1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年三月六日(月曜日)午後一時五十分開議
出席委員左の如し
委員長 野村嘉六君
理事 長野高一君 理事 曾和義弌君
理事 一ノ瀬俊民君
佐藤與一君 長野長廣君
樋口善右衞門君 庄司一郎君
田子一民君 河上哲太君
坂本宗太郎君 河合義一君
椎尾辨匡君
出席國務大臣左の如し
文部大臣 男爵 荒木貞夫君
出席政府委員左の如し
法制局參事官 樋貝詮三君
文部政務次官 小柳牧衞君
文部參與官 野中徹也君
文部省普通學務局長 藤野惠君
文部省社會教育局長 田中重之君
文部省圖書局長 近藤壽治君
本日の會議に上りたる議案左の如し
青年學校教育費國庫補助法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=0
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001・野村嘉六
○野村委員長 是カラ開會致シマス-佐
藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=1
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002・佐藤與一
○佐藤委員 我ガ國語ヲ尊重シ愛護スル
ト云フコトハ、國民精神ヲ作興スル所以ノ
一ツノ道デアリマシテ、私ハ極メテ必要ナコ
トデアルト考ヘルノデアリマス、此ノ問題
ニ付キマシテハ、後刻大臣ニモ御伺シタイ
ト思フノデアリマスガ、先ヅ政府委員ニ御
聽キシテ戴キマシテ、之ニ對シテ御答辯ヲ
煩ハシタイコトハ、我國ノ國語ノ使用ガ、
現在極メテ亂雜ニナツテ居ルト云フコトデ
アリマス、勿論國語ハ死物デハアリマセヌ
カラ、段々ニ發展シテ、外國語ヲモ採入レ
テ我ガ國語ノ領域ト爲スコトハ、洵ニ結構
ナコトデアリマスケレドモ、我ガ國語ヲ以
テ十分或ル事柄ヲ表現スルコトガ出來ルニ
拘ラズ、徒ニ外國語ヲ採入レルコトハ、國
民精神作興上面白クナイ、國家ノ發展ヲ阻
碍スルモノデアルト考へルノデアリマス、
ソレト同時ニ、私共ハ我ガ國語ガ段々ト進
化スルト云フコトハ、洵ニ結構ナコトト思
ヒマスケレドモ、間違ツテ居ル言葉ヤ文章
ヲ、正シイモノトシテ取扱フト云フコトモ
●洵ニ遺憾ナコトデアルノデアリマス、例へ
バ文法上許容事項トシテ、ドチラデモ宜イ
ト云フヤウニ學校等デ許サレテ居ル事柄ガ
アリマス、例ヘバ「得セシム」ト云フ言葉ハ文
法上正シクナイ言葉デアツテ、「得シム」ト申
サンケレバナラヌノデアルケレドモ、得セ
シムト誤リ用ヒラレテ來タ爲ニ、得セシム
デモ得シムデモ、兩方トモ差支ガナイト
云フヤウニセラレテ居ルノデアリマスガ
其ノ他是ト同樣ノ例ハ尙ホ多クアルノデア
リマシテ、斯ウ云フモノヲ許容事項トシテ
〓育上許シテ置クコトニナリマスト、甚ダ
恐懼ニ堪ヘナイコトデアリマスケレドモ、
陛下ノ御勅語ニ「得シム」ト云フ御言葉ガ
アリマスノニ、常ニ得セシムデモ宜イト云フ
ヤウニ考ヘテ居ル爲ニ、ソレヲ得セシムト誤
リ奉讀スルト云フヤウナ、洵ニ恐懼ニ堪ヘ
ナイヤウナ事實モ生ズルノデアリマシテ、
許容事項ト云フモノハ許サヌデ、ドウシテ
モ一ツニヤハリ定メテ置ク方ガ宜クハナイ
カト考ヘルノデアリマス、又我國ノ動詞ハ
靈妙不可思議ナ活用ヲスルモノデアリマシ
テ、他國ニ見ルコトノ出來ナイ、我ガ國語
ノ特色トモ、又生命トモ稱スベキモノデア
ルニ拘ラズ、文部省ノ臨時國語調査會ニ於
キマシテハ、之ヲ左樣ニ取扱ツテ居ラヌノデ
アリマシテ、例ヘバ「行フ」ト云フ言葉ガアリ
マスト、ソレハ「ハ」行ニ變化スル言葉デアリ
マシテ、「行ハズ」ト云フ時ニハ行ハズト書ク
ベキノヲ、「ワ」行ノ「ワズ」ト云フヤウニ書ク
アノ文部省臨時國語調査會ノ假名遣ヒノ御
決定ニハサウナツテ居ルヤウデアリマス、
併シ文部省ノ此ノ臨時國語調査會ノ決定
通リヲ、小學校ノ〓科書等ニ其ノ儘御用ヒ
ニナラヌト云フコトハ明カデアリマス、屢〓
第六十四五議會等ノ豫算委員會等ニ御質問
申上ゲマシタ際ニモ、當時ノ文部當局ハ、
マダ〓究中デアツテ、之ヲ國定〓科書等ニ
ハ使用シナイノデアルト云フヤウニ御答辯
ニナツテ居ルノデアリマスケレドモ、爾來
アノ決定案ヲ其ノ儘或ハ〓科書等ニ御用ヒ
ニナルヤウニナルノデハアルマイカト心配
シテ居ルノデアリマス、勿論アノ決定ハ其
ノ後改正セラレタ點モアルノデアリマスシ、
又國語審議會ニ移サレマシテ、サウシテ尙
ホ〓究ガ續ケラレテ居ツタノデアリマスケ
レドモ、私共ノ考ヘテ居ル通リ、若クハ之
ニ近イヤウニ改正セラレタモノトモ考ヘル
ノデアリマスガ、私マダソレヲ承知シテ居
ラヌノデアリマシテ、之ニ關シテ圖書局長
ノ御意見竝ニ現在國語審議會ノ審議ノ狀況
ガ、ドウ云フ工合ニ進ンデ居ルカト云フコ
トヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=2
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003・近藤壽治
○近藤政府委員 御答致シマス、今ノ御話
ノ國民精神ヲ作興スルト云フコトニ付テ
ハ國語ヲ尊重シ國語ヲ愛護スルト云フコ
トガ非常ニ重要ナ事柄デアルト云フ御意見
ハ、當局トシマシテモ十分是ハ御同意デア
リマシテ、其ノ積リデ實ハ〓科書編纂等ニ
モ當ツテ居ルヤウナ次第デアリマス、其ノ
國語ヲ愛護スルト云フノミナラズ、正シク
國語ヲ愛護セシメネバナラヌ、唯國語愛護
ト云フコトガ間違ツタ國語ヲ愛護セシムル
ノデハイカヌ、隨ヒマシテ國語ノ純正保持
ト云フコトニ付キマシテハ十分留意ヲ致ス
積リデ、其ノ觀點カラ小學校國語讀本ノ改
訂ニ著手ヲ致シマシテ、漸ク十三年度ニ於
キマシテ全部出來上ツタヤウナ次第デアリ
マス、無論是ハ完全トハ申シマセヌ、將來
又續々改訂ヲ行ツテ行カウトハ思ツテ居リ
マスガ、過去ノモノヨリハ少クトモ國語ノ
純正ナモノヲ愛護セシメル、國語ノ力ト云
フコトガ如何ニ國民精神作興ノ上ニ大キナ
力ヲ持ツモノデアルカト云フ、サウ云フ觀
點カラ新シイ本ヲ作ツタヤウナ次第デアリ
そいく、然ラバ其ノ純正ナル國語ヲ如何樣ニ
シテ吾々ガ定メ、ソレヲ愛護スルヤウニ實
ニ施シテ行クカト云フコトニ付キマシテ、先
程御話ガアリマシタヤウニ、臨時國語調査
會カラ延イテ今日ノ國語審議會ニ及ンデ居
ルノデアリマシテ、昭和十年ニ文部大臣カ
ラ此ノ國語審議會ニ諮問ヲ致シマシタ所ノ
箇條ハ、サウ云フ點ニ十分ナ注意ヲ致シテ、
諮問事項モ大體國語ノ統制ニ關スル件、ソ
レカラ漢字ノ調査ニ關スル件、假名遣ヒノ
改訂ニ關スル件、文體ノ改訂ニ關スル件ト
云フ、此ノ四項目ヲ諮問セラレタノデアリ
マスガ、其ノ國語統制ニ關スル件ト云フ所
ニ於テハ、特ニ今ノ御話ノヤウニ純正ナ國
語ヲ此ノ際確定シ、ソレヲ保持スルヤウニ
シタイト云フ御趣意ノ下ニ其ノ諮問ガ出タ
ノデアリマス、此ノ問題ニ付テモ國語審議
會ガ〓究ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、目
下ノ所審議狀況ハ漢字ノ調査ニ關スル件ト
云フコトカラ始メマシテ、サウシテ是ガ昭
和十年ノ三月ニ漢字ノ調査ニ關スル件ノ中、
特ニ漢字ノ字體整理ト云フコトヲヤリマシ
テ、其ノ字體整理ノ案ガ決定ヲサレタノデ
アリマシテ、文部大臣ニ是ガ答申ヲセラレ
タ、其ノ後引續キマシテ常用漢字表ト云フ
モノノ修正ニ著手致シテ居ルノデアリマス、
先程御話ガアリマシタヤウニ、臨時國語調
査會ニ於テ色々國語ノ調査ヲ行ヒマシタ
ガ、時勢ノ進運ト我國ノ文化、我ガ國體ト
云フモノノ反省ガ年ト共ニ深マツテ來ルニ
從ヒマシテ、ヤハリアレデハマダ十分デナ
イ、ドウシテモモウ少シ是ハ修正再檢討ヲ
要スルモノガアルト云フノデ、今サウ云フ
風ナ臨時國語調査會ニ於テ決定サレマシタ
常用漢字表ト云フモノヲ、更ニ再檢討ヲス
ルト云フコトニ入ツテ居ルノデアリマスガ、
併シ斯ウ云フ風ナ狀態デ日ヲ長ク掛ツテ居
リマシテハ、實際上今日ノ大局カラ見マシ
テ國語ノ問題ト云フモノハ非常ニ重要性ヲ
增シテ居ルノデアリマスカラ、モウ少シ是
ハ機關ヲ充實シ、サウシテ本當ニ學問的ニ
モ實際的ニモ傳統ニモ又進步性ニモ何レノ
方面カラ見テモ、最モ的確ニシテ有效デア
ルト云フヤウナ正シイ國語ヲ確定シ、是ガ
實用ニナルヤウニ致サネバナラヌト云フコト
ニ付キマシテ當局ニ於テソレ〓〓本案ヲ〓究
シ、ソレノ方策ヲ運ラシテ居ルヤウナ次第
デアリマス、ドウカ左樣ニ御諒承ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=3
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004・佐藤與一
○佐藤委員 私モ國語調査會ノ進行ガ遲々
トシテ居ルコトハ洵ニ遺憾デアリマスケレ
ドモ、追々是ガ進捗ヲ見テ居ルト云フ只今
ノ圖書局長ノ御說明ハ諒承致シマシタ、尙
ホ私ハ圖書局長ニ對シマシテモ他ノ政府委
員ニ對シマシテモ質疑ガアルノデアリマス
ケレドモ、大臣ガ御臨席ニナツテオ居デデ
アリマスカラ、大臣ニ對スル質疑ヲ致シタ
イノデアリマスガ、大臣ニ對シマシテハ他
ノ委員ノ方ノ簡單ナ御質疑ガオアリダサウ
デアリマスカラ、其ノ方カラ御質疑ヲ戴イ
テ、其ノ次ニ私ハ大臣ニ對シテ御伺ヒシタイ
ト思ヒマス、是デ一時質疑ヲ中止致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=4
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005・野村嘉六
○野村委員長 サウ願ヒマス、長野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=5
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006・長野長廣
○長野(長)委員 私ハ三點ダケ御伺ヒ致
シタイト思ヒマス、先般モ段々〓育ノ內容ニ
付キマシテ、或ハ皇道精神ノ問題ト云ヒ、或
ハ「マコト」ノ問題ト云ヒ、或ハ自然界ノ理
法ニ對スルコト、宗〓〓育ニ關スルコト、
種々本質的ナ御質問ガアツタノデアリマス、
私ハ是等ノ觀念論ト言ツテハ失禮カモ知レ
マセヌガ、詰リ言ヒ換ヘマシタナラバ、サ
ウ云フ眞理、原理等ノ問題ハ勿論尊重致シ
マスガ、一步進ンデ私ハ具體的ニ是等ノ事
項ヲ、小學校、靑年學校、中學校等ノ〓員
ニ十分ニ打込ンデ置クト云フコトガ、先般
來ノ委員各位ノ御質疑、大臣ノ御答辯等ノ
內容ヲ徹底スル上ニ最モ根本的ナ問題デハ
ナイカ、斯ウ云フコトカラ致シマシテ、平素私
ノ考ヘテ居リマスル所ヲ玆ニ述ベサセテ戴キ
マシテ、大臣ノ御高見ヲ承リタイト思ヒマス
從來ノ〓育ノ缺陷ガ極メテ抽象的〓念的
デアツテ、眞ニ役立ツ國民ヲ養成スルト云
フコトガ出來ナカツタト云フ所ニ世論ガ歸
一シテ居ルヤウデゴザイマス、此ノ〓育ノ
抽象的〓念的ナ缺陷ヲ矯メル上カラ致シマ
シテ、私ハ〓員養成機關タル師範學校、靑
年學校〓員養成所ト云フヤウナ方面ニ於ケ
ル〓育演習、〓育ノ實習ノ上ニ一大改善ヲ
加ヘル必要ガアリハセヌカ、斯ウ云フヤウ
ニ感ズルノデアリマス、ソレハ從來ノ〓員
ノ養成ニ付キマシテハ、附屬ノ學校ヲ置キ
マシテ、主トシテ其ノ附屬學校ノ中ニ於テ
〓授法ノ〓究、訓育、體育ト云フ方面ニ付
テノ指導〓育ヲ致シテ居ルノデアリマス、
隨テ此ノ指導ノ環境デアツテ、將來ノ生活
ノ場所デアリマス所ノ〓土ノ全體生活、卽
國民生活ト云フ方面ノ指導ニ關シテ〓員ニ
信念ガ足ラナイ所ガアリハシナイカ、是ガ
因ニナリマシテ、自然ニ〓育ノ爲ノ〓育夕
ルカノ如キモノガ行ハレテ、眞ノ〓育デア
ル處ノ有爲有能ノ國民ヲ養成スルト云フ事
ガ閑却ヲサレテ居ルト云フコトニナツタノ
デハナイカト考ヘマス、ソコデ玆ニ附屬ノ
小學校或ハ靑年學校ノ〓育經營ヲバ擴充致
シマシテ、サウシテ農村デアリマスレバ、其
ノ農村全體ヲ一ツノ〓場ト見テ、サウシテ詰
リ農村全體ヲ附屬ノ小學校ナリ靑年學校ト
見ルノデアリマス、所謂露天學校デアリマシ
テ、サウシテ師範學校ナラバ小學校ヲ中心ト
シテ、小學〓育ヲ中心トシテ理想〓ノ建設ヲ
體驗セシムル、ソレカラ靑年學校〓員養成
所ナラバ靑年學校ヲ中心トシテ小學校等ト
聯關ヲシツツ農村ノ物心兩面ノ生活ヲ向上
スル〓育運動ヲ行ハセマシテ、理想〓ノ建
設ヲ體驗サセル、ソコデヤガテハ先生トナ
ルベキ者、卽チ先生トナルベキ生徒ハ其ノ
理想ノ〓土ヲ作ルベク自ラ其ノ村民、町民
トノ中ニ飛込ンデ、サウシテ一緒ニナツテ
白熱的ニ其ノ村ノ振興、町ノ興隆ト云フコ
トニ努力スル、サウ云フ氣持ノ間ニ、サウ
ヤツテ行ク間ニ、或ハ小學校ノ演習ヲ爲シ、
又靑年學校〓員養成所ナラバ靑年學校ノ〓
育ヲヤツテ行ク、斯ウシマスルト自ラ斯ウ
云フコトニナルト思ヒマス、假ニ農村デ申
シマスナラバ、其ノ先生トナルベキ養成所
ノ生徒、師範學校ノ生徒ハ大地ニ精魂ヲ打
込ンデ村民ト共ニ土ノ文化ヲ建設スル、
斯ウ云フコトヲ體驗スル、玆ニ私ハ〓育ノ
非常ナ意義ガ生レテ來ルノデハナイカト思
フ、詰リ土ヲ基調トスル生活、是ハ申スマ
デモナク天地ノ化育ニ參與スルノ生活デア
リマス、是レ程聖ナルモノハナイ、實ニ大
宗〓ダト私ハ思フ、此ノ大宗〓的事業ニ先
生自體ガ村民ト共ニ徹底スル、靑年ト共ニ
徹底スル、兒童ト共ニ徹底スル、斯ウ云フ
體驗ヲスル所ニ、立派ナ信念アル〓師ガ鍊
成サレル、斯ル〓師ガ一ツノ農村或ハ町ノ
先生トシテ立ツタ時ニ、確固不拔ノ信念ガ
出來テ來ル、何物ニモ動カサレヌ、大信念
ト云フモノガ玆ニ出來テ來ルデハナイカ
ト思フノデアリマス、其ノ意味ニ於テ私ハ
〓員養成機關ニ於テハ此ノ理想〓土ノ建設
ト云フコトヲ含ンダ意味ノ附屬學校ヲ造ツ
テ行ク必要ガアリハセヌカト云フ風ニ考ヘ
ルノデアリマス、ソレカラ又一面ニ於テハ
社會〓育ト言ヒ、或ハ產業振興、乃至ハ自
治ノ促進ト申シマスケレドモ、要スルニ是
ハツマリ理想〓土ノ建設デアリマス、再建
デアリマス、ケレドモ此ノ〓土社會ト云フモ
ノハ申スマデモナク大自然ノ中ニ包容サレタ
モノデナクテハナラヌ、大自然ノ中ニ、渾然一
體トシテ包容セラレタ人間社會ヲ建設スルト
云フノデ無クテハナラヌ、サウ云フ意味ノ社
會デ無クテハナラヌノデアリマスルカラ、其ノ
自治體ノ振興、社會ノ振興ト云フコトヲ圖ル
上ニ於テハ、ヤハリ一ツノ農村、一ツノ〓土ト
云フモノニ、先生ニナルベキ者ガ自分ノ全
身全靈ヲ打込ンデ興隆ニ參畫スルト云フ其ノ
體驗ヲ持ツテ居ラナケレバ、眞ニ其ノ大自
然ニ響應シタ所ノ、基調シタ所ノ社會ヲ建
設スルコトハ困難デハナイカト思ヒマス、
偖テサウ云フ意味ニ於テ小學校、靑年學校
ヲ擴充シタ意味ノ理想〓土ノ再建ト云フ此
ノ大運動ヲ、〓員タルベキ人ニ與ヘテ行ク
ト云フコトハ、サウシテ其處ニ自覺セシメ
テ行クト云フコトハ、軈テ我ガ日本ノ〓育
ヲ抽象〓念ノ〓育カラ救ウテ、眞ニ本質的
ナ日本精神的ナ、日本學的ナ新シキ〓育學
ヲ建設スル上ニ、是ハ最モ必要ナコトデハ
ナイカト云フ風ニ感ズルノデアリマス、ソレ
デ別ニ法令ノ改正ト云フヤウナコトハナク
テ濟ムコトデアリマシテ、小學校、靑年學
校等ノ現ニ〓員養成機關ニ附屬學校トシテ
附設セラレタモノヲ經營スル上ニ於テ、學
校ノ當事者ガ其ノ町村ノ理事者ト聯携シマ
シテ、サウシテ互ニ援ケ合ツテ村長、村會
議員ト共ニ其ノ村ノ自治體ノ經營ト云フ本
來ノ方面ニ働クガ、同時ニ其ノ師範學校ノ
附屬小學校ノ先生、ソレカラ靑年學校ノ先
生養成所ノ附屬靑年學校ノ先生、校長、ソ
レト一ツニナリマシテ互ニ相援ケ合ツテ、
其ノ村ノ自治ノ促進カラ產業ノ興隆、村民
生活ノ振興ト云フヤウナ方面ニ力ヲ盡スコ
トトナラバ、自ラ玆ニ理想〓土ノ建設ト云
フヤウナ意味ヲ持ツタ附屬學校ノ經營ガ出
來テ行クト思フノデアリマス、大體ノ手心
ト幾ラカノ經費ヲ國庫及地方ヨリ出スコト
ニ依ツテ出來ルコトト思フノデアリマス、
甚ダ纏リガ付キニククテ失禮ト思ヒマスガ、
私ノ意ノ在ル所ハ御察シヲ願ヘルコトト思
フノデアリマス、斯樣ナ意味ニ於ケル施設
ニ付キ、マシテ如何ナル御考ヲ持タルルデア
リマセウカ、又將來若シ之ヲ御採用ニナツ
テ實際ニ行ハレルデアリマセウカ御見解ヲ
承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=6
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007・荒木貞夫
○荒木國務大臣 只今御質疑ノ點ハ、結局
理想ヲ實現化シテ行キ、更ニ〓土ニソレガ
現ハレテ來ルト云フ〓育ノ施設改善ト云フ
コトニ拜聽シタノデアリマス、大體御趣旨
ハ適切ナル御意見デアルト存ジマスルシ、
又當局ニ於テ靑年學校ノ義務制ノ施行又國
民學校ノ實現、又之ヲ待ツマデモナク今日
全般的ニ亙ツテ改善セナケレバナラヌ大キ
ナ問題ハ其ノ點デアリマシテ、先般來意見
モ申述ベタト存ジテ居リマスルガ、校內
ニ於ケル〓育ト、校外ニ於ケル鍛鍊ト併セテ
ソレガ空疎ニ涉ラズシテ、〓土其ノモノヲ主
トシテ行ク、卽チ南部ニ於テハ南部、北部
ニ於テハ北部、雪國ニ於テハ雪國ト云フヤ
ウナ風ニシテ、〓土ト結ビ付ケタ知行ノ問
題ニナリマスガ、鍛鍊及ビ知育、德育、體
育、兩者併セテ行ク、斯ウ云フ風ニ考ヘマ
スルト、初メテ我國ノ〓育ノ總テニ實質ガ
伴フノデハナイカ、又〓土ノコトニ付テハ
歐羅巴アタリニ於キマシテモ、殊ニ新興國
ニ於テハ〓土ト融ケ合フト云フヤウナ〓育
ニ對シテモ可ナリ實施ヲスルヤウニ傾イテ
居リマス、敢テ歐羅巴ノ新興國ヲ待ツマデ
モナク我國ニ於ケル社會組織ノ上ニ付テハ、
十分ニ斯樣ナ點ヲ行ヒ得ルヤウナ組織ガ過
去ニ出來テ居ル、一家一族、一村一家ト云
フヤウナ、或ハ町會ト云ツタヤウナ昔ノ思
想デ行キマスト非常ニ其ノ點ハ良イ所デア
ラウト存ジマス、今ノ御意見ヲ承リマシテ、
形ヲドウ云フ風ニ致スカ、是ハ相當大問題
デアリマス、先般モ御話ガアリマシタガ、
靑年團或ハ少年團ト靑年學校トヲ如何ニス
ルカ、校外ノ鍛鍊ト校內ノ〓育トガ一致ス
ル時ニ此ノ問題ハヤハリ解消スルモ
ノデハナカラウカ、又適當ニ組織サレ
ルモノデハナイカト考ヘテ居リマス、
御意見ノコトハ十分ニ承ツテ、唯其ノ形
ヲ如何ニスルカト云フコトニ付テハ、今
附屬學校ノ御話モアリマシタガ、更ニ師範
學校ニ於ケル〓育ノ方面ニ付テモ斯樣ナ點
ヲ十分加味シテ、〓員ソレ自體ガサウ云フ
ヤウニ向クコトニ、將來一層ヤル必要ガア
リハシナイカト考ヘテ居リマス、唯一步誤
リマスト、〓育ト云フモノガ基礎〓育ト實
際〓育、詰リ社會〓育トノ間ニ餘リ混線ヲ
致スト、基礎〓育ニ非常ニ動搖ヲ來スト云
フコトモアリマスカラ、是ハ〓育ト云フ高
イ觀點カラ十分ニ考慮致シマシテ、基礎〓
育ハ何處マデモ基礎〓育トシテ考ヘテ、社
會〓育ヲ混ゼテ、今御述ニナツタヤウナコ
トヲ何等カノ形ニ於テヤリタイト思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=7
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008・長野長廣
○長野(長)委員 洵ニ至レリ盡セリノ御抱
負ヲ拜聽致シマシテ、洵ニ私ハ力强ク思ヒ
やく、何卒將來此ノ點ニ付テハ時節柄特別
ナル御配慮ヲ加ヘラレマシテ、萬全ヲ期ス
ルヤウニ御努力ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ今一ツハ、從來官立學校ノ建設
ト云フ場合ニ於キマシテハ地方的ニ誘致
運動ト稱シテ相當ノ競爭ガ行ハレル、然ル
ニ其ノ競爭ノ結果ハ勢ノ趨ク所、或ハ其ノ
運動ノ方法トカ、或ハ地方寄附金ノ多寡ト
カ云フヤウナコトニ依ツテ左右セラレタト
認メラレル場合ガ、相當ニ多カツタヤウデ
アリマス、隨ヒマシテ此頃ニ於キマシテモ
又左樣ナ傾向ガ出ハシナイカト云フコト
ヲ、國民一般ニ懸念ヲ致シテ居ルノデアリ
アント、幸ニ極メテ地方的ニ故ラニ行掛リ等
ノナイ荒木大臣ヲ迎ヘタ時デゴザイマスカ
ラ、勿論從來モ實際ニハヨモヤ左樣ナコト
ハナカツタト思ヒマスケレドモ、此ノ際〓
育ノ大見地ヨリ致シマシテ、從來國民カラ
彼此レト遺憾ニ思ハレマシタヤウナ事ノ起
ラナイヤウニ、理想的ナ御見地カラ今後建
設サルベキ官立學校ノ建設ヲシテ、後昆ニ
範ヲ御垂レヲ願ヒタイト云フノガ私ノ切望
スル所デアリマス、洵ニ失禮ナコトデ說明
ガマシクナツテ如何トモ思ヒマスケレド
モ、感ズル所ヲ申述ベテ見マスルト、其ノ
學校ノ建設ノ場所ハ、寄附金ノ多寡ト云フ
コトヨリハ、多少施設ハ貧弱デアリマシテ
モ、眞ニ其ノ〓育ニ適切ナル環境ヲ持ツテ
居ルト云フコトヲ十分ニ考ヘナケレバナラ
ヌト思ヒマス、例ヘバ彼ノ北海道帝國大學
ノ前身札幌農學校ガ、農學校デアリナガラ
自然科學以外ノ或ハ宗〓界或ハ政治界其ノ
他各方面ニ偉材ヲ出シマシテ、明治昭和ニ
掛ケテ又今日尙ホ國家ノ中心人物、特ニ學
界ノ中心人物ヲ輩出セシメテ居ルト云フコ
トニ考ヘテ見マシテモ、靑年學徒ノ精神ヲ
緊張セシメ、其ノ熱ヲ加ヘマスル意味カラ
致シマシテ、環境ガドレダケ影響スルカト
云フコトハ、之ニ依ツテモ想像スルコトガ出
來ルト思ヒマス、必ズシモ賢哲ノ出タ地方
云々ト云フコトデハアリマセヌ、ソレ〓〓
專門〓育ナリ、或ハ大學〓育ナリ、其ノ學
校ノ種類ニ應ジマシテ、先ヅ其ノ地方ノ環
境ト云フコトヲ十分ニ考ヘテ、サウシテ只
今申上ゲマシクヤウナ意味ニ於テ、十分之
ニ相應ジタ土地柄ヲ選ブト云フコトガ必要
デハナイカト考ヘルノデアリマス、又特ニ
實業方面ノ學校ニ於キマシテハ、彼ノ大開
拓ヲナサナケレバナラヌ北海道ニ農科大學
ノ大發展ヲシタト同ジヤウニ、ヤハリ工業資
源ノ多寡トカ、或ハ工業原動力タル動力ノ供
給トカ、或ハ又生產物ノ販路トカ、貿易其ノ
他ノ關係トカ、交通ノ便否トカ云フヤウナ方
面ニマデモ考慮ヲセラレマシテ、十分ナル
專門的〓究ノ活キルヤウナ場所、靑年ノ意
氣ヲ鼓舞スルヤウナ場所ヲ選擇スルコトガ
非常ニ必要デハナイカト思フノデアリマス、
最近專門學校ノ新設サレルニ當リマシテ、
相當深刻ナル競爭ガ又面白クナイ形ニ於
テ現ハレントスルカノ如ク聞クノデアリマ
ス、是ハ我國〓育ノ健全ナル發達ト云フ、
大キイ意味ダケデナク、我國ノ產業ノ振興、
斯ウ云フ意味カラ考ヘマシテモ、工業專門
〓育ナドニ付テハ、決シテ過去ノ如ク寄附金
ノ多寡ニ依ツテ場所ヲ選ブト云フヤウナ事
ノナイヤウニシナケレバナラヌト考ヘルノ
デアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ、勿論
大臣ニ於カレマシテハ十分御考慮トハ思ヒ
マスケレドモ、併シナガラ從來賢明ナル大
臣皆之ニ當ラレテ、動モスルト今日カラ考
ヘテ多少遺憾ナ點モアソタカノ如クニ考ヘ
ラレル場合モアリマスノデ、此ノ際ニ於キ
マシテ一應大臣ノ御所見ヲ御伺シタイト考
ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=8
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009・荒木貞夫
○荒木國務大臣 官立學校ノ位置選定ニ關
シテ、寄附金ノ多寡ニ依ツテ選定スルコト
ハ好マシイコトデハナイト云フノヲ主點ト
テ、其ノ環境其ノ目的ニ關シテ御話ガアリ
マシタ、札幌農學校ノコトニ付キマシテハ
全然御同感デ、恐ラク明治以後ニ於ケル一
ツノ學校トシテ最モ異彩ヲ放ツタ、-シノ
魂ヲ持ツテ居ツタ學校トシマシテ札幌農學
校ヲ推スコトハ、又私共今日ニ至ルマデ其
ノ精神ヲ其ノ後身ノ現在大學ニモ遺シテ居
ルト云フコトヲ感知スルコトハ、全ク御同感
デアリマス、是ハ環境モ然ラシメタデアリマ
セウ、又當時ノ國民ノ一般ノ氣魄モ然ラシ
メタデアリマセウ、又當時外國人デハアリ
マシタケレドモ、彼校ニ身ヲ挺シテ來タ〓
育者ノ眞ニ打込ンダ其ノ精神ガ醇化セラレ
テ、日本人ノ精神ニ觸レテ、玆ニ新ナル一
ツノ意氣、氣魄トシテ新興日本ノ上ニ役立
ツタコトモ、私共豫々敬服ヲ致シテ、又當
時ノ〓育ニ携ハツタ人ニ對シテ感謝シテ居
ル一人デアリマス、私ハ學校ニハ何モ關係
ハアリマセヌケレドモ、サウ云フコトヲ絕
エズ學校ノ出身者ニ依ツテ感知致シテ居ル
ノデアリマス、學校〓育ガ斯ノ如クニナル
ト云フコトニ付キマシテハ、大イニ考慮ス
ベキコトデアツテ、十分是等ノ點ハ考ヘテ
參リタイト思ヒマス、故ニ〓育ニ付テ四圍
ノ環境ガ宜シクナケレバナラヌト云フコト
モ、此ノ意味カラ全然御同感デアリマス、
又第二ノ、先般來大分御話モアリマシタヤ
ウニ、適當ニ學校ヲ分散ヲシテ、地方ニ於
ケル發達ヲ助長スルト云フコトモ考ヘテ居
リマス、斯ウ考ヘマスルト、他ニ不便ガ多
少アツテモ、左樣ナ點モ十分ニ加味シテ行
カナケレバナラヌト云フコトガ、一ツノ考
トシテ必要ナコトデハナイカ、其ノ他目的
ニ從ツテハ〓育資材ヲ得ルニ、或ハ〓員ヲ
選擇ヲスルノニ都合ノ好イト云フヤウナコ
トモ考ヘテ行カナケレバナラヌ、卽チ〓育
ノ便宜ノ方面カラモ考へテ行カナケレバナ
ラヌト思ヒマス、數へ來リマスレバ、細カ
ニ述ベマスルト尙ホ玆ニ幾多ノ要素ガ入ツ
テ來ルノデアリマス、是等ヲ其ノ目的、時
代ノ要求、過去ノ經驗等ヲ參酌致シマシテ、
適當ニ配劑シテ決定ヲスベキモノト考ヘテ
居リマス、而シテ寄附金ノ問題ニ付テハ、
是ハ御說ノ通リ、寄附金ノ多寡ヲ以テ位置
ヲ選定スルト云フコトハ好マシイコトデモ
ナク、又考フベコトデモナイト存ジマス、
唯色々ナ要望ダノ、急ニ之ヲ造ルト云フコ
トノ關係カラ、ドウモ財政關係デ出來ナイ
ト云フヤウナ場合ニ、地方ニ於テ是等ニ對
シテ是非トモヤルト云フヤウナ場合ガアレ
バ、同ジ條件デ總テノ要素ガ同ジダトスル
ナラバ、自ラ實施ヲ急グト云フヤウナ場合
三ハ、左樣ナ點モ或ル程度マデ純眞ナ意味
ニ於テ考ヘル場合ガアラウト存ジマスガ、
原則トシマシテ、只今御述ニナリマシタヤ
ウナ寄附金ノ多寡ニ依ルト云フコトハ、考
