノ子供ノ〓育ヲシテ居ル、
此ノ〓員ニ對シテ、其ノ學校長ハ種々ノ理
由ヲ附シテ俸給支拂ヲ停止シタノデアリマ
ス、果シテ學校長ニ斯ノ如キ權限ガアルカ
無イカ、縣學務當局ハ之ヲ知ラヌ筈ハアリ
マセヌ、視學官ト學校長ハ同ジ學校ノ卒業
生デアツテ、所謂學閥的行爲アリト一般ヨ
リ見ラレテ居ルノデアリマシテ、而シテ本
人ノ俸給支拂ヲ受ケル權利ト云フモノヲ無
視シ、本人ヲ干乾シニ致サウトシタノデア
リマス、斯クテ泣寢入リサセテ有耶無耶ノ
裡ニ葬ラウトシタ事實モアルノデアリマス、
更ニ最近某代議士ト連絡ヲシテ居ルト云フ
噂ガアル、オ前ハ思想問題トシテ相當ノ處
置ヲスルト云フコトヲ言ツテ、警察官ガ動
キ出シタト云フコトヲ責任アル學校長ガ申
シテ威壓セントシテ居ルノデアリマス、斯
クシテ文部督學官ガ認メタル優秀學校
ヲ建設スルニ功績アリシ〓育者ニ對シテ、
有ユル力ヲ以テ壓迫致サウトシテ居ル、
故ニ若シ文部大臣ニシテ縣當局ニ依リ一方
的調査デ之ヲ處斷スルガ如キコトガアリ
マシタナラバ、ソレコソ今マデ私ガ述ベ
タルコトニ對シテノ大臣ノ御所懷ヲ全然
裏切ルモノト相成ルノデアリマス、故ニ極
メテ自由ニシテ安全ナ形ニ本人ヲ置イテ、
今マデアリタル實情、及ビ學校長ノ前デ毆
打シタ其ノ後日ニ於テ、〓頭以下〓員ガ集
ツテ酒ヲ飮ンデ凱歌ヲ奏シタ實例ヲ初ルト
シテ-洵ニ小サイヤウデアリマスケレド
モ、是ガ全國的ニヨクアル流弊ノ一例デア
リマス、文〓ノ振〓ニ缺陷ガアル爲ニ斯ル
事實ガ累々トシテ全國ニアル、マダ私ハ幾
ラモ其ノ事例ヲ持ツテ居ル、必要ナラバ私
ハ出シマスケレドモ、純良ナル〓員ガ斯ル
理不盡ナ境遇ノ下ニ打チノメサレテ居ルト
云フコトヲ御考ニナラレマシテ、サウシテ
一方的調査ニ依ツテ權力ヲ發動スルナドト
云フガ如キコトノナイヤウニシテ全國的流
弊ノ一掃ヲナスコトヲ御願シタイノデアリ
マス、申スマデモアリマセヌガ、支那ノ賢
哲モ申シテ居リマスヤウニ、力ノ政治ホド
恐ロシイモノハアリマセヌ、力ノ政治ハ國
ヲ亡ボス、剛ノ中ニ必ズ柔ガナケレバナラ
ヌ、剛ト柔ト伴ハナイ場合ニ國家ハ亡ビル
ノデアリマス、思想ノ病弊モ斯ル誤マレル
剛ニ過ギル政治ノ結果、玆ニ大キナル思想
的破綻ヲ釀成スルノデゴザイマス、大臣ノ
〓育ノ一元化ニ對スル御意見、〓權尊重ノ
御意見ヲ拜聽致シマスルト、必ズヤ私ハ申
ス此ノ本人ニ對シテモ慈愛アル態度ヲ執ラ
レテ、俸給ヲ仕拂ヒ本人ノ生活ノ安全、本
人ノ地位ノ安全ヲ確保シタ上ニ於テ、十分
ニ心境ヲ吐露セシメ、以テ本問題ガ根本的
ニ解決シ、サウシテ本問題ノ處斷ニ依ツテ
全國ノ病弊ヲ一掃スルト云フ、玆ニ一ツノ
旗幟ヲハツキリセラレタイ、是ガ私ノ希望
デゴザイマス、此ノ私ノ希望ヲ容レテ戴イ
テ、十分ニ御調査ヲシテ戴クコトガ出來ル
カドウカ、最後ニ之ヲ御尋申上ゲタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=24
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025・荒木貞夫
○荒木國務大臣 今縷々御述ニナリマシタ
精神、又之ニ對スル事實、能ク諒承致シマ
シタ、事實ニ付テハ十分ニ調査ヲ致シマス、
御要望ノ精神ニ付テハ十分諒承致シマシテ、
此ノ問題ノ解決ヲ圖リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=25
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026・長野長廣
○長野(長)委員 一寸玆デ簡單ニ結ビヲ申
上ゲマス、私ハ斯ル一地方ノ事例ヲ擧ゲマ
シタケレドモ、是ハ要スルニ文部大臣ガ遺
憾ナク權威アル所ノ御責任ヲ果サレル上ニ
於テ、大切ナ根本問題ニ觸レタ實例ト考へ
ルノデゴザイマス、ドウシテモ〓育行政ノ
一元化、卽チ行政官ノ人權、サウシテ行政
事務ノ運行、是ハ一元的ニナラナケレバナ
ラヌト私ハ考ヘル、曾テ私ハ滿洲國ノ〓育
建設ノ其ノ末席ニ當リマシテ、特ニ地方ニ
ハ〓育廳ヲ作リ、サウシテ此ノ多難ナル滿
洲文化建設ノ根幹ノ實現ニ當ツタコトガア
ルノデアリマス、ソレ等ノ實例カラ考ヘマ
シテモ、此ノ〓育ノ一元化ト云フコトハ、
今日ノ如ク思想問題ガ混亂シ、時局極メテ
〓育ニ依ル所大ナル時、寸刻ヲ爭ウテ實現
シナケレバナラヌコトデアルト思フノデア
リマス、殊ニ軍事思想ノ徹底ト云フコトハ、
是ハ現在及ビ將來ノ世局ヲ眺メマスル時ニ
於テ何物ヨリモ私ハ大事ナコトト思フノデ
アリマス、若シ反軍思想等ガ彼等〓育者
行政官ノ中ニ存在シ、歷々トシテ其ノ事實
ガ斯ル不祥事トシテ發現サレルト云フコト
ガ萬一アリトシマスナラバ、是コソ恐ルベ
キコトデアル、私ノ言フ猶太思想ノ發現ト
云フコトハ、サウ云フ點ニモ現ハレテ來ル
ト見ナケレバナラヌノデアリマス、ソレデ
私ハ先ヅ〓育行政ノ一元化ト云フコトガ、
此ノ多難ナ〓育ノ革新、〓育內容ノ刷新ト
云フコトニ重要ナモノデアルト考ヘテ、此
ノ問題ヲ御質問申上ゲル次第デアリマス
ソコデ內務大臣ハ本日ハドウシテモ時間ガ
ナイト云フコトデスケレドモ、ドウゾ委員
長ニ於カレマシテ何トカ-僅カ五分間デ
モ宜シウゴザイマスカラ內務大臣ノ御出席
ヲ願ヒタイノデアリマス··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=26
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027・野村嘉六
○野村委員長 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=27
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028・長野長廣
○長野(長)委員 尙ホ申上ゲテ置キマス
ガ、若シ之ヲ出席不能等ニ藉ロシテ囘避ス
ルガ如キコトガアリマシタナラバ、之ニ關
聯シテ幾多ノ問題ガ發生シテ來テ居リマス、
今ヤ〓育界ノ輿論ハ本問題ニ集中サレント
シテ居ルノデアリマス、若シ斯樣ナ問題ヲ
遷延スルニ於キマシテハ、歷々タル事實ガ
出ル、之ヲ臭イ物ニ蓋ヲスルヤウニ隱蔽ス
ルト云フコトガアリマシタナラバ、國家ノ
爲ニ私ハ憂慮ニ堪ヘナイ、我ガ〓育界ノ爲
ニ憂慮ニ堪ヘナイ、ドウゾ文部大臣ニ於カ
レマシテモ內務大臣ニ御交渉ニナリマシテ、
僅カ五分間デモ宜シウゴザイマスカラ御出
席下サルヤウニ、特ニ一ツ御力說ヲ願ヒタ
イ、ソレカラ陸軍大臣ニ對シテモ、本問題
ニ關聯シテ、我ガ日本〓育ニ一溷濁ヲ生ゼ
ントシテ居ル虞ガ多分ニアル、故ニ軍事〓
育ニ對シテハ陸軍大臣ノ明確ナル御答辯ヲ
願ハナクテハナラヌト思ツテ居ルノデアリ
ひと、單ニ是ハ普通ノ意味デ御呼出シスル
ノデハアリマセヌ、私ハ出テ戴イテ、速度
本日此處デ解決シナケレバ憂慮スベキ事ガ
出來ル、之ヲ理由トシテ要望ヲシテ居ル次
第デゴザイマスカラ、何卒五六分間ノ御出
席ヲ特ニ御懇請シテ戴キタイト存ズルノデ
ゴザイマス、私ハ先ヅ之ヲ以テ質問ヲ一區
切リ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=28
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029・野村嘉六
○野村委員長 私カラ内務大臣、陸軍大臣
ニ交涉ヲ致シマス、ソレデハモウ十二時ヲ
過ギマシタカラ休憩致シマス、午後ハ一時
半カラ始メルコトニ致シマス
午後零時十分休憩
午後一時五十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=29
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030・野村嘉六
○野村委員長 是ヨリ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=30
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031・長野長廣
○長野(長)委員 靑年學校ノ〓員問題ニ付
テデアリマス、現在靑年學校ノ校長ノ殆ド
大部分ハ小學校長ノ兼務デアリマス、從ヒ
マシテ小學校長ハ非常ナ繁務ヲ背負ウテ、非
常ナ過勞ニ陷ル、從ツテ大切ナ國民〓育ノ側
ガ手薄ニナル虞ガアルノデアリマス、故
靑年學校長ハ成ベク之ヲ專任トナシ、サウ
シテ靑年學校ノ經營ヲ一層能率的ニスル必
要ガアルト思ヒマスガ、特ニ義務制斷行ノ
機會デモアリマスルシ、御配慮ニナラレル
コトガ大切デナイカト思ヒマス、之ニ對ス
ル御意見ヲ承リタイ
又專任〓員ハ日々朝早クヨリ夜學ニ至ル
マデ十數時間ノ勤務ヲ、熱心ニ全ク犧牲的ナ
態度ヲ以テ勤メテ居ルノデアリマス、殊
專任〓員ノ中ニハ無報酬デ、又ハ無報酬ニ
近イ程菲薄ナ待遇ノ下ニ働イテ居ル者ガ多
イ、指導員ノ如キニ至ツテハ特ニ顯著ナモ
ノデアリマス、仍テ此ノ際是等ノ專任〓員
ヲ出來ルダケ充實致シマシテ、過勞ニ陷ル
コトナク、極メテ能率的ニ本務ヲ遂行セシ
ムルコトノ出來ルヤウニ、多數ノ專任〓員
ヲ養成シ、又小學校ニ現在勤メテ居ル〓員
ノ中デ有資格者ガ相當アリマスナラバ、是
等モ差支ナイ範圍ニ於テ出來ルダケ靑年學
校ノ專任〓員トシテ採用スル、又待遇ノ如
キモ從來ノ如ク地方ノ負擔ヲ多クシテ國庫
ノ補助ガ少イ場合ニ於キマシテハ、町村等
ニ於キマシテ、俸給ノ高イ爲ニ〓員ヲ忌避
