第74回帝国議会　衆議院　米穀配給統制法案委員会　第4号　昭和14年3月10日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十四年三月十日（金曜日）午前十時二十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　添田敬一郎君
  　　理事　長野綱良君　理事　古田喜三太君
  　　理事　田中好君　理事　三善信房君
  　　理事　馬岡次郎君　理事　窪井義道君
  　　理事　杉山元治郎君
  　　　　三好榮次郎君　　　原玉重君
  　　　　高田耘平君　　　山田六郎君
  　　　　今成留之助君　　信太儀右衞門君
  　　　　山本粂吉君　　　福田關次郎君
  　　　　勝田永吉君　　　小野寅吉君
  　　　　河野一郎君　　　吉植庄亮君
  　　　　小平重吉君　　　小山田義孝君
  　　　　牧野良三君　　　西川貞一君
  　　　　國光五郎君　　　伊東岩男君
  　　　　石坂繁君　　　北勝太郎君
  　　　　平野力三君　　　三宅正一君
  　　　　佐竹晴記君　　　小野謙一君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　農林大臣　櫻内幸雄君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　農林政務次官　松村謙三君
  　　　　　農林省米穀局長　周東英雄君
  　　　　商工省商務局長兼商工省統制局長　新倉利廣君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　　　　農林技師　松本友助君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　米穀配給統制法案（政府提出）

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• 001・添田敬一郎

  ○添田委員長　ソレデハ會議ヲ開キマス、
  昨日ニ引續イテ西川君ノ御質問ヲ願ヒマス

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• 002・西川貞一

  ○西川委員　昨日材料ヲ御出シニナルコト
  ニナツテ居ツタノデアリマスガ、マダ戴イ
  テ居リマセヌガ、成ルベク時間ヲ短ク、能
  率ヲ擧ゲル爲ニ御質問ヲ致シマス、此ノ法
  律ノ精神ト致シマシテ、又將來ノ運用ニ於
  キマシテ、生產消費兩方面ノ負擔ヲ成ベク
  輕カラシムル爲ニ、出來得ルダケ中間ノ經
  費ヲ省ク、特ニ中間ニ於テ不勞所得ニ類ス
  ルガ如キ利得ヲ取ルト云フヤウナコトハ、
  極力之ヲ矯正致シマシテ、生產消費兩方面
  ノ負擔ノ輕減ニ努力サレル御方針デアラウ
  ト思フノデアリマスガ、其ノ點ニ對シマシ
  テ此ノ法案ノ根本目的ノ一ツニ關スルノデ
  アリマスガ、其ノ點ヲ農林大臣カラ一寸御
  示ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 003・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　間ニ色々ナ手數料其ノ他
  ノ無駄ナ費用ノ出ルヤウニ致シタクナイコ
  トハ勿論デアリマシテ、出來得ルダケ御趣
  旨ノヤウナ風ニ取計ツテ行キタイト思ツテ
  居リマス

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• 004・西川貞一

  ○西川委員　事務當局カラ口頭デ宜シウゴ
  ザイマスガ、會社ノ主タル收入、詰リ市場
  ノ手數料トシテノ收入ガ幾ラデアツテ、ソ
  レガ全體ノ何割デアツテ、又其ノ他ノ收入
  ガ何ト何ガアツテ、ソレガ金額何程デ全體
  ノ何割デアルカヲ一寸御示願ヒタイト思ヒ
  マス

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• 005・周東英雄

  ○周東政府委員　御答致シマス、目論見ニ
  依リマル會社ノ收入ノ總額ハ、三百二十九
  万六千三百六十五圓ト云フコトニナツテ居
  リマス、ソレカラ其ノ中米穀市場業務收入
  ガ百四十六万一千二百圓、ソレカラ米穀取
  扱業務收入ガ百七十六万五千七百圓、雜收
  入ガ六万九千四百六十五圓、以上デアリマ
  ス

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• 006・西川貞一

  ○西川委員　此ノ米穀取扱收入ト申シマス
  ノハ臺灣米ノ賣却、政府米ノ賣却、賣渡若
  クハ買入等ニ依ツテ得ル收入ノ全部デアリ
  マスカ、又市場收入ノ中ニ臺灣米關係、政
  府米關係ガ入ツテ居ルノデアリマスカ

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• 007・周東英雄

  ○周東政府委員　臺灣米ノ受託賣却手數料
  及ビ政府ノ買入又ハ賣却ノ受託手數料ト云
  フモノハ、前ノ米穀市場業務收入ノ中ニ入
  レテ居リマス

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• 008・西川貞一

  ○西川委員　日本米穀株式會社ノ主タル業
  務デアル內地米ノ市場ノ經營ニ依ツテ生ズ
  ル收入ト、附隨スル業務デアル臺灣米ノ賣
  渡、政府米ノ取扱ニ依ツテ生ズル收入トノ
  區別ハ、ドウナツテ居リマスカ

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• 009・周東英雄

  ○周東委員　內譯ヲ申上ゲマス、米穀市場
  業務收入ノ中、實物取引トシテ市場ニ於テ賣
  買セラレル數量ニ付テノ賣買手數料ハ、一石
  ニ付キマシテ四厘、年五万八千四百圓、ソ
  レカラ未著物取引トシテ賣買セラレル數量
  ニ付テノ手數料ガ、一石ニ付キマシテ四厘、
  是ハ賣方及ビ買方各々カラ取ルノデアリマ
  スガ、是ガ年九万一千二百圓、ソレカラ延
  取引トシテ賣買セラレル數量ニ付テノ手數
  料見込ハ、一石ニ付キマシテ八厘、賣買雙
  方カラ取リマシテ年二十万一千六百圓、是
  ダケノ合計ガ市場ノ手數料ノ總額デアリマ
  ス、臺灣米ノ受託賣却手數料ト云フモノニ
  付テハ、石十五錢年七十二万圓、政府米ノ
  買入賣却ニ關シマス受託取扱手數料、石十
  九錢五厘、年三十九万圓、斯ウ云フ豫定デ
  アリマス、臺灣米、政府米共ニ手數料ノ率
  ハ販賣高ノ千分ノ六デアリマス

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• 010・西川貞一

  ○西川委員　極メテ簡單デ宜シウゴザイマ
  スガ、米穀ノ取扱ニ依ル收入ト云フモノ
  ハ、大體主ナモノハドウ云フモノデゴザイ
  マスカ

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• 011・周東英雄

  ○周東政府委員　一ツハ所有倉庫カラノ收
  入デゴザイマシテ、是ガ保管料ト致シマシ
  テ四十四万二千三百六十八圓、ソレニ荷役
  賃ガ入リマシテ二十七万三百三十六圓、合
  計七十一万二千七百圓、モウ一ツハ荷扱元
  請ノ關係デアリマス、消費地ノ市場地域ニ
  於テ賣買サレルモノニ付キマシテノ運賃
  ノ立替、爲替ノ立替ト云フヤウナコトヲ致
  シマシテ、其ノ金利トカ手數料ニ付キマシ
  テ受クル收入ノ合計ガ、百五万三千圓ト云
  フコトニナツテ居リマス

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• 012・西川貞一

  ○西川委員　先刻大臣ノ御示ニナリマシタ
  ヤウニ、中間ノ經費ハ極力省略致シマシテ、
  生產、消費兩方面ノ負擔ノ輕減ヲ圖ルト云
  フコトハ、此ノ法律ノ目的デアリマスカラ、
  此ノ百七十六万圓ノ收入ハ大體實費主義デ
  オヤリニナルコトト見ルベキダト思フノデ
  アリマス、只今ノ御示ノヤウナ業務ニ於テ、
  利潤ヲ擧ゲルベキモノデハナイ、是ハ當然
  實費收入主義デ百七十六万圓ト云フ計算ハ
  立テラレテ居ルコトト存ジマスガ、左樣ニ
  承知シテ宜シイノデアリマスカ

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• 013・周東英雄

  ○周東政府委員　御話ノ通リデアリマス

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• 014・西川貞一

  ○西川委員　ソコデ問題ハ此ノ會社ノ利潤
  ノ源泉ト見ルベキモノハ、市場業務收入ノ
  百四十万一千二百圓トシナクハテナラヌ、
  是ガ利潤ノ源泉トナルモノト吾々ハ見ザ
  ルヲ得ナイ、而シテ此ノ利潤ノ源泉ハ何處
  ニアルカト申シマスト、此ノ會社ノ主タル
  業務カラ出マスモノハ僅ニ三十六万圓バカ
  リデアリマシテ、百十一万圓ト云フモノハ
  臺灣米竝ニ政府米ノ取扱ニ依ツテ、其ノ利潤
  ガ生ジテ來ル、而モ昨日局長ノ御答辯ニ依
  リマスレバ、政府米ノ取扱、臺灣米ノ取扱
  ニ依ツテ此ノ會社ハ別ニ新ナル施設ヲ要ス
  ルモノデモナイシ、大シテ負擔ヲ負フモノ
  デモナイ、唯臺灣米ヲ取扱ヘバ向フニ出張
  所ヲ置ク程度デ、大シタモノデハナイト云
  フコトヲ昨日御答辯ガアツタノデアリマス、
  サウ致シマスト此ノ會社ハ百餘万圓ノ不勞
  利得ヲ得ルコトニナル、此ノ不勞利得ハ更
  ニ朝鮮米ノ統制等ガ行ハレマシテ、何等カ
  ノ形式ニ於テ、之ニ類似ノ方法ヲ以テ此ノ
  會社ニ委託サレルト云フコトニナリマス
  ト臺灣米ノ二倍位ノ數量ガ朝鮮米ハアル
  ノデアリマスカラ、更ニ之ニ百五十万圓バ
  カリノ不勞利得ガ加ハルコトニナルノデア
  リマス、サウシマスト此ノ會社ハ非常ニ大
  キナ不勞利得ヲ取ルモノデアツテ、政府ノ一
  ツノ特許ニ依ツテ不勞利得ヲ取ルト云フコ
  トハ、是ハ所謂利權ト見ナケレバナラヌ、
  政府ノ免許若クハ特許ニ依リ、政府ノ法律
  命令ニ依ツテ生ズル不勞利得ヲ持ツモノ
  ハ、是ハ利權デアル、サウスルト此ノ會社
  ハ甚シク利權會社ノ色彩ヲ帶ビテ來ル、併
  ナガラ私ハ此處デ誤解ヲ避ケル爲ニ申シテ
  置キマスガ、臺灣米カラ七十二万圓ト云フ
  不勞-不勞ト云フト語弊ガアルカモ知レ
  マセヌガ、兎ニ角七十二万圓ト云フ最モ大
  キナ此ノ會社ノ利潤ノ源泉ガ、臺灣米カラ
  生レテ來ルト云フコトハ、何等臺灣ノ農民
  ニ負擔サセルノデハナイ、從來臺灣米ノ移
  入ニ對シマシテハ三井、三菱、杉原、加藤ノ
  四大移入商ニ依リマシテ、占メラレテ居リ
  マシタ所ノ是ハ、獨占利潤デアツタト思フ、
  米穀ノ如キ主要食糧ノ移入ニ依ツテ斯ノ如
  キボロイ利潤ヲ握ルト云フコトハ、甚ダ怪
  シカラヌコトデアルト云フノデ、屢〓世上ノ
  問題トナツテ居ル、合同ノ臺灣米ノ管理ト
  同時ニ、斯ノ如キ不合理ナコトハ一擧之ヲ
  是正シ、斯ノ如キ不合理ナル獨占利潤ガ存
  在シナイヤウニ努メナクテハナラヌニ
  拘ラズ、其ノ獨占利潤ヲ日本米穀株式
  會社ガ引繼グ、而モ此ノ日本米穀株式會
  社ハ現在ノ取引業者ニ對シテ其ノ株式ヲ
  優先的ニ割當テテ、而モ民間ノ出資ニ對シ
  テハ優先的ニ六分マデハ配當ヲ認メル、
  斯ウ云フコトニナリマシテ取引所ニ對シテ
  救濟ヲシナイ、斯ウ云フ建前ノ下ニ從來カ
  ラ問題ニナツテ居リマシタ取引所ヲ救濟ス
  ルト云フヤウナ規定ハ、此ノ法律ノ中ニハ
  ナイノデアリマスケレドモ、救濟シナイ代
  リニ將ニ死滅シヨウトシテ居ル所ノ取引所
  ガ、是カラ將來益〓發展スル見込ノアル利
  權ト取換ヘラレルト云フコトニナル、丁度
  現在ノ米穀取引所ガ「フエニックス」ノヤウ
  ニ、一タビ死滅シヨウトスルモノガ、我國
  ノ主要食糧デアル米穀ヲ一手ニ取扱フ所ノ
  國策會社トシテ、莊嚴ナ姿ヲシテ更生シテ
  來ルヤウナ結果ニナルノデアリマス、本案
  ニ對シテ世上幾多ノ反對運動ガアリマスノ
  ハ、其ノ本ヲ皆此處カラ發シテ居ル、詰リ
  是デハ非常ニ不合理ナ結果ニナルノデアリ
  さく、之ニ依ツテ救ハレルモノハ取引所ノ
  株主デアリ、資本家デアル、而モ其ノ救ハ
  レ方ハ土地建物等ヲ餘リ多ク持タズニ堅實
  ニ經營ヲ致シテ居リマス者ハ、土地建物ノ
  買收サレル價格ガ割合ニ少イカラ大シテ恩
  惠ニ與ラナイ、然ルニ不必要ニ壯大高層ナ
  ル建築ヲ致シテ居リマシテ、土地建物ニ非
  常ニ澤山ノ資本ヲ投ジテ居リ、而モ其ノ經
  營ハ甚ダ振ハナイガ如キ取引所ガ、土地建
  物ノ買收ニ依ツテ非常ニ多クノ利益ヲ得
  ル、斯ウ云フ不合理ナ結果ヲ取引所ニ對シ
  テ齎ス、又市場員ノ側カラ見マスルト、此
  ノ法律ニ依ツテ直接最モ大キナ打擊ヲ被ル
  者ハ、生業ヲ失フ所ノ市場員デアル、其ノ
  市場員ニ對シテハ、政府ハ或ハ轉業資金
  ノ貸付等ニ付テ御考ニナルト云フ御言明デ
  アリマスケレドモ、是ハサシテ手厚イ所ノ
  救濟方法ニナルトハ思ハレナイ、又現在ノ
  〓算市場ノ取引員ガ、實物市場ノ取引員ニ
  轉向スルト云フヤウナコトハ、是ハ容易ニ
  出來ルモノデアリマセヌシ、前途ニ見込ガ
  アリマセヌカラ、左樣ナ希望ヲ持ツ者ハ私
  ハ少イダラウト思フ、サウスルト市場員其
  ノモノハ甚ダ救ハレナイ、市場員ノ所ニ仕
  事ラシテ居リマスル所ノ從業員ニ至ツテ
  ハ、政府ハ何等之ヲ顧ミラレナイ、市場員
  自身ガ何トカスルデアラウト云フ態度デア
  ルカラ、從業員ニ至ツテハ益〓救ハレナイ、
  ソレカラ米穀政策ニ依ツテ年々營業ガ不振
  ニ陷リツツアル所ノ一般ノ米穀商人ナルモ
  ノハ、取引所ノ株主ダケガソレダケノ利權
  ノ分與ニ與ツテ、吾々ヲ見殺シニスルト云
  フ所ニ非常ナ反感ヲ持ツテ、此ノ澎湃タル
  反對運動ガ起リツツアルノデアリマス、此
  ノ事ハ私共ハドウ考ヘマシテモ許スベカラ
  ザルコトデアルト思フノデアリマス、私ハ
  此ノ際政府當局ガ、斯ノ如キ一ツノ利權ト
  見ルベキ收入ノアル所ノ會社ニ對シテ、特
  ニ取引所ニ對シテ、株式ヲ優先的ニ割當テ
  ルト云フヤウナ方針ハ寧ロ此ノ際一擲サレ
  マシテ、サウシテ此ノ市場ヲ經營スルノニ
  直ニ適當ナル者ニ依ツテ、此ノ日本米穀株
  式會社ガ經營サレル、詰リ資本關係ニ於テ
  モ左樣ニシテ行クト云フヤウニ、此處デ農
  林大臣ガ方針ヲ明示サレンコトヲ希望スル
  者デアリマス、若シ此ノ點ニ於テ國民ノ承
  服スルニ足ル方針ヲ明示サレマスナラバ、
  今日國內ニ起ツテ居リマス反對運動ノ如キ
  モ、私ハ鳴リヲ潜メルト思フ、斯樣ナ内部
  ノ實情ハ當局ガ如何ニ祕密ニ隱サレマシテ
  モ、凡ソ業界ノ者ト云フモノハ能ク知ツテ
  居ル、而モ取引所ニ對シテ株式ノ優先割當
  ニナルノデアル、而モソレニハ六分ノ配當
  ガ優先的ニ認メラレルノデアルト云フ宣傳
  ガ致サレ、今沈衰萎靡振ハザル米穀取引所
  ガ、此ノ會社ノ株主トナツテ、非常ナ大キ
  ナ恩惠ニ與ルノデアルト云フ世上ノ誤解
  ガ、非常ニ大キイノデアリマス、故ニ此ノ
  際農林大臣カラ之ニ對スル將來ノ方針ニ付
  テ御明示下サルヤウ御願致シマス

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• 015・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　此ノ收入ノ中ニハ臺灣米
  ノ取扱竝ニ政府ノ買入、賣渡ノ取扱ニ對ス
  ル收入ガ、多ク見積ツテ多クナツテ居ル、
  ソレガ收入ノ主ナル部分ニナツテ居ル、斯
  ウ云フ御話デアリマスケレドモ、全體カラ
  見マスト御話ノ如ク三百万圓ノ中デ約百万
  圓程デアルノデアリマス、之ニ對シテハ無
  論多少ノ費用ガ掛リマス、從來政府ガ買
  入賣渡ヲ致シマス時ニ實際ニ拂ツタ手數
  料ヨリハ、今囘ハ減額シテ居ルヤウナ次第
  デアリマス、臺灣ノ米ニ付キマシテモ從來
  カラ見ルト、實際ノ手數料ガ安クナツテ居
  ル譯デアリマス、唯御話ノ如ク此ノ會社ノ
  基礎ガ之ニ依ツテ非常ニ堅クナツテ、卽チ
  堅實ナル收入ヲ持ツト云フコトハ一ツノ利
  權デアルヤウニ見ラレル、斯ウ云フ御話デ
  アリマスケレドモ、旣ニ全國ノ米穀ヲ統制
  致シマス關係カラ申シマスト、ヤハリ臺灣
  米モ政府米モ同樣ニ、此處ニ於テ取扱フノ
  ガ、正當デアルノデアリマシテ、是ハ自然
  此處ニ持ツテ來ナケレバ相成ラヌト思フノ
  デアリマス、唯御話フ此ノ株式ヲ取引所側
  ニ優先的ニ持タセテ、サウシテ今日四分カ
  五分ノ配當ヲ致シテ居ル取引所ニ、六分ハ
  間違ヒノナイト見ラレル所ノ此ノ會社ノ株
  劵ヲ渡スコトハ、非常ニ彼等取引所ヲ擁護
  スルモノデハナイカ、寧ロ資本家ヲ援助ス
  ルモノデハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマ
  スケレドモ、左樣デハナイノデアリマス、
  此ノ法案ガ出來マシタ結果、取引所ガ廢止
  サレルノデアリマスカラ、取引所ヲ廢止ス
  ル結果トシテ此ノ取引所ノ跡始末ヲ致スト
  云フ事柄ハ、是ハ致サナケレバナラヌコト
  ト思フノデアリマス、隨ヒマシテドウ云フ
  風ニ致スカト申シマスレバ、從來ノ例カラ
  申シマスレバ所謂鐵道買收法トカ、或ハ其
  ノ他ノ樣式ガアリマスケレドモ、此タビハ
  サウ云フ式ヲ執ラズシテ、會社ニ持ツテ居
  リマス財產ノ中デ、此度ノ會社ガ利用スル
  所ノ財產ヲ引繼イデ、卽チ從來取引所ガ米
  穀取扱ノ爲ニ使ツテ居ツタ市場ナリ建物ナ
  リ、ソレ等ノモノヲ適當ナル價格ヲ以テ引
  受ケル、サウシテヤハリ此ノ會社ニ於テ利
  用スル、斯ウ云フ建前ヲ執ツタノデアリマ
  ス、此ノ評價ハ、前ニ申シマシタ通リ公正
  ナル價格ヲ得ル爲ニハ、卽チ米穀事業審議
  會ニ於テ決定スルコトニナツテ居ルノデア
  リマス、買ツテヤルノハ宜イガ、之ニ對シ
  テ其ノ株劵ヲ優先的ニ持タセル必要ハナイ
  デハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマスケレ
  ドモ、從來米穀調整ノ任ニ當ツテ居ツタ株
  主ガ、玆ニ其ノ財產ヲ賣拂ツテ金ガ出來タ、
  之ニ對シテ其ノ金額ニ相當スル新タナ投資
  物トシテ、此ノ株劵ヲ持タセルト云フコト
  ハ、丁度從來ノ目的ニ副フモノデアリマシ
  テ、是等ノ人々ニ對シテ權利ヲ認メルトカ
  或ハ賠償金ヲ拂フト云フ意味デハナイノデ
  アリマスカラ、此ノ株劵ニ對スル申込ヲ受
  ケルト云フコトハ、不當デナイト考ヘテ居
  ルノデアリマス、六分ノ配當ト現在配當ヲ
  受ケテ居ル三分トカ、或ハ四分トカ五分ト
  云フヤウナモノト對照シテ、此ノ會社ノ株
  式ノ配當ガ多イ、多イカラ非常ヲ利益デナ
  イカト云フ議論モアルカモ知レマセヌケレ
  ドモ、其ノ代リ會社ノ財產ヲ買フ場合ニ於
  テハ、是ガ堅實ナル經營ガシテアリマス
  ト、帳簿價額ソツクリデ買フコトニナルカ
  モ知レマセヌケレドモ、若シ會社ノ內容ガ
  今御話ノヤウニ少シデモ惡ケレバ、其ノ値
  打ハ下ツテ來ルノデアリマス、是ハヤハリ
  一方ニ於テ適正ナル價額デ買フト同時ニ、
  ソレニ對シテ本會社ノ株劵ニ對シテ優先的
  ナ申込權ヲ與ヘルコトハ、何等不都合ガナ
  イト思ツテ居ル次第デアリマス

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• 016・西川貞一

  ○西川委員　元來米穀ハ國民ノ主要食物デ
  アリマスガ、此ノ主要食糧ヲ除イタ他ノ食
  糧特ニ蔬菜、鮮魚等ノ市場ノ經營ニ關シ
  テハ、消費地ニ於キマスル市場、少クトモ
  中央卸賣市場ノ如キハ、其ノ消費者ノ利益
  ヲ代表スル地方公共團體ガ經營シテ居ル、
  生產地市場ハ生產者團體ガ之ヲ經營スルノ
  ガ、從來政府ノ市場政策ニ對スル大體
  ノ方針デアルト吾々ハ承知致シテ居
  ル、然ルニ今囘ノ國民主要食糧タル米穀
  ノ市場ヲ經營致シマスル方針ニ付テハ、劃
  然タル方針ガ政府ニナイノデアリマス、
  斯ウ云フ市場ハ、政府自ラ之ヲ經營スルコ
  トガ最モ合理的デアル、又政府ガ消費地ノ
  市場ト生產地ノ市場ヲ分ケテ、御考ヘニナ
  ツテ居ルナラバ、少クトモ生產地市場ハ生
  產者團體ヲシテ經營セシムルノガ至當デア
  ル、實際現在ニ於テハ米ノ生產地ニ市場ハ
  ナイノデアリマス、生產地ニ市場ガナイカ
  ラト云ツテ、生產者ハ何等ノ不便ヲ感ジテ
  居ナイ、ソレハ事實ニ於テ生產者團體ガ、
  產地ニ於ケル市場ノ機能ヲ十分ニ營ンデ居
  ルカラデアリマス、實情ヲ申上ゲマスト、
  例ヘバ九州、中國方面ニ於キマシテハ門司
  市ニアリマス全販聯ノ事務所ニ於テ、其ノ
  地方管下ノ、各府縣ノ各驛ニ存在スル米ニ
  對シテ、每日入札ヲ行フノデアリマス、指
  定商ヲシテ入札セシメ、其ノ入札ニ依ツテ
  落札致シマシタ額ガ、ソコデ成立シタ賣買
  價格デアリマシテ、ソレヲ其ノ日ノ中ニ新聞
  「ラヂオ」ニ依ツテ全生產者ガ知ルコトガ出
  來マスカラ、全販聯ニ於ケル入札ノ價格ガ、
  中國、九州方面ニ於キマシテハ、既ニ市場
  價格トシテ、絕對ニ是ガ權威ヲ持ツテ居ル
  ノデアリマス、デアリマスカラ今更ラ日本
  米穀株式會社ナルモノノ市場ガナクトモ、
  用ハ足リテ居ルノデアリマス、隨テ若シ生
  產地市場ト消費地市場トヲ別ニ當局ガ考ヘ
  ラレルノデアレバ、生產地市場ハ生產者團
  體ニ經營セシムベキモノデアル、サウ云フ
  方面ヲ見ズシテ、全國ヲ一元的ニオヤリニ
  ナラウトスルナラバ、是ハ國營ニサレルノ
  ガ至當デアル、詰リ臺灣米ノ賣却、政府米
  ノ賣却ト云フコトガ主タル利潤ノ源泉デア
  リマスガ、ソレハ三分ノ一ニ足リナイ收入
  デアルト仰セラレマスケレドモ、半分ノ百
  七十六万圓ト云フモノハ、實費收入主義ニ
  依ツテ出テ來ルノデ、實費收入主義デナケ
  レバ是ハ許サルベキモノデハアリマセヌ、
  是ハ國民主要食糧配給ノ經營費デアリマス
  カラ、ソレカラ利潤ヲ生マウト云フ經營ノ
  仕方ハ、斷ジテ許スベキコトデハアリマセ
  又、隨テ三分ノ一ノ收入ガ主タル利潤ノ源
  泉デアリマス、此ノ利潤ノ源泉ハ、政府ノ
  特許、免許ニ依ツテ出テ來ルノデアルカラ、
  ヤハリ一ツノ利權デアル、サウ云フモノハ
  一ツノ營利會社ノ手ニ渡スヨリモ、政府自
  ラガ之ヲ持ツテ、之ニ依ツテ米穀配給ノ圓
  滑ヲ期スル業務ヲ政府自ラ爲サレルコトガ
  至當デアル、今日ノ場合、取引所ヲ廢止致
  スニ伴ヒマシテハ、取引所ニ對シマシテモ、
  市場員ニ對シマシテモ、亦市場員ノ使用致
  シテ居リマスル使用人ニ對シマシテモ、必
  要ノ場合ハ救濟ナサレルガ宜シイ、私共ハ
  此ノ救濟ニ反對スル者デハナイ、必要ノ限度
  ニ於テ是ハ救濟スベキモノト思ヒマス、併
  シナガラ其ノ善後處理ヲシナケレバナラヌ
  爲ニ、將來ノ日本ノ米穀政策ノ發展ノ上ニ、
  非常ナル支障ヲ起スヤウナモノヲ此ノ際御
  作リニナル必要ハナイデハナイカ、昨日ノ
  朝鮮總督府當局ヨリノ發表ニ依リマスレ
  が、朝鮮ニ於テモ内地類似ノ會社ガ設ケラ
  レテ、米穀ノ統制ガ行ハレル、臺灣ニ於テ
  モ既ニ管理ガ行ハレテ居ル、滿洲ニ於テモ
  滿洲米穀株式會社ニ依ツテ、大體米穀ノ專
  賣制ガ行ハレルヤウニ承知致シテ居リマス、
  支那ニ於キマシテモ、ヤハリサウ云フ制度
  ガ將來行ハレルデアリマセウ、斯ク致シマ
  シテ、單ニ我國ノ內外地ヲ一貫スル政策ノ
  ミナラズ、所謂興亞「ブロック」內ニ於ケル
  主要食糧品ニ對スル政策ガ、一元的ニ進マ
  ウト致シテ居リマス、是ガ暫ク進ンデ參リマ
  スト、更ニ一段階飛躍致シマシテ、多年我黨
  先輩ガ〓究シ、唱道シテ居ラレマス米穀專賣、
  所謂從來ノ如キ收入本位ノ專賣デハナクシ
  テ、米穀ノ配給竝ニ價格ヲ完全ニ國家ガ管理
  スル段階ニマデ、進マナケレバナラヌ趨勢ガ
  目ノ前ニ見エテ居リマス、其ノ政策ガ一段
  階進展致シマスル際ニ、今日餘程此ノ會社
  ノ處置ヲ考ヘテ行カナイト、將來ノ妨ゲニ
  ナル、此ノ際將來ノ米穀政策ノ禍根トナル
  コトハ、爲サラナイ方ガ宜イノデハナイカ、
  此ノ點ニ關シマシテ、農林大臣ハ如何ナル
  根本方針ヲ持ツテ居ラレ、又將來ノ米穀政
  策ノ進展ニ付テ、ドウ云フ見透シヲ持ツテ
  居ラレルカヲ御示シ願ヒタイト思ヒマス

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• 017・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　最初ノ御尋ノ、魚市場或
  ハ蔬菜市場等ガ公共的ニ經營サレテ居ル
  ガ、是モ其ノ見地カラヤラナケレバイカヌ
  デハナイカト云フ御話デアリマス、無論此
  ノ市場等ニ於キマシテモ、ヤハリ統制シテ
  行クノデアリマス、御承知ノ通リ市場ノ統
  制或ハ充實ニハ、隨分困難ガ伴ヒ、非常ニ
  夥シイ權利金ガ拂ハレタリ、種々ノ關係ニ
  依ツテ漸ク今出來上ツテ居ルヤウナ譯デア
  リマス、若シ國ガ非常ナ巨額ノ賠償金デモ
  出シテ、總テノ方面カラ之ヲ買上ゲテヤル
  コトニナレバ、ソレハ甚ダ圓滑ニ行クデア
  リマセウ、併シナガラ今日ノ事情トシマシ
  テ、假ニ國ガ經營致スト致シマシテモ、左
  樣ナ譯ニハ行カナイノデアリマス、要シマ
  スルニ所謂非賠償主義デ今日此ノ會社ニ臨
  ンダ譯デアリマス、卽チ取引所ニ對シマシ
  テハ損害金ヲ賠償シナイ、之ニハ多年相當
  ナ歷史ガアリマシテ、議會ニ於テモ此ノ點
  ニ對シテ相當ノ賠償ヲ爲スベシト云フ議論
  ガアツタニ拘ラズ、之ヲ事實ハ避ケタノデ
  アリマス、ソレカラ又取引員ハ救濟スルガ
  取引所ノ從業員ハドウスルカト云フ御話ガ
  アリマシタガ、是モヤハリ從業員ノ數ナド
  ヲ見マシテ、ソレニ對シテ對策ヲ講ズルヤ
  ウニナツテ居ルノデアリマス、ソレカラ只
  今御質疑ノ、將來ノ米穀政策ニ對シテドン
  ナ考ヲ持ツテ居ルカ、斯ウ云フ仕事ハ當然
  ニ國ガヤルベキモノデハナイカ、卽チ將來
  ノコトヲ考ヘテモ此ノ際是ハ國ガヤツテ、
  サウシテ眞ニ根本的米穀國策ト云フモノヲ
  確立スルノガ宜イデハナイカ、斯ウ云フヤ
  ウナ御意見ノヤウニ拜承シマシタガ、勿論
  斯樣ナ場合ニ於テ國自身ガ經營スル場合、
  國ガ絕對的監督權ヲ以テ之ヲ管理スル場合
  ト、今二ツノ行キ道ガアルノデアリマス、
  其ノ中御承知ノ如ク、最近ニ於キマシテハ
  多ク半官半民デアツテ、事實ハ政府ガ一切
  ノ監督ヲスルト云フ立前デ、可ナリ多クガ
  其ノ行キ道ニナツテ進ンデ居ルノデアリマ
  ス、此ノ會社モ、政府自ラ米穀ノ管理ヲ致
  シ事業ヲ營ムコトモ、卽チ特別會計デモ
  拵ヘテ營ムト云フコトガ、或ハ宜イカトモ
  思ヒマスケレドモ、現在ノ實情ニ於テハヤ
  ハリ民間ヲモ取入レテ、サウシテ圓滑ニヤ
  ツテ行クコトガ宜シイデアラウ、斯ウ云フ
  ヤウニ只今ハ考ヘテ居ル譯デアリマス、將
  來ニ對シテドウスルカ、是ハ此ノ米穀問題
  ニ對シテノ〓究者各位ノ、專賣若クハ國營
  ト云フ御議論ニ對シマシテハ、深ク敬意ヲ
  表スルノデアリマシテ、其ノ問題ニ對シマ
  シテ關心ヲ持タヌノデハナイノデアリマス
  ケレドモ、ヤハリ之ヲ如實ニ行フト云フコ
  トニナリマスト、相當アチコチニ色々ナル
  〓究スベキ問題ガ殘サレテ居ルノデアリマ
  ス、故ニ若シソレ等ノ問題ヲ〓究セズシテ、
  又解決ノ途ヲ立テズシテ、一朝ニシテソレ
  ニ進ムト云フ事柄ハ、可ナリ困難ヲ殘シハ
  シナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマ
  シテ、此ノ際直チニ專賣國營ト云フモノニ
  對シマシテノ御審議ヲ煩ハスコトノ順序ニ
  行カナカツタノデアリマス、私自身ト致シ
  マシテモ、深ク此ノ問題ニ對シマシテハ〓
  究ヲ致シテ、其ノ〓究ノ結果ガ國營專賣ト
  云フモノハ可能ナリ、又ソレガ最善ノ方法
  ナリト云フ確信ガ付キマシタ時ニハ、其ノ
  方針ニ依ツテ進ンデ行キタイト、斯樣ニ思
  ツテ居リマスケレドモ、只今ノ所デハマダ
  〓究中デアル、斯樣ニ申上ゲルヨリ外ナイ
  ノデアリマス

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• 018・西川貞一

  ○西川委員　只今ノ御答辯ニ對シマシテ、
  更ニ御問シタイコトハ多々アリマスケレド
  モ、時間モ急ギマシテ、大體只今ノ御答辯
  ニ對スル質問ハ致シマセヌ、次ニ此ノ法律
  ノ成立ト共ニ、米穀ノ公定價格ノ性質ガ根
  本的ニ變ツテ來ルト思フノデアリマス、從
  來公定價格ノ性質ハ、其ノ公定價格ヲ目標
  トシテ、一ツノ基準ト致シマシテ、政府ガ
  米價調節ノ操作ヲサレル、詰リ政府ノ米價
  調節ノ操作ノ發動ニナリマス一ツノ條件
  ガ、此フ公定價格デアツタノデアリマシ
  テ、此ノ公定價格其ノモノハ、國民ニ是レ
  以上ノ價格デ賣ツテハナラナイ、買ウテハ
  ナラナイト云フコトヲ、從來ノ公定價格自
  體ガ命ジタノデナイノデアリマス、隨テ臣
  民ノ權利義務ニ關スル問題ニ關シテノ性質
  ハ、餘程違ツテ來ルト思フノデアリマス、
  然ルニ今囘ノ法律ニ依リマスト、最低價格
  最高價格ノ範圍內ニ於テ、政府ノ示サレル
  價格以外デハ取引スルコトガ出來ナイノデ
  アツテ、是ハ直接ニ臣民ノ權利ニ關スル問
  題デアリマス、詰リ拘束ヲ加ヘルノデアリ
  マス、現在物品ノ販賣價格等ニ付キマシテ、
  價格自體ヲ拘束致シマス法律ハ多々アリマ
  ス、併シナガラ是等ハ多ク臨時立法デアリ
  又非常ノ場合ニ限ツテ施行サレル法律デア
  ル、然ルニ此ノ法律ハ臨時立法デハナイ、
  恒久的立法デアリマスト共ニ、又是ハ平常
  時ニ於テ施行サレル所ノ法律デアル、サウ
  云フ意味ニ於テハ、私ハ此ノ一ツノ立法ト
  シテモ、是ハ劃期的ナ性質ヲ持ツモノト、
  承知致スノデアリマス、而モ此ノ公定價格
  ハ從來ノ公定價格トハ、生產者ニ與ヘマス
  關係ガ違ツテ來ル、從來ノ公定價格ナラバ
  最高價格デハ政府ハ無制限ニ賣出サレルケ
  レドモ、事實政府ノ所有米ノ範圍シカ操作
  ノ能力ハ及バナイノデアリマス、隨テ其ノ
  需給ノ關係ヲ見越シマシテハ、或ハ公定價
  格以上ニ上ルコトモアルシ、又運賃諸掛等
  ノ關係ニ於キマシテハ、政府ガ中央ノ市場
  ニ於テ賣却サレマシテモ、地方ニ於テハソレ
  ニ運賃諸掛「プラス」ノ價格ヲ以テ賣ルコト
  ガ出來ル、然ルニ今囘ハ中央ノ市場ニ於テ
  公定價格デ賣レタナラバ、地方ノ產地ニ於
  テハ「マイナス」ノ價格ニナツテ來マスカラ、
  實質ニ於テハ是ハ最高價格ヲ切下ゲラレタ
  ト同樣ノ效果ヲ生ズル、餘分ニ切下ゲラレ
  ルコトニナルノデアリマス、ソレヲ切下ニ
  ナラナイト言ハレマスナラバ、又一問一答
  デ行カナケレバナラヌ、併シ今ハソンナ小
  サイ事柄デ論議スル時間モアリマセヌノデ
  又私ハサウ云フ一問一答デ長イ時間ヲ取ル
  コトハヤリタクナイノデアリマス、唯何ト仰シ
  ヤラレテモ、實質的ニハ公定價格ノ切下ゲ同
  樣ノ效果ヲ生ジテ來ルノデアリマス、然ルニ現
  在ノ公定價格ヲ定メル基準、詰リ米穀統制法
  ノ施行令ニ關シテモ種々議論ノアリマス
  コトハ、先般本會議ニ於キマシテ、村上國
  吉サンノ詳細ニ論ゼラレタ通リデアリマス、
  私モ其ノ施行令ニ關シテハ種々ノ意見ヲ持
  ツテ居リマスガ、是亦時間ヲ節シマス關係
  上申シマセヌ、唯是等ノ關係ヲ考慮サレマ
  シテ、農林大臣ハ現在ノ米穀統制法ノ施行
  令ニ對シテ再檢討ヲ加ヘ、生產者ノ利益ヲ
  甚シク害シナイヤウニ、是ガ改正ヲサレル
  ノ意思ヲ持ツテ居ラレルカドウカ、此ノ點
  ニ付テ御方針ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

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• 019・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　御承知ノ如ク最近ニハ公
  定相場ト云フモノガ設定サレテ、甚シキニ
  至ツテハ時價ヨリモ安イ、低物價政策ノ關
  係上價格ヲ成ベク下ヘ持ツテ行ツテ、公定
  相場ヲ決メルト云フ風ナ事態ガ御話ノ如ク
  澤山アルノデアリマス、併ノ此ノ法案ニ於
  キマシテ、臨時的措置トシテサウ云フ風ナ
  公定價格ヲ設ケルト云フ場合ハ、是ハ極端
  ナ場合デアリマシテ、平素ハナイ事態デア
  リマス、唯イマ御示ノ如ク、最高最低ノ範
  圍內ニ於テ賣買ヲスルト云フコトニナツテ
  居ルノデアリマシテ、是ガ一ツノ大キナ枷
  ニナツテ居ルノデアリマス、西川君ハ最高
  ニナツタ場合ニ於テハ、政府米ヲ以テ抑ヘ
  ルト云フダケガ從來ノ關係デアルト云フ御
  話デアリマシタケレドモ、從來ト雖モ最高
  價格ニ達シマシタ時ニ、政府米ヲ無論賣ル
  ノデアリマスガ、ソレ以外ニ最高ノ價格ヲ
  維持スル爲ニハ、或ハ外國米ヲ買ツテ賣渡
  スト云フ操作モ、政府トシテ出來タノデア
  リマス、隨ヒマシテ大體ニ於テ最高ノ相場
  ト云フモノヲ市場デ維持ガ出來タラウト思
  ヒマス、併シ現在ノ最高最低ノ基準ハ先般
  來種々委員各位カラ御意見ノアリマス通リ、
  ドウモ基準ノ立テ方ガ惡イデハナイカト云
  フヤウナ御議論ハ、相當多數カラ拜聽致ス
  ノデアリマス、只今モ西川君ノ御話ハ此ノ
  問題ニ對シテ再檢討ヲスルノ意思ガアリヤ
  ナシヤト、斯ウ云フ御趣旨デアラウト思ヒ
  マスガ、此ノ問題ニ對シマシテ私常ニ注意
  ヲ拂ツテ居リマスケレドモ、只今ノ所之ニ
  對シテ私ガ如何ナル考ヲ持ツテ居ルカト云
  フコトヲ、申上ゲル機會ニ到達致シテ居リ
  マセヌノデ、此ノ問題ニ對シマシテハ答辯
  ヲ差控ヘタイト思ヒマス

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• 020・西川貞一

  ○西川委員　詰ラヌコトデアリマスカラ、
  ソンナ事ヲ申上ゲヌデモ宜イノデアリマス
  ガ、外米ト內地米トノ嗜好ハ全然違フノデ
  アリマシテ、相當米代ニ不自由ヲシナイ階
  級ハ、外米デハ滿足シナイノデアリマスカ
  ラ、外米デ最高價格ヲ決メルト云フコトハ
  餘程問題ダラウト思ヒマス、次ニ御問ヒ致
  シマスガ、政府ハ昨年度ト本年度ニ比較致
  シマスレバ、本年度ノ方ガ米穀ノ生產事情
  ガ著シク惡化シテ居ルコトハ、御認識ニナ
  ツテ居ルト思フノデアリマス、肥料ノ關係
  カラ致シマシテモ、勞力ノ關係カラ致シマ
  シテモ、其ノ他ノ關係カラ致シマシテモ、
  甚シク惡化シテ居ル、其ノ惡化シテ居ルニ
  モ拘ラズ政府ノ方針ハ從來ノ豫想ニ基ク本
  年度ノ米穀生產高ニ加ヘテ、更ニ四百餘万
  石ノ生產ノ增加ヲ企圖サレテ居ルヤウデゴ
  ザイマスガ、是ハ尤ナ御計畫デ私共其ノ御
  計畫ニ對シマシテハ敬意ヲ表スルノデアリ
  やっ、併シナガラ工場生產ノ如キ大量生產
  ノ行ハレルモノデアリマスナラバ、數會社
  ニ對シテ强制的ニ命令ヲ致シ、强制的ニ生
  產施設ヲ致シマスナラバ機械的ニ生產
  ガ行ハレルノデアリマスカラ、ソレハ
  自動的ニ生產增加ノ目的ヲ達成スルコトハ
  出來ル、併シナガラ我國ニ於ケル如キ小農
  組織ニ於テ、此ノ非常ニ去年ヨリ惡化致シ
  テ居ル生產條件ヲ克服致シマシテ、更ニ四
  百万石ノ增產ヲ期スルト云フコトニナリマ
  スト、是ハ結局政府ノ掛聲倒レニナル虞ガ
  多分ニアル、之ヲ掛聲倒レニセシメナイ爲
  ニハ十分ノ用意ガナクテバナラヌ、私ハ其
  ノ用意ニ付テ一々之ヲ御聽キスル暇ハナイ
  ノデアリマスガ、第一ニ生產費ノ關係カラ
  致シマシテ、私ハ本年度ハ增產ヨリモ、旣
  ニ從來ノ豫想サレタ計畫數量ヨリモ、生產
  費ト米價ノ關係カラシテ、減產ニナル必然
  性ヲ數字的ニハ持ツテ居ルト考ヘルノデア
  リマスガ、其ノ點ニ付テ大臣ハ御考ノ上デ
  對策ヲ講ジラレテ居リマスカドウカ、詰リ
  生產費ト市場價格トノ關係ニ於テ、必然的
  ニ數字的ニ減產ニ陷ルベキ一ツノ趨勢ヲ持
  ツテ居ル、ソレヲ十分考慮サレテ、ソレニ
  對スル處置ヲ執ツテ居ラレルカドウカヲ御
  伺ヒ致シマス

