1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十四年二月二十一日（火曜日）午後三時十八分開議
出席委員左の如し
委員長 菊池良一君
理事 岡野龍一君 理事 田中好君
理事 森下國雄君 理事 葉梨新五郎君
岩瀬亮君 粟山博君
吉植庄亮君 川崎末五郎君
成島勇君 朴春琴君
内藤守正君 石坂繁君
高田耘平君 須永好君
小田榮君 松山常次郎君
沖島鎌三君 木村正義君
同日委員松岡俊三君辭任に付其の補闕として三善信房君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
大藏參與官 矢野庄太郎君
大藏書記官 松隈秀雄君
拓務政務次官 寺田市正君
拓務參與官 江藤源九郎君
拓務省殖産局長 植場鐵三君
拓務書記官 森重干夫君
臺灣總督府總務長官 森岡二朗君
臺灣總督府財務局長 嶺田丘造君
臺灣總督府殖産局長 田端幸三郎君
樺太廳長官 棟居俊一君
本日の會議に上りたる議案左の如し
明治四十五年法律第二十三號中改正法律案（樺太に於ける石炭の採掘に關する件）（政府提出）
臺灣米穀移出管理特別會計法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/0
-
001・菊池良一
○菊池委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、明
治四十五年法律第二十三號中改正法律案、
卽チ樺太ニ於ケル石炭ノ採掘ニ關スル件ニ
付キマシテハ、旣ニ質疑ハ前會デ終了致シ
マシタ、仍テ直チニ討論ニ移リマス-粟
山博君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/1
-
002・粟山博
○粟山委員 私ハ只今議題ニナツテ居リマ
ス明治四十五年法律第二十三號中改正法律
案ニ對シマシテ、民政黨ヲ代表シテ贊意ヲ
表スル者デアリマス、此ノ機會ニ我黨ヲ代
表致シマシテ、樺太廳當局ノ方々ニ對シテハ
勿論、大藏省、商工省、農林省、拓務省等
ノ關係諸省ニ對シマシテ深キ注意ヲ促シ、
寧ロ進ンデ內閣全體ニ注意ヲ促シタイト思
フノデアリマス、本案ノ骨子ハ第一條ノ
部ヲ改正スルニ過ギナイ極メテ簡單ナル文
字デ滿サレテ居ルノデアリマスガ、此ノ案
ヲ審議致シマスルニ當ツテ、今日マデノ委
員會ニ於ケル質疑應答ノ內容ニ照シマシテ、
洵ニ樺太ノ全體ノ國防上、產業上、殊ニ交
通運輸ヲ初メトシテ、林業、農業等ノ事柄
ノ諸般ニ亙ツテ、注意ヲ促スベキコトガ
多々アルノデアリマス、此ノ封鎖炭田ヲ開放
サレルコトハ、現下液體燃料ノ極メテ缺乏
セル我ガ日本ニ於キマシテ、其ノ量ト質ト
ノ多量ニシテ優良ナル點ニ於テ、我ガ國策
上特ニ此ノ開發工作ニ對シテハ、極力力ヲ
注ガナケレバナラヌト云フコトヲ痛感スル
ノデアリマス、今日マデ燃料問題ニ關スル
國民ノ關心ト云フモノハ、非常ナルモノガ
アツタノデアリマスガ、未ダニ此ノ自足自
給ト云フ目標ガ、十分徹底シテ居ラナイノ
デアリマス、幸ニ我ガ樺太ニハ、斯ノ如キ
豐量ニシテ優良ナル炭田ガアツテ、而モ當
局ノ御奮發ニ依ツテ開放サレルナラバ、蓋
シ之ニ依ツテ其ノ自足自給ノ大部分ヲ、私
ハ負擔シ得ルモノデハナイカト思フノデ
アリマス、此ノ液體燃料問題ニ付キマシ
テハ勿論、天然石油ノ試掘開發ニモ、更ノ
努力ヲ加ヘテ增量ヲ圖ラナケレバナラヌコ
トハ申スマデモアリマセヌ、併シ天然石油
ニ於キマシテハ、實際如何ニ努力致シマシ
テモ、當分ノ所中々七十万瓲ト云フ數字ヲ
擧ゲルト云フコトハ、是ハ容易デナイト思
フノデアリマス、併シナガラ日本ノ現在ノ
石油ノ需要、一般液體燃料ノ需要ト云フモ
ノハ、年々三四十万瓲以上ニモ達スル、年々
ノ此ノ新シク消費增ヲ加へテ居ル前途カラ考
ヘマスト云フト、洵ニ莫大ナル數量ニ達スル
ノデアリマス、其ノ數量ノ消費增ヲ負ヒナ
ガラ、而モ自足自給ノ目的ヲ達スルト云フノ
三、此ノ僅カナル天然石油ノ開發ノ如キ
ハ、洵ニ心細イ次第デアリマス、是ニ於テ此
ノ液體燃料ニ重點ヲ置イテ、此ノ方面ニ於
テ十分確信アル生產增ヲ圖ラナケレバナラ
ナイモノト、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、
此ノ場合ニ於キマシテ斯ノ如キ計畫ヲ示サ
レマシタコトハ、洵ニ我ガ意ヲ得タモノデ
アリマスケレドモ、此ノ液體燃料ノ必要ト、
其ノ生產ノ現狀トニ鑑ミマシテ、規模ハ甚
シク小ナルモノデアル、彼ノ帝燃會社ノ旣
設或ハ計畫中ノモノニ比較シマシテハ、
億二千万圓ノ會社ト云ヘバ、洵ニ其ノ形ニ
於テハ大キナモノニ見エマスケレドモ、實
際ノ生產數量ノ上カラ云ヘバ、我國ノ大キ
ナ需要量ノ燃料關係カラ眺メマスト云フ
ト、決シテ大キナ數字デハナイノデアリマ
ス、而モ此ノ殘サレタル十一億數千万瓲ニ
當ル大キナル炭田ノ大部分ガ、液體燃料ノ
適應性ヲ持ツテ居ルト云フコトヲ見ル時ニ
於キマシテハ、ドウシテモ御當局ニ液體燃
料ニ付テ、モツト〓〓御奮發ヲ願ハナケレ
バナラヌ、此ノ意味ニ於キマシテ、私ハ大藏