ヘタクモナイ、又考ヘテハナラヌコトト存
ズル次第デアリマス、以上ノヤウナコトヲ
十分考究ノ資料トシテ決定ヲ致シタイ、斯
ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=9
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010・長野長廣
○長野(長)委員 〓育行政官ノコトニ付キ
マシテ、先般相當ノ時間ヲ費シテ御高見ヲ
伺ツタノデアリマス、私ハ最後ニ此ノ〓育
行政ノ衝ニ當ルベキ行政官ニ關スルコトニ
付キマシテ、結論的ニ、多少前ト重複スル
點モアルカト思ヒマスルケレドモ、重要ナ
コトデゴザイマスルカラ大臣ノ御高見ヲ承
ツテ置キタイト思ヒマス、〓育行政ノ衝ニ
當ルベキ學務部長、學務課長、視學官、新
ニ設置セラルベキ靑年〓育官等ニ至ルマデ
全部内務大臣ノ任命ニ係ツテ居ルコトハ、
自ラ文部大臣ノ威令ヲ輕ンズルコトトテル
ノデアリマス、又學務部長、學務課長ハ生
涯ヲ〓育ニ投ズル人デハアリマセヌデ、軈テ
ハ知事ニモ進ンデ行クベキ極メテ短カイ期
間地方々々デ一ツノ過程ニ於テ學務行政ヲ
執ツテ居ルノデゴザイマス、隨ヒマシテ其
ノ携リマスル所ノ事務ノ上ニ熱意ヲ缺クコ
トハ已ムヲ得ナイ人情ノ歸趨デアラウト思
ハレルノデアリマス、以上ノ二ツノ缺
陷ヲ根本的ニ補ヒマシテ、サウシテ熱意ア
ル十分ナル〓育行政ヲ行ハシムル爲ニハ、
是等ノ官吏ノ任命權ヲ文部大臣ニ握ラシメ
ルコトガ最モ必要デハナイカト思フノデア
リマス、蓋シ是ハ〓育界ノ輿論デアルト思
フノデアリマス、文部大臣ハ是等ノ問題ノ
解決ヲ一日モ早ク實現サレルヤウニ御努力
サレル御意思ハアリマスマイカ、之ヲ承リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=10
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011・荒木貞夫
○荒木國務大臣 一般行政トノ關係モアル
ノデアリマスカラ、學務ニ關スル諸事項ニ
對シテ十分ニ文部省ノ意見、文部省ノ威令
ノ屆クヤウニスルコトニ付テハ只今色々
考慮ヲ致シテ居ルノデアリマス、又內務省
關係ニ於テモ、或ル程度ノ利害モアリ、人
事ノ交流ニ對シテモ旣ニ議ガ起ツテ居ル譯
デアリマス、一地方行政廳トシテノ縣政ニ
對シテ如何ニ爲スベキカハ、今少シク-
是等ノ關係各省トノ關係モアルト思ヒマス、
例ヘバ經濟部長ニナルト商工省ノ關係ガア
リ、或ハ農林省ニ關係ガアルトカ云フヤウ
ナコトガアリマスノデ、ソレヲ全部サウ云
フ風ニスルト云フコトニナレバ、又他ノ方
ノ支障モ起リハスマイカ、目下是等ニ付テ
ハ十分〓究ヲ致シテ、何レニ致シマシテモ、
地方長官ガ、國ノ反映トシテ、內閣ノ反映
トシテ、其處ニ厚薄ノナイヤウニスル考ヲ
以テ地方行政ヲ行フコトニ付テ決定ヲスル
コトガ必要デアル、之ヲ如何ニ組織化シ、
如何ニ地方行政ノ上ニ及ボシテ行クカト云
フコトニ付テハ、尙ホ十分ニ〓究ヲ致シテ
見タイト思ヒマス、直チニ之ヲ如何ニスベ
キカト云フ具體案ヲ申上ゲルマデニハマ
ダ到達シテ居リマセヌ、御諒承願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=11
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012・長野長廣
○長野(長)委員 本委員會當初ヨリ洵ニ多
數ノ事項ニ付キマシテ、多クノ時間ヲ戴キマ
シテ色々ト御伺シマシタガ、終始御熱誠ニ
御說明ヲ戴キマシテ、又御意見ヲ拜聽スル
コトガ出來マシテ、衷心ヨリ此ノ點感激ヲ
致シテ居ル次第デアリマス、私ハ最後ニ私
ノ希望トシテ御聽屆ヲ願ツテ置キタイト思
ヒマスルコトハ、過去ニ於テ文部行政ハ他
ノ方面ノ行政ニ比ベマシテ、非常ニ置キ去
リニセラレタ沈滯シタカノ如キ感ヲ國民ニ
與ヘテ居ツタノデアリマス、大臣ハ一身ヲ
賭セラルルノ御態度ヲ以テ著々是ガ革新ニ、
又再建設ニ邁進ヲセラレテ居ルコトハ、私
共非常ニ愉快デアツテ國民ト共ニ喜ビトス
ル所デアリマス、然ルニ此ノ上我ガ〓育ヲ
再建設スルト云フコトニ付キマシテハ、ド
ウシテモ文部省ノ所謂日本ノ文〓行政機構
ノ上ニ根本的ナ改革ヲ加ヘナケレバ、到底
出來ナイト思ヒマス、是ハモウ私ガ申上ゲ
ルマデモナイ、文部省ニ居ラルル方ハ皆御
痛感ナサレテ居ルコトト思ヒマス、就キマ
シテハ、從來彼ノ〓育審議會其ノ他ノ方法
ニ依ツテ〓究セラレテ居ルコトガ、甚ダ長
年月ヲ要シテ實現ヲシナイ、又將來何時出
來ルカ亡羊ノ歎ヲ致シテ居ル、〓育及ビ〓
育行政機構ノ改革ト申シマシテモ、何時出
來ルカ分ラナイト云フコトデハ是ハ致シ方
ガナイト思ヒマス、今ヤ長期建設ニ卽應ス
ベキ此ノ思想國防ノ點ニ付テモ、寸刻モ吾々
ハ猶豫スルコトノ出來ナイ事ト思フ、殊
ニ思想的傾向ハ、私ノ眺メル所デハ、洵
表面カラ見ルト何デモナイヤウニ見エマス
ケレドモ、中々深刻ニ、種々ノ形ニ於テ根
深ク國民精神ヲ蝕ミツツアルコトガナイト
ハ言ヘナイ、殊ニ戰時及ビ戰後ノ狀態ヲ今
カラ想像シマスト、ドウシテモ是ハ思ヒ切
ツタ〓育革新ヲシテ置カナケレバナラヌガ、
其ノ根本ハ何ト言ツテモ私ハ〓育機構ノ改
革デアルト思フ、一面ニ於テハ學校系統ノ
方面、他面ニ於テハ〓育行政ノ方面、又更
ニ進ンデハ〓育ノ內容方面、斯ウ行カナケ
レバナラヌト思ヒマスガ、就中私ハ〓育ニ
關スル一般機構、此ノ〓育行政及ビ學校方
面ノ機構ノ大改革ヲ要スルト思フ、其ノ中
デ〓育行政機構ノ改革ト云フコトガ急務デ
ハナイカト思フノデアリマス、ドウカ益〓御
自重御自愛セラレテ、サウシテ此ノ劃期的
〓育革新期ニ於ケル一大事業ヲ御敢行遊バ
サレンコトヲ切望致シマス、私ノ質問ヲ玆
ニ終ルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=12
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013・野村嘉六
○野村委員長 佐藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=13
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014・佐藤與一
○佐藤委員 私ノ大臣ニ對スル質疑ハモツ
ト早ク御願シタイノデアリマシタケレドモ、
過日私差支ノ爲メ委員會ヲ休ミマシテ、當
日ノ他ノ委員諸君ノ御質疑ハ速記錄ヲ讀マ
ネバ承知スルコトガ出來マセナカツタ爲ニ、
ソレヲ讀ム爲ニ今マデ質疑シナカツタノデ
アリマス、他ノ委員諸君カラハ極メテ適切
ナル多クノ質疑ガ試ミラレタノデアリマシ
テ、之ニ對シテ大臣竝ニ政府委員、他ノ省
ノ大臣及ビ政府委員等ヨリモ、極メテ適切
ナル御答辯ガアツタノデアリマシテ、私ガ
質疑ヲ致サウト思ツテ居リマシタコトハ大
體盡キテ居ルノデアリマスケレドモ、尙ホ
私ハ色々御伺センケレバナラヌコトガアル
ノデアリマス、若シモ私ノ質疑致シマスル
コトノ中ニ、他ノ委員諸君ノ御質疑ト、旣
ニ大臣其ノ他ノ應答ガアリマシテ、重複ス
ルヤウナ點ガアリマシタナラバ、御遠慮ナ
ク委員長及ビ大臣、政府委員等ヨリモ、ソ
レハ重複シテ居ルノデアル、モウ斯ウ云フ
コトハ濟ンデ居ルト云フヤウニ御注意下サ
イマシテ、私ノ發言中デモ宜シウゴザイマ
スカラ御注意ノ上、餘リ時間ガ掛ラナイヤ
ウニシテ戴キタイト云フコトヲ豫メ御願シ
テ置キマス
第一ニ大臣ニ御伺シタイコトハ、去ル
二十五日ニ私ハ內閣總理大臣ニ對シテ數
項ノ質疑ヲシタノデアリマス、其ノ事柄
ハ、大體我ガ國體ノ本義ニ關スル事項デ
アリマシテ、文部大臣ニモ是非御聽キヲ
願ヒ、又御意見モ拜聽センケレバナラヌ
ノデアリマシタガ、文部大臣ハ初メノ內
ハ此處ニ御著席デアリマシタケレドモ、直
グニ御用事ガ他ニ御アリノモノ不見エマシ
テ御退席ニナリマシタノデ、全部大臣ノオ
耳ニ入レルコトノ出來ナカツタノハ甚ダ遺
憾デアリマス、或ハ其ノ當時ノ速記錄ニ依
ツテ大臣ハ御覽ニナツタカドウカ知レナイ
ノデアリマスガ、若シ速記錄ヲ御覽ニナツ
テ居ルナラバ、又ハ他ノ屬僚カラ其ノ大要
ヲ御聽キニナツテ居ルナラバ、私ハ重ネテ
玆ニ申述ベルノ煩ヲ省キタイト思フノデア
リマスガ、先ヅ第一ニ私ハ總理大臣ニ對シ
マシテ、文部省ガ他ノ各省ニ比シマシテ文
〓ノ府デアリマスカラ、文部省竝ニ文部大
臣ト云フモノガ政府部內ニ於テ特異ノ地位
ニ在ルト云フコトヲ申述ベタノデアリマス
ガ、此ノ點ニ付テハ大臣モ總理大臣モ御同
意ノヤウニ見エタノデアリマス、文部省ノ
掌ツテ居ル所ノ〓育ガ國家ノ爲ニ極メテ重
要ノモノデアルカラ、學校等ニ關スルモノ
ハ勅令ヲ以テセズシテ、法律ヲ以テ定メテ
戴キタイト云フヤウナ意見ヲ申述べマシタ、
所ガ從來勅令ヲ以テ之ヲ定メルノガ例デア
ルカラ、將來モ其ノ通リニ致シタイト云フ
御意見デアリマシテ、私共ノ意見ト違フノ
デアリマス、此ノ點ハ既ニ他ノ委員諸君カ
ラ屢〓、文部大臣ニモ質疑致サレマシテ、文部
大臣ハ全然御反對デハナイケレドモ、相當
ノ時期ニ於テハ或ハ勅令ヲ以テセズシテ、
法律ヲ以テ定ムル時期ガ來ルカモ知レヌト
云フヤウナ御答辯デアツタト私記憶シテ居
リマスノデ、總理大臣ノ御意見ト少シ違ツ
テ居ルヤウデアリマス、其ノ他私ガ御伺シ
タコトハ、大體ニ於テ總理大臣ハ全部御同
意下サツタノデアリマス、卽チ我ガ肇國ノ
大精神、我國ノ大理想、大使命ト云フモノハ
何デアルカト云フヤウナコトハ、外國ニ對
シテハ遠慮センケレバナラヌ所ノ點モアル
ケレドモ、武力ヲ以テ外國ヲ征服スルノデ
ナク、天皇陛下ノ御稜威ヲ世界ニ推弘メ
ルト云フコトガ我國ノ大理想、大使命デア
ル、國民ハ皆其ノ道ニ向ツテイソシマナケ
レバナラヌ、是ガ卽チ萬民輔翼ノ大道デア
ルト云フコトヲ總理大臣モ御述ニナツタノ
デアリマスガ、先ヅ此ノ點ニ付テ文部大臣
ハ餘程深イ信念ヲ御持チデアルト私ハ信ジ
テ居リマスカラ、大臣ノ御意見ヲ伺ヒマシ
テ、其ノ次ニ又私カラ御質問ヲ申上ゲ、又
ハ速記錄其ノ他ニ依リマシテ大臣ノ御意見
ヲ伺フコトニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=14
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015・荒木貞夫
○荒木國務大臣 過般佐藤君カラ總理大臣
ニ御尋ニナツタコトハ、梗〓ハ總理大臣カ
ラモ承リマシテ、又速記錄ニ依リマシテモ
大體要綱ハ拜見致シマシタ、總理ノ御答ニ
ナリマシタ點ニ付テハ御同感デアリマシテ、
重ネテ私ヨリ之ヲ申上ゲルコトハ、却テ當
時御答シタコトヲ混亂スルヤウナコトニナ
ツテハ恐縮デアリマスカラ、御尋ガアリマ
スレバ御答ヲ致シマスガ、大體總理大臣ノ
御答ニ依ツテ御諒承下サツタコトト考ヘマ
ス
今ノ〓育ニ關スルコトヲ法律ニスルカ勅
令ニスルカト云フコトニ付キマシテハ、可
ナリ論議モアツタノデアリマスガ、法律ニ
スルト云フヤウナ考ヲ持タレタコトモアル
ヤウデアリマス、過般慥カ長野君ノ御質疑
カト思ツテ居リマスガ、私ガ御答シタ時ニ
モ、必要トアレバ法律トスルト云フコトモ
決シテ否ムモノデモナイ、併シナガラ今日
ハ既ニ勅令トシテ運用上何等差支ナイノデ
アリマス、又サウ云フ風ニ今日マデ慣行モ
ナツテ居リマスノデ、今改メテ玆ニ法律ト
スベキ煩ヲ執ル必要モナイト存ジマス、只
今ノ所ハ從來ノ慣行通リデ行ク積リデアリ
マスシ、又ソレデ結構デアリマス、併シ茲
ニ動カスベカラザルモノガアルノデハナイ
カト云フコトニ付テハ、一般ノ〓育ニ關ス
ル總テノ事ノ推移ト共ニ、又十分ニ考ヘテ
モ然ルベキモノデハナカラウカト考ヘマシ
テ、過般御答シタヤウナ譯デアリマス、此
ノ點ハ總理大臣ガ御述ニナツタコトト、其ノ
意味ニ於テ同一デアリマスコトヲ御諒承願
ヒタイト存ジマス、以上只今ノ御質問ニ對
シテ取敢ズ御答ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=15
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016・佐藤與一
○佐藤委員 只今ノ大臣ノ御答辯ニ依リマ
スト、勅令問題ニ關シマシテモ、總理大臣
ト殆ド同ジ御意見デアリマス、其ノ他ノコ
トモ總理大臣ト同ジ御意見デアリマスレバ、
私ハ重ネテ文部大臣ヨリ御意見ヲ拜聽スル
コトハ-尙ホ詳細ニ拜聽シタイノデアリ
マスケレドモ、他ノ機會ニ讓リマシテ、今
ハソレニ付テ御答辯ヲ煩サナイコトニ致シ
マス、唯一點御伺申上ゲタイコトハ、文部
省ハ文〓ノ府デアリマシテ、文〓ニ關シマ
シテハ、ドウシテモ私ハ文部省ダケデオヤ
リヲ願ハナケレバナラヌト考ヘルノデアリ
やく、文〓ノ一元化ト云フコトニ付テ、長
野委員カラ御質疑ガアツタノデアリマスガ、
苟モ事文〓ニ關スルナラバ、國民ノ思想ノ
問題等ヲ初メトシテ、精神問題等ハ殘ラズ
文部省ノ所管ニシテ戴キタイノデアリマス、
神社ヲ崇敬スルト云フヤウナコト、各地方ニ
於ケル神社ノ管轄ト云フヤウナコトハ、內
務省ニ御委セニナツテモ宜イカモ知レマセ
ヌケレドモ、其ノ根本ノ問題デアル所ノ祭祀
ノ問題ト云フヤウナモノハ、文部省ヨリモ
尙ホソレヨリモ上ノ祭祀ニ關スル官廳ガ出
來レバ格別デアリマスケレドモ、ソレガ出
來ナイ以上ハ、私ハドウシテモ祭祀ノ如キ
コトハ文部省デヤツテ戴キタイト思フノデ
アリマス、又〓育ノ一部分デアル所ノ體育
ノ問題、勿論厚生省ガ出來マシテモ、保健
衞生等ハ厚生省ノ仕事デアツテ、〓育ノ中
ノ體育ハ文部省ガオヤリニナルノデアラウ
トハ考ヘマスガ、段々厚生省ノ方ヘ其ノ〓
育ノ方面ガ移ツテ行クノデハナイカト考ヘ
ラレル節モアルノデアリマシテ、〓育ノ行
政トノミ申シマセヌケレドモ、〓育ニ關ス
ル大切ナ根本ノ仕事ガ、文部省ヲ脫シテ他
省ヘ移ルノデハナイカ、現在ノ機構カラ申
シマシテモ、祭祀ノ如キハドウシテモ文部
省デオヤリヲ願ヒタイノニ、ソレト反對ノ傾
向ガアルノデハナイカト考ヘマス、-尙ホ現
在ニ於テ大切ナ問題ガ文部省ヲ離レツツア
ルノデハナイカ、文部省ハ全部ノ〓育ニ關係
シテ、文部省デヤツテ行クノデアルト云フ
ヤウナコトニ付テノ、大臣ノ御意見ヲ承リ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=16
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017・荒木貞夫
○荒木國務大臣 祭祀ノ問題ハ、我國ニ於
テハ殊ニ國民精神ノ根本ニ關スルコトデア
リマス、故ニ〓育ト祭祀ノ問題トハ離スコ
トガ出來ナイト思フノデアリマス、故ニ〓
育ニ於テ此ノ祭祀ニ對スル國民ノ根本精神
ヲ涵養スルト云フコトハ、最モ必要ナコト
ト存ジマス、唯祭祀ヲ取扱フト云フコトニ
關シテハ、嘗テハ神祇官ノ制度モ明治初年
ニアツテ其ノ運用ニ付テ色々考ヘサセラレ
ルコトガアツタノダラウト思ヒマス、當時
適切デナイ點モ見出サレタノデアリマスガ、
間モナク廢止セラレタヤウナコトガゴザイ
やっく、此ノ取扱ヲ如何ニスベキカト云フコ
トニ付テハ、餘程深ク考ヘル必要ガアラウ
ト思フノデアリマス、サウ云フ議論モヨク
承ルノデアリマス、是カラ先ノ神社ノ行政、
祭祀、〓育ト云フヤウナコトニ付テハ、文
部省デ全部サウ云フコトヲ如何ナル組織ニ
依ツテヤツテ行クカ、事ハ文〓ノミニ關係
セヌモノデアリマスカラ、機構ノ改正、行
政機關ノ變更ニ付テハ今少シク〓究シテ見
タイト存ジマス、其ノ點ニ付テハ只今御答
申上ゲ兼ネルノデアリマス、御趣旨ノ程ハ
能ク拜聽致シマシテ、能ク御意見ノ在ル所
ヲ基礎トシテ考ヘテ見タイト思ツテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=17
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018・佐藤與一
○佐藤委員 祭祀ノ問題ニ付テハ御意見ヲ
拜聽致シマシテ、有難ク諒承致シマシタ、
國民體育ノ問題ハ是非文部省カラ脫出シナ
イヤウニシテ戴キタイノデアリマスガ、之
ニ付テノ大臣ノ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=18
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019・荒木貞夫
○荒木國務大臣 只今御答ヲ落シテ甚ダ失
禮致シマシタガ、體育關係モ、只今ノ所學
校關係ニ於ケル體育ハ文部省デ主管ヲ致シ
テ居リマス、靑年學校ガ完成致シマスレバ、
ソレ等ノコトハ悉ク文部省ニ於ケル管轄ト
シテ體育ノ振興ヲ圖リタイト存ジマス、ソ
レ以外ノ體育問題ハ、御承知ノ通リニ厚生
省ニ移ツテ居ルノデアリマス、例ヘバオ〓
リンピック」ノ問題ノ如キ、此ノ邊ハ又厚
生省ガ創設セラレマシテ、ココニ色々ノコ
トガ移管シタノデ、其ノ間ノ區分又ハ限界
ト云フヤウナモノガ必ズシモマダハツキリ
シテ居ラヌ點ガアルノデアリマス、各種ノ
問題ニ付テ色々交涉モ重ネテ居リマスガ、
只今ノ御意見モ十分ニ考へマシテ、體育
ガ〓育カラ離レナイヤウニ-先般モ委員
會カデ御質疑ガアツタノデアリマスガ、健
全ナル身體ニ健全ナル精神ガ宿ルカ、健全ナ
ル精神ニ依ツテ健全ナル身體ガ出來ルカ、
斯ウ云フコトモ大イニ考ヘテ行クベキデア
ツテ、寧ロ私共ハ、健全ナル精神ガアツテ
初メテ健全ナル身體ノ養成ガ出來ルト云フ
見方ヲ以テ進ムノガ、體育向上ニハ宜イノ
デハナイカ、斯ウモ考ヘマスガ、ソレハ分
離ハ出來ナイコトト存ジマスノデ、左樣ナ
コトカラ考ヘマスト、〓育ノ上カラ體育ヲ
十分ニ振興スルト云フコトモ全ク重要ナ問
題デ、社會一般ノ體育ニ關シテモ此ノ精神
ヲ及ボシテ行キタイ、單ニ競技一點張リデ、
勝ツ負ケル、又ハ唯規定ノ儘ノ運動競技ヲ
ヤルト云フダケデハ、必ズシモ健全ナル體
質ガ出來ルトハ考ヘマセヌノデ、是ハ文部
省ガ主トシテ其ノ源泉ヲ成シテ居リマスカ
ラ、サウ云フ源ヲ十分ニ作ツテ行クコトニ
遺憾ナイヤウニ、將來努力致シタイト考へ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=19
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020・佐藤與一
○佐藤委員 大臣ノ御抱負ヲ御伺致シマス
ト、厚生省ヲシテ國民體育ノ問題ヲ所管セ
シムルトモ、其ノ源泉ハ文部省ニアツテ、
精神ハ文部省ニ於テ司ル、精神問題ノ方ハ
文部省ニ於テヤリ、厚生省ヲシテ唯其ノ精
神ニ基イテ體育行政ヲヤラセルノデアルト
云フヤウニ仰セニナツタ、或ハソコマデ御
述ニナラナイカモ知レマセヌガ、大臣ノ御
意思ノ存スル所ハソコニアルト云フコトヲ
伺ツテ、洵ニ有難ク存ズルノデアリマス、
文部省ハ單ニ學校ノ爲ノ文部省デハナイノ
デアリマス、學校ノ〓育ヲ掌ル爲バカリデ
ハナイノデアリマシテ、國民ノ〓育ヲ掌ル
所ノ文部省デアル以上ハ、國民ノ體育ハド
ウシテモ文部省ガ之ヲ主管シナケレバナ
ラヌヤウニ考ヘルノデアリマスカラ、只今
大臣ノ御述ニナリマシタ御意思ニ依リマシ
テ、實際ノ仕事モ亦文部省カラオヤリ下サ
ルヤウニシテ戴キタイト思ヒマス、例ニ御
引キノ「オリンピック」大會ノ如キ、或ハ明
治神宮體育大會ノ如キモ、文部省ノ主催デ
オヤリニナルベキデアルト思フノデアリマ
スケレドモ、旣ニ機構ガ變リマシテ、其ノ
仕事ガ厚生省ニ移リマシタコトハ洵ニ遺憾
デアリマス、將來サウナルヤウニ希望スル
次第デアリマス、之ニ對シテハ別ニ御答辯
ガアリマスマイト思ヒマスカラ、希望ニ止
メテ置キマシテ、次ノ質疑ニ移リタイト思
ヒマス
次ニ國民精神總動員ノ問題デアリマス
ガ、此ノ問題ハ本會議ニ於テモ本會議、委
員會等ニ於テ屢〓、質疑應答ガ重ネラレ、又
之ニ關スル質問主意書モ提出サレテ居ルノ
デアリマス、併シナガラ是等ノ御意見ヲ
拜聽シ拜見致シマスト、私ハ國民精神總動
員デハナクテ、國民ノ精神總動員デアルヤ
ウニ感ゼラレルノデアリマス、國民精神ヲ
總動員スルノデナクテ、國民ガ其ノ精神ヲ
一ツニスルト云フ此ノ運動、之ヲ國民
精神總動員ト言ウテ居ラレルヤウデ
アリマス、私ハ勿論國民ガ心ヲ一ツニシテ、
所謂萬民輔翼ノ大道ト同ジニ、國民ガ心ヲ
協セテ時局ニ處サナケレバナラヌト云フコ
トハ勿論デアリマスケレドモ、此ノ國民精
神總動員ト云フモノハ、國民精神ヲ總動員
スルノデアル、國民ノ精神ヲ總動員スルノ
デハナイト考ヘルノデアリマスガ、本院ニ
於ケル所ノ質疑應答其ノ他ニ付テ見マスル
ト、ドウモサウデナイヤウニ見エマスノデ、
或ハ私ノ考ガ間違ツテ居ルノデハナイカト
モ思ハレマスカラ、大臣ノ御所見ヲ承リタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=20
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021・荒木貞夫
○荒木國務大臣 今御尋ノ名稱ニ付テハヨ
ク議論ガ出ルノデアリマシテ、國民ノ精神
總動員、國民精神ノ總動員、是ハ兩方同一
ナ意味デアルト私自身ハ解釋致シテ居ルノ
デアリマス、國民ノ精神總動員、國民精神
ノ中ニ一切ノ實踐運動モ入ツテ居ル、其ノ
點ガヨク分離シテ考ヘラレルコトガアリマ
スガ、只今佐藤委員ノ御述ニナリマシタコ
トモ同一デハナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、昭和十二年九月九日ノ
内閣告諭ノ中ニハ「凡ソ難局ヲ打開シ國運ノ
隆昌ヲ圖ルノ道ハ我ガ尊嚴ナル國體ニ基キ
盡忠報國ノ精神ヲ益〓振起シテ之ヲ國民日常
ノ業務生活ノ間ニ實踐スルニ在リ今般國民
精神ノ總動員ヲ實施スル所以モ亦此ニ存ス」
トアリマシテ、玆ニハ國民精神ノ總動員ト
斯ウアルノデアリマス、又別ニ是等ヲ分解
致シマシタ、總動員ノ實踐要綱ノ中ニハ、
國民精神ノ發揚、斯ウ云フ項目ヲ設ケマシ
テ、其ノ實踐項目トシテ社會風潮ノ一新、
銃後ノ後援ノ强化、非常時經濟政策へノ協
力或ハ資源ノ愛護ト云フヤウナコトヲ部分
的ニヤルノダ、斯ウ云フ風ニアリマス、或
ハ國民精神ダケデハイカヌデハナイカ、各
國ニモ國民精神ガアルノダト云フ御議論モ
ヨク出ルノデアリマスガ、精神作興ノ御勅
語ノ中ニ國民精神ノ作興ト云フコトヲ御示
シニナツテ居リマシテ、是ハ吾々日本臣民ノ
本分ヲ守ルベキ當然ノ精神デアル、斯ウ云フ
風ニ考ヘラレマスノデ、今ノ御解釋ニ依レ
バ、國民精神ヲ基礎トシテノ國民ノ精神總
動員デアル、卽チ精神總動員デアルガ、是
ハ實踐ヲ含ンデノ精神總動員、斯ウ云フ風
ニ私共今マデ考ヘテ、サウ云フ方向ニ進ム
ヤウニ督勵モ努力モ致シテ居ルヤウナ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=21
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022・佐藤與一
○佐藤委員 色々國民精神作興上爲サンケ
レバナラヌ仕事ガ澤山アリ、又此ノ國民精
神ニ基キマシテ時局ニ處セナケレバナラヌ、
例ヘバ銃後ノ後援デアルトカ、或ハ資源ノ
愛護デアルトカ、只今大臣ノ御述ニナリマ
シタヤウナ色々ノ仕事ハアリマスケレド
モ、其ノ本元ハ先刻御讀上ゲニナリマシタ
ヤウニ國民精神ノ作興、ソレヨリモ尙ホソ
コニ書イテアリマスヤウニ、我ガ國體ノ本
義ニ遵フト云フコトガ本元デアリマシテ、
ソレニ依ツテ時局ニ處シテ色々ノ仕事ヲ爲
サンケレバナラヌト云フコトニハ大臣モ御
同意ダト思フノデアリマスケレドモ、ドウモ
ソレガ疎カニセラレマシテ、國民精神總動員
運動ニ於テ、國民精神ヲ作興シ、國體觀念
ヲ明徴ニスル運動ガ行ハレナイコトハ、洵
ニ國家ノ爲ニ遺憾ニ存ズルノデアリマス、
若シ此ノ趣旨ニ從ツテ運動ヲヤラウト致シ
マスルナラバ、過日野村委員長ヨリ御質疑
ニナリマシタヤウニ日本ノ歷史ヲ尊重セン
ケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、此ノ
事ニ付テハ野村委員長ヨリ詳シク御質疑ガ
アリ、之ニ對シテ御答辯モアリマシタカラ
重ネテ私カラ申上ゲヨウトハ思ヒマセヌケ
レドモ、具體的ノ一ツノ事實ガ茲ニ存スル
ノデアリマシテ、之ヲ是非大臣ノ御耳ニ入
レテ御批判ヲ乞ヒタイノデアリマス、ソレ
ハ紀元ノ問題デアリマスガ、紀元何年ト云
フト西洋紀元ニ決マツテ居ルカノヤウニ世
間デ思ハレテ居ルコトハ洵ニ遺憾デアリマ
シテ、我ガ大日本帝國ト致シマシテハ、紀
元ト言ヘバ我ガ國ノ紀元デアルト云フヤウ
ニ解釋シタイノデアリマス、西洋ノ紀元ナ
ラバ西洋紀元、囘〓ノ紀元デアルナラバ
「マホメット」ノ囘〓紀元ト云フヤウニ申シ
マシテ、日本ノ紀元ハ唯紀元ト言ヘバ分ル
ヤウデナケレバナラヌト考ヘルノデアリ
マスケレドモ、野村委員長ノ申サレマシタ
ヤウニ、今マデハ勿論現在デモ西洋歷史ヲ
重ンジ日本歷史ヲ輕ンジテ來タ餘弊トシテ、
紀元ト云ヘバ西洋紀元デアルカノ如ク考ヘヲ
レル、例ヘバ紀元千九百九十九年ト言ヘバ西
洋歴史バカリヤツテ居ル學者ナドハ直グ西
洋紀元ニ考ヘルノデアリマス、是ハ極メテ遺憾
デアリマス、現在ニ於テ我國ニハ紀元ト云フ
代リニ皇紀ト云フ言葉ガ用ヒラレテ居リマ
スガ、此ノ皇紀ト云フ言葉ガ惡イトハ申シ
マセヌ、皇紀ト云フ名前ハ我國ニ相應シイ
名前デアリ、我國ノ大道ヲ皇道ト云フコト
ニモ異論ハアリマセヌケレドモ、是ハ歐羅
巴ニ於ケル帝國主義ガ、日本ニ言ハレテ居
ル帝國ト全ク同一デアルト云フヤウナ誤ツ
タ考カラ帝國ト稱スルノヲ忌ミマシテ、大
日本帝國ト云フ國號ガアルニ拘ラズ、帝國
ト申シマセヌデ、皇國ト言フ、サウ云フヤ
ウナ意見ニ出發致シマシテ、皇國ノ紀元デ
アルカラ皇紀ト云フヤウニ相成ツタト思ヒ
やく、皇紀ト言フノガ强チ惡イトハ申シマ
セヌケレドモ、成ベク日本ノ國民デアル以
上ハ自分ノ國ノ紀元ヲ唯紀元何年ト云フヤ