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• 021・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　品物ガ高ク賣レル場合ニ
  ハ品物ヲ多ク生產スルト云フノハ、經濟上
  ノ通念デアリ、經濟上ノ常態デアリマスカ
  ラ、今日ノ米ノ生產ニ要スル所ノ色々ナル
  條件ガ惡イ場合ニ於テ、米ノ價格ガ將來餘
  リ高クナラヌ、斯ウ云フヤウナ見透シガ付
  イタ場合ニ於テハ、米ノ生產ガ減ルダラウ、
  卽チ色々ナ生產ニ要スル肥料ナリ其ノ他ノ
  モノガ多クナツタノニ、米價ガ上ラナイト
  云フ風ナ見透シデアルナラバ、生產ヲスル
  モノガ減ツテ來ル、隨テ生產ガ減ズル、斯
  ウ云フ風ナ見透シデ西川君ノ御意見ガアル
  ヤウデアリマス、經濟上ノ建前カラ言ヘバ
  其ノ通リデアリマス、隨ヒマシテ此ノ增產
  計畫ト云フモノハ洵ニ容易ナラザル難事業
  デアリマス、隨テ此ノ增產計畫ヲ立テマス
  ル場合ニ於テ、種々ナル事柄ニ付テ考慮ヲ
  致シマシテ、サウシテ色々ナ經濟事情ヲモ
  考慮致シ、又實際ノ局ニ當ツテ居ル人ノ心
  理狀態ヲモ能ク考ヘマシテ、サウシテ適當
  ナル對策ヲ今立テツツアルノデアリマシテ、
  御示シノヤウナ事柄ニ付キマシテモ、深ク
  考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 022・西川貞一

  ○西川委員　更ニ私ハ具體的ノ數字ニ付テ
  大臣ノ御考慮ヲ煩ハシテ置キタイノデアリ
  マス、昭和十三年度ノ石當リ米穀生產費ヲ、
  農林省ニ於テ調査サレマシタ結果ニ於キマ
  シテハ、其ノ平均生產費ハ御承知ノ如ク二
  十八圓六十錢トナツテ居ルノデアリマス、
  併シナガラ之ヲ具體的ニ考ヘマス時ニハ、
  調査致シマシタ千八百八十二戶ノ中デ平均
  生產費ヲ超エルモノハ、實ニ八百六十六戶、
  四六%ノモノガ平均生產費以上デアリマス、
  更ニ本年ノ大體ノ市價ヲ超エルモノ、大體
  三十五圓ヲ市價ヲ超エル生產費ト致シマス
  ト、ソレガ百七十一戶、彼此レ一割ノモノ
  ガ市價ヨリモ高イ生產費ガ掛ツテ居ルノデ
  アリマス、此ノ事ハ經濟上如何ナルコトヲ
  意味シテ居ルカト云フト、成程平均生產費
  ハ比較的安イ所ニアルケレドモ、ソレハ五
  四%ノモノガ平均生產費以下ニアルノデアル、
  此ノ一割ニ近イモノハ損ヲシテ米ヲ作ツテ
  居ルコトニナル、今年ニ於テ既ニサウナル
  ノデアリマス、而モ此ノ調査サレマスモノ
  ハ、少クモ記帳ヲ爲シ得ル農家デアリマス
  カラ、此ノ記帳ヲスル位ノ農家ハ、ヤハリ
  經營ニ對シマシテハ合理的ナ頭腦ヲ持ツテ
  居ル、一般ノ農家カラ致シマスト、現在ノ
  市場米價以上ノ生產費ヲ要シテ居リマスモ
  ノガ、マダ〓〓割合ハズツト多クナルト思
  フノデアリマス、私ハ此ノ市價以上ノ生產
  費ヲ要シテ居リマス農家ガ、損ヲシテ居リ
  ナガラ米ヲ作ツテ居ル、何故サウ云フ馬鹿
  ナ事ヲスルダラウカ、斯ウ云フ疑問ヲ持ツ
  者モアルデアリマセウガ、是ハ露國ノ「チヤ
  ノフ」ガ小農經濟ノ分折ニ於テ詳細ニ示レ
  テ居リマス如ク、小農經營ニ於キマシテハ
  自分ノ勞働ヲ他ニ、ヨリ有利ニ消化スル
  機會ガ與ヘラレナイ時ニハ、如何ニ損ヲ
  シテデモ農業生產ヲ續ケテ行クノデアリ
  マン、從來市場ノ價格以上ノ生產費ヲ投
  ジテ米ヲ作レバ損ヲスルニモ拘ラズ、農民
  ガ米ヲ作ツテ來タノハ、ソレヲシナケレバ
  他ニ働クコトガナイカラデアル、然ルニ本
  年度ニ於キマスル狀況ハ非常ニ勞力拂底デ
  アリマシテ、勞働ノ機會ガ非常ニ多イ、損
  ヲシテマデ米ヲ作ラナクテモ他ニ働ク機會
  ガ多イノデアリマスカラ、市場米價ヲ超エ
  ルヤウナ高イ生產費ノ掛ル不良耕地ハ、續
  續生產圏外ニ落チテ行キマシテ、自然ノ數
  理上カラ言ヒマシテモ、米穀ガ一割以上ノ
  減產ニ陷ルト云フ經濟上ノ自然ノ數字ヲ示
  シテ行クノデアリマス、之ニ對シマシテ大
  臣ハ色々御苦心ニナツテ、又此ノ議會ニ於
  キマシテモ、色々ナ機會ニ其ノ對策ニ付テ御
  示シニナツテ居ルノデアリマスケレドモ、
  私共カラ見マスト其ノ對策ハ一ツトシテ肯
  綮ニ當ツタモノガナイノデアリマス、私ハ
  大臣ノ御答辯ガアリマシタコトヲ一々捉へ
  テ反駁ヲ致シマスナラバ、サウ云フコトデ
  ハイケナイト云フコトガ大臣ニモ能ク諒解
  シテ戴ケルト思ヒマスガ、時間ノ關係上ソ
  レハ申上ゲマセヌ、隨テ此ノ點ハ餘程大臣
  ガ徹底的ニ、損ヲシテモ米ヲ作ルコトノ出
  來ルヤウナコトヲ、農村ニ對シテ施設ヲシ
  テヤツテ戴キマセヌト、全部ノ農民ガ損ヲ
  スルノデハナイガ、少クトモ一割以上ノ者
  ハ損ヲシテ米ヲ作ラナカツタナラ、生產力
  ノ維持ハ出來ナイノデアルカラ、其ノ農家ノ
  損失ヲ「カバー」スルコトノ出來ル何等カノ
  徹底的ナ施設ガナカツタナラバ、生產力ノ
  維持ハ絕對ニ出來ナイト云フコトヲ私ハ申
  上ゲテ置キマス、一々ニ付テ御答辯ヲ願ヒ
  タイノデアリマスケレドモ、時間ノ關係上、
  其ノ點ハ私ノ申上ゲマシタコトヲ能ク御諒
  承ヲ願ツテ、處置ヲ執ツテ戴キタイト思フ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=22

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• 023・添田敬一郎

  ○添田委員長　西川君、一寸今貴族院カラ
  農林大臣ニ急ニ出テ吳レト云フ註文ガアツ
  タノデスガ、アナタノ御話ハ代ツテ政務次
  官ガ聽イテ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=23

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• 024・西川貞一

  ○西川委員　次官デ結構デス-統制主義
  ノ經濟ノ下ニ於キマシテハ、營利主義ノ經
  營形態ハ適當デナイ、營利主義ノ經營形態
  ガ能率ヲ發揮致シ、其ノ機能ヲ發揮シ得ル
  ノハ自由放任主義ノ下ニ於テデアツテ、統
  制主義ノ下ニ於キマスルト、營利主義ノ經
  營形態ハ非常ナ弊害ヲ生ジテ來ルコトハ、
  理論カラ言ヒマシテモ、實蹟ニ徵シテモ爭
  フベカラザル事實デアル、然ルニ政府ノ方
  針ハ此ノ營利主義經營形態ノ下ニ於テ統制
  ヲ行ハウトサレルノデアリマスカラ、ソコ
  ニ非常ナ弊害ガ起ツテ來ルノデアリマスガ、
  一例ヲ取ツテ農業用資材ノ關係カラ見マシ
  テモ、農業用資材ノ價格ノ引下ニ對シマシ
  テハ、少クモ昨年ノ暮ニ公定米價ヲ決定サ
  レマシタ其ノ委員會ニ於テ、農林當局ハ重
  大ナル責任ヲ持ツテ居ラレル、然ルニモ拘
  ラズ最近是等ノ價格ハドウ云フ關係ニナツ
  テ居ルカト申シマスト、昭和十二年ノ春ト
  十三年末、十四年初ノ指數ヲ比較致シテ見
  マスト、原料品ノ價格ハ下ツテ居ルノデア
  リマス、棉花ニ於キマシテハ指數カラ申シ
  マスト一〇〇カラ六六·一ニ下ツテ居リ、實
  數カラ申シマスト「ピクル」八十二圓ノモノ
  ガ五十四圓二十五錢ニ下ツテ居ル、綿絲ハ
  二百八十二圓カラ二百六圓ニ下リマシテ、指
  數カラ申シマスト一〇〇カラ七三七ニ下ツ
  テ居ル、護謨ハ八十錢ノモノガ五十九錢ニ
  下リマシテ、指數カラ申シマスト一〇〇カ
  ラ七三·七ニ下ツテ居ル、斯ウ云フ風ニ原料
  ハソレ〓〓下ツテ居ルニモ拘ラズ、製品ノ
  價格ハ皆上ツテ居ルノデアリマス、具體的
  ノ例ヲ申上ゲマスト、「スレン」作業服ハ二
  圓五十錢ノモノガ六圓ニ上ツテ、指數カラ
  申シマスト一〇〇カラ二四〇ニ上ツテ居リ
  マス、夜具地ハ二圓ノモノガ三圓五錢ニ上
  リマシテ、指數ハ一〇〇カラ一五二·五ニ
  上ツテ居ル、地下足袋ハ八十錢ノモノガ一
  圓十五錢ニ上リマシテ、指數ハ一〇〇カラ
  一四三·七ニ上ツテ居ル、運動靴ハ四十七錢
  ノモノガ六十八錢ニ上リマシテ、指數カラ申
  シマスト一〇〇カラ一四四·六ニ上ツテ居ル、
  護謨靴一足ハ二圓四十五錢ノモノガ三圓九
  十九錢ニ上リマシテ、指數ハ一〇〇カラ一六
  二·八ニ上ツテ居ル、原料品ノ價格ハ前述ノ
  如ク下ツテ居リマスノニ、製品ノ價格ハ斯
  ノ如クニ騰貴シテ居ル、然ラバ勞働賃銀等
  ガ上ツタカト申シマスト、織物業ノ勞銀ノ
  指數ヲ見マスト、一〇〇カラ一〇三·三ニ
  ナツタノミデアリマシテ極ク僅カナ上リ方
  デアル、ソレニモ拘ラズ製品ノ價格ガ
  斯ノ如クニ昂騰致シテ居リマスノハ、
  是ハ中間ニ於ケル利得ガ餘リニ大ニ過
  ギル、詰リ統制經濟ノ下ニ於テハ絕
  對ニ適シナイ營利主義ノ經營狀態ヲ以テ統
  制シテ居リマスカラ、ソコニ獨占的ノ利潤
  ヲ貪ツテ、低物價政策ニ反シテ斯ノ如キ物
  價騰貴ノ實情ヲ示シテ居ルノデアル、農業
  資材ノ農家ノ購入品ニ對シマスル價格ノ引
  下ニ付テハ、大ナル責任ヲ持ツテ居ラレマ
  ス所ノ農林當局ト致シマシテ、斯ル事實ヲ
  何ト見ラレテ居ルカ、之ニ對シテハドウ云
  フ手當ヲシヨウトサレテ居ルノデアルカ、
  御伺シタイト思ヒマス

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• 025・松村謙三

  ○松村政府委員　御話ノ通リデアリ「マシ
  テ、今日ノ營利經濟ノ下ニ統制經濟ヲヤル
  カラ、斯ウ云フ無理ガアルト云フ御指摘ハ
  理想トシテハ或ハ左樣デアルカモ存ジマセ
  ヌガ、今日實質上ノ問題ト致シマシテハ、
  玆ニ根本的ノ經濟機構ヲ變ヘルト云フコト
  ニ付キマシテハ、是ハ容易ナラヌコトデア
  リマスノデ、今御指摘ニナルヤウナ點モ十
  分アルコトト思ヒマス就キマシテ之ヲ農
  業關係ニ當嵌メマシテ、其ノ資材ノ騰貴致
  シテ居リマス部分ガ相當ニアリマスコトハ
  御話通リデアリマシテ、之ニ對シテハ相當
  ノ抑制ヲ致スト共ニ、配給ノ圓滑ト申シマ
  スカ、潤澤ト申シマスカ、サウ云フ方面ニ
  モ力ヲ盡シタイ、肥料ノ如キモ兎ニ角量ヲ
  何トカシテ得ナケレバナリマセヌノデ、旣
  ニ春肥ニ付テハ其ノ施設ヲ致シマシタコト
  ハ御承知ノ通リデアリマス、ソコデ是等ノ
  農業用資材ノ物價ノ抑制ニ付キマシテハ、
  商工省トモ連絡ヲ取リマシテ、出來ルダケノ
  抑制ヲ試ミテ來テ居ル譯デアリマス、此ノ
  抑制ノ手段ハ今後モ出來得ル限リノ力ヲ盡
  シタイト思ヒマスガ、其ノ抑制ガ出來ナイ
  場合ニ於テハ、農產物價ヲ之ニ伴ハナイデ
  抑ヘルコトハ、到底出來兼ネルコトト私ハ
  固ク信ジテ居リマス、隨ヒマシテ其ノ場合
  ニ於キマシテハ基準米價其ノ他百般ノ農產
  物ノ價格ニ付キマシテハ、相當考慮ヲシナ
  クテハナラナイト考へテ居リマス、隨テ只
  今農產物ノ價格ヲ一般工業生產物ノ價格ノ
  公定ノヤウニ簡單ニヤルコトハ、吾々ハ絕
  對ニ反對デアリマシテ、農業用資材ノ騰貴
  ヲ其ノ儘ニシテ置イテ、ソシテ農產物ノ價
  格バカリ抑ヘルト云フヤウナ如キ考ハ、今
  日ノ生產擴充、農民生活ノ上カラ行キマシ
  テモ、容易ナラヌコトデアリマスカラ、是
  ハ他ノ工業生產品ト同一視セラレナイヤウ
  ニ十分注意ヲ致シマシテ、價格ノ公正ヲ期
  シタイト存ジテ居ル次第デアリマス

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• 026・西川貞一

  ○西川委員　次官ノ御答辯能ク諒承致シマ
  シタ、御答辯ニ依リマスレバ農業用資材ノ
  價格抑制ガ出來ルカ否カハ、政府ノ執ツテ
  居リマス經濟政策、卽チ從來ノ御方針ガ根
  本的ニ破レルカ否カニ關スルコトデアリマ
  シント、是ハ極メテ重大ニナツテ來ルト思フ
  ノデアリマス、ソコデ更ニ御注意ヲ御願シ
  ナクテハナラヌコトハ、此ノ經營形態ノ下
  ニ價格ヲ抑ヘル、假ニ價格ヲ抑ヘルコトニ
  成功シタト致シマスト、今度ハ規格ガ低下
  スルト云フ虞ガ生ジテ來ル、是ハ現在非常
  ニ規格ガ低下シテ居ルノデアリマス、護謨
  製品ニ於キマシテモ、或ハ農具ノ鐵金物等
  ヲ使用シテ居リマス器具類ノ規格ニシテモ
  非常ニ低下シテ、品質ガ惡クナツテ居ルノ
  デアリマス、ソレデ色々農林省ノ方デ御心
  配下サイマシテ、農業用ノ物トシテ割當テ
  ラレテモ、ソレガ他ノ有利ナ方面ニ逃ゲテ
  行クト云フコトニモナツテ居リマス、又購
  買力ノ豐カナ方面ニハ偏在致シマスケレド
  モ、購買力ノ缺乏シテ居ル貧窮農村方面ニ
  ハ、ソレガ流レテ行カナイト云フヤウナコ
  トニナツテ居ルノデアリマシテ、此ノ營利
  經營形態ノ儘ニ任セテ置キマスト、丁度瓢
  簞デ鯰ヲ押ヘルヤウニ、アツチヘ逃ゲコツ
  チヘ逃ゲテ、遂ニ其ノ目的ヲ達シ得ナイヤ
  ウナ結果ニ陷ツテ來ルノデアリマス、ソコデ
  是ガ改善ニ關スル積極的意見ト致シマシテ
  私共考ヘテ居リマスコトハ、是ハソレ等ノ物
  ヲ消費致シマス消費者ノ團體、詰リ農產物
  ニ於ケル生產者ノ團體デアリマスガ、資材ノ
  消費者ノ團體ニ原材料ヲ割當テテ、其ノ團體
  ガ原材料ヲ貰ツテ、ソレト引換ニ消費者ガ
  製品ヲ受取ルト云フコトニナリマスト、是
  是ノ規格デ是々ノ値段ト云フコトデ、原材
  料ト引換ニスルコトガ出來マスノデ、其ノ
  價格ノ抑制ニ相當成功スルト吾々ハ考ヘル
  ノデアリマス、現ニ最近ノ市價ト、是等ノ
  團體ノ取扱ツテ居ル價格ヲ比較致シマス
  ト、「クレープ」ニ於テハ市價ガ東京莫大小
  ノ此ノ春ノ見本市場價格デアリマスガ、最
  終卸賣値段ガ十九圓五十錢、此ノ團體ニ於
  テハ十圓五十錢、猿股ノ純綿竝ニ混綿ノ三
  十番手、十圓ガ四圓十五錢、同六十番手、十
  一圓二十錢ガ五圓四十五錢、同「ス·フ」三十
  番手、六圓ガ四圓四十六錢、九斤「コットン」
  四十八圓ガ四十圓五十錢ト云フ著シキ差ガ
  アルノデアリマス、之ヲ生產者自體ノ團體
  ニ於テ配給シテ戴キマスナラバ、非常ニ安
  ク其ノ目的ヲ達スルコトガ出來、隨テ政府
  ノ低物價政策ヲ基調ト致ス經濟政策ノ圓滑
  ナル運用モ出來ヨウト思ヒマス、併シナガ
  ラ農林次官カラ農林水產物ノ價格ニ付テ、
  十分ニ是等生產者ノ利益ヲ考慮スベク將來
  ニ對處サレルト云フコトヲ言明戴キマシタ
  コトハ、甚ダ吾々ハ心强ク感ジマスガ、併
  シ最近ノ絹織物ニ對スル商工省ノ色々ノ措
  置ニ對シテ、一般養蠶家方面ニマデ多大ノ
  影響ヲ及ボシタヤウナコトカラ考ヘマス
  ト、此ノ點モ餘程農林當局ニシツカリシテ
  貰ハナイト、非常ナ不安ガアル、幸ヒ農林
  大臣、次官ノ背後ニハ立憲民政黨ト云フ强
  大ナル勢力ガアル、又吾々モ及バズナガラ
  驥尾ニ附シマシテ、此ノ御方針ノ貫徹出
  來ルヤウニ、幾分ノ力ヲ盡シタイト思フ、
  其ノ背後ニ在ル所ノ力ヲ以テ、十分農林省
  ノ方針ガ貫徹出來ルヤウニ努力シテ戴キタ
  イノデアリマス、ソレカラソレニ伴ヒマス
  具體的ノ問題トシテ、現在資材ノ配給ニ關
  スル事務ガ、商工省ノ臨時物資調整局、農
  林省ノ臨時農村對策部トノ關係ガ、ドウモ
  吾々ニハ明瞭デナイ、從來企畫院デハ各方
  面ニ使用致ス資材ヲ割當テラレマス、其ノ
  總量ニ於テ割當ヲ決定スルガ、是ハ商工省ノ
  臨時物資調整局ニ、白紙委任ノ狀態ニ於テ、
  割當テル、ソレヲ農林省ノ方カラ商工省ニ
  貰ヒニ行クト云フ恰好ニナツテ居ツタノデ
  ハ、決シテ農用資材ノ配給ニ付テ、完全ナ
  ル統制ガ出來ナイノデハナイカト思フ、是
  ハ或ハ商工省ニ於テ主觀的ニ農村方面ヲ壓
  迫スルト云フ考ハナイカモ知レナイガ、併
  シナガラ、商工省ノ仕事ト云フモノハ非常
  ニ複雜多岐デアツテ、一人ノ事務官ガ澤山
  ノ種別ニ亙ツテ處理シナケレバナラヌト云
  フ狀態ニアリマスカラ、農林水產ノヤウナ
  特殊ノ業態ノ特殊ノ用途ニナル物ヲ、徹底
  シタ世話ヲ燒イテ戴クト云フコトハ、商工
  省ニ御願スルノハ無理デハナイカ、現在ノ
  官制ニ依リマスト、商工省ノ臨時物資調整局
  ト農林省ノ農村對策部トノ關係ハドウナツ
  テ居リマスカ、是ガ私ノ御伺シタイ點デア
  ル、現在ノヤリ方デハイケナイノデハナイ
  カ、農林省ノ農村對策部ハ企畫院カラ直接
  ニ資材ヲ受取ツテ、之ヲ配給スルト云フコ
  トニナラナケレバ完全ナル資材ノ配給ガ出
  來難イデハナイカ、是ハ單ニ農村ノミナラ
  ズ、水產方面ニ於テモ非常ナ大キナ問題ト
  ナツテ居ル、例ヘバ網ノ原料ノ「マニラ」麻
  ノ値段ガ下ヅテ居ルニモ拘ラズ、製品價格
  ガ騰貴シテ居ル、是等ノ重大ナル事實ニ對
  處スル爲ニ此ノ物資ノ配給ノ問題ニ付テ、
  更ニ次官ノ御方針ヲ承ツテ置キタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=26

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• 027・松村謙三

  ○松村政府委員　只今最後ノ御話ノ商工省
  ト農林省ノ資材ヲ取扱ツテ居リマス制度ノ
  コトニ付キマシテハ、官制上ノコトデゴザ
  イマスカラ、私カラソレニ對スル意見ヲ申
  上ゲマスコトハ妥當デナイト考ヘマスノ
  デ、商工農林ノ兩國務大臣ヨリ若シモ御必
  要ナラバ御答申上ゲルコトト致シマスガ、
  唯配給上ニ付テノサウ云フ色々ノ御話ノヤ
  ウナ御遺憾ナ點ニ付キマシテハ、從來ハド
  ウデアツタカ存ジマセヌケレドモ、將來ニ
  於キマシテハ商工省モ農林省モ共ニ此ノ非
  常時ノ物資ノ供給ニ對シマシテハ、能ク話
  セバ分リマスノデ、十分ノ御相談ヲ致シマ
  シテ、農業資材ノ獲得ニハ遺憾ノナイヤ
  ウニ致シタイ、吾々ト致シマシテハソレ
  ニ全力ヲ擧ゲテ盡シタイト思ヒマスシ、
  商工省ノ方ニ於キマシテモ私共ノ主張ヲ聽
  カレル上ニ於テ吝カナモノデハナイ、斯ウ云
  フ風ニ思ヒマシテ、雙方ノ關係ヲ極メテ圓
  滿ニ進行サセテ行ク、是ガ只今ノ官制ニ於
  テハ最善ノ方法デアルト考ヘテ居リマス、
  生絲ノ御話ニ付キマシテモ此ノ公定價格ヲ
  決メルニ付キマシテハ、只今緊密ナ連絡ヲ
  取リマシテ、公定價格ノ決定ニハ生產者ノ
  點輸出貿易ノ點ニ付キマシテ遺憾ノナイ
  對策ヲ立テタイト存ジ、兩者協議ヲ致シテ
  居ル次第デゴザイマス、ソレカラ一番初メ
  ノ御話ノ農業資材ノ品質ガ非常ニ惡クナ
  リ、他ニ流ルルト云フコトハ、私共モ御話
  ノ通リニ承ツテ居ルコトモアリマス、是ハ
  洵ニ拾置キ難イコトデアリマシテ、此ノ事
  ニ付キマシテハ私共ハ深甚ノ注意ヲ拂ヒ、
  若シモサウ云フ事實ガ續々現ハレテ來タ場
  合ニハ、御話ノ通リ生產者ノ團體ヘ渡シ
  テ、サウシテヤツテ行クコトモ亦已ムヲ得
  ナイコトト考ヘテ居リマス、今日ハ大體相
  剋摩擦ヲ避ケナケレバナリマセヌカラ、大
  體斯ウ云フ形デ進ンデ居リマスケレドモ、
  一方ガ此ノ趣旨ニ反シテ不正ヲシ、若クハ
  本當ノ農業ノ利害ヲ考ヘナイデ、自利自營
  ヲ働カウト云フコトデアリマスナラバ、相
  當ニ考ヘテ處置シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=27

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• 028・西川貞一

  ○西川委員　大體次官ノ御言明ニハ私ハ非
  常ニ心强キモノヲ覺エルノデアリマス、從
  來ドウモ議會ニ於ケル言明ハ、議會ニ於ケ
  ル言明ニ止マツテ、實行サレナイコトガ多
  イノデアリマスケレドモ、農林次官ノ御言
  明ニ限ツテ、是ハ單ナル一個人デハナク、
  背後ニ立憲民政黨ト云フ强大ナ力ガアルノ
  デアリマシテ、其ノ民政黨ノ建前カラ致シ
  マシテモ、立場カラサレマシテモ、只今ノ
  御言明ハ必ズ御履行ニナルコトヲ私ハ信ジ
  マスルノデ、議事進行ヲ圖ル意味ニ於キマ
  シテ、私ハ澤山ノ質問ヲ致シタイコトガア
  リマスケレドモ、之ヲ以チマシテ先刻ノ質
  問ニ於ケル國務大臣ノ御答辯、尙ホ場合ニ
  依ツテハ其ノ答辯ニ對スル再質問ト云フ點
  ヲ保留致シマシテ、私ノ質問ヲ大體ニ於テ
  打切ルコトニ致シマス

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• 029・添田敬一郎

  ○添田委員長　信太君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=29

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• 030・信太儀右衞門

  ○信太委員　今度ノ法案ノ提出ヲ見マシタ
  コトハ、吾々ハ寧ロ遲キニ失シタデハナカ
  ラウカト云フ懸念ヲ持ツテ居リマス、仄聞
  スル所ニ依リマスト、本案ハ閣議ニ於テ相
  當難色アツタカノヤウニ聞イテ居リマシタ
  ダケニ、此ノ案ノ前途ト云フモノハ、相當
  是ハ論議ヲ盡サナケレバイカヌノヂヤナカ
  ラウカト云フヤウナ感ジヲ持ツテ居リマス、
  御承知ノ通リ多年米穀ノ配給、所謂米ノ賣
  買ニ付キマシテ、國家ニ貢獻シ來ツタ所ノ
  當業者ガ、ソレヲ解體致シマシテ、別個ノ
  半官半民ノ日本米穀株式會社ト云フ特殊會
  社ヲ作ルト云ツタヤウナコトハ、是ハ相當
  政府ニ於キマシテモ自信ガナケレバイケナ
  イコトカト私ハ存ジテ居リマス、先ヅ第一
  ニ三千万圓ト云フヤウナ資金ヲ以テ、十分
  ニ其ノ會社ノ特色ヲ發揮シ得ルヤ否ヤト云
  フコトハ、是ハ本員ノ非常ニ疑問トスル所
  デアリマシテ、此ノ點ヲハツキリ私ハ御答
  ヲ得タイト思ヒマス、尙ホ又政府ハ米ノ增
  產ヲ計畫致シマシテ、種々ナル畫策ヲ致シテ
  居ルコトハ、是ハ吾々ト致シマシテモ大イニ
  多トシテ居ル所デアリマスガ、此ノ法案ニ依リ
  マスト、米穀ノ賣買ノ外ニ所謂雜穀或ハ肥料
  ト云フコトガアリマスガ、私ハ先ノ質問者ト重
  複スルコトヲ避ケマシテ、議事ノ促進ノ爲ニ
  成タケ簡單ニ御伺ヲ致シタイ考デアリマス
  ルカラ、政府ニ於カレマシテモ、成タケ要點
  ニ觸レマシテ御答ヲ得タイコトヲ私ハ希望
  致シマス、米ノ增產ニ付キマシテ色々政府
  ノ計畫シテ居ルコトハ、今申上ゲマシタ通
  リ非常ニ國家ニ取リマシテハ多トスル所デ
  アリマスルガ、何ニ依ツテ此ノ多產ヲ畫ス
  ルヤ、御承知ノ通リ既ニ技術的ニ於キマシ
  テハ、今ハ殆ド米ノ增產ニ付キマシテハ、
  最高調ニ對シテ居ルデハナカラウカト思ヒ
  きく、唯此ノ上ハ肥料ノ圓滿ナル配給ニ依
  リマシテ、サウシテ多收穫ニ依リマシテ、
  米ノ增產ヲ畫スルヨリ外ハナイノヂヤナイ
  カ、是ハ年々耕作反別ガ諸種ノ道路或ハ鐵
  道等ノ開通開鑿ニ依リマシテ減少サレテ行
  キマス、之ヲ補フ方法トシマシテハ、ドウ
  シテモ肥料ノ完全ナル配給ヲ得ルト云フコ
  トガ、今ノ農家ノ最モ懸念シテ居リ、又最
  モ其ノ圓滑ナランコトヲ希望シテ居ル所デ
  アリマス、先ヅ是等ニ付キマシテ、政府ノ
  所信ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=30

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• 031・松村謙三

  ○松村政府委員　信太君ノ御話ノ中デ、何
  カ此ノ案ノ提出ニ付キマシテ閣議ニ於テ特
  ニ論議ヲ鬪ハサレタト云フヤウナ御言葉ガ
  アリマシタガ、閣議ノ內容ハ勿論申上ゲル
  コトハ出來マセヌケレドモ、此ノ法案ハサ
  ウ云フ政府ノ內ニ意見ガアツタト云フ譯デ
  ハアリマセヌデ、現內閣ノ重要ナ政策トシ
  テ政府ガ一致致シテ提案致シタコトデゴザ
  イマスカラ、其ノ點ダケハ一寸申上ゲテ置
  キマス、ソレカラ只今ノ御話ノ肥料政策デ
  ゴザイマスガ、此ノ點ハ旣ニ春肥ダケノ數
  量ハ總テ確保致シマシタコトハ、御承知ノ
  通リデゴザイマス、此ノ間モ閣議ニ於テ約
  二千万圓程度ノ燐鑛石、加里ノ輸入ヲ認メ
  マシテ、ソレデ春肥ダケノ確保ヲ得タコト
  ハ、御承知ノ通リデアリマスガ、唯之ヲ緩急
  ニ應ジテ農村へ如何ニ手際好ク渡スカト云
  フコトデ、之ニ對シテ遺憾ノナイヤリ方ヲ
  致シタイト存ジマス、ソレカラ其ノ後ノ肥
  料ニ付キマシデモ、私共ハ是ハ〓糧政策ガ
  國ノ非常ナ重要ノ問題デアリマスカラ、ソ
  レニ要スル肥料ノ獲得ハ、絕對的ナモノト
  信ジマシテ、彼ノ物動計畫ノ中ニモ最重要
  ノモノトシテ採入レテ、計畫ヲ樹テタイト
  思ツテ努力ヲ致シテ居ル譯デアリマス、米
  ノ生產計畫ハ御承知ノ通リデアリマスガ、
  今日開墾等ニ依ラナイデ技術ノ改良、性能
  改良等ニ依ツテ得ヨウト云フノデアリマシ
  テ、大體之ニ對シテハ全國熱心ニ今日意氣
  込ンデ、ヤツテ吳レテ居リマス、此ノ費用
  モ最近追加豫算トシテ皆樣ノ御協贊ヲ得タ
  イト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=31

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• 032・信太儀右衞門

  ○信太委員　肥料ノ問題ニ付キマシテ尙ホ
  二三點御伺シタイコトハ、年々肥料ノ堆肥、
  所謂日本ノ內地ニ出來マスル草木ニ依リマ
  シテ得ル所ノ堆肥ハ、非常ニ得ルニ至難デ
  アリマシテ、是ハドウシテモ政府ノ林野、
  牧野ヲ開放シテ、サウシテ之ヲ圓滑ニシナ
  ケレバナラヌコトト思ヒマスルガ、政府モ
  近頃其ノ意ヲ固メタルヤニ聞イテ居リマス
  ガ、其ノ邊ノ確タル御意向ヲ承ツテ置キタ
  イト思ヒマス

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• 033・松村謙三

  ○松村政府委員　御話ノ通リ今日ノ場合ニ
  於テハ、自給肥料ガ何ヨリモ大切デアリマ
  スノデ、ソレ等ニ對スル必要ニ應ズル爲ニ、
  政府ノ山林デ其ノ地方ノ利用出來ル所ハ、
  出來ルダケ其ノ用ヲ足スヤウニ致シタイ、
  斯ウ考ヘテ居リマス

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• 034・信太儀右衞門

  ○信太委員　其ノ御意思デアレバ、私共滿
  足スル所デアリマス、尙又金肥、所謂輸入
  肥料ガ種々ノ品目ニ亙ツテ居リマスガ、若
  シモ長期抗戰ガ惡化ヲ致シマシテ、日分谷
  經濟的ニ一種ノ封鎖ヲ受ケルト云フヤウナ
  コトニナリマスト、金肥ノ輸入ト云フモノ
  ニ付テ非常ナ支障ヲ來スコトト思ヒマス、
  サウナル曉ニ於キマシテハ、ドウシテモ是
  ハ內地ニ於テ補塡シナケレバナラヌ、何カ
  代用品ヲ以テ之ニ代ヘナケレバイケナイト
  云フ結果ニ陷ルト思ヒマスガ、政府ニ於カ
  レマシテハ、或ハ是等ニ付キマシテ何カノ
  對策ヲ講ジテ、所謂自給自足ノ策ヲ立テマ
  シテ、其ノ道ノ指導者ヲ網羅シテ、全智全
  能ヲ傾注シテ一大機關ヲ設立シテ、此ノ肥
  料ヲ作ルト云フ、何カサウ云フ對策ヲ御持
  チニナツテ居リマスカ、ソレヲ承ツテ置キ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=34

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• 035・松村謙三

  ○松村政府委員　サウ云フ萬一肥料ヲ穫得
  出來ナイ場合ノ措置トシテノ〓究ニ付テ、
  一大調査機關ヲ設ケル考ガアルカト云フ御
  尋デゴザイマスガ、只今ノ所デハ調査機關
  ヲ設ケル考ハ持ツテ居リマセヌ、併シナガ
  ラ農林省ノ農事試驗場ニ於テハ、是等ニ對
  スル多年ノ〓究ガゴザイマシテ、別ニ特ニ
  調査會ヲ開キマセヌデモ、其ノ方面ニ於テ
  ノ〓究ハ今日十分進ンデ居リマス、唯今度
  ノ場合ニ於キマシテモ、燐鑛石ダケデモ日
  本ノ勢力範圍、所謂圓「ブロック」內デ取ル
  コトガ出來マスナラバ、是ハ非常ニ仕合セ
  デアリ、又御話ノヤウナ萬一ノ場合ニ於テ
  モ、是ハ非常ニ結構ナコトデアリマスカラ、
  南洋其ノ他日本ノ勢力範圍ニ於ケル燐鑛石
  ヲ確保シテ、サウシテ之ヲ內地ニ持ツテ來
  ルヤウニ、今度ノ追加豫算ノ中ニモ其ノ費
  用ヲ相當ニ見込ンデアリマス、是ガ出來マ
  スト、果シテ大藏省ガ要求ニ應ジテ吳レマ
  スナラバ、燐鑛石ノ一部ハ日本ノ勢力範圍
  内、圓「ブロック」ノ中カラ供給シ得ルコト
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=35

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• 036・信太儀右衞門

  ○信太委員　本案ハ肥料ノ配給宜シキヲ得
  ルト得ナイトニ依リマシテ、重大ナル日本
  ノ米ノ產額ニ付テノ責任上、ドウシテモ是
  ハ政府ト致シマシテハ、最善ヲ盡シテシナ
  ケレバナラヌコトト思ヒマスガ、御承知ノ
  通リ此ノ肥料ト云フモノハ、其ノ施ス時ヲ
  一朝誤ツテ其ノ期ヲ逸シタナラバ、後ノ肥
  料ハ只貫ツテモ役ニ立チマセヌ、ドウシテ
  モ是ハ恒久的ナ正確ナル政府ノ方針ヲ立テ
  マシテ、業者ニ安心ヲシテ、百姓ヲセシム
  ルト云フコトハ、是ハ頗ル政府ト致シマシ
  テモ執ラナケレバナラナイ所ノ重大方針デ
  アルト考ヘマス、隨ヒマシテ肥料ヲ如何ニ配
  給スベキヤト云フコトハ、申スマデモナク
  肥料ハドノ位需要ガアルカト云フコトヲ、
  ヤハリ政府ト致シマシテハ種々ナル機關ヲ
  通シテ御調査ニナリマシテ、其ノ前年度ニ
  於テ對策ヲ講ジマシテ、其ノ配給ノ遺漏ナ
  キコトヲ期サナケレバナラヌガ、或ル府縣
  ノ一部デハ之ヲヤツテ居ル所モアリマスガ、
  マダ〓〓吾々ガ之ニ滿足スル程デハアリマ
  セヌ、政府ト致シマシテハ極力此ノ方針ヲ
  立テマシテ、ドノ位ノ正確ナ需要ガアルカ
  又供給力ハドノ位アルカト云フ計畫ヲ立テ
  マシテ、眞ノ農業政策ヲ確立致シタイト考
  ヘマスガ、政府ニ其ノ邊ニ對スル對策アリ
  ヤ否ヤヲ御伺致シマス

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• 037・松村謙三

  ○松村政府委員　御話ハ御尤デアリマシテ、
  私共ノ方ト致シマシテハ一昨年デアリマス
  カ、全國ノ各町村部落ニ於ケル施肥ノ實績
  ヲ調査シテ、ソレヲ得テ居リマス、ソレヲ
  年々ノ情勢ニ於テ變ヘテ行ク譯デアリマス
  カラ、之ニ依ツテ配給ノ大體ノ目安ガ付ク
  ノデアリマス、ソレデアリマスカラ、今日、
  量ヲ、春肥ニ付テ獲得致シマシタコトハ、
  先程申上ゲマシタガ、其ノ配給ノ緩急ヲ圖
  ルト云フコトガ大切デアリマシテ、例ヘバ
  東北地方ノ如キ早ク溫床苗代デモヤラナケ
  レバナラヌト云フ所ニ對シテハ配給ヲ急ガ
  ナケレバナリマセヌ、斯ウ云フ所ニ對シテ
  ハ特ニ東北地方カラノ御要望モアリマスノ
  デ、其ノ數量ニ付キマシテハ、私共ノ方ニ
  サウ云フ基準ヲ持ツテ居リマスカラ、其ノ
  基準ト御要望トヲ照シ合セマシテ、適當ナ
  ル數量ヲ早急ニ東北地方ニモ廻スヤウニ現
  ニ致シテ居リマス、隨テ御心配ノヤウナ配
  給ガ遲レテ不必要ナ時ニナツテ肥料ガ渡ル
  ト云フヤウナコトニ、萬ナラナイヤウニ致
  ス考デ居リマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマ
  ス

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• 038・信太儀右衞門

  ○信太委員　肥料ノ點ハ此ノ位ニ止メテ置
  キマス、尙ホ又此ノ增產計畫ニ付テ自分ノ
  御尋シテ見タイコトヲ進メタイト思ヒマス
  ガ、年々潰レ地ノ多イト云フコトハ、先程モ申
  シマシタ、而シテ之ヲ補塡シ代用シテ行ク所
  ノ開墾地ト云フモノハ、中々容易ノコトデハ
  アリマセヌ、政府モ開墾助成金ヲ交付シテ居
  リマスケレドモ、先ヅ第一ニ現在ハ勞力ニ於
  テ缺乏シテ居リマスシ、又勞銀モ非常ニ〓騰シ
  テ居ル爲ニ豫期ノ如ク成果ヲ擧ゲルコトハ
  出來マセヌカラ、政府ト致シマシテハ、重
  大ナ關心ヲ以チマシテ、一部地方ノ林野ヲ
  非常ニ低廉ナル値段ヲ以テ、其ノ土地ノ開
  墾主或ハ之ヲ經營セントスル者ニ賣拂フナ
  リ拂下ヲスル意思ナキヤヲ御伺シタイト思
  ヒマス

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• 039・松村謙三

  ○松村政府委員　只今ノ御問ハ國有林ノ
  農耕地ニ適スル所ヲ拂下ゲルカドウカ、斯
  ウ云フ御話ト思ヒマスガ、其ノ點ニ付キマ
  シテハ御承知ノ通リ山林局デハ不要存置
  林ガアリマシテ、其ノ中デ地方ノ農村ノ個
  人ニハ下ゲマセヌガ、地方ノ經濟更生計畫
  ニ伴ヒマシテ、サウ云フ開墾ヲ必要トスル
  所ガアリ、ソレガ町村ニ於テノ食糧政策ノ
  上カラ云ツテ、妥當デアルト考ヘマスモノ
  ハ、其ノ一部ヲ拂下ゲルコトハ出來ルト思
  ヒマス、詳細ノコトハ此處ニ山林局ノ人ガ
  居リマセヌカラ、御答致シ兼ネマス

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• 040・信太儀右衞門

  ○信太委員　尙又御伺シタイノハ、私ハ日
  本全國ヲ通ジマシテ天變地異ニ因ル災害
  ハ、非常ニ多イト思ヒマス、折角努力致シ
  マシテ漸ク美田ニナラントシテ來マシテモ、
  或ハ風水害ニ因リマシテ是ガ根柢カラ破壞
  サレテ、農民ガ折角粒々辛苦ノ功勞モ全ク
  文字通リ畫餅ニ歸スルコトガ往々アリマス、
  治山治水ノ問題ハ文字通リドウシテモ徹底
  的ニ行ハナケレバイケナイ、政府ト致シマ
  シテモ、個人ト致シマシテモ先ヅ水ヲ治メ
  山ヲ治メ、能ク之ヲ兩方カラ〓究致シマシ
  テ、眞ノ國策ヲ立テルニアラザレバ不可能
  ト思ヒマスルガ、今ノ日本ノ治山治水ノ對
  策ハ御承知ノ通リ內務省ノ所管ト、農林省
  ノ所管トニ分レテ居リマス、私ノ想像スル
  所ニ依リマスト、其ノ殆ド八割位ハ內務省
  土木局ノ所管ニ屬シテ居リマシテ、其ノ他
  ハ農林省デアリマスルガ、是ハ箇々別々ニヤ
  ル爲ニ一貫シタル趣旨ノ下ニ行ハレテ居リ
  マセヌ、主トシテ農林省ハ高地方面詰リ水
  源ノ方面ノミニ制限サレテ居リ、平地ノ方
  面ハ內務省ノ土木方面ノ技術ニ俟タナケレ
  バイカヌト云フコトカラシテ、終始一貫シ
  タル趣旨ガ徹底シテ居ナイ爲ニ、折角多大
  ナル國帑ヲ費シマシテモ、一朝風水害ガ來
  ルト水ガ氾濫シマシテ、折角ノ美田モ荒廢
  地ニナルコトガ往々アリマス、是等ニ付キ
  マシテハ內務省モ農林省モ合作致シマシ
  テ、災害ヲ未然ニ防イデ、サウシテ眞ノ治
  山治水ヲシテ、農耕地ノ價値ヲ高カラシメ
  ルヤウナ方針ヲ執ル所ノ御考ヲ、今御持デ
  アラウトハ思ヒマスガ、實際ソレダケノ確
  信ヲ持ツテ、今進ミツツアリマスカ、尙ホ
  將來一層强化シテ之ヲヤルト云フ風ナ御熱
  心サガアルカドウカ、御聽キシタイト思ヒ
  マス