スルト云フヤウナコトガ多イノデゴザイマ
シテ、自然地位ノ不安ヲ來シテ居ル、轉々
場所ヲ變ヘル爲ニ、一地ニ落著イテ理想〓
ノ建設ヲ爲スガ如キ地味ナ働キヲ爲スコト
ガ出來ナイ、隨テ其ノ〓育的效果ヲ擧ゲル
コトガ困難デアルト云フコトモ少クナイノ
デアリマス、故ニ私ハ此ノ際專任〓員及ビ
〓練指導員ノ如キモノハ、之ヲ國庫負擔ト
スルコトガ必要デアルト確信ヲスル者デア
リマス、又現行制度ニ於キマシテハ、專任
〓員ノ優秀ナ者ハ奏任官トシテ待遇スルコ
トニナツテ居ルノデゴザイマスルガ、此
ノ數ハ極メテ少數デアリマス、速ニ調査
ヲサレマシテ、其ノ功績顯著ニシテ有能ナ
ル者ニ對シテハ、奏任待遇ノ地位ヲ與ヘ
ルコトガ大切デハナイカ、斯クシテ文相ノ
抱懷セラレテ居ル所ノ〓權ノ伸張ト云フ
コトモ如實ニ現ハレテ來ルノデアリマシ
テハ靑年〓育ノ振興ヲ玆ニ見ルコトガ出來
ルノデハナイカト考ヘルノデアリマス、之
ニ對スル大臣ノ御意見ヲ承リタイノデゴザ
イマス、時間ノ關係上二、三項目續ケテ申
上ゲマス
次ニ專任〓員ハ靑年學校〓員養成所デ養
成ヲ致シテ居ルノデゴザイマスルガ、此ノ〓
員養成所ナルモノハ、今日一校平均僅ニ九千
圓ノ經費デアルノデアリマス、隨ヒマシテ〓
育ノ內容ガ極メテ充實シテ居ナイ、苟モ中等
學校又ハ師範學校ヲ卒業シタ者ヲ二年三年
ト〓育シテ居ルノデゴザイマスカラ、專門
學校ノ地位ニ在ル、ソレニ匹敵スル內容ノ
充實ヲ致サナクテハナラヌト思ヒマスルガ
是ガ出來テ居ナイ、到底斯ル經費ヲ以テシ
テハ出來ナイノデアリマス、ソコデ私ハ國
家ガ此ノ靑年學校〓員養成所ノ經費ヲ負擔
シテ-直チニ全部負擔シナイマデモ、相
當大部分ノ負擔ヲ致シマシテ、速ニ充實ス
ル必要ガアリハシナイカト考ヘルノデゴザ
イマス、之ニ對スル大臣ノ御見解ヲ承リタ
イノデアリマス、更ニ專任〓員ト云フモノ
ハ靑年〓育ニ當ルダケデハナシニ、町村ノ
理想的建設ラシナケレバナラヌ、曾テ私ガ
熊本縣ニ於テ靑年〓育ノ〓員養成ノ事ニ當
リ、理想農村ノ建設ヲシタ際ニ、文相ハ幕
僚ヲ連レテ參リマシテ親シク視察サレ私モ
色々御說明ヲシ、村中ヲ巡ツテ熱心ニ御〓
究下サツタコトガアルノデアル、旣ニ早ク
斯樣ナ熱心ナ態度ヲ執ラレテ居ル大臣デア
ルカラ、直チニ大藏大臣ノ諒解ヲ求メテ、
靑年學校〓員ノ養成所ノ充實ヲ圖リ、同時
ニ其ノ附屬靑年學校ナルモノハ理想農村ノ
建設、理想市ノ建設ト云フコトヲ標榜シテ
玆ニ其ノ腕ヲ養ヒ、其ノ人格ヲ鍛鍊シテ、
サウシテ任地ニ行ツタナラバ、理想〓ノ建
設ヲ標榜シテ靑年ヲ指導スルト云フコトニ
致スコトガ肝要デハナイカト思フノデアリ
やく、之ニ對スル御見解ヲ承リタイノデア
リマス
又將來ハ專任〓員ニ、試補制度ヲ設ケマ
シテ、學校ヲ卒業シテモ一應ハ試補トシテ
相當ニ修鍊セシメ、然ル後ニ之ヲ本官ノ〓
諭トスルト云フコトニスルナラバ、一層彼
等ハ修養ニ努メテ良質ノ〓員ニナリハシナ
イカ、更ニ數年或ハ十數年勤務致シテ居ル
〓員ヲ招集シテ、之ニ再〓育ヲ施スト云フ
ガ如キハ、時局ニ鑑ミマシテモ極メテ大切
ナコトデハナイカト考へルノデアリマス、
以上ハ私ノ〓員ヲ尊重スル、〓權尊重確立
ノ觀念カラ割出シタ意見デアリマシテ、斯
ク親切ニ國家ガ〓員ノ內容充實ヲ圖ルコト
ニ於テコソ、初メテ靑年〓育ノ發達ガアル
ノデハナイカト思ヒマスルガ、是等ノ點ニ
對シテ如何ナル御見解ヲ有セラルルノデア
リマセウカ、成ベク簡單ニ御答辯願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=31
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032・荒木貞夫
○荒木國務大臣 專任〓員竝ニ指導員ノ國
庫負擔ノコト、竝ニ奏任官ノ待遇ニ關スル
問題、專任〓員ノ優遇ニ關スル問題、何レ
モ必要ナコトデアリマスルガ、財政ノ伴フ
點モ多イノデアリマスルカラ、ソレ等ノ
點ト併セマシテ、出來得ル範圍ニ於テ是等
ノ具體化ヲ期シタイト思ヒマス、又〓員養
成所竝ニ再〓育ノ問題、其ノ他〓育ノ實質
ニ關スル問題ニ付テモ、全ク御意見ノ通リ
デアラウト存ジマス、多少經費モ計上致シ
居リマスルガ、此ノ進展ト共ニ是等ノ點モ
具體的ニ進メタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=32
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033・長野長廣
○長野(長)委員 幸ニ御贊成ヲ戴イタト思
ヒマスルケレドモ、由來此ノ委員會ニ於テ
言葉ノ應酬ダケデ終ツテハ、結局何時マデ
經ツテモ實現ヲシナイノデアリマス、ソコ
デ私ハ近イ內ニ大藏大臣ニ對シテ、靑年〓
育ノ立場ニ付テノ御見解ヲ伺ツテ、サウシ
テ重要ナル豫算ノ實現ヲ圖ルヤウニ言明ヲ
得タイト考ヘテ居リマス、就キマシテハ只
今ノ文部大臣ノ御見解ハ、單ナル一場ノ辭
令ニ止マラズ、之ヲ少クトモ次ノ議會マデ
ニハ豫算ノ上ニ具體的ニ計上シテ戴キタイ
ト考ヘルノデアリマス、仍テ私ハ內容ニ亙
ツテ更ニ御意見ヲ伺ツテ見タイト思ヒマス
ソコデ靑年學校ノ〓員俸給ト云フモノハ、
大體ドノ邊マデ給與スル必要ガアルカト云
フコトヲ計算シテ見マスルト、男子ノ專任
〓員給ハ、一万七千校ニ對シテ二千百四十
二万圓、卽チ一人平均年額八百四十圓トシ
マシテ、此ノ數ハ大體二万五千五百人位ニ
シナケレバナラヌト思フノデアリマス、詰
リ一校一人半ノ割合ニナルノデアリマスガ、
ソコマデ行カナケレバナラヌ、其ノ他ノ〓
員ノ手當ハ約千四百万圓、合計三千五百万
圓程度ニスル必要ガアルト思フノデアリマ
ス、又女子ノ專任〓員ニ付キマシテハ、
万七千校ニ付テ一人平均年七百二十圓トシ
マシテ、千二百二十四万圓デアル、其ノ他
ノ女〓員ガ三百四十万圓、計千五百六十四
万圓、總計シテ三千八百九十一一万圓ト云フ
程度ノ計上ガ必要デハナイカト思ヒマス、
小學校ノ兒童デサヘ四十人內外ニ一人ノ〓
員ガ當ツテ居ル、一村二三百人ノ男女生徒
ヲ〓育スルノニ、現在ノ如ク一人ノ專任〓
員モ居ナイト云フガ如キハ、到底靑年〓育
ヲ義務制トシテ、靑年〓育ノ徹底ヲ圖ルニ
卽應シタ施設デハナイト私ハ信ズルノデア
リマス、殊ニ現在ノ靑年學校ハ放漫ナ經營
デハ駄目デアリマス、全ク理想〓ノ建設、
〓土愛ノ精神ト、サウシテ〓土ヲ振興スル
ニ必要ナル資質、能力ヲ靑年ニ與ヘル、其
ノ大責務ヲ果スダケノ〓員ガ充當サレナケ
レバナラヌノデアリマス、此ノ意味ニ於テ、
私ハ國家ハ速ニ專任〓員ノ最低限ノ充實ニ
力ヲ盡サレテ、サウシテ之ニ對スル待遇ヲ
十分ニシ、〓員ノ地位高マリ俸給ノ高クナル
爲ニ地位ノ不安ヲ釀スガ如キコトノナイヤ
ウニ、出來得ルナラバ國家ガ之ヲ全額負擔
ヲスルマデニ、一日モ早ク努メテ戴カナケ
レバナラヌト考ヘルノデゴザイマス、之ニ
對スル御意見ヲ承リタイト思ヒマス
更ニ設備ニ付テ考ヘテ見マスルニ、本會
議デモ說明サレテ居タ如クニ、多クノ學校
ガ、靑年期ニナリマシテモ尋常小學校時代ニ
使ツタ机、腰掛ヲ用ヒサセラレ、隨テ身體
ガ曲リ、視力ニモ非常ナ惡影響ヲ來シテ居
ルノデアリマス、小學校時代ニ於テ理想的
ナ身體ヲ作ツテモ、靑年期ニ於テ之ヲ破ツ
テ居ル、而モ是ガ白日ノ下ニ、此ノ大切ナ
靑年〓育ノ上ニ其ノ儘ニ放置サレテ居ルト
云フニ至ツテハ、默視スルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、昨年決算委員會ニ於テ文部
當局カラ言明ヲ得テ居ルノデアリマス、然
ルニ之ニ對シテ滿足ナ設備ノ手續ガ進ンデ
居ナイヤウニ私ハ眺メテ居ルノデアリマス、
現在ノ學校一万七千校ニ對シテ、靑年〓育
ニ必要ナ獨立ノ校舍ヲ與ヘル場合ニ於テ、
一校平均大體五千圓ト見マシテ八千五百万
圓、十年計畫トシテ每年一千七百校ダケヤ
ルトシテ八百五十万圓ヲ要スル譯デアリマ
ス、此ノ義務制斷行ノ際ニ於テ、當局ハ此
ノ十年計畫ノ下ニ地方ヲ督勵シテ獨立ノ校
舍ヲ造リ、體育上由々シキ弊害ヲ釀シツツ
アル此ノ設備上ノ缺陷ヲ補フ考ガアルカナ
イカ、簡單ニ御答辯ヲ願ヒタイ、アルトス
ルナラバ速ニ其ノ調査ト實現ニ向ツテ不言
邁進ヲセラルルノ御自信ガアルカナイカ、
御言明ヲ得タイノデアリマス、更ニ設備ノ
點ニ付テ特ニ改善シナケレバナラヌノハ實
驗實習ノ設備デアリマス、實驗、實習ト
云フコトハ農、エ、商等ニ於テ急務中ノ急
務デアリ、又家事、裁縫ノ〓授ニ於テモ必
須デアリマス、然ルニ是亦小學校ノモノヲ
代用シテ居ル有樣デアリマシテ、全ク靑
年〓育ヲ尊重セザルノ甚シキ狀態ニ放置セ
ラレテ居ルノデアリマス、ソコデ之ニ付テ
ハ約五十万圓ヲ要スル、〓練ノ設備ニ付キ
マシテモ極メテ不滿足ノ狀態ニアリマスル
ガ、三十餘万圓ヲ以テ最低限ノ程度ニ
於テ充實ヲシ得ルト云フ、專門的〓究ノ
結論ニ到達ヲシテ居ルノデアリマス、更
ニ靑年〓育ノ義務制ハ、本年ハ其ノ第一
步トナルノデアリマシテ、大多數ノ靑
年ガ尙ホ義務制外ノ過去ノ儘ニ置カレ
ルノデアリマスルケレドモ、時局ハ一日モ
速ニ一〇〇%ノ就學出席ヲ見ナクテハナラ
ヌ場合デゴザイマス、ソレデ就學獎勵金ノ
如キモノヲ相當ニ組ンデ、貧乏ナ者デモ、
又雇傭サレテ居ル不自由ナ靑年デモ競ウテ
出席ノ出來ルヤウニシナケレバナリマセヌ
ガ、之ニ要スル經費ハ大體五百万圓ヲ最低
限度ト見ラレルノデアリマス、更ニ女子ノ
義務制ハ一日モ早ク實現シナケレバナラナ
イノデゴザイマスルガ、之ニ要スル經費ハ
大體三百万圓ノ就學奬勵費ヲ要スルモノト
考ヘラレマス、以上ノ經費ハ實ニ急務中ノ