ウニシタイト考ヘルノデアリマス、幸ニ我
國ニ於キマシテハ紀元二千六百年ノ記念事
業デアルトカ、或ハ祝典ト云フヤウナモノ
ニ紀元ト稱シテ居リマス、又新潟縣ニ於キ
マシテモ皇紀二千六百年ノ記念事業ヲヤル
コトニナツテ居ツテ審議ヲ重ネテ居リマシ
タ最中ニ、ヤハリ紀元ト言フ方ガ皇紀ト言
フヨリモ宜シイト云フヤウナ當路者ノ御考
デ、今マデハ皇紀ト稱シテ來マシタケレド
モ、今後ハ之ヲ改メテ紀元二千六百年記念
事業ト言フコトニシヨウト云フコトニナツ
テ居ルヤウデアリマス、ソレデ國體觀念ヲ
明徵ニシ、國民精神ヲ作興スルニハドウシ
テモ我ガ國史ヲ十分ニ國民ノ間ニ徹底セシ
メンケレバナラヌ、學校ニ於テモ能ク〓へ
ンケレバナラヌノニ、斯ウ云フ一ツ、ノ事例
ヲ擧ゲテモ洵ニ遺憾ナコトガアルノデアリ
マス、此ノ歷史ヲ尊重スルコトニ對シテノ
御答辯ハ過日伺ヒマシタカラ、重ネテ御伺
ハシナイノデアリマスガ、若シ何カ之ニ對
スル御意見、御感想ガアリマシタナラバ、
拜聽シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=22
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023・荒木貞夫
○荒木國務大臣 歴史尊重ヨリ出發シタル
紀元ノ名稱ニ關スル御質問ト存ジス、御承
知ノヤウニ我國デハ御代々々ニ應ジテ年號
ヲ色々吉凶等ニ依ツテ定メラレテ、其ノ御
代ニ於ケル問題ヲ表示サレテ居リマシタ爲
ニ、紀元年號ヲ用ヒルコトガ甚ダ乏シカツ
タノデアリマス、斯樣ナ事例カラ紀元ト云
フト、西曆ヲ想ヒ出スヤウナ意思ガ知ラズ
識ラズノ間ニ湧イテ居ツタノデアリマスガ、
御話ノ通リニ最近ハ我國デモ紀元ヲ用フ
ル者ガ多クナリマシテ、我國ト外國トノ間
ニ非常ナ混雜ヲ生ジマスノデ、之ニ付テモ
學者ノ間ニハ色々ナ意見ガ澤山アルノデア
リマス、例ヘバ漢字ヲ用ヒマスルコトヲ以
テ、ソレハ支那ノ字デアルカライケナイト
云フヤウナコトスラアルノデアリマス、而
シテ公ニ於テハ旣ニ紀元何年ト御用ヒニナ
ツテ居リマス、又公ノ文書等ニハ紀元一一千
六百年ト云フ風ニ用ヒラレタイト思ヒマス、
ソレカラ大日本帝國ト云フコトハ憲法デモ
御示シニナツテ居ルノデアリマスガ、是ス
ラ、先般モ速記錄ヲ拜見シマスト、其ノ點
ニ付テノ御尋モアツタヤウデアリマシテ、
總理大臣ノ御答ガアツタト存ジマスガ、我
國ニ於テハ皇國ト云フ文字ヲ古カラ「スメ
ラミクニ」トシテ用ヒラレテ居リマスガ、
皇國ソレ自體モ亦支那ノ文字ダト云ヘバソ
レダケニナツテシマヒマシテ、是モ「スメ
ラミクニ」ト書カナケレバナラヌコトニナ
リマスガ、其ノ邊ノ解釋ニ付テハ私ハ非常
ニ大キク拘泥ラズニ考へテ行キタイト云フ
感ジヲ持ツテ居リマス、固ヨリ公ノ場合ニ
於テハ定メラレタモノヲ以テシナケレバナ
リマセヌガ、公ノ場合以外ニハ其ノ意味ガ
ハツキリト國體ナリ日本ナリヲ現ハスナラ
バ、色々ノ文字ガ豐富ニ使ハレル方ガ吾々
國民トシテ好イノデハアルマイカ、例ヘバ
我國ヲ「秋津島」ト申シマシテモ、「大八洲」
ト申シマシテモ、「日ノ本」ト申シマシテモ、
「日本」ト申シマシテモ、「大和」ト申シマシ
テモ、何レモ異存ガナイノデアリマス、唯
外國ニ對シテ「大和」デハ通ラヌ、「秋津島」
デハ通ラヌト云フナラバ、何ヲ用ヒルカト云フ
コトヲ國デ決定シテ置ケバ宜イノデアリマシテ、
若シ今マデ用ヒラレタ所ノ「ジャパン」ト云
フコトガ甚ダ面白クナイト云フコトデアリ
マスレバ、外ノ言葉ニ變ヘル外ナカラウト
存ジマス、サウ云フ意味カラ皇紀ト云フ意味
ヲ神武天皇樣カラ出發シタト云フコトノ
意味ニ相ヒラレルコトモ、時ニハ却テ意味
ガハツキリ致シ、大日本皇國ト御書キニナ
リマスルコトモ却テ意味ガハツキリシテ來ル
ト云フヤウニ考ヘマスルガ、ヤハリ紀元二
千五百九十九年ト云フ風ニ御用ヒニナルコ
トガ必要ダト私ハ信ジテ居リマス、或ハ元
號ヲ用ヒズシテ昭和十四年ト云フ風ニ御代
ヲ表ハスコトモ表向キニハ却テ結構デハナ
イカト云フ風ニ實ハ考ヘマスガ、其ノ用フ
ル所ニ依ツテ幾多ノ變化ガアル、サウ
シテソレガ少シモ我國ノ國體ナリ、我
國ノ歷史ニ對シテ障碍ガナイノミナラズ、
ソレヲ明ニスルト云フ意味ニ於テハ寧ロ變
化ガアルヤウニシテ居ル方ガ宜イノデハナ
イカ、實ハ斯ウ云フ風ナ考ヲ持ツテ居ル次
第デアリマス、御說明申上ゲル言葉ガ足リ
ナカツタカト存ジマスルケレドモ、以上御
答申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=23
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024・佐藤與一
○佐藤委員 能ク分リマシタ、大臣ノ御意
見ト致シマシテハ、紀元ノ名稱ハヤハリ紀
元ト言フノガ正式ノ唱ヘ方デアリ、國號ヲ
大日本帝國ト言フノガ正式ノ唱ヘ方デアル、
唯場合ニ依リマシテ或ハ皇國ト稱シ、或ハ
皇紀ト稱スルコトモ强チ惡クナイ、是ハ國
語ノ問題ニモ關係ガアルノデアリマシテ、
國語ヲ豐富ナラシメル上ニ於テモ亦極メテ
宜イコトデアルト私モ考ヘテ居ルノデアリ
マスガ、正式ニ於テハサウデアルト云フ大
臣ノ御意見ヲ聽クノヲ以テ滿足スル次第デ
アリマス
尙ホ國民精神ヲ作興スルニハ、先刻圖書
局長カラモ御聽シタノデアリマスガ、ドウ
シテモ國語ヲ尊重シナケレバナラヌノデア
リマシテ、國語ノ進展スルコトハ其ノ國運
ノ發展ヲ象徵スルモノデアルトモ考ヘラレ
ルノデアリマスカラ、是非國語ヲ何處マデ
モ尊重シテ、舊來ノ言葉ヲ其ノ儘ニ保存ス
ルト云フ意味デハナイノデアリマスケレド
モ、採入レルベキモノハ外國語ト雖モ之ヲ
採入レ、其ノ代リ我ガ國語ヲ以テ言表ハス
コトガ出來ル所ニハ濫リニ外國語ナドヲ用
ヒナイ、又我ガ國語ヲ用フルニモ國語ノ用
方ニ從ツテ用フルヤウニスルコトハ、國家興
隆ノ爲ニモ、又私ガ今問題トシテ質問シテ
居リマスル國民精神總動員ノ運動トシテモ
此ノ國語ヲ尊重シ國語ヲ愛護スルト云フコ
トハ極メテ重要ノ問題デアルト思フノデア
リマスガ、之ニ對シテ大臣ハ如何ナル御所
見ヲ御持チデアリマスカ、御伺シタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=24
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025・荒木貞夫
○荒木國務大臣 豫算總會ニ於テ慥カ鶴見
君カラ國語ノ問題ニ付テ御尋ガアリマシタ
時ニ、一應ハ御答致シタノデアリマスガ、
國語ヲ尊重スベキハ當然ナコトデアリマシ
テ、假ニモ國語ヲ紊スト云フヤウナコト
ハ、一國ノ文化、精神ヲ攪亂スルモノデア
ルト私ハ深ク信ジマス、ヨク世間デハ國語
調査會ガ出來タカラトカ、又サウデナクテ
モ簡便法其ノ他色々ナコトニ依ツテ國語ヲ
一定スルト云フコトガ言ハレマスケレドモ、
古カラノ一國ノ興廢ノ歷史、一國ノ文化隆
替ノ歷史ヲ辿ツテ見マスト、國語ヲ無理ニ
一定スルコトハ、一國ノ思想ヲ攪亂シ、
國ノ文化モ攪亂スル、又第三國カラ、卽チ
他ノ國カラ併合セラレタ國ノ國語ヲ奪フト
云フコトモ、是ハ非常ニ考フベキ問題デハ
ナイカ、私過般モ申述ベタノデアリマスガ、
昔「ポーランド」ト「フインランド」ガ舊露西
亞ノ治權下ニ入ツテ居リマシタ、然ルニ「ポ
ーランド」ノ如キハ其ノ國語ノ語源語脈
ガ、露西亞語ト同ジクヤハリ「スラブ」語源デ
アツテ、唯文字ガ「ラテン」文字ヲ使フコト
ダケガ違ツテ居リマスガ、能ク似テ居ル
ノデアリマス、此ノ時ニ露西亞ガ「ポーラン
ごノ國語ヲ非常ニ壓迫シテ、ソレヲ用ヒ
サセナイヤウニシタ時ニ於テ、「ポーランド」
國民ハ初メテ起ツテ、我ガ文化ヲ護ル爲ニハ
一國ノ獨立ヲ圖ラザルベカラズト云フ聲ガ
起ツタコトヲ聞イテ居リマス、「フィンラン
ドㄴニ於テモ亦同ジヤウナコトガアツテ、
是ガ世界大戰後ニ「ポーランド」ガ獨立シ、
「フィンランド」ガ獨立スルニ至ツタ一ツノ
大キナ問題デハナカツタカ、斯ウ云フヤウ
ナコトヲ密ニ考ヘテ見マシテ、國語ハ其ノ
國其ノ民族ニ自然ニ發達シタ言葉デアリマ
スカラ、ソレヲ無理ニ色々ニ取扱フト云フ
コトハ、只今申述べタヤウニ、思想ノ問
題ニ付テモ、文化ノ問題ニ付テモ非常ニ大
キナ問題デアラウト存ジマス、斯樣ナ見地
カラシテ、自然ニ其處ニ參リマスルコトハ
別デアリマスガ、國語ノ基礎ハ何處マデモ
尊重シテ行クコトガ肝要デアルト私ハ深ク
信ズルノデアリマス、唯我ガ國民ノ如ク極
メテ物ヲ消化シ、物ヲ應用スルコトニ發達
シマシタ民族ハ、總テノ文化ヲ採入レテ然
ルベク之ヲ取捨選擇シ、之ヲ消化シ得ル能
力ヲ持ツテ居リマスルノデ、玆ニ其ノ發達
ヲ自然ノ儘ニスル考モ十分ニ加ヘルコトガ
必要デアリハシナイカ、是ガ文化進運ノ上
ニ非常ニ重要デハナイカ、斯ウ云フヤウナ
考ヲ持ツテ居リマス、私ハ國語ニ付テ今御
話ノ基礎ハ全然御同感デアツテ、深ク其ノ
點ニ付テ私ハ必要ヲ感ジテ居ル一人デアル
コトヲ申述ベテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=25
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026・佐藤與一
○佐藤委員 只今大臣ヨリ承リマスレバ、
大臣ハ國語ノ自然ノ發達ヲ成ベク阻碍セヌ
ヤウニセンケレバナラヌト云フ御說デアル
ニ拘ラズ、文部省ガ今マデ執リ來リマシタ
所ノ國語政策ト申シマスカ、從來ノ臨時國
語調査會、其ノ後ノ國語調査會等ノ處置ノ
一部ニ付テ見マスト、大臣ノ御意見ト相反
シテ居ルモノガアルヤウニ考ヘラレルノデ
アリマス、先刻圖書局長ニ御伺シマシテ、
其ノ進行ノ程度モ大略分ツタノデアリマス
ガ、勿論餘リ多クノ漢字ヲ小學校ノ兒童等
ニ詰込ムト云フコトハ弊害ガアルカモ知レ
マセヌガ、國語ノ正シキ文法ニ從ハナイ、
卽チ我國ノ文法ハ煩雜デアツテ之ヲ小學兒
童ニ〓授スルコトハ兒童ニ負擔ヲ多クスル
ノ弊ガアルト云フヤウナ點カラ、出來ルダ
ケ簡略ニスルコトヲ努メラレルト云フコト
ハ是ハ我國ノ國語ノ自然ノ發達ニ留意セ
ヌコト夥シイノデアリマシテ、其ノ後改メ
ラレタト云フコトデアリマスケレドモ、初
メノ時ナドハ明治ノ治ト云フ字ヲ「シ」ニ濁點
ヲ施シタ所ノ「ジ」トセンケレバナラヌ、「チ」ニ
濁點ヲ施シタ「ヂ」ト云フモノヲ全部「シ」ニ濁
點ヲ施シタ「ジ」ニセンケレバナラヌト云フヤ
ウナコトニサレマシテ、多分動詞ノ變化ナド
ハ現在デモヤハリサウ云フ流儀ニ依ツテヤ
ツテ居ラルルト思フノデアリマス、是ハ臨
時國語調査會若クハ國語審議會等ガサウ云
フヤウナコトヲ御決メニナツテ之ヲ答申ニ
ナツテモ、大臣サヘサウ云フシツカリシタ
御考デオアリデアレバ安泰デアリマスケレ
ドモ、若シモ他ノ西洋カブレノ大臣デモ文
部大臣トシテ御就任ノ際ニハ、忽チソレガ
採用セラレテ、〓科書等モソレニ依ランケ
レバナラヌコトニナルト云フ時ハ、私共國
家ノ將來ノ爲洵ニ深憂ニ堪ヘヌノデアリマ
ス、ソレデ圖書局長ニ再ビ御伺シタイノデア
リマスガ、文部省ノ國語審議會ニ於キマシ
テ、大臣ニ答申セラレマシタ所ノ假名遣ノ
改正案ハ如何ニナツテ居リマスカ、或ハ臨
時國語調査會ノアノ時ノ決定通リデアリマ
スカ、其ノ後改正セラレテ居リマスカ、若
シ改正セラレテ居ルトスレバ、如何ニ改正
セラレタカト云フコトヲ圖書局長ニ御伺致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=26
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027・野村嘉六
○野村委員長 一寸佐藤君ニ申上ゲマスガ、
ゅ
マダ大臣ニハ簡單ダサウデスケレドモ、長
野君モ一ノ瀨君モ大臣ニ對スル質問ガアリ
マスノデ、ソコデドウデセウカ、大臣ノ方
ノ質問ノ後ニ政府委員ノ圖書局長ニ質問シ
テ貰フト云フコトニシタラ便利ノヤウニ思
ヒマスガ、是ハ兩君ノ大臣ニ對スル質問ノ
後ニ保留シテ下サイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=27
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028・佐藤與一
○佐藤委員 諒承致シマシタ、ソレデハ只
今委員長ヨリ御述ニナリマシタ通リニ致シ
マシテ、只今私ガ申述ベマシタ圖書局長ニ
對スル質疑ハ後〓シニ致シマシテ、續イテ
大臣ニ御伺スルノデアリマス、國語ノ問題
ト同時ニ私ハ國號ノ問題ハ是ハ國民精神作
興上捨テ置ケヌ問題デアルト考ヘルノデア
リマシテ、其ノ點ニ付キマシテハ、樋貝政
府委員ヨリ後刻又詳細ニ御伺シタイト思フ
ノデアリマスケレドモ、過日モ此ノ問題ニ
付テ、大臣モ御承知デ居ラツシヤイマスヤ
ウニ、總理大臣ニ對シテ御伺致シマシタ所
ガ、御述ベノコトニ付テハ諒承致シマシタ、
考慮ヲ致シマスト云フヤウナ御答辯ガアツ
タノデアリマス、私之ヲ首相ニ申上ゲマシ
タノハ初メテデハナイノデ、嘗テ新潟へ御
出デノ時、私ハ之ヲ申述ベタノデアリマシ
テ、其ノ時ハ御諒承シテオ居デデアツタト
思ヒマスケレドモ、是ハ私的ノコトデアリ
マスカラ私何モ申上ゲマセヌノデアリマス
ガ、ドウシテモ吾々國民ハ吾々ノ愛スル所
ノ國ヲ呼ブニ、或ハ「ニツポン」ト言ヒ或ハ
「ニホン」ト言ヒ、又外國ニ於テハ「ジャパン」
「ジャポン」「ヤーパン」等ノ稱號ヲ用ヒ
ルノヲ其ノ儘ニシテ置クト云フコトハ、愛
國心ニ富ンデ居ル所ノ我ガ國民ノ首肯スル
コトノ出來ナイ問題デアリマシテ、一日モ
早ク是ガ統一セラルルコトヲ私ハ希望スル
者デアリマス、政府ニ於キマシテモ、後刻
樋貝政府委員ヨリ申述ベラルルト思ヒマス
ルガ、調査中デアルト云フコトデアリマス、
ソレハ元來「ニホン」ガ正シイノデアルカ、「ニ
ツポン」ガ正シイノデアルカト云フコトヲ
調査シテ居ラルルサウデアリマシテ、此ノ
調査ハオ門違ヒノ調査デアリマシテ「ニホ
ン」ガ正シイカ「ニツポン」ガ正シイカト云
フコトヲ私ニ御聽キ下サレバ、私ハ「ニツ
ポン」ガ正シクナク、「ニホン」ガ正シイト
云フヤウニ御答辯申上ゲルノハ、是ハ決ツ
タコトデアリマシテ、我國ノ國語ノ發達カ
ラ「ポ」ト云フヤウナ音ハ昔ナカツタノデア
リマシテ、昔ハ大和詞-先刻モ大和詞ノ問
題ハ大分大臣御述ニナリマシタヤウニ、能
ク御承知デアリマセウガ、或ハ敷島ノ大和
國デアルトカ、又ハ千五百秋ノ瑞穂國デアル
トカ云フヤウニ雅ヤカナ言葉ヲ以テ稱シ來
ツタノデアリマシテ、其後中世ニ於テハ「ニ
ホン」ト云フヤウニ呼ンデ來タノデアリマ
シテ、吾々ノ學校時代ニ於キマシテハ、又
「ニホン」ト云フヤウニ〓ヘラレタノデアリ
そう、斯ウ云フ歷史的ノコトヲ考ヘマスレ
バ、「ニホン」ト言フノガ正シイト云フヤウ
ナ議論ハ立ツノデアリマスケレドモ、其ノ
後外國ト交際致シマシテ、「ホ」ト云フヤウナ
音ハ外國人ハ之ヲ發音スルコトガ出來ナイ、
「エッチ」ト云フ字ハ「サイレント」デ響カヌノ
デアリマスカラ、「ニホン」ト言ツテモ「ニオ
ン」ト云フヤウニナツテ、ドウシテモ「ニツ
ポン」ト言ハナケレバナラヌト云フヤウナ
コト、其ノ他色々ノ理由デ「ニツポン」ト呼
ブヤウニナツタノデアリマシテ、其ノ「ニ
ツポン」ト呼ブヤウニセラレタ以上ハ-
昭和何年デアリマシタカ、第六十四議會ノ
豫算委員會ノ席上ニ於テ、私ハ當時ノ文部
大臣ニ御伺致シマシタ所ガ、小學校ニ於テ
ハ「ニツポン」ト〓ヘテ居ルト云フヤウナ御
答辯ガアツタノデアリマシテ、旣ニ小學校
ニ於テ「ニツポン」ト〓ヘテ居ラルレバ、國
民ハ間モナク近キ將來ニ於テ全部「ニツポ
ン」トナルデアラウト云フヤウニ私信ジテ
居リマシタケレドモ、其ノ後ノ情勢ヲ顧ミ
マスト、小學校ヲ出マシテモ、社會一般ガ
「ニホン〓〓」ト申シテ居リマスト、自然ニ
又ソレ等ノ小學校ヲ出タ人々モソレニ倣ツ
テ「ニホン」ト申スヤウニナル、偶ニハ「ニ
ツポン」ト言フ人モアル、「ニホン」「ニツポ
ン」兩樣ニ用ヒラレルト考ヘマシテ、其ノ
後私ハ其ノ次ノ第六十五議會ニモ質問申シ、
其ノ他屢、質問主意書及ビ建議案等ニ依ツ
テ政府ニ向ツテ是非國號ヲ一定シテ貰ヒタ
イト云フコトヲ申シテ居ルノデアリマス
ガ、政府ハ常ニ調査中デアルト云フコトニ
藉口シマシテ、中々容易ニ決定セラレナイ
ノデアリマス、旣ニ文部省ニ於テ小學兒童
ニ「ニツポン」ト稱ヘルヤウニ一定セラレ
テ居ル以上ハ、文部省ニ於テハ既ニ決ツテ
居ルヤウニ考ヘルノデアリマス、又前七十
三議會ニ於キマシテハ、池崎參與官ハ單ニ
小學生ノミナラズ、〓科書等ニ於テ、中學
校以上ニ於テモ「ニツポン」ト〓ヘルヤウ
ニシテ居ルト云フヤウニ言ツテ居リマス
ガ、又陸軍省ニ於テモ一定シテ居ル、卽チ
陸軍省ハ「ニツポン」ト統一スルコトニ
努メツツアリマスト建議委員會ニ於テ答辯
セラレタ所ニ依リマシテモ、陸軍省ニ於テ
ハ左樣ニ決定シテ居ルノデアリマシテ、陸
軍省ニ於テモ左樣ニ決定シ、文部省ニ於
テモ左樣ニ決定シテ居リマシテモ、其ノ省
內ニ於テ尙ホ「ニホン」ト言ハレル方ガアル
ト云フコトハ遺憾デアリマス、ケレドモソ
レハ致シ方ナイト致シマシテ、兎ニ角小學
兒童ガサウ云フヤウニ心得テ居ルニ拘ラズ、
ソガレ果シテ良イノデアルカ惡イノデアルカ
ト云フヤウナ危惧ヲ小學兒童ニ懷カシムル
ト云フコトハ、是ハ學校〓育ノ上ニ於テモ
由々シキ問題デアルト考ヘルノデアリマス
ガ文部大臣ハ此ノ點ニ付テ如何ニ御考デ
アリマスカ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=28
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029・荒木貞夫
○荒木國務大臣 總テ御一定ニナルト云フ
御意思カラ出タ今ノ御質疑ト存ジマスルガ
是ノ學術上ノ〓究又如何ニシテ「ニホン」ト
ナツタカ、「ニツポン」トナツタカ、ドウシ
テ此ノ日本ノ字ヲ用ヒタカ、斯樣ナコトヲ
探究シテ參リマスト、色々ナ說ニ分レルノ
デアリマス、我國ノ「ニホン」ト呼稱シタノ
ガ何時頃デアルカト云フコトモ一ツノ議題
ニナリマス、「ニホン」ト云フ字ヲ最初ニ用
ヒタノガ何時頃デアルカ、先程申上ゲマシ
タヤウニ、昔ハ日本ト書イテ「ヤマト」ト讀
マシタ場合モアリマス、又「ヒノモト」ヲ可
ナリ古クカラ用ヒラレテ居リマス、書物ト
シテハ日本書紀ナドガ「ニホン」ト云フ字ヲ
用ヒテ居ルノデアリマス、是ハ「ニホンシ
ヨキ」トズツト言ヒ慣ラサレテ居リマシテ、
日本書紀ハ「ニホンシヨキ」、大日本史ハ「ダ
イニホンシ」ト云フヤウニ既ニ呼稱セラレ
テ居リマス、又大和ノ枕言葉トシテ用ヒラ
レ、「ヒノモトノヤマト」、歌ニ「ヤマト」ト
出レバ必ズ「ヒノモト」ト枕言葉ヲ用ヒタ、
或ハ「飛鳥」ト書イテ「アスカ」ト讀ムト云フ
ヤウニ、學問的ニ言ヒマスト、何レヲ捉へ
ルベキカハ非常ニ專門的ナ問題ニ涉ルノデ
アリマス、ソレカラ「パピプペポ」ノ音ガ何
時頃カラ出タカ、是ハ德川ノ初期、元祿ノ
頃ト記憶致シテ居リマス、又詰ツタ音ガ何
時頃カラ出タカト云フヤウナコトモ、時代
ヲ考ヘテ見ルト、必ズシモ古イ時代デナイ
ト思ヒマス、ソレハ文字ニ現ハレタ場合デ
アツテ、發音ハ果シテドウ云フ風ニ用ヒタ
カト云フコトモ明瞭デナイノデアリマス、
「パピプペポ」ト云フ文字ガナカツタノデア
リマスルカラ、「パピプペポ」ヲ用ヒズシテ
「ニホン」ト書キマシテ、ソレヲ「ニツポン」
ト呼ンデ居ツタカモ知レヌト云フヤウナ說
モ亦無視スルコトハ出來ナイノデアリマス、
「ニツポン」ト斯ウ云フヤウナ文字ヲ「日本」
ニ當嵌メタノハズツト後代デアリマス、サ
ウ云フヤウナコトモ考ヘラレマス、之ヲ漢
字デ當嵌メマスルト、能ク支那人ガ發音致
シマスル所カラ、「ホン」ノ字ハ「ペン」デア
ルカラ「リーペン」ト云ツタヤウナコトニナ
〓、ソレガ訛ツテ「ジャパン」ニナツタノダ
ト斯ウモ唱ヘラレテ居リマス、ドレガ正シ
イカト云フコトニナリマスト、旣ニ日本書
紀、大日本史ハ「ニホン」デ用ヒラレテ居リマ
ス、斯樣ナ專門的ノ〓究ニ涉リマシテ之ヲ
論議致シマスルト、歸スル所ハ甚ダ困難デ
アリマス、隨テ今文部省ニ於テハ通常「ニ
ツポン」ト讀ムト云フコトニ旣ニ〓科書デ
一定致シマシテ、唯韻文デアルトカ特別ナ
固有名詞ニ當ツテハ「ニホン」トシテ、例へ
バ「ニホンシヨキ」トカ「ダイニホンシ」ト讀
マセテ居リマス、或ハ現在ヤツテ居リマス
歌ノ中ニハ、小學校ノ生徒ニ「ニホン」ト云
フ風ニ歌ハシテ居ルモノモアリマス、「日本
ノ旗ハ」ト云フノハ「ニツポンノハタハ」ト
言フト一寸語調ガ惡イノデ「ニホン」ト言ハ
セテ居リマス、斯樣ナコトヲ申述ベルト長
クナルコトデアリマスガ、兎ニ角左樣ナ
コトガ一定ヲスルノニ非常ニ難關ノアル
一ツデアルノデアリマス、併シ古イ外
國人ノ書キマシタ書物ニハ「ニツポン」ト
云フ文字ガ用ヒラレタ、大體「日本」ト云フ
字ガ出テ來マシタ以前ノ外國人ノ書キマシ
タ著書ノ中ニハ、日本ノコトヲ書クノニ「ニ
ツポン」ト書イテアツテ、「ニホン」ト書イ
テナイ、「ニツポン」、「ニツポン」ト書イテ
アル、サウシマスト、日本ト書イテ居ツテ
「ニツポン」ト讀マシタノデハナイカト云フ
ヤウナ疑モ起リマス、併シ何レニシテモ公
ニ我ガ國號トシテ外ニ向ツテ用ヒルコトニ
付テハ何等カ方法ヲ執ツテ「ニツポン」トス
ルナラ「ダイニツポン」-「ダイニツポン」
ト致シマスルカ「ニホン」ト致シマスルカニ
議論ガアルノダト思ヒマス、併シ國內ニ於
ケル稱呼ハ先程申上ゲマシタヤウニ中々
言葉ガ多ク、巧ミニ使ハルルコトデアリマ
スルカラ、餘リ之ヲ一定ヲシ、喧シクナリ
マスルト、ツヒ語呂ノ惡イコトモ起ツテ參
リマス、又語氣ノ關係カラ「ニホン」ト決メ
マシテモ、「ニツポン」ト言ツタ方ガ好イ場合
モアリマスシ、此ノ邊ハヤハリ文學上若ク
ハ國語上ノ問題トシマシテ、「ヤマト」ト申
シマシテモ、「ニホン」ト申シマシテモ、「ニ
ツポン」ト申シマシテモ、「ダイニツポン」
ト申シマシテモ、ソコハ餘リ銳クナイ方ガ
宜イノデハナイカ、唯國ヲ表ハス外國ニ對
スル問題トシマシテハ、ソレガ色々デアル
ト云フコトハ決シテ好マシキコトデナシ、
又左樣ニスベキコトデモナイト存ジマスル
ノデ、其ノ點ハ全ク御同感デアリマス、左
樣ナ見地ニ於テ今日尙ホ一般ニハサウ云フ
風ニ致シテ居リマスルケレドモ、之ヲ國ト
シテ如何ニスルカト云フコトニ付テハ尙ホ
考究ノ餘地ガアルノデハナイカ、斯ウ云フ
風ニ考ヘマスノデ、先般總理大臣ガ御考慮
ニナルト言ハレタコトモ、サウ云フ意味ヲ
申述ベラレタノデハナイカ、斯ウ私ハ存ジ
テ居リマス、此ノ點ニ付テハマダ承ツテ居
リマセヌガ、サウ云フ風ニ御述ニナツタト私
ハ信ジテ居ル次第デアリマス、以上御問ニ
對シテハ甚ダ茫漠ナコトデスケレドモ、
應申上ゲマシテ御諒承ヲシテ戴キマスナラ
バ、此ノ問題ニ關スル將來ノ決定採否ノ問
題ニ付テ參考ニナルノデハアルマイカ、吾
吾モ亦十分〓究モ致シテ見タイ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=29
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030・佐藤與一
○佐藤委員 只今ノ御答辯ニ對シマシテハ
私ハ承服スル能ハザルモノガアルノデアリ
さく、成程國語ノ發展ノ歷史カラ考ヘマス
レバ、昔ハ勿論「ニホンシヨキ」ト言ヒ「ダイ
ニホンシ」ト言ウテ來タカモ知レマセヌケ
レドモ、如何ニ左樣ニ申シテ來タト云ウテ
干、之ヲ「ニツポンシヨキ」「ダイニツポン
シ」ト言フコトガ出來ナイト云フコトハア
ルマイト思フノデアリマス、現ニ私共「ニ
ツポン」トハ〓ヘラレマセヌデ、「ニホン」
ト〓ヘラレテ來タノデアリマスケレドモ、
「ニツポン」ト稱スルコトガ出來ルノデアリ
やく、又歷史的デナシニ、學術的ニ考ヘマ
シテモ、「ニツポン」ト言フヨリモ「ニホン」
ト言フノガ宜イト云フコトハ、是ハ學究的
ニ考ヘマスレバ左樣デアルカモ知レヌノデ
アリマス、併シナガラ現在ノ我國ノ國情カ
ラ考ヘマシテ、國民全部ガ同ジヤウニ稱呼
スル必要ガナイト大臣ガ御感ジナラバ私ハ
何モ申上ゲマセヌ、併シナガラ〓育上、國
民精神ノ作興上、是非我國ノ國號ヲ同ジヤ
ウニ稱ヘンケレバナラヌト云フ確信ヲ御持
チデアルナラバ、今ノ御答辯ハ爲サラヌ筈
デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、或ハ
學究デアリ、或ハ一官吏デアルナラバ、只
今ノ御答辯ハ至極御尤デアルト私ハ承服致
シマス、併シナガラ大臣トシテ、特ニ文部
大臣トシテ、文部省ニ於テ既ニ一貫シタル
所ノ〓育方針ガ此ノ國號問題ニ付テアルニ
拘ラズ、只今ノ如キ御答辯ヲ爲サルコトハ、
或ハ樋貝政府委員ガ先刻耳打サレマシタカ
ラ、ソレニ幾ラカ御依リニナツタノデアル
カドウカハ知リマセヌ、甚ダ失禮ノ申分デ
アリマスケレドモ-今一遍御答辯ヲ煩ハ
シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=30
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031・荒木貞夫
○荒木國務大臣 今御述べニナリマシタ點
ハ、我國ガ悉ク「ニツポン」ト言ヒマスカ、「ダ
イニツポン」ト言ヒマスカ、御意見モ承ツテ
居リマセヌガ、一切ガ「ダイニツポンテイコ
ク」ト言ハナケレバイケナイト云フコトニナ
リマスト、言葉ノ綾、又昔カラノ言ヒ來リ
ニ對シマシテ、唯徒ニ混雜スルバカリデハ
ナイカト存ズルノデアリマス、例ヘバ大和
民族ト申シテハナラヌ、日本民族デアル、
斯ウ云フヤウナコトモ論議ノ一ツノ種ニナ
ルノデアリマス、大和民族ト申セバ外國ニ
分ラヌデモ、所謂日本民族ダ、日本民族ト
書イテ大和民族ト讀マシテ居ル、日本ヲ「ニ
ツポン」トモ讀マセ、日本トモ讀マセ、「ヤマ
ト」トモ讀マシテ居ル、日本魂ト書キマシテ
「ヤマト」魂トモ讀マセ、大和魂ト書イテ「ヤ
マト」魂ト讀マシテ居ルノデアリマスカラ、