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• 041・松村謙三

  ○松村政府委員　內務省ノヤル範圍ト、農
  林省ノヤル範圍トヲ分ツコトノ中々難シイ
  事ハ、御承知ノ通リデアリマス、併シナガ
  ラ是ハ何ト致シマシテモ內務省デヤラネバ
  ナラヌ部分ガアリマスルシ、又農林省デ森
  林ニ、關スル技術ヲ加ヘテ、工事ヲセネバナ
  ラヌ所モアリマスノデ、兩方ニ分レマスコ
  トハ是ハ已ムヲ得ヌコトデアリマス、唯如
  何ニ兩者ガ協調シテヤツテ行クカト云フコ
  トガ問題デアリマスノデ、其ノ點ニ付テハ
  近來オ互ニ遺憾ノナイ打合セヲ致シテ、統
  一シタ工事ヲシヨウト努メテ居ルノデアリ
  マシテ、御心配ノヤウナ惡イ結果ニナルコ
  トハ、出來ルダケ避ケタイト存ジマス

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• 042・信太儀右衞門

  ○信太委員　私ハ尙ホ此ノ資料ニ依リマシ
  テ、若干御尋シタイコトモアリマスガ、ソ
  レハ留保致シマシテ、私ノ質問ハ之ヲ以テ
  終リタイト思ヒマス

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• 043・添田敬一郎

  ○添田委員長　休憩ヲ致シマス、午後一時
  半カラ開會致シマス
  午後零時五分休憩
  午後一時四十八分開議

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• 044・添田敬一郎

  ○添田委員長　午前ニ引續イテ會議ヲ開キ
  マス-國光君

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• 045・國光五郎

  ○國光委員　私ハ本案第七條ノ公定價格ノ
  關係ニ付キマシテ、二三ノ質疑ヲ致シタイ
  ト存ズルノデアリマス、此ノ問題ニ付キマ
  シテハ本會議デ小山田君モ質問ヲシテ居ラ
  レマスシ、又村上君ハ詳細ナ數字ヲ擧ゲテ
  質問ヲシテ居ラレマスガ、大臣ノ之ニ對ス
  ル御答辯、殊ニ村上君ガ米穀統制法施行令
  ノ改正ニ付テ、其ノ意思アリヤ否ヤト云フ
  質問ニ對シマシテノ大臣ノ御答辯ハ、現行
  ノ施行令ノ運用デ十分ニ事足ルト云フ御答
  辯デアツタヤウデアリマス、本日午前中ニ、
  西川君カラ此ノ點ニ付キマシテ更ニ再檢討
  ノ意思ハナイカト云フコトヲ、御尋ヲ申上
  ゲタノニ對シマシテ、大臣ハ意思ガナイト
  ハ申サレマセヌガ、マダサウ云フ意思ヲ表
  示スベキ時期ニ到達シテ居ナイト云フ御答
  辯デアツタト承知致スノデアリマス、是一
  本法第七條ノ規定ニ依リマシテ、市場ノ公
  定價格ノ法的權限ト云フモノガ强化サレマ
  シテ、公定價格以外ノ取引ハ全然禁止セラ
  レタト云フ非常ナ强イ公定價格ノ決定ニ、
  意義ヲ與ヘラレルノデアリマス、斯ウ云フ
  劃期的ノ法案ノ成立致シマスル時期ニ、ソ
  レニ伴フ米穀統制法ノ施行令ノ、ソレニ關
  スル規定ニ付キマシテ、再檢討ノ必要ガア
  ルコトヲ私ハ痛感致スノデアリマス、殊
  昨年ノ十二月十七日ノ米穀統制委員會ニ於
  テ、決定セラレマシタ所謂十三年度ノ公定
  價格ナルモノハ、農村方面ニ於キマシテ非
  常ナル不滿ヲ持ツテ居ルノデアリマス、ソ
  レガ實際ニ統制法ノ運用ノ上ニ、合理的ナ
  決定ダト考ヘレバ問題ハアリマセヌケレド
  干、非常ニ不自然ナ裁定ヲ加ヘラレテ、所
  謂公定價格、殊ニ其ノ最高價格ト云フモノ
  ガ決定セラレタト云フコトニ付キマシテハ、
  農村關係ノモノハ非常ナ不滿ヲ持ツテ-
  是ハ無論國家ノ一般ノ物價政策トノ關聯モ
  アリマスルカラ、其ノ事情ハ諒ト致スニシ
  マシテモ、此ノ米穀統制法ノ今日マデノ米
  穀政策ニ寄與シ來ツタ點カラ考ヘテ見マシ
  テ、非常ナ遺憾ナ意ヲ持ツテ居ルノデアリ
  やっ、農業者ハ大雜把ニコンナ考ヲ持ツテ
  居ル、戰爭ニナルト米價ガ上ルノダト云フ
  ヤウナ、バツトシタ考ヘ方ヲ持ツテ居リマ
  ス、ソレハ吾々トスレバ、統制法ト云フモ
  ノガアツテ、其ノ統制法ニ依ツテ規制セラ
  レルノデアルカラ、唯農民ガ昔カラノ古イ
  考ヘ方ヲ持ツテ、徒ニ戰爭ニナレバ米ガ上
  ルノダト云フヤウナ考ヘ方ハ、非常ナ時局
  ヲ認識シナイ考ヘ方デハアリマスルガ、唯
  幸カ不幸カ此ノ米穀統制法ト云フモノガア
  ツタ爲ニ、其ノ運用ニ依ツテ國民ノ主要食
  糧デアルト云フ故ヲ以テ、其ノ頭ヲ抑ヘラ
  レタト云フコトニ付テハ、多大ノ不滿ヲ持
  ツテ居ル、併シ私ハ此ノ十二月十七日ニ決
  メラレタモノガ、此ノ年度ニ於テ米穀統制
  法ノ中ニ其ノ改訂ノ途ガ如何ニ開ケテ居リ
  マシテモ、ソレヲ動カスコトハ出來ヌト云
  フコトハ、十分ニ承知致シテ居ルノデアリ
  マスケレドモ、唯食糧充實ノ點カラ見テ、
  西川君ガ指摘セラレタヤウニ、十四年度ニ
  於テノ決定ニハ、此ノ米穀統制法ノ施行令
  ノ再檢討ニ依リマシテ、相當ノ途ガ開ケル
  ト云フ風ナ明ルサヲ持タセルト云フコトガ、
  政府ノ意圖シテ居ラレマスル所謂米穀增產
  ノ計畫ノ上ニモ、非常ナ關係ヲ持ツデアラ
  ウト考ヘルノデアリマス、其ノ意味合ニ於キ
  マシテ、同ジ問題ヲ繞ツテ繰返シテ御尋ヲス
  ルヤウデ、議事ノ促進ノ上カラドウカト云
  フ風ニ委員長ハ御考カモ知レマセヌガ、併
  シ私ハ決シテ之ニ付テ自分トシテ私案ヲ持
  ツテ居ル譯デハ無論アリマセヌ、ガ希望的
  ノ意見ヲ持ツテ居ルノデアリマス、其ノ意見
  ヲ申上ゲテ、ソレヲ中心トシテ質問ヲ致シ
  タイト考ヘルノデアリマス、唯此ノ問題ヲ質
  問致シマス前ニ、御聽キシテ置キタイコト
  ハ戰時ニ於ケル食糧政策ノ根幹ニ關スル
  問題デアリマス、此ノ點デモ本會議ニ於キマ
  シテ相當質問サレ、ソレニ對スル農林大臣ノ
  御答辯モアリマシタガ、ドウモ私ニハソレ
  ガドウ云フ所ガ狙ヒデアルノカ、其ノ狙ヒ
  ヲハツキリ摑ムコトガ、其ノ答辯ダケデハ
  出來マセヌ、三宅君デアリマシタカ、此ノ
  點ニ付テハツキリ尋ネテ居ラレマスルガ、
  ヤハリ農林大臣ノ御答辯デハ、ソコガハツ
  キリシテ居ナイヤウデアリマス、食糧政策
  ノ問題ニ關スル根本的ノ考ヘ方ガ、ヤハリ
  公定價格ノ決定ニ反映シテ參ルノデアリマ
  ス、此ノ點ニ付テ政府ガドウ云フ考ヲ持ツ
  テオ居デニナルカ、其ノ點ヲ一番先ニ確メ
  マシタ上デ、公定價格ノ決定ノ事情、竝ニ
  ソレニ伴ウテ私等ガ斯ウ云フ點ヲ幾分デモ
  是正シ、改正スベキデハナカラウカト思ツ
  テ居リマス、此ノ點ニ付テ當局ノ御所見ヲ
  伺ヒタイ、斯ウ云フノガ私ノ質問ノ要領デ
  アリマス、ソレデ先ヅ第一ニ〓糧政策ニ付
  キマシテノ根幹ニ付テ、御尋ヲ致シタイト
  思ヒマス、戰時ニ於ケル食糧問題ノ重要性
  ハ是ハモウ何人モ承知シテ居ル所デアリ
  マシテ、一般大衆モ兎モ角此ノ戰時ニ於ケ
  ル食糧ノ重要性ハ、相當ノ程度ニ認メテ居
  ルコトハ間違ナイノデアリマス、併シ一般
  ノ人ノ考ガ唯觀念的ニ食糧ト云フモノハ戰
  時ニハ大切ナモノデアル、世界大戰ニ於テ
  獨逸ガ破レタ所以ハ、主トシテ食糧ノ缺乏ニ
  在ル、聯合軍モ此ノ食糧ニハ非常ニ惱ンデ
  居ルト云フコトハ承知シテ居リマスケレド
  モ、同時ニ又日本ハ世界ニ類ノナイ自給自
  足ノ出來ル國デアル、食糧ニ關スル限リ如
  何ニ戰爭ガ長期ニ亙リマシテモ、此ノ點ニ
  付テ大シタ心配ヲスルコトハアルマイト云
  ツタヤウナ、甘イ、安易ナ氣持ト云フモノ
  ガ一般大衆ノ頭ノ中、肚ノ中ニアルト云フ
  考ハ、寧ロ大事ダトハ思ツテ居ルガ、併シ
  ソレハ日本ニハ幾ラ戰爭ガ續イテモ、ソレ
  デ困ルコトハアルマイト云フ安易ナ氣持ガ
  アルト私ハ存ジテ居リマス、併シ是ハ現實
  ニ食糧ノ缺乏ト云フモノヲ今眼ノ前ニ見セ
  付ケラレタコトガナイノデアリマスカラ、
  サウ云フ風ナ安易ナ氣持ガ國民ノ肚ノ中ニ、
  一般ノ人ノ頭ノ中ニアルト云フコトモ、是
  モ無理カラヌコトダト思ツテ居ルノデア
  リマス、併シ私ハソレハ別ト致シマシテ、
  甚ダ是ハ失禮ナコトヲ申スヤウデアリマス
  ガ、農林當局ノ方ニモ此ノ安易ナ氣持ノ何
  十分ノ一カガ、是ハ無論私ハ意識的ダトハ
  申シマセヌケレドモ、、兎モ角潜在意識ト
  シテ何處カノ隅ニ此ノ何十分ノ一カト云フ
  モノガ、アルノヂヤナイカト云フ氣ガシテ
  ナラナイノデアリマス、是ハコンナコトヲ
  申スト何デスガ、本案ノ如キハ、現在米穀
  ニシマシ、テモ八百万石、九百万石ト云フ
  持越ヲ見テ居ツテ、此ノ統制案ガ出テ來ル
  ノデアリマスカラ、所謂轉バヌ先ノ杖デ、斯
  ウ云フ風ニマデシテ用心ヲシテ掛ルノダト、
  無論仰シヤルデアリマセウガ、併シドウモ
  サウ云フ安易ナ氣持ト云フモノガ、何處カ
  ノ隅ニ何十分ノ一カアルノヂヤナカラウカ
  ト云フヤウナ氣持ガスルノデアリマス、私
  ハ第一ニ昭和十四年度ノ一般會計ニ於ケル
  所ノ農林豫算ノ形ヲ見ルノデアリマス、ド
  ウモ農林豫算ハ私共ノ氣持カラシマスレバ、
  食糧問題ニ付テノ大キナ責任ヲ持ツテ居ル
  戰時ノ農林豫算トシテハ、洵ニ·貧弱ダト申
  サザルヲ得ナイト思フノデアリマス、形ノ
  上カラスレバ追加豫算ヲ除イテ、十三年度
  豫算ニ比シテ千五百万圓增加シテ居ル、斯
  ウ言ヘバソレハ無論農林當局ノ御苦心ハ諒
  トシマスガ、併シ其ノ內容ヲ能ク檢討シテ
  見マスト洵ニ物足ラヌ氣持ガ致スノデアリ
  やっ 、此ノ農林豫算ノ新規要求ヲ見マスト、
  臨時農村對策施設ニ關スル經費、或ハ生產
  力擴充ニ關スル經費等、之ヲ合セテ見マシ
  テモ、此ノ大キナ問題ガ大シタ金額ニナツ
  テ居ナイ、サウシテ一面ニハ殆ド軍事豫算
  ト同樣ダト思ハレルヤウナ、兩方共管ノヤ
  ウナ感ジノスル馬政計畫、所謂軍馬資源保
  護ニ關スルモノハ、二千何百万圓ノ金ガ計上
  サレテ居ル、是等ヲ對照シテ見マスト、千
  五百万圓ヤソコラデハ內容ヲ見テモ一向ド
  ウモ榮エタ豫算デハナイ、戰時農林豫算ト
  シテ大手ヲ振ツテ步ケルヤウナ豫算デハ
  ナイヤウナ氣ガ致スノデアリマス、大體
  昨年ノ十二月ノ初ニ臨時農村對策部ガ新
  ニ設置セラレマシテ、ソレガ十四年度カ
  ラ掛ツタノデハ到底間ニ合ハナイ、十三年
  度カラ掛ラナケレバイケナイト云フノデ、
  豫備金ノ支出ニ財源ヲ仰イデ設置セラレタ、
  ソレヲ最初私共聽キマシタ當時ハ、是ハ洵
  ニサモアルベキコトデアルト其ノ施設ニ對
  ジテハ非常ナ共鳴ヲ持ツテ居ツタノデアリ
  そう、然ルニ其ノ後ノ臨時農村對策部ト云
  フモノノ結果ガ吾々ノ府縣ノ方ニ廻ツテ來
  タ形ヲ見ルト、如何ニモ不徹底デアル、如
  何ニモチグハグナコトヲ甚ダ遺憾ニ思フ、
  折角最初共鳴シタモノガ實際コンナモノデ
  ハト云フ氣持ガ致シタ、私ハ農會ニ多少ノ
  關係ヲ持ツテ居ルノデアリマスガ、此ノ生
  產ノ確保、肥料ノ配給等ニ付テノ駐在員ガ
  農村對策施設トシテ出來テ居ル、私ノ縣ニ
  モ其ノ配置ヲ受ケタ、ソレハ二郡市ニ對シ
  テ一人ノ駐在員デアル、折角設ケラレル程
  ナラ之ヲ一郡一人ト云ツタ形ニサレレバ、
  農林省ガ考ヘテ居ラレルヤウニ事モ早ク運
  ビマセウ、又今日ノヤウナ肥料ノ急迫シテ
  居ル狀態カラ言ヘバ、總テノ取調ノ書類ナ
  ドモ早ク農林省ノ御手ニ入ツテ、敏活ナ施
  設ノ運用ガ出來ルノデアリマスケレドモ、
  何分ニモ二郡市ニ一人デアル、而シテ置カ
  レテ居ル所ノ郡市ノ方カラ見ルト云フト、自
  分ノ所ニ事務所ハ設ケテアルケレドモ、自分
  ノ郡ダケデハナイノデアリマスカラ、上デ
  考ヘラレテ居ルヤウナ風ニソレニ十分ナ手
  傳ヲシテ、任務ヲ果サセルベク協力スルト
  云フコトハ出來ナイ、置カレテナイ方ノ郡
  市カラ言ウト、マア置イテハアルガ、ト云
  ツタヤウナ感ジ方ヲスル、此ノ二郡市ニ
  人ト云フコトハ如何ニモ不徹底デアリマス、
  ソレニモ拘ラズ、其ノ吏員ヲ選ブコトニ付
  テノ申請ノ手續ヲ運ビマシテモ中々捗ラナ
  イ、私ノ縣ノ如キモ今月ニ入ツテ漸クソレ
  ガハツキリシタ位デアル、折角十三年度カ
  ラ掛ツテヤラレルト云フノニ、人ノ配置ガ
  漸ク此ノ頃ニナツテ出來ル、斯ウ云フコト
  ハドウシテモ徹底スルヤウニナサラナイト、
  臨時農村對策部トシテハ洵ニ物足ラナイ、
  唯斯ウ云フ形ダケヲ作ツテ置クト云フ風ニ
  考ヘラレル、私ノ縣デ此ノ臨時農村對策部
  ニ付テノ各郡市農會長ノ協議會ヲヤリマシ
  タ際ニ、或ル郡ノ農會長ガ曰ク、コンナ笹
  ノ葉ニ水ヲ付ケテ振ルヤウナコトデ、此ノ
  大キナ吾々ノ任務ガドウシタツテヤレル筈
  ノモノデハナイ、ソンナチツポケナ金ヲ戴
  イテ非常ナ拘束ヲ受ケテヤルヨリハ、寧 口
  吾々農會獨自ノ立場デ、自由ニ對策ヲ立テ
  タ方ガ宜イデハナイカト言ツテ非常ニ主張
  サレテ、私共モ理窟デハ尤ニ思フモノデア
  リマスカラ、ソレ等ノ處理ニ困ツタ位ノコ
  トデアリマス、是ハ極端ナ例デアリマスケ
  レドモ、兎ニ角サレル程ナラバ徹底シタ所
  ノ施設ヲサレテ、是ガ郡ナリ、市町村ナリ
  部落ナリニ廻ツテ行ツテ、農林省ガ考ヘテ
  居ラレルヤウナ效果ガ擧ガルフデアラウカ
  ドウカト云フ、末ノ末マデ見透サレテ案ヲ
  立テテ戴カナイト、今ノ臨時農村對策部ノ
  如キ形デハ、中々農林省ノ意圖セラレル所
  ヲ十全ニ現ハス譯ニハ行カナイ、斯ウ云フ
  ヤウナ氣持ガ致スノデアリマス、私共ノ縣
  ノ郡農會ノ關係者ナドハ、皆今私ガ申上ゲ
  タ通リノ考ヲ持ツテ居ルノデアリマス、折
  角政府ガソレダケノ施設ヲセラレルナラバ、
  ソレニ順應シナイト云フコトハ、時局ノ認
  識ガナイヤウニ見エマス、ダガ順應シテヤ
  ツテ見テモ、思フヤウナ働キガ出來テ、ソ
  レニ應ヘルコトガ出來ルカト云フト、ソレ
  ガ出來ナイコトニナル、私ハ農林當局ニ於
  テ此ノ點ハ非常ニ注意ヲシテ戴カナケレバ
  ナラナイト云フコトヲ、熟〓思フノデアリマ
  ス、先日各派一致ノ生產確保ニ關スル決議
  案ガ、滿場一致デ決議セラレマシタガ、政
  府ハ目下ソレニ付テノ方法ヲ御〓究ニナツ
  テ居ルコトト思フノデリマス、其ノ事ガ現
  ハレマシテモ、例ヘバ部落團體ニ對スル助
  成ハ、此ノ法案ノ本當ノ狙ヒト致シテ居ル
  所ニ致シマシテモ、ソレガ實際ニ農村內ノ
  部落團體ヲ刺戟シテ、ソレニ感激ヲ與ヘテ、
  政府ノ〓糧政策ニ何ヲ措イテモ、之ニ順應シテ
  其ノ增產ノ目的ヲ達スルヤウニシナケレバナラ
  ヌト云フ氣持ニナラセルヤウニ、此ノ助成ヲ
  セラレナイト唯言譯ノヤウニ金ヲ出シテ、
  ソレハ今マデノ豫算ノ編成ノ仕方ト同ジコ
  トデ、細カイアノ項、此ノ項ト云フ風ニ數ヲ分
  ケテ、サウシテ僅カノ金ダケヲ廻サレテ、
  其ノ金ガ本當ニ活キテ、肝腎ナ增產ト云フ
  モノノ鍵ヲ握ツテ居ル所ニ效果ガ現ハレナ
  イト云フコトニナリマシテハ、折角ノ決意、
  竝ニソレニ對スル政府ガ考ヘラレル所ヲ、
  本當ニ透徹シナイコトニナルノデアリマス
  カラ、是ハ餘程注意ヲシテ戴カナイトイケ
  ナイ、是ハ餘分ノコトヲ申スヤウデアリマ
  スガ、サウ云フコトヲ思フノハ、此ノ臨時
  農村對策部ノ十三年度ニ於ケル施行ノ狀態
  ヲ見テ、特ニ其ノ事ヲ感ズル次第デアリマ
  ス、要スルニ十四年度ノ豫算ハ臨時對策ノ
  施設トシテハ、十三年度ク豫算、卽チ四ケ
  月分ヲ一年ニ引延バシタト云フニ過ギナイ
  形ニナルデアラウト私ハ思フノデアリマス、
  兎モ角農林豫算ハ、先程農林次官ノ御答
  辯ニナリマシタヤウニ、追加豫算ニ依ツテ
  一般農林豫算ヲ强化サレテ、本當ノ戰時ニ
  對スル食糧增產ノ參謀本部トナツテ居ル此
  ノ農林豫算トシテ、大手ガ振ツテ步ケルヤ
  ウナコトニ强化サルベク、農林大臣ノ特ニ
  御努力ヲ仰ギタイト思フノデアリマス、今
  日ハ私ガ言ウタ安易ノ氣持ノ何十分ノ一ド
  コロデハナイ、ソレハ綺麗ニナクナツテシ
  マツテ、非常ナ眞劍ナ氣持ニナツテ居ラレ
  ルト思フノデアリマスガ、此ノ豫算ノ編成
  ノ當時ニハ、大藏省トノ折衝ニモ相當ノ御苦
  心ハアリマシタデセウガ、大藏省ガ認メナ
  イカラドウモ仕方ガナカツタト云フコトデ
  ハ、戰時ノ農林當局トシテノ責任ハ、決シテ
  解除サレルモノデハナイト思フ、私ハ此ノ
  豫算ヲ見テモ何處トナシニ此ノ安易ナ氣持
  ガ、潜在意識トシテアルノデハナイカト思
  フヤウナ氣持ガスルノデアリマス、肥料ノ
  問題ニ致シマシテモ、肥料割當制ヲ昨年ニ
  發表セラレタ時ニ、農村ノ實情ハ勞力ノ不
  足其ノ他ニ依ツテ非常ニ困ツテ居ルカラ、
  肥料ノ關係ダケハ何ヲ措イテモ其ノ配給ニ
  遺憾ナキヲ期サナケレバナラヌ、ソレニ全
  力ヲ注イデ、其ノ勞力ノ不足其ノ他資材ノ
  廻リノ惡イノヲ、此ノ肥料デ補ツテ行クヤ
  ウニシナケレバ、此ノ年度ノ增產ハ出來ナ
  イト云フ氣持ガ、强ク農林當局ノ頭ニアリ
  マシタナラバ、私ハ今日ノヤウナコトニハ
  ナラズニ濟ンダラウト思フ、政府ハ隨分日
  日陳情其ノ他デ責メラレテ居ルデセウガ、
  私共ノ手許ニモ每日二一二通電報デ催促セラ
  と、ドウモ廻ラヌデ困ルカラ何トカ心配
  ヲシロト言ツテ來ルヤウナ狀態デアリマス
  ガ、私ハサウ云フコトニナラズニ濟ンダノ
  ダト思フ、十四年ノ一月カラ實行スルト云
  フ時ノ氣持ガ、何處カマダ潜在意識ニアツ
  タ爲ニ、今ニナツテサウ云フコトニ非常ニ
  御苦心ナサレル、其ノ御苦心ニ付テハ敬意
  ヲ表シマスガ、ソレモ一ツノ安易ナ氣持ガ、
  一般大衆ガ考ヘテ居ルヤウナ何十分ノ一カ
  アツタノデハナイカト云フヤウナ氣持ガ、
  私ハスルノデアリマス、ソレデ私ハ其ノ安
  易ナ氣持ガ、同時ニ米ノ增產ヲ控ヘテノ公
  定價格ノ問題ニモ反映シテ來テ居ルノデハ
  ナカラウカト思フノデアリマス、ソコデ問
  題ハ、此ノ食糧政策ニ關シテ攻府ガドウ根
  本的ニ考ヘテオイデニナルカ、此ノ點ニ付
  テハツキリシタコトヲ一ツ私ハ伺ツテ置キ
  タイノデアリマス、所謂一方デハ價格ノ問
  題、一方デハ增產ノ問題ガアル、是ガ兩建
  ニナツテ居リマスケレドモ、之ヲ一體ドウ
  取扱ハウトセラレルノデアルカ、本會議ニ
  於ケル質問ニ對シテノ御答辯ヲ伺ツテ見テ
  中、又速記錄ヲ讀ンデ見テモ、之ヲドウ取
  扱ハレルカト云フコトハ分ラナイノデアリ
  マシテ、此ノ食糧ノ增產ト價格トノ關係ヲ
  ドウ御扱ヒニナルカト云フコトヲ第一ニ承
  ツテ、ソレカラ公定價格ニ關スル問題ニ移
  ツテ御尋ヲ致シタイト思ヒマス

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• 046・松村謙三

  ○松村政府委員　大臣カラ御答辯申上ゲネ
  バナラヌノデアリマスガ、據ロナイ用事デ
  貴族院ノ他ノ委員會ニ出テ居リマスノデ、
  私ガ御答申上ゲマス、御話ノ點ハ極メテ重
  大ナコトデアリマスガ、只今ノ御質問ハ
  食糧政策ノ方ガ主ノヤウデアリマスカラ、
  其ノ點ニ付テ先ヅ御答ヲ申上ゲマス、御話
  ノ通リニ今日マデハ幸ニ食糧ニ事缺カナイ
  デ、殆ド國民ハ〓糧ニ對スル關心ヲ持ツテ
  居ナイヤウナ狀態デアリマスガ、是ハ洵ニ
  一面カラ見タナラバ、世界ノ戰史ニ例ノナ
  イコトデアリマシテ、戰爭ヲシテ一年半
  モ此ノヤウニ食糧ガ滿足ニ供給セラレルト
  云フコトハ是ハ一ニ國土ノ惠ミト、農民
  ノ非常ナ努力ノ結果デアリマスコトハ申ス
  マデモナイコトデアリマス、併シナガラ斯
  ウ云フ狀態ガ、安心ヲシテ今後モ持續シテ
  行ケルカト云フコトガ、大キナ問題デアリ
  マシテ、私共ハ御話ノ通リ今日マデハドウ
  カ斯ウカヤツテ來タガ、今後モ此ノ調子デ
  必ズ行ケルモノダト云フヤウナ御話ノ安易
  ナ氣持デ居ルト云フコトハ、大變ナ間違デ
  アリマシテ、農林當局ハ決シテ左樣ナ考ヲ
  持ツテ居リマセヌ、今日ノ場合色々ノ資材
  ガ不足ヲシ、勞力ガ不足ヲシテ參リマシタ
  上ニ、戰時〓糧ヲ確保スルト云フコトハ非
  常ナ困難ナコトデアリマスガ、又是ハ非常
  ナ必要ナコトデアリマシテ、若シモ此ノ確
  保ガ出來ナイデ、不安ヲ與ヘルト云フコト
  ガアツタナラバ、是ハ大變ナコトデアリマ
  スカラ、私共ハ此ノ食糧ノ確保ノ爲ニ最善
  ノ努力ヲセナケレバナラヌト思ツテ居リマ
  ス、ソレニ付キマシテハ先般モ議會デ此ノ
  點ヲ御心配ニナリマシテ、滿場一致ノ御決
  議モアリマスルシ、農林當局モ豫ネ〓〓是
  等ニ對スル色々ノ施設ヲ考ヘテ居リマシタ
  ノデ、計畫ヲ新ニ致シマシテ、現在大藏省
  ニ豫算ヲ要求致シテ居リマス、日ナラズ決
  定ヲ致シテ皆サンノ御協贊ヲ得ルコトニナ
  ルコトト存ジテ居リマスガ、其ノ點ハ全ク
  國光サンノ御話ノ通リニ考ヘマシテ、出來
  得ル限リ役所ノ人件費ナドヲ節約シマシテ、
  此ノ生產ヲ掌ル最前線ノ方面ニ有效ニソレ
  等ノ費用ガ〓ルヤウナ考ヘ方ヲ以テ、今日
  要求致シテ居ル譯デアリマス、同時ニ獨リ
  內地ノミナラズ朝鮮、臺灣ニモ此ノ生產ニ
  協力ヲシテ戴ケルヤウニ致シテ居ル譯デア
  リマシテ、食糧ノ確保ニ付テハ遺憾ノナイ
  ヤウニ努力ヲ致シタイト考ヘテ居リマス、
  之ヲ各府縣ニ綜合的ニ御願ヲ致シマシテ、
  府縣々々ノ責任ヲ以テ此ノ生產ニ當ルヤウ
  ニ、生產者タル農民ニ御願ヲシタイト思ヒ
  マシテ、明後日ノ日曜ニモ經濟部長會議ヲ
  農林省ニ招集シマシテ、是等ノ生產ニ付テ
  計畫的ニ相談ヲシテ、直グサマ實行ニ掛ル
  積リデ居リマス、幸ヒ前內閣ノ時ニ農業報
  國聯盟ト云フモノガ出來マシテ、其ノ豫算
  モ取ツテ居リマスガ、斯ウ云フ場合ハ主ト
  シテ生產擴充ガ何ヨリモ大切デアリマスカ
  ラ、此ノ方面ニモ御願ヲシテ、生產擴充ノ
  爲ニ衆議院方面ノ皆樣ニモ御協力ヲ願ツテ、
  此ノ目的ヲ達シタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘ
  テ居ル譯デアリマシテ、決シテ此ノ生產確
  保ニ手ヲ著ケナイデモ、食糧ハ得ラレルモ
  ノダト云フガ如キ考ハ斷ジテ持ツテ居リマ
  セヌ、餘程ノ努力ヲシナクテハ確保ガ出來
  ナイト考ヘテ居ル譯デアリマス、斯ウ云フ
  風ニ、一面ニ〓糧ノ確保ニ努力ヲ致スト共
  ニ、更ニ配給方面ニ力ヲ用ヒマシテ、是ダ
  ケノコトヲシテ居ツテモ、若シ不足ナドヲ
  スル場合ガアリ、不足ガナクテモ假思惑ガ
  起ツテ、米價ノ適正ヲ失フガ如キコトガ生
  ジ、國民生活ヲ脅カスガ如キコトガアツテ
  ハナリマセヌカラ、一面ニ生產ノ擴充ヲ致
  スト共ニ、又一面ニハ只今御審議ヲ願ツテ
  居リマスヤウニ、配給機構ノ改善ヲ圖リ、
  取引ニ付テハ投機ヲ抑制シテ、實需ニ依ツ
  テ公定相場ガ決マルヤウニスルコトガ、第
  一義デアルト思ツテ居ル譯デアリマス、是
  ダケ御答ヲ致シテ置キマス

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• 047・國光五郎

  ○國光委員　一應農林次官ノ御答辯ハ諒ト
  致シマス、殊ニ軈テ議會ニ出マスル農林省
  ノ追加豫算ニ付テハ、私ガ申上ゲタヤウナ
  本當ノ〓糧增產、生產確保ノ鍵ヲ握ツテ居
  ル所ニ狙ヒノ狂ハナイヤウニヤル積リダト
  云フ農林次官ノ御答辯ニハ非常ニ滿足ヲ致
  シマス、戰時豫算デアル限リハ、ヤハリ本
  當ノ非常時豫算トシテノ形デナケレバナラ
  又、平常通リノ考ヘ方デ豫算ヲ編成スルト
  云フコトニナルト、大藏省デ通ラヌト困ル
  モノダカラ、ソレニ合フヤウニサレル爲
  ニ、折角ノ狙ヒヲ狂ハシテシマフ、或ハ折
  角金ヲ取ツテ居リナガラ使ヒヤウガナクテ
  餘ツテシマフト云フヤウナコトヲ、ヨク
  話ニ聞クノデアリマス、併シ戰時豫算デア
  ル限リハ少シハ大雜把デモ、本當ノ狙ヒ所
  ニ向ツテヤラレルト云フ、今ノ農林次官ノ
  御答辯ノ通リニ農林豫算ヲ御取扱ヒニナル
  コトヲ、衷心ヨリ御願申上ゲテ置キマ
  ス、ソレカラ此ノ食糧政策ニ付テ、私ハ決
  シテ之ヲ農林省ガ忽セニシテ居ルトハ申シ
  マセヌガ、幾分カ安易ナ氣持ガ知ラズ識ラ
  ズノ裡ニアツタノデハナカラウカ、農林省
  ノ豫算ヲ見、又資料、其ノ他ヲ見ルト、サウ
  云フ氣持ガシテナラヌカラ申上ゲタノデア
  リマシテ、決シテ政府ニ何等ノ經綸モナケ
  レバ、熱意モナイトハ私考ヘテ居リマセ
  ヌ、併シ眞劍サガ足ラナイデハナイカト云
  フヤウチ氣持ガシテナラナイノデ、ソレヲ
  申上ゲタノデアリマス、所ガ農林省ノ政策
  ガ增產第一主義ト云フコトニナリマスレ
  バ、結局價格問題ハ第二ニ廻ルノデアリマ
  セウカ、ソレサヘハツキリスレバ宜シイノ
  デアリマス、所謂增產主義ト價格、此ノ兩
  方ヲ兩建ニ見渡シテヤラレルト云フコトデ
  アルノカ、或ハ增產第一主義デ、價格政策
  ナルモノハ第二ニ廻ルベキモノデアルカ、
  午前中ニモ西川君ガ申サレタガ、材料ハ非常
  ニ安クナツテ居ルニモ拘ラズ、其ノ製品ハ
  高イ、高イカラ今度ハ抑ヘルノダト云フ形
  ナラバ、增產ハドウモ非常ニ危險ガアルト
  思ヘバ、其ノ場合ニハ尙又考へ方ガ別デア
  ルガ、增產狙ヒデ行ケバ增產第一主義、若
  シソレガ思ハヌ價格ノ〓騰ヲ來シタ時ニハ、
  第二段トシテ其ノ價格ヲ抑ヘルコトヲ考ヘ
  ルト云フ行キ方ガ、今日ノ狀態トシテハ當
  然ナコトデアルト思フ、マダ增產ノ計畫モ
  立タヌ內カラ、價格ヲ抑ヘテ、後ニ增產ニ
  廻ルト云フコトハ、戰時ノ食糧政策トシテ
  ハ逆ニ廻ツテ居ルノダト云フコトヲ私ハ思
  フ、ソコガドツチデアリマスカ、今ノ農林
  次官ノ御答辯ガ、生產確保第一主義デ行ク
  ト云フノデアリマスナラバ、私ノ思ウテ居
  ル通リデアリマスガ、マダソコガハツキリ
  致シマセヌ、私ノ問ヒタイコトハ、所謂生
  產第一主義、價格第二主義、斯ウ云フ所ヘ
  行ケバ、私ノ是カラ進ンデ行ク考ヘ方ニ丁
  度ピツタリ合フノデアリマスガ、ソコヲハ
  ツキリシテ貰ヒタイ

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• 048・松村謙三

  ○松村政府委員　其ノ點ハ御話ノ通リデア
  リマシテ、生產ヲ增サウト致シマスニハ、
  價格ヲ適正ニシナクテハ出來ナイコトハ勿
  論デアリマス、是ハ生產ヲ增スコトニ努メ
  ル時ニハ、價格ヲ其ノ生產ガ出來ル程度ニ
  置イテ確保シナクテハ出來ナイコトト存ジ
  テ居リマス

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• 049・國光五郎

  ○國光委員　ソレハ言ヒ表シ方ニ依ツテ
  ハ、今ノ農林次官ノ御答辯モ適正ナト云フ
  コトノ意義ニナルノデアリマスガ、米穀統制
  法ニ於ケル公定價格ノ問題ニ一寸觸レテ見
  マスト、增產計畫ヲ立テル一方デハ、統制
  法ニ基ク最高最低ノ價格ガアルノデアリマ
  ス、何シロ農林當局ノ肚デハ、十四年度ハ今
  ノヤウナ安易ナ氣持デ一般國民ガ考ヘテ居
  ルヤウナコトデハイケナイ、斯ウナツテ此
  ノ增產ト云フコトニナリ、其ノ增產計畫ハ
  漸ク昨日農業計畫委員會デ、先般大臣ガ御
  答辯ニナツタ內地四百万石ノ增產計畫ガ御
  決リニナツタヤウニ新聞ニ出テ居リマス
  ガ、サウ云フ計畫ガ今定ツテ居ルノニ、前
  ノ公定價格ニ付テ幾ラカデモ不自然的ナエ
  作ヲスル必要ハナイノデハナイカ、例ヘバ
  「ゴム」ノ下ツテ居ルニモ拘ラズ、其ノ製品
  ハ自由ニ委セテ、十割モ二十割モ高クナツ
  テ居ルト云フコトハ、適正ナル價格デハナ
  イノデアリマスカラ、ソレヲ抑ヘナケレバ
  ナラヌ、ナゼ公定價格ヲ決定セラレル際ニ、
  增產ノコトガ目ノ前ニアルニ拘ラズ、ソレ
  ニ付テハ主要〓糧品デアルガ故ニ、他ノ物
  價ニ對シテ刺戟ヲ與ヘテハイケナイト云フ
  コトデ、ソレヲ抑ヘラレタト云フ氣持ガ、
  此ノ增產第一主義カラスルト、ドウシテモ
  私共ニハ合點ガ行カナイノデアリマス、當
  リ前ニ是ガ公正ニ決メラレタノデアルナラ
  バ、ソレガドンナ形デアラウトモ、若シソ
  レニ依ツテ其ノ價格ガ一般ノ國民生活ニ不
  安ヲ與ヘル、斯ウ云フコトニナレバ、其ノ
  時ニ抑ヘル方法ハ幾ラデモアル、兎ニ角統
  制法ガ今日儼トシテアルノデアリマス、ソ
  コガドウモ私ニハ分ラナイ、實際ハドウ
  云フ風ナノデアリマスカ、適正ナ價格ト云
  フモノガ此ノ增產ニハ必要ダト思ヘバ、不
  自然ナ工作ト云フモノハ執ラルベキ筈ノモ
  ノデナイ、ソレハ他ノ物價ニ對スル氣兼カ
  ラサウ云フ方法ヲ執ラレタ、斯ウ云フコト
  ニナルノデアリマス、他ノ物價ノ方ハ遠
  慮會釋ナクズン〓〓イツテ居ル、コツチ
  バカリガ遠慮ヲシテ、主要食糧品ダカラ
  國民ノ生活ニ不安ヲ與ヘテハイケナイト
  云ツテ抑ヘラレテハ、迷惑スルノハ農業
  者バカリデアルト云フコトニナリハシナ
  イカ、農林大臣ガ昨年ノ十二月十七日
  ニ統制委員會デ決ツタ後ニ出サレタ聲
  明書ヲ見ルト、如何ニモ苦シイ辯解ヲシテ
  オイデニナル、其ノ苦シイ辯解ヲセラレル
  程ノコトナラバ、モウ少シ戰時ノ食糧政策
  ト云フモノニ付テ大乘的ナ考ヲサレテ、所
  謂値ガ少シ上ツテモ國民生活ニ不安ヲ與ヘ
  ルト云フコトト、若シソレガ足ラナクテ價
  格ノ抑制ヲシタ爲ニ增產ノ計畫ニ暗翳ヲ與
  ヘルト云フコトニナツテ、ソレガ阻止セラ
  レタ時ニ起ルベキ不安、是ハ比較ニナラヌ
  程大キイ社會的不安デアル、ソレガアルカ
  ラコソ、轉バヌ先ノ杖ト云フコトデ配給統
  制案ト云フモノガ今日出テ居ルノデアリマ
  ス、ソコガドウモ私共ニハツキリシタコト
  ガ分ラヌ、如何ニモソコマデハ上ツテハイ
  カヌ、一般ノ人氣ガ惡カラウト云ツタヤウ
  ナ氣持デヤラレテ居ルト云フ風ニシカ私ニ
  ハ考ヘラレナイ、ソコハドンナモノデアリ
  マセウカ、執拗イヤウデアリマスケレドモ、
  御考ヘ方ヲ承リタイ

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• 050・松村謙三

  ○松村政府委員　只今御話ノ點デゴザイマ
  スガ、昨年ノ暮ニ基準米價ヲ決メラレマシ
  タコトハ、是ハ其ノ時ノ色々ノ情勢ヲ斟酌
  セラレ、又基準米價ヲ決定スル條件ヲ參酌
  セラレテ、オヤリニナツタコトデアリマシ
  テ、其ノ事ハ別ト致シマシテ、今後ハ如何
  ニスルカト云フ御話ダラウト存ジマス、今
  後ノコトニ付キマシテハ、私共ハ先刻モ御
  話ノ通リ、米ノ擴充ニ付テハ相當ニ其ノ價
  格ニ付テ農民ニ安心ヲセシメネバナラナイ
  ト云フコトハ、痛切ニ感ジテ居リマス、併
  シ今直チニ此ノ基準米價ヲ變更致スコトノ
  善シ惡シハ、此處ニハ申上ゲマセヌケレド
  モ、併シナガラ其ノ生產擴充ノ爲ニ今日ニ
  於テ基準米價ヲ變ヘルト云フコトハ、ソレ
  ハ相當ニ考慮ヲセネバナラヌコトト思フノ
  デアリマス、殊ニ今日カラ段々農家ノ人達
  ニ本當ニ米ガナクナリ、若シクハ段々是カ
  ラ米ヲ買ハネバナラヌト云フ事情モアルノ
  デアリマスノデ、今日公定米價ヲ動カスコ
  トノ善シ惡シニ付キマシテハ、愼重ナ考慮
  ヲ要スルコトト思ヒマス、併シナガラ米ノ
  增產ヲ圖ルノニハ、或ル程度ノ安心ヲ與ヘ
  サセルコトガ必要デアリマスカラ、是等ノ
  點ニ付テハ遺漏ナキヲ期シタイトハ考ヘテ
  居リマス、唯此處ニ申上ゲ得マスコトハ、
  新米穀年度ノ基準米價ヲ決定スルニ當リマ
  シテハ、ソレハ決シテ米ヲ犧牲ニシテ、サ
  ウシテ他ノ物價ト伴ハナイ價格ヲ決メルト
  云フヤウナコトハ斷ジテ致シマセヌ、御承
  知ノ通リアノ基準米價ヲ決メル色々ノ條件
  ハ、議會ニ於テモ長イ間色々ノ〓究、沿革
  ヲ經テ定ツタモノデアリマスカラ、アノ間
  ニ定メルナラバ、相當適正ニ出來ルノデア
  リマスルシ、其ノ運用ニ依リマシテハ十分
  御話ノヤウナ點モ考慮ニ入レテ、決メルコト
  ガ出來ル譯デゴザイマスカラ、新米穀年度
  ノ基準米價ノ決定ハ、米價ト他ノ物價トノ
  釣合等ニ付キマシテハ、十分考慮ヲ致シマ
  シテ、米價ヲシテ他ノ犠牲-犧牲ト言ツ
  テハ惡イカモ知レマセヌガ、特ニ米ダケヲ
  安クシテ、農民ガ多クノ負擔ヲスルト云フ
  ガ如キヤリ方ハ致サナイト云フコトダケ
  ハ、今日カラ申上ゲ得ルコトト思ヒマス