急務デアルト考ヘマス、徒ニ義務制ヲ說キ、
徒ニ靑年〓育ノ重要性ヲ叫ビマシテモ、此
ノ實行ガ伴ハナケレバ何等ノ效果ヲ擧ゲ得
ナイノデアリマス、文部大臣ハ以上ノ事項
ニ對シテ、次ノ十五年度ノ豫算計上ニ於テ相
當-少クトモ此ノ程度ノ費用ヲ計上スル
意思ガアルカナイカ、徒ニ大藏省トノ折衝
ヲ憂ヘテ荏苒日ヲ潰スコトハ罪デアルト思
ヒマス、私共ハ出來ル限リノ力ヲ出シマシ
テ、文相ヲ御援助致シタイト思ヒマス、以
上ノ費目ハ必要デアルカナイカト云フコト
ヲ簡單ニ答ヘテ戴キタイ、必要ナリト認ム
ルナラバ、ソレヲヤルカヤラナイカ、努メ
ルカ努メナイカト云フコトヲ簡單ニ御答願
ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=33
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034・荒木貞夫
○荒木國務大臣 〓員ノ充實、設備費、實
驗實施ニ關スルモノ、又就學奬勵費、是等
ノ點ハ何レモ必要ナコトト考ヘマス、又私
自身トシマシテモ、出來ルダケ之ヲ充實シ
タイト考ヘマスルガ、御承知ノヤウナ經費
ノ伴フコトト、又物ノ關係カラ、例ヘバ設
備費ニ致シマシテモ制限ガアルト云フヤウ、
ナ點、アレヤ是ヤヲ考ヘマシテ、今御示ニ
ナリマシタヤウナコトガ直チニ實現シ得ル
ヤ否ヤハ、是ハ別ノ問題デアリマスガ、出
來ルダケサウ云フ方面ニ向ツテ努力シテ見
タイ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=34
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035・長野長廣
○長野(長)委員 資材ノ關係、豫算ノ關係
勿論是ハ重要ナ事項デアリ、當然ノ制限事
項デアルトハ考ヘマスケレドモ、現在ノ我
國ノ兒童學生ノ向學費ヲ眺メテ見マシテモ、
一箇年ノ金額ガ、小學校兒童ニ於テサヘ二
十六圓七十八錢、高等學校ニ至ツテハ三百
十四圓デアリ、大學ニ於テハ七百六十二
圓、專門學校ニ於テハ百九十四圓デアリマ
ス、之ニ對シテ靑年〓育ニ於テハ僅ニ十三
圓デアリマス、小學校兒童ノ半分デアリマ
ス、文部大臣ハ本會議ニ於テ、此ノ比較ハ
靑年〓育ニ對シテ衡平ヲ缺イテ居ルト云フ
其ノ資料トシテハ穩健ヲ缺クカノ如キ御答
辯ニナツタヤウニ承リマシタケレドモ、私
ハ荀モ今日ノ大衆靑年ハ、現在國家ノ生產
ニ參畫シテ居ルト思ヒマス、一般學生生徒
ハ生產ニ參畫シテ居リマセヌ、隨ヒマシテ
靑年〓育ニ金ヲ投ズルコトハ直チニ靑年ノ
生產擴充、其ノ他社會生活向上ニ對スル貢
獻トナツテ現レテ來ルノデアリマス、卽チ
金ヲ投ズルコト卽ヨリ以上ノ收獲、生產ヲ
擧ゲテ行クト云フコトニ付テ、經濟上カラ
眺メテ經費ヲ投ズルコトハ積極的節約施設
デアルト言ハナケレバナラヌ、又靑年大衆
ガ身命ヲ賭シテ懸軍幾千里、海ニ陸ニ働イ
テ居ル、又將來働クベキ運命ニアル幾百万
ノ銃後ノ靑年大衆ガアル、是等愛スベキ靑
年大衆ノ身ニ想ヲ馳セ感激スルモノハ、其
ノ官吏タルト、一般國民タルトヲ問ハズ、
此ノ〓育充實ノ爲ニ誠意ヲ披瀝シ、十分ナ
ル施設ヲ施スト云フコトガ、卽チ銃後國民
ノ責任デハナイカ、斯カル感激的ノ責任ヲ
果ス所ニ靑年ノ士氣ガ鼓舞サレ、國民ノ士
氣ガ鼓舞サレルノデアリマス、由來現代ノ
社會ガ沈滯シ、官界ト云ハズ、實業界ト云
ハマ、中々吾々ノ思フヤウニ緊張シテ來
ナイノハ、要スルニ感激、感謝スルト云フ
コトガ、實際行動ノ上ニ現ハレテ居ラヌ
爲デハナイカ、口ニハ色々言ハレテ居ツテ
モ實行サレナイ、私ハ將軍大臣荒木文相ガ、
眞ニ其ノ使命ヲ果サルル意味ニ於テ、一ツ思
ヒ切ツテ此ノ勤勞靑年、此ノ忠勇ナル靑年
ニ對スル感激的施設トシテ閣僚ヲ說破
シ、速ニ衡平ナル〓育制度ノ下ニ十分ナル
修養ノ出來ルヤウナ施設ヲセラルルヤウ、
努力シテ戴キタイト思フ、又私ハ此ノ機會
ニ萬難ヲ排シテ、關係當局ノ言明ヲ得タ
イト覺悟シテ居ル次第デゴザイマス、
付テハ先ヅ當路者デアル文部大臣カラ之ニ
贊成ヲセラレ眞摯ナル感激的氣分ニナツテ
戴カナケレバ困ルト思フ、如何デアリマス
カ、此處デ一ツ-成程サウダト云フコト
ハ今マデ申サレマシタガ、之ヲ實現スルコ
トニ勇往邁進スルト云フ言明ヲ簡單ニシテ
戴キタイ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=35
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036・荒木貞夫
○荒木國務大臣 先般來靑年學校ニ付テノ
御熱心ニ對シテハ感謝致シマス、私モ其ノ
點ニ付テハ人ニ劣ラナイダケノ熱意ハ持ツ
テ居リマス、屢〓繰返シテ申ス通リニ、直チ
ニ其ノ希望ヲ實現スルニハ餘リニ問題ガ大
キノデ、將來ニ對スル效果ヲ擧ゲル上ニ付
テ、直チニ希望ノ通リ爲シ得ザルコトヲ洵ニ
遺憾トシテ居ル者デアリマス、左樣ナ考デ、
今後此ノ效果ヲ擧ゲルニハ一段ノ努力ヲ國
ヲ擧ゲテ爲スベキデアルト云フ考ヲ持ツテ
居リマスルカラ、此ノ點ダケ申上ゲテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=36
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037・長野長廣
○長野(長)委員 ドウモハツキリシマセヌ
ガ、此ノ豫算ノ計上ニ向ツテ萬全ノ努力ヲ
拂フト云フ御決心ハアリマセウカ、大臣ト
シテモウ一囘御答ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=37
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038・荒木貞夫
○荒木國務大臣 今御示シニナツタ計數ヲ
其ノ儘取入レテ之ヲ豫算ニ移スト云フコト
ニ付テハ、尙ホ愼重考究ノ餘地ガアルト存
ジマス、併シ此ノ目的ヲ達スル爲ニハ最善
ノ努力ヲ盡シ、其ノ豫算ニ付テハ、十分ニ
折衝ヲシテ實現ヲ期シタイ、斯ウ云フ風ニ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=38
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039・長野長廣
○長野(長)委員 靑年〓育ノ中デ、靑年體位
ノ向上ト云フコトハ極メテ肝要ナコトデア
ルト思ヒマス、然ルニ先般御尋ヲ致シマシ
タ如ク、思想上ニ由々シキ現代ニ於キマシ
テハ、體育ノ方面カラ、單ニ體位ノ向上ヲ
圖ルト云フコトデナク、健全ナル身體ノ內
ニ健全ナル精神ヲ宿ラシムルト云フ意味ニ
於テ、日本精神ノ作興ト云フコトト關聯シ
タ靑年體育ノ施設ニ努力スルコトガ肝要デ
ハナイカト思ヒマス、特ニ私ハ、體育ト云
フコトハ、單ニ走ルトカ或ハ跳躍ズルトカ
云フガ如キ、現在一般ニ行ハレテ居ル體育
ト云フモノノ外ニ、特ニ日常生活ニ必要ナ
ル體格ヲ作ル、ソレカラ體力ヲ調和的ニ發
揮ノ出來ルヤウチ行動ノ修練ト云ヒマスル
カ、ソレヲ建設シナケレバナラナイト思フ、
例ヘバ機械ヲ動カスニ調和的ニ發達シタ
身體ト、鋤鍬ヲ執ツテ農事ニイソシムニ必
要ナル調和的體力ノ發揮ト云フガ如キコト、
或ハ身體ノ均衡ナル發達ト云フガ如キコト
ハ、全然趣ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、
隨ヒマシテ、先ヅ氏神ヲ中心トスル村民生
活、都會生活ト云フモノニ必須ナル、ソレ
ゾレノ職業ニ適切ナル體格ヲ築キ得ル體育
ノ振興ト云フコトガ大切デハナイカ、殊
一國ノ文化ハ大地ノ內カラ萠出ルノデアリ
マス、殊ニ其ノ大地ノ中心ハ氏神デアリマ
ス、我ガ日本ノ社會組織ノ特質カラ考ヘテ
モ、氏神コソ本當ニ國民文化ノ中心デアル
ノデアリマス、ソコデ私ハ、例ヘバ農村ニ
於キマシテハ氏神ヲ中心トスル體育、或ヘ
鋤ヲ犁ク所ノ修練、或ハ物ヲ擔グ事、或八
耕作ヲスル事、或ハ手仕事ヲスル手工的ノ
事柄、或ハ武道、相撲ト云フヤウナモノニ
至ルマデ、氏神ヲ中心トシテ、生活ニ卽シ
タ身體ノ調和的、發達ト共ニ、茲ニ日本精
神ノ確乎不拔ナルモノヲ發揚スベキコトガ
必要デハナイカト考ヘルノデアリマス、此
ノ新シキ意味ニ於ケル、而モ極メテ切實ナ
ル日本式體育振興ニ御努力ヲセラルル御意
思ハナイカ是亦簡單ニアルカナイカヲ御
答ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=39
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040・荒木貞夫
○荒木國務大臣 御意見ノ氏神ヲ中心トシ
テノ體位向上、竝ニ自己ノ環境ニ應ジ、職
務ニ應ズル適切ナル體位向上ニ付テハ、全
ク御意見ノヤウナ方法ガ最モ有力ナ一ツノ
方法ト考ヘマス、單ニ「オリムピック」ニ出ル、
或ハ競技ニ耽ルト云フコトダケガ體育ノ最
善ナルモノデアルトハ考ヘテ居ラヌノデア
リマス、殊ニ今ノ氏神ヲ中心トシテヤルト
云フ御意見ニ付テハ、先般來モ考慮致シマ
シテ、段々〓究ヲシテ居ルヤウナ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=40
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041・長野長廣
○長野(長)委員 物ハ〓究ダケデハイケマ