當局ハ大處高處カラ考ヘテ、樺太當局ノ新
ナル計畫ニ十分協力ヲセラレ、商工省ニ於テ
モ、拓務省ハ勿論ノコト各關係省ニ於キマ
シテ、力ヲ協セテ此ノ富鑛ヲ我ガ國策ニ副フ
ベク意義アラシメルヤウニ、根本的ノ對策
ヲ講ジテ戴キタイ、殊ニ實際問題トシテ懸
念サレル所ノモノハ、帝燃會社ハ三年前ニ
計畫サレタルモノデアリマス、三年間ニ於
テノ我國ノ内外ノ情勢ハ著シク變化シテ居
ルノデアリマス、此ノ著シキ變化ノ情勢ニ
應ジテ參リマスルノニハ、帝燃會社ガ當初
計算ニ入レマシタ設備等ニ付キマシテモ、
物價關係等カラ考ヘマシテ、當初ノ計畫デ
ハ其ノ目的ヲ達スルニハ到底困難ナモノガ
アリハシナイカ、ソレ等ノ點カラ考ヘマシ
テモ、新ナル情勢ニ應ズル上カラ考ヘマシ
テモ、是ハ更ニ根本的ニ編成替ヲシテ、帝
燃會社ヲ興シマシタル趣旨ニ鑑ミテ、其ノ
目的ヲ達スル爲ニ根本的ニ其ノ立直シヲシ
ナケレバナラヌ、其ノ立直シヲシナケレバ
ナラナイ機會ニ於テ、此ノ樺太封鎖炭田ノ
開放ニ付テ劃期的ノ御計畫ガアツテ欲シイ、
ソレハ卽チ我國ノ液體燃料ノ自給自足ト云
フ大キナ眼目ヲ目標トシテ、御計畫爲サレ
ンコトヲ先ヅ希望スルノデアリマス、其ノ
參考ニ申上ゲテ置キマスガ、御承知ノ通リ
ニ、液化ニ對スル特許トカ、或ハ方式ト云
フモノハ多々アルノデアリマス、併シ現狀
ニ於テハ何レモ祕密主義デ割據主義ニナツ
テ居ル、サウ云フヤウナ情勢ヲ續ケテ居ツ
テハ、到底本格的ナ最モ能率的ニ有效ナ開
發ガ出來ナイ、特許權ハ成程莫大ナル金ヲ
費シテ、會社ガ獲得シタル所ノ特權デアリ
マセウケレドモ、國ノ大事ノ前ニハ總テ忍
ビ得ル程度ノ犠牲ヲ忍ンデ、國策ノ大眼目
ニ合流スルト云フ考ノ上ニ、政府モ之ヲ誘
導シ、事業家モ之ニ從フト云フ考デナケレ
バナラヌ、此ノ事業ニ於テ殊ニ痛切ナル感
ヲ致スノデアリマス、ソレ等ニ對スル取扱
ヒ方、或ハ設備工作等ニ付キマシテ能率的
ナ統制ヲ考ヘル、或ハ製造技術ニ付テ各社
ノ連繫ヲ圖ルトカ、或ハ又〓究實驗機關ノ
連繫ヲ圖ツテ、サウシテヨリ有效ナラシメ
ルト云フヤウナコトハ、ドウシテモ是ハ大
處高處カラ考ヘテ連繫ヲ保タナケレバナラ
ヌノデアリマス、殊ニ技術者ノ養成ノ如キ
ハ、本院ニ於テモ貴族院ニ於テモ、繰返シ
テ昨年來論議サレテ居ルノデアリマスルケ
レドモ、實際ノ必要ノ上カラ考ヘマシテハ、
私ハ甚ダ不十分デアルト云フコトヲ痛切ニ
考ヘザルヲ得ナイモノデアル、ソレ故ニ私
ハ是等ノコトヲ考ヘマスルト、帝燃會社ノ
豫算ト云フモノガ、今マデノ豫算デハ當初
豫想シタ所ノ數量ヲ擧ゲルニハ中々困難ナ
モノガアル、況ヤ年々ノ激シキ消費增ノ現狀
カラ鑑ミマスルト、ドウシテモ非常ナ奮發
ヲシテ編成替ヲシナクチヤナラヌノデアル、
斯樣ニ考ヘマスルガ故ニ、私ハ本案ノ改正
其ノモノノ文字ハ極メテ簡單ナモノデアリ
マスケレドモ、樺太廳ニ於キマシテモ國家
ノ重キニ於テ、此ノ日本ノ國情ノ重大性ニ
鑑ミテ、劃期的ノ御奮發アランコトヲ希望
ニ堪ヘナイノデアリマス、ソレカラ樺太ト
云フモノハ中々重要ナ地域デアル、併シナ
ガラ近年、殊ニ此ノ日支事變、更ニ遡ツテ
滿洲事變以來、國民ノ注意ハ滿洲ニ、北支
ニ、南支ニ、更ニ南洋ト云フ方面ニ向ヒツ
ツアル、勿論國ノ發展ノ爲ニハ大イニ是ハ
意ヲ强ウスベキ事柄デアリマスケレドモ、
其ノ爲ニ動モスレバ我ガ亞寒帶ニ於ケル唯
一ノ國民試練ノ修道場デアリ、國防上ニ於
テ、經濟上ニ於テ北進ノ據點デアル、北ニ
進ムベキ北進ノ根據地デアル、此ノ重大性
ニ照シテ、如何ニモ稍〓忘レラレントスル傾
向ガアツタノデアリマス、然ルニ今囘論ヨ
リ證據、力ガ物ヲ言フ樺太ニハ日本ノ本島
或ハ植民地、或ハ政治勢力圈內ニ把握スベ
キ其ノ廣イ地帶ニ見ルベカラザル優秀ナル
液體燃料ニ適スル多量豐富ナル優良炭ヲ埋
藏シテ居ル、卽チ是ダケデモ我ガ樺太ヲ能
ク見返セト叫ンデ、關心ヲ國民ニ促スコト
ノ力ヲ持ツモフト、私ハ考ヘル、殊ニ樺太
ハ露領ト國境ヲ足一步ニシテ、境シテ居
ル、國防上カラ國民ノ關心ヲ迎ヘルモノ極
メテ急ナルモノガアルノデアリマス、ソコ
デ此ノ國境關係カラ眺メマシテモ、露西亞
ノ方デハゲ·ペ·ウト云フ實ハ軍隊ニ依ツテ、
護ツテ居ル、日本ハ正直ニ條約ヲ守ツテ、
所謂警官ノミヲ以テ護ラレテ居ル、果シ
テ現狀ニ於テモ、樺太廳ニ於ケル其ノ警備
ノ施設ガ十分デアルカドウカ、殊ニ長官ノ
御示ニナルヤウニ、安別ニ於テ國策會社ヲ
設立シテ、此ノ優良ナル「コークス」炭ヲ以
テ日鐵ヲ誘致シテ、特殊會社ノ御計畫ガア
ルヤウニ聞イテ居ル、個人ノ經營ハ言フマ
デモナイ、特殊會社ノ設立ヲ見ルト云フヤ
ウナ場合ニ於テハ、特ニ國境ノ警備ニ付テ
ハ御關心ガナケレバナラヌト思フガ、ソレ
等ニ付キマシテモ、果シテ十分ナ費用ヲ求
メテ、警備ニ御差支ナイダケノ御用意ガア
ルカドウカ、アレバ結構デアリマスケレド
モ、長官ノ御苦心ニナリマシタ所ノ劃期的
ノ產業計畫ノ前途カラ考ヘマスト、此ノ方
面ニモモツト〓〓費用モ要リ、又御苦心モ
要ルノデハナイカ、私ハ斯樣ニ考ヘラレル、
又今マデ樺太ハ林業ニ主トシテ依存シテ居
ルケレドモ、林業モ稍〓計數的ニ言ヘバ行詰