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• 051・國光五郎

  ○國光委員　公定價格ノ決定ハ前內閣ノ時
  決ツタコトデアリマシテ、是以上申上ゲル
  コトハ差控ヘタ方ガ宜カラウト思ヒマス、
  唯年度內ニ公定價格ヲ變更スルコトノ出來
  ナイト云フコトハ、是ハモウ農林次官ノ御
  話ヲ俟タナイデモ、常識的ニ私モ考ヘテ居
  ルノデアリマス、今御答辯ノ通リニ新米穀
  年-度ニハサウ云フ風ナ御意思ヲ持ツテヤ
  ラレルノダト云フコトガ分レバ、私ハ其ノ
  點ハ滿足致シマス、ソレデ公定價格ヲ決定
  シマシタ當時ノ事情ヲ申上ゲタイト思ツテ
  居リマシタガ、是ハ今農林次官ノ御答辯ニ
  アリマシタカラ、ソレハ省略致シマスガ、
  唯大體的ニ申シテ見レバ、兎モ角最高價格
  ノ決定ガ物價參酌値ノ上値二割乃至三割ノ
  間、又一方家計米價ト云プモノト見合シテ
  此ノ決定ヲサレルト云フノニ、實際此ノ物
  價參酌値自體ガ、三十八圓二十六錢ト云フ
  コトニナツテ居ツタノデアリ、之ヲ三割ヲ
  除イテ二割ト致シマシテモ、ソレハ四十五
  圓九十一錢デアル、見合シテ居ルトハ言ヒ
  ナガラモ、問題ノ決定ニハ殆ド何等ノ力ガ
  ナカツタト云フコトハ、是ダケデモ分ル、
  二割ニ見テモ四十五圓、サウシテ最高價格
  ノ決定ハ三十五圓四十錢ト云フノデアリマ
  スカラ、一方ノ基準ト、下ノ家計米價ノ基
  準、之ヲ兩方ヲ見合ハセタモノデ適正ナ事
  ヲ決定スルト云フノニ、上ノ方ハ全然考ヘ
  ラシナカツタト云フコトダケハ、ハツキリ
  シテ居ル、ソレハ殆ド問題ニナラナイ、兎モ
  角此ノ二割三割ト云フコトハ別ニ致シマシ
  テモ、參酌値ダケハ相當ニ考慮セラレテ宜カ
  ツタノデハナカラウカト云フ感ジガスルノ
  デアリマス、其ノ上ニ家計米價ソレ自體ノ中ノ
  所謂副食物其ノ他ヲ加ヘテ、一割以內ト云
  フモノガ三分五厘ニ下ゲラレテ居ル、其ノ方
  ヲ下ゲテ、サウシテ結局統制法違反デナイ
  ト云フ表面ヲ繕フ爲ニハソコニ行ツタト云
  フコトハドウ考ヘテ見マシテモ私ハ不自
  然ナ公定價格、卽チ最高價格ノ決定デアツ
  タト云フコトダケハ、誰ガ常識的ニ判斷ヲシ
  テモ間違ヒノナイ考ヘ方ダト思フノデアリ
  やく、併シ是ハ前內閣當時ニ決ツタノデア
  リマスカラ、決定事情ノ內容ニ付テ彼此レ
  申上ゲルコトハ、此ノ場合差控ヘテ置キマ
  ス、ソレデ此ノ新シイ米穀年度ニ付テハ相
  當考ヘルト云フヤウナ御答辯デアリマスシ、
  大臣ノ答辯ハ所謂米穀統制法ノ施行令ヲ、
  再檢討スルカドウカト云フコトノ意思ヲ、
  マダ表明スベキ時機デナイ、斯ウ云フノデ
  アリマスカラ、申上ゲテモ仕樣ガナイヤウ
  ナモノデアリマスケレドモ、私自身ガ此ノ
  統制法ノ內容ニ付テ、斯ウ云フ點ヲ變ヘタ
  ラ宜クハナイカト云フ點ダケヲ申上ゲテ、
  此ノ公定價格問題ヲ打切ルコトニ致シタイ
  ト思フノデアリマス、ソレデ大體私ハ現在
  ノ施行令ノ中デ、所謂物價參酌値ノ二割カ
  ラ三割、ソレヲドウ云フ所デ見合セルカト
  云フコトモ、施行令デハ漠トシテ、ハツキ
  リシタ數字ハ出テ來ナイ、此處ニモ大藏大
  臣ノ裁量ガ働イテ居ルコトニ現行法デハナ
  ツテ居ル、又家計米價ノ方ニ於キマシテモ、
  今ノ副食物其ノ他ノ分ハ一割以內デ、農林
  大臣ガ決メラレルコトニナツテ居ル、ソレ
  デ一割以內デアルカラ、一分デモ一割以内
  デアルシ、三分デモ一割以內ト云フコトニ
  ナツテ來マスカラ、是モ農林大臣ノ裁量、
  ソレカラ此ノ物價參酌値ノ上値二割乃至三
  割ト、家計米價ノ間デ見合セル、是モ農林
  大臣ノ裁量、斯ウ云フコトニ現在デハナツ
  テ居ルト云フヤウナコトガ、私ハ大體思ハ
  シクナイノデアリマス、私ハ農林大臣ノ裁
  量ヲ否認スル譯デハアリマセヌケレドモ、
  少クトモ物價參酌値ノ二割乃至三割ト云フ
  モノト、家計米價トノ間デ農林大臣ノ裁量
  ガアレバ、是ハ立派ナ働ガシテ行カレルヂ
  ヤナイカト言ハレルカモ知レマセヌガ、動
  カヌ二ツノ基準ガアリマシテ、其ノ中デ適
  正ナ所ニ農林大臣ノ裁量ニ依ツテ決メル、
  斯ウ云フコトデアレバ宜シイケレドモ、其
  ノ基準自體ガ動イテ居ル、動カセル、農林
  大臣ノ裁量デ上ヘモ上ゲラレレバ、下ヘモ
  下ゲラレル、基準自體ガ動カナイナラバ、
  私ハ此ノ十三年度ノ公定價格ヲ決メラレル
  時ニ、農業者ノ方ニ非常ニ不自然ナ無理ヲ
  シタ査定額デ吾々農民ニ犧牲ヲ拂ハシタノ
  ダト云フ惡イ感ジヲ持タセルヤウナコトガ
  ナシニ濟ム、假ニ十三年度ヲ見マシテモ、
  二割ト申シマスト四十五圓、サウシテ家計
  米價ノ關係ハ三十四圓七十五錢ニナツテ居
  リマスカラ、其ノ間ノ開キデモ十圓ノ開キ
  デアル、其ノ十圓開イテ居ル範圍ノ中ニ於
  テ農林大臣ガ公正ニ經濟事情ヲ參酌シテ適
  正ナ所ヘ、或ハ三十四圓ト四十五圓ノ間ノ
  十圓ノ眞中ニ於テ五圓ヲ上ゲルカ下ゲルカ
  ト云フコトハ、其ノ時ノ經濟事情ニ依ツテ
  農林大臣ガ決メラレルト云フコトニシテ置
  キサヘスレバ、斯ウ云フ昨年ノ決定事情ノ
  內容ヲ彼此レ言ツテ、農民ガ不平ヲ申シテ
  居ルヤウナコトハ起ラナイ、ソレデアリマ
  スカラ所謂二割乃至三割ノ間-二割ト三
  割トノ間ト言ヘバ物價參酌値ノ二割五分ノ
  所デアル、二割ナラ一一割、二割五分ナラ二
  割五分ト云フコトデ、物價ノ上ノ方ノ關係
  ハ確定シタ數字ガ出テ來ル、ソレハ農林大
  臣ノ裁量ノ範圍ヲ出テシマツテ居ル、ソレ
  カラ家計米價ノ方ニ於キマシテモ、農林大
  臣ノ現在ノ一割以內ノ裁量ヲ五分デモ一割
  デモ宜イ、十二年度ノ分ガ七分ニ決ツテ居
  ツタト云フコトハ、是ハ所謂一割ノ中デ五
  分ガ中心デアリマスカラ、五分ノ上ニ持ツ
  テ行ツテ二分程上ゲテ七分ニスル、今度ハ
  又一分五厘下ゲテ三分五厘、斯ウ云フコト
  ニナツタノデアリマスカラ、ソコハ五分ナ
  ラ五分ト云フコトニ決ツテ居レバ、モウソ
  レハ農林大臣モドウニモナラナイ、農林大
  臣ノ裁量ハ其ノ物價參酌値ノ二割乃至三割
  ト云フモノノ確定數字ト、ソレカラ家計米
  價ノ確定數字トノ間ノ十圓デモ、八圓デ
  モ、五圓デモ、其ノ開キニ於テ適正ナ裁
  定ヲサレルコトニ依ツテ、此ノ公定價格
  決定ニ決シテ遺漏ノアルヤウナコトハナイ、
  サウ云フ風ニ農林大臣ノ裁量ヲ上ニモ下ニ
  モ自由ニシテ置カナケレバナラヌト云フ特
  別ノ理由ハ私ハナイト思フ、ソレヲスレバ
  此ノ所謂決定事情ニ對スル何等ノ不平ハナ
  イ、ソレハ法ノ適正ナ運用デアルノダカラ、
  ソレガ假ニ十圓ノ開キノ中デ下ノ方ノ二圓
  ニ決メラレテモ、又消費者ノ立場カラ言ウ
  テ上ノ八圓ニ決メラレテモ、ソレハ統制法
  ト云フモノガ儼タル存在デアル以上ハ、
  ツモ不平モ不滿モアリヨウ筈ガナイ、之ヲ
  私ハ此ノ改正ノ事情トシテ考慮セラレタイ
  ト言フノデアリマシテ、是ガ私ノ御伺シタ
  イ一點デアリマス、ソレカラ此ノ最高、最
  低價格ノ決定ノ事情ト云フモノヲ所謂祕密
  ニシテオ居デニナル、是ガ私ハ誤解ヲ生ズ
  ル大キナ原因ダト思フ、從來ノ最高、最低
  價格ト致シマシテモ、ソレガドウ云フ風ナ
  コトデ決定サレテ居ルカト云フヤウナコト
  ハ、是ハ消費大衆ニモ、生產者ノ間ニモ大
  變ナ利害關係ガアルモノデアリマスカラ、
  適正ニソレガ決定サレルト云フ以上ハ、其
  ノ事情ハハツキリ一般大衆ニ分ルヤウニシ
  ナケレバナラヌ、成程無理ガナイ決定ダ、
  少シハ自分共ガ考ヘルヨリハ高イ、或ハ自
  分共ガ考ヘルヨリハ安過ギルト思ツテモ、
  是デハドウモ不平ハ言ハレヌ、不滿モ言ハ
  レヌト云フ所デナクテハナラナイ、昨年ハ
  全ク祕密ニナツテ居ル、私共農會ニ關係ヲ
  持ツテ居ルノデアリマスケレドモ、帝國農
  會ノ會長モ副會長モ其ノ統制委員デアリマ
  スカラ、ドウ云フ風デアリマシタカト言ツ
  テ話ヲ聽イタケレドモ、委員會ノ申合セデ
  絕對祕密ニシナケレバナラヌト言フ、サウ
  聽クト表面ニ現ハレテ居ル事實以上ニ、何
  カ細工ガアツタノデアラウカト云フ風ニ思
  フ、之ヲ公ニシタラトンデモナイコトニナ
  ルカラト言ツテ祕密ニサレテ居ル、事務當
  局ノ方ハ內〓デデモ聽イテ居ルダラウト思
  ツテ、帝國農會ノ事務當局ノ方へ内緒デ聽
  イテ見ルト、ソレモ實際私共話ヲ聽イテ居
  リマセヌト言ツテ聽カセナイ、先日本會議
  デ村上サンハ委員ニナツテ居ラレタカドウ
  カ知レマセヌガ、或ル程度マデ遠慮シイ〓〓
  質問ヲサレタヤウニ承ツテ居リマスガ、ア
  レ以上ニ如何ニモ無理ガアツタニ違ヒナイ
  ト云フコトヲ吾々ハ想像スルノデアリマス、
  ドチラニシテモ表面ニ現ハレテ居ル事實ダ
  ケヲ見テモ、如何ニモ適正ナ手續ニ依ツテ
  決定セラレタモノトハ思ヘナイ、彼此レ農
  林大臣ノ聲明等ヲ併セ考ヘテ見マスルト、
  大變ナ無理ガアル、少クトモ三十四圓五十
  錢ニ据ヱ置カレタト云フコトガ非常ナ不自
  然ダト云フコトハ、是ハ前ノコトデ、既化
  濟ンダコトデアリマスカラ仕方ガアリマセ
  尺り、今後ハ此ノ統制委員會ノ材料ナドト
  云フモノハ、少クトモ公正ナモノダ、所謂
  公定價格ト云フ以外ノ價格取引ガ出來ナイ
  ト云フ非常ナ法的ノ意義ガ、强化サレタノ
  デアリマスカラ、是ハ國民ニ重大ナ關係ヲ
  持ツテ居ル、是以上ノモノハ賣レナイコト
  ニナリマスカラ、其ノ點ヲ是非一ツ今後ニ
  付テ御考慮ヲ仰ギタイ、斯ウ云フコトヲ私
  ハ常々考ヘル、殊ニ戰時態勢ノ上ニ於テハ
  無理ナコトデアルト云フコトガ、一番增產
  ノ氣持ヲ害スルノデアリマス、食糧政策ニ
  付テノ重大ナル責任ヲ負ウテ居ラレル限リ
  ハ、此ノ點ハ殊ニ御考慮ヲ仰ギタイト思ヒ
  さく、農林大臣ガ其ノ時期デナイト仰シヤ
  ツタノデアリマスカラ、農林次官ニ其ノ點
  ヲ御尋スルノモヲカシイヤウニモ考ヘマス
  ガ、私ガ今申上ゲタコトニ付テ何カ御答辯
  トシテ承ルコトガアレバ、私ハ幸ニ存ズル
  ノデアリマス

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• 052・松村謙三

  ○松村政府委員　御話ノ點ニ付キマシテハ、
  此ノ間大臣ガ申上ゲマシタ通リニ、アノ基
  準米價ハ相當ニ議會デ長イ沿革ヲ經テアソ
  コニ決マツタモノデアリマシテ、アノ運營
  ニ依リマシテハ御話通リノ目的ハ達シ得ル
  ト思フノデアリマシテ、只今ノ所デハソレ
  ヲ法制的ニ變ヘル考ハ持チマセヌノデアリ
  マスガ、先程御話ノ農林大臣ノ參酌ノ餘地
  ガ非常ニ廣イト云フ御話デアリマス、是ハ
  御尤ノコトデアリマスガ、併シ國民生活其
  ノ他色々ノ方面ニ重大ナ關係ガアリマス米
  價ノ決定ヲ、單ニ機械的、數學的ニ決メ
  ル譯ニモ參リマセヌカラ、ソレデ斯ウ云フ
  斟酌ノ餘地ヲ或ル程度マデ盛ツテ置カナク
  テハイケナイダラウト考ヘマス、唯以前ハ
  御話ノ通リニ參酌値ノ上値二割トカナツテ
  居ツタノデアリマシテ、二割カラ三割マデ
  ト云フヤウナコトデハナカツタノデアリマ
  ス、御話ノ御意見ハ前ノ統制法ノ基準米價
  ハ、サウナツテ居ツタト思ヒマス、ソレデ
  二割デ適正デアルカ、更ニモウ少シ上マデ
  斟酌セネバナラヌデハナイカト云フ議論ガ
  アリマシテ、ソレデ二割ト三割ノ間ニ農林
  大臣ガ參酌スル、斯ウ云フコトニナツタ沿
  革モアルノデアリマス、卽チアノ節ハ二割
  デハ足ラナイカラ二割以上ノ所ニ農林大臣
  ガ參酌シロト云フコトニナツタカト記憶致
  シテ居リマス、サウ云フ次第デアリマシテ、
  運用ノ如何ニ依リマシテ、此ノ法規ヲ改正
  シマセヌデモ、十分ニ其ノ目的ガ達シ得ル
  コトト思フノデアリマス、ソレカラモウ一
  ツノ祕密會ノ御話デアリマスガ、是ハ別ニ
  法規ヲ變ヘマセヌデモ實行ノ出來ルコトデ
  アリマス、併シ之ヲ祕密會ニ致シテ置キマ
  スコトニ付テハ、是ハ色々ノ點カラ申シマ
  シテ公開スルコトハ妥當デナイト考ヘテ、
  今日マデ來テ居ルノデアリマス、御話ノ點
  モ御尤デアリマスカラ、果シテサウ云フコ
  トガ出來ルカ否カ存ジマセヌケレドモ、十
  分考慮ヲ致スコトト致シタイト存ジマス

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• 053・國光五郎

  ○國光委員　滿足ハシマセヌガ併シ大體諒
  承致シマス、唯祕密會ト云フノハソレハ色々ナ
  事情ガアリマシテ困難デアリマセウカラ、決
  定セラルルマデハ無論祕密ニサレテ宜イノデ
  アリマスガ、一旦ソレガ發表セラレタ以上ハ、
  ソレニ伴フ材料位ハハツキリシテ、一般
  ニ無理ガナカツタ、適正ナ落著キ所ダト云
  フコトヲ知ラシメルヤウナコトニシテ、戴
  キタイト思ツテ居リマス、私ハ此ノ公定價
  格ノ問題ハソレデ大體御尋スルコトノ要點
  ヲ濟マセマシタガ、最後ニ吉植君ガ本會議
  デ御尋ヲシテ、農林大臣ガ實現ヲシナイノ
  ハ遺憾ダト云フ簡單ナ答辯ヲシテ居ラレマ
  ス、穀物檢査ノ國營ノ問題デアリマス、是
  ハドウシテモ吉植君ガ質問サレタヤウニ、
  所謂車ノ兩輪ノ片輪ノヤウナ重大ナモノデ
  アリマス、此ノ統制法ガ成立致シマス限リ
  ハ米穀檢査ト云フモフガ全國的ニ試ミラ
  レナケレバ、是ガ十全ノ效果ヲ收メ得ナイ
  ト云フコトハ、是ハ誰ニ聞イテ見テモ當然ノ
  コトト考ヘルノデアリマシテ、是ト兩樣ニ考
  ヘラレテ然ルベキモノト思フノデアリマス、
  併シ之ヲソレナラバ次期ノ議會ニ提案サレ
  ルカト云フコトノ御尋ヲ申スノモ、或ハド
  ウカト考ヘマスガ、唯實現シナイノハ遺憾
  ト云フ程度デナクシテ、私ハ自分ノ記憶ガ
  間違ツテ居ルカモ知リマセヌガ、兎ニ角
  國營檢査ハ」既ニ農林省デ案ヲ立テラレタ
  ガ、大藏省トノ諒解ガ出來ナカツタ爲ニ、
  其ノ儘ニナツテ居ルカノヤウニ私ハ記憶シ
  テ居ルノデアリマス、私ノ記憶ガ全然違ツ
  テ居ルカドウカ、ソコハドウモハツキリシ
  ナイノデアリマスルケレドモ、此ノ配給統
  制案ガ成立スル限リハ、此ノ檢査ノ國營ト
  云フコトハ是非實行セラレナケレバナラヌ
  コトト思フノデアリマス、其ノ點ニ付テ唯
  實現シナイノハ遺憾デアルト云フ本會議ノ
  御答辯デアリマシタガ、モウ少シハツキリ
  シタ御答辯ヲ此ノ際御願致シタイト思フノ
  デアリマス

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• 054・松村謙三

  ○松村政府委員　此ノ問題ハ多年ノ問題デ
  アリマシテ、曾テ一度大藏省モ同意致シタ
  コトモアルノデアリマスガ、ソレガ內閣ノ
  更迭其ノ他ニ依リマシテ、今日實現シナイ
  コトハ甚ダ遺憾デアリマス、農林省ト致シ
  マシテハ殊ニ斯ウ云フ配給機關ガ成立致シ
  マスナラバ、米穀檢査ノ國營ト云フコトハ
  是非必要ダト考ヘテ居リマス、豫算其ノ他
  ノ關係ガアリマスノデ、必ズ來議會ニ出セ
  ルトハ言明致シ兼ネマスガ、出來ルダケ速
  ニ之ヲ實現スルヤウニ農林省ト致シマシテ
  ハ最善ノ努力ヲ致シタイト思ツテ居リマス

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• 055・國光五郎

  ○國光委員　御答辯滿足デアリマス、命令
  ニ讓ラレタ所ノ施行案ハ先刻配付サレマシ
  テ、マダ內容ヲ見ル暇ガナイノデアリマス
  ガ、大體私ノ質問ハ是デ以テ一應終リマス、
  又其ノ勅令案ノ內容ヲ見マシテ必要ガアレ
  バ御尋致シマス

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• 056・添田敬一郎

  ○添田委員長　北君-一寸申上ゲマス、
  農林省大臣ガ御見エニナリマスカラ一寸御
  待チ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=56

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• 057・河野一郎

  ○河野委員　資料ノコトニ付テ一寸御尋致
  シタイ

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• 058・添田敬一郎

  ○添田委員長　河野君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=58

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• 059・河野一郎

  ○河野委員　昨日頂戴シタ資料ノ中デ、道
  府縣購買組合聯合會ノ肥料取扱高ニ關スル
  調ト云フモノト、單位購買組合ノ肥料取扱
  高ニ關スル調ト云フモノヲ私見タノデアリ
  マスガ、其ノ中デ神奈川縣ノ調ガ昭和十一
  年度ニ於テ道府縣ノ方ガ百八万三千四百二
  十二圓、單位組合ノ方ガ九十三万一千八百
  六十五圓ト云フコトニナツテ居ル、是ハ吾
  吾ノ常識ヲ以テスレバ、產業組合ノ機構ニ
  於キマシテ、道府縣ノ產業組合ノ取扱高ガ
  單位組合ノ取扱高ヨリモ多イト云フコト
  ハ常識上アリ得ヌノデアリマス、如何ナ
  ル場合ニモ、道府縣ノ扱ヒ高ヨリモ單位組
  合ノ扱ヒ高ノ方ガ多イコトガ常識デアツ
  テ、道府縣ノ扱ヒ高ガ單位組合ヨリモ多イ
  ト云フコトハ、產業組合ノ建前ニ於テアリ得
  ザル數字デアルト私ハ解釋スルノデアリマ
  スカ、サウ云フ風ナ場合ガ產業組合法ノ上
  カラアリ得テ、斯ウ云フ數字ガ出テ居ルノ
  カ、アリ得ザルモノデアルトスレバ數字ガ
  間違ツテ居ルノカ何レデアルカ、御說明ヲ
  承リマセヌト、斯ウ云フ風ニ間違ツタ數字
  ガアルト、折角政府カラ戴イタ表ガ何處モ
  彼モ怪シイヤウナ氣持ガシマスノデ、甚ダ
  遺憾ニ考ヘルノデアリマスガ、此ノ點ニ對
  スル御說明ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス

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• 060・周東英雄

  ○周東政府委員　說明員カラ說明致サセマ
  ス

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• 061・松本友助

  ○松本說明員　今ノ御話ハ仰シヤル通リ、
  聯合會ノ取扱數量ヨリ單位組合ノ取扱數量
  ガ少イト云フコトハ、アリ得ナイノデアリ
  マスガ、此ノ統計ハ單位組合ノモノニ付キ
  マシテハ、昭和十年七月カラ昭和十二年六
  月マデニ事業年度ヲ終ツタ組合ニ付テ、集
  計シタノデアリマシテ、聯合會ハ一ツアリ
  マスカラ、其ノ一箇年分ノ一事業年度ノ分
  ヲ、茲ニ揭ゲテアルノデアリマス、而モ單
  位組合ノ分ハ、神奈川縣ニ購買組合ガ二百
  八アリマスガ、是ハ縣ノ〓況報〓ヲ集計シ
  テ統計ヲ作リマスノデ、其ノ中ノ八割以上
  ト云フコトニナツテ居リマスガ、百六十三
  ノ購買組合ニ付テ集計シテアリマスノト、
  年度ノ食違ヒト、ソレカラ集計シマシタノ
  ガ全部ノ購買組合ヲ集計シテナイト云フ關
  係上、斯ウ云フ食違ヒガ出來テ來テ居ルノ
  デアリマシテ、斯ウ云フ食違ヒハ時々アル
  コトガアルノデアリマス、ソレダケ御諒承
  ヲ願ヒマス

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• 062・河野一郎

  ○河野委員　サウスルト折角統計ヲ戴イテ
  モ、食違ヒガアツテ見タリスルト、サツパ
  リ資料ガ資料ニナラナイヤウナ氣ガシマス
  ガ、又同時ニサウ云フヤウナコトガアルナ
  ラ、アルヤウニ書イテ置イテ戴マセヌト、
  吾々ノ常識デ考ヘルト、縣購聯ノ扱ヒ高ガ
  單位組合ノ扱ヒ高ヨリ多イト云フコトニナ
  ルト、議員ハドウセ碌ナコトハ見ナイダラ
  ウト云フノデ、出鱈目ノ資料ヲ寄越シタト
  云フヤウナ氣ガスル、折角御作リ下サツテ
  モ、ドレガ本當カ、ドレガ食違ヒカ分ラヌ
  ヤウナコトニナル、斯樣ナコトハ他ノ表ニ
  モアルノカ、數字ニ偶〓サウ云フ吾々ノ常識
  デ、現ハレザルモノヲ發見シタカラ、是ハ
  ドウモヲカシイナト云フ氣持ガスルガ、他
  ノ所ニサウ云フ風ナモノガアリマスカ、大
  體他ノ所ハ間違ヒナイト云フコトデ、吾々
  檢討ヲ加ヘテ宜イカドウデスカ

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• 063・松本友助

  ○松本說明員　大體間違ヒナイト思ヒマス

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• 064・添田敬一郎

  ○添田委員長　北君

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• 065・北勝太郎

  ○北委員　本法案ニ依ル米穀會社ニ對シテ
  延取引ヲ認メタノハ、ドウ云フ譯デアルカ
  之ヲ伺ヒタイノデアリマス、此ノ法律案
  ハ言フマデモナク、國民ノ主要〓糧デア
  リマスル米ヲ、投機ノ目的ニサシテハナ
  ラヌト云フ所ニ重點ヲ置カナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、昨日片岡委員ハ延取
  引ハ投機デアル、ソコデ產業組合ニヤラ
  シテハイカヌト云フ御質問ガアツタノデ
  アリマスルガ、產業組合ハ旣ニ地方ノ組合
  カラ委託ヲサレタ實米ヲ持ツテ居ル場合ニ
  於テハ、是ハ延取引ヲヤツテモ決シテ投機
  デハナイノデアリマス、ソレハ兎ニ角トシ
  テ、實米ヲ持ツテ居ル者ノヤル行爲ハ投機
  デハナイノデアリマス
  〔委員長退席、馬岡委員長代理著席〕
  然ルニ實米ヲ持タナイモノヽ延取引ト云フ
  ノハ實質ニ於テハ空賣買デアリマス、所謂
  睹博ナノデアリマス、投機デアリマス、此
  ノ弊害ニ至ツテハ從前ト少シモ變ラヌ、僅
  ニ期間ガ三箇月ノモノガ二箇月ニ短縮サレ
  タト云フダケニ過ギヌモノト思フノデアリ
  マシテ、依然トシテ投機ノ具ニ供セラレル
  ト云フコトハ、是ハモウ決シテ間違ガナイ
  ト私ハ思フノデアリマス、前ニモ申上ゲマ
  シタヤウニ、本法ノ重點ガ米ヲ投機ノ具ニ
  供シテハナラヌト云フコトデアル以上、此
  ノ場合商人タルト產業組合タルトヲ問ハズ、
  一切ノ投機取引ヲ絕對ニ廢止シナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマスガ、農林大臣ハ此
  ノ間本會議デ、眞鍋君ノ質問ニ對シテ「此度
  ノ延取引ニ依リマスト、一定ノ米種ニ限ラ
  レテ居ルノデアリマスガ故ニ、容易ニ投機
  ノ目的トハナラナイノデアリマス」云々、斯
  ウ云フ工合ニ言ハレテ居ルノデアリマスガ、
  コンナコトデ果シテ空取引トナル、卽チ投
  機ノ目的ニ使ハレルコトナシニ行ケルト云
  フ工合ニ大臣ハ御考ニナツテ居ルノカドウ
  カ、之ヲ一ツ承ツテ見タイト思フノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=65

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• 066・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　本市場法ガ實物本位デア
  ツテ、投機取引ト云フモノヲ廢止シタイト
  云フコトノ精神ノ籠ツテ居ルコトハ、聞
  〓算取引ヲ廢止シマシタバカリデハナク、
  此ノ延取引ノ問題ニ付キマシテモ、相當多
  分ニ含マレテ居ルノデアリマス、卽チ今御
  話ノ如ク銘柄取引、卽チ何處ノ米、何處ノ
  米ト云フ米ノ種類モ限ツテ、相對的ニ取引
  ヲ約束スル、又組合セ銘柄ニ依ツテ取引ヲ
  スルト云フコトダケデモ、格付デ取引ヲシ
  テ無制限ニ一本建ノ、何處ノ米デモ持ツテ
  行ツテ間ニ合フ取引トハ大イニ趣ヲ異ニ致
  シテ居リマス、故ニ其ノ銘柄取引ト云フ事
  柄ダケデモ、私ハ投機抑制ニ對シテハ相當
  效果ガアルト思ヒマス、又一タビ賣リマシ
  タ以上ハ其ノ米ヲ中途ニ於テ轉賣買戾ト云
  フコトヲサセナイト云フ事柄モ、私ハ投機
  ヲ抑制スル大キナ力ガアルダラウト思ヒマ
  ス、從來ハ本日百石米ヲ賣ツタ、明日其ノ
  米ガ安クナツタ、直グニソレヲ買戾ス、其
  ノ翌日ハ直グニ差金ガ受取レル、斯ウ云フ
  ヤウナ狀態デアリマシタケレドモ、此ノ度
  ノ本案ハソレハ出來ナイノデアリマシテ、
  卽チ期日々々ニ於ケル、最終ノ期日ニ於ケ
  ル所ノ場合ニ於テノミ差金ノ決濟ガ認メラ
  レテ居ルノデアリマシテ、此ノ點ニ付テモ
  私ハ投機ヲ抑制スル力ガ非常ニ大キイト思
  ヒマス、又限月ノ上ニ於キマシテモ、期日
  ガ違ツテ居リマス、或ハサウ云フ多少ノ投
  機抑制ノ力ガアツテモ、ソンナコトハ必要
  ハナイ、之ヲ止メテシマツタラ宜イデハナ
  イカト云フ風ノ北君ノ御意見デアルカモ存
  ジマセヌガ、兎ニ角遠方ノ米ヲ取寄セテ賣
  ルト云フ場合ニハ、單ニ十五日ノ未著物取引
  バカリデハ圓滿ニ參リマセヌ故ニ、其ノ間
  ニ於ケル所ノ調和ヲ圖ツテ、サウシテ取引
  ガシ易イヤウニスルト云フコトニ付キマシ
  テモ、多少ハ考ヘナケレバ相成ラヌト思フ
  ノデアリマス、今ノ販賣組合等ニ於キマシ
  テハ、洵ニ機構ガ整然ト致シテ居リマシテ、
  農村カラ都會ニサウ澤山ノ期日ヲ費サズニ
  集荷シ得ルノデアリマスケレドモ、米穀商
  人ノ人々ノ集荷機構ト云フモノノ上ニ於キ
  マシテハ、マダ左程マデ發達シナイ點モア
  リマスノデ、多少ノ期日ハ玆ニ認ステ取引
  ヲサセルト云フコトガ、市場運用ノ上ニ於
  テ適當デアラウ、斯樣ニ考ヘマシテ斯ウ云
  フ風ニ決定シタ譯デアリマス

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• 067・北勝太郎

  ○北委員　實米ヲ持タズニ米ノ賣買ヲスル、
  是ガ地方ノ米價ニ非常ナル影響ヲ及ボスコ
  トニナルノハ當然デアリマス、卽チ立派ナ
  投機デアルノデアリマス、デスカラ多少投
  機ノ抑制ガ出來ル位デ本法ヲヤツテ行クベ
  キモノデハナイト私ハ思フ、此ノ際斯ウ云フ
  ヤウナコトハ、モウ根コソギ無クシテシマ
  ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ工合ニ思フノ
  デ、ソコデ如何ナル方法ニ依ツテモ投機ノ
  目的ニサセヌガ爲ニハ、是ハ未著物取引ノ
  期間ヲ長クスレバソレデ宜イデハナイカ、
  十五日ト限ラズニ、或ハ必要ノ場合ニハ三
  十日トサレテモ宜イダラウト思フ、ソレデ
  實物ヲ賣買サセルコトガ出來ルコトニナル
  ノデアリマシテ空賣買ガ行ハレナクナル、
  是ガ本法制定ノ本當ノ目的デナクテハナラ
  ヌト思フノデアリマスガ、甚ダ此ノ點ニ付
  テハ私ハ滿足仕兼ネルモノガアル、モンノ
  步進メテ斯ウ云フ劃期的ナコトヲヤル場合
  ニハソコマデドウシテモ行カナケレバナラ
  ヌノデハナイカト思フノデアリマスガ、モ
  ウ一應重ネテ御伺シテ見タイト思ヒマス

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• 068・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　只今申上ゲマス通リ、從
  來ノ如ク格付ノ、何處ノ米デモ代用スルト
  云フ米ヲ標準トシテ賣買スルニアラズシ
  テ、一定シタル地域ノ米ヲ標準トシテ賣買
  ヲ致シマス以上、實物ヲ持タズシテ賣買ヲ
  スルト云フコトハ、私ハヤツテヤレナイコ
  トハナイト思ヒマスケレドモ、容易ニ是ハ
  危險デ出來ナイコトデアラウト思フノデア
  リマス、殊ニ況ヤ最高最低ノ相場ガ決定サ
  レテ居ルノデアリマシテ、ソコニサウ云フ
  風ナ投機ヲ容易ニスル餘地ガ餘リ私ハナカン
  ラウト思ヒマス、併シ理想ト致シマシテハ
  此ノ集荷機構ヲモウ少シ整備シテ、サウシ
  テ御話ノ如ク限度ヲ三十日位ナ程度ニ置イ
  テ、未著物取引ヲヤツテ延取引ヲ止メルト
  云フコトモ一ツノ方法デアリマセウケレド
  モ、今日現在ノ所謂米穀取扱業者ノ取扱ツ
  テ居ル米ノ集荷狀態ニ鑑ミ、又米ノ配給狀態
  ニ鑑ミタ時ニ、先ヅ此ノ程度ニ於テ然ルベ
  シト考ヘタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=68

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• 069・北勝太郎

  ○北委員　ドウモ滿足スルコトハ出來マセ
  スガ、問題ヲ次ニ移シマス、本案ノ條文ノ
  上ニモ屢〓出テ來ルノデアリマスガ、此ノ委
  員會ニ於テモ審議ノ途上產業組合ノコトガ
  多ク論ゼラレルノデアリマス、而シテ其ノ
  產業組合ノ正體ニ付テ非常ニ認識ノ足ラヌ
  モノガアルヤウニ思ハレルノデアリマス、
  產業組合ガ恰モ何カ役員ノモノデアルカノ
  如ク思ツテ。貰ツテハ困ルノデアリマス、申
  スマデモナク組合員ノモノデ、役員ハ番頭
  サンニ過ギヌノデアリマシテ、決シテ主人
  デハナイノデアリマス、能ク役員ノ惡イノ
  ヲ產業組合ノ惡イノト混同シテ論ジラレル
  場合ガアルノデアリマスガ、ドウカ是ハ本
  末ヲ轉倒セヌヤウニ、農林當局ハ說明ヲシ
  テ、此ノ點ヲハツキリシテ置イテ戴キタイ
  ト思フノデアリマス、能ク產業組合ヲ非難
  スル言葉ニ、產業組合ノ行過ギト云フ言葉
  ガアルノデアリマスガ、產業組合卽チ組合
  員ナノデアツテ、組合員卽チ農民ト云ツテ
  モ宜イ位ナノデアリマス、斯ウ云フヤウナ
  考デ物事ヲ見テ戴キマスルナラバ、行過ギ
  ドコロヂヤナイ、今日農民ハ非常ニ經濟的
  ニ苦シイ立場ニ居ルモノデアリマスカラ、
  ソコデ金持階級ノヤウニ經濟上ノ問題ヲ鷹
  揚ニ取扱ツテ行クコトガ出來ナイノハ事實
  デアリマス、其ノ結果法ニ許サレタ範圍內
  ニ於テ最モ合理的ニ活動シテ行カナケレバ
  ナラヌノデアリマス、實ハ現在ノ農民ノ貧
  困ダト云フコトハ、此ノ合理的ナ活動サヘ
  足ラヌノデス、行過ギドコロヂヤナイ、行
  キ足ラナイ狀況ニナツテ居ルノデアリマ
  ス、先日本會議デ吾々ノ崇敬シテ居リマス
  ル現ニ此ノ委員ニナツテ居ラレマスル高田
  サンニ對シテ、眞鍋君ガ、高田サンモ產業
  組合ノ行過ギ云々ト言ツテ居ラレタト言ツ
  テ、鬼ノ首デモ取ツタヤウテ口吻ヲ漏サレ
  タノデアリマスガ、ソレハ恐ラク此ノ不都
  合ナ役員ガ、產業組合ノ運營ヲ誤ツテ、サ
  ウシテ法規ヲ逸脫シタ仕事ヲシテ居ル分ヲ
  指シタモノデアルト私ハ思フノデアリマス、
  多數ノ役員ノ中ニハソンナ惡イ者ハナイ
  トハ私ハ言ハナイノデアリマスガ、併シサ
  ウ云フ者ハ段々淘汰サレテ行ク、官廳ガ監
  督シテ居ルノデアリマスカラ、サウ云フコ
  トヲヤラセル筈モナイシ、又組合自體ニ於
  テモ監事ガ監督ヲシテ居ル組合員全體ガ、
  又總會ニ於テ一人一票ノ決議權、此ノ決議
  權ヲ以テ直チニ斯ウ云フ者ヲ淘汰シテ行ク
  コトニナツテ居ルノデアリマシテ、今日ノ
  農民ト云フモノハ、日進月步ノ今日デスカ
  ラ、是位ノ能力ハ持ツテ居ルノデアリマス、
  デスカラ餘リ農民ヲ見縊ツチ貰ツテハ困ル
  ト思フノデアリマス、農民心理ト云フモノ
  ハ現在ニ於テハ產業組合ノ惡口ヲ言ハレル
  ト自分ノ身ノ上ノ惡ロヲ言ハレル位ニ腹ヲ
  立テルト云フヤウナ狀況ニナツテ居リマス、
  ソコデ產業組合ノ意思ハ卽農民ノ意思ダト
  云フ此ノ產業組合ノ正體ヲ、シツカリ把握
  シテ戴クコトガ大切ナノデアリマス、此ノ
  主觀ガ違ヒマストソコニ大キナ間違ヲ來ス
  ノデアリマス、殊ニ此ノ產業組合ノ非營利
  公益性ト云フコトニ付テノ考ガ、ハツキリ
  シテ居ラヌトイカヌノデアリマシテ、實ハ
  昨日モ農林大臣ノ御答辯ノ中ニ、ドウモソ
  レニ似タヤウナ怪シ氣ナ節ガ出テ來マシタ
  ノデ、私ハ非常ニ遺憾ニ思ツテ居ルノデア
  リマス、農林當局ハ斯ウ云フ點ニ付テ、ハ
  ツキリシタコトヲ此ノ委員會ニ於テ述ベテ
  置イテ戴キマスコトハ、本案ヲ審議シテ行
  「ク上ニ重大ナ關係ガアルト私ハ思フノデア
  リマス、此ノ點ニ付テ一ツ御說明ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス

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• 070・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私ガドウ云フ言葉ヲ使ヒ
  マシタカ存ジマセヌガ、私ハ產業組合ガ明
  治三十三年ニ出來マシテ以來、所謂農村ノ
  中小農業者ノ爲ニ非常ニ貢獻ヲ致シテ、而
  シテ其ノ發達ノ爲ニ努力ヲ致サレテ居ルト
  云フコトハ能ク存ジテ居ルノデアリマス、
  又農業者ヲ保護スル上ニ於テ產業組合ノ穩
  健ナル發達ヲ希望シテ居ル點ニ付キマシテ
  ハ、何人ニモ讓ラナイ考デアリマス、行過
  ギ云々ト云フ言葉ヲ私ハ使ツタ覺エガナイ
  ノデゴザイマスガ、併シ世間ニハ左樣ナ議
  論ヲ爲ス人ガアルヤウデアリマス、此ノ點
  ニ付キマシテハ私共モ十分注意ヲ致シテ〓
  究致シ、又組合ヲ預カツテ居ル方々ニモ深
  ク此ノ點ニ付テ顧ミテ戴イテ、兩々相携へ
  テ產業組合本來ノ目的ニ對シテ、進ンデ行
  クヤウニ致シタイ、斯樣ニ思ツテ居ルノデ
  アリマス、此ノ點ニ付キマシテハ此ノ機會
  ニ於テ私ノ考ヘテ居ルコトヲ明ニ致シテ
  置キマス
  〔馬岡委員長代理退席、委員長著席〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=70