セヌカラ、〓究ノ進ンダモノハ直チニ片ツ
端カラ實行スルヤウニ御願シタイノデアリ
マス、次ニ、都會ノ靑年ガ職場カラ直チニ
靑年學校ニ出席ヲスルト云フ場合ニ、勤勞
ノ後極メテ汗ニ塗レ油ニ塗レテ不快ナ狀態
ニ居ルノヲ、直グニ一轉シテ修養ノ環境
ニ移スト云フコトニ付テハ、風呂ニ入ラナ
イト中々氣分ガ一轉サレヌノデアリマス、
隨テ最近ハ工場等ニ於テハヨク共同風呂ヲ
拵ヘテ居ルノデアリマス、ケレドモ是ハ、
業務ニ多クノ時間ヲ費ス關係上、農村ニ於
テモ特別ナ地方、比較的ニ人口ノ多イ密集
シタ地方ナドデハ、ヤハリ共同風呂ノ必要
ガアルト存ジマス、地方漁村、農村、山村、
都會ノ別ナク、夜學〓育等ヲ能率的ニ行フ
ニハ共同風呂ノ必要モアリ、又榮養ト云フ
點ニ付テモ、私ハ强チ美食ヲサセヨト云フ
意味デハゴザイマセヌガ、今日ノ勤勞靑年
ハ食物ト云フコトニ頗ル惠マレテ居ナイ、
市內ノ職工或ハ靑年勞務者ガ攝ツテ居ル
日々ノ食堂ニ參ツテ見マシテモ、思ヒ半ニ
過グルモノガアリマス、ソコデ此ノ食料ト
云フコトニ付テ一考シナケレバナラヌト思
ヒマスガ、今日農村デハ殆ド鹽ヲ嘗メテ居
ルト云フ地方ガ多イノデアリマス、四國ノ
或ル地方ノ如キハ米不作ノ爲ニ、モウ三月
デ食糧米ガナクナルト云フヤウナ狀態ニ陷
ツテ居ル所ガアル、東北ニモヒドイ所ガア
ルヤウデアリマス、隨テ榮養不良ニ陷ル氣
味ガアル、ソレカラ都會ニ於テハ野菜食ト
云フモノガ中々困難デアル、隨テ野菜ハ寧ロ
肉類ヲ食フヨリモ費用ヲ多ク要スル、斯ウ
云フ實情デアツテ、健康ノ上ニ及ボス弊害
ガ絕大デアリマス、是ガ直チニ徵兵檢査ノ
上ニ現ハレテ由々シキ事象ヲ來シテ居ルコ
トハ、夙ニ大臣ノ御承知ノ所デアリマス、
ソレカラ又米ノ問題デアリマスガ、米ヲ〓
フノニ白米ニスル、而モ此ノ白米ニシタモ
ノニ石粉ガ入ツテ居ルト云フコトデ、近頃
混砂米ヲ廢シテ無砂米ニスルト云フヤウナ
意見モ出テ居ルノデゴザイマスガ、事ハ學
問上、醫學上ノ關係ニ屬スルノデ俄ニ論斷
ハ致セマセヌケレドモ、是等モ速ニ文部大
臣トシテハ、大衆靑年ノ〓育ニ當ル、詰リ
知育、德育ト共ニ體育ノ建設ヲスベキ重要
ナ立場ニ居ラレマスル關係上、一日モ速ニ
〓究ヲ發表セラレテ、サウシテ適切ナル制
度ヲ實施シ、混破米ガ不都合ナリトスレバ
斷乎之ヲ廢スルヤウニシテ戴カナケレバナ
ラヌト思ヒマス、先般、前內閣ノ閣議ニ於
テハ、農林大臣マデガ此ノ問題ニ對シテ案
外輕々ナ御答辯ヲナサツタト云フノデ、其
後私ハ、米穀國策〓究會ヲ組織シテ居ル關係
上有馬大臣ニ面會シマシタ所ガ、大臣ハ
其ノ非ヲ悟ラレテ、近ク之ニ付テハ解決ヲ
サセル積リダカラ、議會ノ問題ニナルマデ
ニ解決ヲスル積リダカラ諒承願ヒタイト云
フコトヲ私共ニ答辯ヲサレタノデアリマス、
斯ノ如ク米ト云フ主食物ノコトニ於テモマ
ダ政治上極メテ幼稚ナ現狀デゴザイマス、
何卒體育當面ノ責任ヲ持タレテ居ル文部大
臣トセラレマシテハ、以上ノ榮養上ノ關係、
衞生上ノ關係ニ付キマシテモ、速ニ適切ナ
ル施設ヲ行ハレンコトヲ希望シタイノデゴ
ザイマス、又之ニ付テ相當ノ經費ヲ充當シ
ナケレバナラヌト思フノデアリマスルガ、
御見解ハ如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=41
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042・荒木貞夫
○荒木國務大臣 段々微細ニ入ツテ御親切
ナ御意見ノ一端ヲ御漏ラシ下サイマシテ、
能ク拜聽致シマシタ、給食又共同風呂等各、〓
其ノ環境ニ卽シテ色々ナヤリ方ガアラウト
存ジマス、是等モ將來施設ヲスベキ一ツノ
コトデアラウト考ヘテ居リマス、十分ニ〓
究シテ、其ノ土地ニ適應スルヤウナ方法ヲ
講ジテ見タイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=42
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043・長野長廣
○長野(長)委員 文部大臣ニ直接御質問ヲ
申上ゲルコトハ、一通リ是デ終ツタノデゴ
ザイマス、併シ先刻モ〓育行政ノ一元化ト
云フ點ニ付キマシテ文部大臣ニ御答辯ヲ煩
ハシタノデゴザイマスルケレドモ、是ハ尙
ホ陸軍大臣ト内務大臣ノ御答辯ヲ求メナケ
レバナラヌコトニナツ、テ居ルノデゴザイマ
ス、而シテ其ノ結果ニ於テ更ニ文部大臣ノ
御答辯ヲ求メナケレバナリマセヌ、同時ニ
靑年〓練ノ事ニ關係ヲ致シマシテ、靑年〓
育法ノ制定、卽チ立憲的ニ靑年〓育ノ制度
ヲ確立スベシト云フ間題ガ、陸軍大臣ノ御
答辯ニ關聯シテ起ツテ來ルノデアリマスカ
ラ、文部大臣ニ對スル質問モ亦玆ニ留保シ
ナケレバナラヌノデアリマス、甚ダ長時間
ヲ要シテ次ノ質疑者ニ恐縮デアリマスルガ、
御讓リノ上デ成ベク本日中ニ殘餘ノ大臣ニ
對スル質問ヲ繼續出來ルヤウニ、委員長ト
シテモ御努力ヲ願ヒタイト存ズルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=43
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044・野村嘉六
○野村委員長 承知シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=44
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045・長野長廣
○長野(長)委員 短時間デ宜シウゴザイマ
スカラ是非ヤツテ戴キタイ、此ノ問題ハ全
國ニ亙ツテ續出シツツアル惡弊ノ代表的事
例デアルカラ、私ハ身ヲ挺シテ解決ヲシナ
ケレバナラヌト思ツテ居ル次第デゴザイマ
スカラ、時間ガナイカラドウ斯ウト云フコ
トハ斷ジテ私ハ許スコトハ出來ヌノデアリ
そく、其ノ積リデ御願シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=45
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046・野村嘉六
○野村委員長 今他ノ大臣ノ方ニハ交涉シ
テ居リマス-曾和君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=46
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047・曾和義弌
○會和委員 私此ノ法案ニ關聯シマシテ二
三御伺シタイト思ヒマス、最近國內改革ト
云フコトガ段々ト話題ニ上ルノデアリマス
ガ、國內改革ニハ色々重要點ガアリマセウ
ガ、私ハ人事ノ刷新ト云フ事ガ重要デハナ
カラウカ、殊ニ〓育界ニ於ケル人事ノ刷新
ハ急務中ノ急務デハナカラウカト思フ、小ハ
小學校カラ大ハ大學校ニ至ルマデ、〓育社
會ニ蟠ル人事ノ弊害ト云フモノハ、實ニ病膏
盲ニ入ルト云フ程度ニ達シテ居ルト存ジマ
ス、最近文部大臣ガ東京帝國大學ノ一部ニ
改革ノ手ヲオ著ケナサツタコトニ付キマシ
テハ、私共衷心贊意ヲ表シテ居リマス、併
シナガラ單ニ此ノ一部ニ止マラズ、他ノ專
門學校、中等學校乃至小學校等ニ於ケル人
事ノ刷新ノ根本ヲ御定メニナツテ、斷然之
ニ手ヲ著ケテ戴キタイト云フコトヲ私ハ希
望スルノデアリマスガ、先ヅ此ノ法案ニ直接
關係ガアリマスル靑年學校ノ〓員ニ付テ申シ
マスルト、大體今日ノ靑年學校ノ〓員ハ、
專任〓員ト云フノハ甚ダ少ウゴザイマシテ、
主ニ小學校ノ〓師ガ兼務シテ居ル、而モ此
ノ小學校ノ國民〓育ニ從事スル更ニ靑年學
校ガ義務制ニナリマスルナラバ、一層其ノ
關係ガ深クナルノデアリマスルガ、此ノ小
學校〓育者ノ人格識見等ハ、私ハ上ノ方デ
見テゴザル方々ニハ殆ド豫想モ付カヌダラ
ウト思フノデアリマスルガ、實ニ劣等ナ者
ガ多イノデアリマス、卽チ彼等ノ中ニハ、
〓育者タル所ノ天職ヲ自覺シナイ、日本尙
ホ巧利的ナ、實ニ卑シムベキ精神ノ上ニ立
ツテ居ル〓育者ガ相當ニアル、ソレガ結局
派閥ノ爭ニナル、例ヘバ一府縣ニ二ツ以上
ノ師範學校ガアル府縣デハ、必ズ此ノ師範
學校ノ卒業者ガ互ニ鎬ヲ削ツテ勢力扶殖ニ
努力スルノデアリマス、又斯樣ナコトヲ申
上ゲテ、是ハ或ハ速記ヲ削ツテ貰ハナケレ
バナラヌカト思ヒマスガ、〓育者ノ一部ニ
ハ、師範學校ヲ卒業シタ時ノ兵役關係ヲ利
シテ〓育者ニナツテ居ル者ガ無キニシモア
ラズデアルト云フコトヲ見タトキニ、私共
ハ非常ニ寧ロ憂國ノ念ニ驅ラレル、此ノ點
ハ此ノ度ノ兵役法ノ改正デ、普通ノ國民ト
同ジ取扱ニナリマシタコトハ洵ニ結構デア
リマス、是ハ私昨年ノ兵役法ノ改正ノトキ
ニ委員ニナリマシテ、政府委員ニ質問モシ
要望モシタノデアリマス、サウ云フ風ナ〓
育者ガ一部ニ混ツテ居ル、又一部ニハ百
姓ノ子供デアリナガラ百姓ヲスルノガ嫌ダ
ト云フノデ〓員ニナル、而モ〓員ノ地位ハ
比較的安固デアル、左樣ニ第二義、第三義
以下ノ動機、或ハ最モ我ガ日本國民トシテ
忌ムベキ動機ヲ以テ〓育者ノ席ヲ汚シテ居
ル、斯樣ナ者ガ更ニ卒業後派閥ヲ組ンデ爭
フ、私ハ常ニ之ヲ目擊シテ實ニ寒心憂慮ニ
堪ヘナイ者デアリマス、ソコデ之ニ對シテ
ハ先ヅ第一ニ學校長ノ監督ガ適正公平デ
ナケレバナラヌノデアリマス、其ノ學校長
ガ亦甚ダ不公正、不適正ナ人間ガ多イ、府
縣ノ視學ニ取入ルコトヲ專ラ努メ、サウシ
テ身ノ榮達ヲ圖ル、ソコデ問題ハ更ニ上リ
マシテ、府縣視學ノ任命銓衡如何ト云フコト
ニナル、之ニモ亦私共ハ遺憾ノ點ガ多々ア