リノ狀況ヲ示シテ居ル、是カラハ卽チ地下
資源ノ開發ト云フコトニ大イニ力ヲ入レナ
ケレバナラヌ、ソレニ長官ノ御考ニナツテ
居ル今日ノ御計畫ニ依ツテモ、中々大キナ
數量ガ年ニ現ハレテ來ルヤウニ思フ、然ル
ニ一面ニ交通運輸ノ狀態カラ考ヘマスト、
惠須取ニハ八千噸ノ船ガ三隻橫付ケニナル、
斯ウ御述ベニナツテ居ル、出來上ツタ曉ニ
於テハ、更ニ現狀ヨリモヨリ多クノ石炭ガ
掘ラレルコトニナル、此ノ惠須取ノ設備ハ
其ノ地方ノ石炭以外ニ利用セラルル餘地ハ、
蓋シナイモノト考ヘテモ宜カラウ、然ルニ
眞岡、本斗-唯一ノ不凍港デアリマス本斗
ハ、現在ノ計畫ガ完成サレテモ、三千噸ノ船ガ
三隻、若クハ四隻シカ橫付ケニナラナイ、最モ
大キナ樺太ノ港灣デアリマスル大泊ニ於テド
ウカト云フト、今ノ計畫ガ完成シタ曉ニ於
キマシテ、五千噸ノ船ガ二隻、三千噸ノ船
ガ四隻、其ノヤウニ承知シテ居ル、大泊一
箇年ノ積荷瓲數ガ四十万瓲、是マデノ樺太
ノ產業計畫カラ言ヒマスレバ、四十万瓲ト
云フモノハ、蓋シ非常ナル御奮發デアツタ
ニ相違ナイガ、是カラ此ノ非常時ニ臨ンデ、
此ノ物動計畫ノ大キナ線ニ沿ウテ、樺太ノ
天然資源ヲ思フ存分ニ開發シヨウト云フ時
ニ當ツテハ、現實ニ陸上ノ交通ニ付キマシ
テモ、港灣ノ水陸連絡ニ付テモ、設備ニ於
テ不足シテ居ル、今ノ計畫カラ順次ニ進マ
レルナラバ、容易ナコトデハナイ、總テノ
產業開發ノ爲ニハ水陸連絡ト云フモノハ、
總テノモノニ先驅スベキモノデアルノデア
ル、其ノ用意ガ十分ニ出來テ居ルカドウカ、
ソレガ卽チ生產計畫ノ見透シト竝行シテ居
ルカドウカト云フコトガ、極メテ重大ナ
「キー·ポイント」デアル、サウ云フコトヲ考
ヘマスル時ニ樺太當局ニ於テハ、其ノ抱負
經綸ヲ實現サルル上カラシテモ、玆ニ劃期
的ナ卽チ全面ニ亙ル計畫ヲ明ニ立テラレナ
ケレバナラヌ時デハナカラウカ、私ハ斯樣
ニ考ヘルノデアリマス、ソコデ國ハ益〓金ガ
要ツテ、今日モ本會議デ增稅案ニ對スル討
議ヲ耳新シク聽イテ來タバカリデアル、借
金ノミデヤツテ行クコトハドウカト思フガ、
吾々ハヤラナケレバナラヌモノハ公債デ賄
ツテモ結構デアル、國ガ生キテ行カウト云
フ時ニ、物ガ要ルカ、金ガ要ルカト言ヘバ、
金ヨリモ物ガ要ル、物ヲ多量ニ把握スル場
合ニ於テハ、卽チ財政計畫モ、金融計畫モ
成立チ得ルノデアル、其ノ物ヲ開發スルー
此ノ非常時ニ當ツテ大キナ線ヲ引イテ、
其ノ線ニ到達スル爲ニ物動計畫、生產擴充
ヲ爲スト云フ時ニハ、私ハ借金スルモ
可ナリ、但シ物ガ豐富ニ生產サレルコト、
ソレハ今日ノ場合ニ於テハ、已ムナキ
常道ナリト考ヘナケレバナラヌト思フ、
ソレ故ニドウゾ樺太廳ニ於キマシテハ、單
ニ樺太廳ノ長官ト云フダケノ御考デナク、
幸ニ棟居サンノヤウナ立派ナ方ガ長官ニナ
ツテ居ラレルコトヲ、非常ニ心强ク思フ、
ドウカアナタハ國家ノ重キニ任ジテ政府全
體ニ呼掛ケテ、其ノ資源ノ開發ニ、此ノ非
常時ノ大キナ線ニ沿フヤウニ、畫期的ノ御
計畫ヲナサランコトヲ希望スル、蓋シ議會
人ハ悉ク其ノ御計畫ニ贊成ヲ致シマシテ、
國力ノ培養ニ努力スルコトヲ惜マヌト私ハ
ハ思フ、甚ダ失禮ナ言分トハ存ジマスガ、
ドウカ此ノ上トモ御奮發アラレンコトヲ希
望致シマシテ、私ハ民政黨ヲ代表致シマシ
テ贊意ヲ表スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/2
-
003・菊池良一
○菊池委員長 沖島委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/3
-
004・沖島鎌三
○沖島委員 私ハ立憲政友會ヲ代表致シマ
シテ本案ニ贊成ノ意見ヲ申述ベタイト思ヒ
マス、先日ノ委員會ニ於キマシテ帝燃ノ事
業ノ前途ニ付テ、私ハ甚ダ多クノ不安ヲ持
ツテ居ルト云フコトヲ述ベマシタガ、之ニ
對シテ燃料局長ヨリ確信アルヤウナ御答辯
ガアリマシタ、併シ現在帝燃會社ガ投資シ
テ居ル會社ハ五ツアル、其ノ中帝燃會社獨
自ニ創立シタ會社ハ、北海道ノ液化會社ダ
ケデアル、甚ダ心細ク感ジテ居ツタノデア
リマスガ、今度此ノ法案ガ通過致シマシテ、
之ニ依ツテ豫期ノ如ク事業ヲ進行致シマス
しく、初メテ帝燃モ其ノ面目ヲ發揮スルニ
至ルデハナイカト云フ風ニ考ヘマスカラ、
無論本案ニハ雙手ヲ擧ゲテ贊成スルノデゴ
ザイマス、併シナガラ樺太ノ封鎖炭田ガ北
部、中部、南部ヲ通ジテ其ノ推定埋藏量ハ十一
億噸、是ハ二十數年前ノ推定其ノ儘デアリ
マシテ、今日ノ現狀カラ再調査ヲスレバ恐
ラク倍以上、斯ウ云フ大キナ炭田ガアル、
サウシテ今ノ極メテ燃料ノ不足シテ居ル國
情ニ對應スル計畫トシテハ、今後續々出テ
來レバ結構デアリマスガ、私ハ僅ニ此ノ位
ナ計畫デハ、餘リニ炭量ノ豐富ナルニ比シ
テ、計畫ガ貧弱過ギルト思フノデアリマス、
炭質ノ關係カラ致シマシテ、無論今後ノ計
畫ハ液化事業ヲ主トシテ此ノ炭田ハ開發サ
レル、併シナガラ極メテ豐富ナル炭量ヲ持
ツテ居ルノデアリマシテ、燃料問題ハ獨リ
石油バカリデハナイ、石炭モ非常ニ缺乏シ
テ居ルノデアリマスカラ、此ノ石炭ノ缺乏
ニ應ズル處置ト致シマシテハ、豐富低廉ナ