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• 071・北勝太郎

  ○北委員　別ニ大臣ガ行過ギテ居ルト言ハ
  レタトハ私ハ申シマセヌガ、昨日大臣ハ、
  產業組合ノ全部ニ集荷サセルト、是ハ消費
  者ノ不利ニナルト云フ言葉ヲ使ハレタノデ、
  私ハ驚キマシタ次第デ、ソンナコトガアル
  ベキ筈ノモノデナイ、ナゼサウ云フコトヲ
  考ヘテ居ラレルカト云フノデ、非常ニ私ハ
  驚イタノデアリマスガ、產業組合ノ持ツ非
  營利公益性ヲ、大臣ハ御認識ガナイノデハ
  ナイカ、甚ダ失禮ナ言分デハアルガ、御認
  識ガ足ラナイノデハナカラウカ、若シ御認
  識ガアルトスレバ、サウ云フ御言葉ハ間違
  ツテモ出ル筈ガナイト思フノデアリマス、
  併シ決シテ言葉尻ヲ捉ヘテドウ斯ウショウ
  ト云フノデハナイノデアリマスガ、此ノ際
  私ハ產業組合側ノ現在考ヘテ居リマスルコ
  トヲ、一ツ申上ゲテ見タイト思フノデアリ
  やっと、實ハ產業組合ノ行キ方ハ申スマデモ
  ナク階級鬪爭デハ斷ジテナイノデアリマス、
  內部ニ於キマシテモ是ハ自由主義經濟ノ長
  所ヲ、相當認メテ行カウト云フノデアリマ
  シテ、外部ニ對シテモ勿論サウデアリマス、
  金持モ貧乏人モ、一家ノ家族主義ノヤウナ
  考デ、溫カイ氣分デ進ンデ行カウト云フコ
  トニナツテ居ルノデアリマシテ、是ガ所謂
  產業組合ノ共存同榮ト言ツテ居ル所以デア
  リマス、ソコデ資本主義經濟下ニ於ケル非
  常ニ極端ナル弊害ヲ、小サイ人達ノ協力ニ
  依ツテ防イデ行カウト云フ-
  除カウト云フノヂヤナイ、防イデ行カウト
  云フ範圍デヤラウト云フノデアリマス、社
  會改新ニ對スル所ノ極端ナル方法ヲ執ラナ
  イノデアリマシテ、多クノ社會改革ノ方ノ
  人達カラハ、產業組合ノヤウナ生溫イコト
  デ、ドウシテ此ノ時代ガ改革シテ行ケルカ
  ト云ツテ、平素攻撃サレテ居ル位ノモノデ
  アルノデアリマス、サウ云フヤウナ工合デ
  アリマスガ、ソレニシテモ實ハ產業組合ニ對
  シテハ、ソレ〓〓ヤハリ進ンデ行クベキ道、
  執ツテ行クベキ道ヲ與ヘテ置カナケレバナ
  ラヌ、所謂傳家ノ寶刀ヲ一ツ與ヘナケレバ
  ナラヌノデアリマス、例ヘバ白米ノ小賣ヲ
  スルト云ツタ所デ、都市ヘ來テ直グニ小賣ガ
  出來ルモノデハナイ、ダガ併シ小賣ガ出來
  ルヤウニシテ置クコトガ必要デアル、若シ
  ソレガ出來ナイトナルトドウナルカ、產業
  組合ノ者ハ締出ヲ食フト云フコトニナリ兼
  ネナイノデアリマシテ、サウ云フヤウナ
  ツノ安全瓣ヲドウシテモ拵ヘテ置ク必要ガ
  アルノデアリマス、丁度商工省ノ方ガ來テ
  居ラレマスカラ、大變參考ニナルト思ヒマ
  スノデ申上ゲルノデアリマスガ、實ハ北
  海道ノ靑豌豆ノ問題ガ起ツタ時ニ、吾々ハ
  決シテ商人ノ輸出組合ヲ攻擊スルモノデハ
  ナイ、輸出組合ニモドン〓〓ヤラセナケレ
  バナラヌガ、其ノ反面ニ於テ產業組合ニ極
  メテ「フリー」ナ立場ニ於テ輸出ヲサセナ
  ケレバナラヌ、非營利的ナ特長ヲ使ツテ行
  カナケレバナラヌト云フコトヲ、主張シタ
  モノデアリマスガ、商工省ハドウシテモ商
  業者ヲ自分ノ子供ト思ツテ居ル、其ノ商業
  者ノ方ニ、何ト云ヒマスカ、其ノ方ニ加擔
  シ易イノデアリマス、サウシテ遂ニ產業組
  合ノ輸出ト云フモノヲ非常ニ窮屈ニシタ、
  是ハ何モ產業組合ガ輸出シタカラト云ツテ
  海外ニ對シテソンナコトハ一ツモナイ、商
  人達ハ輸出組合ノ組合員デアリナガラ、皆
  各自電報ヲ打ツテ各自勝手ナコトヲヤツテ
  賣ツテ居ルノデアリマス、其ノ中ニ一ツ產
  案組合ガ入ツタカラト云ツテ決シテ國家的
  損失ニナルモノデハナイノデアル、ニモ拘
  ラズ色々ナ理由ヲ付ケテ到頭之ヲ非常ニ窮
  屈ナモノニサレタノデアリマスガ、其ノ結
  果今日ハドウナツテ居ルカ、最近私共ノ方
  デ靑豌豆ガドウシテモ動カナクテ困ルカラ
  倫敦ニ人ヲ調査ニヤツタノデアリマスガ、
  斯ウ云フコトヲ言ツテ來テ居ルノデアリマ
  ス、「英商「ベルグ」ト中村トノ靑豌豆輸出關
  係ニ付テ、倫敦市場ニ於ケル日本產靑豌豆
  沈衰ヲ極メ「ベルグ」以外ノ一般取引業者ハ
  何レモ日本産ヲ嫌忌シ、賣行漸次不良トナ
  リ、和蘭產ヲ希望シツツアル狀態ナルモ、
  是ハ倫敦市場ニ於ケル「ベルグ」ト中村トノ
  結合ニ依リ投機的策動ヲナス爲ニシテ、斯
  ノ如キ投機策動家ニ依リ、爲ニ年々數万磅
  乃至數十万磅ノ損失ヲ蒙リツツアルハ國家
  的ニ見ルモ寔ニ殘念ナル次第ナリ、策動方
  法、「ベルグ」(一名「バーグ」)ハ倫敦市場ニテ
  大手筋ナリ(猶太系ノ人)、市場ニ於テ相場
  ヨリ安値ニ空賣シ、他ノ業者ヲ斷然壓倒シ、
  一方日本ノ輸出業者ニ向ケテハ日本市場ヨ
  リ安値ノ電報ヲ發シ、(中村ノミニ一般業者
  ヨリ高値)爲ニ小樽相場ガ「ベルグ」ノ電報
  ヨリ漸次引合相場マデ低落スル、此ノ時「ベ
  ルグ」ハ中村ニ買付ケセシメテ兩者ニテ暴
  利ヲ貪リ居ル仕組ナリ」斯ウ云フ工合ニ言
  ツテ來テ居ルノデアリマス、ソコデ是ハ營
  利ノモノニモ非營利ノモノニモソレ〓〓特
  徵ガアルノデアリマスカラ、營利ノモノト
  非營利ノモノト二本建デヤラセテ行クコ
  トハ一方ノ弊害ヲ除ク上ニ於テ又特長ヲ伸
  バス上ニ於テ極メテ必要デアルノデアリマ
  ス、所ガソレヲ何カ摩擦デモ起ルカノ如ク
  考ヘラレテ、サウシテ斯ウ云フヤウナ問題
  ニ對シテハ農業者ノ進出ヲ非常ニ不利ニス
  ル、今度ノ法案全體ニ付テ見テモ斯ウ云フ
  傾ガ隨分アルノデアリマス、斯ノ如クシテ
  商業者、若クハ農業者ノ利益ヲ擁護シ、或
  ハ消費者ノ利益ヲ擁護スル爲ノ一ツノ安全
  瓣デアル、產業組合ト云フ非營利、公益性
  ノモノ、卽チ此ノ一ツノ安全瓣ヲナクシヨ
  ウトシテ行クコトハ大ナル危險ガアルノデ
  アリマス、私ハ本法案全體ヲ通ジテサウシ
  タ傾ガアルコトヲ見テ非常ニ遺憾ニ考ヘル
  ノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ今度
  ノ立法ヲスル上ニ於テ十分注意シナケレバ
  ナラヌ點デアルト思フノデアリマスガ、當
  局ハドンナ工合ニ御考ヘニナツテ居リマス
  カ、之ヲ承ツテ見タイト思ヒマス

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• 072・新倉利廣

  ○新倉政府委員　只今生產者ノ團體ト商業
  者ノ問題トニ付テ縷々御話ガアリマシタ、靑豌
  豆ノ問題ニ付キマシテハ具體的ニ私モ詳細存
  ジテ居リマセヌカラ、御答スル資格モゴザイ
  マセヌガ、唯一般的ニ輸出統制ノ見地カラ、
  徒ニオ互ニ競爭シテ輸出スルコトガ、從來
  ノ我國ノ輸出貿易ヲ如何ニ阻害シタカト云
  フコトニ付テハ、北サンモ御承知ノコトト
  思ヒマス、左樣ナ見地カラ或ル程度色々ナ
  問題ヲ起シタト云フコトハ承知シテ居リマ
  ス、次ニ生產團體ト商業者ノ一般的ナ問題
  ニ付キマシテハ、是ハ確ニ吾々トシマシテ
  モ非常ニ難カシイ問題デアル風ト云フニ考
  ヘテ居リマス、併シナガラ要ハ此ノ兩者、ガ
  相剋摩擦スベキモノデナクシテ、如何ニシ
  テ提携協力スルカト云フ問題デゴザイマシ
  テ、此ノ根本ノ方針ニ付テハ何人モ異存
  ガナイコトト存ジマス、唯具體的ニドウス
  ルカト云フコトニ付テハ色々ナ問題ガアル
  ト思ヒマスノデ、斯ウ云フ點ニ付キマシテ
  ハ從來ニ於キマシテモ農林商工兩省デ、相
  當御協議申上ゲテ居リマスガ、今後ニ於キ
  マシテモ一段ノ工夫ヲ要スルト云フ風ニ考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=72

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• 073・北勝太郎

  ○北委員　此ノ法案全體ヲ眺メテ見マスト
  云フト、ドウモ農業者ノ利益代表デアル產
  業組合ダケヲ縛ツテ、西川君ノ言ハレルヤ
  ウニ二世紀前ノ法律デ以テ、モウ時代ノ過
  ギタ不合理ナモノヲ擁護シヨウトシテ居ル
  ガ爲ニ、是ハ非常ニ無理ノアル點ガ見エル
  ノデアリマス、今度ノ問題ニ對シテハ農民
  全體ハ非常ナ不滿ヲ持ツテ居リマス、コン
  ナコトヲヤツテ百姓ノ頭ヲ押ヘテドウスル
  ノカト云フ不滿ヲ持ツテ居ルノデアリマス、
  大體一般ノ觀念ガ農民ヲ搾取ノ對象物トス
  ルコトヲ平氣デ居ラレル、是ハ當リ前ダト
  云フヤウニ考ヘテ居ルヤウデアリマス、此
  ノ觀念ガ流レテ居ツテハイカヌノデアリマ
  ス、日本ノ農民ガ現在大不滿ヲ持ツテ居ル
  ノハ、斯ウ云フヤウナ觀念ノ流ニ對シテデ
  アリマス、今後日本ハ大陸發展ヲシテ行カ
  ナケレバナラヌ、支那ノ農民ヲ指導誘抜シ
  テ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フ場合ニ、
  コンナ日本ノ農民サヘモ不平ヲ言ツテ居ル
  ヤウナ行キ方デ、ドウシテ支那ノ農民ヲ日
  本ニ惹付ケテ行クコトガ出來ルカ、私ハ戰
  爭ハ決シテ武力ダケデハ濟マヌト考ヘテ居
  ルノデアリマス、日本ノ農村ハ斯ノ如ク直
  ツテ來タゾ、日本ノ觀念ハ斯ノ如ク變ツテ
  來テ居ルゾ、百姓ヲ搾取ノ對象ニシテハ居
  ラヌノダ、ソシテ農民ノ生活狀態ハ良クナ
  ツテ來テ居ルゾ、社會的地位モ良クナツテ
  來テ居ルゾ、ダカラ支那モ此ノ通リニヤツ
  テ行カナケレバナラヌ、斯ウ言ツテ支那農
  民ヲ惹付ケテ行ク、卽チ支那國民ノ八割以
  上ヲ占メテ居ル所ノ農民ヲ惹付ケテ行クト
  云フコトガドウシテモ出來ナケレバナラ
  又、此ノ大事ナ新秩序ノ建設ヲシナケレバ
  ナラヌ時ニ、日本國內ニ於テ此ノ態デハ大
  變デアル、到底支那農民ヲ日本ニ惹付ケル
  資格ハナイ、斯ウ云フ意味ニ於テモ、ドウ
  シテモ是ハ農民ヲ搾取ノ對象物ニスルト云
  フ考ヲ根柢カラ直シテ行カナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、折角農民ガ國家ニ忠
  義ヲ盡シ、至誠ノアリツタケヲ國家ニ盡シ
  テ居ルノニ、其處ニ妙ナ法律ガ出來テ、農
  民ニ一大不滿ヲ持タセルト云フヤウナコト
  ガアツテハイカヌ、所謂羊頭狗肉ノ此ノ法
  律案ガ通過シテ行クヤウナコトガアツテハ
  イカヌ、斷ジテイカヌト私ハ思フノデアリ
  マイク、農林大臣ハ本案ハ農業者ノ生活ヲ安
  定サセルコトト、モウ一ツハ消費者ニ對シテ
  食糧品ヲ安ク確保シテ行クコトガ大事ダト
  言ハレテ居リマスガ、此ノ法律全體ヲ眺メ
  テ見ルトサウ云フ所ハ一ツモアリハシナ
  イ、商人ノ擁護バカリデアル、片ツ端カラ
  商人ノ擁護ニナツテ居ルノデアリマス、何
  處ニ農民ノ爲ニナル所ガアルカ、農民ノ生
  活ガ安定出來ルヤウナ所ハ一ツモアリハセ
  又、斯樣ナ法律ニナツテ居ルノデアリマス、
  是ハドウシテモ斯ウ云フ根柢ノ流ヲ直シテ
  行クト云フコトデナケレバナラヌト思フノ
  デアリマス、百姓ヲ馬鹿ニシ切ツタヤウナ、
  差別的行キ方ハドウシテモ除カナケレバナ
  ラヌ、サウデナケレバ恐ラク生產力ノ擴充
  ハ遂行出來マセヌ、是ハ感情的ニ言フノデ
  ハナイ、實際上經濟上動キガ付カナクナル、
  ソコデ生產ガ擴充出來ナクナルト云フコト
  ニナルノデアリマス、之ニ對シテ當局ハ根
  本カラ考ヲ直シテ貰ハナケレバナラヌト思
  フノデアリマスガ、一ツ御所見ヲ承ツテ置
  キタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=73

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• 074・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私共ハ今北君ノ御意見ノ
  如ク、農民ノ利益ヲ眼中ニ置カズシテ、總
  テノコトヲヤツテ居ルト云フ風ナ精神ハ毫
  末モ持ツテ居リマセヌ、如何ナル場合ニ於
  テモ、農家ノ現在ノ人々ガ、殆ド國家ノ中
  樞トモ言ハルベキ立場ニ在ルノデアリマシ
  テ、之ヲ擁護シ、此ノ健全ナル發達ヲ期シ、
  同時ニ其ノ生活ノ安定ヲ期スルト云フコト
  ニ付キマシテ、有ユル努力ヲ致スト云フコ
  トニ付テハ、申スマデモナク考ヘテ居ルノ
  デアリマス、今農村ニ於ケル狀態ガ一番不
  利ナ狀態ニ在ルコトハ、是ハ私モ確ニ認メ
  マス、卽チ勞力ガ不足シテ居ル、肥料モ思フ
  通リニ廻ラヌ、馬モ少クナツタ、サウシテ生
  產力ハ擴充シナケレバナラヌ、然ルニ生產資
  材ハ高クナツタ、生產物ハ思フヤウニ高ク
  賣レナイ、斯ウ云フヤウナ場合ニ於テ、其
  ノ擔ハサレタル大任ヲ發揮シナケレバナラ
  ヌノデアリマスガ故ニ、農村ノ今日ノ現狀
  ト云フモノハ、私共カラ言フト確ニ農民精
  神ノ發露ニ依ツテ、農村ノ總力ノ協和ニ依
  ツテ、此ノ時難克服ニ對シテ邁進シテ居ル
  場合デアリマシテ、深ク敬意ヲ拂フト同時
  ニ、何トカシテ農民ノ負擔ヲ輕減シ、農民
  ノ人々ノ生活ノ向上安定ヲ期スルト云フコ
  トニ對シテ、全力ヲ擧ゲテ行キタイト思ツ
  テ、晝夜苦慮シテ居ル譯デアリマス、唯吾
  吾ガ現在採リツツアル所ノ事柄ニ付キマシ
  テモ、色々ナ非難モアリマセウ、又足ラヌ
  所モアリマセウ、アリマセウガ、少クトモ
  精神ハ農民ノ爲ニ、卽チ言葉ヲ換ヘテ言ヘ
  バ、國家ノ爲ニ其ノ向上發展ニ對シテ力ヲ
  盡スト云フ點ニ付キマシテハ、決シテ一日
  モ忘レテ居ルモノデハナイト云フコトヲ申
  上ゲマシテ御答ト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=74

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• 075・北勝太郎

  ○北委員　產業組合ノ今行ツテ居リマスコ
  トハ非營利デアルコトハ勿論デアリマス、
  公益性ト云フ點ニ就テ組合ノ米ノ取扱ヒガ
  ピツタリ一致スルト云フコトヲ申上ゲテ見
  タイノデアリマス、產業組合ノ米ノ賣リ方
  ハ旣ニ農業界ノ人ナラ誰デモ御存知ダト
  思フノデアリマスガ、是ハ無條件委託平均
  賣ガ原則ニナツテ居リマス、何處ノ產業組
  合デモ農民ニ對シテ之ヲ奬勵シテ居ルノ
  デアリマス、是ハ農民ト云フモノハ商人ノ
  ヤウニ、其ノ日〓〓ノ相場デ動イテハイケ
  ナイ、又ソンナ動クベキ性質ノモノデハナ
  イノデアリマス、モウ一ツハ實ハ現在ノ農
  業者ハ非常ニ貧困ナ立場ニ居リマス爲ニ、
  生產シタ米ハ全部出來秋ニ農業倉庫ニ持ツ
  テ行ツテ、實ハ筒一ツパイニ金ヲ借リテ
  居ル、普通ノ擔保デ借リルト七掛カ八掛シ
  カ貸サナイノデアリマス、併シ無擔保デ金
  ヲ貸スヨリハ品物ヲ擔保ニ金ヲ貸シタ方ガ
  安全デアル、若シ賣却シタ時金ガ足ラナカ
  ツタラ信用デ責任ヲ負へト云フノデ、筒一ツ
  パイニ金ヲ貸シテ居ルノデアリマス、隨テ
  貸ス方ノ安全感ノ上カラ云ツテモ、是ハ若
  シ農家ガ筒一ツパイニ借リタモノヲ見込ヲ
  サレテハ堪ラヌ、ソコデサウ云フヤウナ見
  込ヲ斷ジテヤツテハイケナイト云フヤウナ
  條件ヲ付ケテ、サウシテ平均賣ニサシテ居
  ルノデアリマス、米ノ需要ハ御承知ノ通リ
  ニ每日々々平均ニ食ベテ行クモノデアリマ
  スカラ、平均賣ノ方法ハ是ハ一番理想的デ
  アリマス、投機モナケレバ見込モ何モアリ
  ハシマセヌ、斯ウ云フヤウナ行キ方ヲシテ
  居ルノデアリマシテ、是ハ偶然ニモ組合ノ
  此ノ米ノ賣リ方ハ現ニ社會ノ要求スル公益
  性トピツタリ一致シテ居ルト云フコトニナ
  ツテ居ルノデアリマス、產業組合ノ理事者
  ガ往々ニシテ投機ヲヤルト云フヤウナコト
  ヲ考ヘテ居ル人ガアルヤウデアリマスガ、
  ソレハ絕對ニナイ、何故カト言フト、先程
  モ言フ通リ組合員ノ組合デアリマス、若シ
  投機デ儲ケテ、是ダケ儲ケマシタト言ツテ
  總會デ假ニ報〓ヲシタトスルト、ソレハ組
  合員ハ斷ジテ喜ビマセヌ、投機デ儲カル反
  面ニハ必ズ損ヲスルコトガアル筈デス、ソ
  ンナ金ハ決シテ欲シクナイト言ツテ、產業
  組合ヲ自分自ラガ守ラナケレバナラヌ爲ニ、
  組合員ガ承知セヌノデアリマス、儲ケタ所
  デ其ノ金ノヤリ所ガナイノデスカラ產業組
  合ハ投機ヲスルト云フヤウナコトハ絕對ニ
  ナイノデアリマシテ、米ノ取扱ヲサセルト
  云フコトニ付テハ、是ハ全ク產業組合ノヤ
  ツテ居ルコトハ期セズシテ社會ノ要求シテ
  居ル線ニビツタリ一致シテ居ルノデアリマ
  ス、斯ウ云フヤウナ賣リ方ヲスル者ハ恐ラ
  ク商人ニハアリマセヌ、商人ニハ平均賣ト
  云フモノハアリマセヌ、此ノ間ドナタ
  カ言ハレタ通リ、商人ハ利ニ依ツテ動ク
  ノデアリマス、利ガナケレバヤラナイノ
  デ、決シテ商人ニハ斯ウ云フコトハ出來
  ナイコトデアリマスガ、農民ハ否デモ
  應デモ斯ウシテ行カナケレバナラヌト云フ
  コトニナツテ居ルノデアリマスカラ、米ノ
  取扱ヲサセルモノトシテハ是程理想的ナモ
  ノハナイト私ハ思ツテ居ルノデアリマス、
  併シナガラ斯ウ言ツタカラト云ツテ商人ヲ
  排除セヨトハ言ヒマセヌ、ヤハリ商人ニハ
  商人トシテノ特長モアルノデアリマス、デ
  アリマスカラ此ノ特長ハ何處マデモ伸バシ
  テ行ク方ガ宜シイ、サウシテ兩々相俟ツテ
  切磋琢磨デヤレバ宜イ、一方產業組合ノミ
  ヲ縛ツテ、サウシテ舊時代ノ遺物ノ米ノ取
  引商ノ人達ダケガ羽振リヲ利カシテ行カウ
  ト云フノハ、是ハ不都合千萬ナ考ノ持チ方
  デアリマス、米ノ取扱ヲ所謂商人ノ營利本
  位ニノミサセルト云フコトハ、決シテ國家
  ノ公益性ト云フヤウナコトト一致スルモノ
  デハ斷ジテナイノデアリマス、ソコデ產業
  組合ノ頭ヲ此ノ際決シテ抑ヘルベギモノデ
  ハナク、產業組合ハ產業組合デ何等ノ束縛
  ナシニドン〓〓進ヌテ行クガ宜シイ、又商
  人ニハ商人デヤラセルガ宜イ、斯ウ云フヤ
  ウニ考ヘルノデアリマス、サウナルト商人
  ハ段々ナクナルデハナイカト考ヘラレルカ
  モ知レナイガ、實ハ先程モ一寸申上ゲタヤ
  ウニ、產業組合ト云フモノハ無暗ニ組合員
  ヲ縛ツテ居ルノデハナイ、組合加入自體ガ
  任意加入デアツテ、決シテ强制加入ヲサセ
  テ居ナイ、平素取扱ツテ行クコトモ、決シ
  テ組合員ヲ束縛シナイ行キ方ヲシテ居ルノ
  デアリマス、デスカラ商人ノ伸ビルコトニ
  ハ決シテ吾々ハ不平ヲ言ツテ居ラヌノデア
  リマス、隨テ一方ダケヲ縛ツテ行カウト云
  フヤウナ行キ方デナシニヤツテ行ツテ貰ハ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、ド
  ウモ此ノ法案全部ヲ見ルト、產業組合ダケ
  ヲ縛ルヤウニ見エル、所ガ反產ノ連中ハ實
  ニ大袈裟ナコトヲ言ヒマシテ、產業組合ハ
  何モカモヤツテ、白米小賣モ全部取ラレル、
  自分等ノ業務ハ全部ナクナル、斯ウ云フ宣
  傳ヲシテ居ルヤウデアリマスガ、決シテソ
  ンナ力ヲ產業組合ハ持ツテ居ラヌ、又ソン
  ナ惡辣ナコトヲヤルモノハナイノデアリマ
  ス、明治三十六年ニ產業組合法ガ施行サレ
  六、四十年ノ年限ヲ閱シテ居リナガラ、產
  業組合ノ現在取扱ツテ居ル米ノ數量ハ全生
  產額ノ三分ノ一シカニ達シテ居ラヌ、之ヲ
  見タダケデモ產業組合ハ決シテ飛躍的ニ進
  ムモノデモナケレバ又ソンナ排他的ナ商人
  ヲ除カナケレバテラヌト云フヤウナコトヲ
  ヤツテ居ルノデハナイ、寧ロ色々ナ事デ農
  民ニ不利ナ立場ニナル部分ニ對シテ、防禦
  的ニ行カウト云フ考デ居ルノデアリマス、
  隨テ商人ガ普通ノ行キ方ヲシサヘスレバ、產
  業組合ト云フモノハ伸ビナイモノデアリマ
  ス、サウ云フ性質ノモノデアリマス、商人ガ
  惡辣ナ事ヲスレバスル程產業組合ハ伸ビテ
  行ク、ダカラ商人ガ正シイ仕事ヲシテ居サヘ
  スレバ斷ジテ產業組合ハ伸ビナイ伸ビナイト
  云フコトハナイガ、左程急激ニ伸ビルモノデ
  ハナイ、斯ウ云フヤウナコトヲ一ツ根本的ニ頭
  ニ入レテ置イテ戴カヌト極メテ安價ナ同情
  ヲ商人ニ與ヘテ、サウシテ大事ナ三千万農
  民ノ立場ヲ苦シクサセルト云フコトニナツ
  テシマフノデアリマス、此ノ點ニ付テ當局ハ
  私ノ見解ニ間違ガアルト云フ工合ニ觀ラレ
  ルカドウカ、ソレヲ一ツ承ツテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=75

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• 076・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　本法案ニ於テハ御承知ノ
  通リ其ノ市場員タル者ハ生產者ノ團體及ビ
  米穀取扱業者、是等ヲ何レモ入レテ居ルモ
  ノデアリマシテ、別ニ產業組合ヲ排他的ニ
  斥ケルト云フヤウナ意味-ハ持ツテ居ラナイ
  ノデアリマス、又產業組合ガ中小農業者ノ生
  產品ヲ委託ヲ受ケテ販賣スルト云フコトニ
  付キマシテ順次發達シツツアルト云フコト
  モ吾々認メルノデアリマシテ、其ノ點ニ付キ
  マシテハ別ニ北君ト意見ヲ異ニシテ居ルトモ
  考ヘマセヌ、唯先程モオ話ニナリマシタガ、
  產業組合ニ全部取扱ハシタラソレハドウモイ
  カヌデハナイカト云フコトヲ私ガ言ツタ、斯
  ウ云フオ話デアリマシタガ、其ノ點ハ私ハ
  斯樣ニ考ヘテ居ルノデス、先ヅ十年二十年先
  ハ別デアリマスガ、今日ノ時代ニ於テハ、所
  謂生產者ノ團體ノ方々ト、消費者ノ團體ノ方
  方ト、サウシテ其ノ間ニ立ツテヤハリ集荷機關
  ヲ持チ、販賣機關ヲ持ツテ居ル所ノ米穀取
  扱業者トノ三者一體トナツテ米穀ノ配給ヲ
  完成スベキモノダ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデア
  リマス、何故ナラバ之ヲ人間ニ譬ヘテ言ヒマ
  スレバ、此處ニ一人ノ人間ガ米ヲ持ツテ居
  ル、一人ノ人間ハ米ヲ持ツテ居ナイ、持ツテ
  居ナイ者ハ必ズ買ハナケレバナラヌ、持ツ
  テ居ル者ハ剩ツテ居ルカラ賣ラナケレバナ
  ラヌ、斯ウ云フ場合ニ於テ、其ノ二人ノ者
  ガ唯取引ヲスレバ簡單ニ行クヤウデアリマ
  スケレドモ、其ノ間ニ一人居テ、俗ニ謂フ
  仲人ト申シマスカ、自由自在ナ立場ノ人
  ガ居リマスト、玆ニ圓滿ニ其ノ取引ガ行ハ
  レルノデアリマス、今日ノ狀態ト致シマシ
  テハ三建ト云フ言葉ヲ使ツテハヲカシイ
  カモ知レマセヌガ、三建デ發達シテ行クノ
  デハナカラウカト私ハ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=76

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• 077・北勝太郎

  ○北委員　配給機關ノコトニ付テドウモ考
  ニ大變隔リガアルヤウデアリマスガ、塾
  決シテ商人ハ要ラヌト言フノデハアリマセ
  ヌガ、併シ產業組合ダカラト云ツテ決シテ
  百姓ガ直接來テ賣ルモノデハナイ、百姓ノ
  機關デアル產業組合ノ代表ニソレ〓〓ノ系
  続ノ者ガ來テ賣ルノデアリマシテ、決シテ
  大臣ガ考ヘラレテ居ルヤウニ、生產者ト消
  費者ダカラ其ノ間ニ、直グソンナ行キ方ガ
  出來ナイ、仲人ガ要ルト言ハレルヤウナ、
  サウ云フ性質ノモノデハナイ、是ハ一ツ能
  ク嚙ミ分ケテ御考置キヲ願ヒタイ、ヨク世
  間デハ配給機關ノコトニ付テ色々ナコトヲ
  言ハレルノデアリマスガ、產業組合ハ立派
  ナ配給機關ノ仕事ヲシテ居ル、是ハ何モ直
  接ニ農家ガ米ヲ持ツテ來テ賣ルモノデハナ
  イノデス、又自分等ノ購買品ニシテモ其ノ通
  リデ產業組合ノ職員ノ人達ガ代ツテ配給シ
  テ行クノデアリマシテ、是モ極メテ「スムー
  ス」ニ行ツテ居ルノデアリマス、ヨク世間
  ニハ產業組合ガアレバ配給機關ハ要ラナク
  ナルトカ、配給機關ナシニハ立ツテ行カヌ
  ト云フヤウナ說ヲ爲ス人ガアルノデアリマ
  スガ、產業組合ハ立派ナ配給機關デアル、
  之ヲ一ツ間違ハヌヤウニ御考ヲ願ヒタイト
  思ヒマス、更ニ是カラ條文ニ付テ申上ゲテ見
  タイト思フノデアリマスガ、第一ニ本法ノ
  二十九條ノ二項、三項ニアリマスル麥、大
  豆、雜穀、肥料等ヲ市場ニ掛ケルト云フ問
  題デアリマスガ、是ハ實ハ各市場ノ定款ニ
  ハアルヤウデアリマスガ、事實上小樽ニ於
  テモ神戶ニ於テモ實際取扱ヲシテ居ラヌ、
  殆ド相對賣買デ出來テ居ル、其ノ價格ヲ單
  ニ新聞デ發表シテ居ルニ過ギナイト云フノ
  デアル、斯ンナモノヲ此ノ大事ナ米穀問題
  ノ取扱ノ副產物ノヤウニシテ此ノ中ニ加ヘ
  ラレルコトハ大キナ間違デアルト思ヒマス、
  サウ云フコトヲスルトドウナルカト云フコト
  ヲ一ツ考ヘテ見マスト、是ハ農業者トシテ非
  常ニ困ル、例ヘバ小麥ニ付テ申シマスト、
  小麥ハ五大製粉會社ヲ相手ニシテヤツテ居
  リマスガ、其ノ賣リ小麥ノ半分以上ガ全販
  聯ノ取扱ニナツテ居ルガ、サウ云フ場合ニ
  於テモ全販聯ハ決シテ無謀ナコトハヤツテ
  居ラナイ、製粉價格カラ計算ラシテ會社側
  トノ間ニ値段ヲ決メテ行ツテ居ルヤウナ狀
  況デアリマシテ、今ノ所農村ガ非常ニ有利
  ノ立場ニ居ルノデアリマス、所ガ之ヲ市場
  ヘ持ツテ行クトドウナルカト云フト、相手
  ガ少イカラ直チニ彼等ノ中デハ談合ヲスル、
  斯ウ云フヤウナコトガアリ得ルノデアリマ
  ス、或ハ少數ノ作爲値段ヲ造ツテ、ソレデ
  大量ノモノヲ攪亂スル、斯ウ云フヤウナコ
  トモアリ得ルノデアリマシテ、是ハ農業者
  トシテハ洵ニ困ル、斯ウ云フ條項ヲ加ヘテ、
  斯ウ云フ物マデ市場デ取扱ハセテ貰ツテハ
  農民ハ非常ニ不利ニナル、斯ウ云フコトニ
  付テハ當局ハ、米ハ米ノ問題トシテ純粹ニ
  取扱ツテ行クト云フ御考ハナイカ、之ヲ
  ツ承ツテ見タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=77

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• 078・周東英雄

  ○周東政府委員　御答致シマス、二十九條
  二項ノ仕事デアリマスガ、是ハ本會社ノ本
  來ノ事業トシテ考ヘタ譯デハアリマセヌノ
  デ、本會社ニ於ケル事業トシテハ何處マデ
  モ米穀ノ配給統制上ノ必要カラ致シマシテ、
  之ニ關スル市場ノ單一化及ビソレニ伴フ各
  種ノ仕事ヲヤラセル譯デアリマスガ、唯此
  ノ法制ガ出來マスル結果、從來米穀ノ取扱
  ヲ致シテ居リマスル市場ニ於キマスル米ノ
  關係ヲ全部ソチラニ取扱ハセルヤウニナリ
  マスト、或ハ從來ノ麥其ノ他ノ雜穀等ノ取
  扱ニ付テ支障ヲ起ス場合ハナイカ、斯ル場
  合ニ於キマシテ全然ソレガ爲シ得ナイト云
  フヤウナコトニナツテハ不便デアリマスノ
  デ、其ノ範圍ニ於キマシテ此ノ會社ニ於キマ
  シテモ政府ノ認可ヲ受ケテヤリ得ルト云フ
  形ヲ整ヘタマデデアリマシテ、之ニ依リマ
  シテ米ノヤウニ他ノ方デ麥、雜穀等ノ取扱
  ヲシテ居ルモノヲ全面的ニ禁止シテ玆ニ統
  一シテ行クト云フヤウナ考ハ持ツテ居ラヌ
  ノデアリマス、從來ヤツテ居リマスモノガ
  急ニ、直チニヤレナクナルト云フコトガア
  ツテハ不便デアラウト云フコトノ爲ニ斯ウ
  云フ規定ヲ置イタノニ過ギナイノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=78

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• 079・北勝太郎

  ○北委員　ソレハ此ノ儘ニ殘シテ置イテモ
  出來ヌコトハナイト云フコトナンデス、東
  京人絹ノ如キハ既ニ殘ツテ居ルケレドモ其
  ノ儘ヤツテ居ル、斯ウ云フノデアリマシテ、
  强ヒテソンナ理由デ此ノ中ニ加フベキモノ
  デハナイト思フノデアリマス、斯ンナコトガ
  法文ニアリマスト、將來之ヲ如何ニ利用サ
  レルカ分ラヌ、農林當局ハ今ソンナ一時的
  ノ暫定的ノヤウナコトヲ言ツテ居ラレルノ
  デアリマスガ、是ガ法文ニアルト、是ハ將
  來ドンナ工合ニ利用セラレルカ分ラヌノデ
  アリマシテ、或ハ業者ノ投機ノ材料ニナル
  憂ガ十分アルノデアリマス、ソンナ危險ナ
  モノハ玆ニ置ク必要ハナイ、此ノ間モ或ル
  人ガ言ツタ、是ハ盲腸的存在ダ、何モ役ニ
  立タナイモノヲ入レテ置イテ、後ニハドン
  ナコトニナツテ爆發スルカ分ラナイト云フ
  ヤウナ言葉ヲ使ツテ居ツタヤウデアリマス
  ガ、ソンナ危險ナモノヲ暫定的ナト云フ理
  由デ此ノ米ノ一貫シタ法律ノ中ニ入レル必
  要ハ斷ジテナイ、是ハ取殘サレテモ獨リデ
  別ニヤレルト考ヘルノデアリマスガ、之二
  對スル御考ヲ承リタイノデアリマス

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• 080・周東英雄

  ○周東政府委員　御話ノヤウニ麥ナリ其ノ
  他ノモノニ付キマシテハ、ソレ〓〓其ノ價
  格ノ統制ナリ、市場ノ問題モ、外ノ方面デ
  出來ルモノモアルノデアリマス、唯急激ニ
  從來ヤツテ居ツタ場所ニ於テヤレナイ、其
  ノ地方ニ於テ賣買取引ヲスル市場ガナイト
  云フコトニナツテ、不便ニナツテハ困ルノ
  デアリマスカラ、其ノ點ヲ考慮ニ入レマシ
  テ規定ヲ置イタノデアリマス、併シナガラ
  此ノ點ハ、若シ此ノ會社ニ於テ其ノ必要ヲ
  認メル場合ニハ、十分ニ各般ノ事情ヲ考ヘ
  マシテ、之ヲ認可スルコトニナラウト思ヒ
  マスカラ、御心配ノヤウナ事柄ハ起ラヌノ
  デハナイカト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=80

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• 081・北勝太郎

  ○北委員　實際問題トシテ、一向ヤツテ居
  ラヌモノヲ强ヒテサウ云フ所ニ入レテ置ク
  必要ハナイト私ハ思フ、每日活潑ニヤツテ
  居ツタノデ、斯ウ云フモノガナケレバ困ル
  ト云フノトハ違フ、實際調査ヲシタ結果ハ
  ヤツテ居ラヌト云フノデス、サウ云フモノ
  ハ斷ジテ除イテ置カナイト、後日非常ニ問
  題ノ種ニナルト思フノデアリマス、併シ是
  レ以上ハ申シマセヌ、其ノ次ハ今度ノ法律
  案デ何故購買組合ヲ買市場員ニシナカツタ
  カト云フコトデアリマス、御承知ノヤウニ
  產業組合ハ一面ニ於テ生產者ノ團體デアリ
  マスガ、併シナガラ又一面ニ於テハ、是ハ
  消費者ノ大キナ團體ダト思フノデス、其ノ
  組合員ノ中ニハ米ヲ作ラザル者、或ハ農業
  ヲシテ居ラヌ者、米ヲ作ツテモ足ラナクテ
  買ハナケレバナラヌ者、斯ウ云フヤウナ人
  達ガ澤山アルノデアリマシテ、其ノ取扱フ
  米ノ量ハ決シテ少クナイノデアリマス、生
  活ノ必需品デアル米ニ對シテ、購買組合ガ
  此ノ市場ノ買市場員ニナルコトガ出來ナイ
  ト云フヤウナコトデハ、非常ニ困ツタコト
  ニナルノデアリマス、成程五日以內ノ現物
  ハ買フコトガ出來ルト云フコトヲ說明サレ
  テ居ルヤウデアリマスケレドモ必ズシモ是
  ハ法律ニアル譯デモナイヤウデアリマシテ、
  唯御說明ニアルダケデアリマス、ソレカラ
  假令現物ヲ買ヘルトシテモ、大量取引ニナ
  リマスト、是ハドウシテモ市場員カラ買ハ
  ナケレバナラヌコトニナツテ來ルノデアリ
  マシテ、其ノ市場員ノ取ル利益ダケハ購買
  組合ガ高ク買ハナケレバナラヌ、ソレデハ
  結局購買組合ノ仕事ハ成立タナイ、購買組
  合ノ仕事ノ閉出シニナツテシマフト云フコ
  トニナルノデアリマス、更ニ特ニ臺灣米或
  ハ朝鮮米ノ方ハ全販聯デハ買フコトガ出來
  ナイ、御承知ノヤウニ全販聯ハ賣リ一方ナ
  ノデスカラ買フコトガ出來ナイ、隨テ全購
  聯其ノ他購買組合ガ是ノ買入ヲスルコト
  ハ出來ナイト云フコトデアルナラバ、是尺
  大變ナ問題ニナルノデアリマス、當局トシテ
  ハドウシテモ購買組合ヲ買市場員ニシナ
  ケレバ、先程カラ言ツタヤウニ購買組合ハ
  全ク閉出シヲ喰フ、卽チ農業者ハスツカリ
  頭ヲ抑ヘラレルコトニナルノデアリマスガ、
  當局ニ其ノ意思ナキヤ、之ヲ承ツテ置キタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=81

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• 082・周東英雄

  ○周東政府委員　御話ノ點御尤デアリマス
  ガ、只今ノ所直ニ買市場員ニナル必要ハナ
  イノデハナイカ、斯樣ニ只今ハ考ヘテ居リ
  きく、購買組合ハ小賣商人同樣ニ必要ナル
  實米ヲ實米市場ニ於テ直接市場員タル人カ
  ラ買ヒ得ルコトデモアリマスシ、殊ニ購買
  組合ノ性質上、餘リ先ノ見込ヲ付ケテ多ク
  ノ購入ヲシテ分ケルト云フコトハ却テ如何
  カト思ハレル、大體ノ組合員ノ實需ニ應ジ
  テ隨時實米市場カラ買ツテ參ルト云フコト
  ニシタ方ガ宜イ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ參リ
  マスト、只今ノ所是等ノ購買組合ヲ買市場
  員ニ爲ス必要ハナカラウト云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=82

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• 083・北勝太郎

  ○北委員　サウスルト結局購買組合ヲ閉出
  シテモ宜イト云フアナタ方ノ御說ニナツテ
  シマフ、卽チ購買組合ハ此ノ市場員カヲ買
  ハナケレバナラヌ、サウスルト其ノ市場員
  ノ手數料ダケハ商人ヨリモ高イモノニナル
  ノデアリマス、隨テ高イモノハ誰モ買ヒニ
  來ヌ、是ハモウ購買組合ノ事業制限デアツ
  テ、產業組合ハ斷ジテ之ニ贊成スルコトハ
  出來ナイ、重大問題ガ惹起スルト思フノデ
  アリマス、サウ云フヤウナ簡單ナ御考デ、
  購買組合ニ對シテ差別待遇ヲスル必要ハ斷
  ジテナイト思フ、商業組合ハ全部此ノ購買組
  合員ニナルコトガ出來ルデハアリマセヌカ、
  然ルニ同ジ立場ニ居ル產業組合購買組合ニ
  對シテ差別待遇ヲシタラドウナリマスカ、
  是デ斷ジテ購買組合ノ發達ヲ抑ヘ、購買組
  合ノ頭ヲ抑ヘテシマフト云フコトナラバ別
  デアルガ、サウデナイ限リ、先程カラ申ス
  ヤウニ、二本建デ行クベキデアル、然ルニ
  ナゼサウ窮屈ニシナケレバナラヌノカ、ソ
  ンナ犧牲ヲ農民ニ負ハセルコトハイカヌト
  思フ、此ノ法案ヲ眺メタ時ニ、全部百姓ガ
  頭ヲ抑ヘラレルヤウニナツテ居ルト云フコ
  トヲ先程申上ゲタガ、ソレハ現ニココデモ
  サウナツテ居ル、是ハ否定スルコトハ出來
  マイト思フ、購買組合ヲ買市場員ニセヌト
  云フヤウナコトハ、大變ナ間違ヒデアルト
  思フガ、重ネテ御伺シテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=83

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• 084・周東英雄

  ○周東政府委員　購買組合ハ現在ノ小賣商
  ト同ジヤウニ、今日ノ狀態ト少シモ變ヘテ
  居ラヌノデアリマス、今日モ必要ガアレバ
  正米市場ニ於テ市場員カラ買ヒ得マス、或
  ハ直接產地ト連絡シテ買ツテ居ルノガ寳情
  デアリマス、其ノ事柄ヲ本法デハ少シモ變
  ヘテ居リマセヌ、ソレガ爲ニ特ニ購買組合
  ヲ除外スルト云フヤウナ意味合ニナツテ居
  ラズ、寧口現狀ノ儘ニ置イテ購買組合ニ必
  要ナル米ヲ買ハセルト云フヤウニ考ヘテ居
  ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=84