ルノデアリマス、斯樣ニ考ヘテ參リマスル
ト、我ガ日本國ノ〓育制度全般ニ亙ツテノ
人事ノ刷新-ト申シマスレバ甚ダ廣汎デ
アツテ、殆ド何カラ手ヲ著ケレバ宜イカ、
手段ニ苦シムヤウナ狀態デアリマスルガ、
今日マデ之ニ對シテ私共ガ滿足シ得ルヤウ
ナ方法ガ少シモ講ゼラレテ居ナイト私ハ信
ズルノデアリマスルガ、私ノ今申上ゲマシ
タ點ニ付キマシテノ大臣ノ御所見ヲ承ハレ
マスレバ幸ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=47
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048・荒木貞夫
○荒木國務大臣 人事刷新、殊ニ小學校ノ
最モ重要ナ國民〓育ニ當ル者ノ人事刷新、
之ニ關スル監督官タル視學ノ刷新デアリマ
スガ、仰セノ通リ左樣ナコトヲ折々耳ニ致
シマス、又一般カラ申シマシテ、全般ニ必
ズシモ滿足スベキ狀態デアルトハ考ヘ得ラ
レマセヌコトヲ、殊ニ今日ノ時代ノ要望ニ
對シテ感ズルノデアリマス、此ノ爲ニ今ノ
兵役ノ問題モアリマス、又生活ノ安固ニ對
スル農村カラ師範ヘノ問題モアリマス、今
幸ニ〓育審議會ニ於テ師範學校ノ問題モ制
度トシテ、又其ノ內容ニ付テモ〓究サレテ
居リマス、兵役關係ニ付テモ、兵役法ノ改
正ト共ニ、進ンデ兵役ニ服シ、國民〓育ノ
重任ヲ果シ、一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ズ
ルト云フ、此ノ點ヲ十分ニ體得シ、之ヲ身
ヲ以テ示スト云フヤウナ方面、是等ノ點モ
考ヘテ、師範〓育ノ內容ニ關シ、是ノ志願
者ニ關シ、更ニ待遇等ヲ考慮シタイト思ヒ
マン·同時ニ今モ丁度靑年學校ノ問題ニ觸
レマシタガ、今一應是等ノ〓員ノ〓育ヲ他
ノ角度カラシ直ス、サウシテ玆ニ非常ニ崇
高ナ考ヲ以テ自ラ進ムト云フ方面、物心兩
方面、内外ノ關係カラ改善シテ行クヤウニ
シタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、要
シマスルニ一方ニ於テ師範ニ關スル所ノ人
ノ招致、學校ノ內容、更ニ現在アル所ノ〓
員ノ再〓育ト云フヤウナコトヲ併セテ〓究
ヲシテ見タイ、又事實之ニ向ツテ著手ヲ致
シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=48
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049・曾和義弌
○會和委員 只今ノ御答辯デ私非常ニ滿足
致シマシタ、私ハ決シテ〓育ノ價値ハ否定
スルモノデハアリマセヌガ、〓育ニハ限界
ガアル、殊ニ其ノ〓育ノ限界ハ客觀的ニ存
スルモノデナクシテ、其ノ人ノ個性ニ存ス
ル、デアリマスカラ私ハ天賦ト申シマスル
カ、素質絕對デアルト思ヒマス、同樣ノ〓
育ヲ受ケテモ、素質ノ惡イ者ハドウシテモ
イカヌ、隨ヒマシテ只今大臣モ仰セラレマ
シタヤウニ、〓育者タラントスル者ノ素質
ノ檢定ト申シマスカ、單ナル智能デナシニ
私共ノ要求シマスルノハ、立派ナ家ガ大切
ナオ嫁サンヲ貰フ時ノヤウニ、有ユル角度
カラ調べ、血統マデモ御調ベニナル、ソレ
位マデシナクテハ嘘ダト思フノデアリマス、
兎ニ角師範學校ノ入學生ノ檢定ト、他ノ中
等學校、實業學校ノ入學生ノ檢定トニ格段
ノ差ヲ設ケテ貰ヒタイト思フ、苟モ將來人
ノ師表トナルベキ人ニ對シテハ、自分ノ衣
食ノ料ト云フヤウナモノハ殆ド念トセズシ
テ、誠心誠意、精魂ヲ打込ンデ國民〓育ニ
當ルダケノ熱意ノアル人ヲ選ブ爲ニハ、今
日ノヤウナ簡單ナ師範學校ノ入學試驗デナ
クシテ、十分ナ方法ヲ執ツテ戴キタイ、斯
樣ニ存ズルノデアリマス、ソレト今一ツハ、
現在〓職員ノ中デ不都合ナ者ハ或ル程度職
ヲ罷メサセル、餘リニ〓育界ハ無風狀態デ
アリマス、非常ニ不埒ナ行爲ヲヤツテ居テ、
現ニ父兄モ知ツテ居レバ、町村長モ皆知ツ
テ居ル、ガ一向府縣當局ハソレヲ懲戒シナ
イ、サウ云フ事實ハ多々アルノデアリマス、
隨テ父兄モ其ノ〓育者ヲ信賴シナケレバ、
七ツ八ツノ子供デスラ其フ先生ノ不德ヲ鳴
ラシテ嘲ウテ居ル、斯樣ナ〓員モ少クナイ
ノデアリマス、勿論是ハ其ノ人ニ取リマス
レバ重大ナ問題デアリマシテ、ソレデモ相
當年數ヲ重ネテ、恩給デモ取レル人ナラバ
兎モ角、ソレ程ノ年限ニ至ラズシテ罷職サ
レルコトハ氣ノ毒デアリマスケレドモ、是
ハ唯一片ノ人情ノミデナク、此ノ時局下ニ
國家ノ將來ヲ考ヘル時ニハ、所謂泣イテ馬
謖ヲ斬ル、ソレ位ノ覺悟デ以テ府縣當局
ガ-大體ニ於テ私ハ小學校、中等學校ノ〓
師ヲ指シテ申シテ居ルノデアリマスガ、其
ノ人間ニ對シテ貰フト云フコトデナケレバ、
國民ノ心ハモウ一層緊張シナイノデハナイ
カ、如何程精神總動員デ單ナル講演ヲシテ
巡ラレテモ、國民ガ日常見セ付ケラレテ居
ル、其ノ國民ノ儀表タル人ガ少シモ信賴ス
ルニ足ラナイ、サウ云フ足ラナイ人ガ一部
ニアツテモ、彼等ノ全部ガ然ルガ如ク見ル
ノデアリマス、次ニハ最近ノ小學校ノ校長
ナリ、中學校ノ校長ナリガ、會議ヲスルコ
トガ多過ギマス、私ハ〓育ト云フモノハ多
數決ノ問題デハナイト思フ、人格ノ問題デ
アリ、人物ノ問題デアル、勿論今日ノ法制
上ニ於キマシテ、一學校ヲ經營致シテ行
キマス上ニハ、相當關係ノアル他ノ同
種ノ學校ト連絡ヲ取ラナケレバナラヌ、
會議スベキ事項モアリマセウケレド
モ、最近ノ彼等ノヤツテ居ル校長會議ナ
ルモノノ內容ヲ見テ、果シテ是レ位ノモノ
デ時間ヲ費シテ寄ラナケレバナラヌ必要ガ
アルダラウカ、常ニ疑フヤウナコトガ度々
アルノデアリマス、更ニ斯ウ云フ會議ヲ口
實ニシテ會議ニ必要ナキ時間ニ於テモ、校
長ノ中ニハヒヨコ〓〓出テ行ク人間ガアル、
今日ハ午後會議ガアルンダカラト言ツテ、
午前中カラ出テ行ク、何ヲヤツテ居ルカト
思フト、私ハ此ノ間或ル「デパート」デ、中
等學校ノ校長ガ欠伸ヲシナガラ「シヨー
ウヰンド」ヲ見テ步イテ居ルノヲ見タ、何タ
ル無責任ナ校長カト私ハ思ツタノデスガ、
サウ云フ例モ偶ニハアル、卽チ是ハ一ニ小
學校ナリ中等學校ナリノ〓育者ニ對スル監
督權ガ殆ド行使サレナイ、卽チ無風狀態デ
アルカラデ、是ガ國民精神ヲ弛緩セシムル
上ニ如何ニ役立ツテ居ルカト云フコトヲ考
ヘマスルト、洵ニ空恐ロシク私ハ感ズルノデ
アリマスガ、當局ニ於カレテハ各府縣廳ニ
通牒ヲ發セラレテ、必要ナモノハ仕方ガア
リマセヌガ、サウ云フ會議ハ出來得ル限リ
少クシテ、校長ハ直接自分ノ受持學科ガ有
ル無キニ拘ラズ、自分ノ仕事場デアリ、國
民ノ鍛鍊道場デアル受持ノ學校ニ常ニ出席
シテ、部下ヲ督勵シ、兒童生徒ノ〓育ニ專
念スベシト云フ位ノ通牒ヲ御發シナサルコ
トヲ、御考ニナツテ居ラレルダラウカ、之
ニ付テ御考ヲ御伺シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=49
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050・荒木貞夫
○荒木國務大臣 師範學校入學資格者ノ檢
定ニ付テ特ニ愼重ヲ期スル、智能ノミナラ
ズ德性及ビ人格其ノ他ニ對シテ考慮スルト
云フコトハ、洵ニ必要ナコトト存ジマス、
斯樣ヲ方法モ一段ト力ヲ入レテヤル必要ヲ
認メテ、是等ノ實現ニ遺憾ナキヲ期シタイ
ト考ヘテ居リマス
整理ヲ主トシテ監督竝ニ之ニ對スル處置
ノ問題デアリマスガ、可ナリ平素ヨリ是等
ニ對シテ通牒モ發シ、訓令モ出シ、人モ派
遣シテ居ルノデアリマスガ、十分ナ陣容モ
出來テ居ラヌト云フ憾モアツテ、此ノ事ノ
實現ガ今御話ニナツタヤウニ行カナイコト
ハ甚ダ遺憾ト思ヒマスガ、最近殊ニ此ノ點
ニ鑑ミマシテ、地方ニ對スル督學官、〓學
官其ノ他體育官等ノ派遣ニ對シテハ、綜合
的ニ目標ヲ決メテ、今ノヤウナコトノナイ
ヤウニ、文部省ノ重要ナ地位ニ在ル者ヲモ
之ニ加ヘテ府縣廳ニ於テ視察ノ結果、又是等
ノ點ヲ十分ニ徹底セシムルヤウニ、直チニ
此ノ實現ヲ圖ルベキ實行方法ヲ定メマシテ、
旣ニ之ニ著手致シテ居リマスルガ、是等モ
人員ガ十分ナイ爲ニ、一擧ニ全國ニ向ツテ
徹底スルコトノ出來ナイノハ甚ダ遺憾デア
リマス、更ニ必要デアレバ其ノ增加ヲ致シ
マシテ、急速ニ是等ノコトノ效果ヲ擧ゲタ
イ、又現ニ其ノ實行ニ移リツツアルノデア
リマス、此ノ點ヲ御諒承願ヒタイト思ヒマ
ス
又校長其ノ他ノコトニ對シテノ問題ニ付
テ、モウ一段ト考ヘテ見タイト思ヒマスコ
トハ、今ノ官公立ノ一ツノ弊害、校長自身
若クハ其ノ擔任者ガ自ラ打込ンデ行キ得ナ
イヤウナ機構等モ累ヲシテ居ルノデハナイ
カ、此ノ點ニ關シマスルト、私學ノ方面ニ
於テハ人格ヲ以テ立ツテ、サウシテ徹底セ
シムルコトガ出來ルト云フ點モアリマスノ
デ、ソレヤ是ヤヲ考ヘ、昔ノ塾風等モ考ヘ
テ、此ノ點ニ付テ何等カノ方法ヲ以テ兩者
カラ之ヲ矯正シタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
居リマス、左樣御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=50
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051・曾和義弌
○曾和委員 次ニ靑年學校ノ訓練指導員デ
アリマスガ、最近ニ於キマシテ全國何レモ
在〓軍人ノ將校或ハ下士官、兵等ヲ囑託シ
テ居リマスルガ、非常ニ是ハ成績ガ好イノ
デス、全國的ニ國民ガ感謝シテ居ル所ナノ