ル樺太ノ燃料炭ヲ、內地ニ移出スルニ付テ
ノ計畫ガナクテハナラヌ、之ニ付キマシテ
ハ本委員會ノ質問ニ對シテ、政府ニ於テ相
當ノ計畫ヲ速ニ立テルト云フ答辯ヲサレテ
居リマスカラ、姑ク之ニ信賴シテ、八田拓
務大臣ノ御言明通リ、速ニ此ノ對策ヲ立テ
ラレンコトヲ希望スル次第デアリマス、是
等ノ炭田ノ開發ニ伴ヒマシテ當然起ル問題
ハ、只今粟山君ノ御述ニナリマシタ通リ、
港灣鐵道ノ問題デアリマス、現ニ此ノ法案
ニ依ツテ生ジマス所ノ中央炭田ノ方面ニ於
キマシテモ、現在ノ樺太廳鐵道ト云フモノ
ハ極メテ貧弱デアリマシテ、僅ニ三井ノ川
上炭ノ五十万瓲ヲ出スノニモ骨ガ折レル、
サウシテ大泊ノ港灣モ、先年出來マシタ拓
殖計畫ニ依リ現ニ進行中デアリマスルガ、
モウ數年前ノ計畫デアリマスカラ、今後炭
田ヲ開發シテ、多量ノ燃料ヲ輸出スル爲ニ
ハ到底不十分デアル、更ニ本斗、眞岡、
惠須取、敷香、何レモ拓殖計畫ニ載ツテ居
リマシテ、敷香以外ハ相當ニ進行シテ居ル
ノデアリマス、此ノ計畫ニ付キマシテモ再
檢討サレマシテ、十分ニ他日ニ備ヘラレル
ヤウナ計畫ヲ立テラレンコトヲ希望スル次
第デアリマス
又此ノ炭田ノ開發ニ伴ヒマシテ、當面ノ
問題ハ坑木ノ問題デアリマス、之ニ付キマ
シテモ樺太廳當局ハ、十分ニ成算ガアルト
謂フ、今ノ計數カラ成算アル計畫ガ立ツノ
デアリマシテ、今マデノ經驗ニ徵シマスル
ト害蟲ノ被害ハ大體計數ニ入ツテ居リマ
シテモ、山火ノ被害、是ハ恐ラク計數ニ入
ツテ居ナイデアラウ、斯ウ云フコトモ極力
防止ニ努メテケレバナリマセヌガ、併シサ
ウ云フコトニ依ツテ、現在ノ採掘量ガ急激ニ
減退スルコトモアルマイガ、是等ニ對シマシテ
モ十分餘力ノアル對應策ヲ立テラレンコト
ヲ希望致シマス、樺太ハ森林ガ生命デアリ
やく、森林資源ノ保持ニ、特ニ肝要ナル施
設ガ行ハレルノハ當然デアリマス、ケレド
モ一昨年來屢〓、私耳ニ致シテ居リマシタガ、
坑木其ノ他鑛業用材料ノ點ニ付テハ、餘リ
ニ杓子定規デ非常ニ困ルト云フ不平ガアル
ノデアリマス、之ニ付キマシテモ、此ノ鑛
業ノ發展ニ順應スルヤウニ、林政ノ上ニ於
テモ相當ナ便宜アル施設ヲ必要トスルデア
ラウト考ヘルノデアリマス、ソレカラ又是
モ大臣ノ言明ガアリマシタガ、昨年ノ議會
ニ於テ附帶決議ニナツテ居リマス樺太鐵道
ノ買收、是ハ東海岸ヲ貫通シマスル樺太ノ
交通路ノ幹線デゴザイマス、速ニ是ガ計畫
ヲ實行セラレルヤウ、是等ノ點ヲ希望トシ
テ述ベマシテ、本案ニ贊成スル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/4
-
005・菊池良一
○菊池委員長 石坂委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/5
-
006・石坂繁
○石坂委員 私ハ第一議員倶樂部ヲ代表致
シマシテ、本案ニ贊成ノ意ヲ表スル者デア
リマス、本案自體ニ對スル希望及樺太ノ開
發、竝ニ樺太行政ノ全般ニ付テノ希望ハ、
只今民政黨代表及政友會代表ノ方ノ贊成ノ
演說ノ中ニ述ベラレマシタノデ、私ハ重ネ
テ申上ゲルコトヲ差控へタイト存ジマスガ、
要スルニ只今申述ベラレマシタヤウナ希望、
尙ホ又先日ヨリノ議案審議ニ際シマシテノ
熱心ナル質疑應答ノ趣旨ニ鑑ミラレマシテ、
當局ハ將來樺太ノ開發、及樺太行政ノ刷新
ニ努メラレ、宜シク國策ノ線ニ副フヤウニ
邁進セラレンコトヲ、衷心ヨリ希望致シマ
シテ、贊成ノ意ヲ表スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/6
-
007・菊池良一
○菊池委員長 須永委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/7
-
008・須永好
○須永委員 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シマ
シテ、本案ニ贊成ノ意見ヲ申上ゲマス、樺
太ノ開發ガ必要デアリマスコト、殊ニ液體
燃料ノ事業ヲ興サナケレバナラナイコトハ
申スマデモナイノデアリマス、唯此ノ際希
望トシテ申上ゲテ置キタイコトハ、斯樣ナ
事業ガ如何ニ必要デアリ、重大デアリマシ
テモ、單ニ此ノ改正法律案ノ趣旨ノ如クニ
競爭入札ニアリマシタモノヲ、唯指定採掘
料デ採掘サセルト云フコトタケデ以テ、決
シテ此ノ際樺太ノ事業ガ急速ニ發達スルト
ハ思ハレナイノデアリマス、ソコデ樺太ノ
開發ヲ速進サセル爲ニハ、色々ナ條件ガ必
要デアルト思フノデアリマスガ、特ニ私共
ガ樺太開發ノ上ニ必要ト思ヒマスコトハ、
何ト申シマシテモ事業ノ發展ノ爲ニハ、人
的要素ガ必要デアリマス、然ルニ樺太、北
海道等舊來北邊ノ方ノ勞働ト云フモノニ付
キマシテハ、監獄部屋ノ歷史ガ未ダニ殘ツ
テ居ルヤウナ狀態デアリマス、非常ニ勞働
條件等ガ惡イノデアリマス、併ナガラ樺太
ガ新領土デハアリマシテモ、其ノ九割以上
ハ日本民族ガ行ツテヤツテ居ル、而モ最近
ドシ〓〓新シイ事業ガ興リマシテ、日本人
ノ行ツテ業ニ就ク者ガ益〓殖エテ參ルノデ.