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• 085・北勝太郎

  ○北委員　ソレハ今マデノヤウナ內地米ダ
  ケヲ取扱ツテ居ツタ時ト違フノデアリマス、
  今度ノ機構ニ於テハ、臺灣米、朝鮮米ガ今
  度ノ市場デ獨占的ニ扱ハレルノデアリマス、
  ソコデ此ノ臺灣米、朝鮮米ヲ購買組合ニ扱
  ハセヌト云フコトニナツテシマツタナラバ
  ドウナルカ、全國ノ農民ノ生活ハドウナル
  カ、買ハナケレバナラヌ人達ハドウナルカ、
  之ヲ一ツ考ヘテ貰ハナケレバナラヌト思ヒ
  そう、斯ウナツタ新事態ニナツテ來タ以上
  ハ、其ノ新事態ニ合フヤウナ法律ニシナケ
  レバナラヌ、從來斯ウ云フ臺灣米、朝鮮米ガ
  市場ニ於テ獨占サレテ居ラナカツタ時ト全
  然違フ、斯ウ云フヤウナ時ニ此ノ問題ヲ從
  來通リニ考ヘテ居ラレルノハ大變ナ間違ヒ
  デアルト思フ、之ニ付テ御考ヲ承リタイ

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• 086・周東英雄

  ○周東政府委員　只今申上ゲタヤウニ、只
  今ノ所ハ從來通リノ行キ方デ宜カラウト考
  ヘテ居ルノデアリマス、將來ニ於キマシテ
  ハ是非其ノ點ハ能ク考究致シタイト思ヒマ
  ス

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• 087・北勝太郎

  ○北委員　ドウモ新事態ニナツテモ、只今
  ノ所デハソレデ宜イト云フヤウナ無責任ナ
  御答辯ハ、吾々ハ承服スルコトガ出來マセ
  ヌ、併シ是レ以上ハ討論ニナリマセウカラ、
  次ニ移ツテ行クコトニ致シマス、其次ハ米
  ノ賣買ノ免許制ノコトデアリマス、是ハ恐
  ラク白米ノミニ限ツタ小賣ノコトカト思フ
  ノデアリマスガ、第一ニソレカラ承ツテ見
  タイト思ヒマス

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• 088・周東英雄

  ○周東政府委員　御質問ノ點ガ少シハツキ
  リ致シマセヌガ、此ノ第一條ノ許可ヲ致シ
  マスル對象ハ、白米ニ限ラズ、米穀ノ買
  入若クハ賣渡又ハ其ノ代理若クハ媒介ノ
  業務ヲ爲ス者ニ付キマシテノ許可制デア
  リマス、御質問ノ點ガ、此ノ免許ヲ受クル
  場合ニ於ケル生產者團體等ニ付キマシテ、
  其ノ範圍ハドウカト云フ御質問デゴザイマ
  スト、只今ノ御意見ノ通リ、販賣組合ノ白
  米ノ小賣ニ付テノミ許可ヲ受クル必要ヲ玆
  ニ規定スル積リデアリマス

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• 089・北勝太郎

  ○北委員　販賣組合ノ米ノ取扱ニ對シテ、
  是ハ私ハ免許ハ全然要ラヌモノヂヤナイカ、
  此ノ免許ノ範團外ニ置クベキモノヂヤナイ
  カト思フノデアリマス、ソレハ組合ノ仕事
  ノ性質上、當然サウナルベキモノヂヤナイ
  カト思フノデアリマス、勿論今マデ米ヲ扱
  ツテ居ツタ組合ハ、是ハ旣得權デアツテ、
  恐ラク免許サレタト同樣ニナルダラウト思
  フノデアリマスガ、將來販賣組合ガ、白米
  ヲ販賣スル目的デ出來タ場合ニ、之ヲ政府
  ガ免許シナイト云フヤウナコトガ若シアツ
  タトシタナラバドウナルカ、是ハ販賣組合
  ノ目的ヲ全然沒却シテシマフコトニナルト
  思フノデアリマス、當局ハマサカ產業組合
  ニ對シテマデ免許制度ヲオヤリニナルノデ
  ハナイト私ハ考ヘルノデアリマスガ、此ノ
  點ハツキリ承ツテ置キタイト思ヒマス

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• 090・周東英雄

  ○周東政府委員　御話ノヤウニ、產業組合
  トカ或ハ商業組合ト云フヤウナモノニ付キマ
  シテ、ソレ〓〓其ノ設立ノ許可ヲ致シ或ハ
  其ノ定款ノ認可ヲ致スト云フヤウナ場合ニ
  ハ、ソレ〓〓其ノ準據ノ法律ガアリマス、
  今御話ノヤウニ、販賣組合ハ組合員ノ生產
  シタル米ノ賣却ヲ爲スコトガ目的デ出來ル
  組合デアリマスノデ、其ノ性質上カラ致シ
  マスト、產業組合ノ設立許可ヲ受ケタモノ
  ハ〓別ニ此ノ本法ニ依リ更ニ許可ヲ受クル
  必要ハナイ、斯ウ云フ意味合ニ於キマシテ
  除イテアリマス、但シ販賣組合ガ更ニ進ミ
  マシテ、米穀ヲ精白致シマシテ、個々ノ消
  費者ニマデ配給スルト云フヤウナ事柄ニ付
  キマシテハ、是ハ新シイ事態ニ卽シマシテ、
  其ノ地方ニ於ケル米ノ配給事情等ニ鑑ミマ
  シテ、之ニ付テ許可制ヲ執ツテ行ク、斯ウ
  云フ風ニ致シテ居ルノデアリマス、是ハ一
  ツノ行政上ノ必要カラデアリマス

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• 091・北勝太郎

  ○北委員　其ノ個々ノ消費者ニ配給スルト
  云フ、所謂小賣ノ定義デアリマスガ、所謂
  消費者ノ臺所ニマデ持ツテ行ツテ賣ルトカ、
  或ハ一升賣リヲスルトカ云フヤウニ、消費者
  ニ直接手渡シスルト云フヤウナコトハ、是
  ハ小賣トナルカモ知レヌノデアリマスガ、
  併シ消費者ノ手ニ渡スト云フコトニ付テハ、
  隨分色々ナ種類ガアルノデアリマス、例
  バ大キナ消費團體、軍隊デアルトカ、鑛山
  デアルトカ、工場デアルトカ云フヤウナ大
  キナ消費團體ニ供給スル、此ノ事マデモ小
  賣ト云フ範圍ニ入レテ、所謂直接消費者ニ
  配給スルト云フコトデ免許ヲ要スルト云フ
  コトデアルト、大問題ダト思フノデアリマ
  スガ、マサカソンナコトハナイト思フノデ
  スケレドモ、此ノ點ニ付テ、ハツキリシタ
  コトヲ一ツ承ツテ置キタイ

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• 092・周東英雄

  ○周東政府委員　御話ノヤウニ、本案ノ對
  象トナツテ居リマスノハ、個々ノ消費者ノ
  臺所ヘ配給スルコトニ付テ、考慮致シテ居
  ルノデアリマス

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• 093・北勝太郎

  ○北委員　私ノ質問ハ大體是デ終リマシタ

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• 094・添田敬一郎

  ○添田委員長　福田關次郞君

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• 095・福田關次郎

  ○福田委員　過日來カラノ質疑應答デ、本
  案ニ對シマスル質問ハ大體盡サレテ居ルヤ
  ウニ思フノデアリマスガ、過般本會議ニ於
  キマスル農林大臣ノ本法御提案ノ御說明ニ
  依ルト、本法御提案ノ根本理由ハ、生產供
  給ノ確保、價格ノ適正、國民ノ主要食物ニ
  對スル不安ノ念ヲ除去スルト同時ニ、出征
  將士ニ對シテモ後顧ノ憂ヒナカラシムルト
  云フコトガ、本法御提案ノ趣意ノヤウデゴ
  ザイマス、此ノ理由ト致シマスル所ヲ拜シ
  マシテ、洵ニ適切ナルモノト思フノデゴザ
  イマス、先程來產業組合ノ利害關係ヨリシ
  マシテ、縷、御意見ヲ拜聽致シタノデアリマ
  スガ、ソコデ私共ガ本案ヲ審議致シマスル
  ニ當リマシテハ、農民三千万人ノ生活ノ確
  保ト、消費階級ニ屬スル四千万餘ノ人々ニ
  對シマスル國策ノ根本樹立ト云フモノニ立
  脚シテノ本法デナクテハ相成ラヌト信ズル
  ノデゴザイマス、私ハ過日來カラ他ノ委員
  會ガ連續シテ居リマシタ爲ニ、總テノ皆樣
  ノ御高說ヲ拜聽スルノ機會ヲ得ナカツタコ
  トハ、洵ニ殘念デゴザイマスルシ、又速記
  錄ヲ拜見スルノ遑ナカツタコトハ、自分ノ
  怠慢トシテ謝スルノデゴザイマシテ、本員
  ノ問ヒマスルコトニ多少重複スル點ガアル
  カモ知レマセヌガ、出來得ル限リ、大方斯
  ウ云フ質問ハアツタラウト思フコトハ
  避ケタイノデゴザイマスルガ、若シア
  リタリト致シマシテモ、其ノ邊ハ御諒
  承ヲ得タイノデゴザイマス、本法ヲ通
  觀致シマスルノニ、現在多クノ經濟立
  法ト云フモノノ主義ハ、生產者ヨリ直接消
  費者ヘト云フノガ、近代經濟統制ノ根本精
  神デアルノデゴザイマス、又近代デナクテ
  モ、例ヘバ農林省及ビ商工省ノ御計畫ニナツ
  テ居ル所ノ中央卸賣市場ノ如キ、多ク生產
  者ヨリ直接消費者ヘト云フコトノ1ay)
  トー」ノ下ニ、社會政策ハ立テラレテ居ルノデ
  ゴザイマス、同時ニ又現時戰時體制下ニ於
  キマスル經濟統制立法ハ、一層之ヲ强調サ
  ルベキ性質ノモノデハナイカト、吾々ハ信
  ズルノデゴザイマスガ、本法ヲ拜見致シマ
  スルト、其ノ根本主義ニ反シテ居ル、時代
  逆行ノ法案デハナイカト云フ感ガ致シマス
  コトヲ甚ダ遺憾トスル、卽チ本案ノ內容ハ、
  却テ中間搾取機關ヲ多カラシムルヤウナ傾
  向ニナルノデハナイカ、是デアリマス、其
  ノ中間商人ノ中ニハ色々アリマス、產業組
  合ヲ中心ト致シマシタルモノ、今マデ米ノ
  實際ヲ知ラズシテ空取引ヲシテ居ツタ所ノ
  市場員ヲ之ニ加ヘル、一方ノ產業組合ハ實
  際ノ米ヲ御扱ニナツテ居ル經驗ガアル、今
  度新シク取引員ニナル從來ノ取引員ト云フ
  モノハ、殆ド紙ノ上デノ取引ヲヤツテ居タ
  者デアツテ、何百万石、何千万石ト云フヤウ
  ナ米ヲ、實際ニ於テ見タコトノナイ人ガ之
  ニ加ハルノデアリマス、而モ過般黨ノ政務
  調査會ニ於ケル農林省ノオ役人ノ御說明
  ニ依リマスト、左樣ナル取引員デアル、然
  ラバ今マデノ者ハドウスル積リデアルカト
  云フ問ニ對シテ、是等ヲ悉ク此ノ市場ニ收
  容スル積リデアルト云フコトデゴザイマス、
  是ハ一面當然然ルベキコトデアルト思ヒマ
  ス、其ノ御趣意ト御精神ハ大變結構デアリ、
  又現在相剋摩擦及ビ失業等ヲ多ク來サシメ
  ナイト云フ政策ニハ、吾々ハ非常ニ贊成デ
  アリマス、併シ此ノ結果トシテ、是等ニ對
  スル從業員ガ多過ギテ、ソレヲ養フ所ノ方
  法ヲ講ズルト云フ所ニ、非常ナ錯誤ガ起リ
  ハセヌカト云フ點ヲ憂慮スルノデアリマス、
  其ノ結果ハ多數ノ生產者ニ歸スベキ一部利
  益ヲ此處ニ奪ハレルコトニナル、同時ニ又
  多數ノ消費階級ニモ亦是ガ轉嫁サレルト云
  フコトニナルノデゴザイマシテ、右兩者ノ
  受クベキ利益ガ中間特殊部門ノ爲ニ搾取セ
  ラレルト云フ結果ニナリマスノデ、私共ハ
  此ノ結果カラ類推致シマスルト、現在戰時
  體制下ノ經濟立法ト致シマシテ、果シテ適
  順ナモノデアルカドウカト云フコトニ、非
  常ナ疑ヲ持ツノデゴザイマス、私共ハ非常
  時局デゴザイマスカラ、出來ルダケオ互ニ
  切瑳琢磨シテ、其ノ立法ノ完璧ヲ期シテ、
  消費者及ビ生產者兩者ニ全ク不滿ナカラシ
  ムルト云フコトハ出來マスマイガ、其ノ不
  滿ヲ少カラシムルト云フコトハ必要デアル
  ト思フ、過般來ノ日本ノ社會ノ實勢ヲ通觀
  致シマスルト、農村方面カラハ一向本法ニ
  對シテ反對ノ意向ハゴザイマセヌ、先程全
  販聯其ノ他ノ不利益デアルト云フ御意向モ
  アツテ、產業組合擁護ノ御意見ガアツタノ
  デアリマスガ、農村方面カラハ唯一本ノ反
  對電報モ來ナイノデアリマス、此ノ本法ノ
  內容ガ分ラナイノデ、鬱憤ヲ如何ニ晴ラス
  ベキカ、如何ニ意思ヲ發表スベキカニ迷ツ
  テ居ル者ハ、大體ニ於テ之ヲ面白カラザル
  立法デアルト考ヘテ、有ユル手段ヲ以テ本
  法反對ノ策動ヲ行ツテ居ル、此ノ一事カラ
  見テモ、本法ハ消費階級ト同時ニ、米ヲ商ツ
  テ居リマシタ所ノ多クノ中間及ビ小賣商人ニ
  及ボス影響ノ甚大デアルコトヲ、常識ニ依ツ
  テ想定出來ルノデアリマス、農林省トシテハ是
  等ノ點ニ付テ相當ニ御考ニナツタ案デハゴザ
  イマセウガ、只今御話ガアリマシタノトハ、正
  反對ノ現象ガ社會實勢ノ上ニ現ハレテ居リ
  Way、之ニ對シテ農林大臣ハ如何樣ニ御考
  下サツタデアリマセウカ、固ヨリ現農林大
  臣ハ有ユル社會實勢ニ付テ能ク御諒承ノ御
  方デゴザイマスカラ、吾々ハ大ニ安心ヲシ
  テ此ノ立法ニハ贊成スル者デゴザイマス、
  併シナガラ御就任間モナイコトデゴザイマ
  シテ、謂ハバ前任者ノ編ンダモノモ相當ニ
  ゴザイマセウ、近時ニ至リマシテ、商工省
  其ノ他ノ方面ノ案ト御折衷ニ相成リマシタ
  俄作リノ點モナイデハゴザイマセヌカラ、
  ソレ等ニ對スル御所見ト御信念ノ程ヲ伺ヒ
  マシテ、ソレカラ除々ニソレニ依リマシテ
  自分ノ質問ヲ續ケテ行キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=95

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• 096・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　只今福田君ノ御質疑ノ第
  一點ハ、本案施行ノ結果トシテ中間搾取ガ
  增加シハシナイカ、ソレハ從來米ヲ取扱ハザ
  リシ所ノ取引員ヲ市場員ニスル、ソレハ不
  慣レナ者デアツテ、中々圓滑ナ取引モ出來
  ズ、消費モ多ク掛ルデハナイカ、サウ云フ
  人々ガ市場ニ入レバ、自然ト市場ニ於ケル
  取扱手數料ガ增シテ來テ、安ク配給出來ヌ
  デハナイカ、斯ウ云コトヲ第一ニ仰セラレ
  タト思ヒマス、成程本法施行ノ結果、取引
  所ガ廢止サレマスノデ、其ノ臨時措置トシ
  テ、從來ノ取引所ニ勤メテ居リマシタ取引
  員ヲ市場ニ收容致シマス、故ニ從來市場員
  ノ中ニハ〓算取引ヲ、主トシテ行ツテ居ツ
  テ、實米ノ取引ヲシナカツタ者ガ多少アリ
  さく、是等ノ人々ガ實米ノ取扱ヲ致スコト
  ニナツタ場合ニ、旨ク行クカ行カヌカ、斯
  ウ云フコトニ付キマシテハ、私モ福田君ノ
  御心配ト同ジヤウナ心配ヲ持タヌ譯デハア
  リマセヌ、併シナガラソレハ極メテ少數ノ
  人デアリマシテ、全體ノ市場員カラ見マス
  ト恐ラク一割ハ偖テ措イテ五分ニモ滿タ
  ヌ少數ノ人ダト思ヒマス、是等ノ人々ガ
  果シテ實米ノ取扱]ニ實際從事シテ行ケル
  カ、行ケヌカハ別問題ト致シマシテ、ソレ
  等ノ人々ガ米穀業者竝ニ新ニ入ル全販聯、
  及ビ商業團體ノ人々ノ間ニ入ツテ競爭ヲシ
  テ行ク關係ニナリマスカラ、其ノ爲ニ中間
  ノ費用ガ增加スルト云フ風ニハ考ヘナイノ
  デアリマス、ソレカラ本法ニ依ツテ消費者
  階級ノ利益ヲドウ考ヘルカト云フ御話デア
  リマスガ、是ハ先刻北君ニ御答辯申上ゲマ
  シタ通リ、又今福田君ノ言ハレタ通リノ本
  法ノ趣旨デアリマシテ、決シテ是ガ消費者
  階級ニ利益デアルトカ、或ハ生產者階級ニ
  利益デアルトカ、卽チ特殊ノ方面ニ特ニ利
  益ダト云フニアラズシテ、全體的ニ價格ノ
  公正ヲ維持シテ、配給ノ圓滑ヲ期シテ、雙
  方ノ利益ヲ圖リタイト云フノガ主眼デアリ
  マシテ、決シテ一方的ニドウシヨウト云フ
  風ニハ考ヘテ居ラナイノデアリマス、同時
  ニ只今御話ノ米穀ヲ取扱ツテ居ラレタ所ノ
  方々ニモ、此ノ機會ニ於テ更ニ一層ノ御奮
  發ヲ願ツテ、消費者及ビ生產者ノ間ニ立ツ
  テ、圓滑ナル本法ノ施行ニ對シテ御協力ヲ
  煩ハシタイ、斯樣ニ思ツテ居ルヤウナ次第
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=96

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• 097・福田關次郎

  ○福田委員　農林大臣ノ御方針御理想ハ多
  ト致シマシテ、其ノ御理想ノ通リニ一切ガ
  實現サルルコトニ、農林當局ニハ御盡力ヲ願
  ハナケレバナリマセヌ、次ハ我國ハ長キ戰
  時下ニアリマスルモ、歐羅巴ノ或ル國々ノ
  如ク〓糧ニ對シマスル大ナル不安ハ少イノ
  デゴザイマス、其ノ結果ト致シマシテ、
  過般來カラ御精神ハ增產ヲ相當ニ目的ト
  シテ居ルト云フ御話デアルノデゴザイマ
  スガ、此ノ御政策モ當然シテ戴カナケレ
  バナラヌノデゴザイマスルケレドモ、併
  シ本法デハ私ハ米ノ增產ハ望ミ得ラレナ
  イノデハナイカ、斯ウ思フノデス、是八
  一種ノ附ケタリニナルノデハナイカ、ソレ
  デゴザイマスカラ、私共ノ望ム所ハソレヨ
  リ以上ノ、モウ少シ根本ノ對策ヲ立テテ戴
  イタラドウダラウカ、是ハ私共ニ言ハセル
  ト、一種ノ枝葉末節ノ統制機構デハナイカ
  ト思ハレルノデアリマス、農林當局ガ本法
  提出ノ御理由ニ御述ニナリマシタ趣旨ニア
  リマスヤウニ、增產計畫モ重大デアル、此
  ノ目的ヲ達成シナケレバナラヌト仰セニナ
  ルト云フコトハ當然ナコトデ、必要デハゴ
  ザイマスガ、併シ農林省ト云フモノト別ニ
  致シマシテ、現內閣ノ全體政策ト」致シマシ
  テ之ヲ通觀シタ時ニ、本法ト反對ナ結果ヲ
  御實行ニ相成ツテ居ルノデハナイカ、是等
  ハ農林大臣御就任ニナリマシテ間モナイコ
  トデゴザイマスカラ、色々缺點ノアルコト
  ハ是ハ人間トシテ當リ前デゴザイマシテ、
  ソレヲ恐レモ致シマセヌ、併シオ互ガ能ク
  之ヲ練リマシテ、練成シテ以テ後日ニ悔ヲ
  貽サヌヤウニシテ行クト云フコトガ、立法
  ノ府ノ責任デアリ、眞ノ本分ト申サナケレ
  バナラヌト思ヒマスカラ、吾々ノ氣付ク所
  ハ相當ニ申上ゲテ、以テ之ニ善處ヲ願ハナ
  ケレバナラヌノデゴザイマス、ナゼサウ云
  フコトヲ申スカト言ヒマスト增產計畫ノ
  中デ、本法ニ依リマスル增產計畫ト致シマ
  シテハ、一反當リノ多收穫ヲ期スルト云フ
  コトハ結構デアリマス、是ハ固ヨリ今日殆
  ド飽和點デ出來マスマイガ、此ノ上ニモ尙
  ホ〓究シテ貰ハナケレバナラヌ、又全體的
  增產計畫ト云フコトモ結構デアリマシテ、
  益〓シテ戴カナケレバナリマセヌガ、併
  シ事實ハ不可能デアル、ドウシテ不能デア
  ルカ、現在御承知ノ通リ、農村民ハ出征多
  クシテ勞力ハ不足デアルト云フコト、ソレ
  カラ軍需工業方面ガ有利デアルカラ、家ヲ
  或ル程度マデ抛棄シテ之ニ從事シツツアル
  ト云フ現象、同時ニ又輸入制限其ノ他ニ因
  リマスル肥料ノ騰貴、是等カラ立算致シマ
  スルト、今日ノ農業ハ到底收支相償ハヌト
  云フコトニナル傾向ガゴザイマスルカラ、
  折角農林當局ノ御骨折デハゴザイマスル
  ガ、私ハ事實ニ於テ眞ノ增產ト云フモノハ
  不可能デハナイカ、其ノ上ニ飛行場或ハ重
  工業地帶新設ニ依リマシテ、美田ハ化シテ
  工場ノ敷地ト相成リマスルノモ、年々相當
  ナ反數ニ上ツテ居ルコトハ、農林當局デハ
  明瞭ニ御分リニナツテ居ルト思フノデゴザ
  イマス、斯ク觀ジ來リマスルナラバ、何處
  ニ據ツテ一反當リノ增產ガ幾ラ出來ルノデ
  アルカ、其ノ外ニハ殆ド增產スルノ見込ハ
  ナイ、固ヨリ開墾助成モゴザイマスガ、今
  ハ中々遲々トシテ、サウ云フコトニ從事シ
  テ居ルコトハ少イノデアリマス、斯ク致シ
  マスルト事實ニ於テソレガ出來ナイ、其ノ
  上ニ私ガ最モ遺憾ニ感ジマスルノハ、本法
  ノ出サレタ動機ハサウ云フ動機デハナイノ
  デアリマス、外ニアリマス、ソレハ何處ニ
  アルカ、第一ハ臺灣米ノ管理、是デス、是
  ハ三年前カラノ問題デゴザイマシテ、農林
  省ト臺灣總督府トノ意見ガ對立シタ爲ニ今
  日マデ延期サレタ、臺灣ハ三年以前カラ之
  ヲ斷行セント致シマシタガ、農林當局トノ
  妥協ガ出來マセヌ爲ニ、徒ニ唯延々トシテ
  今日ニ至ツタノデゴザイマスガ、今囘總督
  府ハ農林省ノ御計畫、御方針ニ盲從スルコ
  トトナツテ、玆ニ初メテ臺灣米ノ專賣案ト
  云フモノガ計畫サレタノデゴザイマス、私
  ガ實ハ過般來カラ成ベク控ヘテ居リマスル
  ノハ、臺灣米專賣案ガ衆議院ヲ通過スルコ
  トヲ待ツテ居ツタノデアリマス、ケレドモ
  是ハ已ムヲ得マセヌカラ、本當カラ申シマ
  スルト、此ノ法案トハ反對ニナルノデス、
  其處ヲ申上ゲル、日本ノ內地デハ最早增產
  ハ-ナサルト云フ御努力ハ有難ウゴザイ
  マスガ、事實ニ於テハ殆ド不可能デアル、
  ソレト同時ニ增產シナケレバナラヌト云フ
  御理想ガアルニ拘ラズ、此ノ臺灣米專賣案
  ニ御贊成ニナルト云フコトハ、私ハ此ノ內
  閣ニ於キマスル政策ト云フモノガ一致シ
  テ居ラヌノカ、或ハ其處ニ一ツノ大キナ
  何モノカガアツテ、サウ云フ風ニナサ
  ツタノデアルカドウカト思ヒマス、臺
  灣ノ米穀管理案ハ、御承知ノ通リ是ハ減
  反ヲスルト云フ案デゴザイマス、表面ニ
  ハサウ云フコトハ書イテアリマセヌ、私
  ハ此ノ米管理案ナリ米穀統制法案ガ出ント
  致シマスル匂ヒガアリマシタ時ニ、單獨デ
  昨年ノ九月臺灣ニ參リ、臺灣ノ各地、農
  村部落ヲ自ラ跋涉致シマシテ、有ユル方面
  ヲ調査致シマシタガ、驚クベキコトニハ、
  例ヘバ臺中州知事ト會見シタガ、知事ハ、
  今日水ヲ當テル所ノ樋口ヲ破リ、挿秧シテ
  一箇月位ノ苗ヲ引拔ク所ノ有樣ハ、內地デ
  ハ到底皆サン御覽ニナルコトハ出來マスマ
  イト言ツタ、苗ヲ植エテ一箇月位ノモノヲ
  命令ヲ以テ引拔カス、同時ニ美田ヲ化シテ
  甘蔗畑トセヨ、理想ハ軍需工業ニ必要ナル
  麻ヲ作ラネバナラヌ、甘蔗ヲ作ルノハ二囘
  ノ米ヲ穫リマス中間デ出來ルノデアリマス
  カラ、改メテ田地ヲ廢メテ之ヲ畑ニスル必
  要ハナイノデアリマス、今日無水「アルコー
  ル」ヲ多量ニ增產シナケレバナラヌト云フ
  計畫デアルト言フ、米ヲ植エテ、ソレガ許可
  ナクシテ植エタト云フノデ、ズツト伸ビテ
  居ルノヲ、官吏ト人夫ヲ以テドン〓〓引拔
  イテ居ル有樣ヲ見テ、私ハアア實ニ出先官
  憲ト云フモノハ、人間ノ道德的觀念カラ實
  ニ忍ビ得ザル所ノ行爲ヲスルモノダナ、斯
  ウ感ジマシタ、此ノ臺灣米管理案ニ御贊成
  ニナルト云フコトト、米ノ增產計畫トハ、
  私ハ背馳スルト思フ、斯ウ云フ矛盾ヲ今日
  ノ時局ニ於テ、モウ少シ御考ヲ願フト云フ
  コトハ出來ナカツタノデアラウカ、米管案
  其ノモノヲ見マスルト、決シテ減反ト云フ
  コトハ言ツテアリマセヌガ、其ノ目的トス
  ル所ハ今申上ゲマシタコトヲ達成スル爲
  ニ、此ノ米穀ノ生產ヲ犠牲ニスル、斯ウ云フ
  コトデアリマス、新竹州ニ行キマシテモ、高
  雄州ニ行キマシテモ、農村ノ方面ハ臺灣總
  督府ハ全ク專制政治デアル、米價ニ付テノ
  可否ハ一言半句モ新聞ニ書カシメナイコト
  ニナツテ居リマス、併シ私ハ其ノ初メノ理
  想ニハ贊成デアル、麻麻作ル、我ガ日本內
  地ニハ出來マセヌ特殊ナル所ノ軍需資材ヲ
  此處デ出來ルトナレバ、一時ハ已ムヲ得ナ
  イ、斯ウ私ハ思ツタノデアリマス、ソレデ
  是ガ衆議院ヲ通過シマシタカラ、此處ニ內
  容ヲ相當種明シヲ致シマテモ、大シタ害ハナ
  イト思ヒマシテ今申上ゲルノデゴザイマス
  ガ、併シ本法ヲサウ云フ風ニ御考デ御通シ
  ニナルト、大變ナ結果ガ來ル、又後ニ色々ナ
  議論ナドガ喧シクナリマスカラ、事前ニサ
  ウ云フ方面ヲ能ク考ヘナケレバナラヌ、我
  ガ日本ノ政府ハ總括スルト云フト、米ノ增
  產ノ計畫ハナイ、之ヲ減少セシメヨウト云
  フ計畫ガアルト云フコトニ取リ得ルノデア
  リマス、是ハ內閣全體ノ問題デアリマシテ、
  農林大臣一人ノ御意向ヲ以テシテハ、如何ト
  モ爲シ得ナカツタノデアラウト思ヒマス、若
  シ本法ニ依リマシテ何處マデモ增產ヲシテ、
  長期抗戰ニ耐ヘ得ルダケノ素質ヲ培養シナ
  ケレバナラヌト云フノデゴザイマスナラ
  バ、斯ル政策デハ私ハ出來得ナイト思フノ
  デアリマス、ソレカラ次ニハ先程來農民ノ
  爲農民ノ爲ト云フコトガ澤山ゴザイマシ
  テ、非常ニ農民カラ見マスルト喜ブベキ御
  話デアツテ、數日來カラモソレガ多カツタ
  ト思フノデアリマスガ、本案デハ大農デア
  ル不勞地主ハ非常ニ利益ニナリマスガ、農
  民ノ八九割ヲ擁スル小農ニハ、何等ノ利益
  ハナイノミナラズ、却テ今言フ配給機關タ
  ルモノノ喰ヒ物ニナルト云フ虞ガゴザイマ
  ス、何故サウ云フヤウニナルカ、一體此ノ
  農村々々ト言ツテ、此處ニオ居デニナル方
  方ハ、皆農村ノ爲ニ御盡シ下サルノデアル
  カラ此ノ限リデハゴザイマセヌガ、全體此
  ノ農村政策ニ對スル所ノ我ガ日本ノ本當ノ
  政策ハ、確立シテ居ルカドウカ、本當ニ大多
  數ノ中產以下ノ農村民ヲ救フ所ノ政策ガ何
  ガアルカ、私ハ農村代表ノ議員デハゴザイ
  マセヌガ、併シ國策樹立ノ上ニ於キマシテハ
  農村モ都市モ違ヒアリマセヌ、農村ヲ良クシ
  ヨウト云フ議論ノ方ニモ私ハ申上ゲタイ、
  農村ニ生レタ子弟ガ五人アレバ、其ノ五人ガ
  農村ニ居ツテ一家ヲ形成シテ永久ニ生存ガ
  出來ルカ、其ノ兄貴一人ガ殘ツテ後ハ女モ
  男モ悉ク何處へ逃ゲテ行クカ、其ノ過剩人
  ロハ都會ニ走ツテ此ノ米ノ消費者トナル、農
  村ダケヲ潤ハシテ是等ノ長男ヲ除イタアトノ
  子弟ハ死ンデモ宜シイノカ、斯ウ云フ點ニ
  於テ農村政策トシテ我ガ日本ニハドウ云フ
  ヤウナ政策ガ行ハレテ居リマスカ、此ノ點
  カラ農林省ナドノ今日ノ政策ヲ見ルト、地
  主擁護、資本階級本位ノ政策デ、本當ノ農
  村ノ政策デナイト言ヒ得ル、何故サウ云フ
  コトヲ言フカ、ソレハ事實ガ證明スル、私ハ
  此ノ點ハ非常ニ御考ヲ願ハナケレバナラヌ、
  殊ニ今ノ非常時ニ一層御考ヲ願ハナケレバ
  ナラヌト思ヒマス、ドウ云フ譯デアルカ、
  農村ノ更生々々ト云フ名前デ以テ全販聯、
  購販聯等ガ出來マスガ、ソレハ中間ノ地位
  ノ者ガ皆食ツテシマフ、農村民ニドウ云フ
  コトヲ轉嫁シテ居リマスカ、第一農林省ニ
  御考願ハナケレバナラヌノハ、今日ノ日支
  事變ノ戰線ノ第一線ニ身命ヲ賭シテ、彈丸
  硝雨ノ中ニ銃ヲ枕トシテ血ヲ流シテ居ル者
  ハ、中產以下ノ農村民ガ大多數デゴザイマ
  ス、地主階級ハ其ノ十分ノ一、百分ノ一モ
  アリマセヌ、是ダケ家ヲ捨テ、妻子ヲ忘レ
  親ヲ忘レテ、邦家ノ爲彈丸硝雨ノ中ニ犧
  牲トナル所ノ農村民ニハ、農林省ハモウ少
  シ同情ヲ以テヤツテ貰ハナケレバナラヌ、
  ドレダケ斯ウ云フ法案ガ出マシテモ、全販
  聯購販聯ガ出來マシテモ、米ノ買上ゲハ
  宛ガヒ扶持ナノデス、左樣ナコトデ實際
  ノ農村ノ生產者ガ救ハレルデゴザイマセウ
  カ、此ノ點ト尙ホ御尋シタイノハ、地主ト
  小作人ト云フモノノ契約--農村民ハ家屋
  ヲ持ツテ居リマス、祖先傳來ノ家屋ヲ持ツ
  テ居ルカラ、何百年モ續イタ農村民ガ多イ
  ノデアル、昔カラノ地主小作人ノ契約ハ、
  此ノ田一段ニ付テオ前ノ所ハ何石出セ、斯
  ウ云フ契約ニナツテ居リマス、何石ヲ以テ
  一年間預ケルトナツテ、是ガ永續致シマシ
  テ、今日ハ一種ノ世襲財產ノ如クナツテ居
  ルノガ日本ノ農村ノ實情デアル、一段ニ付
  テ何石ト云フ契約ダケデ、之ヲドウ云フ米
  ヲ持ツテ來イ、容レ物ハドウ云フヤウニセ
  ヨト云フコトノ契約ハナイノデアル、ソレ
  ガ今重大問題デアル、今日農村カラ議員
  諸君ガ澤山出テ居ラレルガ、本當ニ生產者
  デアル三千万農民ノ爲ヲ思召シテ居ル方ガ
  幾人アルデアリマセウ、私共ハ思フ、所謂
  米ノ規格、合格米、斯ウ云フコトハ近代ニ
  於テ御作リニナツタ、合格米ノ判ヲ捺シタ
  ノデナケレバ年貢ニ取ラナイ、斯ウ云フ契
  約ハ初メカラノ地主ノ契約ニアリマスカ、
  又此ノ頃ハドウデス、新シイ何重ノ俵ニシ
  テ、ソレニ縄ヲ何廻リ掛ケテ斯ウセヨト云
  フ、尙ホ今日農會及ビ府縣令ヲ以テ縛ル所
  ノ手數ト云フモノハ、ドレダケデアルカト
  云フコトヲ農林省ノ方ハ御承知デアリマセ
  ウカ、悉ク何等ノ法律上ノ義務ノナイ小作
  人ニ對シテ、化粧ヲサシテ米ガ高ク賣レル
  ヤウナ計畫ヲスル、自分デスルノデハアリ
  マセヌ、今日農村政策ヲ高調サレル方ガ、
  同一人殘ラズ本當ノ情ヲ持ツテ、今日第一
  線ニ立ツテ居ル子弟ヲシテ後顧ノ憂ナカラ
  シメ、サウシテ生活ノ安定ヲ與ヘナケレバ
  ナラヌト云フ時ニ、家ニ歸レバ地獄デハゴ
  ザイマセヌカ、是等ニ付テ私ハ斯ウ云フ主
  張ヲ致シタコトガアリマス、米ヲ何石ヲ只
  袋ニ入レテ擔イデ持ツテ行ツテ宜シイノダ、
  誰ガ何ト言ツテ咎メルコトガ出來ルカ、ソ
  レニ向ツテアアシナケレバナラヌ、斯ウシ
  ナケレバナラヌト云フ所ノ義務ハアリハシ
  マセヌ、法律ヤ經濟ヲ知ラザル小農ニ手數
  ヲ掛ケテ、地主ハ知ラヌ顏ヲシテ、是デ米
  ヲ高ク賣ル計畫ヲシ、サウシテ高イ時ニ賣
  ツテモ米ガ變質ヲシナイヤウニ保存ダケヲ
  命ズル、我ガ日本ハ非常時ト言ヒナガラ、
  國民精神總動員ト言ヒナガラ、斯ウ云フコ
  トガ今アル、何モ合格米ノ契約ヲシテ居ル
  ノデハナイ、其ノ出來タモノヲ持ツテ行キ
  サヘスレバ宜イ、賣ラウト思ヘバ地主ガ唐
  箕ニ掛ケルトカ、籾摺リニ掛ケルトカ、サウ
  シテ米ヲ出シ、ソコデ初メテ府縣令ヲ以テ
  スル檢査ヲスベキデアル、一體農村民ノ賣
  ル米ガ幾ラアリマスカ、私ハ農林省ニ御願
  シタイノデアリマス、二石以上販賣シ得ル
  小農ガ日本全國ニ幾人アルカ、五石以上ヲ
  販賣シ得ル小農ガ幾人アルカ、十石以上ヲ
  賣リ得ル農村ノ生產者ガ幾人アルカ、十五
  石以上ヲ賣リ得ル農村民ガ幾人アルカノ表
  ヲ、二十石マデノヲ出シテ戴キタイト思ヒ
  マス、私共ハ斯樣ナ國家ノ政策ノ矛盾不合
  理ニ對シマシテ、農林大臣御就任間モナ
  イコトデアリマスシ致シマスカラ、斯ウ云
  フコトハ相當困難ナ問題ト思ヒマスガ、併
  シ卽時ニ本當ニ農村ノ生產者ノ困苦ヲ救濟
  スルト云フコトハ、刻下ノ緊急事ト思ヒマ
  スカ、之ニ對シマシテ農林大臣ハ相當ノ御
  理想モ御持チデアラウト思ヒマスカラ、此
  ノ邊併セテ御伺シテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=97