此ノ邊ハ吾々國民ノ間ニ於テ其ノ言葉ノ關
係デ、却テ發音スルニ付テサウ言ツタ方ガ
能ク通ズル場合ガアル、前後ノ關係デサウ
云フ場合ニ於テハ必ズ「ニツポン」ト言ハナ
ケレバナラヌト云フコトニナリマスト、非
常ニ豐富ナ言葉使ヒヲ持ツテ居ル我ガ國民
ガ、始終ソコニ至ツテ吃ルコトガアルノデハ
アルマイカ、最近モ其ノ點ハ可ナリ喧シイ
問題ニナツテ居リマスガ、私ハ公ノ場合ニ
外國ニ向ツテ「ニツポン」ト書ク、又大「ニツポ
ン」帝國ト書ク、又發音スル場合ニ大「ニツ
ポン」帝國萬歲ト云フヤウナ、斯ウ云フ發音
ノ場合ニハ、大「ニツポン」ト國トシテ決定
サレマスコトハ大イニ必要ト存ジマスケレ
ドモ、唯ソレ以外ニ餘リソレヲ喧シク言ハ
スコトハ却テ如何ナモノデアルカ、然ラバ
ドレニ決定スルカト云フコトニナリマスト、
只今申上ゲマシタヤウナ學究ノ問題ガアリ
マスノデ、國語トシテ決定ヲ致シマスコト
ニ付テハ、是ハ何等カ考究ヲ要スルコトデ
アリ、旣ニ歷代內閣ニ於テ、可ナリ考究セ
ラレテ、旣ニ此ノ問題ニ付テ慥カ私ハ答申
モアリ建議モアツタト、曖昧デアリマスガ
過去ニ承知シテ居リマスケレドモ、ソレハ
結構デアリマス、唯餘リニ銳敏ニナリ過ギ
たた。其ノ點ハ困ルコトガ各方面ニアリハ
シナイカ、ソレガ困ラナイト云フコトニナ
リマスレバ決定シテモ宜イ、ソコガ考究ヲ
要スル問題デハナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘ
マスノデ只今御答シタ次第デアリマスカ
ラ、此ノ點御酌取リ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=31
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032・佐藤與一
○佐藤委員 只今ノ御言葉デ私能ク諒解致
シマシタ、大臣ノ申述ベラレマス或ハ大和魂デ
アルトカ、其ノ他ノ言葉ハ、是ハ正式ノ國
語デハナイノデアリマシテ、正式ノ國語ハ
外國ニ對シ、或ハ萬歲ヲ三唱スル時ニハ、
大「ニツポン」帝國ト呼ブ方ガ宜イト云フ大
臣ノ御意見デアルト云フコトヲ、今初メテ
御伺致シマシテ、私之ヲ能ク諒解シタノミ
ナラズ、洵ニ有難ク感謝ノ意ヲ表セザルヲ
得ナイノデアリマス、實ハ國號ノ稱呼統一
ノ問題ニ付テ私ノ建議案ノ最後ニモ最近
書イテアルコトハ、來ルベキ紀元二千六百
年ノ式典ニ於テ、我國ノ臣民竝ニ我國ノ國
體ヲ讃仰スル所ノ萬國ノ國民ガ聲ヲ揃ヘテ
大「ニツポン」帝國萬歲ト三唱シ得ルヤウニ
シテ戴キタイ、ソレマデニ是非サウナルヤ
ウニシテ貰ヒタイト云フコトヲ申述ベテ來
タノデアリマスガ、此ノ點ニ付テ大臣モ同
ジヤウナ御意見ヲ御述ベニナリマシタコト
ニ付テハ、私感謝ノ意ヲ表セザルヲ得ナイ
ノデアリマス、國語ノ問題ハ尙ホ樋貝政
府委員ガ控ヘテオ居デデアリマスカラ、ソ
レニ讓リマシテ次ニ移リタイト思ヒマス
國語國號ト共ニ私ハ國歌ヲ尊重スルト云
フコトガ極メテ大切ナコトデアルト考へ
ルノデアリマス、所謂若槻內閣ノ當時ナド、
アノ頃ハ御承知ノ通リ政黨意識ガ極メテ熾
烈デアリマシテ、黨勢ノ擴張ト云フコトガ
講ゼラレテ居ツタノデアリマス、黨ノ大會
等ニ於キマシテハ、先ヅ何ヨリモ我ガ民政
黨ノ黨勢ヲ如何ニ擴張スベキカト云フヤウ
ナコトガ議論セラレタノデアリマス、私
ハ黨ノ大會等ニ於キマシテハ是非君ケ代ヲ
歌ツテ、サウシテ黨員ノ腦裡カラ黨利黨略
ノミニ集中スルト云フコトヲ止メテ-ソ
レモ勿論考ヘナケレバナラヌケレドモ、ソレ
ヨリモ國家的觀念ニ黨員ヲシテ燃エシムルヤウ
ニセヌケレバナラヌ、之ニハ黨員ガ一齊ニ國
歌ヲ奉唱スルノガ一番宜イカラ、サウヤツテ
貰ヒタイト云フコトヲ屢〓獻言シテ居リマスケ
レドモ、中々ソレガ行ハレナイノデアリマス、
御名前ヲ指スコトハ遠慮致シマスガ、ココ
ニ樂器ガナイカラ出來ナイ、或ハ揃フカ揃
ハナイカ分ラヌカラヤラヌト云フヤウナ、言
ヲ左右ニ託シテ中々ヤツテ吳レナイノデア
リマス、ソレデアリマスカラ私ハ或ル時ニ突然
之ヲ行ヒタイト云フコトヲ提議致シマシタ
所ガ、之ニハ誰モ反對スルコトガ出來ナイ
デ、其ノ時カラ黨ノ大會等ニ於テ君ケ代ヲ
奉唱スル慣例トナツテ來テ居ルノデアリマ
シテ、民政黨以外ノ他ノ黨ニ於キマシテハ、
一時之ニ倣ツタヤウデアリマスケレドモ、
是ガ繼續シテ居ル所モアリ、繼續シテ居ラナ
イデ、モウ御止メニナツタ所モアルト云フコ
トデアリマスガ、此ノ君ケ代ヲ歌フニ當リ
マシテ、自分ハ誠心誠意歌フノデアルカラ、
姿勢ヲ正シテ歌ハナケレバナラヌノニー
是モ餘リ黨內ノコトヲ暴露スルヤウデ失禮
デアリマスケレドモ、過日モ黨ノ大會ニ於
テ君ケ代ヲ奉唱スル際ニ、幹部ノ方ガ壇上
ニ立ツテ私共ト一緒ニ歌ハレタノデアリマ
スガ、或ル者ハ手ヲ前ニ組ミ、或ル者ハ後
手ヲ組ンダ儘君ケ代ヲ奉唱スルト云フコト
ハ、是ハ洵ニ遺憾ノコトデアリマス、政黨
ノミナラズ、國民一般ニ君ケ代ヲ奉唱スル
所ノ意義ヲ明ニシテ、モツト嚴肅ニ奉唱セ
シメナケレバナラヌノデアリマスルノニ、
アノ國歌ガ果シテ小學校等ニ於テ能ク小學
兒童ノ腦裡ニ滲込ムヤウニ〓授セラレテ居
ルカドウカト云フコトヲ私ハ怪シムノデア
リマス、小學校ニ於テハ如何ナル程度ニ
之ヲ〓授セラレテ居リマスカ、又將來此ノ
國歌ニ付キマシテハ-幸ヒ第二國歌ガ必
要デアルト云フヤウナ議論ハナクナツタヤ
ウデアリマスケレドモ、洵ニ有難イ所謂萬
民輔翼ノ精神ヲ一首ニ籠メテアル所ノアノ
君ケ代、陛下ノ聖壽ヲ奉讚スルアノ國歌ノ
意味ヲ今少シ小學校ニ於テハ-唯國歌ト
シテ歌ハセレバソレデ宜イノデハナイノデ
アリマシテ、モツト能ク小學兒童其ノ他國
民ノ腦裡ニ徹底セシムルヤウナ方策ヲ講ジ
テ戴キタイノデアリマスガ、之ニ對スル大
臣ノ御所見ヲ承リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=32
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033・荒木貞夫
○荒木國務大臣 別ニ之ニ關シテハ意見ヲ
申述ベルマデモナイト思ヒマス、仰セノ通
リ其ノ必要ガアルト存ジマス、又文部省ニ
於テモ國歌ヲ奉唱スル場合ノ態度、心構ヘ
等モ段々〓育ヲ致スヤウニ、總テノ方法モ
執ラレテ居ルノデアリマス、總テノ點ニ於
テ左樣ニ致ス必要ガアルト考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=33
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034・佐藤與一
○佐藤委員 只今一寸聽キ漏シマシタケレ
ドモ、文部省ニ於テハ今マデヨリモ一層小
學校等ニ於テ、徹底的ニ君ケ代ノ意味ヲ諒
解セシメルヤウニセラルルト云フヤウニ御
答辯セラレタモノデアルト諒承シテ宜シイ
ト考ヘマスカラ、此ノ問題ハソレデ打切リ
マシテ、其ノ次ノ問題ニ及ビタイト思フノ
デアリマス
國民精神ヲ作興スルニハ色々ノ方策ガア
ルノデアリマス、尙ホ幾ラモアルカモ知レ
マセヌケレドモ、國語、國歌等ヲ尊重スルト
同時ニ、私ハ日本ノ國ノ旗ヲ尊重シナケレバ
ナラヌト思フノデアリマシテ、國旗ハ旣ニ
其ノ寸法ガ、縱橫ノ割合デアルトカ、或ハ
日ノ丸ト白地トノ間ノ寸法ノ比例等ガ明ニ
定メラレテ居ルノデアリマスガ、坊間賣ラ
レテ居ル所ノ國旗ニ付テ見マスト、布ヲ儉
約スルト云フヤウナ意味カラ細長クナイ眞
四角ノ國旗ヲ能ク見ルノデアリマス、又赤イ
丸ノ極ク小サイノガ多クアルノデアリマス、
大キイノハ餘リアリマセヌ、赤イ丸ヲ大キ
クスルト多分經費ヲ要スルモノト見エマシ
テ、非常ニ小サ過ギルノガアルヤウデアリ
ひと、斯ウ云フヤウナモノハ或ハ文部省ノ
關係デナイカドウカ知リマセヌガ、國家ノ〓
育上、國民精神作興上是等ヲ統制スルト云
フコトガ極メテ必要デアルト考ヘルノデア
リマスガ、之ニ對スル大臣ノ御所見ハドウ
デアリマスカ
又モウ一ツ御伺シタイコトハ私共ノ所ニ
出征軍人若クハ其ノ友人等ガ日ノ丸ノ旗ニ
署名ヲシテ貰ヒタイト言ツテ能ク來ルノデ
アリマス、是ハ私餘程考ヘナケレバナラヌ
コトデアラウト思フノデアリマシテ、苟モ
國旗ヲ尊重セナケレバナラヌ以上ハ國旗ニ
一點ノ汚點ヲモ附ケテハナラヌモノデアル
ト考ヘルノデアリマシテ、友人ノ出征ヲ送
ルト云フヤウナ眞心、又出征スル人モ多ク
ノ國民ノ支援ニ依ツテ出征スルノデアルト
云フヤウナ氣持ハ、洵ニ麗ハシイ銃後ノ一
ツノ現ハレデアリマスケレドモ、是ハ餘程
考ヘナケレバナラヌコトデアツテ、等閑ニ
之ニ署名スルト云フコトハ如何カト考ヘル
ノデアリマス、是ハ荒木文部大臣ニ申スノ
デハアリマセヌケレドモ、前內閣ノ首班ニ
居ラレタ方-ト申シマシテモ間違ヒデア
ルカドウカ分リマセヌガ、閣僚ノ中等ニ於テ
ヤハリ之ニ署名セラレテ、其ノ署名セラレ
タ國旗ガ麗々シク新聞ニ揭ゲラレテ居ツタ
ノヲ見タコトガアリマシテ、私苦々シク感
ジテ居ツタノデアリマス、國旗ト云フノ
ハ-ソレガ單ニ日ノ丸ト言ツテ國旗デナイ
ナラバ別問題デアリマスケレドモ、苟モ國
旗デアリマス以上ハ、其ノ國旗ヲ壁掛ニ使
ツタリ、其ノ他國旗使用ノ本來ノ目的以外
ニ使用スルコト、又之ヲ汚スト云フコトハ
米國邊リニ於テサヘモ法律ヲ以テ禁ゼラレ
テ居ルト云フコトデアリマス、愛國心ニ富
ンダル我國ニ於テ國旗ノ寸法ガドウデモ構
ハヌ、又之ヲ汚シテモ宜イト云フヤウナコ
トハ我ガ國民ノ愛國心ト相容レナイモノデ
アルト考ヘルノデアリマスガ、大臣ノ御所
見ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=34
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035・荒木貞夫
○荒木國務大臣 大分此ノ問題ニ付テモ今
御議論ノアルヤウナコトモアルノデアリマ
ス、寸法ノ如キモ既ニ制定シテアリマスシ、
幾度カ之ニ對シテノ徹底モ期セラレテ居ル
ノデアリマス、今ノ御議論ハ正ニ其ノ通
デアルト私ハ存ジマスガ、併シナガラ玆ニ
大イニ考ヘナケレバナラヌ問題ガアリマス
コトハ、我國ノ國旗ガ一國ヲ代表スルモノ
デアルト云フコトハ今日申スマデモナイノ
デアリマスガ、國際的ニ一國ヲ代表シテ日
ノ丸ヲ國旗トシテ御制定ニナツテアルノデ
アリマス、併シナガラ亞米利加ナリ他ノ國
ノ國旗ニ對スル總テノ思想ト、我國ノ國旗
ニ對スル總テノ思想トノ間ニハ未ダ以テ合
致シナイ點ガ澤山アルノデアリマス、國旗
ニ對シマスル國民思想ノ向ハシムル所ニ付
テハ餘程我國ノ〓育トシテハ愼重ナ考ヲ致
サナケレバナラヌコトト思ヒマス、御示シ
ニナツテ居ル所ハ、卽チ此ノ點ハ私ガ御說
明申上ゲマセヌデモ御諒承ヲ戴クコトト存
ジマスガ、國旗ノ尊重ハ飽クマデ一國ヲ國
外ニ示スベキ一ツノ標章トシテ必要デアリ
マスコトハ申上ゲルマデモナイコトデアル
ノデアリマス、只今申述ベタ點ヲ十分考慮
ノ中ニ置ク必要ガアル、斯ウ云フ見地カラ
國旗ニ對シマシテ隨分問題ガ澤山起ルコト
デアルノデアリマスガ、外國ノ國旗ヲ取扱
フノト全然一致シテ之ヲ用ヒルコトハ餘程
考慮ヲ要スルコトデアリ玆ニ問題ガアルノ
デアリマス、何處カラガ國旗デアリ、何處
カラガ國旗デナイト云フ、又寸法ガチヨツ
トデモ違ツタナラバ國旗デナイト云フ强辯
モ起ルノデアリマスガ、私共ハ白地ニ赤丸
ガアリマスナラバ兎ニ角我國ノ國旗トシテ
ノ觀念ヲソコニ持ツテ居ル、ソレガ「インキ」
デ書イテアリマシテモ、血デ染メテアリ
マシテモサウ考ヘル、別ニ理窟ヲ付ケズト
モソレヲ以テ大日本帝國ノ臣民トシテノ氣
持ガソコニ充實シテ居ルノデアリマス、此
ノ點ヲ考ヘマスト此ノ國旗ニ對スル、所謂
日ノ丸ノ旗ニ對スル考ハマダ國旗御制定以
後餘リ年數ヲ經ナイ爲ニ色々御質疑ノヤウ
ナコトモアルノデアリマス、此ノ點ニ付テ
十分深ク考ヘテ定ムルコトガ必要デアリマ
ス、假ニ半紙ニ赤丸ヲ描キマシテ、棒ニ附ケ
テ歡送迎ニ出テ行クト云フヤウナ場合ニ、
ソレモ甚ダ宜シクナイト云フコトニナリマ
スト、玆ニ國民ノ機微ナ心ノ働キト云フモノ
ヲ推察致シマスル時ニ、却テ大イニ考サセ
ラレル點ガアルノデアリマス、固ヨリ今ノ
國旗ニ對シテ一ツノ色ヲ附ケル、墨ヲ一ツ
垂ラスト云フコトモ、是ハ國旗トシテハ考
ヘナケレバナラヌコトデアリマシテ、私共
モ其ノ點ニ付テハ全然御同感デアリマシテ
國旗ニ對スル左樣ナコトニ付テハ非常ナ
愼重ナ考ヲ持ツテ居ルノデアリマス、之
ヲ以テ其ノ弊ノ及ブ所カラ遂ニ非常ナ冒
瀆ニナルト云フコトモ考ヘルノデアリマシ
テ、ソコニ限度ヲ考ヘナケレバナラヌコ
トト思ヒマス、今囘ノ出動將兵ニ對スル
征途ヲ送ル爲ノ國旗ノ署名ハ他ノ意味ニ於
テ私ハ一ツノ考ヲ持タネバナラヌノデハア
ルマイカ、斯ウ云フ點カラ其ノ限度ヲ考へ
テ取捨宜シキヲ得テ然ルベキデハアルマイ
カ、併シ原則ト致シマシテハ飽クマデ國旗
ト致シマシタ時ニハ一ツデモ汚點ガアツテ
ハナラヌ、汚點ノミナラズ之ニ對シテ勝手ニ
取扱フト云フコトガアツテハナラヌト存ジ
やく、是等ニ對シテ細カイ幾多ノ戰役中ノ
諸例モアルノデアリマスガ、今ココデ申上
ゲル時間モアリマセヌケレドモ、ソレ等ヲ
併セテ只今ノ御質問ニ御答辯ヲ申上ゲルノ
デアリマス、外國ニ於テハ國旗ノ冒瀆ト云
フコトガヨク問題ニナルノデアリマシテ、
例ヘバ品物ナドニ日ノ丸ヲ書イタモノガヨ
クアル、ソレヲ破ツタト云フテ國旗ノ冒瀆
ト云フテ問題ガヨク外國人トノ間ニ起ルノ
デアリマシテ、或ハ貨車ナドニ小サク日ノ
丸ガ書イテ貼ツテアル、ソレニ何カ數字ナ
ドガ書イテアル場合ガアル、何瓲或ハ何々
ト書イテアル、ソレヲ破ツタト云フノデヨ
ク貨車ノ取合アタリデ國際的ニ出動シテ居
ル場合ニアルノデアリマス、是ニ至リマシ
テ非常ニ困ルノデアリマス、日本ト云フモ
ノヲ表象スル、亞米利加ト云フモノヲ表象
スル、此處カラハ日本ノ車デアルト云フヤ
ウニナツタ時ニ能ク諍ガ起ルノデアリマス、
サウ云フ際ニ之ヲ國旗トシテ見ルカ、一ツ
ノ印トシテ見ルカ、能ク鞄ナドニ日ノ丸ガ
書イテアルト云フヤウナコトモ考ヘ來ツ
テ、ソレガ國旗トシテ代表セラレテ居ル
カ、或ハ一ツノ日本ト云フコトヲ示ス日本
ト云フ文字ノ代リニ日ノ丸ヲ書イテアルノ
ダト云フヤウナコトモ考ヘ合ハセマスト、
細カイ議論ニナリマスト中々難カシクナリ
やく、ソコデ一定ノモノヲチヤント領事館
ノ上ニ揭ゲル、或ハ自分一己ニ對スルモ
ノサウ云フモノトモ分ケテ參リマスト、
其ノ邊ノ限界ガ難カシクナル、唯之ヲ其ノ
儘ニ致スト云フコトハ斯ウ云フ論爭紛糾ノ
問題ニナリマスノデ、十分ナ〓究ヲ致シタ
イト私考ヘテ居ルノデアリマスガ、今日ノ所
ニ於テハ今ノヤウナ見地ニ於テ其ノ弊害等
ノ赴ク所ナドヲ取捨選擇シテ其ノ宜シキニ
從ツテ行クベキデアル、斯ウ云フ風ニ國旗
ト云フコトニ對シマシテノ問題、日ノ丸ト
云フコトト、ソレカラ國旗ト云フコトニ對
シテ其ノ邊ヲ十分ニ〓究ヲ致シテ何トカ之
ニ對シテハツキリスルヤウニ致シタイト考
ヘテ居ル次第デアリマス、十分ニ御答ヲス
ル言葉ガ足リナカツタ點ハドウゾ御諒承ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=35
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036・佐藤與一
○佐藤委員 只今大臣ノ御意見ニ依リマシ
テ、國旗ハ何處マデモ尊重センケレバナラ
ヌト云フ原則ハ大臣モ御認メニナツテ居ル
ト云フコトヲ知リマシテ、私共モ極メテ御
同感ニ存ズルノデアリマス、之ニ對シマシ
テハ大臣御述べノ通リ其ノ場合々々ニ依ツ
テ考ヘンケレバナラヌコトモ多イノデアリ
マスシ、又將來〓究スベキ點モ多カラウト
思フノデアリマスカラ、文部大臣トシテ折
角御考慮御〓究ヲ下サルヤウニ御願致シタ
イト思ヒマス、尙ホ國民精神作興ニハ他ニ
色々問題ガアルデアラウト思ヒマスケレド
モ、大體我國ノ歷史ヲ尊重スルト云フコ
ト、國語、國號、國旗、國歌等ヲ尊重スル
ト云フコトハ國民精神總動員運動ニ於テ缺
クベカラサル所ノ事項デアルト考ヘルノデ
アリマシテ、是等ニ依リマシテ國民精神ヲ
作興スルコトニハ何ヨリモ先ニ其ノ運動ニ
加ヘラレンケレバナラヌ問題ダト思フノデ
アリマス、大臣モ多分是ニハ御同意ダラウ
ト考ヘルノデアリマスガ、幸ヒ大臣ニ於キ
マシテハ國民精神總動員運動ノアノ聯盟ノ
重要ナ位置ニ御坐リデアルト云フコトデア
リマスカラ、是等ニ對シテ折角御盡力遊バ
サルルヤウニ御願致シマシテ、此ノ國民精
神總動員ニ關スル私ノ質疑ヲ打切リタイト
思フノデアリマス
次ニ他ノ委員諸君ノ質疑セラレタコトト
關聯シテ居ルノデアリマスガ、過般〓員ノ
素質向上ノ問題ニ付テ長野委員カラ御質疑
ガアツタノデアリマシテ、詳細ナル御答辯
モ拜承シテ居ルノデアリマスガ、之ニ關シ
マシテ私ノ新潟縣下ノ實情ヲ申上ゲマシテ
大臣ノ御意見ヲ御伺シタイト思フノデアリ
マイ、新潟縣ニ於キマシテハ最近師範學校
ノ入學志望者ガ激減シタノデアリマシテ、
初メ募集人員ノ三倍、四倍ト云フヤウナ志
望者ガアツタニ拘ラズ、最近ニ於テハ一倍
半ニ過ギナイノデアリマス、承リマスト他
ノ府縣ニ於キマシテハ募集人員ニ滿タナイ
所モアルト云フヤウナコトヲ聞イテ居ルノ
デアリマスガ、ドウ云フ原因ニ依ルカト云
フコトヲ調査致シマスト、過般ノ質疑應答
ヲ重ネラレタル中ニ小學〓員ト云フモノハ
其ノ待遇ノ厚薄ニ依ツテ勤務ノ狀況ヲ二三
ニスベキモノデナイ
〔委員長退席、曾和委員長代理著席〕
如何ニ待遇ガ菲薄デアッテモ其ノ天職ノ重
大ナルヲ白覺シテ〓育ノ爲ニ盡サンケレバ
ナラヌト云フヤウニ私共モ承知シテ居リマ
スケレドモ、マダ師範學校ニ入學セントス
ルヤウナ少年時代ニ於キマシテハ、ヤハリ
將來ノ待遇等ニ付テモ考慮スルコトハ、是
ハ其ノ當人モ父兄モサウデアラウト考ヘル
ノデアリマスガ、近來殊ニ事變以來實業界
ノ景氣ニ連レマシテ、〓員ノ待遇ガ依然ト
シテ居ルノニ、實業界ニ進出致シマスル所
ノ靑年ニ對シマシテハ其ノ待遇ガ非常ニ好
イノデアリマシテ、中學校ヲ卒業シテ、滿
洲方面ニ赴キマスレバ直グ七十圓位ノ月俸
ヲ得ルコトガ出來ル、內地ニ於ギマシテモ
四十圓位ハ取ルコトガ出來ル、然ルニ師範
學校ノ卒業生ハドウデアルカト考ヘマス
ト、中學ヲ卒業致シマシテ、二箇年デ師範
學校ヲ了ヘル者モアリ、又師範學校ヲ初カ
ラ終リマデヤル者モアリマスガ中學ヲ卒
業シタ者デ、他ノ滿洲及ビ內地ノ俸給ヲ今
申上ゲマシタカラ、之ヲ例ニ取リマスト、
中學ヲ了ヘマシテ二年師範學校ニ在學スル
ニハ七百圓若クハ八百圓ノ學費ヲ要スル、
サウシテ〓員トナツテ其ノ曉ニ初任給ガ四
十六圓位デアル、新潟縣ノ實情カラ申シマ
ストサウデアルト云フコトデアリマス、實
業界ニ入リマスレバ、年々ノ賞與等ハ可ナ
リ多額ノ賞與ヲ貰フノデアリマス、大都會
ニ於テハ〓員モ賞與ガアルカモ承リマセヌ
ガ、新潟縣ノ如キハ賞與ナドハナイト云フ
コトデアリマス、斯ウ云フヤウニ待遇ハ比
較致シマスト他ヨリ劣ツテ居ル爲ニ、師範
學校ノ應募者ガ激減シタノデアラウト考ヘ
ルノデアリマスガ、文部大臣ハ是等ノ狀況
ニ鑑ミラレマシテ、當分ノ間デモ、或ハ或
$
ル程度、一割五分トカ、二割トカ云フヤウ
ニ、師範學校ニ初メカラ入ツテ之ヲ卒業シ
タ者、或ハ中學ヲ卒業シテ師範學校ニ入ツ
テ之ヲ卒業シタ者ニ-新潟縣デハ一部、
二部ト申シテ居リマスガ、是等ヲ通ジマシ
テ臨時增俸ヲセラルルヤウナ御意思ガアリ
マセヌカ、ドウデアリマスカ、或ハズツト
前ニ斯ウ云フコトガアツタヤウニ記憶シテ
居リマスガ、師範學校ノ在學生ニ對シテハ
公費ヲ以テ其ノ學費ヲ支辨スルト云フヤウ
ナ制度ガアツタト思ヒマスガ、之ヲ復活シ
テナサラウトスルヤウナ御意思ハアリマス
カ、ドウデアリマスカ、是等ニ付テ御所見
ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=36
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037・荒木貞夫
○荒木國務大臣 最近時局ノ環境ニ伴ハレ
テ師範學校ノ入學希望者ノ減少スルコトニ
付テハ、段々報〓ニモ接シテ居リマスシ、
洵ニ憂慮ニ堪ヘズ、又甚ダ面白カラザルコ
トト存ジマス、併シ事實ハ事實デアルノ
デ、之ニ對シテ如何ナル方法ヲ執ツテ是等
ノ弊ヲ防グカト云フコトニ付テノ根本ノ問
題ナリ、或ハ將來ノ問題ニ對シテハ、段々
過般來ノ質疑應答デ御答ヲシテ居リマスノ
デ、御諒承下サツテ居ルコトト存ジマス
ガ、現在ドウスルカト云フ問題ニ付キマシ
テハ、是ハ今御述ニナリマシタヤウナ方法
モアルト思ヒマスガ、餘リ姑息ニ茲ニ之ヲ
決定致シマスコトハ、或ハ弊害ヲ伴フ點ガア
リハシナイカト存ジマスノデ、此ノ應急ノ
處置トシテハ、根本ノ處置ト併セテ相連鎖
シタ問題トシテ考究ヲシテ、早速是等ノ方
法ヲ講ジタイト考ヘテ居リマス、玆ニ斯ク
スベシト云フ具體的ノ案ヲ詳細ニ御答スル
コトハ出來ナイノデアリマスガ、急速ニサ
ウ云フ處置ヲ執リタイト思ヒマス、色々方
法モアラウト思ヒマス、御意思ノアル所ハ
能ク分リマシタノデ、之ニ對スル善處ノ方
法ヲ講ジタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=37
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038・庄司一郎
○庄司委員 一寸關聯シテ······只今佐藤委
員ノ御質問ニ關聯致シマシタコトデアリマス
ガ、師範學校ノ卒業生ノ俸給ノ初任給ハ、
文部大臣ノ既ニ御諒承ヲ戴イテ居ル程度
デ、極メテ安イノデゴザイマス、全國平均
ハ、現在男子〓員ハ四十五圓、女子ノ〓員
ハソレヨリ約四五圓格安ニナツテ居リマス、
ソレハ濱口緊縮內閣ノ時、四十八圓ノ初任
給ヲ男子ニ於テ四十五圓ニ下ゲマシタ、其
ノ崇リガ未ダニ小學校〓員ニ禍ヲナシテ居
リマス、ソコデ昭和十四年四月以降初任給
ヲ增額スル計畫中ノ府縣ガ只今全國ニ十六
縣カアルヤウデゴザイマス、緊急的ナ善後
策トシテハ、文部省ニ於カレマシテハ、各
地方長官ニ適當ニ、十四年度ノ當初ニ於テ
初任給ヲ增額シ、且ツ平均俸給ヲ增額スル
コトヲ御慫慂ナサルコトガ最モ手ツ取早イ
善後策デアルト思フノデアリマス
〔曾和委員長代理退席、委員長著席〕
只今ノ佐藤委員ノ質疑ニ對シマシテ、關聯
ヲ致シマシテ、左樣ナ善後處置ヲ文部大臣
ガ府縣知事ヲ通ジテ御勸誘下サレ御慫慂下
サツテ、地方長官ヲ通シテ初任給ノ增額、
平均給ノ增額ヲ睨ミ合セテ府縣知事ヲシテ
考慮セシメテ善處サルルヤウニ御配慮ヲ御
願申上ゲタイト思フノデアリマス、此ノ點
ニ關シマシテハ文部大臣ノ答辯ヲ必要ト致
シマセヌ、御參考ノ一端ニマデ申上ゲテ是
非御實行ヲ御願申上ゲタイノデアリマズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=38
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039・佐藤與一
○佐藤委員 私モ先刻文部大臣ヨリ御答辯
ノ通リ、此ノ問題ニ關スル急速ノ措置ヲ實
施セラルルヤウニ御願致シマス、尙ホ過般
私ガ本會議ニ於テ質問ヲ致シマシテ、其ノ
後田子委員カラモ質疑セラレマシタ靑年團
ニ關スルコトニ付テ御伺シタイノデアリマ
ス、ソレハ靑年團ニ法的ノ存在ヲ與ヘテ貰
ヒタイト云フコトデアリマス、具體的ニ申
上ゲマスレバ、靑年團令ト云フモノヲ布カ
レマシテ、サウシテ之ニ依ツテ靑年團員ヲ
義務制トセラレタイト云フコトデアリマス、
靑年團ハ自然ノ發達ニ依リマシテ-過般
田子委員ヨリ詳細ニ其ノ由來等ヲ述ベラレマ
シタカラ私重ネテ申上ゲマセヌケレドモ、團
令ヲ布イテ戴キタイト云フコトハ、是ハ靑
年團ノ本來ノ成立チト少シ違ツテ居ルノデ
アリマスケレドモ、是ハ時勢ノ要求已ムヲ
得ナイ所デアリ、特ニ靑年學校ト云フモノ
ガ義務制ニナリマシタト云フコト、義務制
ニナリマセヌデモ、昭和十年デアリマシタ
カ、靑年訓練所ト實業補習學校ト合併シテ
靑年學校トナツタノデアリマスガ、其ノ靑
年訓練所ガ設ケラレルト同時ニ、靑年團モ
亦勅令ニ依ツテ、勅令ノ下ニ立ツテ居ル團
體トセラルベキデアツタト私ハ考ヘルノデ
アリマシテ、靑年團ニ法的ノ存在ヲ與ヘテ
戴キタイト云フコトハ、靑年團ガ昔カラ要
望シ來ツタ所デアリマシテ、ズツト前ノ事
ハ申シマセヌデモ、最近ニ於キマシテハ、
福岡ニ於テ開カレマシタ所ノ第四囘ノ大會
ニ於キマシテモ、靑年團令ヲ布イテ貰ヒタ
イト云フコトガ滿場一致議決セラレタノデ
アリ、昨年ノ九月ニ於キマシテハ、文部大
臣ノ御諮問ニ答申致シマシテ、ヤハリ此ノ
事ニ最モ力ヲ入レテ答申致シタノデアリマ
ス、又最近先月ノ十七、十八日ニ於キマシ
テ、大日本聯合靑年團ノ代議員會竝ニ大日
本聯合靑年團ノ評議員會ガ開カレマシタ際
ニ於キマシテ、全國ノ代議員ハ、悉ク現在
卽刻靑年團令ヲ發布シテ戴カナケレバ、將
來靑年團ガ立ツテ行クコトガ出來ナイ所ノ
窮狀デアルト云フコトヲ愬ヘテ居ルノデア
リマス、是等ノ事情ヲ能ク御推察下サレマ
シテ、靑年團令ハ靑年學校ト一丸トシテ他
日考ヘタ上デ御發布ニナルト云フヤウナ御
意向デアルヤウニ承ツテ居ルノデアリマス
ガ、左樣ニ窮迫シテ居ル現在ノ狀況デアリ
マスカラ、成ベク早ク之ヲ實施シテ戴キタ
イト御願スルノデアリマスガ、大臣ハ何時
頃御發布ニナラウトスルヤウナ御意向デア
リマスカヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=39
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040・荒木貞夫
○荒木國務大臣 過般モ御質問ガアツタノ
デアリマスガ、靑年團ノ將來ニ關シテ、靑
年學校ト睨ミ合セテノ校內、校外ト云フヤ
ウナコトガアリマスノデ、ソコ等ヲ十分ニ
考究致シテ萬全ヲ期スルコトガ宜イノデハ
ナイカト密ニ考ヘテ居リマス、今直チニ靑
年團ダケヲ切離シテ斯ウト云フコトヲ申上