アリマス、併シ未ダニ樺太ハ內地ト違ツタ
待遇ヲ受ケテ居ルノハ非常ニ遺憾ト思フノ
デアリマス、玆デ少クトモ樺太ガ事業ヲ興
シテ、ドシ〓〓開發サレルノト併行致シマ
シテ、此ノ勞働者ノ保護法、或ハ更ニ生活
ノ上ニ及ボス色々ノ文化施設、サウ云フモ
ノガ充實シテ行キマセヌコトニハ、中々樺
太ノ事業ガ盛ンニナルトハ考ヘラレナイノ
デアリマシテ、特ニ此ノ人的要素ヲ充實セ
シムル爲ノ施設ガ必要デアラウト考ヘルノ
デアリマス、其ノ外ニモ勿論今マデ質問應
答ノ中ニアリマシタヤウニ、資材ノ供給ガ
十分デナイ、或ハ交通運輸施設ニ缺クル所
ガアル、或ハ產業ノ先驅ニナルベキ發電事
業ガマダ完全デナイ、斯ウ云フコトモ樺太
開發ノ上ニ於テ、相當考慮シナケレバナラ
ナイ問題ダト思フノデアリ·マス、ソコデ搔
摘ンデ次ノ三ツノ希望事項ヲ附シマシテ、
本案ニ贊成シタイト思フノデアリマス、第
一ハ事業進展ニ伴フ勞働者增加ニ應ジテ厚
生施設ヲ充實セラレタイ第二ハ工場法健
康保險法等勞働者保護法令ノ速ナル施行ア
ラレタシ、第三ニハ必要ナル資材ノ供給ヲ
圖リ、併セテ交通運輸施設及ビ發電事業等
ヲ起シ、產業文化ノ進展ニ資セラレタイ、
此ノ三ツノ希望條項ヲ付シマシテ、本案ニ
贊成スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/8
-
009・菊池良一
○菊池委員長 小田委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/9
-
010・小田榮
○小田委員 私ハ第二控室ヲ代表致ツマ
シテ、本案ニ贊意ヲ表シタイト思ヒマス、
今マデニ質疑致シマシテ參リマシタ事柄
ニ對スル當局ノ御答辯ニ於テ、其ノ御熱
意ニ對シテハ滿腹ノ敬意ヲ表スルノデ
アリマスガ、樺太ニ於ケル重要資源ノ開
發ト云フコトガ、現在ノ日本ニ取ツテ重大
ナ課題トシテ提起サレテ居ルノデアリマス
ガ、此ノ國家ノ要求ヲ充タスガ爲ニハ、其
ノ間ニ島民ヲシテ、又國民ヲシテ些カタリ
トモ疑惑ノ念ヲ懷カシムルガ如キコトガア
ツテハナラナイノデアリマス、其ノ疑惑ト
申シマスコトハ、全民族ガ此ノ前古未曾有
ノ大國難突破ノ爲ニ、其ノ肉體ト生命ヲ邦
家ノ爲ニ捧ゲテ戰ヒツツアル時、國民ノ極
ク一部ノ者ガ徒ニ利潤追求ノミニ汲々タル
狀態デアリ、サウシテ其ノ利潤追求ノ度ガ
甚シクテ、國民ノ思想惡化ヲ招來スルガ如
キコトアリトスルナラバ、是ハ國家民族ノ
斷ジテ許シ得ナイ所ノモノデアリマス、仍
テ私ハ此ノ戰爭突破ノ爲ニ、樺太ニ於ケル
諸事業ニ於テ、一部事業家ノ專斷的ナ高度
ノ利潤ヲ抑制スルト云フ方策ヲ御執リニナ
ルト云フコト、卽チ利益ノ均分化トデモ申
シマスカ、之ヲ特ニ御配慮願ヒタイト思フ
者デアリマス、又一面ニ於テハ昨日モ申シ
タコトデアリマスガ、兎角農民デアレ、或
ハ勞働者デアレ、是等ノ生產擴充ノ基底ヲ
成ス勞働力ノ提供者デアル勤勞者大衆ニ對
スル政治的、社會的待遇ガ十分デナイ、今
一段ト產業殉國ノ大衆ニ對シテ、國家的ナ
ル民族的ナル敬意ヲ表スベキデアル、其ノ
意味ニ於キマシテモ、犧牲ノ均分化ト云フ
コトガ要求サレルベキデアルト思フノデアリ
マス、是コソガ平沼内閣ガ唱道セラレテ居ル
國民ノ總力ヲ擧ゲル爲ノ、總親和ヲ齎ス所
ノモノデアルト共ニ、是ガ又戰爭自體ノ要
求スル所デアリマス、サウシテ又總親和ヲ
遂ゲ、萬民輔翼ノ實ヲ擧ゲシムル爲ニモ、
吾々內地ニ在住シテ居ル日本人ト、寸分違
フ所ナキ純乎タル日本人タル、樺太島民ニ
對シテ、一刻モ速ニ參政權ヲ附與セラレタ
イ、之ニ對シマシテモ、非常ニ當局ノ好意
アル、善意アル御答辯ガアツタコトニ對シ
テ、非常ニ期待ヲ懸ケテ居ルノデアリマス
ガ、此ノヤウナ事柄ガ今日尙ホ等閑ニ附セ
ラレテ、放置サレテ居ルト云フコトソレ自
體ガ、平沼內閣ノ唱道スル總親和ヲ破壞ス
ル所ノモノデアルト感ズルノデアリマス、
之ニ對シテ最善ヲ御盡シアランコトヲ御願
ヒ致シマス、漸次明朗化ノ一途ヲ迪リツツ
アル樺太島政ニ對シテ、右ノ事柄ヲ希望致
シマシテ、本案ニ贊成ノ意ヲ表スル次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/10
-
011・菊池良一
○菊池委員長 是ニテ討論ハ終結致シマシ
タ、仍テ直チニ採決ニ入リマス、本案ニ御
贊成ノ諸君ノ御起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/11