デアリマス、然ルニ此ノ事變ノ爲ニ優良ナ
指導員ガ次第ニ召集セラレル、私自分ノ村
ノ例ヲ取ツテ甚ダ恐縮デアリマスガ、私ノ
村デハ適當ナ指導員ガナイ、又在〓軍人ハ
殘ツテ居リマスケレドモ、ドウモ指導員ト
シテ適當ナ人ガナイ、甚ダ此ノ點ニ付キマ
シテ憂慮致シテ居ルノデアリマスガ、之二
付キマシテハ何等カ之ニ對應スベキ策ヲ御
持チデゴザイマセウカ、之ヲ御伺致シタイ
ト思ヒマス
次ニハ又職業科ノ〓師デアリマス、主ト
シテ私ハ農村ノ靑年學校ノ職業科ニ付テ申
上ゲタイノデアリマス、要スルニ農林、水
產ニ關スル〓師ナノデアリマスガ、是ガ又
甚ダ出來難イノデアリマス、大抵最近專任
〓師ト申シマスト、職業科ノ〓員デアリマ
スガ、ソレガドウ云フ經歷ヲ持ツテ來ルカ
ト云フト、大抵最近出來テ居リマス靑年學
校〓員養成所ヲ出テ來タ人デアル、所ガ是ガ
又先程モ申シマス通リ、農業ト云フモノヲ
嫌フガ爲ニ學校ニ入ツタ連中ナノデアル、根
本ガ違フ、旣ニ出發點ガ違フノデアリマス、
親父ノ後ヲ繼イテ肥料桶ヲ擔フコトガ嫌ヒ
ダト云フ連中ガ中學校ニ入ル、或ハ農學校
ニ入ル、サウシテ〓員養成所デ二箇年習ツ
テ出テ行ク、農學校ヲ出テ〓員養成所ヲ出
タ者ナラバ適任者デアリマスケレドモ、中
學校ヲ出テ二年間唯ヤツテ來タト云フヤウ
ナ先生ハ、職業課ノ先生トシテハ寧ロ害ガア
ルト思フ、單ナル書物ノ上ダケデ農業ノ〓
念ヲ得テ、實際問題デ生徒ガ聽クト何モ分
ラヌ、行詰ツテシマフ、私ハ將來職業課ノ
良〓師ヲ得ルト云フコトニ付テハ甚ダ困難
ダト思ヒマスガ、之ニ付キマシテモ何カ當
局ニ於カレテ御名案ヲ御持チニナツテ居ル
ノカ、御聽キシタイノデアリマス、更ニ〓員
養成所ハ各縣ニ一箇所大體設ケテ居ルヤウ
デアリマスガ、此ノ義務制ヲ實施サレルト
共ニ益〓此ノ方面ノ〓員ノ需要ガ多クナリマ
スカラ、單ニ量ニ於テノミナラズ、質ノ向
上ニ付テモ、ヤハリ先程申シマシタ師範學
校ノ生徒採用ト同ジ意味デ、人ノ師範タル
者ヲ養成スルノデアリマスカラ、府縣ノ〓
員養成所ヲモツト充實シナケレバナラヌ、
ト同時ニ府縣ノ費用ト云フモノガ次第ニ嵩
ンデ來ルノデアリマシテ、其ノ方面ニ對シ
テモ政府ハ相當ナル助成ヲシテ戴カナイ
ト、大府縣ナラバサウ云フ學校ニ三万ヤ五
万ノ金ヲ入レマシテモ困ラナイデアリマセ
ウケレドモ、四十數縣アル中ニハ、ヤハリ
財政上困難ナ所ガアルデアラウト思ヒマス、
サウ云フ方面ニ對スル御用意ガアルノデア
ルカ、之ヲ御伺シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=51
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052・荒木貞夫
○荒木國務大臣 靑年學校指導員ガ、召集
ノ爲ニ缺員ガ多クテ困ル、此ノ點ハ今日ノ
惱デアリマシテ、御承知ノヤウナ大軍ヲ出
シテ居ル爲ニ、左樣ナ者ガ大部分召集サレ
テ居ルノデアリマス、陸軍ノ方ニ可ナリ交
渉ハ致シテ居リマスケレドモ、直チニ此ノ
問題ニ付テ、〓練指導者トシテノ優良ナ軍
隊〓育、若クハ戰場ノ體驗ヲ經タ者ヲ得ル
ト云フコトハ當分困難デハアルマイカ、併
シナガラ十分ナル訓練ハ致サナケレバナラ
ヌノデアリマスカラ、其ノ間或ハ兼務ト云
フヤウナコトニシテ、急速ニ養成ノ方法ヲ
執ルナリ、或ハ廣イ地域ヲ何等カ方法ヲ以
テ巡ルナリシテ、取敢ズサウ云フ人ノ養成
ト、助手ヲ作ツテヤルト云フヨリ致シ方ガ
ナイト考ヘテ居リマス、是モ陸軍ノ方ト十
分打合セマシテ、又適當ナ方法ヲ執ツテ運
用シタナラバ出來ハセヌカト思ヒマス、十
分此ノ點ハ考究致シタイト思ヒマス、又交
涉モ致シテ居リマス
ソレカラ職業課ノ方ノ問題デアリマス
ガ、是ハ仰セノ通リ校內デ〓究シタバカリ
デハ十分デナイノデアリマス、是ハ地方ノ
土地ニ於ケル其ノ方面ノ練達ナ人ニ部分部
分ヲ指導シテ貰フヤウニシマシタナラバ、
彼ト此ト併セテ實效ガ擧ルノデハナイカト
實ハ腹案シテ居ル次第デアリマシテ、靑年
學校ノ今後ノ指導竝ニ〓育ヲ擔任スル人
ニ、地方ノソレ〓〓ノ特有ナ人、名望家或
ハ特ニソレニ適切ナル人ヲ煩ハスト云フコ
トガ、寧ロ方途ト一致シタ效果ヲ擧ゲルノ
デハナイカト云フ腹案ヲ持ツテ居リマス、
サウ云フヤウナ方法ヲ以テ之ニ善處スルコ
トガ出來ルノデハナイカト考ヘテ居リマス
〓員養成所ノ問題ニ付テ、殊ニ地方ノ經
費ノ負擔ガ多クナルト云フコトニ付テハ御
說ノ通リデアリマス、出來ルダケ是等ニ付
テハ地方ニ煩ヒヲ掛ケナイヤウニシ、又他
方ニ於テハ地方有力者ノ設立セル各種ノ機
關等ヲ通ジテ、是等ノ點ヲ遺憾ナイヤウニ
シタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=52
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053・曾和義弌
○曾和委員 私直接ノ問題ハ大體ソレデ終
リデアリマスガ、玆ニ昭和十年十一月二十
八日附デ、時ノ文部次官三邊氏ノ名ヲ以テ、
宗〓的情操ノ涵養ニ關スル通牒ト云フモノ
ヲ御出シニナツテ居ルノデアリマスガ、之
ニ付テ少シ御伺シタイト思ヒマス、私ハ宗
〓問題ニ付キマシテハ一方ナラヌ關心ヲ持
ツテ居ル者デアリマス、隨テ此ノ通牒ガ出
マシタ時、旣ニ此ノ通牒ニ對シテ疑問ヲ懷
イタノデアリマス、何レ此ノ問題ハ宗〓團
體法案ガ上程サレマシタ時ニ、私ハ詳シク
御質問シタイト思ヒマスガ、此ノ昭和十年
ノ通牒ハ、明治三十二年ノ訓令ニ依リマス
ルト、學校ニハ全然宗〓ヲ入レテハナラヌ、
斯ウ云フモノデアツタノデアリマス、所ガ
最近宗〓ト云フモノガ必要ナリト云フ聲ガ
段々ト各方面ニ起ツテ來マスルニ付テ、殊
ニ思想問題ガ發生シマスルニ付テ、此ノ通
牒ヲ發セラレタト思フノデアリマスガ、最
初ノ方ハ「宗派的〓育ハ家庭ニ於ケル宗〓上
ノ信仰ニ基キテ自然ノ間ニ行ハルト共ニ宗
〓團體ノ活動ニヨル〓化ニ俟ツモノニシテ
學校〓育ハ一切ノ〓派宗派〓會等ニ對シテ
中立不偏ノ態度ヲ保持スベキモノトス」斯ウ
アルノデアリマス、是ハ所謂信〓ノ自由ト云
フ立場カラデアリマセウガ、私ハ今日ノ日
本ノ宗〓ノ狀態ヲ混亂迷罔ノ狀態ト名ヅ
ケ、我ガ日本ノ今日ハ宗〓ニ關スル限リ思
想的亡國ニ瀕シテ居ルト唱ヘテ居リマス、
隨テ斯樣ナモノニ依存セズシテ行クト云フ
建前ハ、成程此ノ宗〓ノ現狀カラ見テ言ハ
レルコトデアリマスルガ、併シ特定ナル或
ル一ツノ宗〓其ノモノニシ入ルノデナケレ
バ、私ハ宗〓情操ト云フモノハ養ヘナイト
考ヘテ居リマス、若シ現在ノ各宗派-宗
〓ト云フ言葉ニ付テモ私ハ色々意見ガアリ
マスガ、先ヅ世間デ申シテ居ル言葉デ申シ
やく、現在ノ宗〓現象ト云フモノヲ通ジタ
或ル〓念ハ、大體ハツキリトシタモノヲ誰
デモ持ツテ居リマスガ、其ノ宗〓的情操ト
云フモノハ朧氣ニハ觀念シ得ラレルノデア
リマスケレドモ、偖テソレナラバ、學校ノ
生徒ニ情操ヲ養ハセルト云フコトニナルト
ドウナルカト云フト、是ハ實際問題デアリ
マシテ、實ニ私ハ困難ナ問題ダト信ジテ居
ルノデアリマス、ソレハ我國ニ放ケル宗〓
國策ト云フモノガ確立ヲシテ居ナイカラデ
アル、此ノ問題ニ付キマシテハ、先程申シ
マシタヤウニ宗〓團體法案ガ出マシタ時
ニ、私ノ意見ヲ述ベテ伺ヒタイト思ツテ居
ルノデアリマス、〓派、宗派、〓會等ニ對
シテ中立不偏ノ態度ヲ執ツテ、サウシテ宗
〓情操ヲ養ヘト云フノデスカラ、實ニ是ハ
難カシイノデス、ソコデ私ハ其ノ後實際〓
育家ニ、何カヤツテ居マスカト言ツテ色々
聽イテ見タ所ガ、「イヤ一向分ラヌカラ私ノ
學校デハヤツテ居マセヌ」ト言フノガ遺憾
ナガラ多イノデス、又府縣ノ學務課ヘ行ツ
テ、アナタノ方ハ斯ウ云フ通牒ガ出テ居ル
ガ、之ニ付テ中等學校、小學校ヲドウ指導
シテ居マスカト言ツテ聽イテ見タ、私ノ聽
イタ人ハ數府縣ニ亙リマスルガ、「ドウモ是
ハ難カシイ問題デスカラ、何トモ仕樣ガナ
イノデス」ト言フ、所ガ或ル中等學校ノ校
長ガ私ニ「イヤソレハ私ノ方デヤツテ居マ
ス」ト言フ、ドウ云フコトヲヤツテ居マス
カト聽クト、「四大節或ハ記念日ノ時ニ神
社ニ連レテ參ツテ居リマス」ト言フ、ソコ
デ私ハ是ハ甚ダ小股取ノヤウナ議論ニナリ
マスガ、現在我國ノ政府ハ神社ハ宗〓ニア
ラズト云フ建前ヲ採ツテ居ル、之ニモ私ハ
意見ガアリマスガ、長クナリマスカラ申シ
マセヌガ、サウ云フ風ニシテ神社ニ參拜シ
テ敬神ノ念ヲ起サスヤウニスレバ、ヤハリ
〓師ノ指導ニ依ツテ宗〓的情操ヲ養フコト
ガ出來ルト私ハ思ツテ居ル、併シナガラ其
ノ神社ハ、政府ニ聽イテ見ルト宗〓ニアラ
ズト仰シヤツテ居ル、此ノ神社ニ參拜スル
以外ノ方法デ、何カ宗〓的情操ヲ養ハナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトニナツテ來ル、
デアルカラ折角玆ニ長文ノ通牒ヲ御出シニ
ナツテ居ナガラ、本年デ既ニ三年有餘經ツ
ノデアリマスガ、此ノ通牒ノ精神ト云フモ
ノガ活カサレテ居ナイノデハナカラウカト
云フコトヲ憂フル者デアリマス、ソレニ對シ
マシテ、當局ノ方デハドウ云フ風ニ御覽ニナ
ツテ居ルカ、斯ウ云フ風ニヤラセルト云フ
ヤウナ方針ガアルナラバ御示ヲ願ヒタイ、ソ
レト今日ニ至ルマデノ、此ノ通牒ニ依ツテ行
ハレテ居ル實情ガ御分リデアルナラバ御示
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
其ノ次ニ、其ノ通牒ノズツト終リノ方ノ
三ト云フ所ニ、「宗〓的情操ノ涵養ニ關シ
學校〓育上特ニ留意スベキ事項大凡左ノ如