ゲル機會ニハマダ到達シテ居リマセヌ、御
諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=40
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041・佐藤與一
○佐藤委員 何時頃御出シニナルカト云フ
コトヲ承リマシテ、サウシテ全國ノ靑年團
竝ニ靑年團員ヲシテ安心セシメタイ爲ニ、
只今御伺シタノデアリマスケレドモ、何時
ト云フコトハ仰セラレマセヌケレドモ、成
ベク早ク靑年學校ト考へ合セテ御出シニナ
ルデアラウト云フコトヲ確信致シマスガ故
ニ、重ネテ御伺ハ致シマセヌ
モウ一ツ、餘リ屢〓申上ゲテ相濟ミマセヌ
ケレドモ、大日本聯合靑年團ニ對スル補助金
ノ增額ニ付テ御願シタイノデアリマス、大日本
聯合靑年團ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ昨年
ノ不祥事件ノ勃發以來、大臣モ過日御述ノ通
リニ更生致シマシテ、殊ニ昨年ノ大會以來更
生ノ氣分ニ燃エテ居ルノデアリマシテ、此
ノ機會ニ於キマシテ色々ノ仕事ヲ計畫實施
セントシテ居ルノデアリマス、第十五囘大
會ハ朝鮮ノ京城ニ於テ開會スルコトニナツ
テ居ルト云フコトデアリマス、從來內地竝
ニ樺太ノ靑年團ガ聯合シテ存在シテ居ツタ
ノデアリマスガ、今度昨年ノ大會以來臺灣
及ビ朝鮮ノ靑年團ガ之ニ參加シテ來タノデ
アリマスシ、又其ノ色々ナ事業ノ中ニ、今
度ハ日滿支ノ靑年團ノ聯繫及ビ獨逸、伊太
利等ノ靑年團トモ提携スルト云フコトガ、
一ツノ重要ナ事業ニ擧ゲラレテ居ルノデア
リマスカラ、斯ウ云フ際ニ於テ文部省カラ
モツト一層オ力ヲ加ヘテ戴カナケレバ、此
ノ進路ヲ滿足ニ遂ゲシムルコトハ出來ナイ
ト考ヘルノデアリマスカラ、是等ノ點ヲ十
分御考慮下サレマシテ、大日本聯合靑年團
ノ經費ニ付キマシテ增額シテ戴キタイノデ
ゴザイマス、又近ク滿洲國ノ靑年團ノ大會
等ガアリマシテ、之ニ對シテハ或ハ文部省
カラモオ出デニナルカドウカ知リマセヌ
ガ、大日本聯合靑年團ハ、之ニ參加スルニ
最モ都合ノ好イ園體ダト考ヘラレルノデア
リマスカラ、是ガ出席等ニ付キマシテモ、
單ニ經濟上ノミナラズ、格段ノ精神的物質
的兩方面ノ御援助ヲ御與ヘ下サルヤウニ御
願致シマス、私ノ質疑ハ之ヲ以テ打切ルノ
デアリマスガ、只今申上ゲマシタ事ニ付テ
重ネテ恐縮デアリマスガ、大臣ノ御答ヲ御
願シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=41
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042・荒木貞夫
○荒木國務大臣 マダ滿洲ニ行クコトモ、
具體的ニ承知シテ居リマセヌガ、何レソレ
等ノ點ハ十分調ベマシテ、補助金ノ問題、
更生ノ問題ニ付テハ、當局ニ於テモ十分ニ
考ヘテ居リマスノデ、御希望ノ點ハ十分拜
聽致シマシテ、萬全ヲ期シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=42
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043・椎尾辨匡
○椎尾委員 先刻ノ國旗ノコトデ關聯シテ
一寸大臣ニ御尋シタイト思ヒマスガ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=43
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044・野村嘉六
○野村委員長 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=44
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045・椎尾辨匡
○椎尾委員 先程國旗ノコトニ付テ御答ガ
アリマシタガ、日ノ丸ト國旗トノ混雜等ノ
コトハ能ク分ツテ居リマスガ、軍ノ出征ニ
贈リマス署名ノコトデアリマス、一般ニ疑
ヒツツ希望サレルノデ致シテ居ツタノデア
リマスガ、昨年ノ夏軍ノ方ノ講演ニ、宮中
ノ思召ニモ宜クナイト云フコトデアリ、又
軍トシテモサウ云フ方針デ書イテ貰ハヌコ
トニシタインダ、但シ書イテハナラヌト言
ヘク、現ニ出征シテ居ル者ガ多數持ツテ居
テ每日使ツテ居ルノダカラ、ソレニ差支ヘ
ルニ依ツテ、サウ表向キ禁ズルト云フヤウ
ナコトハシナイケレドモ、總テソレヲセヌ
方針デ指示スルト云フコトデ、情報、新聞
班等ノ方ガ講演ニ廻ラレマシテモ、サウ云
フ風ニ言ハレ、又私モソレヲ了承シテ居タ
ノデスガ、先刻ノ大臣ノ御答ノヤウデハ、
其ノ點ガハツキリシマセヌガ、サウ云フ風
ナコトデ文部省ト陸軍省トノ間ニ何カ協定
ニナツタコトハアリマセヌカ、何モマダ決
ツテ居ラヌノデスカ、序ニ承ツテ置キタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=45
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046・荒木貞夫
○荒木國務大臣 マダ正式ニ何等ノ交涉モ
受ケテ居リマセヌシ、話合モ致シテ居リマ
セヌ、今御尋ノ點ハ、吾々モ甚ダ苦心ヲ致
スノデアリマシテ、御同感ナノデアリマス
ガ、私共自分ノ所見ハ持ツテ居ルノデアリ
マスガ、此ノ狀態ヲ眺メマスル時ニ、一ツ
ノ異例トシテ今日ニ至ツテ居ルノデアリマ
ス、此ノ邊ノコトニ付テハ餘程深ク考ヘテ
行カナケレバナラヌ問題デアルト思ツテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=46
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047・椎尾辨匡
○椎尾委員 サウ云フ御心配ニナツテ居リ
マスコトヲモウ一步御進メニナリマシテ、
何トカ各省デ御打合セノ上、適當ナ指導ガ
出來マスヤウニ、成ベク早ク御運ビヲ願ヒ
タイト云フコトヲ此ノ際希望シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=47
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048・野村嘉六
○野村委員長 一ノ瀨君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=48
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049・一ノ瀬俊民
○一ノ瀨君 私ハ極ク簡明ニ大臣ニ對シテ
一言御尋ヲ致シテ見タイト思フノデアリマ
ス、滿洲事變前マデハ多クノ學生ニ、今年
ハ紀元何年カト云フコトヲ尋ネテ見マシテ
モ、知ラナイ者ガ多カツタノデアリマス、
其ノ半面ニ於キマシテ西曆ヲ聽キマスト卽
座ニ答ヘル者ガ大變多カツタ、私ハ非常ニ
ソレヲ遺憾ニ思ヒマシテ、是非是ハ一ツ學
生ハ勿論、一般國民ニ對シテモ、紀元ヲ頭
ニ植エ付ケネバイケナイト云フヤウナ考ヲ
持チマシテ、屢〓私ハ知事其ノ他〓育界ノ方
面ニ向ヒマシテモ進言ヲシクコトガアツタ
ノデアリマス、滿洲事變以來引續キ支那事
變ニナリマシテ、餘程一般學生ノ頭或ハ國
民ノ考ガ違ツテ來マシテ、殊ニ明年ハ紀元
二千六百年祭ノ式典モ控ヘテ居ル際デアリ
マスカラ、昨今デハ殆ド紀元ト云フ意識ガ
ハツキリシテ來タヤウデアリマス、ソコデ
私ハ此ノ紀元ヲ學校ノ卒業證書又ハ後世ニ
遺スベキ公文書其ノ他ノコトニ付テ是非此
ノ紀元何年、昭和何年ト云フコトヲ併記シ
テ貰ヒタイト私ハ常ニ考ヘテ居ル一人デア
リマス、是ハ是非一ツ文部省ニ於カセラレ
テモシテ戴キタイト思フノデアリマス、各
神社ノ鳥居ナンカヲ見マスト寳曆何年、或
ハ寛政何年ト云フコトヲヨク見受ケルノデ
アリマスガ、一寸アレデハ今カラ何年前ト
云フコトガ甚ダ算定ニ苦シムノデアリマス、
ソコデドウシテモ今後ハ褒狀トカ或ハ學校
ノ卒業證書ナンカニハ紀元ヲ入レテ、而シ
テ昭和何年ト云フコトニシテ貰ヒタイト云
フ希望ヲ私ハ持ツテ居ルノデアリマスガ、
是非是ハ文部省トシテシテ戴キタイト云フ
コトヲ私ハ熱心ニ御願スル一人デアリマス、
大臣ノ御考ハ如何デアリマスカ、御尋ヲシ
テ見タイト思ヒマス、私ノ質問ハ是ダケデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=49
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050・荒木貞夫
○荒木國務大臣 御說ノ點モ御尤ナコトデ
アリマスルガ、色々慣習其ノ他モアリ、各
方面ノ關係モアリマスノデ、十分ニ〓究
致シマシテ、此ノ處置ヲ執ツテ行キタイ
ト存ジマス、是デ御諒承願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=50
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051・河合義一
○河合委員 私ハモウ一步進ミマシテ、紀
元ダケニ致シテハドウカト思ヒマス、若シ
御考慮下サイマシテ、御相談ガアル場合ニ
サウ云フコトモ御考へ願ツタラドウカ、今
ドナタデシタカ御尋ニナリマシタノニ、紀
元何年カト學生ニ尋ネタ時ニ知ラナカツタ、
ソレハイケナイコトハイケナイノデスガ、
アレガ昭和トカ明治トカ云フコトヲ用ヒズ
シテ、紀元ト云フコトバカリ用ヒテ居リマ
シタナラバ、誰デモ知ツテ居ル筈デアリマ
ス、明治トカ昭和トカ云フコトハ支那アタ
リノ眞似カモ知レヌト私ハ思フノデスガ、
寧ロモウ紀元何年ト斯ウ云フコトニシテ置
ク方ガ、簡明デ能ク頭ノ中ヘ沈込ミマスシ、
モウコンナ問題ヲ繰返ス必要ハナクナルト
思ヒマスカラ、能ク御考慮下サル際ニ斯ウ
云フ點モ御考願ツタラドウカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=51
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052・荒木貞夫
○荒木國務大臣 御意見ハ承リマシタガ、
此ノ點ニ付テハ可ナリ歷史ノ關係ガアラウ
ト思ヒマスシ、成程年號ノ問題ニ付テハ御
說ノ點モアルノデアリマスガ、玆ニ日本ノ
文化ノ非常ナ麗シサガアルトモ思ヒマスノ
デ、一〓ニ直チニドウト云フコトヲ此處デ
申上ゲ兼ネルト思ヒマス、紀元ヲ覺エテ
居ラヌト云フコトハ是ハ〓育ノ至ラザル所
デアツテ、十分ニ理解セシムル必要モアリ、
最近ニ至ツテハモウ總テ曆其ノ他ニ於テモ
我國ノ紀元ヲ立派ニ書クヤウニナツテ居リ
やく、御意見ダケハ承ツテ置キマスガ、其
ノ點ハ今申上ゲタヤウナ次第デ簡單ニハ參
ラヌダラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=52
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053・河合義一
○河合委員 他ノ事項デアリマスガ、序ニ
御伺シテ置キタイト思ヒマス、日本ノ歷史
ノコトニ付キマシテ、委員長カラモ熱心ナ
質疑ガアリ、其ノ他ノ委員カラモ日本ノ歷
史ノコトニ付テ色々ナ御說ガアリマシテ、
至極御尤ノヤウニ私ハ拜聽致シタノデアリ
きく、ソレニ付キマシテ、斯ウ云フコトヲ
御尋スルノハドウカト思ヒマスガ、山陽ノ
書キマシタ日本政記、アレガ幕府ヲ覆シタ
大キナ力ニナツタト云フコトモ聞イテ居リ
マス、私ハ自分ノ經驗カラ申シマシテモ、
中學ノ漢學ノ時間ニ山下政吉ト云フ熱心ナ
先生ガ居リマシテ、日本政記ヲ講義スル時
ニハ淚ヲ滾シテ講義サレタコトヲ未ダニ記憶
シテ居リマス、サウ云フ點カラ考ヘマシテ
モ、日本ノ歷史、是ハ書物ノ上ニ現ハレテ
居ナクテモ、吾々當然國民トシテ知ツテ居
ナケレバナラヌ筈デアリマスケレドモ、併
シ是ガ書物ニ一纏メニナツテ居ルト云フコ
トモ必要ナノデアリマス、ソレデアリマス
カラ文部大臣、或ハ他ノ文部省ノドナタカ
ラデモ宜シウゴザイマスガ、吾々、又靑年
學校ノ生徒ガ今後日本歷史ヲ能ク咀嚼致シ
マス上ニ於キマシテ、如何ナル書物ガ適當
シテ居ルカト云フコトヲ一ツ御指示ヲ願ヒ
タイノデアリマス、靑年學校ノ生徒、又吾
吾國民ト致シマシテモ、ドノ書物ニナツテ
居ル日本歷史ガ、最モ國民精神ヲ興起スル
上ニ於テ良キ書物デアルカト云フコトヲ、
一ツ文部當局カラ私共國民ニ御示シヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=53
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054・近藤壽治
○近藤政府委員 御說御尤デアリマシテ、
歷史〓育ハ〓育上非常ニ重要ナ問題デアラ
ウト思ツテ居ルノデアリマスシ、又歷史ノ
學問ハ我國ノ學問ノ一ツノ特色デアラウト
思ツテ居リマス、ソレデアリマスカラ此ノ
委員會開會以來、非常ニ熱心ニ歷史〓育ノ
コトガ論ゼラレテ居リマシタガ、文部省ニ
於テモ、殊ニ圖書局方面ニ於テモ、歷史ノ
〓育ニハ十分注意ヲ致シテ居ルノデアリマ
スガ、今申サレタヤウナ靑年學校方面ニ於
テモ、ソレガ非常ニ重要ダカラ、政記トカ
外史ノヤウナ、感奮興起セシメルヤウナ纏
マツタ歷史〓科書ノヤウナモノガ何カナイ
カ、サウ云フモノヲ文部省ノ方カラ指示シ
テ吳レタラドウカト云フ御話デアツタヤウ
ニ拜聽致シマスガ、サウ云フコトモ社會局
ノ方デ良書推薦ト云フコトデ、色々良書ヲ
推薦シテ居ラレル中ニモ自然ニ出テ來ルデ
アラウト思ヒマスガ、併シ此ノ歷史ハ、肇
國ノ初カラ今日ニ至ルマデ一貫シテ〓ヘル
モノデアリマシテ、政記トカ外史ハ、少ク
トモ賴山陽ガ書イタ時代マデシカ史實モ載
ツテ居ナイノデアリマシテ、ソレ以後ニ又
色々大ナ事件ガ足ツテ居リマスカラ、アレ
ダケデハ足ラヌ所モアルダラウト思ヒマス、
唯併シアレニ依ツテ非常ニ大義名分ガ明ニ
ナツテ我國ノ國體ガ明徴ニナルト云フ點ニ
於テ非常ニ良イ所モアルト思ヒマス、隨ヒ
マシテ地方ノ靑年團ナドデ外史若クハ政記
ノヤウナモノノ或ル部分ヲ飜刻シ、之ヲ拔
萃シテサウシテ〓科書ニ使ツテ居ル府縣モ
アリマス、併シ今日カラ云ヒマスト、サウ
云フ國體ノ問題、若クハ大義名分ト云フ我
國ニ一貫シテ渝ラザル根本ノ問題ト、又同
時ニソレガ時間的及ビ世界的ニ相觸レテ發
展シテ行ク現實ノ問題ヲ刻々ニ理解シテ行
ク上ニ於キマシテハ、尙ホヤハリソレダケ
デハ足ラヌ所ガアルト云フコトニナルノデ
アリマシテ、過去ノコトヲ是ダケノ本一册
ニ依ツテ歷史〓育ガ完全ダト云フ風ニ御指
示ヲスルト云フコトハ或ハ出來ニクイカト
モ思ヒマスガ、ケレドモ斯ウ云フ物、斯ウ
云フモノヲ參考ニシテソレ〓〓ノ立場カラ
歷史〓材トシテオヤリニナルナラバ宜カラ
ウト云フヤウナコトニ付テハ、今後吾々ノ
方デモ〓員ノ歷史〓材取扱指針ト云ツタヤ
ウナモノヲソレ〓〓發表シテ傳ヘテ行キタ
イ、斯樣ニ思ツテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、ソレカラ此ノ前カラモ御話シテ居リマ
スガ、圖書局ノ方ニ於キマシテハ國史ヲ〓
ヘマス場合ニモ、今申シマシタヤウニ一番
大事ナモノハ歴史ヲ流レテ居リマス我國ノ
不變ノ大方針、或ハ國體ノ本義ト云フ
モノガハツキリ摑メテ居ランケレバ、
ドウシテモ史實ダケヲ取扱フダケデハ
本當ノ我國ノ國史ニナラスカラ、一九六一
ハヤハリ不變ノ國體ノ本義ト云フモノヲ
明ニシナガラ、併シソレガ抽象的ナ本義
デアツテハナラヌノデアリマシテ、時間的
ニハ三千年來常ニ物ニ卽シテ、文化ニ卽シ
テ、行動ニ卽シテ出テ來ルヤウニ、之ヲ指
導シヨウト思ツテ居ルノデアリマス、卽チ
時間的ノ中ニ不變的ナモノガ現ハレテ來ル
ト云フ姿ニ於テ相互一貫シテ我國ノ歷史ヲ
〓ヘヨウト云フ考カラ公民科ノ〓育ニ於キ
マシテモ、ソレカラ修身ノ授業ニ於キマシ
テモ、ソレハ修身デアリ公民デアリマスケ
レドモ、根本ニ於テハ縱トナリ橫トナツテ國
體ヲ明徴ニシ歷史〓育ニ資シヨウ、斯ウ云
フヤウナ目的意圖ノ下ニ〓科書ヲ編纂シテ
居ルノデアリマシテ、唯三時間ナラバ三時
間ノ地理歷史ノ時間ノミガ歷史〓育デハナ
イ、具體的ニソレ〓〓ノ學科ニ於テ歷史ヲ
取扱ヒ國體ノ本義ヲ取扱ツテ行クト云フ積
リデ編纂シテ居リマスカラ、左樣ニドウゾ
御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=54
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055・河合義一
○河合委員 只今專門的ナ立場カラ御鄭重
ナ答辯ヲ戴イタノデアリマスガ、能ク了承
致シマシタ、併シ私ガ御尋致シマシタノハ
靑年學校ノコトモアリマスガ、吾々國民ト
シテドノ歴史ノ書物ガ常識的ニ一番適當デ
アルカト云フコトヲ御尋シタ、苟モ社會〓
育ト云フコトヲ心掛ケテ居ラレルオ役人ト
致シマシテハ、ソレ位ノコトヲ御指示下サ
ツテモ宜イト思フノデス、私ハ外史ト日
本政記ト申シマシタノハ、アレハ一ツノ例
ニ取ツタノデアリマシテ、何モ外史ト日本
政記ハアノ當時マデノコトヲ書イテアルダ
ケデ現在マデノコトヲ書イテナイト云フコ
トハ、說明ヲシテ戴カナイデモ能ク分ツテ
居ルノデアリマス、併シ斯ウ云フ書物ハ作
ラウト思ツテモ出來ルモノデハナイ、自然
ニ現ハレテ來ルモノカモ知レナイ、或ハ後
世ニナツテカラ此ノタビ德富蘇峰氏ガ書イ
タアノ讀本ナルモノガ非常ニ推奬サレルカ
モ知レナイ、サウ云フヤウニ自然ニ出テ來
ルモノカモ知レマセヌケレドモ、併シ現在
アリマス書物ノ中デ、國民ニ日本歷史ノコ
トヲ能ク頭ニ泌込マセル上ニ於テ、ドノ書
物ガ一番適當デアルカト云フ專門的ノ意味
デハナク、常識的ニソレ位ノコトハ文部省
ノ役人ハ心掛ケテ下サツテ宜イト思フ、ド
ウ云フ書物ガ日本歷史ノ立派ナ書物デアル
カ、ソレヲモツト範圍ヲ縮メテ言ヘバ、ア
ナタガ讀ンダ日本歷史ノ書物ノ中デドレガ
一番宜イカト云フコトヲ尋ネラレタ時ニ答
ヘテ戴ク、其ノ御答ヲ得レバ宜イ、日本歷
史ト云フコトハ非常ニ喧シク此ノ委員會ニ
於テ問題ニナツテ居ルノデアルカラ、私達
モ國民ニサウ云フコトヲ尋ネラレタ時ニハ、
ソレヲハツキリ話ヲシタイノデス、私ハ甚
ダ迂濶ナコトニナルカモ知レナイケレド
モ、實ハ私モソレヲ探シテ居ル、最近ニ於
テ發行サレル書物モ私ハ其ノ意味デ漁ツテ
見マスケレドモ、是ナラバト思フヤウナ書物
ヲ見出スコトガ出來ナイ、私ハ曾テ日本歷
史デハアリマセヌケレドモ、「セーニョボー」
ノ文明史ノ極ク「プレサイズ」ナコトガ
書イテアル本ヲ讀ンダ時ニ、非常ニ興味ヲ
持ツテ讀ンダコトヲ未ダニ記憶シテ居ル、
又私ハ日本政記ニ於テ漢學ノ先生カラ淚ヲ
流シテ講義サレタコトモ記憶シテ居ル、
若シサウ云フヤウニ非常ニ興味ヲ持ツテ一
般ノ國民トシテ讀ムベキ書物ガアルヤウデ
アリマシタナラバ御指示ヲ願ヒタイノデア
リマシテ、〓科書トシテノ編纂ニ付テドウ
云フ方針デ御ヤリニナルカト云フコトヲ尋
ネテ居ルノデハナイ、若シサウ云フ意味
デ御氣付ニナツテ居ル歷史ノ書物ガアリマ
シタナラバ此ノ席上デ御指示ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=55
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056・田中重之
○田中政府委員 獨リ歷史ノ問題ノミデナ
イノデアリマスガ、非常ニ我國ノ出版物ガ
多イノデアリマシテ、是等ノ中カラ一般ニ
宜イトカ、靑年ニ向ツテ宜イトカ、農村方
面ニ宜シイトカ云フコトヲ適當ニ指導致シ
マスコトハ、〓育的ニ考ヘマシテ非常ニ大
事ナコトデアリマス、サウ云フ見地カラ文
部省ニ於テハ專門家ヲ委囑致シマシテ、ソ
レゾレ良書ノ推薦、認定等ヲ行ツテ居ルノ
デアリマス、併シナガラ今此處デ今日澤山
出テ居ル歷史ノ本ノ中デ誰々ノ何ト云フ著
書ガ一番良イカラ讀ンデ欲シイト云フコト
ヲ申上ゲルノハ聊カ困難デアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=56
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057・河合義一
○河合委員 大體能ク分リマシタ、サウ云
フ書物ノ名ヲ御指示ニナルノハ非常ニ困難
ノヤウニ拜承致シマシタカラ、私ノ質問ハ
是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=57
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058・野村嘉六
○野村委員長 長野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=58
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059・長野高一
○長野(高)委員 私ノ文部大臣ニ對スル御
尋ハ二點デアルノデアリマスガ、私ハ他ノ
委員會等ノ關係カラ長ク缺席致シテ居リマ
シタカラ、其ノ間ニ他ノ委員ニ依リマシテ
同ジヤウナ趣旨ノ質問ガ發セラレマシテ、
文部大臣ガ若シ御答辯ニナツテ居ラレタナ
ラバ、委員長ハ適當ニ御注意願ヒタイノデ
アリマス、併シ私ノ質問ハ極ク簡單デアリ
やく、私ハ靑年學校ノ義務制ノ實施ト最モ
密接ナル關係ノアリマス義務〓育ノ年限延
長ニ付キマシテハ、現在文部大臣ハ如何ナ
ル御所見ヲ御持チニナツテ居ラレマスカ、
近ク御實施ニナル御意嚮アリヤ否ヤト云フ
コトヲ明白ニ致シテ置キタイ、是ガ第一ノ
御尋デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=59
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060・荒木貞夫
○荒木國務大臣 過般一兩囘其ノ點ニ付テ
ハ御答シタノデアリマス、國民〓育ノ延長
ハ之ニ伴フ國民學校ノ〓科內容ガ最モ重要
デアルノデアリマス、出來ルダケ速ニ實施
致シタイ、斯ウ考ヘテ、出來得ルナラバ十
五年度カラデモ行ヒタイ、斯ウ云フコトデ
段々進メテ居リマスルガ、各法令ノ改正ノ
數ガ多イノデアリマス、來ルベキ年度ノ財
政關係ニ於テドウ云フヤウニ之ヲ調和シテ
行クカ、又〓員、學校內ノ設備、建築其ノ
他ニ付テ今日物資統制上非常ニ制限サレテ
居ルノデ、是等ヲドウ云フ風ニ配合ヲ實施
致スベキカト云フヤウナ問題、〓員ノ養成
ノ問題、再〓育ヲスルト云フヤウナ問題、
色々ナ問題ガアリマスノデ、直チニ玆ニ何
時カラ始メルト云フマデニ到達致シテ居リ
マセヌ、實際問題トシテノコトハ一刻モ早
ク始メテ行キタイ、サウシテ準備ガ出來マ
スナラバ十五年カラデモ實行致シタイ、斯
ウ云フ考ダケハ持ツテ居ルノデアリマス、
今折角此ノ方面ヲ取急イデヤツテ居リマス、
其ノ確定ニ至リマセヌ爲ニ、單ニ財政バカ
リノ關係デナク、其ノ方面カラモハツキリ
申上ゲ兼ネルノデアリマスガ、速ニ一部ナ
リトモ實現スルヤウニシタイ考ヲ持ツテ居
ルト云フコトヲ御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=60
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061・長野高一
○長野(高)委員 此ノ問題ハ國家ニ取リマ
シテ、極メテ重大ナ問題デアリマス、國民
ト致シマシテハ最モ御力ノアル現荒木文部
大臣ニ依ツテ御解決ヲ要望シテ居ルノデア
リマスカラ、此ノ點篤ト御考置キヲ願ヒタ
イト存ジマス
次ノ御尋ハ文部省ニ於テ現ニ行ハレテ居
リマス〓育ガ兎角時局ノ要求ニ應ゼザル所
ノ傾向ガアルノデハナイカト云フ點デアル
ノデアリマス、卽チ先日來此ノ委員會ノ席
上ニ於キマシテモ屢〓問題トナリマシタ所ノ
彼ノ農民道場ガ現ニ農林省ノ手ニ依ツテ行
八く或ハ熟練工ノ養成ガ商工省ニ、或ハ
又航空技術者ノ養成ガ遞信省ニ依ツテ大規
模ニ計畫ヲセラレ實施ヲサレテ居ル、或ヘ
又滿蒙移民ノ靑年〓育ガ拓務省ノ關係ニ依
ツテ今日行ハレテ居ルト云フヤウナコトハ、
要スルニ今日ノ文部省ノ機構ト申シマスカ、
或ハ組織ト申シマスカ、サウ云フ點ニ缺陷
ガアツテ、斯樣ナ結果ヲ招來シテ居ルノデ
ハナイカト云フコトヲ世間デ言ハレテ居ル
ノデアリマスガ、大臣ハ此ノ點ニ付テ、是
ハ文部省トシテハサウ云フ目先ノ仕事ト申
シマスカ、單ニ時局ニ依ツテ一時的ナ〓育ト
云フヤウナモノハ文部省ノ與ル所デナイ、
文部省ト云フモノハ〓育ノ本當ノ大方針ニ
付テ進ンデ行ケバ宜シイノダト云フ御考ヲ
持ツテ居ラレルカラ或ハサウ云フ風ニ放任
サレテ居ルノデアリマスカ、或ハ曾テ商船
學校ノ經營ガ遞信省カラ文部省ニ移管サレ
タト同樣ノ趣旨ニ依リマシテ、サウ云フ方
面モヤハリ文部省ガ擔當スルコトガ適當デ
アルト御考ニナルカ、更ニソレガ出來ナイ
ト云フコトハドウ云フ理由デアルカト云フ
コトヲ明白ニ御知ラセ戴ケバ仕合セデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=61
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062・荒木貞夫
○荒木國務大臣 文部省ノ〓育ノ任務ガ〓
育ノ基礎ニアリ、ソレヲ土臺トシテソレゾ
レノ技術其ノ他ニ行ツテ居ルコトハ御承知
ノ通リデアリマス、今ノ遞信省ナリ農林省
ナリニ所管ヲ致シテ居リマスル〓育ハ、ド
チラカト申セバ實務〓育ノ方ニ入ツテ居ル、
ソレヲ殆ド主トシタヤウナ學校デ、實際問
題ニ携ツテ居ルコトト密接ナ關係ヲ持ツ、
寧ロ其ノ方ガ主ニナツテ居ル爲ニ、ソレゾ
レ所管省ニ委ネラレテ居ル譯デアリマス、