-
012・菊池良一
○菊池委員長 起立總員、仍テ本案ハ全會
一致ヲ以テ、原案ノ通リ可決致シマシタ、
此ノ際私ヨリ一言申上ゲマス、本案ニ對シ
テハ、四囘ニ亙リマシタ御審査ヲ下サイマ
シテ、委員諸君ノ御熱誠ナル御審議、政府
當局ノ詳細ナル御說明ニ對シテ、委員長ト
シテ此ノ際深ク感謝ノ意ヲ表シマス、是一
テ此ノ案ハ終了致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/12
-
013・菊池良一
○菊池委員長 續イテ御諮リ致シマス、茲
ニ併託ニナツテ居リマス臺灣事業公債法中
改正法律案、臺灣米穀移出管理特別會計法
案ノ二ツガアリマスガ、此ノ二案ニ付テ政
府當局ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/13
-
014・矢野庄太郎
○矢野政府委員 委員長ニ一寸申上ゲマス
ガ、臺灣事業公債法中改正法律案提出ノ理
由ニ付テハ、先般御說明ヲ申上ゲタヤウニ
記憶致シテ居リマス、ソレデ殘ル所ノ臺灣
米穀移出管理特別會計法案提出ノ理由ダケ
ヲ、御說明致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/14
-
015・菊池良一
○菊池委員長 只今伺ヒマスト臺灣事業公
債法中改正法律案ノ御說明ハ致サレタサウ
デスガ、私失念致シマシタ、ソレデ第二案
デアル臺灣米穀移出管理特別會計法案ノ御
說明ヲ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/15
-
016・矢野庄太郎
○矢野政府委員 臺灣米穀移出管理特別會
計法案提出ノ理由ニ付テ御說明ヲ致シタイ
ト存ジマス
本委員會ニ付託セラレマシタ臺灣米穀
移出管理特別會計法案提出ノ理由ハ、本
會議ニ於テモ申上ゲマシタ通リデアリマ
シテ、臺灣總督府ニ於キマシテハ、昭和十
四年度ヨリ米穀ノ移出ヲ管理致シマシテ、
米穀ノ買入、賣渡、加工、貯藏等ヲ行ヒ、
其ノ結果生ジマスル收益ヲ以テ、臺灣ニ於
ケル農業ノ調整開發、及ビ助長ニ要シマス
ル經費、竝ニ損失ヲ生ジマシタル場合ノ補
塡ニ充當スルコトト相成リマシタノデ、本
事業ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ、之ヲ他ノ
會計ト區分シテ經理スルノヲ適當ト認メマ
シテ、特別會計設置ニ關スル本法律案ヲ提
出シタ次第デアリマス、何卒御贊成ヲ御願
ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/16
-
017・森岡二朗
○森岡政府委員 只今提案ノ理由ノ御說明
ガアリマシタガ、其ノ內容ヲ成シマスル臺
灣米穀移出管理特別會計法案ノ趣旨竝ニ目
的及ビ內容ニ付キマシテ、此ノ機會ニ於テ
私カラ申上ゲタイト存ジマス、臺灣米ノ移
出管理ハ、臺灣產業ノ發達ノ現在ノ狀況又
我國ノ經濟ノ實情ニ鑑ミマシテ、產業ノ將
來ノ健全ナル發達ヲ企圖致シテ居ルモノデ
ゴザイマス、之ニ依リマシテ臺灣ニ於ケル
重要產業ノ調和的發達ト、農業經濟ノ安定
向上等ヲ圖リマスルト共ニ、積極的ニハ土
地生產力ヲ擴充致シマシテ、臺灣特有ノ農
業資源ノ利用開發ヲ徹底致シマシテ、臺灣
ノ產業的使命ヲ達成致シタイトスルノガ其
ノ趣旨目的デゴザイマス
此ノ點ヲ少シク詳シク申上ゲタイト存ジ
マスガ、第一ハ臺灣產業ノ調和的發達デゴ
ザイマス、御承知ノ如ク內地ノ米穀事情ノ
爲ニ設ケラレマシタル米穀統制ニ關スル諸
施設ニ對應致シマシテ、臺灣ニ於キマシテハ、
從來米穀ノ急增ヲ抑制致シマスル爲メ、水
利施設ノ新設又ハ改修ノ一切ヲ禁止致シマ
シタ、又米ノ增產ヲ圖ル如キ各種ノ施設、
土地改良ト云フガ如キコトモ共ニ中止シ、
一方代作奬勵ニ努メマスル等、色々努力シ
テ參ツテ今日マデ來タノデゴザイマス、併
シ是等各種ノ施設ノ結果ハ、單ニ米ノ生產
ヲ抑ヘタダケニ止マラズシテ、臺灣農業全
體ノ發達ヲ阻碍スルノ結果ヲ來シタノデゴ
ザイマス、卽チ資源ノ利用開發、生產力擴
充ノ最モ緊要デアリマスル現在ノ事情ニ鑑
ミマシテ、洵ニ遺憾トスル所デゴザイマス、
之ヲ米ニ付テ考ヘテ見マシテモ、我國主要
食料トシテ不斷ニ之ガ改良ヲ圖リ、增產ノ
根據ヲ培養シ確保致シマシテ、常ニ情勢ノ
變化ニ對應スルヤウニ備ヘテ居リマスルコ
トハ、食糧國策上洵ニ緊要デアリマスルコ