シ」ト云フコトガ書イテアル、其處ノ一ニ、
修身、公民科デドウシロ、二ニ哲學ノ〓授
ニ於テドウシロト云フコトガアル-直接
宗〓ノ本質ニ關スルコトニ付テハ後日ニ讓
リマスガ、三ノ「國史ニ於テハ宗〓ノ國民
文化ニ及ボシタル影響、偉人ノ受ケタル宗
〓的感化、偉大ナル宗〓家ノ傳記等ノ取扱
ニ留意スベシ」斯ウ云フコトガアル、此ノ
條項ニ付テ御伺シタイノハ、今日マデノ宗
〓ト申シマスレバ、明治初年マデハ所謂「キ
リシタン」宗ハ禁制デアリマシタカラ、先
ヅ歷史上ノ大人物ガ宗〓ノ影響ヲ受ケタト
云ヒマスレバ佛〓デアリマス、ソコデ佛〓
ガ我國ノ文化竝ニ偉人ニ對スル感化等ノ多
大デアツタコトヲ認メマスルガ、此ノ反面
ニ佛〓ガ我國ノ國民精神ニ害毒ヲ流シハシ
ナカツタカ、國民精神ノ發達ヲ阻碍スルコ
トハナカツタカト云フコトニ付テ、如何ナ
ル御考ヲ持ツテ居ルカ御伺シタイノデアリ
ひと、ソレト今一ツハ此ノ「偉人ノ受ケタ
ル宗〓的感化」ト云フコトヲ言ヒマスナラ
バ、其ノ感化ハ禪宗カラ受ケタモノデアル
カ、或ハ眞言宗カラ得タモノデアルカ、或
ハ天台宗デ得タルモノデアルカ、或ハ眞宗
カラ得タルモノデアルカ、ヤハリソコニ〓
派、宗派ト云フモノガ必ズアルノデアリマ
ス、私共カラ見マスレバ、各宗派ト云フモ
ノニ對スル感化力ガ違フノデアリマス、親
鸞ダカラシテアノ眞宗ヲ說イタ、又其ノ感
化ニ依ツテ益〓、〓鸞ト云フ人ヲ完成シタ、
詰リ佛〓デ所謂囘向デアル、自分ガ說ヲ出
シテ、其ノ說ガ又自分ニ向ウテ來テ、ソコ
ニ益〓自己ト云フモノヲ完成スル、空海デア
ツタレバコソアノ眞言宗ト云フモノヲ傳へ
テ、之ヲ日本ニ於テ大體日本的ニ完成シタ、
勿論偉人ニ依リマシテハ單一ナル宗派デナ
クシテ、禪宗ノ感化モ受ケテ居レバ、眞言
宗ノ感化モ受ケテ居ルト云フコトモアリマ
スガ、先ヅ大體ニ於テハ一宗一派ヲ熱心ニ
信仰シタト云フコトデナケレバ、信念マデ
到達スルモノデハナイ、通佛〓的ニ有ユル
佛ヲ拜ミ巡ルト云フヤウナ人ニ信念ガ出來
ル筈ハナイ、ヤハリ一宗ニ凝ラナケレバ嘘
デアル、一宗ニ凝ラナケレバ宗〓ノ感化ト
云フモノハナイト、私ハ斯樣ニ信ジテ居リマ
ス、サウシマスルト、斯ウ云フ偉人ノ受ケ
タル感化ト云フコトヲ說クノニハ、必ズヤ
ハリ特定ノ宗派ト云フモノヲ說カナケレバ
ナラナイ、又特ニ其ノ次ニアリマス「偉大
ナル宗〓家ノ傳記」ト申シマシテモ、ヤハ
リ宗〓家トシテ說クノデアリマスカラ、其
ノ人ノ奉ジテ居ル宗派ト云フモノヲ說カナ
ケレバ分ラナイノデアリマス、今日マデノ
歷史ニ於テハ傳〓ハ唯天台宗ヲ傳ヘタ、或
ハ弘法ハ眞言宗ヲ傳ヘタ、日蓮ハ日蓮宗ヲ
創メタト云フ位ノコトデアリマスケレドモ、
宗〓的感化ヲ與ヘヨウト思ツタナラバ、其
ノ宗〓ノ簡單ナル〓理ニマデ立入ツテ〓へ
ナケレバ感化ヲ與ヘルコトハ出來ナイ、唯
傳〓、弘法、日蓮、親鸞、是等ハ宗〓家デ
アツタト云フ知識ヲ與ヘルナラバ、ソレデ
宜シイガ、其ノ時ニ宗〓的感化ヲ與ヘルト
云フコトニナルナラバ、其ノ〓理ヲ簡單ニ
說カナケレバナラナイ、シテ見レバヤハリ
玆ニ〓派、宗派ト云フモノト離ルベカラザ
ル關係ガ生ジテ來ルノデアリマス、更ニ之
ヲ源ニ遡ツテ申シマスルト、此ノ第二ノ所
ニ「家庭及社會ニ於ケル宗派的〓育ニ對シ
左ノ態度ヲ保持スベキモノトス一、家庭及
社會ニ於テ養成セラレタル宗〓心ヲ損フコ
トナク生徒ノ內心ヨリ發現スル宗〓的慾求
ニ留意シ苟モ之ヲ輕視シ又ハ侮蔑スルガ如
キコトナカランヲ要ス」ト云フノデアリマ
スルガ、是ハ又難カシイ條項デ、私ノ言フ
ノハ、生徒ノ內心カラ發現スル宗〓的慾求
ト云フモノヲ留意スルマデ認メ得ラレル〓
育者ガアルカト言フノデス、宗〓ノ道ハ別
ナノデアリマス、唯世間的ニ學問ガアル
カラ、或ハ法學ニ通ジ、文學ニ通ジ、歷
史ニ通ジテ居ツテモ、宗〓ノコトガ分ル
トハ言ヘナイ、卽チ宗〓ノ中ニ入リ込ン
デ、身モ魂モ宗〓ニ捧ゲテ、何年カ何十年
カヤツテ來タ人デナケレバ駄目デス、ソレ
デモ今日ノ大多數ノ儈侶ノヤウナ、自分
ノ職業化シタ信仰デハ駄目デス、眞實
ニ人生ノ上ニ宗〓ノ內ニ入リ込ンダ其ノ宗
〓生活ト云フモノヲ送ツテ來タ者デナケレ
バ、宗〓ト云フモノハ分ラナイノデアリマ
スカラ、此ノ通牒ヲ府縣知事ガ小學校ナリ
中學校ニヤツタ時ニ、小學校ヤ中學校ノ校
長ニ是ガ分ル人ガ何人アルカト云フノデス
而モ生徒ノ內心カラ宗〓的慾求ガ-ソレ
ハ發現スル時ハアル、アリマスガ、是ハ宗
〓的ナ明細ナル觀察眼ト信念ト經驗トヲ持
ツ者デナケレバ分ラヌ、而モ況ヤ此ノ前段
ニアリマス「家庭及社會ニ於テ養成セラレ
タル宗〓心」ト云フモノハ、是ハ果シテ今
日ノ社會ニ於テ如何ナル宗〓心ト云フモノ
ヲ養ハレテ居ルカ、今日內地千四五百万戶
ノ家族ニ付テ申シマシテモ、上ハ高貴ノ方
カラ、下ハ匹夫ノ家庭ニ至ルマデ、各家庭
ニ於テ先ヅ如何ナル宗〓心ヲ養成サレテ居
ルカ、本質ニ於テドウ云フ宗〓心デアルカ、
恐ラク眞ノ宗〓ト云フモノヲ辨ヘズシテ、
直接ニ吉凶禍福、功利的ナ或ルモノシカ慾
求スルノ外ニ出ナイ、隨テ私ハ普通ノ家庭
ニ於テ養成セラレタル宗〓心ト云フモノハ、
寧ロ或ル程度ニ於テ排斥スベキモノデハナ
イカト私ハ思ツテ居ルト又社會ニ於テ養成
セラレタル宗〓心ト云フモノモ殆ド同樣デ
アリマシテ、今日世上見マスル所ノ所謂參
拜者ト言ヒマスカ、參詣人ト申シマスルカ、
オ寺ト云フノハドウ云フオ寺デアルカ、
必ズ直チニ福ヲ授ケル、或ハ直チニ病氣ヲ
治シテ吳レル、斯樣ナ直接的ノ功利主義ニ
唆ラレテ、一般民衆ガ參詣スルオ寺ガ非常
ニ繁昌スル、サウシテ其ノオ寺ノヤツテ居
ルコトモサウデアリマス、オ寺トシテハ眞
ニ衆生救濟ト云フヨリモ、成タケ參詣人
ヲ多クシテ、サウシテオ守札ヤ護符ノ販賣
所デアル、私ハ最近ハサウデハアリマセヌ
ガ、昨年マデ實ハ熱烈ナル日蓮信者デアツ
〃、其ノ當時或ルオ寺ニ參詣シテ、サウシ
テ御蠟燭代トシテ一圓上ゲタ、甚ダ事ハ細
カクナリマスガ、是ハ最近ノオ寺ノ現狀ヲ
見ル參考ニナルト思ツテ申上ゲマス、サウ
スルト其處ニ居ル受付ガ「オ名前ハ誰方デゴ
ザイマスカ」ト言フカラ、私ハ大阪ノ某トシ
テ置イタ「某ヂヤ工合ガ惡イノデス、受取ヲ
出サナケレバナラヌカライケマセヌ」「受取
ト云ツタツテ此ノオ金ハ君ニ上ゲタノデハ
ナイ、御本尊ニ對シテ御厄介ダガ蠟燭一本デ
モ上ゲテ戴キタイ、僕ハ御本尊ニ對シテ供
養ヲスルノダ、君ニ上ゲタモノナラ君ニ受
取ヲ貰フケレドモ、僕ハ君ニ上ゲタノデハ
す け大體君達ハ信用ガナイカラ、受取ヲ
出サナケレバ執事ガ承知シナイノダラウ」ト
言ウタ所ガ非常ニ恐入ツテ居ツタ、卽チ私
共ガ比較的墮落シテ居ナイト思ツテ居ツタ
日蓮宗アタリデモ左樣ナ狀態デアリマス、
況ヤ私ハ他ノ宗門ナドハ最近ハ殊ニ見直シ
テ考ヘテ居ルノデアリマス、隨テ社會ニ於
テ果シテドノ程度ノ宗〓心ヲ養ウテ居ルカ
ト云フコトモ、私ハ非常ニ疑フノデアリマ
ス、隨ヒマシテ此ノノ通牒ハ、先程申シマ
ス通リ、我國ノ〓育上ドレダケノ效果ヲ齎
シテ居ルカ、現實ニ最初此ノ通牒ヲ發セラ
レタ意圖ガ、勿論完全トマデハ行クモノデ
ハアリマセヌ、コンナモノハ「パーセン
テージ」ニ現ハセマセヌケレドモ、五〇%モ
三〇%モ私ハ此ノ通牒ヲ發シタ意圖ガ行ハ
レテ居ナイト思ツテ居リマス、併シナガラ
假令僅カナリトモ之ヲ行ハセヨウト云フナ
ラバ、唯此ノ一片ノ通牒ヲ出シタダケデハ
駄目ダト私ハ思ヒマス、宗〓心、宗〓情操ナ
ルモノノ分ラナイ〓育者ニ對シテ、分リ易ク
宗〓情操トハコンナモノダ、ダカラソレヲ
養フニハ斯ウ云フ方法ガ宜イノダト云フコ
トヲ御示シニナラナケレバ、私ハ噓ダト思
フノデアリマス、果シテソレニ付テ今日マ
デ何カオヤリニナツタノデアリマセウカ、
或ハ將ニソレニ對シテ何カノ計畫ヲ御立テ
ニナツテ居リマセウカ、其ノ點ヲ伺ツテ置
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=53
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054・荒木貞夫
○荒木國務大臣 宗〓ニ關聯シタ訓令ヲ基
礎トシテノ宗〓〓育ニ關スル御質問デアリ
マシタ、曾ツテ明治三十二年デアリマシタ
カ、當時ニ於テハ〓育ノ中ニ宗〓ガ入ルト
云フコトハ、御承知ノ通リ國〓ガ定メラレ
ザル限リハ非常ナ多クノ弊害ヲ及ボス、斯
ウ云フコトデ恐ラク當時ノ環境及ビ當時ノ
思想カラ訓令ヲ發セラレタモノト思ヒマス、
而シテ今段々御示シニナツタコトハ可ナリ
難カシイノデアリマスガ、玆ニ當局ノ苦心ガ
アツタノデアツテ、事ヲ碎キ、其ノ中カラ採
ツテ用ヒルト云フコトハ、一ニ其ノ人ノ技倆
ニ俟タザルヲ得ナイノデアリマシテ、可ナリ
苦心ノアツタコトト思ヒマス、殊ニ宗〓ノ關
係ハ御承知ノヤウエ、我國ニ於テハ最モ難
カシイ一ツノ問題デアリマス、憲法ニ於テ
信〓ノ自由ヲ許サレ、他方ニ於テ國家ノ宗
祀トシテノ神社ガ、宗〓外ニ立ツテ國民
ノ奉行スベキ一ツノコトニナツテ居リマ
ス、玆ニ非常ナ苦心ガアツタコトト思ヒマ
ス、而シテ之ヲ今段々御話ノアリマシタ宗
〓界ノ狀態、又過去カラ今日ニ至ルマデノ
宗〓、殊ニ佛〓ノ我國ニ及ボシタ貢獻、又
今御話ニ依レバ功罪ト云フヤウニモ承ツタ
ノデアリマスガ、或ハ基督〓ノ解禁以後ニ
於ケル我國ノ宗〓界ハ、可ナリ他國ト違ツ
タ非常ニ複雜ナ所ガアルノデアリマス、此
ノ間ニアツテ、國民ノ宗〓心ガ甚ダ確定ヲ
シテ居ラヌト云フヤウニ御覽ノヤウデアリ
マスガ、何レニ致シマシテモ宗〓ガ必要デ
アリ、宗〓心ガ無クテハナラヌト云フコト
ハ論ズルマデモナイノデアリマシテ、今ノ