斯樣ナコトカラ段々分離サレテ居ルノデア
リマスガ、其ノ限界ガ中々困難ナノデアリ
やっく、是ハ段々ニ行ツテ行ク間ニ-今日
マデモ屢〓移管問題ガアチラコチラデ起リ
マシタヤウニ、最近ニ於ケル皇學館ノ問題
ガ色々議論ガアリ、內務、文部ノ間ニ何レ
ヲ主管トスルカト云フヤウナコトスラアリ
マスシ、サウ云フヤウナモノノ內容ニ對シ
テモ非常ニ分離シニクイ點ガアリマス、是
等ハ一ツ今後ニ於ケル〓育ノ內容、結果等
ニ顧ミテ色々配合セラルベキモノデハナイ
カト考ヘテ居ル次第デアリマシテ、今日
ノ所ハ今ノヤウナコトデ、實務〓育ニ主ヲ
置イテ居ルモノハ其ノ實際ノ實務トノ關係
ガ顧慮セラレテ居ル、サウ云フコトヲ諒承
シテ居ルヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=62
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063・長野高一
○長野(高)委員 大體質問ハ是デ終ツタノ
デスガ、モウ一二點極ク簡單デアリマスカ
ラ御許シ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=63
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064・野村嘉六
○野村委員長 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=64
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065・長野高一
○長野(高)委員 靑年學校ノ義務制實施ニ
伴ヒマシテ考ヘナケレバナラヌ點ハ、靑年
團ノ經營デアリマス、今日ノ時局カラ考ヘ
マシテモ一國ノ靑年ノ元氣如何ガ直チニ國
運ノ消長ニ影響致シマスコトハ言フマデモ
ナイノデアリマス、特ニ今日ノ場合ハ靑年
運動ノ大切ナルコトガ非常ニ强調サレテ居
ルノデアリマス、所ガ從來我國ノ靑年團ノ
經營ハ、所謂獨特ノ地步ヲ踏ンデ今日發展
ノ途上ニアルノデアリマスガ、此ノ靑年學
校ノ義務制實施ニ依リマシテ、年齡其ノ他
ノ關係カラ根本的ニ組織其ノ他ノ點ニ付テ
變更ヲ加ヘナケレバナラヌト吾々ハ考ヘル
ノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテ當局ハ
如何ナル御用意ヲ持ツテ居ラレマセウカ、
實ハ昨日日比谷公園ニ於キマシテ、東京市
主催ニ係ル興亞記念東京市男女靑年團ノ大
會ガ開催セラレタノデアリマス、文部大臣
ハ親シク御臨場ニ相成リマシテ、列席ノ男
女靑年ニ對シテ最モ感銘スル所ノ一場ノ御
訓示ヲナサレタノデアリマス、此ノ靑年團
ノ經營ト云フコトニ付キマシテモ、アノ御
訓示ヲ拜聽致シマシテモ、常ニ深甚ナル御
考慮ヲ拂ハレテ居ルト云フコトヲ、吾々ハ
國民ト致シマシテ非常ニ感激ヲ致シタノデ
アリマス、此ノ際靑年學校ノ義務制實施後
ニ於ケル靑年團ノ經營ニ付テハ如何ニナサ
ルカト云フコトニ付テ、簡單デ宜シウゴザ
イマスカラ、御抱負ノ一端ヲ承ツテ置キタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=65
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066・荒木貞夫
○荒木國務大臣 是ハ屢〓問題ニナルコト
デアリマス、靑年團ノ將來ノ活躍、例ヘバ
之ヲ勅令ニ依ツテハドウカト云フヤウナ意
見モアツタノデアリマスガ、私ハ靑年團ノ
活躍ノ歷史ヲ十分ニ尊重シツツ新シイ時代
ニ卽應スルヤウニ今後ノ改正ヲシテ行キ、
又發展シテ行クコトガ必要デナイカ、具體
的ニ申シマスト、靑年學校ノ生徒、是ガ義
務制ニナリマスト、靑年團ノ團員トハ十九
歲以下ニ於テハ一ツナノデアリマス、サウ
シテ殆ド餘暇ヲ持タナイノデアリマス、兩
者ガ密接ナ連携ヲ致シマセヌケレバ、靑年
團員ハ又靑年學校ノ生徒デアツテ、ソレ等
ノ者ハ非常ニ忙殺サレルダラウト思フ、故
ニ義務制ニナリマシタ以上ハ、靑年學校ノ
義務、靑年團ノ義務、兩方共ニ相俟ツテ、
校內ト校外ノ鍛鍊、斯ウ云フコトデ一ツノ
手ニ、一ツノ方向ニ進ム必要ガアル、唯靑
年團ガ今日マデアレダケ發展ノ歷史ト、ア
レダケノ功績ヲ持ツテ居リマスカラ、リユ
ヲ飽マデ尊重シツツ行ク方法ヲ講ズル必要
ガアル、更ニ二十五歲マデノ問題ニナリマ
スト、今日ノヤウナ壯丁ノ徵集デ、暫クノ
間ハ殆ド在〓軍人カ若クハ軍人デアル、殘
ル者ハ甚ダ乏シイコトニナル、サウスルト
在〓軍人ト二十五歲マデノ靑年團ト云フ
モノノ關係ハ同ジヤウナモノデ、是ハ文部
省ノ手カラ離レマスガ、考ヘナケレバナ
ラヌ、此ノ點ヲ考ヘマシテ、將來ノ靑年團
ノ卽チ校外ノ運動ト共ニ、更ニ先ニ行
ツテハ在〓軍人ト一體ノ運動トシテ、國
トシテ今度ハ本腰ヲ入レテ考ヘ直サナケレ
バナラヌノデハナイカ、其ノ時ニ如何ニ團
令ト云フモノヲ作ルカ、是等ヲ兩方ドウ云
フ風ニ調和スルコトガ必要デアルカ、斯樣
ナ考デ、ソレ等ノ調査ヲシテ、其ノ具體案
ニ付テ實ハ考ヲ進メテ居ルノデアリマスケ
レドモ、何分國民學校ノ八年制モ決マラヌ
デ、靑年學校モ中途デアルノデアリマスシ、
在〓軍人トノ關係モ、文部省ノ手ト違ヒマ
スガ、是モ亦靑年團ト云フモノヲ文部省ガ
監督シテ居ル以上ハ考ヘナケレバナラヌ、
斯ウ思ツテ居ルノデアリマス、マダ直チニ
斯クスベシト云フマデニ參ツテ居リマセヌ
ガ、實ハ左樣ナ考ヲ以テ行クコトガ一番宜
イノデハアルマイカ、更ニ尙ホ名案デモアリ
マスレバ、一ツ十分ソレ等ノ點モ參照シテ
行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=66
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067・長野高一
○長野(高)委員 御答ニ依リマスルト、心
配ハ致シテ居ルケレドモ、マダソコマデ手
ガ及バヌト云フコトニ結論ガナルト思フノ
デアリマス、是ハ御尤ノコトト思ヒマスガ、
何ヲ申シマシテモ、今御說明ノ中ニ學校內
ニ於ケル靑年〓育、或ハ靑年訓練ト、學校
外ニ於ケル左樣ナ團ノ經營ニ依ル靑年運動
ト相俟ツテ行キタイト云フ御話デアリマス
ガ、從來ノ靑年團ノ經營ハ今大臣ノ仰セノ
通リノ徑路ヲ辿ツテ來テ居ルノデアリマス、
又義務制ニ依ル學校ノ〓育ト云フモノハ、
今後何ト申シマスルカ、所謂オ役人ノ御指
圖ト申シマスカ、兎ニ角學校〓授ノ手ニ依
ツテ是ガ行ハレルノデアリマスカラ、自然
ソコニ矛盾ト申シマスカ、衝突ト云フモノ
モ起ルト思フノデアリマス、其ノ間ニアリ
マス所ノ靑年ガ奔命ニ疲レルヤウニナリハ
シナイカト云フコトモ、非常ニ憂慮サレテ
居ルノデアリマスカラ、ドウカ斯ウ云フ點
ニ付キマシテハ、一ツヤハリ相併行シテ御
〓究アランコトヲ切望スル次第デアリマス
ソレカラモウ一ツ御尋致シタイト思ヒマ
スルコトハ、文部大臣ニ御尋申上ゲルコト
ハ御迷惑カモ存ジマセヌガ、實ハ先日此ノ
委員會ニ於キマシテ、他ノ委員カラ平沼總
理大臣ニ對シマシテ、萬民輔翼ト云フ言
葉ノ意義ヲ御尋サレタノデアリマス、之二
對スル總理大臣ノ御答辯ハ、凡ソ職業ノ如何
ヲ問ハズ、地位ノ上下ニ拘ラズ、國民ノ全
體ガ己ヲ拾テテ、公ニ奉ズルコトガ卽チ萬
民輔翼ノ意デアルト云フ御答辯ガアツタノ
デアリマス、ソコデ私ガ文部大臣ニ御尋申
上ゲタイト思ヒマスルコトハ文部當局ト
致サレマシテハ此ノ總理大臣ノ萬民輔翼ト
云フ此ノ御言葉ノ實踐ハ如何ナル方法ニ依
ツテ國民ニ求メントサレルノデアリマセウ
カ、畏クモ〓育勅語ノ御言葉ノ中ニ「一旦
緩急アレハ義勇公ニ奉シ」ト云フコトガア
ルノデアリマスガ、是デ總理大臣ノ仰セニ
ナリマスル所ノ萬民輔翼ノ目的ヲ達シ得ル
ノデアルカ、或ハソレデハ尙ホ十分デナイ
ト御考ニナルノデアリマセウカ、其ノ點ヲ
御尋致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=67
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068・荒木貞夫
○荒木國務大臣 大分限定サレテノ御尋デ
アリマシタガ、〓育勅語ノ冒頭カラ最後マ
デノ御示シハ悉ク萬民輔翼ノ道ヲ御示シニ
ナツテ居ルノデアリマシテ、今ノ職業ノ問
題ニ入リマスレバ「進テ公益ヲ廣メ」斯ウ云
フコトニ考ヲ置イテソレ〓〓ノ職分ヲ盡ス
ト云フコトガ自ラ萬民輔翼ノ道ニナルコト
デアリマスカラ、〓育勅語全般ガ其ノ道ヲ
御示シニナツテ居ルモノト私ハ考ヘルノデ
アリマス、之ヲ徹底セシムルニハ、自分ノ
本分ヲ總テ盡スト云フ所ニ萬民輔翼ノ道ガ
在ルノデアツテ、日本帝國ノ臣民トシテハ
其ノ點ガ極メテ明瞭デアリマス、自分ノ今
爲スベキ職分ヲ驀地ニ盡ス、斯ウ云フコト
デ輔翼ノ道ガ立ツコトト思ヒマス、固ヨリ
其ノ思想的若クハ根本的ノ精神ト云フモノ
ハ、〓育勅語ヲ體シテノ問題デアリマス、
斯樣ニ致シテ實踐ノ道ガ擧ツテ行ク、斯ウ
云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=68
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069・長野高一
○長野(高)委員 其點デ非常ニ明瞭ニナリ
マシタノデ私有難イト存ジテ居リマス、實ハ
先般ノ總理大臣ノ御答辯ニ、只今モ申上ゲ
マシタヤウニ己ヲ捨テテ公ニ奉ズルコトガ
卽チ萬民輔翼デアルト云フ仰セデアリマス
ト、世間ニ於キマシテハ現在歐洲ノ全體主
義國ニ於キマシテ個人ノ利害ハ國家ノ利害
ト衝突シナイ、或ハ國家ノ利益ハ個人ノ利
益ニ先行スト云フ言葉ガ非常ニ今喧シク唱
ヘラレテ居ルノデアリマスガ、此ノ思想ト
總理大臣ノ今申上ゲマシタ己ヲ捨テテ公ニ
奉ズルト云フコトト、ドノ點ニ差ガアルノ
ダラウカト云フコトヲ色々取沙汰スル者モ
多數國民ノ中ニハアルノデアリマス、只今
文部大臣カラ總テノ國民ガ其ノ職分ニ於テ
誠ヲ盡スト云フコトガ卽チ萬民輔翼デアル
ト云フ一層進ンダ明瞭ナル御答辯ヲ戴キマ
シタノデ、私ノ疑義ハ一掃サレマシテ、有
難ウゴザイマシタ
ソレカラモウ一ツダケ御許ヲ願ヒタイノ
デアリマスガ、只今本席上ニ於テ文部大臣
カラ御答ノアリマシタ所謂國語ノ問題デア
リマスガ、是ハ文部大臣ガ仰セノ通リ、國
語ト云フモノハ色々長イ傳統歷史ガアルノ
デアリマスカラ、一朝ニシテ之ヲ變更スル、
或ハ之ヲ絕エシムルト云フヤウナコトハ國
ヲ治メテ行ク上ニ於キマシテ宜シクナイコ
トデアルト云フ御話ガアリマシタ、其ノ通
リデアルト吾々モ信ジテ居ルノデアリマス、
然ルニ我ガ日本ニ於キマシテ而モ臺灣ニ於
キマシテハ最近皇民化運動ト稱シテ、現
總督府ハ昨年以來臺灣ノ全新聞カラ漢文ヲ
削除セシメテ居ルノデアリマス、漢文ハ支
那ノ言葉デアルカラ是ハ絕對イカヌノデア
ルト言ツテ、サウシテ今日四十、五十以上
ノ臺灣本島人ガ日常用ヒテ居リマス所ノ漢
文ヲ全部削除セシメテ居ル、卽チ臺灣人カ
ラ文字ヲ奪ツテ居ルノデアリマス、果シテ
此ノ總督府ノ態度ガ臺灣ヲ統治スル上ニ於
テ正シイヤリ方デアルカドウカ、是ガ若シ
事實デアルト致シマスナラバ、只今文部大
臣ノ仰セニナリマスコトト全然相反スルコ
トニナルノデアリマスガ、此ノ點ニ付キマ
シテ文部大臣ノ御所見ヲ承ツテ置キタイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=69
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070・荒木貞夫
○荒木國務大臣 少シク話ガ問題カラ離レ
テ居ルヤウデアリマスガ、屢〓申述ベマスヤ
ウニ、八紘一宇ノ精神ハ各〓ニ處ヲ得セシム
ル、本島民ヲシテ其ノ處ヲ得セシムル、サ
ウ云フコトガ本旨デナケレバナラヌト存ジ
マス、唯今政策トシテデアリマスルガ、サウ
云フ御方針ヲ執ツタコトハ別ニ臺灣統治ノ
上ニ他ノ理由ガアルノデハアルマイカ、是ハ私
ハ承知シテ居リマセヌガ、私カニ存ズルノデ
アリマシテ、臨時ニ或ハ其ノ實情ニ卽シテ是
ヨリ他ニ方法ガナイト云フコトデオヤリニ
ナルトスレバ、ソレハ臨時ノ一ツノ方法ト
シテノ御考デアツテ已ムヲ得ナイノデハア
ルマイカ、根本精神トシテハ私ハ飽クマデモ
左樣ニ考ヘルノデアリマシテ、然ラズンバ其
ノ八紘一宇ノ精神ヲ以テ世界ノ各方面ニ我
國ノ德ヲ先被スルコトハ困難デアルト言フ
ヨリモ、ソレハ御聖旨ニ違フモノデアル、
斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、只今ノ方面
ノ實際ノ問題ニ付テハ統治ノ關係上今日ソ
レヲヤルモ已ムヲ得ザル狀態ニアルノデハ
アルマイカト私カニ斯ウ思フノデアリマス、
詳細ハマダ承知シテ居リマセヌノデ、玆
御答ヲシ兼ネルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=70
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071・長野高一
○長野(高)委員 申上ゲルマデモナク臺灣
ニハ外地ノ政治ガ行ハレテ居ルノデアリマ
スカラ、文部大臣ノ所管外トハ存ジマスガ、
併シ苟モ日本ノ國務大臣トシテ輔弼ノ大任
ニアラレマスル文部大臣ト致サレマシテハ、
ドウカ此ノ間ノ事情ニ付テハ篤ト御調査置
キヲ願ツテ置キタイノデアリマス、私ノ質
問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=71
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072・椎尾辨匡
○椎尾委員 今ノ問題ニ付テ一言···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=72
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073・野村嘉六
○野村委員長 今ノ問題ニ關聯シテ居ルノ
ナラバ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=73
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074・椎尾辨匡
○椎尾委員 一寸御願シテ置キマスガ、只
今長野サンノ最後ノ御言葉デ私モ盡キテ居
ルト思ヒマスガ、臺灣ノ方ニ行ハレテ居リ
マスヤウニ、朝鮮ノ方デモ諺文ヲ段々ナク
シテ行クト云フ大體ノ行キ方デアルヤウニ
感ジテ居ルノデアリマス、サウ云フコトデ
國策トシテ唯臨時ノ出來心ミタイナコトト
ハ違フト思フノデアリマスカラ、國策トシ
テモ、モツト統一シタハツキリシタ解決ヲ
得タイト存ジマス、併セテ御調査ノ上他日
ノ機會ニ御報告ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=74
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075・曾和義弌
○曾和委員 大體諸君ノ質疑ハ終ツタヤウ
デアリマスカラ、私最後ニ一ツ御伺シタイ
ト思フノデアリマスガ、私ノ意見ヲ申述べ
テ聽イテ戴キタイノデアリマス、ソレハ甚
ダ畏イコトデアリマスガ、御稜威ト云フ言
葉ニ對スル國民ノ觀念ガ、私ハ一般ニ間違
ツテ居ル人ガ多イヤウニ思フノデアリマス、
ソレハ最近此ノ事變ニ關聯シマシテ、忠勇
ナル戰病傷死ノ將士諸君ノ公葬ニ參列シマ
スト、ヨク人々ガ弔辭ヲ御讀ミニナリマス、
其ノ文章ノ中ニ是レ御稜威ノ然ラシムル所
ナリト雖モ亦忠勇ナル將兵諸士云々、斯ウ
云フ言葉ガ多イノデアリマス、御稜威ノ然
ラシムル所ナリト雖モ亦忠勇ナル將兵諸士
云々、斯ウ云フ風ニ御稜威ト忠勇ナル將兵
諸士ノ働キトヲ別ニ考ヘテ居ル、相對シタ
モノト考ヘテ居ル、私ハ其ノ考へ方ハ日本
ノ國ニ於テハ容レラレヌト思フ、凡ソ我國
ニ於キマシテハ一草一木ニ至ルマデ總テ
大御稜威ノ御蔭デアル、況ヤ國民ガ總テ其
ノ處ヲ得テ士農工商、有ユル階級ノ人々ガソ
レゾレ其ノ處ニ應ジテ働キ得ル、而シテ光
輝アル日本國民トシテノ生活ヲ樂シミ得ル
ト云フノハ總テ御稜威ノ御蔭デアル、況ヤ
國ノ將兵ガ忠勇ナル働キヲ爲スト云フモノ
モ全ク御稜威ノ蔭ニ掩ハレテ働キ得ルモノ
デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、然ルニ
御稜威ノ然ラシムル所ナリトハ雖モ亦將兵
諸士ガ忠勇ナルカラダ、斯ウ云フ考ヘ方ハ
私ハ日本ノ國體ニ合ハヌモノト思フノデア
リマス、併シ流石ニ今マデ私ハ隨分各所ノ
サウ云フ場合ニ列シマシタガ、ヤハリ陸軍、
海軍ノ方デ出サレルノニハサウ云フ言葉ガ
少イヤウデアル、御稜威ノ下忠勇ナル云々
ト使ハレテ居ルノデアリマシテ、其ノ方面
ノ御言葉使ヒニ付キマシテハ、大體ニ私ノ
考ヘテ居ル所ト同ジヤウニ思ヒマスガ、其
ノ他ノ方面ハ殆ド總テ私ガ今言ツタ言葉ニ
ナツテ居ル、學校ノ校長ガ讀ム、或ハ在〓軍
人ノ中デモソンナノガ能クアリマス、ソレ
カラ其ノ他陸軍以外ノ關係ノ所デスト、例へ
バ各府縣ノ知事デアルトカ、サウ云フヤウナ
連中ノ讀ミマスノハ大抵サウナツテ居ル、
是ハ餘程扱ヒ方ヲ愼重ニシナケレバナリマ
セヌガ、特ニ私ハ〓育者ナドガサウ云フ考
方ヲシ、サウ云フ言葉ノ使ヒ方ヲスルト云
フコトハ、本當ニ日本ノ國體ト云フモノガ
彼等ニ徹底シテ居ナイノダ、斯ウ思フノデ
アリマスガ、文部大臣ハドウ云フ御考デアリ
マセウカ、御伺シタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=75
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076・荒木貞夫
○荒木國務大臣 本義ニ於テハ正ニ一切ハ
御稜威ノ御蔭ニ依ツテ吾々ハ總テノコトヲ
仕遂ゲ得、爲シツツアルノデアリマス、過
去ニ於テ言葉ガ足リナイ爲ニサウ云フコト
モアツタノデ、其ノ精神ニ於テハ決シテサウ
デハナイノデハナイカ、言葉ノ使ヒ方ガ十分ナ
ラザル爲ニ、左樣ナ誤解ヲ各方面ニ可ナリ喚
ビ起シテ、其ノ點ハ隨分議論ガ起ツタコトモ
アルノデアリマス、是ハ言葉ノ用ヒ方デア
ルト思ヒマスガ、最近ハ何處モ其ノ點ハ十
分ニ注意ヲ致シテ居ルヤウニ考ヘテ居リマ
ス、御趣旨ノ通リデナケレバナラヌト思ヒ
マスガ、過去ニ於テノコトハ屢〓言葉ノ使ヒ
方ニ於テ誤ガアリ、或ハ足リナイノデアツ
テ、精神ニ於テハ御考ノ通リデアルト私ハ
深ク信ジテ居ル次第デアリマス、將來ノ言
葉ノ使ヒ方ニ付テハ十分ナ銓衡ヲ要スル、
斯ウ云フ風ニ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=76
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077・樋口善右衞門
○樋口委員 委員長一寸発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=77
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078・野村嘉六
○野村委員長 餘程長イノデスカ、長ケレ
バ明日ニ讓ラナケレバナラヌノデスガ、餘
リ長クナケレバ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=78
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079・樋口善右衞門
○樋口委員 此ノ間私普通學務ノ方ニ關係
スルコトデ伺ヒマシタ所、當局ガ御見エニ
ナリマセヌデシタガ、本日ハ局長モ見エテ
居リマスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=79
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080・野村嘉六
○野村委員長 樋口サンノ御質問ハ大臣ニ
對スルモノデハナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=80
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081・樋口善右衞門
○樋口委員 私ハ大臣ニ答辯ヲ强ヒテ求メ
ヨウトハ存ジマセヌガ、聽イテ居ツテ戴キ
タイト存ジマス、實踐上ノ問題デスガ、靑
年學校ノ義務制ハ、先日モ申シマスルヤウ
ニ〓育上ノ一大革新デアリマシテ、國家ノ
爲ニ慶賀スベキコトデアリマスカラ、ドウ
アツテモ此ノ目的ヲ達センケレバナラヌト
存ズルノデアリマス、ソレニ付キマシテハ
種々ナル用意ヲ持タネバナラヌト思ヒマス
ガ、先ヅ第一ニ義務制ニ一番重大ナ影響ヲ
持ツモノハ、小學校ノ〓育ノ方針デアリマ
ス、之ニ對シテ如何ナル御用意ガアルカヲ
承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=81
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082・藤野惠
○藤野政府委員 只今樋口サンノ御尋ハ
靑年學校ノ義務制實施ニ關シテ色々用意ガ
要ルガ、小學校〓育ニ於テ如何ナル用意ア
リヤト云フコトニ承リマシテゴザイマス、
私ノ伺ツタ所ガ間違ツテ居リマシタナラ
バ、又改メテ御示ヲ戴キタウゴザイマス、
靑年學校ノ義務制實施ニ關シマシテハ、本
省トシテモ數次地方ノ學務部長其ノ他關係
官ノ會同等ニ於キマシテ、義務制實施ニ必
要ナル諸準備ヲ整ヘルコトニ、相當用意モ周
到ニ進メラレテ居ルノデアリマス、又左樣
ナ機會ニ於キマシテ、小學校〓育ト靑年學
校〓育トノ關聯ニ關シマシテモ、本省ノ氣
持ハ大體明ニ致シテ置キマシタ、小學校殊
ニ高等小學校ノ〓育ハ、靑年學校ノ〓育ト
ハ其ノ趣旨ニ於テ異ル所ガアリ、實際靑年
ニ對シテ其ノ實情ニ應ジタル〓育ヲ授ケル
コトヲ主ト致シマスル靑年學校〓育ト、晝
間通年制ヲ建前、ト致ス小學校ノ六箇年ト關
聯ヲ持タシメタ高等小學校ノ〓育トハ、又
其ノ趣キニ於テ異ル所モアルベキ筋合ノモ
ノデアルノデ、義務制ノ實施ニ關シテハ其
ノ點ノ用意ヲ十分ニ周到ナラシメ、兩者ノ〓
育ノ特色ヲソレ〓〓發揮セシメルヤウニ遺
漏ナキヲ期セラレタイト云フコトヲ、ハツキ
リ申シテ居ルノデアリマス、大體左樣ナ所
ニ用意ヲ持ツテ居ル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=82
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083・樋口善右衞門
○樋口委員 旣ニ靑年學校ノ義務制ニ付テ
ハ相當用意ガ出來タ頃ダト思ツテ居リマス
ガ、今ニ於テ學務部長會議等デ審議ヲシテ
居テ、マダ具體的ノ御說明ヲ願フ所マデ行
カヌト云フコトハ、聊カ期待ニ反シテ遺憾
ニ存ズルノデアリマス、ソコデ只今ノ高等
小學校ハ高等小學校、靑年學校ハ靑年學校
トシテト云フコトデスガ、玆ニ私伺ツテ置
キタイコトハ、只今大臣カラモ、義務〓育
ノ二箇年延長ト云フコトハ成ベク早ク用意
ヲ進メルト云フヤウナ御答辯ヲ承ツテ居ル
ノデアリマス、サウ致シマスト、何レ是モ
亦勅令ニ依ツテ御發布ニナルモノダト思ヒ
マスガ、此ノ際靑年學校ノ義務制ニ關聯シ
テ最モ重大ナル點ハ、全日通年ノ普通科ノ
方ト、高等小學校タル卽チ高等國民學校ト
ノ關係デゴザイマスガ、體〓育審議會ノ
答申案ヲ見マスト、初等國民學校六年ト
高等國民學校二年ト云フ風ニナツテ居リマ
スガ、是ハ一體從來ノ尋常小學校ト高等小
學校ト云フ意味ハ、或ハ斯ウ云フ風ニナツ
タニ付テハ內容ガ變ツテ來ルノカ、一體ド
ウ云フ風ナモノデアルカト云フ點ト、ソレ
カラ國民學校ノ六年ト高等國民學校二年ト
ヲ併置スルモノヲ以テ國民學校トス、斯ウ
云フコトガ原則ニナツテ居ルノデアリマス、
此ノ點ハ審議會ノ答申ニ付テノコトデアリ
マスガ、當局トシテ之ヲ併置スルコトヲ以
テ國民學校トスト云フコトデアルト、從來
ノ高等小學校ノ併置ト同ジヤウナ意味ニナ
ツテ居ルノカドウカ、其ノ邊ヲ一應承リタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=83
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084・藤野惠
○藤野政府委員 第一點ノ、〓育審議會ノ
答申ニ係リマスル國民學校ニ關スル要綱中
)、所謂高等國民學校ト初等國民學校トノ
關係ハ、從來ノ高等小學校及ビ尋常小學校
トノ關係ト同樣ニ見テ宜イカト云フ御尋デ
ゴザイマシタガ、此ノ點ハ實ハ〓育審議會
ニ於キマシテ最モ愼重ニ〓究ヲ致サレマシ
タ點デゴザイマシテ、要綱ノ第一ニハ、御
案內ノ通リニ國民學校ノ〓育ヲ八ケ年ト
テ、之ヲ義務トスルト云フ趣旨ヲ現ハシテ
居リマス、國民學校ノ〓育ハ內容的ニハ國
民ノ基礎的鍊成ヲ致シマスル〓育デアリマ
シテ、是ハ八ケ年ヲ通ジテ行フモノデアリ、
且又之ヲ義務ト致スト云フ建前ヲソコニ明
ニ致シテアリマス、隨テ八ケ年ハ一貫セル
國民基礎〓育デアルト云フ建前デアリマス、
同時ニ又其ノ次ノ項ニ於キマシテ、高等國
民學校ハ二ケ年、初等國民學校ハ六ケ年ト
致シテ居リマス、是ハ詰リ高等國民學校ニ
相當致シマスル高等小學校ノ程度ノ兒童ト
シマスレバ、所謂靑年ノ前期ニモ相當致シ
マス〓育デナケレバナラナイノデアリマシ
テ、其ノ意味ニ於キマシテ、段々是マデノ
御質疑ニモ大臣ヲ首メ御答ガアリマシタヤ
ウニ、其ノ年齡期ニ相當致シマスル者ニ必
要ナル〓育デアツテ、又ソコニ國民學校〓
育トシテ施サレルノデアリマスガ、年齡期
ノ關係モアリ、今日ノ高等小學校〓育ノ內
容ト同一ノモノデハアリマセヌ、相當其ノ