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• 098・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　福田君ノ御質問ハ二ツニ
  分ケラレルト思ヒマス、一ツハ增產計畫ガ
  今日ノ時代ニ於テ最モ必要デアツテ、有ユ
  ル努力ヲ致シテ居ル際ニ、臺灣米移出管理
  ノ問題ニ對シテ同意ヲ致シテ居ルノハ矛盾
  デハナイカ、卽チ增產計畫ニ反スルモノデ
  ハナイカ、是ガ一點デアツタト思ヒマス、
  第二點ハ、農村ノ生產者デアル所ノ小作人
  ガ、地主ニ對スル所ノ納メ米等ニ對シテ、
  包裝ナドヲサシテ、サウシテ化粧ヲシタ米
  ヲ地主ガ取ルガ、是ハ小農者ニ對シテノ、
  所謂農林行政トシテ何ト見ルカ、斯ウ云フ風
  ナ御質疑デアツタト思ヒマス、增產計畫ニ付
  キマシテハ、度々申上ゲマス通リ、非常ナ
  困難ガ伴ツテ居ルノデアリマシテ、之ニハ
  色々ナ方策ヲ立テテ其ノ增產ヲ致サウト致
  シテ居ルノデアリマス、卽チ此ノ問題ニ對
  シマシテハ、是モ度々申上ゲテ居リマスガ、
  所謂勞力ノ不足、肥料配給ノ不圓滑、或ハ
  舟車、車馬ノ不足、或ハ農具ノ不足、又勞
  力ガ出征將士竝ニ重工業ニ出テ居ツテ非常
  ナ不足ヲシテ居ル、斯ウ云フコトニ打勝ツ
  テ生產ノ增殖ヲ圖ルト云フコトハ容易デハ
  ナイ、容易デハナイカラ、之ニ對シテノ方
  策ト云フモノハ、餘程力ヲ入レナケレバナ
  ラナイト云フコトハ、度々申シテ居ルノデ
  アリマス、所デ臺灣米ノ增殖ハ容易デアル、
  是モ私ハ福田君ノ御意見ニ同意致シマス、
  併シ日本ニ於ケル所ノ米穀政策ト致シマシ
  テハ、常ニ大局ヲ考ヘ、將來モ考ヘナケレ
  バ相成リマセヌ、今日內外地ニ於ケル生產
  高ハ約一億石デアリマシテ、消費量モ殆ド
  是ト匹敵致シテ居リマス、卽チ內外地ヲ通
  ジテ自給自足ノ方針ヲ立テテ、之ニ對シテ
  百万石ナリ二百万石ナリノ常ニ餘地ヲ保ツ
  テ行ク、卽チ本年ハ九百二十二万石ノ繰越
  ニナルダラウト思ヒマスガ、其ノ端境繰越
  ノ石數ハ多少デモ殖ヤシテ行クト云フ建前
  ニ於テ、今日進ンデ居ルノデアリマスケレ
  ドモ、今日現在ニ於テ此ノ計畫ノ遂行ハ非
  常ニ困難デアルニハ相違アリマセヌ、故
  若シ今日ノ實情カラ申セバ、臺灣デ出來得
  ル限リノ增產ヲシテ戴クト云フ事柄ハ、是
  ハ私ノ希望スル所デアリマス、又朝鮮ニ於
  テモ其ノ增產ヲシテ戴イテ結構デアリマス、
  併シナガラ顧ミルト、僅ニ數年以前ニハ臺
  灣總督府ニ對シテ減反ノ交涉ヲ致シタ時代
  ガアルノデアリマス、朝鮮ニ對シテモ内地
  ニ對スル所ノ米ノ移出ヲ制限スル時代モア
  ツタノデアリマス、何ガ爲カト云フト、內
  地ノ農村民ノ生產シタ米ノ價格ガ非常ニ暴
  落シテ、農村ノ米ノ生產費維持ガ出來ヌ結
  果デアツテ、政府モ米ヲ買入レ、日本內地
  ニ於テスラ減反ト云フ說モアツタノデアリ
  さい、若シ假ニ何等ノ事モ構ハズシテ增產
  ノ方針ヲ立テルト致シマスナラバ、或ハ滿
  洲國ニ交涉ヲ致シテ、滿洲國ノ田地ヲドン
  ドン開發スル、朝鮮デモドン〓〓增殖ヲシ
  テ貰フ、又臺灣モ增殖シテ貰フ、是ナラバ
  相當ナ石數ガ出ルト私ハ思ヒマス、併シナ
  ガラ出征シタル將士ガ日本內地ヘ歸ツテ來
  タ時ニ、其ノ人々ガ耕ス所ノ土地カラ出ル
  米ガ、又今日以上ニ非常ナ增產ヲ致シテ、
  是ガ爲米價ノ暴落ヲ來スト云フガ如キコト
  ガアルト、是亦考慮ニ入レテ置カナケレバ
  ナラヌ一ツダト思ヒマス、故ニ今日ノ實情
  カラ致シマスト、日本ノ內外地ヲ通ジテ、
  日本デ消費スル所ノ石數ヲ確保シテ、將來
  多少ノ餘裕考アルト致シマスナラバ、其ノ
  程度ヲ摑ンデ生產計畫ヲ立テルコトガ、
  番宜イノデハナイカト思ツテ居ルノデアリ
  やく、日滿支ヲ通ジテ一體トシタル所ノ、
  此ノ米穀生產計畫ト云フモノハ、是ハ自ラ
  立テナケレバナリマセヌ、卽チ其ノ生產ノ價
  格ヲ考ヘ、又消費ノ狀態ヲ考ヘテ、所謂海外ニ
  輸出ノ出來ルヤウナ現狀デ出來ルノナラバ、是
  ハ又其ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、此ノ點ニ付キマシテハ、今企畫院ニ於テ
  折角調査ヲ致シテ、滿洲ニドウ云フ計畫ヲ立
  ツテ行クカ、支那ニハドウ云フ計畫ヲ立ツ
  テ行クカト云フコトヲ考究致シテ居ルノデ
  アリマス、勿論今日ハ滿洲ハ許可制度ニ致
  シマシテ、滿洲ノ生產ニ對シマシテモ一定
  ノ統制ヲ加ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ
  日本內地ノ增產ガ絕對ニ出來ヌ、若クハ增
  產ガ非常ニ困難ダ、斯ウ云フ場合ニハ、何
  トシテモ是ハ確保シナケレバナラヌ米デア
  リマスガ故ニ、臺灣、朝鮮ニ向ツテ協力ヲ求メ
  ルコトハ當然デアリマス、是ハ固ヨリ其ノ
  通リデアリマス、ソレデ臺灣米ノ移出管理
  ニ付キマシテ、臺灣ニ於ケル米穀生產計畫
  ト云フモノハ決シテ減產シナイ、年々一定
  率ノ增加ヲシテ、一定率ノ增加シタル石數
  ダケハ、內地ニ之ヲ持ツテ來ル、而シテ若
  シ內地ニ於テ一朝不作ノ憂ガアリ、或ハ懸
  念ノアル場合ニ於テハ、特別ノ非常手段ヲ
  以テ增產ヲ圖ツテ、サウシテソレダケノ石
  數ヲ持ツテ來ル、斯樣ナ話合ノ下ニ、臺灣
  ノ米穀計畫ニ同意ヲ致シタノデアリマシテ、
  私就任以來尙ホ一層ノ米ノ增產ノ必要ヲ認
  メマシタガ故ニ、更ニ五十万石臺灣カラ增
  產ヲシテ貰ヒタイト云フ交涉ヲ致シテ、旣
  ニ內諾ヲ得テ居ルヤウナ譯デアリマス、隨
  ヒマシテ臺灣ニ於ケル今御話ノ、所謂計畫
  ノ内情ガドウ云フ風ニナツテ居ルカ私ハ知
  リマセヌケレドモ、私ノ聽キ得タ所、私ガ
  之ニ對シテ反對ヲセザル所ノモノハ、所謂
  米穀ニ對シテハ減產ヲシナイ、同時ニ此ノ
  米穀以外ニ更ニ苧麻デアルトカ、黃麻デア
  ルトカ云フ、卽チ今日國際收支ノ上ニ於テ、
  ドウシテモ輸入シナケレバナラヌ品物ヲ、
  卽チ金ヲ以テ輸入シナケレバナラヌ品物ヲ
  臺灣ニ於テ作ル、斯樣ナ意味合デアリマシ
  テ、私ハ臺灣ガ此ノ國際收支ノ關係上ソレ
  ニ貢獻シテ吳レルコトハ、甚ダ結構ナコト
  デアツテ、延イテハ臺灣ノ島民ガ將來非常
  ナル利益ヲ蒙ムルヤウニナルダラウト云フ
  見地カラ、之ニ贊成ヲ致シタヤウナ譯デア
  リマス、勿論內地ノ米穀ノ增產計畫ガ容易
  ナモノデアルカト云フト、決シテ容易ナモ
  ノデハアリマセヌ、故ニ之ニ對シテハ極力
  吾々ノ豫定シテ居ル數量ダケハ收穫ヲ得タ
  イト考ヘマシテ折角努力ヲ致シテ居リマス、
  併シナガラ勿論天候ノ關係其ノ他モアリマ
  スカラ、相當ノ豫備ヲ見テ今計畫ヲ立テテ
  居ルノデアリマシテ、是ガ臺灣ノ今日ノ計
  畫ニ對シテ全ク矛盾シテ居ルトハ私自身ハ
  考ヘテ居ナイノデアリマス、ソレカラ俵裝
  ノ問題デスガ、此ノ問題ハ中々一俵ニ對シ
  テ少カラヌ金ガ掛ルノデアリマシテ、此ノ
  俵裝代ヲ地主ノ方面ニ於テ負擔スルト云フ
  事柄ハ、地方ニ依ツテハ適當デアラウト思
  ヒマス、併シナガラ小作人ト地主トノ關係
  ハ昔カラ溫情主義ト申シマスカ、色々ナ慣
  習デ圓滿ニ話合ガ付イテ居ルノデアリマシ
  テ、米何石ト云フ小作米デ契約シテ居ル所
  モアリマセウシ、或ハ收穫高ノ何割ト云フ
  所デ契約シテ居ル所モアリマセウ、或ハ又
  俵裝シタ何俵ト云フモノデ契約シテ居ル所
  モアルト思ヒマスガ、大部分ハ俵デ契約シ
  テ居ルノデアリマシテ、俵デ契約シテ居ル
  以上ハ、米ヲ俵ニシテ持ツテ來ルト云フコ
  トモ亦當然デアルカノ如ク考ヘマス、併シ
  ナガラ是等ノ點ニ付キマシテ實際ノ小農、
  中農以下ノ人々ノ今日ノ困苦ニ顧ミテ、是
  等ノ人々ノ負擔ノ減少ニ對シ、若クハ增產
  ニ對シテ相當ナ施設ヲ致スコトハ當然ノコ
  トデアリマスガ故ニ、是等ニ對シテハ出來
  ルダケノ努力ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=98

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• 099・福田關次郎

  ○福田委員　只今申上ゲマシタ中デ小農ト
  見マスル者ノ收穫高、自分ノ一年間ノ飯米
  ヲ差引キ、肥料代トシテ米ヲ拂ヒ、其ノ殘
  リトシテ賣却シ得ル所ノ數量ハ、此ノ場合
  デハ一寸御答ハ無理カト思ヒマスケレドモ
  出來レバ御示シ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=99

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• 100・周東英雄

  ○周東政府委員　只今直グニハ勿論出來マ
  セヌガ、實際調査ノ上カラ致シマシテモ、
  先程御話ガアリマシタヤウニ五石以上、十
  石以上、二十石以上ノモノト云フヤウナ區
  別ヲ致シテノ調査ハ困難カト思ヒマスガ、
  是ハ能ク農務當局トモ連絡ヲ致シマシテ、
  出來マスナラバ出來ルダケ早ク差上ゲタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=100

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• 101・福田關次郎

  ○福田委員　左樣ニ願ヒマス、-只今農
  林大臣ノ小作農ニ對シマスル施設トシテ、
  本員ノ申上ゲマシタコトニ對シテ何トカサ
  ウ云フ小農ノ負擔輕減ノ方法ヲ執ルコトニ
  盡力サレルヤウナ意味ノ御答辯ガアツタコ
  トヲ、私ハ國家ノ爲ニ洵ニ喜ブ者デゴザイ
  マンク。其ノ他ニマダモウ一ツ殘ツテ居リマ
  スルコトハ、此ノ借地者デアル小作人ガ納
  メマスル米、合格米ト稱セラレル一二等三等
  ト云フ米デゴザイマスガ、其ノ點モ今申上
  ゲマスヤウニ、非常ニ不條理ナコトヲ强ヒテ
  居ルノデゴザイマスルカラ、其ノ邊ヲヤハ
  リ御考慮ノ中ニ入レテ戴クコトガ出來ルカ
  ドウカ、今日府縣令及ビ農林省ノ認メテ居
  ラレマスル所ノ規格ト云フモノハ、是ハ移
  出致シマスルモノナリ、或ハ販賣致シマス
  ルモノガ、其ノ土地ニ出來ル米ノ聲價ヲ維
  持スル方法デゴザイマス、本當ヲ申セバ自
  分ノ家デ出來タ米ヲ千石筵デアルトカ、唐
  箕ニ掛ケテ之ヲ拵ヘテ、而シテ販賣スベキ
  デアルノニ、何等理由ナク農民ニ悉ク之ヲ
  嫁シテ、或ル等ノ等級ノ米ニアラザレバ之
  ヲ年貢トシテ取ラヌト云フガ如キコトハ、
  今日全國津々浦々マデ是ガ實行サレテ居リ
  さく、是等ニ對シマシテ農林大臣ハ此ノ不
  條理、此ノ矛盾、而モ此ノ非常時下ニ於キ
  マスル出征將士ノ家族ニ御同情下サレマス
  ル農林大臣トシテハ、是等ニ對シマスル對
  策ハ如何ニシテ戴クノデゴザイマスカ、改
  メテ御伺シテ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=101

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• 102・櫻井兵五郎

  ○櫻內國務大臣　只今ノ問題ニ付キマシテ
  ハ十分方法ヲ〓究致シテ見タイト思ヒマス
  ガ、第一番ニ私共ハ出來ル限リ速ニ檢査ノ
  方法ヲ國營ニシテ、卽チ國營檢査ノ法ニ依
  ツテ行キタイト云フコトヲ、今日〓究致シ
  テ居ルノデアリマス、是等ノコトガ出來ル
  ヤウニナリマスレバ、多少其ノ點ニ貢獻ス
  ルデハナカラウカト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=102

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• 103・福田關次郎

  ○福田委員　體產業組合ナドト云フモノ
  ガ、先程來カラ農村民ノ爲ニ非常ニ利益ヲ
  爲シテ居ルヤウナコトヲ御强調ニ相成ル、
  又產業組合設立ノ根本趣意モ農村民ノ生產
  者ニ對スル救濟ノ一助トシテ、社會政策的
  ニ本法ハ成立致シタモノデゴザイマスガ、
  未ダ曾テ產業組合或ハ全販聯ノ如キガ、斯
  ウ云フ小農ニ對シテ搾取ハシテ居ルケレド
  モ、未ダ曾テ之ヲ救濟スルノ途ニ出デナイ
  コトハ、今日ノ產業組合ト云フモノガ如何
  ニ地主ト一部官吏ノ古手ト財閥ノ集團デア
  ルカト云フコトガ窺ハレル、是ハモウ一點
  疑ナキコトト私ハ信ズル、今後產業組合ハ
  宜シク自制シテ本當ノ、產業組合設立ノ本
  義ニ鑑ミマシテ、社會政策的ノ見地ニ立ツ
  テ、生產者ノ味方デアルナラバ之ヲ事實ニ
  現ハシテ貰ヒタイ、失禮ダケレドモ、農村
  民ハ經濟的ナ知識ハゴザイマセヌ、同時ニ
  世ニ疎ウゴザイマス、サウシテ地主ニ對シ
  マシテハ殆ド頭ハ上ラナイノデアリマス、
  此ノ永年ニ亙ル所ノ奴隷ノ如キ境遇ニ置カ
  レタ人々ニ、當然ナルベキ所ノ民法上ノ權
  利ヲ默ツテ〓ヘズニ置イテ、何デモ强ヒテ
  來タ所ノ產業組合ノ無責任ト云フモノハ大
  ナルモノデアル、農村生產者カラ言ヘバ產
  業組合ハ搾取階級デアル、眞實三千万農民
  中ノ大部分ヲ搾取シテ居ルノハ產業組合デ
  アル、ナゼ斯ウ云フヤウナ不條理ヲ說イテ、
  本當ニ多數生產者ノ爲ニ御盡シニナラナイ
  ノカ、彼等ノ生產シタモノヲ取上ゲテ、其
  ノ間ニ搾取ハ爲シテ居ルケレドモ、斯ウ云
  フ事實ニ付テ何等貢獻セヌト云フ所ニ、產
  業組合ガ農村民多數ノ利益ニアラザルコト
  ヲ私ハ宣言シテ置キタイノデアリマス、左
  樣ナ點ハ農林省モヤハリ同ジデゴザイマセ
  ウ、農林省モ今日マデ斯ウ云フコトヲ御考
  ヘニナラヌ、此ノ議會ニ國民ノ眞ノ總意ノ
  發露ニ依ツテ初メテ御動キ下サルト云フコ
  トハ時既ニ遲イ、遲イケレドモ、之ヲシテ
  戴ケレバ日本ノ農村民ノ利益ハ如何バカリ
  デアリマセウカ、私ノ聞ク所ニ依リマスル
  ト、自分ノ息子ガ出征シテ手ガ足ラナイノ
  デ、年取ツテ隱居ヲシテ居ツタオ爺サンガ
  働キ出シタ、ソコニ於テ秋ハ來ル、朝鮮人ヲ
  雇ウテ一反幾ラデ請負ハセマシタ、朝鮮人ノ
  勞銀ハ非常ニ上ツテ居リマス、ソレデモ仕方
  ガアリマセヌ、雨ハ降ル、日ニチハ來ルカラ
  ヤラセルノデアリマス、所ガ俵ヲ編ムコトガ出
  來ナイ、出來ナイカラ何トカシテ近所界隈
  ヲ買ヒ步キマシテモ、何處モ皆手ガ足ラナ
  イ、遠クニ出張シマシテ、僅カナモノデア
  リマスケレドモ、其ノ俵ヲ俄ニ買ヒマシタ
  ナラバ丁度是ガ其ノ縣ノ規格ニ適合致シマ
  スル縄ト、此ノ俵デ一俵五十錢、俵裝ニ掛
  ツタト云フコトデゴザイマス、是等ノモノ
  ガ永年ニ亙ル所ノ負擔デアル、而モ此ノ米
  ガイケナイカラ良イノヲ持ツテ來イト言フ、
  サウ云フ契約ガ何處ニシテアルカ、サウ云フ
  ヤウナ點ヲ農林省ハ少シモ御考ヘニナラズ
  シテ、モノノ分ラヌ者ヲ其ノ儘今日マデ利用
  シテ來テ、農村ガ苦シイト云フ、農村ガ苦シ
  イト云フノハ彼等ハ發言權ヲ持ツテ居ナイ、
  何デモ地主ノ言フ通リデアル、サウシテ一
  面莫大ナル補助金ヲ與ヘテ居リマスケレド
  千、是ガ果シテ農村民ノ中以下ノ爲ニナツ
  テ居リマスカ、國家カラ出シテ居ル補助金
  ト云フモノハ殆ド皆中間ニ搾取サレテ居リ
  さく、ソレデアリマスルカラ、何事モ知ラ
  シメズ由ラシムベシノ政策ヲ執ツタ德川時
  代ト同ジ政策ヲ、購販聯、全販聯デ執ツテ
  居ラレマス、斯ルコトハ、私共ハ攻撃スル
  譯デハゴザイマセヌガ(笑聲)諸君ハ皆是等
  ノ小農家カラ御選出ナサレタ方デアリマセ
  ウ、アナタ方ハ投票ハ得テ居ルガ、彼等ノ
  利益ヲ圖ラヌト云フノデハ、今日所謂議會
  否認ト云フヤウナ聲ガ大ヲ成スノデアリマ
  スカラ、ドウカオ互ハ-此處ニ居ラレル
  方々ハ皆御盡シニナツテ(笑聲)一生懸命ニ
  ヤツテ居ラレマスルケレドモ、多クノ議會
  人ニ斯ウ云フ方ガ多數デアリマセヌカラ、
  斯ウ云フコトガ實現サレナカツタノデゴザ
  イマス、今後オ互ハ非常ニ考慮シナケレバ
  ナラヌ、私共ハ農村選出デハゴザイマセヌ、
  都會選出デハゴザリマスルケレドモ、兎ニ
  角日本ノ今日ノ非常時下ニ於ケル國策ト致
  シマシテハ業者ヲ考ヘ、米ガ餘リ高クテモ
  イケマセヌ、又安クテハ農村ガ立チマセヌ、
  高ケレバ消費者ハ如何ニスルカ、農村民ハ
  米ヲ高ク買ツテ下サイト言ツテ陳情ニヤツ
  テ來ル、都會ニ行ケバ、米ガ高クテドウシ
  テ生活ガ出來ルカト言フ、其ノ間ニ處シテ
  政治家ハ兩者ノ中庸ヲ得ルヤウニ政策ヲ執
  ラレルノガ、本當ノ政治デゴザイマス、ソ
  レデアリマスルカラ私共ハドチラニモ加擔
  ハ出來マセヌ、同ジ陛下ノ平等ナル赤子
  デゴザイマスルカラ、其ノ赤子ニ不平等ナ
  ル所ノ同情ヲシテハナリマセヌ、ドチラニ
  モ贔屓スベキデハアリマセヌ、併シナガラ
  今日マデ農林省ノ御執リニナツタコトハ、
  ドウモ殘念ナガラ資本家擁護ニ流レテ居リ
  マく、今ノヤウナコトヲ御氣付ニナラヌト
  云フコトハ洵ニ遺憾デアリマスカラ、今後
  ハサウ云フ觀念ヲ御捨テニナツテ、本當ニ
  全販聯ト云フモノガ生產者ノ團體デアリ、
  三千万農民ノ爲ニナルヤウニ、大體國家カ
  ラ出シマス莫大ナ金ガ中間ニ搾取サレナイ
  ヤウニ、是非私ハアナタ方ニ御願シタイ、
  國家ノ爲ニ御願シタイ、是ガ出來マシタダ
  ケデモ、出征將士ガ目出度ク凱旋ヲシテ歸
  ツタ時ニ、歸ツテ見レバ、今マデノアレダ
  ケノ大ナル負擔ガ輕減サレテ居ルカラト言
  ツテ、是レ一ツデモ彼等ニ對スル感謝ノ意
  ヲ表スル一助ニナルト思フノデス、ドウカ
  非常時下ニ於キマスル政策トシテハ、此ノ
  點ダケハ、必ズ米ヲ喧シク言ハナイコト、
  其ノ田デ出來タモノヲ納メルコト、同時ニ
  俵裝ニ付テ一俵五十錢、六十錢ト云フ金ヲ
  掛ケテ、サウシテ地主ガ負フベキモノヲ小
  作人ニ轉嫁スルコトハ此ノ次カラ御止メヲ
  願ヒタイノデアリマス、併シ櫻内農林大臣
  ハ其ノ邊ニ對シマスル非常ナ御理解ガア
  リ、私ハアア云フ御答辯ハ一寸難カシイカ
  ト思ウタノデアリマス(笑聲)ソレハ中々
  容易ナルコトデハアリマセヌ、併シ
  卽座ニサウ云フ御答辯ヲ得マシタト云フ
  コトハ、此ノ三千万農民ノ爲ニ如何
  ニ滋雨ノ如キ感ヲ與ヘタカト云フコト
  ヲ、私ハ此ノ席カラ喜ブ者デアリマス、
  次ハ肥料ノ問題デゴザイマスガ、先程一言
  申上ゲマシタヤウニ、肥料ガ今日騰貴シテ
  居ルコトハ御承知ノ通リデゴザイマス、正
  貨流出ヲ防グ爲ニハ輸入ノ防遏ヲシナケレ
  バナラヌコトハ當然デゴザイマス、是ハ今
  日國策上已ムヲ得マセヌ、此ノ結果ト致
  シマシテ、肥料ノ輸入防遏ヲ致シマスルカ
  ラ、ソコデ需給ノ關係ガ不均衡ヲ來シマス、
  不均衡ノ結果ガ玆ニ騰貴ハ免レマセヌ、免
  レマセヌガ、私ガ御伺シタイノハ、今日肥
  料ノ輸入ノ爲ニ三四千万圓ヲ此ノ非常時ト
  言ヒナガラ、ヤハリマダ使ツテ居ルノデア
  リマス、輸入ノ金額三四千万圓ヲ使ツテ居
  ルト云フコトハ、正貨ノ流出ヲ來シテ、今日
  ノ日本ニ取ツテハ全ク非常ナ苦痛デゴザイ
  やっ、御承知ノ通リ各家庭ニアリマスル
  耳搔ノ金屬マデモ取上ゲヨウト云フヤウナ
  時局デゴサリマスルノニ、肥料ダケニ一年
  間三四千万圓、之ヲ餘程切詰メテ切詰メテ
  殆ド無キガ如キ所マデ節シテモ三四千万圓
  ハ輸入ニ仰ガナケレバナラヌ、是ダケノ貴
  キ金ガアリマスナラバ、此ノ金ヲ以テ他ノ
  資材ヲ買入レ、或ハ平和產業ノ資材ト致シ
  マシテ振向ケタナラバ、多クノ今日ノ平和
  產業デ職ヲ失ツテ居ル者ガドレ位助カルカ
  分リマセヌ、ソレ等ヲ考慮致シマスルナラ
  バ、玆ニ私ハ農林當局及ビ現內閣ニ對シテ
  御注意ヲ御願シナケレバナラヌコトガアル
  ノデアリマス、今日ノ肥料會社ノ多クヲ見
  マスルト、肥料ノ値下ヲシナケレバナラヌ、
  管理ヲスル位ニ行カナケレバナラヌ、物動
  計畫ノ上カラ言ヒマシテモ當然ナ歸結デゴ
  ザイマスルガ、ドウモ肥料ニ對スル所ノ方
  面ノ御干渉ハ少イト思ヒマス、ソレハ何處
  ニアルカト云フト、肥料會社ノ株主ト云フ
  モノハ-ソレハ一般モアリマスガ、主ト
  シテ農村ノ財閥ガ多イ、農村ノ財閥ガ多イ
  カラ、自分等ノ經營シテ居ル肥料ガ餘リ安
  クテモ困ル、ソコデ或ル程度ノ肥料ノ價格
  ハ維持シテ貰ハナケレバナラヌト云フコト
  ガ、口ニ言ハズ、以心傳心ニ現ハレテ來ル
  ノデアリマス、是ガ證據ニハ農村ノ人ガ多
  クノ株ヲ持ツト云フ傾向ニナルト云フコト
  ノ事實ハ、先般御計畫ニ相成リマシタ滿洲
  國ニ於ケル所ノ肥料工業株式會社ノ件デア
  リマス、滿洲國ト日本トガ半々ノ株ヲ持チ
  マシテ、オ互ガ之ヲ出シ合フ、約五千万圓
  デゴザイマシタカ、其ノ半分ハ日本ノ農民
  ノ力ニ依ツテ之ヲ出シテ貰フト云フコトニ
  ナツテ居リマス、農民ト言ツタツテ今私ノ
  申上ゲマシタヤウニ生產者タル者ハ一厘モ
  出ス餘裕ハ持チマセヌ、サウ致シマスルト、
  是ハ悉ク地主階級ノ地方ニ於ケル財閥デゴ
  ザイマス、日本內地ニ於ケル各種ノ肥料財
  閥デアリマス、イマ日本デ使ヒマスル滿洲
  カラ輸入シテ來ルモノガ、是ガヤハリ地主
  ノモノデアル、是等ガドウシテ肥料ノ値下
  ヲ斷行出來マセウカ、配當ヲ今日五分ニ制
  限スル、肥料ハ特有ナルモノデアルカラ他
  ノ平和產業ト違ツテ特ニ五分ニ制限シ、有
  ユル積立、留保、其ノ他ヲ制限シテヤツタ
  ラ、非常ナ問題ガ起リマセウ、所デ玆デ御
  考ヲ願ハナケレバナラヌノハ、サウ云フ風
  ニ肥料代ガ上リマス、上ツタ所ノ負擔ハ生
  產者ガ出スノデゴザイマス、サウシテ其ノ
  生產者ガ出シタモノハ自分ノ使ツテ居ル小
  作人ガ之ヲ使フノデアリマス、米價ヲ上ゲ
  テ地主ハ儲カリ、高イ肥料ヲ賣ツテ地主ガ
  又個々ノ生產者カラ之ヲ搾取シテ居ルト云
  フコトガ日本ノ現在ノ實際デゴザイマス、
  是ハ悉ク農村ノ地主及ビ資本家トハ申シマ
  セヌヨ、所ガ滿洲國ニ於ケル肥料工業會社
  ノ如キハ、其ノ半分ト云フモノハ日本ノ農
  村ノ方面カラ之ヲ取ルト云フ規則ニナツテ
  居リマス、斯ウ致シマシテ、肥料會社ヲ地主
  ガ作リ、其ノ肥料ハ自分ノ子デアリ、子飼
  ヒデアル所ノ小作人ニヤリ、肥料ヲ賣ツテ莫
  大ナ利益ヲ受ケ、同時ニ又小作料ニ依リマ
  シテ不當ナ利益ヲ得ルト云フ二重ノ搾取ヲ
  シテ居ルノガ、我ガ日本ノ現狀デハナイカト
  思フノデアリマス、此ノ點ハ兎ニ角斯樣ナ次
  第デアルノデアリマスカラ、今度滿洲デ出來
  マスモノニ付テモ、非常ナ考慮ヲ拂ハナケ
  レバナラヌ、サウシテ肥料ノ如キ、特有ナ
  ル物デアリマスカラ、假令平和產業デアリ
  マシテモ、私ハ之ニ對シテ何故ニモウ少シ
  物動計畫ノ下ニ此ノ深刻ナル方法ヲ御執リ
  ニナラヌカト云フコトヲ御伺シタイ、其ノ
  次ニハ其ノ肥料ヲ多クサセナイ、輸入ニ仰
  グ位ニ拂底ヲ見セテ、或ル程度價格ヲ上ゲ
  ヨウト云フ計畫ガアルノデハナイカト私ハ
  思フ、是ハ餘リ行過ギタ疑カモ知レナイガ、
  事實ニ基イテ類推スルトサウナル、肥料ヲ
  多カラシムレバ價格ガ下ルカラ、之ヲ或ル
  程度マデニ制限シテ、サウシテソコニ多少
  ノ輸入ヲ仰イデ、日本ノ內地デハ到底供給
  シ切レヌト云フコトヲ知ラシメテ、多クノ
  增產ヲ防グト云フ計畫ガアルノデハナイ
  カ、其ノ事實ハ何處ニアルカト申シマスト、
  私ハ臺灣ニ參リマシテ、臺灣ノ新竹州、竹.
  東郡ニハ御承知デゴザイマセウケレドモ、
  九九%ノ含有量ノ無盡藏ナ瓦斯ガ發生致シ
  テ居ルコトハ、御承知ノ通リデゴザイマス、
  今日新竹州ノ如キハ、人民ハ皆瓦斯ヲ使ツ
  テ居リマスケレドモ、「メートル」ヲ使ツテ
  居リマセヌ、朝カラ晩マデ使ヒ放題デアル
  カラ、勞働者ニ至ルマデ朝風呂ヲ立テテ居
  ル、私ハソレヲ見テ來タノデアリマス、サ
  ウシテ此ノ無盡藏ナル天然瓦斯、而モ其ノ
  含有量ハ九九%デ、世界ノ天然瓦斯ノ中ニ
  モ類ノナイ程ノ優良ナルモノガアルノデア
  リマス、普通ノ瓦斯ノ生產ニハ非常ナ燃料
  ヲ要シマス、其ノ燃料ガ生產費ノ大部分ヲ
  占メルノデゴザイマスカラ、玆ニ大ナル會
  社ヲ拵ヘテ、此處デ約五万坪、畑モ美田モ
  ゴザイマスガ、之ヲ平原ト致シマシテスツ
  カリ地均シヲシタ、地均シヲシタガ、之二
  必要ナル所ノ肥料製造ノ機械ヲ亞米利加カ
  ラ買ハナケレバナラヌコトニナツタ、ソコ
  へ爲替管理ニ引ツ掛ツテ、ソレヲ買フコト
  ハ相成ラヌト云フコトデ、美田ハ化シテ徒
  ニ平野トナツテ居ル、サウシテ其ノ儘放置
  シテアルノデゴザイマス、是ニ於テ私ハ現
  內閣ノ方針カラ見マシテモ、惡ク考ヘレバ
  肥料財閥ヲ擁護スル爲ニ斯ウ云フコトヲシ
  テ居ルノデハナイカ、一年間ノ輸入ノ額ガ
  三四千万圓デゴザイマス、一會社ガ肥料製
  造ノ機械ヲ買フノニ幾何ノ金ヲ要スルト御
  覽デゴザイマセウカ、此ノ物ハ一時デ宜シ
  イ、肥料ノ輸入ハ永年ニ亙ツテ居リマス、
  一時其ノ機械ヲ亞米利加ナリ何處ナリカラ
  買ツテ、サウシテ臺灣ノ無類ノ燃料ヲ以テ
  作業ヲ開始致シマシテ肥料ヲ供給シ始メタ
  ナラバ、日本內地ニ於ケル肥料ノ相場ハド
  ウナリマス、ソレニ依ツテ安イ肥料ヲ供給
  スルコトガ出來ル、本當ニ日本國民及ビ生
  產者、三千万農民ノコトヲ親心ヲ以テ思召
  ニナルナラバ、斯ウ云フ政策ヲナゼ行ヒナ
  サラヌカ、コンナ僅カナ金デ濟ムモノヲ其
  ノ儘放ツタラカシテ、投資シタバカリデ仕
  事ヲシナイデ遊ンデ居ラナケレバナラヌ現
  狀ニアリマス、斯樣ナコトハ櫻內農林大臣
  ハ御就任ニナリマシテ間ガゴザイマセヌカ
  ラ、ソンナ一々事務的ナ所マデ頭ヲ御使ヒ
  ニナレヌコトハ當リ前デ、又ソンナコトデ
  ハ大キナ政策ハ實行出來マセヌ、併シ本法
  ヲ實施スルニ當リマシテ、已ムヲ得ズ斯ウ
  云フ事實問題ニ付テ申上ゲタ譯デアリマス、
  肥料統制ハ所謂米ノ增產ヲ圖ル所以デゴザ
  イマスシ、農村生產者ノ生活安定ヲ圖ル所
  以デゴザイマスカラ、之ヲ實行致サナケレ
  バナラヌノデゴザイマス、之ニ對シマシテ
  私ハ農林當局ガ如何ナル御考ト、如何ナル
  御決意ヲ御持チニナツテ居ルノデアラウカ、
  サウシテ此ノ肥料ノ拂底ヲ緩和シ、輸入ス
  ル物ヲ防遏スルト云フ、其處ニ所謂一擧兩
  得ノ策ニ御出デニナル考ガゴザイマスカド
  ウカ、御伺致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=103

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• 104・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　只今肥料ノ問題ニ對シテ
  福田君ノ御意見ガゴザイマシタガ、或ル點
  ニ於テハ私共鳴スル點モアリマスケレドモ、
  大體ノ實情ヲ一應御話シテ御賢慮ヲ煩ハシ
  タイト思ヒマス、肥料ノ中デ俗ニ謂フ金肥
  ト堆肥トノ關係ヲ勘定シテ見マスト、總體
  デ七億二三千万圓デアリマシテ、其ノ中ノ
  丁度半分位ノ三億五六千万圓ガ金肥デアリ
  マイ、アトハ堆肥卽チ自給肥料デアリマス、
  有機質肥料デアリマス、金肥ハ大體ニ於テ無
  機質肥料デアリマスガ、其ノ中デ硫安肥料
  ハ、可ナリ長イ間商工農林等ノ間ニ議論ノア
  ツタ問題デ、難カシカツタ問題デアリマス
  ケレドモ、現在ハ幸ニシテ漸ク自給自足ガ
  出來ルヤウニナツタノデアリマス、而シテ
  此ノ硫安ニ付キマシテハ、硫安ノ販賣會社
  ヲ拵ヘテ、之ヲ統制致シテ其ノ値段ヲ一定
  サセテ居リマス、隨ヒマシテ戰爭ガ始マリ
  マシテカラ今日マデ、マダ其ノ騰貴率ハ勿論
  一割ニ達シテ居リマセヌ、ソレカラアトハ
  加里ト過燐酸デアリマスガ、過燐酸ニ對シ
  テハ約百万瓲位要リマシテ、時價ニシマシ
  テ三千五百万圓位デアリマス、此ノ中低度
  ノ過燐酸ハ內地ニアリマスケレドモ、高度
  ノ過燐酸ハアリマセヌ、已ムヲ得ズ輸入ニ
  俟タナケレバナラヌモノガアルノデアリマ
  シテ、是ハ私共ガ深ク今心配シテ居ル所デ
  アリマスガ、幸ニシテ物動計畫ノ中デ、取
  敢ズ一番先ニ此ノ七月マデノ分ヲ今日確保
  スルコトガ出來タノデアリマス、其ノ値段
  モ幸ニ統制ヲシテ居リマシテ、是ハ二月ノ
  二十三日、ツイ先日之ヲ一元的ニ一ツノ會
  社ニ致シマシテ統制ヲ致シテ居ルノデアリ
  マスガ、是亦サウ大シタ値上リハ致シテ居
  リマセヌ、加里ハ日本ニ於テ殆ド出來マセ
  ヌ、隨ヒマシテ多ク輸入ニ俟ツノデアリマ
  スガ、此ノ方ハ今一ツノ會社デ取扱ツテ居
  リマスケレドモ、實ハ外國ノ人ガ主トシテ
  ヤツテ居リマス、併シナガラ値段ハヤハリ
  農林省ノ意向ヲ酌ミマシテ、殆ド上ゲテ居
  リマセヌ、僅ニ何「パーセント」ト云フモノガ
  上ツテ居ルダケデアリマス、有機質ノ肥料
  ハ、ドウモ鰊其ノ他ノ魚ノ不漁、又其ノ他
  勞力ノ不足等ニ依リマシテ、二割三割、多
  イノハモツト上ツテ居ルノデアリマス、此
  ノ點ニ付キマシテハ甚ダ遺憾デアリマシテ
  何トカシナケレバナラヌト思ツテ居リマス
  ガ、是ハ國內デ出來ル物デアリマスガ故ニ、
  金肥程重要デハアリマセヌケレドモ、農家
  トシテハ重大ナ問題デア、リマスノデ、出來
  ルダケ安クシタイト考ヘテ居リマス、臺灣
  ノ例ヲ御取リニナリマシタガ、臺灣ニハ硫
  安工場ノ出來掛ツテ居ルノガアリマシテ、
  是ガ開業シマスレバ、硫安ノ製造ガ非常ニ
  多ク殖エルノデアリマシテ、洵ニ結構ナコ
  トデアリマスケレドモ、物動ノ關係カラ今
  御話ノ如ク進行セズニ中途ニナツテ居リマ
  ス、ナツテ居リマスガ、是モ出來ル限リ、
  速ニ進行セシメテ、サウシテ御話ノ如ク一
  時要ル金ハ少クシテ、ソレガ永遠ニ日本ノ內
  地ニ於テノ肥料トナルバカリデナク、是
  等ノ肥料ハ賣レルノデアリマシテ、對外的
  ニ賣ツテサウシテ外國カラ金ヲ持ツテ來ル
  コトモ出來ルノデアリマスガ故ニ、其ノ方
  策ニ付テモ今考慮致シテ居リマス、單ニソ
  レバカリデハナクテ、硫安ニ付キマシテハ
  モウ少シ積極的ナ考ヲ以テ、實ハ今私ヤリ
  ツツアルノデアリマス、外國カラ相當ナ代
  金ノ機械ヲ買ハナケレバナリマセヌガ、買
  フ機械ハ出來レバ「クレヂット」デ入レテ、
  サウシテ製品ガ出來テ其ノ「クレヂット」ノ
  金ヲ拂フ、斯ウ云フ方法ガ何トカシテ出來
  ルノヂヤナカラウカト云フノデ、實ハ當業
  者ノ人々ニモ集ツテ貰ツテ協議ヲ致シテ居
  リマスガ、恐ラク此ノ硫安ニ對スル所ノ增
  產計畫ト云フモノニ付キマシテハ、相當ナ
  考ガ運ラサレテ、隨テ國內ノ硫安肥料ガ騰
  貴ノ狀態ニアツテモ騰貴セズニ濟ンデ行ク
  ノヂヤナカラウカト思ツテ居リマス、要ス
  ルニ肥料ガ稍〓値上リ氣味デアリマスコトハ
  甚ダ遺憾デアリマスノデ、是ガ値ノ上ラヌ
  ヤウニ出來ルダケノ努力ヲ致シテ居リマス
  ノデ、金肥ノ方ニ付キマシテハサウ非常ナ
  暴騰ヲスルト云フガ如キコトハナイ、斯樣
  ニ信ジテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=104

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• 105・添田敬一郎

  ○添田委員長　福田君ニ一寸申上ゲマス、
  アナタノ御質問ハ非常ニ熱心ナル御質問デ
  アツテ、其ノ點ハ洵ニ敬意ヲ表シ結構ダト
  思ヒマスガ、成ベク本法ニ直接關係アル問
  題ニ付テノ御質疑ヲ願ヒタイ、肥料ノ問題
  ハ別ニ統制法ガアリマスカラ、此ノ法案ニ
  成ベク直接ノ問題ヲ簡單ニ願ヒタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=105

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• 106・福田關次郎

  ○福田委員　モウ少シデゴザイマスー只
  今農林大臣ノ御答辯洵ニ御尤デ、現在ハサ
  ウデナクテハナラナイト思フノデアリマス
  ガ、唯本案ヲ鵜呑ニ致スコトノ出來マセヌ
  原因ハ、有ユル觀點カラ本法案ノ性質ト其ノ
  成立ト、將來トヲ考慮致シマシテ斷案ヲ下
  サナケレバナラヌノデゴザイマシテ、洵
  御手數ヲ掛ケルヤウナ次第デハゴザイマス
  ルガ、私ハ所謂農村民タル生產者、同時ニ
  消費者タル人ノ之ニ依リマシテ豪リマスル
  利害ガ重大デアリマスルカラ、其ノ根本ニ
  入ツタ所ノ御理想ヲ承ラナケレバ、本法ノ
  審議ハ出來ナイト思フカラ申上ゲタノデア
  リマス、尙ホ本法ノ創設ノ動機ト云フモノ
  ハ、私共考ヘマスル所ニ依ルト、農林大臣
  ガ過般本會議デ提案ノ理由ヲ御述べニナツ
  タヤウナコトノ外ニモ、大切ナ原因ガアル
  ト思フ、サウシマスルト本法ノ目的ガ何處
  マデニ行クノデアルカト云フコトガ是デ分
  ルノデナイカ、創設ノ動機ハ要スルニ永
  年ノ目的デアル、先程言ツタ所ノ臺灣ノ米
  管問題、其ノ取扱ヲ如何ニスルカ、サウシ
  テ愈、管理案ガ出來マシテ、米ノ賣方ヲ農
  林省ニ託スル、託スルノデハナイ、農林省
  其ノモノハ商賣ガ出來ヌカラ、玆ニ於テ斯
  ウ云フモノヲ作ラナケレバナラヌト云フコ
  ト、一ツハ米專賣ノ前提條件デハナイカ、
  昨日ノ御答辯デハサウデハナイト云フヤウ
  ナコトヲ言ハレタ、マダ速記錄ヲ拜見致シ
  マセヌガ、新聞デ見タノデアリマス、併シ
  過日ノ本會議ニ於キマシテハ專賣ノコト
  モ考ヘナケレバナラヌト云フヤウナ御答辯
  ガアツタヤニ私ハ記憶致シテ居ルノデアリ
  やく、サウ致シマスルト是ハ一層考慮シナ
  ケレバナラヌ、其ノ次ニハ是マデノ取引所
  ト云フモノガ、主食物ヲ投機ノ對象トスル
  コトハ非常ニ面白クナイト云フノデ、此ノ
  取引所ヲ改廢シナケレバナラヌ、改廢致シ
  マスルニ付テハ其ノ處分ヲシナケレバナラ
  ヌト云フコトニナツタ、苟モ政府ガ保證金ヲ
  取ツテ、今日マデ公認致シテ居リマスル者
  ノ業ヲ廢スルト云フコトニ對シテハ、國家
  トシテ相當ナル處置ヲナサルノハ當リ前デ
  ゴザイマス、其ノ當時ノ農林省ノ御企圖ナ
  サレタモノデハ、其ノ救濟方法トシテ約五
  千万圓ヲ之ニ出スト云フコトガ、私共ハ其
  ノ當時輿論的ナ農林省ノ御意見デアツタト
  思フノデアリマス、之ガ改廢ヲスル時ニハ、
  今日ノ取引所員ヲ五千万圓程度ヲ以テ救濟
  シナケレバナラヌト云フ案デアツタ、ソレ
  ガ段々年月ヲ經ルニ從ツテ、今度ハ三千万
  圓ニ減ジテ來タ、サウシテ本法ガ出來マス
  ル前後ニハ一千二三百万圓位デハドウカト
  云フコトニナツタ、ソレガ今度變化シテ一
  文モヤラヌト云フヤウニナツテ來タノデア
  リマス、是等ハ農林當局ノ御決定トシテ御
  發表ニナツタノデハナイノデゴザイマスガ、
  斯ウ云フヤウニ、實際ニ商行爲ヲ爲シテ居
  ツタモノニ對シテ、一部官憲ノ御理想ヲ實
  現ナサル爲ニ、斯ウ云フ政府ノ公認シテ居
  ツタ者ノ業マデモ取上ゲルコトニ付テ、何
  等賠償ヲナサラヌト云フコトハ、果シテ
  情理ヲ盡シタル所ノモノデアルカドウカ、
  此ノ結果本法トナツテ現ハレタモノデアリ
  マスルコトハ私共ノ疑ハヌ所デゴザイマス、
  サウシマスト本法制定ノ動機ト云モノハ、
  多少私共ハ疑ハナケレバナラヌ點ガナイト
  ハ致サナイノデアリマス、サウシテ賠償ハ
  シマセヌガ、取引所員ト云フモノヲ市場員
  ニスルノデアルト云フ御話デゴザイマシ
  ク、併シ市場員ニ致シマシテモ、先程申上
  ゲマシタヤウニ、是等ノ人々ハ本當ハ米穀
  ノ取扱ヲシタコトガナイ人々デアリマス、
  此ノ者ガ產地ノ實際生產者ト直接スル所ノ
  產業組合トカノ進出デ、コヽデ共同作業ヲ
  致シマシタ時ニ、果シテ如何ナル結果ヲ來
  スデアリマセウカ、結局私ハ一厘ノ賠償金
  ヲヤラズシテ是等ノモノヲ自然消滅ヲセシ
  ムル所ノ前提條件トシテノ本法デハナイカ
  ト疑フノデゴザイマスガ、農林大臣ノ御所
  見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