トハ申上ゲルマデモナイコトト存ジマス、
又一方臺灣ノ有シテ居リマスル特質及ビ使
命ニ鑑ミマシテ、臺灣特有ノ有用作物、卽
ホチ甘蔗、綿黃麻、蓖麻、苧麻、藷、斯ウ云
フヤウナモノノ增產ヲ圖リマシテ、國內物
資需給ノ圓滑ニ資シ、併セテ國際收支ノ改善
ニ貢獻致シマスルコトモ亦必要ナリト存ズ
ルノデアリマス、卽チ臺灣ノ米價ヲ或ル程
度ニ調制致シマシテ、適當ニ安定セシメ、
米作面積ニ付キマシテハ其ノ必要面積ヲ確
保シ、無統制ナル耕地ノ擴大ヲ抑制シ得ル
ヤウナ方策ヲ講ジテ置キマシタ、現在禁止
又ハ中止致シテ居リマスル水利施設、或へ
土地改良等、生產力ノ擴充施設ハ積極的實
行ニ移シマシテ、是等ノ耕地ニハ米ノ漸進
的增產ヲ圖リマスルト共ニ、是ト竝行致シ
マシテ、有用作物ノ增產ヲ奬勵致スコトニ
依リマシテ、玆ニ初メテ米其ノ他ノ各種作
物ノ調和的發達ヲ期待シ得ルト存ズルノデ
アリマス
其ノ次ハ農業經濟ノ安定向上デアリマス、
臺灣ニ於キマシテハ米作ノ有利デアルト云
フコトカラ致シマシテ、農家ニ於キマシテ
ハ米作ニノミ傾キ、米作ニ單一化スルノ傾
向ガアルノデゴザイマス、又同時ニ臺灣ニ
於ケル特殊事情ト致シマシテ、臺灣ニ於ケ
ル米價ノ特色ト致シマシテ、騰落ノ差ガ極
メテ大ナルヤウナ事情ニアルノデゴザイマ
ス、斯ノ如ク米作ニノミ偏重シ、又米價ノ
騰落ガ著シク激シイト云フガ如キ狀態ハ、
決シテ農家經濟、農民生活ノ安定ヲ圖リ得
ル所以デナイノデゴザイマス、卽チ米作ノ
外ニ各種作物ヲ合理的ニ組合セマシテ、經
營ヲ多角化、集約化セシメマスル方策ヲ講
ジマスルト共ニ、米價安定ノ方策ヲモ併セ
講ジマシテ、從來餘リ生產的ニ利用セラレ
ズニ消費サレテ居リマシタ所ノ農業收益ヲ、
生產的ニ轉換セシメマスル方策ヲ立テマシ
テ、之ヲ農業ノ調整開發ノ爲ニ充當スルコ
トニ致シマスレバ、玆ニ農家經濟ノ安定向
上ヲ圖リマスコトトナリマシテ、島民
永遠ノ福利增進ト相成ルコトト存ズルノデ
アリマス
其ノ次ハ臺灣產業ノ國家的使命ノ達成デ
ゴザイマスルガ、臺灣ハ御承知ノ如ク我國
ニ於ケル熱帶圈內ニ位シテ居ルノデゴザイ
マシテ、隨テ臺灣產業ノ開發如何ハ、先ニ申
上ゲマシタルガ如ク國內物資ノ需要供給ハ
固ヨリ、國際收支ノ改善ニモ資スル所ガア
ルノデゴザイマス、隨テ米作ト共ニ、臺灣
ニ於キマシテ栽培スルコトヲ得策ト致シマ
スル各種有用作物ノ增殖ヲ圖リマスルコト
ハ臺灣產業ニ課セラレマシタル國家的使
命ヲ達成スル所以ト存ズルノデアリマス、
故ニ此ノ目的達成ノ爲ニ臺灣ノ實情ニ卽シ
タル米穀對策ヲ樹立シ、斯ク致シマシテ各
種產業ノ調和的發達ヲ促シマシテ、一面生
產力擴充ノ徹底的施設ヲ講ジ得ルコトト相
成ルト存ズルノデアリマス
以上ハ本管理案ノ趣旨竝ニ目的デゴザイ
マスルガ、管理案ノ要綱ノ內容ヲ簡單ニ申
上ゲマスレバ、第一ニハ米ノ生產ニ當リマ
シテハ、我國食糧問題ノ重要性ニ鑑ミマシ
テ、國內全體ノ米穀需給ノ圓滑ヲ期スル爲
ニ、總督府ニ於キマシテハ、農林省ト協議
致シマシタル內外地ヲ通ズル需給推算ニ基
キマシテ、一定年次ノ生產目標ヲ立テ、之
ニ基イテ生產ニ當リタイト思フノデアリマ
ス、其ノ次ニハ臺灣ヨリ移出セラレマスル
米ハ總テ之ヲ臺灣總督府ニ於キマシテ買入
レマシテ、總督府ノ手ヲ經テ移出セシメル
コトニ致シタイト云フノデアリマス、米ノ
買入ハ其ノ買入價格ヲ作付ノ前ニ決定致シ
マシテ發表スルコトトシ、右買入價格ハ生
產費、物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌致シマ
シテ、適正ナル米價タラシメ、之ニ依ツテ
農家經濟ノ安定ヲ期シマスルト共ニ、各種
有用作物ノ調和的增產ヲ圖リタイノデアリ
マス、次ニ米ノ移出ニ當リマシテハ、移出
ニ計畫性ヲ與ヘマスルト共ニ、其ノ販賣ハ
內地ノ米穀政策ノ一元化ニ副フ爲ニ需給竝
ニ配給ノ圓滑ヲ期シ、內地ノ米穀政策ニ貢
獻致シタイト存ズルノデアリマス、其ノ趣
旨カラ致シマシテ、移出サレマシタル米穀
ハ之ヲ農林省ニ委託シテ、農林省ノ下ニ於
テ販賣サレルコトニ致スノデアリマス、其
ノ次ハ賣渡價格ト買入價格トノ差額カラ經
費ヲ除キマシテ生ジタル剩餘ニ付キマシテ
ハ、將來ニ於テ或ハ豫想サレ得ベキ損失ノ
補塡、竝ニ將來ニ於テ或ハ豫想サレ得ベキ
米穀事情ノ變化ニ依リマシテ價格ガ生產費
以下ニナツタ場合ニ於キマシテハ生產費以
上ニ買上ゲルコトニ致シマス爲ニ、備荒的
ニ積立ヲ致シタイト思フノデアリマス、尙.