內容ニ關シマシテハ注意シテ、實務ノ訓練
〓育ト云フコトニモ重キヲ置カレ、靑年前
期ノ〓育トシテ相應シイ內容ヲ盛ラルベキ
要綱トナツテ居ルノデアリマス
ソレカラ第二點ノ、高等國民學校ト初等
國民學校トヲ併置スルモノヲ國民學校トス
ルト云フ關係ハ、今日ニ於ケル尋常科及ビ
高等科ヲ併置スルモノヲ尋常高等小學校ト
スルト云フ關係ト、大體設備上ニ於キマシ
テハ同樣ニ考ヘテ居リマス、左程ニ深イ意
味合ヲ持ツ次第デハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=84
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085・樋口善右衞門
○樋口委員 私一寸分リマセヌガ、前段ニ
於テ御答ノ國民學校ノ〓育內容ハ、內容ニ
於テハ靑年期ニ屬シテ居ルモノデアルカラ
云々ト斯ウ云フ御答辯デアツタヤウニ思
ヒマス、私高等國民學校ト云フモノヲ、靑
年期デアルトシテ之ヲ御取廻シニナルモノ
ナラバ、從來ノ高等小學校ノ第一缺陷ト云
フモノハ、勿論文部省デハ能ク分ツテ居ル
筈ダト思ヒマスルガ、是ハ町村經濟ニモ非
常ニ影響ヲ致シテ居ルノデアリマス、ト云
フノハ、靑年期ニナツテ居ル所ノ十三四歲
ノ生徒、之ヲ同樣ニ一年生カラノ尋常小學
校へ通學サセル、一ツニ併置サシテ通學サ
セテ、ソコニ尋常小學校扱ヒヲ致シマスト
云·フコトハ、資力ナク、〓土ニ留マル高等
小學生徒ニハ、心理上ニモ非常ニ重大ナル
影響ヲ持チ、我ハ資力ハナイ、併シナガラ
資格ダケハ求メナケレバナラヌニ依ツテ、
ドウデモ高等小學ダケハ行カナケレバナラ
又、斯ウ云フコトデアリマスガ、昨日マデ
我ト共ニ居ツタ者ハ、旣ニ六年ヲ卒ツテ中
學校へ入ツタ、早イ者ハ五年デ行ク、サウ
スルト今マデ同級デアツタ者ガ中學ヘ行キ
女學校へ行クト云フノニ、我ハ依然トシテ
兒童ト一緒ニ同ジ小學校ヘ通フト云フ氣持
ハ非常ニ考ヘナケレバナラヌコトデアル
ト思フノデアリマス、之ヲ何故ニ獨立校舍
ニセヌカ、-今ヤ一般社會ノ要求ト致シ
マシテモ、何レノ都市ヲ問ハズ、獨立校舍
ニスレバ宜イト言ツテ居ルコトハ御存ジノ
コトダト思フノデアリマス、然ルニ改革セ
ントスル此ノ國民學校案ノ高等國民學校ハ
靑年期デアリ、稍〓其ノ點ハ御了解ニナツテ
居ルヤウダガ、之ヲ併置スルコトヲ以テ原
則トスルト云フト、大變ソコニ〓育改革ノ
上ニ矛盾ガアリハシナイカ、從來ノ缺陷ヲ
缺陷トシテ尙ホ存シテ行クト云フコトニナ
リマス、現ニ東京市アタリニ於キマシテモ
大阪、名古屋等ニ於キマシテモ、都市ト云
フモノハ何レモ高等小學校ハ獨立デナケレ
バイカヌト云フ傾向ハ、繰返シテ申シマスガ
明カニ見エル、之ヲ同一ノ所ニ併置スルト
言ヒマスト、從來ノ小學校ト云フモノヲ唯
高等國民學校ト、名ヲ變ヘラレタノト何モ
違ヒハセヌヤウニ私共ハ思ヒマス、若シサ
ウ云フコトデアリマスレバ、此ノ國民學校
ノ高等科ト、靑年學校ノ普通全日通年ハ之ヲ
廢止スベシト云フコトヲ言ハレテ-ソレハ
答申案ニモアリマスガ、若シ廢シテ此ノ高等
國民學校へ御入レニナルト云フナラバ、是
ハ〓育上ノ大逆轉デアルト私ハ思フ、現ニ何
レノ地方ト雖モ、〓育ニ關心ヲ持ツテ、高
等小學ニ對スル此ノ缺陷ヲ何トカ修正セン
トスル-地方ニ於テハ、都市デモ、農村
デモ、非常ニ此ノ國民學校案ノ答申トハ現
ニ實情ハ趣ヲ變ヘテ居ル結果ニアルコトハ
能ク當局モ分ツテ居ルト思ヒマス、當局ニ
於テ此ノ答申案ヲ肯定シテ居ラレルト云フ
コトニナルト、是ハ更ニ一段ト御〓究ヲ煩
ハシタイ、少クトモ此ノ〓育上ノ逆轉トマ
デナラヌヤウニ、御配慮ヲ煩ハシテ置キタ
イト思フノデアリマス
ソコデ更ニモウ一點簡單ニ御伺致シマス
ガ、斯ウナツテ參リマスト、〓育審議會ト
云フモノハ、〓育上ニ於ケル色々ナコトヲ
御改革ニナル目的ノ爲ノ機關デアリマスガ、
併シ大體ト致シマシテハ、文部省案ト云フ
モノガ必ズ其ノ中心ニナツテ行クモノデハ
アルマイカト私共ハ思フノデアリマス、ソ
コデ一番問題ニナツテ居ルノハ師範學校ノ
改善、此ノ問題ガ最モヤカマシク叫バレテ
居ルノデアリマス、卽チ此ノ國民學校案ニ
伴ツテ、〓育審議會デハ必ズヤ、是ガ問題
トナルモノデアルト思ヒマスガ、文部省ト
シテ是ガ改善ヲ爲サントスルニ付テノ手段、
一體如何ナル御考ヲ持ツテ居ラレマスカ、
此ノ點ニ付テ簡單ニ御伺致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=85
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086・藤野惠
○藤野政府委員 御答辯致シマス、前段御
述ノゴザイマシタコトハ、〓育上洵ニ御熱
心ナル御主張デゴザイマシテ、私共モ深ク
敬意ヲ表スル所デゴザイマス、御述ノゴザ
イマシタ如クニ、高等國民學校ト初等國民
高等學校トノ關係ヲ成ベク切離シテ行ク、
獨立ノ學校ニシテ行クト云フコトハ、是ハ私
共モ同樣望マシイコトト考ヘテ居リマス、唯
高等國民學校ト初等國民學校トヲ併置スルモ
ノヲ國民學校トスルト云フ要綱ノ現ハレテ居
リマスノハ、是ハ單ニ名稱ヲ左樣ニ扱ツタノデ
ゴザイマシテ、出來得ルナラバ是ガ獨立ニナツ
テ居ルコトハ勿論望マシイ所ト考ヘマス、併シ
一面ニハ地方財政等ノ關係モゴザイマスカ
ラ、之ヲ强制的ニスルト云フヤウナ譯ニモ參
ラヌト考ヘテ居リマスガ、氣持ノ上ニ於キ
マシテハ、御述ノヤウニ大體私共モ御同感
申上ゲテ居ルノデゴザイマス、隨テ全日通
年制ノ靑年學校普通科ト云フモノニ付キマ
シテ、若シ之ヲ高等國民學校ニシテシマフ
ト云フコトニナルト、〓育上非常ナ影響ガ
アルノデハアルマイカト云フヤウナ點ニ付
テ御言及ガゴザイマシタガ、此ノ點ハ私ノ
說明ガ不十分デアルトモ存ジマスガ、今囘
審議會ニ於テ決定セラレテ居リマスル要綱
ハ、其ノ內容ニ付キマシテモ可ナリ大キイ
改革ヲ見テ居ル譯デゴザイマシテ、高等國
民學校ノ內容タルベキ〓育ハ、靑年前期ニ
屬シマスル兒童ニ授ケラレル〓育內容トシ
テ、先程申上ゲマシタヤウニ實務的修練ト云
フモノニモ相當重キヲ置キ、其ノ下ニアリ
マスル初等國民學校ノ〓育トハ、餘程趣
キヲ異ニ致ス點モ多々アルノデゴザイマス、
此ノ點ニ關スル御懸念ノ點ハ、其ノ國民學
校〓育ノ內容ヲ十分改メテ行キ、又國民學
校案ノ意圖スルヤウナ内容ニ實際ニ致シマス
ナラバ、自ラ御希望ノ點ニ合致致シテ行ク
モノデアラウト、斯樣ニ考ヘテ居リマス
ソレカラ第二點ノ師範學校ノ〓育ノ改善
ト云フコトガ、小學校〓育ノ義務年限ノ延
長ナリ、〓育ノ內容的改善ニ付テ非常ニ肝
要デアル、之ニ付テノ用意ハドウナツテ居
ルカト云フ御述デゴザイマス、是ハ洵ニ
御述ノ通リデゴザイマシテ、小學校〓
育ノ內容ヲ改善致シ、又其ノ年限延長ニ
師範學校ノ〓育ト云フモノガ至大ノ影響
ヲ持チマスルコトハ、全ク御同感デゴ
ザイマス、此ノ點カラ致シマシテ、〓育審議
會ニ於キマシテモ、國民ノ基礎的〓育ト師
範〓育トハ洵ニ密接ナル關係モアリ、又國
民學校〓育ノ內容ノ刷新ノ爲ニモ師範學校
〓育ノ改善ヲ必要トスルト云フ建前ヨリ致
シマシテ、〓育審議會ハ、師範學校ニ關シ
マスル制度及ビ內容ニ關シテ非常ニ御熱心
ナ御審議ガゴザイマシテ、丁度昨年ノ十二
月ニ大體師範學校ニ關シマスル改善要綱ガ
決定致サレマシテ、御答申ガアリマシタ次
第デアリマシテ、是ガ內容ニ關シマシテモ、
十分國民學校ノ〓育ト相俟ツテ其ノ效果ヲ
十全ニ收メルヤウニ、當局ト致シマシテモ
努力ヲ致サナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=86
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087・樋口善右衞門
○樋口委員 ドウモ御述ニナルコトハ善イ
ガ、言ハレル所ヲ聽キマスルト、靑年學校
ノ全日通年ノ普通科ト高等國民學校トハ、
其ノ内容ニ於テ同ジヤウナ〓育ヲ授ケルカ
ラ心配ハナイ、斯ウ云フ風ニ承ツテ居リマ
スルガ、ソレハ言フベクシテ行ヘルコトデ
ハナイ、何トナレバ現在ニ於キマスル高等
小學校ニシテモ、先ヅ先生ヲ如何ニスルカ、
今カラ出テ來ル人ハ知ラヌケレドモ、現在
高等小學校ヲ〓ヘテ居ツタ先生ガ、今度ハ
靑年學校デ今ノ晝間通年ト云フ風ニヤルト
言ツテモ、是ハ到底行へルモノデハナイ、ダ
カラ制度ヤ內容ダケヲサウ云フ風ニ御說明
ニナツテモ、實際ニ於テハサウハイカヌ、
私共ハ旣ニ十年以前カラ高等小學校ヲ變ヘ
テ今ノ靑年學校ノヤウニヤツテ居ルノデゴ
ザイマス、高等小學校ノヤリ方デハイカヌ
ト云フコトハ、學校令ガ惡イノデモナカラ
ウト思フケレドモ、先生自體ガ生徒ヲ〓養
スルコトニ付テノ何等ノ素養ガナイノデアリ
マス、都市ニ於テモサウデアリマスルガ、農
村ト來タラ格別デゴザイマス、其ノ一番分
リ易イ例ヲ言ヒマスレバ、師範學校ヲ出マ
シタ先生ニ、何處ヲ希望スルカト聽キマス
ト、農村ニ行クコトヲ希望スル先生ハナイ
ノデアリマス、皆都市若クハ都市ニ準ジタ
ヤウナ所ノ學校ニ行キタイト言フ先生ガ殆
ド全部デゴザイマス、配置上已ムヲ得ズ田
舍ノ方ニ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フヤ
ウナコトデ、機會ガアリ、何カノ手蔓ガア
ツタラ、都會ヘ替ラウト云フヤウナ、所謂
都會〓育ヲ致シテ居ル、ソレガ今日農村ニ
直接間接ニ影響致シマシタ結果ガ、今日ノ
農村ノ上ニ現ハレテ居ルノデゴザイマス、
今日靑年〓育タル普通〓育ニ携ル者ハ、眞
劍ニ魂ヲ打込ンデヤツテ居ルノデアリマス、
先程御質問ガアリマシタガ、俸給ガ足ラヌ
ニ依ツテ待遇ヲ好クセネバナラヌ、是ハ御
尤デゴザイマス、師範學校ノ志願者ガ減ツ
ク、是ハ御尤ダト思ヒマスルガ、苟モ農村
ノ師表タルベキ者ハ、魂ヲ打込ンデ人ノ師
表タルベキ所ノ動作ノ出來ル者デナケレ
バ、卒業免狀ダケデハ〓員ノ價値ガナイノ
デゴザイマス、現在ノ形式的ナル、畫一的
ナル師範〓育ニ於キマシテ養成セラレテ來
タ者ヲ以テ、高等國民學校ノ〓育ニ當ラセ
タノデハ、審議會ニ於テ如何程內容ダケヲ
御變ヘニナツテモ駄目デゴザイマス、此ノ
只今ノ職員ヲ如何ニナサル御方針デアリマ
スカ、御伺致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=87
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088・藤野惠
○藤野政府委員 樋口サンノ多年ノ御體驗
ニ基キマスル段々ノ御意見、私共モ十分ニ
有難ク承ツタ次第デアリマス、御述ノゴザ
イマシタ動モスレバ師範學校卒業者ガ都會
ヲ望ンデ、農村ニ行クコトヲ嫌忌スルノ傾
キガナシトシナイト云フヤウナ點ハ、是尺
師範〓育トシテ特ニ反省ヲ致スベキ大キナ
題目デアラウト考ヘテ居リマス、確ニ御述
ノアリマシシタヤウニ、今日ノ〓育ハ魂ヲ
打込ンダ〓育、眞ニ地方ノ人々ノ先導者ト
ナツテ進ンデ行クト云フ氣〓、氣魄ガナク
テハナラヌト考ヘテ居リマス、審議會ニ於テ
決定セラレマシタ師範學校〓育ノ要綱ニ關
シマシテモ、此ノ點ハ特ニ强調ヲセラレテ居
ル所デゴザイマシテ、幸ニココ數年來ノ師
範〓育ノ一般的趨向ト致シマシテハ、精
神鍛鍊方面ニ非常ナル力ヲ用ヒマシテ、或
ハ道場ノ設置ト申シ、或ハ集團勤勞ノ訓練
ト申シ、段々ニ師範〓育ノ方面ニ斯樣ナ目
覺メタル施設ガ具體的ニ行ハレテ居リマス
ルコトハ、樋口サンノ御述ニナリマシタヤウ
ナ方向ニ向ツテ又一步ヲ近ヅケツツアルコ
トノヤウニ考ヘマス、同樣ノ考ヲ以チマシ
テ、當局ト致シマシテハ師範學校ニ農業的
〓育ヲ加ヘマシタモノヲ一層多ク採入レテ、
サウシテ眞ニ地方農村ノ指導的ナ立場ニ
モ立チ得ルヤウナ〓師ヲ養成致シタイト
云フ考ノ下ニ、昨年ノ十二月師範學校ノ入
學者ノ選拔ニ關シ、實業學校、特ニ農業學
校方面ノ志望者ヲ十分勸奬致スヤウニ地方
長官ヲ督シマシテ、是ガ選拔ノ方法等ニ付
キマシテモ、從來ノ中學校本位或ハ高等女
學校本位等ノ選拔方法ト異ナリマシテ、特
別ノ方法ヲモ講ズルヤウニ指示ヲ致シタノ
デアリマス、是等ノ考ヘ方モ亦小學校ノ〓
育ト云フモノニ一層農業的ナ〓育ト云フモ
ノヲ採入レテ、御述ノアリマシタヤウニ地
方實情ニ副フヤウナ〓育ニ致シテ行キタイ
ト云フ考ニ外ナラヌ次第デアリマス、師範
學校ノ〓育ヲ斯ノ如ク考へ、又一面一般小
學校〓員ニ、師範學校修了後或ハ再〓育等
ノ機會ニ於キマシテモ、更ニ是等ノ方面ニ
注意ヲ致シテ、御述ノヤウナ弊害ヲ速ニ根
絕致スコトニ一層ノ努力ヲ拂ヒタイト考ヘ
テ居リマス、何レニ致シマシテモ、御述ノ
アリマシタ點ハ私共モ深ク感ジテ居リマス
ル所デアリマシテ、今後小學校〓育竝ニ師
範學校〓育ノ指導ノ上ニモ非常ニ關心ヲ持
タネバナラヌ所デアル、斯樣ニ信ジテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=88
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089・樋口善右衞門
○樋口委員 時間ガ來マシタカラ、彼此レ
申シマシテモ皆サン御迷惑デアリマスルカ
ラ簡單ニ一言ダケ申上ゲタイ、此ノ靑年學
校ノ確立ト云フコトニナリマスト、一番困
ルコトハ、本科ニ移ツタ時ニ就學率ガ惡ク
ナルト云フコトデアリマス、ソレハ何故サ
ウ云フコトニナルカト云フト、是ハ所謂尋
常小學ニ八年モ置キマシテ、ポツト出シマ
シテ直チニ本科ヘ入レルト云フコトニナル
カラ斯ウナツテシマフノデアリマス、ダカ
ラ尋常六年ヲ出テ中等學校ヘ行ク者ハ行
ク、サウシテ一方直チニ出テ社會人タルノ
活動ヲセネバナラヌ所ノ者ハ、此ノ二箇年
ト云フモノハ極メテ重大ナ時デゴザイマス
カラ、靑年前期デアルナラバ靑年ノ〓育ヲ
スルト云フコトガ私ハ當然ダト思フノデア
リマス、之ヲ小學校ニ併置サセテ置イテ〓
ヘルト云ヘバ、依然トシテ〓育ハ普通〓育
ニ傾キ、サウシテ又靑年ノ氣分ト云フモノ
ガ實際上ソコニ訓練ヅケラレテ行カナイト
思フ、ダカラシテ晝間通年、卽チ全日通年ノ
モノハソコニ方針ヲ置イテ、之ヲ完成シテ
行クニハ後ノ本科ヲ出サナケレバイカヌ、
之ヲ靑年學校トシテ晝間通年ニ致シテ置キ
マスルト、此ノ學校ヘ行キマス者ハ、尋常
科カラ中學校ノ一年生ヘ入ツタヤウナモノ
デ緊張シテ居リマス、此處ニハ十八、十九
ノ大キイ者ガ居ツテ柔道モ劍道モヤル、其
ノ中ニ入ツテ行ク一年生デアリマスカラ緊
張シテ居ル、ダカラ本科ニ移ルニモ行キ易
イノデアリマス、卽チ中學校ヲ卒業シマシ
テ高等學校へ入リマスレバ其ノ一學期ハ緊
張シテ居ル、ソレト同ジコトデ、學校ガ變ツ
テ行キマスレバソコニ於テ緊張スルノデア
リマス、而モ靑年學校ハ一町村一校ト云フ
コトデアリマスト、町村經濟ノ上ニ於テモ
非常ニ樂デアリマス、初等、高等ヲ併置ス
ルト云フコトヲ原則ノヤウニ言ハレマスル
ト農山村ノ洵ニ財政ニ窮シテ居ル所ガ、
廣イ範圍ニ跨ツテ居ル關係上、高等小學校
ト併置ノ學校ガ多イノデアリマス、洵ニ不
經濟ナル學級數ヲ持ツテ居ツテ、如何トモ
整理スルコトガ出來マセヌ、然ルニ靑年期
ダト云フコトデ革新的ナ〓育ノ方法ヲ執ル
ト云フナラバ、此ノ靑年學校ガ一町村一校デ
濟ムト云フコトニナリマスルト、經費ハ非
常ニ助カツテ行キマシテ、內容ノ充實モ出
來ル、各町村ノ山村ノ如キ所ヘ行ヅテ眺メ
テ見マスルナラバ、〓育費ヲ節減致シマス
ルコトニ依ツテ、學校ノ併置ヲ止メレバ宜
イケレドモ、ソレハ止メナイデ節約ヲスル
カラシテ、內容設備ト云フコトハ殆ド出來
テ居ナイ、無理ナ〓育デ補ツテ行クコトニ
ナル、今ノ初等高等ノ國民學校案デ補ハレ
ルナラバ、依然トシテ私ハイカヌト思フ、
故ニ靑年學校ヲ確立スル上カラ行キマシタ
ナラバ、是ハ大イニ考フベキモノダト思フ
ノデスガ、旣ニ靑年學校ノ義務制ヲ實施シ
テ居ル、ソコヘ又〓育審議會ハ如何ナル御
考ヲ以テデアリマスカ、之ヲ廢スベシト
云フヤウナ答申ヲナサツテ居ル、現ニ是ハ
私ノ方ノ職員始メ洵ニ不安ニ堪ヘヌノデア
リマス、又一般ノ心アル人モ、農村ノ〓育
上ニ於ケル設備カラ行キマシテ、何ト云フ
コトヲ審議會ト云フモノハヤルノダト言ツ
テ居ル、結局調査ヤ統計、其ノ他報告位ノ
コトヲ基礎トシテ、實際ヲ見ザル人ガ之ヲ
決メラレテ、其ノ行フ所ハ實際町村ガ之ヲ
ヤル、是ハソレヲ受ケル所ノ兒童ノ將來ニ
關係シ、國家ノ靑年〓育ニ重大ナル影響ヲ
及ボスモノデアリマスカラ、只今ノ局長サ
ンノ御意見デ見ルト、普通科ヲ廢シタ時デ
モ心配ハナイト云フ風ニ私ニハ聞エマス
ガ、全日通年ノ普通科ノ起ツテ來テ居ル由
來ヲ能ク一ツ御〓究ヲ願ヒマス、少クトモ
縣內デモ先進町村ト目サレテ居ル所ガソレ
ヲヤツテ居ルノデアリマス、ソレガ再ビ
高等小學校ニ引戾サレマシタナラバ、其ノ
爲ニ及ボス影響ハ、單ナル〓育上ノ問題バカ
リデハナイト私ハ思ヒマス、國ガ勸メ、縣
ガ勸メ、ソレニ順應シテヤツタ所ノ施設、
而モ地方ニ適切ナ施設デアリマスニモ拘ラ
ズ、內容ヲ變ヘタト云ツテモ先生ハ變ヘツ
コナシ、靑年期デアルト云ツテモソコニ靑
年ノ訓練モシツコナイ、殊ニ靑年ノ陶冶ヲ
スルト云ツテモ、直チニ社會人タル者トシ
テ一番大切ナノハ身體ヲ丈夫ニスルコトデ
アル、私共ノ經驗ニ依リマスト、先ヅ靑年
學校、高等小學二年ヲ卒業シテ重工業方面
ヲ志望致シマシタ者ノ體格檢査ノ結果カラ
行キマスト、靑年學校ヲ二年行キマシタ者
ハ八五%ノ率ヲ以テ入ツテ居ルノデアリマ
ス、高等小學校ノ方ハ六〇%シカ採ラナイ、
之ヲ全部ノ會社カラ行キマスト靑年學校ガ
六五%、高等小學校ハ三〇%ニ及バヌノデ
アリマス、就職率ノ上カラ行キマスト靑年
學校ノ方ガ宜イ、而モ體格ノ比較カラ行ク
ト高等小學校ノ方ガ背ナドモ高イシ、一見
體格ガ良イヤウデアリマスガ、愈〓、實際ニ工
場ニ檢査ヲ受ケニ行クト靑年學校ノ方ヲ餘
計採ル、是ハドウダト云フト、高等小學ノ
方ハ發育盛リノ時ニ不自然ナル體操位ノコ
トデ體育ヲヤラセテ居リマスガ、片一方ハ
自然ノ運動ニ依ツテ適切ナル發育ヲ致シテ
居ル、此ノ二箇年間ハ普通ノ考ヘ方カラ見
マシタナラバ、心身ノ發達ニ非常ナ影響ヲ
及ボス重大ナ時期デアリマス、私共ハ實際
ノ經驗ニ依ツテ之ヲ力說スルノデアリマス、
唯單ニ今日內容ヲ變ヘタ、〓育ハ斯ウスル
ト云ツタヤウナ簡單ナモノデハナイノデア
リマス、今日體位ガ劣惡ニナツタト言ハレ
テ居ルノハ、〓育ニ於テ知ヲ先ニヤツテ體
ヲ次ニシテ居ルカライカヌノデアル、知モ
必要デアリマセウ、明治ノ初年ダツタラソ
レモ必要デアルカモ知レマセヌガ、斯クマ
デモ體格ガ弱ツテ來タ時ニ、尙且ツ知ヲ先
ニシテ知德體ト云フヤウナ〓育ヲ致シテ居
ラレル、現在靑年ニ要求スルモノハ體德
知デナケレバイカヌト私ハ思フノデアリマ
ス、其ノ體位向上ト云フコトニ付テノ私共
ノ經驗カラ行キマスレバ、今ノ高等小學校
ヲ國民高等學校トシテ之ヲ建テテ行ツテ、
晝間通年ノ今日マデノモノヲ逆轉サセテ、
ソレデ憂フルニ足ラヌト云フヤウナ風ニ之
ヲ輕ク御觀察下サラヌヤウニ、此ノ點ニハ
篤ト御留意アツテ、我國靑年學校ノ確立ノ
意義ヲ、文部省トシテハ十分ハツキリト國
民ニ對シテ御示シガ願ヒタイト思フノデア
リマス、ドウデモ宜イト云フヤリ方デハイ
カヌ、大體私ハ、靑年大衆ノ〓育ノ爲ニ靑年
學校ヲ主體トシテ行クト云フコトニ、今日
ノ義務制ノ意義ガアルト思ヒマスガ故ニ、
此ノ點ニ付テハ篤ト一ツ御〓究ヲ煩ハシタ
イト云フコトヲ希望致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=89
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090・藤野惠
○藤野政府委員 段々御述ヲ戴キマシタ點
ハ私共モ十分ニ拜承致シマシタ、其ノ點ハ
十分參考ト致シマシテ、又國民學校案ヲ檢
討致シマス上ニモ其ノ點ハ考ヘテ行キタイ
ト思ヒマス、唯現在ノ高等小學校ヲ目標ト
シテノ御立論ニ付キマシテハ、國民學校殊
ニ高等國民學校トモ相成リマスレバ、其ノ
〓育ノ內容ハ相當ニ內容的ニモ改善ヲセラ
ルベキモノデアリマスルノデ、ソレニ對シマ
スル用意ト云フモノハ當局トシテモ實施
ニ際シテハ十分考慮致ス積リデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=90
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091・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ佐藤君、內閣ノ方
ノ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=91
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092・佐藤與一
○佐藤委員 先刻圖書局長ニ對シマシテ一
ツノ質疑ヲ致シテ置イタノデアリマスケレ
ドモ、都合ニ依リマシテ內閣ノ政府委員ニ
對シマシテ御伺シタイノデアリマス、ソレ
ハ建議委員會ニ於テモ建議ノ趣旨ヲ私カラ
辯明致シマシテ、之ニ對シテ樋貝政府委員
カラ屢〓御答辯ヲ煩シタコトガアルノデアリ
やく、第六十七議會ニ於テモ、第七十議會
ニ於テモ、其ノ建議委員會ニ於テハ此ノ問
題ニ關シテ樋貝政府委員カラ御說明ヲ承ツ
ノタデアリマス、其ノ結論ト致シマシテハ、
第六十七議會ニ於キマシテハ、「ニホン」ト
呼ブカ「ニツポン」ト呼ブカト云フコトニ付
テハ十分ニ考究シテ、適當ノ所ヲ考ヘネバ
ナラヌト云フ風ニ考ヘテ居リマスト云フ御
答辯ヲ得タノデアリマス、ソレハ昭和十年
二月十九日ノ建議委員會ノ第一分科會デア
リマシタ、第七十議會ニ於キマシテハ、政
府ハ隨分詳シク〓究ハ致シテ居リマスガ
マダ確定ハ致シマセヌ、成ベク早イ機會ニ
一樣ニ確定シテ行キタイト考ヘテ居リマス
ト云フヤウナ御答辯ヲ得マシタガ、內閣ト
致シマシテハ御考ニナルノハ宜イカモ知レ
マセヌケレドモ、斯ウ深ク御考ヘニナラヌ
デモ宜イト考ヘルノデアリマス、第七十議
會ニ於キマシテハ、他ノ委員カラ、旣ニモ
ウ攻究ノ時期デハナイノデアツテ、之ヲ實
行スレバ宜イノデアルト云フヤウナ意見ノ
開陳ガアツタコトハ樋貝政府委員ノ記憶
シテ居ラルル所デアラウト考ヘテ居ルノデ
アリマス、「ニホン」ガ正シイカ、「ニツポ
ン」ガ正シイカト云フヤウナコトニナリマ
スト、之ヲ歷史的ニ見、或ハ學術的ニ考ヘ
レバ、勿論私モ先刻大臣ニ對シテ申上ゲマ
シタヤウニ、「ニホン」ノ方ガ正シクテ「ニ
ツポン」ノ方ガ正シクナイヤウニモ申スコ
トガ出來ルノデアリマスケレドモ、現在ハ
サウ云フヤウナ學究的ノ、屬吏的ノ攻究ヲ
シテ居ル時代デハナイノデアリマシテ、現
在ノ日本ノ情勢ニ顧ミマシテ、ドウシテモ
之ヲ統一シテ稱呼センケレバナラヌヤウナ
狀況ニナツテ居ルコトハ、樋貝政府委員モ
能ク御承知ノコトデアラウト考ヘルノデア
リマス、先刻文部大臣ガ樋貝政府委員ノ前
ニ申サレマシタ通リ、國號ノ稱呼ハ、正式
ノ場合ニ於テハ外國等ニ對シテ大「ニツポ
ン」帝國ト稱呼スルト云フコトハ、サウセ
ンケレバナラヌ、萬歲ヲ三唱スル時ニ於テ
ハ國民ガ齊シク、大「ニツポン」帝國萬歲ト
萬歲ヲ唱ヘンケレバナラヌト述ベラレタノ
ハ御聽キデアツタト思フノデアリマスガ、
私ノ要求スル點ハ其處ニアルノデアリマシ
テ、學術的ノ〓究、歷史的ノ〓究ヲ俟ツテ
是ガ決定セラルベキ問題デハナイト私ハ考
ヘルノデアリマスケレドモ、是レ或ハ意見
ノ相違デア、ルカモ知レマセヌカラ、私ハ樋
貝政府委員ノ御意見ガ間違ツテ居ルト云フ
ヤウナコトハ申シマセヌ、今少シク御考慮
下サレマシ、テ御考直シヲシテ戴キタイト思
フノデアリマス、就キマシテ過日ノ建議委
員會ニ於キマシテ、「ニホン」ト呼ブベキカ
「ニッポン」ト呼ブベキカニ付テ、學者其ノ
他ノ意向ヲ問ヒ質シテ、サウシテ其ノ結果、
「ニッポン」ヲ可トスル者ガ四十何名、「ニ
ホン」ヲ可トスル者ガ六十何名云々ト云フ
ヤウナコトヲ御述ニナリマシタノデアリマ
スガ、學者ト云フヤウナ者ニ學術的ニ、歷
史家ト云フヤウナ者ニ歷史的ニ、ドチラガ
正シイト云フヤウニ御聽キニナレバ、勿
論「ニツポン」ガ惡クテ「ニホン」ガ良イト答
ヘラレルカモ知レナイト思フノデアリマス
ガ、併シ今日ニ至ツテハサウデナイデアラ
ウト考ヘルノデアリマス、「ラヂオ」ノ「アナ
ウンサー」デモ「ニツポン」ト常ニ稱呼シテ
居リマス、之ニ對シマシテ其ノ表題ヲ、例へ
バ「ニツポン」精神ニ付テ何々博士ノ御講演
ガアルト云フヤウナコトヲ「ラヂオ」ノ ブ·
ナウンサー」ガ言ヒマスト、其ノ次ニ立タ
レル學者ハ、或ハ「ニホン」精神ト云フヤウ
ニ述ベラレルカモ知レマセヌケレドモ、ニ
ホン」ト言ハウトシテ「ニツポン」ト言直サ
レルヤウナ實例ハ、此ノ委員會ニ於テ大臣
席カラモ委員席カラモ屢、聞ク所デアリマス
ノデ、此ノ現在ノ時代ニ於キマシテハ、何
レガ正シイカト云フヤウナ穿鑿ハ旣ニ無用
ノ穿鑿デアリマシテ、一日モ早ク國民全部
ガ、先刻文部大臣ガ述ベラレマシタヤウニ
稱呼シタイト私ハ考ヘルノデアリマス、併シ
ナガラ樋貝政府委員ガ建議委員會ニ述ベラ
レマシタ其ノ御照會ニナリマシタノハ、何
時頃御照會ニナリマシタノデアリマスカ、
其ノ御照會ノ文面ハドウ云フ文面デアリ
マシタカ、ドウ云フ方面ニ御照會ニナリマ
シタカ、サウシテドウ云フ方面カラドウ云
フ返答ガドノ位參ツテ居ツタノデアリマス
カト云フコトヲ御伺シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=92
-
093・樋貝詮三
○樋貝政府委員 先日建議委員會デ申上ゲ
マシタニ對シマシテノ今ノ御引用ハ、少シ
實ハ〓違ツテ居リマス、過日申上ゲマシタ
ノハ、速記ヲ御覽戴ケバ能ク分リマスガ、
一應政府デドノ位ノ程度マデ進ンデ居ルカ
ト云フコトヲ申上ゲマシテ、本年內ニモサ
ウ云フヤウナコトハ確定シタイト思フト云수
フコトヲ申上ゲマシテ、唯決定スルニ付キ