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• 107・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　本法ガ米ノ專賣ニ關スル
  前提デアルカナイカト云フコトニ付テ御質
  問デゴザイマスガ、米ノ專賣若クハ國營ト
  云フコトニ付キマシテハ、是ハ私〓究ノ價
  値ノアル問題ダト思ツテ居リマス、併シナ
  ガラ本案ガ其ノ前提デアルト云フコトハア
  リマセヌト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
  マス、左樣御承知願ヒマス、ソレカラ取引
  所ガ許可ヲ得テ商行爲ヲ完全ニヤツテ居ル
  ノニ、之ヲ取上ゲル場合ニ於テハ相當ナル賠
  償ヲ致スコトガ至當デハナイカ、曾テハ五
  千万、三千万、千万ト云フヤウナ賠償金ヲ
  出スト云フ說ガアツタノニ、此ノ度ハソレ
  ヲ一厘モ出サヌ、是ハ餘リニ穩カデナイデ
  ハナイカト云フ風ナ御意見デアリマス、普
  通カラ申セバ、先ヅ斯ウ云フ場合ニハ鐵道
  國有法ノ例ニ依ルトカ、或ハ其ノ他ニモ例ガ
  アリマス、土地收用法ノ例ニ依ルトカ、サ
  ウ云フ民業ヲ官ニ於テ買收スル場合ニ於テ
  ハ幾多ノ前例ガアルノデアリマス、或ハ市
  場法-京都、大阪、東京ノ如キ場合モア
  リマス、サウ云フ手續ヲ取ツテ然ルベキデ
  ハナイカト云フコトハ一應考ヘラレルコト
  デアリマス
  卽チ本法施行ノ結果取引所ヲ廢止致ス
  ノデアリマスガ故ニ、今御話ノ點ニ付キ
  マシテハ是ハ一應考ヘナケレバナラヌコ
  トデアリマス、併シナガラ法案ガ出來マ
  シタ結果之ヲ廢止致スト云フ事柄ハ、事
  變以前ハ知ラズ、最近ニ至リマシテハ澤山
  例ガアルノデアリマス、卽チ皮革ノ統制ニ
  依ツテ靴屋ノ方々ガ倒レル、綿絲ノ統制ニ
  依ツテ綿絲布ノ營業ノ人ガ業ヲ奪ハレタ、
  或ハ鑄物屋ノ方々ガ原料ノ鐵ノ配給ガ無ク
  ナツテ倒レタ、或ハ鐵ノ配給ガナイノデ鐵
  瓶ノ製造家ガ全部倒レタト云フヤウニ澤山
  例ハアルノデアリマス、是等ノ人々ニ對シマ
  シテモ國家ト致シマシテハ、此ノ事變ニ依ツ
  テ業ヲ失ハレテ洵ニ氣ノ毒千萬デアルト思
  フカラ何トカ致スベキ筈デアリマス、併シ
  ナガラ總テ是等ノ人々ガ全部國家ノ爲ニ御
  忍ビ下サツテ、此ノ際我慢ヲシテ戴イテ居
  ル場合デアルノデアリマスカラ、玆ニ大キ
  ナ金額ノ賠償金ヲ出スト云フコトニ付キマ
  シテハ餘程〓究ヲシナケレバナラヌ點ガア
  ルノデアリマシテ、私共其ノ〓究ノ結論ヲ
  得ナイノデアリマス、併シナガラ他ノモノ
  ト違ツテ、此處ニ是ダケノ會社ガ出來テ、
  取引所ノ仕事ヲ行フノデアリマスルガ故
  ニ、隨テ丁度民間デ言ヘバ合併ノ形式ト云
  ヒマスカ、何ト云ヒマスカ、從來ノ取引所ノ
  株主ヲ此ノ株主ニ致シマシテ、サウシテ從
  來ソレ等ノ人ノ市場ニ使ツテ居ツタモノヲ
  適當ナ値段デ買上ゲテ、サウシテ此ノ會社
  ノ株劵ヲ御持チ願フト云フ事柄ガ丁度合併
  若クハ買收シタト同ジヤウナ形式ニナリハ
  シナイカ、斯樣ナ見地カラ、要スルニ取引
  所ノ株主諸君ニ、此ノ會社ノ株劵ヲ優先的
  ニ御持ヲ願フ、又米穀ヲ扱ツテ居ル方々ニ
  優先的ニ御持ヲ願フ、斯ウ云フ風ニ此ノ機
  構ヲ拵ヘタノデアリマス、先刻モ御話ニナ
  リマシタ取引員ノ問題モ、兎ニ角茲ニ後繼
  ギ會社ノヤウナモノガ出來テ、一方ニ於テ
  失業サレル人ガ氣ノ毒デアルカラ、其ノ立
  チ行ク方法ノ一助トモナルコトヲ考ヘナケ
  レバナラヌ、斯樣ナ見地デ此ノ法案ノ上ニ
  於テ措置ヲ爲スト云フコトニシテ、勅令、
  命令ニ於テ別ノ規定ヲ拵ヘマシテ、官民カ
  ラソレ〓〓ノ權威ノアル方ニ出テ戴イテ、
  其ノ審議ヲ俟ツテ是等ノ問題ノ解決ヲ致サ
  ウト致シテ居ルノデアリマシテ、私ハ現在
  ノ時代ニ於テ是ガ不法ナル、亂暴ナル案ト
  モ考ヘテ居ラナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=107

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• 108・福田關次郎

  ○福田委員　御趣意ノアリマスル點ハ諒承
  スルノデゴザイマスガ、時局デアルカラト
  云フ一言デ簡單ニ片付ケマスレバ、今日ノ
  忠良ナル國民ハ一人モ反對スル者ハゴザイ
  マスマイ、併シ其ノ時局ト云フ一言デ以テ
  有ユル多數ノ人民ノ業ヲ奪ツテ顧ミヌト云
  フヤウナコトガ他ニアツテハ、私ハ大變ダ
  ト思フノデアリマス、長期應戰ノ實力培養
  ハ內地ニ於キマスル有ユル國民生活ノ安
  定ト、其ノ潑剌タル勇氣ヲ保有サシテコソ、
  長期應戰ノ本分ヲ全ウスルコトガ出來ルト
  思フノデゴザイマスカラ、今日ノ時局ダカ
  ラ我慢セヨ〓〓ト言ウテ、斯ル平和的ナ、
  殆ド戰爭ニハ不必要ナルモノニマデ統制ヲ
  進出サルルト云フコトハ、少シク私ハ履キ
  違ヘテ居ラレル政策ダト思フ、今日日本デ
  ハ臺灣デ米ガ作レルノデ、米ハアリ餘ル、先程
  御話デゴザイマスガ、臺灣ノ米管法ハ減反
  ノ方策デゴザイマス、米價ノ規制ノ爲ニ出來
  タノデアリマス、其ノ內容ハ時間ガ掛カル
  カラ申シマセヌ、臺灣總督府其ノ他ノ意向
  モ悉ク詳細ニ私ハ盡シテ居リマス、其ノ
  目的ハ悉ク減反ニアル、米ノ所謂生產制限
  ニアル、此ノ事ハ申シマセヌ、併シ今御話
  ノコトハ、是ハ禁止シテマデモ止メサセルノ
  デハゴザイマセヌカラ、多少寬恕スル所ガ
  ゴザイマシテ、又辛抱シナケレバナリマス
  テイ併シ今日ノ官僚ガ何モ彼モ悉ク統制
  シテ、俺ニ頭ヲ下ゲルニアラザレバ事ガ出
  來ヌゾト言ツテ、非常時局ノ波ニ乘ツテ斯
  ウ云フ不必要ト認メラルルモノマデ干涉壓
  迫ニ出ルト云フコトハ、餘程考ヘテ戴キタ
  イ、獨逸ヤ伊太利ヤ英吉利ノ如ク足ラヌ國
  デアリマスナラバ、是ハ相當ニ方法ヲ講ジ
  ナケレバナラヌ、ソレガアリ餘ルカラ臺灣
  デハ米ヲ作ツテ吳レルナト云フ法律ガ出來
  タ、非常時局デアツテモ其ノ通リ、斯ウ云
  フモノマデモ私ハ統制スル必要ハナイト思
  フ、先程申シマシタヤウニ、本法ノ目的ト
  云フモノハ要スルニ他ニハアリマセヌ、之
  ヲ專賣ノ前提トサレタモノデアリマシテ、
  取引所ノ整理ト、ソレカラ其ノ結果ト致シ
  マシテ、彼等ニ補償金ヲヤラズシテ「カム
  フラージュㄴスル所ノ一ツノ案デアリマシ
  テ、本當カラ申シマスト是ハ立派ナモノデ
  ナイト云フコトヲ殘念ニ思フノデアリマス、
  一種ノ糊塗策デアルト思ヒマス、今マデモ
  從業シテ居ツタ者ガ職ヲ失ハズ、本法デ所
  謂市場員トナツテ業ヲ續ケルコトガ出來ル
  ト云フ建前ハ、此ノ法文デハ餘程立派デゴ
  ザイマス、立派デアリマスガ、事實ヲ述べ
  テ私ハ農林當局ニ少シク御參考ニ供シテ見
  タイト思フノデアリマス、全國ヲ色々ト調
  ベマシテ、是ハ澤山アリマスガ、澤山申上
  ゲマスト時間ガ掛カリマスカラ一ツノ例ヲ
  申上ゲマス、京都ノ伏見ニ於キマシテ、今
  マデ實際ニ米ヲ取扱ツテ居ツタ所ノ卸問屋
  デゴザイマス、ソレハ數人居リマシテ、其
  ノ一年間ノ米ノ取扱高ハ平均約四十万石デ
  ゴザイマシタ、所ガ數年前カラ此處ニ全販
  聯ノ出張所ナルモノガ出來マシタ、伏見ハ
  京都市ニ編入サレテ居リマスカラ、今日デ
  ハ京都市ノ一部デゴザイマス、所ガ三四年
  前ニ全販聯ノ出張所ガ出來テ、今日卸業者
  ハドウ云フヤウナ實體ニナツタカ、私ハ大
  阪或ハ名古屋ナド、其ノ方面ヲ悉ク調ベマ
  シタガ、其ノ事ヲ申上ゲマスト大變ナ時間
  ニナリマスカラ、此ノ一番手ツ取リ早イ、
  一番新シイ實例ヲ申上ゲマス、四十万石取
  扱ツテ居リマシタモノガ、今日ニ至ツテド
  ウナツテ居ルカ、直接生產者カラ持ツテオ
  出デニナツテ、是等ノ農村ト接觸シテ居ル
  所ノ者デゴザイマス、其ノ者デサヘモ遂ニ
  是ト對抗スル能ハズ、オ情ヲ以テ今日ハ四
  十万石ノ中ヲ四分六ト云フ約束ニシテ、六
  分ヲ全販聯デ奪ツテ、四分デ以テ、詰リ今
  マデ四十万石取扱ツテ居ツタ所ノ業者ガ、
  僅カ十六万石ヲ賣ツテ生活ヲシテ居ルノデ
  ゴザイマス、ナゼ對抗出來ナイカ、全販聯
  ハ幾百万ノ金額ノ商ヒヲシテモ、一厘ノ稅
  金モ出シテ居リマセヌ、コチラノ方ハ四十万
  石ヲ扱ツタ時ト比ベルト十六万石シカ取扱
  ハナイデ、二十四万石ヲ奪ハレテ、奄々トシ
  テ僅ニ業ヲ續ケテ居ルノデゴザイマスガ、
  稅務所ハ中々聽カナイデ、元ノ納稅シテ居
  タ時ヲ思ツテ、之ニ苛歛誅求ヲシテ居ルノデ
  ゴザイマス、ナゼ斯樣ナ莫大ナ負擔ヲ取ラ
  レルカ、有ユル特權ヲ持ツテ居ル所ノ全販
  聯ハ、國家ニ納ムベキ所ノ義務ヲ果サズ、
  橫暴ヲシテ、サウシテ民間ノ正常ナル、神
  聖ナ業ヲ奪ツテ居ルノガ事實デゴザイマス、
  今此ノ人等ハ議院ノ內ニ來テ居リマス、斯
  ウ云フコトデ實際米穀ヲ取扱ツタコトノナ
  イ、紙ノ上ノ取引ヲシタ所ノ今マデノ市場
  員ニ對シテ、米ヲ取扱フコトノ專門家デア
  リ自分ハ產地ノ生產者ト直接接觸シテ居
  ル所ノ全販聯ガ進出シテ來レバ、是等ノ業
  者ハ何年續クト思召ニナリマスカ、農林大
  臣ハ先程カラ申シマスルヤウニ、就任御〓々
  ノコトデゴザイマスカラ、此ノ邊御承知
  ゴザイマスマイ、ケレドモ今マデ農林省ノ
  御計畫ニナツタコトヲ其ノ儘御繼ギニナリ
  マシテ、斯ウ云フ矛盾撞著ノ實際ヲドウナ
  サルノデゴザイマスカ、私ハ此ノ「カムフ
  ラージュ」シタ法文ヲ見テ今日ノ帝國議會
  ハ宜イ加減ニ之ヲ御認メスルコトハ出來マ
  セヌ、民意ヲ體セラレル農林大臣デ、人情ニ
  御厚イ方デゴザイマスカラ、斯ウ云フ所ハ
  ドン〓〓今カラ修正ニ御贊成下サルコトハ
  疑ハヌノデゴザイマス、斯ウ云フヤウナ事
  實カラシテ實際ヲ御推察願ハナケレバナリ
  マセヌ、稅金ヲ出サヌデ直接產地ノ人ト接
  觸シテ居ル所ノ全販聯ト、米ヲ扱ツタコト
  モナイ所ノ市場員トガ對抗シテ、然モ稅金
  ハ一厘モ出シマセヌ、有ユル官憲ノ援助ガ
  アリ、補助金マデモ貰ツテ居ル者ト、稅金
  ヲ拂ツテ行カナケレバナラヌシ、何等ノ援
  護ガナイ、其ノ上ニ壓迫ヲ受ケルノデアリ
  マスカラ、私ハ之ヲ補償シテ差支ナイ、斯
  樣ナコトデハ、將來我ガ日本ノ思想上ニモ
  影響シ、如何ニ非常時トハ言ヒナガラ、今
  日ノ憲法、今日ノ民法デ育ツテ來タ今日ノ
  國民デアリマスカラ、餘リ非常時ニ名ヲ藉
  リテ一方ニノミ好意的便宜ヲ與ヘルヤウナ
  偏頗ナ政策ヲ執リマシタナラバ、戰後ニ於
  ケル日本國民ノ思想上、恐ルベキモノガ來
  ルノデハナイカト思フノデアリマス、是ハ
  今カラ十分ノ戒心ヲ要スルコトデアリマシ
  テ、若シ我ガ日本ノ實體ガ西伯利亞出兵ノ
  ヤウナ有害無益ニ終ツタナラバドウシテ治
  マリマスカ、ソレデアルカラ假令非常時ト
  ハ言ヒナガラ、物動計畫ニ付テハ、物心兩
  方面ニ亙ツテ愼重ノ上ニモ愼重ヲ期セラレ
  マシテ、眞ノ立法府ノ權威ト、百年ノ安泰
  ヲ確立スルノ本旨ニ基イテ法案ヲ立テテ貰
  ヒタイ、ソレ等ノ人ハドウカト拜ンデ、オ
  情ヲ以テ十分ノ四ヲ貰ツテ、今マデ通リノ
  家ニ居リ、氣息奄々タル生活シテ居ルノデ
  アリマス、今度モ此ノ通リニナルト云フコ
  トハ當然デ、無稅デアツテ直接產地ヲ相手
  ニシテ居ル者ト、片一方ノ机上ノ空論ガド
  ウシテ對抗出來マセウカ、若シ農林省ガ出
  來ルト思召スナラバ、社會ノ實態、社會ノ
  實生活ヲ御承知ナイ、商行爲ノ本義ヲ御承
  知デナイト云フコトニナリハシナイカト思
  フ、斯ウ云フコトハ實際問題ニ御觸レニナ
  リマシテ此ノ法ヲ立テテ、先程申上ゲタ通
  リ生產者タル三千万ノ農民ト、四千万ノ消
  費階級ガ和氣靄々トシテ、眞ニ擧國一致態
  勢ヲ以テ生存權ヲ確保セシメルコトガ、眞
  ノ今日ノ善政ト申サナケレバナラヌノデア
  リマス、私ハ泣イテ此ノ點ニ付テ御考慮願
  ヒタイノデアリマス、併シ私ハ是等ノ人ニ
  賠償金ヲヤツテ吳レノ、補償金ヲヤツテ吳
  レト言フノデハアリマセヌヨ、是等ノ者ガ
  職ヲ失フコト斯ノ如シト云フ事實ヲ申上ゲ
  テ居ルノデアリマス、今ノ京都市伏見ニ於
  ケル全販聯ノ實績ヲ御調ニナツタナラバ、
  是ハ釋然トシテ直グ分リマス、私ハ一言半
  句虚僞モ駈引モ申上ゲテ居ルノデハアリマ
  セヌ、實際ガ斯ウナツテ居ルノデアリマス、
  四十万石ヲ取扱ツテ居ツタ者ガ十六万石、
  而モ之ヲオ情デ貰ツテ居ルノデアリマス、
  斯樣ナ次第デアルカラ、此ノ法案ガ成立致
  シマシタ三四年後ニハ、恐ラク斯ノ如キ結
  果ガ生ジテ來ルト思フノデアリマス、是
  等所謂全販聯及ビ購販聯ニ對シテ、英國ノ
  如キハ課稅シテ居ルノデアリマス、今日ハ
  所謂非常時局デアルカラ、是等購販聯、全
  販聯聯ト雖モ一箇ノ國民トシテノ義務ヲ果
  シ、此ノ非常時財政ヲ救助スルノハ當リ前
  デアルト思フ、之ニ對シテ農林大臣ハ、國
  民トシテ平等ナル義務ト責任ヲ果サセルノ
  ガ當然デアル、英國ノ如キハ敢然トシテ產
  業組合ニ對シテ課稅シテ居リマス、ソレヲ
  低利資金ヲ貸與ヘルダケデ結構デアルノニ
  其ノ上ニ多額ノ商買ガアツテモ稅金ヲ徵ラ
  ナイト云フヤウナ、サウ云フヤウニ國家ノ
  義務ヲ果サナイト云フ一面、多數農民、生
  產者ハ搾取サレテ、益スル者ハ、單リ全販
  聯購販聯ノミデアル、斯樣ナモノヲ無稅
  ニシテ置イテ特權ヲ與フルガ如キハ、時代
  ノ逆行デアリ、我ガ日本國民精神ノ惡化ヲ
  來ス根源トモアル政策デアルト思ヒマスカ
  ラ、之ニ對スル農林大臣ノ御信念ト御處見
  ヲ御伺シテ置キタイト思ヒマス

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• 109・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　名ヲ時局ニ藉リテ特別ナ
  ル負擔ヲ國民ニ負ハスト云フヤウナ考ハ持
  ツテ居リマセヌ、隨ヒマシテ本法案ニ於テ
  モ取引所方面、其ノ他ノ方面ニ付テ相當考
  慮ヲ拂ツテ居ル積リデアリマス、ソレカラ
  全販聯ニ對シテノ只今ノ御話デアリマスガ、
  是ハ地方々々ニ於キマシテ今ノ御話ノヤウ
  ナコトヲ耳ニ致サナイノデハアリマセヌ、
  併シナガラ今ノ御話ハ本法案ニ關係ノ無イ
  事態ノ話デアリマシテ、若シ本法案ガ出來
  ナイト致シマシテモ、左樣ナ事態ガアルダ
  ラウト思ヒマス、此ノ問題ニ付テハ私十分
  ニ調査ヲシ、〓究モシテ見ル考デアリマス
  ケレドモ、本法案ニ依ツテ產業組合ガ市場
  ニ進出シテ來テ、ソレニ依ツテ多クノ人ガ
  迷惑ヲスルト云フヤウニハ考ヘテ居リマセ
  又、先程來申ス通リ、ドウシテモ消費者
  ト、生產者ト、第三者タル米穀取扱業者ト
  ガ三建テニナツテ、相協力シテ行ツテ初メ
  テ圓滿ニシテ圓滑ナル配給ガ出來ルノデア
  リマス、私ハソレニ對シテ必ズシモ今ノ福
  田君ノ仰シヤルヤウニハ考ヘテ居リマセ
  ヌ、唯、今御話ノヤウナ點ニ付キマシテハ、
  十分ニ調査ヲ致シマシテ、本問題トハ別デ
  アリマスケレドモ、〓究ハ致ス考デアリマ
  ス、併シ本法案ニ依ツテ左樣ナコトガ起ル
  ヤウニハ考ヘテ居リマセヌ

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• 110・福田關次郎

  ○福田委員　農林大臣ニハ大變御疲勞ノ所
  ヲ洵ニ恐縮デゴザイマス、唯私共ハ此ノ案
  ノ出來マシタ爲ニ、生產者、消費者共ニ喜
  ンデ貰ヘルヤウニ、吾々立法者トシテノ責
  任ヲ全ウセンガ爲ニ此ノ言ヲ爲スノデアリ
  やっく、其ノ邊ヲ御諒承ノ上デ御聽キヲ願ツ
  タコトト思ヒマス、只今伏見ニ於ケル全販
  聯ノ進出ニ依ツテ生ジタ卸賣業者ノ窮迫ニ
  付テハ、ソレハ今度出來ル法案ニ依ルモノ
  トハ違フカラ、サウ云フコトハナイダラ
  ウ、又ソレニ對シテハ十分ニサウ云フコト
  ノナイヤウニ注意ヲ致ス積リダト云フコト
  ノ御答ハ一應諒承致シマス、サリナガラ假
  令此ノ法ガ出來マシテモ、實際ノ活用上ニ
  於ケル結果トシテハ、今ノ伏見ニ於ケル所
  ノ事實ト少シモ變ラヌ結果ガ生ジテ來ルト
  云フコトダケハ、農林大臣、農林當局ハ能
  ク腦裡ニ銘記シテ置イテ戴キタイノデゴザ
  イマス、一方ハ莫大ナ取扱ヲシマシテソレ
  ニ依ツテ課稅セラレテ、ソレニ對シテハ有
  ユル附加稅モ來マス、而モ一方ハ何等ノ稅
  金ヲ拂ハヌ、國家ノ特別ナル保護助長ノ下
  ニアル、是トドウシテ對抗ガ出來マスカ、
  是ガ對抗出來ルト云フナラバ私ハ是ハ不思
  議ダト思ヒマス、常識カラ考ヘテモ斷ジテ
  ソレ等ト對抗出來ルモノデハゴザイマセ
  ヌ、假令此ノ法案ニ依ツテ生ジタコトデハ
  アリマセヌデモ、今日ノ全販聯ノ進出ヲ御
  認メニナリマス以上ハ、是ト同一結果ニ終
  ルコトヲ農林大臣ニ能ク御記憶願ハナケレ
  バナラヌシ、是ガ重大ナル問題ダト思フノ
  デアリマス、此ノ點ニ對シテモウ一度大臣
  ノ御信念ヲ伺ツテ、サウシテ速記錄ニ留メ
  マシテ、將來ノ結果ヲ私共拜見致サナケレ
  バナラヌト思フノデアリマス
  同時ニ今度ハ小賣業者ノ方デゴザイマ
  ス、小賣業者ニ對シテ第一條ニ於テ要許可
  制度トナサレタノデゴザイマス、或ハ是ハ
  結構デゴザイマセウ、今日日本ノ是等小賣
  業者ハ、之ニ依ツテ特許サレルカラト云フ
  ノデ、一種ノ錯覺ニ陷ツテ居ツテ、之ニ對
  シテ反對運動ヲスル者ガ少イヤウニ思フノ
  デアリマスガ、今日勅令案、或ハ命令案ノ
  內示ヲ戴キマシタガ、私ハ此處ニ於テ其ノ
  點ニ關係アル一ツノ實績ニ付テ申上ゲテ見
  タイト思フノデアリマス、ソレハ御承知ノ
  通リ鐵道省ガ一昨年日本通運會社法案ト
  云フモノヲ御出シニナリマシタ、其ノ當時
  非公認運送屋ヲ如何ニ取扱ハレルカト云フ
  吾々ノ質問ニ對シテ、ソレハ丁度此ノ米ノ
  小賣商人ト同ジヤウニ、許可制度ニシテ之
  ヲ保護スルノデアルカラ、永遠ニ是等ノ權
  利ハ消滅スルコトハナイノミデナク、却テ
  許可シテ當業者ハ非常ナ利益ヲ受ケルデハ
  ナイカト云フ政府當局ノ御答辯デアツタト
  記憶シマス、然ルニ今日ハ如何ニナツテ居
  リマスカ、此ノ非指定運送店ト云フモノニ
  對シテ、政府ハ如何ナル行動ヲ執ツテ居ラ
  レマスカ、半官半民ノ政府監督ノ此ノ法案
  ガ出マシタ結果、要許可事項デアル所ノ小
  賣業者ハ、所謂是等ノ非指定運送店ト同一
  ト見ナケレバナリマセヌ、其ノ者ハ永久ニ
  其ノ營業ヲ認メテ、決シテ御話ノ如キコト
  ハ斷ジテアル筈ハナイ、其ノ代リ濫リニハ
  殖ヤサナイ、殖ヤサナイカラ自分ノ權利
  ヲ確保スルコトガ出來ル、ダカラ安全デ
  ハナイカト云フ御答辯デアツタノデアリ
  さい、然ルニ今日ハ如何デアリマセウ、北
  海道ヲ初ト致シマシテ、是等ニ對スル
  干涉ハ、人ガ五人集マルト警察官ガ來
  テ解散ヲ命ジテ居ル、親代々カラ運送業
  ヲ營ンデ來テ居ル者ニハ、日本運送會社ガ出
  來タ其ノ時ニハ特權ヲ與ヘルト云フ答辯デ
  アツタ、ソレト今日ニ於ケル政府ノ答辯ト
  同ジデス、是等ノ運送業者ニ對シテ、鐵道
  ハ如何ナル壓迫干渉ヲサレテ居ルカ、北海
  道デハモウ三十何箇所ノ運送店、是等ノ運
  送業者ガ今路頭ニ迷ツテ居ル現狀デアリマ
  ス、今大阪、名古屋及ビ京都方面ヲ初トシ
  テ、東京ノ非指定運送店ハ、今日ノ白米商
  ト同一ニ昔カラアツタノデアリマスガ、此
  ノ壓迫干涉ノ爲ニ已ムヲ得ズ淚ヲ呑ンデ、
  自然消滅ノ形デ業ヲ廢止スルニ至ツテ居ル
  ノデアリマス、伏見ニアル所ノ取引ノ實際
  ニ徵シテ、私ハ斷ジテ此ノ法案ト此ノ事實
  ハ違フノデハナイカト思ヒマス、政府ノナ
  サレマシタ所ノ半官半民ノ會社ニ於テ、斯
  ノ如キ實績ガ上ツテ、是ガ爲ニ日本全國ノ
  非指定運送業者ガドレダケ困難ヲ感ジテ居
  ルカ、立憲政治ノ下ニ於キマシテ、私共ハ
  櫻内農林大臣ハ民意ヲ能ク御尊重アラセラ
  レマスカラ、斯樣ナコトニ付テハ、何レサ
  ウ云フコトハナイヤウニシテ戴ケマセウガ、
  此ノ點ハ餘程御考ヲ願ヒマセヌト、突嗟ノ
  場合ニ出來タ所ノ法條デ、又農林大臣トサ
  レマシテモ、此ノ邊ハ目ヲ御通シニナル暇
  モナカツタト思ヒマスガ、是ハ大變ナコト
  ト思ヒマス、此ノ解釋ニ依リマスト、現在
  許可ヲ受ケタ者ガ死ンダ時ニハ、其ノ營業
  ヲ許可スルカ否ヤ、親父ガ死ンダ時ニ、其
  ノ後ノ者ニ許可スルカセザルカハ分ラヌガ、
  ソレマデハ營業ヲ續ケテ居テ宜イ、是ハ卽
  チ是等ノ業ヲ奪フ所ノ前提デアルト業者ガ
  思フノハ無理ハアリマセヌ、而モ驚クノハ
  其ノ干涉壓迫デアリマス、昨日ノ新聞ニ依
  リマシテモ、相當數ノ者ヲ檢擧シテ、一二
  ノ違反者ガアツタト云フコトデアルガ、是
  ハ農林當局ノ御精神ノアル所ヲ忖度シテ、
  旣ニ之ヲ實行シツツアリマス、斯ノ如キ壓
  迫干涉ヲ受ケテ、而モ今日ノ小賣商人ト云
  フモノハ、ドウ云フモノデアルカト云フト、
  田舍ノ百姓カラ出テ來テ居ル、是ハ皆農村
  ノ疲弊困憊カラ、農村ニ於テハ生活ガ出來
  ヌノデ都會ニ出テ來テ居ル、皆農村生レノ
  人デス、先程購販聯、全販聯カラ行ツテ農
  村擁護ノ演說ガアツタ、今日ノ都會擁護ハ
  農村擁護ノ政策デアル、農村カラ出テ來ル
  者ニ生活ヲ與ヘルノハ都會デアリマス、
  方ヲ見テ一方ヲ知ラザル政策ハ偏頗ナ政策
  デ、萬遍ナ政策デアリマセヌ、今日第一線
  ニ立ツテ邦家ノ爲ニ殉ジマス者ハ、吾々中產
  民衆ノ子弟ガ大多數ヲ占メテ居リマス、私
  達ガ斯ウ云フ戰死者ノ遺族ヲ訪ネテ見ルト
  百人中二人位ガ生活ノ安定ヲ得テ居ル、ア
  トハ實ニ憐ムベキ生活ヲシテ居ル、今日是
  等ノ白米商ハドンナ生活ヲシテ居ルカ、其
  ノ親父ガ死ンダ時ニ、許可スルカセヌカヲ
  決メルマデ、營業ヲ續ケテ居テ宜イトハ何
  タルコトデアリマスカ、其ノ不安、其ノ恐
  怖大臣ハ今日ノ陛下ノ赤子ヲ何ト思召
  スノデアリマセウカ、鐵道省ニ於ケル斯ウ
  云フ不法ナル法案ヲ立法スル時ニハ、好イ
  加減ニ答辯シテ置イテ、マダ一二年經タザ
  ルニ斯ノ如キ壓迫干涉ヲシテ良民ヲ苦シメ
  テ居ル事實ガアリマスカラ、農林省ニハサ
  ウ云フコトハアリマスマイガ、今勅令ヲ見
  ルト、許可スルカドウカ分ラヌガ、ソレマ
  デ營業ヲ續ケテ居テ宜イ、サウ云フ立法ヲ
  ナサルト云フコトハ、道理ヲ超越シテ、
  眞ニ國家民衆ヲ憂ヘ、國家百年ノ大計ヲ立
  テル政策デアルカドウカ疑ナキヲ得ナイノ
  デアリマス、私ハ斯ウ云フ命令ヲ見テ一層
  驚イタ、今戰爭ヲ續ケテ居ル忠良ナル陛
  下ノ赤子ニ向ツテ、親父ガ死ンデ、許
  スカ許サヌカヲ決メルマデ、營業ヲ續ケテ
  居テ宜イト云フコトハ何タルコトデア
  リマセウ、國民ニ不安ト恐怖心ヲ與ヘテ、
  ソレデ戰時體制下ノ國民精神總動員ガドウ
  シテ行ハレマセウ、私ハ是ハ農林大臣ノナ
  サレタルニアラズシテ、事務當局ガ編ミ出
  サレタ所ノモノダト思ヒマスガ、立憲政治
  ノ下ニ於キマシテ、斯ノ如キ法案ハ吾々ハ
  堪ヘ難イ酷ナ法案ダト思ヒマス、斯ウ云フ
  ヤウナ命令、親父ガ死ネバ許スカ許サヌカ
  分ラヌガ、ソレマデ營業ヲシテ居ツテ宜イ
  ト云フヤウナコトデ、ドウシテ業者ガ安心
  出來マスカ、是ハ段々無償デ是等ノ營業ヲ
  取上ゲル前提デハナイカト思ヒマス、是等
  ニ對シテ洵ニ恐縮デアリマスガ、農林大臣
  ノ御答辯ヨリモ、此ノ案ヲ出サレタ事務當
  局ガ責任ヲ持ツテ御答ニナツタ方ガ宜イノ
  デハナイカト思ヒマスガ、ドウ云フ目的ヲ
  以テ斯ウ云フコトヲナサルカ、無論農林大
  臣ノ御答辯ガアレバ結構デスガ、是ハドウ
  モ餘リ亂暴ナ法案ダト思ヒマス、ドウカ一
  ツ宜シク御答辯ヲ願ヒタイ、サウシテ國家
  民衆ニ安心ヲ與ヘテ貰ヒタイト思ヒマス

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• 111・周東英雄

  ○周東政府委員　御尤ナ御質問デアリマス
  ガ、是ハ本許可ノ目的ガ人ヲ對象ニシテ居
  ルノデ、一應戶主ガ死ニマシタ場合ニ、相
  續人ニ對シテ其ノ手續ヲ執リマス、併シ是
  ハ大體從來長イ間ノ業ノ經驗ヲ有スル者ガ
  續ク譯デアリマス、實際問題トシテハ、許
  可ヲ受ケルコトニナツテ居リマス、人ヲ對
  象トスル許可制度デアルガ故ニ、相續人ニ
  付テハ一應形式上、サウ云フ手續ヲ履ムト
  云フコトニ致シタイト思ヒマス

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• 112・福田關次郎

  ○福田委員　親ガ死ンダ時ニハ又改メテ願
  書ヲ出サセル、サウシテ許可ヲ與ヘルト云
  フ御答辯ダト承リマス、ソレデ本法ガ出來
  マシテ、新ニ許可ヲ致シマシタ者ニアラズ
  シテ、本法ガ出來ル數年前カラ營業ヲ續ケ
  テ來テ居ル者ニ對シテ、其ノ子孫ガ營業ヲ
  繼續スル時ニ、又改メテ許可ヲ要スルト云
  フコトデアルト、取消ヲスルコトモ、許可
  セヌコトモ出來ルガ、サウ云フ意思デナイ
  ト仰セニナルナラバ、宜シク斯ウ云フヤウ
  ナモノハ、眞ノ相續人ハ之ヲ繼承スト御改
  メニナルコトガ是等ノ者ニ安心ヲ與ヘル所
  以デアルト思フノデアリマス、何等必要ノ
  ナイノニ恐怖ヲ與ヘル法案ト云フモノハ、
  私ノ採ラザル所デアリマスルシ、農林當局
  モサウ爲スツタ方ガ、餘程國民ノ受ケモ宜
  シイシ、成程ト言ツテ直チニ常識的ニ分ル
  ノデゴザイマスカラ-何レ後ニ是ハ各條
  ニ就キマシテ讀會ニ於キマシテ御伺申上ゲ
  マスケレドモ、サウ云フ風ニ此ノ勅令ナリ、
  命令ナリ、法文ナリヲ發表致シマスルダケ
  デモ、全國ノ當業者ハドレ位恐怖シテ居ル
  カ分ラヌノデスカラ、此ノ際ニサウ云フ意
  味デナイノダ、ヤハリズツト續ケサセル積
  リデアルカラ、死ンダ時ニハ其處ニ相續人
  ガ決マレバ業務ヲ繼承スルコトヲ得ト云フ
  ヤウニ御改メニナルコトガ、至當デアルト
  思ヒマス、今此處デ直グ改メロトハ言ヒマ
  セヌガ、サウ云フ方針デアルカドウカヲ御伺
  致シマシテ、日本全國ノ當業者ニ安心ヲ與
  ハイ、此ノ非常時國家ニ貢獻サセルヤウニ
  致シタイト思フノデアリマスガ、モウ一度
  御答ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=112

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• 113・周東英雄

  ○周東政府委員　此ノ點ハ新規ニ許可ヲ受
  ケマス者ト、相續人ガ續イテ業ヲ繼續スル
  場合ニ於ケル手續トハ、自ラ違ツテ來ルト
  思ヒマス、其ノ點ハ餘程手續上ニ簡便ナ手
  續ヲ執リタイト思ツテ居リマス、手續ダケ
  ハ執ツテ貰フヤウニ致シタイ、斯樣ニ思ツ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=113

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• 114・福田關次郎

  ○福田委員　サウ致シマスト、新規ノコト
  ハ別デアリマスガ、父ガ死ンデ其ノ正當ナ
  ル相續人ガ出來テ居リマシテ、其ノ後再ビ
  業ヲ續ケル場合ニハ、申請シテ許可ヲ受ケ
  ルト云フコトニナルノデアリマスカ

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• 115・周東英雄

  ○周東政府委員　一定ノ形式ニ依リマシテ、
  業務ヲ繼續スルニ付キマシテ、必要ナ事項
  ヲ屆出ヲシテ貰フヤウナ考ヲ持ツテ居リマ
  ス

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• 116・福田關次郎

  ○福田委員　私ハ屆出サセテ許可ナサルヨ
  リ、正當ナル相續人ニハ之ヲ繼續スルコト
  ガ出來ルヤウニ、屆出ル必要ナシトセラレ
  タイ、然ルニ其ノ許可ハ、アナタノ方ノ活
  殺自在ニナツテ居ルノデアリマスカラ、是
  ガ非常ナ恐怖ヲ懷クノデアリマス、何レ是
  ハ讀會ニ於ケ修正其ノ他ニ付テ御相談申上
  ゲマスケレドモ、其ノ邊ダケハ國民ノ多ク
  ガ疑ヲ挾マヌヤウナ常識的ナ法文ニシテ置
  イテ戴イタ方ガ、私ハ至當デアルト思フノ
  デアリマス、ソレカラ尙ホ一言申上ゲタイ
  ノハ、今日小賣業者ノ如キ者ハ、失禮デハ
  アルガ、簿記其ノ他ノ學問〓育ハゴザイマ
  セヌ、ソレニ對シテ、何時タリトモ必要ガ
  アレバ其ノ帳簿ヲ檢閱サレルト云フ、其ノ
  一項デ以テ今日官權濫用、人權蹂躪ガ行ハ
  レルノデゴザイマス、行政執行法ニ致シマ
  シテモ、此ノ一項ヲ以テ警官ハ自由自在ニ
  檢事ノ令狀、判事ノ所謂召喚狀ヲ要セズシ
  テ、何等ノ犯罪ノ痕跡ナキニ拘ラズ民家ニ
  亂入スルコトガ出來ルト云フコトニナル、
  斯樣ナ恐ルベキ原因ヲ作リ、人權蹂躙ノ途
  ヲ與ヘルヤウナ法文ハ、何レ御相談申上ゲ
  マスガ、斯ウ云フモノハ今カラアナタノ方
  デ削除サレテ御出シニナル方ガ、本當ニ農
  林省ガ一般民衆ニ對シテ親心ヲ持ツテ御掛
  リ下スツテ居ルコトノ實證ニナルト思フノ
  デアリマス、數十石賣ツテ、タツタ一圓五
  十錢カ二圓儲ケル極ク僅カナ利益シカ得ナ
  イ者ニ對シテ、帳簿ヲ臨檢シテ、之ヲ拒ム
  コトヲ得ズ、拒ンダラ直チニ營業ヲ停止ス
  ルト云フ反面ガアリマス、斯ウ云フコトマ
  デ御干涉ニナルト云フコトハ、何處カラ見
  テモ彼等ヲシテ自然ニ止メシムル、恰度煙
  草專賣ノ時ト同一ナ行動ニ出デラレヨウト
  云フ前提ノ方途ガ、玆ニ潛在シテ居ルノデ
  ハナイカト國民ガ疑ヒマスカラ、此ノ法案
  ニ對ツテ如何ナル信念ト、又如何ナル御所
  存ノ結果、斯ウナツタノデアリマスカ、モ
  ウ一度御伺致シテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=116

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• 117・周東英雄

  ○周東政府委員　此ノ點ニ付キマシテハ、
  本法ノ制定ノ趣旨ガ、全國民ノ爲ニ必要ナ
  米穀ノ配給ヲ出來ルダケ圓滑ニ致シマシテ、
  其ノ適正ナ價格ヲ以テ取引サセルト云フコ
  トニ目的ガアリマスノデ、サウ云フ風ナ必
  要上、米ノ取引ヲ致シテ居ル者ノ實情ヲ能
  ク知ル必要ガアリマス場合ガアルト思ヒマ
  ス、サウ云フコトノ爲ニ報〓ヲ命ズルト云
  フヤウナ場合ヲ考ヘテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=117

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• 118・福田關次郎

  ○福田委員　ソレデハ最後ニ一言御伺致シ
  マスガ、斯樣ナ紛ラハシイ法文ヲ作ルト云
  フ所ニ、今日謂フ官僚獨善、官僚跋扈ト云
  フヤウナ-アナタ方ハサウデハゴザイマ
  セヌケレドモ、國民ハサウ思フヤウニ今日
  ハナツテ來タノデアリマス、是ガ恐ルベキ
  結果トナツテ來ル、斯ウ云フヤウナ法律ガ
  ナクテサヘモ、今日ノ官憲ハドレダケ良民
  ニ干涉ス、壓迫シ、人權蹂躪ヲシテ居ルカ、
  況ヤ斯ウ云フ米ノ取引、米ノ小賣ニサヘ
  モ官憲ガドン〓〓來ル、劍ヲ提ゲテ土足
  デ以テ上リ込ムト云フヤウナコトヲサセル
  ト云フコトハ、何ト云フコトデアリマスカ、
  法文ノ拙劣ニモ依リマスガ、無論農林大臣
  ハ能ク民意ヲ代表シテ下サイマスカラ、何
  レ斯ウ云フコトハ削ツテ貰ヘマセウケレド
  モ、今日農林事務當局ガ今カラ是ハ斯ウシ
  ナケレバナラヌト、吾々ガ言ハヌ中カラ、
  豫メ修正シテ御出シ下サイマスヤウニ御願
  致シマス、農林當局ニ私ノ申上ゲタコトハ、
  出過ギタ言葉モアルカモ知レマセヌガ、併
  シ內外及ビ國民ノ全體ヲ通覽致シマシテ、
  今日國民ハ生活苦ト鬪ヒナガラ國家ニ奉仕
  スルノ念ニ燃エ、己ノコトヲ忘レテ居ル、
  斯ウ云フ時ニ當リマシテハ、ヤハリ立法ヲ
  爲サル方モ其ノ邊ヲ能ク忖度ヲサレテ、ド
  チラモ完全ニ喜ブト云フコトハ、ムツカシ
  イカモ知レマセヌガ、兩者寄ツテ、アア是
  ナラバト言ツテ法ノ有難サヲ知ルヤウナ立
  法ヲシテ戴キタイノデゴザイマス、サウシ
  テ國家ガ何處マデモ一致團結シテ、東亞新
  建設ノ大事業完成ノ爲ニ持ツテ行キタイト
  云フ志カラ、此ノ言ヲ爲シタノデゴザイマ
  スカラ、農林當局ハ私ノ意ノアル所ヲ、卽
  チ吾々微力デハゴザイマスガ、至誠ノアル
  所ヲ御酌取リ下サイマシテ、何卒吾々ノ聲
  ヲ御聽キ下サレ、以テ本法ニ對シテ何人モ
  恐怖ノ念ヲ懷クコトガナイヤウニ御修正
  ニナリ、善處アランコトヲ御願申上ゲマシ
  テ、私ノ質問ハ大變長ク御〓聽ヲ煩ハシマ
  シテ恐入リマシタガ、之ヲ以テ終リト致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=118

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• 119・小山田義孝

  ○小山田委員　遲クナリマシテ甚ダ恐縮デ
  ゴザイマスガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=119

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• 120・添田敬一郎

  ○添田委員長　關聯シテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=120

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• 121・小山田義孝

  ○小山田委員　關聯シテ一寸······先刻福田
  君ノ取引所廢止ニ關スル善後處置ノ問題ニ
  對スル大臣ノ御答辯ノ中ニ、取引所ノ株主
  ノ所有スル株式ヲ其ノ儘ニ新シイ日本米穀
  株式會社ノ拂込株式ニ充當スルト云フヤウ
  ナ意味ノ御話ガアツタノデゴザイマス、結
  果ニ於キマシテ廢業手當ヲ支給シタト同樣
  ナコトニナルト云フ御話モアツタノデアリ
  マスガ、果シテ左樣デアリマスカドウデア
  リマスカ、其ノ點ヲハツキリ御答辯ヲ願ヒ
  タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=121

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• 122・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　ソレハ少シ話ガ違フヤウ
  〃
  デアリマス、詰リ取引所ノ財產ヲ買ヒマス
  評價委員ヲ拵ヘマシテ、所謂委員會ノ議ヲ
  經テ買ヒマス、サウシテ其ノ會社ガ新規ニ
  株式ヲ申込ムコトヲ認メルト云フダケデア
  リマシテ、株ト株ヲ取替ヘルト云フヤウナ
  コトハアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=122

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• 123・添田敬一郎

  ○添田委員長　ソレデハ本日ハ是デ散會致
  シマス、明日午前十時ヨリ開會致シマス
  午後六時二十分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413118X00419390310&spkNum=123

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