「ソビエト」ノ如ク、宗〓心ヲ全ク奪フト云フ
コトハ如何ニ人ヲシテ寂シカラシメルカ、
又人生トシテノ觀點カラ立チマシテ、是ナ
クシテ人生ガ恐ラタハ意義アルヤウニ終始
スルコトハ私ハ出來ナイト思フノデアリマ
ス、是ハ申スマデモナイコトデアリマスカ
ラ、此處デ敢テ申ス必要ハナイノデアリマ
スガ、斯樣ナ宗〓心ヲ如何ニシテ助長スル
カト云フコトニ關シテ、此ノ訓令ガ發セラ
レテ居ルノデアリマス、今御示シニナリマ
シタヤウナ情念、或ハ家庭ニ於ケル宗〓
心、或ハ學校ニ於テ宗〓又ハ過去ノ宗〓若
クハ宗〓ノ功績、宗〓家ノ傳記ヲ擧ゲルト
云フコトニ對シテ、直チニ之ヲ以テ滿足ナ
結果ガ得ラレルトハ考ヘマセヌガ、併シ之
ヲ運營シテ行ク技倆ニ依ツテハ十分ニ養ヘ
ルノデハナイカ、又養ヒ得サセナケレバナ
ラヌノデアリマス、併シナガラ一ツノ〓義
ノ中ニ入リマシテ、或ハ一ツノ宗派若クハ
〓派ノ點ニ入ツテ申シマスルト、所謂〓育
ト宗〓トノ間ニ一ツ避クベカラザル交流ガ
出來テ、其ノ爲ニ信〓ノ自由ノ上ニ及ボス
影響ガ多イノデアル、斯ウ云フ風ニ考ヘル
ノデアリマス、隨テ私トシマシテ宗〓心ヲ
養フ上ニ付テハ、一方ニ於テ何ト致シマシ
テモ宗〓ハ信仰ニ出發ヲスルノデアリマス、
信仰ニ基礎ヲ置カナケレバナラヌノデアリ
さく、又宗〓ソレ自體ノ運用ト云フモノ
ハ御承知ノヤウニ非常ニ微妙ナモノデア
リマシテ、其ノ微妙ナ人心ノ動キヲ本當ニ
指導誘抜ヲシテ行カナケレバナラヌ所ニ宗
〓ノ根柢ガアル、或ハ哲學的ニ之ヲ見マス
ル知識階級ノ人ニ於テモ、私ハ其ノ點ニ付
テノ基礎ガナケレバ、宗〓ト云フモノハ理
解スルコトガ出來ナイノデハナカラウカ、
斯ウ云フ風ニ考ヘマス、隨テ第一ニ先程御
話ニナリマシタ神社ニ對スル問題デアリマ
スガ、敬神崇祖ノ念ト云フコトモ宗〓心ノ
一ツノ芽生デアリ、發露デアツテ、又ソレ
自體ガ宗〓ニナルノデアリマス、併シ又報
恩感謝ト云フ念モ宗〓ノ出發點ノ一ツデア
リマス、或ハ哲學ヲ超エテノ人生ヲ達觀シ
テ行クト云フコトニ對スル情操モ、是一ツ
ノ宗〓ノ發露デアリ、宗〓心ノ發露デアリ
やく、斯樣ナコトヲ子供ノ內ニ、單ニ唯物
的ニ無宗〓、功利的、實利的ニノミ考ヘサ
セズシテ、天地自然ノ大ト云フモノハ斯ノ
如キモノデアツテ、過去ニ對シ、將來ニ對
シテ人生ト云フモノハ斯ク行カナケレバナ
ラヌト云フコトノ情操ヲ十分ニ〓ヘマスナ
ラバ、自ラソコニ自己ノ環境、自己ノ性
質總テニ於テ自分ノ信ズル所ノ佛〓デア
レ、或ハ神道デアレ、或ハ基督〓デアレ、
其ノ他ノ宗〓ニモ入リ得ルノデハナイカ、
ソレダケノ事ヲ學校ニ於テ〓育スル必要ガ
アリ、又ソレダケノ觀念ハ是非〓ヘテ行カ
ナケレバナラヌノデハナイカ、此ノヤリ方
ニ付テハ、實ニ其ノ對象トナル兒童ノ狀態ヲ
見テ、玆ニ〓員ガ其ノ機會ニ於テ適當ニ之
ヲ運營ヲスルヨリ外ナイノデアリマス、然
ラバ〓員ガサウ云フ情操ガナイデハナイカ、
サウ云フ宗〓心ガ無イノデハナイカ、斯ウ
云フヤウナ御說ニ對シテハ、過去ニ於ケル
我ガ〓育ガ遺憾ナガラ其ノ點ニ付テ甚ダ物
足リナカツタ點ハ、私モ之ヲ認メザルヲ得
ナイノデアリマスガ、斯樣ナ點ハ師範學校
ナリ一般國民ノ間ニ於ケル情操〓育、或ハ
宗〓ノ關係、或ハ哲學ニ關スル方面ヲ十分
盛ンニシテ參リマシタナラバ、之ヲ實行シ
得ルノデハナカラウカ、其ノ程度ニ於
テ此ノ最モ人心ノ微妙ナ所ヲ摑ンデ行
キ、其ノ〓化、感化ト云フモノハ、最モ
微妙ナ宗〓ノ方面ヲ通ジテ、斯クシテ初
メテ行ハレルモノデアツテ、一ツノ理
窟一ツノ理解デハ私ハ出來ナイノデハ
アルマイカ、卽チ此ノ機會ニ於テ斯樣ナ
事ヲスルノガ一番宜イノデハアルマイカ、
而シテ今囘ノ宗〓團體法案デモ實行セラレ
ルト云フヤウニナリマスレバ、旁〓以テ是等
ノ點ハ宗〓ノ方面ト〓育ノ方面ニ於テ密接
ナ交流ヲ持タセテ、此ノ點ニ關スル萬全ヲ
期シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマ
ス、尙ホ宗〓其ノ他ノ問題ニ付テ此ノ席デ
申上ゲルノハ時間ヲ要スルト思ヒマスカ
ラ、以上ヲ以テ御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=54
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055・曾和義弌
○曾和委員 只今大臣カラ伺ツタノデアリ
マスガ、御承知ノ如ク信仰ハ主觀的ナモノ
デアリマスノデ、宗〓ニ關スル大臣ノ御考
ヘ方ト云フモノハ左樣デアリマセウガ、
般民衆ノ宗〓心ト云フモノハ非常ニ程度ガ
違フノデス、宗〓心ノ根據ハ同ジデアリマ
スガ、ソレガ今日マデ社會的ニ歷史的ニ段々
親カラ子、子カラ孫ト云フヤウナ工合ニ、或
ハ引續キ或ル檀家トナリ、或ハ引續キ色々
ナ宗〓的〓化ヲ受ケル上ニ於テ間違ツタ
〓化ヲ受ケテ居ル、詰リ間違ツタ宗〓心ナ
ルモノガ社會ニ流布サレテ居ル、是ガ私ノ
非常ニ考ヘテ居ル所ナノデアリマス、隨テ
此ノ通牒ノ第二ニハ正シキ信仰ハ之ヲ尊
重スル云々ト書イテアリマスガ、是モ大臣
ニ於カレテハ大臣ノ御考ハ持ツテ居ラレル
デセウガ、私ノ言ヒマスノハ、個々ノ〓育
者ガ、果シテ正シキ信仰ト云フモノハドウ
云フモノデアルカト云フ認識ヲ得テ居ル
デアラウカ、是ハ小學校ノ〓材ニモアル
ノデアリマスガ、一方ニ迷信ヲ避ケヨト云
フ〓材ガアル、是ナンデス、是ガ又最近ノ
所謂功利主義的ナ、物質的ナ、單ナル淺薄
ナ科學的ナ考ヲ持ツテ居ル所ノ〓師ハ、兒
童ノ心ノ奧底ニ尊イ宗〓心ノ芽生ヘテ居ル
ノヲ、ソレハ迷信ダト言ツテ〓ツテ居ル、
デアリマスカラ正シキ信仰ト迷信トハ何ニ
依ツテ明ニスルカト云フコトガ重大問題デ
アル、迷信ヲ信ズルコトガ其ノ害ガ大ナル
ト同時ニ、正シキ信仰心ノ芽ヲ摘ムト云フ
コトガ又人生ニ取ツテ由々シキ大事デアル
ト云フコトヲ考ヘタ時ニ、此ノ問題ヲ取扱
フ上ニ於テハ非常ニ重大ナル關心ヲ要スル
ノデアツテ、唯此ノ一片ノ通牒ノミヲ出シ
テ、ソレデ今大臣ガ仰セラレルヤウナ事柄
ハ、中々私共トシテハ出來ニクイト思フ、
デアリマスカラ私ガ先程伺ヒマシタノハ、
此ノ通牒ニ關聯シテ更ニ注意ヲ與ヘラレル
カ、御指導ヲサレルカ、或ハ宗〓的再〓育
ト申シマスカ、サウ云フ考ヲ御持チデナイ
ノデアルカト云フコトデアリマス、ソレヲ
簡單ニ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=55
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056・荒木貞夫
○荒木國務大臣 御話ノ通リ吾々モ其ノ點
ニ付テ、迷信ト正シキ信仰ト云フモノニ對
シテノ懸念ヲ十分ニ持ツテ居ルノデアリマ
ス、幸ヒ宗〓團體法案ノ審議竝ニ是ノ經過、
更ニ今後成立ニ伴ウテ宗〓方面ニ關スル一
切ノ問題ヲ組織的ニ常置機關ヲ置イテ、之
ニ依ツテ恐ラク是等ノ御心配ニナルヤウナ
點ヲ漸次解消シテ行ツテ、正シキ宗〓心ヲ
養ヒ、而シテ〓育ト宗〓トノ關係ニ於テ誤
ナキヲ期スルコトガ出來ル、斯ウ信ジテ居
リマス、サウ云フヤウナ方法ヲ執ルベク目
下其ノ手段ヲ執ツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=56
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057・曾和義弌
○曾和委員 私是デ最後ニ致シマス、只今
大臣ガ宗〓團體法案ノコトニ付テ言及サレ
マシタガ、其ノ件ニ關シマシテハ私ハ上程
ニナツテカラ詳シク申上ゲタイト思ツテ居
リマシタガ、簡單ニ唯一點ダケ申上ゲタイ
ノハ、-是ハ甚ダ早マリマシテ、宗〓團
體法案ガ上程ニナツテ居ナイノニ申上ゲル
ノデアリマスケレドモ、私ハ我國ノ宗〓ト
云フモノニ對シテ獨特ノ考ヲ持ツテ居ル、
最近多クノ人ハ餘程其ノ方マデ考ヘテ來テ
居ル、ソレハ何カト云フト、日本ノ神宮神
社ヲ宗主トスル此ノ御祭デアリマス、殊
畏多イコトデアリマスガ、皇室ニ於テ執行
セラレマスル御祭事ヲ學ビ奉ツテ、吾々
國民ガ之ヲ御祭リスルノガ私ハ日本ノ宗〓
ナリ、斯ウ考ヘテ居ル、然ラバ他ノ宗〓團
體ヲドウスルノカト云フコトニナリマスガ、
詳シイコトハ後日申上ゲマスガ、私ハアノ
宗〓團體法案ヲ、ナゼ信〓團體法案トシテ
出サナカツタカト考ヘル、アレナラ宗〓デ
ハナイ、宗〓ト云フモノハモツト根本的ナ、
動カスベカラザル、或ガ國體トシテ萬民之
ヲ仰ガザルヲ得ナイモノデナケレバ宗ト云
フ字ハ當テラレナイ、デアルカラシテ他ノ
團體ハ宗〓團體トシテ當分許シテ置イテモ
宜イ、私ハ斯ウ考ヘル、デアルカラ私ハアノ
宗〓團體法案ニ付テ論議スベキコトハ多々
アリマスガ、唯サウ云フ考ヲ持ツテ居ルト
云フコトダケヲ申上ゲテ、將來宗〓〓育方
面ニ付テハ特別ノ御考慮ヲ御願シテ質問ヲ
打切ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=57
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058・野村嘉六
○野村委員長 本日ハ此ノ程度デ散會スル
コトニ致シマシテ、明日ハ午前十時カラ開
會致シマス
午後三時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X00319390220&spkNum=58
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