ホ其ノ他ノ剩餘ハ之ヲ島內ニ還元致シマシ
テ、農業ノ調節、開發及ビ助長ノ經費ニ充
テマシテ、以テ積極的ニ土地生產力ノ擴充
ヲ圖リ、農家經濟ノ向上ニ資シマシテ、臺
灣特有ノ農業資源ノ利用開發ノ徹底ニ資シ
タイト存ズルノデアリマス
本管理制度ノ圓滑ナル遂行ヲ圖リマスル
爲ニ特ニ考慮致スベキ點ハ、其ノ一ツハ、平
時及ビ非常時ヲ通ジマシテ我國ニ於ケル食
糧問題ノ重要性ニ鑑ミマシテ、米ノ生產竝
ニ移出ニ付キマシテハ、特ニ內外地間ノ緊
密ナル連絡ノ下ニ、本管理制度ノ運用ニ當ラ
ナケレバナラテイト存ズルノデアリマス、
次ニ本管理制度ノ實施ニ當リマシテハ、將
來農家經濟ノ安定向上ヲ圖リマシテ、產業
ノ健全ナル發達ヲ期シマスル爲メ、農業經
濟竝ニ一般經濟界ニ及ボス影響ヲ十分ニ考
慮致シマシテ、漸進的ニ之ヲ行ハナケレバ
ナラナイト存ズルノデアリマス
第三ニハ臺灣ノ農業ガ米糖產業ヲ根幹ト
致シテ居リマスル現狀ニ鑑ミマシテ、本管
理制度ノ實施ニ伴ヒマシテ糖業ニ對シマシ
テハ監督權ヲ强化致シマシテ、十分ニ其ノ
統制ヲ圖ラナケレバナラナイト存ジテ居ル
次第デアリマス
以上ハ本管理制度ノ趣旨竝ニ目的及ビ案
ノ內容ノ〓要ヲ申上ゲタ次第デゴザイマス、
何卒十分御審議ヲ願ヒマシテ御協賛(アラン
コトヲ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/17
-
018・川崎末五郎
○川崎委員 私ハ若干ノ資料ヲ當局ニ要求
致シタイト思ヒマス、曩ニ理事ヲ通ジテ書
面ヲ提出致シテ置キマシタガ、稍〓不十分
ナ點ガアリマスノデ、改メテ此處デ口頭デ
要求致シタイト思ヒマス
第一ハ過去十箇年間ニ於キマスル米ノ實
收高、耕地面積、反當リ收量生產費、之ヲ
一ツ御願致シタイト思ヒマス、是ハ內地ニ
於キマシテハ各道府縣別、朝鮮ニ於キマシ
テハ各道別、臺灣ニ於キマシテハ各州別ニ
精細ニ御願致シタイ
第二ハ過去十箇年間ニ於キマス只今申上
ゲマシタヤウニ內地ニ於テハ各道府縣別、
朝鮮臺灣ニ於テハソレニ準ジテ各道州別ニ
付テ、實際當局ニ於テ農家ノ家計調査ヲサ
レテ居リマスレバ、其ノ家計調査ノ實際ノ
計數ヲ統計的ニ、總テアルダケノ資料ヲ御
提出願ヒタイ
第三ハ臺灣ニ於キマシテ甘蔗ノ過去十箇
年間ニ於ケル實收量、其ノ耕作面積並ニ反
當ト云ヒマスカ、臺灣ニ於テハ甲當デモ宜シ
ウゴザイマス、其ノ收量、實際ニ於ケル其
ノ生產費並ニ糖業者ガ此ノ甘蔗ヲ買集メマ
シタ時ノ買上値段、是ノ正確ナ數字ヲ御願
致シタイ
其ノ次ハ過去十箇年間ニ於キマスル臺灣
ニ於ケル所謂主要農產物ト認メラレテ居ル
モノ、ソレ等ニ付キマシテノ耕作面積、其
ノ增減並ニ反甲ノ收穫量、其ノ生產費、特
ニ甘蔗、蓖麻、棉花、黃麻、苧麻、斯ウ云
フモノニ付テ資料ヲ御願シタイ
其ノ次ハ臺灣ニ於キマシテ近來水田其ノ
他米作ニ使ハレル耕地ノ擴張ヲ制限スル上
ニ於テ、各種ノ水利事業或ハ耕地改良事業
ヲ制限サレ或ハ禁止サレテ居ル、斯ウ云フ
風ナ當局ノ度々御說明ヲ伺ヒマス、ソレ等
ノ具體的事實ニ付テソレ〓〓御調査ノ資料
ヲ御提出願ヒタイ、尙ホソレニ關聯シマシ
テ臺灣ニ於キマシテ、或ハ開墾、或ハ干拓
ナドガアルカドウカ知リマセヌガ、サウ云
フコトニ依ル農耕地ノ水田、畑地、或ハソ
レノ增加シテ參リマシタ情勢カラ各年別
ニ、過去十箇年間ノ統計ヲ御願シタイ、尙ホ
農耕地ニ從來使ハレテ居ツタモノガ、例へ
バ鐵道ノ爲ニ、或ハ建物建設ノ爲ニ、他ノ
農耕以外ノ用途ニ使ハレタ爲ニ耕地ガ減少
シタコトガアルト思ヒマス、是モヤハリ過
去十箇年間ニ亙ツテ成ベク正確ナ數字ヲ御
提出願ヒタイ
最後ニ過去十箇年間ニ於キマスル、是八、
內地ニ於キマシテハ各道府縣別、朝鮮ニ於
テハ各道別、臺灣ニ於テハ各州別ニ付キマ
シテ、所謂農業勞働者ノ賃銀ノ調査ヲ御提
出願ヒタイ
尙ホ審議ノ途中ニ於テ御要求スル場合ガ
アルカモ知レマセヌ、差當リ此ノ資料ヲ政
府ニ御提出ヲ要求致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/18
-
019・菊池良一
○菊池委員長 川崎君ノ御要求ノ參考資料
ハ、政府ノ方ニ能ク申上ゲテ提出シテ貰フ
コトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/19
-
020・小田榮
○小田委員 私モ資料ヲ御願致シタイト思
ヒマス、一反當リ小作料州別ノ最高最低、
平均價格ノ百分比、小作料取得人口、小作
料取得一千圓以上、一万圓以上ノ人口、最
近三箇年間ノ小作爭議件數竝ニ調停成立件
數拂下土地總面積ト拂下件數及ビ其ノ拂
下ヲ受ケシ者ノ職業別、拂下地ノ轉賣者調、
臺灣拓殖會社福大公司ノ投資大要、關係會
社ト其ノ投資額、各製糖會社最近五期ノ資
本金利潤率、利益金總額、社内保留總額、
及ビ持株數ト其ノ金額、最近製糖各社ノ原
料甘蔗一千斤ニ要スル買收價格、「ピク
ル」當リ生產費、是等ノ資料ノ提出ヲ願ヒ
マイ、又中等學校程度ノ卒業者ノ總數、及
ビ就職者數、專門學校以上ノ卒業者總數及
ビ就職者數、最近一年間ノ公務員ノ犯罪調、
是ハ數デ宜シウゴザイマス、最近小公學校
男女別ノ就學率、最近小公學校ノ修業者總
數以上御願致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/20
-
021・菊池良一
○菊池委員長 小田君ノ參考資料ノ御要求
ハ能ク政府ニ申傳ヘテ置キマス、尙ホ文書
ニ依ツテ御出シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/21
-
022・須永好
○須永委員 資料ト致シマシテ、川崎君ノ
御要求ノモフニ附加へマシテ、生產費別ヲ
出來マスレバ自作生產費ト小作生產費ヲ區
別シテ御提出ヲ御願致シタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/22
-
023・菊池良一
○菊池委員長 須永君ノ御請求モ能ク申傳
ヘテ置キマス、別ニ御發議ハアリマセヌカ-
ソレデハ今日ハ此ノ程度デ止メマシテ散會
致シマス、次會ハ公報ヲ以テ御報知ヲ申上
ゲマス
午後四時三十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007412474X00919390221/23
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。