マシテハ正シイモノニ決定シナケレバ、早
クサヘ決定スレバ宜イノダ、正シクナイニ
拘ラズ强ヒテソレヲ言ハサネバナラナイト
云フ態度ハ一寸執リ難イト考ヘテ居リマス
ノデ、其ノ時ニ尙ホ附加シテ、參考トシテ
申上ゲマスガ、是ハ政府デヤツタノデハア
リマセヌケレドモ、私人デアリマスガト言
ツテ、相馬御風サンノ發シタ照會ニ付テノ統
計ヲ申上ゲタヤウナ譯デアリマス、政府ガ去
年學者ヤ色々ナ方面ニ照會ヲ發シテ、返事
ヲ取ツテ統計ヲ取ツタト云フ譯デハアリマ
セヌ、ソレデ政府デハ去年ドウ云フ風ナ態
度ヲ執ツタカト申上ゲマスレバ、今御聽キ
ニナツタヤウニ、段々ニ具體的ニ〓究ヲ進
メテ參リマシタ、初メハヤラナケレバイケ
ナイダラウト云フヤウナコトヲ考ヘマシ
テ、ソレカラ次ノ時ナドニハモツト突込ン
デ各種ノモノヲ〓究シ、、公ノ文書ニ付テモ
諸種ノ取調ヲスルト云フヤウナコトニナツ
テ參リマシタ、初メハ佐藤サンノ御引キニ
ナルヤウニ、大「ニツポン」帝國ト申スカ、
大「ニホン」帝國ト申スカ、大日本帝國ト云フ
言葉自體モ是ガ相當ナリヤ否ヤト云フコト
デ相當疑問ニナツテ居ツタノデアリマス、
ソコデ大日本帝國ト云フコトニスルカ、「ニ
ホン」ト呼ブカ、「ニツポン」ト呼ブカハ別論
トシマシテ、サウ云フヤウナ正式ナ國號ト
云フヤウナコトノ餘程具體的ニナリマシタ
ノハ、實ハ樞密院ニ參リマシテ、條約ノ時ガ
ソレノ問題ノ起リマシタ動機デアツタノデ
ス、ソレデ以來正式ニ言フ時ニハ大日本帝
國ト言フコトニ略〓樞密院ト政府ノ方面ト
話ヲ付ケタ譯デアリマス、唯是ハ形容詞的
ニ使フ時ニ一々大日本帝國トヤツテ居タノ
デハ到底動キガ付カナイ場合ガアリマスノ
デ、略稱ヲ使フモ妨ゲナシ、是ハ政府ト樞
密院ノ間ニ話合ニナリマシタ結果デアル、ソ
レ以後大日本帝國ト云フコトガ餘程普及シ
テ參ツタ、是ハ元々憲法デ御承知ノ通リニ
サウ使ハレテ居ルシ、其ノ當時ニ於キマシ
テハ丁度先程御引キニナツタ議會ニ於キマ
シテモ、皇國ト言フベキデアツテ帝國ト言
フベキヂヤナイト云フヤウナコトヲ兩院ニ
於テ屢〓、申サレマシタ、衆議院ノ方デモサ
ウ云フコトガ或ハ請願ノ形ニ於テ、或ハ建
議ノ形ニ於テ現ハレタヤウニ存ジテ居リマ
スガ、貴族院ニ於キマシテモサウ云フコト
ガ起リマシテ、帝國ト申スコトハ決シテ差
支ナインダ、單獨ニ帝國ト云フコトヲ仰セ
ラレテ居ルノモ明治天皇樣ノ御勅語ノ中ニ
モ澤山ニアルシ、憲法ノ發布ノ時ノ御勅語
三、五、或ハ國際聯盟脫退ノ當時ニ於ケル御
勅語ニモ引用サレテ居ルノデアリ、ト云フ
ヤウナコトデ、帝國ト云フコトニ付キマシ
テモ初ニハ左樣ナ異論ガアリマシタ、皇國
ト言ハネバナラヌト云フヤウナコトガアリ
マシタ、先ヅ大體今日ニ於キマシテハサウ
云フ譯デ政府ト樞密院トノ關係ニ於テハ大
日本帝國ト正式ニ呼ブ時ニハ呼ブト云フコ
トマデハ略、〓一致シタコトデアル、ソコデ
ソレヲ「ニホン」ト言フカ「ニツポン」ト言フ
ベキカト云フコトニ付キマシテハ、正シキ
モノニ決メルト云フコトデナケレバイケナ
イト思ヒマス、ダカラ是ハ先程カラ佐藤サ
ンノ御意見モ伺ツテ居リマシタケレドモ、
確ニ歷史モ尊重シナケレバナラヌト思ヒマ
ス、國名ノ如キモノハ殊ニ歷史ノ產物デ
アツテ、便宜ノ爲ニ製造スルト云フガ如
キモノデアツテハナラヌト私ハ考ヘテ居
リマス、現ニ最近ニ於キマシテ「ニツポ
ン」ト云フコトガ此ノ議會ニ現ハレマシ
タ議員ノ方ノ御論議ノ趨勢ト申シマセウ
カ、全體ノ雰圍氣ト申シマセウカ「ニツポ
ンレト呼ブ方ガ力强クテ宜イト云フヤウナ
御考ガ反映シマシテ色々ナ方面デ「ニツポ
ン」ト呼ブ部分ガ殖エテ參リマシタ、ソコ
デ色々考ヘナケレバナラヌト云フコトハ、
歷史ヲ尊重スルト云フ立場カラ考ヘ、殊ニ
國語ナルモノニ付テノサウ云フ必要カラ考
ヘマスト「ニホン」ト言フ方ガ宜イヂヤナイ
カト云フヤウナコトモ言ヘルノデゴザイマ
ス、又他方事實トシテ相當ニ「ニツポン」ト
云フ方ガ廣クナツテ來タト云フ點ニ顧ミ、
又外國人ノ便宜ト、先程承ツテ居リマシタ
ガ、外國人ガ日本ヲ呼ブコトノ便宜ト云フ
御話モアツタヤウニ拜聽致シマシタ、サウ
云フコトモ亦或ル程度ニハ考ヘナケレバナ
ラヌ、ケレドモ外國人ガ我國ヲ呼ブ便宜ト
3
云フコトヲ主ニシテ之ヲ決定スルト云フコ
トモ出來ナイコトデアリマス、ソレ等ノコ
トデ國號ノコトハドウデモ構ハナイト言ヘ
バソレハ別デスケレドモ、決定シヨウト云
フ時ニナリマスト、相當愼重ヲ期サナケレ
バナラヌト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、
隨テ「ニホン」ナリ「ニツポン」ナリガドノ程
度ノ沿革ヲ持チ、又ドウ云フヤウナ今日ノ
實情ニアルカト云フヤウナコトヲ調査致シ
マシテ、恐ラクハ是ハ閣議ニデモ諮リマシ
テ確定シナケレバ、一官省ガ自分ノ部分ダ
ケデ以テ、或ハ一ツノ學會ダケガ斯ウ言フ
ベキダ、斯ウ言フノガ當然ダト云フヤウナ
コトヲ輕々ニ論議スベキモノデハアルマイ
ト思ヒマス、或ル場合ニ於キマシテハ更ニ
其ノ上ノ御判斷マデ願ハナケレバナラヌト
云フヤウナ場合ガ生ズルカモ知レマセヌ、
少クトモ閣議ニデモ諮ツテ正シク之ヲ決メ
ルト云フコトガ執ルベキ途デアラウト考ヘ
さく、昨年ニ於キマシテモ、近衞內閣ガ出
來マシテ間モナイ頃、サウ云フ方法ヲ執ラ
ウト云フ譯デサウ云フコトモ、後程問題ニ
シヨウト云フヤウナ所マデ參ツテ居リマシ
タ、其ノ後御承知ノ、事變ガ勃發致シマシ
テ、ソレ等ノ點ニ付テノ具體案ハナシ、色
色論議スルマデ參リマセヌ、昨年ガ過ギ今
年ニナツタト云フ譯デ、延ビ〓〓ニナツテ
居ル譯デアリマスガ、先程モアナタカラ樋
貝ガ側デ耳打シタト云フヤウナ御話デアリ
マシタガ、文部大臣ト耳打シタノハソンナ
事ヂヤナイノデス、本年ハ一ツ閣議ニデモ
諮ツテ決メルヤウナ處置ヲ執リタイト思ヒ
マスト云フ話ヲ致シテ居ツタノデ、アナタ
ノ御話トハ非常ニ距離ノアル耳打ノコトデ
アツノタデアリマスガ、ソレハ兎ニ角トシ
テ、サウ云フヤウナコトデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=93
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094・野村嘉六
○野村委員長 佐藤君、アタナノハマダ餘
程長クナリマスカ、失禮デスガ其ノ問題ハ
モウ何遍モ聽イテ居ル問題デアリマスカ
ラ、ドウカ簡單ニシテ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=94
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095・佐藤與一
○佐藤委員 承知致シマシタ、只今樋貝政
府委員ヨリ御誠意アル御答辯ヲ戴キマシ
テ、洵ニ滿足スル者デアリマスガ、併シド
ウモ歷史的ニ又學術的ニ、ドチラガ宜イカ
ト云フコトヲ御調ベニナルト云フ方ニ尙ホ
沒頭シテ居ラレルヤウニ私御見受スルノデ
アリマシテ、サウ云フヤウナコトニナリマ
スト、容易ニ其ノ結果ガ得ラレナイト思フ
ノデアリマス、只今或ハ閣議ニ諮ラナケレ
バナラヌデハナイカ、又ハ今年ノ中ニ之ヲ
決メタイモノダト云フヤウナ御意向ヲ聽キ
マシテ、洵ニ喜バシク感ズルノデアリマス、
岡田内閣ノ時、岡田内閣總理大臣カラ聽イ
タコトデアリマスガ岡田內閣總理大臣ハ、
他ノ委員會デアリマシタカ、慥カ此ノ前ノ
內閣デアツタト思フガ、國號ハ大「ニツポ
ン」帝國ト云フヤウニ決メラレテアル筈デ
アルト云フコトヲ申サレタコトガアリマ
ス、ソレカラ又他ノ閣僚ノ御話ニ依リマス
ト、是ハ閣議ニ出テドチラガ宜イカト云フ
ヤウナ相談ハアツタケレドモ、總理大臣ガ
其ノ決ヲ採ルノヲ御忘レニナツテ其ノ儘ニ
ナツテ居ツタト云フヤウナコトモ承ツテ居
ルノデアリマス、ドウカ先刻私ガ御尋シ
マシタコトバ、相馬御風サンガ、御調べニ
ナツタト云フコトデアリマスケドモ、其
ノ結果等ニ付テ、樋貝政府委員カラ御發表
ニナツタ所ニ徵シマシテモ、如何ナル文句
ノ問合セヲ如何ナル範圍ニオヤリニナツ
テ、如何ナル返答ガ參ツタカト云フコトハ
政府ニ於テモ、オ分リダラウト思ヒマスカ
ラ、ソレヲ御聽キシヨウト思ヒマシタケレ
ドモ、ソレハ後デ御調ベノ上聽カセテ戴
ケバ大變結構デアルト思ヒマスス、只今
御答辯ノ如ク誠意アル御處置ヲ執ラレルヤ
ウニ重ネテ御願致シマシテ、樋貝政府委員
ニ對スル質疑ヲ終リタイト思ヒマス
次ニ圖書局長ニ對シマシテ先刻私質疑ヲ
致シマシタコトハ、國語ハ是非尊重シナケ
レバナラヌ、國ノ獨立、國ノ發展ト云フモ
ノハ國語ニ依ルト云フ點カラ質疑ヲ致シタ
ノデアリマスガ、幸ニ文部大臣ハ我ガ國語
ノ急激ナル改革ハ爲スベキモノデハナイト
云フ御言明デアリマスカラ、現文部大臣御
就任中ハ絕對サウ云フコトハアルマイト思
ヒマスケレドモ、文部省ノ國語審議會、其
ノ前身ノ臨時國語調査會等ニ於キマシテ、
先刻圖書局長ヨリモ御述ベノヤウニ、漢字
ノ問題デアルトカ、假名遣ノ問題デアルト
カ、其ノ他色々ノ問題ガ色々考究セラレタ
ノデアリマスガ、其ノ結果ヲ知リタイノデ
アリマス、是モ只今御答辯ナクトモ後デ宜
シウゴサイマスカラ、其ノ審議ノ狀況竝ニ
其ノ結果ガ答申ニ現ハレタ事柄ニ付テ、詳
細御發表ヲ御願シタイノデアリマス
時間モ大分遲クナリマシタカラ簡單ニ唯
一ツ質疑致スノデアリマスガ、文部省ノ臨
時國語調査會ニ於テ定メラレマシタ假名遣
ノ問題-字音ノ假名遣ハ別ト致シマシ
テ、國語ノ訓ノ方ノ假名遣ハ、其ノ決定ガ
極メテ不合理デアリマシテ、我國ノ國語ノ
靈妙ナル動詞ノ變化ヲ無視シ、國語ノ生命
ヲ奪フガ如キモノデアルト私ハ考ヘルノデ
アリマス、其ノ後餘程改善セラレタコトハ
事實デアリマスケレドモ、或ハ若シ〓科書
ニデモ用ヒラレルコトニナルト、洵ニ由々
シキ問題ヲ生ズルト思フノデアリマス、國
語ヲ殺スヤウナコトニナルノデアリマスカ
ラ、サウ云フコトノナイヤウニシテ戴キタ
イノデアリマス、或ハ抑々小學校ノ〓科書
ガ改訂ニナルノデアリマシテ、ソレガ用ヒ
ラレツツアルノデアルカ、ドウデアルカ、
又先刻モ申上ゲマシタ許容事項ノ如キモノ
ハ、今ハ許シテアリマスケレドモ、アレハ
許サナイ方ガ宜イノデハナイカ、特ニ文部
省カラモ屢〓注意サレテ居リマスノニ拘ラ
ズ-文部省カラハ皇室ニ關スルコト等ハ
特ニ注意ヲセンケレバナラヌト云フヤウニ
訓令ヲ御發シニナツテ居ルニ拘ラズ、過日
委員長ノ机ノ上ニ積ンデアリマシタ〓科
書-是ハ文部省カラ出マシタ國定ノ〓科
書デハアリマセヌケレドモ、靑年學校ニ用ヒ
ラルベキ〓科書ニ、靑年ニ賜ハリマシタ御
令旨ガ揭ゲラレテアルノデアリマスガ、其
ノ一番末ノ方ニ「勗メムコトヲ望ム」トアリ
マスガ、其ノ「勗メム」ノ「ム」ト云フノハ
「ム」ト云フ假名ヲ用ヒナイデ「ン」ト云フ假
名ヲ用ヒナケレバナラヌト私ハ心得テ居リ
マスガ、其處ニ「ム」ト云フ假名ヲ使ツテアル
ノデアリマス、斯ウ云フコトハ、些細ノコ
トノヤウデアリマスケレドモ、勅語若クハ
御令旨ト云フヤウナ有難イ御言葉ヲ奉戴ス
ル上ニ於テ注意センケレバナラヌト考ヘル
ノデアリマスカラ、是等ニ付テモイマ少
シ-是ハ或ハ文部省デ檢定濟ニナツテ居
ルカドウカ分リマセヌ、慥カ靑年〓育會カラ
出テ居ル本ダト思ヒマスガ、サウ云フヤウナ
點ニ付テ格段ナル注意ガ欲シイト考ヘルノ
デアリマスガ、是等ノ點ニ付テ圖書局長ノ
御意見ヲ承ルニ止メテ、私ノ質疑ヲ了ヘタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=95
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096・近藤壽治
○近藤政府委員 今ノ御質問ニ御答致シマ
スガ、靑年學校ノ〓科書ハ只今檢定中デア
リマシテ、マダ檢定濟ノモノハゴザイマセ
又、今御話ノヤウナ誤字デアリマスカ、或
ハ誤植デアリマスカ、サウ云フ點ハ特ニ注
意致シテ指示シタイト思ツテ居リマス、其
ノ點ハ御注意トシテ有難ク承ツテ置キマス
假名遣ノ問題ハ、アノ當時假名遣改訂案ガ
出來マシタガ、實際上之ヲ運用スト云フコ
トニハ尙ホ色々〓究スル餘地アリト、アナ
タ方モ御思ヒデアリマセウガ、私ノ方デモ
左樣ニ思ツテ居リマス、ソシテ是ハ尙ホ國
語審議會等ニ於テモ愼重ニ一ツ考ヘテ、今
ノ御話ノヤウニ、三千年來ノ我國文化ノ基
本ニナル國語デアリマスカラ、是モ便宜一
點張リヤ一ツノ道具視シテ、勝手ニ決定ス
ベキモノデハナカラウト私ハ思ヒマス、愼
重ニ考慮シヨウト云フノデ、今檢討中デア
リマス、左樣御承知願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=96
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097・野村嘉六
○野村委員長 河合君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=97
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098・河合義一
○河合委員 唯一ツ御伺シマス、現制度ノ
下ニ實施サレテ居リマス靑年學校デ、就學
率其ノ他ノ點カラ最モ優レタ靑年學校ヲ〓
ヘテ戴キタイ、私ハ實際的ニ卽シテ計畫ヲ
進メテ行クノガ宜イト思ヒマスシ、個人的
ニ申シマシテモサウ云フノヨ二三見タイト
思ヒマス、文部省ノ方ニ於テハ旣ニソレガ
分ツテ居ルト思ヒマスカラ、何處々々ノ靑
年學校ガ非常ニ能ク行ツテ居ルト云フダケ
デ宜シウゴザイマスカラ、御示シ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=98
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099・田中重之
○田中政府委員 只今ノドレガ一番宜シイ
カト云フコトニ付テハ、他ノ學校等ノ關係
モゴザイマスシ、非常ニ良イ學校ガ多イ
ノデアリマスカラ、特ニ一二ニ付テ申上ゲ
ルコトハ避ケタイト思ヒマスガ、他ノ機會
ニ便宜申上ゲルコトハ出來ヤウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=99
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100・野村嘉六
○野村委員長 椎尾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=100
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101・椎尾辨匡
○椎尾委員 私初メニ御伺シタ時ニ、靑年
學校其ノ他ノ〓育ノ時局ニ對應シテ特ニ施
設セラルベキコトガアリサウナモノデア
ル、ソレガ審議會ノ方デドウナツテ居ルカ
ト云フコトヲ聽キマシタ所、文部大臣ハサ
ウ云フ方面ハ文部省デ直接ニヤル、卽チ永
遠ノモノハ審議會デヤルガ、直接ニ時局ニ
對應スルコトハ文部省ノ方デヤルト云フ御
話デ、ソレ以上ノ追究ヲ致シマセヌデシタ
ガ、先程モ御話ニ出マシタヤウニ、時局ニ
對應シ、國運ノ新發展ニ應ズベキ各種ノ〓
育ガ、文部省ヲ離レテ各省ヘ分散シテ參リ
マスコトハ、文部省ガ時局ニ對應スル當面
ノ行キ方ヲ怠ツテ居ル爲カ、或ハ斯カル趨
勢ヲ輕ンジテ居ル爲ダト思フノデアリマス
ガ、其ノ點ハ如何デアリマスカ
モウ一ツハ靑年學校ニ付キマシテ、旣ニ御議
論モ出タノデアリマスガ、此ノ頃晝間ニシテ
ハドウダト云フコトニ對シテ、政府委員ハ極
メテ輕ク之ヲ扱ハレマシタガ、都市ニ於キマ
シテノ靑年學校ノ成績ハ、最近時局ノ影響ヲ
受ケマシテ、〓練ヲ主ニシテ居リマス爲
ニ、稍〓緊張シテ居ルコトハ事實デアリマス
ガ、一般ニ申シマスト、都市ハ、夜間ノ靑
年學校ノ爲ニ店員ガ非常ニ惡化スルト云フ
コトカラ、靑年學校參加ヲ嫌ツテ居ルノデ
アリマス、ソレ故ニ靑年學校ヲ今度義務制
トシテ實施シマス場合ニ、農村ニ於キマシ
テハ全日通年ノ制度ハ最モ望マシイコトデ
アリマスガ、サウデナイニシテモ農閑季ヲ
主トシテ晝間全日ノコトガ出來ルデアリマ
セウカ、都市ニ於テハ時期ハ左樣ニ限ルコ
トハ出來マスマイガ、勤勞時間中ニ之ヲ加
ヘルトシテ、同時ニ、晝間制度ヲ採ルト云
フコトハ、餘程ノ御考慮ヲ拂ハレマセヌケ
レバ、結局靑年學校ハ、是マデノ一般成績
カラ言フナラバ、半分ハ惡化スルモノデア
ル、善イモノハ少部分デアルト云フコトニ
ナルト思ハレルノデアリマス、此ノ點ニ付
テ、靑年學校ノ本當ノ有效ナル成績ヲ擧ゲ
マス爲ニ、晝間制ヲ採ルト云フコトニ付テ、
モツト深甚ナ御考慮ヲ御拂ヒニナラナケレ
バ、都市ノ靑年學校ノ成績ニ對スル文部省
ノ調査、從來ノ統計等ハ甚ダ不確實ナモノ
ガ多イヤウニ感ズルノデアリマスガ、ドウ
デセウカ、最近地方ヲ廻リマスト、昨年ノ
末カラデアリマスガ、殊ニ本年ナドノ文部
省ノ出張ハ、極メテ綿密デアツテ、正確デ
アツテ、初メテ文部省ノ出張ガ價値ガアルト
云フコトヲ各所デ聞キマスガ、ソレハ半面
カラ申シマスト、從來ノ出張ハホンノオ座ナ
リデアツテ、本當ノ成績ヲ見テ居ラレヌト
云フコトヲ各都市デ言フノデアリマス、私
モ最近屢〓休日ダケヲ使ヒマシテ、各都市ヲ
廻ツテ居リマスガ、サウ云フコトニ付テ靑
年學校ニ對スル實行上ニ疑惧ヲ持ツテ居ル
點ガ非常ニ多イノデアリマスカラ、其ノ點
ニ付テ晝間制ヲ御採リニナルコトニモツト
深甚ノ考慮ヲ拂ツテ戴ク御考ガアルカドウ
カ、又サウ云フ風ニ最近ノ文部省ノ出張調
査ト、昨年ノ十月以前マデノ出張調査等ニ
於テ大分程度ノ違ツタ所ガアルト御感ジニ
ナツテ居ルコトガアルカドウカ、其ノ點ヲ
伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=101
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102・田中重之
○田中政府委員 靑年學校ノ授業時刻ノコ
トニ付テノ御質問デアリマスガ、御承知メ
通リ、先般〓育審議會ニ於キマシテ、靑年
學校ノ義務制ノコトガ審議セラレマシタ時
ニ於キマシテ、文部省カラ出シマシタ其ノ
原案ニモ、靑年學校ノ授業時刻ハ晝間ヲ採
リマス、但シ土地ノ情勢ニ依ツテハ夜間ヲ
認メル、斯ウ云フ要綱ヲ提出致シタノデア
リマス、之ニ對シマシテ〓育審議會ニ於キ
マシテモ、非常ニ御贊成ヲ下サイマシテ、
是非サウスルヤウニト云フ御話デアツタノ
デアリマス、ソコデ是ハ申上ゲルマデモナ
〃、〓育的ニ考ヘテ見マスルト、〓育ノ效
果ノ上カラ申シマシテモ、或ハ又國民體位
ノ上カラ申シマシテモ、靑年學校ノ〓育ガ
原則トシテ晝間制ニ移行シナケレバナラヌ
ト云フコトハ、是ハ議論ノ餘地ノナイコト
デアラウト思フノデアリマス、而シテ實際
ノ狀況カラ申シマシテ、然ラバドウカト申
シマスルト、靑年學校卽チ夜學デアルト云
フヤウナ通念ガドウモ今日瀰漫シテ居ルヤ
ウニ考ヘルノデアリマスガ、此ノ通念ハ實ハ
誤レル過去ノ通念デアリマス、今日ノ實情
ニ於キマシテハ、只今椎尾サンカラ御話ガ
ゴザイマシタヤウニ、農村方面ニ於キマシ
テ、殊ニ靑年〓育ニ關心ノ深イ方面ニ於キ
マシテハ、晝間ニ於キマシテ靑年學校ヲ經
營シテ居ル所ガ段々殖エテ來テ居ルノデア
リマス全日通年制ノ學校ノミナラズ、「パー
ト·タイム」ノ學校ニ於キマシテモ、晝間ニ
於テ行ツテ居ルト云フ方面ガ殊ニ西日本ニ
於キマシテハ非常ニ多クナツテ居ルノデア
リマス、又全部晝間デハアリマセヌデモ、
授業ノ一部分ヲ晝間ニ行ヒ、一部分ヲ夜行
フト云フ所モ大分アリマス、今日ノ實情カラ
申シマシテ、極ク大雜把ニ大觀シテ申シマ
スト、靑年學校ノ三分ノ一位ハ授業ノ全部
ヲ晝間ニ於テ行ツテ居リマス、三分ノ一位
ハ授業ノ全部ヲ夜間ニ於テ行ツテ居リ、ア
トノ三分一位ハ一部分ハ夜間ニ於テ、部
分ハ晝間ニ於テ行ツテ居ル、斯樣ナ狀況デ
アリマス、而シテ晝間ニ行フモノガ漸次殖
エツツアル實狀デアリマシテ、其ノ點ハ當
局トシテモ非常ニ喜バシク思ツテ居ルノデ
アリマシテ、斯ウ云フ實情ヲ考慮致シマシ
テ、先程申シマシタヤウナ原案ヲ〓育審議
會ニ提案ヲ致シタヤウナ次第ナノデアリマ
ス、ソコデ此ノ際ハ一步ヲ進メテ全部晝間
ニヤツテシマツタラ宜イデハナイカト云フ
ヤウナコトハ、是ハ一ツノ議論トシテハ考
ヘラレルノデアリマスケレドモ、是ハ農村
ニ於キマシテモ、全國一擧ニ行フト云フコ
トハ、中々難カシイ點モアリマシテ、殊
設備ノ關係モアリマシテ、晝間ニスルニハ
少クトモ專用ノ〓室モ必要トスル實情デア
リマスシ、又產業界ニ及ボシマスル影響モ
アリマスノデ、一擧ニ晝間制ヲ畫一ニ行フ
ト云フコトハ、相當困難ガアルノデアリマ
ス、ソコデ原則トシテハ晝間デアルガ、夜
間モ認メルト云フヤウナ行キ方デアリマス、
只今御話ノゴザイマシタヤウニ、農村ニ於
テハ段々行ハレテ居ルガ、都市ニ於テハマ
ダ夜間ガ多イヂヤナイカト云フ御話デゴザ
イマス、併シ是モ成ベク晝間ニ移行セシムル
ヤウニ努力ヲシナケレバイカヌヂヤナイカ
ト云フ御話デアリマシタガ、其ノ通リナノ
デアリマシテ、今日都市ニ於キマシテハ、
遺憾ナガラ夜間ノモノガ多イノデアリマス、
併シ之ヲ成ベク晝間ノ方ニ持ツテ行クヤウ
ニ致シタイト云フノガ當局ノ念願デアリマ
ス、勞働時間ニ關シマスルヤウナ法律ガ幸
ニシテ協賛ヲ得マスルナラバ、是等ノ點ニ
對シマシテモ、餘程ノ便宜ガ得ラレルヂヤ
ナイカト考ヘテ居リマス、當局ト致シマシ
テモ、此ノ點產業ノ狀況、又土地ノ財政ノ
狀況等ニモ關係致シマスノデ、急激ニ一擧
ニト云フコトハ困難デアリマスガ、サウ云
フ方面ニ向ヒマシテ餘程ノ熱意ヲ以テ考慮
ヲ加ヘタイト云フ意向ヲ持ツテ居リマス、
又次ニ靑年學校ノコトカト存ジマスルガ、
一般的ノコトデゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=102
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103・椎尾辨匡
○椎尾委員 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=103
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104・田中重之
○田中政府委員 一般的デアリマスト、私
カラ申上ゲルコトハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=104
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105・小柳牧衞
○小柳政府委員 只今時局ニ關係ノアル〓
科ノ仕事ハ各省ニ分屬致シテ居ルヤウナ狀
況デアリマス、文部省ノ手ヲ離レテ居ルト
云フコトハ、甚ダ當ヲ得ナイト云フ御質問
ノヤウニ拜承致シマシタガ、現在ノ狀況ハ
先刻モドナタカノ御質問ニアリマシタヤウ
ニ、時局ノ必要ニ依ツテヤル廣イ意味ノ〓
育ト申シマセウカ、サウ云フヤウナ種類ノ
モノガ各省ニ於テ行ハレテ居ルコトハ事
實デアリマス、本來〓育ニ關スルコトハ、
勿論文部省ノ下ニ統制ヲシテ其ノ實施ヲ圖
ルベキコトハ是ハ勿論デアリマス、此ノ趣
旨ハ何處マデモ徹底セシムルヤウニ努力シ
ナケレバナラヌト存ジマスルガ、唯併シ比
較的期間ノ短イ講習トモ申スベキ種類ノモ
ノニ依リマシテハ、其ノ〓育ヲ受ケル者ノ
立場、又其ノ講習等ヲ終ヘテ後ノ職務ノ關
係竝ニ其ノ〓育ヲ施ス講師其ノ他ノ便宜ト
云フ點ヨリ考ヘマシテ、各省ニ於テ行フコ
トモ實際トシテハ已ムヲ得ナイモノガアル
デアラウト存ジマス、是等ハ要スルニ程度
ノ問題デアリマスルガ、併シ苟モ〓育ニ關
スル重要ナルコトハ、文部省デ統轄スベキ
モノデアルト思フノデアリマス、要スルニ
其ノ講習トモ申スベキ〓育ヲ受ケテ居ル者
ハ、謂ハバ學科本位ノ〓育ヲ受ケテ居ルト
見テ宜シイノデハナイカト思ヒマスルガ、
之ニ反シマシテ〓育全體トシテノ〓習ト申
シマセウカ、サウ云フヤウナ種類ノモノニ
付キマシテハ、出來ルダケ文部省デ統轄ス
ベキモノデアルト存ジテ居リマス、ソレカ
ラ學校其ノ他ノ視察、督學ニ關スル問題ノ
御質問ガアツタヤウニ拜聽致シマシタガ、
御示シノヤウニ昨年ノ夏頃ヨリ督學ニ關ス
ル內規ヲ改メタノデアリマス、自然其ノ結
果等ニ於キマシテモ色々異ツタ結果ヲ持チ
來シタノデハナイカ、斯ウ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=105
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106・野村嘉六
○野村委員長 是デ質問ハ全部終了致シマ
シタ、ソコデ御相談致シマスガ、明日ハ各
黨派ニ於テ色々協議ガアルコトト存ジマ
ス、隨ヒマシテ明後日午前十時ニ開會致シ
マシテ、討論竝ニ採決ヲ致シタイト考ヘマ
スガ、如何デセウカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=106
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107・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ左樣ニ致シマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時五十一分散會
衆議院靑年學校〓育費國庫補助
法案委員會議錄第十囘中正誤
頁段行誤正
1一二一二「プラトニズ「ヒロツオイ
스ズム」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007412002X01219390306&spkNum=107
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